運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-02-27 第87回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十四年二月二十二日(木曜日) 委員会において、設置することに決した。 二月二十二日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       海部 俊樹君    正示啓次郎君       砂田 重民君    谷川 寛三君       坊  秀男君    石橋 政嗣君       川崎 寛治君    坂井 弘一君       不破 哲三君    大原 一三君 二月二十二日  正示啓次郎君が委員長指名で、主査選任さ  れた。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十四年二月二十七日(火曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査 正示啓次郎君       砂田 重民君    谷川 寛三君       坊  秀男君    安島 友義君       井上  泉君    川崎 寛治君       西宮  弘君    日野 市朗君       横山 利秋君    小川新一郎君       坂井 弘一君    大原 一三君    兼務 井上 普方君 兼務 川本 敏美君    兼務 新盛 辰雄君 兼務 栂野 泰二君    兼務 野坂 浩賢君 兼務 森井 忠良君    兼務 大内 啓伍君 兼務 竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房審         議官      矢田部厚彦君         外務大臣官房会         計課長     後藤 利雄君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         水産庁次長   恩田 幸雄君  分科員外出席者         内閣官房内閣審         議官      黒木 忠正君         法務大臣官房参         事官      藤岡  晋君         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省経済局外         務参事官    遠藤  実君         大蔵省主計局主         計官      角谷 正彦君         通商産業省通商         政策局経済協力         部企画官    関野 弘幹君         海上保安庁総務         部長      沼越 達也君         会計検査院事務         総局第五局審議         官       高橋  良君         日本電信電話公         社技術局長   前田 光治君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     横山 利秋君   川崎 寛治君     安島 友義君   坂井 弘一君     小川新一郎君   不破 哲三君     瀬長亀次郎君   大原 一三君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   安島 友義君     西宮  弘君   横山 利秋君     渡辺 芳男君   小川新一郎君     貝沼 次郎君   瀬長亀次郎君     津川 武一君   小林 正巳君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     川崎 寛治君   渡辺 芳男君     上原 康助君   貝沼 次郎君     玉城 栄一君   津川 武一君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     日野 市朗君   玉城 栄一君     坂井 弘一君   安藤  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     馬場猪太郎君 同日  辞任         補欠選任   馬場猪太郎君     佐野  進君 同日  辞任         補欠選任   佐野  進君     井上  泉君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     石橋 政嗣君 同日  第一分科員川本敏美君、野坂浩賢君、森井忠良  君、第四分科員栂野泰二君、大内啓伍君、第五  分科員井上普方君、新盛辰雄君及び竹本孫一君  が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 正示啓次郎

    ○正示主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。  本分科会は、外務省大蔵省及び文部省所管につきまして審査を行うこととなっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。園田外務大臣
  3. 園田直

    園田国務大臣 昭和五十四年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  外務省予算の総額は二千四百二十一億七千八十六万円でありまして、これを昭和五十三年度予算二千四十五億八千六百二十三万七千円と比較いたしますと、実額にして三百七十五億八千四百六十二万三千円、伸び率にして一八・四%の増加となっております。  外務省予算伸びの大宗は、経済協力費伸びによって占められております。先般の外交演説でも述べましたとおり、南北間の著しい経済格差世界経済安定的拡大にとっての障害であり、また、政治的な不安定要因でもありますが、わが国としては、この南北問題の解決のための国際的努力を成功に導くために積極的な役割りを果たす必要があります。かかる見地から、政府としては、政府開発援助の三年間倍増の方針を打ち出していますが、その一環として五十四年度において外務省所管経済協力費充実強化を図った次第であります。  また、動きの激しい国際情勢に機動的に対処するため、外交実施体制整備するとの観点より、外務省定員の拡充、機構整備を図るとともに、在外公館国有化の推進、不健康地勤務条件の改善についても重点的な配慮を加えました。特に機構整備については、わが国にとりきわめて重要な地域である中南米に対する外交を一層強化し、同地域の実情に即応した政策を総合的、機能的かつ統一的に統括するため、中南米局を設置することといたしました。なお、中南米局の設置に当たっては、予算定員等行政コスト実質増をもたらすことのないように配慮した次第であります。  このほか、国際的な相互理解を増進するための広報文化活動強化、また海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事の一つである子女教育の問題についての施策の充実強化についても重点的な配慮をしております。  これをもちまして、外務省関係予算概要について説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手もとに配付してあります印刷物を主査において会議録に掲載せられるよう配慮願いたいと存じます。
  4. 正示啓次郎

    ○正示主査 この際、お諮りいたします。  ただいま園田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 正示啓次郎

    ○正示主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  6. 正示啓次郎

    ○正示主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 正示啓次郎

    ○正示主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  8. 横山利秋

    横山分科員 きょう現在、中国ベトナムとの戦争状態と言ってもいいと思うのでありますが、非常に重大化してきたということを私どももとより国民も非常に憂慮いたしておるわけであります。大臣が、しばしば予算委員会なりいろんなところで御報告になり、あるいはまた中国ベトナム政府に対して、あるいはまた国連安倍大使が述べておられることもよく承知をいたしておりますが、事態はきわめて重大化し、ハノイ放送並び北京放送をもちましても両国正規軍衝突という事態であり、しかも中国の報道するところによりますと、さらに一カ月以上問題が終息する可能性はないというような節まで見られるに至りました。そこで、日本政府としての対処を、きわめて重大でございますから、二、三振り返って、まずお伺いをしたいと思います。  ベトナム代表国連で演説したことに対して、安倍大使が事実に反すると言ったことがございます。それは鄧小平氏が米国及び日本へ来て、ある意味では予告をした、予告をしたことで米日両国政府がそれに同意したというのは事実に反するということであります。しかし、客観的に見て、鄧小平氏の決意アメリカ及び東京において、膺懲といいますか、こらしめなければならぬと言ったことについて、その予告の場を与えてしまったという点については、どうお考えでございますか。
  9. 園田直

    園田国務大臣 米国のことは他国でありますから私が言うところでありませんけれども、わが日本においては、鄧小平副首相が訪米後訪日をしたその際、厳重に自重を要請し、ASEAN並びに日本は重大な懸念を持っている、したがってアジアの平和を撹乱するような行為は慎まれたいという厳重な要請をいたしましたので、これに同意を与えるとか、あるいはその予告を了承するとかというようなことは断じてございません。この点はベトナムの方にも私自身からも詳しく説明してあります。
  10. 横山利秋

    横山分科員 私も同意を与えたと信じているわけではありません。しかし、鄧小平氏がアメリカ及び日本をまず回って、そこでみずからの決意を披瀝する場としたということは、争われない事実ではなかろうかと思うのであります。むしろ世界各国には鄧小平氏がそう言ったことが大きく宣伝されて、いま大臣がおっしゃった日本政府としての慎重を要望されたということは、きわめて小さく映っているのではないか。客観的に言って、ベトナム側にあるいは世界各国に、米日政府がそれに慎重論を説いたにしても、鄧小平氏にそういう軍隊を動かしてベトナムへ入るための予告の場を与えておるから、中国政府としてはきわめて堂堂と、黙ってやったわけではないという場を与えたのではないかという判断世界各国にあるという点を、どう思いますかと言っているのです。
  11. 園田直

    園田国務大臣 その点は、今後の政府のとるべき態度についても十分留意をしてやっていきたいと思います。
  12. 横山利秋

    横山分科員 第二番目に、その際、そのときの雰囲気として、きわめて短時間、たとえば一週間とか十日とか、あの緒戦当時はそういう雰囲気であったと思うのであります。そのわずかの期間の中国軍の侵入ということについて、世界各国は、恐らく日本政府も、じきにそれは手を引くであろうと思っておったのが、今日に至るまでなお正規軍衝突という事態中国政府の一部の発表をもってしても、まだ一カ月、共同通信社長に言っておられますね。それはどういう状況の変化であろうかという点でありますが、私の意見同意されるのかどうか伺いたいのであります。  要するに、中国政府事態を甘く見ておったのではないか。一週間か十日過ぎれば解決をする、ほっぺたをひっぱたいてベトナムをこらしめれば、それで問題が済むと思っておったのが、そうではなくて、容易ならざる状態になった。ベトナムはずっと引いてしまって、正規軍を後ろの方に引っ込めてしまって、そして中国に対するベトナム一流やり方をしたために、本来の目的が達せられなくなってしまって、ずるずると入り込んで、そしてベトナムは、待っていたというわけで逐次正規軍を繰り出すということに――世界各国認識も間違っておったし、中国政府判断も甘かったし、間違っておって、ずるずるとどろ沼にこの問題が発展しやしないかということを考えるのですが、あなたはどう思いますか。
  13. 園田直

    園田国務大臣 鄧小平主席来日の際には、具体的な内容計画等は一切話に出ません。これは反対しているわけでありますから、こちらは内容を聞くはずもない。しかし、その後両方主張は、戦況についても全く食い違っておりまするから、情報のみでありますけれども、少なくとも中国の言から判断すれば、限定短期と思っておったのが、今日のようにだんだん延びてきたということは、中国所期計画どおりにいかなかったのではなかろうかと推察をいたします。
  14. 横山利秋

    横山分科員 わかりました。私も同感だと思います。なぜ中国予定した限定短期ということが実行されないのかということなのであります。その判断がどうしてうまくいかないのかという点の分析が、これは両国の間でございますから、われわれの関知することではないにしても、大臣が、また日本政府がいろいろとおやりになる調停への努力、あるいは各国と、ASEAN諸国と共同して、両国軍隊を引かしめるための努力意味から言いますと、情勢がこれからどう発展するかについては、決して分析を誤ってはならないと思うから私は申し上げているのでありますが、なぜ予定どおりいかなかったかということについて、どうお考えでありますか。
  15. 園田直

    園田国務大臣 これは全くわれわれが批判すべきところではありませんけれども、作戦計画予定どおりにいかなかった、こういうことになれば、結局は地形、時期、その他すべての総合的な点から、中国軍事行動というものが所期目的を達成するに至らなかったのではなかろうか、こう思います。
  16. 横山利秋

    横山分科員 遠慮しいしい言っていらっしゃるのですけれども、ずばり私に言わせれば、中国は必勝といいますか、短期間、限定的に地域的にも行えば必ず目的を達するということが、どうしてできなかったか。相手仕事であるといま言っている。相手仕事というのは、要するに、ベトナム軍に対する認識誤りがあった、ベトナム戦略に対する認識誤りがあった、こう思わざるを得ないのであります。  そこで、その次の質問は、中国は当初、こらしめのためと言っていました。ところが、この一両日、言うならば潜在的侵略能力弱体化という言葉を使い始めたのであります。これはお気づきかと思うのでありますが、単にこらしめる、ベトナムがおかしなことをやったらいかぬぞ、いつもおれが控えておるぞ、しかし、ほっぺたをぶん殴るだけで殺しはせぬというようなやり方、つまりこらしめといいますか、膺懲といいますか、私は、北支膺懲という大東亜戦争の初期の言葉を思い出して、ひやりとするわけでありますが、とにかく一遍ほっぺたをぶん殴ってみる、こらしめるということが、次第に潜在的侵略能力弱体化という抽象的かつ広範な言葉に変化したということは、私は非常に注目をいたしておるわけでありますが、一体、中国の真の目的は何だとお考えになっておりますか。
  17. 園田直

    園田国務大臣 非常に重大な段階になってまいりましたし、しかもここ一週間というのが、これがどちらに展開していくかという大事なときであると思います。その際にわが日本は、両方停戦撤退を呼びかけておるわけであります。したがいまして私が、両方戦況なり目的を公に批判することは、今後の問題に影響すると思いますので、横山委員の御意見はよく拝聴して、私は、これに対する答弁は差し控えたいと思います。
  18. 横山利秋

    横山分科員 ごもっともだと私も思います。私の意見を拝聴してくださって大変恐縮に存じますが、しかし私は、そういう意味合いではわりあいに自由な立場でございますから、一遍ぜひ拝聴してください。  中国の当初の目的は懲罰だ、こらしめだという。しかし軍事的に言うならば、だれしも納得できることは、ねらいはカンボジアにあるベトナム軍ベトナムに引き揚げさせる、これが軍事的な目的だと思われるのであります。なぜ引き揚げさせるか。それは、カンボジアにあるポル・ポト政権――ポル・ポト政権というのか、別な呼称を使っておる権力があるから、まあどちらでもいいのですが、旧ポル・ポト政権に息を継がせ、そしてカンボジアにおける内戦を持久戦に持ち込む、これが中国戦略的な目的だと私は思うのであります。そうだといたしますならば、ベトナムが少なくとも大軍を中国国境に集結をして、正規軍をそこで大激戦をやるようにしむけなければならない。一説によりますと、十五万ぐらいのカンボジアにあるベトナム軍は、約四万ぐらいがベトナムへ帰ったという話であります。その意味では、ある程度そのねらいは効を奏しておるにいたしましても、しょせんベトナムが、正規軍を全面的に中国ベトナム国境に集結するような愚は今日までのところ行わない。中国目的がわかっているから、その手に乗らない。そこで中国としては焦りがくる。予定に反する。したがって当初の戦略目標を変更せざるを得ない。そういうところに来ておるのではないかと私は思われるのであります。  そこで、今度は日本政府外交政策でございますが、先ほど私が申しましたように、両国調停の機運、あるいはまた方法としては、いかなる国の軍隊も自国に引き揚げよ、そういうような趣旨のことを言っていらっしゃるのでありますが、そういうことをするバックグラウンドと申しますか、日本政府両国に対して中立的な立場、そう考えてよろしいのですか。
  19. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  20. 横山利秋

    横山分科員 もし、そういう両国に対して紛争中立立場であるならば、経済的にもそうならなければならないと思うのであります。ベトナム援助については一定のかぎをかった。中国についてはどうなさったのですか。
  21. 園田直

    園田国務大臣 中国については、いま御承知のとおりに、民間の層でそれぞれ話が進んでおりますが、政府援助というのは、まだ金融その他で話し合いをしておる段階でございます。
  22. 横山利秋

    横山分科員 お説のとおりであります。しかし、もし政府両国に対して中立的な立場を堅持するならば、中国に対する政府援助はいまないけれども、方法はいかようにでもあると私は政治家として考えますが、あなたはどうですか。
  23. 園田直

    園田国務大臣 中国に対する民間のベースの話し合いも、なかなか当時のブームと違って、進んだりとまったりしているような状態です。ましてや、政府間の問題については、中国からも話がありませんし、こちらからも話をしたことはございません。
  24. 横山利秋

    横山分科員 話はないけれども、あなたの物の言いよう、考え方で、それなりの影響、それなり相手に対する場というものはあり得ると思う。  きのう、おとといのある新聞の解説に、外務省筋で対中協力慎重論台頭という報道をいたしておる大新聞がございます。御存じかと思うのであります。私は、この中国ベトナムとの紛争に際して日本政府名実とも中立であるならば、何もしないで、片一方だけ抑えて、片一方政府援助をしておらぬで私は知らぬぞということでは、ベトナムが言うこと聞きません。説得力がありません。ベトナム援助の方は、次の段階では、もうあなたの方がうまく解決しなければ考えますよという大きな牽制球を送りながら、中国側に対して何らの牽制球を送らないということに、私はやや奇異に感ずるわけであります。  このことは、日中平和条約を締結された際のあなた方の御答弁覇権に対する答弁等から考えまして、まあ、私はなるべく客観的な物の言い方をしようとしておるわけでありますが、今日の中国軍事行動日中平和条約の際の審議における覇権主義等からいって、絶対あの精神に矛盾することがないとあなたはお考えでしょうか。
  25. 園田直

    園田国務大臣 覇権は、これの判断覇権に対する反対行動は、日本は独自の判断、独自の行動をやるということを言っておりまするから、いまインドシナ半島ではどちらがよくて、どちらが悪いかということよりも、現実状態平和的解決の方向へ進めることが大事であると思いますので、この点は両方に対して中立態度をとっておるわけであります。
  26. 横山利秋

    横山分科員 慎重に言葉は選んでおられるけれども、両国にくみせず中立的な立場である、ベトナム中国も陣を引け、軍を引けと言っておられる。中国も軍を引けと言っておられる。なぜ軍を引けと言うのですか。他国の領土へ軍隊を持っていくことは、中国ベトナムもいけないという立場でしょう。明らかに覇権ではありませんか。  日中平和条約における覇権主義というものについての論争は、きわめて広範かつ長期にわたって行われている。覇権ということについて、中国流考え方もあるだろう、しかし同時に、日本的な独自の考え方もあるという説がある。私はそれは余り信用しない。そんな勝手なことを両方言っておったって、それなら決める必要はないじゃないかと思うのだけれども、百歩も千歩も譲ってそうだとして、日本政府として、中国ベトナムへの軍隊の進出は覇権主義ではないですか、どうですか。
  27. 園田直

    園田国務大臣 覇権であるなしの問題よりも、前提として、日本は、紛争は力をもって解決すべきでない、軍隊他国に入れるべきではない、戦争反対拡大防止、これが一貫した方針でありますから、これをベトナムにも中国にも言っているわけであります。両方はそれぞれ全く違った主張をしておりますので、その主張にはこちらは関係なしに、現実の問題として、平和的に解決即時停戦を要求しておるわけであります。
  28. 横山利秋

    横山分科員 大臣自分で言っておりながら、自分の矛盾にちゃんと気がつきながら、中国のやっていることは覇権主義だと、ここで言ってはちょっとかっこうが悪いから、覇権主義であるとかないとか言わないで、中国のやっている軍事行動はいけないことだ、こういう御答弁でありますが、まあ暗々裏に私はあなたの腹の中を察して、次の問題に移りたいと思うのであります。  そこで、中越仲介は何とか、できるならばしたい、しかしその条件の問題がある。あなたは、両国からの要請がないときに、日本政府が積極的に出るのはいかがかと思うという趣旨をどこかでおっしゃったようでありますが、そのとおりでありますか。
  29. 園田直

    園田国務大臣 まだ、その時期ではないと考えております。
  30. 横山利秋

    横山分科員 時期というものは、両軍の衝突が、ある段階、その段階というのは一方が勝ち一方が負ける、あるいは膠着状態に入って両方とも手がない、そういうような軍事的な条件のほかに、双方ともそれを言わない、気持ちがあっても双方とも言わない、言えない、言った方が弱みにつけ込まれるから双方とも言えない、だからこちらから言わなければいかぬ、そういう場合と、いろいろあると思うのであります。両軍の勢力の均衡ないしは決定的な勝利、そういうことはわれわれがなかなかどうにもならぬことであります。しかし、両国腹の中で、たとえば中国共同通信社長に両軍の撤退大賛成だというアドバルーンを上げた、しかしベトナムにとっては、攻めてきて、そうして自分の方はカンボジアに対する安全保障条約があってやったことであるから、おれの方は間違ったことをカンボジアにしているわけではないという理論があるわけですね。  少なくとも軍事的な問題はさておくといたしましても、もし日本政府が独力で、あるいは国連の場で安倍大使が言っているように、ただ言うばかりでなくて、どういう方法を提起するかという問題があると思うのであります。和平のテーブルに着けというだけでは話にならぬのであります。中近東の、あるいはインドシナ戦争の、あるいはアフリカの例を見習うまでもなく、少なくとも両軍引き離し、非武装地帯、国連の監視、当然のことのように、両方にある程度説得力のある具体的な問題提起がなければいけないと思うのでありますが、この点についてどうお考えですか。
  31. 園田直

    園田国務大臣 日本両国間の仲立ちをすることになるかならぬか、これは今後事態を見なければわかりませんけれども、そういう事態が来るにしても、いまおっしゃいましたように、どういう時期に話を出すか、あるいは話をする場合にはどういう話をするか、これはきわめて大事な問題でありまして、これから日本調停するんだ、条件はこうだ、いつごろやるのだというようなことでは、これは筋書きになりません。いまおっしゃいましたことも、私の考えているいろいろな要素とかみ合っているわけでありますから、その点十分考慮をして、時期を見、しかも慎重にやりたいと考えております。
  32. 横山利秋

    横山分科員 この問題がソビエトに対する影響は実に重大であり、かつ、この間の本会議の決議があり、日ソ関係はきわめて条件がよくありません。私はたまたま日ソ親善協会の理事長をしております。赤城宗徳さんが会長であります。日ソ友好の上に平和条約を締結し、領土の返還を求めたいというのは、超党派の親善協会の一つの理念でもあります。ただ反ソ的言辞をするばかりが能ではない。友好、信頼の中にこそ懸案の問題が解決できる。その点については、あなたとの累次のやりとりの中でも、あなたの御発言の中でも、国会の院議となっている点でも私は変わりはないと思う。  問題は、その具体的な問題で、平和条約をこちらが提起し、向こうが善隣協力条約を提起をしておる。先年、この問題が提起されたときに、あなたはけんもほろろのあいさつで、見もせぬ金庫の中にしまっていた、こう言っていらっしゃったのでありますが、その後あなたは、平和条約とミックスして、あるいは両方同時に審議ならぬ、あるいはまた領土の問題が少しでも机上に乗るならというふうに変化があると私は見ておるのですけれども、今日、この問題についてどうお考えでありますか。
  33. 園田直

    園田国務大臣 中越問題が、日ソの関係を何とか深めていこうということに対していろいろなさわりがあることは、横山分科員と同じように心配をし、留意をしなければならぬと考えております。  日ソの間には、御承知のとおり領土問題がありますが、これは真っ向から対立しておるわけです。したがいまして、真っ向から対立する問題だけを繰り返しておってはなかなかうまくいかない。わが方としては、この領土問題に対するソ連の姿勢なり考え方、話し合おうという姿勢があるならば、こちらもまたいろんな問題で両方の利害の共通する問題あるいは話しやすい問題について話を積み重ねて、話をする機会をつくり、話し合っていきたいと考えておることは以前のとおりでございます。
  34. 横山利秋

    横山分科員 ここで平和条約と言えば、領土を含むことは当然のことである。平和条約の中に領土問題がないということはあり得ないのでありますから、われわれの提案する平和条約は、領土を含むことは当然国際常識から考えられる。  ソビエトの善隣協力条約草案を見ますと、「平和条約締結の交渉を継続する意思を確認し」とある。そこに接点をどう見つけるかということが、私どもの課題だと思う。  そこで、日ソ善隣協力条約草案の中の何が気に入らないのか。一つは、平和条約とちゃんとセットになっておるか。領土問題が平和条約とともにあるということは当然のことである。これは草案の外の問題ないしは中の大前提ではあるけれども、その中身のどこに問題があるとお考えでしょうか。時間の関係上、問題点だけ申し上げて、あなたの御意見を聞きたいのです。  第三条に、安保条約に多少抵触しそうな点があります。第四条に、第三国が相手側に対して侵略的行為に出るのを鼓舞するようないかなる行動も差し控える。日中平和条約上に多少問題の考えられる点がある。第五条に、双方が平和の維持にとって危険であると考える事情等を発見した場合あるいは平和が侵害された場合には、双方は情況の改善のためにいかなる措置をとり得るかの問題について意見を交換するために、直ちに接触するとある。このことは、ソビエトとアメリカとの条約の中にも、自由諸国との条約の中にも、ソビエトの衛星国との条約の中にも、ソビエトと後進国との条約の中にも、大なり小なりニュアンスの相違はありますが、皆あることであります。時間がございませんが、日ソ善隣協力条約のどこが気に入らないのかという点について、お答えを願いたいと思います。
  35. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 いわゆるソ日善隣協力条約につきましては、昨年一月、園田外務大臣が訪ソされましたときに、日本政府としては、懸案の領土問題を解決して平和条約を結びたいと申されましたのに対して、先方のグロムイコ外務大臣が、いまあなたの言われたような基礎では平和条約の交渉はできないから、それにかわるものとして、ソ連としてはこの案を提示するといって、いわゆる善隣協力条約案を提示したわけでございます。したがいまして、園田外務大臣とされては、そのようなことでは検討もできないが、礼儀上これは預かっておく、こういうふうに申されて、一応持ち帰られたわけでございます。  したがいまして、その後日本政府といたしましては、先方が提示いたしました善隣協力条約の案というものは、検討もしないということでございますので、発表もいたしておりません。したがいまして、ただいまお尋ねの、この条約のどの点がどうかという点につきましては、政府といたしましては、これを云々することは差し控えさせていただきたいと存じます。ただ、先方が提示いたしました条約は、日本の言うような平和条約の交渉はできないから、そのかわりにと、こういうことでございますので、日本政府としては、これは検討できない、このような立場でございます。
  36. 横山利秋

    横山分科員 一言だけ。  そんなことはわかって聞いておる。あなたに返事をしてもらったのでは、答弁は必要はない。  そこで、今日の事態において善隣協力条約のどこが問題であるかということを、大臣に政治的に私が伺っている意味を御賢察くださって、大臣から答弁をいただきたい。
  37. 園田直

    園田国務大臣 善隣協力条約については、昨年九月、グロムイコ外務大臣と話したことは御承知のとおりであります。その内容について、どこがどうで、どこが反対ということは、これを中心にして話し合いが進む段階にならない前に私が申し上げることは不適当であると考えております。
  38. 横山利秋

    横山分科員 終わります。
  39. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、栂野泰二君。
  40. 栂野泰二

    栂野分科員 竹島問題についてお尋ねしたいと思います。  園田さんが外務大臣になられましてから、竹島問題については積極的な姿勢をとられるようになりまして、それは高く評価しているわけでございます。昨年の九月の日韓閣僚会議の際にも、重要問題として取り組まれました。その点にも敬意を表しますが、しかし、残念ながらこの共同声明には、竹島問題は一言も触れられておりません。会議の正規議題に取り上げられたかどうかもはっきりしておりません。  ただ、会議が終わってから、日韓両国の外相共同記者会見がございました。その中で竹島問題に言及されたわけであります。そこで日本側としては、竹島の領有権問題については今後とも外交ルートで話し合っていく。それから竹島周辺の日本漁船の安全操業問題、これは領土権と切り離して何らかの解決を見る、その点について合意をした。具体的には事務レベルで詰めていく。大体こういう趣旨だったと思うのです。  ところが、その後間もなく韓国側の方では、これを否定するような見解が発表されました。韓国側としては、日本漁船の安全操業問題と領土権問題、これを切り離すことに合意したことはないんだ。それから、安全操業につきましても、十二海里の外の公海上のことであって、十二海里内の日本漁船の安全操業については、これは協議の対象にならない。こういう全く真っ向から否定するような見解であります。結局今日までその点は対立したままで、昨年の竹島周辺の秋漁は終わってしまったわけであります。私の地元でもございますし、大変日本海の漁民が心配しております。  そこで、昨年の十月の二十日ですが、私どもは園田外務大臣にお会いしました。その際に大臣は、そういう安全操業問題について合意があったことは間違いないのだ、いま事務レベルで詰めているからもう少し待ってもらいたい、十二月いっぱいには何とか決着をする、ただ、その時分韓国が選挙その他あって情勢が大変微妙だから、余り騒がぬでくれ、黙って見守ってくれないか、こういうことでございました。私どももその趣旨を了解しまして今日まで待ったわけであります。  ところが、暮れはおろか、今日まで解決しません。もうこれ以上待てないのです。もう春の漁期が迫ってまいりますが、そこで、この安全操業問題について合意があったとおっしゃっているわけですが、一体日韓閣僚会議の正式議題の中で取り上げられたのかどうか。もし正式議題でないとすれば、どういうところで、どなたとどなたとの間で合意があったのか、この点をまずお伺いしたい。
  41. 園田直

    園田国務大臣 竹島の問題、領有権の問題、それから操業問題については、ずっと以前から、しばしば栂野委員から強く要請もされ、御指導もいただき、また激励も賜っております。  そこで、この前の日韓定期閣僚会議では、私は合同会議の劈頭で、竹島問題に触れた上、個別会議では、竹島の領有権については、韓国はこれはもう自分のものだと決め込んでおりますが、これは紛争地帯である、したがって日本立場を強く述べ、今後事あるごとに日本はこの点について韓国と折衝をする、紛争地帯であるということを宣言するにとどめて、正直言って、領有権の問題はそれ以上は深く入っておりません。  そこで私が言ったのは、領有権の問題は、両国にとってきわめて困難な問題であるから、ここで解決しようと思わぬが、漁業の問題は別である。これは漁民の、しかも目の前にある伝統的漁場というものに対する観点から言えば、こういう領有権の問題と切り離して話すことは不適当であるかもわからぬが、操業の問題だけは、漁業の問題という立場からひとつ善処してもらいたいということを強く要請をし、そして向こうも操業問題は何とか考えましょうということで、共同記者会見で韓国の外務大臣のおる席で、ああいう発言をしたわけでございます。  その後、また韓国の最高指導者の方とも私は会って、この漁業問題だけ取り上げて話をしてございます。その後の交渉の経過については事務当局から御報告をいたさせます。
  42. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま大臣から御答弁がありましたような経過で、九月の日韓外相間の話し合いがあったわけでございますが、その後、そのお話の経緯を受けまして、地元関係漁民の生活に直接かかわる問題であるという立場で、なるべく速やかに現実解決策を得るということで、それによって当該区域の安全操業が可能になるような努力を続けてきているわけでございます。  現在の時点におきましては、遺憾ながら結論が出ておりませんけれども、現在なお引き続き水産庁、さらには関係漁民の方の御意向も体しながら、鋭意努力しているというのが現状でございます。
  43. 栂野泰二

    栂野分科員 ともかく安全操業問題について何とか解決しようという話は、いま大臣は最高指導者と会って話したとおっしゃいますが、最高指導者と言えば朴大統領ということになると思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  44. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  45. 栂野泰二

    栂野分科員 そうしますと、結局朴大統領と外務大臣が会われて、ともかく領土問題は別にして、操業問題だけについては切り離して何とか解決しようということだとすれば、これは国際信義上、その合意というものは大変重要な合意になるわけで、その後の具体的な事務レベルの詰めというのは、韓国側も誠意を持ってやってもらわなければ困ると思うのですが、きょうは余り時間がありませんから、一体この事務レベルというのは、どことどことの間でおやりになっているのですか。
  46. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 これは主としてソウルにおいて、わが大使館と先方の当局との話し合いでございますけれども、もちろん日韓間には水産庁関係者の、両国の水産当局の責任者の往来もございますし、そういう場合における種々の話し合いの場も、もちろん可能な限り活用しているというのが実情でございます。
  47. 栂野泰二

    栂野分科員 ともかくいま日本の漁民にとっては、昨年の四月以前の状態、十二海里から三海里の間に安全に入れるかどうかというところですね。この点については、いまどういう進捗状況ですか。
  48. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほど申し上げましたように、現在鋭意先方と交渉中、話し合い中でございますので、問題は現実的な解決を図るということに主眼を置いて話し合っておりますので、具体的な内容について申し上げるのは、今日のところ御遠慮させていただきたいと思います。
  49. 栂野泰二

    栂野分科員 ともかくもう春漁がこの五月から始まるわけですが、五月までに解決するという自信がおありなのかどうか。それから、解決した場合に文書を取り交わされるおつもりかどうか、この点を伺います。
  50. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 五月が重要な時期であるということは、もちろん私どもも承知しておりますし、水産庁当局からいろいろ伺いながら、協力して話し合いを進めておりますので、自信があるかという御質問に対しては、必ず解決したいという意気込みで交渉に当たっているということをお答えさせていただきたいと思います。
  51. 栂野泰二

    栂野分科員 領有権問題ですが、これは外交上のルートで今後とも引き続いて話し合うということですが、これはもう何十年やっていまして、このままやっていても百年河清を待つに等しいと思うのです一恐らく外務大臣も、領有権問題が外交上のルートで話し合っても、そう解決すると思っておられないと思うのです。  そこで、この問題については御承知のように交換公文がございます。それで、外交上のルートで話し合いがつかない場合には、双方の合意する手続で調停をするということになっているわけです。あの交換公文にいう紛争に当たらないという主張を韓国はしておりますが、それは承知しておりますけれども、日本側の主張としては、この交換公文にいう紛争に竹島は入るという主張ですが、第三国に対してこの問題を調停に持ち込むという話は、公式には韓国側になさったことはないと私は思うのですが、そういう話を持ち込むという御意向はございませんですか。
  52. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 日韓国交正常化の際に、何とか竹島問題を解決したいということで、当時努力があったわけでございますけれども、遺憾ながら解決せず、御指摘の交換公文ができて、それからずいぶん日がたったわけでございます。  この交換公文の趣旨は、日韓両国間のこういう重要な問題は、外交ルートで外交上の経路を経て話し合って解決する、それが最善の方法であるという当時の認識がございまして、自来すでに何回か御報告しておりますような両国間の応酬によりまして、外交的チャネルによる解決を現在図ってきておるわけでございます。  したがって、現在の時点でほかの方法はどうかという御質問でございますと、今後のことは、今後それぞれの状況において考えるべき問題ではございますけれども、現在のところ、現時点において、この外交ルートによる話し合い以外の方法を具体的には考えておりません。
  53. 栂野泰二

