運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-02-27 第87回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十四年二月二十二日(木曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十二日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       愛野興一郎君   稻村佐近四郎君       竹下  登君    浜田 幸一君       藤波 孝生君    安宅 常彦君       稲葉 誠一君    大出  俊君       近江巳記夫君    坂口  力君 二月二十二日  藤波孝生君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十四年二月二十七日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 藤波 孝生君       愛野興一郎君    竹下  登君       浜田 幸一君    稲葉 誠一君       川本 敏美君    清水  勇君       野坂 浩賢君    山口 鶴男君       近江巳記夫君    草川 昭三君       草野  威君    坂口  力君       瀬野栄次郎君    兼務 上原 康助君 兼務 西宮  弘君    兼務 土井たか子君 兼務 池田 克也君    兼務 沖本 泰幸君 兼務 玉城 栄一君    兼務 山本悌二郎君 兼務 瀬長亀次郎君    兼務 安田 純治君 兼務 小林 正巳君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  京須  実君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         内閣総理大臣官         房管理室長   小野佐千夫君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府賞勲局長 川村 皓章君         総理府恩給局長 小熊 鐵雄君         青少年対策本部         次長      松浦泰次郎君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         警察庁長官官房         会計課長    城内 康光君         行政管理庁長官         官房会計課長  田代 文俊君         北海道開発庁予         算課長     岩瀬多喜造君         科学技術庁長官         官房会計課長  劔持 浩裕君         環境庁長官官房         会計課長    神戸 芳郎君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         沖繩開発庁総務         局会計課長   永瀬 徳一君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君  分科員外出席者         内閣官房内閣審         議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   赤松 良子君         内閣総理大臣官         房参事官    手塚 康夫君         人事院事務総局         管理局会計課長 林  博男君         公正取引委員会         事務局官房庶務         課長      厚谷 襄児君         警察庁警務局人         事課長     大堀太千男君         警察庁刑事局保         安部防犯課長  柳館  栄君         警察庁交通局運         転免許課長   森田 雄二君         防衛庁経理局会         計課長     小田原 定君         防衛施設庁総務         部会計課長   窪田  稔君         法務大臣官房人         事課長     吉田 淳一君         大蔵省主計局主         計官      川崎 正道君         国税庁長官官房         人事課長    田口 和巳君         文部省大学局医         学教育課長   五十嵐耕一君         文部省体育局学         校保健課長   島田  治君         文化庁文化部著         作権課長    小山 忠男君         厚生省医務局指         導助成課長   瀬田 公和君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 川崎 幸雄君         通商産業省産業         政策局産業組織         政策室長    榎元 宏明君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 細川  恒君         通商産業省産業         政策局規模小         売店舗調整官  伊藤 敬一君         通商産業省立地         公害局総務課長 河野権一郎君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      沼倉 吉彦君         運輸大臣官房人         事課長     山下 文利君         運輸省自動車局         保障課長    伊藤 嘉之君         郵政省人事局人         事課長     岩田 立夫君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         自治大臣官房参         事官      野村 誠一君         消防庁予防救急         課長      中島 忠能君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     山口 鶴男君   稲葉 誠一君     清水  勇君   坂口  力君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   清水  勇君     稲葉 誠一君   山口 鶴男君     野坂 浩賢君   草川 昭三君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     川本 敏美君   正木 良明君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     森井 忠良君   瀬野栄次郎君     草野  威君 同日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     安宅 常彦君   草野  威君     坂口  力君 同日  第二分科員上原康助君、西宮弘君、玉城栄一  君、瀬長亀次郎君、小林正巳君、第三分科員土  井たか子君、第四分科員池田克也君、山本悌二  郎君、安田純治君及び第五分科員沖本泰幸君が  本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算  〔内閣及び総理府所管経済企画庁国土庁を除  く)〕      ――――◇―――――
  2. 藤波孝生

    藤波主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。  本分科会は、昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算中、皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣総理府及び法務省並びに他の分科会所管以外の事項、なお、総理府につきましては経済企画庁及び国土庁を除く所管について、審査を行うこととなっております。  まず、内閣総理府、ただし経済企画庁及び国土庁を除く所管について、政府から説明を求めます。三原総理府総務長官
  3. 三原朝雄

    三原国務大臣 昭和五十四年度における内閣及び総理府所管歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。  内閣所管昭和五十四年度における歳出予算要求額は九十九億三千六百二万五千円でありまして、これを前年度歳出予算額八十八億六千四百八万六千円に比較いたしますと十億七千百九十三万九千円の増額となっております。  次に、総理府所管昭和五十四年度における歳出予算要求額は五兆一千七百五十七億一千八百七万四千円でありまして、これを前年度歳出予算額四兆五千八百六十一億六千七百三十三万七千円に比較いたしますと五千八百九十五億五千七十三万七千円の増額となっております。  このうち、経済企画庁及び国土庁に関する歳出予算要求額については他の分科会において御審議を願っておりますので、それ以外の経費について、予定経費要求書の順に従って主なるものを申し上げますと、総理本府に必要な経費一兆四千五十二億六千四百三万七千円、警察庁に必要な経費一千四百五十七億三千三百五十八万一千円、行政管理庁に必要な経費百八十九億四千三十五万一千円、北海道開発庁に必要な経費七千百億三千八百九十四万六千円、防衛本庁に必要な経費一兆八千五百二十六億二千二百二十三万二千円、防衛施設庁に必要な経費二千三百四十五億七千三百八十四万四千円、科学技術庁に必要な経費二千八百四十一億六千五百二十万五千円、環境庁に必要な経費四百二十四億九千七百四十三万円、沖繩開発庁に必要な経費二千七十七億八千百五十三万一千円等であります。  次に、これらの経費についてその概要を御説明いたします。  総理本府に必要な経費は、総理本一般行政及び恩給支給等のための経費でありまして、前年度に比較して一千五百三十六億九千六百十一万一千円の増額となっております。  警察庁に必要な経費は、警察庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県警察補助のための経費でありまして、前年度に比較して百八十五億三千三百三十三万四千円の増額となっております。  行政管理庁に必要な経費は、行政管理庁一般行政及び国の行う統計調査事務に従事する地方公共団体職員の設置の委託等のための経費でありまして、前年度に比較して十三億二百九十八万四千円の増額となっております。  北海道開発庁に必要な経費は、北海道における海岸漁港住宅、公園、下水道、農業基盤整備造林、林道、沿岸漁場整備等事業経費及び治水治山道路整備港湾整備空港整備事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等経費でありまして、前年度に比較して八百九十四億八千三百十四万五千円の増額となっております。  防衛本庁に必要な経費は、陸上、海上、航空自衛隊等運営武器車両及び航空機等の購入並びに艦船の建造等のための経費でありまして、前年度に比較して一千七百七億九千百五十一万二千円の増額となっております。  防衛施設庁に必要な経費は、基地周辺整備等諸施策の推進のための経費提供施設整備のための経費補償費等の充実のための経費基地従業員対策強化のための経費提供施設移設等のための経費でありまして、前年度に比較して五百四億三千六百三十五万七千円の増額となっております。  科学技術庁に必要な経費は、原子力開発利用宇宙開発海洋開発防災科学技術及び重要総合研究推進並びに科学技術振興基盤強化等のための経費でありまして、前年度に比較して三百五十七億九千三百七十二万六千円の増額となっております。  環境庁に必要な経費は、環境保全企画調整推進公害健康被害補償大気汚染及び水質汚濁防止公害防止等調査研究推進並びに自然環境保全推進等のための経費でありまして、前年度に比較して三十六億六千七百四十一万一千円の増額となっております。  沖繩開発庁に必要な経費は、沖繩における教育振興保健衛生対策農業振興に要する経費並びに沖繩開発事業に要する海岸漁港住宅環境衛生施設都市計画土地改良造林等事業経費及び治水治山道路整備港湾整備空港整備事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等経費でありまして、前年度に比較して二百八十三億二千九百四十七万円の増額となっております。  また、以上のほかに新規継続費として、防衛本庁において一千三百二十二億一千三百六十二万九千円、国庫債務負担行為として、総理本府において八億四千四万九千円、警察庁において二十億五千三百三十二万円、北海道開発庁において二百四十二億四千万円、防衛本庁において四千二百十七億九千九百三十一万二千円、防衛施設庁において二百八十七億五千六百十六万五千円、科学技術庁において一千二百九十億四千四百三十万円、沖繩開発庁において四十七億五千三百二十九万八千円を計上いたしております。  以上をもって、昭和五十四年度内閣及び総理府所管歳出予算要求額概要説明を終わります。  よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。(拍手)
  4. 藤波孝生

    藤波主査 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 藤波孝生

    藤波主査 これより内閣及び総理府所管について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  6. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 三原総務長官お尋ねしたいと思うのですが、昨日、灘尾議長の御努力もございまして、E2C問題に関する議長見解が出されました。一応この問題については決着がついたわけでございます。三原総務長官は、かつて防衛庁長官も歴任され、また自由民主党の国会対策委員長さんも経験されたわけでございますが、そういう中で今回の問題につきましてはいろいろ御感想があったのではないかと思います。しかし、私どもそのことをここで長官お尋ねしようとは思いません。ただ、問題は、私ども議会を通じていろいろ仕事をさせていただいているわけでございますが、やはり議会というものは話し合いの場である。特に現在のように与野党伯仲、こういう状態におきましては、やはり国民の意向というものを念頭に置いて、お互いがある程度の自制をしつつ話し合いを尽くしていく、こういう姿勢が私は必要ではないだろうかと思っておる次第であります。  そこで、総務長官お尋ねしたいのは、総務長官の方で元号法案を出しておられるわけですね。あれは予算関連法案ではございません。ところが、どういうわけですか、二月二日、非常に早く提出をせられたわけでございます。実は私ども議運におきましても、議運理事会田中官房長官を呼びまして、大体予算関連法案でもないものを一番先に出してくるというのは筋が通らぬではないか、しかも予算関連法案をなかなか政府提出しない、これは間違っている、一体政府予算関連法案とそうでない法案とをどのように理解をしておるのかということをただしたのであります。田中官房長官はこれに対しまして、予算第一義であります、予算関連法案第一義であります、実はこういうことを議運理事会でお述べになっておるのであります。とすれば、総理府所管しておられる予算関連法案と言えば恩給法がございますが、やはりこういうものを総理府としては第一義にお考えになっておられるのではないかと私は思います。その点をまずお伺いしたい。  それから同時に、元号法案と言えば、まさにこれは国民生活全体にかかわる重要な問題だと思います。こういうものについては、ある党が賛成だからといって強行するというようなことは絶対になすべきではない。しかも、新聞等世論調査では、何も法制化までする必要はないではないかというふうに考えておられる国民の皆さんが七割近くにも達しておる、こういうデータもあるわけでございます。したがいまして、私は、この際、現在の与野党伯仲という国会情勢を考え、また、国会十分話し合いを尽くすべきである、こういった政治姿勢の問題を考え、さらにまた、元号法案につきましては国民全体の生活にかかわるきわめて重要な問題である、こういうものこそまさに国民合意というものを得て結論を出すべきものだ、しゃにむにこれを強行するなどということは絶対に避けるべきである、かように考えるわけでございますが、まず総務長官政治姿勢の問題として、以上お尋ねいたしました点についてお答えを賜りたいと存じます。
  7. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  現在の国会情勢、特に保革伯仲の中での情勢でございますが、これは総理も申しておりますように、保革伯仲であるからということばかりでなくして、基本的に、国政の運営話し合い、協調で進むべきであるというのは私どもの終始一貫した姿勢であると私は思うのでございます。私は、そういう方針のもとにいままで国会運営等についてやってまいったのでございます。今後もそういうことで運営されることを期待いたしておるところでございます。  次に、総理府関係法案の中で、恩給等予算関係法案あるいは元号法案等提出の時期、あるいはどちらを大事に考えておるかというような第二番目の御質問でございましたが、私は、国会に出される法案はいずれも重大であろうと思いまするけれども、やはり審議順序等は、予算から始められるという今日までのルールを堅持していかれることにつきましては、自分もそういう方針でいくべきであると考えておるのでございます。  元号法案につきましては、先に出したことについて、官房長官をお呼びいただいていろいろ政府態度等をただされたことも承知いたしておりまするし、私も、官房長官からお答えいただきましたように、これは事前にそういう準備をいたしておりました。もちろん、順序としては予算関係法案から出すべきであるという国会ルールもございます。しかし、私の方としては、準備も一番先にできておりましたから、できれば早くお出し願うわけにはいかぬだろうかというお願い等も申し上げてまいりました。なお、率直に申し上げますと、私ども、昨年の福田内閣から大平内閣へのそうした事態等におきましての一つ引き継ぎ事項の中にもございましたような経過等もありまして、私はそうあわてて出すというような気持ちはございませんでしたが、そういう諸般の情勢を踏まえて二月二日に出させていただいたというような経過でございます。  なお、次には、政治姿勢に関連しながら、この法案審議についてはひとつ十分国会審議をやりなさい、強行採決等の挙に出ることは避けねばならぬぞという、いま御指摘でございました。私も、ぜひひとつそういうことで御審議を賜り、この国会において議了していただきたい、そういうような切実なお願いの心境でもおるわけでございます。強行採決等は、できるだけと申しまするか、避けねばならぬということは十分心がけてまいりたいと思っておるところでございます。
  8. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 総務長官政治姿勢に関する御見解、承りました。この際、私これ以上このことを議論するのは避けたいと思っておりますが、ここで強く要請をいたしたいことは、田中官房長官予算並びに予算関連法案第一義だと言われているわけでございますから、やはり同じ総理府所管法案につきましては、予算関連法案第一義とする、こういう姿勢で対処をいただきたい。そういう趣旨の御答弁もあったわけでありますが、重ねて強く要請をいたしておきたいと思います。  さらに、今国会では議了してほしいという希望的な御意見がございましたが、国民世論がいろいろ分かれているわけでございます。しかも、この問題は国民全体にかかわる重要な問題でもあり、国際社会を迎えてこれからさらに諸外国との交流を深めていかなければならないわが国の現状等もございましょう。そういう意味では、こういう問題は多数決でぱっぱと決める問題ではない。あくまでも国民合意を得るような粘り強い慎重な態度というものが必要ではないのかということを実は申し上げたかったのであります。したがいまして、ぱっぱと議了していきたいということではなくて、あくまでも国民合意を粘り強く得ていくための慎重な手続、努力というものが必要ではないのかということをこの際強く申し上げておきたいと存じます。  次に、公営競技の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  自治省が出しております地方財政白書を拝見いたしますと、公営ギャンブル売り上げ状況、実質上の収支の状況等が出ております。やはり、各自治体の決算を終えましてからの資料でありますので、一番新しいのが昭和五十一年度しかございません。これを見ましても、競馬事業自転車競走事業小型自動車競走事業モーターボート競走事業宝くじ事業、合わせまして売り上げ金の合計が三兆二千九百二十九億五百万円という、実は非常な多額に上っております。したがいまして、この状況等を考えますと、毎年一〇%程度伸びておるようでございますので、五十四年度には四兆円にも達する売り上げがあろうかと私は思います。政府経済見通しですと、国民総生産が二百兆を超えるという推計になっておりますが、これを見ましても、国民総生産国民総支出の実に二%にも達する膨大な売り上げというものが去る、こういう現状であります。  ところが、これほど多額売り上げがあり、国民の関心の深いこの公営企業、いわゆるギャンブルの問題につきまして、かつて長沼答申が出たのでありますが、あの答申趣旨がその後完全に実施されたとも思えません。しかも、長沼答申が出ましてからずいぶん長い年月もたっておるわけでございます。この際、これだけ国民生活に深い関係を持っておる公営ギャンブル、これの改善について政府として真剣に対処するということが必要ではないだろうかと思います。この点に対して、総務長官のお考え方をまずお尋ねいたしましょう。
  9. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  御指摘長沼答申以来、政府は鋭意検討を進めてまいっておるわけでございますが、いま御指摘のように四兆近い売り上げを結果するという、一つ国民的な大変大きな問題だと思うわけでございます。したがいまして、この問題の取り扱いについては今日まで検討し、いま公営競技に対する懇談会を設置いたしまして、昨年来十五回にわたって検討を進めてまいっておるわけでございます。その結果を踏まえて対処いたしたいと思いますが、国会におきましても超党派的にこれの検討を進めていただいておりますから、その結果を踏まえて、なお懇談会においてそれを十分受けとめながら最終的な結論を出していただくようにお願いをして今日取り組んでまいっておる事態でございます。
  10. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 いま総務長官からお話がございました超党派の議員懇談会事務局長を私させていただいておるわけでございますが、きょうはその事務局長ということではなくて、社会党の一議員としての立場から幾つかの問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  公営競技は、中央競馬地方競馬、競輪、オートレース、競艇とあるわけでございますが、これを規定しております法律はそれぞれ別個な法律になっております。特に競艇につきましては、法律成立経過を見ますと、一たん衆議院で可決をされ、参議院で否決をされ、それを衆議院で三分の二の憲法上の規定に基づいて成立をさせるという、いわば法律成立としては非常に異例な経過をたどって成立した法律であることを承知いたしております。その間にどういうことがあったのか、昔のことでありますから私も知りません。ただ問題なのは、各種競技を主催する振興団体、一号交付金、二号交付金を配分するこの団体が、他のものはいずれも特殊法人でございますが、競艇に関しては財団法人になっておるのですね。したがって、役員も、設立以来実は同じ方がこの会長さんをしておられるという形もございます。公営ギャンブル――ギャンブルというのは本来禁止されているものでありますが、地方公共団体が主催するものに限って法律で許可をいたしているという経過から見まして、やはり交付金を配分する各種振興団体につきましては、各省庁の監督というものが厳重でなければいけない。そういう意味では、特殊法人ならば、船舶振興会についても特殊法人にすべきであるということを私はかねがね主張してまいりました。かつて、運輸委員会だったと思いますが、当時の木村運輸大臣に対しましてそのことを主張いたしましたら、木村運輸大臣は大分渋々しておったのでありますが、最後に、確かにその点については改善すべきであると考えます、検討をいたしますという答弁も実はいただいた経過があるわけであります。  船舶局長に伺いましょう。その後、運輸省としてはどのような検討をし、これの改善についてどのようなお考え方を持っておられますか、伺います。
  11. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 お答えを申し上げます。  昭和五十年の第五分科会におきまして、先生の御質問に対しまして当時の木村運輸大臣が答弁をしております。法人格の問題につきまして、大臣は、実際の運営に果たして支障があるかどうか、よく検討して善処したいという言い方等をしております。その後、私どもにおきましても検討をしてまいっておりますが、船舶振興会につきましては、先生御指摘のとおり、昭和二十七年だと思いますが、当時は社団法人でやっておりましたのを、長沼答申の結果によりまして昭和三十七年に改組して現在の形になり、かつ第二号交付金を入れたわけでございます。その後、私どもとしては実際の運用について厳重な監督をしておりますし、かつ実質上他の特殊法人と同じような監督をしておるつもりでございます。  それで、その後種々の改善をしておりますが、まず二号交付金を法律によって加えたということと、最近におきましては補助事業に対する監察制度の整備など、交付金配分の公正確保について監督をしております。そこで、私どもとしては、現在の法人格において実態的には支障がないというふうに措置をし監督をしておるつもりでございます。ただ、先ほど総務長官からお話がございましたように、公営競技問題懇談会がございますので、これの結論を踏まえまして検討をしていきたい、こう考えております。
  12. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 重ねてお尋ねいたしますが、二号交付金につきましても公正に配分されるように十分監督しておられるということでありますが、総理府内に設置をされました懇談会におきましてもこの問題についていろいろ検討をしておられるようでございますが、この船舶振興会の会長が笹川良一さん、これに対して、二号交付金を受け取る団体の長がこれまた笹川良一さんというようなケースが間々ある。やはり交付金を出す方と受け取る方が同じだということでは、これはおかしい。野球だってピッチャーとキャッチャーが同じ人が兼ねるなんということはできないのでありまして、そういうことは理屈に合わないという点が指摘されているわけなんですね。どうもそういうことから見ると、運輸省が十分な監督をしておるとは私ども思いません。テレビなんかでは大いに御活躍いただいておるようでございますけれども、ああいう御活躍が必要なのかどうか、私も疑問に思っておりますが、それは別として、その点をまずお伺いしたい。  次いでお尋ねいたしますが、歴代の運輸省の官僚の方、特に船舶局長とか船舶局にかかわりのあった運輸省の役人の方で、船舶振興会ないしは競艇に関する各種団体に天下りをしておられます方が一体何人おられますか、お示しをいただきたいと思います。
  13. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の、振興会として補助金を交付する団体の長と補助金を受ける団体の長との兼務の問題でございます。この点については、最初に、法律的な議論といたしましては、船舶振興会の会長が他の公益法人の会長を兼務することは禁止されておらないわけでございまして、問題は他の公益事業法人の独立の法人格を持っておる、ということで補助金の交付が左右されることはないと考えております。実際に会長をやっておりましても、補助金は必要に応じて減額される場合もありますし、また増額される場合もあると私どもは考えております。ただ、この交付の仕組みにつきましては、何回も申し上げておりますので申し上げませんが、所管省の推薦を受けて、交付金の専門委員会において審議をして、最終的に運輸大臣が認可することにしております。  第二点につきましては、船舶振興会の目的から考えましていろいろありますが、第一のモーターボート、それから造船、造船関連工業の振興等がございます。したがいまして、いままで運輸省の船舶局の関係におきまして、現在までおられる方は山県昌夫さん、この方は非常勤でございます。船舶局長をしておりました。ただ、この方はその後東京大学の学部長もされた方でございまして、いわゆる造船学の大家ということで御参加をいただいております。その後、現在は、船舶局長経験者では前々回の船舶局長が理事長をしておりますが、船舶振興会の事業の目的から見て、専門家という立場で理事長をしております。公営競技のモーターボート競走会の方には、名前を記憶しておりませんが、たしか古い方が監事であるいは残っておられるかもしれませんが、基本的には、船舶振興会におきまして私がいま御説明申し上げたような方が役員及び理事長をしておるということでございます。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 それは後で資料として出してください。  交付金の審査委員長さんに、かつて運輸省の事務次官をされた若狭得治さんも就任しておられた経過もございます。私は、これからは、大いに監督を厳重にしていただくことも結構でありますが、総理府に設けられた懇談会の中でも数々の指摘があるような点については改めるべきだ、そういう意味では、この際この船舶振興会についても特殊法人にするべきである、かように考えておりますが、この点については総務長官の御見解を承りたいと思います。  それから重ねて、時間もありませんのでお尋ねいたします。各自治体の収益金につきましても非常にアンバランスがございます。たとえば当該自治体の地方税をはるかに上回る収益金を上げている団体もある。また全然収益金のない団体もございます。かつて開催権を付与したときには戦災復興という名目だったわけですね。いまや戦災復興という名目はいかがかと思うのです。むしろ過疎過密、新しい各自治体の財政需要に応じて再配分する、均てん化していくことが正しいと思います。この点の考え方についても総務長官のお考え方をお聞かせいただければ幸いだと思います。  最後に、諮問機関であります公営競技問題懇談会、精力的にいろいろ御調査もし、御論議もいただいておるようであります。ただ、私は、この際この調査会を法律に基づく調査会にすべきではないだろうか。総理府設置法を改正して、法律に基づく調査会を設置をすることが必要ではないか。そうして、より高い立場から御論議もいただき、答申も出していただく。そうして、できれば総理府の中に一つの室を設けるなり部局を設けていただきまして、出しました答申答申の出しっ放しであって、さっぱりこれが法律改正その他現実のものとなっていかない、こういうことではならないわけでございますので、答申がなされた場合、それが実施についても総理府が中心になってその実現に対して十分な推進をいただきたい。関係する省庁は、運輸省もあれば農林省もあれば、通産省もあればまた自治省もございます。そういった各省庁にまたがる問題でもございます。そういう意味では、総理府が総合的な立場からこれに対してイニシアチブをとっていくことが必要だと思います。これらの点につきまして長官の御見解を承りたいと存じます。
  15. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  公営競技関係の振興団体について、船舶振興会その他の団体が法人格において異なった状況の中にある、そしてこの問題は、交付金の配分あるいは人事、監督指導等について今日まで論議がなされてきたところでございまして、この際、各党から出ます超党派的な国会の御意見、そして懇談会はこれを受けて最終的な結論を出してもらうことになっておりますので、その最終答申を受けます際に、そういうものを踏まえて結論を出していただこうと思っておるところでございます。  なお、交付金の配分のあり方について厚薄あり、地域的にいろいろな問題もあるぞということでございます。この点もよく承知をいたしておるところでございまするし、ただいまの御意見を踏まえて最終的な結論を受け、その答申を待って対処してまいりたいと考えております。  第三番目には、現在諮問をいたしております懇談会をもう少し強化して、法律に基づく調査会的な機関にしてはどうだ、なおまた、庁内に室なり部局を設けて責任のある運営をやったらどうだという御意見でございますが、実は調査会の御意見等がございますので、この問題もきわめて大事なことでございまするが、当面いたしますと実は行政機構の簡素化をやろうという時代でもございまして、なかなか問題もあろうかと思いまするけれども、いまの御意見等も十分受けとめさせていただいて、まず懇談会での結論を待って今後対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  16. 藤波孝生

    藤波主査 以上で山口鶴男君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  17. 野坂浩賢

    野坂分科員 私は、総務長官に二つの点について質問をしたいと思います。  まず最初に、元陸海軍の従軍看護婦の処遇についてお尋ねをしたいと思うのであります。  日赤の従軍看護婦の皆さんは戦時中に非常に御苦労された。その労苦にこたえるために、本年度の予算には慰労金が計上されておるわけであります。この内容を見てまいりますと八千七百万円だというふうに理解をしておりますが、三年以上戦地で勤務された方、平均金額として十四万円、人数は本年度は大体千百人、こういうふうに理解をしておるわけであります。もちろん昨年五党一致して内閣の方に要望し実現されたわけでありますが、これと同じように従軍し、軍人とともに辛酸をなめてまいりました元陸海軍の従軍看護婦にはこの恩典が付与されていない、こういうふうに理解しております。同じ公務員として同じ任務についたわけでありますから、これを日赤従軍看護婦と同じような処遇にすべきではないかと考えるわけでありますが、総務長官はいかにお考えでありましょうか。
  18. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  旧日赤の看護婦の方々に対しまする処遇につきましては、いま先生御指摘のとおりでございまして、女性の身をもって戦場に陸海軍大臣の命令に基づいて行動をなさり、しかも長期にわたって御苦労をなさった方々でございます。そうした特殊事情もございまして、日赤において慰労給付金を支給いたしたいという申し出がございまして、これに対して、政府がその特殊事情にかんがみて助成をすることにいたしたことは御指摘のとおりでございます。  そこで引き続いて、陸海軍の病院等で勤務をなさった看護婦さんもひとつめんどうを見てやるべきではないかという御指摘でございます。この点につきましても、ケースは多少違いますけれども、この処置についていろいろ検討を加えておるわけでございますが、現在の状況はきわめて困難な事情もございますけれども、なお一層掘り下げて検討をしてまいりたいということで鋭意取り組んでおるのが現在の状況でございます。
  19. 野坂浩賢

    野坂分科員 同じような公務についていたということは御回答いただきました。ただ、元の陸海軍の従軍看護婦の皆さんは、その調査なり手続について若干複雑であるというような御意見でございますが、日本赤十字社の場合は、日赤本社がよく管理しておりますから、そういう点は非常に明瞭であろうと思うのです。陸海軍の従軍看護婦の場合は、直属として陸海軍が雇用したという関係にございます。  ただ、一番の焦点というものは、日赤本社の赤紙で、しかも日赤本社が十分管理しておる、非常に明瞭である、任務は同じであるということでありますから、元の陸海軍の従軍看護婦の処遇については御検討いただくわけでありますけれども、いまこの人たちは同じように取り扱ってほしいということで、収入もないわけでありますが、一人当たり五千円ずつ出し合って、元の陸海軍従軍看護婦の会というのを結成して全国に調査をしております。私はいろいろとお手紙をちょうだいしておるわけでありますが、いまの調査段階では、はっきりしているのは五百六名いらっしゃる、こういうふうに聞いております。軍歴書の届いた者とか、非常に明瞭であるわけですから、そういうものを民間人の自分たちでもできるわけでありますから、政府でできないことはないじゃないかと私は思うわけです。その点について、そういう点が明確になれば同じような取り扱いをする、こういうふうに考えてもよろしゅうございましょうか。
  20. 手塚康夫

    ○手塚説明員 この問題は、先生御指摘のように、あるいは先ほど大臣から御答弁いたしましたように、戦地での勤務の実態、確かに共通する面もございまして、日赤の救護員について種々検討した際、その辺問題になった点でございます。ただ、その実態と申しますのは、一つには数の問題もございますし、さらには個人個人の経歴が明確に取れるかどうかという問題もございます。そのほか身分的にも、日赤の救護員の場合には明治時代から特殊な制度、いわば裏の軍隊的な組織であった、というのは申し過ぎかもしれませんが、そういう日赤の性格に乗って救護員という制度ができてきたわけでございます。そういうことで、日本の赤十字社の救護員というのはちょっと特殊な任務を持っておるわけなんです。それと陸海軍の看護婦、これは軍の雇用人になります。そうなりますと、軍の雇用人はほかにもたくさんございまして、その辺、一概に同じに扱えるかどうか、これは問題になるところでございます。先ほど大臣も御答弁いたしましたように、その辺の問題点もさらに詰めていかなければいけないような点が多々あるというふうに理解しております。
  21. 野坂浩賢

    野坂分科員 戦傷病者戦没者遺族等援護法という法律がありますね。この法律の目的は、「軍人軍属等の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家補償の精神に基き、軍人軍属等であつた者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」ということで、「「軍人軍属」とは、」ということで、部内の有給の嘱託員とか雇員とか傭人とか工員とか鉱員とか、たくさん書いてありまして、いまあなたがお話しになりました陸海軍の直接の雇用者も援護法の中に入っておるわけですね。ですから、負傷された方あるいはお亡くなりになった方、そういう方には証明書があればちゃんと援護の手が差し伸べられている。ですから、これもそういう精神からいたしますと同じことになるのじゃないか、恩給法を見ましても。だから早期に調査をされて、この精神を生かして取り扱いは同じくするというのが、道義的にも、また内閣としても、総理府としても、これらの点については当然考えるべきものというふうに考え、同じ取り扱いができるものだ、理論的には私はそう思いますが、総務長官、そうでしょうか。
  22. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  先ほどから申し上げておりますように、私ども、心情的にはいま御指摘のような心情で、何とか陸海軍看護婦の方々の御苦労に報いる道はなかろうかということで検討を進めておるところでございますが、ケースが日赤看護婦さんの場合と多少異なったところも見受けられる、そういう手続的な問題等もあるわけでございますが、なお、これがいま御指摘ございましたように、陸海軍の雇用者全般にどう問題が波及し、解決をしていかなければならぬかというような問題も生じてまいるわけでございます。相当な予算検討しなければならぬということにもなりかねない状態でもございますので、それら諸般の問題点を踏まえながら、いま鋭意検討を進めておるという状況でございます。
  23. 野坂浩賢

    野坂分科員 これ以上質疑はいたしませんが、予算上の問題もあるということですけれども、同じようなケースにして五百六人のうち三年以下というのが百人程度、解明をいたしますとあるようですから、当面は五千万円弱ということになるだろうと思うのですね。範囲が広がってとどまるところがないというようなことではなしに、同じようなケースがあれば、国としては同じように取り扱うというのが本旨だろうと思いますので、早急に検討されて実施されることを要望しておきます。  次に、同和問題についてお尋ねいたします。  時間がありませんから、ごく簡潔にお尋ねいたしますが、さきの国会で三年間の延長ということになりました。このとき附帯決議が三つついておるわけですが、この間の予算委員会の一般質問の中で、総理府総務長官は実態調査を十分にやっていくということでございましたが、この同和地区における実態調査は、今年度内に各省の大臣はおやりになるというふうに考えていいわけですね。
  24. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  本年度は三月末でございますから、私は、五十四年度中にはそういうような実態の把握をやらなければならぬということで、各省関係者にもお願いを申し上げておるという事態でございます。
  25. 野坂浩賢

    野坂分科員 わかりました。この実態調査は、五十年に一応の調査をされたわけでありますが、この調査よりも、その後百二十カ所程度指定地区もふえておりますし、現在市町村会なりあるいは同和対策協議会なりあるいは解放同盟の皆さんから出されております残事業量というものは相当数に上っております。同盟等は六兆円にも及ぶのではないかというふうに資料が出されておるわけであります。これは、たとえば三百四十一の市にそれをかけまして出した数字でありますから定かではない点もあろうかと思いますが、五十年度調査の残事業量よりも大きく伸びておるということだけは間違いないと思います。そういうふうに総理府総務長官も把握していらっしゃると思いますが、そのように考えてよろしゅうございますか。
  26. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、実態を把握することは事業を効率的に推進するために絶対必要な条件でございます。したがいまして、鋭意努力をいたしておるわけでございますし、いま御指摘ございました五十年におきます実態の調査、その後市長会あるいは同和会の団体からも出てきたことも承知をいたしております。また、同和地域の増加等も出てまいっております。そういうものもその都度整理はいたしておるわけでございますが、なおこの際、関係各省庁にも十分御連絡を申し上げまして、実態の把握については、今後御要請のようにまとめてまいりたいと考えておるところでございます。
  27. 野坂浩賢

    野坂分科員 現在の同和地区は何地区というふうに把握していらっしゃいますか。
  28. 黒川弘

    ○黒川政府委員 昭和五十年の全国同和地区調査によって把握いたしました同和地区の数は四千三百七十四地区でございます。その後、この調査にならいまして補完的な報告として受け付けた地区がございますが、その地区は、現在までの段階で地区数として百二十地区でございます。
  29. 野坂浩賢

    野坂分科員 これは私どもが最も忌避しておる部落地名総鑑の中にも約五千出ておりますし、それから解放同盟の皆さんでもいろいろ調査をされておりますが、対象部落は五千六百三十五程度あるじゃないか、こういうふうにおっしゃっております。  ここにあります差別の実態という本の中にも、昭和十年に調査をしたのと昭和五十年の調査とでは相当な数が各府県、市町村別に落ちております。少なくなっておる。これは、未指定の地域があれば拾い上げて対象地域とするということはそのとおりと考えていいわけですね。
  30. 黒川弘

    ○黒川政府委員 先ほど、昭和五十年の調査でまとめました以降の段階におきまして出てまいりました地区数について御報告申し上げたわけでありますが、さらにこの後におきましても同様の趣旨によりまして追加報告という形で出てまいりますれば、それを受けまして各省に連絡してまいりたいというふうに考えております。
  31. 野坂浩賢

    野坂分科員 実態調査を来年度中に実施をしていただくわけですが、不敏にして私、この実態調査費というのが、読んでみましてもよくわからぬのですが、各省にはどの程度実態調査費が組んであって、集約をするとどの程度になりますか。
  32. 黒川弘

    ○黒川政府委員 実態調査を行う方法でございますが、実態の把握につきましてはいろいろの方法が考えられるわけでございますけれども、中心として考えておりますのは、各事業所管省が、同和地区の存在する市町村、これを管轄する府県の担当部局から事情聴取をして、残事業量がどれくらいであるかということを中心にして把握いたしたいと考えております。また、必要に応じまして各事業所管省等の担当者が現地に出向きまして、それぞれ自分の目でもって実態を確かめるという方法でこれを補うということを考えているわけでございますが、これに要する経費といたしましては、総理府経費として連絡調整経費という形で百二十五万六千円を計上してございます。その他の省におきましては特別にそのための経費として計上した分はございませんが、既定経費の中から、ただいま申し上げました現地に赴いて実態を視察しその後の取りまとめに充てるための経費、これを支出するということを考えている次第でございます。
  33. 野坂浩賢

    野坂分科員 百二十五万円程度では調査ができませんから既定の経費でやっていただくということになるだろうと思いますが、十分粗漏のないように、金額は少ないですけれども、補正でもしてきちんとやっていただくように要望しておきます。  それから、この三項目の附帯決議は、総務長官が国対委員長のときに話し合いでやられた問題でありますから一番よく御承知だと思うのですね。この中に、「同和対策事業を実施する地方公共団体の財政上の負担の軽減を図ること。」と書いてあります。この法律には第七条に、三分の二は国が負担するということになっておりますね。これは全国各県の市町村を集約したものを「昭和五十二年度同和対策事業状況」ということで、これは自治省が出しておる資料ですが、構成比としては国が三六・二で、地方が六三・八だ、こういうふうに資料が示されております。それを裏づけるように自治省の財政局長から五十三年の七月八日付で通達が出されております。同じような趣旨が書いてありますね。そういう意味では、これは法律と違った結果になっておるのではないか、こういうふうに思うわけですが、その点はどのようにお考えになり、把握していらっしゃるでしょうか。
  34. 黒川弘

    ○黒川政府委員 同和対策事業に対しまして国が支出いたします補助金は原則として三分の二ということで法律に定められておりますし、そのように執行しているわけでございますが、そのほかに、地方におきましてはいわゆる単独事業の形で実施しております事業がございます。それを含めまして、全体について費用の支出割合等を検討いたしますと、先ほど先生御指摘のような、自治省取りまとめの数字になってあらわれてまいったものというふうに考えております。
  35. 野坂浩賢

    野坂分科員 お話がありましたように、「地方単独事業の実施等により、その財政負担が過重なものとなっております。」と書いてあります。これは、予算のある程度の拡大はやり得るというふうに判断をされておるわけでありますが、そういう意味で来年度の新規事業というものを相当要求しておりますけれども、削られておるというのが実態ですね。そうするとやはり単独事業が多くなってくるのじゃないか。それでは地方財政の負担が過重になってくる。こういう悪循環を来すわけでありますが、それらについて、総理府は連絡調整機関として、大蔵省なり各省庁とどのような連絡をおとりになってこのような結果になったのか、お尋ねをしたいと思います。
  36. 黒川弘

    ○黒川政府委員 総理府といたしましては各省間の連絡調整に当たるわけでございますが、同和対策事業予算につきましても、予算要求の段階から査定の段階に至りますまで、適時密接な連絡をとりまして、連絡協調を図ってまいったわけでございます。  そこで、昭和五十四年度におきましても、幾つかの新しい事業が国庫補助対象事業として認められているわけでございまして、――(野坂分科員「時間がありませんから簡単でいいです」と呼ぶ)一々新しく認められた事業説明を省略いたしますが、たしか六項目にわたりまして新規事業が認められたわけでございます。
  37. 野坂浩賢

    野坂分科員 そうなんです。六事業認められておるのですけれども、要求としては二十二事業を新規に要求をしておるわけなんです。認められたのは六です。それが単独県費とかそういう事業に変わってくる場合、だからこういう点についてはもっと精力的に補正等でもやってもらわなければならぬと思いますが、その点と、そして三分の二ということの中で、単独ではなしに、もっとウエートがあるものは、その基準ですね、基準とあるべき姿というものとの懸隔が非常にあり過ぎる。だから、地方の自治体の場合はあるべき姿で事業を執行するし、国の場合は基準を設定して、その差額が非常に多いわけなんです。それが一番のウエートなんですね。これについて基準見直しをする必要があろう、こういうふうに私どもは考えるわけです。それの点については、早期にやらなければ地方財政への圧迫が顕著になると同時に、この残事業はこれから伸びていくわけですからなかなかできてこない、三年間ではとてもやり切れないという実態になるだろうと思うのです。それらの点については十分対処していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 黒川弘

    ○黒川政府委員 ただいま御指摘の国庫補助事業の執行につきましても、実際に要する費用と国庫補助金との関係、この問題は同和対策事業を今後推進するに当たりまして重要な問題の一つでございます。これらの問題を含めまして、各省間に同和対策連絡会議を設けまして鋭意検討しているわけでございまして、今後適切に対処してまいりたいというように考えております。
  39. 野坂浩賢

    野坂分科員 私これで終わりますが、いまお話しいただきましたことは、基準の見直し、それから残事業等もこれから実態調査をしていただくわけでありますから、大臣が中心になられまして、各省の大臣もそれぞれ調査をしていただくことになったわけでありますから、ぜひ満足のいける体制をきちんと整えていただくと同時に、基準見直しも特に要望して、これで私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  40. 藤波孝生

    藤波主査 以上で野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  41. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議の草川であります。  私は、いわゆる救急医療問題に関して、どちらかといえば、プレという言葉がありますけれども、病院に搬送される以前の問題について、法体系と行政分担の体制整備の問題があるわけですから、その点を中心に質問をさせていただきたいと思うわけです。  御存じのとおりに、いまわが国の救急医療体制というのは、交通安全対策基本法というのがございますが、これはいわゆる交通規制等も含めまして道交法など警察関係ということになります、たとえば事故が起きた場合のことでございますから。それから、患者が発生をした場合には負傷者の搬送という意味で消防法というものがあるわけです。あるいはまた、消防法で搬送された患者というものが病院に運び込まれまして、ここからは医療法。こういうように多岐にわたる法律に基づいた制度になっておるわけでございますけれども、そのために、救急活動の実施面において関係諸機関の足並みというのは非常にふぞろいだと思います。あるいはまた、国民の教育という面を取り上げましても、学校教育だとか大学の教育だとか、あるいは医科大学等の中における教育カリキュラムがどうなっているのかというような、非常に問題が多方面にわたるわけでございます。  いわゆる救護、通信、搬送、治療など、本来は一貫した救急医療体制というものを構成すべきだと思うわけでございますが、それを執行する、管轄をする省庁というものが非常に明確ではないわけです。どちらかといえば、これを総合的にまとめるのは総理府だと私は思うわけでございますけれども、総合的な体制確立について、現在の体制で総理府としては矛盾を感じていないのかどうか、まずお答えを願いたいと思うのです。
  42. 三島孟

    ○三島政府委員 お答え申し上げます。  交通安全対策を担当しております総理府といたしましては、交通事故による負傷者の救急医療対策につきましては、ただいまお話がございましたとおり、交通安全対策基本法及びそれに基づく交通安全基本計画に定めておりますところに基づきまして、関係省庁と協力してこれまでも救急医療対策の推進に努めてまいったわけでございますけれども、私どもとしては今後ともさらに密接に関係省庁と協力、連携を保ちながら救急医療対策の充実強化に努めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  43. 草川昭三

