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1979-02-20 第87回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二十日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 竹下  登君   理事 伊東 正義君 理事 小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村左近四郎君    大坪健一郎君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       中川 一郎君    根本龍太郎君       野呂 恭一君    藤田 義光君       藤波 孝生君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    安宅 常彦君       井上 普方君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       兒玉 末男君    平林  剛君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       古寺  宏君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    神田  厚君       宮田 早苗君    安藤  巖君       寺前  巖君    松本 善明君       三谷 秀治君    山原健二郎君       伊藤 公介君    大原 一三君       川合  武君    山口 敏夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    長橋  進君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         警察庁刑事局長 小林  朴君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁長官官房         審議官     四柳  修君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君         法務省民事局長 香川 保一君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      天野 可人君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      篠澤 公平君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         水産庁長官   森  整治君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省立地         公害局長   伊勢谷三樹郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         運輸省船員局長 向井  清君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         労働大臣官房長 関  英夫君         労働省労政局長 桑原 敬一君         労働省労働基準         局長      岩崎 隆造君         労働省婦人少年         局長      森山 真弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設省道路局長 山根  孟君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君         自治大臣官房審         議官      関根 則之君         自治省行政局長 柳沢 長治君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         衆議院法制局長 大井 民雄君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   篠原 武司君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   大平 拓也君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   田村  元君     谷川 寛三君   安宅 常彦君     細谷 治嘉君   矢野 絢也君     古寺  宏君   宮田 早苗君     神田  厚君   寺前  巖君     松本 善明君   東中 光雄君     山原健二郎君   大原 一三君     川合  武君   山口 敏夫君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     田村  元君   細谷 治嘉君     安宅 常彦君   古寺  宏君     矢野 絢也君   松本 善明君     三谷 秀治君   山原健二郎君     安藤  巖君   伊藤 公介君     山口 敏夫君   川合  武君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     寺前  巖君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。山原健二郎君。
  3. 山原健二郎

    山原委員 最初に、文部大臣にお伺いをいたしたいのですが、最近のロッキード並びにグラマンと引き続きます事件経過を見まして、教育に携わる最高責任者としてどういう感想を持っておられるのか。こういうことが全国民に報道されておるわけですが、これが子供たち教育にとってどういう影響があるのか。恐らく文部大臣としては苦々しい気持ちでおられると思います。また特に道徳教育ということを強調してこられました文部大臣でございますから、これについては恐らく一定の見解を持っておると思いますが、最初にこの点について文部大臣のいまの気持ちを伺っておきたいのです。
  4. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 御指摘の点ですが、グラマンロッキードの件はよくわかりませんけれども、連日こういう問題が討議されておりますことは、教育子供たちにいい影響を与えるとは私は思っておりません。
  5. 山原健二郎

    山原委員 大臣、さらに、私もロッキード事件以来の経過を見まして、たとえば元総理大臣をしておった方が五つの大切、十の反省、いわゆる五切十省でございますけれども、こういう道徳徳目を発表されたその直後に逮捕されるなどという事件も起こりました。これはまさに、恐らく全世界でも珍しい衝撃的な事件だと思います。それから大臣は、特に大臣就任に当たって道徳教育徳目の問題を出されておりますので、こういうことに対してはかなり厳しい態度を持っておられるのではないかと思うのです。たとえば真相究明につきましても、内閣の閣僚として、大平内閣真相究明を期待するというふうな点から余り出ない段階で、内閣構成員として当然国民の前に積極的に真実を明かかにすべきであるというような発言をするとか、あるいは疑惑のあるE2Cについては予算化すべきでないとかいうことは、当然気骨のある文部大臣として発言をすべきではないか。ロッキードグラマンはわからないということではなくて、道徳徳目を言われるならば、内閣やあるいは政府高官においても当然それらの律すべき態度があると思うのですね。その点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  6. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 御意見よくわかりますけれども、しかしダグラスグラマンの問題はいま国会でも審議されておりますし、まだ検察庁でも十分検討しておる段階でございますから、私はこの問題については意見を差し控えさせてもらいたいと思います。
  7. 山原健二郎

    山原委員 私は、内藤文部大臣意見はいろいろあると思いますけれども、かなり硬骨の人物だと思ってもおります。だから、こういうことについては全く物事をあいまいにしない態度をとるということが今日の文部大臣として非常に重要じゃないか。子供教育の面からも、こういうことの真相究明は積極的に内閣が行うべきであるというぐらいのことは意見として提出していいのではないかと思いますが、あえてそういうことをやる必要はないとお考えになっておりますか。
  8. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 政府国会真相究明に真剣にいま努力している最中ですから、これをごまかすなんという考えは絶対ないと思います。
  9. 山原健二郎

    山原委員 教育にとって好ましくないという御発言でございますから、この点については、今後文部大臣としても当然の努力をすべきであるということを申し上げまして、次の本題に移りたいと思います。  まず最初に、いままで文部大臣就任された方が教育勅語につきましていろいろ発言をしてこられました。その中で最も強烈な教育勅語礼賛論を掲げて登場したのが内藤文部大臣であったと思います。私も、就任の当時の記者会見も見せていただきました。また、各紙の報道しております文部大臣の諸発言につきましてもここへ持ってきておりますが、就任早々教育勅語に言及した真意というものはどこにあるか、まず伺いたいのであります。
  10. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私は、教育勅語国会廃棄の決議をされたときにちようど私も文部省におりましたから、その事情はよく存じ上げております。しかし、教育勅語の中にもいい部分もあるのです。確かに「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ」というようなこと、「古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」の教えだと言われていていい面もあったのですから。私は別に教育勅語を礼賛するのじゃないけれども、教育で一番大事なのはやはり道徳なんですよ。人柄ですからね。お勉強も大事だけれども人柄が一番大事だから、この人柄をどうして育てるか、これが私の一番願いなので、ひとついい案があったら私に教えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  11. 山原健二郎

    山原委員 そうしますと、教育勅語廃棄をされたということは認めておられるが、中身によいところがあるということは、親に孝に兄弟に友にというあの徳目のこと、これがいいのだというふうにおっしゃっておられるのですか。そのほかに何かありますか。
  12. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私も戦前に育った人間でございますから、教育というものはやはり親と子供先生、この三者に共通価値観がなければだめなんですよ。親は親、子供子供学校先生学校先生で、てんでんばらばらというのではりっぱな教育はできっこないのです。ですから、何かそういう共通価値観があってほしいなというのが私の願いで、私は教育勅語を復活させる気は毛頭ありません。
  13. 山原健二郎

    山原委員 共通価値観というのは、教育勅語の中にあるのは何ですか。
  14. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 教育勅語にある共通価値観、先ほど申しましたように、「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ」というのは、これはだれが見ても私は当然の教えだと思うのです。そういう価値観があったことを私は高く評価したので、私は教育勅語復活論者じゃないから、この点は誤解のないように願  いたいと思います。
  15. 山原健二郎

    山原委員 私がなぜこういうことを言っておるかといいますと、いつも教育勅語論というのが出てまいりますので、やはりこれは問題を整理した方がいいと思うのですよ。だから、あなたのおっしゃるのは、まず第一番に、教育勅語にはよいところがあるというのは、いまおっしゃったような徳目のところがよいのであるというふうに解釈してよろしいのですか、こう言っています。
  16. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 教育勅語日本明治以来終戦までずっとやってきて、その当時の日本人というのは国際的に大変な評価があったので、私は決して日本教育は悪かったとは思っておりませんが、それは、いま申しましたように教育勅語の中で国民指導原理が明確になっておった、こう申し上げたわけです。
  17. 山原健二郎

