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1979-04-25 第87回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月二十五日(水曜日)    午後一時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         夏目 忠雄君     理 事                 斎藤栄三郎君                 鈴木 正一君                 高杉 廸忠君                 桑名 義治君                 木島 則夫君     委 員                 衛藤征士郎君                 山東 昭子君                 世耕 政隆君                 藤井 裕久君                 真鍋 賢二君                 増田  盛君                 大森  昭君                 田中寿美子君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君                 小笠原貞子君                 下田 京子君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂徳三郎君    政府委員        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       佐々木孝男君        資源エネルギー        庁石油部長    神谷 和男君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山地  進君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部取        引課長      川井 克倭君        資源エネルギー        庁長官官房参事        官        深沢  亘君        資源エネルギー        庁公益事業部計        画課長      木下 博生君        運輸省航空局監        理部監督課長   早川  章君        日本専売公社副        総裁       原  秀三君    参考人        日本銀行総務部        長        東山 紀之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価対策基本方針に関する件)  (公正取引委員会物価対策関係業務に関する  件)  (北海道における電力料金及び灯油価格に関す  る件)  (石油製品価格に関する件)  (国鉄運賃値上げに関する件)  (牛肉の価格安定対策に関する件)     —————————————
  2. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査のため、本日の委員会参考人として、日本銀行総務部長東山紀之君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) 当面の物価等対策樹立に関する調査議題といたします。  前回委員会において聴取いたしました物価対策基本方針及び公正取引委員会物価対策関係業務等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、わが国経済全般見通しの問題と、それから物価に関連して長官にお尋ねいたしたいと思います。  長官は六月末のサミットに向けて、そのための露払いというふうに言われておりますけれども、訪米なさるそうでございますが、その役割りはどういうところにございますか。
  6. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 新聞には露払いのようなこと書いてございますが、別にそんな意味はないのでございまして、実は、経済企画庁アメリカ大統領経済諮問委員会との間に定期協議が毎年行われておりまして、ことしがたまたまアメリカで開催することになっておりますので、それに私が出席をするのが渡米する主な目的でございます。もちろん先方の委員長シュルツ委員長でございますので、シュルツ委員長は、少なくともアメリカ政府に対してはサミットに関連したいろいろな事項の基礎的な資料あるいは基礎的な考え方等をアドバイスする立場にあるわけでございますので、そんなような関係で多少話が入るかもしれません。  なお、先般ブルメンソール財務長官あるいはまた大統領府のオーエン大使日本に参りましたときも私会っておりまして、両氏からもぜひ改めてアメリカへ来たときに話し合いをしたいという申し入れを受けておりますので、そうした方々との会談等予定をいたしておりますが、ことさらにサミットという問題にしぼって話をするつもりはございません。
  7. 田中寿美子

    田中寿美子君 重要な経済閣僚メンバーでいらっしゃいますし、いま日本の政治、外交、経済挙げて六月末の東京サミットに向けて動いている感じがありますわけですね。それで、大平総理も四月三十日から五月七日まで訪米なさいますし、それから帰っていらっしゃったら、また七日から始まるマニラでのUNCTADに大平さんがいらっしゃる。東京ラウンドの本調印が夏に予定されているわけで、アメリカとかECとの関係だけでなく、さらに発展途上国、特にASEAN諸国との関係日本十分八方手を尽くして、そしてサミットが成功するようにと、そういう努力をしているということは、これはもうだれでも承知していることでございますね。ですから、これは大平内閣の信を問うような大きな問題でもありますので、当然のこととして経済企画庁長官もその中の重要な役割りを果たされるというふうに想像いたしますが、六月の初めの訪米を前にして、これも新聞報道によっていますが、西独ラムスドルフ経済相が来られて、そして話し合いをなさった。昨年のボン首脳会議のときに、西独ラムスドルフ経済相は前もってアメリカに行かれて、そしてアメリカと打ち合わせをしてスムーズにいくように努力をした。そのときの経験などを企画庁長官もお聞きになったと思うのですが、昨年のは主としてこれは先進諸国全部景気をつけることに重点があったと思います。それで景気対策というところに重点があったと思いますが、その後の推移が多少違ってきておるわけなんで、それでいま東京ラウンドを中心に、日米間にも経済的な摩擦がいっぱいあるわけなんですが、そういうことについて、やはり長官は相当の役割りを果たされるというふうに私は想像するのですが、そういう使命もお持ちになっているんではないでしょうか。
  8. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 当然話し合いもいたしますから、その中にいろいろな問題が出てきて、また現在いろいろとアメリカ側日本に対して要求していることもございましょうし、またその後ろ盾アメリカの議会であるということ等もわれわれ承知しておりまして、そうした方々とも十分話し合いをしてみたいということはございますが、またそれからアメリカの後、OECDの閣僚理事会がございますのでそれに回ってまいりますものですから、ちょうどサミットの前に一回りするようなことになって、いろいろと憶測がなされているというふうに思いますが、ことさらに特別な使命というようなものは全く与えられてもおりませんから、きわめて事務的な話をしてまいるつもりです。
  9. 田中寿美子

    田中寿美子君 重要な経済閣僚メンバーであり、日本経済方向について方針を出すことに主な責任を持っていらっしゃる長官でございますから、私はそういうふうにお答えになろうとなるまいと、大きな役割りはやっぱり持っていらっしゃると思うのですけれども、今度の東京サミット議題経済成長率の問題、雇用インフレというふうに聞いておりますが、この点についてやっぱり日本も相当問題を抱えておりますわけですね。最近の日本経済情勢というか状況というか条件と申しましょうか、それは昨年のボン会議の当時から見て相当程度変わりつつあるということについて、長官はそれをお認めになりますか、どうですか。つまり、政策の面から考えますと景気よりは物価対策の方に重点を移していかなければならない時期に来ているんではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  10. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 御指摘のような考え方は、われわれといたしましても決して否定を申しておるわけでございません。特に、昨年度そしてまた本年に入りましてから内需拡大が、少なくともわれわれが予測した以上に拡大をいたしておりまして、こうした面におきまして非常に私は底がたい経済発展が徐々に実現しているというふうに思っておりますが、いま問題なのは御指摘のようにやっぱり価格の問題であります。これは何も日本だけではないのであって、世界じゅうの先進諸国がややインフレ的傾向にあるということは、これは非常に前回のときと私は違った環境ではないかと思います。  それからもう一つは、やはりそれに加えての石油値上げ等OPECでやられておりまして、特にこれが六月のOPECの総会において今年の後半の価格がどうなるかということなどは非常に私は重要な一つのモメントだろうと考えております。したがいまして、アメリカも非常にインフレでは苦しんでおるようでございますし、ドイツも先般の経済相との話の中でも、多少のインフレ傾向というものに非常に警戒的でありましたし、われわれの方も卸売物価の最近の情勢を見ますと、ややこれも警戒信号であるというふうに考えております。問題は、結局世界物価情勢というものについて少なくとも相当突っ込んだ話、しかもその一番のもとをなしておる石油価格の安定ということについては、これは消費国全般がさらに非常に強く手を握って、生産国石油引き上げというものに対抗していく必要がある。私は一番国際的に考えなきやならぬのはその協力がうまくできるかできないかということ、同時にまた、先般のIEAにおいて決めました五%の節約ということ、本当にこれは各国が実践してみせるということが価格安定の一つの引き金になるというふうに考えておりまして、こうしたことを一国一国それぞれ努力するとともに、世界先進諸国が一斉にその方向で強い政策を打ち出していくということを合意することが、きわめて今後の世界全体に対しましても、また日本にとりましても重要な施策の一端ではないかというふうに考えております。  なお、世界経済全体でございますが、非常に緩やかでありますけれども、われわれの調査によりますればだんだんと拡大方向にいま入ってきておりますので、これは世界にとりまして非常にいい傾向でございます。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、長官がことしの国会の当初の一月二十五日に演説なさいました経済演説ですね、そこに出されている全体の基調というものは私はやっぱり少し見直さなければならないんじゃないかという気がするわけなんですね、その基調はよく覚えていらっしゃいますと思いますけれども、第一景気不況対策の方に重点があったと思います。それから、石油危機後の調整期に入っていって安定成長路線に乗ったということが強調されております。つまり、いまおっしゃったような新たな意味石油危機というものはまだその当時十分に認識されていなかったと思いますね。それでイランの革命があって、あそこに日本もたくさん石油の会社なんか、あるいはコンビナートなんか進出しているわけですけれども、あそこからの石油輸入ということも今後不安定な状況にあるし、それから中東和平の問題なんかも、日本が余りにエジプト、イスラエルのあの中東和平のところで肩入れをし過ぎたら、アラブ諸国の反発を買うというようなこともあって、今後の石油輸入の問題にも不安定要因が出てきておる。それから政治的にも不安な状況がある。そういうことがあるんですけれども、長官経済演説では、石油危機後の調整期で安定的な状態に入っているという考えに立っております。それから物価の方も安定的に推移している。いまや卸売物価は五十三年度末には二・六%前年度よりマイナスになるだろう。それから消費者物価は四%ぐらいになるだろう。それから五十四年度の見通しについては大変楽観的なんですね。  ところが、後でまたもう少し細かく御質問いたしますけれども、昨年の十一月以降卸売物価は連続五カ月高騰してきているわけなんですね。卸売物価が上がれば三カ月ないし六カ月の間に消費者物価にこれははね返ってくる。したがって、物価見通しもあの一月二十五日当時の経済演説ではちょっと私は問題がある。それから、国際収支の方も順調に回復しつつあるというふうにおっしゃっておりますけれども、確かに五十三年度末で貿易収支が二百二十億ドルぐらいでしょうか、経常収支が百二十億ドルぐらいですか、やっぱりこれは非常に大きいんですね。五十三年度の経済見通しのときにはあれはたしかもつと低く見ていますよ。それがやっぱり実現されていないわけですね。しかもいまの状況は、これから日米間の貿易交渉でここのところが非常に問題になっておりますし、東京ラウンドでも全体として大きな問題になってくるわけで、それで果たして東京ラウンド調印をしたからといって、黒字を減らすようになっていくかどうかということは非常にいろんな要因にかかっていると思うんですね。ですから、その辺の見通しについても問題じゃないかしら。日本アメリカに対する黒字は百十一億ドル、ECが六十四億ドルでしょう。そういうことなどを考えますと、五十三年度のまとめ、さらに五十四年度に向かっての経済見通しも私は修正の要があるんじゃないかと思うんですが、長官修正の要がないということをおっしゃっているように私は伺っております。  まず第一に物価の方ですけれども、卸売物価はこの経済演説によりますと、五十四年度は前年度比一・六%アップと見ておりますね。ところがいままでの推移からしますと、年率に直したら二けたになる、二・四%ぐらいでしょうか。これは卸売物価指数の上がってきている状況を見ますと、そういうわけにはいかないんですね。まさにこれは日銀の方が公定歩合を引き上げる際に、日銀総裁が、まさに狂乱物価前夜の状況にあるというふうなことを言っていられるんですけれども、卸売物価指数を見ますと、昭和四十七年三・二%、前年度比アップですね、四十八年度が二二・七、四十九年度が二三・五というむちゃくちゃな上がり方をして、それがはね返った消費者物価指数が四十八年一六・一、四十九年二一・八、五十年一〇・四、五十一年九・四と、こういうふうに狂乱物価状態を引き起こしたわけですね。今年度の卸売物価は五十三年度十一月まではマイナス推移していて、そして十一月から〇・二、十二月〇・六、五十四年度に入って一月が〇・六、二月〇・九、三月〇・九、だからこれを年率に直すと二・四というふうに大変な大きなアップになるはずなんですね。そういうことを考えますと、五十四年度の経済見通しについてもまず物価の点で見直しをする要があるのじゃないか、まずそれをお伺いします。
  12. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま御指摘の五十四年度の経済見通しでございますが、全体としてのわれわれの考えましたことは、先般の経済演説で申し上げましたとおり、一つには、国内失業を直二十万程度以上にはふやさないということ、そしてまた新たに六十五万人ぐらいの就業者を増加するということが一つの大きな目標でございました。それからもう一つは、やはり経常収支を百億ドルを切っていくためにはどうしても国内内需拡大しなくてはいけない、要するに国内内需を支えとした経済成長を遂げるということをねらうということでございまして、あわせて、それの一つの大きな柱としての物価の安定ということを三つねらっておるわけでございますが、現段階におきまして、多少卸売物価は確かに御指摘のように今年に入りましてから相当の上昇率を示しておりますが、消費者物価の方は三月末の時点でも当初の計画よりもさらに低い上昇でございまして、三・九くらいのところでございますから、これは非常に私は消費者物価の方は現時点でもなお安定していると思っております。ただ、卸売物価の問題でございまして、この事態が多少われわれが非常に目につきましたのが二月の初めからでございますから、その時点物価政策総合的推進ということを閣議で決めました。そして、四十八年のあの狂乱物価のときにつくりました組織の物価担当官会議というものをずっと開いておりませんでしたので、それを直ちに招集するということで、第一回を二月の二十六日にいたしました。また四月の五日に第二回をいたしました。特に、卸売物価上昇に対して徹底的にこれを行政的に監視をしていくということを決めて、いまその努力を続けておるところでございます。  こうしたことをやっておりますが、そしてまた、公定歩合を〇・七五引き上げたというのも結論的に申し上げればインフレマインドに水を差そうということでございまして、これが景気を余り大きく引き下げるという程度でないことをわれわれは希望いたしますし、大体〇・七五というのならほとんど経済成長には影響なしというふうなことでわれわれも理解をいたしておるわけでございますが、等々のことで、卸売物価につきましては御指摘のような問題を含んでおります。しかし現在まだ四月でございますので、五十四年度は四月からのスタートでございますから、現時点だけに立ちましてわれわれの経済見通しそのものの手直しをすることは、まだいささか早過ぎるということを考えておりまして、その前にわれわれとしてできるだけの努力をいたしまして卸売物価上昇に歯どめをかける、それが一番いまの政策的な重点施策でございます。ただ、せっかくわれわれが考え雇用の改善は、ありがたいことに三月時点でも非常に私はいい傾向になってきていると思います。また、もちろん特定不況地域その他にはなお大量の失業がありますが、しかし全般として見ますとわれわれの予測以上に早いテンポで有効求人倍率なども上昇しておりまして、このような状況内需拡大ということでそれがカバーされているというふうに考えておりますので、やはり物価の問題もきわめて重要でありますが、同時に経済成長もある程度遂げてまいりませんとすべてに息づかれてしまうということで、言うならば、両にらみと申しておりますが、物価景気というものを両方にらんでまいる。しかしいまは物価にやや重点を置いているという政策運営をいたしております。
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前の石油ショックの後の狂乱物価のときの経験がありますから、それを再現しないための非常な努力を皆さんが払っている、これはよくわかります。ですけれども、明らかに卸売物価指数なんかの見積もりは違ってきておりますし、それから、五十二年度のときに経済見通しをお出しになったときに、貿易収支の方はおよそ百六十五億ドルの黒字経常収支は百億ドルという見通しを出したわけですね、五十三年度。五十四年度は、そこのところを書きかえて今度は円で出しておりますけれども、計算すると、大体二百億ドル以上が貿易収支黒字で、経常収支の方は百二十億ドルぐらいと、こういうことになって、結局、黒字減らしということを先進国首脳会議でも約束をし要求されてきたけれども、実際には予定よりはなかなかできなかったという事実もあるわけなんですね。  それで、長官がこの委員会で二月の中旬になさいましたあいさつがあるのですが、これは物価に対する対策をこういうふうにするというようなことがいろいろと書かれておるわけなんですけれども、これは、何と言ったらいいか、失礼な言葉で言いますと大変気の抜けたようなあいさつですね。たとえば非常に抽象的に、価格安定に努力いたしますとか、それから建設資材価格動向注意を払ってそして不況カルテルの運用にも配慮する必要がありますとか、それから公共料金の改定は厳正に対処する所在ですとか、通貨供給量動向注意を払ってそして過剰にならないようなふうに努めますとか、全体として監視努力、配慮、非常に二月の中旬のときのごあいさつは非常に消極的な言い方であるわけなんですけれども、その後の状況、それから東京ラウンドなんかで各国から非常に厳しい要求がある。特に日米関係摩擦の問題が出てきて、政府としても余り楽観的な態度ではおられないということで多少あわてられたのじゃないかというふうに思います。いまおっしゃった物価担当官会議も、長官が二回目をお開きになったと。一回目、二月二十六日のときの申し合わせ、それからさらに二回目の担当官会議での申し合わせなどを見ますと、なかなか、これはいいかげんなことでは済まないということで大分あわてていらっしゃるのではないかという感じがするわけなんです。  そこで問題にされております点についてお尋ねしたいと思いますが、強調をされている問題は、いまの第一卸売物価上昇の問題、物価上昇する心配があるからこれに対処しなければならないという問題、それから、円高の効果がもうなくなってきている、だからこれも物価を引き上げる心配がある。それから、原油の価格が先ほどおっしゃいましたように今後上がっていく心配がある、それから一部の物資はすでに高騰しつつある。この辺を警戒しなければならないということが話し合われておりますね。そうして行政指導をするというふうなこと、物価について監視をし臨機応変行政指導を強化していく。これは、行政指導を強化するというふうな少し強い口調に変わっておりますね。第二回目は、大変もう日銀の方からは警戒信号がずいぶん出てきておりまして、通産省、農林省、経済企画庁長官もそうだったろうと思いますが、やはり景気対策の方に重点を置いた方がいいというお考えであったのではないかと思うのですが、日銀森永総裁からしばしば警戒信号が出ていたと。そして二回目の物価担当官会議は四月五日に開かれているわけですね。そこで大分強い口調になって、そして物価監視して臨機応変行政指導をする。行政指導の強化というのは具体的に言えばたとえば何についてどういうことをなさるということでございますか。
  14. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 現状においての卸売物価動向原因と申しましょうか、それをわれわれいま調べたのでありますけれども、大体三月時点における上昇の主な原因海外要因が三分の二を占めておりまして、三分の一が国内要因ということでございますから、四月の初旬しかまだわかっておりませんが、大体この傾向が四月以降まだ続いているとわれわれ見ておりますので、海外要因でございますから結局それは円安であるとか、あるいはまた海外値上げでございますね。特に日本輸入品素材原料が多うございますから、銅だとかあるいはまた石油だとかそうしたものの値上がりが非常に影響を持つわけでして、したがいまして物価対策の一番の根本は、やはり便乗値上げというところを一番チェックをする必要がある。したがいまして、現在は挙げて便乗値上げへの監視、そしてまたその上昇が強い物資も全部わかっておりますから、そういうものについてはだれがどうしたのかというところまで、通産省その他でいま深く突っ込んでチェックをしているところでございます。  文書に書きますと大変なまぬるいような対策に見えるわけでございますが、実態として現在の物価対策根本が、もちろんこれからはだんだん国内要因が出てくるんでございましょうが、しかし、その国内要因として値が上がるであろうと思うのは生産制限だろうと思うんです。これがやっぱりカルテルでございますが、これはカルテルはいままでございましたのは四月までで全部なくなりますから、そうした生産制限による価格引き上げということはない。それからあとあるのはやはり便乗値上げということになりましょう。石油が上がったというと一挙にそれが波及していくというようなことになると思うんでございます。その辺のところをチェックするのが現時点における物価対策の私は根本ではないかと思っておりますので、したがいまして余りはでではございませんけれども、着実に物価一つ一つ攻めながらいく。  それからもう一つは、海外要因で上がっている卸売物価でございますが、それを使ったものがやはりそれをただ価格にそのままざっと転嫁していくということは、これは価格方式から言えば当然だと言えば当然かもしれませんが、そこにいまわれわれ一番強く産業界その他に要求していることは、生産性を上げてなるべくこの海外要因上昇を吸収してほしいということを声をからしてやっているわけでございます。こうしたようなことは同時に増産をしてもらうということにもなるでしょう。等々で現在輸入する商品が減っているわけじゃございません。また外貨もたくさんございますから幾らでも原料は買えるわけでありますから、それがこの前のオイルショックの時とは大変違った私は環境ではないか。この前は石油があってもないんだというルーマが先行したものですから、一挙にそれでもって上がってしまったというふうにも考えておりますが、いずれにいたしましても海外要因による卸売物価上昇現時点原因でございますので、その便乗ということに対してこれを抑える方法、それからもう一つインフレマインドを消すということ、そのようなことが具体的にいま進めておる施策重点でございまして、さらに細かくは物価局長がおりますので御答弁させます。
  15. 田中寿美子

    田中寿美子君 それではいまおっしゃった海外要因が非常に大きいことは確かに事実だろうと思います。そしてそれと便乗値上げということをおっしゃったんですが、それをチェックする方法は一体具体的にはどういうことなのか。たとえば建設資材というのが名前が挙がっておりますね。建設資材の中で、たとえばどういうものがいま上がりつつあって、それに対してチェックする方法というのはどういう方法があるのかということですね。  それから石油製品ですね、原油が上がってくるとその石油製品便乗値上げをする可能性がある。これをどのように行政指導チェックしていくのか、その辺を初めに聞かしていただきたいと思います。
  16. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 建設資材につきましては、昨年の末ぐらいから需要が公共事業等の増大を背景としてふえておるということもございましたり、それから海外の原材料の市況が上がるということもございましたし、それから過積み規制というようなことがあって、いろいろの要因が重なりまして昨年の十一月ごろから上昇したわけでございます。その中には木材関係の合板とか、それから小形棒鋼、そういうものがあったわけでございます。これに対しては早くから価格監視をしてまいったわけでございますが、全体としては供給の余力があるわけでございますので、一時的な要因で値上がりしていくというものに対しての状況をよくつかんで、それに対して対策を打とうということにしてきたわけです。  そこで政府としてやりましたのは、特に合板についての値上がりが非常に著しかったものですから、当時政府の補助金等でできておりました備蓄機構からの合板の放出を早速いたしたわけでございます。そういうこともございまして、合板については一月まで非常に上がったんですけれども、二月、三月と二カ月にわたりまして下がってまいっております。そういうことで、かなり供給をふやすということの効果が出てきているのではないか。これからも価格の動きを見ては適切な手は打っていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それで、石油製品の方につきましては、これは特に今回の卸売物価値上げについての心配が一番強い品目でございますので、これについては便乗値上げ監視を強くしようということにしておりまして、具体的には通産省の方で石油精製企業が値上げをするときに、その内容を通産省が全部ヒヤリングする、チェックするということが第一でございます。それから第二には、末端の小売価格については地方通産局の職員等が小売価格の動きを毎週調査するということでございます。それから、さらに基本的にはやはり石油精製業とか、それから流通団体等がその価格についていわば適正なコストを反映したものにするということが必要でございますので、これらの業界に対して通産省から便乗値上げをやらないようにというようなことについての文書の要請をいたしております。現在、そういう形で石油製品についての監視をしているわけでございまして、これからもこの対策については強力に進めていきたいと考えております。
  17. 田中寿美子

    田中寿美子君 建築資材に関してはそういう行政指導をする。それで備蓄してあったものを放出して供給量をふやすというお話がありましたけれども、それは黒字減らしのために買い込んで備蓄してあったものということなんでしょうかね。それから石油に関しては、やっぱり昨年度貿易収支黒字を減らすために買い込んでタンカーで備蓄してある、そういったものを必要に応じて出すことによって価格チェックすると、そういうお考えなんですか、またそうしているんですか。
  18. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 合板の備蓄の方は、やはり合板の価格の安定のために設けられた機構でございまして、三大都市圏で主としてやっているわけですが、非常に需給が緩んだときに買っておく。そして逼迫したときにそれを放出するという形での需給調整でございます。  それから石油については、いまの備蓄といいますのはこれは将来の石油供給の安定を図るという意味でやっているわけでございまして、いわば国際的に進めているものでございますので、やはり備蓄を使うということはよほどのことでないと好ましいことじゃない。やはりできるだけ供給を確保していって、そして一方でエネルギーの消費の節減も十分やる。そういうことで需給をバランスをしていくべきではないかと思うわけでございます。そういうことで見ますと、ことしの一−三月の輸入の入着量も昨年を上回っておりますし、それから四−六についても昨年を上回るということで、そういう供給の確保はかなり企業の努力によって進んでまいっております。当面、一方で行いますエネルギー消費の節約ということを行いまして、備蓄というものに手をつけるということでないような形での石油の消費をしていくということがいいのではないかと思っております。
  19. 田中寿美子

