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1979-03-22 第87回国会 参議院 建設委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月二十二日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員異動  三月二十日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     渡辺  武君  三月二十二日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     伊江 朝雄君      増岡 康治君     田原 武雄君      松本 英一君     宮之原貞光君      渡辺  武君     上田耕一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浜本 万三君     理 事                 土屋 義彦君                 堀内 俊夫君                 増岡 康治君                茜ケ久保重光君     委 員                 伊江 朝雄君                 遠藤  要君                 上條 勝久君                 中村 禎二君                 降矢 敬義君                 最上  進君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 内田 善利君                 桑名 義治君                 二宮 文造君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 栗林 卓司君    国務大臣        建 設 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  中野 四郎君    政府委員        内閣法制局第四        部長       工藤 敦夫君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛施設庁施設        部長       多田 欣二君        国土政務次官   保岡 興治君        国土庁長官官房        長        河野 正三君        国土庁地方振興        局長       佐藤 順一君        法務省人権擁護        局長       鬼塚賢太郎君        厚生省援護局長  河野 義男君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        建設省住宅局参        事官       吉田 公二君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    説明員        経済企画庁物価        局物価管理室長  糠谷 真平君        大蔵省銀行局中        小金融課長    吉居 時哉君        国税庁直税部所        得税課長     小野 博義君        文部省初等中等        教育局審議官   高石 邦男君        厚生省医務局指        導助成課長    瀬田 公和君        農林水産省構造        改善局建設部水        利課長      伊東 久弥君        水産庁振興部振        興課長      岩崎 壽男君        水産庁漁港部計        画課長      福地 辰馬君        通商産業省生活        産業局通商課長  村田 文男君        運輸省港湾局計        画課長      小池  力君        運輸省航空局監        理部監督課長   早川  章君        運輸省航空局飛        行場部計画課長  平井磨磋夫君        気象庁総務部企        画課長      関口 理郎君        気象庁予報部業        務課長      浅田 暢彦君        気象庁観測部地        震課長      渡辺 偉夫君        消防庁予防救急        課長       中島 忠能君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措  置法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○特定市街化区域農地固定資産税課税適正  化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復  興特別措置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (建築物防災対策に関する件)     —————————————
  2. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十日、上田耕一郎君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。  また、本日、松本英一君及び寺下岩蔵君が委員辞任され、その補欠として宮之原貞光君及び伊江朝雄君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 浜本万三

    委員長浜本万三君) まず、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに質疑を終局しておりますので、これより直ちに討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  4. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 総員挙手全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。     —————————————
  6. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに質疑を終局しておりますので、これより直ちに討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 私は日本社会党を代表して、特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対し反対の意を表するものであります。  以下、反対理由を簡潔に申し述べます。  その第一点は、本案の背景となっている農地宅地並み課税問題点についてであります。  都市環境改善災害に対する安全性が叫ばれている現在、都市近郊の緑地の保全、オープンスペース確保は、まさに都市行政課題であります。  わが党は、都市農業を圧迫し、農地の無秩序な開発を進めることとなる宅地並み課税に対し、従来から反対しているところであります。  地方自治体においてもこの制度に対し強い反対が続いており、現在の課税対象都市を見ても、その九五%が条例等で大幅な減額措置を講じている状況であります。  また、この制度に対する政府・自民党の方針も税制改正の都度二転、三転しており、国の施策として、責任ある追跡が果たされていない実情であります。宅地並み課税はこうした問題の中で、骨抜きにされた制度となっており、本案前提条件は事実上崩れていると言っても過言ではないのであります。  第二点は、本案の諸施策の持つ問題点についてであります。  住宅金融公庫貸し付け特例所得税固定資産税不動産取得税軽減等金融税制面優遇策は積極的であります。しかし、これに応じて譲渡された土地宅地化義務建設された賃貸住宅家賃規制等は、法文上何ら規定がなく片手落ちとなっているのが現状であります。  また、宅地並み課税が一〇〇%減額されている地区に対しても、これらの優遇措置が適用されており、施策の上で不均衡、矛盾となっているのであります。  これらは総じて場当たり的、単なる思いつき措置寄せ集めであると言っても過言でありません。政策とは呼び得ないものではないかと考えるのであります。  第三点は、本案の目的と住宅政策都市政策のかかわりについてであります。  本案は、農地宅地化促進のため金融税制面優遇措置を講ずる等、いわゆる場当たり的な対策法であり、農民はこれらの措置を余り受けとめておらず、農地宅地転用が期待をはるかに下回っていることは、審査の過程で明らかとなったところであります。  しかし、仮にこの措置により、宅地化が大きく進んだとしても、近郊農業の取りつぶし、地価の高騰、無秩序な宅地化市街地化促進されるのみであります。このことは計画的、文化的な町づくり勤労者向け住宅対策とならないのみか、むしろこの方向に逆行するおそれすらあると言わざるを得ないのであります。  以上の通り、本案宅地対策の本質を避け、当面を糊塗するもので、いみじくも通称されているように、その場だましあめ法であります。したがって宅地土地問題の根本課題を放置したままで、あめ法特例期限をさらに三年間延長させようとする本改正案には、遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。  以上、反対理由を申し述べ、討論を終わります。
  8. 増岡康治

    増岡康治君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案賛成の意を表明するものであります。  本案は、特定市街化区域農地、すなわち三大都市圏特定の市に所在するA、B農地に対する固定資産税課税適正化措置にあわせて、これら農地宅地化促進するため、特定市街化区域農地所有者等が市に対して土地区画整理事業施行要請をすることができる期限及び特定市街化区域農地所有者等当該農地を転用して中高層の賃貸住宅または分譲住宅建設する場合等における住宅金融公庫貸し付け特例を適用する期限を、昭和五十七年三月三十一日までさらに三年間延長しようとするものであります。  本案延長を図ろうとしております、いわゆる宅地化促進臨時措置法に盛り込まれている住宅金融公庫融資税制上の特例措置等優遇措置は、いわゆる宅地並み課税の実施と相まって、これまで相当の効果を上げてきたところであります。  現下の市街化区域農地宅地化の動向及び大都市圏における宅地需要を勘案いたしますとき、本案は、今国会に提出されている地方税法等の一部を改正する法律案及び今回本委員会に付託された農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案とともに、市街化区域農地宅地化を今後一層促進するための措置として、まことに時宜を得たものと考えられ、本案賛成の意を表するものであります。  以上で討論を終わります。
  9. 渡辺武

    渡辺武君 日本共産党を代表して、特定市街区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。  宅地化促進臨時措置法は、農地だけを宅地供給対象とし、特定市街化区域農地に対する宅地並み課税制度と表裏一体の関係を構成しております。今回の三年延長措置も、宅地並み課税延長措置に対応してとられようとしているものにほかなりません。もし本来の意味で、農業継続が不適切な農地宅地化促進する制度だというのなら、宅地並み課税制度存廃いかんにかかわらず、本法制度が存在しなければなりません。ところが、政府には単独で本法制度を存続させる用意も準備もないのであります。だとすれば、まさに本法案は、大都市とその周辺地域から農業を追い出し、農民土地を吐き出させることをねらいとした宅地並み課税制度補強策としか言いようがなく、ここに反対の第一の理由があります。  反対理由の第二は、大都市とその周辺地域農地は、都市住民に対する新鮮な野菜の供給基地であり、また過密都市生活環境を守る貴重なオープンスペースであり、さらに都市災害防止の重要な役割りを果たしているということから、むしろ保全することこそ必要だからであります。宅地並み課税セットにされた本制度は、都市近郊農業農地現状を無視した宅地化促進策と言わなければなりません。  第三の反対理由は、農業継続の見通しが立たないなどの事態が生じた場合には、農民みずからの意思によって宅地に転用できるのであって、大多数の農民宅地並み課税制度及びこれとセット宅地化促進法を歓迎していないということであります。このことは本法律実績にはっきりあらわれています。委員会審議を通じて明らかになったとおり、要請土地区画整理事業は、本法施行以来一件しかなく、特定分譲住宅に係る住宅金融公庫貸し付け特例及び農住法適用に当たっての水田要件緩和特例も、その実績はゼロであります。そして、今後利用される可能性もほぼ皆無という状況であります。今回改正対象になっているこれらの条項はすでに死文化に等しい実態であり、特に改正延長が必要なものだとは言えないのであります。  本来、宅地供給のため政府が目を向けるべきは、大企業の保有する未利用地の吐き出し、国・公有地有効利用促進住宅公団の抱える遊休地や都道府県の土地開発公社が無計画に先行取得してもてあましている未利用地の活用に有効な施策を講ずることであり、大都市とその周辺地域農地の吐き出しだけに目を向けることは、本末転倒であると言わなければなりません。  以上で反対討論を終わります。
  10. 桑名義治

    桑名義治君 私は、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました政府提案特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表明するものであります。  従来、両党は、特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法については、地方税法における、いわゆる農地宅地並み課税制度との密接な関係性を重視して反対の態度をとってまいりましたが、本法律制定後、住宅金融公庫貸し付け特例による賃貸住宅貸付予約件数は、昭和四十八年度から本年一月末までで五千三十一戸と一応の実績を上げており、また近年、宅地供給量は年々減少し、このままでは、第三期住宅建設五カ年計画に伴う新規住宅需要六万六千ヘクタールの確保は非常に困難であり、特に三大都市圏におきましては、逼迫した宅地需要事情地価の上昇にも拍車をかけているのが現状であります。  このような事態を打開するためには、土地税制改正を初め財政措置金融措置国土利用計画法の効果的運用等総合的な土地対策が講ぜられなければならないことは申すまでもありません。  本法律案は、そのための一つの有効な手法であります。すなわち、固定資産税減額措置長期譲渡所得税軽減措置住宅金融公庫融資特例措置計画的に優良宅地確保するための土地区画整理事業施行等内容としており、宅地化促進のための方策としては、一応評価できるのであります。  また、三大都市圏における当該地域農業従事者方々も本法律案の成立を期待していること等も踏まえて、両党は本法律案賛成の意を表明するものであります。  以上をもちまして討論を終わらせていただきます。
  11. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  特定市街化区域農地固定資産税課税適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  13. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  15. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 内田善利

    内田善利君 私は主として奄美群島関係について質問したいと思います。  奄美群島は、御承知のとおり昭和二十八年十二月、日本復帰し、復興特別措置十年間、さらに振興特別措置十年間、さらに振興開発特別措置五年間、合計二十五年間特別措置が行われてきたわけでございます。ところが、実態についてはいまだに生活保護率全国平均の約五倍、所得水準も依然として低位にございます。それから市町村自主財源も二〇%未満、地方税の収入も六・二%程度、財政力指数も〇・二五、昭和五十年度は〇・一でございました。全国平均の五分の一であった。こういうことで、事業量がふえても消化能力がないというようなこともありまして、このように二十五年間特別措置によって、なおさらに自立できないという実態にあるわけですが、特別措置という特別とは一体何であったのか、特別という名に値する措置であったのかどうか疑わざるを得ないのでございます。こういった点から次の三点についてまず御質問したいと思いますが、このような実態から奄美振興実態をどのように国土庁は把握しておられるかどうか、これが第一点。第二点は、さらに五年延長をせざるを得なかった理由はどこにあると受けとめられておるか。第三点は、二十五年間の国費投入額は八百八十六億円になります。これは私の計算でございますが、奄美実態はさきに申し上げましたような状態でございますが、多額の事業を持ってきても補助率が低いので町村にその能力がない。今日までの状態は生かさず殺さずのやり方であったんじゃないかと私は思うんですが、せめて沖繩並みにやるべきじゃないか、今回の改正に当たって補助率のあり方についてどう考えてなされたか、この三点についてまずお伺いしたいと思います。
  17. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) お答え申し上げます。  まず奄美群島に対する特別措置——復興振興振興開発というものの意味するところはどういうものであったかというのが第一点の御質問でございますが、仰せのございましたとおり、奄美群島復帰後二十五年に相なるわけでございますが、何分にも復帰のときの状況というものは非常に厳しいものがございまして、住民方々生活水準、それからまた、もろもろ施設水準も非常に低位にあったことは否めないわけでございます。そこで、復興措置十年は何を目標にしたかと申しますと、まず戦前の本土並み水準まで引き上げることを目標にしたいということで設けられたのが復興特別措置でございました。十年を経まして、諸種の施策が投下、投入されました結果といたしまして、相応の成果は上がったわけでございますが、本土もまたいろいろと一大進展を見せているわけでございますので、その間、なお施設水準におきましても、所得水準におきましても問題がある、厳しいものがあるということからいたしまして、次なる十年、すなわち振興特別措置は、鹿児島県の本土並み水準目標にいたしたいということを目標振興特別措置が行われたわけでございます。そして、十年を経まして、さらに諸施策が投じられたわけでございますが、その結果におきましても、なお問題は残っている、厳しい状況が残っているということからいたしまして、次なる五年間は振興開発特別措置というものが行われたわけでございますが、この際には内地本土並み水準目標にいたしたいということで、振興開発特別措置が行われたということでございます。つまり、それぞれの段階の特別措置の意義と申しますか、目標といたしたところはそういった点でございます。  それから、そのように二十五年間の特別措置が行われたものの、水準の向上という点においてなお問題がある。つまり計画の目指すところがなかなか達成できない理由は何か、こういうお尋ねでございますが、これは非常に本土から隔絶をいたしました外海離島にありますという特殊事情、それからさらに台風常襲地帯にある。こういう地理的、自然的な悪条件というものがございまして、せっかくその持てる特性あるいはまた発展可能性というものについて、これを十分に発揮することができなかったということが二十五年間経ましたけれども、依然として本土との間に水準において格差を残しておる、こういうことの原因ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  それから、この間における国費投入額についての試算をなさいました数字を仰せがございましたけれども、これにつきましては、昭和四十九年度から本年度までの事業を見てまいりまする場合に、事業費にいたしまして約九百四十六億円、国費にいたしまして約六百七十九億円という事業が投入されていると私どもでは試算をいたしている次第でございます。  そこで、そのような特別措置をとってまいったわけでございますけれども、依然として奄美の置かれている状況には厳しいものがある、なお本土との間に水準において格差があるということからいたしまして、今回お願いをいたしております法改正による延長措置をお願いしているわけでございますが、最後のお尋ねは、今度の制度改正に当たってはどのような措置をとったのか、それで十分かというお尋ねでございますが、基本的には、体制と申しますか、考え方を従前の体制を引き続き踏襲するわけでございますけれども、たとえば、事業補助率につきましては、仰せございましたように、沖繩並みの補助率にしてほしいという地元の御要望もございまして、私どももまたそれを必要と考えるところがございまして、そこで幾つか御要望あったわけでございますけれども、主として農業基盤整備という面に重点を置きまして、これは地元市町村や、さらには農民方々に負担を伴う性質の事業でございますので、この面に着目をいたしましてここに重点的に補助率引き上げを行おうということで、畑地帯総合土地改良事業、それから団体営農道整備事業団体営農地開発事業ため池等整備事業、これには大規模も小規模もあるわけでございますが、こういつたような事業につきまして、補助率アップをいたしました。このうち畑地帯総合土地改良事業団体営農地開発事業につきましては、沖繩並みの補助率に相なったわけでございます。さらに新規補助制度といたしまして、港湾施設用地とか、サンゴ礁排除とか、あるいは地区センターと、こういつたようなものについて新規補助制度を採用いたしますとともに、さらに冒頭申しました畑地帯総合土地改良事業につきましては、奄美特性にかんがみまして、採択基準緩和を行う、こういったようなもろもろ措置を盛り込んだ次第でございます。こういったことで、新しい五年を迎えるに当たりまして、こういったような内容も盛り込みまして一段と目標の実現に近づけたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  18. 内田善利

    内田善利君 いま三番目の答弁がありましたように、農業基盤整備重点を置かれて沖繩並みにしていただいたということは、これは地元の方でも非常に喜んでおります。しかし、他の事業についてはまだまだ、補助率が沖繩並みになるように努力していただきたい。というのは、最初に申し上げましたように、非常に財政力が弱いということで、裏負担に対する起債とか、交付金の傾斜配分等によって特別の財政援助をするとか、そういった措置を配慮していただきたい、このように思うわけです。  それから次に、昭和四十九年三月二十七日、前回の法改正時に参議院の地方行政委員会で附帯決議をしているわけですが、この第一項に、初めは読みませんが、「社会、経済の発展に対応する事業量確保し、関係各省庁間の連繋を密にして、」とありますが、この事業量についてはどのように確保をしてきたかという問題ですね。それから、五年延長することによって国土庁目標をどこに置いているのか。事業量をどのように見込んでおるかということになると思いますが、本土並み生活環境生活水準確保できるかどうかという問題。それから、「関係各省庁間の連繋を密にして、」とあるわけですが、私はいつもこうして質問するときに困るのは、国土庁が執行面も——自治省のときのように執行する体制計画の一体性を確保してきているということであれば非常にやりやすいんですけれども、細かい問題になりますと各省庁に御迷惑をおかけしているわけですが、そして大事な問題はなかなか的確な御回答がいただけないということで、何回も私はこういう質問をするときに限って苦渋するわけですけれども、こういった点について計画の一体性、執行面の一体性ということをどのようにお考えになっているのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  19. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 二点お尋ねの中の、延長後の計画の骨子及び想定している事業量を明確にする方からまずお答えを申し上げます。  特別措置延長後の奄美群島振興開発計画の改定は、まず鹿児島知事が計画案を作成して内閣総理大臣にこれを提出し、内閣総理大臣は審議会の議を経て計画を決定することになっております。すべてはここから作業ということになるんですが、したがって今後五カ年間に必要な考えられる事業量について現時点で見込みを立てることは非常に困難なことだと思います。今後五カ年間の方向といたしましては、奄美群島特性発展可能性を生かしながら本土との諸格差の是正を目標に、一つは快適で住みよい生活環境確保、それから二つの特性を生かした産業の振興、それから三つは均衡のとれた地域社会の発展のこの三本の柱を計画基本方向として奄美群島振興開発を進めていきたいと考えておる次第であります。  第二点でありまする前回の法改正時の附帯決議で、「事業量確保し、」とあるが、どのように確保してきたのか、また五カ年延長本土並み生活環境水準等が確保できるかというお尋ねについてお答えをいたします。  昭和四十九年度から今年度まで、交通基盤整備、社会基盤整備、それから産業振興を中心に事業費を約九百四十六億円、その中で国費が約六百七十九億円で、これをもって振興開発事業を実施してきたところであります。今後の五カ年におきましても、本土との諸格差の是正を目標奄美群島振興開発を一段と進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  20. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 事業量確保の問題については、ただいま大臣から基本的にはお答えがあったとおりでございますけれども、若干実際どのような点に事業が集中的に行われたかということについて御説明をさせていただきたいと存じます。  昭和四十九年以降の振興開発事業におきます成果の中で主なものを挙げてみますと、まず第一に、交通基盤の整備につきましては、たとえば定期船の寄港港湾につきましては、現在就航中の船舶が安全に接岸できることというものを当面の目標といたしたわけでございますが、各港とも厳密に申しますと、与論港だけが暫定接岸でございますが、各港とも安全接岸が実現するようになったわけでございます。また道路について申し上げてみますと、昭和四十八年度末におきまして県道改良率五八・八%、舗装率四八・九%でございましたものを、五十二年度末におきます国道、県道の改良率は六九・二%、舗装率が七五・三%というふうに進んでまいっております。また空港を例にとりますと、与論空港が五十一年の五月に開港いたしまして、これによりまして各島に空港が建設されたことに相なるわけでございます。特に徳之島空港は五十五年度にジェット機の就航ができるようにこれを目標に整備を進めている状況でございます。  二番目に、社会基盤の整備を例に挙げて御説明してみますと、民間のテレビ放送につきまして基幹中継局が完成をいたしまして、これで各島におきまして民間テレビの視聴が可能になっております。また保健衛生を例にとりますと、屎尿処理施設を名瀬市、瀬戸内町に、ごみ処理施設を名瀬市、瀬戸内町及び和泊町に整備をいたしました。五十一年度からは名瀬市におきまして下水道事業も着手されている状況でございます。  三番目に、産業基盤整備でございますが、農業につきましては、サトウキビを基幹とする農業振興を図りますとともに、畑地帯総合土地改良事業とか、農道整備、水田転換特別対策事業重点的に農業基盤の整備、開発に努めておるところでございます。林業につきましては森林生産量の増大を図るために造林事業、林道事業を実施いたしました。また水産業につきましては漁港の整備といたしまして、大熊とか早町とか知名、小湊漁港の修築事業その他各漁港の改修事業、さらには十二の一種漁港についての局部改良事業を実施いたしますとともに周辺の海域におきます漁業資源の調査などを実施いたしております。さらに大島つむぎにつきまして品質向上を図るための技術者養成施設二カ所、共同利用施設五カ所を整備するといったようなことを努力いたしております。もう一つ観光開発について申し上げますと、亜熱帯性観光資源の開発利用のために観光地帯整備五カ所、路傍植栽を大島本島につきまして実施いたしております。こういった事業などによりまして群島の住民方々生活水準、群島におきます施設整備の水準はかなりの向上を示しているんではなかろうかと思うわけでございます。  それからもう一つお尋ねございまして、「関係各省庁間の連繋を密にし」という附帯決議、これはどのように実現されているかというお尋ねでございますが、最近におきましては予算はその大部分が国土庁に一括計上されました後関係各省庁に移しかえて実施されると、こういう方式をとっているわけでございますが、このことによりまして概算要求の段階におきましても、予算編成の段階におきましても、それから実施の段階におきましても関係各省庁と十分協議し、非常に大きな理解と協力を得ながら進めておる次第でございます。さらに関係各省庁の職員の方々で構成しております奄美群島振興開発審議会の幹事会におきましても意見交換等を行いまして、連携と調節を図っているところでございます。
  21. 内田善利

    内田善利君 次に、三全総と本法延長問題についてお聞きしたいと思いますが、三全総では定住構想を推進する中で、その実現のために離島の各地域の居住環境の整備が当然必要になってくると思いますが、離島というよりも外海離島という立場の奄美群島についてどのように三全総の中で位置づけておられるのか、そして今後の方針をお伺いしたいと思います。  それともう一つは、奄美では老齢化、過疎化が進行しておりますが、三全総の活力ある地域社会の形成という目標から見れば、奄美振興開発計画内容もそうした問題を是正し、対応し得るような内容でなければならないと、このように思うんですが、五年延長してどのように対応していかれるのか。
  22. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 三全総における奄美の位置づけ及び今後の方針についてお答えを申し上げます。  三全総においては離島の総合的振興を図るとともに、奄美大島については同地域の特殊な事情にかんがみまして、その振興について所要の処置を講ずることとしておるところであります。今後とも積極的にその振興に努めていきたいと考えておりまするが、第二のお尋ねに対してさらに追加してお答えを申し上げますが、今回の制度改正に当たりましては奄美群島現状、それから特別措置の経緯等を十分に勘案いたしまして、奄美群島振興開発を強力に推進し得るように各般の面について充実強化をしたところでありまして、地元の要望にもこたえ、前進した措置を講ずるように今後措置していきたいと考えておる次第でございます。
  23. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 第二点のことについて一つだけつけ加えをさしていただきたいた思います。  法改正後の振興開発計画の改定は、先ほど大臣からお答えがありましたとおり、まず鹿児島県知事が計画案を作成いたしまして提出をし、内閣総理大臣がこれを検討し、審議会にも付議してその上で決定をするということに相なっておるわけでございますが、こういった過程を通じまして、ただいま御指摘のありましたような現状とその問題点につきましても十分対応してまいることができるような計画内容になりますように努力をしてまいりたいと考えております。
  24. 内田善利

    内田善利君 次に、奄美群島振興開発基金についてお伺いしますが、今回は保証業務に対して、昭和三十一年度の二千五百万出資以降二十三年ぶりに二千万ですか、国が出資するわけですが、いままで出資しなくて二十三年ぶりに追加するその理由、そして今後保証業務が増加した場合に新たに国の出資はあり得るのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  25. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) この問題につきましては、地元方々の非常に長年にわたる御要望であったわけでございます。今回昭和五十四年度の予算編成に当たりまして、近年におきます奄美群島における保証需要の増大に対処いたしますため、また基金の経営基盤を強化する必要もある、こういう点に着目をいたしまして新たに国が追加出資することになったわけでございます。さらにこれが誘い水になりまして他の機関からの出資もさらに一段と増大するものと考えております。  そこで、今後の問題でございますが、今後の出資につきましても、保証業務の状況などを十分勘案いたしまして、その時点に立って検討をしてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  26. 内田善利

    内田善利君 ぜひそうしていただきたいと思いますが、次に、大島つむぎの問題について質問します。  韓国産の大島つむぎの国内流入の問題についてでございますが、大島つむぎは鹿児島県の産業としても、また奄美群島における産業としても命の綱みたいな重要な産業でございます。したがって、伝産法の指定を受けておるわけでございますが、近年の韓国産大島つむぎの国内流入や、また不況に伴う需要の低迷で市場は著しく混乱をしております。販売コストも採算ラインを割ろうとしている現状でございますが、政府の努力によって観光客の持ち込み反数が三反まで制限される等の措置も講じておるわけでございますが、私がここで質問したいのは、第一番目に、日本政府と韓国政府の二国間の協定が決められたわけですけれども、韓国つむぎの生産反数は守られているかどうか、複雑な経路で流入している量がかなり大きいと、そのように聞いておりますが、その生産反数が守られておるかどうか、その実態をお伺いしたいと思います。  それから二番目は、これはどうかと思いますが、韓国政府に対して二国間協定の数量を厳守するように政府としては強力に要請すべきではないかと、このように思いますが、この点はどうなのか。原産地表示を厳守するということを伝産法の中に明記すべきであると思いますが、この点はどうなのか。  それから三番目に、他のつむぎ製品と区別するため、大島つむぎには特別ビザを設け、入管のチェックをするよう厳しく関税率の引き上げ等地元では要求しておりますが、この点についてはどのように検討されておるのか。  この三点と、最後に、新しい情勢として香港経由で中国に大島つむぎの類似品が進出する動きがあるように聞いておりますが、これはどのように把握しておられるのか。高度成長で人件費が高騰し輸入規制が強化されつつある韓国から中国へと目が向けられる可能性が十分あり得ると、このように鹿児島あるいは地元業界では警戒をしておりますが、この点についてどのように考え対策を講ぜられるのか。  この四点についてお伺いしたいと思いますが、通産省いいですか。
  27. 村田文男

    説明員(村田文男君) お答え申し上げます。  日韓協定では、御案内のように千五十五万平米の絹織物全体といたしまして輸入量が決められております。大島つむぎにつきましては、内枠といたしまして三万六千五百反の輸入枠が設定されております。韓国政府から月々報告がございますが、それによりますと、月間平均いたしまして三千反でございまして、基本的に守られているというふうに理解しておるわけでございます。ただ韓国の生産量等から見まして、それ以上のものが入っているんではないかというような意見が業界の万からございますので、目下私どもといたしましては韓国の生産状況の調査等を進めておるところでございます。  以上第一点でございますが、第二点の伝産法の改正によりまして韓国産の表示というものを義務づけるべきであるというような御意見についてでございますけれども、昨年の二国間協定の交渉の際に韓国政府との間におきましてつむぎ類につきまして韓国産である旨の表示を両端に表示をする、かつそれを平畳みという形で通関時に明確にチェックできるという方式を韓国政府との間で了解を取りつけました。現在それが実施されております。完全に実施されておるかどうかは、まだ始まったばかりでございますので、一〇〇%実施されておるかにつきましては目下われわれ税関当局に調査を依頼しておりますが、そういう二国間の取り決めといいますか、これを厳格に実施させることによりまして十分対処できるというふうに考えております。  それから、特別ビザの問題でございますが、これは昨年以来の日韓交渉の懸案事項でございます。昨年も私ども特別ビザを大島つむぎについてつけることを要求いたしましたけれども、技術的理由その他により韓国とついに了解に達することができませんでした。したがいまして、今後もその辺の技術的な問題を詰めることによりまして、次期以降の日韓交渉におきまして強力に要求いたしたい、こういうふうに考えております。  それから、香港経由で中国で大島つむぎを生産するといううわさがございます。私どもいろいろ調べておりますが、現段階ではうわさの段階にとどまっております。輸入実績といたしましても、この種のものは一切ございません。ただ、将来の影響を考えますと確かに重要な問題でございますので、われわれ情勢の把握に十分努めまして、業界の指導等遺憾なきを期したいと考えております。  以上お答え申し上げます。
  28. 内田善利

    内田善利君 時間の関係で次にまた入りますが、運輸省にお伺いしたいと思います。  まず、港湾関係についてお伺いしたいと思いますが、これまでの奄美の港湾は五千トン級の定期船の接岸を目標に整備を進めてきたわけですけれども、名瀬港を除きますと、防波堤あるいは泊地もない裸港であるわけですが、これからは全天候型の港湾の整備を図り、特に裏港の整備を急ぐべきであると思いますが、五カ年計画ではどのような目標で進めていかれるのか。一昨年、台風のときに私も災害対策特別委員会から一緒に参りましたが、十日間ぐらい救援物資が陸揚げできなかったと、こういう実態にありますが、もうこれが陸揚げできるのかどうか、一昨年同様の台風がやってきた場合に大丈夫なのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
  29. 小池力

    説明員(小池力君) お答え申し上げます。  奄美群島におきます定期船対策の港湾整備のお尋ねがございました。奄美群島、先ほど国土庁からのお答えがございましたとおり、離島でございますので、定期船対策といたしましての港湾整備、従来から鋭意進めてきたところでございます。特に御指摘がございました海洋条件と申しますか、気象海象条件によりまして定期船が入れない場合の方はどうかというようなことがございまして、従来からこういった奄美群島といったようなところでございますと、通年的に一年じゅう利用可能な港湾をつくるということはなかなかむずかしゅうございます。気象海象条件に合わせまして十分な防波堤整備といったものを考えているわけではございますが、やはり冬季とそれから夏季とでは海象条件の差がございますので、中核港湾といったもののほかに補完港、裏港——御質問にございました裏港でございますが、補完港をあわせまして整備するというやり方をとっております。いわゆる一島に二ないし三港主義というような考え方でその整備を進めているところでございます。一昨年の台風に伴います沖永良部の和泊港でございますが、ちょうど台風の余波がございまして、御指摘のとおり船が入らないというような事態がございました。この台風時期を外しますと、沖永良部の和泊港は定期船が常時寄港し得る港でございます。  なお、御指摘のございました沖永良部におきます裏港の整備につきましても、現在港湾管理者でございます鹿児島県が計画を検討しておりますので、運輸省といたしましても来年度予算以降積極的にその整備を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  30. 内田善利

    内田善利君 一昨年のような台風が来た場合には大丈夫かどうかお聞きしたわけですが、その点については管理者の鹿児島県が計画中ということで、まだできないというふうに私は判断しますが、ようございますね。  次に、空港関係についてお伺いしますが、新奄美空港が昨年から調査が行われているわけですが、この本格的な着工はいつになるのか、そして完成はいつごろになるのか、まず第一点お伺いしたいと思います。  第二は、これは名瀬空港から鹿児島空港経由で東京行きの場合に通し割引運賃制度があるわけですね。ところが、全日空と東亜国内航空との両社間の取り決めがなされてないために、両社の路線にまたがって来る場合には割引運賃制度がないわけですね。ですから、利用者の立場に立ってどの路線をとっても割引運賃制があるようにすべきだと、このように思うんですが、この点はどうお考えか。  それから、なお、他の離島の空港から上京する場合はそういう割引制度がないという現状、この点についてどのようにお考えあるいは検討されておるのかお伺いしたいと思います。
  31. 平井磨磋夫

    説明員平井磨磋夫君) お答え申し上げます。ただいまの第一点の奄美の空港の整備についてまずお答え申し上げます。  奄美の新空港につきましては、ただいま実施いたしております第三次空港整備五カ年計画の中で着手をしたいというふうに基本的には考えておるわけでございます。目下設置管理者でございます県におきまして、適地の選定あるいは地元の調整ということをおやりになっておるという段階でございます。私どもといたしましては、県の方針の固まるのを待ちまして、なるべく早急に着手してまいりたいと考えておる次第でございます。着手の時期が明確になっておりませんので、完成の期日等はまだ未確定でございます。  以上でございます。
  32. 早川章

    説明員(早川章君) 先生御質問の第二点及び第三点について説明申し上げます。  まず、第二点の名瀬から鹿児島経由東京に来る場合でございますが、これは通し運賃制と呼んでおりますが、この運賃のある種の低額な運賃制度は、実は自分の会社の路線があるところについてだけ認めるのが原則的な考え方でございます。したがいまして、現在でも名瀬から東京に参ります場合に、いずれも全日空なら全日空、あるいは東亜国内航空なら東亜国内航空を利用する場合には、いずれも通し運賃によって利用して来ることができると、あるいはこちらから行くことができると考えております。ただし、現実の姿といたしまして東京−鹿児島間は全日空が非常にたくさんの輸送力を提供しておりますのに対しまして、鹿児島−奄美間がもっぱら東亜国内航空と、主として東亜国内航空の輸送力が提供されておるものでございますから、非常に利用しにくいということは間違いない事実だと思っております。非常に原則的なところから先に申し上げますと、自分の会社の路線同士をつなぐということで、通し運賃ができますために東京から沖永良部、東京−喜界島、徳之島等のものにつきましては東亜国内航空を利用する場合にしか通し運賃が利用できない。こういう実態になっておりまして、全日空で鹿児島まで参りまして、そこから先を、TDAしかこれは路線ございませんが、東亜国内航空に乗っていく場合には通し運賃が出てこない、こういう実態になっています。ただし、いまの航空法上の運賃の考え方からまいりますと、むしろ原則は別々のそれぞれの運賃を合わせた運賃、合算運賃と申しておりますが、それによらざるを得ないという基本的なたてまえであろうかと考えます。ただし、実際にある高い運賃と安い運賃とがそこに併存いたしてございまして、しかも利用者の方が非常に利用しにくい形で存在しているということについてはわれわれも問題が多いと考えておりまして、前々から各方面からの御指摘もございますので、これの解消方については現在関係事業者を含めて検討をいたしておるところでございます。もうしばらく時間をかしていただいて、何とか御不便のない形で整備いたしたいと考えております。  以上です。
  33. 内田善利

