運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-05-28 第87回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十八日(月曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      上田  哲君     片山 甚市君  五月二十八日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     上田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 徳永 正利君                 秦野  章君                 二木 謙吾君                 三浦 八水君                 小野  明君                 片山 甚市君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        労 働 大 臣  栗原 祐幸君    政府委員        外務政務次官   志賀  節君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省条約局外        務参事官     山田 中正君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        厚生大臣官房審        議官       松田  正君        労働省労政局長  桑原 敬一君        労働省労働基準        局長       岩崎 隆造君        労働省婦人少年        局長       森山 眞弓君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局外        事課長      鳴海 国博君        法務省刑事局公        安課長      河上 和雄君        厚生省社会局保        護課長      山内 豊徳君        厚生省児童家庭        局児童手当課長  鏑木 伸一君        厚生省保険局国        民健康保険課長  黒木 武弘君        厚生省年金局年        金課長      長尾 立子君        労働大臣官房国        際労働課長    平賀 俊行君        労働省労政局労        働法規課長    岡部 晃三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(第八十四  回国会内閣提出、第八十七回国会衆議院送付) ○市民的及び政治的権利に関する国際規約締結  について承認を求めるの件(第八十四回国会内  閣提出、第八十七回国会衆議院送付) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定を修正補足する議定書の締  結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次  延長に関する千九百七十九年の議定書締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出)     —————————————
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、寺田熊雄君が委員辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。  また、一昨二十六日、上田哲君が委員辞任され、その補欠として片山甚市君が選任されました。     —————————————
  3. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 片山甚市

    片山甚市君 国際人権規約批准留保条項について、関係大臣にまずお聞きをいたしたいと存じます。  まず外務大臣でございますが、一九四八年に世界人権宣言が採択され、これを一対のものとして一九六六年に人権規約ができ、すでにA規約が五十八カ国、B規約が五十六カ国批准されておると聞いておるんでありますが、今日、現在、どのような状態でしょうか。
  5. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) お答え申し上げます。  A規約につきましては現在の段階で五十八カ国が批准承認をしております。B規約については五十五カ国が批准承認をしておるわけでございます。
  6. 片山甚市

    片山甚市君 わかりました。  わが国憲法平和憲法と称せられておることについて、そのゆえんと特徴を簡潔に外務大臣から述べてほしいと思います。
  7. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいまの御質問でございますが、平和憲法の精神がいかに人権規約等に実体的に反映しておるかという御質問でございますが、わが国は比類のない人権尊重国内憲法を持っておるわけでございまして、そういう意味では、人権規約の中身の大半においてすでに権利保障が行われておりますけれども、同時に、細かな点につきまして、A規約については漸進的に、B規約については速やかにこれをさらに推進達成することが期待されておるわけでございまして、今回の御批准によりまして、そのスタートラインにつくという意義があるかと考えておるわけでございます。
  8. 片山甚市

    片山甚市君 わが国憲法は、一般的に言いますと、平和憲法の象徴的なものとしては第九条について広く国民に知られておるところでありますが、憲法第三章国民権利義務の項の第十一条の基本的人権、第二十八条の勤労者団結権など、いわゆる基本的人権を非常に尊重したということにおいてこの平和憲法が特徴づけられておると私は思うのでありますが、いまのお言葉と変わりがないかどうか、もう一度お尋ねいたします。
  9. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 委員の御指摘のとおりと存じております。
  10. 片山甚市

    片山甚市君 特に国際人権規約関係する条文について、基本理念はどのように述べられておりますか。
  11. 志賀節

    政府委員志賀節君) 一九四五年に作成された国連憲章は、国際の平和と安全の維持とともに、人権及び基本的自由の尊重を助長奨励するための国際協力の達成をその目的一つとしており、人権規約は、かかる目的を達成するために国連国際権利章典の一部として作成したものでありますが、その根底には、世界の平和のためには人権及び基本的自由の確保こそが必要不可欠であるという認識があるわけであります。
  12. 片山甚市

    片山甚市君 人民基本的人権を大いに伸長させ、官僚あるいは政治家人民を支配し統治するものとは対立した、いわゆる人民基本的人権からつくり上げられているというのが国際人権規約基本理念と大体考えてもよろしゅうございますか。
  13. 志賀節

    政府委員志賀節君) よろしいと思います。
  14. 片山甚市

    片山甚市君 ありがとうございました。  このような憲法を有するわが国が、今日、ようやく十三年ぶりで国際人権規約批准しようというに当たりまして、なお留保条項を付している点について、これから質疑をしたいと思います。  先進諸国と言われる国のバロメーターは単に経済的優位性を誇るところにあるのかどうか、そうでないと思うのであります。このような普遍的権利基本的人権を認め合う国際規約さえも批准できない国——カーター人権外交などと宣伝しておるけれども、アメリカはよほど暗黒社会の一面を有する国ではないかと私は思うのであります。友邦であります、わが国盟友国で一番頼りにしておる、どこの国よりも命かけて大切にしなければいかぬのはアメリカだと外務省も思っておるようでありますが、その国がまだこれを批准しておりません。そういう意味では、国際的な警戒心を高めるためにそれはそれで意義がある。今度の批准というものについてはやはりそれだけの意味があると思います。しかし、批准をするために、体裁を整えながら、ことさら留保条項を付することについては理解ができません。ほかの先進諸国扱いも含めて外務大臣の所見はどうなっておるかお聞きをしたいと思います。  いわゆる先進諸国では、留保条項をつけておる国はどことどこか。今度サミットで来ますね、東京へ。わざわざおいでくださる、お暇だから。そのお暇な節に、その国はいわゆる留保条項をつけておるかどうかちょっと聞きたいのですが、お答え願いたい。
  15. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 米国の態度でございまするが、これは一昨年すでにカーター大統領国連本部に出かけまして人権規約に署名をしておるわけでございまして、国会で間もなく審議が始まるものと考えておるわけでございます。  それから先進諸国留保は、これは読みますと大変時間がかかりますので、恐縮でございますが、お手元に資料を、差し上げることでお許しいただけますでしょうか、それともこれを全部読み上げますか。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 よろしゅうございます。資料はいただいています。  A規約第二条1項には「権利の完全な実現を漸進的に達成するため、」としておりますか、留保条項は将来とも漸進的にさえもその実現を図る意思のないことを表明したということではないかと心配するのでありますが、漸進的にやるつもりでありますか、留保条項は。
  17. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 純粋に法理論的な解釈として申し上げますると、この第二条の「漸進的」と申しますのは、受諾いたしました目的を完全に達成するために漸進的に措置をとってよろしいということでございますが、留保と申しますのは、御高承のように、条約につきまして右するか左するか全く白紙状態を表明したものでございますので、漸進的項目留保項目とは法理論的には関係のないことでございます。
  18. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、留保条項については、将来の諸般の動向を考えて検討するなどということについて、衆議院ではいわゆる要望決議をつけておるようでありますが、全く留保条項については今後とも考えない、こういう考えでよろしゅうございますか。そういうようないまの外務省考えだとお尋ねしてよろしゅうございますか。
  19. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいまお答え申しました点は純粋に法解釈でございまして、留保ということに関する限りは、法律的にはそういうことでございまするから漸進性規定はかぶらないわけでございまするが、政治的な別個の次元におきまして、人権規約全般にわたりましていろいろな判断が今後行われ、社会の変遷、推移等に対処するような判断が行われるということはもちろん排除していないわけでございます。
  20. 片山甚市

    片山甚市君 提案理由説明にありますところの「わが国現状にかんがみ」「留保」したとは、この部分に限ってのみ国内的に成熟していないということですか。
  21. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) これらの留保条項につきましては、わが国国内法規定その他に参酌いたしまして、現在の段階では、留保することが適当であるということを政府において全般的に判断をしたためと考えております。
  22. 片山甚市

    片山甚市君 「わが国現状にかんがみ」「留保」したのは、この三点を中心としたものでありますけれども、特にこのうち従来からILO等から指摘をされてきた問題でありますけれども、国際的ないわゆる問題としてどうしてもこれを受け入れることはできない、こういうようにいま考えておるところですか。
  23. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 留保条項につきましては、法条約的な解釈におきましては、この留保条項としましたる項目のいずれにつきましても、現在の段階では、わが国としては有するか左するかを決めることができない白紙状態であるということを表明したものと考えております。
  24. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、後からその内容について質問いたしますが、二つ目に「公の休日についての報酬——A規約第七条(d)ですか——の項を留保した理由は何ですか。
  25. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 条約に言います「公の休日」というのは、わが国の場合に国民祝日がこれに当たるというように考えられますけれども、わが国現状では、国民祝日を休日としている企業でありましても、これについて賃金を支払う旨を労働協約なり就業規則で明らかにしている例は少ないわけであります。こういう現状と、それから賃金決定は本来労使話し合いにゆだねるべきであるということを考え合わせますと、休日とされました国民祝日について賃金支払いを強制することは適当でないということから、公の休日について賃金支払いを義務づけている条項留保したものでございます。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 いまの労働省のお答えは至って不適当でございまして、労使で決められるという数は五千六百万人ほどおります労働者のうちの三分の一で、三分の二はいわゆる労使という関係でございませずに、いわゆる組織がございませんから、使用者と被使用者というのは力関係が違います。そういう点では、労働省というのは、大きな組合、大きな企業、これについて顔を向けておればいいという考えだということがよくわかりました。私は、公の休日について報酬を与えることについて聞いたのでありますけれども、いわゆる労使関係で決められるような問題でない、こう思っておるんです。返答要りません。  大体、労働省というのは、そういうように勤労者の三分の二に対しては冷たい団体であって、残りの三分の一の、しかも強力にストライキをするとか暴れられるとかいうところには顔を向けておる団体である、こういうふうに理解をしておきます。  外務省に聞きますが、A規約は、定期的な有給休暇及び公の休日に対する報酬人権として保障するとしておりますが、わが国実態として、特に不安定労働者、いま申しましたいわゆる中小零細、五人未満のいわゆる厚生年金あるいはそういうのの対象にもないような方々を含めてでありますが、休日給を受けられない実態はどういうようになっているのか、労働省厚生省、これは両方ともどういうようにA規約の「公の休日についての報酬」を留保したときに協議をされたか、これは労働省よりも、まず、この規約外務省がやっておるのですから、外務省はこのことについてどういうように労働省から聞いておるか、まず外務省に聞きます。
  27. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 第七条の御協議段階におきましては、「公の休日についての報酬」を支払うことについて、現在の段階におきましては、ただいま御答弁ございましたように、労使間の合意にまつべき部分が多くて、これを法律において強制するごとき事態ではないという御判断と承っておりますし、その他の先進諸国におきましても、若干の国でこの項目留保しておる国もございまして、そういった全体的な判断において、その留保内容がしかるべきことと考えまして、御協議の上、留保さしていただいた次第でございます。
  28. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 現在、全労働者のうち、国民祝日が休日だという形になっておりますものが大体三分の二でございますが、その中で私ども賃金支払い形態によりまして、月給制で、現実に休んでもその都度差し引かれないというような形態のものが労働者の三分の一ぐらいでございまして、あとの三分の二ぐらいは日給月給制ないし日給制というような形になっておりますので、現実問題として、公の休日に報酬労使の慣行として支払われているという割合が非常に少ないものと、こう考えておりますので、直ちに賃金支払いを強制するということは適当でないという観点から、このような判断をしたわけでございます。
  29. 片山甚市

    片山甚市君 国民の健康、生活文化の向上に寄与する祝祭日がふえ、週休二日制が労働協約の基本的な態様となりつつあるときに、労働省初め国の政策がいわゆる強められているからではないか。国が週休二日制あるいは祝祭日をふやしてきたということでありますから、それにふさわしい措置をとるべきだと思いますが、労働省はどうお考えですか。
  30. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 週休二日制を漸次実情に即しまして推進をしていくということについては、私ども好ましいと考え推進をしているわけでございますが、その週休二日制の場合に、その休んだ休日を賃金との関係でどのように取り扱うかということは、先ほど申し上げましたように、やはり労使が自主的に決定すべきことだというふうに第一義的には考えております。  ただ、労使が話し合う際に、そういった休日の場合に、これを必ずしも収入減にならないような形で労使が話し合っていっていただくべきことが好ましいという観点から、私ども、指導をいたしておるのが現実でございます。
  31. 片山甚市

    片山甚市君 先ほどから言いますように、労使関係などあるのは日本の国では三分の一の労働者であって、三分の二は労使関係じゃなくて、親方の言うとおりやらなければあしたから首切られるといいますか、ほうり出されるようになっておる。労働報酬は一方で生命の維持労働力の再生産、健康で文化的な生活を営む保障のものだとすれば、公の休日ということは、就労しないでもよろしい、そのかわり飯を食うことについては心配しなくてもよろしいということが人権を守ることだと思いますが、いかがなものでしょう。
  32. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 労働者労働福祉という観点から、たとえば経済の成長あるいは企業の発展というものの利益を労働者使用者とともに享受すべきことは当然でございますし、それが労働福祉の面で、たとえば休日増になるかあるいは賃金増になるかというようなことの選択は労使が自主的に御決定いただくということが好ましいと思っております。  ただ、私ども、必ずしも賃金の上昇ということではなしに、休日増という形で週休二日制なり労働時間の短縮なりというような形のものが漸次浸透していくことが望ましいという観点から指導しているわけでございまして、休日の増が直ちに賃金の減収になるというような形で現実労使話し合いをして週休二日制なり休日増なりを行っているという例はむしろ少ないわけでございます。賃金の純増という形にするか、あるいは休日をふやすことによって、相対的な形で賃金と休日との関係において、労働福祉が総括的に向上していくという形での労使話し合いによって現実には週休二日制等推進されているというのが現実だというふうに理解しております。
  33. 片山甚市

    片山甚市君 何回も言うているように、労使関係のあるようなものはほうっておいてもいいんですよ。賃金の問題にはくちばしを入れないのがあなたたちの主義でしょう。いいかっこうばかり言うて、春闘になれば、賃金決定になれば、それは労使問題ですと、こう言っておるんだから。  私は、公に休暇をふやす、こういうことになれば、週休二日制をしくというようなことは、労働力の再生産の問題もあるし、経済活動関係もあるし、雇用の安定のこともあるしということで、いわゆる週休二日制などが推奨されたり、定年延長の問題が留保されたりしておるんでありますが、公に休ますという以上は、賃金支払い形態でこれらの休日になった場合には、実質的な恩恵を受けることのない者は、休暇がふえるために収入が減るということはないですね。いま、先ほどから、減らないようにしたいと思いますと言っておるけれども、三分の二の人に言っておるんですよ、新日鉄みたいな巨大な企業で働いている人たちのことなんか私の頭の中には一つもないんです。むしろ、そこらの五人か四人かで働いておる人たちのことを考えたらどうなのか、もう一度聞きます。あなたの仕事でしょう。
  34. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) たとえば現実に月一日にせよ週休二日制の増という形で行いました企業、これは大企業に限らず、中小企業におきましても、たとえば日給制のものにつきましては、その休みの日を有給扱いにする、あるいはまた、その日は有給でない扱いにするにしても、そのかわりに出勤をしている日の賃金の日額をある程度増にするということで、トータルでその月の収入が減らないように、あるいはふえるようにという形で休日増が行われているというのが私ども見ている現状でございまして、これは必ずしも大企業のみならず、中小企業の規模においても同じようだというふうに把握しております。
  35. 片山甚市

    片山甚市君 押し問答はこのぐらいにしておきますが、とにかく実態はまた明らかになるでしょうから、私はそういうふうになってないという立場から聞いておるんです。あなたの方は実質的に恩恵を受けておる、休んでも食べられるように、全体としてお金をもらっておる、こう言うておる。  日雇い、パート、季節労働者など不安定労働者、あるいは中小零細企業労働者現状にかんがみてみますと、この人々の人権を守る立場から言えば、先ほどから言われるように、単に労使問題として片づけられるべきではなく、国が決めた公の休日に生活を脅かされないで休める法制化が当然だという立場から意見を述べておきます。  同じことはよう言わないんです。そんなことを言うと、また首になるかもわからぬから、危ないでしょう。もし大臣の方からこれより変わったことを言うなら別ですが、おっしゃらないでしょうから、やめておきますが、大体そんなものです。むずかしくなったら労使関係だ、こう言います、労使関係で決めてくれと。楽なことというか、落ちつける問題は一生懸命に法律をつくって締めつける。締めつけの法律はできるけれども、守る法律はできない。こういうふうなのが今日の労働省だと考えますから、いままでは、労働省と言えば温かくて、そういう組織労働者ではなくて、労働組合もできないような人たちを守る省になってほしいと、大きいスピーカーを持っておる者の言い分よりも、声が出せないような者をどうするのかについて一生懸命やってほしい、こう思っておる。そのために労働団体などというふうな団体があるんですから、彼らは勝手に少し仲よくやればいいんですよ、それで資本家にまとまって当たればいいんですよ。自分たちが四つも五つも分かれておって、資本家とけんかをせずに労働省に頼みに行くようなことはまさかすまいと思うけれども、ときどきやっておるんじゃないかと心配しておるんです。わかりますか。労働界だって、大体、この問題をどう取り扱うかということになると余りさっぱりした意見はありませんから、議員として言うておるんですよ。私は、議員として、一国民として、小さいところに力を入れてくれと言っておきますから、答弁は要りません、岩崎さんに何遍聞いても同じことしか言わぬようになっておるようですから。  企業から言えば、これら低賃金構造を再編成し、さらに休日などに対する無権利的状態をつくることは好ましいことであり、国がそれらの要望にこたえ、措置をして留保したと理解してよろしいか。あなたは何とかしておるはずだと言っておるけれども、具体的な改善策が示されなければそう思いますが、いかがでしょう。私の言い方は、企業から言えば低賃金構造をこれから続けていけるようになれる、休日がふえてもお金を払うか払わないかというようなのは労使関係だと、無権利状態だと、権利をそれじゃ組織のない者はどういうように発揮できますか、労使交渉を政府がかわってやってくれますか。そのために、先ほどから言うように、法制化と言っているわけです。
  36. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 私ども、その週休二日制の問題にいたしましても、あるいはいまの先生の休日増という形にいたしましても、一昨年、中央労働基準審議会の公労資一致の御建議をいただき、また、昨年、衆参の両院からの行政指導推進ということでの御決議もいただいておりますので、そういう観点から行政指導を地方段階であるいは本省段階で強力に推進していこうという考え方を持っております。  これは特に中小企業に従事する労働者、あるいは先生のいま御指摘のような不完全就業と申しますか、そういうようないろいろな雇用形態の方々にも、そういった意味での労働福祉観点、その他の観点からの休日増というようなことが推進されることは好ましいということでございますので、特に地方段階では、たとえば業界ぐるみ、あるいは地域ぐるみ、あるいはまた系列関係のグループでいろいろな形での集団指導ということを中心にいたしまして、話し合い指導を続けております。したがいまして、そういった成果として、労使が合意と申しますけれども、それは未組織労働者も含めましての形で、いろいろな形の推進が行われることを期待しつついま指導をしているわけでございます。
  37. 片山甚市

    片山甚市君 未組織労働者というのは、競争関係にあるだけじゃなくて、砂地のようにばらばらに五人とか六人ずつおって、お話し合いをする力がありません。ナショナルセンターと言われるようなものがあって中小零細企業組織しようとしてもできない理由は、それは商売上の関係もあります、お仕事の性質もあります。それらを包括的にガバメント、政府が拾い上げていくということが大変日本国民人権を守るものだと思う立場で申しました。これ以上言いません。  そこで、次の問題ですが、公共部門を含む労働者の争議権について、すでにILO等においても国際法上の確立した人権となっていると思うが、どうか。これはお答え願いたいと思います。
  38. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 公共部門におきます争議権の問題につきましては、長い国内的な歴史もございますし、ILOにおいてもいろいろと問題が提起された問題ではございます。私どもの承知いたしました関係では、ILO条約において争議権について触れておる条約はないというふうに考えております。八十七号条約あるいは九十七号条約については団結権あるいは団体交渉権については触れてございますけれども、争議権については特に条約では規定をいたしていない、こういうふうに承知をいたしております。
  39. 片山甚市

    片山甚市君 わが国憲法において、生存権的基本権でもある労働基本権が完全に保障されていながら、現状は、法理として憲法違反と言えるような多くの制約があると思っておるんですが、いかがでしょうか。
  40. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 労働基本権につきましては憲法において制定がされておるわけでありますけれども、一方において、公共の福祉との調整において国内法が決められていることは御承知のとおりでございます。したがいまして、一般的には、民間の労働者を中心にいたしまして労働三法において労働基本権がきちっと制定をされ、憲法に適合しているというふうに考えるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、官公労関係の問題につきましては、そこの職務の公共性、地位の特殊性等から、争議権についてはこれを禁止いたしておるというのが国内法のたてまえになっております。
  41. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、官公労働者の争議権というものについては認めておるが、法律で禁止をしておる。権利があることを認めておるが、行使をすることについて剥奪をしておる、こういうふうに理解をして質問したいんですが、ドライヤー勧告などを踏まえ、第一次公務員制度審議会、昭和四十年十一月一日以来、十三年にわたる第二次、第三次公制審、さらに専門懇、基本問題会議へと昭和五十三年六月十九日まで引き継がれた議論に、一体、何人の審議委員、何回の会議を持ったのか、どのぐらいのいわゆる必要な措置をとられたのか、データがあればお示しを願いたい。
  42. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) お答え申し上げます。  ILO八十七号条約批准を契機にいたしまして、先生御指摘のとおりに、昭和四十年十一月に公務員制度審議会が発足いたしたわけでございます。これは公労使三者構成でございまして、約二十名の審議会において意見が交換されまして、四十八年の九月に、いわゆる三論併記という形で全会一致で答申が行われたところでございます。その後、公務員等の争議権問題が大きな争点となりました四十九年の春闘におきまして、政労口頭合意が行われまして公共企業体等関係閣僚協議会が設けられまして、そこに労働界二人を含む学識経験者二十名から成ります専門委員懇談会が発足したのでございます。この懇談会は五十年の十一月に意見書を取りまとめて提出をしたところでございます。それから、それに次ぎまして、翌五十一年一月に新たに公共企業体等関係閣僚協議会が設けられまして、経営のあり方、当事者能力の強化、関係諸法令の改正という三点について検討を行いますために公共企業体等基本問題会議が設置されまして、ここまでは三懇談会、八部会、九十七名に及ぶ委員を委嘱したわけでございます。この基本問題会議は五十三年の六月に意見書を提出した、こういう経緯であると承知いたしております。
  43. 片山甚市

    片山甚市君 基本問題会議には九十七名おられるんですが、何回審議をされましたか。
  44. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 基本問題会議は延べ百七十六回にわたる会議を重ねたと承知いたしております。
  45. 片山甚市

    片山甚市君 これらの審議はどのような方向を模索しようとしたのか。すなわち解決するということは、憲法に言う労働者の基本的権利労働三権を確立させるために、いつまでに、どのような方法でやるのかを求めたのかどうか。何をいわゆる解決しようとしたのか、お聞きいたします。
  46. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 先生お尋ねの件につきましては、五十二年の十二月二十七日、政労会談において了承されておりますように、この問題の解決を図るというふうな了解のもとに行われているというふうに考えております。
  47. 片山甚市

    片山甚市君 労働者の基本的権利の問題を解決するのでありますね。
  48. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) そのような文言と承知しております。
  49. 片山甚市

    片山甚市君 今日までの遅々とした審議の経過とともに、今日もなお、労働者の基本的権利を否定しておきながら、一方で労働者に死ねという命・令に等しい解雇を含む法的制裁を加え、すべての責任を労働者に転嫁しようとする国が何が民主国家かと言いたいのですが、いわゆる基本的な権利というものを否定をしておるというように考えませんか。
  50. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 現行法につきましては、先ほど申し上げましたように、憲法規定にのっとり、また国内法の調整に基づいて、公務の特殊性、公共性ということから禁止をされておると思うわけであります。これにつきましては、御承知のように、最高裁の判例でも適合だということになっておりますし、また、そういった法違反につきまして一定の処分が行われることはやむを得ない、こういうふうに考えるわけでございます。
  51. 片山甚市

    片山甚市君 最高裁の判例が出たようでありますから、これから都合の悪い最高裁の判例が出たときも守ってください、いいときだけ話をせずに。  たとえば原爆の問題については、これはちゃんと一つの方向が出て、原爆被爆者援護法をつくれ、いわゆる国の責任である、こういうような最高裁の判決が出ていますね、それでもまだ実際において手がつけられていない。あなたの管掌じゃないから私は一方的に言いますが、大体、日本のいわゆるテクノクラートを中心に官僚というものは人民を抑圧するためであっても、人民に対する喜び、生活を楽しませるというようなことにはならない、こういうふうに私の方はこの五年間の議員生.活で体感をするところです。  大きな労働組合は物を言っていますけれども、いわゆる労働組合のないようなところでは大変だと思う。官公庁でもそうですが、国家公務員の組合がばらばらでしょう。大体使用者一つでありながら、総理大臣が一人しかおらないのに、各省別の労働組合でばらばらで、まとまった意見も国家公務員さえ言わない、言えない。重要だから言えないようにしてある、これはわかりますけれども、そういうように思いますから、これ以上批判は——労働組合に対する批判はこれはしておきますけれども、意見を述べておきます。  そこで、公務員の範囲ですが、どうなっていますか。各国のそれと、労働の態様の違い、特徴的なものを示してほしいんです。日本の国では草刈りのおばさんも含めて、全部、大体公務員ということの範囲に入っておりますから、非常に厳しい制約があるようでありますが、それはどういうようにお考えですか。
  52. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 人権規約の中に「公務員」という言葉が使われておりますが、この点につきましては、法令に基づき勤務条件を保障されている者、すなわち国家公務員及び地方公務員を考えております。
  53. 片山甚市