    田中寿美子君 石油資源は守っていかなければなりませんから、価格操作のためそうやたらに使うべきものではないだろうと思いますけれども、行政指導をするといえば、何かそういういろいろなことをやられるのではないかと思っているわけなんですが、それじゃその海外要因だけじゃなくて、土地の騰貴の問題があると思うんですよ。土地価格ですね、これは土地税制を緩めたということもあって、ひそかな騰貴がもう行われつつあると思う。土地の表示価格で五十三年一月の地価上昇率五・二%ですね。それが実際には売買するときにはその五倍も六倍もで買うわけですから、平均して五・二%ですね。五・二%というのはもうすでに定期預金の金利を上回っているわけなんで、これはもう投機の好対象になるわけですが、これに関してはどういう指導をなさっておりますか。
  20. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 特に土地の問題につきましてわれわれが一番心配いたしておりますのは、東京、大阪、名古屋の三大都市圏における住宅地の上昇でありまして、これは全般的ないわゆる公示価格上昇率五%台をはるかに超えております。特に東京の場合には九%近く上がっておりますので、この点は非常にこれは一種のスペキュレーションになるということを非常に心配いたしまして、結局まず土地に対する金融を日銀、大蔵省協力して大いに締めるということを二月五日の閣議で決めているわけでございまして、さらにそれをフォローいたしまして、物価担当官会議においてもそれをさらに詰めていくということ、これは二月の二十六日、そしてまた四月の五日にもさらに確認をいたしているところでございまして、ただなかなか従来、前のオイルショック後の土地騰貴というものの後始末がまだ十分できていない面もありますので、この引き締めということは、少なくともこれからのものに対しては相当効果がありますが、前から根雪になっているものに対しての問題というものは、これはまた新しい角度で金融界その他でよく検討してもらわなくてはいけないと思うのでございます。しかしそれは一応、むしろ上昇でなしに安定化の方に役立つような方向で処理をする、あるいは引き下げの方向で処理をするということをわれわれは主張しておるところでございます。  それからもう一つは、やはり供給を少しふやさなければいかぬ、先般来土地税制その他の改正ございましたが、やはり三大都市におきましては、線引きの見直しということ、先般の閣議でも国土庁長官から線引きの見直しということについてぜひやりたいんだと、むしろ線引きをもっと広範囲にするとか、現在ある線引きの地点をさらに具体的に土地供給の増加する方向での見直しをするとか等々は現在国土庁において検討してもらっておるところでございまして、政府としましては、国土庁の案が出ましたらば、建設省その他全関係省庁が協力してそれを早くやるということなどが、いま進められておる施策でございます。  それからもう一つは、特に公示価格がでたらめだと言う人もおりますが、やはりあれは一つの目安でございますから、この公示価格で、少なくとも公的なと申しますか、政府機関あるいはそれに準ずる者が土地の売買をするときには、その公示価格を超えてはならないということで、少なくとも政府関係機関の土地売買に際しては、厳重に公示価格を守るということで進むことに先般決定をいたしておるわけであります。等々でありますが、土地の問題はきわめて重要なことでございまして、まだまだいろいろと新しい手を考えたり、あるいはもっと根本的な物の考え方をしなければならぬのではないかという意見も政府内部にはございますが、こうした問題につきましては、前回のオイルショック後の問題にわれわれもこりておりますので、きわめて注意深くしかも早くそれが実現して、手の打てるものをまず集中的にやっていこうということで、現在対応を進めているところでございます。
  21. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前のオイルショックのときの土地の値上がりというものはものすごかったし、それから建築資材の値上がりもひどかったし、本当にああいうことが二度と起こらないためのあらゆる努力はやっていただかなければならないと思いますが、そこで公定歩合の引き上げの問題なんですが、これは日銀の方にお尋ねしたいと思うんですが、今回〇・七五%の引き上げは、相当高率を突如としてやることができたというか、これはいろいろまあ報道によりますと、それぞれ財界だとかあるいは通産省とかいうところの必ずしも賛成はなかった、反対もあったと。しかしそれを強行したのは、インフレ心配をした、さっきも申しましたように、狂乱物価のまさに前夜の状況にあるというような言葉すら使って、金融引き締めのために日銀がそれを主張し、そしてそれを政府も賛成したということになるかと思うんですが、それを行うのについて、日銀としてこうこうこういう材料で心配であったという御説明を聞かしていただきたいんですが。
  22. 東山紀之

    参考人東山紀之君) 先ほどすでに先生からお話もありましたとおり、私どもとして一番心配いたしましたのは物価動向でございます。先ほどからお話がございますとおり、去年の十月まではきわめて安定した卸売物価動向が見られたわけでありますが、十一月以降、皆様御指摘のとおり物価上昇が非常に加速してまいりまして、五カ月連続の上昇になった、しかも上昇幅は月を追って高まると、こういう状態にございました。現在四月の上旬までわかっているわけでございますが、四月の上旬だけで〇・八ということの上昇でございまして、これによりまして三月の末に前年比で〇・一のプラスになりました卸売物価が、四月の上旬では一・七のプラスになると、こういう状態になっておるわけでございます。先ほど長官からも御指摘がございましたとおり、十一月の上昇から三月までの間をとってみますと、上昇率は三・一%でございまして、その三分の一が国内要因、三分の二が海外要因ということになっておりますが、三月をとりますと、〇・九のうちの〇・四が国内要因、〇・五が海外要因、四月の上旬をとりますと、〇・八のうちの〇・五が国内要因、〇・三が海外要因と、こういうふうにだんだんと長官が先ほどお答えになっておられますとおり、国内要因のウエートというのがふえてきております。  さらに輸入原材料からの値上がりというものが次第に二次製品、製品というふうに移っていくと、こういったような傾向が見られるようになっております反面におきまして、一応この長い期間を通じまして減量経営が徹底しました結果といたしまして、需要がふえても必ずしも生産がこれに伴わないというような分野が少しずつ出てきているということも否定できない事実であります。その上に企業それ自体が非常に慎重でございまして、石油ショック以来在庫を非常に切り詰めておりまして、むしろにわかに生産をふやす、在庫をふやすという動きがいまのところは見られませんが、今後、在庫の量が少ないものでございますから、価格動向いかんでは仮需的な動きが急に高まるというような危険があるわけでございます。現在、そういった動きを指摘できるものはごくわずかな業界でありまして、全体として依然として企業は慎重なムードにあるというふうに考えておりますが、他方におきまして、長い間の金融緩和を通じまして企業の手元流動性というものが非常に高まっております。マネーサプライの水準から申しますと、大体ここのところ一二%というような水準で推移しているわけでございますが、それ以外に企業手持ちの有価証券というのがかなりふえておりまして、これを含めて考えますと、企業の手元流動性というのは前年比一三、四%の増加というような感じでございます。  で、もちろん石油ショックの当時の非常な高さには及べべくもないわけでありますが、しかしながら当時とは状況が非常に変わっておりますし、他方において財政の支出が国債の発行ということについて行われておるというようなことを考えてまいりますと、現状がインフレだとは私ども申しておりませんが、インフレのムードというものが高まった場合にそれが非常に広がる危険というのは依然として大きい、こういうふうに考えておるわけでございます。そういった状況を踏まえまして、すでに一−三月に窓口指導を強化いたしますとともに、総裁の方からもこれ以上の金融緩和はしないということを明言しておりましたわけでございますが、最近の物価状況にかんがみまして、四−六月には窓口指導を一層強化をする。さらに市場調節を少しきつ目にいたしますとともに、三月二十日の国会で総裁から、むしろ警戒中立型に切りかえるということを明言されたわけでございます。  今回の公定歩合の引き上げは実はその延長線上にあるものでございまして、私どもはこれによりましてインフレ心理を未然に抑える。そうして息の長い成長というものを期待したいということを考えて今回の引き上げを行ったという次第でございます。
  23. 田中寿美子

    田中寿美子君 日銀インフレになることを恐れて、それを警戒して公定歩合の引き上げに踏み切られたその理由の御説明がいまあったわけなんですけれども、いまマネーサプライのことをおっしゃいましたが、現状でいま一二%ぐらいとおっしゃいましたか。これは多過ぎはしないんですか。名目経済成長率と同じくらいというのが適度の量ではないかと思いますが、その辺はどうですか。
  24. 東山紀之

    参考人東山紀之君) 一二%が果たして適当であるか、あるいは高いかということにつきましてはいろいろな見地からこれを検討しなければならないわけでございまして、私どもはこの一二%という数字は、実はかなり長い間続いております。それでその間景気が、たとえば非常にまだ上昇過程にある間は私どもも景気の回復を着実にするということを主眼に置きまして、したがってどちらかといえば緩めな通貨供給ということを心がけてまいりましたので、その限りにおいてこの一二%を必ずしも高いというふうに考えておりませんでした。しかしながら、先ほどお話がございましたとおり景気自体が着実な回復過程に乗ってきたという段階で、この一二%とさらに加えまして、先ほど申しましたような有価証券手持ちが非常にふえている。しかもこの一二%の中身の中で国債の発行による財政面からの寄与度というものがここ一年間で倍にもなっていると、こういうことを考えてまいりますと、この水準は確かに若干高目ではないかというふうな感じを持っております。したがいまして、こういったマネーサプライの水準に対してある程度抑制的な効果を持つことを期待して金融引き締めを行っているということでございます。
  25. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま国債の問題に触れられましたけれども、国債インフレというふうなことが心配されるのじゃないか。国債の発行額はいま非常に多いですね。すでに五十三年度で四十三兆二千六百億、五十四年度十五兆二千七百億を加えると五十八兆五千三百億の国債の発行があるわけなんですけれども、余りに大量の発行のために国債の価格が非常に下落してしまって買い手がないというような状況が起こった。一つは、公定歩合の引き上げはそういう意味公定歩合を引き上げて、そうして国債の利率も引き上げる、こういうことのためにやられたのではないかと思いますが、いかがですか。
  26. 東山紀之

    参考人東山紀之君) いろいろなたとえばジャーナリズム、あるいはその他からも国債の価格公定歩合関係指摘されておりますが、私ども公定歩合につきましては先ほど申し上げましたとおり国内物価の観点からこれを行いましたもので、国債というものとの直接の結びつきで公定歩合を引き上げたということではございません。  なお、敷衍して申し上げますと、公定歩合自体、短期金利は全体の金利水準と密接に関係するものでございまして、これと長期金利というものはおのずから——その接点面では当然関連はあるものでございますが、必ずしも短期金利と長期金利は同じように動くわけではない。たとえば現在よく短期市場では金が余っているにもかかわらず国債が売れないというような事態が出ておりますが、これはむしろ短期市場長期市場間の資金の流れがうまくいかないというところに問題があるわけでございまして、したがいまして、国債の値下がりの問題、あるいは国債消化の問題というのは国債を消化する側、つまり国債の需要者がどのような希望を持っているか、たとえばいまにして申し上げれば、長期の投資よりは短期の投資を選ぶとか、あるいは短期の投資の中でも特に利率のいいものがいいんだとか、あるいは短期の投資の中で何年ぐらいのものが適当か、いろいろな工夫をすることによって、むしろこの国債の消化は図るべき筋合いのもので、公定歩合でこれを解決するというような筋合いのものではないというふうに考えております。
  27. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと大量に国債発行をしている状況の中で、そして必ずしも景気も本当に回復していないようなその中で公定歩合を引き上げるという問題、私は非常にその辺が何となく矛盾を感じるわけなんですね。それで本来、公定歩合を上げたり下げたりするのは景気と関連して上げたり下げたりするべきものじゃないかと思うんですけれども、今回はまだ景気沈滞してはっきり立ち直っていない状況の中で、大幅に公定歩合を引き上げたということは、この点だけ伺いたいのですが、今後公定歩合の引き上げとか引き下げとかいう問題は、景気とか金融関係の必要からじゃなくなるんではないか、こんなに大量の国債持っているときにどういうふうにそれは考えたらよろしいのですか。
  28. 東山紀之

    参考人東山紀之君) いまの最初の御質問でございますが、私どもの公定歩合の引き上げ、引き下げというものはあくまでも景気または物価との関連で行われるべきものであるという筋合いにつきましては、私ども全く同感でございまして、それ以外に公定歩合を動かすということはございません。  それからいまの国債との関連でございますが、いまの御指摘の点は、たとえば国債が売れなくて国債金利をどんどん上げていく、そういう状態において景気状態が必ずしも思わしくない。で、公定歩合をそれに追随して上げれば景気に水を差すと、そういうような事態が生じてこないかと、こういうふうな御質問というふうに解釈いたしますが、たとえば国債が消化できないという状態におきましては、私は必ずしも金利だけ無限に上げれば国債が消化できるものではないと思います。たとえば売れないからといって金利を上げますと、まだ上がるだろうという期待感が出てまいります。そういたしますと、もう少し上がるまで買わないという問題が出てまいりまして、やはり金利を上げるということだけが絶対の消化方法ではないわけでございます。したがいまして国債に対する対策というものをもっと別の意味から考えませんと、せっかく成長を考え公定歩合を動かしましても、むしろデフレの面から逆に消費者心理も沈滞し、あるいは投資も引き込むというようなことが出てまいるんではないか、そういうふうに考えております。
  29. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあこれは議論するだけの時間はありませんけれども、もう非常にこんなにたくさんの国債を消化し切れない場合に、結局資金運用部資金でもってそれを一部吸収するとかいう方法も考えているけれども、それも吸収し切れなくなる。そうすると日銀引き受けになって、そしてインフレという方向に私は回っていくんじゃないかということを心配しますが、国債の問題はまた別途いつか議論させていただくとしまして、長官、新経済社会七カ年計画ですね、これを長官経済演説の中でその基本構想を説明なさいましたね。そしてそれは今年度末ぐらいまでに答申を得て五月ごろに計画をつくるということになっておりましたけれども、その答申も延ばされています。一部には、これはいま日米間の貿易交渉が非常にむずかしい状況になっていて、例の電電の本体までも開放せよという非常に強い要望があっていろいろと難航している最中なんですが、あの七カ年計画の基本構想によりますと、黒字は五十四年から六十年までの中期の間で百億ドルから八十億ドルというような見通しを立てておりますね。それから、成長率も六%ぐらいと。こういうことに対してアメリカ側の大変不満が出ているというふうに私は聞いております。  それから今回の日米間の経済交渉の中でアメリカはいろんなことを言ってきている中で、大平さんも行かれるけれども、対日の基本戦略として幾つかのことを言っている。つまり、日本が中長期に産業構造を転換させなければいけないというようなことまで言っているわけですね。そして、それで要求しておりますことは、たとえば、住宅、上下水道、公園、そういった社会資本、社会基盤の方にもっと日本は金を使うべきだ、それをやらないから生産性がやたらに上がって輸出の方に向かっていくんだと、いわゆるウサギ小屋論ですね、日本人はウサギ小屋に住んで働きバチのように働くという、そういう議論でありますね。この社会的基盤にもっと金を使うということは、本来私は欧米諸国に比べて日本はストックの所得が非常に低いと思っていますからこれは必要なことだけれども、アメリカから言われてするべきものではなくて、日本経済構造、あるいは産業構造の基盤をかえるということは非常に必要なことであろうと思っておりますけれども、それを要求しているとか、それから、政府調達部分を開放せよと、これは相当の額、特に電電公社の電気通信機器の本体を開放せよということを言っておりますね。それからもう一点、財政金融の硬直性を直せというようなことを言っているわけなんですね。その意味は、私察しますのに、金融が閉鎖的だ、外国銀行その他の金融企業に対して、日本は市場を制限している、こういう意味であろうと思うんですがね、それから、農作物に対して過重な保護を与えているとか、だから農業についてももっと開放せよと、こういうのを基本戦略としているということなんですね。  それで、経済企画庁で立てる新経済社会七カ年計画というのが手直しをされるんですか。そして、いまアメリカ要求していること、これは私日本が自分自身の立場に立って主体的に考えた場合に、この辺のことは長官はどうお考えになりますか、伺いたいんですが。
  30. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 田中委員は非常にアメリカにお強いということを私もよく存じております。  ただいま仰せられましたことの中で、われわれとしてもいま気を使っている点、多々お述べになったわけでございますが、いま私らが七カ年計画におきまして多少肉づけを、時間的余裕を持ちたいということを庁内で私申しまして、それはなぜかと申しますと、やっぱりあの七カ年計画で、私はやはり国民にこれからの日本の社会がどうなるんだということをもっと具体的に示すべきだ、あれだけの話だとこれはどうも自分でつくったものを言うのは変でありますが、税金ばかりがふえるような感じになっておりまして、これじゃどうも非常に将来に対しておもしろくないから。たまたまいま社会資本と申しますか、社会ストックにつきまして、これはもう外国へ行った人はだれでも相手にやられるところなんです。これなんかにつきましても、基本構想の中では具体的に何も明示しておりませんものですから、先般来詰めておりまして、現在大体百五十兆円ぐらいの、百四十兆ぐらいとわれわれは推定しておるんです、社会ストック。これを七カ年において二百五十兆円ぐらいにしたい、つまり倍にしたいということであります。  その中の中身としましては、下水道をどの程度整備していくとか等々、いま細かくやっております。公園の面積にいたしましても。道路の舗装率のみならず、学校、保健所、保育所、病院、廃棄物処理、特別養護老人ホームとかあるいはまた、社会教育関係の公民館とか、公立の図書館数とか、それから公立のプールであるとか、体育館であるとか。あるいはまた、国民生活の安定のための施設としましては、河川、治山、水資源、それから一部農業、林業、漁業等々、いまこの肉づけをずうっといたしておるわけであります。こうしたことをやはり具体的に明示することによって国民の理解をいただきたいということが、やや時間をかけないといけないという結論の根本でございます。  七カ年計画におきましては、結局、日本の将来の姿としては、欧米の諸国に比べて、言うなれば社会ストックが、十分比肩し得るまでにふやすということをねらっているわけなんであります。なお、二百四十兆円程度の投資をこの計画の中でやるわけでございますが、そのタイミングがやっぱり問題なんでありまして、その二百四十兆円を使っていくタイミングは、これは各省ともいろいろと意見がございますが、それをできるだけ調整して、国民の目から見て社会ストックの増大ということ、生活の環境がよくなるということ、衛生的になるということ、きれいな水と空気が自由に、いまよりよくなるのだというようなこと、そうしたものが身近に感ぜられるような形での投資のスケジュールまで含めて肉づけをいたしたいと思っておりまして、いまこれは着々と進めております。  私はこれは外国からの要望でやるということじゃないのでありまして、日本自体として当然こういう計画をつくった場合に、そのような方向をとるのがあたりまえだし、また、こうしたことを長期計画の中で具体的にメンションするということはいままでなかなか政府はできなかったことであります。今度はそれをひとつ強引にやろう。そうすることによって内需拡大ということがこういう面から広がっていく、そうしたことによって、企業のいろんな活動もこうした方向への投資が進むであろう等々いろいろ考えております。なおまた就業労働力を吸収する面におきましても、こうしたものができますれば、当然いわゆる就業構造も、第三次産業と申しましょうか、第三次部門へのシフトが、もっと働く人たちにとって意味のあるものであるという認識を持ってもらえるだろうというふうに思うわけでございまして、七カ年計画を単なる数字だけでなしに、できるだけ内容を盛って、しかも、それを国民にひとつよく見ていただいて、そうしてまだ足りぬじゃないかとか、なぜこれがこんなに遅くなっているのだということについての議論までも深めていただきたい、そんなつもりでやっているわけでございまして、このような努力を長期計画の中でわれわれいたすことはとりもなおさず、外国に対する最も説得力のある日本経済運営の姿勢ではないかというふうに私は思うわけでございます。  御指摘のように、いろいろ厄介なことを言ってまいりますが、これはこれとしまして、われわれといたしましては、日本自体としての考えの中で七カ年計画をもっと、繰り返して申し上げますが、国民に身近でよく皆さんおっしゃいますような生活の足元に対する投資というものをきわめて重要なファクターとして推進していく、それが日本の社会発展の基盤を拡大するし、それが一つ日本の社会の安定になるし、同時にまたこうしたことが世界との関連においての非常に平和的な国としてのイメージになるというふうに考えております。
  31. 田中寿美子

