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1979-04-24 第87回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月二十四日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      上田  哲君     大木 正吾君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 秦野  章君                 二木 謙吾君                 大木 正吾君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣       外 務 大 臣   園田  直君    政府委員        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       加陽 治憲君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        法務省入国管理        局資格審査課長  山下 善興君        外務大臣官房外        務参事官     井口 武夫君        外務省中近東ア        フリカ局外務参        事官       堤  功一君        外務省経済局外        務参事官     遠藤  実君        外務省国際連合        局外務参事官   中村 泰三君        外務省情報文化        局文化事業部外        務参事官     平岡 千之君        通商産業省通商        政策局米州大洋        州課長      安楽 隆二君        日本電信電話公        社技術局長    前田 光治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (中東情勢資源エネルギー問題に関する件)  (東京ラウンド政府調達問題に関する件)  (国連貿易開発会議に関する件)  (ニュー・ジーランドとの漁業問題に関する  件)  (東京における先進国首脳会議に関する件)  (ECとの経済関係に関する件)  (インドシナ難民問題に関する件)  (日米首脳会談に関する件)  (防衛問題に関する件)  (中国との経済協力に関する件)  (ソ連軍事的動向に関する件)  (南北朝鮮問題に関する件)  (国際海洋法会議に関する件)  (ベトナム留学生問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十三日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として大木正吾君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件及び千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、両件を便宜一括して議題といたします。  政府から、順次、趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  海上における人命の安全のための国際条約は、海事関係基本的条約として長い歴史を有するものであります。この条約は、この種の条約として五番目のものであり、現行条約昭和三十五年に作成されて以来の技術進歩を考慮し、規制の強化を主たる目的として昭和四十九年十一月にロンドンにおいて作成されたものであります。この条約は、本年三月二十六日現在未発効でありますが、米国英国等二十二カ国が締約国となっており、明年中には発効するものと考えられます。  この条約は、航海の安全、特に海上における人命の安全を確保することを目的としており、船舶の構造、設備、積み荷等に関し、各国政府が自国の船舶に対してとらせるべき安全措置について詳細な技術規則を定めるとともに、これらの安全措置の実施を確保するために行う検査及び証書の発給並びに証書互認について規定しております。  わが国がこの条約締結することは、航海安全確保のための国際協力を推進するため、また、検査規準の統一及び証書互認により船舶運航上の不便を除去するために有意義であるとともに、海運及び造船の分野においてわが国が国際的に重要な地位を占めていることを考慮すればきわめて望ましいと考えられます。  よって、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  海上における人命の安全のための国際条約は、航海安全確保のため長年大きな役割りを果たしてきました。近年の技術進歩等を織り込んだ千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約は、昭和四十九年に作成されましたが、その後、海洋汚染防止及びタンカー安全性向上必要性が強く認識されるに至ったことを背景として、政府間海事協議機関ロンドンにおいてタンカーの安全及び汚染防止に関する国際会議を開催した結果、昭和五十三年二月にこの議定書が作成されました。  この議定書は、船舶、特にタンカーの安全を増進することを目的として千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約を修正する規定及びこれに追加する規定を定めたものであり、検査強化並びにタンカー操舵装置及び消火装置についての安全要件強化を内容としております。  この議定書は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約目的とする航海の安全の確保を、特にタンカーについて、一層増進するものであり、この議定書締結することは、この分野における国際協力を推進するため、また、この議定書で新たに定められた証書互認による船舶運航の自由を確保するために、きわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上、二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 以上で説明は終わりました。  両件に対する自後の審査は、後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  6. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 次に、国際情勢等に関する調査議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 私は、中東問題につきまして、特にエネルギーの問題、経済協力の問題の二点にしぼりまして、また、それに関係する事柄につきまして外務大臣の御意見をお伺いいたしたいと存じます。  御承知のように、イスラム革命が起きた後で、従来イランと最も近い関係にあったアメリカが後退するという事態が起きるし、また、イランの新政権が開発問題それから石油政策について相当の変更を見た。当初、私どもは非常なショックが社会的に起きるんじゃないかというふうに考えていたのでございますが、幸いにして備蓄があって余り影響を受けなかったというので一安心しているような状態でございます。しかし、私は、いろんな方面から考えてみますと、そう安心したものじゃないという感じがいたします。ここに日本外交が非常に大きく影響を与えるのじゃないかということを考えるのでございます。  エジプトイスラエルの間に平和条約ができた。しかし、今度は逆にアラビアのいわゆるタカ派と言われているところからこれに対する批判がずいぶん起きてきている。そういうふうに見てまいりますと、いまこの動揺の中で、各方面から言われておりますが、油の値段は近い将来において二十ドルになるとか、あるいは二十五ドル説をも言っておるのでございます。さらに、私は、日本として考えなきゃならないのは、またこういうときに不幸にしてアメリカ原子力発電の事故が発生した、これがまた今後のエネルギー問題に対して非常な影響を与えるのじゃないか、こういうふうに考えるのでございます。  そうして今後の需給の面から考えてまいりますと、原油供給量がことしは前年度よりも七・九%ふえるのじゃないかという計画もされております。それから石油資源の件につきましては、一九八五年から一九九〇年の間において、その限界が来るんじゃないかということが一般の通説として言われております。また、石油産出国におきましては、三十年たったら、あるいは一番長いところでも五十年たったら油はなくなるであろうということでもって、命を長引かせるためには資源を保存したり、あるいは値段を上げたりいろいろ考えるのでございまして、しかし、その反面においてまた消費国では需要が増大していくということになっておりまして、私は、このいまの石油の問題というものは経済の問題でなしに政治の問題であり、外交の問題であるんじゃないか、こういうふうに考えております。  それで、エネルギーの問題について短期的には非常な不安がありますが、あるいは諸般のいろんな研究が進むに従って長期的に見ると安定するような状態が来るんじゃないかとも言われております。あるいは水素エネルギーの問題もございますし、あるいは太陽エネルギーの問題があって、その研究が二〇〇〇年ごろには大体目鼻がつくんじゃないかという話もございますが、しかし、それにしましても一般見通しといたしましては、一九八〇年から二〇二〇年に至る間に原油生産の低下と、それから代替エネルギーめ不足というものがピークに来るんじゃないかというふうに言われております。それでこれをどういうふうに切り抜けていくかということはわが国存立の問題といたしまして私どもが十分に考えなきゃならないし、そしてこのかぎを握っておるのが私は中東産油国じゃないかというふうに考えるのでございます。  それで今日まではサウジアラビアアメリカ友好関係にあるし、人によってはアメリカの一州じゃないかというふうな皮肉を言う人もいたのでございますが、イランの問題が起き、それからエジプトイスラエルとの条約の問題が結末をつける、その結果といたしましてイラク、シリアその他の国々が反西欧的になってきた、これをサウジアラビアの方は無視できないし、これに対する影響が見られる。こういうふうに見てまいりますと、私が心配いたしますのは、サウジアラビアにおきましても、この前の新聞によりますと共産主義の運動が始まったんだというふうに言われておりますし、あるいは南イエメン、また北イエメン等、あるいはエチオピア、その周辺における動きというものはきわめてサウジアラビアに対して不利な状態があらわれつつある。私はそういうことを考えるのはどうかと思うんですが、万一サウジアラビアの油田が大きく破壊される、またサウジアラビアイランのような問題が発生した場合においてはどうなるだろうかということを考えますと、一番この影響を受けるのは私はわが日本じゃないかという感じがいたします。  原油日本需要の八五%を中東からもらっておる日本にとって、ドイツにいたしましてもイギリスにいたしましてもフランスにしても石炭がございます、しかし、わが国においてはそういうものはない。そうなってくると私は一番被害を受けるのが日本であるし、この前のわずかの石油ショックにおいてもあれだけの恐慌を来した。だから、私は、わが日本経済に対して致命的な影響を与えるんじゃないかと思っております。私は、政府の方も、それから民間の方も、わが国にとっては中東の問題というのは死活の問題だというふうにとらえて、中東方面におけるいろんな事件の発生というものを対岸の火災視することなしに、自分のことのように考えてこれに対処すべきじゃないか。  それで、ひとつお尋ねいたしたいのは、政府としては現在のエジプトイスラエルの問題、それからイランの問題、これから派生するところのサウジアラビアの混乱の問題、また北の方からはトルコがいま非常な不安な状態にありますが、これも影響なしとは言われない。こういうふうに民族問題と宗教問題、それからイデオロギー問題がある。それから数千年にわたるところの民族の怨念というものが固まって陰湿などろどろした闘いをやっているイランに対して、今後、わが政府がどういうふうに対処していくべきであるか、これについてのお考えを大臣からお伺いいたしたいと存じます。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 中東地域わが国にとってきわめて重大であることは御発言のとおりであります。政府としては、中東地域及び中東諸国動向に深く関心を払っているところであります。  まず、イランの新政権に対して、実情は御承知のとおりでありますから詳しく申し上げることは省略をいたしますが、新政権が発足以来、石油輸出の再開、国民投票内政外交面での重要施策を逐次明らかにするなど、新しい政治体制強化を急いでおりまして、事態は一応平静化しておりますものの、御発言のとおり武器の大部分はいまだ回収されていない。また行政面でも、独自の活動を行っておる革命委員会との関係がきわめて複雑である。かつまた行政機構が完全に回復しておりません。また経済面については、石油生産は予想よりもやや早目に回復しておりますが、経済面については軌道に乗るためにはまだたくさんの問題があり、特に現在多数の町にあふれておる失業者に対する対策、インフレなどの問題が多々あるわけでありまして、時の経過とともに漸次政情が安定して、新しいイラン国家体制が形成され、一刻も早く経済活動が活発化することを期待し希望しておりまするものの、また一面には、一縷の不安というものに対する注意を怠りなくやっていかなければならぬと考えております。現在のところ、イランの新政権日本政府との関係はきわめて良好に進んでおるわけでございます。  次に、エジプトイスラエル関係を中心にした今後の中東情勢の簡単な見通しでございますが、先般署名されましたエジプトイスラエル間の平和条約履行状況が今後どうなっていくかということも一つの問題であると思っております。特にイスラエルのシナイ半島からの撤退及び西岸・ガザ地区における自治政府樹立に関する交渉進展に左右されるところこれまたきわめて大きいと見ております。前者については、現在のところ、特に大きな問題は予想されませんが、後者の自治政府態様権限等について両国間に意見の隔たりがあって予断を許さないものがございます。このような状況の中で、PLOは、パレスチナ問題の解決の態様に重大な関心を持っておりまして、自治に関する交渉進展いかんによってはエジプトイスラエル及び米国に対し具体的に反発する行動に出ることも予想されないことはございません。  また、サウジアラビアは、エジプトイスラエル間の平和条約署名に対し批判的ではありますが、エジプトとの伝統的な友好関係もあり、平和条約署名に反発するアラブ諸国の中にあって、その立場には微妙なものがございます。アラブ諸国の間では、平和条約署名後、エジプト孤立化を図る動きが強まっておりますが、エジプトがこれにいかに対応していくかを含め、今後の中東情勢は当面流動的に推移していくと思います。  いずれにしましても、中東地域穏健派急進派、この間をどのように調整をし、どのように進めていくかということがきわめて大事でありまして、また一方、ソ連は、米国との関係を考慮しながら、中東地域に対して影響力を強めるような動きをやっておるわけでございます。米国としても、  エジプトイスラエル平和条約を第一歩として穏健派急進派に対して今後逐次一歩一歩進めて  いくと予想いたしております。  こういう前提のもとに、わが日本は、中東地域がわが日本存立に重大な関係があることを考えまして、この地域にわが日本が持っておる経済力政治力を最大限に利用しながらエジプトまた反エジプトアラブ連合諸国に対してもそれぞれ応分の援助なり、外交関係を進めていって、この中東地域包括的和平に進むよう努力をしたいと考えておるところでございます。
  9. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 いま大臣お話をお伺いいたしまして、イランの問題もわれわれが予想したよりは早く安定に向かっておるというお話でございまして安心するのでございますが、私は、中東の問題はソビエトアラブとの関連を考えてみますと、相当長期的な闘いになる、それで短期的な処理とともに、長期にわたってはますます深刻化するような状態も発生するんじゃないかということを考えてわが日本政府施策を進めていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるのでございます。  それにつきまして、私は、外交を進める場合において一番大事なのは情報機構の整備じゃないかというふうに考えております。今日まで必ずしも、私の知る範囲内におきましては、日本世界戦略から見たところの情報機構が整備されているとは思いませんし、特に、この中東方面において感じますことは、言葉の不利があるし、またイスラム教に対してわれわれがなじまない点もある。私が若干関係したことなんですが、ある医師の事件がございまして、これがわれわれのどうも余り感心しないような行動に出たためにイスラム教国で非常な動揺を来したというようなこともございまして、これはよっぽどわが日本はしつかりしないと、これが国策にまで影響してくるんじゃないかというふうに私は内心心配しているのでございます。  それで一つお伺いいたしたいのは、アラビア語をしゃべる外務省職員が何人いるか、これのうち何人がアラビアの方に派遣されているのかどうか。  それから、あと一点は、イスラム教徒が――これはどなたでもいいですから答えてください、外務省職員の中にいるかどうか、この点をお伺いいたしたいんです。
  10. 堤功一

    説明員堤功一君) アラビア語をしゃべります外務省職員の数は、現在、四十五名でございます。そのうちの二十名が中近東地域に配属されております。ただ、二十名のうち研修員、すなわち勉強中の者が八人ございますので、実際に仕事をしておりますのは十二人でございますが、研修生は年々実務に加わっているわけでありますので、この数はどんどんふえていくと思われます。残りの二十五人は本省ないしほかの地域勤務しております。他の地域勤務アラビア語地域における勤務を助けるものとして外務省の方針としては両方地域に勤めるようにしておりますので、他地域にも配属しております。  ついでに申し上げますと、ペルシャ語トルコ語専門家がそれぞれ約五名程度ずつおります。  回教徒の数でございますが、私はっきり存じませんのですけれども外務省職員の中にはイスラム教徒職員というのはいないというふうに了解しております。
  11. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 いま私はもっと少ないかと思ったんですが、わりに四十五名という数字はやっぱり外務省におかれても言葉重要性というものを認識されて漸次それの数を多くするという線で進めておられるんじゃないかという感じがいたしますが、しかし、なお、中東重要性から見ると、それだけじゃ少ないと思いますので、さらにそれを拡大されていかれんことを希望いたします。  それから、私、先ほど、これは希望なんですが、なかなか相手の習慣を理解しなかったということで仕事がらうまくいかなかったという面があるし、そういう点で十分にこのイスラム教に対する理解を持つということが大事じゃないか。それからイスラム教徒というのは世界に六億おりまして、特にロシアにおいては五千万人おりまして、これの影響で今後ソビエトの方のロシア人が少なくなって紀元二千年には大体バランスが崩れてくるんじゃないかというふうにも言われておりますので、ソビエト研究の場合においてもこのアラビア語ペルシャ語なんかが重要性を持ってくる時期が来るんじゃないか。それはあるいは先になるかもしれませんが、そこの方までも考えられて、ぜひこの点については十分の配慮をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  なお、次に、あとわずかの時間でございますが、簡単にひとつ大臣の御意見をお伺いいたしたいと存じますが、これは経済協力の問題でございますが、いま三井の方が石油化学工場向こうに建設して約八〇%までできたところを、今度あれを国営にするとかあるいはまたそうでないとか、いろいろ問題がございますが、私、今度のイラン革命を見ますと、イランパーレビ王、皇帝が余りに近代化を急いだ。そのために輸送問題も考えない、あるいはまた都市の集中化が生まれてくる、失業者はふえる、逆にまた貧乏人もふえてくる。その間において多くの資金が外国から流れるものだから、その資金の流れが王並びにその周辺貴族階級の方に回っていった。これに対する反発があって今度のイスラム革命が生まれたんじゃないかということも言われておりますので、私は、ああいう開発途上国においてただ近代化すればこれでいいんだという考え方じゃなしに、もっと今後は、われわれ日本が、イラン、あるいはこれは中国の問題にも言えることでございますが、そういうところと協力をしていく、その場合に、われわれがやっておることがその国民のためになるかどうか一応向こう立場に立って問題を考える。どうもわが日本の場合は、自分立場から考えて、相手立場をあんまり考えないという面があるんじゃないか。そういうことがインドネシアの方にもあらわれている。田中元総理が向こうに行かれたときに、ずいぶんデモンストレーションを食らったという事件もあったのでございまして、今後、私は、中東に対する経済援助の問題あるいは経済協力の点については、先方の国の立場に立って考えて、そして本当にためになるんだという自信を持ってこれに当たる必要があるんじゃないか。  それと関連して考えるんですが、今度の三井の問題を考えると、大分むずかしい状態になっている、これについてはひとつ政府援助を頼むということもございますので、政府といたしましても、私は、ただ民間がやるからやらしておけということじゃなしに、政府の方もそれに一口かむような形において十分な指導をやって、これが両方の国の現在並びに将来にわたって大丈夫だという経済協力の仕方をやるべきじゃないかというふうに、今度のイランにおける問題それから中国との問題を見まして、感ずるのでございますが、この点についてひとつ大臣の御意見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済、技術の援助協力についてでありますが、御発言のとおりに、これは今後十分検討すべき問題が非常に多いと存じます。特に、その中でも、日本援助なり協力がその国民あるいは地域の住民の利益につながるものでなければ効果はない。ただ近代化近代化と言って国民に直接影響のない援助をやっておりますと、これはその場の政権に対する援助強化ということになり、地域国民の反発を招く可能性も十分あるわけでありますから、これは中東地域においても、中国に対する問題も同じでありますが、やはり近代化という基盤である国民地域住民に利益があるような、しかもその利益がわかるような援助に、相手の国の実情を詳細に検討する、かゆいところに手の届くような援助をしなきゃならぬと考えており、御発言のとおりでございます。
  13. 秦野章

    ○秦野章君 東京ラウンドをめぐって、いまいろいろ交渉、準備をされておるわけですけれども政府調達物に関するいろいろのいま準備段階だと思いますが、まず第一点は、電電のようなものはアメリカでは民間企業ということになっていますし、たまたまATTのような民間の企業でやっているということで、アメリカはそれがバイアメリカン的な実態になっておっても、それには全く触れない。日本政府機関になっているということで、その調達物の対象になっていると論議されている。ヨーロッパなんかでもEC諸国はほとんど一種のバイアメリカン的なそれぞれの国の立場で、これは一種の国益というような立場で触れていない。対米交渉の中で、企業体の形式が政府機関であるかないかということでやはり日本が譲っていかなきゃならぬというような感じを受けるわけですけれども、これはちょっとどういうふうに理解したらいいですかね。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 御承知のとおり、アメリカは国内法で国内企業を擁護しておったわけでありますが、政府調達についても百五十億ドル近くのものを開放する、したがって日本政府調達を開放しろ、こういうのがアメリカの基本的な言い分でございます。そこで、そういう基本的な立場からこの貿易障害というものを取り除こう、こういうことがいまの日米経済問題の基本的な原因でございます。
  15. 秦野章

    ○秦野章君 額の問題でそういうふうに向こうがオファーしてこちらが対応していくというような形になっておるけれども、具体的にはアメリカのATTなんかで実際問題として余り日本から入れてないんじゃないですか、また入れる可能性はあるんですか。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 電話交換機とか、その他日本から相当現在でも入っているようであります。かつまた両方が競争入札ということになれば、当分は日本の方から入ってくる率が多いと、アメリカの言い分はそういう言い分をしておるわけでございます。また一面から言えば、交換機などはアメリカの方が優秀だとは言っておりますが、われわれが見た場合では、やはり日本の方が優秀であって、国際競争に日本の方が必ずしもいまのところ負けるとは思っておりません。
  17. 秦野章

    ○秦野章君 ATTのベルシステムでは、そこが言うならば大部分を購入しているウエスタン・エレクトリックなんかでは、ほとんど日本の企業からいままで少なくとも買っていませんね、まあゼロに近い。これは買うようになるわけですか。
  18. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) ATT、ウエスタン・エレクトリック等は政府公社に入りませんので、今回のガットのコードという問題からは直接にはアメリカ側はこれらの会社が日本を含む外国品に対して門戸を開放するということはございません。しかしながら、ガットのコードの場を離れまして、アメリカ国内でいまのような態勢でいいかということは検討されておるとわれわれは聞いておりまして、政府調達の問題とは別に、ATTなりウエスタン・エレクトリックなりが外国産品に対して門戸を開放する可能性は最近の情勢ではふえておるとわれわれは承知しております。
  19. 秦野章

    ○秦野章君 そこのところなんだよね、ATTが民間だから今度の交渉の枠外だと、形式論としては。そして今日までは日本のものをほとんど入れてないんだね。企業体の形態が民間であるからということでそうなっているんだけれども、実質的に見れば、電気通信の実態というもので見れば、そこらにやっぱり、何というかな、アメリカのごり押しみたいなものを感ずるんだよね、実態的に見れば。そのことをぼくは言っているんですけれどもね。だから、今後、向こうはそういうことをやるらしい、形式的にはこれに入ってこないけれども、今後はそういう方向に行くらしいというあなたの方の情報はわかるんだけれども、それはやっぱりちゃんとしてもらわぬと、実態的にはおかしいんじゃないか、こう思うんですがね、どうですか、その辺。
  20. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) われわれの交渉相手でありますSTRとか行政府限りでは、ATT等を国際産品に対して開放するということは決定できないというのがアメリカの法制上のたてまえのようでございます。したがいまして、その交渉の駆け引きとして、わが方はこれだけやるからアメリカの方もこれだけ約束しろと言った場合に、向こうは民営ですから、STRの方でそういうことをするということまでは確約はできない。したがって裁判所とかいろいろ問題が絡んできますので、それらを含めてわれわれの方としては情勢を見守っておるということになるわけでございますが、このATTそれ自身をとってみても、そうい、うことでアメリカの方でもこのコードの枠外でございますが、動きがあるという点が一点。それから、どれぐらいの規模を政府調達のコードの対象とするかというバランスは、向こうの方とこちらの方とを見ましても、これ一つとってみましても、アメリカの方としてもできるだけの努力をしているようで、いま大臣がおっしゃいましたように、相当規模のオファーをしておる。それで電電公社ということを離れて考えてみますと、政府調達のコードとしては相当バランスのとれた形になりつつあると言うことができようかと思います。
  21. 秦野章

    ○秦野章君 政府調達の額は大体どの程度になりそうですが、大臣、いかがですか、見当は、新聞にいろいろ出ているんですけれどもね。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) いま米国で折衝中でございますが、新聞等に出ておって一向こうは七十五億、こちらは五十五億ぐらいから折衝しているわけでありますから、向こうの言い分に近いところへいま……。
  23. 秦野章

    ○秦野章君 五十五億ドルか何億ドルか、いずれにしても決まってきますね。その決まった額というのは要するに調達対象の可能性、調達物の購入の可能性を示しているわけですわね。  そこで、私どもちょっと気になるのは、例の経済成長率七%という問題は一つの努力目標であったんだけれども、それがいかにも国際的な公約のように受けとられて、言うならば後で追い打ちみたいなかっこうになっていますわね。今回の問題も、結局、実際に調達のプロセスの中で入札にしたところが、やっぱり品質とか価額とかいうものが入念に審査されて、恐らく高度のものであるならば工場検査までやらなきゃいけないだろう、それでなければ一つの技術体系の中で虫食いみたいなかっこうになる可能性もあるわけですから、したがって一つの額を決めたからといって、それは一つの単なる努力の目標であって、実際にそれ以下になることは当然あり得るわけですわな、そういうものでしょう、これ。そういう性質のものであるならば、七%成長論のときにいろいろ国際的にも日本は何か約束違反みたいなふうに言われた。日本の国内でも国会の論議でもずいぶんあったんだけれども、その点と比較して、これは単純に比較するというのは多少問題があるけれども、やや共通した問題があるような感じがするんですけれども、これはいかがですか。
  24. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済成長の問題は全く御発言のとおりでありまして、ボンのあの宣言の中にも七%という数字は挙げてない。しかしながら、そういう目標で努力するということは言っているわけでありますが、西独のシュミットあたりは、七%できなかった、六%だと言ったら、世界経済が必ずしも希望どおりに拡大しなかった、この時期に六%やることはえらい努力で、その功績はわれわれは多とする、こういうことでありました。米国も七%ができなかったというあの瞬間にはいろいろ意見があったようでありますが、今度、私が行きましたときには、経済成長についての要望であるとか不満というものは一切向こうから発言されませんし、私もこれに弁明すらないと思いまして、経済成長というのは、おっしゃるとおり、あくまで世界経済に貢献するための日本の目標であって、これはその数字が公約ではない、こう私も考えております。
  25. 秦野章

    ○秦野章君 これとの比較ですね、つまり今度は何ドルと決まるでしょう、それを達成しなかったときに、できないことはあり得るわけですわな、そのときにも、一種の何というのか、公約じゃないんだけれども、それにすりかえられる可能性があるんですよね。  確かに七%は、今日アメリカは非難していないとおっしゃいますけれども、少なくとも相当公約的に受けとられた部分があることは明らかですよ、外側からね。今度の場合も何十億ドル買うと言っても、それは買うという問題じゃなくて、それは一つのめどなんですわな。その中で半分になるか、三分の一になるか、目いっぱいになるかというものはやってみなけりゃわからぬというような性格のものだから、そういう一種の条件つきというのかな、そこらの性格をきちっとしておかぬと、必ず後でやっぱりあれはうそだったじゃないか、今度は取引の問題だから、一層それはうそじゃないか、だましたんじゃないかというふうにかかってきそうな気がするんですよ、その懸念がある。それに対応する姿勢とか態度とか方法とかいうものは一体何だろう、これをお尋ねしているわけです。
  26. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの点はきわめて明確にしてございます。買うという金額ではなくて、この範囲内で指名でもよろしい、入札を許すということであって、その入札で落札をするという約束、またはこれだけは買いますという約束は一切しないばかりでなく、それは違うぞということを明確にしてございます。向こうもまたそれで結構だ、こう言っております。
  27. 秦野章

