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1979-05-08 第87回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月八日(火曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      川村 清一君     上田  哲君  四月二十八日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     三浦 八水君  五月七日     辞任         補欠選任      上田  哲君     穐山  篤君  五月八日     辞任         補欠選任      穐山  篤君     上田  哲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 二木 謙吾君                 三浦 八水君                 穐山  篤君                 小野  明君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        運 輸 大 臣  森山 欽司君    政府委員        外務政務次官   志賀  節君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省条約局外        務参事官     山田 中正君        運輸省海運局次        長        妹尾 弘人君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省船員局長  向井  清君        海上保安庁長官  高橋 壽夫君        海上保安庁次長  飯島  篤君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        科学技術庁原子        力局原子力開発        機関監理官    長柄喜一郎君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        運輸省船員局船        舶職員課長    山田 幸作君        海上保安庁警備        救難部長     野呂  隆君        郵政省電波監理        局法規課長    松田恵一郎君        郵政省電波監理        局無線通信部航        空海上課長    仙波 康之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定を修正補足する議定書の締  結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次  延長に関する千九百七十九年の議定書締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出) ○経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(第八十四  回国会内閣提出、第八十七回国会衆議院送付) ○市民的及び政治的権利に関する国際規約締結  について承認を求めるの件(第八十四回国会内  閣提出、第八十七回国会衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月二十六日、川村清一君が委員辞任され、その補欠として上田哲君が、また、去る四月二十八日、志村愛子君が委員辞任され、その補欠として三浦八水君が、また、昨七日、上田哲君が委員辞任され、その補欠として穐山篤君が選任されました。
  3. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件及び千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  両件につきましてはすでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 穐山篤

    穐山篤君 今回の審議は二件ありますね。いわゆる人命の安全のための国際条約締結、それからもう一つは、この国際条約に関する七八年の議定書締結というふうに二つあります。  そこで、お伺いをするわけですが、前者の方は一九七四年、いまから五年前に作成されたものです。それから後者議定書というのは去年の七八年にできたものですが、歴史的に言えば別々に承認を求めるという形がごく常識的なんですが、今回まとめて一本で承認を求めてきたというのには何か特別な理由があるんですか、その点をお伺いします。
  5. 小林俊二

    説明員小林俊二君) お答え申し上げます。  前者、すなわち一九七四年条約の方は、御承知のように、前々からございましたSOLAS条約を全面的に改定するということで行われた採択会議の結果採択されたものでございますが、この間におきまして、それでは不十分な点が特にタンカー等につきましてあるということがわかりましたので、この発効する前にさらにそれを修正する意味での技術的な面についての議定書がさらに採択されたわけでございます。そこで現在の議定書はこの一九七四年条約一体のものであるという形になっております。本質的には七四年条約を追加修正するという内容のものでございます。そこで、これはまだ採択されて本当に日のない国際約束でございますけれども、この際、両方を一体のものとして御承認いただくということにしたいと考えたわけでございます。
  6. 穐山篤

    穐山篤君 他の国の批准状況を見てみますと、前者の方を早く批准をした国があるわけですね。
  7. 小林俊二

    説明員小林俊二君) はい。
  8. 穐山篤

    穐山篤君 それから、後者議定書の方の内容は、主としてタンカーの安全あるいは汚染の防止というものが中心になるわけでありまして、わが国としては、地理的な条件あるいは海運国現状から考えてみて、速やかにこういうものは承認を求めるべき性格のものだというふうに考えます。その意味で言いますと、前者の方は、確かに昭和四十九年に作成をされたもので、まとめて一本にすればいいんじゃないかということもわからないわけではありませんけれども、他の条約でもそうでありますけれども日本国会は非常に批准がおくれているという傾向なしとしないわけでrね。今回のことについて、私は、これ以上特別な注文をつけませんけれども海運国として日本ができるだけ早く国会承認を求める、あるいは国内法の改正を行うということが一番いいのではないかというふうにあらかじめ申し上げておきたいというふうに思います。  さて、この問題に関連をするわけですが、いまフィリピンのマニラで行われておりますUNCTAD会議におきまして、海洋関係の問題も議論がされる、小委員会議題があるというふうに聞いているわけですけれども、どんな事情になっているでしょうか。その海洋関係についてだけで結構ですから、お話をいただきたいと思うんです。
  9. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 海運関係で今回のマニラUNCTADの際に最も問題になると見込まれる案件は、いわゆる定期船同盟憲章批准の問題でございます。この憲章は、すでにUNCTADにおいて採択をされておりまして、各国の批准を待っておるという段階でございます。  で現在までの海運界現況におきましては、先進海運国が主導的な立場に立ってそれぞれの分野における慣行をつくり上げてきております。また、それぞれの取り決めが存在するわけでございます。こうした取り決めないし慣行につきまして、開発途上国海運立場から、これに修正を加えたいという希望は、順次、日を追って増大して今日に至っております。そうした希望あるいは願望を集約した一つのあらわれがこの憲章でございます。これにつきまして、すでにUNCTADにおきましても採択をされておるということで批准も日を追って進んでおりますけれども、いまだいわゆる先進海運国と言われる国々批准がはかばかしくないということで、開発途上諸国から希望が非常に強く出されておる。この問題がマニラで取り上げられるというのもその批准を促進するという点にあると申し上げることができるかと思います。  この点につきましては、先進海運諸国におきましても、今日までの間に種々検討が重ねられております。海運諸国の間の見解立場というものも必ずしもまだ一致したものでございません。むしろ非常に分かれておるということの方が正しいかと思います。が、しかし、この問題についての途上国側願望の表明というもの、あるいは要求というかっこうでマニラで改めて繰り返されるということが見込まれるわけでございます。
  10. 穐山篤

    穐山篤君 いまお話があったようなものでしょうけれども、今回、マニラでいま開かれ始めたわけですけれども、南北の意見をいろいろ参酌をしてみますと、南側の団結、意見というのはあらゆる分野で非常に大きいわけですね。で、いまお話しのあった定期船同盟行動憲章批准の問題についても、当然、南の側から大いに発言がされるというふうに思うわけです。なかんずく日本という立場から言いますと、片足を北側には突っ込んでおりますけれども、半分南側の方に足を突っ込んでいかないと、総合安全保障の見地から言うと、余りうまくないというふうに思うわけですね。  そこで、この批准国を見ておりますと、いま話がありましたように、大部分は南に関係する国々です。しかし、これらの国の批准国数あるいは船腹量数から考えてみまして、日本がどういうふうな態度をこのUNCTAD会議で示すかということは非常に重要な因子を与えるというふうに技術的な分野からも考えられるわけです。そこで、今回、大平総理大臣外務大臣がそれぞれ出かけられるわけですが、どういう態度で臨もうとされているのか、もう一遍念を押しておきたいと思うのです。
  11. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 基本的に、わが国といたしましては、この条約定期船同盟の運営に関する国際的なルールを改めて定めたものとして、新しい定期船海運秩序の形成に資するものであるという観点から、できる限り速やかに発効させることが望ましいと考えているという立場を表明する予定でございます。  ただ、この問題は、先ほども少し申し上げましたように、長年にわたって先進海運諸国の間で築かれてきた慣行なり秩序なり、定めというものに対する一つの変更でございますので、これを実際問題として支障なく実施に移すためには、それぞれの領解あるいは必要な相互の話し合い先進諸国間における見解一致ということがきわめて望ましいわけでございまして、そういう面において、不要な支障を来さずにこれを実施に移すことができるように、先進諸国間の話し合いを詰めるということにも私どもとしては十分な重点を置かなくてはならないという問題もございます。それから法律的な観点からしても、たとえばOECD自由化コードとの関係等において一体どういう解釈をするのかということにおいて、OECD諸国間の見解一致というものもきわめて必要であるということもございます。  したがって、一口で申し上げますと、政治的には何とか早くこれを批准する必要があるという考えでございます。しかしながら、法技術的に無用の混乱を生じさせない必要があるということも、これは現実的には十分な考慮を要する点でございますので、この間の調整ということが今後の課題であると、一口で申し上げれば、申し上げられると存じます。
  12. 穐山篤

    穐山篤君 昨年八十四国会において、安全なコンテナに関する国際条約締結がこの外務委員会にかかりました。その中で、大多数の野党の議員の意見は、非常に国際条約批准について遅いじゃないかという指摘がされております。コンテナの場合について言えば、わが国の場合には、コンテナの製造においても使用においても先進国の中では抜群でありまして、技術的におくれているというふうなことは言い得ない背景があるわけですね。にもかかわらず、昨年、相当厳しく指摘をされているわけです。  そういう面から、国連舞台あるいは国連舞台に準ずるようないろんな国際会議採択をされました国際条約というものを外務省からいただきましたけれども、かなり重要な国際条約批准をされていない、あるいは署名をされているけれども批准をされていない、あるいは発議国一つであり署名をされていながら、なおかつ批准がおくれているというようなものが非常に多いわけですね。これは一々申し上げることはきょうはやめたいと思いますけれども条約批准についての基本的な国の政策といいますか、考え方、どういうものを基準にしているのか、合理的な何か判断材料というものはあるんですか、その点ひとつお伺いしておきます。
  13. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ただいまの先生の御質問でございますけれども、確かに文化経済、その他いろいろの面におきまして多数の国際条約ができ上がっておりまして、それをわが国はまだ未締結であるという現状は、遺憾ながら、そのとおりであろうと思うわけでございます。大体、現在、百数十件という未締結条約があるわけでございますけれども、個々の案件ごとに、その締結の意義と申しますか、そういうものについて従来必ずしも十分な検討が行われていなかったり、あるいは十分な検討が行われておりましても、検討の結果、締結するか否かということにつきまして直ちに政策決定につながらずにそのまま推移するという形で、結果的にこれらの案件が放置されているかのごとき印象を与えるという事態が生じていることはまことに遺憾であると思うわけでございます。  このような反省に立ちまして、外務省といたしましては、過去一年以上二年ぐらいにわたりまして、関係省庁とも協議しながら、未締結条約の見直しの作業を進めているところでございまして、まだこの作業は完全なものとは言えませんけれども、これまで検討いたしましたとりあえずの結果によりますれば、今国会に提出いたしましたものを除きまして、次の通常国会以降の可及的速やかな時期に国会に提出することを目指すという条約、あるいは条件が熟せば国会提出を考えるべき条約というものが約三十件程度、緊急なと申しますか、早急にやるべきであろうというようなものがございます。政府といたしましては、これらの条約については、今後、関係省庁とも緊密に連絡しながら、早期に国会に御提出申し上げることができるように努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  14. 穐山篤

    穐山篤君 いまの点は、今回の条約批准関連をして、やっぱり日本が常に国際環境を横にらみで、なおかつ一歩おくれて承認をしているという感を免れないわけですね。もっと積極的に国際間の条約というものは批准をしてしかるべく、国内法整備も行うということが私は望ましいというふうに思うし、また、やらなければならない日本的な背景があるんじゃないかというふうに私は思います。いずれこれはぜひ理事会でも十分に協議をしていただきまして、条約批准の促進ということについて考えていただきたい、これは御要望を申し上げておきたいと思うんです。  さて、今回、出されました二つ条約議定書は、いずれも海上の航海の安全、人命の安全という問題でありますので、そのことを中心にして、以下、質問なり具体的な問題の指摘をしていきたいと思います。  海上保安庁が毎年発表しております「海上保安現況」というものの資料をずうっと十年近く調べてみましたが、いっとき海難事故が増加の傾向にありましたけれども、ここ一、二年、海難あるいは大型船事故というのが非常に激少した、このことは私はいいことではないかというふうに思います。ただ、振り返ってみますと、特徴的なことが幾つかありますので、この点をまず最初にお伺いしたいんです。  たとえば大型船事故記憶に新しいといえば、昭和四十三年八月の大型タンカー陽邦丸事故というのがありました。それから四十四年の一月貨物船ぼりばあ丸の事故がある。それから四十五年の二月にかりふおるにあ丸の事故があり、それからごく最近では五十一年の九月にタンカー菱洋丸事故があった。いずれも大変な損害、人命の損失があったわけであります。  こうやって指摘をしてみますと、どうも昭和三十九年前後あるいは四十年前後に建造したものの船の中に大型船事故が、多いとは言いませんけれども、やや周期的にあるような感じがするわけです。これはもっと科学的に言わなければ議論にならないんでしょうけれども、いわゆる昭和四十年前後につくられました第二十次の計画造船のものが多いのではないかというふうに関係者の間には言われておるわけですがね。この大型船海難事故と第二十次の計画造船との間には因果関係があるんじゃないかというのは関係者の間でも指摘をされているわけです。また、それに対して私どももそうではないかという疑惑を持っているわけですけれども、この点について、いやそうじゃないんだというふうなものがあるかどうかおっしゃっていただきたいと思います。
  15. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 先生指摘のように、昭和四十一年から四十五年、最近の五十一年と大型船事故があったわけでございます。大型タンカーあるいは大型鉱石専用船でございます「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」、この三つは比較的船齢が新しかったわけでして、この点で関係者にとってばかなりの問題であったわけでございます。特に「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」につきましては、運輸省の中におきまして、それぞれ海運造船、気象、海象運航等専門家を入れまして、具体的に専門的に計算あるいは実験等をやって結果を出してみたわけでございます。  そこで、私の記憶にあるところを述べますと、確かに三十九年から四十年の大型船でございますが、基本的には、言うなれば若干の積み過ぎと異常海象あるいは船の腐食状態等が重なってこういった結果をもたらしたということではないかと考えておりまして、大型化がかなり急速に伸展した時期ではございますが、必ずしも計画造船のものと因果関係があるというふうには言えないんではないか。この時期にはかなりの大型船国内船だけでなくて輸出船にも出しておりますので、その意味におきましては、計画造船云々という因果関係はないんではないか、こう考えております。  それから五十一年の菱洋丸でございますが、これはかなり船齢の古いタンカーでございまして、この点につきましては、船齢の古いことによります腐食が進んでおりましたところでございまして、実はスクラップ直前の船でございましたが、これを荒天中に航海したときの積み荷の状況原因中心ではないか、こういうことで、これも専門調査会の結論を得まして、こういったのが主要な原因ではないかというふうに見ておるところでございます。
  16. 穐山篤

    穐山篤君 この十五年ぐらいの間に、日本ドックで建造された船で外国に売船をする、それを改めて用船をするというふうなこともありますけれども、いずれにしても日本ドックで建造した船で諸外国にかなり船籍があるわけですね。その中で、大型船で結構ですから、海難事故に遭遇をしたというふうな特徴的な船はございますか。
  17. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) いま手元にございませんが、記憶によりますと、一つ特徴的なのは、超大型タンカー爆発事故でございます。これはたしかアフリカの西海岸で起こっております。それからあと折損事故その他は余り起こっておりませんで、主としてタンカー中心とした爆発事故でございます。これは空荷のときに中のタンクの清浄をするために高圧蒸気清浄をいたしますが、そのときの静電気の発生が爆発原因ではなかったか。したがって、その後は、清浄に当たっては、高圧蒸気による場合にしましても、不活性のガスを中に入れてやるというようなことでほとんどこの種の事故はなくなってきている、こう考えます。
  18. 穐山篤

    穐山篤君 菱洋丸事故については、もっと専門的に後ほどお伺いをしますが、議定書の方をちょっと見てもらいたいんですが、この中でやや解釈に難があると思われる、あるいは過去の海難事故の経験から考えてみて、少し無理があるなと思われる点を二つだけお伺いをしておきます。  それは議定書の十二ページの検査部門になりますが、この中の(c)項ですね、「(a)及び(b)の規定により検査を行う検査員を指名し又は団体を認定する主管庁は、」以下ありますが、(i)の「船舶修繕要求すること。」というふうに書かれておりますが、なお「その責任の範囲及び条件機関に通報する。」別に決めるということになるわけですが、「船舶修繕要求すること。」というのは、抽象的にはよくわかるわけです。しかし、いつでも問題になりますのは、どういう根拠でどういう修繕を行う、これは特に船体本体の場合は非常にむずかしい問題を持っているわけですね。あるいは縦強度というふうな、やっぱり専門的な基準があるわけですけれども、「船舶修繕要求する」というふうに単純に書かれておりましても、問題が後に残る。  そこでお伺いしますのは、要求する場合の合理的な基準といいますか根拠といいますか、そういうものが明示をされなければならぬと思うんです。その点について国内法ではどういうふうに示しているんですか、その点が第一です。  それから、同じく議定書の十六ページの第八規則になるわけですが、この(a)項の中ごろに「条約第一章第七規則(a)(II)の「十二箇月」は、「二十四箇月」とする。」というふうに書かれております。これは私は貨物船設備のことについて言うならば、後ほど具体的な問題で指摘をしますが、かなり近代的な設備というものが出てきた。そういう意味では、意味がわからないわけではありませんけれども、しかし、主要な設備あるいは救命設備というものについては二十四カ月にする必要がないじゃないか、十二カ月でいいのではないかというふうに思うわけです。これは「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」あるいは菱洋丸事件の場合におきましても後で問題になったことであります。この点について国内法ではどういうふうに整備をされようとするのか。  まず、条約の中の二つだけ、とりあえずお伺いしておきます。
  19. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 第一点の、議定書の第六規則にございます「船舶修繕要求すること。」ということでございますが、これは若干条約の立て方と国内法の立て方が違っております。が、基本的には、私どもは、現在の船舶安全法でこの条約の第六規則は賄い得る、こう考えております。  その根拠は、まず船舶安全法の第八条で、現在財団法人日本海事協会というのがありますが、これはほかの諸外国船級協会とほぼ肩を並べます有力な船級協会でございますが、これを船舶安全法の第八条に基づいて、主務大臣が、昭和九年に認定を受けた船級協会であるということに認定をしております。したがいまして、この船級協会検査を受けて合格したものは、これは船舶安全法に合格したものとみなす、こういうことでございます。  それで、具体的に修繕要求ということになりますが、検査に当たりまして、船舶ふぐあいのところがある場合には、これは安全法の第一条に立ち返りまして「必要ナル施設ヲ為スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用二供スルコトヲ得ズ」ということになっておりまして、ふぐあいのところを直さない限り航行の用に供し得ないということになりまして、そういう意味では、修繕要求はしませんが、船を動かす限りにおいては修繕をしなければならないというふうになるわけでございます。  それから第二点の、第八規則の十二カ月を二十四ヵ月ということでございますが、十七ページの第八規則の(a)の十二カ月というのは、これは旅客船についての検査インターバルでございまして、これを貨物船については二十四カ月ということにしてあります。私どもとしましては、現行は、船舶安全法で定期検査を四年のインターバルで、それから中間検査を二年のインターバルでやっておりますが、その間の一年ごとに無線電信、それから満載喫水線の表示、荷役設備等については十二ヵ月でやっております。  なお、後段でこの二十四カ月の御議論があるかと思いますが、私どもとしては、別途、この議定書検査の強化がうたわれておりますので、今後、貨物船につきましても検査の強化という点で検討してまいりたいと考えております。
  20. 穐山篤

    穐山篤君 さて、そこで、いまの問題に深い関係のあります菱洋丸事故についてお伺いをするわけです。  事故内容はいまさら申しあげることはないと思いますけれども、先ほどお話がありましたように、老齢船と言えば語弊がありますけれども、かなり年期の古い船であることは承知をしております。しかし、豊後水道でこの海難事故があったというのは、事故はない方がいいんですけれども、結果的に救われたというふうに思うわけですね。これが太平洋を航海中にV型に曲がって折れて航行不能になったということを考えてみますと、救命ボートと救命いかだが十分に作動をしていなかったわけで、そのためにかなり御苦労が多かったわけですけれども、幸いに付近を航行中のリベリアの船と海上保安庁の巡視船に全員が救助されたわけです。そのことを考えてみますと、これは簡単に事を済ましてはならない事故ではないかというふうに思うわけです。  そこで、先ほど私がちょっと指摘をしましたが、たとえば昭和四十五年「かりふおるにあ丸」の事故の際に起きた設備の中で救命艇のことを言いますと、左舷の救命艇は高波により宙づりになって十分に使えなかった。それから右舷の救命艇はダビットが作動をしないためにこれも使えなかった。で膨張式の救命艇も、乗り込んで途中で突然ガスが全部抜けるというふうなことがあったわけです。この後、関係者の間で、いわゆる設備、救命艇の問題について大いに議論がされたのはいいことなんですが、残念ながら昭和五十一年に起きましたこの菱洋丸事故では、前回の事故の教訓というものが十分に生かされておらなかったというふうに断定せざるを得ないと思うんですね。  たとえば、菱洋丸事故の場合に、左舷の救命艇は降下せず、それから右舷の膨張式救命いかだはコンテナのままで、これが展張しなかった。で左舷の膨張式救命いかだは格納レバーが作動をしなかったということが菱洋丸事故では具体的に明らかにされたわけですね。  そこで、何回も指摘をするわけですけれども事故が起きた場合には、当然、事故原因について科学的に調査をする。その調査結果が、事のよしあしは別にしましても、十分に納得されるものであるということが第一の問題だと思うんですね。それから二つ目の問題は、その事故の教訓を生かして、次には二度とそういうことが起きないように補強をする、あるいは起きた場合でも被害を最小限度に防衛をしていくというふうなことを通して、先ほども指摘がされましたように、船舶安全法の第一条の体裁を質的にも備えなきゃならぬ、これは当然なことだと思うんですね。ところが、菱洋丸事故の際に、前の教訓が全然生かされていなかったという意味では、関係者の責任は非常に大きいというふうに私は思うわけです。  それから、船体の問題についても報告書を読ましていただきました。この点は後ほど重要な問題ですから指摘をしますが、具体的にこの救命いかだの問題、救命艇につきまして、先ほど、旅客の場合には十二カ月でよろしい、貨物の場合には二十四ヵ月に周期を倍に延伸をする、こういうお話があった。そこで、私は先ほども指摘をしたんですけれども、主要な設備、機器については、貨物船といえども、過去の例から考えてみて、旅客船並みに取り扱っていい部分もあるんじゃないかというふうに考えますけれども、その点はいかがでしょう。
  21. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 外航船舶救命設備として、救命艇、救命いかだ、それから膨張式の救命いかだ等がございますが、非常に力の大きい波にたたかれるわけですから、想像以上の波の力がかかるというので、基本としては、がんじょうで簡単な操作というのを一番基本に置いております。  そこで、救命艇なり救命いかだを規定に従いまして数をそろえ、基準に適合したものを船に搭載をしているわけですが、そのチェックは、先生指摘のように、貨物船については二年に一遍やっております。で、問題は、その間、検査のインターバルの問の補修等について一体どうやってその確認をしているかということになりますと、これは検査のインターバルの問題のほかに、船長の発航前点検義務といいますか、そういうもので補っておるわけでございます。そこで「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」の事故の後で、救命艇なり降下装置そのものについては、きわめてがんじょうであり、きわめて簡単な操作ということで、あの施設についての乗組員のいわゆる救命操作訓練といいますか、そういうものを実施をすることの通達をいたしまして、これは励行されていると思います。  それから、その次に、菱洋丸が、幸い豊後水道でございましたので、先生指摘のように、不幸中の幸いであったわけでございますが、その際の救命設備の作動状況につきまして、事故調査委員会検討結果によりますと、二つの点に分かれます。  まず、救命艇につきましては、操作について必ずしも万全の操作がなされていなかったやに見受けられます。それから、最後に使いました救命いかだにつきましても、これは本来コンテナでデッキの上に積んであるわけですから、コンテナを投げ込むときに自動的にコンテナがあくようにひもがついておりますが、それの操作が若干間違っていたというような点もありました。そこで、最後に開いた救命いかだにつきまして、たとえばいろいろな問題が出まして、途中で救命いかだの外壁のゴムの接着がはがれた云々とか、あるいは水が入った云々とかということがございましたが、私の記憶では、逆に乗ったことが主要な原因でして、そういう意味では水は入りましたけれども、一応そのまま浮力があるので浮かんでおることができたということで、この点につきましても、救命いかだの操作の訓練等について乗組員の訓練の励行をやると同時に、もう一つは、救命いかだのいわゆる耐用年数につきまして、私どもとしては耐用年数八年を超えたものにつきましては、これは特別に耐圧試験をするというようなことで、老化についての対策をとる。救命いかだそのものは、これは検査のときに展張してやるわけですが、老化の点については、普通の圧力よりも高くしてやることによって裂罅についてのテストを行うということで、今後は、乗組員の操作の訓練と、それから先ほど申しました裂罅に対する試験の強化によりまして、今後の救命いかだの安全性については、この際の教訓を生かして安全の確保をより一層できるように努力したい、こう考えています。
  22. 穐山篤