    田中寿美子君 大臣のおっしゃるとおりだと思いますが、だからアメリカから言われたから手直しするということではないということですね。それじゃ成長率六%ということだとか、あるいは黒字幅八十億ドルから百億ドルというのについては不満だとかというようなことの問題は、この七カ年計画の中では手直しをされるおつもりなんでしょうかどうかということと、それからいまの問題は、これはOECDに行かれても、ECに行かれても、アメリカに行かれても、恐らく必ず問題にされる点だろうと思いますので、ぜひそれはきちんとしたことをおっしゃっていただきたいと思うし、それからさっきの金融の閉鎖性の問題はいかがですか。
  32. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いまおっしゃいました日本の産業構造を変えろということは、私の接しました先方から参りました人々並びにその他の人々から、そうした露骨な話は聞いたことございません。ただ、連中が非常に——よしんばそういうことがあっても、その転換には——日本には少なくとも五千五百万人の人が働いているんだと、日本の社会には。この五千五百万の人たちがどこに一番重点的に働いているかということを考えれば、それが変わっていくということは大変な社会的な問題なんだから時間がかかるんだということで、それはごもっともだというのでオーエン大使もその他の連中もよくわかると、こう言います。  それからもう一つ彼らがいま満足しておるのは、日本のいわゆる経済体質そのものが、五十三年度において内需が八%もふえたと。しかし、円高によって輸入がふえて輸出が減って、そうしてそれがGNPにはマイナスに働いて、七%という約束したけれども、それが六%少し切る程度にしかならなかった、しかし内需はふえたと。だから、円高でもあったけれども、輸入が非常にふえて、しかも製品の輸入が三〇%を超えるまでふえたと。そうしたことを説明しますと、大変それは努力をしていただいたということで感謝をされております。また、西独経済相も、百点満点をやったのは日本とドイツだけだと言っていばっておりますから、私らは別に七%ができないと言うならば、それじゃアメリカ自身がインフレを退治するのにどれぐらいやったんだということも聞かなくちゃいけないことになりますし、まあ先方さんもそういう議論を余りしたくないようでございますから、いいんじゃないでしょうか、余り気にしないで。  それで、銀行のことでございますけれども、これは大蔵省の担当官おられるから、そっちに言ってもらいたいんですが、私の、答弁を聞いております限りにおいては、決して差別をしたことはないんだというお話でございますので……。
  33. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間がありませんから終わりますけれども、私、申し上げているのは、これは日米経済交渉、貿易交渉の中で、アメリカ日本に対するその基本戦略として、そういう産業構造の転換とかそのほかいろいろ要求してきているのは、これは日本側と向こうの政府との間の話し合いというよりは、むしろアメリカ議会筋、そうしてアメリカの議会というのは、本当にもう日本なんかよりはるかに選挙区の企業代表というか、ロビイストがちゃんと議会の中に地位を占めているぐらいの議会ですから。ですから自分の選挙区の企業を代表して、日本日本黒字を少なくさせるための開放を求めると、こういうことで、そういう幾つかの戦略を決めて要求してきているものだと思いますので、それはあくまで私はやはり日本日本の立場で、本当に日本の社会資本をどのようにふやし、そうして日本の国民生活を守っていくかという立場を貫いていただきたいということを申し上げて、きょうはこれで終わります。まだお答えいただいていない部分ありますけれども、また次の機会に譲ります。
  34. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 時間がありませんので、基本的な問題については日を改めて質問することといたしまして、私は、当面緊急な課題につきまして二つほど、ぜひひとつ政府側の積極的な解決をしてもらいたいということで質問いたしたいと思います。  まず最初に、石油価格の問題につきまして、物価動向に対しまして重要な問題は、やっぱり何といっても石油価格であります。いまも田中先生からございましたが、まさにそのとおりでありまして、そこで問題は、昨年円高で莫大な為替差益が、——私の数字も相当出ているわけでありますが、OPECが本年一月から原油を五%値上げをした。その後一キロリットル当たり平均一四%ないし一五%、まあすでに三千五百円の値上げの実施。今回実は四月十八日の新聞報道なんかに出ていますが、共石が下旬までに再値上げと。これにつきましては、大体為替差損分が千七十円、OPECの割り増し上乗せ分が九百三十円、計二千円の再値上げと、こういうのが出ているわけですが、これはまあ明らかに、私も一応この石油問題ではこの五年間ずっと商工、物特でやってまいりましたけれども、差損金出るときはすぐさっと業界は値上げするし、為替差益出たときはじりじりじりじり延ばすにいいだけ延ばして国民に返さない。これがいままでの実態で、まさに通産行政としては後手後手と、天下り——俗に言われる国会で問題になりました——そういう可能性があるのかどうか別にしても、まあ無性に腹立たしい感じがするのでありますが、この問題についてまず、余りひどいんじゃないか、この二千円の再値上げということは。これに対してどういうお考えを持っているか、まず最初にひとつお伺いしたい。
  35. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 御指摘のように、共同石油が四月の二十五日から全油種等額で、キロリッター当たり二千円の価格の引き上げを行いたいということで、現在特約店あるいはユーザー等とお話し合いを行っておるということは事実でございますし、それの積算あるいは根拠といたしまして、為替の動向、特に円安動向と、それから二月の中旬に主として湾岸諸国——アブダビカタール等の軽質原油を大幅にサーチャージをつけてきた、この原油高、この二つから来ておるということも先生御指摘のとおりでございまして、この点につきましては、私どもも会社から実情をヒヤリングをし、調査をしておるところでございます。  円が、現実の問題といたしまして、たとえば共同石油前回価格算定をした際の百九十八円というレートから最近のレートは、この共同石油が計算いたしましたときは、まだそれほどでもございませんでしたけれども、二百数十円まできているというのは事実でございますし、これはこういう席で具体的なことを申し上げるのはいかがかと思いますが、きわめて大ざっぱに、きわめて大ざっぱに申し上げれば、円が一円で大体石油製品価格百円ぐらいの動きでキロリットル当たり上下するものでございますので、十円を超えるような円の動きというものが製品価格にはね返ってくるということは、これは全く理論的根拠なしというものではないと思いますが、ただ、いずれにいたしましても、石油製品価格は需給動向並びにユーザーとの交渉等によって決定されるべきものというふうに考えておりまして、共同石油が、現在このような考え方で特約店並びにユーザーと交渉をしておるという事実、さらにそれが具体的にどのように実現されていくかということ、さらにはそれの影響がどのように波及していくかということを慎重に見てまいりたいと思っております。
  36. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで長官ね、一月の八日に長官にもお会いしまして、特に私は北海道ですから、灯油問題について長官ともお会いしまして、話をしておるわけでありますが、いま石油部長がそんなこと言っていますけれどもね、それは経常収支はそれじゃどうなっているかと言えば、私の計算でいけば五十一年度だけで三千七十七億の為替差益が出ておるわけですから、五十二年度はあなた四千億超えているんだから、これは理屈にならないですよ、そんなこと言えば。そういうものを全部明らかにせいと私は言いたいわけだ。問題はそのことを、時間がありませんから率直に申し上げて、長官に再確認をする意味で申し上げたいんでありますが、この前、北海道の衆参議員団を代表しまして長官をお訪ねして要望しましたときに、少なくとも今需要期は灯油は上げない、こういう行政指導をぜひしたい、そうしたいという長官の力強いお話が一月八日にございまして、私、それなりに長官のお答えが確信あるお答えでございましたし、そのことを期待しておりましたが、どうも最近、その動向がちょっと変わってきているものですから、その方針には変わりがないかどうかということをまず、長官にひとつお尋ねしておきたいと思います。
  37. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私は、特に北海道の灯油問題は、これはもう生活必需品であることはよく認識しておりまして、これが上がるということについての北海道道民の異常な反発ということはよく心得ておるつもりでございます。私は、やはり今度のOPECの六月の値上げがどうなるかということが非常に気がかりなんではありますが、できることならば、北海道に関係の灯油だけはひとつ価格を据え置くということを業界の方々が十分理解して行動してもらうことを期待をいたしております。
  38. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 長官がいまも力強い、据え置きをするという方針に変わりないという、また、これからもそういう期待をしていきたいという御意見ですから、所見を述べられておりますので、全く同感でございます。  そこで石油部長、時間もありませんから、具体的な例をひとつ答えてもらいたいんだが、これは四月に入ってから北海道で日石から一リッター一円上げてくれということが出てきておるわけだ、特約店に。これ、具体的に申し上げますよ。大体四月の十日ごろから出てきた。ぜひひとつ上げてもらいたいと。一リッター一円となると、北海道の場合、いま長官も認識されておりますように、一冬にドラムかん十本から十五本たくわけですから。そうすると、十万から十五万円の出費がかさむわけですよ。これは、北海道においてはまさに米と等しい、同じですから。そうなりますと、一リッター一円というと、二百リッターでいけば二百円上がることになるわけだ、ドラムかん一本。大変なことなんですよ、これ。だからこれは、やっぱりいま長官の、今需要期は上げないという、据え置くという力強い方針からいきまして、これは三月の三十日の閣議でも具体的にこのことを御決定されて、通産省も積極的に乗り出して、通産大臣も業界に文書の行政指導をした、それは認めますよ。しかし、この具体的な事実としてこういうふうに出てきている限り、これはやっぱり少なくとも需要期は抑えてもらわぬとどうにもならぬわけだ、はっきり申し上げて。これはいまの長官方針と全く違うんですよ。この点、ひとつ、率直に申し上げて、私は具体的に申し上げたことなんですが、こういう事実に対してどう対応していただけるか、これをひとつ通産省に具体的にお聞きしたいと思います。
  39. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) ただいま御指摘のように、日石がリッター一円、すなわちキロリットルでございますと千円の灯油の価格の引き上げを四月十日ごろですか、四月から行ったという事実は私ども現時点においては承知いたしておりません。日石におきましても、灯油は本需要期中は元売価格は据え置くということで、私どもの方針に協力をしていただいておるというふうに了解をいたしておりますし、最近の小幅の価格修正におきましても、他の油種は別といたしまして、灯油は据え置いてきておるものというふうに了解をいたしております。ただ、恐らく流通段階におきまして若干の値動きがあるということはあり得るだろうと思います。これは、先生も御承知のように石油製品の流通というのはきわめて複雑でございまして、特に、流通段階における価格形成の中で、いわゆる業転物と称するもののファクターというのは非常に大きいわけでございます。これは需要と供給で非常に価格は変動いたしまして、元売仕切り価格とは別に動くものでございます。需要がタイトになってまいりますと、業転物が上がるとか、あるいはそういうものを主として仕入れたり、あるいはそれらをまぜて販売しているところで末端の流通価格に若干の動きがあるということは否定できないと思います。  したがいまして、御指摘の事実につきましては、ただいま申し上げましたように、元売価格は現在動いていないという前提のもとで、どのような力が働いたものかというのを現地の通産局等でよく調査をさせまして、その上で、私どもといたしまして、先般、先生からお話のございましたように、要するに現時点において北海道は需要期とわれわれは考えておりますので、その需要期において、元売に対して価格を引き上げを自粛するよう要請しておる趣旨が乱されないような方向というものを考えていかなければならないと思っております。
  40. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それで、時間が大変短い時間なのであれですけれども、いま石油部長が言ったように、これは実際具体的に出てきたんだから、確かめるも確かめないもないんだ、これははっきりしているんだから。私が具体的な事象を挙げて、店の名前を言ってもいいんだから、これは。特約店に正式に……。  そこで具体的に私は申し上げたいのは、いま言ったように確認したいことは、札幌通産局に対して直ちに、今需要期はやっぱり据え置くということを行政指導してもらいたい。第一点。具体的に申し上げます。  それから第二点、具体的に店の名前が挙がっているわけですから、抽象論を言ったってしようがないから、日石に対して、こういう事実がいま言われているがこういうことのないようにひとつきちっとやれという、当業界に対してやっぱり行政指導してもらいたい。  それからもう一つは、これは非常に巧妙に出てきているんだが、供給カットになるおそれがあるんですよ。結局、上げてくれなければ品物を渡さないよと、こう来ているわけだ。これにまいっているわけですよ、いま、率直に言うと。つまり、供給カットで出てきているわけだ。ということは、品物は渡しませんよ、結構ですよ、私の方は品物がないですから、と。こうやられると、泣き泣きそこに行かざるを得ないという、こういう実に商法の裏手の方で来ているもんですから。だから第三点目としては、そういう品を、供給カットをするような状態にならないように、ひとつ通産省として行政指導をしてもらいたい。  この三点をひとつ確認していただけますか。
  41. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 先生の御指摘の御趣旨はよくわかります。  ただ、札幌通産局に対してどの値段を末端で幾らにせいということを指示するということは、灯油が統制品でございませんし、公定価格でもございませんので、ある程度市況メカニズムというものは働かざるを得ませんので、先ほど申し上げましたように、元売に価格引き上げを自粛するよう要請し、各元売がそれに協力しておるという実情が末端において乱されないような措置を講ずるよう、札幌通産局を指導したいと思います。  それから、日石に対しましては事情の調査をさせたいと思いますし、そのようなことはないと思いますが、系列店に対して十分留意するよう指示したいと思います。  それから、供給カットにつきましては、いわゆる価格は据え置きというような状況でいっておりますので、価格不整合のためにカットをするということはあり得ないことだと思います。ただ御承知のように、現在のような状況になってまいりますと、先高で、買いだめであるとか売り惜しみというのが幾ら目を光らせても出てまいりますし、したがって、ある程度、前年の同期に比べて非常に膨大な申し込みのあった場合には、前年同期並みにしてほしいというようなことが特定の油種、特に需給がタイトの油種で行われていることは事実でございますので、この辺は、何を理由にして、いかなるカットが行われているかというのを個別具体的に調査し、適切な指導をしてまいりたいと思っております。
  42. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 最後の方だけれども、それは石油部長、何を理由にと言ったって答えは簡単なんがよ。それは値上げするための理由でカットしているのであって、素人に話したってそんなことは通るわけないじゃないか。それは相手がちゃんとわかり切ったことをやっているのだから。これは、そのことをひとつはっきり行政指導するということで、そういう三点でひとつ確認しておきます。よろしゅうございますね。——  それから次に、長官、この間も予算委員会でちょっと同僚の議員からも質問しているんですけれども、北海道電力の値上げの問題につきましてちょっとお伺いしておきたいんですが、実はこの間、五十三年度電力料金については円高差益がかなり出まして、長官努力をされて、かなり割引ということで、最終的には東京都の場合六百三十円、電力とガスを合わせますと平均で返してもらえます。だが、北海道の場合は、これはびた一文返してないですね。理由は、答えは簡単で、石油が少なくて石炭が多い、石炭が高いから円高差益が少なかった、こう言うのだけれども、これは私らも調べてみますけれども、北電から正式に私の方に回答あるのは、三十八億実は円高差益の利益ありますと。それでまあ、ないと言ったって三十八億あるんですから。われわれにすれば気の遠くなるような金なんだけれどもね。それで足りなくて、石炭がやっぱり高いということは事実なんで、石炭も貯炭もありますから何とか使ってもらおうじゃないかと。石炭増加引取交付金ということで、今回の五十四年度予算で十億円つけているんですよね。それで私は、これ理由にならないと思うんだね、北電は。  ただ、長官の基本的な姿勢をお伺いしたいのは、電力料金が上がるというのは、公共料金ですからね。いまでさえも——先ほど田中先輩が質問した中でも、公共料金のこれからの値上げ動向というのは大変な物価影響を与える。特に基本的な問題の第一点はそれなんですが、私は、九電力の中で北海道電力だけは違うんだ、五十四年度、八電力は据え置くけれども北海道電力は違うんだという政府の基本姿勢が私は問題だと思うんですよ。どこが違うのかということを私が言いたいのは、さっき言ったようにそれだけの北電に対してはかなりの政府の手だてが行われている。むしろその分、それは同等に扱ってしかるべきだ、こう思うんだが、どうも政府は、北電だけは別ですよということになると、何か北電は値上げしてもいいんですよと、裏返して言えばそういうことになるんで。どうして北海道道民だけが——暖房用だけでも、灯油だけでもあなた、十万から十五万の出費を重ねて、電力料金もまた上がるということになればダブルパンチで、北海道道民だけが袋だたきに遭っているなんというようなことは許されるべきことではないので、この点ひとつ基本方針として、認識は、各社よりも石炭だからということは私はわかりますよ。そのことを否定しているんではなくて、しかしその分をまた逆に予算措置で手だてをしているわけですから、電力料金は少なくとも北電と八電力は違う、北電は違うんだということの認識について、基本方針としてまず長官のひとつ考え方を伺っておきたいと思うんです。
  43. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 北海道電力だけは別だということは、何かこう、もうすでに定着しちゃっておりますので、その理由はやはり炭をたいていると。その炭も外炭を入れればそんなに違わないんですけれども、北海道の地場の炭をたくと。何かそれをやってもらわぬと北海道の労働問題が非常に大変だということで、結局北海道炭を使うということになっておって、政府の方では何かそれをお願いしてやっているというようなことになるものですから弱いわけでして、弱いから、やはり値上げしてくれと言うと、そうかということになってしまうんで、これは大変にどうも北海道の道民の方にお気の毒だし、この前私参りましたときも、電力が商いということは結局産業がだめなんだから何とかしなくちゃいけないだろうと思うんですが、私も聞いてみますと、北海道の炭鉱の方々のことを考えますと、それはやめてしまえというわけにもいかないものですから、結局十億円程度の補助金みたいなものを出し、鉄鋼その他にも相当出しておるわけですね。だけれども、それだけの補給金では足りないんだということになってしまっておりまして、その解決の方法は、青函トンネルができますと中に送電線が引っ張れるらしいんでありまして、つまり、内地の電力と融通ができるようになれば、これは私は非常に価格が平準化すると思います。同時にまた、ただ北海道の炭をもう掘らなくていいんだということにも全くいかないことでございますので、その分だけは何とかしていかなくちゃいけないわけですが、電力会社だけを別に扱うということは、つまり、送配電のルートが本土とつながれば、これはいままでのようなことでなくていけるはずでございますが、それもまだ時間的にあるので、今年度と申しますか、やっぱりいまのところは北海道は別ということになっておりますんで、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  44. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま長官、事情説明というか、内容は私全部知っているんですよ、これはもう北海道ですから。特に私も石炭に携わっておりますから、百も承知しているわけです。ただ、やり方が間違っているんです、政府のやり方が。私はいま石炭の関係を言いますと、かつて配炭公団をやったように、政府が販売機構の公社制度をつくって国内炭と外炭の一元化をやれば、長官が言うとおり下がるんですよ。答えは簡単なんです。それは何も国内炭を圧迫するわけでもないし、圧迫するという意味は、カロリーが違うんだから、炭質が。私は専門家だから言うわけじゃないけれども。だから、そういう点では何も北電が言うような理由はぼくは理由にならないというのが第一点なんです。  それからもう一つ長官に言っておきたいことは、認識してもらいたいことは、五十一年度、五十二年度は油に対して石炭はトン当たり安かったんだから。一円二十八銭安かったんでしょう。これは通産省も認めているんだから、五十一年度、五十二年度は。そのときに北電はどうしたんだとぼくは聞きたいのですよ。五十一年度、五十二年度は油より石炭はカロリー当たり一円二十八銭安かったときに、それでもうかっているときは、それじゃ北海道電力は安くしたか、われわれ道民が安く使ったかといったら、何も安く使っていないんですよ。これは私は理由にならぬと思うんだ。北電がやってきているのは詭弁だと思うんですよ。いま現在、油等の円高為替差益の問題が出たから、たまたまそこを理由にしている。為替差益がなくなってきたら何を理由にしたかというと、いま違ったことを言っているでしょう。いや、実は北海道における北電の設備投資が本州とは違ってきていると、今度は言い方が変わってきていますからね。これではちょっとぼくは一貫性がないと思うんですよ。だから、政府もそこらあたりもきちっとやっぱり調べていただいて、きょうは時間がありませんが、私、本当は基本論争をしたいところなんだけれども、私はこの問題についてはひとつ、まず長官に認識を改めてもらいたいのは、八電力と北海道電力は違うんだ、だから値上げするよという言い方は、これはいただけないんですよ、われわれ五百五十万道民としては。その点はひとつ認識を新たにしていただいて、値上げをする態度については慎重な、やっぱり認めないという基本姿勢で臨んでもらいたいということを一点、もう一回お伺いしたい。  それから、通産省側が来ておりますので、具体的に北電からどういう態度が出ているのか。この二つを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私の方から……。あとは通産省の方の現場の話を聞いてみてください。  北海道の電力値上げというものは、やはり思い切って火力なり原子力なりに切りかえるというようなことがなされれば、この問題は当然なくなると思うんでございますが、現時点ではどうも収支計算面だけ見ておりますと、ほかとは違って非常に苦しい経営状態でございますから——しかし、その値上げは別だと申しましても、大変高くこれを認めるつもりは毛頭ないんでして、ぎりぎりいっぱいのところでお勉強願うということだと思います。この北海道電力だけは別だという一つ考え方が、やはり政府といたしましてもあとの八電力と同じだというふうにする努力を早くするよりしかないのじゃないかと思っておりますが、どうも御答弁になりませんで恐縮ですけれども、その辺で御勘弁いただきたいと思います。
  46. 木下博生

    説明員(木下博生君) 北海道電力の料金、五十一年に改定になりましたときに、先生おっしゃいましたように石炭の値段が石油よりも安うございましたので、それを反映いたしまして、北海道電力の現行料金はほかの電力会社に比べますとやや低目のところに決まっております。昨年、円高になりましたために、ほかの電力会社の買っております石油の代金が下がりまして差益が出ました関係で、昨年の後半に割引措置を実施いたしましたけれども御承知のように、OPEC値上げがありまして、また再び輸入します石油の値段と、それから北海道で産出されます石炭の値段とはずっとくっついて、ほとんど一致するようになってきております。しかし、そのコストが上下しましたのは八電力会社の方のコストが上下したわけでございまして、北海道電力は、御承知のように非常に広うございますので、配電線の長さも長いというようなこともありますし、新しい発電所の資本が入ってくるというようなこともありまして、傾向的にはコストが上がる状況にある。したがいまして北海道電力の経営問題は大分苦しくなってきているのが実情でございます。  ただ料金につきましては、できるだけ経営努力を払って、長期に安定させるという方針で指導しておりますわけでございますし、現在のところ、まだ具体的に北海道電力の方からいつ上げたいというようなことは言ってきておりませんが、できるだけ北海道の経済の実情等も考え、慎重にこの問題は処理していきたいと思っております。
  47. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 終わります。
  48. 桑名義治

    ○桑名義治君 最初に、経済情勢もしくは物価の問題につきまして概略的にお聞きをしたいと思います。  最近の経済情勢というものは、物価が比較的に安定をしているわけでございますが、生産、出荷が着実に増加をしまして、自立回復の機運が見られるようになったわけでございます。しかしながら、雇用情勢は依然として厳しいものがあるわけでございます。その上に財政の再建という非常にむずかしい問題を抱えておるわけでございますが、今後のわが国の経済情勢政府経済運営のいかんによるところが非常に大きい、こういうふうに認識しなければならないわけでございます。  そこでまず最初に、当面の経済見通しとそれに対する政府施策について、大臣の率直な御意見を伺っておきたいと思います。
  49. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 最近の見通しでございますが、大変におかげさまで内需は着実に私は拡大していると思います。しかも、その拡大方向がきわめて緩やかであるということも、非常にわれわれとしてはいいことだと思っております。ただ問題は、卸売物価の方が少し急上昇しておりまして、いまわれわれが一番配慮すべき点は、この卸売物価上昇に歯どめをかけたい、また、かけなければならぬということが一つ政策の当面の問題でございます。日銀公定歩合の〇・七五引き上げなどもその一連でございまして、これは一種のインフレマインド抑制。それからもう一つは、やはり卸売物価上昇原因が、今日までのところは外的要因が三分の二でございますから、こうしたものを吸収するためには、やはり生産性の向上によって対応してもらうという産業界の努力を要請するということにあると思います。もう一つは、やはり国債が非常に大量に今日まで出されておること。それによって内需拡大したことは結構なことであったのでありますが、しかしこの国債の消化難ということが現在起こっておりまして、これが心理的に非常にインフレにつながる可能性もあるという点がありまして、国債消化をぜひとも順調にいくような方向政府としては努力をしていくということ。私は大体この三本柱であると思います。  もう一つは、御承知のように海外要因と申しますか、外国との関係において、いわゆる日本経常収支がやはり五十三年度の末で概略百二十億ドルくらいになります。これは非常に大きな巨額な経常収支でございます。もちろん最終的にはこれはとんとんになる、あるいはやや赤字になるわけでございますが、経常収支だけでいまアメリカもヨーロッパも話をするものですから、この百二十億ドルというのは非常に大きいわけでございます。こうした経常収支を減らしていくということ。つまり日本輸入をもっとふやすということになりましょうか、こうしたことをしていかなければならない。そのためにもやはり内需拡大していくということが非常に重要な政策でございまして、物価内需拡大と申しますか、景気の回復という非常に幅の狭い選択でございますが、いま、やや重点卸売物価の歯どめに置き、しかし基本路線としてはやはり物価の安定と景気の回復をパラレルで進めたいというところが現状のわれわれの姿勢でございます。同時にそれがわれわれにとってのこれからの見通しにつながっているわけでございます。  卸売物価の方はそうでございますが、消費者物価の方はおかげさまできわめて安定をいたしておりますし、この消費者物価の安定はなお相当期間続くというふうにわれわれは考えております。
  50. 桑名義治