    ○秦野章君 いま一つ、これは七%問題とはまた違って、結局、技術のレベルというか機械の品質というか、そういうものが非常に問題になることですわね。そういう点についてやはり日本の技術というものは相当進んでいるという客観的な評価もあるわけですから、そこらの問題でよほどわが方がちゃんとしないと、また、だまされたみたいなことにならぬように、はっきりとしているとおっしゃるけれども、これはむしろ担当省というか関係省のところの問題だと思うんですが、何か具体的にそこらの点をきちっとする必要があるような気がする。これは郵政省どうかな。
  28. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まずガットのコードにおきましても、大臣が先ほど申されましたように、指名入札か競争入札にしろということだけが書いてあるわけで、幾ら買えということはコードには書いてございませんので、まずコード上の義務は公開入札か指名入札にすればそれで結構ということになります。  それから、いまいろいろ言われております金額でございますが、これは、交渉上、大体同規模のものをオープンにしたということを比較するために過去の実績を持ってきただけでありまして、その数字を買うということを約束するわけではなくて、ただ交渉の材料にしておるということでございます。
  29. 秦野章

    ○秦野章君 そもそもこの問題は、日本のドルが大変たまった。ドル減らしの延長線上に出てきた問題だ、その側面があるわけですね。無論、日本の貿易政策がアンフェアだというアメリカの世論がずっとあってフェアにしろと言うが、この中には非常に誤解があると思いますけれども、そういう面と、しかし、ドル減らしの一つの方法ということは現実的な問題だと思うのですけれども、そもそも日本がドルがたまったということは、一体、日本の貿易政策がアンフェアであったからたまったのか、フェアな貿易政策であった上でたまったのか、この二つのどっちかということを考えたときに、私はアンフェアな貿易政策ではなかったと思うのだけれども、これは通産省どうだね、まず一般的でいいから、簡単に。
  30. 安楽隆二

    説明員(安楽隆二君) 経常収支や貿易収支の黒字が高まりました原因としては、やはり石油危機以降この二、三年、アメリカの景気回復がほかよりも非常に早く進んだというそういう景気回復のずれの問題、それからもう一つは、日本などにおきましては非常に生産性の向上とか、あるいは省エネルギー努力のための合理化投資などが進みまして、商品の競争力が非常に強くなってきた。これに対して、アメリカの方ではインフレ問題あるいは生産性の向上がなかなか進まないということで、そこに競争力の差が出てきた、こういうことが一番大きな原因ではなかったかと思われます。
  31. 秦野章

    ○秦野章君 これは一年ちょっと前になりますけれども、七七年の十二月二十六日付の「ビジネスウイーク」とそれから同じ日の「タイム」に出た記事なんですけれどもアメリカはこういうことを言っているのですよ。「自国の産業が一つまた一つと人為的な低価格の輸入でノックアウトされているのに、日本の市場は外国製品に対しピタリと閉ざされているというのでは、どの国の政府だって黙っていられない」。それからタイムの方は「外国製品は閉め出し、他方、世界市場を自国製品で飽和させることによって、日本は、今年一五〇億ドルにものぼる新記録の黒字を溜めようとしており、これこそが、米国と西独の経済成長を阻害し、失業を増大させているのだ」こういう記事がアメリカにあるんですね、こういう一つの対日批判の考え方ですね。  そういうようなことを拾ってみるといっぱいあるのですけれども、これに対して外務省が、昨年でしたか、アメリカの五つの新聞かなんかに広告なんかを出したのを私も知っていますけれども、私がいまアンフェアかフェアかという問題については、一つの例で言うと、たとえば農産物についてこういうことを言っているのだな。「クリスチャンサイエンスモニター」の七七年の六月の記事なんですけれども、「どの国もガット規約上完全ではないが、日本はガット違反の輸入数量制限を三〇近くも有している」。それからいま一つは「ニューヨークタイムズ」これは七七年の十二月です。「日本一般に他の工業国より多くの非関税障壁を有していると考えられており、例えば、輸入数量制限についていえば、米国の七、ベネルックスの八、カナダの五に対し日本は二七となっている」こういう指摘をしているのです。ところが、これはたとえばガットの問題では、ガットに入る前にアメリカは例外で、たとえば農産物なんかについて現在でもバター、チーズ、ミルク、クリーム、綿花、小麦、小麦製品、落花生、砂糖、こういう農産物については輸入制限しているのですよね、アメリカは。こういうことはたなに上げて、こういう記事が新聞に出るということは、日本にドルがたまったというのはやはりフェアな貿易政策じゃないんだというふうにアメリカが見ているからなんですね。  この問題については非常に私は重大な問題だと思って、いささかアメリカのおごりとアメリカ一つの怠慢というか、そういうものを感ずるのですけれども外務大臣はこういうことは交渉の中でもちろんおっしゃっているんだろうと思うのだけれども、こういう個々のアメリカの世論を代表するようなかなりの新聞その他に出てくるものについて、一般的に外務省が一遍広告をするというのでなくて、一つ一つについてもっと入念な対応策をとっていかないと、このアメリカ日本の貿易政策はアンフェアであるという、そういうかなり強い世論を変えるということは、つまり貿易交渉の背後にあるアメリカの認識の流れを変えるということは、私は非常に困難ではないかと思うのですがね。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) いま日米間に横たわる経済問題で二つの原因は、いま御発言のとおりでありまして、日本の黒字というよりもアメリカの赤字、特に失業者、インフレ、こういうことから、自分の方の責任は考えないで、日本の商品がもぐり込んできて自由に売っている、自分たちが売ろうとすると関税または貿易障害を設けて防いでおる、勝負が汚い、この二つから起こっておる感情的な問題でありまして、いまおっしゃるとおりに、そうではなくてアメリカ自体にも責任が大部分あるんだ、こういうことを理解させることが非常に大事だと思いますが、いまのところは、ごく一部の人がそういうことは理解をいたしますが、なかなか議会、国民の感情というのは理解ができない。  そこで、私は、今度の交渉中でも、たとえば昨年製鉄所がつぶれました。五千名の失業者が出ました。この製鉄所は何年にできた施設でやっておられたのか、こういう質問を発しました。これはもう何十年も前の施設でそのままやっておったわけでありまして、これを一例にして、日本はつらい中に施設あるいは企業体質の改善を図って国際競争力をつけてきた、アメリカは依然として旧式のままやっているじゃないか、したがってアメリカの赤字というものはアメリカ自身に大部分の責任があるんだ、日本は決して汚い勝負をやるつもりはない。したがって今度の問題でも、できるだけ、国内ではいろいろ困難な問題があるけれども、話し合おうじゃないか、こういう筋で話してきたわけであります。
  33. 秦野章

    ○秦野章君 これは御存じと思いますが、去年の三月二十六日、この次大統領に出るか出ないかと言われている元財務長官のジョン・コナリーがこう言っている。「シカゴトリビューン」に載っている記事ですけれども、「我々は敵味方を問わず世界中に、公正な貿易に信を置き、それに固執しつづけることを云ってやらないといけない。率直に云って我々は日本から公正な貿易をしてもらっていない」とある。選挙だから多少ほらを吹くんだろうと思うけれども、こういうことをこういう有力な人材が言っているのですよ。  だから、いま大臣がおっしゃったように、私は、このアメリカの誤解――誤解なのかあるいはわかっていてやっているのか、そこらは多少わからないところもあるのですけれども、一種の日本も成熟社会と言われますけれどもアメリカの成熟社会は、いまおっしゃったように失業、インフレ、ドルの問題、そういった一つの苦悩を抱え、さらにその上に人種問題を抱えて労働の質が低下しているというのが定評なんですね。そこらの労働の問題、人種問題を抱えての問題なんていうものは、アメリカに言わせれば、ある意味では一つの病弊と言っても、栄光の病弊とでも言うべきものなのか、そこらは問題があろうと思いますけれども、われわれとの対比において労働の質が下がっているということはもうあらゆる資料、文献にも出ておる。  これはアメリカの品質管理についての世界的に有名なドクター・M・ジュランという教授が昨年の十月京王プラザホテルで開かれた国際品質会議に出て、そこへ論文を提出したんですけれども、これなんかを見ても、たとえばとにかく日本の製品は故障が非常に少ない。それから企業も長期償却の投資に耐えるような体質を持っている、技術者の実務経験を非常に重視して、特に品質管理の考え方に他の国と非常な差があるというようなこととか、とにかく日本の製品は欠陥率が低いという点を強調し、西欧に比べて二けた以上の違いがあるというようなことを精細なデータのもとに発表しているわけです。特にアメリカのラルフ・ネーダーなんかも理事に入っている世界最大の消費者団体と言われているコンシューマーのレポートによりますと、世界の自動車十種類、十の車種を調べて、その中で結局故障がないのは日本の車種で上位三つを占めている、上位は全部日本車なんです。これはトヨタカローラ、日産のサニー、本田シビックなんですけれども、こういう機関の月刊誌で二百万も売れている雑誌に出ている、これは私はかなり権威のあるものだと思うんですけれども、そういうように品質の差というものが非常に出てきちゃった。  いずれにせよ、アメリカも苦しいから頼むよみたいな話も多少あるのかもわからぬけれども、しかし、言うべきことはもっときちっと日本も言って、私どもが最近耳にすることでも、アメリカへの企業の進出というものは販売会社はずいぶん早くからやっているけれども、生産の方はそうテンポは早くありませんけれども、ソニーとかオートバイとかいろいろあるわけですけれども向こうに進出した企業でメード・イン・USAのソニーは売れない、メード・イン・ジャパンのソニーは売れる。これはほかのもの全部そうなんですよ、私調べてみたら。  私は、一週間前ですけれども、三菱の核燃料の品質管理をやっている非常に高度な技術の先端の人の話を、これは東海村でやっていますから聞いてみると、核燃料の管理の仕方、これはアメリカに行っても勉強するし、お互いに現場を見るんだけれども、全然違うと言うんですね、ちゃらんぽらんらしいですよ。  これはいろんな要素があると思いますけれども、そういうようなことを考えると、ここらの問題というものは一朝一夕には解決がつかぬし、アメリカは相当苦しい問題を抱えているとは思うんだけれども、しかし、アメリカの大衆、さっきのコナリーの演説じゃありませんけれども、あるいは国会議員あるいは大統領が選挙というようないろんな背景があって、みずからの怠慢というのか、成熟社会における一種の退廃みたいな部分が出てきて、それが波及しちゃっているんだ。  そしてそれがまた、一方において、アメリカアメリカ独特のおごりもあるでしょう、私どもアメリカがいいかげんになってもらっちゃ困るわけですから、そこらの問題を十分に反省、批判の上に立つべきである。対米交渉というだけの問題じゃない、日米関係の問題というものも、緊密にお互いにもっと言うべきことが言えるという舞台をどういうふうに展開していったらいいか、ジェトロもある、いろいろある、外務省もやっているということかもしらぬが、そういったような枠だけではちょっと間に合わないんじゃないかという感じもするんですけれども、その辺の問題については外務大臣はどういうふうにこれからのそういった対米努力――われわれ自身にももちろん問題が全然ないことはないでしょう、アメリカが言うように、すぐに流通機構が複雑だとかいろいろ言いますわね。安全度なんかの検査が厳しいとか、そういうことを言ったら向こうだって厳しいところもあるんですから五十歩百歩の問題だが、要するにもっと背景のアメリカの体質の問題について、われわれがヘルプすることはできないけれどもアメリカがむしろみずからの反省と真剣な政治努力をやらぬと、これはいつまでたっても追っかけられていくというふうな感じがするんです。  そういう点についてのこれからの広い意味の経済外交というか、政治と絡んだ非常にむずかしい展開をどういうふうに具体的にやって、われわれ自身国会議員の交流とかそういうものも少しはふえてきましたけれども、大変な問題だと私は思うんですがね、大臣の御所見はいかがですか。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど言われましたコナリー発言というのは、これは非常に大きく響いておりまして、私が会った閣僚はほとんどコナリー発言を引用して、日本に対してカーター政権は弱腰である、汚い勝負をやっている日本を是正できない、しかもそれが演説会で拍手喝采を受けるのだ、その立場を理解してくれということを全部言っておるところでございます。  そこで、私は、いまの施設の問題と、もう一つは、黒字、赤字と言われても、自動車の輸出を百台を仮に五十台に抑えた場合、アメリカのインフレとドルと円の関係で五十台で百台分のドルが入ってくるということになれば、品物は抑えてもアメリカの赤字、日本の黒字は解消しないのだ、こういう点もあなた方は考えたことがあるか、こういうところを力説したところでありますが、どうもいまおっしゃるとおりに、政府間の理解というのはある程度あるわけでありますが、議会なり国民に対する感情的な、たとえば突拍子もないことを議会等では考えておるわけであります。日本経済援助が少ない、難民対策が積極的じゃない、そういう分までアメリカがかぶっている、こういう物の言い方で、いまのところはつらいのは全部日本のせいだというふうに何でもかんでも感情的になっておるようなことでありまして、いままでのわれわれのやり方は行政府との間はわりに緊密に理解を深めておるが、議会なり国民に対する理解の深め方が足りない、この点は十分今後考えて、いますぐ効き目があることではありませんけれども、しかし、大事なことでありまして、御発言のとおりに、そういう点から考えていかなきゃならぬと思います。  それからもう一つは、私がじっと話をして考えますことは、いまの問題が一応解決をして、なおアメリカの赤字が減らない、こうなった場合は、アメリカ自体が反省を始めたら今度はアメリカの企業改善をやるだろう。そうすると資本はやはり相当持っておるわけでありますから、自動車にしても何にしてもこれが近代設備をやってかかってくると、今度はまた日本が受け身になる時期が来る、これに対する対応の準備もしなきゃならぬと考えております。
  35. 秦野章

    ○秦野章君 一つだけ。工業製品についての関税なんかでも日本は高いなんというアメリカの世論なんだけれども、工業製品に対する関税率のアメリカ日本の比較、それわかるかな。
  36. 安楽隆二

    説明員(安楽隆二君) 関税水準の比較につきましては、各種の計算方法があって単純な比較は困難でございますけれども、一言で言いますと、日本は、現在、先進工業国と比較して遜色のない水準にございます。  たとえば、その基礎税率で申しますと、日本米国、ECとも大体六%程度ということでございます。それで現在仮調印が行われました東京ラウンド、これを実施していくわけでございますが、これをやりました後には、たとえば引き下げ後の税率で見ますと、これもいろんな計算方法があろうと思いますけれども日本が三%程度になる、米国やECは四%とかあるいは五%程度になるというような計算もございまして、いずれにしましても、日本はすでに欧米並みの水準にあるし、東京ラウンド後は世界で一番低い水準の国になるというふうに言われております。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまも秦野委員から日米関係の問題、貿易の問題たくさん出ておりますが、いま日本外交東京サミットに向かってどんどん進められている感じでございますね。きょう総理大臣の訪米の日程が発表になったと思いますが、四月三十日から五月七日まで、帰っていらっしゃったらまたすぐにUNCTADの方にお出かけになる。それらはやっぱり六月末の東京サミットに向かって、それを成功させるために一方向に向かって地ならしをしていらっしゃるという感じがするわけなんです。  いまもお話を聞いていても、それから全体として、一番最初にちょっとお尋ねしておきたいと思いますのは、日米の貿易関係の問題は特にそうだと思うんですけれども、非常に政治的なバックというかな、があり過ぎる感じがするわけなんですね。つまり、いま外務大臣がおっしゃいましたけれども政府間の理解はできているけれどもアメリカ議会の理解はできないとか、それからアメリカ国民の理解はなかなかむずかしい。そうしていまカーター大統領の選挙を前にしての、それからアメリカの議会の人たちの選挙を前にしての政治的なマヌーバーといいますか、そういうものと、それからこちら側から言えば大平総理大臣政治的な、何といいますか、成功のためにと、こういうことで両方が非常に政治的な立場で話し合いをしているような感じがするわけです。  外務大臣は、この間アメリカに行ってらっしゃって大平訪米の地ならしをしていらっしゃった。そして報道によりますと、日米間の経済的な摩擦をストラウス代表と外務大臣との間でこれを一掃するということについて同意した、そして日本は相当な譲歩をしたというふうに言われておりますが、外務大臣はそういうふうに譲歩をしてこられたんでしょうか、どうでしょうか。
  38. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が訪米をいたしましたのは、大平総理の訪米、日米首脳者会談を成功させるための下準備に参ったのが第一の目的であります。したがいましてバンス国務長官その他の関係者との話し合いは、現在日米間の懸案になっておる経済問題が未解決の場合でも、日米首脳者会談は国際情勢、世界経済の見地からこれが成果を上げるようにというのが私の第一の目的でございます。  なお、いままでいろいろ問題があったわけでありますけれども米国の具体的な考え方は全然わからないわけでありまして、ただ金額が七十五億ということを言っておっただけでありますから、第二番目には、何とかしてその米国の具体的な意向を知りたい、その次には何とかしてこれを解決する糸口がないか、こういうことでありまして、私は日本側の案を示すとか、あるいは考え方を示すとかという権限は全然ございませんし、私もそれは交渉上有利ではないということを知っておりましたので、一切日本側の考え方は言っておりません。ただ、でき得れば総理訪米直前に、この問題が長引けば長引くほど感情的に高まってきていろいろ摩擦が起きるから、米国の方も言い分を通そうとされては通らぬ、日本もまた米国の具体的な考え方は十分考えた上で解決しようじゃないか、こういう抽象的な話はしましたが、具体的な個々の問題については一切私は案も示さないし、考え方も示さない、ましていわんや譲歩などということは一切ございません。
  39. 田中寿美子

    田中寿美子君 前に牛場特使が行かれましたときは、アメリカとの間で四十億ドルあるいは五十億ドルの黒字解消――開放といいますか、ということを申し出たけれども、それに対してアメリカ側は賛成しなかった、だから不調に終わった。しかし、今回、園田さんが行かれて七十五億ドル――園田外務大臣経済問題は話をするはずではなかったけれども、すっかりそこにはめ込まれたというふうな報道がされておったわけですが、ですけれども、先ほどの話でありましたように、その七十五億ドルは開放の対象とするということについての大まかな合意をなさったということでしょうか。
  40. 園田直

    国務大臣園田直君) それは全くございません。私は、向こう意見に対してコメントは全然一言も発しておりません。ただ、七十五億という数字は、前々から言った数字をそのまま繰り返しただけでございます。
  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、きょう、東京ラウンドに関連して、発展途上国との関係の問題と、それから日米間の貿易の問題と、この二つの点についてお尋ねしたいと思っております。  去る四月十二日にジュネーブでなされた東京ラウンドの合意議事録についての仮調印ですね、これには九十九カ国のガットの参加国のうちの三分の二であるところの途上国八十カ国ぐらいがほとんど仮調印していない、アルゼンチンだけというふうに聞いておりますけれども、こういう状況では余り意味がないんじゃないか。だから東京サミットを成功させるためにはアメリカとの関係もよくし、一方、UNCTADに総理大臣外務大臣が行かれて、そして発展途上国との関係もちゃんとしてこなければならないというお考えで訪米の後UNCTADに行かれるんだと思いますが、マニラに総理大臣は行かれますね、行かれたそのときに、ジュネーブでは発展途上国はみんなあの東京ラウンドに対しては非常な不満を示しておりました、そしてあるいは途上国ラウンドなんというものを要求するんではないかというふうなことも言われておりますね。で、こういうことに対して日本は比較的中立の立場を保っていた、こういうふうに聞いておりますが、こういう問題に関しては、今回アメリカに行かれて、それから帰ってこられて間もなくすぐにマニラに行かれるわけですから、私たちは途上国に対する政府の態度というのを議論するのはきょうだけしかないと思います。それでお尋ねするわけなんですけれども、発展途上国に対して、いま持っている不満など、どういう態度で行かれるおつもりなのかということを伺いたい。
  42. 園田直

    国務大臣園田直君) ASEANの国々とは、私、外相会議に出まして以来、いろんな会議に出席する場合には、文書なりあるいは人を派遣をしてASEANの国々のその会議に対する要望事項を取り求めて度ず出席をいたす習慣をつけており、かつまた会議が終わったらそれぞれASEANの国々には報告をする、こういう習慣をつけておるわけであります。  そこで、サミットについては、具体的にはASEANの国々には人を派遣をして、サミットにおいてASEANの国々がそれぞれどういう要望を持っておられるか、日本に対してどういう要求があるか、こういうことを承りますということは通告をしてございます。したがいましてUNCTADに出席するのがサミットに全然関係ないとは言いませんけれども、今度のサミットではやはり、いろいろ議題がいま詰められておりますけれども、アジアで初めて開かれるわけであります。しかも南北問題が大きく変わろうとしております。それから開発途上国も単に自分たちの要望を言うだけではなくて、世界経済の中に自分たちがどういう役割りを果たすか、どういう地位にあるかという認識が深くなってきておるわけでありますから、したがいまして南北問題が今度のサミットの中の重要な議題となることは当然で、続いてエネルギー問題だと考えております。そこでUNCTADでは、御承知のとおりにASEANの会議でわれわれは共同基金の問題、これが非常に困難でありましたが、原則的にはまとまっております。それから、いまやられておる海洋会議の問題、その他いろいろ問題がありますので、マニラで開かれるUNCTADの総会には総理が出席をされて、就任以来初めてでありますからASEANの国々と語り合う、こういうふうに考えておるわけでございます。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 昨日の報道によりますと、インドシナ難民の救済に対して十億円の援助を出すということをUNCTADで大平首相が発表なさるというふうに報道されておりますが、それは事実でしょうか。つまり手みやげというような意味で持って行かれるわけですか。
  44. 園田直

    国務大臣園田直君) これはUNCTADの総会ではなくて、この難民対策について日本が立ちおくれてきておった、これは人道上の問題であり、かつまたこの難民の問題はアジアの安定を阻害する一つの要素になっておりますから、先般、総合対策を日本としては画期的で出したわけでありますけれども世界から見たら画期的な案ではないわけでありまして、これをさらに追加拡大しようということが一つ。それからインドネシアを中心、にしてASEANの国々が御承知のとおりに島を出してこれに一時収容所をつくろう、こういうことで各国に協力を求めているところでありますけれども、私としては、こういう場合には、思い切って施設費ぐらいは日本が受け持った方がASEANに対して難民対策にしてもいいんじゃないか、こういうことでどっかの場所でそういうことを打ち出してもらいたいと思っておりますが、マニラで必ず言われるかどうかはいまのところまだ決まっておりません。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本が国際経済協力が不十分だということを絶えず非難されておりますので、これもそれの一つの項目としてはいいことだろうと思います。  ところで、東京ラウンドが、さっき申しましたように、発展途上国が署名しないということであればほとんど意味がなくなってくるというふうに思いますが、途上国と言う場合に、日本にとってはASEANが一番重点でしょうけれども、ASEANだけではないと思います。途上国が今度の東京ラウンドに関して不満に思っている点はどういう点かということなんですが、一つは優遇措置が不十分だとか、これは通産省の方にでも具体的に伺いたいんですが、どういうことをそれじゃ途上国は具体的に要求しているかということ。それから例の選択的セーフガードという緊急輸入制限、これをEC諸国が相手国の同意なしに導入するということを主張している、そこで途上国とはその点では折り合いがついておりませんですね。そういう問題とか、それから関税の引き下げが今回全体に平均すれば三〇%ということになるということであれば、これまで優遇措置を受けていた発展途上国の関税率の目減りがあるということについての不満があるとか、それから、この議定書を見ますと、いわゆる卒業条項というのがありますね、これは一体どういう基準で、つまり途上国が一定程度の発展をしたらもうこれは卒業だ、だからほかの先進国と同じような扱いをしてもいいというふうにするんだというようなことの不満が述べられているということを私は承知しておりますけれども、具体的にそれじゃ途上国はどういうことを主張しようとしているのか、おわかりになるだけ話していただきたいんです。
  46. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まず関税でございますが、先生おっしゃいましたように、いま開発途上国が受けております特恵税率が今度の一般的な税率が下がることによって差が、目減りがするといいますか、少なくなるということはございます。  この点に関しましては二つぐらい要求が出ておりまして、一般的な関税を下げること自身は開発途上国としても国際貿易拡大という大義名分から反対はしておりませんけれども、引き下げる品目についてなるべく開発途上国の関心のある品目を一下げてほしい。たとえば日本はその要望にこたえましてエビの関税を下げたわけでございますが、こういつたことはASEANなんかでは非常に歓迎されたわけでございますけれども、そういった一般的な関税の中でも開発途上国に対する関心品目を下げてほしい。それから、これはガットの交渉ではございませんで先進国側が自主的にやるというたてまえになっておりますけれども、特恵税率そのものも内容的に改善して目減りした部分をできるだけ特恵税率の改善によって穴埋めしてほしい。これは東京ラウンド関係ではございませんで、今後の課題だと思います。  それから、開発途上国は、さらに、そういった特恵上の目減りもこれはやむを得ない面もあり、かつどうしても穴埋めができない面もあるんだけれども、関税以外の面でひとつめんどうを見てほしいというようなことを言っております。この点に関しましては、東京宣言が七三年に出されましたときにも、そういった措置をなるべく考えようという宣言がなされておるわけでございますが、それに従いまして今度のできましたコードの中でもいろいろな条項が織り込まれております。政府調達につきましても、たとえば技術的困難といいますか、規格の問題につきましても、開発途上国についてはいろいろその技術指導とかスペック等でわからないところがあればできるだけその内容を説明するようにということで、開発途上国がその恩恵をできるだけ受けやすいようにいろいろな工夫がなされております。ただ、その面に関して開発途上国はなお不十分であって、もっとたくさんそういった、少しの努力がなされておるということは認めていると思うんですけれども、これだけでは不十分だからもっとやってほしいという要求があることは事実でございます。  それから、先生のおっしゃいました卒業理論でございますが、この点に関しては、開発途上国と一口に言っても非常に開発のおくれているものから、もう開発途上国をそろそろ卒業してそれこそ先進国の仲間入りができる国もあるんで、そういった国は同じ開発途上国の中でもおくれている国を援助するとか、あるいはその他の面でも世界経済の運営にそれ相応の責任をとってほしいというようなことでございますけれども、おっしゃいましたように、どれだけの国民所得になったらじゃ卒業するとか、どれだけの輸出量があったら卒業するとか、そういうことは別に今度のガットで決められたわけではございませんで、いわば精神規定といいますか、努力規定になっております。しかし、この前のアルーシャ宣言におきましても、開発途上国がそういった考え自身が自分たちとしては受け入れがたいということで抵抗していることは事実でございまして、この点に関しては開発途上国と先進国側の今後の意思の疎通といいますか、お互いの理解を深める必要があるのではないか、こういうように考えております。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 それを伺っておりますと、たとえば中進国と言われるブラジルだとか韓国だとかいうようなところが一番卒業条項を適用される心配があるということなんだろうと思うんですけれども、そんなにたくさんの途上国がこれだけの不満を出していて、一体、東京ラウンドの意味というものは、これは途上国がこれに協力するだろうかどうだろうかという点はどういう見通しを持っていらっしゃいますか。
  48. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まず関税の方でございますけれども、関税の方は初めから開発途上国は何ら代償を出さなくてもよろしい、それで一般的な関税の引き下げを先進国側が行うに当たりましては先進国が下げるだけで、その先進国が下げた部分は先進国同士でなくて開発途上国にもそのまま均てんするということになっております。したがって開発途上国が参加しなくても関税引き下げの効果はそれらの国に及ぶわけでございますから、その意味では関税に関する限り差し当たって、その特恵の問題はございますけれども、これの引き下げを実施することの支障にはならないというふうに考えております。  それからコードの方でございますけれども、なるべくこれはコードに参加してほしいということでこれから呼びかけていきたいと、ガットの事務局長ロング以下も、事務局としても今後そういうことに努力をしたいと言っております。どれだけの効果があるかわかりませんけれども、UNCTADの方を通じてもこういった努力を先進国側もしているということを説明して、なるべく参加を呼びかけていきたい。  それから、先生が先ほどおっしゃいましたセーフガードの問題でございますけれども、この点に関しましては、おっしゃいますとおりに、開発途上国側がその選択的適用ということに関しまして大変大きな反対、強い反対をしておりまして、まだコード自身ができていない段階でございます。それで、この点に関しましては開発途上国と先進国側――先進国側も実は意見が一致しているわけではございませんで、相当分かれていることは先生御存じのとおりなんですけれども、なるべくそういった異なった意見をまとめたいということで事務局長も苦労いたしまして、妥協点を見つけるべくいま努力をしている段階でございます。したがいまして、その努力が成功すれば開発途上国も先進国側も満足できる形でセーフガードのコードに参加することができるようになるのではないかということが期待されている次第でございます。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、日本としては、仮に途上国がほとんど調印しなくても、夏に本調印をし、そして秋に批准する、こういうことですか。
  50. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) 現在のところのやり方は、この四月十二日、カバリングノートに署名したわけでございますが、そのときの了解は大体そういうことになっておりまして、これに従って、まだちょっと案文の法律的な整理が残っておりますけれども、それができ次第、各国とも正式署名をした上で、必要に応じ国会の承認等を含めまして国内の手続を終え批准をする。その間にも、各コード等はあけておきまして、いつでも開発途上国が参加できるようにしておくと同時に、その間、先ほど申しましたように、事務局及びその署名することに決定いたしました先進国並びに、先生も申されましたアルゼンチン等の国が他の国に対して参加を呼びかけていくということになろうかと思います。
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、日米間の貿易上の問題の方に移りたいと思います。  対米貿易のアンバランスですが、これは大蔵省の発表している数字と通産省のおっしゃっているのとちょっと違うような気がします、五十三年度の経常収支の黒字です。アメリカに対しては百十六億ドル、全体としての日本の経常収支の黒字というのは大蔵省は百二十億ドルちょっとで大変よくなったように最近発表しておりますね、通産省の方ば百六十六億ドルぐらいというふうに、それで、これはことしに入って国際収支は順調に推移しているというふうなことを政府は言っているけれども、実際にはまた黒字がふえる心配もあるんじゃないか、その辺はどうお考えでございますか。
  52. 安楽隆二

