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1979-03-01 第87回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月一日(木曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  二月二十八日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     立木  洋君  三月一日     辞任         補欠選任      三善 信二君     竹内  潔君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 鳩山威一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 竹内  潔君                 秦野  章君                 町村 金五君                 小野  明君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務政務次官   志賀  節君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省条約局外        務参事官     山田 中正君        外務省情報文化        局長       加賀美秀夫君        水産庁次長    恩田 幸雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省経済局外        務参事官     国広 道彦君        外務省経済局調        査官       磯貝 肥男君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部長       仙石  敬君        水産庁海洋漁業        部長       佐野 宏哉君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○北西大西洋漁業についての今後の多数国間の  協力に関する条約締結について承認を求める  の件(内閣提出) ○日本国政府フィンランド共和国政府との間の  文化協定締結について承認を求めるの件(内  閣提出) ○日本国ポーランド人民共和国との間の通商及  び航海に関する条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に  関する条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○南極のあざらしの保存に関する条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  昨二月二十八日、佐藤昭夫君が委員辞任され、その補欠として立木洋君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約締結について承認を求めるの件及び日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  両件につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田中寿美子

    田中寿美子君 北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約というのについて、私は質問いたします。  予想以上に早く二百海里体制になってしまって、なかなか日本漁業界にとっては波が荒いという状況だと思うのですが、それに対応して今回の条約が結ばれ、それに日本も加盟していくということでございますが、私は、条約の題名というのはいろいろむずかしいなとこのごろ審議しながら思っているんですが、この「今後の」というのの意味ですね。やっぱりこれまでの条約、つまり北西大西洋漁業に関する国際条約というのを今度こういう条約に改めていくということに関して、特に「今後」というのに意味があるんだろうと思いますので、そのことを先に御説明いただきたいんですが。
  5. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 御指摘のとおりでございまして、この条約は、北西大西洋沿岸諸国が二百海里水域設定の決定を行ったために、北西大西洋漁業条約にかかわる新しい条約が必要であろうという認識から作成されたものでありますが、この御指摘の「今後」と申しますのは、かかる二百海里水域設定以後という意味でございます。  なお、この条約作成のため、会議も、北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する外交会議というふうに呼ばれて議論してまいりました。
  6. 田中寿美子

    田中寿美子君 わかりました。つまり二百海里設定後のというふうに解釈していいわけですね。  それで、今回、沿岸国、つまりアメリカカナダグリーンランドですね、が二百海里を設定しているのに対して、新しくそこへ入ってくる幾つかの国が規制を受けるためにこの条約に入るんだと思いますが、この沿岸国が二百海里を設定したことに伴ってどういう新しい事態が起こったのか、どういうふうにこの新しい条約に変えなければならない理由みたいなこと、それを御説明いただきたいんですが。
  7. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 御指摘のとおり、北西大西洋漁業資源の国際的な保全及び管理は北西大西洋漁業条約のもとで行われてまいりました。ところが、昭和五十二年に北西大西洋沿岸国でありますカナダデンマークフランス及び米国がこの条約対象水域において相次いで二百海里水域設定を実施してまいりました。で条約区域の一部におきまして漁業管轄権を行使することとなりました。  御質問の点は、従来北西大西洋漁業条約におきましてカバーしておりました地域の従来公海とみなされておりました部分に二百海里の適用がございましたので、その間、その地域についての漁業の取り扱いをどうするかということが当然問題になってきたわけでございまして、その手当てをするために、新たな国際協力の枠組みについて規定した条約を作成する必要がある、こういう認識協議したわけでございます。
  8. 田中寿美子

    田中寿美子君 つまり二百海里を設定して、今回はその規制区域というのは二百海里の外ですね。外に規制を設けるわけなんですが、そうしますと、日本がこの沿岸国にこれまでかかわってきたそのかかわり、それから今度新しく新しい条約に入るのについて、日本にとってはどういうふうな変化というかな、かかわりが起こってくるんでしょう。
  9. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 条約規定から申しますと、新しくできます漁業委員会における話し合いに従いまして、従来対象区域でなかったところにおける漁業規制を受けることになります。その他細かなことは従来と違うことがございますけれども、一番実利実害から申しますと、そういうことだろうと思います。
  10. 田中寿美子

    田中寿美子君 その二百海里以内は、それぞれの沿岸国漁業管轄権のもとで規制を受けるわけですね。その二百海里以内で受けている規制というのはどういう内容でございますか。
  11. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 二百海里以内における規制は、本来は、それぞれの国の漁業管轄権のもとで受ける規制でございますが、現実には、それぞれの国との間にわが方は二国間で協定を結びまして、その範囲において漁獲をいたしております。
  12. 田中寿美子

    田中寿美子君 つまりそれぞれの国が二百海里を設定したら、その国との二国間の協定によってその規制に従う、こういうことですね。
  13. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 概念的にはそうでございますが、具体的なことは水産庁から説明させていただきたいと思います。
  14. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、その二百海里内の入漁料とか、そのほかどんな規制があるのか説明してください。
  15. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 二百海里以内の操業につきましては、このNAFO条約関連水域としては、日米漁業協定日加漁業協定によってそれぞれわが国漁船入漁が認められておりますが、協定に従いまして、わが国入漁する漁船は、漁獲クォータなり操業水域なりにつきまして先方の規制措置に服することを条件として、入漁料を支払って操業が認められるということに相なっております。
  16. 田中寿美子

    田中寿美子君 日米日加、そうすると今回はグリーンランドがありますからデンマークでしょうけれども、この今回の新しい条約に入っても、一般的な規制というのはなくて、それぞれその二国間で協定を結ぶということになりますんでしょうか。
  17. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 御承知のとおり、NAFO条約水域規制水域としからざる水域とに分かれておりまして、規制水域外部分につきましては、わが国操業規制を受けるのは沿岸国との入漁協定によって規制を受けるということになります。それから規制水域につきましては、NAFO自体が定める規制措置に服するということになります。
  18. 田中寿美子

    田中寿美子君 ということは、二百海里の外の今回の規制水域ですね、規制水域に関しては一般的なこの条約によって今度新しくできるNAFOで決めた規制に従うと、どの国も、こういうことですね。
  19. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) さようでございます。  それで蛇足でございますが、現在もICNAFがございまして、二百海里の外側でもICNAF規制措置を受けております。その点につきましては根本的な違いはございません。
  20. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、その機構のことに入りますけれども、いままでのICNAFから今度NAFOに変わっていくわけなんですが、そうすると、その内容相当変わるものなんだろうかということや、それからその機構は現在のICNAFから脱退して新しくNAFOに入る間のプロセスみたいなものはどういうふうになっていくのか、その各国が引き継いでいくところ、その辺のことを少し御説明いただきたいんですけれども
  21. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 新条約の第二十三条によりまして、旧「条約」――ICNAFと呼んでおるものでございますが「第八条の規定により伝達されており又は効力を有していた提案は、同条約に従うことを条件として、」「既に効力を有している場合には直ちに又は当該提案が」と、ここちょっと読みにくいですが、過渡的には旧条約提案されていることが実施され得るようになっておりますので、この移行については問題がないように配慮されております。
  22. 田中寿美子

    田中寿美子君 大体、これ新しいNAFO機構が発足するのはいつになりますんでしょうか。
  23. 国広道彦

    説明員国広道彦君) この三月といいますか、もうきょうは三月ですが、この三月に新条約メンバーが集まりまして協議をすることになっております。私どもはまだ加盟しておりませんのでその正式メンバーとしては出席できませんが、オブザーバーとしてこれに出席しまして、そこでどういうふうに移行が行われるかということについて協議がなされることになっております。
  24. 田中寿美子

    田中寿美子君 この条約はもう発効しておりますね。ですから、三月にそういう会議を開いて決定することがそのままそれに関係する締約国ですか、みんなそれの中で相談したことに従う、こういうことだろうと思います。  それで、この条約についている附属書によって見ますと、分担金ですね、これは順序から言うと、あんまりこの地域での日本割合はそう多くはないわけですね。カナダECソ連アメリカポーランド、スペイン、ポルトガル、日本というような順序のようですが、金額にして。そうしますと、この地域は、日本遠洋漁業をする場合、世界の漁場の中で大事な順番から言えば、ここはどのくらいのところに当たりますか。
  25. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) お答えいたします。  この旧ICNAF、新しいNAFO条約水域漁場として持っております意義と申しますか、そういうことについて若干申し上げたいと存じますが、私どもいわゆる南方トロール、要するに北太平洋以外のトロール業界でございますが、南方トロール漁場といたしましては、このICNAFNAFO水域南方大西洋モーリタニア水域ニュージーランド水域と並ぶ四大漁場一つでございまして、一九七七年を例にとりますと、南方トロール八十七隻の操業のうち十四隻がこの水域操業をしておりまして、約二万五千トンの漁獲を揚げたということでございます。それで一九七八年におきましても、七八年と申しますと当然のことながら二百海里設定後でございますが、相変わらずNAFO水域で三万八千トンのクォータを保持しておるということで、非常に重要な水域であるというふうに考えております。
  26. 田中寿美子

    田中寿美子君 四大漁場のうちの一つだということですから、分担金というのはこの機構運営のために必要な分担金というふうに考えてよろしいですね。そうしますと、日本がこの辺の漁場で二百海里以内に入って入漁料を支払っていると思うんですが、それはどのくらい支払っているということになりますか。
  27. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) エクスベッセルプライス、これは通常船側価格といって訳しておりますが、それの三・五%相当入漁料を支払っております。
  28. 田中寿美子

    田中寿美子君 その入漁料割合というのは、ここへ入ってくる締約国相当ありますが、国のうちでは多い方なんですか、どうなんですか。
  29. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) いま申し上げましたのは、要するに二百海里水域沿岸国に対して支払う入漁料でございますが、北米大西洋岸の二百海里水域内の操業における日本のシェアというのは、ヨーロッパ各国の船もあの水域に出漁しておりますので、太平洋におけるほど高いわけではございません。
  30. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、二百海里の中に入ってとる分よりは、今度二百海里の外の規制水域ですか、そういうところでとるものの方が今後多くなるだろう、あるいは現在も多いということでしょうか。
  31. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) ICNAF水域におけるわが国漁獲実績というのは圧倒的に二百海里内でございまして、二百海里外は、あると申しましても、ほんの些少でございます。
  32. 田中寿美子

    田中寿美子君 締約国の中にECが入っておりますけれどもEC九カ国が一括して一つの国のような扱いで入っておりますが、これはどういうふうな扱いに――それはECの中で漁獲の割当なんかも決まるでしょうからですけれども
  33. 磯貝肥男

    説明員磯貝肥男君) お答えいたします。  EECメンバー国で、この水域で旧ICNAF条約メンバー国として操業しておりましたのは、西独、デンマークフランス、イタリア、イギリス、この五カ国でございます。
  34. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 補足いたします。  EC共通農業政策の一環としまして、EC各国が加盟するのではなくて、ECとして加盟するという形をとっておりますけれども現実にこの条約に基づいて漁獲をする国は先ほど申しました五カ国でございます。
  35. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、ICNAFのときは、ECの中のいまおっしゃったような国々がそれぞれ加盟していったのですね。そうして今度はEC一つとして入る、こういうことですか。
  36. 国広道彦

    説明員国広道彦君) そのとおりでございます。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 魚の種類は、ここに附属書に出ておりますので、むずかしい名前ですからちょっとわかりにくいのですけれども日本語にしたら、終わりの方の「やりいか」とか「まついか」とか「えび」「ししゃも」とかはわかるのですけれども、主にどういうようなものが一番多いのでしょうか。
  38. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 大西洋のこの水域におきまして日本漁獲しております主な魚は、先ほど先生お話にございましたイカ、シシャモ、それからそれ以外に、わが国では普通ラテン系名前メルルーサというのでよく知られておりますが、英語で申しますとヘイクですが、それが主力でございます。
  39. 田中寿美子

    田中寿美子君 何ですか、ヘイクというのは。
  40. 佐野宏哉

  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 メルルーサというのは、どんな魚。
  42. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) これは和名で売りますと消費者団体から虚偽表示でおしかりを受けますので、最近は、魚屋さんも正直にメルルーサということで売っております。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 ああそうですか、私知らないな、どんな魚か。  それでは二百海里問題に関連して少し伺いたいのですが、二百海里時代に入ってきて、日本漁業相当苦しくなってきつつあると思うのですが、漁獲量は、伸びが減っているというか、あるいは全体として減っているんではないですか、どうですか。
  44. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 昭和五十三年のつまびらかな数字というのはまだ集計を終わっておりませんので、二百海里元年とでも申すべき昭和五十二年の数字でお答えをさしていただきますが、昭和五十二年のわが国の総漁獲量が千七十六万四千トンでございまして、これは昭和五十一年の実績が千六十五万トン、それから五十年の実績が千五十四万トンという水準でございますので、少なくとも二百海里元年の時点では漁獲量減少を見ずに済みました。と申しますのは、そのうちいわゆる遠洋漁業漁獲量というのは二百六十六万四千トンでございまして、これは昭和五十一年の三百十六万八千トンに比べまして相当落ち込みを見たわけでございますが、一方、沿岸漁業沖合い漁業漁獲量がふえることによりまして遠洋漁業落ち込みをカバーして、少なくとも昭和五十二年には漁獲量減少を見ずに済んだということでございます。  私どもといたしましては、今後、二百海里時代になりまして、当然、外交のかさの下で漁業外交と言われる分野で精いっぱい努力をいたしまして、わが国遠洋漁業漁業権益を確保することに努力することは当然のことでございますが、しかしながら、やはり手近の海を再開発して、そちらの漁場的価値を高めていく、あるいは多獲性大衆魚利用効率を向上していくというような形で対応していくということが基本的な方向であって、そういう意味では、いま御説明をいたしました昭和五十二年の漁獲実績が示しておるような方向というのが今後の行き方ではないかというふうに考えております。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 私が見ましたFAOの統計ですけれども、一九五五年を一〇〇とした指数が出ているのを見ましたのですが、日本伸びというのは二倍ちょっと。これはまだ二百海里になっていない時期ですから、いつもその沿岸まで行ってとったんだと思いますが、ところが、それに対してずいぶん伸びている国がほかにいっぱいありますね。ソ連は三六九だから、約四倍ですね。それからペルーなんかでは一九〇〇という指数ですから、やっぱり二十倍。それからインドが二六八・八だから、ちょっと三倍近いですね。韓国が七六三ですから、もう八倍近い。タイも七六三。そういう非常に目覚ましく漁獲量伸びている国と、日本漁業資源を非常に多く使う国なんですが、伸びとしては必ずしも多くないし、今後二百海里問題で相当苦しい目にも遭うかと思うんですが、非常に目覚ましく伸びている国は一体どういうわけでこうなっているのかということをお伺いしたいのです。
  46. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 実は、先生から御質問の御通告をいただきまして、私もFAOの資料を調べてみたわけでございます。それで、確かに先生指摘のように、大変大きな漁獲量伸びを遂げている国がございます。  いま先生お話のございましたソ連でございますとか韓国でございますとか、こういう国は、何と申しますか、遠洋漁業国として日本に続いて日本をキャッチアップしてくる過程で、そういう意味では、こういう国々遠洋漁業伸びに支えられた非常に急激な漁業分野における高度成長というものは、ちょうど工業、ことに軽工業の分野におけるいわゆる中進国先進国に対するキャッチアップの過程漁業版のような、そういう性格のものであるというふうに考えております。  それから、もう一つ分野として、先生もちょっと名前をお挙げになりましたけれどもタイとかインドとかフィリピンとかという、そういうグループの国がございます。こういうグループの国は、主としてエビでございますとかマグロでございますとか、そういう輸出志向型の商品的な漁業をねらって重点的に伸びてきている。それで、そういう過程でその輸入国側からのいろんな形でのてこ入れも行われているというのがもう一つの顕著な伸びを示しているグループ。  大体、そういう二つのタイプ漁業成長国というのがあるというふうに見ておるわけでございますけれども、前者の方につきましては、これは二百海里時代に入ることによって日本とある意味では同じような衝撃を受けておるわけでございまして、こういうパターンがどこまでいくかということについては、ある種の問題がある状況になりつつあるというふうに考えております。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの御説明を聞きますと、魚の漁獲量を急激にふやした国々一つ理由は、国内消費が非常に上がったということ、それからもう一つは、魚をとってそれを輸出に回す国、こういう国が急激にふえてできてきたというふうにお聞きしたんですが、もう時間がありませんから最後の質問にします。  日本の将来の漁業のことを考えてみて、二百海里時代に入って、その二百海里を設定した国の中に入漁料を払って入っていってとるという部分、その方が有利だという部分と、それから国によって、これは南の方はそうじゃないんでしょうか、ニュージーランドとかオーストラリアなんという国は、自分たちがとって魚を食べるというよりは、二百海里を設定して、その二百海里内で魚をとったものを――反対ですかね、オーストラリアニュージーランドは。むしろあれですか、日本などが入っていって、入漁料を取ってとらせ、その収入を考えるというふうな国と両方あると思うんです、自分の方でとって輸出に向けるのと。日本がそういう世界じゅうの漁場を考えた場合、どの地域に対してはどっちの方をやった方が日本漁業にとって将来性があるとか利益があるとかいうことになるんでしょうか。
  48. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 何と申しますか、二百海里を設定いたしました沿岸国としては、当然、二百海里に対するジュリスディクション自分の国のナショナルインタレストに即してできるだけ有効に駆使しようとするわけでございますが、大別いたしまして、三つぐらいのパターンがあるように思っております。  一つは、パプア・ニューギニアとかソロモンとか、ああいうタイプの国でございますが、主として入漁料という形での財政収入ということに一番大きな関心を示しておる、このタイプ。それからニュージーランドのように、ほかの分野での貿易上のアクセスを改善するための交渉上の武器として使うということに主たる関心を示している国、あるいはアメリカのように国内漁業振興とか対日水産物輸出とか、そういうための武器として使うというふうな関心を示しておる国、いろんなパターンがそれぞれございますが、ただ、何といいますか、そういういろんな使い方をいたしますけれども、どん欲さの程度みたいなものがまたそれぞれ違うわけでございまして、どういう使い方をする国が一般論として特にどん欲だということもございませんので、これはなかなかその国益実現の手段として二百海里のジュリスディクションを使う使い方パターン分類ごと漁場としての利害得失というのがそう正確に分類できるというものでもございません。  一般論として申し上げますと、大体、南寄りの国というのはカツオ、マグロ類が主体でございまして、これはいわゆる高度回遊性魚種と言われておりますように、必ずしも特定の漁場にスティックしなければとれないというものでもございませんので、わりにこちら側から見ても選択可能性がある、そういう分野とのおつき合いの仕方と、それから底魚類みたいに、ある程度のことを言われてもその漁場にスティックせざるを得ないという、そういう魚を対象にした場合のおつき合いの仕方というようなことで一つのアプローチの差が出てくる、大づかみに言ったら分かれ方ではないだろうかと思うわけでございます。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も水産漁業のことをほとんど知らないで質問しているものですから、きょうお話しいただいたことは全く手ほどきなんで今後の参考にしたいと思いますけれども、二百海里問題で、問題としてまだ未解決の問題をいっぱい持っているわけですね。  これから日ソ漁業の問題、それから日米日加その他、昨年やった問題なんですけれども、今後も非常に交渉の過程で問題が残されていると思います。たとえば日ソ漁業でしたら、これまでの実績が物を言うというような時代が終わったような、等量主義みたいなことを向こうも主張してきていますし、それから例のサケ・マスの母川国主義だとか、いろいろまだ解決していない問題がいっぱいあると思います。それで、もちろん日本政府はもとより、水産庁は特に今後の漁業のあり方について、もう先ほど沿岸を開発するというようなこともおっしゃったし、非常に研究していらっしゃるものと思いますので、その点について私なんかは専門的知識も持ちませんからあれですけれども、しかし、政治的に未解決の国々の問題もあるわけですね。中国とか韓国とか二百海里問題などもあるわけなんで、今後、そういう問題についてどういう方向に持っていこうとしているのか、これは外務省の政務次官、何かお考えがありますか。
  50. 志賀節

