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1979-06-05 第87回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年六月五日(火曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     立木  洋君  六月五日     辞任         補欠選任      町村 金五君     上條 勝久君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 上條 勝久君                 秦野  章君                 二木 謙吾君                 小野  明君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   大平 正芳君        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        内閣総理大臣官        房同和対策室長  黒川  弘君        外務大臣官房長  山崎 敏夫君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省条約局外        務参事官     山田 中正君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        外務省情報文化        局長       加賀美秀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局外        事課長      鳴海 国博君        法務省民事局第        五課長      田中 康久君        法務省入国管理        局資格審査課長  山下 善興君        法務省入国管理        局参事官     藤岡  晋君        大蔵省理財局資        金第一課長    廣瀬  勝君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部長       仙石  敬君        厚生大臣官房国        際課長      金田 伸二君        労働省婦人少年        局婦人労働課長  高橋 久子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(第八十四  回国会内閣提出、第八十七回国会衆議院送付) ○市民的及び政治的権利に関する国際規約締結  について承認を求めるの件(第八十四回国会内  閣提出、第八十七回国会衆議院送付) ○国際人権規約に関する決議 ○教育交流計画に関する日本国政府アメリカ合  衆国政府との間の協定の締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る一日、神谷信之助君が委員辞任され、その補欠として立木洋君が選任されました。     —————————————
  3. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田中寿美子

    田中寿美子君 大平総理大臣、時間が少ないものですから単刀直入に入らしていただきます。  昨日、金大中事件について外務省から新たな事実が発表されました。衆議院決算委員会でも取り上げられた問題ですが、金大中氏がソウルにある日本大使館接触を二、三週間前に図ったという発表がされました。その接触内容なんですが、昨夜、NHKニュースセンター9時のときに小浜キャスター金大中氏とが電話連絡をされました。それを聞いておりましたが、その内容外務省発表されたことと大体同じだと思います。  第一点は、韓国公権力介入がこの事件においては米国の公文書でも明らかにされたんだ、だからその政治決着という六年間にわたる虚構を見直すべきであるということを金大中氏が述べておりました。それから第二点は、自分自身の自由とか人権を確保してほしい、こういうふうに自分は望んでいるということについて接触をしているのである。しかし、幾らかその内容について大使館対応が不満足なので保留しておったところが、先月末に自分軟禁状態になって接触ができなくなったというような意味電話内容でございました。  この接触のことは、当然、大平総理御存じでいられたと思うのですが、金大中氏の申し入れていることに対してどういうふうに御判断なさり、どうしようと思っていらっしゃいますでしょうか、総理の御意見を伺いたいと思います。
  5. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、事実の経過を簡単に私から御報告いたします。  金大中氏と在韓のわが方の公館とは、これまである程度の接触をあるいは夫人とあるいは金大中氏と保っており、その後、金大中氏が御承知のとおりに刑に服した後絶えておりましたが、今度釈放されてからしばらくして、二週間ぐらい前に会いたいという話がありました。会いたい相手は大使または次席公使に会いたいという話がございました。そこで、私の方からは、そういう機会があるならば会いなさいという訓令を出しております。その後、いまおっしゃったような事情でまだ会うに至っておりません。  NHK発表になりました方との電話の応答の内容等は、わが方が知るところではございません。
  6. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと聞こえません。内容は何ですって。
  7. 園田直

    国務大臣園田直君) 電話内容は私たちは全然関知しておりません、存じません。
  8. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、大平総理大臣、昨日のその電話内容、いま内容は知らないとおっしゃいましたが、大平総理は、昨日のあの電話をお聞きになったかどうか、当然お聞きになっているべきだと思いますが、その内容についてどうお考えになりますか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、この金大中事件韓国公権力介入があったかどうかということにつきまして、伝えられるところによりますと、金大中自身は肯定的な見解を持たれておるというように承りますけれども、これは金大中氏御自身の御意見として承ったまででございます。日本政府判断は、この問題につきまして政治的決着をつけたわけでございますが、それを見直すに必要な証拠を掌握するに至っていないということでございます。  それから第二点、金大中氏御自身の安全、人権上の問題でございます。この事件被害者であられたわけで、私ども同氏の安全につきましては関心を持ってまいりましたが、日韓両国の間の政治的決着におきましては、同氏一般韓国人と同様の人権上の保障が与えられるというように私ども了解をいたしておるわけでございます。この了解は今日までも変わっておりません。しかし、事実、金大中自身の御身辺に起こっておる事件、これはそもそも、いわゆる日本韓国との間に起こりました金大中事件それ自体の問題ではなくて、これは韓国内部の問題であるように思いますので、私は、それに対していろいろコメントすることは差し控えたいと考えております。
  10. 田中寿美子

    田中寿美子君 あの折の第一次決着には大平総理大臣外務大臣でいらっしゃいましたから、大変責任がおありになったと思います。それで、そのとき一般韓国市民と同じような自由を確保するということになっておりまして、別件逮捕はしないということになっておりました。後で、それから九カ月ぐらいたってからの逮捕でございますね。ですから自由は確保されなかったということがあるんですが、大平当時の外務大臣自身も決して満足はしていらっしゃらなかったということは、これまでの大平さんの御発言をずっとたどってみまして、いつでも新しい公権力介入証拠となるような事実を見つけたときには見直すということを一貫しておっしゃっていて、これは当時事情を相当よく御存じであったがゆえに大平さんも大変心痛があったんではないかと私は思っております。  しかし、その内容のことにいま入っていると時間がなくなりますから、今回の接触で、金大中氏は、大使が前向きな返事をしたけれども不十分だというふうに言われているので、先ほど外務大臣の言われたような何にも中身は知らないというようなことは私はないと思いますが、そのことは後で外務大臣にお尋ねしたいと思っております。  私どもは、公権力介入証拠となるような新事実というのは、一つ韓国政府みずからが認めることであろう、しかし、それはあり得ないだろう。それから金東雲自身を取り調べるということも一つの手ですけれども、それはほとんど不可能な状況にある。そうすれば金大中自身証言が一番いまのところ唯一の新しい事実を得る道だと思います。  それで、今回、大使接触されて、そして事実をきちんと金大中自身から確言を得ていただきたいと思いますが、その場合、いま軟禁状況にあるけれども大使金大中氏に会うことはできるはずだと私は思います。そのように政府訓令をされるだろうかということが一点。もしそれだけで不十分であれば、私どもは、かねがね金大中氏を日本にお呼びして、そして参考人として証言をしていただきたい、こういうふうに御要求もしているわけなんですが、そのような方法をとってでも、この金大中氏の事件に関しては大きな責任のある日本政府はできるだけのことをしなければならないと思いますが、そのことを総理はどうお考えになりますか、いまの二点に関して。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、第一の金大中氏とわが方の大使館関係者との接触の問題でございます。  これは私の承知しておる限りにおいては、過去においても何回かそういうコンタクトがあったように承知しております。今回は、いま御指摘のように、先方から接触を求められてきておる経緯があるようでございます。これに対しましてどのようにわが方として対応すべきかという問題につきましては、わが方の大使以下大使館員がおりますので、現地の事情をよく承知しておりますので、大使がどのような判断をしますか、私としては大使判断を尊重していきたいと考えて、こちらからああしなさい、こうしなさいというような訓令を出そうとは思っておりません。
  12. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはおかしいんじゃないでしょうか。出先の大使というのは日本国を代表しているものでございますね。このような事件に関して本国政府訓令をしないということは私はあり得ないと思います。  すでにけさの毎日新聞では、これは外務省内部資料としてですけれども、もう事件発生後の二カ月後に内部資料として出されたものの中で相当克明に事件について外務省当局も把握していた。当時外務大臣でいらっしゃった大平総理は、あそこに書かれているような実情ですね、あの中には韓国政府相当上層部朴鍾圭大総領警護室長李厚洛KCIA部長などの指示を受けて行ったというふうなことが明らかにされておりますし、それに対して韓国側公権力介入したんだということをなるたけ否定するような方向へと、いわゆる政治決着へ持っていこうとしたということや、それから、その手だてとしては日本を非難せよというようなことや、それから、その他今後この事件関係ないような形で当事者を更迭させるとか、いろいろなことがもう外務省当局で把握されていたんですね。  その際に、朴大統領のメンツを立てよとか、日韓関係を悪くしない、壊さないようにしようとか言いながら、いわゆる政法決着がつけられた当の御責任者でいらっしゃいますから、その間の事情は、私はもうこれについてとやかく申し上げる暇がないので、大平大臣がずっと心の中ではいろいろと悩みながら、新事実があればというようなことを言ってこられたんではないかと思っております。その点について、どんな心境でいらっしゃるかだけお伺いして、私の時間を終わります。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大使判断を尊重するという意味は、そういう先方からの申し出がありました場合には、大使判断して、これは自分はこうしたい、いかがでしょうかという御相談があれば、また当然応じていくべきでございますが、向こうの大使館側意見も聞かずに、こちらから訓令をするというようなことは差し控えていくべきだと考えておるわけでございまして、練達な須之部大使でございますので、その間の状況判断は間違いなくやっていてくれているものと私は信頼をいたしております。こちらに、中央の方に御相談があれば、それに対して私どもといたしましては私ども見解を申し述べるのにやぶさかではございません。  それから第二の問題でございますが、外務省といたしましては、私がお預かりしておった当時もそうでございましたし、今日もそうであろうと思いますが、あらゆる手だてを講じまして各種の情報を収集することに努めておるわけでございます。きょうも一部の新聞にそういう記事が出ておるようでございますけれども、あれは外務省の文書というものではなくて、外務省が依頼いたしました情報のたぐいであろうと思うのであります。で、それはそれなりの情報として外務省状況判断材料にしておるわけでございますけれども、それが直ちに外務省見解であるというわけのものではないことは田中さんも御理解いただけることと思うのでございまして、政府立場は、いろいろなことがいまアメリカから材料が出てまいりましたり、いろいろ出てまいりますけれども、なお政治的決着を図りました立場におきまして、これを軽々に見直すというような立場をとっていないことを御了承いただきたいと思います。
  14. 戸叶武

    ○戸叶武君 金大中事件に対して大平首相はきわめて慎重な発言を行っておりますが、その発言内容を分析してみると、いままで政治的決着がついたという形において結論を出している大平さんが、新事実が出てきた場合においては、これに対応せざるを得ないというような柔軟な変化がその中にはうかがい取れる向きもあるのでありますが、そういう意味において政治的決着がついたという二回にわたってのいままでの発言と、金大中自身から日本政府接触したいという申し出に対する受けとめ方の中にはニュアンスの異なる面が出てまいったのであります。そこに柔軟路線を行こうとする大平さんの悩みと配慮がひそんでいるように見えますが、いずれにウエートを置かれているのでありますか、それを承りたい。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政治的決着がついたと申し上げていないんです。政治的決着をつけたんでございまして、この事件自体はまだ捜査中でございまするし、新しい事実が出ましたらこれを見直すことあるべしということで日韓の間で話をつけたわけでございます。日韓の間におきましては、金大中自身の自由につきましては、先ほど田中先生にお答えいたしましたとおり、一般市民と同様の自由が保障されるということを了解いたしておるわけでございます。しかし、金大中氏の身辺が必ずしも穏やかなものでないということが伝えられておりますけれども、これは金大中事件自体に関連したものか、それとも別の事件でそうなっておるのか、私は後の方の見解をとっておるわけでございまして、そういう問題に対して深く立ち入るわけには私はいかぬと思います、日本政府として。  ただし、日韓の間に起こりました不幸な事件でございますから、この金大中事件主権侵害かどうかということを問う事件でありましたが、同時に、日韓関係にとりましてもないがしろにできない問題でございまして、この問題についていろいろな混乱があるけれども日韓両国民は、政府の処理というものはまずまず理解できるというようなものであってほしいと私は念願いたしておるわけでございまして、日韓関係をりっぱに運営していく立場から申しまして、われわれは金大中氏御自身からも御意見を承って、裨益することがあれば、それはそれとして承る必要があるのではないかということで、過去、何回かそういう接触もあったと聞いております。今回もそういうお話がございますので、それをこういう状況のもとでどういたしますか、これは大使の慎重な判断にまとうじゃないかという立場をとっておるわけでございます。
  16. 戸叶武

    ○戸叶武君 大平首相のいまの発言で重要な点は、政治的決着がついたとは言わない、政治的決着をつけたと言っていたまでだ、これは言葉のあやでなくて、そこに大平さん的な柔軟表現の受けとめ方のむずかしさが非常にあると思います、非常なデリカシーですね。しかし、国民一般にはわかりにくい面があります。  こういう言い回し方でもって国民が納得できるかどうか、国民的合意を得られるかどうか、を得られるために努めているのだとは言っていたが、政治的決着がついたとは言わない、政治的決着をつけたという内閣意思表示でありますが、私は、この前も、内閣の言う政治的決着というのはいかなることを意味するのか、その内容、その意味を承りたいと言って政府側答弁を求めましたが、その専門家答弁は非常に長いものですが、いまあなたが言った簡単な表現の方がやや明瞭になって、やはり大平さんは頭のいいところがあるんだなと感じました。  これは、これからやはり問題によっては金大中さんの意のあるところも聞いて、そうして問題を掘り下げていこうという謙虚な態度もそこにはひそんでいることを私は察知しましたので、その点は安心していいか悪いかはまだ私の方には決着がついておりませんが、いままで段平で政治的決着がついたという表現政府側でやったときに、これはまた吉田首相造船疑獄の際における内閣防衛のための指揮権発動と思えるような伝家の宝刀が抜かれたのかなと、解散権よりもこわいのは、内閣命脈を保つためには、内閣自体、閣僚に不正があってもその内閣を防衛するために指揮権発動を平気で行う、こういう権限がいつ内閣に与えられたのか。日本国憲法においては国の最高の機関が国会であり、国会の中から内閣を生み出したのだ、内閣というものが行政権限の拡大につれて鬼っ子となってしまって母親を食うような状態にまで奇形な発達をしてしまった、これで議会民主主義というものが成り立つかどうかということに私は非常に危惧を感じ、民主政治危機というものをそれから感じたんですが、時間がないからもうすでに終点の方へ走らなければならないから、途中下車はしないで結論の方へ飛びます。  東京サミットにおいては、東西南北からいろいろな問題が持ち込まれますけれども、いままで外務大臣その他の根回しが相当効果があり、あなたも体を張ってアメリカにもマニラにも出ていって、外務大臣もヨーロッパにも行き、中東にも行くという状態で、やや一応かっこうをつけた東京サミット先進国同士の痛み分けでなされるのだと思いますが、問題はやはりエネルギーの問題、石油の問題が重点となり、もう一つはやはり通貨不安定下における貿易のアンバランスが出ている。これをどういうふうな形において、いろいろな立場があるが、調整していくかということで東京サミットにおける問題点がぐっと浮上してまいると思うのであります。  その後に十月、十一月は解散どころの騒ぎじゃない、内閣命脈国会で防衛するのよりは、国際的な波動の中に日本自身責任をどれだけ果たし得るかどうかというイバラの道に直面するんじゃないかと思いますが、その辺の御覚悟、東京サミット以後における国際的なあらしの中における日本みずからの主体性の確立と、解散なんかということはうかつにできないんじゃないかという、この危機感首相は持っておられるかどうか、簡単にお聞きいたします。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 東京サミットでどういう議題をどういう手順で取り上げて、どういう仕上げに持っていくかという問題は、戸叶先生も御承知のとおり、各国の首脳の代表が集まりまして、準備会議で慎重に練っておるところでございます。今月の半ばごろ最終の準備会議がパリで行われることになっております。そこでだんだんと仕上がりを見せてくると思いますので、私からこの段階でこうする、ああするというような僣越なことは差し控えなければならぬと考えます。  しかしながら、いま仰せのように、石油の第二の危機を契機といたしまして、エネルギーの問題が最大の問題としてクローズアップされてきておりますことは御指摘のとおりでございます。この問題は経済の成長、インフレ、通貨、南北問題それから貿易、各般の問題に影響する一つの象徴的な問題になってきたと思うのでありまして、したがってこのエネルギー問題というのが、サミットにおきましても、当然のこととして最大関心と論議の的になるのではないかという展望を私は持っております。したがって、これについて先進主要国がどのように認識して、どういう対応をするかということは世界が注視しておることと思うのでありまして、それにはできるだけ忠実に東京サミットはこたえるところがなければならぬのじゃないかというように考えておるわけでございます。  しかし、同時に、エネルギー問題は大変むずかしい問題でございまして、東京サミットでどのような対応考えましても底深い問題でございます。依然としてこの問題はサミット後も大きくのしかかってくる課題であると考えております。日本経済の今後の運営にとりましても、この問題を避けて通れないどころか、この問題に対するちゃんとした姿勢を決めなければ運営の方針が立たないということになることであろうと思うのでありまして、大変むずかしい問題でございます。したがって十分な満足すべき答案が内外にわたってできるかどうかという点は確かに問題だと思うのであります。だといって、われわれはそれを断念するわけにはいかないわけでございますから、エネルギー問題を直接に解決することがむずかしいとすれば、間接にどういう手だてをもってその問題を緩和する方向に持っていけるかというような点をいろいろ模索していかなければならぬことと思うのであります。  したがって、仰せのように、このサミットが終わりました後におきましても、政府といたしましては、エネルギーの問題それ自体も大変でございますが、これに関連いたしまして物価問題、それからインフレ問題、雇用問題、財政再建問題がいろいろ控えておりますけれども、みんな関連いたしておりまして、もう一日の休息もとれないような緊張した環境を迎えるに違いないと思っております。われわれの任務は、微力でございますが、それに全力を挙げて対応するということを一心に考えなければならぬと思っておるわけでございまして、いろんなことで道草を食っておる余裕はないと考えております。     —————————————
  18. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 委員異動について御報告いたします。  本日、町村金五君が委員辞任され、その補欠として上條勝久君が選任されました。     —————————————
  19. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私は、今度のサミット日本の将来の運命にとって、また世界にとってきわめて重大なる会議だというふうに考えております。その観点からいたしまして、サミットに関連するところの諸問題について、私に与えられた時間は二十分でございますが、総理にお尋ねいたしたいと存じます。  総理は、この前のUNCTADにおきまして、一般演説の中におかれまして南北問題に関する開発途上国の考え方を聞いて東京サミットに十分にこれを伝えたいんだということを言っておられます。ところが、新聞の報道によりますと、UNCTADの会議というものは私どもが期待していたほどの結果は生まれなかった。それだけに私は総理サミットにおけるところの御発言に対して大きな期待を持って二億の民が待ち構えているんじゃないかというふうに考えます。フィリピンから伝わった報道でございますが、こういうことを言ってるようでございます。東京サミットこそ日本にとって絶好の場となる、日本日本経済という立場を固執することなく、東南アジアを含めた立場から発言し、この地域を代弁する態度を示すことができれば、東南ア諸国は改めて日本を見直すだろうということを言っているのでございます。  それで、総理は、サミットにおけるアジアの諸国民を代表する立場において、どういう対応と覚悟を持って臨まれるか、お伺いいたしたいと存じます。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) なるほど、今度、東京サミットに集まる七カ国でございますが、エネルギーの消費から申しましても世界の七割を占めておる経済的な主要国家であるわけでございます。みずからは相当の経済力を持っておりますけれども、しかし、それだけの責任も世界に対してあるということでございます。同時に、自余の開発途上国と先進国との間というものをどのように秩序あるものにしていくかということについて絶えず関心も払い、努力も払わなければならぬ立場にある国々でございます。  集まるものは七カ国でございますけれども、そこには集まっていないけれども空席の世界が非常な関心を持って見守っておる会議であるという意識を持ってやらざるを得ないことは当然のことと思っておるわけでございまして、私ども先進国だけが優雅な会合を開こうというようなそんなことではなくて、いまの世界が直面しておるむずかしい問題につきまして、出席していない国々の立場に常に重大な関心を払いながら、取り上げられる議題に対して議論を深めていきたい。それに対しての先進国は先進国としての背任ある対応を示していかなければならぬと考えております。
  21. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私は、日本が戦争に負けた、その点から考えて、開発途上国等についても、その考え方は十分にわが日本人ははだでもって理解できるんじゃないかと思っております。その意味におきまして、総理が、わが日本がアジアにおける唯一の先進国だという認識のもとに、常に背後にはアジアの諸君がいるということを考えながら、サミットに臨まれんことを期待いたしたいと存ずる次第でございます。  それから、今後の大きな問題になるのは、現在もそうですが、アジアの安定また世界の安定じゃないかと思っております。いまのベトナムを中心とした諸問題、ベトナムのカンボジアに対する圧力あるいは中越紛争等、現在、われわれの眼前において起きつつあるところの諸問題というものは、もしその方策を誤ればアジアの安定に重大なる影響を及ぼすような事態が発生するんじゃないかと思っております。  私、過日、タイのある代表の方と話をしたのでございますが、現在のベトナムにおける異状に対してはきわめて不安感を持っております。そして東北地区においては共産党のゲリラ戦術もございまして非常に悩んでいる。この地域における紛争が私は将来大きな紛争にならぬことを期待しておるのでございます。インドネシアの諸君がいつも言っておりますが、お互いが真剣になって自分らの幸福のことを考え、また相手の幸福も考え自分の幸福も考える。みんなが一緒になっていくという姿勢をとるならば、アジアは本当に安定し、そして将来すべてのアジアの諸国民が先進国という名誉を担うまでになるんじゃないか、そういう意味において、アジアにおけるところの安定というものはきわめて重要なる要素を持ち、日本の場合におきましては、いま世界において問題になっておりますところのアジア並びに中東方面につきましても、十分なる利害関係があると同時に、また、私は、日本の持っているところの、従来正義をもって臨んだ、単なる利害関係だけじゃなしに、精神的にもある結びつきがある。その結びつきが将来のこういう国々の安定に対してきわめて重要なる役割りを演ずるんじゃないかと思っております。  その意味におきまして、今度のサミット会議におきましては、アジアの諸君が非常に不安を持っておりますし、また中東においても、非常に複雑な姿において、あるいは宗教的な問題あるいは経済的な問題あるいはエネルギーの問題あるいはイデオロギーの問題、とにかく今日まで私どもが経験しなかったような事態というものが起きておるし、また、将来、この紛争がさらに拡大する傾向にある。その間において、私はいつも思うんですが、私自身がいろんな経験を持っておりますが、われわれ日本人が本当に腹を割って向こうの方たちと話をする場合においては、彼らは十分にそれは聞くんだ、逃げることなしにぶつかっていく、そういう精神が必要じゃないか。だから今度のサミットにおきましても、ぜひこの安全保障の問題は、私は単なる言葉だけじゃなしに、お互いに理解をしお互いに信頼をする、そういう信頼感がない限り恐らく今後の世界の紛争というものは絶えないのじゃないか。この点においては、サミットに参加する国々の皆さんにおかれましても、経済的な利害関係あるいは世界戦略において衝突するようなことがあっても 本当に人類の幸福というものを思うならば、お互いに譲り合いながら正しい方向に持っていけるのじゃないか。その点において私は日本の持つ役割りはきわめて重大であり、また、総理発言というものはきわめて影響力を持つものだと思っています。  どうかこの安全保障の問題、それからアジアの安定、中東の安定、これらについて十分なる話し合いをし、問題を提起し、しかもこれを相互理解あるいは相互信頼になるまでに総理が腹を割って皆さんと話をされることが大事じゃないかというふうに考えますので、その点についての総理の御意見を伺いたいと存じます。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、アジアの安定の問題でございますが、先ほど心配をされておりました中越紛争でございますが、幸いに両国の自主性によりまして当面事なきを得ましたことは大変幸せであったと思います。中国と外交関係をわが国は持っております。またベトナムとも外交関係を持っておる数少ない国の一つでございます。両当事者に対しまして自重を求めてまいりました日本といたしましても、このような終息に至りましたことを大変ありがたく思っております。今後とも、こういう国々との間の理解を深めていく。ASEAN諸国との協調を保ちながら、この地域の安定のためになすべきことをなさなければならぬと考えておるわけでございますが、ASEAN諸国とベトナムとの間におきましても新たな外交問題が出てきておるようでございまして、これが堅実な展開を見ることを私どもは期待いたしておるわけでございます。  仰せのように、われわれは先進国の中では一番おくれて近代化をいたしました国でございますし、一番開発途上国に近い立場と経験を持っておるわけでございますから、われわれといたしましては、ほかの先進国以上に開発途上国の問題につきましては通り一遍の協力以上のものを傾けていかなければならぬのじゃないかと考えております。  それから第二のサミットとの関連でございますが、稲嶺さんに御理解をいただきたいのは、今度のサミット経済サミットでございます。過去四回のサミット、今度五回目のサミット、これは経済サミットというタイトルのもとで世界経済の主要な課題を議題として論議をしてまいりましたわけでございまして、政治あるいは軍事の問題を討議する場ではないわけでございます。その点は御了解を得ておきたいと思います。  ただ、経済を離れて安全保障はないわけでございまして、世界経済が安定的な秩序ある発展をしていくという保障の上に初めて世界の各地域の安全が保障される基盤ができるわけでございますので、そういう意味合いから関連がないわけでは決してございませんで、われわれが経済問題について懸命に努力をすること自体はあなたの言われる世界の安全保障に大いに寄与することになるのではないか、そういう問題認識を持っております。精いっぱい、しかも、ことしは主催国という立場もありますので、御注意も体しながらベストを尽くしてまいりたいと考えております。
  23. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 総理はUNCTADにおきまして農業問題について触れておられますが、私は、東南アジアの諸君と話をしておりますと、彼らは今度のイランにおける急激な工業化とあの革命から非常な教訓を得た、だから、今後、東南アジアにおいてもその教訓をもとにして農業に重点を置きながら国づくりをやらなきゃならぬというふうな発言をやっております。まことにもっともなことでございます。  それで、私は、実は農業の問題につきましてインドネシアの農業大臣と話をした。そのときに、過去において、日本は、三十年の間、貴国においてランポンプロジェクトの問題やら、その他において農業をやってきた、ところが、ほとんどみんな失敗をしておる。そういうことで、この農業問題はやさしいようできわめてむずかしい問題であります。しかし、また、非常に基本的な問題で、これを避けて通ることはできない。もっとも農業において成功したのは日本である。それで、この前、渡辺農林大臣のところでインドネシアの指導者と一緒になって会った。それで、彼は、渡辺農林大臣に対して、ぜひインドネシアに来て、本当にお互いに腹に隠すことなくすべて言い合ってインドネシアの農業問題を話し合ったらどうかという話をしておられた。  それから考えまして、私は、せっかく総理が農業問題を重点的に取り上げたので、現在までに日本が失敗をし成功している例もあります、そういうものを全部テーブルの上にのっけて、これに対する検討を加え、そのうちから一番いいものを取り上げて、そして今後の東南アジアあるいはUNCTADに対する農業の政策とし、これを実行に移すということがまず大事じゃないかというふうに考えますので、その点についての総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 発展途上国の当面している問題にはそれはたくさんございますが、私は、とりわけマンパワーの開発問題、教育の問題、人間能力の開発問題が第一に大事でないか。第二は、いま仰せの農業問題ではないかと考えております。  工業化の計画と言えば、どの国におきましても魅力のある課題であるように一見見えますけれども、農業経済がしっかりしないところの工業化なんて成功した例は世界にないわけでございます。自由主義圏であろうと社会主義圏であろうと同様でございます。したがって、どうしても本格的には、やはり農業には時間はかかるけれども、手間はかかるけれども農業問題から取り組んでいく必要があるんじゃないか。ところが、農業は、あなたがおっしゃるとおり、非常にむずかしいので、私は工業経営なんかよりずっと農業の方がむずかしい、害虫との闘い、天候との闘い、土壌等の処理を前提にするわけでございまして、非常な高度の技術、より高度の技術を必要とするような問題もあると思うんでございます。したがって、それが基礎にしっかりしないと経済のバランスのとれた発展、安定ということが期待できないというように思いますから、これをまず、めんどうだけれども、時間はかかるけれども、この問題に取り組んでいくべきじゃないか。したがって日本経済協力の軸は、その農業開発問題とそれからマンパワーの開発問題をやっぱり軸にして考えていくべきじゃないかと私は主張し続けておるわけでございます。  もっとも、これは押しつけではいけないわけでございまして、受益国である国々がそれを希望していかなければ、こちらが押しつけるわけにはまいりませんので、先方の強い希望がある限り、そういうラインに沿いまして時間をかけて親切に御相談に乗っていくというように考えていきたいと思っておりまして、そういうことをこの間のUNCTADの第五回総会の席上明らかにしてまいったわけでございます。そこで演説するだけでなくて、そこで述べたことをフォローアップいたしまして、忠実に実行していくように政府は今後努めてまいりたいと思っております。それで果たして日本の評判がよくなるかどうかは序じません。日本が評判がよくなることはやって、よくならぬことはやらないんだというのでなくて、日本がやるべきことはやっていくということでよろしいんじゃないか。その評判をよくするなんということはなかなかむずかしいことでございまして、そんなことにこだわらないでわれわれはやるべきことをやって差し上げる、先方の希望がある限り、そういう純粋な経済協力というものをじみちに展開していくべきじゃないかと私は考えております。
  25. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日本外交のいわゆる自主外交展開の上で最も大きな汚点ではないかと思われておりますのが、先ほど来から問題になっております金大中事件ではないかと思うんです。  で、今回、国務省の秘密文書の公開ということで新しい一つの展開を示したわけでありますけれども政府は一貫して伝聞証拠である、また当時の外務大臣である金氏がそういうスナイダー氏との会見もないし、また、そういうことをしゃべった覚えもないという、そういったことを背景として一貫して政治決着の見直しということはやらないというふうに表明されてきたわけでありますけれども、しかし、国内世論あるいは伝えられるところによりますと韓国の世論も、もうほとんどがKCIAの犯行であるという、その認定に立っているわけであります。恐らく政府としても今後の対応の仕方で大変苦慮されているんではないかということが十分うかがえるわけでございますけれども、先ほどの答弁に見られるとおり、もうがんとして政治決着の見直しをやるつもりはないというふうに貫かれるものなのかどうなのか、また政治決着の見直しという可能性はないのかどうなのか、これが一点。  もう一つは、スナイダー氏といいハビブ氏といい、米国を代表する大変権威ある立場に置かれている方の証言というものは単なる伝聞であるということでもってこれをもう全然取り上げない、そういうしろものなのかどうなのか、その辺の大平さんとしての認識、どのようにお受けとめになっていらっしゃるのか、まず、そこからお伺いをしたいと思います。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) このいろいろな文書とか電報とかいうようなものが出てきたということでございますが、これに対しましてアメリカ自体がコメントを差し控えるという態度をとっておるわけでございますし、韓国側ではそんな記録はない、こういうこと、そういうように私は伺っておるわけでございまして、そういう状況政治的決着を見直せといっても、そう軽々にできるはずのものでないことは渋谷さんも御理解をいただかなければならぬのじゃないかと思います。
  27. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 苦慮されていることはわれわれも理解しないでもございません。ただ、従来からもしばしば繰り返し言われてきておりますように、恐らく大平さんとしては一番痛切にお受けとめになっていらっしゃると思うんですが、のどに刺さったとげというものはとらなければ悪化するだけである。なれば、今後、日韓関係の上において友好関係というものを強力に推進しようとするならば、やはりいまはもやもやとしたこの疑惑というものを晴らさなければならないであろう。  その次善の策として、これまた提起されておりますように、たとえば金大中氏の身柄というものについて自由を保障するというような提言が行えないものかどうなのか。そういった具体的なもう避けては通れない問題でありますだけに、政府としても、しかるべき対応というものがなされてよいのではないだろうか。政治決着をもう一遍見直すというのはこれは重大決意が必要だろうとは思います。その当時どういう背景があったか私は存じませんけれども、何といっても当時の当事者であった大平さんでございますので、もう細部にわたってそのときの事情というものはいま恐らく走馬灯のように思い浮かぶであろうと私は思うんです。  その細かいことを一々お尋ねをし確認している時間はございませんけれども、やはり大局的見地というならば、むしろそういう立場に立って、何らかの、われわれとしても不満は残るけれどもやむを得ないなという、そういう結論を出す必要があるのではないだろうか。そうでありませんとアメリカ側との関係において、一体、日本はスナイダー発言あるいはハビブ発言というものについてどうこれから対応していかなければならないのかというまだ問題が残されているわけです。まあコメントを避ける、それは当然避けるでしょう。日韓関係状態を悪化させるということも考慮しなければならないという米国としての配慮もあるかもしれません。カーター大統領がサミット終了後訪韓をする、恐らくその一連の動きの中で何らかの新しい展開というものがあるのではなかろうかということも実は想像されるわけであります。  そうした一連の動きの中で、大平さん自身が、いま日本に降りかかっているこの大きな問題を、ある程度国民の納得し得る、あるいはある程度の合意を得られる、そういう決着の仕方こそいま望まれるんではないだろうか、こう思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何千年もおつき合いをしてきた国でございます。将来悠久にわたっておつき合いをしていかなければいかぬ国でございます。いろんなことが過去においてもありましたし、今後もないという保証はないわけでございます。日韓は両国ともどこへも引っ越すことができないわけでございますから、何とか分別をつけながら出てきた問題を処理していく、冷静に処理していくということでいかなければならぬと思っておるわけでございます。  そういう両国の間に起こりました一つ事件でございまして、あなたが言われる大局的な見地に立ちまして政府政治的決着をつけた、これで問題はきれいさっぱりと済んだというようには私は思っておりません。現に野党の皆さんがこのように非常に執拗に政府をただされておるわけでございまして、問題はこれまた全部決着がついたなんて考えておりません。政府としては決着をつけた、しかし、まだその余震があるというか、そういう状態にあることは私も率直に認めます。  しかし、政府決着をつけたことにつきまして、日韓両国の長い関係から、また将来にわたる関係から見まして、私はそんなに間違った判断ではなかったといまに考えておるわけでございます。これはもう完全無欠の解決でございましたと胸を張って皆さんに誇示するなんというつもりはありません。けれども、両国の間のつき合いの仕方として、この出てまいりました問題についての決着の仕方として、こういう決着の仕方でひとつ御理解いただけますまいかといま相談を申し上げておるところでございますが、皆さんはまだ釈然とされないこともわかっております。  そこで、私は、皆さんからの御質疑にありましたことにつきまして誠意を持ってこれからもお答えしていくつもりでございますが、結局のところ、これはやっぱり韓国政府も確かに私の方の公権力介入したものでございましたということにならぬと、問題の解決にならぬと思うんです。ここで何ぼ議論したって始まらぬので、やっぱり向こうもそういうところまでまいりますと、また韓国政府もそれはそうだと認めるに足る証拠が出てくる、これは私は解決になるんでないかと思います。思いますけれども、いま出てきておるだけでは、いま申しましたように、とてもまだそういうことになっていないこともあなたが御承知のとおりなんでございます。ですから、この問題は、主権侵害かどうかという問題であると同時に、やっぱり日韓一つの外交問題でもございますので、両方を考えて、政府はこういうところで一応決着をつけるから承知していただけますまいかと相談をしておるところですから、もう野党の方もそろそろ御理解をちょうだいできないかと思いますけれども
  29. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど来の御答弁を伺っておりますと、一つ明らかになったという事実があります。それはスナイダー発言とハビブ証言については大平さんも否定はなさらないという事実ですね。お認めになっているわけです、否定されていませんから。ということは、裏返しにしてみた場合に、そういう事実関係はあったであろうとあるいは判断なさっているかもしれない、これは私の想像です。残るところは、韓国側がそうだったと表明しない限りは、これは何ともなりませんよと、まあ恐らく一貫しておられるんではないだろうか。  ですから、私が先ほどの質問の中で申し上げたのは、せめてここまで世論が高まっている以上は、一つの具体的な一歩前進的な解決の方途といたしまして、金大中自身の身柄というものを自由にするとか、その保障を与えるような提言をするとか、すでに外務省の柳谷局長は在日韓大使館に対してそういうような旨を申し入れている。それからここ二、三日来の動きの中では、金大中氏が在韓日本大使館の人たちに会いたいという、その接触を希望してる。これは新しい一つの展開だと思うんです。  そうした中から、これはもうどうにもならぬ、流れに逆らえないという一つの動きの中で、せめてもう一歩それを前進さして、いま申し上げたような対応というものを大平さん御自身は頭の中に描いてないかどうか。たとえば、いま申し上げたように金大中氏の拘束をほどく、自由の身にしてやるという、その保障を提言できないかどうか、これはいかがでございましょう。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変誤解があるようでございますが、私が先ほどからも田中先生戸叶先生にお答えを申し上げたとおりでございますが、金大中氏の自由の問題は私は政治的決着でつけてあるつもりでございますがね。金大中氏は一般市民と同様の自由が保障されるというのが日韓両国政府の間の了解でございます。金大中氏が現にどういう状態であるかは、これは金大中事件関係のない問題、事件でそういうようになっておると私は了解しておるわけなんでございまして、それをごっちゃにされてわれわれに責任を負わされちゃこれは非常に困ります。
  31. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうでしょうかね、ごっちゃに私たちは判断して申し上げているつもりはさらさらないわけでありまして、向こうの都合に日本政府は何かこう口裏を合わしたようなやりとりをしているんではあるまいかという疑問がどうしても残るわけです。  なれば、全然話は別な方向へ展開しますけれども、そういう事件を引き起こしながら、依然として竹島にしても漁業問題にしても未解決じゃございませんか。一体、日本の自主外交というのはどこへ飛んでいってしまったのかという、またそういう連関したいろんな問題が起こってくるわけです。やはり解決をするためにはどこかに突破口を開いていかなきゃならぬ、その開くためにいま私は一つの問題としてこの金大中事件というものを指摘しているわけです。もし大平さん御自身の中に、日韓とも友好親善を強力に推進していかなければならぬという、そういう御方針が当然おありになるならば、やはり国民世論というものを大事にしなきゃならぬことは当然でしょうし、それは十分お感じになっているはずだと私は思うんです。われわれは決してそのことをごっちゃにしながら考えてはおりません。  それはいろんな報道をされていますが、いろんな角度から分析もされて今日まで何年たっていますか。その何年間という長い期間の中で、またここで金大中事件というものを見直していかなきゃならぬということは非常に残念なことだと私は思うんです。お気持ちはわかるんですよ。わかりますけれども日本政府として余りにも消極的な取り組み方ではないだろうかということで、ここでもう一遍再考をなされたらいかがなものでしょうかということを、もうこれだけ申し上げると私の持ち時間が切れますので、その辺の所信を最後にまとめてお伺いして、私の質問を終わらさしていただきたいと思います。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのあなたの言われることを私は理解できないわけじゃございませんけれども、こちらがやりましたことは、この事件に対して日本がこういうこれこれの了解を踏まえて政治的決着をつけたという、それはこの問題をどこかで解決していかなければならぬという政府考えから、これはいろいろ批評、批判があろうと思いますけれども政府としては、この問題についてはこういう解決が一番現実的で、そしてよくよく説明すれば国民にもわかっていただけないはずはないんじゃなかろうかということでやってきたわけでございます。しかしながら、また、この見直しといえども、新しい事実が出てまいりまして、主権侵害という事実が出てまいりましたならば、これは見直すことはあるべし、この政治的決着は見直すことあるべしということにしておかないといけない、捜査は続けるんだという了解のもとで、政治的決着をつけたわけでございます。  その一つの筋道と、それから金大中自身の自由の問題、これは被害者として大変日韓両国にわたって非常な関心も同情も呼んだ問題でございますが、それにつきましては一般市民と同様の自由を保障するということで、私は、この了解で、それ以上のことを——政府がやるべきことはやっておると思うんでございます。つまり、日韓了解の中で金大中自身の自由は一般市民と同様保障される、金大中自身を治外法権の立場に置くんじゃありませんけれども一般市民と同様の自由は保障しますと韓国政府が言うて、そういう了解の上に立っておるわけでございますので、私は、その問題は、後でどういう事件でどのように金大中氏が取り扱われているかそれは存じませんけれども、それは向こうの内政の問題ですから私どもがいろいろコメントする筋合いのものではないと思っているので、何かその金大中事件金大中自身の自由の問題が二重写しになって、ごっちゃになっているような感じがするんですが、そういうような処理はしていないということは御理解をちょうだいしたいと思います。
  33. 立木洋