    穐山篤君 豊後水道で、なおかつ海上保安庁の巡視船もおったし、それからリベリアの船もおったので、合計六十二名の方は救助を最終的にはされたわけですね。しかし、これがもっと遠隔の地を航行中に起きた事故だとするならば、私は全員救助ということはまずまず不可能に近いのではないかというふうに思うわけですが、この救命艇のことについて船舶局長が五十二年の三月二十五日に見解を発表されております。  救命艇及びその揚げおろし装置については外観の検査、効力検査を行ったが、規定に定める諸条件を満足している。また、第一種中間検査を行っており、救命設備検査に関し特に問題があったとは認められない、となっているわけです。平たい言葉で言えば、医学的には最高の手術をやったというふうに医者は満足をするでしょうけれども、患者は死んでしまったというのと同じだと思うのですね。問題があったとは認められないということを指摘をしているわけですけれども、現実には二つないし三つの救命艇あるいはいかだが十分に機能しなかった。ですから、私は、これは陸上交通でも海上交通でもそうでありますが、安全に限界はないというふうに思うわけです。その意味で言いますと、この五十二年三月二十五日に出されました見解というのは、お役所の意見としてはわかりますけれども、人間の命を大切にするという立場から言いますと、私が先ほど申し上げた医者の話と同じだというふうに言わざるを得ないと思うんですね。ですから、この前の事故についてはこれから大いに教訓を生かしてもらいたいというふうに申し上げておきます。  それから、この事故全体についての技術調査委員会、通称寺沢委員会と言われているわけですが、ここの結論を読ましていただきましたが、私ども素人の目から見ましても驚きました。これは非常に参考になることですから、簡単に私が読み上げてみます。  一般に船体の縦強度には、波浪と貨物バラスト水等の積み付けが関係するが、特に大型船においては積み付けの影響が大きいことにかんがみ、貨物の積み付けと船体縦強度との関係について、関係者がより一層の配慮を払いなさい、というふうに最終的にまとめられています。ところが、その前に出されております真の原因は何かといいますと、これが私はふるっていると思うんですね。「今回の事故は、バラスト水の積み付けによる大きな静水中縦曲げモーメントと台風十七号の影響による波浪の縦曲げモーメントが重畳して船体中央部に過大な縦曲げモーメントを生じ、これによる上甲板構造の圧縮応力が座屈強度を超えたため上甲板構造が座屈圧壊したことによるものと思われる」  これを一言で言いますと、波浪と積み付けの競合によって折れたんだ、したがって、どこにも原因はありません。これは船体が悪いわけでもありませんし、船長の操船上の問題ミスもありませんというふうに、鉄道の事故の用語で言いますと、競合事故、競合脱線というふうにつくられているわけです。これはどこも、だれも責任を負わないでいい結論になっています。こういうのが車両あるいは船でも、その他でもそうでありますが、交通関係の事故をまとめるときによく使われる手であります。なぜもっと科学的な調査をしてくれなかったのかというのがいま私ども後になってみて思われる大きな疑惑であります。  私は、このことを議論をしておれば長くなりますので、あとを続けて言いますけれども、さて、こういうことを考えてみまして、先ほどお話のありました船舶安全法第八条の日本船級協会検査を受けて登録した船は安全だと、ここに登録制度というのは第八条で規定をしておりますね。それは言いかえてみれば、第一条の「本法二依り其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ為スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ」、言いかえてみれば、必要な施設がなされておるならば、それは運航してもよろしい、安全な船だというふうに法律は規定をしておるわけですね。ところが、この法律をよく読んでみますと、船級協会に登録をしても、この船は安全だという担保が法律の上では全然なされていないんですね。その点いかがですか。
  23. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 二点ほどお答えいたします。  菱洋丸事故でございますが、先生の御指摘の最終結論につきましては、決して原因不明という、ことで片づけたわけでございませんで、幸い船が残っておりましたので、これを全部所定のところまで持ってきまして、それで全部科学的な調査と、それから実験とをまぜて、結論を出したわけでございます。非常に端的に申し上げますと、積み付けが間違っていた、こういうことになると思います。  これは船というのは細長い箱と考えていただいて、波の上に乗るわけですから、仮に両端に波があって真ん中にだけ積んでおりますと、これははへこむわけでございます。それの極端な例がこのケースだと考えております。したがって船級協会検査の際に、かなり老齢船でもあるのでバラストの積み方については、私の記憶では、ハーフバラスト、半分のバラストで走りなさい、こういう指示をしてございます。その点で半分のバラストでございますが、問題は、その半分のバラストのボリュームを船体の各層の中にどういうふうに配分するかというのが積み付けでございまして、この点については積み付けの責任者の問題がございますが、私どもとしましても、積み付けがより容易に乗組員によって理解されるような積み付けのマニュアルをつくるべきだということで、原因とそれから改善の対策を立てたわけです。したがいまして、先ほどの最後の先生の御指摘の八条と一条によって登録を受けた船が安全かという担保につきましては、少なくとも検査を受け、登録され、かつ乗組員の保守点検義務が守られており、なお想定しております通常の気象海象であれば安全に航行し得るという判断をするわけですが、基本的には、先ほどから問題になっておりますように、しょせん船は他の機械と同じようにマンマシンでございますから、そこのとり合いが、船体の構造設備と同時に、乗組員の操船の訓練あるいは退避の訓練等と相まって安全が確保されるわけでございますので、今後、これらの点について、私ども設備、施設の面を担当しておりますが、より改善の方向で努力はするつもりで考えております。ただ、問題は、普通の状況で考えられる以上に波の力というのは非常に強烈であるということで、しゃれた装置よりもがんじょうで単純でかつ操作がしやすいということを基本に置いて、今後とも、安全の確保については改善してまいりたいと考えております。
  24. 穐山篤

    穐山篤君 前者のマニュアルの問題については、運輸省初め関係者の間で十分検討されているということですから、私はそれに大いに期待をしたいというふうに思いますが、後者の問題、言いかえてみますと、船級登録を受け四年に一遍なり、小型船の場合には十年に一遍定期検査を受ける、その間にいろんな検査があるわけですが、船級登録を受けた船舶というのは安全だというふうにこの法律の上では保証をしているんですか。
  25. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 安全であるということについては、これはたびたびの事故の際に議論になるわけですが、基本的には第一条にありますように、堪航性と人命の安全を確保していない場合には航行の用に供し得ないということでございますから、定期、中間を問わず、検査の時点においては十分堪航性あり、それから人命の安全について確保し得る施設を所有している、こういうことは確かでございます。ただ、その期間の間におきます点検を義務づけられた船の所有者あるいは所有者の代理で動かします運航者は常に堪航性なり人命の安全を保持し得るような点検をする義務があるわけでして、この点は、先生再三御指摘のように、人間にたとえますと定期検診は受けて、その間の人の動き方といいますか生活の仕方といいますか、それと似たように船の運航につきましての運航の仕方その他について、あるいは点検の内容について、堪航性の維持、人命の安全の維持の確保が図られることを船員法で記載をしているわけでございまして、その点は必ずしも絶対に安全かと言われれば、そうでないケースがあるということだと思います。
  26. 穐山篤

    穐山篤君 正直に白状したような感じですけれどもね。いま私がくどくも辛くも聞いております船級協会の登録制度と第一条の堪航性について、協会の意見運輸省見解というのが出ているわけです。これは非常に重要なことでありますので、私は見解をちょっと読んでみたいと思うんです。  協会の見解によりますと、「当会の鋼船規則は、船舶が適正に管理運航されることを前提として作製されています。従って当会の行う検査は、鋼船規則に定めのある事項について船舶の所有者及び運航者によって適正管理されており、定められた基準が維持されているか否かを確認するものであって、検査から検査までの期間について船舶の堪航性を保証するものではありません。」というのが協会の見解ですね。言いかえてみれば、船舶が安全で長い航行にたえられる、あるいはかなり強力な波浪にもたえられる堪航性の保証ではありませんというふうに協会はきめつけているわけですね。  それから運輸省見解は幾つかあるわけですけれども、「国の行う船舶検査は、法令により規定された施設が船舶所有者及び運航者により適正に管理されており、定められた基準が維持されているかどうかを確認するために行うものである。」と、ほほ協会の意見と同じです。「したがって、船舶検査の結果交付される船舶検査証書は、国がこのような確認を行ったこと及びその結果から必要な航行上の条件を明示するための書類であって、検査から検査までの期間について船舶の堪航性を保証しているものでは」ありません、保証しませんというわけですね。それから、さらに船級登録について言いますと、「船級協会規則に適合しているかどうかについて確認された船舶に対してなされるものであり、施設が船舶所有者及び運航者により適正に保守・管理され、定められた基準が維持されるということを前提にする点で上記(1)と同様である。」というふうに、ほほニュアンスの同じような見解を示しているわけです。  私ども国民の立場あるいは利用者の立場、さらには海員組合の立場、どなたの立場から言ってみてもそうでありますが、この船は安全でございますと、よく東海汽船その他のチラシに出ていますね。あるいは国鉄でもそうですが、安全な船で愉快な航海をしようというチラシをしばしば見るわけです。ところが、法律的に言いますと、この船は安全です、安全な船ですという保証は法律的には何にもしてないんですね。いま私が運輸省見解と協会の見解を読んでみたわけですが、これはお客さんにとっても、あるいは船長さんにとってもゆゆしい問題ではないかと思うんですけれども、これはどういうわけで第一条なり第五条なり第八条はでき上がっているんですか、その点非常に私どもとしては疑問を感じるわけです。その背景なり、あるいは具体的な根拠についてお伺いをしておきたい。
  27. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 先生指摘の物の安全、あるいは端的に船の安全ということに限定して申し上げますと、私どもあるいは海事協会の見解はそのとおりでございます。  で、問題は、特に船あるいは飛行機、鉄道、自動車、この移動するものの安全というのは、基本的には施設であるものが基準に合格しているかということと、それからもう一つは、運転者、所有者がしかるべき免許制度を持った特別な技能者ということが規定されておりまして、それと同時に、運航その他におきましては、船の場合で言いますと、海上保安庁の適切な運航の指示に従わなければならないというふうなことで、私どもとしては、基本的には物の面から安全を管理・担保する法律と、それから人の面で安全を管理・担保する職員法等の法律と、それからさらに広範に航行上の指示等で安全を管理・担保する海上保安庁法等によりまして総合的に考慮するべきものだ、こう考えております。  したがいまして船舶安全法だけで船舶の運航時の安全を全部カバーしているというふうには考えておりませんで、少なくとも定期的な点検の際におきます基準の適合ということを中心規則して安全の確保を図るという法律でございまして、先ほど申しました人間の関係、あるいは周りの航行上の注意、指示等の関係については、この法律の外の別の法律で担保・管理されているというふうに考えております。
  28. 穐山篤

    穐山篤君 私だけでなくて、皆さんもまだ納得いかないと思うんですが、たとえば日本の場合、国内法で第二条以下必要なことが規定をされておりますね、で検査を受ける。そうしますと、検査証書をもらうわけですね。その船がデンマークに行こうが香港に行こうが、相手の国に行った場合には検査証書を見せる。このやり方というのは、検査証書を見て、これは航海に必要な設備その他が全部具備をされておると、一般的に言えばこれは安全な船だという証明書を発行するようなものじゃないでしょうか、検査証書をお互いに互認をするという意味は。ところが、法律の上では堪航性は保証しておりませんよと。  いまお話がありますように、海難事故を考えてみましても単純でないことはわかりますよ。船舶の本体の問題もあるし、それから設備のこともあるし、性能のこともあるし、それから積み荷、気象、座礁、いろんなことが総合的に絡んで海難という問題は起きるわけですよ。しかし、検査済みの証書をお互いが互認をするということは、この船舶は安全でございますということを確認をするという意味を含めて互認がされるわけでしょう。ところが、日本国内法律第一条と第五条ではこの船は安全でございますという担保が書かれてないんですよ、担保してないわけですね、保証してないわけです。日本が、外国の船が来た場合に検査証書を見て、互認をするというか、認めるわけですね。その認めるというのは、検査がしっかり行われたかどうかということを確認をすると同時に、この船というのは安全な航海ができるでしょうかどうでしょうかということを一面では考えながら互認をするわけですよ、双方。そうじゃないでしょう。  ですから、私は、船級協会に登録する船という社会的な意義と、第一条で言うところの堪航性というのは表裏の関係にあるはずではないだろうかというふうに考えるわけです。にもかかわらず、この運輸省見解あるいは海事協会の見解によりますと、それは堪航性は保証していない、必要なものがただ備わっているかどうかということだけを確認する、あるいは基準に基ずいて設置されているかどうかということを確認するだけであって、この船舶というものか十分に堪航性  航行にたえられる船であるということを証明するものではないということを言っているわけですから、これは非常に危ない話だと思うのですね。もっと厳しく言うならば、責任逃れを法律の上でやっているんじゃないかという疑惑を持つわけです。平たい言葉で再三言っておりますように、安全な船で愉快な航海をしようと、愉快な航海というのはいいですよ、しかし、安全な船だというのは日本国内法ではどこにも保証してないんです。くどいようですけれども、もう一回答弁してください。
  29. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 先生再三の御指摘でございますが、私どもとしては、船舶安全法のたてまえは、船舶職員法あるいはその他船員法等の義務規定と合わせまして、適正な管理・運航を前提として施設が基準に適合しているということを検査によって検査合格、検査合格すれば登録をするということをしておるわけです。  したがいまして、その担保が何かということになりますと、これは通常の言い方をしますと、義務違反をすれば罰則があるし、船舶職員についても罰則規定がある。したがって適正な管理・運航あるいは適正な検査、適正な修繕その他が行われ得るということを前提にして組み立てられておるわけでございまして、検査の途中期間におきます運航状態の船についての安全につきましては、基準を維持する、あるいは適切な運航をするということに関しては、もっぱら運航者と所有者に期待をしておるというのが安全法上の話でございまして、これに、先ほどたびたび申し上げておりますが、船舶の職員の義務規定とか、あるいは海上保安庁法等一連の交通規制法等が総合して私は安全が確保されている、こう考えるわけです。  で外国日本の船がこの条約によって行きました場合には、検査証書の相互互認ということではなくて、この条約に決められております構造証書なり、あるいは安全設備証書なり、そういったものを持っているかどうかというのをまずチェックをします。それから、それが持っていてもなお明らかに基準から外れている場合には、これは条約の規定によって措置をすることができるようになっておりますので、そういう意味におきまして安全法上も立入検査等の規定がございますので、特に問題がありと思われる場合には、その規定を活用するということによって検査インターバルの間の安全の増進に努めるというような考え方が出てくるわけでございますが、この辺が今度の条約なり議定書検査の強化の考え方に出ておりますので、私どもとしては、それを十分考えて国内法上の措置をしてまいりたい、こう考えております。
  30. 穐山篤

    穐山篤君 時間がなくて非常に残念ですけれども、たとえば陸上交通の場合でも似たようなことがあるわけですね。車検のときに、車検の基準に適正に設備をされ管理され装置され作動されていれば、トラックでもタクシーでもハイヤーでもマイカーでも、全部、それは車検を通過するわけですね。その翌日、トラックなんかが改造をかなりごまかしてやっているわけですね。私は、船舶の場合にそういうあくどいことはないというふうに信じておりますし、また、そういうことはないというふうに考えますけれども、少なくとも定期検査から定期検査まで、その間四年間船は航行をするわけです。最終的に、それは気象の問題があったり、操船上のことがあったり、あるいはローリングのこともあったり、いろいろありますから、私も総合的だと思います。しかし、船そのもの、あるいは船体本体中心にして設備を含めた船舶が、この船は通常の航海には安全でございますというものを保証したのは、少なくとも歴史的に言えば、船級協会による登録制度というものが一つはその基盤をなしているんじゃないだろうか。それと同時に、検査そのものが非常に厳しい。厳しくするということは航海の安全、人命の安全ということをよりベターに望む、そういう見地から考えられたものだろうというふうに思うわけです。その上に立って、国内法の第一条の堪航性という話は、それらのものが全部背景になって堪航性という文章になってあらわれたと思うんですね。  ところが、運輸省見解なりあるいは海事協会の見解を言いますと、そういう基盤、認識というものを全部取り去ってしまって、堪航性と登録制度とは関係ないとか、あるいは検査制度と堪航性とは切り離しをすべきだというふうに解釈をしておりますので、非常に私は認識の問題として重視をしているわけです。そういうものが三位一体、渾然一体になって、第一条に言うところの堪航性を保証して安全な航海ができるんですというふうに第一条は保証されているのかと理解をしておったところ、実は、そうでなかったということが過去の記録の中からあらわれてきたわけです。  局長、私の申し上げている話もわかるわけでしょう。この船は安全だと、それは波のこともあるし座礁のこともあるから単純には言わないけれども、この船は安全だというのは、登録をする、あるいは検査を十分に受けている、だから安全で堪航性があるんですというふうに考えるのはごく常識でしょう。ところが、法律では安全と堪航性の問題については別になっているわけです。堪航性を保証していないわけですね。ですから、船舶の航行安全、人命の安全の上から言いますと、この法律は私はゆがんでいるんじゃないかというふうに思いますけれども、時間がありませんから、最後に、最終的な見解をお伺いしたいと思うんです。
  31. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 確かに、第一条の「堪航性ヲ保持シ」云々「ニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ」ということと五条の検査とが全部完全にカバーしているものではないという点は確かに先生のおっしゃるとおりです。  問題は、第一条であと抜けているのは、言うなれば検査期間後あるいは検査期間のインターバルの中におきますその堪航性の保持については、再三申し上げておりますように、自動車と同じように、動かす前には保守点検の義務づけをしておるということで、一つ基準をつくって、それで定期的な検査をして、その間はその基準から離れてないかどうかという点については、先ほど先生指摘のように、適切な船舶の管理・運航ということで船舶所有者、運航者に義務づけるということによって第一条が達成し得る、こう考えておりますが、船舶所有者なりあるいは運航者は、物の面に関する限りは、その施設が仮に基準に合致していないときは動かさなければ、あるいは修繕しなくても動かさなければいいわけでして、動かす場合には、当然、船員法あるいは船舶職員法等から来ます基準合致の点検義務、こういうものが重なってきて動く場合には、第一条の堪航性については担保されているというふうに考えられるのではないかというふうに、先生お話をお聞きして、そういうことを考えているわけです。
  32. 穐山篤

    穐山篤君 これは海員組合からも――和田先生専門家ですからまたお話があるんでしょうけれども、ざっくばらんに申し上げて「かりふおるにあ丸」「ぼりばあ丸」の事故の際にも、その点についての論争が労使の間あるいは行政当局を含めて議論がありましたけれども、もっと深刻に議論をされたのは、この五十一年の菱洋丸事故以来、船級登録制度というのは何だろうか、社会的な背景、基盤というものは何だろうか。それから検査というものは何だろうか、検査から検査までの間堪航性を保証しないと言っているけれども、そうすると、それは単に適切に管理されて維持されておりさえすれば、それは堪航性があるというふうに認識をすることができるかどうか。あるいは検査から検査までの間は堪航性は保証しませんというふうに見解が協会や運輸省からも出ているけれども、実際に船を操船しております海員組合の皆さんとしては、これは納得できない、納得して船を動かすわけにいかないという、そういう問題点が非常に深刻に出てきたのが記録の上ではっきりしているわけですね。実際に操船をする船員の方々、部員の人たちが、この船は検査では安全だというふうに保証されておるようなものの、検査は合格したようなものの、この船は安全でございます、航行にたえる船舶でございますというふうに言ってくれない限り、船長さんとしては心配で心配でならない、これは当然なことだと思うんですね。  海員組合と皆さんとの間に長い論争が続いておることもよくわかりますし、これをまとめていただく努力をしていただいた方がいいんじゃないだろうかというふうに考えますが、その点いかがですか。
  33. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 先生指摘運輸省見解あるいは海事協会の見解にございますように、基本的に物とそれを動かす人との総合的な安全に対する配慮によって安全が確保される性格のものでございますので、したがって物の面で安全の管理をやっている私どもとしましては、やっぱり適切な船舶の管理・運航ということが前提にありませんと、技術的な基準もなかなか策定しにくい、こういうことになりまして、そこが確かに先生がおっしゃるように、じゃどこがどこまでの範囲だという点については、これは私はほかの交通機関あるいはほかの機械においても、あるいはほかの装置においても、そういう問題はあるわけでして、これはなるべく私ども立場から言いますと、技術基準は詳しくかつわかりやすくということと、それに適合している検査を必要に応じて実施するという立場でございまして、それから、動かすあるいは操作をする立場の人は、また、その立場から安全の確保を図っていくということで、どちらがどこまでやれば安全かという点については、私どもは物の施設の面から安全の確保により一層努力するように技術的な基準も定め、検査の時期についても必要に応じて実施していくということではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  34. 穐山篤