    政府委員(志賀節君) 私は、海洋法という動きが出始めたときから大変関心を持っておるものでございますから、大分海洋法を追いかけました。  現在、私が抱いております考え方の一端を御披露いたしますと、世界じゅうには海洋に面していない国があるわけであります。たとえばモンゴルとかパキスタンとか、こういう国々、一方、われわれ日本のように海洋に面して、特に海洋法と深いかかわり合いのある国がございますが、こういう国々がいわゆる資源ナショナリズムのような恣意的な、天から与えられたそういう地位をいいことにして、そういうことに突っ走るということではなくて、やはりそういう恵まれていない国々をも含めたグローバルな観点から相互の理解を深め、あるいは利益を一方的に求めるということではなくて、相互互恵、もとより海洋に面していない国々に対してまでもそういう思いをいたしながらやっていかなければいけない、そういう中の一端としての北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約の精神もまたそこに存しなければいけない、こういうふうに考えておりますから、今後のこの種の条約、この種の考え方はこういう面でやはり追い求めてまいりたい、そういう精神を追求してまいりたい、このように考える次第でございます。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 時間十五分ほどの間に短くひとつ。  この日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件の御質問をいたします。  わが国とフィンランド共和国との間の文化交流を促進するためのフィンランド共和国との間の文化協定は、両国間の相互理解を深め、友好関係を強化することに貢献があるという考え方から始められたものと思います。一九七七年の二月に、ここに出席している鳩山さんが外務大臣の時分、コルホネン・フィンランド共和国外務大臣の訪日を機会に締結交渉を開始して今日に至ったのでありますが、わが国としては、この種の文化協定は、一九五三年といいますから、いまから二十六年ほど前ですか、日仏文化協定締結後すでに十七カ国との間に文化協定締結しておりますが、この文化協定によってどのような成果が上がったか、重立った成果についてその実績を列挙していただきたいと思います。大体でよろしゅうございます。
  52. 志賀節

    政府委員(志賀節君) わが国とフィンランドの間には、人物交流の分野では、フィンランドからわが国に毎年二名の国費留学生、国際交流基金招聘事業による文化人数名が招聘され、また一方、わが国からもフィンランド政府奨学金による留学生一ないし二名が招聘されているほか、青少年、スポーツマンの交流及び文化人、学者、教員の交流も活発でございます。また、わが国は、フィンランドにおける日本文化紹介のためフィンランドの諸大学等への日本関係図書、日本語教材等の寄贈等を行っております。  芸術交流の分野では、わが国は、昭和五十二年十月、東京都交響楽団をヘルシンキに派遣し公演を行っており、フィンランドは、昨年、現代フィンランド美術五人の作家展、スカンジナビア工芸展等を東京などで開催しております。わが国といたしましては、国際交流基金を通ずる文化交流事業を一層拡充するとともに、民間レベルの各種文化交流活動に対する支援を強化し、着実にフィンランドとの文化交流を発展させていくよう努力する、こういう決意でございます。
  53. 戸叶武

    戸叶武君 フィンランド共和国においても、すでに十七カ国との文化協定締結しておりますので、文化協定による成果というものを高く評価しているのだと私は思います。  そこで、いま外務政務次官が列挙したようないろいろな催しがあるということでありますが、両国において留学生の交換、日本から二人ということですが、先方からはやはり二名じゃないかと思いますが、昨年は向こうの要請によって日本から四人の留学生が派遣されておるはずですが、その正確な数字を外務省なり文部省の方からこの際承っておきたいと思いますが、どのようになっておりますか。
  54. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) ただいま先生の御指摘がございましたように、文部省の国費留学生としましてフィンランドからわが国に受け入れた者の数は、昭和四十二年度から現在まで合計十六名でございまして、最近は毎年二人ずつ受け入れております。一方、フィンランド政府の給費を得てわが国から留学している者の数は、同期間内で合計二十三名となっておりまして、最近の数字を申し上げますと、昭和五十一年度が一名、五十二年度が二名、五十三年度が五名でございます。これはフィンランドの一般奨学金のわが国への割り当ては一名でございますが、このほかに国別割り当てのないフィンランド研究のための特別奨学金及び専門家奨学金というのがございまして、たまたま五十三年には、これらの国別割り当てのない奨学金を獲得する日本人が多かったためにふえている、こういうことになっております。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 フィンランドの方ではフィンランド研究のための奨学金を出しているということですが、日本側からはその種の奨学金は出されておりますか。
  56. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 文部省の国費留学生は、特別に日本研究とかいうような指定をしておりませんで、どのような研究でもいいということになっております。このほか、一般の留学生とは違いますけれども日本研究のためといたしましては国際交流基金の方で研究者等を招致しております。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 文部省とか国際交流基金というものを問わず、過去において二十三名からの留学生を送っているということであり、フィンランドからもすでに十六名の留学生を受け入れているということでありますが、その留学生たちの専攻はどのようなことになっておりますか。
  58. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) フィンランドから日本に来ました学生の五十三年度分について御説明申し上げますと、一名が大阪大学の工学部に入っております。それから一名が京都大学の医学部に入っております。それから日本からフィンランドに昨年参りました五人でございますけれども、一名が哲学を研究しております。それから二名がフィンランド語の研究でございます。それから一名が動物発生学、それから一名が工芸デザイン教育ということになっております。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 フィンランド語でありますが、フィンランドにおいては九二%までフィンランド語ということになっておりますが、フィンランド語は、ハンガリアあるいはエストニア、フィンランドというふうに、日本語のあり方と非常に類似しているのが特異なものとして言語学上問題になっておりますが、そういうことについて、もちろんその人はそれを掘り下げていこうとする人なんでしょうが、日本語の起源そのものすらもまだ非常に学問的には突き詰められていないのですけれども、そういう目標を持ってやっておるんでしょうか。
  60. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) フィンランドにおきます日本研究等も最近はかなり関心が起こってございまして、フィンランドに十余りの大学がございまして、そのうち日本関係の講座も若干ございます。たとえばヘルシンキ大学におきますアジア・アフリカ学科内の日本語講座、あるいはトゥルク大学におきます政治歴史学科内のアジア政治史講座、それからオウル大学に近く日本に関係の講座が開かれる予定と聞いております。それから大学以外に、タンペレという町がございまして、そこで日本語講座が開講されているという状況でございます。
  61. 戸叶武

    戸叶武君 この日本研究が非常に盛んになったのは、特に最近において関心が払われているのは、日本の近代化というものが発展途上国において学ぶべきものがあるのではないか、その発展の原動力となっているものは日本の文化の蓄積からきているんじゃないかという形において、日本の古典の研究と同時に、日本の近代化のプロセスというものをしっかり学ばなけりゃならないという考え方が強いようですが、私がいまから二十六、七年前にインドを旅行したときに、都留さんの講義がインドのニューデリーの大学で行われまして、大変な関心を呼んだようです。その関心の中心は、近代経済学をも身につけた方から日本の近代化への道を学び取ろうという意欲がそこにあらわれたんだと思いますが、インドでは当時二百人からの中国語あるいは中国の文化や歴史を教える中国人の教師がインドの各大学に入っておりましたが、日本からは非常に微々たるものであります。それは日本語のむずかしさもありますが、言葉だけでなく、日本の近代化から学び取ろうという意欲はインドだけでなく各国に強いと思います。  特に、いまフィンランドにおいては、高度経済成長政策が当たって隣のソ連よりも国民の生活が楽になったという段階で、石油ショックにおいて、ソ連に依存したフィンランドが石油の値上げによって非常に苦境に立った、これをどう打開するかというのが今日フィンランドにおいても一つの課題だと思いますが、そういうフィンランドがいま当面しているところの問題、苦脳に対して回答を与えるような一つの学問、研究、あるいはそういう意欲を持った留学生というようなものは別に派遣されている趣はないんですか。
  62. 仙石敬

    説明員(仙石敬君) 先ほど御説明しましたように、文部省の留学生というのは全科目を受けることができることになっておりまして、文部省の側から特にその学科目を指定するわけでございませんので、先方からそういうような希望がございましたときにはぜひ優先的に考慮していきたい、こう考えております。
  63. 戸叶武

    戸叶武君 その辺に、いまの日本の外務省並びに文部省の文化交流というものはきわめて後ろ向きの文化交流であって、現在もがいている発展途上国の苦脳にこたえるような、ニーズにこたえるような一つの行き方がなされていないところに私は一個のマンネリの文化交流があるんじゃないかと思うんで、そういうところはもう少し、外務省あたりも苦労人が多いのだから、やはりその発展途上国に即応したような意欲を持って、文化交流に対しても向こうが言ってきたのに応ずるという受け身のものでなくて、教えて遣わすというような傲慢な態度ではいけないけれども、発展途上国としてその国に何を与えるべきかということの配慮は今後の外交においては十分なされなければならないのじゃないかと思います。これは注文ですが。  そこで一九七七年に東京都の交響楽団がフィンランドを訪問しましたが、フィンランドは作曲家のシベリウスを生んだ国であり、それを誇りとしている国でありますが、その反響はどの程度のものでありましたですか。
  64. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) わが方から参りました渡辺暁雄さんという方はシベリウスの解釈に関しましては一流の方だそうでございまして、反響は非常によろしかったというふうに承知いたしております。  それから先ほど戸叶先生が御質問の中でお触れになりました点でございますが、わが国の文化交流におきまして、日本の近代化、日本の文化等に関します交流に関しましては、国際交流基金から文化人の派遣ということをやっておりまして、わが国から著名な学者、文化人等を海外に派遣いたしております。で先生指摘のとおり、わが国の近代化というのは、特に発展途上国におきましては、旧来の伝統的な文化、生活体系、それと近代技術との調和、発展的な一体化ということで非常に関心が高いわけでございます。したがいまして、その点につきましても、日本としてあるいは先方に何らかの示唆なり有益な点を与えられるかもしれない、また先方においてもこれを求めるということもございますので、その点につきましては、日本の近代化あるいは日本の文化という点について日本の事情の紹介に努めるという努力は行っておる次第でございます。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 フィンランドは沼と湖、森林とキノコの国と言われておりますが、特に最近、キノコを養殖し、そうしてこれを食料に取り入れる、かん詰め、その他世界的な一つの風潮が生まれてまいっておりますが、日本と同じく三千種類ぐらいのキノコがスカンジナビア諸国にはあるということで、日本、イタリアとともにキノコを食料にすることに対して非常に関心を払っているということですが、食欲と色欲はだれにもあるそうですが、やはりそういう食べ物の問題なんかにまで一つの文化交流というものが入っていかなけりゃうそだと思いますが、日本にも植物学者なり、あるいはキノコ栽培の過疎地帯における発達は目をみはるものがあるんですけれども、そういうものをお互いに交流してみるというような考えはお持ちかどうか、これから考えてもいいんじゃないかと思う。  また、先ほどの御答弁にあったように、日本の近代化の手引きと思われるような本は、発展途上国に向けて相当の権威ある学者に三人なり五人なり委嘱して、わかりやすく、それがテキストブックになるようなものを参考にしないと、やはりまちまちの解釈で見ていられるのよりは、当たりさわりがないようにしても結構私はその手引きはなし得るのではないかと思いますが、この二つを質問いたします。
  66. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) フィンランドの食物あるいは料理に関しましては、毎年、一回、フィンランドのフード・フェスティバルというようなものを帝国ホテルでやっとおりまして、このキノコも含めましてフィンランドの料理の紹介に努めておるわけでございます。文化交流は非常に幅の広いものでございますので、そういう生活のきわめて重要な一面でございます料理等に関しましても、さらに幅広く両国間の交流、理解の伝播ということについては続けてまいりたいと考えております。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先般来、アザラシ、水鳥、きょうは漁業ということで、大分動物愛護の条約にかかわる審議が多かったようでありますが、きょうはまず最初に人間愛護の文化協定から入っていきたいというふうに思います。  この種の文化協定条約内容を見ますと、ほとんどもうどこの国と締結をする場合でありましても中身は変わらぬと、まことに結構、きわめて理想的な中身が盛り込まれているというふうにうかがい知ることができるわけであります。今回のフィンランド共和国政府との文化協定におきましても、この前文に見るとおり、文化及び教育の分野における両国間の協力を助長し、かつ、発展させることを希望し、」とあり、さらに第一条、ずっとあとそれ以降におきましても、要するに密接な文化交流を通じての両国間の友好親善を図ろうという、そういう意味合いが込められていると判断されるわけであります。しかし、今日まで文化協定締結いたしましてその実効の面を考えた場合に、日本政府の取り組むこの文化交流というものが残念ながらいまだしという印象をぬぐい切れないのではあるまいかというふうに思えてならないわけであります。  先ほども質疑のやりとりを聞いておりまして、フィンランドとの関係におきましても、果たして日本人がどれほどフィンランドの国情を知っているのか。かつてオリンピックが開かれたところであるとか、いまも話題になりましたかの有名な作曲家であるシベリウスを生んだ国であるとか、あるいは沼地が多いところであるとかという、きわめて漠然としたことしか知らない。いわんやフィンランド人の日本に対しての認識と理解というものについてはいかがなものであろうか。先ほどユネスコの関係者でございますか、おっしゃっていました。こちらから参ります留学生よりも向こうから来る留学生の方の数がはるかに少ない。で大阪大学の工学部と京都大学の医学部に現在も留学されているそうであります。ただし、大変難解な日本語というものについての習得のさせ方あるいは日本語を通じての理解の仕方というものが果たしてどういう仕組み、機能になっているんだろうかというささやかな疑問を抱かざるを得ない。そういうような多くのネックを抱えておる今日の状態の中で、果たして今後の理想的な文化交流というものが助長されていくんであろうか、発展へのその希望というものが考えられるんであろうか。  いろんな文化人の言われることの中には、文化交流こそ最大の国防の礎であるということすら言われている人がございます。確かにいままで経済に重きを置いてきた日本の実情というものも、それはやむを得ないという側面があるかもしれないけれども、いま大平内閣もしきりに政策転換を図ろうとしてその方向づけをされているようであります。日本全体がいまそういうような方向へ向かおうとしているときに、果たして従来のようなこの実りのない、と言えば余りにも言い過ぎかもしれませんけれども、果たしていかがなものであろうか。  ちなみに申し上げると、日本の文化交流というのは時たま国の金でもって歌舞伎を紹介するとか能を紹介するとか、それも時に応じては日本の伝統芸術というものを紹介して日本のあり方というものを知らしめるためには必要かもしれません。しかし、それだけでもって十分なんであろうか。もう一遍基本的にこの辺を洗い直す必要があるのではなかろうか。根本的にこの文化交流というものにより以上の力点を置くとするならば、もう少しく、ただ条文に盛られたきれいごとだけではなくして、具体的にどういうこれからの実効あるあり方を考えていらっしゃるのか。これはむしろ政務次官にお答えいただいた方がよさそうでございますね、大変政務次官は文化方面にも造詣の深い方であることを私も理解をしておりますので。
  68. 志賀節