    内田善利君 もうしばらくということですが、およそのめどはどのぐらいか、それから他の離島についても。
  34. 早川章

    説明員(早川章君) この通し運賃制の問題につきましては、実は非常に問題が、利用者の方から非常に不便であるということでございますので、実は当初はTDAの東京−鹿児島線の免許の時点までに何とか考え方を整理すべきであろうということで勉強した経緯がございます。しかし現時点まで、現在までまだ結論を得るに至っておりません。その間には関係各社のいろいろな考え方の相違がございまして、調整がまだできてないという面がございますが、私ども計画といたしましてはある形の運賃全体の見直しを現在いろいろ各方面から迫られておりますが、そういうものの一環としてこれを行うということでございます。  もう一つの方……
  35. 内田善利

    内田善利君 めど、めどだよ。しばらくというめど。
  36. 早川章

    説明員(早川章君) めどというのは具体的には非常にむずかしゅうございますが、現在航空運賃そのものにつきましていろいろと制度の面につきまして種々問題がございますので、それの一環として可及的速やかに検討をするということでございます。
  37. 内田善利

    内田善利君 名瀬空港からだけではなくて、他の離島から上京する場合には全然ないわけですが、この点はどうか。
  38. 早川章

    説明員(早川章君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、東亜国内航空を利用して——両方ともでございますけれども、向こうの奄美関係から鹿児島まで及び鹿児島から東京まで利用いたします場合には、現在のところ通し運賃制度の適用は可能でございまして、現在も設定されています。
  39. 内田善利

    内田善利君 それじゃあ次、気象庁関係をお伺いしたいと思いますが、こうして各省庁に聞かなきゃならないことで非常に委員長にも御迷惑をかけておりますし、各省庁にも御迷惑をかけておりますが、できたら国土庁の地方振興局長で答弁いただきたいなと、このように思うんですね。  気象庁にお伺いしますが、台風常襲地帯にある名瀬測候所について、私は奄美は特別な外海離島ということで、奄美を一つの県に準ずる考え方から名瀬測候所を気象台に昇格すべきであると、このようにかねてお願いしておるわけですが、そういうことはなかなかむずかしいようでございますが、名瀬測候所の人員不足はどのように解消されたか、この点をお伺いしたいと思います。  それから、二番目に実質的な強化、この点をどのように対応されてきているかどうか。  それから三番目には予警報一斉伝達装置というものができるようにお伺いしておりますが、大変効果のある伝達方式と考えますが、この整備完了のめどはいつごろになるのか。今回も予想される台風に対して時間的に問に合うのかどうか、その完成が。  四番目に、気象衛星「ひまわり」の受信装置はもう運用していると思いますが、どのように役立っているか。  この四点についてお伺いしたいと思います。
  40. 浅田暢彦

    説明員(浅田暢彦君) 先生のただいまの御質問にお答えいたします。  まず一点の、人員不足につきましての質問につきましては、昭和五十四年度に予報官二名を増員する予定でございます。  第二点の実質的な強化はどうなっているかということにつきましては、昭和五十四年度におきまして、先ほど先生がおっしゃいましたような予警報一斉伝達装置を設置すること。それから、その近くの気象状態を把握するための地域気象観測網のリアルタイムに近いデータを集める宅内装置を設置すること。これらを設備的に設置する予定になっております。なお、人員不足の件でも申し上げましたように、最も必要なのは予警報の伝達を常に監視をしておりまして、的確迅速に情報を図るというための予報官が必要でございますので、二名の増員を予定しているわけでございます。そのほか、昨年度——五十三年には気象衛星の打ち上げに伴いまして「ひまわり」の受信装置を名瀬の測候所に台風シーズン以前に設置いたしまして、作動して大きな効果を上げております。これは台風が近づきましたり、異常気象が起こりましたときはスリーアワリーの雲の画像が受信されるわけでありまして、これはすでに名瀬の測候所にございます気象レーダーの観測とあわせて、きわめて効果的な実績を示しております。  それから、第三点の予警報一斉伝達装置とは何かという御質問でございますが、これは従来はいままで一対一で防災機関と気象庁の間は電話によって情報の交換、注警報の伝達をしておりましたのが、今度は一対多数という防災機関を相手に一斉に呼び出しまして、有線回線で回送することができますので、きわめて短時間に効果的な情報が伝えられるということになります。なお、これは計画でございますので、予算の成立を見ましたら、なるべく早く発注いたしまして、台風シーズンに間に合うように努力したいと考えております。  第四点「ひまわり」衛星でございますが、「ひまわり」衛星の受信の作業は、先ほども若干触れましたように、異常気象時にはスリーアワリーに観測いたしまして、的確な情報、離島という非常に観測点が少ない海域を含む全体の担当区域の監視に十分に役立っております。これは昨年の台風シーズンからすでに実施をして運用に効果を上げているということは先ほど申し上げました。  以上でございます。
  41. 内田善利

    内田善利君 では水産庁にお伺いします。  二百海里時代に入ったわけですが、奄美近海は非常に好漁場に恵まれて有望な沿岸漁場だと聞いておりますが、漁港の整備、船だまりの基盤整備、それから流通体制の整備、確立、こういうものを促進すべきだと思いますが、奄美特性を生かした水産業の振興を図るべきだと思いますが、特にお聞きしたいことは、大型漁船の建設ということがなかなかできにくいように聞いております。したがいまして、漁船の大型化に向けての漁船建造資金対策でございますが、奄美は漁協が非常に弱体でございますので、漁業近代化資金あるいは農林漁業金融公庫の資金、こういうものが利用できないわけですね。したがいまして、奄美振興開発基金の漁船の建造資金も限度額が低いというようなことで十分な利用ができない。そういう状態でございますが、この奄美振興開発基金の限度額の引き上げ、あるいは借り入れ条件の緩和などを図るべきだと思いますが、この点はどうなのかお聞きしたいと思います。  それからもう一つは、奄美には水産試験機関が一つもないわけですね。せっかくあった県の試験場が撤廃された。こういうことでございますが、二百海里時代に入っているわけですから、国立の水産試験研究機関をつくるべきだと思いますが、この点はどうなのか。保岡政務次官もお見えになっておりますが、ひとつひっくるめて、またいままでの質問を通してどのようにお考えか、あわせて御答弁いただければ幸いだと思います。  以上で私の質問を終わります。
  42. 岩崎壽男

    説明員(岩崎壽男君) 先生の御指摘のございましたように、奄美群島周辺ではカツオでありますとか、あるいはトビウオでありますとか、あるいは地先のイセエビでありますとか、そういった漁業が行われておるわけでございまして、二百海里体制というような現状のもとでやはり奄美の自然条件に合ったような漁業、沿岸漁業の振興を図るということが今後の重要な課題であると考えておりますし、その中におきまして漁港の整備でありますとか、あるいは製氷冷蔵施設の整備でありますとか、そういった一連の整備を進めていく所存でございますが、なお先生御指摘のございましたように、現在奄美群島の漁船というのは一トン未満の漁船が比較的多いということで、やはり三トンなり五トンなりというような形での漁船の近代化を図っていく必要があるというふうには考えておるわけでございますが、この点につきましては主として融資措置ということで、従来から奄美開発基金からの融資が主体であったわけでございますが、最近におきましては漁業近代化資金の活用あるいは五十二年度から沿岸漁業構造改善事業が出発しておりますので、農林漁業金融公庫におきます構造改善資金の活用といったような面で今後漁船の近代化のための資金、制度金融の面で対処をしてまいりたいというように考えておるわけでございます。  なお、国の研究機関がないというようなお話でございますが、現在国の水産研究所関係は全国を八つのブロックに分けまして、それぞれのブロックにおきます全体的な研究をそれぞれ実施をしておるということでございまして、現在九州——長崎に西海区の水産研究所というのがございまして、各県におきますいろいろ水産試験場等とタイアップして、そういった海域の研究を進めている。また今後もそういう形で進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  43. 保岡興治

    政府委員(保岡興治君) 内田先生いつも奄美のことについては御熱心にお力添えをいただいて心から感謝を申し上げているところでありますけれども、いま先生御質問の水産振興、これは奄美大島の所得水準を上げるためにも非常に大事で、いままではどちらかというと先生御指摘のように、非常にその振興策がおくれていた分野だと思います。そういうことで、昨年だったと思いますが、奄美群島地域の、南西諸島地域の漁業の振興可能性、企業として成り立つにはどうしたらいいかという問題点などを把握するために県と国の方で調査などもいたしまして、またそういう結果を踏まえて県のいろいろな検討を基礎に国土庁としても十分それに対応する施策を講じていくつもりでおりますし、なお先生御指摘の融資の点についても開発基金等において漁船の融資対象の枠を広げたり規模を拡大したり、あるいは条件もソフトなものにするために利子補給を考えたりするなど、従前もいたしておりますし、来年度でも相応の改正をするつもりでおります。今後地元の漁業のこれらの施策の充実と相まって、試験施設やその他研究施設等、なお必要であればその状況に応じて考えていかなければならないものと考えておるところであります。  以上です。
  44. 二宮文造

    ○二宮文造君 関係各省庁からそれぞれ御出席をいただきまして本当にありがとうございました。お礼申し上げておきます。  私は冒頭に、この法律案の体裁についてお伺いしたいんですが、いま提案されていますのは、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案、こうなっております。考えて見ますと、全く地域の違う二つの地域を一本の法律案でまとめるというこの体裁ですね、これは私、先例は余りないんじゃないかと、こう思うんですが、ちょっとこれ、体裁としてよくないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  45. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 奄美群島振興開発特別措置法小笠原諸島復興特別措置法はいずれも類似した経緯と実情にある地域に対する特別措置法であることが第一であります。二法とも有効期限が到来するのでこれを延長しようとするものであることと、そういう理由からこの改正を一本の法律で行おうとするものでありますが、法案の内容においてはそれぞれ地域の特有な課題に対応する努力をしたつもりでありますのですが、なお今後このようなケースについて、提案の仕方についてどのようにする考えかというお尋ねでありまするが、政府としては、そのときそのときの事情を勘案して、慎重かつ適切に対処するようにしたいと考えておる次第でございます。
  46. 二宮文造

    ○二宮文造君 次の問題まで御答弁いただいたんですが、無理しているんです、このまとめるというやり方が。たとえば、大臣、国土庁の国土六法、これ見ますと——あけてください。目次「あ」の部分には「奄美群島振興開発特別措置法」と、こう出ているわけです。及び何々は抜けています。ですから、これは国土庁監修といいながら正確な法律案の表現ではございません。——目次です。本来ならば忠実に言うならば、及び小笠原諸島というのが入らなければいけないでしょう。それから、私は七八年のを持っていますけれども、大臣、七九年かもわかりません。ページ数が違うかもわかりませんが、七八年の分では千七百七十二ページは「奄美群島振興開発特別措置法」と、単独の法案を並べています。同じく今度は千七百八十六ページには「小笠原諸島復興特別措置法」、まとめて提案をしておきながら、国土庁監修の六法の中には単独の法案のような表現をしているわけでしょう。ですから、これはもともと無理なやつを一本にした。将来のことを考えてみますと、やはりその到来期限が一緒だということではなくて、御都合主義ではなくて、やはり単独の法案として提案されることが法律の体裁を整えるんではないかと、こう私は思うんですが、この点、いかがですか。
  47. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 確かに仰せのとおり、奄美群島振興開発特別措置法とそれから小笠原諸島復興特別措置法はそれぞれ別個の法律でございますので、仰せのとおり六法全書におきましても別のところに載っていることは私どもは承知しておるところでございますが、ただいま大臣から申し上げましたとおり、いずれも特定の地域の特別の助成措置を決めた法律であるという点において相類似しているものがあるということと、たまたま今回有効期限が到来いたしまして延長する、その他いろいろとございますが、そういったような共通点に着目をいたしまして、それぞれの法律ではございますが、その改正案につきましては一本化させていただいた。こういう次第でございます。
  48. 二宮文造

    ○二宮文造君 とにかく無理していることは御承知でしょう。だって、もう一つ言いましょうか。もう時間が余りないんですが、たとえばその附則のところを見ましても、(経過措置)第五十三条というのはきわめて不明確な——いいですか、時間がないんでもったいないんですがね、千七百七十八ページには、その一番下の段で(経過措置)第五十三条、「この法律施行の際現にこの法律による改正前の〔中略〕」として「奄美群島」何々と奄美の方では表現するわけです。よろしいですかページ数違う。
  49. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ちょっと……
  50. 二宮文造

    ○二宮文造君 ああそう。まあいいや。もうそちらの方がよくわかっているんですから。  それから小笠原諸島の分では、(経過措置)の第五十三条ですね。「この法律施行の際現にこの法律による改正前の〔中略〕」と、こういう表現をして「小笠原」と、とにかく五十三条をぶち切って両方に説明をしなきゃならぬような、そういう体裁をとっているわけです。おわかりですか、質問の意味は。ですから一本にまとめたからずいぶん無理しているというわけです。今回の改正案も一本である。前があるわけですよ、前がある。前を受けているわけですね。ですけれども、将来のことを考えたら当然これは単独の一つ一つのそれぞれの法律案として提案をされることがいいんではないかと、こう申し上げているんであって、この点の御答弁がないわけです。
  51. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 御指摘のとおりその方向が好ましいと存じますが、まあ今後におきましては十分そのケースのあり方について考えまして、そのときどきの事情を勘案して慎重かつ適切に対処するようにしたいと思っております。
  52. 二宮文造

    ○二宮文造君 大臣の意のあるところ了とします。  奄美につきましては、いま内田委員から質問ございましたので、私は小笠原に限らしていただきたい、こう思います。  まず、この小笠原諸島、この範囲はどういうことになっているのか、さらにまた島の数は幾つあるか、戦前人が住んでいた島はどこか。この点についてお伺いしたい。
  53. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) まず第一に、小笠原諸島の範囲でございますが、これは小笠原諸島復興特別措置法第二条に定義がございまして、そこにありますとおり、「孀婦岩の南の南方諸島」、すなわち「小笠原群島、西之島及び火山列島」、これと「並びに沖の鳥島及び南鳥島」と、以上であるわけでございます。  それから、二番目のお尋ねの小笠原諸島の島の数でございますが、父島列島九つ、母島列島九つ、智島列島六つ、火山列島四つ、その他が西之島、南鳥島、沖の鳥島の三つでございまして、合計いたしますと三十一でございます。そのほかそれぞれに対しまして付属島が二百十七ございます。合計二百四十八でございます。  それから、三番目にこれらの島々のうち戦前に人が住んでいた島はどうかというお尋ねでございますが、これは父島、母島、硫黄島及び北硫黄島、以上四つでございます。
  54. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、その戦前人が住んでおりましたいまおっしゃった四つの島、父島、母島、硫黄島、北硫黄島、この四島のうちで四十五年七月三十一日に閣議了解されましたいわゆる当初計画、それから四十九年六月十八日に閣議了解をされました現行の改定十カ年計画、このそれぞれの中において帰島及び復興計画対象になっている島はどこですか。
  55. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 当初の復興計画及び改定復興計画におきまして当面帰島及び復興計画対象とされております島は父島及び母島でございます。
  56. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから硫黄島についてはどうなっていますか。
  57. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 硫黄島については、この計画の中に、帰島及び復興計画の中に入っておりません。これは不発弾の処理及び遺骨収集の状況との関連におきまして復興の方途を検討するという取り扱いとなっております。
  58. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと、北硫黄島はこの硫黄島の中に含まれるんですか。
  59. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 北硫黄島は硫黄島と別個の島と考えておりますので、この中には含まれておりません。
  60. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと、父島、母島については、いわゆる帰島及び復興計画はあれすると。それから硫黄島については、先ほどの不発弾の処理とか遺骨収集の状況の関連ということで復興の方途を検討すると、こうですね。そうすると、戦前人が住んでいた北硫黄島については全然ノータッチですか、これはどうするんですか。
  61. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 北硫黄島に戦前住民方々が生活を営んでおられたということは承知しているわけでございますけれども、現行の復興計画におきましては、北硫黄島はその計画の中でその他の小島嶼といたしまして当面は自然保護地域といたしまして保護をすると、こういうことになっているわけでございます。
  62. 二宮文造

    ○二宮文造君 大臣にお伺いしますがね、戦前硫黄島、北硫黄島には人が住んでいたわけです。いわゆる強制命令によりまして、疎開命令によって本土に引き揚げられたわけですね。そして念願かなって本土復帰になったと、米軍から日本復帰になったと。そうしますと、ここには北硫黄島にもそれから硫黄島にも民間地があるはずですね。自分の土地がある。ですから帰りたい。これは人情ですよね。ところが政府の方で遺骨の収集だとか不発弾の処理がまだだからということでもう今日まで全然ないわけですよね。しかもその帰島もかなわないというような状況になっているし、復興計画対象からも外されているというようなことは、ちょっと関係方々からしますと非常に政府が冷たいということで、これは人情論になりましょう。人情論的に大臣の率直な所感を承っておきたいと思うんですがね。人情味豊かな大臣ですから恐らく………。(笑声)
  63. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 全く仰せのとおり御同情申し上げる以外にないという一言に尽きることですが、問題の焦点は、この旧島民の方々が帰島したいというお気持ちは十分にお察しはできるんです。しかし、一つ問題点がありますのは、火山活動によって地盤が隆起しておる。ちょうど昨年の八月に実施した調査に引き続いて活発な地盤変化が起こりつつあるということも一つ大きな要因であります。それから、お話のような不発弾がたくさんあるということ、こういうような問題についても今後最善を尽くさなきゃならぬことでありまするから、まあでき得るだけ慎重な対応をしつつ御要望にこたえるような道を開いていかなきゃならない。こういう考え方でおるわけであります。
  64. 二宮文造

    ○二宮文造君 いま大臣おっしゃった件についてはまた後ほど具体的にいろいろ問題点を挙げてお伺いしたいと思っております。ただ、いま総括的な問題でお伺いしているわけですが、さて、このいま提案されていますいわゆる振興計画のもとで硫黄島とか北硫黄島の帰島及び復興計画の策定推進ということは、これは検討に値するんですかしないんですか。もう全くこのこれから扱っていく振興計画の中でも硫黄島、北硫黄島というのは途外して考えられるんですか、それともそれらを勘案しながら進められていくのか、この点はいかがですか。
  65. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 率直に申し上げます。  勘案しながら大いに検討をする、また検討に値するものであると考えておる次第であります。
  66. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから、わざわざ復興計画から振興計画に今度は肩がわりするわけですね。これはいろいろ、たとえば新集落の整備だとか、新島民の導入とか、土地利用計画の見直しとか、産業の振興及び観光の開発と、こういうような柱を立てていらっしゃいますが、振興計画にしないとこういうものは組めないんですか。どうも私は奄美の例にならって、十年間復興計画をやってきたから奄美のように今度は振興に変えるんだと、振興に変えるんですか。ですから、今度は奄美振興開発特別措置法に変わりますね。そうすると、五年たったらまた奄美の後を迫っかけて中身が変わっていく。何だか体裁を奄美にとって後を追っかけているようなかっこうになるんですが、これはどうなんですか。
  67. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 復興計画の十年を終わりましてぜひ振興段階に入りたいと。つまり、一定のところまでのレベルアップということだけで満足することなく、さらに一段と振興ということに進みたいと、これが実はやはり地元方々にとっても非常に熱望であったわけでございます。そこで、今回ちょうど復興十年を経ましたところで振興段階に移りたいということで来たわけでございまして、決して形式や体裁のみを追っているつもりではございません。まさに振興段階に進むべく第一条の目的規定におきまして、小笠原諸島におきます基礎条件の整備と、それから地理的自然的特性に即したところの小笠原諸島の振興を図りまして、そうして住民方々の生活の安定と福祉の向上に期することを目的としたいということで、一段と振興段階に進むということを目的規定でも明示しますとともに、第三条におきます振興計画における策定事項につきましても、それにふさわしい計画を立てるように文言を追加していると、こういうことであるわけでございます。
  68. 二宮文造

    ○二宮文造君 私はこれから硫黄島、北硫黄島に限って質問しますので、そのおつもりで御答弁をちょうだいしたいと思います。  私は、御承知のように、昨年の十月の十四日に、福田総理にあてて十四項目にわたる質問主意書を出しまして、福田総理名で回答をいただいております。また、ことしの参議院の代表質問でも、大平総理にその見解を伺っておりますし、またわが党の上林議員も昨年の十月の十九日に、参議院の地方行政委員会でこの問題を取り上げております。ただ、いずれも答弁が、私にしてみますと不十分、不明確な点が非常に多いものですから、そういうものを踏まえながらこれから質疑をさしていただきたいと思うわけです。  それで、硫黄島はもう御承知のように、第二次世界大戦のいわゆる戦禍の地ですね。そして昭和十九年、米軍の攻撃でとにかく玉砕、二万人の方がお亡くなりになったと、将兵がお亡くなりになったと。また地元の方も、軍に協力をした方がとうとい命を犠牲にされたと、こういう悲しい思い出のあるところですけれども、北硫黄島も硫黄島の北方七十四キロですか、にありまして、水が豊富なことで知られていたと、こういうふうにも伺っておりますが、戦前の硫黄島村、それから北硫黄島村、この概況はどうなっておりましたか、戦前です。
  69. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 戦前、昭和十九年の四月現在におきます状況を申し上げてみますと、人口につきましては硫黄島の方は二百十六世帯一千百六十四人、北硫黄島の方は十七世帯九十人でございました。また産業について見ますと、硫黄島は農業及び漁業を主としておりまして、若干の商業も営まれておったわけでございます。北硫黄島の方は農業及び漁業のみであるわけでございます。  なお、そのころの生産高、生産額はどうであったかということにつきましては資料がやや古いわけでございますが、昭和十四年現在につきまして金額も昭和十四年の時点での額でございますが、農業におきましては薬用の植物につきまして二百九十六トン、四万円、蔬菜類につきまして百三トン一万一千円、さらに果実類などがあるわけでございます。  さらに漁業について見ますと、ムロアジとかサワラなど魚介類の水揚げ高が百二十四トンで一万三千円、その他に水産加工品などもあるわけでございます。  次に生活環境について申し上げてみますと、水は天水に依存しておりました。電力は自家発電によっておったということでございます。  次に交通の利便についてでございますが、昭和十五年当時の状況で見まして、父島経由で東京と硫黄島間に年六航海があったということでございます。  以上でございます。
  70. 二宮文造

    ○二宮文造君 北硫黄島。
  71. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 交通のところ以外は、全部北硫黄島も一緒に申し上げたつもりでございます。最後に申し上げた交通以外のところは、全部北硫黄島も一緒にお答え申し上げたつもりでございます。
  72. 二宮文造

    ○二宮文造君 そう。  いま御説明いただいたように、戦前は硫黄島並びに北硫黄島はそれぞれいわゆる何といいますか、独立したといいますか、生活に見合った、そういう生活態様を備えていたわけですね。それからこれもう古い年次であれですが、硫黄島の場合は官有地が山林が千二百六十一町九反三畝二歩、民有地が、畑地が五百四十六町八反七畝七歩、山林が百九十八町五反八畝二十四歩、原野が二十七町五反六畝二十一歩、その他一町九反一畝十歩と、こういうふうに官有地、民有地がそれぞれ混在をして、りっぱに一つの生活態様を整えていたということはお認めになりますね。
  73. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 当時におきまして、住民方々がそれぞれなりに生活を営んでおられたことは承知をいたしております。
  74. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから北硫黄島を分けて申し上げてみますと、私の持っている資料では北硫黄島の場合は、島民が疎開までは七十有余名、戸数は二十数戸あったと、こういうふうに記録されて、これもやはり同じく生活の態様を整えておったとこういうふうに理解しますが、さてこの硫黄島、北硫黄島のこれらの方々が、軍の命令で強制疎開を余儀なくされたわけですけれども、その命令年月日はいつですか、これは国の方針でしょう。
  75. 河野義男

    政府委員河野義男君) 厚生省は陸海軍の残務を引き継いでいる関係上資料が場合によってありますが、軍の命令につきましては、記録文書等は当局に残されておりませんので、いつ引き揚げとか疎開について命令あるいは勧告が出されたか、その辺は定かではございません。
  76. 二宮文造

    ○二宮文造君 定かではない。
  77. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 月日まではわかりませんけれども昭和十九年に本土に引き揚げられたというふうに理解しております。
  78. 二宮文造

    ○二宮文造君 だからそれは自発的に引き揚げたんですか、命令疎開なんですか、その点です。
  79. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) これは強制疎開であるようでございます。
  80. 二宮文造

    ○二宮文造君 あるようでございますなんて、強制——言い方変えてくださいよ。強制疎開でしょう、あるようではないんでしょう。
  81. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 私どもは記録によって承知する以外ないわけでございますが、強制疎開であったように記録で承知しております。
  82. 二宮文造

    ○二宮文造君 要するに国の方針ということは確認できたわけです。  それで、硫黄島、北硫黄島がいわば御承知のように戦後アメリカに占領されておりましたね、これが四十三年六月二十六日に返還されました。日本復帰した。東京都の小笠原村に属することになった。強制疎開の解除の行政指導というのはされているんですか、されてないんですか。
  83. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) これについては私ども確たることがわからないわけでございますが、疎開の解除ということは、事実上終戦後におきましていわば全国的に行われたものというふうに考えるべきではなかろうかと考えております。
  84. 二宮文造

    ○二宮文造君 命令のしっぱなしで、戦争が済んだからそれは解除になったと、後は国民の方の御自由でございますと、こういうことですか。
  85. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 後は、決して御自由ということではございませんで、たまたまいま話題になっておりますこの両島につきましては、一方では長いこと米国の施政下に置かれておりましたこと、さらに本土復帰後におきましても先ほど来大臣も申し上げましたような実情がございまして、実際上帰島が実現できていない状況である。こういうふうに考えるわけでございます。
  86. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと、強制疎開で本土へ引き揚げた。戦争が済んだ、だから強制疎開は解除になった、自然にね、解除になった。ところが問題の、その硫黄島、北硫黄島については帰島及び復興計画というのが実施されてない——外されているわけです。そうすると、帰島が可能になるまでは、関係住民の方はいまだ強制疎開中というようなことにならざるを得ないんじゃないでしょうか。外されているんですから、帰島の条件かなってないわけでしょう。出されたっきり帰ろうにも帰れない。とすると、この関係の方はやはり強制疎開というのが現状まで続いていると、こう理解せざるを得ないんですが、どうですか。それもまた国の方で強制疎開は解除しましたぞと、こういう措置があったなら別として、その措置もない。この硫黄島、北硫黄島の関係住民の立場というのは、いま今日どうなっておりますか。
  87. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 先ほど申しましたように、終戦により事実上疎開が解除されている状況と解すべきではなかろうかと思うわけでございますが、そうはなっておりましても、客観的に帰島困難な実情にあるということであると思います。  硫黄島につきましては、先ほど大臣が申されましたような事情があり、また北硫黄島につきましても、やはりかつてそこに皆さん方が生活をされたのは、硫黄島自体に一千人以上の方々が住んでおられた。そういうことからしまして、七十四キロ離れました北硫黄島にもまた、昭和十九年時点で約九十人でございますか、あるいは先生のお調べによれば七十余人、そういう人が居住することができたと思うんでございます。しかし、硫黄島の方に現在帰島ができない状況、したがって、人の住めない状況ということになりますと、北硫黄島におきましてもやはり人が居住することが困難である、あわせまして、帰島することができない状況、こういうふうに思うわけでございます。
  88. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) これ、二宮先生、行政上の処置はできておるんです。
  89. 二宮文造

    ○二宮文造君 どういうふうに。
  90. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) たとえば、四十三年の四月五日に小笠原返還の協定調印ができておりますね。同時にこれ、六月二十六日返還が実施されますと同時に、小笠原村を設置いたしまして、東京都の小笠原支庁の所管としてすでに行政上の措置は、そういうようなたてまえはとっておるわけであります。まあ現実の問題は、いま局長が答弁したような事実関係によるものでありましょうけれども
  91. 二宮文造

    ○二宮文造君 私伺いたいのは、十九年に強制疎開をされたと、それでやむを得ず本土へ引き揚げられた。ところが、復帰にはなったけれども政府の方がいろいろな条件を加えて、復興計画にも手をつけない。要するに、住める状態政府が手助けをしてないわけです。したがいまして、戦前にこれだけの、千名を超える方が住んでいた硫黄島ないしは北硫黄島も含めて、帰れないわけでしょう。ですから、この帰れない人の立場というのは強制疎開が続いていると、こう見ざるを得ないじゃないですかと、こういうことです。いかがですか。——帰島できないんですもの。
  92. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 何と申しますか、実情から表現いたしますと先生のような表現に相なるかと思われるわけでありますけれども、やはり政府といたしまして申し上げる場合には、現在強制疎開中とまでは申しませんで、疎開中ではないが、帰島できない状況である。こうしか申し上げる……
  93. 二宮文造

    ○二宮文造君 物の言い方を考えて、へたに口をきくとまた後で損するような言い方ですから、それは了解します。実情として帰れない。ですから、強制疎開の立場にやむを得ず置かれている。それだけ気の毒な立場にあるという認識がほしかったわけです。補償の問題とか何とかに絡めていくわけじゃないんですけれども。  それで、四十五年のいわゆる当初計画、ここでは硫黄島についての帰島及び復興計画は——もう時間がありませんから私言いますが、この場合は「不発弾の処理および遺骨収集の状況との関連において復興の方途を検討する。」、これが四十五年です。ところが今度は、四十九年の閣議了解の場合は、一項加わりまして、硫黄島については「不発弾処理及び火山活動についての安全性の確認を前提とし、遺骨の処理状況を考慮しつつ、開発可能性を検討する。」、ここで「火山活動」というのが四十九年には加わったわけです。これは一つ、私は非常に重要な問題だと思うんです。それで、これを提起しておきまして、「不発弾の処理および遺骨収集の状況」と、こうなっておりますが——最初の分ですね、四十五年の分、現在推定の残存遺骨の数、あるいはその分布状況、こういうのはどうなっておりますか そっちかな、援護局かな。
  94. 河野義男

    政府委員河野義男君) 硫黄島におきます遺骨の状況は、過去九回遺骨収集を行いまして、約四千九百柱持ち帰っておりますが、現在残っておる遺骨は大体ごうの中にあるというふうに考えられておりまして、ごうの遺骨を収集するためにはいろいろなむずかしい問題もございますが、何せごうの中でございますので、残存遺骨数が幾らと、正確な推計は困難かと思いますが、硫黄島全体で約二万人の将兵が玉砕しておりますけれども、ごうの中に残っている遺骨は数千というふうに推定しておるわけでございます。
  95. 二宮文造

    ○二宮文造君 要するに、まあ数次遺骨の収集をされまして、現在、お話聞きますと、ごうの中にまだ未着手な部分があると、したがって、大体ごうの中に遺骨が数千、まだ当時の状況のままに置かれているということですから、この遺骨の収集、遺骨ということの関連において復興計画がつくれないということはないんですね、もう、ごうの中です。この点いかがですか。  だから厚生省言ってくれればいいんです。遺骨はごうの中でしょう。ですから、復興計画というものは、この四十五年に遺骨の収集状況というのがあった。耳打ちしなくていいの、よけいなことを。単独に、各省庁単独に聞いてるんですから。
  96. 河野義男

    政府委員河野義男君) ごうの中にある遺骨の収集につきましては、ごうの数が約八百あったわけでございますが、このうちこれまでの遺骨収集によりまして五百カ所につきましては遺骨収集は終わったものというふうに考えております。今後残った遺骨、ごうの中の遺骨の収集につきまして、今後も引き続き努力をしていきたいと思っておるわけでございますが、ごうの中の遺骨の収集とその復興計画、私ども復興計画に直接加わっておりませんので、どういうことになるかはっきり申し上げかねますけれども、同じような状況は沖繩におきましても多数の戦没者が出ております。現在も地表およびごうの中の遺骨の収集を続けておるわけでございます。それとの復興計画、復興という関係で考えるということもあろうかと思います。
  97. 二宮文造

    ○二宮文造君 いいヒントを出していただいた。沖繩は確かに復興計画は進んでいるわけです。復興開発振興計画まで進んでいるわけですね。ですから、これはあえて、もう四十五年の段階はこれはもう一応完了したと。しかし、まだ未収集の遺骨がございますので、この点についてはやはり本来の作業を早く進めていただきたい。それで遺族の方々の御期待に沿っていただきたい、こう思いますが、復興計画とは一応切り離せる立場になっている。  それから、今度は不発弾の処理ですが、推定の埋没量、これは約千トンと言われておりますが、いままでに防衛庁が処理されたその実績というのはどれぐらいになっておりましょう。
  98. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 硫黄島がわが国の施政下に戻ってまいりまして以来自衛隊が不発弾の処理を行ったわけでございますが、その実績は約二十一トンでございます。
  99. 二宮文造

    ○二宮文造君 その遺骨の収集とか不発弾の処理とかいうのは、年次計画をお持ちの上で作業を進めていられるのか、行き当たりばったりにされているのか、この点はいかがですか。遺骨とそれから不発弾と分けて。
  100. 河野義男

