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1979-03-06 第87回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月六日(火曜日)    午後零時三十二分開議  出席委員   委員長 竹下  登君    理事 伊東 正義君 理事小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田村  元君       谷川 寛三君    中川 一郎君       根本龍太郎君    野呂 恭一君       羽田野忠文君    藤田 義光君       藤波 孝生君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    安宅 常彦君       井上 普方君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       兒玉 末男君    平林  剛君       安井 吉典君    市川 雄一君       古寺  宏君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    吉田 之久君       浦井  洋君    柴田 睦夫君       寺前  巖君    藤原ひろ子君       大原 一三君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         公正取引委員会         委員長     橋口  収君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         警察庁交通局長 杉原  正君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      多田 欣二君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      佐々木孝男君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁水資源局         長       北野  章君         外務大臣官房審         議官      矢田部厚彦君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵大臣官房審         議官      天野 可人君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生大臣官房会         計課長     加藤 陸美君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省立地         公害局長   伊勢谷三樹郎君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁次長     児玉 清隆君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸省海運局長 真島  健君         運輸省自動車局         長       梶原  清君         運輸省航空局長 松本  操君         気象庁長官   有住 直介君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省河川局長 稲田  裕君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君         自治大臣官房審         議官      関根 則之君         自治大臣官房審         議官      花岡 圭三君         自治省行政局選         挙部長     大橋茂二郎君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     谷川 寛三君   正木 良明君     古寺  宏君   矢野 絢也君     市川 雄一君   米沢  隆君     吉田 之久君   東中 光雄君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     正示啓次郎君   市川 雄一君     矢野 絢也君   古寺  宏君     正木 良明君   浦井  洋君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     柴田 睦夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を行います。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、この一カ月来の予算審議を通じまして、予算審議の当初と比較をして、今日段階において相当経済情勢の変化も生まれてきているのじゃないかと思うのであります。そういう情勢を踏まえて、きょうは主としてインフレ、物価問題を中心質問をしたいと思っておりますが、それに先立ちまして、私は、国会開会中における政府国会に対する対応姿勢と申しましょうか、端的にいいますと、議会を軽視するようなそういう言動が最近余りにもあり過ぎるのではないか、このように思います。  その一つは、いま問題になっております電電公社政府調達の問題に関連をいたしまして、先般この場において、たしか二十二日であったと思いますが、この電電公社のいわゆる機材購入の問題で、議員が、翌日の関係閣僚会議では議題になるやに聞いておるけれどもどうなんだ、こういうことを聞きますと、外務大臣通産大臣の方からは、そういう予定はないという答弁があったにもかかわらず、翌日の関係閣僚会議ではこの問題が主たる議題として取り上げられている。  この問題について、すでにこの国会でも指摘をされたところでありますが、この閣僚会議中心になって運営された責任者はだれなのか、そして、前日の国会ではそういう議論があったということを知りながらやったのかどうか、それに対する今日段階における議会との関係における政治責任をどのように考えているのか、このことをひとつお尋ねすると同時に、このことと関連をいたしまして、けさの新聞によりますと、長期国債金利を〇・四%引き上げるという記事が出ております。  この問題についてもわが党の平林議員がせんだって、国債を発行するということは、いわば一つには景気をよくするという政策目的を持って国債を発行しておるのであるから、この長期国債金利引き上げるようなことをすれば、今日のわが国の深刻化する財政のもとにおいて国の出費がかさむことになるではないか、したがって、このような長期国債金利引き上げについては、今日国債が実際の市場において売れ行きが悪いという状態もあるけれども、慎重を期するべきじゃないか、たしかこういう質問をしたと思うのであります。そのことに対しては何らそのときには答弁がなかったと思うわけであります。  ところが、国会開会中、しかも予算委員会がこのように審議をされておる段階において、正式に予算委員会にも報告がない。恐らく予算委員長にもこの種のことについての正式な報告もないと私は思うわけであります。そういう段階において、院外において一方的にこのような報告がなされるということは、これまた、電電公社機材調達議題の問題ではありませんが、私は国会軽視のそしりを免れないと思うのでありますが、それぞれ責任者立場から、それに対する政治責任を含めての答弁を願いたいと思います。
  4. 田中龍夫

    田中国務大臣 藤田委員にお答え申し上げます。  藤田委員指摘する会合は二月二十日の日米経済問題に対する経済閣僚会合のことだと思います。  三つ御指摘がございましたが、第一の、国会電電公社の問題についての論議があっておったことを知ってやったかどうかということでございますが、その問題は私ども熟知しておりますが、二十日の会合は、私がいま冒頭に申し上げましたように、日米経済問題に対する会合ということでございまして、日米問題につきまして、ちょうど帰国いたしました安川代表それから牛場代表、両代表を招きまして、アメリカとの交渉経過、日米経済問題に対するアメリカ側意見の開陳を聞いてきておりましたので、その問題、それから両代表がこれらの問題をどういうふうに見ておるかという見方、そういう問題についてお話を承っておったわけでございます。その間、当然いま問題になっております電電公社政府調達の問題も出ました。  それから、国会を軽視してないかという質問でございますが、私どもは、大平内閣は「信頼合意」ということもキャッチフレーズにしておりますし、国民信頼を得ること即それは国会信頼を得ることでございますので、その点は私ども留意して運営をしてまいっております。
  5. 金子一平

    金子(一)国務大臣 国債金利幅改定についてお話がございましたが、ことしの一月から六分一厘のものにつきまして流通利回り発行利回り相当の差が出てまいりました。平林議員からも今後の対処をどうするのだというお尋ねがございましたが、この乖離原因、いろいろあると思えるものですから、もう少し慎重に乖離の出た原因を見きわめて対処したいということで今日までまいりましたけれども、最近の実勢にかんがみまして、現在のところ三月債から〇・四%引き上げる方向で検討を進めてまいりましたが、きょうじゅうにもシンジケート団改定幅について提示したい、こういうふうに考えておる次第でございます。実行いたしますとするならば三月債から、幅は〇・四%引き上げる必要があると判断いたした次第でございます。
  6. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の質問は、そういうことではないと思うわけですよ。大蔵大臣のいまの答弁を聞いておりますと、年率〇・四%の引き上げの実施時期を三月からやるのだとか、あるいはシンジケート団に対してきょうのうちにもこういう方針でいくことを伝えようと思っておるのだとか、そういうことではないのですね。平林議員がこの問題について質問をしたときには、たとえば年率〇・四%の金利引き上げの見通しについていつごろやるとか、そういったことについては全然答弁をなさっていない。国会に対して正式な答弁見解表明もないまま、しかも委員会が開かれておる、まだ継続中の段階において、この院に対する見解表明もないまま、外に対してこういう形で発表されることは議会軽視のそしりを免れない、こう言っておるわけであります。その点に対する大蔵大臣態度表明を求めたいと同時に、官房長官のお答えも率直に言って私は答弁になっていないと思うのです。亡くなられた保利衆議院議長でありませんが、私は昨晩NHKの保利先生のありし日の話をずっと聞きましたが、吉田内閣あるいは佐藤内閣があそこまで長期政権として長続きをした一つの大きな要因には、番頭役としての官房長官がしっかりしておったのだ、こういうくだりがございました。私は同じ四国の出身でありますが、与党と野党の違いがございますから、大平さんであろうと福田さんであろうと、自民党の内閣が余り長続きすることを歓迎するものではありません。しかしながら、官房長官政治的な立場というものは、その内閣にとっても非常に重大な立場にあるのじゃないか。その国務大臣が、解散の問題をどこかで口走ってみたり、あるいはいまこのように日米関係においても最も重要な問題になっておる、一昨日来こちらに来ておりますブルメンソール財務長官との会談の中でも、この問題が恐らく一つ中心課題になっておるだろう、こういう問題について、国会がそのことを重要議題として審議をしておるさなかに、あすの閣僚会議には議題にならぬのだ、こういうことを国会外務なり通産大臣答弁をしておきながら、翌日その問題が中心課題になるというのは、これまた議会軽視にならないかということを聞いておるわけであります。私は、まずかったらまずかった、こういう姿勢は率直に言って改める、こういうことを虚心坦懐に認め合って、そうして将来を戒めていくという姿勢がなければ、大平内閣の言う「信頼合意」などというこんなキャッチフレーズは、もういま直ちにおろしてもらいたいと思うのですよ。これはごまかしですよ。国民を欺くものになりませんか、どうですか。これは私は政治の基本的な姿勢としてお尋ねしておるのです。
  7. 園田直

    園田国務大臣 まず最初に、委員会軽視の誤解を受けたことを深くおわびを申し上げます。  あのときの経緯を申し上げますと、私は答弁しておりませんが、通産大臣答弁されたわけであります。その通産大臣答弁された責任者は私であります。と申しますことは、いまおっしゃいました日米経済問題に対する関係閣僚会議ということで招集があったわけであります。通産大臣から、あすの関係閣僚会議では政府調達電電公社の問題が議題になるのだろうか、こういう話がありましたから、それは議題になりません、してはなりません、いまや国内においてもまだ打つべき手段も打たれていないし、まだ煮詰まっていない、それから米国と日本関係は、ここで関係閣僚会議等でうかつなことを言うと、それが響くから、これは議題にすべきじゃありません、議題になりません、私がこう言ったので、通産大臣があすの議題ではございませんと答えたわけであります。決して委員会を軽視して言ったわけではなくて、この問題の重要性にかんがみて、あすの経済閣僚会議でこういう問題を議題にしてはならぬという熱意から通産大臣に申し上げ、通産大臣はそう答弁されたわけであります。したがいまして、その責任は私にある、こういうことを御理解願いたい。  そこで、翌日の会議では、官房長官から言いましたとおりに、議題安川政府代表及び牛場代表からの、いままでの経緯の御報告があって、これが主議題でありました。しかし、その中にいまの問題が出ましたので、これに議論が、各意見が出たわけでありますが、しかし方針その他を決定したわけではなく、具体的な論議をしたわけではありません。  以上、経緯を申し上げて、おわびを申し上げると同時に、今後十分注意をいたすことを申し上げておきます。
  8. 金子一平

    金子(一)国務大臣 重ねて申し上げます。  この金利引き上げの問題は、長期金利全般との関係もあるものですから、私ども立場としては、慎重に審議を重ねて、やっと本朝決断を下した次第でございまして、委員会冒頭において申し上げようと思っておりましたところ、藤田さんからお尋ねがありましたので、公式に外部に発表いたしますのはいま初めてなのでございます。委員会で御報告申し上げて、それからシンジケート団との交渉に入りたい、こういう段取りをいたしておるような次第でございまして、どうかひとつ御了承をお願い申し上げます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 必ずしも了承するわけではありませんが、私の申し上げておる真意をしかと受けとめられて、今後議会軽視のそしりが起こるようなことのないようにやってもらいたいということを強く警告しておきたいと思います。  それでは、たまたま電電公社政府調達の問題が問題になっておりますので、この問題から質問をいたしたいと思いますが、まず電電公社総裁お見えですね。電電公社は、政府調達規約電電公社が入ることが、国民のための電気通信サービスを提供していく立場から見て、いろいろ問題があるように聞いております。特に、先進諸国と言われるECあるいはアメリカにおいても、いま問題になっておりますように、電気通信機材競争入札にしておる国はどこにもない、こう聞いておるわけでありますが、諸外国の事情なり、特にアメリカの事情、そうしてどういうところに基本的な問題があるのか、説明をしてもらいたいと思います。
  10. 秋草篤二

    秋草説明員 お答えいたします。  電電公社の基本的な考え方というものは、この前の委員会でも申し上げましたけれども、まず国民信頼されるサービスというものを、信頼度の高い通信サービスを提供するということと、もう一つは、少しでも安い料金でそれが提供できる、この二つの目的につながる考え方でなければならぬと思って資材を調達しております。  それで、この問題になっておる資材競争契約は困る、随意契約でなければ困る、競争契約は困るのだという問題は、少し時間を、四、五分ちょうだいしないとわかりにくい問題ですから、少し後に譲りまして、いまの先進国ですね、発展途上国は別といたしまして、これはメーカーが全然ございませんから。先進国は全部これは随意契約でやっていると言っても過言ではございません。  御質問アメリカは民営でございますが、これは今度のガット対象にはならないということになっておりますけれども通信事業としては全く日本の三倍くらいの電話事業を擁しておりますが、それの八五%ぐらいの事業量を有するATTと、それから七、八%を持っているゼネラルテレホンがある。あと千くらいの会社で数%の電話事業をやっております。これは社長さん以下五十人とか百人とか千人ぐらいの会社が千ぐらいございますが、巨大なるATT、それからゼネラルテレホンも全部これは随意契約でやっておるのでございます。しかし、これはガット対象にはならない。そんなようなわけで、世界の大勢では全部電気通信設備購入というものは随意契約でやっておるのが常識だと私は思っておるのでございます。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この問題が政治問題になってまいりましてから、衆議院分科会でも二、三問題が取り上げられたようでありますが、率直に申し上げて、電電公社代表される意見考え方というものが十分まだお互いの間に理解されてない向きがあるのじゃないか、これは私を含めてでありますが。そういう観点から、私は、この電気通信設備というのは非常に特殊性があると思うわけであります。これを競争入札にすると、先ほどもお話がありましたが、安定した低廉な電信電話サービスを確保することができない、抽象的にはこう言っておるのでありますけれども、いま少し具体的にどういう問題があるのかということを、代表的なものだけで結構ですから説明をしてほしい。
  12. 秋草篤二

    秋草説明員 一番わかりやすい経済的な問題にこれは類すると思いますが、私どもの発注する電話電信の機器というものは、電話電信事業がまず完全独占事業と言っていいくらい日本で唯一の巨大なる事業でございますので、発注する品物も一つ特注品というか、電電公社しか使わないという品物が圧倒的なものでございます。もちろん、一般の官庁、民間の会社で使うような事務用品というものもかなり多くございますけれども、まず電気通信機材につきましては特注品であって、ほとんどが電電公社のマーケットに依存しているということでございます。したがって市販性がない。  したがいまして、これを競争契約に打ち出すという場合には、確実に入札できるという確実性がなければ、なかなか工場生産というようなものも、非常に膨大な工場なり設備なり技術者、労働者というものを擁しておりますから、安定した生産ができませんので、これを競争契約でやるならば、日本のいまの制度で言えば一年契約でございますから、十カ年継続した契約というような契約も、できないことは民間ではないと思いますけれども、一応競争契約ということになれば、来年必ず注文が受けられるという保証はございません。したがいまして、大きな設備というものも、経営者というものは当然早く償却しなければなりません。また労働者も、来年の不安というものもありますし、確実に注文がとれるという予約もございません。電電公社のようなマーケットは、しかも注文の量が多いということで、ここに非常に大きな不安感がございますので、これはやはり随意契約でなければならないのではなかろうか。  それから、これから少し技術的な問題になりますけれども、電気通信事業というものは、現在、全国の電話機というものは、各事業所なり家庭に五千万ぶら下がっております。これは一つのネットワークとして機能するものでございまして、非常な精度の高い技術を要し、また、品質のよい生産過程を経て十分な指導と検査の中で製造されるものでございますので、この点が非常にまちまちの電話機が方々の国から入ってくるということになりますると、その点を完全にネットワークに入れるということは不可能でございます。  それならば、それを徹底的に仕様書で厳重に精密に規制して、そうしてノーハウまで与えて各国にオファーを出して注文をとるということも不可能ではございませんが、その出したものが一社なり二社に入札が落ちて、あとは落ちないということになりますと、せっかくのノーハウも、落ちないところではノーハウだけがいただかれて、実際、注文は受けられない。そういう非常に不自然な形ができまして、各メーカーの技術革新あるいは公社の技術革新、そういうものに対する努力というものは本当にだんだん失われてくるのではなかろうかというようなことが言われます。  そのほか、また品物がまちまちになりますると、具体的には建設工事も保守工事も、それぞれの規格についてまた多少の訓練も違ってまいります。そこに非能率な、人の数、増員というようなものも必然的に起きなければならない、なかなかいまのような安定した保守というものは確保でき得ないという問題が出てまいります。  その他、部品等の供給も一年限りではございませんので、いつ何どき故障が起きた場合の部品の供給というようなものも、これもまちまちな会社から出てくる品物に対する部品というものも、非常に不安定なものになってきます。  そういうようなことがございまして、一応いまのお話は、随意契約というものが一番よろしいのだ。ただ、この随意契約というものは非常に誤解を招く言葉でございます。これは法定用語にはなっておりますけれども、私ども随意契約は、英語で言うシングルコントラクトというようなものではございませんので、一社というものはございません。必ず二社ないし五社ぐらいでそれぞれの技術指導をして、それぞれの検査もして、工場検査し、それからまた値段も出させて、これを非常に合理的に競争させて、おまえのところは少しこちらが高い、工費が高い、こちらは償却費が少し高過ぎる、そういうものをできるだけ勉強させて、ならして、言うならば公正協議に近いものだと思いますが、そういう意味の随意契約でございまして、安易なじだらくな契約というようなものとは全く性質の異なるものでございまして、これはまた会計検査院も十分認めていらっしゃる。また、近く行政管理庁も御検査くださるそうでございますが、私どもは、これは、ぜひとも早く公社に向かって検査もしていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 公社の考え方は、一応私ども素人でありましても大方わかるような気がするわけでございます。いま答弁のあったことを踏まえてお尋ねしたいのでありますが、いわば電気通信機器の機材の調達の仕方は競争入札ではなくて随意契約だというのは、実質的にはアメリカを含めて世界の常識になっておる、世界の常識だ。こういう常識になっておることをなぜ日米関係において競争入札にしなければならないのか、まだ競争入札にするとは政府も言っておりませんけれども、そういう方向でアメリカに強要をされなければならないのか。いま電電公社の主張しておるようなことを踏まえて、アメリカ日本立場というものを説明すれば、十分アメリカに対しても理解を求めることができるのじゃないかと私は思うのです。昨日来からこちらに来ておりますブルメンソール財務長官、あるいは新聞等によりますとソロモン次官ですか、そういった次官との間には、この問題が具体的にやりとりをされておるように報道されておりますが、どういう状態なのか、見通しを含めてひとつ外務大臣からお聞かせを願いたいと思うのです。
  14. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  東京ラウンドの政府調達に関する交渉において、米国としてはバイアメリカン法制の適用を軽減し、米国の政府調達市場を各国に開放する、その見返りにわが国、欧州等の政府調達市場の開放を求めているわけであります。米国は、米国が開こうとしておる政府調達市場とわが国のそれとが均衡がとれない、こういう主張をしているわけであります。また、最近のわが国の大幅な黒字が背景になっているわけでありまして、米国議会等においては行政府よりも非常に強くこの点を主張しておりまして、対日不満は依然として根強く、その原因の一端として日本の市場が閉鎖的であるとの印象が抱かれており、この観点からも、米国が電電公社の調達に強い関心を持っているものと考えております。私たちは電電公社の言い分もずっと前から絶えず聞いておりまして十分わかっておりまするし、かつまた、この際、日本の電気技術あるいは電電公社が開拓をした諸技術、部品、品物等の品質が低下をしたり、あるいはこれによって非常な攪乱をされたり、これに関連する産業というものが非常な影響を受けてはならぬということは、これまた強くわかっているところであります。しかしながら、一方から言うと、サミット、その前の東京ラウンド、どうしても東京ラウンドは、これはまとめなければならぬという政治的な強い要求があるわけであって、いまのところは日本の市場閉鎖のシンボルとして電電公社の問題が煮詰まってきたという感じでございます。そこで、わが方では絶えず向こうに対する理解を求めるとか、あるいは電電公社の技術者と向こうの技術者と話せばよくわかるのではないかという技術者同士の話し合いをさせた。いまも現に外務省を初め各省、電電公社を初め米国に行って折衝しているわけであります。さらにまたこれに対する努力は続け、どのようにしたならば東京ラウンド収束のために解決ができて、しかも電電公社の方々が言う言い分が通るか、何か方法はないかと苦悩しているというのが現実の状態でございます。  なお、お言葉を返すようでありますが、ヨーロッパ各国の状態を調査したところによりますと、フランス、オランダは指名入札が原則であります。イギリス、デンマークは競争入札と随意入札と両方をやっておるわけでございます。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 諸外国の例でデンマークの例が出ましたが、これはちょっと私も深い事情は知りませんけれども、大体世界的には随意契約だというのが常識になっておるということだけは間違いないのじゃないかと思うのですね。  そこで、いまの大臣の答弁ですけれども日米関係でこの問題がここまでやかましく言われてきたのは、基本的には貿易不均衡が一番大きな原因だと思うのですけれども、そのように理解してよろしいのですか。それと大変苦悩をしておるということなんですが、結論はいつごろまでに出す予定なんですか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりに、大幅黒字がこの背景となり大きな影響を与えることは事実であります。東京ラウンドを考えてなるべく早く結論を出したいと思っておるわけではありますが、事きわめて重大で微妙でありますから、だからといって過早にこれを結論を出すということは、これまた大変な後々悔いを残すことになりますから、その点もまた慎重に苦悩しているところであります。  昨日、ブルメンソール財務長官と総理とのお話、私とブルメンソール財務長官の話は、方針や具体的問題、一切話はしておりませずに、東京ラウンドを待ってひとつなるべく早く解決をしたいが、わが方も努力をするから、あなたの方ももう少し理解をして弾力性ある態度をとってもらいたい、こういうことでありまして、方針や具体的な点が議論されたことはございません。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 貿易の不均衡が一つの大きな原因だと言うのですけれども、これはアメリカの挙げておる数字と日本の挙げておる数字に違いがあるように聞いておりますが、どのように違いがあるのかというのが一つ。  いま一つは、貿易不均衡是正の一つの有力な手段に使うというのですけれども、電通関係日米関係の取引における不均衡と言いますが、その貿易不均衡額はどの程度になっておるのか、これが二つ。  三つ目の問題は、これは大臣も御承知かと思いますが、ジョーンズ・レポートというものが最近出たようでありますけれども、このジョーンズ・レポートによる電電公社の貿易不均衡額はどの程度のものだというふうに報告されておるのか、これも聞かしてほしいと思います。
  18. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  日米の間の一般的な貿易の日本側の黒字につきましては、昨年においてアメリカ側の統計によりますと百十六億ドルということになっておりますし、日本側の通関統計によりますと、たしか百一億ドルぐらいであったというふうに思っております。ただ、ここで御質問のありました電気通信関係資材の日米間の貿易がどういうふうになっているかということにつきましては、これは品目のとり方その他によりまして、ただいまここに具体的な数字はございませんが、ジョーンズ・レポートが申しております電気通信関係の数字を先方の数字で申しますと、七七年の数字でアメリカの対日輸出が四百五十万ドル、それからアメリカ日本からの輸入が三千五百万ドルであったというふうに記憶しております。(「それは売ってくれと言っているんだ、向こうが」と呼ぶ者あり)
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一応その性格は、後ろの不規則発言ではありませんが、ともかくとして、数字そのものからいっても、日米関係の貿易不均衡額が、いま言っておりますように、アメリカの数字を前提にしても百十六億ドル、日本の場合が百一億ドル、それに対して、このジョーンズ報告ではありませんが、いまの日本からアメリカヘ、アメリカから日本へ、この相関関係の差し引き額が、これはラフな数字ですが約三千万ドル。こういうことを見ますと、どうでしょうかね、これは全部解消しても大した額じゃないですね。ですから私は、今日の日米間の貿易不均衡を解消するというのであれば、たまたま財務長官も来られておるわけですから、これは言わずもがなでありますが、アメリカ自身のインフレ政策の中に一つ大きな問題があるのじゃないか。そしてアメリカ自身のいわゆる製品輸出に向けての努力も、率直に言って足らぬのじゃないか。あれだけ日本が昨年あたり円高になっても、結構日本の製品が売れるというのはどういうことなんだ。これはエコノミストじゃなくとも、一般の常識からいってもおかしいじゃないか、これは何か原因があるのじゃないか。それは、アメリカのインフレ政策に一番大きな原因があるのじゃないかというぐらいのことは常識でわかると思うのですよね。そういうインフレ克服に向けての努力もしないで、私から言えば、わずか三千万ドル程度の通信機材に何だかきりもみ式に門戸開放を迫ってくるというのは、どういうことなんだろう。別に特別な政治的意図があるのだろうか。そういうものがあるとすれば、外務大臣あたりからも聞かしてもらいたい。先ほどの公社総裁説明ではありませんが、そういう電気通信事業特殊性、それと、いま指摘いたしております日米関係のこういった貿易収支の現状から見て、わが国政府としてはこの種の不当な要求には断じて応ずるべきでない、こう私は思うわけでありますが、大臣の見解を聞かしてもらいたい。
  20. 園田直

    園田国務大臣 理論的には御指摘のとおりでありまして、仮にこの電電公社の問題を全面的に開放したとしても、黒字に対する影響はごくわずかであります。したがいまして、大幅の黒字をどうやって圧縮していくかということは、今後の経済運営、中期、長期の展望で米国に明確に示すべきであるということは、私からも総理からも言っております。なおまた、米国の方でも努力されるべきである、特に輸出努力その他のことはやられるべきであるということは強く要望をしております。  問題は、そういう背景のもとに、市場閉鎖のシンボルとしてこれが取り上げられるところに問題があるわけでありますので、この点に圧縮をして何らかの解決方法を見出さなければならぬと考えております。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほどからの答弁を聞いておりましても、外務大臣としては非常に歯切れが悪いし、自信がない。いろいろ見方はありましょうけれども、日中平和友好条約に示された園田外務大臣のあの態度なり、物事の筋を通すところは通していくという観点からいけば、なぜアメリカにこれだけ――大臣御自身がいま言ったように、理論的にはそのとおりだ。理論的にそのとおりなものであれば、アメリカという国は、私は合理的な国だと思うのですね。この合理性を非常に尊重するアメリカにおいてなぜそのことが理解できないんだろうか。私はその点では、所管大臣のいま少し責任ある見通し論といいますか、決意といいますか、そういうものを聞かしてほしいと思うのです。
  22. 園田直