    政府委員(志賀節君) 大変渋谷先生の該博な知識をお聞かせいただきまして、私、啓発されるところ大でございまして、ありがとうございます。  私は、実は、このフィンランドに一度行ったことがございます。それで現地で大使から聞きまして、私、非常な親しみを一層覚えましたことは、かねてからこの国の言葉が日本語と同系統ではないかと目されているウラル・アルタイ語族に属する言葉でございまして、これがたとえば「日曜日に」という場合に、英語でございますと、御承知のとおりオン・サンデーと申しまして、「に」が日曜日の前にくるわけでありますが、「日曜日」というフィンランド語の次に「に」というのが何か「ネ」と言うそうでございまして、そんな点まで何か似ているということを聞かされまして非常な親しみを覚えたことがございます。そんなことから、あるいは私詳しいことは存じませんが、同じウラル・アルタイ語族に属する言葉を使う人たちにとっては日本語は習得がしやすい言葉ではないだろうかという実は期待感が私にはございます。  ただ、いずれにいたしましても、外国語というものはマスターをすることはきわめてむずかしいことでございますから、そういう面から積極的にこの文化交流の事業の一環としての留学生が日本に来た場合には、この人たちに対して日本語の習得がより容易に達成でき得るように、政府としても、関係機関としても積極的な姿勢をとるべきであるということはもう御指摘のとおりでございます。  私は、そういうようなことの積み重ねが大事だと思っておるのでございまして、日本の諸外国に対する文化交流がまだまだ至らない点が多いという御指摘もそのとおりだと思います。そしてまた識者が言っておられる、これこそ本当の意味での日本の安全保障、防衛につながるのではないかということも私はごもっともな御意見だと思っております。そういう意味で、われわれはわれわれの安全を保障してもらいながら、また同時に感謝してもらえ、そしてまたこちらも感謝の念を持って接していく、そういう文化外交というものを一層充実させなければいけない。  私の一つの考え方として申し上げさしていただきますと、御承知のとおり私の出身地は岩手県でございます。ところが、高度経済成長の中で私ども地域もいわば高度経済成長のやり方に右へならえをしてしまいまして、地方のよさ、風土の個性というものを若干失ってきつつございます。ところが、フィンランドに私が行きまして驚きましたことはフィンランドの手工芸品というものが非常にすばらしいんでございます。これはセンスといわず、あるいはその他手の込んだできぐあいといわず、非常に私は感銘を受けたわけでありますが、おのれの置かれているそういう環境を十分に牛かしてそれをプラスに持っていく、そういうフィンランド人のあり方というものを私は非常に教えられた思いがいたします。私ども地域も雪深い、そういうところでも、こういうものを育てれば育て得るんではないだろうか。こちらの文化も学んでほしいが、こちらの方から先方の文化に謙虚に接しながら学んでいく姿ということが私どもの文化外交の大事な点ではないだろうか。また、御案内のとおり、フィンランドには日本人で言ういわゆる大和魂とでもいうようなシシューというものがあるそうでございまして、これは昨今は若い者からなくなりつつあるというような嘆きを老人層が漏らしておるそうでありますけれども、このシシューを今日相当まだ温存しているフィンランドのそういうものからもわれわれは学ぶべきところがあるかもしれない。そういう謙虚に学ぶ姿勢というものを堅持していくことが大事ではないだろうか、このように考えておりますので、お答えをさせていただきます。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 志賀さんが恐らくかねてからお気持ちの中に描いていたことをいまお述べになったんだろうと私思います。  私は、このフィンランドの問題に限らずに、きょう採択が予定されておりますポーランドの場合でありましても、えてして通商条約の方が先行いたしますけれども――そうした通商条約が結ばれるのは結構、非常に密接な関係を結ぶ、で文化協定はその後からのこのことくっついていく。ポーランドに例をとったっていま百二、三十名だそうですね、住んでいる日本人が、在留邦人を入れましてね、あれだけの広大な面積を持っている。そういったことを考えても日本人がポーランドに対してどれだけの理解と認識があるか、逆に今度ポーランドの人たちが日本に対してどれだけの理解力を持っているかという場合もございましょう。あるいは一番歴史的に伝統的に友好のきずなが強いと言われております中南米を見た場合でも果たしていかがなものであろうか。いわんや中東なんて一番接近度の薄かった関係国においては、いわんやというような気がしてならないわけです。総じて国連に加盟している国全部と直ちに時間をかけずにということは、これは不可能なことでございましょう。特にいま接近の度合いの深い、そういう友好国と目されている立場に置かれている国柄とは、そういう面での文化交流を通じての接近度というものが果たしていかがなものであろうかと、フィンランドの今回の問題を通じましていまは私は申し上げているわけでございます。  フランスなんかの場合を例にとりますと、これは日本としても大変伝統的につながりが強いところであるとわれわれは理解していたわけです。ところが、ことしの初めに、もうすでに御存じのとおり、前のパリの日本館長をやって、現在東京大学の教授をやっている小林さんの「論壇」による指摘を申し上げますと、恐らくことしの初めか去年の暮れあたりだったろうと思うんですが、パリ大学の教授が国営放送を通じて日本の紹介をしたという。しかもその方は日本に滞在したこともある、日本に来たこともある。どちらかというと知日派の一人と目されている人が、どういう一体紹介の仕方をしたかというと、日本には十三歳になると女の子は売り飛ばされるという習慣があるということを述べたというんです。それを聞いて、フランス在留邦人は肝を冷やさんばかりに驚いた。東大教授であり、前のパリ館長と言えば相当権威ある立場に置かれている人の言として、これはもう真実であろうと私は疑わないわけであります。フランスあたりでそうなんですね。毎年三十万を超えるような旅行客が行っている、しかも恐らく在外邦人としても一番多くフランスにいるんじゃないかと思うんですね、一万人を超えると言われているんですから。それでいてなおかつそうであると、本当に背筋の寒い思いがするんですね。  かつて恐らく衆参どっちかの委員会で問題になったろうと思うんですが、イギリスの教科書なんかで、これは日本の絵なのか中国の絵なのかどっちともつきかねるような絵入りの教科書が紹介された。文化交流が地に着いたものであるならば、もっと正確な紹介の仕方があっていいんではないだろうか。そういうところから日本に対する侮べつ感というものがあるかもしれない。そういう国柄でありながら、大変高度経済成長の波に乗って経済先進国である、ドルはどんどんたまって豊かな国だ、どうなっちゃっているんだみたいな受けとめ方しかされないんじゃあるまいか。もちろん全部が全部、イギリス、フランスの人たちがそういう考え方を持っているとは言いません、日本をよく知っている人もございましょう。けれども、一般的な受け方がそうであるということになりますと、これはやっぱり非常に遺憾なことであるばかりではなくて、お互いの親善友好の上におきましてもなかなかその速度が進まないんではないだろうかという感じがしてなりません。  こういう点については、どんな受けとめ方をされ、そしてさらにどういう解消の仕方をされていこうとされているのか。これは外務省あたりも情報文化局あたりが中心になって広報活動もしきりにおやりになっていらっしゃる。一体、その広報関係の活動というものがどういう反響を呼びながら実質的な効果を上げているんだろうか。それにはやっぱり何億という金がかかるわけですから、その辺がどうもこういう文化協定が出てくるたびごとに理解に苦しむ点ではなかろうか。すべてが満足という、そういうむちゃなことをぼくは要求しているわけではないですよ。むしろこれは加賀美さんに伺った方がいいかもしれませんね。
  70. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 私どもも、先生指摘の記事につきましては非常に驚いているわけでございます。ときどき私どもからいたしますと考えられないような誤解というようなことがございます。  外務省の方といたしましては、日本の国情、それから政策、文化、こういったものを正しく海外に伝え、諸外国の対日認識の向上を図るということでいろいろやっておるわけでございます。たとえば報道関係者を日本に呼んで日本現実を見てもらう、あるいは世論形成層――オピニオンリーダーと言っておりますが、こういう人々を日本に招いて日本の指導者との会談をしてもらう、あるいは日本をいろいろ見てもらう、そういう招待事業をやっております。これは年間約二百名に上っておるわけでございます。それから各種の海外広報資料を作成いたしまして、これを配付する。この広報資料の中には日本をある程度知っている人向けのもの、あるいは日本を本当に知らないと思われる普通の方々のためのものというようなものをいろいろこしらえておりますが、これが年間約三百万部ぐらいを作成配付いたしております。それから各種広報映画等視聴覚資料、テレビも含みますけれども、こういうものを作成配付いたしておりまして、こういった視聴覚資料が年間約千四百本ぐらいになります。こういう努力をしておるわけでございますが、こういうじみちな海外広報活動を積み上げて、できるだけ対日認識を一歩一歩向上していってもらうという努力は、今後とも、さらに続けてまいりたいと思っております。  それから教科書の点でございますが、ときどきわが国に関する誤った記述あるいは非常におくれた記述というものがございます。この点につきましては、国際教育情報センターという財団法人がございまして、諸外国の教育資料の調査、是正、これを目的として事業をやっております。これまでのところ、かなりいい仕事をしておりますので、これを大いに奨励いたしまして、外務省としても補助金を出しておりますけれども、引き続いてわが国に関する教科書等の是正に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから青少年教育に携わります外国の先生方、これに対するシンポジウムとか、この人方を日本にお呼びするというようなことも考えておるわけでございます。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 本当はこの問題だけで一時間以上欲しいところなんですけどね、限られた時間ですから、あれもこれもとても言うている時間がありません。  あと一、二、もう少しくつけ加えて申し上げたいんですが、明治維新後、日本としては欧米文明の輸入と相まって急速な欧米化への経路をたどったということからも、日本と諸外国を比較してみた場合、日本人が欧米文化を理解する度合いというものははるかに正確を期しているんじゃないかという感じがするんですね、それはパーフェクトでなくてもですよ。ですから、その辺のアンバランスをやっぱり調和をとらないと、お互いに相手国の理解が乏しいということになると、それが感情的になり、別な条約の折衝の中でも、日本人というのはこういう民族なんだという既成概念でもって押しつけられるようなことになりますと、これは大変迷惑なんですね。ないとは言えないですよ。戦争なんていうのは偶発的に起こるみたいですけれども、大体そんなところからいろいろこじれちゃって戦争へ突入するというのは過去の歴史が証明しているわけでございますので、文化というのはいま一番大事じゃないか、私なんかも外交政策の中でこれは最重点政策の中に置くべきじゃないかとすら考えているわけです。ともかく、そういった問題で外務省としても大変御苦心をなさっている。これは文部省も関連するんで、きょうは文部省を呼んでないものですから、本当は政治的な判断については大臣にきちんとその辺を表明してもらって、日本の今後の文化交流全般に対する基本的な姿勢というものをただしていかなきゃならぬ、こう思っていたんですけれども、きょうはいらっしゃいませんしね。  もう一つ、私、提言したいんですよ。日本をよく認識をし理解してもらうためには、先ほど冒頭に申し上げたように、歌舞伎の紹介あるいは能の紹介だとか、あるいは伝統産業の紹介、それも結構だと思うけれども、それよりももっと地に着いたやり方としてはやはり教育の面にもっと力点を置いた取り組み方というものが必要ではあるまいか。それにはいろんないま加賀美局長が言われたような考え方も必要でございましょうし、願くは、私は、これは非常に時間のかかる、忍耐を要する問題であるけれども、いままでは何もやってこなかったと言うと語弊があるかもしれませんけれども、ほとんどやってこなかったと同じなんです、結果的には。だから、今後、また時間をかけるならばやっていただきたいことがあるんです。  それは、できれば、ヨーロッパにしても、あるいはアメリカにしても、著名な学者、文化人あるいはジャーナリスト、こういった方々を日本に半年なり一年ぐらいお招きをして、つぶさに日本の国情というものを知ってもらう。それを、自然科学の面から、あるいは人文科学の面から、あるいは社会科学の面から、あるいは日本の歴史の経過というものを十分理解をしていただきつつ、諸外国の中学生、高校生にわかる文章にしてもらうとか、あるいは一般のインテリに理解をしてもらう文章にしてもらうとか、というぐあいに何らかそういうような方途というものはとれないものだろうか。もっと正確にそういうものを伝えるためには、日本人が紹介するよりも、むしろ日本と友好関係にあるそういう国の方々に来ていただいて、ときには専門的な立場から、あるいは一般的な立場から日本のありのままの姿というものを、むしろ過去の姿よりも現在の姿を正確に知らしめてもらいたいものだ、せっかくお金を使うならば、むしろそういうところにお使いいただいた方が非常に効果があるのではなかろうか。これはどうでしょうかね、できませんかね。
  72. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先生冒頭に御指摘の、日本人の間における外国知識、理解のレベル、それから外国におきます日本人に対する理解のレベル、これにギャップがある、これはまことにそのとおりであると存じます。これは恐らくこれが日本人の特色であるかもしれません。外国文化あるいは外国の人物、文化等に抵抗なくこれを理解し、あるいはいいものはこれを吸収していこうという、これは一つ日本の文化体系の典型であるかもしれない。恐らくこのゆえに日本が短期間の間に長足な進歩をしてきたということであるかもしれません。  そういうことで、日本におきましては非常に外国の文化なり文物に対する向学心と申しますか、これは高いわけでございますが、外国におきましては必ずしもよその国についての知識、ないしこういったものに対する好奇心なり向学心というものは高くないということはございます。しかし、日本はむしろ外国に理解されなければならぬということはまことに御指摘のとおりでございまして、そういうことで、私どももできる限りの努力をいたしておるわけでございます。  で、先生指摘の、現代日本の文化なり日本の実情の理解ということと、それからそのために世界的に著名な文化人、学者等を日本に招いていろいろな視察をしてもらうということでございます。これはある程度実は実施いたしておるわけでございます。先ほど若干申し上げましたように、世論形成層の人々、それから報道関係者、これを呼んでおりますが、さらに文化人の招聘というプログラムもございまして、国際交流基金によって著名な学者、文化人を一カ月程度の日程でわが国に招聘いたしております。さらに特に社会的な名声を持っております学者、文化人につきましては、交流基金の特別賓客といたしまして三週間ないし六週間日本に招きまして、わが国の識者との意見交換、視察等を通じまして高い次元から日本理解の増進を図るということでございまして……。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 はい、わかった、これから述べられること大体見当がつくんです。  それで、いま三週間とか四週間、これじゃどうにもならぬですよ。ぼくらが議員として諸外国を視察に行きますときにも大体メーンになるところしか見せてもらえないんです、はっきり言うと。国会議員の視察なんかについても一カ国なら一カ国に指定をして、田舎まで入り込んで、せめて一カ月も二カ月も本当は視察をすることによって初めて大きな効果があらわれるんじゃないか、これはもうアジア地域を含めての話です。三週間や何かじゃ日本の本当のことはわかりませんよ、これは。だからやっぱり半年なり一年住みついてもらうくらいのそういう方向で願望したいわけです。  もうあと少々ですから、はしょって物を言います。どうかそういう点についても考えてもらいたいことと、先回の臨時国会のときにも私申し上げたのですけれども、この留学生の問題については、特に、日中条約締結後において大量の中国側の要望によって留学生を受け入れなければならない、ところが受け入れの体制は全くなっていない。これは数だけたくさん来ればいいというものじゃないと思うんです。中国なんかは一番近いところにありながら、戦後、三十年余りにわたって断絶をしてきております。むしろ今度は逆に、日本の若い人たちが中国に対して正当な評価ができるだけの判断というものを持っているだろうか。と同時に、中国の若い青少年が日本に対して的確な判断を持っているのかというと大変疑問であります。それを含めて、私がいま申し上げていることは、いままでずっと述べてまいりましたように、ヨーロッパのみならず、特に親交のある中南米、ここらあたりも十分包括的に今後の文化交流のあり方というものを基本的に考えて、日本としてはどういうような姿勢でもって取り組んでいかなければならぬのかと、もう一遍私は洗い直してみる必要があるのではないかということが一つ。  それからもう一つ、これは予算書をいまずっと細かくやろうと思ったのだけれども、できません。ただ、言えることは、文化交流に要するお金というものは原則的には国際交流基金の運用益を用いてやるわけでしょう。昨年の場合では四百億、今度五十億上乗せして四百五十億、その運用益は大体概算すると三十五、六億、これでできますかいな。イギリスに例をとると七分の一だそうです。あるいはフランスと比較をしてみた場合も六分の一、西ドイツと比較をしても三分の一以下、これが日本の文化交流に使われるであろう運用資金だと言われております。こういう状況で、果たして、日本がこういう文化協定を結ぶのは結構ですけれども、本気になって前向きに取り組んでいるというふうな姿勢がうかがえるであろうかどうかということに私は大変な疑問を抱かざるを得ない。  どこに一体ウイークポイントがあるのか、もっとふやせないんだろうか。だから外務省の担当者の方がよく言うのです、わが省はどうも予算の取り方がへたで因る、だから上の方がしっかりしてもらわなければならぬ、こうなるわけです。これはむしろ外務大臣に申し上げた方がいい問題かもしれません。そういうところからもう一遍ぼくは総合的にやり直さないことには、こういうようなのが幾らできても実効は上がらぬと思うんですよ。やるからには日本がやっぱりむしろイニシアチブをとりながら積極的に相手国との間における文化交流を進めていくという、そういう姿勢が私は必要ではなかろうか。答弁は要りません、それはよろしくお願いしたいと思うんですよ、またやりますから、文化協定のときに。  ちょっと魚を聞きたいんですわ。魚も聞かなければ条約審議でございますからね、文化協定は一応ここで締めくくっておきます。魚はもう一問か二問しかできません、時間が過ぎたので。  今回の北西大西洋漁業の新しい条約ですね、大変いろんな規制を加えなければならないという背景があって、こうした試みがなされる、十分理解できると思うんです。  水産庁の方いらっしゃいますね。きわめて概算で結構ですけれども、世界の全水域において年間どのくらいの漁獲量があるのか。日本はそのうちの大体一千万トンと言われているんですけれども、それを今後も確保するためにはどういう漁区が確保されていかなければならないのか。現在、確保されている漁区の中で十分国民の消費に供することのできる漁獲量が確保できるのかどうなのか。これは輸出も含めて、かん詰めや何かで輸出する場合がありますので、大変大ざっぱなことを最初に伺って恐縮なんでありますけれども、この点は今回の北西大西洋条約締結に基づいて国益に反しない方向にいくものかどうなのか。
  74. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) お答えいたします。世界全体で約七千数百万トンぐらいの漁獲量で、そのうち、先ほど田中先生にもお答えいたしましたが、日本が約一千何十万トンという水準でございます。それで二百海里直前の昭和五十一年の実績で調べてみますと、外国の二百海里水域内で漁獲しております数量が約三百五十万トンでございます。  私どもといたしましては、もちろん外国の二百海里水域内におけるわが国漁獲実績をできるだけ確保するということに努めることはもちろんでございますが、やはり率直に申し上げて事情は苦しいわけでございまして、そういう意味では、先ほど申し上げましたように、もう一度日本沿岸漁場を見直して、それの再開発を図る、あるいは従来低位な利用しかされておりませんでした多獲性大衆魚の利用の効率化を図る、そういうような方向で努力をしていかなければならないし、また、そうすることによりまして二百海里時代におきましてもわが国の国民に対してその消費を賄うに足る水産物を供給することは十分可能であるというふうに考えております。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ちょっともう本当に時間がありませんから、いま日本カナダとの間においてジョイント・オペレーション方式というのがとられているでしょう。これは将来ともに安定の方向へ向かうものなのか、内容的に。不安定な要素を多分に持っているのかどうなのか、細かい説明は要らない、安定するかどうか。
  76. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 私どもといたしましては、カナダ側の内部に、これはデベロプメンタルチャーターという名前で始めておりますけれどもカナダ国内漁業のデベロプメントに対する寄与の度合いが不十分であるという若干の反省の念がカナダ側にあるというふうに承知をしております。そういう意味では、現在のスキームのものは安定的に続けるかどうかということについては若干懐疑的にならざるを得ないわけでございます。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一点だけ。三月に日本カナダとの漁業交渉が持たれるでしょう。その場合の取り決めの中身と今回のNAFOの取り決められていく中身と競合するのかしないのか、どっちが一体優先権があるのか、その辺はどうですか。
  78. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 三月に予定されておりますカナダとの交渉は一九七九年の漁獲クォータについての交渉でございます。これは日加二国間の協定に基づいて行われるものでございまして、当然、カナダの二百海里水域内におけるわが国漁獲クォータはこの交渉によって決まります。ただ、NAFOは、規制水域に限らず、条約水域全体について資源保存の見地からいろんな意見の交換が行われる場を提供することになっておりますので、NAFOに加盟することによってカナダ側の独善的資源論に支配されることなしに、ある程度多数国間の目にさらされた場で行われた資源論を踏まえて日加間の交渉が行われるようになるという点が大変大きなメリットとしてあるというふうに考えております。
  79. 立木洋