    草川分科員 そういうお答えでございますけれども、たとえば交通安全対策基本法の三十四条では、交通事故に関する救急医療体制の整備拡充というのは国が行うということが非常に明確に規定をされているわけでございますが、私が先ほど質問しましたように、実際具体的にその旨を実行する所管省庁というものは必ずしも明確ではないわけです。あるいはまた、運び込まれて今度は厚生省の管轄になるわけでございますけれども、厚生省にも医療機関の整備をするセクションというのですか、課はあるわけでございますけれども、救急医療そのものを専門として担当する課というものはないわけです。非常に細かく言っていきますと切りがないわけで、たとえばいまの道交法にも関係するわけですが、道路交通法第七十二条には運転者に対する負傷者救護の義務が規定をされているわけです。ところが、この条項そのもののPRというのですか、たとえば周知徹底をする、あるいはその中身にありますような応急手当等について具体的にどういうような指導をしておるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  44. 森田雄二

    ○森田説明員 ただいま、交通事故の現場における救急措置というものの教え方ということでございますけれども、御存じのとおり、新たに運転免許を取る人の大部分は指定自動車教習所を卒業しておるわけでございます。そこで、一昨年来国会で、運転免許保有者に対する救急措置の教育ということにつきましていろいろ貴重な御意見をいただいたものでございますから、私どものところで、厚生省、消防庁等の関係機関及び専門の医師等を集めまして研究会を開きまして、それで運転者がわきまえておるべき救急に関する知識について改正をいたしまして、国家公安委員会が出しております「交通の方法に関する教則」の中に大きく取り入れたわけでございます。これを、新たに免許証を取る人につきましては指定自動車教習所において、それからすでに免許証を取って運転しておる人につきましては三年に一度の更新のときの講習、それから違反や事故を起こしまして処分を受ける人につきましては処分者講習という時期に十分教え込むように、そういう形をとっておるわけでございます。
  45. 草川昭三

    草川分科員 いまおっしゃられたのは「交通の教則」、私これだと思うのですけれども、この中には実は八十ページに「応急手当」というのが一ページよりないわけですよ。しかも、私自身も免許証の更新に参加をすることがあるわけですけれども、実際問題として応急手当の方法という実技はないわけです。この教本でよく見なさいよというような指導はあるわけでございますけれども、これから交通事故だけではなくていろいろな災害が予想されるわけですから、私は、実技の講習等もあるときには、別にこれは運転者に限りませんけれども、もう少しやっていく必要があると思うのですが、その種の教育をたとえば一体どこの省がやるのかということになりますと、私、事前に各省の方々といろいろレクをやりましたけれども、それはわが省で行うと明言されるところはどこもないわけですよ。それが私はきょうこの委員会でこの問題を取り上げさせていただいた最大の理由なのです。そこを私は総理府なら総理府で取り上げていただかなければしようがないのじゃないかというのが趣旨なのですけれども、その点についてはどうでしょう。
  46. 三島孟

    ○三島政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、救急医療対策の問題につきましては、私どもこれまでも必要に応じ関係各省庁と連携を保ちながら進めてまいったわけでございますけれども、ただいま御指摘の救急医療教育の問題につきましても、今後やはり関係省庁と御連絡を保ちながら検討を進めてまいりたいというふうには考えております。
  47. 草川昭三

    草川分科員 それは本当に具体的にぜひそれを実行に移していただきたいというふうに要望申し上げて、搬送業務の方へ移っていきたいと思うのです。  たとえば事故が発生をして、救急搬送業務を各市町村なんかにお願いするわけですが、これは三十九年の消防法省令の改正でそういうことになったわけでございますけれども、ただいまのところ、全国で二千七百四十四市町村でございますか、その程度のところをいっておると思うのですが、人口の何%ぐらいをカバーすることになっておるのか、ひとつ実情を御説明願いたいと思います。
  48. 中島忠能

    ○中島説明員 お答えいたします。  人口割合では九六・四%でございます。
  49. 草川昭三

    草川分科員 かなりのところまでカバーをするようになったわけでございますが、実際的にたらい回しというのが何回か国会でも問題になっておりますけれども、たらい回しの実態、傾向がなくなっておるのかどうかということをお答え願いたいわけです。一口でたらい回しといいましても、電話で問い合わせをしながらそこの病院へ行くということ、あるいは問い合わせではなくて、いわゆる車に乗って送りながら、専門医がいないとか、ベッドが満床だとか、設備不十分ということで断られるというようないろいろな例があると思いますけれども、ひとつ実情をお聞かせ願いたいと思うのです。
  50. 中島忠能

    ○中島説明員 五十二年中における搬送人員は全国で百六十二万一千四百人ばかりでございますが、その中で、たらい回しといいますか、転送の対象となりましたのは全体の二・五%、四万一千人ばかりでございます。そのほとんどが一回ないし三回の転送でございますが、転送の理由というのは、ベッドが満床であるとか専門外であるとか医師が不在であるとか、そういう状況でございます。消防機関といたしましては、病院情報というものを即座に消防本部で把握できるように情報収集装置の設置の促進を毎年図っておりますが、その結果、転送は毎年着実に減ってきておりますけれども、いま申し上げましたように二・五%、四万一千人というのは大変な数でございますので、消防機関といたしましては、厚生省その他の関係機関と協力いたしながら、病院情報を即座に把握できるように努めてまいりたいと考えております。
  51. 草川昭三

    草川分科員 パーセントでは二・五%ですが、おっしゃるように四万一千人の方が転送になったというのは大きな数字だと思うのです。その中でも、たとえば四回以上転送になったという極端な例があると思いますけれども、その対象人員は四万一千人の中でどの程度いますか。
  52. 中島忠能

    ○中島説明員 四回以上というのは、四回から六回までが六十四人、それ以上が三人でございますから、全部で六十七人ということでございます。
  53. 草川昭三

    草川分科員 まあ四回から六回は六十四人という数字でございますけれども、これもかなり大きな数字ではないだろうかと私は思っております。そういう意味では、ぜひ情報センター等も早急に一貫体系の中で取り上げていただきたいと思うわけです。  次の質問になりますけれども、今度は救急隊員の状況について、これは量的にはかなり充実をしてきておると思うのですけれども、全国で約三万人を超す救急隊員がみえるようですけれども、専任の隊員というのは非常に少ないと言われております。いわゆる専任隊員は二三%ぐらいだ、あとは消防業務との兼任だというわけですけれども、それでいいのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  54. 中島忠能

    ○中島説明員 いま先生がお話しのように、救急隊員は現在全国で三万一千六百八十二人、専任隊員は二三%の七千百五十八人ということでございますが、救急業務というのは毎年需要がふえておりますので、救急隊員の増加、特に専任隊員の増加については、消防庁といたしましても各消防機関に強く働きかけておりますし、それに必要な交付税の措置等も毎年講じておりますので、私たちといたしましては、国民の救急需要に対する状況を的確に把握いたしながら、救急隊員の確保というものには努めてまいりたいと考えております。
  55. 草川昭三

    草川分科員 では、その救急隊員というのは、現在各自治体の行う救急実務講習を経て養成をされておるという、消防大学なんかもあると思うのですけれども、いわゆる救急業務の実施基準に基づく資格のある隊員というのは何%ぐらいですか。
  56. 中島忠能

    ○中島説明員 お答えいたします。  三割を少し切れるぐらいの状況でございますので、私たちといたしましては昨年の秋に消防法施行令を改正いたしまして、救急隊員の資格に係る基準というのを政令に決めまして、実施基準というのは省令にゆだねておりますけれども、私たちといたしましてはその政令、省令に基づきまして、いま先生が御指摘になりました点につきまして、できるだけ有資格者を確保してまいりたいというふうに体制を整備しております。
  57. 草川昭三

    草川分科員 救急隊員の方は非常に御苦労なさってみえるわけでありますけれども、実際、資格を持つ方が三割を超す、三一・三%ですか、三一%程度ということでございますが、やはり患者が病院に担ぎ込まれる間は救急隊員の方々の判断によるわけでありますから、役割りというのは非常に大きいわけです。そういう意味では、この救急隊員の一〇〇%の完全実施ができるような背景、条件を予算上もいろいろと考えられるとかしてもらいたいと思うのです。  それにつけましても、実は消防庁に専門のいわゆる技官というのですか、お医者さんというのはおみえになるのですか。
  58. 中島忠能

    ○中島説明員 専門の技官といいますか、専門の医者はおりませんけれども、私たちといたしましては、救急隊員の医学的知識というものの向上のために、外部の先生方に委嘱いたしまして、その専任の職員がいないことに伴う欠陥というものを十分補充してまいりたいというふうに考えておりますし、現にそういうことをやっております。
  59. 草川昭三

    草川分科員 まあ、消防庁はどういうような予算を持っておみえになるかわかりませんけれども、救急隊員、いわゆるパラメディカルスタッフというのですか、外国というか、アメリカだとかヨーロッパの方へ行きますと、非常に専門的な知識、そして一定の資格要件というものが与えられているわけです。これは厚生省の方にお聞きをしたいわけでございますけれども、厚生省当局としては医療業務の助手的な資格要件を与えることについては否定的な御意見を出しておみえになるわけでございますが、私は、そうではなくて、やはり救急隊員というものは、たとえば看護婦さんだとか、はり、きゅう、マッサージでもそれなりの国家ライセンスがあるわけですから、それに見合う資格を少し与えるべきではないだろうかと思うのですが、この点について消防庁と厚生省の意見をお聞かせください。
  60. 中島忠能

    ○中島説明員 救急隊員が患者を搬送する過程におきまして行う措置というのは、確かに人命救助の面におきまして非常に重要なものがあるかと考えております。そこで私たちは研究会を設置いたしまして、外部の専門家にその委員になっていただきまして、いかなる応急措置が現在の医師法その他の関連で救急隊員にとらせ得るかということを現在検討いたしておりますが、いずれにいたしましても、救急隊員の任務の重要性ということを強く認識しながら、また一方、医師法とかその他関連法との関連というものを十分認識しながら、できるだけ国民の救急需要に対応する体制というか、そういうような認識を持って仕事に当たっておるわけでございますが、先生のおっしゃるのは私たちのこれからの一つの大きな研究課題だというふうに考えております。
  61. 瀬田公和

    ○瀬田説明員 厚生省といたしましては、救急医療機関の整備でございますとか、それから救急医療に関する医師の研修について現在実施しているわけでございますけれども、そういった救急隊員等の資格の問題等につきましても、今後消防庁との間に定期的な協議会等を持たしていただいて検討していきたいというふうに考えております。
  62. 草川昭三

    草川分科員 私は先ほどお話をしましたように、厚生省としても救急医療のことについて、いわゆる病院のことあるいは情報センターだとか救命救急センター等については大変熱心に取り組んでみえるわけですし、さらにそれを拡大をしていただきたいわけですが、それだけ拡充しても一貫した流れがないとそれはかえって問題が出てくるんじゃないだろうか。だから、早く言うならば、救急隊員の判断というものが非常に大きな役割りを与えられてくることになるわけでございますから、ぜひこの救急隊員の教育の充実ということについては、消防庁の方も厚生省の方も御検討願いたいと思うわけです。私、ここに「当面とるべき救急医療対策について」昭和五十一年の救急医療懇談会答申案ですか、それがあるわけですが、ここの中にも、救急隊員の教育の充実ということについては非常に強い要望というのが出ておるわけでございますから、ぜひこれは実施をお願い申し上げたいと思うわけであります。  それから問題は、今度は搬送からさらに一般の国民というのですか、子供を含める教育の場あるいはまた大学なんかの教育という面も出てくるわけでございますけれども、まず最初に、小学校なり中学校なりの教育で、保健衛生なんかで特にこの種の医療問題というのですか、救急問題というものはある程度の教育を文部省でもなすってみえると思うのです。ところが、いわゆる実技という面で、果たして教師の方々が三角巾の手当ての方法だとか止血の方法をどのように指導するかということになりますと、ほとんどいわゆる実技というのはないわけですよ。私、日赤の講習会を教師の方々、教員の方々がどの程度受けてみえるのか、調べてみましたら、昭和二十二年以来累積でわずか七百名よりやっておみえにならないわけですよ。これから大災害だとかあるいは大事故なんかもいろいろと予測をされるような状況なんでございますけれども、果たしてそういうことで本当に間に合うのかどうか、これもひとつお聞かせ願いたい、こういうように思うわけです。
  63. 島田治

    ○島田説明員 先生御指摘のとおり、学校における救急措置の実技の教育をさらに一層充実していかなければならないと存じております。私ども現在、学校では養護教諭というのを中心に、養護教諭の養成には救急措置も一応入っておりますが、なお養護教諭の中央講習会というあたりでも、たとえば五十年度では学校における救急措置の実際とか、あるいは五十一年度、救急措置とその実態、日赤あたりの先生もお願いして、これをまた講習の上各府県の講習あたりでも伝達するというようなことには努めておるわけでございますが、重要なことでございますので、なお一般の教員も含めましてできるだけこの面に理解を持ち、またどういう場合にもできるだけの措置ができるように努力をしてまいりたいと存じます。
  64. 草川昭三

    草川分科員 では、医科大学における救急医学の教育というものがどういうようにやられておるかという実情についてお聞かせ願いたいと思うのですけれども、実際、この救急医療というものは、先生なんかにお話を聞きますと、やはり医療の原点だとおっしゃられる方が多いわけです。しかし、それが本当に、看護婦からいろんな検査技師だとか麻酔医師等を含める一貫した救急医学というものの体制が大学教育の中でもまだ確立をされていない、こうわれわれは聞くわけでございますが、一体この医科大学における救急医学というようなものあるいはカリキュラムというようなものはどういう形で行われておるか、文部省の方からお聞かせ願いたいと思います。
  65. 五十嵐耕一

    ○五十嵐説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、救急医療と申しますのは非常に大事なものでございます。特に医学教育の専門分化の傾向が非常に強いということから考えますと、一般医としての教育を重視いたしましてプライマリーケアの教育をやっていくことが必要であると考えております。  このような救急医学教育あるいは救急医学を進めていきますに当たりましては、大学病院におきます救急部といいますものを充実していかなくてはなりませんものでございますから、それについての充実も図っておるということでございます。さらに、救急医学を独立した授業科目としております大学は増加の傾向にございまして、昭和五十年度におきましては国・公・私立大学合計十三校でございましたのが、五十二年度におきましては十六校と増加しておりまして、大学におきましてもだんだんそういうことに力を入れているということでございます。また、救急医学を独立した授業科目としていない大学の場合でも、内科学、外科学等の各授業科目で救急医学の教育に創意工夫を行っているところでございます。
  66. 草川昭三

    草川分科員 時間がございませんので、最後になりますけれども、いまもお話がございましたように、まだまだ完璧な状況ではないわけですよ。しかも、いまの数字でも、五十二年の数字でまだまだ十六という状況でございますから、いかに救急医療を体系的に取り組むということについておくれておるかということはおわかりだと思うのです。そういう意味で、私は何回か申し上げておりますけれども、プレ・ホスピタル・ケアというのですか、病院前のいろいろな手をつけなければならないものが山ほどあると思うのです。国民に対する理解と協力も必要でありますし、あるいはまたいろいろな、PTAだとか社会団体等における啓蒙開発ということも、私、必要になってくると思いますし、どちらかというならば、トータルな意味で救急医療基本法というようなものを、私はぜひわが国に制定をしていく必要があると思うのです。もちろんこれは医師に対する応招義務を明確にするとかいうような、そういうところに視点を当てるのではなくて、全体的に関係省庁というものがもう少しうまく連携をし合いながら一貫して救急医療問題に取り組むことが必要だと思います。  最後になりますけれども、その種の各省にまたがる問題点というのは総理府以外にはないと思うので、長官の方から、一体この問題についてどういうようなお考えか、態度をお聞かせ願いたいと思います。
  67. 三原朝雄

    三原国務大臣 救急医療問題がきわめて重要な問題であり、一つ国民的な課題であるということを御指摘願っておるわけでございます。その間、病院にかつぎ込みますまでの問題、その救急医療関係自体に、事故に遭われた方、またこれを搬送いたします問題等ばかりでなく、広く国民に理解を願って協力を願っておく必要がある、そういう点について、いま救急医療の基本法的なものをつくって万全を期すべきではないかという御指摘がございました。非常に貴重な御意見でございますし、関係省庁担当者の連絡会議等も常時やっておるわけでございますので、そうした点も問題を提示いたしまして検討をさせていただこうと思っております。
  68. 草川昭三

    草川分科員 最後に要望を申し上げておきますが、私が本日提起をした問題等については、非常に前向きな形の答弁というのはないわけでございますが、これは国民的な課題でございますので、関係各省ともぜひ前向きな形で取り組んでいただきたいということを要望し、さらにまた、熱心に地域でいろいろな各種の民間団体あるいはまた協会等をつくられて、将来のあるべき方向で非常に努力をなすってみえる方々にぜひ皆様方の方も関心を持っていただいて、助成等の措置がとられるよう要望しまして私の質問を終わりたい、このように思います。  どうもありがとうございました。
  69. 藤波孝生

    藤波主査 以上で草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  70. 上原康助

    上原分科員 私は、大変限られた時間ですから、昨年の七月三十日に実施されました沖繩の交通方法変更後の懸案事項の幾つかについてお尋ねをしたいと思います。  それとの関連もありますし、総務長官沖繩開発庁長官も兼務されておりますから、沖繩振興開発計画の今後の見通しあるいは昭和五十六年度で一応十カ年計画が終了するわけですが、その後どのようなお考えを持っておられるのか、その点についてもお尋ねをしますので、誠意ある御回答を求めたいと、冒頭お願いをしておきたいと思います。  交変の問題につきましては、これまでもしばしば沖繩北方対策特別委員会などでも取り上げられ、その他の交通安全対策特別委員会、また内閣員会等でも議論されてきたことなんですが、今回、予算案の審議の過程では余り議論されておりませんので、この件を冒頭取り上げたいんです。  特に、当初から問題になっておりました、交通方法が変更されることによって生ずるであろう個人または団体の救済措置については、政府の誠意が全く見られない。うやむやな形にされてすでに半年余が経過しておるわけなんです。一体、この交通方法変更に伴う個人または団体の営業損失補償について政府はどのようにお考えになっているのか、改めてこの件に対する確たる御見解をまずお聞かせいただきたいと思うのです。
  71. 三原朝雄

    三原国務大臣 沖繩県下におきまする交通方法の変更に伴って、今日までいろいろな施策を推進してまいったわけでございますが、いま御指摘の個人及び団体に対しまする有形無形の負担と申しまするか、あるいは損失というようなものもあわせてあろうと思うわけでございまするが、そういうものに対していまお尋ねであるわけでございます。  この点につきましては、個人個人、個々の問題につきましては、融資の面でいろいろと対処いたしておるわけでございます。  なお、全体的な問題といたしましては、これは県民全体に及ぼした影響もあるわけでございますので、特別事業を計画して五十四年度から約四年間ぐらいで一つ事業計画を進めておるわけでございます。ことしも約十一億の予算を計上してこの特別事業推進するということでまいっておるわけでございます。
  72. 上原康助

    上原分科員 総務長官はおわかりの上でいまのような御答弁をなさると思うのですが、それは当初の政府の答弁とは非常に違うわけですね。この点については前総務長官稻村さんとはどういう事務引き継ぎをなさったんですか。
  73. 三原朝雄

    三原国務大臣 前長官とも、沖繩の交通方法の変更に伴います事業につきましては十分相談をした上でまいっておるわけでございます。その中で、いま申し上げまするように、大きく県民全体に対する問題、ここにはいろいろなものがあろうと思いますけれども、全体の問題をどう対処するかということと、それから個々の問題、お一人お一人の補償的な措置はできないまでも、具体的にその御意見を聴取しながら、融資の面あるいはその他の方法で対処してまいることにいたしたいということで、そうした大まかな事務引き継ぎをいたしておるわけでございます。
  74. 上原康助

    上原分科員 そういうふうに、これは政府の責任ある方々の国会における答弁あるいは沖繩現地における七・三〇前の御発言から非常に後退してきている。失礼な言い方をすると、全くペテンで、県民に対する政治的な背信行為ですね。そういうことで責任の回避というものが許されるかとなると、私は納得いきません。稻村前総務長官は、営業上の損失の補償についてはあくまでケース・バイ・ケースで迅速に処置し、いささかも県民に不安のないようにしたい、こういうことを繰り返してきたわけです。いささかも県民に不安を与えていませんか。そこで総務長官、こういう議論はいろいろやってきましたので、いまあなたがおっしゃるようなことでは事は済まないと思うのです。  事務当局にちょっとお尋ねしておきたいのですが、七・三〇の実施前もそうなんですが、実施後において、沖繩県から一九七八年の十月九日に政府関係要路へいろいろ要請が出されておりますね。「交通方法変更に伴う救済措置について」。これは時間の都合もありますので全部は読みませんが、さらに七八年の十月七日付で沖繩議会からも「損失補償、特別事業の実現、交通渋滞の解消等について」のいわゆる意見書が出されている。こういうことについては、具体的にどう検討して、どう対処してこられたのですか。
  75. 三島孟

    ○三島政府委員 私ども、ただいまお話しございましたとおり、沖繩県あるいは沖繩議会から御要請のあった問題につきましては、それぞれの関係省庁と御相談の上、その措置を講じてまいっておるわけでございますけれども、いまお話しのございました、たとえばいわゆる損失補償の問題につきましては、先ほど大臣から御答弁なられたとおりの方法で対処してまいっております。  また、渋滞対策等の問題につきましては、関係省庁とも連絡会議を持ちまして、それぞれ必要な措置を講ずることにしておる次第でございます。
  76. 上原康助

    上原分科員 これはいずれまた時間をかけて少し議論をしなければいけませんが、誠意ある検討はしてないということが、いまのあなたの答弁からもはっきりするわけで、県議会なり県がこういう要請書を具体的に出したことについては、もう少しまじめに対処していただいたらどうなんでしょう。  そうしますと、現段階における皆さんの御回答からすると、当初から融資以外は全然考えていなかったわけですね、政府は。ケース・バイ・ケースでいささかも県民に不安を与えない、常識的日本語感覚を持っている人はどう受けとめるのですか、こういう発言は。しかも、何回かの議論においても、この件については、県側から具体的に要求が出てきた場合は、ケース・バイ・ケースだから中身を洗って検討いたしますということも言っている、前総務長官は。だが、昨年九月実施された以降になって、全く個人的な損失補償とか団体の営業補償については融資以外考えられないということで後退発言をなさっておる。これでは、国策によって遂行された交変というものが県民に犠牲を強いる結果になっているじゃありませんか、総務長官。改めてケース・バイ・ケースでいささかも県民に不安を与えない、迅速に処理する。迅速という言葉は半カ年余たっても全くうやむやにするということじゃなかったわけでしょう。これについては明確な御答弁がないと納得できませんよ。県民に対する裏切りじゃありませんか。私はそういうことはあっちゃいかぬと思いますよ。御見解を求めておきたいと思います。
  77. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  政府が今日まで沖繩県の開発振興に努力をいたしておることは十分御承知のはずでございます。県民を裏切るとか、そういうようなことのないことは、私はここではっきり申し上げておきます。私なども鋭意そういう点を配慮しながら、歴史的な事情等も顧慮して、沖繩の振興開発については努力しておるわけでございます。  ただ、交通方法の変更について、いまここで特に御意見がございまするが、県民の方々全体に及ぼしておる有形無形の負担、被害等も相当であろうと思いまするから、その点につきましては、一つの特別事業を起こして、この実施を図っておるわけでございます。また個々の問題でいろいろな営業上の問題等があることも承っております。しかし、それは補償の形でいくべきかどうかということは、やはり真剣に考え、お一人、お一人、ケース・バイ・ケースでお話を進めながら、何とか融資の道を開いて、低廉な融資で再起を願うとかいうようなことで努力をいたしておるところでございまして、この点はひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。しかし、特別にこういう点で私ども話し合いの中で出てきた問題等につきましては、またそれなりの処置もせなければならぬものもあろうかと思いまするけれども、一般的にお答えをいたしまするならば、いまのような状態で誠心誠意努めてまいっておるということははっきりここで申し上げることができると思うわけでございます。
  78. 上原康助

    上原分科員 長官のせっかくのお言葉ですが、そう言ってみたって、県民はそうは理解をしていないわけですよね、正直申し上げて。特別事業という話は当初からあったことなんですよ、これは。私は県民一般が受けていることを言っているわけじゃないのです。著しく、方法が変更されたことによって生じている営業損失補償は、当然国策によってなされたわけだから、それなりのしかるべき、融資じゃなくして補償をすべきでしょう。前例がないということを盛んに事務当局はこれまでも繰り返して言ってきたのですが、日本全国探して、交通方法が左から右に変更された都道府県がありますか。沖繩だけにしかないじゃありませんか。そのことを言っているのですよ。そういう、県民に何か政治的な発言をしておって、後で実施をされていったらそれっきりということが政治不信を招くのです、総務長官。  それじゃ、もう少しお尋ねしておきます。  いま県が、沖繩県交通方法変更に伴う営業損失等の救済措置についてという調査を行っている内容は御存じですか。
  79. 三島孟

    ○三島政府委員 県が現在調査をおやりになっておる内容は私ども承知しております。
  80. 上原康助

    上原分科員 あなた、内容は知っていると得々と言っているんだが、それは本来は政府がやるべきことじゃないですか。
  81. 三島孟

    ○三島政府委員 国としても国としての立場での実態把握には努めておるところでございます。さらに加えまして、県でも実態調査をおやりになるということでございますし、それがまとまり次第私どもの方にお出しになるわけでございますから、十分私どもの実態把握の参考にしたいというふうに考えておる次第でございます。
  82. 上原康助

    上原分科員 国はどういう実態把握をしたのですか。いままであなたがやっていると言うなら、具体的にここに資料として提出してください。
  83. 三島孟

    ○三島政府委員 これまでも何回もお答え申し上げておりますとおり、私ども現地の方に交通方法変更対策本部の駐在官を置いておるわけでございます。そこに直接または県を通じていろいろな御相談があるわけでございます。その御相談があった際、いろいろ事情をお聞きするなりあるいは現地調査をするなりして、実態把握に努めておるわけでございます。
  84. 上原康助

    上原分科員 あなたはいつもそういう官僚答弁ですわ。抽象的なことだけ言っているけれども、そうじゃないんだよ。何もやっていないじゃありませんか。この間私は総合事務局の運輸部に行ってちゃんと調べてきた。営業損失補償を一切やっていない。総務長官、事務当局はそういう態度なんですよ。この交変は国策によってなされたのですよ。私はそのことを問題にしている。県は膨大な予算を使ってやっているんだ、これは。要綱もつくり、そういった実施内容というものも。そういった予算措置についても、五十四年度では何ら計上されていないじゃありませんか。  これについての長官の御見解を求めておきたいのですが、そこで、先ほど長官も、まあ原則的にはということでしょうが、融資で考え、あとは特別事業で全般的な損失については考えたつもりなんだ、しかし、特定といいますか、さらに特別なものについては、相談があればまたそれなりのという、ちょっとわかるようなわからぬような御答弁ですが、どうなんですか。沖繩県が現在調査をして約百二十件ぐらいすでに県側に申告といいますか、申請をされているわけですね。三月中旬あるいは遅くても三月下旬までには整理をして、国にそれなりの損失補償を要求する。これはもちろん前県政が強力に進めてきたことでもあるわけですが、引き継いだ西銘県政も、この件については、やはりやると言っていますよ。これが出た段階においては、損失補償についてはどういう検討をなさるのですか。やはり融資以外はできないという立場をとるのか、この件についてお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  85. 三島孟

    ○三島政府委員 これは前にもお答え申し上げましたとおり、個々の補償ということになりますと、現在の法律上あるいは制度上非常にむずかしゅうございますので、私どもといたしましても、それを前提とした一般的な調査というものはやっていないわけでございます。しかし、私どもはできるだけ実態把握に努めて、それぞれの個々のケースに応じまして特別融資制度をお勧めしたり、またその他の御要望がありましたら、われわれのできる範囲内の措置をひとつ検討させていただくという方針でございます。したがいまして、県の調査結果が出まして、それに基づきまして県の方からどういった形の御要望が出るかわかりませんので、その御要望が出た段階で検討はさしていただきますけれども、直接的な補償という問題は非常にむずかしいという考え方でございます。
  86. 上原康助

    上原分科員 総務長官、いまお聞きのとおりなんですよ。これは事務当局の範囲で考えるとそういう御答弁しかできないと私は思う。制度上なじまない、個々の補償というのは大変むずかしい。やはり法律や規則に基づいてしか仕事をしない事務段階では、善意に解釈すればそうかもしれないのですね。しかし、その姿勢は私はいただけない、いまの御答弁にしても。制度上なじまない、あるいは前例がないというのは、さっき申し上げたように、前例はありますか、右から左に変えた前例ありますか。ないでしょう。全国でありますか。それをまず答えてください。
  87. 三島孟

    ○三島政府委員 私は、法律上も現行制度上も非常にむずかしいということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、先例等もございません。まあ先例といいますと、よく似たケースとしましては、たとえばバイパスをつくったとか、あるいは一方通行の規制をやった場合には車の流れが変わるわけでございますから、その場合などが一つの先例にはなるかもしれませんけれども、そうした際の補償ということはこれまでやった例はないということでございます。
  88. 上原康助

    上原分科員 あなたはよけいなことを言わないでいいですよ。それはバイパスをつくるというのと変わるんじゃありませんか。先例がないわけだから、それを先例にすることはいけないということははっきりしませんか、政治的に。  そこで長官、これは事務屋に任せちゃいけないのですよ。そうしますと、いま話がありましたが、県がどういう要請をしてくるかわからない、そのときに検討はしてみます。県が具体的に実態調査をして、やったその内容がまとまって、救済措置、いわゆる営業損失補償、個々人あるいは個々の団体に対する損失補償をやれという要求が出た場合においては、当然検討しますね。それはどうなんですか。これは長官からお答えください。
  89. 三原朝雄

    三原国務大臣 いま、交通方法の変更に伴いまして個人あるいは団体がそれがために損失を受けた、それに対して補償を前向きで検討するということを前長官は言ったではないかということでございますが、もちろんこの点につきましては十分な検討を進めております。検討を進めてまいっておりまするが、どうも現在の制度、法規上からはなかなか至難な状態にある。そこで何らかの方法でということで、全体的にはいま言った特別事業というようなもので県民全体の福祉のために考えていこうではないかという処置をとったり、あるいは金融措置をしたりしておるわけでございまするが、それでもなおかつ問題の解決ができないというようなものにつきましては、私は、先ほど申しましたように、特別にひとつそういう事案については、もちろん県、市町村と連絡をとりながら、これに検討を進めてまいるということはやらざるを得ない、そういうことでおるわけでございます。
  90. 上原康助

    上原分科員 ひとつこの点は、うやむやにする、あるいはいまのむずかしいということでないがしろにできる問題じゃありませんし、われわれも県がまとめるものについて十分関心を持ちつつやっておりますので、ぜひ、強い要求にこたえるように、特段の御配慮を強く求めておきたいと思います。  そこで、あと振興開発計画についてお尋ねをしておきたいのですが、これもいずれ時間をかけて議論をしなければいかないいろいろな問題があると思うのですが、振興開発計画では、本土との県民所得の格差を縮めるため、本土の経済成長にプラスした高い伸び率、すなわち国の平均が大体七%前後を見込んで、それはもちろん変化いたしておりますが、実質経済成長率に対して沖繩の場合は一〇%から一一%を見込んで計画がなされてきたわけなんですね。だが、沖繩県が想定した五十三年度の経済成長率はたしか五%であったと思いますし、さらに五十四年度はそれを下回っている、また実質的にもそういう経済環境、状況になっていることは御案内のとおりなんですね。したがって、その計画当初から今日までの沖繩の経済振興といいますか、推移を見ますと、当初計画が達成できないというのはほぼはっきりしてきていると私は思うのですよ。加えて、現在の不況ムードがある中ではますますむずかしい状況にあると思いますし、当初の県民所得にしましても八〇%程度に持っていくことが困難であるということ、五十二年度でようやく七〇%になったかと思うと五十三年度は落ち込んで六八%になった、こういう状況からして、振興開発計画の当初目標が達成できなくなっていると思うのですね。この点についてはどういうお見通しを持っておられますか、簡単にお答えください。
  91. 三原朝雄

    三原国務大臣 御指摘のとおり、振興開発計画の今日までの実績は、相当な成果を上げてまいったと思うのでございます。しかし、いま足踏み状態にある。特に二%の低下を示しておるという御指摘がいまございました。そのとおりでございます。なお、雇用関係等で失業問題等も出ておることも承知をいたしておりまするので、このあと残されました三カ年であるわけでございまするが、その間に、本土並みの体制に持っていけるかどうか、鋭意努力はいたしますけれども、非常に至難な状態の中にあるということも、そういう見通しも立てておるわけでございます。  そういうことで、社会資本の投資をもっと積極的にやり、あるいは自立的な経済体制の整備に当たらねばならぬというわけで、本年度の予算等も相当大幅な予算計上をいたしておるわけでございます。まずは、目標といたしましては、年内にひとつ事業目的の達成に鋭意努力をいたしまするが、その後の状態等につきましては、そうした三年の事態を踏まえてまたこれに対処せなければならぬと考えておるところでございます。
  92. 上原康助

    上原分科員 確かに五十四年度予算においても、財政主導による公共事業中心のプロジェクトがなされようとしているのは理解はいたします。  そこで、時間がありませんので、この開発庁がおつくりになっている「沖繩の振興開発」というパンフを見ましても、要するに計画の性格及び期間なり計画の目標というものあるいは振興開発の基本方針というのは、「長年にわたり祖国から隔絶されていたことなどによって生じたいろいろな面での本土との格差を早急に是正し、さらに自立的発展ができるような基礎条件を整備して、平和で明るい豊かな沖繩県を実現することをめざしています。」それはそのとおりだと思うのですが、これができなくなっているというのは、いま私が指摘をしたことだけでも十分推測できると思うのですね。  そこで、いろいろあるでしょうが、いまの振興開発計画で、特別措置法で目的達成がなされない見通しが立ったとするならば、この振興開発計画、特別措置法を再延長する、その具体的な作業に着手をしなければいかないと私は思うのです。県がもちろんすでにやっている。この件について、どういう方針でやっていかれようとするのか。私は、やはりさらに十年を延長するとか、いろんなきめ細かい見直しの上に立った新しい計画というものがあっていいと思うのですが、この点についての御回答を求めておきたいと思うのです。
  93. 三原朝雄

    三原国務大臣 あと三年を残しておりまする現在時点において、先は三年後も延長するぞというようなことをいま私がここで回答申し上げるということは適切でないと思います。とにかく三年間に鋭意努力をいたします。現状におきましてもそうした厳しい状態の中にあるということは承知をいたしておりまするので、具体的に三年間で最大の努力をやってみるということでございます。やがてその時点になりまして、改めて見直すべきかどうか、あるいは延長すべきかどうかというようなことはその時点に立って考えてまいりたいと考えておるところでございます。
  94. 上原康助

    上原分科員 終わります。
  95. 藤波孝生

    藤波主査 以上で上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。
  96. 土井たか子

    ○土井分科員 一九七五年の国際婦人年を機にいたしまして、ただいま政府の中に婦人問題企画推進本部というのが設置されているわけでありますが、総理府長官はこの中でどういう役割りをいま担っていらっしゃるわけでありますか。
  97. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  私が副本部長、本部長が総理大臣、そういうことであるわけでございます。
  98. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、副本部長であられる長官とされては当然御承知だと思いますが、五十二年の六月十四日に「婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱」というのが出されたわけであります。御存じでいらっしゃいますね。この要綱の中の、ただいま進められつつございます国内行動計画の十年のうちの前半期の重点実施事項の中で、活動方針をその目的に従って見てまいりまして、一番重点を置いて考えられているのはどういう点でございますか。
  99. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  重点項目は、各職域における婦人の参加ということが全体的には一つの大きな課題であると思うのでございます。その中でも、まずは婦人の政策の参加、あるいは公務員におきまする国家公務員の上級試験あるいは一般の試験等におきまして婦人を多く採用をしてもらう、そういうことで、いま申し上げましたように、婦人が政策に参加をし、また責任のある仕事に参加されるという点を行動の重点目標として掲げておられるものと思っておるのでございます。
  100. 土井たか子

    ○土井分科員 いま長官がおっしゃったような事柄を推進する主体は一体だれでございますか。
  101. 三原朝雄

    三原国務大臣 もちろん責任は総理大臣にありますけれども、実際上の推進の責任は私にあると思うのでございます。
  102. 土井たか子

    ○土井分科員 それはちょっと違うんじゃないですか。この要綱の中にもはっきり書いてあるのですが、推進の主体というところを見ますと、本部が主唱するのです。推進する主体というのは本部じゃない。もう一度お答えいただきます。
  103. 三原朝雄

    三原国務大臣 御指摘のとおりでございます。推進は本部が推進役でございましょうが、しかし、本部の責任の立場にある私がやはり率先しなければならぬということを申し上げるわけであります。
  104. 土井たか子

    ○土井分科員 それは心得としては長官言われたとおりだろうと思うのですが、文面からいたしますと、決めてある事柄に従って申し上げれば、推進要綱として昨年の六月十四日に決定された中には、企画推進本部がいまお答えになったようなことを主唱なさるのだ。その活動を推進なさる主体というのは各省庁だと決められておるのですが、どうなんでございますか。
  105. 三原朝雄

    三原国務大臣 もちろん関係省庁でございます。
  106. 土井たか子

    ○土井分科員 関係省庁なんですね。  そこで、公務員についての採用、特に国家公務員についての採用、登用の問題について、各省庁がこの活動を推進する主体でございますから、きょうは順を追って各省庁にそれをお尋ねしたいと思います。  まず、国税庁の方で国税専門官、この国家公務員採用試験に女性の受験を認めておりますか。
  107. 田口和巳

    ○田口説明員 現在のところ認めておりません。
  108. 土井たか子

    ○土井分科員 それじゃ運輸省はいかがです。特に、お尋ねを具体的にしたいのは、職種を申し上げましょう。航空管制官、航空保安大学校の入学試験、海上保安学校、気象大学校等々についていかがでございますか。
  109. 山下文利

    ○山下説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の各部門については、現在は男子に限られてございます。
  110. 土井たか子

    ○土井分科員 運輸省に再度お尋ねしますが、航空管制官について現在は限られておるけれども、ここ一両年の間にこれに対して変えようというお考えはおありになりませんか。
  111. 山下文利

    ○山下説明員 ただいま申し上げましたように、現在では男子に限られてございますが、これにつきましてはいろいろ問題がございまして、人事院規則の改定その他のネックが取り払えるならば、来年度の試験あたりから男子に限るという規定を削除する方向で検討させていただいてございます。
  112. 土井たか子

    ○土井分科員 いま運輸省にお尋ねするとそういう調子なんですが、郵政省の場合はどうでしょう。国家公務員の初級の郵政事務のBというのはいかがですか。
  113. 岩田立夫

    ○岩田説明員 郵政事務のBについては現在認めておりません。
  114. 土井たか子

    ○土井分科員 警察庁、御出席ですね。警察庁の場合はいろいろあると思いますが、具体的にこれも限定してお尋ねします。皇宮の護衛官、この職種についていかがです。
  115. 大堀太千男

    ○大堀説明員 男子のみに限定をいたしております。
  116. 土井たか子

    ○土井分科員 法務省、御出席ですね。入国警備官、刑務官等々、これはただいま女性の受験を認めていらっしゃいますか。
  117. 吉田淳一

    ○吉田説明員 現在認めておりません。
  118. 土井たか子

    ○土井分科員 一応大まかにいまお尋ねした関係だけから申し上げて、こういう調子なのです。長官、いまのをお聞きくださっていると思いますが、こういう調子なんですよ。まず長官から一言感想をお伺いしたいです。
  119. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、私といたしましては、現在のような状態であるということを実は承知をいたしておったところでございまして、そこで、去る一月十二日に閣議に提案を申し上げまして、各大臣に対して婦人御採用方について要請をいたしました。各大臣とも、今後そういう方向に向かって鋭意努力をするというお言葉をちょうだいをいたしておりますので、私は、いま各省庁の回答がありましたが、今後努力を願うものと期待をいたしておるところでございます。
  120. 土井たか子

    ○土井分科員 これは国際婦人年以後、毎年、努力努力と言われてこの調子なんです。ですから、閣議で各大臣は、恐らく長官の前では努力しますとおっしゃったに違いないのですが、同じような繰り返しがことしから来年にかけてあるということになりますと、御承知のとおり、来年度というのは第二回世界会議がデンマークで行われるという予定になっております。これは十年計画のちょうど真ん中、五年目に当たるということで、長官御承知のとおりに、一九八〇年は七五年からの五年、つまり十年の期央ということでこの世界会議を行うわけでありますから、少なくとも日本における推進要綱のこの本部決定に従って言えば、行動計画の前半期の重点実施事項として日本の国内行動計画はこのように定めている、ところがいまのような状況だということをひとつ御認識いただきたいと思うのです。よろしゅうございますね。  それで、先ほど来、ただいまは女性を認めておりませんときっぱりと断言なさったそれぞれの省庁に、なぜそういうことになっているかという理由をひとつお尋ねしたいと思うのです。法律や規則で、女性は採用すべきでない、登用すべきでない、そういう文面があれば別でございますが、もしそういうことがあるならば、それもひとつ根拠をはっきり示しておっしゃっていただきたいと思います。  まず、順を追って申しましょう。法務省、いかがでございますか。
  121. 吉田淳一