    園田国務大臣 米国に対しては、理解を求めるところは十分理解を求め、主張すべきところは十分主張をしてきた経緯は御存じのとおりであります。いまもなおそれに努力をしている最中でございますが、一面では電電公社並びに日本の電機産業のことも一十分理解できるし、一方には東京ラウンドを控えておりますので、歯切れが悪くなっておりますけれども、何らか解決の方法を見出したいと思っております。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 東京サミットなり日米のそれに向けての事前会議等を含めて、ここで断定的なことは言いづらい、きわめて政治的に、そのあたりは半ばぼやかさなくてはいかぬのじゃないかという意味の御発言ですが、私は、この種の問題こそむしろ毅然たる態度で、事前に、これは国民のコンセンサスとしても、国会代表される大多数の意見もそうなんだということを鮮明にすることが、東京サミットの成功のためにもいいんじゃないか、こう思うのですけれども、これはどうでしょうかね。外務大臣だけではそういう最終的な態度決定に向けての意思表明というものはむずかしいと思うのですが、総理どうでしょうか。
  24. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 藤田さんも御案内のように、いま日米両国の二国間の貿易というのは大変膨大なものでございます。したがって、こういう膨大な貿易をやっておる上におきましては、いつの段階におきましても、いろいろな問題が過去において生じておりまするし、今後もそういう問題が生じないという保証はないわけでございます。こういう巨大な貿易を実行いたしておる両当事者の間には、いろいろな悶着が絶えず起こり得るわけでございます。そういう中でどのようにして問題をほぐしていくかという場合は、一つにはやはり国際的なルールというようなものを目安に解決を図っていかなくてはならぬことは当然でございまして、ガットという場面をベースにいろいろなルールが定立されておりますことは御案内のとおりでございまして、そういうラインに沿って日米間が具体的に出てきた問題をどのように解決するかということは、一つの課題であろうと思っておりますが、しかし、それぞれの国はそれぞれ産業構造が違うわけでございまして、すべてのことがユニホームに行われておりますと、そういった場合の問題の解決はやさしいわけでございますけれども、それぞれ固有の、個性的な構造を持っておりますので、一つのルールに従いまして問題は解決するにいたしましても、相互になかなか釈然としない論争が起ってまいるということもあり得ることでございます。  それから、先ほどからも御議論にありましたように、日米間にはいま非常なアンバランスが現にあるわけでございまして、もしそういうものがなければこの問題の出方も違っておったのじゃないか。現実にこういう鋭い貿易のアンバランスが見られておる以上は、日本のマーケットが閉鎖的であるというようなことに対するアメリカ側の不満が爆発しやすい状況にあることは、われわれの警戒しておかなければならぬことと思うのでございます。そういうこともございますので、私どもとしては、こういう問題について具体的に、相互の理解で、相互の互譲で解決したいと存じまして、いま鋭意努力しておるところでございます。  サミットも控えておることでございますし、MTNの終結も急がなければならぬというような状況でございますので、政府としては、こういういま出てきておる問題の解決はできるだけ早くいたしたいと思っています。そして、こういう問題の解決が長引くことによって、MTNの終結が遅くなったり、サミットの雰囲気を悪くしたりする、そのようなことはできるだけ避けたいと考えております。したがって、いま園田外相が申し上げましたように、われわれの方も勉強するけれども、あなたの方も日本立場に対する理解を持ってくれ、それで早く解決しようじゃないかということで、いま御相談を申し上げておるところでございます。  私ども、解決ができない問題とは思いませんし、また、相互の理解によって妥当な解決を図りたいものといませっかく努力をいたしておりますので、遠からず御報告ができることと思いますが、いましばらくわれわれの交渉に時間をかしていただきたいと思っております。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理からあのような答弁があったわけでありますが、私は、決してアメリカだけを責めようとは思いませんけれども、最近のアメリカの対日政策といいますか、貿易不均衡是正に向けて、オレンジを出してきたかと思えば牛肉を出してくる、牛肉を出してきたかと思うと今度は電気通信機材だという形で、これはどこかの評論記事の中にもあったかと思うのですけれども、いけにえのヤギを一匹一匹血祭りに上げるような形でやってくるような、そういう外交交渉のあり方自身に一つ問題があるのじゃないか。  それと、先ほども言ったように、貿易の不均衡というところからこの問題が起こってきたというのであれば、やはりアメリカ自身の国内におけるインフレ政策のまずさをもっと大胆に指摘をする。最近、貿易不均衡と言いますけれども、製品輸入の枠なんかもかれこれ三〇%近くふえたのじゃないか。これは通産大臣責任範囲でしょうけれども、私はそういうふうに枠もふえてきていると思うのですね。そういう中で、なぜ日米関係においてこの問題だけきりもみ的に、いわば政治的圧力をかけるような形で問題を押し込んでくるのか。これはもう何としても、貿易不均衡というその口実以外に別の政治的な意図があるのじゃないか。これをきちっと私どもは見きわめてやらなければ、問題の解決にはならぬと思うわけでありますが、その点についての見解をひとつ聞かせてもらいたい。  それと、いま一つ、時間の関係もありますので、通産大臣にもお尋ねしておきたいのですが、通産大臣は、このアメリカATTは全調達額の二〇%程度がウエスタン・エレクトリック社以外から購入をしておる、約二〇%程度はいわゆる競争入札だ、こういったことを言っておりますね。そして、私、二、三の議事録を見てみますと、わが党の島本虎三議員が去る二月二十七日、この問題を衆議院分科会で尋ねましたところ、これを訂正するような御答弁政府委員の方からあったやに記録されております。ところがまたその後で、通産大臣が依然としてこの三月二日、安島議員質問に対しては、二〇%程度はアメリカATTの場合にはいわゆる競争入札にしているのだというようなことを言っておるのですね。このあたりの食い違いというのはどちらが正しいのか、これをひとつ説明してほしいのと、私は、こういう事実認識を誤っておると、事実認識の誤った中で幾ら交渉してみても、日本の主張なり立場というものを貫くことができないんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  26. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 こういう農産物の問題を取り上げたり、今度の電電の機材調達問題を取り上げたりすることは、何か別な意図があるのじゃなかろうかというようなお話でございますけれども、私どものこれに対処する方針といたしましては、これは経済問題であり、貿易問題でございまして、これを経済問題のベースで、貿易問題のべースで片づけるというようにしないといけないと存じておるわけでございまして、これを一々せんさくいたしまして、原因がどこにあるかというようなことの御指摘でございますけれども、私どもとしてはそういうことでなくて、これは貿易問題のベースで片づけるということに徹したいと存じております。
  27. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 このATTの二〇%というのは、安川特派大使が私ども説明をした数字、それが約二〇%と、こういうわけです。  そこで、いま御質問の次第でございまするが、最近大木審議官報告によりましても、米政府側に問いただしたところ、ATTを含む通信企業全体の調達というものは三十億ドルから四十億ドルである、したがって、自社ないし系列以外からの調達というのはやはり一五ないし二〇%、こういうことを言っておるわけでありまして、必ずしもこの数字が間違っておるというふうには私思いません。そういう報告を、改めていま向こうへ行っておりまする大木君から公電で入ってきた、こういうわけであります。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 本来なれば、いまのこの数字の違いというようなものをきちっと確かめないと、これは責任ある審議もあるいは交渉もできないと私は思うのですが、これはどうですか、電電公社総裁、いまの通産大臣のお答えは、電電公社でお調べになっておる資料からいって大分違うと思うのですが、私どもの手元の資料ではうんとその枠が少ないということになっておりますが、どうでしょうか。
  29. 秋草篤二

    秋草説明員 ATT昭和五十二年の全資材調達額は九十一億ドルでありまして、そのうち八六%、七十八億ドルでございますが、これをウエスタン・エレクトリックから、あと残りの、十三億ドルでございますが、一四%をウエスタン・エレクトリック以外の会社から買っております。その一五%ということはそう大きな間違いではございません。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの答弁を聞いても、通産大臣のお答えのこの二割と一四とでは大分違うと思うのですね。こういうときには、私はやはり一つの数字も物を言うと思うのですよ。だから私は、通産大臣、そういう立場で、二〇%ぐらいはやっておるんだから、アメリカの例をとってもやっておるんだから、その程度は開放せざるを得ぬじゃないか、そういうお気持ちで通産大臣が折衝されておるということになると、私はちょっとこの問題だけでも問題が大きくなると同時に、今日のわが国の置かれておる雇用情勢の中で――少し私のこの問題自体の持ち時間をオーバーしておるのですけれども電電公社との取引をやっておる会社というのは大企業だけでなくて中小企業が非常に多いというふうに聞いています。そうすると、枠は二〇%と言うけれども、この二〇%の波及するものはどこへ来るのだろうかということを考えると、中小企業にしわが寄ってくる。そのことが雇用問題にも深刻な影響を与えてくるのじゃないだろうか、こういうことを考えると、この数字の扱いについても私は慎重を期してもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  31. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私は直接交渉には当たっておりません。お尋ねがあったからATTはこの程度は随契で、一方またその系列以外からも調達しておるということをお答えしたわけです。それでいまのこの資料も、正式の公電ですから必ずしもそんな信用のできぬ資料じゃないと思いますよ。しかも米政府側がATTについて表明した数字というのが六億一千八百万ドルを、これは一五から二〇%というものを系列以外から調達をしております、こういう報告になっておるわけですから、私は質問者に対して、前の二〇%というのも安川特派大使がわれわれに言うたその報告をもとにして、お尋ねがあるから申し上げたわけで、それを根拠にして折衝はしていない、それはどうぞ御了承願いたいと思います。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 通産大臣のいまの答弁はきわめて事務的というか、私は直接交渉に当たってないのだから、質問があったから答弁したのだ、こう言いますけれども、一国の通産大臣がこの種の問題について、極端に言えば二割程度はオープンにしてもいいのだというようなことを援護射撃するような形で、たとえばアメリカにプラスになるように、日米関係で言えば、損得からいけば日本にとって不利になるようなことをどんどんアドバルーンを上げていけば、それは直接交渉に当たっておる外務大臣にしたって、交渉に当たっておる者にとっては、これはむずかしい条件になってもやりやすい条件にはならないのじゃないでしょうか。そういう点から、いまの数字の問題についても電電公社自身が専門的にお調べになっておることと、同じ政府機関であってそういうふうに基本的な調査の数字が違うなんということはおかしいと思うのですよ。そのあたりの調整が、これだけ問題になっておるのになぜできないのでしょうか。そんなことで正しい意味における日本の国益というものは守られるでしょうか、どうでしょうか。
  33. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私の答え方に言葉の足りないところがあったら、ぜひこれは御了解願いたいと思いまするが、私は最近入ってきた公電に基づいていま申し上げたわけです。しかもこういうこともあるのですよ。輸入は一億三千万ドルだ、これは全体の三・二五%から四・三%程度、そのうちの四五%が日本のシェアである、これが約六千万ドルということですか、こういう報告もあるわけで、これは最近の公電ですから、もとより電電側にも伝わっておるというふうに私は思います。何も私が二〇%というて二〇%を強要するその問題とはまたおのずと別ですから、目下交渉をやっておるわけです。私はむしろここで力を入れて答弁をしたことは、本来議員が一々出向くものではないが、ジョーンズ報告に基づいて、特にアメリカ議会筋が日本の電電問題について怒りを発しておる。それならばひとつわが方の議員も向こうへ行って、議員同士というのはまた別な角度で話もできますから、アメリカへ行くことも望ましい、こういうことを言っておるわけでございまして、今後雇用の問題等々と絡み合わせて慎重であるべきはもとよりだと思います。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この問題はこの程度にいたしますけれども、少なくとも、不当な政治的圧力に屈してわが国の正しい意味における国益が損なわれないように、堂々とわが国の正当な主張というものを展開して、そして現行の制度が維持できるように、そういう方向でベストを尽くしてもらうことを要請いたしておきます。  次に、私は財政問題とインフレ、物価問題に少し時間を割きたいと思いますが、財政問題については、ここ一カ月余りの予算審議を通じて少し資料も用意したのでございますが、インフレ、物価問題に少しきょうは時間を割きたいと思いますので、結論的なことだけをひとつ申し上げたいと思うのであります。  その前に、大平総理、あなたは五十年秋の臨時国会で、国債発行の問題についてどういう財政演説をなさったか御記憶ありますか。――時間の関係もありますし、いきなりそんなことを申し上げても、思い出せと言っても無理でしょうが、こういうことを言われておりますね。これは、私ももちろん大蔵委員をやっておりましてなにしたのでございますが、「もし、やすきについて財源の調達を公債の多額な増発に依存するようなことになれば、著しい公債の累増を招き、財政の健全性は失われることになります。」「特例公債に依存しない堅実な財政にできるだけ早く復帰するよう、あらゆる努力を傾注する所存であります。」こういうふうに財政演説をなさったわけです。この新聞の記事によりますと、ここは私は定かではありませんが、この報ずるところによりますと、「大平首相は、五十四年度予算案を決める前後二回の臨時閣議で、金子蔵相の説明に終始沈黙し、一言の感想さえ漏らさなかった」こういうふうに報じられておりますが、この当時といまの現状、これは私自身もこの予算委員会財政問題全般について質問したところでありますが、この当時と比較しても、わが国の財政というものは相当深刻な度合いを深めておると思うのですが、その認識についてはどうでしょうか。
  35. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおり深刻の度を加えておるという認識を深めております。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういう基本的な認識の上に立って、五十四年度の予算審議が、一応予算委員会においては終盤の段階に差しかかっておるわけでありますが、政府は、この五十四年度予算をもって財政再建の足がかりができたというふうにお考えでしょうか、どうでしょうか。
  37. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 足がかりが全部できたとは考えておりません。足がかりの一部に手がついたという程度だと心得ております。
  38. 藤田高敏

    藤田(高)委員 足がかりができたというその認識自身がむしろ危ないのじゃないか。そういう楽観的な考え方を持たれると、今日までの予算審議を通して明らかになりましたように、真の意味における財政再建というものはむしろむずかしくなってくるのではないか、こう私は思うのですが、どうでしょうか。
  39. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せになる意味は、いま政府がやっておる歳出についての経常経費を抑圧していく、節減していくということ、歳入につきましては、いま現行税制上問題になっておる、不公平と言われておる特別措置をかなり是正していくというようなことで果たして財政再建の足がかりが完全につかめた、このラインを推し進めていけば財政再建に到達するのであるという認識であるかと問われれば、私はそうは考えていないということでございます。ほんの一部に手がついた程度でございまして、さらに相当歳入歳出両面にわたりまして抜本的な改革のメスを入れないと再建のめどをつかむことはとうていできないと考えております。
  40. 藤田高敏

    藤田(高)委員 抜本的なメスを入れるというメスの入れる角度といいますか条件といいますか、そういうものは大きく分けて幾つぐらい考えておられますか、どういう条件を考えておられますか。
  41. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 これは歳出歳入両面にわたってやらなければならぬわけでございます。  歳出面につきましては、経常経費を節減していくやり方をもっともっと彫り深く進めていかなければならぬと思います。  歳入面におきましては、従来やってまいりました現行税制の見直しというようなものでは、とうてい赤字公債を脱却するというような財政状況を招来することはできませんので、新たな歳入源を求める措置を講じなければならない。現行税制の増税によって賄うか、新しい税目を考えるかということでございますが、方向としては、主なる柱はやはり新しい税目を想定せざるを得ないのではないかという展望は持っております。
  42. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の持ち時間からいって、この問題を深く議論を展開することのできないことを残念に思うわけでありますが、私は過般の予算審議でも申し上げましたが、非常に憂慮いたしますのは、政府財政見通しなり一応財政収支試算に盛られた計画からいっても、五十九年度に赤字国債を発行しないというところを一つのポイントにして、そしてそれまでの国債発行をどうするかというようなことを軸として財政計画をお立てになっておるわけでありますが、私、先般も指摘したように、五十九年度までももちろんだけれども、むしろ赤字国債を発行しなくなった以降、国債費が非常にかさんでくる。そして、たとえば昭和六十年だったら六十年の一つの局面を見ても、赤字国債は出さないという計画にしておるけれども、建設国債は十三兆円余り出すのに対して国債費が十一兆円からになるわけですね。八〇%になる。これはまさに借金を借金で返すというサラ金財政もいいところですね。そういう状態が出てくるわけですから、先ほどの冒頭、私が昭和五十年の総理の大蔵大臣当時の財政演説をあえて披露しましたけれども、これはよほどの腹を決めて財政再建に取り組まなければ、今日の財政需要を、一定の歳出を抑制する、これは議論のあるところですけれども政府のやろうとしておるのは増税型と歳出抑制型のパターンで乗り切ろうとしておるのですけれども、とてもじゃないがいまのままいけばインフレが高進して、ますます赤字が増大するようなことになり得るのじゃないか。そういう立場から言いましても、歳出構造についてはそれこそ根本的なメスを入れる、そして、過般私も指摘したつもりでありますが、予算編成のあり方についても、ゼロ査定方式というようなものを現実のものとして生かされないかどうかということを来年の、来年と申しますのは五十五年、五十五年の予算編成に向けては真剣に考えてみる、あるいは不公平税制の是正は、これは総理の言葉ではございませんが、革命的な手法をもってやる、あるいは建設国債については、建設国債はいいのだという考え方、公共事業に向けていく公債であるから、建設公債で財源の足らざるものは補っていけばいいじゃないかという考え方、この考え方にも根本的なメスを加えていく、こういうことを、予算審議の締めくくりに当たって、私は特に政府に対して強調したいと思うのです。  私の気持ちからいけば、この財政再建の問題は、大変失礼な言い分でありますが、内閣一つや二つつぶれても財政再建にすべてをかけるのだというくらいな決意で、今日の財政再建に向けてベストを尽くしてほしい、私はこう思いますが、その決意のほどを伺って、次へ進みたいと思います。
  43. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま藤田委員が仰せになりました再建に向けてのとるべき方策、歳出歳入、それから建設公債も含めまして、いま言明されましたことにつきましてはおおむね私も同感に存ずるわけでございます。問題は、それを実行する手だてをどのようにしてつくり上げていくかということでございまして、政府・与党といたしましても十分に考えなければいかぬことでございますけれども、野党、とりわけ第一党の野党に対しましては、全幅の御協力を願いたいと思います。
  44. 藤田高敏

    藤田(高)委員 野党第一党の社会党にまで大変な激励をいただいて、ありがとうございました。ひとつ私どもも真剣にこの財政再建の問題については取り組んでまいりたいと思います。  さて私、きょうの、自分としては本題とも言うべきインフレ、物価問題について質問をしたいのでありますが、その前に、今日のインフレ、物価問題にも直接かかわり合いを持つ海外要因の中で一番大きな問題は、原油価格の値上げの問題じゃなかろうか。けさの新聞ではございませんが、OPEC加盟の産油国は、十三カ国のうち十二カ国までが、さらに昨年OPECの一四・五%の値上げの上に上積みをするような動きが顕著にあらわれてきておる、このことは、ひとり中近東を中心とする産油国だけの動向ではなくて、マレーシアその他の非OPEC産油国にまでそういう状態が起こっておるということが報道されております。この状態が石油製品に、あるいはわが国の物価情勢なりインフレ問題にどのような影響を与えてくるのだろうか、この見通しについて、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  45. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 いまわれわれが、これからの卸売物価の上昇一・六%程度というふうに見込んでおります中に、OPECの年間平均一割の値上げを入れて計算をいたしております。私らは、現在起こっておりまする最近の情勢につきまして、決して楽観をしているわけではございません。また、いま委員指摘のような値上げの方向が徐々に動きつつあることは十分承知しておりますが、われわれの物価の政策の中で、こうした値上げが一挙に消費者物価の方に波及しないように、先般来政府挙げての総合的な政策推進を決定いたして、きめ細かくそのフォローをこれからやっていくわけであります。  もう一つには、やはり円高の影響が、今年度の前半にはなお相当影響力を持っているというようなことも基礎に考えておるわけでございます。しかし、そうした情勢でありましても、これからの物価の動向につきましては、やはり十分注視をし、また物価の安定の基本線が貫かれるように万全の努力をいたしてまいりたいと思っております。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 政府は、五十四年度の消費者物価のアップ率は大体四・九というふうに想定しておりますが、今後、原油の値上げによって、この四・九%の中に含まれる原油価格の上昇率というのは、消費者物価指数では〇・三%、卸売物価では〇・七というふうに想定をしていると思うのですね。これがいまの原油価格の引き上げが起こっておる状態の中では、かなり狂ってくるのじゃないか、こう思うわけですが、数字的に一応想定できるものがあるとすれば、どの程度と見込まれておりましょうか。
  47. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 われわれの消費者物価に対する影響の計算の中には、いま委員のおっしゃいましたOPEC値上げ分の〇・三というもの、並びに〇・三上がることによるその他の波及的なものも含めて計算をしておるわけでございまして、いま言われておるような原油価格の引き上げというものが、さらにこれを非常に大幅に突き上げてくるものというふうには、現在は予想しておりません。  また同時に、石油関連の価格引き上げと申しましょうか、一種の便乗と申しましょうか、そうしたことに対しましては、やや神経質に過ぎるほど各省挙げて、それぞれその値上げに対しての自重を求め、あるいは値上げをいたしましても、その波及ができるだけ小範囲に影響するという努力をいま払っておるところでありまして、それの計数的な把握というものは現在まだやっておらないわけでございます。
  48. 藤田高敏

    藤田(高)委員 余り影響がないというような御答弁であったと思うのですが、そこのところちょっとわかりにくかったのですけれども、そうではなくて、消費者物価にかなり影響が出てくるのじゃないでしょうか。
  49. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 全く影響がないというふうには考えておりません。もちろん相当の影響があるかもしれないというわけでございますが、その影響が出るのが大体今年の六月以降、あるいは七月ごろからあらわれるかもしれないという点を予測いたしまして、なるべく強い影響の出ないような方策、そしてまた同時に、幸いなことにまだ相当の備蓄もございますので、そうした諸点を総合的に運営しながら、影響の極力少ないような方向に指導してまいりたい、そのように考えております。
  50. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは私ども一つの試算でございますけれども、いまのイランを中心とするOPECの原油の上積み値上げといいますか、この状態は、政府が想定しておる卸売物価あるいは消費者物価よりは、約二倍程度の影響が出てくるのではないか、こういうふうに見るわけであります。それ以上に影響が出てくるというふうに見るわけですが、その見通しについての判断はどうでしょうか。  いまの経企庁長官のなにを聞いておりますと、ちょうどもう春闘時分でございますので、いろいろ物価が上がるとかなんとかいうことになると、春闘に一つの心理的な影響を与えるのじゃないかというようなことで、わかり切ったことでも春闘が終わるまでは抑えていくというような思惑さえ秘められておるように、私ちょっと勘ぐるわけでありますが、この種の問題はそういうことでなくて、上がるべきものは上がるだろうということを率直に国民に知らしていくということが大切ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  51. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 まず第一点でございますが、そうした状態が春闘などに影響するのではないかというお話でございますが、私は全くそういうことは考えておらないわけでございます。  それから、現在唱えられておりまするスポットの原油価格の値上げの希望が表明されているというわけでございますから、これが現実の契約になって、そして買い入れ価格にきちっと反映する時点、それはやはりわれわれは押さえませんと、少し早まってしまうこともあるのではないかと思います。それは見方によれば、のんびりし過ぎているではないかというふうにお考えになるかもしれませんが、われわれはその時点で、スポットのものあるいは本契約にそれがどの程度本当に反映するか、同時にわれわれとしましては、消費国の連合体をもって、こうしたスポット的なものが本契約にまで波及することを極力防ぐ。そのためには、非常につらいことであっても、石油の消費の大幅な節減をひとつ連合してやろうではないかというような決まりをやっているわけでございまして、スポット価格即直ちに日本の全体の原油の取得価格になるというものでもないというふうに考えておるわけでございます。
  52. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一応物価問題に関連をする素材として、そういうことだということを承っておきます。  ところで、時間の関係もございますので、まとめてお尋ねをいたしたいと思いますが、このインフレ、物価高の徴候として、どういうものが今日顕著にあらわれてきておるかという一つの指標としては、マネーサプライの増大がここ七カ月来、いわば危険水域になってきているという問題。あるいは卸売物価が、これまた年率で一番――二月の推定数字からいいましても、かれこれ年率で一〇%程度、前月対比で〇・八というような状態ですね。あるいはミニ過剰流動性が、これまた一つの危険状態になりつつある。こういうようなことが条件として指摘できると思うのですけれども、このM2の最近の動向なり、あるいはそのM2増大の最大の原因はどこにあるのか、卸売物価がこのように上昇してきておるのは、これまた原因はどこにあるのか、あるいはミニ過剰流動性がこういうふうにふえてきておるのは、これまたどういうことが原因なのか、そのあたりについて、それぞれ所管大臣から聞かしてもらいたいと思います。
  53. 金子一平

    金子(一)国務大臣 マネーサプライについての御指摘がございましたが、お話しのとおり、昨年の初めまでは低下を続けたのでございますけれども、暮れから一二%前後で推移いたしてまいっております。これは今日の経済活動全般の水準から見たら大体妥当な水準で、私どもはいまのところすぐこれが景気過熱につながるとは決して考えておりません。大体名目GNPに一、二%プラスしたところが世間ではよく適当な水準だということも言われますけれども、これだけで景気全般の動きを、あるいは景気過熱の動きを推定することは私どもはむずかしいのではなかろうか。一つの基準としてこれの動きを見守ることは大事なことであるとは考えております。それは結局、経済が大分大きくなってきておるというところにその根本原因があるのだろうと思います。  それから過剰流動性の問題でございますけれどもお話しのように株式市場が大分値を上げております。これは事業会社の余剰資金と申しますか、設備投資に回らない、回さない金がいま株式の方へ流入しているというような問題がございまして、そういう動きが出ておるのだろうと思います。土地、地価に対する影響等につきましても当委員会でもしばしば御指摘がございましたので、これは今日、大きな仮需要が起こっているとは私どもは決して考えておりませんけれども、必要な警告措置はとっておる次第でございます。  それから卸売物価の動きにつきましては、これは企画庁からお話があるかもしれませんけれども、海外の輸入資材、特に木材とか非鉄金属とかが大分上がってきたとか、あるいは円高基調で推移しておりましたもの、がだんだんその効果が薄れてきたというところに原因があるのでございまして、今後私どもは景気と同時に物価の動きについてもよく注意してまいらなければならぬと考えてはおりますが、いま非常に危ない状況であるとは考えておりません。
  54. 藤田高敏