    山原委員 いま大臣おっしゃいましたが、私はここへ各国子供たちの使っておる教科書を持っています。フィリピン韓国、インドネシア、インド、この中に当時の日本軍国主義あるいは教育勅語、「君が代」というものについていま各国でどういうことを教えているかということが出ているのです。決して日本評価していません。たとえばフィリピンの場合は、日本軍隊は今日の文明の諸要素のルールまで踏みにじって、残虐な行為を行ったとまで教科書の中に出ているのです。韓国だって三・一運動から子供たちにちゃんと教えているのですね。だから、あなたのように簡単な受け取り方をしてはいかぬのです。私はいまここで教科書——戦争に対する反省というものがほとんど指導要領の中から消えてしまいましたが、侵略を受けたよその国においては、子供たち日本軍国主義はどういうものであったかということをちゃんと教えているのですね。ですから、そういう理解なしに海外へ進出をしましても、国際協調というものが生まれてこない中身が出てまいります。だからそのことを一つ指摘しておきますが、いまあなたがおっしゃった勅語には基本理念指導原理があるとおっしゃるわけですが、その基本理念あるいは指導原理とあなたがおっしゃるものは何でしょうか。
  18. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 先ほど申しましたように、やはり「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ」というようなことはどこの国に出してもいいことだと私は思っています。
  19. 山原健二郎

    山原委員 それが指導原理だと言う。徳目指導原理ならば、たとえばいまコマーシャルで親に孝行しましょう、仲よくしましょうというモーターボートのコマーシャルが出てくるのですよ。これだって指導原理になるかというと、教育指導原理というものはそういうものではないわけです。いまあなたのおっしゃるのは「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ」というようなもの、その教育勅語評価についていま私は申し上げません。その最後には、句読点なしに「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と出てくるわけです。だからそれが問題になったのですけれども、とにかくあなたは教育勅語の中にあるあの幾つかの徳目指導原理だとおっしゃるわけです。そうして一方では、教育基本法には基本理念がない、心棒がないとおっしゃっているのでありますが、教育基本法にはそのような基本理念はないとお考えでしょうか。
  20. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私は教育基本法基本理念はないと申しておりません。教育基本法の中にもやはり教育原理がはっきりしているのです。ですから、真理正義を愛し、勤労責任を重んじ、平和で文化的で健康な国民を育成するというのが教育基本法原理でございますけれども、ただ教育基本法原理は少し抽象的過ぎるのじゃなかろうか。やはりもう少し具体性があって、親も子も学校先生共通価値観を持って、そして教育するというのが一番大事じゃないか、そういう点がいまの教育に欠けているのじゃなかろうかなという不安を私持っているわけなんです。
  21. 山原健二郎

    山原委員 教育基本法に対してそういう不安があれば、お互いに解消していけばいいわけですね。だから、あなたのおっしゃっていることをちょっと読んでみますと、勅語は形式には問題があったが、中身は含蓄があっていい、日本人の心のふるさととも言えるものではないか、日本教育にはいま理念がない、教育には根本心棒がなければならない、勅語の中心にはその心棒がある、勅語自体を否定してはだめだ、中にはお互いに仲よくしようとか親孝行しようとか必要な点も含まれている、教育基本法だけでは不十分だ、道徳教育基本がいまの日本には欠けている。教育基本法にも真理正義を愛するという教育目的が書いてあるがどうかという質問に対して、あれはあれでりっぱです、しかし、あれだけで万事うまくいくかな、どこか抽象的で、私はやはり具体的な指導理念が必要だと思う。たとえば日常の五心ということを言っておられますね。あなたが校長さんをしておられた学校に、体育館に張られておるのは、はいという素直な心、済みませんという反省の心、おかげさまでという謙虚の心、私がしますという奉仕の心、ありがたいという感謝の心、こういうものをそのときに言っておられるわけですが、要するにあなたのおっしゃる指導原理あるいは教育心棒というのはこのようないわゆる徳目を指すのでしょうか、改めてお伺いしておきます。
  22. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 やはり教育根本徳育だと私思います。何といっても人柄であります。先ほどあなたがおっしゃるように、日本は東南アジアから非難を受けておるそうですが、私は、資源小国日本が国際的に信頼と尊敬をかち得るような日本でなかったら日本の繁栄もないと思う。そういう意味で何が大事だというと、一番大事なのは人柄だと思うのです。そういう意味人柄を育てるのにどうしたらいいのか、いま文部省指導要領でもいろいろ苦労しておりますが、私がちょうど文部省におりましたときに道徳の時間を特設したわけでありますが、道徳だけではありませんで、各教科活動全部を通じて徳育に専念すべきだと思います。
  23. 山原健二郎

    山原委員 いまおっしゃったように、教育勅語には指導原理がある、それから教育基本法にも基本理念指導原理があるとおっしゃったけれども、抽象的でそれは不十分だという意味のことをおっしゃったと思うのですね。教育基本法基本理念教育指導原理というものがあるかないかということをもう一回はっきりさせておきたいのですが、いかがですか。
  24. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 教育基本法の中にも指導原理はあります。ただ少し抽象的過ぎやせぬかというのが私の懸念でございます。
  25. 山原健二郎

    山原委員 結局文部大臣の心配しておられる点は、教育勅語には指導原理があった、それは「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ」という徳目である、ところが教育基本法にも指導原理はあるけれども、抽象的でそういう徳目が足らない、端的な表現がないところに問題があるのだということをおっしゃっているのでしょうか。これは確認する意味でちょっと伺っておきたいのです。
  26. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 教育基本法はいろいろな問題が入っているのです。ただそれは教育目的だけじゃないのです。その目的の中に真理正義を愛し、勤労責任を重んじ、平和で文化的で健康な国民、これは間違いないのです、結構なんです。結構だけれども、これは少し抽象的過ぎやせぬでしょうか。教育の現場に十分かどうか私もよくわからないのですけれども、やはり教育で一番大事なのは親と子、学校先生、この三者が共通価値観をもって教育しなかったら教育の効果は上がらないと思うのです。そういう意味で、少し抽象的過ぎるのじゃなかろうかなという懸念を私は持ったわけでございます。
  27. 山原健二郎

    山原委員 それで大体、文部大臣が心配しておることはどういう意味かということは私もわかりましたが、その前に、教育勅語指導原理があったというその指導原理そのものがすでに否定をされておることを御承知でしょうか。
  28. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 明治、大正、昭和を通じて敗戦までずっと教育勅語日本指導原理であったことは間違いないのです。
  29. 山原健二郎

    山原委員 その指導原理が、今日なお適用する可能性を持っておるという意味教育勅語はよかったというふうな御発言になっているのじゃないですか。
  30. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 そういう考えは持っておりません。もうこれは衆参両院で廃棄決議をされたので、私もその当時文部省におりましたから、よく存じております。こういうものを復活しようなんて毛頭考えていないので、誤解のないように願います。
  31. 山原健二郎