    ○吉田説明員 現在は、人事院規則をもって男子について入国警備官と刑務官の採用試験を行うというふうに定めてございます。そこで、この点につきましては、総理府の方からも、女子刑務官等の採用について、採用試験の実施について検討してほしいという要望がございましたし、私ども、その御要望を待つまでもなく、以前から検討しておるところでございます。  簡単に現在採用していない理由を申しますと、まず実態といたしまして、女子の刑務官及び入国警備官は相当多数選考採用によって採用しております。刑務官について言えば約四百七十名から八十名、それから入国警備官について申しますと現在三十三名採用しておるところでございます。この実態は、採用試験を実施いたしましてもその数においては恐らく同じような数になるかと思います。  どこにそういう採用試験を実施すると問題があるかと申しますと、第一の点としては、これは技術的な問題でございますが、女子の刑務官にまずしぼって申しますと、これは地域的に非常に限られております。御承知のように、女子の刑務所を中心として女子職員が多数配置されておるという現状でございます。それにマッチした試験制度を考えなければいけないというのが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、刑務所という特殊の矯正処遇をやる必要がございます。相手が犯罪収容者でございます。それらについて適切な矯正処遇を行うためには、それ相当の経験を経た中年齢と申しますか、そういう女子職員がどうしても多数必要でございます。それで、採用試験を実施いたしますと、どうしても最初に若年者によってこれが占められるわけでございます。その点について、婦人の職員をどういうふうに採用するのが最も適切か、この辺に一つの矯正処遇上の悩みがございます。それらの問題点を現在検討して、さらにこの問題について矯正局当局とも十分検討いたしまして、今後結論を出したい、こういうふうに考えております。
  122. 土井たか子

    ○土井分科員 十分検討して結論を出したいとおっしゃっておりますけれども、これはもうことしに始まったことでも何でもないわけで、むしろ法務省よりもこの点は難点が多いだろうと思われた運輸省の航空管制官の方は、人事院規則の改正点というものを具体的に提起しながら、来年度はこれを期して待ちたいということで具体的に歩み出されたわけです。むしろこっちの方がいろいろな状況から言うと問題点があるのじゃないかと思われた方が先行されているようなかっこうなわけでありますけれども法務省とされたら、いまおっしゃったような点というのは、いろいろな配慮は、まことに念の入った配慮をされていると言わざるを得ませんけれども、しかし、そうだからと言って受験を女性には認めないという理由にはならないと思うのです。いまおっしゃったようなことから、受験をすなわち女性には認めないということにはならないと思いますよ。女性の受験を制限しているという理由としていまの理由というものは、私は適切な理由をお述べになったとは思われません。法務省としては、受験に対して女性にまず窓口をあけて、それから採用時にこの問題に対しての配慮というものをなさればいいのじゃないですか。受験からしてシャットアウトということになると、試験がすなわち受けられない、それから事が始まるわけですから、このことは法務省としては少し考えられる必要がおありになると私は思います。  それから、国税庁の方、いかがでございます。これはなぜ女性の受験をいま制限されているわけですか。
  123. 田口和巳

    ○田口説明員 国税庁の方から御説明申し上げます。  私どもの職場の特色というのは、先生も重々御承知のところかと思いますが、私どもの職務というのは、署の外で非常に激しい調査なり検査なり、あるいは滞納処分というような仕事が中心でございます。また、一人で長期間にわたり納税者の事業所等で激しい調査を行うというような場合が多い。それも単なる帳簿の調査というようなことにとどまらず、銀行調査とか反面調査とか、短期間に並行的にいろいろな調査をしなければいけない。行動範囲も非常に広い。ときには身体的な、肉体的な危険を伴うというようなものもあって、総じて肉体的、精神的に非常に負担が大きいというような職種でございます。それから、職務の特殊性から頻繁に広範囲な転勤というものが避けられない状況、こういうことでございますが、婦人の場合に実際上転勤が非常に困難だというような場合もあって、人事配置上、隘路になることが多うございます。また、実績で見て、若年での離職率というのが非常に高い。私どもの調べたところでは、経験九年ぐらいで四割ぐらいの方が退職するというような状況でございますが、われわれの職場は長い経験が必要だというようなことで、この辺からもわれわれとしての悩みがございます。  そういうことで男子に限るというようなことをしてまいったわけでございますが、最近総理府等から受験制限を撤廃すべきではないかというおしかりにも近いような強い働きかけを受けておりまして、それから、先ほど土井先生からのお話にもございましたように、私どもも特別活動推進要綱というのは重々存じておりまして、その方向に従って、全国の国税局長会議あるいは今週も全国の総務部長会議を予定しておりますが、そこでも議題に上げて、目下後ろ向きでなく慎重に検討いたしておる状況でございます。
  124. 土井たか子

    ○土井分科員 いまの、なぜ女性を試験からシャットアウトしているかという理由をるるお述べになったところをお伺いしていて、理由になりません、これは。理由にならない。何だか一生懸命に、きょうはこういうことを聞かれるかもしれないということで、理由を考えてここにお出ましになったような感じがしますね。本来これはどうしても動かしがたい理由だ、だから女性の受験は認められないという理由じゃないですよ。しかも、これは後ろ向きでなく会議の席で鋭意検討を重ねる、そんななまっちょろいことをおっしゃっておるようじゃ、恐らく私はこれもまた実現不可能だと思います。国税庁の方の人事課長さんの決意一つで事柄は動くんじゃないですか。  それで、先ほどいろいろお述べになったところからすると、やはりこれは国税専門官の上級乙であるとか、それから同じ国税庁の問題でも国家公務員の初級の税務ということになってくると少し趣が違いますからね。だから、片や現場に接触するという部面が少ない職務、それから現場に接触するという部面が多い職種、そういうふうな分け方でいまこういう理由をるる述べられたように私はお伺いするわけですけれども、しかし、これはいずれも私は理由にならないと思います。現に税務関係で言うと、税理士さんの中で婦人税理士さんというのは大変にこれは税理士としても高く評価されておるし、納税者からすると非常に信用がある。税務関係の仕事というのは、女性だからといって手心を加えたり、つらいからといって休ませてくださいというわけにはいかないですよ。こういう実績なんかを見ておりますと、いまおっしゃったようなことは理由にならない理由だということを私は断言したいと思うのです。国税庁としてどうですか。
  125. 田口和巳

    ○田口説明員 御説明いたします。  私どもの現在の状況の中でも、婦人職員の方が職場全体に約一割までまいりませんが、四千数百人の女子職員の方がおられまして、たとえば、ただいま先生の御指摘の中にもございましたような納税者との触れ合いの中で、私の方の職場の中で活躍していただいている職員の方も少なからずおります。たとえば税務相談、こういうような仕事をする税務相談官という格の高いポストもございますが、そういうところで活躍しておられる方、それから、数は少のうございますが、税務署の統括官クラス、俗な表現をいたしますと税務署のいわば班長と申しますか課長と申しますか、そういうポストで活躍していらっしゃる方もございます。そういう点で御指摘のように婦人だからできないとは限らないと思います。ただ、頑迷固陋と先生におしかりを受けるかもしれませんが、これまでの定着率なりあるいは状況から見て、私どもとしては、定員の少ない中で激しい厳しい仕事をしていく際に、男子により適した職場かなというような感覚でいままでまいっておるわけでございます。ただ、御指摘のようなことをわれわれも十分踏まえて、先ほど申し上げましたように、ただ言葉だけでということでなしに、本気で局長会議等で検討をいたしておる、そういう状況でございます。
  126. 土井たか子

    ○土井分科員 幾ら御説明を賜っても、女性に対して受験させないということは、これは憲法十四条から考えてもおかしいことで、性別によって社会的、経済的、政治的関係において差別されないという点から考えてそもそもおかしいとお考えにならないと、これはどうもいただけない御答弁だと思うのですが、そうしますと、法務省、いま国税庁と、これは承りましたが、警察庁はどういう理由ですか。
  127. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  警察庁の皇宮護衛官の御質問と承っておりますが、皇宮護衛官は現在八百九十八名の定員でございます。その中で約八割強に相当いたします七百二十三名といいますのが交代制の勤務員でございまして、三交代勤務ということで、当番、非番、日勤の繰り返し、こういった勤務が原則的な勤務形態でございます。  この交代制の勤務のほとんどは、皇居の中にございます坂下、吹上、赤坂、それから京都の護衛署におきまして外勤勤務に従事をしております。そのほか、御用邸等でやはり外勤勤務に従事をしておるわけでございまして、これの勤務の特徴といいますのが、やはり交代制なるがゆえに深夜勤務を伴うものであるということが第一点でございます。それからもう一つは、この外勤勤務は特定の派出所で見張りをする、警戒をする、あるいは警らをするといった状態でございまして、一人勤務で現実に勤務をする場合が非常に多いわけでございます。  一方、これと似たような職種といいますのは、全国の警察の中では警察官として婦人警察官をすでに採用をしておるわけでございますけれども、婦人警察官を全国で採用しております場合に、婦人警察官の職種を見ますと、やはり婦人としての適性の認められる部門として、たとえば婦人としての親しさ、やわらかさといったようなものを生かした職種、たとえば警察の広報をするとか、あるいは学童等の交通整理をするとか、あるいは交通安全指導をする、あるいは防犯相談を受ける、あるいは少年の補導をする、そういった勤務を中心にしたもので、夜間の深夜の勤務はいたしておりません。  そういうようなことからこの皇宮護衛官を見てみますと、通常の外勤勤務の特徴といいますのがほとんど一般の国民の方々との事案を通じての接触というのはなしにして、ほとんどそういった接触がございません。立番、警ら、警戒といった、きわめて、ある意味では孤独な、また厳しい勤務でもございまして、婦人の特性が本当に生かせるかどうかということについて疑問があり、また先ほど来申し上げましたような深夜勤務をさせることについての難点、それから全体の定員が非常に限られておるものですから、それでは日勤勤務で、たとえば皇居などに訪ねてくる人方の案内役、接遇といいますか、そういった応対に使えばいいではないかということでございますが、こういった場合のことも検討してまいっておるのですが、やはり数限られた定員の問題の中でやりくりをする場合に難点があるというのが現状でございます。  そのようなことで、私どもも先ほど来先生御指摘のように何とかこの難点を克服してやろうということで、現在、その人事院規則における深夜勤務の問題を解決した場合にどういう問題が残るかということにつきまして、たとえば婦人の深夜の仮眠の部屋をどうするかとか、そういうような問題についても、交代制勤務でございますから、当然男子と一緒にするわけにはまいりません。そのようなことを現在検討をしておる次第でございます。
  128. 土井たか子

    ○土井分科員 私がお伺いしているのは、女性に対して受験の機会を奪っているということに対してどう思うかということを私はお尋ねしているわけでございまして、後々、採用してから後にこの条件をこう変えなければならない、あの条件をこう変えなければならないということから逆流させて試験を受験させないなんというのは逆立ちの論法ですよ。しかも、女性の特徴というものを生かせるかどうかという点に難点がある、これはだれがお考えになっているのですか。男性ばかりが寄って、そういうことに対していいか悪いかということを判別なさっているのでしょう。女性の特徴というのは男性のみによって考えられる問題じゃなかろうと私は思うのです。しかも、職種に対しての判別というものは男性だけが寄ってなさるというところが、すでにこれは問題に対するへんぱな考え方じゃないかと私は思う。いまの御答弁を承っておっても、四六時中女性向きであるかどうかということに非常にこだわっていらっしゃるが、そのこだわり方というのが、どうも私は社会通念上納得のいけるような合理的な理由とは聞こえません。  試験について女性も受けられるような、これは当然だと思うのですけれども、そういう機会をどの省庁に対しても認めさせる、このことが、私はこの行動計画の前半期の重虚実施事項の内容を具体化することからすると非常に大切な問題だと思うのですが、こういうことからすると、人事院規則の改正も勢い片や必要になってくる部面もあります。先ほど運輸省がそう言われ、法務省がそう言われているわけでありますが、それは確かにそうでありますけれども、しかし、試験を受験させるという機会は、わざわざ人事院の規則を改定させた後でなければこれは問題にできないということじゃないので、受験ということをまず女性に対して認めるという姿勢を打ち出して、人事院規則の改定ということに対してやはり熱意を持って臨まれるということが私は順序だろうと思いますが、これは長官、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  129. 赤松良子

    ○赤松説明員 ただいま御指摘の点につきましては人事院にすでに申し入れをいたしておりまして、人事院では、人事院規則が決定的な障害で試験を開放できないということであれば、それについては人事院の規則を改正するということについて最大限の努力を払う、このようにお答えもいただいているところでございます。
  130. 土井たか子

    ○土井分科員 人事院からはそういう感触がすでに具体的に総理府の方に伝わってきているわけなんですね。  そこで、各省の姿勢というのは、先ほど来聞くにつけてもまだまだまことにかたくなであります。これは長官の方からかなり御努力が必要であるかと思われますが、ひとつ長官としての決意をここで聞かしていただきます。
  131. 三原朝雄

    三原国務大臣 御指摘の点、ごもっともでございまするし、婦人年の八〇年におきまする会議を目前に控えておりまするし、前半期の見直しもいたしておる時期でございまするから、私どもといたしましては、各省庁に対しまして、推進本部の構成員でもあるわけでありまするので、ひとつ会議を開くなりいたしまして十分趣旨の徹底を図って、いま申されますように、婦人の公務員としての受験はもちろん、政策への参加等について積極的に措置を願うように取り計らってまいりたいと考えております。
  132. 土井たか子

    ○土井分科員 そこで、いま長官はそういう御答弁なんですが、さらに、これは公務員として採用する、任用するという問題とは別に審議会等、これは調査会もございますし、委員会もございますし、研究会もあると思うのですが、政府機関のこういう審議会等の委員として女性が入っていないところはまだまだ非常に多いわけですから、これの全部の総括をこの節きちっとやっておいていただく必要があると思います。もちろん任期の問題もありますから、交代期でなければ女性をその場所に任用するということがむずかしいという事実上の実情もございますけれども、いまのところ約一〇%は政府全体として女性を各審議会等の委員に登用する、一〇%程度は引き上げなければならない、こういうことを当面の目標にして掲げていらっしゃるようでありますが、まだまだこれでは心細いですね。中央では現在約三%ぐらいしかまだ女性のそういう委員の数がございません。これもまた言えば、女性に向き不向きがあるとか、これには女性は向いていないとか、専門知識がないとか、種々おっしゃるかもしれませんけれども、それぞれの審議会や調査会は一体何のために設置されているかという、設置の目的なり趣旨などから考えますと、やはり女性ができる限り数多くの場所に参加をして、国民、住民、市民が一体具体的にこの問題に対してどういう考え方を持っているか、どういうことを要望しているか、こういうことがそこを通じて明らかにされていくという貴重な場面でもございますから、この点ひとつ全体的に、具体的な名称で、どれだけの審議会と委員会に女性がまだまだ入っていないかという総括をしていただいて、それの実情をぜひ具体的に公表してくださいますように、それを申し上げたいと思います。いかがですか。
  133. 赤松良子

    ○赤松説明員 ただいま先生の御指摘のように、一〇%の目標を前期重点目標の中の一つとして掲げているわけでございますが、三・五%というのがただいまの数字でございます。しかし、これは行動計画が、特別活動が決定されましてからはいささかふえてまいっておるわけでございます。その速度をさらに速める必要があろうかと思います。それからまた同時に、御指摘のように女性がゼロというのもかなりございますが、かなりな速度で減ってきております。したがいまして、これもぜひ、せめてゼロというのはなくしたいということを考えているわけでございます。審議会がどういう状態であるかということは、特別活動が決定されまして以来、年に一度は調査をいたしているわけでございます。また昨年からは、任命の都度事前に通告をいたしていただくこともいたしているわけでございますので、実情の把握についてはかなり整ってきている、このように考えております。
  134. 土井たか子

    ○土井分科員 最後に、本日ここに御出席を求めました各省庁の人事課長はいずれも男性ばかりであります。人事課長の中に女性があっても不思議じゃない。人事の問題を担当している女性があれば、やはり人事の問題に対してこういうあり方がいつまでもあたりまえのようにまかり通らせることは恐らくないだろうと私は思うわけであります。  最後に長官から本日の感想を聞かせていただいて、私は終わりにします。
  135. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  お説ごもっともと思いまするし、御期待に沿うように、私は、婦人の公務員ばかりでなく、全体の職場における進出をぜひ進めてまいりたいと思う次第でございます。
  136. 土井たか子

    ○土井分科員 終わります。
  137. 藤波孝生

    藤波主査 以上で土井たか子君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。午後二時三十分から再開することといたします。     午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十六分開議
  138. 藤波孝生

    藤波主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田克也君。
  139. 池田克也

    池田(克)分科員 公明党の池田克也でございます。  きょうは公取委員長においでいただきましたので、私は、出版物の流通について若干お伺いをしたいと思います。  昨年の秋ごろから、公取委員長の発言として、出版物の流通問題に新たなライトを当てて、何らかの改善と申しましょうか、改革を企てていらっしゃる、このように伝えられているわけでございます。最初に、その意図というものについて手短にお述べいただきたいと思うのです。
  140. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止政策の当面する課題といたしましては、従来は製造業が中心であったわけでございますが、産業構造の変化に伴いまして、製造業以外のいわゆる非製造業の分野に対しても重点を指向する必要があるという基本的な認識を持っておるわけでございます。この非製造業の中でも、なかんずく緊要な問題としては流通問題であるという認識を持っておりまして、流通問題の中にも、流通機構、流通過程、取引方法の問題等がございますが、そういう流通問題全体に本格的に取り組みたいという考え方のもとに、いろいろ問題があるやに見受けられる流通問題を取り上げてみますと、書籍その他の出版物は、事業の規模で申しましても、教科書を入れますと一兆六千億くらい、教科書を除きましても一兆円をはるかに超える大規模な市場でございます。したがって、その中における生産物としての出版物の生産、流通、販売が円滑に行われているかどうか、もし円滑に行われていないとすればどこに原因があるか、こういう問題意識から書籍の問題を本格的に取り上げるということにいたしたわけでございます。
  141. 池田克也

    池田(克)分科員 この出版物の流通については、従来三つないし四つの問題点が挙げられていたように私は理解をしております。その一つは返品の問題、これは年々返品率というのが上がってきて出版社の経営を脅かす、あるいは資源の浪費である、こんなような御意見もございました。第二は、奥付等が例の石油ショック以来廃止されるようなことで、カバーのつけかえ等によって容易に本の定価が変わってきたりするというようなことによって、消費者の側からも若干の批判があった、あるいは継続して出されてくる百科事典というようなものについて、広告で当初うたったのから一年ないし二年配本が続くにつれて定価が上がる、こういうような問題が指摘をされていたわけです。そのほか、大型店が進出をするというような問題もございました。  そこで私、昭和五十二年の五月二十四日付で公正取引委員会事務局が発表されました「再販制度の観点からみた出版業の実態について」――たしかこの当時は橋口委員長の時代じゃなかったと思いますけれども、この時代に一遍出版業の実態調査がなされております。その結論として、定価の状況などは「全体としては、特に過大であるとは認められず、独占禁止法第二十四条の二の「一般消費者の利益を不当に害する場合」に該当する状況ではない。」こんなように一つ結論が出されているわけであります。つまり、まだまるまる二年たっておりません。わりと新しい調査の段階で、この独禁法二十四条の二については余りいじることはないんじゃないか、こういうお答えであったように私受けとめるわけでございますが、昨今いろいろと伝えられるところによりますと、独禁法二十四条の二を変えて、いわゆる再販というものを撤廃する、こんなような御意見のように伺っているわけでありますが、再度、この独禁法二十四条についてこれを手直しする必要があると公取委員長はお考えになっていらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  142. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和五十二年の調査の結果でございますが、これは主として昭和四十八年当時の石油ショックに伴います狂乱物価の時代に書籍の定価の改定等が乱脈に行われた、そういうことに対する消費者からの苦情に基づいて調査をしたわけでございまして、そういう観点から申しますと、狂乱物価が落ちつきました昭和五十年当時の状態を見まして、二十四条の二のただし書きにございますような、消費者の利益を不当に害するような事態はない、こういう認識を明らかにしたわけでございまして、実は、二十四条の二の規定をどうするかということについてある前提を持ったり、ある予断を持って作業をしているわけではございません。  このただし書きの中には、一般消費者の利益を不当に害するという要件のほかに、販売事業者が再販契約をいたします場合にはメーカー、つまりこの場合版元でございますが、出版業者の意に反してすることはできないという規定もございます。そのほか、再販契約をいたします場合には、その再販契約が正当な行為である場合に限って妥当であるという規定もございますし、それから再販契約につきましては間々誤解がございますのは、あくまでも相対の契約でございまして、販元と小売業者との契約というのが原則でございます。それがいわゆる集団的な再販と申しますか、共同的な再販と申しますか、再販の行為を共同的に維持するというような弊害も出ております。したがいまして、いま私ども考えておりますのは、少なくも定価の問題に関しまして一般の消費者を害するような行為は見られません。  ただ、先生が冒頭に御指摘になりました、たとえば返品率の問題等を考えますと、かつては二〇%台でありましたものが三〇%から、物によっては四〇%になってまいりますと、最初から返品を見込んで定価を設定するということも考えられるわけであります。したがいまして、四十八年当時の定価について、本体に定価を打ち込まないで外枠に打ち込むというような弊害等につきましては改善の状況にあるわけでございますが、実はそれ以外にもいろいろ問題があるということで、いま取り上げているわけでございます。
  143. 池田克也

    池田(克)分科員 いまの公取委員長の御答弁を伺っておりますと、定価については余り問題がない、その他の再販契約の問題について集団的に行われている、この独禁法の精神といいますか、そういうものについて問題があるというふうに私考えるわけであります。  ところが、ここに公取さんが五十三年の十二月、つい三カ月ほど前でございます。「著作物の再販制度に関する調査報告書」というのをまとめておられます。これは五十三年度第四回消費者モニターアンケート、この中に問いの十二というのがございまして、「一定期間(例えば一年間)は価格を維持できるが、一定期間を経過した本については再販契約をはずし自由な価格にできるという制度が外国にはありますが、もし日本で採用されるとしたら、これについてどう思いますか。下記のうち一つに〇印を付けてください。」というような設問を掲げていらっしゃるわけです。  この設問を見ますと、やはり現在の町に流れている本の定価というものについて、確かに欧米にこういう例があることは私も承知しておりますが、一つの予断やそういうものを持って言っているんではないんだ、むしろ定価の問題じゃない、契約条項なんだというふうなお話がどうもうなずけない。何らかの将来こうあるべきじゃないかというような一つのお考えというものが公取さんの中にあるんじゃないか。これは私の勘ぐりかもわかりませんし、単なるこれは一つのサンプルだと言われるかもわかりませんが、私は、こういう一つのアンケートを見ますと、方向づけをお考えになっていらっしゃる、こういうふうにしかとれないんですね。このアンケートをお出しになった真意、それをもう一遍、確認の意味ですが、お答えいただきたいのです。
  144. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいまのアンケートはいろいろな項目について調査をいたしておりまして、法定再販があった方がいいか、ない方がいいかという調査もしておるわけでございますから、一定の方向に誘導するという趣旨で調査をしたものでないことはおわかりいただけると思うわけであります。  ただ、定価の問題について問題がないということを申し上げましたが、留保いたしておりますように、たとえば返品率を織り込んでの定価の設定ということはあるいは問題があるかもしれないということを申し上げたわけでございまして、定価について全く問題がないという認識を持っているわけではございませんけれども、いまお挙げになりましたことは、定価の問題ということよりも、資源の浪費の問題であるとか、あるいは日本は新本屋と古本屋しかない。再販契約がありますために、一たん消費者に売られて、消費者から転売されて初めて再販契約から自由になって、定価以外の価格を決めることが可能になるという大変硬直した姿になっておるわけでありまして、実はそういうことを問題にいたしておりますから、たとえば一定期間終了後にはその再販契約を解除するというような道はどうだろうかというような設問をしたわけでありまして、そういう方法が絶対にいいというふうに決めているわけでもございませんし、また、先生がおっしゃいましたように、外国では確かにそういう習慣がございまして、いわゆる第二市場的なものがあったり、あるいは一定期間本の安売りをするというような制度もあって、これは消費者に喜ばれておるわけでありますから、私どもが念願いたしますのは、良質な書籍その他の出版物が低廉に消費者に渡るということでありまして、そのためにどういう方法がいいか、現在の制度以外により改善された道はないかということを模索しているのが現段階でございます。
  145. 池田克也

    池田(克)分科員 そうしますと、幅広くいろいろなことをアンケートされ、調査されているということだと思うのです。  ただ、もう一つ気になりますのは、その次の十三に、「学術書・専門書については、価格を維持できるが、その他の本については、再販契約をはずし自由な価格で販売できるという制度がもし採用されるとしたら、」こうあるんですね。そうすると、いわゆる学術専門書は外して、いわゆる一般書について再販契約を今日のような状態から移していく。こう二つ並んで、幅広くと言われますが、実際堅実な商売をしている人たちにとっては一番敏感なところですね。したがって、御存じと思いますが、さまざまな陳情というものが今日出てきているわけであります。  この第十三問については先ほどと同じ御趣旨だと私は理解しますので、重ねてもう一度だけ確認をさしていただきますが、いまの時点で独禁法二十四条をいじるということを、一つの方向づけとしてお考えになっていらっしゃらない、こう理解してよろしいですか。
  146. 橋口收

    ○橋口政府委員 文字どおり幅広く調査をするということを申し上げたわけでありまして、ただいまの問題も幅広い調査の一環としてしたわけでございます。  それから、二十四条をいじるかどうかという問題でございますが、正確に申しますと、いじるかどうかはまだ決めておりません。それから、もちろんいじらないという方針も決めておらないわけでありまして、いじった方がいいのか、現状どおりでいいのかということも含めて調査をいたしているというのが現段階でございます。
  147. 池田克也

    池田(克)分科員 それでは、先ほど来返品が多い、これについて定価に上乗せされるのじゃないか、公取委員長の御心配でありますので、通産省にお伺いしたいと思うのです。  通産省もまた書店あるいは出版業という業種を指導されているはずであります。いま出版業界、大型店の進出、これは大規模小売店舗法の問題で昨年も私国会で取り上げたことがございます。また、取り次ぎのあり方あるいは返品の処理の仕方、特に返品の処理等については独自のお考えを持っているように伺っておりますが、通産省として、この業種をどのように指導していらっしゃるか、かいつまんでで結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  148. 細川恒

    ○細川説明員 御説明申し上げます。  出版物の流通に関する問題点につきましては、業界の実態を踏まえた十分慎重な検討が必要であるというふうに考えております。通産省といたしましてはこのような観点から、昨年の秋に学識経験者と業界関係者から成ります出版物流通近代化推進議会を設けまして、具体的な流通問題の検討を始めたところでございます。  本協議会におきましては、書籍の物流上のコストの低減を図り、欲しい本を早く入手したいという読者の要望にもこたえるために、荷受けあるいは集荷、配送といった業務を共同して行う共同倉庫などの共同物流システムの基本構想を策定することを目的といたしまして、現在検討を行っておるところでございます。
  149. 池田克也

    池田(克)分科員 そういたしますと、この返品の処理等は共同物流倉庫等によってかなり効率的な運用ができる。重ねてお伺いするわけでありますが、先ほど公取委員長が御指摘されておりましたが、返品というものがいわゆる原価に加算されて、それがコストを上げているというふうな情報を通産省は何か得ていらっしゃいますか。
  150. 細川恒

    ○細川説明員 私どもの方では特段消費者あるいは関係者の方からそのような情報というものは具体的にはいただいておりません。
  151. 池田克也

    池田(克)分科員 通産省にもう一つだけお伺いしたいのでありますが、最近書店が大変大型化して、そのことによって旧来からある、どちらかといえば標準的なんですが、小さなお店が大変圧泊をされている。昨年の八重洲ブックセンターの問題も、近隣では二割売り上げが減ったという話も私は聞いておるわけであります。データがあればお出しいただきたいのですが、最近わりと伸びてきていると思うのですが、書店の大型店舗化のデータがあったらお示しいただきたい。
  152. 伊藤敬一

    伊藤(敬)説明員 お答えいたします。  私ども、大規模小売店舗法を所管いたしております部局といたしましては、通常の場合、書店が大規模小売店舗の中の一つのテナントとして出店をいたすという事例はしばしばあるわけでございますが、書店単独で大規模小売店舗という形で、大規模店舗法に基づきます届け出を行った例はいまのところございませんで、先生御指摘いただきました八重洲ブックセンター、これは当初はわりに大きな規模でございましたので三条届け出を行われたわけでございますが、その後、御承知のように関係者間で話し合いをいたしまして、店舗面積を大規模店舗法の対象面積よりも縮小するという話し合いが行われましたので、その届け出を取り下げておきまして、現在のところ、この大規模店舗法に基づく単独の書店の出店の例というのはないわけでございます。  御承知のように、昨年秋に大規模小売店舗法の改正案を私ども提出いたしまして国会で御審議いただきまして、この五月から新しい法体系として施行いたしていこうということで、現在鋭意準備検討を進めておる段階でございますが、この大規模店舗法に基づきまして書店が届け出を行ってきたような場合、やはり大規模店舗法の趣旨、それから手続にのっとりまして慎重かつ公正に調整を行ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  データの持ち合わせばきょうはちょっとございませんので、また後ほどということで提出させていただきたいと思います。
  153. 池田克也

    池田(克)分科員 確かに八重洲ブックセンターは大規模小売店舗法上の届け出が必要だったケースなんですが、業界からの要請もいろいろあってそれに該当しない規模になったわけであります。しかしながら、実態として、最近は俗に百坪あるいは二百坪というような大変大きな店が出てきていることは、公取委員長も御承知のとおりだと思います。そういう中で、どちらかと言えば零細の書店の経営は大変苦しい状態になってきている。消費者の保護も当然でありますが、同時に、いままでそれによって生計を立ててきた業者の保護ということも、これまたあわせて必要なことだと思うのです。  そこで、もう一度だけ通産省にお伺いをしたいのでありますが、これは細川室長で結構ですけれども、いま通産省としてお話があった返品の流通対策が一つございます。そのほか、書店経営はこのままでは大変だ、あるいは本を流通していっていわゆる末端のお客さんに売る、この流通経路の中で、通産省側としてどうしても早急に手を打たなければならない、こういう問題意識を持っているのは何と何でしょうか。
  154. 細川恒

    ○細川説明員 御説明申し上げます。  私どもとして、流通の近代化という観点から見ます場合に、一つは、先ほど申しました流通のシステム化といいますか、共同配送なり共同倉庫なり、そういうふうなものもございますし、加えまして受注あるいは発注システムの改善というようなものもあろうかと思っております。そのほか、当然のことながら、先ほど来お話が出ております基盤整備といたしましての取引条件の適正化の問題もその中の一つかと考えております。
  155. 池田克也

    池田(克)分科員 もう一つだけ。いま細川室長の答弁されたことをやっていくのに、この独禁法二十四条を改正する必要を感じていらっしゃいますか。
  156. 細川恒

    ○細川説明員 先ほど来お話がございますように、再販売価格維持契約は、そのおとり廉売等の不公正な取引方法からメーカーのブランドの信用を守り、小売業者の利益を保護するのに役立つものとして一定の条件のもとで独禁法の適用が除外されておるものと理解をいたしておりますが、この再販売価格維持契約は、独禁法上は例外的に認め得る契約でございますので、一般消費者の利益が不当に害されることになるような弊害が生じます場合には、当然のことながら独禁法上の適用除外にはならないというふうに考えます。  具体的に書籍、雑誌についての再販売価格維持契約自体を消費者利益の観点から見直すことに関しましては、実態を踏まえて十分慎重な検討が必要であるというふうにわれわれは考えております。
  157. 池田克也

    池田(克)分科員 実態を踏まえて十分慎重な検討というのは大変玉虫色にとれるのですけれども、時間がございませんので、また別の機会にこれは詰めていきたいと思うのです。  そこで、文化庁にお尋ねをしたいわけであります。  文化庁もまた、著作権法という立場から出版物の値段あるいは流通の仕方等についてはお考えがあると思うのです。公取さんが、いま委員長おっしゃったような形の、独禁法二十四条をいじる、あるいは流通の問題について改善をする、こうしたことにつきまして文化庁は何か連絡、相談を受けていらっしゃいますか。
  158. 小山忠男

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  著作権法におきましては、著作者の権利を保護するということを主眼にしておりまして、その方法といたしまして著作者に複製権その他の権利を与えます。出版物の場合に例をとりますと、著作者はその著作物が複製される際に複製権という権利を行使しまして、それによりまして経済的な利益を確保する、そういうことができるようにしておるわけです。そして、出版物が作製されて以後の流通の過程におきましては特にそういう点につきましての権利を与えるということにはしておりません。そういう意味で、出版の流通の問題と著作権の制度というものが出版物につきましては直接のかかわりはないというふうに考えておりますけれども、なおこの問題につきましては単に出版流通という観点からのほかに、出版の文化という観点からも文化庁といたしましては関心を持っておりまして、今後の推移を注目してまいりたいと考えております。
  159. 池田克也

    池田(克)分科員 ですから、公取さんからあるいは文化庁から、この件について相互連絡はあったかということを伺っているのです。
  160. 小山忠男

    ○小山説明員 この件につきましては、公正取引委員会の方から格別の御連絡は聞いておりません。
  161. 池田克也

    池田(克)分科員 そうすると、先ほど公取委員長がおっしゃっていたようないわゆる新しい第三のマーケット、新本と古書の間に二十四条を外して、たとえば一年後に定価が自由になるというふうな市が立つ、こういうことが予想されますね。その場合、定価はだれが決めるのか。仮に自由定価になって、あるところでは千円、あるところでは九百円、あるところでは八百円というような自由定価が予想されますが、この場合、私は著作権法上問題じゃないかと思うのです。つまり、著作権法では、著作者を保護し、自分が書いた本が幾らで売られているかということは契約できちっと決まっております。そういたしますと、町で本が幾らで売られているかということは著者としての権利なんですね。それがたたき売られて、場合によっては八百円、七百円というふうに下がっていくとなると、市で値がついたその段階で一々著者に相談して、こういう話で値段がつきました、これでようございますかというふうに著作権法上はチェックしていかなければならない、こういうことになっていませんか、いかがですか。
  162. 小山忠男

    ○小山説明員 出版物の再販制度を廃止した場合にどういう影響が出てくるかという点につきましては、主管官庁の公正取引委員会の方で御判断をいただく事項であると考えておりますが、仮に再販制度の廃止に伴いまして小売価格が自由に変動するというような場合を想定した場合におきまして、従来出版物の小売価格にリンクをしてまいりました印税制というものがそのまま維持されるとしますと、著作者の経済的な利益に影響が出てくることも予想されるわけでございます。そのような場合には、印税というものを小売価格ではなくて、たとえば標準価格のようなものを設定するとか、あるいは出版社からの卸売価格に相当するものにリンクさせるというような方法も考えられると思うのですが、いずれにいたしましても、このことは直接には著作権制度上の問題ではなくて、第一次的には当事者の契約上の問題であろうかと考えております。そして、著作者は複製権に基づきまして出版を許諾する際に契約上の条件としまして、いま申し上げましたようないろいろな方法によりまして損失をカバーするような方法を考えることも可能であろうかと考えております。
  163. 池田克也

    池田(克)分科員 時間がありませんので、もう一つだけそのことについてお伺いしたいのです。  確かに著作権制度上の問題ではない。出版社と著者、それから流通ルートの問題ですが、当然出てくる問題は、たとえば強い著者は、だんだん値段が崩れていっても、おれの印税を保障しろと言えますよ。ところが、弱い著者は出来高払い、おれのは余り売れないかもわからないからどんなにたたき売られていっても最後にできた分だけおれに印税くれればいいよ。強い著者と弱い著者の間に相当大きな力関係の開きが出てきてしまう。これは公平を旨とする文化政策上の著作権法として問題はないですか。
  164. 小山忠男

    ○小山説明員 今後再販制度がどういうふうに変わっていくかという点につきましては、現在の段階でははっきりしてないわけでございまして、そういうことからこの問題につきまして的確な御返事を申し上げることは非常にむずかしいと思いますが、いずれにいたしましても、文化庁としましては、この問題の推移によりまして著作権者の利益が不当に害されることがないように十分に関心を持ち、対処をしてまいりたいと考えております。
  165. 池田克也

    池田(克)分科員 むずかしいという返答だ。何もむずかしくないのですよ。あなたは著作権課長さんですから法律に詳しいでしょうが、たとえば著作権法の八十一条の二号「当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務」これを出版権者は負わされています。つまり著作者からその出版権をもらった、当然代償を払うのですよ。三年間あるわけです。この二号には「当該著作物を慣行に従い」とある。これは四十五年以前の旧著作権法にはなかったのです。新しく入れたのです。これは御承知のとおりです。つまり、慣行というのはなかった。「継続して出版する義務」があるでは、ちょっと時代の流れがいろいろあるから、それを緩める意味で「慣行に従い」というのが入っているのです。この慣行とは何ですか。いまの印税制度であり、いまの再販制度というものが背景にあった上の慣行ではありませんか。
  166. 小山忠男

    ○小山説明員 いまおっしゃいました八十一条の問題でございますが、そこに言っております慣行と申しますのは、直接にはこの再販の問題とは関係ないというふうに思っております。この場合、慣行と申しますのは、出版界の慣行としまして出版物が順調に販売されている場合には、出版権者の方でその社会的な慣行に従いまして継続的に出版する義務を負う、そういうことを規定しておるというふうに理解しています。
  167. 池田克也

    池田(克)分科員 出版界の慣行で普通に動いている、こういうお話ですが、いろいろな御意見が出ております。ともかく先ほど来から指摘をしておりますように、たとえば本屋さんが売りやすい本だけわっと集める。当然本が届かないところも出てまいります。あるいは地方では、郵送代、運賃を上乗せした本の供給というものが予想されますね。そのほか、場合によっては、著者が了解しなければいかに出版権があっても一本は出せません。洛陽の紙価を高めるために著者が次の出版継続を渋った場合に品薄になってくる。当然市が立って値が上がってくると予想されます。あるいは、一年の間に売れなければ出版社としては値段が崩れてしまうのですから、かなり強力に宣伝をしていきます。その宣伝費というのは上乗せされる要素があるわけですね。  こういうことを考えて、時間がないけれどももう一つ指摘をしますと、本屋さんが本の競りをするのですが、中を読まないのです。数が多いものですから読みません。そうするとタイトルを見る、出版社を見る、著者を見る。これは有名だ、かなりセンセーショナルなテーマだ、これはいい値段がつくかもしれない。しかし、出版物というものはそんなものではないと思うのです。本人が一生かかって一冊薄い本ができるかもしれません。こういうふうな本当に営々とした出版文化というものの観点、著作権法はそれを守らなければならない。あなたのところはそれの担当なんです。  そういう観点から見て、この二十四条を外して第三のマーケットができて自由な定価が競られていくということは、出版文化上問題がある。かなり遠慮された御答弁でありますが、私はまた文教委員会でもこれをやるのですけれども、問題は全然ないのでしょうか。もう一遍最後に念を押したいと思います。
  168. 小山忠男

    ○小山説明員 この再販問題の検討に当たりまして、文化庁といたしましては、この出版物の流通というものが国民の文化生活に及ぼす影響という点につきましても十分に考慮をしたいと考えておりますし、あわせて著作者、出版社あるいはレコード制作者、こういった関係当事者の御見解というものにも十分耳を傾けながら、わが国の文化の普及発展という立場から慎重に考え、対処してまいりたいと考えております。
  169. 池田克也

    池田(克)分科員 公取委員長、あなたの前でいろいろな議論をいたしました。私も出版の事情を若干知る者として非常に心配をしているわけであります。強い著者、弱い著者、強い書店、弱い書店、それによって本来良心的な著作物を持つ人が本が出せなくなるかもしれません。また、いま出版社が広告をしておりますが、書店が広告を始めるようになります。そういたしますと、先ほど申し上げたように、内容物について、人的にも時間的にも量的にも十分審査できない状態が来ます。千円改め九百円なんという、スーパーで食料品が売られるような形で本の値段が自由になっていくということになれば、わが国の出版あるいは文化状況に大変好ましくない、私はこう考えるわけで、ぜひ公取委員長にはこの問題について慎重な、そしてこの二十四条の改正を含まない別の形での出版流通の指導をお願いしたいと思うのです。一言お答えをいただきたいと思います。
  170. 橋口收

    ○橋口政府委員 書籍の生産、流通、販売、すべての分野におきまして一種の病理現象があるという認識を持っておるわけでございまして、病気に類する幾つかの症候群があると思います。ただ、その原因が那辺にあるか、どこに原因があるかということにつきましての実態の把握というものはまだ十分なされておりません。そういう把握をしたいということでいま調査をいたしておるところでございます。  なお、再販契約は、先生御承知のように、卸の段階、流通の段階、小売の段階における競争を全く排除するという制度でございますから、いま小売店についていろいろお話がございましたが、再販契約という制度があります以上は、小売店同士の競争というものは本来起こり得ないということであるわけでありまして、多少極端な表現をいたしますと、いまの書店はショーケースの管理人であるというような批評もあるわけでございます。したがって、私どもとしましては、メーカー相互間の競争だけではなくて、卸の段階、小売の段階での競争も最終的には消費者の利益に還元されるのではないか、こういう考え方を持っておるわけでございますが、それに伴う問題はいろいろあるということはただいま御指摘があったわけでございまして、先ほど申し上げましたように、最初から何かの前提とか予断を持ってやっておるわけではございません。しかし、書籍の生産、流通、販売に全く問題がないという認識は持っていないということを特に申し上げておきたいと思います。
  171. 池田克也

    池田(克)分科員 いまケースの管理人なんていう話がありました。それはそういう御認識があることは御自由でありますけれども、書店の場合は、読者から著者の名前、出版社の名前を言われて、どこの本だなにあるか、出す。なかなか知的な知識の要る商売であります。単にケースだけ置いておいて、どういう積み方をしても本はいつでも売れていく、どこも値段は同じだ。私は、定価が同じなら競争はない、そんなことはないと思うのです。むしろ、定価が同じな中でいかにしてサービスをし競争をしていくか、売れる品物を常時集めておく、大変なことであります。そういうことをぜひとも御認識をいただき、ショーケースの管理人というのだけはぜひ撤回をしていただきたいな、こういう気持ちでおります。  以上で終わります。
  172. 藤波孝生