    穐山篤君 最後に、たとえば第十条の第三項で「船舶検査証書ハ中間検査、臨時検査又ハ特別検査ニ合格セザル船舶に付テハ之ニ合格スル迄其ノ効カヲ停止ス」言いかえてみれば、合格通知を出すのには、その他の各種の検査を全部完了しなければ合格証書を上げませんよと、こうなっていて、船舶検査証書というのは非常に重要な意義を持つわけですね。船長の操船上のミスで海難事故が起きたというならば、これは話は別ですよ。操船上のミスで事故を起こした、あるいは海難事故に遭うというなら、これは話は論外です、次元の違う話ですから。これは船体に問題があるわけでなくて、船長の操船上の問題です。しかし、船舶検査証書を出すということは、少なくとも設備を含む船舶本体についての安全を担保するわけでしょう。安全を担保するということは、言いかえてみれば船級登録の意義をここで十分に効力を持たせるということにならなければ理屈に合わないわけでしょう。また、そのことがひいては第一条の堪航性に戻ってくるというふうに私どもは考えたいし、また海員組合の皆さんのほとんどの人がそういうふうに今日まで理解をし認識してきたと思うんですね。しかし、五十一年の海難事故中心にして議論が分かれているというのは全く残念でならないのです。  短い時間の間にまとめるということは非常にむずかしいと思いますけれども、私の申し上げている理屈、理論も多少はおわかりでしょう。船長の立場あるいは荷主なり乗船するお客さんの立場から言えば、この船は安全ですかと聞かれたときに、船長は、安全です、皆さんは愉快に航行してください、愉快に遊んでくださいと言えない法律になっているのです。  以上で終わります。
  35. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 先生のおっしゃる点について理解をしておりますが、船舶安全法だけで船舶のあらゆる運航について安全を担保しているということではございませんので、私どもとしては、五条なり十条の検査につきまして、必要に応じあるいは国際条約の決めるところに応じて強化をしてまいりたいということでございまして、操船者それから航行の規制者等の関係法律等も総合的に改善し、かつ適切に運用をしまして、安全についてより一層努力をしたいということをお答えしたいと思います。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約及び議定書につきまして質問をいたします。  最初に、一九七四年のいわゆるSOLAS条約と言われているそうですが、この条約が作成されて四年半以上たっているわけでありますが、各国の加盟状況、締約国は三月二十六日現在で二十二カ国である、現在まだ未発効である。この未発効の理由は何ですか。
  37. 小林俊二

    説明員小林俊二君) この御提出申し上げました説明書に書いてございます三月二十六日現在以降、ウルグアイが加わりまして、現段階におきましては二十三カ国でございますけれども、この発効規定によりますと、世界全体の商船船腹量の一定パーセンテージを超えるということとともに、締約国が二十五カ国必要であるというふうに書かれてございますので、その条件をいまだ満たしてないというのが未発効の理由でございます。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 発効の見通しはどうなるんですか。
  39. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私どもといたしましては、明年中には発効するものというふうに考えております。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国は四年半もたってまだ批准をしていない。海運国であり、IMCOの理事国であるわが国がこういう問題に率先をしてやるべきである、にもかかわらず、おくれた理由は何でしょうか。
  41. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私の承知するところでは、この条約批准されますと、この条約に基づいて新たに負うこととなる義務の中に、かなりの設備投資、その他新たな措置を海運界そのものにおいて行う必要も生ずるわけでございます。そういう観点から、海運先進国としての一種の宿命でございますけれども、非常に多くの措置を要する結果になるということから、関係各界について所要の調整措置と申しますか、意見の調整あるいは用意、準備というものが必要になるということが最も物理的な準備の多くの部分を占めるわけでございます。それが実態的な面でございますが、もう一つは、国内法制の整備という、これはもうあらゆる国際条約批准につきまとう問題でございますけれどもわが国として国内におけるそれに対応する法制の準備が必要である、あるいは、これは実際に立法措置ということまでいかなくても、現在の立法措置において担保されているという確認が必要である、そういった作業の面、以上が国内的な問題でございます。  さらに加えまして、海運におきます国際約束実施に伴いましては、国際的なかかわり合いの多い分野でございますので、海運先進国と言われておる主要各国の動向との調整、それと軌を一にする必要がある、したがってその出方を確認する必要がある、これは対外的な面における一つのプロセスになるわけでございます。そういった観点から今日までこの見通しをつけるための作業が行われてきたということで時間をとったということが申し上げられるかと存じます。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この条約は、四十九年十一月一日、ロンドンで作成をされ、条約採択会議にはわが国を含む六十七カ国が参加した、このように説明書には書いてありますが、最後の資料で署名国三十七カ国の中には、わが国は入っていないわけであります。わが国は参加をしたけれども署名をしなかった、そういうことになるんでしょうか。また、その理由は何でしょうか。
  43. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  国際条約、特に多数国間の条約では条約採択会議というようなものが行われるわけでございますけれども日本もその条約採択会議に出席いたす場合が多いわけでございますが、必ずしも全部その条約採択会議に出席したからといって署名するわけではございません。もちろん署名する義務もないわけでございまして、したがって、署名する場合もございますが、署名しないからといってその条約に対して特に反対であるとかいうことを意味するものでもございません。ただ、署名いたしますときは、大体においてこれが早期に加入できるという見込みがある、しかも日本も積極的に行こうという意思がそのときに決まっているような場合には、多くの場合、署名するわけでございますけれども署名しないからといってその意思が全くないということではなく、やはりこれは国内へ持ち帰りまして、慎重に検討した上で、そこでひとつ参加するかしないかの判断をしようというようなことが署名をしない場合の考量の理由として挙げられると思います。  ただ、具体的にこの条約につきまして、どうして署名しなかったのであるかということについては、申しわけないんでございますけれども、私もその当時の事情をつまびらかにしておりませんので、お許しいただきたいと思います。
  44. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 先ほど、私、この条約が明年中には発効するものと考えておると申し上げたように思いますが、これは言い間違いでございまして、本年中には発効するものと考えておりますので、訂正さしていただきます。
  45. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この条約の作成の段階において、国際間でいろいろ意見の対立等はあったのかなかったのか。海運国わが国として、この条約の作成の過程において特に主張した点とか、わが国の主張が取り入れられた、そういうような点はあるのかないのか。あるいは、先ほどのお話では余り積極的じゃなしに、ただオブザーバーとして静かに聞いておっただけなのか、その点はどうなんでしょうか。
  46. 小林俊二

    説明員小林俊二君) この条約SOLAS条約としては四つ目の条約に当たるわけでございまして、非常に長い歴史を持って積み重ねられてきた条約でございます。これがこうした長い歴史を持って、かつ改正条約採択されてきたというのは、主として海運界における技術的な発展に基づくものでございまして、そうした発展に対応した条約内容に切りかえていく必要があったということでございます。  今回の七四年条約も、前回の条約採択以降のそうした技術的な発展に対応するものでございまして、そういう観点からは特に政治的な立場見解といったようなもので影響される部分はほとんどございません。したがって、そういう面におきまして実情に合わせていくという観点からの条約作業でございましたので、各国間の見解の相違が非常に問題となって条約採択を妨げたというような事情はほとんどございませんで、そういう面から、わが国としても、合理的な条約のあり方ということを唯一の立場といたしまして、積極的に討議に参加したということでございます。したがいまして別に条約採択会議におきましてわが国がオブザーバーであったわけではございません。これは正式の前条約の締約国として積極的に採択に関与いたしたわけでございます。
  47. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この一九七四年の条約が発効になるまでは、一九六〇年のいわゆる条約というものが国際的な条約として生きておる、このように理解していいわけですね。
  48. 小林俊二

    説明員小林俊二君) さようでございます。
  49. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、一九七二年の海上衝突予防条約も先般国会批准をしたわけでございますが、このときもわが国の対応は非常に遅かったわけですね。西ドイツ政府批准をし国際条約として発効をされることになったために、政府はあわてて国内法整備あるいは条約批准国会に提案をしてきた、こういうことであります。  先ほども小林参事官から話があったように、四年半もおくれてきたのは各国の出方待ち、そしてまたこの条約批准するに当たって船舶業界、海運業界のいろんな設備投資の問題、そういうような点から非常におくれてきておるわけで、そういうところが、われわれとしては、特に海上衝突予防条約にいたしましても、今回のSOLAS条約にいたしましても、これは人命に関する問題であって、もうちょっとわが国は積極的にやるべきじゃないか、そういう姿勢が余りにも経済重視の日本の国のようにとられるんじゃないか。そういう点で、私は、このようなわが国の姿勢、これは外務省だけではない、海運業界の姿勢、また、それに対する運輸省の指導の姿勢、そういうものも関係あると思うんですけれどもね、そういう点もっと姿勢を改めるべきではないかと思うわけでありますが、これは運輸省外務省の次官の御答弁をお願いいたします。
  50. 志賀節

    政府委員(志賀節君) 私も、この種の問題には、日ごろから心を痛めている一人でございます。  ざっくばらんに申し上げまして、過般、電電公社をめぐる政府調達問題がございました。今日なおこれが日程から消えておるわけでないことは御承知のとおりでございます。これなぞも、日米摩擦をなくすことを主眼に置きますならば、相当日本も譲歩しなければならないにもかかわらず、日本の国内事情あるいは電気通信業界の事情によってこれが非常にブレーキがかかる、こういう実情があることは御承知のとおりであります。このことは電電公社内部の労働組合の面にも同じことが言えると思います。そういう日本の国内の情勢でどうしても対外関係に大きな摩擦やおくれをとることになっておることを私は大変憂慮している一つの例として申し上げたわけであります。いま死児の年を数えるようなことでございますけれども、仮に牛場・ストラウス会談が決裂をしないで、東郷大使が提案した内容をあのときすでに出していたならば、こんな事態にならなかったのではないだろうかという想定もできるわけであります。  そういうようなことを他山の石として考えますならば、国内の問題と条約批准あるいは発効という問題は非常に密接に絡み合っているということを切実に考えないではいられません。特に委員先生御存じのとおりワシントン条約がございます。このワシントン条約にいたしましても、御案内のとおり、一方においては先進諸国が絶滅に瀕している植物、動物の保存を願っておる。にもかかわらず、これがたとえば日本の国内の場合にはべっこうの業者が死活問題としてこれの批准をおくれさしてもらわなくては困るという問題が出てきております。そういう国内の問題がとりもなおさず条約批准ということとの絡みで大きな問題として出てきておることは御承知のとおりであります。私どもは、そういう面から、外交というものは、実は、みずからの国内のおひざ元を固める問題ではないだろうか、こういう観点にもかんがみまして、誠心誠意国内問題に取り組まなければならない、これがこういう条約に対する一つの基本的な姿勢でなければならない、このように考えておる次第でございます。  以上、外務政務次官としての立場から、私の先生指摘の点についての日ごろから考えております所見の一端を申し述べさせていただいた次第でございます。
  51. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 私どもとしましても、国際条約に関しましては、条約草案の作成の前の準備段階から、この種の技術的な内容中心とします基準に関する条約については積極的に協力をし、積極的に審議に参加しておるわけでございます。  問題は、こういうきわめて基本的な技術基準中心としました条約でございますので、大体十年程度のインターバルで改正がされてまいります。その間、技術的な進歩につきましては、国内法におきましては、先ほど御指摘のような海難事故の教訓なり、あるいは新しい技術の開発の成果を取り入れて、逐次、省令なり、あるいは通達による行政指導で安全の確保について努力をしてまいっておるわけでございます。今回の条約につきましては、そういう意味で過去の技術進歩の集大成でございましたので、その七四年SOLAS以後におきましても、たとえば検査のやり方の問題でございますとか、あるいは内容の一部につきまして、逐次、技術上の進歩あるいは社会的なニーズが出てまいっております。そういう意味におきまして、私ども、関係業界の意見条約草案の作成段階から十分聞いてまいっておりますので、そういう意味において時間を特に必要とするということはないわけですが、ただ、こういった条約批准と、それから国内法を総合的に整備をしたいという考え方で今日まで業界の条件あるいは私どもの技術基準整備条件等を整えながらまいったわけでございまして、いわゆる単一の条約と違いまして、船舶の少なくとも施設面での安全に関します総合的あるいは基本的な技術基準内容とする条約でありますだけに、条約批准と同時に、国内の法令の整備を総合的にしたいということで今日まで至ったわけでございますが、今後とも、私ども、この種の条約につきましては、国内の条件整備について努力をしまして、海運国あるいは造船国としての重大な立場を十分認識して努力をしてまいりたい、こう考えております。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、いま外務次官からワシントン条約とか、あるいは電電公社の資材の調達問題のお話もありましたけれども、むしろこのSOLAS条約等は、別に対外的に早くこれを日本批准をしろ、こういう圧力がかかっているとか、対外的な面で早くこれを批准してかっこうをつけろと、そういう意味ではなしに、やっぱりこれは人命を尊重するという、こういう立場での条約ですから、船で働く人たちあるいはお客さんの安全を守るための条約ですから、そういう点でもっと運輸省としても積極的に取り組んでいただきたい、こういうことを強く要望しておきます。  本条約は、漁船はこの対象にはならない、このようになっておるわけでありますが、私がいろいろもらいました資料等を見ますと、かなり海難状況を見ましても漁船の海難の件数というものは一向に減っていないわけであります。また死亡、行方不明の数を見ましても、漁船関係で亡くなった人が、昭和五十三年四百四十八人、これは全部でありますが、そのうち二百八十一人が漁船である。しかも五十一年が二百三十四、五十二年が二百六十五、五十三年は二百八十一と、こういうように漁船関係の遭難によって亡くなる人、行方不明の人、こういう数は年々ふえておる。私たちも新聞のニュースでこういう漁船の遭難を見るたびに、まことに悲しいニュースであると感ずるわけでありますが、この漁業安全のための国際条約がいまどういう状況になっておるのか、これをお尋ねいたします。
  53. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 漁船の安全性の問題につきましては、昭和五十二年の三月に、スペインのトレモリノスというところで、SOLAS条約をつくりましたと同じIMCOの主催による国際会議が開催されております。その結果、漁船の安全に関するトレモリノス国際条約採択されたわけでございます。この条約はまだ発効いたしておりませんけれどもわが国といたしましては、現在、加入につきまして関係省庁との間の協議を進めておる段階でございます。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはまだ署名はしておりませんか。
  55. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 署名いたしておりません。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国は、この条約が発効すると数千隻の現有船が設備の取りかえ、追加変更などが必要とされることから、この会議に出席するに当たり、一九七七年の漁船の安全のための国際条約草案に対する修正提案を準備して、同条約の現存船への適用に一定の猶予期間を設けるよう提案したが、その主張が受け入れられ、条約発効後六年間の猶予期間が認められるようになった、このように聞いておるわけでありますが、わが国もそういう主張をしてきたのかどうか、その点どうなんでしょうか。
  57. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 御説のとおりでございます。わが国といたしましても、そういう主張をしてまいったということでございます。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 きょうは農林水産省の方に来ていただいておりませんので、農林水産省の方に御答弁は願えないわけでありますが、もちろん経済性という問題もあると思うのですけれども、やはり国際条約よりもむしろ先にわが国がその体制を整える。わが国は特に海運国であるとともに、漁獲高も世界で一、二を争っているそういう国でございますので、そういう点積極的にやってほしい、こういうことを意見として申し述べておきます。これは答弁者がおりませんので答弁は結構でございます。  それから、次に、本条約締結に伴いわが国が負うことになる義務、特に国内法上はどういう処置を講ずるのか、国内法の改正あるいは省令の改正等はもうすでに終わっておるのか、どういう点を改正しなければならないのか、これをお尋ねいたします。
  59. 小林俊二

    説明員小林俊二君) ただいま御提出申し上げております条約及び議定書の履行に関連する国内法といたしましては、船舶安全法、船員法、電波法及び気象業務法がございます。このうち、今回の条約締結に伴いまして改正を要すると考えられますのは電波法でございます。  現在、所要の改正を行うための電波法改正案を国会に提出申し上げております。で電波法改正案のうち、この条約に直接関連する部分は無線電話遭難周波数での聴守義務についてでございます。電波法六十五条に、国際航海に従事する船舶の義務船舶局のうち船舶無線電信局につきまして、五百キロヘルツの周波数での無休聴守に加えまして、二千百八十二キロヘルツの周波数での無休聴守をしなければならないという規定を加えることになっておるわけでございまして、これがこの今回の条約締結に伴います法改正ということでございます。
  60. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この法改正は、本国会で成立の見通しなんでしょうか。
  61. 松田恵一郎

    説明員松田恵一郎君) 国会の方に御提出申し上げておりますが、一応、私どもとしてはぜひ今国会で成立させていただきたいと思っておりますけれども、ただいまのところは、まだ委員会への付託がなされていない、こういう状況でございます。
  62. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、この条約だけ通って、いまの電波法の改正は次の国会になっても差し支えないのかどうか、その点どうなんでしょうか。
  63. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 私どもといたしましては、国内法も今国会において御承認をいただいて、早急にこの条約に加入することができることを望むわけでございますけれども、法律的に申しますれば、国内法ができませんと、この条約に加入するという手続がとれないわけでございますので、もし先生のおっしゃいましたような事態になりました場合には、次の国会において国内法整備をいたしましてこの条約上の義務を履行できるという段階に至りまして初めて加入の手続をとる、こういうことになると思います。
  64. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、今回、第八章に原子力船についての追加的要件が定められているわけであります。これは他の章と異なり、詳細な技術要件に関するものではなく、基本原則を定めているにすぎないわけであります。この条文等を読みまして不十分ではないかと、今後原子力船というものが将来もしふえていくとするならば、この条文で定めているような非常に概念的な抽象的な取り決めでは不十分ではないかというような、そういう感じがするわけでありますが、この第八章の追加的要件が定められているその経緯とか、いきさつとか、そういう点について御説明を願いたいと思います。
  65. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 御承知のとおり、原子力船という技術発展の一つの結果としてあらわれた新しい現象と申しますか、産物という観点から、まだ世界的にも非常に未確認あるいはなお検討、研究を要する面が多いということから、この原子力船についての規定が基本原則にとどまっておるということになったわけでございます。  ただ、この現象と申しますか、そういう動きとしては、海運界におきましてもきわめて新しい一つ分野が開けつつあるということは否定し得ざる事実でございますので、その面で将来の方向を示しておく必要がある。したがって技術的にはなお検討を要する問題が多いけれども、その原子力船の安全というものについても国際的な関心を示す必要があるということから、その方向を明らかにするという意味でこの今回のSOLAS条約に加えられたということでございます。したがいまして、これはなお発展段階にあるという面が非常に強いという観点で、技術要件の上におきましてはなお原則にとどまったというのが実態であると申し上げることができると思います。
  66. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国は、御存じのように、原子力船「むつ」の問題が非常にこじれこじれて難航をしておるわけでありますが、世界の各国においては、軍事用は別といたしまして、商船として原子力船の建造、運航をすでにやっている国もあるわけでありますが、最近のこの世界のいわゆる商用の原子力船の動向というものはどういう方向にあるのか、これをちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  67. 長柄喜一郎

    説明員長柄喜一郎君) まず、原子力船を平和利用に実用いたしましたのはソ連でございますが、一九五九年に原子力砕氷船「レーニン号」これを完成しております。そして現在でも北極海で砕氷しながら就航しております。引き続き、ソ連では、七四年それから七七年に、いずれも砕氷船でございますけれども、就航さしておりまして、現在、ソ連では三隻の砕氷船が北極海を走っております。次に、米国でございますけれども、これは六二年に貨物船「サバンナ号」を完成いたしまして、ヨーロッパの主な港、それからアジア各国を訪問しております。それから西ドイツでございますけれども、六八年に鉱石運搬船「オット・ハーン」を完成いたしまして、現在まで約十カ年間でございますけれども、すでに六十万マイル、地球の二十四周分に当たりますけれども、これを航海しております。そのほかイギリス、フランスなども原子力船の研究をやっておりまして、次の原子力船の建造計画を検討している。またカナダでも原子力砕氷船の計画が検討中でございます。  以上でございます。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまお話がありましたように、米国「サバンナ号」あるいは西ドイツの「オット・ハーン」、これは現在は航行を取りやめておりますけれども、「サバンナ号」の場合は二十六カ国、四十五港を訪問した。西ドイツの場合の「オット・ハーン」は二十二カ国、三十三の港を訪問した、このように言っておるわけでありますが、ところが、この条約によりますと、この原子力船が訪れようとする国の締約政府に事前に提出をする。何を提出するかというと、原子力船が海上または港において乗組員あるいは旅客、公衆等に不当な放射線その他の危険を及ぼさないことを示す安全説明書を作成して、主管庁承認を受け、それをその相手の国へ渡す、こういうことでありますが、その自分の政府がこれは安全だという証明書をこっちの政府に出したからといって、じゃそうですがといって安心はできないんじゃないかと思うんですけどね、いまはまだそういう「オット・ハーン」も「サバンナ」も日本へ来ることもないからいいようなものですけれども、そのあたりの原子力船の各港をずっと航行する点の国際条約というようなものはないのかどうか、その点はどうなっているんですか。
  69. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 原子力船の運航と申しますか、入港について国際条約というものがあるかというお尋ねなんでございますが、私の承知いたしています限り、国際的な条約というものはいまだ考えられていないと思います。ただ、「オット・ハーン」でございますとか「サバンナ」とかにつきましては、それぞれ入港先が具体的に決まりました際に、たとえばスペインに入港するというような場合に、アメリカとスペインとの間でその都度二国間の取り決めを結んで入港しているというのが過去の経緯であったと承知いたしております。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 一九七五年、昭和五十年七月に原子力船運航者の責任に関する条約というものが発効した、これにはわが国はまだ署名をしていない、こういうように聞いておるわけでありますが、これに対するわが国の姿勢はどうなのか、この点を科学技術庁の方にお尋ねいたします。
  71. 長柄喜一郎