    山原委員 そうおっしゃるならば、何であえて教育勅語大臣就任に当たって持ち出さなければならないのか、私は最初の審議でお尋ねしたわけですが、たとえば昭和二十三年の衆議院の決議はもう大臣御承知のように、「しかるに既に過去の文書となっている教育勅語」「が今日もなお国民道徳指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは従来の行政上の措置が不十分であったがためである。」「詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は明らかに基本的人権を損い且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって」「排除しその指導原理的性格を認めないことを宣言する。」「謄本を回収し排除の措置を完了すべきである。」これが衆参両院の満場一致の議決であります。だから、すでに教育勅語における指導原理というものは、ここで国会としてはこれを否認をいたしておるわけですね。だから、それをいまなおかつ教育勅語はよかったというこの出し方に問題がある。もしあなたが心配されておることを出すならば、親に孝行とか夫婦仲よくせよとかいう徳目がないと、何も教育勅語を持ってこなくていいじゃないですか。だから、そこに非常に混乱が起こる。私は、少なくとも大臣が議員としていろいろ発言されることは結構ですよ。それは議員のそれぞれの信念もありますね。けれども、日本教育行政の最高責任者としての文部大臣としては、一たん国会において否決された教育勅語をまた持ち出してきて、これがよかったとかなんとかいうことを言われるのでなくて、もし心配なら、こういう徳目が必要だということをおっしゃったらいい。勅語をここへ持ち出す必要は私はないと思うのですね。その点ははっきりさせておいていただきたいと思いますが、少なくとも大臣就任中は、在職中は、こういうことはもう発言をしないというぐらいのことは言っていいのではないかと思うのです。
  32. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私がそういう発言をした記憶はないのですけれども、ただ、教育勅語が全部悪いのでなくて、あの中にもいい徳目があると申し上げただけで、私は御指摘のように、教育勅語の復活論者じゃないし、今後発言は、お説のとおり慎重にいたしたいと思います。
  33. 山原健二郎

    山原委員 私は、これからも文部大臣が次々とかわられることだろうと思いますけれども、やはりこの点をはっきりして、こういう点は本当に慎重な態度をとるべきだと思うのです。  それから、ことに文部大臣が心配されておるその徳目の問題でございますけれども、教育基本法は、御承知のように教育基本教育憲章、教育宣言とも言えるものを国会は決定をしたわけですね。だから、教育基本法というのは教育理念を明らかにしまして、そして国会ではその次に、基本法ができました翌日から審議されております学校教育法によって徳目の問題もかなり綿密に出てくるわけです。  たとえば学校教育法の審議に当たりまして、政府の日高政府委員の答弁の中にも、道徳的訓練を第一に強調している。それから、これは十八条ですが、小学校教育目標につきましても、「自主及び自律の精神を養う」、人間相互の理解、協同、「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養う」あるいは衣食住の問題、基礎的な学力の問題、そして日高さんは、中学校教育においてもそうだ、大学教育においては、あえて道徳的修養や人格の完成ということまで入れておるのだということまで言って、むしろくどいほど道徳徳目については強調をしてきたのでございますと、ここまで言っているのです。だから、教育基本法というのは、教育原理基本について、平和的で民主的な人格の完成を図るということを基礎にして、学校教育法でこれらの、あなたが心配されるようなこともやれるようになっているのです。それをやるかどうかです。ここに教育勅語などというものをまたまた引っ張り出してくるのじゃなくて、国会が決めたところの、そして三十一年目を迎えますところの教育基本法を本当に大事にして、そのもとにおいて日本教育を民主的にどう前進をさせていくかということが文部大臣の立場でなければならぬでしょう。そうじゃないですか。
  34. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私が学校教育法は全部起案しましたから、お説のことは全部よく存じております。ですから、私は教育基本法学校教育法の体系のもとにやりたい。今回も指導要領を改定いたしまして、十分に検討いたしまして、子供たちの能力を伸ばし、そして徳育をしっかりやるようにいたしておりますから、私は心配ないと思っております。
  35. 山原健二郎

    山原委員 もうちょっと勅語問題について申し上げておきたいと思うのですが、私ども教育勅語で育てられた人間です。あなたもそうですね。しかし、私は戦前においても教員もやっておりましたけれども、教育勅語のもとにおいても絶えず知育偏重知育偏重と最後までついてきたのです。徳育をやらなくちゃならぬ。教育勅語に、あなたのおっしゃるように、指導原理に親に孝になんて書いてあるけれども、最後まで知育偏重で、徳育をやらなくちゃならぬというのは戦争が終わるまで続いた。しかし、こんな徳目を何千遍並べたところで、それは教育ではない。石川啄木の「雲は天才である」の中に、ある校長さんが忠信孝悌を一千万遍繰り返している。しかし、子供にとって何の感銘も与えなければ何の感動も与えない。これが本当に教育だろうかという皮肉めいたことが書かれております。教育というのは感動でしょう。ただ徳目を並べて、それが本当に満足するというような単純な考え方では教育行政はできませんよ。  私はいまの教育を見ましても、たとえば今度政府が出しました青少年白書の資料を見ましても、親をどう見ているかということについて、年老いた親に対する扶養の義務の意識についての調査は何と八七%、世界でも高いのです。それから、たとえば年老いた父母と将来同居することがいいかどうかということについても、日本の青少年の意識は七一・二%、世界でも高いのですね。だから、日本教育が親に対する子供の立場というものを、親孝行という言葉そのものはそんなに強調して使っていないかもしれませんが、そんなに劣った教育をしているわけじゃありません。やっぱり人倫の問題については教育の中で、教育基本法の中で先生方はちゃんと教えているのですね。むしろ日本子供たちに足らないのは、この青少年白書によりましても、社会意識が足らない。こういう欠陥が出ているのです。だから、あなたのおっしゃるように、余り徳目だけ心配される必要はないと思いますよ。だから、本当に教育基本法に基づいてやっておられる先生方を励まし、そしてきちんと政府みずからが守っていく、こういう立場をぜひとっていただきたいと思います。よろしいですか。
  36. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私も教育というのは、徳目だけでいくようなものじゃなくて、やっぱり子供に対する愛情とか信頼とか、そういうものが根本にあると思いますから、徳目だけでやろうなんというような気はさらさら持っておりません。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
  37. 山原健二郎

    山原委員 むしろ、私はいま聞きましても、それほど文部大臣の言っておられることは、教育勅語を絶えず繰り返し引っ張り出さなくとも、率直に徳目が足らぬということをおっしゃったらいいと思うのです。それならそれでみんなで国民的合意の得るような話はできると思いますね。何が日本教育にいま足らないか、あるいはこれはそんなものを書かなくったってもっと進められるのだとかという意見はいろいろあると思います。それはそれで教育的に解決していけばいいわけですね。ところが、盛んにいつも勅語を引っ張り出されるし、それから徳目の問題をおっしゃるわけですが、私は、むしろそういうことよりも、教育勅語に対する政府の取り扱いと教育基本法に対する取り扱いの違いがあるのじゃないかと思うのです。  たとえば教育勅語の場合は、御承知のように御真影が背景にありまして、そして校長さんが白い手袋でこれを厳かに読み上げるということですね。最後には、奉安殿というものまでつくって、そして子供たちはうつむいて、それを読み上げる間はじっとしていなくちゃならぬということ、そして東方遥拝、こういうものが結びついて教育勅語というものはあなたの印象の中にあると思うのですね。私にもあります。ところが教育基本法に対してはどうかというと、絶えず教育基本法はりっぱだよ、しかし不十分だ、ここが足らぬという形で、戦後せっかく日本国憲法の精神に基づいてつくった教育基本法、あなたもりっぱだとおっしゃる教育基本法を、政府みずからが本当に大事にしていくという立場をとらなかったところに、むしろ問題があるんじゃないかと思うのです。教育勅語の場合は、最初出たときには内村鑑三さんは頭を少ししか下げなかったということで不敬罪に問われた。そうしてキリスト教に対する弾圧があれから始まったのです。こういう取り扱い、ここに違いがあるのですね。  だから、あなたが教育勅語復活論者じゃないと言うならば、また教育基本法はりっぱだとおっしゃるならば、教育基本法というものを日本政府の、また文部省基本理念としてこれを大事にしていく、この精神に基づいてやろうじゃないかということをおっしゃってこそ、文部大臣としての資格があるわけです。私はこれをぜひやっていただきたいと思いますが、改めてお伺いしておきます。
  38. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 いまお話しのように教育基本法はりっぱなものですから、文部省としても教育基本法を中心に指導をいたしておりますから、決してこれを粗末にすることは考えておりません。
  39. 山原健二郎