    栂野分科員 同じ答弁がもう三十年続いていまして、ここら辺でぼつぼつ新しい手だてをしてもらわぬと困るのですよ。  そこで、もう一つは国際司法裁に対する提訴の問題ですが、確かに韓国は国連未加盟ですから、国際司法裁判所の当事国じゃない。ですから、日本が提訴しても、韓国がオーケーしなければ国際司法裁の判断が得られない、これはもう承知しておりますが、ただ、この国際司法裁の提訴問題というのは、昭和二十九年にわが国が提案した、韓国は拒否した、それっきりなのですね。それで、この点についても、もう少し工夫があってしかるべきではなかろうかと、かねがね考えているわけです。  これは昨年の五月、衆議院の外務委員会でも、あるいは参議院の商工委員会でも、わが党の土井たか子議員なり対馬孝且議員が提案しておりますが、国際司法裁にはフォルム・プロロガチューム、応訴管轄と訳すのですか、そういう制度がございますね。これはもう判例として定着している。これでも、日本が提訴してもなおかつ韓国が最終的にオーケーと言わない限りは、これは手続が進まない。却下されるわけですが、しかし少なくともこういう制度がある以上、また国際司法裁でも、この成功例が六件あるのですね。国連に入ってからでも二件ございます。そういうことですから、ともかく日本が提訴してみる。韓国がどう出るかわかりませんが、提訴してみるという、それは私は大変意味が大きいと思っているのです。第一、国際世論を喚起いたします。国際世論が喚起される。その中で、韓国は自分の固有の領土だという主張を持っているわけですから、もしそれに自信があれば、それ相応の論拠を添えて応訴するのが私は当然だと思う。  特に大事なのは、日本政府がこの問題は外交ルートで話し合うと言って、今日までそれ以上のことを何にもやらない。そのことで国民がいらいらしてくる。ですから、一部には自衛権の行使をやったらどうかなどという大変危険な意見が出てくるわけであります。ともかくこういう危険な傾向は何としても抑えなければなりませんが、そのためにも、平和手段としてとり得るあらゆる積極的な手段、これをもっととっていただきたい。この国連へのそういう応訴管轄を前提にした提訴ということを、ぼつぼつ考える時期ではなかろうか。外務大臣、いかがでしょう。
  54. 園田直

    園田国務大臣 御意見を拝聴して、十分検討いたします。
  55. 栂野泰二

    栂野分科員 ぜひ積極的に、前向きに検討していただきたいと思います。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕  ちょっと話が変わりますが、いま海洋秩序の問題については、第三次の海洋法会議が進行中でございます。この中で島、アイランドの制度が取り上げられております。そこで、この非公式単一交渉草案によりますと、草案では百二十八条になっておりますが、日本訳ではこういうことになっていますね。百二十八条「島の制度」第一項「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮位において水面上にあるもの。」第二項「次項に規定する場合を除き、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、この条約の他の陸地領域に適用される規定に従って決定される。」第三項「人の居住またはみずからの経済生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域または大陸棚を有しないものとする。」こうなっておりますが、この条文に規定された「島の制度」は、その後の会期でも、これを変えようという論議は余りないというふうに聞いております。ということは、少なくともこの条文の配置その他は変わるかもしれませんけれども、「島の制度」についてのこの内容、これはほぼ定着した、こう見てよろしいのでしょうか。
  56. 井口武夫

    ○井口説明員 確かにこの非公式交渉草案では、百二十一条について、いま先生の御指摘のような規定ぶりになっておりますけれども、まだこれは交渉中のものでございまして、たとえば三項に関しましては、人間が居住できないか、あるいはそれ自身の経済生活を維持できないという岩がどういうものであるか、またこの規定自身が非常に問題でございまして、これを削除するという主張をしている国々もございまして、まだ最終的には固まってないわけでございます。
  57. 栂野泰二

    栂野分科員 この第三項が実は問題なのですが、私も、この解釈がどういうことになるのか、きょうお伺いしたかったのです。  まず、この第三項を削除した方がいいという意見のある国があるとおっしゃいましたけれども、それはどこら辺ですか。
  58. 井口武夫

    ○井口説明員 これは島国が多うございまして、わが国を含めて島国が、こういう規定というものはやはり非常にあいまいである、むしろ島の大小や住民や経済活動の有無によって大陸棚、経済水域の有無を決定するということ自身に対して、異議を唱えておる立場を表明しております。
  59. 栂野泰二

    栂野分科員 どうも調べてみても、文献上そういう主張をしている国があるようには思えませんが、いま国の名前はおっしゃいませんでした。  そこで、第一項から言いますと、要するに、これは島の定義で、この要件を備えた島というのは、原則としては領海、接続水域だけではなくて、排他的経済水域、大陸棚を持つ。ただし、第三項の人の居住できない岩またはみずからの経済生活を維持することのできない岩、これは排他的経済水域と大陸棚は持たない、こういうことになっておる。  そこで、人の居住できないというのは一体どういう意味なのか。それから、みずからの経済生活を維持することのできない岩というのはどういう意味なのか。時間がもう余りありませんので、要点だけでいいのですが、現在、日本政府はどういう解釈をとっておられますか。
  60. 井口武夫

    ○井口説明員 この点に関しましては、まさにこの規定があいまいだということで、私どもとしてはこの規定に同意しておりません。
  61. 栂野泰二

    栂野分科員 そうすると、日本政府はこの第三項については削除を要求されるのですか。
  62. 井口武夫

    ○井口説明員 そういう立場に立って交渉しておりますけれども、なかなか削除がむずかしいという情勢でございます。
  63. 栂野泰二

    栂野分科員 そこで、これは最終的にこの第三項が条約化されるというふうな場合、あるいは事実上国際法として通用するというふうに至ったという前提に立ってお伺いしますが、一体この竹島というのはこの第三項に照らして、この第三項が適用できる島になるのですか、それとも第三項でない島ですか。
  64. 井口武夫

    ○井口説明員 この点についてはまだ交渉中の草案でございまして、先ほど申し上げましたように、この表現自身があいまいであるし、いろいろな議論がまだあるわけでございます。ただ、仮定の問題として、もしこれが確定した場合には、そのような島に該当するというような解釈も場合によってはとり得るかと思います。
  65. 栂野泰二

    栂野分科員 つまりこういうことですか。経済水域なり大陸棚を有しない岩、岩礁、こういう解釈もとり得る、こういうことでよろしいですね。
  66. 井口武夫

    ○井口説明員 まだこの点については確定した立場をとるわけにはまいらないわけでございまして、条約の規定と解釈も確定はしていないわけでございますけれども、そういう可能性もあり得るというふうに一応お答えしたわけでございます。
  67. 栂野泰二

    栂野分科員 五十一年五月七日の衆議院外務委員会で、わが党の河上委員の質問に対する当時の条約局の伊達参事官の御答弁があるのですが、「竹島と申しますのは深海海底から突出してきました岩礁でございまして、それ自体大陸だなというものを持たないし、それからまた大陸だなの距離測定の基準とはならない島であるというふうにみなされるわけでございます。」こういう御答弁がありますね。この御答弁は現在でも維持されますか。
  68. 伊達宗起

    ○伊達説明員 ほぼ三年前に私が御答弁申し上げたものを御引用なさったわけでございますが、その当時の私の答弁は、御承知のように、日韓大陸棚の分割に関します協定を審議いたしていたわけでございまして、その枠内におきまして私が申し上げたところでございます。したがいまして、言っておりますところは、竹島の周辺というのは非常に急傾斜をなして海中に没入しておって、その周りに日韓大陸棚の対象となっているような大陸棚とおぼしきものは見当たらないということで、それ自体の大陸棚を持っていないということを申し上げたわけでございます。また、「大陸だなの距離測定の基準とはならない」といいますのもいまのような意味合いからでございまして、日韓間で問題となっておりました、対象としておりました大陸棚の分割にはかかわりがないということで基準としなかったということを申し上げたわけでございます。
  69. 栂野泰二

    栂野分科員 いずれにしても、この島の制度については解釈が確定しないという問題もございます。しかし、海洋法会議の動向としては、どうもいまの政府答弁でもこのまま確定する傾向が強いと思われるわけですが、そうなった場合に、竹島が大陸棚あるいは二百海里の排他的経済水域、漁業専管水域の基点になるかならないかというのは、これは今後大問題になるはずであります。ですから、政府もこの点について早急に見解をまとめておいていただきたいと思います。  ちょうど時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  70. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で栂野君の質疑は終わりました。  次に、小川新一郎君。
  71. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 本日は短い時間の中で、最近の国際情勢わが国外交のあり方について、大臣に若干の御質問をさせていただきます。  去る十七日より中越紛争が起こりまして、あらかじめ予想された事態とはいえ世界をびっくりさせているわけでございます。今回の中国やり方は一体どのように理解してよいのか、私なりにいろいろと疑問もあるし、またそれに対する答えもございますけれども、侵略なのか、また覇権なのか、または懲罰なのか、このことはいろいろな尺度から明確にすることは困難であると思いますけれども、しかし一つの尺度として、一九七四年十二月の国連総会が採択された侵略の定義がありますが、侵略の定義は国際連盟時代からの課題であり、半世紀かかってやっとつくり上げられたものでありますことは御承知のとおりであります。この三条を見ると、今回の中国の行為はどうなのかという疑問を私は持つわけでございますが、中国ベトナム両国、この三条に照らしての御見解を承りたいと思います。
  72. 園田直

    園田国務大臣 ベトナムカンボジアに対する態度中国ベトナムに対する態度、それぞれベトナム中国はいま真っ向から対立をいたしております。お互いに自分のやっている行動は正当なものである、やむを得ざるものである、侵略ではない、こういう主張をしているわけでありますし、わが国としては事の経緯、事情のいかんを問わず、力をもって紛争解決し、他国軍隊をやるようなことは反対であるから、即時停戦撤退ということを両国に申し入れているわけでございます。
  73. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 確かにこの問題は微妙で、お答えしにくいと私も思います。しかし、この第三条には、   次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無にかかわりなく、第二条の規定に従うことを条件として、侵略行為とされ得る。  (a)国家の軍隊による他の国家の領土に対する侵入若しくは攻撃、一時的なものであってもかかる侵入若しくは攻撃の結果として生じた軍時占領又は武力の行使による他の国家の領土の全部若しくは一部の併合  (b) 国家の軍隊による他の国家の領土に対する砲爆撃又は国家による他の国家の領土に対する兵器の使用 云々と、こう幾つか続いております。これはやはりこの国連の第三条に照らし合わせると、大臣、どうなんですか。
  74. 園田直

    園田国務大臣 わが国は、御承知のとおりに国連憲章を中心にして外交を進めているわけでありますから、ただいまの小川委員の御発言は十分参考にして今後行動したいと考えております。
  75. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 参考にするというのは、この第三条はそのとおりであるということですね。
  76. 伊達宗起

    ○伊達説明員 この国連で採択されました侵略の定義に関してでございますが、これはもうたびたびこの国会の席上において明らかに政府側より御説明申し上げておるところでございますけれども、この定義と申しますのはガイドラインとして考えられているものでございまして、この定義に該当するものが直ちに侵略行為になるのではなく、第二条に書いてございますと思いますけれども、一応の一つの証拠として第三条に該当するような行為は侵略行為かもしれない、しかしながら、それを侵略行為であるかないか、最終的に認定するのはやはり安全保障理事会であるということになっているわけでございます。
  77. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 安全保障理事会の決議を聞いているのではなくて、第三条の見解について大臣の御所見を承っているわけですから、あなたのようにすりかえられては私は迷感でございます。  しかし、非常に外交に練達の、しかも人格、識見、力量、非常にごりっぱな大臣として私は尊敬いたしておりますし、日中平和友好条約という長年の懸案を大臣のお力でなし遂げ得た、福田、大平両内閣にわたっての外務大臣という大事な職にある園田大臣でございますので、その辺の御所見は、ただいま参考にするということで私も了解させていただきます。  昨年四月、尖閣列島周辺に中国漁船による侵犯事件が起こったことは事実であります。ちょうど日中平和友好条約交渉の再開されようとするやさきの出来事で、政府もわれわれも中国の真意がはかり知れなく驚いたものでありますが、しかし、八月、園田外相が訪中し、鄧小平副首相が再びさきのような争いを起こすことはないと述べたことが、その言葉を問い詰めることなく、外交上の配慮として大局的判断でこの事件は乗り切って日中平和友好条約を締結したことは、私も了承している次第であります。交渉のときに私はその場に居合わせませんでしたが、信義を重んずる東洋の大先輩である中国の漢民族の人格、人柄、また東洋民族の大和民族としての日本人の代表として、文武両道の達人である園田外務大臣がお互いの、大人と大人としての腹芸の中で、この問題は十年間たな上げしよう、いまの時代の者よりも次の世代の人たちの方がいい知恵があるだろう、こういうことで園田先生のひざを鄧小平副首相がつかんだか、たたいたかわかりませんけれども、そのことが新聞に出ておりますが、「尖閣列島をわれわれは釣魚島と呼ぶ。呼び名からして違う。確かにこの問題については双方に食い違いがある。国交正常化のさい、双方はこれに触れないと約束した。今回、平和友好条約交渉のさいも同じくこの問題にふれないことで一致した。中国人の知恵からして、こういう方法しか考えられない。というのは、この問題に触れると、はっきりいえなくなる。確かに、一部の人はこういう問題を借りて中日関係に水をさしたがっている。だから両国交渉のさいは、この問題を避けることがいいと思う。こういう問題は一時タナ上げしても構わないと思う。十年タナ上げしても構わない。われわれの世代の人間は知恵が足りない。われわれのこの話し合いはまとまらないが、次の世代はわれわれよりもっと知恵があろう。その時はみんなが受け入れられるいい解決方法を見いだせるだろう。」こうおっしゃっているわけですね、鄧小平さんが。ところがこの問題をたな上げにするということわずか半年足らずで、一月の十六日に森山運輸大臣が海上保安庁の仮ヘリポートを尖閣列島につくる、こういうことを記者会見しておりますが、これは実効支配の初のあらわれであり、腹と腹、それこそ大臣の人格、識見を信頼し、私たちも、国民も、国会も代表として中国に送り出したのです。その大臣が、鄧小平さんと十年たっても構わないのだ、次の世代の若者にこれを譲ろうと言っておきながら、尖閣列島には触れないと言っておきながら、今回の予算で三千万円調査費がついている。一体、これは中国としてはどう理解していいのか。またこの問題も尾を引いて、中越戦争のように一寸尺土の土地を争って血を流す、侵略とか侵略でないとかの定義はいずれにいたしましても、両国軍隊が血を流して争っている。これも国交の信義が破れた結果であります。私は、東洋人の中国日本の指導者が平和友好条約を結ぶ一つの条件としてこの問題を水に流しておきながら、締結して半年足らずで海上保安庁が仮ヘリポートをつくのだなんて大臣が発表して、三千万円沖繩開発庁の予算についている。こういうことは、大臣、納得できない。これは本当に森山さんが記者会見したのですか、運輸省。
  78. 沼越達也

    ○沼越説明員 いたしました。
  79. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 その真意はどこにあるんだか知りませんけれども、海上保安庁がヘリポートをつくるのですか。
  80. 沼越達也

    ○沼越説明員 海上保安庁といたしましては、沖繩開発庁がなさる調査について全面的に協力したいと思っております。その場合、あの島は非常に波も荒うございますので、ヘリコプターで調査要員、それから資材を運ぶのが最適と考えております。そのためには、安全にやるためには若干程度の整地が必要だと思います。あくまでも調査のためのものでございます。
  81. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 いずれにいたしましても、大臣、日中平和友好条約の前に中国の漁船が武装していろんなデモンストレーションをやった。その真意はわれわれはかり知れませんけれども、その問題は解決した。今度締結がなった。日本の海上保安庁、要するに運輸省でヘリポートをつくるための調査費を三千二万幾らですか、ちょっと忘れましたが、ことしの五十四年度予算に計上している。これは大臣、私が鄧小平さんの立場に立ったら、園田さん話が違うんじゃないか。また園田先生が鄧小平さんの立場にお立ちになられたらどうなんでしょうか。この問題を避けて通れないけれども、いまは避けるんだ。十年、二十年先の次の時代に譲るんだと言って話し合いがついた。腹と腹、腹芸の中で政治外交の大問題を解決なさってきて、日本が、締結をしたわずかその三カ月か四カ月後にこういうことをやって、これが中越戦争のようなことにはならないとは思いますけれども、外交問題も個人の感情もすべて人間と人間。国家と国家といえども、人と人との信義の中から生まれる問題であります。予算に計上されないときならいざ知らず、三千万円の調査費を計上して、森山運輸大臣が一月十六日にこういうことを発表するということは、大平内閣として不見識じゃないかと思います。外務大臣、御所見を承りたい。
  82. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島については、大筋は小川委員おっしゃったとおりであります。若干これを明確にいたしますと、わが日本はすでに尖閣列島を有効支配をしております。これはわが国固有の領土であることは明確であって、その後台湾、引き続いて中国政府からああいう声明が出たわけでありますが、その後紛争地帯とは考えておりません。そこで北京で話しましたときには、この尖閣列島に対するわが国立場を私申し述べまして、その上でこの前のような事件は困る、こう言いましたところ、鄧小平副首席は、今後絶対にああいうことはやらない、考えていない。そして今度は日本に来られたときに、十年でもいい、二十年でもいい、先にしようじゃないかということを言われたわけであります。そういうわけでありますから、私はすでに日本が支配しているところで、中国がこの前の事件を起こさないということであればこれでよろしいという、まあ腹と腹の芸かわかりませんが、小川委員がおっしゃったようなことも考え解決をしたわけであります。したがいまして、その後私は、党の方でも強い意向がありますし、いまのような話もあるわけでありますが、終始私はこの尖閣列島に対する施設、これは地域の住民の方の避難港であるとか、あるいは漁業のための必要なものであるとか、そういうものなら結構であるけれども、有効支配をするために施設をすることは絶対に反対である、こういうことは最後まで明快にいたしております。運輸大臣にもその点は言っているわけでありまして、海上保安庁が付近の漁民その他の保護のために施設が必要であるということなら私、結構でございますけれども、それをわざわざ有効支配のためにやるということになれば、これは全く小川委員のおっしゃるようなことに外交的な儀礼はなるわけでありますから、今後ともその点については、私は自分の所信を貫徹するつもりでございます。
  83. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 戦後三十数年たって、では何でこの尖閣列島に予算をつけなかったのです。この問題が急速に三千万円ついたのは、日中友好平和条約を結んでわずか三カ月足らずでできたのですよ。そんなに必要なものだったら、もっと前につけてちゃんとしておいたらいいじゃないか。何でここであわただしくばたばたと実績をつくろうとする、運輸省は。私はわからぬです。そんなに必要な避難港だったら、その前に整備をし、予算をつけたらいい。初めて出てきたのじゃないですか、この予算は。戦後尖閣列島に国家が調査費としても予算をつけたというのは、初めてじゃないですか。鄧小平さんこれを聞いたらどういうふうになりますか。これで問題が起きたら私知りませんよ。
  84. 沼越達也

    ○沼越説明員 この調査費は総理府沖繩開発庁の予算でございます。
  85. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そんなこと聞いているのじゃないですよ。戦後三十数年間かかってわが国固有の領土である尖閣列島にではなぜいままでこういった予算、調査費をつけて、いま大臣がおっしゃったような避難港とかなんとかいうことをやらなかったのですか。日中友好平和条約のときには、私たちは中国からやられたときに文句を言った。ところが、向こうは向こうの立場を明かしているじゃないですか。釣魚島だか魚釣島だか知らないが、そういう名前がある。おれのものだと言っているのです。それをお互いに主張したら日中友好平和条約が御破算になっちゃうから、次の世代に、十年でも二十年でもかかって次の若い者に譲ろうじゃないか、こう言って大臣の腹と腹の中で、触れたような触れないようなかっこうでやったというのは、私のような幼稚なものでもわかります。それを今度は予算をつけて実効的支配に移るということは、最も信義を重んずる中国に対しての挑発行為にならないかと心配しているのです。それでなくたって中越戦争だって最初はわずかなことから始まったのです。人間のけんかだって、感情だって、一家の夫婦げんかだって何だって、ささいなことから火がつくのです。せっかくここまできた中国との――私はだからさっきの侵略の定義についても追及はしないです、大臣のお苦しい気持ちがわかるから。ただ、中国ベトナム両国に対しては、ちゃんとはっきりした見解が出ているのです。これは国連の中で三条で。ただ、それについては安保理事会のどうのここうのといういろいろな定義があるでしょう。それをいまこの席で大臣が言ったらえらいことになるということを踏まえつつ、私はそれほど配慮をするならば、なぜそれだけの配慮がある大臣が、これだけの大きな問題を三千万円の調査費の予算を組んだのか、私はこれこそ凍結し、削除をする問題だと思っているのです。まだ時期が早いです、こんな三カ月や四カ月たったくらいで。つけるならもう少したってからやったっていいじゃないですか。大臣いかがですか。私の言ったこと間違っていますか。
  86. 園田直

    園田国務大臣 有効支配の誇示のためならば、そういうことはみずから日本がいろいろな事件の責任をつくることになると、小川委員と同じように考えます。
  87. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 全く私はいま大臣は深い洞察力とそれだけのお力があればこそ、福田内閣からただ一人残られて、大平内閣にバトンタッチをしても外務大臣という重責を担われている。わが国の安全保障という立場に立って、外務大臣の一挙手一投足――わずか三千万円の調査費のために中国にぬぐい得ないような不信感と、日本人とはこんなものなのか、約束をしたら後は何でもやるのか、こういうことをきめつけられる方が大マイナスになるということを大臣、私はいま力説しているのです。間違っているでしょうか、私の言っていることは。わずか三千万円の調査費をなぜあわてて昭和五十四年度につけなければならないか。つける必要があるならなぜ戦後三十年間の間にやらなかったのか。
  88. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 尖閣の領有権あるいは実効支配についての日本外交立場は、先ほどから大臣がしばしば御説明申し上げたとおりで、この日本外交上の立場につきましては、外務省のみならず国内諸官庁すべて一致して理解されているところと信じております。  その上で、先ほど海上保安庁の御説明がありましたように、国内行政上の措置として必要のある場合にその措置をとるということは、これは国内の関係官庁の御判断で、そういう行政上の理由の予算措置等につきましては、これは各官庁において検討の上御措置になっている、このように理解しております。
  89. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、これはもう大臣の大人物としての、武道家としての、古武士としての、また日本人としての信義の立場から、私は、同じく私も武道をたしなむ一人として、こういう不見識なことをやってはまずいと思うのです。官僚はどうあろうと、国家国民の立場中国という得がたい友人をいま積年の中から条約を結んだ。そしてまだ向こうも了解していないのだ。それともこういう問題は中国は了解したのですか、何たびか鄧さんがおいでになっているときに、大臣がこういうことをやってもいいというのは。向こうはこんなこと知らないですよ、まだ。日本には日本の理由がありますよ。それはいろいろ、わが国の領土だからここにヘリポートをつくって海難救助だ、そんなことはこっちの理由です。向こうは向こうの理由があります。そこに外交のむずかしさがあり、いろいろとした国家百年の大計を私たちは大臣にゆだねているのじゃないですか。そんな各省庁がどうだなんと言っているのじゃないのです。国会こそ大事だ、国民の意思ですから。これは削除していただきたいです。
  90. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島の取り扱いの経緯について、日本がこれを有効支配しておるわけでありますから、ことさらに有効支配を誇示するために施設をやることは、私はあくまで、最後まで反対してきており、組まれた予算についてはそれが有効支配の誇示のためのものではなくて国内的に地域住民のためであるということであれば、まあまあ何とか話し合いをする方法もあると思いますけれども、委員のおっしゃることはよくわかります。
  91. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 それは大臣、全然おかしいじゃないですか。あくまでもそれはこちらの考え方でしょう。相手様のあることでしょう。問題が解決していないから十年先、二十年先の次の世代にこの問題を譲ってたな上げにしておこうというので、いまお互いに手をつけないというのでしょう。向こうもそのかわりやってこないというのでしょう。向こうは向こうでもっておれのものだと言っているのです。こっちはこっちで私のものだと言っているのです。だけれども、そこは竹島と違うのだ。話のわかる中国だ。私は竹島の問題だってやりたいのだけれども、時間がないからやらないけれども、竹島とちょっと違うじゃないですか、よくおわかりのように。なぜこっちがそういう口実を与えるようなことをするのかということが理解できない。いまわずか三千万円の調査費をつけてここでがたがたすること自体がどんなに後になって尾を引くか。引いたときにどうなるのですか、責任は。有効だ、実効だと、それはこっちの理解であって、中国の方はそうとらなかったらどうなりますか、実質的にこうなったら。それは大臣が一番、鄧小平さんとひざを突き合わして、はだ身に感じた、血の通うお互い政治家政治家の中で国家を代表して話し合われた御人物なんだから、私どものように外野で騒いでいる者と違うのですから、中国というのはどういう国なのか一番よくおわかりなんです。信義を重んずる国じゃないですか。その国を裏切るような行為だけはやめてくれと私は言っているのです。こんなことはやめてくださいよ。
  92. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島の取り扱いについては、いまのままでよいというのが結論になっておりまして、何もしないという具体的な約束はないわけであります。したがいまして、日本地域の漁民のために、あるいは地域の漁船の保護のために必要であるということならば、これは中国でも理解していただけると存じます。
  93. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私は、ここまで力説したんだから、責任は全部そちらにあります。私は園田先生がこんなわずかなことで、中国との友好を保つためにもいまやるべきでない、もう少し時期を置いて、少なくとも中越戦争が終わって、中国ががたがたして大変なときに火事場どろぼう的な外交なんかやるべきじゃないですよ、園田先生。向こうだって一国の運命をかけていま争っているときなんです。それをこの一月さっと行ってさっとやるなんて、日本人らしくないですよ。私は日本人として言っているのです。公明党とか自民党とかで言っているのじゃないのです。  最後にそのお考えを踏まえて、時間がありませんから……。  そして日中平和友好条約締結後、わが国の産業界に中国からの活発な引き合いがなされた。これは中国の近代化達成のあらわれでありますが、最近中国中国に進出した外国法人への課税をする動きがでております。現在の中国の外国法人に対する課税と今後の動きがどうなっているのか、これが一点。  第二点は、中国が外国法人に課税するとするならば、中国に進出した企業が日中両国から二重に税金を徴収される場合も起こり得ると思います。そこで二重課税防止と、今後の貿易資本取引を促進するためにも、日中租税条約、こういったものを締結する考えが早急に起こる、こういう問題の方を先にやらなければならない。いまあわててやらなくてもいいものをあわてて先にやる、そこで日本中国との百年にわたった友好をそれこそぶつ壊すようなばかな、愚かな外交をやるとは私は思っておりません。私たちの尊敬、信頼する、自民党の園田さんじゃなく、日本人、われわれの代表としての園田先生としてきょうは質問しているつもりでございますから、篤とした御所見を承って、私の質問は終わらせていただきます。
  94. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 現在中国政府は、税関とか、関税関係の法令の整備をいろいろ急いでいる、また、外国の税法等も取り寄せて研究中であると聞いております。現在のところ私どもは、わが方の商社の駐在員事務所等に対しての具体的な課税の動きがあったとは聞いておりません。  いま御質問の中国との租税条約でございますけれども、日本は、御承知のとおり、すでに三十数カ国と租税条約を結んでおりますので、これは中国が現在取り組んでいると伝えられます非居住者課税についての法令の整備の状況を見まして、適当な時期に日中間の租税条約の締結の交渉に入るという段取りになろうかと考えております。
  95. 園田直

    園田国務大臣 いまの二重租税については、中国とも話し合って、そういう方向でやりたいと考えております。  それから先般の尖閣列島の固有支配の誇示の問題については、先ほどから申しますとおり、最後まで誇示をすることには私は反対である。小川委員のおっしゃることも十分よくわかります。この点十分踏まえて今後やってまいります。
  96. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 終わります。
  97. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で小川君の質疑は終わりました。  次に、新盛辰雄君。
  98. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 外務大臣は、いま日本海域における韓国漁船の北海道沖操業などについて、あるいはまた西日本地域における韓国船の大型トロール船が乱獲をしている、魚族を大変資源枯渇というところまで追い込んでおるという事実を知っておられますか。
  99. 園田直

    園田国務大臣 北海道周辺、西日本周辺で韓国の大型漁船が来ていろいろ乱暴なことをやっておることは報告を受けております。
  100. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 水産庁が漁業外交の面で、これから韓国との間の折衝等もおやりになるでしょうが、その協定を結ぶとか、あるいは日韓の間の漁業協定というのも現在あるわけでありますが、そうした外交的な面では、これは外務省としてその認識と姿勢ということにおいてきょうはお尋ねをするわけでして、水産庁関係は呼んでおりません。  そこでまず第一に、この韓国漁船の北海道沖操業について、いま御認識があるというふうに言われておるわけでありますが、まさに北海道沖におけるサケ・マス交渉の中で、減船を強いられた北海道周辺の漁民の皆さんは、いまオホーツク、べーリングの両漁場から締め出された韓国の漁船、いわゆる釜山港を中心にして二千トン級の大型トロール船二十三隻、それが北海道の領海十二海里のすれすれまで、まさにぎりぎりのところに来て一年じゅう操業している。しかも開口板方式のオッタートロールという漁法でありますから、これはまさにせっかく操業の規制や、あるいは資源を確保するために日本の船は七十五トン、あるいは大きい船でも約百二十四トンくらいという地元漁船が、いままでいろいろな規制をお互い相談しながらやってきたのに、なぜこんなにまでめちゃくちゃにやられなければいけないのか。操業区域や、安全操業ルールの設定やあるいは被害処理や、そうした問題で日韓漁業交渉ということで、日韓の水産庁次長クラスで交渉が先般持たれたわけでありますが、決裂をしております。そこで、私は農林水産委員会渡辺農林水産大臣にそのことについてただしたのでありますが、この問題についてももはや次長クラスではだめだから、閣僚レベルで問題解決を図らなければどうにもならない、こういうふうにお答えがありました。しかし、外務省として韓国と日本との外交手段の中において、漁業水域に関する暫定措置法というのを日本の国はすでに昨年設定をしたわけです。そしていわゆる二百海里の設定はしましたが、第五条で外国人の漁業水域における除外地域を設けまして、これはお互いの利権にかかわる問題でありますので、その面を一応配慮してのことでございますが、もはや北海道周辺海域における韓国船の操業が規制されない限り抜本的な解決ができないとするならば、二百海里法を適用すべきではないかという強硬意見が出ています。そうすると、西日本の方はどうなるのか。西日本の方は、それにかえて二百海里を今度韓国でも引くであろう、そうすると、操業する場所がなくて締め出されてしまう、これではまた西日本の漁業者は困ってしまうという痛しかゆしの状況があるので非常にむずかしい問題だというふうに言われておりますが、その西日本の皆さんが、実は二百海里専管水域の早期設定をやってくれ、これは外交手段としていままでがまんにがまんを重ねて、日本政府が何とかしてくれるだろう、禁止区域や禁止期間やあるいは無許可の漁船や、そうしたことに対して、十二海里以外は公海であるという原則を踏まえる韓国の船に対して、漁具や漁網を片っ端から引きちぎられ、被害を受けているという段階では背に腹はかえられない、こういう強硬意見が出ているわけです。何とかしましょうということなんでしょうが、どういうふうにされるつもりですか、お答えいただきたい。
  101. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御承知のとおり、日韓漁業協定というものが結ばれて、これが日韓間の漁業秩序の基本的な規定になっていることは御指摘のとおりでございます。他方最近の状況において、いま御指摘のような状況が発生しているわけであります。したがいまして、今後これにどう対処するかという点につきましては、いま御指摘のいろいろな利害得失というものをよほど慎重に見きわめて考えませんと、単に日韓漁業協定を改定すれば解決するというものでもございませんし、また二百海里を宣言すれば解決するというものでもございません。したがいまして、これは漁業者それぞれの立場からくるいろいろな利害が絡む問題でございますので、外務省といたしましては水産庁と常時緊密に連絡をとりまして、どうすることが一番わが国の漁業関係者全体の利益に資するゆえんであるかという見地からこの問題の研究を続けているのが現状でございます。協定の改定ということに一足飛びにいくのか、個々の問題を実質的に解決することによって問題をより円満に処理するのがいいか、その辺も含めてなお検討しているのが実情でございます。
  102. 園田直