    藤波主査 以上で池田克也君の質疑は終了いたしました。  次に、山本悌二郎君。
  173. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 委員長に御忠告を申し上げておきます。七分も超過をされたんでは困ります。いろいろ質問が続いておりますので、できるだけ時間内でやるようにひとつお取り計らいを願いたいと思います。
  174. 藤波孝生

    藤波主査 十分心得ます。
  175. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 総務長官に少し御議論をしようと思って参りました。  このことを私は地方行政委員会でも何度か取り上げまして問題にしたのでありますが、なかなか解決がつかない問題でありますし、所管総理府でございますので、長官もかわられたことでございますし、ゆっくり長官に考え方を聞きたい。また、これほど社会問題になっている問題でありながら、余り政府が問題にしないというのもおかしいのではないか。それは猛獣ペットであります。自民党では志賀先生が盛んに勉強されておられたようでありますが、私は別に利害関係があってやっているわけではございませんけれども、危険な猛獣ペットを日本は盛んに買い込んで、しかも野放しになっておるというのがどうも納得がいかないのであります。地行の委員会でもかなりの時間を費やして、総理府の方は余りきちっとした御答弁をいただけなかったと思いますけれども、この法律にかかわるものは動物の保護及び管理に関する法律という法律しかないのであります。いわゆる保護法しかない。だから、大蛇でもトラでも象でも入ってくることは自由。保護をすることがあっても、かみつかれればかみつかれっ放しということなんですね。  そこで、被害状況は後ほど警察庁さんにお尋ねいたしますけれども、まず長官、一体どんなふうにお考えになっているか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  176. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたしますが、この問題、特に昨年埼玉県におきますライオンにかみ殺されるというような事件がございまして、また相次いでそうした事件が全国各地に起こってくるというような事態でございました。個人が安易に猛獣を飼っておられるというような結果から来たものではないかということで、いま御指摘のように憂慮いたしておる事態でございます。  総理府といたしましては、いま御指摘なさいました、これは私がちょうど内閣委員長のときに皆さん方から御提案をなさって、動物の保護及び管理に関する法律が出て、これを総理府所管をいたしておるところでございます。今日までもこうした事故が起こりましたような状態でございますので、この飼育等について十分な御注意が払われるように、総理府といたしましては都道府県にも十分連絡をし、条例等でひとつそうした事故の発生しないように、お願いを申し上げてまいっておるところでございます。現在のところ五県ぐらいがすでに条例化しておられ、また茨城を初め数県について新しく条例を制定しようかという動きもあるところでございます。すでに御承知のことであろうと思うのでございますが。なお、わが方におきましても動物保護審議会にこの問題を提示いたしまして、これが対策等について御審議を賜っておるところでございます。  なお、現在猛獣など個人の飼育は許可制にしてはどうだというような御意見も出てまいっておるわけでございますが、そういう点について各県においてもすでに条例化しておられるところもあると承っておるところでございます。一方、審議会におきましても最近に至りまして、危険な動物による危害防止対策をさらに強化する必要があるということを答申を願っておるわけでございまして、また地方自治体の条例運用の推移等を見ながら、私どもも今後引き続いて猛獣などによります危害防止対策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。いま、具体的にどう処置していくかということを、関係省庁とも連絡しながら具体的な対策を検討いたしておるというところでございます。
  177. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 御検討していただくのは結構でありますけれども、大臣のお手元にも恐らくあると思いますが、警察庁保安部防犯課というところから猛獣飼育実態調査というのが出ておるのですよ。恐らくことしもまたお調べになると思いますけれども、これは昨年のデータでありますが、警察庁さんおいででございますね、後ほどちょっと御答弁願いますけれども、千百三十八頭、二百八十三カ所、合計するとそういうことになっております。ちょっと長官に申し上げてみましょうか。クマが一番多くて八百七十四頭だそうであります。ライオンが五十頭だそうであります。ヒョウが二十九頭だそうです。トラが十四頭、象が四頭、オオカミが一頭、ゴリラが一頭、カバが一頭、ヒヒが一頭というのですね。  これは小さいときはかわいいのですよ。問題ないのです。非常にかわいいのです。だからよくテレビなんかに出てきて、なめたりさすったり転がったりしているのです。ところが大きくなってきますと手に負えなくなる。しかも、えさをやらないから、埼玉で問題になった、ライオンに食い殺されるというような事態が起きている。これは去年の十月二十五日、アメリカで起きていることですけれども、やはりライオン二頭に若奥さんが食べられちゃって、それこそ骨だけになっちゃったのですね。おやじが帰ってきて調べたところが、裏の庭に骨だけしか残っていなかった、こういう事例があるのですね。それは結局えさが間に合わない。間に合わなければどうしても腹が減って食いつくという結果であります。こういうことで、かわいい、かわいいでは私はだめだと思うのです。  時間がありませんからそんなむだ話はやめますけれども、社会問題として、約二千頭に近いようなものが、いわば犬に至るまで、犬は猛獣とは言いませんけれども、この間のように秋田犬がかみ殺したという例があるのですから、そういうものに至るまで、ともかく大変なことになっておるのです。  しかも、これはもう地行でも申し上げましたけれども、私の調べたところでは輸入の制限がないのですよ。幾らでも入ってくる。これは通産の問題なのでしょうけれども、本当に困ったことだと思うのです。ですから、私は地行でも申し上げたのですが、いわばこれにかかわる関係省が五つあると思うのです。そういうところが話し合って連絡協議会をつくっていらっしゃるのかどうか、知りません、後ほど答弁いただきたいと思いますけれども、もしそうであるならば、その辺が話し合って、輸入の規制をまずしなければだめだと私は思うのであります。入ってくるのは自由だということになれば、小さいうちにどんどん入ってきますよ。ですから入ってきて、今度はこっちで大きくなってしまって、昨年の春でしたか、宮城県で個人の動物園でどうにもこうにもならなくなって、やるところがない。愛知県で何かサーカスをやるというので持っていったところが要りませんというので、えさに困って大弱りしているという例があるのですね。その後どうなったか、その調査はよくわかりませんが、もしおわかりでしたら警察庁から聞かしていただきたいと思うけれども、そういう危険なことを平気でさせておるというところに大変問題があると私は思うのです。  そういうことで、話はもとに戻りますけれども長官、連絡協議会を持っていただいて結構でございますし、それから、国としてそういう規制の法律をつくることが不可能ならば、どうしてもできないというなら、この前の法案もそうでありますけれども、われわれは議員立法をつくったわけでしょう、議員立法でやるという方法もあると思います。だが、しかし、そこまでわれわれが手をかけなくても、事は非常に大きな問題でありますから、政府として基本的な問題はひとつきちっと出していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  178. 三原朝雄

    三原国務大臣 先ほども申し上げましたように、今月の初めに動物保護審議会の答申も出てまいっております。それにもそうした問題点の指摘もございますし、地方自治体に対しましてもいままで十分な連絡指導をしてまいっておりまするし、先ほども申し上げたように条例等をおつくりになった県もあるわけでありまするし、御指摘の点、各地に問題がすでに惹起をしておりますような状態でございますので、関係省庁と十分連絡をして、具体的に、再びこういう事態が起こらない一つの歯どめについて検討を積極的に進めてまいりたいと思います。
  179. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 長官がみずからそういうことを約束されたのだから間違いがないと思いますが、ともかく悲劇が悲劇を生んでおることを本当によく知っていただきたい。しかも、この人たちはどこに泣きついていきようもないのですね。ですから、ぜひ自治省、いわゆる自治省傘下の各都道府県も、先ほど長官が言いましたけれども、いままで三つあったのですけれども五つになった。二つふえたわけですね。それぞれいまやりかかっておりますけれども、規制の条例をつくるだけではなくて、基本的にどうするのかということを私は真剣に考えてもらいたいのです。それは、何遍も申し上げるようですけれども、国にそういう基本的なものがないものだから。ペットだからいいということにはならないのですね。輸入業者を呼んで私が聞いたときにも、輸入業者自身がそれを憂えているのですよ。これは参考人としてお呼びして約一時間にわたってお聞きしたのです。そのときに輸入業者自身も大変心配をされておるのですね。ですから、そういう意味でぜひこの機会にきちっと対策を立てて、しかも法律が必要ならばある程度法律で規制をするというふうにしていただきたいと思います。  警察庁さんにお尋ねしますが、この猛獣の飼育実態調査、私の手元にあるのは十月のものでありますけれども、その後やっておりますか。
  180. 柳館栄

    柳館説明員 私どもの手持ちにあります資料は五十三年十月一日現在のものが最終でございます。
  181. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 そうすると私がいただいた資料と同じでありますね。先ほど哺乳類のところまで申し上げましたけれども、ちょっとそれは古いものですね。新しい方になると、たとえばワニが百六十九頭、ニシキヘビが八十七匹というのですよ。八十七匹もニシキヘビが日本じゅうにうろうろしているなんて思うとぞっとするのですけれども、そんなわけで、警察庁としてはこの後も調査をする意思があるのですか。
  182. 柳館栄

    柳館説明員 また近い機会を見まして調査いたしたいと考えております。
  183. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 柳館さんにもう一度お伺いしますけれども、取り締まる方だけにあなたの方は一生懸命に調査をしたりしていただいているのですけれども警察庁さんとしてはどんな考えを持っているのか。長官がおいでになるならば一番いいのですけれども、防犯課長さん、もし何かお考えがあったら聞かせていただきたいと思います。
  184. 柳館栄

    柳館説明員 この問題に対する警察庁の考え方ということでございますけれども、どこの点に焦点を当ててのお尋ねか、ちょっとつかみかねるのでございますけれども、一応警察庁といたしましては、警察の責務として生命、身体、財産の安全を保護するということが非常に重要なことであるという考え方を持っておりまして、したがって、そういう観点から、あるいは直接権限に関係するものではないけれども、調査はやはりしなければならぬということで調査もいたしてきておりますし、また関係機関に対しましてもその調査結果等をお示しを申し上げてしかるべく対策を講じていただいておるし、またその都度警察として危ないと考えた場合には、飼養をされている方に対する御注意なども申し上げでいるということでございます。
  185. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 いま言われましたけれども警察庁さん、もう一つお尋ねします。  私はこの問題を取り上げたときに、どこが一体主体なんだ。総理府が主体ということはよくわかりますけれども警察庁がいわゆる各戸のおたくのこういう猛獣ペットを飼っておるところをお調べになる。それならば警察庁が一番よく知っているんじゃないか。入ってくるのは自由で全然わからない。そうして業者が全国に二十一業者いるのです。大臣、覚えておいてください。二十二業者あったのですけれども一つつぶれまして二十一業者いるのですよ。入ってくるのが自由であって、それが自由に売られていって、そのことがわかるのは警察の方だけなんですよ。そうでしょう。どこのうちにどんなものを飼っているかなんということを詳しくはわからなくても、大体、ここにデータが出るくらいですから全部わかっているわけですね。そうすると、一番わかっている警察庁が一番心配をして、そして何か規制をしなければならないんじゃないか。それには警察庁さん、あなたの方が主体になるべきではないかということを私は地行の委員会で申し上げたんだけれども、どうもその辺のところは逃げ腰、と言ったら課長さん、あなたでは大変申しわけないのですけれども、腰が落ちつかないのですね。  ですから、きょうは長官おいでになるから、長官にもきちっといま私が申し上げていることを頭に入れていただきましたから結構でありますけれども、そう逃げ腰にならないで――どこも手をつけないというんでは一般の国民はやりようがないんだ実際。取りつく島がない。相手が動物なんだ。人間ならまだ説得するということもあるし、話をする。親子兄弟、親族を集めて、そして話をするということもあるし、いろいろあるけれども、こいつばかりはどうにもしようがない。言ったってわからないやつ、それがだんだん大きくなって、えさを求めて食いつくのですからね。ですから、わからないもの、いわば動物そのものを何とかするとすれば自分たちの手でする方法しかない。ここに長官一つ問題があるのです。それでは、かわいい、かわいいと言ってかわいがっているライオン、トラあるいはニシキヘビ、そういうものが要らなくなったときどうされますか。処分の方法、これはどういうお考えでございますか。動物園ではお引き取りになりませんよ。引き取ってくださるのもありますけれども、引き取らないのです。長官でおわかりでなかったら、関係局長さんかだれかおいでですか。わかったらひとつ、どう処分されておるか。
  186. 小野佐千夫

    ○小野(佐)政府委員 お答えいたします。  愛玩動物、ペットでございますが、これの飼養者は、その動物が死ぬまで終生これを飼養する義務があるのを原則といたしております。このことからいたしまして、飼い主の都合によりましてこれを飼養することが困難となった場合には、飼い主の責任におきまして、その動物を動物園とか動物商等の猛獣類の飼養にふさわしい新たな飼養者にこれをお引き取りを依頼するとか、あるいは万やむを得ない場合に限りまして安楽死の方法でこれを処理するのがたてまえとなっております。現在のところはそういう状態でございます。
  187. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 たてまえはそうですね。それしか方法がないと思うのですよ。ところが、動物園だってそうたくさん持ってこられたんでは困っちゃうしね、限られた範囲でえさを買ってやっておるわけですからね。そうすると引き取らないということになるのですね。その場合は殺す、こういうことでしょうね。殺すということになると、いわばさっきの保護法のところにひっかかりはしませんか。矛盾しますか、矛盾しませんか。保護法があるんだ。猛獣だから飼ったんではないのですよ。ペットとして飼ったんだ。それが猛獣になったわけだ。さあ今度は猛獣になって困るから殺すという段階になって、まだ食いつかないのですよ、もうとても持っていることは不可能だ。一日何百キロもの肉を食うわけですから大変なわけでしょう。ですからそうなったときにどうするか。そのときには保護法に抵触しませんか。
  188. 小野佐千夫

    ○小野(佐)政府委員 お答えいたします。  動物を飼う場合には、飼養者が事前に十分な知識とか施設というようなものを整えて、十分な心構えを持った上で飼うということを指導しているわけでございますけれども、動物保護法ではみだりに動物を殺してはいけないということでございまして、万やむを得ない場合には先ほど申し上げました安楽死とかいったような方法、あるいは動物園、動物商に引き取り願うというような方法で、動物を虐待しないという精神を堅持しながら処理していくというのが現在のとり得る方策ではないだろうかというふうに考えております。
  189. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 長官、やりとりをお聞きになられたとおりでありまして、そういう疑問点がたくさんあるために猛獣ペットというものは問題が大きいのであります。一般の人はよくよくこれがわからないのですね。ですから私は、各県に条例で任せるばかりではなくて、やはり一つの規制法をつくるべきではないか。その第一は、やはり入る時点、輸入の時点でちゃんとした一つの規制を置くべきではないか。二番目は、飼育をするなら飼育をする条件を与えなければいけない。どういうことで飼育をし、どういうふうにして大きくなってもそれを持っていけるかという、いまの保護法に沿った条件を与える必要があるのじゃないか。三番目は、大きくなってどうにも手に負えなくなった場合、いまの話ですが、当然それは安楽死させるしか方法がないのですけれども、それをどうするか、こういうことだと思うのですね。この三つの要素を持った問題を一つの条文にするなり、あるいは何か規制をして、安心をして猛獣ペットを飼えるようにしてあげたい。そしてまた輸入業者も、自由にとにかく登録さえすればどんどん買ってこられるというような、そんないいかげんなものじゃなくて、ちゃんとした方法を考えてやるべきではないか、こんなふうに思います。  時間がこの猛獣だけにとられてしまって大変申しわけないのですが、最後にちょっとお尋ねをしたいと思います。  今度は人間のことであります。私は、青少年の問題を地元でも、また昔から大変心配をしてやっている一人でありますけれども、特に青少年の非行の問題で、これは学校外でございますが、総理府には青少年育成全国対策協議会というのがありまして、いろいろ指令だけを出しているわけです。地元の下の方は一生懸命、PTAやら町内会やら何やらと一緒になりましてやっているのですね。そこで二つの問題を簡単にひとつ、時間がございませんから、長官からお考えをお聞きしておきたいと思います。  一つは、いま申し上げましたように、そういう機構の中で、いわゆる地域末端で一生懸命に青少年問題を取り上げておる団体があるわけですけれども、そういうものをもう少し補助、援助して相当めんどうを見てやっていただきたいし、それから命令や何か指令ばかり出すのではなくて、もう少し何か具体的にこうあるべきではないかというようなものがないのかどうか、これが第一点であります。  それから二点は、最近青少年、と言っても特に少年ですね、少年少女の首つり、いわば自殺、これが多くなりましたね。昔からない例ではございません。まま子いじめもあったし、それから不幸な家庭もあったし、自殺も結構ありましたけれども、最近は特に目立っておる。この少年の自殺について何か対策というか、お考えを持っているのかどうか。このまま放置するわけにいかないんですね。そのことを地域や家庭だけに、むろん家庭は一番中心なんですけれども、任せてやらせることもなかなか不可能だと思うのであります。長官の御意見をお聞きします。
  190. 三原朝雄

    三原国務大臣 国際児童年のときに当たっておりまして、青少年に対しての御配慮を心から感謝を申し上げるところでございますが、第一点の、青少年の育成等について、政府は音頭だけとって、実際上地方なりあるいは民間団体に任せきりにしておるという感がするぞという御指摘でございました。  もちろん、青少年の育成につきましては、国は関係省庁の連絡会議等を持って絶えず対策協議をいたしておりまするし、県、市町村に対しましてもそれなりの指導費を助成いたしておりまするし、団体等に対しましてもそれなりの、少額ではございまするけれども助成をいたしておりまするし、また、これらに対して指導協力をしていただきました功労者に対しましては感謝の表彰もいたすというようなことは配慮いたしております。御指摘のように、全体的に見れば、政府は音頭とりだけに終わっておりはしないかとお見受けされる点も私は認めざるを得ないかとも思うわけでございまするけれども、それだけ青少年教育というものがきわめて重要である。特に今日のごとく、ちょうど昭和四十八年から今日まで、一つのピークと申しますか、非行青少年の状況というものはそうした高い高原地帯にあるというような状態にあるという受けとめ方もいたしておるわけでございます。具体的な対策は、もうきょうここでは申し上げませんが、そういう点で特別の処置をいたしたいと考えておるわけでございます。  次に、自殺に対します御指摘がございました。特にことしの一月の二十日から二十二日まで、数件にわたります自殺が出てまいりました。それも年齢的に見ますと中学生というようなことでございまして、いままでは、自殺の統計等を見ますれば、高等学校というようなときでございましたが、今度は中学生にそういうことが起こったという事態でございます。関係省庁、早速この事態を厳しく受けとめまして連絡会議を開き、ただいまは学者諸先生方の知恵もかりまして、青少年の自殺に対します懇話会を形成をして、総理府総務長官の諮問機関として昨日発足をいたしまして、第一回の会合をいたしました。近く具体的にこの成果を出していただきまして、各関係省庁ともその成果を踏まえて対処いたしたいということでおるわけでございます。
  191. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 時間でありますので、もうこれでやめさしていただきます。  以上、長官、動物のことと人間のことと二つ申し上げましたけれども、いずれも非常に重要なことでございますので、ひとつ腹に据えてかかっていただきたいと思います。  終わります。
  192. 藤波孝生

    藤波主査 以上で山本悌二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、川本敏美君。
  193. 川本敏美

    川本分科員 私は、総理府総務長官に同和問題を中心にお聞きしたいと思います。  昨年末の国会で同和対策事業特別措置法が三年延長されました。それには三つの附帯決議がついておることは、もういまさら私が申し上げるまでもないと思うわけです。  ちょうどそれと前後して昨年の十月に、奈良県で、この間八選されました奥田知事ですけれども、奈良県が「同和対策後期総合計画」というもので、いわゆるこれからの十カ年計画を、このような厚い本ですけれども、策定されたわけです。この奈良県の「同和対策後期総合計画」というものを見てみますと、「推進上の諸問題」というところでこういうことが書いてある。「事業の必要性を痛感しながらも財政困窮のため事業実施が遅延している。このことは、とくに財政力の弱い市町村、同和地区数が多く住民の占める割合いの高い市町村に顕著である。その要因の主なものは、国庫補助基準、用地取得、施設運営費の不充分さにある。」こういうふうに推進上の諸問題を指摘をすると同時に、特別措置法が九カ年を経過した現在、事業実施においても市町村の間に格差が生じておる。このことは、市町村の超過負担、用地取得など種々の理由があるにしても、同和問題解決に大きな支障となっている。こういうような問題点が指摘をされているわけです。  そこで、そういう観点から来年度の予算検討してみますと、私どもは、まことにこれでは不十分ではないのかと思うわけです。  自治省、おいでいただいていますか。――まず自治省の方にお聞きしたいのですが、昨年末、特別措置法の延長の問題が論議されました当時、この国会では、いわゆる五十年に実態調査が行われまして、その調査に基づいて、五十年から五十三年までの間に実施した事業を差し引いた残事業量が、いわゆる政府規模では三千二百六十億だということをたしか総理府では言っておられましたが、そういう中で今日まで九カ年間の実績を見てみると、特別措置法で三分の二負担すべきはずの国庫の負担が三六%程度になっておるというようなことを言われたように私は記憶をいたしておるわけですが、自治省、その点についてもう一度確認をいたしたいと思うんです。
  194. 野村誠一

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  先般私ども申し上げましたのは、確かにそういう数字を申し上げたわけでございますけれども、私どもの自治省でもって同和対策事業を実際実施する場合に、その地方負担につきまして地方債の措置を講じているわけでございます。それで、地方債の充当した結果を私ども集計整理いたしまして、そういうものから出てきた数字で見ますと、これは住宅関係を除いてございますけれども、同和対策事業につきまして、全体の総事業費の中で国費分が三六%、それから地方費分が六四%、大体こういう比率になる結果が出ております。先生のおっしゃるとおりでございます。
  195. 川本敏美

    川本分科員 そこで同和対策室長にお聞きしたいんですが、今日でも政府予算策定に当たって、いわゆる残事業量が三千二百六十億だという前提に立って来年度の予算を編成されたのではないかと思うわけです。しかしその後、全国市長会の調査とか、あるいは全国町村会の調査等踏まえてみても、数字は大きくかけ離れておると思うわけです。  私は、そういう観点から見たときに、この三年間で現在の残事業を全部消化することができるのかどうかということについて大きな危惧を持つわけですが、室長、どう思っていますか。
  196. 黒川弘

    ○黒川政府委員 先生がただいま引用されました三千二百六十億円という数字は、先生も御承知のとおりでございますが、昭和五十年に調査いたしました同和対策事業に基づきまして国庫補助事業の補助方式で算定した金額から、その後、昭和五十年度から昭和五十三年度までのこれに対応する予算を単純に差し引いたものでございます。  御指摘のように、その三千二百六十億という数字が少な過ぎるのではないかということにつきましては、これもたとえば、ただいま御引用の市長会が昭和五十二年に調査いたしました数字におきましては、同和地区を有する市だけの数字でございますが、昭和五十二年度以降事業費として約一兆二千億という数字が計上されております。ただ、この数字につきましては、別な席でもお答え申し上げたわけでございますが、国庫補助事業だけではなくて、単独事業等も含み、かつその算定に当たりましても国庫補助基準によらないで算定いたしておりますので、そういった違いが出ているわけでございます。  そういうことを前提にいたしまして、各省が五十四年度予算をどういうふうに編成したかということでございますが、これにつきましては三千二百六十億という数字ということではなくて、昭和五十年調査によって把握しております事業量を頭に置きまして、かつ今後これに対してどのように対応いたすべきかということにつきましては、実態の把握ということが一つの重要な要請でございますので、これにつきましては、各事業所管省が、同和地区を有します市町村を所管するところの府県の担当部局から実情をよく聴取し把握いたしまして、今後の対応に努めてまいりたいということで考えております。  また、観点を変えまして、三年で実施できるかどうかという御指摘でございますが、私どもこの同和対策事業を担当する立場にある者といたしましては、法律が延長されましたこの三年間におきまして同和対策事業を完遂するという目途で努力してまいるという所存でいるわけでございます。
  197. 川本敏美

    川本分科員 私は、そんなむちゃなことを室長言ってもだめだと思うのですよ。というのは、これは奈良県が策定した後期十カ年計画ですよ。この中で先ほど申し上げた、そのようなことが書かれてあり、その中にいわゆる来年度以降、七九年以降の事業費の合計は一千七百六十五億八千四百万だ。これは奈良県だけですよ。そうしてこれだけのものを消化するのに八年ないし二十年かかると明確にここに書いてある。あなたは、全国の自治体が策定しておるこういう計画を全然見ていないわけですか。
  198. 黒川弘

    ○黒川政府委員 各自治体でおまとめになりました資料につきましては拝見しております。ただ、その内容におきましては、たとえば市長会でおまとめになりました、先ほど御説明いたしました資料でございますが、これにつきましては単独事業を算定の基礎に含んでおりますので、国が把握いたしております数字と大分食い違うということがあるわけでございます。各自治体におかれましておまとめになりました資料につきましても同様の要素があるというふうに考えているわけでございますが、この点につきましては、これを一つの意味におきましては参考資料とさせていただくということと、もう一つは、国が把握いたしました数字につきましても、固定的な考え方ではございませんで、先ほど申し上げましたように、各事業所管省が各府県から事情を聴取いたしまして、果たしてこれ以降の段階においてどれくらいの残事業があるのかということをよく把握して対処してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  199. 川本敏美

    川本分科員 それでは、私は長官にお聞きしたいのですが、いま室長お答えになりました。各自治体が自分のところで持っておる計画、これ一つを見ても、いま総理府の同和対策室長が三年間でやるのだと言うものを、県は二十年間かかりますと言っておるわけです。恐らく市町村もまた別別の計画を持っておる。そういう中で、いま最後におっしゃったように、各省庁と連絡をしてもう一度残事業量の調査をしなければならぬということをいま室長は言ったわけですけれども長官としては五十年調査のような規模の実態調査というものを今日もう全然必要でないと思っておるのですか、それともやはりもう一度これはやらなければいかぬなと思われますか、どうですか。
  200. 三原朝雄

    三原国務大臣 五十年のような総合調査を再度やるかどうかという問題は一応別といたしまして、いま言われました五十年に調査をいたしまして政府が当時得ましたところの実態、その後市長会から出されました実態、あるいは同和地区から出てまいっておりますいろいろな残事業状況、なおまた、いま奈良県において県自体でやられました新しいそうした計画というようなものを承ったわけでございますが、そうした現実のあることは十分承知をいたしております。政府は五十年の総合調査を踏まえて、次々に出されます実態について、たとえば地区の増加についてはそれを増加いたしましたり、あるいは残事業等につきましてもその都度都度これを見直しておるわけでございますが、しかし、いま言われましたように、全体的に非常にこの数字的な食い違いがあるぞという御指摘については、私もその事実を認めておるわけでございまして、したがって、私はこの際、政府として、全体的に同和対策の事業というようなものが、具体的にはどういうところに整理をしてまいらなければならぬかという点をこの時期にはっきり検討する必要がある。しかし、そのやり方につきましては、五十年のような総合的な実態調査という考え方はいま持っておりません。  しかし、いま申し上げましたような具体的な事実につきましては、関係省庁もこれを承知をいたしておるわけでございますから、あと残されました三年間でございますので、三年の間に果たして政府が考えておるように具体的にそれが完遂できるのかどうかという問題もございましょう、そういうものも総合的に関係官庁において判断をする時期だと思う。具体的な実態把握がなければ私どもも効率的な事業推進もできぬわけでございますから、早急にそうした各関係官庁の協議をいたしまして、実態の把握に努めてまいりたい。  方法といたしましては、各関係官庁の窓口によって県、市町村と連絡をとって、そこでまとめてまいるということも考えておりますし、また各関係官庁がみずから現地に出向いて調査もするというふうな方法で、とりあえずは整理をいたしてみたいという方針でおるわけでございます。
  201. 川本敏美

    川本分科員 私は一つ実態を申し上げて、具体的に説明したいと思うわけです。  私ども奈良県の御所市、自民党の奥野誠亮代議士の生まれたところです。ここは人口が三万七千五百三十一人で、世帯数が一万百六十四世帯、文字どおり、大平さんが思っておるのかどうか知りませんが、ここは田園都市なんです。その中に同和地区というのは八地区ありまして、世帯数が二千二百八世帯、そして同和地区人口が九千四十二人ということで、同和率といいますか、地区住民が市民の中に占める比率は大体二七%近くなっておるわけです。  ここで、昨年末市長さんが新しく当選されたわけですが、この間新幹線の中で一緒になりました。市長さんがおっしゃるのには、私の町はもう赤字財政で再建団体に転落するかどうかのすれすれの状態にある。だから、これだけの同和地区を抱えておるけれども、今日までまだほとんど何もできていない状態にあるのだ。この間県から残事業量について報告せよということだったので、とりあえず三百六十億というものを報告しておいたけれども、それは現在までで大体市民的な合意に達したもの、あるいは用地取得の見通しの立ったもの、あるいは市として基本計画に載っておるもの、そういうものをまとめただけで、まだ合意に達していないものとか用地取得の見込みがないもの、五年以後にでもまだなるという可能性のあるものについては現在全然計上していないのだ、こういう話で、実際この八地区を全部完全に環境改善事業をやるだけでも一千億ぐらいは要ると思うのだというような話を市長さんがしておられるわけです。  ところがこの町の実態は、八地区全部こういうことです。長官、これはひとつ見てほしいと思う。ここにもかいてありますが、地区の道路というものは、四メーターの道路が地区の周辺部を走りでおるだけで、地区の中は現在でも歩行者道路の段階でございます、こういうわけです。道路にアプローチした家というのはごくわずかしかない。ともかくかさをさして歩いたらもう二人歩けないくらいの道路なんです。そしてその道路に面しておる家と家との間の軒下を通って後ろへ出ると後ろ側にまた家がある。その家の間を通ってまた後ろへ出るとその家の後ろにまた家がある。消防自動車はもちろん、救急車はもちろん、ごみ取り車も屎尿処理の車も、車という車は全然地区の中へ入れないような実情なんです。中には、橿原というところは川が地面より高くて、一年に一回くらいは地区全体が床下浸水ないし床上浸水という状態で、ほっとけない実情にあることは確かなんです。そしてその中で皆さんは何を生業にしておるかというとヘップサンダル、いわゆるつっかけぞうりとか、ああいうヘップサンダルをやっておるんですけれども、ヘップサンダルというものは合成ののりを使いますから、火災面からは非常に恐ろしい状態になる。そういう実態の同和地区というものについて、総務長官、あなた現実に自分の目で見たことありますか。
  202. 三原朝雄

    三原国務大臣 私も同和地区をたくさん抱えております福岡地区、特に私どもの遠賀川筋地区というのにはずいぶんそういう地域が以前は多かったのでございますが、同和対策特別措置法ができまして、鋭意そういう点について事業処理に努力をいたしました関係上、いまはそういう地域はまずございません。私は大分成果を上げ得たと思いまして、以前は非常にひどいところがございましたけれども、現在はそうした地域は見受けられぬようになってまいりました。
  203. 川本敏美

    川本分科員 もしここで火災が起こって、そしてたくさんの人があるいは災害に遭われるような事態が起こったら、町は手をつけなければいかぬし、県も手をつけなければいかぬ、国も手をつけなければいかぬ。ところが、現在では、そういうおそれがあるということはわかっておっても、先ほど自治省からお話があったように、やろうとすれば市の財政力は現在ゼロ。これが特定不況地域に自治省から指定された町です。そういう町ですから財政的には何もできない。こういう状態で、まだ隣保館が建っておるだけなんですよ。その隣保館まで自動車も乗り入れできない状態にあるわけなんです。こんなところが三年や四年でできると思っておったら私は根本的におかしいと思うわけです。  もう一度こういう実態を踏まえて実態調査をやってみるというのならいいし、実態調査もやらないでこのままでいいんだという長官の考え方であれば、建設大臣でもいい、長官、あなた自身でもいい、一度ぜひ御所市へ来てこの八地区を回って、現在置かれている実情というものをつぶさに見た上で、もう一度私は私の質問に答えていただきたいと思うわけなんです。どうでしょう。
  204. 三原朝雄

    三原国務大臣 実態の把握は私は同和対策事業推進に必須の条件だと思う。したがいまして、実態の調査、把握をしないということではございません。あくまでこれは精力的に詰めてまいらねばならぬことだと思っておるわけでございます。  ただ、いま三年でもできないぞという御指摘、あるいはそういう地域もあろうと思いますけれども、それは私は、鋭意努力をして、三年の期限が切れる時点に立って再度検討を進めるべきものだ、そう考えておるわけでございます。この三年間でできるだけの努力をしなければならぬという責任を果たしてまいりたいと考えておるのでございます。
  205. 川本敏美

    川本分科員 総務長官、いまお答えになりましたが、三年間一生懸命やって、三年でできなければその時点でもう一度考えるとおっしゃいましたけれども、ただ考えるでは私はおかしいと思う。その前に実態の把握がなければならない。あるいはいま言いましたような市町村の窮乏した財政のもとででも事業が進められるようにまず措置しなければならぬと思うわけです。来年度の予算では、この御所市なんかではもうものの一億も二億もという仕事、市の単独の負担が一億になっても市の財政はもたない実情にあると思うわけです。こういうところについては、長官、特別の措置をされますか。
  206. 三原朝雄

    三原国務大臣 先ほど御指摘がございましたように、同和地区で、特に関係者が人口稠密である、しかも市町村の財政のきわめて困難な地域については特別な考えを持たねばいかぬぞという先ほどの御指摘でございます。私もそういう点については、同和対策事業を実施する以上何らか対処せなければならぬ。今日までも御承知のように三分の二の国庫補助、それから起債のあっせん、それから交付税にこれを算入するというような問題等もございますけれども、それでもなおできないような財政状態の地方公共団体があるとするならば、それをどう具体的に対処するかということは関係省庁で今後積極的に検討すべき課題だと私は思っております。
  207. 川本敏美

    川本分科員 最後にもう一回だけ長官にお聞きしたい。  三年やってみて、三年目になってそこで今度どうするかということを決めたらいい。言いかえれば、そこで法の延長とかあるいは基本的な同和対策基本法のような法の制定等を含めて長官はおっしゃられたのだと私は理解するわけですけれども、それを最後の年になって考えるのでは遅いので、少なくともこの三年の間に同和地区の実態を把握して、その上に立ってできるだけ早い時期に、いま言う特別措置法を延長したり地方公共団体の負担を軽減したり、あるいは基本法的な法制定をやるかどうか。そうしなければ差別はなくならない。いま申し上げた事業量というのは、いわゆる建設事業といいますか、そういうものだけについて私は申し上げておるので、教育の問題だとか雇用の問題だとか福祉の問題だとかいうようなことは一切言っていないわけです。そういうことも含めていくとさらに莫大な事業量になることは間違いないと私は思っておる。本当に差別をなくそうとすれば、教育あるいは社会教育、それから福祉、雇用差別、こういうことも私は大変な問題だと思うわけです。そういう点からも早期に総合的な根本方策といいますか、制度といいますか、あるいは立法といいますか、そういうことについて長官として取り組む意欲をひとつ示していただきたいと思うわけです。もう一度その点についてはっきりしたお答えをいただきたい。
  208. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  お説のとおり、いま申されましたのは物的な施設、事業面だけでございます。それも全部申されたわけでもないことも承知いたしておりまするが、この事業国民的な課題でもあるわけでございまするから、国民全体の理解と協力を得ねばならぬ啓蒙的な問題もあるわけでございます。そうしたことを考えるにつきましては、その事業の実績を上げるためにはとりあえず実態の把握がいま御指摘のように一番大事である。それは三年と言わず、まず早急にその実態の把握に私は精進をいたしたいと思うのでございます。それに向かって、三年後にはどうなるか、あるいは具体的に見通しがつかない場合にはどうこれに対処していくかというような問題について、今後関係省庁と連絡をとりまして、具体的に結論を出してまいりたいと思う次第でございます。
  209. 川本敏美

    川本分科員 終わります。
  210. 藤波孝生

    藤波主査 以上で川本敏美君の質疑は終了いたしました。  次に、清水勇君。     〔主査退席、愛野主査代理着席〕
  211. 清水勇

    清水分科員 いま同僚の川本委員から、膨大な残事業を今日抱えている御所市等の窮状に触れて、この際改めて実態調査をやる、それを基礎にしながらこの三年間鋭意事業推進すべきではないか、こういう話があったわけであります。私も昨年この委員会で残事業問題についていろいろお尋ねをした経緯がございますが、冒頭に、五十年当時の総合的な実態調査、こういったことが今日改めて必要になってきているのではないか、こういうことを強く申し上げ、また長官の所信を聞きたいと思っております。  さて、それはそれとして、実は私、欲を言えば、法務大臣に地名総鑑の問題について具体的な突っ込んだお尋ねをしたいと思っておったわけですが、局長がお見えになっているようでありますから、局長に向いてお尋ねをせざるを得ないわけであります。  まず最初に私が申し上げたいのは、御承知のように、特措法が制定をされて十年、第一の地名総鑑が判明をしてまる三年を経過しているのに、第九の地名総鑑が昨年十一月に問題になるというように、いよいよ地名総鑑が続出をし、しかも悪質化をしてきている。私はこの原因はいろいろあると思いますが、一つには地名総鑑の真相の究明が十分に行われていないというところから後を絶つことができない、新しい地名総鑑を再生産するような状況を生んでいるのじゃないか、こういうふうに思っているわけですが、今日まで真相究明のために一体どういう努力が払われ、今日どの程度の掌握をなさっておられるか、お聞きしたいと思います。
  212. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 お答えいたします。  御存じのように、昭和五十年の暮れごろに最初の「部落地名総鑑」、いわゆる第一のリストが発覚いたしまして、それを調査しております過程におきまして、第二から第六のリストのあることが発覚いたしました。それで、御指摘のようにすでに三年たっているわけでございますが、この第二ないし第六のリストにつきましては、発行者がすでに死亡している、あるいは行方不明になっているという関係で、発行者の一部にまだ不明の点が確かにございます。しかし、購入企業の調査につきましてはかなりの程度進みまして、かなり未済が少なくなっております。  しかし、同じく昭和五十一年にいわゆる本田リストと言われます七番目のリストのあることが発覚いたしました。これについては、当初本田なる者が調査に全然協力いたしませんでした。その関係で調査が非常に難航いたしましておくれたわけでございますが、その後説得いたしまして、態度が非常に協力的に変わりましたので、調査がかなり進展しております。ただ、現在のところこれは非常に微妙な段階になっておりますので、現在の段階では具体的なことについて申し上げることをちょっと御容赦いただきたいのでございますが、第七のリストにつきましてはそういう状態でございます。  それから第八のリスト、先ほど先生が悪質になっていると御指摘になったのはまさにこの第八について言えるのではないかと思いますが、これは政府の同和対策について真っ向から挑戦するような非常に不穏当な文章が載っておるリストでございましたが、昨年発覚したばかりでございますので、現在まだ大阪の法務局におきまして鋭意調査中でございます。  それから最後に第九のリストということをおっしゃいましたけれども、これはまだ投書だけの段階でございますので、その真偽についてただいま調査中、こういう状況でございます。
  213. 清水勇

    清水分科員 いずれにしても、第七のリストについては微妙な段階であって、この場で詳しい説明はできないというお話ですから、それはそれとしておいておきましょう。  だが、しかし、全体的に見ると、第一の文書はある程度の解明がされたけれども、第二以降については、たとえば発行所もわからない、印刷所もわからない、発行部数もわからない。したがって、回収部数もわからないし、資料の入手先もわからないというような、全部ということじゃございませんが、その一つ一つを見ていくと、そういう不明な個所が相変わらず究明されてないで残っている。実はそういうことが結果的に新しい地名総鑑という、差別を生む一つの温床になっているのじゃないか。ですから、法務当局が鋭意真相の究明に当たっているのだ、こういう努力は私も否定はいたしません。が、しかし、今日きわめて悪質化してきているそういう実態と比べてみると十分ではない、不十分と言わざるを得ない、こういう感じを持っておりますので、具体的に、いま不明な点あるいは調査中のものは一体いつごろまでにその全容を解明なさろうとしておるのか。一口で結構ですが、その時期的なことについて触れていただきたいと思います。
  214. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 ただいま鋭意調査中の面につきましては、ちょっと具体的なことは申しにくいのでございますが、実は第一から第六の関係の中で若干不明な点がございます。これは全部が不明ということではございません。発行所は全部わかっておりますし、発行者も資料の入手元もすでにわかっているのでございますが、わからない点は、先ほどもちょっと申し上げましたが、すでに発行者が死亡しているものでございますから、それ以上追及のしようがないというところがございます。それから不明の点につきましては、鋭意調査しておりますが、あるいは幾ら努力しても、偽名など使って逃げておりますと、ちょっとこれはもう把握できないのではないかというおそれも確かにございます。  第七の関係では、これは先ほど申しましたように、いまちょうど非常に微妙な段階でございまして、それほど遠くない時期にある程度の究明ができるというふうに考えております。
  215. 清水勇

    清水分科員 私は、第七、第八、第九といったようなことを通じてしみじみ感ずるのは、あるいは悪質化をしてきているというのは、たとえば第七の地名総鑑が判明をした時期というのは、これが販売をされていたのが五十一年三月から八月ごろだと言われているわけでしょう。第一の地名総鑑が判明をし、大きな社会問題になり、マスコミにも取り上げられたし、時の総務長官も異例な談話を発表する。労働大臣もそうだ。各省の次官が連名で次官通達を出す等々を通じて、憤りを持ってこの種の差別事件を根絶せねばならぬ、関係方面に相当な協力も訴えた、そういうときにこの第七が出ているわけですね。いま比較的協力的に調査に応じているというから、それ以上のことは言いません。しかし、そういうような状況がある。  それから第八についても、天をも恐れぬ態度という言葉がありますが、私はまさにそうだと思う。たとえば一般家庭へ訪問販売をする。結婚問題を抱えられて家族の皆さんは大変でしょう、こういうことを巻頭言で言いながら、同和地域、つまり差別部落の見分け方を記述したり、ありとあらゆる不法な内容で発刊をされ、販売をされている。そのような差別意識を駆り立てて差別を助長する、こういったような差別を商売にするようなものについては、単に調査をし、状況がわかったら説諭をするなんていうことを幾ら重ねたって、新しい地名総鑑の多発を防ぐというようなことにはならないんじゃないか、こういうように思うのです。  そこで私は長官に、どういうふうに受けとめておられるか、所信をお聞きしたいと思うのです。
  216. 三原朝雄