    山原委員 この問題の最後に、これに付随しまして、ずっと内藤さんのお話を聞いておりますと、どうしても結びついてくるのは教育基本法を改定するのではないかという疑点です。それからもう一つは、道徳基本法をつくるというお話があった。それから大臣就任されてからの御発言の中にも教育憲章をつくる必要がある、こういう三つのものが絡んでいるような感じがするわけでございますが、そういうお考えがあるのか。ことに、少し明確に出ております教育憲章というものなどについては何かの構想を持っておられるのか、あるいは大臣就任中にこれを実現するという決意を持っておられるのかどうか、この三つの問題について最後に伺いたいのであります。
  40. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 先ほど申しましたように教育基本法日本教育の中心でございますから、これは遵守していくつもりでございます。  ただ、私が先ほど申しましたように、何か親と子供先生共通価値観が欲しいなという気持ちで、教育憲章みたいなものができたらいいなという気持ちはありましたけれども、具体的な構想は持っておりません。これも慎重に検討させていただきたいと思います。
  41. 山原健二郎

    山原委員 この問題は一応おきまして、次に、山下防衛庁長官がお見えくださっておりますので、先に幾つかの例を申し上げて、長官の御意見を伺いたいのです。  その前に、中学校、高等学校の新しく卒業する生徒の就職の問題について、この三月に卒業する生徒につきまして、文部省初中局長労働省職業安定局長の名前で昨年の三月十四日に通達を出しております。「昭和五十四年三月中学校・高等学校新規卒業者の就職のための推薦及び選考開始の期日等について」というものが出ておりますが、これは、文部大臣に伺いますけれども、どういう目的で出されたのですか。
  42. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 これは就職する場合の時期の問題、いつやるかという時期の問題、それからやはり手続の問題でございますから、そういう問題は労働省と文部省が協議して通達を出しておるものでございます。
  43. 山原健二郎

    山原委員 労働省の方もそういうことでしょうか。
  44. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま文部大臣からお答えございましたとおりでございます。
  45. 山原健二郎

    山原委員 この通達によりますと、求人に対して各官庁、もちろん防衛庁も含めて、すべての会社その他に出されておりますが、七月一日以降安定所に求人票を提出して、安定所は七月十五日以降に確認印を押した求人票を求人者へ返す。それから七月十五日以降学校が求人票の受理をする。そして九月二十一日以降学校の推薦行為が行われるわけでございます。そして十月一日以降に選考がなされるというのがいまの中学校、高等学校の卒業者の求職の期日の設定であります。これはなぜかと言いますと、学校における勉学の期間を長期間安定をさすということと、適確な就職を期するという意味で出された通達であることは、この通達の中にはっきりしております。  ところが、この点でいま自衛隊の、いわゆる青田買いと呼ばれておりますところの隊員募集が、非常に過度なことが行われておるのではないかと思います。これは防衛庁長官にお伺いしますが、たとえば青森県の弘前南高等学校の例を挙げますと、十月一日から開始されなければならぬのですが、昨年の九月ごろより弘前南高等学校におきましては、二百十三名の男の生徒のうち四十五名に対して公園、喫茶店で、特にその中で二度、三度家庭に押しかけて広報官、自衛隊員から勧誘を受け、必要だからということで写真も撮られる。就職解禁一カ月前の九月ごろから目立ち始めまして、父母や生徒の間からそれらの声が学校に聞こえてくるようになりました。したがって同校で三年生八クラスを対象に実態調査をしましたところ、二百十三名中四十五名、理数系のあるクラスのごときは三四%が家庭訪問を受けております。家庭でも困りまして、家庭でもめるケースもあらわれております。突然自宅や下宿にやってきた、生徒の名簿を入手して手当たり次第に勧誘しているとしか思えない、進路指導もめちゃくちゃにしている、家庭訪問は市内全域に行われているのではないか、こういう声が教師の間からも起こりまして、たまりかねた奈良校長が弘前募集事務所に対して、勧誘に目に余るものがあり自粛してほしいと抗議し、所長も行き過ぎがあったと謝罪をいたしておる事件が起こっております。県の職業安定課も強引な勧誘や個別訪問はしないよう要請をしておりまして、昨年の春、各学校先生を通じて願書を出させ、家庭や本人から申し入れがない限り家庭訪問はしないという約束をしたばかりでございましたのに、いま申しましたような事件が起こったわけであります。さらに、数年前にもこの県ではトラブルがありまして、勧誘は学校を通じて行うとの取り決めまでなされておったのでございます。  なお、青森県全体におきまして、県内六十校のうち四十四校、学校に無断で訪ねた例が二十二、学校の知らぬ間に身体検査までやった例もございます。こういう事態が起こっておりまして、これは一部新聞にも報道されております。さらに北海道倶知安におきましては、七月六日、進路指導教員を集めて説明会がなされまして、一校より五十名、六十名の予約者が出されておるわけであります。これは昨年のことでございます。  それからさらに一昨年の例を申し上げますと、岡山県におきまして、七七年の六月一日に県下百十四校中六十三校で勧誘がなされ、六月、八月、十二月と七月、八月、九月など、三回も勧誘を受け、家庭訪問を受けた学校は十六校。喫茶店などでこういうことが行われております。山口県におきましても、一昨年は大体六月から九月、この勧誘が家庭訪問その他を通じて盛んに行われておりますし、長野県におきましても、五月より生徒に一人最高七回も勧誘のはがき、文書が来ております。自宅訪問を受けた生徒、長野県におきましては、調査の結果千百五十八名に達しておりまして、七回にわたって家庭訪問を受けた生徒もおります。  こういうようなことを、私の調査では出てきておりますが、長官は御承知でしょうか。また、このような過度の勧誘が生まれた背景には、防衛庁としまして何らかの勧誘の指示が行われたのではないかと思いますが、この点についてお伺いをいたします。
  46. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘の労働、文部両省の通達のことも承知いたしておりますし、私どももできるだけそれを尊重する方針であることもはっきり申し上げる次第でございます。  ただ、自衛隊員の募集につきましては、自衛隊法の定めるところによりまして、自衛隊がこれを行っているわけでありまして、その業務を担当いたしますところの地方連絡部におきましては、常時広報に努めておる次第でございます。もちろん新規卒業者につきましては、学校を通じて、教育上の見地からいたしますならばお願いすることが適当であると思いますけれども、またわれわれとしても、一般の広報を通じましてその業務を行っていることもございますが、ただ御指摘の個々の事例につきましては、政府委員より御答弁いたさせます。
  47. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛隊の自衛官の募集につきましては、職業安定法三十一条の二によりまして適用除外になっておりますので、自衛隊が募集のための広報その他の活動を実施しているわけでございますが、特に新規卒業者の募集につきましては、先ほどからお話がありますような文部、労働両省の局長の通達に基づきまして、選考開始の時期であるとか、推薦の時期であるとかいうことは遵守して実施しております。  また新規卒業予定者の募集につきましては、まだ高校在学中でもございますので、学校教育への影響あるいは求人秩序の維持というふうなことから、私どもとしては、できるだけ学校当局と十分連絡をとりながら実施するようにしておりますけれども、残念ながら一部の学校におきましては協力をしてもらえないというふうな事態もございますので、その際は私どもはみずから直接募集広報をしている、ただし、この場合におきましても、先ほど来の通達の趣旨にのっとった形で実施しております。御指摘の青森県あるいは北海道等におきます例につきましても、私どもの調査では、いずれも両省の通達の趣旨を外れているものはないというふうに考えております。
  48. 山原健二郎