    園田国務大臣 いま発言されましたとおり、正直に言うと、北の方で取り締まれば西日本の方でやられるという、どちらが有利かというようなことで、こういうふうになってきたわけであります。しかし、北海道周辺においても西日本においても、乱獲だけではなくて、大型漁船を持ってきて日本の漁船をばかにしたり、横切ったり、あるいは示威運動をやったりするという行動がしばしば出てきて、このままほおっておくと感情問題にまで発展するおそれがあると思いますので、農林水産大臣が言うように、まず閣僚級の折衝を個々にやり、それでもできなければさらに二百海里、あるいは協定等も検討しなければならぬのではないかと考えておりますので、いまの御発言の趣旨をよく踏まえて、農林水産大臣と協議をいたし、この問題を折衝することにいたします。
  103. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 北を救えば西が立たずという水産外交のメンツの問題もあるわけでしょうが、いま大臣決意を述べられておりますように、韓国側が積極的に自主規制をしていただければ問題は解決するわけですね。そしてまた、一つの方法としては、北海道沖合いにも共同規制水域を設ける方式もあるでしょう。あるいはまた、日韓漁業協定がいま現にあるわけですが、これとは別に政府間協定を結ぶ方法もあるでしょう。しかし、これはいずれをも韓国側は拒否しています。拒否しているというのは、七九年に予算を北洋漁業振興会、韓国北洋漁業振興会でありますが、二億ウォンすでに基本計画事業として組んでおります。これは民間漁業外交強化するというのです。しかも、新漁場開拓と漁業指導強化に重点を置いて、北海道操業問題は民間ベースを通じて解決する方法を検討するということなどを決めているようである。しかし、相も変わらず、これはもうめちゃくちゃだ、もうがまんができない、現地の漁民の皆さんはここまでばかにされることはないじゃないか、みずからは減船を強いられ、そして結局は船が少なくなった上に、スケトウの操業だって数量も少なくなっている。しかし、韓国側はこれは十二海里外はすべて公海であるから、ぎりぎりのところまて行って、しかも、このオッタートロールという最新式の漁法でもって、底びきでもってめちゃくちゃにとるということになれば、資源確保の問題もこれは出てくるわけですね。だから、言うことを聞かなければどうするのかと言えば、前向きに検討しましょう、場合によっては、この日韓漁業協定の内容も変えなくてはいけないでしょうと、こうおっしゃるのですが、それじゃ漁民が納得しないんです、現に。西日本の皆さんももうがまんをしておる。それは北が救われれば西の方は立たないという理屈じゃない、日本の漁業を守るんだ、こういうことなんですから、二百海里法を設定をするというところまで踏み切らざるを得ないじゃないか。そのことについて大臣にもう一回、前向きに検討します、やりますとおっしゃいますけれども、これは緊急の問題ですから、ひとつ確固たる態度をお示しをいただきたいと思います。
  104. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨は私も同様に考えておりますので、そういう方向で努力をいたします。
  105. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 その前向きの姿勢を今後に期待をして御努力をいただきたいと思います。  次に、国連の第三次の海洋法会議等がこの後あるわけですが、最近の外交の姿勢として、特に水産関係をめぐる漁業外交、これもそうでありますが、豪州ではいまキャンベラで十九日から例の漁業外交が行われています。入漁料の問題や漁業操業の問題、あるいはミクロネシアではホノルルの方で二月二十三日からすでにいま交渉が始まっています。ニュージーランドもそうであります。ミクロネシアも、これもまたそうした交渉の中でデッドロックに乗り上げているということで、漁業外交に示されている入漁料という総括的問題は、これは水産庁がお取り計らいになるのですが、南太平洋基金が今度新しく九億円予算化されました。そして大日本水産会がそれに九億円出して十八億でその入漁料のいわゆる補強をやるわけでありますが、それぞれに一括前払い方式もあれば、あるいはそれぞれの基準に応じて、数量に応じて、船の長さに応じてというのもあり、ばらばらです。将来、これは外交手段ですから、相手側が入漁料を取る、取らなければならないというのがもう何といったって二百海里時代の原則だとすれば、これは国庫で補助してやらなければならないんじゃないか。一部分それを基金から出して補強するというような形をとるのは、これはもう間違いじゃないか。外交手段としてこのことについてどういう御見解を持っておられるのか。  それと、いま、各沿岸地域の漁場の確保等について、公使や大使を通じてそれぞれの地域の南太平洋フォーラム諸国におけるそれらの交渉を根回しをする。水産庁だけがいわゆる漁業外交の一環として、やれ数量がどうだ、漁獲量がどうだ、操業協力がどうだ、やれ基地がどうだ、えさがどうだという話よりも以前に、外交として、そうした面についてどうこれから進めていかれるのか。  三つ目に、カツオは高度回遊魚だということに規定されていますが、最近はそれぞれの国の帰属にあるのではないかという議論がしきりと声高いわけであります。第三次の国際海洋法会議では、そのことについてまだ結論を出していないわけですが、いまは原則的には高度回遊魚ということになっている。もしこれがそれぞれの帰属性だ、サケ・マスみたいに遡河性だというふうにまではいかないにしましても、なった場合に、これは資源の問題で大変困るわけです。マグロだっておっつけそういうことになるんじゃないかと思いますが、そういう面の海洋法会議における外務省としての態度、そのことについてお知らせをいただきたいと思います。
  106. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま御指摘のとおり、南太平洋水域におきまして相次いで各国が二百海里法を制定し、あるいは施行をしておるということでございまして、この辺は、数量は区々でございますが、いずれも日本の漁船が伝統的に操業を続けておるところでございます。したがいまして、日本といたしましては、このような各国の二百海里法の施行に対して、次々と漁業取り決めを結んで、伝統的操業を確保いたしたい、こういう努力を続けておりますこともただいま御指摘のとおりでございます。  ただ、非常に困難に逢着いたしますのは、主として入漁料の問題でございまして、一言で申せば、要求額が日本から見て大変高いということでございまして、私ども外務省といたしましては、元の取れないような操業では意味がないということが片方にございますが、片方ではまたこの資源有限時代にこれを利用して国富をふやそうとしている国の要望もわからないではない。したがいまして、漁業者にとってどの辺が負担し得る穏当なところであろうかということは、外務省としましても常に水産庁とよくお諮りしながら交渉を進めておるわけでございますが、この際やはりこれらの国々との友好関係を増進するということと、それから伝統的な操業の確保、こういうことを考えておるわけでございます。  それから高度回遊魚につきましては、南太平洋諸国、特にミクロネシア等におきましては、カツオ・マグロ等日本が非常にたくさんの漁獲量を上げておるところでございますが、日本立場は、国連の第六次非公式統合草案にございますように、二百海里水域の内及び外におきましても、その沿岸国と関係国が話し合いを通じてその保存と有効な利用を図る、こういうような立場に立ちまして交渉を進めておるわけでございます。
  107. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 これからの漁業外交というのは、水産庁がいろいろとこれまでの沿岸から沖合い、沖合いから遠洋へと発展的な、日本の漁業外交というのは、そういう意味では操業もそうでありましたが、いったのですけれども、最近は二百海里問題でもうどこの国も設定してきているわけですね。そうすると、全部uターンする。沖合いに入る。沖合いからまた沿岸へ帰ってきているという現実です。だから、そういうことになれば、漁獲量一千二、三百万トンと言われている日本の漁業も、一千万トンを超えるのにはもう並み大抵のことではなかろう、恐らく外洋でとる漁獲量というのは激減するであろうというふうに言われているわけですね。だから、新しい漁場を確保するというのは、外交手段の中ではそれぞれの国と友好を高めて、よく日本立場を理解をしてもらって、経済協力の問題やあるいはそうした操業技術の交流とか、そういうことにおいてお互いに親密な外交的な雰囲気が出てくれば、問題の解決は私は図れると思うのです。そういうことについて何か水産庁がそれぞれ次長クラスあるいは外郭団体、民間団体の代表が行ったりして、下の地ならしはしてくるが、中身はなかなかいかないので、これは外務省の方にお願いをしなければなるまいかという段階ではもはやもう完全に固まって、姿勢がにっちもさっちもならない。豪州あたりでは、農畜産物をまたバーターで入れなければだめですよ、こう言っているのでしょう。そういうことについて、外交手段としてそれをほぐしていくということが大事なことだと思うのです。その面に欠くるところがあるのじゃないかと思うのですが、大臣どうですか。
  108. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、もちろん日本といたしましては、日本が魚をとりに行く先の国との友好関係、これらを十分に考えております。もちろん漁業といわゆる経済協力ということは違うたてまえでございますし、違う観点からいたしてはおりますけれども、おのずからまたそこに有無相通ずるものはないわけではございません。  それから、ただいま御指摘のとおり、豪州もニュージーランドと同じように、農産物等の日本への輸出とある程度関連せしめるような方針を打ち出しておりますので、この点につきましては、やはり広い友好関係というような点からも、私どもも農林省とも話をよくしながら、何とか先方の希望と折り合えるように努力を続けておるわけでございます。
  109. 園田直

    園田国務大臣 海外援助については御指摘のとおりでありまして、豪州、パプア・ニューギニア、ニュージーランド、それから中南米等諸国についても、海外援助は漁船の新造であるとかあるいは漁業の研修所であるとか、そういう面について援助をやり、水産庁と連絡をとってやっているところでありますが、今後ともこういう方向に重点を置きながら、農林省とも密接に連絡をとって間違いがないようにしたいと考えております。
  110. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 そこで、この海外援助物資という、そうした面でお互いの友好を高めていこう。日本立場からいけば、農畜産物あるいは船とか――漁船ですが、あるいは漁網とか、そうしたもののいま大臣がおっしゃられたようなことも含めて十分配慮しておられると思うのです。現状、大体この海外援助物資の中にいままで入らなかった水産物もかん詰めになって入るのだという話を聞いているのですが、この農畜産物、米やら麦やら大豆、いろいろなものがあります。あるいは水産物、魚の種類もいろいろありましょう。いまのカツオの余剰になった部分をぜひひとつかん詰めにして、海外に輸出して需要を高めてほしい。そうすると、国内で余っているカツオが少しでも消化できる。いま十何万トン余っているのですから、それを二、三万トンくらい買い上げてほしいという業界の強い要望があります。これはもうカツオ加工業者が大変なことになるので、そういう要求が出ているわけであります。現在まであるいは今年度の予算の中でこの農畜産物、そして水産物あるいは漁船だとか漁網だとか、いろいろなものがありますが、対外援助物資と名のつく品目、そうしたことについて内容を明らかにしていただきたいと思います。
  111. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生お話しのとおりでございまして、わが国の無償資金協力、これはもちろん相手政府要請に応じまして供与するわけでございますが、相手国の要請がございました結果、農林水産物資が無償資金協力として購入されるということはあるわけでございまして、その主なものとして例を申し上げますと、たとえば食糧関係援助でございますが、これは米あるいはいまお話しのございましたようなカツオ・マグロかん詰めあるいは酪農品等の購入が行われる場合がございますし、それからまた開発途上国における食糧増産に貢献するために、肥料とか農薬とか各種農業機械等が購入される場合もあるわけでございます。このようなものの総額、これは五十三年度現在まで交換公文が結ばれたものでございますけれども、百七十二億円ということになっております。それから先ほどからお話がございました水産関係でございますけれども、これも五十三年度の予算に五十億円の予算が組まれておりまして、漁業調査船とか訓練船あるいは漁網、冷蔵庫の施設等々の援助を行っているというのが現状でございます。
  112. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 これからもそうした新しい時代、二百海里時代におけるそれぞれの南太平洋を中心にした諸外国との交流あるいは未開発国のこの種の海外援助物資、そうしたことについてやはり日常の中における理解とまた友好を高めていくということが一番いま大事だと思うのです。米で先ほど説明がありましたけれども、九十万トンことし余っちゃったということの話の中で、その余った米を少しでも低開発国あるいは餓死線上にあるというバングラデシュだとか、そうしたところにどんどん持っていっていいのではないかという話も出ているわけです。カツオのかん詰めも余っているのならば、それをどんどん消化できる――それは政府が買い上げなければできないわけでありますから、そういうことについて強力な外交手段をもって、これからもこうした国内における生産者の急場をしのぐ面でも一挙両得ということにもなるわけですから、ぜひひとつこの点についても今後さらに各品目を拡大し、あるいはできるだけこうした海外援助の面の実を上げられるように最後にお願いをして、終わりたいと思います。
  113. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で新盛君の質疑は終わりました。  次に、日野市朗君。
  114. 日野市朗

    日野分科員 主に外務省に質問を申し上げたいと思います。  わが国外交国連外交ですが、昨年大きな挫折が一つありました。国連の安保理事会の理事選挙で敗れるという非常にだらしない結果といいますとこれはちょっと語弊があろうかとも思いますが、残念ながら選挙に負けたということは、これは事実であります。これはやはりわが国に対する各方面からの不信がもたらしたものではないかというふうに思います。特にこれはアフリカ諸国からの協力が得られなかったのではなかろうかというような推測、これがささやかれているわけでありますが、この点に関して一体どのように外務省考えておられるのか、まず伺っておきたいと思います。
  115. 園田直

    園田国務大臣 わが国外交で具体的に反省いたしまする一部には、直接に利害関係の少ない場所あるいは距離的に遠い場所、こういう場所等に対する外交の手の打ち方が薄かったということを反省をいたしております。特にアフリカ地域に対してはそうでありまして、少なくともアフリカ地域に対する問題はどこに参りましてもこれが議論をされて、アフリカに対していろいろな外交を相互にやってないところは話が余り通らぬというところもある。したがいまして、私は今年から外交の重点はアフリカ、中南米ということにしまして、調査団を数回出しておりますし、それからいま、三月にも、どのようにアフリカに協力すべきであるかという具体的な調査団を出すことにしておりますから、国会が終わりましたらできるだけ早く私自身がアフリカを訪問して、アフリカとの関係を今後密接にしていきたい。反省の上に立ってアフリカ外交に重点を置くことを考えております。
  116. 日野市朗

    日野分科員 いま大臣のお話を聞いて私も非常に心強く思っておるところでありますが、私も去年アフリカをちょっと歩いてくる機会がありましていろいろ見てきたのですが、やはり日本外交はアフリカに関して非常に手薄であるなという感じを、率直に持ちました。私、ギニアに行ってまいりましたのですが、あそこの大使館に参りましたら、大使館員は二人しかいないという現状ですね。アフリカには国交関係を持っている国がいっぱいありますが、どの国に何名、どの国に何名ということは結構ですから――私が見てきたギニアではたった二人、それが涙ぐましい努力を重ねているわけですね。こういう状況を見て、これじゃ本来の大切な仕事がかなりできないのではないかというふうに感じます。まず人員を確保するということが緊急の必要事であろうと思っているのでありますが、いかがでございましょう。
  117. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省といたしましては、在外公館の機能強化のために定員の大幅拡充が急務であると考えておりまして、従来からその実現のために努力いたしております。全体といたしまして、昭和五十三年度は定員は三千三百十一名でございますが、五十四年度の予算案では三千四百名にふやすようにお願いいたしておるわけでございます。これで純増が八十九名になっております。そのうちアフリカ地域につきましては、五十三年度現在、大使館の実館は二十、それから総領事館は一つでございまして、定員は百五十四名でございます。五十四年度の予算案ではさらに六名の増強を予定いたしております。今後とも、このアフリカ地域の重要性にかんがみまして、引き続きこの地域の大使館員の増強に努めてまいりたいと思います。なお、御指摘のありましたギニアにあります大使館につきましては、御指摘のとおり、実は定員が四名あるのでございますが実員は二名になっております。これは、実は充足いたしかねております一つの非常に現実的な理由は、あの土地の住宅事情が非常に悪くて、館員を送ろうとしましても住宅が見つからないというふうな窮状にあるわけでございます。しかしながら、仕事の面で見ますと、このところ二、三の経済協力案件の話も進んでおりますし、確かに仕事もふえてきておりますので、私たちは、住宅事情ともにらみ合わせながら、館員の増強を今後検討してまいりたいと存じております。
  118. 日野市朗

    日野分科員 一応努力をなさっておられるということはよくわかるのですが、まずその基本的な考え方として、非常にアフリカというのは遠い、それから直接の利害関係というと、一見してないようにも実は見えるのであります。しかし、あの国の持っているこれからの将来性を考える、それから、何よりも資源的にも非常に豊かである、それから、これは私、切実に考えなくちゃいけない問題だなと思ったのですが、開発途上国があらかたなんでありますが、そういった国の指導者に会って話を聞いてみると、アフリカの国というのは日本を兄貴分のように思っているわけですね。まず西欧がどんどん発展をして、その後から一生懸命追いかけて西欧諸国と肩を並べていまやっている国、日本、これを非常に模範として考える、そして、精神的な、またいろいろな経済的な助けを日本に求めたいという非常に切実な気持ちを持っているようですが、これらについて、外務省としてどういうふうにお考えになっておられるか。根本的なところですが、考えを聞かしていただきたい。
  119. 園田直

    園田国務大臣 先般アフリカへ行かれましたので私よりも詳細に御承知だと思いますけれども、アフリカの国々というのは、ほとんどかつての植民地であります。したがいまして、大国というものがいかに自分の利益のためによその国を動かすかという実際の体験を持っておるわけであります。そういうことで、日本というものに対しては非常に感情はいい感情を持っているわけでありますけれども、正直に言うと、愛すべきであるが頼りにならぬと、こういうのがアフリカの民族のいまの考え方でありますから、そのアフリカの諸民族の独立しよう、繁栄しようという熱意、それから、日本を愛すべきではある、しかし頼りにならぬという、その頼りにならぬということを、進んでそれぞれの国の独立と繁栄に協力をするならば、これは私は、日本外交の非常な発展のためによいのではないか。かつまた、国連その他におきましても、こういう大国はこわい、われわれが手を握ってやっていこうという、いわゆる非同盟諸国の中心思想というものは、これは今後大きくわれわれは計算しなきゃならぬ。かつまた、距離は遠いが地下資源というものはまだまだ調査、開発されないものがたくさんありますので、いまの点から推察をしても、相当な地下資源もあるわけであります。しかし、そういう資源外交ではなくて、真に兄弟として、しかも日本を愛しておるというアフリカに重点を注ぎ、経済協力その他を強力に進めていきたいと考えております。
  120. 日野市朗

    日野分科員 アフリカにおける公館での外交官の配置も、これは一つの問題点としてぜひ強力に取り組んでいただいて、もっと増員を図っていただきたいというふうに思うのですが、外務省設置法を見ますと、中近東、アフリカ、これが局としては一本になっているわけですね。中近東アフリカ局と、こうなっているわけですが、どうも、中近東を見ると、イランの問題に象徴されるような非常に複雑な問題を抱えて、中近東の国々とのこれからの外交というものも一つの重大な課題であるというふうに私、思います。それと、アフリカについても、ここだけでも非常に広大な地域でもあるし、国も多いし、中近東とアフリカというのを一体一本にしておいて、これを限られた人員でやっていくということには、かなりの問題がありはしないかというふうに私、実は思うのです。中近東、特にイランの問題というのは、あれは単にイランだけの問題ではなくて、あのようなモメントはどの国でも持っているわけで、いつ火を吹くかという、時間の問題ではないかというような気すらするわけなんですが、こういった組織上も、中近東とアフリカ、これはそれぞれ局を分けて、それぞれの地域に専念をするという必要も出てくるのではないかというふうに考えているのですが、いかがでしょう。
  121. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 日野委員のおっしゃいますとおり、アフリカはきわめて広大な地域でございますし、また、中近東は大変複雑な、日本にとって死活の重要性を持っている地域でございます。いずれの日かは両方を分けてやっていかなくちゃならないのではないかという認識は私ども持っておりますが、現在の段階におきましては、先ほど官房長から答弁申し上げましたように、人員の点でありますとかその他種々の要因がございましていまだそこに達しておりません。実は、昭和五十四年度の予算要求の一環といたしまして、私どもの方からアフリカの第二課というものを出しましたが、これは予算の原案にのらないでしまったわけでございます。こういったようなことを積み重ねまして、だんだんにやっていきたいと思っております。
  122. 日野市朗

    日野分科員 将来はこうなるだろうという予測も結構なんですが、どうもあの辺の激動の状況を見ておりますと、これは焦眉の急じゃないかという、私、非常な焦りを感じるわけなんです。イランだって、この間まではもうこんなに安定した政権はあるまいと思われていた王制が、あっという間に覆る、そして激動の国内状況、そしてその状況というのは各地に飛び火をするであろうことは想像にかたくないところなんですね。ひとつこれは外務大臣、せっかく大物外務大臣がずっとやっておられるわけですから、その間に局を二つに分ける、それから大使館員も大幅に増員する、こういう仕事に手をつけていただきたい。手をつけて、これを強力に推進していただきたいというふうな要望を私、持っておるのですが、御感想いかがでしょう、大臣
  123. 園田直

    園田国務大臣 きわめて大事なところで御激励をいただいてありがとうございます。そういう方向で努力をして、そういう方向に突破口をあけたいと存じております。
  124. 日野市朗

    日野分科員 アフリカの問題ですが、実は現地の大使館が非常に一生懸命やっておられるということ、非常によくわかるのです。特に二人の員数でこれは処理するとなると、これはもう大変、特にお役所仕事的な雑用も非常に多数抱えて、それから公式の行事に出て、そして本国とのいろいろな連絡をとって、情報を収集して、これはもう私、見ていて本当に何と気の毒なと思った。しかも、アフリカなんというのは大体が不健康地でございますから、そういうハンディをしょいながらやっておられる。本当に見ていて気の毒としか言いようのない、表現しようのない実情を私、見てきたのですが、その中でこういう仕事も全部消化しなさいというのは私は無理かもしれないと思うのですが、ギニアに私参りまして、私が行ったのは独立の二十周年の記念の国会ですか、コングレとそれから記念式典に出たわけです。私、そこで大統領の演説を聞いておりまして、実はびっくりしたのでげ。それまではギニアというのはどちらかといえばソ連圏、東欧圏に近いと言われていたけれども、私の非常に乏しい英語力で同時通訳を聞いてきたので正確は期し得ないのかもしれませんが、それを聞いた範囲では、いままで抑えてきた経済活動をこれから盛んにやっていくということ、それから外交面でもアメリカとの非常に強い接近というものが非常に目についたわけであります。いままでどおりの考え方ではこれはいかぬぞというふうに思ったのです。特に私ギニアについて聞くのは、ギニアの大統領はセクー・トーレでありますが、セクー・トーレというのは、アフリカの民族主義、それからアフリカの最近独立した国々に対する非常に強い影響力を持った政治家であるというふうに私思いますので、あの辺の動向というのは非常にわれわれ注意していなければならないのではないかというふうに感じるわけですが、このギニアでの変貌といいますか、それを外務省では的確につかんでおられるかどうか、ちょっと伺いたいと思います。
  125. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃいました大統領は三選をされて、一貫した国家路線の建設に努力をしているわけでありますが、御承知のとおりここの国は急進非同盟路線でございます。当初は西欧に対しては鎖国的態度をとっておりましたが、その後フランスと外交を始め、続いて隣接国と外交を始め、昨年だと思いますが、十一月党大会では全方位外交を打ち出し、そして西欧、日本、その他の国々とお互いに外交を深めて、自国の建設を進めていくという姿勢をとっておりますので、いまおっしゃったとおりであると私も判断をいたしております。
  126. 日野市朗

    日野分科員 こういうようないろいろな変化が、目まぐるしいようにいまやはりアフリカ諸国おしなべて起こっているのではないかと思いますし、それに十分対応し切れるようなわが国外交施策、これを私は十分にお願いをしたい、こういうふうに強く考えるところなんであります。特にギニアにおいていろいろな経済的な開発をこれから進めていくということをセクー・トーレ大統領は演説の中で強調をしておりましたが、こういうようなギニアの全方位的な外交が進められていく。そうすると米ソ間の対立というような問題、それに中国もいろいろ絡むわけでありますが、日本としてはこのアフリカの諸国に対する外交、これは米ソ、中国、そういったところと十分に渡り合えるような、そして十分な政治的な、そして精神的な、経済的なこういった協力関係を通じて、わが国の影響力というものをこれらの国々に広めていくということは、国連外交の重要な舞台になっている今日、また日本国憲法で軍事力を背景にしない外交、そして世界の平和への貢献、こういったことを考えると、各国に対する日本の影響力を強めていくということは非常に必要になると思います。この点についてのお考えはいかがでしょう。
  127. 園田直

    園田国務大臣 例をギニアにとりましても、東西両陣営から協力を求めつつ、自国の経済発展を図りたいということでありますが、具体的にもっと言うと、西独と日本に期待していることが非常に大きいわけであります。したがいまして、ギニアを初めアフリカの諸国は西独ともよく連絡をし、あるいは分析をしているところでありますけれども、この期待にこたえつつ、まずアフリカの国が単独で大使が来ているところもありますが、大部分は兼任が多い。というのは、中国日本の大使を兼任しているところもあります。それから日本もまだ出していないところや兼任のところがあるわけでありますから、何とかして大使の交換を先にやろうじゃないかという話もしているわけであります。そしていま行っている調査団が帰ってきましたら、どのように協力するかを具体的に両国で話し合うわけでありますから、これができましたらアフリカの諸国との間にそういう事務的な詰めを行う機関を設置をして、具体的に逐次協力の実を示していきたいと考えます。
  128. 日野市朗

    日野分科員 去年の十二月だったと思います。たしか経済ミッションがアフリカに派遣をされましてずっと各国を回ったようであります。その中で多くの経済的な協力についても問題が出たと思うのですが、いかがでしょう。
  129. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 御指摘の調査団は実は三班に分かれておりまして、第一班と第二班でございます。ただいまおっしゃいましたのは一班、二班のことと存じますが、第三班は先ほど外務大臣から申し上げましたように三月に発出する予定でございます。  これらのミッションの目的は、いわゆる英語で言いますとベーシック・ヒューマン・ニーズ、基礎的な人類の必要を満たすべく行くというわけでございまして、種々具体的な問題は出ております。その内容は、大体共通点は、ただいま申し上げましたような点を踏まえまして、いわゆるインフラストラクチュアの構築に寄与与する、こういうものでございます。具体的には多々ございまして、目下それぞれ検討中ないしはまだ向こうとの間で話をさらに詰めておるという段階でございます。詳しくはまた経済協力局の方からお答えできるかと存じますが、ただいまの段階ではそういったようなことでございます。
  130. 日野市朗

    日野分科員 私もギニアに行きまして、あのイスマエル・トーレという経済担当大臣なんかともいろいろ話をする機会がありまして、日本からの経済協力が話題に上りました。その中で多くの具体的な向こうからの要望なんかもあったのですが、とにかく日本の商売のきつさといいますか、これを民間ベースなんかでやる場合はそういう形にならざるを得ないというのが、日本人から言うと常識なわけですが、たとえばクレジットを出すにしてもどこかの銀行の保証を要求するとか、そういった商売が、アフリカの人たちから見れば非常にきついというような印象を与えているようなんですが、これは民族性、それから経済的な進歩の度合い、そういったものから言うとかなり複雑な問題点を含んでいるんだなというふうな感じを持たざるを得ないのですが、そういった感覚のギャップというものはあろうかと思いますが、それを埋めていって向こうの要望、それからこっちの必要性、そういうものを時間をかけて長い目で見ながら進めていくには、よほどの根気が要るだろうという感じも実は持ってきたわけなんです。こういった点についていかがお考えになっておられましょうか。
  131. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 まことに日野分科員御指摘のとおりの問題点でございまして、私どもの方としては御指摘につけ加えることもできないくらいでございます。ただ、ここで一つ申し上げたいと思いますことは、やはり商売をいたしておりますと、わが国のたてまえからいきますと、政府がいろいろと直接どうのこうのと言う立場にはないわけでございます。そこでわれわれとしましては、やはりその国と日本との関係の親密化を進める、そういった雰囲気のもとで、商売をされる方々も十分に信頼関係を持ってやっていかれるようにする、そういうふうにいわば側面的にやっていきたいと思っております。その基本としましては、先ほど来御指摘のミッション等を大いに活用してやっていきたいと思っております。また、もちろん国連外交等におきましてもいろいろ協力の場もあるかと存じますので、総合的にやっていきたいと思っております。
  132. 日野市朗

    日野分科員 ギニアに例をとってみても、せっかく向こうに大きな冷凍庫のようなものをつくって感謝されながら、結局商売的に引き合わぬということでさっと引き揚げてくる。それから現地の労働者との摩擦も若干あるような感じもするわけです。こういった点のギャップをできるだけ国の方の指導――指導といっても、これは限りのあることかと思いますが、やはり国としては長い目で見た場合、できるだけの努力をすべきではないかというふうに私思います。この点について、ひとつ外務省の見解を伺いたいと思います。
  133. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 基本的に申し上げますと、東京の方でしっかりした政策を確立するということ、それから現地におきまして、大使館が国の出先でございますから、先ほど来たびたびおっしゃっていただきましたように、そういう点を充実し、大使館員が親身になって事に当たるということに尽きるかと思います。  ただし、きわめて抽象的な言い方で恐縮でございますが、これは国によっていろいろ事情が違いますし、また考え方も違いますので、きめ細かくやっていかなければならないと思っております。われわれといたしましては、乏しい人員と種々不備な組織をできるだけ個人の努力でカバーしてやっているつもりでございますが、なおかつ、今後とも勉強、努力をしていきたいと思っております。
  134. 日野市朗

    日野分科員 今度は少し話題を変えて質問を申し上げたいと思います。  在留邦人がこれまた非常に献身的な努力をして、現地の方々の信頼をも得ているようです。非常に感激すべき場面にもいろいろ遭遇してまいりまして、ここでもよくやっているなという感じを受けて帰ってきたのですが、私がそこで非常に心配をいたしましたのは、これらの在留邦人の健康であります。アフリカなんかですと、非常に不健康な地域が多い。そして医療設備、医療施設も非常にお粗末と言えばお粗末ですね。貧困な状態なのですが、これらの在留邦人の状況を聞いてみると、病気にかからないように努力をするのがまず第一である、もし事故だとか病気にかかった場合には、近接のちゃんとした医療施設のあるところに病人を送るために、いかにして飛行機の便を確保するかということが緊急課題だというふうに現地の邦人は言っているわけです。これらに対する配慮というものは非常に私は必要だと思うのです。ただ、この点について質問の通告をしておりませんでしたので、余り具体的な御回答というのもなかなかむずかしいかと思いますが、できる範囲で答えていただきたいと思うのです。  私、まず思いつきのように感じたことは、医務官の巡回をもっとふやす、その場合、在留邦人にも医務官の診断を受けさせる、こういう手段、方法を講じることはできないのだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  135. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省は、アフリカには四カ所に医務官を配置いたしております。エジプトとケニアと象牙海岸とナイジェリアでございます。たとえばギニアの場合、たしか象牙海岸の医務官が巡回することになっております。また、この医務官は、そのたてまえ上、大使館員の健康管理を主としておるわけでございます。現地での医療行為は認められておりませんので、大使館員の健康管理が主たる任務でございますが、その巡回をいたしますときに、時間の許す限りにおいて在留邦人の方々の健康管理についても御相談に応じておるわけでございます。  さらに、それとは別に、巡回医療団をアフリカ、中近東地域では年一回出しております。われわれはさらにその回数をふやしたいと思っていろいろ努力しておりますが、まだ実現を見ておりません。巡回医療団はまさに在留邦人の方々を主としてやるわけでございまして、これはお医者様の御協力を得なければできませんのでなかなかむずかしいのでございますが、予算の面その他で手当てをいたしまして、この巡回医療団の回数をふやしていきたい、できれば年に二回出したいと思って努力いたしておる現状でございます。
  136. 日野市朗

    日野分科員 それから、病気になったり事故に遭ったりして、緊急に手当てを要するような病人が発生したという場合、最寄りの医療施設へ早急にその病人を送り届けるというような手段、方法、これもぜひともお考えをいただきたいものだというふうに私痛切に感じてまいりました。その点について、現状はどうなっておるか、それから何か構想があるかどうか、ひとつお聞かせいただきたい。
  137. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 御指摘のとおり、たとえばギニアあたりで病気になりました場合、現地の医療設備が非常に貧弱であるということはわれわれもよく承知しております。そういう場合には大抵パリに病人を送ることが多いようでございます。大使館員などの場合には、その際には象牙海岸かあるいはナイジェリアにおります医務官が行って付き添ってパリに送ってやるということもいたしております。一般在留邦人の場合には、もちろん各民間企業の方々はまず自前の手当てをされることになるかと思いますが、たとえばパリで病院に入る場合のその病院をお世話申し上げるとか、あるいは場合によりましては飛行機に乗っけるというようなことまでもお世話申し上げておるようでございます。ただ、費用その他の点ではやはり各企業の責任においてやっていただいておるようでございます。
  138. 日野市朗