    ○桑名義治君 ただいまの大臣の御答弁の中で、経済成長は緩やかにというお言葉がございました。しかしながら、その中で最も注意をしていかなければならないのは、卸売物価の急騰であるという立場をとりながら三本柱のお話があったわけでございます。  しかし、この物価動向でございますが、卸売物価が、御説明があったように、本年の二月並びに三月は年率にして一一・四%、また四月上旬にも年率一五・六%上昇しております。産業界の中にも値上げムードが非常に強くなっておりますし、世界情勢を見てみますと、イランの情勢あるいは中越紛争などで、石油価格あるいは国際商品市況の上昇というものが続き、さらに円高基調のために、大臣が前々に発言をされておりましたが、物価が警戒水域に入ったといったなまやさしい認識ではならないのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。五十四年度も十五兆円の大量の国債の発行によりまして、企業の資金需要が出てくるとマネーサプライの増大、つまりインフレ発生のおそれが十分どころか、確実にやってくるというふうに見ていくのがむしろ妥当な見方ではなかろうかというような考え方もあるわけでございますが、五十四年度の経済成長率を五十三年度の五・七%から六・三%に拡大し、なお四十八年、四十九年の狂乱物価を再び起こさないための物価対策というものについて具体的にどういうふうにお考えになっておられるのか。先ほど概略的な三本柱というお話をお聞きしましたけれども、具体的な方策を考えておられるとするならばここで明示をしていただきたいと思います。
  51. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) それぞれの現在問題を持っておりまする物資、特に卸売物価の中での、何をどうやったらいいかということについてのその現状把握は、先日来企画庁でできておるわけでございまして、問題は、三つのタイプがあるということであります。それは、昨年の十一月から急激に上がって、そうしてこの二月、三月からややそれが騰勢がとまったということ、それから非常に根強くずっと上がりっ放しにきている、それから石油関連のもので上がってきているものと、大体三つのタイプがございます。これはそれらの動向をいまつかまえておりますので、一つ一つきめ細かく通産省も非常にこの点について努力をしていただいておりますが、さらにそれを一層拍車をかけまして、こうした三つのそれぞれ違ったタイプの値上がりのいわゆる牽引車になっているものを抑えていくということを当面ぜひやってみたい、やっていかなくてはならぬというふうに思っております。  他の問題につきましては、大体二月の二十六日に決定しました八項目、そうしてまた四月の五日に決定しましたそのフォローアップによる結論、これをさらに推し進めることで卸売物価に対する態勢を進めればいいのではないか。ただ一番問題は、先ほどから問題になっておりますマネーサプライと申しますか、流動性の増大でございまして、この問題については、さらに日銀、大蔵省あたりでも綿密なスケジュールをつくってその動向等についても十分注意をし、またそれが一種のインフレマインドというものに火をつけるかどうかというその辺までのところ、立ち入った監視をひとつ続けてもらいたいというようなことではないかと思っております。  いずれにいたしましても、物価政策というものはなかなか決め手がございません。したがいまして、気のついたときに早目早目に手を打って、そうして自重を求めるということ以外にはないのではないか。また、そうしたことに経済界が対応してくれるということは、私は現時点では十分理解はついていると思いますが、また、そうした軌道から外れる場合ございましたら、ひとつ委員の方からもどんどんと御注意いただいて、われわれもそうした御意見に対しては行動をもっておこたえをしていきたいと思っておりますので、お気づきの点がありましたら御注意を賜りたいと思っております。   〔委員長退席、理事鈴木正一君着席〕  なお、いまやっております実態等につきましては、必要ならば物価局長からお答えさせていただきます。
  52. 桑名義治

    ○桑名義治君 日銀は、今月の十七日から公定歩合の〇・七五%の引き上げを実施したわけでございますが、森永総裁によりますと、インフレを未然に防止し息の長い景気上昇を図るのがねらい、こういうふうに発言をされ、インフレの予防措置を強調をされておるわけでございますが、その実は国債消化が最大目的であったということは周知の事実のようでございます。物価対策の上からいけば公定歩合は上げることになるかとも思いますけれども、今回の引き上げの〇・七五%では経企庁の試算で卸売物価を年度中に〇・一%程度引き上げることにとどまり、また消費者物価への影響に至ってはきわめて軽微と言わざるを得ない、こういうふうに経企庁では言われているわけでございますが、また大和証券の試算では、公定歩合の引き上げは当面の物価抑制にほとんど効果がなく、かえって卸売物価を〇・一%引き上げ、設備投資は低迷、成長率は大幅に低下する、このように新聞紙上では発表されているわけでございます。で、公定歩合の引き上げは考えものであるというふうな結論を出しているようでございますが、この点について大臣はどのような御所見をお持ちでございますか。
  53. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 大和証券の公定歩合引き上げの影響は、きわめて景気の回復には大きなマイナスを与えるであろうという予測でございますが、私は〇・七五程度のものであれば、企画庁においていろいろの計算をしてみましたし、またわれわれ自身各地に飛んで経済界の方々の意見も聞いてみたわけでありますが、この〇・七五程度公定歩合の引き上げということが、景気の回復というものにそれほど大きなマイナスにはならぬだろうというのが大方の皆さんの結論であったと思います。また、われわれもそうであってほしいわけでございまして、しかし問題は卸売物価の方でございますが、やはり一番大きな影響を持っているのは、実質的にはさほどでないにしても、石油価格の引き上げでございまして、ましてプレミアムがつくということで、これが現時点では日本が買っている油の、平均で一ドル程度でございますので、卸売物価消費者物価ともにその影響はそんなに大変なものでないという試算になっておりますからでございますけれども、これがもっと上がってくると、だから六月過ぎが非常に心配でございます。そのような公定歩合よりも、むしろ石油のプレミアムが現状よりもさらに六月以降大幅に上がるかどうかと、その時点が一番われわれとしては今後の景気に対しての最大の重要な転機だと考えております。ですから六月にOPECの決定がさらに引き上げに動かないように節約を大いに各国で協力してやる、またいろいろなその他の世界的な消費国の全体の連携の中で、OPECの行動をある程度規制していくというようなそうしたことをぜひいまからやっていかなければ間に合わぬ、またしなければならぬというふうに思っておりますが、現状までの時点では公定歩合の引き上げ〇・七五が非常に景気には大マイナスであるというふうには考えておりませんので、いまお尋ねの問題について、大和証券の試算もやはり民間の英知を集めた計算だと思いますので、もちろんわれわれはそれを大切に考えてまいりますが、現時点において、われわれは影響はそう大きくないということで考えているところでございます。
  54. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に、経企庁の月例報告の中で、最近の経済情勢狂乱物価前の昭和四十七年後半の姿に似ているが中身はかなり違う。先ほどの御答弁の中にもこういった意味の御答弁があったわけでございますが、狂乱物価の再現なしと、こういうふうに結論づけておられるようです。経済同友会は、現在の物価情勢は四十七年の狂乱インフレ直前の状況とかなり似通った状況にある、物価問題は放置できない。したがって財政、金融運営の通貨供給量いわゆるマネーサプライの目標値の公表を経済同友会では求めておるわけでございますが、この経済同友会の提言に対しては大臣はどのようにお考えでございますか。
  55. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いずれも経験豊富な経済界の方々の現状に対する認識でございまして、われわれとは多少見解を異にしているわけでございますけれども、きわめて重要な示唆だと考えております。したがいまして、われわれとしましてはこうした体験の深い経済界の方々の提案というものが、多少われわれの見方が違っているからといって、それは間違いだといって済ませていくつもりは毛頭ないんでございまして、こうした御提案になったことを大変重要な御提議というふうに考えて、われわれはよく踏まえて考えておるつもりであります。ただ問題なのは、そのマネーサプライのパーセントをどれぐらいにしたらいいかということは、これは私は、やはり現在の金融というものがきわめて流動的に動いておるものでございますし、その中である程度の比率、これ以上超したら危ないですよという警戒警報を出すといっても、どこを基準にして出したらいいかということについては、ずいぶんわれわれも庁内ではいろいろ議論し、政府内部でいろいろ議論してもらいましたけれども、どうもここがここ以上いったらだめですよという、ここの数字を出すことはできないという、私もそのとおりだと思っておりますんで、ただ一二・三%程度ということだけでわれわれは考えておるわけではないんでありまして、むしろGNPに対する公債の発行残高というようないわゆるマーシャルのKと申しましょうか、この比率は非常に高いんですね。この点が高いということもわれわれ十分踏まえて物価政策に対しては早目に手を打つという行政行動でそれにこたえているつもりでございまして、そのマネーサプライの基準を決めることはちょっといまわれわれとしてはできかねるという考えでございます。
  56. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、物価変動といわゆる強い相関関係にありますマネーサプライは、昨年の六月以降はずっと一二%台の高率水準を続けておったわけでございますが、日銀でも、昨年暮れ以来目立ってきた景気回復、それから物価上昇の中で最近の名目成長率と比べても、このマネーサプライの水準はやや高過ぎると、こういうふうに判断をしておられるようでございますが、また経企庁あるいは経済研究所の研究調査官は、マネタリストモデルから現在の一二%増がいわゆる限度としてマネーサプライの急増は危険であると、こういうふうに言われているわけでございます。政府物価対策八項目で通貨動向を引き続き注視と、こういうふうにうたっているだけで、具体的ないわゆる事柄が述べられておられないわけでございますが、商品や土地などの物的資産への投機を未然に防ぐための金融政策が後手にならないように早目に実施施策をしなければならないと、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてはどのようなお考えをお持ちでございますか。
  57. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私から日銀当局並びに大蔵省に対して、いま先生申されたような方向で早目に手を打ってほしいと、それはぜひ早目に手を打ってほしいということを再三にわたって要望をいたしておりますから、恐らく日銀当局は十分それを踏まえて現時点では行動してもらっておると思います。
  58. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、本年度の物価見通しについてちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、本年度の卸売物価はたった十日過ぎただけで四月の上旬で早くも対前年比がプラスの一・七%、政府見通し、すなわち昭和五十年を一〇〇とした場合、ことしの目標値というのは一〇五・五というふうにうたわれておるわけでございますが、四月の上旬の一〇七ということに合わせますと一・五のオーバーになるわけでございます。さらに日銀の予想では、四月は年率二〇%になるという、こういうふうな事柄を新聞紙上でうかがっておるわけでございますが、政府卸売物価見通し修正するお考えはないわけですか、どうでしょうか。   〔理事鈴木正一君退席、委員長着席〕
  59. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 十一月から卸売物価上昇が続いておりまして、五十三年度末におきまして当初見込んでおりました卸売物価の下落率ですね、五十三年度下落した二・六%がマイナス二・三%になったということでございます。  そこで四月の動きにつきましては、いまおっしゃいましたように上旬の動きが出てまいりまして、その結果、対前年同期比で一・七%の上昇ということになったわけでございます。確かにすでにそういう形でかなり当初見込みの線に比べまして上がり方が少し激しいという感じは持っておりますが、ただ、現在まだ五十四年度の始まったばかりの時点でございますし、それから円レートの動きとか海外物価の動き、さらには国内の需給等いろいろ卸売物価を決めていく要因があるわけでございますけれども、少しそういう要因の動きを見守っていく必要があるのではないか。一方でそういう卸売物価の騰勢というものができるだけこれからとまっていくような物価対策の総合的な推進、そういうことについては十分やっていかなきゃならないと思っております。そういうような対策の効果等見てまいりまして見通しの問題は扱っていきたい。そういう意味で、現在卸売物価見通しを変えるという気持ちは持っておりません。
  60. 桑名義治

    ○桑名義治君 まだ卸売物価見通しを、四月に入ったばっかりで改定をするということは非常にむずかしい問題でもございますし、余りにも節がなさ過ぎるというふうに考えられるわけでございますが、しかし、一応私はこの現在政府考えておるようななまやさしい状況下に今年度は置かれないであろうというふうに考えざるを得ないのであります。たとえば、昨年の消費者物価円高、それから暖冬のための野菜の豊作、それからサービス料金の安定、こういった好条件が重なって一応四%程度上昇であったわけでございます。本年度はどうなっているかというと、非常にさま変わりが激しいわけでございます。にもかかわらず四・九%の物価上昇ではとてもおさまりそうにはない。  たとえば四つ大きな問題があると思いますが、第一は、公共料金が、昨年の公共料金の寄与度一・〇が本年度は一・五と、こういうふうに予想されておる。公共料金値上げというのはメジロ押しにあるわけでございます、現実に。  それで第二の問題は、先ほどからたびたび御答弁にもなっておられますように、原油の問題でございますが、昨年度の安定から本年度はこの原油の問題が一・二から二・〇%消費者物価を引き上げる要因が一応あると考えなけりやなりません。  第三は、最近の円安基調で、昨年は円高消費者物価を一%低下をさせたわけでございますが、本年度はこれをほとんど期待できない。むしろ消費者物価を押し上げる要因になるおそれは十二分にあるわけでございます。  第四の問題は、最近の卸売物価の急上昇。最近の年率一五・六%の卸売物価上昇が数カ月のタイムラグで消費者物価に必ず影響する、こういうふうに考えなければならないわけでございます。経済白書によりますと、消費者物価上昇率卸売物価の寄与率は二五%と非常に大きい。  以上の四つの要因考えてみましても、昨年の四%、今年度の四・九%ということは、客観情勢というものが非常に逆の方向に働いている、昨年から見た場合には。そういうふうなことを考えますと、果たして昨年の実績の四・〇%が四・九%におさまる理由はこれはどうしても考えられないわけでございますが、その点はどのようにお考えになっておられますか。
  61. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 御指摘の点は決してわれわれはノーだと申し上げるつもりはないんですが、しかし、われわれとしましてはやはり政策目標としての四・九%消費者物価と一・六程度上昇卸売物価ということをペースにして考えておりまして、これが達成されないかどうかということは、なおこれからのいろいろな私は世界情勢の変化も考えなくちゃなりません。たとえば円安でございますが、昨年の一年間の月々の円の対ドルレートは、ずっと並べてみますと二百十円なんです、平均が。スタートは非常に高かったけれど、しまいに百九十円近くなったり、それを平均いたしますと二百十円でございまして、そうなりますと、いま円安と言われているのが二百十五、六円なんですが、そういう意味から言いますとそれほど私は大きいものではない。ただ、百八十円に比べて二百十円とか十五円とか二十円は安い、非常に大幅だというふうに、何というんでしょうか、一種の相場感というんでしょうか、そういうもので心理的に大変に円が安くなっているように思うんでございますが、実際的にはそれほどの大きな断層がまだあるとは思っておりません。また逆に、いまの円安が一体いつまで続くのかだれも予想ができない。またOPECの六月の値上げというものが本当にそれほど大幅でない場合には、恐らく日本の円はうんと強くなるでしょう。  そういうようないろんなファクターがございまして、あるいは東京サミットが済んだころの時点から六、七月にかけて非常に私はいろいろと違いがまた出てくるのではないかと思います。そうしたことを考えますると、現在時点での石油の値上がり、そして一ドル程度のプレミアムという現在の価格体系、これは少なくも六月までは続くわけでありますから、これは十分にわれわれの計算だと先ほど申し上げた数字の中に入ってくるわけでございますから、これについては別にだからといってあわてることもない。それから〇・七五という公定歩合の引き上げも、これは全体の経済成長に対してはほとんど大した影響ももたらさないというふうに考えておりますから、いまお挙げになりました問題は、もちろんこれは私らの計算とはまた逆に働くことも十分考えていかなきゃなりませんが、しかし今年度の計画そのものを現時点ですぐ見直してしまうということは、これは私は少し早急なんではないかというふうに思っております。もちろん、悪い情勢に動くならばそれに対応してわれわれも十分努力もしますし、またその回復にも全力を傾けますが、しかしいま申し上げたように、特に日本経済は基礎原材料の輸入がきわめて大きい比重を占めておりまして、それがつまり一ドル幾らという円レートになるわけでございまして、これがどのような形に動いていくかという予測のつかない時点におきましては、一応われわれは百九十円で計算しておりますから、これが高いか安いかは別といたしまして、百九十円で計算しました現在のストラクチュアというものをこの時点ですぐ変えてしまわなきゃならぬとは思っておりませんものですから、その点はひとつ御了解賜りたい。ただ、御指摘の点についてわれわれは常に最大限の注意とそれから努力を払ってまいろうと思っています。
  62. 桑名義治

    ○桑名義治君 大臣は四・九%のラインは自信を持っておられるようでございますが、しかし、私が大ざっぱに四点挙げたわけでございますが、こういう四・九%以上のいわゆる値上げの要素というものが十二分にある。したがってこれを、こういった問題に対して機動的に動ける体制というものを常に持っておかなきゃならない、そういうことを指摘をしておきまして、次の問題に移りたいと思います。  まず初めに、先ほどからいろいろ論議を重ねておりますが、石油の問題が日本経済に与える影響力というものが非常に大きいわけでございます。そのように御答弁にもあったわけでございますが、そういった意味から、この油の問題についてまず最初にちょっと伺っておきたいと思います。  イラン危機以後、世界石油需給というものは非常にタイトになりサウジの増産によって現在のところはまあ辛うじて極端な不足は免れているというふうに一般的には見ているわけでございますが、このサウジの増産にも限界があると思います。それから、世界石油不足は八十年代にも到来すると米上院外交小委員会などでは警告をしているのが現実の姿であります。いずれにしましても、石油不足は必ずやってくる、こういうふうな立場でわれわれは常に考えておかなきゃならないわけでございますが、政府はこの点について、長期エネルギー需給計画石油をどのように位置づけておられるのか、まず伺っておきたいと思います。
  63. 深沢亘

    説明員(深沢亘君) お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のように、イラン情勢の変化に伴います石油のタイト化、これによりましてはその他のOPEC諸国の増産とか備蓄の弾力的な運用とか、それから現在節約等呼びかけておりますが、そういったことによって当面今需要期への影響というのは最小限に食いとめられているということでございます。  それから次に、長期的なところでアメリカの上院外交委員会、これは国際経済政策委員会でございますが、ここのレポートの中にサウジアラビアの長期生産目標のいろんな分析を踏まえたかっこうでの、石油消費国は今後、そこでの油の需要の増加をサウジアラビアの増産に期待するということについては問題があるという点についての警告を言っておるわけでございます。まあ、ただ先生、この点につきましては従来からOPEC、要するになかんずくサウジアラビアが将来の世界の油の需要の増大に見合うだけの供給をしてくれるかどうかということにつきましての保証というのは必ずしもないという点についての問題指摘というのは従来からございましたわけです。そういうような角度も踏まえましたかっこうでエネルギー需給の計画なんですが、昨年エネルギー調査会、これは「二十一世紀へのエネルギー戦略」ということで報告をまとめておるわけでありますが、当時は、言うなれば世界の油の需給というのは若干なりとも緩和ぎみでございました。その点についての見方はこれはあくまでも一時的な問題で、長期的に見ればその度合いというのは非常に増してくるという基本的な認識に立ちまして、それで方向性としては石油代替エネルギーの開発ということを中心的に進めていかなければいかぬというその基本的な認識のもとにあったわけでございます。  そこで、ただ石油とそういう石油代替エネルギーの関係でございますけれども、石油代替エネルギーの開発と申しましても、やはりそこにはいろんな技術的な問題、それから経済的な問題等いろいろございますし、それから需要サイドにつきましてはすぐさまそれを受け入れるようないろんな対応ができるかどうかという点についても、若干問題があります。したがいまして、要するに石油のエネルギーの中での占める地位といいますか、要するに代替エネルギーの方向への開発を進めていくんですけれども、やはりなお長期にわたってかなりのウエートは占めざるを得ないという基本的な認識でございます。  それで、需給計画の中で具体的に数字で申し上げますと、一定の成長率を前提にし、それから申し上げましたような石油需給の展望を踏まえて、六十年度ぐらいに現状維持ベースでまいりますと五億キロリッターぐらいになるわけでございますが、その点についての確保はむずかしいという角度から、官民挙げての最大限の努力のもとに代替エネルギーの開発等々を行い、油につきましては六十年度で四億三千万キロリッター、それから六十五年度では四億五千万キロリッターというような数字を立てたわけでございます。まあこれからこの四億三千万にしましても自主的な開発を一層進めたい、それからメキシコ等々を新しい供給源と申しますか、そういう点の拡大等を行うことによって、必死の確保の努力を続けていくということでございます。  以上でございます。
  64. 桑名義治

    ○桑名義治君 急転直下ということになるかと思いますが、現実の最近の問題についてちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、新聞記者の皆さん方とお話しをしたり、あるいは石油スタンドの経営者、こういった方々とお話をしましても、石油の問題ほどわからない問題はないと、こういう言葉がはね返ってくるわけです。どういうふうにわからないのかというと、現在の日本石油の備蓄が、前年度と比較した場合には大体どうなっているのか、今後どういうふうな経路をたどっていくのか、こういった見通しもなかなかつけにくいというふうなお話でございます。ところが、現実に新聞紙上やあるいは総理のテレビの対談等でお話しになっているのは、石油の備蓄については何ら心配はないというふうな意味の発言が常に行われているわけです。  ところが、現実にガソリンスタンドに、私地元のガソリンスタンドをあっちこち当たってみたんですが、たとえば一ガソリンスタンドでございますが、従来まではメーカーから入ってくるいわゆる量というものは前年度の実績、いわゆる前年の同月の実績、これに見合うだけの品物が要求に応じて即入ってきたわけです、メーカーからスタンドにですね。ところが、最近はそれがなかなか八〇%程度に抑えられてしまった。たとえば一つのメーカーのお話でございますが、前年度の実績を最初に言って、現在今度の割り当てを見ますと、五十三年の四月にはいわゆるハイオクタンというガソリンですが、これは八キロ入れているわけです、この商店では。で、普通ガソリンを九十キロ。これが双方ともにゼロと、割り当てはあげられませんと。それから灯油は七十七キロで、それに対して六十六キロ。A重油が十八キロに対して割り当てゼロ。それからLSAの重油が二キロに対してゼロ。二号灯油が百六キロに対して七十五キロと、こういうふうに非常にメーカーから限定されているわけです。したがいまして、ガソリンスタンドの皆さん方にとっては恐らく前回のいわゆるオイルショックよりもまだ激しくなるんではないか、こういうことがスタンドの間でどんどん話し合いが、もう論議されているわけですね。こういったいわゆるうわさというものは過去の石油パニックと同じような心理的効果をまずあらわしていくおそれが十二分にあるんじゃないかということを恐れているわけです。  ところが、今度は逆にいわゆる商社用のガソリン、こういう品物については、物についてはこれ幾らでも要求に応じて売ってくれるわけです。ところが、この商社物については今回は非常なまた値上げを言ってきているわけですね。で、業界の方々にお話を聞いてみると、いわゆるだぶついているときには非常に安いけれども、こういうふうに一たん品不足というような状況下に置かれてくると急激に上がってくるという話があるわけでございます。たとえばこの仕入れ値段でございますが、この業者物、これは兼松江商でございますが、昨年度は、軽油でございますが、一リッターが四十八円五十銭から四十九円五十銭だったのが五十四円、灯油が二十七円五十銭から二十八円五十銭だったものが三十三円、A重油が二十八円五十銭だったものが三十二円、それからLSAが二十八円五十銭だったのが三十二円二十銭と、こういうふうに大きな値上がりが続いているわけでございます。こうなってくるとガソリンスタンドとしても油については何も心配がないんだと、一応計画どおりに輸入が進んでおると、そしてまた備蓄についても何も心配はないんだと、こう何度新聞で報道されようとも、テレビ対談でなされようとも、現実に直接その業に携わっている人々にこういう不安感をまき散らすのであったとするならば、これは大変ないわゆる石油パニックのような状況が起こり得る可能性は十二分に私は持っているんじゃないかと思う。したがって、力のないガソリンスタンド等については、もう売る物がないということで力のあるそういうスタンドの方から物を回してもらっているというような現実の姿が、もうすでに出ているわけでございます。  こういう事実を踏まえながらお尋ねをしたいわけでございますが、果たして昨年の四月とことしの四月、輸入量とそれから備蓄の量、これを比較した場合にはどういう状況下にあるかということをお示し願いたいと思います。
  65. 深沢亘