    政府委員河野義男君) 遺骨の収集につきましては広い戦域に多数の遺骨がございまして、それぞれいろんな条件が違いますのではっきり年次計画を立てて完了するという、また、完全にこれを行うということもきわめて困難でございますが、遺族その他の関係者の心情を踏まえまして、できるだけ早く終わりたいということで努力を重ねておるわけでございます。
  101. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 不発弾の処理につきましては、硫黄島におきましても、本土、あるいは沖繩等と同様の処理を自衛隊はしておるわけでございます。遺骨収集の際、あるいは施設の整備の際その他発見されました場合に自衛隊がその専門家を派遣してこれを処理するということでございまして、そういうような計画で、そういうようなやり方で今後もやってまいりたいと存じております。
  102. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですから、私はちょっとそういうところがいわゆる閣議了解をして硫黄島については不発弾の処理とか遺骨の収集ですね、遺骨の収集状況の関連において復興のその方途を検討すると四十五年に決めておりながら、条件になっている遺骨の収集、あるいは不発弾の処理にきわめて不熱心だ、さらに、その上に不可抗力みたいな、もとの住民の方にとっては致命傷とも言えるような火山活動云々を加えて帰島を不可能に追い込んでしまっているこの政府のやり方というのは私はどうも解せないところがあるわけです。  さてそういうふうに一応おためごかしに生命の、財産の安全というものを図るためにこういうことを考えてやりますよということでいままで帰島を、何といいますか、延ばしてきましたね。ところが現実に硫黄島は海上自衛隊、それから米軍、これがいま使用していますね。その使用状況どうなっていますか。
  103. 多田欣二

    政府委員(多田欣二君) いま先生おっしゃいましたように、米軍と海上自衛隊が使用しているわけでございまして、米軍はいわゆるロラン局ということで使用いたしております。使用面積は専用面積といたしまして四百五十四万平方メートルでございます。それからまた、海上自衛隊は飛行場を含めまして飛行場の管理支援業務の部隊が駐とんをいたしておりますが、海上自衛隊が使用しております土地の面積は四百九十五万平方メートルということでございます。
  104. 二宮文造

    ○二宮文造君 要するに、硫黄島の約面積の四三%、これが海上自衛隊並びに米軍が管理使用している、こういうことですね、四三%。このいわゆる四三%についてはそれでいま海上自衛隊が何人いますか、それから米軍関係者が何人いますか。
  105. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 海上自衛隊は約五十名でございます。それから米軍につきまして、これは沿岸警備隊員でございますけれども、二十五名でございます。
  106. 二宮文造

    ○二宮文造君 その方々は生命の危険はないんですか。住民だから帰れない。軍関係だからいてもいい。同じ人間には違いがないんですが、危険はないんですか。不発弾が千トンもまだあるんですよ。遺骨の収集もまだ十分に終わっていないんですよ。火山活動も非常にあれして島民は帰れないぐらい政府は重視されているんですが、そういう危険なところに自衛隊を派遣していいんですか。自衛隊員だからそういう危険なところに置いてもいいという判断ですか。だから私が聞きたいのは、生命の危険を感じられないかと、いま常駐しているわけですから、そのことを聞きたいわけです。
  107. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 米側につきましてはちょっと私事情をつまびらかにいたしませんが、自衛隊員につきましては現在行っております五十名の者はこれは全員単身赴任でございます。家族は連れていっておりません。その理由はいろいろあるわけでございますけれども、一つの理由は、やはり現地が火山活動が活発で年に数十センチでございますか、隆起しておるという状況も一つの要素と考えております。
  108. 二宮文造

    ○二宮文造君 それじゃね、ちょっと沖ノ鳥島かな、気象庁でしたか、沖ノ鳥島を引き揚げたのは。どこでした。
  109. 渡辺偉夫

    説明員渡辺偉夫君) お答えいたします。鳥島。
  110. 二宮文造

    ○二宮文造君 鳥島か。鳥島は引き揚げたんでしょう。
  111. 渡辺偉夫

    説明員渡辺偉夫君) 引き揚げたのでございます。引き揚げました。
  112. 二宮文造

    ○二宮文造君 鳥島はそういうふうな同じような火山活動の安全性の確認というようなことで鳥島は引き揚げられた。ところが自衛隊は単身赴任といいながら硫黄島におられるということは、それはそう緊迫したそういう状況がないと。しかし、いろいろなデータから類推されるものがあるからというふうな、差し迫ったものはないという判断で海上自衛隊は常駐されているわけでしょう。もう一遍、確認の意味で。
  113. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 差し迫ってきょう、あす、あるいはごく最近においてそういう火山活動によります生命の危険があるというふうには必ずしも判断していないわけでございます。
  114. 二宮文造

    ○二宮文造君 まず、そういう現地の状況がある。さらに、自衛隊に関しましては、ずいぶん、四十八年ごろからいろいろな新聞報道が述べられまして、その大要は硫黄島を基地化しようと。要するにいま人が、民間人が住んでいない。民間人が住んでいないということを最大のよりどころにする。そして四十八年の五月の十九日には、「硫黄島を基地化、自衛隊五次防をメドに構想、航空は訓練、海上は常駐」と。あるいは五十一年の一月六日付では、硫黄島に訓練基地を置きたいと防衛庁が計画しておると。五十一年の六月十二日付では、見出しを言いますと、「硝煙再び?あの硫黄島、演習に——三自衛隊上陸作戦、PX」五〜六機海、FX一個飛行隊空、機関砲・ミサイル陸、ポスト四次防に常駐戦力」、こういうふうに陸、海、空に分けて自衛隊が硫黄島を対象に基地化を進めようとしていると。あるいは五十一年の七月の二十六日付には、防衛的価値を見直す動きがあって、訓練場を検討段階と。さらに五十三年の六月六日付では、硫黄島に大演習場をつくる、自衛隊三幕が構想して将来は南方方面の戦略基地にしたいと、本土の用地難を打開して五十七年度から使用開始すると、総額三百億円の予算を概算要求をするとかしないとか。こういう中身を持った新聞報道ということです。  ですから、政府の方では、やはり遺骨の収集がまだである。あるいは不発弾が未処理である。さらには、火山活動云々というふうに言われておりますが、それをいいことに、要するに住民の方が帰島できてないことをよりどころにして現に海上自衛隊は五十人常駐されているし、新聞報道ですから、真意はどこにあるかわかりませんけれども、演習場あるいは基地としての機能を強化しようというふうな考え方をお持ちなわけです。  そうしますと、帰島したいという住民の立場から見ますと、政府はだめであると、こう言っている。だめだというのは、要するに、自衛隊が、防衛庁が使いたいからわれわれを帰してくれないんじゃないかというふうなよけいなせんさくを住民の方は持つ。したがって、これはやはり民有地もあるわけですから、やはり問題が遺骨の収集、不発弾の処理ということであれば、これは精力的に、住民の方の帰島ができるように精力的に処理をされる、そういう年次計画も持たれる。そして住民方々に、何といいますか、希望を持っていただくという努力は政府もやっていいんじゃないかと、こう思うんですが、この点いかがですか。
  115. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 私ども住民方々の帰島の阻害要因になっておると思われるものにつきましては、関係各省庁と連絡をとりながらその除去のために協議を進め、努力をしていくことは当然であると思います。ただ加えまして、その火山活動による危険性、つまり安全性が確認できないというこの事態につきましては、ただいま自衛隊につきましてやはり単身赴任で行っておられるという実情をお話がございましたが、これを裏を返しますと、住民方々が完全にそこを生活の本拠になさいます場合には、これは当面——きょう、あすには危険がないというだけでは政府としては安全性を確認したということにならないわけでございまして、やはり何と申しましてもそこに生活の本拠を構えられるにふさわしいと申しますか、安全性の確認というところまでまいらないと決断をすることがなかなか困難ではないか。こう思う次第でございます。
  116. 二宮文造

    ○二宮文造君 日本は火山国なんです。火山地帯というのはあちこちにあるんです。有珠山がこの間やったじゃないですか。有珠山の地盤隆起とこの硫黄島の地盤隆起とはどうです、比較してごらんなさい。問題にならぬでしょう。ゆがみの問題なんかにしても。これはもう私時間がありませんので……。  国土地理院とか、それから、科学技術庁からもおいでいただいていますし、それから、気象庁からもおいでいただいていますし、地盤隆起の問題とか、火山活動の問題とかという面について、確かに地盤の隆起はありました、隆起はありましたけれども、火山活動はおっしゃるほど差し迫ったもんでもないし、ですから、これはやっぱり私は理由のための理由づけじゃないかというような気がしてなりませんよ。一つ一つ、たとえば地盤隆起がどうだと、三角地点の調査した二十六年から四十三年の米軍の調査がどうだとか、こうだとかということは資料として見ました。見ましたけれども、それはたとえば、それじゃ川崎にそれがないのか。川崎は地盤沈下がありましょう。それから、有珠山のひずみなんというのは、横のひずみなんというのは大変なもんでしょう。ですから、一硫黄島に限ってだけの問題ではない。確かにそれはその千二百キロも離れているという、あるいは水がないという、その島の特殊のものはありましょう。しかし、これは政府の方から資金を投入してやっていけばできないことないわけですから住めない状況ではない。技術的な問題でやりとりしてもこれはもう学術的なやりとりですから、結果としていま住めるか住めないかという判断はいま住める。ですから、政府の方は復興計画なり振興計画なりを、これに——東京都がつくるんですが、それに適当に行政指導して、計画の中に入れて、そして住民方々の期待にこたえるという前向きの姿勢がいまは一番必要なんじゃないか。こう思うわけです。  大変恐縮なんで、気象庁の方ですね、いわゆるこの硫黄島の火山活動についての最終的な見解と言いますか、それをどういうふうに見解をお持ちになっているのか。それだけちょっと御説明願いたいと思います。地震活動について。
  117. 渡辺偉夫

    説明員渡辺偉夫君) お答えいたします。  現在気象庁では地震その他の観測はしてはございませんが、気象庁では火山噴火予知連絡会の庶務、運営を担当しておりますので、そこに行って行われました報告、その他のことを勘案しますと次のようなことが考えられております。  過去の、噴火の記録から考えますと、今後も引き続き島内のどこかで水蒸気爆発という程度の噴火は発生するものと考えられております。しかし、現在の地震活動とか、地殻変動、その他を、これがいまのところいますぐ大規模な大噴火というものの徴候はあらわれておりませんが、今後もこの火山活動というものはこの島にとっては非常に重要なもので、動向については十分注意していきたい。こういうふうな考え方でございます。
  118. 二宮文造

    ○二宮文造君 いろいろ、私がいただいた気象庁の資料を読んでみますと結論はこうなっているのです。いまおっしゃったこととほとんど同じ意味ですが文章はもう少し明確なんです。  「地震活動に関しては従来の変動範囲を越えるものではなく、また地盤傾斜、温度や断層変動などの諸観測および地表状況に特に異常もみられなかったので観測および警戒体制を特に強化する必要は感じられない。」これが気象庁のあれです。  それから、科学技術庁だとか、あるいは国土地理院では、確かに過去の経緯として地盤の隆起があったという別の報告もございますけれども、結論としては特に顕著なものはない。こういうことですから、この点を勘案されて今後の硫黄島、北硫黄島の復興あるいは振興ということに特段の配慮をお願いしたいと思うわけです。  科子技術庁さん、それから国土地理院さんからも資料をちょうだいしまして、時間があれば御説明をいただきたいと思ったんですが、ございませんので、御出席いただいて大変ありがとうございました。お引き取りいただいて結構でございます。  私は要するに、昭和四十九年に決定された現行の改定十カ年計画の帰島及び復興計画対象に硫黄島が火山活動ということを加えてさらにまた厳しくされたということに疑問を持つというために、いままでお話をしてきたわけです。ですから島民の方はもうすでに考え方を持っておりまして、五十七年の八月を目途にしまして、全島の再開墾をしたい、もう大臣もお聞き及びだろうと思いますが、それから小作権者を主体にして、総合開発を推進する。こういう計画をお持ちになっています。もうすでに青写真もできておりまして、とにかく帰島の意欲というのは日に日に高まる一方、また、そのためのお互いの会合等もしょっ中持たれているようです。したがって、私は、ここで法律とか何とかということじゃくぐりたくはないんですけれども、法務省の人権擁護局に御意見を伺いたいんですが、先ほどからるる申し上げてきているような状況の中に、強制疎開をやむを得ずされた、そしていろいろな理由はあるにせよ、今日までまだ帰島がかなっていない。しかも政府の対応から見ると、いつ帰島がかなうかわからない。こういうふうな状況に置かれている硫黄島のもとの島民の方々の立場というものを、人権擁護局としてはどう判断をされますか。お見えになっていますか。
  119. 鬼塚賢太郎

    政府委員鬼塚賢太郎君) この問題はこの席で初めて伺いましたので、一般論しかちょっと申し上げにくいのでございますけれども、人権擁護の立場といたしまして、一般論から申し上げますならば、御承知のとおり、憲法二十二条に居住及び移転の自由の保障がございまして、これは公共の福祉に反しない限りということでございますが、そういたしますと、いま問題になっておる硫黄島あるいは北硫黄島に戦前住んでおられた、生活しておられたと。その方々が自分の意思に反して、いわば強制疎開ということで苦しい生活をされておりますといたしますと、この方々が自分たちの島へ戻る、これはもう当然そういう憲法上の権利であろうというふうに思いますし、それがいろいろむずかしい問題があるようでございまして、まだその帰島はかなわないということは、やはりこれは非常に問題であろうというふうには思っております。ただ、いま伺いますと、やはり不発弾の処理がまだないとか、あるいは火山活動による隆起があるとかということで、これもまた生命あるいは身体の安全の問題でございまして、これもまたやはり人権の問題でございますので、その辺の兼ね合いが非常に具体的なことになるとむずかしいかと存じますが、そういうことで、一般論としては、やはりそういう住民方々の帰島の意思が早くかなえられることを私も願うわけでございます。この程度で御容赦いただきたいと思います。
  120. 二宮文造

    ○二宮文造君 恐らく島民の方々もこの問題が片づきませんと、人権擁護局の方に御援助方をお願いするようになるかもわかりません。これはもう切実な問題になっておりますから、よく状況を予備的に把握していただいた方がよろしいのではないか、こう思います。それで、きょうはおいでをいただいたわけです。  私、いろいろまだ申し上げたいのですが、申し合わせの時間が二十分、あと五分しかございませんので、問題点は、米国政府から島民に何らかの補償を行った場合には、返還することを条件に六百万ドルですか、補償金が出ておりますし、それからまた、政府の方からも昭和三十年度九千八百九十八万円、三十一年度に三千九百九十九万円、こういうように、補償のようなかっこうで見舞金ですか、見舞金とか、補償の意味を含めての支出がされておりますが、この性格が一体どうなのかということも問題なんですが、これはまた、後で日にちを変えて補償の問題、お金に関する問題はお伺いしていきたいと思います。  そこで、最終的にこれは大臣にお願いをしたいのですが、私も代表質問のときに大平総理に申しました。要するに島民の方々の心情に思いをいたして、早急に硫黄島並びに北硫黄島の復興計画作成、実施する。これは当然のことですが、その前に各省庁あるいは島民の方や学者などを含めました総合調査団、これを編成をして、要するに硫黄島、北硫黄島に派遣をすべきではないか。こういうように、私はぜひこれは大臣の肝いりで早急に実現をしていただく。そうすれば、それが手がかりで、ここに問題点があるというふうにもっと明確に問題点が出てくる。そうして島民の方々の御期待にこたえられる日が必ず来ると、こう私は思うのですが、総合調査団の派遣について、大臣の所見あるいは方向性をお伺いしておきたいと思うのです。
  121. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 先ほど来二宮先生のいろいろの御心配、御配慮の点、伺っておりました。御想像の将来の展望は展望としまして、当面なさなければならぬことは、とにかく不発弾があるというのですから、これを除去することはやはり国の責任です。  それから、もう一つ大事なことは、いやしくも国家のためにとうとい犠牲になった英霊の遺骨を不発弾があるからといって、外地ならいざ知らず、内地において、いまだにその御遺骨をば収集することができぬということは申しわけないことであります。これに対して最善を尽くすことは第一番であります。  それから、いま火山の問題についていろいろなお話がありましたけれども、これは私ら専門外の者はわかりません。いま御提案の、現地をつぶさに調査して、各界各層の者が、なるほどとうなずくところから将来のいわゆる策定というものは始まっていいと思います。昭和四十九年十月から東京都が中心になりまして、各省庁の者がいろいろと調査をし、いろいろな意見がここに発表されておりまするが、よりそれよりも大事なことは、いまお説のような各界の人々がもっと広い範囲において現地を十分調査し、今後のあり方というものを決めることについては全く私は同感であります。したがってその方向で、実現する方向で大いに検討してみる考えであります。
  122. 二宮文造

    ○二宮文造君 ありがとうございました。ぜひ御努力願いたいと思います。  私、最後に資料だけちょっとやや抽象的な面もあるのですが、これはひとつ各省庁でわかりやすい、これだけ資料を出せば意味がわかるだろうというようなことで、配合していただいて提出願いたいのですが、まず一番に、軍から強制疎開の勧告が出された以降硫黄島あるいは北硫黄島の出来事ですね、施設ができた、どうなったという、それから施策です、国の施策、これを年次別、年月日別に経過表をつくっていただきたい、今日までの。  それから、硫黄列島の、硫黄島ですね、あるいは火山列島ですか、これの火山活動に係る各種の資料、これをひとつ御調査の上整えていただきたい。  それから、不発弾の処理の実績について、処理年月日順に処理トン数と発掘地点と、これを明記した一覧表をちょうだいしたい。  それから四番目に、米国から小笠原諸島疎開民の方々に支払われた六百万ドルに係る年月日順の一切の経過表。  それから五番目に、小笠原諸島に係る戦後処理についての事務所掌の引き継ぎの経過、それから関係書類の保管省庁、これをわかればお知らせいただきたい。  六番目に、小笠原諸島についての対米放棄請求権の取り扱いに対してどんな見解をお持ちなのか。  この六つですが、六項目ございますが、この点ひとつ、やや抽象的なお願いも含めておりますが、よろしくお願いしたいと、こう思うんですが、委員長、お取り計らいを。
  123. 浜本万三

    委員長浜本万三君) いま二宮委員から各省庁に要求されました資料、よろしゅうございますか。−意見がなければよろしいものと理解をして議事を進行させていただきます。よろしゅうございますか。
  124. 二宮文造

    ○二宮文造君 ありがとうございました。  それじゃ最後に、気象庁さん、あなたもまた責任問題出ましょうから。
  125. 渡辺偉夫

    説明員渡辺偉夫君) 先生のところに差し上げました資料の中で、いわゆる判断としまして警戒体制を特に強化する必要を感じられないという資料は、これは防災センターからことしの一月に私どもの火山噴火予知連絡会あてにいただいた資料のその何といいますか、アブストラクトでございますので、気象庁の意見ではあるいは噴火予知連絡会の御意見ではございませんので御了解をお願いしたいと思います。
  126. 二宮文造

    ○二宮文造君 すみません。私の捕捉、間違えました。  じゃ、以上です。
  127. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本件に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      —————・—————    午後一時二十五分開会
  128. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから建設委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  129. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 奄美群島振興開発特別措置法の五年延長内容の一部改善内容としますところの本法案については、私は関係者の皆さんの努力に対しまして敬意を払い、かつ内容を大筋について賛意を表しながらも、本特別法案の本旨にかんがみて、その内容をより充実をさしていただくという立場から、幾つかの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  まずその第一は、本法案が制定、実施をされたところの四十九年六月決定の奄美振興開発計画本法案との関連をするところの問題でございます。  振興開発計画は、積極的な振興開発を進めるという立場から、目標年次、すなわち五十三年度末の人口及び経済社会の見通しを立てておるようでございます。もう年度末に来たわけでございますだけに、今日その当時の見通しと対比をいたしまして現状がどうなっておるのか。現状というのは全般的なことじゃなくて、いわゆる人口及び経済社会の部面に焦点をしぼってお聞かせを願いたいと思いますが、まずそこのところをお聞きいたしたい。
  130. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいまお話ありました奄美群島振興開発計画におきましては、「人口及び経済社会の見通し」というものを挙げておりますが、ここに「積極的な振興開発を進めた場合、目標年次の人口及び経済社会は、一応の想定によれば次のようになるものと予想される。」といたしまして、総人口は、基準年次でありますところの四十七年度十五万八千人でありますものから、どうしてもこれは減少傾向に推移し、五十三年度には十五万人を割るものとみられる、こういうふうに申しております。これに対してどのようになっているかと申しますと、五十三年十月の推計で十五万五千六百九十九人という数字が挙がっておりますので、最終年次までに人口が減るのではなかろうかと見られたものよりも五千六百九十九人少なくて済んでおる。こういう結果があらわれているようでございます。  次に経済見通しの方でございますが、計画におきましては、「生産所得は地域の特性を生かした産業の振興、観光開発等を通じて」基準年次でありますところの「四十七年度の五百九十六億円から一・七倍強の一千四十七億円程度に達するものと期待される。」、こう申しているわけでございます。それに対して実情はどうかということでございますが、これは御承知のとおり、経済関係の統計というのは約一年半程度のずれをもって統計が出てまいりますので、ここには五十一年、つまり最終年度よりも二年度前の五十一年の数字があるわけでございますが、実質にいたしまして八百二十一億円と相なっております。すなわち、五年後の目標が一千四十七億円でありましたものに対しまして、五十一年の状況では、二年前の状況では八百二十一億円というように相なっているわけであります。これは非常に比較しにくいわけでございますけれども、しかし五十三年度末の最終目標に至ります間の年平均伸び率を算出してみますと、計画が九・八五%の年率の伸びを見通しておったというのに対しまして、いま申し上げました最近の五十一年の実績というものに至るまでの年率の伸びを見てみますと、八・三九%と相なるわけでございまして、これは率直に申しましてやや低目である、こういうふうに見られるわけでございます。人口と経済見通しを例に挙げますと、こういったことに相なるかと思います。
  131. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それでもう少しお聞きしたいのですが、産業所得の分野の見通しという問題ですね、この開発計画を見ますと、第一次産業の構成比は低下をし、第二次産業の構成比は横ばい、第三次の所得は大幅に増加し、構成もかなり増加をするという見通しを述べておられるのですがね、現実にはそういう形になっておりましょうか。
  132. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 傾向といたしましてはおおむねこのような傾向をたどっておるように見受けられるわけでございます。
  133. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はここに鹿児島県の企画統計課の報告書を持っておるのですが、ただいまの答弁とは大分違うようですがね。これは構成比を見ますと、第一次産業が昭和四十七年に一五・一、昭和五十一年が一三・三、第二次産業が三二・五で三三・一、第三次産業が五二・四で五三・六と、大分局長の答弁と違いますね。どうなんですか。
  134. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 私どもその数字は持っているわけでございまして見ているわけでございますが、傾向としてということを私は申し上げたわけでございます。
  135. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうごまかさんでください、初めから。ここにはあなた第三次産業はですよ、これは大幅に増加し、構成比もかなり増加と思われると書いてあるんですよ、皆さんの五年前のやつは。しかし、県の統計課の資料は明確に第三次産業は五二・四が構成比では五三・六と、これは横ばいですよ、客観的に見れば。それでもやっぱり大幅に伸びたと理解されておるんですか。
  136. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) これは若干の伸びでございますので訂正いたします。
  137. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ひとつ素直にお答えくださいね。何も皆さんの揚げ足を取るためにやっているんじゃないんですから。現実はやはりきちんと認めてその対策を立てなければ私は間違うと思いますよ、それは。これはだれがどう見たって伸びておりますとは言えませんよ。客観的に横ばいですよ。  それで私がお尋ねをいたしたいのは、いわゆるこの純生産費というのは確かに伸びておりますけれども、いまそれぞれの第一次、第二次、第三次の産業構成比を見ればやはりとまっておる。こういうことはどこにやはり問題点があるというふうに皆さんは握っておられますかね。
  138. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) この五カ年間におきまして振興開発計画のもとにおきまして毎年度毎年度予算措置をいたしまして毎年度の計画を立てているわけでございますが、それにつきましては国も、それから県も、それから市町村も努力をいたしまして着実にその計画を消化していると確信するわけでございますけれども、何分にもやはり本土から非常に隔絶した外海離島であるということ、それから最近でこそ余り見舞われておりませんが、台風常襲地帯であったという地理的、自然的な不利な条件、こういうようなもののハンディを克服するということが非常に容易ならぬものがありまして、奄美大島の持っております特性と申しますか、発展の可能性というものをついに引き出すに至ってない面があるということが原因だろうと思います。  それから言いわけになるかもしれませんが、先ほどの第三次産業の数字でございますけれども、四十七年のときの第三次産業の構成率が五二・四%でございまして、四十八年、四十九年とやや高いテンポで伸びまして、四十九年には一たん五五・三%という構成比にまで伸びたわけでございますけれども、やはりその後の、これは奄美大島だけの事情か、それとも全国的な事情かというようなことも考えますが、その後五十年、五十一年におきまして構成比が減退をしていると、こういう結果を示しているようでございます。
  139. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで私がお尋ねしたいのは、この第三次産業の伸びの予想に反しての鈍化ですね、これはどこが問題点があると皆さんは見ておられますかね。
  140. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 第三次産業の一例でございますけれども、観光関係の産業があるわけでございます。これにつきましては入り込み観光客数が一定時相当な伸びを示したわけでございますが、経済の最近の動向なども影響いたしましてかと思いますが、伸び悩んでおると、こういったようなことが見られるわけであります。これは一例でございますが。
  141. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは一例というよりも、第三次産業の一番主力はサービス業、すなわち観光産業でしょう。これはパーセンテージから言っても明白なんですよ。これは一部じゃなくて一番の主力は、これが伸びれば伸びるわけなんですから。だから、とりもなおさず観光産業が予期に反して余り伸展をしておらないということを私は示しておると思いますよ、これはね。振興開発計画を見ますと、この観光産業というのは振興開発の基本方向の三つのうちの一つの柱なんですね、きわめて重要な。それは文章表現で見ますと、「自然を基調とする海洋性レクリエーション地帯の形成」と、こういうような形で言っていますが、これは言葉をつづめて言えば観光産業ですよね。確かにそれは純生産では統計を見ますと伸びていますけれども、この構成比を見ますと、これは依然として余り芳しくない。したがって、そこのあたりの観光産業の伸びないところの理由ということをいまの局長の答弁から推量いたしますと、日本全体の景気が悪かったから大体悪かったんだというふうに握っておられるようですがね、そうはばっさりやっていいんでしょうかね。私は、それならば日本全国のそれぞれの各県の観光産業もうんと落ちなきゃならぬと思いますし、御承知のように、奄美の中でも与論島はむしろ観光客という面では足がふえておるわけですよね。したがって、単に私は不況だからということだけでは片づけられない、やっぱりこの振興開発政策の問題と関連して私はあるのじゃないかと見ておるのですよ。もちろん私も景気の動向がそれに影響しないとは申し上げておりません。あります。しかしながら、だからといってすべてその原因をそういう経済的な他に求めるということで果たしていいのかどうか。どうお考えになっていますか、それ。
  142. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 先ほど私入り込み観光客数を一例として申し上げたわけでございますが、全く仰せのとおりでございまして、他にもいろいろと要因があるかと思われます。ちょうどいまお示しになりましたとおり、島別に見てまいりますと、与論島は五十一年五月の空港開設後順調に伸びを示しておりまして、それに対して他の島が横ばいという傾向を示しておる状況でございます。これと申しますのも、やはり交通の便、つまり足の問題ということが非常に大切なんではなかろうかと思うわけでございます。その意味におきまして、今後は交通基盤の整備とか航空路網の拡充というようなものが一層促進されなくてはならない、こう考える次第でございます。
  143. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 おたくにも来ておると思いますが、県の総合調査の報告書、これを拝見をいたしますと、五十年度の純生産に対する五十一年度の観光消費額の割合を見ますと、県全体が七・一%に対して奄美は一五・七%と高い。高いということは、これはとりもなおさず奄美群島の経済におけるところの観光産業の比重が本土以上にやっぱり高いということを示していると私は見ざるを得ないと思う、この点ね。そうしたときに、いま局長の答弁されたところの足の便というだけでこの対策が、解決策というものが得られるものだろうかどうだろうかというと、率直に申し上げて私は疑問を持たざるを得ないんですよ、これ。  たとえば五十三年度の予算を見ますと、観光開発予算はわずかに三千九十九万円です。これが五十四年度が四千九十一万円になっておりますね。なお、報告書の四十九年から五十三年の五カ年間を見ましても、交通基盤整備費とか産業振興費に比べますと、そのものずばりの観光開発に対するところの国費の支出というものはきわめて額が少ないんですよね。五カ年間でわずかに一億三千三百万円ですよ。私はここにも問題があるんじゃないかと思うんです。  それならばどういう観光開発事業かというて、開発事業内容を見ますと、ほとんど大部分が、展望台をつくるとか、あるいは路傍植栽をやるということから一歩も出てないでしょう、皆さんの予算の中身を見ますと。もちろん、観光産業がそういうことだけで振興できるとは私も思いません。総合的なものであるということは、これは論をまちませんけれども、肝心かなめの観光開発に対するところの予算の充当それ自体にもきわめて低さがあるから、民間にだけ頼って、ただ方針書を書くときだけ観光産業は大事だ大事だと書いておるところに私は一つの問題点がありゃせぬかと思うんですがね。  そういう点から見れば、むしろやはり、奄美の将来ということを考えたならば、この観光産業という面についてもう一回私どもはスポットを当ててみる必要がありゃせぬかと思うんです。言うなれば、やはり奄美独特の味覚、ロマン、歴史、文化など、そういうものを観光資源として積極的に開発をし、やっていくという積極的な姿勢がない限り、このことを幾ら皆さんが、また今度の六月か七月に書かれるでしょうが、書いてみられても、また五年たてば同じかっこうにしかならぬと思うんですがね。こういういままでの経緯と予算の配当と配置を見まして、私はこれでは不十分だと思うんですが、大臣、いまのやりとりを聞いておられてどうお考えになりますかね、この問題について。ひとつ大臣のこの問題に対する基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思うんです。
  144. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 先に私の方から。  いま、予算の投入の仕方、考え方について御指摘がございましたが、私、実は昨年の六月に地方振興局長のポストを拝命したわけでございますが、五十四年度予算編成をいたします過程におきまして強く感じましたことは、関係各省が非常に奄美の問題について理解を示されまして、それぞれなりに対前年度高い伸び率の予算を組んでいただいておるということを実は私は実感しておるわけでございまして、むしろ奄美については関係各省庁とも非常に手厚い配慮をしていただいているという実感こそあれ、力の入れ方が足りないという気持ちは持っていなかったわけでございます。しかし、過去におきまして御指摘のような面がありましたといたしますならば、それはまたそのときなりのあるいは事情があったのかというふうに反省もされるわけでございます。  今後の問題といたしまして、おっしゃいましたように奄美の観光産業にいま一度スポットを当ててみる必要がある。県がこれから原案を作成し、やがて国に提出し、国もまた奄美の審議会にお諮りをして決定をするに至るこの御審議いただいております法延長後の新しい五カ年の計画につきましては、鹿児島県におきましても必ずやそういうところに重点を置かれまして原案を作成されるでございましょうし、私どももまたそういう気持ちでもってこの計画案に接し、関係各省ともお話し合いをし、そして審議会にもお諮りをしていい計画にしていきたい、その計画のもとでまた毎年毎年の予算計上というものを努力してまいりたいと思う次第でございます。
  145. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 先ほどからお話を伺っておりまして、結局民間の力を引き出すことのために、国、県、各方面がいろいろと今後配慮して力を尽くすということに尽きるんではないでしょうか。いま局長からも御説明申し上げましたように、観光産業が一番重点だと申し上げておられるように、そのような措置をだんだん推進するような努力をいたしていく方向に進めていきたい、こう考えております。
  146. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 局長ね、私はほかのものについて言及しておるんじゃないですよ。観光産業の予算を見たときに、余りにも対比して少な過ぎるというんですよ、これは。それならば何も三本柱の一つに書かぬでもいいんですよ。開発計画の中には文章づらはよく書いておいて、予算の配置になると十分の一あるいは五十分の一にしかならないようなことではどうでしょうか。それはもちろん民間が主体になりましょうけれども、いまの大臣の答弁じゃないですけれども、その呼び水になるようなものをやっぱり国の投資でやらなければだめなんですよ。それは観光産業の振興促進策というのは何かというと、国道や地方主要道のところに木を植えるとか展望台をつくるだけで、いや観光産業にこれだけ金を出しましたということでは、私は本当に奄美振興開発の基本方針として皆さん方掲げておるところのこの重要な柱に合うようなものはできないんじゃないかと、こう申し上げておる。だから私は、ことしの予算はしょうがないにしても、これはやっぱりいわゆる来年度以降の問題の中では十分文章づらと実際とがつり合うようにひとつ努力をしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  続いて、水産業の問題について若干お聞きをいたしたいと思います。これまた開発計画と水産業との関連を見ますと、この開発構想計画の中には、いわゆる島別の基本構想にもあるいは部門別構想にも水産業の振興ということが非常に重視をされておるんですね。そういう立場からこの水産業の実績を、これまた県の所得推計報告書ですか、これを中心にして見ますと、生産額においては伸びてないんですね、これ。昭和四十九年が二十七億七千万円、五十年度が二十八億八千万円、五十一年度が二十七億九千万円ということで、ほとんどこれ横ばいなんです。あるいはこの就業人口の面でも、昭和三十年よりも昭和五十年度は減っておるという、こういうふうな状況なんです。奄美振興の中にはこれまた水産業の振興というのはきわめて重要な、これは重点を入れなければならないんですけれども、入れて、強調されておるところの割合について、いま申し上げましたように生産額の部門においても就業人口の面についても横ばいないしは減少しておると、こういう事態なんですがね。ここはやはりどこに問題点があるというふうに皆さんは理解をされていますかね。将来これをどのように打開をしていこうというお考えなのか、それをお聞かせ願いたいと思います。1水産庁も来ておりますね。これはもう国土庁に聞くよりは皆さんの方に聞いた方がなおいいと思いますね、これ。
  147. 岩崎壽男