    山原委員 通達の趣旨を離れておる点はないとおっしゃいますけれども、いま私が申し上げたとおり、青森におきましては一度自粛を認めておられますし、それからそういう点で一応の謝罪もされたりしておる事実があるわけでございまして、ともかくいま時間をかけて、この真実のほどをどうかということを申し上げる時間はありませんけれども、しかし、長官、やはり過度なことをやることはこれは避けるべきですね、当然。しかも、学校教育影響あるような、あるいは進路指導に非常に神経を使う時期でございますから、だからあえて十月一日以降というふうに両省通達はしておるわけでございまして、学校教育あるいは子供たちの心理状態を乱すようなことは、これはしてはならぬということだと思います。したがって、長官としても、職安にも届けないで一本釣りのようなかっこうで現在在学中の生徒に対してやるのではなくて、やはり正規のルートを通じてやっていく、また通達の線に沿ってやっていくという指導をすべきだと思いますが、その点はよろしいですか。
  49. 山下元利

    山下国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおり、自衛隊員の募集は自衛隊法によりまして私どもがいたしておりますが、その労働、文部両省の通達を尊重することには変わりません。そしてまた教育上の見地からいたしまして、学校の御協力をお願いしたいとも考えておりますので、今後ともぜひとも学校側の御協力を得るように、私ども努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  50. 山原健二郎

    山原委員 次に、防衛白書の問題につきまして二、三伺っておきたいと思います。  今度出ました防衛白書の中に、教育との関係ですね、「日本の防衛」五十三年七月に出されたものですが、三の百七十二、有事の際「教育などの各分野において国防上の配慮を加えることなどについて、平素から検討を進めておく必要があろう。」そしてこれは三原前長官、お見えになっていますけれども、雑誌「国防」の中で、国の安全について、各大学、民間機関などの研究が防衛庁と総合される必要があるというようなことを述べられております。  そこでお伺いをしますけれども、「教育などの各分野において国防上の配慮を加えることなどについて、平素から検討を進めておく必要があろう。」この点は、平素から検討を進めるということは、たとえば文部省との間に、これは教育だけではありませんけれども、定期的な何らかの協議機関を設けるとかいうことを意味しておるのかどうか、最初に伺っておきます。
  51. 山下元利

    山下国務大臣 国の防衛が国民の皆様の御理解と合意を得なければならないことは、もう私ども絶対不可欠のものであると考えておるわけでございます。したがいまして、青少年に対しまして防衛に関する教育を行うことは、国の安全保障に関する国民的合意を確立する上からいきましても望ましいと考えております。しかし総合的な問題につきましては、防衛庁としては問題提起をするにとどめておりまして、したがいまして、私どもといたしましても、このための特定の機関を持っておるわけでもございませんし、このことにつきまして文部省と、いま御指摘のような形における協議をしておるわけではございません。しかし私どもはあくまで国の防衛は国民のコンセンサスを得たい。したがいまして、青少年にそのような教育をしていただくことは最も望ましいことだと考えておることだけは、はっきり申し上げておきたいと思う次第でございます。
  52. 山原健二郎

    山原委員 今度の防衛白書を出すに当たりまして、防衛審議官の佐々淳行さんが白書のまとめ役であろうと思いますけれども、述べておりますが、関係の各省庁二十省庁との間の話し合いがなされて、それも骨が折れたけれども、コンセンサスを得て作成したのが今回の白書で、積極的な意見を交換した、こういうふうに述べられておりますが、今回のこの白書を出すに当たりまして、たとえば教育の問題ではどういう論議をし、どういう機関との間に話し合いがなされたのか、伺います。
  53. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  防衛白書の作成に当たりましては、関係省庁と意見調整を行いまして、最終的には国防会議及び閣議の了承を得た上で発行するものでございますが、文部省との間におきましても、その意味で調整を行ったものでございます。  具体的には、文部省の場合今回の白書の中に三カ所教育に触れたところがございまして、その点につきまして文部省意見の調整を行ったわけでございます。  三カ所と申しますのは、百八十一ページから百八十二ページにかけての世論調査の結果をデータとして掲載した部分、あるいは百七十二ページの国防上の配慮の必要性について記した部分、百八十九ページの自衛官の大学院等における入学拒否の問題について記した部分等でございます。
  54. 山原健二郎

    山原委員 いま三カ所が出されておりますけれども、私は、防衛上の配慮を加えて平素から検討という問題、それから三原元長官のお話を見ましても、いわば産軍学共同研究体制的な発想を持っておられるのではなかろうかということをこの中から感じておるのでございますが、そういうことをやろうとお考えになっておるのではありませんか。
  55. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁では、諸外国に比べまして予算も少額でございますし、限定された陣容で技術研究開発を遂行しているわけでございますが、近代的な技術要素を基礎といたしておるために、広いそうした技術上の基礎が必要でございます。その意味から部外の技術研究開発の成果等を適切に活用することが必要であろうということは、一般論としてお認め願えるところであろうと思うわけでございまして、三原元長官の御発言の趣旨もここに出るのであるかと思うわけでございます。
  56. 山原健二郎

    山原委員 「国防」の中で、前々の官房長であろうと思いますが、竹岡さんの発言が出ております。たとえば、平時では自衛隊ほど若い人の社会教育に適した場所はないというような発言も出てまいりまして、私はこの文章を見ましたときに、かつて、昭和六年当時の陸軍大臣をしておりました宇垣一成氏の、軍隊は最高の国民教育の場であるという発言を思い出したわけです。あれから、単に軍隊で学生を教育するだけでなくて、結局将校の配属あるいは軍事教練というものが学校の中に次第次第に入っていく過程を踏むわけです。すでにそういう言葉が、防衛庁の幹部の方から、平時では自衛隊ほど若い人の社会教育に適した場所はないという発言になってくる、これをいまここで指摘をする程度にとどめます。結局、あらゆるものを国防へという形で、教育もそういう形、研究もそういう形に持ち込んでいく、こういう情勢があるのではないかということを指摘をしておきまして、次の問題に移りたいと思います。  それは「君が代」の問題でございますけれども、この「君が代」問題につきまして、一昨年学習指導要領に、突然「君が代」の上に国歌という言葉がつけられたわけでございます。しかし学習指導要領の審議会ではほとんど審議もしていないことが出てまいりまして、そのことはいままでずいぶん論議になりましたが、これが急速にいま学校現場に対する「君が代」の強制という形であらわれてきております。  まず第一番に文部省にお伺いしますが、来年度から使われる小学校の音楽の教科書、これでは「君が代」はどういう取り扱いを受けるのでしょうか。いままでは巻末にあったりあるいは一ページのどこかに記載されておりましたが、今度は教科書の中にも国歌「君が代」として一ページを使うという方針が出され、すでに白表紙本の教科書を見ますとそういうことになっておるように思うのでございますが、そういう指導をなさっておるかどうか、伺っておきます。
  57. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 国歌「君が代」というのは、これはやはり当然子供たち教えなければならぬと思うし、国旗、国歌というのは日本の象徴でございます。私は終戦直後アメリカへ行ったけれども、アメリカではどの教室にも国旗がありまして、必ず国歌を歌っておりまして、私は非常に感銘を受けたのですが、日本も同じだと私は思うので、国旗と国歌を大事にすることが日本の国を守り、日本の国を愛するゆえんではなかろうかと思います。  具体的にどうするかについては局長から答弁させます。
  58. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 「君が代」を小学校の一年から六年までの共通必修教材としておることは昭和三十三年以来でございますから、今回の指導要領においてもその取り扱いは変わっておりません。ただ、指導要領において「君が代」を国歌といたしましたので、それを受けまして、現在小学校の音楽の教科書は四、五社あるかと思いますけれども、私の聞いておりますところでは、いずれも国歌「君が代」というふうに表示をいたしまして、教科書のどのページかに載せておる、こういうことでございます。
  59. 山原健二郎