    立木洋君 先般、アメリカの秘密公電が明らかにされてから、政府外務省当局としてはこれについて検討を開始し、しかるべき早い時期に結論を出すように努力をするというふうに言われましたけれども、きょうの総理の御答弁は、その検討がすべて終了し結論を得たという段階での御答弁なのか、あるいは検討はまだ進行中であるけれども、現在までのところ、このように考えておるという意味での御答弁なのか、まず、その点最初にはっきりさしておいていただきたいと思います。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま言われた後者の方です。
  35. 立木洋

    立木洋君 これはもう明白なことですけれども総理のお考えをお伺いしておきたいんですが、日本の捜査当局では金東雲というのは金大中を連行した犯人の一人であると、これは明白に述べておられるんですけれども、この金東雲が犯人であるという日本の捜査当局の考え方、判断について総理はどのようにお考えでしょうか。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 捜査当局が深い容疑を持っておるということは私も理解しております。
  37. 立木洋

    立木洋君 先般、一日でしたか、衆議院外務委員会総理はKCIAの疑いがあるということが一般に述べられておることは承知しておるが、私自身も懸念を持っていたという——持っているではなくて、持っていたというふうに述べられていますけれども、きょう問題になりました、ある新聞で出されておる、当時昭和四十八年の十月の外務省の文書、先ほど総理はこれは情報のたぐいというふうに言われましたけれども、これは当時外務大臣であった大平さんは当然ごらんになっておられただろうと思いますがね、情報のたぐいにしても。その懸念を持っていた当時の外務大臣とされて、この情報のたぐいについてここでは明白に述べられておりますのは、この金大中事件が大統領警護室長、それからKCIA部長との連携の形で行われたと見てほぼ間違いないというふうに述べられておる、この情報についてどのような判断あるいはお考えを当時お持ちでしたでしょうか。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一つ情報として見た記憶はございます。
  39. 立木洋

    立木洋君 ごらんになって当時懸念を持っていたわけですから、これについてはどのような判断を。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 懸念を持っておるから捜査を続けていただいておりまするし、それを私は否定していないわけです。
  41. 立木洋

    立木洋君 ところが、文書が出された十月九日以降、急激に第一次政治決着へという方向に当時の外務大臣として努力をされたわけですが、どういう心境の変化から懸念がありながらそういう努力をなさったんでしょうか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは、この問題は、ちり一つ残さず公権力が関与したという事実が明らかになりまして、それから決着するということが主権侵害問題の処理としては一番いいのかもしれませんけれども、そういうことができるのかできないのか、いつになるのか見当がつかない。しかし、日韓関係というのは生きた関係でございますから、毎日のように人の行き来はある、貿易はある、漁業は営まれておるというようなことでございますので、これは何かやはり日韓関係は正常な軌道に乗せておかなきゃならぬ。だから一方において一応政治決着はつける、しかし捜査は続行する、新しい事実があれば見直すことあるべし、しかし日韓のつき合いは正常にやっていこうじゃないかという措置を当時の政府はいろいろ熟慮していたしたわけでございますし、韓国側におかれても最大限の措置をとられたわけでございますから、こういう措置、あるいは皆さんの御満足を買わないかもしれぬけれども、そのまず御理解はいただけるんじゃないかということでやってきたんですよ。
  43. 立木洋

    立木洋君 その御理解ができないので、お伺いしておるんですけれども
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく理解してよ。(笑声)
  45. 立木洋

    立木洋君 いやいや、総理、結局、当時は総理自身日本に対して主権の侵害があるかもしれないという懸念も持たれておった、ところが一方ではやはり韓国との関係をそれよりも重視しなければならないというので、総理が言われる現実的な道を歩まれたということですね。それを理解してくれという意味で言われているわけですが、ところが、この政治決着の見直しの問題ですけれども、当時の総理大臣にしてもそうですし、大平さん自身もそうでしたけれども、新しい事実が出てくれば見直しましょう、新たな証拠があれば当然見直しをいたしましょうということは繰り返し言われてきたわけですね。  ところが、先般の総理のお言葉によりますと、わが国に対する主権侵害韓国政府が認めるに至る証拠があればというふうに今度限定されたわけですよ。私は、これは新しい証拠、新たな事実というよりも後退した、より狭い意味での見解だろうと思うんです。韓国政府が認めるに足る証拠とは、大臣、どういうふうなお考えで述べられたんですか。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはまさに韓国政府が認めるに足る証拠です。
  47. 立木洋

    立木洋君 だけど、捜査上から言いますと、指紋というのは決定的なんですね。これはもう私が言わなくたって総理の方が十分おわかりだろうと思うんですよ。この決定的な指紋という証拠すら向こうは容疑の事実はないと言って拒否してきたんですよ。この科学的な今日の捜査上における指紋の問題一つとってみたって、そういう態度ですよ。これ以上どんなことを言おうとも、結局、韓国政府が認めなければ政治決着を見直すことができないということであるならば、私は永久に政治決着を見直すことには至らないだろうというふうに考えざるを得ないように思うんですけれども総理、いかがでしょうか。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 双方のいままでのやりとりからいたしまして、まだいままで出てきました証拠から申しまして、韓国政府もこれは確かにそうだというふうに認める、容認するというところまでいっていないと思うんです。それで今後どうなりますかね、これは捜査当局を信頼して待つよりほかにはないと思います。
  49. 立木洋

    立木洋君 公的な権力によって主権が侵害されているかいないかという問題を判断するのは、今回の金大中事件に関して言えば、日本政府なんでしょうか、韓国政府なんでしょうか。
  50. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 韓国政府公権力の行使が金大中事件にあったかないかということを決める決め手と申しますのは、日本政府が客観的な証拠を手に入れた段階におきまして日本政府判断をすることであると思うわけでございます。
  51. 立木洋

    立木洋君 私も、そのとおりだと思うんですよ。日本政府がこれは明確に判断しなければならない、自主的に。で韓国政府が認めてくれるかくれないかということは、私は、今日の問題を解決する本質的な問題ではないと思うんですよ。  この間のスナイダーの秘密公電に述べられた内容についても、金東祚当時の韓国外相自身金東雲の犯罪であったということを事実上認める、そして彼がKCIAであったということを認めると、当時の外務大臣ですよ、これが明確にアメリカのスナイダーに話しているんですよ。これは日本に対して認めてもらわないと困るという言い方をされるのは、私はいかがなものであろうか。  この際、もう時間がありませんから結論を急ぎますけれども、今日の事態というのは、明確に日本政府判断すべき時点に来ておる。そして本当に自主的な立場に立って、日本主権侵害の問題について、いままで日本政府としては結果から見てこういう状態である、この点についてどうすべきであるかということを明確な時点に立って韓国政府に強く要求する。そして先ほどの金大中氏の問題についても日本政府考え方を明確に述べる、そういう段階に私は来ていると思うんですよ。まだ検討の状態が最終段階ではないと言われるので、私は、そのことを現在の時点で強く要望しておきたいと思うんですが、最後に総理の御所見を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御要望を承っておきます。
  53. 和田春生

    ○和田春生君 金大中事件の問題がかなり議論をされました。今後どう取り扱うかということについては問題があるにいたしましても、問題点はほぼ議論をされていると思うんです。私に与えられた時間が非常に限られていることと、人権規約に関しての総理に対する質問である、こういう点にかんがみまして、同じく韓国にかかわる問題でなお残されている、しかも人権とヒューマニズムの面では非常に深刻な問題についてお伺いしたいと思うんです。  それは終戦時樺太に抑留されたまま、今日に至るもなおそのままにとどめられている韓国人の問題であります。  御承知のように、戦争中日本人として日本の国籍を持っておった韓国の同胞が半ば強制的に樺太に送り込まれまして、ここで労働に従事させられたわけです。やがて終戦を迎えまして韓国は独立をいたしました。そして日本人は、非常に悲惨な状況の中でシベリアや樺太に朽ち果てた人もおりますけれども、生ある人はその後何年かの間にほとんど帰還してきたわけです。また、私どもの聞くところによると、共産主義を認め北朝鮮に帰国を希望した人々はシベリア経由で帰されたと、確認したわけでございませんが、そういう話を聞いております。ところが、韓国とは国交がないという理由のもとに何千人かの人々がそのまま樺太に抑留されたまま今日に至っているわけです。これは非常に重要な問題だと思うんです。金大中事件日韓関係に刺さったとげであるとするならば、樺太に抑留されている韓国人の問題は、日本人として向こうに連れていったという前提があるだけに、日本国政府日本国民に背負わされた私は十字架であると思う。  そういう前提でこの問題をお伺いしたいと思うんですけれども、最初に政府委員の方に、終戦当時何人いたか、その後亡くなったり、いろいろな移動があったと思いますが、現在、何人ぐらい生存し残っていると推定されるか、ソ連政府にどういう確認をしたか、これらの人々が無事帰ってくることができるようにするためにどんな努力をして、どういう結果になっているか、この四点につきまして簡潔に要点的にお答え願いたいと思います。
  54. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 終戦直後の帰還促進団体の方等からできるだけ聴取した在樺太朝鮮人と当時呼ばれた者の総数は約四万人でございます。そのうち北朝鮮籍六五%、ソ連籍二五%、無国籍一〇%というのが当時の関係者の話から得た情報でございまして、その後、韓国政府が提出しました帰還希望者リストというのがございまして、このリストには約七千名の名前が記載されておりまして、その七千名のうち千五百名は日本への引き揚げを希望していたと伺っております。  その後、詳細は省略いたしますけれども、いろいろ帰還手続が行われたわけでございます。これは、残念ながら、現在樺太がソ連の支配下にあるというような状況、つまり日本側の権力の及び得ないところという事情もございまして、率直に申しまして、きわめてこの話し合い、特にソ連との折衝は難航しているのが遺憾ながら事実でございます。そのような困難な状況ではございますけれども、過去、長い間にわたりまして、政府は、高いレベル、たとえば総理外務大臣等がソ連の首脳とお会いになったときとか、あるいはより事務レベルにおけるいろいろな接触の機会におきましても、ソ連側に対して特段の配慮をしばしば要請してきているわけでございますけれども、残念ながら、なかなかその目的が達成されないというのが現状でございます。最近におきましても、機会をとらえてそのような努力をしてまいっておりますが、先方の反応はわれわれの希望に離れているものでございます。
  55. 和田春生

    ○和田春生君 総理、いまお聞きのように、当時の引き揚げ者その他の話を総合しても、最低四千人以上、韓国政府情報によれば七千人、数千人の人々がそういう状況に置かれているわけです。しかも、それは先ほども申し上げましたように日本政府が連れていったんです。敗戦の結果の変化によってそのまま抑留されているわけですね。しかも韓国とソ連との間には国交がありません。したがって、この問題については韓国政府としては手をつけようがないわけです。ソ連に働きかけようと思っても交渉の手段がないわけです。まさに私は全面的に日本政府責任であると思います。  総理外務大臣もお務めになりました。どういう努力をされてきたか。今後、この問題の解決のために、私は、本当にこれこそ体当たりでやらなくてはいけない問題だと思うんです。どういうふうにされようとされるか、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の方々の帰還問題は、道義的に考えても人道的に考えましても日本責任があることは当然でございます。その早期帰還実現のためになすべきことはあらゆることをなさなきゃならぬ立場にあると考えております。いま事務当局からも御報告いたしましたように、ソ連との話し合いの場面では必ずこの問題は取り上げて先方の留意を促してまいったわけでございまして、今後も、それは続けてまいるつもりでございます。  方法を、しからば、どのようにしていくかということでございますけれども、いま韓国とソ連邦との間には国交がないわけでございますので、具体的申請がございますならば、一度日本に受け入れて、しかる後に希望する国へ御出国いただくような方法も、できる限り、そういう希望に沿って検討してみるべきじゃないかと思います。
  57. 和田春生

    ○和田春生君 いま総理はおっしゃいましたけれども、私も、現実的に考えて、その道を選択して強力に推進する以外に当面解決の方法はないのではないかと思います。  ソ連もこの人権規約を締結をしている、日本も今度締結をするわけです。したがって、これは人権問題として両国間にわだかまる重要な問題でありますから、特に日本政府はこの人々を日本に受け入れる、それから韓国に帰る方あるいは日本に定住を希望する人あるいは他の外国に行きたいという人がおるかもわかりませんけれども、そういうような措置をとることによって早急に解決をすべきではないかと思うんです。後十五年、二十年、三十年とたちますと、次々にお亡くなりになっていく。死なれたから問題は解消したという性質のものでは根本的に私はないと思うんですね。時間ももう三十何年たつわけですから余り延ばすわけにいかない。その点、ひとつ総理の御決意をお伺いしておきたいと思います。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結局は、しかし、日ソ関係で話をつけていかなきゃいかぬ問題でございます。したがって日ソ間の了解が確立していくことがまず最初のステップでございまして、国際情勢の推移いかんという問題もございましょうけれども政府としては、精力的に日ソの間の各分野における話し合いというのは年とともに進んできておりまするので、ソ連の理解を深めていくように努力してまいりまして、御期待のようなことが可能になるように、軌道ができるように努めていくつもりでございます。
  59. 和田春生

    ○和田春生君 どうも人権の問題等になりますと、目に見えることについては世間も注目もするわけですが、いま申し上げたような目に見えない十字架というような性質のものについてはとかく注目をしないわけです。その点を忘れないように努力を特に希望いたしまして、私の質問を終わります。
  60. 田英夫

    ○田英夫君 私も、執拗に金大中事件をお尋ねせざるを得ないわけでありますが、私、先日、金大中さん自身電話をしまして、かなり長時間心境を伺いました。その時の金大中さんの言葉ですが、私は日本大使館に行く、責任をとれと日本大使館に行く決意がありますという意味のことを、これは実は当時の事件直後の心境として話していたわけです。それが今回改めて日本大使館接触を求めてこられた、そういうことでこの六年間の空白、しかも投獄というようなことを経た後に、いま改めて当時の心境に戻って日本大使館接触を求めてこられたと思うわけです。  そこで、ずばり伺いますが、金大中さんが日本へ来たいという希望を、その日本大使館との接触の中で、伝えられた場合には、日本政府はどういう態度をおとりになりますか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 同氏が訪日を希望されるということであれば、わが方としては、これを拒む理由はないと思います。
  62. 田英夫