    説明員(安楽隆二君) ただいまの数字の点でございますけれども、国際収支統計は政府の方で統一してやっておりますので同じものでございますけれども、百六十五億ドルというのは一月から十二月までの七八暦年でございまして、それから百二十億ドルの黒字というのは七八年度ということで、そういう違いでございます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 時間があれですから、その点を少しあれするつもりでしたけれども飛ばしまして、今回、アメリカ側が日本に対して日本の黒字がどうしても減っていかない、それは日本の産業構造に問題があるんだということで、それでアメリカの対日基本戦略として挙げているもの、これは三月二十三日の日経で見たんですけれども日本は産業構造の中長期的な転換をするべきだ。その第一番には、住宅とか公園とか下水道とか、そういった社会的基盤を怠っているから、それが生産性の向上に結びつき輸出の方に向かってくるんだ、だからもっと社会資本を投資すべきだ。それから第二番目には、日本が十分に国際責任を果たしていない、経済協力費とか防衛費だとか、あるいは大規模開発、石炭の液化なんていう、そういうものにもつと協力すべきであるとか、それから日本の財政金融構造の硬直化を改めるべきだとか、農業の開放体制といったようなことを要求するんだというのがアメリカの基本戦略だというふうに伝えられておりますけれども、このようなことは大変日本の国内の政策に介入している発言だと思います。  大平総理大臣は産業構造の転換は日本日本として自主的にやるんだというふうにおっしゃっておりますが、園田外務大臣は、このような要求を、この間の訪米の際、聞いていらっしゃいましたんでしょうか。そして今度の大平訪米をスムーズに成功させるために、そういうアメリカの対日戦略はもっともだというふうにおっしゃったんでしょうか。
  54. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済問題では、貿易障害を取っ払えという話はありましたが、日本の産業構造についての話はございませんでした。ただ、日米両国が貿易のアンバランスを解消するためにどのようにやるかという経済運営、将来の基本方針について中期・長期の展望を日米首脳者会談で話し合うべきだという話は出ました。  そこで、私は、その際、長期・中期の展望、黒字、赤字の解消ということについては、ひとり日本だけでできるものではない、日本だけの責任ではない。したがって日本が何をなすべきか、アメリカがまた何をなすべきか、そしておのおのなすべき任務をなしつつ日米経済協力をして世界経済にどのように貢献するか、こういうことで考えていただきたい、こういう話をして帰ってまいりました。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただ、私は、日本経済構造の転換というのは、これは日本自身として考えるべき問題点だと思っ加おります。かねて日本は欧米諸国に比べましてストックの所得というものが私は劣っていると思う。住宅にしても生活環境施設にしても福祉型の経済に変えるべきだということは、これは私は異論がないんですけれども、それはアメリカに言われなくっても日本としてはそういうことをしていかないと長期的に黒字を減らすということは非常にむずかしいんじゃないか。  それで、実は、これは経済企画庁の方の問題ですけれども、新経済社会七カ年計画の基本構想というのを国会の当初に説明なさいましたですね。それであれによりますと、五十四年から六十年の中期的な黒字ですね、経常収支の黒字は百億ドルから八十億ドルぐらいということになっている。アメリカの側からすると、これではちっとも黒字は減っていかないじゃないか、それは基本的に日本の産業構造がおかしいからだということでこういう基本戦略を出してきたんではないかと思うんです。そこで、これはもしおわかりになれば伺いたいんですけれども、新経済社会七カ年計画の答申が三月中にあるはずだったのが延びておりますね。これはアメリカなどからそのようなことが指摘されて計画の基本構想を見直しつつあるんではないかというふうに私は想像するんですけれども、どうでしょう。閣僚として、外務大臣、そういうことはお聞きになりませんですか。
  56. 園田直

    国務大臣園田直君) 黒字の解消については、米国もようやく理解してきたのは、急速にこれが減るべきものではないということは大分理解をしてきたようでございます。したがいまして、今後、その方向に両国がどう努力をするか、こういうことでございます。したがって、いまの日本の内閣で決めた経済展望について見直しをする必要があるかどうかということは、今後、首脳者会談の結末によって決まる、このように存じております。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本経済社会七カ年計画に関しては、これは日本自身がやらなければならない問題だと思いますので、私はそれは経済企画庁長官に明日お伺いするつもりでおります。  そこで、日本政府調達の問題は先ほど秦野委員から大分出ましたわけなんですが、これは日本経済の閉鎖性のシンボルみたいになって、ここのところに集中して攻撃を受けているわけなんですけれども、いま電気通信機の本体を除いて中枢的な部分を開放する約束をしたというふうに、これは園田さんがなさったのかどうか、そういうふうに報道されておりますが、その本体を除いた中枢的な部分というのは、一体、どういう部分なんでしょうか、郵政省か電電公社の方がいらっしゃったら御説明いただきたいんです。つまり、どこのところを開放しようという話になっているんですか。
  58. 前田光治

    説明員(前田光治君) お答えいたします。  ただいまこの最終の案につきましては、外務当局の手で日米間で鋭意折衝が進められておりますので、この案の内容の詳細につきましては御理解の上御容赦をお願いいたしたいと思っております。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 その内容の詳細を言えって言っているわけじゃないんですけれどもね、その本体を開放せよということを向こうが要求している、その本体を除いて電気通信機の中枢的な部分と。私も図面をもらいました。後でこれは専門家大木委員から尋ねていただきますけれども、一体、その中枢的な部分とはどこを指すのか。それから、その中にはいわゆるノーハウまで含まれていくのか、そういうことも一切お答えができないということですか。
  60. 前田光治

    説明員(前田光治君) 私ども電気通信事業をやっております者にとりましては、この日米間の問題が高まりますまでに本体とか中枢とかという言葉は特段にございませんでした。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 なかったんですよね。
  62. 前田光治

    説明員(前田光治君) われわれは、公衆電気通信サービスといいますのは電話機から始まりまして伝送路、それから交換設備、そういったようなものが大きなカテゴリーになりますが、そういうものが全部つながって一体となって電話機に至るまでのすべての接続されたシステム、それ全体を電気通信設備というふうに考えておりまして、事実、その中のどこの部分が欠けましてもやはり電話に支障を生ずるわけでございまして、どこが中枢であり、どこが本体あるいはどこが不必要なものと、こういったような分け方というのは従来概念としてございませんでした。
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣がこの間行かれたときに、その本体を除いて中枢部分を開放する用意があるというようなことをおっしゃってきたのか。それでなければ、なぜそこのところから一体幾らの金額に値するものを開放しようとしているのか、そしてなぜそれならば、そのことのために電電公社の総裁が辞表を出さなければならないのか、ちょっと不思議に思いますので、伺いたいわけです。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が参りましたときは、先ほどから申し上げますとおり、こちらの意見は一切言っておりません。したがって本体を開放するとかしないとか、こういう話は一切してございません。帰りましてから、向こうの並べた要求を見ながら、こちらの方で、政府意見を調整をして、いま交渉中でございます。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 あちらでは言ってこられなかったけれども、いまこちらでそれぞれ関係する閣僚との間でそれじゃこのあたりまで開放はしなければならないんではないかという話になって、そしてそれの責任をとって公社総裁が辞表を出していらっしゃるんじゃないかと思いますが、それは郵政省か電電公社の方、どういうふうにお思いになりますか。なぜ出すんですか、辞表を。
  66. 前田光治

    説明員(前田光治君) 総裁が辞意を表明いたしましたことは新聞等に報道されておるとおりでございますが、その理由等につきましては、これは御本人の考えでございますので、私どもが強いてそんたくすることはちょっと遠慮さしていただきたいと思っております。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 何を聞いてもお答えにはならないわけですが、東京ラウンドですね、政府調達の開放ということが入っているわけですけれども、先ほど秦野委員も言われたように、アメリカの場合はATTというのは民間の企業である、しかもその発注のほとんど一〇〇%が子会社のウェスタン・エレクトリックに発注されている、だから、全然これは政府調達の対象とはならない。ECの方はどうかといいますと、公衆電気通信は国営または公営だから政府調達の対象にはなるけれども、しかし電気通信設備は除かれていて、随意契約になっているんですね。なのに、なぜ日本だけがそこのところを集中してそれを受けなければならないかということ。  それから、そのようなところを開放して、これは外務大臣に伺いたいんですけれども、そういうことで国民へのサービスが果たして確保できるのかということと、それからこういう通信というような非常に戦略的な機械の部分、それを開放して、一体、日本のナショナルインタレストが守れるだろうか、その辺はどうお考えになりますでしょうか。これはやっぱり政府部内での議論に参加なさっていると思いますね、外務大臣は。今度大平さんと一緒に行かれるわけで、そしてその立場は大体決めていらっしゃると思いますが、その辺はどうお考えになりますか。
  68. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) まず私から東京ラウンド関係の技術的面について御説明をしたいと思います。  先生おっしゃいましたとおりに、アメリカにつきましては、それが民営であるということで今回の調達体の対象としては取り上げていないわけでございます。西欧、特にECの内部につきましては、公社になっておるものもあれば中央政府の管轄下に入るものもあるということで各国によって若干事情は違うようでありますけれども、おっしゃいますとおりに、この面に対するオファーはなされておりません。それに対しましてECが行っております説明と申しますのは、各加盟国によってそれぞれ制度が違うし、国際ラウンドにおいてはECがまとまって一つとして交渉しておりますので、ECとしてはオファーができなかったというように説明しております。  それに対して、なぜ日本だけがと、こうなるわけでございますが、コードにおいては、政府機関とか、政府の直接監督するもの、あるいは実質的に監督するもの、または政府が指名するものというものが決められておりまして、その中に何を入れるかということは交渉になるわけでありまして、必ずしも全部が全部ここがこれを出したからこちらもこれを出すということで一対一の対応をするということではなくて、全体の規模が大体バランスしておるということを目がけて交渉する問題だと思います。それで先ほど大臣アメリカの提案は規模において約百五十億ドルに近くなっておるとおっしゃいましたけれども、ECもそれ相応の提案をしておるということで、日本に対してもっと出してくれという話が参ったという背景であろうかと存じます。
  69. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御質問の中の本体といいましても、これはなかなか向こうの言うのも大まかでありまして、あるいはメインという言葉を使い、あるいはオンラインという言葉を使っておるわけでありますが、この中の個々の調達体の開放というものは、事業業務に決定的な影響がないよう、かつまた公共サービスあるいは技術の低下、こういうものを配慮しつつ、日米経済関係の安定的発展という兼ね合いも考えながら、十分に対処していきたいと考えております。
  70. 田中寿美子

    田中寿美子君 電気通信機で大体二十五億ドルに相当する部分を開放するというふうに言われておりますね。で、それだけして、いまおっしゃったように、公共のサービスに差し支えないというふうに断言できるかどうか、それは後で私は大木委員に追及していただきたいと思います。  そこで、なぜアメリカがここのところに集中して日本にその電気通信機の開放を求めてくるのかということについてですけれども、たとえばどんどん日本の自動車がアメリカにいっぱい行って、そしてアメリカの自動車労働者の失業を招いたと同じような意味で、日本から通信機が入ってくるから通信労働者の失業を輸出するんだというようなことを言っているんじゃないかというふうに私思いますが、そのようなことをお聞きになりましたですか。
  71. 園田直

    国務大臣園田直君) そういう発言は承りませんでした。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣はお聞きになっていないかもしれませんけれども日本の電気通信労働者が向こうの通信労働者と相当接触をしているわけですね、その場合にやっぱり向こうはそういうおそれを抱いている。日本が失業を輸出するというのは、日本の黒字に関して鉄でも何でもみんなそういうふうに言われておりますね。だから、あそこのところを開放しないから、そこに集中してきているという感じがするんです。  それで、私は、黒字対策はさっきの中期的あるいは長期的な日本のもっとほかにいい対策を立てて対案としてなぜ話ができないんだろうかなと、そこのところを向こうが攻めてきたので、そこのところでそれじゃこれだけを開放しますという交渉になってしまっている感じで、つまりアメリカのぺースに入り込んでしまって非常に重要な情報産業、しかも大変戦略的な通信機械の部分を開放してしまうという危険を冒すんではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  73. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言の点は十分考慮してやらなきゃならぬと存じますけれども、開放と申しましても、これはアメリカから買うということではなくて入札を許す、こういうことでありまして、私は、入札を許した場合に、ほとんど大部分は日本の国際競争力が強くて米国の入札が実現するとは考えておりませんので、その点も考慮しながら両方面を検討してやっておるわけでございます。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 それではアメリカが非常に電気通信機に期待をかける意味が余りないということは知られているはずだと思うんですが、そこのところで私は想像いたしますのに、大変これは政治的次元の発想がある感じがする。  アメリカの通信労働者の組合といいますか、組織のその委員長のハルケンという人はカーター大統領のブレーンだそうですね。ですから、カーター選挙に向かって、やっぱり対日黒字に対する国民のふんまん、あるいはいらいらを、そこのところで、これだけ開放しましたよという政治的なマヌーバーをするというようなところがあるのか、あるいはそれだからそれに対して大平さんも協力してカーターさんにてこ入れをする、その努力をなさる、それに園田外務大臣協力していらっしゃるというような感じがするんですが、大変両方とも政治的な次元で、実は、中身を見たら、入札してみたらほとんど日本のものしか入らなかったというようなことになるというそのからくりがよくわかっているのなら、ちょっと非常におかしい感じがするんですけれども、どうですか。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) この問題が非常に感情的になり、かつまたその中でも政府調達のこの電電公社の問題が日本の市場閉鎖の象徴的なものだと見詰めて見られてきたことは事実であります。そしてその背景には、日本の黒字、アメリカの赤字、失業者、こういういら立ちがあることも事実でございます。したがいまして、これをこのまま放置するならばますます感情が激化をして、この問題はだんだんだんだん困難な状態になってくる、こういう判断をしたわけで、これに対するカーター政権政治立場を救うためにやっているわけではございません。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 多分にそんな感じがいたします。そういう向こうのいらいらが間違っているとすれば、もっとちゃんと中期的にこういうやり方で黒字は縮小できますよという積極的な案を提示すべきだと私は思うんですけれども、そういう努力の方がほとんどされないで、あそこの電気通信機のところの攻防みたいになっているのは非常におかしいと思うんですね。  ですから、私が政府に要望したいのは、これは外務大臣だけの問題ではないのですけれども日本にとって必要な本当の意味の長期的あるいは中期的な産業構造の転換、これをやりながら年次的にこういうふうに黒字をある程度減らすことができるという案を提出して向こうに納得させるということを努力していただきたいということと、それから大平さんが向こうに行かれる前にストラウス特使が見えますですか。これは両方が妥結したら、あるいは解決ついたらストラウス特使が見えるというふうに言われておりますが、ストラウス特使は来られますか。
  77. 園田直

    国務大臣園田直君) 中期・長期の展望で日本が具体的な方針を示すことは御発言のとおりやって大事だと思いますけれども、念のために申し上げますと、この黒字の解消も、単に日本ひとりだけの責任でもなければ、日本アメリカに公約すべき筋合いのものでもない。したがいまして日米両国が責任を分担してこれに対する具体的方法を検討することは今度の首脳者会談の一つ目的であると考えております。  なお、ストラウス通商代表が日本に来るか来ないかということは、いまやっております交渉の結果によって決まることだと存じます。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、いま両方に責任のある問題であることは当然のことですが、それでは攻防戦がいま電気通信機に集中しているときに、もっと説得できるような努力をし、そして対案を提示する用意をしていらっしゃるのかどうか、そんなようなことではもう向こう承知しないというような段階に来ているのではないかという気がして、もしストラウスさんが見えるときにはアメリカの言い分によって日本が譲歩したというふうに考えざるを得ないんですが、いかがでしょうか。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) ストラウス代表が来るか来ないかということは、いま申し上げましたとおりに、いま第一回の会談をやっただけで全然交渉見通しはついておりません。そこで、この会談で解決の見通しがつけば来日するでありましょうし、なければずっとこれは先に引き延ばす以外に道はない、こういうことでございますが、同時に、長期・中期の展望についてはこれまた両方政府でいま詰めているところでございます。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 簡単に短時間で解決するような問題ではありませんけれどもアメリカの議会筋というのは大変これはもうロビイストがちゃんと認められている議会でございますから、公然とそれぞれの議員が自分の選挙区の企業の利益を代表して働くという議会ですから、それを説得するということは非常に困難ではあると思いますけれども、私はもう少し積極的に日本の側のそういう積極的な提案と説得の努力をしていただきたいということを要望して、私の質問を終わります。
  81. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度として、午後零時三十分まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後零時三十二分開会
  82. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 大木正吾

    大木正吾君 秦野委員田中委員の御質問に関連いたしまして、私、東京ラウンド、特に政府調達関係について御質問したいんです。  一つは、東京ラウンドと日米通商貿易交渉ですね、この関係はどういうふうに理解すればいいんですか。余り長くしゃべらずに、簡潔に。
  84. 園田直

    国務大臣園田直君) 東京ラウンド交渉は、関税のみならず、関税以外の貿易障害についても軽減、撤廃を図ることを目的としておりまして、政府調達もその一環に取り上げられておるわけでございます。政府調達の分野は、今月十二日の東京ラウンド交渉の実質妥結までに日米間の合意が得られず、残された問題の一つとなっておるわけでございます。
  85. 大木正吾

    大木正吾君 先ほどの秦野先生の質問に対するお答え等に絡んで伺いますが、政府調達物品に関する東京ラウンドの国際規約、そしてその付属資料が手元にないわけで、いずれも後でもらいますけれども、この場合に、ECは余り日本に対して電気通信機器のことを言ってきてないわけですね。アメリカが盛んに言ってきているわけで、その辺についてはどういうふうに受けとめておられますか。
  86. 園田直

    国務大臣園田直君) ECの方では、いまこの問題を取り上げておりません。これはECの特別の関係もございますけれども、しかし、アメリカと話し合いがつけば、同等のことをECとも話をすることになるわけでありまして、ECの方では、特に対米関係とEC関係に差別をつけるな、こういうことをやかましく言っているところでございます。
  87. 大木正吾

    大木正吾君 八〇年代になりますと、情報産業、コンピューター関係を中心としまして国際市場が相当活発化することは展望としてはわかるんですが、ECの中で通信機器等を競争入札にしている国は余りないことは大臣知っておられますね。それで、なぜ日本だけがアメリカとの関係でこんなにごちゃごちゃやられなくちゃいけないんですか。
  88. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) ECの場合は、御案内のように、東京ラウンド政府調達のオファーといたしましては電気通信事業を除いております。これは一つにはECの加盟各国の間で必ずしも歩調がそろいませんで、したがってEC全体としては通信事業を除く、こういうことになったわけでございます。ただ、政府調達のオファーにつきましては必ずしも一つのセクターごとにオファーするということではございませんで、中央官庁その他関係機関を含めまして、全体としてバランスをとる、こういうことになっております。
  89. 大木正吾

    大木正吾君 そこで、長い質問をすると時間がなくなっちゃうからずばり聞きますが、現状としてEC関係はそういう状態で、スイス、スウェーデンぐらいしかないわけだ、開放しているところは。そういう中でECが先行き東京ラウンドに絡みまして、電気通信機器について競争入札という具体的な行為に入ってくることはあり得るの。
  90. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) ECの各国は、国によって違いますけれども、現在、いわゆる公開入札ではございませんが、指名入札というのは幾つかの国でやっております。そこでまた、この東京ラウンドとの関係で申しますと、実施後三年いたしましてから大きなレビューをする、再検討する、そういうことになっておりまして、そこが一つの機会であろうというふうに考えております。
  91. 大木正吾

    大木正吾君 外務省は、逆に、じゃ日本の品物をECに買ってくれと売り込むというようなことについても考えているのですか。
  92. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) 売り込みそのものにつきましては、もしわが国関係業界の方におきましてそのような商談の可能性がございますときは、当然、外務省あるいは出先公館を通じまして側面援助をするということは従来どおり変わっておりません。
  93. 大木正吾

    大木正吾君 現状を全部わかってこっちは聞いておるわけだからいいですけれども、とにかく東京ラウンドというものでは形はこういうものも競争入札制度となるでしょうけれども日本だけが袋だたきに遭うということではがまんができないからずっと聞いたんだけれども、いずれにしても三年たったって五年たったってECは簡単にはアメリカ日本のを買いはしないですよね、それはそれでいいです。  それで続けて伺いますが、電電調達の問題で、どうも中身がいつもいつも質問しますと交渉中だからと言って園田さんにすらりかわされちゃうんですけれども中国との交渉のときには園田さんはエンジンを鳴らして待っているのだ、こういうふうに答えていましたね、予算委員会で。ですから、こういう問題について具体的な品目がどうも出てこないんですけれども、A新聞に出ました四月二十一日の記事はある程度信憑性がございますか。朝日新聞のトップだから見ているでしょう、だれかね。
  94. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) いま先生おっしゃいました折衝中ということで常に答弁を避けておるということでございますが、大変申しわけございませんが、今回もたまたま折衝中でございますので、詳細につきましては御説明を差し控えさしていただきたいと存じます。  ただ、ここの見出しに書いております「通信機器本体の一部含める」ということは従来少なくともやっておりませんでしたので、その意味ではさらに新しいオファーを出すという時点でこのような可能性を検討したということは事実でございます。
  95. 大木正吾

    大木正吾君 検討したということでございまして、このA新聞の記事は信憑性は薄いということですか、十四種類の機材……。
  96. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) その点につきましては、大変申しわけございませんが、ちょっと現在の時点では確認を差し控えさしていただきたいんでございますが。
  97. 大木正吾

    大木正吾君 秋草総裁が結局辞表を出したということはそういったことと関係が深いと思うんですよね。私が総裁であったって、これは別に電電セクトとか、日本のナショナルインタレストだけの問題じゃないと思うんで、こういったものを買ってきて地震や台風があったときに本当に国民の生命なり情報等が守り切れるかどうか、そういう自信がないから秋草さんはやめる意思を表明した、こういうふうに私は見ておるわけだ。新聞も同じに書いている、同じ日の新聞だからさ。だから、こういう問題についてアメリカの方では国会で相当激しくやっているのに、日本の方では交渉中だからお待ちなさい、お待ちくださいではこれは困るんですよ。大臣、もうちょっと何かこれは具体的にどの辺までどうなっているんだということを言ってくれませんか。
  98. 園田直