    立木洋君 文化協定に関連して一言だけですが、文化交流は相互の国の国民の理解を増進して、これは長期的に見れば友好関係を増進しながら日本のあり方、日本の考え方、民族の問題等々を十分に理解していただく、これは今後の外交上の問題としては非常に重要な点だと思うのですね、ただ単なる経済交流だけではなくして。  いままでのところを伺えば、文化協定が結ばれているのは十七カ国、その他文化交流に関する交換公文ですかが数カ国ありますけれども、やはり今後の世界の情勢を考えていった場合、特に開発途上国との文化交流だとか、広範な世界、何しろ百五十近くもある国の中で協定が結ばれているのがまだ十七カ国。これは一面から言いますと、先ほど言いましたように、予算の問題もあるし、さらにはその質の問題も問題になっているということは当然ですが、量的にもやはり考えてみる必要があるだろうと思うのですね。そういう点についての一問だけ局長にお伺いしておきたいのですが、今後の考え方として。
  80. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) ただいま御指摘のように、文化協定は十七カ国ございます。そのほかに、先方から申し入れを受けており、若干交渉も行っておる件がソ連オランダ、バングラデシュ等十数カ国申し入れが来ておるわけでございます。それから、先ほどの御指摘のとおり、政府間の行政取り決めでございます交換公文等の文化取り決めが八つすでにございます。  今後とも、この文化協定につきましては、その国との一般的な関係、それから実際に協定なしでも進められます実際の文化交流の実績、こういったものを勘案いたしまして、できるだけ文化協定あるいは文化取り決めをそれぞれの場合に応じまして進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  81. 立木洋

    立木洋君 そのことは非常に重視していただきたいと思うし、それを促進する裏づけもちゃんと確保してやるようにしてほしいと思います。  北西大西洋漁業条約についてですが、この十一条の四項目のところに規制区域における漁獲量の配分の問題が出されておりますが、ここでは「伝統的に漁獲を行ってきたものの利益を考慮に入れたものとする。」あるいは「これらの漁業資源の保存を確保するために広範な努力を払ってきた締約国に対して特別の考慮を払う。」こういう伝統的に行ってきたものの利益を考慮に入れる、あるいは締約国に対して特別の考慮を払うというのは、一体、どういう意味なのか、説明していただきたいのですが。
  82. 国広道彦

    説明員国広道彦君) 御指摘規定の前半の部分は、漁獲量の国別配分につきまして委員会が採択する提案は伝統的漁獲国の利益を考慮に入れたものとするという、これは漁業協定におきましてたびたび採用されておる考え方でございまして、これはむしろ当然の規定と思われます。  後半の規定でございますが、これはこの条約の作成の過程におきまして、カナダのグランド・バンクス及びフレミッシュ・キャップと言われるところ、その両地域漁業開発資源の保存に大きな役割りを果たしてきたという自負と、それから自国の関係沿岸漁民がこの両地域漁業の資源に大きく依存しているという理由から、二百海里以外に存在しますグランド・バンクスの一部分及び同様のフレミッシュ・キャップにおける漁獲量の配分に当たりまして、カナダを特別に優遇するよう要求しまして、これに反対する国々との間で交渉が行われまして、その結果、カナダに対しまして特別の考慮を払うという、そういう抽象的な規定を設けて折り合いをつけたわけでございます。
  83. 立木洋

    立木洋君 つまり海洋法会議でまだ内容が確定されていない、だけれど実際の趨勢としては二百海里ということが事実上進んでいるわけですね。いま述べられた二つの漁場というのは二百海里内外にまたがっておる事実上漁場であって、そしてそれらの沿岸国が特別の努力をしてきたことについての配慮をするということになった場合に、いわゆる二百海里以外の公海上においての問題にまでまたがっておるというふうなことになるわけですが、海洋法の今後の会議の趨勢を見る場合に、そういうふうな問題については何ら問題にならないんですかね。
  84. 国広道彦

    説明員国広道彦君) この規定が該当する部分は、もともと公海といいますか、二百海里の外側に出っ張っている部分でございます。したがいまして、この出っ張っている部分について特別の考慮を払うのはおかしいではないかという議論が当然あり得るわけでございまして、そこでまず非常に交渉が行われたわけでございます。それで妥協の趣旨は、先ほど申しましたように、やっぱりこの地域についてカナダの関係者が非常に多くの資源開発の貢献をしてきたというその貢献を評価するという特別のもとで妥協しましたので、これがそのままほかの場合の海洋法会議及び交渉における前例となるということはないと思います。
  85. 立木洋

    立木洋君 これは特別の例といいますか、特別の問題だというふうにはもちろん言えるわけですけれども、二百海里外の部分に関しても、漁業資源の問題点などではその国が自国の利益を主張するというふうなことが出されてきているわけですが、日本の場合、いわゆる自国の二百海里の中においても十分に対策がとられていないというふうな現状があるわけですね。  特に、先般の二百海里のあれを採択した場合でもそうですけれども韓国との関係でいろいろな問題が出てきておるということなんですが、北海道の沿岸地域におけるいわゆる韓国漁船操業のあり方が現地の漁民にどういうふうな実害を与えているかというようなことはよく御承知だと思うんですが、どうですか、その点は、どういう問題点があるのか。
  86. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 現在、北海道の沖に韓国船が約二十杯ほど来ておりますが、これの操業が、わが国が決めております国内規制でございますオッタートロールの禁止ライン、この中で操業いたしております関係がございまして、各種沿岸の漁具に被害をすでに与えておりますし、さらに沿岸漁業者といたしましては、大型船が近くに来るということでどうしても漁場を避けざるを得ないということで、沿岸漁業における漁場の縮小、さらに沖合いの底びき網漁業につきましては漁獲量減少、こういうような現象が現在起きております。
  87. 立木洋

    立木洋君 国内漁業としては、一定の秩序を持ってそれぞれの規制がありながら、それを守って漁業をやっている、そういう状態というのが破壊されていくという状態がありますし、それから事実上大きな被害が発生して、そのために経営と生活に大きな打撃を受けておる。同時に、やはり重要なことは漁業資源の枯渇というふうな問題まで考えられなければならない重大な事態までいま発生しておるということなんですが、今回、韓国側と水産庁次長が会談をされているわけですけれども、この交渉はどういう交渉の内容になったのか、その内容と結末についてお答えいただきたいんです。
  88. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 二月の十五、十六日の両日にわたりまして日韓の水産庁次長会談を行ったところでございます。  私どもといたしましては、今回の会談で問題の解決を図ろうということで、韓国側に対しまして、わが国漁業の与えられている状況、それからそれに伴う漁民のいろいろな感情的問題と国内の緊迫した状況を詳しく説明いたしまして、わが国の底びき漁船が守っている規制韓国の底びき船にも遵守させるよう強く要請して、粘り強く交渉いたした次第でございます。これに対しまして、韓国側は、日本国内の事情は理解するとは言っておりますが、やはりオッタートロールの禁止ライン外で操業する場合には経済的に業界はいろいろ不安感を持っている、でライン外の操業の採算について時間をかけて調査いたしました上で判断するということで、わが方の主張は受け入れられなかった次第でございます。  わが方といたしましては、次長会談というレベルでの努力はすでに限界に来たのではないかというふうに判断をしておって、今後は、違ったレベルあるいは違ったルートで韓国側と折衝して、早急に打開を図りたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 立木洋

    立木洋君 韓国側の回答というのは去年の十月のときとほとんど変わっていないわけですよね。事実上、こちらの要望が受け入れられるという状態ではなかったわけですが、だけれども、いままでもこの問題に関する審議を何回も国会でやってきたわけですが、岡安さんの先般の答弁なんかでも、外国漁船に対しては、わが国漁船が受けているような制約、これは当然外国の漁船にも課さなければならない、これは別途政府協定を結んでやりたいというふうなことも述べられていたわけですし、また同時に、そういう問題が実際に可能なのかどうなのかというふうな点について言いますと、その点でも前々の鈴木さんが農林水産大臣をやられていたときでも、私は韓国がこの日本の秩序ある操業という提案に対して拒否的な態度をとるようなことは毛頭考えていませんということまで現に言われておったわけですね。だけれども、二年間たった今日でも、現実にはそういう事態にはなっていないわけですし、こういう点についてやはり水産庁としての見通しが甘かったというか、間違っておったというか、そのことによって結局漁民に対する被害というものも起こってきているわけですし、問題もたくさん出てきているわけですが、そういうあたりの責任との関連で、もう少し今後の対応策というのをはっきりさせていただきたいんです。
  90. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私ども、先ほど先生から御指摘のありましたように、鈴木大臣あるいは岡安一長官、いろいろ御答弁申し上げておりまして、それをずっと踏まえまして、従来努力してきたわけでございます。それで昨年の十一月でございますか、やはり次長会談を持ちまして、よく十分こちらの内容説明いたしまして、なお話し合いで韓国の自主的規制による解決ということで私どもは進めてまいりましたわけでございますが、秋の分、今度の分を通じまして、やはり私どものレベルでの事務的な話し合いでは非常に困難だということがはっきりわかったということであると思います。したがいまして、これからは、いろいろな手がございますと思います、別な、さらに高度なレベルあるいは外交ルート等を通じまして、さらに韓国側といろいろ接触してまいりたいと考えておる次第でございます。
  91. 立木洋

    立木洋君 これは新聞の報道ですけれども、二百海里の適用という問題も、これは全般的な適用かあるいは部分的な適用かということもあるでしょうし、また一九六五年の日韓漁業協定ですね、これをどういうふうにするのかという問題もありますが、そういう問題が検討されておるというような趣旨の報道もあるんですが、そこらあたりはどうなっていますか。
  92. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもは話し合いで解決する、円満に解決することが一番望ましいと現在でも考えておりますが、やはりそれだけでいかない場面も想定されますので、いろいろな部面、方法について検討はいたしてはおります。
  93. 立木洋

    立木洋君 それから竹島周辺の安全操業ですね。これも非常に大きな問題になって、去年来いろいろ議論されてきた点なんですが、これは園田外務大臣は、両国が紛争防止の精神に立って対処することを確認した、それからこれは最高首脳とも話し合った、ほぼ問題がないかのように言われてきたわけですが、現実には、去年の十一月、秋イカの漁期を目前にして、事実上、漁業関係者というのは、政府の確約がない限り竹島十二海里内では危険があると判断せざるを得ない、またトラブルが起きても国の補償がない現状では操業できないということで、安全操業の見通しが立たないために出漁を断念したというふうなことも言われているわけですが、ここらあたりの関係はどういうふうになっているんですか。
  94. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 竹島周辺におきます問題につきましては、あの周辺がイカ及びベニズワイの加工漁業漁場でございます。私どもといたしましては、竹島周辺において従来どおり操業できることが一番望ましいと考えております。そのため外務省ともいろいろ御相談をいたしまして、韓国といろいろなお話をしていただくようにしておるわけでございます。
  95. 立木洋