    片山甚市君 外国も同じですか。
  54. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 外国の場合に、どういうふうに考えておるかというのは、その国の法制等で一様でございませんけれども、たとえばこういうものの中に、日本で言います公社、公団の職員とか、あるいは公共企業体等の関係の職員等も入れているところもございます。また、そうでなくて、官吏といいますか、そういうような考え方に立っているところもございます。
  55. 片山甚市

    片山甚市君 各国でそれぞれ違いがあるということを言えばいいことであります。日本の国では、公務員の範囲を、いわゆる三公社五現業を含めて政府機関——国家公務員、地方公務員という枠の中へ入れておるというふうにいま聞きました。  基本問題会議は、経営形態が変わらない限り、現状のままでということでありますが、スト権付与は困難だということでありますけれども、それでこの答申に基づく作業はどのように進行しておりますか、いま、その結果。昭和五十三年六月二十一日にそういうようなスト権付与は困難であると述べて以来、それからはどうなっていますか。
  56. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 基本問題会議意見書のその後の作業がどうかというお尋ねでございますが、この意見書は御承知のとおり大きく分けて四つの部分から成っているわけでございます。  一つは、労働基本権の関係部分でございますが、これは現時点において争議権を認めることは適当でないということでございますが、しかし、労使関係の正常化こそが本来の課題であって、政府関係労使が参加する適切なその話し合いの場を設置するというふうな環境づくりに努力すべきであるというふうな指摘がございますので、これに基づきまして公共企業体等労働問題懇話会——公労懇を設置しているところでございます。  それから経営形態関係でございますが、これは国鉄の一部それから専売公社それからアルコール専売事業については、経営形態の変更を行ってはどうかという示唆も行われております。これにつきましては関係各省において、それぞれ検討中の段階でございます。  それから当事者能力関係、法令関係につきましても、それぞれ今後の改善案が示唆されておりまして、これにつきましても関係各省におきまして、現在、検討中という段階でございます。
  57. 片山甚市

    片山甚市君 同盟罷業すなわちストライキという争議行為とストライキ権という労働者の基本的権利とをわざわざ混同させ、ストライキ権すなわちストライキということで、いたずらに国民の不安をかき立てる動きがあるけれども、これに対する所見を、これは労働大臣にお答えを願いたいんです。ストライキという争議行為というものと、いわゆる国民が持っておるストライキ権というものとを混同させる必要はないと私は思っておるんですか、いかがでしょうか、大臣
  58. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) 先ほど政府委員からもお話がありましたとおり、憲法では労働基本権は認めておる、ただし、いわゆる三公社五現業、そういったものにつきましては、公共の福祉との関連において争議権を認めない、しかも判例はこれを支持しておる、そういうことでございまして、別に矛盾ないと思います。
  59. 片山甚市

    片山甚市君 矛盾がなければ、後からも質問いたしますけれども、いわゆる公企体等労働問題懇話会——労相の私的諮問機関、中山伊知郎さんが持っておる公労懇などというようなことをしていろいろと意見を聞かなけりゃならないことはないはず。大体、いま賃金の問題について話をする一とはないんでありまして、私はあなたの御答弁については満足いたしません。  なぜならば、労働組合というのはどういうのか教えたと思いますが、団結ができて、それで団体交渉ができて、そしてそれに対してイエス、ノーということを表現ができることが三つあって初めて労働組合の五体満足なものになる。代償措置として人事院勧告があるとか仲裁機関があるとか、いろんなことを言っておるけれども、それはいわゆる人の心臓を借りたような、臓器の移植のようなものでありまして、本来、労使というものは——あなたたちが、特に国家公務員とか地方公務員が信用ならぬ、ストライキ権を渡したら、明くる日からもうストライキをやって国家転覆でもするんじゃないかと治安的な考えを持っておることは明らかである。こういう考えだから、弁護人抜きの裁判などというものを出してみたりする。つまらぬ、信用しない、ごく一部の人の中にもいろいろありましょう、弁護士の中にもありましょうし、労働者の中にもありましょうけれども、国民のいわゆる大きな判断というものは、そういうようなものについて、幾つかの波はくぐり抜けても訓練を得るために正常な、民主的な手続をとるに違いない。にもかかわらず、あなたの一番近くにおる労働省の職員とか厚生省の職員が、ストライキ権というものをもらったら、明くる日からストライキをするように思い違いをされるようでありますから、これほど信用のできない者を雇っておるということだけ確認しておきます。よろしいな。ストライキ権を渡せば、すぐに明くる日からストライキをして日本の政治をとめるに違いないという自信と確信があるから、このことについて大変な苦労をされておる。御苦労さんです、そうですね、大臣、私はそういうふうに聞きますよ。
  60. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) あくまでも、私ども、国家公務員、地方公務員、それから公企体に働く者たち国民に対して奉仕をしているわけでありますから、そういった面についての十分な調整をしながら実定法というのはつくられていると思いますし、そういう意味において憲法においても規定を置かれ、また最高裁においてもそういう憲法適合の判決もしておるわけでありまして、それ以外の思惑で、私どもはそういった実定法ができているというふうに思っておりません。
  61. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) いま政府委員から話がございましたけれども、これはもう職務の公共性とそれから地位の特殊性、そういう観点からの制約でございまして、信用相ならぬからというようなことはございませんので、念のために私からも申し添えておきます。
  62. 片山甚市

    片山甚市君 戦後、産業が荒廃をしたといいますか、アメリカ軍の爆撃で産業が全部つぶれた時分に、残ったのは官公労労働者だ。ストライキに手をやいたマッカーサーが政令二百一号を出して、それが今日になっておるんでありますから、何と言われても納得できません。大臣のお気持ちはわかった。だけれども、本当の腹は一番身近におる者が一番こわいと、何をするかわからぬと、そうでしょう、労働省とか厚生省とかにおるような人たちがストライキ権が行使ができない、こういうようなことになる、ストライキをするんじゃない、対等に団体交渉をする権利を持つ、これがこわい。西ドイツへ行っても、どこへ行っても、それぞれに、協会になりましょうか、労働組合という名前のでも、大臣以外は全部協会、団体を持って、自分たち賃金とか労働条件について意見を述べるようになっておる、こういうように思いますから、私は、大臣が信用してないんではない、信用しておるんだけれども、法のたてまえからそういうように決めておるんだ、こう言われるところについては納得しないけれども、御答弁はいただいておきましょう。  さらに、経営形態とストライキ権とは直接関係ないと思いますが、このような討議のたて方は、結果的にストライキという行為がやられてもよい、あるいはやられてはまずいというための対症療法的避難措置でしかない、問題の本質をすり変えて結論を引き延ばす考えだと思うんで、いわゆる経営形態関係はないと思いますが、いかがでしょう。
  63. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 先ほど申し上げましたように、争議権というのが禁止されているのは公企体の職員の職務の公共性、地位の特殊性からきているわけでございまして、それがもし民営という形の中でいわゆる市場原理が貫徹される一つの経営形態になれば、それはまたスト権の問題を当然に議論してよろしい、こういうような考え方だと思います。
  64. 片山甚市

    片山甚市君 気の長い話でありますから、次のことに入ります。  ILO第六十四回総会で採決されました百五十一号条約及び百五十九号条約について、わが国はどのように対処してきましたか。すでに本文が届いておれば、これを受けてどのように対処されようとしておりますか、百五十一号と百五十九号についてです。
  65. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 御質問になりましたのは、六十四回の総会で採択されました公務に関する百五十一条約とそれに伴います勧告、こういうことであろうかと思います。  この条約及び勧告は、公務、これは非常に広い意味で、たとえば先ほど私が申し上げましたように、公社・公団の職員に類するものから国家公務員に至るまでかなり幅の広い公務に従事する職員の取り扱いといいますか、労働条件の決定手続等について定めた条約及び勧告でございます。昨年、採択されたばかりでございますけれども、わが国の状況等によって判断しますと、いろいろ具体的に問題等がございますので、関係各省等とも十分に相談をしてまいりたいと思っております。
  66. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど申しました公労懇——公共企業労働問題懇話会の設置は、今日までの根深い問題を解決しようということでありますが、いわゆる一応の解決のめどを立てるためにどのようなことを考えられておるのか、どのような状態なのか、お知らせを願いたいと思います。
  67. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 公労懇につきましては、昨年の六月の意見書に基づきまして設置をいたしたものでございます。特に、そこで指摘をされておりますのは、公企体における労使関係というものは国民的な観点から見てきわめて問題がある、これはやはり早く正常化をすべきであるというような御指摘がございます。私どもといたしましては、この公労懇の運営に当たりましては、労使関係の改善に少しでも役立つように運営に努力をいたしてまいりたいと思います。したがいまして、この運営につきましては幹事という制度をつくりまして、当局、労働組合、公益の方々が十分に事前に御相談をいただき、その合意によって議事を運営をしていっているようなわけでございます。  これまで三回やっておりますけれども、きょう実は朝やってまいったわけでありますけれども、労使の方々が腹蔵なく意見を述べ合い、そこでお互いに信頼関係が確立されるということを実現すべく最大の努力を私どもとしてもしてまいりたい、こういうような考え方でございます。したがいまして、そういったこれからの問題でございますので、具体的にいつごろまでということでなくて、期限を付すことなく、これから関係者の御希望を十分に入れながら会議を運営してまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  68. 片山甚市

    片山甚市君 中山会長は大同団結を訴えられて三回これで行われておるんでありますが、非常に危惧をいたしますのは、会議は行うけれども、その中で相互の信頼感、信頼を深められるような状態をつくり出していけるのかどうかですね。非常に微視的なといいますか、ミクロ的な立場に立って労働問題を見るのか、グローバルな国際的な立場でいま日本の国が置かれでおる状態考えて公企体の労働者を見るのかということによって一変をしてまいろうかと思うんです。  電力問題一つとってみても、いまのような形であれば、国鉄だ、やあ私鉄だ、やあバスだ何とか言っておっても、電気、ガス、石油が来なくなれば明くる日からどうなるのかということになりましょうし、それから、もう少しそういう点でストライキはすべてもう決定的ないわゆる罪悪であって、世の中にある諸問題について、ある団体はストライキ絶対反対でいく、ある団体はストライキさえやれば物事は解決するんじゃないかと考える。そういうようなものについて、これは社会的に言えば固有の権利であって売り渡すことのできないものであるから、使うか使わないかということの前に、労使で話し合うといいますか、十分な成熟した民主的な手続をとるような考え方に立てば、ストライキ権というものを認めても困難でないと思う。しかしながら、いまの段階でストライキ権を認めれば、必ずむちゃなことが行われるに違いないということの労労の間の不信、労使の不信、政府労働者の間の不信、その三者三様があると思いますが、大臣、いかがでしょう。
  69. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) 公労懇は、きょう私もやってきたわけですけれども、私はこれで二回目です。  交流ができましたゆえんのものは、労使の間にきわめて大きな不信があるということから、その不信を除去、解消することが最大の目的一つだろうと思うのです。そういう意味では、これは回を重ねなければいけない。私は産労懇というのにももちろん出ておりますけれども、産労懇は回数を重ねるごとにお互いに労使の方々、学識経験者が入りましていろいろと話をする。世の中に接すれば情を増すという言葉がありますけれども、非常にこなれてきましたね。この公労懇におきましても、大局的な見地からグローバルに、日本のことだけ考えない、あるいは自分のところの部分だけ考えない、総合的に考えようという芽生えが私はできつつあるのではないかと思うのです。そういうことの中からいろいろ今後の発展があるのであって、いまここで直ちに個々の個別的な問題とか、あるいは高度の政治的な問題については、お互いにこれは触れずに総合的にいこうといういまの公労懇の態度というものは非常に結構じゃないかと思うわけです。もう少し時間をかしていただきたいと思いまするし、また、かすことが今後の労使の間の進展に役立つものと思いますので、時間をかしていただきたいと思います。
  70. 片山甚市

    片山甚市君 結局のところ、幾ら議論をもてあそんでみて双方が理解をしたということになりましても、憲法二十八条をどういうように具現をするのかという決断をして、そのためにどのような内容で討議をするかということでなければ、第一次制度審が始まって十三年の長きにわたりましたことがこれからも続くと思います。  私は、公労懇について批判的な立場をとる意思はございませんけれども、あれだけ考えの違う、もう道で会っても物も言わぬ人間が集まっておるんですから、大変りっぱなお仕事だと思いますね。大体皆さんとはやあやあと握手しても、自分と違う組合とだったら足けっても知らぬぷりして歩くという、こういう労労関係がございましょう。こんなことを言う社会党の国会議員はおりませんでしょうが、とにかく私はそう思うんですね、大体敵を間違うておるんじゃないか、考えが違うたらすぐに引っぱり出す。もう少し日本の国の現状国際的によく見てもらえるような労働組合になろう、大同団結しよう、こういうようなことがなければ大変だと思う。その立場からストライキ権という権利を認めるかわりに、行使の問題について十分な配慮のできる良心を持った団体が育成できるようないわゆる社会環境をつくるべきだというのが私の説で、私は大体右寄りの人間と言われるか右翼と言われるか、どうもケネディ、ライシャワー路線の人々、日本労働運動を毒した人々と、亡くなった斎藤一郎というような人から言わせると、いわゆる労働貴族の列に列せられた人間ですから、そう思いますから、ひとつ考えてもらいたい。  一体、いつまでのめどを持って労働者が納得する結論を出すのか。国際人権規約留保条項を出されまして白紙だと言われましたが、百歩譲って、これをやむなしとしないで、何としてもその解除する時期、方法についてあなたたちはどういう時期を待ちたい、このぐらいはきょう示してもらって、私の信頼する理事である田中先生の方から附帯決議をつけていただけるようにお願いしたいところなんです。いわゆる時期です。この間みたいに、わけのわかったようなわからぬようなこと、あれで精いっぱいですよね、衆議院なら。しかし、参議院はそうでないんですから、私らは。そんなむちゃなことしませんよ、良識の府ですよ。衆議院だって良識の府ですが、よりベターに良識の府なんですよ。ちょっと答えてください。めどを大体どういうふうにしたいか、希望があれば公労懇やっておっても何とかそうしようじゃないかと、こういうようにひとつ考え方を述べてくれませんか。私はいい答えというよりも、そう希望します。
  71. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) 留保の問題といいますか、条約全体の問題につきましては外務省からのお答えが適当だと思いますが、公労懇について申し上げますと、いま申し上げましたとおり、これは始まったばかりでございます。ですから、この段階でいつまでということは申し上げられません。それと同時に、これはやはりいろいろむずかしい問題がございますけれども、論議を重ねている間に一応雰囲気というのができてくるものですよ、だんだんと。その雰囲気が出てきますと、その雰囲気がある程度のところへきますと、多少そこに不満がありましても、大勢はこっちにあるというのは決まってくると思いますので、そういう意味合いでこれは公労懇についてはいついつまでということは申し上げられません。積極的にこれを活用して労使話し合いがうまくいくように努力をいたしたい、こう考えております。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 外務省のお答えの前に、もう一度大臣に聞きますが、できるだけそういうように解除ができる方向といいますか、解決ができる方向に努力をしたい、こういうことでよろしゅうございますか。
  73. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) そういうという意味がよくわかりませんけれども、私の方は労使の不信感を取り除いて、お互いにフランクに話し合って問題解決ができるような、そういう環境をつくる、こういうふうに思っております。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 憲法二十八条に基づく権利が付与されても、なおかつうまくいくように考えられますか。
  75. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) それは先ほどから申し上げているとおり、現時点において述べるわけにはまいらないということでございます。現時点においては適当でないという答申をいただいておりますので、それに基づいて政府がこれを尊重しているわけでございますから。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 外務省に聞いても同じいやなことを聞くんでしょうから、そんなことで何ぼやっても、葬式の日に坊さんが来てお経を唱えておるようなもので、このとき涙を流して、後済んだらけろっと酒飲んで知らぬぷりをする、よう死んでくれたもんや、たまにこんなことがなければみんなで酒飲めないのに、よかったなというぐらいの公労懇になると思いますから、余りよくありません。いや本当ですよ。俗語で言わないと、日本語ではなかなかわからないですから、そういうことは余りよくありません。  私は、その中に生きてきた三十年近い人生がありますから、皆さんと違って、国家公務員、地方公務員が格段と責任が重いということはわかるけれども、そのかわり労働基本権を制約しなければならないほどの危険人物だと政府が思っているということだけはよくわかった。今後、やはり一段とそういう人物をお雇いになるようでありますから、エリートだからというんなら、もう月給もらわずに、賃金もらわずに働いてほしいんです。賃金もらうんなら、ちゃんと労使対等の原則に基づいてやるようにしてもらう。ガバメントが使用者、いわゆるサーバントであるところの公務員は労働者、被使用者。その間には取引というか、バーゲンがある、当然である。こういうようにしなければ、日米貿易と同じで、ストラウスのおっさんに大平のおじさんも、だれもみんなノックアウトされて、電電門戸開放などというつまらぬことを言うて、それでやられておる。このぐらいにしておきます。つまらぬという話をしにきたのではない、きょうは余り確認をして何かいいものをもらおうと思っていませんよ、こじき根性はありませんから、私。だけど、いかに人民大衆三分の二の未組織労働者に対して配慮が乏しいか、それで大きいところだけに注目するか、しかも向いている顔は総理大臣に向いておるのか、カーター大統領に向いておるのか、ストラウスのおじさんがこわくて、ストラウスが来たらどうしようかと外務省なんかしりが上がったり尾が上がったり、もうとにかくどないしょうかと思って色を青くしておる。なにアメリカなんかの第五十一州でないんだから、もっとしっかりせんか、こう言いたいけれども、そうでないと思います。  次に、実は、政府は警察の中に消防職員が含まれるとわざわざ解釈宣言まで行っておりますが、職場の実態から見て、そのようなものかどうか。先進国、西ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ等における団結権についてどうなっておるか、簡単に述べてください。スピードを上げますから、早く答えてください。
  77. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 消防者の団結権についての御質問でございまするが、今回の解釈宣言をわが国はいたしておるわけでございまするが、西ドイツ、フランス、アメリカ等の取り扱いの点でございまするが、これらの国については、このように条約に対して解釈宣言あるいは留保等の措置を講じておりません。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 労働組合というのは法律ができてできたんでありません、御心配なく、労働大臣ができる前に、政府委員がある前にできました。労働組合つくったために殺されたり、投獄されたりしたからできたんでありますから、法に頼ろうという意思は片甚についてはありません。法律以前の問題と思っていますから、御安心を願いたい。法律ができるときには取り締まる、これ以上のむちゃなことをささぬためにということだと思っておるんであります。ですから、労働法ができたから守られるんじゃなくて、うんと労働組合の力が強くならないために、安定的に政府がコントロールできるためだと思います。  そこで、消防職員の団結権の禁止については、国内の現状からも、諸外国の例から見ても、例外的法制であり、憲法二十八条に反し、あるいはILO八十七号条約の第九条の一項の「軍隊及び警察」のらち外であると考えて、不当なものだと私は指摘をいたします。ここに政府の見解を見ておりますが、賛成はできません。ですから、私は何と言われても、協会等という名前、アソシエーションという名前になるかどうか知らぬけれども、つくりまして対抗しますから。労働組合をつくらなきゃいいんだからね、つくって対抗しますよ、宣言をしよう。既成事実をつくってやる以外にないです、もう。あんた、そんなこと、宣言ですから、双方宣言してけんかしましょう、楽しいわね。これはここの立法機関で声明しておく。  自治体の消防職員、それから自治体におけるところの消防団員、こういうのも一つの雇用関係はありませんけれども、一つの役割りを果たしているのは御承知のとおりです。私は、あなたの方がそうおっしゃるなら、政府職員とか、監獄というか、刑務所の職員等については団結権を認めておる、こういうようなことを見ておると、非常におくれておると思います。  一九七九年の三月に開かれた条約勧告適用専門家委員会の見解を承知しておると思いますが、どうでしょう。それによれば、日本政府の「違法活動を行わない限り消防職員全国評議会の活動に介入する意図はない」という声明に関心を持って留意するとありますけれども、これはこのとおりでよろしゅうございますか。
  79. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 本年三月のILO条約勧告適用専門委員会のコメントを見まするというと、次のような文言になっております。   消防職員の団結権に関する従前のコメントに ついて、本委員会は、これらの従前のコメント に言及した総評が提出した意見に留意した。委 員会は、従前の論評に言及し、かつ全国消防職 員協議会が違法な活動を行わない限り政府は干 渉するつもりはないこと及びより一般的には、 団結権の問題については長期的視野に立ち慎重 に検討し続けるとの政府説明に興味を持って 留意した。このようになっております。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 それを受け入れるということですね。
  81. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) このコメントにつきましては、わが国消防職員の団結権の問題に関しまして従来からの日本政府の主張にILOが理解を示したもののように思われますので、その限りにおきまして日本政府としてはこれを了承したいという考え方でございます。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 また、日本政府の「軍隊及び警察の定義は、国内法及び慣行による」との修正提案も撤回した経緯から見ても、消防が警察と同じでなければならない理由はないという条約勧告適用専門家委員会の見解に従えば、まず、国内法の整備を図ることにより、消防職員の団結権保障して、介入する意図のないことを示すのが筋ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  83. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) わが国政府は、ILOの場におきまして、一貫して、わが国消防は警察の中に含まれる、これはILO八十七号条約九条あるいはILO百五十一号条約の一条三項、いずれにおきましても、その警察という文言はわが国消防を含むものであるというふうな考え方で主張いたしまして、各国の理解を求めてきたところでございます。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 警察にさえも団結権を認める国際情勢の中で、わざわざ解釈宣言を付して権利を制限するということはことさらに介入する意図を明確にしたものではないかと考えます。ましてや宣言である以上、政府みずからの意思で解消を宣言しなければ永久に変えられないことになると思うけれども、どうか、宣言ですから。どうでしょう。
  85. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 解釈宣言は、御承知のように、ILO条約の特定部分についてのわが方の解釈を念のため宣言したものでございまして、新しい特別の解釈をここでしたとかということではございませんで、その条約の中に内包される解釈の幅の中で、わが国はこう考えておるんだということを念のために宣言したものでございます。将来の仮定の問題として、国内法の方がどういうふうになっていくかという符節の問題とは直接関係のないことだとわれわれは了承しておる次第でございます。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 考え方はわかりましたが、同意できません。  人権規約批准事項と国内法の整備についてですが、A規約第七条(d)には「休息、余暇、労働時間の合理的な制限」を規定しておりますが、日本人の働き過ぎに国際的批判の厳しい今日、規約批准はその関係条項の履行が義務づけられていくことになると思いますが、具体的に週労働時間、超過勤務、年休の消化あるいは週休二日制の実施等について国際水準にまで引き上げることが必要となると思いますが、これに対する労働基準法の改正やILO条約の早期批准について、どのような措置をおとりになりますか。
  87. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 労働時間の問題あるいは休日、休暇の問題等につきましては、私ども、先ほども御説明申し上げましたが、一昨年十一月、中央労働基準審議会で公労使一致の御意見によりまして、これを実態に即して具体的に推進すべきである。ただし、当面法律改正というようなことではなしに、行政指導をもって行うべきであるということを指摘されておりますし、また、時間短縮、週休二日制の推進につきましては、昨年、衆参両院の御決議もいただいておりますので、そういう方向で、当面環境づくりと申しますか、具体的な実態に即しながら推進をしてまいりたいというように考えておりまして、たとえばILOの労働時間、休日、休憩等に関する条約は、日本国としては、批准をしていないわけでございますが、それぞれわが国労働基準法の現実の実定法規が若干問題がある点もありますので、現実にはそういった実態の前進ということを図りながら、当面は、対処してまいりたい、このように考えております。
  88. 片山甚市