    国務大臣園田直君) いま大木先生が言われたのは四月二十一日付の朝日新聞ですね。
  99. 大木正吾

    大木正吾君 そうです。
  100. 園田直

    国務大臣園田直君) この内容はこれをこのままだと申し上げるわけにいきませんけれども、大体、これに書かれた記事というものは見当はつけているようでございます。
  101. 大木正吾

    大木正吾君 名前は出しませんが、自民党通信部会のある方の御講演があった模様でございまして、その際に記事になりまして、秋草総裁は、これではおれは総裁の仕事はできないとこう言って、国民にサービスが保てない、保証できない、こういう気持ちでもって、政府に盾突く気持ちはないけれどもということで辞表を書いた、こういうふうに大体いきさつを伺っているものですから、ちょっと聞いたんです。  話を変えますが、これからが本論なんですけれども、ちょっと外務大臣にこんなことを言うのは悪いんだけれども、ここに電電の流れを書いて持ってきたんですよ。それで、これはちょうど東京から大阪でもいいですし、大臣の熊本でもいいですけどね、大臣のお宅から熊本まで行く場合には、お宅のうちの近くの電話局に行きまして、それから東京の市外局に行きましてマイクロウエーブに乗っかって大阪へ行きまして、それで大阪の市外から今度さらにまた行くわけですね。調べてみますと、この東京でもって外務大臣と私が電話で話をいたしますと、私のうちの杉並と大臣のうちの電話局へそうやった場合、大体二百か三百ぐらいの接続点があるんですね。ですから、よく子供時分私がやったんですがね、電灯をぱっと引っかけて盗んできて、そしてやみに電灯を光らすなんということじゃ電電の仕事はできないわけですよね。外務省の方はこういうことを知っていますか。
  102. 園田直

    国務大臣園田直君) いま折衝中の案をそのまま申し上げるわけにまいりませんけれども、本体の一部を含んでいることは事実でございます。そこで、その本体の一部が開放された場合に、いまのような全国的な組織に影響があるかどうか、こういうことはこれはわれわれは技術的にはわからぬ、正直に言うわけでございまして、これは米国の方のストラウスもまたわからぬわけであります、話してみても。そこで、これは技術的に検討していただいて、そしてこれを入礼に入れて決定的な影響はないものかどうか、政府内の政策調整の責任者は官房長官でございますから、官房長官が中心になっていま交渉している案はまとめたものでございます。
  103. 大木正吾

    大木正吾君 心配なことは、大きな課題で二つあるんですよ。  一つは、さっき秦野さんがおっしゃったことなんですが、検査がやかましいわけですよ。日本の車は大体左ハンドルでもって全部輸出用のやつはつくって出ていくでしょう。ECも最近は日本に持ってくるやつは右ハンドルに若干直してありましてね、アメリカだけはのほほんとして左ハンドルでもって持ってくるわけですよね。ですから、こういった精密機械の場合、検査を十分しませんと故障が起きるわけです。検査のときに全部だめになってしまう心配があるんですよ。そうすると、日本外務省、また国民全体がアメリカに対して信用失墜なんですね、私はもう目に見えていると、そう見ているし、外務大臣も、どうせその指名のときに検査に合格しないものだから、追っ払うからいいじゃ、ないか、こういう気持ちじゃないですか、そうじゃないですか、その辺はどうですか。
  104. 園田直

    国務大臣園田直君) 米国で電話機あるいは交換機の故障の場合に直した、そしたら直った、よく見たら日本の沖電気の名前がついておったということで、技術から言っても、それから国際競争力から言っても、私はいまは入礼を開放したというだけではアメリカの品物が中に入ってくるということはあり得ないので、かつまた、仮に開放いたしましても、そういう重要な場所に阻害を来すようなものであれば、指名入札であれ仕様書が渡るわけでありますから、その点は最小限防げるのではなかろうかと素人ながら考えておるわけでございます。
  105. 大木正吾

    大木正吾君 これは例が悪いんですけれども、たとえば西武ライオンズという野球の球団があるでしょう、それから近鉄バッファローズという野牛の何か名前を使っている球団もあるわけですね。大体、獅子、ライオンとバッファローがけんかしたら腹をかきむしって、食いちぎって獅子は勝つわけですね、普通の場合には。ライオンズは十三回やって一回も勝ってないわけです、いまのところ。わかりますか、言っていることは。フロリダのキャンプでどんなにホームランを打ったって日本に来たら湿気が多いからだめなんです、結局は。広岡もだめなんです、ヤクルトのね。  だから、私が一番心配しますことは、外務省の方々に、経済局長ぐらいは特に電話局に入ってみてもらいたいです。いまこういう服を着て入っていくでしょう、そうしたら、いまはそれほどひどくないですが、夏入っていったときにはそれはもう寒くて大変なんですよ。冬行ったら、全部半そで着ましてやっていて、それでとてもじゃないけれどもやっぱりまだ汗が出るぐらいですよ。要するに、もしもアメリカのウエスタンか何か日本に上陸しまして合弁会社を日電とつくられて、日本の土地でつくった交換機、電話機、そういうものなら使えるかもしれませんよ。しかし、仕様書をつくって綿密に持っていかせまして向こうでつくったものを日本でもって故障なしにいけると思うと大間違い。そこのところはちょっと自動車とかオレンジ、牛乳と違うんですよ。  そういうことをよく調べた上でもって外国へやってもらわないと、後でもって外交的にいわば信用を落とすか、コストの高いものを国民に売りつけるか――一番心配なことは地震、台風。台風は毎年あるんですから、台風のときに通信網が寸断されたらどうもならぬですよ、部品がなかったらどうしますか。私は電電のセクトはけしからぬと思いますよ。しかし、国民生活に密接な関係があるものが、いま故障状態は、日本の場合、平均しますと電話機は十四年間無故障なんです、アメリカは三年から四年に一回故障しているんです、そういったデータなどを集められて持っていっているかどうかね、その辺ちょっと教えてください、危なっかしくてしようがないですからね。
  106. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) 御指摘のように、同じ機械でも確かに使う場所によりましていろいろ違うということは、今回の交渉を通じまして私どもも勉強をさしていただきました。  そこで、今回、政府調達のコードに入って、その関係日本アメリカの間で適用するということになりますと、当然、アメリカの企業に対して競争に一枚加えるという措置は必要でございます。ただ、その場合に、まず第一に、当然厳重な資格審査ということが行われなければならないわけでございまして、この点はコードの上でも認められております。また、単に仕様書を出してそれだけで日本側がそれを受け入れなければならないということではございませんで、たとえば電電公社の方が、これについてはさらに厳重なチェックが必要であるというお考えでございましたら、それは応札の一つの条件とすることは当然しなければいけないと考えております。そのようなかっこうで、ただいま御指摘になりましたような御心配、このようなことが起こらないようにできるだけ努力をする必要がございますし、その点につきましては外務省としても最大限協力をしたい、こう考えております。
  107. 大木正吾

    大木正吾君 二つの問題に対して答えになっていないんですよね。さっき秦野先生も御質問されたけれどもアメリカの自動車がなぜ六十五億ドル対一億ドル弱かという問題の一つには、やっぱり日本の自動車の規制問題とか官庁の事務的な税関の手続とか、つくり変えをしろとか、そういったことがやっぱり響いて相当に量も減っていることは御承知でしょう。いまあなたはそううまくおっしゃるけれども、もっと精密な機械ですね、電電の場合には。あなたのおっしゃるみたいに検査をします云々でいったら、秦野さんが指摘したとおり、これはもうとてもじゃないけど二十億ドルはおろか、アメリカものを使えるものは本当に少量になってしまうんですよ。だから、ここでもって大統領選挙を控え、解散を控えて日米両首脳がいいかっこうをしようということぐらいでもってお茶を濁すんであったら、国民の生活に響くんだから、もうちょっときちっとした話をやるべきなんです。  だから、そういった問題についてもう少し考えてみてもらいたいし、大体、日米通商のこの赤字というものは自動車、鉄綱でしょうが。そういったものに対する、自由貿易だからいいとは言いながら、少し出っ張ったところを整理するとか自主規制するとか、そういった中で十億ドルぐらいすぐに変わってくるし、また円安問題でもってこれはどう響くかわからぬけれども、最近の新聞論調は毎月毎月貿易収支の黒字が減っているという報道が出ているでしょう、そういったこと等を考えて、この辺の電電調達物品との、バランスを余り焦って変な妥協をしてほしくはないんですよ、焦ってね。ですから、かっこうをつけておいて中身はどうするかということはまだ二、三年はかかる話だろうから、その辺抜かりなくやってもらいたい。これは大臣にはっきり答えてもらいたいんですがね。
  108. 園田直

    国務大臣園田直君) 精密機械、電機等で、私、技術は素人でありますけれども、湿気、温度その他、非常な特殊なその地域のものが微妙に影響することはよく理解できます。ヨーロッパの話が先ほど出ましたが、ECに日本の電機業者が入札を握ったことや、あるいはフランスが高く評価をして、日本の技術を入れた合弁会社を向こうへつくろうという計画等もしましたことも、いま大木委員発言されたとおりであります。その点、門戸を開放した場合には、十分これに対する対応の策は技術者当局と十分討議をして講じなきゃならぬと考えております。
  109. 大木正吾

    大木正吾君 その辺は十分に外務大臣心得てやっていただけるということを期待をいたしておきますが、これはきょうの委員会だけでなしに、通産の委員会でも逓信委員会でもやらしてもらいますけれども、できればやっぱり政府内部にもう少し――総裁が辞表を出したことは、まああいつも古いからやめてしまえばいいじゃないかというようなものではなしに、なぜということですよ。要するに自分じゃないですからね、これは。国民あるいは国にとにかく責任が持てない、あるいは国民に迷惑をかける、こういう気持ちでもって出した辞表だから、あっさり受け取ることも結構なんだけれども、その中身をもっとしっかり外務省は知ってもらわぬと、何かあいつかっこうをつけて牽制した程度でもって終わったら困りますから、その辺ぜひお願いいたします。  それから最後にもう一つ伺いますが、これはちょっと雇用関係の問題でございますけれども、大体、大臣、六十億ドルぐらいに相手は必ず言ってくるでしょう。中央官庁関係三十五億ドル。これは江崎さんにも聞いたんですけれども、中小企業はわいわい騒いでたいけれども、大体三十五億ドルは中央官庁の買い入れる品物でしょう。そうすると自衛隊被服なんかも入るのかもしれませんが、仮にテーブルとかいすとかあるいは消耗品、備品、そういうものをやっているのは大体三割ぐらい中小企業なり零細ですよね。そういった方々は騒いでないけれども、七千七百億円の納入物品がなくなったら、この中小企業はぶっつぶれますわね、そういったことを知っていますか。これは電電の問題だけやっているわけじゃないですからね。  それから、あわせて申し上げますと、電電関係の関連だけでもって十一万人の私の計算でもって失業者が出るんですよ。いま申し上げた中央官庁関係でいきますと約九万人ぐらいいきますね。二十万人前後失業者が発生するということについてお気づきになっているかどうか。日本の車が行ってアメリカでもって失業者をふやしたならば、アメリカから電電物品とか官庁調達を買って、関係労働者二十万人失業者が出る。そういったことは余り新聞記事にはしてくれませんけれども外務省関係ないと言うかもしれませんけれども、これは非常に大事な問題ですから、そこのところはお気づきになっているかどうか、対策があるかないか、ちょっと聞かしていただきたい。
  110. 園田直

    国務大臣園田直君) いまいろいろ意見を求めております意見で妥結いたしまして、ある程度の開放の金額が決まります。その金額どおりにアメリカの品物が入ると私は考えておりません。しかし、これによって何らかの雇用問題あるいは関連産業、特に下請企業等に影響がある場合のことは、これは十分考慮する必要がありますので、これについては、第一には、そういう企業に国際競争力をつけるような政府の策、続いてそれに影響を受けてその産業が苦しいような場合の援助の策等は十分考えて、大きな摩擦や混乱を起こさないように十分配慮していく必要があると考えて、その意見は言っているところでございます。
  111. 大木正吾

    大木正吾君 これは社労に出してもいいんですけれども、この委員会でもぜひ理事会でも相談してもらいたいんです。やっぱり総理府なり外務省、労働省、通産省、郵政省ですか、そういう関係省庁で、外務大臣ね、これがもし決まった段階で、さっき申し上げた外務省経済局長さんも電話局に入って見てもらいたいんだ、ぼくらね。やっぱりわかりますよ、どんなに細かい機械が動いておるかということね。  それから、やっぱりいま言った雇用問題とか倒産問題が出てきますから、ちょうど円高問題で騒いだときとか石油ショックと同じですから、産業構造にも絡むし、失業にも絡んできますから、省庁を横断しました対策委員会的なものをつくらないと、あっちこっちで、この国会の答弁だけをのらりくらりかわせばいいというものじゃないですからね、そのことを六月のサミットの前後から私は政府内部につくってもらいたいと思う。田中官房長官にも言っておきますから、ぜひそのことはお願いしておきたいです。  最後に、こういうこともぜひ、外務大臣、頭に置いてほしいんですが、これはヨーロッパのロンドン「エコノミスト」の記事なんですけれども、約十年たちますと、いま三百四十億ドルぐらいの通信関係の機器のシェアが六百五十億ドルぐらいにふくらむわけでして、国際競争も激しくなる、こういう記事がありまして、そのうちアメリカのITTとウエスタンでもってシェアの三七%を占めているんですよ。日電が日本では最高で四%なんですね。ですから、これはずっと見ていきますと、相当八〇年代に入って国際競争が激しくなりますね。  私、お願いしたいんですが、航空機を日本ではつくる能力がありながらもつくらずに遠慮しておる、アメリカから買った方が安いという感じでいるわけですね。石油と核問題を含んだエネルギーアメリカがほとんど押さえているわけでしょう。コンピューターを押さえられたら、古くさい船から、あなた今度自動車はもう古くなっちゃうんだから、一体、八〇年代の日本の産業の中枢なり発展方向はどうなるんですか。私は大臣か長くいることは期待しておるし、これからもいてもらいたいんですけれども、やっぱりそういった戦略産業の日本的に持てるもの、日本石油を持てませんから、航空機はやればできるわけですから、国が援助すれば。しかし、コンピューターは現にあるんだから、そういったものについて、やっぱり未来産業の中で日本人が生きる道をどうすれば生きられるかについて、せひ世界経済を含めた外交政策の中にしっかり織り込んでおいてもらわぬと、園田外務大臣はいいことをやったということだけじゃなしに、あの人は日中関係でいいことをやったけれども、この方はまずかったでもって歴史に残っちゃうわけですから、りっぱな大臣だから、そういったことを、最後に、私は方向を見誤らないでやってほしいことを申し上げて、時間ですから終わります。
  112. 戸叶武

    戸叶武君 私は、現在の政府の基本政策、外交が乱れに乱れて、何か中心がない、主体性が確立してない状態を見ると、ちょうど満州事変、シナ事変、太平洋戦争へ突入する前の一九二九年から三〇年にかけての混迷期と同じような非常な危険をはらんでいることを感ずるのであります。  きょうも元号の問題が衆議院を通過するということでありますが、多数によって、数の力で押し切ることができる、これは民主主義の一つのルールみたいになっておりますが、民主政治の基本的な哲学というものは、やはり主権者が人民である、国民が納得できるような明るい開かれた対話を通じて、そうして結論を導くということが基本理念であり、また民主政治の核をなす一つの内閣制度の運営におきましても、国会が国の最高の機関であり、内閣は行政の最高機関にすぎないんだが、行政の膨張によって、内閣そのものに中心的な一つの見識が総理大臣なりキャビネットにおいて持たれないときには、始末に負えないものになって今日のような混迷を招いているのであります。  具体的な一つの事例をすれば、元号の問題でも、外務大臣にこれを一つの例としてお聞きしますが、日本と外国との間の条約や何かは西暦でもって書かれているのであります。それにもかかわらず、日本の国内においてはそれが西暦では書かれないで、日本特有の一つの逆戻り的な元号を法制化するというような形は、これは慣習上から言っても国際的な通念から言っても、ここに非常に矛盾が内在すると思うんですが、こういうグローバルな時代、世界の中の日本としての外交というものがきわめて重要なときに、そんなアナクロニズムの一つの元号の取り扱いというものを日本が容認したときには、諸外国においては、また日本がちょんまげをつけて帯刀御免になってしまったのかと不思議がられると思うんですが、そういうふうな形の常識なり通念というものに対して、余り窮屈じゃなくて常識的な判断において――常識が真理なんです、最高の。園田さんはなかなか常識よりも良識家のようですが、そういう点においてどっちが便宜か、どっちが世界に笑われないか、ひとつ御感想を承りたいと思います。
  113. 園田直

    国務大臣園田直君) 個々の問題については、私も自民党から出ている閣僚でありますから発言を避けますが、外交を進めるについては国際通念に基づいてやるべきであると考えます。
  114. 戸叶武

    戸叶武君 名回答です。国際通念において外交をやっていくと言うならば、国民がいままで日常使っている慣習化された通念に、なぜ日本においてはそれに対応しないのか。そこいらに外国と日本で使い分けをする日本の二刀流というのじゃ――宮本武蔵の二刀流ならわかるけれども、ちょっとわかりにくくなると思いますが、園田さんの通念ではどうでしょうか。
  115. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省は国際的な交際をするのが主要な任務でございますから、国際社会をにらみながら外交を進めていきたいと存じております。
  116. 戸叶武

    戸叶武君 その辺でいいというわけじゃない.が、園田さんを余りいじめてもしょうがないから、そこいらでチョンしておきます。  きょうは、上智大学の渡部教授がコンスチチューションの意味について一つの追求をやっております。やはりコンスチチューションの理解というものが、西洋的な意味における憲法、特にイギリスの伝統的なものとアメリカ、また日本においても、相当違うんでありますが、日本は、明治十五年に、デモクラシーや議会民主主義の運営ということに教養も見識もない伊藤博文という男がビスマルクとカイザーにだまされて、とにかく議会において野党に軍事費を否決されたときにまことに困るから、軍事費を否決できないような――ドイツ憲法からいろいろなものを学んでもいいが、それをさせないような統帥権というものを挿入しなけりゃならないと言われたら、何にも知らない無教養な伊藤博文という男は小躍りしてこれを日本憲法の中へ差しはさんだんです。  それで日本における議会民主主義というのは名ばかりで、全く目が開かれてない民主主義で、民々と言いながらついにあのようなぶざまな敗北をやり、それで全面降伏をやり、天皇自身も泣いて人間宣言をやった。政治というものは指導性と同時に責任感というものがあるんですから、それと分離できないんです。当然、あのときにおいて天皇がみずから自分を処断しなければならないような窮地に立たされたのは、軍部官僚が天皇を利用しての統帥権という形において、明治憲法で、憲法という名ばかりで、事実上における責任内閣制というものを成立させないところにあったんだと思うんです。  そういう意味において、いまこそわれわれは憲法とは何ぞや、国家とは何ぞや、ガバメントとは何ぞや、責任内閣制とは何ぞや、国会の機能とは何ぞやというのをもっと追求しないと、ばらばらに総理大臣に各省の大臣が任命せられて、あっち向いたり、こっち向いたり、ちょろちょろ歩いていて、そこに統一のない一つ外交なり貿易がなされていく。こういうところまでくると収拾がつかなくなると思うんですが、どうやって今後においては交通整理をやっていくつもりですか。やっぱり政治というものはコントロールというだけじゃなく、アナーキーな状態の貿易なり経済なりに対して一定の方向づけをやるということが政治の中における一番重要な指導性と責任感との不可分な関係だと思いますが、特に外務大臣の置かれている立場というものは重要と思いますが、通念としてどういうふうに考えておりますか。
  117. 園田直

    国務大臣園田直君) 国の政治のあり方というのは、各国ともそれぞれ立場は違い、方針は違っておりますが、一つの方向は持っておると思います。そればやはり憲法というものを大前提としながらあくまで平和の追求、そしてまた世界各国の人々が平等に繁栄をしていく、こういう一貫した方針のもとに進めていくべきであると考えております。
  118. 戸叶武

    戸叶武君 お答えはお答えとして聞きおくことにいたします。  そこで、問題は、最近、いま裁判にかけられている田中さんのところに――田中さんというのもアメリカのニクソン級の達者な方でありますから、ハワイ会談以後いろんな疑惑も持たれておりますが、そういうのに対して日中平和友好条約の橋渡しをしたのは事実上において田中さんだという敬意を中国側が披瀝するのもよろしいでしょう。またキッシンジャーさんがハワイ会談で田中さんが大変苦しんでいるが、これに対してはアメリカ側も道義的責任なしとしないと思われる意味において訪ねるのも一理があるでしょう。しかしながら、いま日本政治的なモラルとして、このような外国の元首級の人々の行動というものを、要人を抑制する必要なしという日本独特の自由が存在するんですが、一般の受けとめ方は非常にここに混乱が生じていると思いますが、あなたの通念ではどういうふうに受けとめていますか。
  119. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も御発言のとおりだと考えております。
  120. 戸叶武

    戸叶武君 私は、日本にはやはり自主的な道義的な責任感というものが政治の中に貫かれないところにいまのような混迷が行われているんで、三権分立と言っても内閣に打撃を与えるというので、吉田首相は指揮権発動をやって、これを抑えました。あれ以後において、日本の司法権は独立しているように見えるけれども、司法の要人であった人たちが今度は問題が非常に政治的に絡まった日本の要人の弁護を引き受けるというような事態が平然としてなされている。これは弁護士としての商売からやむを得ないという形でしょうが、三権分立というのは法理論的な形式論でなくて、道義力というものがそこに表現された形において法の権威というものは保てるんですが、道義的な一つのモラルを失って形式的な普通の弁護士なり計理士なりが行っているような形において、国の枢要なる地位にあった者がいまのようなうろちょろした態度をやっておって、国民に道義を説くことはできなくなるんじゃないかと思いますが、こういう問題に対してはどういうふうに考えておりますか。
  121. 園田直

    国務大臣園田直君) 非常に大事な問題で、お説のとおりだと考えております。
  122. 戸叶武

    戸叶武君 これは総理大臣に尋ねるのが本当でしょうから、この辺で打ち切ります。  大平・カーターさんの対話において、日米エネルギーの協調、特に首脳会談で原発の安全性の共同研究というものに重点を置いて、話がそこから入っていくかのように二、三の新聞は伝えておりますが、さようでございましょうか。
  123. 園田直

    国務大臣園田直君) 首脳会談でもサミットでも、エネルギー問題、それから南北問題等は重要な課題の一つであると考えております。  エネルギー開発について日米間にはいろいろ話し合いが進められております。その前提として先般のスリーマイル島の事故というのは、これは世界的に核エネルギー開発について非常な停滞を起こす、一九八五年資源の危機だと言われているのが数年早まってくるという気配さえあるわけであります。核エネルギー開発のための軽水炉を中心とするいろんな施設に対する安全確認という問題は話題の一つになるかもわからぬと考えております。
  124. 戸叶武

    戸叶武君 キッシンジャーさんもSALTの話し合いがまとまるというような見通しの上に立っていろいろな講演もなされているようですが、私は、やはりアメリカソ連がもっとみずからが自制して核兵器を使わないように、戦争手段に訴えなくても話し合いで物事はどんな難問題も解決がつくという範を示さないと、ソ連アメリカに揺すぶられて、人工地震のような危機をつくられて、やたらに要りもしない軍用機や何かを買わせられてしまうのでは、いろいろのところに不安が拡散してかなわないと思うんです。  いままでのアメリカの極東政策におきましても、この間、シカゴ大学の著名な学者が来て一緒にお話ししたことがありますが、話を聞いていると、日本が軍事力をもっと強めて、ドルが余っているぐらいなんだから、そうして特に軍用機を買わなけりゃならないようなお話で、前には政治家と大企業のやり手がセールスマンであったが、このごろはアメリカから実証主義と称しながらも、きわめて具体的な国際関係学者と称するような人たちの言動もセールスマン的になり、フォード前大統領もカーターのやったやり方は間違いである、ある者はキッシンジャーのやり方がそもそも間違いである、日中平和友好条約を解消して台湾も認むべしというような、まあいろいろな、日本は自由だからあらゆる放言は許されるので私たちもこれを楽しむことができるのですが、こういう外国の要人が往来して日本の世論形成の中に揺すぶりをかけていく状態というものは、ニクソン、キッシンジャーもどこまで深入りしていたかわかりませんが、ハワイ会談以後における奇々怪々な一つの出来事だと思います。  こういうふうに、ジャーナリズムも、自由であるから、書くのも自由、書かないのも自由と言うけれども、このごろ競争が激しくなるほど書き得というので書きます。しかし、それが情報化時代において世論の形成に役立ちます。そういう形のときに、日本ではこういう野っ外し、ソ連に行っても中国に行ってもアメリカに行っても日本ほど言論の自由はない、こういう状態であります。こういう雰囲気の中で、日本の国会議員と称する者も、一部のアメリカの農作物の売り込み、肉の売り込み、果物の売り込み、飛行機の売り込み、そういうものに揺すぶられ、わっしょわっしょとお祭り騒ぎをしていったならば、一体、どこの国籍、  どこの利益を擁護しようとして皆さん方が騒ぎ回っているのかわからなくなると思うのです。  そういうことが最近においてでも、たとえばオレンジの問題でも牛肉の問題でも酪農製品の問題でも魚の問題でも全部あらわれていると思うのですが、日ソ漁業協定の関係は後で質問しますが、ニュージーランドの外務大臣が昨日来て、いろいろ議連のメンバーで話し合いをしましたが、外交的にそれほど苦い経験を持っていないでイギリスに依存したニュージーランドとして、現在は、イギリスよりもアジア・太平洋時代が来たというので日本寄りに傾いてきたときに、人口三百万というと静岡県程度の国ですが、その国の要請には無理もあるし、いろんな点でこれを譲ればこうだという点はありますが、現状況において、ニュージーランドもアジア・太平洋時代だと言って、三番叟は三木さんも福田さんも花道からおっこちるほど演出をやりましたが、中身が一つもないじゃないかというのがこの太平洋諸国の嘆きですが、園田さんはどういうところから根をつけていこうとしておりますか。
  125. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりに、ニュージーランドの副首相兼外務大臣が参っておりまして、昨日は約三時間ぐらい会談をいたしました。今夜もまた会うことになっておりますが、日本がアジア地帯の平和を維持し繁栄を図るためには太平洋地域の国々はきわめて大事でありまして、特に南太平洋は小さい国々がそれぞれ独立をした国がたくさん出ておるわけでありまして、ニュージーランドを初め、こういう国々は今後アジア・太平洋地域としてきわめて重要であるという日本関心を率直に私はニュージーランドの副首相に伝えたところでありまして、ニュージーランドを初め、こういう南太平洋の小さいと申しますか、人口、面積の小さい国々は今後日本にとつてきわめて重要であり、その重要性はますます増してくるということは御発言のとおりだと考えております。
  126. 戸叶武