    ○田英夫君 当然だろうと思います。それは総理が先ほどから言われているように、第一次政治決着金大中さん自身の自由が保障されている、一般市民と同じ自由が保障されているということになっているはずなんですから、日本側としては当然受け入れられるはずだと私も思いますね。  韓国側が問題じゃないか、こういうことでこれは韓国政府の決めることですから、私どもとやかく言えませんけれども、現に韓国で現在金大中さんは刑の執行停止という形になっているわけですが、同じように刑の執行停止になっていたやはり反体制運動をされた池牧師、あるいはごく最近では社会主義インターが東京で開かれましたときに統一社会党の金哲党首が来日をしております。これもやはり刑の執行停止という形の中で日本に来ておられる。したがって韓国政府がそういう例にならうならば、金大中さんの来日を認めざるを得ないはずだと私は思うわけです。  したがって、いま総理日本としては迎え入れる、こうお答えになったことは、私もすぐ金大中さんにこのことをお伝えして、そういう御希望があるならば日本政府は受け入れますということを申し上げたいと思いますが、そういうことだと思います。  もう一つ、次の問題は、先ほども立木委員の質問にいろいろお答えがあったのですけれども、先日のこの委員会で、園田外務大臣は、当事者が公権力介入があったと認めるならば日本政府は見直しをするというふうにずっと言ってこられた。その当事者というのは、韓国政府を指すのか、あるいは金大中さんも含めるのかということを私が御質問したことに対して、外務大臣は、従来言ってきたのは韓国政府というつもりで言ってきたけれども、改めてそういう質問があるならば、金大中さんが言っただけでそれを認めるわけにはいかぬけれども金大中さんも当事者の一人であるということは認めますと、こういう意味の、実はここに速記録がありますから正確にそれを読んでもいいのですが、そういう意味のことを言われました。総理の言ってこられた当事者というのはどういうことでしょうか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の理解は、金大中氏は事件被害者ですね、そういう立場だと思いますが、公権力が関与したかどうかという問題につきましては、これは韓国政府がどう判断するかということだろうと私は考えております。
  64. 田英夫

    ○田英夫君 そこが非常にひっかかるのですが、それは先ほど立木委員とのやりとりの中で私も非常におかしいと思います。韓国政府公権力であると認めるというのは大変おかしいと思うんです、さっきの条約局長のお答えとも関連しましてね。  そこで金大中さんも被害者であるけれども当事者の一人と認めるという外務大臣のお答えに関連をして、私は、また、このことを金大中さんと話し合ったわけです。その当事者の一人と認められる金大中さんは、あの現場に金東雲がいたということをはっきり私に電話で言っておられるわけです。これは録音をお聞かせしてもいいんですけれども、はっきり言っています。ほかに正確な写真を見せてもらえば他に二、三人は顔を確定できる記憶がある。その中で金東雲はすでに何回も写真を見せられたので、はっきり金東雲が現場にいたということを私は信じていますと、こう結んでいますが、これについてどうお考えになりますか。ごの人は当事者ですよ。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたが金大中氏にコンタクトをとられて聞いたお話ということは承りました。それはどのようにそれを評価したらいいか、これはやっぱり政府としては捜査当局に判断をさしてみます。
  66. 田英夫

    ○田英夫君 すでにその録音は捜査当局にもお渡しをしてありますから、検討しておられると思います。これは国会の場で公に責任者である大臣がお答えになった当事者の一人がそういうことをはっきり自分の声で言っているということは、私はやはり見直しの重要な一つの資料になってしかるべきものだと思うわけです。  時間がありませんが、私の意見では政治決着が二段階に分かれている。第一次政治決着というのは、文字どおり非常に政治的なものですね。このこと自体非常に私は不満でありますが、第二次政治決着というのはさらに非常におかしいわけです。さっきの立木委員とのやりとりの中でも実に明快に出ているわけですけれども韓国政府金東雲が犯人であるということを断定できない、しかし外交官としては罷免した、こういうことを言った口上書を日本政府がまるまるのんでしまったというのが第二次政治決着ですね。政治決着というよりも、これは不当な妥協と言わざるを得ないと思うのですね。  金東雲の容疑を確定できないということ自体、これは日本政府、捜査当局に対する大変な冒涜であると思います。そういう意味で私が申し上げたのいは、第二次政治決着というものはまず解消しなければいかぬ、見直すどころか解消しなければいかぬという性質のものだと思うわけです。これがまず第一段階として、見直しというよりも、日本政府が手をおつけになるべき問題だろうと思うわけです。この点はいかがでしょうか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府は自民党政府でございますし、継続性を持って処理いたしておるわけでございまして、第二次決着について御批判があることは承知いたしておりますけれども、その時点におきまして政府がここでそういうけじめをつけていったということは、それなりに理解できないわけじゃないと考えております。
  68. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、近く東京サミットが開かれる、その折にカーター大統領も来日をされ訪韓をされるという状況の中で、先日、共同通信に対してアメリカの国務省があのような秘密文書を公開したということ自体も私は偶然ではないという気がしているわけです。  つまり、アメリカ政府の姿勢というものは、従来のいわゆる東西対立、冷戦構造という時代には、いわば自由陣営の国であれば、その政府がとっている態度が民主主義を破壊するようなものであってもやはりこれは擁護しなければならぬという、これがたとえばハビブ駐韓大使の当時の姿勢でもありました。しかし、いまカーター政権というものは人権外交を掲げて出発をして以来、日本に対しても、あるいは韓国に対しても、そういうイデオロギーを最優先するということよりも、まさにいま国際人権規約を批准しようとしているわれわれですが、人権という問題を非常に重視をする、こういうことを一つの外交の原則にしてきている。その一つのあらわれとして、いま朴政権に対して表でもあるいは裏でも非常に厳しい姿勢をとっているというふうに私は考えておるわけです。  こういう状況のときこそ、日本政府が従来誤ってボタンをかけ違えてしまったそのボタンをいまかけ直す、つまり政治決着を見直す絶好の機会ではないかというふうに考えるわけで、私は、いまそれがチャンスである、むしろ自民党政府としてそういうことをお考えになるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかく田さんの御質問でございますけれども、先ほど渋谷さんの御質問にもお答え申し上げましたように、人権問題として、つまり金大中氏御自身の自由の問題というのは政治決着において私は解決されておるという立場をとっておるわけでございます。  で、問題は、主権の侵害があったかどうかという問題がいま問われておるように私は考えておるわけでございまして、いわゆる金大中事件人権の問題という問題はない。しかし、韓国の国内で金大中氏がどういう理由でどのように取り扱われておるかという問題は、この事件と別に、あるのではないかと思うのでございまして、それは韓国の内部の問題、内政の問題でございますので、私ども政府立場でこれを云々するということは慎まなければいけないのではないかと考えておるわけでございます。  国際的に人権尊重、擁護ということにつきましては、政府としては、精力的に取り組んでいく姿勢に変わりはありません。
  70. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  71. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 総理、終わりました。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣、続きでございますから、やはり人権に関連して金大中氏の問題を初めに少しお尋ねいたします。  これまでの議論の中で、それから政府がこれまで示した態度なんかででも、政治決着というのはもう大局的見地からつけたものであって、これを見直す考えはないという線が一本ずっと通っているように思うんですね。それにもかかわらず、日本の主権の侵害を証明する新たな事実が発見されたならば見直すかのような言葉を使っていられる、非常にいまの大、平総理のお答えにもその両面があらわれております。  それからもう一つ、まだ本当に決着がついていないから捜査当局にいま捜査させているというような御発言もありました。しかし、それじゃ捜査当局が一体何がまだできるんでしょうか。たとえば指紋その他のちゃんとした証拠があっても、それが証拠にならない。で先ほども日本の主権の侵害があったかどうかは捜査当局に検討させますというふうにおっしゃいましたけれども、一体、そのようなことができるとお思いになりますでしょうか。
  73. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理答弁も私の答弁も、公権力の行使というものを捜査当局に判断させるというのではなくて、政治決着の際の条件に、捜査は続ける、そして新たな事実が出てくれば見直すこともあり得る、こうなっておるわけでありますから、新たな証拠が出るかどうかということについて捜査を続ける、そして新しい事実が捜査当局で発見されれば、公権力の行使であるかどうか、主権の侵害であるかどうかということは政府判断する、こういうことで一貫していると思います。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 言葉だけが素通りしている感じなんでございますね。いまも金大中氏の人権日本の主権の侵害とを分けてお話しになりましたけれども金大中氏の人権が侵されているというのは、あの拉致事件によって侵された、そしてその第一次決着のときに一般韓国市民と同じような自由が保障されると言われたけれども、事実、自由は保障されなかった、それも言葉だけなんですね。ですから、非常に逃げるだけで終始していられる感じなんです。  昨日来、外務省発表されました、金大中氏がソウルの日本大使館須之部大使接触をしてこられたという問題ですね。これは外務省の方では二、三週間前から接触しているように言っていらっしゃる。で先ほど大平総理はずっと絶えずちょくちょく接触をしてきたようにおっしゃっていますね。で今回のこの金大中氏からの接触というのはアメリカのスナイダー公電が公表された後でございますか、それよりも先から外務省大使館接触しているとおっしゃるんですか、どうですか。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理がおっしゃいました金大中氏とわが在韓国公館との接触は、あの事件以来、ときどき行われているわけであります。たとえば大統領夫人からの申し入れ、あるいはこれとの食事、あるいは日本から行かれた方々が面会された場合に同行していって一緒に会談するとか、あるいは金大中氏ともそうして接触がしばしばあった、こういう意味でございます。そして金大中氏が刑に服したということで暫時切れておったわけでありますが、一週間ぐらい前、第三者を通じて、大使または次席の公使と会いたいという意思の表明があったわけであります。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、明らかにスナイダー公電その他、国務省の公電が発表されたそれを踏まえてのことでございますね。
  77. 園田直

    国務大臣園田直君) 時期から言えば、それが出た後、一週間ぐらいしてからでございます。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほど、外務大臣は、きのうの晩、金大中氏がNHKのキャスターと話し合った中身として、六年間も虚構の上に立っている政治決着を見直してほしいということと、それから私自身人権を守るために努力してほしいという内容のことを言われましたが、そのようなことは一切須之部大使には伝えられていない、中身は何にも伝えられていないということでございますか。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) 第三者を通じて会いたいということだけで、会った後の用件については一切伝えられておりません。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、金大中氏が不満であった、だから保留していたら、今度は軟禁状態になったという、その不満であったということはどういうことなんですか。
  81. 園田直

    国務大臣園田直君) 直接聞いたわけではありませんからわかりませんが、推測をすると、第三者を通じてそういう意思表明があった。そこでこちらが公使をと言ったら、向こうは公使より大使に会いたい、それから場所をどうするかこうするか、こういうことで手間取っているうちに会う機会がなくなった、そういうことに対する不満だったと思います。
  82. 田中寿美子

    田中寿美子君 私どもずっと金大中事件を絶えず外務委員会その他いろいろの委員会で政府に対して追及しているわけなんですけれども、その間、外務大臣は、このことについては知っていらっしゃったけれども、黙っていられたわけでございますか、金大中氏からの接触があった件については。
  83. 園田直

    国務大臣園田直君) 知っておりましたが、先方からの話し合いの途中でありますから、外部に発表することは避けておったのであります。
  84. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、大使がこれから今後金大中氏と会うことはあり得る、それから金大中氏が望むように金大中氏の自宅に大使が訪れるということがあり得るというふうに考えてよろしいですか。
  85. 園田直

    国務大臣園田直君) 向こうからまだそういう具体的な話は来ておりません。それから私の方は大使の方には一切任せるからということで、会えということを言ってあります。
  86. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの問題とともに、軟禁状態であるけれども、会うことはできるはずでございますね。昨日、たしか外務当局がそういうふうな発表をされたと思うんですけれども金大中氏の自宅に大使が行かれることもできるし、それから軟禁状態であっても、それは行けることである、こういうふうに考えてよろしいですか。
  87. 園田直

    国務大臣園田直君) 一切大使に任せてありますから、そういう場合もあり得ると存じます。  それから、金大中氏とは直接会ったわけじゃありませんが、電報では金大中氏のわが方に対する言葉、態度等は以前よりも非常にやさしく、丁寧になってきたような感じがいたします。不満だとか日本政府はけしからぬという言葉は一切私は聞いておりません。
  88. 田中寿美子

    田中寿美子君 昨夜のテレビ放送をお聞きになりましたでしょうか、そこでは不満であるという言葉を使っていらっしゃいましたですね。そして私の人権回復を、のどに刺さっている骨を抜かない限り、その痛みは悪化するばかりだというふうなことをおっしゃっております。もちろん大使館に対してはそのような言葉をお使いにならないかもしれないけれども金大中自身のそれは感じであろうと思います。  そこで、この際、外務省としてはどういうふうにしようと思っていらっしゃるんでしょうね。どうも政治決着を見直すということは考えられない、どうもそれはしないというのが政府の一致した態度のように思われるわけなんですが、そうしますと、政治決着を見直すというのとはまた別の方法で、そういうこととは切り離したやり方で何らかの形で金大中氏の身柄の自由を確保するように努力するというふうなことを考えていられるんでしょうか。これは須之部大使に一任しているとおっしゃっても、先ほど申しましたように、日本国を代表する大使が勝手に振る舞えるはずはないわけですから、もちろん訓令は出していらっしゃると思うんですけれどもね。
  89. 園田直

    国務大臣園田直君) テレビの金大中氏の話でございますが、私はやや早とちりかもわかりませんが、違った感じで、日本政府のいままでの取り扱いについては不満の意を表明せられた、今度会うということについては不満の意は表明されなかったというふうに私は聞きました。
  90. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはそうなんです。それで後の方のことをお管えいただきたいんです。
  91. 園田直

    国務大臣園田直君) そこで、後の方は、金大中氏と連絡をとって会えという訓令を出しているだけで、その会う方法だとか場所は一切大使に任しております。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 どういう方向でという、その訓令はしていらっしゃらないわけですか。
  93. 園田直

    国務大臣園田直君) 方向と申しますと。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほど申しました金大中氏の身柄を何らかの形で自由にするとか、そういうことについてです。
  95. 園田直

    国務大臣園田直君) 金大中氏の身柄については、いままで、わが方は、特別な関係上、金大中氏の取り扱いについては重大な関心と懸念を有するということはしばしば会談があるごとに、機会があるごとに申し述べてきているところであります。したがいまして、会った上どうしろこうしろということは、会った会談の内容が報告になって、その上での訓令でありますから、まだ会う先にどうこうという訓令はいたしておりません。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、先ほど田委員からも聞かれましたが、金大中氏が訪日したいという意思を表明された場合には、それを受け入れられるおつもりがあるんですか。
  97. 園田直

    国務大臣園田直君) これはまあ仮定のことで、お答えすると誤解を招くかもわかりませんが、わが方はそういう御意思があれば受け入れる用意はあるわけでございます。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、韓国政府がどういう立場をとるかによってそれは左右されるということでございますか。
  99. 園田直

    国務大臣園田直君) それは韓国に在住される韓国人でありますから、韓国政府が出国を許さなければ、わが方がこれを受け入れるわけにはまいりません。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 今回の事件事件というよりは、スナイダー公電が発表されて以来、こういうふうに金大中氏の問題が非常に国民にも十分納得がいかないし、それから国際世論にも大きく訴えていると思うんですけれども、この問題について日本韓国政府の間で何らか交渉をしていらっしゃることがあるのでしょうか。
  101. 園田直

    国務大臣園田直君) あの公電が発表されて以来、これに対する照会その他のことはいたしております。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、韓国政府に、こういうアメリカのいわゆる電文であるところの文書を確認するということを交渉されたわけですか。
  103. 園田直

    国務大臣園田直君) その事実は局長から報告させます。
  104. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 前回にも御説明いたしましたとおりでございますけれども、この文書が公になりました後、とりあえずの措置として米国政府韓国政府に事実の照会と申しますか、そういう努力をいたしたわけでございます。  そのうちの韓国政府に関する部分につきましては、特に例の一月十日の公電、スナイダー電報というのが一番注目されたわけでございますので、これに関する韓国側の説明というか、それを求めたわけでございますが、二、三回に分けて先方から返事がございましたけれども、まずは、韓国政府は、こういう場合に通常作成する記録がこの場合には、この会談に関しては記録がないというのが最初の説明でありました。さらに追加的に説明を求めたのに対しまして、念のため金東祚当時の外相に直接照会してみたけれども、金東祚氏はそういう記憶はないということで、したがって、韓国政府としては、いかなることでこのような電報が出たのか想像ができないことであるという返事がございました。なお、その後、国会の場で、情報によればこの会談はいわゆる公式の机を隔てての会談ではなくて、たとえば屋外で行われた会談ではないかという御提起がありました。これについては、こういう情報があるけれどもどうであるかという点については、さらに目下照会中でございます。
  105. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういう文書の照会とか確認だけでなくて、この際、もうこのように長引いて世論が納得できない問題について日本韓国政府との間で何とかもう少し、さっきの総理大臣の言葉で言えば、すっきりちり一つ残さないというふうな言葉を使われたけれども、そうはいかないまでも、もう少し前進した交渉をしていらっしゃるというような事実は全然ありませんか。
  106. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) この点は、次のように私ども現在考えております。  すなわち、七五年の七月のいわゆる決着、その後これを第二次決着という表現がとられているわけでございますけれども、その際に、金大中氏は出国の自由を含めて一般韓国人並みに自由である、そういう了解が守られている限り、金大中事件について今後わが方より韓国側に対して問題を提起することはないということが当時了解されておりますので、金大中事件について提起するということは控えて、行っていないのが現状でございます。
  107. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまこんなに問題が大きくなっているときに、そういう状況であるということは大変遺憾だと思いますが、また別の機会にこの問題は追及さしていただくとしまして、きょうは国際人権規約の審議の最終の日でございますから、少し総括的に御質問をしたいと思います。  国際人権規約は、二度にわたる世界戦争に対する反省として国際的に人権を守っていこう、戦争中に行われた多くの残虐な行為、人権無視、そういったものをみんなで、世界じゅうの国が一緒に守っていこうというその思想に発していると思います。特に個人の人権意識については、日本は欧米諸国に比べて人権意識が欠けている国だと思いますので、私は、国際人権規約をこの際批准し、締結を完了したら、これからその線に沿って国内法も整備していかなければいけないと同時に、日本国民が世界の市民としてもっともっと人権意識を高めていくような運動も必要だというふうに考えております。  今回、ただ残念なのは、留保の条項があること、さらにB規約の四十一条の中での宣言ですね、あれを活用するという宣言をしていないということ、さらにB規約の選択議定書を締結しなかったことなどを考えますと、この規約の中に盛られている精神が実効を上げるのについての担保を少し欠くというような気がいたします。これについてはもう御説明は伺いません。  これまでの御答弁や、それから参考人の言葉なども参考にしながら、私たちは、世界じゅうの国がこういう人権規約に参加して、そうして実行力が上がっていくような状況の中で、どこの国の国民人権をじゅうりんされた場合でもこれを守っていけるような、そういう保障をつくり上げていくために、日本は先進国ですからぜひ今後努力してほしいし、したがって留保している条項もできるだけ早い機会に留保を解く。それからB規約四十一条の宣言もして、そして人権の保障を進めていく。それから選択議定書も、個人が人権を侵されたときに国際的に訴えていくことができるような、そういう方向にしたいということを私は最初に希望として述べておきます。  そこで、この人権規約は無差別の原則に立っていると思います。差別された者をなくしていくという原則に立っていると思いますので、私は第一番目に男女平等のことを御質問したいと思います。  第七条の「公正かつ良好な労働条件」というところの(a)の(i)のところに「同一価値の労働についての同一報酬」というところがありますが、その中で「女子については、同一の労働についての同一報酬」というふうな言葉になっております。ここで私はちょっと確認しておきたいのですが、同一価値労働に対する同一報酬というのは、これはILO百号条約の同一価値労働に対する同一報酬の条約上の言葉です。それで、いま女の人たちは現在の日本でもあるいは世界のどの国でもそうだと思いますが、全部男性と同じ仕事をしているわけではありません。ですから同一の労働はしていない、違った労働をしているけれども、価値において同一であれば、つまり平等の仕事をしておれば平等の賃金を受けるべきだというふうに考えますが、この点、この「同一の労働についての同一報酬」と書きかえてある点をどういうふうにお考えになるか。そして私の考えているように、男女とも同一価値の労働をしていたら同一の賃金を受けるべきだという原則が正しいのではないかと思いますが、その辺の御意見を伺いたいと思います。
  108. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生がいま御指摘の点、条約のテキストにおきましては、男女の同一報酬につきましては同一の労働となっておるわけでございますが、これは条約の英、仏初めすべての正文におきまして、前段の方には「同一価値の労働についての同一報酬」と書いてあるのに比べまして、後段においてはその「価値」という言葉が入っておらないために、使い分けておりますために、訳の方でもこのように分けて書いておるわけでございますが、先生から御指摘がございましたように、男女同一報酬の問題につきましては、ILO百号条約で、同一価値の労働について同一報酬という、定義と申しますか、概念がございまして、その方がより正確な概念であろうと思います。したがいまして、この条の解釈におきましても、前段は男女も含めましてすべての人についての「同一価値の労働についての同一報酬」ということを規定いたしておりますので、あわせて読めば先生御指摘のように解釈するのが適当であろうと思います。
  109. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も同意見でございます。  それで、この際、お尋ねしますけれども、いま国連で婦人に対する差別撤廃条約案が審議されております。三十三回の総会には日本から高橋展子さんが経済社会理事会の第三委員会にお出になって、これの審議に加わっていられて、今度三十四回総会に採択を目標としてさらに審議される予定でございますが、その際の御報告を受けまして、まず第一番に、婦人差別撤廃条約に対しては、日本政府はこれに賛成の投票をされる予定であると信じますけれども、そのことが一つ。  その際の報告を伺いましたときに、いまの同一という問題ですが、ILO百号条約の同一価値の労働に対する同一報酬というその同一も、それから日本の労働基準法の四条の同一賃金の原則のこの同一という言葉も、英語に訳せばセイムなんですね、イコールじゃない。イコール・ペイ・フォー・イコール・ワーク・オブ・イコール・バリュー、このイコール、平等というのとセイムというのと使い分け——日本の翻訳は最初間違ったのじゃないかと私は思うんですけれども、男女が全く同じ仕事をしているというふうには限らない。あるいは男性の間でも同じ仕事をしていないけれども、同じ価値の労働であれば同一平等の賃金をという意味に解さなければいけないと思います。  ところが、最近の傾向として、イコールじゃなくて、セイムにせよという意見が先進国の男女平等論者からも出るし、それから発展途上国の方からも、長い間人種差別などをされてきた人々から見ればセパレット・バット・イコールという言葉があって、分離して同じ待遇をとればいい、これはアパルトヘイトなんかの問題とも関連してくると思いますが、そういうことが心配されるのにかかわらず、国連の場であるいはILOの場でザ・セイムの方に変わろうとしている傾向があるというふうに聞いておりますが、この辺を日本政府はどういうふうに把握して、今後、国連総会その他ILOなどでどういうふうに対処なさるつもりか。つまり、これまでの日本の訳語が「同一」になっていますので、訳せばザ・セイムなんです。だけれども、本当は「イコール」を訳すならば「平等」と言わなければいけないのですね。そこでここのところは混乱してきますから、今後、私は、日本の場合もあるいは全世界的に見ても働く婦人の立場から言えば、平等の仕事をしていれば平等の賃金をと、その「平等」という方がいいのではないかという気がしますが、この意見をどうお考えになりますか。
  110. 園田直

    国務大臣園田直君) いま国連で行われている婦人差別撤廃条約、これに対しては、御発言のとおり、わが国は賛成の立場をとって、審議においても基本的な賛成の立場に立って、できる限り多数の国が参加し得るよう努力をしているところでございます。  なお、いま言われました問題は、いろいろ議論のあるところでありますが、わが国としては、男女の生理的差異及びそれに基づく両性の特性を考慮すれば、機械的に何もかもセイムということよりも、差別を撤廃するという意味から言えば、イコール、平等ということが適当ではないかと思って、そういう方向で進んでいるところでございます。
  111. 田中寿美子

    田中寿美子君 この間、参考人からの御意見も伺いましたが、女性が母性という特質を持っていることに対する保護を与えるというのは、これは合理的な差別である。だから、これはイコールという概念に反しない、平等概念に反しないというお話がありまして、私もそのように考えているわけなんです。そうでありませんと、第十条の家庭、母性、児童、年少者の保護というところ、その2項に「働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。」という、その条項がうまくいかなくなるというふうに私は思います。  これに関連して、いま日本の労働基準法などは産前産後休暇には所得保障をしておりません。今後、やはり国際人権規約を批准する以上は、そういう方向に向かっていくべきだと思いますが、いかがですか。
  112. 高橋久子

    説明員(高橋久子君) 先生がおっしゃいましたA規約の第十条の2は「産前産後の合理的な期間においては、特別な保護が母親に与えられるべきである。働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。」このようになっております。  わが国では、御承知のように、労働基準法の六十五条で産前産後の休業を定めておりますが、出産休暇中の有給ということは労働基準法には規定がございませんが、社会保障給付といたしまして、健康保険に加入している場合には出産手当金が健康保険法から支給されるということになっているわけでございます。したがいまして労働基準法について有給の規定という形に改正するというような考えは現在のところございません。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 労働省の官僚としてお答えになっておりますけれども、産前産後の休暇というのは、これは人類の子孫の維持のために必要なものでございますから、それに対して国家かあるいは社会保障で保障していくという原則が出されておりますので、これは労働基準法に限らず、いろんな面から保障していくべきだと私は思っております。  ですから、組合の健康保険に入っている人たちは保障されても、あるいはその他の場合には保障されないという場合がありますので、今後、これは漸進的に達成すべきA規約ですから、そういう方向に向かっていただきたいと思いますが、いかがですか、外務大臣
  114. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) ただいま御指摘の点につきましては、第二条の漸進的規定に従いまして、積極的な措置を進めてまいるべきであると考えております。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 これはちょっと自信のないお答えでしたけれども人権規約を批准し締約国となる以上は、今後、その方向に向かっていっていただかなければならないと思います。  さらに、男女平等の問題でもう一つ。国籍法上の父系優先血統主義というものからくる国籍を失う者、無国籍者あるいは帰化などにおける不平等の実態があります。このことはもう余り詳しく触れる時間がありません。先日、参考人から具体例でお話を受けました。で、ことしは児童年でもありますし、人権規約Bの二十四条の3「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」これはだれでも生まれたら国籍を持っていなければならないものですから、当然のこととして保障されなければなりませんけれども、最近、国際結婚が多くて、しばしば子供が籍を持てない場合がございます。特に沖繩でその事実がたくさん見られておりまして、日本人母とアメリカ人父の間で産まれた子供が無国籍になりやすい状態が起こっておりますので、こういう場合に、子供に国籍を継承させる権利を男女両方に平等にすべきであるというのが私どもの主張でございます。  このことは、国際婦人年以来、各国で検討されてきて、父系主義をとっている国でも子供が無国籍になるような場合には、母の国籍なり父の国籍なり、どちらかが選べるようにさせようという方向に向かってフランスも西ドイツも国籍法を改正したし、スイスもそうしたということでございます。具体例は省きますけれども、今後、そのようなことについて、国籍法上の父系主義を簡単に日本は改めるとは思われませんけれども、籍を失い、あるいは籍が取れないという者に対して籍が持てるような制度をつくり上げていくということについてお考えがないでしょうか、伺いたいと思います。
  116. 田中康久