    三原国務大臣 るる、いま御意見がございましたように、五十年以降一回から九回に及んで、これほど法務省を中心にして警察庁等で取り締まりを願い、また私ども総理府その他関係機関もこれを根絶しなければならぬということで努力をいたしながら、そういう結果になっておるという事態、しかも悪質な差別感を鼓吹するような、そしてそれで営業をするというような事態は、まことに遺憾な、いま憤りを持ってと言われましたが、私どもも同様な立場でこれを受けとめておるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては関係省庁と絶えず連絡をとりながら対処いたしておるわけでございますけれども、一層緊密な連絡を保持いたしましてこれが対処をいたしたいと、ここに申し上げる次第でございます。
  217. 清水勇

    清水分科員 私が改めてこの機会に申し上げる必要もないことなんですけれども、差別が刃物以上に人を傷つけ、ときにはその命を奪う、こういう性質を持っておるわけですね。政府は、いま長官も言われたけれども、憤りを持ってそういう差別を根絶しなければならない、こういうふうに言われておるわけですけれども、これまでの経過は、差別をなくすために、結局は教育とか啓蒙の手段でやってこられた。やってこられたけれども、現実にはなくならないだけではなしに、地名総鑑などというものはむしろ多発の傾向すらあるんじゃないか。私はそうだと思うのですよ。真相が究明をされた、たとえば売った者、買った者、これを使って差別を助長した者、現状では何ができるかといいますと、結局厳重注意だとか説諭だとかあるいは勧告といったようなことしかできない。何もこれを規制することができない、そういう仕組みになっているわけでしょう。わずか原価千円程度のものが三万円にも五万円にも売れるというようなことになれば、その程度のことなら引き続き商売に使うというようなことはあり得るんじゃないか、こう思わざるを得ないのです。ですから、各省庁で協力をし合って鋭意排除のために努力をするというようなことは、これはもうやってもらわなければいけませんが、しかし、もっと基本的に、ここまで来れば、法的規制という形でこの種の差別商法を排除していくという段階に来ているんではないか、私はそう思うのです。この点、まず長官、どういうお考えでしょう。
  218. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  この問題につきましては、法務省と御相談をして検討を進めておる段階でございます。
  219. 清水勇

    清水分科員 法務省、何かありますか。
  220. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 ほかの省と同じように、法務省におきます同和対策の役割りと申しますもの、これもやはり啓発活動でございまして、現在の立場は決して法で何か強制するということではないわけでございますが、私どもが現実にこの地名総鑑という差別図書の調査に取り組みました段階で感じましたことは、やはりあくまでこれは啓発はしなければならないものでございますけれども、御指摘のように、差別を金もうけの種にする、こういう悪質なことはちょっと啓発だけで抑え切れない面があるのではないかというふうに感じまして、ただいま総理府総務長官もおっしゃいましたように、何らかの法的規制の必要もあるのではないかという観点で検討を続けておるわけでございます。
  221. 清水勇

    清水分科員 局長、せっかく座られたところで恐縮ですけれども、一体いつまで検討を続けられるのかということに私は深い疑問を感ずるのです。昨年のこの委員会でも、あるいは予算委員会総括質問の中でも、時の瀬戸山法務大臣はこう言っておられるのですよ。法務省として何とか法的規則をしなければこういうものを防除できないという観点で検討を進めている。またあなた自身も、むずかしい問題もあるが、やはり悪質なものについては法的規制が必要であると、もう一年前に言われているわけなんですよ。そして早急に法的規制についてどうするかということをまとめられるという意思が披瀝をされているわけですね。ところが相変わらずきょうになっても、検討していきたい、悪質な、たとえば差別を商売に使うようなものはとても教育や啓発では無理だろう、何とかしなければならぬと、同じようなことを言われている。  そこで私は、もうここまで来れば、いつまでも検討しているというのではなくて、それは検討してもらわなければなりませんけれども、大体いつまでをめどに検討結論を固める、そうして法的な規制措置を講じたいというような具体的な御意思が表明されていいんじゃないか、こう思います。その点、どうでしょう。
  222. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 人権擁護局はそれほど人数も多くございませんけれども、全職員挙げてこの法的規制の問題の検討にいままで取り組んでまいりました。幾たびか私も具体的な答弁を申し上げておりまして、結局根本にありますものは、憲法の規定しております表現の自由との関係、それから同じく憲法問題でございますけれども罪刑法定主義の関係、その他いろいろございますけれども、表現の自由との関係は非常にむずかしくて、これをいろいろな角度から検討しまして非常に精力的に取り組んでまいってきておるのでございますけれども、現在一番その検討がむずかしい段階になっている、こういうことで、しかしながら何とかこれを芽を出したいということで鋭意やっているわけでございます。昨日もそういう検討をいたした次第でございます。
  223. 清水勇

    清水分科員 むずかしい問題があるということは昨年もおっしゃられた。昨年はとりわけ言論、出版の自由とのかかわり合いもあってむずかしいと言われた。けれども、何も一般出版物を対象にこれを規制すべきであるという措置を云々しているわけじゃない。政府を挙げ、また国民事業として差別の根絶の推進をする。しかるに、そういう方向に真っ向から挑戦をするような悪質な、たとえば地名総鑑と呼ばれるような差別文書についてはこれを規制の対象とする。そこには表現の自由という問題がかかわり合いを持つ余地はないのじゃないか。それは一般出版物を対象にするというようなことになれば話は別でありますが、目的意識的に、つまり営利を目的にするという立場から、しかもその出版資料を通じて差別が助長される、そういうはっきりしたものについては当然規制されてしかるべきじゃないか。そういう角度で御検討もあるのだと思いますが、重ねて聞きますが、いつごろまでに結論を出されるおつもりでしょう。
  224. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 いまわれわれが取り組んでおります部落地名総鑑のようなもの、こういうものは一見しまして非常に悪質でございまして、ぜひこれは取り締まらなければならぬ、場合によっては罰則をもってでも処置すべきじゃないかということは、心情的にわれわれも感じておるわけでございますが、ただ、構成要件をどのように定めるかということによりまして、御承知のように、法律というのはひとり歩きをいたしますので、そうなりますと、一体どこまでの出版物がここに入ってくるか。  たとえば、もう少し具体的に申し上げますと、要するに問題は同和地区の地名を記載した書物ということでございますが、そういうことの出版でございますと、これは純粋な学術を目的とした出版物もございますし、それから差別解消のための民間運動団体が出しておる書物でもそういうものはたくさんございます。ほかの文章が書いてありましても、中に地名があると法律的な対象になるというようなことになりますと、この適用の仕方によりましては非常に危険な場合もあり得る。それをもろ刃の剣というふうに、私、前に表現して答弁申し上げたのでありますが、いわばそういう限界をどこにするかという線引きの問題、実はこれが非常にむずかしいのでございます。ほかにもたくさんございますが、一例を申し上げますとそういうことでございますので、いましばらく時間をいただきたいというのが私の本心でございます。
  225. 清水勇

    清水分科員 そこで、その点は時間の関係でこれ以上きょうの場面では突っ込みませんけれども、いずれにせよ、早急に、もう懸案事項ですから、取り扱いについての決着をつけてもらうように強く要望しておきます。  それから同時に、法的規制ということとの兼ね合いで、たとえば最近は企業の側は非常にこの種の文書の購入を敬遠する。そこで興信所だとか探偵社がもっぱらこれを出版をしたりあるいは使ったりして、企業の行う就職問題の調査に当たる、あるいは結婚の調査にあたる、これらを通して事実上の就職あるいは結婚をめぐる差別というものが助長をされる、こういう状況が多くなっている。ですから、せめて興信所であるとか探偵社等の登録制とかあるいは認可制といったようなものが考えられてしかるべきじゃないか、こう思うのですが、その点はどうでしょう。
  226. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 法務省といたしましても、地名総鑑などの調査の過程におきまして、これは主として購入企業の啓発の必要上、わが国の興信所などの実態の把握に努めてまいりました。その結果、ただいまの検討の結果を申し上げますと、御指摘のような登録制あるいは許可制ということもあり得ると思いますが、結局それは、興信所の事業を指導監督する立場でそういう規制が行われていくということになりますと、業界法の問題になると思います。そういたしますと、どうも法務省所管事項ではないのではないかというふうに私どもはただいま考えているわけでございます。
  227. 清水勇

    清水分科員 そこで、これは総務長官にもぜひ申し上げて決意を示してもらいたいと思うのですけれども、いまいみじくも人権擁護局長が言われるように、この部分までは法務省としてできるけれども、それ以上になると他の省庁の問題になるということが、地名総鑑一つを見ても、あるいはこの取り扱いをめぐる法的規制をとってみただけでも必ずついて回るのですね。  そこでこの際、総務長官が中心となって、一つ政府部内に、総理府法務省、労働省、通産省、自治省、そのほかにもあるかもしれません、そういった各省から成る、これは事務レベルのものはいま連絡協議会がありますが、そういうものではなしに、より高い政治判断を必要とするような状況なのですから、そういうものが中心に大臣レベルの対策本部というものがもう設置をされなければ、一貫して、しかも総合的に、しかもいまのような問題でしょう、こういうものをも処理することは非常にむずかしくなるのじゃないか。そうして、いまある事務レベルの連絡協議会が、その対策本部のいわば幹事会的役割りを機能として果たしてもらう、こういう時期に来ているのではないかと思いますが、どうでしょう。
  228. 三原朝雄

    三原国務大臣 いま大臣レベルの何かそういう機関を設けるべきではないかという御指摘でございますが、御承知のように、いままで私ども関係機関と連携を密にいたしまして啓蒙運動に全力を傾倒しております。また一方、具体的な問題等は法務省あたりを中心にして御努力を願っておるわけでございますが、いま御指摘を願いましたような具体的な事項があるわけでございますので、そういう問題をとらえて、いますぐここで大臣レベルのそういう連絡会議とか何かを持つことがどうだということでありますが、(清水分科員「対策本部」と呼ぶ)その対策本部等につきましては、いずれにいたしましても、いまの御意見を踏まえて、関係機関とひとつ相談をさせていただいて結論を出したいと思うところでございます。
  229. 清水勇

    清水分科員 時間もありませんから、いろいろ申し上げたいわけでありますが、大変残念です。ただ、私のいま提起をした対策本部の設置については、早急に相談をして結論を出してみたいというふうに言われたわけでありますから、これはぜひ速やかにお進めをいただきたい、こういうことを強く希望をいたします。  それから、あわせてこの際、長官に所見を求めたいと思いますのは、第一の地名総鑑が判明をした際に、総務長官の談話、労働大臣の談話などというようなものが、先ほど申し上げたように示されております。しかし、その後まる三年経過をしても、申し上げたように続出をし、かつ悪質化をしてきている。こういうことに思いをいたすときに、私は、根絶を図るのだとさっき長官は言われたわけでありますが、そうだとすれば、そういう意思をすなおに率直に国民に表明をする、あるいは関係方面の新しい強い協力と理解を求める、そしてこのような悪質文書の再発を断固として阻止をする、それらを通して全体として同和行政の推進を効果的に図る、こういうような趣旨を盛り込んだ声明といったようなものが出されてしかるべき時期なのではないか。さっき申し上げたような関係各省の大臣との連名でそういうものが示されるということになれば、一面では国民に新しい、政府の意のあるところを受けとめてもらう、国民的立場からも同和行政をさらに効果的に推進し得る、こんなふうな感じを私は持つのです。この辺、そうしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  230. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  地名総鑑の現状等を憂えられて、なおまた同和対策事業の積極的な推進ということを踏まえて、この時点において大臣の声明なり談話というものを出すことはどうだということでございますが、きわめて重要な問題でございますし、また総合的な判断に立っての措置も考えねばならぬと思いますので、関係省庁と十分連絡をいたしまして、検討をさせていただきたいと思う次第でございます。
  231. 清水勇

    清水分科員 時間が参りましたから終わりますが、大臣は実力ある大臣なのですから、一々他と相談をしなければならぬということではなしに、この点はぜひ実施をしていただきたい。このことを最後に申し上げて、質問を終わります。
  232. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で清水勇君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬長亀次郎君。
  233. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私は、失業問題、雇用問題について質問をいたします。  総理府統計局がこの前発表しました従業者三十人以上の事業所数及び従業者数の調査結果によりますと、従業員三百人以上の大規模事業所で、昨年六月までの三年間に約三十八万四千人の人減らしが行われております。逆に、三十人から四十九人、五十人から九十九人、百人から二百九十九人規模の事業所ではいずれも前回比でふえています。このことは、大企業が大量失業と雇用不安の元凶となっていることを示しておりますが、大臣、いかがでございますか。
  234. 三原朝雄

    三原国務大臣 総理府で統計を出しました労働力の調査の結果について御意見がございました。この問題の雇用対策等の問題につきましては、私自身が御回答申し上げることが適当かどうかということもございますので、いま御指摘の点につきましては、主管大臣にその旨を十分お伝えいたしたいと思います。
  235. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 いま私が申し上げましたのは総理府統計局の調査でございますから、ぜひ関係大臣にお伝え願いたい。これは事実なのです。  しかも、人減らし合理化の口実の一つとなっている企業危機なるものは、大企業には存在しないわけであります。ことしの三月期決算の予想でも、従来構造不況業種と言われた鉄鋼、石油化学、繊維を含め、軒並み増収増益が確実視されておって、証券各社による当初予想の増額修正が伝えられております。こうした事実は、失業と雇用不安の発生源になっておる大企業の減量経営への社会的規制がいよいよ重要かつ緊急なものとなっていることを示しておりますが、長官の御意見を伺いたいのであります。  引き続き、これに関連して、総理は今度の国会での施政方針演説及び答弁でも、雇用失業問題にほとんど触れないで、雇用不安と失業の増大の元凶である大企業の人減らし合理化、中小企業つぶしには注文をつけることはいかがと思うなどと、大企業のやり方をむしろ擁護しております。これも事実であります。この大企業の不当な人減らし合理化攻勢を規制するどころか、産業構造の転換促進と称して、造船、繊維などの人減らし合理化をむしろ正当化しているのが内閣の現実であります。政府が五十四年度経済見通しの中で、五十三年度を数万人も上回る百三十万人の完全失業者を見込んでいることも、こうした姿勢のあらわれであると私は考えます。閣僚の一人として総務長官のこれに対する見解を承りたいと思います。
  236. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  景気が緩やかながら回復、上昇の兆しが見えておりますことは御承知のとおりでございますが、にもかかわりませず、雇用問題、失業情勢は依然として厳しいものがあるということ、その原因についていま瀬長分科員の御意見も承ったわけでございますが、この問題は、今日まで予算委員会あるいは本会議等で各議員の方から御意見が出てまいっておるところでございまして、そういう点についてその都度総理または主管労働大臣もお答えをしてまいっておるところでございますけれども、重ねて現在この問題について強い御意見のあったことを主管大臣、総理にお伝えをいたしておきます。
  237. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 そこで私は提案いたしますが、労働者代表を含む雇用対策委員会を中央、地方につくり、人減らし合理化計画の事前届け出を義務づけ、必要な調査、勧告ができるようにすべきであると考えます。  また、こういう時期にこそ、週四十時間制、週休二日制の確立、厳しい時間外労働規制に踏み切るべきであると思います。現に週四十八時間労働制をとる国は先進資本主義国では日本だけなのです。欧米では週五日労働、四十時間制がむしろ常識になっております。住友銀行試算によると、完全週休二日制が一〇〇%普及すると二百二十二万人の新しい雇用が確立できる。さらに、一人月平均十二時間の残業をなくすることで三百七十九万人の雇用が可能となるということを発表しております。この問題は、失業雇用問題を解決する大きいかぎであると思いますが、この点について長官の御所見を伺いたい。  さらに、いま申し上げました雇用対策委員会については、特に沖繩、筑豊などの失業多発地域こそ設置すべきであるというふうに考えております。総理はこの前の私の質問に、職業安定所があるからこんなのは要らぬとか言っておりますが、この点、特に長官としてもよく検討されて総理に進言していただきたいと思いますが、いかがなものでありましょうか。この二つの点。
  238. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  第一の問題も、今日まで予算審議の中で再三取り上げられてまいった問題であり、その都度総理なり労働大臣からお答えを願っておるわけでございまして、雇用問題は現時点におきまする政策の重点でもございまするし、鋭意政府といたしましても努力してまいるわけでございます。  なお、第二点の雇用のための委員会を現地につくってはどうだ、この問題も実は今日までの審議の中で出てまいった問題であるわけでございまするが、現在のところ、政府といたしましては、いますぐそうした委員会をつくるということでなくて、具体的に雇用対策を他の面で処理していきたいということでお答えをしてまいっておることは承知をいたしておりますが、なお重ねて瀬長議員から二点について御意見のあったことは、総理並びに労働大臣にもお伝えをいたします。
  239. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 長官沖繩開発庁長官も兼任されておりますので、特に沖繩の失業問題、雇用問題について触れますが、総理府統計でも、五十三年十二月、完全失業者が二万二千人、失業率は五・一%、全国平均の約二・五倍、依然として高い記録を示しておるのは御承知のとおりだと思いますが、そのうち求職者が一万三千四百六十四人、就職できたのがわずかに四百二十七人しかおりません。三・二%にしか当たりません。この現象は、四十七年の復帰時に失業者が急増し、今日まで一貫して続いています。また構造的失業と言うべきものでありますが、いまなお解決の見通しもなく推移し、事態が深刻になっております。  二月二十日に沖繩での講演会で、開発庁の井上次官と思いますが、沖繩の失業の特色は、一、基本的には人口規模がふくらむ中で就業者の伸びが労働人口の伸びに追いつかない。二、若年失業人口の比率が高く、下に厚い人口のピラミッド構成から見て、雇用問題は長い期間背負って歩かなければならない十字架ではないかと分析しております。これはきわめて重大な発言でありますが、長官もいまの井上次官と同じように、長い期間背負わなくてはならない十字架と思っているのか。それから、この失業の根本的な原因は一体どこにあるか、どうすれば雇用失業問題を具体的に解決できるかという点について、御所見を承りたいと思います。
  240. 三原朝雄

    三原国務大臣 沖繩県におきまするいま当面する非常に大きな問題は雇用問題であり、失業対策の問題であること、御指摘のとおりでございます。他の府県の二・五倍なり三倍のところまで高い失業率であることも承知をいたしておるわけでございます。  そこで、そのよってきたる原因はどこにあるかということをまず御指摘でございましたが、その前に、井上次官が非常に厳しい状態は相当長期にわたるというようなことを言ったことを御指摘なさいましたが、私どもは、長期にわたるということよりも、一日も早く私はこの問題を具体的に解決していく努力をすべきだ。しかし、やはり沖繩県自体の自立体制というようなことを考えてまいりますると、相当厳しい状態の中を当分行かざるを得ないかなという井上次官の考え方についても、私は思いを同じゅうする点もあるわけでございます。  そこで、その原因でございますが、第一には、新規学卒者の増加に見合うだけの県内の新規の雇用の場所がないということでございます。それから、県民の県内指向性が非常に強くて、広域職業紹介の実がなかなか職業安定所等においても上がらないという実態も一つの要因であろうと思いまするが、なおまた、本土で就職なさっておる方が自分の郷里沖繩県にUターンをされるという現象も最近に至って出てまいったという事態もございます。そこで、国内における沖繩県民の方々の雇用の安定をお願いしてまいることもいたしておるわけでございます。     〔愛野主査代理退席、主査着席〕 第四には、不況によりまする倒産でございまするとか事業規模の縮小によりまする解雇者と、駐留軍の基地の解雇者等が滞留しておりますことが主なる原因であろうと思うのでございます。  したがって、失業者の雇用を促進するために、しからばどういうことを開発庁は考えておるかというお尋ねでございますが、基本的には、何と申しましても沖繩県の産業経済の開発がやはり基本だと私は思うのでございます。そして県内におきまする雇用機会を確保することが絶対必要な条件と考えるわけでございます。われわれといたしましては、公共事業の拡大によりまする社会資本の充実など、産業基盤の整備や産業の近代化を推進するとともに、失業者の吸収率制度の積極的な活用でございまするとか広域紹介事業等、他府県に比してきわめて手厚い後援の措置を講じておるわけでございまして、そうした点で、私どもといたしましては、まずは県内の産業経済が自立していける体制のために振興開発事業推進することが基本的な問題だと考えて取り組んでおるところでございます。
  241. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 沖繩の失業状況を五十三年度平均しますと完全失業者が二万六千人、このうち七千四百人の失業者が雇用保険及び駐留軍離職者特別措置などの適用を受けていない者、期間が切れている者、何の手だてもないというのが七千四百人います。それから、完全失業者のうち駐留軍離職者は約四千四百人、これはもちろん職安の窓口を通じた者だけであります。三番目に、完全失業者のうち約八千人が世帯主であるという問題、若年層が約六〇%、中高年層が三三%を占めておる。五番目に、復帰から五十三年十二月の延べ解雇者の人員は一万八千九百八十六人である。このうち就職できない者が九千人という数字が出ております。  そこで、深刻であるといろいろ言われておりますが、復帰後いまだに解決ができないのは一体どうか、私はその実態をむしろ知らないんじゃないかということを痛感しますが、昨年十月、こちらの方で調査した失業者の声の二、三を紹介しますと、これは軍離職者、女性、四十九歳、Mという人。「私は、米軍の仕事をしていましたが、おととしの三月に首を切られ、一カ月七万円の就職促進手当を受けましたが、それだけでは生活できないので、五月から病院でパートで働きました。ところがことしの三月にそのことがばれて手帳を取り上げられてしまいました。主人は漁船員で、昨年七月の末に台風で遭難し、兄さんを亡くし、それ以来働く気力がなく、ショックで家にも帰ってこない。中一と小四の子供もいるし、パートの五万円ではとうていやっていけない。相談するところもなく、心配で心配でノイローゼになって夜も眠れない毎日である。」  次は民間企業の倒産の実例でありますが、これはAさん。二十七歳の男性です。「食費さえどうすることもできず、恥を忍んで妻と二人の子供を実家でめんどう見てもらっている。別居してもう四カ月を迎えている。これはもうどうにもならない。」  それから、二十五歳、これも民間企業の倒産による失業であります。「定期預金や生命保険を解約して生活費に充て、親戚からも借り尽くしてしまった。家族の顔を見るのがつらくて、みんな寝たころ帰宅する。」  これはCさん。これも民間企業の倒産によります。「食事は一日一食。パンか即席ラーメンで済ませている。」  さらに、五番目はDさん。これも同じく民間企業の倒産による、三十歳の男性。「息子を亡くしたとき葬式の費用さえなく、お通夜の日に、親兄弟、親戚の間を借金に駆けずり回った。身障児の長男に補聴器も買ってやれない。」  それから、これは同じく民間企業の倒産、四十三歳、Eさん。「悪性の貧血症で入院していた妻が、入院費用のことを心配して、治療半ばで退院を余儀なくされた。子供たちに学費や給食費さえ持たしてやれぬ。親戚からももう借り尽くしてどうにもならない状態である。」  こういうように、一々これは挙げますと大変なことでありますが、すでにこういった惨状であります。これは並み大抵のことでは沖繩の深刻な雇用問題は解決できないということを示しております。この問題について、たとえば、この根本問題をえぐらなければその解決の道はないと私は思います。  この要因は、私は率直に言って米軍基地の存在にあると指摘せざるを得ません。米軍基地の離職者の問題からいってもそれが明らかであります。米軍基地労働者の一方的な大量解雇、解雇者は五十二年度四百五十一人、五十三年度六百七十二人、復帰から五十三年の十二月まで実に延べ一万八千九百八十六人に達している状態であります。これがいかに米軍基地との関連があるかがわかります。  第二に、米軍の支配及び米軍基地の存在が産業振興、産業活動の大きな障害となっている事実であります。言うまでもなく、二十七年間にわたる米軍支配のもとで、沖繩が基地経済と言われてきたように、第三次産業肥大のいびつな形に押し込められたこと、これは逆に農業や第二次産業の発展が著しく阻害されたことであります。いまなお米軍基地は大規模かつ密度が高密度で存在しておりますが、その大部分が地域開発上重要な沖繩本島中部に集中しております。このことが、産業構造や都市形成、交通体系等の改善、整備の大きな障害になっていることは明らかであります。米軍基地の存在が産業振興の障害になっておる、これは隠せない事実でありますが、これらについて長官の御所見を承りたいと思います。
  242. 亀谷禮次

    ○亀谷政府委員 長官にかわりまして、広範囲にわたる御所見につきまして開発庁としての見解を申し述べたいと思います。  先生が御指摘をされますまでもなく、お話しのように、沖繩の深刻な労働雇用問題の根本に、復帰後の基地関係従業員の多数にわたる解雇の問題が非常に大きな問題であることは率直に存じておるところでございますが、先ほど長官からも御回答ございましたように、先生も御案内のとおり、この二万二千人という失業者の方々の中の約六割が二十歳から三十歳未満の、いわゆる若年労働者層であることも御案内のとおりでございます。この傾向というのは本土と変わっておりまして、非常に若い、いわば中学、高校を卒業した方の無業者の方が非常に多い、こういうことが特徴であることは、先ほど御質問の中にも触れられたとおりであります。  私どもが、復帰しまして実質六年間の労働力人口の推移、それから就業者層の推移を見てみますと、これも先生よく御案内のことだと思いますけれども、この五十三年度まで六年間に、労働力人口で約六万人の増加を沖繩では見ております。これに対しまして、復帰後現在まで、五十三年まででございますが、累計で約四万八千、五万人近い就業者の増加もやはり見ておるわけでございます。いわば、労働力人口の増に対しまして就業者として吸収されているものが約八〇%ございます。その間、わが国も石油ショックでいろいろ経済の構造変化もあるわけですが、私の承知しておる数字が間違いなければ、全国グローバルでいわゆる労働力人口がこの六年間で約三百万人、就業者数がその間二百五十万でございますから大体約八〇%強。沖繩と全国トータルでほぼ同じ程度の労働力人口と就業者数の吸収と申しますか、シェアと申しますか、比率になっておると承知しております。  沖繩につきまして私どもが見てみますと、これも先生御承知と思いますが、復帰後労働力人口の毎年の伸び率がきわめて高いわけでございまして、私どもの承知している数字が間違いなければ、大体年率で二%から三%の増加率になっております。本土は御承知のようにその間一%を切るという労働力人口の伸びでございます。この中で私どもは、先ほど来長官からもるる御回答申し上げましたように、いろいろ問題はございますけれども、公共事業の集中投下等による産業基盤の整備、あるいは社会資本のストックの整備に努めてきたわけでございまして、私どもがせっかく努力をしたことだけではなしに、沖繩県民の方もいろいろと御苦労をされた結果ではございますが、とにもかくにも、本土に比べて二倍から三倍に近い労働力人口の増加の中で、やはり八〇%近い就業者の、いわゆる就業構造における吸収と申しますか、増加を確保したという形になっていることも御念頭に置いていただければと思うわけでございます。  なかんずく、この労働力人口の中身を見ますと、海洋博等いろいろ要因はございますが、五十年、五十一年にはきわめて異常に高い労働力人口、具体的にいいますと五%から六%という増加を見ておりますのは、先ほども長官お答えしましたように、沖繩における一つの大きな問題として、若い方が本土に就職された後、きわめて短期間の間にUターンをされる、こういう問題も実はあるわけでございます。  こういう問題自身につきましては、政府としてもいろいろと考えなければならぬ問題もあるところでございますが、とにもかくにも、先ほど先生が御指摘のように、また長官から御答弁いたしましたように、一次、二次、三次産業を通じまして、やはりきめの細かい張りつけと積み上げによってこれを一つ一つ解決する以外に私は道がない。こういう意味で事務次官の、昨年でございますか、労働雇用の問題がややしばらくきつい、厳しいという意味におきましては、先ほど長官お答えしましたように、われわれとしてはもちろん一日も早くこれを解決することにやぶさかではございませんが、そういった構造的な問題をやはり中期にあるいは長期に解きほぐしていくよう、われわれとしてもせっかく努力をする必要がある、こういうふうに考えておるところでございます。
  243. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間がありませんので、最後に長官にお伺いします。  沖繩の失業雇用問題は、沖繩の産業振興にかかるとこれまで答弁してこられたのでありますが、復帰後七年を経過した今日、なおその見通しがつかない。しかも、すでに沖繩振興開発審議会がまとめた沖繩振興開発計画中期展望で、産業振興による解決について後期五カ年間に県内で需給バランスが回復する見通しはきわめて薄いと指摘しております。いま次官が十字架の問題を出してみたように、沖繩の失業問題は、たとえば、せっかくつくられた沖繩振興開発特別措置法の第三十八条に、失対事業の特別の事業を起こすように労働大臣はぜひやらなくてはいかぬというようなことまで書いてありますが、この三十八条をどのように解釈し――そのとおり沖繩の失対事業を労働大臣が県知事と相談して決めるということがはっきり書かれているのに、いまだにそれが実行に移されていない、これに対する長官の御所見を承りたいと思います。
  244. 亀谷禮次

    ○亀谷政府委員 沖繩振興開発特別措置法の第三十八条でございますが、いま先生が御指摘のように、この条文には、沖繩復帰後の労働雇用情勢の現況にかんがみ、労働大臣の責任におきまして、沖繩県知事から各種意見も聞いた上で、労働雇用政策の具体的な問題として沖繩県の雇用についての所要の計画をつくり、なおかつ必要がある場合には所要の措置をとる、こういうふうに書かれておると存じております。  この問題につきましては、先生も御案内のように、本土におきましては一般的な失業対策事業あるいは中高年の特別緊急就労事業等、特定の地域については行われておるところではございますけれども沖繩につきましては、復帰後各般にわたりますところの相当大規模かつ稠密ないわゆる社会資本整備のための公共事業等を集中施行しておりますし、あるいはまた、これに伴う沖繩についてだけ特別に高いレートのいわゆる一般失業者の方の雇用吸収率を定めておるところでもございます。  そういったこともございまして、労働省としては、私の理解しておりますところでは、当面でき得る限り、先ほど繰り返しお答えをいたしましたが、長官お答えしましたように、広域職業紹介等のさらに手厚い遂行、あるいはいま言いましたような各種の公共的事業推進に際しての雇用調整率の確保、こういった総合的な手法を駆使することによって雇用問題に対処をしていきたい、こういったことで進んでおるところでございまして、先生が御指摘の三十八条に言いますところの措置、恐らくこれは緊急就労のようないわゆる失業対策的な事業を想定しておると思いますが、それを直ちに発動するということについては、やはりもう少し慎重に考えたいというのが労働当局の意向であるというふうに私どもも推察をしておるところでございます。
  245. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間が参りましたのでやめますが、最後に、この三十八条を私が申し上げましたのは、とりわけ就業の機会の増大を図るための事業の実施、これがないわけなんです。これについて、労働大臣が行うということになっておりますので、ぜひ長官に、労働大臣に対しても積極的にこの法の施行を進めていくように進言してほしいということを要望して質問を終わります。大臣いかがですか。
  246. 三原朝雄

    三原国務大臣 三十八条の基本的な措置について現在政府が考えておりますことは先ほど答弁を申し上げたとおりでございますが、なお沖繩の雇用問題について特にまた重ねてそういう要請のあったということは、労働大臣に私からお伝えをいたします。
  247. 藤波孝生

    藤波主査 以上で瀬長亀次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬野栄次郎君。
  248. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 戦後ソ連に強制抑留された者に対する補償等に関する諸対策について、国務大臣田中官房長官並びに政府当局に見解を求めます。  私は、戦後ソ連に抑留され、昭和二十三年十月十三日、ナホトカ港から舞鶴港に復員し、本問題について長年にわたり検討を進めてきたところであります。  本員は、昭和五十三年二月二十七日、当予算委員会第一分科会で、九項目にわたり当時の国務大臣安倍官房長官等に対し、戦後三十三回忌を期して政府見解を求めたところでありますが、その後一年間にわたり会議録を検討した結果、政府見解に対し疑義があるので、ここにさらに政府見解を求めるものであります。不思議と言おうか因縁と言おうか、たまたま一年後の同じ二月二十七日に同じこの分科会政府見解を求めることになったことに、私はひとしお感無量なものを感ずるものであります。  終戦の詔書が渙発された昭和二十年八月十五日、私たちは当時の満州、北朝鮮、樺太、北千島、北支において終戦を迎え、日本政府の命令に従ってソ連軍の支配下に入ることを余儀なくされ、このことにより世紀の悲劇が始まりました。日本政府が受諾したポツダム宣言第九項には「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」と明記されてあり、昭和二十一年十二月に、民族の大移動と称せられた五百八万の旧軍人、軍属、邦人等が中国大陸、南方諸島、台湾の各地域からなつかしの祖国に帰還しましたが、残念ながらソ連地区からは帰還できなかったのであります。ポツダム宣言の主要参加国であるソ連政府は、ポツダム宣言の定めるところにより武装解除を行い、私たちを速やかに日本に送還すべきであるのに、五十七万余の私たちを、不法にも戦後復興五カ年計画に動員し、ソ連国内及び占領地域に剣と銃で威嚇しながら拉致し、戦時賠償の肩がわりとして長期にわたり強制抑留し、過酷きわまる労役が課せられたことは御承知のとおりであります。  言うまでもなく、私たちの中には、一家を挙げて国策に挺身した開拓農民、内地の不況時に職を求めて大陸に渡った人たちも、ソ連の不法参戦により、家族を現地に残したまま応召した者も数知れなくいたのであります。極寒マイナス五十度を超える日々を、ただ生きるだけのための粗末な衣服に身をまとい、粗食で、鉄道工事、炭坑作業、森林伐採、工場建設にと、人体の極限に及ぶ重労働に酷使され、多くの戦友がとうとい生命を失いました。私たちはその過酷に耐えてソ連の戦後復興に尽くし、数年を経て、戦友のしかばねを異国の地に残したまま、九死に一生を得て、戦後動乱の祖国にやっとの思いで帰国したのであります。したがって、私たちに課せられた強制抑留役務の措置は戦時賠償のためのものであったことは疑いのない事実であります。  そこで、国際間の戦時賠償は、偶然その場に居合わせた不運な一部の抑留者のみが負担すべきものではなく、国家の責任において解決、清算すべきが当然のことであるとの見解を持つものであります。すなわち、私たちは日本政府の命令によってソ連に長期強制抑留される口実を与えたものでありました。換言すれば、この期間の労働は国家公務に服したも同然で、そのために生死の境を彷徨し、家族ともども物心両面にわたって受けた損害は甚大であると言わねばなりません。  ちなみに申し上げると、西ドイツ政府では、ソ連強制抑留者に対し、いち早く捕虜補償のため抑留者援護法及び戦時捕虜賠償法を制定し、国家が慰謝を実施いたしました。一九四七年一月以降三カ月以上とらえられた者を基準として、一九五一年には毎月八十マルクを支給し、一九六七年末までに十三億五千マルクに上っており、さらに住居購入対応費、家具購入補助金、準備金等を予算に計上し、一九六〇年度まで、当時の邦貨にして千六百五十二億三千万円の膨大な対策費をその救済に充てております。さらに一九六九年には法律を改正し、福祉的に改善を加えて合理化を期している事実があります。  しかし、日本政府においては、先に申し上げたように、既定事実をたな上げにして、日ソ共同宣言においては、日本政府はなぜかソ連政府に対する補償請求権を放棄してしまったのであるから、当然国家の責任において補償を実施すべきであると私たちは訴えておるものであります。このことは幾たびか国会で取り上げてきたところであり、いまや全国的にこの補償運動が叫ばれておることは御承知のとおりでございます。  そこで、まず最初にお伺いいたしたいことは、戦中と戦後はいつの時点で分かれるのか。これについては、昨年の私の質問に対して、政府は戦中、戦後を一括しての答弁でありますが、私は戦後についての質問をするわけでございますので、戦中、戦後の区別はいつの時点で分かれるのか、この点からまず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  249. 田中六助

    田中国務大臣 法的な戦争終結というのは、国際法上平和条約の締結ということで戦争が終わったということになるわけでございます。日ソ間のそういう状態は、昭和三十一年十二月十二日の日ソ共同宣言というもので一応戦争は終結したということになるわけでございます。
  250. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 昨年二月二十七日、当分科会で私の質問に対しての政府答弁は、少なくとも犯罪人の処罰などに関します正当な事由がなくして行われましたソ連による日本人捕虜の抑留等につきましては、ポツダム宣言第九項に違反したものであったというふうに考えられるわけでございますと答弁されておられますが、これについて政府としては法的解釈はどういうふうに考えているのか、明確に述べていただきたい。
  251. 田中六助

    田中国務大臣 瀬野議員がいまおっしゃっておるとおりに、私どもといたしましてはポツダム宣言の第九項によります、いま委員お読みの条項でございますが、それによります見解でございますので、ソ連の抑留というものは、ポツダム宣言の第九項に違反するというふうに思っております。
  252. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 昭和二十年八月十八日、大陸命第千三百八十五号、奉勅伝宣、参謀総長梅津美治郎命令、その三項に「詔書渙発以後敵軍ノ勢力下ニ入リタル帝国陸軍軍人軍属ヲ俘虜ト認メス」とありますが、捕虜と認めなければどんな身分であるのか、明らかにしていただきたい。
  253. 田中六助

    田中国務大臣 事務当局から答えさせていただきます。
  254. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  国際法上の問題といたしましては、降伏いたしましてソ連の勢力下に入りました軍人軍属等は捕虜であるというふうに考えております。大陸令一三八五にいま先生仰せの点が、当時の陸軍の出しました指令でございますので、私ども有権的に解釈する立場にございませんが、その後にもございますように、当時の戦陣訓等で生きて虜囚の辱めを受けずというふうな雰囲気があった中で、捕虜になっても恥ずかしいことはない、自重して無事に帰ってこいという趣旨の指令であったのではないかと考えております。
  255. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 捕虜でなければ一般民間人ということになるわけですが、そのように理解してよろしいですか。
  256. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  国際法上は捕虜でございます。
  257. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 国際法上は捕虜であるけれども、認めておるわけですけれども、捕虜でなければ何ですか。その身分を明確に答えてください。
  258. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  わが国といたしましては、国際法上ソ連に抑留された同胞の方々は当然捕虜として扱われるものでございますし、捕虜としての待遇を受くべきものであったという立場でございます。――失礼いたしました。それで大陸令自体につきましては、当時陸軍が出したものでございまして、私どもとして有権的に解釈する立場にございませんが、推測いたしますと、先ほど申し上げましたような意味で、命をむだにしないで自重しろという趣旨であったのではないかというふうに理解いたしております。
  259. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間がないので、はしょってぼんぼん聞くわけですが、官房長官、いま聞いておられてどうなんですか。捕虜でなければ何ですか。国内法からいってもどうなんですか。
  260. 田中六助

    田中国務大臣 戦争という事態でございますし、明らかに敗戦ということでございますので、これは国際法上から見れば捕虜ではないかと思います。ただ、司令官の一つの命令として国内的にどうかということでございますけれども、大戦争というようなことを控えて国家としての内部的な問題がございましても、あくまで国際的には捕虜だということの解釈しかしようがないのじゃないかというふうに考えます。
  261. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 捕虜としか解釈しようがないのじゃないかとおっしゃるけれども、この辺が問題ですね。本当に詰めなければならぬわけですけれども、あと重要な問題があるのでこれだけ追及するわけにいきませんけれども、それでは、ソ連に抑留された者は捕虜ということで、国際法上は、捕虜と認めない、宙ぶらりんで、何だったか。この点が明確にならないと、この問題の焦点がぼけてくるわけです。これはひとつ政府の統一見解を出してきちっと答えてください。私は当委員会をとめてもいいのですけれども、きょうは傍聴者もたくさん見えているし、重要な問題でございますし、後に大きな問題がたくさんございますので、政府の統一見解を求めます。委員長、お取り計らいください。時間がないですから急いで……。
  262. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  繰り返しになりますが、国際法上捕虜であったと理解いたしております。
  263. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 何ぼ言っても同じことを言う。ひとつ政府の統一見解を出していただくように委員長お願いします。委員長、どうですか。
  264. 田中六助