    日野分科員 非常にむずかしい問題を含んでいることはよくわかっておりますが、この点についても、ああいう地域で一生懸命努力をしている在留邦人のことを考えますとほってはおけないという感じがいたしますので、よろしくやっていただきたいということを最後に要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  139. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で日野君の質疑は終わりました。  次に、大内啓伍君。
  140. 大内啓伍

    大内分科員 外務大臣も大変お疲れだと思いますが、よろしくお願いいたします。  きょうは、最近の外交案件の重要だと思われる幾つかの問題について、余り深入りはできませんが、お伺いをさせていただきます。  まず初めに、いま航空機特別委員会の永田委員長以下、アメリカの方へ参りまして調査をいたしておりますが、実は二月の二十一日に、この訪米調査団とマーシャル・グリーン氏との間で一時間半ほど会談をいたしまして、わりあい重要なことを指摘しているのはすでに御存じのとおりであります。一応その要点を申し上げますと、例のE2C導入については、ハワイ会談の一年ほど前から一人もしくは二人の日本人に話した。それは政治家ではなくて外務省の人である。こういうことを一つ言っているわけなんです。それからもう一つは、ハワイ会談の非公式会談では、鶴見審議官に、E2Cの件は決めたかと回答を求める形で実はただしたのである。議題目録にはなかったけれども、米政府として公式に関心のあることとして、会議の二日目に非公式会談で申し出た。これはそれぞれなかなか重要な中身を持っておりますし、私も先般の予算委員会における集中審議等で園田外務大臣にこの点をただしました。なお再調査しようというお答えも当時いただいたわけですけれども、要するにマーシャル・グリーン氏の言い方というのは、日本政府は、ハワイ会談以前から米政府の強いE2C導入要請を知っていたはずである。そして、具体的に自分自身もアプローチをしているんだ。この点について、外務大臣はどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  141. 園田直

    園田国務大臣 まず第一番にE2Cの問題で、ハワイ会談以前一年くらい前に外務省関係に話をしたというグリーン氏の発言は、新聞で拝見いたしました。これは初耳でありまして、正直に言って、当時の者は本省にほとんどいないわけであります。記録を探すにしましても、二万通近くの記録、電報を探すのは大変なことでございますので、向こうが発言するからには何か根拠がある、直ちに調査をしろということでただいま検討している最中でございます。検討でき次第御報告をする予定でございます。  二番目の、グリーン氏が鶴見審議官に話されたということも、外務省には記録もなく、鶴見審議官は亡くなったわけでありまして、これを聞いた者はだれもいないわけであります。そこで、国会で質問される前に、私の方では向こうに問い合わせをしたわけであります。その問い合わせをした結果とグリーン氏が今度言ったこととは、いささか食い違っているような気がします。こちらから向こうに教えたことは、責任ある言葉として、公式会談を終わった外務大臣は総理大臣の会談の方へ出ていった。それから次官その他記者会見に出ていった。その後残って会談の終わるのを待っておって人の出入りがあった。グリーン氏の記憶では、そのときに自分がおって、横にアメリカの役人が一人おって鶴見さんがおった。三人がその場所で話をしたんだ。その話した内容というのは、E2Cを買ったらどうだ、こう言ったら、鶴見氏は、まだまだそういう防衛計画は決まっていないから、そういう段階じゃないという返事をしたので、やや印象が違うようであります。そこでこちらの言ったのは、米国からの通報でそのように言っているわけでありますから、それがまたグリーン氏の発言が違うのはおかしいじゃないかということで、もう一遍調べてみる、こういうことになったわけであります。
  142. 大内啓伍

    大内分科員 私、きょうこれを深く議論するつもりはありません。背景を述べ出しますと大変切りがない問題であります。したがって、できれば事実関係を確かめたいというのが、きょうの主たる目的でございます。  ただ、御存じのように、マーシャル・グリーン氏はアメリカ外交官としての専門家でございますし、それなりにいいかげんな発言をするとも思えない。しかも、ハワイ会談の一年前から、外務省の方と思われる一人もしくは二人の方にお話しをしてきたというようなことを、しかも国会の調査団に述べているわけでありますから、それなりにこれは、ただ単におかしな発言だといって退けるにしては重要な発言である。いま外務大臣は、なお調査されるということでございますので、この発言については肯定も否定も、いまの段階では加えられない、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  143. 園田直

    園田国務大臣 結構でございます。
  144. 大内啓伍

    大内分科員 それではこの問題を終わりまして、次の問題に移りたいと思います。  実は二月二十五日に、ブラウン国防長官及びシュレジンジャー・エネルギー長官、時を同じゅうしまして、テレビインタビューで重要な発言をされている。これはきっと園田外務大臣御存じだと思うのでありますが、これはいまのイラン情勢に関連をいたしまして、一つはペルシャ湾諸国の防衛のため、アメリカとしては軍事力も行使する。二つ目には、中東地域での軍事的存在を検討中である、つまり中東地域におけるアメリカのプレゼンスという問題を新たに関係諸国との間で検討し始めた。それから、中東の多くの諸国はソ連の脅威を感じている。もちろんこの背景には、中東からの石油供給を守ることは、アメリカにとって貴重な利益であるということを踏まえた発言だと思いますが、それより先、二月の二十二日でございましたか、カーター大統領が、中東各国に軍事援助を拡大するという内容を含む中東政策を発表されている。それぞれアメリカの現役の国防長官及びエネルギーの最高指導者の発言でございます。特にあの地域は、ソ連自身の動きも相当活発でございますし、アメリカは軍事力をもってしてもそれを守り、戦争も辞さないという、なかなかセンセーショナルな発言が行われたわけですが、外務大臣はこれをどういうふうに評価されておりますか。
  145. 園田直

    園田国務大臣 まだ私もテレビで拝見しただけであって、これでこれをどのように評価するかということは過早であると思いますけれども、少なくとも中東地域の和平工作を含む、イランの動乱を含む問題はきわめて複雑であります。しかも、今後イランの動向等がどのように周辺諸国に影響を与えるか、このイランのいろんな動きを背景にして、一方ソ連がどのような対応策を講ずるのか、これはきわめて深刻な問題であって、アメリカの大統領、国防長官、エネルギー長官等がテレビをもってこのような決意を表明したのも、それほど深刻である、しかもこれに対して米国は最後の一線であると考えておるというように考えております。
  146. 大内啓伍

    大内分科員 特にブラウン国防長官は、そのCBSテレビインタビューの中で、こういうせりふ回しをもって言っております。中東の幾つかの国国は、国境を越えた――これはもちろんソ連という意味でありますが、の脅威を感じており、米国は、これらの国々との間で、より積極的な米国の軍事的存在について話し合いを始めた。米国は、こうした脅威に対抗する準備をしており、死活の問題について軍事力を含むいかなる手段も行使する。  これらの発言がそれぞれ軌を一にして、それぞれの長から発表されたという意味では、アメリカとしては相当意図的な発言であろう、決して偶然の発言ではあるまい。これは具体的に何らかの影響が出てきましょうか。その影響についてはどういうふうにお考えでしょうか。たとえば、第七艦隊等をあの地域に派遣するという問題等は前から検討されておったのですが、そういう何か具体的な発展を見ておられましょうか。
  147. 園田直

    園田国務大臣 イランの情勢を一つ例にとりましてもなかなか複雑ではありますけれども、今度新しくできた政権は、一方には米国に対してなじりながらも、一方にはソ連の介入を防止するという姿勢をとり続けているようであります。大体非同盟中立政策をとるのではなかろうか、それから外交的には常識的な、すべての国と外交を進めていくということをやるのではなかろうかと見られておりますが、今後そういうふうに推移するといたしましても、いますぐいまの三つの声明されたことが具体化することは果たしていいことかどうか、私は中東の和平のために疑問を持つところであります。しかし、いま大内委員のおっしゃいますとおり、軌を一にして同時にこういう意見が出たということは、確かに米国の一つの方針であるとは私も考えます。しかも、それは単なる方針だけではなくて、具体的に検討されつつある、こう見ておりますけれども、いまこの流動的な情勢の中で具体的に直ちに行動に移ると考えられる率、パーセントは少ないのではないか、将来の問題として注視すべきことであると考えております。
  148. 大内啓伍

    大内分科員 特にブラウン国防長官の場合は、この発言に先立ちまして、サウジアラビアとかヨルダンあるいはエジプト、イスラエル等回って、恐らく諸国の首脳との会談を経た後の発言でございますから、わりあいに具体化してくる可能性を持っております。そして外務大臣、いまそういう方向が必ずしも本当に好ましいかどうか若干疑問があるというお話でしたが、これはやはり米ソの対決の場でございますから、十分ひとつ今後とも留意されるように希望いたします。  イランに関連いたしまして、私自身も先般質問申し上げたのでありますが、この辺で中東外交それなりに再構築というか手当てをしておく必要があるのじゃないか。これはもちろん今後のイラン情勢等も十分にらまなければならぬわけですが、その見地から、江崎通産相のイラン訪問等がうわさされておりますが、通産大臣のイラン訪問の時期及びその目的を外務大臣としてはどういうふうにお考えかということと、これは後で通産大臣にも確かめたいと思っておりますが、さらに大平総理大臣が中東へ行くという計画も私ども仄聞をいたしておりますが、これについてはどういう方針を大体のところお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  149. 園田直

    園田国務大臣 江崎通産大臣がイランに行くという新聞記事がございますが、これは実情とはやや違っております。  と申しますことは、イランの新政権は近く石油政策を発表する模様であります。そしてイラン自体のためにも石油輸出をなるべく早くしょうという考えのようではありますが、いま日本が再び、通産大臣が行って、日本の資源に対する対応策を講ずるということは、火事場に行って自分の都合のいいようなことをやるという全く逆な効果も出てくると思いますので、これは江崎通産大臣と二人で話して十分注意するところであります。  ただ、新政権がわりに手がたく発足しておりますが、いまの混乱をどう静めるかということもありますけれども、その後のイラン国内の経済復興は大変な問題であると考えております。そこで、イランの経済復興万般について、日本が技術その他について協力することがあれば、何でも協力したいという意向を持っておりまして、新政権にはその意向を内々申し入れてあるところでございます。新政権は、御承知のとおりの実情であるから、自分の方でそういう相談ができるころになってからにしてほしい、こういうことでありますから、時期は向こうの方から、いいからおいで願いたいということになってから、目的を一口に言えばイラン経済復興協力調査団、こういうことを考えておるわけでございます。  なお、総理が中東を訪問されることはこれまた大事であると思いますが、まだ全然検討もしておりませんし、総理に相談もしておりませんし話題にも上っておりません。しかし、これはイランを中心にする問題、サダトの和平工作の停滞、これから何か変化をしようとしておるイランの情勢によって、御承知のとおりアラブを初め周辺諸国は心理的にも非常な変化をいたしております。一方には、米国だけではというのでソ連とも緊密にという気配がなきにしもあらず、これもまた先ほどの声明にも関係があるところと思いますが、そういう中東に対する物の考え方、これに対する対応の処置、それから中期の展望、こういうことで大内委員が的確に言われましたとおり、ここでさらに原点に返って、もう一遍中東外交を検討し直し、新たな方針を立てるべきだということは考えておりますので、行く行くは総理にもぜひ行っていただきたいということを私、外務大臣考えておるわけでありますが、まだ話題にはなっておりません。
  150. 大内啓伍

    大内分科員 外務当局のお考えが非常にわかりました。  向こうから調査団等のお招きをいただく時期は、向こうの政情自体のもとでなかなかむずかしいと思いますが、その場合の調査団の長はやはり通産大臣とか外務大臣級とお考えなのですか。  それから、いまの通産大臣の訪イランという問題は、そうしますといまの段階ではペンディングと理解してよろしゅうございますか。
  151. 園田直

    園田国務大臣 おっしゃるとおりで、通産大臣として行くのではなくて、できれば私が――各省の幹部、その場その場で判断のできる幹部、これに民間人等も加えて、調査団長は通産大臣か私が、こういうことを考えておるわけでございます。
  152. 大内啓伍

    大内分科員 それは大変結構です。この問題は議論すれば大変大きな問題でございます。次の問題に移らせていただきます。  二月二十五日、例の国連の緊急安保理事会におきまして、日本としての例の中国ベトナムベトナムカンボジアについての和平会談の提案をやったわけですが、その前日に、安保理におきましてベトナムの代表がこういう発言をしております。中国ベトナム侵入が日中平和条約と米中国交正常化、そして鄧小平副首相の日米両国訪問直後に始まったことから、日米両国がこの侵入に同意を与えた、これはわれわれにとってもあり得べからざるもので、そういうものを踏まえて日本の和平提案が行われたわけなのであります。ただ、和平会談の提案をすることはそうむずかしいことではなくて、問題は、それをどういう形で実現するかということが非常にむずかしいわけなのですが、この実現の方法等については、もちろんそれだけの提案をする以上は検討されたと思うのですが、大体どんな仕組みをお考えでこういう提案がなされたでしょうか。
  153. 園田直

    園田国務大臣 ベトナム日本に対する言い分、米国のことはわかりませんけれども、日本同意を与えたとかあるいは中国寄りであるとかいうのは全く荒唐無稽でありまして、私自身からも、それから安部国連大使からもこれに反駁をさせ、特に私は、経済協力というものを慎重にやると言っておるが、実際はスピードが少しでも減ったか、約束どおり進んでいるじゃないか、そういうことから言ってもそういうことはあり得ないということは明確に言っておるところでございます。和平会談というのは、これは考えてみましても実際はそういうチャンスがあるか、時期が来るか、場面が来るか、なかなかむずかしい問題でありますが、努力だけはするのが日本の責任であると思い、ASEANの諸国ともよく相談をしてやっておるわけでありますが、いつどのような情勢、まず第一にインドシナ半島における紛争の成り行きも非常に大きく響くわけでございまするし、また、果たして日本のような力を持たない国が調停役ができるかできぬかということも、希望としてはありますけれども、別問題でありますので、詳細にいろいろな場面を検討いたしておりますが、いまどういう時期にどういう方法でということは、よくお答えできるところではございません。
  154. 大内啓伍

    大内分科員 これはいま申し上げたように、なかなか実現するやり方そのものが非常にむずかしい。問題が熟さなければできないわけでございます。二十六日に鄧小平副首相が中越の相互撤兵、これはもろ手を挙げて賛成である、しかし別に条件をつけてというようなことはしないというようなことを言っておりましたし、そういう点ではベトナム中国双方にパイプを持っている日本といたしましては、和平会談の実現に向かって今後ともせっかく努力されるように希望いたします。  最後に、これは政府委員の方が私にきょう何を質問するかと問われたときに、日米貿易のインバランスあたりを質問することになろうと申し上げて、その他は言わないできょう質問いたしましたので、どうか政府委員の偉い方を責めないようにひとつよろしくお願いしたいと思うのです。と申しますのは、新しい問題がその後に出ておりますのでお許しをいただきたかったのです。  そこで、日米貿易のインバランスの問題でございますが、つい最近、前のエネルギー庁長官橋本通産審議官がお帰りになりまして記者会見がありまして、やはり日本が想像している以上に課徴金問題というものの動きがアメリカの中で活発化している。すでに法案の準備も一、二行われている形跡がございます。これも私がこの前の予算委員会の総括質問等で申し上げた点なのでありますが、やはり何らかのシンボリックな措置が必要であろうということから、例の電電公社の資材調達というものに対する門戸開放の問題がいま象徴的に起こり、そして関係閣僚会議等も開かれたようであります。二十六日には大木官房審議官が渡米をされまして、アメリカとの間にいろいろな接衝をやるようでございます。ただ伝えられるところによりますと、一応この大木審議官アメリカに対する打診の仕方というのは、電電公社の資材調達については、外国に対しても門戸をある程度開放するというような方向で接衝が行われるというふうに承っておりますのですが、この辺について特に外務省という立場ですね、通産省は通産省の立場がございますし、あるいは電電公社は電電公社としての立場があることは十分存じておりますが、日米関係というのはやはり日本外交の基軸でございますから、決して小の虫を殺して大の虫を生かすという意味ではないと思うのでありますが、バランスある判断としてこの問題についてどういうふうに処理しようとされているのか、そのことが一つと、仮に電電公社資材の門戸開放をやります場合に、いま電電当局から言っている理由も非常にもっともな点があるわけですね。たとえば電気通信システムそのものが非常に荒廃してくるであろう、あるいはサービスコストそのものが上昇してくる可能性もあろう、あるいはそれをつくっております下請関係まで含めて十万人を超える失業者が出るかもしらぬとか、それから実際にはこの種の資材調達につきましては、ECのみならず、アメリカにおいても随意契約でやっているというような面、この辺の影響をどういうふうに考えられておられるか。きょうは本会議がございますので、まだたくさんお伺いしたいことがございますけれども、その辺をひとつ包括的に外務大臣の方からお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思っております。
  155. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言は全くそのとおりでありまして、予算委員会でも発言されましたが、日米間に残っておる貿易の不均衡、それを背景とした政府調達、いわゆる電電公社、関税その他若干の問題、これは日本考えている以上に緊迫した問題であり、課徴金法案が必至ではなかろうかと言われているくらいの状態でございます。したがいまして、このままではとうていこれは解決はできない。保護主義が台頭し、課徴金法が出されるということになってきますので、何らかの解決策を出さなければならぬ、方法を出さなければならぬ、そういう時期に来ておる、こう思うわけであります。しかし、わが方から言えば、電電公社及びこれに関連する産業あるいは従業員、こういう問題等からいたしましてもなかなか困難な問題でございます。  そこで大木審議官が参りましたのは、電電公社の技術担当の人と一緒に向こうへ行って、もう一遍向こうの技術者なりあるいは独占企業の人々と話をしてこいということで出かけたわけであります。したがいまして、大木審議官解決策を持って出ていったわけではございません。もっと何とか最後の段階でも日本立場、向こうの望む最小限のもの、こういうものを打診してくるということでございます。なおまた、ごく最近日本の関連産業の代表の方々も向こうへ行かれるということで、これもいいことだと考えておるわけであります。それが終わりまして、今度逆に外務大臣立場から言うと、よく御承知のとおりにサミット、これを逆算しますと東京ラウンドとあるわけでありますから、時間的にも相当切迫をしている。ここで非常に困難ではあるけれども、電電公社並びに関連産業の言い分もよくわかりますから、その言い分も踏まえつつどのような解決の方策を講ずるか、いま苦悩しておるところでございます。どのような方向で持っていくかということは、まだお答えはできる段階ではございません。
  156. 大内啓伍

    大内分科員 時間でございます。ありがとうございました。
  157. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で大内啓伍君の質疑は終わりました。  午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十九分開議
  158. 正示啓次郎

    ○正示主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。安島友義君。
  159. 安島友義

    安島分科員 わが国をめぐる国際環境は、政治的にも経済的にも重大な局面を迎えているというように思います。私は、時間の制約もありますので、主として資源エネルギーという観点から外交をどういうふうに進められるのかということでお伺いしたいと思うのです。特にわが国の場合は資源・エネルギーに恵まれてない。したがって、外交の基調いかんによって今後のわが国の方向が大きく左右されると言っても過言ではないと思います。  そこで、そういう観点を踏まえて外交の基調とも言うべき考え方につきまして、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  160. 園田直

    園田国務大臣 資源のないわが国が、多角的な資源を考えながらやらなければならぬことは御発言のとおりであります。ただ、いままでの外交は、反省いたしますと、ややもすると資源を目当てにして外交を進めてきた気配があって、とかく産油国からそういう点を指摘されたものであります。  先般、私は中東その他を回りまして、エネルギーの問題は、たとえば石油にいたしますと、産油国と消費国、売る方、買う方、こういう関係ではなくて、売る方と買う方が共に石油をどのように有効に使うか、省エネルギーをどういうふうにやるか、あるいは石油を使いつつ次のエネルギーをどう開発するか、またひいては産油国が石油の限界が来た場合に、その後のその国の発展、建設計画、こういうものにどういうふうに協力していくか、産油国と日本が真の友好関係を深めて、日本がなければ自分の国も成っていかぬ、したがって、こちらが頼むのではなくて、産油国の方から日本には石油の供給を断ってはならぬという関係を結ぶことが、外交の基本姿勢であると考えております。  それから次には、具体的にはエネルギーに対して一面的なものではなくて多角的に、たとえば中国であるとかアラスカであるとか、各方面に着目しつつ資源の確保を図っていかなければいかぬと考えております。
  161. 安島友義

    安島分科員 全く私も同感でございます。特に、園田外相は就任以来、わが国外交の基調とも言うべきものを、いわゆる特定の国に偏らない、すべての国との友好関係を維持し、また資源・エネルギーの問題につきましても、いま言われましたように、両国間の利害を一致させるような方向で取り組んでこられたということに対しては、敬意を表したいと思います。  次に、対ソ通商貿易関係。政治と経済とは密接不可分の関係にありますから、それは当然承知の上でお伺いするわけですけれども、日中関係はようやく正常化といいますか軌道に乗ってまいりましたが、国際政治、経済環境の著しい変化によりまして、わが国外交の基調が、いま大臣の言われたように、どこの国にも偏らないという基調に立って進めておることは承知しますが、どうしても世界の情勢に影響を受けるものですから、特定の国から見るならば、どうも一方に偏っていると見られがちです。特にベトナム中国との紛争、これは遺憾なことでございますが、こういう問題がわが国の対ソ外交の進め方を一層むずかしくしているやに思われるわけです。  私は、ここで特にソ連との通称貿易関係に触れましたのは、それほど専門的な知識を持っているわけじゃございませんが、やはりこれからの日本の将来を考えれば、ソ連自身も日本の技術とか資金に大きく期待している、わが国の場合も、これからどう進められるかはまだわかりませんけれども、シベリア大陸等の開発、これは無限の宝庫とも言われております。これらの問題に対して十分条件が整うならば、わが国としても積極的に進めるべきではないか。資源に乏しいわが国にとっては、特定の国のみに依存せずに、多角的な外交の中でわが国が求めるものと相手国が求めるものとの一致点を見出す、そういう必要性が非常に増してきているのではないか。  そういう点で、今日の米中ソという強大な国家群のかかわりの中で、日本自体も非常にむずかしい立場に立っておることは承知しているのですけれども、これらの問題をわが国として慎重に見きわめながら対処することだろうと思いますけれども、いまのところ停滞している対ソ関係の改善を今後どのように図ろうとするのか、また、この中で懸案となってきておりますシベリア開発等については、現在の段階まででどの程度話が行われてきているのか、その辺の見通し等も含めてお答えをいただきたい、こう思います。
  162. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言のとおりでありまして、基本的に申しますると、日本が先般締結いたしました日中友好条約が、アジアの平和、世界の平和のてこになるか、あるいは逆に、これが邪魔になるかということは、一に今後のあり方によると思うわけでありますが、そのあり方の第一の大きな問題は、ソ連と日本外交が友好関係をもっと深く進めていけるかどうかというところに問題があると存ずるわけであります。  領土問題で困難な状態にありまするし、いまのインドシナ半島の問題で、なかなかむずかしい時点ではありますけれども、両国に共通する利害関係は多いわけであります。開発問題あるいは経済、貿易、こういう問題があるわけでありまして、立場立場としてはっきりさせつつも、このように利害が共通する問題で誠意を持って話し合い、積み重ねていくことが大事であると考えております。  そのためには、シベリア開発その他に対しても、いままでは民間がこれに乗り出していっておったわけでありますけれども、ソ連の政府は、民間が来ているだけじゃないか、政府は何もしていないじゃないか、こういうことも具体的に話がときどき出てくるわけでありまして、今後はソ連の立場考えながら、金融の問題あるいは政府がどの程度乗り出していくか、あるいは貿易その他のものにしましても、単年ではなくして、ソ連が言うように長期の相談をどうやっていくのか、こういうことを逐次積み重ねていかなければならぬと考えております。  幸いに、事務的な会議は御承知のとおりに順調に進んでおりまするし、つい先般は日ソの経済合同委員会がありまして、非常な成果を上げて、次の会議の議題まで出てきたようなわけでありますから、こういう問題等を足場にしながら、いま御発言の通商問題等については、一つずつ積み重ねていくようにやりたいと考えております。
  163. 安島友義

    安島分科員 いまソ連側から見れば、これは推測でございますが、少なくとも余りいい感情を日本に対しては持っていないのではないかと考えられるわけなんです。  ちょっと話は別の方になりますが、イシコフ漁業相が高齢であることも理由かもしれませんけれども、それ以外の理由で退任されるとすれば、少しく問題があるやに思われますが、長年の間漁業交渉の責任者として、知日家としても知られているこの漁業相が、更迭されたのか、いわゆる高齢でやめることになったのかはわかりませんが、漁業相が更迭されることによって、現在のソ連の対日感情、さらには、これまでの交渉でも非常に厳しい局面に立たされてきまして、細々ながらわが国の水産業界というのは辛うじて生き延びてきているというような現状の上に立って、今後もうすぐにも行われるであろう漁業交渉というものと、イシコフ漁業相の退陣というもののかかわり合いを、どのように外務省としては御判断なされておるでしょうか。
  164. 園田直

    園田国務大臣 イシコフ漁業大臣がどのような理由で更迭されたかは、これは他国のことでございますから、私が言うべきことじゃございませんが、少なくとも新しい漁業大臣ができたわけであります。この方は、御承知のとおりに次官をやっておられて、漁業には相当経験があるわけであります。したがいまして、日本の実情もおわかりであります。また一方には、ソ連の置かれた漁業の立場というものもなかなか厳しいものがあるわけでありまして、漁業交渉の前途は楽観は許しません。しかし、漁業大臣がかわったことによって、ああいう国でありますから、急に変更するとは思われません。また、他の問題につきましても、向こうの方からわりに話が出てくる問題と反発する問題と両方ありますが、そういう話のしやすい問題からやっていきたい、漁業についても大事な問題でありますから、連絡を緊密にしたいと考えております。
  165. 安島友義

    安島分科員 実は二月二十三日付の読売新聞の報道で、私は、これは外務省も当然かかわっているのかと思って質問を用意したのですが、いろいろ調査しますと、まだそうなっていないようでございますので、その辺の問題も含めて、これは通産省の方から御説明いただきたいと思うのですが、読売新聞の報道を要約しますと、イランで三井グループが進めております、建設中の石油化学コンビナートがイランの内戦で一時停滞し、これはいままでも相当資金が投下されておりますので、その後この問題をいろいろ話し合われているやに聞いているわけですが、結局、イランの新政権が発足したばかりでございますので、たとえば、この話を進めてきますと、資金計画等も、具体的には四月以降必要な一千億円の資金調達の中で日本側、これは民間、前に申し上げましたような三井グループの分担金が二百五十億円相当額で、イラン側が大体七百五十億円くらい負担するということで、大筋の話が進められているそうですが、その資金調達がイラン側にとっては現状ではむずかしい。したがって、この話を進めるためには政府が何らかの形で融資あるいは肩がわり等が必要だということで、具体的にはもうすでに政府としてもこれは本腰を入れて、そういう方向でこの合弁会社を設立する方向に動いているかに報道をされているわけです。そこで、これは政府間での交渉じゃありませんから、あくまでこれは間接的かもしれませんけれども、民間の三井グループとして一体どの程度話が進められて、それは公式、非公式を問わず、政府関係筋にはどのような形での協力要請が現在時点で来ているのか、その辺について御説明を受けたいと思います。
  166. 関野弘幹

    ○関野説明員 通産省の経済協力企画官でございます。  二月二十三日付の読売新聞に、いま先生御質問のとおり、あたかも政府が、本プロジェクトの追加資金のうちイラン側負担分につきまして、肩がわりその他により支援する方向を固めたかのごとき報道がなされておりますが、そのようなことを決めた事実はございません。ただ、本プロジェクトは、日本とイランの合弁事業として建設が進められております大型経済協力案件でございまして、政府としても、従来から円借款その他の形で、その完成のために支援を行ってきたわけでございます。一方、イランの新しい政権も、本計画がイランの国民生活の向上にもつながるプロジェクトであるということから、非常に重要視していると私ども聞いております。それから、日本側投資企業も本計画完成の方針に変わりはないというふうに私ども聞いておりますので、通産省といたしましては、今後関係省庁とも連絡をとりながら、その完成のためにできるだけの支援を行っていくつもりでございます。  本プロジェクトにつきましては、イラン側の政府関係機関の体制が整備されましたところで、日本側投資企業の代表が、今後の進め方あるいはその完成までの問題点等について、イラン側と十分協議をするということになっておりまして、その結果、政府に対して何らかの具体的支援措置について要請があれば、その時点で検討していくことになろうかと考えております。
  167. 安島友義

    安島分科員 これは民間ベースで進められているといっても、結局はイランの新政府が前面に出てくることは明らかだと思うのです。外務省としては、いまの説明ですと、今日の段階までは、この問題については直接タッチしていなかったということでございますか。
  168. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃいましたプロジェクトは、約八割方工事ができ上がっております。  そこで、今度の混乱が起きましてから、一時は、非常に従業員の生命の危険とか、あるいはこれが破壊されるおそれがあって、異常な決意をしたこともあるわけでありますが、その後イランの新政権のこれに対する態度がだんだん好転してまいりました。総理大臣とわが方の大使が先般会見をしました際、向こうの総理大臣の方から、この工事は自分も現場を見た、なかなか相当なものであって、わがイランの国の経済再建の一つの中心にもなる問題であるから、一刻も早くこれを完成したい、そして、これは今後両方努力をしていきたい、ただし、そのかわりに、なるべく早く技術の移転をして、イラン側でこれが運転できるようにしてくれなどという具体的な話もあるわけであります。しかし、まだ御承知のとおりの状況でありますが、イラン側のこのプロジェクトに対する意図は明瞭になったわけであります。  いま新聞等で、日本から行った人が打ち切って引き揚げておるなどという記事が二、三出ておりますが、これは、このプロジェクトの工事を引き揚げているということではなくて、個々の請負契約をした団体が契約を終わって帰っておるわけであります。  そういうわけで、これについては、わが政府も進んでイランの政府と相談をして、これが一日も早く完成をし、しかもイランの経済復興の中心になるよう努力しなければならぬと考えておりますので、向こうの政権が安定をして、逐次いろいろな要求が出てまいりますれば、資金その他の面も含んで、いろいろまじめに考えてみなければならぬのではないかと考えておるところでございます。
  169. 安島友義

    安島分科員 そうしますと、どのような方法で、どの程度の金額かは、これからの問題としても、政府としても、具体的にこれを軌道に乗せるための援助、協力は惜しまないという立場で、今後通産省等とも当然いろいろと相談する内容であろうと思いますが、外交といいますか、新政府との間における話ということになりますと、当然外務省ということになりますね、その段階になれば。  そして、少なくともわが国の資源・エネルギーに大きな影響、役割りを果たす、民間ベースで進められている事業に対して、政府がこれに援助、協力を惜しまないというのは、国益に沿って当然対処するという考え方だろうと思うのです。ということになりますと、この事業計画というものは今後どうなるかわかりませんが、イランの石油輸出というものがいろいろと世界の関心を呼んでいるわけでございますが、石油の安定供給とのかかわりにおいては、わが国としても、これがスムーズに進展するということは非常によいという判断が、この計画の中に含まれておるのでしょうか。
  170. 園田直

    園田国務大臣 実は二、三日前に、イランの燃料公団総裁があと二、三週間で具体的な石油政策を発表するはずであるということを内々に通知してきております。今明日のうちに、石油の輸出について閣議で論議が行われる模様でございます。なお、わが方で特に注意しておりますのは、先ほど申し上げましたとおりに、日本がイランからの石油の輸出を目当てに、火事どろ式によその国が困っているときに日本だけが入り込んだという印象を与えたくありませんので、その点は十分注意しているところであります。しかし、イランの経済復興の中心は石油であり、石油をなるべく早く輸出しなければイラン自体がもたない、そういう意向のようでありまするし、また日本に対しては特に、最初に日本の方にはいろいろ供給も考えるという内々の話があるわけであります。  したがいまして、この点を計画どおりにやるとすれば、イランの方の受け持った資金その他が、先生がおっしゃいましたように、なかなかいまの状態では無理ではないか。そうなってくれば、三井グループに政府が援助することではなくて、イランの政府日本政府と相談をして、イランの政府のつらい立場、できない立場をどうやって暫定的に日本がカバーしていくかというようなことになれば、いまはまだ金融その他の相談は何も受けておりませんけれども、行く行くは先生のおっしゃったような場面が出てくるのではなかろうか、それに対して心の準備をしている、こういうことでございます。
  171. 安島友義