    藤田(高)委員 マネーサプライの問題については、ここ七カ月来こういうふうに連騰を続けておるわけですが、大臣の答弁によりますと、このことによって経済に過熱状態が起こるとは考えてない、こういうわけでありますが、そのことだけでどうこうなるということを言おうと思いません。しかし日銀あたりのいままでの定説として言われてきたことは、成長率プラス二ないし二・五程度の指数といいますか数字が出てくると、インフレ、物価面から見て、これは危険水域、警戒水域に入ったと見なければならぬというのが従来の定説であったと思うのですが、これはどうでしょうか。日銀からお見えになっておりましょうか。日銀から見たこの見方について聞かしてほしい。
  55. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 先般来森永総裁たちといろいろこの問題について話し合いましたが、日銀当局の判断でございますと、大体一二%程度のところは、それが直ちにインフレヘの転化になるという判断はまだそれほど持っておらないということで、われわれは一応話をしておるわけであります。
  56. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは私の手違いで日銀の代表を呼んでなかったようでありますけれども、私どもの見る限りにおいては、マネーサプライがこういうふうに一二%台に乗っかってきた。また卸売物価が昨年の十一月を転機にずっと上昇してきた。地価についても、これは時間の関係で具体的な数字は余り申し上げませんが、全国平均で見ましても、住宅地のごときは、全国平均でも東京都圏を中心としたところを見ても、一昨年の二倍ぐらいに上がってきておりますね。これは国土庁長官もお見えでありますが、大体そういう数字が出てきておるというようなことをあれこれ総合いたしますと、物価問題について、昨日ブルメンソール長官と経企庁長官の何か対談か会談かの経過が出ておりましたが、経企庁長官はいまインフレ、物価高抑制に向けての具体的な手だてをするようなことは急ぐつもりはない、こういうことを言ったと言っておるのでありますが、私どもは、もちろん下手に抑制策をとりますと、せっかく景気が上向きになってきておるものに水をぶっかけるという問題があると思うのですけれども、しかしインフレ、物価高の傾向としては、いま指摘をしておるようなところに具体的にインフレが強まってくるような状態が出ておるということになれば、これは日銀は日銀において、あるいは大蔵当局は大蔵当局において、やはり私は一つの予防的な措置をとるという、そういう政治的な姿勢は必要じゃないかと思うのです。  そういう観点から、きょうは日銀からはお見えになっていないようでありますが、大蔵大臣代表されるあるいは国土庁長官代表される、予防的措置としてどういうものをお考えになっておるかというものを聞かしてほしいと思います。
  57. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいまの段階で、すぐいろいろな手を打つ必要はないということを私どもは考えておるのでございますけれども、とにかく経済は生き物でございますし、物価は今後どういう状況になるかということは常時よく見定めていかなければなりません。非常に過熱するというようなことになりましたら、それに応じて適切な措置を機敏に機動的にとってまいりたいと考えております。
  58. 藤田高敏

    藤田(高)委員 具体的には買いオペ、売りオペに対する公開市場操作の問題もありましょうし、あるいは公定歩合の引き上げの問題もありましょうし、預金準備率の引き上げの問題等、これは日銀の直接所管になることかもわかりませんが、その種の問題、あるいは大蔵当局とすれば銀行に対する、金融機関に対する窓口規制の問題とか、あるいは土地融資の抑制指導、こういうものについては今日段階においても十分留意をして、その対応策のタイミングを誤らないようにこれはぜひやってもらいたい、私はこのことを強く要請をいたしておきます。  それと同時に、物価値上げの大きな要因になっておりますのは不況カルテルの問題じゃないかと思うのです。時間もありませんので率直にお尋ねしますが、過日、わが党の平林委員からも質問をいたしましたが、現在実施中のカルテルは大きく分けて四品目残っておると思うのですが、私が指摘するようなインフレ、物価高の情勢が強まる中で、現在実施中のカルテルについては、今後、期限としては三月末までのものあるいは四月末までのものもありますが、これらについてどういう措置を講じられようとしておるのか。これは公取委員長からお答えをいただきたい。  いま一つの問題は、まだ公共料金がたくさん値上げの予定にありますけれども、こういうインフレムードが強まってきた段階では、公共料金の値上げについても、できれば一時ストップできるものはストップする、ストップするところまでいかないものは、その値上げ幅あるいは時期、そういうものについて再検討する、こういうことが国民生活を守るという立場から私は大変大切ではないかと思うのですが、この公共料金の値上げ抑制について、今後の措置と見通しについて経企庁長官にお尋ねをいたしたい。  いま一つは、トラックの過積み規制の問題に関連するわけでありますが、これは実質的にそこから資材の値上がりが来ておるのか、本当にそこに原因があるのかどうかという追跡調査をしてみなければわからない要素もありますけれども、一般的な情勢としては、トラックの過積み規制から相当建設資材についての値上がりがあると言われておりますが、その現状はどうなのか。この過積み規制を緩和するというわけにはいかぬとすれば、この過積み規制によって現実に資材なり物資が上がっておるとすれば、それを抑制するための手だてとしては、政府はどういうものを考えているのか、これらについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  59. 橋口收

    ○橋口政府委員 現在実施中の不況カルテルは四品目でございますが、そのうち三品目、品目名を申し上げますと、合成繊維、合成繊維用の染料、アルミニウム地金、これは三月末に期限が参ります。それから四月末に両更クラフト紙の期限が参るわけでございます。  現在における判断といたしまして、三月末の三品目のうちの染料につきましては、恐らくは延長の申請がないだろうという見通しを持っております。残りの二品目、合成繊維とアルミニウム地金でございますが、これにつきましては業界の内部でいろいろ検討がなされておるように承知をいたしておりまして、申請をすべきか、断念をすべきか、いろいろ議論があるようでございます。私どもといたしましては、内々の御相談もいただいておるのでございますが、市況もよくなってまいってきておりますし、原価の方も下がってまいってきておりますので、できれば卒業していただきたいという気持ちを持っておりますが、これはまだ多少時間もございますので、業界から申請が出ました場合には、厳重に、また慎重に審査をいたしたいというふうに考えております。  それから四月末の両更クラフト紙は、四品目の中では一番厳しい条件の中にあるようでございますが、これはまだ一月以上も時間がございますから、今後の需給の状態、市価の動向等十分注意してまいりたいというふうに考えております。
  60. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 公共料金につきましては、御指摘のように、これは非常に物価に対する影響が大きい。したがいまして、二月の二十六日の物価政策の総合的推進という政府の申し合わせにもございますように、厳正な査定態度で臨むことと、また公企体その他すべての合理化を進めてもらうということで進んでまいりたい、こういう基本的な方針を決めております。  具体的には、予算費目といたしまして、たばこの値上げ、これは五月から、また国鉄の値上げも、やはり財政上の問題でございますので一応五月二十日からということで計算をいたしております。それから現在御審議をいただいております健保の改正による薬剤費の半額負担、こうしたものも一応予算費目として五十四年度には考えておるところでございます。国立大学の授業料等の引き上げ、これは六万円から八万円ということです。  以上が大体五十四年度におきまして考えられているものでございますが、これで〇・八程度の上昇という予定でございます。もちろん、国鉄などにつきましては特に実施時期をずらすことと、さらに徹底した企業の赤字対策を進めることを条件に運輸大臣に御努力を願っておるところでございますが、さらに二月に米価の改定がございました。これが四・二%の値上げでございまして、これが物価には〇・一程度の影響等々でございまして、われわれといたしましては、公共料金につきまして政府責任で決定いたすものにつきましては、以上の品目以上はふやす考えはございません。また、同時に、実施するにいたしましても、それぞれ大いに工夫をしていただくということでございます。  さらに電力料、ガス料金でございますが、差益還元で割引をいたしておりましたが、これが三月で終わりますが、現在、石油事情その他で相当に原料高ということも予測されておりますけれども政府といたしましては、通産大臣の御指導の中で電力、ガス料金は今年度は据え置くという方向を強くとる方針でございます。なお、タクシー料金その他につきましては、運輸大臣のところでさらに十分検討してそれに対応する。  ただ、心配いたしておりますことは、地方の自治体が認可するいわゆる公共料金的なものでございまして、これらにつきましても先般自治大臣を通じまして、特に地方自治体に対しての認可すべき公共料金的なものについての自粛をお願いをするということ等で、あくまで公共料金全般の大幅な値上げあるいはメジロ押しと言われることをわれわれとしては極力避けてまいりたい。そのための政治努力を傾注をしてまいりたいと思うものでございます。  一応そうしたことから、消費者物価の値上がりとしまして四・九%を維持するという、その母体としての公共料金の位置づけをいたしているわけでございまして、二月二十六日に決めました総合的な物価政策というものは、お尋ねのマネーサプライも含め、またカルテル問題も含め、非常に幅広く実施をして、物価安定に全力を傾けてまいりたい、そのように考えております。
  61. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お尋ねの過積み規制の強化によりまして輸送コストが上がった、これは地域差もありますが、確かに骨材等品目によりましては若干上昇傾向が見られます。私ども通産省としては、コストの上昇分の販売価格への適正な転嫁、これはどうもいたし方ないと考えますが、かりそめにも便乗値上げということがあれば、これはひとつ必要に応じて関係業界を指導していきたいというふうに思います。  なお、公共事業の円滑な推進を図るために、従来から通産省内に公共事業関連物資需給等対策本部というものを設けております。したがって、よく品物、その動向などを見定めまして、適時指導をしてまいりたいというふうに考えます。
  62. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これで時間がまいりましたので終わりますが、率直に申し上げて、政府の四・九%という消費者物価の見通しは、私はもう今日段階ではかなり狂ってきているのじゃないか、こう思いますので、どうかひとつインフレマインドを抑えていくためにも、いま御答弁のありましたような、特に公共料金等につきましては、一応値上げを考えておるから時期が来ればやるのだということではなくて、この段階では再検討してみる、あるいは不況カルテルの問題についても、いまの現実に置かれておる業種の立場もありますけれども、物価問題という観点から特にひとつ留意をして政策執行をやってもらいたいということを強く要望いたしまして、質問を終わります。
  63. 竹下登

    竹下委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、まず初めに予算修正問題についてお伺いしたいと思います。  まず総理にお伺いをいたしますが、わが党と民社党、両党から五十四年度予算につきましてその修正を要求いたしてまいりました。自民党との折衝の経過につきましては、その都度大平総理は逐一お聞き及びと思います。われわれの予算修正要求に対し予算の修正をしないという断を下されたのは、総理、総裁としての立場において大平総理が断を下されたと認識しております。  そこで大平総理に確認をしておきたいと思います。  まず、われわれの要求に対しまして、どのような決意でその実現に臨まれるか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  65. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府としては、現に御審議をいただいております五十四年度予算が最善のものと考え、御提案したところでありまして、各党の御理解をいただけるよう念願いたしております。  しかしながら、公明党、民社党の両党から修正の御要求があり、これに対しまして自民党としての回答を両党に対し文書で示した経緯につきましては、政府としても承知いたしております。このような経緯を踏まえまして、政府としても自民党の回答内容について今後誠意をもって検討を進め、適切に対処してまいりたいと考えております。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 雇用対策の強化につきましては、現状の雇用情勢並びに急速な高齢化社会の進行を背景にいたしまして、きわめて重要な課題であります。  われわれはとりわけ、一つ、労働市場センターの機能の充実、二つ、雇用発展職種研究開発委員会の地方設置、三つに定年延長奨励金、さらに四つとして、基本的な問題としての定年延長推進にかかわる雇用等に関する年齢差別を一定要件を定めて禁止する立法化の問題等を要求したのでありますが、総理としてどのように対処されるのか、承りたいと思います。
  67. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 雇用対策はきわめて重要な問題であり、御審議願っておりまする五十四年度予算におきましても最も重点を置きました事項の一つでございますが、自民党の方でも、特に雇用について種々御検討の結果回答をお示しになったものと承っております。このような経緯を踏まえまして、政府としても今後誠意をもって検討を進め、適切に対処してまいりたいと存じます。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 第三点目として、年金等の改定についてであります。われわれとしては、老齢福祉年金を本年八月から月額二万円に引き上げることを初め、その他の福祉年金、さらに五年年金、十年年金を引き上げ、これらに連動する一連の諸策の給付水準引き上げを要求したのでありますが、いかに対処されるか、承りたいと思います。いずれも社会的に弱い立場にある人々の生活の現状から見て切実な課題であります。以上、御答弁をお願いいたします。
  69. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 老齢福祉年金等の改定につきましても種々お話を進めておられるようでありますが、この間の経緯を踏まえまして、政府としても検討を進め、適切に対処していきたいと存じます。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 第四番目として、住宅宅地対策は、地価安定とともにその拡充は国民がひとしく要望するところであります。そのため、われわれは住宅宅地関連公共施設整備促進事業費の増額、それから住宅金融公庫の融資限度額の増額並びに融資戸数の増加を要求しておりますが、これについていかに対処されますか、承りたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 住宅宅地対策の重要性もよく認識いたしております。住宅宅地関連公共施設整備促進事業費の増額など自民党の示した回答につきましても検討を進め、誠意をもって適切に対処してまいりたいと存じます。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 第五点目として、窮迫する国民生活の現状から国民生活を守り、かつ経済の側面から見て、個人消費支出を確保することは重要であるという見地から、所得税の物価調整減税並びに住民税減税の増額を要求いたしましたが、これに対して総理はいかに対処されるのか、いずれも具体的に御答弁を承りたいのであります。
  73. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政の状況が御高承のとおりであり、財政健全化が国民生活の健全な発展の上でも非常に重要な課題となっておりますので、このような時期に減税を行いますことは、所得税につきましても、住民税につきましても適当ではないと存じますので、何分御理解をいただきたいと存じます。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 減税等につきましては、さらにまたよく政府で御検討いただきたいと思います。誠意ある実行というものをいま私たちは強く要望いたす次第でございます。  次に、外交問題についてお伺いしたいと思います。  中国政府は五日、ベトナムからの全面撤兵を宣言いたしたわけでございますが、この中越紛争の今後の見通しをどのように見ておられるかという問題であります。この五日、ベトナムは、ベトナム人民に戦闘態勢に入れと指示をしておるようでございますが、特にこのベトナムの中国撤兵に対する行動というものは注目されるわけでございます。こうした点を踏まえていただきまして御答弁をお願いしたいと思います。
  75. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  御承知のとおりに、昨五日の夜九時、中国は新華社を通じて、ベトナムからの中国軍の撤退を正式に公表いたしました。それに先立ち、わが国には内報があったわけであります。しかしながら、五日から撤退開始をしたというだけでありまして、その後の行動についてはまだわかりません。一方、同じ日にベトナムは総動員令を下令し、外国の在外公館に対しては、防空ごうの設置、薬品、食糧の備蓄、老人、婦女子の他国への避難等を勧告したような状態でございます。中国が撤退するにいたしましても、戦闘において撤退作戦は一番困難な、しかも不測の事態が出る戦闘でありまして、やはり撤退するについては、戦闘行動を続けながら撤退するとすれば、攻勢防御というようなことも考えられますし、果たしてこれがどのようになるか、ここ二、三日大事に見守らなければならぬと考えておるところでございます。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 中国の撤兵完了というものにつきましてはどのぐらいの期間を要すると見ておられるのか。中国は国境会談を再び提案をいたしまして、ベトナムも中国軍の撤退を前提条件としてきたことからも、この話し合いの可能性も十分あり得るのではないか、このように思うわけですが、政府としての見通しはどのようにお持ちか、お伺いをしたいと思います。
  77. 園田直

    園田国務大臣 撤退がいかような形で行われ、いつ完了するかは、中国自体も相手のベトナムの出方次第である、こう言っておるわけでありますが、戦闘のことでありますから、両方がどのような出方をするか、これによって決まることでありまして、現在見通しをつけるというわけにはまいりません。  ただ、日本政府は、ベトナムは中国が撤退したら話し合いに応ずる、こう言っているし、中国は撤退して話し合いをやる、こう言っているわけでありますから、撤退作戦において無益な殺傷がないように、即時話し合いによって戦闘行動を停止をする、そして撤退、話し合い、こういうふうにやられるように日本は希望するところでありまして、両国には強く要望し、かつまた、平和解決のために日本が何かできることがあればという気持ちでおるわけでございます。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 外相がおっしゃいましたように、政府としては話し合いで解決できるようにしてもらいたい、こういう希望を持っておられるわけでございますが、それを実現するためにこの両政府に呼びかけをし、あるいは仲介するなど、何らかの具体的な外交措置というものをお考えになっておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  79. 園田直

    園田国務大臣 できるだけの努力はしたいと思っておりますが、いま進行中でございますから、その内容はお許しを願いたいと存じます。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 日中平和友好条約の締結あるいは米中国交回復、こういうことがございまして、ソ連のわが国に対するかなり厳しい姿勢というものをいろいろな点で感じるわけでございますが、そういう中でこの中越の武力紛争等も起きておるわけでございまして、わが国を取り巻く環境というものはきわめて厳しいと思うのです。  そこで、農林大臣に、また外務大臣にもお伺いしたいと思いますが、北洋漁業の問題で、サケ・マス交渉というものが近くまた行われるわけでございますが、そういう背景から考えまして、相当厳しいものになるおそれがあるのではないかと思うわけですが、この点につきまして、交渉の見通し等につきましてお伺いをしたいと思います。
  81. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御指摘のような複雑な国際情勢というものの影響のあることは事実だと思いますか、しかし、われわれとしては鋭意努力をして、いままでの既得権である北洋におけるサケ・マス漁業の確保については万全の対策を立ててまいりたい、かように考えております。
  82. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御質問でございますが、日中友好条約締結後、この締結は日中が協力をしてソ連に対抗するものでないということは絶えず機会をとらえてソ連側には説明をいたしております。  ソ連と日本の間では、経済問題その他の実務的問題はわりに順調に進んでおります。したがいまして、この漁業交渉も農林大臣とよく緊密に連絡をしつつ、かかる政治的影響を受けることなく実務的に進むように、今後とも最善の努力をいたしますけれども、御承知のごとく、漁業の国際環境情勢は非常に厳しいわけでありまして、見通しとしてはなかなか大変なものであると想像いたしております。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 ソ連は沖取りの全面禁止を要求してくるのではないかという予測も一部にされておるわけでございますが、まさかそういうような最悪の事態というものはあり得ないとは思うわけでございますが、政府としてはどういう見方をされておるか、もしもそういうような最悪の事態に立ち至った場合、政府として対策はどのようにお立てになっておられるか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  84. 森整治

    ○森政府委員 大臣御答弁いただきましたように、非常に厳しい情勢でございますが、極力わが方の伝統的な漁業についての立場をもう一回よく理解していただくように交渉を進めるということで、当面はそういう強い態度で臨んでまいるほか、そういう方針交渉をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府としては、非常に厳しいそうした情勢で、ございますので、十分な対処ができるようにひとつがんばっていただきたい、このように思います。これは漁民にとりましても死活の問題になるわけでございます。国民にとりましてもこれは非常に大きな影響のある問題でございます。政府の万全の取り組みを強く要望いたしておきます。  それから、外務大臣は一日の本委員会におきまして、日ソ経済関係の真の建設的発展というものは、四島返還でソ連が柔軟な態度を示すことが前提だと述べておられるわけですが、このことは、四島返還がなければ真の日ソ友好協力関係が結べないということなんですか。
  86. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 もし、この四島返還問題を将来交渉することを日ソ間で確約されるならば、日ソ平和条約の交渉に入り得るということは言えるわけですか。
  88. 園田直

    園田国務大臣 日本国民の悲願は四島の返還でありまして、これは一貫した変わらざることでございます。したがいまして、四島返還問題に対する領土問題に対し、ソ連がこれを話し合うかあるいは誠意をもって解決するかの態度があれば、その他の問題についてもこちらは弾力的に対応すべきものだと考えております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、経済問題等に入っていきたいと思います。  いよいよ年度末に近づいてまいりまして、政府といたしましても、五十三年度の経済というものはほぼ終わりに近づいてきたわけです。  そこで、この経済の実績につきましてほぼつかんでおられると思うのです。経済成長率の問題あるいは物価、経常収支等々、政府の経済見通し、当初見通し、改定見通しございましたが、それと比べてどれぐらい達成できたか、御答弁をいただきたいと思います。
  90. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 経済成長率についてでございますが、国内の方の情勢はだんだんとよろしいのでありますが、やはり輸出が円高によって相当減ったこと、また逆に輸入が製品輸入も含めまして相当に増加しておりまして、そうした関連でプラスマイナスになっておりますが、全体としては大体政府の見通しの線に沿って着実に成長を続けているという判断をいましております。  経常収支につきましても、国内の内需振興の政策の浸透や円高の影響によって、いま申し上げましたように輸出が減退し輸入がふえるということ等によりまして、黒字幅は着実な縮小傾向にございまして、大体五十三年度の政府実績見込みはほぼ達成される方向にあると考えます。  なお、物価につきましては、現時点で推定いたしますと、予定では卸売物価はマイナス二・六%程度、消費者物価は四%程度上昇ということでございましたが、五十三年の四月から五十四年の一月までの実績を見ますと、卸売物価の前年同月比は上昇率はマイナス二・七%程度、消費者物価のそれは三・六%程度となっておりまして、今後の動向を考えましても、卸売物価がマイナス二・六%程度、消費者物価が大体四%をやや下回るという予測を現在持っているところであります。  なお御参考までに、現在の生産状況その他も一応一月のものがございますので御報告いたしてもよろしゅうございますが、また後ほどさせていただきます。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 経企庁長官いまおっしゃったように、引き続いて御答弁ください。きょうは与えられた時間が少ないものですから、余り長くならないように簡潔にお願いします。
  92. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 大臣が先ほど申し上げました以外の点について申し上げますと、鉱工業生産指数は五十三年度見込みが六・三でございまして、五十四年一月の対前年同月比は七%になっております。それから稼働率は、正式の見通しには出しておりませんが、この予算委員会で申し上げましたが、五十三年度の実績見込みは指数で一一三でございますが、ことしの一月が一一五・二、それから就業者の増加数が当初の見通しが六十七万人で、一月現在の一年前に対する増加は百四万人になっております。失業者数は百三十万人という見通しに対しまして、この一月百十五万人、失業率は見通しが二・三%に対しまして、この一月二・〇六になっております。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣と局長の方から御答弁いただいたわけでございますが、この景気動向につきまして、そうした実績を踏まえて経企庁としてはどのようにごらんになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  94. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 簡単に申し上げますと、だんだんと国内経済は順調な上昇が始まってきておる。また、民間経済も相当に設備投資等にも動意を見せてきておる。ただ、問題なのは、卸売物価がやや上昇を続けてきておるということ、これは特に海外要因及び現在の世界情勢等によることが大きな動因だと思いますが、こうしたことから、物価への情勢が大きく変化しつつあるというような認識に立っておりまして、国内の方の状態はだんだんとよろしいのでありますが、われわれとしましては、当面物価に対しての政策を十分整えてまいりたい。そのために二月二十六日に、物価政策の総合的推進という政府全体を挙げての対策を出発させたところでございまして、物価動向には特段の配慮をしつつ、かつ景気の上昇機運を損なわないように、非常に幅の狭い選択でございますが、努力をしてまいるつもりであります。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 景気は若干上向きの状態に入った、総括してそのようにおっしゃったわけでございますが、そうなってきますと、企業収益というものは、一部を除きまして、経済紙等報道するところを見ましても、三月期はかなり増益になるのではないかと思うわけですが、この企業収益動向について、政府としてはどのように見ておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  96. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 ごく最近発表されました日本銀行の短期経済観測資料によりますと、製造業の売上高経常利益率は五十二年上期が三・五四で、五十四年上期の予測が三・八七になっております。利益の水準としましては、五十三年上期が、四十八年上期つまり前回のピークを一〇〇にいたしまして八八・一でございます、が、五十四年上期には一〇一と大体四十八年上期の水準に戻ります。  それから非製造業につきましては、売上高経常利益率が、五十三年上期が一・五〇で、五十四年上期の予測が一・三九、同じく利益の水準を四十八年上期を一〇〇にいたしますと、五十三年上期が一二六・八、五十四年上期は予測が一二三・四となって収益の回復が着実に見られます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 この企業収益の動向に伴いまして、増益ということになってまいりますと、税収は当然増加してくるわけですが、大蔵省としては昭和五十三年度税収についてどういう見通しを持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  98. 金子一平

    金子(一)国務大臣 昨年暮れまではやっとかっと見積もりに届くか届かぬかという危惧の念を持っておったのでございますが、最近の活発な企業活動、それに伴う企業収益の増加によって、若干上回る程度になるのじゃなかろうかというようないま見通しを立てておる状況でございます。もう少ししてみないと的確な見通しは立ちませんけれども、まあ予算見積もりいっぱいいっぱいのところはいけますよ、こういうところでございます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 若干余る程度とおっしゃったわけですが、いま経企庁等の報告を聞きますと、かなり上向いておる。大蔵大臣としては若干余る程度だとおっしゃっておるのですけれども、若干と言っても国民にとれば幾らが若干かわからぬわけですからお答えいただきたい。
  100. 金子一平

    金子(一)国務大臣 実は、一番大きな源泉所得税が相当マイナスになっております。それから、税収のキーポイントになりますのは、いま申告期なんですが、この申告所得税が一体どうなるか、これが実はまだわかっていないわけです。まあ法人の方は少しくらいはプラスになるのじゃなかろうかと思っておるのでございますけれども、そこら辺の見通しがもう少し立ちませんと、本年度の税収全般の的確な把握ができないというのが正直な姿でございます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 企業収益のこういう動向からいたしまして、今後の経済運営によりましては、この前大蔵省が財政収支試算をお出しになった、いわゆる増税路線というものをお考えになっておられるわけでございますが、これがこういう増収ということになってまいりますと、税制全般を見直しをして、いま大蔵省が考えておられる一般消費税の導入であるとかそういうようなことについては、これはやめる方向で当然私は考えていく必要があるのじゃないかと思うのです。この点、根本的な税制のあり方というものを考えなければいけないのではないか、このように思うのです。いかがでございますか。
  102. 金子一平