    田中国務大臣 戦争というのは相手のあることでございますし、日本にとっても重大なことでございますし、国際的にも重大な事項でございますし、これはあくまで国際法上の見地から判断する、あるいは判定する以外ございませんので、やはり国際法上捕虜であるということが政府の統一見解だというふうに言わざるを得ないわけでございます。
  265. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 一応田中官房長官の、政府の統一見解は国際法上捕虜だということで再度答弁がございましたので、後の問題があるので一応聞き置くということにいたしまして、会議録を検討しながらまた次の機会にこの点については詰めることにいたします。残念でございますけれども次の機会に譲ることにしまして、次の問題に入ってまいります。  昭和二十年八月十九日、ソ連領のジャリコーウェの丘において、関東軍参謀長秦中将、ハルピン駐在官川領事そのほかは、ソ連のワシレフスキー元帥と会見しました。日本人のソ連においての生活、すなわち衣食住等の諸条件を取り決めておりますが、この時点において、日本政府及び最高軍当局はある程度抑留生活を日本人が強いられることを察知していたと思われるが、政府見解を承りたいのです。すなわち、ちなみに申しますと、ドイツ国の敗戦によるソ連のドイツ国民の強制抑留による重労働の前例を承知していたはずでありますから、ひとつその点、政府はどう理解しておるか、お答えいただきたい。
  266. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたこの取り決めでございますが、当時は、日本側といたしましてはポツダム宣言第九項、すなわち「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」の規定に基づいて、武装解除された日本軍の構成員が帰還せしめられるものと期待していたものと考えられます。何となれば、この時期までには、ソ連は対日参戦の通告の中で、ソ連もポツダム宣言に加入したということを述べたからでございます。
  267. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 昭和二十年九月二日、一般命令第一号(陸、海軍)の一項中(ロ)に「満州、北緯三十八度以北の朝鮮、樺太及千島諸島に在る日本国の先任指揮官並に一切の陸上、海上、航空及補助部隊は「ソヴィエト」極東軍最高司令官に降伏すべし」、十二項中「日本国の及日本国の支配下に在る軍及行政官憲並に私人は本命令及爾後連合国最高司令官又は他の連合国軍官憲の発する一切の指示に誠実且迅速に服するものとす本命令若くは爾後の命令の規定を遵守するに遅滞あり又は之を遵守せざるとき及連合国最高司令官が連合国に対し有害なりと認むる行為あるときは連合国軍官憲及日本国政府は厳重且迅速なる制裁を加ふるものとす」とありますが、これは政府の命令と本員は理解するが、どうですか。
  268. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  一般命令第一号は、昭和二十年九月二日に、わが国が降伏文書に署名したことに基づきまして、連合国最高司令官総司令部が指令第一号によりまして、同指令の別添といたしましてそのまま発出することを命じたものでございまして、連合国の命令でございます。
  269. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 しからば、さきに述べましたソ連領ジャリコーウェの丘の会談上、抑留、重労働を予期しつつ、しかもその苦しさを、ドイツ国の強制抑留に前例があることを百も承知でこのような命令を出した政府見解はどう理解すべきか、真意を伺いたいと思うのですが、どうですか。
  270. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げましたように、この一般命令は総司令部の命令でございますので、当時総司令部が事態をどのように了解いたしておったか、私どもとしては承知いたしておりません。
  271. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 昭和二十年九月三日、ソ連の当時の主張、プラウダ紙の掲載のスターリン首相のソ連国民に対する布告によれば、当時のソ連首脳初めソ連国民は、日本に対する感情として、第二次世界大戦にとどまらず、一九〇四年以来の日露戦争当時にさかのぼり、日本には四十年間の特別勘定を有すると報道されている。  そこで、このような感情を持ったソ連に抑留、重労働を強制され、かつ病死していった一般民間人の犠牲の事実は、抑留された一部の日本人のみがなぜに全国民を代行して背負わなければならないのか。政府は一般民間人とはなかなか言わずに捕虜と言っておりますが、私はこの点について政府見解を求めるものであります。
  272. 田中六助

    田中国務大臣 たびたび申し上げておりますように、いろんな事情がありますし、わが国同胞のことでございますし、私どもも、シベリアの抑留生活というものを考えるだけに本当にそら寒い思いもしますし、気の毒だということはもう万々十分わかりますが、やはり国際法上あくまでこれは捕虜であるという断定を下さざるを得ませんし、まあそういう見解で長い間政府もきておりますし、国際法上どうしても捕虜という断定は、たびたび申し上げますように、私としてもあるいは政府としてもそのような見解で統一せざるを得ないわけでございます。
  273. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それでは再度お伺いしますが、政府は、シベリア抑留者が帰還後、さきに述べましたように、西ドイツ国のように速やかに補償の義務を遂行すべきであるにもかかわらず、なぜ行わなかったのか。この点についてはどうですか、改めてまたお伺いします。
  274. 田中六助

    田中国務大臣 御承知のように、戦後シベリアに抑留され、病気にかかったりあるいは死亡した者については、軍人軍属、一般民間人を問わず、恩給法、援護法により遺族給付、障害給付が行われておりますし、それで十分というわけにはいきませんが、そういう法的措置も講ぜられておりますので、放置しておるということにはなっていないわけでございます。
  275. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そういう答弁ではもう昨年の答弁と同じでありまして、全然講じられてない方もたくさんおるわけです。一々それをやっていたのでは時間がかかりますので、一応次の問題にも触れておきたいと思う。  昭和三十一年十月十九日、日ソ共同宣言が発せられているが、この日ソ共同宣言第六項に、一九四五年八月九日以来の戦争における一切の賠償権を放棄し、すべての請求権を相互に放棄するとありますが、これについて伺いますけれども、戦勝国のソ連が賠償権を放棄し、なおかつ請求権を放棄するとあるが、敗戦国日本にも、相互にという字句の中に請求権の放棄を求めていることになります。したがって、これを解釈すると、日本政府が支払わなければならない賠償を十二分に先取りしてあるが、その請求は日本はするなということになるのであります。現にソ連とアメリカを除いた連合国には数十年をかけて賠償に応じております。したがって、ソ連における強制抑留による重労働は、国にかわって役務賠償したことは明々白白であると私は理解しているが、このような理解でよろしいか、官房長官お答えください。
  276. 田中六助

    田中国務大臣 日ソ共同宣言の第六項で、請求権を相互に放棄するということになっておりますし、ソ連も、もちろんわが国も、請求権の放棄ということの規定にはかかわりないと思います。
  277. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 どうもはっきりしない答えなんですけれども……。  次に、軍人軍属は捕虜だと政府は言っておるけれども、終戦で逃亡すれば罰せられ、命令どおりソ連に強制拉致されれば重労働。政府の答弁は、八月十五日までは命令であって、ソ連抑留期間中は命令でないという、昨年もいろいろ答弁もございましたが、自然の成り行きだから補償の義務がない、かような解釈のような感じがするわけです。  こういったことを総合しますと、ソ連抑留、重労働等一連の行動は、明らかに私はこれは公務につながる、かように解すべきが当然じゃないかというように思うのですが、その点は政府はどういう見解をお持ちでありますか、お答えください。
  278. 小熊鐵雄

    ○小熊政府委員 お答えいたします。  恩給による公務員と申しますのは、先生すでに御承知のように、軍人あるいは文官といった方々でございまして、こういった方々で長期間公務に従事したという方、これが退職された場合に、その退職後の生活の支えとして出しておるのが年金たる恩給ということになるわけでございます。したがいまして、そういった年限に達しないような方、これに対して年金たる恩給を給するということは、恩給制度はもちろんでございますが、他の公的年金制度の体系といいますか、たてまえといいますか、こういったものから考えて非常にむずかしい問題じゃないかというふうに考えております。
  279. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 むずかしい問題なんと言っておられますが、以上の質疑は国際法上から論じてきたが、昭和三十一年十月十九日、日ソ共同宣言が行われたのでありますから、以下国内法上の問題として順次さらに質問をしたいと思います。  昭和三十一年十一月三十日、参議院外務及び農林水産委員会の連合審査会において、参議院の千田正議員が、「この問題は将来重大な問題でありますが、ソ連との間にこの問題に対しては今後に残されておるのか、これで請求権を放棄したことによって打ち切られるのか、その点はっきりしていただいて、もし請求権を放棄したものだとすれば、国内的に何とか補償しなければならない」との質疑に、当時の鳩山総理大臣は「こういうような問題はほかにも同様な関係に立っておる事件がありますので、国内問題として考慮したいと思っております。」と答弁しております。ほかにも同様な関係に立っておる事件とは、言うまでもなくソ連復興五カ年計画のもとに重労働に課せられた日本人もその中に入ることを言っていると解すべきであります。すなわち、この時点からはや二十二年余りの年月がたっております。振り返ってみると、この間国内問題として政府はどういう対策を講じたか、私は本当に疑いを持つものであります。  これに対して答弁を求めても時間がかかるのでさらに質問を続けてまいりますが、同じようなことの繰り返しでございますので、私は会議録を見た上でさらにまた改めて政府見解をただしますけれども、いま当局から答弁がございました問題についてさらに質問を申し上げておきます。  軍人恩給、一般恩給法で処理したと政府はいまおっしゃいますが、年限に達せず全くその恩恵に浴さないもの、また一次恩給でわずかなお金で終わってしまったものの矛盾はどう考えているのか。一九〇四年にハーグ国際赤十字、ジュネーブ各協定に規定されている捕虜取扱規定に従って、比較的軽作業で、普通カロリー食を与えられて日本からの帰還船を待つ日本人と、強制拉致されて、厳寒、粗食、重労働にあえいで死亡率一〇%を超し、全員栄養失調に悩んだソ連抑留者が、同じ年数加算計算法で事務的に処理をされたということは、まさに公平を欠いたはなはだしい人権じゅうりんである。その格差の大なることを政府は考えるべきだと思います。すなわち、十年以上の加算をすべきじゃないかと思うのですが、その点、当局の見解を承っておきたい。
  280. 小熊鐵雄

    ○小熊政府委員 いま先生御指摘の加算年でございますが、これは恩給法上生死の危険、これの度合いに応じまして加算をつけておるわけでございます。  いま御指摘の抑留者の加算についてでございますが、先生おっしゃいますように、占領軍の方針であるとか、あるいはその地域であるとかによって、御苦労のされ方にいろんな度合いがあったということは想像にはかたくないのでございますが、ただ、どの国の占領の場合はどれだけ苦しかったというような評定をすること自体にもいろいろ問題があるかと思いますし、また地域によってどうだということも、客観的に把握するということは非常にむずかしい問題でもあるかと思いますので、そういった諸般の事情から一年という等しい加算年、これは一年といいますか、実在職年について二倍の計算をする、こういったことで特例措置として抑留加算を認めたわけでございます。
  281. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 この点についても大変問題が多いわけですけれども、時間の制約もあり全部詰めることはできませんけれども、会議録を見て次の機会に内閣員会等で十分な時間をまたとって政府見解をただしたいと思うから、一応聞き置くということにしておきますが、このように公平を欠いた政府の処置と矛盾はなぜ起きたかといいますと、それは戦中、戦後を一緒に片づけて、その場しのぎで逃れようとした政府態度にあると私は思うのであります。昭和二十一年十二月、軍籍から解放されたはずの軍人軍属が、その後の取り扱いも復員であり、戦病死と無理なこじつけをしております。軍人恩給の有効期限は昭和二十一年十二月をもって失効しておるわけだと私は解釈しております。政府は特別立法をすることも考えずに、軍隊の解散を命じておいてなおかつ補償のみ旧態依然として軍人恩給を採用したところに大きな矛盾、大なる失政があったと指摘されるべきだと私は思うわけです。  ちなみに、先ほど申し上げました西ドイツにおいては、法規によりその実情に即していち早く救済に当たっております。当時のアデナウアー首相は、この法案が在独高等弁務官府から拒否にあったとき、総理大臣の職を賭して救済に当たっておるではありませんか。  要するに、軍籍になかった者が救われていないではないか。このことについて政府はどう考えておるか。時間もあとわずかですから簡潔にお答えください。
  282. 田中六助

    田中国務大臣 戦争という大きな悲劇でございますし、あらゆる日本人が日本国内あるいは国外を問わず大きな犠牲を払っておるわけでございます。したがって、政府としては、戦争を中心とする日本人の苦労、これには差別、区分けのつけようがございませんし、各種の戦後処置に関する援護措置を講じておるということはいま私初め事務当局も答えたとおりでございますが、昭和四十二年の引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律、その法律の制定をもって一応あらゆる戦後処置は終わったというふうに私どもは考えております。
  283. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間が迫ってきましたので、最後に一番重大な問題を指摘し、政府見解を承っておきたい、かように思います。  昭和二十一年十一月三日公布された新憲法はその十八条に「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る處罰の場合を除いてはその意に反する苦役に服させられない。」とあります。昭和二十年の秋期から陸続としてソ連領に拉致された善意な日本国民が、長期にわたり奴隷以下の扱いを受けたのは事実であり、長く歴史に残ることであります。これはまさに憲法違反ではないか、かように私は指摘をするものであります。政府は、強制抑留そして重労働の事実を顧みることなく、現法規により処理しようとするならば、人権じゅうりんの観点から憲法違反になることは明白であります。  何回も繰り返しますが、昭和二十年八月十五日を境にし、みな、抑留された一般日本人として平等な立場にて苦しみを味わってきたのであり、以上述べたことをつぶさに検討してまいりましても、ソ連抑留によるいわゆる一般日本人は明らかに役務賠償と認め、特別立法の上それ相当の補償政府において行うことが当然であると考えるわけです。  最後に田中官房長官見解をお伺いしたい。
  284. 田中六助

    田中国務大臣 ただいま憲法の法解釈は、あくまで人権の尊重ということに尽きると思います。そういう意味で私ども一つの懸念は持ちますが、戦争という異常事態でございますし、わが国の政府の意の届かないところ、手の届かないところでございますし、先ほど申し上げましたように、昭和四十二年の法律で私どもは一応の戦後処置に対する法的措置は終わったというふうに考えておりますし、新たな特別立法をするという考えはいまのところございません。
  285. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 冗談じゃないですよ、田中官房長官。異常な戦争状態、だから戦後と戦中と分けて私は質問をした。そしてまた抑留された人の身分を聞いたけれども、その身分すらあなた方はっきりしないものだから質問の内容についても私若干戸惑いがありましたけれども、そういうことをはっきりしないで、異常な状態とか、ポツダム宣言の違反でしょうがなかったのだということで片づけられては浮かばれませんよ。私たちは若い青年で、二十、三十の若さでもって、いわゆる天皇陛下の命によって軍隊に参りました。十数年、航空隊の部隊長で千軍万馬、戦野を駆け回ってきました。そして抑留されました。私たちは若いから体はそれは耐えましたけれども、若いときに無理した、あのマイナス五十度の厳しさ、これに耐えた者はいまになって、五十、六十になりますとだんだん後遺症が出まして、いわゆる後遺症で悩んでおる人がたくさんおります。その遺族も大変苦しいと言っております。こういった人たちを救わずにどうします。三十三回忌に当たり去年質問をいたしましたが、この問題については政府としては十分な検討をしてもらわなければならぬ。いま、全国津々浦々、大運動が起きておりますけれども国会議員の中にも議員連盟をつくって大いにこれを推進しようという動きがあります。そういったことをはっきりしていただかなければならぬ。  ともあれ、一応のことを短い時間の中にはしょってお伺いしましたが、私は、最後に申し上げました、これらの抑留の皆さん方は役務賠償を果たしたものとして、特別立法の上、それ相当の補償をすべく政府としては早急に検討をすべきだ、このことを再度要求し、また、政府姿勢をぜひそういう方向で進めていくように強い希望を持つものであります。  と同時に、冒頭私が質問しましたように、この問題については、ポツダム宣言によって「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」こういうふうにポツダム宣言第九条で明確になされておる、これに対する違反でもあると私は思う。こういった点もはっきりした統一見解を出していただきたい。  と同時に、先ほどの、いわゆるソ連に抑留された者は、これはあくまでも捕虜なのか、それではいつまでが捕虜なのか、また、一般人としてソ連は認めておった一般人でないのか、この辺については一番重要な問題であるので、私は、明快な政府の統一見解を近い機会にひとつ資料としていただきますように、再度委員長お願いをしまして、一応の質問を終わらせていただきます。  また会議録を見た上で、三たび、ひとつ政府見解をただすことを留保し、本日の質問は、時間が参りましたのでこれで終わります。
  286. 藤波孝生

    藤波主査 以上で瀬野栄次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、小林正巳君。
  287. 小林正巳

    小林(正)分科員 三原総務長官お尋ねをしたいと思います。     〔主査退席、愛野主査代理着席〕  私は、日本の栄典制度についてお尋ねをするわけでございますが、戦後、昭和三十九年にいわゆる生存者叙勲が復活をしたわけでございます。それから大方十五年を経まして、すでに八万人ぐらいの方が叙勲の栄に浴したと言われておりますけれども、戦前は、この叙勲の対象というのは大体軍人、官吏がその対象者の主なるものであったようでございます。それはその当時の国の価値観、あるいは国民の側にもそれを受け入れる価値観があったわけですが、今日、社会の価値観あるいは人間の社会的貢献に対する価値観というものも、戦前と今日では大きな開きがあるわけでございます。しかるに、依然として、日本の栄典制度の対象、その実態というものを拝見をいたしますと、やはり官尊民卑といいますか、そういった傾向が実際の運用の面で出ておるように思うわけでございます。  たとえて言うなら、たとえば叙勲を受けられる方々、あるいは国会議員あるいは学校の先生、校長さんでございますとかその他公務員が大変多いわけでございますが、同じ学校の先生、教育に携わる方々について考えますと、同じような期間教育に携わってきた方、その教育の実態というものは、公立あるいは国立学校の教職員であろうが民間の私立学校の教職員であろうが、その教育に携わる内容というものは変わりがないわけでございますが、実際問題、叙勲の対象となる場合、例外的なものはあるでしょうけれども、大体公立学校あるいは国立大学とか、そういうふうな先生が、たとえば勲五等であるとかあるいは四等であるとかいうことになりますが、民間で同じ期間教育に携わってこられた方はその対象にならない。こういうふうに実際の運用面で明らかなる差というものが出てきておるわけでございます。  そうしたことについて、今日のこの栄典制度の運用というものに対して、多くの一般の国民の中からも、一部には大変抵抗感を感ずる人もおられるでしょうし、首をかしげる人もあるであろうと思います。栄典制度自身はそれなりに評価すべきものだろうと思いますが、その運用に関してかなりひずみがあるように思うのですが、そうした点について基本的な大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  288. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  ただいまお尋ねの栄典制度、叙勲の問題でございますが、戦前におきましては、御指摘のように軍人それから官吏を中心にして運用されておったことはそのとおりでございます。しかし、昭和三十九年、池田内閣のときだと思うのでございますが、この春秋の叙勲制度が再開をされました。その際には叙勲基準というものが明確に定められて、閣議において決定を見て、その後の運用をいたしておるわけでございます。その際にも明示されましたように、各界各層の功績のある者を広く対象にして叙勲をするということをお決め願っておるわけでございまして、その後の運用におきましては、御指摘のように戦前の叙勲のような運用はいたしておりません。重ねて申し上げまするが、各界各方面の、深くそういう点を掘り下げて慎重な運用をいたしてまいっておるところでございます。
  289. 小林正巳

    小林(正)分科員 それはもちろん戦前と同じだということを申し上げているわけではないので、依然としてしっぽが残っておるような感じがするということを申し上げておるわけでございます。もちろん戦前の価値基準が今日そのまま適用されておるはずはないわけでございますけれども、しかし、実際に官と民というものを比べた場合に、官に偏重しておるということは否定できないのではないだろうか。それは、いまの叙勲の一つの基準といいますか、物差し自体が大変アバウトなものである、あやふやなものであるというところにも一つ原因があるのじゃないかと思うのです。もちろん、その人の社会的な功績というものを総合的に判断するというのはなかなかむずかしいと思うのですけれども、たとえばいま総理府がやられておる実際の運用、民間の場合は、民生委員さんを三十年やったらこれは勲何等相当であるとか、あるいはある業界の長、それも県レベルあるいは国レベルというふうなことがございますが、それを何十年間やったらどうだとか、大変大ざっぱな基準でやっておるわけだろうと思うのです。これをまた個々に余り細かい物差しをつくるということ自体もむずかしいのかもしらぬけれども、まあ公務員の場合はわりとその物差しのつくり方が簡単である、その仕事の内容も非常に捕捉しやすいということから、実態としてそうなっておるのではないかと思うわけでございます。  いずれにしても、この栄典制度の発想なり運用上の理念というものから言って、民間の中にあって社会に目立たない貢献をしている人もできるだけ拾い上げていかなければならぬというお考えでやっておられるということまでは疑うものではございませんけれども、実際問題として、そういった官と民との差というものがどうしても出ているように思われてならないわけでございます。  そこで、これは大臣の地元にあるのかどうかわかりませんが、一つの例として申し上げますと、田舎といいますか、地方の中小都市あるいは農山村などにおいては、それぞれの町あるいは市なりの末端行政というものは、いわゆる区長さんが携わっておるわけですね、実際問題として。都会地のいわゆる自治会長さんというのと、そういった地方都市あるいは農山村の区長さんというものは、仕事の内容というものが大分異なるわけでございますけれども、昔は、そういった地域の部落の区長さんを二十年あるいは三十年間、地域の世話役を長年してこられたという方がかなりおるだろうと思うのです。私の知る範囲、私の郷里でもかなりそういう方がおられるわけでございますが、今日では、世の中が世知辛くなったということもございますが、そういった区長さんをやりますと、そこの町なり市なりからの依頼を受けたもろもろの末端行政の伝達役あるいはその地域社会のまとめ役としての雑用がいっぱいある。実際問題として、区長さんをやっておりますと自分の仕事の方もなかなか満足にできないというのが実態でございます。そこで今日ではもうそういう地域社会の区長、まとめ役みたいなことは余りだれもやりたくなくなってきている。一期仮に二年として、二期もやれば早く人にかわってもらいたい。何ら経済的な裏づけらしいものもないわけですね。微々たるものでしかない。そんなことでその在任中忙殺されてはかないませんからだんだんやりたがる人がいない。自分は忙しいからやりたくないけれども、しかしそうかといってその地域社会には世話役は必要だ。いないとやっていけないわけですから必要だし、そうかといって余りいかがかと思う人にお願いするわけにもいかない。そこで、まあまあその部落の中で信頼できる人をひとつ区長になってくれということでやらされておるというのが実態ですね。都会地なんかそんなことはありませんが、たとえば昨年の減反、転作、昨年に限りませんが、そういった問題も、本来なら農業委員の職責かもわかりませんが、実際には地域の区長さんがその部落の中の調整をする、まあやらざるを得ない、こういう立場にあるわけですね。  ところが、二十年間、三十年間そういった区長をやろうが、これはもう一切そういう叙勲の対象、その物差しには全く入っていないわけですね。昨年も兵庫県の区長会がございまして、その区長会でそういった声も出ておったわけでございますが、今日これほど割りの悪い役割りをしょっておる方々はいないんじゃないかと私は思うのです。しかるに、そういった地域社会の中で、非常に目立たない存在だけれども、実際問題、区長がいなければそこの市なり町なりの行政というものは全く徹底をしないし、動かないのが実態であるわけです。そういった人たちに対してこの叙勲の対象にするということになれば――いま二十年、三十年そんなことをやる人は実際問題としておりません。とてもやってはおれぬわけですからやりませんが、たとえ二期、三期やっておる方々にとっても、そういう理由で叙勲を受ける、二十年、三十年やったということによって、それを評価をされて叙勲されるということになれば、そういった区長なら区長職というものに対する責任と、あるいはある種の誇りというものを持ってもらうことができるのではないか、そんな感じがするわけでございます。  これは単なる一例でございまして、そういった区長さん以外にもそういう例はたくさんあると思うのですよ。あると思うのですが、まあ一例でございますが、そういった面について一体賞勲局の方ではいままで考えたことがあるのかどうか。なかなか、地方の区長さんと大都市における自治会長とは実際問題として性質が違いますから、一概に捕捉はできないかもしらぬ。あるいは法律的な裏づけのある存在、役職ではございませんから、その辺に難点があるのかもわからぬけれども、現実に、そうした経済的裏づけがなくて地域のために奉仕的に尽くしておられる方々に対する栄典制度運用上の配慮というものを考えたことがあるのかどうかを伺います。
  290. 川村皓章

    ○川村政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生がるる述べられた問題は、社会のいわば底辺にあってそれを支える方々を、できるだけ栄典の栄に浴させるように努力をすべきじゃなかろうかという基本精神であろうかと思います。その点につきましては私ども全く同感でございまして、基本精神は、先ほど総務長官が御答弁になりましたように、三十九年以来現在まで、春秋叙勲としてもう三十回の経過を持っておりますが、その中で徐々にそういう問題の発掘には努めてまいったつもりでございます。したがいまして、最近は春秋それぞれ約四千名の方々に叙勲の栄に浴していただいておりますけれども、その中で約三分の一が、いわば人目につかない分野の方方ということは先生すでに御存じであろうと思います。  それが全般の傾向でございまして、さらにいま区長さんの例が出ましたので、その点についてもお答えを申し上げておきますが、広く言いまして地方自治を支える自治委員の問題というふうに私ども問題を把握いたしております。ただし、二つばかり問題がございまして、現在検討はいたしておりますが、まだそこのところまで栄典が及ばないという現状になっております。  その理由は、先ほど先生もお触れになりましたように、これが公的な制度というかっこうになっておりませんものですから、それぞれの地方によって実態は相当違います。そこで実態が多少違う場合に、叙勲の範囲というのは、やはり等しからざるを憂うという原則を全国的には通さなければならぬという問題がございまして、その辺はすでに声は聞いておりますが、その実態についてまだ共通につかめておりませんものですから、一斉にこれを叙勲の対象にするというところまでまだ至っておらないというふうにお考えをいただきたいと思います。  それからもう一つは、しょせんこの栄典制度も広い意味ではいわばほめる制度でございますので、それぞれ地方の末端でそういう御努力をなさっている方は、必ずしも栄典だけでなくて、それぞれ、仮に地方公共団体では知事表彰もございますし、市町村長の表彰もございます。そういうものも適当に運用をなさっていただいて、これは賞勲局の必ずしも所管ではございませんが、それらの方々にせめて日ごろの御労苦に報いる点があってしかるべきだなという考えもあわせて持っておりますので、その辺の実態も現在調査中でございます。
  291. 小林正巳

    小林(正)分科員 三原長官三原長官のところは大都市ではありませんね、選挙区は、北九州市であるけれども長官のところの地元の中にも私が申し上げたような区長さんの実態があるのじゃないかと思いますが、長官自体は、こういう技術的な問題は賞勲局の方でいろいろ検討されるわけですけれども長官の実感としてどうでしょうか。
  292. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  私も以前官房副長官をしたときがございました。当時の佐藤総理は栄典のことについて非常に配慮をしておられました。そのとき、私は山中総務長官総理府総務長官をしておられたことを思い起こすのでございます。私も、佐藤総理と山中総理府総務長官の御精神、全くいま小林議員がお話しになりましたそういうところから、あの時代から非常に幅が広くなったと思います。いま局長お答えをいたしましたように、とにかくボランティア活動者として、本当にこの地方自治体あるいは陰のそういう国の秩序維持のために御努力を願っておる方々、そればかりでなく、工芸者としてその地元の伝統的な工芸に百年一日のごとく精を出しておられるような方々、こういう方々を何とか発掘をして、そして国の栄典に浴せしむるということが政治家として必要なことではないか。そういうことで特にその際総理総務長官が主唱されたことを思い起こすのでございますが、いま申されましたように、私も地元で一つ抱えておることがございます。それは司法保護司の方々、ほとんどの方が二十年、三十年、長い人は四十年、特に刑を終えて帰られた方々のお世話までやっておられるわけでございますが、これらの方々に栄典措置がないということで、私のところに県内の代表者がお見えになった。これは一カ月前にお見えになったこともあるわけでございますが、いま局長が申し上げましたように、何とかそういう点をいま申されます御精神に即しまして掘り下げていこうではないかということを十分私どもも考えておるわけでございます。そういう点で、なお一層ひとつ検討を加えて対処してまいりたいと思っておるところでございます。
  293. 小林正巳

    小林(正)分科員 ひとつ生きた運用をしていただきたいと思うわけでございます。  それから、いまの栄典制度をやぐらで組み上げていく、そういう操作をされているわけでございますが、たとえば何職を二十年間やった、この人は旭五相当である、その人がほかに何とかを十五年やった、これは瑞五相当である、もう一つ瑞五相当の職歴がある、瑞五と瑞五を合わせて、〇・五足す〇・五で一だ、その一とメーンになる旭五相当を合わせると、旭五と旭五で瑞四だ、こういう仕掛けに組み上げていっておるわけですね。  ところが、そういうやり方も余り合理的かどうかということは疑問がありますが、それはさておいて、たとえばある人が二十年間あることをやっておればその賞勲の物差しの中に入ってくる。ところが十七年だからちょっと年限が欠けてしまう。もう一つの件についても十五年やっておれば対象になるのであろうが、十三年だからこれは対象にならぬ。一方ではやぐらの組み上げでいきまして、一方では各省別になっているものですから、ある省の所管で対象にならないということになると、その総合的な評価をするところがないわけですね、実際問題として。何か一つ基準に合致しておれば、それにプラスアルファで勘案をして、ある程度腰だめ的な評価をするということができるのでしょうが、そうでないと、各省別に受けつけることになっておるようでございますから、その省の所管に関しての基準に達しないからだめだ。そうすると、これ、やぐらにならないわけですね。ゼロを幾ら足してもゼロだ、こういうことになる。一方ではやぐらの組み上げ方式で積み上げていく、こういうやり方になっておるのですが、こういうやり方はどんなものでしょうかね、賞勲局長。そういう総合的な評価ということがやはりできるような運用というのは必要じゃないでしょうか。どうでしょうか。
  294. 川村皓章

    ○川村政府委員 お答えをいたします。  大変技術的な中身にお入りになったようなことでございますので、その限りにおいて多少技術的にお答えを申し上げますが、先生、やぐらと申されたのは、あくまで個人の履歴の中で種類が違っている場合に行うことが原則でございまして、同種のもののやぐらは原則としてやっておりません。それで、いまおおむね七十歳以上ぐらいになられた方々は多彩な御履歴を持っている方が多いものですから、むしろ単一の方の方が少ないと考えていただいて結構でございまして、それはそれぞれの仕事の種類別にある程度の重さをはかると申しますか、そのために、これは何々相当、何々相当という説明のためにそれは申し上げるわけでございます。そこで、個人はあくまで一つでございますから、その意味では何もそれを機械的に足すとか、やぐらがあったから持ち上げるとか、そう単純な原理ではやっておりませんで、そのためにわざわざ功績調書もお書き願うわけでございますので、その辺は最後は総合していることになるわけでございます。  ところで、最後に御質問がございましたのは、省が違ってそれぞれの基準に達しない場合、ですから、これは叙勲対象者になるかならないかというあたりの、各省推薦にかかるところの問題だろうと思いますが、一例を申し上げまして、幼稚園の園長さんは三十年必要なところが仮に二十八年だった、片や民生委員の方は、これは法務省関係、これが三十年のところ仮に二十八年だった、二つ持っていたら何か入ってもいいじゃないか、こういうふうな御質問であろうかと思います。この点につきましては、先ほどのやぐらの問題とやや共通の原理が一番その下限のところであるわけでございますが、この辺をむしろ見て、いわば公平を欠かないようにするのはいわば賞勲局しか多分なかろうと思います。この例は、最近しばしばそういう例にあっておりますので、この辺につきましてはそれぞれの省で、それぞれのお仕事で足らないというものをもしそれぞれの省でまけますと、いわば政治性が欠けてしまうという問題がございまして、省が違う仕事がゆえに多少それを考慮しなければならぬというような問題のときには、概してこれを気がつくのは地方公共団体の場合がございます。たとえば市の場合それから県の場合、その場合には東京事務所からあらかじめ賞勲局に御連絡を願いまして、それぞれ足してみればいいではないかというような運用を図るようにいたしておりますので、その点で若干とも救うかっこうにいたしております。
  295. 小林正巳

    小林(正)分科員 もう時間ですからやめますけれども、私が申し上げた趣旨はおわかりをいただいたと思うのです。ですから、大臣が言われた保護司さんの問題にしても、私が申し上げた区長さんにしても、社会的にボランティア的に貢献をされておられる方々に対する配慮というものをやはり今後の運用の上で考えていただきたいということを要望をいたしますとともに、いま八十八歳は高齢者叙勲ということになっておりますが、八十八歳の場合も七十歳の場合も同じような基準が適用をされておると聞いております。法律に背くことなく八十八歳まで生きられただけでも表彰ものだろうと思いますけれども、この高齢者叙勲なんかについては、私は多少弾力的な運用があってしかるべきじゃないか。七十歳でそれに達しない人が八十八歳までの間に達する要件を充足するということは事実上なかなかむずかしいんじゃないかと思うのです。ですから、そういった運用の面でもひとつ弾力的にこの制度の理念を十分に生かしていただくように要望申し上げて、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  296. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で小林正巳君の質疑は終了いたしました。  次に、沖本泰幸君。
  297. 沖本泰幸

    沖本分科員 私は、総理府総務長官に、先般予算委員会の一般質問でも御質問申し上げたのですが、同和問題につきまして問題点をしぼってお伺いしたいと思うわけです。何分関連質問で十分だけやっただけでということで、本日も、特別措置法の期限の延長ということにちなみまして、問題点を投げかけるような意味合いで御質問していきたいと思います。  まず、ある同和団体の月刊誌の中に寄稿されておる東洋大学の学長の磯村英一先生の一文があるわけでございます。非常にその示唆するところが多いのでお読みしてみたいと思います。時間の都合でいろいろな点、はしょりますので……。  「国会審議の焦点」というところで、   衆議院内閣小委員会からの要請で、参考人としての意見を述べる機会をもった。ただ私がいちばん関心をもったのは、いったい国会議員の多数は、同和問題に対して基本的にどのような考えをもっているかについての疑問である。   民間団体によると、衆参両院の議員の大多数は、与野党の所属を問わず、いずれも“強化延長”に賛成の署名をしている。地方自治体の首長達は、県・市・町村等いずれの階層も同じように賛成の要請をしている。しかし国会での審議を見たり聞いたりすると、それは“強化”という面での意見はほとんど触れられずに、同特法の実施によって十年間に“積残された計画・経費”に論議が集中したことである。 あと、間を飛ばします。  「二、付帯条件の課題」という点です。   延長の審議のために“小委員会”がつくられるとなると、たんなる期間延長の決議だけでなく、若干の付帯条件がつけられた。   第一は、同特法の実施にともなう、あまりにもきびしい地方自治体財政への圧迫である。  “特別措置法”という名において、指定された同和地区内で実施する施設・事業について、原則として“三分の二”の国の補助が規定されているのが同特法の根幹である。しかし、同和事業以外の事業についてもいわれるように、国の示す基準単価が、一般の価格とは、大きく違っている現状からすれば、地方自治体は、わずかの――時には五分の一程度にもなる――補助金で、莫大な財政負担をしなければならなくなっている。現に滋賀県内のある町は、町民の約四割が被差別者であり、その要請も強いために、町の財政の七割が同和対策に向けざるをえなくなり、ついに部落・地区外の住民から強い反対を受け、町長自体が辞職にまでおい込まれるという事実がある。   以上のような状態は、同和問題の解決は国の責任だとうたった同和対策審議会の精神に添わないことになる。このような実態は、法の三年間の単純延長という形で解決できるものかどうか、そのような点は、たんなる付帯決議でお茶をにごすことはできないほどきびしい現実である。  「三、三年間の課題」   来年四月に同特法は改めて、三年間の新しい発足をする。しかし、すでに述べたような国会審議の状態からすると、さし迫った“積み残し事業”の処理等に追われて、たちまち終ってしまうのではないかという懸念がある。それにしても、はじめに述べた、市町村財政の窮情に対しては、なんらかの特別の特別の配慮をしないかぎり、同和対策の完遂などはまったく期待することは無理である。しかも、この問題は別としてもこの三年間は、行政がどのようにして、その主体性のある措置をとるかにある。すなわち、   第一に、地域社会に適応した同和対策を実現するために、“政策方針決定”の機関として、改めて地方別に「同和対策審議会」を設けることが考えられる。   同和問題は、あくまで国民的課題でなければならない。そのためには、同和対策の直接の対象となる被差別者の組織だけではなく、いろいろな住民組織や学識経験者を加えて、地域に適当した対策の樹立が必要である。   いわゆる“窓口一本”という状態は、必ずしも一般的なものでないことは、現在“休業中”の総理府の同和対策協議会においても合意を得ている問題である。行政当局の問題認識の甘さが、同和問題を国民全体の目からそらす結果ともなっている。地方審議会を設置して問題を、県民・市民の前に“開かれたる同和対策”として実現すべきである。   同じことがナショナル・センターである中央政府についてもいえる。三年延長にあたっては、行政の“調整機関”である同対協に、特別に“諮問”してその意見を聞いた。本来ならば政府も、審議会を設置してその意見を聞くぐらいの姿勢があってもよかったのではなかろうか。したがって、付帯条件にみられるように、すべての問題を将来に残したことになる。地方審議会の設置が必要であり、地方自治体は、その決定によって、あとは行政の主体性において実施すべきである。   第二は、過去十年間の努力にもかかわらずいまだに国民的課題となっていないことへの反省である。すでに小中学校では、同和問題についての理解を求めるテーマが与えられている。しかし、国民全体としては、もちろん、県民・市民全体としてもその課題とはなっていない。その理由はいろいろあげられるが、この点では行政当局はもちろん、民間の団体にも同じ趣旨で協力を必要とする。その焦点は、簡単な言葉でいうと、同和問題を「だれでも、自由に易しく」話すことができるような姿勢を確立することである。 ほかのところはもう省略させていただきます。  この中に非常に示唆される点があり、今後の課題がずいぶん含められておるというふうにも考えられますし、いわゆる参考人としての意見を述べられ、その後の国会審議経過をごらんになりながらこういう意見をまとめられておられるという点があるわけですけれども、とりあえずこういう問題について、これから三年間の延長という課題の中でいろいろな問題点を消化していかなければならないし、また残された残事業についてどういう形で解決していくか、あるいはこの延長をまたさらにしなければならないか、いろいろな点がこれから示唆されていくわけですけれども、そういう問題を含めまして、総務長官は今後に対してどういうお考えでこの問題の処理に当たっていかれるか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  298. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  同和問題が憲法で保障された基本的人権に関しまする重要な問題であり、国民的な課題であることは申し上げるまでもございません。特に、ただいま御一読願いました磯村先生の御意見につきましては、同和問題の解決の推進をいたします総理府といたしましては、示唆に富むきわめて重要な御意見と受けとめられたわけでございまして、これをひとつ十分参考にさせてもらいまして、将来の行政運営の役に立たせてもらいたいと思うのでございます。  そこで、いま最後にお尋ねになりましたこの延長問題、あのときに御決定を願いました附帯決議等の問題の御指摘があったわけでございまするが、同和対策の問題は、物的な事業とともに啓蒙、一般国民国民的な課題として受けとめていただいて、これを推進していただく体制をつくることが必要であると思うのでございます。そういう二面があるわけでございますが、特に第一の物的事業の問題でございまするが、残事業につきましてもいろいろなデータが新しく、五十年の調査いたしました実態以上に出てまいっておる点もございます。それから同和地区の問題にいたしましても相当追加、増大をしてまいったことも承知をいたしておりまするし、残事業につきましても相当な事業量が増してまいっておることも承知をいたしておりまするが、いずれにいたしましても、これを有効に推進をしてまいりますためには、どうしても実態の把握が必要でございます。したがって、早急にそうした諸般の客観的な情勢を踏まえて実態の把握に努めますとともに、残事業推進、啓蒙活動の具体的な展開について今後取り組んでまいりたい、そういう決意でおるわけでございます。
  299. 沖本泰幸

    沖本分科員 この問題は総理府が中心になって処理をしていかれるわけでありますから、各省にまたがる問題として、非常に、掌握の仕方あるいは連絡のとり方あるいはその諸問題についての協議なり推進、いろいろな点でむずかしい問題は私たちもよく理解はできるわけです。  きょうも法務委員会で法務大臣と人権問題でいろいろお話し合いをしたわけですけれども、物の点は別にして心の問題、これは十年なら十年、あるいはそれが三年間延長された、そういう中で解決できる問題ではないと法務大臣もおっしゃっておられました。これもまたよく理解できるところではあるわけです。しかし、その中で、依然として心の中の差別問題はあるわけですし、法務大臣がおっしゃっているのは、私のところでは大分よくできている、物の点をおっしゃっていたわけですけれども、その辺ではよくできていると見られるところと全然できていないと見られるところ、またこれからこういうところにも差別されている被差別部落があるという点が出てくるかもわかりませんし、全然日の当たっていない問題も今後これからあらわれてくるかもしれない。また同時に、結婚の問題だとか職業の問題だとか、いろいろな点での差別問題が出てくるわけで、単なる部落差別的なもの以外の差別ですね。朝鮮人であるがゆえに、あるいは韓国人であるがゆえに日本名を名のっておった。あるいは自覚によって、自分の本当の名前を堂々と名のって生きていこうとすると、そこからまた問題が起こってくる、こういうことも同じように言えるわけですし、あるいは沖繩と本土との関係の問題。いわゆる基本的人権に対する認識というものが民主主義社会の中でちゃんと通用するような形でいまの日本国内に行き渡っているかというと、まだまだこれもそうでもないという点もいろいろあるわけでございますから、範囲が非常に広いということは言えるわけですけれども、とりあえず一番軸になるのが十年の時限立法で進められた同和対策である。そこから事を起こし、掘り起こして問題を進めていかなければならない、こういうことになってくると思うわけです。  そういう点でたちまち問題になってくるのが、形で出てきたりするのが地名総鑑、こういうことで、完全に差別問題が形という点であらわれてきておる。これは単に啓蒙し啓発していって解決するという問題ではないわけですから、これには厳重なる対応の仕方をしていただかなければならない、こういうことにもなるわけです。ただ、それは法務省の管轄の問題であるということだけでは総理府としては済まされないことにもなりますし、どちらかというと、船で言えばブリッジに当たるところであり、そこからいろいろな動きに対して指示もしていただき、コントロールもしていただいて完全実施ができていくように、またそこから成果が上がっていくような形で問題処理に当たっていただかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。これはもう言わずもがなで、長官は一番お詳しいお立場にいらっしゃり、御経験も十分ですからよくおわかりなんですけれども、重ねて申し上げておきたいということでございます。  そこで、三年延長になった。三年間延びたから気分的にやれやれというふうなことでこれから取っ組んだらいいんだとか、お互いにそんな気持ちが出てこないとは限らない。そこで物という形であらわれてきておる問題、五十四年度の予算の中に特別措置法に関連する同和対策費が各省別にどういう形で盛り込まれておるかということを見てみますと、例年と余り変わりない、むしろ後退しているところもある。きょうは時間がありませんから一つ一つ指摘はいたしませんけれども、こういうものも出ておるわけです。臨時国会でこれが決まって、すぐ通常国会ということで、この延長問題が形の上で各省にあらわれてくるという点は、そこまで手が回らなかったということで、あるいは通例的に在来の予算を組んだ、そこに三年延長なりあるいは三年間で問題解決していこうというふうな意欲が予算面で出ているということにはあらわれなかったということが考えられるかもわかりませんけれども、ともかく一般的に見た場合に、総合的な改正を将来に向かって展望しておる予算であるという点はちょっと言えないものがあるわけですけれども、これは五十四年度予算ですから、この予算案をとらえてみて総務長官はどういうふうなお考えでいらっしゃるか、それを伺っておきたいと思います。
  300. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  最後の御指摘になりました五十四年度の予算において、どうも同和対策事業推進する誠意について疑問を持つぞという御指摘でございました。  御承知のように、本年のわが国の財政状態については申し上げるまでもございませんけれども、同和対策事業の重要性にかんがみまして、ことしの予算は昨年に比較しまして二二・九%、約二三%の上昇をさしておるのでございます。しかし、いま言われますように、残事業なりあるいは全体の啓蒙運動等を見ればもっと組んでもよくはなかったかという御指摘もございましょうけれども政府といたしましては、相当な重点を志向して予算編成をしてまいり、今後とりあえず三年間延長されましたので、その期間にできるだけひとつ精力的に本事業推進を図っていこうといういま構えで進んでおるわけでございます。
  301. 沖本泰幸