    説明員田中康久君) 確かに先生が御指摘のように、わが国の国籍法では、結婚した男女の間から産まれた子供は、たとえば母親が日本人で父親が外国人の場合には、日本の国籍を与えないことにしております。これはわが国の国籍法のたてまえが、そういう場合には外国の方で国籍を与えるだろうというたてまえで、無国籍が生ずることを予定しないでつくられたわけなんですが、御指摘のように、アメリカの場合には父親の国籍を子供に継承させない場合があるということで無国籍の場合が出てきて、私どもも予想していなかったところではございますけれども、そういう事態が出てきています。  それで、御指摘のように、現在、男女平等という観点から、西ドイツ、それからフランス、スイス、現在あとスウェーデンと、私どもが把握したところではデンマークが改正をしているようでございます、内容はまだ完全に把握しておりませんけれども。そのように改正にはなっておりますけれども、わが国の場合にはちょっと特殊事情がございます。といいますのは、わが国で国際結婚の例が多いのは朝鮮関係と台湾関係、中国関係もございますが、が一番多いわけでございまして、その場合に二重国籍が生じた場合の後始末をどうするかというのはちょっと大問題でございますので、そういう処理の関係を完全に整序しない限り、わが国で男女平等、父または母の国籍を与えるという構造にすることはちょっとやはり問題があるのではないかというふうに現在のところ考えております。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 国際人権規約を批准するんですから、ですからこれは直ちにその方向に向かって努力をしていただかなければならないと思います。  時間を急ぎますけれども、いま朝鮮、台湾の問題をおっしゃった。で沖繩の米兵と日本の女性との結婚によって無国籍になる子供たちは学校にも行けない、就職もできないという非常に苦しみを持っております。ですから、この問題はこの問題としてとりあえずの対策も講じなければいけませんけれども、根本的な方向が求められなきゃならないと思います。  もう一つ、昭和二十七年四月二十八日の民事局長通達で、台湾と朝鮮の人はそれまで日本人の国籍だった、ところが戦後の台湾の領土の日本からの離脱と同時に全部日本国籍を抜かしてしまったわけですね。そこで日本に在留している日本人の妻も、あるいは日本人であったところの台湾人も朝鮮人も国籍を失ってしまうという状況で、いろいろと非常に苦しい運命に遭っている人たちがあるわけです。この民事局長通達というのは、一局長の通達でそのようなことをしたこと自体問題だと思いますけれども、今後、どういうふうに対処していかれるおつもりでしょうか。
  118. 田中康久

    説明員田中康久君) この点につきましては、私どもの理解としましては、日本が平和条約を結んだ時点で朝鮮と台湾につきましてはわが国が主権を放棄したということから、主権を放棄するということは領土に対する日本の主権を放棄しただけでなくて、その領土の人間としてみなされるべき朝鮮の方それから台湾の方に対する日本の主権が及ばなくなった、そういう意味で、この平和条約はそれらの人たちは日本人でなくなるというふうな前提でできているのだろうと私ども理解しております。そういう前提のもとに民事局長の通達が出されているのだと私ども理解しておりますので、現時点でその民事局長通達を変えるというようなことは、多分、私ども局長がちょっときょう出てこれませんので、私、事務当局として考えますと、現在のところ変える必要性はないというふうに理解しております。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 こういう議論をしている暇がありませんけれども、領土と一緒に除籍されてしまうという問題はこれは重大な問題だと思うんです。ですから、今後考えなければならない問題として残しておきます。  次に、内外人平等の原則というのはこの国際人権規約の原則だと思うんです。A規約六条労働の権利、A規約九条社会保障、A規約十三条教育の無償化の問題のところですね、それらすべてが外国人にもこれは適用されるべきものだと思いますが、これが適用されていない人々が現に日本にはたくさんある。在日朝鮮人、韓国人などもそうだと思いますが、この問題についてはどういう取り組みをなさるおつもりですか。
  120. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 今回の人権規約が社会的出身、国民的出身、人種その他による差別をしない方向の基礎的な組み立てにおいてでき上がっていることは御承知のとおりでございますが、ただいま御指摘のような点において、今後、さらに努力をすべき点が残っておるということは御指摘のとおりでございまして、そういう意味合いにおきましてはA規約につきましては漸進的という言葉があるわけでございますけれども、各省ともさらに御相談をして、この点は今後の努力の目標として外務省としても十分意識して対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、留保しなかった以上は、漸進的にその目標を達していかなければいけないので、具体的に進めていただきたいと思いますが、これは外務省に言っても外務省は窓口で、それぞれの原局が努力をするように督促をしていただきたいんですね。  それでは、次に、難民の問題をちょっとお尋ねいたします。  国連ではたくさん人権に関する条約がありますね。先ほどの国籍の場合も、無国籍を食いとめるための条約が二つありますね、既婚婦人の国籍についての条約というのともう一つありますが、難民に関しても難民の地位に関する条約というのが二つございます。相当数の国が締約国となっているわけなんですが、いま特に問題なのは、日本にいるベトナム留学生五百人くらい、この留学生の扱いが諸外国の留学生の待遇と比べると非常に悪い。政権の変化があったんですから、大変特別な条件のもとにいる留学生たちなので、この人たちを、難民と同様に——この前、大学を卒業した後一年間滞在できるように延長されましたようですが、さらに難民同様の扱いをして、永住権を与えることができないかどうか、その辺の御意見を伺いたいんです。
  122. 藤岡晋

    説明員(藤岡晋君) いわゆるベトナムその他インドシナ諸国からの留学生でございますが、今日、留学生の在留資格を維持しておる者につきましては一年、それから留学生であったけれども、いろんな事情で留学生の実体がなくなった者につきまして、特に人道的な立場から、引き続き滞在を認めております者について、百八十日の在留期間を原則的に留学生当時と同様に一年与えるという方向にまいっておることは御指摘のとおりでございます。  問題の、いわゆる永住という在留資格を与えるかどうか、これは一概には申し上げかねるところでございまして、ケースごとに本人の在留状況等をよく調べまして、永住の在留資格を与えるにふさわしいという者があるならば、それはそれなりにその方向で処理していくことも可能であろう、かように考えております。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 留学生たちが希望が持てるような方向にやっぱり前進させなければ人権規約を批准した意味が余りなくなります。  それでは、続いて被差別部落の方々の問題ですが、この間は参考人から相当詳しく具体的なお話を聞きました。A規約六条、九条、十三条などで労働権とか社会保障権とか教育権が保障されるわけなんですけれども、具体的に言えば、職業選択の自由とか進学の自由とか、そういった社会保障の面からも非常に差別がまだ存在するという細かいお話がありました。  それで、こういう問題に対して、今後、どういうふうに取り組んでいかれるか。特にあのとき指摘されました部落地名総鑑の販売というのを禁止するようにできないかどうか。それから同和対策特別措置法が三年間延長になっておりますけれども、これはもっと根本的な基本法として取り組んでいくことができないかどうかについてのちょっと御回答をお願いしたいと思います。
  124. 黒川弘

    政府委員(黒川弘君) 同和対策につきましては、同和対策事業特別措置法が三年間延長されたわけでございますが、一つには、この三年の間、同和地区における環境整備等の面で残された事業がございますので、これをなし遂げるとともに、また、意識の面におきましては、国民の同和問題に対する理解をさらに深めるため啓発活動を続けてまいる必要があると考えているところであります。このため関係各省の間の連絡を一層緊密にいたしまして、これら対策の推進に力を尽くしているところでございます。  それから、いまお話しの部落地名総鑑の問題でございますが、これにつきましては法的規制が必要なのではないかという意識のもとに、その問題の検討を法務省において現在行っているところでございまして、必要があれば、この問題につきましても総理府において関係省間の調整を図ってまいるという必要があろうかと考えております。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの基本法のことについては。
  126. 黒川弘

    政府委員(黒川弘君) 同和対策あるいは同和対策事業の運営の問題につきましては、改善を検討すべき事柄が多々あるというふうに思っているわけでございまして、現行法の体系の中で改善を図り得る事柄、あるいは法律の改正を要する事柄等、広い視野に立ちまして検討を行っているところでございますが、基本法のようなものをつくるという考え方はないわけであります。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 とにかく具体的に被差別部落の人たちの生活が向上し、差別がなくなっていくための努力を今後大いに払っていっていただきたいと思います。  最後に、これは外務大臣外務大臣が昨年国際人権規約を署名してこられたのは大変よかったと思いますし、勇気があったと思いますが、ただ、私どもは、留保の部分について、これは参考人などからも留保なんということをしないですっきりと批准してほしいという意見がたくさん述べられておりますが、今後、この留保の部分、つまりA規約八条の労働三権のところ、それから七条の公の休日の問題のところ、それから中高等教育の無償化あるいは初等教育をすべての者に無償化するという、その留保のA規約十三条のところですね。それらについて、今後、やはり留保をとっていく方向をとってほしい、どういうふうになさるおつもりでいらっしゃるかということ。  それから先ほど申しましたが、B規約四十一条の2項のところですね、日本はこれを宣言しないと救済措置を受けられない。しかし、まだ余り整っていないからまだまだというような御意見もありますけれども、やっぱり率先してこれを有効なものにしてほしいということについて、どういうお考えを持っていらっしゃるか。  それからB規約の選択議定書ですが、これもきれいに批准をして、そしてやっぱり日本が先頭に立ってほしいという意見が私どもの中にたくさんございます。今後、これをどういうふうに——本当に国際人権規約が国際社会に根づいていくようにするために、やっぱり日本は先頭に立ってほしいという私の要望を加えて、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  128. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御審議願いまする規約の三点の留保については、政府部内で慎重に検討に検討を重ねた結果、やむを得ず留保したものでありまするから、直ちにこれを解除するというわけにまいりませんけれども、憲法、国連憲章、その他の人権規約の目的からも考えて、この留保を、逐次、解除する方向に検討をしていくべきものであると考えております。  解釈宣言その他については、いままでお答えしましたとおり、運営考えながら、逐次、そういう方向に持っていって、その際、この解釈宣言をどのような措置をするか考えてみたいと存じます。
  129. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  130. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  131. 戸叶武

    ○戸叶武君 この六月の末の東京サミットは世界の注目を浴びておるし、先進国各国が大体一致している点は、最重要な問題としてエネルギー資源の問題、石油の代替品の開発の問題、いろいろな見解の相違はありますが、その問題を中心として、いまの不況の克服なり景気の回復なり雇用のの拡大なりに一つの一致点を見出そうとする努力もあると同時に、日本が回避できない問題は、やはり東南アジアを中心とする南北問題及び石油消費国としての日本アメリカとともに手を抜くことができないのは中東産油国との対処の問題だと思いますが、アメリカとの関係は非常に摩擦面が多いように見えましたが、大平さんが行く前に園田さんが飛び込んで体当たり外交をやって、そうしてアメリカでも大体自国の農民なりあるいは自国の産業人なりの悩みと同じように、日本の国内でも大変だということがわかって、痛み分けとまで言わなくてもお互いに相手の立場をもう少し尊重して問題を煮詰めていこうというところまできたようです。  一番最初にお聞きしたいのは、この東京サミットにおいてアメリカがいままで新聞その他で書き立てたような形でむちゃな要請はしない、しかし、問題は後に残る可能性はあると思います。外務大臣は勘のいい人ですが、一番アメリカとの関係でむずかしい問題は何だと思っていますか。
  132. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本アメリカとの間で格別現在はサミットで対立する案件はないと思いますが、米国とECその他の関係エネルギー問題その他で若干食い違いがあるのではないか。それから南北問題については日本がよほどがんばらぬとやや消極的じゃないか、こういう点を心配しております。
  133. 戸叶武

    ○戸叶武君 ECの国々を訪ねて、特に西ドイツなりスイスなり、苦悩しているフランスなりベネルックス三国なり北欧なりイギリスなりというものは、それぞれの立場から日本の置かれている立場を理解しているようですが、貿易におけるところの問題はECの国々と日本との関係はそれほど大きなものではないにしても、貿易と関連のある通貨の安定、ヨーロッパにおける基準通貨も一応できた形になっていますが、ヨーロッパ的な形においてこれをもってよしとするんじゃなくて、国際的な規模における基準通貨の確立というものに対する模索がヨーロッパ諸国においてはそれぞれの国の立場からなされておりますが、その中で傾聴に値する御意見はどういう御意見か、園田さんの受けとめた範囲内でお聞かせ願いたいと思います。
  134. 園田直

    国務大臣園田直君) 通貨の問題は、大きく分けると二つあると存じます。現在の基軸通貨であるドルの安定を中心にした議論と、それからもう一つは新しい将来の通貨に対する問題、すでにヨーロッパでは御承知のとおりにECの新通貨の提案が出ているわけであります。しかし、この通貨の問題はサミットではさほど具体的な深刻な論議ではなくて、抽象的な論議で終わるのではなかろうかと想像されるわけでございます。
  135. 戸叶武

    ○戸叶武君 先ほど大平首相東京サミット経済サミットであるというふうに断定しておりましたが、そのように、現在、このエネルギー、特に石油の問題を中心として、その代替品の問題に対してもそれぞれの国々の立場によってドイツ、イギリス及びフランスの立場も異なっておるようでありますが、日本としては、石炭埋蔵を多く持っているドイツやイギリスと違って、やはり一度石炭を放棄して石油一本で行き、石油のかわりに核燃料というふうに安全性の保障がまだ未解決のまま突っ込んだような形になっておりますが、フランスと日本との比較において、どういうところに問題点がありと見ておりますか。
  136. 園田直

    国務大臣園田直君) エネルギーの問題では、フランスや日本は、やはりエネルギー問題を解決するのには、産油国、開発途上国も入れた総合的な話し合いをしなければ、本当の解決はできないというのが大体の基本線でございます。  一方、また全般的に言いますと、エネルギー問題では三つの柱があります。一つは省エネルギー。二番目は代替エネルギー、石炭液化の利用を含む。三番目が原子力開発の促進。そこで原子力開発の促進については、まず促進する前に安全性の確認をやらなきゃならぬ、こういう世界各地にみなぎっておる危険に対する恐怖、こういう三つのことが議題になるのではなかろうか。大体、いま準備委員会で詰めております。近くパリで三回目の準備委員会をやれば大体の見当がつくわけでありますが、いま申し上げたような方向で進むものと考えております。
  137. 戸叶武

    ○戸叶武君 代替エネルギーの問題で、アメリカでは早くからサンシャイン計画といいますか、太陽熱の利用ということを考えているが、なかなかスムーズにはいかないけれども、これを植物栽培等に活用したり、家庭用の燃料にしたりして、エネルギーの代替品として若干の成功はおさめていますが、その開発過程において、このサンシャイン計画に参加をした人々に地熱の活用や、もう一つはやはり核融合はここ二十年ぐらいはむずかしいのじゃないかと言われながらも、核融合への方向づけのための若手の学者を相当養成しております。エール大学に十年以上それに従事している私の後輩もおります。奥さんはもうとうにアメリカの大学の国際法の教授になっておりますけれども、そういう意欲を持って明日に挑戦している人々が筑波大学のシンポジウムなんかに多数集まってきているようですけれども日本では国策として太陽熱の活用あるいは核融合の基本的な研究にどの程度取り組んでいるのか。  アメリカ側に言わせれば、石油と核エネルギーに執着し過ぎて、未来をかち取る基本的な研究が日本では欠けているんじゃないか、それに対するところの投資もなされていないんじゃないかという問題提起がなされておりますが、園田さんは外務大臣であるけれども、このエネルギー問題が東東サミットにおける中心課題だとするならば、当然、それが問題になってくると思いますが、その代替エネルギーの中で石炭を利用するというようなことじゃなくて、将来の未開発の世界への挑戦というものがアメリカでもその他の国々でも意欲的です。日本じゃ少しそういう点が足りないと思う点にはお気づきじゃないでしょうか。
  138. 園田直

    国務大臣園田直君) 代替エネルギーで太陽熱、地熱の利用、こういうものはある程度進んでおりますけれども、現状は先生御承知のとおりであります。やはり一番大きな問題は新エネルギーの開発というのが一番大きな問題で、その新エネルギーとはいまおっしゃいました核融合燃料が未来の燃料であるということに着目をすることがきわめて大事であると考えております。  日本でも、専門家の話をそれぞれ聞きますると、技術的には十分可能性がある。ただ、莫大な費用と年限が難点でございます。そこで核融合を目指す新エネルギーの開発については日米の間で協力してやろうじゃないか、かつ、これにはECも加わってもらおうじゃないかということで、話がいま進んでいるところでございます。
  139. 戸叶武

    ○戸叶武君 そのように一国だけでは未来に挑戦することができない。技術面においても国際的な協力が必要であるということを学者や研究所においても、そういう形において新しい一つの国際連帯の情熱を燃やしております。  問題は、政府一つのショービニズムであってひとりよがりの愛国主義でいったのでは、やはりグローバルな時代における未来をかち取るだけの躍動というのができないのだと思いますが、そういうことにアメリカなりECも気がついているのでしょうが、日本においては、その面において具体的にはどういう点を担当しようとしているのか、また、どの程度費用も出し合って協力をしようという構えを持っているのか、そういう点はまだ模索中で決まってはいないのでしょうか。
  140. 園田直

    国務大臣園田直君) これは大事な問題でありまするし、相当具体的な話がいま進んでいるところでございます。どういうふうな機構でどういうふうな方法で研究を進めていくか、現実に費用はどういうふうに分担するかというところまでいま相談がきているところでございます。
  141. 戸叶武

    ○戸叶武君 そういうふうにだんだん進んできているということでありますが、私の後輩でアメリカ原子科学研究所にも呼ばれ朝日賞もいただいた学究が、やはりイスラエルの大学に呼ばれたりソ連の大学に呼ばれたりフランスの大学に呼ばれたりしている。この科学者のすそ野が広くなっている。ソ連においてもイルクーツクのアカデミーに行ってびっくりしたのは、やはり少数の科学者だけでなくて底辺が非常に広がっている。ソ連は独善的な傾向があるんじゃないかと思ったが、やはり宇宙科学のあれだけの進歩発展というものの中にはピラミッド型の底辺が揺るぎなき体制をつくらなければ新しいものは創造できないということは自覚し、国もその方向づけをやっているようだが、日本では、そういうことに対して国が惜しみなく費用をそこにつぎ込むということがなくて、相当な学者が育っても、国際会議において十分な研究発表をしたり、また、ほかの意見を聞いたりすることができない封鎖的な傾向がいまだになくなっていないということをときどき嘆きます。  そういう面は、外務省においても、このごろは文化交流、技術交流という形において外国の著名な学者を呼んだり、それからいろんなシンポジウムを試みようとしていたりするようですが、今後、この封鎖的な日本の学者社会のこれをどこから打開しようと考えておりますか。これは文部省だけには任せておけない、やっぱり諸外国の動きに刺激されて、日本の科学技術の協力というものに対して抽象的でなく具体的な成果を上げなきゃならないと私は思いますが、そういう面においては何をやっておりますか。
  142. 園田直

    国務大臣園田直君) これは御発言のとおりでありまして、現在は、抑止力による平和で平和を維持しつつ戦争をなくする社会をつくろう、そして東西の対立を共存の世界に持っていこうということでありますけれども、第一は、いまのような学問、技術というものをお互いに研修し合う、交流する、そしてみんなの力を合わせて一つの目的を達成するということが一番大事なことだと考えております。したがって、このエネルギー問題を東西協力してやることはきわめて緊要であると思います。  日本では、技術、学問がおくれておるとは必ずしも私は思いません。ただ、資金の面とか、あるいは海外との交流、開放、こういう点にまだ難点があるのではなかろうか、こういうことで、いま御発言のとおり、将来は東西両方が力をそろえて、これを開発する方向に持っていく。そのためには、日本は、各国ともお互いに技術、学問を開放して、この新しいエネルギー開発に前進するということがいまの日本の閉鎖性を是正し、そしてまた一つ日本の学問と技術を生かしていく道だと考えております。
  143. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本の外交は、いままで、よその国の、日本自体の国策もそういう方向を走っていましたが、外国のいいところを学び取って、それを活用して、日本人は器用だから生かすという形の受け身の外交であって、積極的に諸外国に触れ合ってそこから引き出そうというような創造的な意欲というものがないところに日本人がいろいろひやかされる原因もあると思うんです。私は、民族の中にアンビシャスなものを失い、活気を失っておったならば、繁栄の中にモラルは崩れて、そうして民族の一番大切な精神的なエネルギーというものは消耗され尽くしてしまうと思うんです。  そういう意味において、東西南北どこでもいいから、どこでも長所はあるんだから、エネルギーの問題なんかは何もアメリカと中近東の産油国だけに頼ることなく、シベリアには無限の埋蔵資源があるんです。ソビエトはヨーロッパに心臓部があって、このシベリアの埋蔵資源というものはおろそかにしている傾きもあります。そういう意味において、観念的なイデオロギーの時代あるいは権威主義的な官僚的な統制時代よりは、資本主義国家たりと社会主義国家たりと、それは動脈硬化に陥って官僚主義、非能率主義に陥って埋没をする前夜に私は来ていると思います。日本だけでなく、そういう新しい国際的な息吹をソ連にでもあるいはどこにでも注ぎ込むような、独善的なショービニズムを排して、抽象的なインターナショナルじゃなくグローバルな時代に、世界にわれわれは貢献しようという意欲で、外交がその先頭に立って、文化、技術の協力に必要な人を養成し、また向こう側のそういうすぐれた人をも大切にしていくということが必要で、もはやイデオロギーの時代は去ったんです。権威主義と権力主義の力ずくめの時代は去ったのです。それを一番持っていながら察知できないのが持てる者の悩みでアメリカとソ連です。世界から孤立していったら大変だということをいまになってソ連でもアメリカでもやや感じてきたと思うんです。  日本自体も、私は素っ裸でいま世界に対処しているけれども、裸の魅力というものは肉体美と精神美です。やはりよその民族がほれぼれするような精神力と健康な肉体を持っていくならば裸で歩いても恥ずかしいことは何もない。そういう私は民族の気魄というものを外交の中にも込めなくちゃならない。だからこそわれわれは平和憲法を擁護し、拡散防止条約の決議も行い、核開発能力を持ちながらも核拡散防止に賛意を表し、フリーハンド論を排し、独善を排して、そうして国際協力にすべてをゆだねようというところへ来ているんですが、外交、防衛の問題、特に防衛の問題は東京サミットでは経済サミットだから論ぜられないかもしれませんけれども一つの軍用機の売り込みにアメリカの前の大統領もあるいは有名な大学の教授も憂き身をやつして、アメリカの大企業のメジャーとロッキード、グラマンその他の軍需産業の走りやっこになって与党の議員たちに揺すぶりをかけたりなんかしてきていますけれども、いま非常に急を要するのは、この三年なり五年、十年の間に、本当に世界の人々が、暴力革命によっては反革命を促したり、戦争によってはさらに復讐を促したり、そこには何ら人類に貢献することがないということだけを見定めるときが私は来ていると思うんです。  その中において、日本もときには孤独の道を歩んでも、この平和共存を目指しての国際協調、東西南北の融和を図ろうというこの外交は、核融合以上に重大な私は外交の基本的な姿勢だと思います。まあ園田さんには釈迦に説法で、余り進歩的なことを言って自民党にいられなくなっちゃ困るでしょうから無理な答弁は促しませんけれども、いまの体質が抜けない限り、総裁なり総理大臣になるのは、悪いことと知りながら金でほっぺたをたたくのが一番安上がりということになって、日本の政界は全く救いがたいものになってしまう。外交も真理追求も、人を動かすのも、真実と愛情以外に人を動かすことはできないんです。どんなに隠し立てしたって真実はあばかれていくんです。その方が気が楽なんです。  いまこそ、私は、人を裁くのでなくて、みずからの自覚によって日本自体のモラルの復興、ずるく立ち回れば、罪にならなければこれで無難だというのでなくて、世界の人々が日本人は信用できるという領域にまで政治も進め、外交も進めなければ、どこの国も小ばかにして、腹ではあざけって相手にしないんだと思います。あなたの言った外交、何と言いましたか、八方ふさがりじゃない(笑声)八方にらみの外交ですか——全方位か、うまいことを言っているが、あれは幾らか効果はこのごろは見えてきましたか。
  144. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言、外交の基本に関する御意見は全く同感でありますから、その方向で全力を挙げて努力をいたします。
  145. 戸叶武

    ○戸叶武君 これで時間が参りましたから、終わります。
  146. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 国際人権規約もあとわずかな時間を残して批准へという段取りになりました。ただ、この審議に当たっていままでを振り返ってみますと、非常にスピーディーな審議でございまして、本来ならば法務省あるいは文部省、厚生省等々、各省恐らく一日ないし二日ぐらいは十分に細かいところまで国内法整備というふうな問題等を含めて検討されるべき筋合いのものではなかったろうかという、そういう印象を私は持っております。もちろん、いささかおくればせではありましょうけれども、ようやく日本国際人権規約に加盟するというその段取りに道を開いたということは非常に好ましいことでありますけれども、個々に見た場合に、まだ整備を急がなければならない、とりわけ国内法の関連の中でこれから一体どう対応していく必要があるんだろうという、そういう感じを非常に強く持ったというふうに私は受けとめているわけです。  まだまだ個々的にお伺いしたいこともたくさんありましたけれども、きょうも限られた範囲の中で、きわめて限定された問題に一応的をしぼりながら政府としての考え方を伺ってまいりたいなと、そんなふうに思います。  いろんな差別の問題について、いままでも同僚委員の方々から質問を通し、あるいはその提案というような形を含めて、審議がなされたわけであります。確かに現実的に見た場合に、日本国内においても冷静に詳細に社会の事象というものを見た場合に、差別という問題は今後国際人権規約に加盟されることによって、また平和憲法のもとで誠実に実行されていかなければなりませんし、また、そのためのいま申し上げた国内法の整備というものもしていかなければならないだろうというようなわけで、まだまだそういう問題の処理というものが今後に残されているのではあるまいかというふうに判断をしているわけでございます。  いま総論的なことをかいつまんで印象を通して申し上げているわけでございますけれども外務省としても、この国際人権規約に加盟するに当たりましてさまざまな国内法との衝突ということで苦慮されたのではあるまいか、これは個々に、部分的にどこがどうだということではなくして、その辺の所感というものをまず最初にお伺いをしたいと思うわけでございます。
  147. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 御指摘のように、人権規約の御批准をいただきますためには、この条項を誠実に履行し得るめどを持たなければならないわけでございまして、そういう意味で国内法的にもその整合を非常に緻密に検討してまいったわけでございます。  御承知のように、A規約については漸進性の規定がございます。B規約につきましては、もともと根源的な権利でございますので、余り猶予性のないものでございます。そういったことを踏まえて検討したわけでございまするが、細かいことは別にというお話でございまするが、私どもといたしましては、人権規約の締結によって今後とるべき措置の漸進的なプログラムを一応心の中に描いておるわけでございまして、その中には社会保障の外国人への適用の問題とか、あるいはやや細かくなるわけでございまするが、国家賠償法の相互主義の廃止とか、弁理士資格の外国人への開放というような内外人の格差をなくする方向の問題、さらには賃金以外の男女平等問題で、これはかねてから御指摘があるところでございますが、これを単に判例上の担保のみならず、何らかの成文法的な手当てを必要とするかどうか、あるいは同和差別の問題、そういったような問題につきまして漸進的プログラムの概要を描いておるわけでございます。  また、これはやや中長期的な将来の問題でございまするが、戦争宣伝の禁止等につきましてもこの委員会で御指摘がございまして、現在直ちに法益が侵害されておるという判断はしておりませんけれども、将来の社会情勢の推移によりまして、この点もあるいは状況によっては国内法の制定等が検討される時期が来ないとも限らないというような認識を持っているわけでございます。
  148. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁にございましたように、確かにまだ不備な点が相当残されたまま国際人権規約に加盟をしなければならないという状況でありますので、国際人権規約の精神に基づいて、日本は特にいかなる場合でも大変誠実に実行あるいは運用という面については取り組んできたということを考えた場合に、これはむしろ早急に整備を図る必要があるのではないだろうか。いま述べられた問題もそのとおりでありますが、きょうは、そうした観点から、午前中にも同僚委員の方が触れられました国籍の問題について若干お尋ねをしたい、こんなふうに思います。  これは先般の参考人の方々の御意見を参考にしながらお尋ねをしたいと思うのでありますが、確かに日本の現行の国籍法というものを考えてみますと、父系主義というものが主体であるようでございます。一方、憲法には男女平等がうたわれている、この辺の兼ね合いというものを、まあ一言で言えば憲法違反になりはしまいかという、これもいろいろと議論され尽くしてきた問題ではありましょうけれども、この機会に再度確認をしておくためにお伺いをまず冒頭にしたいと思うわけであります。
  149. 田中康久