    戸叶武君 昨年でしたか、中川農水大臣とマルドーン首相との会談において、学校給食の脱脂粉乳をニュージーランドから買い上げて、日本が発展途上国に買い上げる資金を継続的に出したらどうかというのに、七八年にはたしか十一億五千万円ぐらい買い上げたのだと思いますが、七九年には目下検討中ということでありますが、これは前向きに検討なんですか、ただ単に検討中なんでしょうか。
  127. 園田直

    国務大臣園田直君) これは実質的に年々ニュージーランドと日本の貿易は増加をいたしておりまして、わが国が過去三年間はいずれも入超でございます。前向きに検討するということは実質的にこれは検討していくつもりでございます。
  128. 戸叶武

    戸叶武君 松材を建築用材として輸入したいということであり、また、その関税も引き下げてもらいたいということですが、日本政府は共同試験の必要があるという点にしぼって技術上の問題としてそれを取り扱っているようですが、七九年の十月までには結論を出すという約束をしている模様ですけれども、十月までには結論が出るのでしょうか。
  129. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいま日本側から専門家向こうへ参りまして調べました結果を検討しておりますので、ただいま御質問のとおり、この秋までにはその結論を出し得るものと考えております。
  130. 戸叶武

    戸叶武君 二百海里時代が到来して、ニュージーランドの海岸に住む人は、日本の漁船が来て、イカ釣り船なんかがずうっと無数に来て海岸でイカや魚をとっているのを見ると、自分の国の領域にまで入ってきて、あのように日本人がとっていくあの魚なりイカなり、こういうものを、いままで酪農製品や肉を食べている習慣になっているけれども、この資源を、ほかに資源が乏しいニュージーランドとして、肉も買ってもらえない、酪農製品もアメリカ並みに余り買ってもらえないというからには、この辺でひとつ何とかニュージーランドの利益を守らなければならないという考え方がある模様でありますが、二百海里時代の到来に対応して、向こう側ではすでに合弁会社を七つほどつくり、加工を中心としたもの二つ、沿岸漁業開発一つ、イカ釣り三社というふうになっているそうですが、その合弁会社の実績というものは相当な実績を上げているのでしょうか。
  131. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ニュージーランドとの漁業の面におきます合弁会社、合弁企業の概要は、昭和四十二年九月に大洋漁業が沿岸定置網につきまして合弁事業を開始いたしましたのが最初でございまして、その後、年を追いまして、ただいま仰せのとおり数件の合弁事業がイカ釣り、その他水産物加工等におきまして合弁事業の実績を上げておりまして、今後さらにいろいろニュージーランドの方でも合弁事業をやりたいという要請がございましたらば、日本側といたしましても、国内業者との関係、条件その他を考慮いたしまして、適切なものであれば促進してまいりたい。過去におきまして、それなりに合弁の実績を上げてきたものと考えております。
  132. 戸叶武

    戸叶武君 ソ連との漁業関係の協定においての問題は二十六日に質問しますから、これはきょうは省略しますけれどもアメリカ側で盛んに軍事費の日米格差を縮めよというふうな形でチャーチ米上院外交委員長日本で講演したり中国でも説いているようでありますが、シュレシンジャーのアメリカ中国日本を結びつけてのソ連包囲策に若干触れているような感じがして、マンスフィールドさんは老練な大使ですから、防衛費を日本が自主的にもう少しふやすべきじゃないかぐらいまでは言うが、それ以上のことは言わないようですけれどもアメリカが無遠慮に物を言う気持ちもわかりますが、もとに戻りますが、日本のいまの憲法をつくるのにだれが一番熱心に協力したんでしょうか。その協力してきたアメリカが、今度は逆に――ダレスさんの外交の時代は岸さんがアメリカに行って、いまのアメリカと同じように、日米貿易のアンバランスを是正してくれ、アンバランスが是正できなければ、あの貿易外収入としての船の片道ぐらいは日本のを使ってくれと言っても、これに対してこたえなかった。――  時間が来ましたから、これはこの辺で、次に二十六日に質問いたします。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 当面の重要な外交課題の一つになるであろうと思われておりますのが東京サミット、UNCTADにどう取り組むかということであろうと判断されるわけであります。  先ほど来から日米貿易交渉問題をめぐるさまざまな問題点の質疑がございました。前回も当委員会におきましてこのサミットにかかわる点についての質疑をさしていただきました。果たして昨年七月に行われたボンのサミット等々の経過を踏まえた場合に、どれだけ世界経済を含めて前進的な実りある成果というものが期待できたんであろうかというふうに振り返ってみますと、単なる話し合いで何となく終わってしまうということの繰り返しであった印象がぬぐい切れないというふうに残るわけであります。今回の東京サミットもわずか日程が二日間、この二日間で一体どんな話が具体的に話し合われて、その結果というものが期待できるんだろうか。非常にいままでの経過の中でこの不安というものがぬぐい切れない、これは決して私一人だけの印象ではなかろうというふうに思うわけです。  ことに今回のサミットで討議されるであろうという内容については、経済政策、貿易、エネルギー、通貨、南北問題というふうに取りざたされているようでございます。いずれを挙げましてもきわめて各国とも抱えておる重要な問題点であることはもう否定できないと思うんです。ただ、それぞれ抱えている問題が国によって違いがありますので、果たしてそうした問題の整理がついて今後の世界経済がきわめて円滑に運営されるかという、そうした面を考えますと、やはり心配がぬぐい切れない。そういう状況を背景にして、今回、東京サミットが実は行われるわけであります。いろいろ日本として主張すべき点は主張し、また、こうあるべきだという将来展望に立った構想というものも十分あるいは展開される御方針をすでにお立てになっておられるだろうというふうに思います。その前段として、特にネックになっております日米貿易の不均衡というものを何とか是正して、できればまとまった結論というものを引き出したいという発想から、今回、大平さんが訪米されるというわけであります。そうした一連の動きの中で東京サミットに対する期待と不安というものが入りまじっている点について、外務大臣としては、今回の東京サミットにいかなる期待をかけられて臨まれるか、まず、その基本的な考えを再度ここで確認をしたいという点からお伺いをしておきたいと思うわけであります。
  134. 園田直

    国務大臣園田直君) サミットの成功かどうかということは準備によるところが非常に大きいわけでありまして、第一回東京で行われた準備会初め逐次準備を行い、議題、方向等を詰めておるところでございます。  しかし、発言にありましたとおり、過去数回サミットをやって相当の成果は上げたものの、サミットの目指す世界経済不況の打開という点はなかなか成果が上がったとは考えません。ボンのサミットでは、そういう点を考慮して、サミット後、サミットでそれぞれ責任を分担した点をお互いがフォローアップをして調整していくということまでついたわけでありますけれども、これまたなかなか思うほどの成果は上がっていない。こういう状況の中で、国際的には、御承知のとおり、去年よりもインフレの問題、雇用の問題等、各国ともまた新たな問題を抱えつつこの会議に臨むわけでございます。したがいまして、このサミットの精神というのはだんだん固まってまいりまして、お互いが相手国の責任を追及することではこういう問題は解決をしない、お互いが責任を分担し、お互いが相助け相補うことによって物事を解決しようというサミット精神というものは大体定着したようであります。  その精神のもとに、東京サミットでは、アジアで初めてやるわけでありますから、諸問題について十分に手落ちがないように、特に南北問題、それからエネルギー問題ということには重きを置きながら、かつまたサミットを始める前には開発途上国の意見等も個々に人を派遣して聴取をし、こういう意見も代表しながら、この東京サミットを成功に導きたい、こう考えて、ただいませっかく議題、重点等は詰めておるところでございます。
  135. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 サミット精神が定着しつつある、それが事実であればそれなりの評価というものがあろうかと思うんでありますが、各国とも持っております利害というものはそれぞれ異なりますし、それを画一的に整理をするということは、これは非常にむずかしい問題だろう。  特に、最近の事例としては、御承知のとおり、昨年三月には牛場さんとハフェルカンブとの間に取り交わされた共同声明がございますね。日本は今後経済成長については七%程度の目標を達成する、あるいはまた経済収支の黒字についても、七七年対比三分の一以下にする、こうした二項目にわたって合意に達して声明が発せられた。残念ながら、これは成功しなかったわけですね。依然として、一九七七年、日本の対ECの黒字というものが当時五十二億ドルですか、一九七八年、昨年は六十四億ドル、つまり二三%ずつ増加している。今年も増加のそういう兆しが濃厚である。こうなりますと、日本に対する信頼度というものが一体どうなるんだろうという問題、これはアメリカの問題はこの後に申し上げたいと思うんですが、非常に今回の東京サミットについても、そういう面からの風当たりが強い。言うなれば、もう東京サミットで、極端な考え方をいたしますれば、日本は袋だたきに遭うんじゃないかという、そういう危惧すらも抱くような現在ではなかろうか。  こうした抜きがたい一つのあり方について、ECにいたしましても、あるいはアメリカにいたしましても、日本に対する要求というものも日本では簡単にのめないという側面を抱えている、その辺がなかなか整理がつかないままついに東京サミットを迎えなければならぬ、こうなったわけであります。そういった面について、十分相手国に理解を与えるだけの説得力のある話というものができるのかどうなのか。そしてまた、その話の結論に立っての将来展望というものの見通しというものが考えられるのかどうなのか。これは実際に話し合ってみなければ何とも言えないということかもしれませんけれども、しかし、少なくとも政府としては、今後の具体的なあり方と将来展望というものは、サミットを通じてこうあるべきではないだろうかという明確な方向性というものを十分御検討なさっているんだろうと私は思うんです。なかなか結論の出にくい問題ではあろうと思うんですけれども日本としては、譲るべきところは譲っても、これだけは譲れぬという明確な路線というものを示すのが今回の東京サミットではなかろうかというふうにも考えられます。その点について、そういうふうにいままで検討が加えられて、そしてその結論をお出しになっていらっしゃるのか、もう当然結論の出されている段階ではなかろうか、こんなふうに感じますので、その点に触れた一つの御答弁をお願いしたいと思うわけであります。
  136. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどサミットの成功は一に準備の会にあると申し上げましたが、それはいまおっしゃいましたような趣旨のことを相互理解することが重点であると考えております。  昨年のボンのサミットでも、始まる直前まで、黒字を抱えておる日本、次いで西独、これが袋だたきになるのではなかろうかという気配があり、そういう情報も流れたわけであります。そこで、昨年は、御承知のごとく、主としてドイツ、日本経済成長に精を出して、赤字国はこれに引きずられていくという機関車説が出たわけでありますけれども、今度のサミットの主眼というのは、そうではなくて、経済成長ももちろん必要ではありますけれども、黒字国と赤字国がお互いに理解し合い、お互いに尽くすべきことを尽くす、赤字国は体質改善をやるとか、あるいは輸出努力をやるとか、あるいは開発途上国を含めて世界経済打開のための方法を考えるとか、そういう黒字、赤字をめぐって議論があると思いますが、直接サミットで個々の利害関係を主張し合うことはないと考えております。ただいませっかく、ただいまの御発言の趣旨に従って各国の理解を求めておるところでございます。
  137. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだと思うんですね。もう各国とも最高首脳が出ての会合でございますから、いたけだかになって、ここはこうしろ、あそこはこうすべきではないかというような議論は恐らくなさらないと思うんですが、その前段として、すでに事務レベルの折衝が進められているわけですね。この段階では大変手厳しいいろんな要求があったやに伝えられているわけであります。東京ラウンドをめぐる関税の引き下げについても、さらに皮革製品だとか繊維製品だとか、あるいは酪農製品についても引き下げるべきではなかろうか、こうした要求であるとか、あるいはフランスあたりにおいては濃縮ウランについても買ってくれ、こういうような話が内々ずっと交渉の予備折衝の段階であったやに伝えられております。もちろん、もっともっと細かいいろんな手厳しい注文というものもあったであろう、こういうふうに判断されますし、それを踏まえて各国首脳が大綱的にこうだという一つのおのおのの国の所信というものを恐らく明らかにしつつ、一つの結果が出るかどうかわかりませんけれども、話し合いを進めるんではなかろうか。  具体的に、ひとついま申し上げたことに関連しまして、この予備折衝の中身について、余り詳細なことは必要ございませんけれども、確かにいま私が申し上げたそういう要求が突きつけられたはずであるというふうに私聞いておりますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  138. 園田直

    国務大臣園田直君) これは渋谷先生の御発言でありますが、予備会合でそのような手厳しい要求というのは出ておりません。予備会議の模様については局長からお答えをいたさせます。
  139. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 第一回目の準備会合が先日開催されたわけでございますけれども、ここで行われましたことは、今度のサミットの会合の日取りを決めることとか、あるいはサミットの議題について意見を交換するということが中心でございまして、特に個々の国の行動についてお互いに注文をつけ合うというようなことはございませんでした。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あるいはまた別の話し合いの中でのことかもしれません。  特にECの問題に限っていまお尋ねをしているわけでございますけれども、従来からもしばしば委員長あるいは副委員長あるいは事務局長等のレベルにおいて日本に突きつけられた要求というものは、当然のことながら、対EC黒字の是正をしてもらいたい、あるいはEC製品の輸入の拡大を図れ、あるいは日本の市場を開放しろ、大体しぼるとこの三点に要約されるんではなかろうか。いまそうした問題の中で、関連してさらに東京ラウンド交渉経過を踏まえて、皮革製品であるとか、あるいは繊維製品であるとか、酪農製品についての関税の引き下げも行え、そうすればスムーズに日本の市場にも入る可能性というものを考えての発言だろうと思うのでありますけれども、依然として私はそういうようなECにおける日本に対する要求というものは消えていないと思うんです。そのほかにもエアバス300ですか、これを買ってくれというような話も、もう出たり入ったり出たり入ったりしているわけでございまして、こういったものもECとしてはやはり日本の黒字解消の一環としてどうしても踏み切らざるを得ないECにとっての最大の課題であるというふうに、もちろんECの立場から考えれば、われわれとしては当然だろうと思うんです。だけれども日本としてはいろいろな事情がありますから、それはすんなりのめない。  その辺の今日までのそういったやりとりの中で、果たしてECが日本立場を理解し、そして納得できるような方向へ取り組める可能性というものは見出せるのかどうなのか、これは必ず将来残る問題だと思うんですね。サミットあたりでは具体的にそういう問題が出なくても、相当厳しいやはり話というものが陰に陽に出てくる、そういうことが十分考えられる。その辺はどういうふうに受けとめていらっしゃるのか。
  141. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 先生御指摘のように、ECの対日要望を整理して申しますと、一つは、グローバルな分野での経常収支の黒字の縮小。第二番目に日本とECとの間の貿易のアンバランスの縮小。それから第三番目に、EC側が日本の市場に進出したいと思うときに、いろいろ関税上あるいは関税以外のものの障壁があるので、これを削減してほしいということです。そのほかに、たとえばもう少し政府援助を開発途上国の方にふやしてくれないかとか、あるいは日・EC協力のためにさらに産業協力を両地域間でやろうではないかというようなことがございます。  他方、私どもの方から見ておりますと、確かに先生御指摘のとおりに、昨年の牛場・ハフェルカンプのコミュニケがそのまま実現されているというわけではありませんけれども、しかし、どの経常収支の分野におきましても、最近の数字でごらんいただけますように、かなりの進展というものがある点はEC側としてもこれは注意をしておるところでありますし、また、貿易につきましても、日本側の統計によりますと、少なくとも昨年は依然として日本側の黒字が増加はしておりますけれども、その増加のスピードは落ちているわけでございます。ただ、若干ことしに入りましてからの数字で輸出が輸入とともに増加しております点が気になる点ではありますけれども、ECからの輸入の額は、その前の年に比べて、非常に大きく伸長をしております。この点はEC側といたしましても認識をしておるところでございます。  第三番目の関税その他の障害が日本の市場に対してあるではないかという点でございますが、この点につきましてはEC側を十分にまだ満足させているとは申せませんけれども東京ラウンドにおきましても日本としてはできる限りのことをしたつもりでございますし、また、EC側としては、たとえばECから日本に輸出する商品の検査の手続でありますとか、あるいはその規格のつくり方の問題について、ECからの輸入が促進されるように、できることは改善してほしいという要望がございまして、これはEC側の専門家の来日を求めまして、実は三月に協議をして、また若干の進歩をしておるところでございます。このように日本側としても最大の努力を掲げてきておるわけでございますし、一部、傾向としてはいい方向に行っているというふうに思います。  ただ、経常収支の問題にいたしましても、貿易収支の問題にいたしましても、そのほかの検査等の手続の問題にいたしましても、これをすべてEC側の満足のいくように解決するのには時間がかかる問題でございまして、この点はEC側にも折に触れ述べるとともに、他方、日本側としては、少しでも、若干ずつでも前に進むという姿勢を示していくことによりましてEC側の理解をさらに深めたいというふうに考えております。したがいましてサミットに至るまでもこのような努力を続け、EC側との接触を続けることによりまして、日本に対する理解を深めていきたいというふうに考えます。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですから、要は、日本として率直なことを申し上げれば買う物がない、そういうところから起こる一つの問題点ではなかろうか。どう考えてみても、恐らく日本国民というか需要を満たすだけの製品というものは期待できない。そういった背景もありましょうし、なかなかこれは一挙に、確かにむずかしい問題であろうとは思い、ますけれども、ただ、一般国民が消費するそうしたもの以外に、エアバスだとか濃縮ウランだとか、こうしたものがあるわけですね。そういったものに日本が積極的にというか、輸入を講じながら多少でも貿易収支のバランスのとれる方向へは取り組めないものかどうなのか、そういう点についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。日用品だとか食料品についてはなかなか日本の市場を開放してくれと言っても非常にむずかしい問題がございまして、日本として必要なものはと言えば、率直に言えば日本にないもの、いま申し上げた濃縮ウランであるとかエアバス、きわめて限定されたECの産品を輸入する以外には考えられない、そういった点についても、これはやっぱり相当理解を求める必要があるんではないだろうか。あるいは私の言っていることが極論かもしれませんけれども、率直に言えば政府筋としてはその点についてはどう一体考えていらっしゃるのか。  そうでありませんと、いま局長がそれは時間のかかることですと申されたとおり、これは一年、二年でとても解決のできる問題ではなかろう、一体、いつの時代にこれが解決するのか、あるいは二十一世紀、先のことの問題ではあるまいかとすらも判断せざるを得ないわけです。しかし、やはり世界動きは時々刻々に変貌するわけでございますので、日本としても十分それに対応できる姿勢というものは常に堅持していかなければならないということになりますと、時間のかかる問題ではあるけれども、いま申し上げた細かい問題を含めて、どんなふうにこれから日本としてありたい一つの理想的な姿、批判は残るかもしれませんよ、ECにとっては不満は残るかもしれないけれども、どうあることが望ましいのか、その点についてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  143. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 日本とECとの間の貿易のパターンが先生のおっしゃるようなことになっておる点は私どももよく承知をいたしております。その意味におきまして、エアバスの購入につきまして、日本の会社がこれを購入するということに決定したということにつきましては、ECとの関係から見ますと、非常に歓迎すべきことであろうというふうに思っております。  実は、濃縮ウランにつきましては、ちょっと私の所管でございませんので、現状その他ちょっとお答えいたしかねます。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一つのECの不満は、再々ここでも問題になりましたように、日米貿易の不均衡についてのバランス調整をやる、そちらに力点が置かれ過ぎてECの方はそっぽを向いているのと違うんかと、言うなれば、そういうことも非常に不満の材料になっているんではないか。こういう点についてはどう一体説得をするおつもりなのかということも問題の一つではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  145. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 仰せのとおり、ECが日本に対して持っております一つのいら立ちは、日本が対米関係には非常に努力をするにもかかわらず、ヨーロッパに対してはそれほど真剣に考えてくれないということにあろうかと思います。この点につきましては、われわれといたしましても、最大限の努力をしたいというふうに考えております。  たとえば、昨年、ハフェルカンプ副委員長日本に参りまして、牛場当時対外経済担当大臣との間でコミュニケを作成するようなことをいたしましたのも、その前に牛場・ストラウスのコミュニケということで、日米関係だけが日本の対外経済政策の基軸にあるのではないということを示したいという考慮があったわけでございます。その後、たとえば昨年とりました措置といたしましては、当時の福田総理が五月に訪米されましたときに牛場大臣が同行されたわけですが、その後、直ちにワシントンからヨーロッパに回りまして、ヨーロッパとの間での意見交換を行うようなこともいたしております。  .ことしに入りましてからも、ECから委員の方がかなり大ぜい日本に見えますので、これも日本とECとの間で意思疎通を図り、相互理解を強化する上でのいい機会であろうというふうに考えております。
  146. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、いまいい機会だと思うんですがね、意思の疎通を図れる結構な材料がございましょうか。いままでずっと私が申し上げた観点に立って、日本政府もようやってくれるなあという材料がございますか。やはり材料がなければ、なかなか意思の疎通というのはできないだろうと思うんです。言葉じりをつかまえて申し上げるわけではございませんけれども、その辺が気になるんですよね。大いにやってもらいたい、話し合いは。
  147. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 先ほど申し上げましたエアバスの件につきましては、これはEC側として非常に喜んでいる具体的な例でございます。そのほか、一見小さな問題のように見えますけれども、先ほどちょっと触れました商品の検査とか規格の問題につきましても、三月に先方からの代表団が参りました機会に、幾つかのものにつきましてEC側の希望を満たすことができ、先方は、それなりにそれを評価をしておるわけでございます。  特に、そのときに先方が申しておりましたのは、これから先、この検査、規格等の問題については、一見小さいように見えるけれども、これを少しでも、一つずつでも解決をしていくことがEC側の日本に対するイメージを改善する上に非常に大きな効果を持つということを言っておりまして、いま政府関係各省との話でその解決に努力をしておるところでございます。
  148. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言の点は非常に苦心しているところでありまして、米国の方は、御承知のごとく、漸次黒字幅縮小の傾向にあり、今後、これが定着するかどうかということが非常な疑問でございます。  残念ながら、ヨーロッパの方はややふえているわけでありまして、これが一番説明しにくいというか、向こうが一番言うところでございます。個々、いまおっしゃいましたような問題もございますが、これは逐次解決できるものは解決していくし、困難なものはよく話し合っていく。いずれにいたしましても、根底にはアメリカとECの方を区別をする、こういう感情が非常にあるわけであります。ところが、また一方、構造の関係で、ECとアメリカ関係とECと日本関係というのは全く別個でありまして、いろんな意見が対立する場合に、ECと意見がこちらが合った、そういう場合でもECは後ろの方では米国とツーツーだというところもございまして、非常に微妙なところもございます。そこで、私は、総理のお供をして日米首脳者会談から帰ったら、国会のお許しを得て、なるべく早い機会にECの本部及びECの議長国家であるフランスを訪問して、いろんな相互理解を深めたい、こう考えておるところでございます。
  149. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変結構なことだと思いますね。  先ほど局長がお触れになりましたね、検査とか日本の制度、これは非常にわかりにくいという、これは大変大きな不満をECに限らずアメリカにおいても持っている。ただし、この検査についても手抜きをされますと、これは非常に困るんですね。日本の製品というのは、決してわれわれ手前みそじゃありませんけれども、非常に優秀なものがそろっておりますので、粗悪品を持ち込まれたんではこれは非常に困る。そういう手抜きをされては困りますけれども検査がやりやすい、制度上もきわめて単純明快である、日本へ製品を運んでもきわめて円滑に市場へ持ち運ぶことができるというふうな、隘路をぜひ切り開いていただいて、それを話の対象にしながら現在努力をしているということを十分徹底方を図るいいチャンスであろうかと思いますので、私からもつけ加えてその辺の善処方をぜひお願いしておきたい、こう思います。  ボンにおけるサミットにおいても福田さん、牛場・ハフェルカンプ会談の声明といい、それから福田さんの言明といい、これは全部不履行に終わったというぬぐい去ることのできない不信感というものを持ちながらの今回の東京サミットでありますだけに、非常に苦労が私は多かろうと思います。  さて、そこで日米間における問題ですが、確かにいま外務大臣がお触れになったように、逐次黒字縮小の方向へ動きつつあるという傾向でありますが、ただ、今後、先ほどもしばしば議論のやりとりがございましたように、通信機械の本体あるいはその中枢部品、これは日本も前向きに取り組みそうだ、これに味をしめて、また次の新しいものを要求する可能性というものが考えられはしまいか。恐らくアメリカは果敢にそういう次の手次の手を考えつつ日本の市場へ自国の製品を送り込もうとする意図が私は十分に考えられるような感じがいたしますが、その辺はどんな見通しをお立てになっていらっしゃいましょうか。
  150. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの懸案を処理するについても、いまの御発言のようなことは十分私も心配をしながら交渉しているところでございます。
  151. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日米間を考えてみますと、非常にアメリカ自身も、独善的と言えば言い過ぎかもしれませんけれども、自国のインフレ収束のために、失業者救済のために、そのツケを日本に回すというみたいなやり方というものは決してわれわれは歓迎すべからざることだと思うんですね。その点については非常に苦労しなければならないこれからの折衝もありましょうし、そしてまた今回外務大臣が訪米されて地ならしをどの程度大平さんが行かれるまでの間に円滑に取り計らって、そして東京サミットへ臨まれるか、この辺が非常に今回大きなやはり課題ではなかろうかというふうに思います。  いずれにしても、わずか二日間のこの東京サミットについて世界も注視をするばかりではなくして、日本自体もその行方というものについては細心の注意を払いながら見守るであろう。特に大手は言うに及ばず、中小零細企業に至るまで、なぜかと言うと、暮らしがかかっておりますから。したがって、私は、多くのものを望まなくても、先ほど御答弁にあったように、せっかくサミットというものが設定された以上、それを定着をさせ、それを軸にしながら今後の世界経済というものがわれわれの考えるような方向へかじ取りをしていただきたい。むしろそういうかじ取りの役割りを果たす、そういう意味においてはサミットというものは非常に私は大きな貢献度があるだろうと思うんですね。しかし、いままで行われたサミットは残念ながらそうした成果があったとは思えない。したがって、そうした過去の実態というものを踏まえて、外務大臣にしても大平総理大臣にいたしましても、新たな決意で恐らく東京サミットへ臨まれるであろう、その一環として訪米をされる、こんなふうに私も受けとめておりますけれども、その辺のさわりはいかがでございますか。
  152. 園田直