    立木洋君 外務省の方ですね、これは日韓間で了解ができておるかのように報道されたり、また韓国側からそれが否定されるような報道があったりして、現実にはまたことし五月ごろからですか、春の漁期に入りますし、そういうふうな問題も起こってきているわけで、現地の漁民の人たちは大きな問題にしているわけですけれども、事実上、日韓間の了解というのはあったのかなかったのか、あるいはそれがどういうふうに現実にはなっているのか、ことしの見通しとしてはどうなのか、そこらあたり少し詳しく述べていただきたいんですが。
  96. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) まず、事実といたしましては、先生御案内のとおり、九月の日韓定期閣僚会議における両外務大臣間の確認、すなわち漁業紛争防止の精神で対処するということでございまして、それ以外につきましては、それを受けまして私たちがこの段階で申し上げられますのは、現実的な解決策を見出すべく努力をしているということでございます。もちろん地元関係漁民の生活に直接かかわる問題でございますので、いろいろなレベルで問題の重要性を先方に指摘しつつ現在努力していると、それ以上申し上げますことは、かえって今後のわれわれの努力との関連で非常に困難でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  97. 立木洋

    立木洋君 これは北海道との関連もそうですけれども、いつも努力するということは聞くんですよ、お尋ねすると。努力しておりますと。しかし、現実に、努力はされても全く見通しが立たないというふうなことになると、これは困るわけで、何らかの見通しがあるのかどうなのか。それは交渉のあれもあるでしょうから、言いづらい部分もあるでしょうけれども、もう少しめどが立ち得るかどうかというあたりについてははっきりさしていただきたいんですがね。
  98. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) この問題につきましては、われわれは、また五月に最盛期が参るものですから、それまでには何とかめどをつけたいと思ってがんばっていきたいということだけ申し上げられると思います。
  99. 立木洋

    立木洋君 韓国漁船の問題に関連して、大臣も、衆議院でしたか、二百海里の問題、それから日韓漁業協定の問題等々についても考えてみなければならないのではないだろうかという趣旨の答弁があったわけですが、そのあたりについて外務省としてはどういうふうな対策を考えておられるのか、その点について述べていただきたいんです。
  100. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) この問題につきましては、片や日韓の漁業秩序全般の問題、それから仮に日本が二百海里を適用した場合に韓国から予想される反応、そういうものを総合的に判断して、果たしてそれが得策であるかどうかということについては、いま言った二百海里適用の問題と日韓の漁業秩序全般の問題、それからいま起きておる個々の問題、得失を十分総合的に検討した上で、慎重に結論を出したいと考えております。
  101. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の審査はこの程度として、午後一時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  102. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、三善信二君が委員辞任され、その補欠として竹内潔君が選任されました。     ―――――――――――――
  103. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 休憩前に引き続き、北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約締結について承認を求めるの件及び日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件、両件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  104. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、本当に短い時間、二点だけ御質問したいと思っております。  前回に続いて、私は、南北朝鮮の対話の問題をずっと追っていきたいと思っているんですが、前回の南北の対話の後、三月七日に二回目が予想されておりますし、このムードが続いていくということは、統一ということはそう簡単ではないけれども、対話が続けられていくということで三十八度線の緊張をほぐして、朝鮮民族がお互いに交流をしていくということですね、平和への路線を歩んでいってほしいというふうに思い、それを支持する立場から、私は、日本がすべきことは何でもしなければならないし、それを妨げるようなことをしてはならないというふうに思っております。これは園田外務大臣もそのようにおっしゃっておると思います。  きょう、お尋ねしますのは、ピョンヤンで四月二十五日から開かれる予定になっておりますところの世界卓球選手権大会ですね。中国の場合もピンポン外交なんというようなことが言われたわけなんですが、今回、北の方から提案して、統一チームを南北でつくってこの選手権大会に臨もうではないかということに対して、南側もこれに応じた。そして第一回の話し合いが二十七日行われたわけなんですが、私、時間が短いですから、私の方の言いますことをずっと全部まず言ってしまいますけれども、あのときもテレビなんかで見ておりますと、友好的な雰囲気で板門店で南北の卓球協会の会長や代表者たちが話し合ったようなんでございますけれども、幾つか隘路があるようですね。国際卓球連盟の方が首を縦に振っていない。ITTF、国際卓球連盟の主事のトニー・ブルックスという人はどうも否定的なコメントを流しているということを新聞の報道で見ております。  それに対して方法はないのかなというふうに思っておりましたんですが、けさの朝日新聞の報道によりますと、日本の国際卓球連盟の城戸会長代理その他が、もし南北の両方が統一チームに合意をするならば、大会前に臨時総会を開いて、これを肯定的な方向へ持っていく用意があるというような意思表示をされた、あるいはロンドンの事務局の方に打電されたということが載っておりますが、この点について隘路が一体どこにあったのか、外務省が把握していらっしゃるかどうかということと、それに何か方法はないものかどうか。統一に向かっての対話というのは文化とかスポーツとか芸術とか、そういう面から一番雪解けがしやすいわけでございますので、それに対して外務大臣としても何か手をお尽くしになる気はないかということ、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  105. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) おっしゃるとおり、五日に両方話し合うようでありますが、一方は卓球連盟で検討しておるようであります。  そこで、私は、南北両方で統一チームをつくろうということは非常にいいことだと歓迎をしております。したがいまして両方が争ってどちらに味方するかということになれば政治的でありますけれども、両方が一緒になって仲よくやろうということでありますから、これはスポーツの精神にも合致することでありますから、私の方としては卓球連盟の方にぜひ統一チームの参加ができるように御配慮願いたいという要請をするつもりでおります。
  106. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、その要請はできるだけ早くしていただきたいと思います。  何か隘路があるということで、私もちょっと卓球連盟の規約を取り寄せて見たんですけれどもメンバーシップのところを見てみても不可能でないように思われますので、ぜひそのことの意思表示はなるべく早くお願いしたいと思います。  第二点目は、チームスピリット79のいわゆる米韓合同演習のことなんですけれども、これについて衆議院の予算の分科会でも問題になったようでございますが、昨年以上に大変大きな規模で、南北の話し合い、雪解けムードがあっている時期にこれをやるということ、あるいはアメリカが在韓米軍を撤退するということを決めて、そしてその撤退を始めているやさき、この対話が始まっているやさきに大規模の合同演習をするという問題は非常に重大なことだと思うんです。これは北側を大変刺激しているし、こういう演習というのは極東軍事衝突というのを想定するのでなければ、あるいは仮想敵国というふうなものが想定されなければ演習というのはできないはずだと思いますね。  それで衆議院の方での外務省のアジア局長の答弁では、合同演習は自衛的なもので、かつアメリカの約束を遵守するために行うものである、アメリカも南北対話の結実を希望しており、演習は南北対話の機運に反するものではないというふうにお答えになっておりますが、しかし、外務大臣は必ずしもそれと同じ見解を持っていらっしゃらないように、これは報道によって拝察しておりますが、このようなことは好ましくないことで、もしもう少し前でしたら中止してくれという要求をしていただきたいというふうに私は思うんですが、これが南北の対話を妨げるような心配がないかどうか、それからいま中越紛争中で、このような大規模な合同演習をそこでするということはソ連側を刺激するようなことにはならないのかどうか、それからアメリカ韓国からの米軍撤退計画とそごしはしないかどうか、その点。  それから、もう一つは、六月の先進国首脳会議のときにカーター大統領は日本にお見えになるものと思いますが、その際に韓国を訪問するということになっているような報道がされておりますが、その辺も御存じであったら教えていただきたい。そして韓国を訪問されるということは、米軍撤退あるいは南北の話し合いのことなどについてどのような目的を持ってそこに行かれるのであろうかというようなこと、幾つか言いましたけれども、お答え願いたいと思います。
  107. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの問題は、基本的には米韓両国の問題でありますけれども、どう考えても、いまの時期にこれが南北対話のいい材料にはならぬと私も思います。そこで、その意は内々伝えてあったわけでありますけれども、これは年中行事の一つであって、しかも防御的であって、しかも三十八度線からずっと南に下がったところでやる、こういうことで発表になったわけであります。私としては、しかし、そういうことでありますが、あくまで南北対話に刺激を与えたり影響を与えないように細心の配慮を頼むという申し入れをしてございます。  それから、大統領がおいでになるときに、その以前に日本においでになるということでありますが、具体的にはまだ決まっておりません。その際、アジアの国を訪問したいという意向もあるようでありますが、まだ韓国に行くとは決まっていないようでございますが、そういう可能性はあると思います。これは訪問でありますから、私の方でどうこう言うわけにはまいりません。
  108. 田中寿美子

    田中寿美子君 大統領が見えたら韓国を訪問するようにということを進言なさいますか。
  109. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いや、それはいたしません。
  110. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、先ほどお尋ねした大規模の軍事演習ですね、これがいまの中越紛争の最中に行われて一そしてソ連を刺激するようなことがないかどうかということはいかがですか。
  111. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) それはソ連に対することは米国も大分配慮をしておるようでありますが、非難はするでありましょうが、直接刺激をしてどういうことになるということは可能性としては余りないと思います。
  112. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は非常にそういう心配を持つんです。  それから米韓合同演習では、昨年もやったときにランスミサイルですか、地対地核ミサイルの輸送に関して横田基地を経由しているわけですね。ですから日本も便宜を供与しているわけですが、今回もそういうことになりますんでしょうか。
  113. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ランス部隊は途中の輸送機の給油のために横田に立ち寄るというふうに伺っております。これはわが日本政府として何か便宜を供与するとかいうようなことではなくて、アメリカ日本にありますところの施設、区域をそのように用いる、使う、こういうことでございます。
  114. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ演習だからというふうに考えていらっしゃるかもしれませんけれども、非常にこういう問題は微妙なことでございますので、今後、南北の話し合い、対話のムードを妨げないということは日本の大きな私は責任だと思いますので、ことしは既定の方針としてやってしまったということですが、来年に向かって、ぜひ外務大臣、これについては考慮するようにというふうにお話しいただきたいと思いますが、今度外務大臣がアメリカにも行かれる時期があるかもしれないし、あるいは大統領がお見えになることもありますね、そのときにはぜひそういうことを一つまり、いまアメリカも中国も南北の対話は進んでほしいと考えていると思います。日本も特にそばにいて大きな責任のある国ですから、それを妨げるようなことをしないという意味で、幾つかそういうことを言っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  115. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御意向はお伝えします。
  116. 戸叶武

    戸叶武君 米韓合同軍事演習の中止勧告のために、私は、昨日、党を代表して、総評その他の代表とともにアメリカ大使館及び官房長官に申し入れを行いましたが、そのときのアメリカ大使館における一等書記官のフェザーストンさんの言いわけは、先ほど園田外務大臣が言われたように、これはいままでやっていたことであり、しかも軍事境界線からはるか南方での防衛的な野外演習にすぎない、しかもアメリカ韓国側の要請によってこのことはやっているんだという話でしたが、私は、これは普通の場合ならばその言いわけは通るけれども、きょうは、外務大臣も御承知のように、いまから六十年前に韓国が日韓合併を強要された後における民族抵抗運動としての万歳騒ぎが起きた日であります。一九七九年から六十年の距離がありますが、六十年というのは東洋歴によると歴史の回転の年でありまして、何か不気味な回り合わせが起きないとも私は断言できないと思うんです。  韓国政府は、国内における言論の取り締まりを厳重にして、いまの政権に批判的な人たちを全部再び拉致しております。そういう強圧手段によって、開かれた民主国家においては想像のできないような専制政治が強行されております。先ほどイランの帝政が崩れてイラン革命が起きたのと思い合わせると、何か不気味なものを私たちははだで感ずるのであります。それまでやって国の秩序を保たなけりゃ秩序が保てないのか、それに対してアメリカが何か韓国側の言い分だけを聞いて引きずられていっていいのか。イランの留学生がアメリカには相当おったので、アメリカを王様が訪問したときのあの抵抗運動も見ておりましたので、アメリカとしてはいろいろな危惧を持ちながらも、イラン革命に対して深入りをしないで事態を見詰めている状態にありますが、この韓国に対する、特に極東の危機に対するアメリカ側の情報及び認識というものは、ベトナムにおいて二回も失敗しているように、朝鮮半島においてもいままで成功していないように、少し物の見方が甘過ぎると思うんですが、人の国のやることだから何とも言えないというお考えか。パートナーシップの発揮というのは、こういうときにこそアメリカ側に目をあかしてやはり忠告をする、それが本当の友情じゃないかと思いますが、園田さんはどうしてその点ではなまぬるくなってしまったんでしょうか。
  117. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) パートナーシップとは、いまおっしゃったとおりに、率直にただすべきものはただし、意見を言うべきことは意見を言うことがパートナーシップであるということは考えておりますが、外務大臣として、この席で甘いとかやり方が悪いとかという発言をすることは差し控えたいと存じます。
  118. 戸叶武

    戸叶武君 いまの自民党の不安定な政情のもとにおいては、いかに勇気ある外務大臣でもうっかり発言すると右左から袋だたきに遭う危険性はある。しかしながら、日本のこの全方位外交、抽象的でだれも余りわからぬと言っているが、それを具体的に示す絶好の機会が到来したときに、それに対して具体的な回答ができないような、一種の官僚外交に類するようなこのちゅうちょの仕方というものは、歴史の流れにおいて重要な瞬間におけるタイミングを失した行動としか見られない。  これはむずかしい問題がいまイラン革命において中国とベトナムとの軍事的紛争において見られるのですが、これと米韓合同軍事演習とは何らかの牽制的なかかわり合いがあるかないか、どういうふうに判断しておりますか。
  119. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) イランの問題と米韓合同演習が直接に関係あるとは考えておりません。
  120. 戸叶武

    戸叶武君 直接にとか間接にとかということを質問しているのじゃないんです。日本外交は世界の中における日本のあり方を方向づける外交でなければならないので、霧の中を泳いでいるような――このころ春がすみが立ち始めたから仕方がありませんが、そういう外交であっては私はいけないんだと思います。  アメリカは、イラン革命後においてのソ連の出方に対しての対策、あるいは中国とベトナムの軍事紛争に対しては相当明快な態度を示しております。日本アメリカとやや調子の合ったようなことをやっておりますが、イラン革命の後の対処の仕方は必ずしもアメリカと同じじゃないと思いますが、そこいらに、これは日本海の出来事だ、これは朝鮮半島の出来事だ、極東の範囲はベトナムに及ばないというような、三百代言的な論理において今日の外交は律せられないところへきていると思うのですが、あなたはダイナミックに動いていくこの流れにさお差して、その瞬間においてわれわれはいかなる回答を行うべきかというのは十分心得ている方だから言うのですが、こういう危機の中における日本外交、世界の注目を浴び、一番監視されているときに、朝鮮半島において少なくとも波乱を醸成させるような、民族の苦悩に思いやりを持たないような、せっかく話し合いにおいて、ピンポンの球を打ち合うがごとく、一つの統一への道を模索しようという段階が軌道に乗りかかったときに、花も咲かないうちにあらしが吹いて花をもぎ落としてしまった、これじゃ実はならないじゃありませんか。いつでも事朝鮮の問題に入ったときには、いいところまでいくと思うと、どこからか風が吹いてきて、そうして花を散らせていく、無風流な話です。これにどういうふうに対処しようというお考えですか。
  121. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御発言の趣旨はそのとおりであると考えます。そういう方向で努力をしたいと考えております。
  122. 戸叶武