    説明員長柄喜一郎君) お答えいたします。  いま先生が多分見ていらっしゃる科学技術庁の監修いたしましたポケットブックだろうと思うのでございますが、実は、間違いがございまして、これはまだ未発効でございます。申しわけございませんけれども、この本は間違っておりまして、未発効でございます。そして日本はまだ署名しておりませんが、その理由といたしましては、この条約が原子力軍艦を含んでいること、それから国内法との調整がまだとれてないということで、まだ日本署名しておりません。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  次に、この条約がもし発効した場合――これは今年中に発効になるようでございますが、わが国を訪れる外国船舶で、この条約の締約国と未締約国と両方あると思うのですけれども、扱いは具体的にどういう違いになるのでしょうか。条約が発効した場合、締約国が日本へ来た場合、あるいは未締約国が日本へ来た場合、日本政府の対応はどのように違うのでしょうか。
  73. 小林俊二

    説明員小林俊二君) まず、その発効の問題でございますが、私先ほどからちょっと混乱いたしまして恐縮でございますが、正確に申し上げますと、本年中に発効要件を満たすことになる見込みであるということでございまして、発効そのものは発効要件を満たしまして十二カ月後になりますので、そうしますと、最初にお答え申しましたように、発効そのものは明年ということになる可能性がきわめて大きいわけでございます。  そこで、その締約国がわが国を訪れました際の最も大きな相違は、締約国の船舶につきましては、この条約に従って相手国主管官庁が発行した証書を条約上の義務に従ってわが国は認容するという点が最も端的な違いであろうかと思います。したがいまして非締約国の船舶が参りました際には、この条約に基づいて相手国主管官庁の行った発給行為を認容する義務はないわけでございまして、その点の取り扱い上は条約上の義務から離れるということが一番大きな違いであろうかと存じます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では次に、最近のわが国海難状況についてお尋ねをしたいと思います。海上保安庁の白書、あるいはいただきました資料を見ますと、貨物船タンカーは減少の方向にあるわけでありますが、旅客船が余り減らない、漁船も減らない。漁船の問題は先ほどお話ししたとおりでありますが、特に「その他」というのがふえておるわけなんですね、「その他」とは何か。また、このように海難が減らないという問題については海上保安庁としてはどう認識しておるのか、これを伺っておきます。
  75. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) 「その他」の海難でございますが、これはプレジャーボートが非常にふえまして、そのプレジャーボートの海難が大多数を占めております。したがいまして海難がなかなか減らないということでございますが、プレジャーボートが非常にふえておりますので、私どもといたしましては、このプレジャーボートの海難防止のために各種の安全対策を講じております。内容といたしましては、講習会の開催、あるいは現場におきます臨船指導、それからプレジャーボートがたくさん出ます海域あるいはシーズンには、巡視船艇あるいは航空機等をその海域に配備いたしまして事故の防止に努めておるところでございます。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この問題は、時間がございませんので、また別の機会にいたしたいと思いますが、海上保安庁の白書によりますと、特に外国船舶事故が多い。五十二年度の実績では、要救助外国船舶の全体の要救助船舶の中で占める比率、これを見ますと、一千トン以上で六一%、一万トン以上で六六%、こういうように六割、七割が外国船舶である。この原因は何ですか。
  77. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) 先生指摘のとおり、外国船の特に一万トン以上の海難が非常に多うございます。先ほど申されましたとおり、昭和五十三年には全体の二十九隻中二十一隻が外国船という状況でございます。  その原因といたしましては、いろいろあろうかと思いますが、やはり日本近海あるいは特にふくそうする港湾等の地理に明るくないということも一つ原因かと思います。それからまた、わが国海上交通ルール等の周知が徹底していないということもあろうかと思います。  そういうことで、私どもといたしましては、周辺海域の気象、海象、航路事情あるいは交通ルール、こういうものに関する英文その他の資料を作成いたしまして、海上保安官が直接外国船を訪船し、あるいは代理店等を通じまして、配付いたしまして、その防止の指導に当たっております。特に浦賀水道等、船舶の交通のふくそうする海域におきましては、やはり巡視船艇を配備いたしまして航法の指導を実施いたしております。それとともに、外国船に対しましては、できるだけ水先人を乗船させるように指導いたしております。また、主要港におきまして、外国船舶取扱会社等がございますが、その連絡協議会等を設置いたしまして、その協議会を通じて海難防止の指導を行っております。現在、全国に三十九の協議会等が設置されております。そういう状況でございます。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 瀬戸内海――私は瀬戸内海の沿岸に住んでおるわけでありますが、瀬戸内海においてもこういう事故が非常に多いわけであります。昭和五十二年四月六日から六月十八日の二カ月半の間に瀬戸内海の釣島水道付近では連続四件の海難が発生をし、大部分のものに外国船が関与しているわけであります。先ほど海上保安庁は、五十二年三月より外国船舶安全運航連絡協議会を設置し、そうして外国船舶への指導、情報の提供をやっておるわけでありますけれども、正直のところ余り効果は上がっていないわけであります。  そこで、東京湾は強制水先区としていわゆる水先案内人を乗せることが義務づけられておるようでありますが、瀬戸内海やあるいは関門海峡のようなところも、瀬戸内海全体、関門海峡全体を強制水先区に設定すべきではないか。これは全日本海員組合からも昭和五十二年にそういう要望書が運輸省にも出されていると思うのでございますが、この点はどうなのか。やはり私は瀬戸内海は非常に潮の流れも速いし、しかも非常に狭い。外国から来る船主、台湾人の船長とか余りなれない点もあるわけで、当然、瀬戸内海全域を強制水先区に設定をすべきではないか、こういう点は検討中と聞いておるわけでありますが、その後、どうなっておりますか。
  79. 山田幸作

    説明員山田幸作君) ただいま強制水先区の問題についての御質問でございますけれども、どういった水域を強制水先区にするかということにつきましては、気象とか海象、そういった自然条件、それから船舶交通の状況あるいは海難の発生状況、航行に関する法規制の内容とか、二次災害の重大性、こういったような諸要素につきまして総合的に判断をいたしまして、緊急度の高いところから逐次実施いたしているわけでございます。  ただいま御指摘のございました瀬戸内海、それから関門海峡につきましては、まず関門海峡の方につきましては、ことしの一月一日から通過船につきましても一万トン以上のものについて強制化をいたしております。それから瀬戸内海でございますが、瀬戸内海につきましては、ことしの十二月一日から、これも対象船舶は総トン数一万トン以上の船舶でございますが、明石海峡、それから備讃瀬戸及び来島海峡、こういったところと、その周辺の水域を強制区ということで実施をするということにいたしております。ただいま申し上げましたように、緊急度の高いところから強制化を行っているわけでございまして、これら以外の水域につきましても、今後の状況を見ました上で検討を進めていきたいというふうに考えております。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、本四架橋の問題で、五月十二日に大三島橋も開通するわけでありますが、本四架橋に伴う電波障害、いわゆるレーダーに虚像が映って、これが非常に航行上危険である、こういう点が数年前から山口県の大島架橋のとき以来問題になっておるわけでありますが、この問題は解決したのかどうか。  それからもう一つは、五十二年一月十日、全日本海員組合から電電公社に船舶電話のVHF波の不感地帯というものがある、そういう点の実態調査と、その解消の申し入れが行われておるわけでありますが、この問題は解決をしたのかどうか、この二点についてお尋ねをいたします。
  81. 仙波康之

    説明員(仙波康之君) 御説明いたします。  ただいま御質問の第一点のレーダーの虚像の問題でございますが、確かに大三島の工事が五十二年夏ごろ始まりました時点で、そういう問題が発生をいたしました。で旅客船協会からの工事の中止の申し入れであるとか、あるいは全日本海員組合からの申し入れ等がございまして、私ども、本四公団から相談を受けまして、検討を続けてまいりました。  公団といたしましても、要は、大きな橋が鏡と同じような役割りをいたしまして、その反射した電波があたかも別のものがあるかのような像を結ぶということでございますので、橋そのものに吸収剤を塗って何とか解決できないかということで吸収剤の研究開発を一つは行っております。それからもう一つは、昨年の十一月でございますが、そういった虚像の発生する実態そのものが一体どうなっておるのかということを調査するために、私ども本四公団にレーダーの実験局を免許いたしまして調査を継続いたしております。現在のところ、技術的には決め手がございませんで、吸収剤をうまく使うとか、航行援助施設を設けるとか、そういった形で本四公団あるいは海上交通安全に関する所管庁であります海上保安庁等とも御相談をしながら解決をしていくほかはないんじゃないかというふうに考えております。  それから第二点目の船舶電話の不感地帯でございますが、全日海からの申し入れ後、私ども、関係機関――海上保安庁、電電公社、公団等でございますが、と相談をいたしまして、調査委員会を設けまして調査をいたしました。今月、大三島橋が完成をいたしますが、現在までのところ、障害が発生したという事実は聞いておりません。しかしながら、今後たくさん橋ができますので、建設前の状態と建設後の実態とを比較調査をいたしまして、実際に障害が発生いたしました際には、中継局を設けるとか、そういった形で電電公社とも協議の上措置をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 あと造船業界の問題についてもお尋ねをする予定でございましたが、ちょっと時間もございませんので、以上で終わります。
  83. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十五分開会
  84. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、穐山篤君が委員辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。     ―――――――――――――
  85. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 休憩前に引き続き、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件及び千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 この条約関連して、水難救助の問題をお尋ねしたいと思うんですが、SOLAS条約では、第五章「航行の安全」の第十規則で、海上における船舶の船長は遭難しているという信号を受けたときも全速力で遭難者の救助に赴かなければならないというふうになっていますが、この点、日本ではどのようになっているのか、最初に御説明願いたいと思います。
  87. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) わが国の制度といたしましては、やはりもとはSOLAS条約にあると思いますけれども、船員法の中に規定がございまして、船長の義務といたしまして、遭難船舶があると知ったときは救助しなきゃならないというふうに書いてございます。  なお、これはいわゆる洋上の海難の問題でございますが、このほかに沿岸海難の問題があると思います。これにつきましては大変古い法律でございますが、水難救護法という片かなの法律が明治三十二年にできておりまして、これによりますと、「遭難船救護ノ事務ハ最初ニ事件ヲ認知シタル市町村長之ヲ行フ」こう書いてございまして、一応市町村長の事務になっているわけでありますけれども、事実上、水難救護法は、最近におきますと、いろんな障害がございまして働くことが非常にむずかしくなってきている。そういうことでございまして、事実上は、海上保安庁の現場の船艇が民間のたとえば漁協の人たち、こういった方々あるいは水難救済会の出先の方々、こういった方々と協力をして救護をするということが多くなっております。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 いまちょっと述べられたんですけれども、遭難信号が発信されて具体的に海難救助を行う場合には、どういうような段取りといいますか連絡を取り合いながらやるのか、具体的に現在どういうふうに行われているのか、もし少しちょっと説明していただきたいと思うんですがね。
  89. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 私も実際に船で航海の任務についたことがありませんので具体的な詳細は必ずしも知りませんけれども、遭難船からSOS、万国共通の遭難信号が発せられますと、付近を航行している船舶がこれを無線でキャッチをする。そうしますと、そのキャッチした船とSOSを発信した船との間でどの辺の海域にいるかということがわかるわけでありまして、そしてそこはお互いの船同士の交信によりまして、比較的近い海域にいる船がじゃおれが引き受けた、こういうことになって出かけていくのが一つのルートであります。もう一つは、その遭難信号を海上保安庁の出先の各保安部あるいは海上保安署の通信所がこれを傍受いたしまして、海上保安庁がいわば仲介になりまして、付近航行船舶にこの情報を伝えて救助要請をするとか、あるいは直接海上保安庁の船が救助に赴くとか、こういうふうな事実上の関係になっていると思います。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 海難救助の場合に、第一義的には海上保安庁が義務を負うのか、あるいはそういうことではなく、SOSをキャッチした最初の船がそれを完全に第一義的な責任を負うというふうな関係になるのか、そこらあたりはどうなっていますか。
  91. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 洋上におきます遭難、これに対処することというのは、海上におきましてあるいは航海をしあるいは漁業をしている人たち同士のいわば相互扶助というふうな精神から、お互いに遭難信号をキャッチしたならば助けに行くという仕組みがあるわけでございますけれども、しかしながら、こういういわば自助組織といいますか、これだけに頼るわけにいきません。近くに船がないこともございますし、それから状況によりましては遭難船を救助するに足る力がない場合もあります。そういったことで同時に海上保安庁の船艇がこれをカバーするということになるわけでありますが、したがって第一義的にどちらがということになりますと、船員法の体系からいけば、その遭難信号をキャッチした船長の義務になりますけれども、しかし、海上保安庁としても国の機関といたしまして、海上保安庁の任務として遭難船の救助という任務がございますので、これもそういった意味では第一義的であるということで、主と従というふうな関係に分けることはむずかしいと思います。いずれも言ってみれば主たる立場になり得る。ただ、事実上、遭難している船のいる場所によりまして、優先的に飛び込む方がどっちになるかということが決まってくるんだろうと思うのであります。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 いままでのデータによって、つまりこういう海難事故の場合、民間の船舶が救助に赴いたのと、あるいは海上保安庁が赴いたのと、比率的にはどんなふうになっているんでしょうか。
  93. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) たとえば五十三年の統計によりますと、海難の隻数が二千三百隻ございました。この総隻数に対しまして、海上保安庁が救助したものが六百隻、約四分の一です。それから海上保安庁以外のものが救助した、これが約千隻、四五%ほどになります。それから助けをかりずに自力で入港したというものが約三百隻で一割ちょっとございます。それから全損または行方不明になってしまったものが四百隻、一七、八%、こういうふうになっているわけであります。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 状況は大体わかったんですけれども、船長には、さっきも言われたように、SOSをキャッチした場合にそれを救助する義務が生じるわけですが、そういう救助活動を行った場合のいろいろかかる費用なんかについてはどういうふうに現状ではなっているんでしょうか。
  95. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) これにつきましては商法の規定によりまして、その遭難した船舶の船体あるいは積み荷等を処分することによりましてお金が出るような場合に、その遭難した船舶船舶所有者が助けてくれた人に支払うというふうなことは規定してございますけれども、これはいわば民事法でございますので、行政として考える場合に、これに頼り切るということは、これは不適当であると思います。そこで、かねてからこの問題が議論されておりまして、ただ働きになるようなことではいけないのじゃないかということが言われているわけであります。  私ども、もともと海上においてお互い同士助け合うというこのことは、いわば海で働く人の間の道徳としては大変すぐれたものでございますけれども、しかし、大変危険を冒し、あるいはかなりの費用を負担して助けに行かなければならないということがあるわけでありますので、そういった場合には何らかのそういった費用を後で補償する制度が要るんじゃないかということが議論になりまして、数年前でございますが、海上保安審議会という審議会に私どもがその問題を諮問いたしましたときにも、審議会の御意見といたしまして、たとえばそういう場合の補償基金のようなものをつくったらどうだろうか、船舶所有者等から基金を積み立ててもらいまして、そういった基金の運用によりまして、いまのような救助に赴いた人たちが泣き寝入りしなくても済むようなことにしたらどうか、こういう御提案もございまして、その後、それの具体化につきましていろいろ検討しているのでありますけれども、なかなか促進されないという状況にございます。しかしながら、海上保安庁自体がみずからの船艇または航空機を出動させまして救助する場合は別といたしまして、民間船が手弁当で助けたという場合にその費用を何らかの形で補償するということはこれからの問題といたしまして必要であると思います。したがいまして、たとえばいま御説明しましたようなそういう補償基金のようなものをつくることも含めまして、ひとつしっかりした制度化を検討しなければならない、こういうふうに考えております。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 船員法にある義務では、これは人命の救助のみで、人命の救助の場合に救助に行った者がけがをしたりあるいは死亡したりしない限り、油代だとか時間的なロスだとか、積み荷の一部を放棄しても助けたというふうな費用については全く出されていないということですが、救助活動してその人がけがなり死亡したような人的な面で災害を受けたときに海上保安官の協力援助法というのが適用されるものがありますよね。  これによりますと、補償されて国庫から支出がされるわけですけれども、しかし、これは海上保安庁が明確に要請をした場合にのみ限っているというふうにとれるわけですが、事実上海上保安庁が要請したという明確な事実がなくても、その船舶がいた地点から見て、当然、海上保安庁がその船舶に救助を依頼するであろうというような状況想定がなされるような場合に、そのような救助に赴いた船舶に対しても運用上では適用されるというふうなことは全く不可能なのかどうなのか、そのあたりはどうなんでしょうか。
  97. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) この問題は大変微妙な問題であると存じます。私どもといたしましては、できる限り運用の幅を広げまして、海上保安庁の何らかの連絡を受けた形でそれに適用させたいというふうに思いますけれども、全然海上保安庁からいかなる形でも要請がなかったという場合に、これを一つのフィクション、擬制として適用するということにつきましては、実は、この法律がたとえば警察または消防に協力した人の災害給付の問題と横並びの関係もございますので、はなはだしくフィクションを重ねて運用するということはむずかしいのではないかというふうな気がいたします。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 いまの点ですがね、運用上、何らかの連絡を受けた形としてというふうな意味なんですが、そこらあたりは具体的にもう少し説明していただけませんか。
  99. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 私の先ほどの説明をもう少し補足させていただきます。私の説明は一部足らない点がございまして、その点申しわけございません。  災害給付の法律によりますと、原則的に要請を受けた場合と「その他」というところがございまして、この海上保安官に「協力援助することが相当と認められる場合」という規定がございますので、この「相当」ということの判断の中身といたしましてはかなり広い運用ができると思います。恐らく実情といたしましては、この「相当」という言葉を目いっぱい読みまして、事実上、そういった場合にはほとんどすべての場合に給付ができるような運用をしていると思います。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 当然、そういうふうにあってしかるべきだと思うんですが、先ほど言われた一般船舶が義務として救助を行ってもいろいろな費用が十分に見られない、船員同士の自助協力、お互いの助け合いですね、その精神に依存している部分が非常に大きいというふうなことでは、やっぱり制度上、将来の問題で、これが二千件からの海洋遭難が起こっておる状況で、そのうち六百件が海上保安庁だと、あと四五%ですか、民間に依存しておるという状況のもとでは、これはやはり制度的にもきっちりしていくことが私は非常に大切ではないだろうかというふうに思うわけです。  それで、さっきの商法で、これはまた別になりますけれども、しかし、積み荷や船体などのものを救助して、それが実現できたならば救助された側によって補償される、いわゆる物の場合にはそういう形になっているわけですね。だけど、人命を助けた場合、これが先ほど言ったような助けに行った側が死亡するだとか、けがをするだとかというふうな事態がない限り、補償されないということでは、法律のあれは違いますけれども、法的に言えば人命の救助よりも何か物品を救ったという場合の方が補償されるような仕組みに事実上なっておるということでは、やっぱりこれも制度上考えていく必要があるんではないだろうかというふうに思います。  それで、さっき消防法等々の兼ね合いの問題も出されたわけですが、だけど、そういう火災なんかに協力したような場合は、これは体一つで協力できるわけで、海の場合には全部船舶自身が必要ですし、それから大変危険な事態を冒すというふうなこともあるわけですし、それからSOSをキャッチした場合に、最初にキャッチした船舶が第一義的に義務を負うというふうに義務づけられているという点から見ても、これはそういう陸上の場合とは若干の違いもあるだろうと思うんですね。こういう点から考えても、この制度の問題というのは相当やっていただきたいと思うんですけれども、聞くところによると、先ほども触れられましたけれども、四十二年のころ海上人命救助基金というものが検討されて、まだそこまで煮詰まっていないという経過があるわけですが、これはどういうふうな経過だったのか説明していただきたいんですが。
  101. 飯島篤

    政府委員(飯島篤君) いまお話の出ました人命救助基金につきましては、海上における人命救助に要した費用の負担制度の合理化についてということで、四十一年の十月七日、海上保安審議会の答申を受けまして、船舶所有者の納付金を中心とする海難救助基金構想を立てまして、四十二年だったかと思いますが、二年ばかり予算要求をいたしたわけでございますが、共済金の負担方法あるいは救助に要した費用の算定方法等非常に問題があるということで、残念ながら現在も実現を見ていない状況でございます。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 現在、地方によっては、水産庁の指導で県等の段階での漁船海難救助基金協会というのをつくって、救助の費用や援助災害補償などを支給するようになっているというふうに聞いているわけですが、そういう水産庁の指導では地方単位ではあってもつくれているのに、海上保安庁としては、どうしてそれが、いまその基金の算定の問題で行き詰まったというふうに言われていますけれども、できないんだろうかと、やはり納得いくようなその説明が欲しいんですけれどね。
  103. 飯島篤

