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和田静夫君 少し見解を述べさせてもらいますが、現在、十五の新産都市と五つの工業整備特別地域が指定をされている。国の助成等を受けて整備計画が進行して今日に至っている。これは
昭和三十七年及び三十八年の
法律に基づいている。それぞれ地区指定がなされたわけですが、この新産都市は池田内閣の所得倍増計画及びそれに基づいて策定された全国総合開発計画に示された工業の地方分散のための地域開発政策を具体化したものである。これはもう周知のところですね。
この新産都市は既存の工業地域における集積のマイナスというものを除去をして、かつ経済の拡大に伴う設備投資需要に対処しようとしたものであった。その高度成長期という時代の特色が新産業都市という
名称にもあらわれたというふうにわれわれは見ましたが、しかし、その新産業都市建設の意図するところは、大都市の過密の弊害を除去するとともに、新しい開発地域を人と自然及び都市と農村との調和のとれたものにしようとするところにあった。たとえば岡山県の南地区新産業都市建設基本計画、これは
昭和三十九年十二月二十五日、
政府が承認したものでありますが、その中にはこう書いてあるんですね。「工業開発に伴なう工業生産の増大、人口の流入、物資の流動等の急激な発展に対応するため、建設基本方針に基づき、地区全体の秩序ある
土地の利用を計画して工場用地、住宅用地、公園緑地、農地等を合理的に配置するとともに総合的な都市機能を充実させるため、産業基盤整備に偏することなく、生活環境施設、教育施設、文化施設等の整備をはじめとする社会開発にも留意して、「太陽と緑と空間」のある人間尊重の都市づくりを行なうものとする。」と書いている。つまり、名前は新産業都市でありますが、その
実態は、大平さん流に言えばまさに田園都市づくりそのものだと言えると思うんです。
一体、田園都市構想といま読み上げたような新産業都市づくりの構想とどう違うんでしょうかね。新産業都市は工業開発に重点を置いていると言えますが、田園都市といえ
ども雇用の場づくりを重要視せざるを得ないはずであります。したがって、この両者に基本的な考え方の違いがあるとは思えない。
自治省としてはこの点をどうお考えなのか。田園都市構想の概念をはっきりさせるためには、ここのところをひとつ御意見を承っておきたい。
それから、続けますが、ちょっと恐縮ですが、私はこの地域政策には大きく分けて総合開発施策と個別施策があると思っています。すなわち一定圏域を範囲としまして総合的に開発政策を推進する、そういう施策と、特定地域の
状況に応じて、雇用とかあるいは特定不況業種の救済を図るなどの政策を推進する施策。
そこで総合開発政策というのは、文字どおりあらゆる施策を総合的に計画をして実施するものでありますから、総合開発計画でありながら対象区域が異なるということは、同じレベルの施策としては本来あってはならないと思うんですね。ところが新産都市は、旧全総、いわゆる第一次全国総合開発計画に基づく総合開発計画である。それから広域市町村圏は新全総、すなわち第二次全総計画に基づく総合開発計画である。ともに総合開発計画であり、都市と農山漁村を一体にした地域づくり、都市づくりを目的とするものであるから、新産業都市の設定されている区域では、本来両者を一本化して、必要があったならば新産区域の、あるいは広域市町村圏区域の見直しを行って、そしてその間の区域がまちまちにならないのが本来望ましい姿であったと私は思うんです。ところが、新産都市は
法律に基づいてかつ審議会等の議を経て
政府の承認したものである。ところが一方、広域市町村圏は、これは
自治省の側にとっては不幸にして、市町村連合法案をめぐる私との論争を通じて廃案にしましたから、
法律はでき上がらなかったから、したがって、
自治省の行政措置でこれは実施されていくというようなこともあるでしょうが、法的には手続や重みがその意味では違ってきているはずです。新産都市はすでに広域市町村圏に比べて六、七年も先行している。そうすると、いろいろ問題があるかもしれませんが、高度成長から、その後反省期という時代の転換を迎え、それゆえに全総計画自体が見直される必要が生じたわけであって、新産都市も新しい時代の
要請の中で衣がえしてもよかったはずであります。
実はわが国の総合地域開発政策というのは、いろいろ考えてみても、古いものを古いまま、別の言い方をすれば各省のなわ張りをそのままにしてその上に新しいものを次々とつけ加える。しかも各省別々に
予算獲得に奔走する。地方
自治体の側からすると、新規施策をどう受けとめたらよいのかという混乱が生じていることはもう明確です。新産都市、広域市町村圏、地方生活圏、その上に定住圏、そして今度は田園都市と、追いかけるように国の施策が先行するわけでありますが、この際
政府としても十分反省をされる必要があると思うんですね。
広島県の宮澤知事は、地域づくりの構想は早く一本化し、
政府の窓口を一本化することが先決だと。私、宮澤さんと行政
局長時代ずいぶん地方行政
委員会で論争をしましたし、その前にお書きになったいろいろな本も読ましていただいて、ある
部分において、いわゆる地域主義という
部分においては大変共通する
部分がありました。その人がいま知事になって
政府に向かってこういう
発言をされているわけですね。そして
政府施策が多様化することは御免だと、こう
自治省事務次官までいった人がいま知事になってはっきり物を言われているわけですから。特色ある地域づくりは地方における発想と行動の多様化、そのことが必要だとまで言い切っていらっしゃいますよ、彼は。ここのところね、自治大臣の所見を承っておきたいと思う。私は自治大臣と総理大臣の所見が違うことを実は期待をして、
予算委員会の準備のためのあなたの
答弁でございますので……。
以上二点、ひとつ。