    安島分科員 きょうの衆議院本会議で核燃料の再処理事業が、改正前は動力炉・核燃料開発事業団と日本原子力研究所という二つの、言うなれば政府機関に事業が限定されておったのが、今度は民間に委託し、再処理事業を行うことができるという法案が可決されて、参議院に送付されたわけです。  そこで、これは科学技術振興対策特別委員会でも、これまで論議されてきた中で、アメリカの核政策というものがカーター政権になりましてから変わってまいりまして、特に、再処理事業の過程でプルトニウムというものが当然取り出されるわけですが、これの軍事目的への転用というようなことを防止する、言うならば核拡散防止という観点、私は必ずしも表向きの理由だけで動いているとは思いませんが、いずれにしてもそういうことから、これは相当長期間に多額の費用がかかる計画でございますが、それがアメリカの合意が得られないままに、こういう再処理事業の民間委託が進められてよいかどうかということが、論議の焦点になってきたわけです。  ところが、先日のこれも新聞報道によりますと、アメリカは最近になりましてこれまでの方針を転換をしまして、ある程度条件つきで日本や西ドイツに認めるというような報道がされているわけでございます。これまで、原子力の平和利用と核拡散防止の両立のための新原子力国際システムの討議が長い間行われてきたわけですけれども、この方針が事実変わったかどうかということにつきましては、いま申し上げましたいろいろと賛否両論がありますが、そのことは別として、わが国民間における再処理事業の今後の方向を左右するものとして、これは注目されるべき方針転換であるわけです。  したがって、外務省としては、どの程度現在段階でこの問題が煮詰められてきているのか、近く開かれるこの国際会議で、新聞で報道されたような方向に落ちつくのかどうかにつきまして、お答えをお願いしたいと思います。
  172. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 米国の再処理問題に対する基本的な考え方は、再処理が世界じゅうに無制限に、不必要に行われることは、核兵器の拡散の観点から好ましくないということが基本でございます。  それに対しまして日本といたしましては、エネルギー政策の観点から核の再処理は必要であるという立場をとっておりまして、この点につきましては、新聞報道にございますようなアメリカと主要国の間での意見が一致したというような事実はございません。しかしながら、先ほど先生の御指摘もございました、また大臣の御答弁もございましたように、アメリカ日本立場というものの一致点を求めるべく、日米間で協議を続けておるという段階でございます。
  173. 安島友義

    安島分科員 そうすると、いまの段階では、新聞に報道されているような見通しは、外務省の当局としては持っていないということでございますか。
  174. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 新聞報道には、主要国の間で考え方の一致が見られたというふうにございますが、この問題は主要国間だけの問題ではございません、開発途上国を含む多数の国が非常に重要な関心を持っておる問題でございますので、主要国間のみでこの問題を解決するということは不適当でもあり、可能でもないと存じます。しかしながら、日本といたしましては、エネルギー政策の観点から、日本の必要な核再処理の実施は確保できるようにいたしたい、そういう方向で交渉をいたしておるわけでございます。
  175. 安島友義

    安島分科員 時間が参りましたので、終わります。大臣、どうもありがとうございました。
  176. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、野坂浩賢君。
  177. 野坂浩賢

    野坂分科員 朝鮮統一の問題についてお尋ねをいたしますが、いろいろ紆余曲折がございましたが、三年十一カ月ぶりで南北朝鮮の会談が、二月十七日に板門店で行われております。  この会談についての見通しと、日本政府のこれに対する見解を、まずお尋ねをしたいと思います。
  178. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 本年一月に、この会談の再開の話し合いが始まりまして、これが会談再開に至るかどうか、世界の注目を浴びていたわけでございますけれども、去る十七日板門店において、なお双方立場の相違を残しつつも、ともかくも両代表の接触が行われ、そのときの合意で、次回の会合を三月七日に開くということに決まったわけでございます。  この南北双方の最近の動きの背景は、いろいろあるかと思いますけれども、やはりそこには最近のアジアにおける一連の情勢の発展というものもあって、南北双方の当事者がこの朝鮮問題を主体的に解決していくという意欲が、そこにいろいろ感ぜられるところでございます。したがいまして、今後ともこのような意欲がなお持続されまして、いろいろの双方立場の違いを乗り越える、それを克服する努力が引き続き続きまして、実りある対話の実現すること、これは、わが国もかねてそういうことを望んでおりましただけに、そのような方向に発展することを強く期待しているというのが、現在の私どもの考え方でございます。
  179. 野坂浩賢

    野坂分科員 一月二十五日に、大平総理は施政方針演説でこういうふうに演説をされました。「日韓関係は、年とともに緊密の度を加えております。私は、両国の信頼と友好の関係をより強固なものにするよう努力する一方、南北両当事者間の対話が再開され、朝鮮半島における緊張が一層緩和の方向に向かうことを期待する」こういうことで、外務大臣の所信表明の中にも、経済、文化、スポーツ等の交流を盛んにして積み上げていきたいという意味のお話がございました。  いま読みましたように、「信頼と友好の関係をより強固なものにするよう努力する」。この朝鮮の対話というものについては、われわれは、朝鮮の自主的、平和的な統一というものを望んでおるわけでありますが、政府も常にそういうことを口にされます。この前段の意味は、南北朝鮮の分断といいますか、そういう固定化という意味ではないとは思いますが、これはどういうことでしょうか。それから、一方、対話が再開され、緊張が緩和するような方向であるということについて、日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国に対しての政策の転換を行うという意味に解釈をしてもいいだろうか。その点はどうでしょうか、大臣
  180. 園田直

    園田国務大臣 南北の問題は、固定化された分断の姿ではなくて、自主的に、平和的に解決され、統一されることをわれわれは期待をしてやっている問題であります。  なお、朝鮮人民共和国に対するわが方の態度でありますが、なるべくケース・バイ・ケースによって実績を積み重ねつつ、話し合いの機会をつくるということに努力をしたいと考えております。
  181. 野坂浩賢

    野坂分科員 分断固定化は考えていない、朝鮮の統一促進のために日本政府努力する、こういうことでございますね。  この会談ができ上がった、一応軌道に乗るといいますか、ともかくも再開をされたということは、米中の国交正常化及び日中平和友好条約というものが、大きな側面的な影響を持ったというふうにお考えでしょうか。
  182. 園田直

    園田国務大臣 アジアにおける一連の情勢の発展というものが、南北の当事者自体がみずからの自主的な解決の方向に進もうという機運をつくったということは事実だと思います。
  183. 野坂浩賢

    野坂分科員 そういう意味で、わが国の北朝鮮に対する政策の転換あるいは軌道修正ということは、いままでよりも変わってくる、修正されるであろうというふうに考えていいでしょうか。そして、具体的にはどのような進め方を、ケース・バイ・ケースとか積み重ねとはお話しになりましたが、どのように、これから転換をしていくのか。
  184. 園田直

    園田国務大臣 政策の転換といいますのは、わが方と向こう側との両方の相まってできる言葉でありまして、いまのまま、すぐ政策の転換は考えておりませんが、そのようなことを考えながら、話し合いの機会をたくさんつくりたい、こう思っております。
  185. 野坂浩賢

    野坂分科員 この会談に先立って、南北ともにいろいろな声明を出されておりますが、北朝鮮側から、声明の中で四つありますね。七二年七月四日に共同声明を発表されておりますが、たとえば七月四日南北共同声明の原則に戻ろう、誹謗、中傷の中止をやろう、軍事行動の無条件の停止、具体的には三月一日から軍事境界線における軍事行動の停止をお互いにやろう、四番目に、南北民族大会の招集をやって、朝鮮統一のために大同団結を呼びかける、この四点について、私は常識的に、だれが見ても問題はないと、こういうふうに考えておりますが、その点について、大臣はどうお考えでしょうか。
  186. 園田直

    園田国務大臣 南北統一のための話し合いの意欲が非常に出てきておることは、結構であると考えます。
  187. 野坂浩賢

    野坂分科員 そういう日本政府の見解でありますが、三月一日から米韓の大合同演習が展開をされます。参加兵員は十六万八千人、米軍は五万六千人、韓国軍が十一万二千人と言われております。これは昨年よりもはるかに大きくなっておるという現状であります。  一方では、園田外務大臣がいまお話しになりましたように、緊張の緩和、自主的平和的統一、こういうことを日本政府は期待すると言いながら、一方カーター大統領は、第一次の撤退計画を六千人とし、三千四百人は撤退をさしたわけでありますが、残りは、二月九日に大統領は撤退の停止を行っておるというのが現状であります。  これについて、そういう緊張を緩和するという方向を望みながら、逆に、このような大合同演習を展開するということは、これに水をかけることになるし、緊張を高めるということになると思いますが、隣国と特に緊密の度と信頼と友好と、こういうことをおっしゃっておる日本政府としては、これを見て、どのようにお感じになり、いいことだとお考えになっておるのか、やめてもらいたいとお考えになっておるのか、その辺はどうです。
  188. 園田直

    園田国務大臣 米韓合同演習は、これは今年だけのことではなくて、例年のことでありまして、前々からの計画で年中行事の一つであります。しかし本年は数が飛躍的にふえておる。一方では、また南北対話、緩和の情勢があるときに、このような演習はいかがなものかなと思いますけれども、例年の予定された行事をやるわけでありますから、なるべく支障のないようにやってもらいたいと考えております。
  189. 野坂浩賢

    野坂分科員 アジア情勢もいろいろな動きがございますが、大臣から、いままでに御答弁いただきましたのは、平和裏に進める、あるいは四項目でも政府としては歓迎である。こういう時期にチームスピリット79、去年よりも七万人も兵員は増大をしているわけですから、横の方でそういう大合同演習をやって、片方では握手をしながら、片方ではげんこつを持っている。そういう姿では、会談というものが思うように進んでいかないじゃないか、こういうふうに思うわけです。  友好国のアメリカに対して、外務大臣は、このような時期に適切ではないではないか、微妙な影響を与えるではないか、こういうふうに思うというようなことを御提言になったことはございますか。通例だし恒例だから、これはしようがないじゃないかということだけでは、特に隣国が統一をし平和になれば、それがアジアの平和に貢献すること非常に大であることは、だれもが承知しておるわけですから、それについて大臣は何にも言わないで、余り影響のないように心から祈っているというような、そういう具体性のないことでは、日本外交とは言えないと思うのです。それについて、積極的にアメリカ意見を述べられる必要があろうと思いますが、どうでしょう。
  190. 園田直

    園田国務大臣 計画はすでに発表されたものでありますし、かつまた境界線とは大分離れてやる、全くの米韓の合同の演習だと承っておりまするので、今日の情勢に刺激にならぬように、うまくやってもらいたいと考えております。
  191. 野坂浩賢

    野坂分科員 第一次の撤退計画は、米軍は六千人ということでございました。一応三千四百人というものは撤退をしたわけですが、あと中止をした理由ですね、撤退中止というのは、一体どういうことだというふうに把握していらっしゃいますか。
  192. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 在韓米地上軍の撤退につきましては、基本的に、アメリカと韓国との間でいろいろな状況を話し合いながら進められていると承知しておりますが、私どもの承知しているところは、先般発表されましたアメリカ国防報告の中の米地上軍撤退計画についてというところに書いてあることに、恐らく尽きるのではないかと思います。  この中では、アメリカ側は、最近の北朝鮮の軍事情勢、兵力が増強されているのではないかという情勢を踏まえて、昨年四月以来、この計画の一部修正を検討してきた、いまのところ、全体としての撤退計画そのものについての変更は考えていませんけれども、したがって原則的には従来の方針に変わりはありませんけれども、このような北朝鮮の情勢をさらによく見守って、撤退計画については部分的に速度を落とす、その他のことを考えているという趣旨がのべられております。米側は、そのような認識に基づいて、今後の撤退計画について、その状況に応じて考えていくのではないか、こういうふうに理解しております。
  193. 野坂浩賢

    野坂分科員 アメリカ側の主張によると、朝鮮民主主義人民共和国の軍事力が増大をしておる、それに対応する。私が先ほど大臣に御確認を申し上げましたように、軍事行動の無条件停止をやろう、そういうことを提言して、歓迎をするということであったわけでありますから、そのアメリカ考え方というのは、軍事力の均衡といいますか、こちらも軍事力を増大をして、それを背景にして、それをてこにして会談、話し合いに入るという考え方になると、常識的に考えられるわけですが、この状況について、私たちは、そういう武力背景というものについては大きな問題があろう、こういうふうに思うわけです。それについてはどうお考えですか。
  194. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ちょうど二年前にカーター新政権になりまして、この在韓米地上軍の撤退計画が発表になりましたときに、アメリカ側は、次第に米地上軍を撤退させるという方針、原則を打ち出したわけでございますけれども、その当時から、この米軍の撤退が一方的に行われて、現在朝鮮半島において維持されている南北間のバランスが崩れることは好ましくないという認識がございます。  そこで、いわゆる補完措置ということで、米地上軍の撤退がバランスを乱さないような種々の措置、具体的には、韓国軍の整備とかあるいは武器援助というようなものによってバランスを維持しながら、しかし、なるべく米地上軍を一定の速度で撤退させるということであったと承知しておりまして、その後の米地上軍の撤退計画も、この基本的な考え方に基づいて続けられていると思います。  なお、先ほどちょっとチームスピリットの関係で御指摘がございましたけれども、これは防衛的な現時点における在韓米軍と韓国軍との間の合同演習であって、他方アメリカ側は、このような防衛的な、かつアメリカが持っているコミットメントを遵守することを示すために行うこのような演習は、現在の南北対話の機運、こういうものに反するものではない、アメリカとしても、南北対話の話が出て以来、終始この南北対話の結実を非常に強く期待するということを言っておりまして、それとは矛盾するものでないということは、自来明らかにしているように承知しております。
  195. 野坂浩賢

    野坂分科員 局長からお話しいただいたわけでありますが、このチームスピリット79というものは、この対話の結実に影響のあるものではない、あるいは反するものではない、こういう見解だということであります。しかし、私たちは常識的に見ておって、朝鮮半島そのものに、あるいは対話そのものに、いい影響を及ぼすとは考えられません。  外務省は、アメリカ考えておるように、そういういい影響といいますか、そういうものに影響はない、また反するものではない、こういうふうにお考えでありましょうか。私はどうしても納得ができません。一方、平和的に対話を進めておる、一方では戦争の練習をしておる、こういうことは朝鮮半島にいい影響を与えるものではない。だれが見ても、そう考えると思うのです。しかも軍事力の均衡を背景に、てこに進めるということについては、これの対話が成功するということが、なかなかむずかしい情勢を迎えてくるのではないかということすら心配をするわけですが、政府考え方としては、どちら側の御意見をおとりになりますか。
  196. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 軍事演習はやはり軍事演習でございますから、これが南北の平和的な緊張緩和あるいは統一にいい影響があるかということであれば、これは基本的に、それはいい影響があると申したわけではございませんで、悪い影響はないというふうに申したわけでございます。  すなわち、現在の朝鮮半島の状況というのは、遺憾ながらやはりある種のバランスの上に立っているという状況があり、そのような認識の上に立って、米軍と韓国軍の間で防衛のための、防衛的な毎年行っている演習を行うということでございまして、そういう認識両国がこれを実施するということに理解しております。  他方、南北対話は、先ほども申し上げましたように、ようやく緒につきまして、来月第二回目を開くということで、これがどう結実していくか、どのような速度なのか、あるいはまた難関に逢着するのかということは、なかなか予見できませんけれども、これは日本のみならず、米国も含めて各国において、この結実を非常に期待しているわけでございますから、将来南北間の対話が本当に実を結びまして、南北間の緊張緩和というのが具体的に出てまいりました場合に、これは韓国側であれ、また北朝鮮側であれ、現在のような軍事的な体制というものが次第に緩められると申しますか、そういう方からくる軍事的な体制というものは、おのずから変容していくのだろうと思いますが、現時点で考えますと、先ほど申しましたような事情で、双方がバランスの上に立っているという状況で、こういう演習が行われ、また米側の判断では、北におきましても、相当程度の軍事力が維持されているという判断を持っているというふうに承知しているわけでございます。
  197. 野坂浩賢

    野坂分科員 幾らやっても、平行線になるだろうと思うのですが、最後に、大臣にお尋ねをしておきたいと思います。  総理なり園田外務大臣が施政方針演説でも述べられたように、隣国である韓国とは友好と信頼でいきたい、朝鮮の平和的、自主的な統一をこいねがう、北朝鮮の四つの原則に基づく提案についても歓迎をする、こういうお話でありました。いまアジア局長のお話でも、緊張緩和がこれから進んで実が結んでくるに従って、軍事力はだんだん取られいくだろう、それを取っていくために対話が再開をされ、会談が行われておるというのが現状であるという認識をしなければなりません。  さすれば、そういう時期に、このような大合同演習というものは、いい影響があるかという質疑に対しては、いい影響はないと思うけれども、悪い影響もないと思う、こういうまことにはっきりしない御答弁であります。だれが考えてみても、いい影響はない、影響は悪いというふうに判断をされるわけでありますから、先ほど申し上げましたように、友好と信頼をやって緊張緩和の促進を日本政府がやるとすれば、この大合同演習を中止をするように米国側に要求されるのが、私は、日本政府のいままでの質疑の中で示されましたことと一致をすることになるであろうと思うわけであります。  外務大臣の最後の見解をお尋ねをして、次の質問に入りたいと思いますので、十分配意をして御答弁をいただきたい、こう思います。
  198. 園田直

    園田国務大臣 先ほどから局長が申し上げますとおりに、いずれにしろ合同演習が対話によい影響を与えるとは考えておりませんけれども、しかし、地域は境界線をはるかに下がり、しかもその演習そのものの想定は、全く防御的な想定のもとに行われる。演習そのものは米韓の純然たる合同連絡の演習でありますので、対話に刺激を与えないように演習がされることを希望するものであります。
  199. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんので、多くを申し上げることはできませんが、いい影響はない、できるだけこれに支障のないように、その程度であるという外務省の姿勢を、非常に問題であるし残念である、こういうふうに考えておるところであります。  私は、最後に、わが県に最も近い韓国との領土問題で争っておる竹島周辺におきます漁業問題について、お尋ねをしたいと思うのです。  午前中、同僚議員が、竹島周辺における漁業の安全操業の問題について質疑をいたしたわけでありますが、私は、端的に、外務大臣が日韓定期閣僚会議ですか、その際に冒頭にもお話しになりましたし、個別的な会談も行われた、相手は最高指導者朴正煕大統領であったというふうに承知をしております。  そこで、領土問題はそう簡単には解決をしない、したがって漁業の問題は、これと分離してやろうという話し合いがされたやに承っております。大きく刺激をすると問題があると、従来から言われてまいりましたが、特に韓国の総選挙も実施をされる、その後でという話があり、事務当局で詰められておるということでありますが、竹島から三海里までは入漁、操業してもよろしい、韓国の警備艇は出ない、こういうふうに私たちは承知をしておるわけでありますが、いままで十二海里から三海里になった。この三海里までは、われわれ日本の漁民たちが操業してよろしい、そしてそれは安全操業が確保できる、こういうふうに話し合いが詰まっておりますかということを、第一点としてお尋ねをしておきたい。
  200. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘の昨年九月の閣僚会議、その機会における外相間の話し合いで、領土問題も議論になりましたが、さらに緊急な問題としての竹島周辺の安全操業の問題が議論になり、漁業紛争防止の精神で、漁業者の利益を確保するという趣旨現実的に解決しようという原則的な話し合いがあったわけでございます。  この話し合いを受けまして、自来今日まで、事務当局におきまして鋭意努力を重ねているところでございます。これは外務省だけではございませんで、水産庁、さらには漁業関係者と密接に連絡をとりましての努力でございます。大変残念ながら、現時点におきましては、いまだ解決を見ていないわけでございますが、私どもは、現在も引き続き、この問題の円満な解決に最善の努力を払っているというのが現状でございます。
  201. 野坂浩賢

    野坂分科員 日本のトップである外務大臣、韓国のトップである朴大統領がお話し合いをされて、その方向でいくという確認をされたのに、なぜ事務当局では詰まらないのか。漁期は迫ってまいりました。漁期、解禁までにはその問題は整理され、事務折衝でできなければ、その上である大臣の政治的な会談にまつということになろうと思いますし、窓口は外務省でありますから、これは早期に解決できる見通しというふうに理解をしてよろしゅうございますか。外務大臣、どうです。
  202. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 努力していると申し上げました中には、たとえば外務大臣が韓国側の要人と会われるときの話題にも必ず出るというようなことも含めまして、公式にテーブルをはさんでではなくて、非公式な場、あらゆる努力を払っているという意味でございます。  御指摘のとおり、当面私どもの理解しておりますところでも、漁期が五月という一つの時期がございまして、どんなに遅くともこれまでに円満な解決を図らなければならないという自覚を持って努力しているわけでございます。私どもとしては何とかそれまでに妥結するような意気込みで現在これに当たっているというふうにお答えいたしたいと思います。
  203. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間が参りましたのでこれ以上質疑ができませんが、五月までには解決をするように最大努力をする、外務大臣を含めてだ、こういうふうに確認してよろしいかということが一点と、その場合、でき得なかった場合、これは水産庁との関係になりますが、政府は何らかの責任を持って、その漁獲高に対する補償といいますか、そういうものは考えてもらわなければ、漁民の生活に重大な影響を及ぼすという結果になります。それらについてはもちろん農林水産省とも話し合いをしなければならぬとわれわれは思いますが、外務大臣としては、それに対処する方法はそのようなことで考えていかなければならぬとお考えでしょうか。
  204. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  205. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、終わります。
  206. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、井上普方君。
  207. 井上普方

    井上(普)分科員 これからお伺いいたします事柄については、外務委員会あるいはこういう場で私は初めて質問をするわけであります。といいますのは、私もこれで十二年国会議員をいたしておりまして、感じたことを二、三申し上げると同時に、外交が国の将来にとりまして非常に重大であると考えるからにほかなりません。  日本は資源を持たない、エネルギーを持たない。今後日本民族が平和に、しかも世界の各国から畏敬せられる国であるためには、日本外交というものの重要性、外務省の重要性というものは、他の省庁とは比較にならないほど重大であると私は考えるものであります。したがって、これから申し上げますことは、あるいは外務官僚の諸君には耳が痛いことがあるかもしらぬ。しかし、こういう考え方があることをひとつ御承知になっていただいてお聞き取り願いたいと思うのであります。  私どもは外国へ旅行いたしますと、在外公館に立ち寄ります。そのとき、在外公館に立ち寄った際にまず私どもが失望いたしますのは、外務省から出ておりますいわゆるキァリアの諸君の勉強不足であります。これは私どもだけではなくて、ほとんどの国会議員の諸君もこのことを感じておられるのは、もう野人である園田外務大臣もおわかりのところではないかと思うのであります。  そこで、もちろんキァリアの諸君の中には優秀だなと考えられる諸君もおるにはおります。しかし、勉強不足であるキァリアの諸君が大多数であることはもうわかることなんであります。よく勉強しておるなと思えばアタッシェの諸君である、これは率直な、われわれが在外公館へ出向いた際の感想であります。  しかし、これであってはならない。日本外交というのは、外務省というのは、大蔵省やあるいは他の省庁と比べましてもはるかに重要な外務省である、ここにはひとつ人材を集中していただきたい、そして、識見豊富な外交官をつくっていただきたい。これが日本の将来にとり、日本の安全にとり、繁栄にとって重大であると思うからこそ私は申すのであります。  そこで、外務省における人材の登用の仕方あるいはまた教育の仕方、こういうものを一体どう考えられておるのか、お伺いいたしたいのであります。これがまず第一点であります。  といいますのは、いま幹部になりあるいは大使になって出ていっている諸君は、戦前からあるいは三国同盟をともかく礼賛し、白鳥大使、これを外務大臣にしようとして運動した諸君が外務省の主流を占めておるように思われてなりません。しかし、その後敗戦の憂き目を見て、占領政策下において外務官僚諸君が異民族の支配のもとに気力を喪失してやってきたことは、これは否めない事実だろうと思う。それが今日までまだ及んでいないか、私は、はなはだ心配に思うのでございます。したがって、先ほど申しました、いかに優秀な人材を外務官僚として迎えるか、そしてそれを育てていくか、どういうような方法でやられておるのか、ひとつお伺いいたしたいのであります。
  208. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省の上級職員の採用に関しましては、外務省としては多くの志願者の中から最も厳正な方法で採用し、その上で研修所に入れ、さらに在外で平均少なくとも二年あるいは三年の研修をさせておるわけでございます。  外務省に入ります以上は、将来そういう人たちは大使にもし得る人材を養成したいと考えておるわけでございまして、まず第一に語学を勉強させます。これは第一語学のみならず、第二語学についてもかなりの程度まで勉強させるような方針をとっております。また、そういうふうに大使となって一国を代表いたします以上、単に一つの分野にだけ深くてほかのことは知らないということではだめでございますので、いわゆるジェネラリストとしての教養、つまり政治のみならず経済についてもあるいは広報についても勉強する、そういうふうな訓練をいたしておるわけでございます。われわれはそれによってすべてのそういう上級職員が大使としてりっぱに務まるように、不断に訓練しておるつもりでございますが、なかなかその期待に十分こたえ得ない職員が間々あるということはわれわれも率直に認めますけれども、これは相互の研さんによってさらにその質の向上に努めてまいりたいと考えております。
  209. 井上普方

    井上(普)分科員 私どもが在外公館へ参りまして、そしていま不届きな者が間々あるとおっしゃいましたが、優秀だなと思う人が間々あるぐらいのところなんであります。まことに外務官僚の諸君は苦虫をかみつぶしたような顔をしているけれども、それが率直なるわれわれの感覚であります。  私らが在外公館へ参ると、われわれに対しては過剰サービスをしてもてなしてくれます。私どもが行って、これは過剰サービスだなといつも感じます。そしてその後、私どもはその分野その分野において質問する。まともなお答えはほとんど返ってこないのが普通であります。アタッシェの諸君――たまに勉強しておるなと思ってよく聞いてみますと、私は大蔵省から出向しました、通産省から出向しました、自治省から出向した。そうか、やっぱり違ったな、日本外交官はこれだけ違うのだなと思って、実は私はそのときに失望を感じておるのであります。  いまもおっしゃいましたが、どうも語学ができる者ばかりをともかく大事にして、識見あるいは抱負、こういうようなものについての訓練が足らないんじゃないか、あるいはまたまともな、あなたはいま、ジェネラリストとしての常識を養わさすのだというようなことをおっしゃいましたけれども、果たしてできておるのだろうか、私は大いに疑問を持つものでございます。  いかに大事であるかがわかろうかと思いますので、一例を申し上げて質問をいたします。  昨年の秋、福田総理大臣はイランへ行かれました。そしてパーレビ国王と握手をされて、パーレビ王室を持ち上げたことは御承知のとおりです。しかし、すでに昨年の八月におきましては、もうイランにおいてパーレビ王制というのは崩壊することは間違いないということを私どもも聞くし、かつまた、お隣のイラクの在外公館において堂々と私どもに説明のあったところであります。あるいはまた私の縁者にイランにおるのがおりますが、それに聞きますと、もうすでに昨年の春から小商売人のストライキが起こっておる。イランの実態から言うならば、学生がストライキを起こす、デモを起こす、続いては一般労働者が起こす、最後に一般商人、小売商人がゼネスト、デモを行うときには、もうイランにおいてはその政権は危ういというのが常識になっておる。  そこへもってきて、なぜ日本の総理大臣をイランに出したのか。これによってイラン民衆からは、パーレビ国王と日本の福田総理大臣が握手したことによって対日感情が非常に悪化した。このことは外務省の諸君も認めるところだろうと思います。その後も中国の華国鋒主席がパーレビ国王と握手したことによって、イランにおける共産主義者がこれまたほとんど中国に失望しておるということも私は聞いております。同じように日本に対しても悪感情を持っておる。これが一般市民の反応であるということが言われておるのでございますが、なぜあの時期に福田総理大臣にイランを訪問させたのであるか、お伺いしたいのです。
  210. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいまの御質問におかれましては、当時の福田総理大臣のイラン訪問がパーレビ王朝のてこ入れのために行われたとおっしゃったかと存じます。(井上(普)分科員「いやいや」と呼ぶ)違いますか。もしそうでないのならば申し上げますけれども、その当時イランの情勢はおっしゃるとおり非常に急迫いたしておりましたけれども、イランは依然として中近東の大国であります。特に非アラブの産油国といたしましては、中近東において最も重きをなしておったものであります。そこを除外して中近東訪問というものは画竜点睛を欠く、こう思った次第でございます。  なお、当時まだパーレビ王朝が倒れるという点につきましては、確立した受け取り方としてはございませんでした。もちろん一部炯眼な方でそういう方もおありだったかと存じます。しかしながら、全般的に見まして、やはりこの訪問後の非常なる事態の変化というものがあったと存じます。  第二に、イランの対日感情は決して悪くないことは、このたびいろいろと報道されているとおりでございまして、新政権を承認いたしましたときのバザルガン新首相の和田大使に対します言明その他を通じまして、また現地からの報告によりますと、日本人と言えばみんなから非常に歓迎される、こういうふうに報告を受けております。  そういう次第でございまして、ただいまおっしゃられましたような御危惧はなかったのではないかと存じております。
  211. 井上普方

    井上(普)分科員 私はこれはイラクにおいて聞いたことなんです。あるいはまた私の縁者でイランにおる人間から私は聞いておる。もうすでに、パーレビ王朝は倒れるであろうということは昨年の春からささやかれておった。そのためにイラン民衆の日本に対する感情は非常に悪くなったということを私は言っておる。私は先ほども、福田総理が行くことによってパーレビ王朝の支えになったなんということは言っておりはせぬ。イラン民衆にとって対日感情は悪くなった、このことは否めない事実であります。  それじゃあなたは――いまこんなことを小役人に言ってもしようがないんだけれども、それほど大事なのであれば、なぜそれじゃイラクへ行かなかったのです。お隣じゃありませんか。福田総理大臣はなぜイラクへ行かなったか。道順じゃないですか、あの道順を見たら。石油をわが国が輸入する大事な相手国であることは私も重々存じておる。サウジにも行く、あるいは首長国にも行く、イランもおいでた。じゃ、なぜイラクには行かれなかったのか、となるじゃないですか。私はどうも不思議でならないのであります。それは外務省に言わせれば、情報をとる金がないからとも言っていつも逃げ口上をする。するけれども、実際に果たしてこんなことでいいのだろうか。もう少し的確なる判断と的確なる見通しがつけられるような外務省になってもらいたいと私は思う。単にアメリカのCIAの情報によって動いたとは私は思いたくはない。思いたくはないけれども、日本の福田総理大臣あるいは中国の華国鋒首相が続いてイランを訪問されたことを見ますと、アメリカのCIAの情報によって日本外交が動かされたのじゃなかろうかと疑うのは私一人じゃないと思う。私はいままでも全然考えなかったけれども、あなたがおっしゃったので、なるほどな、パーレビ王朝を支えるために、支援するために日本の総理大臣が行ったのかなというようにとられることもあり得るんだなと実は私感じた。ここらあたりなんです。私は日本の将来を考えると、やはり民衆の中に親日感情を植えつけていくことこそ外交の基本でなければならないと思う。外務大臣、いかがでございます。
  212. 園田直

    園田国務大臣 第一番に、最初発言されました外務省の人材の登用、教育、こういうことについては私もいろいろ深刻に考えておるところであります。大事なところでありますから、さらに広く御意見を個人的にも承って、将来の人材登用、教育に資したいと考えております。  イランの問題については、私、一月にモスクワへ行って、帰ってからすぐイランに参りました。そのときは、後で財界の方やその他から聞くと、イランに詳しい方は相当前からあの王制はつぶれるだろうという考え方を持っておられたようでありますが、私は、一月に行ったときにはそれを如実に読み取ることはできませんでした。総理と一緒に参りましたとき初めて私が国王と会い、それから国王と更迭された総理大臣との会談もやったわけでありますが、二回目に行きましたときには、これはおかしい、これはがたがたするだろう、こういうことを考えて、帰ってからはそういうことを言ったわけであります。  いずれにしましても、情報を的確にとり、その場で、相手の政権がある場合に、その国を訪問しておかしいと言うわけにはまいりませんけれども、今後は十分そういうことを考えて手違いがないように、しかも、行ったことによって的確に日本外交の進路が得られてくるように考えたいと思います。
  213. 井上普方