    説明員(深沢亘君) 恐縮でございますが、いまちょっとその詳しい資料は手元にございませんのであれですが、全体のピクチュアとしてコメントさしていただきたいと思いますが、輸入は毎年毎年大体四半期ごとにこれぐらい輸入するということを予定量がある程度立っているようでございます。それに対して具体的にどの程度入っているかということをいろいろチェックしてきたわけでございますが、問題になりました昨年の、お答えの期間がちょっと違いますけれども、お許しいただきたいと思いますが、昨年の十−十二月期で見てまいりますと、大体予定していた量の九六%ぐらいが具体的に入ってきました。それから一−三月期、この十−十二月期と一−三月期というのは需要期でございますので非常に関心が高いわけでございますが、一−三月につきましては大体その予定どおりのものが入ってきました。それで、この四−六月以降不需要期に入ってくるわけですが、四−六につきましては昨年は大体六千六百万キロリッターぐらいでございまして、昨年の実績よりもかなり上回るような見込み量が予定されております。その間におきましては数日ぐらいの備蓄の積み増しができ得るような量的な状況かと思います。  お答えになっておるかどうかあれでございますが、以上でございます。
  66. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうなりますと、メーカーが言っているように、現在石油が非常に詰まっているという現実はないわけですよね。そうすると、もうすでにメーカーはいわゆる便乗値上げが始まっていると、こう言わざるを得ないわけですよ、便乗値上げが始まっていると。それでしかも現在は、通産省の指導でもありますように、タンクがいまからの時期ですね、灯油のタンクがほとんどからの時期なんです。したがって、タンクの総点検をする時期にも入っているわけです。そうすると、ある程度の売り惜しみをしてもそれができる状況下にあるということをわれわれは認識していかなければならないのじゃないかと思います。この問題については、早急に私は各業界を調べていただきたいと思う。そうしませんと、せっかくこういう物価を抑えようとして必死になっておっても、こういうところからいわゆる物価を押し上げてくる要因が生まれてくる。これは心理的に大きな問題ですよ、これは。それはお約束していただけますか。
  67. 深沢亘

    説明員(深沢亘君) その実態等につきまして、もちろん当然調べてまいるわけでございますけれども、この場であれでございますが、先生の御趣旨を踏まえて実現いたしてまいりたいと思います。
  68. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどから具体的に一スタンドの状況をお話ししたわけでございますが、これは一スタンドの話ではありますが、大体おしなべてこういう状況下にあるということを認識を大臣はしていただきたいと思うのですが、こういった状況に対して大臣はどのようにお考えになりますか。
  69. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの具体的な例示をいただきまして、大変われわれもそのとおりであろうと思います。と申しますのは、石油会社がわれわれのところへ参りまして、結局一番値上げをしたいのがガソリンなんでありますが、これは過去一年間安売りをし過ぎたので戻したい、たまたま原油も上がったからと、こういう説明であったので、じゃ、それはだめだということと、それから小売のガソリンスタンドの多くの人たちが私の方へ陳情に参りまして、非常な無理な値上げ要求されているが、そんなことをされてはわれわれまた干上がっちゃうということで売れないんだという陳情もありまして、われわれはそれは本当だと思って、そうしたことを石油会社の方には申しました。それきり来なくなったんでありますが、しかし恐らく流通の量を減らして値上げを強要しているのだろうと思います。そうしたことは、われわれもそうするだろうと思っていたことが、もうすでに始まっておるようでございますので、いま物価局長とも話をしましたが、その点についてはひとつ早速われわれ全力を上げて調べるなり実態を調査して、またそういったことが不正当な理由によって行われる場合には、それに対して十分対処していきたいと思っております。
  70. 桑名義治

    ○桑名義治君 これまただめ押しのような形になって恐縮でございますけれども、ガソリンの仕入れ値段と売りの値段でございますが、北九州の場合は昨年の十二月からことしの一月にかけて大体平均的に仕入れがリッターが七十五円五十銭から七十八円で、そして八十五円で売っておったわけですが、で、四月に入りますと、仕入れが八十七円から九十円の幅、そして百円で売らなければならないというような状況に入っております。それから灯油の場合を考えてみますと、昨年の十二月から一月までは四百五十円程度の仕入れで五百四十円、これは十八リッターでございますが、この売りだったわけですが、どうしてもことしの四月に入りますと二十七円五十銭から三十三円程度、いわゆるこれがリッターですから大体五百九十四円ぐらいの値段になって大体六百円と。こうなってくると、ガソリンスタンドそのものの売りのもうけがほとんどない、むしろ赤字であるというような状況が生まれているわけでございます。したがって、売り惜しみ、そして便乗値上げ、これが同時並行的に行われていることは、これは私たちがこういった事実を見ましても当然予測できるような状況下にあるわけでございますので、いま大臣は早急にこれは調査をした上で対処するという御答弁でございますので、これでこの問題についてはこれ以上の発言はとどめますけれども、これはしっかりやっていただきたいと、こういうふうに思います。  それからエネルギー庁ですね、大臣はそういうふうに言われています。所属の大臣ではないかもしれませんけれども、しかし直接の担当はおたくの方ですから、だから、経企庁の長官がやろうと言われているのですから、直接の担当の皆さん方がやらないということは、これは非常におかしなことだと思います。心してやっていただきたいと思います。  そこで石油不足を反映をしてOPECの大半が上積み値上げをしたために一バレルが二十ドル時代も間近に迫っているというふうにこれは常に報道されているわけでございます。そこで石油に大きく依存しているわが国におきましては、石油製品価格値上げによって今後の景気動向あるいは物価動向に大変大きな影響があると、こういうふうに思われるわけでございますが、この点についてどのように大臣はお考えになっておられますか。
  71. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) この四月のOPECの総会で決定された程度でありますれば、まあまあのところであります。われわれいま、先ほど来申し上げているように、六月にありますOPECの総会で後半にどのような値段を出してくるのか、特に一番うるさいのは上積み分でございます、それがどれぐらいに増してくるのか、したがいまして、それに対応してわれわれとしては五%の節約は絶対しなくちゃだめだということで、全世界的にいまそれをやっている最中でございますが、こうした供給者側と需要側とのいろいろな力の引っ張り合いと申しましょうか、そうしたことでわれわれが負けますと、六月のOPEC価格が非常に大きく上がる可能性もあるとわれわれ非常に心配しております。したがいまして、この価格がどれぐらいになるかということを見きわめてからでないと、予測で物を申し上げるわけにまいりませんが、この六月の時点OPECの総会というものを非常に注目すべき一つのターニングポイントであるか、あるいは幸いにして四月の値上げ程度のもので済むのであるか、その辺のところ、われわれもすでにことしの計画のベースに石油価格が一割年間上がるという計算ですべてはじいておりますから、この範囲内であればこの計画は全くどうということはございません。ただ問題は、このプレミアムが新たに各国自由につけてよろしいということになっておりまして、それが恐らく六月にいろいろ議論されるんではないかと思いますが、そのときに、特にわれわれとしてはサウジの値段が大きく上がるようなことになりますと、これは非常に重要な影響があるというふうに考えておりまして、その時点に立ったときに重ねてわれわれとしましては将来の見通し等についても検討することもあり得るというふうにお答えしておきます。
  72. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に、公共料金の問題について伺っておきたいと思いますが、運輸省来られておられますか。——まず、国鉄料金の値上げの問題についてお尋ねしておきたいと思いますが、まあ国鉄が前回値上げしたのが五十三年の七月であったわけでございますが、一年もたたずに再値上げがされるわけです。国鉄財政の再建という名目のもとに年中行事化したいわゆる運賃値上げが、一体いつまで繰り返されるのかというのは、国民の一般的な感情ではないかというふうに私は思います。で、国鉄当局は、まあ来年も値上げすることを示唆しておるわけでございますが、大多数の国民はこういったことに腹立たしい思いをしていると、こう断定して私はいいんじゃないかと思います。まあ構造的な赤字と言われております赤字ローカル線の問題、それから人員の合理化の徹底の問題とか、あるいは財政面からの助成、国鉄の経営合理化にまつわる論議がいろいろとこういうふうに上がってきているわけでございますが、しかし、こういった値上げによって国鉄の再建が行われるということにつきましては、大変に国民の間では不信感というものが渦巻いていると思いますが、この国鉄の今回の値上げの問題については、どういうふうに認識を運輸省としてはなさっておるんですか。
  73. 山地進

    政府委員(山地進君) 国鉄の赤字の現状につきましては、先生すでに御承知だろうと思うんでございますが、ここ三年続けて九千億円ぐらいの赤字を毎年出しております。こういうような国鉄の赤字の現状を踏まえまして五十二年の十月、衆議院の運輸委員会で国鉄の再建の基本方針というものを各党の共同の合意を得ましてつくりまして、それに基づいて五十二年のやはり暮れに国鉄の再建の基本方針というものをつくりました。この国鉄の再建の基本方針と申しますのは、国鉄自身の徹底した合理化というものを前提といたしまして、適時適切な運賃改正をすると、それ以前は法律で改正をするというために、なかなかその運賃の値上げということが適時適切ではいかなかった場合が多かったわけでございますが、そういった運賃改正をこういう国鉄の赤字の現状に踏まえてそういうものをやると。それから国の財政援助と、この三つの柱でやるということを国鉄再建の基本方針で言っているわけでございますから、この場合の運賃値上げというのは、これは法律で国鉄の運賃法の改正をいたしまして、運賃の値上げの幅というものは国鉄の収支の改善ということを企図しておりませんで、収支の悪化を防止する。経費が物騰といいますか、それから賃金の上昇ということで自然にアップしていくということを限度とするということで、本年度で申しますとその限度額というのは千九百億であったわけです。で、ことしの五十四年度の国の助成というのは六千億を超えております。六千二百億、国民一人にしてみると、一億二千万人おるとすれば一人当たり五千円ずつ国鉄に助成をしていくというのが現状でございます。  そういったような国鉄の赤字というものを一体だれが負担していくのかということを考えたときに、この再建の基本方針というものは国鉄に対する助成と国鉄自身の合理化とそれから運賃の値上げということでやっていかざるを得ないんじゃないかということで運賃値上げというものは構成されているわけでございます。したがって私どもとしましては、経費の上昇分に見合ったものということで五十四年度の予算編成時に千九百億の値上げを四月一日からやるということを考えていたわけでございますが、公共料金動向とかあるいは国民生活の安定への影響ということを考慮いたしまして、政府の部内で約五十日おくらせまして五月二十日から千六百五十億というものを増収を目当てに運賃改定をしたということでございます。したがって、この運賃改定で国鉄の財政再建ができるということではございませんで、むしろ国鉄の再建の見直しということを六月ぐらいまでにやりまして、それで要員の合理化というものを含んだ再建の方向をつくって、その中へ助成を入れていくと、先ほど先生のおっしゃったローカル線対策というものもその一環として考えていくということでいろいろの方向、角度から国鉄再建というものを考えていきたいと、かように考えます。
  74. 桑名義治

    ○桑名義治君 国鉄再建の三本柱の一つに運賃の値上げがある、これは通常経費が上がってくる。で、現在のいわゆるその赤字を一応のレベルに維持をしていくための運賃値上げにしかすぎないんだというお話でございますけれども、これはもうしょっちゅう議論に上がっている問題ですけれども、今回の値上げ案で目立ったのは初乗り運賃のアップ率ですね。旅客運賃は平均八・九%アップと言いながら、いわゆる最低区間料金は現行八十円から百円に二五%もの値上げを申請しているわけです。この初乗り運賃については五十一年の十月までは三十円、それが十一月には六十円と倍になり、それから五十三年の七月には八十円、五十四年の五月から百円とわずか二年間の間に三倍以上の値上げになっているわけでございます。こういうふうに言いますと、もとが安かったんだと、こういうお話になるかもしれませんが、まあいずれにしましても短期間の間にこのような急激な値上げがされた運賃というのは他にないわけですね。しかも大手の私鉄の現行運賃を平均的に見ますと約七十円。そうすると、約七十円と百円ということになれば、これは当然また相乗効果を起こしながらその乗客が減っていくというマイナス点がまた表に出てくることは、これは当然なことだと思うんですが、そういった事柄についてはどのようにお考えになっていらっしゃるんですか。
  75. 山地進

    政府委員(山地進君) 初乗りの運賃は御指摘のとおり二五%値上げでございます。  それから五十一年の十月に三十円であったというわけでございますが、かなり前の話で恐縮でございますが、二十円から三十円に上がったのは四十四年五月でございます。これから七年間三十円を据え置いて五十一年までまいって、いま先生もおっしゃいましたように昔から安かったからというようなことは私どもも非常に実感として持っておるわけでございます。それから、五十一年の値上げ後六十円から八十円、八十円からただいま百円にということでございますが、これは全国一律運賃という国鉄の運賃のあり方からいきますと、個々に見ますとローカル——地方に行きますと国鉄運賃の方が安い、大都市に来ると国鉄運賃が高い。そこらでその全国画一運賃という宿命下にわれわれは泣くわけなんでございますが、初乗りの百円自体につきましては、やはり国鉄の発着コストというものを考えますと私鉄より若干やはり高目になるし、それから公営交通等、たとえば東京都の都営の地下鉄はもうすでに初乗りは百円になっているわけでございまして、そういうことで大手の私鉄は七十円でまあ非常にりっぱな経営をやっておられるけれども、やはり国鉄を取り巻くいろいろの交通機関を見ますと、必ずしも百円ということを否定するのはいかがかなあと、私どもとしてはぜひこの際百円に値上げをやらせていただきたいと、かように考えております。
  76. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの質問でございますが、いわゆる初乗りが平均的に大手の私鉄の場合は七十円、国鉄の場合が百円、こういう格差が生まれてきたことに対して国鉄さんはどういうふうに、運輸省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのかというところに、その前の質問の一番の焦点があったわけですが、そこら辺はどうもあんまりはっきりお答えになっていらっしゃらないように私は思うんですが、これをひとつお答えを願いたいということ。  それから通学定期についてお伺いをしておきたいんですが、ことしの元日から値上げになったばかりのものを、六カ月を経ずして再度の値上げ申請であるわけでございます。一月一日に五・五%の値上げをしながらまた三六・九%の値上げ、五カ月間に四割を超す値上げ。しかも当局は、来年度の運賃値上げの際も定期の割引率を下げ大幅な値上げを申請する意向だと、こういうふうに聞いておるわけでございます。通学定期は、経営者側で負担する場合の多い通勤定期と違いまして、家庭直撃型の値上げになるわけでございます。そういうふうに考えますと、私立大学の入学金あるいは授業料、こういったものが軒並みに上がっている。それから進学ローンがたくさんの人に利用されている。あるいは公立高校の授業料の値上げ、これも自治体で予定をされている。こういういろいろな関連を考えた場合に、この通学定期の値上げの家計に及ぼす影響というものは、非常に大きなものがあるというふうに考えざるを得ないわけでございますが、もちろん国鉄再建ということもこれは切り離して考えるわけにはいきませんけれども、しかしここらは、通学定期についてはある程度の政治的な配慮が私はむしろ必要ではないかと、こういうふうに思うわけでございますが、その二点についてどのようにお考えですか。
  77. 山地進

    政府委員(山地進君) まず第一の初乗り運賃に関連いたしまして、何で私鉄と比べて国鉄が高いのかという御質問であったように思いますが、確かに国鉄の合理化努力というものについては十分でない。むしろいろいろ御批判があることは私どもも承知していますが、初乗りのコストというものにつきましては、必ずしも合理化努力だけではございませんで、やはり国鉄の駅の持っておりますウエートというものが、私鉄はやはりそういう国鉄の駅の周辺に、言ってみると後でついてくるというようなことで、やはり初乗りのコスト自体がどうしても潜在的に国鉄の方が高くなるということが私はあるんだろうと思います。事実われわれが計算してみたときに、初乗りの固定費用ということを私ども申しますが、国鉄の場合にはやはり私鉄に比べると二割か三割以上高くなってまいりますので、七十円と百円というのはそういう数字を比べた場合には、やはりこういうことになるのかなと私どもとしては考えております。  それから、二番目の通学定期の問題でございますが、先生の御指摘のとおり、通学とそれから通勤というのが、交通の利用の状態というのは同じパスで乗るということでございます。国鉄の運賃法では、一カ月定期については五割まで割り引かなきゃいけない。それが通学定期と通勤定期との間に何で三割差があるのかというと、普通の通勤定期はいま五割、ほとんど五割ぎりぎりまで来ております。ところが、通学定期は八割の割引をしておるわけです。普通の人の二割の運賃で乗っているわけです。これはやはり私どもとしては、国が文教上の配慮をしているのだろうと、かように考えるわけでございます。仮に文教上の配慮であったならば、なぜ国鉄がそれをしょわなきゃならないのかというところが非常にむずかしいんだと私は思うんです。そこで、一部は文教上の配慮で文部省から国鉄に助成金をいただくと。それから、ほかの乗客とのバランスを調整するためには、通学の方々もある程度持っていただく。  それから通学の方がどの程度家計に影響があるかということについては、大学生の場合に通学の費用というのをこれは学生の連盟の方も出しておりますが四%でございます。全部の学生の費用でございます。この場合には援業料とか学校の納付金、こういうものを全部含めて四%でございます。それで国鉄に乗っているシェアといいますか、学生の割合というのは大体三割五分ぐらいが普通利用しているという計算があるわけです。そうすると四%に三割五分掛けまして今度は値上げの三割五分掛けますと、〇・五%ということが計算上出てまいります。したがって、私は確かに家計で、私も子供がおりますから値上げの前にあわてて買いに行くんで、確かにそれは影響があるのはもうわかるわけでございますが、計算上はやはりそういった〇・五%程度影響ということはこれまた疑いないところでございますので、私どもとしては、通学定期は全体の割引率の是正ということを踏まえまして、逐次やらせていただきたいと、かように考えます。
  78. 桑名義治

    ○桑名義治君 値上げのときは全体のわずかの〇・五%とか〇・三%とかそういう数字のあやを操りながら、そして負担は少ないんだという印象を植えつけながら常に上げているのが実情なんですね。それがたびたび重なってきますと結局は大きな値上げにつながってくるわけですよ。だから、そういうよそはどうだからおれのところだけ責められるのはおかしいという論理は、それはちょっとやめてもらいたいと思うんですね。  そこで、なぜ国鉄の運賃の値上げというものがこういうふうにいろいろ論議されるかということは、もう国有鉄道という一つの名前がついている。もっともいわゆる輸送機関としては一番公共性が強い。こういったところからこういうことが一応論議されると同時に、いわゆる私鉄への大きな影響力とそれから航空料金への大きな影響力と、それから運賃が当然そうなってくるならば、それが今度は物価にはね返るんですね。そういうふうに一番物価値上げの根幹を示すというのが、やっぱり国鉄の料金がどうなるかというところに根があるわけですから、したがって、それだけの責任を感じながら、この問題に取り組んでいかなければならないのじゃないかと、こういうふうに私は思うわけでございます。  そこで、今回の国鉄の運賃値上げによって私鉄との料金差はますます広がってくるわけですね。一番極端な例は、これはもうしょっちゅう挙げられているわけですが、新宿から八王子間、国鉄が四百十円に対して並行して走っている私鉄は二百十円、国鉄の片道運賃が私鉄の往復運賃に相当するという大変な格差を生み出しているというのはこれはもう否めない事実です、否めない事実。これがまた通学定期になりますと四千二百六十円対千八百円、二・四倍の格差になる。こういったいわゆる格差是正を目的に、値上げする必要のない私鉄が値上げを申請をしてくるということも十二分に考えられるわけです。そういうふうに考えた場合に、今回のこういった値上げに対してやすやすと認めるということは、これはまあちょっと考え物ではないか、考えなきゃならないと、こういうふうに私たちは思うわけでございますが、この点についてはどうお考えですか。
  79. 山地進

    政府委員(山地進君) 国鉄運賃と私鉄の運賃との差といいますか格差というのは、どこから来るかといいますと、やはり全国画一運賃、新宿と八王子の間二十八キロでございますが、私鉄の運賃の構造というのは遠距離逓減制を、短い距離の間にずうっとこういうふうにやるわけですね。国鉄というのは三百キロまで真っすぐ上っていっちゃうんです。そうするとどうしても新宿−八王子あたりでは差が出てきちゃうんですね。そこでこれくやしいんだけれどもどうしようもないんです。そこで本当言いますと安くしてお客に乗ってもらった方がいいのかなと思うんですけれども、そういうふうに運賃の構成ができておりませんで、これは何とかせにゃいかぬかなということは思うんですが、そこで新宿−八王子はどんな不合理が起きているのかと。じゃ、そういうことによってだれかがもうかっているかといいますと、案外私鉄の方にそれじゃ乗るというふうなことも起こっていないんです。国鉄に乗る人は八王子から新宿に来まして、それから四谷とか東京駅に行く人とか、あるいは新宿で乗りかえて国電で山手線に乗りかえる。そういう人はちょっと八王子から新宿まで安いんだけれども、その次乗りますとトータルでは高くなっちゃうんですね。そういうことがあるものですから、並行区間じゃなくて東京の特殊の構造からいって新宿−八王子については国鉄にそうデメリットはない。そこで先生のおっしゃるように、そういうことをやっていると私鉄の方がどんどん値上げを追随してこないかと。私もあわてて調べてみたんですが、四十九年の十月に国鉄と京王とは、比較してみますと、そのとき二百円と百六十円でございます。それが五十三年七月に、国鉄が三百六十円に上がったのに私鉄の京王の方は百九十円でございまして、追随するどころか全然関係なく国鉄の運賃と京王の運賃が決まっているわけです。したがって、今度四百十円に上げられた場合、私鉄の方は二百十円でございますので、これを国鉄の悪い方に見習って、私鉄が上げるということはありませんし、運輸省としても十分に、私鉄の運賃の合理性については各官庁とも御相談しながら適正な運賃を維持していくということで、その御懸念は全くないと考えております。
  80. 桑名義治

    ○桑名義治君 私鉄はことしの一月八日にいわゆる平均一二・八%上げたばっかりですからね、そのことも頭に入れておっていただきたいと思います。しかし、いずれにしましても、そういうふうに運賃格差があれば一つの根拠を与えるということになることは事実なんですよ。このことをやっぱり考えていかなきゃならないと思います。  さらに航空運賃につきましても、四十九年の九月に平均二九・三%の値上げをしまして、それ以後ジェット料金の新設があっただけで、四年半据え置かれておるわけですね、航空運賃は。この間利用客は、国鉄離れもありまして急激にふえて、航空三社の中でも経営状態の悪いとされておりました東亜国内航空でさえ累積赤字を消しそうだという、そういう状況下にあるわけでございます。しかし昨年の九月に着陸料が一〇〇%アップし、また航行援助施設利用料が五〇%アップした。さらに五十四年度は航空機燃料税が倍額になる、それからOPECの原油値上げでジェット燃料も大幅にアップする。こうした値上げ要因がメジロ押しに並んでいる状態の中で、国鉄運賃が上がれば航空三社も早速値上げ申請してくるのではないかと、こういうふうにうわさをされているわけでございますが、この航空運賃の値上げ問題については、現況ではどういうふうに対処をなさろうとお考えになっておられますか。
  81. 早川章

    説明員(早川章君) 国内の定期航空会社の収支状況につきましては、先生ただいま御指摘のとおりに輸送需要が非常にふえてまいりまして、ただいま、たとえば五十三年度速報ベースでございますけれども、旅客数は五十二年度に比べて一三%増ということでございます。ロードファクターも非常に上がってまいりまして、そのために収支状況——まだ五十三年度決算は出ておりませんけれども、非常に順調に推移するのではないかというふうに現在見ております。したがいまして、航空会社の側から運賃改定の申請を出そうというような話は、まだ具体的には何ら出ていないという状況にございます。  ただ、先生ただいま御指摘になりましたように、幾つかの要素がございまして、今後の、五十四年度以降の収支状況についてわれわれとしては注意深く見守ってまいる必要があるものと考えておりますが、具体的に現在、そういう動きが出ておりませんので、特に対処方針等を決めておりません。
  82. 桑名義治