    金子(一)国務大臣 五十四年度の税収見積もりは、政府の経済見通しの線に沿って見ているわけでございまして、来年度の経済見通しが果たしてどういう動きになるかはこれからのことでございます。特に税収の計算の基礎になるのは、新年度は五月からでございますので、いまから的確な予測を立てることは困難だと思います。私どもとしましては、しかし内外の諸情勢の変化によって経済見通しに大きな変化がなければ、大体見積もりの歳入予算は確保できるのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 景気が明るさを取り戻してきた、総合的なそういう計数に基づく御答弁もあったわけでございますが、しかし、それはあくまで全般的な問題でありまして、御承知のように中小企業というのは連続四十カ月以上、一千件以上の倒産を示しておるわけです。特にこの三月、御承知のように年度末というようなことになってまいりまして、私もいろいろとそういうリサーチのそういうところにも聞いておりますが、千三百から千五百件ぐらいになるのじゃないか、そういう非常に厳しい見通しが出ているわけですね。こういうことで私は中小企業の問題というのは非常に大事な問題だと思うのです。そこで、年度末にかけまして中小企業の倒産が再び増大する心配がある。ここで政府としては私はやはり何らかの手当てをしなければいけないと思うのです。これにつきましてひとつお伺いをしたいと思います。
  104. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 五十三年の倒産件数は、負債金額ともに昭和五十二年を下回る水準であります。五十四年に入っても倒産件数は十四カ月連続して対前年同月比減少を続けております。基調的には減少傾向にありますし、また、そういう見方は正しいと私ども認識しておりまするが、二月には、新聞等にも報道されました林紡績それからパシフィック通商、こういった大型倒産が発生しましたために、負債金額全体で見ますると相当な金額になるというふうに推定されまするが、倒産件数は前年同月を下回るものというふうに考えます。  しからば今後の対策いかん、これは、お示しのように年度末というのはやはり決済が集中する季節でもありまするので、この景気をどう持続させるか、これが私どもにとっては一番重要な根本的問題というふうに考えております。そのためにあらゆる総合的な手を打っていくわけでありまするが、やはり各種の中小企業施策をきめ細かに運用して、極力倒産を防止したいというふうに考えます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に金融の問題がやはり何といいましても緊急の問題だと思います。そこで、特に政府系の金融機関あるいは民間金融機関等に対しても、政府としてはそれだけの要請をする必要があろうかと思うのです。その点、政府としてどういう対策をとっていかれるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  106. 金子一平

    金子(一)国務大臣 中小企業のこれからの動向につきましては私どもも非常に大きな関心を持っておりますので、政府系金融機関はもちろんでございますけれども、特に中小企業関係の機関に対しましては、その資金供給等につきまして万全を期するように、十分の連携をとって配慮してまいりたいと考えております。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府の、大蔵大臣姿勢も前向きでいいと思いますが、それじゃ具体的にどれだけの金を用意されるのですか。
  108. 左近友三郎

    ○左近政府委員 年度末対策といたしましては、資金的には現在余裕がございますので、むしろきめ細かい対策が必要ではないかということでございまして、実は昨年も政府系中小企業金融機関等につきまして指示をいたしたところでございますが、今年もこの年度末対策といたしまして、中小企業倒産対策の緊急融資等を機動的に実施することとか、あるいは各業種、各地域の実情を十分考慮して適宜適切な貸し出しを行うこととか、その他こういう政府系金融機関としての心構えを大蔵省と私の方で共同して指示をしてまいりたい、指導してまいりたいというふうに考えておりますし、また、民間の金融を円滑にするためには信用補完制度の一層の円滑化を図る必要がございますので、各県にございます信用保証協会に対しても、迅速な保証の審査だとか、担保徴求の弾力化というようなものを指導してまいりたいというふうに考えておりますので、そういうふうな一連のきめ細かい指導をいたしまして年度末対策に支障のないようにいたしたいというふうに考えております。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 倒産防止対策というものはかなり活用されておるという方向で私も聞いておるわけです。ところが、そうした対策というものは年度末三月三十一日でほとんど期限が来るわけですね。期限切れになるわけです。たとえば円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、これは三月末で切れるのです。この法律に基づきまして円高緊急融資あるいは保証する、こういうことが切れるわけです。さらに倒産対策緊急融資制度、これは不況業種等を指定して貸し付けるわけですが、これも三月三十一日で切れるのですね。それから特定不況地域中小企業対策臨時措置法、これに基づく特定不況地域対策緊急融資、同じく保証、これも三月三十一日で切れます。いわゆる城下町法と言われるものです。こういう問題、これをこの末で切らしていいかという問題ですね。さらに既往金利の引き下げ措置、これがことしの四月三十日までの実施期限になっております。これも非常に心配な問題であります。こういう問題を放置しておきますと中小企業はまた大変ひどい状態になるわけですが、日にちが迫ってきておるわけでございまして、政府としてはいかにお考えであるか、お伺いをしたいと思います。
  110. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お示しの点は全く大事だと思うのです。しかも景気が構造不況業種を除きましては回復路線に入ったというときに、中小企業全般を見渡しますると、必ずしもまだ十分とは言えません刀したがって、いまお示しのありましたそれぞれの期間延長について、通産省としては全部延長をしたいと考えまして関係省庁と目下調整中、こういうところでございます。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはぜひ延長して、中小企業を守るために政府としては努力していただきたい、このように思います。その方向でやるとおっしゃっておりますから、実行していただきたい、これを要望しておきます。  そして、倒産防止対策というものは引き続き必要と考えるわけでございますが、五十四年度におきましてさらに一歩前進したものをお考えであるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  112. 左近友三郎

    ○左近政府委員 倒産防止対策といたしましては、今後なお一層強力に実施いたしたいと思いまして、従来からの方策のまず拡充ということで、政府系中小企業三金融機関につきまして、貸し付け規模の拡大あるいは貸し付け限度の引き上げというふうな金融対策を実施するとともに、各種の行政指導を実施するつもりでございますが、特に五十四年度からは全国のとりあえず七十二の商工会議所に倒産防止特別相談室というものを設置いたしまして、倒産のおそれのある中小企業の方から申し出を受けまして、いろいろな倒産を防止するための方策を指導する、場合によってはいろいろな倒産を防止するためのあっせんをするというふうな制度を開きまして、従来は連鎖倒産防止ということが主体でございましたが、今回は中小企業自体の倒産についてもいろいろ相談に乗って、事前に防止するという対策を実施していきたいというふうに考えておりまして、予算も用意をしておるところでございます。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 これだけの不況が続いたわけでございまして、どちらかといいますと政府の施策というものは何かその都度その都度、船に穴があいて、そこに継ぎはぎをするというような、そういう対策であったように思うのです。やはりそういうその場その場を応急にやっていくという対策、それももちろん必要なんです。それをやらなければ沈没するわけですから。と同時に、やはり中長期的な中小企業対策というものが私は必要じゃないかと思います。そういう点、五十四年度等においてはそういう考えに立った施策というものについて考えておられるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  114. 左近友三郎

    ○左近政府委員 御指摘のとおり、中小企業対策といたしましては、当面の緊急対策も必要でございますが、国際的、国内的な経済の転換に対処した中長期的な対策が必要であろうかというふうに考えまして、来年度といたしましては、中小企業の産地を中心といたしまして、その産地について今後の新しい活路を切り開くための対策を考えてみようというように考えておりまして、実は各産地におきましても、現在産地の組合を中心に、新製品を開発するとか、新しい市場を開発するというようなことによって、新生面を切り開きたいという要望も相当強いわけでございますので、その一般の中小企業の方々の要望にこたえて、新しい法律、産地中小企業の振興を図るための法律をつくりまして助成をしてまいりたいというふうに考えておりまして、現在法案について関係方面といろいろ相談中でございますので、なるべく早く国会にも提出して御審議を受けたいというように考えております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 市中銀行の金利が非常に下がっておるわけでございますが、政府系の中小企業金融機関というものは非常に基準金利に縛られておるわけでございまして、貸出金利というものが割り高になっておる、こういう状況はもう皆さん御承知だと思いますが、そこで全般的に貸出金利というものを引き下げる、そういうお考えはないのか、強く要望したいと思うのですが、いかがでございますか。
  116. 金子一平

    金子(一)国務大臣 近江さんも御承知のとおり、政府系金融機関の原資は郵便貯金だものですから、コストが高くついておって、現在の七分一厘、なかなか下げられないというような問題もございます。それで、しかも市中金利はいま最低の線まで行っておるものですから、どんどん下がってきておる、そこで乖離があるということでございますが、私どももこの問題についてはこれからも十分ひとつ検討していかなければいかぬという感じを持っております。いますぐ、それでは下げますよと言うことはできませんけれども、この乖離を何とかして埋めることを考えなければいかぬという気持ちでおることだけ申し上げておきます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは中小企業問題につきましては、何といいましても日本経済を支える大事な基盤でございますし、またそこで働く人たちも圧倒的に多いわけですから、政府としては十分な対策をとっていただきたいと思うのです。本来なら中小企業省というものがあってもいいわけなんですよね、これは。そういう点で、政府として中小企業に最大の取り組みをしていただきたい。中小企業問題の締めくくりとして、総理から中小企業に対する決意をお伺いしたいと思います。
  118. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 わが国における産業の中で数において圧倒的に多いし、また実力において半分以上の力を持った中小企業でございます。この機能が十分でなければ、大企業が占めておる経済活動につきましても十全を期することができないわけでございまして、わが国の経済を支える重要な柱であると承知いたしております。したがって、中小企業対策は政治経済政策の中で最重点の施策と心得て、政府といたしましては、金融、税制、産業、労働万般にわたりまして周到な配慮を加えてまいるつもりであります。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 物価の問題をお聞きしたいと思います。  暖冬異変ということで野菜等は非常に安かった、こういうようなことで、消費者物価につきましては比較的安定しておるように思うのですが、最近の卸売物価の上げ調を見ましても、土地の値上がり等を見ましても非常に心配であります。さらに政府みずから公共料金の引き上げをやっている。本来この公共料金などというものは、物価が上がってくる、どうしても立ち行かないということで慎重に判断をして、政府として国民の皆さんにお願いしたいという姿勢で来るのが私は本当だと思うのです。にもかかわらず真っ先に公共料金を引き上げてくる、政府のそういう姿勢というものがやはり物価上昇の大きな火つけになる、このように私は思うわけです。政府としてもその辺を若干気づいてきたのかどうか知りませんが、この間八項目のいわゆる対策をお立てになったわけです。「物価対策の総合的推進について」これは二月二十六日、物価担当官会議でおまとめになった。これは一項目ずつお聞きしていけばかなり時間がかかりますから、進捗状況につきまして簡潔にポイントをお答えいただきたいと思うのです。これは経企庁長官ですね。
  120. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 八項目に対しましてはもうすでに御承知のことだと存じますので、その進捗状態というものを一応まとめて申し上げたいと思います。なお詳細につきましては担当省大臣がお答え申し上げるのがいいと思いますが、大まかに申しますと、第一項目におきましては、認識でございますけれども、物価情勢に大きな注意すべき情勢変化が来たという認識に立っておるわけでございまして、政府としましては早目早目に対策を打つということを中心に、二月二十六日に物価対策の総合的推進というものを決めたわけでございます。  第一は重要物資に関連しておることでございますが、これにつきましては特に在庫調査というものをすでにやっておりますが、特段に今後は在庫の状態というものを十分把握すること、それから需給状態、仮需要であるかないか、そうしたことについての克明なフォローをすでに始めております。  それから石油製品についてでございますが、これは便乗値上げがあり得るということはだれも予測するところでございまして、特にこの便乗値上げに関することについては厳重に監視をしていく。さらにそれが聞かれぬ場合には所要の要請を強く行うということで、すでにこれは通産当局その他においてやってもらっております。  それから通貨の供給量でございますが、これはやはりM2ということをフォローし、日銀はすでにこれについて具体的にきわめて慎重に行動を開始しております。  ただいま御指摘の暖冬異変等による食料品につきましては、農林当局できわめて詳細な対策をとっておりますし、またこの決定に従いまして、牛肉の枠の五千トン輸入を増加するという措置をやってくれております。詳細は農林大臣から申し上げる方がいいと思います。  それから、さらに円高に伴う物価対策の推進でございますが、これなども大体円高の消費者還元ということがいろいろな面で推進する方向をとっておりますが、なお数社の数種の製品につきましては、世界的な独占体系等によりまして円高のメリットがなかなか製品には移らないものもございまして、こうしたものについて先般来努力をいたしておるところでございます。  公共料金につきましては、先ほどのお話のとおりの考え方でわれわれといたしましては、現在予算に計上してあるもの以外には、これ以上公共料金については本年度は考えないということ。同時にまた、地方自治体においても、公共料金に準ずるものについての処置につきましては政府と同一歩調で厳重に査定をし、また企業努力を要請するということに進んでいくことを自治省を中心にすでに展開をしてもらっております。  地価につきましては、日銀を中心といたしまして投機的な状態についての調査を、報告をすでにとっておりまして、大体その方向が徐々に明確になってきておるということ。同時にまた国土庁におきましても、地価対策についての具体的な取り組みをすでに始めつつあるところでございます。  なお、カルテルによる問題につきましては、二月に二品目がカルテルの認可期限が終了いたしました。外装用のライナーと中しん原紙でございますが、さらに残っておるものが四品目になりまして、これは公正取引委員会から委員長の話のとおり、これらについての慎重な運営を現在進めておるところであります。  いずれにいたしましても、この物価対策は官民一体とならなければなりませんので、国民の御理解を得、そしてまた政府も早目早目に全力を傾けてこれら八項目の推進に努力をしてまいりたい、そのような所存でございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 八項目を詰めますと、これは何時間かかるかわかりませんので、そこまではできませんが、概略御報告いただいたわけでありますが、特に農林大臣に私はお伺いしたいのです。第四項目にございますが、牛肉については云々と出ておりますね。牛肉は非常に目玉になっておるわけです。最近牛肉の消費につきましては非常に伸びてきている。これだけ円高が続いてきたわけですね。ですから消費者としては、もっと牛肉が下がっていいのじゃないか。これは国会でも委員会のたびにこの問題は、大臣に対して要請もし問題点を指摘してきたわけでございますが、最近のそういう需要も伸びてきておるし、しかしもっと何とか安くならないか。この価格を下げるということ、量の供給ということ、これは国民として私は切実な要求じゃないかと思うのです。農林大臣、一番こういう点は敏感に国民に反映する問題なのです。どういう対策をもってこの牛肉を安くしかも量を豊かに安定供給をしていかれるのか、その対策についてお伺いしたいと思います。
  122. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、牛肉につきましては国内産のものと輸入肉と両方あるわけです。輸入肉についてはもっと下げてもいいじゃないか、こういうような御意見でございまして、われわれといたしましても極力下げたいところでございますが、これを余り下げると結局国内産が下がってしまう。そこに非常にむずかしい問題があって、いま農家の方では、野菜は御承知のとおり暴落しておって、手取りが非常に少ない、そういうような問題が一方にあります。したがって、われわれは牛肉についてはここ一年間ほとんど値上がりはさせない。大体牛肉の国内産ですと、去年のいまごろ百グラム三百十円ですが、和牛でいまも三百十円。輸入肉が百七十円でずっといまも百七十円。ほかの物価は二、三%みんな上がっておりますが、これについては上げないように、いろいろな生産の合理化、流通の改善その他をやっておるところであります。もう少し国内産の体制を強化をしながら、輸入牛肉の面についてはいろいろと方途を講じてまいりたいと考えております。値上がりだけはさせないように、極力努力をしてまいるつもりであります。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 現状維持では国民は納得しないのですよ。それはそれなりに農林省としても努力はされておる。それはわかるわけですが、やはりそれを現状じゃなくしてさらに下げてもらいたい。これだけの円高の背景もあり飼料も安くなってきているわけですし、最近は円もかなりきておるわけでございますけれども、しかしもっと、政府はやっていただいているのだけれども国民がもっと納得できる、なるほどと言えるような、そういうさらに一段の努力が欲しい。これは国民の声なのです。ですから、いまこれ以上上げないように努力をする。それも努力だとは思いますが、全体としては物価もじりじり上げ調の中にあって、今後上げないとおっしゃっている。私は一つの戦いだと思います。しかしそれをさらに引き下げる、こういう努力はやっていかなければいけないと思うのです。それについては大臣いかがですか。
  124. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 全くそのとおりでございます。最大限の努力をいたします。  ただ、国内産の牛肉は、御承知のとおり十八カ月というような長い肥育の期間が必要なわけです。オーストラリア産の牛肉は、山の中へ行って牛をつかまえてきて、ぽかっと殺せばそれでいいというわけですから、実際のところこれは全然比較にならないわけなんです。グラスフェッドですから草しか食わしてない。したがって、それが入ってきて安い値段のまま売りますと、大量に売ればもちろん下がるのです。下がるのですが、国内産もそれにつられて下がってしまう。そこで生産者がやっといま牛肉の本格生産に乗り出したやさきなもので、実際頭が非常に痛いわけであります。しかし、御趣旨はごもっともでありますし、ですから国内産の肉は仕方がない、そういうふうな手数のかかるものだから。外国産の肉はもっと下げてもいいのじゃないか。それは間違わないでくださいよ、これは外国産、これは国内産、こっちは高いのはあたりまえ、こっちは安いのはあたりまえというようなことを少しPRをして、そこでおかしなことが行われないような工夫を何かひとつ考えたい、そう思っております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはひとつ農林省、農林水産大臣だけではなく総理もひとつ、国民の大きな声でございますから、取り組んでいただきたい、このように思います。物価問題というのは実に対策はいろいろとあるわけでございます。総合的な取り組みをしていかなければいけない問題であります。  そこで私は、公正取引委員会にお伺いしたいと思うわけでございますが、最近いろいろと動きをなさっておられることも私は知っております。そこで何点か具体的な問題についてお伺いをしたいと考えております。流通部門の実態解明に最近動いておられるわけでございますが、流通問題に取り組んでおられる、そういう目的ですね。さらに私は、最終的には十九条を受けまして不公正取引の一般指定の見直し、こういうところまでいかなければいけないのじゃないか、このように思うのです。その点、公取委員長としてはどのようにお考えであるか、お聞きしたいと思います。
  126. 橋口收

    ○橋口政府委員 公正取引委員会は流通問題に本格的に取り組んでおるわけでございますが、ねらいと申しますか、理由といたしましては、第一には産業構造の変化ということがあろうかと思います。産業構造の中に占める製造業のウエートが下がりまして、非製造業の分野のウエートが高まってきているという事情がございます。非製造業の中でもなかんずく流通問題が一番緊要性が高いというように考えているわけでございます。それからやや短期的に申しますと、経済の成長パターンの変化ということがございます。高度成長の時代には、いわゆる成長の成果の分配につきまして不公正感というものはそれほど強くなかったと思うのでございますけれども、成長の率が下がってまいりますと、成長の成果について公正な分配ということがどうしても必要になってくるわけでございまして、流通過程に何らかの障害がございますと公正な分配ができない、そういう短期的な経済の成長パターンの変化ということをベースにいたしまして流通問題に取り組んでおるわけでございます。  取り組みの姿勢といたしましては、現在八品目についての実態の調査をいたしておるわけでございまして、さらにいわゆる独占禁止法の研究会というものを設けまして、学者の先生方にお集まりいただきまして、流通上の問題点につきましての解明をしていただいておるわけでございます。その際の姿勢としまして、独占禁止法第十九条の不公正な取引方法の一般指定について見直しが必要ではないか、こういう御意見でございますが、昭和二十八年に制定をされましてから四分の一世紀以上経過をいたしておりまして、運用の行政体系等から申しますと、いまの一般指定は大変よくできているとは思いますが、しかし最近の事態に合わない面もあるように感ぜられます。ただ、運用の姿勢といたしましては、たとえば十号の優越的地位の乱用につきまして従来以上に強い姿勢で臨んでおるわけでございまして、規定は規定としまして、運用面の改善もあわせてやっておるわけでございますので、いまの段階で一般指定を必ず変える、こういう前提なり展望を持って作業をやっているわけではございませんが、いまの実態調査の結果あるいは研究会の成果によっては、あるいは一般指定についても再検討を加えるということも十分に予想されるところでございます。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 流通問題に関連してお聞きしたいと思いますが、さきに二月二十一日、本委員会で公正取引委員長は、二十二社の百貨店、スーパーから押しつけ販売、協賛金等の実情について事情聴取を行うということを明言されたわけでございますが、事情聴取の段取りがついているのかどうかということが一つ、さらに押しつけ販売、協賛金等につきましては特殊指定をしていくべきであると私は考えるわけですが、そういう用意があるかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  128. 橋口收

    ○橋口政府委員 百貨店十六カ店、それからスーパー六カ店、合計二十二カ店につきまして今週から事情聴取に入っておるところでございまして、これは事前に先方に通知をいたしまして、今週から事情調査を開始いたしております。その場合、百貨店につきましては、名のある百貨店はほとんど網羅をいたしておりますし、スーパーにつきましては、アンケート調査の結果として比較的成績のよくないものを取り上げて対象にいたしております。そういう意味では十分段取りはつけてあるつもりでございます。  それで、将来の問題としまして、百貨店の押しつけ販売あるいは協賛金要求等に関して何らかの特殊指定が必要ではないか、こういう御指摘でございますが、これはいわゆる三越に対する独占禁止法の適用の問題について現在審査の最中でございますし、二十二の百貨店、スーパーについての事情聴取も現在行っている最中でございますので、その結果を見まして何らかの措置が必要であれば、これはいろいろな方法があろうかと思います。たとえば公正取引委員会がガイドラインを示すという方法もあると思いますし、また百貨店あるいはチェーンストア協会等で何らかの申し合わせをしていただきまして、これを公正取引委員会が審査して承認するというやり方もあろうと思いますし、また特殊指定という方法も考えられるところでございまして、いずれにいたしましても、ことしの秋ごろまでには何らかの成案を得たいということで現在作業をいたしておる最中でございます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員会として自動車メーカーのディーラーに対する押し込み販売について調査を続けておられるということを若干聞いておるわけでございますが、今日まで判明した実情というものを簡潔にひとつお答えをいただきたいと思うのです。さらに、この実態を踏まえて是正策というものにつきましてどのようにお考えであるか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  130. 橋口收

    ○橋口政府委員 自動車産業につきましては、昭和四十七年以来調査をいたしておるところでございますが、最近になりまして第二回の調査を行っておる最中でございます。これも、先ほど申し上げましたように、流通の過程に何らかの問題があるのではないか、そういう観点から、経済的強者としての自動車産業あるいは自動車販売株式会社、こういうものの行動につきまして、ディーラーに対して行き過ぎたコントロール行為があるのではないか、こういう問題意識を持って調査をいたしておるところでございまして、具体的に申しますと五つほど問題があるというふうに考えております。  第一は専売店制でございます。第二はテリトリー制、第三が押し込み販売の実態。これは責任販売台数というのが専門用語でございますが、責任販売台数が行き過ぎますと、これはいわゆる押し込み販売に該当するわけでございますから、第三の問題としては押し込み販売の実態の究明。第四がリベート政策であります。高額リベートの操作によりましてディーラーをコントロールすることは可能でございますから、リベート政策の実態。それから金融の手段としての白地手形というのがございます。これは、無記名の手形をディーラーがメーカーないしは自販会社に預けるという行為がございます。こういうことの弊害があるかないか、こういう点から第二回の調査をやっておるわけでございまして、簡単に現在まで判明したところを申し上げますと、千四百五十通発送いたしまして千三百二十二通の回収がございました。回収率は九一%で、大変良好でございます。  主な内容でございますが、一社当たりの資本金は八千百万円でございます。それから従業員数は二百三十一名、そのうちセールスマンは六十六名、年間の総売上額は一社当たり約五十億円でございます。それから支店の数は一社当たり大体六・六カ店、七カ店弱ということでございます。それからメーカーあるいは販売会社から役員を派遣している店がどのくらいあるかということでございますが、大体全体の四割にはメーカーあるいは販売会社が役員を派遣いたしております。それから、先ほど申し上げました責任販売台数が設定されているものは大体全体の九割四分でございます。ほとんど責任販売台数が設定されている。この責任販売台数の設定につきまして、全部消化しなくてもいいというものは四割くらいでございまして、六割は責任販売台数は引き受けなければいけないというような実態になっております。それから白地手形は全体の四六%がメーカーに預託をしているというのが実態でございまして、そのほか一カ店一車種というようなことについてもいろいろ不平不満があるようでございます。  概要は以上のとおりでございます。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近、どうも石油製品等の流通等におきまして滞っているのじゃないかという声をちょこちょこ聞くわけでございますが、町工場等では原材料が非常に手に入りにくいというような声も耳にするわけですが、公取としてそういうようなことは聞いておりませんか。これはどうですか。もしそういうことがあるとするならば、そこには不公正な取引が介在しているのではないか、そういう心配をするのですが、そういう点、公取としてはやはり十分な監視の目を向けておく必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  132. 橋口收

    ○橋口政府委員 景気が上昇過程に入りまして、物資の需給がやや緊張状態になりますと、メーカー等が共同行為によりまして出荷を妨害するとかあるいは出荷を停止するとか、そういう現象が一般的に見られるわけでございまして、おっしゃいますように、いままさにそういう状態にあるやに推察されますので、具体的な事実等につきましては十分承知をいたしておりませんが、公正取引委員会関係の下請事業者の協議団体等もございますので、よく話を聞いてみたいと思いますし、また、そういう情報の提供いかんにかかわらず、幅広く情報の網の目を張りまして、もしそういう独禁法違反のことがあれば、これは機を逸せず適当な処置をとりたいというふうに考えております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 前の狂乱物価のときに、私はやみカルテルの実態を明らかにして政府に独禁法の改正を迫ったわけでございます。曲がりなりにも皆さんの御協力で独禁法の改正が済んだわけでございますが、このやみカルテルというのは不況の子とも言われておるわけですが、最近若干摘発が減少しておるように私は思うのです。公取委員会としては改正独禁法の抑止効果が出ておるという立場をとっておられるように思うわけでございますが、必ずしもそうとは言えないということもあるのじゃないか思うのです。非常に巧妙な手口でやみカルテルがまかり通っているのじゃないか、こういううわさも非常に出てきておるわけです。じりじりと最近はそういうように製品の値上げに動こうとしておる状態があるわけでございますし、やみカルテル等の監視、これにつきましては強化する、こういう必要があろうかと思うわけでございますが、公取委員長の御見解、決意を承りたいと思います。
  134. 橋口收