    井上(普)分科員 一例をイラン訪問について申したわけであります。イラン民衆が日本に対して一応持っておった親日感情というものはあの時点において大きく崩れ去ったということを私は聞いております。これは私が直接知ったわけじゃなくて、イランに在住しておる私の縁者から聞いた。ここらあたり一つを見ましても、日本外交はしっかりしてほしいということをお願いするのでございます。  このガットの交渉を見ておりましても、本当にこれはわれわれの実情を向こうに伝えておるんだろうかというのは、私は不思議でならないのです。見てごらんなさい。ちょうど明治初年にパークスが大声でもって日本政府にどなったごとく、アメリカの通商代表のストラウスは日本へ来てどなったじゃありませんか。唯々諾々としてアメリカの言い分を聞いてきた日本のいままでの外交の集積がここにあらわれておるのではなかろうかと私は思う。もちろん日本アメリカとが将来とも安保条約を廃棄した後も仲よくいかなければならないというのは私の主張であります。しかし、仲よくやらなければならないし経済的にも友好関係を保たなければならないけれども、いまの状況のもとにおいて果たしてできるのか。アメリカ外交を見てごらんなさい。一つずつ、オレンジ問題で日本にがむしゃらに要求した。日本が譲歩した。続いては牛肉。これも猛烈にともかく牛肉一点張りでもって日本へ要求をしてきた。そして一体牛肉はどうなんだというと、アメリカは輸入してから日本へまた輸出するような形じゃございませんか。あるいはまた今度の電電公社の問題につきましても、あのジョーンズ報告を見てごらんなさい。全く感情的な言い分じゃございませんか。電電公社の総裁が国会で用事があったがために会えなかった。そうすると、ジョーンズ報告においては、悪意にわざわざこれを、会わない、待遇が悪かったと言わんばかりの考え方に立っておるじゃございませんか。私があえてこういうことを言いますのは、果たして日本主張すべきところを十分に面と向かって主張しておるのだろうか、疑問に思わざるを得ないからであります。  私は幕末からの外交史というものをちょっとかじってみました。幕末の日本の幕府の外交官というのは、いかにもアメリカやあるいはイギリスの外交官からは優柔不断、言うことを聞くがごとく不服従の態度をとってきた。そして片方、明治維新になってからの日本の若手外務官僚はばりばりとともかく物を言った。ここに日本の信用というのが出てきたんだと思う。果たしていまの日本外交官で日本主張すべきことは堂々と胸を張って主張相手に対して耳の痛いことでもどんどんと言ういま外交ができておるんだろうか。それが将来は外国から畏敬せられる道であると私は考えるがゆえにあえてこういうことを申すのです。日米外交交渉を見ておりまして、日本外交を見ておりますと、幕末の幕府の外交官のごとき姿勢がこのようにこじれさした大きな原因じゃなかろうかと私は考えます。外務大臣、いかがでございます。
  214. 園田直

    園田国務大臣 まず、先ほどのイランのことからちょっとお答えしますが、局長が答えましたとおりでございまして、イランは一時は排他的でありまして、日本人の身辺の危険なような状態もございました。その後新政権ができましてから非常に対日感情がよくなりまして、今日では大方の車に日の丸の印をつけて走った方が安全であると言われるぐらいきわめて友好的であることは御報告をいたしておきます。しかし、今後とも十分小さい点に注意をして、相手の国民の感情を知らない間で過ちを犯して悪くするようなことは十分注意をいたします。  なお、米国との関係でありますが、御意見は十分拝承しましたが、決して唯々諾々としているものではありません。特に私は日本外交というものはとかく会っていると唯々諾々としているが、実行になるとやらないというような空気を醸していることは十分認識をしておりまして、率直に私は意見を言っております。  たとえば、一例を挙げますと、ストラウスとボンで対決した場合も、私や牛場君が決裂するなら決裂してもよろしいということで決裂の一場面さえもあったくらいでありまして、言うべきことは率直に言っております。しかし、惰性がありますから、今後とも、よくただいまの御発言は拝承して、そういう方向で、率直に言うべきことは言い、ただすべきことはただす、こういうふうにやるつもりでございます。
  215. 井上普方

    井上(普)分科員 私はイランにおいて民衆の親日感情がその後非常にいいということを承りまして安心するのでございます。何を申しましても基礎になるのは民衆のわが国に対する見方であります。イランのことを申して失礼でありますが、パーレビ周辺のイランの北部に住んでおる一部の人たちだけの意見を聞いて日本のイラン外交というのは行われてきたのじゃないだろうか。国王周辺の人たちの意見だけで日本のイラン外交というのが行われてきたのではなかろうかと私は思うがゆえにあえてこういうことを申し上げるのであります。  もう一つ。やはり惰性があったということは大臣もお認めになっておられますが、これはお認めになるとかならぬとかいう問題じゃなくて、日本の将来のために考えますと、外務省というのはもう少し機構は大きくなってもよろしい。金はたくさん使ってもよろしい。そして日本の安全と日本の資源を確保して民族の将来の発展をやるのは外務省なんだという気概を持ってほしい。そしてその気概にこたえるだけの働きをしてほしい。これを私は要求するのであります。いまの外務省に果たしてその気風ありや否や、私は疑問に思わざるを得ません。残念ながら疑問に思わざるを得ない。これをいかにして育てていくか。民族の独立のために、あるいは将来の日本が国際的に畏敬せられる国であるためには日本外交はいかにあるべきか、そういう若い外交官――いまの大使なんという諸君にこれを望んでも私は無理だと思う。しかし、若い諸君にひとつ気概を持たせるように外交官を育てていただきたい。これが民族の安全のためには非常に重要なことであると思いますがために私はあえて外務省の諸君には耳ざわりなことを申し上げた次第であります。私の意のあるところを十分おくみ取り願いましてがんばっていただきたいことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  216. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、竹本孫一君。
  217. 竹本孫一

    竹本分科員 二つほど私は大臣にお伺いしたいと思うのです。  まず最初に日米経済協力関係の問題でございますが、外務大臣として東京ラウンドはいつごろいかなる形においてまとまるであろうとお考えになっておるか。どうもだんだんにこれが延び延びになっておりますし、いろいろな問題もまた横から出てきておるようでございますが、大臣としてのお見通しをお聞かせ願いたい。
  218. 園田直

    園田国務大臣 いろいろありますけれども、外務大臣としては東京ラウンドは四月までには収束をしたいと考えております。
  219. 竹本孫一

    竹本分科員 次に、これと関連をするのですけれども、来月ブルメンソール長官が日本に見えるということになっておるようでございますけれども、その際に――日本の貿易の黒字あるいはアメリカの赤字の減少のテンポが少し遅過ぎるということに対するアメリカのいら立ちが日本で想像する以上に深刻であるという点については通産省の橋本審議官も報告をしておるようでございますが、実は私個人も去年の八月でしたかアメリカに参りまして議員連中といろいろ話をいたしましたけれども、そのときにもなかなか予想外に強い感じでございました。さらに、日米の議員の協議懇談会がこの前持たれましたときにいろいろアメリカの人たちと話しましたけれども、そのときに彼らが言うのは、日米関係はややこしいことではないのだ、シンプルクェスチョン、簡単な問題をひとつ解決してもらいたいだけなのだ、要するにアメリカの赤字を早く縮小させてもらいたいのだ、こういう簡単な問題、簡単な答えをわれわれは要求しているだけだ、しかるに日本の方の対応が非常にぬるい、こういうような議論を盛んにやっておりました。その後、議会等の動きを見ておりますと、政府の動きと議会の動きというものは御承知のように大分違う。特に議会の方が少し荒っぽいと思いますが、その議会の方の発言権がだんだんに強くなりまして、あるいはパニック議員、あるいはジョーンズレポート、さらには上院のベンツェン氏のいろいろな法案といったようなものを見れば見るほど、問題の取り上げ方が激しく厳しくなってきておる。そういう意味において、輸入課徴金をかけるというような案も出てくる心配も日本で受けとめている以上に、先ほども外交認識の問題がいろいろ出ましたけれども、われわれが受けとめている以上に深刻な動きがあるのだ。したがって、むしろそういうものはあるという前提に立たなければならないくらいの危機的な状況である、こう思うのです。  二つお伺いをいたしたいのですけれども、大臣はそういう点について事態をそういう危機的な状況であるというふうに受けとめておられるかということが一つ、もう一つは、これに関連しまして、ブルメンソールさんも電電公社の資材の購入について門戸開放をしろということを言ってきておる。私は公平に見まして、日本努力というものも相当評価すべきであるし、アメリカも確かに評価してきたようでございますけれども、先ほど申しますように、なかなか問題の解決に対するテンポが遅い。特にいま象徴的な問題になっておりますのは電電公社の問題でございますが、これは事務官僚と申しますか技術屋さんと申しますか、電電公社の方々のおっしゃることは十分わかりますし、理由があると思いますけれども、その事務的レベル、技術的レベルで問題に取り組んでおれば、結局はアメリカをいら立たせるだけである。したがって、この際は特に、あるいはこれからもそういう事務的な、技術的なレベルだけで問題に取り組まないで、国家の重大な政治、経済に関する問題については政治家レベルで問題の解決に取り組むべきである。したがって、電電公社の問題についてもいろいろ努力をされていることもわかりますけれども、私は最終的に、事務的ないろいろ因縁、情実というわけでもありませんが、技術的な説明を聞いておればそれなりの理由があることはよくわかりますけれども、そこを四捨五入してレベルを高くすることが政治である。その政治解決に取り組む決意がなければならぬと思いますが、この点はいかがでございますか。この二つをお伺いしたい。
  220. 園田直

    園田国務大臣 日米の経済関係、御承知のとおり政府調達の問題、関税の問題その他若干の問題があるわけであります。他はだんだんと煮詰まってまいりましたが、関税の問題と政府調達の問題が残っているわけであります。これに対しては楽観論もあれば悲観論もあるわけでありますが、私は非常に深刻に考えております。米国の議会の各議員の発言、特に日本に好意を持った日系議員の方々の発言等を聞いてみましても相当深刻でありまして、保護貿易の台頭、特に課徴金などというものは、やりようによっては必至のような状態にある。まさに緊迫すべき状態にあるので、これはひとつこれが大きな政治問題にならないうちにこの問題は解決をしなければならぬと考えております。  政府調達、電電公社の問題、これも私は電電公社の方々からも十分意見を聞いておりまするし、電電公社と向こうの独占事業である電機会社との話し合いも、打ち合わせもやっておりまするけれども、いま最後に外務省の大木審議官が電電公社の人と行って向こうと理解を深める。続いて電機関連業者の方も近く行かれるということでありますけれども、御発言のとおり、ある程度話し合いが煮詰まってきたら、被害を最小限に食いとめつつ、政治的にこれを解決するという方向で解決をせなければ、事はきわめて重大になると考えております。
  221. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣の力強い御答弁をいただいて大変心強く思うのですが、なおそれに関連をいたしまして、たとえば輸出の自主規制といいますか抑制措置と申しますか、そういうものも本年度末にはおわるという予定でございますし、それに対してまたアメリカのいろいろの反発もあるようでございまするが、先ほど申しましたように、彼らが言うのも、きわめて簡単明瞭に黒字はどうなる、赤字はどうなるというこの結論だけなのですから、途中の説明やら弁解は幾ら言ってみても何の役に立たない。そういう意味で大変犠牲を日本国民、日本経済としては覚悟しなければなりませんけれども、日米関係の長期展望の上に立って、この際は輸出を抑制することを三月で打ち切るというようなそれこそまた事務的な考え方でなくて、四月以降についても、とにかくよくなった、なるほどアメリカもこれで納得ができたというときまではその抑制措置は続けるべきであると思いますが、いかがでございますか。
  222. 遠藤実

    ○遠藤説明員 その点につきましてはさらに今後の国際収支、貿易収支の状況その他を考え合わせまして、さらに検討して決定したいと考えております。
  223. 竹本孫一

    竹本分科員 考え合わせましてとおっしゃればそのとおりだと思うわけですけれども、私が要望しておるのは、そういうものを考え合わせた上に政治的決断が要りますよということを特に大臣にも要望しておきますので、お含みの上に善処をしていただきたい。要望を申し上げておきます。  あともう一つは、北方領土問題について二、三の点をお伺いいたしたい。  御承知のように、沖繩・北方問題に関する特別委員会におきましても、この問題については、ソ連の四島における軍事措置を撤回するように決議されましたし、さらに衆議院、参議院の本会議においてもこの決議が行われたのであります。大臣、その際にもいろいろと御所見を承りましたが、この決議を受けていかなる措置をとられたか並びにとられようとしておられるのか、この二つの点をお伺いいたしたいと思います。
  224. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 衆参両院の本件に関する決議の御趣旨を私ども政府としてはいただきまして、ソ連側に対しまして二月二十六日、在ソ魚本大使からソ連側のフィリュービン外務時間にこの決議が行われたこと及びその内容をあらまし伝えまして、北方領土問題及び今回の軍備増強に関する日本政府の申し入れは単に日本政府のみの考えでなく、広く日本国民一般の強い考え方であるということを伝えたわけでございます。
  225. 竹本孫一

    竹本分科員 これに対するソ連側の反応が一番問題なのですけれども、いかなる反応がありましたか、どう受けとめられておりますか、伺いたい。
  226. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 これに対しましてソ連側のフィリュービン次官の反応といたしましては概略次の三点でございまして、決議があったことはすでにその事実を承知しているが、ソ連政府としては北方領土問題は存在しないと考えており、この問題について日本側と話し合うつもりはない。第二点は、この決議は日本政府に対するものであって、決議の採択は日本の国内問題であるから、ソ連政府の関知するところではない。第三点は、この問題をめぐる最近の日本側の動きは日ソ両国間の友好関係の発展に逆行するものである、概要このような趣旨のことを先方は応答したわけでございます。
  227. 竹本孫一

    竹本分科員 この問題に対するソ連の回答は大体考えられるような回答だと思いますが、これについて私の個人的な意見は後で少し述べさせていただきますが、それに関連して、これは大変デリケートな問題でございますので、答弁は適当な方からやられて結構だと思うのですけれども、われわれは、日中平和条約におきましても覇権反対ということを言った。そこで外務省にお伺いするが、私は、ソ連の今度の四島における軍事措置といいますか、これは明らかに覇権的行為であると思うのだけれども、覇権的行為と認めておられるかおられないかということが一つ。それから第二番目は、覇権的行為というのは、一体だれがいかなる基準で判断をして結論を出すのか、その点について、政府部内においては大体こういうふうなところで覇権的であるか覇権的でないかの判断、結論を出すんだということについての、ルールか基準か、一体おありであるかどうかという二つの点をお伺いしたい。
  228. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 私から第一点についてお答えを申し上げます。  北方領土問題、すなわちわが国固有の領土、北方四島をソ連側が今日なお占拠しておることが覇権であるかないかという点でございますが、私どもは、この問題を覇権と断ずるということでなくて、これは、日ソ間に残されました戦後処理の未解決の問題として解決すべきもの、そういう観点からこの解決方に努力をいたしておる次第でございます。
  229. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 第二点、覇権の認定をするのはどういう基準でだれがやるのかというお尋ねでございますが、これは、日中平和友好条約を結びました際の政府説明をたびたび申し上げているわけでありまして、覇権に反対すると具体的に表現を使ってあるわけでございますが、あくまで日本中国もそれぞれの立場におきまして覇権というものを考え、そしてその覇権というものがあった場合には反対するということを言っているわけでございます。したがって、日中間に覇権ということについての基準というものもございませんし、判断は日中間で協議をしてやるとかいうものではございません。判断は、あくまでも日本日本の独自の立場から行うというように御説明申し上げているところでございます。
  230. 竹本孫一

    竹本分科員 第一の問題の、これはソ連の覇権的行為ではなくて、ただ解決してない未解決の問題であるんだ、こういう受けとめ方は、私ははなはだ不満である。これが覇権的行為でなかったら一体何が覇権的行為であるかとさえ言いたいくらいであります。しかし、これはデリケートでもありますし、見解の相違という範疇もありますからこれ以上は言いませんけれども、しかし、私は、こうした行為は覇権的行為であるというふうに私個人は明確な意見を持っておるということを申し上げておきたい。  それから、第二の問題は答弁になっていないと思うのですけれども、中国との間においてそれぞれ独自に覇権あるいは覇権反対という行動をとるということを決められたということは、条約の解釈としてそのとおりで結構だと思いますよ。私が聞いたのは、そうではなくて、今後は、中国であろうがあるいは第三国であろうが、ソ連であろうがアメリカであろうが、いずれにしても、われわれは条約においてはっきりと覇権反対と言っておるんだから、覇権反対と言う以上は、何に反対するかということの基準についてもっと明確なものがなければならぬではないか。何となく覇権反対というばかなことはない。または、政府の一部だけが、あるいは日本の政界の一部だけが覇権反対と言ってみても、日本の国論としてそれこそソ連が認めない。どこの国も認めないでしょう。そういう意味で、覇権という有権的な解釈はどこでやるかということについて、閣議で一つの方針、ルールを決めていなければ話にならぬと思うのですが、決めていないとおっしゃるのであるか、決めておるけれどもいまのは答弁になかったというのであるか、あるいはこれから少なくとも覇権というものについては閣議なら閣議でこれは覇権的行為であるという結論は下すという考え方に立たれるのであるか。物差しのない反対ということはない。そこはどうですか。
  231. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 日本の国におきまして覇権というものを最終的に決めるのはどこかというお尋ねでございますれば、特に明瞭に決まった合意と申しますか、決めるのだという機関も設定されておりませんし、政府の内部であるわけではございませんけれども、当然のことながら日本国憲法において内閣が政府方針を決める最終的な機関でございますので、内閣において最終的には決定されるものであろうということになると思います。
  232. 竹本孫一

    竹本分科員 覇権ということについてわれわれがあれだけ大騒ぎした条約で覇権反対ということを言うのですから、ある程度、もっと具体的なコンセンサスがなければならぬではないかということが一つ。それから、いまの答弁で大体わかりましたが、やはり行政の責任者としての最高の責任のある内閣がこの問題について決めるべきであるが、まだ決めてはいないというような御答弁のように承るのだけれども、将来少なくともある一定の行為が覇権的であるかないかということについては、必ず内閣においてこれは決めるべきものであるというふうに解釈してよろしいかどうか、外務大臣の御所見を承っておきたい。
  233. 園田直

    園田国務大臣 これは内閣で決定すべきものであると私も考えます。
  234. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで、覇権の問題はその程度にいたしまして、今度は先ほどのソ連の回答の問題についてでございますが、ソ連の回答は、日本政府に対する決議ではないかとか、あるいは領土問題はもうすでに存在しないではないかというような意味において、少なくとも日本国民の熱望を集約してやった決議に対する十分に期待に沿うような答えではないと思いますが、その場合に、これからの外務省方針としては、いやそうではない、まだ解決はしていないんだというようないままでの日本立場を繰り返し、粘り強くという言葉がよくありますが、粘り強く、極端に言えば言うてみるだけであるのか、あるいは、言うてみるだけでは承知できない、少なくとも相手は力の信者のソ連ですから、何とも馬耳東風で聞き流すだけだろうと思いますが、ただ、いやその問題はまだ未解決である、解決しなければならぬ問題であるということを依然として繰り返して述べられるにとどまるかどうかということであります。それが一つ。  それから関連してもう一つわかりやすく申し上げますが、ソ連がこの問題について、軍事的措置を撤回しろという決議を出した、それに対して応じなければ日本としても考えがあるんだといったような意味において、たとえばソ連がいま盛んに言ってきている経済協力の問題は当分打ち切りだ、あるいはストップだ、凍結だといったような、少し力のこもった措置を講ずる意思があるのか、政経分離で、領土問題は未解決のままだ、いやそうじゃない解決だ、解決が済んでないんだというような繰り返しを続けながら経済協力はそのまま続けていかれるつもりであるか、この点伺いたい。
  235. 園田直

    園田国務大臣 日本とソ連との間で、いまおしゃいましたように経済協力あるいは通商、金融、いろいろ問題があるわけであります。ソ連の方が期待するものもまたたくさんあるわけであります。そういうものを糸口にして、一つずつ積み重ねていって友好的な雰囲気をつくり、これを大前提である領土の問題に及ぼす方がよいのか、あるいはいまあなたがおっしゃったように、両方に横たわる共通の利害というもの、これを聞かなければわれわれもこれは話は打ち切ると言った方がいいのか、これは十分検討していかなければならぬ問題であると考え両方検討しているところでございます。
  236. 竹本孫一

    竹本分科員 これから先は個人的な意見で思いつきにすぎませんが、私はある程度一つずつ片づけていくという事務的な積み重ねである状況が開けるという場合もあるでしょう。しかしながら、相手はソ連であるからなかなかその手には乗ってこない。何年努力してみてもこの問題については何らかの力の要素というものが加わらなければどうにもならぬではないかという心配をいたしておるわけでございますから申し上げるのですが、たとえばこんなことが考えられないかというのですね。それは四島撤去の決議が出た。日本国民にもそれだけの熱望があるということはソ連だってわかっておるはずで、わからぬような風をしておりますけれども、これは日本国民の一部がアジったわけでも何でもない。政府がアジったわけでも何でもない。自然発生的な国民の要望であるということはだれもが認めておる。したがって、それに対応が不十分な場合には承知できないので、いま申しましたように経済協力はしばらくストップする。これは明確に打ち出す。しかし同時に、もしその撤回に応ずるならば、軍事的措置を撤回するというような、ソ連が誠意ある対応を示してくるならば、その場合には日本としてもそれにこたえなければなりませんから、ソ連がよく言っておるような善隣友好条約と日ソの平和友好条約は同時に審議をする、そして同時に決着をつける、そういうような意味の一種の妥協ですね。日本としても譲歩する。向こうが撤去するならば撤去に応じてわれわれの方もソ連が言った顔を半分立てて、一方だけというわけにはもちろんいきませんから、同時に平和条約と善隣友好条約とを審議しましょう。もちろん同時の決着でなければならぬが、いままでは政府は同時に審議することに何だかえらい強い反対を唱えておられますけれども、やはり外交ですからお互いに譲り合うということがなければなりませんので、向こうが強く出れば経済協力は当分凍結だ。向こうが誠意を持って出てくるならば、われわれの方も誠意を披瀝する意味において善隣友好条約と平和条約は同時審議に応じましょうというような外交的な手は打てないものか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  237. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの考え方も一つの考え方として私も考えてみたことがあります。善隣友好条約については、やはりただすべきものはただすという、ソ連側が北方四島領土問題に対して話し合う姿勢を見せるか、あるいは誠意ある態度をとるかということになれば、それを前提にするならば考え方はいろいろ出てくると思います。
  238. 竹本孫一

    竹本分科員 この問題はデリケートでもありますから、余り細かく議論することはどうかと思いますのでこの辺で終わりますけれども、意のあるところをくんでいただきまして、要するに何か手を打たなければ、じっと考えておるとか、同じことを何度も繰り返しておるだけでは全然前進をしない。園田先生のステーツマンシップに私は非常に大きく期待を持っているのです。そういう意味で、ひとつそのステーツマンシップを発揮していただきたいことをお願いするわけであります。  最後に、択捉と国後の問題の軍事的重要性ということについて、日本の国民あるいはマスコミその他、ちょっと認識が甘過ぎるというか、少な過ぎるというふうに私は思う。どうしてそういうことを言うかと申しますと、ペトロパブロフスクというところから北海道まで線をずっとつないで考えた場合、したがってオホーツク海という海が、択捉、国後がさらに軍事的な措置を講ぜられて大きな基地になる、兵隊もたくさん入る、ミサイルも備えつけられる、潜水艦も入る、こういうふうになりますと、これはかつてケネディが一大決断をもって対応いたしましたキューバ問題が、オホーツク海がソ連海になるといったような形においてアメリカに対してだけでなくて、日本に対してもそういう危機的な状況になるのではないか。要するに第二のキューバではないか。あるいは第二のキューバとして認識するような重要な要素を持っておるではないか。ただ二つの島がどうだという問題だけではない。単にオホーツク海がどうなったという問題ではなくして、日本に対するあるいは日本の安全に対する、そしてまたアメリカに対する非常に大きな脅威である。その脅威の受けとめ方が単なる小さな、と言っても相当な島のようだけれども、二つの島という問題ということではなくて、軍事的に考えるならばもっともっと深刻な要素を持っておる。第二のキューバという表現がいいか悪いかは別といたしまして、そういう方向の危機的な感覚を持たなければならぬではないか、こう思うが、単なる物理的な二つの島と考えておられるか、より以上に重要な軍事的要素の強いものであると考えておられるか、お考えを承っておきたい。
  239. 園田直

    園田国務大臣 重要な軍事的な基地として考えておるからこそソ連はああいう態度をとっておるものと思います。
  240. 竹本孫一

    竹本分科員 非常に重要な深い意味を持ったものとしての認識を持っていただくようでございますから、その認識に応じたような対応を強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  241. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、井上泉君。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕
  242. 井上泉

    井上(泉)分科員 ただいま竹本先生の北方領土の問題、対ソ連の関係についてのいろいろな質疑を私も拝聴して、私自身も予定をしておりましたけれども、これについて園田外相が昨年の分科会でもソ連の善隣友好条約に対してとった見解といいますか、その方針を今日もなお貫いておるということに対して敬意を表するものであります。特に、また昨年の三月からこの一年間におきましては、日本外交は大きな功績といいますか、歴史に残る仕事をされたわけで、そのことはやはり政治家としての、政治が国の行政を指導するという本来のあるべき姿を具現したものとして、その点についても深い敬意を表するものであります。そこで、私は外交というものが、日本のようにあくまでも武器を用いず、戦争によらず平和的に国際間の紛争も処理していこう、そういう平和に徹した外交姿勢というものは、今日の非常に複雑で、そして至るところに砲弾のにおいが立ち込めるような状況の中できわめて重要なものを持っておると思うわけであります。  そこで大臣に、いま中越紛争について日本あるいは西欧諸国が、双方がそれぞれ侵略した地域から軍隊を引き揚げることによって話し合いをし、そして平和的解決を図るべきである。こういう提言をされておるということを聞き、それについては西欧諸国においても、関係諸国の中であるいは一部は反対した。そういうことは中国を利するものだという見解を述べておる国もあるようでありますけれども、やはりそのことはきわめて大事なことであるので、中越紛争についての解決方法について大臣はどうお考えになっておるのか。この機会に改めて御見解を承っておきたいと思います。
  243. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御発言がありましたとおり、日本外交は憲法に従い平和外交に徹することはきわめて大事であると思います。そのためになまぬるいこともあり、あるいは非常に厳しいこともあると思いますけれども、それにめげずにこれを一貫してやれば最後には平和外交目的を達する、このように考えておるわけであります。全く御発言のとおりでございます。  カンボジア情勢は、一番情報が入りにくいところでありまして、この判断には困難を感じておるところでありますけれども、人民革命評議会側が主要都市を支配しておるが、これに対して、民主カンボジア、いわゆるいままでの政権の方が各地でゲリラ戦を展開しておる。この情勢がどのようになるか、全く予測がつかないというのが正直なところであります。ベトナムの方とはいまなお接触がございまするが、カンボジアの方とは北京で大使同士が話しておるだけで、ほとんど情報が入りません。いずれにいたしましても、わが国としては、カンボジアにおいても即時停戦、外国軍隊撤退、民族自決と内政不干渉の原則によって平和的解決を図るように要求をしているところでございます。
  244. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう姿勢を貫くに当たって、カンボジアでありますけれども、カンボジアわが国外交関係、いわゆるポル・ポト政権外交関係を持っておるわけで、一方のヘン・サムリンの現政権、サムリン政権と称する、いわゆる救国民主統一戦線ですか、それとカンボジア民主政権と、二つの政権が、新聞紙上によると相争っておる。現実カンボジアでそういう二つの勢力が、一方はベトナムの支援を受ける形の中で紛争が起こっておるわけですが、そういう中にあって、日本はやはりポル・ポト政権との外交関係を樹立をしておるし、そしてまたその外交関係というものは当然継続をしていくべきことであるし、そういう点についていささかも心配はしておりませんけれども、このヘン・サムリン政権がプノンペンを落としたから、だから日本はもうポル・ポト政権とは国交関係を断って、新しい政権と国交関係を結ぶのだとかいうような軽々な行為はとらないものだと思うわけでありますけれども、それについての大臣の見解といいますか、対処の仕方というものをお聞かせ願いたいと思います。
  245. 園田直

    園田国務大臣 ポル・ポト政権が首都を放棄したからといって、直ちにこれと外交関係が切れるというわけではございませずに、御発言のとおり、現在のところはポル・ポト同政権との外交関係は継続しておると私は考えております。
  246. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、この中越紛争というものの背景とかいうようなことを論議をすることも、時間もないし、またそういう必要もないと思うわけですが、要は、ああいうふうな、中国で言えば懲罰の意味を持って攻撃者に対して打撃を加えたということでやってはおりますけれども、やはり一種の戦争行為には変わりはないわけなので、そういう点からも、やはりアジアにおける日本の地位から考えて、これはもっと日本としても積極的に中越紛争解決をする行動というものを、私は、国連の場においても、あるいはASEAN諸国に対しても、いま少し積極的に行動を展開されてはどうか、こういうふうに思うわけですけれども、その点について大臣の見解を伺いたい。
  247. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨に基づいて、国連においてもASEANの諸国との連絡等、あるいはベトナム中国等とも、絶えず、繰り返し繰り返し、状況に応じて要請をし、要望をいたしております。今後とも続けるつもりでございます。
  248. 井上泉

    井上(泉)分科員 それはアジアのいろいろな問題国といいますか、そういう問題を抱えておる国に、朝鮮半島における二つの国家の存在の中で、これは昨年大臣に私が質問をしたときに大臣が述べられた、朝鮮民主主義人民共和国と韓国との関係というものとは、もう格段に、比較にならないほど対話のムードというものができておるわけですが、そういう事実認識の上に立って考えるならば、やはり今日、私は、朝鮮民主主義人民共和国との交流というものに、より一層外務省は積極的に乗り出しても構わぬじゃないか、こう思うわけですが、どうでしょう。
  249. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 これは、今回の国会の外交演説における外務大臣の談話に基本的には尽きていると思います。すなわち、北朝鮮との関係については、今後とも経済、文化等のあらゆる分野における交流を漸次積み重ねて行く、相互理解の増進に一層努めていくという政策を維持しているわけでございますけれども、今後とも、やはりこれは相手のあることでございますので、北側のこれに対する対応といいますか、姿勢というものを注視しながら、さらに進められるものは進める、そういう基本的な姿勢を維持しているところでございます。
  250. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう姿勢にあるならば、たとえばいま朝鮮労働党の代表団が社会党の招きで日本に入りたい、日本社会党が朝鮮労働党の代表団を呼びたい、こういうことに対して、労働党の名前をつけたらいけないとか、あるいは個人の資格だとかいうようなことが新聞紙上、取りざたされておるわけですが、そういう条件をつけて、ことさらに問題から逃げようとする、そういうやり方というものは、いまあなたが言われた精神と反するのじゃないですか、どうでしょう。
  251. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 北朝鮮労働党代表団入国問題、これは御承知のとおり法務省の所管事項でございまして、ただ外務省としてもいろいろ御相談を受けて、現在検討が進められているわけでございますけれども、現在、法務省においてなお検討中というふうな連絡を受けているところでございます。
  252. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは法務省が決めるにしても、法務省が決めることだから外務省はそれに関与せぬということではなしに、やはりわが国平和外交を徹底をさせていくためにも、そしてまた、朝鮮が事実的な統一の機運というか、対話のムードというものが盛り上がっておる、そういう中でいわゆる韓国側の政治家は、いつも日本に無条件に来ておるわけですが、今日、共和国の政治家、それが日本へ来ることに対して、それを法務省が抑えるとか抑えるような風潮があるということ、それを外務省が黙認をして、法務省がやることだからということで対岸のできごととせずに、これはまたやはり園田外交の一つの大きな功績にもなることではないかと思うわけですけれども、これからの朝鮮の平和的な統一を図り、そして南北朝鮮が対話ムードを促進させておる、そういう中で外務省がなぜ積極的に働きかけをしないか、外務省はそんなことにいろいろな条件をつけずに、労働党の代表を社会党が迎えて入れるということなら、それは入っても結構ではないか、私は、そういう意思表示ぐらいはしてしかるべきだと思うのですが、どうですか。
  253. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 井上委員御指摘になりましたとおりの最近の南北対話の再開のムード、一回目の会合が先般開かれまして、また近く来月早々二回目の会談が開かれることになりました。また、卓球チームの統一チームの問題も、きょう午前中、板門店で会議が開かれて、これも二回目の会議が来月早々開かれるということになったと伝えられておるわけであります。このような南北の対話ムード、対話の再開よりも、さらに再開された対話が実を結ぶというムードへ、そういう方向へ向かっていくことを日本政府として強く期待し、望んでいるということはたびたび申し上げているとおりでございます。  なお、御質問の、朝鮮労働党入国問題の件につきましては、いま井上委員のお述べになったことも十分外務省、法務省において念頭に置いて検討しておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  254. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、この問題は、やはり大臣としての外交方針の一つの姿勢を示す大事なことではないかと思うのです。昨年の国会における韓国と朝鮮民主主義人民共和国との問題等についての大臣の見解から一年間の情勢の推移を見てまいって、この際共和国の方も自由往来できるような、特にそういう政治の衝にある労働党の代表を迎えるというならば、これはぜひ迎えて積極的に話し合いをすべきではないか。大臣のいままでの外交姿勢から見て、こういう見解になるのが当然の行為だと私は思うわけですけれども、大臣、それに対してはまだ逡巡なさるのでしょうか。
  255. 園田直