    片山甚市君 労働基準法上の改正の問題は幾つかのことがあるんですが、それはいまの答弁から一歩進めるわけにはいきませんから、やめておきましょう。  A規約第七条(a)の(i)において、特に女子の同一労働同一報酬及び労働条件について規定されてますが、わが国においても改正を求められる諸点について言えば、一つは、労働の機会の男女平等の保障についてでありますが、女性であるという理由のみで多くの職場から締め出されている実情からも、規約に基づく立法措置を必要とすると思います。  二つ目には、労働条件における男女平等についてですが、労基法第三条に「性別」を加えること及びわが党提出による男女雇用平等法の早期実施について、政府の積極的な具体的な措置をお聞きしたい。  三つ目には、労働時間の合理的制限では、少なくともILOの労働時間に関する基準までに短縮するよう法改正を行い、時間外労働の規制及び休日増等を行って速やかに国際水準への到達を果たすようにすべきではないか。  そういうことで、先ほど言いましたように、公の休日の報酬については、婦人労働者の職場への進出が言われておりますが、パートや臨時、アルバイトの日給あるいは時間給によって休日の報酬を受けられない実態であることにかかわらず、本条項留保されることについては、雇用形態を通じて女性労働者の差別の固定化につながるのではないかと心配するんですが、それについてお答えを願いたい。留保を撤回し、規約に沿って漸進的に努力をすることを明確にすべきではないか。留保と漸進的な努力とは別だと言っておりますが、そういうことについてまず簡略にお答えを願いたい、時間がありませんから。
  89. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 男女の平等は、わが国憲法におきましても保障されております基本的人権でございます。雇用の場においても、それが確保されなければならないというのは当然ということで鋭意努力をしているわけでございますが、特に男女同一労働同一賃金の原則というのは労働基準法にも明確に規定されているところでございまして、その原則の徹底に努力しているところでございます。さらに、最近、特に問題になってまいりました男女差別的定年制、結婚退職制等の解消、その目的のために現在五ヵ年の計画を立てまして、具体的な行政指導に努力をしているところでございます。  なお、昨年秋の労働基準法研究会の報告によりまして、先生御指摘のような、女性なるがゆえの雇用における男女差別というようなものをなくすために、雇用における男女平等を確保する特別の法制を考えてはという御提案がされております。労働省といたしましては、今後、関係審議会の審議を経まして、その具体化を検討してまいりたいと考えます。  なお、労働基準法の労働時間等につきましては、基準局長から御説明いたすものと思います。
  90. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 時間外労働、休日労働の減少ないし縮減ということにつきましては、私どもも、当然、時間外労働あるいは休日労働というものが、労働基準法に定められています趣旨から申しましても本当に臨時的あるいは緊急的な意味でのものに本来は限らるべきであるという観点から、先ほど申し上げました行政指導の面におきましては、過重な時間外労働あるいは休日労働を減少していくということについては最も重点を置いて積極的に推進をしてまいりたいと考えていることろであります。  ただ、労働条約との関係あるいは法規制の関係につきましては、先ほど申し上げました事情から、当面は、そういった行政指導によりまして事態の推進を図ってまいりたい、このように考えているわけでございます。
  91. 片山甚市

    片山甚市君 婦人局長にもう一度聞きたいんですが、男女雇用平等法——田中寿美子先生発議による、前に出しました案があります。これは省として、政府としても尊重してもらい、その早期の実施ができるように御努力を願えるかどうか。もう一つの産前産後の休暇についても、所得保障という形で、やはり次代の子供を育てていくために必要だと思うんですが、そういうようなことについては婦人少年局長としてはどうでございますか。
  92. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 田中寿美子先生初めの御提案に係ります男女平等法の案につきましては、私どももよく承知いたしておりまして、勉強させていただいているところでございます。先ほど申し上げました基準法研究会報告の中にも必要だという趣旨をうたっていただいておりますし、あわせて勉強していきたいというふうに考えております。
  93. 片山甚市

    片山甚市君 ありがとうございました。  もう時間が来ましたので、厚生省に対してお聞きをしておきたいと思います。  今回のいわゆる条約に伴って、外国人の取り扱いについては日本人同様に認めることになります。そういたしますと、国内法を全面的に改正をしなきゃならぬと考えておりますか、漸進的な解決ということになりましょうけれども、国民年金、それから特別児童扶養手当、児童扶養手当、それらの問題と、外国人の法人が納付義務を持っておるんですが、雇われておる人が外国人であれば給付されておらないというようなことは解決できるのかどうか。こういうことで、今回の場合、公的扶助として生活保護法についても、第一条で外国人は法の適用の対象にならないとありますが、これからなるというように理解してよろしいか。  こういうように、実は、厚生省に関する限りは、相当これによって労働省みたいにかたくなじゃなくて、大変お金の要る話をすいすいと通していただいてありがたいと思っておるんですが、厚生省、お答え願いたい。どうも感謝にたえません。
  94. 松田正

    政府委員(松田正君) 人権規約A規約第九条につきましては、すべての人に対して社会保障を適用する、こういうことになっておるわけでございます。  わが国社会保障制度の中で人権規約に抵触をいたすと考えられますのは、いま御指摘のございましま国民年金あるいは児童扶養手当、児童手当等でございます。これらの諸制度につきましては、今後、人権規約の趣旨に沿いまして漸進的にその実現方につきまして努力をしてまいる、これか基本的な考え方でございます。
  95. 片山甚市

    片山甚市君 基本的な考えはよろしい。金の要る話ばかりしてね、ストライキ権の方は金は要らぬですけれども、政府転覆というのはこわいのでやれない。厚生省の方はにこにこ笑ってこれを通しておりますが、今度は金が要りますからね、相当。それから、この規約に基づいて弱い部分を相当補強しなきやならぬですから、この間の同対審答申に基づく特別措置法の三年などというのは、これからそれがなくなるまで全部やることになりますから、この間のやつね、おわかりでしょう。身にしみて考えてくださいよ、政府。私は警告を発しておきますから、私は大阪の人間ですから。なぜこれをこれだけの勢いで社会党が一生懸命になって推進をして通しておるかと言ったら、ちゃんと裏に部隊がおるんですからね、わかりますね、名前を言わなくても。  時間が来ましたから、もうこれで終わりますけれども、とにかくもう一度労働大臣外務省に聞きたいんですが、留保条項の解消について具体的な日程、こういうものをつくられることが望ましいと思うので、それを示してもらいたい、こう思います。留保条項をつけていますね、これは未来永劫に留保条項をつけるつもりなのか。公の休日の問題もあります、教育の問題もございましょう、いまの争議権のこともございましょう。それに人権委員会に対して個人が申し出る制度になっていますね、これについては未来永劫ですか、いまの段階考えておるんで、もう日が改まれば考えてくれますか。以上、終わります。質問に両方からお答え願いたいと思います。
  96. 栗原祐幸

    ○国務大臣(栗原祐幸君) 先ほどから申し上げましたとおり、留保してよろしいという前提があるわけです。それに基づきまして私どもは留保するという意思表示をしたわけでございますが、未来永劫であるとか永劫でないとかいうことを抜きにいたしまして、いま留保すると、それ以上のことは言えないということでございます。
  97. 志賀節

    政府委員志賀節君) 留保に関しましては、さきに国連局長から御答弁いたしましたとおり、法的には白紙でございますが、さきに衆議院国際人権規約に関する附帯決議の中に、留保事項については将来の諸般の動向を見て検討することとうたわれておりますとおり、将来の社会的ないろいろな考え方の移り変わりの中でこれは前向きに検討をしてまいりたい、こういう考え方を持っておる次第でございます。
  98. 片山甚市

    片山甚市君 もう一度言うておきますが、私は、諸般の動向とかいろんな枠組みを入れておりますけれども、日本の国の力をもってすれば、速やかに日時を明示して、そうしてその留保条項をなくするように強く要望して、質問を終わります。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは人権規約について質問をいたします。  まず、最初に外務省にお尋ねいたしますか、この人権規約につきましては、六六年の採択のときに決議が付されており、その決議によりますと、政府はこの人権規約を国内にできる限り広範にPRをしなければならないという義務づけが行われております。政府は、人権規約に対する国民の関心を喚起するために、今日までどういう努力をしてきたのか、これを最初にお伺いしておきます。
  100. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 御指摘の点でございまするが、外務省といたしましては、人権規約を採択いたしました二十一回の国連総会の審議経緯、その他をまとめました国連総会の事業等を国会方面及び各地方公共団体、各諸学校に配布さしていただきまして、その内容について御理解を賜るべく努力をいたしてまいりました。また、久保田きぬ子成蹊大学教授に御研究を委嘱いたしましたパンフレットも昭和四十五年にできておるわけでございます。  そういったことで、一生懸命やってまいったつもりでございますが、しからばそれで十分であったかという御質問でございますれば、これはこういう問題は十分ということはなかなかないと存じます。じくじたる点もないではないというふうに申し上げるべきでございましょうと存じますので、この点につきましては、御指摘を踏まえて、今回の御批准を機にさらに新しい趣向をこらしてやってまいりたいと考えております。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、本日は、A規約の方の社会保障に関する第九条を中心に質問したいと思います。  第九条の意味は、社会保険その他の社会保障について外国人を差別してはならない、こういうような意味理解をしておるわけでありますが、これでいいのかどうか。
  102. 松田正

    政府委員(松田正君) 御指摘のとおりでございます。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 国内法で、社会保険あるいは社会保障関係で外国人を差別しているものにはどういうものがございますか。
  104. 松田正

    政府委員(松田正君) 現在、外国人に対しまして適用されていない制度といたしましては、法律日本国籍を有する者、つまり日本人に限定しているものといたしましては、国民年金、それから児童扶養手当、特別児童扶養手当、児童手当、これらでございます。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま国民年金、それから児童手当、児童扶養手当、それから特別児童扶養手当、これだけであると理解をしていいわけでしょうか、ほかにはございませんでしょうか。
  106. 松田正

    政府委員(松田正君) このほかに事実上適用いたしております制度といたしまして、生活保護あるいは国民健康保険等がございます。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 生活保護あるいは国民健康保険も現在の法律では外国人を除外しておる、そう理解していいわけですね。
  108. 松田正

    政府委員(松田正君) 生活保護につきましては、一応、国籍を要件にいたしておりますけれども、これは事実上の問題として、すべて日本国民と同様に適用をいたしておるわけでございます。  医療保険であります国民健康保険につきましては、これはそれぞれ条例でもちまして適用できる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それ以外のものは、外国人に対しては適用しておると理解していいわけですか。
  110. 松田正

    政府委員(松田正君) そのとおりでございます。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、現在、国民年金法による年金には、御存じのように、拠出制の老齢年金あるいは通算老齢年金、障害年金、母子年金、さらには経過的補完的にいわゆる無拠出制の七十歳以上の老齢福祉年金、障害福祉年金、母子福祉年金等があるわけでありますが、これらにつきましては、今回の人権規約わが国批准に伴い、当然、これらの差別をなくする義務が日本政府にもできるわけでありますが、今後、どういうスケジュールでどういう点を改正する方向であるのか、これをお伺いしておきます。
  112. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) お答えを申し上げます。  国民年金につきましては、ただいま先生お話しのように、日本国民であるということを一つの要件といたしまして社会保険方式によりまして年金制度を組み立てておるわけでございます。御承知のように、わが国国民年金につきましては、原則といたしまして、二十五年間拠出を必要といたしまして、二十五年間拠出をした場合に限りまして本来の老齢年金が出るというような仕組みをいたしておるわけでございます。  こういった原則的な仕組みからいたしますと、一般に日本に居住されます外国人の方、これはさまざまな態様の方があるわけでございますが、一般的には日本におられます期間が短いわけでございますので、保険料の掛け捨てというような問題が原則的に起こってくるわけでございます。  私どもといたしましては、今回の人権規約批准に関しまして諸外国の例等も勉強さしていただいておるわけでございますが、人権規約批准しております諸外国におきましても、こういった拠出制の年金制度の適用は必ずしも一定いたしておりません。諸外国の年金制度はそれぞれ仕組みがさまざまでございますので、簡単に比較はできない問題があるわけでございますが、拠出要件を付しておりますような場合におきまして、これを対象といたしております国もございますし、また拠出要件を付しておらないような、たとえばスウェーデンのような、これは事業主からある意味では税金のような形で拠出を求めておる制度でございますが、この場合におきましても国籍要件を付しております。スウェーデンは批准はいたしておるわけでございますが、この場合にはスウェーデンは国際協定を結びました国との間にのみこういった外国人の方に年金制度の適用を及ぼしているというような形をとっておるようでございます。  私どもの所管いたしております年金制度、厚生年金の場合は、これは被用者を対象といたしておりますので問題はないわけでございますが、国民年金のような無業者その他の方々も対象としておりますような制度におきまして技術的にどういった形で外国人の方を適用していくか、もう少し勉強さしていただきたい。一つ考え方といたしましては、このスウェーデンがとっておりますような二国間の協定というような形で持っていくというのが一つの方向ではないかというふうに思っておるわけでございます。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、やっぱり国民年金というのは拠出制の年金であり、確かに二十五年拠出しなければ年金を受けられない、そういうことで短期に日本に滞在をする外国人が掛け捨てになる、そういう選択はその人たちがやればいいわけであって、しかも、わが国には特に在日朝鮮人の場合、これはほかの国にはない特殊な事情もあるわけでありまして、在日朝鮮人の人たちは本当に日本人とほとんど同じように長期間日本に滞在をしておる。そういう人たちが希望するならば、これは当然門戸を開放するのが私はこのA規約第九条の精神ではないか。そういう点で、この国民年金法の第七条を改正すべきではないかと思うわけでありますが、この問題についての政府の見解、改正しては非常に困るとか、その点はどうなんでしょうか。
  114. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) ただいま申し上げました私どもの国民年金についての技術的な難点の問題でございますが、諸外国の例を見ますと、拠出期間を持っておりますところでも、たとえば例外的には十年とかさらに短い期間でそれを満たし得るというような例外規定がございまして、現実的には救えているという実態があるわけでございます。先生御指摘のようなお話は、いわばこの制度において特殊な外国人の方、いまお話しのようなわが国と特別な歴史的な関係を持つ方について特別な取り扱いはできないかという点と、外国人についてたとえば任意に加入するということを考えてはどうかという御指摘かと思うのでございます。  この点につきましては、先ほどちょっと二国間ということを申し上げましたが、国民年金の体系から特定の国の方だけを例外的に扱うということは国民年金法の体系からはむずかしいと思うわけでございます。この場合には、二国間協定のような法律と並ぶような形のものがないとできにくいという点があるわけでございます。  それからもう一つ、任意でという面でございますが、わが国の年金制度、妻の任意加入という制度はございますが、これは夫がほかの制度に強制加入になっておりますので、その意味で任意加入になっておるわけでございまして、公的年金全体といたしましては任意というのを基本的に考えるのはいかがかという点もあろうかと思います。先生の御指摘の問題、私どもも十分検討させていただきたいと思うのでございますが、なかなかにむずかしい点があるということは御理解いただきたいと思うわけでございます。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この問題は、特に私はきょうは在日朝鮮人の立場を主体に質問をしたいと思うわけでありますが、この問題は何も今回の人権規約だけの問題ではない、前々からそういう第七条を改正せよという意見は出されているし、私も全く当然じゃないかと思うんですが、厚生省としては問題があるあるということで、大体、いつごろまでにけりをつけるつもりなのか、いたずらに時期がたつわけですけれども、いつごろまでに結論を出すつもりなのか、これを伺っておきます。答弁は簡単で結構ですから。
  116. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) なかなかにむずかしい問題であると思いますので、現段階でいつごろまでにというのはちょっとお答えはできないわけでございます。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 はなはだよろしくない答弁でございます。  それでは、七十歳以上の老齢福祉年金のようないわゆる無拠出の制度、経過的補完的にある制度でありますが、これについてはどのように考えますか。
  118. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 先生御承知のように、国民年金にございます無拠出の年金制度といいますものも、経過的な老齢福祉年金を除きまして、またこれもある意味ではそうでございますが、拠出制の年金制度と結びついておる制度でございまして、これだけ独立に議論するということはできないというふうに思っておるわけでございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、こういう無拠出制の年金、たとえば七十歳以上のお年寄りに支給する老齢福祉年金ですね、これは、現在、在日朝鮮人には適用されていないわけでありますが、これを改める考えはいまのところない、こう理解していいわけですね。
  120. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 全部一連の問題として考えておるわけでございます。
  121. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは当然人権規約批准に伴い、わが国としても前向きに検討する私は義務があると思うんですけれども、その点はもうちょっと前向きな答弁は出ないんですか。
  122. 松田正

    政府委員(松田正君) 国民年金制度全体につきましては、ただいま年金課長から御説明を申し上げたとおり、いろいろ問題がございます。ただ、人権規約批准後につきましては、できるだけその趣旨に沿いますように前向きで検討いたすということをお約束をいたしておきたいと思います。具体的にいついつまでというのはちょっといまの段階では申し上げかぬますけれども、その方向で努力をいたしたい、かように考えております。
  123. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 全国ハンセン氏病患者協議会のもとにある在日外国人ハンセン氏病患者同盟が差別をなくする運動をして、昭和四十七年より同額の障害福祉年金を支給していると聞いておりますが、このことはどうなんでしょうか。これは御存じのように障害福祉年金は外国人には適用されない。したがって外国人の両眼の見えないハンセン氏病患者にもそういう障害福祉年金が支給されていない、そういうことでこの在日外国人ハンセン氏病患者同盟がそういう運動をして、昭和四十七年から同額の金額を支給していると聞いているわけですが、これは事実なんでしょうか。
  124. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 先生御指摘の問題は、実は、国立療養所の中におきまして、ハンセン氏病の患者さんの場合には国立療養所の中に日本国籍でない方も御一緒に療養生活を送っておられるという実態に着目いたしまして、障害福祉年金に相当する何らかの手当を国立療養所の方でいたしておるというふうに聞いておるわけでございますが、細部にわたっては、恐縮でございますが、ちょっと承知しておりません。
  125. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは国の予算から同額の障害福祉年金が支給をされておるわけであります。しかし、これは当然法律に基づいて権利として支給されているんではなしに、違った名目で支給されておるわけであります。そういう点から考えてみても、私は、厚生省としても当然こういう判断をしたということは、やはり特にこのハンセン氏病患者というのは在日朝鮮人の方がほとんど大半でありますが、そういうものを差別するということは実態に合わない、そういう点からこうなったんではないかと思うわけであります。私は、こういう点をもっと前向きに厚生省としても推進をすべきである、このことを意見として要望しておきます。  それから、在日アメリカ人について国民年金法は適用されるんでしょうか。
  126. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 在日アメリカ人につきましては、日米修好条約におきまして、強制的な保険に関しましては、その両国間において最恵国待遇、つまり同国人と同じ扱いをするということが国民年金法施行前に結ばれておりまして、この観点から言いますと、国民年金につきましても強制適用になるという解釈がとられておるわけでございます。これはある意味では二国間協定という形になっておるわけでございます。
  127. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 アメリカ人については国民年金法が適用されておる。これは運用上駐留米軍には適用されないようではありますが、原則的にはアメリカ人は本人が希望すれば国民年金には加入できる、ところが、それ以外はできない。特に在日朝鮮人というものの歴史的な特質、彼らはあの第二次世界大戦のときに強制的に日本へ連れてこられた、そういうようないきさつを考えたときに、アメリカ人には適用するけれども、在日朝鮮人には適用していない。そういう点、まことに現在の日本政府のあり方はよくないんじゃないか、このように考えるわけですけれども、その点外務省としてはどう考えますか。
  128. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいま御指摘の点がございまして、外務省といたしましても、内外人平等というのが今回の人権規約の精神、柱の大きな一つであるということは十分認識しておるわけでございまして、そういう意味漸進性の規宇というのがあるわけでございまするけれども、別にこれを頼りにするということではございませんけれども、これを非常に重視いたしまして、われわれとして、いま直ちにできなくても、現在はスタートラインに並んだことに大きな意義があるというのが現状でございまするから、外務省といたしましても、内外人平等はわれわれの外務省の大きな関心事でございましたので、今後とも、この点については何とか前進を図るように努力してまいりたいと考えております。
  129. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 厚生省にお尋ねしますが、国民年金法のこういう外国人を適用しないという、こういう点を改めるという点において問題になるのは、財源的な点で障害があるのか、財源的な面はそれほどではないと考えているのか、その点はどうなんでしょうか。
  130. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) もちろん、国民年金につきましては、現在、三分の一の国庫負担という形のものが入っておりますから、一般財源に対する負担も当然に影響があるわけでございますが、本来的には国民年金は皆様方の拠出によって制度として成立しておりますので、拠出の面につきまして、先ほど申し上げましたように、拠出された方は掛け捨てになるというようなことのないような措置というものを十分考慮せざるを得ない、両方の面があるわけでございます。
  131. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 はなはだ納得のいかない答弁でございますが、時間もございませんので、次へ進みます。  児童手当関係でございますが、児童手当法、児童扶養手当法あるいは特別児童扶養手当法、そういうものはいわゆる親または養育者に支給されるわけですけれども、この親または養育者に日本国籍が必要である、このように理解をしておるわけでありますが、間違いないでしょうか、間違いないかどうかということだけで結構です。
  132. 鏑木伸一

    説明員(鏑木伸一君) 間違いございません。
  133. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在、地方自治体で外国人に適用しているところもあると聞いておるわけでありますが、これはどうなんでしょうか、適用の状況をお尋ねいたします。
  134. 鏑木伸一

    説明員(鏑木伸一君) 児童扶養手当、特別児童扶養手当につきましてはちょっとその資料がございませんですが、児童手当について申し上げますと、国の児童手当類似の手当制度を設けまして外国人にも支給しております地方公共団体の数は、昨年二月末現在で一都七十一市町村でございます。  その内容を見てみますと、支給額につきましては、年間で三千円、月額にいたしますと二百五十円から月額で五千円に至るまで非常にばらつきがございます。この中で月額千円としております地方公共団体が最も多くて、三〇%ぐらいを占めております。それから支給対象としております児童でございますが、第三子以降の義務教育終了前の児童を対象にしております地方公共団体が最も多うございまして、四〇%弱、それから第四子以降を対象としておりますものがこれに次いでおります。大体、以上でございます。
  135. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 児童手当は、御存じのように、わが国の児童手当法では第三子から、児童扶養手当は児童扶養手当法ではお父さんと生計を同じくしていない児童、あるいは特別児童扶養手当というのは二十歳未満の障害児等に支給されておる。これは私は国際人権規約の精神から言えば、わが国におる外国人にも適用するのが筋ではないか、このように理解をしておるわけでありますが、外務省の見解を承ります。
  136. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) この点につきましては、A規約九条の社会保障の外国人への適用ということは、第二条の漸進的な目的達成の範疇に入るものと考えております。
  137. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先般の委員会で、この「漸進的」というのは、条約意味はかなり加速的にやる、そういうように局長から答弁があったわけですけれども、厚生省としては、この問題についてはどういうスケジュールでやる考えなのか、これを伺っておきます。
  138. 松田正

    政府委員(松田正君) 御指摘の児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当につきましては、御承知のように、児童扶養手当においては生別母子を対象にするわけです。特別扶養手当につきましては二十歳未満の障害児、こういうことでございまして、いずれも国民年金制度を補完をいたします意味で創設をされた制度でございます。したがいまして、ただいま年金課長からも御説明申し上げましたように、国民年金制度と同じ趣旨のものでございますので、それと一体的に検討を進めざるを得ないという点がございますので、国民年金制度の批准後の動向に合わせながら検討を進めるということになろうかと思います。
  139. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 児童手当は。
  140. 松田正

    政府委員(松田正君) 児童手当につきましては、御承知のように、児童手当制度はわが国の最後の社会保障制度ということでつくられた制度でございます。そういう意味も含めまして社会保障全体の中で現在のところ日本国籍を要件といたしておるわけでございます。これにつきましても、国民年金と同様の趣旨で、現在、児童手当制度につきましてもいろいろ問題を検討いたしております最中でございますので、そういった方向に合わせながら検討を進めるということにいたしたい、かように考えています。
  141. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 せっかく人権規約が通っても、厚生省答弁は全く前進がない、非常に残念に思います。  それでは国民健康保険でございますが、これは御存じのように法律の本文には外国人の適用除外はないわけですけれども、施行規則第一条二項で日本国籍を有しない者を除外しているわけであります。国民健康保険というのは、やっぱり法律の本来の趣旨から考えて、なぜ外国人を除外しなければならないのか、これが一点。それから、これは例外があるわけであります。これはこの施行規則第一条の二項にいろいろ書いているわけでありますが、非常にややこしいので、例外は、一体、どこの国の外国人は国民健康保険に加入できるようになっておるのか、これを御説明ください。簡単にね、時間ないんだから。
  142. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) お答えいたします。  第一点は、なぜ国民健康保険法において外国人を除外しておるかという御質問でございますが、これは立法政策として条例によって適用するという形で省令で書いておるわけでございまして、したがいまして外国人を排除するというよりも、経営主体である地方公共団体、市町村の判断にゆだねるという形で外国人に適用を認めておるということでございます。現に五六%の外人を国保でカバーしておるわけでございまして、あと被用者保険にカバーされている者等を考慮しますと、ほとんど大部分の方が国保の適用を受けていると私どもは考えておるわけでございます。
  143. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 実際には各市町村で条例を定めて外国人にも適用するようにしておるわけであります。これは決して厚生省の指導でなったのではなしに、在日朝鮮人を初めとする各団体がいろいろ議会に働きかけて、こうなってきているわけでありますが、しかし、まだ外国人に適用していない市町村もあるわけでありますが、この実態はどうなっていますか。
  144. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 全部の条例を調べているわけではございませんが、外国人が居住されておると思われる大きな都市等について調べました結果は、ほとんどの外国人を適用する条例を設けております。あと小さな町村部においてどういう適用状況になっておるかわかりませんけれども、先ほど申しましたように、四十三万人の方、カバー率で申しまして五六%の外国人の方を国保がカバーしておるということは、もうほとんど大部分の方が、外国人で医療保障の必要な方はカバーされているのではないかというふうに判断しておるわけでございます。
  145. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私の知っている範囲でも、先般、三月ごろに広島県の府中町、これは東洋工業のある町、海田町、そういうところはようやく外国人に道を開いたわけなんですね。こういう点は、厚生省としては、不適用の自治体には適用の条例をつくるように指導をしているんですか、したことありますか、そういう指導は。
  146. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 国民健康保険というのは、従来から、地域住民の方の相扶共済の強固な連帯意識で運営されるというふうに理解をし指導してきておるわけでございますが、そういう意味で私どもは条例の適用をすべしという指導はしたことはございませんが、条例で外国人の適用をする道が開けておるということ等を通じまして、制度の趣旨あるいは実態等を市町村の方に的確に流すことによって、私どもは、市町村の外国人適用の理解が相当進み、年々、適用が高まっておるという実態でございますので、今後ともそういう方向で臨みたいというふうに考えております。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは現在の施行規則では、日本国籍を有しない者を除外しているんですね、一応は。あと条例で道を開いておるんですよ。私はこういうものは改めるべきじゃないかと思うんですがね。むしろ不適当な人を除外するより、原則的にもう適用すべきだ、これは私は人権規約批准するわが国の姿勢でなければならないと思うんですが、厚生省どうですか、その点。
  148. 松田正