    戸叶武君 私は、この一年、ことしから来年にかけては、朝鮮の問題、台湾の問題で日本自身はアメリカさんがやるようにやればよいというような形でなくて、アメリカ日本のやることから学ぼうという考えもあるし、そうでない部分もありますけれども日本は朝鮮問題ではずいぶん手をやいておるのであります。  明治十七年に朝鮮独立の志士金玉均が日本に亡命し、上海におびき出されて暗殺されて以来、朝鮮の独立の陣営の中においても四分五裂の状態でありまして、私は、私の父が京城の大韓日報の社長をやっておった関係で、伊藤博文を殺した安重根とは父は親友でありました。彼はクリスチャンであり教育者であり、本当の意味韓国の生んだ近代文化人であったのです。ところが、日清、日露を通じて独立への道を模索していた韓国の志士を操って、独立をさしてやるという名目のもとに犠牲を払わせて朝鮮を合併してしまった。これが伊藤博文や山縣や寺内や日本の軍部官僚のなしたところの帝国主義的侵略である。アジアのためにと言いながら信義を裏切る日本のこの指導者に対して、民族を代表して身を鬼にして彼は暗殺を企てたのであります。彼が父に書き残した血書の手紙を見ても、自分は鬼となる、二年以内に要路の大官を倒し得なかったなら自分は自殺すると言って、ウラジオストックに逃れ、ハルピンで明治四十二年に伊藤博文を暗殺しているのであります、十月二十六日だったと思います。  また、あの万歳騒ぎのときに、私たちの早稲田大学における学友は、あの万歳騒ぎで中学、高等学校時代の十六、七からの少年が一年、二年の刑を受けて、後に大学へ留学してきておったのであります。私たちはその悲憤の情をつぶさに彼らから聞き、一応彼らは日本で勉強してアメリカに大部分は去っていきましたが、日本はこの朝鮮の民衆の心というものを知らないばかりに、軍部官僚に任せていたばかりに、あのような悲劇を繰り返したのであります。  私は、終戦のときに、朝鮮をまず第一に文句なしに独立させなければならないという盟約を与うべきであるという主張の上に立って、朝日新聞の京城の支局長の伊集院君とともに、朝鮮の独立党の志士と意見の交換をしましたが、そのおおむねの人たちはその後に暗殺されて死んでいったのであります。統一への道、イバラの道です。しかし、それを乗り越えて、いまやっと南北の対話がつくり上げられようとしたときに、今度壊されたら、後では私はこのことはチャンスを失う危険性があると思うのです。ポーランド独立の悲劇を知るために私はポーランドにも訪ねたことがあります。朝鮮にも訪ねたことがありますが、この民族の悲歌を私たちはくみ取らなければ、言葉だけの美辞麗句では民族の心を私はかち取ることはできないと思うのです。  そういう意味において、いま心してアメリカも朝鮮問題に対処しなければいけない。ソ連が軍事的にイランに出てくるのを牽制するためにアメリカは場合によっては軍事的な行動を起こすかもしらぬということを、アメリカの要路の大官、エネルギー関係あるいは軍事関係の長官は申しておりますが、その反響、それから見通しはどういうものか、外務大臣が知り得た情報があったならば、それを承りたいと思います。
  123. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 米国国防長官の中近東に対する発言は情報として聞いておりますが、正式にまだ承っておりません。しかし、その後、諸情報を総合すると、この声明はどういう意味で出したのか、警告なのかあるいは意図なのか、具体的に艦隊を持っていくとか基地をつくるとか、そういう具体的なところまでは言っていない。しかし、いずれにしましても、おっしゃるとおり、力をもって紛争なりあるいは予防をやることは適当でないと存じております。
  124. 戸叶武

    戸叶武君 ブラウン国防長行なりシュレシンジャー・エネルギー長官なりの発言というのは、いま外務大臣が御答弁なさったように相当きついものであります。新聞情報ですが、具体的な動きがどうなっているかということを承りたかったのですが、それ以上まだ具体的な動きは取り得てないんでしょうが、イランに対する情報というものは非常にいままで不正確であります。  私は、前に、イランの問題において、中曽根君が通産大臣の時分、イランの王室と日本の皇室とは非常に似ている、だから親密の度を加えなけりゃならぬという形で、石油ショックのときだからあわてたのでしょうが、そういうふうに持ち上げ、それだけでなくて、べらぼうに高い金を支払って、しこたまイランの石油を買う約束をしてきたのは事実であります。衆議院の内閣委員会に通産大臣の報告を聞きに行って、どうしてあんな軽率な言動を、日本の皇室のあり方というものも非常な慎重を要するときに、近代化への道を開いていく王様とは言いながら、コサック出身の武力によって政権を獲得した王様、民衆は貧しく王様だけが富んでいるというような、こういう中近東でもエチオピア以上に矛盾の累積している国の内面的な危機というものを把握しないで、一国の大臣がなぜあんな軽率な発言をするのか、参議院の外務委員会に来てああいう発言をするならば、私は引きずりおろしてから文句を言ってやると言ったら、苦労人の熊本から出ていた、あれは予算委員会でしたか、外務委員会と思いましたが、理事が行って、衆議院と同じようなことを中曽根さん発言すると、戸叶君は思想は穏健だが行動は厳しい人だから引きずりおろされるかもしれないからと言って、さすがの中曽根君も遠慮してくれましたが、私は、一国の大臣がこの程度の軽はずみの言動でも間に合うほど、日本の閣僚というものが無責任発言というか、外務省なり通産省に相当の情報の機関もあるんでしょうが、外国の生きた動きに対して正確に、いい悪いの前に、動きの現実を把握していない面があるんですが、あなたはその轍を踏むのはいやだと思うし、自分で足まめに歩いて正確に物を体で受けとめようとしているようですが、要らぬ心配ですが、イランのことはやはり大丈夫でしょうか。
  125. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) イランの王制と日本の天皇が違うことは当然でありまして、革命で王制をしいたり、王制が近代化をやれば王制が危うくなることは当然の理屈でありまして、かつまた、あり方も象徴である日本の天皇と実際に細々と指図をしているイランの国王とは非常な差異があったわけであります。  現在の新政権は、まず第一番の問題として、いまの混乱をどう抑えていくか、秩序を回復するか、これは相当大きな問題であります。情報ではありますが、民間に渡った兵器二十万丁、自動小銃を含め、そのうち政府に回収されたのは二万丁だと言われております。かつまた、この新政権に対する反発の動きもいろいろ出てきております。五つのグループ、それからまた中立系の若い青年男女がどうも新政権は以前の政権と同じことをやるのではないかとかなんとか出ております。しかし、また一方から言うと、今度の内閣には回教徒の方は一人もいないで、大体、経験者、それから学識の人々が入っているようで、手がたく進められておると思います。なかなか流動的ではありますけれども、だんだんと政権が安定をしてくる、そして石油その他についても逐次政策を打ち出しておる、こういうふうに見ておるところでございます。
  126. 戸叶武

    戸叶武君 石油の問題ではアメリカ以上にイランに日本は密接な関係があり、関心を持っているんですが、アメリカソ連牽制のためであり、また軍事実力があるからそのくらいのことをやらなけりゃ牽制ができぬと思ってやっていることでしょうが、日本アメリカとは別個の道、どこまでも話し合いによって難問題も解決に当たろうという態度のようですが、その見通しはどうですか。この二、三週間の間に石油政策が発表されるであろうという期待もあるようですが、それまでに回復はしないであろう、石油産業は左派が支配しているというような情報も流れておりますが、どっちの方を重く見ておりますか。
  127. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 二、三週間内に石油政策を発表するというのは、石油公団総裁のわが方の大使に対する説明であります。かつまた、新政権の総理もまず治安回復をして、その次にイランの国内の経済その他の復旧をしなければならぬが、その重点は石油である、イランのためにも石油輸出を急ぎたい、こういうことを言っておられますけれども、しかし、それも具体的にいつになるかわかりませんけれども、見ておるところ多くの問題がありますが、ストライキも解除されつつあるし、しかも逐次新政権の政策も出ているようでありますから、経済活動が一刻も早く正常化するように希望しながら見ておるところでございます。かつまた、イランに対しては、御発言のとおり、米国とは全く違った方法でイランの新政権、イランの国民の立場を考えながら日本協力していきたいと考えておるところでございます。
  128. 戸叶武

    戸叶武君 具体的な問題としてバンダルシャプールの石油化学コンビナートの建設について、三井グループは三千億、イランが二千五百億の分担でいままで進められておりましたが、イラン側の分担金未払い金の三百億を、場合によっては政府は立てかえ払いをしてもよいというふうに受け取れるような新聞記事がありましたが、そういうことを政府はそれまでの配慮をしておるんでしょうか。
  129. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 具体的にそういうことを考えているわけではありません。イランの経済、政情の安定化のために日本がどのように協力するかということは向こうの要求を待っているところであります。
  130. 戸叶武

    戸叶武君 最後に、中国とベトナムとの軍事抗争に対して、日本は、国連もアメリカも大体一致しているような言動で終始して、とにかく中国のメンツは一応考慮しながらも、中国もベトナムも他国への侵略と思われるような軍事侵出から撤退せよというような筋の通ったきつい発言を、また日本の国連大使も、また外務大臣もやっておりますが、この基本的な考え方というものは、国連なりアメリカなり、その他の諸国と打ち合わせした上での発言ですか、日本独自の発言ですか。
  131. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 発言は日本独自の発言でありますが、その後、ASEANの諸国とは話し合いました結果、全く同一歩調であるということがわかり、今後も緊密に連絡することにいたしております。  米国とは相談した上の発言ではございません。しかし、今後は連絡は緊密にしたいと考えております。
  132. 戸叶武

    戸叶武君 最後に結論的に一言申し上げますが、遠いイランの方にはきわめて慎重な態度で臨んでおり、中国とベトナムとの軍事紛争に対しては、日米安保における極東の範囲に属しないという形で、これに対しても中国ぺースに必ずしも乗っていかないという態度で、だが、どうも事韓国の問題におきましては、少し、アメリカ軍部のペースに日本はいやでも乗らざるを得ないのかもしれませんが、安保の運営の問題に対してはいろいろ問題があるのであって、一つ一つこういうふうななし崩しにおいて日本国内の基地までアメリカの軍事行動によって演習という名で揺すぶられていったのでは、一九六〇年の安保闘争のようなことがまた巻き起こらないとも断言できない。いまのアメリカ大使はなかなか議会人として用意周到な人だからあの轍を踏まないように注意をしてもらいたいということもきのうはつけ加えましたが、どうぞ政府においても、せっかくこの外交の基本路線というものが確立しかかったときに日本海でもって沈没してしまったでは一つの言いわけにならぬと思いますから、園田さん、心して南北朝鮮の対話、統一への悲願、そういうものをやはり思いやりのある目で見守っていくことと、ほかの国々に対しても、そういう方向日本は努力しつつあるんだということをやはり示していただかれんことを期待し、返事は要りませんから、どうぞ、これで結びます。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先般、中越紛争について日本政府の考え方、また対応策について外務大臣としてはさまざまな見地からその所信を披瀝していただきました。あれからまた時間的に経過しておりますが、表明されたとおりに、どうも長期化する傾向が強くなってきたのではあるまいか。  中国側はしきりに限定、短期というようなことで事態の収拾を図ろうというようなことが伝えられておりますけれども現実にはなかなかそのような動きではなさそうな気がいたします。もちろん、あの時点から現在に至るまでの間には報道関係についても大分混乱から立ち直って相当整理された分析の上に立つ情報というものが入ってきているのではあるまいか。そうしたことを背景に考えますと、一方においてはベトナム軍が中国側に入ったとか、また特に最大の要衝であるランソン地域においては、これは決定的な戦闘への道を開くことを中国側が考えているんではあるまいか、いろいろそういうことが入り乱れているわけであります。  私どもが一縷の希望を抱いたのは、国連の緊急安保理事会においてどういう一体今回の中越紛争に対しての速やかな調停工作ができるんであろうか、しかし、これも残念なことにはその可能性がきわめて薄くなってきた。特に英国あたりは、すでに伝えられておりますように、国際間の監視機構というものをぜひつくるべきであるというような提言をされたようでありますけれどもアメリカとかあるいはフランスあたりがきわめて消極的であるということに伴って英国側もその提言を取り下げざるを得ない、かてて加えてASEANあたりに任せる以外にないだろうというような判断を持つに至ったというふうに伺っております。こうなりますと、今後、国連の緊急安保理事会におけるその調停工作というものが全くもう絶望的なそういう行き方をするものなのか、また戦闘状況の推移いかんによっては何らかの方途というものが考えられるのか。日本側として当然国連にも参って、その辺の動きというものを敏感に吸収されていると思うのでございますが、現状は、その国連を中心とした緊急安保理事会にわれわれが今後とも期待を寄せられるいま状況なのかどうなのか、この辺は政府としてどういう御判断をお持ちになっていらっしゃるのか。
  134. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 国連の安保理事会は御発言のとおりでありまして、決議案の準備がされたようでありますが、ソ連の拒否権、中国の拒否権等もこれあり、そこでASEANから決議文の案文を準備したり、事務総長が両方がのめるような決議文の案文を準備したりしているということでありまして、なかなか結論が出るということについては、楽観というか、可能性は大きくはない。むしろ国運では何らかの決議文なり、あるいは決定的な事項を出すことは困難ではなかろうかというのがただいまの判断でございます。中には事務総長が両国間の調停をしたらよいという意見も出ておりますが、これも一部の意見にとどまっております。
  135. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうした経過を考えますと、非常にわれわれとしては先行きの見通しがきわめて暗い。ただ、お互い当事国同士が今後も引き続きどろ沼の中に突っ込もうと突っ込むまいと、これは傍観せざるを得ない、そういう行き方になる危険性というものが多分にあるのではないだろうか。少なくとも現在の国連のそういうような環境であります限りは、まず国連に期待することは非常にわれわれとしても不安感を持たざるを得ない。  そういった場合に、一体、日本としてとるべき道はあと何が考えられるのか。先般、私が念を押しながらお伺いした中で、あらゆる努力をあらゆる機会を通じておやりになるということをお示しになりました。その中には、日本として独自の立場に立っての調停まで含めてお取り組みになるおつもりがあるかということについては、明言は避けられたものの、それを含めて、否定なさいませんでしたから、お考えの中にあったんであろう、これは一面考えると大変好ましいというふうに実はその当時判断をしておりました。  このまま、日本としても、アメリカであるとかあるいはイギリスであるとか、いわゆる自由主義国家陣営のそういう動きをただ静観せざるを得ないのか、今後のソビエトの出方というものはどう出るかということも現在の段階では直ちに判断することは無理だろうと私は思います。けれども日本としては、何も先駆けて、アメリカや何かほかの国々に抜け駆けというわけではございませんけれども、先を越すようなかっこうで、あえて調停の労をとる必要もなかろう。もうしばらく情勢を静観していた方が、一体、これから事態が急変するのか、あるいはこのまま膠着状態で推移するのか、その辺の判断もございましょうし、そういったことを含めて、いま恐らく園田さんの胸中には、こうなった場合こう、こうなった場合こうという、断定的ではありませんでしょうけれども、ある程度の御方針というものをすでにお持ちになっていらっしゃるんじゃないだろうか。その辺、差し支えない限りはお聞かせをいただければ大変ありがたい、こう思います。
  136. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私としては、この前、発言申し上げましたとおりの心境に変わりなく、非常に注意深く見守っておるところでございます。  そこで、それならば、いかのやの時期にどのような方法でどうやるか、こういうことになってまいりますときわめてむつかしい問題でありまして、かつまた微妙な問題であると存じております。わが日本の力をうぬぼれるわけでもないし、また日本の立場を高く買いかぶっておるわけでもありませんけれども、直接インドシナ半島が平和的に解決されるかどうかということは、今後のアジアの平和に重大な問題であって、一番影響があるのは日本でありますから、そういう意味においてあらゆる努力をしたい、こう考えております。
  137. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおり、これはわれわれとしては決して対岸の火事じゃございません。いま御指摘のとおり、これはアジアの確固たる平和へつながるかどうかという点については、今回の紛争はまことに遺憾であると言わざるを得ないわけであります。まだまだこうもしたい、ああもしたいということの心のうちというものをうかがい知ることのできないことは残念でありますけれども、こうしたことがこれからまた一週間、二週間あるいは一カ月と時を追うにつれて、日本としてもただじっと手をこまねいて見ているわけにはいかないだろう。  いろんなことが想定される中で、たとえばいろんな情報を的確につかむという一環という場合もございましょう。在日米空軍あたりが、たとえばいま国会で大変論議されておりますE2Cあたりをベトナム上空に偵察をさして、その情報を探る、こういうような可能性というものは考えられましょうか。
  138. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま紛争が起きている場所の大部というのは、私もかつておったことがありますが、十メートル先が見えないぐらいの森林地帯であります。それから海岸に近い方で大体千メートル、離れていくと二千メートルの山岳地帯であります。しかも、もうすでに雨期が迫っておりますが、現在でも小さい霧みたいなのがいっぱいありまして、航空偵察あるいは写真の撮影等はなかなか困難な状態であります。  そればかりではなくて、この際、私が念願するところは、当事者同士が平和的な解決をする、そのための努力をすると同時に、これに関係あり、取り巻く大国であるソ連と米国がこれになるべく関与してもらいたくない、介入してもらいたくないということも申し入れているわけであります、米国、ソ連両方に。しかし、これが長期化すると不測の事態が出てくるということを心配しているわけでありますが、そういう意味におきましても、米国の偵察機等がベトナムに飛んでいくことは、私は不測の事態が起こるおそれがあるので、余り好まないところでございます。
  139. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 余り好まないという言葉じりをつかまえるわけではありませんが、確かにそうあっては因ると思いますね、かえって拡大の方向へ刺激を与えるという。  もう一つは、現在、在中国日本大使館にはどの程度の一体情報が入ってきているのか、その辺をどう整理されて今後の推移というものの判断の基準にされているのか。在中国日本大使館においては相当精度の高い情報が入っていると判断してよろしゅうございますか。
  140. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ベトナムの方からも中国の方からも必要な情報は提供があります。しかし、これは正直に言って、一方的に自分の主張を主にした情報でありますから、これは判断の資料には余りならぬのではないか。むしろこれに関係のない各国に駐在する館員が雑談なりあるいは懇談なりで、各所の方から横にもらう情報の方が的確なような気がいたします。いずれにいたしましても大事なところでありますから、各国に対して情報を提供してもらうよう注意をし情報を集めて、これを収集、判断をしているところでございます。
  141. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一つ。ベトナムがカンボジアへ侵攻した、これはいろんな見方というものがあるのでしょうけれども、その後においてベトナムの外務大臣が来日いたしましたですね。その際に、新たな援助要請があったけれども、それについては断られた。要するにカンボジアから一刻も早く撤兵してもらいたい、それが実現の暁にはという、大変含みのある、そういうことで新しい援助を、全くそれはやめたということでなくて、それが達成できた暁には再び継続的に新しい援助要請にもおこたえいたしましょうと、事実上は新しい援助要請は断った。そういった側面を考えましたときに、いま日中間においては四つの近代化達成のために、日本に対する強力な、軍事協力を除く、四つの近代化に対しての協力要請、援助要請がございます。そういったものについて、今後長期化するということが考えられ、もうどうしようもないどろ沼の中に入った、それを早く収拾を打たせる一環として、何らかの協力態勢に措置を加えるような考え方はありますか。
  142. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ベトナムに対する経済援助でありますが、これは御承知のとおり凍結はいたしておりません。契約をした五十三年度分はどんどん実行して、ほとんどこれは進んでおります。お米の問題だけが、向こうから話し合いがありませんから、進んでいないわけであります。五十四年度以降のことについては、これまた今後の話し合いによって決まることでございます。  中国に対する経済協力は、御承知のように、ほとんど民間ベースでありまして、政府が関係している関係は余りいまのところないわけでありまして、この両方の紛争を日本の経済協力その他をてこにしてやるということは余り効果はないし、また、やるようなことも考えておりません。
  143. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、われわれとしては事態の速やかな収拾ということを先般も申し上げたとおりでありまして、願わくは、ともあれ政府としては従前から明確に表明されておりますように、どちらの国とも友好的なそういうかかわり合いをこれからも持続さしていきたいという、願望を込めてそういう考え方を持っていらっしゃる。  そういうことを踏まえた上で、何らかの機会に、きょうは再度要望を込めて申し上げておきたいことは、何らかのチャンスというものは必ずあるであろう、そのチャンスがあった場合に、国連の機能というものがもう麻痺状態であるならば、アジアの今後の平和と繁栄というものを日本としてはどうしても強力にこれからもその道を開いていく役割りを果たすという立場に立って、何とかその調停の役割りが果たせるならば、強力にそれを果たしていただきたいということをきょう再度御要望申し上げておきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  144. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまの御意見は十分拝承いたしまして、そういう方に必死に努力をしていきたいと考えます。
  145. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、午前中も若干論議された問題の中で、わが国を取り巻く周辺というものは大変騒々しい外交課題が山積しているわけでございます。特に漁業関係についてはなおのことでございまして、北が変なぐあいになると西の方もどうにかなりはしまいかという、常に北を向いて西を向いてという大変われわれとしてはつらい立場に置かれておるわけでありますが、最近、非常に深刻な問題として取り上げられている中に北海道近海における韓国漁船の目に余る操業、いままでも水産庁の中堅幹部でございますか、事務レベルでもって大分折衝を詰めてきた経過があるようでございます。  特に、その中で問題にされたのは、漁業区域についての問題、それから安全操業についての問題、それから第三点としては損害に対する補償の問題、この三つが軸にされてやりとりが行われ、そのうちの二つですね、安全操業については、とにかく韓国漁船に向こうの監督賞を常時乗せながらそういう摩擦が生じないように善処をする。それから損害を受けたときには、それに伴う補償措置をとるというようなことで何か合意をされた。ただ、一番漁業でもって基本的な問題の漁業区域については最後まで折り合いがつかなかったということで、いつの時期にこういった問題が、もう大変長い間こうした問題が解消されないままにしばしば当委員会でも繰り返し繰り返し話題にされつつ一向に進展を見せない。恐らく外務大臣としてももうすみからすみまで頭の中にきちんとお入りになっていらっしゃいますから、そういう経過よりも、今後、そうした問題が果たして早い時期に解決できるのかどうなのか。  しかも、御存じのとおり、六月から八月に至ると漁を休む、日本の場合は。漁を休もうと何しようと韓国漁船が約百二十隻ですか、伝えられるところによりますと。それで日本漁船の漁網は損壊する、とりほうだい、特にスケソウダラを中心にして年がら年じゅうとっている。漁区は荒らされますし、これは日本の漁民にとっては言うまでもなく多大な被害である。さりとて二百海里を設定いたしますと西の方はどうなるんだと、こういう問題がありまして、全く二者択一を迫られてもどうにもならぬという経過の中で、これは一体解消の道が本当にあるんだろうか。竹島も長いこと問題にされてきたけれども、これも一向に解消されない。恐らくこれからも日韓閣僚会議というものが常時持たれていくんだろうと思うんですけれども、この問題に対する見通しはいかがでございましょうか。
  146. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先日、おとといですか、米国に行き在外公館長会議を終わった韓国の外務部長官が日本を経由して帰国をいたしました。その際、若干時間でありますが、外務大臣と私と話をいたしました。  その中で、私は、漁業問題を第一に取り上げ、第一に北海道の問題、これはしばしば話をして自省するということになっておるが、その後その実が上がっていない、ただ単に乱獲というだけではなくて、大型の韓国漁船日本漁民に対する振る舞いというのは日本漁民の感情的な反発まで買ってきて、このままではとうてい済まされない、先般事務当局が詰めの会議をやったがまとまらなかった、そこで早急に水産庁長官同士の話し合いをやってもらいたい、それでまとまらなければ私としてもさらに考えざるを得ない、こういう話をしました。そこで両方の長官、大臣が話し合うことがまとまりましたが、その場で日にちも決めようと思いましたが、ちょうど農林大臣もいないし、日にちは決まりませんでしたが、早急に両方の大臣と長官の話し合いをするように相談したいと考えております。
  147. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一点だけ、要望を込めて申し上げます。  午前中に、私、政務次官を対象にしてお話しした中で、文化協定の問題、これは大変結構だと言うんです、お互い文化交流することは。ただし、日本の場合はそれに伴う予算措置というものが余りにも小さ過ぎる。先進国と比較をすると七分の一とか六分の一とか五分の一とか三分の一、これで果たして文化交流なんて中身のとおりのことができるかどうかということを申し上げました。  そこで、昭和五十五年度からの予算編成に当たっては、今回の場合は例の基金の運用益でもってやるわけですけれども、やっと五十億上乗せになった。何とか早い時期に運用益百億ぐらいまでその見通しを立てられて、文化交流の実が上がるように十分な予算措置の配慮をお願いを申し上げたいという要望を込めて、それだけに対する御返事を伺って終わりにします。
  148. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまの御意見、十分感じているところでありますから、努力をいたします。
  149. 立木洋