    説明員田中康久君) 憲法十四条には、すべて国民は、性別その他によって差別されないという規定がございます。これと国籍法との関係を御質問のようでございますが、私ども理解するところでは、憲法は「すべて国民は」という書き方になっております。ですから、国民になった者がその性別によって差別をされることは憲法違反でございますが、国籍法の二条で書いておりますのは、その国民となるべき要件を国籍法は書いているわけでございまして、その憲法の前提を国籍法で決めているという構造になっておりますので、私どもの理解では、国籍法は憲法に違反していないというふうに考えております。
  150. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃるとおりだと思います。  さて、そこで、非常に不愉快といいますか残念といいますか悲しいといいますか、先進国という立場におかれている日本の国内において無国籍者がいるというこの現実ですね、この実態的な状況については、どうなうているんですか。
  151. 田中康久

    説明員田中康久君) 無国籍者が日本でどのくらいいるかというのは、私どものところでは入管で把握しておるわけです。私、詳しい数字を忘れましたが、全国的には二千人前後いると記憶しております。ただ、無国籍者の中身にはいろいろな態様がございまして、産まれたときから無国籍の場合と産まれた後に無国籍になる場合と両方あると思います。  生まれたとき無国籍になるというのは、一つの例で申しますと、たとえばアメリカ軍人と日本人の女性が結婚した場合に、わが国の国籍法のたてまえでは、アメリカの国籍が与えられるだろうからということで日本の国籍を与えてないわけなんですが、実は、アメリカの国籍法は、アメリカ軍人がある程度アメリカに居住をしていないとその父親の国籍を子供に与えないというシステムになっておりますので、そのためにたまたま無国籍になる場合がございます。それから、もう一つは、私生児、外国人から産まれた私生児につきましては、わが国の法律のたてまえですと、たとえば日本の女性が私生児を生みますと、どこで出生しようと日本国籍を与えるわけなんですが、そういうシステムになっていない国がございます。だから、わが国で私生児を外国人の女性が生みますと国籍を与えない、だから無国籍になるという場合がございます。  それから、大きくなってから無国籍になる場合というのは、たとえば中国関係ですと、向こう側から中国の国籍を喪失するという許可をもらってきますと、一応、それは無国籍ということになります。そういう場合と、それからもう一つは、アメリカの場合ですと、やはりいままで、今回改正をされておりますけれどもアメリカにある程度の期間居住しないとアメリカ国籍を取れないという規定がございまして、それとの関係でやはり無国籍になる場合が生じているわけです。
  152. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その救済の方法については、具体的に法務省としてこうすれば救済の措置が考えられるだろうという、その取り組みはございませんか。
  153. 田中康久

    説明員田中康久君) 私どもの方では、現在、帰化という行政をやっておりますが、いまのような例の場合に、たとえば米軍人と日本人女性との間で子供が産まれますと、一応、わが国の国籍法のたてまえでは日本人の子供でございますので簡単に帰化が申請できる。特に居住要件も要りませんし生計要件も要らない。特に素行要件がよくさえすれば簡単に帰化ができるたてまえになっております。で私どもの方としては、帰化行政は後ろ向きじゃなくて、積極的になるべく要件を備えている者については帰化を認めるという方向で実務をやっておりますので、帰化申請をしていただければ、特段の問題がなければ日本国籍を与えることができるということになると思います。
  154. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうでしょうかね。私も現実に扱ったことがあるんですけれども、大変むずかしいですよ、この帰化という問題については。  いまの御答弁ですと、ある一定の条件さえ整えばという、それは犯罪がないとかいろんな問題はあるでしょう。そういう方であっても、条件を満たしておりながら、なおかつなかなか承認が与えられないという、特に韓国の方の場合なんかは顕著な例がございますね。実際にいま御答弁なさったような取り組み方でお取り扱いになっていらっしゃるとすれば、これは非常に円滑にこの帰化という問題が進むでありましょうし、あるいはまた望ましい一つの傾向であろうかと私は思うんですけれども、いままで私が現実にそういう体験をしているんですよ、非常にむずかしいという。
  155. 田中康久

    説明員田中康久君) 実は、一つの例で申しますと、たとえば戦後二十八年までに帰化した人間を大体数えてみますと、戦前からですから年間わずか何人とか何十人というかっこうでしか帰化は事実上されてなかったわけですが、二十八年以降は、私どもの方では年間何千人という単位で帰化を認めてきているわけです。それからごらんになっていただいてもわかりますように、私どもの方は、さほど後ろ向きのかっこうで帰化行政をやっているわけではございません。特段問題がなければ帰化は大体認められるはずでございます。
  156. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはあるとかないとか水かけ論みたいなことを言ってもらちが明かぬことでありまして、もしそういういま方針でおやりになっておられるとするならば、この無国籍という問題もおのずから解消できるであろうというふうに考えたいところなんですけれども、現実にいまお触れになりました、特に沖繩にこの例が多いはずだと私は認識をしているわけです。米軍人との結婚という例が非常に多いと思うんですね。  ただ、その米軍人がもうアメリカへ帰っちゃった、それで残された日本人妻の方はアメリカ国籍を持っている、離婚するにもできない、こういった場合に産まれた子供は完全に無国籍ですね。その救済方法なんか、具体的にそういう問題は起こっているわけで、しかも一人や二人じゃないんですね。沖繩からいろんな報告を受けまして、その実態を私どもも調べました。それは何万とか何十万という数ではもちろんあろうはずはございません。ただ、それが千単位ということになりますと、これは人道上やはり捨てておけない問題だということになります。日本法律の保護も受けられない。それに伴って先ほど賀陽さんが述べられたように、社会保障等のいろんな問題、そういうせっかくの仕組みがあっても、その恩恵すら受けられない。特に教育の問題はそうでしょう。それが戦後すでに三十何年かがもう経過しているわけです。そうした経過している中で、これが一つの社会的な世論として起こっているにもかかわらず、その解決へのまだ糸口すらも見出せないという現実があるわけです。  しかも、いま国際人権規約に加盟しようとしている。当然、そういう人たちの人権というものは何らかの形で守られていかなければならない、これはもう言うまでもない常識でございましょう。こういう機会でないとなかなかこういう問題が提起されていかないものですから、その辺の考え方について、これからどういう御方針を立てられるのか、その辺を伺っておきたいと思います。
  157. 田中康久

    説明員田中康久君) 先ほど全国に無国籍者が二千人ちょっといるというお話をしましたが、私どもが聞いているところでは、沖繩にいる無国籍者というのは百人足らずというふうに聞いております。その中では、先ほど言いましたように、こういう関係で米軍人と日本人との間に産まれたために無国籍になっているという内訳はどのくらいあるかというのを私ども把握しておりませんけれども、多分、私どもの感じでは、大半は中国関係者ではないかというふうに理解しております。  そういう人たち、この無国籍の子供をどう救うかという問題は、私どもももちろん気になっている点でございますけれども、一応、私どもの方としては帰化申請をしていただかないと日本国民にすることができないわけでございまして、現在、そういうことで沖繩に私どもの出先がございまして、そこの法務局の方へ相談していただければ、私どもの出先の職員がその相談に当たり指導に当たってくれるはずでございます。ただ、そういう相談に行っていただかないと、私どもの方で直接勝手に日本国籍を与えるというわけにいきませんので、やはり相談なり帰化申請なりしていただかないと、私どもの普通のルートに乗らないということになりますので、日本人になりたいというお方があれば、そういう出先の方へ相談に行っていただくほかちょっと方法がないということになります。
  158. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはそのとおりだと思います。そのたてまえはわかりますよ。しかし、一般市民というのは役所にはなかなか行きたがらないんですよ。あるいは自分自身のプライバシーに関するようなことまで探られたくないという、そういう一面もあるかもしれない。行きたくても行けない、まあやむを得ない、そのままずるずるべったりになっちゃう。だから、その辺をもっと何らか、ただ来れば受け付けますよじゃなくて、むしろもっと前向きに、特に沖繩という特殊ないままでの事情と環境の中に置かれているわけですから、むしろこちらが救済の手を差し伸べて、まあ救済ということ自体もそれは差別感を与えるかもしれませんけれども、もっとその辺の洗い直しをしながら気楽に相談ができるというような道が何らかの方法でできないものか。それは沖繩にある行政府を通じても結構でしょう、いろんなやり方というものが考えられるんじゃないかと思うんです。  なかなか行きませんよ。そうすると、その人は野放しになっていつまでも無国籍で終わっちゃう、これは現実なんです。皆さん方はそういう実感としてはおわかりにならないかもしれない。大体は、警察だとか司法関係だとか税務署だとかはいやがって行かないんですよ。そういうところも機微に触れて、法のもとで平等である以上は何らかの方法というものが考えられてもいいんではあるまいか。このほかにも確かに韓国人の問題もありますし朝鮮人の問題も出てきますよ、とりあえずいま沖繩のそういう特殊な問題を通じて何とかならぬのかなと、こう思います。どうでしょう、外務大臣、いま私がやりとりしている中で。  もう一つ聞いておきましょう。その帰化手続や何かについては民事局長あたりからはちゃんと通達が行っているわけでしょうね、当然、沖繩に対して。
  159. 田中康久

    説明員田中康久君) 一般的に、私どもの方では、もちろん帰化手続については民事局長から通達を出しておりますけれども、特別、沖繩に限ってというかっこうではちょっと私は記憶にございません。ただ、沖繩の方からやはりそういう問題があるということで局長のところに相談が来たことございまして、そのときには局長の方からは沖繩の法務局の方へ相談に行ってくれという、そういう話をしたというふうにちょっと聞いております。
  160. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 行ってくれですか、まことにその辺が何かあやふやで、行っていいものか悪いものなのか、何か非常に明確さを欠くという印象しか残らないんですけれどもね。これは人数の多少にかかわらず、いまこうした問題が表面化しつつあるその時期に当たって、むしろ、私は、そういう点での国内法整備に伴う、もっと気楽に、帰化申請でも結構でしょう、無国籍者の救済の方法というものが、帰化申請によって限定されるということになれば、もっと適宜な方法が考えられてもいいんではないかな。
  161. 田中康久

    説明員田中康久君) 先ほどからお話ししておりますように、日本人と身分関係のある無国籍者につきましては、先ほどから簡単に手続ができるというお話をしましたけれども、実は、私どもの方では、その手続について費用も一応かからないたてまえになっております。現実にはたとえば書類を取り寄せるための費用がかかったりということはございますでしょうけれども、一応、帰化手続のためには特段の費用はかからないというシステムになっております。それでどういう書類が必要かということはまた法務局に相談に行っていただければ、私どもの方の現地の職員が指導してくれることになっておりますので、やはり現地の方に相談に行っていただかないことには私どもの方としては何もできないかっこうになっております。私どもの方では、そういう意味では、帰化は簡単にできますというパンフレットなんかをつくって一応備えつけをしておりますので、もしそういうことで御希望の方があれば現地の法務局に行っていただければお渡しができるはずです。
  162. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほども答弁があった中で、今度は逆の立場ですね、子供に米国籍が与えられる場合には、その父親の条件は、アメリカの国籍法ですか、非常に厳しいものがありますね。そうすると、日本の国籍法と米国の国籍法の谷間にどうしても沈む期間というものが出てきはしまいかという懸念があるんですよ。  帰化の申請もしたくない、できることならば米国籍を取りたいという願望があるかもしれない。この辺が非常に処理の仕方もむずかしいんだろうとぼくは思うんですけれどもね。いつまでもそれが未解決のまま放置されておりますと、結局、結果論から見れば無国籍で通さなきゃならぬ。しかも、自分の主人が米国へ帰ったはいいけれども、行方がわからないというような場合もございましょう、確認のしようがないわけですね、下手をすると二重国籍みたいなことになりかねない。そういうことを避けるために、大変厳しい拘束が日本の国内法ではあるんではないだろうかという感じすらもするんです。その辺の懸念は持たなくてもよろしゅうございますか。
  163. 田中康久

    説明員田中康久君) 先生の御指摘のように、確かに先ほどから申していますように谷間の部分で無国籍の場合が出てくるわけでございます。実は、私どもの方でも、その無国籍者が全員日本の国籍を希望しているのかどうかということも私どもは把握していないわけです。聞くところによりますと、先生がおっしゃったようにアメリカ国籍を取りたいという希望の方もいらっしゃるというふうに聞いておりますけれども、ただ、アメリカ国籍を与えるかどうかというのはアメリカの要するに国の決めることでございまして、わが国ではいかんともしがたい面があるわけでございます。特にアメリカの場合には、わが国と実情がどの程度違うのかわかりませんけれどもアメリカの帰化手続はなかなかむずかしいという面があるというふうに聞いておりますので、そういう事情考えられて、もし日本人となりたいということならば、私どもの方の手続に乗っていただかないことにはしようがないということになります。
  164. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ここで非常に問題になりますのは、無国籍の間放置された子供の処遇、とりわけ教育問題が非常に問題になると思うんですね。これはどうなりますか、日本の学校には入れないでしょう、入れますか。それから、一方、児童手当だとか、そういうような社会保障も受けられない、この方がむしろより明確でしょう、この辺は厚生省どうなっていますか。
  165. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 先生御案内のとおり、社会保障制度は一般的には国籍の要件を問わずに適用されておりますけれども、ただいま御指摘のような無国籍、裏返して言えば日本国民でない者については一部の社会保障制度——国民年金、児童手当は現在のところ適用されておりません。
  166. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 現実的に見ると、日本という国土で産まれて、しかも母親が日本人で非常にちぐはぐな感じを受けるわけですけれども、それでありながら国籍がないばっかりにそういう恩恵を受けられない。受けられるようにするためにはやはり法律の改正をせざるを得ないだろうと思う。考えてみれば、そういうことになると思いますけれども。やはり平等に機会を与えるという立場から考えた場合に、年金にしてもあるいは児童手当にしても、そういう道を開く必要もあるのではないだろうか。これが数が多くなれば財源という問題も当然あるでしょうし、拠出という問題もございましょうし、いろんな条件というものがあるなしということによってもずいぶん事情が違ってくると思いますけれども、しかし、児童手当の場合には、これはもう国でもって与えているわけでございますから、その辺も何とか道を開けるような方法というものは全く現状としては考えられないのか、また考えなければならないのか。その辺は厚生省としてはどんな受けとめ方をされているんでしょうか。
  167. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 先ほど申し上げましたように、無国籍者につきましても、一般外国人と同様に、私ども社会保障の面では考えておりまして、今後、国民年金、児童手当について、一般外国人に対してどういう形で適用していくかという問題の一環として検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  168. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 検討していくということは、十分その救済の方法というものは考えていかなければならないと受けとめてよろしいですか。
  169. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 検討という意味は、国際人権規約の批准に当たりまして、私ども、外国人に対しても社会保障を漸進的に適用していくという、そういう趣旨には賛成でございますので、私ども留保いたしておりません。したがって厚生省といたしましても、この人権規約の趣旨を体しまして、現在外国人に適用されてない社会保障制度についてどういう形で適用していくかということを検討するということでございますが、国民年金制度、児童手当制度、それぞれ技術的ないろいろな問題点等もございますし、諸外国がどういう形でこれを運用しているかというようなことも参考にしながら取り組んでまいりたい、こういう趣旨でございます。
  170. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃいましたように、沖繩の無国籍の子供というのはこれも単に国籍がどうのこうのという問題ばかりでなくて、米国の国籍を取りたい、ところがそれ取るためには米国に若干在留しなければならぬ、こうなると費用のあるわずか数名の子供はそれで解決できるが、あとの者は費用がないからできない。  それから社会保障も、いまのようなことで、したがってこれは法務省も大事でありますけれども、厚生大臣とこの問題について話し合ったことがございます。数字はいまのところ急でございますから覚えておりませんのでお許しを願いたいと思いますが、これは社会問題として外務省、厚生省が主体になって法務省やその他の関係省に相談するという方法で詰めていかなければ、このままでは、こういう手続をやれば国籍ができるんだという程度で解決のできる問題じゃございませんので、いましばらく時間をかしていただいて、厚生大臣と相談をして、後刻、その結果を報告することでお許しを願いたいと思います。
  171. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 了解しました。それは確かに政治的判断というものを必要とされる問題だろうと思いますので、答弁がなかなかしにくかったろうと思います。  文部省の方は来ておられますか——いなければ結構です。  いずれにしても、まだまだ詰めて考えますと、国内法の整備ということも急がれなければならないというふうに考えられます。整備をしなければならない点については、早急に国際人権規約の精神にのっとってぜひ体制的にも内容的にも整備を図ってもらいたいものだなというふうに思うわけでございます。  そのほかに、いま私は沖繩のことだけ申し上げましたけれども、沖繩以外に、アメリカ人と結婚をした方、こういう場合にも永住をしたい、要するに主人がアメリカ人で奥さんが日本人、これはどういうわけであれなんでしょうね、先ほどの帰化申請ということで認めてもらえるとするならばこれは何にも問題はないと思うんですけれども、そういうことが新聞で伝えられている面があります。これは先月ですから御記憶がおありになると思います。そのほかにもラオス人と結婚した日本人の問題。これも法務省当局の方からは国外退去命令が出て、本人としては日本へ住みたいんだけれども、それだけの条件が備わっていない、国外退去命令が出ている。こういうような非常に細かい点を見ればいろんな問題がまだ残っているように思うんですね。これが社会問題や人道上の問題に発展しないようにやはり法の整備というものを急ぐ必要があるのではないだろうか、そういうふうに思います。  それから、締めくくりとして最終的に外務大臣にお伺いしたいのは、先般もちょっとお出にならないときに私は若干触れたんですけれども人権に関する国際条約が御承知のとおり十八あるわけですが、今回、この国際人権規約が成立をいたしますと、十八のうち四つ加盟することになるわけであります。そのほかいま申し上げております無国籍者の地位に関する条約であるとか、難民の地位に関する——これは次の国会に御提出になる予定であるというスケジュールがあるようでございますので、これはともかくとして、そのほかやはりもっと進めた方がいいのではあるまいかという人権規約がここに残っているようでございますけれども日本として、可能な限り、この後、どういう条約に入ることが望ましいとお考えになっていらっしゃるのか、この辺で一遍整理をしておく必要があるのではないだろうかと思いますので、その辺を、政府として、今後の残された人権規約について、日本の国としてなじまないものはともかくといたしまして、これはぜひ進めた方が日本としても非常に効果が大きいのではないだろうかというものが、内容的に見ますと、あるようでございます。どんなふうにお考えになっていらっしゃるのか、その辺をお伺いして、ちょうど時間が参ったようでありますので、私の質問を終わりにしたいと思います。
  172. 園田直

    国務大臣園田直君) 多数存在する人権関係の諸条約の中で、いま御発言のとおりに、いますぐ着手できないものもありますが、逐次、条約に入っていくことがメリットがあると考えられるものが数件あるわけであります。順次、これをいま検討しておりますが、とりあえず難民問題の重要性にかんがみまして、次期の通常国会では難民の地位に関する条約、回議定番への加入方の承認を求める方向で、いま関係各省と折衝しているところでございます。
  173. 立木洋

    立木洋君 B規約の関連でお尋ねしたいんですが、規約の実施義務、つまり第二条のところで、具体的な措置が国内法でとられていない場合、当然、立法措置をとる義務がある、そういう趣旨のことが第2項で述べられておりますが、これはB規約と仮に国内法が抵触するような場合も、当然、この二条2項の立法措置その他の措置がとられる義務が生じるというふうに理解していいのでしょうか。
  174. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) ただいまの立木委員の御質問でございますが、この第二条のB規約の特徴にかんがみまして、A規約のような漸進的な達成ということよりも、ある程度妥当な期間ということは許容されると思いまするけれども、猶予性の少ない対応というものを必要としておるわけでございまして、もし仮に国内法との抵触があった場合には、その整合は、妥当な期間ということは許容されると思いますけれども、いわゆる漸進性というほどに猶予性が高いというふうには見ておらない次第でございます。
  175. 立木洋

    立木洋君 B規約の前文で「市民的及び政治的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、」云々ということが述べられているわけですが、つかぬことをお伺いしますけれども、この「政治的権利」というのはどういうふうに解釈されていますか。
  176. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) この点は、A規約、B規約の対比によく言われることでございまするが、A規約の方が、どちらかと申しますと社会施策的な政府の施策として新たに保障を進めていくべき権利というものを中心としておりますのに対しまして、B規約の方は、どちらかと申しますと、本来の、より根源的な権利というものを対象としておるということが言われておるわけでございまして、また、そのとおりと存じまするが、ここの「市民的及び政治的権利」というものも、そういう角度で理解すべきものと思います。
  177. 立木洋

    立木洋君 いや、局長、政治的な権利という内容についてちょっと説明していただきたいんです、条項に沿っても結構ですが。
  178. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) この点につきましては、若干整理して申し上げる必要があるかと思うのでございますが、たとえば第一条の自決の権利、あるいは立木委員から過般来御指摘がございますところの資源の自由処分の問題その他もございます。それから第四条の緊急事態の問題、これは日本には当てはまらない客観条件と思いまするけれども、理論的にはこういうものが挙げられるし、これは一つ一つ申し上げてまいりますると、かなり広範囲にわたるものと思います。
  179. 立木洋

    立木洋君 じゃ端的にお伺いしますが、これは先般からも問題になった国家公務員の規定の仕方にもよるわけですけれども日本の場合の国家公務員法、これは百二条で政治活動が制限されあるいは禁止されているわけですね。それからまた人事院規則の十四−七、これでも制限及び禁止という条項があるわけですが、これはいま一つ一つは申し上げませんけれども、これらの内容ということは、この人権規約で述べられている精神から見ると、どういうふうなかかわり合いになるんですか。抵触する部分があるというふうに見られる点もあるのか、全くそういうことはございませんというふうに判断されるのか、その点いかがでしょうか。
  180. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) この点でございますが、B規約をお読みいただきますると、たとえば第十九条の表現の自由の規定がございます。この中にも、これらの権利の行使は公共の秩序を理由として法律で定める制限を課し得るという表現になっておりますし、第二十一条の平和的集会の権利もそのような形になっております。さらには二十二条の結社の自由もそういうことでございます。そういった諸般の規定から観察いたしますると、公務員に対して、その職務の性質上、政治的活動をその限りにおいて制限されるということは、人権規約の精神に反するものではないというふうに考えております。
  181. 立木洋

    立木洋君 この「公の秩序」ですね、確かに公の秩序に対して乱すような事態になれば、それはいまおっしゃったような事態が生じるかもしれませんけれども、現実に進められている状況を見ると、いろいろやっぱり問題があるんじゃないかと思うんですよ。これは選挙なんかの状況をよく見てみますと、たとえば国家公務員がみずからの地位を利用して、そして選挙に有利な方向に相手を誘う、そうすると相手はその人の公の立場からいろいろな圧力を受けて、当然それに従わざるを得ないというふうな方向に動くということはあり得るわけですね。こういうような選挙において公的な立場を利用するなんということは、これは当然許されるべきことではないだろうと思うんですよ、地位の利用の問題に関して言うならば。これは確かに公の秩序を乱すわけですね。  ところが、国家公務員と言っても、こういう言い方が適切かどうかわかりませんけれども局長さんだってこれは国家公務員、だけれど実際に外務省でいろいろ掃除をなさっている方だって、そうなるわけでしょう。ところが、たとえば一現場で働いている国家公務員の労働者、この方が、選挙の場合に、ある集会に出て自分発言を述べたというふうな形は、これが公の秩序を害するというふうなことになり得るのかどうなのか。イギリスなんかを見てみますと、国家公務員というのは大体三通りに分けられていますね。ここらあたりの考え方というのはもう少し整理する必要があるんじゃないかと思うんですが、その点はどうなんでしょう。
  182. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) ただいまの御指摘の点でございまするが、公務員の中の種別に基づきまして、その政治的活動に対してその範囲に軽重が出てまいるということにつきましては、これは人権規約の問題ではないと考えるわけでございまして、これはそれぞれの国の実情その他を踏まえて、国内法制的にどうそれを決めていくかという問題であろうかと思います。
  183. 立木洋

    立木洋君 大臣、この問題は余り時間がないからこれ以上述べることができないわけですけれども、いま局長は、これは人権規約の問題じゃないと言われた。しかし、少なくとも社会的政治的な権利がどのように保障されるかという問題は、この規約の中に述べられてあるんです、十八条から十九条から二十二条から全部ありますよ。これは挙げられないぐらいたくさんあるんです。  これは一人一人、たとえ国家公務員であろうとも、公の秩序を乱さない限り、その人の政治的な権利というのは当然認められなきゃならない。これは他国の条項を見たってそうなっていますよ。公の仕事をする場合には完全に中立を守らなければならないけれども、その人がどのような思想、信条を持つかということはこれは全く自由なんですよ。そういうことを考えた場合に、すべては挙げませんけれども、国家公務員に対する考え方、分類の仕方、それから政治活動等々に対するかかわり方という点については、政治活動のいわゆる禁止、制限、そういう意味での政治的な権利を当然受けなければならないそういう制約が、外国の場合に比べて、私は日本の場合きわめて厳しいのではないかということをどうしても考えざるを得ないわけです。そこらあたり、やはり人権規約を批准するに当たっての政府考え方を、この問題についてお尋ねしておきたいんです。
  184. 園田直

    国務大臣園田直君) いかなる意味におきましても基本的な人権を制約するということは、これは本則ではないわけであります。したがって国家の秩序であるとか社会の秩序に妨害を与えるという点でやむを得ずやっているわけでありますから、それは最小限であるべきことは御発言のとおりであります。その点、日本の方が厳しいかどうか、御発言の趣旨に従って検討する必要はあろうと考えます。
  185. 立木洋