    政府委員(飯島篤君) 先生のおっしゃるように、一部の地区でそういった制度が実現をしていることも聞いておりますが、問題を地域的に限っており、かつ、漁船なら漁船ということで相互扶助組織として形づくっているということでございまして、当庁の考えましたのは、あらゆる船について共済制度を考える。その場合に船の大きさとか種類とかそれぞれに応じましてどのような負担をすべきかという問題があるわけでございますが、その負担をどういうふうに割り振るかという点がなかなかむずかしい問題があるということでございます。また、先ほどから話の出ております船体、積み荷等が救助された場合と人命のみが救助された場合とをどのように組み合わせるのかという問題それから外国船にかかわります海難についての救助費用をどうするかというような問題等々がありまして、まだ完全に煮詰まっていないという状況でございます。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ、結局、海上保安庁の方としては、先ほど言われた何とかしなければならないという考え方もおありになるようだけれども、現実にはどういうふうにやっていこうというふうにお考えになっているのか説明していただきたいんですが。
  105. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 実は、海上保安庁は、ここ数年来、いわゆる海洋新秩序時代ということで、二百海里漁業水域の設定とか、あるいは領海の十二海里への拡大というふうなことに対応いたしまして、かなり船艇、航空機を整備してきておりますけれども、私ども一体、そういった船艇、航空機を使って、たとえばこの海難救助ということに例をとってみた場合に、海上保安庁はどこまでカバーすべきなのであるか、日本の沿岸におきまするすべての海難を大小漏らさず一〇〇%海上保安庁が救助するというふうに目標を立てるべきなのか。それとも、現状は、先ほど申し上げましたように、海上保安庁の救助が四分の一ぐらいであるということもございますし、そういったこととの関連でこの四分の一というのを一〇〇%にするのがいいのかどうかというふうな問題。さらには、そのことを考える場合に、その海難の起こりました場所との関係、つまり沿岸近くの海難まで全部やるのか、あるいは沿岸近くの海難は自助組織とかあるいは市町村の仕事でカバーをしてもらって、遠洋の海難海上保安庁がやるのかというふうな考え方もあり得るわけであります。  ちなみに港の中の海難は全体の三割ございます。それから三海里未満から港の外側のところまでが約四割。この両方、つまり三海里から内側だけで七割ございます。こういうことを考えますと、この七割を占める三海里未満の海難については全部を全部海上保安庁でカバーするということよりも、もう一つ別のことを考えることの方があるいはいいかもしれない。こういった問題でございますとか、それから遠洋の海難にいたしましても、たとえばすべての遠洋海域に海上保安庁の船が分布しているということも不可能でございますので、当然のことながら、従来の船員法の体系によりまして義務づけられている船舶相互間の救助、これは当然国際的な問題もございますが、国籍のいかんを問わず相互に救助する、こういったことに頼る部面も何割かあるわけでありまして、そのようないろいろなファクターを全部総合いたしまして、どのようにこれを整理していくか、そういったことの中で海上保安庁の勢力以外で、たとえば市町村がその責任においてやった場合の費用の問題、あるいは船がお互いの自動組織あるいは自助努力ということでやった場合の費用の負担の問題それぞれに分けまして、しかるべき構想を立て、これを実現するということにすべきであると考えまして、実は、ごく最近でございますが、海上保安庁としてそういったカバーすべき範囲はどこまでかというふうないわば一つの成果目標、成果基準といいますか、そういった目標をつくって検討してみようという作業を始めたわけでありますが、この作業の展開によりまして何らか合理的な分担関係を明らかにし、その上に立ったところの費用の負担あるいは補償の関係を明らかにしていきたい、こういうふうに考えております。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 海上保安庁が一〇〇%海難救助に当たるべきだなんていうふうなことをもちろん私も考えているわけではなくて、いろいろいままで別の課題のときには海上保安庁船舶が足らないから船をふやすべきではないかというふうな問題も問題になったりしているわけですから、いずれにしろ海洋国である日本において果たさなければならない海上保安庁のお仕事の任務としては、それはそれなりにあるわけですけれども、いまの問題は、そういう大多数の海難救助を民間に依存しなければならない状況のもとで、いわゆる合理的にそういうふうなことがやられるような制度になっていない、この問題点を正しく解決していくことが必要ではないだろうか、そういう意味なんですね。  それで先ほど一番最初におっしゃった水難救護法ですか、明治時代の。これを見てみますと、市町村長が指揮をとるというふうな形になって、だけど実際上海難救助なんていったって市町村長が指揮をとれる状態にはないだろうと思うんですね。これはもちろん海上保安庁ができる前の法律ですが、しかし、この法律を見てみますと、援護活動の費用の問題についても、ぼくはある程度はっきりした内容が書かれておると思うんですね。だけれども、現実にはそれは市町村長が指揮をとった場合においてのことですから、現実には運用されていないという問題だろうと思うんですけれども、この水難救護法という点についていま述べたような考え方でいいのかどうか、基本的な点をもうちょっと説明していただきたいんですが。
  107. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 水難救護法の考え方は、市町村長に遭難船救助の事務を任せているという法体系になっておりまして、明らかに海上保安庁ができる前の戦前の法体系のものでございます。これを現代においてどういうふうに援用していったらいいのかという問題があるわけでございます。  そこで、先ほどちょっと申し上げましたように、国とそれから市町村のこういった仕事をする上での分担関係というふうなものを海難発生の場所などを一つの目安にして決めるというふうな方法もあるのではないかと思います。そうした上でそれぞれにおきまして費用の負担の方法等について検討していくということではないかと思うんでありますが、水難救護法に書いてあります考え方自体は、市町村長が責任を持つという形の中では一つの合理的なこれなりに完結した体系になっておると思うんでありますが、残念ながら、世の中の仕組みが変わってしまいましたものですから、戦後におきましては水難救護法はいわばほとんど働いていないという状況にございます。  そしてこれを埋めるといいますか、この水難救護法に事実上かわるものとして、国の仕事としては海上保安庁の活動があり、そのほかにはたとえば漁業協同組合等の自主的な救助活動があり、あるいは水難救済会というふうな民間の公益法人、これも自主的なボランティア活動みたいなものでございますが、そういったものがありということになっておりまして、何といいますか、一つの法律体系としてきちっとシステマチックになってないという点が現状でございます。これはやはり御指摘のようにいつまでもこういったことではおかしいわけでありまして、何らかの形でこれを整理する必要があると思います。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 できるだけ先ほど申し上げたような合理的に解決できるような速やかな制度を検討していただきたいと思うんですが、それが現実に実現するまでの間、たとえばいま水難救済会に対して若干の補助をやっていますですね。これは救難器具なんかの補助として出されておるのだろうと思うんですが、しかし、関係者の方のお話を聞いても、やっぱり器具の補助でもだんだん少なくなっていっている状況にあるというふうなことがあるわけですが、この水難救済会自体もいろいろなところに寄付のお願いに行く。しかし、国からは援助をどれぐらい出されているのかというふうなことを聞かれて、十分にもらっていないということになると、まず国からの援助をもらうべきではないだろうかというふうなことで、寄付の活動もいろいろうまく進んでいないというふうなことも言っておられました。ですから、この水難救済会への運営に関する費用の補助等もいままでのようにだんだん減らすということではなくて、器具等も、多少とも今後ふやしていくというふうな問題が検討されないのかどうなのか、その点はいかがなんでしょうね。
  109. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) 水難救済会は明治二十二年に設立されました社団法人でございまして、東京に本部がございまして、都道府県に三十八の支部があり、その下に救難所または救難支所という現場のデポのようなもの、これが約六百ほどございます。そして六百の個所に二万四千人余りの人が、一応これは全部がもちろんボランティア活動ですが張りついておりまして、救助船は八十八隻、もちろん小さい船でしょうけれども、持ってやっております。この年間の財政規模は四億ちょっとの財政規模でございまして、そのうち二億余りのものを船舶振興会あるいはお年玉郵便はがき等から拠出してもらっている。そのほかに会員の会費、寄付金等で賄っているということでございます。  御指摘のように、国も、先ほど来申し上げておりますように、海上保安庁としてまだ手を伸ばした方がいいような場所についても事実上水難救済会のボランティア活動に依存しているという面があるのであるならば、それに対する一つの呼び水といいますか、そういった意味でも何がしかのお金を出して強化したらどうかということは当然の問題であると思います。従来、救命艇などをつくるときのお金などはわずかながら出しておりますけれども、救助活動をしたときの費用の一部を補助するといういわば活動費補助のようなものは、毎年要求しているけれども、予算化されないという実情にあるわけでございまして、ここのところ四、五年はもうギブアップしてしまったという状況もございますが、この点につきましては、改めてこの問題の重要性ということにかんがみまして、何がしか、この呼び水的なものとしてでもいいから、国から出せないだろうかということを検討してみたいと思います。ただ、零細補助金の整理ということが行われている一方で、こういうものを新しく補助金の項目としてつくることは財政当局に非常にいわば抵抗がございますので、そこを突破してどうやってやっていけるか、何とか努力してみたいと思います。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 何とか検討して、できるような方向で進めていただきたいと思うんです。  もう一つ、北海道などでは、先ほど言いました水産庁の指導で北海道漁船海難救済基金をつくってやっているわけですが、こういう基金のもとで救助費用だとか救助災害補償などを支給するようになってきているわけですけれども、当面、こうしたような各都道府県の基金についての助成といいますか、そういうふうなことが考えられないかどうか。かつては海上人命救助基金について国も一定の拠出を考えたこともあったというふうな話も聞いているわけですけれども、ですから、何らかの形でこういう救済、救護費用の支給を何か予算化できるような、そういうふうな点は考えられないかどうか、いまの問題とあわせてお尋ねしたいんですが。
  111. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) いろいろな方法があると思います。御指摘のような漁業協同組合等が中心になってやっておりますその基金を何らかの形でバックアップする方法もございますし、あるいは水難救済会の組織をバックアップする方法もございますし、それらのそれぞれ横並びを検討いたしまして、全体として一番座りのいい制度を何とか考えていきたい、こういうふうに思っています。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、いま私の方でお尋ねしておった内容を政務次官もお聞きになって、大体どういうものかというのはわかっていただけたと思うんですけれども、事実上、民間でお互いに海難が起こった場合に助け合っておる。しかし、これはいま言ったように、ほとんどそれに使った費用が補償されないという状況にあるわけですね。ですから、こういう問題については、海上保安庁がすべてをやるというようなことはいまの事態からいってもなかなかできないわけですし、大部分が民間に依存している、それに必要とするいろいろな費用が適切な形で国から出されておらない、この問題についてはもっと抜本的に考える必要があるんではないかという趣旨なんですが、最後に政務次官の方からそれに関するお考えを伺って、私の質問は終わりにしたいと思います。
  113. 志賀節

    政府委員(志賀節君) 大変御指摘に啓発をされまして、私もいろいろ考えさせられるところ大でございました。  確かに、政府としてはそのような民間の善意にのみ依存をするということは、これはある程度考えなければいかぬ、こういう側面があると思いますが、同時に、ヒューマニズムというおのれの内側から出てくることを一〇〇%金銭にかえるということにも私個人的には抵抗がございます、気持ちの上で、その辺の兼ね合いではないかという気がいたします。しかし、やはり政府としてはよいことはより助長していくという風潮をつくり出すこともまた行政面での当然の責務であると思いますので、その至らない点を今後鋭意補う方向で検討させていただく、このようにお答えをさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  114. 和田春生

    ○和田春生君 それではSOLAS条約関係について御質問をいたしたいと思うんですけれども、まず最初に、七四年のSOLAS条約批准承認国会に提出することが今日までおくれた理由についてすでにこれまでの審議の中で同僚委員から幾つかの質問がなされておりました。そこで同じようなことを重ねて質問する労を避けまして、御答弁の中で重要と思われる点を確認をしたいと思うんですが、いろいろな説明がありましたけれども、要約すると三点だったと思うんです。  その一つは、新条約によるとすると、新たな設備投資その他で船主等に負担をかける、こういう面を検討する必要がある。第二は、必ずしも国内法を直ちに改正するという問題ではないが、法制上いろいろの問題点があるので、それの調整を検討しなくてはならない。第三は、主要海運国の動静、出方というものを見きわめながら調整をする必要がある、その見通しのための作業に時間がかかった。具体的にすでに四年近くこれが放置されてきた理由についてはそういうふうに私は受け取ったんですが、そう確認してよろしゅうございますか。
  115. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私の方でお答え申し上げました事情説明を要約すれば、いまお話しのとおりになるかと存じます。
  116. 和田春生

    ○和田春生君 それからもう一つ、この条約署名をしていないということの理由について、署名をする場合と署名をしない場合の基準というか、扱い方の相違というものについて、署名をするという場合には積極的に条約を履行していくという意思がある。署名をしない場合には、必ずしも反対というんではないが、どういうふうに扱うかということを持ち帰って検討する必要がある場合には署名をしない、大体、そういうようなことだというお答えがあったんですが、これもそのとおりですか。
  117. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 大体、そのとおりでございます。ただ、署名をする場合に、この条約を履行していこうという先生のお言葉でございましたが、履行というのはちょっと早過ぎるあれでございまして、積極的に締結していこうということだったと思うんでございますが、大体、そのとおりでございます。
  118. 和田春生

    ○和田春生君 それはじゃ、締結をしていこうという意思だというふうに解釈をいたします。  さて、そうなってくると、外務省から配付をされたSOLAS条約の説明書という中に「締結の意義」ということが書いてありますね。(1)(2)(3)と書いてあるんですが、(1)では「条約により国際的に統一的な規則を定め国際協力を推進していくことが不可欠である。」(2)では「この条約締結国際的に船舶検査規準を統一し、検査の後発給された証書」云々「右のごとき不便を解消することができる。」それから第(3)点として「今日海運及び造船分野において国際的に重要な地位を占め、本条約作成の主体とった政府間海事協議機関の理事国として国際協力に寄与している立場からも、この条約の締約国となることば、極めて望ましい。」と書いてあるわけですね。それと署名をしなかったこととの関連はどうなるんでしょうか。つけ加えますと、この説明書のとおりだとすれば、当然、署名をしてしかるべきであるし、もっと早く承認案件として国会に提出されるのがあたりまえなんであるというふうにしか読み取れないんですけれども、その辺の矛盾はどうお考えなんですか。
  119. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私の方からお答え申し上げました諸点、すなわち、この国会に対して締結について御承認を求めるのがおくれました事情につきましては、先ほど御要約いただいたとおりでございますが、それとここに書いてございます「締結の意義」との関係につきましては、一口で申し述べますれば、ここに書いてありますのは、締結そのものの前向きと申しますか、積極的な意義をここに列記したわけでございます。ここに書いてあります意義そのものがすなわちこの締結の実際性と申しますか、可能性をそのまま意味するものではございませんで、それはその締結によって生ずるわが国の負う義務その他を検討に入れる必要があるということを前提とした上での話でございます。締結した場合に、こういう積極的な意義があるということをここに御説明申し上げておるのでございまして、そういう意義を実現するために要する作業、要する検討あるいは調整といったものはその前段階に存在するわけでございます。そういう問題点を克服した上で初めてこういう意義を実現することができるというところに論理的にはつながると申し上げることができるのだと思います。  署名しなかった理由につきましては、実は、署名そのものは一つの行政府立場を縛る政治的なゼスチュアでございまして、それが法律的に直ちに締結に結びつくわけではございませんけれども、今回のこの条約に限って署名をなぜしなかったのかということは、実は、私どもつまびらかにいたしておりません。まことに申しわけございませんが、署名することができなかった理由は別段なかったのではないかと思いますが、むしろ、署名より先に、一挙に批准にいこうということになったということが一つ言えるのかもしれないと存じます。
  120. 和田春生

    ○和田春生君 どうもいまの説明はそっくりそのまま受け取りにくい面があると思うんですけれども、要するに、じゃ、こういうことなんでしょうか。  日本政府立場は、これは運輸省外務省も含めましてですが、この条約が作成をされたという段階においては、まだこれを積極的に締結していこうという意思を持っていなかった。そこで署名をすることによって行政府として拘束をされる、そういう形は避けたい。しかし、その後、条約締約国がだんだんふえていく。四年たち五年たっていよいよ今年中には効力発生の要件が整って、来年からはこれが実施をされる、そういう大詰めに来たので、ほうっておくわけにはいかない。そこで、この際、条約締結について国会承認を求めよう、こういう段取りになったとしか受け取られないんですけれども、そう受け取っていいですかね。
  121. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私どもの承知している限りにおきましては、この四代目に当たりますこのSOLAS条約採択会議の段階において、わが国として、特に非常に基本的に困った点がある、したがってにわかには受諾しがたいという意識が政府側にあったというふうなことは承知いたしておりません。したがいまして、そこに出てくる問題点も、政策的に基本的な問題ではなくて、技術的な国内法との調整あるいは新立法の必要の有無の検討といったようなことでございまして、特に、この条約の受諾と申しますか、加入につきまして基本的な困難がつきまとって今日に至った、国際的な情勢の上でやむなく受諾を決心したということではないというふうに考えております。
  122. 和田春生

    ○和田春生君 そこで、今度は具体的にお伺いしたいんですが、特に、これは運輸大臣にはお忙しいところをお見えになっていただいておるわけですけれども、もっぱらこの条約実施に関係する運輸省に主体を置いての質問になります。  先ほど来の質疑の中で出ておったんですけれども、新しい条約締結して、これを履行していくことになると、設備投資その他でいろいろ負担がかかる。私は、それは当然のことだと思うんです。全く新しい条約がつくられるという場合もそのことは考えられますが、御承知のように、SOLAS条約はすでに存在をしておった。その後、船舶の技術進歩とかあるいは数々の海難事故とか、そういう面でやっぱり海上における人命の安全を強化するために、設備の面でも構造の面でも、また、その運用操作の面でも強化をしていこうというのがこの新しい七四年SOLASをつくった基本目的なんですから、あたりまえの話なんです。それが検討を要する点でおくれた理由にはならないというふうに思うんです。  それから次に、国内法との関係で問題があった、こういうふうになってまいりますと、それでは、具体的にこのSOLAS七四と七八年の議定書締結をし、承認をし、実施をしていく。その場合に、国内法制との関係で直接法律そのものの条文に抵触するというような形、あるいは政令もあれば規則もありますし、いろいろな制度上実行していることもあるんですが、国内法制との関係で、新たに問題になるんだというふうに思われた特に重要なポイントはどこどこでしょうか。これは船舶局長でもあるいは海運局長でも結構です。
  123. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 本条約批准とそれから関係します国内法整備に関しまして先ほど外務省の方からの答弁もありましたように、法律改正については電波法だけでございまして、あとは関係省令の整備ということになります。  したがいまして、あと、要するに、何でいままでという中で、基本的には、私どもとしましては、六〇年から七四年の大改正でございますので、この大改正に伴って総合的に関係規則が形を整えて整備できるようにというのが基本でございます。この種の改正というのはなかなかIMCOでも時間がかかりますし、事前に相当準備しながら進めるわけですから、こういった際に、私ども、国内の諸省令の改正に当たりましても円滑に移行できるようにということで、たしか先生指摘のように、時間をかけておりますが、一部は通達なり、一部は任意の備えつけでやっておりますから、そういう問題というのも整合性を伴って全体の法体系の整備をしたいということでございます。  それから設備の点につきましても、私どもとしましては、そう大きな、特に極端に費用のかかる設備ではないと考えておりますので、これが大きな障害になったとは考えておりません。  ただ、一つ、御指摘された中で、これは七四年ですから四十九年ごろでして、特に、今回の七四年SOLASでの大きな技術的な改正点として防火構造の規定がございます。防火構造の規定の適用につきましては、これはかなりの防火性能あるいは耐火性能を持たされておりますので、基本として当時言われておりましたのは石綿アスベストを使った防火材の生産なり基準が間に合うであろうか、こういう点がありましたが、その後、生産もふえておりますので、その点では支障がなくなってきておりますが、七四年当時は、たとえば外国におきましても日本におきましても、若干その問題があったように記憶しております。
  124. 和田春生

    ○和田春生君 確かに、今度のSOLASの改正の視点は、防火あるいは防災というところに大きな重点が置かれていることはおっしゃるとおりなんですね。しかし、そういう新しい規定が強制されるのは、御承知のとおり、この条約が効力を発生したとき以降キールの備えつけられる船ですから、タンカーにしろ旅客船にしろ貨物船にしろ、いわば新船舶であって、在来船のいわゆる現存船舶については直ちに強制されるものではないわけです。  そのギャップについては、後から別に質問いたしたいと思うんですけれども、そうすると、いま船舶局長の御説明になったことも、これをここまで四年以上引っ張ってきた理由にならないんですね。そうでしょう、現在船にも全部適用されるということになると、それは大変だ、いろいろな面で大した設備でなくても問題が起きるというんですが、それはそのままでいけるわけなんです。そうして効力が発生した以降に建造にかかる船について適用するという形になると、四年も五年も検討に時間がかかったというのは解せない。その点いかがですかね。
  125. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) 確かに先生がおっしゃる点があるわけでございますが、これはかなり事前に技術的な準備を整えて条約の審議に参加していたわけですから、そういう意味ではかなり先を見ながら作業をしていたつもりでございます。  確かに新船適用でございますが、先生よく御承知のとおり、七八年とか七九年のころですと、国内あるいは外国造船所もきわめてラッシュしておるような状況でございまして、そういう意味でキールを何年に置いたということの契約がかなり先行することが懸念されていた時期でございます。いまとかなりさま変わりでございますが、そういう意味で、これは諸外国とも協議をしながら、実際に防火構造を規定したときに、材料が間に合うであろうかどうであろうかというような国際間での論議をした記憶がございます。そういう意味で、今日の情勢から言いますと、先生が御指摘のように、すっかり問題はないじゃないかと、こういう御指摘が当たるかと思いますが、当時、私どもも若干そういう点については国際的にも協議しながら心配をしていたこともあったわけでございます。
  126. 和田春生

    ○和田春生君 それで具体的な問題として、先ほども船舶局長お話しになった無線電話の遭難緊急信号の聴守態勢ですが、これは確かに電波法の改正を必要とすると思います。同時に、無線通信設備の方にはオートアラームが従来から普及いたしておりますけれども、二十四時間聴守になると無線電話にもオートアラームが必要になってくる。その面については的確な見通しを持って別に支障がないと判断しておられますか。
  127. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) これは私どもがお答えする立場かどうかは別ですが、船舶安全法の法体系の中に無線電信、無線電話の施設の規定がありまして、それの実際の施設の基準あるいは承認につきましては電波法にゆだねておるわけですが、その面では法律改正以外には施設の内容あるいは技術的な点での問題はない、こう思っております。
  128. 和田春生