    沖本分科員 三年延長という点につきましてはいろいろないきさつがあるわけで、いわゆる残事業の評価の仕方につきましても、政府がお調べになって見積もられた残事業と、あるいは解放同盟なりあるいは市町村の方で詳しく問題を出してきた内容とは大分違う。また五十四年度の内容そのものがその中で見積もられていなかったというようないろいろな経過があるわけですね。ですから、当座、与党の方では二年でいいじゃないかという御議論があって、そこで野党側の方は五年だ、五年以上にしてもらいたいということで沸騰したわけですね。そこで三年延長ということになったわけですけれども、少なくともその中で、やはり三年間で残事業を解消しよう、こういうふうな意気込みが物という形であらわれていなければ、延長していただいたということで、その反面は、実態調査は十分やってみる、その上で検討するという裏づけがないことはないわけですけれども、しかし、見る者をして、そこに将来に向かってどうなんだろうかという心配も出てきますし、これでは困るなという問題もあらわれてくるわけですから、その点も十分考慮していただいて、今年度どうにもならないということであれば、来年度に向かってこれを何らかのたたき台にして議論していただいて、来年度、再来年度の予算の中にこういう問題が十分盛り込まれていくような、見る者をして納得さしていくという内容のものでなければ延長の意味がなくなってきますし、あるいは先ほどの磯村先生のお話しのとおり、変な目でにらんでいないと危ない、こういう御意見が飛び出してくるということにもなりかねないわけです。そういう点について、総務長官のお考えを伺っておきたいと思います。
  302. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  五十四年度の予算面につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、いま御指摘のように、事業推進について強化されたという実態を、事業面においても予算面においても明確に受けとめられるような強力な態勢で進めということでございます。したがいまして、本年は、いろいろ御指摘がございましたように、まずは実態の把握と申しまするか、五十年にやりました状態からその後の県、市町村におきまする要請、また同和の組織から出ております要請等もあるわけでございまするので、彼此検討を加えましてそうした事業の将来の見通し等もつけねばなりません。  なおまた、啓蒙活動は相当期間私ども国民的な課題としてやっていかねばならぬ問題もあると思いまするので、五十四年度におきましては、そういう点を踏まえて積極的にひとつあかしを立てるような努力をしてまいりたいと思うのでございます。
  303. 沖本泰幸

    沖本分科員 それにつきましては、実態調査というものが非常に注目されているわけですね。だから、政府がどういう実態調査を始めていくだろうかということで、在来のような実態調査なんだろうか、これで具体的なものを検討できるだけの内容の実態調査を始められたという点が理解できるような調査をお始めになるかということになると思うのです。結局、四月から開始されるわけですから、そこから取っ組むということになって、それまでじっと様子を見ているということになるかもわかりませんけれども、その辺のスタートを十分、やはり政府は始めたというふうな理解ができるような形で実態調査にお取り組みいただきたい、こういう点でございます。  それから、一番大きな問題になっておったのは、同和事業推進の一番大きなネックである地方自治体の超過負担の問題になるわけで、いまのこの予算案から見ていくと、またまた大きな超過負担という壁に各地方自治体がぶつかってしまうということになるわけです。これは一括していま御質問しているわけで、これについて一つ一つ指摘していかなければならないわけですけれども、また、この超過負担という問題も、自治省の問題もありますでしょうし、大蔵省の問題もあるでしょうし、総務長官お一人のお考えなりお力ですぱっとできる内容でもないということもよく理解はしておりますけれども、やはり中心にお立ちになる総務長官であるわけですから、この超過負担について、今後どういうふうな形で解消に向かって手を打っていかれるか、この点を伺っておいて質問を終わりたいと思います。
  304. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたしますが、二点について御指摘がございました。  第一点は、実態の調査をはっきりやれということでございます。先ほども一申し上げましたように、効果的な事業推進は実態の把握から始まると思います。そういう点で、ひとつ各関係機関と連絡を密にしまして取り組んでまいりたいと思います。  次には、地方公共団体の超過負担、財政が非常な過重な負担をしておるという実態の解明をして、それに対して対処せよということでございます。これも自治省、大蔵省あたりと十分折衝をいたしまして、この問題をどう処置していくかという点について取り組んでまいりたいと思います。
  305. 沖本泰幸

    沖本分科員 この超過負担につきましては、せんだってのいわゆる一般質問の中で加藤自治大臣の内閣員会でのお答えを申し上げたとおりでございます。そういうことで、各自治体がこぞって超過負担の解消ということはもう急務だということを訴えておるわけでございますし、またこの延長という中での一番重大課題でもあるという点がありますし、先ほどの磯村先生のお話の中でも、滋賀県のある町では町の財政の七割までをつぎ込んでしまった、そのためにいろいろな問題が起こって首長をやめなければならない、こういう悲しい事件にまで発展しているということにもなるわけで、これはひとえに超過負担の過重というところから起こっておるわけでございますから、この点を十分御配慮いただいて、本年度期間中に、早い時期に解決できる方向の方途をおつくりいただきたいことをお願いして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  306. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で沖本泰幸君の質疑は終了いたしました。  次に、玉城栄一君。
  307. 玉城栄一

    玉城分科員 私は、青少年の問題と、関連して、ことしは国際児童年でありますし、その点と、もう一点は、昨年行われました沖繩県の交通方法変更の問題、二点についてお伺いをしたいと思います。  第一点の青少年問題についてでございますが、青少年対策本部長をしていらっしゃる大臣の御所見を承りたいことは、青少年の健全な成長、そして育成ということについて、基本的にどのように総務長官は考えておられるのか、その点をまず最初に承りたいと思います。
  308. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  明日の日本と申しますかあるいは世界を担うものは青少年であるということは、私ども申し上げるまでもないわけでございます。したがいまして、総理府といたしましても、青少年問題につきましては、関係省庁と十分連絡をとりながら、これが対処に今日まで処してきたわけでございます。  しかし、いま私どもが心配をいたしておりまするのは、そうした青少年の中に、自殺行為でございまするとかあるいは非行青少年が非常に多くなってきたという事態に対しましては、これは大変な事態であると厳しい受けとめ方をいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、今後とも、青少年みずからがたくましく生き抜いていき、知恵と力を身につけて、社会との連帯感を深めますとともに、家庭の中でも親子の心の交流が行われて対話が絶えず行われていくというような家庭事情等も確立してまいりたい。そういう点で今後とも施策の一層の充実強化に精力的に取り組んでまいりたい、そういう心境であるわけでございます。
  309. 玉城栄一

    玉城分科員 これは昨日だったと思いますが、青少年の自殺問題に関する懇話会が持たれたようでございますが、この懇話会の構成メンバーと、この懇話会の今後の運営の御計画等についてお伺いをしたいと思います。
  310. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 お答えいたします。  この懇話会は十二名の委員から構成されておりまして、心理学関係の方が二人、精神衛生学あるいは精神医学の関係の方が五人、倫理学の関係の方が一人、報道関係の方が一人、学校教育の関係の方が二人、教育学の関係の方が一人というように、各分野の自殺に関連する専門家をもって構成しております。
  311. 三原朝雄

    三原国務大臣 今後の運営につきましては、いま申し上げましたように各専門的な諸先生方で構成する懇話会におきましては、何分、この自殺行為のその原因、それから動機あるいは環境等、きわめて複雑でございます。したがいまして、きのう第一回の懇話会をやったわけでございまするが、そこで私どもといたしましては、拙速はたっとびませんけれども、できるだけ早期にひとつ中身のある結論を出していただきたいというお願いをいたしておるわけでございます。しかし、先生方が、御承知のように学年末であり、大学の入学期等も半数くらいの先生方に関係があるわけでございまして、そういう事情もございましょうが、精力的にひとつお運びを願いたいというお願いを昨日いたしました。  そこで、大体目安といたしましては、三月末ごろから具体的にまた第二回目を取り組んでもらいまして、五、六月ころには五、六回ぐらいの懇話、検討会をしていただいて結論を出していただくような、きのうの話し合いのおおむねの結論でございましたので、それに大きな期待をかけ、これを踏まえて、具体的に施策の方針として打ち立ててみたいと考えておるところでございます。
  312. 玉城栄一

    玉城分科員 いま長官からお話がございましたとおり、次代を担う、未来からの使者と言われる、そういう青少年の自殺の問題あるいは非行の問題が最近非常に社会問題にもなっておりますし、マスコミ等でも取り上げて報道されておるわけですが、こういう現象がやはり世界的現象なのか、特にわが国だけがこういう現象なのか、時間もございませんのでいろいろお話し合いもちょっと無理かと思いますけれども、非常に憂慮すべきことであると思うわけであります。  それで、ちょっとこの問題に関連をいたしまして、ことしは国際児童年であるわけですが、そういうことで新年度予算にもそういう関係予算が計上されて、いろいろな記念行事であるとかあるいは展示会であるとか、中央、地方にかけて御予定をしておられるわけであります。そこで、先ほどのお話にもございましたとおり、特に青少年の非行問題、自殺問題という中で、私は、こういう国際児童年という記念すべき年を迎えているわけでありますので、この問題についてのわが国としての受けとめ方、基本的な点について御説明いただきたいと思います。
  313. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  国際児童年は、御承知のようにいまから二十年前でございますが、児童に対しまする権利宣言が行われて、そして今年、国際児童年として、各国におきまして、積極的に児童のための擁護、福祉増進等に対する国民の理解、そして青年自身のための施設あるいはみずからの具体的な運動等を展開していこうということで進めておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、一つには年中行事的なものを考えております。それは行事といたしましては、大体その年中行事をやるわけでございまするけれども、山を、五月五日の子供の日を中心にする週間、あるいは八月の夏休みを中心にいたしまして、最も盛り上げた一つの行事を愛知県においてやりたい。それから、十一月の記念日を中心にして一つの山をつくりたい。そういう年間の行事を国あるいは地方においても展開をいたしたいということでございます。  それから、相前後しましたけれども一つには、国民自身が児童の福祉のために立ち上がっていただくという啓蒙運動が大事であるわけでございます。この点につきましては、テレビ、ラジオ、新聞等マスコミの方々の全面協力を願って展開をいたしておるわけでございます。そのほか標語でございまするとか、あるいはパンフレットをつくりましたり、あるいはまたキャンペーンのために行動を展開するとか、あるいは外国と子供の交流をするとか、そういう面で行事の実施をいたしておるわけでございます。  しかし、行事だけではいかぬではないかということでございまするので、具体的に母子家庭の施設の強化とか、あるいは子供の体力づくりのための公園、あるいは歩道等の新設でございまするとか、その他、関係省庁においても特に本年度は予算を組んでそうした施設面の強化等お願いをいたしておるような状態でございます。  そのほか、実は私どもが戦後非常に荒廃をして財政的にも困っておりましたときに、世界の国々から非常に温かい子供のための援助を受けました。アメリカあるいはインドから象をいただくとかいうようなことがございまするが、いま日本は経済的に相当伸びてまいっておりまするし、特に恵まれない開発途上国等に対しまする援助をすべきだというようなことで、感謝の気持ちを込めたそうした国際的な児童の交流と申しまするか、なおまた恵まれない開発途上国に対しましては基金の募集でございまするとかいたしたいと考えておりまするし、また、国連のそうしたユニセフを中心といたしまする機関に対しての負担金等も相当大幅なものを負担して協力をいたしておる。そういうようなことでこの国際児童年に取り組んでおるところでございます。
  314. 玉城栄一

    玉城分科員 政府のこの国際児童年に取り組む諸行事等につきましてはただいま長官からお話がございましたけれども、これは御提案でございますが、ぜひ御検討いただきたいと思いますのは、先ほどの青少年の非行化の問題、それから自殺の問題、ただいま長官から、わが国は戦後世界からいろんな形で援助も受けた、これからそういう意味ではまたわが国としてそういう面でも貢献をしていくべきだというお話もあったわけでありますが、私も今回のこの国際児童年の総理府のいろんな予算関係、いろんな諸行事の資料等を見まして、どっちかというと何か大人的な発想と申しますか、そういう感じが一部しないでもないわけです。したがって、本当に青少年、特に児童がそういう若さと申しますか、行動、それをフルに発揮しながら、思う存分そういう記念行事にふさわしいものが持たれてもいいのではないか。  そういう考え方から、沖繩県にも、長官もよく御存じのとおり、国立の海洋博記念公園があるわけですが、やはり太陽、海、自然、空、そういう国立のせっかくのものがあるわけですから、そういうところを一週間とか十日無料で開放するなり、いろんな形で、本土の青少年あるいは世界の青少年グループとのリンクの中でそういう行事が持たれてもむしろいいのではないか。思う存分そういう若い青少年が、それこそ若さ、行動力の発揮できるような形の行事もやはりこういう国際児童年にちなんで検討されていいのではないか、そのようにも考えるわけでありますけれども長官のお考えはいかがでございましょうか。
  315. 三原朝雄

    三原国務大臣 御指摘のように、国民挙げて国際児童年を理解し、やっていただくわけでございますけれども、その中で子供を中心にした、また若さと希望に燃え、はつらつとした行動をとらせるための行事を計画することが必要ではないか。まことにそのとおりだと思うわけでございまして、たとえば愛知県の青少年公園におきまする一カ月間の集中行事等は、主として子供を中心にした行事を盛り込んでおります。中身は、世界と日本の子供の展示会がありますが、そのほかに芸能、音楽等少年みずからがやるわけでございます。そのほかいろいろな施設等も子供を中心にして広い地域に計画を進めておりまするし、それから各県におきましては、私も申し上げることが実は非常に心苦しゅうございますが、これは各県に四百万ばかりの金でございまして、それを継ぎ足してもらいたいということでございまするが、そういうことで、各県はいま申されましたように各県なりに子供を中心にしたそうした行事の展開を願いたい。そういうことで、各青少年関係の、県、民間団体等の組織をもって計画を進めていただいておるのでございます。  沖繩等においては、その海洋博の跡地あたりを利用して、広く他の県から青少年をそこに連れていくというようなこともどうだという御構想、非常にありがたいと思うわけでございまするが、何かそういう点についていま示唆に富むお言葉がございましたので、一層検討を進めてまいりたいと思う次第でございます。
  316. 玉城栄一

    玉城分科員 ぜひ今後の問題として御検討していただきたいと思います。  次に、沖繩県が本土復帰して、それに伴う最大事業一つとして、昨年の七月に国の責任において交通方法が変更をされたわけであります。その後、御案内のとおりに、いろいろ後遺症の問題等も出ておるわけですが、政府とされてもいろいろな角度からそういう問題解決のために努力をしておられるわけであります。  そこで、その中で非常に顕著な問題としてぜひこの機会に申し上げておきたいことは、例の交通方法変更で人と車の流れが全く逆に変わったわけでありますから、特に商店街であるとかあるいはサービス業関係の方々が非常に著しい営業の損失を受けておるわけであります。この問題につきましてはこれまでも国会の中でも議論がされてまいったわけでありますが、なかなか前進をしない状態にいま置かれておるわけであります。  そこでお伺いしたいことは、沖繩県の方で交通方法変更後、それが原因で著しい営業の損失を受けている、そういう実態等について現在調査をし、それが近くまとまるやに聞いておるわけでありますが、そのことを御存じであるのかどうか、それからお伺いをいたします。
  317. 三島孟

    ○三島政府委員 ただいまお話しの、沖繩県でいわゆる影響等の実態調査をおやりになっておることは、私ども十分承知しております。
  318. 玉城栄一

    玉城分科員 その件は御存じだということでございますが、そのことをどのように受けとめておられるのか、それをお伺いいたします。
  319. 三島孟

    ○三島政府委員 私どもも、交通方法変更後も、交通方法変更対策本部もそのまま存置しておりますし、私どもの駐在官もそのまま現地に置きまして、その後のいろいろな実態の把握に極力努めてまいっておるわけでございますけれども沖繩県の方で先ほどお話しの実態調査をおやりになり、それが大体三月ごろまとまるということをお聞きしておりますので、その実態調査がまとまり、それに基づいて御要望が私どもの方に提出された段階で、私どもの実態把握の参考にさしていただいて検討させていただく、こういうふうに考えております。
  320. 玉城栄一

    玉城分科員 地元の沖繩県が実態調査をし、それが国の方に上がってきたときに参考にされて検討していきたい、このようなことでありますが、ぜひそのことを、これまでの経過等よく御案内のとおりでありますので、御検討をしていただきたい、このことを強く御要請しておくわけであります。  そこで、実はそういう営業上著しい損失をこうむった方々に対しては特別な融資制度ができておるわけであります。そこで、その融資制度についてのこれまた地元の県の方からこういう要請政府の方にも参っていると思いますが、  まず一点は「特別融資制度の存続期間の延期について」「県においては、この制度が創設されたことについて、市町村を通じ県民への周知を図ってきましたが、県が実施した交通方法変更に伴う営業損失調査によれば、この制度のあることを知らず、またそれを知って融資を受けたいとする者が多数おります。したがって、制度の存続期間を相当期間延長する必要があります。」  二番目は「融資条件の緩和について」「県民の中には、特別融資について、現行利率の引下げ、償還期限等の延長はもとより、担保や保証人の選定についても条件を緩和すべきとの声があります。融資する以上、金融機関の措置としてやむを得ない面のあることは承知いたしていますが、特別融資制度の趣旨にかんがみ、融資条件の緩和及び担保等についての弾力的運用を図る必要があります。」  そういうことで特別融資制度の存続期間の延長と融資条件の緩和の問題について要請が参っておると承知をしておるわけであります。このことについてどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。
  321. 亀谷禮次

    ○亀谷政府委員 ただいまお尋ねの、交通方法の変更にかかわります特別融資の期限の延長並びに条件の緩和についてでございますが、先生ただいま御指摘のように、最近になりまして沖繩県から私どものところに、これらの諸案件についての配慮方の要請が出てまいっておることは御指摘のとおりでございます。ただ、内容につきましては、先生もよく御案内のとおり、実は昨年の七月の交通変更の行われましたときから、これらの問題に関連しましたいわゆる必要なケースとしての事業の転換あるいは設備の更新等、これらの必要を申し出られた方につきまして、御案内のように金利五%、償還期限十年、据え置き三年、しかも中小企業及び生業資金の別枠、こういったことで、私どもとしては他の類似のと申しますか、沖繩においては、先生御案内のように、特に本土と違いまして制度的に低金利を含めて特別措置をとっておるわけでございますが、その中でも特別枠ということで、昨年の変更前から発足した制度でございます。  当時いろいろと考えておったわけでございますが、本来の趣旨にかんがみまして、当面、今年度末を目途にできるだけ御相談に応じようということで実施してまいりました。これまでに融資の相談件数が四十一件、すでに決定件数は九件、調査中のものが三十二件ございますが、私ども、年が変わりましてから、一応三月末の期限がありますので、県あるいは金融機関である公庫、それから関係機関である交対室あるいは現地出先、こういうものを通じまして、新聞等を通じまして数次にわたりまして県民への御周知方を呼びかけましたし、いろんな方法でこれまで周知の徹底を図ってまいったのでございますが、なおまだ、ただいまお話もございましたように、期限が三月末でございますので一カ月余あるわけでございます。私どもとしてはなお今後さらに特段の周知方について意を用い、県民にPR等も積極的にいたしたい、こう存じておりますし、かつまたいろいろとそれにかかわる個人あるいは法人の方々も、融資を申し込まれるについてはいろいろ御本人のお立場もあるし、御検討もいろいろあろうかと思いますが、とにもかくにも三月末を目途にいわゆる融資事案としてお申し込みさえいただければ、自後、実質的な内容審査等は四月に入りましてもできるだけ円滑にこれを処理したい、こういうことを考えております。  なお、条件の問題でございますが、先ほども若干触れさせていただきましたように、沖繩についての現行の諸制度から見まして、必ずしも類似とは言えませんが、基地周辺の円高対策あるいはその他万般の制度から見まして、私が先ほど申し上げましたように、現行法の諸制度の中で金利あるいは償還期限、別枠融資額等格段の措置をとらせていただいているものと考えておりますので、この面についての条件改定ということは非常にむずかしい、困難である、こういうふうにお答えをさせていただきたいと思っております。
  322. 玉城栄一

    玉城分科員 最後に、この問題で、長官、これは本来は、国が行った事業でありますのでその実態調査もぜひ国でやっていただくべきではないかという考え方があったのですが、これはやはり県の方がまず最初やるべきだということで、その実態調査をいま進めているわけです。その実態調査を進める中で、具体的にぜひ融資でも受けて何とか挽回していきたいという方々がいま出始めているわけです。ですから、先ほど制度のPR等についてはなされてきたというお話があったわけですけれども、実際に県が実態調査をした現時点においてそういう方々が出始めているので、当面来月でこれが打ち切られると、せっかく交変に伴う特別融資制度をつくった、しかし期限切れでアウトになる、これはちょっとそういう関係者に対しても非常に気の毒だから、それは来月いっぱいでほぼ満足な状態に終われば結構だと思うのですけれども、県の判断としては、それはもう少し延ばしてもらいたい、こういう要請が先ほど読み上げたとおり来ておるわけでありますので、その点はぜひ御考慮を、当然、その時点で御判断されて結構だと思いますが、していただく必要があるのではないか、このように思うわけですが、長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  323. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  いま政府委員からお答えいたしましたが、あと残期間が一カ月ございますという事態現状において、私どもの方で延期をするぞという声を出しますればまた事務的な処置もおくれてくるというおそれがありますので、先ほど政府委員から申しましたように、四月にかかりましてもやらねばなりますまいということも率直に答えたわけでございまするが、現時点におきましては、精力的にひとつ残された一カ月間を有効に、手続等、また希望者に対する趣旨徹底等もやらしていただいて事務を運ばせてもらう、その時点に立っていまの御意見も十分受けとめながら対処してまいりたい、こう考えておるところでございます。
  324. 玉城栄一

    玉城分科員 以上でございます。
  325. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で玉城栄一君の質疑は終了いたしました。  次に、安田純治君。
  326. 安田純治

    安田分科員 本日、私は、特定不況産業安定臨時措置法、いわゆる特安法の運用問題に関連いたしまして、企業合併問題について若干の点でお伺いしたいと思うわけです。  まず、特安法第三条五項では、政府が安定基本計画を作成するに当たっては「労働者の雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定について、十分な考慮が払われたものでなければならない。」と規定しておるわけであります。この意味は、労働者及び関連中小企業者の実情を事前に十分把握し、設備の処理などの措置が行われれば労働者や中小企業にどのような影響を与えるかを十分考慮して計画内容を定めるべきであるということだと思いますけれども、通産省の解釈もこれに相違ないでしょうか。まず確認の意味でお答え願いたいと思います。
  327. 榎元宏明

    ○榎元説明員 第三条第五項の解釈ということでございますが、ただいま先生がおっしゃいましたような趣旨で私どもも考えております。ただ、一つコメントさせていただきたいと思っておりますことは、安定基本計画策定の段階におきましては、個々の具体的な事業所でどの設備をどれほど処理をするかということはまだ決まっていないわけでございます。そういう意味で、この段階での配慮あるいは考慮と申しますのは、その事業の全体の観点からどれほど設備処理をするか、あるいはいつやるか、さらにはどのような方法で実施するかといったような観点で考慮するということになるのであろうというふうに考えておるところでございます。
  328. 安田純治

    安田分科員 確かに、個々の企業についてどういうことをやるかというところまでは安定基本計画では言わないとしても、しかしながら、関連中小企業者の実情を事前に十分把握しなければ影響に配慮することはできないはずであります。全体的なその業種の過剰設備なり何なり、この廃棄の量を決めると労働者として何人くらい浮くかというようなことは、マクロの立場で計算できるかもしれませんけれども、関連中小企業の経営の安定となりますと、そう簡単にマクロの立場から言えないのではなかろうか。関連企業と言えば、原材料の運搬業もあれば、それから中間製品のいろいろな副産物的なものや、そういうものをお互いに供給し合う関連企業もある。いろいろな関連企業がございまして、単に生産設備のどのくらいを廃棄すれば、それは労働者の場合ですと一人頭どのくらいの生産量というようなことは大まかにはつかめますけれども、関連中小企業の実情を把握するとなるとそう簡単にはいかないと思うのです。ですから、この点でのこの条文の法意はどうなっているのでしょうか、これをお伺いしたいのですよ。マクロの立場で関連中小企業の影響を考慮するということができますか。
  329. 榎元宏明

    ○榎元説明員 先生のおっしゃっている実情は私どもも理解できるわけでございますけれども、抽象的に申しますと、設備の処理などが関連中小企業に、たとえば急激かつ大量に困難な影響を与えるか与えないかといったようなことで考えていくということになろうかと思います。  ただ、実際の運用といたしましては、安定基本計画の一つ一つの計画の中で、個別の事業者に対して関連中小企業者に対する配慮ということを一項設けまして、事業者に対する責務を課している、こういうことでございます。
  330. 安田純治

    安田分科員 政府はことしの一月に、尿素、アンモニア及び湿式燐酸について特安法に基づく安定基本計画を作成して告示されました。この計画が実行される上で、三菱グループの日本化成と鹿島アンモニアをどうするかが一つの焦点になっているといわれておるわけです。福島県いわき市の日本化成小名浜工場が、三菱銀行などの方針によって、茨城県にある鹿島アンモニアと合併されようとしている問題がいわき市民の大きな関心事となっておるわけでありますけれども、通産省の担当課に確かめましたところが、日本化成か鹿島アンモニアか、どちらか一方が廃棄されるとのことであります。この安定基本計画作成に当たって、冒頭に確認しました第三条五項に基づいて日本化成小名浜工場が廃止になればどんな影響を与えるか、調査されましたか。
  331. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 お答えいたします。  いま先生お話しになりました日本化成と鹿島アンモニアの合併問題につきましては、実は、これまで企業の三菱グループの方で検討を重ねてまいっておりますが、合併をするか、どういうふうにするかという点についてもまだ明らかにはなっていないようでございます。私どもの方といたしましても、現在まで地元から、小名浜工場の方でございますが、幾たびもこの存置に関していろいろ御要望、御相談を受けておりまして、その際、地元から、小名浜工場のアンモニア設備を処理した場合の影響等についてもいろいろ伺っております。そういうことでございますが、現在の段階では、日本化成と鹿島アンモニアの合併の仕方あるいはその方針さえも、関係企業においてすら明らかにされていない状況でございますので、具体的な影響がどのように出るか、この関係企業においても、影響を与える部分がどこになるかというようなことについてもまだ十分明らかになっておりませんので、この件等についてのめどがある程度明らかになるまで見守っていきたいと存じております。
  332. 安田純治

    安田分科員 だから私は冒頭にお伺いしたのですが、この法律の規定あるいは安定基本計画それ自体にも、関連事業に対する影響といいますか、これを配慮するということになっているわけですが、先ほど申しましたように、非常に多種多様にわたる業種が実際は関連企業として個々の企業にくっついているわけです。ですから、マクロの立場で影響あると簡単に測定できないので、せいぜい、いま榎元さんですか、お答えになったように、余り急激にやるとうまくないのじゃないかという程度の配慮しか実際問題としてできないのじゃないか。だから、経営の安定に対する影響を配慮するなどという言葉を使っておりますけれども、実際はその程度の配慮しかできないのじゃないか。つまり、そういうふうに法律もなっておるから決まり文句としてくっつけておるようなもので、本当に本気になって細かいところまで調べられないのじゃないかということが一つあるわけです。  それと同時に、いまのお答えでは関係企業内で細かいことが決まっていない。だから私どもはむしろ事前に実情を把握する必要があるのじゃないか。決まってしまってからでは遅いじゃないですか。とにかく今度の安定基本計画によって設備の廃棄何万トンが決まっているわけですね。大体じゃなくてちゃんと決まっているわけです。それが、鹿島アンモニアか小名浜の日本化成か、どっちかを廃棄するということにどうやらなりそうだ。なれば、企業が具体的に細かい中身まで決めてしまってから、それじゃ影響はどうなんだということになってくるのでは遅いのであって、事前に、たとえば鹿島の方が廃棄になった場合はどういう影響がある、小名浜の場合はどういう影響がある。一方だけ調べれば、いかにもそれは通産当局がこっちをつぶせと言わんばかりのことになりますので、それはできないと思います。しかし、両方平等に調べてみるということくらいは事前におやりになってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。決まってしまってからでは遅いじゃないですか。
  333. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 お答えします。  先生御指摘のとおりの問題がございますが、確かにどちらか一方だけ聞けば通産省が何か指示をしておるようであるというお話でございますが、実はそれぞれに聞きましても、それぞれまた地元の不安というものが非常に大きくなる問題ではないかと存じております。またもう一つは、先ほど御説明申し上げましたように、企業自体がいまの段階ではどういうふうにしようかというのが、必ずしもまだ方針すら明らかになっていないということでございますから、この問題につきましては、実際に設備の処理の問題を企業として考えるような事態になるにしても、まだそれぞれ企業として地元へのことも考えまして対処しなければならない問題を含めて検討する部分がございまして、それが出ませんとまた影響なども明らかになってこないのではないかと存じております。実は、先生御指摘のような問題につきましても、私ども、雇用、それから関連企業、関連中小企業者という問題につきましての、この構造改善事業によります影響については、安定基本計画におきましても十分それが配慮されるようにということを明らかにしておりますし、これまで業界の対応ぶりもそういう点については十分配慮したやり方を、すでに休止しているプラント等についても行われているという点については、今後とも同じような慎重な対応が期待されるわけでございます。また、私どもといたしまして、そういう問題が起きないよう十分配慮を払うように指導してまいりたいと存じております。
  334. 安田純治

    安田分科員 この問題だけ言っていると時間がなくなってしまいますけれども、そういう個々の企業の配慮といいますか、これをしろと言うだけでは、安定基本計画を決め、共同行為の指示をした通産省としての責任はどうも免れないのじゃないか。つまり、配慮しなさいよと言って個々の企業に全くげたを預けてしまうというのでは困るので、それは実際に実行するのは個々の企業かもしれませんけれども、少なくとも、安定基本計画を決め共同行為の指示をする通産省としては、やはりそれなりのいろいろなパターンを考えておかなければならないのじゃないか。それで十分調査をして、事前にも対応でき、途中においてもいろいろ指導できる材料を十分握っていなければならないのじゃないかというふうに思うわけであります。それで決まってしまってから、先ほど言いますようにいろいろやった場合、じゃこれは決まったことを通産省の指導で全く覆すことが可能なのかどうかということも実際問題としては出てきます。  それから、いまのお話ですと、アンモニア、尿素の設備廃棄については、鹿島も小名浜も両方とも廃棄しないこともあり得るという通産の立場なのかどうか、この点もちょっと確かめておきたいのですが、どうですか。その分だけちょっと。
  335. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 お答えします。  通産省といたしましては、三菱グループに対しまして、合併を進めろ、あるいは合併をするな、あるいはどちらかの工場を処理しろというような指示は一切いたしておりません。それから、いままでのところでは、企業の方では合併をするということで、その際には一方の設備を、一応いずれかを存置するという形で考えているというふうに承っております。
  336. 安田純治

    安田分科員 ちょっとその、企業はというのはどの企業を指しますか。
  337. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 いまこの合併の問題につきましては合併準備員会というのが持たれておりまして、これはまず日本化成の方の親会社に当たります三菱化成それから三菱商事、それから鹿島アンモニアの方につきましては三菱レイヨンと三菱油化、それと三菱銀行の五社が委員会をつくって検討しておるというふうに伺っております。
  338. 安田純治

    安田分科員 そうするといまの、企業がというのはその五社を指しているわけですね。日本化成それ自体を指してはいない。
  339. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 現在、合併について検討しておりますのはこの五社でございます。
  340. 安田純治

    安田分科員 次に、立地公害局に伺いますけれども、福島県いわき市小名浜地域は、工業再配置法その他でどういう地域として指定されているのか。また、その中で、小名浜コンビナートの中で日本化成はどういう役割りを果たしている企業か、明らかにしていただきたいと思います。
  341. 河野権一郎

    ○河野説明員 お答えいたします。  いわき市がどのような地域開発法の指定を受けているかという御質問でございますが、いわき市は三つの地域開発法による指定を受けているわけでございます。まず第一に、昭和三十七年に、産炭地域振興臨時措置法に基づきまして産炭地域として指定を受けております。第二に、昭和三十九年に、新産業都市建設促進法に基づきまして、いわき市を中心とするいわき市を含む地域一帯が新産業都市として指定を受けております。それから第三には、昭和四十七年に、工業再配置促進法の成立によりまして、同法に基づく誘導地域として指定を受けております。
  342. 安田純治

    安田分科員 この地域は、いまおっしゃるような三つの指定のほかに、山村振興法による振興山村地域にも指定されておるようでありますが、このようにして、この地域は特別に幾つかの指定を受けておるわけであります。いまお答えありませんでしたけれども、そういう中での小名浜コンビナートの日本化成の役割りも非常に重要な中核的役割りだと思います。  また、小名浜港は重要港湾であって、昭和五十一年から五十五年まで、港湾整備五カ年計画が三百億円の事業規模で実施中であります。さらに、工業用水道事業も国の補助を受けて進められております。こうして国、県、市が多額の公共投資を行ってきた結果、化学工業では一定の成果を上げてきた、こういうふうに言われております。  それから、日本化成小名浜工場の役割りですけれども、この地域は肥料化学コンビナートの中核企業である。まだ富士興産が出てきておりませんので、油の方の関係のコンビナートがまだ完成しておりませんが、肥料化学コンビナートとしての中核企業である。このような企業を廃棄することはコンビナートのメリットを失うことになる。それから関連する企業の存続にも波及する。港湾管理者、工業用水道事業にも大きな影響を与えます。  しかも、いま申し上げたように、この地域は特別な指定をたくさんされておる。運輸省の担当官も、法律上権限はないけれども困ったことだというように話しております。通産省内でも、立地公害局の立場は基礎産業局とはどうも異なっているように感ぜられるわけであります。政府の政策の上から見ても、この小名浜の日本化成をもし廃棄するとすれば明らかにこれは歓迎できない事態だ、そういう状態だと思うのです。しかも、日本化成小名浜工場のアンモニア部門は、企業採算としても赤字ではないと私は聞いております。二十万に及ぶ市民が、これは人口の七割、ほとんど有権者全員ですが、存続を求めて署名をしておるようであります。要するに、日本化成小名浜工場の廃棄は、社会的にも経済的にも合理性に欠けるものだと言わざるを得ないわけであります。  実はこの種の大企業の減量経営問題について、私は昨年九月二十七日に衆議院の商工委員会で通産省の態度をただしております。当時河本通産大臣はこう答弁されております。「地域社会上非常に大きな影響があるのでこれは何とかならないかというような相談を地域社会の責任者から受けました場合には、その企業の責任者を呼びまして、」「何とか配慮するようにもう一回研究しなさい、こういう注意をすることもたびたびございます。」「地域社会から相談があれば通産省としても意見を申し述べることがあります。」こういうふうに答弁されております。これは江崎通産大臣も、公私を通じて最大の努力をするということを市長の陳情の際に約束されたわけでありますが、この点について再検討する、指導する、立ち入った指導、こういうものを実行されるべきだと思いますが、まず通産当局からの答弁を求めます。
  343. 河野権一郎

    ○河野説明員 先生御指摘のように、日本化成が小名浜のコンビナートにおいて非常に中核的な役割りを持つ企業であるというのはそのとおりであるというふうに考えております。先ほど肥料課長からも御説明いたしましたように、まだ企業としての方針が決まってないようでございますけれども、私どもといたしましては、企業が方針を決定するに際しまして、できるだけ地域経済に対する影響、それから雇用に対する影響その他についても十分慎重に配慮をして決定がなされることが望ましいというふうに考えております。こういう点で、私どもとしましても、通産省内部でも基礎産業局とも十分連携をとりつつ、できるだけそういう方向で企業の指導をしてまいりたいと思います。
  344. 安田純治

    安田分科員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。  次に、公正取引委員会にお聞きいたします。  特安法に基づいて安定基本計画及び設備廃棄などの共同行為の指示がなされた場合に、設備の処理の方法として企業の合併が行われるケースがあり得るわけであります。特安法では、企業合併をも独禁法の適用除外としているのかどうか、それとも企業合併は独禁法の適用除外としないのか。これは一般論として念のために伺っておきたいと思います。
  345. 橋口收

    ○橋口政府委員 特安法の規定によりまして、計画が行われ、指示カルテルを発動いたしました場合におきまして、その結果として会社の合併等が行われます場合に独禁法の例外規定があるかということでございますが、これはございません。
  346. 安田純治

    安田分科員 これも一般論として聞くのですが、合併の計画が進行する過程において独禁法に違反する疑いが認められた場合、合併の届け出が行われる以前であっても当然しかるべき指導がなされるべきであると思いますが、この点はどうですか。
  347. 橋口收

    ○橋口政府委員 独禁法第十五条には合併の制限に関する規定がございます。この規定は、合併によって一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合と、当該合併が不公正な取引方法による場合、この二つの場合には合併を絶対的にしてはいけないという禁止の規定でございます。  いまお話しの件は、恐らくは合併の過程におきまして不公正な取引方法が行われる場合に事前に指導ができるかということでございますが、これは不公正な取引方法が行われているということが明瞭であれば事前の指導も可能だと思います。
  348. 安田純治

    安田分科員 そこで、具体的ケースについてお聞きしたいと思います。  いま日本化成と鹿島アンモニアの合併が検討されているわけでありますが、この合併の過程に私は問題があると考えるものであります。  まず第一に、この両社の合併の検討会議が、先ほども御答弁がありましたように、当事者を除いて、つまり合併する会社を除いていわゆる五社、三菱銀行、三菱商事、三菱レイヨン、三菱油化、三菱化成、この五社によって検討されておるわけであります。ここでの結論によって両社の合併が強制されるわけであります。日本化成株式会社も資本金三十九億円、証券取引所上場の企業であります。従業員は九百名、三菱化成という系列、上の方ですが、出資率が三七%であるようです。一般的に言って、いかに系列会社のこととはいえ、企業合併という重大問題を事実上決定するに当たって、当該企業を除外した場において行うという姿は正常ではない、不適切だというふうに考えますけれども、こういう状況で企業合併が決められるケースは、実はわが国の現状では決して珍しくないというふうに思います。  この点について、公取委員長は公正な姿だと考えられるかどうか。つまり、合併する当事者の企業そのものを除いて、系列の上の方だけで事実上決めてしまう。法律上の合併はもちろん当事者を入れなければなりませんけれども、そういう軌道をきちっと敷いて、系列ですから有無を言わせずやらせるというようなことがどうもあるようですが、この点、公取委員長の御見解を伺いたいと思います。
  349. 橋口收

    ○橋口政府委員 親会社を含む合併準備員会あるいは合併検討員会で合併を論議し、合併した方が適当だという結論に到達したこと自体は独禁法上問題はないと思います。
  350. 安田純治

    安田分科員 親会社を含むではなくて、当事者の会社、合併する会社を除いて、おのおのの上部の系列の会社だけで相談をして事実上の軌道を敷いてしまうというやり方は、不公正な取引とまではその段階では言わなくても、正常な姿だと言えるかどうかということです。
  351. 橋口收

    ○橋口政府委員 全く関係のない第三者だけで相談をいたしましても合併を推進する材料にはならないと思います。したがいまして、問題は、融資関係があるとか、あるいは株式の関係で親子の関係があるとか、そういう上位機関と申しますか上部機構と申しますか、そういうものが話し合いをすること自体がどういう法律上の問題があるかということでございますが、それ自体では問題はないというふうに思います。
  352. 安田純治