    政府委員(松田正君) 御承知のように、医療保険につきましては、健康保険は外国人にすべて被用者という立場で適用されることになっております。地域保険であります国民健康保険につきましては、ただいま先生が御指摘のとおりでございますので、今後とも、人権規約の趣旨に沿いますように慎重に検討を進めてまいりたい、努力をいたしたい、かように考えております。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはひとつ、まだ適用の条例をつくってない自治体には、私は、人権規約の精神からいっても指導すべきである、これは法律改正じゃないんですから、あしたでもできるんだから、その点厚生大臣によく相談をしてすぐ指導をすべきだ、この決意があるかどうか伺っておきます。
  150. 松田正

    政府委員(松田正君) 御指摘の趣旨に沿いますように努力をいたしたいと思います。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから生活保護法の問題でございますが、これは昭和二十九年五月八日厚生省社会局長通達で、外国人については、当分の間、準じて行う、そういうことで実質的には生活保護法が適用されているように理解をしているわけでありますが、この二十九年五月八日の通達はそのまま生きているのかどうか、この点お伺いします。
  152. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) 現在も確実に有効な通知でございます。
  153. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、生活保護法は、わが国の場合は、外国人に対してはわが日本国民と同じように差別なく適用されておる、こう理解をしてよろしいのかどうか。
  154. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) 支給されます保護の内容あるいはやり方は、すべての点で国民の場合と同じ仕組みで保障されておることは事実でございます。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは私がいただきました資料によりますと、昭和二十九年五月八日の通達でございますが、これには法の準用による保護は国民に対する保護とどういう差があるのか、日本人とたとえば外国人との場合どういう違いがあるのかと、それに対して、外国人に対する保護は、法律上の権利としてこれを保障したものではない、単に一方的な行政措置によって行っているものである。したがって生活に困窮する外国人は法を準用した処置により利益を受けるのであるが、権利としてこれらの保護の処置を請求することはできない。だから日本人の場合は、保護を受ける権利があるわけですから、これをとめられた場合は不服申し立ての制度があるわけですけれども、外国人の場合は不服の申し立てをすることができない。  こういうように内容は同じであっても趣旨は違う、国民の場合は権利だけれども、外国人の場合はこれは権利ではない、このように書いているんですけれども、これはいまも生きていますか。
  156. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) その点は、法律解釈としては現在も生きている解釈でございます。法律自身が、御存じのように、憲法二十五条の国民に対する最低限度の生活ということを大きな理念として制定されましたために、制度論としては、そのような解釈をせざるを得ないということを通達でもうたったわけでございます。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務省にお伺いしますが、この人権規約先ほどから言っております第九条の精神からいって、待遇、金額は一緒であっても、そういう考え方というのはこの人権規約の精神には私は反するんじゃないか、どうなんですか、その点は。
  158. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) やはり御指摘のとおり、人権規約のこの規定の具体的な表現とは別に、精神面に着目いたしますると、そういう法の方向に沿った御検討を願いたいというふうに考えております。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務省はそういう見解で、私も、当然、ただ金を出してやればいいんではなしに、特に在日朝鮮人のような人たちの場合を考えても、私は生活保護法も日本政府のお恵みとして支給するというんではなしに、日本国民と同じような権利として支給できるように改正すべきじゃないか。これは別に予算措置の要らない問題ですから、すぐできるんじゃないかと思うんですが、これは国民年金法とは関係なしにできる問題だと思うんですが、その点どうでしょうか。
  160. 松田正

    政府委員(松田正君) 生活保護法に対します外国人の適用の関係につきましては、いま保護課長から御説明申し上げましたとおりでございます。生活保護は国民の最低生活保障するということで、外国人に対しましても全く同じ趣旨で同じ内容で同じ手続で適用しておりますので、実態的な面につきましては、いささかもその待遇につきまして変わるところがないかと思うわけでございますが、確かに形式的にはいま御指摘の問題があろうかと思います。今後とも、十分に検討をしてまいりたいと思います。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 検討は別にぼくが質問しなくても、当然、検討しなきやならぬわけだけれども、どっちの方向に検討するのか、やっぱり人権規約国会批准されようとしているんですから、厚生省ももうちょっと前向きな答弁をしていただかないと、何のために人権規約を通すのかさっぱりわからないですよ、それじゃ。やっぱり人権規約わが国が長年かかって、諸外国が全部入っちゃって、その後先進国がほとんど入るようになって、ようやく一歩おくればせながら入ろうというのに、しかもそれに対して厚生省がいまのような答弁では、結局、人権規約外務省批准するのを足を引っ張ったのは厚生省じゃないかと、こういうことになりますよ。
  162. 松田正

    政府委員(松田正君) 国際人権規約の趣旨には厚生省といたしましては基本的に賛成でございます。生活保護等の問題につきましても、いま御指摘の御趣旨を体しまして十分に検討してまいる、かように考えております。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、先ほど議官は、外国人を差別している法律は幾らか挙げられましたけれども、いわゆる援護法とか、そういう法律、先般も、私の知人の方が、在日朝鮮人であったか韓国の方であったかわかりませんが、いずれにしても、そういう方が、自分のお父さんが戦争に行って戦死をした、日本軍に徴用されて戦争へ行って死んじゃった。けれども、たしかこの方は軍属だったと思うんですが、日本人であるならば当然援護法が適用になるわけですけれども、それが全然適用されない。こういう点はやっぱり外国人を差別しておるようになるんじゃないでしょうか、その点はどうなんですか。
  164. 松田正

    政府委員(松田正君) 私どもの厚生省が所管をいたしておりますいろんな制度はたくさんございます。で、この国際人権規約で挙げられておりますそれぞれの国の社会保障制度の中にどういう仕組みのものが入っていくか、これはそれぞれの国の国情によっても違いましょうし、いろんな制度の立て方によっても違うと思います。御指摘のような援護の問題あるいは国家補償の問題、これにつきましてはこの中で社会保障制度の一環として取り扱うのはいかがかというふうに実は考えているわけでございまして、そういう趣旨からただいまの御指摘の点については別の見地から検討をすべき問題ではなかろうかというふうに考えております。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、援護法等は確かに社会保険、社会保障関係法律とは違うわけで、そういう点でいま外国人を差別しているものの中に挙げなかったというお話ですが、しかし、この人権規約全体の流れから言えば、社会保障社会保険のみならず、教育の面、あらゆる問題においてやはり外国人を差別しないということは、これは根本的な私は原則じゃないかと思うんですがね。そういう点で、これは厚生省のみならず各省に当てはまると思うんですけれども、そういうすべての法律内容を総点検して、そういう差別というものを是正するようにすべきではないかと思うんですが、そういう点はすでにやっておるのかどうか、どうなんでしょうか。
  166. 松田正

    政府委員(松田正君) 国際人権規約に関連をいたしまして、私どもも十分にいろいろな制度を検討してまいってございます。いろいろな点につきましては御指摘のような問題もあろうかと思います。十分に、今後とも、そういう姿勢で検討を進めてまいるということには変わりはございません。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、先ほどのいわゆる無拠出制の老齢福祉年金でございますが、これはたとえば七十歳を過ぎて支給される老齢福祉年金、これを七十一歳のときにその年寄りが日本に帰化した場合、その人は日本人になったけれども七十歳になったときにはまだ日本人ではなかった、そういう場合は支給されるのかどうなのか。
  168. 松田正

    政府委員(松田正君) そういう場合には、支給されないことになっております。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは障害福祉年金にしても、全部そういうようになっておるわけですね。そういう支給要件が発生した時点で日本人でないと、けがをして障害者になった、それから後帰化したんではこれは支給されない。こういうこともどう考えても納得のいかない問題なんですが、そのあたりはどうなんですか、改正したら都合悪いことが何かあるんですか。
  170. 松田正

    政府委員(松田正君) 国民年金制度につきましては、昭和三十六年に国民皆保険ということで制度が発足をいたしたわけでございます。先ほども年金課長から御説明申し上げましたように、福祉年金、老齢者になりましてから支給いたします七十歳からの老齢福祉年金、こういったものも国民年金制度による皆保険という大きな目標を実現するために、実は、その拠出制の問題と密接な関連を持って仕組みができているわけでございます。また、社会保険のたてまえ上、その事故か発生した時点でその給付が行われる、こういうこともございまして、ただいま先生御指摘のようなケースには支給がされないということでございますが、先ほど申し上げましたような国民年金制度全体の中で、今後とも、検討をすべき問題であろうかと考えております。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、外務次官に御要望と御決意を伺っておきたいと思うんですけれども、私は、今回、おくればせながらも人権規約わが国が加盟をする、それを批准をするということから、この際、やっぱり世界の動向というものにわが国も沿っていかなくちゃいけないわけですから、そういう意味で、特にこの第九条を中心としたわが国社会保険あるいは社会保障の制度、そういうものの外国人を差別しておる内容については、政府としても積極的にやっていかなくちゃならない。  そういう意味で、きょうの厚生省の御答弁は、私はもうちょっと前向きの答弁が出るんじゃないかと期待をしておったわけですが、検討、検討、検討ということで、何もそういう検討だけの答弁ならば質問する必要もないぐらいのもので、やっぱりもうちょっと前進の意欲を示してもらいたい。そういう気持ちで全く納得しないわけでありますが、これは立法はわれわれ国会がやることで、国会の方がそういう法律を決めておるんだから厚生省としてもそれは仕方ないんだと、こういう論法も成り立つわけですけれども、われわれもそれは努力はいたしますが、政府としても、外務省が各省に呼びかけて、厚生大臣労働大臣、文部大臣、そういうひとつ日本の大平内閣としても、この国際人権規約への加盟を契機として、もうちょっと積極的に、しかも漸進的にということはある程度スケジュールも決めてやっていただくように努力してもらいたい。いまのような厚生省答弁でやるんだったら、ほかのを何も留保する必要はないんですよ。全部入って、それでもいまの厚生省答弁ならば、それでいいですわ。それでいまのような検討する検討するというような答弁は、わが国が第九条を留保しなかったんですから、そういう点を考えれば、これは非常によくないんじゃないかと思うんですがね。そういう点、ひとつ今後の御決意を承って、質問を終わります。
  172. 志賀節

    政府委員志賀節君) 私の立場から各省庁に号令を発するといいますか、命令をすることはいささか僭越でございますが、私の考え方からいたしますと、かつて岡倉天心がアジアは一つと言いましたように、やはり人類は一つであり、いろいろ社会的あるいは伝統的な考え方、物の見方というものの変化の中からどうしても足並みがそろわない状況が現実にはございましても、将来は必ず一つになる方向に進んでいく、そういう考え方に立って、できるだけ私ども日本政府といたしましては、人類の中の一つの民族としての日本をそういう方向に持っていけるような努力をする、そういうことではないかと私は考えております。  したがいまして、私は、この九条の問題をめぐりまして先ほど来の塩出先生のお話も十分に承りましたから、今後、厚生大臣ないし厚生政務次官と会う機会には、塩出先生のお考えを十分にお伝えすることをお約束させていただきます。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 先日、外務省の方からいただいた資料で、国連が中心になって作成した人権に関する条約、今回のA規約B規約、これを批准するといたしますと、人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約と婦人の参政権に関する条約、合わせて四つの条約に加入、批准しておるということで、あと十四残るということになるわけですが、これらの人権に関する条約について、今後、どういう方向で対応していかれるのか、局長の方から御説明いただきたいと思います。
  174. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 御指摘のいろいろな人権関係条約を今後どうするかという点でございますが、まず第一に難民条約、これは外務大臣からも御表明がございましたように、難民につきましては、この人権規約も適用されるわけでございます。最も包括的な人権規約をまず御承認をいただきまして、次には、この難民が入ってまいりました後のステータスあるいは条件その他について事細かく規定をいたします難民条約——実は、入国関係は難民条約は取り扱っておりませんことが必ずしも巷間理解されておらぬようなところもございまするけれども、難民が入ってきた後の万全を期するという、そういう条約でございますが、これにつきましては、来国会に御批准を賜るべく鋭意検討をさしていただいておる次第でございます。  その他、数多くの人権関係条約があるわけでございまするが、当面は、そういうことで、このほか十件ほど今後加入の方向で検討する条約既婚婦人の国籍に関する条約というものもございますし、あるいは婚姻の同意、最低年齢及び登録に関する条約、そういったものもございます。それから奴隷条約、人種差別撤廃条約。人種差別撤廃条約についてはさらに検討すべきと、奴隷条約につきましては、強制労働の概念が不明確でございますとか、わが国現状において特に奴隷問題を把握しなければならない緊要性がないというような点、そういった点から必ずしも必然性を感じておりませんけれども、それから集団的殺害罪というような集団殺害犯罪の防止、処罰に関する条約等につきましても、日本現実性から言って非常に緊要性が高いということが言えないものもあるわけでございまするけれども、さらには無国籍者の削減に関する条約とか無国籍者の地位に関する条約とかいろいろございますので、これにつきましても整理をして検討しておりまするが、漸次、御批准をいただく方向で検討させていただきます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 いまお述べになった中で、戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用に関する条約というのは局長は触れられなかったわけですが、これは一九六八年国連で採択されたときには日本政府は棄権したわけですよね。その棄権したときの経過といいますか、そのときの政府としての考え方、どういう考え方から棄権されたのか、それをちょっと御説明いただきたいんですけれども。
  176. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) これは時効の不適用の問題でございまするが、一番の問題点はやはり遡及効の遡及処罰という観念を取り上げてみますると、憲法の三十九条の精神に反するという疑いがございますので、さらには犯罪構成要件の定義が明確でないということもございまするけれども、そういった点で憲法との関連を考えまする場合に、この条約を直ちに前向きに考えることが必然的であるかどうかという点については若干の疑義を持つものでございますが、これは、先般来、衆議院でも寺前委員から御指摘もございましたし、ただいまは立木委員からも御指摘がございましたので、この点はもう一度検討さしていただきます。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 基本的な人権は、もう私がここで言うまでもなく、平和というものが前提になって本当に人権が守られる、こういうことになるわけですし、そもそも今度のこの時効不適用条約というのが、長年にわたって戦争犯罪を国際政治から一掃する、そういうような国際世論の結実に基づいてつくられた条約であるということも言われておるわけですし、それから、わが国憲法自身が平和憲法というふうに言われていますように、戦争に反対をし、再びああいう事態を繰り返さないという精神から出てきているものですから、この点は積極的に私は考えていただく必要があるんじゃないかと思うんです。  いま局長が遡及処罰の問題で憲法との関連で言及されましたけれども、しかし、時効不適用の条約自体が前文で、戦争犯罪こそは国際法における最も重大な犯罪であるということを強調しているわけですし、したがって事後法で時効の適用を除外することは戦争犯罪に限っては当然であるとみなすべきだというふうに私も考えるわけです。  大体、当初、これが採択される一年前ですか、政府は、これに賛成されておった経緯があるんですね。採択される一年前一九六七年のときには、国連の第三委員会で、日本政府の代表は、わが国としては例外的に戦争犯罪、きわめて非人道的な残虐な犯罪について時効制度の適用除外を考慮することは可能であると考えるというふうに日本政府の代表が発言していたわけですが、それがどうしてこういうふうになってきたのか、その辺の経緯ももう少し御説明いただきたいと思うんです。
  178. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) この点は、立木委員が御指摘のように棄権をしておるわけでございますし、当時出席した者が考え方としてはやはり仰せのような方向で考えておったことがあると思うのですけれども、その後、手続的な問題を中心といたしまして、そういう精神論と手続面との調整という問題に直面せざるを得なかったということだと思いますので、ただ、これは何も遡及罪問題におきまする憲法論ということだけで判断すべきものとも思えませんので、ひとつ総合的に判断させていただきたいと思います。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 さっき憲法の三十九条ですか、その事項だけを取り上げて言及されたので、私はやっぱりもっと総合的に憲法の精神その他からも、日本政府がとってきた態度の経緯もあるわけですから、十分に検討していただきたいということを重ねて御要望しておきたいと思うんです。  それからさらに、いままでも衆議院等々でも問題になり、また当委員会でもあったわけですが、B規約の第二十条の問題について、政府は、ここでは法律によって禁止しなければならない、戦争のためのいかなる宣伝も法律によって禁止しなければならない。この点に関しては、先日も、局長は、五分ぐらい何か街頭で演説しているのがこれが戦争宣伝であると言って直ちに処罰するのもどうかと思いますというふうな言い方をなさっておられましたけれども、もちろん、ちょっと問題が起こればすぐ処罰するというふうなことが本来の精神ではなくて、しかし、事態は、ここで言われておる「戦争のためのいかなる宣伝」つまり戦争という問題がきわめて重視されなければならないということがあるわけですし、ここで日本政府としても、こういうB規約、これを批准し、これを公布するということになれば国内的に効力を持つわけですから、ですから、そういう意味で言えば、施行法的なものを考えるだとか、いうふうなことも検討されてはいかがだろうかと思うのですけれども、平和という問題に関する、つまり戦争犯罪、戦争を何としてもとどめなければならないということの重大性から考えて、この問題についてもどういうお考えなのか、一言お答えいただきたいと思います。
  180. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 二十条でございまするけれども、これはかなりいろいろな国が留保をしておりまして、相当問題点になった項目であることは御指摘のとおりでございますが、現状においては、わが国としては、これについて特段の禁止を定めなければならないというふうには考えておりません。  ただ、将来の問題として、世界の変転に伴いまして、現在のような憲法九条の精神が浸透しておる社会におきましては即時的な必要性を感じておりませんけれども、社会の変遷は必ずしも予断を許さないということであれば、これは将来においてはそういう法益侵害の実態を把握しながら新しく立法を考える。特に、立木委員の御指摘のように、日本は、何と申しますか、セルフエグゼキュトリという言葉を使っておるようでございますが、条約の国内的効力を国内法をもってして初めて担保し得る、こういう法制度でございますから、単に人権規約だけで精神論としてこれを振りかざすわけにもまいらない。したがって、これは本当に社会の変遷に従って必要な場合には国内法を要するということになりますので、その段階ではやはり立法を考えるということがあるのではないかと思いますが、現状では、私が三分間とか五分間ということを申し上げたのは比喩の話でございまして、三十秒間戦争宣伝のスピーカーの放送が行われて直ちにこれを犯罪構成要件とすることの問題点は、これは比喩的には私やはり言えるのではないか、これは表現の自由との関連で慎重を要するのではないかと考えておる次第でございます。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 もちろん表現の自由との関連もありましょうし、それから問題はそのような状況になってからというその判断ですね、この点が非常に私は大切だと思うんですよ。というのは、事態が起こってしまったら実際遅いわけで、問題は、そういうことにならないようにやっぱりどうしていくかということが私は人権を守る上で大切なことだと思うんですね。だから現実にそういう事態が起こって、さあこれは大変になったからといって、その時点で考えましょうということではすでに遅いわけで、いままでの歴史というのは、戦争が起こる状態というのはもう私よりも局長の方が先輩ですから十分おわかりでしょうから言いませんけれども、そういうような事態になったら遅いわけですから、私は、この問題についてもやはり禁止するという方向もありますけれども、前向きにどういうふうにやってこの精神を生かしていくかという観点からの取り上げ方というのもあり得るんではないかと思うんですよ。そういう点もあわせて積極的に御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  182. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) これは立木委員の御指摘でございまして、私も拝承して、そういう余り固定的な固陋な考え方にはとらわれないで対処すべきではないかと思っておりますけれども。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどちょっとお触れになりました集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約ですか、これはすでに八十四カ国が加盟して、このときは条約作成の会議には日本はまだ参加していなかった状況のもとでつくられた条約ですけれども、これは先ほどの御説明では緊要性が余り高くないのでと言って、その後言葉をちょっと濁されたんですが、これはどういうふうに対応されるというお考えでしょうか。
  184. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 立木委員から関連条約を列挙するようにという御要望でございましたので申し上げたんでございまするけれども、このジェノサイドの集団殺害犯罪の条約の要求しておりまする犯罪としてみなさねばならない行為が何であるかという点につきましては、これが非常に広範かつ不明確であるという点から見まして、ざらには、わが国の実情にかんがみれば、集団殺害犯罪を設ける実態的必要性がやはり乏しいと言わざるを得ないということから加入をしておらないわけでございますが、現在の段階では、直ちにはやはりこの締約国となる必要性は乏しいと考えておる状況でございます。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 私は、これらについての考え方も若干述べさしておいていただきたいんですけれども、問題は、緊要性が高いか高くないかということは一つ判断の要素だろうと思うんですよ。ただし、八十四カ国がすべて緊要性があると考えて参加しているんだろうかどうだろうか。すべてこれらの国々が、つまりジェノサイド云々が問題になり得るという緊要性から八十四カ国すべてが加入しているとは考えられない。しかし、少なくとも日本政府の場合も、こういうものにはわれわれとしては反対である、当然、こういうものは防止し処罰をしなければならないんだ、こういうことがあってはならない時代だという日本の態度を明確にする、対外的にも。そういう意味から私は非常に重要な意味を持つだろうと思うんですよ。だから、そういう緊要性といいますか、そういう点だけではなくして、この問題についても日本政府の今後の外交姿勢のあり方、人権に対して基本的に日本政府としてはどういう態度をとっていくんだということを明確にする上においても、ぜひとも積極的に御検討いただきたいと思うんですが、これもいかがでしょうか。
  186. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 非常な即時的な緊要性があるかどうかにつきましてはすでに申し上げたとおりでございまするけれども、人権関係の諸条約というものについて、これを等閑視するというわけにはまいりませんので、もちろんわれわれとしては検討は進めてまいるわけでございます。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 この際、総括的なA規約B規約批准するに当たって、いまそれらに関連する人権に関する諸条約というのがあるわけで、これに対して日本政府が加入しているというのはきわめて少ないことは先ほど申し上げたとおりですが、日本政府人権に対するあり方、基本的な外交姿勢にかかわる問題として、日本政府としては総合的にひとつ積極的に御検討いただきたいと思うんですが、その点、政務次官の御答弁をいただきたいと思うんです。
  188. 志賀節