    ○和田春生君 本件について先ほどの質疑の中でも、電波法の改正が今国会で上がるかどうかちょっと見通しがはっきりしないというようなお話がございまして、これは郵政省にお伺いすべきことかもわかりませんが、要望を申し上げておきたいんですけれども、今年中には効力発生の要件が整って来年からはスタートする、またどろなわ式でばたばたやるのではなくて、特にこれは船舶に関係して起きていることですから、もちろん国会並びに国会議員の方も努力をしなくてはなりませんけれども政府当局も、電波法の改正についても、こういう面についてはひとつ積極的に対応していただきたい、これは要望として申し上げておきます。  それから、これは大臣にひとつまとめてお答えをいただきたいと思うんですが、このSOLAS関係はいろいろな面で構造とか設備の面でも安全対策が強化をされていく。しかし、従来からそうですが、たとえばこのSOLASと非常に密接な関係のある海上衝突予防法の面におきましても、最近のこういうルールの決め方というのは、単に構造とか設備とかいうような、つまりハードな面だけではなくて、その操作、運用、訓練、こういうものも含めて、いわば一般的に言えばソフトな面における対応というものを非常に重視するという傾向になってきていると思います。これは後ほど時間があればお伺いしたいと思うんですが、例のSTCW条約についてもそうでございまして、従来のように船員の資格とかあるいは職員の定数とか、そういうものを決めるだけではなくて、当直のやり方の内容とか船員のそういう訓練とかいうものまで含めて条約化をしていく、こういう方向に来ているわけですね。  つまりこのことは幾ら構造をきちんとし設備をちゃんとしても、操作、運用というものがうまくいかなければ何にもならぬわけであり、幾らりっぱな消防車を備えておったところで運転手が運転を誤ってぶつけたんじゃこれは役に立たない。操作を誤って化学消火剤でも散布ができ損なえば全くナンセンスな結果になるわけですから、救命装置においてもそうだと思うんです。そういう点で、単に新しいSOLAS条約等から見て日本の法律そのものの改正は大して大きな手を加えなくていいということで事が足りるわけではないと思う。そういうようなソフトな面に対する対応、これは先ほども申し上げましたように、操作、運用、訓練を含めてこれを積極的にやっていかなくちゃいけないと思うんです。どうもその点が非常に欠けている面があるのではないか。  たとえば最近の事故で言いますと、菱洋丸が遭難したときに膨張式救命いかだが一つの欠陥商品として、幸い死人が出なかったからいいようなものの、かなり問題を起こしました。あの事故があってから運輸省では後を追うようにして、そういう経過年数によって材質に変化があるようなもの、そういう点についてはさらに検査とか、そういう面を徹底しようという後追いの通知が出ているわけですね。そういたしますと、私は、そういうような運用とか、あるいは訓練とかいう面について船主、船員にも責任が大いにあると思いますけれども、そういうものを推進しチェックをしていくということが行政機関としての非常に重要な任務ではないか、この点についてどうも欠けるところがあるように思えてならないわけです。この条約承認をし新たに体制を整えるに当たって、そういう点に積極的にどう取り組んでいくか。一つは、これは船主対策としては海運局長の所管でしょう、船員面としては船員局長の所管でしょうが、運輸省全体の行政姿勢にかかわる問題であるというふうに思いますので、そういう点について、それぞれの担当局長並びに大臣から御見解と今後に対応する姿勢についての御答弁をいただければ幸いだと、こういうふうに思います。
  129. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほど来お話がありますように、海上における人命の安全のための国際条約、これは船舶の安全措置等に関し画一的な原則及び規則を設定することによって航海の安全を確保することを目的としておりまして、一九六〇年に採択された現行条約にその後の技術進歩を考慮して規則の強化を主たる目的として昭和四十九年に採択をされたものであります。また、議定書につきましては、タンカーの安全性を一層増進するために昨年の二月採択されました。  海運造船分野において国際的な重要な地位を占めるわが国としては、航海の安全確保のためにはこれらの条約を紡結することは真に意義あることと考えておりまして、その実施に当たりまして、運輸省としては可及的速やかに船舶安全法の関係省令等の整備を行って、船舶の安全の向上を図る所存であります。構造、設備等、ハードの面におきましても、また安全確保の運用、すなわちソフトの面におきましても、その点万遺憾なきを期してまいりたいと思いますし、また、先ほどお話しのありました遭難信号の無休聴守義務の追加等に関する電波法の改正、これは私の所管ではございませんが、郵政大臣の方とも連絡をとりまして、この条約について十分話を通しておきます。そしてこの条約の取り扱いとともに、国内法体制の整備に遺憾なきを期してまいりたいと思います。  それで構造、設備等のハードの面は先ほど来若干お話がございましたが、安全確保の運用、すなわちソフトの面等につきましては、関係局長の方から御説明いたさせます。
  130. 向井清

    政府委員(向井清君) 先生指摘のように、ソフトの面というのは非常に大事なわけでございまして、すでに六〇年条約におきましても非常時における配置表とか操練の実施等について規定があるわけでございまして、現行の国内法制においてもこの関係の整備がなされており、実施につきましては船員労務官による監査の機会というのが主たる機会になりますが、それでございますとか、あるいはその他の機会をとらえまして遵守の確保に鋭意努めているということでございますが、今回の七四年の条約におきましては、先生御承知のように、自動操舵装置の使用の条件というような新たなものが加わっておるということでございまして、これに対するソフト面の手当てというのがやはり大事なことになってくるわけでございます。  これにつきましては、船舶所有者その他船員諸団体等の関係者に十分な指導を行っていく所存でございますが、やはりこれの訓練につきましては、それなりの施設、装置が要るわけでございまして、一言で申せばレーダーシミュレーターあるいはレーダーというようなものを活用しながらやっていかなきゃならぬということでございますが、すでに四十三年から海技大学校においてレーダーシミュレーターの本格的なものが取り入れられて、かなり訓練が進んでおる。それから海員学校におきましても、レーダーは全学校にございます、それからレーダーシミュレーター、簡易なものでございますが、三台ばかりすでに備えつけ終わって、これからも大いに充実していかなきゃいかぬと思っております。それから民間団体におきましてもレーダーシミュレーターの装備というのが五カ所ほどなされておるというようなことでございまして、その辺をフルに活用いたしまして、ソフト面の訓練というものをやってまいりたい。また、今後、さらにこういう施設面の拡充等につきましては、審議会の議論等を経まして十分対応できるような体制をつくってまいりたいと考えております。  それから、もう一つ指摘がございました、いわば非常事態の際の問題として、操練の問題というのが非常に大きな問題としてあるわけでございます。これは申し上げるまでもございませんが、操練と申しますのは、地上で物を考えたり本を読んだりということでは何にもなりませんので、実地の訓練ということが非常に大切なわけでございますが、これをどの程度励行させていくかということ。それから、その励行の規模と申しますか、やり方と申しますか、そういうものは実際問題としてなかなかむつかしい問題がございます。やはり役所側といたしましては、民間側が本気になってこの操練に取り組めるような体制づくりということでいろいろ頭をしぼっているところでございますが、一つには、やはり実地訓練、これの機会づくりというものを極力やってみたい。たとえば安全衛生月間というようなものがございます、あるいは総点検というような機会もございます。そういう機会、あるいは定期的に何かそういう訓練日を設けるというようなことも考えまして、極力、この実地訓練の励行とその機会づくりということに役所側としては取り組んでまいりたい、このように考えている次第でございます。
  131. 和田春生

    ○和田春生君 その点で、いまいろいろとやっていきたいというふうにおっしゃったわけですけれども、どうしてもこれは船主並びに船員の協力というものがなければ、法律で強制している事項は別としまして、なかなかうまくいかないと思うんです。  いま時代が要請をしているような、そういう安全対策、防災対策、また新しいSOLASの条約に基づく国内体制の整備、そういう面について関係の船主団体あるいは船舶職員団体あるいは海員組合、その他と事前にどういう相談をし、また打つべき必要な手についてどのような検討を加えてこられたか、その点を伺ってみたいと思います。
  132. 向井清

    政府委員(向井清君) いまお尋ねの件でございますが、本条約の規定に盛り込まれております点、新たに盛り込まれました事項等、事柄としてはこれは当然の事柄が載っておるわけでございまして、今後、これをさらに詰めて具体的な内容づくりをしていく、それを法制化するということにはかなりの議論がまた出てくるということでございますので、私どもとしましては、いま御指摘のありましたような関係諸団体、船主関係、船員関係、その他の役所関係もいろいろございますから、そういうところとは緊密な連絡をとり、協議すべき場というものもいろいろございますから、そういうところで御意見を十分伺いながら具体的な詰めを行ってまいりたい、今後、その辺は抜かりなく詰めてまいりたいと考えている次第でございます。
  133. 和田春生

    ○和田春生君 そこで具体的な問題で、いま船員局長からも語られましたけれども、例のレーダーシミュレーターによる訓練についてお伺いしたいと思うんです。  これは御承知かと思いますけれども昭和五十年に、実は、私が現在会長をしているんですが、全日本船舶職員協会が提唱をし、それを受けて五十一年から海技協会、そして養成協会等で検討されて、確かに必要だという形で設備をやり、いわばシミュレーター訓練の受け入れ体制というものを整備をしてきたわけです。実際の現場を見てみますと、私の見るところ、レーダーシミュレーターによる訓練を実施していくという面における受け入れ体制には、いまのままで完全に十分というわけにはいきませんけれども、ほとんど問題がないのではないかと思うんです。ところが、さっぱりその方に訓練を受ける者が集まらない。せっかく設備をつくって受け入れ体制をやっているけれども、閑古鳥が鳴いているというのが現状ではないかと思うんですね。  御承知のように、レーダーというのは、あるだけではどうにもならないんで、レーダー映像というものをどう判断するかという、判断が一つ狂うと大変なことになるわけですから、新しい衝突予防法のルールによりましても、レーダーのそういう運用、操作と判断のことについてかなり細かく規則が決められていることは御承知のとおりなんですね。それを判断するというのは、機械ぐらい操作を覚えればだれでもやれるんですが、やっぱり実際の経験を経るチャンスが少ないとすればシミュレーターによる以外にないと思います。大型船でジャイロ・コンパスとレーダーが連動しているというような場合にはこれは余り問題にならぬですが、一番問題になる小型船というか国内船等でジャイロ・コンパスとレーダーというものが連動していない。操舵によって船首が相当振れる、そういう中にレーダー映像というものをどういうふうに判断するか。プロッティングをしていく技術もないし時間もない。それがある程度プロッティングをやって、あるいはシミュレーターによる訓練を受けて頭の中に入っておれば、映像を見てすぐにその判断ができる、そして的確に衝突を予防できると思うんですね。ところが、それをやっていないと、かえってレーダーに頼ったためにぶつかったなんという例が実際あるわけです。特にそういう点で、最近、外国では、御承知のように英国等北欧諸国もそうですが、仮にレーダーを持っている船同士が衝突をした、そうすると、そういうレーダーに対する基礎的な訓練を受けてない方が決定的に悪いという形にされるという傾向が出てきているわけです。  ところが、わが方は商船大学や商船高専等ではある程度基礎的な訓練もやっておりますけれども、一般に現在乗り組んで運航している、特に千六百トン以上の適用船というものを考えていくと、そのレーダーシミュレーターによる訓練というものが実際上余り行われておりません。理由は何かと聞いてみると、船からおりて自分の金を使ってそういうところに行って何週間でも勉強するというのはとてもその負担は大変だし、一方、船主は一向そういう問題に構ってくれない。そうなってくると、船員の方には、そういう訓練を機会あるごとに受けなさい。法定の免許じゃなくても、そういうシミュレーター訓練を受けた者については一つの資格証明を与えることによって、この人はレーダー操作については十分適応性を持っているんですよということを示してやる、そういう人はある程度優遇もされ尊重もされる、そういう条件をつくっていく。一方においては、船主サイドにやはり船舶の安全、そういう面から考えて、乗組員のレーダー操作に従事する者については少なくともシミュレーター訓練というものを受けさせるチャンスを与えるべし、しかも、それは船主側の安全というのは最大の投資なんですから、費用負担というものについても考慮してやれ、そういう行政措置なり何なりというのは私は必要なんじゃないかと思う。いまほうっておいたんじゃ、これはもう全然受け手がないんですがね、それをひとつ船員局長はどう考えているか、あるいは船主サイドの問題になればこれは海運局長ですね、一体、どういうふうに措置をいままでしょうとお考えになっているのか、これからやっていくのか、その辺もお伺いしたい。
  134. 向井清

    政府委員(向井清君) いまお尋ねのレーダーシミュレーターの問題でございますけれども、確かに御指摘のようにシミュレーターの施設そのものは、さっき申し上げましたが、かなりのものができつつあるということでございますけれども、その訓練実績と申しますのは、確かに御指摘のように余り大きな数字が上がってきておりません。海技大学校で申しますと、四十三年の設置以来十一年ぐらいたっているわけでございますけれども、累計にしましても三千人足らずというような人数でございます。その他のところも大した人数ではないかと思います。  それでいま御指摘のように、確かに訓練の実を上げる、たくさんの者がこの訓練を受けられるようにするということには、いろいろな要素を総合的に考えまして、これを推進しなきゃならぬということでございます。その中には船主サイドヘの強力な指導ということもございますし、また、さらに大きな問題といたしましては、先生先ほどちょっと御指摘ございましたSTCW条約がらみの問題でございますけれども、船員制度の近代化の問題というのがいまわが船員局としては最大の課題と申し上げていいような大きな問題になっておりまして、非常に大きな動きがいま始まって、審議会あるいは関係委員会におきましての審議が一斉に開始されたという時期に当たるわけでございますが、その中におきまして、やはり教育訓練の問題、あるいは先ほどちょっと触れられた新たな資格の問題いままで部員の資格というものが定められておりませんでしたけれども国際条約におきまして部員資格を定めることについての規定もございますから、新しい船員資格の問題についても議論をしなきゃならない。それらの中にこういう高度近代化船の施設についての訓練、それを扱う者の資格というものも当然議論の対象になるわけでございますので、いま御指摘ありましたような総合対策ということも含めてでございますけれども、これが実の上がるような方策というものを具体的にひとつ御審議を願って、そこで早急に結論が出るように船員局としても努力をいたしてまいりたい。確かにいままでの実績としてはやや不足でございますので、この点につきましては、今後、基本的な問題からひとつ掘り起こしまして、大いに実が上がるように努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  135. 和田春生

    ○和田春生君 海運局長、いまの問題はやはり船員は実施者であって、安全の直接的な現場の責任者は船主だと思うんですね。船主に対する対応をどういうふうにお考えになっていますか。
  136. 妹尾弘人

    政府委員(妹尾弘人君) 海運局といたしましては、従来から船員の資質向上につきましては船主協会を通じましてもちろんいろいろ指導をしているわけでございますが、具体的にレーダーシミュレーターの問題についていままで検討したことは実はないわけでございますけれども、問題がございましたら、船員局ともよく連絡をとりました上で、また船主協会を通じ、あるいは直接船主に対しまして適宜適切な検討を命じたい、こう考えております。
  137. 和田春生

    ○和田春生君 これも大手の船会社の場合には、船舶職員の構成もしっかりしておりますし、また船主の方もある程度考慮していると思うんです。また、内航でも、内航タンカーのようにやっぱり直接的な危険にさらされているというところは自己防衛からもこれはよくやっていると思うんですよ。問題は、そのはざまにある船主ですね。しかも、一番問題のあるところが関心が非常に欠けている。それから船員の方についても言われなければ積極的に対応していかない。これは必ずしも責める意味で言っているんではなくて、もう全体の構造上そんなようなかっこうになっている。そこへ積極的に手を入れていかなければ、仏つくって魂入れずということになると思うんで、ぜひ、船員局だけというんではなくて、海運局もタイアップして、船主の教育からやっていかぬとぼくはいかぬと思うんですね。いかがですか。
  138. 妹尾弘人

    政府委員(妹尾弘人君) 先生のおっしゃるようなクラスの船主、この辺はやはり地方海運局を通じるというクラスではないかと思いますけれども、その地方の海運局にも連絡をいたしまして、資質向上に遺憾なきを期したい、このように考えております。
  139. 和田春生

    ○和田春生君 もう一つの問題として、防災とか防火、消火の訓練の問題ですが、いろいろ検討してこれから積極的に推進していこうというお話だったんですけれども、在来式のやり方でしたらそれでいいんですが、特にタンカー、それからそういう危険物搭載の場合に化学消火剤を使うとか、こういうような場合には、本当は実際やってみなくちゃいけないんだけれども、航海中に訓練をやって使っちゃったらおしまいなんですね、だからなかなかできない、話を聞いているだけなんです。  そういう点について、現に、ごく一部ですが、そういうことを自発的に実施しているところもありますけれども、一定の耐用年数がありますから薬を詰めかえていく、その薬品を詰めかえる前に、適当な、停泊中の、国内なら国内で実際に散布して、あるいは放出をして訓練をやるという形で、効果を確かめつつ操作方法に慣れていくということが必要じゃなかろうか。われわれも船におるときに防火訓練、消火訓練をやりました。それはポンプとかハンドポンプでやる分には海水をばあっと噴き出していいんですが、最近の化学消火剤の場合はそうはいかない。そういうことについても、強制はするわけにいかぬでしょうけれども、やはり防災センターその他とも協力をしながら進めていく行政指導が必要ではないかと私は思うんですが、ぜひそれを検討していただきたいと思う。いかがでしょうか。
  140. 向井清

    政府委員(向井清君) 確かにいま御指摘ありましたような化学消火剤を使っての訓練というのは、費用の問題もございますし、いろいろ障害があるということは前から言われているわけでございまして、どういう機会に自発性を持ってやらせるかということでございますけれども、先ほど申しました、今後は実地訓練の機会づくりというものにひとつ重点を置いて考えていきたいという中にやっぱり先生指摘のそういう点もあるわけでございまして、化学消火剤を使いやすいような時点をとらえ、場所もうまく選定し、それから要すればやはり新しい施設等も利用しながらやっていく、そういう機会と申しましても時間的な問題と場所的な問題とございますけれども、そういうような実地訓練ができるような場合というのを十分考えて、訓練の実施というものが頻繁にできるように具体的に考えていく、いろいろお知恵も拝借しながらその辺を詰めてまいりたいと考えております。
  141. 和田春生

    ○和田春生君 もう一つは、救命設備の問題なんですが、先ほどもちょっと触れましたけれども、この条約によれば、旅客船の場合には十二カ月ごとの検査ですけれども、それ以外の一般の貨物船については二十四カ月でいいことになっておりますし、特に国内法制との問題は出てこないと思うんです。しかし、本件については、一昨年、海員組合からも運輸省当局に要望書が出ていると思うんですけれども、乗組員の方にしてみれば、いざというときの救命設備が役に立たぬというようなことになったら非常に困るわけですね。菱洋丸事故でも、たまたま国内の近い水域で起きたからよかったものの、あれが太平洋の真ん中だったらどうなるだろうかと思うと非常に慄然たるものがあるんです。  そこで、法律上の問題としてそういうふうに決めろとまでこの段階で主張はいたしませんけれども、少なくとも救命設備、膨張式のいかだとか、そういうような面については一年ごとに立入検査もやる、そういうようなことによって常に有効に作用するような状況を保持さしていくということが必要ではないかと私は考えます。昔からの救命ボートであれば、海へ一遍おろして浮かべてみれば浮くか浮かぬかわかるわけですけれども、新しいいろいろな設備というものについては、そういう面で耐用年数、経過年数というものもこれ必ずしも絶対的なものではありませんから、そこまで踏み込む必要があるのではないか、こういう点についてどういうふうにお考えですか。
  142. 謝敷宗登

    政府委員謝敷宗登君) このことにつきまして、午前中の説明に若干つけ加えをさしていただきます。  確かに、今度の条約あるいは私どもの従来基準としております船舶安全法によりまして、旅客船については十二カ月ごと、それから貨物船については、従来、無線と喫水マークと荷役設備については十二カ月ごとですが、一般的には一中後二年ということで見ているということでございます。ただ、七四年の今度の人命安全のための国際条約では、まず一つは、レーダーが十二カ月ごとの項目に加えられたというのは一つの前進だと思います。それからもう一つは、七八年の議定書の第一章第六規則というのがございまして、これはいわゆる不定期に無通告の立入検査をやりなさい、こういうことでございます。私どものいま船舶安全法でとっておりますやり方と申しますのは、定期的に貨物船で言いますと四年、その間に中間検査を二年に一遍、それから先ほど申しました種類のものについて一年に一遍やっているということでカバーをしてきたわけですが、検査の強化という観点から不定期に無通告で立入検査をしなさい、こういう条項が七八年議定書で入っているわけです。  これの運用をどうするかということで、第八規則それから第十規則との関連が出てまいりますが、これはたとえばやり方としては、先ほど申しました船舶安全法の現在の体制のままで二年に一遍あるいは一年に一遍の間に不定期で無通告に立入検査をするというやり方もあると思います。それからもう一つ、これは主としてソ連がこういう検査のやり方をしておりますが、特に先生指摘のような救命設備その他の設備ということで、救命艇の無線電信電話、あるいはいかだのための持ち運び式無線装置云々とかいう、特に救命に密接な関係のある施設については毎年の強制検査ということも考えられるではないか。したがって毎年いわゆる定期的に日を決めて検査をするか、あるい無通告に立入検査検査の間にやるということになっています。これはどちらを採用した方がより的確かということでいま検討しているところですが、従来の日本の受検側の立場を申しますと、検査以外に定期的な保守のためにドック入りをする、そうすると、ある程度いつということを予告してやった方が受ける側の運航から言いましても、インターバルが短くても、その方がいいという判断もあるかと思います。あるいは無通告で、そんなに毎年じゃなくて、その方がいいじゃないかという議論もありますが、いずれにしても七八年議定書ではかなりその点が強化されております。したがって、ただいま先生の御指摘の御趣旨も十分体して、両方の検査のやり方について検討して実施をしてまいりたい、こう考えております。
  143. 和田春生

    ○和田春生君 ぜひその点は検討して、積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。  それから、ちょっと今度は質問が変わるんですが、これは海運局関係に問題の重点は移ると思うんですけれども、仮に、ことし中に発効条件が整って来年効力を発生する。そうすると、再来年ぐらいからこのSOLAS新条約に基づくいわゆる新船舶が就航することになる。でタンカー等については安全対策が従来に比べるとかなり強化をされていく。そうすると、そういう船と現存船との間にギャップが出てくる。これは運賃あるいは契約あるいは保険、その他いろんな面で変化が生じてくるわけですが、そういう問題についてどう対応していくかということも必要なんですけれども、これはいまここで具体的に、残された時間も余りありませんし、あれこれお聞きしょうとは思いませんけれども、そういう問題点についての問題意識を持って、さらにこの新しい条約の発効後に備えるという態勢を整えていってほしいと思うんですけれども、何らかこれまでに検討されてまいりましたか、それともこれからの課題ですか。
  144. 妹尾弘人