    ○桑名義治君 大臣どこへ行かれたんですか。——最後の締めを大臣にと思っていたら、ぱっと行かれちゃったからね。——  いま公共料金値上げの問題について具体的に伺ったわけでございますが、物価をやはり押し上げる要因一つに、こういった公共料金値上げというものは、これは欠くべからざるものであるわけでございます。そういった意味で、いま具体的に個々の問題について論議を続けたわけでございますが、この公共料金値上げの問題について、私は今年度は非常に時期の悪いときではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この公共料金値上げの問題について、大臣はどのように認識をされておられるか、最後に伺って私の質問を終わりたいと思います。
  83. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 中座をして失礼いたしました。  公共料金につきましては、これはやはり非常に物価に——消費者物価にも卸売物価にも非常に大きな影響を持つ。特に消費者物価に対しての影響は大きいものである。われわれといたしましては、なるべくこの公共料金については上げたくないという、もちろんそういう考えであるのでございますが、今年度の予算におきましてお願い申し上げているのは、第一点はいまの国鉄の運賃の改定、それからもう一つはたばこの値上げでございまして、それからもう一つは健康保険、それから米はもう二月ですね、その三つが主体でございまして、大体これら全部合わせまして〇・八程度影響というふうにわれわれは試算をしておったわけです。  特に問題なのは、国鉄の運賃の場合に、先ほどもお話ございましたように、国鉄運賃法によりましての経費の赤字分を運賃でしょうということになっておりますが、これを先ほど来、四月一日のものをわれわれは、五月二十日から上げるならば上げてくれ、大体それで二百五十億円くらいの節約と申しますか、それをやってもらいましたり、消費者米価の場合にも赤字分を三年でそれを解消するという方針であったのを、四年でそれを解消していくということで繰り延べをいたしたわけでございますが、同時に、麦については一切上げないというようなことで努力いたしましたりしておるんでございますが、やはりこの公共料金が今年は前年よりも多少アイテムがふえているということ、そうしてまた地方の自治体においても、それぞれ、公共料金的なものを上げるような方向が来ておりますので、全体として一・五%程度影響というふうに考えておるんでございますが、なるべくこの影響が少ないようにと思って、実際に発動する前には十分われわれの方とよく御相談いただくということで、なるべく上げ幅を少なくし、影響をなるべく減らしたいというふうに考え努力をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、そのようなことで、公共料金につきましては、特に今年は多少上げる品目が数が多いので、よく軒並みと申しますか、大変な値上げだというふうにおっしゃいますけれども、実態はそうでもないんでありまして、その点のところを少し詳しくお話をしたいんでございますが、いずれにいたしましてももうわれわれとしましては、公共料金は予算でお願いしたもの以外には政府としてはお願いをしないということで、今年度の消費者物価の維持を図ってまいりたい、そのように考えています。
  84. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大平内閣が誕生いたしまして、ことしの一月二十五日、大平大臣は衆参両院の施政方針演説の中で、経済成長至上主義の時代はもう済んだ、これからは文化重視の時代に持っていかなきゃならないという意味の大変格調高い御発言がございました。本音とたてまえはどの辺のところかなと、ちょっとまゆつばものだと聞いていたわけでございますけれども、確かにこの指摘は大事なことでございます。私なども考えておりましても、経済成長の時代に物は与えられて、そして大事な心は奪われてしまったのではないかという点から、私はやっぱりいまというのは人間性が本当に豊かなそういうものになっていかなければならない、そして経済至上主義ではなくて、やはりそこに文化というものに対してのちゃんとした認識と位置づけというものを大臣にしていただかなければ、いまの世の中大変なことになるのではないかと、そう思っていたわけなんで、きょうは時間の関係もございますので、具体的に初めからお伺いしていきたいと思います。  実は出版物に対する再販制度の廃止の問題なんですけれども、この問題をお伺いする前に、まず認識としてしっかり頭に置いて私の質問にお答えいただきたいんですけれども、出版物というものは紙とインクの合成品ではないんだと、洗剤やなべかまと一緒の物ではないんだと、そこに出版物としての大きな役割りがあるという立場に立って御答弁もいただきたいと思います。  まず最初に、出版物の流通問題としていろいろ議論になってきておりますけれども、とりわけ、昨年の十月公取の橋口委員長が出版物流通に対する問題というようなことで記者会見もなさいまして、いろいろな問題を提起されたと思うんですけれども、その指摘の真意は一体どこにあるのかという点を最初にお伺いしたいと思います。
  85. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 現在公正取引委員会は流通問題に本格的に取り組んでおるわけでございます。正確に申しますと、流通問題を含めた製造業以外の非製造業の分野について、調査を含めた取り組みをいたしておるわけでございます。いまお話がございました出版業につきましても、現在調査をいたしております項目の一つでございまして、正確に申しますと現在調査中でございますので、公正取引委員会としてこういうふうにするとか、こういうふうに決めたということは実は一つもございません。  ただ、いまお話がございました昨年の十月の記者会見での私の発言でございますが、書籍につきましては著作物ということで、昭和二十八年に独占禁止法が改正になりまして、いわゆる法定再販対象商品ということになっておるわけでございまして、これは格別の指定行為あるいは申請行為がなくて当然に再販契約をすることが認められる、いわば特権的な地位を得たものでございまして、昭和二十八年から今日まで約四分の一世紀が経過をいたしておるわけでございまして、その間における経済情勢、社会情勢、文化状況等につきましても大変大きな変化がございますし、それからいまお話がございましたように、書籍につきましても物としての生産という形態が大変強く表面に出ておるわけでございまして、いわゆる大量生産、大量販売、大量消費という形態が急速に拡大をいたしておるわけでございます。また、ラジオ、テレビの普及、電話の発達等情報網の整備、あるいは交通機関の発達等、四分の一世紀以前と今日とでは大変大きな状況の変化がございます。  そういう点から申しまして、著作物につきましても、現在認めておられます法定再販の制度を含めて、一体すべての生産、流通、販売の問題が妥当であるか、適正であるかということについて検討する必要があるという発言をしたわけでございまして、基本的な認識としましては、社会情勢、文化状況につきましても非常に大きな変化がある、そういう点を踏まえまして、法定再販制度を含めた書籍の生産、流通、販売のすべてについて検討を進める必要がある、こういう発言をしたわけでございます。
  86. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこで、これはずいぶん問題になりまして、いろいろ調査なさるということについては、別にどうこうということではございませんけれども、法定再販制という問題がそもそも一つの問題ではないかというふうな観点からの調査項目になったのではないか、その制度そのものが弊害があるという点からこの調査の対象にされたというふうに思うんですけれども、実際問題として具体的にどういうような点が調査をしなければならないという対象としてお考えになったか、もう少し具体的なお考えをお聞きしたいと思います。
  87. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 出版事情につきましては公正取引委員会は従来からたびたび調査をいたしておるわけでございますが、昨年の九月には消費者モニター八百十八名を対象としてアンケート調査をしたわけでございまして、これももろもろの項目が入っておるわけでございますが、たとえば購入価格状況、末端の書店において実際に値引き行為が行われておるかどうか。法定再販ということは定価販売ということでございますから、出版社がつけた定価を末端の小売店は維持すると、こういう契約上の責任があるわけでありますが、実際はどうなっているかというような調査もいたしたわけでございます。そうやって見ますと、末端の小売店においてかなりの値引きが現に行われております。現金による値引きが大体八%程度、その他書籍券等の優待券が三%程度でございまして、大体一割ぐらいの値引きが行われているという現状がございます。これは書店の方はそういうことはないというふうにおっしゃっておるわけでございますけれども、実際にアンケート調査をいたしてみますと、約一割程度の現金その他の値引きというものが行われておるわけでございます。それから当面の問題としての再販につきましての意識調査をしたわけでございますけれども、これも、書籍について申しますと、再販制度が必要だという意見が全体の四五%ぐらいでございまして、必要ないという意見が四二%で、これはほぼ同じぐらいになっております。  あと細かくなりますから省略いたしますが、雑誌とかレコードとか録音テープにつきましても調査をいたしまして、大ざっぱに申しますと、書籍に比べますと、雑誌、レコード、録音テープといくに従って再販制度の必要はないという意見の方がふえてきております。これはあくまでもモニターの調査でございますからこれですべてを律するわけにまいりませんので、本年になりましてからかなり広範な調査をやっておるわけでございまして、これは出版社約千社、取次百社、それから書店約千社につきましてアンケートの調査票を出しまして、現在回収の最中でございまして、大体五割なり六割ぐらいの回収が終わっているということでございます。これはモニターよりはさらに突っ込んだ、同時に広範な調査をいたしておるわけでございまして、大ざっぱに申し上げますと、出版社と取次、取次と書店との間の取引及び決済条件がどういうふうになっているか。それから再販契約の実施状況。それから三番目が出版物の返品と廃棄の状況。それから四番目が取次に対する出版社のかかわりの程度。これは大きな取次店に対しては大きな出版社が出資者になっているというようなことも聞いておりますので、そういう出版社と取次との関係等につきまして広範な調査をしておるわけでございまして、もちろんそれと並行いたしまして、専門家の方や一般書店、あるいは出版社、取次等からのヒヤリングもいたしている最中でございます。
  88. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろ御調査いただいている様子でございまして、また詳しくその御調査の結果を伺いたいと思います。いま大変小さいお声で早口でおっしゃいましたものですから、なかなか聞き取るのに大変でございましたので、後でその現在までの調査状態というものをいただけますでしょうか。
  89. 橋口收

    政府委員(橋口收君) はい、結構でございます。
  90. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ、ぜひいただかしていただきたいと思います。  独禁法の二十四条の二で再販価格維持行為が適用除外になっていると。しかし一般消費者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。というのが書かれておりまして、一般消費者の利益を不当に害しないということになっているわけですけれども、現在の状態の中で消費者の利益を害する事態というような点が見受けられますんでしょうか。
  91. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、その出版物の生産、流通、販売、各プロセスにおけるもろもろの問題があるわけでございますが、私どもはある種の病理現象が相当深刻に進んでいるんじゃないかという評価をいたしておるわけでございますが、逆に申しますと、幾つかの病気の症候群が見られるわけでございまして、一体こういう病理現象の原因がどこにあるかということにつきましては十分調査をして診断を下す必要があるわけでございますけれども、どうも法定再販という制度が、ちょうど金太郎あめみたいに、どこを切っても法定再販という字が出てくるような感じがするわけでございます。これはあくまでもそうだというふうには断定はいたしておりませんが、やはり法定再販という制度があるがために生産、流通、販売の各段階における問題というものが生まれてきているんじゃないかという感じがしているわけでございまして、たとえば一例を申し上げますと、この法定再販に対する幾つかの誤解がございます。  いまおっしゃいました消費者の利益を害してはいけないというのも重要な要件でございますが、そういうことはどこかに忘れられておりまして、いわば法定再販というのはわれわれに与えられた特権であるからフルに活用していいんだというような、そういう誤解があるやに見受けられるわけでございまして、たとえば再販制度というのは、本来出版社と小売店、出版社と取り次ぎ、取り次ぎと小売店との間の相対契約でなければいけないわけでありますが、ところが、現在出版界には再販維持励行委員会というような共同監視機構を持っておりまして、先ほどもちょっと触れましたが、末端の小売店で値下げでもいたしますと、励行委員会の人が行って、なぜ値下げをしたかというようなことを注意をするというような事実もあるわけでございますし、そういうことが実はいまの出版界の流通の円滑を阻害している面もあるわけでございまして、専門的に申しますと共同再販ということになるわけでございます。  これは、出版をめぐる社会的、文化的な状況に非常に大きな変化があったということを申し上げましたが、そのほかに加えて一昨年の十二月から改正独禁法が施行になったわけでございまして、共同行為に対しましては課徴金という制度が生まれたわけでございまして、われわれは、一昨年の十二月二日を境にして世の中一変したというふうに考えているわけでございまして、そういう法律制度の側の変化も十分踏まえた上で、法定再販の問題に対しても対処する必要があると思うわけであります。そういう角度からの業界の意識の変革と申しますか、意識の転換というものもおくれているんじゃないか。したがって、繰り返しになりますが、いろんな問題を検討いたしてまいりますと、長年の商習慣ということのほかに、その商習慣と一体になった法定再販というものが一つの隘路になっているんじゃないか。こういう感じを持っているわけでございます。
  92. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 おたくの方で、これ一昨年の五月の二十四日ですか、お出しになっていますね。「再販制度の観点からみた出版業の実態について」というのを見せていただきました。まあ値引きしているというようなところが一割近くあるというような点もございましたけれども、いろいろ言われているのは、この再販制があることによって欲しい本がなかなか手に入りにくいとか、相談に乗ってくれないと。消費者の苦情があるというような点も大きく宣伝されているわけでございますね。そういう点から、このおたくでお出しになったのを見ましたところ、「最近の出版物の定価、マージン、リベート、広告宣伝費等の状況について他業界とも比較しつつ検討してみると、全体としては、特に過大であるとは認められず、独占禁止法第二十四条の二の「一般消費者の利益を不当に害する場合」に該当する状況ではない。」というふうにお書きになっていらっしゃるわけですね。いま値引きというような問題が出されましたけれども、この再販を取り外すことによってむしろ値が上がるのではないかという心配というのも非常に出てきているわけで、また売れる本というのは取り扱いやすくなるし、売りやすい本しか置かないというような問題が出てきて、ますます消費者にとってみたら欲しい本が入りにくいというような状態になるというような心配が、非常に大きく出てきているわけなんですけれども、その辺のところはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  93. 橋口收

    政府委員(橋口收君) いまおっしゃいましたのは昭和五十二年五月の調査結果でございまして、これは昭和五十一年の九月現在で調査をしたものでございます。これは昭和四十八年の石油ショックの際に、書籍の定価の改定につきまして消費者の苦情が強く出てまいったわけでございまして、そういう社会的な背景を受けての調査でございまして、そういう点から申しますと、いまお読みになりましたように書籍の定価とかマージンとかリベート、広告宣伝費に関する限りは行き過ぎた行為はなさそうだ。つまり、そういうものがたくさん出ますと定価が高くなるということなんですけれども、そういうことはなさそうだということを言っているわけでございまして、これはそういう点から申しますと、いまから三年以上前の調査であるということでございます。それからもう一つは、いまお読みになりましたところのちょっと前に書いてあるんですけれども、「この再販売価格維持励行委員会の行為については、行過ぎのないよう指導する必要があろう。」これは先ほど私がお答えしたところでございまして、こういう励行委員会という共同監視機構の行き過ぎ行為というものにつきましては、当時よりは現在の方がもっとシビアな見方をしておるわけでございます。  それからいまおっしゃいました、仮に法定再販を廃止いたしました場合に書籍の定価が上がるんではないかとか、あるいは大事な文化財としての書籍の出版率に影響があるんじゃないかということが言われておるわけでございますが、これは、実は一九六五年にスウェーデンが書籍につきましての法定再販の制度を廃止いたしたわけでございます。その廃止する直前に行われた議論と全く同じ議論が、現在書店を中心として行われておるわけでございまして、いまおっしゃいましたことのほかに、書店の数が減る、こういうことも言っております。ところが、スウェーデンの実態を昨年人をやって調べたところによりますと、事実は実は逆でございまして、書店の数もふえておりますし、それから発行点数も増加をいたしておりますし、それから定価の方も一般の物価の値上がりよりは低いという事実が出ておるわけでございまして、実はそういうニュースが日本に流れてまいりましたのは、日本と同じような再販制度を持っております西独において、西独新聞記者が調査した結果が、日本に流れてきたということでございまして、実際にスウェーデンにおいて当たってみますと、再販制度に復帰したいという声もほとんどございませんし、伝えられるような弊害も少ないということでございまして、私どもの方は、外国でこうやっているからこうするということではございませんが、一般の書店の方が、外国において、スウェーデンにおいて廃止した結果いろいろ問題が多かったということでございますので調査をいたしましたところが、むしろ結果はいいということでございますので、だから、したがって法定再販をすぐやめるというふうに結論づけるつもりは毛頭ございませんが、いま言われておりますような書籍が高くなるだろうとか、それから書籍の発行点数が少なくなるだろうとか、あるいは書店が減るだろうというのは、少なくともスウェーデンの実績に徴する限りはそうではないという確認ができておるわけでございまして、しかし、そうだからと申しまして日本の実情に十分照らしてそういう弊害がないように努める必要はございますが、一応の調査はそういうことでございます。
  94. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 諸外国の調査をなすってという問題もあろうかと思いますけれども、またこれは一つの議論のしどころでございまして、スウェーデンでそうだったから日本にこうだというふうに面接ストレートに結びつくものでない。やはり日本なりの長い商習慣だとか社会的な環境というものから考えると、心配というのが出てくるということは申しておきたいと思います。  それで、私もいろいろ再販価格維持の問題について、一体どういうふうな趣旨でこれができて、どういうふうに運営されてきたかということをいろいろ出してもらって調べたんです。大変古いですねときのうもいらした方と話し合いしたんですけれども、だけれどその精神においては私は変わりない。実はこれ五四年に「再販売価格維持契約の手引」というものが出されておりまして、そしてこれは公取の企業課長と係長がお書きになっていらっしゃいますけれども、ここのところでなるほどなと思ったんでございますけれども、「もし乱売の程度が激しくなり、又それが広汎な区域に迄発展してくると、その商品の品質が次第に低下し、又前述したように販売業者はその取扱意欲を減退し、やがては消費者の購買慾と関係なしにその商品が漸次市場から姿を消す結果を招くのである。従って、この制度は本来、」「適正利潤と品質の保証によって、販売秩序を維持し、この秩序が乱れて、商品が市場から姿を消したり、品質が低下したりすることのないようにするためのものなのである。」と、非常に基本的な考え方が書かれていて、なるほどそういう役割りを持つものであるということになると、この考え方ですね。乱売が激しくなって、品質の低下とそれから消費者の講売意欲と関係なしに漸次市場から姿を消す。九ページ、十ページにわたってのところでございますね。ここに書かれている本質的な問題というものは、私はいま変わっていない、やっぱりこれが果たすべき役割りであるというふうに考えるんですけれども、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  95. 橋口收

    政府委員(橋口收君) この点は先ほどもちょっと触れたわけでございますが、昭和二十九年の解説本でございますから、昭和二十八年に法定再販の制度ができました後の解説でございますから、あくまでも昭和二十年代の出版事情を背景にした解説であろうかと思います。くどくど申し上げることは必要ないと思いますが、最近におきましてはいわゆる書籍のほかに週刊誌、漫画本等当時なかったようなものまで生まれてきているわけでございまして、大衆文化の行き着くところ豊饒の中の貧困と言われるような出版事情になっておるわけでございまして、品質の低下とかあるいはおとり販売とか、そういう行為を防ぐためにというのは、あくまでも昭和二十九年の実情であったと思います。今日におきましては、書籍に限らず他の商品につきましても言えるわけでございますが、物はあふれるばかりに生産されておるわけでありまして、そういう物が生産者から、川上から川中、川下を通って末端の小売店にとうとうとして商品が流れてくるというのが現在の実態であろうと思うんです。   〔委員長退席、理事鈴木正一君着席〕 そうなりますと、末端においていわゆるおとり販売のような行為が起こるわけでございまして、そういうものにつきましてはまた他の別個の規制の策ということも考える必要がございますし、われわれのところには、これは書籍じゃございませんが、他の商品につきましてのおとり販売についての取り締まりをしてくれというのが一日に一本ぐらい必ず電話がかかってくるわけでございまして、それはそれなりの対策が必要であろうと思いますが、そういう品質の低下とか物がなくなってしまうとか、そういうことではなくて、今日におきましては、いまの出版事情のもとにおきましては、いわゆる法定再販の弊害の方がクローズアップされてきているのではないかという感じがするわけでございまして、こういうことを申し上げますと、公取は書籍について有用なものとそうではないものとの何かランクづけをやるんじゃないかというようなことをすぐ言われるわけでありますが、私どもはそういうことは毛頭考えていないわけでございまして、あくまでも経済現象としての出版の実態、出版事情というものを考えますと、果たして法定再販という制度が今日においても有効な手段であり、また出版を維持するため必要不可欠なものであるかどうかにつきましては、これは十分調べてみる必要があるのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  96. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうなりますと、見解の相違ということになるのかもしれませんけれども、やっぱりわれわれから見れば、おとり販売に使われるということはもういま非常に心配していることで、その二十何年のときと状況はちっとも変わっていないのではないかというふうに考えられるわけなんです。これで議論は見解の相違になるわけなので、あと具体的にそれじゃお伺いしていきたいと思います。  いまいろいろ御指摘になった問題がまんざらないとは私申しませんけれども、それを流通の寡占化による弊害と言うのは私はやぶさかではない、認めるわけなんですけれども、ただその流通寡占による弊害と再販制とどういうふうな関係があるのかという点がもう一つはっきりしない。
  97. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 取り次ぎの段階における市場構造の問題、二社によって六十数%か占められているという構造上の問題と再販制度とは理論上は関係がないというふうに申し上げて差し支えないと思いますが、ただ、さっきもちょっと申しましたように市場構造が寡占的になっておりますと、出版社としては巨大取次店と取引をすることが出版社としての死命を制するということになるわけでございますから、どうしても二大取次店に取り次ぎをしてほしいということを申し出るわけでございます。そうしますと、取引の契約と一緒に再販売価格維持契約を締結することが二大取り次ぎとの取引開始の条件になっておるわけです。これはあくまでも行き過ぎた行為と言わざるを得ないわけでありまして、法律にも書いてございますように、中間段階の流通業者が再販契約をする場合には、これはメーカーの意思に反してやってはいけないということになっておるわけでありますが、現実にはそういうことが行われている。言いかえますと、いわゆる市場構造における寡占問題と法定再販とが実は表裏一体をなしているのじゃないかと。先ほど申しましたように、たとえば書籍につきましては買い切り制と委託販売の制度がございますが、従来の慣行では委託販売の制度の方がウエートが高くて、これは実はまた法定再販と同じような性格を持って表裏一体をなしているという面があるわけでございまして、市場構造における寡占問題と法定再販も実は相互に絡み合って法定再販を維持し、寡占構造を維持するという、こういう機能、効果を持っているんじゃないか。したがいまして理論上関係ないはずであるにもかかわらず、現実の姿におきましては非常に深い関係があるんじゃないかという、そういう感じを持っておるわけでございます。
  98. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ、具体的にお伺いしますけれども、流通が寡占化してくると、再販契約をしなければ取り次ぎはしないということになって、大手出版と中小出版との取引条件が違ってくるというような問題が出てきている。それじゃ再販を外してしまったら取り次ぎをちゃんとしてくれるか、取引条件は同じにしてくれるかというふうに、再販を外した場合にこれが保証されるのかどうかということなんですけれどもね。
  99. 橋口收