    説明員(岩崎壽男君) ただいま先生御指摘のように、奄美群島におきましては水産業、特に漁業でございますが、その地域の自然的な条件に対応した漁業の振興を図っていくことが重要な問題でございますが、確かに御指摘のように、漁獲量あるいは生産金額というものは伸びを余り見せてないというのが現状でございます。これにつきましては、一つはやはり奄美群島というようなところが非常に離島であり、しかも本土からかなり離れた離島であるというような点から、やはり地元消費以外の部分を出荷するというあたりの流通条件が、必ずしもいいというわけではないという点があるかと思いますし、そういった意味におきまして、今後やはり奄美の漁業の振興を図るには、やはり輸送費のコストにたえ得るような意味で、比較的高級魚中心の漁業というものを推進する必要がございますし、またある程度漁獲物を貯蔵しあるいは出荷用あるいは漁船用の氷の確保といったような製氷、冷蔵施設の整備といったような流通改善施策を行いますとともに、漁場等におきましても、たとえばイセエビみたいな特産品もございますので、そういったものの魚礁の設置というものを図るというようなことによって、やはり今後奄美の沿岸漁業の振興に努めてまいりたいと、かように考えております。
  148. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 一体そういうような外的な流通運搬あるいは製氷、冷凍施設、魚礁づくりだけで本当にこれ、振興できますかね。私は五十二年度の奄美の水産白書の資料を持っておるんですけれども、あなた方主管官庁というか、水産庁としては、そういうことをやればうまくいくという認識なんですか。まだまだ欠けておるところがありゃしませんか。どうなんですか、そこは。
  149. 岩崎壽男

    説明員(岩崎壽男君) ただいま主として流通の問題を中心に申し上げたわけでございますが、漁業の振興にとりましてやはり一つの問題は、漁場なり資源をどうやって利用していくかという生産の問題があるわけでございますし、この点につきましてはもちろん漁港の整備といったようなことをやりますとともに、やはり先ほど申し上げました漁場の関係の整備あるいはやはり現在奄美の漁船は比較的小型な漁船が中心でございますので、今後たとえば三−五トンとか五−十トンといったような機動力のある、あるいは近代的な漁船の建造といったようなものを推進するといったような面の対策が必要であろうと思うわけでございます。それ以外に、やはり生産と同時にそれの消費といいますか、需要という面でマーケットの問題というのは非常に重要な問題でございますので、そういった面につきましては先ほど申し上げましたような、流通改善施策等を通じまして対処していくのが適当ではないかというふうに考えている次第でございます。
  150. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも私はいま答弁をいただいた点が重要でないと否定はしませんが、きわめて重要ですけれども、まだ私は一番根本の問題を皆さん方は等閑視しておられるからなかなかうだつが出てこぬのではないかと思いますがね。たとえばいまおたくは船の問題について比較的小型と、こう申しましたけれども、皆さんはきちんと理解しておいてもらわなきゃならぬのは、船などは三トン未満の船が九二%ですよ、比率が。比較的じゃなくて徹底的に船が小型であるということなんですよ、これは一つは。だから船を、漁船の大型化、近代化ということは、あなたが言われたところ以上に重要な問題なんです。それと同時に、台風常襲地帯でしょう。これ、港がなきゃどうにもできませんよ。漁港の整備ということも、これまた決定的な重要なことなんですよ。漁港とか船とかというものに対するところの皆さん方の振興政策重点があって、初めてその流通やいろんな問題が伴っていくんであって、外回りばかり一生懸命あなた先ほど答弁されておったですがね、こういう漁船とか漁港という問題についての理解はどういうことなんですか。さして重要でないというお考えなんですか。
  151. 岩崎壽男

    説明員(岩崎壽男君) 先生御指摘のとおり、漁港の整備は漁業の生産基盤の整備として最も重要な分野でございますし、当然漁業を行う際の生産手段としての漁船の近代化といったようなものは非常に重要な問題であるというふうに理解しております。
  152. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 振興開発計画を見ても、漁港の整備をまず重点に置きながら云々とずっと出ておるんです。そうするとここに盛られておることと水産庁の指導しておることとには非常に違いが出てきますね、これ。そういうことになりませんか。いま私から初めて指摘をされてそれも重要ですと、それもではぐあいが悪いんですよ。何といっても船だまり、船がなけりゃこれはできないことなんですから。だから私は水産庁が先ほど御答弁いただいたような認識であるならば、これはもう認識を変えてもらわなきゃ困ると思いますよ。何といってもやはり漁港と船ですよ。とりわけ漁港の問題は重要じゃないでしょうか。そのことはお認め願えますか、どうですか。
  153. 岩崎壽男

    説明員(岩崎壽男君) そのとおりでございます。
  154. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 御承知のように漁港の問題ですが、奄美の漁港は第四種漁港が四港、第一種が十九港あるんですがね。この整備ですがね、確かに五十二年、五十三年、五十四年と以降は飛躍的に漁港の整備に国の投資が行われておるわけでございます。その点は評価するわけでございますが、ただこれだけ投資をしても本土と同格のたとえば四種漁港なら四種漁港、一種漁港なら一種漁港をこう見ますと、非常なやはり整備水準が低いんですよ何といっても。あるいはまた基本施設、機能施設等もこれは非常におくれておる。このおくれということは皆さんは水産庁としてはそういうふうに理解されておるんですか、それとも、うんと進んでおるとこう見ておられるんですか、どうなんですか。
  155. 福地辰馬

    説明員(福地辰馬君) お答え申し上げます。  漁港の整備につきましては、全国の漁港の整備をただいま第六次の漁港整備長期計画というものに基づきまして進めておるところでございまして、奄美群島分につきましては計画事業の中で一番規模の大きい修築事業というので四港、それから改修事業という事業で四港、合わせて八港を計画してただいま事業を進めておるところでございます。この奄美群島内の主要な漁港を八港取り上げておりまして、なおこのほかに局部改良事業という事業をもちまして、毎年五港ないし十港程度の整備を取り上げながら進めてございまして、全体を含めました、奄美の漁港全体としての進捗状況は、五十三年度では予定いたしました事業量の約二九・六%、三割弱ぐらい。それからただいま御審議をいただいております五十四年度の予算案によりますと、おおむね五〇%ちょっと超える程度までまいろうというふうな見込みでございます。同じく全国の漁港の長期計画の進捗率といたしましては、五十四年の予算案では約四〇%になる見込みでございまして、全国平均をおよそ一〇%強奄美計画の場合進んでいるということで、私どももこの促進にはできるだけの努力をいたしておるつもりでございますが、なお今後も一層奄美群島の水産の基盤になります漁港の整備について、その整備の促進に努めてまいりたいと存じておるわけでございます。  それに本土と比較しての水準いかがかというお尋ねがございまして、これはなかなか漁港と申しましても岸壁の長さ、水面の広さ、深さ、それから波がどのくらい入るか、入りやすいかとか、いろんな要素がございまして、一概に比較は非常にむずかしゅうございますけれども、私ども事務的な一つの目安といたしまして、岸壁の長さが、そこを利用する船の隻数なり使用の頻度なりに比べてどのくらい必要で、その必要量に対してどのくらい充足されておるかというふうな指標を一応目安として内部で使用しておるわけでございますが、この数字によりますと、現在計画いたしております計画が予定どおりでき上がりました場合は、岸壁の延長につきましては、奄美本土はそれほど差がなくなるであろうというふうに存じております。  ただし、先ほど来お話がございましたように、奄美群島は非常に台風の常襲地帯でございまして、波を安全に防ぐというのも非常に重要でございまして、その面では不備な面もかなり見られますので、この面については今後なお一層整備、改善するように努力してまいりたいと、こういうふうに存じております。
  156. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまの答弁だと非常に進んでおるという話ですが、ちょっと先ほども触れましたように、皆さんは現在の船の大きさ、そういうものに合わせてつくっておるからこれでいいんだという物の考えでしょう、物差しが。さっきも言いましたように、三トン未満の船が九二%おる。したがって、奄美の水産業発展をさせるというものは漁船の大型化、近代化ということが非常に必要になってくる。今後の課題の中では積極的に船をやっぱり大きくさせていくという指導をしていかなきゃならぬ。そういうような、やはり将来の展望を踏まえて、いまの皆さんがつくっておるところの漁港を見るときわめて水準が低いんです、何と申し上げても。おまけに台風でしょう。そういうものから見て、いやあ本土と比べて遜色はありませんと言えるでしょうか、果たして。そこのところを皆さん考えてもらわなきゃだめなんですよ、それは。そこに政治が生きるわけなんですから、官庁の仕事じゃなくして、皆さんもやっぱり行政官であると同時に将来の展望というものを見ながら、積極的に私は指導していただかなければこれは困ると思うんですよ。現在の船に間に合わしさえすればいいというんじゃ、またどんどん船が大型化になったらまた金をつぎ込んでまた変えなきゃいかぬというかっこうになってくるんですよ、これは。  たとえばその点でこう申しましょう。先ほどあなたの方から言いましたところの主要漁港と言われておるところのこの七つか八つの港——漁港をこう見ましても、たとえば徳之島の山港とか本島の小湊とか与論の茶花港というところは水深わずか二メーターでしょう。なるほどいまの三トン未満の船ならそれでいいかもしれない。しかし本当に漁業を発展をさせようということで大型化していくということになれば、これはもっともっとやはりこのことを考えてもらわなけりゃだめなんだよ、これ。  そればかりではございませんよ。たとえば四種漁港として大分投資をして県が管理をいたしますところの名瀬市にありますところの大熊漁港、これにしても実はこういうことがあったんですよ。先月の二十八日に冬の季節風をもろに受けた。ところがこの港はこの季節風を一番もろに受けやすいところにこう口があいておるんですよ。そういう影響もありましてね、四種漁港として整備をされておりながら、ここに係留されておるところの船が季節風だけでロープを切って他の船と衝突をする、けが人が出ておるんですよ。だから現地の皆が、これはもう保岡政務次官が一番知っておりますけれどもね、現地からは、こういう漁港のつくり方ではだめだと、もう一つ沖の方に防波堤をつくってもらいたい、こういう要望が出ておるわけなんです。言うならば皆さんは、基準の四種漁港はりっぱにできておるんだと、こういうふうに見ておられるかもしれぬけれども、これは実際に合ってないんですよ、実情に。それだけに、奄美の漁港というものを考える場合には、台風地帯であるということと、今後漁船を大型化していかなきゃならないとするならば、もっともっとこの漁港のところに力点を入れて整備ということが行われなきゃならないと思うんですがね。そういう点から見てどうなんですか、もう一回聞かしてください。
  157. 福地辰馬

    説明員(福地辰馬君) 最初にお話がございました徳之島の山漁港でございますが、私ども計画では水深は二メートルでございます。海図の基準面から下へ二メートルの深さを持つように計画してございます。それで、この水深はこれでは不足ではないかというふうな御意見であろうかと拝聴しましたが、私ども計画は六カ年計画でございまして、始まりが五十二年で、終わりが五十七年でございます。そこで、計画いたしますときには、現在おる船ではございませんで、これを基礎にいたしまして、五十七年に利用するであろう漁船というものを、地元の方の御意見等も伺いながら計画をいたしたわけでございます。この山漁港につきましては、先生も先ほどおっしゃいましたように、現在使っております船は非常に小型でございまして、大きいものでも五トン未満でございますが、計画いたしておりますマイナス二メートルでございますと、一応十トンの船までは使用可能ということで私ども計画をいたしておる次第でございます。  それから、二番目にお話がございました大熊でございますが、これは防波堤を計画では二本つくる計画でございまして、まだ沖側のができ上がっておりません。それから、内側のも大体八割近い、その程度のでき上がりで、まだ完全な状態でございませんところへ波を受けまして、いろいろおっしゃられたような事情ができたということも私ども最近伺いましたが、なお防波堤の延長にこれからも鋭意努めまして、早くこういった状態が解消するように努めたいというふうに存ずるわけでございます。
  158. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 たとえば、山港の問題が出ましたがね。これはあれでしょう、この計画書によりましても、泊地が四百五十、平米しかない。そうすると、御承知のように徳之島という三町ある、人口が三万のこの島、大きな島の中で一番ここを重点にされておるだろうけれども、四種漁港一つない、この島は。いわゆるここと、松原港というきわめてちっちゃなところだけだ。それでおって、人口三万以上の島を抱えておるところの中で、こういう小規模のやつをつくっておいて、それで満足せいということができますかね、将来の水産業を考えようとしたときに。これが、たくさんあるところの中の一つなら私は理解できますよ。いわば、あなた方一番よく御存じでしょう。与論島——いろいろこうあるですわね、たとえば沖永良部島には第四種漁港もある、あるいは大島本島にも二つある。しかしながら、徳之島という三町あって、人口三万という大きな島の中には、漁港らしい漁港はない。少なくともやはり、ここらあたりを拠点にした本格的な漁港づくりをしてもらわぬことには、それこそ水産業の振興といっても、肝心かなめの港がないんではどうにもできませんよ、これ。そういう展望を持ったときに初めて、こういう水深マイナス二メーターだけで満足ですということが言えるでしょうかね。だから私が、ほんとに水産業というものの振興を持てというならば、漁港をつくるものは漁港を、どうだということで、奄美全体の水産をどうさせるかと、その中でこの港をどう位置づけるかという問題があって、そこに今度は港づくりの問題で皆さん方が十二分にそのことを考慮してやるということを考えていただかない限りには、余りにも分散式ではこれはもうどうにもなりませんよ。どうなんですか、そこらあたりは。
  159. 福地辰馬

    説明員(福地辰馬君) 先生御指摘のように、徳之島というのは奄美群島の中で本島に次ぐ大きな島でございまして、現在指定漁港は山漁港と松原の二港でございますが、このほかに運輸省所管の港湾もございまして、この方も実質的には漁船なり漁業なりが利用しております。したがいまして、海岸線の長さも、他の島よりは倍あるいはそれ以上ございますが、一港当たりの平均の海岸線の長さというふうなものを、港湾も含めて考えてみますと、まあそれほどほかの島と著しい差はなかろうということで、現在計画しておりますこの山漁港の計画につきましては、ここは非常にいい湾でもございますので、一応この山漁港をこの島の基幹漁港という考えで計画的に整備を進めておるわけでございまして、漁船につきましても、五十七年までに現段階より一ランクか二ランク程度は上がっても十分利用できるであろうと私どもが考えました深さなり規模なりで、これは地元の町なりあるいは漁業会の方々とも十分御意見を伺った上でやっておるものでございます。
  160. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 一般港湾の中に逃げ込んでもらっては困りますよね。港湾は港湾ですよ、それは。それは確かに港湾が漁港のことを兼ねて船だまりがあるということは、私は結構だと思うんですが、それがあるからここはこれでいいんですということにはなりませんよ、これは。漁港なら漁港らしいやっぱり設備をしてもらわなきゃならぬわけなんだから。だから、そういう徳之島というあの地域の条件を考えてみた場合に、私は亀徳とか平土野という港湾があるからそれで結構ですということじゃ困ると思うんです。だから、あなたが後から答弁をされたところの基幹漁港として積極的に開発するというなら、そういう方向であるということを明確にしてくださいよ。その点はそういうふうに理解してよろしいですか、どうですか。
  161. 福地辰馬

    説明員(福地辰馬君) ちょっと港湾もあるからよろしいというふうに御理解されたといたしますと、それは私のお答えの仕方がまずかったと思いますが、港湾を利用する船は、重複投資は不適当であろうということで申し上げまして、漁港といたしましては、あくまでこの山漁港を徳之島の基幹漁港として今後も整備してまいりたいと、こういうふうに存じておりますので、御了承いただきたいと思います。
  162. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ計画はわかりました。  それで、いまやったところの一問一答やいろんなお話から伺うと、奄美の漁港というのはこれからますますやっぱり整備をしていかなきゃならない。そうしないことにはやはり水産業の振興策の大きな欠陥になってしまうと、振興策の。  そういう点から見て、私がまたもう一つ理解できないのは、そういうものがありながら国庫補助が十分の十から十分の九・五に引き下げられたというのは、これまた私は理解できないんですよね。漁港のこれからの比重の大きさということを考えていってみた場合に、引き下げられている。それはなるほど説明は、三年間は現行のままだと書いてある。これを引き下げたところの最大の理由はどういうことですかね、それなら。これはこれからやっていかなきゃならぬのに、ここはぽんと引き下げられているんですね、これ。どういうことですか、これ。
  163. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 漁港の外郭施設等につきましては、いままで十分の十といういわば最高の補助率であったことは御承知のとおりであるわけでございますが、復興十年、振興十年、さらに振興開発の五年と経まして二十五年にも相なったということで、一つの見直しの時期になったということが一つの理由でございます。  そういたしまして、また、内地離島などにおきましてもかつてそういった高率の助成を受けておった時代がありますが、これも助成をある程度続けたことによってある時期に見直しをして、これを引き下げたというような事例もございまして、一つの見直しの時期になったということでございます。しかし、見直しという方向はとりましたものの、向こう三年間はやはり現行の十分の十で置きまして、この間鋭意整備のための努力も進めていこうと、こういう両様の構えをしているわけでございます。
  164. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはちょっと局長、答弁で説得力に欠きますね、率直に申し上げて。  見直しの時期がきたから引き下げたっていったって、見直しの時期がきて、大分農業基盤の整備などもうんと上げてもらったんでしょうが。それがまだ足りないからという判断のもとから私は上げてもらったと思っているんですよ。だから、見直しの時期がきたから、一般離島がそうだからということで、右へならえしましたというんじゃ、そこは私は答弁にならぬと思うんですよ、率直に申し上げて。片一方は上げているんだから、どんどん。しかも、いままでのやりとりの中からも皆さんお感じのように水産業を振興するということはあなた方も三本柱の一つにしているんでしょう、方針の中に。それで、それを水産業振興の一番かなめになるところの漁港の補助率は四年からあっちは引き下げるというんじゃ、これはいかがなものでしょうかね。これは余り言いたくないですけれども、やっぱりいろいろな兼ね合いの中で私は大分ここは飛ばっちり食らったと思って見ておるんですよ。その点では水産庁の皆さんに気の毒でしょうがないんですが、まさか水産庁の皆さんがこのことに合意されたとは私は思いたくない。それだけに私はやはり引き下げられるにしてもこれから三年間の間にもっともっとこの漁港を精力的にやはり整備をするところのものは、これはもうあなた方の責任だと思うな、これ。  その約束はしてくれますか。
  165. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 今回御審議いただいております法延長の後の新しい五カ年計画をつくるに当たりましては、ただいまの御指摘、それからまた今後とも水産庁にもさらに一段と御指導をいただきまして、まず地元の鹿児島県で立てます計画案の段階からこの充実について努力を払ってまいるという方向で努力をいたしたいと考えております。
  166. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点はぼくは大臣ね、ぜひ考えてもらいたいと思うんですよ。その理由はもうせんきくしません。いまの答弁では答弁になってないんですから、これは。だれだってみんなわかっているんですから、これは、聞けば。  しかし、本当に策定をされたところの計画の中で水産業を興そうとするなら、これは引き下げられたという現実の上に立てば、もっともっと集中的にこれはできるところの間に予算を集中してでも、投資してでもやはり漁港の整備をしていくという積極的な私は姿勢を示してもらわなければ、せっかく皆さんがつくられたところのこれが泣きますよ、方針が。その点はやはり大臣としてもお約束できますね。いかがでしょう。
  167. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) ここに至りまする諸般の事情の存することは大体御賢察が願えると思いまするが、でき得るだけ御要望にこたえるように努力をいたします。
  168. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時には大臣、威勢のいい答弁をしてくださいよ。できるだけってね、中野時代にこういうものを前向きにやったんだというものを残すように。その方がいいですよ。  次は、やはり関連をして水資源の問題について若干お聞きしたいと思うんです。  この水資源の問題は部門別構想の中でも非常に強調されておりますね、皆さんがおつくりになったところの。奄美は一カ月に三十五日雨が降ると言われる多雨地帯なんです。しかしながら、やはり島嶼ですから降ったものはほとんど海に流れてたまるものがない。こういうことから雨量の割合には水の問題というのは、市民生活あるいは産業振興の上から見てもこれはきわめて重要なやはり今後の課題だと思うんですよ。したがって、私は、この水資源というものが、今後の五年にわたるところの計画の中では特に重視されてもらわなければ困ると思うのです。これはサトウキビ農業自体が水を一番要求します。あるいはまた市民生活、あるいは先ほど来私が強調してまいりました観光産業ということも考えるとすると、水の使用量というものは相当やはり高まってくるものだと判断しなければなりません。そういう点、特にまた喜界、与論、沖永良部島というサンゴ礁の地帯ですね、これは御承知のように地下水しか活用できない。そうすればやはりこの地下水の水資源をどうするかということは大きな課題だと思うんですがね。こういう問題について国土庁としては一体どういう今後対処しようとお考えなのか。まずそれを伺います。
  169. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 水資源の重要性と、それからまた水資源の現在の問題点については全く御指摘のとおりでございまして、私ども承知しておりますところでございますが、奄美群島はせっかく多雨地帯でありながら、降雨は梅雨期や台風時期に集中しておりまして、加えて地形、地質の特殊性——ここで二つほど例を挙げますと、大島本島と徳之島におきましては、地形が急峻で、しかも河川の延長が短いために降雨後直ちに海へ流出しておる。また喜界島、それから沖永良部島、さらに与論島におきましては琉球石灰岩から成るという特質からいたしまして、降りました水が地下に直ちに浸透しやすい、こういったような地形、地質の特殊性、加えまして、水利施設の不備などによりまして生活用水あるいは農業用水の確保につきまして従来必ずしも十分ではなかったようでございますが、このためということで名瀬市と徳之島町におきましては畑地帯総合土地改良事業とそれから水道水源開発施設整備事業、これをあわせまして多目的のダムを建設中でありますほか、昭和五十三年度におきましては大島本島の北部の農業用の水資源開発調査などが実施されておるわけでございます。そのほか、これもまたいま御指摘がありました大切な農業用の地下水の調査につきましては、五十四年度に行おうということで予定をされておるところでございます。今後におきましても島ごとの水の賦存状況というものを調査検討いたしまして水資源の開発に努めてまいりますとともに、生活用水や産業用水といたしましての有効利用を図っていく必要があるというふうに考えている次第でございます。
  170. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ちょっと私は、もっと具体的にこの問題について状況をお話をしながらきちんとした御答弁をいただきたいと思うんですがね。  県の水資源開発計画というのを私もプリントで見ました。しかしこれは何かというと、五十五年度に全県の長期水需給計画を策定するというんですよね。五十五年度から始まるというんですよね。これは再来年の話ですね。そうして、農林省もいま話を聞きますと、地下ダム開発調査をやると言って、今度三千万から予算措置をしたというのですがね。そのことは結構なことなんですけれども、ただ御承知のように、地下水ダムというのは沖繩が復帰したときに宮古島のものをずうっといま調査をしているでしょう。もうすでに六年かかってまだ調査中なんです、これ。まだこの開発の問題の具体的な手だてということを私は余り知らない。きわめてこれは長くかかるところの問題なんです。ところがこれだけ、たとえば奄美の五島のうちの三島は地下水に頼らなければならないという状況なのに、県の方も県の方だけれども政府の方も政府の方で、いまから調査をしますということになると、一体何年かかるんでしょうかね、これ。百年河清を待つとは申しませんけれども、少なくともこれから十年先の話でなければ、これは具体化していきませんね。一体そこのあたりはどういうことになるのかという問題がさらに出てくるんですがね、この問題についてはですよ。これからやりますというかっこうの話なんです。  また私は、この県の調査計画を見てみましたが、たとえばまた、笠利町にダムをつくると、こう出てきておるのです。笠利町は一番、御存じのように、奄美空港のあるところで、これはもう平たんな丘陵地帯ですよね。そこで一体ダムをつくるといった場合、そのダムというものは大体有効貯水量というのは、これはしれておりますね。それは本当に農業用水、飲料水に役立つのかどうか。ここらあたりがいままで国土庁が指導してきた、農林省が指導してきたところの一つの行政単位のところの水資源の開発という、こういう物の考え方から、もっと地域を広げたところの総合的な水資源の開発というところにこれは物の考え方を切りかえて、本格的なやっぱり水資源の開発をしない限り、私は、つくった、また足りなくなった、またつくるというかっこうになってしまうと思うんです。これは皆さんも御承知のように、徳之島には十二のダムがありますよ、ちっちゃなダムが。その中にはもうほとんど水をためていないところもありますよ。だから、先ほど局長から答弁があったように、これでは本物にならないからと言って、ようやく徳之島に県が主体になって神之嶺ダムというのをつくろうと言っている。あるいは伊仙の中に中部ダムという大きなもの、本格的なものをつくろうとやっているんです。これは言うならば従来の町村という行政の枠から越えて、徳之島全体で水資源を積極的に開発して、大きなものをつくって、それが農業用水になり水道水になっていくという、こういうことに発想を切りかえない限り、私はこの水資源の開発というものはいままでのような惰性ではだめだと思うんです。したがって私は北大島の笠利の問題についても、これは県の計画では行き詰まることは決まっているんですよ。むしろ隣の竜郷町で水は余って、あれだけ大きな川の水が海にて捨られておるのですから、そこの水をやはり積極的に大きな開発をして、二つの町にまたがるように、ひいては隣の名瀬市の飲料水にもなるような本格的なやはり水資源の開発ということを皆さんが指導されなければだめだと思うんですよ、これは。徳之島にしてもしかりなんです。先ほど申し上げたように、徳之島は一番奄美農業の宝庫だと言われている、ウクライナだと。しかしながら、これはまだ農業は十分なっておらない。それだけにまた積極的な土地改良が、皆さんも御存じのように行われておりますね。これを完全に行うとすると三千六百ヘクタールの耕地ができるんですよ、これがずうっと進んでいきますと。そうなりますと、そこに水が少なくとも千八十万トン要るんです、水が。ところが、現在のものは、たくさんダムはありますけれども、合わせて百九十万トンでしょう。これでは片一方で幾ら言っても、農業基盤整備だとこう言っても、肝心かなめの水利が伴わなければ、これは効果は十二分に発揮しませんよ。だとするならば徳之島全体の水利の中で、あの島全体で水資源をどう開発するか、こういうやっぱり巨視的な立場から皆さんが指導をして水資源の開発をさせるという姿勢に立たない限り、従来の惰性でつくるんでは、つくっては物の役に立たなくて、また大きなものと。私は結局のところ、金がむだ遣いになってしまうと思うんです。したがって、やはり今後の水資源の開発ということを考えるならば、そこまで皆さんがやっぱり目をはっきり開いていただいて、そういう立場から私は指導していただきたいと思うんですがね。そのことについてどうお考えになりますか。
  171. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいま幾つかの問題が御指摘があったわけでございます。すなわち、これからの長期水需給計画というのは非常にまた急がれなければならないところが五十五年以降ということでは間に合わないではないかという御意見でございますが、これなどはもちろん、長期の水需要というものを判断しながら、水需給計画というものを立てる作業は鹿児島県として続けてもらいまして、当面この改正法成立後、早速作業に入ります計画におきましては、できるだけこれを前向きに取り上げるという姿勢を県の方に求めたいと思いますし、それからまた笠利町のダムを例に挙げて仰せのございましたように、これからはすべての面について広域的な物の考え方を取り入れていかなくてはならない時代でございます。この点につきましても鹿児島県の方で十分考えてもらうように話をしてまいりたいと考える次第でございます。あわせまして、御指摘の点は十分踏まえまして計画策定に当たりたい、こう考えておる次第でございます。
  172. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はこの種の計画、いろんな指導というものは、やっぱり相当本庁の方で大きな立場から指導していただかなければ、ただ県から上がってくるものを認めるんでは、私は何も中央官庁の意味なさぬと思うんですよ。それでいて中央官庁というのは要らぬときには要らぬくちばしを入れるのが通例なんでね。こういう大事なときにこそ、私は入れてもらいたいと思うんです、率直に申し上げて。したがって、私はやはり奄美の水資源の開発ということを将来の問題として考えるとなれば、いままでの小さな町村の枠を飛び越えて、二つの町村、三つの町ぐらいにまたがるものの立場からどうするかということを考えていただきたいんですよ。その点はひとつ検討していただけましょうかね。どうですか、大臣。
  173. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) やっぱり振興という名に恥じないように、特に水資源ということは非常に重要な問題でもありまするから、今後大いに、しかも積極的に推進するような努力をいたしたいと思っております。
  174. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは漁港と違って、大分大臣が前向きに言っていただいたから、ぜひともひとつ示していただきたいと思うんですがね。  ただ、そのために一つやっぱり隘路があるんですよ、これ、現行法では、この法律の中に。御承知のように、この法律の第二条の開発に関するところの事項には、肝心な水資源の開発はないんですよ、これは。沖繩の開発法にはあるんですけれども。ないんだがどうするんだと、こうお聞きしますと、第二条第二項の「生活環境施設」とか、第四項の「農林漁業、商工業等」の「等」、これを使えば水資源の開発はできますという話なんですけれども、これはやっぱり積極的な意欲の面から見て、私はいかがだろうかと、こう思いますよ。  加えて、大臣ちょっと聞いてもらいたいんですけれども、法六条に別表があるんです。ところが、この水資源にかかわるところの水道のところを見ますと、残念ながらこれが水道法の三条の三、簡易水道ですよ。簡易水道だけ特別に補助をしますとある。ところがまたこれは部落別ですよ、この簡易水道というのは。二つの町にまたがるような広地域のものでは、これでは率直に言って間に合わぬのです。この現行法ではできないんです。それは補助率を一般の法律並みにやれというならそれは別ですけれども、財政の貧困なところなんだから、やっぱり特別措置をしてもらわなきやならない。そういう点から見ますと、残念ながら大臣が前向きのお答えいただいたんだけれども、現行法ではどうにもできないところの隘路がある、率直に申し上げて。その点で非常に不安なんです。しかし、私は、ここまで来ればここでこれを変えろといういまむちゃなことは言いませんけれども、この問題の改正も含めて、今後やっぱり水資源の開発の姿勢というものについて少し見直してもらわなければならないと思うんですよ、これは。そういうひとつ検討をしていただきたいと思うんですが、まず検討は、いかがなものでしょうか、それは。
  175. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいまの法の条文の中に水資源の確保という文言がないということにつきましては、実は本委員会に至ります前にも宮之原委員からすでに御指摘がございまして申し上げたところではございますが、法の条文にはございませんけれども、そのもとでつくっております現行の振興開発計画におきましても、水資源の確保という一項目を設けまして計画を策定しているということで一方は御了承いただきたいと思いますとともに、今後の問題につきましては、これまた振興開発計画の改定に当たりましてもっと積極的な姿勢で水資源の確保に当たる。これは県の方もそういう姿勢でまいるはずでございますし、私の方からも重ねてこれは注文してまいりたいと思う次第でございます。  また、補助率の問題について御指摘がございました。簡易水道については全国並み以上の補助率が設けられているが、一般の上水道についてそのような仕組みにないという御指摘でございますが、これはやはり奄美振興開発するためということではございますけれども、どのような事業について補助率を高めていくか、どのような事業は全国並みでもよしとするかということは、やはり彼此勘案し、また選択をする問題でもございますので、そういういままでの歴史的な経過もあるわけでございますので、この点は御了承いただきたいと思います。しかし、事業自体に対しましては積極姿勢をもって当たってまいりたい、こう思うわけでございます。
  176. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 検討課題として皆さんに宿題を残しておきたいんで、これ以上言いませんけれども、余り法律で、これで救われるんだと言ってみたって、これは納得できないんですよ、これね。歴史的な経緯があるからここまで来ていると思うけれども、いま言ったところをもう一歩破らぬことには本物になっていかぬから私申し上げておるんですよ、これは。だから、そこのところはやっぱり謙虚に受けとめてよ、皆さんはね。それは一般法ではできないことはないんですよ。だれだって知っておるんです。けれども、こういう特別の補助をするということ、それ自体特別措置法なんだから、だから、簡易水道からもう一歩広げた広地域の適用ができるように、すでに隣の沖繩ではやっているのですからね、それが奄美ができないという法はないんだから、それを前向きにひとつ検討してもらいたいと思いますよ、これは。  以上私は、この開発計画と予算とを関連をさせながらいろいろお聞きしたんですが、率直に申し上げて、開発計画はごっついのはここに出ておるけれども、予算は必ずしもそれに裏づけられているとは言えない。あるいはまた、開発計画にありながら、法体系から言えばどうかと思われる点もある。これは過渡的な経緯の問題でございますから私はそれ以上申し上げませんけれども、やはり皆さんが、少なくともこれが制定をされて、閣議で今後五カ年間の開発計画というものを決められた場合は、この開発計画に沿ってこれを実効あらしめるために、ことしはどうするかということで限られた予算を集中的にやっていただいて、五年後には、この重点がここまで行きましたと、横ばいでございますと言われぬようなかっこうでやっていただきたいということをこの機会に強く申し上げておきたいと思うんです。  次は、教育関係の問題についてお尋ねしたいと思いますが、文部省関係、来ておられますね。——法第二条第六項に、従来は「文教施設の整備に関する事項」というのがございましたね。これを今度は「教育及び文化の振興に関する事項」というふうに改められる。そのこと自体は私は結構なことだと思うんですがね、これこういうふうに変えたところの最大の理由というのは何ですかね。これは文部省よりも国土庁の方がいいですか。
  177. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) このたびの法改正に当たりまして、いま仰せがありましたとおり、従来の「文教施設の整備に関する事項」というのを「教育及び文化の振興に関する事項」と改めましたのは、従来の表現が、どちらかと申しますと、いわゆるハードウェア的なものでございましたのに対しまして、これにソフトウエアも含めまして、幅広く教育及び文化の振興を図ろうと、そういう趣旨でございます。したがいまして、施策といたしましては、学校教育、社会教育、社会体育など広く教育の向上を図りますとともに、またこの群島の風土や伝統に培われましたところの文化財につきましても保護、活用を図るなど、文化の向上にも努めてまいりたいと考えるわけでございます。  なお、国土庁といたしましては、昭和五十四年度から新たに地区振興センター——ミニセンターというものでございますが、これの設置に対する補助制度を新設をいたしまして、このセンターの活用によりまして、生活、文化活動その他総合的な地域活動もまた推進してまいりたいと、こう考えているような次第でございます。
  178. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで、文部省の調査をもとにしてここに集計をされておるので、文部省自体は承知だと思いますが、県のこの調査報告書を見ますと、五十二年五月一日現在で学校の施設、設備の状況が、校舎の不足率、屋内運動場の不足率、プールの整備率の低さは、奄美全国平均よりもはるかに劣っておるということがこの数字の中で明白に出ておるのですね。こういうような現実を踏まえて、今後五年の間本法改正されていく。どういう克服策を文部省としてはお持ちですかね。これは一番、やっぱり文部省の方が所管ですから、大事だと思いますのでね、そのことをひとつお聞かせ願いたい。
  179. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) いま、県の方のデータでもわかるように、学校の施設、設備、プール等の整備が全国的水準から見て立ちおくれていることは御指摘のとおりであります。文部省といたしましては、これらの施設整備をできるだけ全国並みに近づけていくという努力をしなきやならないということで、たとえば小、中学校の施設、設備につきましては、来年度は予算的にも前年度の比較四六%の施設の予算を確保いたしまして、一般的な施設の伸びは二九%でございますが、奄美群島につきましては四六%の予算措置を講じているわけであります。したがいまして、それぞれの市町村計画される学校の施設、設備の整備計画については全面的に協力して整備を推進できるというふうに考えている次第でございます。
  180. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで高石さんね、いままでの政府の態度を見ていると県や地元から上がってきておるから、それを認めるか認めぬかというのが皆さんのお仕事なんですよね。私はそういう状況の中ではこの格差というものは埋まらぬと思うんです、これは。この不足状態。というのは、やはり町村の負担分が大きいようになるんだから、きわめて財政の貧困な町村が多いわけですからね。そこのところを私はやはり文部省の方でむしろこれだけやっぱり不足率、いろんな面で落ち込みがあるわけなんだから、引き上げさせるところの積極的な皆さんの指導というのがなければ二年たっても三年たっても同じことにしかならぬと思うんですよ。そこのところに対するところの積極的な行政的な意欲というのはありませんか、どうですか。聞かしてくださいよ。
  181. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 御指摘のように、国といたしましては他の一般の場合よりも予算を十分に準備しておりますので、したがいましてそれぞれの市町村に対して計画の相談があれば積極的にそれらの整備を図っていくということをしていきたいと思うんです。過去五年間の大体の整備計画を見ますと、屋内体育館を中心として全国よりもかなり高いレベルで整備が行われてきているわけでございます。あと不足教室の解消、それからプールの整備、これがおくれておりますので、これにつきましては全国的な水準はこうであると、できるだけ早くその水準に到達できるような整備をしてもらいたいということを県を通じて指導してまいりたいと思います。
  182. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは学校教育の分野だけじゃなくて、社会教育の分野の問題あるいは文化財の問題にしてもそうだと思うんです。非常な立ちおくれ、ときにまた文化財は地理的な条件からして独特のものがありながら、たとえばいろんな貝塚、いろんなものが発掘されながら、なかなかそれが適切に処理をされておらないという部面等で非常に大きなやはり私は問題点があると思っている。そこのところあたりも県からあってどうだということじゃなくて、むしろやはり皆さんの方で積極的にこの点については指導していただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。よろしゅうございますね。
  183. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) はい、わかりました。御指摘のとおりの指導をしてまいりたいと思います。
  184. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは今度は国土庁に聞きますかね。補助率の問題でちょっとお聞きしたいことがあるんです。この補助率農業基盤整備の問題を中心にして既存のものは四つの事業新規のものが二事業、それぞれアップされたということについては私どももこれは評価をし、関係者の努力に対して感謝しておるんですが、実はこういうアップ分で、国の支出というのは、国庫負担は幾らふえることになりますかね。
  185. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) その数字はちょっと手元にございませんので、お答えいたしかねます。
  186. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私の資料によりますと、これは九億三千五百十万六千円という数字が出ておるんですが、間違いございませんか。これは保岡さん御存じですか。県の……。
  187. 保岡興治