    ○橋口政府委員 いわゆるやみカルテル、違法カルテルの摘発の件数は、この一年ぐらいかなり減ってきております。近江先生おっしゃいましたように、われわれといたしましては改正独禁法で抑止効果が十分働いていると評価をいたしておるわけでございますが、先ほど来お示しがございますような経済情勢、物資の需給の状態でもございますので、違法なカルテルが発生しました場合には、もちろんこれを摘発いたしますと同時に、課徴金をかけるということにつきましても、十分な体制を整備してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 十分な取り組みを強く要望いたしておきます。  それから、特に日米間の問題におきましても、貿易の問題一つ見ましても日本は黒字である、こういうようなことで、日米間に非常に摩擦も起きてきておるわけです。そういう中で政府としても何とか経常収支黒字減らしに努力されておる、それはわかるわけでございます。しかし、たとえば、緊急の輸入対策、こういうことにつきましても、私は本当に効果というものはそれであるのか、国際収支対策として有効であるかどうか、こういう問題をよく踏まえて、ただ、ばたばたと、とにかく責められるから減らさなければいけないのだ、そういう姿勢だけでいいのかということを申し上げたいと思うのです。  たとえば緊急の輸入問題は、全般としていずれ輸入される財であるならば、一時的に輸入が早まるだけで、その後輸入の減少となるという問題があります。意図的に輸入増大を図るために、緊急外貨貸し制度という財政上の負担を招いておらないか、輸入需要期でないときに輸入することにより、市場への圧力、市場のひずみをもたらすおそれがないか、こういうような問題もあるわけですね。  そこで、本委員会におきましても、私は緊急輸入の状況等をお聞きいたしました。これは二月七日の日にお聞きしたわけでございます。そういう中で、私、この中身というものをいろいろ見てきたわけでございますが、たとえば民間航空機の緊急輸入、当初計画で二十二機、六億八千五百万ドル、追加計画三機で一億三千万ドル、合計二十五機で八億一千五百万ドル、すべて輸入契約を締結して、輸入時期、五十四年度引き渡し二十三機、七億七千七百万ドル、五十五年度引き渡し二機、三千八百万ドル、こういうようになっておるのですね。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そうしますと、私はここで考えなければいけない問題があると思うのです。それは、輸銀が金を貸しているわけでございますが、お聞きしたいのは、航空機のリース料です。リース料というのは年八・二五%、輸銀の貸付金利が六%ですね、その差二・二五%ある。航空機のリース料率というものはどういうように決めたのですか。また、どういうリース会社が成約を受けたのですか、あるいは輸銀に申請中であるか、またこのリースを受ける飛行機会社及びその機数というものにつきましてお聞きしたいと思います。
  136. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  いまお尋ねのやり方でございますけれども、これはすでに御案内かと思いますが、この制度は、たとえば航空機リースの場合ですと、民間のリース会社等が、輸出入銀行の緊急輸入外貨貸し制度を利用して外貨を借り入れまして、そうして海外の航空機メーカー等から民間の航空機を購入しまして、海外のエアライン等にリースを、つまり貸し付けをするという制度でございます。  具体的には、いまお話しありましたように、輸出入銀行の緊急輸入外貨貸し制度の運用に基づいて行われているわけでございますが、それを行う場合に、通産省といたしましては、航空機の輸入について運輸省の同意を得まして、輸出入銀行に対して外貨貸し付けの推薦を行っております。こういうのが大体の仕組みでございます。  それから金利でございますが、いまのお尋ねのように、いまの輸出入銀行の外貨貸し制度の金利六%、それからリース料の金利分八・二五%ということで、差が二・二五ということでございます。この中には銀行の保証料とかあるいは交渉費用等の諸経費というものが含まれておりまして、それを除いたものがいわば各社に入るというかっこうになります。通常の場合、このリースの場合には複数の社で一種のナース団というのを組んでやっておりますので、その費用が各社に配分される、こういうのが仕組みでございます。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 輸銀は国民のお金を貸すわけですよね。これはたとえば、私、言いました二十五機で八億一千五百万ドル、たとえばドル二百円で計算しましても千六百三十億です。これに対するいわゆる六%と八・二五%の差の二・二五%、これだけで三十六億六千七百万あるんですよ、金利だけで。そうでしょう。そうしますと、ただ窓口だけで三十六億六千七百万というものが入ってくるわけですよ。中にはいろいろな経費だということもおっしゃっておりましたけれども、これは少なくとも国民の税金、血税でもって運用しておるんですからね、利子等について、それは商売ですから、やはりそこには適正な経費等もあるでしょう。だけれども、果たしてこういう金利体系でいいのかということは、これは国民の税金を運用するわけですから、これについてはいかがお考えでございますか。
  138. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答えする前に一言私の方から御報告申し上げますが、従来の航空機リースの実績でございますけれども、従来まではボーイング747の英国航空向け、あるいはDC10のシンガポール航空向け等十四機、輸入金額合計で二月末までに四億六千万ドルという物件がリースされております。それから今年度中の見通しでございますが、いま申し上げましたほかに約二億五千万ドル程度の案件が一応見込まれておるというのが現在までの状況でございます。  それから八・二五でございますが、この金利は大体国際的なリースの場合の一つの水準ということで八・二五ということになっておると承知しております。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、輸銀のそうした貸付金利、これはただ国際的に見てこうだから。そうすると、実際そういう仲立ちする代理店というのは、何といいますか努力しなければいけないのですか。国民の税金を利用してこれだけの膨大な金利がつくのですよ。その辺についてはこのままでいいのですか、いまの制度で。
  140. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答えを申し上げます。  いま申しましたような仕組みになっておりまして、当初この制度が発足するときに、こういう制度を進めるということでいろいろ検討してこういう制度、フレームワークにしたわけでございますが、その後の状況等を勘案しまして、今後の金利をどうするかということにつきましては、現在大蔵省等と協議をしておるという状況でございます。
  141. 金子一平

    金子(一)国務大臣 緊急輸入の必要性は、もう御承知のとおり、当面の黒字対策として何らかの措置を講ずる必要があるということで取り上げられて外貨貸し制度を利用しておるわけでございますが、いま御指摘のような問題もございますので、関係省との間で十分この点を詰めて、適正な金利水準に持っていきたいと考えておる次第でございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから仕組み船の問題も一緒なんですね。政府は、仕組み船については一般的には外国銀行から融資されて建造されたものと述べているわけですが、一般的ということはどういう意味かということが一つです。  それから、輸銀の延べ払い融資を受けて建造された船舶が仕組み船となって、再び輸銀の緊急外貨貸付制度によって融資を受けるというようなことが起きておらないかどうか。また、この仕組み船は船員費の安さをねらいとしたものでありますけれども、今後国内船員の賃金が上昇するならば、緊急の外貨貸付制度の融資を受けて日本船籍となった船舶が再び仕組み船に戻るおそれがないか、こういうことが問題として挙げられると思うのですが、こういう点についてはどのように見ておられますか。
  143. 森山欽司

    森山国務大臣 ただいまお話を承っておりまして、緊急輸入の問題と航空機を五十四年度合計二十五機、その場合の金利の問題と、それから航空機リースの場合の金利の問題とは別の問題でありますので、後ほどこの緊急輸入に対する金利の問題は航空局長から答弁をいたさせます。  それから、仕組み船の問題は前回、二月七日でありますが、現時点における進捗状況は、運輸省から輸銀に対して推薦済みのものが二十五隻、約三億七千二百万ドルになっている。それが現在は三十一隻、約四億八千五百万ドルになっておるわけでございまして、この金利の問題も、これは緊急輸入の金利の問題でございまして、先ほど来お話しの航空機リースの金利の問題とは全然別個でございます。そしてこの金利の問題につきましては、海運局長の方からお答えをいたさせます。  なお、仕組み船が今後それらの問題と関係して所期の目的を達成するかどうかということもあわせて答弁いたさせます。
  144. 真島健

    ○真島政府委員 お答えいたします。  先ほどの先生の最初の御質問でございます仕組み船というのは何かということかと思います。(近江委員「そんなことはわかっていますよ」と呼ぶ)それでは、輸銀の延べ払い等を受けて建造された船がまた輸銀の融資で買い戻されることはないかということでございますが、輸銀の資金をもって建造されたものについては今回の仕組み船購入対象としておりません。  それからもう一つ、仕組み船として買い戻されたものがまたすぐ向こうへ売られるということはおかしいではないかという御趣旨かと思いますが、これにつきましては、当面、少なくとも三年間はそういうことを認めない制度にしてやっております。
  145. 松本操

    ○松本(操)政府委員 リースについては、先ほど通産省の方からお答え申し上げたとおりでございまして、緊急輸入の方につきましては、先ほどおっしゃいました八億一千三百万、これの金利の問題は、航空会社がどこから金を借りてくるかということにかかってくるわけでございますので、たとえば日航の場合には一部政府保証債が入る、民間機の場合には市中銀行から借りる、それぞれの金利はその状況によって変わってくる、こういうことでございますので、さっきおっしゃいました八・二五%とは直接的な関係が全くない、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、こういうように経常収支の黒字減らしということで苦慮されていることはわかるのですが、ばたばたとやっていきますと、たとえばこの金利の問題でも、大蔵大臣初め適正な金利ということについて考えていくという御答弁があったのですが、こういうように一つ一つ見ていきますと問題があるわけです。ですから、その点は本当に国民の血税を運用されるわけでございますから、十分な国民の理解と納得が得られる、そういうことをやっていただかないといけないと私は思うのです。総理の決意をお伺いしたいと思うのです。
  147. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せの趣旨は十分尊重してまいります。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間が来たようでございます。  それで最後に一問だけ。きょう来ていただいておりますので、会計検査院院長さん、えらい遅くなって済みません。もう時間ですが、われわれはこの再発防止ということで非常に期待をかけておるわけです。そこでいろいろ法改正について意欲的に取り組んでおられると思うわけでございますが、この改正点の柱といいますか、その点だけをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  149. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 会計検査院法改正の要点でございますが、さきに衆議院におきまして決議をされました点がございまして、その五十二年の御決議の中に、政府機関等の融資先あるいは債務保証先等についての検査が十分でないから、その点について十分の措置を講ずるようにという内容になっておるわけでございます。私どもとしましては、会計検査院というのは国の収入、支出の決算を検査するという基本的な性格もございまするので、そういう政府関係機関の融資の適否を検査するに必要な最小限度の範囲内におきまして、融資先に調査が及ぶことがあり得るということを考えておるわけでございます。それもまた乱用というふうなことがありましては、これはやはり大事なことでございまするので、そういうことをやります場合はごく限られた範囲内ということにしまして、検査官会議の議決によりましてそういうことをやる。  そういうところが、いま考えております会計検査院法改正の大体の内容でございます。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、終わります。
  151. 竹下登

    竹下委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、安井吉典君。
  152. 安井吉典

    ○安井委員 初めに、いまきょうの夕刊を見たのですが、古井法務大臣、きょうあなたは閣議後の記者会見で、衆議院予算委員会の航空機疑惑問題をめぐる審議につきまして批判を加えたというふうに新聞は報じておりますが、私はこの委員会の中で今日までグラマン、ダグラスということについて一生懸命取り組んできた委員の一人として、この点きわめて遺憾に思うわけであります。ここに新聞みんなあるわけじゃありませんが、二、三の新聞を読んでみますと、たとえば「第一ラウンドを終えたことの感想として」法務大臣は「「にぎやかにやることだけを繰り返していては将来よくない。空騒ぎ、しり切れトンボに終わってしまうのではないか」と述べ、現状を批判するとともに国政調査の在り方の見直しを強調した。」こういうふうに伝えられています。空騒ぎ、しり切れトンボ、政府としてそういう批判をわれわれの予算委員会審議の中に与えて、それでいいと思うのですか、どうですか。
  153. 古井喜實

    ○古井国務大臣 どういう記事が出ておるか知りませんが、私は後でやや――こういう段階になったものですから、国会審議がこれから先の段階もあることでありますし、その感想のようなことを聞かれたのか、言ったのか、言ったわけでありますね。  それは、私は国会の国政調査というのは非常に大切だ、国会の権威にかけて国政調査の機能を発揮しなければいかぬ。それについては、国政調査のあり方というものを、本当に効果が上がり、それから効率的にいくようなあり方というものを検討するということが、国政調査をして意味あらしめる道ではないだろうか。つまり、国政調査についてはちゃんとそのためのスタッフもなければやりにくいでしょう。そういうことも必要だし、それから手続の上でも、資料の収集あるいは証人、参考人などの調査、そういうことについての手続もちゃんと整とんし、そうして時間をかけて、短い時間でやってしまうということはむずかしいのだから、時間をかけてやるということにする、そういうふうな体制を整えてやれば国政調査は徹底するし、それから成果が上がるのじゃないか。将来の問題だから、きょうわれわれは将来の問題は触れる段階でないと思っている。それが新聞に書いてなければ間違いで、前から私はそう言っているのです。いまは、きょうの目の前の事案を究明するのが一番の問題で、これで精いっぱいだ。次の問題は次にやりたい。けれども研究はしている。みんな研究しなければいかぬのじゃないか。次の話のことについて、それはわれわれも、これは国会関係しておる者として考えなければいけませんし、国会の方とされて、われわれの言うことじゃありませんけれども、どうしたら本当にこの国政調査がりっぱにいくかということを私は考える必要があるのじゃないか、個人的にはそういうふうに思っているが、どんなものでしょうか。まじめなこちらの意見を言ったのです。
  154. 安井吉典

    ○安井委員 国政調査権の問題はもう少し見直して強力なものにしなければいけないというのは、みんな共通の意見ですよ。あなたに言われなくたって、私たちその考え方を持って今後とも国会法の改正やその他に当たりたいと思いますよ。ただ、きょうとあすでこの委員会審議を終わるそのけさ、これまでの審議を「空騒ぎ、しり切れトンボに終わってしまうのではないか」、そういう言い方を私はこの閣僚の中からお聞きしたくなかった。あなたの法務大臣としてのお立場で、もっと積極的に資料をここへお出しになれば、審議はもっと進んだのですよ。資料を出し惜しんで、国政調査権の本当の遂行を妨げてきたのは、むしろ政府じゃないですか。しかも予算を切り離せ、こう言うけれども、この前のロッキードのことを考えてみたって、この予算委員会で取り上げたから証人喚問やその他かなり進んだでしょう。特別委員会に行っちゃった。特別委員会は一体何をやったですか。証人の喚問を要求する、いろいろな資料の要求をする、しかし政府・与党は全部拒否したじゃないですか。一年間もかかって特別委員会は何にもできないじゃないですか。特別委員会にさえやってしまえば何でもできるというふうにあなた方は言うけれども、それは証人喚問や何かもみんなやらないで済む、逃げ場をつくるという考え方でしかないのですよ、政府・与党のいままでの態度は。だから私は、政府がいろいろ資料や事実の解明等を国会とともにやるという姿勢を失ってきたということや、あるいは全体的なそういう証人喚問やその他についての、この予算委員会の場でなければできないというふうな仕組みをつくってきた今日までの責任は大きいと思うのですよ。それをたな上げして、なるほどわれわれも国政調査権の問題はもっと解明しなければいかぬと思うが、空騒ぎ、しり切れトンボだ、そういうことで最後のわれわれに言葉を投げつけただけで、それでいいと思うのですか、どうですか。
  155. 古井喜實

    ○古井国務大臣 空騒ぎ、しり切れトンボなんということを言ったということは、ちょっと私は迷惑します。そんなことを、新聞がどう書いたか知りませんが、そういう失礼なことは言いやしませんよ。何ぼ何でもそれほど失礼なことは言いません。そうじゃなくて、国政調査権というものはもっと拡充しなければいかぬ、将来の問題だと私は言っているのですよ。今回は非常に枠のというか、いまの中でよくおやりになったのだけれども、将来の問題としてやはり整えなければいかぬ。ドイツ連邦を見てごらんなさい。そういう例だってあるじゃないか。そういう手続も、資料の収集であるとか、それについての手続とか、それから証人とか参考人とかということを調べる手続などをちゃんと整えて、だから資料収集などの万全を期するようにし、そうして国政調査権を十分発揮するようにした方がベターじゃないか、将来の研究問題だということを言ったのです。どうしてこれが間違っているだろうかと私は思っているようなわけであります。
  156. 安井吉典

    ○安井委員 空騒ぎとかしり切れトンボだとか、そういう言葉で予算委員会を侮辱したということについては、私は陳謝してもらいたいと思う。どうですか。
  157. 古井喜實

    ○古井国務大臣 いまも申しましたように、空騒ぎだとか何とかというのは私の言葉じゃない。新聞が書いた言葉ですから、そんな短い話をしたのじゃないですよ。これは将来の問題のことをそれやこれや、それから行政部内においても、もっと政府としても行政部内の違法でなくても不正、不当ということをもっと監督するような機能も発揮するような面も考えなければいかぬじゃないか。国政調査だけ言ったのじゃないのです。それを一部分かどこか知らぬが、ちょこちょこっと新聞が多分書いたのだろうと思うのですけれども、これは全体を、また真相をよく調べ、見ていただいておっしゃっていただきたいと思います。
  158. 安井吉典

    ○安井委員 いま土井さんもいるけれども外務委員会で資料要求、この委員会の資料要求もそうですよ、全部拒否したのはあなたじゃないですか。フライトの資料を要求して、それを出さないのも法務大臣じゃないですか。自民党の方から言われるから出さないのだとあなたはそう言ったじゃないですか。そんな態度で、しかもしり切れトンボであるというような国政調査権への侮辱の言葉を私は聞きたくないと思う。総理、どうですか。このような、あす予算が上がるかどうかという段階における閣僚の発言について伺います。
  159. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国政調査権の発動に対しまして、政府は法令の許す範囲におきまして最大限の協力をいたしますということは政府の基本的な態度でございます。いま政府は資料を出さないじゃないかというお言葉がございましたけれども政府は出すべき資料は出すわけでございます。出せない資料は出せないわけでございます。したがって、その点につきまして、もし具体的に政府が理不尽に出さないということでございますならば十分おしかりをちょうだいいたさなければなりませんけれども、私どもといたしましては、誠心誠意国政調査権の発動には御協力を申し上げてまいったつもりでございますし、今後も申し上げてまいるつもりでございます。
  160. 安井吉典

    ○安井委員 法務大臣のいまの議会侮辱的な発言についてどうかと私は聞いているわけです。
  161. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府の基本的な姿勢はいま私が申し上げたことでございまして、法務大臣におかれてもそういう基本の筋を外されておるとは存じません。
  162. 安井吉典

    ○安井委員 これは私、社会党だけの発言ですが、ほかの党はまだきょうの夕刊をごらんになっていないのではないかと思うのですよ。これは各党の意向もあると思いますから、この問題については、後ほど理事会で御相談願うようにお願いしておきたいと思うのです。どうですか。
  163. 竹下登

    竹下委員長 私もまだ新聞を読んでおりませんので、扱いについては、後刻、私も考えましてから協議します。
  164. 安井吉典

    ○安井委員 理事会でさらに御協議をして、措置について御決定をいただきたいと思います。  先ほどの御論議を伺っておりますうちに気づいた幾つかの点について、きょうはもう最後ですから、伺っておきたいと思います。  まず藤田委員電電公社の調達問題ですが、この問題に関するやりとりにおいて、私は腑に落ちないことがあるものですから、その点で伺っておきたいと思います。  総理大臣はブルメンソール財務長官ときのうの朝ですか、アメリカさんばかりの食事を一緒にされたと新聞は伝えています。その中でも、いわゆる門戸開放という問題で、電電公社の問題について同長官は強く主張しましたか。
  165. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私どもの話し合いの中では、一つは日米間の経常収支のアンバランスが今後縮小の方向に行くように日本も努力をいたしておる、今後も続けてまいるということで、アメリカはそれを歓迎するということでございます。  それから第二点は、いま日米間で問題になっておる個々の具体的な事項、これはいま仰せの電電公社の調達問題もございました。そういった問題については、できるだけ早く互譲の精神で解決したいものだということが話し合われたわけでございまして、一つ一つの案件につきましてそれ以上突っ込んだいわゆるネゴシエーションは行われておりません。
  166. 安井吉典

    ○安井委員 先ほど外務大臣から、ヨーロッパ各国の電気通信事業の契約のあり方について、在外公館でお調べになった結果についてお話がありました。指名入札やその他いろいろある、そういうお話でありましたけれども、それはそういう法令の規定はそうなっているが、実際やられている契約はそのとおりですか。間違いありませんか。
  167. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  私どもが在外公館を通じて調べましたところによりますと、回答によりましていろいろニュアンスの相違はございますが、たとえばフランスにつきましては指名競争契約方式により、機器調達の際はまず官報に一般公告を出して関心企業を募り、その企業の技術、資産状況を考慮しつつ、逓信省側で最終応札資格の企業を決定するとか、あるいは大臣が申し上げましたデンマークにつきましては、随意契約競争契約を併用しておる。特殊機器が大半なので九〇%が一般競争契約であるとか、ベルギーにつきましては公開入札であり、一般的な……
  168. 安井吉典

    ○安井委員 わかりました。時間が惜しいからもう一度お聞きしますが、なるほどそういう法令の規定にはなっておりますが、私が聞いているのは実際行われている契約がそうなのかということですよ。
  169. 手島れい志

    ○手島政府委員 個々の国の実態については全部知っておるわけではございませんが、たとえばフランスにつきましては、日本の企業が応札したことがあるというふうに聞いております。
  170. 安井吉典

    ○安井委員 在外公館で明確に、契約書その他を手に入れてそれで確認したのですか。単なる法令だけ見たのじゃ、これは日本だってそうですよ。競争入札、指名競争入札が根本であって、ただし場合によっては随契ができるという書き方にたしかなっているはずですよ。どこの国も皆そうですよ。そんなほかの国の法律やそういう制度だけをここで言って、全部そうなっていますという言い方で外務大臣答弁させるのは私はおかしいと思うのですが、実態を調べたのですか。言ってください。
  171. 手島れい志

    ○手島政府委員 この調査に際しましては、法令を調べたほかに、現地の担当の者をやって質問をした結果が来ておるわけでございます。
  172. 安井吉典

    ○安井委員 では、もう一つ伺いますが、ガットで電気通信事業を処理しているという仕組みをとっている国はどこですか。
  173. 手島れい志

    ○手島政府委員 まことに申しわけございませんが、もう一度御質問をお願いいたします。
  174. 安井吉典

    ○安井委員 ガットに電気通信事業を入れて処理している国はどこかということです。
  175. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  御質問の趣旨は、現在東京ラウンドで交渉中の政府調達コードの対象として、電電関係を出している国があるかとの御質問かと思いますが、ECは出しておりません。当初オファーをいたしました国はスイスとスウェーデンでございます。
  176. 安井吉典

    ○安井委員 それはガットですね。
  177. 手島れい志

    ○手島政府委員 東京ラウンドの政府調達コードの対象の企業としてでございます。
  178. 安井吉典

    ○安井委員 とにかくないのですよ。ガットというのは全部オープンにするという意味でしょう。封鎖的な契約仕組みはだめなんで、全部競争入札にするというのがガットの仕組みなんですから、そういうことになっているのはないのですよ。  それはスイスのような、これは自分の国に電気通信事業がないところは、たしか私はそうだと思うのですが、これはもちはもち屋ですから、私の見方が間違いかどうか、公社総裁、ちょっとお答えください。
  179. 秋草篤二

    秋草説明員 お答えします。  スイスは、御案内のように時計は世界でも一有名な国でございますが、電気通信産業というのはほとんどございません。
  180. 安井吉典

    ○安井委員 とにかくヨーロッパはないのです。オープンで競争入札にしている国なんというのは現実にはないわけですよ。国の法令はいろいろありますよ。競争入札が本則だが、どこの国だってそうでしょう。しかし、随契が場合によってはできるという、それぐらい電気通信事業というのは封鎖性というか、国防的な意味もあるのかどうか知りませんけれども、とにかく一元的な仕組みの中にあるという事実を反論しようとされたけれども、実際はヨーロッパのいいかげんな話を在外公館でまとめてこられただけで、もう少しやはり明確にとらえておく必要があると思う。  それからもう一つアメリカとカナダだけが民間でやっているわけですが、特にATTは世界第一のアメリカの電気通信会社でありますけれども、さっき通産大臣は、ATT以外の購入について、これはこの前はたしか公開入札でやっているというふうなお答えがあったのですけれども、きょうはちょっと軌道を修正されて随契というふうに言われましたね。どうですか。
  181. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 随契でございます。そして随契の中に外国を入れておる、こういうことです。
  182. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、ここで、ガット東京ラウンドで問われているのは、随契じゃだめなんですから、まさに門戸開放でオープンでなければいけないということをいま日本は迫られているのですよ。そのことをもう少し私は理解していただきたいと思うのだ。  特に総理に伺うわけですが、アメリカATT、ウェスタン・エレクトリックの会社で、さっき何パーセントかというような問題があったけれども、八六%ぐらいは自分の子会社のWEに随契しておる。残りの部分はこれはなるほどほかに出していますけれども、それは自動車だとか、WE社が製造していないものだからということでほかの方へ、しかしこれも随契で出しているわけです。通産大臣、そう言われたでしょう。大部分は一つ会社に随契で出していて、残りの部分もこれも随契で出している。そのアメリカの国が、これは民間会社であるけれども日本政府に、電電公社に対して全部オープンでやれと言う。それでなければ東京ラウンド壊すぞ、東京サミットだめだぞとおどす。私はそれがどうしてもわからない。その事実を私はもう少しのみ込んだ交渉をしてもらいたいと思うのだ。どうですか。
  183. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私が申し上げましたように、いま懸案になっておるこの調達問題等でございますが、これは二つあると思うのです。一つは、制度の問題、いまのままの制度でいいか悪いかという問題があろうかと思います。どの程度改まったやり方でこなしていけるかというような実態問題があると思いますが、あなたがおっしゃるように、こういう競争入札で全部やらなければならないとかなんとかいうそういう原則論でわれわれはいま両国の間で問題にしておるのじゃなくて、いま具体的に出ておる問題について、互譲の精神でどういう解決をするかという問題を問題にしているわけでございます。したがって、原則論で対決しておるというようなものとは私承知いたしておりません。
  184. 安井吉典

    ○安井委員 ガット東京ラウンドの問題として出ているからですよ。ガットの中に入るということは全部オープンにせよということで、随契はだめなんでしょう、ガットは。そうじゃないですか。
  185. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  政府調達コードの内容につきましては、原則は公開入札または指名競争入札でありまして、随契は例外的な場合に認めるということになっております。
  186. 安井吉典