    政府委員(橋口收君) いまの点は、あくまでも市場構造をどうするかということにかかってくるわけでございまして、いま二大取り次ぎが六十数%占めておりますが、だんだん直販制度とか、それから先ほどもちょっとお触れになりましたが、流通のルートが変わってまいりまして、スーパーとか薬局とかいうところでも書籍を売るように変わってきております。したがいまして、時代の進展とともにいまのような流通販売機構にも幾つかの変化が出てきているわけでございますから、したがいまして、そういう販売形態なりあるいは流通形態の変化ということも十分念頭において、この問題は処理する必要があるわけでございまして、これはあくまでも現状を固定するとか、現状を維持するという考え方の上に立ちますと問題の解決にはならないんじゃないか。したがいまして、仮にいま法定再販制度がなくなった事態を想定しまして、それじゃ定価販売が一切なくなるのかと申しますと、法定再販のないアメリカとかフランスにおきましても推奨販売価格という制度があるわけでございますから、本当に定価にふさわしい内容を持った書籍は定価で販売をされておるわけでありまして、さっきおっしゃいましたようなことはむしろ逆で、大量生産、大量販売をし、しかも広告費をうんと使うような本が実は値引きをされる、こういう実態が生まれてくるのではないかと思うわけでございまして、本当に内容のしっかりした書籍につきましては、仮に法定再販の制度がなくなりましても定価による販売というものは行われる。  問題は、日本の場合は一回必ず消費者の手に渡らなければ本の定価が下がらないというところに問題があるわけでございまして、諸外国では消費者などの手を経過しなくても、出版社から直接定価より割引した価格のものがマーケットに出るというところにメリットがあるわけでございまして、日本は御承知のように新本屋と古本屋しかないというのが実情でございます。諸外国には第二マーケットというものが生まれつつあるわけでございまして、そういうものがあれば、一回消費者は必ず定価で買わなくても、定価より幾らか安い書籍というものが一般の書店で手に入るということになるわけでございますから、そういう効用、効果を考えますと、これは取り次ぎにおける寡占構造が解決しなければ問題は一切解決しないという、そういう考え方をとる必要はなくて、もっと弾力的な考え方をとるべきじゃないかというように考えておるところでございます。
  100. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 具体的に進められて、そしてこの再販がなくなった場合ということを考えますと、やっぱりますます寡占化が進んでいってしまうということが非常に心配されるわけなんです。だから中小出版社の集まりでも、これはどうしても反対だという立場に立たざるを得ないというふうに私は考えるわけなんです。  で、いま割引の問題だとか、第二市場の問題とかおっしゃいましたけれども、割引ということが許されますと、割引を見越しての価格というものを掛けてこざるを得なくなるのではないかという必配もここに出てくるわけなんです。だから私はこの再販維持を絶対的なものだというそういう硬直した考えではなくて、公取の方でいろいろ問題になすっている点はそれぞれ業界の中で自主的にいろいろと考えて改善していくという道をとらなければならないのではないか。返本の問題、残さいの問題なども伺いましたけれども、そう大変だというもの、返本とか残さいというような問題でもないと私は見ましたし、委託販売があって、そしてみんなが書店で並べられて見て買っていくというような、中小の出版社では広告で宣伝できないというようなときにも、そういう委託販売によってそしてみんなの店頭に飾ることができるし、返本ということがあるから安心してこういう本も飾っておくことができるというふうにもまた見られると思うわけなんですね。  大事なことは、もう時間がありませんからお考えいただきたいんですけれども、業界としてもこの問題について検討を始めているわけでございますね。だから私はやっぱりいままでの出版、流通の問題を通して業界自身が自主的に検討するという力を待つべきではないか。公取が出ていって、これは問題だ、これは廃止すべきだというような結果にならないように自主的な力というものを育てていきたいと思うんですけれども、その辺はどうお考えになりますか。
  101. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 前段でおっしゃいましたことには全く賛成でございまして、現行法制の枠内でも相当の改善ができるのではないかというふうに思っております。ただ、先ほど申しましたように、出版社も、取り次ぎも、小売店も法定再販というこの恩典になれて、改善の意欲というものが従来は大変薄かったんじゃないかと思います。ただ、いまお話がございましたように、最近は出版社も書店もこれではいけないということで勉強し直そうという空気になりつつあるわけでございまして、その点は正しく評価をする必要があるだろうと思います。  冗談に言っておりますが、役人がやめて後商売を始めるのは何かと申しますと本屋だけだということが言われているんですね。これは考えてみると大変情けない話だと思うんです。本屋を始めようと思っても、ある種のノーハウがなきゃ本屋を始められないという書店でなければいけないと思うんですね。たとえばほかの八百屋さんとか果物屋さんとかそれから衣料品店をわれわれは始めることができるかというと、これはとてもできないわけでありまして、いまおっしゃいましたように、委託販売の制度とか法定再販の制度がありますがゆえに、返本の日にちと冊数だけを数えていればその書店のおやじが勤まるというようなことでは、これは大変残念だと思うわけでございまして、したがって、そういう点からすべての出版、取り次ぎ、小売の段階において改善の意欲を持って勉強していただくということにつきましてはこれは応援するにやぶさかでございませんし、また、くどくなりますが、業界ではどうも弊害があるとか、ここをこういうふうに直したらいいと思っていても、だれか第三者に言ってもらえないと直せないという場合もございますから、そういう場合には公正取引委員会を御利用いただく、われわれもできるだけお力添えをして改善の方向に持っていきたい、こういう心境でおりますので、何が何でも法定再販をかたきのように思っているということではございません。
  102. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういう意味でぜひ御理解をいただきたいし、これを契機に業界の自主的な再編成とか再検討課題というものに真剣に取り組んでもらいたいと思うわけです。  先ほどから北海道価格の問題が出ましたけれども、再販が取り除かれますと、これはもう確かに価格問題で地域差というものが出てくるわけなんですよ。そうしますと、やっぱりこの再販制度そのものが全国一律に同じ値段でというところに消費者にとっては大きな魅力があるわけですよ。これが取り除かれますと、北海道では同じ本でも高くなる、北海道からまた離島に行けばまた高くなるというような問題が出てくるというその地域格差の問題というものが非常に大きな問題になってくるのではないかということと、それから売りやすい本しか店に置いてくれない、出版部数が大変少なくても大事な本があっても、それは置けない、やっぱり書店としては売りやすい本しか置けなくなるというふうな弊害が出てくるというふうに私は心配をするわけです。また、心配なすっていらっしゃる大きな問題でいろいろと週刊誌などが出てまいりまして、その質においてこれはちょっとというようなものもあるというような点から、こういうものについても手を入れなきやならないというふうにおっしゃる意味もわかりますけれども、そういう週刊誌なら週刊誌の使い捨て文化というふうにみなさなきゃならない、これは余りよろしくないというような、文化的な著作物であるか、非文化的な著作物であるかというような点の判断というのはこれは非常にむずかしいわけですね。そうすると、こういう問題になりますと公取の立場ではその判断というのはできなくなる、当然やるべき問題ではないというふうに考えざるを得ないわけでございます。そういう点をどういうふうに考えていらっしゃるかということをお伺いしたいと思います。  それから、先ほどのアンケートのモニターの調査ということをおっしゃいましたけれども、やっぱり再販があることによって都会でも僻地でも同じ価格で買えるということは文化の普及に役立つということで、これは大変いいのだというのが三七・六%というような数字が出ておりまして、私もなるほどそうだなというふうに見せていただいたわけでございます。これは五十三年の十二月ですか、十二月におたくの方でお出しになっていますけれども、本が再販制度により、都会でも辺地でも同じ価格で買えることは文化の普及に役立つというのが三七・六%、書籍で。雑誌で三四・九%というふうに出ておりまして、やっぱり私は読みたい本、そしてどこでも同じように読めるというようなそういう立場から簡単に再販が問題だとストレートに結びつけてしまうということにやっぱり危惧の念を抱かざるを得ないという点で、地域格差が出てくるというような心配などについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  103. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 法定再販と全国の一本価格ということは理論上は本来関係のないことなんでございますね。つまり、再販価格というのは各社がそれぞれの商品ごとに契約を締結するわけでありますから、たとえば一それがいいというわけではございませんよ、ございませんが、北海道ではたとえばこの本は二千五百円、東京では二千二百円、こういう再販契約をすることも可能なわけでございますね。たまたまごく一部で定価に差等がございますが、現状では全国一本価格を設定しているということだけでございまして、これは再販制度と本来関係はございません。仮に再販制度がなくなっても出版社の営業政策として全国一本価格をとるということであればそれはそれでよろしいわけでございますから、そういう点から申しますと、本来関係はないわけであります。再販制度のない商品につきまして地域間に格差のあるものもございますし、それからいろいろ価格の問題につきましてはわれわれの方でたとえば全国一本価格でなければいけないとか、地域格差があってはいけないということは、本来言いにくい立場のものでございますから、仮に地域間に格差があります場合に、それが合理的な計算根拠に基づくものであれば、それはそれとしていきなり適当でないと言うわけにはまいらないわけでございますから。  それで、もとへ戻るわけでございますが、再販制度があるということは要するに生産者が価格を決めれば流通、小売の段階で一切競争がないということを是認するというたてまえのものでございますから、これは本来ごく一部の例外的な商品について行われなければならないということでありまして、二十九年以降指定再販の制度がだんだんだんだん整理をされてまいりまして、現在千円以下の化粧品と大衆医薬品と書籍その他の出版物だけになっているわけでございますから、したがって、そもそも流通段階なり小売段階での競争があった方がいいというのが物価対策懇談会の御意見でありまして、そういう見地から申しますと再販制度というものは本来好ましくないものだという考え方があるわけでございますから、これはこれ以上申し上げますとトートロジーになるわけでありますが、競争がない方がいいのか、競争があって末端で多少とも値段に格差が出た方がいいかというこれは大変大きな問題であろうと思います。したがいまして、繰り返しになりますが、本来法定再販の制度と全国一本定価とは関係がないということでございます。
  104. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大変経済効率を考えての公取の立場の御説明だったと思うわけですよね。やっぱりこれが法定再販に指定されて競争がないということは、ある意味ではあぐらをかいちゃっているというふうな御指摘があるかもしれないけれども、そういう保護があったればこそ安心していろんな本を同じ値段で全国の消費者に渡すというそういうのを、さっき言ったように、なべかまや洗剤なんかと違うという価値をやっぱり私は考えていただきたいと思うわけですよ。それからまたいまの、地域格差が出てもそれはそれなりの合理的な理由があればいいんだというふうなおっしゃり方をなすったのは、これはどうにも受け取れないんですよね。  これは大臣にもお伺いしたいんですけれども、この書籍類というものがいまや再販制度で全国どこでも日本人として同じ値段で本を買えるというのが、これが私はもう本当に大事にしたいことなんですよ。しかし、いろいろな合理的な理由があって、たとえば運賃が大変でしょうとか、それからいろいろな経済情勢が大変でしょうということで、東京では千円で買えるのに、北海道は二千円で買っても、合理的な理由があるからいいですなんていうことになれば、これはもうとんでもない議論になっていくと思うんですね。その辺のところは、やっぱり初めに言いましたように、経済効率で考えての御答弁だというふうに言わざるを得ないわけですよね。大臣、その辺どうお考えになりますか、いまお聞きになっていて。
  105. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いま公取委員長が種々お答えになっておったのは、公正取引委員会としてのきわめて明快な立場に立っての御答弁だったと思っております。またそうした意味においての現行の本の販売については、いろいろな面でも問題のあることは事実ではないかと思います。しかし、いま小笠原委員の仰せられましたように、日本じゅうどこへ行っても同じ値段で一冊の本が買えるんだということも、やはりこれは非常に魅力のあることだと思うのでありますが、ただ、その値段が一種の押しつけみたいな形で、千円なら千円という定価でもってその値段が高いか安いかということは消費者は全くどうにもならないんで、定価で買わざるを得ないというようなところには、やはりそれなりの私は選択がもう少し自由にできた方がいいなということがありますが、逆な面で、千円で東京で買えて二千円で北海道でしか買えないというようなことになると、これまた非常に不公平なことでもないかと思います。答弁がきわめてあいまいになってしまうのは、やはりそういう価値判断の拠点をどこに置くかということについて、それぞれの人々のいろいろな私は価値判断があるのではないかと思うわけでございまして、私といたしましては、なるべく良質な本は日本じゅうどこに行っても同じ値段で買える、まあもう少し安い方がいいというふうに考えるわけでございます。
  106. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 で、本当にだから私は、この再販制度というものが、法定再販制度の問題でこの書籍が出されているということの意義というものはまさにそのことにあると思うんですよね。やっぱり書籍というものは、消費者のみんなに全国一律にそれを売ることができる、買うことができるというそういう消費者の立場や、そして書籍の果たす役割りというものが非常に無視されているということを言わざるを得ないわけなんです。  時間がありませんので、いまの御答弁をまた私じっくり考えて、またこれ次にも引き続いてやらしていただきたいと思いますけれども、もう一つ、書籍の問題では運賃の問題があるわけですね。公取の方でもお聞きになっていらっしゃるかもしれませんけれども、たとえば本州と四国は書店の入口までが運賃というものを出さなくても済むということになっているわけなんですけれども、これが北海道とそれから九州、それから沖繩などが一部運賃を持たされるということになるわけなんですよ。これもまさに出版業界というものが金がないなんて言われればそれっきりなんだけれども、まあ書店としては何で北海道と、それから九州と、離島、沖繩だけが持たなければならないのか、やっぱり本州や四国でやっているように持ってもらいたいと。そうしないと公正な取引と言えないのではないか、これももう大変具体的な問題になっているわけなんでね、やっぱり私は公正な取引という立場から見ればこれは不公平だと言わざるを得ないと思うんですが、時間がございませんので簡単にこれ公平だと思われるかどうか。
  107. 川井克倭

    説明員(川井克倭君) お答えいたします。  先生ただいま御指摘のように、一部の遠距離の書店につきまして運賃の一部を書店が負担させられているという事実はございます。しかし、運賃をだれが負担するのか、それを一番利益を受けるその書店が負担をするのか、あるいは全体、総コストとして書店あるいは関係者全体がその部分を負担するのかというのは、これは実は関係者の政策判断の問題に属するのではないかというふうに考えております。当方といたしましても、いずれが妥当なのか関係者から現在ヒヤリングを行っている段階でございます。これも現在われわれ調査を行っておりますので、その調査の結果を待って、もう少し実態を明らかにした上で判断を加えたいというふうに思っております。
  108. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろ言い分はあるわけです、取次協にしても日書連にしても。言い分はいろいろあるから、それについていろいろ調査していただくこと結構だと思いますけれども、やっぱり同じ日本の中で、四国と本州だけはただだと。それから九州、北海道は運賃持ちだと。書店というのも、大きな書店じゃないですね。この間もちょっといろいろ実情を伺おうと思ったら二十軒くらいの方が来てくだすったわけですけれども、非常に小さい書店ですから、運賃というのが大きな負担になるわけでございますからね、だからその辺のところやっぱり不公平だということは、確かに不公平でしょう、そう思われますでしょう。
  109. 川井克倭

    説明員(川井克倭君) 先生、なべかま、あるいは電気製品などと比べられると、また問題だと言われるかもしれませんけれども、普通の電気製品、あるいはなべかまなどにつきましては、メーカーの方でたとえば九州まで送る値段というのは負担しているわけでございます。そういうふうにすべきなのか、あるいはいまの書籍のような形態をとるのか、この辺はどちらが妥当かというのは、まあ関係者にもお話を聞かなければいけないと思っております。
  110. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まあ本当にこれ調べればまた問題が大きくなりまずけれどね、   〔理事鈴木正一君退席、委員長着席〕 結局、定価の何%出版社が持つと言っても、輸送料というのは重量で来ますからね、だから安くて少年マガジンみたいに厚いのはうんと運賃かかっちゃってそれが大きな負担になるというような問題ですよ。で、法律のジュリストなんかは高いから、たくさん何%でもちゃんとやっていけると、そういう矛盾もあるわけですよね。だから、やっぱり本当にこれも全国的に、東京の子供は安く少年マガジン見れて、そうして北海道は、まあこのごろ大人も読んでいますけれどもね、少年マガジン。北海道は高くなってもいいということにはならない。まさにやっぱり不公平だという点については御認識いただけたと思いますので、いろいろその話し合いを進めていただいて、不公平な取引にならないようにお願いしたい。通産省にもそのことを私は——通産省、いいですか、もう時間がないからお答えは結構ですけれども、通産省にもいろいろ言っていますけれども、通産省については取次協会なんかの人たち、こう言っているんですよ。通産省は私たちに非常に理解を示してくれるというふうな言い方しているわけですよね、まあ通産省がどの程度理解なすったか知らないけれども。だから日書連にしてみれば、これはもう通産省けしからぬと、もっとしっかりその問題について話し合いをして、解決できるようにという御指導をいただきたいと思います。  それから時間がもうなくなりましたんですが、最後にお願いしたいんですけれども、まあ北海道価格というのは本当にこれ住んでみなければわからないんですね。その北海道価格の中できょう一つ問題提起したいんですけれども、乗用車でございます。この乗用車がトヨタ、日産、マツダなど七メーカーの価格を実態調べましたら、東京と札幌では店頭渡しの現金価格が約二十万円違うわけなんですね。それも理屈があるわけですよ。つまりスパイクタイヤ、冬用のタイヤを使うとかいうことで十万円くらい高い、それから寒冷地の特別の部品が要る、それから東京から札幌までの輸送費が、負担かかるというようなことでございまして、これも確かにそうだと思います。しかし、それが適正な価格であれば、スパイクタイヤもつけたんだ、これだけの部品もつけたんだということならこれは納得できるんですけれども、調べてみますと、メーカーの販売店と、それから付属品の専門店の価格というのはずいぶん違いがあるわけなんですよ。スパイクタイヤの場合考えますと、販売店では一本一万六千五百円というふうに言うわけですね。付属品専門店に行けば一本九千五十円という、これは大変な差が出てきます。それから、寒冷地対策費がメーカーによってそれぞれ違っています、車の。それで安いのでは五千円から七千円と言っているんです。高いのは二万七千円から三万八千円という高い値段を決めているということですね。これは消費者連盟の方たちが調査して大体どれくらいだというふうに計算してみると、大体五千円ないし一万円で済むはずじゃないか。だから、五千円から七千円という安い方で大体賄えるのに、二万七千円から三万八千円もとっているというようなのがかぶってきまして、非常に一台の価格の差が出てくる。また、輸送費。三つ目の理由としていますけれども、この輸送費について見ますと、東京のあるメーカーでも、福岡と札幌というのは大体距離同じくらいですね、福岡と札幌というのは。それで、大体三万円から五万円の差があるということが出てくるわけなんです。だから、一台について店頭渡し二十万円の差がある。これこれこういう北海道向きの理由だというその理由の計算の根拠というのは非常にこれはあいまいで、私は正確ではない。やっぱり北海道価格ということで上乗せされているというふうに考えざるを得ない。それから、寒冷地用ということでいろいろ必要でないものも取りつけられていて値段をつり上げる要因にしているというような問題もございますので、自動車などについても、公取としていろいろ御調査もなすっていらっしゃると思いますけれども、こういう具体的な問題について御調査もお願いしたいし、御指導もいただきたいと思うんでございますが、その点はいかがでございますか。
  111. 川井克倭

    説明員(川井克倭君) ただいま先生が御質問になりました点、われわれの問題意識の中にも入っておりまして、現在調査中でございます。間もなく実態はっきりすると思います。
  112. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いつごろ。
  113. 川井克倭

    説明員(川井克倭君) 秋までにははっきりしてまいります。
  114. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまの具体的なそういう問題も対象になって入っていますね。
  115. 川井克倭

    説明員(川井克倭君) そのとおりでございます。
  116. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 わかりました。もう時間ですね。最後に一問。  それじゃ具体的な問題を先に聞いてしまわなければと思ったものですから、大臣にいまの物価動向などについてお伺いすることができませんでしたけれども、ただ一つ、さっき聞いていまして、いろいろ物価が上がるというような中で去年は四%、ことしは四・九%くらいで抑えるというような数字をお出しになったけれども、この間うちも選挙で各地を歩きまして、やっぱり物価というのは一番いまわれわれにしてみれば頭の痛い問題で、そうあわてることもない、これで抑えられるんだという見通しをおっしゃいましたけれども、われわれにしてみれば、そのときになってこれはこういう事情でもってここは無理でしたなんて言われても、生活する者にとっては大変な問題になってくるわけでございます。  その物価高の要因としてはやっぱり公共料金の引き上げとか、それから国債の問題だとか、OPECなどによる値上げの問題というような問題がございまして、その一つ一つについてもいろいろさっきお答えになりましたけれども、対外的な要因とか、これからどうなるというような問題についてはなかなかむずかしい点も、予測できない点もあろうかと思いますけれども、一番わかっているのは公共料金ですね。これは日本の中のことでございますし、政府自身がお決めになる問題だ。その公共料金値上げについて、先ほど国鉄の方の御答弁聞いていまして、なるほど理屈というのはいろんなうまい理屈がつくものだな、何で国鉄だけがしょわなきゃならないんだなんということになりますと、これもそれぞれの理屈というのはあろうかと思います。しかし、それは国鉄だどこだというのじゃなくて、政府全体として考えれば、この公共料金値上げの問題について、各省がいろんな考え方があっても、やはり大臣の立場としては物価を抑えるという大きな立場に立って、これはもう自分の問題ですからね、よその国からの問題ではございませんので、もうちょっと積極的にこれを抑えるということを考えていただかなきやならない。公共料金でも〇・八%くらいだなんて低い数字おっしゃいましたけれども、やっぱりそういう数字と生活実感の中からくる物価と実際とは違いますので、その辺のところは大臣にしっかりと物価のお目付役としての役目を果たしていただきたいと思うわけでございます。  それで、一般消費税ですね、これまた上がると大変なことになる。この問題は物価にとってはまさに敵になってくるわけだけれども、その一般消費税の問題はどう考えていらっしゃるのかという大臣のお考え方を最後にお伺いしたいと思います。
  117. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 最初の物価に対する御見解に対しましては私も全く同感でございまして、大いに努力をいたしたいと思っております。また、至らざるところがございましたら、どうか御指摘をいただきたい。われわれも努力をしたいと思っております。  次に、一般消費税でございますが、一応五十五年度中に実施するということを閣議決定いたしておりまして、この方針についてはいまこれを変更するところまでいっておりません。しかし、一般消費税を発表して以来、きわめて大多数の国民各層から、その問題そのものについていろいろな御議論が出ておるわけでございます。しかし一方、今日までの財政支出の非常に膨大な支出を続けてきたために起こっている国家財政そのものの赤字化と申しましょうか、そういう実態についてもいろいろと御理解が深まりつつあるのではないかと思うわけであります。結局国の財政が、きわめて危険な状態にあるという認識がまず一義的に大事なことでありますし、それをまたどうやって埋め合わせをしていくかという方法論につきましては、先般来言われているように、一般消費税という形がいいのか、そうでない方がいいのか、あるいはさらに、一般消費税の取り扱い方はどうしたらいいのか。私はやはりそうした問題は国民各層の間でもっともっと議論がされてしかるべきだというふうに考えます。  いずれにいたしましても、五十四年度にはこれを実施する考えはないんでございまして、五十五年度中にということでございまして、まだ時間も相当ありますし、またその間に日本経済実態がさらにわれわれの企図しておるような形で底がたく拡充し成長するということになれば、当然そこには税収入の増大も考えられるわけでありますから、こうしたことも一つの方法でございましょう。しかし、基本的に申しますと、こうした一般消費税という形であれ何であれ、増税によって国の財政の赤字を国民の側から埋めていただくということのためには、やはり、現在政府のやっておりますいろいろな仕事のしぶりだとか、あるいはまた現在ありまするたとえば財政的に負担を大変に強いられている国鉄にしろ、あるいは米の問題にしろ、健康保険の問題にしろいろいろな問題がございますが、そのほかもろもろの政府支出そのもの、あるいは補助金、そうしたものをさらに厳粛にこれを見直して、そしてその中から幾らかでも節約をして、そしてこれだけ政府としては節約をいたしますということを国民にお示しして、それならばこの程度のことはどうかというような問題になって考えていただくというような方法をとるべきではないかと思っておりまして、現状におきましては、こうした国民の各層の御意見をいわゆるこだわることなくひとつ御発言を願い、それに対してわれわれも十分考え、そしてまたわれわれがなすべきことは、ぜひ今年から来年にかけてはっきりとした方針を打ち出しながら、さらに国の財政を健全化するということに取り組んでまいりたい、そのように考えております。
  118. 木島則夫