    政府委員志賀節君) 総合的な判断に基づいて、これを行いたいと思います。特に、いわゆる高度経済成長から低成長といいますか、安定成長に移りました今日、いままでは経済優先的な何かそういうものを羅針盤にしていれば何かかじ取りがしやすいような、これはまあ錯覚かもしれませんが、あったんですが、これからはやはり一つの道義といいますか、あるいは人権のようなものに羅針盤を置いて、そしてやらないといかぬという考え方がございますので、その点を十分にしんしゃくしながらやっていきたい、このように考えております。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 それから、局長、先般もお尋ねしたことにちょっと関連があるんですけれども、このAB両規約とも第一条の第二項で民族自決権の問題に関連する経済裏づけとしての天然資源の恒久主権ということが規定されているわけですが、これは、私は、今後の日本経済外交といいますか、日本の今後のあり方を考える上で、非常に重要な規定だというふうに考えているわけですが、この点について政府が特にこの問題についての現在の御認識といいますか、お考えをお尋ねしておきたいんです。
  190. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 立木委員の御指摘に私も全面的に同感でございます。特に国際法上の義務に違反しない限り、すべての人民は「自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。」ということは、まさにわが国がこれまでとってまいりました立場と合致するものでございまして、そういう意味でこの第一条は特にわれわれとしてもさらに尊重し、今後、対処してまいる必要があると考えておるわけでございます。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 時間がありませんから、さらにこれを突っ込んでお尋ねすることができないんですが、ちょっとはっきりさしていただきたいのは、最近の開発途上国の国々の中では、天然資源の恒久主権というものをその国の固有の権利といいますか、この点が特に強調されてきていますね。ところが、発達した資本主義国、まあ日本なんかの場合ですと、この国際法的な解釈と両立する意味においてという意味で天然資源の恒久主権ということを認めるというような状況になっているように見るわけですけれども、そこらあたりが実情がどうなっているのか、その固有の権利という主張に対してどういうふうに日本としてはお考えになっているのか、その点ちょっと。
  192. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 立木委員の御指摘の点は、恐らく、それぞれの開発途上国がそういうただいま御指摘のような自由な処分権、そういうものを持っておるけれども、実際には先進国においてこの権利に対しましてある程度の留保と申しますか、そういうような考え方をとる国があるのではないか、こういう御指摘であると思いまするが、これはやはり御高承の権利義務憲章の表決その他の国際連合関係の会合の決議案の取り扱い方、そういった点においてそういった点が顕在化しておる面があるかと思うわけでございます。  その具体例に即して申し上げますると、やはり資源の処分等につきまして、国有化その他の措置がとられる場合に、正当な補償を伴うことが必ずしもこの権利を援用して行われないというような場合におきましては、先進国は、これは国際法に対して十分合致する行動ではないという指摘をしておるわけでございますが、そういった点で私が国際法上の義務に違反しない限りと申しますのは、そういった点を踏まえてこの権利の行使が行われるという事態が望ましいのであるということは、これはわが国といえども同じ考えでございます。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 経済の憲章ですか、あれの中では国際法的な補償ということではなくて、その国つまり自国が適切と認める方法によって補償され得るというようなたしか規定だったというふうに見ていますけれども、日本としては、その点反対したわけですね。だけれど、本来やはり天然資源の恒久主権というのは、その国の領土に存在しておる、たとえば資源、これはその国のものであり、その国がそれを自主的に管理する、あるいは監督しというのですか、自由に処分することのできる権利、権限を持つということは私は当然固有の権利として認められるだろう。外国から資本がそこに入っていってそれを開発する、その場合、たとえば政権がかわって、さあそれが国有化されるだとかいうふうになったときに、その資本の側としてはそれは全くむだ骨になるから、その場合、適当な補償がなされないとこれは困る。エジプトなんかの投資の協定ですか、あれなんか協定がちゃんと書かれてあるので日本としても結んだんだろうと思うんですけれども、しかし、本来は、天然資源の恒久主権というのはその国の固有の権利として認めるという立場を、今後、何らかの形で日本政府考えていかなければ、これは私は国際経済外心上なかなか大変な事態になってくるんではないがろうか。私は、日本政府がそういうようなその用の自国が適切だと考える方法による賠償ということすらにも賛成できないという態度をとっていかんでは、困るだろうというふうに思うんです。  もうこれ以上時間がありませんから、さらに講論はしたいわけですが、次回に延ばしたいと思いますけれども、最後に、この点についてのお考えだけお聞きして、きょうの質問を終わりにしてねきたいと思います。
  194. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 自国の適切と思われる手段によって自由なる収用を行ってよろしいかどうかという点につきましては、これはやはり子の資本投下自体が……
  195. 立木洋

    ○立木洋君 収用じゃないですよ、補償と書いてある。
  196. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 収用ないし補償、そういったものが自国の適切な方途によってのみ行われるということでよろしいかどうかという点になりますると、やはりその資本を投下しました国と当該国との当面の合意というものにもよりまするけれども、その当面の合意の内容をよく見てみませんとにわかに判断ができないのであって、その内容に違反するような補償行為ということであれば、これは資本投下国が不満を持つということは、これは国際法上正当化される議論じゃないかということであろうかと私ども思いますが、そういう観点から本件をながめますけれども、こういう国際法の義務に違反しない限りの自由処分権というものは、もうこれは牢固として確立しておるものと、こういうふうに考えております。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 この問題はもっとやりたいわけですが、時間がないので、きょうはこれで終わりにしておきたいと思います。
  198. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。午後零時四十四分休憩      —————・—————    午後二時三十一分開会
  199. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  200. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣のお留守のときに国際人権規約の審議に入っておりますわけで、ちょうどその最中に金大中事件に関するアメリカの公電が公表されてまいりまして、これは人権に関する重大な問題でもございますので、人権規約の審議の中で御質問をさせていただきたいと思います。  国際人権規約B規約というのは市民的、政治的権利に関する条約なんですが、これは自由権的基本権と公務に参加する権利を主として規定してあるものだと思いますが、国際人権規約はもちろん世界人権宣言によったものであり、世界人権宣言は、第二次大戦における殺戮とそれから人間の自由な権利を阻害していったその経験に基づいて、これからの世界というものが各国ともに人権を守っていこう、そして平和な世界をつくろうという趣旨のもとに宣言がされ、さらにそれを規制していくための国際人権規約がつくられたものだと思います。昨年、世界人権宣言から三十周年で、外務大臣が大変努力して署名をされたということを私も承知しているわけなんですけれども、たとえば金大中事件のような問題は将来の社会で起こってはならないことだと思いますが、国際人権規約批准した場合、たとえば金大中事件のようなものが今後起こった場合に、これは人権規約のどこのところに抵触することになりますでしょうか。  じゃ、私の方から、そういうことがこれに抵触することになるかどうかお尋ねしたいと思うんですが、B規約の二条ですね、そこの「その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、」云々とありますが、二条の1項。それから3項のところに「この規約の各締約国は、」「この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、」云々とありますその3項の(a)あたり、あるいは十二条、十三条ですね、こういうものに抵触するようになるかどうか。十二条というのは「合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。」十三条は「合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。」これはある期間定住している外国人のことですか、それとも一時的に滞在している外国人にも適用できるかどうか、そういうことをちょっと。  つまり、この国際人権規約批准する以上は、相手国、今回は韓国ですから、韓国がこの規約に締約していない、ですから向こう側を制約できないかもしれませんが、日本の方は、これの適用を受けるということになる部分があるかどうか、そのことを御説明いただきたいと思います。
  201. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいまの御指摘の点でございまするが、いろいろな条目について御指摘があったわけでございます。これらの条目につきまして、締約国——これを批准いたしました国は、その内容実現を期するために努力をしなければならない。で、A規約につきましては漸進的に、B規約についてはより加速的にその体制の整備を図らなければならないということになっておるわけでございます。  ただいまの御指摘のように、実際の特定の具体的案件を想定いたしまして、これが人権規約のどの条項に該当するか、したがってどういう態度を批准した国がとらなければならないかということは、これはやはりかなり仮説の問題が含まれておると存じまするけれども、一般的に、外国人の入国、滞在、出国の問題につきましては、当該人権規約は直接にこれに触れませんで、当該各国の判断にゆだねている面があるように存じます。この点につきましては審議経過からも明らかなことでございます。したがいまして具体的案件につきまして、特に入国、出国、滞在に関係いたしまする問題につきまして、直ちに特定の案件を想定いたしまして、これがA規約の第何条に違反するとか、B規約の第何条に違反するとかいうことを予見的に断定するということはできないというのが一般的な人権規約解釈であろうかと考えておる次第でございます。
  202. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま事務当局から申し上げましたが、この人権規約の成立の原因からいたしまして、すべての国の国民人権をひとしく守られることが平和を守るための一番の道であるというこの成立の趣旨、それから個々の条約から言っても、加盟をいたしました条約締結した国の国内も当然ではありますが、相協力して他国の人権も各個条に掲げておることは当然の趣旨であると考えております。
  203. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も、これに違反するとか何とかというようなことを摘発するとか、そういう意味ではございませんで、B規約というのは、もうこの批准の時点でこれに適合していなければならないことになっておりますから、これを批准する以上は、お互いに世界の市民たち人権を守っていくという責任があるんではないかということをまず最初に申し上げます。  金大中事件については、もう大分衆議院の方でも審議されておりますし、参議院の本会議でも衆議院の本会議でもこの問題をしばしば政府に対していろいろと追及をしているわけなんですけれども、前回のこの委員会で社会党の寺田さんの質問がございました。そのときに、今回のスナイダー公電ですね、これが犯罪の証拠物としての証拠能力を持っているかどうかという問題について議論をされましたときに、外務省の柳谷アジア局長は、公電は在外公館の公的な活動であるというふうにおっしゃった。そして法務省の水原審議官は、一の公電が大使の通常の業務として行われていれげ証拠物としての証拠能力を持つというふうにお答えになりました。ところが、すぐその後で、もうその日のうちに外務省の事務次官が、そういう議論はあったけれども、しかし、これは新たな証拠とみなして政治決着を見直すほどのものではないということを言われるし、それから園田外務大臣もお帰りになって、そのような意見を発表していらっしゃいます。  私は、あのとき、刑事訴訟法三百二十一条あるいは三百二十三条の議論が行われたわけでありますけれども、あの本国にあてたスナイダー大使の公電は、法理論上には、法的証拠物の性格を持つ、これはもう一度お認めになりますでしょうかどうか、そのことを法務省当局の方と外務省の御意見をまず聞きたいと思います。
  204. 河上和雄

    説明員(河上和雄君) 一般的に、ある証拠が証拠能力があるとかないとかよく法律上申すわけでございます。しかし、いま田中委員のおっしゃいました政治決着についての証拠となるかどうかというのは、これは私どもとは関係ないといいますか、法律的な概念ではございませんので、それではなくて、法律的な概念だけについてこれから申し上げます。  証拠能力があるとかないとかといいますのは、具体的な刑事事件がございまして、そして犯人が検察側によって起訴され公判が開かれまして、小判審理の過程で具体的な公訴事実あるいはそれを法律的に構成しました訴因、それとの関係、それからその証拠によって何を証明したいか、つまり立証趣旨、それとの関係で当該証拠に具体的な証拠能力があるか、あるいはないか、こういうことが問題になるわけです。  現実にこのスナイダー公電につきましては、対象となる実は訴訟が存在しないわけでございまして、もとよりこれによって何を立証しようとすろかという立証趣旨も明確でない段階で、実は、評拠能力があるとかないとか申し上げるのは非常に法律的には無理がございますので、一般論として、この前、当委員会において水原審議官法律上のいわば抽象論を申し上げたわけでございます。具体的に、では、一体、どうなのか、こういう御指摘がございますと、具体的には公訴事実もなければ、あるいは立証趣旨もはっきりしない段階では、何とも法律的には答えられない、これが法律的には正しい言い方であろうと思います。
  205. 田中寿美子

    田中寿美子君 水原審議官は、そのときに、法的には証拠能力を持っている、しかし、内容については刑事訴訟法三百二十一条以下の伝聞の原則の適用を受けるというふうなことをおっしゃっていましたですね。私も、これの中身の何といいますか証明力といいますか、それはわからない、法的に証拠能力はあるというふうにおっしゃった、そこまではよく理解しております。  それじゃ、外務省の方で、これは政治的な判断をしていらっしゃるわけなんですね。この前は、柳谷さんは、あの公電は在外公館の公的な性格を持っているというふうにおっしゃった。だから、公的なものであれば証拠能力があるというふうに法務省の方はおっしゃったわけですね。で、このスナイダー公電というものの証明力というのはどういうふうにごらんになりますか。これは、法務省はいまおっしゃったとおり、わからないということですか。
  206. 河上和雄

    説明員(河上和雄君) さようでございます。
  207. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうですね。  外務省はどうですか。
  208. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 先般の委員会におきます法務省からの答弁は、これは純法律的な観点からの御議論でございまして、一般の公判廷における証拠能力ということが取り上げられまして、伝聞証拠の証拠能力に関するわが国刑事訴訟法の原則を一般的に御説明があったものと私どもも聞いていたわけでございます。いま具体的な点としてスナイダー電の内容のその法的な証拠能力を肯定したものとしての御発言ではなかったというふうに理解しているものでございます。
  209. 田中寿美子

    田中寿美子君 あのときの御発言よりだんだん後退していったんですね。実は、あの日の夕方に、外務省の事務次官が、あれは新しい証拠とはみなされないというふうにおっしゃっている。外務大臣もお帰りになってから、もう政治決着というのは総合的に判断してやったものなんだから、とても政治決着の見直しというようなものにはならないというふうにお答えになっているようなんですが、そうでございますか、外務大臣
  210. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 経過は省略をいたしますが、アメリカがいまの公電を中心にした百四十四点の文書を発表したわけでございます。これについては、わが方は、この文書の提供を要請したところ、これは向こうから参りました。外務省は文書を入手して以来、検討を進め、捜査当局にも検討のためこれを伝達をしてございます。  そこで、この事件によっていろんな分析の足場が出てきたわけでありますが、さらに今後ともいろんな関係者に照会するとか、文書を検討するとか、自余の文書も検討しなければなりませんが、いまの段階では、政治的決着を見直すようなことではなくて、基本的ないままでの方針に変わりはないのではなかろうか、こう考えておるところでございます。
  211. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣政府はもうすでに方針を決めてあって、一たんやったいわゆる政治的決着というものを変える気はないという、そういう立場に立っていらっしゃるのではないかと思われるんですね。  それで、捜査当局は、毎回、言っていらっしゃるし、この間もおっしゃいましたけれども、刑事事件として警察当局はもう逮捕するのに十分なだけの証拠がある。指紋あるいはエレベーターの中の目撃者あるいは横浜の総領事館の車、その他その他十分の証拠があるということを言っているんですけれども、今回の公電の中でアメリカの国務省に在韓アメリカ大使からそういう報告があったという公電は、新しい証拠物件とするに足りないという立場を、総理大臣もそのようなことをおっしゃっているし、それから外務当局もそういう立場をとっていらっしゃるとすれば、捜査当局が刑事事件としてなおこの事件を捜査中でございますというのは、一体、どういう意味があるんでしょうか。私にはもう何にも意味がないように思われるんですけれども、このことについて警察庁の方、それから法務省、外務省の御意見を伺いたいんです。一体、今後捜査を続けていってどんな意味があるんでしょうか。政府はすでにそういう政治決着をしてこれは見直さないという方針を出しているんならば、捜査を続けていったってどうにもならないんじゃないですか。
  212. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 私ども、捜査を担当いたしておる立場から申し上げるわけでございますが、まず今回のスナイダー公電その他の米国の文書、これにつきましては外務省にお願いいたしまして私どもにも逐次御提供いただいておる。あわせて外務省の方で、いませっかくいろいろな点について御調査である、その御調査の結果も今後いただいて、それを踏まえながら私どもの捜査の参考にしてまいるということを考えているわけでございます。先般申し上げたわけでございますが、ただいま資料としていただいたこの文書を見る限りでは、内容的に直ちに捜査上の手がかりが得られるというものではないということでございます。  ただ、それでは、一体、どんな捜査をしておるのかということでございますが、私ども広くいろいろな端緒あるいは情報というものに耳を澄ませまして、それを真剣に受けとめて、われわれは捜査機関でございますので、捜査に役立つかどうか、捜査の進展に役立つかどうかという観点でそれを洗うわけでございます。私どもとしては、やや抽象的な言葉になろうかと思いますが、新たな情報、そういうことに耳を澄ませ、それを掘り起こし、それに対してこれが手がかりになるものであれば所要の裏づけ捜査を行う、あるいは過去に膨大なる数の関係者もおるわけでございまして、そういったものについての洗い直し捜査をやる、あるいはこれも大変な量の既存の捜査資料等もあるわけでございまして、これも鋭意いま再検討を行い、それぞれについて補充の捜査を行っていくということでやっておるわけでございまして、現在も、なお所要の捜査体制をしきまして推進中である、こういう状況でございます。
  213. 河上和雄

    説明員(河上和雄君) 御承知のように、この事件は、発生当初から警察当局が捜査を進められておりまして、検察庁は、刑事訴訟法の基本線どおり第二次捜査機関ということでもって後ろに退いておりますが、犯人が検挙され検察庁に送致されてまいりますれば、これは当然捜査をし、起訴するかあるいは不起訴にするか、その証拠によって処分する、こういうことになるわけでございまして、犯人の検挙、逮捕ということが特段私の理解するところでは政治決着とは直接関係ないと思っております。引き続き、現場の検察庁においては、警察と協力しながら、主として法的な観点からですが、捜査を継続している、こういうことでございます。
  214. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 外務省は、この過去二週間にとりました措置については、その都度、いろんな機会に御説明していることに尽きるわけでございますけれども、これが明らかになった段階で、米国政府及び韓国政府にとりあえずの照会を行ったわけでございまして、それに対する先方の返答もあったわけでございますが、これはあくまでまだ文書全体が手に入る前からのことでございましたので、全体の文書が入手されました後、これが全面的な検討に入って、先週いっぱいで一通り粗ごなしと申しますか、一通りの検討が終わって、今週あたりは、捜査当局でも御検討願っていることでございますから、捜査当局の意見もまた伺って話し合ってみたいと思っております。それらを経まして、従来米国あるいは韓国に照会、確認していましたことに加えて、再確認ないしは新たな意味でのいろんな問い合わせということが必要になるかとも思っておりますので、それについては、逐次、その措置を続けていきたいと思っております。  ただ、いまお尋ねがございましたこの事件に関する捜査そのものは、これはやはり捜査当局にすべてをお任せしておりまして、私どもは、その捜査の状況に応じて、逐次、捜査当局の御意見を伺うというのが私どもの立場でございます。
  215. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、捜査当局が非常にまじめに一生懸命に追及していらっしゃることは理解できますし、外務省でも公文書を検討したり分析したりしていらっしゃるということは疑わないのですけれども、ただ、行く先はもう決まっているわけなんでしょう、ほとんど。政治決着はもう見直さないという方針が大前提として出されていて、幾ら捜査を続けていっても、これはちょっと欺瞞なんですね、国民に対する。そんなことをやっているだけの意味があるのかどうか。金大中事件は一生懸命でやっていますよというポーズを見せるのにすぎないことになりはしないかというふうに思うのですが、これは外務大臣、高度の政治判断かそういうふうにそれぞれの捜査当局や外務省の当局の仕事についてチェックをかけていく役割りをしていると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  216. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) この問題の政治的決着を見直さないという方針があって、それに基づいてやっているわけではございません。あくまで、今度のアメリカが発表した公電あるいはこれに伴う照会等によって新たなる事実が出てくるかどうか、鋭意、検討、分析さらに資料の収集等に努力している段階でございまして、そのできましたものは関係各省とも連絡をして、そしてその結果によって判断すべきものであるとは考えております。  しかしながら、現在までのところ、いま分析し検討した結果では、主権の侵害となる公権力の行使を明白に裏づけるようなものはいまのところは見出されない、こういう感触を申し上げたわけでございまして、今後とも、さらに分析、検討、真相の解明を続けることは当然でございます。
  217. 田中寿美子

    田中寿美子君 韓国政府は、スナイダー公電のあの事実も、自分たちの方には記録がないと言って否定しているわけですね。あれはうそだとは言っていないけれども、記録がないというふうに言っている。ですから、韓国政府が否定しているものを新たな犯罪の証拠と見るわけにはいかないというふうに、これは総理大臣などもそういうふうにおっしゃっていると思います。よほどのことがなければというふうにおっしゃっている。だから、今回の文書を幾ら分析していっても、覆すほどの証拠にはならないだろう、傍証を幾つか出していくということにすぎないような役割りを果たしているんではないかと思いますけれども、それならば、政治決着を見直させるほどの新しい証拠となるべき事実というのはどういうことを指しておっしゃるんでしょうか。たとえば、どういうことだったら韓国の公権力が日本の主権を侵したという証拠になるということになりましょうか。
  218. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは、ただいま申し上げましたとおりに、新事実かさらにあるかどうか、いろんな資料の収集、照会等を通じて、いろんな資料を集めて、その結論は捜査当局に結論を出してもらうより道がないと思います。
  219. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣は大変困ってお答えになっているように私は思うのですね。資料を幾ら分析しても同じことだと思います。本当にいままでの政治決着をひっくり返すほどの新事実というのは、そういう文書の分析なんかということじゃないだろう。これは法務省の前回の委員会での御答弁でも、伝聞的原則によって、刑事訴訟法三百二十一条ですか、の中身から言っても、これは証明力というふうには断定できないというふうに言っていらっしゃるわけなんですね。ですから、そういうことではないだろうと思うんですがね。  それで、たとえば韓国政府が否定している以上とおっしゃいますので、韓国政府が公権力で日本の主権を侵しましたということを言わなければだめなんではないか、私が想像しますのに。そういう事実、あるいは金大中さん自身が証言に立ってくださって、そして公の席で証明なさるとか、何か幾つか本当に決定的な新しい証拠というものを出さなければ、そういう政治判断ができないんではないですか。
  220. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま言われたようないろんな問題が改めて出てくれば、それはまたそれに応じて捜査当局が捜査を進めることだと思います。
  221. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、やっぱり金大中氏自身が公の場でそれを証明なさるということがなければできない。ところが、金大中さんはいま仮釈放の身で、原状回復を幾ら要求したって日本に来るわけにはいかない。また、日本政府はいままで金大中氏の原状回復ということを要求してないんですね。  自由にするということはアメリカかどこかに行くという意味であって、本当はこれは明らかに捜査当局もわかっているし、だれでもみんなわかっていることで、金東雲だけじゃない、恐らく韓国大使館の一番上層部の方あるいは韓国の中の相当の方の指令によって行われたことであろうというようなことは推測できているわけなんですけれども、そういうような事実がわかっていても、それを証明させない状況にある。金大中さんが日本——犯された犯罪に対して、これを戻すというのは日本にもとのままの状況に戻すということだと思いますけれども、それができない状況の中で幾ら堂々めぐりしていても事件の解決にはなっていかない。また、捜査当局は鋭意捜査をしております、外務省も鋭意分析、検討しておりますというだけのことに終わって、本当にこの問題を解決する方向に向かいつつはないというふうに私は考えて、非常にこれは重大な責任があると思うんです。  もう一つ、これはアメリカの公文書の中で語られていることだけれども、一体、あの事件当時の日本の情報はどうやってとっていたものなのかしら。アメリカの大使の国務省への報告の中では、アメリカの恐らくCIAでしょうけれども、情報を一生懸命にキャッチしてすぐにわかっている。だけど、その情報は日本の大使館には知らせるな、日本には自分で情報をキャッチさせよというようなことを言っているようですが、日本は、一体、あの当時、韓国の出先がどんな情報をとっていらっしゃったのか。後宮大使がいらっしゃったらしいんで、後宮大使とそれからハビブさんですか、あのときはしょっちゅう連絡をとっていたようにあの公文書で発表されておりますが、そのようなことは日本外務省には報告をされ、そして警察当局もそのような情報をとる活動をそれ以外にもやっていたんでしょうか、どの程度の情報をとっていたのでしょうか。
  222. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 事件が発生しましたのは東京で発生したわけでございますから、事件当初は、むしろ東京において警察当局その他が情報収集なり判断、捜査ということに入っておられたわけでございますが、ソウルの日本大使館からその当時以降本省に対する報告その他の記録を見ますると、これは大きな事件が起きたということで、発生以来、在ソウルの日本大使館は、これは当然でございますけれども、全力を挙げて情報の収集、あるいは韓国側との接触、あるいはアメリカを含む外交団との情報交換等に全力を挙げたということは間違いないと思います。その他、それに伴う本省に対するさまざまの報告が寄せられたことも記録されているわけでございまして、その意味におきましては、アメリカ大使館は非常に情報収集を密にやっていた、日本大使館は余りやっていなかったということはないと承知しております。
  223. 田中寿美子

    田中寿美子君 出先のどういう人たちがやっていたんですか、韓国では。
  224. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 在韓日本大使館、当時は後宮大使でございますけれども、大使以下全員でございます。
  225. 田中寿美子

    田中寿美子君 とにかく、今回もマスコミの方からアメリカの国務省の公電を暴露されて初めて外務省がその内容を検討する、もう何もかもこちらの方には材料がないような状況なんですね。そうして第一次政治決着、第二次政治決着に至るその過程を見ておりますと本当に不可思議で、だれでもおかしいと思いながら、そういう決着に来ているわけなんですね。  それで、私は、どうしてそういうふうになっていったのか、捜査の状況、それから外務当局がどういうふうな情報を持っていたのか、そして金大中氏が拉致されていく途中で空からはヘリコプターなどが飛んで、そして殺されないようにこれは防止したというふうに言われているけれども、そういう状況、それからその後、当時は大平外務大臣だったわけですが、韓国に対しても相当厳しく申し入れたはずのが次第次第に、金鍾泌首相がやってきておわびを入れて第一次決着に至ったその経緯、それから第二次政治決着に至りましたいきさつ、捜査当局がいまどのくらいまでわかっているとか、そういったことについて私どもはやっぱり知りたいんですけれども、どうもその辺がぼかされてしまうわけです。  公の場でそのようなことの説明ができないのであれば、私は、これ委員長にお願いしますか、秘密理事会にでも御報告をよく納得のいくように、実はこういうことでこうせざるを得なかったんだというその御説明国会にしていただきたいというふうに思うわけなんです。ロッキード事件のときに秘密理事会に灰色高官名を報告しましたように、金大中事件というのは、実にだれでもあれはもう犯人はだれだというようなことまで十分想像もついているし、おかしいのにおかしな決着をしていることについては、その背後に何があるのかということをみんな想像しているわけですね。ですから、捜査当局、外務当局あるいは法務省の見解なども交えて私どもに、秘密理事会で結構ですから、説明していただきたい、そういう機会を持っていただきたいということを委員長にお願いしたいと思いますが、もしそういうことが要求されたら、外務省もそれから捜査当局も説明に出ておいでになる用意がございますか。
  226. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 捜査の関係でございますが、私どもといたしましては、これは一種の中間報告というようなかっこうに当たろうかと思うのでございますが、現在まさに捜査継続中ということでございまして、御承知のように、継続中の事件の捜査を途中で公表するということについては大変いろいろな意味で問題があるのでございます。従来も、私ども、一貫して、こういうお話がありました際には、捜査に支障のない範囲内で国会での先生方の御質問に応じてお答えするということにいたしておりますので、まとめて報告するということはどうか捜査に関しては御容赦願えればと思うわけでございます。
  227. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いまお尋ねの点は、特に事件発生後第一次決着までの三カ月間のことを御指摘になったわけでございますが、その当時以来今日に至るまでの記録によりましても、外交折衝も相当な内容についてはその都度かなり御説明を申し上げているようでございます。書面にして出したこともございますし、その主な点を口頭で答弁したこともございまして、外交関係というものがございますから、物によっては申し上げ方がやや具体性を欠くということの御指摘はあるかもしれませんけれども、いつどういう措置をとったかとか、どういう返事が先方からあったか、あるいはそれに対してまたどういうことをこちらから申し入れたかと、それが金鍾泌総理の来日に至るまで種々の応酬があった経緯はかなり詳しく御説明した経緯がございますから、それは必要に応じまして国会の審議において今後とも御説明をする用意がございまして、特に重大な事実を秘匿しているとか、いままで御説明してあることのほかに何か申し上げてないことがあるというようなことはございません。したがいまして、さらに御質問があれば、どの場でも御説明できると思っております。
  228. 田中寿美子