    立木洋君 その点、よく御検討いただきたいということを申し述べておきたいと思うんです。  それから、先日、大臣がおいでにならないときに、幾つか民族の主権にかかわる問題、これからの日本の外交にかかわる問題でお尋ねしたのですが、これ一つ一つまたお尋ねしていく時間がないんです。それで全部私が述べますから、最後に大臣のお考えをお聞きしておきたいんです。  これは午前中も申し述べましたが、もう金大中事件の問題については日本の外交上の重要な問題である、主権の問題としてもこれはきわめて考えなければならない問題である、これが一つありますね。  それからもう一つは、南アフリカに対する日本の外交姿勢の問題。先日も、国連のあの南アフリカに対する制裁の問題の委員会で日本政府はこれに棄権しました。この間も大鷹さんに私は申し上げたのだけれども、一九七四年から南アフリカに対する日本政府の誤った態度について私が調べてみますと、延べ三十カ国近い国々が三年間に日本政府を名指しで非難しているんですよ。あれでは常任理事国に当選しないのはあたりまえだと私は思うんです。しかも私はこの間申し上げたのですけれども、南アフリカの最大の都市のヨハネスブルクに貿易の促進をやる事務所まで依然として置いてあるわけですね。そして、いわゆるこれは日本を親会社とする子会社、海外法人ですけれども、これがやはり資金を出しておった。こういう点で大変非難を受けておる状況があるわけです。南アフリカの事態というのは、御承知のように白人の少数独裁政権だというふうに言われて、そして大変狭いところに黒人の人たちが強制収容される、移住の自由も居住の自由も結婚の自由も全く差別されて認められておらないという大変な事態があるわけですから、こういう問題に関してどういう態度を今後とっていくかということは私は真剣に考えていただきたい問題だろうと思うんです。  それからもう一つはチリの問題です。ピノチェトを一体招待するんですかと聞いたら検討中でありますと言った。ところが、二、三日すると、朝日新聞にどうも来年の六月ごろピノチェトを招待するようになりつつあるというふうなことが出た。御承知のように、ピノチェトというのはアジェンデ政権を転覆さした軍事的な独裁政権で、その後の国際的な調査によっても拷問が制度化されておる。最近でも、チリの民主主義的な人々で外国に居住しておる人々がチリのピノチェト政権の公的な権力の介入によって暗殺まで起こされておるという事態が現実に存在しておるわけですよ。これに対しては、もう再々、私は、園田さんの前の外務大臣のときからチリに対する態度の問題については何回か質問をしたことがあるわけですけれども、ところが、こういうピノチェト政権に対する債権の繰り延べ等々の会議にも参加して、ほかの国々が認めないのにも繰り延べを認めていく、そして今度はピノチェト政権を招待する、こういうふうなことで本当にいいんだろうか。  それから、今度のポル・ポト政権の問題もそうですね。この間、衆議院内閣委員会で、大臣が質問に対して、ポル・ポト政権を依然として承認していく、必要であるならば経済的な援助まで行いたいと。今度の児童憲章のあれに際してカンボジアの新しい政権が出しましたあれを読んでみて、私はもう慄然としたわけです。あのポル・ポト政権が産まれたばかりの子供さんの足を持って頭を木にたたきつけて殺したというんですよ、火の中に赤ん坊を投げ込んで殺したというんです、大変な事態ですよ。そういう政権に、いまやまさに実効支配もしておらない状態、これを依然として日本政府承認します、必要であるならば経済援助までしますと。私は、世界じゅうのいま存在しているそういう人権を大変な状態に陥れておるこれらの政権に対して、日本政府は、この人権規約を締結するに当たって、もっと外交上の問題としてもぜひ真剣に考えていただきたいというふうに考えるわけです。この点について大臣のお考えをぜひ詳しくお聞きしておきたいんです。
  186. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、南アの問題でありますが、わが国は人種差別主義に対して従来から強く反対してきております。南ア政府がかかる政策を維持するについてはまことに遺憾であって、これが一日も早く撤廃されるよう希望をし要請をしております。こういう関係で、わが国は南アとの関係を領事関係のレベルにとどめて、外交関係は有しておりません。現地法人設立等の対南ア直接投資をも認めておりません。また、国連決議の趣旨を踏まえて、スポーツ、教育、文化交流についても制限をしておるところであります。ただ、そういうことをとっておりますが、通常貿易で商社がここと世界経済の現状、日本経済の実情にかんがみて貿易はやっておる、こういう点を指摘されたことだと思いますが、人種差別問題については今後もよく十分注意をしてやりたいと考えております。  それからチリの人権問題、これはもうよく承知をしておりまして、国連決議の際も、わが方は賛成をしております。ただし、各点に釈明、留保を行いつつこれは賛成をしておるわけでありまして、それはこのチリの現政権がなるべく民主化する方向に前進するようにというわれわれは願いを持っておるわけであります。その後、チリでは、政治犯の釈放、それから国連人権問題調査団の受け入れ、秘密警察の解体、あるいは労働組合の選挙の方法等、逐次改善されておるところもあるし、また釈放したら新たに逮捕するというところもあるわけでありますが、チリの現政権とは別個に、チリ国民とわが国の国民は非常に深い歴史と伝統があるわけであります。そこで、わが国は、チリに対しても、このような非人権的な政策が逐次改善されるように努力をしておるところでありまして、大統領の招請というのは、そういう観点からも、国会でも御意見がありますから、まだ検討をしておるところでございます。  ただ、私の南米訪問に際して、私が訪問することがいかにもチリに対するいままでの外交を転換するかのごとき印象を与えるということでございますので、これも十分慎重にもう一遍検討しようと思っておるところでありますが、なかなか一遍表明したことを取りかえますと、これまた逆な効果も出てきますから、いまちょっとこの点は正直に言って苦慮しているところです。  それからポル・ポト政権は、いまおっしゃいましたようなこともありまするし、ポル・ポト政権のやり方についてはわれわれもとかくの批判を持っております。これはポル・ポト政権を中国に私は私自身の口から申し上げたわけでございます。  経済援助と申しましたのは、イエン・サリ副首相日本に二回ほど参りまして、そのときに経済援助の話が出ましたが、向こうは具体的に援助を受けるだけの計画がないわけであります。そこで私は具体的計画が出てきたら考えましょう、こう言っただけであって、いま経済援助をするという考えではございませんし、またやろうとしても現実にできることではございません。ただ、どの政権ということではなくて、カンボジアがああいう状態でありますから、一般農民があちらこちらに避難しているし、異常な食糧不足になってくる、大変なことになってくる、その場合には人道主義的な立場から赤十字社等を通じて何か考えなきゃならぬなと、こう思っている状態であります。  この承認については、いま承認を切りかえることはまだ考えない、こういうことでございます。
  187. 立木洋

    立木洋君 さらにお尋ねしたい点がありますけれども、きょうはもう時間が来ましたから、次の機会に譲りたいと思います。
  188. 和田春生

    ○和田春生君 午前中、総理への質問で、樺太に抑留されている韓国人、抑留されているといいますか、棄民と言った方がいいと思うんですけれども、この問題についてお伺いいたしました。順序としては当然外務大臣にお尋ねをして、締めくくりに総理にお尋ねをするということがよかったかと思うんですけれども、質問の時間で前後がこういう形になったわけでございまして、外務大臣にもお聞き願っておったわけでございます。  去年の三月に「忘却の海峡」という、この海峡は宗谷海峡を意味しております映画が上映されました。それは松山善三さんが脚本それから演出をしたわけですけれども、大臣あるいはそこに並んでいる政府委員の方でごらんになった方はいらっしゃいますか。——それはよろしゅうございます。これは実は私が問題にしている問題を取り上げたものであります。決してこれは反日を基本にしてつくった映画ではないんです。むしろ忘れ去られているこの悲惨な深刻な問題を認識してもらおうというセミドキュメンタリーの映画だったわけですが、これを見た人の何人かの感想を聞いたところ、何だか日本が標的にされてわれわれが責められているような感じがして、決して気持ちがよくなかったという感想を漏らした人がかなり多いわけです。したがって、そういう意味で余り娯楽的な要素はなかったと思うんです。まさにあの問題を真っ正面から取り上げると日本自身が責められていることになると思うんです、別に特別の意図を持たなくても。  私は、この運動に前からかかわりを持っておりまして、何とかしなくちゃいかぬという気持ちでいろいろ協力してきたわけですが、午前中にも申し上げましたように、人権規約を締結することになりまして、ソ連も留保をせずに締結をしておりますが、御承知のB規約の十二条では「すべての者は、いずれの国からも自由に離れることができる。」と定められている。この権利はいかなる制限も受けない。それから十二条の4では「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」こういう条項がちゃんと入っているわけであります。したがって、こういう機会に単に両国の外交チャンネルということだけではなくて、やはり日本内閣政府責任においてこれを解決するという形にぜひこの際積極的に努力していただきたいと思います。  時間の関係もあって、私は申し上げますけれども、実は、私は、戦争中上登呂という樺太島五十度線近くのところに石炭の積み取りに、船のオフィサーをしておりましたから行ったこともあります。御承知のとおり非常に労働力が少ないものですから、大方東北地方の出かせぎの人たちが春の終わりから秋場まで行って働いておったわけです。そこで石炭の採掘、材木を切り出すための極端な労働力不足を補うために、これは韓国の人たちは朝鮮人狩りと言っておりますけれども、現在の韓国また北朝鮮にも関係していますが、朝鮮半島でまさに人狩り的な状況で集めて、私は日本帝国主義の国民であります、苦難に耐えて鍛練をしてりっぱな国民になります、ということを約束させて樺太に送った人たちなんです。いわば強制労働と同じなんですよ。それをやりっ放しにしたんです。非常にそういう意味では重要な問題でございまして、どうもそういう人道主義的人権的な問題で、私は政府だけとは言いません、一般国民にも目に触れないために非常に軽んじられ、むしろ意識の外に押しやられているんではないかと大変残念なんです。  はっきり申し上げたいんですけれども金大中さんの人権問題は私も重要だと思っています。日本韓国関係において、この問題の解決ということは大変大切な問題と認識しているんです。しかし、あの人はまだ発言することができる、ニュースを通じていろいろ物が言えるんです、有名人なんです。無名の物も言えない人がこういう状況でほうっておかれているということを考えれば、そういう意味で私は人権問題をとらえれば、この方がはるかに日本韓国関係では重要な問題だと言いたいんです。何千人もおるんですね。そういう点でぜひ決意を持って当たっていただきたい、こういうことを要望しながら、外務大臣の所見を最初にお伺いしたいと思います。
  189. 園田直

    国務大臣園田直君) 午前中の発言も承っておりましたし、これは先生から承るのは初めてではございません。もう第一に、樺太へ行ったこと自体が本人の意思によらずして行った人が大部分であります。それから戦いが終わったときに本人の意思によらずして残されたものでありますから、これはきわめて人権上から言っても大変な問題でございます。  そこで、わが方は、もう内容を御承知でございますから経過は省略いたしますが、田中総理以来、総理外務大臣はソ連の方にたびたび強く要請をし、韓国とも連絡をしているところでございます。いままで在樺太朝鮮人四万と言われる中で、微々ではありますけれども韓国政府提出帰還希望者リストは、四十四年の調査でリスト登載者数が七千名で、千五百人は日本に引き揚げたい、こういうことでございます。その後、四百三十八名、それから四百十一名などと少しずつは帰ってきておるわけでありますが、帰還許可になった者でいまなお帰らない者、これは相当年限を費やしております。それからまた帰還許可のない者等がございますから、今後とも、そういう点は十分注意をして努力をしなければならぬし、する所存でございます。
  190. 和田春生

    ○和田春生君 いまのお言葉でぜひ御努力を期待したいと思いますが、帰れたという人は日本人と結婚しておって、その人の親族とか親が保証人になったとか、そしていろんな手続をやって、幸い適当なチャンネルがあったのでうまく帰れたというだけでありまして、大部分はだめなんであります。
  191. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの数字は私の間違いであります。あれは申請その他をしている数字であります。帰ったのはごくわずかであります。
  192. 和田春生

    ○和田春生君 ぜひお願いいたしたいと思います。  それでは人権規約の方に移りたいと思うんですけれども日本は、この人権規約、特にA規約で三つの問題について留保をしておりますね。公の休日の報酬、同盟罷業をする権利、中等教育及び高等教育の漸進的無償化という点について留保をしているわけです。このことに関連していずれ本委員会でも決議をされると思いますけれども、A規約の性格をどういうふうに理解しているんだろうかという点について、いままで質問の機会がなかったものですから、採決の前に一遍お伺いしておきたいと思うんです。基本的な性格ですね、この留保したということの関連において、経済的、社会的及び文化的権利に関するA規約の基本的性格をどう受け取っておられるのか、そのことによってこの留保という意味が国内的ないろいろな対策の面で違った色合いを持ってくるんじゃないかと思うものですから。
  193. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) A規約は、和田委員も御高承のように、社会施策的な権利というものを内容にしておるわけでございまするが、留保との関係で申し上げますると、たとえ漸進的にせよ、将来この条項を達成することが現在の段階においては見通しができないというようなものについては、これは留保をせざるを得ないというたてまえになるわけでございまして、したがいまして、非常に慎重に国内法との関係その他の事情を調べまして、各省と協議してでき上がりましたものがこの三つの留保ということでございます。したがって、この留保につきましては、漸進的にせよ、現在の段階では達成することが困難な事情があるということでございます。  その他の条項につきましては、これはまた漸進的に達成するということを想定すべきA規約の性格でございます。
  194. 和田春生

    ○和田春生君 この前の参考人の方の意見を聴取した際にも出ておったのですけれども人権規約のこの条約の性格をどう考えるかという場合に、条約にもいろいろあると思いますね。それを締結すれば拘束されまして、国内法並びに実施の上において従わなくてはならない、枠がはめられるという性質の条約もあります。あるいは国際的な一つの合意事項として到達すべきラインといいますか、目標としてお互いが約束をして努力をしようというものもあると思うんです。そういう面で、市民的及び政治的権利に関するB規約の方よりもA規約の方が拘束力が少ないというか、一つの社会権というようなものについて各国が努力をしろ、こういう意味合いの濃い規約だというふうに実は私は理解をしておるんです。これを結んだら直ちに国内法を全部改正して実行しなくちゃならぬというものではないと思うんです。  そうした見地に、もし私がいま言ったような非常に強い制約を受けぬものだというふうに理解をしてみますと、私が実際現地に行って知っている国でも、留保をつけずに締結しているのはこれ一体どうしたことかいなと、まるっきり実態は違うではないかという国がずらっとたくさんあるわけですね。そういうようなことを考えた場合に、どうも日本政府の受け取り方が非常にシビアに受け取るというか、もうちょっと別の言葉で言えば少しばか正直過ぎて、国際的にいろいろと日本に対していわれなき非難、中傷の材料に使われかねない態度をとったんではないかという気がしてなりません。  そこで申し上げますが、たとえば第七条にいたしましても「公の休日についての報酬」、これはどう読んでみても、雇用契約には月給制で雇っているものもあれば時間給制もあるし日給制もあるし失業しているものもおるわけです。あるいは請負契約で働いているものもおるわけですが、これ全部に公の休日について払えというふうに規定しているというふうには読めないんです。日本の場合には、月給制の場合には公務員並びに会社の社員を含めまして大体休日も含めて給料が払われているわけですから余り大した問題はないのであって、いまの欠けている部分を努力をしていくという形にすればそれで十分足りる。留保しなくたって一向日本の実情と他の締結する国と比べて差し支えない。むしろ日本の方がりっぱにやっていると思ってもいいぐらいだというふうに認めるんです。なぜ留保をされたのかということです。  それから「同盟罷業をする権利」を留保されておりますが、これにも「ただし、この権利は、各国の法律に従って行使されることを条件とする。」こういうふうに書いているわけですね。しかも、その八条の第2項では「この条の規定は、軍隊若しくは警察の構成員又は公務員による1の権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものではない。」こういうふうに書いておりますから、消防職員もこれは公務員の中の一つでございますし、消防職員に対する留保とも関連いたしまして、なぜこれを留保しなくてはならないのか。むしろ現在の日本の労働関係法からいけば全然これにもとることはない。さらに、これより進んで公務員とか公共企業体の争議権をどうしようかというのが課題でございますし、ILOの条約から言ったって日本は違反しているわけではない。どうしてわざわざ留保したのかということにつきましても私は疑問を持っている。この規約を締結することによって公務員にも公共企業体の職員にも全部ストライキ権を自由に認めろ、そういう強制になるんだという前提ならば、留保することもいまの法体系からわかりますが、どうもそういう点がこのA規約の性格から言って私としてはもう一つはっきりしない点があるんです。  もう一つありますから、全部申し上げていきますけれども、中等教育及び高等教育の漸進的無償化、この点についても、これは無償化をしろということよりも、漸進的な導入によって能力に応じすべての者に対して均等に機会が与えられるものとせよ、こういうような考え方であって、これは非常にまだ貧しくて普及していないというような中進国あるいは開発途上国の教育の向上という面について言ったわけでございまして、同世代の若者の三人に一人が大学に行く、公立校のみならず私学もいっぱいあるというようなところについて、すべての学校に中等・高等教育を無償教育にしろということを強制している内容ではないというふうに理解しているんですが、これはA規約との性格の関連で、これについて留保をされたということも一体どういう意図なのか。  以上の点について、まとめてお答えをいただきたいと思います。
  195. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 第一点の、第七条の公の休日に対する報酬の件でございまするが、御指摘がございましたように、これは国民の祝日を指しておるわけでございます。御指摘のように一部については留保の必要がない要素があるのではないかということでございまするが、この項目につきましては、先生も御高承のように、現在、国民の祝日に賃金を支払うという社会的合意というものは存在をしないと見るのが現状であろうかと思うわけでございまして、和田委員にこのことを申し上げるのは大変あれでございまするが、国民の祝日を休日としていない企業が約三四%程度あることでございます。また、国民の祝日を休日としている企業でありましても、賃金を国民の祝日に支給していると推定される労働者比率は三十数%にすぎないというような点からいきまして、もしこの第七条の(a)(ii)、(d)項を完全にわが国が実施をいたします場合の見通しと申しますのは、これを法律によって担保しなければならぬということになるわけでございまして、現在はそういう状態にないという判断のもとに留保が行われたわけでございます。  それから、次の同盟罷業の第八条の問題でございまするが、公務員による権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものでない、言いかえますると公務員に対して同盟罷業の権利を与えないことができるという規定でございますが、これまた御高承のように、公務員等は法令によって勤務条件が保障されておるものでございまして、現在、三公社五現業につきましてはこういうカテゴリーに入りません存在でございますので、このA規約を忠実に読みまする場合には、同盟罷業をする権利というものは与えられるべきであるということになるわけでございまするが、現在の国内情勢あるいは国内法の指向いたしまするところは、このような規定については留保をしなきゃならないという判断のもとに留保がされておるわけでございます。  また、もう一つ指摘のございました第八条の1項の(d)の「同盟罷業をする権利」は「各国の法律に従って行使されることを条件とする。」というのは、この同盟罷業権の実際の行使の態様を指すものでございまして、したがいまして行使の態様が法律に従ってなされなければならないという、きわめて当然のことを言っておるにすぎないわけでございます。  それから、次は、後期中等・高等教育の無償化の導入の問題でございまするが、これも文部省とも十分御協議をしたわけでございまするが、日本のように私学の比率の高い国におきましては均衡上公立校におきましても無償教育の導入、言いかえますと授業料を全然とらないという施策はこれは限界があるということでございまして、また、非常に進学率がますます高まっております現在におきまして、無償教育の漸進的導入は財政的にも、この条約の中身におきまして漸進的にせよ、これを達成することはできないという判断がありましたからこそ、この項目も留保された次第でございます。  最後に、先生御指摘のように、日本が少しまじめ過ぎるのではないかという御指摘もあったわけでございまするが、少なくともこの条約の精神に関する限り、漸進的にせよ、現在の段階で達成を国際的にも約束することができない項目につきましては、残念ながらこれは留保せざるを得ないというのがわれわれの国際条約に対する基本的態度であろうというふうに考えておるわけでございます。その他の国がどの条約、どの項目について、何と申しまするか、やや緩やかな解釈をとっているというようなこともあるいはあるかもしれませんけれども、少なくともわが国に関する限りは、この点は国際条約に対する忠実な対処ぶりの反映として御理解を願えることと思うわけでございます。
  196. 和田春生

    ○和田春生君 国際関係というのは相互主義なんですけれども、それではお尋ねいたしますが、留保をつけずに締結をしている国がずらっと並んでおりますけれども、ちゃんとやっている、あるいはやる決意を持っていると考えていらっしゃるのですか。言いにくければ答えなくてもいいですよ、ずいぶんリアルな質問ですから。
  197. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) これは留保の表がすでにお手元に行っておると思いまするけれども、留保をいたしましておりません国が完全に、漸進的にせよ、この内容の実現を図るという少なくとも自信と意思を持っておるというふうに推定せざるを得ないと思います。
  198. 和田春生

    ○和田春生君 そういうことでしょうけれども、今後のこういう条約関係、特に権利に関する条約等につきましては、やはり全体的にながめながら、もう少し何といいますか、ゆとりを持って考えて包括的に問題を処理するという態度が必要ではないかというふうに思います。提案された内容そのものについては賛成でありますけれども、特にそのことを希望いたしまして、最後に外務大臣の所見を伺って質問を終わります。
  199. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見を承って非常に気を強くしておるわけでございますが、この提案折衝の過程においては関係各省は非常に神経質でありまして、私はいまおっしゃるようなことでおったわけでありますが、こういうきちょうめんなことになった。したがいまして、この留保事項については、まず国内の法律事項の内容の検討、充実、続いて、慎重に検討した結果でございますから近い将来すぐこの留保事項を解除するというわけにはまいりませんけれども、国連憲章、憲法その他の精神からしても、そういう方向を見ながら国内関係対応を進めながら検討していきたいと考えております。
  200. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、法務省の方おいでになりますか——国際人権規約に直接関係のある問題でひとつお尋ねをしたいのです。  B規約の十二条に関連をする問題と思いますが、先日も参考人においでいただいたときにもお尋ねしたのですが、いま法務省の方で御存じというか、私がむしろお願いしている問題ですけれども、韓民統の人たち、韓国民主回復統一促進国民会議ですか、この人たちがドイツのブラント前総理、つまり社民党党首から招待を受けている問題があります。昨年の九月以来、これが懸案になっているわけでありますけれども、私も外務大臣並びに古井法務大臣が大変いろいろ御心配くださっていることをよく承知しておりますので、この委員会の場であえて取り上げることを差し控えてまいりましたけれども、すでに半年以上経過いたしまして、私もドイツ大使館のシュタインマン公使と数回会いましてドイツ側の見解もただしております。これはこの間の参考人の御意見でも明らかにB規約の十二条に該当する問題である。したがって再入国を認めるべき性質のものだと思うという、これは参考人の御意見です。私もそのとおりだと思うのですけれども、この点についてひとつ現状と方向をお知らせいただきたいと思います。
  201. 山下善興

    説明員(山下善興君) 御説明申し上げます。  これは御承知のとおり一般的に申し上げまして、日本に在留する外国人が再入国許可の申請をする場合には、有効な旅券あるいはこれにかわる渡航文書をお持ちいただくということが法律上の要件になっておることは御承知のとおりだと思いますが、この本件韓民統の関係者五名でございますかの方たちは有効な旅券をお持ちにならないということのために、現在、再入国許可の申請を受理できない状態にある、これはもう先生御承知のところでございます。  ところで、ただ、本件要請者につきましては、有効な旅券あるいはこれにかわる渡航文書等の提示がありました場合には再入国許可の申請等を受け付けまして、そしてこれを許可する方向で検討するということはすでにもう関係者等にはお伝えしてあるところでございます。ただ、現在なお有効な渡航文書の提示がないということで受理できない状態になっておるわけでございますが、現在、もし有効な渡航文書等、たとえば西独政府が発給するような、そういう文書等の提示がありました場合は、前の、たとえばフリードリッヒ・エーベルト財団でございますか、これらの招聘状等の有効性を確認いたしまして、それに変化がなければやはり前向きに検討すべき問題であろうかと、こういうふうに考えております。
  202. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は長くなりますから、いまのお答えで結構なんですが、要するに国際人権規約をきょうまさに国会承認をしよう、これに日本が正式に参加をするという事態の中でぜひお考えをいただきたい問題だと、これはひとつ外務大臣にもお願いをしておきたいと思います。  あと、また金大中さんの問題について伺いたいのでありますが、午前中の大平総理大臣のお答えの中で、金大中さんが来日を要請されたら受け入れるということをおっしゃったわけでありますが、金大中さん自身の方から言われる場合のことを私は指しましたけれども、むしろ日本国会金大中さんにおいでをいただくというような、そういう要請をした場合には、当然、これは、さらに国政調査権といいますか、そういう意味を含めて、これに政府が協力をしてくださると思いますが、そう考えてよろしいのでしょうか。
  203. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 私からお答えいたします。  これは国会でそのような御決議がありました場合に、政府がこれをしかるべき形で伝達するということは当然であると心得ております。
  204. 田英夫

    ○田英夫君 まあ国会が要請するという問題は仮定の問題でありますけれども、私の個人的な気持ちとしてはそうしていただきたいと思いますし、ぜひそういう形で金大中さんの真意を日本国民の前で話していただきたいという気がいたします。  それから全くこれは別の問題ですが、公権力介入が認められればということをしきりに最近言われるわけです。公権力というのは、一体、この場合にKCIAのことを指すのか、あるいは外交官の場合も公権力と解釈していいんでしょうか。
  205. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  公権力と申しますのは、国家機関がその国の内部でどのように分かれているかということは問題でございません。したがいまして外交官でございましょうと、あるいはKCIAの者でございましょうと、それが職務行為として行ったものである限りにおきまして公権力の行使ということになると思います。
  206. 田英夫

    ○田英夫君 これは金東雲の問題に関連をして、金東雲がKCIAであるかどうかというところに関心が集中していたわけでありますけれども、いまの条約局長のお答えで、外交官であったということは、これは明々白々のディプロマティックリストに載っているわけです。  ただ、問題は、外交官として拉致をするはずはないんでありまして、外交官という肩書きを持っている金東雲がこの行動をしたということが間違いなければ、これは公権力がああいう活動をしたというふうに考えざるを得ない。で金大中さんが先日私に対する電話の中で、金東雲を目撃した、こういうことを言っておられる。ということになってきますと、これは当事者であると外務大臣もこの間お答えになった金大中さんが、公権力——外交官である金東雲がそこにいたということを目撃したということになるんじゃないでしょうか。
  207. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) そこのところがこの金大中氏の事件に関します御議論の中で若干明瞭でございませんので、この際、私からも御説明申し上げたいわけでございますが、この事件の発生以来、政府がしばしば御説明申し上げているところで何度も御議論があったところでございますけれども、外交官の身分を有している者の駐在国における行為がすべて公権力の行使になるのではない。それが公権力の行使とみなされる場合というのは、その本国の法令による権限に基づきましてその外交官が行う職務行為であるかどうかということが問題になるんだということを申し上げてきておるわけでございます。  したがいまして金東雲がKCIAの者であったか、あるいはその他単なる外交官であったかということが問題になるのではなくて、その金東雲が職務行為を行ったのであるかどうか、つまり金東雲日本の警察の捜査によりますと指紋まで検出された、そしてこの金大中氏の誘拐に加わった容疑がきわめて濃厚であるということになっているわけでございますけれども、それが金東雲が職務行為として行ったものであるかどうか、そこが公権力の行使につながる問題なんでございまして、その職務行為では金東雲がこの行為を行うということは外交官としての職務行為とはとうてい考えられない、そこが問題なわけで、したがって金東雲につきましていま警察当局ではさらに捜査を続けて、そこの決め手の明白な証拠を捜そうということになっておるわけでございます。
  208. 田英夫

    ○田英夫君 まさにそうなんですね。私は、六年間、この問題をやってきて、そこのところを繰り返し言ってきたわけですよ。外交官としてやるわけないんですね、そんな外交活動はあるわけないんです。しかし、KCIAというのはもともとひそかに何らかの活動をするのが仕事でありますから、KCIAとしてならやる可能性があるとも言えるし、また、そんな不当なことを国家機関がやるわけないんですね、これは常識で考えれば。だからKCIAとしても、こんなことは本当はやるはずはないんですよ、公に誘拐し拉致するなんということは。だから、この議論をしていっても余り意味がないんですね、公権力介入したかどうかというのを。  公権力介入したと本当に断定できるのは、たとえば名前を挙げてあれですが、当時の李厚洛KCIA部長が命令をしたというその命令書か何かがここに出てこない限り、公権力介入したということは証明できないんじゃないでしょうか。政府は、それを政治決着見直しの材料にするんだとおっしゃる以上は、政治決着の見直しというのはあり得ない、そのことを初めから御存じでそういうことを言っておられるんだとすれば、国民の気持ちを逆なですることになるんじゃないでしょうか、そこに問題があると思いますよ。公権力介入を証明できたら政治決着の見直しをしよう、こうおっしゃるということは私はどうしても納得できないんです。これはそこで実はみんなごまかされちゃっているんです、失礼ながら。これは私の意見です。  そこで次の質問ですけれども、ちょうど官房長もおいでになりますが、外務省日本に駐在する外交官、ディプロマティックリストに載っている外交官の写真というものは必ず持っておられますね。
  209. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 大使館員または総領事館員が着任するに当たりましては、外務省に儀典官室を通じて通報があるわけでございますが、その際、写真をつけておるかどうかは私は存じておりません。
  210. 田英夫

    ○田英夫君 それはひとつ確かめていただけませんか。当然、外交特権を持ってその国で活動をするわけでありますから、たとえば皆さんがそれぞれ任地にいらっしゃればその国の政府当局に対してしかるべきそういうものを証明するような手続をなさらないと、たとえば私が外交官のような顔をして行っても、それは外交活動ができるわけはないんでありまして、そういう手続が必ずあるんじゃないでしょうか。
  211. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 御質問の点は、早速、取り調べて御返事申し上げます。
  212. 田英夫