    国務大臣園田直君) 非常に適切な御意見でありまして、深く拝聴いたしております。そういう方向で努力をする所存でございます。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 このサミットは一応さておきまして、次にUNCTADの問題について若干触れたいと思います。  恐らく、訪米から帰られると、間もなくマニラへ外務大臣は飛ばれることになるはずでございます。これも重要な一つの意味を持った会議であろうかというふうに判断をされております。  いまASEANが抱えているさまざまな問題は言うに及ばず、いわゆる発展途上国がそれぞれのその国の生い立ちを通じていま抱えている問題というものはいろいろあろうかと思います。これも一挙にということはそれぞれの政体あるいは経済状態というものの違いもありますので、こうあればいい、また、こうすべきだという一つの断定的な決定というものは非常にむずかしい要素を含んでいるであろう。サミットにおいても南北問題が討議されるはずであるというふうに伝え聞いておりますので、当然、これはUNCTADにも連動する問題であろう、恐らくその行方というものも少なからず重大な関心を持ってサミットの行方を見守るに違いない。  一方、発展途上国においてしきりにいま望んでいる問題を東南アジア地域において考えてみた場合、第一次産品の買い入れといいますか、積極的に先進国は買ってもらいたい、この問題が必ず出るんではないだろうか。そうした点については大変これもむずかしい問題ではなかろうかと思うんでありますけれども日本としてのこうした問題についての配慮、従来の考え方というものもそう大きく変わってはいないだろうと思いますけれども、やはりこの辺で一つの明確な方針というものを、日本はこう取り組んでいきたいという、そうしたものをやはり提言を交えて示していく段階に来ていはしまいか、こう思いますけれども、いかがでございましょうか。
  154. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) UNCTADの総会は来月、五月七日から始まりまして、相互依存の問題、貿易の問題、一次産品、援助、技術移転、そういったいろいろな各般の議題についての討議が予想されております。  私どもは、この会議は今度で五回目になるわけでございますけれども、特に従来にも比して今度の会議が非常に大きな意味を持っているというふうに考えておりまして、それはたまたまことしは  一九七〇年代の最後の年になるわけでございますが、そういう意味におきまして今度のUNCTAD総会というものが一九七〇年代の南北対話を踏まえまして八〇年代、さらには二十一世紀をも展望しながら、長期的な視野に立って南北問題の行方を探求していく、こういう大きな歴史的な課題を持っているというふうに考えております。  私どもといたしましても、開発途上国の開発を達成し経済自立を達成していきたいという正当な願望というものには非常な共感を覚えるものでございまして、このような観点からUNCTAD総会におきましては、南北問題に取り組むわが国の積極的な姿勢を示していきたい、それによって会議の成功に積極的な貢献をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 当然かと思いますし、それが日本としての果たすべき役割りでもあろうかと思いますが、もうすでに過去四回もUNCTAD総会を通じて日本としてのいろんな提言なり、そういうものがあったはずでありますし、いま答弁されましたように、二十一世紀を目指して日本がいまなし得ることはこれだという、その積極的な中にやはり具体性というものがなければ何にもならないわけです。いまここで抽象論を聞こうという考えは私は持っておりません。たとえば一つはこういうことだ、こういうものを考えている、これを今度UNCTADの総会に日本としては提言もしていきたいし、それを強力に一つの政策として推進をしていくいま腹づもりであるというようなことももうすでにお考えになっているはずですわな、いま積極的にとおっしゃったんですから。どんなものがありますか。
  156. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) 細かい議題を洗いますと、たとえば共通基金の問題これが前回三月の交渉会議におきまして大枠についての合意を見たわけでございますけれども、まだ具体的な細目については今後国際的な協議を進めていく必要がございます。この共通基金の問題もUNCTADにおける議題一つでございますけれども、この早期樹立を目指して日本としても今後応分の協力をしていくという姿勢を示すことも一つかと思います。  それと、個々の具体的な議題を離れまして、長期的な視野に立って、日本としては、南北問題、特に相互依存の深まっております今日の世界におきまして、それぞれ先進国あるいは途上国のなすべき役割りというものがあるかと思いますが、そういう長期的な観点に立ちまして、わが国としてなし得る長期的なビジョンというものを示してまいりたい。こういう長期的なビジョンとなりますと若干具体性に欠けますけれども、また新たに第三次の国際開発戦略というような策定も進められておりますので、わが国のこういった基本的な考え方が国際開発戦略の策定の中に取り込まれていくように積極的に働きかけていきたい、こういうふうに考えております。
  157. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なかなか具体的にと言っても、いろんな問題が出てきた場合に日本としてはこうするということになるでありましょう。ただ、先ほど私ちょっと触れましたように、むしろ発展途上国の方から要求されることが具体的に出てくるであろうという可能性が今回必ずあるであろうと推測されるわけですね。それで私は特に発展途上国における第一次産品についての買い上げを強力に進めてもらいたい、そういった場合についての対応というものは十分考えられているのかどうなのか。いま予測される第一次産品以外にはどういうことがむしろ開発途上国として要求なり、あるいは提言というものがなされるかということも十分分析をされているんではなかろうかというふうに思いますけれども、いかがですか。
  158. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) 具体的にそういう要望が出るであろうということは当然予想されております。したがって、われわれとしてもそういった要請に対していかにこたえるか、これに対して検討しなきゃいけないと思いますが、恐らくUNCTADの会議におきましては、冒頭に申し上げましたように、非常に数多くの議題があるわけでございますので、余り個々の国の熱帯産品の特定の品目について、ああしてくれ、あるいはこうしてくれということではなくて、途上国の願望として熱帯産品の輸出について先進国がもっと考慮を払ってほしいということ、一般的な南北問題彼らが言う新国際経済秩序の樹立に向かって先進国がもっとより理解を示してほしいということが主眼じゃなかろうかというふうに考えております。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん、それは公式、非公式を問わず、総会だとかという席上におきましては、余り突っ込んだ自分の国のことばかりというようなことは考えられないと思うんですね、要求を主張するということは。ただ、その総会の合間にいろんな時間が持たれるわけでしょう、いろんな国の大統領だとか総理級の方々と会うチャンスがあるわけでしょう。大平さんなり園田さんがそういうチャンスをつかまえて、いろんな対外折衝をされる場面というものが当然想定されるわけですね。そういったときに今度は二国間の問題ということになってまいりましょう。ですから、当然、そういうときには、そういう具体的な問題というもの、特にというやつが出てくるんではないだろうか。外務省としては、そうした想定というものは、恐らくこの国の大統領なりあるいはこの国の首相に会えば、こういう問題が出るであろう、日本としてはこうだというようなことなんかの詰めも十分もうおやりになっていらっしゃるんでしょうか。
  160. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) 個々の品目についてまでの詰めは行っておりませんが、たとえば一般特恵制度の問題、これについてわが国として途上国に十分な配慮を行ってまいりましたし、今後も、さらに途上国の要請に応じまして制度の改善等に努めるという具体的な方向は出しております。
  161. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですから、日本の場合はわかりにくいというようなことをよく言われるんですよね。不透明な部分が多過ぎるというふうに指摘されたり、批判をされたりする場合が多いんですよね。やっぱり開発途上国に限らず、別におみやげをということじゃありませんけれども日本としてこういうことを考えている、こういう点については積極的に推進しますよという、ただ抽象的な概念的なそういう考え方の発想ではなくして、やはり少々具体性のあるものを持っていかれることが私は望ましいと思います。会議ですから、どうしてもきれいごとに終わる場合が多いんじゃないかと思いますよ、しかし、実際にいまもう発展途上国においては、心のうちというものを考えた場合に、そういうことを望んでいるんじゃない、具体性のあるものを、たとえそれは一つであってもいい、足がかりとなるべきみたいなものを要望するに違いないと私は思うんです。  向こうだって言いにくいです、それは。もう問題点というのは大体整理されてあるわけですね。特恵国の問題もそれはそうでしょう。それ以外にやっぱりいろんな一つの限定された中に、たとえ、は東南アジア地域について共通性のあるものはこうだ、あるいは中南米等においてはこうだ、あるいはアフリカ等においてはこうだ、いろんなそういう問題点というものがあるはずですね。ですから、そこで日本としてなし得るものは、これとこれはもう全力を挙げてと、そこで初めて積極的にということが私は大変重要な意味を持ってくるんではないだろうか。どうでしょう、園田さん、その辺については。
  162. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) UNCTAD総会におきまして、貿易のみならず、援助の問題も議題となってございます。御趣旨を体しまして、わが国といたしましては何か具体的な方針を打ち出せるように、今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう皆さん方専門家でございますので、いまここで非常に常識的なことをお尋ねをしているわけでございますけれども、そういったことについてもやはりこの公の場である外務委員会において明確に日本のそういった考え方というものを示すことは、直ちに発展途上国あたりにも反映するわけでございますので、私はむしろ大変残念な答えではなかったのかと、まあ十分お考えになっておられるんだろうとは思いますけれども、念のためにそれを申し添えておきたいというふうに思うわけであります。  もう限られた時間でありますので、もう一点だけお伺いしておきたいと思うんですが、先ほどもちょっと午前中の質疑の中で出ましたけれども、インドシナ難民の問題でございます。  これはもう最近いろんな特派員ニュースというようなことを通じまして、ラオスであるとかカンボジアの大変悲惨な光景というものをフィルムを通して見さしていただいておるわけでございます。何千とも何万とも言われる難民があすをもしれないという大変な境遇の中で毎日を不安の中で過ごしているということは、確かに外務大臣が答えられましたように、これはもう人道上許せない問題であると同時に、これは平和安定の上から見ても大きな障壁になると、私も同感であります。したがいまして、これは日本として考えてみた場合、これだけの狭い国土、人口も過密であります、果たしてそれだけ受け入れるだけの施設というものが考えられるかどうかというようなこともございましょう。あるいは長年の伝統と歴史の上に培われてきた民族意識というものが果たして調和というものがとれるものであるのかどうなのかという、日本がもし受け入れた場合に、同化していくだけのことが十分考えられるかどうかなのかといういろんな難問が横たわっているように思うんですね。  ただし、これは日本だけの問題ではなくして、これはやはり世界に呼びかけて何とか難民救済という方途が見出せないものかどうなのか。私は国連というふうにすぐ言いたいんですけれども、先般の中越紛争のあの収拾のていたらくを見ましても、余りにも無気力な国連というものを一遍考え直さざるを得ない、あれではとうてい強力な施策も手の打ち方もできないであろうと、きわめて残念ないまの行き方に私は憤りを感ずるわけでありますけれども、なれば今度はサミットあたりにおいてもこの問題が当然議題とされながら、何とか収容の道というものをお互い責任を持って収拾できる方向へ話し合いというものが進められ、そして結論というものが見出せないものだろうかというふうに思うんでありますけれども、その点いかがなものでございましょうか。
  164. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) いま先生の御指摘の諸問題はまことにそのとおりでございまして、政府としても、これらを踏まえてせっかく努力している状況でございます。特に人道的な問題であると同時に、アジア地域で起こっている問題だということで、アジアに位置する日本として他の問題以上にこの問題に対する責任といいますか、役割りを果たさなければならないという見地から、いまも御指摘ありましたような日本の国土狭隘、人口過密という状況の中で、ほかの非常に国土広大、人口過少な国と比べまして、大量にこれを受け入れるということができないことについては、これはほかにもそういう国土狭隘な国がヨーロッパ等にございまして、そういう国と同じ意味において日本の事情は理解を得ているかと思います。  しかし、そのような中におきましても、なおかつ払うべき努力は多々あるということで、国内の関係各省庁との間でも始終論議を尽くしてまいったところでございますけれども、すでに御承知と思いますけれども、去る四月三日の閣議におきまして、日本国内における定住問題を中心にした幾つかの項目を御審議、御討議願いまして、それに加えて日本が国際的にすでに払ってまいりましたUNHCRに対する拠出の増大とか、一時収容センターに対する協力というような問題もあわせて私ども総合プログラム、八項目のプログラムと称しまして、この点の日本の努力についてはその後各国に説明いたしまして、それなりの評価を得ていると思っております。  ただ、これは他方流出がなお続いているということで、このもとがとまらなければ幾らやってもさらに続いていく、むしろ促進をしてしまうということもありますので、幸い日本といたしましてはベトナムとの間に直接のパイプがございますので、日本の考え方のみならず、アジアその他難民問題で非常に苦しんでおります諸国の立場もあわせまして、ベトナム側に対してはこの流出の抑制方をいろいろ申し入れている次第でございまして、外務大臣が先方の外務大臣に会われましたときにも申されましたし、その後もハノイと東京のチャネルで随時このようなことを行っている次第でございます。  最後に、御指摘のありました国連の役割りという点でございますけれども、UNHCRという国連の機構は、私どもの見るところではかなりその役割りを果たしている機構ではないかと思います。ここで会議が開かれまして、関係国が集まって、先般ジュネーブで会議がございましたり、その後UNHCRの代表者が各地に参りまして現状を視察したり、さらに所要経費を検討するというようなことで、この機構に関して申しますれば、そういう意味での国際的な一つの組織というものは相当にその役割りを果たしておるんじゃないか、こういうふうに見ております。
  165. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日本が引き受けられる範囲というものは、人数にすればどのくらいまで許容できると考えられますか。
  166. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) これは外務省としてどのぐらいということはなかなか申す立場にないのかと思いますけれども、やはりほかの同じような状況にありますヨーロッパ諸国がいずれも二百人、三百人というような数百人の単位で、貧者の一灯と申しますか、ともかくも引き受けるという姿勢を相次いで打ち出しておりましたこともありまして、一体、日本でとりあえずどれだけ引き受けられるかということを厚生省、労働省あるいは法務省等非常に関係省庁が多いわけでございますが、というのは、一たん引き受ければ、これはずっと一生といいますか、引き受けるときだけじゃなくて、その後ずっとめんどうを見るということでもありますので、そういう意味で関係する省庁との間でずいぶん議を尽くしたわけでございますけれども、最終的には、先般、四月三日の閣議において当面五百名という数字をお決めいただいたわけでございまして、当面は、この数字を一つの目標数字として、一定の条件を満たした者については、日本にすでにおられる難民、それから一部は外国にいまおって日本への定住を希望しておる難民についても、これを及ぼしていくということを決めた次第でございます。
  167. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 難民の方の中には日本へ定住したいという非常に強い願望を持っていることがニュース等を通じまして伝えられておるわけでございまして、どれだけの日本に対する理解と認識を持ってそういう強い願望があるのかはわれわれも直ちには信じがたいのでありますけれども、やはり同じ皮膚の色をしたという安心感というものが恐らく一番端的に彼らが感じ日本への希望であろうというふうに受けとめられないではない。  そういったことも十分配慮していただきながら、日本として今後も定住ということを大前提にしながらやりませんと、難民救済なんと言ったって日本はただ通過地点にすぎないということでは、やはりまた日本に対するいろいろな手厳しい批判が加えられるということも考えられますので、十分その点を考慮した上で、この難民救済の問題については、あるいは総理府もかかわり合いを持っているでしょうし、各省庁とも十分連携をとって万全を期して受け入れに意を尽くしていただきたい。この点の所信を外務大臣に最後にお伺いして、私の質問を終わることにいたします。
  168. 園田直

    国務大臣園田直君) 難民問題に対しては、正直に言って日本は非常な立ちおくれであります。人道的見地からも、太平洋地域の安定を阻害する要因という点から言っても、非常におくれておって、かつまた非難も受けておったわけであります。しかし、非難を受けるからということではなくて、人道上という見地から、遅まきながら日本も総合対策を打ち出したわけであります。五百名の定住ということで、これについては、いままでの日本立場から、それぞれの関係国は評価をしておりますが、その評価というのは、いままでが余りに、三名とか何名とかということで少なかったものでありますから、評価はしているわけで、その評価した後には必ず、さらに追加拡大はされるんでございましょうねと、こういう言葉がついておるわけであります。こういう点も十分認識をして、今後、難民対策については十分積極的に進めていきたい。黒字の問題で来ましたけれども、黒字の問題というのは努力をしてもなかなかどうなるか、私自身は疑問を持っておるわけです。だとするならば、経済援助、難民対策、こういう国際的に日本が思い切って貢献することによって、この黒字に対する非難も私は消えるんではなかろうか、こういう面からも難民対策は大事である、こう考えております。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 大平総理が近く訪米される予定が発表されたわけですが、その下準備ということで外務大臣は先般訪米なさってこられたと思うんですね。  それで、けさ午前中からいろいろ問題になっておりました日米経済関係の問題について、いろいろな委員からすでに質問がありましたけれども、しかし、もう一つはやはり今日の世界情勢、とりわけアジアの情勢を踏まえながら、こういう情勢の中で日本アメリカとの関係がどうあるべきかという問題ももちろん重要な問題ではなかっただろうかというふうに考えるわけです。そういう点で外務大臣がブラウン米国防長官と九日の日に話し合われたときに、日米安保関係の問題を中心にしてどういうふうな意見の交換をなさったのか、その主な点を御説明いただきたいと思います。
  170. 園田直

    国務大臣園田直君) 私とブラウン国防長官との会談は、いままでと様相を異にしまして、いままでは日本の安保ただ乗り論、あるいはさらに日本の自衛力に対する何らかの要望等があったわけでありますが、そういうことは全然ございませんでした。そしてアジアの平和、安定というものは単に軍事だけではなくて政治経済、総合的なものの中に本当の安定というものがある。したがって、今後は、軍事面からだけではなくて、米国は国務長官、国防長官、日本では外務大臣、防衛庁長官、こういう四者が緊密に連絡をしていこう、この程度の話でございます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 その席上で、外務大臣の方からは、日本側としては今後日米の協力関係を強めながら、つまり自衛力の増強の問題については外務大臣日本立場としては説明されましたか。
  172. 園田直

    国務大臣園田直君) 説明はいたしません。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 全然説明されていない。
  174. 園田直

    国務大臣園田直君) はい。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 それから、バンス国務長官とお話をされた中で、長官が、ソ連の極東戦略の変化について日本側としてはどういうふうに考えておいでになるかというふうな質問について、外務大臣が見解を述べられたという趣旨の報道があるんですが、そういうふうな話し合いはございましたでしょうか。
  176. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、どの新聞かわかりませんが、拝見しておりませんが、バンス国務長官と私との間で交わされたソ連関係の話は、北方四島返還という重大な問題があるが、今後日本がどうやっていくのか、わがアメリカが手助けすることがあるかという話があって、私がその必要はございませんと言っただけで、いまのソ連の軍事の強化その他についての話は、バンス長官との間ではしなかったと記憶しております。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 それから最近の朝鮮の話し合いが進むかに見えており、また今日ちょっと停滞しているかのような状況があるのですが、こういう朝鮮半島の問題に関してブラウン長官あるいはバンス長官との間での何らかの意見の交換はございましたでしょうか。
  178. 園田直

    国務大臣園田直君) 国防長官からは、朝鮮半島に対しては米軍の撤退、これは一部はやるが、あとはもう少し模様を見た上で慎重に行う、こういう話でありました。それからバンス長官と私との間では、朝鮮半島対話の見通し、これがうまくいくであろうかどうかという程度の話をいたしました。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 うまくいくだろうかどうかの程度のその話の辺、ちょっとお聞かせいただけませんか。
  180. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が言いましたのは、対話が進まれて結構なことであるけれども、この雰囲気を進めていきたい、この環境づくりをしていきたい、しかし、現実にはなかなかこれがうまく妥結することは困難である、こういうような話をしました。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ、両長官あるいはアメリカの首脳と話し合われた中で、いまの中国とベトナムとの関係ですね、これの現状についての認識だとか、今後の見通しなんかについての意見交換はなさいましたでしょうか。
  182. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国とベトナムについての話はございません。ただ、私が言ったのは、ベトナムは中国の侵攻についてアメリカ日本は事前に了解を与えたという誤解をしておったが、日本がそうでないことは理解したようだが、アメリカについては理解してないよと。それは国会答弁において中国の侵攻があるかという質問に対し、そういうことはあるまいと私は答えておる。アメリカは二、三日前に中国の侵攻必至である、こういう答弁をして、これが当たった、したがってやっぱりアメリカは理解を与えておったんだという誤解は解けていない、こういう話をしました。  それからカンボジアの見通し、それからベトナムと中国の会談の見通しについては話をいたしました。中越会談についてはなかなか時間がかかってどうなるか見通しはつかぬと。私の方は、これに対して進んで何かをしようとは考えてないけれども、何かやるべきことがあれば役割りを果たすということを中国にもベトナムにも申し出をしておる。したがって中越会談についてはピッチャーの役目ではなくてキャッチャーの役目をしたい。米国自分が何かすることがあるかと、こう言ったから、あなたは後の方へ控えておられたがよかろうと、こういうふうに言っておきました。カンボジアについてはなかなか見通しは困難だ、この程度の話をいたしました。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 これは大臣が訪米されたときの話し合いとちょっと関係が別になりますけれども、いまの中国とベトナムとの国境の状態ですね、報道によりますと、まだ依然として大軍が集結しておるというふうな報道も一部ありますし、また会談は事実上始まったわけですが、第一回目の会談がやられて第二回目の会談がいつになるかという見通しがまだ立たないという状況もあるわけですが、中国とベトナムとの国境の状態について、日本政府としては、いまどういうふうな大体把握をしておられるのか。あるいは会談の見通しですね、等々についても、それぞれベトナム、中国との関係日本政府としてはあるわけですから、それらの問題についての展望といいますか、見通しというのは、これはアメリカとの会談とは別ですが、日本政府としてはいまどのようにお考えになっていますか。
  184. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国とベトナムの会談がどのように進むかということは、これはなかなか時間もかかることでございましょうけれども、正直言って見通しはどうなるかわかりません。  国境紛争については、いろいろ意見があっているようでありますが、中国はあの国境に集結した軍を逐次移動しているような感じがいたします。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 それから、前回、私が大臣にお尋ねして、カンボジアの新政権承認なさらないかどうかというお尋ねをしたんですが、大臣はまだ実効的な支配が至っていない、そういう状況なので承認する段階ではないという趣旨のお話でしたけれども、現状についてはどのように日本政府としてはカンボジアの状況を判断されておりますか。
  186. 園田直

    国務大臣園田直君) 当時の答弁したときと何ら変わりございません。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 幾つかのいろいろなアジアでの問題についてお尋ねしたんですが、こういう状況の中で特に最近いろいろ新聞紙上で問題になってきておりますのは、日本の防衛能力の強化の問題、増強の問題がアメリカ側から盛んに主張されておるという問題があるわけですね。  たとえば来日されたキッシンジャー氏の話によりますと、ソ連の空母の西太平洋配備などソ連軍の動きを取り上げて、これらの動きというのは西太平洋地域の平和と安全に重大な影響を与えるというふうなことを述べて、これには日米欧のいわゆる軍事力の増強努力によって対処しなければならないという、日本の一層の防衛努力を望んだというふうな報道もありました。それからまた防衛庁等の招きで来日したカプラン教授の新聞での報道によりましても、彼の言う私が見る限り十分な自衛力増強の努力をしていない、日本は。だから日本はあくまで抑止力的効能のある線まで軍事力を増強することが望ましいと思うという趣旨の発言がありますし、それからマーチン・ヒレンブランド氏も、日本がこの地域の安全について責任を持つべきだという欧米の一部にある感じは当然のことだと、つまり経済力を持った日本が。だから、そういう意味で日本の防衛努力の必要は当然のことだというふうなことが述べられておるわけですが、こういう最近の、もちろんこれはいまの政府の当事者ではありませんが、こういうふうな主張について大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  188. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、特にバンス国務長官との会談の中では、日本はアジアの平和、安定のために政治力経済力を発揮をして、その役割りを果たさんとするという決意は述べてきました。帰りましてから急に起こったのがいまの新聞その他での増強論でございます。それからチャーチ委員長その他の人々が言っているようでありますが、私は六人の閣僚に会いましたが、国防長官初め、日本の自衛力の増強を言った人は私には一人もございません。その気配もございませんでした。帰りましてからキッシンジャーさんは、御承知のとおり、力と力の関係外交を考えておられる方でありまして、西太平洋から太平洋に重点が移ったと。私との会談では、日本の防衛力を増強すべきであるという意見は全然出ませんでした。  それからチャーチ委員長にも会いましたが、経済上の問題、中国の問題は話し合いましたが、そういう話はございません。これは講演で言われているところであります。  以上のような、何とはなしにソ連の極東海軍兵力の増強、これをどちらかというと、こちらの方で宣伝をして、これに対して対応して日本が防衛力を増強しなければならぬという意見は、私は非常に懸念をしておる、もっと慎重であるべきと考えております。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 六人の閣僚とアメリカに行って話し合われた中では、日本の防衛力増強の問題については一言も出されなかったというお話ですが、今度総理大臣が訪米されて首脳会談をやられる場合には、この日本の防衛力の問題というのは議題になるんでしょうか、ならないのでしょうか。
  190. 園田直