    山原委員 「君が代」国歌化ということですね。これは文部大臣のように象徴であってというお話もありますけれども、その論議をきょうするつもりはありません。  しかし、このことによってずいぶん大きな変化が出ております。  一例を挙げますと、東京都の場合ですが、「国旗・国歌について」というのを東京都教育管理職員協議会が出しております。これは校長さん、教頭さん等によって組織されておるものでございます。これがそうでございますけれども、この中に、現在文部省指導要領はこれを式典その他で掲揚することが望ましいと書かれておるのでありますが、これはもう全く学校においてどういうかっこうになるかといいますと、たとえばこの「君が代」問題で学校の中に紛糾があったり意見の食い違いが出たりする場合の一問一答、校長や教頭がどういう態度をとるべきかということの指導でありますが、全部職務命令でやるわけですね。たとえば「解決する上で、校長が基本的に堅持していなければならないこと」としまして「無国籍者を作ってはならない、」。基本法に心身ともに健全な国民の育成に当たらなければならぬと書いておりますが、これをさらに「職員会議で多数の反対意見があってもこれに惑わされず、校長の信念や学校管理運営権を貫くことです。この信念と責任感と不退転の勇気で、すべての校長教頭に「教育正常化のために」起ち上っていただきたい」。抵抗や反対の強いときは「校長はどのように職員を説得したらよいでしょうか。」これは都内にあった例を述べて、こういうふうにしなさいと書いております。校長が学校の実態をよくつかんでおく。校長、教頭、幹部職員の協力体制を打ち立てておく。「PTA幹部の意向を握り協力を求める」。そして儀式委員会で否決をされた場合、職員会議が紛糾した場合、結局これは職務命令でやるべきである。そしてその中でPTAの支持、協力を求める。PTAの強い要望だからぜひ実施したい。PTA幹部の了承を取りつけておく。必要な場合は父母全員にアンケートをとろう。了解が得られないようならPTA総会を開いて賛否両論を開き、決定しよう。「管理職に強く、父母に弱い反対勢力を抑えた事例も多く出ている。」というようなことですね。さらに職務命令で実施をする。そのために揺るがぬ決意が必要である。「校長自ら実力行使」を行って、それを妨害する場合には公務執行妨害でやる。こういうことまで書かれておりまして、全く学校の中を敵と味方に分けて、そして強行していくという体制が出ております。その中には、妨害をする者については写真あるいは見ておる者の、現認者の証言を得るというようなこと。まるで学校教育というものが教職員の話し合いによって解決をしていくという立場ではなくて、こういうところまで来ているわけです。そして、結局こういうことでございますから職務命令ということでやられまして、私の調べたところ、東京で職命で強行されたところが新宿、江東、北区、荒川、練馬、足立、葛飾、江戸川、北多摩、南多摩、これらの学校の随所にこういう事件があらわれておるわけでございます。しかも国歌化されたこの時期が強行する絶好のチャンスだ、ここで校長の管理運営権を確立せよ、そうしなければ主任制もだめになってしまうというところまで書かれているのです。これはもう教育の観点ではなくて、全く学校の管理運営というものが強権によってやられているということを示しておると思います。指導要領に国歌という名前をつけただけでここまで来るわけです。  それからまた、千葉県の例でございますけれども、ある市でございますが、ここでは、市内の小中学校十七校のうち六校、朝と下校時、朝は国旗掲揚、帰るときは国旗の降納、そのときに「君が代」が流れると、どこにいても直立不動の姿勢を児童も職員もとらなければならぬとなっております。よそ見をすると、しゃべるんじゃない、気をつけろと、びんたが飛ぶ場合もあると報道されております。昨年小学校一年生の子供が下を向いてそのときに足で絵を描いていたのですが、突然びんたが飛びましてけがをしております。以来、登校をいやがる子供になっておりますけれども、この問題を職員会議で取り上げるにも取り上げることのできないような、タブーのような状態で、何しろ職務命令でやられるものですから、全くこれが話し合いにならない、こういう状態が出ておるのであります。そのほか、長崎、鹿児島、兵庫、岐阜等におきまして、教育委員会からこの現場に対する通達が出されまして、「望ましい」と書かれておることがこのような強制となってあらわれておるのであります。  私は、いま千葉の例を申し上げましたが、韓国にこういう状態があるようです。これは毎日新聞の昨年十月八日付でございますけれども、「午後六時、各市で国旗の降納がおこなわれるが、合図のサイレンが鳴ると全市民がいっせいに掲揚塔の方向にむかって起立しなければならない。これをしないものは、外国人であっても警察に突き出される。この行事は、二、三年前から「国を愛する心は国旗を愛する心から」という市民運動からはじまり、その盛りあがりを待って内務省管轄下の行事となった。これを伝える記事には、「政府が狙っているのは「民族主義」の高揚だ。愛国心を抱かせることにより国防意識を強め、侵略に対する——という遠大な安全保障プランでもある」と書いております。これは朝日ジャーナルにも出ておるわけでございまして、このようなことが韓国で行われるということは、私は初めて知ったわけでございますが、学校の現場においても、こういう事態まで進行しておるということを考えますと、これを学校教育という面から見まして、子供教育で、職場が何でも言える態勢があるときに初めて教育は発展をするわけでございますが、文部省指導要領の中に「国歌」とつけただけでこれだけの強制が行われていって、学校に一定の混乱が起こっているということは正しいことであるかどうか。「君が代」を歌うことはりっぱだとおっしゃる文部大臣でございますけれども、しかし文部省の出しているのは「望ましい」です。強制せよとは書いていないわけでございますが、現実にはこれが強制となって現場にのしかかっているこの実態について、文部省はどうお考えになっておりますか、伺いたいのであります。
  60. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 いま先生からお話しのような事件、私は初めて伺ったのですが、やはり日本人日本の国を愛することは根本で、その意味で日の丸と「君が代」をやることは国民の私は義務だと思うし、それが日本人を育てるゆえんだと私は思っているので(「義務とは何だ」と呼ぶ者あり)学校でそのことをしっかり教えてやらなければいかぬと思う。(「義務といつ決めたのだ」と呼ぶ者あり)指導要領でそういうふうに決めたから、私は指導要領を守ってほしいと思って、そういう意味で(「取り消せよ」と呼ぶ者あり)これは話し合いで、そういう混乱の起きないようにしていきたいと思っている。私の報告ではそういうことを聞いてないのですけれども、いま先生からお話を聞きますと、私非常に悲しく思うので、やはり日本の国を愛するという気持ちをみんなに持ってほしい。その意味で「君が代」を大事にしていただきたい、こう思います。
  61. 山原健二郎

    山原委員 文部大臣、言葉は正確に使っていただかないと、いま義務の問題で出ておりますが、これは義務ですか。そうじゃないでしょう。だれも義務なんということを決めたものはおりはしませんね。しかも、これは法律でもないでしょう。指導要領で「国歌」と入れただけで、しかも、「望ましい」じゃないですか。これは、諸澤初中局長もおいでになりますけれども、文部省の指導方針は「望ましい」でしょう。だから、義務だから強制するなんということは絶対ないでしょう。その点はどうなんですか、正確に。
  62. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私が申し上げたのは、国を守るというのは国民の義務だと申し上げたので、指導要領では基準を決めているわけですから、みんながその線に沿って協力していただきたい、こう申し上げたのであります。
  63. 山原健二郎