    園田国務大臣 おっしゃることはよく理解をいたしておりまして、私もそういうことを念願しておるわけであります。したがいまして、この問題は一つの慣例を破って、これから逐次ケース・バイ・ケースで、一つの方向に持っていくためにはなるべく混乱を少なくしながら解決をしたいということで、いま折々話し合いをしておって、そう遠からず結論が出ると考えております。
  256. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう見解でやられておるとするなら、理解をしてくれるならば、私はその理解を行動に移してもらいたいし、いまその行動をとっておられるということでありますから、その事態の推移を注意深く期待をして見守っておりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、懸案の日本中国との友好条約ができて、そうして経済的な関係も、中国の四つの近代化に対応するための日本の経済界との交流が非常に盛んになってきた。盛んになってきたということは非常に喜ばしい現象であるわけですけれども、そのときに、台湾に対する日本政府としての姿勢そのものは、台湾は中国の領土であることを認めた上での日中平和友好条約であるから、それで済んでおるといえばそれまでのことでありますが、台湾が中国、中華人民共和国の方に一日も早く復帰をするような、そういう中国政府としても強い願望を持って行動しておって、台湾が入ってくることについてはいろいろ厳しい条件をつけるのではなしに、現在のありのままの姿の中で台湾の復帰を認めるということを言っておるわけですが、これに対して、日本政府としてはこれを全然問題にしないのか、一つの大きな流れ――アメリカですら、アメリカ中国との国交回復に当たっても、台湾は中国のものである、一日も早く中国政権の中に組み入れられるべきであるということになっておるわけですが、日本としても、日本は台湾との関係も一番深いのですから、そういう面で台湾の中国への一日も早い復帰を促進をするような行動をとることも、日中の平和友好という面において必要なことではないか、こう思うわけですが、大臣の見解はどうでしょう。
  257. 園田直

    園田国務大臣 台湾地域中国との間が平和的に解決されることを期待し、望むものであります。その場合、日本がいかなる役割りをするかということは、私の口から答弁することはどうもいかがなものかと思いますので、その点については答弁は御勘弁を願いたいと思います。
  258. 井上泉

    井上(泉)分科員 日本としては、台湾の動向を日本外交の中で度外視して考えておっても支障がないのですか。向こうは武力解放もしない、そういうふうな話をしておる中で、これはもう中国の内政問題だから隣の国がとやかく言う必要はない、こういう見解でおられるのかどうか、その辺についてもう一回お伺いしたい。
  259. 園田直

    園田国務大臣 わが日本とは関係のない、知らぬ存ぜぬことであるということとは考えておりませんけれども、これをどうするかということをお答えすることは適当でないと存じます。
  260. 井上泉

    井上(泉)分科員 それで、台湾問題はさておくといたしまして、アメリカ中国との国交回復に伴って、日本アメリカ中国、これをよく、ある勢力といいますかある者は、日米中の三国軍事同盟だとかあるいはその三国によるソ連の包囲だとか、だからソ連は北方領土問題で絶対譲らぬ、しかも歯舞、色丹に強力な軍事基地を設定をしておるとかいうようなことまで合理化するような論調が日本の国内の中にも出ておることは、私は非常に残念に思うわけです。北方領土を返還をさせていくためにも、大臣がさきにも述べられたような、ありとあらゆる機会を通じて国民的運動として盛り上げなければいかぬということに一つの水を差すものではないか、こういうふうに思うわけです。日米中の関係について、そういう懸念を国民の前に一掃するための大臣としての見解があってしかるべきではないか、こう思うわけで、私もそういうことを大臣が述べられたことがあったかどうか知りませんけれども、寡聞にして承知をしておりませんので、ひとつこの機会にアメリカ中国との関係日本中国関係日本アメリカ関係、こういうものについては、これが締結をされたことによって三国の関係は世界の中においてどういう役割りを果たすものであるのか、そういう点も含めて大臣の見解を承りたいと思います。
  261. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約については、これが中国と提携をしてソ連に対抗するものでないことは、私はしばしば中国自体に申しておりますし、また他の国に向かっても説明、理解を求めておるところであります。特に今度のベトナム問題に対する日本政府やり方を見ていただければ、決してこれが中国とすべて協力をして、ソ連やその他に対抗するものでないことは明瞭である、こういう説明をすると、西欧の諸国、東欧の諸国ともよく理解をされます。米国におきましても、先般鄧小平副主席が訪米した際に、米国はこの点をはっきりさしているようでございまして、これは断じて米中日の包囲網ではないということをさらに明確にし、今後の行動においても示したいと考えております。
  262. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、北方領土の返還についての国民世論が統一をされて大きく盛り上がっていかないと、北方領土返還要求の日本外交を推進をしていく上においても非常にいわば迫力が欠ける、こういうことを懸念するものでありますし、そういう点で大臣はあらゆる機会にそのことについては広く訴えてやっていく。それから、戦争が終わってもう三十何年もたって、そして今日まだソ連が領土を占拠をしておることに対する不法性といいますか、不当性というか、言葉をやわらかく言えば、無理解というか、そういう行動にあることについては、やはり国連の場においても訴えるべきではないかということを申し上げたときに、大臣は、そういうことについても機会を見て十分やっていきたい、こういうことも答弁として言われたわけですが、日本が、ソ連の領土返還を要求するのを国連の場に公式に提起をすることはむずかしいのですか、どうでしょう。
  263. 園田直

    園田国務大臣 北方四島の問題で国民の合意の上に立たなければならぬことはお説のとおりであります。またこの問題は、ありとあらゆる場所でありとあらゆる機会をとらえて、粘り強くいかなければならぬことも当然でありますが、過去において、佐藤総理だと思いますが、国連の演説の中で訴えられたことがあります。ただ、国連総会にこの問題を出しましても、一つの出したという事実はできますけれども、それによってよい影響というものはなかなか生まれてこない。ということは、この北方四島問題についてよその国々はこれにかかわりたくないという気持ちが内々あるような気配等もございますので、そういう点も考慮しながら十分検討してみたいと思います。
  264. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、わが国外交アメリカを基軸にした国連外交だとかいうようなことをよく聞くわけですけれども、いまや国連が今度の中越紛争についても非常に無力であるというようなことが言われるわけですが、私は、無力でもやはり国際会議の舞台としては重視をしなければいかぬと思うし、特に国連に加盟しているASEAN諸国に対しましても、こうした領土に対する不法占拠という状態をいつまでも続けておるソ連は、このことを宣伝することによって外交的に非常に失点になるではないか。そういうことも重視しないと、国連外交でやっても弱いというような形でなにすると、日本が戦争に負けたからソ連に占拠されたというようなことで、それはしようがないというあきらめのムード、一方においては日米安保条約があるから、ソ連はそこへ進駐をしているんだというような日本の中の一部の意見というようなものに迎合するようなことになりはしないかと思うのですけれども、そういう点について、もっと国の内外に北方領土返還の大運動を展開をする方途というものを外務省、総理府挙げてやってもらいたいと思うが、ないですか。
  265. 園田直

    園田国務大臣 この問題を国の内外に訴えるということは御説のとおりでありますから、十分検討してみたいと思います。
  266. 井上泉

    井上(泉)分科員 もう持ち時間が五分になったから終わりますけれども、これは大臣が交代しておれば大臣にあえていろいろと質問する事項ではないと私は思うわけですけれども、一昨年になりりますか、福田首相がASEAN諸国を回ってたくさんの経済協力の約束をしてきたわけで、それについては必ず実行する、こういうことをこの前の分科会でも大臣答弁されておったのですが、そのときに約束されたことはもう十分果たされたでしょうか、その辺事務当局から……。
  267. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 果たされたかどうかというのは、現時点で数字的には恐らく申しにくいだろうと思います。たとえばASEANプロジェクトに対する十億ドルの供与という点などにつきましては、各国が鋭意そのプロジェクトを詰めているわけでございますから、現在日本側と先方の間でのいろいろな話し合いが続いておりまして、各国別に五つのプロジェクトになると思いますけれども、これは進行中ということでございます。  それから文化面における協力につきましては、御承知のとおりのアセアン文化基金というものに対するわが方の予算措置も済みましたし、またASEAN側の受け入れ体制も逐次整ったということでございます。  速度が遅過ぎるのじゃないかという声は確かに御指摘のとおりございますし、その点、日本内部においての準備とか手当て等がおくれているためにこれが期待されるほど進まないとすれば、これは私ども常に反省してそうならないようにしたいわけでございますが、一方相手方が、特にASEAN全体のプロジェクトになりますとASEAN五カ国間の意思の調整ということに手間取ることもありまして、そういう方からくる遅延もあると思います。しかしながら、全体といたしましては、前総理の訪問の際に行われた約束は順調に進展している、こう申し上げてよろしいかと思います。
  268. 井上泉

    井上(泉)分科員 大体日本外交というか、外国へ日本政府首脳が行くとすぐ経済援助ということが向こうとの話になるわけですが、日中平和友好条約を締結したときには中国の方からそんな話は全然なしに、あくまでも精神的な友好関係をかたく結んだ条約になっておるわけです。この間、イランに新しい政権ができたから、その政権に対して日本協力するために通産大臣を派遣する、こういうことを大々的に宣伝をすると、今度はイランの方からいま来られても困るという断りの連絡があった、こういうことが新聞に載っておったのですが、やはり金で問題を解決するようになると、今度は金が切れると不仲になるわけで、経済援助というものは当然するべきことならしていかなければいかぬわけですけれども、ただ金を、経済援助をえさに外交関係の緊密化を図るということにしておると必ず破綻がくると思うわけです。そういう点について、私は園田外相のいわゆる経済外交というものに対する考え方をお聞きをして質問を終わりたいと思います。
  269. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、経済外交というのは自分の利益を追求して進めていくという外交ではなくて、相手の国と日本の国がお互いに相補完をしつつ、お互いの発展と繁栄を図り、そしてお互いの国がお互いになくてはならぬ国だ、こういうふうに持っていくのが本当の外交だと考えております。そろばんだけ、利害だけでやる外交というのは確かに破綻がくると存じます。  なお、イランについてのお話がありましたが、これは新聞の報道が誤りでありまして、江崎通産大臣を派遣するということではなくて、イランの政府は、まず混乱の規制、それが終わったら国内産業の回復ということを念頭に置いて手がたくやっておるわけでありますが、これはなかなか困難であります。そこで、もし必要があれば日本はいかようなることでもイランの国内産業の復興について協力をしたい、そこで、それについては、まず日本の方からある時期が来たらどういう協力ができるかという協力調査団を派遣したいということで、向こうの方ではそれは期待するところであるが、その来る時期は自分の方でもうしばらく、政権が安定をして相談ができる時期に話をするから、そのときに来てもらいたい、こういうことで内々話ができておったのが新聞に江崎通産大臣の派遣と書かれて、それでそれが断られた、こういう記事になったわけでございますので御理解を願いたいと存じます。
  270. 井上泉

    井上(泉)分科員 どうもありがとうございました。
  271. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で井上泉君の質疑は終わりました。  次に、川本敏美君。
  272. 川本敏美

    川本分科員 ただいま井上泉代議士の質問に対して園田大臣から、いわゆる経済外交自分の国の利害関係だけを中心にした外交というのは必ず破綻をするのだというお話がございました。私も全く同感でございますが、いわゆる外交の基本というのはどういうことなのか、まず園田外交の基本的な姿勢についてお聞きしたいと思うのです。  私は、外交の基本というものは、やはり人類愛から出発していなくてはいかぬと思うのです。世界じゅうの人間がお互いに助け合って文明社会を建設をしていく、そういうような一つの基本的な理念を持って、その上に立って各国間の外交が展開されてしかるべきだと思っておるのですが、園田外務大臣はどういう基本的な姿勢に立って外交問題に取り組んでおられるのか、まずお聞きしたい。
  273. 園田直

    園田国務大臣 全く御意見のとおりでありまして、人類愛という哲学がなければ外交というものは成立しない。特に力を持たない平和外交に徹するということは人類愛以外にない。したがって、外交の基本は、相手の国の国民に役に立つことである、相手の国の地域住民の繁栄に役立つことであると考えております。
  274. 川本敏美

    川本分科員 そこで私はお聞きしたいのですが、ことしの一月に外務省の中に東南アジアの難民対策室というのが設置されたと記憶をいたしておるのです。この難民対策室は大体どういうお仕事をやろうとしておるわけですか。
  275. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 外務省における難民問題の取り扱いにつきましては、従来国際連合局がUNHCR関係の仕事及びそれから派生したもろもろの国内諸官庁との調整事務をいたしておりました。他方、難民の発生が特にベトナムあるいはラオスということで、アジア局に地域的に非常に関係がございましたので、アジア局の南東アジア一課でこの問題を取り扱って、二つの局にまたがってこれを処理してきたわけでございます。もちろん大部分の仕事はむしろ国内諸官庁の仕事で、総理府の対策室等が取りまとめておられるわけですけれども、外交向き、外向きの仕事についてはいま申しましたような体制でやっておりましたけれども、いろいろ仕事をやってみた経験から、やはり一元的にやった方が能率的であり、手落ちもないということを考えましたので、省内で議論いたしまして、従来の国際連合局のやっていた仕事とアジア局のやっていた仕事を一つにまとめまして、アジア局に小さな部屋でございますけれども一室を設けて、ここで一元的にやるようになったという事情でございます。
  276. 園田直

    園田国務大臣 ちょっと一言。  いま言われましたとおり、難民問題では日本世界各国から不当と言わんばかりの非常な非難を受けていることであります。外務大臣としては、この難民に対する各国の非難は、日本やり方の下手なところもありますけれども、難民問題に不熱心ということになりますと人間の生命をとうとばない、人類愛がない、こういうところから非難が感情的にまで及ぶわけであります。そこで、この非難はこのままほうっておくとますます大きくなる、こう考えましたので、難民対策を画期的にやる必要がある、特に銭金の問題より定住の問題、それから難民を乗せた船が入ってきた場合の取り扱い、こういうことに重点を置いてやらなければならぬと思って難民対策室をつくったわけでございます。
  277. 川本敏美

    川本分科員 難民対策というのは一国の利害あるいは経済発展とかいうことを超えて、人間としてヒューマニズムの問題だと私は思うのです。そのことが、日本が国際的に先進国だとか主要七カ国だと言いながら、果たして人間的なおつき合いができておるのかどうか、この点については、いま大臣もおっしゃいましたけれども、外国から非難があるからやるとかいう問題ではないと私は思うわけです。そういう観点から私はきょうは質問をさせていただきたいと思っておるのです。  総理府にお聞きしますが、現在ベトナム難民と言われる人はわが国に何人おりますか。
  278. 黒木忠正

    ○黒木説明員 きょう現在日本に滞在しております難民は、五百七十二名でございます。
  279. 川本敏美

    川本分科員 その五百七十名余の難民は現在どういう形で保護されておりますか。
  280. 黒木忠正

    ○黒木説明員 現在こういう難民は国連の保護下にございまして、国連の委託に基づきまして宗教団体、それから日本赤十字等がそれぞれ収容施設を設けまして、そこに分散してお預かりしている、こういう状態でございます。
  281. 川本敏美

    川本分科員 そこで、昨年のたしか四月二十八日の閣議だったと思う。先進国会議の前に園田外務大臣が閣議で報告をされて、いわゆるベトナム難民に対する二つの決定をされておる。その中でいわゆる定住許可を与えよう、いままでは外国の漁船とか日本の漁船とかタンカーとかが海上で漂流しているベトナム難民を助け上げた場合に、その船が日本の港に着いたときに、一番先に日本に着く予定であった船であれば拾い上げた国の引き取りということを条件にやっていこうというのを、国連の難民高等弁務官事務所の引き受けだけで入国を認めようということになった。さらにもう一つは、日本でいろいろな条件をつけております。非常にむずかしい条件で、こういう条件は果たして守れるのがどうかということに対して、私は疑問に思ったわけですけれども、一つは、日本人または在国外国人と結婚、親戚関係にある者、二番目には日本に確実な里親がある者、三番目には健康で安定した生活を営める職について身元引受人のある者。日本人でも現在健康で安定した生活を営める職業に全部ついておるのかと言ったらこれまた疑問ですね。ましてベトナムから漂流してきた難民に直ちにそういうことを要求するのが果たして妥当なのかどうなのかと私は思うわけですけれども、そういう条件をつけてでも定住許可の方針を打ち出された。  法務省にお聞きしますけれども、この一年間に定住を許可されたのは何人ですか。
  282. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 お答えをいたします。  今日現在、一家三名につきましていわゆる定住のための在留を許可してございます。
  283. 川本敏美

    川本分科員 難民という言葉についてもいろいろ問題があろうかと思うのですが、一九五一年に締結されたいわゆる難民の地位に関する条約、これは主としてイデオロギーの問題等で政治的亡命をしてきた人を政治的難民ととらえて、これを保護する国際条約は、世界の先進国は全部批准しているわけですけれども、今日に至るまで日本はまだ批准をしていない。こういう難民とインドシナ半島の政治情勢の中から流出してくる難民とは若干違うと私は思うのですけれども、しかしながら、日本が今日まで日本語がむずかしいからとか、日本に定着を希望しないからとかいう言葉でもって難民の救済を故意に回避をしてきた、ここにわが国外交の一つの問題点が私は浮き彫りにされておると思うわけです。  ことしの一月十九日のアメリカ新聞ニューヨークタイムズの論説を見てみますと、いままでベトナムから出てきた難民は莫大な数である、その中でアメリカが入国を認めたのが十八万くらい、中国が十七万人くらい、フランスは年間一万二千人を受け入れておる、オーストラリアも一万五百人受け入れておる、バングラデシュはビルマの難民を二十万人以上受け入れておる。バングラデシュはアジアで一番貧しい国であって、その国民自体が飢餓線上にあるところへビルマの難民を受け入れた。ビルマの難民はバングラデシュで受け入れてもらったからといって、死が飢えに変わっただけで本当の救済にはならぬけれども、バングラデシュはそういうことをあえてやっているというようなことを紹介しながら、この問題は文明世界全体の協力を必要とする人道問題であり、政府立場の基礎となる問題だ、こういう言い方をして、しかし、日本はこの問題に、このような窮状に対してほとんど関心を示していない、こういう言い方をしておるわけです。さらに昨年の十二月三十日のドイツのジュート・ドイッチェという新聞は「難民を受け入れたがらない日本」という表題でもって論説を書いておるわけです。その中でも、ドイツでさえ難民の受け入れをしておる。それにもかかわらず、日本はジュネーブの国連難民高等弁務官が十二月の半ばに三十五カ国の代表を集めて、そして難民救済に対して受け入れを依頼したけれども、日本は沈黙を守ったままだ。総額一千万ドルの負担をふやしただけでそれで片をつけようとしておる。金さえ払えばよいという日本態度は、一種の国際的なスキャンダルだという言い方をして、最後のところでどう言っておるかというと、最近アジアの代表として再び国連安保理事会の非常任理事国になろうとして立候補した日本がバングラデシュに敗れた。日本政治家外交官が目覚めるためにはもっと多くの手痛い敗北をしなければわからぬだろう、こういう言い方をされておるわけです。外務大臣、これに対してあなたどのように思いますか。
  284. 園田直

    園田国務大臣 私は終始一貫して主張してきているわけでありますが、この難民問題は他国から非難があるからやるということではなくて、難民問題に対して手薄だ、これは非人間的、非文明国、非民主国、後進国だということで、よその国の軽べつを買うわけであります。これは決して高等弁務官に対する金銭の問題だけではなくて、やはり定住許可の条件の緩和、それから漂流した人人が一時上陸する場合の取り扱い条件の緩和等含めて、思い切って早くやらなければならぬということを考えております。ただいまの御発言は一言も反駁するところはありません。
  285. 川本敏美

    川本分科員 外務省にせっかく東南アジアの難民対策室がつくられた。私は、この機会に、いわゆる難民の地位に関する条約の批准もあわせて、さらに国内法として、インドシナ半島あるいはその他から新しい形で流出してくる難民に対して、あるいは政治的亡命に対してどのように対処していくのかという、基本的な立法化が必要な時期にもう来ているのではないか、それがないから、外務大臣はいまおっしゃるような形で苦衷を訴えなければならぬ状態に至っておるのじゃなかろうかと思うわけです。まずその点について、外務大臣が中心になって条約の批准、さらには国内法の整備についてどのような考え方を持っておられるのかお聞きしたい。
  286. 園田直

    園田国務大臣 ただいま貴重な御意見を拝聴しまして、その御意見を土台として直ちに検討を始めます。
  287. 川本敏美

    川本分科員 そこで法務省にもう少しお聞きしたいのですが、いま外務大臣は、定住許可の緩和等と言われましたけれども、現在、そのほかにも養子縁組みをしたいとか、里親になりたいとか言う日本人が百四、五十人も希望者があるということを私は聞いておる。その点についてはどうなんですか。
  288. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 正確な数字をただいま用意してございませんが、いわゆる里親希望者等が若干あるということは聞いております。百数十名であるのかどうかは、ちょっとただいま手元に用意してきてございませんので、数字ははっきりいたしません。
  289. 川本敏美

    川本分科員 私は、政府自身は冷たい態度をとっておっても、日本の国民というものにはもっと人類愛を持った温かい人がたくさんおると思うわけです。そういう人たちは、進んでそういう難民を受け入れていこうとかあるいは救済していこうという方々がたくさんおる。ところが、そういう日本国民の善意までも現在の日本政府はがんじがらめにくくって、その善意が国際的に通用しないような形に押しやっておるところに私は一つの問題があると思うのです。まず、定住許可を与える前の一つの問題点として、これは総理府総務長官、官房長官にも聞いてもらわなければいかぬ問題ですけれども、一つは、日本にいま保護されておって、アメリカへ行くとか外国へ行きたいという人もおりますけれども、日本に住みたいという人ももう五十名を超えておることは確実なんです。日本に住みたいという希望を持っておるのは何人おりますか。
  290. 黒木忠正

    ○黒木説明員 難民の希望と申しますと、日本に着きましたときの希望はまず一つ調べてございます。これは昨年度入国しました七百人余りにつきまして調べました結果、五十数名ございます。ただ、これらがその後いろいろ意思を変更いたしておりまして、必ずしも現在もそのお気持ちを保持しておるかどうかはっきりしない。現在調査中でございます。
  291. 川本敏美

    川本分科員 私は、日本に来てから意思を変更するというのは、日本の国の政府が冷たいからだと思うわけなんです。日本人の子供はいまどうでしょう。先ほども自殺の問題が出ていました、ほかの分科会で。子供の教育のことになったら、教育ママまでおって自分の子供はちょっとでも勉強さしたいと一生懸命になっておるのでしょう。ベトナムの子供が日本へ来ておるのに、ベトナムの子供だったら教育せぬと放置しておいていいと外務大臣思いますか。自分のところの子供を一生懸命教育するんだったら、ベトナム難民の子であっても、日本におる間は日本政府は責任を持って教育をしてあたりまえだと私は思うのです。それが人類愛だと思うわけですよ。ベトナムの難民で一人前の大きな体をした男が、ただ外国へ行くのに、日本でおりたいと思ったけれども、日本で受け入れてもらえないからアメリカへ行きたいと意思を変更しておる、この人たちに日本が世界の先進国として、これだけの技術を持っておる、この技術を与えるような職業訓練を施してあげたならば、必ず将来、世界じゅうのどこへ行ってもその人たちは、私はベトナム難民として日本におったわずか一年あるいは二年であったけれども、その間に日本という国はこれだけの技術を私に与えてくれた、職業訓練をしてもらった、そのおかげで私はいまこうやってりっぱにやっていけるんだということで、一生その人に喜んでもらえると思うのです。私は子供の教育の問題あるいはそういう人たちの職業訓練の問題等について、もっと積極的にやることが本当の人類愛だと思うのですけれども、外務大臣どうでしょう。
  292. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりだと思います。
  293. 川本敏美

    川本分科員 そういうことが今日までなぜやられないのでしょう。どこに隘路があるのでしょう。予算が足らなければ予算は組んだらいい。憲法八十九条を盾にとって、現在まで日本政府ベトナム難民に対するいろいろな救済策、援助策というものをサボってきておると私は思う。そんなことは理由になるものではない。私の言うように、国内法を制定していく中で、そういうベトナム難民の子弟が日本に滞在しておる間、せめてその間だけでも、社会で育っていくためには人間としてどうあるべきかというような基本的な教育は、日本政府の責任においてすべきだと思うのですよ。日本におる間にその人たちに一つでも日本の進んだ技術を身につけさして、外国へ行きたい人にはその技術を身につけて外国へ送り出すといところに、世界の国々からやはり日本というものを見直してもらえる、一つの小さなことですけれども、基盤になる。そういうことを全然考えないで今日まで日本は経済外交に終始をして、日本の大資本、独占資本の利益だけを考える、あるいは力で押してくるソビエトやその他の外国に太刀打ちしようとしても成功しないのは当然だと私は思うわけなんです。その辺について、時間もまだ少しありますけれども、大臣が非常に明快な答弁をしていただいておりますので私はあえて申し上げるつもりはないですけれども、もう一度大臣から、人類愛に根差した外交を展開するためには、やはり世界の国々からいまスキャンダルだとさえ酷評されている日本のこの難民対策、この貧しさというものをまず是正をする方向を打ち出さない限り、先ほどのお話のように中越戦争に対して日本はこういう発言をするんだ、国連でこういう演説をするんだ、ソビエトに対して、中国に対して、アメリカに対してこう言うんだと幾らりっぱなことを言ったって、それは外国の人々は、またやっておるなということにしかならぬと私は思うわけなんです。その辺をしかと踏まえて、難民対策について基本的な国内法の制定、条約の批准についてひとつ前向きで検討をして、早急に結論を出されますように強く要望したいと思うわけです。
  294. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの発言は私の平素からの念願でありまして、やはり日本というものが人間らしい人間であるということを言われなければならぬわけでありますが、やってみまして一番障害になっているのは、やはり日本の法体系というのが一番邪魔になっているような気がいたします。そこで、国内法なり批准、こういう貴重な御意見を承りましたから、法務省、総理府等とも相談もして、早急にそちらの方向へ具体的な検討をしたいと考えております。
  295. 川本敏美

    川本分科員 私は、昨年来園田外務大臣が国際的な中で、わが国の世界的な地位の向上のために東奔西走して果たされた役割りというものはまことに大きいと、心から尊敬をいたしておる次第です。その尊敬する園田外務大臣が、いまおっしゃったように、これはもう早急に結論を出しますとお約束いただいたのですから、私は間違いないと思っておりますけれども、ひとつぜひ早期に実現をしてほしい。そうでなければ、六月の東京サミットも成功しないと私は思うわけです。東京サミット前にこの問題に対する基本的な日本のはっきりした態度を打ち出すことによって、初めて東京サミットも成功することができると私は思うわけです。東京サミット前にやれますか。
  296. 園田直

    園田国務大臣 話の外ではありますが、つい二、三日前インドネシアの外務大臣が参りまして、インドネシアの外務大臣と私の会談の主なる話題はいまの難民問題であります。私も強く感じておりところでありますから、各省の関係でありますからここではっきりお約束して食言になってはいけませんから、いつまでとは言えませんが、間に合うように努力をする、少なくとも方向は出せるように努力をするつもりでございます。
  297. 川本敏美

    川本分科員 終わります。
  298. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で川本君の質疑は終わりました。  次に、西宮弘君。
  299. 西宮弘

    西宮分科員 私は、あらかじめ通告いたしておきましたように、世界連邦運動について若干意見を述べながら御質問をしたいと思うわけであります。  私ごとを申し上げて大変恐縮でありますが、私は、いわゆる非武装中立、こういう方針を固く主張をいたしておりまして、かつて、もう十年余りになりましょうか、私の選挙区内のある人から無名の手紙をもらいまして、西宮さんの言っていることは大いに理解できる、大いに西宮さんを支持したいと思うけれども、ただ一つだけ合点がいかないのはいわゆる非武装中立だ、そういう政策、そういうことで日本の安全、平和が守れる、そういうばかなことはあり得ない、とこういうことで、その一点だけ西宮さんが訂正するならば私は喜んで西宮さんを応援すると、こういう手紙をもらったわけであります。しかし、この人は全く無記名な手紙でありますから答えようがないので、私は、しばらくたってから行われた選挙の立ち会い演説会でその問題を特に取り上げて、あるいはこの聴衆の中に私に手紙をくれた人がいるかもしらぬけれども、私の考えはこういうことだということをお話しをしたわけであります。それは、きわめて常識論みたいなものでありますけれども、かつて戦国争乱のあの時代に、やがて日本の国の中ではお互いに藩同士が、あるいは大名、小名お互いに乱立をして相争うそういう事態はやがてなくなるだろう、昔戦国、争乱のそういう時代にそういうことを言ったらば、恐らく彼は気違い扱いされたに違いないと思う、しかし現にそういう時代が到来をしたのだ、それと同じようなことがやがて世界全体の中にも到来するに違いないと、私はこういうふうに確信をしているんだというようなことで、私の非武装論を若干展開をしたわけでありますが、これは私の私事を申し上げたので大変恐縮でありますが、そういう立場に立って考えております私でありますが、大臣にまず最初に伺いたいのは、最近の国際情勢、毎日のようにいろいろな問題が報道されておりますので、私どももそういう点ではある程度新聞を通して承知をいたしておりますが、外務大臣として、いまの国際情勢の基調はどうなっているのか、つまり、非常に憂慮すべき状態にあるのか、あるいはまあかなり楽観してもいいのだというふうな状況にあるのか、その辺をごく簡単に一言で御説明いただきたいと思います。
  300. 園田直

    園田国務大臣 基調としては、世界の情勢は、目前のいろいろな情勢は別として、少なくとも戦争のない社会、力で紛争をしない平和の社会という方向に、とまったり進んだり、遅々としたりして前進しておる。しかし、現実問題としてはいろいろな関係でいろいろな事件が起きておる、このように解釈をいたします。
  301. 西宮弘

    西宮分科員 私も決して外交の専門家でも何でもありませんけれども、私どももいま大臣が言われたと同じような認識を持っているわけであります。ただ、最近いろいろ現象面では、目まぐるしく国際間の紛争というのがかなり頻繁に報道されておる。一歩誤ったらどういう結果になるかわからぬといったような危惧の念もあるわけであります。私は、そういう際に、さっき申し上げたような立場で、世界の恒久平和を実現をするために、どうしても終局的には世界連邦という形が望ましいんだと、むろんこれが一朝一夕にできるわけではありませんが、しかし、お互いに国と国とが国の利益を主張して争う、そういうのでは恒久平和は確保できない。だから世界連邦という組織をつくって主権の一部をその連邦に預ける、こういうことによって、全くの恒久平和が確保できるというふうに考えるわけでありますが、その際、私どもが考えておりますのは、いわゆる世界政府に移譲すべき各国の権限、つまり軍事に関する権限、こういうものだけは世界政府に移譲する、こういう形にして、いかなる国も戦争を組織的に行うという手段を取り上げてしまおう、それだけは連邦政府に移譲する、こういう形が最も徹底しているのではないかというふうに私どもは考えておりますが、大臣の御所見はいかがですか。
  302. 園田直