    政府委員(保岡興治君) それは今後予想される事業量との関係もあろうかと思いますが、いろいろ見込みが立てられるんで、先生御指摘の数字もその一つの場合の国庫負担の割合であろうというふうに思います。
  188. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 実はこの数字と数字の配分をめぐって県と地元の間で若干論争しているところがございますね。それは御報告受けておりますかね。もう三月県議会ではこの額で通っているんですよ、県の方は、国庫からこれだけ来るということで。実は県で問題になっておるのはこの九億三千五百十万六千円のうち三億六千四百七十七万二千円は、これは県が地元へ配分するのを取っちゃって——言葉は悪いですけれども地元の方には、これは五億七千三十三万四千円しかいろんな地元負担の軽減にならないというかっこうで配分されておるんですよ。だから、これは法律の趣旨から言って、これは県の方でピンはねするというのはけしからぬということで、いろいろ県議会でも問題になっているところのことなんですがね。これ国土庁関係者御存じないんですか。三月県議会ですからあると思いますがね。
  189. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) そのような、このことをめぐりまして紛糾をいたしたというようなことは私ども実は存じておりません。むしろ国の予算がほぼ決まりました後で県の方針として聞きましたところによりますと、むしろ地元の負担軽減を図るために今回国庫補助率の引き下げが行われなかった土地改良総合整備事業とか、農村基盤総合整備事業というようなところにつきまして県費の継ぎ足しを行って、沖繩県離島並みに地元負担の軽減を図ってまいりたいということとか、あるいは団体営の普通農道整備事業につきましては国の補助率引き上げと同じく五%の県費の継ぎ足しをしていこうとか、あるいはさらにサンゴ礁排除事業につきましても一〇%の県費の継ぎ足しをしていこうかと思うと、そういうことによって地元負担の軽減を図ろうかと思うというような話を聞いておるところでございます。
  190. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私の資料によりますと、それはいいことだけ皆さんに報告しておるわ、県は都合のいいところだけね。確かにあなたがおっしゃったように土地改良総合整備で県が約一億ぐらい出していますよね。それから団体営農道整備で六千七百三十三万、それからサンゴ礁排除で三千九百九十万出している。ところが、一番目玉であるところの畑地帯の総合土地改良では、県の負担分は五億一千八百七万円ですね、これは減にしておるんですよ。そして、ずうっと差っ引いてみますと、県の減分が三億六千四百七十七万になっておるんですよ、これ。あなたが聞いていたというのは、県がこれだけサービスしましたよという、サービスのところだけあなたの方に報告している、これは。だから、県議会で地元の選出の県会議員の皆さんが与野党は問わず、これはおかしいじゃないかと、本法の趣旨から見るならば、せっかく努力をしてもらって国庫補助の補助率アップしてもらったんだから、それは地元に返っていって、地元の軽減ができるということでなければ、これは困るんじゃないかと。したがって、それをさらにふやさないとするならば、まだ国庫補助の上がらなかった——まだ十六要求して、六つしか上がってきてないわけですから、その残りのところみんなふやしますというなら理屈がわかると。しかし、これはわからぬということで、いろいろありまして、県議会ではまあまあという形で予算は通ったみたいですけれども、私はこれはいかがかと思うんです、率直に申し上げて。だから、おわかりないようですからね、もう少し私の言っているのが事実かどうか調べていただいて、そういうことのないようにしてもらわなければいけませんね。都合のいいところだけ皆さんに報告されたんじゃそれは困りますよ。その点はやっぱりきちんと善処していただけますかね、調査して。
  191. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) よく実情を聞いてみたいと思います。
  192. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、そのことについて一つだけ言っておきましょう。  ですから、地元から言わせれば、県営の畑総の場合でも、これは現在の七〇%が七五になっていくわけですから、県が一五、地元が一〇という配分率になっちゃっているわけです。だから、地元から言わせれば、いわゆる配分五%増分をみな地元に来るとするならば、地元は、現在の地元負担の一〇というのは、さらに六・二五ぐらいに下げられることができるわけですよね、これは。ところが、県は県のところにも歩どまり置いとるものだから、こうなっちゃって、おかしい、ピンはねじゃないかという話まで出てるわけなんですから。私は、あんな貧乏なところに対して余りみみっちいことをされたんじゃ私は困ると思いますよ。そこのところを私はきちんと指導してもらいたいということだけを、資料お持ちでないですから、申しておきます。  次は、気象庁にお聞きしたいんですがね。気象庁は、一昨年の沖永良部台風の教訓からだとは思いますけれども地元要請にこたえて、名瀬測候所を地方気象台へ昇格させようということで予算要求をされましたね。最終的にはこれは実現しなかったようですがね。その皆さん方の積極的な意欲を私は評価しておるんですがね。今後はどうしようというお考えですかね。
  193. 関口理郎

    説明員(関口理郎君) お答えいたします。  御指摘の名瀬測候所の問題につきましては、奄美地方における気象災害を防止、軽減するための気象情報の提供の充実という問題になるかと存じますが、御指摘の、一昨年の沖永良部の台風の教訓を踏まえまして、名瀬測候所におきましては、気象衛星「ひまわり」の受画装置を設置すると、あるいは地域気象観測網の観測点を増設するというようなことでその機能を強化してまいりましたが、それとともに、台風の予報作業実施要領などの見直しによりまして、的確かっ迅速に実施できるよう、措置を昨年までにいたしてまいりました。さらに、昭和五十四年度におきましては、同測候所に予報官二名を増員いたしまして、また予警報の一斉伝達装置、あるいは地域気象観測データの即時入手等を可能にいたします宅内装置、こういうものの整備を行うことによりまして、体制、機能をさらに強化して対処していきたいというふうに考えております。このことによりまして、災害防止のためには十分名瀬測候所がその役割りを果たすことができるというふうに考えております。以上でございます。
  194. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、あれですか、十分できるということは、地方気象台への昇格を考えたけれども、もうそれでできたんで、それはもうやめるということになるんですか。
  195. 関口理郎

    説明員(関口理郎君) そのとおりでございます。
  196. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ぼくはそれはおかしいと思うんですよね。まるでいいかげんにあなたは、私は気象庁は予算要求をしておるなあとしか思えぬですよ、そういうお話だったら。だってあれでしょう、あなた方は、予算要求の中では予報官を三人増出したんでしょう、それから新規の観測器材の購入の要求、それから防災気象官というものの新配置を求めたんでしょう、予算要求の中によ。ところが、結果的には予報官が二名になった、それで新規の観測器材の購入、これが認められただけなんでしょう。要求からするとはるかに低い。それでも事足りるといういまの答弁なら、あなた方は予算概算要求のときにいいかげんなことを要求したということになりますね、そうでしょう。何としても、沖永良部台風の教訓に学んで、自分たちとしては地方気象台に昇格させてもらいたい、そのためにはこういう人間が必要だということで要求されたんでしょうが。それは単なるゼスチュアで、これだけ、二名とった、器材購入認めてもらったからこれで満足だということは、いいかげんなあなた方としては気象台への昇格のゼスチュアだけ示したものだと受け取っていいんですかね。これは重大な問題ですよ。
  197. 関口理郎

    説明員(関口理郎君) お答えいたします。  御指摘のように、予算要求すべてが認められたわけではございませんが、地方気象台におきましては予報官四名のところもございますし、三名のところもございます。そういう意味で、指定地区測候所とわれわれ名瀬測候所を呼んでおりますが、そこに二名増員が認められたということは、非常な戦力の強化につながっていると思います。もちろん予算要求におきまして名瀬の地方気象台昇格も要求したわけでございますが、現在の非常に行政簡素化という時点におきましては、スクラップ・アンド・ビルドというようなことも踏まえて対処しなければいけないわけでございまして、これだけの機能強化が行われたことによりまして、災害防止には十分対処できるというふうに判断したわけでございます。
  198. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも私はそれ納得できませんね。それは従来よりも戦力の強化になったということはそのとおりでしょう。しかしあれでしょう、大体地方気象台の、特に防災気象官というのは、これは一番の、天気予報やいろんなものの気象観測の中心的な人物でしょう。そういうものはだめになっといてね、話聞くとだれかに兼務させるというんでしょう。あるいは予報官にしても、南大東島、宮古、石垣というところあたりは四名きちんと置いておりますよ、これはね。それで皆さんは三名要求して二名になって、まあそれで三名になったかどうかしりませんけどね、それで満足しますというのは、これはのど元過ぎれば熱さ忘れるというのがありますけれども、私は災害委員会でもおたくの長官から、この沖永良部台風の問題でいろいろ聞いた。それで来て、方針としては気象台への昇格というものに努力しますということを明確に言ってる。それで今度のものでだめになったら、もうあきらめて来年はやりませんというんなら、これぐらいあなた方、住民をごまかすものは何にもないですよ、ほかに。ことしだめになったら、さらに充当してそれやろうというなら話はわかるですよ。これぐらい私は住民をペテンにかけるところの仕事はないと思うんだ、やり方、姿勢は。従来より戦力になったということは事実だ。しかしながらあなた方は、ぜひとも名瀬の測候所を地方気象台に昇格させるということが沖永良部台風のあの教訓に学んで重要だと認識したから要求されたんじゃないんですか。それ、いまでもあれはゼスチュアだという理解のもとにやっておられたんですか、どうなんですか、それなら。
  199. 関口理郎

    説明員(関口理郎君) 御指摘の点でございますけれども、決してゼスチュアで要求させていただいたわけではございません。昨年、御指摘のように地方気象台昇格ということを要求したわけでございますが、その経験を踏まえまして、さらにその要求した中での認められた事項、そういうものを踏まえまして、今後は地方気象台昇格の要求をすることなく対処して、十分住民の御要望におこたえできるというふうに判断しているところでございます。
  200. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は納得できませんね、それは。これぐらいペテンにかけたものないですよ。あれだけの陳情団に皆さんは、私どもは今度だめだったら次でもやりますと、こう何回あなた方の責任者言ったですか。それで委員会に来ればしゃあしゃあとして、もうあれのままでがまんしますという話ではね、これは困りますよ。第一、沖永良部台風の一番決定的なミスというのは、あなた方の予報ミスと通報の、気象情報のおくれでしょうが。これを、これぐらい増員しただけでこれは解決できませんよ。したがって、きょうはあなたは課長ですから何も言いませんけどね、日を改めて、そういう態度なら、おたくの長官に来てもらいますから、それはきちんと帰って伝えておいてくださいよ、そういういいかげんなことなら。
  201. 関口理郎

    説明員(関口理郎君) 先生のおっしゃったことは、帰って上司にお伝えします。  さらに、御指摘の点の予報ミスと通報のおくれでございますが、予報のミスにつきましては昨年、先ほどもちょっと触れました「ひまわり」衛星によって常時監視、これは台風が三百キロ以内に近づいたようなときには毎時の観測をする。さらにそのデータを即時に入手できる受画装置、これはどこの気象官署にもございません受画装置を名瀬の測候所に備えております。さらに、予報作業の見直しによってこれを十分伝達するようなことも、また名瀬の測候所にございますデータの情報を利用して、必要なときには名瀬独自で台風の情報が出せるというような処置もしてございます。通報のおくれに関しましては、先ほど申しました一斉伝達装置、これは回送装置と呼んでおりますが、これによって十数ヵ所を一遍に呼び出しまして、迅速的確にお伝えできるという装置が来年度導入される予定になっておりますので、この点もお含みおきいただきたいと思います。
  202. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これ以上言いませんが、いまあなたが話したところの人工衛星をつくって云々というのは、もう去年の八月で方針として出しておるんですよ。その後にあなた方は気象台への昇格の問題を要求して出しておるんでしょう。それをやっておいて、いま尋ねられたらあたかもその後にやったみたいなあなた答弁しておるけれども、ごまかしですよ、ごまかしもはなはだしい。これはもう絶対承服できませんから、それだけ申し上げておきます。  次、大蔵省にお聞きをいたしたいと思うんですが、それは振興開発基金の問題なんです。  今度の改正案で、地元の要望にこたえて、保証業務に対しても国の出資の道を開いていただいたことは、もう私どもも高く評価をしておるところなんです。  それできょう私がお尋ねしたいのは、その保証業務の基金となっておりますところのアメリカからの移転されたところの債権の問題ですね、そのことなんです。この承継債権とも言うべきものが五十二年度末の回収累計額は、資料によりますと三億六千一百四十四万八千円となって、大体回収率七〇%になっておるんですね、地元の基金の資料によりますと。他に免除額が七百八十五万あるわけで、あと残りこれから回収をさらに続けなきゃならないということになってまいることになりますね。この数字は間違いございませんかね。
  203. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) 間違いございません。
  204. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ただ問題は、残されたところのこの問題の中の主力は何と申し上げてもその中のガリオア物資代ですね、この問題だと思っておるんですが、実はそのうち御承知のように八千七百一万五千円という部分のガリオア物資代が承継する以前からこれはおかしい、持てないというクレームの申し立てが来ておるわけですね、続けられておるわけですね。これは私、申し立て理由をずっと見ますと、なるほどと思えるところが相当あるわけなんですね。これはいわゆる占領中のことであり、あるいは混乱期、米軍占領時代である。たとえば食糧会社等を見ると、粗悪品で値引き販売して損を生じたとか、あるいは大島漁業協同組合からの見ますと漁具として不可能な漁網、腐食したロープなどが入っておったとか、あるいは農業協同組合から申しますと品質不良の農業機具、実際に合わないところの農機具などもみんな代金に加算されておる、   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕 こういうこと等で、これは支払い不能なんだという形でクレームの申し立てがずっと続けられておるんですが、私は率直に申し上げて、この中身を見ると無理ならぬところがある。しかも復帰前のことで、当時受け取ったところの住民から見れば、アメリカの救助物資だという理解に立ってもらっておったという経緯もあるわけなんで、これをやはり今後債権としていつまでも残しておくということが果たして妥当なのかどうか、その点大蔵省としてはどうお考えになられておるのか。私は今度二千万の融資の道をつけられたということも、そのこと等も勘案されながら実は配慮されたのかとも理解をしておるのですけれども、このことについてどういうお考えか、お考えを聞きたいのです。
  205. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) ただいま先生から御指摘のように、クレームの内容はガリオア物資の数量の不足であるとか、あるいは粗悪品の混入等ということでございますが、実は奄美群島本土復帰しました直後に、そのクレームの内容につきまして一たん調査を行ったことがございます。しかし、その段階ではまだ十分その内容について確認できなかった、こういういきさつがあったわけでございます。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕 現時点におきましてそれらの調査、それらの事実の確認ということは大変なかなかむずかしい問題かと思いますけれども、クレームの申し立て人のクレームの内容が真にやむを得ないものなのかどうか、さらにこの事情の確認をしなければならないという点もございますし、また同時に現在まだ過去の債務の返済を履行しておる、こういうものとの権衡をどう考えるかといった問題もございます。したがいまして、こういう点を十分考慮しながら、関係機関とも十分協議して適正な処理について考えたい、こう思っております。
  206. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点早急に結論を出していただいて、適正な処置をしてもらいたいと思うのです。私いまちょっと古い新聞を持って、これは昭和四十三年九月三十日の朝日新聞の記事ですけれども、実はそのときからおたくの前任者になるのですかね、大蔵省銀行局中小金融課藤川鉄馬係長談として、「四十八年度末までに七〇%回収できればいいと思っている。気の毒な事情もあるが、基金の運営にも問題が多いので、いちど調べ直したい。」とこう言っておられる。なおまた、当時の中小金融課長も「自治省と」、当時は自治省の所管でしたから「相談して対策を立てたい」と、こういう答弁をされたとこの記事があるんですが、これはいまの課長の答弁と大体似たり寄ったりなんですが、これは大分古い話なんで、もうそろそろ私はこの問題について決着をつける段階に来ておると思いますし、もういつまでたってもそれは債権、債権で取り立て不能ですから、何といっても。それはやっぱり保証業務の基金の一つの基礎にして置いておくのもいかがかと思いますから、十分その実情等を考慮して前向きの検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  207. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) 先ほどお答えいたしましたように、本当にクレームの内容が至当かどうかということにつきましても、現在基金におきましてもいろいろ資料その他を集めておる、それに努力しておると、こういう状況でもございます。そういう状況等も見まして、私ども関係省庁と相談して処理をしたいと、こう思っております。  なお、ただいま先生お話がございましたその未回収の分につきましても、保証の基金の中にカウントをしておるのではないかという御趣旨の御質問かと思いますけれども、実は保証基金にカウントいたしておりますのは、この国からの承継債権のうち回収された分だけをカウントしておりまして、未回収の分はカウントしていないということでございますので、あわせてお答えいたします。
  208. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ぜひひとつ早急に結論を出して、現地の諸君にも喜ばれるような形で処置してもらいたいと思いますよ、それは。  最後になりましたが、物価問題で一つお聞きしたいと思いますが、御承知のように物価高の問題、私過去予算委員会でもやったことがあるんですけれどもね、離島なるがゆえの物価高で非常に苦しんでおるんですよ。これは、私の手元にある資料は五十一年度の名瀬市の消費価格の指数なんですが、鹿児島市を平均一〇〇としますと、名瀬市の場合は一〇七・三になっておる。特に、食料指数が一〇八・九、八・九%の増。それから住宅指数が一二〇・八、二〇・八。特に住宅の問題あたりが非常にあれなんですが。それから被服関係が一〇二・三で二・三%。いわゆる衣食住と言われているところの面で、離島なるがゆえの物価高ということが、非常にいろいろな面で立ちおくれておるところの島の経済生活に大きなしわ寄せを来たしておるんですよ。この問題はもちろん総合的に対処されなきやならぬとは思いますけれども、これは私は、国土庁としても人任せにすることのできない問題だと思うんですがね。この問題についてどういう手だてを現在考えておられるのかお聞かせ願いたいということと、同時に、経企庁としてはこの問題についてどう考えておるのか、そこらあたりもお聞かせ願いたんですがね。
  209. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) まず国土庁でございますけれども、ただいま御指摘になりましたように、奄美群島を初めといたしまして、一般に離島にそういった問題があるわけでございます。生活必需物資の多くを本土から移入をしているということに伴う、海上運賃あるいは荷役の料金など輸送経費の負担が大きいことや、あるいは商圏——商売の範囲でございますね——商圏が小さく卸・小売のロットが小さいことなどから流通販売経費が割り高となっているなどの要因によりまして、本土に比べて全般的に高いということがどうも現況であるようでございます。消費生活の安定向上を図ります見地からいたしましても、島内生産物の自給率の向上に努めますとともに、港湾施設とか流通施設などの整備も促進いたしますなど、適切な対策を講じてまいるように配慮をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  210. 糠谷真平

    説明員(糠谷真平君) お答え申し上げます。  離島におきます物価につきまして、いま先生、名瀬市の例をお挙げになったわけでございますが、私どもも名瀬の数字は手元にございまして、いま先生おっしゃいましたように、鹿児島を一〇〇といたしまして七、八%高くなっているという事情は認識しているわけでございます。  それで、対策といたしましては、いま国土庁の方からお話がございましたように、やはり島内における自給力を高めていくということが基本になろうかと思いますが、離島振興事業等で強力に対策を進めていくということが基本だと思いますけれども、もう一つは、やはり先ほど国土庁からお話がございましたように、島内における需要が小さいということに伴います、いろいろ流通経路が複雑になるとか、そういった離島特有の事情もあろうかと思いますので、そのような離島における価格形成のメカニズムというものを調査いたしまして、これは奄美の例で申し上げますと、昭和五十年に私ども一つ調査をした例がございますけれども、そういった離島における価格形成メカニズムの検討を進めまして、引き続き離島の物価対策というものを検討してまいりたいと、かように考えております。
  211. 藤田進

    ○藤田進君 二つのことを長官に聞きたいと思うんです。  一つは、いま同僚議員からも質疑がありましたように、地域振興、地方開発、これは、私、戦後ざっと調べてみますと、国の予算の配分、かなり北が厚くて南が薄い。その間にオリンピックとか万博とかいったような特別な事情のある地域もありますがね。私は、やはり、国土開発の総元締めとも言われる、均衡のとれた総合的開発ということ——過密地域はやたらに過密になる、社会資本の充実に追われていく、過疎地域はもうだんだんと過疎化していく、そして、わが国のように人口密度の高い、領土の狭いといったような諸般のことを考えてみて、ここらで少し国土庁とされても以上申し上げたような観点から十分事実問題を把握されて、われわれにも資料をつくって提供されて、今後のあり方について——私も総合開発審議会委員もやり、いろいろやりましたが、結局無力な委員会ばかりで、これらがさっぱりどうも、文章はりっぱにできますが、かつては経済企画庁、いまの国土庁と、余りにもどうも幻滅の悲哀を感じるような結果に終わっていると思うんであります。この点についての所信を伺いたい。  第二は、そういった地方開発に力を入れていく必要性があるように思いますが、最近国土庁は地方開発審議会等これを廃止して新しい機構をつくっていくというアイデアをどうも推進されるやに聞くわけであります。確かに何々地方開発審議会に、雨後のタケノコ、おれのところも、といったようなことで、わずかの間にほとんど全部——当初北海道あるいは東北開発が手始めであり、それが全域になって意味があるかないかというような実態にもなりましたが、それにしてもそれなりの機能は果たしてきたように思うわけでありますが、問題はその答申、まあほとんど事務当局がつくるわけですけれども、しかしそれをどう予算化し実行していくかというところにむしろ問題があるのであって、これは国土庁だけで実行が可能なものではありませんが、内閣全体としてだと思うんですが、そういうやさき、この審議会今日数あるわけですけれども、これを全廃して、国土総合開発審議会も廃止して何か新しいものをつくるということのようですが、この点について、むしろそれが増強され、以上申し上げた観点から実効が上がるという、そういう理由なんでしょうから、これをひとつお知らせいただくと同時に、この統合はいつを目標にされているのか。これは法律を必要とすることはもう御承知のとおりであります。廃止並びに新設、これはもうこの国会へ追って提案されようとするのかどうか、お伺いいたします。
  212. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 前段の方ですが、今度三全総にいう定住圏、これは申すまでもなく一遍過疎過密を見直そうという——北の方に厚くて南の方に薄いというようなことがあるとすれば、これをだんだん是正することが大切なことであります。先ほどちょっと宮之原先生からお話があったので、漁業の問題でもそうですが、振興法ができてからかなり奄美には予算的には相当急速にふえておることはお認めをいただけると思うんです。ただ、予算がふえても実際上の施策がかなりおくれておる、こういうふうにも私らは先ほどから伺っておりました。やはり将来は、三本の柱でなくてもいいんだから、四本の柱にしたっていいんですから、大いに漁業振興というようなことを加えて、率直に申し上げれば奄美特性を生かして、産業の振興開発に最大限の努力を尽くすようにしていきたい。  それから、最後に先生からおっしゃいましたいろいろな審議会を総合いたしまして、将来どういうふうにというお話でございますが、これは四月一日にブロックの会議を開いて国土審議会に統合するという考えでおりまするが、この点の詳しいことは局長からちょっと説明させます。
  213. 河野正三

    政府委員河野正三君) 実は昨年の通常国会で審議会の整理に関する法律が行政改革の一環して成立をいたしております。その中に、国土庁関係の各種審議会を十四、これを一本にいたしまして国土審議会に統合するというのが一つすでに決定されております。この施行に関しましては法公布後一年以内の政令で定める日というふうになっておりまして、先般、政令を内閣といたしまして決定をいたしまして、ぎりぎりの三月三十一日に施行するということにいたしたのでございます。ただし、十四の審議会が廃止されまして国土審議会になりますが、従来から歴史的にいろいろ御活躍いただきました審議会でございますので、それぞれの地方審議会につきましてはこの国土審議会の中に特別委員会という形で十三設けまして、それぞれのところに従前国会の諸先生にも御参加願いました委員会はそのとおりの構成でやらしていただくということにしたのでございます。一番問題になります奄美と小笠原につきましてはこの十四審議会の外でございます。したがいまして、従来どおりそれぞれの法律に基づきました審議会が存続するのでございます。  なお、この措置をとりました一つの理由は、整理という行革の趣旨に合致するということのほかに、国土全体をめぐりまして各地域地域の利害関係のある振興のための審議会相互間の調整、統合を図る。そのために国土審議会という基本審議会を置きまして、そしてそれぞれの中に特別委員会を設けるというところに趣旨があったのでございます。ひとつ今後四月以降は新しい体制で、またいろいろと御協力、御審議をお願いしなければならない面もございますが、よろしくお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  214. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 最後になりますが、先ほど物価の問題でそれぞれお答え願ったんですけれども、やっぱり一番の問題はこれは運賃ですよ、船運賃の問題が一番問題になるんでね。ただこれは私は国土庁だけじゃどうにもできない、他省庁にまたがることですけれども、ここにまた大臣にやってもらわなきゃならぬ値打ちのある仕事があるわけですから、ひとつこれらの問題については大臣在任中に何か少しでも前進できるような手だてをやっぱり私は講じてもらいたいと思うのですね。これは一気かせいにきれいにはなりませんよ。いろんな障害点があるということはいままで何回もやってきて知っています。しかしながら、いつまでやっても同じことなんだということでは困るわけで、それらの問題についての大臣のもしお考えがあれば、私ここで意欲をお聞かせいただきまして、これは終わりにします。
  215. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 率直に申し上げまして、私は奄美というのは知らないんです。やはり、百聞は一見にしかずといいまして、現地へ行って自分の頭にそれが入ってきますれば、おのおの同じ行政上の推進を図るにしても力が入るものです。したがって、私はこの国会が少しでもすきができるようになりますれば、政務次官も幸いに奄美出身ですから直ちに参りまして、そして十分に見さしていただくと同時に御趣旨に沿うような努力を図ってまいりたいと、こう考えております。
  216. 渡辺武

    渡辺武君 奄美大島が住民の一致した大きな運動の力で昭和二十八年の十二月に本土復帰しましてから二十五年たったわけです。その間、復興計画振興計画、それから振興開発計画などに基づいた特別措置を積み重ねてきたわけでありますけれども本土との格差は非常にまだ大きいんじゃないかというふうに考えられます。私ども昨年の秋、現地に調査に行きましてつぶさに実情を見まして、それに基づいてきょうこの委員会に共産党としての独自の、改正案に対する修正案ですね、これを提出しているわけでありますが、いま本土との格差がどんな状況にあるのか、これについて、主な指標でいいですけれども、御報告いただきたいと思います。
  217. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 本土との格差はどうかというお尋ねでございますが、やはりこれは一方では所得水準、一方では施設整備の水準あたりを申し上げるのが端的に御理解いただける面かと思います。  そこで、ここに五十一年時点で押さえましたところの人口一人当たりの所得がございます。これは全国が百二十七万五千二十九円でありますのに対しまして奄美におきましては八十一万六千七百三十九円であるという数値が出ております。これが所得水準関係の数字でございます。次に、施設整備の水準について若干触れてみますと、国・県道の改良率でございますが、これは五十二年四月の時点でございます。全国が六三%でありますのに対しまして奄美は六四・六%となっております。これは高いわけでございますけれども、実は率直に申しまして、幅員が仮に狭くともまず開通し、そして改良することが先決である、こういうことから進められました結果といたしまして全国の率よりも高くなっているわけであります。しかし、残念ながら幅員五・五メートル以上の道路と相なりますと低うございまして、全国の五一・三%の率に対して奄美の改良率は二九・二%と相なっておるのがこれが五十二年四月の数字でございます。舗装率について申しますと、国・県道の舗装率は全国が七七%であるのに対しまして七〇・六%に相なっております。もう一つ、市町村道の改良率を数字に挙げてみますと、全国が二三・二%であるのに対しまして奄美は二四・六%、これまた開通と改良を急いだという数字があらわれていると思うわけでございます。そのほかテレビの普及率、全国八六・四%に対しまして奄美が八三・九%、これは五十三年三月の数字でございます。  とりあえず、以上のところを申し上げさしていただきます。
  218. 渡辺武

    渡辺武君 おっしゃるとおり非常に格差はまだ大きいですね。特に私、注目すべきことは、いま報告はなかったんですが、住民生活環境の整備ですね、これが著しく立ちおくれておる。私の手元にあります資料は若干古うございますけれども、たとえば昭和五十一年のごみ処理施設の処理率ですけれども本土が五二・九%のところ、奄美が三〇・四%、屎尿処理施設の処理率、これは本土が六三・七%のところ、奄美が三一・八%、このごみ処理施設の処理率については沖繩よりももっと奄美の方が低いという状況です。  それから、小学校の校舎の不足率、これは五十二年の数字でありますが、全国が九・九%のところ、奄美が二七・三%、これまた沖繩よりも低い。それから、中学校の校舎の不足率、全国八・三%のところ、奄美は二七・〇%、これまた沖繩よりもひどい。それから、中学校の屋内運動場の不足率、これ全国二三・七%のところ、奄美は四五・三%、これまた沖繩よりも一層低い。それから、人口十万人当たりのお医者さんの数、これは五十一年度の数字ですが、全国が百十九・三人のところ、奄美はわずかに六十二・九人にすぎない。これまた沖繩よりも実情は低いという状況です。特別やはり生活環境の整備が非常に立ちおくれているというのがはっきりあらわれているわけですが、同時に、沖繩の基幹産業であるキビを念頭に置きまして考えてみますと、畑の区画整備率ですね、これは数字が古うございまして、四十九年の数字でありますが、全国が五二・七%の整備率であるのに、奄美の場合はわずかに八・九%。それから動力漁船の一隻当たりのトン数ですね、これも全国七・六七トンのところ、奄美は一・三二トンというようなことで、やっぱりこの地元産業の整備、これが非常に立ちおくれているというのが特徴的にあらわれているわけであります。それでこの奄美大島の人口が非常に急減しまして、ピーク時に比べて三分の二程度に下がってきておる。いまおっしゃったような所得の低さというようなことと同時に、生活保護世帯が本土に比べても非常に多いと、数倍になっているというような実情にもなっているんじゃないかと思うんですね。そこで、本土からもおくれているだけでなくて、奄美よりもはるかに遅く本土復帰した沖繩よりもおくれているという実情を大臣しっかり見ていただきたいと思うんです。それでやはりいままでの国の施策の基本的な目的ですね、これは本土との格差の是正というところに置かれていたんじゃないかと思うんですね。ところがいま申し上げたように、沖繩からさえも立ちおくれているという実情、これはやはり今後国が施策をやるに当たって十分に念頭に置いていただかなきやならぬことだと思うわけですね。今回の改正案で期間も延長されましたし、若干の改善点もあります。私どもこれ評価するにやぶさかではありませんが、私これだけでは不十分じゃないかというふうに考えてるんです。いま申し上げたようなことを念頭に置いて急速な是正ですね、これをぜひ図っていただきたいと思いますが、その点どうでしょう。
  219. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) いまお挙げになりました数値は私どもも手元に持っておりまして、仰せのとおりでございます。御指摘のとおりでございます。依然として本土との間に格差があるわけでございますが、やはりこれと申しますのも、昭和二十八年復帰の当時、非常に奄美状態というものが厳しいものがございまして、施設水準にいたしましても、それから所得等の水準におきましても非常に低位にあったわけでございます。非常に低位にありましたものでありますだけに、最初の復興特別措置法におきましてはまず戦前の本土並みあたりを目標にしよう、つまりいわば目標が非常に高いところを望みませんで、まず戦前の本土並みというものをねらって、次なる振興特別措置法におきましては今度は鹿児島県の本土状況目標にしたい、そして最後の五年前の振興開発特別措置法の段階に至りまして、本土並みというものを目標にしようということにいたしたわけでございます。つまりこういう段階を経たことでもおわかりいただけますとおり、最初非常に厳しい低位のものからスタートしたということでございます。本土並み目標にいたしましてから五年を経過いたしましたけれども、この間ずいぶん、九百億に余る事業、それから六百億に余る国費が投入されましたけれども、しかしいまなお格差が厳しい状態があることは御指摘のとおりでございまして、したがいまして、お願いしておりますこの制度改正を含めまして、今後の五カ年間、鹿児島県さらには島内の各市町村とともに努力をいたしてまいりたい、こういうことであるわけでございます。
  220. 渡辺武