    政府委員(妹尾弘人君) 本件につきましては、これからの課題ということでございますが、必要な安全設備のために資本費がかかるというような問題につきましては、計画造船その他の面において、あるいは融資の金利の問題その他につきまして、その辺をきめ細かく考慮した上で、コスト的に過度の負担にならないように考えていきたいと考えております。
  145. 和田春生

    ○和田春生君 過度の負担にならないという点もありますけれども、やはり積極的に対応していきやすいような形というものを進めてもらって、できるだけ早い機会に新しい体制に移行することが安全の見地からいけば望ましいわけですから、前向きの対応をお願いをいたしておきたい、こういうふうに思います。  SOLAS条約については、ほかにもお伺いしたいことが本当はたくさんあるんですけれども、これは運輸大臣、外務大臣いらっしゃらないので、後ほど外務大臣に改めて確認したいと思うんですが、この前の海上衝突予防条約のときにも、せっぱ詰まってどろなわ的な審議だった。今度のSOLAS条約についても、今国会に上げないと困る、こういう形で非常に時間が制約をされている。もし前国会ぐらいの段階で、これが国会に提出をされておれば、継続審議にしてでもある程度ゆとりを持っていろんな面についての討議が私は行われただろうと思うんです。次に控えているSTCWの問題があります、あるいはトン数条約の問題があります。運輸関係にはいろんな条約で、しかも非常に実務的技術的な問題の関連する条約が多いわけですから、慎重に検討するという立場はわからないではないけれども、もっと積極的にこれを取り上げて、国会に提出をして、そうしてその審議を受ける。余りばたばたとどろなわでないようにぜひやってもらいたい。これは大臣は退席しておりますけれども、各局長そろっているわけですから、ぜひそういうふうにしてもらいたいということを強く要望しておきます。  それで今度はSOLASから離れまして、次の質問に移りたいと思うのですが、本年の四月九日から四月の二十七日まで、ハンブルグで海上の捜査救難に対する国際条約というものが採択をされたというニュースを私ども聞いているわけであります。この捜査救難――コンベンション・オン・マリタイム・サーチ・アンド・レスキュー、これは新しい条約で、いままでこういう体系的なものはなかったと思うんですけれども、全く新しい一つ条約体系として採択された、こういうふうに理解していいんですか。
  146. 小林俊二

    説明員小林俊二君) さようでございます。
  147. 和田春生

    ○和田春生君 そうすると、私はこれはまだ仮訳しか手に入れてないんですけれども、中を見ますと、海上保安庁のような日本で言えば政府機関、つまり公的機関だけではなくて、私的機関、船主、船員、こういうものが救助現場等における指揮とか、いろいろな救助部隊の行動等においてひっかかってくる内容がかなりあるわけです。しかも、それは国内の問題だけではなくて、国際的に大きな関連が出てまいりますし、あるいは領海の立ち入りその他につきましても、従来の慣習法的な問題を新しく条約化していこう、こういう内容になっているにかかわらず、私の聞いたところによると、海運関係者は船主もあるいは船舶運航に携わる者も含めて、ほとんどこの会議が開かれ、こういう条約内容が討議されているということを承知をしていない。私も、実は、できてから聞いたんですが、なぜそういうふうに役所の中だけで、こそこそと言ったら言葉は悪いかもわからないけれども、こういう重要な民間にも関係ある問題を処理しようとしたんですか。しかも、これは採択してきちゃっている。それを保安庁長官にお伺いしたい。
  148. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) これは私といたしましても一言も弁解の余地はございません。当然、採択会議に出かけるまでに、御指摘のようなできる限りの、何と申しますか、情報の連絡、そしてまた可能な限り御意見を伺って、それで採択会議に臨むということが望ましかったと思います。この点につきましては大変遺憾であったというふうに存じます。
  149. 和田春生

    ○和田春生君 遺憾であったということはそれなりに受け取りますけれども、それでは済まぬと思うのですね。  たとえばこの中の救難部隊の指定についても、締約国は適切に装置され、かつ装備された公的もしくは私的機関またはその一部を救難部隊として指定をする、というような点がありますし、救難部隊になれば、現場における指揮官はその中から出てくるというような条項もあるわけですから、当然、役所はもちろん監督の立場に立つ、海上保安庁はコーストガードとして日本近海における救難の第一義的な責任を持っていることは認めますけれども、広範な海難救助というものは保安庁だけではできないんです。これは一般の船舶並びに乗組員の協力がなければだめなんです。しかも、保安庁の手の届かないところにおいては、その責任というものは運航している船舶が負わなくちゃならぬわけです。  私は、当然、こういうような場合には、こういう会議が持たれるという形になれば、条約の草案なり、あるいは条約採択されれば、やがてわが国批准しなくちゃならぬ、海運国として。その場合に備えるために、どういう予備知識が必要かということを徹底をしていく責任が私ばあると思う。私は、そういう面では、今度の運輸省当局の取り組みというのは全くけしからぬ、こういうふうに思っておるんです。極端に言えば、海難救助が保安庁だけでやれるんなら勝手におやりなさいと、そう言われても仕方がないような措置であったと思うのですよ。  これは遺憾だけじゃなくて、すでにこれは採択された後ですけれども、速やかに正式の訳文をつくると同時に、関係者の間に説明会を開く、さらに今後これに対応して国内法制その他の面においてのいろいろ意見交換をやる、そういうことをとるように要求したいと思うのですが、お答えを願いたいと思います。
  150. 高橋壽夫

    政府委員(高橋壽夫君) その御指摘のとおりでございまして、私ども採択会議までに十分御連絡できなかった点につきましては、ここで申しわけなかったと申し上げざるを得ませんが、今後につきましては、特に民間の船舶に対しましていろいろお願いする点がございます。もちろん、この条約の中の言葉遣いといたしまして、義務規定ではなくて、勧告規定になっているというような点もございますけれども、しかし、勧告と言っても、これはやはり関係があるわけでございますので、その辺の具体化の問題もあります。また、それらを含みまして、この条約に基づいていかなる国内法制ができ上がるかという点につきましても、海運関係者、船員の方々等の御意見を十分聴取しなけりゃならないと思います。したがいまして速やかに外務省とも連絡いたしながら正式な訳文をつくりました上で、一日も早く説明会を開きまして、御意見を十分聴取する機会をつくりたいと思います。
  151. 和田春生

    ○和田春生君 あとは外務大臣に対する質問は残しまして、以上で一たん質問を終わらしていただきたいと思います。
  152. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣、大変御苦労さまでございます。また、明日、UNCTADにお出かけになると思いますが、短い時間ですので、一遍に二点についてお尋ねしたいと思います。  今回の訪米ですね、出かけられます前は、日米間の経済摩擦の問題を非常に心配されておりました。そして今度の会談でも重点は確かに経済問題にあったと思いますが、非常に心配されておりました政府調達関係で、電電公社の電気通信機の本体の一部とか中枢部とかというその問題に関しては、その開放の問題は凍結という形で一応切り抜けたというふうに報道されておりますわけですが、これは私が観察しますところ、お出かけ前は、必要以上といいましょうか、非常に危機感があおられていたと思います、国内では特に。それで向こうへいらっしゃって米議会筋を牽制なすったという外務大臣並びに外務省一つの戦術であったんじゃないかというふうな気がしますが、それが一応功を奏した。しかし、事実問題としては、六月の末の東京サミットに問題が残されていますし、そして八四年以降に政府調達のこの開放の問題は約束をしなければならないということになっているというふうに報道されておりますが、それが事実であるかどうかということ。  そして最近伝えられておりますアメリカの外交政策の転換とも言うべきバンス国務長官の演説だとか、ブレジンスキー大統領補佐官の演説によって、もう大国主義的な立場を排するんだというような立場が出ているように思われますが、今回、日本側もプロダクティブであった、アメリカ側もプロダクティブであったと言っているけれども、そういう外交の姿勢を反映している結果、そういうふうになったんだというふうに御判断なさいますかどうか、その感触ですね、経済摩擦の問題に関しての御感触が一点。  それからもう一つは、いま海上人命安全条約の審議をしておりますので、それに多少関連してお尋ねしなければと思いますけれども、今回の船体の構造の方の安全を図る条約で、昨年二つILO百三十四号条約とそれからコンテナの安全に関する条約を審議しましたときに、私も初めて船のことを一生懸命に勉強して御質疑したわけですが、あの折に、どうしても、国内法条約も適用しようと思っても、日本海運業者が持っている船だけれども、籍は外国に置いている例の仕組み船ですね、そういうものに働く者に対しての安全は及ばないではないか、規制は及ばないではないかということを申しましたとき、それはやむを得ないというお答えがありましたわけなんですね。今度、UNCTADにおいでになりますけれども、その仕組み船なんかで働いている人たちは主に発展途上国の人たちが多いわけなんですが、船を建造するのは先進国の者が建造するから、構造は一応ちゃんとしたものを建造すると思いますが、そういう仕組み船とかいわゆる便宜置籍船ですね、そういうもので働いております人たちの技術訓練といいますか、資格とか、そういうものに関しては私はやっぱり南北間の協力体制の中で考えなければならない問題ではないかと思うんですが、その辺に関して、これは細かいことを外務大臣がそういう折衝をなさるわけではありませんし、私もいま細かいことをお伺いするわけではないんです。そのような問題も含めて、今度、UNCTADに行かれます際に頭の中に置いておいていただきたいということなんですが、いかがですか、その二点です。
  153. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、政府調達の問題でございます。こちらを出発する直前に、わが方は最終案と申しますか、妥協案を出して、これを米国がのまなかった。そこで、私は、最後の案として、これ以上は譲らないということを明確にしたわけでありますが、その後、三回か四回か米国の方が妥協案を持ってまいりました。四つとも私はこの妥協案を受け付けませんでした。そこで、大統領と総理との首脳者会談でこの問題に触れることは反対だ、二国間の経済摩擦の問題を重要な首脳者会談で論議する筋合いではない、こう主張しましたが、一言触れざるを得ないということで間際まで折衝した結果、大統領から発言があり、両国の方でこの問題は引き続き努力しよう、こういうことで首脳者会談は終わったわけでありますが、その裏では、こちらで思っている以上に、経済摩擦問題については相当厳しいことは想像以上でございます。しかし、問題は、こちらとしてもこちらの立場があるわけでありますから、サミットまでに話し合う段取りとか、あるいは方法等について両方合意したいということでありまして、それはできるだけ努力をしよう、こういうことで決まったわけで、それ以上の具体的なことはまだ進展しておりません。  それから次に外交問題でありますが、今度の首脳者会談はいろいろありますけれども、基調は、米国は指導者としての行動と勇気を持って、日本は持っておる政治力、経済力を持って国際社会に貢献しょうという、言葉をかえて言えば、大平総理の言葉で言えば、日米両方はにらみ合うときではなくて、世界の平和と繁栄という一点を見詰めるときだ、こういうことを言っておりました。これが今度の首脳者会談の基調であると存じます。バンス国務長官、ブレジンスキー等の演説が今度の首脳者会談に特別に響いたとは存じておりません。  UNCTADに私あしたから出発をいたすお許しをいただいたわけでありますが、いま御説明の船員の資格あるいは技術の問題でありますが、これはよく先生御承知のとおりIMCOで取り扱われておりまして、今回のUNCTAD総会では特にかかる観点から本問題が論議されることはないとは存じておりますが、船舶の安全を確保するためにわが国のみが高い技術水準を持っておるということだけではこれは不適当でありますので、世界的規模でこの技術水準を高めるよう、今後とも努力していくつもりでございます。
  154. 戸叶武