    田中寿美子君 その経過はもういいんですよ。私が伺いたいのは、そういう政治決着をせざるを得なかったそこのいきさつですね。ですから、これはもっと高い次元のことだと思いますか、だれも腑に落ちないこと、それがそうせざるを得ない。外務当局でも捜査当局でも、本当にその点はむなしい気持ちを持っていらっしゃるんじゃないかと思うんですね、私たちもそうなんで、だから、なぜそうしなければならなかったのかを伺いたいということでございますので、それはそれだけにしておきます。委員長考えてみてください。  それから、衆議院の方で、きょう資料の要求がありました。土井たか子さんから、事件発生直後・の七三年八月八日直後、それから第一次政治決着の七三年十一月二日前後、それからスナイダー大使と金東作外相との七五年の一月九日の会談の前後、それからさらに第二次政治決着の七五年七月二十二日直後、あの前後の日本・韓国間の会談の資料などというものは、米韓のものが出せて、日韓のものが出せないというのはおかしい。私どもはそういうものを知りたいということなんでございますが、その資料の要求がありましたと思いますが、これはどのように答えられたのか。私どももその資料を要求したいと思いますが、委員長からお尋ねいただきたいと思います。
  229. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) その資料は出せますか。
  230. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 私どもの理解では、衆議院において土井委員から同じような御提起がありまして、委員長が理事会で検討するというふうにおっしゃったように伺ったわけでございますが、その点の御提起があります前に若干御質問がありまして、それに対しては外務大臣からもお答えいたしましたけれども、たとえばソウルから東京に対して送られた外交上の公電について、これをそのまま発表するということは、これは慣例上困難である。しかしながら、当時もそうでございますけれども、それ以来の経緯についていろいろ取りまとめまして、適切なものについては、これは書き物にするか口頭かはいろいろあると思いますけれども、できる限り御質問に対しては御説明申し上げる、これはいままでもそういう姿勢であるつもりでございますが、今後とも同じ姿勢であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  231. 田中寿美子

    田中寿美子君 わかりました。それじゃそのようにお願いします。
  232. 戸叶武

    戸叶武君 いま田中さんと政府側との応答を聞いていると、国会の論議というものが非常にむなしいものであるということをしみじみと感ぜざるを得ないのであります。  そこで問題点の、政府考える政治的決着というのは、一言に表現すれば、どういう内容意味するのか承りたいと思います。具体的な事例でお答え願います。
  233. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) お尋ねの点は、金大中事件に関する政治決着の内容について答えよという御質問かと伺いましたが、そうでございますと多少時間をいただくことになって、この政治決着の内容を、すでに過去においても御説明していることをやや繰り返して申し上げることになると思いますが。
  234. 戸叶武

    戸叶武君 頭のいいところで、なるたけ簡単に要約してください。
  235. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これは昭和四十八年十一月三日の田中総理と金鍾泌国務総理との間ででき上がった了解でございまして四点ございます。  第一点は、韓国側としては、犯人の処理と監督責任者の処分、つまり日本側で指紋を明らかにしました金東雲の容疑を認めまして、これを取り調べて相応の措置をとる、結果は通報する、これが第一点でございます。第二点は、金大中氏の自由の問題でございまして、一般市民と同様、出国を含めて自由であるということをはっきりさせた点でございます。第三点は、朴大統領の親書を金鍾泌氏が持ってまいりまして遺憾の意の表明があった点でございます。第四は、将来の保障ということで、再びかかる事態の生じないように努力をする。  こういうことが簡単に省略して申しますと決着の内容でございますけれども、同時に確認されましたことは、この刑事事件としての捜査は韓国もわが方もそれぞれ継続するという点でございまして、先ほど田中委員の御質問された点にも実は触れるかとも思いますけれども、こういう決着を見たいろいろな経緯があったかとも思いますけれども、一番焦点となりました当時の認識というのは、捜査は継続しますけれども、捜査の結果を待つまで日本と韓国との間のあらゆる関係というものをストップしてしまうことは賢明であるかどうかということにつきまして、当時の双方の最高首脳で真剣にお話がありまして、その結果、韓国側からは大統領の親書を持って国務総理が来られたということ、これを認識いたしまして、事件は事件として、一九六五年、国交正常化以来の両国関係を友好裏に進めるということはそれとして進める、これが両国にとっての利益であるという判断をされまして、先ほど挙げました四点の外交的決着に到達したということであると承知しております。
  236. 戸叶武

    戸叶武君 韓国の歴史を見ると、政治的な変動期における暗殺行為というものが、政治的変化を求める手段として、民主的基盤がないから、その方法がいつも慣用とされておったのであります。  しかし、この問題は、韓国内の出来事と違って、金大中さんは殺されてはいないが、日本の国の主権を無視して日本の国から拉致していったというような出来事が起きたときに、将来を約してと言うが、その行為は明らかであるのにもかかわらず、警察当局においても指紋も明らかになっておるし、犯人に会ったというエレベーターの中の見た人もあるのでありますが、そういうことを無視して、金鍾泌さんが来て、また、韓国の大統領からの親書もあって政治的解決を両国の首脳者でやる、こういう一つの方式が今後慣用されるならば、日本の主権を侵犯することはきわめてたやすいことになりますが、そういう前例を残していって日本の国の今後の外交なり治安というものは維持されるでしょうか、それを承りたい。
  237. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま報告申し上げましたような内容で政治決着をつけたわけでありますが、しかし、両国とも合意しましたことは、さらにこの捜査を続行するということでありますから、主権侵害という事実が明白になった場合はこれまた別個の問題であって、その大事な点だけは残してあるわけであります。
  238. 戸叶武

    戸叶武君 田中さんがすでに、捜査を継続するということと政治的決着という表現には大きな矛盾があるじゃないかと指摘しておりますが、国民のだれでもこれはペテンだという感じを受けざるを得なくなると思います。法の権威というものは、真実を国民に伝えることによって法の権威は維持されるのであって、政治権力を握ったものがクロをシロと言ってしらばっくれることができるような、いまのロッキードとグラマンの立て役者の表現のようなことはなかなか今後においても許されなくなるんじゃないかと思います。  いまの自民党政権は、吉田内閣が造船疑獄において佐藤さんに火がつこうとするや、法務大臣犬養君という文学青年上がりの人のいい方を使って指揮権発動をやった。これがために犬養は悶死して死んでしまいました。やはりあれ以来、三権分立などと言いながらも、現実において、内閣を握っている権力者は、間違ったことをやっても、指揮権発動、ガバナビリティーなんて言って、内閣の意思によって三権をどういうふうにでもゆがめていけるというような形ができ上がってしまって、その上に立って権力を握れば金をたっぷり、片手五億円、この程度はいただけるという前例ができてしまったならば、権力には金が集まる、金さえ使えば選挙には勝てる、政治腐敗と政治不信を招いても長期政権は維持できると思うような思い上がった考え方は文明史観を知らない人であります。恐ろしいことです。民族の魂がここまで腐ったかということによって、今後は、日本はどこからも信用されなくなる、私はむなしさを全部が感じてくるんじゃないかと思います。  二十五日には、世界観、人生観は異なるが、純粋さにおいて、私の歌の友人であった影山正治君が割腹して死にました。何も死ななくてもいいと思いましたが、やはり楠木正成の命日に死にたくなったのでありましょう。生も死もこれは天にささげて、そうして自分で死んでいく。むなしさをかみしめて、人を殺すこともできない。このむなしさで彼は自分みずから黙って死んでいったんだと私は思います。元号の問題はこれは別個の問題であります。純粋な人が、右たると左たるとを問わず、むなしく死んでいかなければならないようなていたらくの日本、恐ろしいことです。  韓国においても、かつて明治維新のまねをして腐敗政権を倒そうとした金玉均は明治十七年に日本に亡命した。しかし、韓国の刺客は日本で殺すことができないので、これを上海におびき出して、上海の万歳館において彼をいざなって殺してしまったのであります。また、日清・日露を通じて朝鮮の独立を約束した伊藤博文などといううそつきが民族の志士を裏切り日韓合併を断行したのを恨んで、安重根は、クリスチャンであり教育者であったが、この民族の信義を踏みにじった権謀術策の人に対して、これを殺して自分も死刑になっていったのであります。南北朝鮮に安重根さんの銅像が立っているのを、曽野綾子さんという聡明と思われる女性文学者が、なぜテロリストを銅像に祭っているかと言うが、このような民族の悲歌というものをみずからの体に受けとめていない人は、しょせん朝鮮を日本の手に入れることもできずに、伊藤博文は権謀術策をやったが、日本歴史の中に汚点だけ残してむなしく死んでいった。今度は吉田さんも伊藤博文の隣あたりに銅像を建てたいということだが、建てるのは勝手だが、ひっくり返されることもあるから、よほど気をつけないと、歴史の流れの厳しさというのを知らないと、十年先しか見えない政治家日本の運命を託することはできないと言って、私は、どこかでこだまする声が聞こえるのであります。  いまから五十年前の昭和四年から始まった世界経済恐慌のあらしの中に、浜口さんも井上準之助さんも犬養さんも、皆殺されていったじゃありませんか、こわいです。いま血を呼ぶような憤りが民衆の中に充満しております。これはエネルギーの問題よりも深刻です。官僚は聡明です、政治家は老練です。けれども、権謀術策にたけた大企業と怜悧な官僚とずうずうしい政党ボスとが組んで、だれも信用できないような政治を日本に醸し出されて、国民がこの政治を信用しますか、近隣諸国がこれを信用しますか。政治の根底は相互信頼です。  一転しましょう。その点じゃ、園田さんは、体当たり外交で率直に真実を説いて、相手の理解を求めて、むずかしい問題を中国でもソ連でも打開してきております。これは私は園田外交の高く評価する一面であり、いま園田さんにこの金大中のことを言わせても、せっかく外務大臣をやっているが、自民党におるところがなくなっちゃうから気の毒だからこれ以上は言いませんが、個人的な気の毒ではない。だれがどう隠そうが真実は暴露されていくんです、真実ほど強いものはない。ソクラテスが死を選んだのは、ソフィスト的な詭弁でなく真実を語る、何が正しいかを青年たちに訴えていくという哲学者になったから追い詰められて毒を仰いで死んでいったんですが、日本に一人の屈原なく一人のソクラテスなく一人の予言者ヨハネのないざまでは、日本は本当に世界じゅうからエコノミカルアニマル、どこかの小屋に飼われている白ネズミぐらいにしか扱われなくなると思います。いま私はこの一、二年が非常に大切だと思います。  一転して、園田さんは東京サミットを成功させるために、世界の中における日本のあり方を示すために、私は、空飛ぶ円盤のように世界じゅうを健康に任せて、健康じゃないところもあるでしょうが、とにかく駆けめぐって根回しをしてきたと思います。  中心課題はエネルギーの問題、石油の問題だというふうにECの国々もアメリカも受けとめたようですが、端的に言って、あなたはどのように東京サミットに備えるつもりですか。その中心課題となるものは幾つか、どういう問題か、いろいろあるでしょうが、その心の準備もできたと思いますが、三点なり四点、法三章というのが一番理想的だが、まあ五点ぐらいはがまんしましよう。その中心課題を要約して私は御答弁を願いたいと思います。
  239. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御発言の数々は深刻に拝聴いたしました。  さて、東京サミットの問題でありますが、いま二回目の準備会議を開催いたしました。私が回りましたイギリス、フランス、EC等では今度の準備会議はきわめて順調に進展しておるという言葉でありましたが、各国とも言われたことは、この前のボンのサミットに引き続いた経済問題のフォローアップでありますが、特にどこの国でも言われたのはエネルギーの問題であり、これはきわめて深刻であります。しかも、これが取り扱いを一歩過つならば重大な問題に発展するということでエネルギー問題が重点になるべきだろう、こういう意見が共通した意見であります。  なお、その際、私は向こうの方から南北問題がどこからも出ませんでしたから、エネルギー問題というのはいまのように消費国が集まって団結をして産油国に対決しておるだけでは解決はできない。消費国と産油国両方が一緒になって世界経済をどのようにやるか、この危機をどう乗り切るかということが必要であると考えると同時に、これと関連をして開発途上国の資源開発等ということも問題になってきて、エネルギー問題と同等に南北問題が重要であるからこれを忘れないでいただきたい、こういうことを主張しました。言いますと、向こうでは南北問題も大事だ、こういうことでありますが、そういうことからエネルギー問題がやはり重点になると存じます。  なおまた、英国を初め各国共通の意見は、サミットが具体的な経済問題だけ取り上げて解決しようとしては困難である。たとえばエネルギー問題一つ解決するのには中東問題に対する討議がなされなければ解決はできないであろうという、これは一例であるけれども、経済問題だけではなくて、政治問題についてサミットが討議すべきである、こういう意見もありましたので、そういうことも踏まえつつ準備をし、それぞれ各国の意向を聞きつつ第三回の準備をやる所存でございます。
  240. 戸叶武

    戸叶武君 そのエネルギー問題が東京サミットの中心課題になるであろうという受けとめ方は、園田さんだけでなく、各国の首脳がひとしくそのように考えているようですが、新聞では初め消費国の団結によって産油国を牽制するような報道がなされましたが、そういう言論もあったと思いますけれども、帰ってきて、あなたが消費国と産油国と対決することでなく、産油国とも十分な話し合いをやって、そうして問題を煮詰めてこの問題を解決しなければ石油問題の解決はあり得ないという決意並びに正しい報告をなされて安心したのでありますが、日本の態度は、左か右かでなく、矛盾が激化して対立したときに総合的に問題を検討して、その中に問題を煮詰めて、そのむずかしい問題を回避しないで、十分話し合って、その問題を粘り強く解決するというこの外交が日本独自の外交として凝結しなけりゃ、日本の外交の存在は私はないと思うんで、その点は私は非常な一見識だと思います。  中近東といえども、油は出て金は入ったわ、しかし、自分たちよりアメリカのメジャーの方が金はもうけたわというところに、何か不可思議な資本主義社会におけるからくりの中に発展途上国というものの持っているむなしさというものを感ずると同時に、自分たちの国の近代化を行わなけりゃならないと思っても、近代化の基盤が十分にできていない。そこに非常にいろんな矛盾が内在する。イランの王様は開化的な近代化を急ぐ名君主だと言われて、日本の石油危機の時分に通産大臣の中曽根君なんかは日本の皇室をこれに密着させなけりゃならぬなんて言ったが、アメリカではやはりコザックの武力集団がイラン王国をつくり上げたまでのことであって、王様は近代化を急いで金をたっぷり蓄積したが、民衆は依然として貧しい。外国の空気に触れた人々はイランの暗い封建的な社会と違って、ブ・ナロードの中へ飛び込んだ貴族の子弟が、フランスにナポレオンを追い詰めたが、フランスの方がツアーのロシアよりももっと自由にして濶達な空気があることを知ってロシア革命の火ぶたを切ったように、イランに革命が必ず起きるということをアメリカの識者は見ておる。  日本政治家並びに外務省の情報は——幾らか外務省の中にも心ある人はわかっていたんでしょうが、とにかく力の政治、長期政権におけるおごりから謙虚に世界の苦悩と動向を把握することのできない人々によって、よそよりも高い金で石油を買ってみたり、いろいろこっけいなドン・キホーテ的な振る舞いがなされて、いまでも外国の笑い物になって、日本政治家はと言うと、要らぬねという返事が出てくるほど無視され嘲弄されているのであります。  いま園田さんが言ったように、中近東の悩みは複雑多岐で、アジアを知らないアメリカが力任せに朝鮮、ベトナムで失敗している、中近東でも成功したとは言えない。アメリカべったりとしたサウジアラビアですらも危ないというので一定の距離を置いてしまった。解決がついたようで基本的な解決が困難な立ち往生のときである。アメリカが急ぎ過ぎるからこうなったでは済まない。ソ連、アメリカの仲に立ち入って、そうして中近東の問題も——ベトナム問題は日本が引き受けるが、中国とベトナム、東南アジアとアメリカの問題もむずかしいけれども、中近東の問題はおれはいやだと逃げるわけにもいかぬと思いますが、園田さんは中曽根さんよりはもっと柔軟と思うが、この東京サミットで石油問題に絡んで南北の問題、中近東の問題も出てくると思いますが、それにどのように対処するお考えでしょうか。
  241. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) わが日本も、各国が考えておるように、単に経済問題だけではなくて、エネルギー問題の解決を考えるならば、中東問題を初め開発途上国、これはわれわれ以上にエネルギーに深刻な影響を受けるわけでありますから、これと関連をして討議すべきであると考えております。
  242. 戸叶武

    戸叶武君 最近、ストラウスさんが来て、強引に電電公社の開放の問題あるいは食糧の問題何でも強硬意見はストラウスさんが代理で強く息巻いているようであり、それに迎合する者も日本にありますが、中近東も強いやつといえばストラウス、いまのカーターの選挙参謀で、金集めの名人であって、頭のさえた押しの強い人だから重宝に見られるんでしょうが、アメリカの大統領選挙と日本の総裁選挙は危なくて見ちゃいられないと言う人があるが、アメリカはとにかく皆ロビーがあって、大統領選挙にはいろんな各層の利害を代表したロビイストが話し合い、そうして軍需産掌あるいはメジャー、それぞれのひもから献金を仰いでいた。ニクソンなんかがやはりその約束を果たすために無理をやったんだと思いますし、カーターさんも潔癖だとは言いながら、参謀は、いまの日本政治家が言うように、金がなけりゃ政治は運営できないじゃないかという論理で金集めに夢中で、選挙に有利のために、日本はどんどん金もうけばかりをやっているというので日本を揺すぶろうとしているんでしょう。  われわれはアメリカとの協調は避けがたいものがあると思います。しかし、余り無法なことは、園田さんもどこかの新聞で、大きくは載ってなかったけれども、われわれは二重外交は許さぬということを断言しておりましたが、その断言は守っていただけるでしょうか。
  243. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私もそのような発言をした覚えがございます。その発言は大事なことだと思いますので貫き通しております。
  244. 戸叶武

