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戸叶武君 私は
園田さんびいきというのじゃないけれども、
園田さんは一身を投げ捨てて
日中平和友好条約もまとめようとした、単なる剣道の達人じゃなくて、人を説得する体と心をぶっつけていくだけの私は土性骨があると思うのです。
いま、これは
日本と
中国だけのことだというので、いろいろ
ソ連のような疑い深い国においては、
日本のやることは松岡洋右やあの東条なんという連中にひどい目に遭ったからという前の不信感がまだこびりついていると思いますが、原爆の洗礼を受け、
日本民族だけでなく、世界のどの
民族をもあのような悲惨な目に遣わしちゃいけないという悲願を込めて
日本が外交をやっているのだということが私は各国の人
たちに通るならば、いまのSALTの行き詰まった
状態――行き詰まったんではなく、デタントの
方向へ
ソ連も
アメリカもいかなければ、私はマンモスの化石みたいに
両方とも武器を持ったまま残骸を後世に残すように滅びていくと思うので、その危機が
アメリカでも
ソ連でもわからないはずはない。問題は、だれが粘り強くそのことを主張して――この行き詰まった
状態の中から、平和共存体制の確立以外に、核兵器をなくする以外に、軍備をなくするように
努力する以外に、世界の行き詰まりを打開することはできない。景気問題やなんかも、いまごろいろいろいじって土地問題やなんかもやっていますが、このままでいけばまたインフレですよ。こんなことを繰り返していたらどうしようもない。
これは外交にはすべて問題があるが、結論的に私がお尋ねしたいのは、
アメリカが石油ショック以前から軍需品だけでなく、エネルギーの問題と食糧の問題を戦略物資として取り扱ってきて以来、ニクソンがダレス以来の封じ込め
政策はだめだ、もっと市場を開拓し――市場だけでなくって、東西の
話し合いの場を広げなければ
アメリカ自身もまいってしまうという形で、私は
中国、
ソ連へも訪ねたと思うんです。田中さんでも、いろいろこのごろは評判が悪いけれども、やっぱり素朴な感情は、古い形の反共主義者のような形だけでは世界の中に
日本の活路はないと思って、彼は彼なりの人生観なり世界観で、悪いとは知りながらも、あるいはそういうとき道義的に欠如したものがあったのかもしれませんが、まあ一生懸命やったんだと思うんです。
いまのような
状態だと、政治の中に見識の躍動がなく、官僚の中に聡明な人がそろっているけれども、悪いやつに命令されれば、権力の中枢にいるんだから仕方がないという形でモラルを失って何だかわかんないようなことをやっているんじゃ、これは政治への不信感というものがいつかは爆発します。あの世界
経済恐慌の中に浜口さんなり、井上準之助なり、犬養毅でも相当な人物であったはずですが、重大なときに金本位制というようなことにこだわり過ぎて、日銀官僚なり大蔵官僚の古い
一つの通貨
政策なり基軸通貨に対する構想なりから出ていけなかったから、かえって
統一のない、大衆の支持を受けないような形で自滅していったと思うんです。見てごらんなさい、もう二、三年景気がよくなると言われっ放しで、牧童がオオカミが来るという、あのだまし方と同じような結果をいつまで政治家が続けるつもりか、私は不気味な
一つの地鳴りが始まっていると思うんです。
だから、われわれ
国会にある者が、われわれは
政権を当分――あるいは急に来るかもしれませんが、取れないかもしれない。しかし、いま野党のやっている役割りというものは、漫然たる
政府の発想能力がなく、創意を欠いているこのマンネリの、ふん詰まりの政治外交に対して、小さな揚げ足取りや、何だか
外務省の外郭団体のような形でテレビか新聞にでも出れればいいんだというような問答をやっていたんでは国民がしびれを切らすと思うんです。その点では
園田さんははっきり物を言う点でよくひっかからないなと思うけれども、やっぱりあなたが誠意があるから、あれは大まじめでやっているんだから
園田にも腹を切らせるわけにいかぬというんで危ない橋も渡れるんだと思いますが、やはり身をなげうっていけば鬼神をも退けさせるんであって、私はいま
ソ連がわからず屋のうちは余りちょいちょい安売りのお医者みたいに打診に行くことはできないが、
ソ連自身がいまのポリャンスキーさんのようながんこ一徹の人ですら幾らか雪解けで、その点でどうも
ソ連やヨーロッパより
日本の方がことしは暖かくなって困ちゃっているんですが、そういう
ソ連の中に、
中国の中に、いままでのようなばかげた権力主義やイデオロギーだけでは民衆を動かすことはできないということが私は必ず大衆の中から吹き上がってくると思うんです。そういう
意味において、みずからの態勢をつくることによって、
ソ連なり
中国だって
日本はがんこと思おうが、
中国のペースにだけ乗っからないで、何か
友好商社のことばかり熱心で往来した政治家が多かったなんて笑われないように、そういう
意味において
日本みずからの政治姿勢をつくることによって今後の外交も変えたいと思うんです。
そこで
日本の生産の原点に携わっている多くの人に、もっとざっくばらんに
中国や
ソ連も見させ、
ソ連の知識人あるいは各層の人にも
日本を見せ、ストリップを見せるというんじゃないが、
日本人の腹はこのぐらいでっかいんだ、こそこそ秘密なんかやらないで、こういう根性で一生懸命働き、通じないところもあるが一生懸命やっているんだということを見せる人間
交流と技術
交流、
経済的な協力、こういうことが必要だと思いますが、先ほど
外務大臣は領土問題のことはなかなかむずかしいが、その他のことではというふうに一応触れたようですが、具体的にどういう問題がいま
ソ連との間に
話し合いに乗って実を結ぶような
状態にまで来ているか、
ソ連に何らかの
変化の徴候があるか、そういう点をこの際承っておきたいと思います。