    安田分科員 ところが、実際そこで決まってしまうとほとんど軌道が敷かれて、いま言ったような融資関係あるいは株式の支配関係から見て、有無を言わせず当該法人にとっては不利益な合併でも実際上強制される。強制されるシステムはいろいろあると思うのです。そういうことで、どうも問題は全くないとは言えない。あるいは少なくともそれ自体が独禁法に直接触れなくても、それから派生してくるいろいろな強制方法や大株主に対する誘引、こういう問題の出発点になりやすいということは言えるのではないかというふうに思います。  日本化成と鹿島アンモニアの合併問題の直接の引き金は、日東化学の赤字をどう処理するかというところから生じているようであります。日東化学の大幅赤字というのは、日東化学に四九・五%を出資している三菱レイヨンの足かせでもあります。そこで、私ども調べてみますと、三菱銀行と三菱レイヨンがたくらんだのは、日東化学の肥料部門を切り離すということであります。そのためには鹿島アンモニアを日本化成に管理させる、つまり、収支状況の比較的いい日本化成に鹿島アンモニア、日東化学の肥料部門になりますが、これを統括させるというプランであると言わざるを得ないと思う。その際、鹿島アンモニアは昭和四十三年設立、日本化成は昭和十二年設立ということで、残存簿価、設備投資の未償却部分の多い鹿島アンモニアの方を残すというのはまた三菱銀行にとってもどうも利益だという筋書きであると思うのですね。一言で言って、日本化成はいい迷惑というようなものであります。日本化成の社長も、日本化成にとって大きな不利益となる合併には反対だ、こういうことを意思表明しております。つまり、資産、債務の処理の仕方がどうなるか。また、小名浜の日本化成は西工場と東工場がございますけれども、西工場がアンモニア、尿素の工場でございますが、これをつぶした場合に、稼働している東工場の、いろいろな原料をお互い供給したりスチームのやり取りがされたりしておりますが、こういうものの将来にわたる安定操業をどう保障するのか。つまりは東工場もつぶれちゃうのじゃないかという心配がある。東工場に原材料を供給しておる西工場をつぶした場合に、それにかわる原材料の調達がコストアップになるようでは大きな不利益だ、こういうような意味のことを日本化成の社長は言われているわけであります。しかし、日本化成を除外した五社社長会で、どの辺まで煮詰まっているかわかりませんけれども、いま決定が下されようとしているわけでして、これは明らかに不利益の強制あるいはそのおそれが多分にあると言わざるを得ないと私は思うのです。  先ほどの公取委員長のお話ですと、そういういわば系列の上部の方で、いわばグループ内でいろいろ話し合うのは、それ自体不公正取引、独禁法の問題じゃないようなことを言われますけれども、では、グループ内でやることは何をやってもいいのかということになります。もしそう認めるとすれば、かつての財閥、コンツェルンの復活をある意味で公取委は容認するということになります。グループといっても、緩いグループといいますか、一枚岩ではない。したがってグループ内でも利害の対立があり得る。そういうグループ化というのはある程度現実に存在しますし、それ自体直ちに独禁法違反とは言えないかもしれませんけれども、これはグループ内であればどんなことをしても許されるというのであったら、もう独禁法はほとんど意味がない。財閥が復活するのじゃないかというふうに思いますし、そうじゃなくて緩いグループだと、場合によっては系列内お互い同士でも対立があり得る。いま挙げました三菱化成とか三菱レイヨン、おのおの縦の系列になってきますと何本かの柱になっておりまして、そのお互いの一つの縦の系列同士も多少利害が矛盾しているところがあるようです。ただし、上の三菱銀行までいきますと、これは銀行の中ではいま言ったように残存簿価が残っているところを残そうとか、いろいろな面では利益が統一しますけれども、それからずっと流れてくる系列はグループといえども多少利害の対立があり得ると思うのです。  そういう意味で、公取委員長がいま言われたような、いわばグループといいますか、系列化内で話し合っている段階では独禁法の問題にならぬというお考えも、どうもそう言ってしまうとちょっと問題があるのじゃないか。これは独禁法の問題になる場合もあるし、ならない場合もあるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  353. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほど申し上げましたように、いまの問題は親子関係のある会社について親会社同士で相談をするというケースでございますから、いまおっしゃいましたように、全く関係のない会社についてグループの中でいわば欠席裁判をするというようなことが適当かと申しますと、これは必ずしも適当とは言えないと思います。  ただ、問題は、そうやって行いました意思決定なりあるいは合意というものをどの程度強制できるかという問題が残っておりますから、強制できないということになりますと、これは独禁法上問題になりにくい。ただいまのケースは、繰り返し申し上げておりますように、親子の関係があるものについて親会社同士で相談するということにつきましては、これはどう考えましても法律上問題になりにくいということを申し上げているわけであります。
  354. 安田純治

    安田分科員 時間が来ましたので、私の質問としては最終的な結論を出さなくちゃなりませんけれども、親会社と言っても、系列がいま言ったように三菱レイヨンの系列、それから三菱油化の系列、三菱化成の系列と言ったって、三菱化成と三菱レイヨンと必ずしも一致しない。しかも片一方、鹿島アンモニアの大株主は三菱化成ですか、こういうぐあいになっておる。それから日東化学の上で三菱レイヨンになっている。こういう場合、お互い同士直接いわば対角線の関係はないのですね。つまり三菱レイヨンが日本化成の大株主ではないわけです。三菱化成が大株主。また一方、三菱化成の方は鹿島アンモニアの大株主ではないわけです。それですから、結局親会社同士の話し合いといっても、そういう意味でお互いに大株主同士がいろいろ話し合う、しかも利害がある程度対立するから、お互いにいわばその上に三菱銀行があって、そして債権の確保その他のことで、融資あるいは持ち株のいろいろな関連関係、それで不利益を強制するということになれば独禁法上問題があると思うんで、そういうことがあるかどうかを調べなければわかりませんことですが、調査をして、事前にもし不公正取引があるとすれば排除を指導すべきであると思いますが、最後にその点だけ伺って質問を終わりたいと思います。
  355. 橋口收

    ○橋口政府委員 これは三菱油化と鹿島アンモニア、三菱レイヨンと日東化学、それから三菱化成と日本化成、こういう関係でございますから、先生のおっしゃいましたようなたすきがけになっておりますとむしろ問題があるのではないかと私は思うわけでございます。単純な親子の関係で、しかも親同士で相談するということでございますから、比較的問題が少ないのではないかということを申し上げたわけでございます。ただ、私ども、新聞情報以上の情報を持っておりませんから、よく情報を集めてみたいというふうに考えております。
  356. 安田純治

    安田分科員 よろしくお願いいたします。では、終わります。
  357. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で安田純治君の質疑は終了いたしました。  次に、草野威君。
  358. 草野威

    草野分科員 私は、交通遺児の問題について何点か御質問をいたします。  現在、私の手元に交通遺児の関係の諸団体の方方から、交通遺児家庭の職業、教育保障、医療、こういうものに関する要望書をいただいております。この要望書は政府の方にも提出されているわけでございますけれども、これによりますと、全国の十二万交通遺児は、長い不況、インフレのために非常に生活が困難である。また、この十二万の交通遺児の九割が父を失った母子家庭である。生活がきわめて苦しい。また、遺児たちは貧しいために高校や大学の進学を希望してもそれをあきらめる場合が多い。また、お母さんたちは三人に一人は病気で悩まされていたり、病気になっても医者にかかれない人たちが二割もいる。このような貧困、それから進学の困難、それから健康の破壊、こういう問題に対する最大の原因は、お母さんたちの職場が非常に不安定な身分で、きわめて低い賃金しかもらえない。したがって、お母さんたちを安定した職場につかせることが救済の基本である、このように訴えているわけでございます。この要望書には五項目の問題が訴えられておりますけれども国会にもこの要望は毎年出されております。  私も、昨年、また一昨年の暮れに交通遺児の全国大会に出席をさしていただきました。そこで交通遺児やまたお母さんたちの訴えを聞いておりました。非常に胸を締めつけられるような、そういう思いもしたわけでございます。私がきょうこの分科会におきましてこの遺児の問題を取り上げたということは、何とかしてこの交通遺児たちの願いを体して国としても報いてあげてもらいたい、このような気持ちできようはこの問題を取り上げさしていただいたわけでございます。そこで、私はきょう何点か伺いまして、最後に長官見解を賜りたいと思います。  まず第一番に、母子家庭の母親の雇用促進に関する問題でございます。この問題につきましては、昭和五十年以来国会法案提出されておりますし、全野党、また自民党も非常に理解ある態度を示しているわけでございます。しかしながら、いまだにこの法案成立をしない。現在、今国会で最大の課題の一つである雇用の問題がございますけれども、この雇用創出の問題から考えても、この母子家庭の母親の職場を確保するということは非常に重大な課題ではなかろうかと私は思います。そういう意味におきまして、この要望書の中に出ているように、官公庁、公的機関、民間会社などに一定の法定雇用率を定めてその枠内で母親の就職を保障する、こういう内容に対しまして、ぜひとも今国会においてこの法案成立を図っていただきたい、このように考える次第でございますが、いかがでございましょうか。
  359. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 就職を希望する寡婦などにつきましては、労働省としましては従来からきめ細かな職業指導、職業紹介に努めますとともに、雇用奨励金制度あるいは職業訓練手当制度あるいは寡婦を専門に担当いたします職業相談員を新たに職安に配置するといったような施策を通じて雇用促進に努めてきたところでございます。  そこで、雇用率を中心とする寡婦の雇用促進法、母子家庭の母親の雇用促進法についてどう考えるかということでございますが、こういう寡婦の方々の就業上の問題点は、就業率が低いというわけでは決してないわけでございまして、雇用の場は一応あるけれども、賃金が低いとかその他労働条件が問題があるというような状況でございまして、その理由としましては、子供の保育に手間がかかるとか、あるいは職業経験、職業能力が乏しいから労働条件のいいところに行けないとか、そういう問題があるわけでございます。そういう意味で、基本的には、条件を整備するために保育所の整備に努めるとか、職業訓練とか職業講習等により技能の習得を図って障害を除いていくというようなことが、より実情に沿った対策ではないかと考えているところでございます。  なお、雇用率制度によって寡婦の雇用を義務づけることにつきましては、こういう実情からしましても、また立法技術的な問題も多いので慎重に検討を続ける必要がある、こういうふうに考えております。
  360. 草野威

    草野分科員 大体毎年同じような御答弁しかいただけないわけでございます。  大臣に伺いますけれども、この問題につきまして、この中にも出ておりますように、昭和五十年の第三回大会に当時の中曽根自民党幹事長が出席されまして、お母さん方の職場を約束する、このように前向きの発言をしていらっしゃるわけでございます。また、五十一年七月には、当時の松野自民党政調会長が次の通常国会法制化を図る、このようにもはっきり約束をしてくださっているわけですね。また、現厚生大臣、当時の橋本社労委員長も、政府提出検討し、早期に実現したい、このようにもおっしゃっているわけです。  このように責任ある立場の方々が確約をされているにもかかわらず、いまだに見送られている、私は非常に残念でならないわけでございます。そういう意味で、一日も早く何とかこのような形で法案を今国会成立させるように持っていくべきである、このように私は考えるわけでございますが、長官の御見解を承りたいと思います。
  361. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  御承知のように、総理府は実際に対策を実施する所管の官庁ではございません。しかしながら、いま、生活の問題あるいは教育の問題あるいは保険の問題等、幅広い立場で御意見が述べられたわけでございまして、いまも労働省から、関係省庁と緊密な連絡をとって、この法制化の問題等を含めて対処いたしたいという答弁をいたしたのでございますが、総理府におきましても、いま申されました問題につきましては関係省庁と十分連絡をとりまして、すでにわが党の関係者がその実現を図るということも申しておるような状況でもございますし、できるだけ早期にこれが実現に対して検討を進めてまいりたいと思う次第でございます。
  362. 草野威

    草野分科員 ぜひとも三原長官の御努力を期待するものでございます。  次に、いわゆる植物人間、また脊髄損傷患者など重度後遺症者に一日も早く救済策を実施してもらいたい、こういう要望でございますが、この中で主に言われていることは、今回運輸省から発表になりました職業付添婦への介護料一日三千円ということが出ておりますけれども、これにつきまして、妻や家族を含むすべての付添人に看護料を公費で負担していただきたい、こういう要望が出ているわけでございますが、この点につきましての御見解を承りたいと思います。
  363. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 お答えいたします。  自動車事故によりまして重度の意識障害に陥った被害者の方というものにつきましては、ある意味では命をなくされた方よりもお気の毒な状態にあるということは皆様御承知のとおりでございます。そのいわゆる付添いと申しましょうか、介護というものが、その被害者の方が体を動かすことができないとか、あるいは食事を自分でとることができないとか、あるいは屎尿失禁の状態にあるとか、あるいは他人と意思の疎通が困難であるとか、そういう状態にありますところから、非常にその介護、付き添いというものが大変であるわけでございます。  運輸省といたしましては、自動車損害賠償保障制度というものを通じまして自動車事故の被害者の救済を図っているわけでございますが、この重度の意識障害者につきましては、そういった現在の自動車損害賠償保障制度を補完する制度といたしまして、こういった方の家族の経済的あるいは身体的な負担の軽減を図るために、五十四年度から自動車事故対策センターにおきまして日額三千円の介護料を支給するということにいたしております。そして目下その実施に当たっての細目を詰めている段階にございます。
  364. 草野威

    草野分科員 この問題につきましてもう少し詳しく伺いたいわけでございますが、まず、植物人間と言われる人たち、この定義なんですけれども、いま、少しお話がございましたが、この定義についてきちっとお示しをいただきたい。  それから、現在全国で、運輸省の発表によりますと、こういう方々が七百人くらいいらっしゃる。これはどのような形で七百人という数字を出されたのか、その根拠について伺いたいと思います。  それからもう一つは、これらの人たちに対しまして、各都道府県において現在掌握をされているのかどうか、こういう問題についてひとつ伺いたいと思います。
  365. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 お答えいたします。  まず最初に、いわゆる植物人間の定義というお尋ねでございますが、私どもは、いわゆる植物人間につきまして重度の意識障害者という用語を用いておりますので、それでお答えさせていただきたいと思います。  私どもが今回の制度発足に当たりまして用いております重度意識障害者の定義といたしましては、実は日本脳神経外科学会の方で、こちらの方では遷延性意識障害者という定義を用いておりますが、その遷延性意識障害者の定義といたしまして、次に申し上げます六項目を満たす状態が、いかなる医療の努力によりましてもほとんど改善することがなく、満三カ月以上経過した患者を言うということになっております。その六項目と申し上げますのは、まず、自力で移動ができない。二番目に、自力で摂食ができない。三番目に、屎尿失禁状態にある。四番目に、目は物を追うが認識はできない。五番目に、簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通はできない。六番目に、声は出しますが意味のある発語はできない、こういう六項目を満たす状態にある患者を遷延性意識障害者というふうに定義いたしております。  それから二番目に、私どもが五十四年度の概算要求の際に、この制度の対象となります自動車事故によります重度意識障害者の数を七百名として要求を出したわけでございますが、その根拠をというお尋ねでございますが、実は、この重度意識障害者は、特に自動車事故によって重度意識障害に陥った方の数ということにつきましては、正直申し上げまして把握いたされておりませんでした。それで、私どもとしましては、先ほど東北大学の医学部の方におきまして、いわゆる全国の脳外のある病院というものを対象にいたしまして遷延性意識障害者が何名いるかという調査をなさっておりまして、その調査結果に基づきまして、自動車事故による者はほぼ七百名程度ではなかろうかということで概算要求をしたわけでございます。しかし、これはあくまでも東北大学の調査が自動車事故による遷延性意識障害者の数ということでございませんで、非常に根拠の薄い数字となったわけでございます。したがいまして、その途中におきまして、実は昭和五十二年度に、自動車事故対策センターにおいて後遺障害の実態調査を行ったわけでございます。この後遺障害の実態調査は必ずしも遷延性意識障害者を対象とするものではないわけでございますけれども、その中にはそういった重度意識障害者というのは含まれているわけでございまして、その事故対策センターの調査結果をもとにいたしまして、それに私どもの補足調査を加えまして、その調査をもとにいたしまして自動車事故による重度意識障害者は四百五十名であるという推計をいたしたわけでございます。そういうことで、五十四年度の予算案におきましては、私どもが推計いたしました四百五十名というものをもとにいたしまして予算措置を講じているところでございます。
  366. 草野威

    草野分科員 時間がありませんので、簡単にひとつお答えいただきたいと思いますが、これらの植物人間といわれる方に対してどのような方法で認定をされるのか、お伺いいたします。
  367. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 先ほどお答え申し上げましたように、現在の段階では来年度の予算措置を講じているという段階でございまして、ただいまお尋ねのございました、どういった形で認定をしていくかといった問題も含めまして、その細目につきましては現在鋭意詰めている段階でございます。
  368. 草野威

    草野分科員 先ほどおっしゃったいわゆる植物人間の定義という問題でございますけれども、これらの人たちは身体障害者ということになるわけですか、ならないわけですか。
  369. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 いわゆる身体障害者に属するのではないかというふうに思います。しかし、身体障害者の定義につきましては厚生省の方からお答えすべき問題ではないかというふうに考えておおります。
  370. 草野威

    草野分科員 厚生省の方、来ていらっしゃいますか。
  371. 川崎正道

    川崎(幸)説明員 私、厚生省の母子福祉課長でございますが、ただいまの件については、ちょっと所管外なものでございますので、お答えを控えさせていただきます。
  372. 草野威

    草野分科員 それから、もう一つ伺っておきたいのですが、こういう方々はそういう交通事故を起こされてから大体平均してどのくらい生きていらっしゃるのか。
  373. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 この点につきましても、現在いわゆる平均的な生存期間というものは正確には把握されておりません。
  374. 草野威

    草野分科員 先ほどの七百人とか四百五十人という推定の根拠についても、いまひとつはっきりしない問題があるわけでございます。私は実はもっと多いのではないかと、このように考えているようなわけでございますが、この問題もまた別にやりたいと思います。  最後に運輸省に一つ、これはお願いでございますけれども、この要望書の中にもございましたように、近親者、家族、こういう人たちが介護する場合にもぜひともこの対象にしていただきたい。この点につきましては、現在運輸省におきましてもいろいろと検討をされている、このように伺っておりますので、この点をひとつ強く要望さしていただきたいと思います。  次に、自損事故の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  これも運輸省でございますけれども、この要望によりますと、がけから転落だとか、また木や何かと衝突して自損事故、こういう場合には現在は自賠責の補償はゼロということになりまして、非常に困窮している。調査によりますと、交通遺児家庭の二八%は父親を自損事故で失っているために一銭の補償金ももらえない、その生活は非常に苦しい、こういう状態が出ております。この中の要望にもございますように、仮にこういう事故を起こした場合、一〇〇%その父親に過失があったとしても、その遺家族の生活の保障については車社会全体でやるべきではないか、このように訴えております。私は、この自損事故の問題につきましてかつて委員会でも申し上げたことがございます。そのときのお話によりますと、これは自賠責という保険の性質から言っても制度の根幹にかかわる問題であるので、法改正等を考えなければ非常にむずかしい、当時そういうお答えをいただいたことがございますけれども、最近こういう自損事故に対する自賠責の適用という声も非常に社会的にも強くなってきておりますが、これの適用ということについての運輸省の御見解を承りたいと思います。
  375. 伊藤嘉之

    伊藤(嘉)説明員 お答えいたします。  自損事故に自賠責保険を適用すべきではないかという御意見であるわけでございますが、現在の自賠責制度は、自動車事故におきます加害者が被害者に対して負っております損害賠償責任を担保するというものでございますので、自損事故につきまして自賠責保険を適用するということは現行の制度のもとではできないというふうに考えております。したがいまして、自損事故を保険の対象といたしますためには、現行の損害賠償責任保険という制度を改めまして、いわゆる災害保険制度といったようなものを導入することが必要になるものというふうに考えられます。その場合におきまして、他人に損害を与えることとはならない自損事故、ただいま先生も例として挙げられました、がけから落っこちるとか、それから電信柱にぶつかるとか、そういうような事故は他人に損害を与えるわけではございません、自分自身に人身的な損害をもたらすという事故でございます。そういった自分自身の損害をてん補するための保険を、法律でもってその付保を強制する必要があるかどうかという基本的な問題があるわけでございますが、そのほかに、実際にこれを導入する場合につきましては、こういった財源をどういうふうに確保していくかとか、あるいは、自損事故というのは相手がいないわけでございますので、そういう保険制度の適正な運用を確保するためには、自動車事故による損害であるということを証明したり、あるいは確認をしたりするという業務がかなりの量のものにならざるを得ないといったような、実施面に際しての問題もあろうかと考えられます。  しかしながら、いずれにいたしましても、先生御指摘のとおりに、自損事故の被害者の救済という問題は、その遺族の生活保障といった観点からは一つ検討課題であろうかというふうに考えられますけれども、先ほど申し上げましたように、これは現在の自賠責制度の根幹に触れる大きな問題でもあるわけでございますので、今後とも慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  376. 草野威

    草野分科員 すでに任意保険においては自損事故については適用しているわけでございますので、法改正を含めてぜひともこの問題についてはこれからも検討を進めていただきたいと要望をするわけでございます。  時間がなくなりましたので最後に申し上げたいのですが、母子家庭の医療費の無料化という問題でございます。この中にも出ておりますように、最近の一年間で、治療で一カ月以上通院したお母さんは約五割、その平均の医療費は四万二千円もかかっている、こういう訴えがございます。そこで、このような家庭の医療費についてぜひとも無料化をひとつ実現してもらいたい。すでに国内におきましても十七の道府県で公費で負担されているわけでございますので、この実現についてぜひともひとつ進めてもらいたい、こういう要望でございますが、厚生省の御見解を承りたいと思います。
  377. 川崎正道

    川崎(幸)説明員 お答えいたします。  母子家庭に対して特別な医療費の負担制度を設けたらどうかというお話でございますが、医療に要する費用をいかに補償するか、負担していくかという問題につきましては、今日国民皆保険が実施されまして、このもとにおきましてはやはり医療保険制度において対処していくということを原則とすべきであろうと思います。この際、母子家庭に対して医療費の特別な負担制度を設けるというような考え方は適当ではないのではなかろうかと思います。  なお、こういった制度とは別に、母子家庭に対する医療費の援助措置といたしましては、私どもの方で実施いたしております母子福祉資金貸付制度の中に療養資金の貸し付けというようなものも実施しているところでございます。
  378. 草野威

    草野分科員 時間が参りましたのでこれで質問を終わりますが、最後に長官に要望しておきます。  お聞きになってもおわかりのように、交通遺児に対しまして非常にむずかしい問題が、大きな壁が立ちはだかっているわけでございます。おわかりのように、各省庁にまたがっている問題が非常に多い。私は長官お願いしたいことは、こういう交通遺児対策につきましてはどこか一つ行政上の窓口をつくっていただきたい。できれば三原長官がその窓口となって、この交通遺児の今後の対策についてぜひともひとつ力を入れていただきたい、このように私は考えるわけでございますが、最後に長官の御所見を承りたいと思います。
  379. 三原朝雄

    三原国務大臣 交通遺児あるいは母子家庭等についていろいろ温かい御配慮を願った御意見がございました。  そこで、各関係省庁におきましては、現状におきましてそれぞれ責任を持って処置をいたしておると思いますけれども、やはりいま御指摘になりましたようないろいろな問題を含んでおる。そこで、窓口を一本にしてお世話をするような体制はとれないかということでございますが、この点につきましては、関係省庁と連絡をいたしまして、何とかそういう点についての検討を進めてまいることをここで申し上げます。
  380. 草野威

    草野分科員 以上で終わります。
  381. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で草野威君の質疑は終了いたしました。  次に、西宮弘君。
  382. 西宮弘

    西宮分科員 総務長官お尋ねをいたします。  元号の問題でございます。  まず最初に、政府が出しておる何かPRの文書などもあるのかもしれませんけれども、それを手に入れておりませんので、私はこういうものを持ってきたのですが、これは長官も御存じでしょうな。これは前の稻村佐近四郎さんが書かれたやつです。
  383. 三原朝雄

    三原国務大臣 二週間前だと思いますが、国会内におきまして稻村前長官からいただきました。
  384. 西宮弘

    西宮分科員 もしだれかお持ちだったら、これを長官に上げていただきたいと思うのだけれども、持っていませんか。
  385. 清水汪

    清水政府委員 ちょっといま持参しておりません。
  386. 西宮弘

    西宮分科員 この稻村さんが書かれたところによると、自分は一生懸命やってきた、現在は一代議士に戻った、総務長官在任中に固めた、法制化以外に道はない、こういう決断に誤りがなかったことを確信した、そしてこれは、内閣がかわったけれども全部引き継がれておる、こういうことが書かれておるので、私は、そういう意味においてはこれはかなり権威のあるものだろうというふうに思って見てきたんですけれども、これを中心にしながら、これを材料にしながら私は少しお尋ねをしたいと思うのです。  まず冒頭の「はしがき」に、「現在のような法的根拠のあいまいな状態のなかでは、かけがえのない伝統文化であるはずの元号も、やがて滅びてしまうという危険性にさらされています。」こう書いているんですが、「かけがえのない伝統文化」というようなものが、そう簡単に、法的根拠がなくなれば消えてなくなってしまうものなんでしょうか。
  387. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、稻村前長官の個人的な私見だと私は思うのでございます。その私見に対してとやかく言うことはどうかとも思いますけれども、現在国民の大多数の方々がその使用と存続を期待しておられる現在の昭和元号というようなもの、あるいはその後の元号というようなものがすぐなくなっていくとは私は考えてはおりません。
  388. 西宮弘

    西宮分科員 国民の大半はそのように存続を希望しているというならば、法的根拠がなくなったからなくなってしまう、やがて滅びてしまうという危険にさらされておりますと書いてあるが、そういう心配はないですね。
  389. 三原朝雄

    三原国務大臣 稻村氏の意見について私はとやかく言おうとは思いませんけれども、しかし、私は、国民の大多数の方々が存続を希望されておられます現状でございますとか、あるいは県、市町村におきまする議会の議決、あるいは先般もNHK等でアンケートをおとりいただいた結果等も報道されておったのでございまするが、法制化についてそうした国民の希望もあるわけでございまして、私どもそうした事実を踏まえてまいりますれば、何らか元号の存続について明確な、そして安定した立場をとりたい、とっていくべきであろうと考えて法制化に踏み切ったところでございます。そういうような事実を踏まえての制度的な一つの手続の処置をいたしたということでございます。
  390. 西宮弘

    西宮分科員 私が言っているのは、国民の大多数が希望している、そして稻村さんの言葉をかりると、「千三百年余りも昔から、日本人の生活に融け込み、私たちにとってはかけがえのない伝統文化」となってきた、あるいは各自治体の決議があるとか、そういうものなら何も法律をつくらなくたって当然存続するだろうし、またそれが存続しないようなものならばいやしくも伝統文化なんてことは言えないと思うんだけれども、もう一遍そこのところだけ答えてください。
  391. 三原朝雄

    三原国務大臣 重ねて申し上げるようですが、稻村氏の私見についてこの席で私はとやかくは申し上げようとは思いません。  そこで、国民の大多数の方々が元号の存続を希望され、そして何らかの形でこの問題について安定した、そして明確な一つの基盤と申しますか、そういうものを期待をしておられる、そういう事実を踏まえて一つの制度の手続でございますが、そうしたことで今日法制化お願いをして国会審議にかけておるわけでございます。したがって、これは、ある御意見等もあり、政府でも一時考えたことがございまするが、政府の告示でもよくはないかというようなこともございましたけれども、私たちといたしましては、国民の代表である国会の場においてやることが最も民主的な方法であろうということで法制化お願いをいたしておる現況でございます。
  392. 西宮弘

    西宮分科員 これは稻村さんの個人的な見解だと言うならば、別にその稻村さんの私見を論議しようとは思いませんけれども、しかし、ここに盛られておることが、恐らく政府でも考えていることの根拠ではないかというふうに私は想像するのです。ほかに材料がないからこれを使っただけなんだけれども、私はこれ以上繰り返してもしようがないと思うのだけれども、少なくとも稻村さんは、いまの国民的伝統文化というのには、建造物や仏像などの国宝があったり重要文化財があったり、それからそういう有形な文化財のほかに大切に守らなければならないものとして、たとえば美しい日本語であるとか生活慣習だとかいろいろなものがある、こういうことを言っているわけですね。そういうものを全部、そういう美しい伝統を守っていきたいというのは私も全く同感です。しかし、それを守るためには法律の基礎を持たなければならぬというのは私は実におかしいと思う。むしろ、そういうりっぱなものならば、法律の規定なんかなくても十分に存続し発展していくものだと考えるので、だから私は、この元号の問題を法律でつくり上げようというところに問題があると思う。しかも、長官は、法律でつくるけれども強制ではないというようなことを恐らく御答弁になろうとしているのだろうと思うのだけれども、強制でないならば、むしろそれこそ、いま長官が言われたような政府の告示で結構だと思うのです。法律というのは、国民の権利義務を定めるというのが少なくとも法律本来の趣旨だと思うのです。そういう強制しないものを法律でなければならぬと言うのはおかしいんじゃないですか。
  393. 清水汪

    清水政府委員 私からお答え申し上げますが、先生がいろいろおっしゃっておりますこともわかるのでございますが、私どもの立場でもう少し大臣の答弁を補足させていただきますと、現在の昭和という元号は、よく言われますとおり、事実たる慣習として用いられているという状態でございますが、同時に、この昭和という元号についての国民一般の理解といたしましては、今上陛下の御在世中に使用されるものというふうに考えられているという理解が一般的であろうと思います。でありますると、昭和の次の元号はどうするかという問題が当然出てくるわけでございます。  ところが、一般の国民の希望といたしましては、先ほど大臣からもお話し申し上げましたとおり、実質的な意味におきましては、昭和の後も元号というものの存続を希望するという意思の方が大多数を占めている。しかしながら、その場合の手続がどうなっているかということは実ははっきりしていないわけでございます。少なくとも法律的な意味では根拠がないと言われるとおり、その手続は決まっていないわけでございます。したがいまして、問題は、よく引用されるアンケートがございますが、存続はした方がいいけれども法制化するほどのことはないというような回答があるわけでございますけれども、そこでお答えになりました回答者は、昭和の後の手続についてどういう受けとめ方でそういう答えをされているかということが実ははっきりいたしません。  そこで、私どもの立場からいたしますと、この元号というものは広く年の表示方法として、少なくとも日本の国内でそれを使えば一元的にそれが理解される、そういうものであるわけでございますから、かなり影響の大きいものでございますけれども、そうしたものについて、だれがどういう場合にそれを定めるのかということがはっきりしていないという点、そこに問題があろうかと思います。そこで、従前はその点が、旧皇室典範というような、法律ないしそれ以上と言われておりますが、そういうものの形で定められていた。ですから、今後の問題として考えますと、少なくともどういう場合にだれが次の元号を定めるのかということだけははっきりしておく必要があるのじゃないか。そのはっきりする方法といたしましては、現在のわが国における一般的な法感覚というようなものからいたしますれば、やはりこれは法律の形ではっきりさせることがいいに違いない。しかも、そういう法律国民を代表する国会でお決めいただくわけでございますから、その辺でもやり方として妥当であろうというふうに考えまして、政府提案という形で御案内のような内容の、つまり内容は全くそういう手続的なものでございます。つまり、いまお触れになりました、その使用をどうこうするというようなことは一切触れておりません。そういう内容の法律として御審議を賜りたいということを申し上げているわけでございます。
  394. 西宮弘

    西宮分科員 非常に時間が短いのですから、そういう長い説明はやめてくださいよ。  私が聞いているのは、さっきから言っているのは、それほど美しい日本の伝統文化ならば、何も法律をつくらなくたって守っていける。またそれが守れないくらいのものならばいやしくも伝統文化なんて偉そうなことを言う価値は全くない、もう消えてなくなったって仕方がない。それほどの大事なものならば、私は国民のコンセンサスで十分に守っていけるというふうに考えておる。だから、そもそも法律でこれを決めなければならぬというのが私にはとうてい理解できないということを言っているわけです。たとえばいまのあれだって、内閣の告示でやるやつだって、強制しないというならば、いまの当用漢字なんかみんな内閣告示でやっているわけです。あれでほとんど強制に近い程度に実施されているじゃないですか。元号の場合には、西暦でもどっちでもいいというようなことできわめてルーズなのだけれども、恐らく当用漢字の例などよりははるかにそういう点ではルーズだと思うのですね。それをしも法律でやらなければならぬということが私にはとうてい理解できないということで、その点を指摘をしておったのだから、それだけ答えてもらえばいいのだ。そう長々と答えられても困る。  それではついでにお尋ねをしますが、確かにいま言われたように、もしいまの天皇が崩御をされるというようなことでもあればその次どうするか。それで昭和は終わりだというふうに国民が思っているというのも、これももちろんそうだと思いますね。だから、そうなればそのときに改めればいいと思うので、手続は私は告示で十分だと思う、結構だと思うのだけれども、第一、そういうふうに天皇の交代と関連をつけなければならぬというのはどういうことですか。これは長官お尋ねをしますがね。――では逆に聞きます。天皇の交代と切り離してはいけませんか。もしいけないとするならば、なぜいけないか、それを聞かせてください。
  395. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  この問題は、長く国民が元号を使っておられた歴史的な事実等もあるわけでございますが、しかし、実際に元号というのは、現在の今上陛下の御在世中のことである、そしておかわりになった時点においては改められるであろうということが国民一般の考え方でございます。その事実を踏まえて、天皇が皇位を継承される時点に新しい元号を制定するということが国民の一般が考えておられる実態であろうというところを踏まえて、天皇の皇位継承の時点をとらえておるわけでございます。要するに、だれがどういう場合にやるであろうかというところから、いま申し上げましたように、国民一般の考え方を踏まえて、そうした措置に出たわけでございます。
  396. 西宮弘

    西宮分科員 私がお尋ねをしているのは、いわゆる皇位継承という、天皇が交代するというのと切り離してはなぜいけませんかということです。
  397. 三原朝雄

    三原国務大臣 この問題につきましては、切り離して考える考え方もないではございません。たとえば何年間で元号を制定するとかいう、時期を区切ることもありましょうし、また、国民にとってあるいは国家にとって非常に明るい一つの時期が来た、そういうときに変えるというようなことを考えられたこともございまするし、また、天皇の皇位を継承されたその時点から何年か置いてというような考え方もできると思いまするが、しかし、いま国民一般的な考え方からいたしますと、天皇が皇位をお譲りになる、そして新しい天皇が在位されるという時期ではないかという一般の国民の方の考え方を踏まえて、私どもはそこに時点を置いて、実は今回の法制化お願いをいたしておるということでございます。
  398. 西宮弘

    西宮分科員 さっき審議室長が言われた中にも、たとえば前の皇室典範にはそのことをうたっておったけれども、新しい皇室典範ではなくなった。これがなくなったのには、私はなくなっただけの理由があると思うのですよ。そのときの考え方は、そういうふうに、いわゆる一世一元で天皇の在位期間と元号が常に一緒でなければならぬ、これが新しい憲法の主権在民という考え方にそぐわない、ふさわしくない、そういう理由のもとに恐らくあの皇室典範を改正する際になくなったのだと思うのですよ。だから、私は決して天皇の在位期間と一緒でなければならぬという理由はないと思う。  そのことはまた一般の国民生活からいっても非常に不便なんですね。たとえば大正の始まりは、明治四十五年七月三十日以降をもって大正となすということになった。だから四十五年全体ではない。四十五年七月三十日というきわめて限定された日からかわっているわけですね。そういうことは実にややこしいと思うのですね。この間グラマンの証人喚問を傍聴していましたけれども、植田社長にグラマン社と代理店の契約を結んだのはいつだといって聞いたらば、これは竹下委員長が聞いたわけだけれども、そうしたら昭和と言ったきり、後が続かない。そんな、委員長から聞かれるような基本的な大事なことを知らないのかと思ったら、昭和で表現ができなかったんでしょうね。それでしばらくたったら、一九六九年の八月十五日だと、日にちまですらすらと言った。恐らくこういう人は西暦の方になれているから、それを昭和に換算するというのが非常に困難だったのじゃないかと思うのですね。ずいぶんこのことは将来不便だと私は思うのですね。一月元日に変わるのじゃないですから、これから先も途中で変わっていくということで、容易に記憶できないんじゃないか。われわれも、たとえば関東大震災は大正十二年にあったということはわかるけれども、それが何年前なんだということになるとさっぱり見当がつかないということになる。  私がここに持ってきましたのは単に一人の人の手紙にすぎません。宮城県鹿島台町というところにおる門間萬太郎さんという人なんです。これは六十七歳になる全くの農家です。この人などはこういうふうに述べているので、ぜひ参考にしていただきたいと思う。「それで、私は元号はあってほしいと思うのです。元号は、私たちの遠い先祖からまた将来までの歴史をはかる物差しのようなもので、ぜひあってほしいのですけれども、いままでのように一首一元ではなかなか不便な点がありました。明治は四十四年、大正は十四年というふうに自分の年齢を計算するにも不便です。そこで私は、皇室と関係なしに国民より募集し、その中から総理府で委員会を設けて審査決定したらどうでしょう。そして元号の境としては、ことし昭和五十三年ですから、昭和百年までは昭和とす一世紀刻みで決めていけば国民に納得できると思うのです。」ついでにその先もう少し読んでみると、「それのみか、お年を召された今上天皇に御迷惑をおかけせずに四十歳を過ぎた皇太子に位を譲り、お年召された天皇を自由環境の中で老後をお過ごしくださると思います。」――よいと思いますという意味ですかな。  これは本当の純然たる農家の方ですけれども、そういう意見は国民の中に少なくないと私は思うのですよ。非常に不便だと思う。便、不便という問題も無視できない大事な問題だと思うのですね。そういう点を十分慎重に考えてもらいたいと私は思います。どうですか、一言お尋ねしますが、そういう国民の便、不便というような問題は考えませんか。
  399. 三原朝雄

    三原国務大臣 確かに御指摘の点もあろうかと思います。しかし、私どもの実態調査等を見てまいりましても、主として元号をお使いになっておる国民の数というのは、八七%くらいの数字がここ三十六年、四十九年、五十一年、五十二年でもそういう数字が出てまいりまするし、なお、主として西暦を使っておられる方は三%、併用しておられる方が七%ということでございまするから、先ほど先生御指摘のような、世界的な視野に立って国際的な立場で考えられる場合には西暦を使った方が便利だろう。したがいまして、今回の使用に関しましては、一般国民の方々にとりましては元号と西暦とを併用いただいて結構でございますというような立場をとっておるわけでございます。
  400. 西宮弘

    西宮分科員 私は、国民の便、不便ということを考えないのかということをお尋ねをしたので、いまのような何年の何月何日から切りかえるというようなことはずいぶん不便きわまりないと私は思うのですよ。国民にそういう不便を忍ばせるということは、政府のやり方としてはまことに国民に迷惑なことだと思う。だから、私は大正なり昭和なりそういう年号があってよろしいと思うのですよ。恐らく国民もこれから先も使っていくでしょう。法律の根拠を持たなくたって、何らかの形で内閣が発表すれば恐らく国民は使っていくと思いますよ。しかし、便、不便というようなことを考えると、さっき私が読み上げた、門間さんという方が昭和百年までにしたらいいのじゃないかと言っておったが、それも一つの提案でしょうけれども、私はむしろ、やがて西暦は二〇〇〇年になるわけですから、その時期に切りかえる。その時期に何とか元年というようなことに切りかえていくということになると、これは非常にわかりやすくて、何の苦労もなしに西暦と日本の元号が両立して、国民は何の不便も感じないということで、私はそういうふうに切りかえたら本当に国民には結構なことじゃないかと思うのだけれども、どうですか。
  401. 清水汪

    清水政府委員 元号の問題は、国民の抱いている感情といいますか、あるいは物の考え方、そういうようなものと切り離せないのじゃないか。私どもとしては、現在の国民が元号というものに抱いているイメージといいますか、頭の中に考えている元号というものを前提にして、それを踏まえて、いまのような法案でいくのが一番いいのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  402. 西宮弘

    西宮分科員 そういう一世一元というのは明治から始まったのですから、千三百年の歴史の中で明治からたった百年少々ですよ。そんな点はいかようにでも変わるし、また、私がいま提案をしたような方向で変えたら国民は大歓迎だと思うのですね。元号と西暦と両方使えて、しかも国民は非常に喜んで両方を併用していくだろうと思う。  それじゃ、最後にお尋ねをいたしますが、新しい元号を何にするかというのを選定する作業はどの時点から始まるのですか。
  403. 清水汪

    清水政府委員 それは大変微妙な問題だと思いますが、要するに必要な状況のもとでその作業が開始されるということでございますが、現在のところはそれを具体的には申し上げようがございません。
  404. 西宮弘

    西宮分科員 新聞によると、総理府で決めたというものが二月の十六日の新聞に大変大きく載っていますけれども、要するに天皇の病気が重いというときに始めるんだと言うんだけれども、これなんかだって私は失礼千万だと思うのですな。第一、いまの元号の問題をこうして議論をしているということが、要するに今上天皇が亡くなったら後はどうするんだということで審議をしているんですから、私はこんなに失礼なことはないと思うのですよ。しかも、元号を早くやれ早くやれと、この法律を通すために、閣議でも国会の冒頭提案だということを決めたということを大変誇らしげに書いているんだけれども、急げ急げ、早く早くと、なぜそんなに早く急がなければならないのか。そういう事態、急がなければ間に合わないというような事態が近づいているんですか。私は実に失礼千万だと思うのだ。  私はきょうは法務委員会の中で恩赦の問題で少し議論をしてきたんだけれども、恩赦の問題なんか考えると、そういう事態を待っている人がいるらしいのですよ。そういう問題が起こって、そういう事態が来て恩赦で無罪になりたいというような人が待っているらしいんだ。そういうのと軌を一にしていると言っては大変言い過ぎだと思いますけれども、とにもかくにも、いま健康な方がおられて、そのときに、後はどうするんだ後はどうするんだと、こういうことを議論するなんというのは、そのこと自体が不謹慎だと私は思う。ましていわんや、それを急げ急げと言って、あらゆる法案に率先してこの問題を成立させようというようなことで夢中になっているというようなことはとんでもない失礼なことだと思うのだけれども長官はそういうことをお感じになりませんか。それだけ伺って終わりにします。
  405. 三原朝雄

    三原国務大臣 いま御指摘のような、不謹慎ではないかという御意見のあることも承知をいたしておりますが、私どもといたしましてはそうしたことも十分踏まえながら、国民要請というようなものを受けとめて、事実そういうような事態が、国民の心情がございますので、それを踏まえて、私どもといたしましては国会法制化審議を願うということでおるわけでございます。そういう点について、決して全く配慮をしていないということではございません。その点はひとつ御了承を賜りたいと思うのでございます。
  406. 西宮弘

    西宮分科員 私はとうてい了承できないので、そういう失礼な不謹慎なやり方というのは、そのことだけでも十分責めるに値する、責められなければならぬと思うのでありますが、そもそもそういう問題が起こるのは、これはこれから先であって、毎回繰り返すわけですよ。この法律が今度できたとしても、いつの時点で新しい元号の選定に取りかかるかというのは、この新聞の発表によると現在の天皇が病が重くなったときだというのだから、一方で何とかして病気が治ってほしいと、恐らくこれは国民全部の念願だと思うのですね。そう言ってみんな一生懸命祈っている最中に、その次のことを準備に取りかかる、こういうことが毎回毎回繰り返される、そんなばかなことはないと思うのです。それを、さっき申し上げたように、天皇の在位という問題と切り離しさえすればそういう問題は一切が解消して、しかも、長い伝統である元号というものもりっぱに生きていける、こういうことになるので、当然そういうことに改むべきだと私は思うのです。  もう時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、私はとうてい納得できませんから、そのことだけ申し上げて終わりにいたします。
  407. 愛野興一郎

    ○愛野主査代理 以上で西宮弘君の質疑は終了いたしました。  これにて内閣及び総理府所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十三分散会