    ○木島則夫君 公定歩合の引き上げに伴ういろいろの問題につきましては、もうすでに同僚委員からも質疑が交わされております。しかし、これは経済の非常に基本にかかわる問題でございますので、あえて重複をさせていただきたいと思います。  十七日から公定歩合が〇・七五%引き上げられたわけでございますが、同時に預貯金金利とか長期の金利も全面的に引き上げられるわけでございます。これは石油ショック後の不況から脱出するために、四年にわたって緩和型を続けてきたわが国の金融政策というものが、緩やかな引き締め型に切りかわることを意味するわけで、わが国経済はいまや一つの転換点にさしかかったと、こういう認識を持ってもいいと思うわけです。  そこで、長官にお伺いをしたいわけでございますけれども、今回日銀公定歩合の引き上げに踏み切るに至った点について、物価をあずかる立場にいらっしゃる大臣としては、これをどういうふうに御評価をなさるか、簡潔で結構でございます。
  119. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 先般来、私らが非常に心配しておりましたことは、卸売物価上昇でありました。この卸売物価上昇というものが、やはりこれは海外要因その他によって起こっていることはわかるわけでありますが、しかしこれに便乗したり、あるいはまたそうした卸売物価高という一種の数量景気と申すよりも価格景気方向に進んでは大変だという考えがありました。したがいまして、前々から日銀当局に対して、われわれは一つ考えとして金融はできるだけしぼる方向でいってくれ。経済の方の底がためはだんだんとかたまっておるから多少不急不要、あるいは先行投資的な思惑的なものがある場合には、それは相当締めてくれても日本経済の実態は大変前向きにうまく進んでいると思うということを申しておったわけであります。  しかし、その後日銀当局が金融面から見て、やはり相当にインフレ心理が進んだという判断に立ったということでありまして、私としましてもそうしたことがインフレ心理を抑えるならば、相当に大量な水をかけなきゃだめだろう。しかし、その大量な水をかけるということは、やっとここで芽が出てきた日本経済回復を大変足を引っ張ることになるといけないので、その点についての配慮を求めたわけでございまして、私は結論的に申し上げますと、この時期に〇・七五程度公定歩合を引き上げるということは妥当な線ではなかったか。またこれが全般として見て、インフレマインドにはやはりある程度の歯どめがかかったのではないか。むしろ、これに基づくある程度の不要不急の資金に対しての規制をさらに続けてもらうということとともに、公定歩合が上がったことによってわれわれが従来やっておりました物価対策をさらに一段と強いものにして推し進める。いろいろな相乗効果があるものだと判断をいたしておりまして、妥当と考えます。
  120. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は今回のこの公定歩合の引き上げというものが、物価円安と国債の暴落の三方をにらんだものだ。こういうふうに考えるわけでございますけれども、政府としては、やはりいま長官からもお話がございましたように、先行きの物価上昇を警戒した予防的な引き締めを旗印に挙げられたようでございます。しかし、私は今回の引き上げにつきましては、何か国債に引きずられる形で上げ幅がやや大き目になったのではないかという感じも否めないわけでございます。  いま長官はお答えの中で、〇・七五%というものが妥当なものであるというその裏づけをされたわけでございますけれども、もう一度お聞きをいたします。この〇・七五%という数値自体についてはどうでございましょうか。
  121. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私、現時点において〇・七五というものは決して過大でも過小でもない。むしろ〇・五程度であれば、さらにもう一段金利上げがあるだろうということ。あるいは一%になりますとこれはシャワーみたいに冷やす効果になるだろうというふうに考えておりまして、〇・七五はやや強目だが、しかしいい効果が出るんじゃないかと思っております。
  122. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは、ある民間の調査機関の数字でございます。これから申し上げる数字はその前提となる条件をここで細かくは申し上げませんけれども、ただある民間の調査機関によりますとという前提だけにさしていただきます。それによりますと、物価卸売物価消費者物価とも五十四年度五・八%程度になると見込まれ、その金融引き締めによる抑制効果は望めず、五十五年度も同様で、むしろ金利の引き上げがあった場合の方が上昇幅が若干大きくなりそうだという予測もしているわけでございます。これは、いまの物価上昇の主な原因が先ほどから論じられておりますように、海外要因にあるので、これに利上げによるいろんなコストの上昇が加わるためであると、こう分析をしているわけでございますが、この点、経企庁としては今回の公定歩合の引き上げが今後の卸売物価、また消費者物価に与える影響をどのように予測をしていらっしゃるか。この点についても、簡潔に具体的に触れていただきたいと思います。
  123. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 今回の公定歩合の引き上げ、いま大臣が申し上げましたように、現在の卸売物価上昇が非常に続いている中で、これからのインフレ心理を断ち切ると、そういうことによって上昇のテンポを抑えていこうということにねらいが、いわば予防的な対策であるわけでございます。そういうことでございまして、モデル的にモデルの面からある程度大まかな推定を置きまして計算いたしますと、卸売物価は〇・〇三%程度消費者物価にはそれほど影響がないという結果が出ております。いまおっしゃいました民間の調査機関におきましては、むしろ公定歩合の引き上げがあれば金融コストが上がって物価を押し上げるのではないかという推計をされているようでございますけれども、一般的に申し上げまして、やはり金利を引き上げるということは何らかの形で、それは仮需でありましょうとも実需でありましょうとも、そういうものに影響していく場合には、やはり引き上げというよりは価格を抑えるとか引き下げるという方向にいくと見るのが普通ではないかと考えております。
  124. 木島則夫

    ○木島則夫君 今回の公定歩合の引き上げについては、各方面からその効果についていろいろその問題が指摘をされている、提出をされている。これはもう当然のことであろうと思います。たとえば卸売価格高騰の原因には、これは国際商品の高騰と円安による輸入品全般の高騰があって、これは多かれ少なかれイラン動乱後の石油の高騰が原因であって、日本独自の金利政策をもってしても、これはなかなか制御できない独立要因であるんじゃないかというように指摘をしているところもございます。事実、金利の引き上げが行われた後も円安傾向は一向に改善をされる兆しが見られないというようなこともございますのですけれども、これについては経企庁長官としてはどういうふうにお受けとめになっておいででございましょうか。
  125. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私は、この程度の金利を公定歩合を上げたことによって、いまの円安傾向がすぐ円高に転換するということはまずなかろうと予測をしておりました。  それからもう一つは、非常に皮肉なことでありますが、世界市場において前回円高になっていったときは日本政府が何か政策を発表するたびに一段ずつ上がっていったということでありまして、これはちょっと市場心理でありますからどうにもわれわれ予測のつかないことでありますが、恐らく今度も必ず逆張りをしてくるだろうと思っておって、したがいまして、これがすぐ円高にならないで円安になって、そしてある時期にまたこれが円高になるというようなことを繰り返すが、大体二百十円とか二百円をへそにして、上下あるのではないかというふうに予測しております。しかし、円安ということになった原因は、もちろん日本経常収支等が大変改善されているという事実も裏にございますので、そうしたことを評価されて円安になるというようなことで、非常に逆々に出ておりますが、しかし、こうした動向はやはり一応われわれは冷静に受けとめながら、結論的に言うならば、やはり二百円がらみのところをねらうという政策的考慮をいたしましても、というのは少し言葉が強いのでありますが、その辺のところをねらっていくというふうに考えたらいいのではないかというふうに考えます。
  126. 木島則夫

    ○木島則夫君 今回の〇・七五%の引き上げについての各方面からの批判とか疑問点を細かく挙げると、これは切りがありませんし、いま私一点取り上げたわけでございますが、この公定歩合の引き上げを中心とする金融政策だけで物価を抑え込むには、これはもう当然限界があるわけです。無理をして大幅な引き締めをすれば、それこそ冷やし過ぎになってしまう。さっき長官ももう一%が上積みをされた場合にはという危惧のお言葉もございました。目下のところ仮需の動きが出て値上がりの目立っているものは、これはもう石油製品、化学製品、非鉄金属などでございますけれども、こういうものについては便乗値上げの自粛の指導であるとか、増産の指導などの個別対策を徹底をさせる。さらに、財政面からも、必要に応じまして公共事業の執行繰り延べなどの手を打つこともこれは当然必要になってくるのではないかと考えるわけでございます。景気への打撃を小さくしながら物価を抑え込むには、これはもう金融政策ばかりではとてもできないわけでございまして、金融政策ばかりにとらわれずに、幾つかの対策を組み合わせた総合対策でやっていくしか方法がない。これはごくごくあたりまえなことでございます。  そこで、きょうは物価局長もここにおいででございます。私が一番危惧をしておりますのは、インフレマインドというか便乗値上げ、こういったものに対して、やはり経企庁が機動的に対処をしていかなければいけない、こういうことも含めていま言った総合対策の組み合わせでこういうものに抜かりのないようにお願いをしたい。この点についてひとつお答えをいただきたい。
  127. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いま木島委員の仰せられたことがわれわれがいま志向している物価対策でございまして、その方向に従って十分努力をいたしたい。金利の問題なども、いわゆる二月の二十六日に決めました総合物価対策の一環でございます、言うなれば。そのときに、これはM2とだけ出ておりますけれども、金融の問題、それから土地の問題ございます、そうしたようなことを全部踏まえての発想がここに具体的に一つ出てきたというわけでございますが、もちろんこれだけでどうにもなるものではないので、おっしゃるように、便乗値上げ等につきましては厳格に今後対処してまいりたいと思っております。
  128. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 二月二十六日の対策の最初に掲げてございますけれども、生活必需物資とかそれから国民経済上重要な物資、こういうものにつきましては、価格や需給の動向監視していく、そして必要に応じて供給の増加を図って価格の安定を図るというようなことを念頭に置きまして、いろいろな対策をやってきているわけでございます。その中ではカルテルの整理もあるわけでございまして、カルテルは当時六つありましたのがいま一つになっている。それからOPEC値上げに応じましての石油製品価格については、特に便乗値上げの防止という観点を強く打ち出す必要がありますので、これにつきましては通産省の方で関係団体に要請をしております。便乗値上げの防止の要請とか、不当な売り惜しみの行為、そういうようなものがないような要請もしておりますし、個別の企業について価格の引き上げを打ち出すときに内容をチェックするということもいたしておりますし、末端での小売価格も毎週調査するということになっておりまして、こういう形での便乗値上げ監視というものは今後とも一層強めていくということで現在やっているところでございます。
  129. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) いま御質問の一つ、私御答弁申し上げなかった公共事業の問題ですが、これはもう非常にわれわれも重視をしておる点でございまして、今回上半期十月までの契約富を大体六五%、多くても七〇%程度でいこうではないか。前内閣のように前倒しをして非常にドライブをかけていくということはしないということで、公共投資に対しましても執行をなるべく緩やかな線で持っていこう、これは物価対策景気の過熱を防ごう、こういうねらいでございます。
  130. 木島則夫

    ○木島則夫君 OPECの原油の値上げに伴う諸物価への影響ということも御質問申し上げたいのですけれども、これはもう同僚委員が数々の具体例をもって指摘をされておりますので、私は、この問題は大事な問題であるという御指摘を申し上げて、割愛をいたします。  今回の公定歩合の引き上げに対しましては、物価高騰に対する抑制効果よりも逆にその促進効果を持っているという指摘をすらする向きがございます。これは極端な議論かもしれません。もちろん私は、今回の措置がインフレに対する予防効果をもたらすことを願っておるわけでございますけれど、同時に、近い将来において公定歩合の再引き上げという、景気との絡み合いでこれ抜き差しならない問題が起こることを一番心配するわけでございます。公定歩合の再引き上げが不可避となるような事態を招来をさせないための経済企画庁長官としての物価安定に取り組む姿勢と申しますか、決意のほどをここで御披瀝をいただきたい、こういうふうに申し上げたいと思います。
  131. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 再引き上げをしなければならぬような状態にはしてはならないということで万般に気を配りたいし、また物価政策というものは決め手があるものではございません、したがいまして、政府としてできることは早目早目に対策を小まめに打つしかない。そしてまた特に重要なことは物価の情報でございまして、きょうももう大変各委員から有益な情報の提供をいただきました。私は、こういうようないただいた情報を大切にいたしまして、すぐあすからでも行動をしていくということで、早目早目に手を打つということが最も大事なことであるというふうに考えております。原則的、基本的な考え方につきましては、もうすでに木島委員の御質問そのものの中でおっしゃったとおりでございます。
  132. 木島則夫

    ○木島則夫君 そこで、物価対策八項目をお出しになっております。その物価対策の四番目に、「生活必需物資の安定的供給と価格の安定を図る」という項目がございます。小坂大臣が経企庁長官におなりになる前から、この物価委員会ではしつこく私は牛肉の問題を取り上げてきたわけでございます。私がなぜきょう牛肉を一つ物価のシンボルとして取り上げたかと申しますと、何というか、都市の立場から、消費者の立場からこの問題の議論がわりあいになされていなかったという点で、細かいことはこれからずっとフォローして後日の委員会に譲るといたしまして、きょうはひとつ牛肉に対する長官の基本的な感触を伺いたいとこう思っているわけでございます。とにかくやっぱり高いですね、これはもう高い。私どもが生活をしていて一番高いのは何かと言われると、牛肉。世界主要都市の中で、肉というのは比較的安いですね。ところが日本では、牛肉というのはべらぼうに高い。じゃ日本でわりあいに買いやすいものは何か、こういう比較を端的にするのは恐縮でございますけれど、そうですね、比較的買いやすいものはむしろ自動車とか衣料であるというような指摘すら行われているわけでございます。  長官、どうでしょうか、感触として、やっぱり牛肉はとてもじゃないけど高いと。たとえばステーキを御自分が召し上がるときに、まず、これは高いなという感触で召し上がるのか。召し上がるときには物価はもうこっちへ置いておいて、ああおいしなと召し上がるのか。ちょっと個人的にわたって恐縮でございますけれど、ひとつ感触をまず聞かしていただいて、それから私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。
  133. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 国民の物価に対する不満とか世論調査をしましても、物価がやっぱりナンバーワンであります、関心度が。これは何かというと、結局、ほかのものはともかくとして、食料費が高い。その食料費の中の圧倒的なものは牛肉が商い。最近はもう牛肉は食えないのであきらめて豚と鳥にしましたと言う主婦の方に会うたんびに、これがまずいんだというふうに私はしみじみ思っておりまして、牛肉を下げることができれば百グラム十円でも五円でもいいから下げてくれということをいつも叫んでおるわけでありますが、こうしたことが実現するならばいわゆる政府発表の消費者物価指数に対しても、ずっといまよりも信頼感をいただけるというふうにさえ思っておるわけでございます。
  134. 木島則夫

    ○木島則夫君 私も、農業政策の基本である畜産物の国内自給、これに向かって努力をしていく、こういう制度、体制というものを否定するものではございません。しかし、何としてもやはり高い、否めない。物価問題のシンボルとして牛肉が出てくるというところに私は問題がある。そしてこの問題を農林省に伺っても、もうガードがかたくて、のれんに腕押しというか、一向に反応は返ってこない。そこで、都市出身の議員でもあり大臣でもある小坂長官に伺えば相当なアプローチがきょうはされるんではないかという、こういう期待のもとに私は御質問を申し上げたわけでございます。  まあ長官もよく御承知のように、こんなことは私が御説明するまでもございません。たとえば、オーストラリアから入ってくるチルドビーフですね、こういうもののCIF、国内到着価格をとってみましても買い入れ価格一キログラム四百円から五百円ぐらいのものだろうと思いますね。それが関税と輸入諸経費と商社の手数料を入れても一キロ二百円くらい。そしてもう一つ輸入調整金、畜産振興事業団が一キログラムに対して六百円の差益金を取っております。こういうものを合算をしましても千二、三百円どまりになるわけですね。じゃ、これがそのまま即いわゆる小売り値段に結びつくかというと、この世界の流通機構、流通の複雑さがありましてどうにも私には理解できない段階を通りながら、小売りに結びついたときにはもう千円くらい一キロそこに上積みをされてつまり消費者に渡されると、こういうことであります。非常にむずかしい。私は四十二万の畜産農家をショックに陥れたり大きく揺るがすようなことをいますぐやれと言っているんではございません。将来に可能性が本当にあるのかどうかということですね。もう一つこの問題とうらはらな問題は、いわゆる牛が食べる飼料、これも九〇%以上外国から輸入をしている。だからこの問題とも関連をする。こういうことにつながってくるわけでございます。  どうでしょうか、長官物価対策四項目のいま「生活必需物資の安定的供給と価格の安定を図る」という項目の中で、「牛肉については、国産牛肉の安定供給、需給事情に即した適切な輸入及び売渡しに努めるとともに、輸入差益の活用等により消費者により直接的に結びつく施策の推進を図る。」たくさん問題点を含んでおります。「安定供給」という、長官がお考えになる「安定供給」というものは、いま安定価格帯がございますね。現在のそういう安定価格帯というものが妥当であるのかどうか、もっと安くしてつまり需要を喚起をしながら、たとえば生産者が不足をしているようなところには不足払いというような形で補助をする方法がいいのかどうか。また、畜産振興事業団がいま差益金として六百円取っておりますね。これがたまりにたまって、何か五、六百億ぐらいたまっているようでございますね。これも本当に消費者に結びついた結びつき方というものがどうも私に言わせるとしていないようです。ある新聞の報道によりますと、この資金を使って農家の方の結婚資金にこれが充てられているというので、何か結婚と畜産とどういう関係があるのか私はわからないような、そういう矛盾をすら実は感じてきたわけでございます。  長官いかがでございますか、価格安定、これは価格安定というのは長官がどんなふうにお考えになるのか。それから、いまのような制度を続ける中で、もっともっとおっしゃった十円でも二十円でも安く本当にできるものかどうか。この議論をしておりますと、これはもう大変なんです。きょうは基本的なことだけを伺いたいと思いまして、一体価格安定というものをどういうふうにおとりになるか、まずこの辺からちょっと伺いたいと思います。
  135. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの御質問はまことに具体的な御質問でございますので、ちょっといまわれわれがすでにやっておることについて多少簡単にでございますが、御説明したいと思います。  基本的にはやはり消費者が食べる肉を安くするためには輸入をふやさなきゃならぬ、このことは事実でありまして、この輸入をふやすということについて農林水産大臣は非常に理解を示しまして、この安定対策と同時に五千トンの追加をしてくれました。これでもう大変なこれは思い切った輸入拡大になっております。それから、ことしの四月のMTNの日豪交渉におきまして、五十八年度までに豪州の高級な牛肉を一万四千トン増加するということを決めておりまして、これは繰り上げその他も可能だと思いますが、輸入がですからこのところでこれは一緒に足してしまってはおかしなことになりますが、約二万トンぐらいのものがふえるということをまず前提にいたしております。  それから、いま結婚資金に回っているとおっしゃる差益金でございますが、これを本当に活用しまして、いわゆる販売ルートの整備、それからもう一つは肉の流通ルート、これの改善、これらにこのお金を大いに使ってという方向をすでに決定しております。  それから、いまの五十四年度の、ことしの牛肉の安定価格ですが、これは昨年並みに据え置いたわけです。これで二年間一応国内の牛肉の値段は据え置いたということになりますが、いずれにいたしましてもこのようなことに加えまして、いまわれわれが考えておりますことは、さらに輸入牛肉の値引きを、ぜひ消費者の手にとってわかる形で実現をしようということでいろいろと農林水産大臣と話し合っているところでございますが、農林水産省も非常にこれについては理解を示しておりまして、われわれとしましてはともかく物価安定の柱でございますので、ぜひこの実現を図ってまいりたいと精力的にいま努力をいたしておるところでございます。
  136. 木島則夫

    ○木島則夫君 この問題につきましては、牛肉の問題は物価対策八項目の四項にもきちっと柱を立ててお入れになっていることでございますが、きょうはこの問題に対する長官の基本的なお考えもうかがわれました。大変この問題に関しては大きな関心をお持ちになり、しかもこの問題の前進を図っていこうというそういう前向きの姿勢もうかがえたわけでございます。私どもとしましてもこの問題を研究しておりますので、いずれ私どもの御提案というか、私どもが考えている政策なども御提案をさしていただきながら、この問題の前進を図っていきたい。  きょうは基本的な長官のお考えを伺うにとどめさせていただきまして、なおこの問題に対するひとつ長官のアプローチをお願いを申し上げたい。こういうことで私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  137. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) ちょっと関連して。  さっきからずっと聞いておると、便乗値上げを抑えろ抑えろと皆さんがおっしゃっておるけれども、便乗値上げを抑えるだけの力がいまの政府にまあないとまでは言わぬけれども、実際どう評価していますか。二割ぐらい抑えられるんで、あとの八割ぐらいはとても抑えられないんじゃないかね。どういうふうに——いや、細かくやってちゃんと便乗値上げを抑えて見せるというだけの自信はないんじゃないですか、正直なところ。物価局長どうです。
  138. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) おっしゃいますとおり、いま自由経済のもとで価格が形成されておるわけでございますので、統制経済時代のような決め方というのはできないわけであります。しかし、やはりいまの石油製品のようなことになりますと、石油精製会社というのはそれほど多くないわけです。そういう大もとのところで値上げを、適正なコストを反映する形で行うということになれば、それがさらに末端にもいい影響を与えていくということになるわけでございますので、そういう意味通産省でも、石油精製会社の方で値上げを打ち出すときに内容を聞くというようなこともしているわけでございますし、同時にまた便乗値上げをやらないようにとか、それから不当な売り惜しみ等もやらないようにというようなこともやっているわけでございます。そういう意味で広い意味行政指導でございまして、きちっとした形でないということは事実でございますけれども、現状においてはそういう程度のことで、かなり効果を上げるのではないか。また、政府自身が非常に監視の目を強めていくということが全般に非常にいい影響を与えていくという効果も期待できるのではないかと考えております。
  139. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) もう一つ、さっき日本銀行の東山さんでしたか、今度の公定歩合値上げというものは、国債の消化ということは全然念頭に入れてないんだと、単に物価対策だと言って、盛んに不自然なほど強調されたように私には思えるんで、実際のプロセスに当たった長官はどんなお考えか。
  140. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) この公定歩合の引き上げを、国債の消化をするためにやるというなら、私は反対だと言ったわけです。結局、インフレマインドを予防的にチェックをするというような意味合いでなければならないし、そうした意味での公定歩合の引き上げならばやむを得ないだろうというふうに言ったわけであります。それでございますので、国債消化とは関係ないと、こう言っておりますが、私は、これで結果において国債消化が多少促進されることにはなるのではなかろうというふうに裏返しに考えます。  それから先ほど委員長おっしゃいました便乗値上げというやつは、実は政府は実に膨大な人間を持っております、モニター制その他。それで現在主要物資、重要物資というものをちゃんと決めております。これは前のオイルショックのときから決まっているのでありますが、それについては十分在庫まで把握できる、またしておるわけでございます。この東京でわいわい騒いでも仕方がないんで、むしろ各地における自治体とそれから本省の出先、こうしたところの物価モニターとか担当官とか、そういう諸君が非常に克明にいま歩き始めております。つい最近は、ちょっと大阪へ参りましていろんな人の話を聞きましたら、やっぱりもうけたい気持ちはあると。しかし、政府を相手にもうけるのはまずいと、こういうことですね。やはり政府がやたらにちらつくんで、まあがっぱりやりたいやつを半分にセーブするとか、そういうことは効果は相当あるんじゃなかろうかと、これは少し思い過ぎかもしれませんが。しかし、そういう熱意を非常に持っているということと、一方金融も、そうした思惑に対しては思い切ってしぼって構わぬと言っているわけでありますから、その両々相まって努力をしてみて、まあ四月の状態が、上旬まででございますが、六月までの傾向というものを特段にひとつ注意してまいりたいと思っておりますが、またいろいろと御指導いただきたいと思います。
  141. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) 木島さん、いいですか。
  142. 木島則夫

    ○木島則夫君 はあ、結構でございます。
  143. 夏目忠雄

    委員長夏目忠雄君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会