    園田国務大臣 世界連邦運動は、世界連邦を実現することによってのみ世界の恒久平和が達成するということを目標にしているということをよく了承しております。  西宮分科員が世界連邦日本委員会の事務総長であり、私もその中の末席に入らせてもらっておりますから、その理想は結構であり、日本政府の目指すところもそうであり、かつまた、それは世界の必然性であり、必ず恒久平和がこなければならぬと思いますものの、現実の社会としては、現状は御承知のとおりでありまして、これを現実政策目標としてやるのには、まだまだ現実がその点まで至っていない。政府としては、今後ともそういうことを念頭に置きながら、国連その他の場所を通じて、そちらの方向へ前進するよう努力するつもりでおります。
  303. 西宮弘

    西宮分科員 私も、ぜひそうあってほしい。また、そうするという道を歩んで、われわれの終局の理想に近づいていくという以外にはないのじゃないかと思います。  大変偉そうなことを言うようで恐縮でありますが、ここで、日本におけるいわゆる世界連邦というか、世界国家というか、そういうものの思想の系譜を若干御披露しておきたいと思うのです。  まず、幕末の碩学佐藤信淵、この人は「混同秘策」という書物をあらわしまして、その中で今日言うところの世界連邦の萌芽をうたっておる。  それからさらに、明治三年に上海に渡りました小野梓という人でありますが、この人なども、非常に徹底したいわゆる世界連邦をつくれという主張をしておるわけであります。   あるいは明治五年、つまりちょうど日本に徴兵制度がしかれたわけでありますが、そのときに植木枝盛、この人は、「戦争は天に対し大罪」である、大きな罪である。「万国統一の会所なかるべからず」万国統一の会所、つまり会議所、議会ですね。そういうものが必要だというふうに述べまして、「戦なるものは何ぞや、生命を戒(そこな)ひ、身体を害ひ、財貨を消すの最たるに非ずや。国を立てて戦を為すといふことは、勘定の合はぬ話なり、さればこそ、宇内に憲法を立て、万国共議政府を建つることは、今日の最大急務なれ。」とうたっておるわけであります。まさに堂々たる世界連邦論者であるわけであります。そしてさらに「茲において断ず。宇内の暴乱を救正し、世界の治平を致すべき道は、万国共議政府を設け、宇内無上憲法を立つるに在り。」こういうふうに述べでおるのであります。  もっとわれわれになじみの深い、たとえば福沢諭吉さんとかこういう人なども、「なんぞ必ずしも区々たる人為の国を分ち、人為の境界を定むることを須いんや。况んや其国を分ちて隣国と境界を争うに於てをや。」「况んや其国に一個の首領」親方ですな。「首領を立て、之を君とし仰ぎ、之を主として事え、其君主のために生命財産を空うするが如きをや。」当時の発言としてはかなり思い切った発言だと思うのであります。  さらに中江兆民に引き継がれ、そういう考え方で、われわれの大先輩であります尾崎行雄さんなどは、こういう歌を詠んでおります。「共有のこのあめつちに国を立て城を築ける罪人は誰ぞ」共有のこのあめつちの中に、国をつくったり城を築いた罪人は一体だれなんだという歌ですね。あるいは「あめつちは生きとし生ける人のため神のつくれるものと知らずや」こういうこともうたいました。  さらに尾崎咢堂先生は、終戦の年の十二月に、国会に世界連邦建設に関する決議案というものを上程いたしました。ただしこれは、当時のGHQが認めないので、実現をいたしませんでしたけれども、その提案理由の中には「世界連邦ヲ提唱シテ着々其ノ方法ヲ研究シ、実行スレバ、半世紀ヲ出デズシテ、全世界の恩人ト為リ、其ノ尊敬ヲ受クルニ至ラム。」と書いてあるのであります。まことに傾聴すべき、敬服すべき卓見だと考えるわけでございます。  こういうように、われわれの先覚者は、それぞれこの道を追い求めてきたわけでありますけれども、国会においては、去る昭和二十四年に国会委員会というのができた。  国会委員会と申しますのは、その前の年に世界連邦建設同盟というのができて、これと相呼応して、国会の中で活動する国会委員会というのができたわけでありますが、その当時の国会の先輩の皆さんは、日本はせっかく軍備を持たない憲法を持つことになったのだ、その軍備を持たないで国際社会に処していくのにはどうしたらいいのだ、そういうことを恐らく真剣に考えて、軍備を持たないで、国際社会の中で自分の国の平和を保っていくというためには、どうしても世界連邦というようなものをつくる以外に道がないのだというふうに考えて、そういうふうに考え抜いて、この当時国会委員会なるものに集まってこられたのだと思います。さっき申し上げた尾崎骨堂先生であるとか、あるいは国会議員ではありませんけれども賀川豊彦先生なども一緒に参加をしてつくり上げたのが、この国会委員会であったわけであります。  そして、ぜひ国会の決議でこの世界連邦をつくろう、こういうことで提案をいたしました。ただし、提案はしたけれども、残念ながら、これは一九六〇年、昭和三十五年でありますが、ちょうど非常に混乱をした安保国会の中でございましたので、その決議が成立する寸前でお流れになってしまった。私は非常に残念だと思うのでありますが、それでも、その当時残された足跡は、大変に私どもにとっては教訓的であります。その国会決議の案文をつくるときに参加をした人たちは、ごく一部を申し上げても松岡駒吉、北村徳太郎、三木武夫、鈴木義男、水谷長三郎、笹森順造、小坂善太郎、戸叶里子といったような、故人になった方もありますけれども、私どもの大変懐しい、しかもわれわれが尊敬する当時の衆議院、むろん参議院からも出ておりますが、両方から約六十名ばかり集まって、案文を練ったようであります。  そこで、練った案文のほんの一部だけ御紹介をしておきます。  これは、国際連盟から国際連合ができたということを高く評価をしながら、「しかしながら、かような国際社会が、国家主権の原理に立脚し、その構成員たる各国家が、なお自己の主権を固執するにおいては、国際社会の基礎たるやいまだはなはだ薄弱であり、世界恒久平和の保障たるには不十分なうらみがある。われわれは国際連合を一層完全な国際組織体にまで発展せしめなければならない。これすなわち、各国家を行政区画として包摂する世界連邦なる世界的組織体に外ならない。」「われわれは、一つの世界法のもとに世界連邦が建設せられ、万国民が同胞愛をもって一致結合することによって、はじめて世界恒久平和が可能となり、法と政治、個人の基本的人権と自由とが完全に保障せられるものとなることを信ずる。」「新憲法によって戦争を放棄し、恒久平和の崇高な理想達成に全力をあげて努力せんことを誓ったわれわれにとって、世界連邦実現の世界的運動の推進のために熱意をもってそれに参加協力することは、われわれの崇高な道義的義務といわなければならない。」これは前後を省き、あるいは間を飛ばしたほんの一部を御紹介しただけでありますけれども、まことに烈々たる当時の気魄がみなぎっておるように思います。  ただ、私がいささか気になりますことは、この昭和三十五年、いわゆる六〇年安保、あの時期は、平和に対する運動あるいは国民の願いというものが非常に高潮したと思います。それは、朝鮮戦争も終わって間もなかったし、あるいはまた戦争経験者が当時の熱心な活動家の中に多かったわけでありますから。ところが、あれをピークにして、何となく平和運動、平和に対する取り組み、関心がだんだん薄らいできたのではないかという感じがするので、その点ちょっと私は心配なんですが、平和問題について最も関心の深い大臣などは、その辺はどういうふうに観測しておられますか。
  304. 園田直

    園田国務大臣 こういう高い理想に向かって行われる運動というのは、ときには停滞があり、ときにはまたいろいろ障害がありますけれども、最後の必然性を確信をして、地道ではあるが努力することが必要であると考えております。
  305. 西宮弘

    西宮分科員 私も基本的には同様でありますが、いま申し上げたように、何となく六〇年安保を境にして平和運動が退潮したということは、新聞、雑誌等でも指摘をされている点であります。しかし、それとは逆に、世界人類全体の中に、一種の運命共同体というような意識が強くなってきたのではないかという感じが私はするわけです。  と申しますのは、いわゆる原子爆弾、核兵器の開発というようなことによって、一歩誤れば、世界の人類が全部一遍に滅んでしまうということになるわけでありますから、その点では――いわゆるそういう脅威は、何も世界に対して外部から来るわけではない。つまりお月様だの火星だの、そういう外部から来るわけではないので、内部から発生する脅威ではありますが、もし一たびそういうことで一歩踏み外したならば、世界の人類が全部一遍に滅んでしまう。そういう意味では、たとえば民族、宗教、言語、いろいろな相違があるにもかかわらず、核兵器の前では共同の運命に立たされている、そういう意識が新たに生まれてきているのではないかと思います。  いままでは、たとえば世界人類などという言葉は、単なる概念にすぎなかったと思うのでありますが、こうなってくると、まさに生き死にをともにする共同体なんだというようなことで、世界の人類が一つだということが、まさに現実の問題として感ぜられてくる、こういうことになってきたと思うのでありますが、私は、この点は、いわゆる世界連邦運動を進める者にとっては、まず基本的に認識をしなければならぬことだと考えておるわけであります。  そういう意味で、いわゆる世界連邦運動というのは、全世界の人類を打って一丸にして、これは言いかえれば国家至上主義、われわれ人間の結合は究極の形態が国家であるという考え方ですね、それを乗り越えて、あるいは政治体制、社会体制、いろいろ違っておりますけれども、それを乗り越えて、人類が一つにまとまっていこう、こういう運動を私どもはやっておるわけであります。だから、その運動を通して、そういう共通の考え方を世界全体の中にできるだけ広く、深く浸透さしていきたいというふうに願って、この運動を続けているわけであります。  どうでしょうか、政府でも、この運動に対してそういうふうに理解をし、あるいはそういうふうに評価をしてもらえるかどうか、政府の見方はいかがですか。
  306. 園田直

    園田国務大臣 まじめで、しかも理想を見詰めつつ前進される姿はとうといことであると理解し、評価をいたします。
  307. 西宮弘

    西宮分科員 そういうふうに評価をしていただいて、私も大変ありがたいと思うのでありますが、この世界連邦の運動は、見る人によっては、全く単なるユートピアを追い求めて、机上の空論あるいはまことに痴人のたわ言だ、そういう見方をする人さえもあるかもしれないと思うのであります。しかし、私どもはあくまでもそういう理想を追いながら努力をしておるわけですが、同時に、もっと現実的な問題についてもいろいろやっておりますので、その点もぜひこの際に御承知を願いたいというので、御紹介をしておきます。  たとえば食糧の問題、つい先般も食糧の問題について国際会議を持ちましたけれども、私は、食糧の問題などは、まさに世界連邦みたいな組織、機構ができ上がらないと、問題は容易に解決をしないのではないかと思います。今日、世界じゅうには非常に食糧か余っている、大量の食糧を生産するアメリカその他があるわけでありますが、同時に、全く食えない、餓死してしまうというような人が、そういう民族もたくさんいるわけであります。こういう問題は、一つの政府ができ上がって、そこでコントロールするということにならなければ容易に解決をしない。しかも私がさっき申し上げたように、世界連邦というのは、戦争はやらないということを大前提にして一切の軍備を持つことを認めない、戦争することを許さない、そういう組織でありますから、当然にその辺から金が浮いてくる。そういう金で食糧生産に当たるというようなことが必要だろうし、いずれにしても、この食糧問題などは、そういう立場で取り上げなければ問題の解決にはならぬと考えております。  それから、水素からエネルギーや食糧を採取する研究であるとか、そういうことなども、この連邦が直接、間接これにかかわってやっておるわけであります。あるいは、昨年は全国の大会をやりましたけれども、核の廃絶の問題を決議すると同時に、海洋の研究とか水産資源の問題とか、そういうものを取り上げたわけであります。あるいは人権の問題なども、これもまた当然われわれの強い関心事としてやっておるわけであります。  しかも、先ほど来大臣も基調として言われましたように、そういう考え方は、次第に基調としてだんだんに浸透していっているということでありますが、できるならば、これを百尺竿頭一歩を進めて、たとえ拘束力のきわめて緩い連邦でもよろしいと思うのですよ。そういうところまで一歩一歩近づけていきたいと考えるわけです。かつて、国連が始まって第二回目の総会にアインシュタインが公開状を送って、国連強化して世界政府を樹立しなければ、全人類の安全と平和は保障できない、こういうことをアインシュタインが述べているわけでありますけれども、私は、ぜひこの国連をさらに発展強化さして、そういうところにまで、どんなに緩いのでも結構だから、そこまで持っていきたいということで、ひとつぜひ日本もこれに力を注いでいただきたいと思います。  最後に、大臣から非常に御理解ある発言をいただいたので、私も大変心強く思いますけれども、一九八〇年に世界大会を日本で開こうとしているわけであります。それほどまでにみんなの気持ちが燃えているわけですけれども、そういうことになりますると、これは当然に政府にもいろいろ協力なり援助なり、とにかくサポートしてもらわなければならぬという問題があるので、これに対して、大臣の御所見を一言だけ伺っておきたいと思います。
  308. 園田直

    園田国務大臣 世界連邦の総会が八〇年に日本でやられることはきわめて歓迎すべきことでありまするし、その理想も先ほど先生が説かれたとおりでありまするから、外務省としても、できるだけの協力をさしていただきたいと存じます。
  309. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で、西宮君の質疑は終わりました。  次に、森井忠良君。
  310. 森井忠良

    森井分科員 私は、ガット東京ラウンドの政府調達問題についてお尋ねをいたします。  大臣、これは大変なことになったと私ども思うのです。日米の貿易の不均衡というのは、私の理解では永久に続くものじゃない、いずれは均衡を回復するものだろうというふうに理解をせざるを得ません。その意味では、あくまでも一時的だと思うのです。ところが、いま問題になっています電電公社の物資の調達を一たん許すと、これはわが国の中枢神経に対しまして外国の具体的な物資が入ってまいりまして、たとえが悪うございますが、血も濁りますし、百年の大計を誤るんじゃないかと、私は大きな心配をしておるわけであります。  まず、この問題についての大臣の基本的なお考え方を承っておきたいと思います。
  311. 園田直

    園田国務大臣 サミット、その前の東京ラウンド、こういうことから逆に考えまして、いまの日米間の中にある経済問題、黒字の圧縮を前提として、その前にある政府調達と関税の問題、これはほぼ煮詰まっているわけでありますが、正直に言って、非常に苦慮しているところでございます。  一面から言えば、私、電電公社並びにその関係者の方々の言い分もよく理解できるわけでありまするし、この解決策を過つと、これまたようやく優秀な技術を誇っておる日本の電気技術、電電技術というものが大変なことになるということを心配しております。また、一面においては、日本国内で考える以上に、この問題は日米間に緊迫をしておる問題でありまして、特に国会の方では保護貿易台頭、課徴金必至という情勢でございます。  政府としては、いままで最善の努力を尽くしてきたところでございまするが、いまや、だんだんと時間的にも詰まってきたわけでありまして、さらに今般は、外務省の大木審議官を中心にして電電公社の技術関係の方々にアメリカに行ってもらって、向こうの技術者を中心にした方々とさらに相互理解を深め折衝する、なおまた、数日のうちに電電関係関連の産業に従事される方々の代表者を向こうに送って、向こうの方々と話をするという、最後の話し合い相互理解をやっているところであります。  しかしながら、また一面から言いますと、先ほどのことから言うと、何らかの妥結方法を見出さなければ、これはとうていこのままでは済みそうにもない、こういうところで、いま両方考えながら非常に苦慮しているところでありまして、まだ、どのような解決方法がいいかという具体的なところまではいっていないところでございます。
  312. 森井忠良

    森井分科員 大臣のお気持ちも、私もわからないでもないのです。現に日米貿易があれだけ不均衡になっていることについても、私も理解をするわけであります。しかし、電気通信設備というふうな問題から考えますと、そう大きな不均衡はない。すでに御承知だと思うのでありますが、通信機器の場合は、日本からアメリカへ輸出をしておりますのは四百九十三億円、逆にアメリカから日本へ入ってきておりますのは百十二億円であります。その差三百億余りであります。  ちょっと、たとえが悪いので恐縮でありますが、たとえば自動車の場合ですと、これは日本からアメリカへ一兆二千八百七十億円、逆にアメリカの自動車を日本が買っているのはわずかに二百六億です。カラーテレビにいたしましてはもっとひどいのでありまして、日本からアメリカへは二千六百二十二億円、それに対してアメリカから日本へはたったの千六百万円というふうな不均衡なんですね。  先ほど申し上げましたように、なぜ電電公社なり電気通信設備に的をしぼって、こういった無理をしなければならないのか、その点について、もう一言大臣のお考えを承っておきたいと思うのです。
  313. 園田直

    園田国務大臣 電電公社の関係の方々や、あるいは米国のこちらからの報告によって、いろいろ表面なりあるいは表の理由等を承っておりますが、これは私がここで言うべきことではないと存じますので控えます。
  314. 森井忠良

    森井分科員 確かに大臣が御答弁しにくい点があることは、私もよくわかるわけでありますが、考えてみますと、電電公社の物資の調達はざっと六千三百億円、ドルに直しますと三十二、三億ドルというわけですね。かなり大きなウエートを占めています。  しかも、アメリカから見えた貿易開発使節団の皆さんあたりの話やら、いろいろ聞いてみますと、やはり日本の電気通信産業というのは未来ある産業だ、こういう見方なんですね。将来にわたってこの電気通信業界に入っていくということは、アメリカにとっても大変魅力のあることでもありますし、それから、先ほど申し上げましたアメリカの貿易開発使節団の団長なり団員の方が、いみじくも本音を言っていらっしゃるのですね。団長はシェパードさんという人でありますが、テキサス・インスツルメント、ICの会社ですね、アメリカの半導体のメーカーでは最大手と言われております。本心を言うと、やはりセーリングミッション、売り込みということを盛んに言っておられるわけですね。はい、そうですかと、どうも私も簡単に引き下がるわけにはいかない何物かを持っておるわけであります。  特に、大臣御存じをいただいておりますように、電電公社は、終戦後公共企業体として昭和二十年代に発足をいたしまして、その当時の稚拙な設備から、必死で技術の開発を進めてまいりました。電電公社だけではありません。電電公社に協力をしてまいりました民間の企業も、一緒になってノーハウの問題について取り組んでまいりまして、これは最大の国家機密と言ってもいいくらい、いろいろなものを開発してきているわけですね。いま、御承知の光ファイバーというふうな問題についても、一朝一夕にできたものではない、これは実用化できる段階に来ておりますけれども。これは世界各国が、少なくとも先進国は日本の電気通信技術というものに注目をし、そして何とかノーハウについても自分のものにしたいという、そういう意味では国家機密と申し上げましたが、私は、なると思うわけであります。そういったものを犠牲にしてまで、コードの中にあります政府指定ですか、電電公社の場合はいろいろ解釈があると思うのでありますけれども、コードの中で、政府の直接的な支配かあるいは実質的にコントロールされる調達体か、私はこの二つしかないと思っていましたら、昨年でしたか、政府が指定したものというのが、やはり調達品目に入っているのですね。  そういうふうに考えてきますと、電電公社の場合は、いま申し上げましたように、直接的な支配ではありませんし、実質的にコントロールされている調達体に見えますけれども、技術の開発とかそういったものについては、公社の性格上、政府のコントロールを受けないで――それは予算その他、若干の制約はあったにしても、技術面から見たら、政府にコントロールされた団体とは思えない。そうしましたら、政府が指定したものというのが調達体に入るということであります。ちょっとその点で聞きたいのですが、これはいつから入ったものですか。
  315. 遠藤実

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  実は、調達体の定義の問題についまして、「直接的支配下あるいは実質的コントロール」等々、その実質的な内容につきましていろいろ議論がございました。そこで昨年のたしか暮れのころであったと私記憶しておりますが、政府及び政府関係機関で各国が合意したものというのが調達体の実態であるということで、それまでの、「直接的支配下あるいは実質的コントロールのもとにあるもの」に加えまして、「政府が指定するもの」という文言がつけ加わったわけでございます。
  316. 森井忠良

    森井分科員 そうすると、電電公社の場合はどれに当たるのですか。
  317. 遠藤実

    ○遠藤説明員 これは、実質的コントロールということがどこまで及ぶかという解釈の問題がございまして、その点につきましては、現在電電公社は、政府の、特に郵政大臣の一般的監督権があるということ、そのほか人事、会計等につきましてコントロールを受けているということを、この「実質的コントロールのもとにあるもの」と読むべきか、あるいは若干はみ出るところがあって、したがって「政府が指定するもの」と読むべきかということについては、まだ確定した解釈はございません。
  318. 森井忠良

    森井分科員 そうすると、ついせんだって、二月の二十日、日本電電公社の政府調達問題について、当面の日米経済関係についての関係閣僚会合というのがありましたね。  ここで、これはお決めになったのかどうかわかりませんけれども、電電公社の調達を一部外国企業に開放するという意味の御決定をなさったと聞いておりますが、さらに時期についても、これは月末までに開放策を決める。これは新聞の報道ですから、定かには申し上げにくいのでありますが、こういった一連の御決定がもしあったとすれば、これは政府指定、先ほど申し上げました第三番目に当たるのかどうなのか。いまあなたははっきりわからないと言われましたけれども、この点についてはまず大臣から、御決定の模様と、それからあと、お考え政府委員からお聞きしたいと思います。
  319. 園田直

    園田国務大臣 まず、先般の経済閣僚会議について、内容は申し上げられませんが、その実情を御報告いたします。  日米経済問題で関係経済閣僚会議を開く、こういう通知があったわけでありますが、私は通産大臣と相談をして、ここで政府調達問題、電電公社の問題等を決めるようなことがあれば、これは大変なことになる。これは国内ばかりでなくて、外務大臣としても、折衝の駆け引きからいっても、まだあわてて方向を決定すべきときではない。仮にこれを解決するにしても、最小限実害のないような方法をどう考えるかという駆け引きの段階であるから、そういうことをやってはいかぬ。したがって、あすの会議はその問題ではないように自分はするから、そういうことにしょう、こういう相談をして行ったわけでありますが、郵政大臣が呼ばれておりまして、郵政大臣は劈頭に、きょうの会議は電電公社の問題を議論し、これを解決することではないだろうなという念押しをいたしました。それから議論が終わって、最後に改めてもう一遍聞くが、この会議では何ら方向は決定されなかったと自分は解釈するが、それでいいかということに同意を得て帰ったわけであります。何ら、この方向や方針あるいは具体策等を決定したわけではございません。その方向をおぼろげにも出したことではございません。  ただ、私が先ほど先生に申し上げたとおり、サミット、東京ラウンドから逆算をすると、やはりどうしても三月初めまでには解決しなければならぬということになるがということを、意見として申し述べたわけでございます。
  320. 森井忠良

    森井分科員 ちょっと聞きにくいのでありますが、いまの外務大臣の御答弁によりますと、少なくとも郵政大臣と他の関係閣僚との意見は、まだ一致をしていないと理解してよろしいわけですね。
  321. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。  それで、会議の主体は、安川君がアメリカに参りましたときの報告が主体でございます。
  322. 森井忠良

    森井分科員 そうなりますと、まだ明確でない点が幾つか出てまいりました。  もうよく言われておりますが、ここでもう一度私からも申し上げたいのですが、たとえばアメリカ、ATTという最大の電話会社がございます。これは経営形態は民間でありますけれども、しかし主要な調達物資は、ほとんど子会社から随意契約で入れている。それからECも、これは国営、公営でありますけれども、これも今回の政府調達物資の中で電気通信設備は除くと明確にうたっていますね。日本だけ、しかも先ほど申し上げました、あれだけの技術を持っている、外国がうらやましがるようなものを、あえて国際競争入札あるいは指名入札等にして開放しなければならない理由がどこにあるのだろうか。  ちょっときつい言葉で本当に恐縮なんですけれども、私は、国辱的な――ECも除外、アメリカも除外、何で日本だけが政府調達物資に電電公社のものを入れなければならないのか、これはどうしても納得できないわけであります。私の不勉強かもわかりませんので、わかるようにひとつ説明をしていただけませんか。一言で結構です。
  323. 園田直

    園田国務大臣 この問題では、私は外務大臣として苦悩しているのですが、一面また、先生御承知のとおりに、今日までアジアあるいはその他の地域で、日本の電電公社、電機産業が入札をやっている実績を私は知っているわけであります。  それから考えますと、先生は血が濁るという言葉を言われましたが、日本の技術、製品と向こうの製品とは、次元の違うほどの相違があります。したがいまして、値段はどちらかというと、精密で精巧で次元の高い日本の方が高い、大ざっぱな品物は部品が安いということで、私も、おっしゃるとおりに日本の世界に誇る技術にさびがくるというか、血が濁るということは非常に心配しているわけであります。  しかし、現実の問題としては、これはいまや日米間に残された問題の最後の一つであります一これが日本市場の閉鎖性のシンボルということになってきているわけでありまして、ここに私の苦悩するところがあるわけでございます。
  324. 森井忠良

    森井分科員 アメリカ下院のジョーンズさんという人が来ていますね。私どももジョーンズ・レポートというのを読ましてもらったのですが、これはずいぶん誤解がありますね。場合によっては事実でないことをレポートにして、たしか先月、一月の終わりに出しておられますけれども、これはずいぶん誤解があるなと、あえてうそとは申しませんけれども、事実に反する部分も入っているというふうに、私は理解しているわけであります。  そのジョーンズさんの分析の一つに、電電公社の回線網等のメーンラインに関する機器については、アメリカからとても入りにくい、これは基本にわたる部分で、私もまた、まさにそのとおりで、これは絶対に譲ってはならぬと思うわけです。あとオフラインネットワーク機器については、ジョーンズさんも少しでもまだ話し合いの余地があるのではないかという分析をしていらっしゃいます。これも答弁しにくいのじゃないかと思うのですけれども、少なくとも、先ほど申し上げましたような経過からすれば、基本部分いわゆるメーンラインの部分については、一歩も譲ってはならぬと私は思いますが、大臣いかがですか。
  325. 園田直

    園田国務大臣 なかなかむずかしい答弁でありますが、御発言の趣旨は正しい趣旨だと思います。
  326. 森井忠良

    森井分科員 しばらく外務大臣にお聞きを願うとして、電電公社にちょっとお伺いいたしますが、公社はかつて公社発足のころ、電気通信省から電電公社になったわけですから昭和二十年代の終わりごろ、まだ日本の技術がある意味で進んでおりませんでしたから、アメリカの品物等を求めて幾つかやってきておられますし、それはまた現に機械もあると思うのでありますが、システムを全般的に見て、いま本当に数えるほどしかそれは残っていないと思うのでありまして、申し上げましたように、電電公社発足の初期のまだ技術的に弱かったころ、やむにやまれず調達をされたものであります。  先ほど大臣も、開発途上国等で一部使っているということをちょっとおっしゃったように思いますけれども、似たような経過をたどったと思うわけでありまして、いまECの主要な国はそんなことはしておりません。自分のところの神経でありますから、ある意味では国防にも影響してくるということで、全部国内で、しかも随意契約で決めているわけでありますから、この点の認識は願うとして、電電公社でも言われたように技術の弱かった時代がありましたから、たしか私が覚えておりますのでも、高崎市とその近郊でクロスバー交換機等を導入をなさいました。そして、もうこれだけの年数がたっておるわけでありますが、私の聞いておる範囲では、これがずいぶん古くなって、いまの近代的な日本の電気通信設備からいけば、まあ数は少ないのでありますが、表現が悪うございますが、重荷になっている。  その間に、電電公社は今日に至るまで、あらゆる電気通信設備の開発をされて、いまや世界の先進国と比べても絶対に劣っていないというところまで進んでいるわけでありますが、そういった点から、当初導入をした時点と、今日の保守も含めて、あるいはまた、さらに需要はうんとふえてまいりましたから、これからのそういった意味での運営について、いまどう考えておるのか、お聞きをしたいと思います。
  327. 前田光治

    ○前田説明員 お答えいたします。  いま先生がおっしゃいましたように昭和二十年代、電電公社が発足いたしましたのが二十七年でございますが、その当時は、残念ながら日本の電気通信の技術というのは、とても先進国と言えるような状態でございませんでした。しかし公社が発足いたしまして、その目的といたしております、なるべく安いコストで広く国民に――当時申し込んでもなかなか電話がつかないという状態を解消し、それから全国が全部ダイヤル一つですぐ出るようにしたい、これを達成いたしますために、国の内外を問わず、とにかく優秀な機械を入れていくという方針で、外国から輸入をいたしたものがございます。  その中の一つに、いま先生御指摘の高崎市に導入いたしましたアメリカのケロッグ社製のクロスバーという方式がございます。そのほか、大阪-福岡間にはマイクロウエーブの方式をイギリスから輸入をいたしております。そのほか若干例がございます。  その後、こういう外国のいろいろの会社のものをまぜて使っておるということは、いまお話ししましたような、全国を統一して自動ダイヤルでかけるという、全国を一つのシステムとしたような電気通信ネットワークをつくる上に非常に支障がございまして、したがって、その後公社は、自分で自主技術を開発して、それで全国を統一した方式でやっていかなければできないということで、急速に自主技術を開発いたしまして、大体昭和三十年代の中過ぎごろにはヨーロッパの技術を追い越しまして、四十年代にはアメリカと完全に並ぶところまでまいったわけでございます。  そういった形でございますので、その後外国から輸入して使っておるというものはございません。ただし、電電公社はあくまでも安いコストで、よりよいサービスをするということが目的でございますので、外国品の使用を排除しておる、いわゆる外国製品排除という態度はとっておりませんで、昨年の閣議の御決定のように、内外無差別の原則に立って調達をいたしております。ただし、品物を買います手続の上で、入札という形態をとりますと、電気通信設備のようなきわめての特注品の場合には、一般市販品と違いまして、かえって入札をする方が高くなって、かつ、いろいろ事業の運営に支障を来すことが多うございます。したがいまして、私どもは随意契約という形態で内外無差別で購入をしたい。したがいまして、競争入札を原則としておるガット東京ラウンドの政府調達コードに電気通信設備を入れるのは、事業の運営上大変支障を来し、サービスを低下し、コストをアップさせるということで、政府調達コードに電気通信設備を入れていただくべきではないと主張しておるのが現状でございます。
  328. 森井忠良

    森井分科員 会計検査院見えていますか。  いまお話がありましたように、公社の場合は、その特殊性からして、いままで随意契約が多うございました。もう時間があと一、二分しかないわけですから多くは聞かれませんけれども、毎年、会計検査院で検査をしていらっしゃいますけれども、公社のその考え方でよろしいということで、いままで随意契約について具体的な指摘はなかったかと私は思うわけでありますが、そのとおりですか。
  329. 高橋良

    ○高橋会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、電電公社の資材につきましては、特殊な仕様あるいは特殊な規格といったようなものが、その性質上多いわけでございまして、こういった点あるいは技術の開発を民間と共同で行ったものがあるという点から、随意契約によって調達しておるものが多いことは事実でございます。  検査院といたしましては、これらの点につきましては、必ずしも特別規格や仕様を行わないでもいいものがないかどうか、あるいは一般市販品で十分足りるものがないかどうかというような点につきまして、関心を持って検査をしてまいりましたし、今後も検査をしてまいるつもりでございます。最近において、こういった点についての指摘をしたものがないことは、先生御指摘のとおりでございます。
  330. 森井忠良

    森井分科員 じゃ、もう御質問は申し上げませんが、大臣、もう一つだけ理解をしておいていただきたいのは、線材、そして通信機器、どちらもたくさんの労働者を抱えているわけですね。そして、線材と通信機器合わせましてざっと二百社の企業が関連をしておるわけでありまして、中小企業も非常に多いわけです。そういった中で、線材の場合は一五%の電電公社への依存率、物資の調達で、通信機材の場合は四五%依存しているわけでありますから、これは雇用の問題としても非常に大切だということが言えますし、単に機材の調達、物資の調達だけでなくて、今度は電電公社に関連をいたします建設業界の打撃が大きいのじゃないか。入ってくる機械が横文字だということだけでなしに、向こうから仕入れたものは、やはり向こうの人手でないと備えつけができないというようなことがあって、実際には工事量の減少につながるというふうな問題もあります。  したがって、この問題については、きわめて重要な要素を含んでおりますので、慎重にひとつ対処していただきたいと、強く要求をしておきたいと思います。
  331. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて森井君の質疑は終了しました。以上をもちまして、昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算中、外務省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時より開会し、文部省所管について審査を行うこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十五分散会