    ○田英夫君 外事課長がおいでになりますが、警察の方は、ずばり伺いますが、私がいまなぜこういうことを聞いたかもう御推察いただけると思いますけれども金東雲の写真はすでに入手しておられると思いますが、いかがでしょうか。
  213. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 金東雲の写真は入手いたしております。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 突然、名前を申し上げて大変お困りかもしれませんが、たとえば当時大使館員であった尹英老、洪性採、柳春国、それから横浜の領事館の劉永福、こういう人間の写真を捜査当局は入手しておられるでしょうか。
  215. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 実は、いま突然の御質問でございまして、私、捜査本部に照会してみなければわからぬわけでございますが、一般的に申しまして、私ども、この事件の捜査に当たりまして、関係者の写真は、いろいろな方法、いろいろな機会に入手をいたしまして捜査には鋭意活用いたしておるわけでございます。  ただ、だれだれの写真を持っておるというようなたぐいのことは、これは実はまだ捜査過程のことでございまして、たとえば金東雲のように、これは被疑者としてまず動かない、断定いたしたという段階でありますれば別でございますが、そうでない者、そうでない方につきまして、一々写真があるとかないとかということを申しますれば、捜査の手がそちらの方にあるいは伸びているんじゃないかとかいうようなことで、そういった名前を挙げられた方に人権上の御迷惑もかかるというような配慮もございまして、だれだれについてあるとか、あるいはないということについては答弁を御容赦願えればと思うわけでございます。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 私がこういうことを伺っているのは、これももう御推察いただけると思いますが、金大中さんは、金東雲の写真を見て、現場にいた顔と一致する、だから現場にいたと信ずる、こう言っておられるわけですね。他に二、三人、正しい写真、鮮明な写真を見せてもらえれば、いたかいないかを判断することができると思うというお話がありましたので、いまあえて伺ったわけでありまして、捜査の方の問題はよく理解できます。それから、外務省の方は、ひとつお調べをいただきたい。  それから、けさの毎日新聞に外務省の文書が出ておりまして、大平さんは当時外務大臣としてそれを読んだ記憶があるというお話でありました。情報に類するものだと総理は言われたわけでありますが、これを本委員会に正式に資料として提出をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  217. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これは当院外務委員会の御決定に従うという立場でございます。
  218. 田英夫

    ○田英夫君 委員長、理事会で検討していただけますか。
  219. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 理事会で検討します。
  220. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなってきたんですが、外務大臣、ぜひひとつお考えいただきたいことは、質問の形で申し上げれば、最近、韓国で新民党の総裁に金泳三氏が選ばれた。その状況を調べてみますと、大会が開かれている建物の周囲に数千人の群衆が集まって金泳三、金泳三というシュプレヒコールを繰り返す中で、全く予想を覆して、李哲承氏が当然勝つであろうとみんなが考えていたにもかかわらず、僅差ではありましたが、金泳三氏が当選をしたという非常に大きな政情の変化があります。  その金泳三氏は、日本の新聞記者の質問に対して、金大中事件政治的決着を見直す必要があるということを言っているわけですね。こういう韓国国内の政治情勢というものの変化、カーター訪韓を控えて、これは非常に重要な問題であって、私も午前の総理に対する質問の中で最後に申し上げて、いまこそそういう意味を含めて金大中さんの事件の見直しをするチャンスではないだろうか。チャンスという言い方はいささかむしろおかしいのでありまして、こういう韓国国内での政治情勢の変化というものもたまたま起こってきたことではない。午前に申し上げたアメリカの変化、そしてそれに連動をする韓国の変化、そして韓国の民衆、国民考え方の変化、いままで韓国の新聞は金大中という名前さえ載せることができなかったわけであります。それを最近は金大中という名前を載せる。そして数百人の警官隊に囲まれながら当選をした金泳三氏と金大中氏が握手をするという光景が見られて、しかも、かなり警官から暴行を受けながら二人が握手をしたという状況があったということも聞いております。こうしたことをぜひお考えをいただきたい、このことを申し上げて、これに対する大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  221. 園田直

    国務大臣園田直君) わが国としては、他国の国内政治の動向についてコメントする立場ではありませんけれども、野党第一党である新民党が今後とも金泳三新党首のもとで、日韓間の相互理解の増進に大きな役割りを果たしていくことを期待するものでございます。
  222. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  223. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  224. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、田中君から発言を求められておりますので、これを許します。田中君。
  226. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党、日本共産党、民社党及び社会民主連合の共同提案に係る国際人権規約に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    国際人権規約に関する決議(案)   国際人権両規約の締結にあたり、政府は、人権及び基本的自由の尊重が日本国憲法及び国連憲章を支える基本的理念の一つであることを認識し、次の事項につき誠実に努力すべきである。  一、両規約において認められる諸権利の完全な実現を達成するため、両規約の規定に従つて必要な国内的措置を講ずること。なお、留保事項については、将来の諸般の動向をみて検討すること。  一、すべての者は法の前に平等であり、人種、言語、宗教等によるいかなる差別もしてはならないとの原則にのつとり、在留外国人の基本的人権の保障をさらに充実するよう必要な措置を講ずること。  一、男女平等の原則に基づき、政治、経済、社会、教育等のあらゆる分野で婦人の権利の伸長及び地位の向上に努めること。  一、国際の平和と人権の尊重が不可分の関係にあることを認識し、人権及び基本的自由の国際的保障を確保するため、一層の外交的努力を行うこと。  一、難民の地位に関する条約・議定書の早期批准に努めること。なお、その他の人権に関する諸条約についても、批准について検討すること。  一、B規約第四十一条の宣言について、その制度の運用の実情を勘案し、積極的に検討すること。  一、選択議定書の締結については、その運用状況を見守り、積極的に検討すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛成くださいますようお願いいたします。
  227. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいま田中君から提出されました国際人権規約に関する決議案を議題とし、直ちに採決を行います。  本決議案に賛成の方の挙手を願います   〔賛成者挙手〕
  228. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、園田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田外務大臣
  229. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について、本委員会の御承認をいただきましたことにつき、厚く御礼を申し上げます。  両規約は、国連で採択された人権に関する基本的な条約であり、内容が広範多岐にわたるため、国会提出に至るまで検討に多大の時間を要したわけでありますが、かかる大きな案件を、今国会における審議の結果、御承認いただきましたことは、各位の御理解、御努力のたまものと存じます。  ただいま採択されました本決議につきましては、政府としては、今後とも、この本決議の趣旨を踏まえ、最善の努力をいたす所存でございます。     —————————————
  230. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 次に、教育交流計画に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、以上両件を便宜一括して議題とし、政府から、順次、趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  231. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました教育交流計画に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国と米国との間では、従来、昭和三十三年一月十一日付の交換公文に従い、学生、教授等の交流を主たる内容とする教育交流計画が実施されてきましたが、その経費は、米国政府の負担によるものでありました。しかるに、昭和五十二年九月に、米国政府は、今後は米国と英、西独、仏、豪州等との間の教育交流計画と同様に経費分担方式により本件計画を実施するため、新たな協定を締結したい旨の提案をしてまいりました。政府は、教育分野の交流を促進することは両国国民間の相互理解の一層の増進に資するところ大であることを考慮して、本件計画を名実ともに両国共同の新たな事業として実施するとの前提で米国政府の提案に応ずることとし、米国政府と交渉を行いました。その結果、本年二月十五日に東京において、わが方本大臣と先方マンスフィールド駐日大使との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定は、両国間の教育交流計画及びそれに関連する教育事業計画を実施するための日米教育委員会を設置すること、両国政府は、委員会の年次予算案を共同して承認し、各自の予算の範囲内で五十対五十の割合による分担原則に基づき委員会に対する資金の拠出の義務を負うこと、委員会は、法人格を認められ、また、直接税を免除されること等を定めております。  この協定の締結により、日米両国政府の拠出による共同事業としての教育交流計画が安定した基礎の上に実施されることとなり、その結果、両国国民間の相互理解が一層促進されるとともに、両国間の友好協力関係が一層強化されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館の設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは大使館三、総領事館三の計六館であります。大使館は、いずれも他の国に駐在するわが方大使をして兼轄させるものでありまして、大洋州のソロモン、トゥヴァル及びカリブ海にあるドミニカの三国に設置するものであります。これら三国は、いずれも昨年英国の施政下から独立したものであります。他方、総領事館の三館は、いずれも実際に開設するもので、中国の広州、米国のボストン及び西独のフランクフルトに設置するものであります。広州は中国南部の要地で毎年広州交易会が開かれ、多数の邦人が訪問するところであります。ボストンは米国東北部の中心であり、その周辺を合わせて二千四百人の邦人が在留しており、また、同市にある米国最高の学術研究機関との接触を深めるのは、今後の日米関係緊密化の上でも意義が大きいと存じます。フランクフルトは、西独の金融、商工業の中心であるとともに、欧州の国際航空の中心の一つでもあり、周辺を合わせ七百五十人に上る邦人が在留しております。  改正の第二は、現在インドネシアにある在スラバヤ及び在メダンの各領事館を、それぞれ当該地域の重要性にかんがみ、総領事館に昇格させるものであります。  改正の第三は、これらの在外公館に勤務する在外職員の在勤基本手当の額を定めるものであります。  最後の改正点は、子女教育手当に関するものであります。すなわち、日本人学校等もないため、多額の教育費負担を余儀なくされる特定の在外公館に勤務する在外職員に対しては、現在の定額部分のほか、一定の範囲の教育費に限り、一万八千円を限度として加算を認めようとするものであります。  なお、本法律案は昭和五十四年四月一日に施行されることを想定しておりましたが、これが実施されませんでしたので、所要の調整を行うため、衆議院において、その附則の一部が修正されましたので申し添えます。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認、御賛同あらんことを希望いたします。
  232. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  233. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいま御説明いただいたばかりで十分の検討をしておりませんが、私、教育交流計画の方で二、三の御質問を申し上げたいと思います。  今回のは、例のこれまでフルブライト計画と呼ばれてきましたものを改組して日米両方が同じ共同の新たな事業ということで、これまでの金額をそのままアメリカが出し、日本もその同じ金額を出し合って、そして日米相互からの人事交流に備えるものであるというふうな御説明を伺いました。恐らく日米間の人事交流というのが日本とほかの外国との間よりも特段に多いだろうということは想像されますし、そしてこれまでのいろいろな実績があったことも十分わかりますので、今回のこの新しい計画は私は結構ではないかと思っております。  最初に、大変簡単なことですが、この説明を読みまして、新たに日米教育委員会というのを設置するということになっておりますようですが、この五人ずつの教育委員ですね、これはあらかじめもう委員の決定を予定していらっしゃいますわけですか。もしわかりましたらどういう方であるか、ちょっとお名前を伺いたいと思います。
  234. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 新しい協定に基づきます日米教育委員会の委員の願ぶれにつきましては、現在のところ、まだ検討中でございます。
  235. 田中寿美子

    田中寿美子君 いままでのフルブライトの関係のフルブライト計画で人選に当たられた委員会があると思いますが、その人たちが継承される部分もあるんでしょうか。
  236. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 現在までの在日合衆国教育委員会の方々の一部にもお願いするという可能性はございますけれども、現在のところ、その点も含めまして検討中の段階でございます。
  237. 田中寿美子

    田中寿美子君 前もって発表するのが御都合が悪いようなら、あえてお聞きしません。  それで、この際、ちょっとお尋ねしたいと思いますが、戦後の日米間の人事交流というのはずっと続けてこられたと思います。私の記憶にも国務省から招待を受けて日本からアメリカへ派遣された人々というのはたくさんあったと思いますが、その後フルブライト計画になったと思うし、それから個人レベルでも財団のレベルでもいろいろあったと思いますが、戦後の人事交流でガリオア、エロアの資金を使って交流した人々の数、それからガリオア、エロア資金は一体どのくらいを費やしたのかということ、それからその結末はどういうふうになっているのか、それで交流された人物がどういうふうな分野に多くて実績としてどういうことがあったのかを伺いたいと思います。
  238. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先生御指摘のガリオア、エロア奨学金制度でございますが、これは一九四九年にアメリカ政府が占領政策の一環として発足させまして、一九五三年までの間いわゆる占領地救済、経済復興資金勘定、いわゆるガリオア、エロア資金勘定でございますが、この中から所要の経費を支出いたしまして、日本の場合、米国に対して理解を有する将来の日本人指導者を育成するという目的で日本から給費生を渡米さしたものでございます。したがいまして、このガリオア、エロアの奨学金制度は現行のいわゆるフルブライト計画の実施のためのいわゆるフルブライト法に基づいて実施されたものでございません。したがいまして性質としては一応別個のものでございます。  それから、このガリオア、エロアの資金で渡米いたしました日本人の給費生は、一九四九年から五〇年には五十人でございまして、五〇年から五一年までが二百八十三人、五一年から五二年が四百七十一人、五二年から五三年が二百九十三人でございます。で、このフルブライト計画が五一年に発足をいたしまして、したがいまして、この一九五二年から五三年にはガリオア、エロアの給費生とそれからフルブライト給費生とが並行して渡米したという時代がございます。  それから主な分野でございます。分野は非常に多岐にわたっておりますが、大部分の方が大体教職関係であると承知いたしております。したがいまして帰国されました後は大学とか研究機関等で活躍した者が多いわけでございますが、ガリオア、エロアの場合、もちろん教職関係以外に官公庁の職員もガリオア、エロアによって渡米いたしております。
  239. 田中寿美子

    田中寿美子君 ガリオア、エロア資金と言いましたね、これは総額どのくらいになっていて、占領が終わった後、これは返済していったものではないかと思いますが、どういうことになっておりますでしょうか。
  240. 廣瀬勝

    説明員(廣瀬勝君) お答え申し上げます。  御案内のとおり、ガリオアは、昭和二十年以降、米国の占領地救済資金と申しますか、そういった性質の資金からの物資の供与でございます。わが国あるいは占領地、そういったものの飢餓、疫病あるいは社会不安の防止を主たる目的とするものでございます。また、ガリオアのうちでも二十四年度以降に経済復興資金として活用されることになりましたものをエロア物資と言っておりますが、それらによりまして食糧、肥料、医薬品、工業用原材料等が供与されておるわけでございます。  先生御指摘の総額といたしましては、見返り資金に対します繰り入れ額、アメリカから供与されました物資にかかわります見合いの資金を見返り資金といたしまして特別の経理をいたしたわけでございますが、それは三千六十五億円ということになっております。その運用利益が二百七十八億円ございまして三千三百四十三億円合計ございます。そのうち一千四十九億円は、見返り資金の会計におきまして学校給食あるいは教育事業、また住宅金融公庫に対します出資、そういった民政安定事業に使われました。この一千四十九億円を除きました二千二百九十四億円は産投会計に引き継がれまして、産投会計におきまして償還し、見合いの債権について、たとえば開発銀行に対します債権の回収といったような業務を行ってまいったわけでございます。その債権債務関係は現在は一切なくなっております。すべて償還が了しまして債権債務関係は一切なくなっております。
  241. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、要するにエロア物資というものをアメリカからもらっていた、それに対する見返り資金の中から人事交流計画に充て、そしてそれを後に償還したということになりますか、つまり全くアメリカからもらったものではないということですね、そういうことになりますか。
  242. 山田中正

    政府委員(山田中正君) いま御質問の点でございますが、最初に情文局長から御説明申し上げましたガリオア奨学金制度、これは先ほどの米国予算のガリオア、エロアの項目の中の行政費としてアメリカ側が支出いたしましたものでございます。その額が幾らであったかはちょっと、私、現在記憶いたしておりません。  それからガリオア、エロアの援助の返還交渉のときの対象になりましたのは、先ほど大蔵省の方から御説明がございましたように、この予算項目の中からわが国に対して援助として物資を持ってこられたわけでございますが、その物資を積算いたしまして、米国側はそれが十九億ドル強、わが方の試算では十八億ドル弱ということでございまして、それをいろいろ積算したり突き合わせたりした結果、最終的には四億九千万ドルを返還することになったわけです。したがって、この四億九千万ドルを返還することになったときの計算の基礎には、先ほどのガリオア奨学金は入っておりません。
  243. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのガリオア資金のときの人事交流というのは、主としてそれを選抜する権限というのは占領軍の側にあったんでしょうか。
  244. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先ほど情報局長が御説明申し上げました千九十七名の選考は文部省が行っております。これは占領軍の委託を受けてやったことだと承知いたしております。
  245. 田中寿美子

    田中寿美子君 なぜそんなことを聞くかと申しますと、文部省からというのは学生の場合ですね、じゃなくて、各省だとか、それから法務関係の人だとか、専門家が大分行かれましたものですから、そういうグループというのは、占領下でございましたから、もちろん間接占領でしたから各省あるいはそれぞれの機関が推薦をして占領軍がそれを認めるという形で行ったんではないかなというふうに思っているわけです。
  246. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先ほど山田参事官から御説明がございましたように、このガリオア、エロアの給費生の実際の選考は文部省がやったわけでございます。
  247. 田中寿美子

    田中寿美子君 よろしいです。そんなの余りせんさくしていても仕方がありません。  次いで、フルブライト計画は、これはフルブライト資金で全額賄われていたものだろうと思いますが、これの計画で非常にたくさんの人たちが今度は行くようになりました。そして、それの選考は日本側に私はイニシアチブがあったんじゃないかと思いますが、この計画は約二十年にわたっておりますので、総数は非常にたくさんになっているだろうと思いますし、分野などがわかっていれば、数とか分野とか、そしてそれの上げた効果というものをどういうふうに評価していらっしゃるかということを伺いたいと思います。
  248. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先生がおっしゃいましたように、一九七八年までに多数の日米双方の人々がこのフルブライト計画によって渡米し、あるいは日本に参っておるわけでございます。日本人でこのフルブライト計画の給費生になられた方の数は四千三百八名に上っておりまして、アメリカ人でこのフルブライト計画によって日本に渡日した方の数は千六十名、両方合わせまして五千三百を超えておるわけでございます。  それから、この研究分野につきましては、アメリカ研究、英語研究それから教員養成学、人文社会科学、経済学、経営学、東洋研究、労働問題、自然科学、農業科学、音楽、芸術、ジャーナリズム、アジア太平洋研究というような多岐の範囲にわたっております。  それから、このフルブライト給費生であられた方で、その後きわめて著名になられた方が数々ございますが、若干の例を申し上げますと、文化勲章の受賞者として京都大教授の広中平祐先生、それから国立遺伝学研究所の木村資生先生、それから亡くなられましたけれども陶芸家の浜田庄司さん、それから作家、評論家では小田実氏とか中野好夫氏がおられます。その他学識者、文化人として、国際文化会館理事長の松本重治氏、それから元東大教授の茅誠二氏、それから建築の方面では丹下健三氏、それから東大教授の芦原義信氏、それから国会議員にもおられまして衆議院の湯川宏先生、それから近藤鉄雄先生、津島雄二先生、それから知事といたしましては栃木県知事の船田譲氏、それから大学の学長等といたしましては前回志社大学長の松山義則先生、京都大学の総長の岡本道雄先生、広島工業大学長の前川力先生というような方が、若干の例でございますが、おられるわけでございます。  こういう非常に広い分野にわたりまして多くの方々がこのフルブライト計画によって日本の方から見ますと渡米いたしまして研究に従事され、またアメリカ事情を親しく経験された。また、アメリカの研究者も、日本に来まして、日本の実情、日本の文化、そういったものに触れる機会を与えられたということでございまして、人事交流といたしましてきわめて効果の高い、日米の友好関係の増進にきわめて貢献した計画であるというふうに考えておるわけでございます。
  249. 田中寿美子

    田中寿美子君 フルブライト基金というのは若い研究者にとっても大変便利でしたし、いま名前を挙げられましたような相当著名な第一線の方々も利用して短期間研究に行かれたりして大変それは大きな効果を上げられたと思いますが、今回、新しい日米教育委員会制度に変わり、そして今度は金額も倍になるわけですね。いままでのフルブライト資金と同額を日本が出すわけですね。そうしますと、さらに計画は大きくなりますが、それについて、今後の運営上特にどういう点に注意をなさりながらどの方向に力を入れたいと思っていらっしゃるか。  たとえば、アメリカから日本に来て日本を研究する人というのは、日本から行くのよりずっと限られておると思いますけれども、ほかの外国人よりははるかに多うございます。私の知っております婦人で日本の婦人問題研究家もずいぶんアメリカからやってきておりますが、そういう人物交流の計画などについて、特にこれまでの方針と変えるようなことがあるのか、あるいは大きくした分だけ何か質的に違うことがあるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  250. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) この協定を御承認いただきますと、先生御指摘のとおり、予算的にも実質的に倍になるわけでございまして、特にいままでは全くアメリカ側の資金によってこの計画が運用されておりましたのが、今後は、日米対等の形で日本側がさらに積極的なかっこうでこの計画を運営していくということになるわけでございます。  この計画の内容自体につきましては、実質的には大体同様でございまして、学生、研究者、教授等の交流を中心として、これを発展さしていくということでございますが、研究分野につきましては、従来主として人文社会科学の分野が非常に多かったわけでございます。特にアメリカ研究、日本研究、太平洋研究等、人文社会科学分野に重点が置かれてまいったわけでありますが、今後は、これらに加えまして新たに応用科学の面を追加していこうということが計画をされております。それから給費生の研究員カテゴリーの中に教育行政官、専門家も対象として加えるという予定になっております。  今後の研究分野につきましては、今後、日米教育委員会におきまして長期的な観点から十分検討を行って、最も必要とされる分野を対象として取り上げるということを日本側としても考えてまいりたいというふうに存じております。
  251. 田中寿美子

    田中寿美子君 いままでフルブライトのほかに個別にいろいろありましたロックフェラー財団だとかフォード財団だとか、それからそれぞれの大学がグラントを出したりしておったわけですけれども、今回、こういうふうに多額に、日本経済的に大国になったと言われておりますから、当然そんなにアメリカばっかりにおぶさることはないと思いますけれども、多額に出すことになって、これまでの個別のファンドみたいなものはだんだんなくなっていくんじゃないかなという懸念をしますけれども、そういうことはありませんですか。
  252. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 日米間の人物交流で、政府レベルで行っておりますのは、日本側では文部省国際交流基金、日本学術振興会の事業がございます。それの年間の交流数が約千三百人でございますけれども、これは依然継続する予定でございます。  それから、米国側で行っております交流計画としては、米国政府の保健教育福祉省の計画、それから国務省の計画、それからアジア財団の計画がございますけれども、これらも依然継続するものと私ども考えております。
  253. 田中寿美子

    田中寿美子君 国際交流というのは、実際にその地に行って暮らしながら研究をするということで、本を読んだり、ちょっと聞いたりすることに比べて非常に役に立つということは、私自身も何回かそういう経験はしておりますものですから好ましいことだと思いますので、これは新しい計画に切りかわった段階で相当意欲的に、これまで行った方などの意見もよく聞きながら、役に立つようにその資金を使っていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  254. 戸叶武

    ○戸叶武君 この協定に当たって、いままでの前例もあるでしょうが、生活条件や何かの違いもあるでしょうが、アメリカ側と日本側あるいはドイツ側の学者あるいは学生、その段階にもよりますでしょうが、給費額に相当な違いがあるようです。これはどのようにいまではなっておりますか、フルブライト計画なんかの個人に対する給費額。
  255. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 日米教育交流計画では、日本人とアメリカ人の給費額につきまして差を設ける予定でございます。それは現在の為替レートでは日米間の物価水準にかなりの格差がございます。たとえば国連では東京勤務の職員に対しましてニューヨーク勤務の者の約一・七倍の給与を支給しております。日米教育委員会でもこの物価水準の格差というものを考慮に入れる考えでございます。  この日米教育交流計画の給費には、基本給のほか、家族手当、住宅手当、教育手当、研究費、着後手当、荷物手当がございまして、受給者の家族構成によって給費額はかなり異なってまいりますが、教授、助教授、助手クラスの場合は、米国人は平均しまして日本人の一・七倍の給費を受け、大学院の学生の場合には平均して約二・三倍の給費を受ける予定でございます。大学院生の場合、アメリカ人の給費額が相対的に特に高いのは、渡米する日本人の学生はアメリカの大学で講義を受ける者がほとんどであるのに対しまして、来日するアメリカ人の学生は、日本の大学で講義を受けるというよりは、博士論文を書くための者がほとんどでございまして、年齢も高く家族持ちの者が多いので、この点を特に考慮する必要があるのではないかと考えているものでございます。しかしながら、日米間では、米国人に支給される給費の総額は、日本人に支給される給費の総額とほぼ同じにするという原則について同意を見ておりますので、日本人は個々の給費が米国人より少ないだけ本計画による受給者の数が日本人は多くなるということになるわけでございます。
  256. 戸叶武

    ○戸叶武君 大体、日本金にしてどのくらいの程度になっておりますか。
  257. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 一人当たりの単価でございますが、これは大学の教授クラス、それから助教授クラス、それから助手クラス、それから大学院の学生それぞれ違うわけでございますけども、たとえば大学院の学生で申しますと、日本に参ります米国人は基本給として十八万円を支給されることになっております。それから大学教授の場合は基本給が月額にしまして三十六万円、それから研究者が月額三十万円、そのほかに先ほど申しましたように住宅手当、家族手当等々がつくわけでございます。
  258. 戸叶武

    ○戸叶武君 いろいろな事情で日米間に格差があることはわかりますが、できるだけその格差をなくさせるように将来に向かって努力していくのがしかるべきだと思いますが、どのように当局は考えておりますか、今後の見通しにおいて。
  259. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 実は、これまでのフルブライト計画では、日本人に対する給費額とアメリカ人に対する給費額とはこれよりもずっと大きな格差がございました。一例を申しますと、大学院の学生の場合には、極端な場合でございますけども、と申しますのは米国政府は地域差というものを設けておりまして、学生の場合はニューヨークにおりますと月額四百二十五ドルもらえる、ところがテキサスですと月に二百五十ドルしかもらえないというようなこともございまして、日本人の大学院の学生で一番少ない額をもらっている人と日本に来ている米国人で一番多くもらっている人とを比べますと約五倍の格差があったわけでございます。  そこで、このような大きな格差を依然続けるということはよくないということで、国連が採用しております物価指数ということを勘案しまして、大体一・七倍くらいの格差というのが常識的な線ではないだろうかということで一応の合意を見たわけでございますけども、この給与表につきましても委員会が発足しましてから正式に採択されることになります。  それから今後の問題でございますが、できるだけ格差を少なくする必要はあるとは思いますけれども一つには、日本人の応募者が大体十倍ぐらいあるのに対して、米国人の本計画に対する応募者が三、四倍というように比較的少ないというようなこともございまして、余り米国人に対する待遇を悪くしますと米国人の応募者が少なくなるということもございますし、また他方、やはり日本の物価高、特にいま住宅の高さということは否定できない事実でございますので、日本人とアメリカ人に対する給費額を同じにするということはなかなかむずかしいのではないかというように考えております。
  260. 戸叶武