    立木洋君 大臣、けさの質問と関連してですが、いまも取り上げられたので簡略に二点だけ最初にお尋ねしたいと思います。  第一点は、北海道の沿岸における韓国漁船の問題ですね。これは大変な状態になっているということはもう繰り返しません。非常に重大な状況にあるわけですが、いままで水産庁次長が二回にわたって会談をやっていますけれども、実際にうまく進展していない。そういうことを踏まえた上で、昨日ですか一昨日ですか、衆議院で外務大臣が、閣僚クラスの会談をやりたい、さらには二百海里の適用問題、また日韓漁業協定についての問題等々も再検討したいという趣旨のことを言われましたが、その内容ですね、どういう内容なのか、どういうふうにいまお考えになっておるのか、それから大体の見通しとしては、いつごろまでをめどとしてそういう問題の決着をつけるというお考えなのか、これが第一点です。  第二点は、竹島周辺の安全操業の問題ですが、これも大臣は、昨年来、毅然としてやるということも言われておったし、さらには、この問題に関しては、そういう問題が解決つかないんならばいろいろな今後の問題も全面的に考え直さんといかぬという趣旨の非常に強い姿勢を国会において述べられていたわけですが、この問題についても依然として解決つかないで、現地の漁民からは繰り返し要望が出されているわけですね。これも五月から春の漁期に入りますし、これについてどういう態度で、いつぐらいをめどに解決されるというふうにお考えになっておられるのか、その二点について最初にお伺いしたいと思うんです。
  150. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 北海道の問題については御指摘のとおりでありまして、これはこの前の私の答弁を基礎にして、先日、外務部長官と水産庁長官同士の話し合いをやろうと、それは四月ということでありましたから、四月では遅過ぎる、もっと早くしてくれということで、日にちは決定しておりませんが、早急にやりたいと思っております。  竹島のことについては局長から。
  151. 立木洋

    立木洋君 竹島のことはさっきもう局長から聞いたんですよ、だから大臣のお考えを。
  152. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) この前のときには、竹島の問題については、いろいろあなたの方は要求をしているが、私の要求は一つも聞かぬじゃないかと、話したことだけは実行してもらいたい、何とか漁業の問題だけは、竹島の問題だけはやらないと私も国会でももたないと、こう言っておきました。それでなるべく善処をしたいと。経過は午前中にお答えしたとおりでございます。
  153. 立木洋

    立木洋君 この問題については、いままでやはり繰り返し努力されるという御答弁をいただいているわけですけれども現実に速やかに解決しないと、決断すべき時期には決断しないと、ずるずるいったんではこれは困るわけですから、その点は重ねて強く要望しておきたいと思います。
  154. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 漁期の問題よく考えていたします。
  155. 立木洋

    立木洋君 中国のベトナム侵略に関する問題ですが、大臣御承知の日中平和友好条約ですね、あの中では、いずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、覇権を確立しようとする試みにも反対する。この覇権ということがどういうことかというと、これは国会の答弁でもはっきりなされて、自分の意思を力によって押しつけようとする行為というふうに政府当局としては答弁されていたわけですね。また、この問題が中国側から要望されたから条約の中に入れるということではない。大臣が明確に述べられたのは、これは国連憲章の精神にも沿ったもので、アジアの平和という観点から考えるならば、これを入れることは非常に積極的な意義がある。だから私はそういう確固とした立場に立ってこの覇権に反対するという条項を入れたのであるということを特に強調されたと思うんですね。  そういうことから考えてみて、こういう覇権に反対をするということを約束した日本として、今日の中国の事態に対してやっぱりいまの行為を速やかにやめさせるという点に関しては、私は特別の責任を日本の政府は持っているのではないかというふうに考えるわけですが、その点についての大臣のお考えはいかがですか。
  156. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) しばしば申し上げますとおり、紛争を力をもって解決すること、他国に理由のいかんを問わず軍隊を入れること、これは反対だ、それは正しくない。したがって即時停戦、撤退、平和解決するということは強くしばしば要望しておりますし、今後とも、これは続けるつもりであります。  ただ、いま覇権とか侵略とかという言葉をお使いになりましたけれども、国連憲章には侵略という定義があります。それから日中友好条約に覇権という言葉がありますが、お互いに当事者同士は自分の正当性を主張しておりまして、中国は、これはしばしばにおけるベトナムの武力侵犯による自衛的反撃だと、こう言っておる。それからカンボジアでは、ベトナムは、これは自分の正当性でポル・ポト政権がやってきたからやったんだと、こう言っておるわけでありますから、自衛権なのか侵略か、そういうことはいま国連の安保理事会で憲章に従って決まることではありますが、私の方は、侵略、覇権という言葉は特に避けております。避けております理由というものは、カンボジアとベトナムの問題にしても、中国とベトナムの問題にしても、これを罪人と断定することよりも、現状の行動をやめさせることが先決問題であるから、そのためにはこれを断定しないでやった方がいい、こういうことでございます。
  157. 立木洋

    立木洋君 いまの御発言はもう先般も聞いているわけですから、大臣の言われている考えというのはよくわかるわけですが、しかし、私がいまお尋ねしたのは、日中平和友好条約を結んだ日本の国の政府としての責任ですね、これをどう考えているかという問題なんですよ。  この間、大臣がインドネシアのモフタル外相と二十二日お会いになっていますよね。あのときも、インドネシアの外相自身が大臣に述べられている点は、日中平和友好条約締結に示された日本の決断とイニシアチブがどう証明されるかを見守りたい、今日の中越の関係における状態の中で。そういう点でやっぱり外国は日本を見ているわけですから、だから日本政府の責任というのがあるわけですね。日中平和友好条約を結んで、その平和の安全のためにどう努力するかということが日本の政府として問われているわけですから、だからその責任という点をどういうふうにお考えになっているのかということなんです。重ねてお尋ねしておきます。
  158. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) インドネシアのモフタル外務大臣は、その発言の後に、外務大臣談話はわれわれと全く意見を同一にする、ベトナム、中国に対する日本政府の態度はわれわれはそれを支持する、こういう発言がございます。  しかし、日本としては、あくまでそういう意味から、中国に、停戦をし、外国領内から軍を撤退させることが、これがアジアの平和のためでもあり、これをさせることが日本政府の責任であるということを考えております。
  159. 立木洋

    立木洋君 先ほどのこれは深く突っ込んで議論する時間がありませんけれども一つお尋ねしておきたいのは、大臣は中国、ベトナムにそれぞれ外国からの軍隊の撤退を求めるということを再三繰り返し主張されているわけですが、これは中国、ベトナムそれぞれの国が、そういう日本政府の立場についてどういうような見解を持っておるか御存じですか。
  160. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中国の方は、限定作戦であり、なるべく早く引き揚げるという返答をしております。その後、新聞等を見ると、いろいろ言い分が変わっているようでありますが、私の方に対する返答はそういう返答であります。  ベトナムの方は、カンボジアにおける自分たちの行動というのは侵略ではない、正当性のものであるという説明であります。
  161. 立木洋

    立木洋君 その中国の最近の発言は変わっておるようであるというところを私は聞きたかったわけですが、先般、共同通信の渡辺さんが鄧小平副首相と会見した席上、この問題について、両国に外国からの軍隊の撤退を求めるという問題の立て方は賛成であるということを鄧小平が明確に言っているわけですね。それで事実上日本の政府が中国に対してそういう行動をとることに同意をしていないという態度を表明しているけれども日本政府は中国の立場に理解を示しておるんではないかという一部の指摘を裏づけることにならないだろうかという問題点も出されているわけですね、鄧小平副首相のこういう発言から見るならば。他方、ベトナム側としては、そういうふうな両国に撤退などということの問題の立て方は、全くこれはわれわれとしては承服しかねると強い意見を述べているわけですが、こういう大臣自身が述べられている立場というのは、現実には中国に理解され得る立場であり、他方からは、そういうことが受け入れられないという立場であるということは、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  162. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中国が私の言い分を理解しているかどうかは、これは私自身に話がないわけでありますから、わかりません。  それからベトナムはいま申し上げたとおりであって、若干の相違はありますけれども、しかし、わが方としては、ベトナムはカンボジアから撤退しろということは中国には言ってありません、これはベトナムだけに言ってあることであります。
  163. 立木洋

    立木洋君 最近の情報を見てみますと、中国の軍隊がベトナムの領内に三十キロ、多いところでは五十キロ入っておるというふうな報道が各紙になされております。私たちは赤旗の特派員を現地の国境に派遣して、そういう事態が間違いないということを確認しておりますが、中国側はそういう状況の中で話し合いということを提起しているのですね、話し合いをしようではないかと。だけど、現実に外国の領内に五十キロ近くも侵犯した状態で話し合いをしようではないかという提起の仕方というのは、これは私はどうも納得できない問題の提起の仕方だと考えるけれども、大臣は、そういう外国の領内に入っておる状態のもとで話し合いを提起するという提起の仕方に賛成されますか、賛成されませんか。
  164. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私は、ベトナムと中国の問題だけに限って言うと、中国を侵略であるとか覇権であるとかという言葉を使うことは遠慮しておりますけれども、その行動は正しくない。少なくとも力をもって紛争を解決しようとする、他国に軍隊を長期にわたって入れておくということは、これは正しくない、こう思います。平和的話し合いということも私は必ず言い、即時停戦、撤退、そうして平和解決と、こういうふうに順序をきちんとしております。
  165. 立木洋