    戸叶武君 私は一問にしぼって質問をしたいと思います。  六月の東京サミットへの道は想像以上に険しいものになっているのは事実でありますが、この具体的な打開に関して世界は同情の眼をもって東西南北の対立の中における十字路に立った日本が東西問題より南北問題に対して具体的な回答を明快に出すことを期待していると思います。その一つは、やはりイラン革命後におけるエネルギー資源としての石油の問題にしぼられていることと、もう一つは、やはり発展途上国の中で一番期待されている太平洋地域に対して、日本がアメリカ一辺倒だけではいけない、中近東の問題それから近隣諸国、特に太平洋の問題に対して責任を持たなければならないという点が、私は、当面の課題になっていると思います。  いままでニュージーランドの人々、国会人と会っておりましたが、小さな国に対して、日本は大国本位主義でいままで無視しているように見られる傾きがありますが、太平洋におけるニュージーランドの問題のごときは、わずかに人口三百万ですから日本の静岡県程度ですけれども、ここにおけるいま打開はイギリスから離れて日本経済的な結びつきをやらなきやならないというところにあせりがありますが、いままでのような三木さんにしても福田さんにしてもうまいことを言っているが、実績は一つもつくらないというような形では、真理は常に具体的でなければならないんで、納得がいかないと思うんです。そこいらの点を、イギリスに依存した外交から離れて、初めてきわめて素朴な外交をやっている国ですが、これにどうやって活路を与えるか。  見本の一つですけど、マニラ会議というのはやっぱり無視できない。日米首脳会議におけるカーター・大平さんの会談は、非常にはらはらするような面があったが、園田さん並びに外務省はなかなかこのごろは根回しがよくて、うまく何とか曲がりなりにもおっつけた。おっつけ仕事としてりっぱだと思いますが、これはしかし東京サミットにおいてはおっつけ仕事じゃ間に合わない。むしろ東西南北、アメリカからも世界じゅうから吹き上げがあると思いますが、それに対して大平さんはアメリカへ行っちゃあうんの呼吸はなかなか明快になって「ああ、うう」と引っ張らないで、黙して語らない大平さんが非常に明快、果断な態度をとったというんで、大平さんも見直しされたですが、太平洋というのは大平に点を一つ入れなけりゃ太になりませんから、どうぞこの平和な海としての太平洋の平和共存の実績をつくるために、少し画竜点睛を欠くじゃ困りますから、そこいらはどういうふうに考えているか、東京サミットへの問題の重点はどこに焦点を置くかをお聞きしたい。
  155. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 今回の東京サミットは、準備会を逐次進めておりまするし、世界の経済情勢というのも、御発言のとおり、非常に厳しくなってきているわけであります。ボンのサミットに引き続いて、こういう問題も論議されるでありましょうけれども、第一は、イランの政変以来、石油問題というものが量においても価格においても、また近く価格を引き上げるのではなかろうかという情報さえ流れております。そこへ加えて、アメリカのスリーマイルの原発事故というのは、単にアメリカだけの事故ではなくて、全世界的に原子力発電の振興開発に停滞を来す。こうなってくると、一九八五年に危機を伝えられておったエネルギーの危機が二、三年早まるのではなかろうかと、こういう各国とも追い込まれた情勢のもとに、いわゆるエネルギーというものは大きく扱われるのではなかろうかと存じます。  それからもう一つは、アジアで初めて開かれるサミットということもありますけれども開発途上国が、アルーシャ宣言以来、一つの新しい国際経済の秩序を目指して具体的にいろいろ努力をしておりますので、今度のUNCTADの総会へ参りますのもそういう意味もあってこれを重視しているわけでありますが、二番目には、南北問題というものをわが方から取り上げて、これを大きく扱うようにしていきたいと考えておるわけであります。  ただ、黒字その他の問題で、日本は袋だたきに合うのではなかろうか、ドイツも日本もやられるぞと、そこで共同闘争でもという話がありますが、これはこの前のボンでもそういうことがありましたわけであります。日本と西独が共通の立場にありますけれども、うかつにそういうことに乗っかりますと、日本経済とアメリカの経済は別個のもの、いまのところでは。ヨーロッパの経済とアメリカの経済は根っこは同じでありますから、これまた、こちらの言ったことが全部すっぱ抜かれるなどというおそれもあるわけでありまして、この点は、サミット自体も、いまや世界の経済その他の問題でお互いが各国の欠点を洗うことではなくて、お互いが力を合わせることだという方向で、私は、このサミットを何とか成功させたいと思っておるわけでございます。
  156. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 このところ外務委員会外国に移ったのではあるまいかという錯覚を起こすぐらい外務大臣の外交日程がきわめて多忙でございます。これもひとえに恐らく近く開かれる東京サミットに対して成功をという並々ならない決意のほどがこのような事態になったのだろう。恐らく衆参両院の外務委員会でかつてなかった光景ではないかという印象を私は強く持つわけでございます。なかなか外務大臣の出席がいただけない。本件と離れた質問を一、二、せっかくの機会でございますから、さしていただきたい、こう思うわけでございます。  今回の訪米について最も懸念されたのは、やはりいまも質疑の中にございましたように、経済摩擦をどう解消するかということが最大の課題であったろうと想像されるわけであります。アメリカの影響はサミットに対してもただならない波動を与えるであろうというふうに受けとめられることから、その根回しを十分にという御配慮であったろうと思うのであります。大平さんの記者会見等の発言を要約して申し上げますと、実りある一つの成果をおさめることができたという、その趣旨の表明がなされたようであります。果たしてどうであったのだろう。大変日本に対して厳しいといわれております上下両院の議員サイドでは、黒字が多少は減少したとはいうものの、依然として貿易のアンバランスという問題については大変手厳しい日本に対する要求、なかんずく、かねがね問題となっております政府調達物資について門戸を開放しろと、日本としては、再々答弁がありましたように、譲れない面もありましょうけれども、どこまでも譲れないということでがんばれるものか。外務大臣は、三日、ワシントンで記者会見をされた際に、将来――というのは恐らく三年後を指すのか、あるいはもっと先を指すのかわかりませんけれども、全面的な開放も考えざるを得ないという趣旨の発言があったやに伝えられておるわけであります。  事ほどさように、そうしたアメリカ側の一方的なと言ってもいいくらいな強い要求に対して、なし崩し的にわが国経済というものが浸食されていく、そういう危険性も将来を考えてみた場合に、この場は逃れることができても、将来にいった場合、果たしてどうなんだろうということを考えますと、将来の日米友好というものを前提にしてみた場合に、どういったことが一番望ましい行き方に今後通ずるのかという一つの問題。  それから、あしたからUNCTAD総会に向けて出発をされるわけでありますけれども、特にASEAN諸国の動向というものが、いろいろとやはりサミットに対する希望あるいは不安の入りまじったそういう気持ちが伝えられております。確かにこのサミットで日米の果たす役割りというものに対しては大きな期待感もあるでありましょう。けれども、一方、果たしてどうなんだろう。日本経済先進国としてもっともっと果たしてもらいたいというこの一面を考えてみた場合に、黒字減らしもございましょう、あるいは南北問題の貿易不均衡という問題をどうするかという問題もございましょう、そういった不安というものがぬぐい切れない、そういう状態のままに大平さんと園田さんを迎える。  大平さんが初めて出られるということについては大変大きな歓迎の意を表しているようでありますが、特にいろんな評価のある中で、東南アジアの将来はソ連の意図とそれに対する米国の反応にかかわっている、あるいはアジアの安定に対する米国の明確かつ積極的な約束が必要であるという、これはロムロ外相がそういう表明をしていることが伝えられておりますし、また、一九八〇年代の中心は米国とソ連の主導権争いである、これはシンガポールの外相がそういう表明をしている。あるいはまた、米国のアジアにおけるプレゼンスを求める空気が非常に強いというような、そういうくだりでUNCTADを通じて将来展望を考えつつ、日本あるいは米国に期待する、そういう声というものがこういう形で表明されている。  一方においては経済摩擦をどう解消するか、一方においてはUNCTAD総会においてあるいは日本に強い要求をされるであろうというもろもろの問題。その中でも特に経済援助もありましょうし、あるいは安全保障という問題もございましょう。きょうは多くの時間がありませんので、あれもこれもという、そういう角度から御質問できないことを非常に残念に思いますけれども、そうした大綱的なその面から所信を述べていただきたいと思いますし、また、アメリカを訪問された外務大臣としては、近くECの方も根回しにということが恐らく当然外交日程の中に入っているんであろう。今度、ECに行かれた場合には、一体、どういう観点話し合いを進められるのか。恐らくECが一番強く望んでいることは、アメリカと同様に、経済摩擦というものをどのように改善すべきかというところに論議の焦点というものがあるであろう。こういったそれぞれの角度から考えますと、日米あるいはUNCTADあるいは日本とEC、こういった一連のかかわり合いの中で東京サミットというものはこれから開かれようとしているわけであります。  で、大変厳しいその環境の中で、前回も私御質問申し上げたわけでございますけれども、果たしてわれわれが期待し得る、いまも御答弁の中にございましたように、単なる精神的な面ではなくて、具体的に、ただ反発するのではなくして、何かしらそこに実りある成果というものが逐次拡大されていくという方向を見出す唯一のチャンスでありますだけに、相当の決意を持って臨まれるんであるまいか。そういったことをいま二、三こう問題点を挙げながら、これからUNCTADあるいはEC等に行かれる場合の所信をひとつ改めて御披露いただきたい、こういうふうに思います。
  157. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、政府調達の問題をめぐる日米の経済摩擦でありますが、これは私はガットの精神、ガットの約束もありまして、特に日本は資源をよそから買ってきて、これに加工して貿易で立っておる国でありますから、したがいまして、そういう意味から言えば、むしろ日本経済の将来のためには貿易障害は進んで開放するのが正しい姿であると考えております。ただし、とは言うものの、いままでの日本の国内産業というものをどう守りつつ、国際競争力をつけて裸になって相撲をとっても負けないような力をつけるかというその時間的な問題もあるわけであります。  もう一つは、私がアメリカに特に主張しましたことは、今後ともこういう問題は起こるであろうけれども、両国間に起こった利害関係を圧力をもって解決をする、日本はこれにどの程度まで抵抗するか、こうなったら断じて話はつかない。つかないばかりでなく、これは困難にする。今度の電電公社をめぐる政府調達のやり方というのはきわめて拙劣である。少なくともお互いに両国経済の未来を考えながら話し合って解決するというようにうまくやろうではないかと、こう私はミスター・ストラウスに話したわけでありますが、今後の方向は大体そういう方向であろうと考えます。  今度参りまして、いろいろ話すことによって米国の厳しい状態もわかりましたが、また反対に、日本の実情もある程度理解をされた。われわれが滞在中にすでに新聞等においても、この黒字の問題貿易アンバランスの問題はヨーロッパの方ではどんどんやっているじゃないか、わがアメリカはもう少し反省しろという記事などが少し出てくるようになりましたことは、これは喜ばしいことだと思いますけれども、しかし、楽観しないで今後とも緻密に準備を進めていくべきだと考えております。  なお、ECについては、私はいささかいままでと考え方を異にしております。と申しますことは、いままでは米国と話をする、その話をECの方に了解を求める、こういうことだと考えておったわけでありますが、実情をだんだんだんだん調べてみますと、ECと米国の経済は全く根っこは同じでありまして、ちょうど夫婦関係みたいなもので、夫人の方に不平があると、夫に言いつけて夫が怒り出すというような関係で、むしろECの方に不平が起きないようにやることが先決問題ではないかなと、こう考えておるわけであります。それを先に了解を得ておると、米国の方の厳しさも変わってくるということで、首脳者会談終了直後に安川政府代表を直ちにECの本部に送っております。いま先生おっしゃいましたとおり、国会のお許しを何とかいただいて、私は、ECの議長国であるフラシス――これは外務大臣かかわったこともございます、それからECの本部、この二カ国だけは参って、今後の経済問題、特に貿易の問題及びサミットでどのような方向で話を進めていくべきかということを腹を割って相談さしていただきたいと存じておるわけでございます。  それから次はUNCTADでありますが、このUNCTADに臨む基本的な姿勢、これは戸叶先生がいま大国主義はいけないとおっしゃいましたが、全くそのとおりでありまして、私が最初の外相会議でやられたのは、日本が背伸びをして大国主義をとっている、われわれに向かってはASEANと言うけれども日本国際会議に行ったらわれわれの味方をしたことはないじゃないか、先進国の一員としてわれわれアジアをなだめようとしている、そういうことでは話は聞けない。これがもう本当に本意でありまして、戸叶先生の大国主義はいけないぞとおっしゃったことが私は一番大事な基本的な姿勢だと思います。したがいましてUNCTADでいろいろ出てくる意見を、先進国とASEANの中間にある日本開発途上国立場になって先進国を説得するという考え方でなければ私は物事は成功しない、また、それは順序ではなくて、それが本心でなければならぬ、このように思っております。  幸い共同基金の問題にいたしましても、ASEANで約束をし、ボンで共同宣言に載せ、脱退しょうとしたアメリカを説得して原則だけは了承を得たわけでありますから、これを具体的に進めていきたい。しかし、問題は、所得補償の問題、一次産品の問題MTNの問題、いろいろあるわけであります。ただ、開発途上国も、いまや強い国が弱い国を助けるという立場はなくなったと思います。援助する方も援助される方もともに相協力して世界経済をどう持っていくかという、世界経済開発途上国が参加するというのが今後の正しい姿であると存じます。  したがいましてアルーシャ宣言で考えた彼らの新国際経済秩序というものは一遍に直ちに実行するということはできませんけれども、相談をし合って一つずつ積み重ねていこう、こういうことで、今度の総会では経済援助などという問題は出ませんけれども、そういうもろもろの問題は出ると存じますので、よく承り、そしてすぐできるものと努力をするもの、あるいは将来何年か後に目標があるものと、そういうものは区分けをして、身内の者として話して帰ってきたいと存じております。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 大臣がアメリカに出発される前に、幾つかの国際情勢の問題について大臣の御見解をお尋ねしたわけですが、きょうすべてまたお聞きするわけにはいきませんけれども、その後の動きを見て、特にやはり私自身考えておる点でお尋ねしたいのは、今日の中国とベトナムとの状態ですね、この問題に関して首脳会談でどのような話し合いがなされたのか、その点についてひとつお尋ねしておきたいんです。
  159. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ベトナムについては、米国は人工衛星その他の情報を持っているだけであって、一方はまた中国から得る情報でありますから、ほとんど実情を知らないというのが真相だろうと思います。したがいまして米国がどうこうするという話はなくて、日本はこれをどうやるのかということでありましたから、日本の方は、本委員会で申し上げているとおり、何とかしてこの紛争を和平の方に向かうように、しかし、こちらから進んで調停しようという段階ではなくて、何かあれば役割りを果たす用意ありということを両方に言っておりますと、この程度の話でございます。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 大臣が行かれて、ニュースもごらんになったりお聞きになったりして御存じのように、国連のワルトハイム事務総長が北京を訪れて、そして北京では鄧小平副首相といろいろ話し合いをされた。その席上で、再びベトナムに教訓を与えてやる必要がある、そういう権利を留保するという意味発言があったわけですね。これは五月の一日ですよ。  それで日米首脳会談が行われて共同声明が発表された。共同声明の内容を見てみますと、日米は中国との建設的な関係をという点が強調されておりますね。この内容も、一体、どういうふうな建設的な内容なのかということもお尋ねしたいわけですが、ところが、他方、ベトナムの問題を見てみますと、これは批判的な見解が共同コミュニケの中にもあるわけですね。  で、私は、この問題で先般の状況を思い出したわけですが、鄧小平副首相がアメリカを訪問して、教訓を与える必要があるということを強調し、さらに、日本に帰国途中に立ち寄って、また同趣旨のことを述べた。それに対して、アメリカの政府日本政府も、まあ若干の意見は述べたけれども、きわめて厳しい態度でそれをたしなめるといいますか、というふうな点で不十分さがあったんではないかというふうなことがいろいろ言われておりますし、そういうことに、これは新聞の報道等でありますが、勇気づけられたといいますか、事実上、アメリカでも日本でもそれほど厳しい反応がなかったということからああいう態度をとったんではないかという新聞の報道もあるわけですね。ですから、いまの状況のもとで、私は、この点はやっぱり明確に、そういうふうな教訓を与えるなどという態度はよろしくない、そういうことは日本としては絶対に認めるわけにはいかない、われわれ日本政府として考えておるのは、一刻も早く平和的に解決すべきことである、そういう再び教訓を与える権利を留保するなんというようなことはきわめて遺憾である、という態度を明確にすることが私は必要だろうと思うんですよ。  そうではなくて、何かそういうことが現に述べられており、中国とベトナムとの会談でも、前、大臣がうまくいかないだろう、なかなか大変だろうと言われていましたけれども、現実にそうなっていますよね。会談自身がうまくいかないだけではなくして、また何かきな臭いような状況までいま言ったような状況から出てくる。そうすると、どうなるかということを日本が見ておくということではなくて、そういう行為を再びとらせないようにする毅然とした対処を日本政府としてはいまとることが必要ではないだろうか。  だから、そういう趣旨も踏まえて、今度のUNCTADの総会に出るならば、日本の外交的な考え方も含めた明確なそういう見解を出す必要があるんではないだろうかというふうに考えるわけですが、まず、その前段としては、そういうふうな問題についてどういうふうにお考えになるのか。そして日本政府としてはそういう何らかの対応をする必要があるんではないかという問題についてどうお考えになるのか。それからUNCTADに行ってそういう趣旨の考え方を明確に述べるべきであるという点についてどのようにお考えになるのか。
  161. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私がどう考えるということではなくて、ベトナム政府態度を申し上げますと、ベトナム政府はいまでも依然として、米国は事前に了解を与えたという誤解は解いておりません。日本政府は最初は了解を与えたと誤解をしておりましたが、その誤解は解けまして、強い要請をしたということはベトナム政府も理解をしておるところでございます。  次に、もう一回何かあるかということについては、私とアメリカの情勢判断は違っておりまして、そして討論した結果、アメリカは私の意見に大体賛成をしたというのが実情であります。  その後については、米国は、ベトナムにどうこうということは考えておりません。ただ、日本がいまのようにうまくやって、なるべくここに和平が来るように、ということでございます。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 そのアメリカと意見が違ったというのは、そして最後的には大臣の見解に同意したというのは、どういう点で。
  163. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中国がもう一回制裁をするかどうかについてです。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカ側は、そうするだろうと……。
  165. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) という情報ですね、しかし、その情報は後で取り消しました。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 いまやっぱり日本政府がそういう状況に対してきちんとした態度を述べる、という点についてはいかがですか。
  167. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは、いままでもたびたび質問を受けておりますが、中国が侵略者であるとかベトナムが侵略者だとか、これについては依然として私は判定を下しませんが、少なくとも両国が実力によらずして話し合いによって解決すべきである、これがアジアの和平のためであるということは、アメリカでも主張をしましたし、UNCTADで私は演説をいたしませんけれども、その他の場所でそういう主張ははっきりするつもりでおります。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 前回も、これは抗議的な意味で中国側にも述べたものであるという趣旨の御発言国会であったわけですね。で先ほど私が経過を述べたのは、会談が事実上大変な事態になっておる、それから同時にまた鄧小平副首相が教訓を再び与える権利を留保するということを国連の事務総長に述べておる。ただ単なる私的な発言ではもちろんないわけで、そういう国連の最高責任者との会談の席上で述べているわけですから、これはやはり重視されていいだろうと私は思うんですね。そういう状況の中にあるわけですから、日本政府として真に平和的な形で問題を解決すべきであるという立場をとるならば、そういうふうなことは再び行うべきではない、あくまで平和的な話し合いによって解決すべきであるということを、日本政府としては、それこそ――抗議せよと言っても、抗議という点についてはいろいろあるでしょうから、抗議的な意味も含めた見解を明確に述べるという必要が私はあるだろうと思うんですけれども、再度その点について。
  169. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) その点は立木さんと同じ意見でございます。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 それでUNCTADに行かれる基本的な見解については、もう前回御答弁になっているので、それはそれであれですけれども、一九七四年の諸国家の経済権利義務憲章の問題ですね、これが問題になったときには、日本は全体的には私は棄権しただろうと思うんですよ、個々の問題については大分反対した点もあるかと思うんですが。しかし、私は、南北問題を考える場合に、この義務憲章の問題を抜きにしては考えられないだろう。いま、ああいう反対をした点だとか棄権をしたような態度を全体的にとったことについて、若干の反省なり何なりがあるのかどうなのか。それとも、あれはあれでよかったと、で、いまは多少どう乗り切るかという形で問題を考えておると言われるのか。一部の新聞では出されておりますけれども、総会等々ではいい発言がされるけれども、実際にそれを具体化する、あるいはそれを実行するということになると、それがやられないとかえってマイナスになるというふうな指摘まであるわけですから、その点についての義務憲章に関する考え方と、それから本当に述べたことが忠実に実行できるという、そういうことまで含めての態度UNCTAD会議に臨まれるのかどうなのか、その点について。
  171. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、この前の経緯を簡単に御説明いたさせます。
  172. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 経済権利義務憲章につきまして、わが国が最も懸念したと申しますか、これに同意できなかった点は、投資その他の相手国による没収あるいは接収等の権利でございます。言いかえれば、これは私有財産権に対する国際的な保障の問題において、基本的にその憲章に述べられておる物の考え方、すなわち受け入れ国がその主権のもとにおいていかなる措置をとることもできるといった、そういう物の考え方について基本的に同意できない点があったということが最も大きな点でございます。  しかしながら、その他の諸点、すなわち低開発国の開発が世界経済の一環をなすものであって、その発展なくしては世界経済そのものの発展が見込まれない、望み得ない、そういう物の考え方につきましては、わが国としても何ら異を唱える立場にございません。むしろそういう立場を推進する観点から協力を密にしていくという政策を今日までとってまいったのでござまして、したがいまして現在のたとえばマニラUNCTADにおきます途上国側の物の考え方も、そうした経済権利義務憲章当時のきわめて赤裸々な物の考え方に比べますと、むしろ先進国あるいは途上国とも非常に現実的になりつつある、過激な政治的な要求によって時日を空費するということは避けるべきであるという物の考え方の方が一般的になりつつあるというふうに考えることができるんじゃないかと存じております。
  173. 和田春生

    ○和田春生君 外務大臣には東奔西走、大変御苦労さまでございました。  きょうも、その短い時間に出席をして質疑にお答えいただくわけで、大変御苦労に思います。時間も余すところわずかであります。同僚委員質問されたこととの重複は避けたいと思います。  そこで、ひとつお伺いしたいことは、パキスタンとの関係についてアメリカから日本に要請があったという件ですが、それほど大きなニュースとしては報道されなかったんですけれども、非核武装下における日本の原子力開発、国際協力という面で、事と次第によってはかなり重要なかかわりを持つ問題ではないかと思いますので、その点お伺いしたいと思うのです。  私の承知している範囲内では、現在のパキスタンの原子力に対してとっている政策は、核兵器を製造する方向に向かうおそれがある、そこで日本経済協力をストップすることによって圧力をかけてほしい、こういうことがアメリカ政府筋から要請があった。これに対して日本は必ずしも同意をしなかったというふうに報ぜられているのを見ているわけですけれども、そうした事実があったのか、事実があったとすれば、どういう形で持ちかけられたのか、またアメリカのねらいはどこにあったのか、こういう問題についてお伺いしたいと思います。
  174. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは今度の首脳者会談の場所ではなくて、私が先般参りましたときに出た話題でございます。  その際、各種の情報を提供して、パキスタンが核武装を準備しておる、これは開発途上国、名前は指せませんが、すぐお隣の国等も含めて、米国は非常に心配をしているところでございまして重大な関心があるという話がございました。そこで、私は、これに対して、わが国は、終始一貫、核不拡散ということは一貫した方針であるから、パキスタンが核武装をやることについては強い反対をする。ただし、中東の諸情勢からもかんがみ、アメリカと同一行動をとって反対するわけにはいかぬので、経済制裁等で同一歩調はとるわけにはまいらぬと、向こうから要請がない先に、こちらから言いましたら、なるほどそうかという返事でございました。
  175. 和田春生

    ○和田春生君 首脳会談のことについては大変これあわただしい間でありますから、いずれUNCTADも終わって大平総理もお帰りになりましてから、総理に対する質問も含めてお伺いをすることがあると思いますので、首脳会談の関連でお伺いしているわけじゃないんです。むしろ非常に先ほど言ったような趣旨で問題があると思うのでお伺いしたわけです。  もし、そういう点を園田外務大臣が向こうに出かけられたときに、アメリカ側から提案ないしは働きかけがあったとすると、核不拡散ということはもちろん私どもも大賛成で、日本は非核三原則を政策の根本としております。しかし、だからといってパキスタンに核兵器を製造し核武装する可能性があるから、そこで経済協力をストップするとかどうとかいう形になると、まさに開発途上国に対する経済協力を賞罰の手段に用いるという形になると思う。もしアメリカがそういうことを考えておるとすれば、これはなかなか大きな問題ではないかと思います。日本の将来のことを考えた場合に、そういうことには断じて巻き込まれるべきではない、その意味で園田外務大臣がアメリカと必ずしも同調するわけにはいかないということではなくて、一歩進めて、やはり経済協力というものをそのときどきの政策に基づいて賞罰の手段に操作をするということはわが国としてはやらないという基本的態度が必要である。そういう原則に立って、アメリカのそういう申し出に対しては、日本は自主的にこれに反対なら反対ときちっとやるべきではないかと私は考えているわけですが、いかがでございますか。
  176. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先ほど答弁したつもりでありますが、落としたかもわかりませんが、経済制裁については共同歩調はとれない、こう言ったのは、いま和田先生がおっしゃったような趣旨でございます。
  177. 和田春生

    ○和田春生君 ぜひそういう方法でお進め願いたいと思います。  それから、これは必ずしも外務大臣の所管事項ではないのですが、このUNCTAD会議とも広い意味での日本経済環境に関係があるんですけれども、御承知のとおり、最近円が相当急激に安くなったと思うとまた非常に高くなる、いわば乱高下の傾向を示しております。円相場というものが安定しないと、日本の対外貿易の面におきましても、あるいは開発途上国への援助といいましても、いろいろな面で支障が来るわけでありますが、どうもこの問題は純粋に経済的な理由だけではない面がある。やはり外交政策的にも対応していかなくてはならないかなり重要な課題ではなかろうか。特に円安がどんどん続いていきますと、円ドル換算の上でいけば開発途上国援助も額面の上ではふえていくわけですが、実質では余りふえない。実質的にふやそうと思うと金額の面ではさらに飛躍的にふやしていかなくてはいけないという問題もくるわけですが、そういう点について、この機会に、外務大臣としてお考えになっていることがあれば伺いたい、こう思います。
  178. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 総理からいまの円の問題については発言がございました。そしていまおっしゃるとおりに、乱高下は困る、ある程度の安定をしなければ将来の計画が立たない、長期・中期の展望と言ってみても、ドルがどんどん下がれば日本の収入は帳簿面から見ればふえるのだ、黒字はふえるのだ、こういう話がございました。私もさように考えております。
  179. 和田春生

    ○和田春生君 その点につきまして、日本政府としての対応と、これは経済政策の面からいけばあるいは大蔵大臣なり、そういう方に質問すべきかもわかりませんけれども、特に、最近、相談をし、あるいは国際関係において相手国に要求すべきもの、あるいは日本として打つべき手を検討されたことはございますか。差し支えない範囲で、もし検討された内容があればお聞かせ願えればと思います。お差し支えがあれば、これはきょうこの場でお伺いするのは遠慮します。
  180. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) お差し支えがあるわけじゃありませんけれども、私はもう全くの素人であります。しかし、いずれにいたしましても、この円の乱高下というのは非常に重大な問題でありまして、これが安定しない限りは、よそとのはっきりした相談さえもできない、こういうことであり、しかも、一方、黒字が減れば円が安くなる可能性がふえてくる、ここは非常にむずかしい問題で、これに対する対応というのは非常にむずかしいんではないか。総理もこの点ははっきり言われませんでしたけれども、素人の私は心配はしておりますが、具体的にどのような対応をやればこれが安定するものか、これはなかなか日本独自ではできないことだと存じます。そういう意味で、いま和田先生がおっしゃったように、専門ではないが外務大臣のやるべき責任は大きい、こう思っております。
  181. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     ―――――――――――――
  182. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する千九百七十九年の議定書締結について承認を求めるの件、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件、以上四件を便宜一括して議題とし、政府から、順次、趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  183. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国ドイツ連邦共和国との間には、昭和四十一年四月二十二日に署名された所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための協定締結されていますが、ドイツ連邦共和国昭和四十九年に行った財産税法の改正及び昭和五十二年に行った法人税法等の改正に伴い、この協定を修正補足する必要が生じました。このため、政府は、昭和五十二年十二月以来数次にわたって交渉を行いました結果、昭和五十四年四月十七日に東京において、わが方本大臣とドイツ連邦共和国側ディール駐日大使との間でこの議定書署名を行った次第であります。  この議定書は、本文八カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、協定の一般対象税目として新たにドイツ連邦共和国の財産税を加えるとともに、不動産、恒久的施設の事業用資産の一部をなす動産等を除き、日本の居住者がドイツ連邦共和国内に所有する財産については、ドイツ連邦共和国の財産税を免除すること、ドイツ連邦共和国の居住者である法人が日本の居住者に支払う配当について、親子関係のある法人の間で支払われる配当の場合には、二五%であった従来の協定上の制限税率を一五%に引き下げること等であります。  この議定書締結によりまして、わが国ドイツ連邦共和国との間の二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済関係の緊密化に資することが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する千九百七十九年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九七一年の国際小麦協定は、本年六月三十日まで有効期間が延長されていましたが、この議定書は、同協定有効期間をさらに二年間延長するものであり、本年三月ロンドンで開催された関係国政府会議において採択されたものであります。  一九七一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約食糧援助規約との二部から成っており、小麦貿易規約は、従前の国際小麦協定に比し、価格帯、供給保証等のいわゆる経済条項を欠いておりますが、小麦の市況の安定化のため加盟国が情報交換、協議を行うこと等を規定し、食糧援助規約は、開発途上国に対する食糧援助について規定しております。この議定書は、この両規約の実質的な内容に変更を加えることなく、その有効期間をさらに二年間延長することを定めており、小麦貿易規約有効期間の第五次延長に関する一九七九年の議定書食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する一九七九年の議定書との二部から成っております。  この議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国の食糧問題の解決に貢献することとなること等の見地から、わが国にとり有益であると考えられます。なおわが国としては、食糧援助規約有効期間の第五次延長に関する一九七九年の議定書に基づく食糧援助を米または農業物資で行う方針であるので同議定書にその旨の留保を付しました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件につき、一括して提案理由を御説明いたします。  これらの規約は、国際連合が世界人権宣言の内容を敷衍して作成した国際条約であり、国連採択した人権関係の諸条約の中でも最も基本的かつ包括的なものであります。  二つの規約のうち、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、いわゆる社会権の完全な実現を漸進的に達成すべきことを規定しております。また、市民的及び政治的権利に関する国際規約は、いわゆる自由権や参政権等の権利を尊重し確保すべきことを規定したものであります。  二つの規約に規定している権利は、相互に密接な関連を有しており、政府としては、両規約を同時に締結することとした次第であります。  国際人権両規約に対する政府の姿勢を明らかにするため、本大臣は、昨年五月三十日、国連本部において二つの規約に署名いたしました。その際、政府としては、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の中の、公の休日についての報酬、同盟罷業をする権利並びに中等教育及び高等教育の漸進的無償化についての規定に関し、わが国現状にかんがみ、所要の留保を行いました。また、二つの規約の団結権等についての規定にいう警察の構成員にはわが国の消防職員が含まれると解する旨を宣言しました。  人権の尊重は日本国憲法を支える基本理念の一つであり、両規約の趣旨はおおむね国内的に確保されておりますが、規約の締結は、わが国の人権尊重の姿勢を改めて内外に宣明する観点から意義深いものと考えます。さらに、両規約の締結は、国際社会における人権の尊重の一層の普遍化に貢献するという意味からもきわめて望ましいものと考えます。  よって、ここに両規約の締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  184. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 以上で説明は終わりました。  四件に対する質疑は後日に譲ることといたします。本日はこれにて散会いたします。   午後四時十一分散会      ―――――・―――――