    渡辺武君 大臣ね、いま申し上げたような実情と、いま御答弁になったような状況なんですけれども、とにかく早くやはり本土並み水準に到達されることがどうしても必要だと思うのですね。これがやっぱり現地の方々の一致した強い要望だろうと思うのです。そうしますと、相当予算もかなりつけてもらって、それから後から申しますけれども補助率などについても十分に考慮してもらうということが必要だと思うのですね。まあ基本的な、原則的な問題でございますので、予算の問題についていまどういうふうにお考えなのか伺いたいと思います。
  221. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 先ほど先生から保護世帯が非常に多いと聞いて驚いておるんですが、今後の五カ年におきましても、奄美群島特性発展可能性を生かしながら、本土との格差の是正を第一番に目標に置こうと、とにかくその土地特性を生かしてその産業の振興を図る、先ほどちょっと宮之原先生のときも申し上げましたが、私は驚いたんですが、漁業があれだけの周辺に海を持ちながら浅海漁業はそんな状態だということを聞いてびっくりしたんです。これはひとつ大いに考え直さなければならない。そういう意味からも、台風の来ない前に一遍ひとつ現地へ行きまして、この目で見て、そして自分の腹にこたえただけの仕事を推進するように必ず努力をいたす決意でありますから。
  222. 渡辺武

    渡辺武君 大臣が現地へ行かれて目で確かめられるということで、非常に結構なことだと思うのです。ぜひひとつ実現していただきたいと思います。それで先ほど御答弁の中に、いままでの格差是正の立ちおくれた原因について、若干お触れになったところがありましたが、私そういう点もあろうかと思うのですけれども、しかし同時にやはりもう少し政府としても考えていただきたいところがあるんです、この原因について。それはあそこの鹿児島県のことをここの場で申し上げるのはどうかと思いますから余り申しませんけれども、たとえば復帰直後に、地元の人たちはこれで本土並み生活水準その他も引き上げることができるんじゃないかということで、たくさん要求を出されたのが、県の段階で三分の一程度に削られてしまったというような経緯もありまして、その後やっぱり地元要求が国の意向に沿って県の段階でずっと抑えられてきているというのが本当は実情なんですよ。それでそのことはこれ以上申しませんけれど、国の方としましても私はやはり重化学工業の大企業の高度成長ということが施策重点になっておって、特に中小企業や農漁業、特に離島のそういう産業などについては十分な配慮が払われなかったというところに一つ大きな原因があるんじゃなかろうかという気がするわけです。  それで、これからの問題ですけれども、やはりいま私、指摘しましたように、生活環境の整備が特別に立ちおくれておりますので、この辺を重点的に改善するということをぜひお考えいただきたいと思うのです。  それからもう一点は、やっぱり何といっても地元の中小企業、これはつむぎに代表されておりますよ。それからキビに代表される農業、林業、漁業ですね、これらを振興さしていく、これが私中心だと思うのです。これが過疎問題を解決する決め手じゃないかという感じがしているわけですね。同時にまた、当然離島のことでありますから、離島苦を解消するための通信及び交通の整備と、そしてまた気象観測体制のもっと充実、整備ということなどがやっぱり今後の施策の中心にならなきやならぬじゃないかという感じがしているわけですが、その辺については大臣、どのようにお考えですか。
  223. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいま大臣から今後五カ年の方向に向かいまして基本的なお考えを御答弁があったところでございますが、重点を置いていくべき基本方向としましては、いま御指摘のとおりだと思うわけでございまして、私どもとしましては、今後鹿児島県と今後の振興開発計画を相談していくに当たりましては、大きく三つの基本方向を採用していきたいと考えて鹿児島県と話し合っているところでございます。  すなわち一つには、快適な住みよい生活環境確保ということでございまして、御指摘ありましたとおり、交通通信体系の整備、生活環境施策の整備、社会福祉の拡充、医療対策の強化、教育文化の振興等を図りまして、自然環境と国土の保全に努めながら快適な住みよい生活環境確保するということをまず第一のねらいにいたしたいと思います。  第二には、特性を生かした産業の振興でございまして、亜熱帯の自然的な特性やあるいは立地条件を生かしたところの農林水産業、特産でありますこれまたいま御指摘のありました大島つむぎ業、その他地場産業の振興を推進いたしますとともに、魅力ある観光レクリエーション地帯を形成するということを促進いたしたいというふうに考えております。  さらに、自然環境や地域社会との調和を図りながら新規産業をどのようにしたら誘導できるかということを考えることによりまして、就業機会の増大、住民生活の安定、向上を図っていきたいと考えております。  第三に、均衡のとれた地域社会の発展ということを柱にいたしたいわけでございまして、群島内の地域社会の有機的な関連性を配慮いたしまして、地域の実情に即したような総合的な施策を推進いたしまして、各島間、それから島内の各地域の均衡ある発展を確保していきたい。  以上三つの大きな柱、そのもとでの幾つかの施策というものを重点を置いて振興開発計画の改定に当たっていきたいと考えておる次第でございます。
  224. 渡辺武

    渡辺武君 まあ、りっぱな言葉が並んでおりますが、ぜひひとつそれは実施に移していただきたいと思うのですね。  それで、私まだほかにいろいろ質問した後でと思っておりましたが、通産省からおいでいただいている政府委員の方が衆議院の方の委員会に出席する都合があって、早く退席したいということでありますので、ちょっと論理的には奇妙なことになりますが、私つむぎの問題について幾つか伺いたいと思うのです。  いまも申しましたように、奄美大島のいわば地場産業で最も重要なものは、これは言うまでもなく、私つむぎだろうというふうに思うのですね。最近一部の製品の売れ行きは若干改善してきているようでありますけれども、しかし韓国産の、まあにせ大島つむぎの流入によってこのつむぎ産業そのものの存立の基盤が大きな打撃を受けつつあるというのが実情だと思うのです。  そこで、まず伺いたいのですが、私きょう手元に「鹿児島県本場大島紬国外進出生産阻止対策協議会」これはメーカーも商社も一緒に入りましてつくっている団体でありますが、それの陳情書を持ってきております。通産省の方に伺いたいのですが、この要旨はもうお読みいただいたと思いますけれども、特に伝産法を改正して、そして原産国表示を厳守させる措置をとっていただきたい、それからまた類似品または原産国表示製品の輸入の急増によって重大な損害を受けまたは受けるおそれがあると認める場合は、製品の輸入の禁止または制限に必要な事項を法の中に組み入れていただきたいということと、それから原産国虚偽表示製品の輸入業者、これに対する制裁措置をやはり伝産法の中に入れてほしいという要望がきていますが、その点について通産省の方はどう考えておられるか。
  225. 村田文男

    説明員(村田文男君) お答え申し上げます。  業界の要望、伝産法の改正の要望につきましては、私ども以前からいただいておりまして検討しておるところでございますが、現在までの検討結果を申し上げますと、まず原産地表示の厳守でございますが、これにつきましては、昨年の日韓絹織物交渉におきまして、韓国側が韓国産であることを両端に表示し、かつこれを税関でチェックしやすいように平畳み方式でやるということを約束いたしております。その実行を徹底することによりまして十分可能だと思っておりますので、これについて特に立法の必要があろうとは考えておりません。  それから輸入禁止、代理店の輸入禁止ないし輸入制限でございますが、こういう疑わしい表示のあるもの、あるいは虚偽の原産国表示のあるものについてでございますけれども、これは関税法あるいは不当表示防止法等によりまして是正措置がとれるようになっておりますので、そういう意味からも特にこのために立法の必要があるかどうかについては疑問に考えておる次第でございます。  それから数量の増加でございますが、これは日韓協定によりまして数量協定を結んでおります。これの運用によって対処し得ると考えております。  それから三番目の制裁措置でございますが、先ほど申しましたように、これにつきまして、やはり不正競争防止法あるいは不当表示防止法等によりまして一定の制裁措置ないし罰則の適用がございますので、特につけ加える必要はないのではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  226. 渡辺武

    渡辺武君 いま御答弁のあったことは私もよく承知しておりますし、それからまた現地の人たちも十分承知しているはずなんですよ。しかしそれでも効果がないということと、それからもう一点は、最近韓国のつむぎ業者が、国内の賃金の値上がりその他もありまして、それで香港や中国に進出していって、そこを拠点として依然として日本への輸出を続けようという動きが非常に強まってきているようです。そうなってまいりますと、中国産の韓国つむぎあるいは香港産の韓国つむぎ、これが日本へ入ってくる可能性というのも、これから先のことです——あるいはいま入っているかもわかりませんが、これから先の問題として非常に重大になってくるおそれがある。それこれについて一々やっぱり国内法あるいはまた国内的な措置によってチェックをするということが非常にますます困難になるのじゃないかということで、そこで伝統的工芸品である以上伝産法の中に一括してこれらの処置を盛り込んで、そして有効に対処すべきではないのかというのが根本の論旨なんですよ。その点をひとつよく踏んまえて考えていただきたいと思うのですが、どうですか。
  227. 村田文男

    説明員(村田文男君) 中国の問題でございますが、いまのところ、これが実行されておるということは輸入実績その他から見てございません。ただそういううわさがあることは事実でございまして、私どもも重大な関心を持って注視いたしております。必要に応じ、中国との交渉あるいは行政指導等々も考えてまいりたいと思っております。  ただ表示の問題につきましては、先ほども申しました関税法の問題、あるいは不当景品防止法の問題等々はいずれも韓国だけを相手にしたものではございませんので、一般法でございますので応法的には整備されておるのではなかろうか。それから中国との、もしそういう中国産の大島つむぎのような問題が起こりますれば、その表示につきましては、また中国と日韓交渉のようなことをやれば両々相まてば十分対処していけるんではなかろうか、こういうふうに考えております。
  228. 渡辺武

    渡辺武君 そこで、先ほど御答弁のあった韓国との間に協定があるんで急増するようなことはあるまいという御答弁がありましたが、ここがいつもわれわれも問題に取り上げますが、しかし地元の人たちも取り上げて通産省に改善を迫っているところだと思いますね。私昨年の四月二十八日の参議院の商工委員会で伺いましたところが、五十二年度の協定数量は三万六千五百反、これは五十三年度もそうだと思いますがね。ところが、それにもかかわらず大体二十万反くらいは韓国から入っているんじゃないかと、その根拠になりますものは、これは韓国の商工部が発表した資料、それからまた韓国の商社に対する韓国政府の発注量ですね、これらが大体三十三、四万反とはっきりしているわけですな。ほぼその六割が本場大島つむぎということで入ってきているんじゃないかということで、とうてい協定数量等に数字が合わないんですよ。それで私伺いましたところが、チェックの方法としては、韓国側がいわゆる本場大島つむぎについてビザをつけていると、それが協定数量と同じなんだと、それから日本政府の方としても実はチェックしているんだと、インボイス統計に基づいて一定の価額以上のものを取り上げてこれを本場大島つむぎとして計算していると、その計算によればほぼ協定数量と同じになるんだと、こういう御趣旨の御答弁なんです。そのときはたしか百四十米ドルというのがチェックの基準で、それ以上のものは本場大島つむぎとみなすということでやっているということだったんですね。いまでもこのような体制でやっているのかどうか、これをまず伺いたい。
  229. 村田文男

    説明員(村田文男君) 大島つむぎの日本側の監視体制でございますが、基本的には先生御指摘のように、日本側といたしましては、韓国が報告してくる数量を信用するというのが基本的立場でございます。ただ一応の日本側のチェック手段として、インボイス統計で一定の金額以上のものを一つの目安としてチェックしておるということは昨年局長がお答え申し上げたとおりでございますが、当時は確かに百四十ドルということで一つのメルクマールを置いておりました。ただその後韓国側の非常な労賃の騰貴、値段の騰貴がはなはだしゅうございます。それから円高の影響もその後かなり強まってまいりました。そういうような非常に変動する要因が多くなってまいりまして、現時点で私どもはこれがこれ以上幾らという具体的数字はいま検討はいたしておりますが、この間も申しました百四十ドルなり一定の線を現時点では持ち合わせておりません。
  230. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますとね、具体的には日本政府側からのチェックですね、いまいわばやられていないというのと同然になっているわけですな。それで当時は一ドルたしか二百五、六十円だったと思うんです。そのときで百四十米ドルということだったですね。私はそれではこの本場大島つむぎの中でも大衆物ですね、これは入ってきても通産省の計算する数量の中に入らないじゃないかと、百ドル程度にチェックの基準を下げたらどうだと、通産大臣もそれは検討しましょうというお話だったんですね。いまは様変わりに円も高くなってきた。大体一ドル二百円程度ということですから、それに応じてやはりチェックの基準を定めていただきたいと思うんですね。そして正確にどのくらい入ってきているのかということを把握してほしいと思うんです。そのためには私やっぱり地元の業者から、どのくらいの基準で調べたら大体網羅できるのか、その意見をぜひ聞いてほしいと思うんですよ。これほどもめているんですよ。毎度毎度上京するたんびに、実際協定数量以上に来ているんだと、それは業者は自分で日常の活動の中でそういうことをつかんでいるからこそ言ってくるわけですから、だからその辺は通産省も、韓国との間の協定という問題は確かにあるんですが、それが本当に守られているかどうかということと同時に、日本国内の業者が非常に危険な状態に陥れられているんだから、これをどう守るかという見地から地元の業者の意見をよく聞いて、そうしてチェックの水準、どの程度がいいのか、ぜひこれを決めていただきたいと思いますが、どうですか。
  231. 村田文男

    説明員(村田文男君) 御指摘のとおり私ども一つの目安、あくまでも目安にすぎませんが、一律の価格で決まるとは思いませんけれども、あくまでも目安としての価格というものを産地の皆さん、あるいは関係の商社等々と打ち合わせをしつつあるんですけれども、いろんな線がございまして、いま先ほど申しましたように、これだということはなかなか申し上げかねますが、引き続き検討いたしてまいりたいと思っております。
  232. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃ、聞きつつあると言うんで、ぜひひとつ奄美大島の地元の人、これの意見聞いてほしいと思うんです。御参考までに申しますがね、いま韓国産の大島つむぎの中で一番たくさん入っているのは五マルキの単色のものだと言いますね。大体国内で反当たり五、六万円の値段で売られている。しかし、これは市場価格であって輸入価格、これは恐らくそれよりもはるかに安い水準で入ってきている。これに国内のマージンがつけ加わって初めて五、六万円という値段になろうかと思うんですね。ですから、インボイス価格でどの辺のものをとったらこの五マルキ類似品、これが全面的につかめるかという点にポイントを置いてぜひ地元の業者の意見聞いてほしいと思います。どうですか。
  233. 村田文男

    説明員(村田文男君) そのようにいたしたいと思います。
  234. 渡辺武

    渡辺武君 それからもう一点。韓国産のいわゆる本場大島つむぎなるものがどのくらい入っているかということの論争の中で一つの重要なポイントは韓国の内部における生産体制だと思うんですね。それで地元の人たちは以前独自に韓国へ調べに行っているんですよ。そうしてこれこれこういうことだと言って主張しているわけですな。しかし、政府の方はその実態の調査に行かれたことはいままでないと思うんです。ですから、この問題解決する上にも国としてもできたら地元の業者などと一緒に韓国に調査に行ってほしいと思うんですが、その点どうですか。
  235. 村田文男

    説明員(村田文男君) 韓国の大島つむぎの生産状況調査でございますが、私どもそういう業界の心配もございますので、私ども以前からいろいろのルートで調べておりますが、なかなか明確な数字はつかめないというのが現状でございます。つきましては、今後予定される政府間交渉その他の場を通じましてできるだけ実態の把握に努め、いたずらな不安感等を除去さしたいと、こういうふうに考えております。
  236. 渡辺武

    渡辺武君 政府間交渉で向こうに聞いたってなかなか実態わからぬのですよ。実際行ってあなた方の目で、ちょうどいま大臣は自分の目でとにかく奄美大島見たいとおっしゃっている。そのくらいの熱意ほしいんですよ。重大問題ですよ。つむぎがどうなるかということで、それはもう奄美のこれから先の問題決まると言っても差し支えないくらいですわ、つむぎとキビで。それほど重大なもんで、私は政府がわざわざこういう法律をつくられて、それを延長して今後こういう方針でいきましょう、予算もなるべくつけたいという御趣旨の答弁やっている。ところが通産省が軟弱な姿勢を示していたら、それはあなた、根本から掘り崩すようなことですよ。だから、もしできたら大臣行ってほしい。大臣が行くことができないようだったら、やっぱりその道の担当官が行って、あなた方自身が確かめてくるというくらいの熱意を私は持つべきだと思う。どうですか。
  237. 村田文男

    説明員(村田文男君) 私ども決して傍観しているわけじゃなくて、いろんなルートで調査を進めているところでございます。調査がまとまればまた御報告する機会もあろうかと思いますが、足らざる部分は、私、先ほど交渉の過程と申しましたが、そういう場も利用し、いろんなルートで引き続き調査を進めたいと思っております。
  238. 渡辺武

    渡辺武君 どうもありがとうございました。どうぞお引き取りください。  それでは、産業問題をやったついでで、あとキビ作の問題を幾つか伺いたいと思います。  いまも申しましたように、やはり地元の産業を振興させるということが私はやっぱり奄美大島の今後の発展の基礎を築く上で非常に重要だと思うんです。先ほどお言葉のありましたよそから企業を誘致するという問題、私どもも頭ごなしにこれは否定するわけじゃないんです。しかし、石油基地などは、これはもう絶対反対と、地元の人たちも多数がそう言っておりますし、私どもはあの美しい自然環境を破壊するというような措置はやってもらいたくないと思うんですね。何よりもやっぱり地元の産業の振興ということに重点を置いていただきたいと思うんですが、そこで、伺いたいのは、先ほど申しましたように、畑地の整備ですね。これが昭和五十年の数字ですと区画整理率がわずかに八・四%、灌漑排水は四・一%という低さですね。基幹的な農業生産がキビ作だという実態を前にしますと、その立ちおくれはまことにはなはだしいと思うんですが、これについて一体今後どういうふうな計画で整備されるのか、これ、伺いたいと思います。
  239. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 奄美群島におきます畑地の整備状況につきましては、先生御指摘のように、一部農道が内地を上回っているという程度でございますが、畑地灌漑等常に低水準にございます。このような状況を踏まえまして、従来から奄美地域の予算といたしまして特別枠を確保しまして、昭和五十二年度の予算におきましては、全国における農業基盤整備費の対前年比一三六・九%に対しまして、奄美におきましては前年対比一四八・二%と大幅に予算を確保いたしましたし、また五十四年度予算につきましても全国の対前年比が一二三・二%に対しまして、奄美では一二九・八%の予算を要求いたしておりまして、農業基盤整備の一層の推進を図っているところでございます。さらに、昭和五十四年度の予算におきまして、畑地帯総合土地改良事業採択基準緩和並びに補助率のかさ上げを行いまして、畑地の整備を積極的に推進してまいりたいと思っております。
  240. 渡辺武

    渡辺武君 結構だと思うんですけれども、その採択基準緩和ですね、従来百ヘクタールのものをたしか五十ヘクタールにまで下げたということだったと思いますが、それ自体として非常に結構なことだと思うんです。しかし、私ども現地を調査に行きまして実情をいろいろ聞いてみますと、それだけでも、なかなか、やっぱり国の施策に乗らないというところがかなりあるんですね。できたら三十ヘクタールくらいまで採択基準を下げてほしい、そういう要望が非常に強いんです。その点についてどう考えておられるのか、ぜひやってほしいと思うんですが。あるいは、それにかわって何か別の施策があれば、三十ヘクタールというようなところで、それでも結構ですが、ぜひその点をお聞かせいただきたい。
  241. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 今回採択基準を五十ヘクタールに引き下げるわけでございますが、それ以下のものにつきましては、団体営の事業がございまして、団体営事業として実施することは可能でございます。  なお、今回採択基準を引き下げまして、その候補地区として五十四年度に新規に二地区を予定しております。
  242. 渡辺武

    渡辺武君 その団体営の場合は、補助率はどうなりますか。先ほどおっしゃった畑地総合整備事業の場合と同じ補助率になりますか。
  243. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 団体営事業補助率国費六〇%でございます。
  244. 渡辺武

    渡辺武君 今度、そうすると補助金を上げましたね、総合の方で。それと比べるとどうですか。
  245. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 畑地総合は今回引き上げまして七五%の予定でございます。
  246. 渡辺武

    渡辺武君 だからそこがやはり一つ大きな問題だと思うんですよ。だから、畑地総合の事業として三十ヘクタールというところまで対象の基準を下げるということをひとつ検討していただきたいんですが、どうでしょうか。
  247. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 現在鹿児島県を通じまして要望を聞いておるところでございますが、今回の採択基準引き下げによりまして二地区新規候補があるということは承知しておりますが、それ以下のもので事業化につきまして採択基準の引き下げがさらに必要であるという話はまだ聞いておりませんので、その辺、また県からいろいろ実情を聞きまして、そういう事態があれば検討をいたしたいと思います。
  248. 渡辺武

    渡辺武君 それに関連しまして一つ伺いたいのは、県営灌排水事業として建設されたダムが全然使われないで遊んでいるという例があるんです。私ども徳之島へ調査に行きましたところが、あそこの母間ダムと轟木ダム、これが取水口もなければ排水口もない。つくって水はたまっているんだけれども、全然使われていないという実情を見てきました。地元方々も、これぜひ農業用水として使いたいんだと言っているんですね。ですから、使えるように至急国が直してほしいというのが基本的な要求です。ここに持ってきましたが、写真を、必要なら差し上げますけれども、りっぱに水はたまっているんですよ、こういうように。たまっていながら、まるっきり放置されているんです。そうしておいて、一方でいろいろな灌漑排水事業をいま国がやろうとしている。特に、サンゴ礁でできているところですから、そこに穴を掘ってみて、そうしてここで貯水がきくかきかないかというようなことまで、金をかけて試験しようというようなことまでやっているわけですから、私は予算のむだ遣いだと思うんです。せっかくつくったものを放置している。こういうところに、いままで国がいろいろ金を使いながらも、本当にやっぱり奄美の人たちの要望にこたえたような血の通ったものになっているかどうかということを判断する一つの手がかりが私はあると思うんですね。こういう点、ひとつ至急調べて直していただきたいと思いますがどうですか。
  249. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) 母間ダム及び轟木ダムにつきましては奄美群島復興事業として昭和三十三年から三十八年に農業用水ダムとして建設されたものでございますが、その実態につきまして、母間ダムにつきましてはもちろん取水口もございますし、既設の用水路もございます。ただ、その既設の用水路が区画整理をやってない圃場につながっているためにうまく運用されておりません。当時の計画といたしまして、そういった既設水路から移動式の配管を使いまして灌漑をするという計画施行になっておりまして、農家の利用度が非常に低いという実態は承知しております。  それから轟木ダムにつきましては、これは水田補給用として使われているものでございますが、現在老朽ため池整備事業で補強を実施しております。
  250. 渡辺武

    渡辺武君 徳之島の地元の自治体の意見をよく聞いて、至急に取りかかってほしいと思うんです。もうとにかく、もったいない。せっかく国が金かけてダムつくってくれて、水はいっぱいあるんだけれども使われてないんだと。いま取水口はあるというお話でしたが、地元の人たちは取水口も排水口もないんだと、こう言っていますよ。この実態はぼくら行って、見てきているんだから。だから大臣、行かれたときにその辺も、そこまでは、徳之島まで行かれるかどうかわかりませんけれども、ぜひ見てほしいと思うんですよ。もったいないと思いますわ。これは保岡さん、あなたはよく御存じでしょう、こういう実態は。農林省ひとっこれは改善してくださいよ。いまの答弁じゃ満足しませんわ。どうですか。
  251. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) ただいま県からの報告によりますと、母間ダム関係の既設水路の整備補修につきましては昭和五十六年度に着工を予定しておると聞いております。  それから轟木ダムに関連いたしましては、五十五年度に県営畑総事業を興しまして整備を行いたいと聞いております。  母間ダムにつきましては、これは地元の調整上か、よくわからないのでございますが、若干着工年度が遅く報告になっております。
  252. 渡辺武

    渡辺武君 地元意見よく聞いて対策を講じてくれますか。
  253. 伊東久弥

    説明員(伊東久弥君) いろいろ県を通じまして報告を受けたいと思っております。
  254. 渡辺武

    渡辺武君 それではもう一点、これは大蔵省の方に伺いたいんですが、いま大島税務署がキビ作農家に所得税をかけるということでいろいろ調査をしているらしいんです。それでいま問題になっておりますのは、収入に対する課税所得の率ですね。これを七三%というふうに非常に高率に見ているんですね。収入の計算も十アール当たりの生産額が六・八九八トン、約七トンと見ているんですね。これにトン当たりの政府の買い入れ価格を掛けまして収入金額を出して、そうして、それから経費を差っ引いて、所得は九万三千百三十二円だというふうに出しまして、それで七三%。これに税金かかってくるということで、地元は大騒ぎになっておるわけですね。  時間ないから私申しますけれども、まず第一に、この収穫量ですね。これについて地元の不満が非常に大きい。十アール当たり大体六トンくらいだろうというのが地元の一致した意見です。地元の方は六・三五トンということで計算をしまして、トン当たりの政府買い入れ価格は同じですわな。そうしますと、収入金額が十二万六千七百十六円というこの数字になるわけですね。これちょっと掛け合わしてみないとわかりません。このいまの数字はちょっとあれしておきましょう。それで収入金額をはじき出しますが。まず生産量ですね、十アール当たりの。これが食い違っておる。それからもう一つは経費の内訳です。これもいろいろありますがね、とにかく、先ほど宮之原委員からも話がありましたけれども農業用の肥料にしても何にしましても奄美大島は運賃もかかりまして、非常に高いんですよ。その辺が税務署には十分に把握されていないんじゃなかろうか。後から詳しく内訳は差し上げますわ。それから同時に人件費です。税務署の方は、キビを刈り出す場合、これ一人でできるというふうに計算しているんです。しかし実情は、課税対象農家はたしか百トン以上の生産農家かな、ということなんで、非常に膨大な量なんですね。一人で刈り出しができるはずないんです。実態は大体十人ぐらいでやるという。一人プラス九人ですよ。その費用を全然見ていないという問題があるんですね。それが一番大きな問題だと思うんです。  それからまた農業用機械の償却費ですね。これも非常に過小に見積もっているというようなこともありまして、それでいま税務署に対して七三%というような所得率じゃ困ると。農民実態に基づいてほぼ計算してみますと、九人仮に雇ったという場合で二〇・五%くらいの所得率。一人でやるというふうに仮定した場合でも大体五二%くらいが至当だということを言っているんです。これは至急に実態を調べて、農民意見もよく聞いて、そして課税適正にしてほしいというふうに思いますが、その点どうですか。
  255. 小野博義

    説明員(小野博義君) 奄美大島のキビ作農家につきましては、たまたま五十三年につきましては作柄もよく、収穫量は比較的良好だったと聞いておるわけでございます。そのためもございまして、五十二年分には課税にならなかった農家であっても五十三年分については課税されてくる農家がかなり出ておるというふうに聞いております。税務署におきましては、農業標準をつくります場合に、所得税法の基本的なたてまえから申し上げますと、本来所得金額は実際の収入金額から実際の必要経費を差し引いて計算をすることになっておるわけでございますが、先生よく御案内のように、一般の農家の現状から見ますとなかなか収支実額の計算ということを広く農家の方々にお願いすることが無理な点もございますので、申告をされる際の目安として農業所得標準を作成しておるわけでございます。この農業所得標準をどのように定めますかにつきましては非常に重要な問題でございますので、作成に当たって農家の経営の実態に即したものとなるよう、できる限りの配慮をしているところでございます。  お尋ねの経費率につきましても、各地区の農家の実態調査の結果をもとに、各種の統計資料であるとか、あるいは農業団体その他精通者の意見を参考に、できるだけ実態に合うようにつくっているというふうに聞いておるわけでございます。  それから、先ほど先生おっしゃいました七三%という所得率の問題でございますが、これはいわば平均的な農家の場合に平均的なものとして農業標準の中に取り込まれる経費をもとにして算出された数字でございまして、そのほかに雇い人費であるとか、あるいは借入金利子であるとか、あるいは大農具の償却費であるとか、このように個々の農家によりましてかなりばらつきの多いものにつきましては標準経費とすることは適当でございませんので、これは御案内のように標準外経費として別途申告の際に控除することにしているわけでございます。その結果、実際の所得率につきましては個々の農家によって大分違うと思いますけれども、大ざっぱなところ、大体五割程度になっているのではないかと思います。ただ、そういうことでございますので、先生御指摘のような個々の農家にとりまして若干のばらつきはあろうかと思いますけれども奄美大島地区のサトウキビ農家の課税といたしましては全体としておおむね妥当なものになっておるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  256. 渡辺武

    渡辺武君 いやいやそれは平均的な農家については七三%という数字が出ているから、そこで大きな問題になっているのですよ。あなたのように五十何%なんということじゃないんです。それは実態調べてくださいよ。しかもこれは瀬戸内町だったと思いますけれども、町で大きな問題に——徳之島の町議会と町役場、農協、これは一緒になって反論していますわ。ですから個々の農民が言っているわけじゃないんです。その点も十分に勘案して、それでやっぱり実態に合ったような課税にしてほしいと思うのですね。それで人を雇って働いてもらっているのだというようなことを言うと、それは領収証を見せてくれ、それから機械の償却率についても、それは機械を買ったときの契約書を見せてくれ、こんなことを言っているというのですよ。いままでそんな習慣のないところに、そういうものを出してこなきゃ認めないというような態度じゃ、これは話にならぬですわ。よく実態を調べて、そして適正課税してほしいと思うんです。その点どうですか。
  257. 小野博義

    説明員(小野博義君) ただいまも申し上げましたように、ちょっと繰り返しになりますけれども、七三%と申しますのは、所得標準率の中に織り込むことが適当と思われる標準的な経費について織り込んでおるわけでございまして、そのほかに償却費であるとか、あるいは雇い人費であるとか、借り入れ金利子のようなものは個別の申告の際にそれぞれ考慮しておりますので、先ほど申し上げたように、最終的には大体五割程度になると申し上げたわけでございます。また、たとえば雇い人費を支払った場合の領収証等につきましては、かねてから農業課税の際にいろいろと御議論があるところでございますけれども、私どもといたしましては、やはり現実に雇い人費等を支払った——証拠書類と申しますと少し大げさになりますけれども、何らか証票書類のようなものは課税上は必要だというふうに考えておるわけでございます。ただ、いろいろ農村の場合でございますと、一々領収証を取るというようなこともむずかしいように思われますので、農業協同組合とか、あるいはそういった農業団体の責任ある方の証明と申しますか、そういったようなものでもいいというような便法を講じているところでございまして、何らかの課税上必要な心証を得る程度の資料については御協力をいただきたい。もちろん課税がその実態に即したものになるような努力は常に重ねておるわけでございますが、農家の方におかれましても若干の協力をお願いいたしたいというふうに考えております。
  258. 渡辺武