    立木洋君 大臣は、あくまで侵略であるかどうかという定義づけ、あるいはそれが覇権であるかどうかという規定をいま下すということにはきわめて慎重な態度をとっておられる。しかし、やはりいまの中国の行為というのは自分の意思を力によって押しつけようとしておる具体的な行為だという点は、これは間違いないですね、大臣。
  166. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) それを中国は自衛権の発動だと、こう言い張っておるわけであります。
  167. 立木洋

    立木洋君 いやいや、中国の言い分を聞いているのではなくて、大臣はどうお考えになっているかと。
  168. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先ほどから申し上げますとおり、事の経緯を問わず、理由のいかんを問わず、他国に軍を進めていることは正しくないと。
  169. 立木洋

    立木洋君 日中平和友好条約を審議した経過の中でも私たちも再三申し上げたわけですが、いまそういう現実に重大な事態がこのアジアの一角で起こっているわけですね。日中平和友好条約承認して、そしてアジアにおいて本当の真の平和が確立できるためにわれわれは努力しなければならないという、ある意味ではそういう強い念願を持ってあの日中平和友好条約は審議されたと思うんですね。それに事実上反しておる事態が起こっておる。  それに対して、政府としては、まだ厳しい抗議というふうな態度もとらないで、遺憾の意を表明するというだけでは、本当に日中平和友好条約を審議し、そして大臣自身があれ相当努力されたわけですし、大臣自身があの当時確信を持って表明されておった立場から見ても、今日はもっと明確な立場をとることが私は重要ではないだろうか。そうしないと、文章の上では幾らいい文章をつくり上げ、国会では幾ら毅然としたことをお述べになっても、現実に起こった事態にきちっと対処するということができないと、これはやはり責任を負う日本政府の立場とは言えないんではないかということを強く言わざるを得ないと思うんですね。  ですから、現実にいま問題なのは、あそこの中国の軍隊がベトナム領域から撤退をし、そしてそういうふうな外国に侵犯するというふうな行為が完全に停止されたならば、これは新しい事態が生まれると思うんですよ。だから、このことのためにいま政府が全力を尽くすということが最も重要なことだろう。その点ではもう少し厳しい態度を私は中国政府に対して伝えるべきであるというふうに考えますけれども、その点、最後に大臣の明確な答弁をいただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。
  170. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私のやっていることがなまぬるい意思の表明であるとおっしゃいましたけれども、しばしば私は申し入れをしておりますが、決して意思の表明をしておるわけではなくて、ちゃんとした抗議をやっております。  なお、言葉を少しつけ加えますけれども、今度のインドシナの紛争に対するわが日本政府の態度こそ、日中平和友好条約が真にアジアの平和のために結ばれたものなのか、あるいは日中・米中協力をして他の国に対する対抗的な意思で結ばれたものなのか、いわゆるアジアの平和を撹乱するか、このインドシナ紛争に対するわが方の態度は、ここが一番大事なところであるということは十分認識をいたしております。
  171. 和田春生

    ○和田春生君 北西大西洋漁業協力条約については、わが国の方針と絡んで後ほどお伺いいたしますが、ただいままでの同僚各委員と外務大臣のやりとりを伺っておりまして、中越戦争及び日中平和友好条約との関連につきまして、日本政府の方針にかなり重大な疑念を感じましたので、その点をお伺いいたしたいと思うんです。  お伺いする前提として、御承知のように、私は、この日中平和友好条約の中に含まれた反覇権条項について終始一貫疑問を呈し、疑念を表明してきた者の一人であります。あの条約を批准するに際しても、締結した条約であるから一定の意義は認めるにやぶさかではありませんから賛成をするけれども、手放しの賛成ではない。むしろこの条約によってパワーゲームの中に、今日のパワーポリティックスの状況の中に日本も足を突っ込んで、逃れることができないような状況に置かれる懸念があるということまで申し述べてきたわけです。まさに今日の中越戦争はそうした懸念された状態の一つだと私は認識しているわけです。  そこで、あの日中平和友好条約の中の反覇権条項というのは一体何であったんでしょうか。いまの大臣の御答弁を聞いてみますと、全くナンセンスな条文を条約に入れて締結したのではないかという感じがするんですけれども、お互いに覇権を求めず、他の国に対しても覇権を求めないということを誓約して調印されたわけですね。一体、その反覇権条項というのはどういうふうなもので、どう認識して日本政府はあれほどまでに覇権反対の条項を入れるということに熱心な態度を示されたんでしょうか、私はその点が疑問なんで率直なお考えをお聞きしたいと思います。
  172. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 反覇権は一般普遍的な覇権に対する反対でありまして、これは国連憲章の定義にもある侵略と通ずるものであり、これを中心に判断すべきである。ただし、その覇権に対する覇権であるかどうかの判断及び覇権に対する反対の行動は、中国とは同一行動をとらない、相談した上で決めない、こういうことだと存じております。
  173. 和田春生

    ○和田春生君 覇権反対に共同行動をとらない、それはそのお言葉のとおりに承りますよ。しかし、いま中国がやっているのは覇権行為じゃないんですか、あれこそ覇権行為の典型的なものの一つじゃないんでしょうか。ベトナムがカンボジアに侵入したのもいかぬと、それは当然ですが、あのいま中国がベトナムに軍事的攻勢をかけて相当深く侵入している、しかも中国政府の公式表明によれば、ベトナムに懲罰を加えて教訓を与える、その手段として武力を使ったわけですね。これが覇権行為でないとするなら、一体、地球上に存する覇権行為というのはどんなものを言うんでしょうか。
  174. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私は、中国のやった行動を侵略であるとか覇権であるとか断定して発言をしていない、また、その反面、覇権でないという発言もいたしておりません。当事者同士がお互いに正当性を主張して、中国はこれは侵略じゃない、自衛権の発動だと、こう言っておるわけであります。ベトナムは明瞭なる侵略、明々白々たる事実じゃないかと、こう言っておるわけでありまして、その紛争を、いま見通しは別として、国連の安保理事会でやっているわけであります。  わが日本は、これに対して、一番大事なことは、中国それからベトナム両国に対して平和的解決を要請し、そして本当の平和を願おうとする、ありとあらゆる努力をしようとするならば、あくまで両国に対して中立の立場を堅持することが大事であると考えております。したがいまして、私は、中国には軍は直ちに撤退しなさい、他国に軍隊を入れていることは正しくありません、そして他国から軍は撤退し即時停戦をして平和的な話し合いをしなさいと平和的会談を提案しているわけであります。ただ、私は、これを両方で言い争って、片方は侵略、片方は侵略じゃないと言っているときに、日本の外務大臣である私がそれを一方に軍配を振るようなことは現時点としてはよろしくない、こういう意味から覇権であるとかあるいは侵略であるという言葉は使わない、こういう意味であります。
  175. 和田春生

    ○和田春生君 大臣の個人の見解を伺っているというよりも、私は、日本政府のとっている外交政策に対する疑問から出発してお伺いをしているわけなんですね。  正しくない、いけないと、それはまさに覇権行為であるからではないでしょうか。日中平和友好条約であれほど大騒ぎをして鳴り物入りで覇権反対の条項を入れたんです。それは両国関係だけではなくて、他の地域においても覇権を求めないという相互の平和国家たらんとする意思のもとにこの条項を入れたというのが当時の日本政府のいわば説明であった。当然、中国に反覇権の条項に反する行為であるということを日本政府が毅然と言う、そういう態度があって初めてあの反覇権条項というものは生きてくるし、日本政府の立場も国際間から正当に評価されるのではないかと私は思うんです。  それを気がねをして、反覇権か侵略かどうかということは軍配を上げないんだ。しかし、世界じゅうの至るところの戦争で、おれは侵略をして侵略者であるなんと言って始めた戦争は一つもありませんよ。みんな自衛の行動とかそれぞれ理屈をつけ合っているわけだ。しかし、少なくとも武力によって他国に侵入するというのはいけない。それは同時に、日本に向けられたときのことも考えた場合に、厳しい態度を表明してこそ私は日本政府の外交方針がきちっとしていくんじゃないか。それを言わなければ、結局、日本というのは頼りにならぬ国、口ではいろいろなことを言うけれども無力な国、あちらに気がねをし、こちらに気がねをして信用するに足らぬ国という国際的な評価というものを一層深めることになるんではないでしょうか。  私は、中国政府に遠慮する必要はない。ベトナムに対し一言厳しい注文をつけたらいいけれども、中国に対したって、これは天下万人が見るように、あんなものは自衛戦争じゃありません。あれが自衛戦争だったら日本が日支事変を起こしたときだって自衛戦争のうちに入る。それはきちんと言うべきだと思いますね、いかがでしょうか。
  176. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私は中国に気がねをしているわけでは決してございません。私と申しますのは日本政府ということであります。  あくまで念願するところは、両方の平和的解決、そしていまの現状がもとに返ることでありますから、それに対して何らかの努力をし、何らかの方法を見出したいと思う私がどちらが罪人であるかと言う必要はない、こういうことであります。
  177. 和田春生

    ○和田春生君 ちょっと私の質問を取り違えていらっしゃるんじゃないかと思うんですが、どちらが罪人だということを日本政府は判定を下せと言っているんじゃないんです。  日中平和友好条約を結んでいなかった、あるいは覇権反対の条項を落として友好条約を結んでおったというんなら、こういう質問はしないんですよ。私どもは反覇権条項を入れるということに対していろいろ質問してきたわけです。それに対する日本政府の答弁ないしは解釈、この条項を入れた立場というものからいけば――日中友好条約を結んでいるわけでしょう、その中に覇権反対の条項が入っているわけでしょう、両方がサインしているんじゃないですか。だから中国に言うべきではないかと、こう申し上げている。
  178. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御意見を取り違えておるわけではございません。御意見は十分理解しながら私は返答しておるわけでありまして、だからこそ事のいかんを問わず、理由のいかんを問わず、力をもって紛争を解決しようとし、他国に軍隊を入れることは正しくない、こういうことを言っているわけでありますから、私の意思は十分これでわかると存じます。
  179. 和田春生

    ○和田春生君 そういたしますと、あの日中平和友好条約の中の覇権とか覇権主義とか覇権行為とかいうのは、一体、何なんでしょう。いまの中国のベトナムに対する行為がそれに該当するかどうかということをおっしゃらないとすれば、あれに該当するような行為というものは一体どういうものなんでしょう。
  180. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中越紛争で中国は侵略ではない、自衛権の発動だと、こう言っているし、それからベトナムはカンボジアとの問題では自分たちは侵略ではない、正当だと、こう言っているわけであります。中越においてはベトナムと中国の言い分が真っ向から反対しているわけであります。そこで、私は、言い得ないのではなくて、あるいは中国が覇権でないと言っているわけではありません。ただ、正しくない、直ちに軍は撤退し戦をやめなさい、それから話し合いをしなさい、こう強く言っているわけでありますから、それを両方から対立していることをつかまえて、現時点においてどう断定するかということは、平和解決を念願している私としてはしばらくは慎んだがよかろうと、こういうことを言っている。私の気持ちを言っているわけで、御意見は十分わかります。
  181. 和田春生

    ○和田春生君 外務大臣がそういう気持ちを持っていらっしゃるということは、いまのお話のとおりに私も受け取っていいと思うんです。  しかし、そういうことになってまいりますと、反覇権条項を含んだ日中平和友好条約を結んだそのことの原点に返って考えた場合、果たして本当に日本外交的な今後の取り組みにとってよかったのかどうかということについては、もう一遍深刻に考え直していただく必要があると思う。反覇権条項について繰り返し展開してきた議論をここで再び私は申し述べようと思いません。大体ああいうものはなじまないんだから、条約としてもそういう場合には外した方がいいというのが私たちの立場だったわけですね。ところが、それを入れられた、目玉みたいになっちゃったわけですから、その点については今後やはり日本外交の姿勢として深刻に再検討されることを望んでおきたいと思います。  次に、北西大西洋漁業協力条約に関してでございますが、御承知のように、ここで設定された水域は、日本の周辺海域、オホーツク海から日本海もすっぽり入るぐらいの広い海域について国際協力条約締結されたわけであります。日本政府が主張するところによると、これに入ることが望ましい、私もそう思います。実は、国連の海洋法会議とか、この条約で使われている国際法の原則というようなものをどう解釈するかということもお伺いしようかと思っておったんですが、きょうは限定された時間でございますので、日本自体に関係する問題についでお伺いをしたいと思います。  それは、先ほど来からも出ておりましたけれども、たとえば北海道領海外における韓国漁船操業というのが大問題になっております。しかし、これは日本から言えば困る。その被害を受けている漁民の立場というのは、私も水産問題が自分の専門領域の一つですから、よくわかるわけです。しかし、韓国側にしてみれば、十二海里の外は公海なんですから、何をしようがおれの勝手だという論理も成り立つ。それはかつて日本漁業遠洋漁業の名のもとに各国の地先沖合い、領海外でやってきた行為と一脈相通ずるものがありますね。それがやはり今日の二百海里時代の引き金の一つにもなったということは日本自体も考えなくてはいけない。  ところで、これをやはり何とか規制しようと思ったら、日本も二百海里をいまのような中途半端なことにせずに、それは適用する、全面的に、法律どおりに、そういう形にしなければならないのではないかと思います。さて、そういたしますと、ソ連日本の間には現在二百海里が相互に適用されているわけですが、韓国との間に、中国との間に問題が出てまいりますし、正式国交はありませんけれども、北朝鮮も関連を持ってくるわけですね。  そこで、そうした問題を個別的に、いろんなものが起きてから後追い的に解決するのではなくて、ここに一つのいい例があるわけですから、このとおりやれとは言いませんよ、しかし、日本の周辺海域にこれだけ複雑な国際関係があるわけですから、ちょうど北西大西洋漁業協力条約のようなものを関係各国で結ぼうではないか、そういう日本外交的イニシアチブをとって私はしかるべきではないか。そういう日本外交姿勢の中で個別問題を包括的かつ部分的に関連させながら解決をしていく。そのことが今後問題が起きたときにも日本の立場を私は非常に強めることになる。どうも問題が起きない間はそっとしておけば自分の方も、言葉が悪いけれども、勝手なことができるんじゃないか、そういうようなやり方ではだんだんだんだん追い込められていくことになるんじゃないかと思うんですが、この問題に対して、日本政府は、いま私が提起したような問題についてどうお考えになっているか、外務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  182. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いろいろ困難な問題がありまするし、いま御発言のとおりのような、複雑で、こちらがうまくいけばこちらが痛いというつらいところがあるわけであります。しかし、その苦労を排除しながらも二国間関係を維持することによって了解を守っていきたい。ただいまの御発言のように、中国、ソ連、それから韓国、北の方を含めて日本がイニシアチブをとって国際的な機構をつくれとおっしゃることも一つの案だと思いますけれども、これまた現実にやろうとするといろいろ大変な問題がありますので、御意見を十分拝聴して検討したいと思います。
  183. 和田春生

    ○和田春生君 一つの案というよりも、私はそれがすぐ簡単にできるとは思いません。それぞれの国情がありますし、またソ連韓国韓国と中国の間には国交が回復していないわけですから、それはなかなか問題があると思う。しかし、少なくとも日本列島、これは日本海を横に控えている、オホーツク海が北にある、太平洋岸がある、尖閣列島を含むトカラ列島から琉球列島の問題まであるわけですから、そういう問題について、やっぱし日本がそういうものをやろうという積極的な意欲を持って取り組むことが私は必要だし、本当の意味での平和外交だと思うんです。一つの案というよりも、ぜひそういう方向で積極的にお考え願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  184. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) よく勉強し、検討いたします。
  185. 和田春生

    ○和田春生君 以上で終わります。
  186. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     ―――――――――――――
  187. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 次に、日本国ポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約締結について承認を求めるの件、南極のあざらしの保存に関する条約締結について承認を求めるの件、北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約締結について承認を求めるの件及び日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件、以上五件を便宜一括して議題といたします。  五件につきましては、すでに質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国ポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  188. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  189. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、南極のあざらしの保存に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  190. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、北西大西洋漁業についての今後の多数国間の協力に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  191. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  192. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、五件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十四分散会      ―――――・―――――