    ○安井委員 そうでしょう。とにかく門戸開放と新聞に大きな見出しになっているそういうことを、自分のところの事業の方は随契で全部やっていて、そのうちの大部分はWE社という一社だけにやっておいて、それでいて日本だけが門戸開放しろしろと言ったって、私はこれはおかしいと思う。そのことを含んだ交渉をやはりしてもらわなければいかぬ。なるほど経済の問題、貿易収支をバランスさせるという問題は大事ですよ。それは大事なのは間違いないけれども、しかし、そのことによって世界の主要国はみんな随契で自分の事業を守っているわけだ。その随契の中で問題が起きるのならそれはそれで解決すべきですよ。そういう仕組みをなぜアメリカはぶち壊そうとしているのだとそこに私は疑問を感じるわけであります。だから、経済問題の大切さ、これはわかるけれども、目先の問題で電気通信事業の百年の計を誤ってしまっては大変だ。私は、そのことを総理にひとつこれから進む場合に要請をしておきたいわけであります。先ほども、東京サミットがだめになるかもしれない、こういう話があったけれどもアメリカの言うままになって東京サミットを成功させたって大平株は私は上がらぬと思いますよ。やはり国民のために考えていただきたい。どうですか。
  187. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 電電公社の仕事の実態をよくわれわれも伺って、その大切さ、できるだけ信用のある、そして廉価なサービス国民にしなければならぬという立場にあられることは十分尊重しながら、一方においてアメリカから提起された問題をどのように具体的に現実的に解決するかということにいま腐心いたしているわけでございまして、決してそう軽々にやるつもりはございません。
  188. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひ慎重の上にも慎重な態度で臨んでいただきたいということをひとつ申し上げておきます。  次に、先ほど近江委員であったと思いますが、インドシナ半島の紛争の問題についてお触れになって、外務大臣からも御答弁があったわけでありますが、一体中国はベトナムにどれぐらいの兵力を送っているのだろうか。これは防衛庁長官かな。あるいは外務大臣か。ベトナムに中国がどれぐらいの兵力を送っているのか。それからもう一つは、ベトナムはカンボジアにどれぐらいの兵力を送っているのか。わかったらお答えいただきたい。
  189. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  実は正確なところはわかりませんが、大体の推測といたしましては、中国がベトナムに対しては約二十万から二十五万ぐらい入っているのではなかろうか、全体の国境周辺の兵力が約三十万を超えていると一般に言われております。それから、カンボジアに対するベトナムの兵力でございますが、約十四個師団ですから、十五万から十六万ぐらいの兵力が入っていると一般に言われておりますが、ただこれは正確なところはわかりません。推測でございます。
  190. 安井吉典

    ○安井委員 とにかくこのような入り組んだ進行状況とでもいいますか、そういうような状態にあるということを念頭に置きながら、いまの新しい中国の撤退決定の動きを見ていかなければいかぬわけですが、いまの法務大臣のことが出ている夕刊にも、ベトナムは、公式声明と認めないとか、タス通信は、撤退開始疑わしいとか、いろいろなことを言っているようであります。  そういうふうな中で、先ほどもちょっと触れられておりましたけれども、撤退作戦というのは、これは孫子の兵法まで私は知りませんけれども、これはなかなか大変であることは間違いないと思います。撤退を決めて、しようとしても、その撤退のときには軍は一番弱いときですから、そこに猛烈な攻撃をかけられたり退路を断たれたりすれば、これは大変なことになってしまうわけですよ。ですから、撤退が十分に完全に行われるようにしていくということが、私たちがいま何とか一日も早く大砲の音をなくして火薬のにおいをあのインドシナ半島になくすというためには、やはりいまは中国の撤退が十分に果たせるようにしてあげることが大事なことではないかと思うわけであります。そしてどちらも共同のテーブルにつくという、それは大変な問題だと思うわけでありますが、その兵力の引き離しという具体的な作業をだれがどうするのか、そういうむずかしい問題があるのではないかと思う。先ほども外務大臣は、日本の役割りについていろいろ検討し、現在進行中だというふうなお答えもありましたけれども、どうなんですか、そういう段階において、中国にもベトナムにも、それからもう一つ背後のソ連にも、この問題をいまの段階においてどう処理するかということについて、もっと果たすべき日本の役割りがあるのではないかとも思うのですが、どうですか。
  191. 園田直

    園田国務大臣 判断は御発言のとおりでありまして、その状況下において日本がやるべき役割りは果たしたいと存じます。なお一層平和解決に努力する所存でございます。
  192. 安井吉典

    ○安井委員 これは外交の動きですから、ここで何もかもぶちまけてくれとは私は言いませんけれども、やはりこの際、ちょうど外側にいる日本として立場もいいわけですから、平和憲法を持っている日本として果たし得る役割りは全部果たしていただきたい。これは総理、私はそう思うのですが、どういうお考えですか。
  193. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 すでに政府は、御趣旨のような御意見を体して両当事者に当たっておるわけでございまして、今後も状況を見まして、われわれとしていたすべきことは要請していかなければいかぬと考えております。
  194. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ園田外務大臣は、日中平和友好条約の締結に当たってずいぶん苦労をされたわけでありますが、例の日本敵視条項を持った中ソ同盟条約の処理の問題であります。四月までに廃棄するというふうなお約束だとか、あるいはそういう確かめを得たとかというような、たしか御報告があったわけでありますが、ちょうどいまソ連と中国間、余りいい状況にないことは間違いないのですけれども、そういうむずかしい時期に重なってきているわけではありますけれども、それがどのようにして果たされるのか、そのことについて関心を持っているわけでありますが、見通しはどうですか。
  195. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  経緯は御承知のとおりでありますから省略をいたします。したがいまして、その四月があと一カ月になってきたわけでありますけれども、これは中国とソ連、特に中国がなすべきことであって、その意思をこちらが聞いた以上、いまこちらが中国に対してどうこうという考えはありませんけれども、これは期待して注目しておるところでございます。
  196. 安井吉典

    ○安井委員 微妙ないろいろな問題もあると思いますから、一応お聞きしたままにしておきます。  そこで、もう一つ沖繩の問題でありますが、端的に二つだけ伺っておきたいと思います。  分科会でもわが党の上原委員等も取り上げているわけでありますが、第一は、沖繩は相変わらず基地の中にあって、失業率は全国平均の三倍近くにも及び、経済開発は非常におくれているのは御承知のとおりであります。したがって、現在の沖繩振興開発計画というのは、まだ間があることはあるのですけれども、しかし、政府の経済社会発展七カ年計画も改定されたことでもあるし、また現在の沖繩の状況を踏まえた見直しをやはり行うべきではないかと思います。具体的な施策で計画を超えたやり方をやったって、これは別に困るわけじゃありませんし、もっと積極的な対策、とりわけ見直し対策、そういうようなものについてお考えはどうでしょうか。
  197. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  復帰以来の沖繩の開発につきましては、一方におきましては社会資本の投資という面、一方におきましては経済成長という面で、この沖繩振興開発計画に基づく努力を七カ年やってまいりましたことは御承知のとおりでございます。  そうした社会資本の投資関係におきましては、公共施設面では大体計画どおり実施をし、残された三カ年で大体の計画実施はできそうだ、公共施設等は本土並みの水準に到達するであろうという予想もつくわけでございます。一方、経済成長の方にいきましても、七カ年の経過を見れば一応順調に進んでまいりましたが、最近低迷状態にあるというような事態でございます。  そこで、最近における沖繩の一つの大きな問題は、失業率の高い問題、雇用問題でございます。そこで雇用問題につきましては、いま恐らく安井委員が御指摘なさるのは、そういう問題を踏まえながら、あと残された三年間で実際の計画どおり実施できるのか、できないとすれば、どう考えておるかということであろうと思いますが、しかし雇用問題も、やはり基本的には産業の振興、そして生活環境等の整備をやりまして県民の福祉を増進するということになるわけでございますから、そういう点で具体的にはどうすればいいかということになるわけでございます。そこで現在時点におきましては、いま申し上げましたように、七カ年の実績を踏まえて、今後、いま持っております計画がどう進展するかという見通し、そして現状の雇用問題等を踏まえて、果たしてそれが実際に雇用問題も同時に解決できるような産業の振興、経済の開発が見通せるかどうかということになるわけでございます。そういうことを現在時点で一応見通しを立て、三年後に処していくべきではないかという御指摘であろうと思うわけでございます。したがって、いま申し上げますように、これは関係官庁ずいぶんあるわけでございます。沖繩振興開発審議会という機関もあるわけでございまするので、この機関におきまして、いま申し上げましたような具体的な見直しをしてみて、将来三年間の展望に立ち、そうした立場で具体的な検討を進めてまいりたい、そういうことでおるのが現況でございます。
  198. 安井吉典

    ○安井委員 とにかく長い間異国の支配の中にあったという重荷をしょっての沖繩の歩みでありますから、たくさんの問題を持っていることは間違いありません。ですから、現状を常に踏まえた対応をぜひお願いをしておきたいわけであります。  後で総理にもお考えを伺うことにいたしますが、もう一つ、沖繩における基地問題でありますけれども、県道の上を越えて実弾射撃が行われている、いまだにそういう演習場もあるわけですね。あるいはまた、この間も民家に機関銃弾が撃ち込まれたりするというふうな事態もあった。ですから、このような米軍基地による大小のトラブルが相変わらず絶えないわけであります。私は基地は全部やめてしまえという論者ではあるが、しかし少なくも、もう少しいまの基地状況を、沖繩の県民の生活を守れるような方向に現状を変えていくという努力は必要ではないか、こう言いたいわけであります。  なかなか政府がお出しにならなかったのだけれども、去年防衛施設庁が「施設及び区域の使用条件等について」という、これは全体の中のダイジェスト、しかもごく簡単なダイジェストじゃないかと思うのですけれども、これをお出しになったいわゆる五・一五メモというものがありますが、沖繩における二十二の施設及び区域、これは本土の六施設も含まれておりますけれども、そのありようについて書かれています。しかし現状はいま言ったような、県道が走っているその上を越えて射撃演習がいつも行われるような事態があるとか、あるいはいま言ったような機関銃弾が民家の屋根に落ちてくるような事態をそのままにしておくというのは、これはおかしいと思うわけですね。ですから、このいわゆる五・一五メモなるものをもう一度洗い直して、もっと県民の生活が守れるようにすべきではないか、せめて本土並みにすべきではないかと思うのですが、どうですか。
  199. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の暮れ、米軍の演習によりまして民家に銃弾が入るという事故がありましたことはまことに遺憾でございまして、直ちに申し入れもいたしております。  ところで、沖繩の基地が大変大きいという実情は御指摘のとおりでございます。日米安保条約の目的達成に支障のない範囲で、また県民の生活を守ることも大事でございますが、そうしたことでありますが、直ちにいま御指摘の問題につきまして、とりたてて使用条件の変更をするということは考えておりませんけれども、今後とも県民の心情をわきまえて、その民生安定のために努力いたしたいと思う次第でございます。
  200. 安井吉典

    ○安井委員 具体的にこれは生活上大変だ、危険だというふうな事態があっても、いまのようなのんきな答弁でいいのですか。私はやはり、すぐに問題点をとらえて解決をしていく、アメリカ交渉していく、そういう態度がなければいかぬと思うわけです。どうですか。
  201. 山下元利

    山下国務大臣 昨年末の事故に当たりましては、再びその事故が起こらないように、演習の態様等におきましても十分注意いたしましたし、米軍の方も十分そこは心がけておりまして、そのことははっきりいたしておるわけでございます。  御指摘の点は、基地全体のあり方についての御指摘であると思うわけでございますけれども、しかるべく実情は十分いつも把握しながら、条約達成の支障のない範囲でできるだけ努力いたしたいと思う次第でございます。
  202. 安井吉典

    ○安井委員 まだ十分な御答弁だとは私は思いませんけれども、総理、いまの沖繩の新しい開発の進め方、もう一つは基地の問題が民生の安定を非常に阻害しているというその問題について、もう少し政府として努力をしていただけないかという県民の切実な願いに対してお答えください。
  203. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 沖繩県に本土に匹敵するだけの基地を抱えておるということは、経済、民生に対する大きな重圧であると考えております。したがって、これまでもこれの整理につきましては努力してまいりましたけれども、今後もその方向でできる限り努力をしてまいりたいと考えます。  また、御指摘のように、沖繩県において失業率が異常に高い状況にあることに対して、あなたと同様に憂慮を共通にいたしております。これはどうしても沖繩県の地場産業の育成を図っていかなければならぬわけでございまして、そのためには、いま振興計画というものを精力的に進めてまいることが基本になろうかと考えまして、沖繩県の置かれた特殊な事情、沿革を十分踏まえた上で既定の計画を鋭意促進してまいり、新たな工夫をいたさなければならぬ場合には、進んでそれを考えていくようにしなければならぬと存じます。
  204. 安井吉典

    ○安井委員 次に、地方財政収支試算というのを自治省からお出しをいただきました。この前の十六日でしたか、私のここでの質問の際に、なぜ早く出さないのか、大蔵省の方は出ているじゃないかということを申し上げたのが先月の末に提出をされた、こういうわけであります。  これをずっと拝見いたしましたが、経済社会七カ年計画を下敷きにした、大蔵省がお出しになった国の財政の方の収支試算、それを、五十四年度の地方財政計画を基礎としたものに焼き直しをしたというものにとどまるようであります。ですから、この中には、地方財政を、いま危機の段階にあるのをどうするかというふうな意欲も何もない。この二つの資料は、二つ合わせて、大蔵省と自治省とが打ちそろって一般消費税導入のPRをやっている、そういう感じでしか受けとめられないわけであります。  地方の時代と言われて、また、ことしは統一地方選挙の年でもあります。地方自治のあるべき姿を原点として、今日の地方財政の危機をいかに克服すべきかというふうな意欲というのは、この自治省がおつくりになった案の中には少しもありません。大蔵省の試算に追随をしただけだというふうに感じられ、せっかく苦労しておつくりになった人には悪いが、これは論評に値しない、私は率直に言わせていただければそういうことではないかと思います。  この試算によりますと、増税なしに現在のままいけば、六十年度には七兆五千八百億円の大きな財源不足を生ずるという参考ケースを一つ示されて、そのためには年々一五・六%ずつ増税をしていかなければいけない。増税と言っても、これは恐らく一般消費税をお考えでしょうが、つまり、一般消費税をやらなければこんなでっかい赤だ、さあどっちをとるのか、そういうおどしをかけているとしか思えないわけであります。ですから、この私の見方について、それで結構なんですか、それとも少しひどいとお考えなんですか、自治大臣どうですか。
  205. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お答えいたします。  もう十分御承知のように、地方財政も国の財政と同様にきわめて窮迫した状態にあるわけでございまして、これをどう再建するかということはもう地方自治行政にとって最も緊急な課題であることは言うまでもございません。  そこで、国の財政について国の財政の収支試算が提出されました。地方財政におきましても、この国の収支試算に準じて、昭和六十年度において収支均衡するという状態を想定をいたしまして、五十五年度から六十年度に至る間のきわめて大まかな収支試算を鳥瞰をした、こういうことでございます。
  206. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、この中身でありますけれども、この試算で見込まれている増税についてはどんなようなものがあるのか、それを伺います。
  207. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御承知のように、国の財政収支試算におきましても、経済社会七カ年計画を基本といたしまして、五十四年度の租税負担率が対国民所得比一九・六%、六十年度において二六・五%という状態を想定をしてつくっておる。地方財政においても大体これに準じて収支試算をはじいておるわけでございまして、その間における増税の具体的な内容は一体何だという御質問でございますが、消費税というものももちろん重要な増税の項目として考えておりますけれども、それでは具体的に消費税の内容はどうなんだというところまでは詰めておらないわけでございます。消費税を含め、ただいま申し上げたようなパーセントの線に沿っての一般的な増税というものを考えて試算をいたしておる、こういうことでございます。
  208. 安井吉典

    ○安井委員 一般消費税の問題が、この間までは国税の段階でこの委員会でも大きく取り上げられてきたわけですが、きょうは地方税の段階における問題点というのもあわせて、この際私はお尋ねをして、一般消費税というのは一体どういうものかということをもっと考えてみたいと思います。  大蔵大臣は、一般消費税は大体五%で約三兆円前後の税収を見込んでいるというふうな御説明をされておりますが、大蔵省は税率五%の案を提出するおつもりなんですか。
  209. 金子一平

    金子(一)国務大臣 まだ税率を詰める段階にまで至っておりません。
  210. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ、五%ならという仮定の上の御発言ですね。  かつて付加価値税というのが地方税法の中にあったときがあります。例のシャウプ勧告の中で勧告されて、昭和二十七年の地方税法改正法案の中に組み込まれて国会を通ったわけですよ。地方税法の中にはっきり付加価値税なるものが組み込まれた時期があるわけです。ところが、国会は通過したけれども、実施されないままに葬り去られて、いま名前は違うが一般消費税というふうな形で立ちあらわれてきているということではないかと思います。若干違いますけれども、まあヨーロッパなどでは付加価値税と言っている国の方が多いくらいであります。ですから、これは一たん地方税であったという経過があるということもあると思うのですが、そういうものを踏まえて、この一般消費税というものが地方財政の中にどう組み込まれるのか、その辺がさっぱりわからぬわけです。何か伝えられるところによりますと、自治省は、一般消費税の税額を課税標準にして都道府県に地方消費税として課税させる、そして、事業税の外形標準課税として上乗せをし、残りは地方交付税の対象にするというような考え方があると伝えられているわけですが、これはそうですが。
  211. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 政府の税制調査会の答申の中で、一般消費税の一部は地方消費税として設定をするという答申が出されております。これを受けまして自治省といたしましては、一般消費税の一部を地方消費税として独立財源として確立をしたい、こういうことで大蔵省と話し合いを進めておるわけでございます。  なお、後段の国税部分に対して地方交付税の対象とするという点につきましては、自治省としてはそういう強い希望を持っております。しかし、これについてはまだ大蔵省との間に話が詰まっておりません。今後の問題として両省の間で十分検討してまいりたい、かように考えております。
  212. 安井吉典

    ○安井委員 もう少し確かめたいのですが、その考え方は、一般消費税というものができれば、その税額に対して計算がされるという意味は、一般消費税があって、その外側に付加税的なものとして地方消費税ができるのか、あるいは一般消費税の中側に、つまり一般消費税の配分の方法として地方消費税が考えられるのか、その辺はどうですか。
  213. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 国と地方の税の配分の割合は、大まかに言って大体二対一、こういうことになっておりますから、この一般消費税が導入された場合の国と地方の税源の配分も二対一を貫きたい、つまり全体の一般消費税のうちの三分の一を地方消費税として独立をさせたい、このように考えておるわけであります。
  214. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ伺いますが、法人事業税にこれまでいつも問題になってきた外形標準課税というのがあるわけですね。その規定はどうされるわけですか。
  215. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 この外形標準課税の問題は、御承知のように非常に古くから論議されておる問題でございますが、私どもといたしましては、この一般消費税が導入されれば大体において外形標準課税の目的をほぼ達成できる、このように考えておりまして、一般消費税という形でこの問題を吸収したい、基本的にはこのように考えておるわけであります。
  216. 安井吉典

    ○安井委員 大蔵省は譲与税方式を考えておるとかいうふうに伝えられておりますが、どうなんですか。
  217. 金子一平

    金子(一)国務大臣 先ほど安井さんからお尋ねのございました地方への配分につきましては、まだ両省間で詰まっておりません。譲与税にした方がいいのか交付税にした方がいいのか、そこら辺はこれからの問題と考えております。
  218. 安井吉典

    ○安井委員 まだできもしない一般消費税について、とらぬタヌキの皮算用をお互いでやっているような感じをわれわれは外側から受けるわけでありますけれども、国と地方の間の税財源の再配分というような大きな課題がずっと宿題になっておるわけですね。それについてどうなのか。地方交付税のあり方も国税三税の三二%ということで、自治体が黒字になろうと今日のような大赤字になろうと同じことで、ずっとやっておるわけですよ。だれが考えたって、これはおかしいのですね。もう少し知恵はないのかということを私は言いたいわけですが、どうでしょうか、これは大蔵大臣、それから自治大臣。
  219. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 地方の財政が大変な赤字の状態にあり、しかも、地方の行政に対する需要は年々拡大をしていくことは確実でございます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 しかも、国全体の方向として、国から地方に重心が移っていくいわゆる地方の時代を迎えようとしておるわけでございますから、私ども立場から言えば、国と地方との税源の配分について、もっと地方に重点を置くような、そういう施策に持っていきたいというのが私どもの希望でありますし、自治省としての希望であります。しかし、何分国も御承知のような状態でございますから、自治省の主張がそのとおり通るかどうかということは非常に問題があるわけでございますが、私どもとしては、これから長期間をかけて、国と地方の財政の再建という問題を実現をしていかなければならないわけでありますから、その間において、自治省としては少しでも、より多く地方の税源が充実できるような方向でせっかく努力をしてまいりたい、このように考えております。
  220. 金子一平

    金子(一)国務大臣 たびたび申しておりますように、国と地方とはまさに車の両輪のごとき関係にあるわけでございます。しかも、明年度の財政規模は地方の方が大きくなるような状況でございます。しかも、双方とも大きな赤字を抱えて困っておる状況でございますので、今後、国だけがよくなればいいとか地方だけがよくなればいいというような問題じゃございません。お互いに事務の再配分について考え、それにふさわしい財源を考えて、両方が相提携して、これから住民に対するサービスができるようなかっこうで持っていくことが本来のあり方であろうと思っております。なかなか簡単に、一遍に、特に今日のような過渡期で結論を軽々に出すべき問題ではございませんので、十分にこれから検討してまいりたい、かように考えます。
  221. 安井吉典

    ○安井委員 もう幾度も幾度も聞き古したお答えを自治大臣、大蔵大臣から伺っておるわけですが、もっと知恵はないものかと思いますね。私どもも積極的に今後提案もしていきたいと思います。  一般消費税なるものについて、まだわからないことがいっぱいあって、私どももいろいろ聞かれたりするわけでありますけれども、私を含めて国会議員というのはその中身について案外知らないものですから、ひとつこれは主税局長ですか、こういうのはいまの政府のお考えの中はどうなのかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。家賃、部屋代、ホテルの宿泊料、理髪の代金、特にサービスという部分がよくわからないわけですが、レストランの食事代、鉄道やバスの運賃、そう言えば芸者の花代、これはサービスでしょう。そういうもの、あるいは建築や土木の請負代金あるいは軍用機の購入、それから大出委員のやるコンサルタント料、酒、たばこ、こういったようなものについて、いわゆる一般消費税、これは五%なら五%でいいですけれども、これはわれわれ賛成しているわけではないということを後で申し上げますが、そういうようなものについてどうなのかということを一通りお答えください。
  222. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 昨年十二月に税制調査会から答申のありました一般消費税大綱、これの考え方に従って申し上げてまいりたいと思います。  なお、お断り申し上げておきませんといけないと思いますのは、現在すでに地方税、国税の消費税がかかっておるものにつきまして、どういう税目の調整を行いますか、これは各省と現在調整中でございます。したがいまして、ごく粗筋で申し上げることをお許しいただきたいと思います。  いまお尋ねのございました家賃、間代でございますが、これは大綱の考え方に従えば課税でございます。ただし個人の家主さんでございますと、おおむねその方々の年間の収入が二千万円に満たないことになろうと思いますので、その場合には非課税ということでございます。  それからホテルの宿泊料、食事代、芸妓の花代、こういったたぐいのものは現在料理飲食等消費税の課税対象でございます。地方税たる料理飲食等消費税と一般消費税の調整をどう行うかは、考え方の大筋は示されておりますが、まだ結論は出ておりませんが、仮に地方税の分野に残るといたしますと、これについては一般消費税の課税の対象にならないということになろうと思います。その反対でございますればその調整は行われるわけですが、税制調査会の昨年の秋以来の御審議ですと、この辺は地方税の分野に残すという御意見が強いようであります。  それから理髪料、コンサルタント料、この辺はサービス課税でございますから課税になる。ただ納税義務者の年間の売り上げ高によって課否が決まるということは先ほど申し上げたと同じでございます。  それから酒、たばこでございますが、酒税、専売納付金、これらはすでに相当税収も高い特殊な嗜好品課税でございますから、これについては併課しないということになっておりまして、酒、たばこの既存の税金のほかに一般消費税は課さないという考え方でございます。  それから土木建築の請負代金につきましては、サービス課税という考え方で課税になる。ただ、その納税義務者の年間の売上高によって課否が決まる、こういうことだと思います。  それから軍用機でございますが、これは国がもっぱら買うものでございます。国が買うものにつきましてどうするか。これは現在いろいろやっておりますが、国、地方公共団体の営む事業という事業には入らないと思います。したがいまして、軍用機を売った人につきまして、つまり航空機の製造会社、それの売り上げとして課税はされますが、これを買った場合にどうするといって、特にはないわけであります。税負担は起こらないわけであります。
  223. 安井吉典

    ○安井委員 国の発注した土木事業あるいは自治体の発注した土木事業は同じでしょう。
  224. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 国公営の事業につきましては一般に非課税というふうに考えられております。したがいまして、国公営の事業につきまして、それに投資を行う場合というのがいまのお尋ねだと思います。その場合には投資財についてすでに税金が課せられてくるということでございますが、国が営みます事業の売り上げにはかからないというふうに考えていただくのが大綱の考え方であります。
  225. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、その場合、原料やその他に対してはその請負業者は消費税を払っているわけでしょうから、したがって請負代金がその分だけ値上がりをしている。つまり、消費税を払った分を含めた代金を請負金として払わなければ、その業者はやれないわけですよ。つまり、国からのあるいは自治体からの請負代金が上がる、そう考えていいわけですか。
  226. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 各段階を通じまして、逐次税額控除の形で一般消費税の課税がなされてくるわけでございますから、最終のユーザーが国または地方公共団体であるといたしましても、それについて特に減免をするということはないわけでございます。したがいまして、いまお尋ねのように、国ないし地方公共団体が建設土木の請負サービス購入したという場合には、建設土木の請負業者までの段階でかかってまいりました一般消費税を、ユーザーたる国または地方公共団体が負担するということに相なります。
  227. 安井吉典

    ○安井委員 社会党は、税率を五%として一世帯年八万三千二百九十二円の負担増になるということ、勤労世帯の税負担は現在よりも一・七八倍に上がっていくということ、そしてまた消費者物価の引き上げは、この間までの大蔵大臣答弁では二・五%くらいの引き上げになると言われておりますけれども、われわれの計算では三・三%のアップというふうに算定されます。そして、逆進性の強い大衆課税だということを指摘した資料をすでに発表しています。とても国民的な合意ができるようなしろものではないということが明らかだと思います。  それからもう一つ、先日この委員会で、たしか工藤委員であったと思いますけれども、国や自治体の歳出増の問題を資料で説明をされていました。物件費も上がるし工事費も上がるし、社会保障費や給与費等あるいは旅費の果てまで上がるのじゃないかということであります。政党がずいぶん苦労してそういうふうな計算をしている段階でありますから、この前の御答弁では、歳出への影響は計算に入れておりません、この試算について歳出の中には入れておりません、歳入の方は一般消費税入れているが、歳出の方には入れていませんということを国の試算の中でおっしゃったが、これは地方の財政の試算の中でも同じことを恐らくやっておられるのじゃないかと私は思います。ですから、私は資料としてこの委員会に、もう残り少なにはなりましたけれども、ひとつ国民の生活に対してどんなような影響が出てくるかということ、五%なら五%を一応仮定してでもいいと思いますよ。それから、国や地方公共団体のこの試算の中に、これはいまの分は計算に入れてませんだけでは私は済まぬと思うのですよ、お出しになった以上。この中にどういうふうな形で歳出がふえてくるのかということを政党が計算しているのですから、政府としてやはり明確に出していただきたい。資料を要求いたします。
  228. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま国民生活なり国、地方の行政費の増としてどういう影響があるかという御試算、いろいろお話ございました。わが方もそれに対する精密な数字を出したいと思っておるのですが、先ほど来申し上げておりまするように、まだ課税するか、どういうものを非課税にするかというようなことでの調整が済んでない段階でございますので、幾つかの仮定を置かぬと数字が出てこないというような問題がございます。もうしばらくお待ちいただけば大体骨子が決まると思うのです。ここ半月、一月というわけにはまいりますまいが、できるだけ案の中身を詰めた上での計算をごらんに入れて、御批判いただきたいと考えます。
  229. 安井吉典