    渡辺武君 もう時間がありませんので、大臣申しわけないが、一つ二つまとめて伺いたいと思います。  それは、私どもが先ほど申しましたように、改正案の修正案を提出しております。この中で、先ほど申し上げた点以外に振興開発計画作成するときに、ぜひ地元意見が十分反映できるようにしていただきたいという趣旨で、特に審議会の構成ですね、この中に地元市町村長会、あるいはまた市町村議会の議長会、それから農業及びつむぎ、これの代表者などを入れて、地元意見が十分に反映できるようにしてほしいということを言っております。その点ひとつぜひ実現をさしていただきたい、これが一点。  それからもう一点は、細かいことは申しませんが、補助率及び補助対象などについて、ぜひひとこ沖繩並みにしてほしいということで、私ども案を提出しておりますが、これもひとつ十分御検討の上で、先ほどの大臣の熱意で実現さしてほしいというふうに思います。この二点を伺いたい。  それから、厚生省からおいでいただいておりますので、一つ伺いたいのは、県立大島病院です。これはもう時間がないので実情申しませんけれども、非常に老朽化しておりますし、お医者さんも不足している。一方で患者さんはふえる一方という深刻な実情です。それで、至急にこの改善をしていただきたいと思いますが、新改築がいま行われることになってるそうですが、短期間にやってほしい。それから、補助率も四分の三くらいの高率にしていただけないかというのが地元の要求です。  それから、もう一つは、これは中核病院ですから、そこで、たとえば専用ヘリコプター、ヘリポート、これも照明つきのヘリポートですね、こういうものを各島々に置いて専用ヘリコプターで行けるようにできないだろうか。それから、高速の診療艇、いま古くなってるんでそれをぜひ欲しい。それから、救急車ですね、現在これは運搬車に等しい。積んでも腕を外に出しておいて輸血をするというような状況らしいんですよ。だから、車の中で応急の診療ができるというようなものをぜひ欲しいということです。その辺含めて御答弁いただきたい。
  259. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 奄美群島振興開発計画の策定に当たりましては、その原案を鹿児島県知事が作成することになっていることは、もう御承知のとおりであります。知事は、その案を作成する際に、当然地元市町村地元の協議会などの意見を、これは徴する、そしてそれらをくみ上げて、その段階で住民の意思を反映するということになっておると思います。御趣旨の点は、よく理解をいたしました。今後精いっぱい努力をしたいと思っております。  あとの点は、局長からお答え申し上げたいと思います。
  260. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいま奄美群島振興開発審議会の人選の問題について御意見がございましたけれども、いままでも地元関係の方をすでに人選をいたしているようなことでございまして、十分配慮をいたしているつもりでございます。  それから、補助率の幅広く沖繩並みアップという御意見ございましたけれども、先ほど来、今回の制度改正に当たりまして、努力をいたしました点は、るる申し上げたところでございますが、私どもといたしましては、現在の国の財政の厳しい中におきましては、精いっぱいのことをしたつもりでございます。  なお、今後につきましては、さらに検討を続けていきたいと思う次第でございます。
  261. 瀬田公和

    説明員(瀬田公和君) お答え申し上げます。奄美の医療水準の向上につきましては、これまで鹿児島県の振興計画等によりまして、ずっと取り組んできておりまして、私たちといたしましても、いままでに、県立大島病院の新設に対する助成でございますとか、それから僻地の診療所に対する助成、それから救急医療体制に対する助成というふうなことで取り組んできたわけでございますけれども、今後とも鹿児島県と十分連携をとりながら、医療水準の向上に努めていきたいというふうに考えております。  特に、ただいま御指摘ございました県立の大島病院につきましては、この病院が群島内の唯一の総合病院ということで、現在地域の医療需要にこたえているということでございますけれども、現在の大島病院というものが、施設も非常に狭いということで、また近年施設設備の老朽化といったことも著しくなりまして、医学の進歩とか、それから医療需要の変化といったものに十分対応できないということもございまして、病院の機能が限界に達しているというか、早急に全面改築をしなければならないような状況に立ち至っているということは事実でございます。病院の改築に当たりましては、ただいま先生御指摘ございましたように、地域の特殊性でございますとか、医療需要の増大、多様化、そういったものに対処できる基幹的な病院、中核的な病院ということで整備する必要があるわけでございますけれども、まあ離島の中核病院としての機能、各離島の各僻地の診療所との連携、医療従事者の確保というふうないろんな問題についてなお検討を要するんじゃないかというふうに考えております。  鹿児島県におきましては、今後建てかえを実施すべく五十四年度には国土庁等とも連絡をとりながら必要な調査をするというふうに私たちも承っておるわけでございまして、今後厚生省としましてもこの調査の結果を踏まえて大島病院の建設の建てかえといったものが円滑に進むように考えていきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  262. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 他に発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認めます。  渡辺君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、本修正案を議題といたします。  渡辺君から修正案の趣旨説明を願います。渡辺君。
  264. 渡辺武

    渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  奄美群島は、昭和二十八年十二月祖国復帰を願う島民の一致した大きな闘いによって、アメリカ占領下から本土復帰いたしました。その後二十五年間、政府は、奄美群島本土との格差是正を掲げ、奄美群島復興計画、同振興計画、同振興開発計画による施策を講じてきましたが、奄美群島は今日もなお、教育、医療を初め住民の生活や農漁業などさまざまな分野で本土との大きな格差に苦しんでいます。  しかも、本土とばかりでなく、奄美よりおくれて本土復帰した沖繩と比べてもなお格差が広がりつつあります。沖繩の振興対策が決して十分であるとは言えない状態の中で、この奄美の立ちおくれはきわめて重大であります。  これは、政府が今日まで、重化学工業重点の経済政策をとり、奄美群島の諸条件にふさわしい郷土産業の育成や住民の医療、福祉など生活条件の整備を軽視して、十分な予算を配分してこなかったことによるものであります。また、振興開発計画の策定と実施に、住民の意思が十分反映されてこなかったことによるものであります。  今回の政府案には、若干の改善点はありますが、住民市町村の要求にはほど遠く、奄美群島現状に照らしてみて、なお緊急に充実を図るべき点も少なくないのであります。  このような見地から、振興開発計画計画期間内に行う事業の拡大等特別措置内容を一層充実させる必要があると存ずるのであります。  以上が本修正案を提出する理由であります。  次に、この修正案の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、振興開発計画の策定手続きの民主化を図るため、知事は計画作成に当たって、奄美群島市町村長の意見を聞かなければならないこと、必要に応じ公聴会を開催し住民意見を反映させること、奄美群島振興開発審議会の委員奄美群島市町村長及び市町村会議長の代表を加えること等の措置を講ずることとしました。  第二に、振興開発計画に基づく事業の円滑な推進を図るため、沖繩振興開発特別措置法に準じて、対象となる事業の拡大及び補助率の引き上げを行うとともに、無医地区における医療の確保農地及び農業施設災害復旧事業についても、沖繩振興開発特別措置法に準じて特別の措置を講ずること、地方公共団体の起債に対して特別の配慮を行うこととしました。  なお、この修正により必要となる国費は、二十三億円余の見込みであります。  詳細につきましては、お手元にお配りしてあります案文をもって御承知いただくこととし、省略させていただきます。  何とぞ、委員各位の御賛同を得て、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  265. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまの渡辺君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。中野国土庁長官
  266. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) ただいま御提案のありました修正案につきましては、政府としては反対であります。
  267. 浜本万三

    委員長浜本万三君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は御発言を願います。——別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。討論は原案並びに修正案について行います。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、渡辺君提出の修正案を問題に供します。  渡辺君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  268. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 少数と認めます。よって、渡辺君提出の修正案は否沢されました。  それでは、次に原案全部を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  269. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  この際、増岡君から発言を求められておりますので、これを許します。増岡君。
  270. 増岡康治

    増岡康治君 私はただいま可決されました奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党、日本共産党及び民社党の各派共同提案による附帯決議を提出いたします。    奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島復興特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、次の事項について、適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一、奄美群島振興開発計画の改定及び小笠原諸島振興計画の策定にあたつては、地元の意向を十分反映させるとともに、特に立ち遅れている水資源の開発、医療体制の充実、児童福祉施設・老人福祉施設の整備を図ること。  二、奄美群島振興開発事業及び小笠原諸島振興事業の実施にあたつては、補助率、補助単価、補助採択基準等について、地元の要望ならびに地元の財政負担に配意しつつ弾力的に対処しうるよう留意すること。  三、奄美群島及び小笠原諸島の亜熱帯性、海洋性の自然と特色ある文化を活用し、国民の健全な保養レクリエーション地帯としての整備を図るとともに、漁業根拠地としての漁港の整備を急ぎ、これらの地域の水産業の振興を図ること。  四、外海離島、台風常襲地帯である奄美群島及び小笠原諸島の特殊事情にかんがみ、これらの地域における気象災害の防止、軽減を図るため、気象情報を的確かつ迅速に周知させるとともに、気象観測体制の一層の充実、強化を図ること。  五、硫黄島及び北硫黄島については、旧島民の帰島及び復興問題を調査するため総合調査団を派遣するとともに、硫黄島の不発弾処理及び遺骨の収集の計画的な実施ならびに旧島民対策についても検討すること。   右決議する。  以上です。
  271. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいま増岡君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  272. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 全会一致と認めます。よって、増岡君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、政府から発言を求められておりますので、この際これを許します。中野国土庁長官
  273. 中野四郎

    ○国務大臣(中野四郎君) 本委員会におかれましては、本法案につきまして熱心な御審議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすように努めてまいりますとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましてもその趣旨を十分に体して努力する所存でございます。  ここに本法案の審議を終わるに際し、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。どうもありがとうございました。
  274. 浜本万三

    委員長浜本万三君) なお、審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  276. 浜本万三

    委員長浜本万三君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として上田耕一郎君が選任されました。     —————————————
  277. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、建設事業並びに建設計画に関する調査のうち、既存の建築物防災対策に関する件を議題といたします。  この際、建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。建設大臣。
  278. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 既存の特殊建築物に対する防災対策の問題に関しましては、今国会における所信表明におきまして行政指導により実施したい旨をお願い申し上げたような次第でございますが、その具体的な方策につきまして関係局長から御説明をさしていただきたいと思います。
  279. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 既存の特殊建築物に対します防災対策の問題に関しまして、経過と今後の方針について御説明申し上げます。  この問題は、昭和四十七年の大阪千日デパートビル火災、昭和四十八年の熊本大洋デパートビル火災を契機として生じました。  そこで、建設省といたしましては、この問題に対処するために昭和四十九年三月に、いわゆる遡及適用条項を含む建築基準法の一部改正案を国会に提出いたしましたが、この遡及適用条項につきましては、なお検討を要するところがあるとのことで削除され、その余の部分につきましては昭和五十一年十一月に可決成立いたしました。  その後、建設省といたしましては、この問題について鋭意検討を重ねてまいりましたが、防災対策として講ずべき技術基準の内容を確定することが必要であると判断いたしまして、昭和五十二年八月に学識経験者、関係行政機関、関係業界団体の代表から成る既存建築物避難施設整備対策懇談会を設けて技術的基準の検討を進めてまいりました。  約一年の検討の結果、技術的基準の大体の骨子をまとめ上げましたので、昨年六月以来二千二百六十棟の対象建築物のすべてについて、技術的基準を具体的に適用した場合に円滑な改修が可能かどうかという検証のための調査をいたしました。その結果、既存の建築物対象とするものであって、今後新たに対象がふえるものではないこと、対象となる建築物は既存の建築物であって、多種多様な形態をしているので、一律に技術的基準を機械的に当てはめるよりも、弾力的な行政指導を行った方が実効性があることとの判断をするに至り、このたび建設大臣が所信表明で申し上げましたように、的確な行政指導によりその防災対策を推進してまいりたいと考えております。  行政指導の進め万といたしましては、近日中に建築物防災対策要綱を定め、建設事務次官名で各特定行政庁あてに通達することといたしております。  その建築物防災対策要綱は、大規模な特殊建築物や中小の雑居ビルの火災により多数の人命が失われている実情にかんがみ、建築物の火災が発生した場合における建築物内の人の避難の安全を確保するため、特定の既存建築物及び中小雑居ビルについて、防災対策を講ずることを目的としております。  特定の既存建築物に対する措置としては、既存の建築物のうち、多数の人が利用し、または使用する建築物について対象建築物を定め、一定期限までに建築物内の人の避難の安全を確保する上で最小限必要な非常時の照明対策、階段等の竪穴に対する対策、最終的避難手段を確保する対策、屋外からの進入が可能な開口部を確保する対策の四項目の対策を講じさせることといたしております。  これらの対策を講ずるための技術的基準につきましては、昭和四十九年三月当初のいわゆる遡及適用条項の検討におきましては、防火及び避難の両面にわたる措置を考慮して、これらに関する技術基準の適用を考えておりましたが、今回の要綱におきましては、人の避難の安全の確保という目的から避難に関する技術基準のみに限定することといたしました。  また、この技術基準の検討に当たりましては、現に存する建築物に対する措置であることを十分に考慮するとともに、スプリンクラー消火設備の設置効果等を評価することといたしました。  具体的に申し上げますと、非常時の照明対策といたしましては、火災の発生と同時に照明が消え、避難に支障を来すことがないよう、階段、廊下及び室内の主要通路において少なくとも十五分程度は何らかの明るさが確保できるよう、別電源の非常用照明装置または別系統配線等を講じさせるなどといたしております。  階段等の竪穴対策といたしましては、階段、吹き抜き等火煙の拡大の経路となる部分について、これを防止するため防火戸等を設置させるものでありますが、これにつきましては、スプリンクラー消火設備、自動火災報知設備の設置等一定の条件のもとで避難計算という方法を導入いたしまして、あらかじめ、火災時におきまして在館者のすべてが安全な時間内に館外に避難できるかどうかを検討して必要な措置を講じさせることといたしております。  なお、病院につきましては、重傷患者のように自力で階段を利用して避難することを期待することが困難な者が多いので、このような場合には各階ごとに防火戸等により安全な区画を二つ以上形成するといったような方法を講じさせることとしております。  最終的避難手段を確保する対策といたしましては、特に避難の困難性が考えられる高層階等の在館者の避難の確実を期するため、これらの階に通ずる階段について火煙から防護されるような措置を講じさせることとしております。  非常用の開口部の確保といたしましては、外部から消防隊が進入して在館者を救出できるよう、進入に必要な窓等の開口部を設置させることとしております。  以上が四項目の対策を実施するための技術的基準の概要でございます。  これらの措置を実施するために必要な補助や融資の助成措置を用意して行政指導をいたしますので、十分実効があると確信しておりますが、万一どうしても必要な改修措置をとらないというものがありました場合には、建築基準法第十条の規定の活用を図ってまいりたいと考えております。  また、建築物防災対策要綱では、近年問題になってまいりました中小の雑居ビル火災に対する対策も考慮いたしまして、中小雑居ビルに対する措置も定めることとしております。  中小雑居ビルに対する措置としては、風俗営業を営む店舗等に三階以上の階の百平方メートル以上の床面積を供している中小雑居ビルを対象といたしまして、避難施設等の維持管理の充実など防災上緊急に必要な安全対策を講じさせることといたしております。  以上のような内容により行政指導を的確に推進していく所存でございます。
  280. 浜本万三

    委員長浜本万三君) これより質疑を行います。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  281. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 私、質問するわけですが、大臣ね、直接あなたの所管とは関係ありませんが、清水トンネルの火災ありましたね。これはあなたの方の話じゃありませんけれども、国務大臣という立場でね。きょうは運輸委員会もありませんし、災害委もありませんので、一応ちょっと御所見をお聞きしたいんですが、いまの問題ね、いろんな説明をされてる。やっぱりあれは、原因は、初期消火のための器具はあったようだけれども、全然それがどうも役に立たなかった、こういうことですね。もし、あるいは消火器が機能を発揮したならば、あるいはああいうことにならずに済んだかもしれないということなんですね。だから、既設ビル防災についても、まあ違うけれども、そういうこともあり得ると思うんですね。これは消防の関係かもしれませんけれども、しかし、やっぱりあなたは建設大臣として、国務大臣としてやっていらっしゃる。これはあなたに直接ではないけれども、そういうことを考えると、この問題も全然無関心とは言えぬと思うんですね。したがいまして、やはりこれを行政指導される上において、あの問題、あの事件は決して無視できない、他山の石と申しましょうか、大いにこれは考えなくちゃならぬと思うんでありますが、まあこれは質問通告以外の問題でありますけれども、ひとつ大平内閣の国務大臣という立場で、これに対する御所見を承れたら幸いだと思うんですが。
  282. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 私もけさほどテレビで、消火施設がありながら、これが役に立たなんだということを見ましたときに痛感したんでございますが、いかなる施設がありましても、要は、管理責任者が常にその責任を感じて万全を期さなければならない。そのためには、日ごろから定期的にそういった器具を点検したり、あるいはそこの従業員に対しまして顧客に対する災害時の誘導訓練をやらすということを管理者として適切に責任を持ってやっていただかぬことには、いかなる設備、あるいは建物ができておってもこれはだめであるということを痛感したような次第でございました。  実は、この特殊建築物の一番最初の発端は、大阪の千日前の火事でございまして、私、当時消防の責任である自治大臣をやっておりましたので、土曜日に起きた火災でございまして、朝六時ごろのテレビで聞きまして、その当時はまだ二十人ぐらいの死傷者であるということでございまして、早速消防庁長官と連絡をとったんですが、その後七時ごろには百名を超えると。早速、日曜日でございましたが、役所へ出て、現地と連絡とりましたが、要領がわからないというので、消防庁次長を連れまして現地へ飛行機で乗り込みました。そのときに、生々しい跡をまつ暗な中で見せてもらいました。それで、後で現地において聞いたんでございますが、あれも避難通路があるのにこれを徹底さしていなかった。しかも、その避難通路を一番最初に逃げたのが閉めてしまって出とるもんですから、ほかに使うこともできなんだというふうな、施設はできておりますが、やっておらないということをそのときにも確認いたしまして、結局、責任者が十分な管理と平生の責任を持ってやってもらうということが最大の要件であると、防災の要件であるということを痛感した次第でございます。  今度の火災が、トンネル内における事故が起こりまして、朝のテレビを見て、今後一層このことを徹底して、管理者に対する責任を十分に持っていくように努力せねばならないと、このように感じておるような次第でございまして、適切に関係当局等も話しまして、万全を期していくように、今後ともに努力していきたいと、こう考えております。
  283. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 以下簡潔に、時間もありませんから、お尋ねします。したがって、御答弁もぜひひとつ要領よく、短い時間でひとつ意を尽くしてもらいたいと思います。  第一に、既設の大規模な特殊建築物防災対策について、第七十七国会以来、建築基準法の一部改正、さらに五年越しの国会・政府間の懸案であったのであります。この間建設省は、歴代の四大臣——竹下、中馬、長谷川、櫻内、四大臣とも、衆参の両院の建設委員会に対し、ビル防災法案の国会提出を約束し続けてきたわけであります。しかし、今国会においては、行政指導で効果が果たせるという判断のもとに、建設省は法案提出を正式に断念される旨を表明され、いま行政指導の要点を説明されたわけであります。このことは、政府建設省の国会に対する、国民に対する約束のほごであるとこれは断ぜざるを得ません。何と弁解されましてもこれはもう事実がはっきり示している。連続した政治責任体制の上でどのような説明をするのか。一応これは、いま申しましたことからしてでありますから、いわゆる国会並びに国民に対して、しかとした建設大臣の所信をひとつお聞かせいただきたい。
  284. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 大規模な特殊建築物防災対策につきましては、従来の当委員会における各大臣の答弁の経緯等も十分承知いたしております。その経緯をも踏まえた上に立って検討いたしました結果、立法措置により一律の基準を機械的に適用することよりも、個々の建築物に対応したきめ細かい行政指導を行った方がより適切に防災目的を達成することができると判断をいたしましたので、所信表明におきまして行政指導によることとしてお願いを申し上げたような次第でございます。  しかしながら、従来の答弁の経緯等と異なる点につきましては、私も十分責任を感じております。この責任を果たすためには、要は実行することであると、この実行で必ず実を挙げるということで、今後万全を期していきたいと、このように考えておりますので、何とぞ御理解賜りたいと存じます。
  285. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 議論すると切りがありませんからまあ議論はやめますが、大臣のいまの御所信いけないとは思わない。いけないとは思いませんが、ひとつなるべく、先ほどの話のトンネルのこともありますから、十二分関係方面に対して厳重な施行に対する措置をお願いしたい。  次に、ビル防災の法制化は、これは先ほど大臣もおっしゃったように、大阪千日前デパート、いわゆる百十八人の死者を出していますね。それから熊本の大洋デパート、これは百人の大災害になっています。それから起こったと思うんですね。私も実はちょうど大阪千日前デパートの火事のときには当委員会委員をしておりまして、私も現地に行きました。つぶさに拝見して、全くもう惨たんたる状態に対しましては目を覆ったわけでありますが、こういうことがきっかけになっていまこの問題が起きていますね。その後も大規模建築物の火災は連続起きたわけでありますが、その都度ビル防災の法制化は報道機関などで強調され、国民世論としても大きく高まってきた。こういう事実を踏まえて、その場合、防災効果の徹底を期する上で、限界のある行政指導ではなくて法体系の整備が必要だということを訴えてきた。これは世論全体ですね。建設省は関係する業界、学者を交えた懇談会で審議をされ、法制化断念の決定をされたと言われている。このことは、そういう事故の流れの中からきて、国民世論の動向よりも関係業界の意向を重視した結果だということが一般的にそう思われている。われわれの方も実は思っている。こういう、いわゆる国民全般は法制化してひとつ再びこういう大災害が、特に人命を失うような大災害は起こらぬようにしてもらいたいという意向であるにもかかわらず、一部のいわゆる学者とか、あるいは業者による懇談会で審議された結果法律でなくてもいいんだという結論に至っていま出されたと。このことは、いわゆる国民の要望や、あるいは国会の要望よりも関係業界の意向を重視したことではないか、こういう批判があるが、これはどう建設省は受けとめておられるか。
  286. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私の先ほどの説明が若干まずかった点があろうかと思いますが、私どもこの懇談会にお願いし検討していただいたのは、技術的基準の内容と、それから悉皆スタディーの結果の分析、そういったあくまで技術的な問題をお願いしたものでございまして、建設省といたしましては、その技術的な検討結果を受けて、法案として出すべきかあるいは行政指導でやるべきかという判断をいたしたものでございます。その結果、先ほども御報告申し上げましたような判断に立ちまして、行政指導による方が適切であるというように判断したものでございます。
  287. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 そういう答弁が返ってくるとまた少し反発したくなるんですが、反発していると時間がなくなってしまいますんで、残念ながら反発は一応やめておきますが、次に参ります。  法体系の整備のもとの施策に対して法的な根拠を欠く行政指導は概して効果の面で問題があると言われています。建設省は、行政指導の方がきめ細かく実態に即したものができると、こう説明していらっしゃるのだが、法の整備の中ではそのきめ細かな対応が困難という意味であるのか。いずれにせよ、多くの人々の生命にかかわる行政上の対応であるので、防災効果が損なわれるようなことがあっては許されない。われわれは強力な行政指導、公平的な行政措置の徹底を期する上で法の整備、そのもとの行政措置が必要と考えてきた。政府は行政指導のみで真に十分な防災効果が上げ得ると判断しているとおっしゃっている。しかし、これはどうもわれわれとしてはなかなか納得できない面もあるんだが、いわゆる行政指導の方がきめ細かな実態に即したものができるとおっしゃるが、法の整備ではどういう意味でできないのか。このことの説明と、それから、いま言った、必ず行政指導でうまくいくというひとつ事例があったら、たとえばこういうことがある、こういうことは法的なことよりも行政指導の方が適切にできるといった、もしそちらに事例があるならば事例を示してひとつ御説明願いたい。
  288. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 行政指導の方がいいのか、あるいは法令に基づくきちっとした技術基準の方がいいのかということでございますが、私どもいずれも一長一短があるというような判断をいたしております。  まず、法令によります場合に、どうしても技術的基準を政令等で定めることになりますが、これはやはり一定の基準というものをきちっとつくらなけりゃならない。ところが、具体的な例をというお話でございますが、たとえば、本当に建物の安全というものはそういった、先ほども先生御指摘になりましたが、設備だけの問題でなくて、管理上の問題あるいは運営上の問題と非常にかかわり合いがあるわけでございます。たとえば大規模物販等の店にいたしましても、たとえば最上階を特売売り場等にいたしまして、人がたくさん集まるようなものに使っている場合と、あるいは、最上階をそういったものに使わずに、むしろ家具売り場等お客さんが非常に少なくなるような使い方をする場合とこれは非常に違ってまいります。したがいまして、同じ建物を安全にするためにたとえば売り場の位置をちょっと変更するというような、こういった、私どもの考えております物的な施設だけでなくて、そういった運営の改善という面でも十分安全になり得る場合がございます。  そういったものを総合的に判断してやるために、私どもは行政指導の方がむしろベターじゃないかというような判断をしたわけでございまして、またそれを十分今度の技術基準はやっていけるという判断をしたわけでございます。
  289. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 次に、中小雑居ビルの防災施設の整備等に対しても行政指導を図るわけですね。いま一番懸念されているのは、大規模建築物の防災よりもむしろ中小雑居ビル群の防災についてであります。これは特にきめ細かな対応が必要であろうと思うんですね。したがって、中小雑居ビルの防災に取り組む建設省の決意は、私はむしろ大型のものよりも特段の注意と、そしてそれこそきめ細かな指導が必要であろうと思うんです。また、行政指導と同時に改修資金の確保、あっせん、技術的な助言等もいわゆる中小雑居ビルについては必要と思われますが、こういうことに対する建設省の考え方をひとつ御説明願いたい。
  290. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 御指摘のとおり、中小雑居ビルは私ども非常に心配しております。それはまず内部が非常にたくさんの小さいお店屋さんとかあるいは飲食店、そういったもので構成されておりますために統一的な管理体制がなかなかとりにくい、しかも営業時間が非常に違っておりまして、上の方ではまだ営業しているのに下の方はもう空っぽになっていると、そういったことのために、そういった火災時にいろんな連絡通報というのがなかなか困難だというような問題。それからそういったお店屋さんでございますと店内の改装がしょっちゅう行われます。したがいまして、そういった改装に当たりまして不備が非常に出てくるというようなことが私ども実際にいろいろ見たり聞いたりしております。そういったことを含めまして、今回中小雑居ビルの対策も入れたわけでございますが、当面そういった本当に小さいものまで入れますと十万近い雑居ビルがございますが、とりあえず三階以上に百平米以上の床面積がございます雑居ビルにつきまして当面措置対象として措置を講じたいというふうに考えております。  その対策といたしまして、まず一番問題は、そういった施設がありながらその維持管理を十分にやっていない、あるいは階段に品物を積み上げたり、あるいは階段にかぎをかけたり、あるいは避難できる窓があるのに窓をふさいでしまったり、そういったもののないように徹底的にやってまいりたい。そのためにはまず建築基準法の十二条によります定期調査報告制度を活用いたしまして的確にそういった報告を受けるということ、それから特定行政庁が消防機関と協力いたしまして随時防災査察を行うということ、それからそういった店内改装等に携わります設計者あるいは施工者の団体を通じまして十分そういった防災上の問題を徹底していくこと、そういったことを考えたいと考えております。それからお尋ねの、いわゆる金融上の問題でございますが、私ども従来もやってきておりますが、建築基準法十条の適用が行われる場合には、改修に必要な資金につきまして環境衛生金融公庫等の政府金融機関からの融資を行うこととしております。この場合の貸付条件等については、これは政府関係金融機関でございますので、低利資金が融資できるということになっております。そういったものを活用して防災上の徹底を期したいというように考えております。
  291. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 最後に、私どもは当然法的措置をすべき問題という考え方でずっとやってきたわけですから、行政指導に対しては非常に不満があるわけですね。まあ反対ですが、まあまああえてこれで了承してもう文句をつけようと思いません。しかし、いままでのいきさつを見ますと、やはり行政指導をあえてされる建設省に対してはいろいろと言いたいこともあるし、また不安もあるわけです。それはそれとして、これから行政指導されるわけですが、何と言ってもやはり人命に非常に大きな関連を持っている、しかも大清水トンネルは十四名のようでありますが、過去の例、一つの火災で百人とか百何人とか死ぬようなことでありますからこれは大変なことだと思うんですね。したがいまして、ひとつそういうことを踏まえながら、後からあのときに法制化しておればこういうことにならなかったんじゃないかといったようなことのないようにひとつぜひ指導を強化してもらいたいし、またもしこの行政指導の結果どうしても、これをやってみたけれども、これは法制化する必要があるというようなときにはいち早くやはり法制化の準備をして、これはもうやはり法制化する必要があると、こう思うんですね。したがいまして、ひとつそのことを要求したいと思うのでありますが、そういうことに対して最後に建設大臣の所信をお伺いしたいし、ひとつ何と申しますか、再びそういうことが起こらぬことを期待しながら私の質問を終わります。
  292. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 事人命に関することでございますから、私もう十分な手を打って行政指導に万全を期していきたいと、このように感じております。委員会が終わりましたなれば、早速手を打っていきたいと。実は最近も雑居ビル等において火災が起こるたびに、人命が事故がなかったかどうかということを戦々恐々たる思いで新聞を読んでおるような状態でございますので、十分な上にも十分な行政指導を行って万全を期していきたいと、こう考えております。  なお、いま御指摘になりました、その上にももし起こった場合は法制化も考えたらどうじゃと、こういう御指摘でございましたですが、その起こりました原因等も十分検討をいたしまして、そういった事態が起こったときには次にそういった事態が起こらないように万全の措置を検討さしていただきたいと、かように考えております。
  293. 桑名義治

    桑名義治君 なるべく重複を避けて質疑に入りたいと思いますが、既存建物の防災対策につきましては、先ほどから論議があっておりますように、五十一年の七十七国会において建築基準法改正案の中から衆議院の段階で修正削除された。それからいわゆる竹下、中馬、長谷川、櫻内と、いわゆる歴代の建設大臣が本委員会におきましても、法律化して提案をしたいと、こういうふうに表明をされてきたわけでございます。その後建設省では既存建築物避難施設整備懇談会、こういった懇談会において検討をし、その後この扱いについては意見は千差万別であり、いわゆる法律化よりも行政指導の方がきめが細かくていわゆるよく指導ができると、こういうふうな結論に達したということではございますけれども、しかしこのことは、修正削除以来の経過にかんがみまして、私たちは大変に遺憾だというふうに考えている次第でございます。いずれにしましても、先ほどからこの問題についての大臣の御所見を伺ったわけでございますが、しかし、いままでの大臣の御意向ではどうも私たちとしては納得できがたいわけでございますが、改めて大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  294. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 御意見いま茜ケ久保先生からの御指摘もあったときに答えさしていただいたのでございますが、私自身所信表明に行政指導にかえるということが入っておりましたときに非常に抵抗を感じまして、一番最初の起こりが自治大臣の私の当時に始まったことでもございますし、この問題に関心を持っておったものでございますから、事務当局にいろいろ意見を私聞きましたが、いま局長が詳しく御説明申し上げましたとおり、限られた既存の建物である。それに対するきめ細かな、打つ手はこう打つんだということも十分聞きました上で、所信表明におきまして、行政指導によるということでお願いいたしますことに決定さしていただいたような次第でございますので、いままでの点、十分各大臣の答弁については責任を感じておりますが、その責任を果たす道は、局長が述べましたような、きめ細かな行政指導が的確に行われ人命尊重の実が上がるということに邁進する、ということを痛切に感じ、その責任を感じながら所信表明を行わさしていただいたような状態でございますので、何とぞ御理解賜りたいと思っております。
  295. 桑名義治

    桑名義治君 たびたび大臣もあるいは局長も、行政指導ということで対処するというふうに言われておりますけれども、防災のためには——もう一遍確認の意味を込めてお尋ねをしておきたいわけですが、このような防災のためには法律化するよりも行政指導の方がいいという意味なのか、それとも、法律化が好ましいが行政指導でも対処できるという意味なのか、ここら辺をはっきりとしておきたいと思います。
  296. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どももこういった判断をするに当たりましていろいろな検討をしてまいりました。お尋ねの、法制化がいいのかあるいは行政指導がいいのか、これは正直申しましてそれぞれ利害得失がございます。まず、法制化しますと、技術基準がどうしても画一的になりまして、そういったことで、末端で画一的な行政になって、本当に必要なところに的確な行政指導が及ばないというようなことがございます。そういったことで、私ども、実際の建物の安全というものを、そういった規則的な機械的な判断じゃなくて、本当に総合的に考えて行政指導でやってまいる方が適当ではないかというような判断をしたわけでございます。
  297. 桑名義治

    桑名義治君 ただいまの答弁、それから、三月一日に私この問題について質疑をしたわけでございますが、そのときにも、法制化の場合と行政指導の場合とのメリット、デメリット、これをお尋ねしたわけです。そのときも局長は、法制化した場合のメリットは強制力を持ち得ること、それから行政指導は柔軟に対処できる、最小の費用で最大の効果を上げやすい、このような答弁をされてるわけです。したがいまして、三月一日の御答弁と本日の御答弁はこれは食い違いはないわけでございますが、いずれにしましても、法制化してもいわゆる技術基準については政令以下で定めるわけですから、細かくまたは柔軟に対処でき得ないということは私は言えないのではないか。行政指導の場合にも、むやみやたらに、基準も何もなしに行政指導ができるわけではありませんで、やはり皆さん方の方から出てきておりますこの要綱につきましても一定限度の基準は設けてあるわけです。  そういうふうに考えますと、法制化してもいわゆる政令以下に定めるとおりに施行しなければならないわけですから、そこには多少の柔軟性もあるし細かいところにも目が届く。そうなってくると、ここで法制化した方がむしろメリットがあるのではないか、また大きな効果を上げ得るのではないか。要するに、もう一遍言葉をかえて言うと、最終的には法の強制力を担保しつつ個別には最も大きな効果を上げる方法がむしろ法制化の方ではなかろうか、こういうふうに私たちは思うわけでございますが、その点についてはどうですか。
  298. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どもも先生の御指摘の点十分いろんな判断を加えたわけでございます。先ほども御答弁申し上げましたように、本当に建物の安全というものは、そういった機械的な物的な設備のみならず、いろんな管理上の問題、運営上の問題と非常にかかわり合いを持っております。したがって、そういったたとえば既存の建物でございますと、それがどこか不備があるといった場合に、まあ私どもこれ、たとえていいのかどうかわかりませんが、人間が病気になったと、病気になった場合にどういう対策を講ずるかというようなことは、表面上、たとえば熱が出たといった場合に、その熱冷ましを飲ました方がいいのか、あるいは別な手を打った方がいいのか、これはやはり人間の体の全体を見て総合判断しなければならない問題だというように考えております。私どもこういった建物の安全といったものはそれに非常に似たものであるんじゃないかと。したがって、私どもこの行政指導の運用に当たりましても、個々のそういった現場の判断でなくて、建設省段階でもあるいは府県段階でも、そういったことが本当に討議できる委員会みたいなものをつくりまして、そこで個々のケースについて、これはもう全国でも千三百棟しかないわけでございますから、それを的確に判断して最良の手を打ちたいというように考えている次第でございます。
  299. 桑名義治