    山原委員 義務という言葉をお取り消しになりますね。
  64. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 おっしゃるように、学習指導要領の記述は、国民の祝日に際しては「国旗を掲揚し、国歌を齊唱させることが望ましい。」という規定でございますから、これを義務づけたものではございませんけれども、学校教育の場におきましては、われわれはぜひそういう方向で指導してほしいということを常々申し上げているところでございます。
  65. 山原健二郎

    山原委員 その願望と、いま少なくとも諸澤局長の方は正確なことをおっしゃっておるけれども、文部大臣、義務と言うと大変なことになってしまうのですが、その点はどうですか。あなたの気持ちはわかりますよ。タカ派のあなたの言うことは大体わかるのだけれども、そんな不正確なことを言われると大変なことになります。義務という言葉は取り消しますか。
  66. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 いや、私が申し上げたのは、国を愛することは国民の義務だと申し上げたので、指導要領でやったのは、いま局長が答弁しましたように、これは基準でございまして、望ましい基準だ、こういうわけです。
  67. 山原健二郎

    山原委員 議事録をちょっと調べていただきまして、いま、「君が代」を学校の式典においてやることが義務だとおっしゃった言葉があれば、これは取り消されますね。
  68. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 指導要領は義務でございませんで、基準でございますから、これは望ましい基準だ、その意味で私は義務と申し上げたのは、それは指導要領は義務ではございませんから、取り消します。
  69. 山原健二郎

    山原委員 こういう強制が行われておるのですから、長崎の場合もそうです。今度教育委員会が昨年の二月に通達を出しておりまして、文部省は望ましいと言いましても、現場には義務的に強制がなされる、こういうことですから、これは大変なことなんです。本当に卒業式などというのは、先生方は、六年間育てた子供がきょう卒業するという喜びと悲しみ、それを生徒、父母とともにどういうふうにこれを表現していくか、そうして、どんな生涯に残るような卒業式をやるかというようなことで必死になっているわけです。そうして、非常に感動的な、校長先生も涙を流すような卒業式があっちこっちで行われているのです。そこへ形式的な、日の丸だ、「君が代」だ、その形式を持ち込むことが教育であるかどうかということ、もちろんその問題については職員会議あるいは校長先生を含めて論議をして、そうして、きょうの卒業式にはこういうやり方が一番いいのだということが教育ですよ。それをあなたは腹では義務と言いたいのでしょうけれども、お取り消しになりましたが、望ましいことだけれども、これはやらなければならぬ、そういう画一的な教育が戦前の教育であったわけです。それを反省して新しい民主的な平和的教育をやろうとするのが教育基本法の立場でございますから、その点は、こういう強制については当然誤り、行き過ぎは指導すべきであると思いますが、いかがですか。
  70. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 間違いがあれば、それは改めるにやぶさかではございませんが、私は、日本国民として、卒業式や入学式にはやはり日の丸を掲げて「君が代」を歌ってほしいなという気持ちは持っております。
  71. 山原健二郎

    山原委員 時間の関係で次へ移りますが、いま私は「君が代」の問題を出しましたが、学習指導要領に国歌とつけただけでこれだけの変化が現場に起こってくるという状態です。先ほど申しました千葉県の例は、去年から始まったものではなくてもう少し前からあるようですから、国歌とつけたいまの変化として申し上げるのは不正確だと思いますが、しかし、至るところにこういう事態が起こっているということですね。ところが、今度、元号の問題については法律で決めるとおっしゃっているわけでございますから、さらに私どもは先のことを考えておく必要があると思うのです。  まず第一番に伺いますが、元号法制化の場合ですね。私はここに一つの教科書を持っています。これは高等学校の「政治・経済」の教科書ですが、たとえば第一回総選挙は一八九〇年に行われたとこれに出ております。今度元号法制化がもし成立した場合には、文部省としてはこの教科書はどういうふうに変えますか。
  72. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 元号法制化が成りましても、教科書は従来どおりでいいと思っております。
  73. 山原健二郎

    山原委員 しかし、教科書検定にあらわれた元号に関する一定の押しつけがすでに出ております。たとえば来年度から使われます教科書の見開き、初出しの部分に必ず元号を明記せよという指導を文部省教科書検定に当たってされておるのではありませんか。それから、一九二〇年前後という表現も昭和何年前後とせよというふうな指示をいたしておると聞いておりますが、この事実も伺います。  さらに、年表、グラフにつきましては、従来一般的に西暦が使われておったわけです。たとえば農業生産のグラフにしましても、これは外国との対比が必要ですから、当然西暦が使われて初めて子供たちも国際的な立場で日本の農業を見ることができるわけでございます。これにも、物量の変化や推移についても元号を使うという指導がなされておるのではありませんか。しかも、元号と併記の場合にしましても、図版のスペース、レイアウトの関係から、たとえばその横に昭和三十一年などと書けない場合があるわけです、教科書の配列の中から見ましても。しかし、それに対しても併記せよということが意見として出されまして、出版社側としてはこれを拒否することができないということ、また話し言葉では西暦よりも元号を優先せよというような指導、それから日本近代史の叙述についても年号を優先せよということがすでに教科書の中に、しかも来年度から使われる教科書の中にそういう指導がなされておるのではないかと思いますが、そういう事実はございませんか。
  74. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 これは著者の判断でございますから、大体西暦と元号を併用しているように思いますが、著者の判断に任せてありまして、文部省は特別な指導はしてないはずでございます。詳しくは局長から答弁させます。
  75. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ただいま幾つかの点について御指摘がございまして、私、個々のケースについて承知しておるわけではございませんけれども、ただ、教科書の検定というものは、教科書全体の構成を子供の発達段階等を考えながら見ていくということでございますから、たとえば本文には昭和何年、千九百何年と書いてあって、それらを受けた巻末の年表のようなものは西暦だけということになりますとやはりちょっと理解しにくいから、主なものは巻末の年表にも元号を入れたらどうですか、こういうことはやります。あるいは社会科の記述で、十年前にこういうことが起こった云々というような書き方になっていますと、教科書は継続して使いますから十年前じゃわからない。そこで通常使っている昭和何年というふうに書いたらどうですか、こういうような指導がございますから、千編一律に年号については全く物を言わないというわけではございませんけれども、基本的な考え方は、従来の著者の判断にまつという立場に立って、ケース・バイ・ケースで、教育上どういうふうに表現したら最も妥当かというような指導をいたしておるわけでございます。
  76. 山原健二郎