    ○戸叶武君 アメリカ側から当該の大学院で、あるいはドクターコースで論文をつくりに来ている連中は、講義を聞いたり読書をしたり、もう一つはやはりよく歩いて実証的なデータを集めて研究しております。こういう研究態度は日本の画一的な講義を聞くというのと、レポートをつくっていくというのが非常に違うと思いますが、相当の歳月をかけて自分の実力を蓄えている。日本にいる間に、ソ連にもあるいは東欧にも中国にも東南アジアにも旅行して、そうしていろいろな材料を集めようという者もあるし、日本の中国の留学生の研究を、エール大学の大学院を卒業するときに日本に出かけてきて、大原研究所でつくり上げたレポートを頼ってきたのでしたが、なかなか詳細にデータを集めていることと、それから今後博士論文に日本と中国との留学生の段階的な流れのデータを十分に集めているような傾向で、しかも将来は中南米の外交問題と取っ組むんだと言って、女性ですが、香港の大学を出、国際基督教大学からフルブライトの資金でエール大学に入り、そうして日本の大学のドクターコースで勉強している、こういう飽くなき研究力の旺盛な方もいる。  また、いまの大統領と同じ名前のカーター君のごときは、やはりソ連、東欧にも自由に行って言葉も覚え、そうしてグローバルな時代にわれわれは各国との比較研究もしなければならない。言葉を覚えると同時に、具体的にはだで触れ合って、そうして実証主義的に社会科学を追求しようという態度ですが、日本のいままでの研究の記憶力なり秀才教育のいいところもありますが、エリート意識が旺盛な割りには実証主義的な研究、踏み込んで突っ込んで真実をきわめようというような態度が少し少ないように思いますが、そういう点はいままでの比較においてどう受けとめていますか。
  261. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) ただいま先生御指摘のとおり、米国人の大学院の学生でございますけれども、一カ所の大学にとどまりませんで、各地を旅行して足でいろいろ資料を集めているということは確かに事実でございます。それで日本人の学生というのはアメリカの一カ所の大学にとどまっているという傾向がございました。こういうようなことを反映いたしまして、フルブライトの奨学金の中でも、研究費でございますけれども、米国人に対しては非常に手厚く支給されておりまして、日本人は従来はアメリカ人と比べまして十分の一以下の研究費だったわけでございます。この点も私どもが問題といたしまして、やはりこんなに大きな格差があるのはよくないし、日本人の学生も各地を旅行して一カ所の大学にとどまることなく、あっちこっちを回って研究をするようにということで、大幅な研究費の増額を認めることにしたいと考えている次第でございます。
  262. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について御質問いたします。  いままで、外交官の人々、外交畑の人は、伝統的に秀才の集まりだが、余り派閥を持たずに個人的に非常に修練をしておりますが、人のめんどうを見るボスは外交畑に余り発生しないとみえて、わりあいに待遇がほかから見ると非常に悪かったのです。外国へ行っても対等なつき合いができないというのが、外交官は口には出さないで武士は食わねど高ようじと決め込んでいるけれども、実際は外交官やその夫人の悩みであり、特に子供の教育の問題に対しては過疎地帯といいますか、恵まれない地帯における教育というものは本当に気の毒であり、おおむねは上の学校にやるためには日本との二重生活を重ねなけりゃならぬ、そういう費用が非常に重なっておりますが、今度は、そういうことに対してもいままでと違ったような改善がなされているので、このことは結構だと思いますが、上級学校に行く子弟は現地だけではやはり教育できない。したがって奥さんなり何なりがそれを受けとめて、日本で二重生活的な子弟教育をやらなくちゃならない場合もあると思いますが、それに対する配慮はどのようになされておりますか。
  263. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 御指摘のとおり、外務省の職員にとりまして、在外におりますときの子弟の教育問題は最大の問題でございます。現在、外務省職員の過半数は在外勤務者でございますが、これらの者が該当いたします子女も相当数に上っておりまして、在外の子女数は合計千百三十六名でございます。在外におきましての教育につきましては、子女教育手当が支給されておるわけでございますが、この点につきましては、今回、御提案申し上げております子女教育手当の一部の地域における増額によって若干の教育費の軽減を図りたいと考えております。  ただ、高校あるいは大学に進学しておる子女の教育の問題は、在外ではうまくいかない場合が確かにあるわけでございまして、こういう場合にはやむを得ず配偶者の方が内地に帰っておられるということになっております。これは外務省といたしましては、余り歓迎できない次第でございます。と申しますのは、やはり外交官というものは夫婦が一緒になって外交活動をすべきことでございまして、われわれとしては、これは余り歓迎できない次第でございますけれども、やむを得ない事象が若干見られるわけでございます。  実は、その際、現在、配偶者手当が在勤基本手当の四割支給されておるわけですが、配偶者が長い間本邦に帰っておりますときには、配偶者手当は支給されません。その意味で給与が減額になりまして、別居しておりますためのよけいな経費もかかりますし、配偶者手当も支給されないという意味で、相当な経済的な打撃になっておるのが実情でございます。本邦の主な商社の中には留守宅手当という制度があるようでございますが、残念ながら、われわれにはまだこういう制度ができておりません。この点は今後の研究課題といたしてまいりたいと考えております。
  264. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、園田外務大臣に一言お願いします。  園田さんは苦労人でなかなか細かいところにも気のつく人ですが、秀才というのはプライドは高いけれども、余り体裁の悪いところや卑しいと思われるようなことは言うまいという習性がありますけれども、いまの状態だと財産形成は困難だし、明日のためにはやはり子供だけでも生きがいのあるような方向づけをやらなければならないというのが、これは外交官だけじゃなく、どこの世界でも教育に力を入れる者の共通の悲願だと思います。こういう機会に、お百姓だと嫁が来ないというけれども、外交官がいかに秀才でも子供のためを考えると外交官には嫁にやりたくないという風潮も起きないとも限らないので、そこまでくるとお手上げですから、お手上げにならない前にひとつ実りのある人情ぶりをやはりその待遇改善の面で配慮してもらいたいと思います。  それから、海外の留学生というのも、ただ語学だけできればいいというんじゃなく、外国じゃ、こじきもルンペンもイギリスでは英語で話しておりますから、そういう形だけじゃなくて、もっと内容のある人間形成と役に立つ人をやはり育て上げるには若干のゆとりがないと、朝から晩までがりがり勉強では冷たい人間、味のない人間しかできないので、日本人というのは秀才だったけれども、つき合ってみると案外つまらないなあというので、やっぱりECの国々の人が陰口をきくようなことが当たっている面も出てくると思うんです。どうぞそういう意味において、何も力んでアメリカと対等にしろと言うんじゃないけれども、段階的にやっぱり日本の海外における留学生にもちょっとゆとりのある、文化というのはゆとりがなければ生まれないのですから、レジャーという意味に解釈するんでなくて、一つのゆとりがあってそこに文化の花は実を結ぶんですから、その辺もひとつ外交官に嫁さんをやるなという風潮が起きない程度の配慮と、もう一つは、外国へ行ってもガリ勉だけじゃなくて人間としてりっぱだったという、新島襄さんや新渡戸さんのような人はその後余り日本からは出てこないというので外国人は嘆いておりますから、どうぞそういう意味における御配慮を願いたいと思いますが、一言御答弁を願います。
  265. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま非常なありがたいお言葉をちょうだいをさしていただきまして感謝いたします。  私も、平素からゆとりのある人間をつくる、ゆとりのある人間が人間的な交際をするということは絶えず言っているところでありますが、残念ながら、いま御指摘されたようなことがときどき現実に出てくることがありまして、若い優秀な外交官が若くして職業をかえることがときどきございます、えぐられるような思いがいたします。なお、子供の教育についても十分注意をして努力をいたします。ありがとうございます。
  266. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 在外公館についてお伺いをするわけでありますが、かつて当委員会におきましていろんな点をお尋ねしたことがございます。今回の改正案を見ましても、領事館から総領事館へ昇格、来年の一月一日から実施、定員四名、そうしたことが内容に盛られているようでありますが、かつて現在の外務省を中心とした今後の外交展開の上で機能的にも多様化する国際社会に十分な対応ができないということの心配を通しまして申し上げたことがあります。それについて、近い将来せめて西ドイツもしくはイタリア並みぐらいの体制に持っていきたい、こういう願望といいますか、一つの目安というものを持たれての御答弁があったように記憶しております。  考えてみますと、いろんな定員法の枠だとかございましょうけれども、やはり思い切ってこの機会に法律改正等を通しまして、五年後にはどうする、十年後にはどうする、二十年後にはどうするという短期、中期、長期の一つの流れに立った今後の外務省全体の整備、強化というものを図る必要があるのではないだろうか。もちろん外交官というのはそんな短期間でつくれるものではございませんので、その辺の展望に立った明確な方向というものを確立いたしませんと、何回こういう議論をやりましても、きわめて観念的であり抽象的に終わってしまう。いつもいろんな問題を抱えながら、こうもしなきゃならぬ、ああもしなきゃならぬと思いつつも、どうもその障壁がとれないままに今後も推移していくんではあるまいかという心配を私は持つんです。  いまも官房長が、子女の教育等を通じまして内地に奥さんを残しておく場合には家族手当がつかない、留守宅の手当もつかぬと相当遠慮して物をおっしゃっていると私は思うんです。それではやはり後ろ髪を引かれるような思いになりましょうし、存分な外交官としての真価を発揮できないだろう。私は、何回もこの点を強調しているのでありますが、この点についてやはり政治判断が私は必要だと思うんです。  いま申し上げたことをもう一遍ここで私は再確認をしておきたいと思いますので、西ドイツ並み結構、イタリア並み結構だと私は思うんですけれども、大体、どの辺を、後どのくらいの年限を目標として、その辺までのレベルアップを図っていくという御方針なのか、まず総括的なそういう問題から入っていきたいと思います。
  267. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 大変結構なお言葉をいただきまして、われわれとしては大変感謝をいたす次第でございます。仰せのとおり、この変転目まぐるしい、かつ複雑な国際情勢に対処するためには、外務省の人を思い切ってふやす必要があるとわれわれはかたく信じておる次第でございます。  そこで、御承知のとおり、昭和四十九年に外務省としては定員五千名という構想を打ち出したわけでございますが、その後、関係方面の御理解と御協力を得まして、純増ベースで申しまして四百七十四名の増員を見ておりますが、それでもやっと現在三千四百名でございまして、まだ千六百名足りないというのが実情でございます。われわれとしましては、この五千名の目標を一日も早く達成いたしたいわけでございますが、現下の厳しい情勢下におきましてそれを直ちに達成するということは無理かとは思いますが、われわれとしては、これが今世紀の末に達成するということではどうしようもないという感じを持っておるのでございまして、これをできるだけ縮めて達成したいということで関係方面の御協力を得たいと考えておる次第でございます。
  268. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今世紀末なんという気の長い話では日本が将来どうなっちゃうんだろうという、そういう危惧すらも実は抱くわけです。確かに少しずつふえていることは事実なんですけれども、とてもしかし私たちが願っているような方向へはいまだしという、そういう印象をぬぐい切れません。  たとえば、今回、領事館から総領事館に昇格をする、四名ずつ配置になるというんでしょう。総領事以下四名です。それは事務分掌からいったらどういうことを分担してやるんですか。これはえらい負担だと私は思うんですよ。もちろん数が多いからいいというふうな考え方で申し上げているわけではございません。しかし、もう実質的に四名で一体何ができるんだろうなという、いままで申し上げてきておりますように、その中には恐らく電信士なんかも含まれるんではないだろうかと思うんです。もし病気で倒れた場合にあと三名でフォローしなきゃならぬわけでしょう。それも三名で常時ローテーションが組まれてやれればいいのかもしれませんけれども、具体的には一体どういう事務分掌というものがあって、そして外交官として、要するに仕事の上からある程度の満足感を持って遂行できたというふうなことになるのかどうなのか、いつもそれを心配するんですがね。四名でどういうことができましょう。
  269. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 現在、大使館あるいは総領事館の最小の人員は、御指摘のとおり、館長以下四名でございまして、そういう構成になりますと、実際問題として一番下の者は電信と文書と会計を一人で担当しなければならないという現状でございます。その者が仮に病気その他で倒れますと、あるいは休暇、帰国するということになりますと、非常に困るわけでございまして、この点についてはわれわれも非常に苦慮をいたしております。われわれの理想から申しますれば、最小限度、本当は七名欲しいところでございます。しかし、これは現在の定員では一挙に達成できませんので、先ほどから申し上げますように、関係当局の理解と協力を得てできるだけ速いスピードでわれわれの目標を達成いたしたいと思います。  では、現在は、どうしてやっていくかということになりますが、電信官等の場合は本省の電信要員を少しふやしまして、電信官が病気で倒れたとか、あるいは休暇をとるということで、やむを得ない場合には、本省から臨時に電信官を派遣して補ってやるということをするようにいたしております。さらに、これも予算面では不十分でございますが、現地補助員をさらに活用するということも考えておりまして、この点につきましても予算をふやしていただいて現地補助員の増員を図っていきたい。そして、この現地補助員につきましても、いままでのようなつかみの金ではなくて、その職務と責任に応じた給与体系をつくりまして待遇改善を図って、いい現地補助員が集められるようにしていきたいと考えておる次第でございます。
  270. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これ以上申し上げても、一番実情については外務省当局が痛いほど経験をしておられるわけでございますので、何とかしなきゃならぬと思いつつも各省との兼ね合いというようなこと、あるいは予算面の計上の仕方、いろいろ隘路があるんだろうと思うんですが、この点についてはやっぱり外務大臣に政治的な判断をしていただいて、日本外交の機能というものがもっともっと、優秀な方が大ぜいいらっしゃるわけでございますので、恐らくいま一人で十人分ぐらいの、オーバーな言い方かもしれませんけれども、やはり仕事をなさっていらっしゃるんじゃないか。無理が生じますよ、スーパーマンなんているわけはないんですから、限界があるわけですからね。限界を超えたらもう病気になるか何かということになりかねません。その点、やはりもっと具体性を持った外務省自身の毅然たる方針というものを貫けるような方向へ、いまの事柄を通じまして、ぜひ具体化するような方向へ取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  271. 園田直

    国務大臣園田直君) 仰せのとおりでありまして、職務上も非常に支障を来しております。何かあると次々に健康を害して倒れる若い職員が後を絶たぬわけでありまして、予算面で何割減とか何割増とかということをやっておってはとうていこれは解決できません。やはり行政、政治にしても予算の面にしても、うんと削るところとうんとふやすところとなければ、わが外務省は、御承知のとおり戦争で中断いたしまして閉店休業の状態があって、戦後、伸びるべきものがそのまま抑えられてきている。そこで、うんと出発点がおくれたところへ何割減、何割増ということではとうていやっていけない、こういうことでいろいろ苦労しておるわけでありますが、この上とも御協力をお願いしたいと思います。
  272. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いつも伺う話の中には、いまも私が指摘いたしましたとおり、たとえば中南米局一つをつくる場合でもすぐクレームがつくんですね。こんなことが一体考えられることなんだろうか、それじゃ今度、他省はおれの方の局も一つふやせと。とにかく外交というものと国内政治の場合は、これはもう全然切り離して考えなければ機能なんか発揮できないということはもう常識だろうと私は思うんですね。政権を担当しておられる自民党の中にも、相当そうした面においては真剣に考えておられる方もおいでになるだろうとぼくは思うんですけれども、野党のわれわれすらも、そういうことを非常に危惧をしながら、将来のあり方というものを問い直していかなければならないということをいましきりに申し上げているわけです。そんなことを一々遠慮し、あっちの方へ心を使いながらやっていたんではいつまでたっても、やっとの思いで今度中南米局が新設されるという、こういう経過から見ましてももう百年河清を待つに等しいんではあるまいかという、そういう心配すらも起きないではない。非常に困ったことだなと思いますけれども、いまの外務大臣の御答弁にもありましたように、何とかひとつ、できれば在任中にぜひ具体的な方向というものをコンクリートにしていただきたいなというくらいに私は考えていま物を申し上げているわけでございます。  それから、在外公館でいろいろ連動する問題が出てまいります。先ほどの留守家族に対する手当の問題なんというのは一体どうなっちゃっているんだろう。これは実際に、ときには後ろ髪を引かれるような思いで仕事をしなきゃならぬということになりますと、十の力を五か六にしか発揮できない場合があるだろうと思う。それは皆大人ですから正面切って不平不満ということは言わないだろうとぼくは思うんですよ。だからといって満足しているわけではない。これはもう今日における最も奇形的な現象ではないだろうかと、口をきわめて申し上げるならば、そういうふうにも言わざるを私は得ない。いま各国の比較を官房長はされました、日本だけだ、これでは先進国が泣きますね。それで任務と責任だけは人一倍強く要求してやれと言っても、それは言う方が無理ではあるまいかというふうに思えてなりません。しかも残された家族の方にしても、子女の教育、子弟の教育を含めまして心の休まることがなかなかないであろう。  たとえば、そうした問題からさらに類推的に広げて考えてみた場合に、先回も私申し上げたことがあるんですが、航空機事故で死亡された外務公務員の方々に対するその補償というものは満足のいくような手当てがなされたのかどうなのか。こういった問題についても未解決だろうと私は思うんです。少なくとも公務のために不慮の事故に遭ったら当然それに見返るような報いの仕方というもの、補償の仕方というものがあってしかるべきであり、それすらもないということになりますと、将来は国益のために何とか日本外交の先陣を切ってという、この有望な若い外交官が途中で挫折感を持たなきゃならぬ。一方ではふやさなきゃならぬという問題と、一方においては全然未整備の問題があるということになりますと、その狭間に置かれている若い人たちは一体どういう気持ちで仕事をなさっているのか、大変マイナスの私は現象ではないだろうか。非常に効果をそぐような仕事に追いやる方向へ置かれているんではないだろうか。こういった問題について、いま申し上げたように見通しがないのかどうなのか。たとえば留守家族の問題につきましても手当の問題、それからいま申し上げたような公務の際に起こった不慮の災害に伴う補償の問題について依然として未整備なのか。将来、こういうふうに考えているというふうなもうすでに具体的な案ができ上がっているのかどうなのか。その点もう一遍整理をしていま伺っているつもりでございますので、お聞かせをいただきたいと思うんです。
  273. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 留守家族に対する手当の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、われわれとしては対策がまだ講じられていないのが実情でございまして、これは本邦の商社等にありますような留守宅手当というふうなものがわれわれについても設けられれば結構だとは存じますが、この点につきましてはさらに外務省としても研究してまいりたいというふうに考えております。  次に、外務省の職員が在外におきまして公務上の災害を受けた場合にはどうなるかと申しますと、これは一般の公務員と同様に、国家公務員災害補償法によって補償されることになっております。しかしながら、特に戦争とか内乱とかその他の異常事態が発生いたしまして、そういうふうな危険な状況のもとで職務を遂行しまして、そのために災害を受けたというふうな場合には一般の災害補償額の五割増しの特例措置がございます。これは最近一つ適用例がございまして、ラオスで殉職いたしました杉江書記官に対してこの五割増しの適用が認められた次第でございます。  さらに、外務省自身の措置といたしまして、本年からこういうふうな災害に遭って不幸にも死亡または不具廃疾になりましたような者に対しましては、いま申し上げました補償制度とは別に、表彰制度の一環としまして賞じゅつ制度が設けられました。そして一定額の賞じゅつ金が与えられることになっております。これである程度在外公館におきまして危険な状況のもとにおいて勤務する人々の士気を維持するに若干は寄与するのじゃないかと思っておる次第でございます。
  274. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御答弁があったような内容については、前回とちょっと変化があるような答弁だといま伺っております。それだけ前進したんだろうと思いますが、いま山崎官房長がおっしゃったように、いま言われたような仕組みの中で十分手当てができると御判断なさっていらっしゃいますか。
  275. 園田直

    国務大臣園田直君) 十分どころか非常に困っているわけであります。いま航空機事故その他不時の災難もありますけれども、近ごろ、御承知のとおりに、内乱、政変等がない国で絶えず生命の不安、身体の傷害への危険があるところが多いわけであります。これについてもいま若い職員が進んでそういう土地を希望してくれますからもっておりますものの、そういう気持ちだけでもつのがいつまで続くか。  なおまた、たとえばいろいろなプロジェクトの調査などで奥地に入りまして事故があった場合、外務省から派遣した職員と事業団の職員とに差がありまして、その差を埋めるのにあれやこれやとやりくりをしているような状態が実情でございます。少しはよくなりましたが、やはり外務省の職員の特別な立場から、いろいろなけがをした場合あるいは生命を失った場合、あるいはその子供、それから家族から離れた場合の教育等については、いまのままではとうてい声を大きくしてがんばれと言うわけにはいかずに、まあ頼む、いやがんばりますという気持ちの問題でもっているのが実情でございます。  次には、また、情報収集等にほとんど手がありませずに、よその在外公館を訪ねて情報を集めているような程度でございますから、こういう点については、本当に日本が軍事力に頼らずに外交によって国を守り国を繁栄させようと思えば、この点は何とか解決をしなければ、そういうわけにはまいらぬと非常に心配をいたしております。
  276. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変実感のこもった御答弁だと私思うんです、そのとおりだと思うんですね。こうしたこともやはり早い機会に整備をしていただいて、やっぱり希望がありませんと仕事にしたって前進できません、これは常識でございます。やっぱりこれをやればこうだという一つの目標が特に若い外交官の方々にあれば、それはもう勇躍していろいろな仕事にも取り組めるだろうという感じがいたします。  少ない時間であれもこれもということは大変技術的に困難でありますが、先ほどもちょっと出ましたけれども、教育費について今回決められた一万八千円ですか、これはどういうところに基準を置かれたのですか。
  277. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは不健康地に勤務する職員で、その土地に適当な学校がないとか、あるいはありましても非常に高額の教育費を要するというふうな場合に、その教育費をある程度補てんするというための制度でございます。ただ、無制限というわけにはまいりませんので、現行の一万八千円にさらに最高一万八千円を上乗せして実費を支給するという制度でございます。
  278. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはわかるんですが、最初の一万八千円というふうに設定をされた基準はどこに置かれたのですか。何かほかの布令等と比較をして一万八千円という限度額を設けられたわけですか。
  279. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この点は、実態調査をいたしまして、あと一万八千円を上乗せすれば大部分のケースは救済できるというふうにめどをつけた次第でございます。
  280. 園田直

    国務大臣園田直君) ちょっと、質問に対するお答えじゃありませんが、各委員から言われておりました金大中氏とわが方の在外公館との接触について報告がありましたから、この際、簡単に御報告申し上げます。  本日、午後三時二十分、わが方の馬淵公使が金大中氏の私宅を訪ねて面談をした。最初の十分間というのはプレス関係、写真班等で費やして、三時半から四時まで約三十分面談をした。こういう報告でありますが、二人きりで話ができたものか、あるいは監視つきで話をしたのか、話の内容等は後刻電報で入りますので、間に合えば、また御報告をいたします。  以上でございます。
  281. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 続いて申し上げたいと思います。  それから外務省の機能強化といいますか、一連の事柄に触れるわけでございますけれども、これも前回私は若干問題にしたつもりでありますけれども外務省にはいろんな大学の出身者の方がいらっしゃる、それがいろんなふうにつながりを持っていらっしゃるようであります。一説に、いろんな見方があるようでありますが、その中で俗に言われておりますキャリア組、スペシャリスト、こういった中に何か差別意識というものがあるのか。私は、たしか福田さんが外務大臣のころからずっとこれは一貫して言い続けてきたことの経験があるんです。それぞれの持ち味、また能力、たとえ公立の大学を出てこられた人でありましても相当の力を持っておる人がぼくはいるであろう。しかし、新聞なんかで発令状況を見ておりますと、ほとんどアメリカ、ヨーロッパ、この辺が中心になりましょう、言うなれば優秀であるからということも言えるでしょうけれども、まあ東大御出身。たまたまアフリカだとか余り好まないような地域に、やっと六十歳を超えてからたとえば公立の大学の出身者の方が大使に就任して二、三年でおやめになる。ちょうどオイルパニックが起こったときにアラビア語の問題について私も触れたんですけれども、非常にアラビア語に精通している人も外務省の中にいらっしゃると思うんです。そういった特性、能力というものを最大限に生かすならば、人材というものは私は外務省にやはり雲集しているんじゃないか。ずいぶんオーバーな言い方をしてどうかと思う面もあるかもしれませんけれども、やはり人はその使い方によってもっともっと日本外交のために役割りを果たしていく素質というものが考えられますし、その辺が何か目に見えないところでセーブされているんではないか。  大体、キャリア組とかスペシャリスト組という、そういうような認識と評価が生まれること自体がいかがなものであろうかというふうに思えてならない場合が実はございます。どんどんやはり力のある人については登用の道を開く、伺ってみますと大体一対三ぐらいの割合になっているんだそうですね、だから三千六百名といたしますと、キャリア組の方が大体千二百名、残りがスペシャリスト、こうなると思うんです。中には試験の関係で中級ぐらいの方もその中に含まれるでしょう。けれども、やはり希望を与えながらもっと充実した仕事ができるという方向へ持っていくためには、そういう障壁といいますか垣根というものを取り払うことによってもっとダイナミックな展開が私はできるような気がしてならないわけでございますけれども、いま私の認識していることが間違いであるのか、そういうような傾向は全くないのか、それぞれその人たちの立場が尊重され、最大限にその持っている力というものが発揮されている現状なのか、その点は外務大臣としてどのように御判断になっておられるのか。
  282. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの現在の外務省で一人一人が最大限の能力を発揮する段階にはないと反省をいたしております。いまの問題は一番大きな問題でありまして、能力のある者はそれぞれの地位につくということはぜひやらなければ、自分の公務に対する意欲が欠けるのみならず、これが沈滞をしてきまして、あるいは汚職であるとか、あるいは網紀の弛緩であるとか、そういうふうにもつながるわけであります。  そこで、なるべくそういうことに注意しまして、在外公館長、あるいは本管においては課長職に能力ある者は登用することにいたしております。なおまた、近ごろは、管理職につく前の段階で上級職員に登用するという道もやってはおりますものの、それはそういう道があるというだけであって、必ずしもみんながふるい立ってやっているという段階ではまだございません。これをだんだん推し広げていって、能力ある者はノンキャリアもキャリアも平等に登用されるという道だけはぜひ切り開いていきたいと考えております。
  283. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねて私はいま御答弁にあった方向へぜひその道を開くようにお取り組みをお願いを申し上げたい。  ちょっと時間が過ぎておりますが、もう一点だけ確認をしておきたい問題があります。  外務省出身の方は、大体ほかの省と違いまして、おやめになると、あとはどこかへもう雲散霧消されるという例が、それも言い過ぎかもしれませんけれども、そういう傾向が多い。やっぱり外交官生活を通して積まれたせっかくの貴重な経験を何とかおやめになった後でも、日本の将来の発展のため、あるいは外交展開の上から、一つの研究機関としてそういうところへお集めになって、もっともっとそういう方々のまだ働ける、あるいはその経験を生かしていける、そういう機構として一つの研究機関を政府機関としてぜひ設置をすべきではないかということを御提唱申し上げたことがございますけれども、恐らくまだ具体化しておらないんじゃないかというふうに思うんです。はっきり申し上げてもったいないと思うんですね。そうした方向へぜひお取り組みをいただくことも一つの今後の外交展開の大きなプラスになる面があるのではないかと、再度、この点確認をして、私の質問を終わりたいと思います。
  284. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省のOBですが、定年で仕事を終わられる場合、大体これからが役に立つというのが非常に多いわけであります。それから外交はやっぱり個人の交際と同じで、顔と申しますか顔見知りというのが非常に大事でございます。そこで、なるべく重要な国際会議等にはOBを、やめた人を登用するとか、あるいはそれぞれそういう研究機関にお世話するとかしておりますものの、そうではなくて、法人か何かを作って、それでこういう人が集まってお国の役に立つようなものはできないかといま具体的に知恵をしぼって検討しているところでありますが、いまおっしゃるようなことは非常に大事であると考えております。それから失礼でありますが、外交官上がりというのは割りにつぶしのきかぬことでありますので、そういう点も考慮をして、そういうりっぱな方がいつまでもお役に立てるようにやりたいと考えております。
  285. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 両件に対する本日の質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十一分散会      —————・—————