    桑名義治君 病人のお話が出ましたが、これは病人にしましてもむやみやたらに治療するわけじゃないでしょう。やっぱり医者としての一定基準があるわけですよ、技術基準というものが医者としてあるわけです。薬にはやっぱり薬としての規定があるわけで、この病気のときはこの薬を飲ませる。そういう一定の基準を設けるならば、これは建物の場合だって同じことが言えるのではないか。そうすると、法制化した強制力を担保にしながら細かい行政的な措置をとる方がむしろ私はベターであろうと、こういうふうに考えるわけでございますが、そういった法律をつくってまでもいわゆる安全性確保するんだという行政上の姿勢が国民には最もまた必要な一面ではなかろうか、私こういうふうにも思うわけです。この点はどういうふうにお考えになるのか。  それからもう一つ、行政指導をやっておって、こういうことがあっては困りますけれども、もし仮に事故が起こった場合、それから法制化して事故が起こった場合、これは建設省の責任の比重というものはどちらに置きますか。
  300. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) まず前段でございますが、私ども先生の御意見も十分わかります。ただそういった、たとえばまたお医者さんの話になってあれでございますが、やはりそういったものを法律的な基準で動かせるかという問題になりますと、やはりこれは、もちろん一定の常識的な基準というものは今度対策要綱の中でも考えておりますが、これを機械的に運用するということが果たして一番適切なのかどうかという問題は、私は先生と若干やっぱり見解を異にしているんではないかというように考えております。  それから後段の点につきましては、これは建築物の安全という問題は建設省が全責任を持っているわけでございますので、これは行政指導であろうとも法制化であろうとも、万一不測の事故が起こった場合には、これはいずれにしても建設省が責任をとるべき問題だというように考えております。
  301. 桑名義治

    桑名義治君 行政指導というのは法律があったってやれるわけですし、法律があっても行政指導はやっているわけです、現実に。そういった立場から考えますと、やっぱり政府がこうまでして、法律化までしてこういった災害を防ごうとしているという、そういう国民に対する姿勢、それから取り組み方、こういったものは法律化した方がむしろいわゆる評価があるんではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、また問題になるのは、消防法の改正によってスプリンクラーのいわゆる取りつけが法律化されたわけでございますが、しかしこのスリプンクラーもなかなか、法律はできたけれども取りつけがおくれてしまった。非常におくれてきたわけです。そういうことを考えますと、果たして行政指導でやった場合に、法律で規定していてさえもおくれるんですから、したがって行政指導の場合にはなお一層のおくれが目立つんではないか。そして、おくれるということだけではなくて、その間に仮に不幸な事態が起こった場合にはどうなるか、こういう心配もあるわけでございますけれども、その点どういうふうにお考えですか。
  302. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どもこういった防災対策というものが、やはり法律にしろ、あるいは行政指導にしろ、結局建築物のオーナーなり管理者の本当に理解を得なければ、これなかなか実効が上がらないというようなことを痛感してまいりました。懇談会をつくりまして、一年半にわたりまして千数百棟あるいは二千棟くらいのものでございますので、その間通じまして十分私どもはそういった、何でこういうことをやらなきやならないのかというようなことを十分PRし、理解していただいたというように考えております。また、そういった実際に一つ一つの建物につきまして相当突っ込んだスタディーも行いました結果、そういった方面の理解を十分得られたと私どもも考えております。そういったことで、行政指導で十分所期の目的を達成できる、またそのための助成措置等も用意しているわけでございますので、私ども十分やっていけるという確信を持っております。ただ、万一そういった改修が行われない場合には、伝家の宝刀でございます建築基準法第十条の規定の活用も積極的に図ってまいりたいというように考えている次第でございます。
  303. 桑名義治

    桑名義治君 大臣にお尋ねしたいのですが、先ほどからたびたび私申し上げておりますように、いわゆる法制化してまでもビルの安全性確保しようという姿勢、取り組む姿勢ですね、そういったものがむしろ非常に重要なことではなかろうか。だからこういうふうに論議をしているわけですね。この件について行政指導に今回しようというわけですが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  304. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 法制化した上に行政指導できるじゃないかと、だから法制化せいと、こういう御意見でございましたが、私自身、何がゆえに行政指導に変えるんだということに、いままでの経過から考えまして抵抗を感じ、局長にいろいろ話したんですが、既存の建物でございますので、ほぼ一々当たることができるものでございますから、それには千差万別の状態であるという姿をるるいま局長から聞きましたやつを私自身聞かされましてそういうふうに感じたんでございます。ややもするとまた法制化、まあこんなことは変でございますけれども、一定の基準で法制化しましたら、その法の裏をくぐるといいますか、また次の手を考えるというか、よくその基準まで来ておりまして、考え及ぶこともできぬような賢い知恵も浮かぶというのが世の中の常識でないかとも考えます。それよりも目的に向かって、役所も、そういった既存の建物を持っておられる皆さん方も、自分の責任を感じてきめ細かく協力してやっていただくということで実を上げていくのも私はまたそれだけのメリットがあると考え、その方に踏み切らしていただいたという次第でございます。
  305. 桑名義治

    桑名義治君 まあいずれにしましても余り賛成すべきことではないわけでございますが、そういう方向でやるということが決まっているようでございますので、この議論はこれまでにしたいと思います。  次に、この要綱を読ませていただきますと、いわゆる面積の規模から今回の防災対策対象とならないビル、これが出てくると思うのですが、いわゆるこの対策は具体的にはどういうふうにお考えになっているのか、これをまずお聞きをしておきたいと思います。
  306. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どもこういったとりあえず既存の特殊建築物につきましては、当初考えておりました規模のものを対象として考え、それから中小雑居ビルにつきましては三階以上百平米以上のものをとりあえずの対象として行政指導の重点を置いてまいりたいということでございます。それは決してほかのものをなおざりにしていい、ほかのものはほっておくんだということではございません。これは、私どもこういった問題に対しましては消防当局と十分従来からもやっておりますし、今後とも毎年春秋消防当局と一緒になって、こういった大規模なやつだけでなくて中小のものに対しましても査察を行っておりますが、そのほかにも能力の許す限りほかのものにつきましても行政査察等を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  307. 桑名義治

    桑名義治君 そこら辺も一つの大きな問題になるわけですよ。実際にこういうふうに対象建築物につきましてはこういうふうに基準が設けられておるわけですよ。これ以外の小さないわゆる雑居ビルがございますが、こういったところで火災のために死亡者が出たという記事は何回も出ているはずなんです。したがって、そういったものについてでも私たちは全面的にもうでき得る限りの力を尽くしてというお話がございますが、いずれにしたって手が足りないことは、これはもうわかり切ったことです。だからしたがって、何かの一つの基準を設けて、法律なら法律を法制化して、そして一つの基準の中へはめ込んでしまうということが非常に大事なことじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。この点についてもう一遍お尋ねをしたいと思います。  さらに、ここに対象建築物の基準というのがございますが、これを見てみますと、いわゆる百貨店、マーケット、これが三階以上の建物が千五百平米、それから病院、診療所の用途に供するもの、五階以上の階でその用途に資するものが千五百平米、それから劇場、映画館、ホテル等、こういう建物は五階以上で二千平米、こういうふうにものによってそれぞれ違うわけですね。これはどういう理由でこういうふうな基準ができ上がったのか。私は、病院の五階というのはむしろ動けない人がおるからもうきちっとした、余裕のある対策を立てておかなければかえって危険じゃなかろうかというふうにも感じられるわけでございますが、こういうふうに分けた理由はどういうところにあるわけですか。
  308. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 二つ問題がございます。一つは、先生御指摘のように、病院のように動けない方がいらっしゃる、あるいはホテルとかそういったように、何といいますか、火災が起きたときに寝ておられる方がおられるというような問題、それから百貨店とかマーケットみたいに、みんなそういった状態ではないけれども、非常に密度が高い、お客さんがたくさんおられるということ、そういったものをかみ合わせまして階数あるいは床面積というものの線を引いたということでございます。したがいまして、私どももこれ以下のものはもういいんだということではなくて、もちろんこれ以下のものにつきましてもいろんな行政指導をやっていきたいというふうに考えておりますが、先ほども先生からの御指摘のように、恐らく全国で何百万というようなそういった建物がございます。そういったものを全部行政だけでやっていけるかというと、これはおのずから能力の限界がございます。そういったものはいわゆる先ほど申し上げました建築基準法の十二条にそういった特殊建築物につきましてはビルのオーナーに、専門家に定期的に検査させ、そしてそれを行政庁の方に報告させるという制度がございます。これをもっと徹底して範囲を広げ、そしてそういったことの起こらないような行政指導を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  309. 桑名義治

    桑名義治君 局長ね、いま私の質問に対してのお答えじゃないと思うんですよ。どうして百貨店、マーケットの場合と、病院、診療所の場合と、劇場、映画館、ホテル等の場合が基準が違うかということをお聞きしているわけです。むしろ百貨店は三階以上で千五一百平米というふうになっておりますが、病院、診療所の場合は五階以上の階で千五百平米というふうになっておりますが、病院の方がむしろ動けない方々が多いんだから、だからより一層慎重を期す必要があるんじゃありませんかと、われわれはそういうふうに考えますが、どうしてこういうふうな、いわゆる対象の中にこういうふうな格差をつけたんですかと、その一つ一つの理由をお聞きしたいと、こういうふうに言っておるわけです。
  310. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 先ほども御説明いたしましたが、そういうふうに各そこにおられる方の非常に差がございます。確かに先生のおっしゃるように、病院等では動けない方が非常にあるということでございます。それから、ホテル等では何といいますか不意にそういった事態になったときに就寝しておられるということがございます。そういったことで私ども考えておりますが、この三階以上と五階以上という差を設けましたのは、何しろ床面積当たりの人の密度と申しますか、これが百貨店とそういった病院、診療所等ではこれはもう格段に差がございます。また、そういった病院、診療所等につきましては、いわゆる医療法の規定によりまして両側に階段を必ず二カ所設けるというような、そういった現実に規定になっておりまして、病院等につきましてはそれが実施されているという事態を踏まえて、こういった基準にいたしたわけでございます。
  311. 桑名義治

    桑名義治君 そのスプリンクラーが一番おくれたのは病院じゃなかったですか。たしか病院だったはずですよ。取りつけが一番おくれたのは病院だったはずなんですよ。そういうように、それはまあ病院には入院の患者がたくさんいらっしゃいますから、工事が非常に困難だったということは一応うかがえるわけですけれども、しかし、最悪の場合を考えた場合には、そういったところにこそやっぱり綿密な計画のもとにそういった方を救済できるような方途を考える方がむしろベターではなかろうかと、こういうふうに思うわけですね。だから一貫して言えることは、行政指導のこの段階ぐらいまで、この要綱の段階ぐらいまでは法制化して、その後足りないところは徐々にいわゆる行政指導ができるという道を残しながら法制化した方が私はやっぱり方法としてはよかったと、こういうふうに思わざるを得ないわけでございます。それと同時に、病院、診療所、ホテルの場合と、それからその他の場合には五十六年までと五十八年までにいわゆる改善をしなければならないというふうに、これもまた二つに分かれているわけですね。どういう理由で分かれているわけですか。
  312. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) やはりそういった現実の改装に当たりまして、たとえば数の問題、それから資金力の問題、それからたとえば病院等でございますと、先生も先ほど御指摘になりましたように、患者さんを抱えながら改装をしなければならないという問題、そういったいろんな条件がございます。そういったものを総合的に判断いたしまして、三年と五年というような猶予期限の、行政指導の期限の差を設けたわけでございます。
  313. 桑名義治

    桑名義治君 最近の超高層ビルについては対策をどのようにお考えになっていらっしゃるのか。それと同時に、既存のビルの中で窓の全然ないビルもあるわけですが、こういったものについてはどういうふうに指導を現在なさっておられますか。
  314. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 超高層ビルにつきましては、これは防災対策等非常に重要でございます。たとえば超高層ビルで私ども考えております、私が実際に当たった例では、超高層ビルにおられる方がもし階段を使って避難していただくということになりますと、小一時間かかるような形になります。したがいまして、超高層ビルでは決して階段を使って逃げないでいいという対策を講じさしておりまして、これはまあいろんな超高層ビルにつきましては、防災対策につきましては現場では一々建設省に相談を受けて、そして防災対策の徹底を期しているということでございます。それから窓のない建物がございます。これは先ほども技術基準のところで申し上げましたように、窓がない場合に一番困りますのは、消防隊がその建物の中のある階に、救助活動あるいは消火活動のために窓を割って入ろうとした場合に、入り口がないという場合がございます。そのために、非常時に進入できるそういった開口部の対策というものも今度の技術基準の中に取り入れているわけでございまして、私どもはそういった少なくとも各階ごとに二カ所はそういった消防隊が非常時に入れるような出入り口を設けてもらいたいということを今度の対策要綱の中でうたってあるわけでございます。
  315. 桑名義治

    桑名義治君 具体的に有楽町ですかね、「そごう」が、全く窓のない建物ができていましたね。現実にあれはもう改善されていますか。
  316. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私も例に引こうと思っておりましたが、あれは一番目につくものでございます。私どもはちょっとあれにつきましても私どももずっと調査をしてまいっておりますが、最近改装したかどうか、ちょっとそこまでは私見きわめておりませんが、少なくともあれにつきましてはそういった改装が必要になるものというように考えております。ただもう一つ、先ほど超高層の例で引きましたが、超高層の場合には、当然はしご車が届きません。したがいまして、超高層ビルに対しましては、私どもはそういった消防隊専用の非常用エレベーターというものをつけていただくことにしております。したがいまして、たとえばいま例に引かれました有楽町の「そごうビル」につきましては、そういった窓をあけるのかあるいは消防隊が外から自由に使えるような非常用エレベーターを設置するか、どちらかの対策が必要になると考えております。
  317. 桑名義治

    桑名義治君 もう時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、「そごう」の例をいま突然に挙げたので御存じなかったと思いますが、ちょっと矛盾があるわけですね。私も例に引きたいと思っておりましたところがとおっしゃるならば、当然それだけの関心を寄せていらっしゃるならば、「そごう」はいまこうなっていますよと、こういう説明があればむしろ説得力があったんじゃなかろうかと、こういうように私は逆に思うわけですがね。何か書類をいま出されたようですからおわかりになったんじゃないかと思いますが、お答えを願いたいと同時に、最後に、資金のあっせん方法について先ほどちょっと御答弁があったようですが、これを見てみますと、別途通知すると、こういうふうになっているわけですね、この要綱では。どういうふうな方法を現実に具体的に考えられておられるのか、これをお聞きして終わりにしたいと思います。
  318. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 「そごう」につきましてはいま調査資料が参りまして、これは非常用進入口につきましては約二千万かけてつけてるようでございます。  それから資金の融資につきましては、今回の予算案の中で私ども地方債及び政府関係金融機関からの低利融資を行うことというようにしております。地方債につきましては、これは公立の病院がございます。これは地方債でやっていただくという話がついております。それから政府金融機関でございますと、中小企業金融公庫、国民金融公庫、環境衛生金融公庫、医療金融公庫、日本開発銀行、沖繩振興開発金融公庫等から融資できるというように融資枠もいただいております。ただ、そういった具体的な金利も決まっておりますが、具体的な融資基準とか何とかにつきまして各公庫とこれから打ち合わせしなければならない問題がございますので、別途そういったことを細かく打ち合わした上で通知したいというように考えております。
  319. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題は私二つの問題があると思うんです。一つは、法制化しないで行政指導にしてしまったという問題と、それから、技術的基準が非常に後退したという問題で、私は調べれば調べるほどこの技術的基準の後退が行政指導でよくなってしまったことの決定的な理由ではないかというように考えておりました。今度の問題は業界の圧力で国民の人命、あるいは健康にかかわる問題で政府が大きな後退を行っているという点では、窒素酸化物の環境基準の緩和と比べられるほどの重大問題ではないかと思う。局長でなく大臣に私お伺いまずしたいんですけれども、既存特殊建築物対象の数が三年前と今度の措置とでどのぐらい減ったのか、また、かかる費用がどのぐらい減ったのか、大体のところでいいですけれども、大臣御存じですか。大体でいいですよ、資料見ないで御存じかどうか答えてください。
  320. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 二千六百ほどが対象、既存、これの対象になるものであって、そのうち直ちにやってもらわなければならぬのが千三百でなかったかと、そういうふうに記憶いたしております。
  321. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 費用は。費用、お金。
  322. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 費用、金の面は、ここで委員会で聞いた局長の説明で出された分では二千億、実際千三百にして、これだけは最小限やらすべきであるという額は五、六百億と記憶いたしておりますが、詳しいことは局長から答弁します。
  323. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 局長にお伺いしますけれども、五百十億ということですね、費用としては。費用の点から言うと、その五百十億のうち、もう実際に消防法その他で行われていて、これから実際に支出されなければならない金額はどのぐらいですか。
  324. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どもは百数十億だろうというように考えております。
  325. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 九百六十むね減ったというわけですね。二千三百むね程度が。その九百六十むねの中で、デパートですね、デパートは、対象のデパートは一体どのぐらいの数だったのが、今回どのぐらい減ったのか、お答えください。
  326. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 一番当初対象に考えておりますのが約千百ございました。これが今回私どもが一斉調査いたしました結果では約六百ということになっております。
  327. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これが私は一番の大きな問題だと思うんですね。むね数で二千三百むねあったのが、これがやらなければいけなかったんですね、二千六百億円かけて、三年前は遡及適用の場合には改造しなければいけなかったんですよ。それがずうっと後退してしまって、むね数では九百六十棟やらなくてよくなった、現状でいいわけです。先ほど大臣は熊本の大洋デパートや特に大阪の千日デパートの例を挙げられましたけれども、デパートは千百対象になったのが、今度は六百でよくなっちゃった。そうすると五百の大きなデパート、ほとんど大きなデパートですね、これはもう何ら手を加えなくてよくなってしまったわけですね。これは現状容認ですよ。金額としては二千六百億円かかるものがいま御答弁のように百数十億円かければいいと、大体十六分の一でよくなっちゃった。それで、私は去年この問題非常に重視して、都内のデパートも幾つか調べましたけれども、デパートの方ではたとえば、一億円とか数千万円かかるけれどもやるつもりでいるというふうに言われていたんです。ところが、こういうふうに後退してしまってやらなくてよくなっちゃったわけですね。大洋デパート、あるいは千日デパートのように実際に火事が起きて百人も百十八人も死んだわけでしょう。だから、直さなけりゃならぬのにあのクラスのデパートは今度の技術的後退で何にもしなくてよくなったんです。現状容認ですよね、そういうことになりませんか、局長
  328. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) まあたまたま先ほど桑名先生からいい例を引いていただいたと思いますが、私存じあげなくて申しわけございませんでしたが、やはりこういった私どものいろんなそういった検討結果、あるいは消防法のスプリンクラーの改装工事等を通じまして相当改善が行われております。先ほどの桑名先生の御指摘ございました「そごう」につきましても、私どももあそこの店内でスプリンクラー工事と同時にいろんな改善を行っております。そういったことを踏まえまして私どもこういった五百十億が百数十億でいいということを調査しているわけでございまして、決して遡及適用のときと現在とでは何にもせずにそのまま十分の一になったということでないことを御理解いただきたいというふうに考えております。
  329. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり金額で十六分の一に減っちゃいましたからね。何も法律改正するのは恥ずかしくてできないと、要らぬと、十六分の一分は細かに行政指導やった方がいいということに私はなったんじゃないかと思うんです。私は前回の委員会でもこの問題質問しましたけれども、たとえば、救仁郷さんは今度の悉皆調査ですね、オールスタディ、私が人命尊重の見地でやったのかと、円滑な改修のためだけにやったんじゃないかということを聞きましたら、いやそうじゃないと、人命確保のためにはどの、どういう基準に従った方がベターかということをも検討を行ったというふうにちゃんと議事録でお答えになった。それで私今度資料を出していただきました、この悉皆スタディの結果についてですね。そうすると、やっぱり、調査の目的は、懇談会で決まった技術基準を適用した場合、「円滑な改修が可能か否か検討をする。」と、はっきり書いてある。この技術基準で果たして人命尊重に役立つのかどうか、もっとベターな方法がいいのかどうかなんということ何もしていないんですよ。昨年いただいた資料を見ましても、やはりケーススタディは円滑な改修が可能か否かということしか調べていません。そして今度各自治体に調べさした調査表そのものも資料としていただきました。全部見てみましても、どれがベターなのかと、技術基準で本当に人命が尊重され得るのかどうかというようなこと何にも調査していないんですよ。この技術基準を適用してどの、たとえば特殊建築物はどうなるかと、避難計算やれとかね、そういうことが書いてあるだけで、そうして最後に一体幾らかかるのかという調査表じゃないですか、あなたの答弁私はうそだと思いますね、この間の。
  330. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 先ほども申し上げましたように、私ども遡及適用の段階では建築基準法そのものの一部を遡及適用するわけでございますから、人命の安全、財産の確保という二点を追っております。特別立法の検討の段階から私どもはそういった財産の保護は捨てまして、人命の安全だけに限って検討を進めてまいったわけでございます。その段階で先ほど金額の点でお触れになりましたが、二千六百億から八百二十億というような金額になったわけでございます。今回五百十億ということに積算いたしましたのは、そういった特別立法の段階では機械的にある基準を当てはめていった。今回の場合には、調査は、いわゆる特別立法のときに御説明申し上げておきましたいろんな代替措置、そういったものを含めて調査した結果、五百十億ということになったわけでございます。  まず、その調査で先生御指摘の、これで大丈夫かどうかということは、これはいわゆる技術検討の中で十分私ども検討したつもりでございます。したがいまして、私どもは今回の調査では、むしろそういったことで工事がうまくできるかどうか、あるいはそういったことのほかにむしろ安全になる方法があるのかどうかというようなことを含めて検討をした、調査したわけでございます。
  331. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは全く事実と違います、あなたはそう言い抜けられるけれども。ケーススタディ、悉皆スタディそのものはね、そういう項目は何らない、技術懇談会で多少そういう議論はされたかもしれませんけれどもね。そういうふうに対象建築物をうんと減らして現状容認にしてしまうために使われたのが戸川東京理科大教授の避難計算式ですね。現行建築基準法、五十一年改正の、この中には避難計算式は含まれていますか。
  332. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) これは当然たとえば百貨店等におきます階段の幅を現行建築基準法では規定してございます。そういった現行建築基準法の階段幅の規定の中では、当然そういったものを織り込んで幅の規定が盛られているわけでございます。
  333. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと消防庁にお伺いします。  今度の一番の後退は全館に避難計算式が適用される場合には一切の措置が要らぬと、竪穴対策が要らぬということにしてしまったところが私は一番大きな後退だと思うんですけれども、消防庁はこの避難計算式なるものが実際に理論どおりにいくのかどうか、その点どう判断されておりますか。
  334. 中島忠能

    説明員(中島忠能君) 現実にビルで火災が起きました場合に、当該ビルに収容されている人間の中にはいろいろな人間がおると思います。したがいまして、すべての人がその避難計算どおりに私は行動すると思いませんけれども、ただ避難計算式というのは先生非常によく御存じでございまして、私が申し上げるのは釈迦に説法の感がございますけれども、竪穴対策を行うかどうかという場合の一つの判断基準と申しますか、そういう意味において建設省の方はお使いになっておるようでございます。ただこの避難計算式というものを評価する場合に、その前提として誘導対策がしっかりとられておるかどうか、あるいはまた最終避難経路が確保されているかどうか、あるいはまた開口部というものが確保されておって消防隊の救助活動あるいは消火活動というものの助けになっておるかどうかということもございますので、総合的に判断しなければならない問題だというふうに考えております。
  335. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この避難計算式というのは大体避難させるための誘導をどうするかという場合の式だと思うんですね。この避難計算式をこういう防災の構造問題と結びつけてこういうふうにした例は今回が初めてではありませんか。ちょっと消防庁にお伺いします。
  336. 中島忠能

    説明員(中島忠能君) 私もすべての例を存じておりませんけれども、私の現在の持っておる知識の範囲内で申し上げますと初めてかというふうに思います。
  337. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 初めてだと思うんですね、先ほど階段の例ちょっとお出しになったけれども。避難計算式、避難計算式と、そういうふうに局長言われますけれども、三月一日の私の質問に対する答弁で、「いろんなケーススタディの結果、一番危ないものでも大体十五分あれば避難できると」「考えております。」というふうに答弁されている。いや私は六分のはずだと言って、時間がないんで討論しなかったんですけれども局長、安全限界時間が十五分でいいと、そういうふうに思っておられるんですか。
  338. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 前回の御質問に対してちょっと舌足らずだったかと思いますが、私ども考えておりますのはもちろん安全限界時間というものは、先生御指摘のように三分とか六分とか九分とかいうように、これは設備によって違いますが、考えております。十五分と申し上げましたのは、たとえば……
  339. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 照明設備でしょう。
  340. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) そうでございます。  十五分と申し上げましたのは、いままでの悉皆スタディの結果、どんな段階の少ない建物でも十五分あれば避難ができるというようなそういった計算がございます。したがって非常用の照明設備については十五分間だけは少なくとももつような構造にしてもらいたいというようなことを規定しているわけでございます。
  341. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 局長自身もはっきり御存じないんですよ。この前の私への答弁、議事録見てごらんなさい。ちゃんといろんなケーススタディの結果一番危ないものでも大体十五分あれば避難できると考えている。十五分というのは、これも見てみますと、先ほどもあなたの説明にあったけども照明設備が十五分もつかどうか、暗くなるとまずいので、それで十五分と書いてあるんじゃないですか。あなた自身がよく御存じないで私たちの質問に対して、こういうふうにあたかも安全限界時間が十五分あっていいような、そういう答弁をされて、しかも非常に緩かな基準後退されるというのは私は全く許せないいいかげんな知識であり、いいかげんな答弁だと思うんですね。  そういう点で繰り返しますけれども、基準そのものが大きく後退して、現状をほとんど容認のままでいいと、業界の圧力の結果であることは明らかで、私のところにさえ当時デパート業界から陳情に参りましたからね。そういうことが今度の後退を生み出して、それで金額でいって十六分の一程度でよければ、じゃ行政指導でいいじゃないかと、法律にするのには余りに特殊建築物二千三百棟対象にしていたのに、その大きな九百六十むねは要らぬということになれば、法律つくると余り問題が明確になるのでやめてしまったということだと思うんですね。先ほどから局長は行政指導の方が法律をつくるよりもきめ細かくできるというふうに何回も言われるけれども、じゃこれから建てる特殊建築物も建築基準法を改正しないで行政指導やった方がきめ細かくできるということになると思いますけれども、そう信じておられますか。
  342. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 前回も申し上げたかと思いますが、新しくつくる場合には設計者がそのような基準に合うようにつくれるわけでございます。ところが、古い建物はこれは改装ということになります。したがって、一律の基準でもってそれをそのとおり改装しろといっても、これは無理な場合が非常にございます。したがいまして、私どもは新しい物に対しては十分一定のそれぞれの基準をもって適用すれば、これはもう現実に設計も可能でございますが、古い物の改装というのはそう簡単にはまいらないというように考えている次第でございます。  それから先ほど十五分で先生からおしかり受けたわけでございますが、私は十分理解しているつもりでございます。と申しますのは、安全時間、これは物によって違いますが、たとえば仮に一番緩い九分ということにしまして、九分たっても避難ができない場合には堅穴対策とかなんとかは現行の基準どおりきっちりやっていただくということにしているものでございます。したがって、その上でさらに十五分間の照明だけはやってもらいたいということでございます。もう十五分で何でもいいんだということで基準を決めているわけではございません。
  343. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 スプリンクラーがなくて内装も防火材料でない場合にはわずか三分なんですよ、この安全限界時間というのは。それほど危ないんですよ。だから、しっかりした措置が必要だというのでこれだけ問題になっているのじゃないですか。それを法律もつくらぬ、行政指導でいいと。昭和四十九年に消防法改正、建築基準法改正が提案されたときには、提案理由に両法相まって防火避難の効果を高めることだという説明しているんですね。それで消防法の方は遡及適用が行われてスプリンクラーがずっとできてきたと、これはきょうの質問でもいろいろ出ましたけれども、まさに法律による強制力があって初めて既存建築物にスプリンクラーの遡及適用が行われたんだと思うんですね。それできめ細かい行政指導と強制力を持った法律と、つまり強制力を持った法律施行して、それに基づいてきめ細かな行政指導を行うというのがまことに普通の姿でしょう。大体そうなっているはずですよね。ところが、なぜこのケースだけ法による強制力を用いるとマイナスになるのか、それほど特別になるのか。いま局長は既存の建築物は改造がなかなか困難だと言われた。困難であればあるほど法律による強制力を行って、その上できめ細かな行政指導が必要なんじゃないですか。法律をやると何でマイナスになるんですか、このケースだけ。
  344. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 先ほどもお答え申し上げましたが、新しいビルを設計するのと古い建物をどうやって安全にするかということは、それぞれ違いがございます。新しいものでございますが、それぞれたとえば建物の安全の問題というのは、たとえば階段がどうなっているか、あるいは非常用照明がどうなっているかというものの、それぞれの項目ごとの積み重ねというもので安全が確保できるわけでございます。ところが既存のビルの場合でございますと、そういった個々の施設の基準をある一定限度に保つ方がいいのか、あるいは一つの施設を非常に重点を入れてやった方がいいのか、これはとり得る判断の問題でございます。たとえば、ちょっとおわかりにくいかと思いますが、私どもよく申していることは、結局、建物の安全と人の避難という問題は、極端なことを申しますと、隣りのビルと横の通路で結ばれている、これが一番安全でございます。したがいまして、そういうものがとり得る、それをいっぱいつければ、これはもうほかの対策がなくても、たとえば階段の数、幅等がなくても、これは当然安全になるわけでございます。したがって、そういった一つのビルを安全にする方策としては、いろんな方策があるわけでございまして、それを一律の基準でもってやっていくというよりも、むしろ総合判断した方がいいという見解に立ったわけでございます。
  345. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が参りましたけれども、今回の技術基準でも、政令にできないような内容はないですよ、多少細かくなってもね。これも大体こういう技術基準で一律に適用してやっているわけでしょう。政令にできないという理由は全くないと思う。私は、今回のこの行政指導にしてしまったこと、それから技術的基準のきわめて大幅な後退というのは、非常にやっぱり国民の利益に反するもので、私ども絶対反対です。  私は最後に、先ほど大臣は大洋デパート、千日デパートの例などもおっしゃって、国民の命を守るということがどんなに大事かということも言われました。私、先ほど指摘しましたように、千百あるデパートのうち五百のデパートはもうやらなくていいということになったわけですね。そういうふうに対象から省いてしまった特殊建築物で、もし今後火災が起きて、被害者が出るというようなことがあったら大変なわけですね。そうすると、後退した技術基準で行政指導をやっても、野放しになっている特殊建築物で被害が起きた場合には、新しくやっぱりどうしても何かやらなきゃならぬわけですね。そういう意味で、私は今後行政指導をおやりになっていく場合に、真剣にその経過、結果、これをごらんになって、どうしても必要だという場合には、やっぱり万難を排して、新たに法制化をも含めて政府が態度を出すということを求めたい。そういう経過を見ていくという上で、今後、これだけ重大な問題ですので、特にやっぱり国会の決議、あるいは参議院建設委員会委員長の要望、それに対する歴代の建設大臣の答弁に反して今度こういう事態になったので、やっぱり一年ごとに当委員会に、既存のこういう建築物に対する行政指導の問題、あるいはその結果の問題を報告していただきたい。それが、大臣が今度の処置について、いろいろまずい点があったということをお認めになる以上、参議院の建設委員会に対して、国会に対して果たすべき最小限の義務ではないかというように思うのですけれども、大臣の明確な責任ある御答弁を求めたいと思います。
  346. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 冒頭に、茜ケ久保先生の質問にも答えたのでございますが、私もこの点十分責任を感じておりますし、行政指導で実を上げる。既存の建物でございますから、その点については十分部局を督励いたしまして、その実を上げるように万全を期していきたいと思っております。なお、その過程におきまして不都合であったというふうなことがもし起こるような事故がありましたら、これまた先ほどお答えいたしましたように、その起こった原因その他を十分検討させていただきまして、万全の措置をさらに考えたいと、このように考えております。  いま国会に対する一年ごとの経過の報告という御要望でございました。私もそういうふうにさせていただきますようにいたしたいと、このように考えております。
  347. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  348. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 以上で各委員質疑は終局いたします。  この際、委員会を代表して、委員長から申し上げます。  建設大臣は、このたびの所信表明において、既存の大規模な特殊建築物防災対策については、行政指導により措置を講ずる旨を明らかにし、本日さらにその内容について説明がありましたが、これは従来の建設大臣の本委員会における答弁の趣旨と異なり、遺憾であります。しかしながら、建築物防災対策は、人命の安全を確保するために不可欠な措置であることにかんがみ、本委員会の審議の経過を踏まえ、再び災害の起こらないよう強力な対策を講じ、所期の防災目的を達成するよう強く要請いたします。
  349. 渡海元三郎

    ○国務大臣(渡海元三郎君) 既存の大規模な特殊建築物防災対策として今回、所信表明でも明らかにいたしましたように、行政指導によって措置することといたしましたが、立法措置によらないこととした点については従来の当委員会における答弁の経緯にかんがみ、申しわけないと存じております。  しかしながら、今後は行政指導を徹底して実施し、委員長の御発言の趣旨にのっとって不測の事故を生じないよう防災対策を適確に行ってまいる所存でありますので、何とぞ御理解を賜り、御指導くださるようお願い申し上げます。
  350. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会をいたします。    午後六時十七分散会      —————・—————