    国務大臣園田直君) いままで外務大臣の会談、首脳者会談等では必ず第一に防衛力の問題が議題になったことが多うございます。今度の特色は、それがやや弱くなってきて、全然その話がなかったというのが私の印象的なことでございます。もちろん、首脳者会談でありますから、安保条約の堅持、これを基軸としたアジアの平和という一般的な話はあるかもわかりませんけれども、私は、防衛力の強化なとという話は断じてない、こう考えております。こちらから出すつもりもございません。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 それで、先ほど外務大臣が言われた点から見ますと、総理大臣の大平さんがアメリカの新聞のインタビューに答えて述べている報道をごらんになったと思うのですが、そこでは、大平首相は、ソ連軍が最近いろいろアジアで行っている動きに対して、そういう状況を指摘しながら、日本としては偵察能力を強化しなければならない、あるいはアメリカとのより密接な軍事協力が必要である等々、日本の防衛協力体制を検討する意向を表明したということが新聞で報道されているわけですが、これは総理に聞かなければわからないことでしょうけれども、こういうふうなことを大平さんは事実上考えて記者会見されて、そういうふうなことについては外務大臣と話し合ったようなことはあるわけですか。そういう総理大臣の考え方がもしかおわかりであれば。
  192. 園田直

    国務大臣園田直君) 防衛力について大平総理の考え方は折に触れて話を聞いておりまするし、私がアメリカへ行くときも御意見を聞いておりましたが、どうも発言の趣旨と平素言われる考え方とは違っているような感じであります。大平総理はやはり首脳者会談等でも防衛の問題等が余り出てくることは好ましくないというような心証だと私は推察をして行ったわけであります。そのインタビューがどういうことでなされたのか、ややその記事とはニュアンスが違っておったという話も聞いておりますけれども、特別の意図があって言われたことではないと私は想像しております。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 これは大平総理にお尋ねしなければその真意というのはわからないわけですが、先ほどの外務大臣説明によりますと、ソ連の脅威ということを大いに吹きまくって、それによって日本の自衛力の増強等々を問題にしていくというふうなあり方には非常に懸念があるという趣旨の答弁があったわけですが、それから見ると、まるっきり大平総理の述べられているのは反対の、反対といいますか、ソ連がこういうふうな動きをしているから、これは大変なんだから、日本としては偵察能力を強めて日米の防衛協力関係強化せぬといかぬのだというような、先ほどの外務大臣の答弁とはまるっきり反対な記者会見での発言のように見えるわけですよね。それはそういうことですね。
  194. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連が海軍を初めアジア地域、極東地域において軍備を増強しておる、これについて日本の国防上懸念を持つことは日本政治家として当然であると思います。ただ、その懸念が、直ちに日本の防衛力を強化して、日本の防衛力強化によって米ソの均衡を維持しようという考え方は、私は慎重であるべきだと考えております。総理が言われた偵察力その他をふやさなければならぬということは、日本の自衛隊の質的な問題を言われたことだと私は想像しております。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 それで、これも大平総理にお聞きしなければわからないことかもわかりません、総理自身が述べられていることですから。だけれども、あえてお尋ねしたいのですが、ここで大平総理が言われておる偵察能力及び抑止力を強化したいという考え方ですね、これがつまり四月二十一日のある新聞によりますと、防衛力の強化議題になる、外務省筋語る、というふうに新聞では報道されているわけですね。これはあり得ないといま大臣が否定されましたけれども、否定されても実際あるかもしれぬわけで、私は大臣が否定されたという事実だけはあれしますけれども、この中の問題として、結局、アジアにおける米ソの軍事力のバランスの変化ということから、日本としてもいわゆる偵察能力やあるいは抑止力を一部担うものとして強めなければならないという発想として考えていいのですか。
  196. 園田直

    国務大臣園田直君) ある新聞とおっしゃいましたのは私も拝見をしましたが、これは全然筋違いの記事であります。外務省の中で、安全保障、燃料というのは重大な問題でありますから、これに対して研究グループをつくっていることは事実であります。しかし、これは今日のソ連の極東軍備の増強によって対応するものとしてつくったものでは絶対にございません。この記事は間違いであることをはっきり申し上げておきます。  日本の専守防御という立場から、日本の防衛隊がいまのままでいいのか、質的にどのように改善をしていかなければならぬか、こういう問題は別個の問題として出てくる問題であって、これはいま突然出てきた問題ではないと考えております。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 後段の部分ですが、私がお尋ねしたのは、つまり大平総理が日本の防衛能力としての偵察能力あるいは抑止力を強化するということを述べられた。なぜそういうことが必要になってきたかという考え方の問題として、いわゆるアジアにおける米ソの軍事バランスに変化が生じたから、日本としてもそれに対応する必要があるという考え方で述べられたものなのかどうなのかという質問です。
  198. 園田直

    国務大臣園田直君) 関連性はないと存じます。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども、事実上、偵察能力を強化するというのは対ソ関係ですよね、具体的に言えば。そしてこれはアメリカの対ソ戦略に含まれた関係としていわゆる偵察能力というものの強化が問題になるわけですよね。そうすると、それは大臣だって日本ソ連とが直接戦争するなんということは考えておいでにならないだろうと思うのですよ、問題は、米ソの軍事バランスの中で日本としてどう安全を保っていくかという考え方で、もちろんそういう戦争にならない方がいいわけですが、そのバランスに変化が生じてくると、日本としてもやっぱり困る立場になる、そうすると何らかの対応をしなければならない。日本としては、しかし、一方では専守防衛、攻めることはしないし集団自衛権は持たないということになっておる。だけど、現実には、そういう米ソの軍事バランスの変化の中で日本が事実上対応せざるを得ないという形の発言として大平総理も発言しているのではないんですか。
  200. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、ソ連でも申し上げましたが、日米安保を基軸にして日本はやっておる、したがってこれは米ソの均衡を維持しながら戦争が起きないように平和を追求するのだとはっきり申し上げておりますが、そういう意味において、いわゆる日本の防衛のために空と海が大事であることはこれはもう当然でありまして、それが直ちにいまの極東の兵力が増強されたからそれをどうこうという筋合いのものではないと存じます。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 結局、今度の日米首脳会談という問題だけに焦点を当ててあれしているわけではないわけですが、去る三月の十八日の防衛大学の卒業式のときに、大平首相が防衛力の整備の問題を述べられたということが国会でも問題になりましたですよね。それから、三月の二十日に、防衛庁が五次防に相当する五十三年度中期の見積もりで、五十九年度には防衛費の対国民総生産比率を一%に引き上げる意向を発表した。で、その後の永野陸幕長らの発言等々もあるし、あるいは山下防衛庁長官の訪韓計画の問題等々いろいろありましたし、それから昨年出されました日米安保協議委員会で正式に決定されたあのガイドラインですね、というふうな問題もあり、この一連の動きというのが私は非常に今日重大な問題を意味しているんではないだろうか。  で、外務大臣は、いわゆる基本の姿勢というのは何も力に頼るんではなくて平和によって日本の安全を保つ、これが基本だと。もちろん今日の状況の中ではそういう対立関係もあるわけだから、全くそういう現状を無視するわけにはいかぬけれどもということは述べられつつも、園田外務大臣発言としては、そういう力に依存するということを極力否定する答弁というのを大体外務委員会の席上ではいただくわけですよね。ところが、現実に閣僚の中で進んでいる状況というのは、防衛力の増強あるいはアメリカからもそういう声がいろんな形でつくり出されてきて、いわゆるきわめて危険な方向に行く懸念もわれわれが持つというのもまんざらわからないことではないだろうと、大臣のお立場にしたって。  そういうことを考えてみた場合に、今日のこうした動きの問題について、外務大臣としては、アメリカからそういう防衛力の増強等々の問題が仮に出されてきた場合、どういう態度をとるのか。それから大平総理に直接聞かなくて、大臣との意見がちょっと違っているような新聞報道でありますけれども、大平総理にもきちっとその点は話していただいて、いわゆる今回の首脳会談では、そういう防衛問題、増強等々の問題については一切こちら側としては触れないし、また向こうから来たら、向こうから要請があった場合にどういう態度を表明するのか、そこらあたりの点をきちっとお聞かせいただきたいんですがね。
  202. 園田直

    国務大臣園田直君) 日米首脳者会談では防衛問題、安全問題では一般的な抽象的な話は出るかもわかりませんが、日本の防衛力強化なんという話は出るはずはないと存じます。出た場合にどういう返答をするか、これはこれから先のことでございますから、ここで答弁することは危険でございます。  なおまた、その後、一貫した防衛庁長官の発言、訪韓問題等、あるいは防衛計画の変更等は国防会議にかかってきた場合には私は発言をいたしますが、それまでは私からは答弁はできないところでございます。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 最近の動き等々を見てみますと、たとえば先般私が予算委員会で山下防衛庁長官に質問したら、軍人勅諭の問題で徳目はいいみたいな変な答弁をされましたね。それから教育勅語の問題でも内藤文部大臣も何か教育勅語がよかったみたいな、すでに昭和二十三年の六月に国会で廃棄させられておるかつてのそういうものを再び持ち出すような考え方というのが一体どういうところにあるのだろうか。あるいは靖国神社の問題等々を見ましても、A級戦犯が合祀されているということが明確になった時点で大平さんは参拝に行かれましたよね、個人だということですけれども。しかし、こういう動きというのは、先ほど述べた防衛力の増強等々あるいはアジアの情勢に対する日本政府の対応等々の問題と考えてみると、私はきわめて重要な問題だろうと思うんです。  きょう、これ以上私はもうこの問題で議論する時間がありませんけれども、そういう点は非常に重要な問題だとして、今度のいわゆる世界の情勢、アジアの情勢を踏まえた上で行われる日米首脳会談ということをそういう意味からも私たちはきわめて重視し注目しておる。だから、その点はぜひともそういう平和を願っておる国民の要望にかなうような立場で情勢に対する正しい対応の仕方をしていただきたいということを最後に要望を述べておいて、大臣の所感をお尋ねし、問題は引き続いて今後お尋ねすることにしたいと思います。
  204. 園田直

    国務大臣園田直君) 十分そういう傾向には注意をして、懸念を持っておるとごろでございます。傾聴いたします。
  205. 田英夫

    ○田英夫君 最初にお尋ねしたいのは、最近の新聞報道などを見ておりますと、実は、きょうの委員会でもそうでありますけれども、いわゆる東京サミットを控えまして、アメリカとECに対する貿易黒字の問題というのがあたかも日本外交のすべてであるかのごとく思われるようなそういう印象を受けるのでありますけれども、私の意見はいささか違うわけであります。  そういう感じを持って伺うわけですけれども大臣は、その点について、この貿易黒字の問題という、これはもちろん日本外交にとって重要な問題であることは私も否定いたしませんけれども、そのウェートというもの、あるいは外交問題すべてを見ておられる外務大臣のお立場からして、これは一体どのくらいのウェートを占めているのか、これは表現がむつかしいでしょうけれども、御見解を承りたいと思います。
  206. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済問題、特に黒字の問題、これは米国ではこれが背景にいろいろあるわけでありますけれども、私は、この黒字の問題が果たして短期間に解消できるか、あるいは日本だけでこれが解消できるが、また、どういうふうに解消していくのかということについては、私個人が相当疑問を持っておるところでございます。
  207. 田英夫

    ○田英夫君 実は、私も全く同感なんでありまして、この問題がおかしな方向に発展をしますと、日本の国内でもこれは非常に不必要な政治的な摩擦を生むおそれもあります。たとえば政府関係の物資の調達の問題で、東京ラウンドで約束をしている問題でありますから、基本的にはこれは開放をしていくというのが原則であることは間違いないわけでありますけれども、たとえば電電の問題で言えば電電公社並びに全電通の皆さんはこれに反対をされる、これもまた当然のことでありましょうし、以前から言われている農産物にしても、あるいは牛肉にしても、あるいはその他関税の問題にしても、いま取り上げられてきている問題というのはすべて国内での利害関係の対立を生んでくる、そういうことの中でいたずらにこれが助長をされるということは非常に国内政治的にもぐあいが悪い。そして同時に、アメリカ、ECとの関係の中でも、これがすべてのようなことになっていく印象を与えると、実際に当事者の皆さんはそうでなくても、一般国民の皆さんというところで言えば、あたかもすべてがぐあい悪いような印象を与えるということはよくないと思うんですが、そういう観点から見たときに、大臣の頭の中にはどういう対策がおありになるか。  いま言われたように、黒字の問題というのはそう一朝一夕に解消できないと私も思いますんで、これを避けては通れませんけれども、実際のその重要性というようなものを国民の皆さんにも認識していただくということを含めて考えたときに、国務大臣としてということにもなりますが、どういうことをお考えでしょうか。
  208. 園田直

    国務大臣園田直君) なかなか日米首脳者会談を前にして微妙ではありますけれども、私が先般西独のシュミット総理と会って非常にまじめな討議をした。  その際、シュミット氏が発言した要旨は、日本とドイツは資源がなくて、資源を買ってきてこれに加工をして貿易で立っている国である、したがって貿易に依存しない国から貿易に依存している国の立場というものはなかなか理解しにくいだろうけれども、黒字罪悪論というのは私はとらないところだ。しかし、そういう立場から言うと、やはり市場の開放ということについては、日本には伝統もあり習慣もあることで困難なことも承知であるけれども、われわれは貿易によって立つ国であるから、自分立場から言っても長い目で見れば市場閉鎖ということはよくないので、これはなるべく開放されたがよろしい。ただ、黒字の問題がいい悪いは別にして、貿易によって得たところの外貨というものの使い方が日本はへたなような気がする。極端な言葉で言うと、たんすの中に入れて温めているという態度は、これは非難を受ける原因じゃないか、わがドイツは、投資あるいはその他のことに、もう入ったときに使います、こういう話をしておりました。  これは非常に私は同感を覚えたところでありまして、日本は、今日の状態では黒字、赤字の国が相助けてやることは当然でありますから、黒字の縮小の努力もさることながら、それよりも、私は、得た黒字というものを、経済援助であるとか難民対策であるとか、あるいは世界的な文化あるいは芸術の進歩等に思い切って金を使うとか、そういうことにこの黒字を使っていくということが賢明であって、黒字減らしということで短期に品物を買ってその場を過ごそうという考え方は余り賢明じゃないのじゃないかなと、私個人の意見よりもシュミットとの会談を通じて、私の気持ちを理解していただければ幸いだと思います。
  209. 田英夫

    ○田英夫君 全く同感なんですね。つい数日前も、おとといですか、日米欧委員会に来日している西ドイツの経済大臣と立ち話のような機会がありましたけれども、同じような調子のことを言っておりますね。  それから、これは数年前になりますけれども、イギリスの議員が日本に来ましたときに、日本はイギリスのものをさっぱり買わないという話をしましたので、ちょうどそのときに、こういうところで言うのはおかしいんですが、ダンヒルの万年筆を持って、ダンヒルのネクタイをして、ダンヒルの生地でつくった背広を着ていたものですから、それを見せてやったら大笑いになってしまったんでありますけれども、何かそこの黒字を抱えているというところだけに非常に罪悪感のようなものを、何か日本は悪いことをしているんじゃないかと一般に印象を与えるような、これは非常にぐあいが悪い、この点をひとつ政府もそういう意味の対策をお考えいただきたいというか、知恵を出していただきたいといいますか、いま言われたように、たんすにしまっておくのがおかしいんだという、先ほどの難民の問題でも若干触れられましたけれども、あるいは文化関係に金を使う、黒字があるからロッキードの飛行機を買うというような発想は全くぐあいが悪いということで私も同感であります。これはその程度にいたします。  これに関連をして、中国との貿易の問題経済協力の問題でありますけれども、最近、主に中国側の理由で経済八カ年計画ですか、そういうものの見直しが行われつつあるということの中で、日本との経済関係で若干の調整が必要になってきている、こういうことが言われておりますが、この点は事実でしょうか。
  210. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、中国近代化五カ年計画を、いろいろ批判をされながらも、見直しをしたことはきわめて賢明であると考えております。近代化というのはやはりなかなかむずかしい問題でありまして、イラン状態中国状態は比べものになりませんけれどもイランの王制が独裁政治近代化を急いだ、しかし、その近代化というものは国内の基幹産業に重点を置いて、国民の生活にこれが全然いかなかったというようなこともあるわけで、やはり中国自体が急速に近代化を進めながらも、国民の生活あるいは農村の繁栄、こういうものと近代化をどう結びつけていくかというようなこと、あるいは資金その他の面から見直しをされていくことは、私は非常に賢明だと考えております。
  211. 田英夫

    ○田英夫君 これはよけいなことかもしれませんけれども、最近会いました中国の、名前を言えば大臣もアジア局長もよく御存じの日本関係の深い人ですけれども、こういう話を伝えてくれたわけです。  アメリカ、ヨーロッパ各国と日本中国経済協力についての比較の話をしまして、日本の産業関係者は欧米に負けない自信を持っている。中国の冶金工業相が先ごろ日本はウサギとカメの物語の眠っているウサギのようだ、こういうことを言った。これは主として金融のことを指しているわけで、確かに日本の特に政府のやり方にはなまぬるい点がある、これに比べると欧米は政府がきちんと指導して産業と金融が一体になってやってくる、特にアメリカには迫力がある、こういう表現を使っているわけですね。ところが、後段が非常にまた興味がありまして、しかし、日本はやはり強いと。それは世論が違う、日本中国への友好感情は非常なものであり、過去の罪を償うという意識がはっきり国民の間にある。これが単なる打算を越えさせるのだろう、こういうことを言っているわけですね。これは中国側の関係者が言っているという意味で、非常に興味深く聞いたわけです。  さらに、全くこれは御参考までに申し上げるわけですけれども、これは中国の工業関係の人、むしろ経済関係の人が話していることでありますが、日本の技術者とヨーロッパの技術者との比較をしているわけです。日本人は非常に勤勉で熱心である、日本人は中国に特別の感情を持っている。ある日本の会社の社長は、中国に残って協力する自社の社員に対して、ここはよその国とは違う、この国ではたとえ相手方が殴ってきても、殴り返してはならないと訓示をした。こういうふうに言って、中国側は日本経済協力のやり方に不満を持ちながらも、日本人の感情に非常に感謝をしているといいますか、こういうことがあらわれていると思います。  これは全くよけいなことかもしれませんけれども、御参考に申し上げたわけでありますけれども、先ほど冒頭お聞きした見直しという点について、かなりこれは従来の政府あるいは民間経済協力の約束が変更になるのかどうか、この点はいかがですか。
  212. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国の方では言明をしておりますが、変更するつもりはない、これを逐次見直して両国がやりやすいようにやっていくんだ、こう言っておりますが、私はその言葉を信用しております。
  213. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つは、先日、来日された鄧穎超女史を団長とする一行の日本における言動といいますか、これはすでに新聞でも報道されているところでありますが、台湾問題について非常に熱心に活動されたように思います。私どもの社民連が会いましたときも、鄧穎超さんの側から特に台湾問題について触れられて、朱学範、屈武、このお二人の国民党出身の団員をわざわざ紹介をされ、そのお二人から発言がありまして、二人ともそれぞれ第一次、第二次国共合作に参加をした経験を持っている、私たちは第三次国共合作に参加をしたいと思っていますと、御老齢の二人ですけれども、そういう発言をされたということは、第三次国共合作、つまり北京と台湾との合作というものがきわめて近い将来にあり得るということを私どもに示唆されたように思ったわけでありますけれども政府はどういうふうにこの点を判断しておられますか。
  214. 園田直

    国務大臣園田直君) 昨年十月来日された鄧小平副首相は、その際、わが方に対して、台湾の現実を尊重するという発言をされております。その後、一月だと思いますが、中国が発表した台湾同胞に告げるという文章では、台湾の現状と台湾各階層人民の意見を尊重するとの旨を述べて、台湾との間に積極的に交流を話かけ、その他の問題についても積極的にどんどん台湾の方に呼びかけをしておる。この前の周恩来未亡人の御発言もこの線に従ったものであると私は聞いておったわけでありますが、いずれにせよ、こういう中国の態度にかんがみて、台湾と中国の間に武力紛争などというのは起こらないのみではなくて、だんだん雪解けのようなことがあるべきだと期待をいたしておりますが、いずれにしても、これはこの地区の平和と安定のために台湾問題が当事者で平和的に解決される方向に進んでいることは私は評価すべきものであると考えております。
  215. 田英夫

    ○田英夫君 いま申し上げたように、二人の国民党出身者をわざわざ団員に加え、林麗温女史も台湾出身であるという、そういう団でわざわざ全人代の代表団が来られたということの意義と、さらに、第三次国共合作という言葉は私も初めて聞いたわけでありますが、これは北京でも聞いたことがないわけで、今回それを私どもに言われたということは、近い将来にかなり劇的なそうした関係の推進があり得るのではないかというふうに私は理解したんでありますけれども政府のお立場からは大変発言されにくいことでしょうけれども、私のこういう印象は間違っているでしょうか。
  216. 園田直

    国務大臣園田直君) 私から見通し発言することは差し控えますが、先ほども申し上げたとおり、中国の今日の態度を高く評価し期待するものであります。
  217. 田英夫

    ○田英夫君 次は、ソ連をめぐる問題なんでありますが、最近、私ども自身も聞きますし、また新聞報道にもありますが、ベトナムのダナンあるいはカムラン空軍並びに海軍の基地でありますが、ここにソ連の飛行機並びに艦艇が立ち寄っている、こういう情報がしきりにあります。ダナンの場合には、日本付近を通過した偵察機がそのまま北上しないでレーダーから消えてしまったということからダナンの飛行場に着陸したのではないかという報道もあったわけでありますが、防衛庁の方では、こういう情報をどの程度把握をしておられるか、把握しておられる内容を、発言できる限り、ひとつ言っていただきたいと思います。
  218. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 航空機に関しましては、四月十一日、TU95D二機が対馬海峡から台湾の東方方面に飛行いたしまして、その後レーダーから消失いたしました。その後、各種の国際的な情報から察しまするに、TU95はダナンに着陸した模様でございます。  それから艦船につきましては、二月十七日に中越戦争が始まりましてから後、東シナ海、南シナ海にソ連の艦艇が種々遊よくいたしまして、そのうちの一部艦艇、大体数隻ずつと推定されるんでございますけれども、カムラソ湾、ダナンへ寄港した模様でございます。
  219. 田英夫

    ○田英夫君 ソ連の輸送機が直接ダナンに着陸をするというような事態が中越紛争の中であったという報道もありますが、これは防衛庁はつかんでおられますか。
  220. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) この点も防衛庁としては未確認でございますけれども、諸般の国際的な情報を総合いたしますと、極東からではございませんけれども、恐らくヨーロッパロシアあるいはロシア中東方面から輸送機が飛来した模様でございます。
  221. 田英夫

    ○田英夫君 外務大臣、これはこの前この委員会でもカムラン湾の問題は私も取り上げたことがありますが、アジアの平和のために非常に大きな意味を持っていると考えざるを得ないわけであります。防衛庁は、そういう防衛庁の立場からこの問.題をどういうふうにお考えですか、まず防衛庁から伺いたいと思います。
  222. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) ソ連の艦船、航空機によりますベトナムの海軍基地使用の態様は、現在までのところは一時使用であろうと推定されております。しかし、これが将来基地の利用等に発展する場合には、東南アジア諸国の安全、それから日本の通商路の安全及び西太平洋におきます米国及び日本の安全にとりまして関心を待たざるを得ない事態だと考えております。
  223. 田英夫

    ○田英夫君 その点で、これも外務省首脳が語られたという報道の形で、ベトナムがソ連にこのような基地使用を認めるという状況の中では、ベトナムに対する経済協力を考えざるを得ないという、そういう通告を外務省がベトナム側にされた、こういうことが報道されておりますが、この点は事実でしょうか。
  224. 園田直

    国務大臣園田直君) これもやや行き過ぎの記事でありまして、一国に経済援助をする場合、こういう場合は打ち切るとか、こういう場合はやめるとかということは、現職の大臣発言すべきことではないと私考えております。  ただ、ベトナムの外務大臣と会談いたしました際、私は、次のように率直に話しております。わが日本米国側に立っている、あなたの方はソ連側に立っている、したがってやるべきことが違うことは当然のことである。しかし、あくまでそういう立場にあろうとも、譲ってならない自主独立の路線はあるはずであって、わが方も日米安保を基軸にしておるが、これはあくまで均衡の維持を保ちつつ戦争を起こさせない、平和というものを追求していくんだ。あなたの方もアジアの平和ということを考えて行動されるならば、その点は十分注意をされて、特にカムラン湾その他をソ連軍の基地に提供することは、これはアジアの一国として非常な懸念を持つところだ、こういう話をしましたところ、それは絶対にしないという話が外務大臣からじかに私にあったわけであります。
  225. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、これは今度は朝鮮半島の問題でありますけれどもアメリカ政府は在韓米軍の撤退を一時中止をするということを表明しているわけですが、それに関連をして朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮の軍事情勢を見直すんだ、こういうことを表明をされているわけですけれども、防術庁のお立場から、いわゆる北朝鮮の軍事情勢というものがソ連とどの程度密接に関係をしているのか、政治的には私はソ連との関係はかなり冷却をしていると見ているわけでありますけれども、ただ、北朝鮮の軍事体制というものは当初からソ連援助によってつくられた部分が非常に多い。特に近代兵器はそうでありますから、その辺をどういうふうに把握しておられるか、この点はいかがですか。
  226. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 在韓米地上軍の撤退問題につきましては、仰せのとおり、いま米国は一時撤退を中止しております。  その理由は、ソ連と北朝鮮の関係と申しますよりも、米国の情報当局によりますと、最近の北朝鮮の陸軍勢力については、従来見積もられていた勢力よりも大幅に増加しているように考えられます。それにつきまして現在も引き続き再評価作業が行われておりまして、その再評価作業及び米中正常化の影響、それから南北対話の提案など諸般の情勢の評価が行われるまでは見合わせる、そういうふうに了承しております。北朝鮮とソ連との関係につきましては、これは従来非常に冷たい関係であったことは御指摘のとおりでございまして、ただ、最近種々の風聞はあるのでございますけれども、確実な動向については把握するのが非常に困難でございます。
  227. 田英夫