    ○安井委員 それは早く出してください。  それから、国の一般消費税、地方の地方消費税というお考えがあるそうでありますけれども、そのことによってどれくらい職員の増員が必要なのか。これは国及び自治体、それぞれの計算をお示しいただきたい。
  230. 金子一平

    金子(一)国務大臣 消費税の実施はなるべく手間のかからぬように、増員を極力抑えるような方向でやりたいと思っているのですが、その中身いかんによってまた変わってまいりますので、見込みが立ち次第、当委員会にも御報告申し上げます。
  231. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 取り組む姿勢としては大蔵大臣から答弁されたと全く同趣旨でございまして、こういう時世でございますから、できるだけ増員を少なくするように努力をしていきたいと考えております。
  232. 安井吉典

    ○安井委員 総理はこの間の答弁の中で、一年間存分に論議を深めていただきたい、こういう言い方をなさいました。一年間論議を深めてくれというのは、今度の国会にはお出しにならぬということは一つ明らかで、どういうことなのですか、次の通常国会にでも出そうというお考えなのですか。どうですか。
  233. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まだ出さないことに決めているわけじゃないのです。ことしじゅう論議を深めていただくために、どのような姿でやっていただきますか、案が固まれば御提案申し上げて、御審議を願うことあるべしという心組みでおります。
  234. 安井吉典

    ○安井委員 これは私、速記録を調べたのですけれども、一年間存分に論議を深めていただきたい、こうはっきり言っていらっしゃる。だから私は一年間は少なくもお出しにならぬ、こう理解するのですが、どうなんですか。
  235. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 論議を深めていただくには、やはり案がなければなりませんので、私どもいま問題が問題だけに十分吟味しなければならぬと考えておりますけれども、御提案申し上げないというように決めたわけではございません。
  236. 安井吉典

    ○安井委員 私はそんななまはんかなことではないと思いますよ。やはりこういう事態、つまり財政が窮迫をしてきたという事態をつくり上げたのは、これまでの自民党政権の放漫財政原因なわけですから、その反省をすることがまず第一必要だし、第二には、歳出の見直しも必要だし、第三には、歳入についても、この間藤田委員やその他からも具体的な提起がありましたいまの不公平税制を是正するとか何かの措置が必要だし、それから第四には、大衆負担を避けた形で何か財源はないかというそういう見直しが必要だと思います。そういうことを何もやらないで一般消費税だ、消費税だと騒いだって、これはどうにもならぬわけで、社会党が反対する限りはお出しになりません、たしかそういう意味のこともおっしゃったわけですけれども、いまのような状態の中でお出しになることについて、われわれは国民の生活を守る立場から、どんなことがあっても反対せざるを得ません。どうですか。
  237. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 たびたび申し上げておりますように、これを御提案申し上げるにつきましては、その前提としてやらなければならぬことはいろいろあるわけでございます。それは丹念にやってまいるつもりでございます。そうしないと御理解が得られないわけでございまして、政府といたしましては、前提条件をできるだけ満たしていくように努力をしてまいるつもりでございます。  それから、野党第一党である社会党さんが御賛成いただかないということになりますと、大変やりにくいということを申し上げたわけでございまして、社会党さんが反対すればやれないとは言っていないわけでございます。社会党さんも御賛成いただくようにわれわれもできるだけ努めていかないとやりにくいことでございます。
  238. 安井吉典

    ○安井委員 逆もまた真なりと言いますからね。私どもは、いまのような形で問題を急に提起されたって賛成のしようがありません。国民生活を守るために闘わなくてはいけないということを一つ申し上げておきます。  もう一つ、水不足の問題をひとつ取り上げてまいりたいと思いますが、暖冬異変で積雪が足りなくてダムや貯水池が干上がっているとか、それでは田植えの代かきの水も足りないとか、水道用水もさらにことしは大変だろうとかというような心配がいろいろささやかれています。気象庁の方から、ことしの水不足のおそれはないのかどうか。それからもう一つは、長期的な分析から水の問題についてどういうふうな見通しを持っているのか、それをひとつ簡単で結構です、伺います。
  239. 有住直介

    ○有住政府委員 お答え申し上げます。  昨年の秋からことしの二月まで見ますというと、総降水量といたしましては平年の八〇ないし九〇%あったのでございますけれども、平年よりも暖冬で、ことしの冬は非常に異常な暖かさでございましたために、積雪量といたしましては平年より少うございまして、所によりますと平年の半分にも達していないというところもございます。先生のおっしゃるとおりに、今夏の水不足ということが心配されておるわけでございます。  今後の見通しでございますけれども、今後三月から五月にかけましての降水量でございますが、西日本では平年並みかやや多く、その他の地方ではほぼ平年並みであろうというふうに私ども考えております。これは三月から五月でございます。六月以降でございますが、この梅雨期、盛夏期の降水量の見込みでございますが、現在鋭意検討しておりまして、三月の十日に発表する予定でございまして、準備を進めておるような現状でございます。(安井委員「長期的な見通しは」と呼ぶ)長期的と申しますと、ただいまもお話しいたしましたように、三カ月予想といたしましては三月から五月まで、またさらに六カ月の予想といたしましては三月十日に出す予定にしておりまして、非常に長い状態で考えますと、実は気象庁といたしましては、異常気象現象というものが世界的にも騒がれておりますので、その辺のことを気象庁以外の学識経験者を交えまして委員会等を開きまして調査しておりますが、その結果によりますと、まだいま検討中でございまして、三月の半ばごろには発表したいというふうに考えておりますけれども、まあいままでのところで見ますと、降水量につきましては、全国二十三カ所のデータその他を調べてまいりますと、一九六〇年代の後半ごろから降水量が非常に減りまして、一九七〇年代も降水量の減少傾向というのは続いているというのが現状でございます。
  240. 安井吉典

    ○安井委員 長期的な水需給の計画について昨年国土庁がおつくりになっているはずでありますが、具体的な対応について一応お話しください。
  241. 中野四郎

    ○中野国務大臣 長期的見通しについて昨年の八月に国土庁におきましては、長期水需給計画を策定したところでありまして、水需要は経済の発展過程、国民生活の向上等によりまして次第にふえる一方でございまするので、水資源開発が計画どおり進んだといたしましても、関東臨海それから近畿臨海、北九州等の地域においては、今後当分の間、当分と申しましても昭和六十五年までの間ですが、水需給が逼迫するものと予想されておりますので、このような状況に対処して安定的な水需給を確保していくために、ダムそれから河口ぜき等の水資源開発施設をば計画的に推進するほか、けさの閣議で首都圏に係る利根川水系及び荒川水系の水資源開発基本計画の一部変更を決定していただきました。それは、埼玉の合口二期事業とそれから荒川調節池の緊急水利用高度化事業、この二事業をば追加いたしまして、農業用水の合理的利用また下水処理水の再利用を具体的にすることとしたように、今後とも節水それから水使用の合理化等を含めた総合的な水資源開発及び利用を積極的に推進していくつもりでございます。
  242. 安井吉典

    ○安井委員 時間がなくなりましたから、私もずっと水問題をいままでやってきていますけれども、ただ一つ、いろいろな対策の中で、最後にいま大臣もおっしゃった中水道の普及の問題ですね。都市の中に水は足りないけれども、そこに新たな水源開発に匹敵するものとしてあるのが、一たん使用した汚れた水をもう一度再生していく、そのための中水道とでも言いますか、そういうような仕組みに対して、もっと技術研究開発に思い切った予算措置が必要だし、それからそれをやれば必ずコスト高になるわけですから、税だとか融資だとかといったような面の特別な対策というのが必要ではないかと私は思います。これはどこですか、建設省、厚生省、どっちですか。
  243. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 安井さん御指摘のとおりに、雑用水道と申しますか中水道と申しますか、非常に有効な水源対策の一つであることは間違いありません。すでに一部の新しいビルまた住宅団地等では実用化をされておりますが、まだ一般に普及をいたしますには、用途でありますとか、間違えて飲む危険性の防止対策とか、さらにいま御指摘にありませんでしたけれども利用者の違和感といったようなもの、さらにコストといったような問題がありますので、今後関係省庁そろっての検討が必要であるといま私どもは考えております。
  244. 安井吉典

    ○安井委員 とにかく予算措置が十分じゃないものですからちっとも進まない。これはひとつ思い切った対策を要求しておきます。  最後に、水道料金の格差が非常に大きい、安いものと高いもので十二倍も差があるというのを放置しておくのは困ると私は思うのですが、もう少し積極的な対策が厚生省なり自治省なりで必要だと思いますが、どうですか。
  245. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 水道料金に大変なばらつきがあるというのは御指摘のとおりでございまして、私どもとしてはこれをできるだけ平均化するような方向で、交付税あるいは特別交付税の運用で対処してまいりたいと考えております。
  246. 安井吉典

    ○安井委員 大臣、これは交付税などの措置じゃだめなので、やはりきちっとしたルールに乗せなければいかぬと思う。そういう対策がぜひ必要だと思いますが、どうですか。
  247. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御趣旨の方向で十分努力してまいりたいと思います。
  248. 安井吉典

    ○安井委員 法務大臣の関係ですっかり最初の時間がとられてしまって、それこそしり切れトンボになってしまったが、きょう取り上げたいろいろな問題の解決のために、総理、政府の方もぜひひとつ十分対応していただきたい。そのことを申し上げて、終わります。
  249. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  250. 吉田之久

    吉田委員 先ほど公明党の近江委員から総理に対し、自民党と民社、公明両党との予算修正交渉の過程において合意された幾つかの項目について、政府の善処を求める旨の質問があり、総理からお答えがありましたので、私は個々の問題について一々お尋ねすることを省略いたします。  しかしながら、二万円老齢福祉年金の実施並びにこれに関連する諸年金の引き上げ、雇用創出機構の設置など、年金、雇用、住宅等に関する合意事項は、いずれも国民生活上また景気対策としてもきわめて緊要なものであります。われわれは、国民立場からもまた民社党の立場からも、これらの早期実現を強く要請いたしたいと思います。つきましては、総理の誠意あるお答えを要望いたします。
  251. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府といたしましては、現に御審議をいただいておる五十四年度予算が最善のものと考え、御提案したところであります。各党の御理解をいただけるよう念願いたしております。  しかしながら、公明党、民社党の両党から修正要求があり、これに対しまして自民党としての回答を両党に文書でお示しいたしました経緯につきましては、政府としても承知いたしております。このような経緯を踏まえまして、政府としても自民党の回答内容につき今後誠意をもって検討を進め、適切に対処したいと考えております。
  252. 吉田之久

    吉田委員 総理のその御回答のとおり、完全な実施を特に強く要望する次第でございます。  次に、質問の順序を少し変更させていただきまして、実は外務大臣が公用のため間もなく退席されるようでございますので、日中商談の中断についてからまず質問を始めたいと思う次第でございます。  御承知のとおり、二月二十八日、突然の電報によりまして、中国側の契約発効ストップという事態に立ち至っているわけでございますけれども、この事態の真意を外務大臣としてはどう見ておられるか。いわゆる路線の変更であるか、あるいは資金的な理由が主たるものであるか、あるいはそのいずれもであるか、その辺の的確なる事実関係に照らした確認を求めたい次第でございます。
  253. 園田直

    園田国務大臣 各プラントの留保、それから続いて李副首相の経済十カ年計画を修正するという発言もありまして、わが国内では非常に強い関心を持っているわけでありますけれども、いろいろ検討いたしました結果、その後中国からも話がありまして、基本的な修正ではないということであります。したがいまして、基本的な修正ではないがなぜあのようなことになったか、これは通産大臣の方からお答えをしていただきます。
  254. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 外務省に正式の回答が来ていないという前提で私からということになるわけですが、最近訪中いたしました日中経済協会渡辺弥栄司理事長らを通じまして、中国側の事情を調査したわけであります。その結果、農業、軽工業、重工業の順にあんばいする従来の基本方針、これに変化はない。人民日報社説もその方向を再確認したものである。契約の留保はなぜそういうことになったのか。これは、現代化路線が敷かれて今日まで各部門がそれぞれの計画を進めてきた結果生ずるアンバランスもいろいろある。特に外貨資金、この資金繰りの問題を調整するために生じた主として金融上の問題だ、こういう回答があったというふうに聞いております。  そこで、わが国におきましても、対中プラントの輸出の資金協力につきましては、かねて市中金融機関、いわゆるバンクローン、シンジケートローンとも言います。それから輸銀の輸出金融を利用した延べ払い、こういったそれぞれの形態に応じましていま当事者間で話し合いがなされております。これは実務家同士の段階です。したがって、これが早く成約を見るように私どもとしても推進をしたいというふうに考えております。  以上であります。
  255. 吉田之久

    吉田委員 外務大臣通産大臣の御見解がほぼ一致しているかに思えるわけでございます。しかし、最近伝わってまいりました李先念副主席の発言をわれわれが読み取る範囲におきましては、必ずしもそう断定できないのではないかという気がしてならないのでございます。特に李先念氏は、私を含めて一部の同志がせっかち過ぎたため、計画全体が大き過ぎた面があった。重点項目に調整を加えつつある現状である。八五年に六千万トンという鉄鋼生産目標も改めるべきかどうか考えている。こういうふうに述べておられるようでありまして、若干修正の可能性もあることがほのめかされているようにわれわれは受け取らざるを得ないわけであります。こういう点につきまして、この李先念氏の発言、特に向こうの経済十カ年計画に何らかの修正が加えられることがあり得るかどうか、その辺の分析をさらにお伺い申し上げたいと思います。
  256. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど申し上げましたように、外務省にまだ公式な連絡が入っておりませんので私からお答えするわけでありまするが、李先念副総理の昨日報道された発言、これは確認されておりません。しかし、先ほど申し上げたように、渡辺君の情報によりますと、建設の基本方針は変わらない、また日本は中国の古い友人であって、日本との貿易は特に大切にしていきたいということを申しておられたというふうに聞いております。
  257. 吉田之久

    吉田委員 路線問題に重要な変更がなければ、それは大変望ましいことではございますけれども、たとえいま大臣から御答弁のありましたような線で今後順調に進んでいくものとしても、結局そうなれば、いよいよ政府借款等をめぐるいろいろな政府の煮え切らない態度に対してかなり向こうが困惑し、また不満を持っているのではないかという感じが強く残ってまいるわけでございます。契約が成立しなければ発効ができないわけでありまして、こういう政府借款等の問題あるいは輸銀をめぐるいろいろな円建て決済等の問題、こうした点につきまして現時点で政府はどのような考え方を煮詰めておられるかお伺いいたしたいと思います。
  258. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいま輸銀との間に輸出延べ払いの交渉が行われておるやに承っておるのでありまするが、これは問題のポイントは、円建てにするかドル建てにするかの問題があるわけであります。わが方としては、日本の輸銀のことでございますからドル建てば困る、円建てにしてほしいということを強く主張しておるわけでございます。  それから、この延べ払いにつきましては、OECDの準則がございまして、その基準の金利でなければ困るという問題があるのでございますが、これはまだ話し合いは煮詰まっておりません。  それからもう一つ、輸銀と中国銀行との間に開発融資、つまり石炭、石油等の開発に要する融資の問題が出ておる。これも輸銀の融資でありまする限りは円建てにしなければいかぬ、金利をどうするかという問題につきまして、まだ話し合いの段階だというふうに私は伺っておるのであります。民間銀行と向こうとの話は、これはまだ具体的な話は煮詰まってないと聞いております。いずれにしても、もう少し具体的な話にならないと何ともその結論を出せないのじゃないかと思うのですが、政府借款につきましてはまだ申し出はないと聞いております。  以上でございます。
  259. 吉田之久

    吉田委員 そういたしますと、あくまでも政府系金融機関が自国以外の通貨建てで融資するのは国際的にも例がないというたてまえに立って、日本の輸銀を通じてはあくまでも円建てでいかざるを得ない、こういう方針には変わりはないと受け取っていいわけでございますね。とは申しましても、いろいろとドルと円の相場の問題、変化等もございますので、民間の方で約五〇%ドル建てによって融資を行うという計画もあるやに聞いておりますけれども、この辺についてはいかがでございますか。
  260. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いろいろな組み合わせの検討が行われていると聞いておりまするけれども、最終的に話がまだまとまっておる段階ではないようでございます。
  261. 吉田之久

    吉田委員 その辺の話はいつごろまとまる予定でございますか。たとえば劉希文氏の来日によってかなりこの辺の協議が詰まるのではないかというふうにわれわれ国民は見ているわけでございますけれども、その決着の可能性と見通しについてお述べいただきたいと思います。
  262. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 劉希文さんは三月十七日に来られる予定でございます。これは外交部の副部長ですから、主として日中長期貿易取り決めに基づく折衝をされるわけですが、いま稲山さんがわが国の代表でありまするので、稲山さんとの間で話し合い、協議がなされる、したがって、私ども通産省としましても、これが一日も速やかな形で成案を得られるように協力をしたいというふうに考えております。
  263. 吉田之久

    吉田委員 プラント輸出や資源開発に対する輸銀の融資についての特に金利の問題でございますけれども、先ほど大臣からもお述べになりましたが、できるだけ安くしないと向う様にもいろいろ都合があることはわかります。しかし、たとえば利息を六%プラスアルファ程度にするとして、そういう動きに対してガイドラインを破る疑いがあるではないかというアメリカ等からのいろんな批判もあるやに聞いておりますけれども、その辺のところにつきましてはいかがでございますか。
  264. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは輸銀の延べ払い融資ということになりますと、やはり各国協調してガイドラインを守らなければいかぬたてまえになっておりますので、心情的には極力応援してやりたいという気持ちは私ども持っております。しかしまた、ほかの国からいろいろなこと、おれの方へも同じように安くしろよというようなことになりますと、なかなか収拾できませんし、そこら辺を考えながら、いまガイドラインの範囲内でやりますよということを大蔵省としては方針として決めておる段階でございます。
  265. 吉田之久

    吉田委員 それから大蔵大臣は、いま政府借款についてはまだ正式に向こうから申し入ればないというふうにおっしゃいましたけれども、わが党の佐々木委員長が鄧小平氏と会談をいたしましたときに、特にこの政府借款等について触れておりまして、先方でも大いに受け入れしたいということを言明されたと聞いております。したがって、恐らくは、海外経済協力基金等をいかに有効に活用しながら向こうの要請にこたえていくかということがこれからの問題ではないかと思います。しかしこの問題につきましても、発展途上国から、そういうことになると、それぞれの国に借款の枠の削減が起こってくるのではないかという警戒心もあるやに聞いております。その辺のバランスと申しますか、調和と申しますか……。
  266. 金子一平

    金子(一)国務大臣 正式に政府借款の申し出がございましたならば、その段階において十分に検討してまいりたいと考えております。
  267. 吉田之久

    吉田委員 では次に、防衛問題について御質問をいたしたいと思います。  まず、この委員会におきまして、過日来大変問題になっております国後、択捉両島のソ連の軍事基地の問題であります。  言うまでもなく、これは本来わが国の固有の領土でありまして、そこに今日の時点において、ソ連が膨大な軍事基地を置いているということを一体どのように解釈すればよいのかということは、まさに国民の最大の関心事でございます。  たとえばこの件に関しまして、米国の対ソ戦略専門家のコリンズ氏は、この両島の基地化問題はまさに政治的なシグナルである、つまり日本は武力で両島を解放することもできないし、米国に頼んでももはや問題にされないという事実を見せつけるためだ、こういう見方を述べているわけであります。そういう見方もあるということは、また国民の中にもそういう感じでこれを受けとめている人たちもかなりあると思うのでございまして、まさにわが国の重要な領土問題と絡んでくるわけであります。この問題につきまして、まず外務大臣見解をただしたいと思います。
  268. 園田直

    園田国務大臣 北方四島はわが国の固有の領土であり、日ソの間でまず話し合うべき重大問題であります。先般の国会決議もそのとおりでございます。ソ連がその話し合うべき四島に軍事基地を置いて不法占拠すること自体が不法なことでありますが、その上、この軍事措置を強化しておることは、この平和的に解決しようという精神に逆行するものでありまして、まことに遺憾であります。このように実績を積みながら、この北方四島問題をこのままにしようということであるならば、これは全く遺憾なことでありまして、わが国民の総意は御承知のとおりであります。いかようなる措置をとろうとも、粘り強く一貫してわが方はソ連に折衝を進める所存でございます。  軍事的意味については防衛庁長官からお答えをしていただきます。
  269. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと防衛庁長官からの御答弁を少し後にしていただきまして、先に外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  いま、まさに、大臣がおっしゃったとおりでありまして、いわゆる国民の願いに逆行するもはなはだしい事態でございます。先ほど大臣は、近江委員質問に対して、北方領土の返還、これに対する答弁で、先方に話し合う誠意があるならば、他の問題についても、いろいろと経済協力の面で誠意をもって対応していきたいとおっしゃいました。しかし、今日の時点というものは、話し合うそういう誠意も雰囲気も全くなくて、むしろわれわれの願いをじゅうりんした状態において膨大な軍事基地を置いておる、こういう状態でございます。したがって、この事態が固定化される限り、日本とソ連の他の通商、経済の面におきましても、貿易の面におきましても、かなりの支障は生じざるを得ないとわれわれは考えますけれども外務大臣はいかがお考えでございますか。
  270. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  御発言のとおりでありまして、日ソ間における問題は、すべて北方四島が大前提でありますから、これに対して話し合うとか誠意ある態度があれば、他の平和条約であるとか善隣友好条約等もこれまた弾力的に考える必要があると存じますが、それがない限りは、断じて応じられないというのが方針でございます。
  271. 吉田之久

    吉田委員 では、そういう外務大臣見解を横に置いて、防衛庁長官としては改めてこの二島の今日の現状をどう解釈、認識しておられますか。
  272. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  わが国固有の領土であります両島地域に、昨年以来部隊が増強され、基地が建設されておることはまことに遺憾なことでございます。ただいま外務大臣から御答弁されたとおりでございますが、私どもといたしましては、このような軍事能力が私どもの領土であるところへ、しかもまた北海道に隣接したところに増強されたことは、軽々しく見てはならないと考えておるわけであります。ただ、この脅威と申しますのは、意図と国際情勢と、それから軍事能力が一緒になって初めて脅威となるわけでございますけれども、意図につきましては、先ほども指摘がございましたけれども、あるいは先ほどの御発言にも関連するかと思いますが、意図というのはなかなかわかりにくい点がございます。また、国際情勢というのは、まことに不確定な要素を持っておるわけでございます。そうした中で私どもは、軍事能力というのは、これはもう具体的にはっきりするわけでございますので、これにつきましてはそうしたことがあるということ、これは私どもも十分見守っていかねばならない、このように考えておる次第でございます。
  273. 吉田之久

    吉田委員 長官のただいまの答弁はかなり現実に即してきた答弁のように思うわけでございますけれども、去る二十一日、わが党の神田委員がこの件につきまして質問いたしましたときには、長官は、国後、択捉両島へのソ連軍配備については「わが国の近接地域に新たな軍事的能力が出現したことには、重大な関心を持っているが、現状は主として、二島の防衛の域は出ないと考える。しかし、二島の防衛以外の目的を排除するものではなく、監視を続け、適時、適切な措置をとるようにしたい」こう答弁しておられるわけであります。ソ連自身があの択捉、国後の二島ないしはソ連領域内のいろいろな軍事地域を防衛する目的のためだ、こういうニュアンスが非常に前に出てきておるわけでございますけれども、しかもその後で、二島の防衛以外の目的を排除するものではないと大変難解な日本語を使っていらっしゃるわけでございますが、もう少し明快に御説明をいただきたい。
  274. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  大変難解という御指摘をいただきまして恐縮いたしておりますが、ただ、昨年来増強されました部隊は主として地上部隊、しかも数千名、強いて言えば旅団クラスというのがあるわけでございます。それで、実は大陸に配置される部隊と違いまして、島嶼に配置されておるということで多少編成等においても大陸配備とは違うようでございます。しかも海空との関係、海上、航空の勢力というものの増強は見られない、したがいまして、その能力からするならば主として島嶼防衛的なものではないか、こう見ておるわけでございますが、ただ、そうは申しましても一つの軍事能力でございますから、それは意図いかんによりましてはどのようにも使えるわけでございますので、その意図がはっきりいたしませんから、その能力だけ見るならば主として島嶼防衛的であると思いますけれども、しかしその意図によってはどのような目的に使われるかわからない、したがって、十分監視する必要があるというのが私の趣旨でございます。
  275. 吉田之久

    吉田委員 そういう分析の後に、あなたは神田委員に対して、この二島の今日の現状というものは、あるいは極東におけるソ連の今日の軍事配置というものはまさに潜在的な脅威と考えざるを得ない、こういう表現をお使いになったわけであります。いまも再三申されましたとおり、しかも、脅威とは侵略する意図とそして侵略し得る能力である、こういうふうに防衛白書にも五十三年に述べられているわけでございます。私は、その脅威は侵略する意図と侵略し得る能力であるという表現はまさに的確だと思います。しかしもう少しこれを一つの方式的にあらわしてみるならば、少し数学的にあらわしてみるならば、脅威イコール侵略する意図掛ける能力というふうに置きかえても間違いではないと思うわけなんです。いかにその軍事能力が強大なものであっても、そういう侵略の意図を持っていない場合にはそれが何ら脅威でないことは事実であります。むしろ今日のアメリカの戦力のように擁護する側に立ってくれている場合は、その戦力が大きければ大きいほどわが国にとっては安全である。しかし、あなたがはしなくもこれは潜在的脅威であると言われたからには、私のそういう方式に従うならば、現に戦力がある以上は明らかにソ連は侵略する意図を潜在的に持っておる、こういうふうに置きかえなければならないと思うのです。あなたは先ほどからしきりに、意図はわからない、場合によっては変化する、そう言いながら、これは潜在的脅威である。そういう理論は成り立たないわけでありまして、われわれも潜在的脅威であると認識いたしております。だとするならば、明らかに侵略する潜在的な意図を持っている国である、現にわれわれの本来の領土に対して基地を置いているということはそれ自体一つの侵略である、こう考えざるを得ないわけでありますが、この辺、防衛庁長官としてもう少しはっきりした分析をなさっていただきたい。
  276. 山下元利