    戸叶武君 私はアメリカのことだけを非難するのは無理だが、アメリカ日本の大企業、軍需産業、それから石油を扱うところの大資本、皆どうかしちゃっている。土建屋もそうです。いまの大企業のあのさまを見ると、国に対しての忠誠心などというものは一片もなく、会社のための鬼となって死んでいかなけりゃ出世ができないというような一個の人生観を持ってしまったと思うんです。恐ろしいことです。保元平治の乱を導いた源平の末期を彩るような心の退廃です。  私は、西欧と日本を比較するときに、西欧自身を美化するわけにはいかないけれども、やはり人格というものは個人人格を中心としてヒューマニズムが発展したと思います。いかなる権力にも、いかなる権威にも屈しないで、人間を尊重し、自由を愛し、創意に満ちた自由濶達な社会をわれわれは築き上げようという考え方がルネッサンスを生み、宗教革命を生んだと思います。日本にもそういう人があったのに相違ありませんが、しかし、今日が昭和元禄と言われるゆえんは、元禄と同じように、金のある者が権力を握れば賄賂は幾ら取っても差し支えない、片手五億円、こういうような風潮というものは日本歴史に必ず残っていきます。恥ずかしい時代です。人間は神様じゃない、常識的な限界がある。しかし、先ほど答弁のやりとりを見ていると、一個の法理論のむなしさを私は感じました。フランス革命のあらしがドイツを襲う前に、シルレルは、当時の歴史家は政治学者でしたが、後ろ向きの予言者であり、法律家は横ばいのカニのようなへ理屈言いだと言って、その人々の論理の中から新しいものは生まれてこないという痛烈な言葉を吐いております。  二回も世界戦争へ突入して無理をしたドイツでも、ブラントさんがアメリカに行ったときに、あなたの考え方はデモクラティックなソシャリズムかと言ったら、彼はもっと自由濶達な態度でフリーなソシャリズムだと。社会主義はいま硬直したものから全部音を立てて崩壊していきます。プロレタリア独裁だとか、あるいは偶像的なボスをいただいて秘密結社的な性格から離脱できないもの、宗教やイデオロギーを過大評価するもの。政治は常識です。国民生活と結びついた具体的な回答ができないでへ理屈だけを言っている間に、国民にしりに火をつけられるときが来るから見てごらんなさい。この一年、二年が世界の転換のターニングポイントです。  サッチャーのような人が勝ったのは、イギリス労働党の政治家よりもすぐれているという選択じゃない。やっぱり労働組合はストライキをやらざるを得ないであろう、政党と労働組合は違う。しかし、その苦労を乗り越えて、矛盾の中に、国のいま問題として具体的に処理をしなけりゃならないのは何かというものに対して、見通しと具体的回答を持つだけの発想の転換ができなければ、労働党といえども国民大衆からはあのような反撃を受けるんです。五十年前の労働党が勝たないであろうと予想されたときの選挙の大勝利の時代には、労働党には未来があった、ビジョンがあった。長期的な見通しと具体的な対策、それが間違っていたとしても、そういう意欲があった。何とかなるだろうというやつは皆自滅していく、滅びていく。  特に、私たちは、われわれ社会党も気をつけなくちゃならないし、保守党のことは余り言いたくありませんが、保守党の中にも本物は一人や二人はいるんだと私は思うんで、少し今度遠くまで見える望遠鏡か顕微鏡を買ってきてながめてみたいと思いますか、このようなときにこそ本当の政治が暗い政治のどん底の谷間から燃え上がらなければ、日本は腐れただれて崩壊していくんです。本当に日本を愛する者は、人を殺したり、暴力革命を幻想したりするんじゃなくて、大衆とともに苦悩し、大衆とともに模索し、そうして真実を語り合う。外国とだけ腹を割って真実を語っても、国民には何も真実を伝えない、すべて国民を盲唖学校か何かへ入れてしまうような仕組みではどっかで爆発点が、どこからか発火点が起きると思うのであります。私は、これからは政治家よりもやっぱり貧乏しても予言者になって野をさすらい歩きながら民衆に訴えていく以外に——民衆か奴隷根性を持っているから、このように政府権力にあたかも国家は自分たちが支配しているようなのさばり方をされているので、とてもかなわぬ。私は、そういう意味において、どこからか、テロリストでなく、志士仁人が、やはり原野にしかばねをさらすような草莽の志士が起きてくる基盤が、いま悲しいかな、できてきたと思うんです。もっと真剣で、もっと気違いじみたやつが政治家の中からも出てこなけりゃ、こんなしらばっくれた論議で、政府の翼賛議会にも等しいような論議をやっていること自身が国民に対して私は相済まないというむせぶような思いで胸を引き裂くものがあるのであります。  右翼の人でも、純粋であったがゆえに、テロもしないでみずからを影山正治君は腹切って鉄砲で死んでいきました。楠木正成の死生観について彼と汽車の中で語ったことがあるが、そのときにも彼にもっと淡々たる心境で人世の苦難の道を歩まなければいかぬということを私は言ったのですが、楠木正成は、進退両難、生と死の絶体絶命の境地に追い詰められたときに、両頭を裁断すれば一剣天にかかって寒しと、これは園田さんはわかると思うが、やっぱり進むとか退くとか、成功するとか成功しないとか、そんなことは問題じゃない。おのれをむなしゅうして生死を離れれば天が迎えてくれる。  これで終わります。  園田さん、自民党だからうっかり親しく口をきくと、今度は園田さんがねらわれるからな。ゆらりゆらりと揺すられながら、できるだけ外交の線では真っすぐの道を歩いてください。
  245. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 近年における外交問題の中で、金大中事件ほど多くの人々に不快感を与え、困惑と憤りを覚える事件は例がなかったのではないかと思います。もうすでに衆参両院の外務委員会、また、その他の委員会を通じて何十回というような事件究明のための論議が重ねられてまいったわけです。午前中から引き続いて、ただいまも金大中事件の問題が改めて確認をされながら政府考え方を求められたわけであります。  前回、私も、この問題に触れさしていただいたわけでございますが、もうだれが見ましても、この事件は間違いない事実であるという確信を得ながらも、それを立証する証拠物件と申しますか、それがないという理由によって政治的決着をせざるを得なかったというのがもういままでの一貫した答弁であったろうと思うんです。ところが、くしくも国務省の秘密文書公開によって、私どもは十分な証明し得る新しい事実というものがここに生じたのではあるまいかということでお尋ねを私自身もしてまいりました。しかし、それについても立証し得る能力はないであろうと、すでに外務大臣が、昨日でございましたか、見直しに対して大変消極的である。恐らく外務大臣の心境を、私、御推察申し上げると、本当にこんなやっかいな問題がと思っていらっしゃるに違いないと思うんです。恐らく本音が言えないのじゃないか、もうそういうところまで恐らくお気持ちとしてお持ちになっていらっしゃると私は思うんです。  われわれは決して意地悪いことをお尋ねしようとはさらさら思いません。もうすでにいろいろ左角度から触れられてまいりましたように、ただ、われわれとして見逃すことのできないことは、主権侵害ということに重大な問題があるわけでございまして、それをやはり明らかにすることがむしろ今後の日米あるいは日韓の友好というものにプラスの面の方があればこそマイナスの面になることは私はいささかもないんではないだろうかという、そういう印象すら持つわけでございます。  そこで、重ねてということになるわけでございますが、外務省の方からも資料をちょうだいしております。この資料を拝見いたしますと、紛れもなくその事実関係についてハビブ大使から国務庁官あて、スナイダー大使から国務長官あての内容というものは、これは常識的に判断をいたしま一ても、当時、まさしくKCIAの公権力の介入があったということを十分に裏書きする内容ではなかったろうか。もしこの事実が否定されるとするならば——確かに否定しましたね、韓国政府は、そういう事実はございませんと、こう言う。となれば、どちらかがうそをついているということになる。韓国政府がうそをついているのか、スナイダー発言やハビブ発言というものはインチキなのか、こういうところまで私どもは思わざるを得かいということになります。  外務委員会は公の場所でございますから、こういう発言もすぐ飛んでいくだろうと思うんですけれども、しかし、やっぱりこういう点から私どもは率直にその関係等について政府がどのように受けとめていらっしゃるのか、紛れもなく当時のハビブあるいはスナイダー両大使が国務長官あてに送った公電と言われるものは、これは事実であるという認識の上にお立ちになるのか、あるいは一方、韓国政府が言うたことに対してこれは事実と認定されたのか、まず、この辺からもう一遍原点に立ち戻って明確にしていただきませんと、われわれの疑惑はまだ残るだろう、一歩も前進しないまま終わってしまうであろうということになりますので、外務大臣の率直な所信をお聞かせいただければなと、こう思うんです。局長はよろしいですよ、きょうは外務大臣のあれですから。
  246. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 本事件に対する米国国務省の文書が公開をされたわけであります。政府は、この文書を入手してまず内容分析、検討を始めるとともに、捜査当局にも入手した文書を伝達をいたしました。  また、米韓両国政府に対して、本件文書についてとりあえずの見解を求めましたところ、これまでのところ、米側並びにスナイダー元大使はノーコメント。米国は、この問題については、従来一貫して日韓間の問題であるから、わが方の態度はノーコメントだという方針を堅持しているわけでありますが、ただし、米側は事実を否定はしておりません、ノーコメントというだけであります。入った文書が事実の文書であることは、これはもう当然であると私は考えております。公開した文書が当時の在韓米大使から国務省に打たれた電報そのものであることは私は否定をするわけにはいかぬと思います。一方、韓国側は、スナイダー大使電報に言う金東祚・スナイダー会談の記録は存在しない、当時の金元外相は記憶がないと述べておるのが今日の状態でございます。  米側から提供を受けた文書について、右のような米韓双方の照会も含めて、これまでにとりあえず分析、検討した結果では、わが国主権の侵害となる公権力の行為を明白に裏づけるようなものはいまのところは見出されておりません。なお、さらに分析、検討を続けて、捜査当局の意見も十分徴しつつ、今後の対応ぶりを慎重に検討する所存でございますが、本件の政治決着の際には、新聞等にも報道されたとおり、金東雲氏の指絞は日本の警察は割り出しておりまするし、かつまた金東雲氏を韓国側で処分をいたしましたことから見ても、これが入っておったということも踏まえて政治決着をされたと私は聞いております。その当時の政府が大局的見地から決断したものでございますから、今後の状況を慎重に検討いたし見守るべきであると存じますが、総理が本会議で言われたとおり、現在の段階では軽々にその見直しを云々することは差し控えたいというのが基本的な認識でございます。
  247. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうの外務大臣の御答弁を伺っておりますと、いつになく慎重で、まことに歯切れの悪いお答えじゃないのかなあというふうに思うのですが、大変失礼はお許しください。  どう考えても、その辺がやはりどなたがお聞きになっても納得できないだろうと思うんですね。要するに、金東雲自身が外務公務員であったのか、KCIA要員であったのかという、その辺の問題が分かれ道になっているようですね。私は、これから一体どういう方法を用いて情勢分析なりというものが考えられるのだろうか。しかもハビブ大使から国務長官あてに打たれた公電は極秘扱いですね、それからスナイダー大使から国務長官にあてられた内容はマル秘扱い、そういう区分がなされているようです、この資料に基づきますと。  私、不思議に思いますことは、確かにアメリカ法律の中に情報の自由の公開という法律があるんだそうですが、それに基づいて提供された。しかし、事務上の手続の手違いから出してはならぬ書類を出しちゃった。どう考えても、そんなことがあり得るんだろうか。恐らく外国のことですから、その管理体制についてはとやかくわれわれが云々すべきではないのかもしれませんけれども、果たしてそんな単純なことで処理できるものだろうかな、そういう事例というものが過去において、アメリカのみならず、あったのか、許されるべき一つのことなのか。もっとも国によって法律が違いますから何とも言えないかもしれませんが、アメリカ自身のことを考えると非常にオープンだ。また裏返しというか、もっと突っ込んで考えますと、当然、これは日韓関係においてもあるいは米韓関係においても問題が異常な方へ発展する影響と可能性というものを十分に含んでいる現実でございますね。となれば、そんなに容易に出せるものだろうか、不注意でしたということで、これは国対国の問題でありますだけに許されるべき事柄なんだろうか、その辺の御判断外務省はどう一体されておられるのかということも疑問でございます。  それから、スナイダー大使と金東祚外相が話し合ったことを内々秘密にしておいてくれという中身までちゃんと出ているんですね。まるっきりなかったことがこんなに明確に公電の中に入るものであろうかどうか。韓国側として、そういう事実はなかった、あったとすれば一国の外務大臣が外国の大使などと会う場合には必ず記録を残しておきます、それは当然でしょう。それをなかったと言われれば、そのまま信用しなきゃならぬのかというわれわれの立場、まことに歯がゆいという以外ないんですけれども、この辺われわれは一体どういうふうに理解したらいいのかという、少々蒸し返しになるかもしれませんけれども、率直な、多少エキサイトしてもいいですから、御見解を伺いたいなあと、こう思うのですがね。
  248. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 日韓関係、米韓関係、それからカーター大統領は訪日をした際に韓国を訪問することになっております。そういうことから何らか目的があったか、政治的意図のためにこういう過ちをやったかという想像をする方もありますけれども、当初から米国の電報を詳細に読んでみますると、そういう目的ではなくて、全く事務的な誤りであったと私は考えております。  なお、その際、日本の方から抗議したというお話でありますが、私は抗議はしておりません。米国の方から事務上の手違いでこういうことになったというおわびの意味の電報が来ております。ただし、間違いであっても発表したものはその事実を否定するわけにはいかぬ、こういうのが正直な米国の電報であります。したがいまして、私は、事務上の手続の間違いであったものを、こちらが困るからとか、けしからぬとか抗議すべき筋合いではないと思って抗議はしておりませんが、これは事務上の手違いであったと私は判断をいたしております。  次に、日韓、米韓との問題でなかなか記録がかい、記憶がない、米国とはちょっとニュアンスが違います。米国のスナイダー元大使はノーコメント、言わない、こういうことでありまして、これは記憶がないとか事実じゃないというのと意味が違う。韓国の方は、そういう事実はない、記録はない、本人も記憶がない、こう言っているということで、これがそのまま申し上げているところでありますけれども、いま先生がおっしゃったように、なかなか微妙な問題で、今後とも、さらにアメリカ資料あるいは本人に対する問題等照会する必要があると考えております。
  249. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにいま御答弁の中にもございましたように、韓国側に言わしめると、記憶がない、まことに東洋的な発想というものがいつからかはやり出しちゃって非常に困るわけですけれども、アメリカ側は非常にフランクな気持ちで、いまでも証明することができる、こう言われている。この辺の食い違い、だれが考えても明確ではなかろうか。  ただ、われわれとして非常にやっぱりふがいなさを感じると申しましょうか、今日まで日韓関係における問題というのはいろいろ残されているわけですね。竹島の問題といい、あるいは北洋漁業の問題といい、今回の問題といい、一体、日本は、強力と言った方がいいのか積極的なと言った方がいいのか、もっと自主的な判断に基づいた外交折衝というものができないんだろうか、何か遠慮する必要性があるんだろうかというふうな、そういう考え方がまた出てまいりますね。何にも遠慮することないと思うんです。対等の立場において、そうしたアメリカ側の公電というものはやっぱり非常に重要な裏づけとなるべき私は材料ではなかろうか。そんなにいいかげんなものを、著名な高官と言われる人が国務省あてに間違った電報を打つわけはない。となれば、一体、これからの情勢分析というものはどんなふうなことが考えられるのか。本人に確かめるのかという、いま外務大臣から御答弁ありましたように、スナイダー大使はいつ何どきでも申し開きをすることができるとおっしゃっている。ここまできた以上あと何を求めたらいいんだろうか。  いろんな資料によりましても、あの当時も大分報道されたはずでございますね。一つは、金大中氏自身の自作自演ではなかろうかという問題、それから第二点は日本の右翼の行動によるものではないかという点、第三点は北朝鮮のしわざではないかということを非常に機械的にアメリカ大使館側の方に流されたという事実についても、この大使は述べているわけですね。そういう一連の背景を考えてみた場合に、これは別に怪奇小説でも何でもないわけですのでね、これはこれ以上はっきりした事実関係というものはなかろう。それは隠蔽するための一つの方法、手段としか思えない。なおかつ、われわれがどうして遠慮せざるを得ないんだろうというところにどうしても刺さるもの、ひっかかるものが出てくるんですね。これはわれわれとしてもいま国際人権規約という問題を審議しているさなかでもありますので、どうしてもやはりこの問題がどっちかにうまく整理されていった方が大変望ましい、この審議の過程においても、そういう含みもありましてあえてこの金大中事件をいま俎上に上らしているわけです。いままでの御答弁では大変残念ですけれども、かつて私は大体いままでの政府の意のある積極的なそういう姿勢を示す発言というものは尊重してきたつもりでございます、はっきり申し上げて。しかし、事この問題に関してだけは、まことに残念ながらちょっと理解に苦しむ。  もう一つ先ほど、アジア局長は、いままでの経過やなんかについては可能な限り求められれば御報告いたします、こういうことを言われた。今回の事件に関しては、もう事実きちっとした証拠というものがあるにかかわらず、それが述べられない、そういうものがあって、どうしても歯切れが悪くなっちゃう。それは、あれですか、公務員の守秘義務というものを盾にとってどうしても言われないというようなことにつながるものなのかどうなのか。何かというと、最後は秘密を守るためにちょっとそれは公開できませんということでちょんというふうになるおそれが過去においてもあったがゆえに、そういうことはかかわり合いがないのかどうなのか。公務員法百条にありますね、守秘義務というやつが。なければないでいいんです。
  250. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いまのお尋ねの点は、証拠は握っているのに隠して述べないということかどうかということであれば、これは捜査当局において捜査を続けていただいておりますけれども、私どもがその当局から伺っておるところでは、決め手になる証拠がないので、ないということを伺っているわけでございます。  守秘義務の方は、これは外交活動を行って、いつ何日だれに会いましたとか、どういう報告が来たということに関しましては、一定の限度における守秘義務を負っているという一般的なことでございまして、本件について特定のことを申し上げないためにこの守秘義務を取り上げているわけではございません。
  251. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 わかりました、その点は結構です。  ただ、先ほど質疑応答の中で大変奇妙だなと思うことがあるんですよね。片方では政治決着をつけた、こう言うんですね、ところが、警察当局は現在もなおかつ捜査は続行中だと言うんですこの辺はどういう一体関連があるのかな。片方は捜査を続行中でしょう、片方は政治決着をつけたというんですよ、この辺どういうふうに理解したらいいのか。これも再々問題になっただろうと思いますが、もう一遍ここでたまたまこういう問題の再び発生したという時点をとらまえて再確認をしておきたいというふうに思うわけでございます。
  252. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 過去における政府側の答弁の繰り返しになりますけれども、政治決着が四点ほどございましたけれども、その了解の不可分の一環といたしまして、韓国側も捜査を続ける、また日本国内において起こった事件でございますから、日本側も捜査を続けるということが明確に理解されたという意味で、捜査を続けるということは、このいわゆる十一月の政治決着の中に含まれた一つの了解というふうに承知しておるわけでございます。
  253. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それをおっしゃるならば、新しい事実が出た場合には政治的な決着の見直しをするということにつながるわけでしょう。だから捜査が一方においては続行中じゃないですか。となれば、今回のこういう事件の発生についてもっと積極的にこの事実関係というものを、これは情勢分析なんという段階じゃないと私は思うんです、これほど明確な私は証明はないんではないだろうか、どうでしょうか。
  254. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いま積極性がないという御指摘でございますけれども、私どもは、この新しい文書が出ましたのを踏まえまして、全力を挙げて資料も分析、検討もいたしますし、とりあえずの照会、確認も行いますし、また、今後、さらに捜査当局とも打ち合わせた上で必要な照会、検討も続けたいという努力をしているつもりでございます。  なお、捜査当局におけるこの捜査の続行に関して、今般のこういう新しい資料あるいはそれに伴って得られた情報等が参考になるかどうか、これは捜査当局の御判断に任したいということで、決して積極的でないというつもりではございません。
  255. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 どこまでもガードをかたくされて、これ以上一歩も先へ進まないような印象を受けるわけでございますけれども、そこで、今後、何日間かかるのか、何カ月間かかるのか、何年かかるのかは私はわかりませんけれども、情勢分析の結果十二分に証拠能力としてこれはもう事実である、事実としてこれは取り上げることができろと、そうなった場合はいかがいたしますか。
  256. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 一言でお答えいたしますと、公権力の行使を裏づける新しい証拠がこれらの検討の中で出てきた場合には、従来から一貫して政府が申し上げておりますとおり、政治決着を見直すこともあり得るということに変わりはございません。
  257. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどの繰り返しになるかもしれませんけれども、こうした伝聞として片づけてしまった方がいいものなのか、証拠能力がないとして。しかし、権威ある立場に置かれているその人たちのやりとりというその関係性の中で明確になったものを、あとどこまで一体追求し分析をすれば証拠能力として取り上げることができるかどうか、そういう見通しはあるんですか。全くもう鎧袖一触で、これは証拠能力としては取り上げることはできないというふうに判断した方がいいんですか。まだ断定の段階じゃございませんでしょう、いま現在進行形の段階でございますから。その辺はどういう要素、条件がそろえば、そうしたものが明確になってくるんでしょうか。
  258. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いまのお尋ねについて、こうなればということを一口で言うことはちょっとむずかしいかと思いますけれども、たとえて申し上げますれば、金東雲書記官がKCIAの要員であり、かつKCIAから明確な指示を得て行ったということが何らかの形で明白になれば、これは公権力の行使があったということの明白な証拠になるかと思います。
  259. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 変な質問になるかもしれませんけれども、明白にする方向でいま取り組まれているのか、まあできることならばこれを穏便にこのままでいって終止符を打ちたいのか、どういう取り組み方なんですか。
  260. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) それは前者でございます。
  261. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大丈夫ですか、大変柳谷さん確信を持ってお述べになりましたけれども、われわれはそれも期待したい、そうあるべきだと思うんです。  ただ、外務省当局として、もういろんな事務的な分析がございましょう、当局としてはこれはもう十二分に信憑性があるものであるとなっても、政治的な圧力に屈しないでそれを押し通すことができますか。
  262. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いまのお尋ねの点は、いろいろ今後仮に新しい事実とか資料とか証拠が出てきたということを仮定して考えますと、それら証拠に基づきまして、かねて事件発生以来捜査を続けておられます捜査当局におかれて、これまではこれを裏づける証拠はなかったということだったわけでございますけれども、今回公権力の行使を裏づける明白な証拠であるという御判断がそこにあれば、これは政府が再々昔から答弁しておりますとおり、外交的決着を見直すことがあり得るということになるのかと思います。
  263. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、警察当局が今回の一連の秘密文書に基づいて情勢分析をした結果、これはクロであるという結論が出た場合には、政治的決着の見直しをする方向へ取り組むというふうに理解をしてよろしいんですか。これは外務大臣の方がいいかもしれないな。
  264. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いまのような仮定の御質問に関して、その仮定どおりになった場合には、いま御指摘のとおりのことになると思います。
  265. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いや、仮定と言った方がいいんでしょうかねえ、もうここまで切迫した事柄でありますだけに、もう仮定の段階を私は通り越していると思うんです。恐らく外務省としても、今後起こり得るであろういろいろな事態に対応すべき措置の仕方といいますか、当然、頭の中で描いておられると思うんです、もうここまで明らかになったんですから。  それで、もう一遍ちょっと逆戻りするようで恐縮ですが、この外交文書の極秘あるいはマル秘扱いというものは、どういうふうにわれわれは理解したらよろしいんですか。その中身に非常に重要、あるいは重要でない、一般に公開しても何ら影響を与えない、いろいろそういう見方があると思いますが、通常、国によってもその扱い方というものはそれぞれ違いがありましょうけれども、大体共通した概念というものがあるだろうと私は思うんですがね。
  266. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これはアメリカの国務省のルールがどうなっているかについては私ども必ずしも承知していないわけでございますが、通常、極秘、秘、平と、こう三つに分けるのがわりあいに一般的なルールかと思いますけれども、これはやはり極秘というものは、その外交活動の内容あるいは相手国の立場あるいは情報源ということから、これを秘匿することが国家の安全ないし外交上の機密として高度な必要性があるという場合を極秘というふうに考えるかと思います。それに至らざるものであって、しかし、これは外部に秘匿することが外交上必要なものというものが秘に属するもので、平につきましては、極秘、秘のような要件は備えていないいろいろな報告等が平に属すると、私ども外務省におきましてはそのような基準で仕事を処理しているわけでございますが、アメリカについては、そのとおりであるか、多少違う基準があるか、存じません。
  267. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 つかぬことをお伺いしますけれども、通常、情勢分析というものはどのくらいの日数があれば——これもなかなか決めかねるでしょうね、その事件の内容によって、それぞれ違う要件を持っておるわけですので。しかし、これが五年も十年もかかるという筋のものではございませんでしょう。おおむねのその目安としてはどのぐらいの日程、時間的なものを考えていらっしゃるのか。
  268. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) お尋ねでございますけれども、どうも一般論でお答えしにくい長期的な見通し、十年後の見通しというような形で取り組むような判断もございますし、ここ当面、当該国の次の選挙はどうであろうかとかいうような一、二カ月たてば見通しが立つような分析もございますから、これは一概に申し上げることはちょっとできないかと思います。
  269. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 決して困らせることを申し上げているんじゃないんですけれども、上手にすり抜けられたんですが、しかし、それは長期、中期、短期という展望はもちろんございましょうけれども、今回の事件に関する限り、そんなに十年もかかるなんていうことは考えられないでしょう。捜査当局にしても、先ほど事課長答弁を聞いておりましたけれども、この答弁が非常に脈絡が通じているみたいな同様の答弁が返ってきているんですよね。そう言うと、いま外事課長はいらっしゃいませんから申し上げにくいわけですけれども、独自のその判断、置かれた立場で問題処理に当たっておられるとは思いますけれども、当然、そんなに時間をかける必要はない。  今後考えられる情勢分析というものについては、くどいようでありますけれども、どんなことが考えられるんでしょうか、教えていただきたいんです。
  270. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) お尋ねの点が今般公開されました外交文書についての私どもの分析がどのぐらいかかるかというお尋ねでございますなれば、これはそう何年かかるというようなこととは考えておりません。むしろなるべく早く検討いたしまして、必要な照会なり問い合わせ、確認を行うということで、日を限るということはどうかと思いますけれども、これはちょうど二週間前に明らかになったわけでございますから、今後、そう長い時間をかけるべきものとは思っておりません。
  271. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 後段のことについては、確認はいいんですよ、確認だけじゃなくて、どういう情勢分析か行われれば、この事実の認定が明確になるかどうかということなんです。
  272. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これは外務省の責任事項と申しますのは、やはり内部でもよく検討し、捜査当局その他関係方面の御意見もよく聞きました上で、すでにある程度とりあえず聞き出したことはございますけれども、なおそれが不十分であり、あるいは新たに追加的に聞き出したり確認したいことが出てくれば、それも確認しまして、関係国であります韓国と米国の当局からできるだけの説明その他を得るということにあるかと思います。それらに基づきまして、それらの調査結果並びに追加的に得られた説明等全体につきまして捜査当局に御検討願って、これが従来の捜査に何らか新しい証拠として加えられるのかどうかという御判断を願うというのが私どもの外務省としての今後の段取りであろうかと心得ております。
  273. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうは、もうあと何分も時間がありません。ずっと局長答弁されたことにつきましては、外務大臣もそのとおりであると了解してよろしゅうございましょうか。
  274. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
  275. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一点。これは全然問題を変えますよ、きょうのところはこの問題はこれだけにしておきます。  一つ気がかりなことがあることについて、いまどこまでお調べになっていらっしゃるか。カンボジアでいまとらわれの身になっております内藤泰子さんという方ですか、その現状と見通し、ちょっと教えてくれませんか。
  276. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) 内藤泰子さんがカンボジア領のシソポンというところで救出を待っているという新聞情報がこの五月中旬にございましたが、これに基づきまして、政府といたしましては、隣接公館、つまり在タイ大使館に対しまして、その現状確認、安否の確認及び救出方法等を訓令いたしました。大使館といたしましては、現地へ館員を送りまして調べたわけでございますけれども、現在までのところ、内藤さんとのコンタクトはとれておりません。一方、ハノイにあるベトナムの政府、ベトナム外務省及び東京にありますベトナムの大使館に対しまして、同様、人道上のたてまえから速やかなる救出方を依頼いたしましたところ、ベトナム側としても最大の努力をいたすという回答に接しております。  なお、ベトナム側は、内藤さんが現在おりますところが現カンボジア政府の支配下にあるところなので、むしろ日本政府としてはカンボジア政府に対してアプローチしたらどうだろうか、こういうことでございましたので、これもハノイのベトナムの外務省に対してそういうことが可能であればぜひやらしてほしい、こういうような申し入れを行っているのが現状でございます。
  277. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは速やかな措置がとれそうな見通しはあるんですか。
  278. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) ベトナム外務省側の回答ぶりでは、かなり時間がかかるという中間報告に接しておりますけれども、しかし、おりますところがタイとカンボジアの国境先約四十キロの地点のシソポン、それも一説にはそこの市長宅気付と言っておりますし、あるいは一説にはベトナムのキャンプというようなお話でございますので、現状においては内藤さんの安否確認までには至っておりませんけれども、可及的速やかにこの安否が確認され救出ができますよう、外務省といたしましては最大の努力をいたしているわけでございます。
  279. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 終わります。
  280. 立木洋

    ○立木洋君 大臣先ほど同僚議員質問に対して、大臣は、現在、新たに出されてきた事実に関して目下検討中である、しかし、現在までのところ、政治決着を見直す必要はないのではないかというふうに判断されるということですね。間違いないですか。
  281. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
  282. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、大臣、もしか韓国政府自身がこれはみずからのKCIAが犯した犯罪でございましたということを明確に認める、確認する事態になったら、これは政治決着は当然明確に見直されるわけですね。
  283. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) それは当事者が認めれば、それ以上の証拠はないわけでありますから。
  284. 立木洋

    ○立木洋君 明確に政治決着の見直しを行われるわけですね。
  285. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) はい。
  286. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、今回、明らかにされた、つまり一月九日の会談というのがまさに私はそれに当たるだろうと思うんですね。  ここでは明確にスナイダー氏が本国の国務長官あてに出しているんでは、金大中拉致に責任のある在日韓国KCIA要員の金東雲はと言っているわけですから、だから拉致に責任があったわけです。そうして金東雲はKCIAの要員であったということを当時の韓国の外相自身が認めたわけですから、これか明確に紛れもない事実であるということが確認されれば、いま申し上げたようなことになるわけですから、政治決着は当然見直さなければならないという結論になるわけですね、いかがでしょう。
  287. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの電報で韓国がこれを認めたと断定するわけにはまいりません。韓国がわが日本に対してそのような事実を言えば、これは断定したことになる。その場合には見直しの相談をもう一遍やることがあり得るわけであります。
  288. 立木洋