    ○田英夫君 外務大臣はどうでしょう。この南北対話というものがいま細々ながら続いている。外交的な立場政治的な立場から考えて、私もこれはいろいろ曲折をたどりながら続くであろうと思いますし、続いてほしいと思います。一方で、韓国の中で金大中さんでも在韓米軍の撤退には従来から反対をしておられたという状況の中で、いまアメリカは純軍事的な立場だけでなくて、政治的な立場も含めて、そういう一つの見直しを始められたのではないかと推測をするわけですが、この朝鮮半島のこの対話の見通しといいますか、先ほどもちょっと立木委員の、ハンス国務長官との話の中で出たという話が披露されましたけれども、結論だけで結構ですが。
  228. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの対話は、北と南の考え方は相当違っておりますし、平行線をたどっているわけでありまして、なかなかこれがまじめな話し合いというか、一つの線に来る話し合いというまでには相当紆余曲折があり、時間がかかると思います、非常に困難だと思います。しかし、私も、たとえ困難であっても、見込みがなくても、この対話の線だけは切らないで続けていくべきであるという期待をし、われわれはこれが続けていくような環境づくりをやりたいと考えております。  なお、北朝鮮の判断では、米軍は第一に北の方の軍の増強と、こう言っておりますが、私は必ずしもこの情報が当たっているかどうか疑問に思うわけでありますが、韓国のためにはアメリカがそう判断していることはいいことだと。むしろ韓国からの撤退は、私は、田先生がおっしゃるとおりに、軍事的な配慮よりも政治的な配慮、この方が大きいと見ております。
  229. 田英夫

    ○田英夫君 時間がありませんが、最後に一つ、これもソ連関係をするんでありますが、いわゆる領海十二海里ということが実施されて以後、津軽海峡を通過した艦艇、これは当然潜水艦が主な対象になるわけでありますが、防衛庁の方ではどういうふうに把握をしておられますか。
  230. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 津軽海峡を通過した艦艇のすべてを把握しているわけではございませんけれども、防衛庁が把握した限りで申し上げますと、領海十二海里後と申しますと昭和五十二年七月一日以降でございます。五十二年七月一日から十二月までに米国の艦艇が五隻、ソ連艦艇二十隻、それから五十三年末までに米国の艦艇五隻、ソ連艦艇七十隻、計米国十隻、ソ連九十隻でございます。
  231. 田英夫

    ○田英夫君 これは十二海里問題が焦点になった当時、この委員会でも、あるいは国会の中でも注目をされた問題でありますけれども、いまのそのソ連が九十隻という、一年間で言うと五十三年七十隻、これの艦種はわかりますか、船の種類。
  232. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 種々ございますけれども、わが方が把握いたしましたのはすべて水上艦艇でございます。潜水艦は含まれておりません。
  233. 田英夫

    ○田英夫君 潜水艦は把握をすればできないことはないと思いますが、実際にしていないのか、しょうとしていないのか、どっちですか。
  234. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 浮上しているものについては、もう当然確認し得るわけでございますが、潜航しているものについては困難でございます。
  235. 田英夫

    ○田英夫君 これは当初懸念されたとおりの問題がここへ出てきていると思いますね、潜航したまま通過をする。実際には近代兵器で把握できても、それがどこの船かわからぬという問題もあるだろうと思いますし、津軽海峡がソ連一つの出口に、日本海からの潜水艦の出口になるという問題、これがやはり現実のものになったという気がします。  それで大臣もさっき言われたように、こういう問題をだからといって非常に誇大に考えて日本の軍事力増強というようなところへ短絡をするということを私も恐れるんでありますけれども、同時に、日本周辺で、やはりさっきのベトナムのカムラン湾やダナンの問題とあわせて、ソ連の軍事的な動きが非常に急であるということも、これも冷静に受けとめなければいけない。こういうことの中で特定の国を敵視したり、あるいは特定のイデオロギーにとらわれて日本立場を忘れるということがあってはならないということを本当に痛感をするわけでありますが、大臣の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  236. 園田直

    国務大臣園田直君) 全く同感でありまして、平和外交を進めるについては、目の前の現象面にとらわれて冷静さを失うことは非常に危険であり、あくまで冷静に大局的に判断しながら、平和外交を進めていくべきであると考えております。
  237. 和田春生

    ○和田春生君 きょうは、国連の海洋法会議に関する問題と、ベトナム人の在日留学生の法的地位の問題、二つに限りまして政府の所見をただしたいと思います。  まず最初に、国連海洋法会議の第八会期がことしの三月から始まっているわけですが、現在、どういう状況になっているか、重要なポイントで結構でございますから、まず最初に御報告を求めたいと思います。
  238. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  第八会期はジュネーブで現在最後の週に入っております。やはり深海海底開発が一番大きな問題でございまして、しかも、この場合に海底開発に従事する私企業がどの程度国際機関に収益を分与すべきかという問題が実は最大の問題になっておりまして、これは国際機関への収益を還元する分が多ければそれだけ私企業の負担が重くなるという点でございます。  それからもう一つは、この国際機関そのものが直接開発するという場合に、あくまでも商業ベースの開発ということでございますけれども、やはり先進国から技術援助資金援助が欲しいという問題がございまして、借入金に対する債務保証というものに加えて、さらに実は財政負担というものを現在要求されておりまして、この点で主張の対立というか調整がまだついておりません。  二番目には、大陸だなの問題でございまして、これは二百海里で切るか、あるいは自然延長の場合に堆積層の厚さあるいは一定の距離基準を補足するかという問題でございまして、かなり歩み寄りが見られますけれども、やはり外縁の定義を最終的にどうするかということで、まだきょう現在交渉中でございます。  それから経済水域の境界画定の問題、紛争解決の問題も、これもかなり煮詰まっておりますが、最終交渉いたしております。なお、二十七日に終わる予定でございますけれども、それがさらに延長されるか、あるいは補足的な会期が夏行われるかという点に関しましては、最終日に恐らくいろいろな意見が出まして表決によって決まるということでございまして、今後の見通しについては、まだ具体的な最終的な形で申し上げる段階の直前でございます。
  239. 和田春生

    ○和田春生君 いま要点的にお伺いしたんですけれども、予定された会期は四月の二十七日までですね、もう余すところ幾ばくもないわけです。そういう状況で、いま出されたような深海海底の開発、特にオーソリティーとエンタープライズとの関係、また負担金の問題等がありますし、大陸だなの外縁規定とか境界線の画定とか、かなりむずかしい長い間対立してきた問題が残っているわけですね。今会期中にまとまる可能性はゼロと見ていいわけですか。
  240. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  今週で実質交渉を打ち切りたいという考え方は実は開発途上国にもございますし、それから社会主義国にもございます。他方において、やはり技術的にいろいろいま申し上げた開発収益をどう分配するかという問題や、財政負担というような問題あるいは大陸だなの地質学的な問題、これは実は年とともに新しい発見もございまして、わが国に関しましてもいろいろそういう点での詰めも行われているわけでございまして、今週で最終的にまとめるにはやはり若干時間が不足であるという感じはいたすわけでございます。しかしながら、もうことしいっぱいで交渉を打ち切りたいということは後進国のグループ七十七が今会期の第一週の冒頭に言ったわけでございまして、補足的な会期は必要であるとしても、そう長く続くというような見通しはないわけでございます。
  241. 和田春生

    ○和田春生君 いまその衝に当たっておられる井口さんとしてはなかなか思い切った発言はできないかと思うんですけれども、正直言って残された短い期間にこれが妥結に導かれるという可能性は私はないと見ていいんではないか。同時に、表決によって物事を仕切っていくと言っても、事柄の性質上、決まったからそれに従いましょうとなかなかいかない問題があると思うんですけれども、そういう点に関してはどういうふうに日本外務省当局としては対応していこうとしているのか、対応策も含めて、現段階における見通しをお聞きしたいと思うのです。
  242. 園田直

    国務大臣園田直君) 現状は報告したとおりでありまして、これについては和田先生からはもう長い間前々からいろいろ御指導を賜っており、そういう御意見も踏まえながらやっておるところでありますが、いまのところは、これが今会期中に解決するのはなかなか困難である。しかし、私としては、なるべく今会期中に片づけたい。したがって、いまの海底開発の債務保証というのは、当然のことながら政府負担の財政負担というものも思い切って日本は諸外国に先立って打ち出して、これを解決の方に導くよう努力してもらいたい、こういう方針でいまやっておるところでございます。
  243. 和田春生

    ○和田春生君 そういう方針で御努力をされるということは私も大変結構だと思いますし、この海洋法会議がパンクをしまして、力ずくの海洋分割時代に入れば大変な事態になるわけですから、日本としても積極的に努力されるのは好ましいと思うのです。  しかし、見通しの問題として、どうもわれわれの見るところ、現在、たとえば深海海底の開発にいたしましても、費用負担あるいは技術移転その他について、開発途上国側の主張は当然やっぱり民間企業をベースとする先進国側では受け入れがたい内容であろうと思いますし、日本政府も同意ができない問題があると思います。それから大陸だなの外縁規定にいたしましても、自然延長論がそのままそっくり認められれば、日本列島自体がアジア大陸の外縁に乗っかっているようなかっこうですから、大変むずかしい問題があると思うのです。さらに、二百海里で切るか、ソ連の言うように自然延長は認めるけれども三百海里で切れというような主張が入り乱れておりまして、それぞれの国益がかかっておるわけですから、私は正直言って絶対だめだということはいかなる問題にも言いにくいと思いますが、まずまとまる可能性が非常に少ないというふうに考えて対応策をとるべきではなかろうかという気がするわけです。  そういう前提に立ちますと、この前にも質問いたしましたが、御承知のように、去年の七月二十六日にアメリカの下院では深海海底鉱物資源法が通過をしているわけですね。さらにアメリカ以外の先進国グループでも、イタリアあるいはベルギー、オランダ、西ドイツ等はやはりマンガン団塊に着目いたしまして、それぞれの規制する国内立法の準備には手を染めております。しかも、それらの国に共通しているのは、これはわが国もその点は同様の立場というふうに私どもは聞いていますけれども、そういう深海海底の鉱物資源に対する国内規制立法というものは国際法の原則に反しないのだと、もしまとまらなければ海洋自由の原則があるわけだからどんどんやろう、こういう主張もあるようでございます。これに七十七国グループを中心にして猛烈に反対している。  さて、そうした場合に、これは二百海里の問題のときにも何度も申し上げてきたことですから繰り返すようなことになりますけれども、何とかまとまるように努力しよう努力しようとしてまとまらずに、そういう国々がどんどん手を出してくる、国内立法で開発に着手する、特にアメリカは非常に急いでいるわけですから。そうなったときに、日本ではそれは困ると言ったところでどうにもならない事態にまた追い込まれるのではないか。二百海里のときのように、どろなわ式にあわてふためいて後追いをするという形では後手後手に回る。そういう点で、前に要望しておいたのですけれども、国内のそういう立法に関しての準備は行っているんですか、行っていないんですか。
  244. 園田直

    国務大臣園田直君) いま会期の最終段階でありますから、先ほど言った方針であって、その時期に準備いたしておると言うわけにはまいりませんけれども、先生の数回にわたる最悪の場合に手おくれをするなという御注意は強く私記憶しておりまして、内々御意見に沿うてやっておるところでございます。
  245. 和田春生

    ○和田春生君 その点で、外務大臣として、最終段階ですから、余り具体的なことは言えない、決裂した場合に備えてということは言い得ないというお気持ちはよくわかるわけです。しかし、日本でも自衛隊を持っているわけですが、あれは何も戦争を起こすことが目的ではなくて、万が一そういうことが起こった場合にはという形で備えていると思うのですね。したがって、この場合にも、それだけのやっぱり腹構えは必要でありますし、外務省だけではなく、通産省あるいは運輸省にも関連する問題が非常に多いわけです。そうした点について立法準備をしているかしていないかはお伺いいたしませんけれども、万一決裂をして新たな事態に発展した場合についての対応策について関係省庁で御相談はいたしておりますか。
  246. 園田直

    国務大臣園田直君) いずれにしても、うまくいった場合でも過渡期に対する国内法が必要でありまするし、最悪の場合のこともおっしゃるとおりでございますから、先生の御指導は十分守って、準備をしているところであります。
  247. 和田春生

    ○和田春生君 この場合、アメリカやその他の先進国グループが国内規制立法に踏み切ったからといってわが国も手をこまねいているわけにいかぬというので、わが国も国内法に踏み切るとした場合に、やはり開発途上国からは相当な反発が来るであろうということは予想されます。かといって、ちゅうちょいたしておりますと、御承知のとおり日本の企業は深海海底の開発についてアメリカの企業との間にコンソーシアムを組んでいるわけです、企業提携その他をやっているわけでございますから、日本が国内立法にちゅうちょしたとしても、巻き込まれていくということは必然的に避けがたいと思うわけであります。したがって、そういう利害得失というものを考えますと非常にむずかしいと思いますが、この会期末までに努力をするという中に、日本自体が、いままでの妥協案でまとまらないとすれば、何らかの具体的な妥協案というものを提出してまとめることに対してイニシアチブをとるといいますか、積極的に努力をするという用意はおありなんですが、あるいはそれをやろうとしていらっしゃるんですか。
  248. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) わが国といたしまして、すでに国際海底に国際機関が直接開発するという立場は支持しておりますし、すでに債務保証も国連分担金の比率に従って受け入れるということは一年前に表明しておるわけでございまして、さらに国際機関に対するいろいろ効果的な手を打つという方策を現在関係省庁と検討しております。
  249. 和田春生

    ○和田春生君 大変抽象的なお答えなんですけれども、そういうやっぱり対立している場合には、妥協案をつくって日本はこういうやつでまとめたらどうだということがなければ、私は具体的な努力にならないと思うんですね、基本的な考え方の表明だけでは。やっぱり決裂しては困るという以上、まとめるために、これなら先進国グループ側にもがまんをしてもらえるし、開発途上国側もまあその程度ならという形で同意できるような案をねらいをつけたら積極的に出していくということがあって初めて日本外交的努力というものは実が実ると思うんですけれども、その点いかがなんですか、これは外務大臣にお伺いした方がよさそうでございますが。
  250. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 国際機関というものに対しまして前向きの援助をするということが必要でございますが、そういうものとあわせて、わが国が理事会で責任ある地位を果たし得るということと結びつけて、わが国としても独自の対案をいろいろ出しております。
  251. 和田春生

    ○和田春生君 むずかしい段階ですから、それ以上細かいことはお聞きしようとここで思いませんけれども、私は、もう何度も言っておりますように、地球上に残された最後の資源、マンガン団塊、この開発問題というのは安全保障上も非常に重要だと思います。  アメリカが非常に焦っているというのも、マンガン、ニッケル等七〇%から一〇〇%海外輸入に頼っているわけでありますから、どうしてもそういう重要資源を輸入政策に頼らなくてもいいという体制をつくるということを強く押し出しているわけです。わが国の場合は、もっとアメリカよりもそういう点は不利な条件にあるわけですから、国際機関に協調することは当然でありますけれども、それがうまくいかなかった場合については、やっぱりきちんと用意をしておいていただいて、あわてふためくことがないように、第八会期も終わりに来ている段階でございますし、ことしでピリオドが打たれるかもわかりませんので、これは本当に重ね重ね外務大臣にお願いをしておきたい。私は非常にやはり日本の将来の国益にとって重要な問題であると考えているわけなんですが、ひとつその点はよろしゅうございますか。
  252. 園田直

    国務大臣園田直君) 十分拝聴いたしてまいりたいと思います。
  253. 和田春生

    ○和田春生君 それでは海洋法の問題は以上の要望をいまは述べるにとどめておきまして、次に、ベトナムの留学生の問題について御質問申し上げたいと思います。  ことしの二月に、日本ベトナム交流協会の中のベトナム留学生一同という形で在日ベトナム留学生の法的地位に関する要望書というのが日本外務省と法務省に出されているわけですけれども承知しておられますか。
  254. 平岡千之

    説明員(平岡千之君) まことに恐縮でございますが、私ちょっとその資料を用意しておりませんので、申し上げられません。
  255. 和田春生

    ○和田春生君 じゃ、どこでとまっているんですか。ぼくのところにはコピーが来ています。もうそんなものは問題にせぬというので、どっかに片づけたんですか。
  256. 山下善興

    説明員(山下善興君) 法務省といたしましては、いただいております。
  257. 和田春生

    ○和田春生君 もらっておりますか。
  258. 山下善興

    説明員(山下善興君) もらっております。
  259. 和田春生

    ○和田春生君 法務省はもらっているそうでございますが、じゃそれに対してどういう検討をされましたか。
  260. 山下善興

    説明員(山下善興君) サイゴン陥落前から入国いたしまして引き続き在留中のベトナム人留学生に関連いたしましての取り扱いを最近決定いたしまして、地方の窓口に全部通達を出しております。  その内容を申し上げますと、従来の取り扱いをまず説明申し上げますと、昭和五十年の四月にサイゴンが陥落いたしまして以降、ベトナム人留学生の取り扱いについて基本的な法務省入国管理局の対処策といたしましての内容を申し上げますと、留学生等につきましては目的継続中は引き続き在留を認めていく、これは当然のことでございます。次に、留学を終えまして引き続きその後でも在留を希望するというベトナム人につきましては、個々の具体的ケースごとにこれは審査するわけでございますが、原則的に在留を認めていく方向で配慮する、こういうことが二番目の処置でございます。  ただし、その情勢の推移を見るという観点から、まだどういうふうに情勢が発展していくかわからないということもございまして、元留学生、いわゆる留学目的を終了した人たちにつきましては、いままで在留期間一年だった方々の在留期間を、在留の安定というものを見ていく必要性から一般の留学生等の就職等と同様の形をとりまして、在留期間を百八十日という形で、在留資格は法務大臣が特に在留を認める者という者に該当いたします出入国管理令四条一項十六号というものの在留資格にこれを変更して在留を引き続き認める。それに伴いまして、引き続き在留を認めている留学生あるいは元留学生等につきましては、本国送金の途絶等の事情もございまして、アルバイト等は大幅にこれを認めていくというような措置を基本的な取り扱いとしてまいったわけでございますが、特に元留学生でございますが、留学をすでに終えた方々で就職あるいはアルバイト等をそのまま続けていくという方々の在留期間が百八十日であるという状況等につきまして、たしかいま先生が御指摘の陳情書がやはり触れているところであろうかと思うわけでございますが、それに関しまして、その直後に、昭和五十四年の四月初旬でございますが、現在もなお帰国できないというようなインドシナ三国の事情等を勘案いたしまして、かつまた現在就職なすっているベトナム人留学生あるいは元留学生の方々の在留期間更新許可申請に当たりましていろんな書類を提出していただくようになっておるわけでございますが、いわゆる所得証明であるとか保証書であるとか、そういうものを非常に出しにくい状態に置かれておられるという特殊な事情を勘案いたしまして、これに対処する方策を立てたわけでございます。  それは何かと申しますと、この方々のいわゆるインドシナ三国等本国に帰国できるようになるまでの間、原則的に在留を認めていかなければならないであろうということが第一点でございます。第二点といたしまして、すでに留学等を終えて就職なすっている方々の在留期間を一応百八十日という形に切り落とした形で在留を認めてきたところでございますが、一番最近の在留期間更新許可申請、これは六カ月ごとに来るわけでございますが、その最新の在留期間更新申請があった時期において原則的に一年という、もとの在留期間にこれを戻していこう、こういうことが第二点でございます。第三点といたしまして、先ほど触れましたところの在留期間更新手続等の際に所得証明とか身元保証書の提出……
  261. 和田春生

    ○和田春生君 あのね、時間が限られているんだから、そんな細かい技術的なことはいいから筋だけをきちっと言ってください、何をやるかということだけを。
  262. 山下善興

    説明員(山下善興君) 本人のそういう説明資料等を非常に簡便な形でこれの許可を認めていこう、こういうことを策定いたして、地方にこれを通達しております。以上でございます。
  263. 和田春生

    ○和田春生君 これは外務省、法務省を含めて日本政府に私はお伺いしたいんですけれども、私たちの承知している範囲では、サイゴン陥落のとき約九百人ベトナム人留学生がおった。そのうち日本に現在在留して残っている者は六百数十人であるというふうに聞いておるわけですが、間違いありませんか、数字に。
  264. 山下善興

    説明員(山下善興君) ほぼそのとおりでございます。
  265. 和田春生

    ○和田春生君 この点について、私はいまの法務省の説明に非常に不満だし、あなた方が根本的に認識を間違っている点があるんじゃないかと思う。それは向こうの方の新しく成立したベトナム新政府がごたごたしているから帰れないんじゃないんですよ、やりっ放しているのが一つということ。  それから、日本に残っている人は、これはまあ共産主義政権を支持する人も支持しない人もおるわけですけれども、新しい共産党支配下になったその国には帰りたくない、こういう希望でやはり日本の自由な天地というものに留学に来たんだからという形で残りたい、つまり帰してやると言われても帰りたくない、うっかり帰ったらそれはふんづかまって監獄にほうり込まれるかもわからないという可能性があるわけですから、身の危険から考えても帰りたくない、そういう人たちなんです。いち早くその当時まだパスポートの期間が切れないうちにアメリカとかヨーロッパに三百人程度の人々が渡っていった、そういう人は新しいところに行って、われわれが聞いたところによれば、日本のようなひどい扱いは受けていない。つまり日本を希望して日本に留学をして、日本のことを学ぼうと、やはり日本に対して親しみを持つなり、あるいはそこで自分の将来というものを考えて、おりたいと考えておる諸君が、いわば難民じゃなくて、棄民のような扱いになってしまった、捨てられたわけです、一番ひどい目に遭っているわけです。  これらの人はいずれかの日か長ずるに及んで、いろんなポストにつくかもわからない。あるいは、いまの共産政権下のベトナムにも、考えを変えて、戻っていって、そういうところでしかるべき知識を生かして、政府ないしは関係のいろんなところでポストにつくかもわからない。ところが、日本におるときにずいぶんひどい扱いを受けてしゃくし定規に縛られていやな思いをした。六カ月ごとに切りかえるから、そのために満足な就職もできない、社会保障の適用も受けない、仕事が見つかっても、あんたは短期滞在者だからだめだという形で非常にひどい仕打ちを受けて苦労している。その苦労している実態というものも私は何人かの人から聞きました。本当に涙がこぼれるような苦労をしている。まじめに勉強したいと思っているけれども、勉強する暇もないという形で苦労している諸君がおるわけです。これは実態を調べればもっともっとたくさんあると思うんです。これは人数の問題じゃなくて、本質的な基本的人権に対する配慮で、私は、国際的な日本外交関係上、そういうことではまずいと思うんです。  もう一つは、抜けているのは、じゃいま、もと持ってきたピザはもう切れたと、便宜的に認められているというのは、ベトナム以外の外国に出国しようという場合に、それは自由に認められるんですか、それはどうなっているんですか。
  266. 山下善興

    説明員(山下善興君) それは認めるように措置しております。
  267. 和田春生

    ○和田春生君 認めておりますか。
  268. 山下善興

    説明員(山下善興君) はい、認めております。
  269. 和田春生

    ○和田春生君 それはどういう条件のもとですか。
  270. 山下善興

    説明員(山下善興君) これはいわゆる新政府からの旅券をまだ発給を受けてない方々がほとんどでございますから、これにつきましては、有効ないわゆる渡航文書等を所持し得ない外国人につきましては、地方入国管理事務所にこれを申し出ていただけるならば、その種の外国人の方には入国管理局長が証明書を出して、これを持って海外に渡航できるようにしております。
  271. 和田春生

    ○和田春生君 その場合に、難民で国連の保護下におる難民の場合の扱いとどこがどう違うんですか、それに準じてやっておるんですか。
  272. 山下善興

    説明員(山下善興君) 私、担当の事務じゃございませんけれども、難民の方につきましては、善興国連の難民高等弁務官事務所の方で定住先をあっせんしておる、こういうふうに記憶しております。
  273. 和田春生

    ○和田春生君 時間も来たようでございますし、外務大臣もお忙しいので、最後に外務大臣にお伺いをし、要望しておきたいんですけれども、先ほど私が申し述べたような趣旨で、非常にこの人たちは気の毒である。そして日本としても受け入れた以上、めんどうを見てやる必要がありますけれども、ほとんどやりっ放されているというのが実態だと思うんです。規則規則、規則ずくめで温かい思いやりというのが私は非常に欠けている。それぞれ法務省なりに努力はしていることは――何にもしてないとは言いませんけれども、困っているわけです。  しかも、これは国際関係を見ますと、西ドイツのごときは、留学生の受け入れとか、そういう形に対して非常に積極的に国としてお世話をやいているのが十年、二十年たったときに好ましい国際関係のプラスになっているわけですが、どうも日本はせっかく日本に留学をしたいと来た者を、肝心の扱いのところで冷たくあしらうものですから、逆に好意を持った者が反感を持っていく。これはやはり将来のことを考えた場合に、日本の国際関係にとって私は大きなマイナスだと思うんですね。ひとつ積極的に、法的措置ばかりじゃなくて、外交的側面から、また基本的な人権を国際的に守るという面から、ひとつ外務大臣に大いに努力をしていただきたい。具体的な問題についてはまた要請に行く場合もあると思いますけれども、その際には十分な御配慮をお願いをしておきたいと思います。いかがでございましょうか。
  274. 園田直

    国務大臣園田直君) インドシナ三国からの留学生、元留学生で、ベトナム新政府に対しては、帰国を希望する者は受け入れてくれという要請を、随時やっております。  その方々については、日本に住みたい方、他国に行きたい方、いろいろおられるでありましょうから、外務省は、当然、関係各省、法務省、文部省とも相談をし、この待遇改善には十分注意をいたします。
  275. 和田春生

    ○和田春生君 終わります。
  276. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時八分散会      ―――――・―――――