    山下国務大臣 私がこの前、神田委員にお答え申し上げましたのは、そういう軍事能力があるということは一つの潜在的脅威であると申しましたのでございます。しかしその能力を配置したことの意図はわかりません、こう申しております。ただ、いまの御指摘は、意図掛ける能力が侵略だと仰せられましたが、私は、侵略を目的とした意図を持ってこのたびの配備をしたかどうか、これはわからない、それまで前提することは私はいまとしては当を得ないのではないか。ただ、昨今のソ連の艦艇、航空機等の動きやあるいはソ連極東軍全体の近代化、増強等を見まするならば、これはやはり巨大な軍事能力でございますから、そのこと自体は潜在的能力でありますけれども、そのことが侵略を意図したかどうかということについては、御指摘ではございますけれども、必ずしも直ちにそう判断することは当たらないかと思うわけでございます。
  277. 吉田之久

    吉田委員 その辺の論議は後日に譲るといたしまして、なお、あなたは三月一日の予算委員会の第一分科会におきまして、わが党の大内委員質問に答えて、これらの基地は攻撃的な基地に変化する可能性もあり得る、こう述べておられるわけであります。まさにあり得る可能性を認めていらっしゃいます。だとするならば、そういう脅威を起こす、しかも侵略を起こす可能性の大いにある向こうの動きに対して、わが方はどう対応しなければならないか。ただ監視し、ながめ、模様ながめで時間を推移していいのかどうか、この辺が国民の心配であったのです。いかがでございますか。
  278. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘のとおり、この前の分科会で、私は、主として防衛的なものと判断いたしますが、これは純軍事的に見れば攻撃的なものにも変わり得る可能性を排除するものではない、このように申し上げましたのはそのとおりでございまして、したがって、その意図は那辺にあるかということでございますから、その意図については私どもはいまのところわからない、しかし固有の領土、しかも北海道にきわめて隣接した地域にこのような軍事能力を増強したという事実はこれは軽々しく見てはならない、このようにお答え申し上げたわけでございまして、それはなぜかといいますと、それは攻撃的なものにも変わり得るということでございます。  ところで、実は、御指摘でございますけれども、それでは何もしないのかというのではございませんで、したがいまして、私は、意図はわからぬけれども、しかしそのような能力がはっきりとしてあるということについては十分監視する必要があるということを申し上げているわけでございまして、それに対してどう対処するかにつきましては、能力といたしますならば、その両島地域のみを見る限りにおきましては、いまのところ島嶼防衛的なものである、しかしながら全体のソ連極東軍のかかわり合いもございますので十分監視してまいりたい、このように申しておる次第でございます。
  279. 吉田之久

    吉田委員 どういうふうに事態が変わっても先方の島嶼防衛的なものだと、そう信じたいあなたのお気持ちはわからぬではありませんけれども、しかし情勢というものは刻々変わってきておる。あなたがおっしゃるとおり、まさにその能力にまた一つの大きな要素が付加されてきた。それは空母ミンスクが太平洋艦隊に編入される可能性があるという動きでございます。この問題につきまして長官はどう分析しておられますか。
  280. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、ソ連キエフ級空母ミンスクが去る二月二十五日、これまで所在していた黒海から地中海に移動したと承知しております。また、防衛庁としては、キエフ級空母がいずれソ連太平洋艦隊に配備される可能性があるとは考えておりますが、この配備時期等についてはつまびらかではございません。
  281. 吉田之久

    吉田委員 太平洋艦隊に編入されるだろう、しかしその配置されるのがウラジオストクであるかどうか、まだその辺までは定かではない、こういう分析でございますね。こういうことになってまいりますと、次第に、あなたが認められる潜在的な脅威は、その脅威の度合いを増加しつつある。潜在的な脅威というものはいつ顕在的な脅威になるかもしれない。これはもう説明を申し上げる必要もないと思います。こういう事態になってまいりますと、四、五年前の日本を取り巻く国際環境あるいは防衛上のいろいろな諸条件が最近著しく変わってきているということを認めざるを得ないと思うわけであります。  そこで、防衛庁長官にお聞きいたしたい点は、昭和四十八年の二月一日、この衆議院予算委員会におきまして、当時の増原防衛庁長官は、現在は大勢としては緊張緩和の傾向にある、このような今日の状態を平和時と規定する、したがって、わが国は平和時における防衛力をいかに持つべきかということで今後の防衛力を進めていかなければならない、ただし防衛力というものは一朝一夕になるものではないので、とりあえず、かくかくの防衛力の配置をしようではないか、こういう考え方で自衛力の配置を説いておられるわけでありますけれども、私は、こういう四十八年当時のきわめてのどかな条件と、今日置かれている日本の条件とは著しく変化の兆しを見せてきておる、したがって、平和時における防衛力という同じ発想のもとに、同じ延長線上で今日のわが国の自衛力を微増しながら温存している程度で果たしていいのかどうかという基本的な疑問にぶつかるわけでございますが、防衛庁長官はこの点をいかに認識しておられますか。
  282. 山下元利

    山下国務大臣 防衛庁といたしましては、ただいま昭和五十一年に策定せられました「防衛計画の大綱」に従いましてその整備を行っているわけでございまして、その当時の、その大綱を作成いたしますについての前提となるべき国際情勢についてはいかがかということでございますが、確かに昨今の情勢は厳しくなってまいっておると思います。
  283. 吉田之久

    吉田委員 おっしゃるとおり、まことに厳しくなってきているわけでございまして、そういう情勢の中で、特にわが国の自衛力が限定された局地的な侵略に対処する自衛力である、かつ、限定されたそういう局地的な戦闘に対しては十分な防衛の任を果たすべき任務を帯びた自衛力である、とういうふうにわれわれは受け取っておりますし、また、政府も絶えずそのことを言及してこられたわけでございます。  私ども考え方に従いますと、およそ戦争というものはほとんど全部奇襲によって始まる。特に、想定される限定的な小規模な侵略というものは一〇〇%奇襲によって始まると言っても決して間違いではないと思うわけでございます。こういうわれわれの考え方に対して、防衛庁長官は是認されますか。
  284. 山下元利

    山下国務大臣 政府委員から……。
  285. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  奇襲という言葉の概念でございますけれども、明確な定義があるわけではございませんが、予想しないときに、予想しない場所に予想しない兵力でもって攻撃を加えてくる、こういう意味に解しておりますが、一般的には、攻撃側は当然軍事的な効果を最大にするために常に奇襲を企図し、防御側は奇襲をされないように不断の努力をしておる、こういうことが軍事的な常識であろうかと存じます。  これらのことから、ただいま御指摘のような、侵略の目的が限定的でありかつ規模が小さい場合には、そうでない大規模な場合に比べますと、よけい防御側にとりましては事前の察知が困難である、そういう意味におきまして、奇襲になる可能性が大きいというふうに考えております。
  286. 吉田之久

    吉田委員 長官、これが常識だそうでございます。その常識を長官自身から御答弁なさらないというのは、われわれも非常に寒々したものを感ずるわけでございますが、いま御説明がありましたとおり、まさに奇襲というものは相手がどういう兵器を使ってくるかわからない、あるいはどこから上ってくるかわからない、いつ起こるかわからない、もうすべてが未知数の要素によって成り立っているわけでございます。だとするならば、こういう奇襲に対してわが国が完璧な防衛をしていかなければならない以上は、奇襲に対するいろいろな即応の仕方、それが絶えず完璧に詰められていなければならないと思うわけであります。しかしながら、今日、多くの人たちが指摘いたしておりますように、まさにわが国のいわゆる有事法制というものは、こういう奇襲に対しては何ら対応できない仕組みにしかなっていないという点を案ずるわけでございます。間々論じられてまいりましたこの有事に対する、あるいは特に有事と言えばいろいろ幅広く誤解されるおそれがありますので、奇襲と限定してもいいと思います。奇襲に対するわが国の法的な欠陥はありやなしや、また、あるとするならば、今日、それについて政府自身がどのような責任ある検討を進めてこられたか、お答えをいただきたいと思います。
  287. 山下元利

    山下国務大臣 ただいまの御指摘は、有事法制についてのお話でございました。その中において、また奇襲対処はどうかという御指摘であると思うわけでございます。  有事法制の問題につきましては、私どもは現在の法制は根幹において整備はされておると思いますが、ただ、どんなところに不備があるか、またそれにどう対処すべきかにつきまして、これはもう防衛庁としては不断に研究いたしている次第でございます。ところで、奇襲と申しますのは、先ほど政府委員が御答弁申しましたように、まさに奇襲でございまして、実は有事というのは防衛出動が下令された状況における問題であるし、奇襲というのはその防衛出動が下令されない前にどうあるかというふうな問題であるわけでございますが、ただ申し上げますと、私どものいまの防衛庁、自衛隊はあくまで憲法、防衛二法のもとにおいて、しかもあくまで文民統制ということは守っていかねばならぬ大原則でございます。そうした文民統制、それからまたそういう事態というものについて自衛隊としてどう行動するかという、実際問題としてそれはなかなかむずかしい問題もございますので、これもそうした問題として研究いたしているところでございます。  以上でございます。
  288. 吉田之久

    吉田委員 それでは、研究なさっていることを一つずつ確かめてまいりたいと思います。  まず、今日の自衛隊の演習について若干お聞きしたいと思うのです。  こういう有事のときに、あるいは奇襲のときに何としても戦力を鍛えておかなければならないのは当然の鉄則でございますので、お伺いする次第でございますが、現在北海道で演習をされる方針はございますか。特に国後、択捉の軍事基地建設に伴って自衛隊としてはどのような対応をこれまでとってこられたか。北海道の北部方面隊あるいは第五師団に何か指示を出されたことはありますか。  時間がないのでまとめて聞きましょう。  今後、何か対応策を検討しようとなさっているか。たとえば軍事演習等を考えておられるのかおられないのか。あるいはここ四、五年間、ひとり北海道だけとは申しません。師団規模以上の演習は陸、海、空、それぞれ何回程度やっておられますか、御質問いたします。
  289. 原徹

    ○原政府委員 国後、択捉にソ連の地上軍が配置したということを対象にして特別の演習というようなことはやっておりません。  それからもう一つの話は、いわゆる移動の演習でございますか。――移動の演習は毎年、師団単位でやりますれば、これは演習地に行くこと自体が移動の演習になりますが、そういうことは絶えずやっておるわけでございますが、方面隊レベルで考えている演習は、たしか年に十回くらいの程度でやっておるわけでございます。
  290. 吉田之久

    吉田委員 毎年大体同じ回数でやっていらっしゃいますか。われわれの調査いたしましたところでは、師団規模以上の演習は、たとえば五十一年には陸が四回、海の方が一回、空が一回、五十二年は三、一、一、こういう数字だと承っておりました。ちょっと十回にはならないのじゃないですか。
  291. 原徹

    ○原政府委員 方面隊以上が企画いたしました移動演習は、これはちょっと数字違いますが、五十一年度が六件、五十二年度が七件、五十三年度が十一件でございます。
  292. 吉田之久

    吉田委員 では次に専守防衛と申しますか、われわれは専守防御と呼んでおりますけれども、何としても練度の高さということが不可欠でございます。いまの答弁を聞きましても、決して現状と照らして自衛隊の演習の度合いは十分だとは思わないわけであります。特に今度の防衛白書にも述べられておりますとおり、パイロットの練度は年年低下している、高練度の技量資格者の占める割合が一体どのぐらい低下してきているか、この際、具体的に説明を求めたいと思います。また、アメリカでの訓練も考えなければならないというふうに白書では述べておられますけれども、現にアメリカでのパイロットの訓練を行っておられるかどうかお聞きいたします。
  293. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 白書にも指摘をいたしましたように、訓練空域にいろいろ制限がございます関係上、戦闘機パイロット、特に戦闘機パイロットの訓練が万全を期しがたい面がございまして、技量低下の傾向が出ておることは事実でございます。ただ、具体的な数字で、ちょっと手元にございませんので申し上げられませんが、米国における航空自衛隊のパイロットの訓練計画につきましては、白書にも書いてございますように、現在米国とこの可能性について検討中でございまして、なるべく早い時期に実現をいたしたいと考えております。
  294. 吉田之久

    吉田委員 年々低下しているけれども、その低下の仕方についてはわからないというようなことでは非常にこれはお寒い限りでありまして、怠慢のそしりを免れないと思います。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  次に、先ほど長官がおっしゃいましたけれども、有事法制の整備と奇襲に対処する問題でございますけれども、自衛隊法の百三条の政令が今日依然としてつくられておりません。これは一体どういうことでありますか。政令がなくとも十分に対処できるということなのか、あるいは政令をつくらなければならないのに全然これが放置されているということは、まさに立法府を無視していることになりはしないかという点であります。
  295. 山下元利

    山下国務大臣 自衛隊法第百二条に基づく政令が定められておらないことは御指摘のとおりでございまして、そうした場合に、仮に自衛隊法の規定によりまして防衛出動命令が下令された場合、出動を命ぜられた自衛隊が部隊移動その他の行動をとるに当たって支障となるおそれがあると思います。ただ、これまで幸いわが国をめぐる国際情勢は早急に措置を必要とするような緊迫した状況はなかったこともございますが、むしろ自衛隊にとりまして、いままでは防衛力整備の面に重点が置かれまして、運用面における具体的な研究整備が必ずしも十分でなかったと考えるわけでございますので、本件に関しましても有事法制の研究の一環といたしまして、その制定すべき政令の内容等含めて検討することにいたしたいと思う次第でございます。
  296. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと最後の方の語尾が、一番大事なところが一番あいまいであります。検討したいと思っているのか、検討しているのか。検討しているならば、いつごろまでに結論が出るか。
  297. 山下元利

    山下国務大臣 お答えいたします。  検討することといたしております。
  298. 吉田之久

    吉田委員 まことに春風駘蕩たる防衛庁長官でございますけれども、総理、お聞きのとおりこれは大変おくれていると思います。いずれまた後で総理にお伺いいたします。  次に、領空侵犯についてどう対処するかという問題でございます。  領空侵犯機については、一、確認、二が警告、三が誘導、そして四に武器使用、こういう四段階で対処すべしという内訓があると聞いておりますけれども、そのとおりでございますか。
  299. 山下元利

    山下国務大臣 そのとおりでございます。
  300. 吉田之久

    吉田委員 ならば、その最後の四番目の武器使用というのは、どういう法的根拠に基づいて武器使用ができるわけでございますか。
  301. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  領空侵犯に対する措置の法的根拠からまず申し上げますと、防衛庁設置法第五条、防衛庁の権限の十八号に「領空侵犯に対する措置を講ずること。」というのがございます。次に、自衛隊法八十四条によりますと、長官は、外国の航空機が国際法規または航空法等の国内法規に違反をしてわが国の領域の上空に侵入してきた場合には、これに対してわが国の領空外に退去させるかあるいは着陸させるため、自衛隊の部隊に対し必要な措置を講じさせることができるということになっております。したがいまして、自衛隊法八十四条が根拠でございますが、この八十四条に基づいて緊急発進をいたしました要撃機は、ただいま御指摘のような確認、警告あるいは誘導、さらにこれに必要な強制的な措置、すなわち最寄りの指定をした空港に着陸をさせるか、あるいは領空外に退去させるかのため必要な措置を講ずるわけでございますが、これに対して指示に従わず実力をもって抵抗をしてくるというような場合には、この領空侵犯措置の実施のための一環として、必要な措置として武器の使用が認められる、かように解釈をいたしております。
  302. 吉田之久

    吉田委員 いまの解釈で、法制局長官よろしゅうございますか。
  303. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま防衛庁の参事官の方から御説明がありましたように、領空侵犯に対する措置の具体的な根拠規定は自衛隊法の八十四条でございます。  そこで、八十四条で、ただいま御説明がありましたように、まず確認をし、あるいは警告を発し、誘導して、本来ならばそこで目的を達するわけなのですが、その侵犯機が何と言っても退去しない、それは非常に困るわけなので、警告を発し、あるいは警戒的な発射をすることもあるでしょう。それに対して、侵犯機がスクランブルをかけた自衛隊機に対してもし発砲するあるいは発砲しかけるというような場合には、これは自分の身を守らなければなりませんし、飛行機と一緒に落っこちてしまったのでは犬死にになるわけですから、そうすれば自衛隊法の八十四条が命じている必要なる措置、つまり着陸させたり退去させるというような、そういう職務を行うことすらもちろんできなくなるわけですから、そういう場合にはもちろん反撃をして発砲してもよろしいというふうに考えるわけでございます。
  304. 吉田之久

    吉田委員 一応理屈はわかりました。もう一度これはちょっと総理にもきちんと聞いておいてもらいたいと思うのですが、八十四条、「わが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。」この「必要な措置」の最大の措置というか、やむを得ざる措置は戦闘を交えることである、武器を使用することである、これだけが唯一の解釈と申しますか、論拠になるわけでございます。しかし、それはいかにも幼稚園の戦争ごっこみたいなものでありまして、そんなにのんびりした状態というのは全く想定できないわけであります。私は、たとえば武器使用のケースをさらに具体的に聞いてまいりますと、いまおっしゃったように侵犯機が先に射撃をしてきたとき、あるいは侵犯機が機体の弾倉を開いて日本本土に爆弾投下を行わんとするとき、こういうときは反撃していいのだ、こういうことがいままで明らかになっておったと思うわけでございますけれども、しかし今日の時点におきまして、わが党が三幕僚長といろいろ懇談して聞きましたときに、空幕長は、もはや弾倉が開いてゆっくりと爆弾を落とすというようなそういう飛行機はございません。ミサイルの場合は全く見えませんので、これは措置のしようがない、こういう現実的な面から見たいまの解釈への欠陥を指摘しておられるわけでございますが、一体こういうときにだれが命令を下すのでございますか。個々に判断するというようなことはあり得ないと思うのです。指揮官が指示をすればいいわけでございますか。
  305. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えを申し上げます。  わが国の領空を侵犯した侵犯機が弾倉を開いて爆弾を落とすあるいは落としかけるというような事態になれば、実はそれは侵犯機に対する対応というのじゃなくて、わが国の領土に対する攻撃ではないかというような感じがするわけなのですが、ですから八十四条の問題じゃないのじゃないかというふうに私は考えるのです。なるほど以前に弾倉を開く話が出たことがあったことは知っております。知っておりますが、どうもそれは八十四条で退去を命じたり着陸をさせたりあるいはそのための必要な措置をとるというような範疇のものではなくて、わが国に対する明瞭なる攻撃なのでございまして、それが組織的かつ計画的に行われるという場合には、わが国に対する直接の武力攻撃であるというふうに考えます。
  306. 吉田之久

    吉田委員 本当に善意で間違ってちょっと領空をわずかに侵犯するとかいう場合、それはそれでいろいろとわれわれもわかるわけでございますけれども、一番われわれが心配なのは歴然たる奇襲でありまして、こういう奇襲の場合に、いま申しておられるような解釈あるいはこの程度の法規、それではとても対応できるものではない。われわれは、ここに改めてもう一度栗栖発言の趣旨を顧みたいと思うわけであります。  申し上げるまでもなく、栗栖発言は、総理大臣の出動命令が発令されなければわれわれは行動を開始することができない、総理大臣は出動命令を発令するにはまず国防会議を招集しなければならない、そしてその可否を決めなければならない、できれば当然事前に国会の承認を経なければならない、しかしそれには相当の時間的な空白が置かれる、奇襲は電撃的なものであるから自衛隊員はなすことなく棒立ちしていなければならないことになる、この辺の現行法体制では国家の防衛の任務の万全を期することはできないので、一刻も早く今日の立法上の手落ちを政府国会において補完してほしい、整備してほしい、こういうことを言われたわけであります。われわれはまさにそのとおりだと思うわけでありまして、一体、こういう今日のまことに不備な法体制の現状の中で、いざというときに本当に対応できるかどうか。  当時論議されたこととしては、そのときは逃げろと口走った内局の人があるようでございますけれども、逃げるようならばそれは自衛隊の任務を果たすことにはもとよりならないわけであります。個人個人の正当防衛として武器が使えるという説明もありましたけれども、制服側からは、それでは個人の行動として認めるのであって、隊としての統制が全くとれないという抗議が当然起こってまいります。したがって、残された道は超法規的に行動するしかないではないかという疑問が当然浮かび上がってくるわけであります。そして、わが国は法治国家でありますから、超法規的に行動した場合には、自衛隊法百十九条第一項第八号の規定に従って、正当な権限がなくて自衛隊の部隊を指揮した者として三年以下の懲役または禁錮に処せられるおそれがあるわけであります。こんな悠長な自衛の部隊が世界じゅうにあるのであろうか、これで奇襲に対処できるであろうか、これで国を守る自衛の措置だと言えるのであろうかという感をわれわれはいよいよ深くするわけであります。  要約すれば、奇襲を受けた場合に、今日の法規では、交戦するにしてもあるいは逃避するにしてもあるいは降伏するにしても、何人も部隊を指揮することは許されないというようなことになるのではないかと思うわけでございます。この辺について、総理はこの法体制の整備のためにどのようにお考えであるか、お伺いいたしたいと思います。
  307. 山下元利

    山下国務大臣 私からまずお答え申し上げます。  超法規的という言葉でございますが、現在私どもの方は、憲法または防衛二法等ございまして、その法制下において防衛の仕事に当たることは申すまでもないことでございまして、しかもあくまで文民統制という大原則が守られねばならぬことは私ども申し上げたとおりでございます。  ところで、わが国に対しまして急迫不正の侵害がある場合におきましては、法の命ずるところによりまして防衛出動を下令することは可能でございますし、またそれはいろいろ条件がございますけれども国会の御承認も得るわけでございますが、急ぐときにはそれは後でもいいということになっておりますし、またおそれのある場合にも対応できるのでございますので、私は現在のこのような情勢下におきまして、そういう現行法制下において対処できること以上に大変な奇襲があり得るということは、いまのところまず想定できないと思います。しかし、仮にそういうことがあるとしたらどうかということでございますけれども、そうしたことを考えて直ちに超法規的行動ということは私は当たらないと思うのでございます。ただ、先ほど申し上げましたとおりに、文民統制の原則と、それから率直に申しまして、いま御指摘のような具体的な事例は、これは万々一ないことを望むわけでございますが、想定せられた場合に部隊としてどう行動するかにつきましての御指摘については、私も十分傾聴させていただきました。そうしたことで、文民統制の原則と部隊としての行動のあり方を一体どのように考えるかということが実は奇襲対処の問題でございまして、私どももそれを真剣に考えている次第でございます。
  308. 吉田之久

    吉田委員 総理にお聞きいたしますが、いま防衛庁長官がおっしゃいましたとおり、いまのところまずそういう奇襲の事態というものはあり得ないだろう、私たちもそう信じたいと思います。しかし、まずいまのところないとしても、それじゃ五年以内絶対ないか、十年以内絶対ないかと言えば、だれも断言できないと思うのです。それが奇襲の奇襲たるところであり、わが国の防衛を全うしなければならない大変難解な、しかし重要な課題であるからであります。したがって、そういう事態が起こったときにあわてて法律を整備してみたり、いろいろ訓練してみたって間に合わないわけであります。治にいて乱を忘れず、いまこそこういう法規を完全に制定していくべきときではないかというふうに私は考えるわけでございますが、総理はいかがでございますか。
  309. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま防衛庁長官からもお話がありましたように、自衛隊はもともと有事に対する存在でございますので、そして現在の自衛隊法は有事立法として相当周到に立法されたものと思います。一応有事に対応できる立法だと思いますけれども、深くせんさくいたしますと、きょうの御論議もありましたように、いろいろ問題がないわけではございません。したがって、防衛庁といたしましてこの有事立法に不備があるのかないのか、ありとすればどこが不備なのかというようなことを検討、研究いたしておると承知いたしております。そしてその必要がいよいよ生じてまいりますれば、国会の判断を求めることになるのだろうと思いますけれども、鋭意防衛庁の方で検討をいたしておる最中であると聞いております。
  310. 吉田之久

    吉田委員 時間がなくなりましたが、最後に一言だけ総理にお尋ねとお願いがございます。  それは防衛委員会国会内に設置しようとする問題でございます。私は今度の国後、択捉の問題にいたしましても、まず新聞が報じて世論が沸いてから国会論議されておる、防衛庁が渋々ぼそぼそと実情を説明しておるという現状、あるいはE2Cの問題にいたしましても、まことに悲しむべき疑惑を媒介としてそれが国民の目に映り、そしてそういういろいろな機種があるのかということが熟知されているという現状、あるいはいまの奇襲の問題にいたしましても、これほど重要な検討が置き去りにされており、しかもそれが予算委員会等でたまたま論議される程度に終わっているということ、こういうことを考えますと、あくまでも防衛委員会ないしは安全保障委員会というものを国会内に設置いたしまして、絶えずそうした論議をしなければならない時期にもはや来過ぎておると思うわけであります。亡き保利議長は、私ついこの間まで議運の理事をいたしておりましたけれども議会制度協議会の席上で、ここに塩川さんもいらっしゃいますけれども、各党みんな合意いたしまして、一刻も早くこれをつくろう、議長も一刻も早くこれをつくろうとおっしゃったにもかかわらず、いよいよ最終的な段階になりますと、あなたの率いておられます自民党の方が、それは屋上屋であるとか、あるいは法案を審議してくれないからいやだとか、逆転委員会がふえるだけだとか、何かそういうことで絶えず暗礁に乗り上げておる現状でございます。私は四囲の情勢をながめるときに、いまこそ総裁としても、一国の総理としても、こういう基本的な問題につきましてさらに一層の御留意を払われたいと思う次第でございます。  以上、御要望いたしますが、一言お答えをいただければありがたいと思います。
  311. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私としても、国会にいわゆる防衛委員会が設置されて実のある論議が行われ、これを通じまして防衛問題に対する国民の理解が深まることは意義深いことであると考えます。しかし、そのような委員会を設置するかどうかは国会御自身の問題でありますので、国会の賢明な判断にまちたいと思います。
  312. 吉田之久

    吉田委員 終わります。
  313. 竹下登

    竹下委員長 これにて吉田之久君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会