    ○立木洋君 もちろん私はあとまたお尋ねしますけれども、いまの時点では、これか事実だとすれば、韓国の当時の外相か明確に認めたということになるわけですから、これが確認されれば見直しは当然あり得るということでよろしいですね。
  289. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは韓国の外務大臣かこの電報の内容は事実であるというだけではなくて、わが日本にその点をはっきり明確にする必要があると思います。
  290. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、問題は、やはりこれが事実であるかどうかということを明確に、しかも早急に詰めていくのが私はいまの日本外務省としてとらなければならない措置だろうと思うんです。さっき局長は全力を尽くしてそれをやるということを言われたわけですし、大臣も全くそれに同感であるという趣旨のことを最後に述べられているわけですから、そうしますと、このアメリカの今回の公電、これはアメリカ政府はコメントしないということですが、これはもちろん否定したわけではない。そして本人のスナイダー氏自身が打った公電ですから、これは本人に明確に確かめるという可能性も当然あり得るわけですし、それもできるだろうと思うんですね。それからまた会談の記録そのものについて、それが事実であったかどうかということをさらにアメリカの国務省なり関係当局に要請し明らかにしてもらう努力を日本政府としては行うべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  291. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) スナイダー氏にとりあえず照会したところ、スナイダー氏はノーコメント、言わない、こういうことであります。
  292. 立木洋

    ○立木洋君 いや、言わないで引っ込んでしまったら日本政府としては困ると思うんですよ。ノーコメントであるけれども、あなたの当時の事柄自体がこうなっている、これは日本の外交問題について重大な問題である、だから、その点については何らかのあなたの見解を明らかにしてほしいということを私は繰り返し要請してもいいだろうと思いますけれども、いかがでしょうか。
  293. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) その努力は続けるつもりでおります。
  294. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、アメリカ側としてはこの事実については否定したということにはなってないわけですね、ノーコメントである。それから韓国の場合には、先ほど言われましたように、これは記録が存在しない、それから記憶にないと。記憶にないなんという発言は何回か聞くわけですけれども、これも私は明確に言えば、韓国政府がこのスナイダー氏の国務長官あてに打った公電の内容を明確に否定したというふうには言えないだろうと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
  295. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまのところは認めていないということであります。
  296. 立木洋

    ○立木洋君 つまり会談の記録がないだとかいうこと、あるいはまた記憶にないという表現の仕方ですから、それが事実無根であるということを韓国政府が言ったことは一回もないわけですから、私は、それを認めることが韓国政府にとって困るという立場からそういうふうな主張をしておるのだろうというふうに思うんですね。  先ほど、この点で大臣が言われましたけれども、今回のこの公文書、秘密公電の内容について捜査当局に判断をしてもらうという趣旨のことを申されましたけれども、捜査当局に判断をしてもらって、どうするかということを決めるという趣旨のお話が同僚議員質問に対してあったんですけれども、これはどういう意味でしょうか。
  297. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま入手しました公電その他の文書、照会で判断してもらうというのではなくて、関係各省と相談しながら、さらに鋭意真相究明の努力をしますが、最後にこれが主権の侵害であるかどうかということを証拠によって判断するのは、これは捜査当局である、こういう意味であります。
  298. 立木洋

    ○立木洋君 私は外交決着をつけたのは捜査当局ではないと思うんですよ、そうですね。捜査当局に外交決着をどうするかという判断を求めるというのは私は筋違いだろうと思う。外交決着をどうするか、見直すかどうかということは外務省当局か私はみずから判断しなければならないことだと思う。  いま捜査当局が提起している問題というのは、捜査がわれわれはできない、何が障害になっているかと言ったら外交決着が壁になってこれ以上の捜査はできません、こういうふうに言っているわけですね。ですから、私は、いまの時点でやっぱり外務当局が、これは前回の政治決着というのも最高の政治判断で決着をした問題ですから、これは捜査当局のいかんにかかわりなく、新しい事実であるということを政府がまた最高の政治判断を行って、この政治決着を見直すという態度を私はとるならばとるべきであると思います。それを私は捜査当局とのかかわり合いで云々されるというのはいかがなものだろうかと思いますけれども、大臣どうでしょうか。
  299. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 仮に政治決着を見直す必要が出てきた場合の判断政府判断であります。それまでいろんな捜査を続け、新事実を明白にして、主権侵害をした事実があるかどうかということを調べることは捜査当局の仕事だと、こう思います。
  300. 立木洋

    ○立木洋君 そうすれば、先ほど問題になりました当時の韓国の金東作外相についても私は接触をして、本人はいま記憶にないと言っているわけですから、記憶にないということで日本外務当局か引き下がるのではなくて、必要なさらに質問を行い、接触を重ねる経過の中で、先ほどのああいう記録の問題等々についてもよく考えてもらって、本人に当時の状況を思い起こしてもらって、記憶にないと言うから、本当に記憶を忘れておるならば十分に思い出してもらって、はっきりとした見解を繰り返し求めていくという努力を私はやるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  301. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 現在わかっておる以外の資料、文書あるいは当事者に対する照会等は、当然、その努力を続けます。
  302. 立木洋

    ○立木洋君 それから、事件直後、一九七三年の八月十一日当時ですが、当時のハビブ駐韓大使が公電でKCIAの犯行であることを示すのっぴきならない証拠が集まったというふうに述べているわけですね。そしてまたレイナード氏は確信を持ってKCIAの犯行だとソウルの日本大使館に伝えていたので、日本外務省への大使館からの報告もその前提に立っていることは間違いないだろうという趣旨のことを述べていますか、この二つについては事実を確認されておりますでしょうか、外務省としては。
  303. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) このハビブ電報ののっぴきならぬ証拠という点につきましては、これは米国の外交機関がその時点におきまして本省に報告した電報でございますから、そういう電報としてこれをいま読んだところでございます。私どもの方からこの根拠とか、その妥当性ということをいまここで判断するその立場にはございません。  それからレイナード氏の件につきましては、レイナード氏がそういうことを発言したということはその時点で聞いたわけでございますけれども、わが方にそのようなことをレイナード氏から話があったという記録はございません。
  304. 立木洋

    ○立木洋君 そういうことを承知しておったということですけれども、当時、いわゆる後宮大使を中心とする在韓大使館からの日本外務省への金大中事件に関する報告の中で、そういうことを示唆したような公電というのはありますか。
  305. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) お尋ねの点は、ソウルの大使館が事件直後に現地でいろいろ情報を得たんではないか、その中にいろいろKCIA犯行説を裏づけるような情報があって、それが報告されたんではないかというお尋ねかと思いますが、もちろんその時点で、東京でもそうでございましたけれども、ソウルにおきましてもわが方外交機関ができるだけいろんな情報を集める努力をしたことは事実でございまして、その中には、東京でもそうでありましたとおり、そういう容疑があるとか、そういううわさがあるとか、いうような報告はいろいろあったと記憶いたしますけれども、これを断定するような動かぬ証拠があるとか、そういうような種類の報告には接していなかったように記憶されております。
  306. 立木洋

    ○立木洋君 そういう内容の公電を当時外務省当局はどのように判断をし、それに対して在韓大使館に対してどのような指示を出されましたか。
  307. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 事件が東京において起こったわけで、ソウルに金大中氏があらわれるまでの期間のことにつきましては、時を逸さず捜査当局が捜査に入っておりましたので、むしろ東京におきまして捜査の状況の進展ということについては私ども捜査当局からいろいろ聞いており、また、その情報はむしろこちらからソウルの大使館にも伝達したわけでございますが、他方、ソウルにおきましてもいろいろな情報が流れていたことは事実でございます。  ただ、繰り返しでございますけれども、その情報の中にKCIA犯行説を明白に断定させるような情報がなかったというふうに申し上げているわけでございます。
  308. 立木洋

    ○立木洋君 その柳谷さんの御説明では納得しかねるんで、アメリカ自身も米韓関係のこの金大中事件の公電について公表されているわけですから、私は、主権が侵害された疑いのある当事国である日本政府が積極的にこの態度を明らかにするという立場をとるならば、当然、国民の前に、ソウルにある日本の大使館と外務省との間でのこの金大中事件に関する公電を一切明らかにしても私は何ら差し支えないどころか、そうすべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  309. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) お言葉ではございますけれども、日本外務省といたしましては、外交活動にかかわるこの種の情報の報告とか判断の報告とかというようなものにつきましては、相手方政府との関係あるいは情報源に対する配慮、今後の相手国政府なり、同地駐在の外交団との接触による外交活動のためのもろもろの配慮からいたしまして、そのものとしてこれを公開、公表することは適当でないと考えております。  しかしながら、すでに過去に、事件以来、そのように心得て実施していると思いますけれども、その報告の概要とか、どういう措置をとったということにつきましては、委員会の御質問等の機会を通じまして、できるだけ詳しく具体的に御報告する努力は払ってまいりまして、今後とも、その努力はいたす用意があることは繰り返して申し上げているとおりでございます。
  310. 立木洋

    ○立木洋君 積極的に解明する立場をとると言われるんですから、私は、少なくとも、先ほど申し上げましたように、米韓間における公電はアメリカ側は公表したわけですよ。そしてその中に大変な、当時の韓国の外務大臣がうちのKCIAの金東雲がやったんですよということを述べているわけです。これが明確な事実であるとすれば、政治決着を見直してやらなければならないという重大なところまでいくものなんですよ、この一月十円公電は。だから、これを徹底して明らかにするというのが日本外務省立場だと言われるんでしょう。徹底的に明らかにするならば、それにまつわる一切のものを徹底的に追及していく。アメリカ側に対してもさらに努力してスナイダー氏に判しゃべってもらう、あるいは金東作元外相にもそのことをよく説明して十分な事情を聞く、あらゆる努力をする。そしてソウルにある大使館との間で交換された公電についても、明確に日本政府としてはこういう状況のもとでこう判断したんだということを明らかにしてやる、そういう努力を私はすべきだろうと思うんですよ。  そうしないと、この問題というのはいつまでも決着がつかなくて、日本外務省当局というのは、事実上、この金大中事件の解明を隠蔽する側に回っているのではないかというふうに言われても私は仕方がなくなるんじゃないかというふうに思うんですけれども、そういう今後の重大な外交問題に対する考え方として、外務大臣、いかがでしょうか。
  311. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先ほどから申し上げますとおり、できる限りの真相究明の努力は今後とも続けるつもりでございます。
  312. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんから、この問題はそういう意味で私は非常に重要だと思うんですね。日本のいま政府当局、外務省当局自身がどういう道を選ぶかという重要な岐路にあるだろうと思うんです、この金大中事件の今回の新しき事実が明らかにされた状態から見て。そしていわゆる韓国自身が認めなければ日本政府が自主的に何ら判断し得ないというような、全くみっともない状態を私は何としても解決していただきたいと思うんです。私は、そういうことを強く要求して、私のきょうにおける質問を終わらさしていただきます。
  313. 田英夫

    ○田英夫君 大臣、いま国際人権規約をまさにわれわれは批准をしようとしているそういう中での問題でありますが、私は、日本国際人権規約批准をして、これに見合うような国内法を整備するという状況の中で、今回保留になった問題もさることながら、非常に大きな特に国際的な問題と言えば、やはり日本におられるいわゆる在日朝鮮人、韓国人の皆さんの問題、もう一つは被差別部落の問題だと思うんですね。ですから、次回の委員会では参考人をお呼びしていろいろお話を伺うことになっておりますが、私としては、在日朝鮮人、韓国人の長い間にわたる人権問題ということをぜひ当事者の方から語っていただきたかったので、わが党はそれを提案したんでありますが、残念ながら人数その他の関係で当事者のお話を伺えない状況にあります。  で金大中さんの事件というのも、私は、そういう問題に関連をして無関係ではない、長い間にわたる朝鮮民族に対する私どもの非常に不当な取り扱いということに基本を置きながら物を考える必要がある。ただ隣国とか、あるいは外交上の一つの問題というような、そういうことで取り扱うべきでないと思いますので、私は、ことさらにこの問題に強い関心を持っているわけです。  そういう前提に立ってお伺いをいたしますが、一つは、先ほどからの大臣のお答えの中にもありますし、きょうの午前の衆議院外務委員会で楢崎弥之助議員質問にもお答えになっているようでありますが、当事者が認めれば見直しをするんだというお答えがありますね。で当事者というのは韓国政府なのか、あるいは金大中さんを含めた、梁一東、金敬仁両氏を含めてこの人たちも当事者なのか、大臣の言われる当事者というのは、一体、どういう人たちを指すわけですか。
  314. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 衆議院における答弁は韓国政府という意味でございます。そういう意味で当事者と答えましたけれども、金大中氏は一つの被害者でありますから、金大中氏だけの意見でこれをどうこうするわけにまいりませんけれども、これに関連をした人々が全部その事実を認めるならばやはりこれは当事者でございます。
  315. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、金大中さんは、実は、いままであの拉致された直後に記者会見をして印象を語られ、その後も部分的には話されておりますが、長い間監獄に入れられていたというような状況の中で真実を語っておられない部分が非常に多いと思います。これをいま改めて釈放された金大中さんの口から直接真実が語られるということがあるならば、これは重要な事実見直しの要因になるというふうに理解していいわけですね。
  316. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 捜査を続けるについての重要な参考にはなると思います。
  317. 田英夫

    ○田英夫君 警察庁外事課長がおいでになっていますから伺いますが、日本の捜査当局としては残念ながらいまだかつて一度も金大中さん自身には直接事情聴取を行っておられないと思いますが、事実ですね。
  318. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) そのとおりでございます。
  319. 田英夫

    ○田英夫君 通常のこの種の事件ならば、被害者自身である金大中さん、そしてその現場におられた梁一東、金敬仁両氏の口から直接事情を聞くというのはもう捜査の常識と思いますが、なぜ今日までそれをおやりにならなかったのか、その事情を伺いたいと思います。
  320. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 被害者でございます金大中氏、それから現場に居合わせられました参考人でございます梁一東氏、金敬仁氏。この参考人でございます梁一東氏、金敬仁氏につきましては、事件発生直後、御協力を得まして私ども直接事情聴取をさしていただき、供述もとらしていただいておるということでございます。ただ、金大中氏につきましては、御案内のとおり、ああいう形で国外に誘拐されてしまったという後でございまして、その後もずっと国外におられるということから、警察当局、捜査本部が直接お目にかかるという機会を得ておらぬわけでございます。  そういうことでございますが、捜査の常道というところから見ますと、これまでにも実は外務省を経由いたしまして金大中氏の供述がわが方に寄せられておるわけでございますが、なおもっと詳細な点について伺う機会を得たいものということは考えております。
  321. 田英夫

    ○田英夫君 国際刑事警察機構というのがありますが、これを通じて、つまり日本の捜査員が直接金大中さんに会って話を聞くということになればこれはまさに逆の主権侵害になりますから、そういう手続をおとりになるつもりはなかったんですか。
  322. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 国際刑事警察機構、ICPOと申しますが、この機構には政治的な問題にはタッチしないという原則があるようでございまして、そういう観点でこの金大中氏事件と申しますもの、これは大変な政治的絡みの事件でもあると思います。政治的な問題も背景にあるというようなことから、ICPOを使いますよりは、すでにその当初から外交的ルートでいろいろと韓国政府に対しわが方も要求をし、あるいは資料の提供もし、あるいは韓国側からも一部の資料若干を提供を受けているということでやってまいったわけでございまして、外交ルートといい、あるいはICPOという、相手にするのは国でございますから、現在のところ、私どもとしては、この外交ルートというものによりましてやっていくということがいいのではないかということを考えておるわけでございます。
  323. 田英夫

    ○田英夫君 私の手帳にもソウルの金大中さんの電話番号が書いてあるんですけれども、電話をかければその場で受話器を置かずにすぐ出てこられますよ、いまでも。いわんや外務省は大使館をソウルにお持ちなんですから、大使館の方が金大中さんのお宅を訪問されていろいろ話を聞かれるなんということはまことに簡単にできるわけですね、やる気になれば。朴政権に対する遠慮とか配慮とかいうことがおありになるんだろうと推測はしますけれども、本当にやる気があれば私はわけないことだと思います。これは私の意見として申し上げます。  もう一つ伺いたいのは、いま非常に問題になっているスナイダー・金東祚会談、一九七五年の一月九日、これもけさの衆議院委員会で楢崎議員から出ているはずでありますが、これはソウル郊外の在韓米軍の陸軍第八軍専用のゴルフ場でこの会談が行われたという有力な情報を私どもは得ておりますけれども、これは外務省はつかんでおられるでしょうか。
  324. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) つかんでおりません。
  325. 田英夫

    ○田英夫君 これは韓国政府が記録がない、こう言っているのは、実は、このゴルフ場会談であるということになれば無理もないことなんですね。ゴルフをしながらきわめて非公式に外務部長官とアメリカ大使が会うなどということは大いに、大いにあり得ることであり、そうした雰囲気の中で、一日じゅう一緒に歩いている中で、こういう話が出るということも大いにあり得ることだと思うわけです。で、この事実を含めてスナイダー、金東祚両氏に確認をしていただけるでしょうか、ゴルフをしたかどうかということ。
  326. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 私ども、この会談のことにつきましては、今回の文書の中でも特に重要なものの一つ考えまして、とりあえずではありましたけれども、米国あるいは韓国に照会の努力をしたわけでございますが、同時に、通常、米国の大使のような外交の責任者が外務部長官を訪問し会談をしたような場合には、大体、韓国の新聞に報道されるのが通例でございますので、念のため当時の新聞を改めて調べてみましたけれども、このような事実はその当時の新聞記事に出ておりません。しかしながら、外相と大使との間に何らかの接触があった事実というもの、その可能性を全くそれだけによって否定することはできないというのは御指摘のとおりでございますので、さらに、今後、いろいろ研究いたしました上で、韓国に関しましては、外務部、ないしは必要に応じて適当と考えられれば金東作氏自身についても、さらに説明をしていただくように申し入れるということは、その可能性を排除しているわけではございません。
  327. 田英夫

    ○田英夫君 大変お役所式なお答えをいただいたんですけれども、排除するわけではございませんということは、民間の言葉で言えばやりますということなのか、あるいは非常に積極的にも聞こえるんですけれども、私は、実は、前回の委員会で、もし政府、行政府がおやりにならないならば、私どもが国民の皆さんの代表として参議院外務委員会の調査団を派遣して、スナイダー、金東祚両氏にお会いをして、その事実を確認をする必要があるのではないか、理事会でも御相談をいただきまして、この問題については行政府の方の出方を待ってわれわれの態度を決めようということで、これは、委員長、そういうふうに理解してよろしいわけでしょうね、そういうことになっていると思います。したがって、私は、このことを改めて伺っているわけです。
  328. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 確かに、最初に明らかになりました五本の電報についてはかなり時間もたちましたので一通りの検討を終わったことは事実でございますけれども、やはり電報全体についてよく検討したいというのが私どもの当初からの考えでございますので、その点はもうちょっと時間をいただきたいと思います。捜査当局とももう少し意見を交換したいとも思っておりますので、その上で、ただいま御指摘のような照会を外務部を通すか、あるいはそれと並行して直接行うかということについては決して消極的な意味先ほど申し上げたつもりではございませんで、そういうこともあり得ると思って検討を進めているのが実情でございます。
  329. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ伺いたいのは、現在、いま在東京あるいは全国の総領事館、領事館も含めていただきたいと思いますが、韓国の外交機関にKCIAの要員が何人いるのか、そしてそれが何という人物なのか、これをつかんでおられますか。
  330. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これは前々からしばしば論議される点でございますけれども、日本政府といたしましては、現在においても、東京の大使館及び総領事館等、韓国の外交機関にKCIAの要員が配属されているという事実は承知しておりません。
  331. 田英夫

    ○田英夫君 これはそういうふうに外務省として答弁を統一することになさったようであります。私の過去の経験によると、実は、速記録にはっきり残っております。昭和四十八年八月二十三日、つまり一九七三年の八月八日に金大中さんの事件が起きたその直後の二十三日の参議院の法務委員会で、私が質問をいたしましたのに対して、当時の中江アジア局参事官と思います、中江さんが答弁をしておられますが、こう言っておられます。   在日韓国大使館の館員の中に韓国のCIAに  所属しておられる方がおられるということは私  どもも承知しております。それが具体的に何人  で名前はどういう人かということにつきまし  ては、ちょっと私準備しておりませんので、こ  こに資料を持っておりませんので、この場で  はちょっとお答えいたしかねる次第でござい  ます。こう言っておられるんですね。ということは、資料があればお答えできますと、名前まで答えられますと、通常の日本語で理解すれば、なるはずじゃないでしょうか。当時、中江参事官はそういう答弁をなさった。  さらに申し上げると、時間がありませんから先へいきますが、それからわずか一週間後の八月三十日のこの参議院外務委員会でやはり私の質問に対して、妹尾当時北東アジア課長、いまジュネーブにおられるそうですが、妹尾さんが「外務省では在日韓国大使館あるいは日本にある総領事館、領事館等にKCIAの出身者がいるかいないか、承知しておりません。」こう答えておられます。いまの柳谷さんのお答えと同じにここで変わるのであります。わずか一週間ですよ。この間に、外務省日本政府はKCIAはつかんでいないんだというふうに態度をお変えになったことは、この答弁で、これは速記録に残っているんですから、事実なんですね。  これは私が疑問を持ち、疑いを持っても仕方がないと思いますが、大臣、これはどうですか、どういう印象をお持ちですか。
  332. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 在外公館はどこの国もそうでありますが、それぞれ出身があります。しかし、来る場合には外交官として来るわけだからそうでありますが、いままでの答弁の経緯にかかわらず、もう一遍調査をさして答弁をいたすつもりであります。
  333. 田英夫

    ○田英夫君 それはぜひお約束をいただきたいんでありますが、いま言われたとおり、その後でまた私しつこく同じような質問をいたしますと、今度は、いま大臣が言われたように、日本の在外公館には外交官として来ているんで、その出身のことについてはわからぬ、日本からもたとえば警察庁の人がソウルの大使館に行っているということもあるんだというお答えが出てきたこともあります。しかし、事は、警察庁の出身とか、あるいは運輸省の出身の方、大蔵省の出身の方が向こうへ行っておられるのと違うんですね、このKCIAという問題になると。  これは警察の方にもお願いをしたいと思いますし、政府の方でこういうものはやはりつかんでいていただかないと困るのであります。私は、大変私事ですが、外交官リストを在日韓国人のしかるべき人に見せれば、これとこれとこれとこれがそうですと、こういうふうに日本におられる韓国の皆さんの方はもう知っておられますよ。そういう状況を政府がつかんでおられないというのは大変おかしなことだと思います。  時間がありませんから、もう一つ進めますが、アメリカがこの時期に発表したということが先ほどからやはり問題になっている、私も全く同感かのであります。これはやはりアメリカの過去何年かの間、しばしばアメリカの皆さんとも接触をし、ハビブ氏とはそういう意味ではずいぶん論争をしてきた経験の中で感ずることなんですけれども、非常に変わってきている。これは外務省としてぜひ御理解をいただきたいことだと思います。アメリカの韓国に対する姿勢、朴政権に対する姿勢というものは変わってきているということは事実だと思います。  そこで、今度、発表された文書の中で一つ興味がありますのは、ハビブ大使からキッシンジャー国務長官あての電報が一つありますね、最初に発表になった五通の中の一つです。それで金大中さんが庇護を求めてきたときにはどうしようか、こういう相談をしておりまして、お断りしよう、こういう意味のことを請訓している、具申をしている。念のため申し上げますが、私自身、金大中さんに電話で確かめましたら、自分は当初そのことを勧められたことがあると。この電報でも「金大中の仲間のある者は」とあるんですが、そういうことを勧めた人があるけれども、私はアメリカ大人使館に庇護を求める気などは全くなかったと、あの事件直後。現在もない、こう最近も言っておられるわけですが、当時は、このとおりの事実があったようであります。そして庇護を求めてきても断ろうというのがハビブ大使の考え方ですよ。ところが、キッシンジャー国務長官は、庇護を求めてきたら大使館で保護しろということを逆に答えているわけですね、これを私は非常に興味深く読んだのであります。  つまり、キッシンジャーという人はそのアメリカの韓国政策の転換を進めていった人ですね。そしていまカーター政権になってそれがさらに大きく進んでいるという事実、そういう中で、今回、カーター訪韓の直前にあえて情報の自由化法の判とでこういうものが発表になったというふうに私は感ずるのであります。キッシンジャー氏はそういう政策を変えていった張本人の一人でありますから、金大中さんを——ここにもはっきり書いてありますよ、韓国政府を困惑させるという可能性があるけれども保護しろと言っているんですね、キッシンジャー氏は。朴政権とアメリカの間が悪くなっても構わないから保護しろ、こう言っているわけですよ。この辺のところは非常に重要な問題だと思いますが、最後に、そういう意味アメリカと韓国との関係というものを、私の意見を申し上げたわけですが、大臣はどういうふうにお考えでしょう。
  334. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) キッシンジャー前国務長官の転換は私もそのように存じております。なお、現在においては、キッシンジャー前国務長官は、自分は野党ではあるがバンス国務長官の外交には協力していると言っておられますから、その方針は受け継がれておるものと私も判断いたします。  しかし、今度の事件は、どうもいろいろ問い詰めてみますると、本当に事務的な誤りであったというふうに私は感じておりまして、そこのところがいささか違います。
  335. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  336. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 両件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
  337. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件及び千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する千九百七十九年の議定書締結について承認を求めるの件、以上四件を便宜一括して議題といたします。  四件につきましては、すでに質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。  ——御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  338. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  339. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  340. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する千九百七十九年の議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  341. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、四件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  342. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会