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戸叶武君 味のない答弁ですな。それは昔の修身の教科書の答弁ならそれでいいでしょうが、いまの政治はやはり現実に生きているんです、厳しく激動しているんです。この激動の中で歩きながら考え、考えながらそれに対する回答をやっていくというのが新しい社会科学の道であり、実証主義的な政治論であり、外交論でなければならないのです。
金大中の問題は、午後の方に回しまして、午前中のもっとさえたところでは、宮澤さんの最も得意とする問題に私は入っていきます。
西
ドイツと
日本はそねまれている点において共通なものがあります。しかし、
ドイツの方が社会民主主義陣営においても、あるいは民主的な政治の運営においても一歩前進していると思います。アデナウアーさんのような人でも、池田さんのような下村君におだてられてそして高度経済成長政策を突っ走った時代に、私は、農林水産常任
委員長でしたが、西
ドイツに行ってアデナウアーの親友で後に大統領になったリュプケ
食糧農林大臣にお目にかかりましたが、彼がアデナウアーさんに言われたのは、いい気になってエアハルトは
ドイツの繁栄の奇跡などと称して突っ走っているが、政治の要諦は、高度経済成長政策の中において矛盾が増大した第一次産業の第二次、第三次産業とのその成長率、
所得のアンバランス、これを政府の力でどういうふうに調節していくかということが一番大きな政治課題であるが、エアハルトには文明史観と哲学がない、私と同じ
見解ですが、だから心してその問題を具体的に処理しようというので農業基本法をつくったのです。
その農業基本法を
日本では、私が持って帰ってきて小倉君のような農林官僚の良心に伝えて
日本でもいいところをとってもらったんだが、いいところじゃなく悪いところばっかりとって、主要農畜産物の
価格の保障という大切なバックを除いてしまって、安上がり農政、農政に余り金を出さないためには、農民がうるさいから米のみの
価格を支持
価格にして、ほかはいいかげんにしてごまかしていけというのが
日本の農業基本法で、農業基本法の
内容は、名前は同じだが、
ドイツの農業基本法とは雲泥の差があるんです。そこに矛盾が増大していったんです。その矛盾を増大させた張本人は前の農林大臣中川君、いまの農林大臣渡辺君で、はち巻きして米の値段を上げろ、増反、それがいつの間にか大臣になったら、国際分業は許さぬと言っていたやつが、いや
日本の工業製品を外国に送るためには
日本の米を犠牲に供しても果物を犠牲に供してもと、国際分業を思い切って強行しているのがいまの青嵐会一派の農政です。これなんか見ると百姓は怒るけれ
ども、まあだまされつけているからじっとこらえているんですが、私は、こういう矛盾した農政のない農政——脳がどうかしているから、これは脳がうみを持っているでしょうな。こういうでたらめ農政は必ず私は国民のふんまんを買うと思うんですよ。外交だけでもせめてまともな道を行かなければ、大衆を愚民と思ってでたらめをやっていると雷が鳴ります。駿河湾における地震よりもこっちの方がこわい地震現象を起こさないとも限りません。
そういうときに、当初からわれわれがあのブレトンウッズ
協定やIMFの会合を通じて積み上げられてきた、あるいはイギリスの経済学者の論戦においても見られるように、
アメリカのドルを基準通貨としていくのは危ない、やはり基準通貨を持っていかなけりゃ円やマルクはユーロダラーのような多国籍企業のならず者に揺すぶられて不安定な状態に置かれるというので、ヨーロッパにおいてはヨーロッパなりの一種の基準通貨に近いものができたと思いますが、ああいう問題と対応してこの法律も考えなけりゃなりませんが、宮澤さん、あなたはこの問題に対しては
ドイツから何を学ぶべきか、
ドイツと
日本の異なった道は何か。サミットヘの道において最も大きく問題になるのは具体的にはエネルギーの問題というが、エネルギーの問題を根幹として揺すぶられていくこの基準通貨と称するドルの不安定な
状況と、マルクや円の相場がユーロダラーに揺すぶられていく状態に対して、どう対処していかなけりゃ貿易のアンバランスは是正できないと考えているかどうか、時間もないようですから、この辺をもっとはっきり私は承りたいと思います。