    山原委員 もうすでに教科書の中には、来年度から使用する教科書でございますが、いま私が言いましたような疑点が出てきておるということを申し上げておきたいと思います。  こういう形でじりじりじりじりと日本教科書も変えられていく。そこで日本教育会が、会長は森戸辰男さんでございますが、去年の六月に教員一万八百人を対象として調査を行っております。これは、元号、西暦併用について、教員の意見としては五八・五%、管理職の場合には六〇・七%が併用を希望しております。元号のみというのは、教員の場合は八・八%、管理職の場合は二三・五%という数字が出ておりまして、教育の現場におる先生方の考え方として、子供の発達段階に応じてこれを使う場合に、元号の強制などということについてはかなり強い教育者の反発があることは事実でございます。また、ちょっとちなみに、「君が代」の問題を先ほど申し上げましたけれども、同じ日本教育会の調査によりますと、「君が代」斉唱については、教員の間では九・九%しかありません。管理職の場合には四四・九%ございますけれども、それにしましても、「君が代」斉唱の問題についても、現場においては一致した見解というのはまだ出ていない状態があるわけでございます。元号の場合もいま申し上げたとおりでございまして、これを強制するなどということは断じて許されないことです。  ところが、いま私が「君が代」の問題で申し上げましたように、指導要領に書いただけでこれだけの強制が行われていく。今度法律化した場合に、三原総務長官お見えになっておりますけれども、何にもそういう変化はないのだ、強制するつもりはないのだとおっしゃるだろうと思いますが、すでに元号法制化推進勢力の中に出ております考え方、たとえば「もし真実に憲法の改正、正統憲法への復活を願うならば、あしたに一城を抜き、ゆうべに一城を抜くが如く、じりじり敵の牙城に迫るべきである。」というような発言も出まして、天皇の元首化あるいは憲法の改正等をねらった運動もすでに起こっております。さらにまた、元号の問題につきまして歴史学者の間に、これに対する四千名の方たちの法制化反対の意見が出ております。日本の歴史を学ぶ学者の間にこういうことが出ておることは、世論としてもきわめて重大な世論でありますが、こういうものに対する脅迫あるいは名指しの攻撃、さらには歴史学研究会が暴徒によって一時中止をしなければならぬ、こういう事態が起こっておることを見ましたときに、幾ら総務長官がおっしゃいましても、このようなことを国民にあらゆる場面で強制していくという可能性がないとは言えないのです。もしそういうことはないのだとおっしゃるならば、そのような歯どめがあるのかどうかということを伺っておきたいのであります。
  77. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  元号使用の問題についていろいろ御意見があるわけでございますが、実は元号につきましては、何回も申し上げますように、元号使用の現実の状態というのは、大多数の国民の方々が御使用なさっておる。なおまた、全く国民の生活に定着してまいっておりまするし、また、大多数の方々がその存続を御希望なさっておるというのが現状でございます。そこでわれわれといたしましては、そうした実態を踏まえまして、それらの国民の方々が、それでは元号はいつの時点で、またどういうようなときに、だれが新しい元号を策定をしてくれるのであろうかということも、一つの希望というか、そういうことを考えておられるわけでございまして、そういう実態を踏まえて、私どもはこの際それを、制度的に手続というようなものを決めておく必要があろうということで、最も民主的な国会に御審議を願って、だれがいつの時点で決めるかというような、手続法的な内容で法制化をお願いをいたしておるのが元号法制化の現況でございます。  そこで、私どもといたしましては、いま、それでは使用について、強制化あるいは義務化というようなものについてその歯どめを考えておるかということでございまするので、再々国民の皆さん方に国会の場を通じて申し上げておるわけでございまするが、使用につきましては義務づけも強制もいたしませんということを申し上げております。西暦併用、現在どおりで構いませんということも申し上げておるわけでございます。ただし、この国会の場で法制化していただきますれば、国の機関、公の機関といたしましては、当然元号の使用を原則的になさるであろう、私どもはそう期待をいたしておるところでございます。しかし、公の機関にいたしましても、たとえば国際的な条約でございまするとか、あるいは協定でございまするとか、そういうときには当然西暦をお使いになるだろうというようなことも考えておるわけでございます。そういうようなことでございまするし、また、国民の方々の公の機関に対しまする手続等につきましては、統一的な事務処理という立場もございまするので、できますれば元号をお使いいただけないかということを期待をいたしております。しかし、いや、おれはあくまでも西暦でいくぞと言われますれば、それも私どもは受理しないというようなことは考えておりません。  そういうことでございまするので、私どもは、使用につきましては全く自由な立場でお取り上げ願い、現状を国民の輿望される、制度的に明確にし、安定していくということで今回の法制化をお願いいたしておるという事情でございまするので、繰り返すようでございまするが、決して強制あるいは義務づけというようなことは毛頭考えていないということを、改めてまたお答えをする次第でございます。
  78. 山原健二郎

    山原委員 この問題については、当然正当な論議がなされると思いますし、私はこの場所でそれを申し上げるつもりはございませんが、しかし、私はなぜこれを出したかといいますと、「君が代」の問題を含めまして、国歌「君が代」と、指導要領が変わっただけで、無国籍者をつくるな、あるいは愛国心の高揚という形で「君が代」の強制が行われていく、それが踏み絵になって、おまえは国家の方針に反するのかということでいくという例がもうすでに出てきているわけですね。それで、元号の場合でも、日本国民と生まれて元号を何で使わぬのだということが必ず行われる可能性を持っておりまして、そういう意味では、この問題はきわめて重大な問題だと思うわけでございます。そのことだけを申し上げておきたいと思います。  最後に、大蔵大臣お見えくださっておりまして、あと五分しか時間がなくなりましたので、一言お伺いを申し上げますが、これは教職員定数の問題と、それから現在、小、中、高等学校の学級は四十五名で編制をされておりますが、これを四十名にせよという国会の決議もございます。そして、さきの参議院の本会議におきまして内藤文部大臣は、四十名にいたします、こういう答弁をなされておるのでございます。ところがこの問題、国会が決議をしましてからすでに日がたちました。そしてその間に自殺の問題あるいは非行の問題が、自殺にいたしましても、その大体三〇%近くが学力不振とか、あるいは相談相手がいないとかいうことでこの問題が起こっておるのでございます。そういう中で国民の父母の間からも、どうしても学級定数を改善してもらいたい、先生の数をふやしてもらいたいという声が起こっておるのでございます。これにつきまして、恐らく財政上の問題で困難だということも言われてきておるのでありますが、大蔵大臣としまして、特に、大平総理大臣が文化の問題を強調された所信表明演説をやられた過程におきまして、しかも文部大臣が四十名にすると言っておるのでございますが、大蔵大臣もこれにこたえて、この問題解決のために努力をするお考えがあるかどうか、伺っておきます。
  79. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いまの学級編制の問題につきましては、五十三年の五月でございますか、文部省で悉皆調査をやっておりまして、いまその集計中と伺っております。その結果を待って慎重に対処したい、かように考えておる次第でございます。
  80. 山原健二郎

    山原委員 その調査の集計ですが、九月に出ると言っておったのが十月、十一月、十二月、いまになってもいまだに出てこない。これは集計上の問題もありますけれども、これはここで言うべきことではないと思いますが、集計の問題、調査の問題はともかくとして、もう一年近くかかっているわけですから大半出ているわけですね。だから、私の言っておりますのは調査の結果を見てどうこうするというのではなくて、内閣の政策としてこの問題について国民の要求にこたえるかどうか、そして国会の決議に基づいて前進をさすかどうか、政策としてお伺いをいたしておるのでございますが、あえて大蔵大臣の御意見をもう一度伺いたいのであります。
  81. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 委員会の決議がありましたことも十分心得えております。しかし財政上大きな問題でもございますので、集計の結果どういう数字が出るか、そこら辺も踏まえて前向きに処理しなければいけませんから、いまその結果待ちという段階であることを申し上げておきます。
  82. 山原健二郎

    山原委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  83. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 これにて、山原君の質疑は終了いたしました。  次に、古寺宏君。
  84. 古寺宏

    古寺委員 最初に通産大臣にお伺いいたしますが、石油はわが国の生命線と言われ、一次エネルギー供給の約七〇%を石油に依存しているわけでございますが、その必要な石油の九九・八%を海外に依存いたしているわけでございます。先日、通産省にお尋ねいたしました際には、一〇%ぐらいの輸入のカットがありましても今後四百五十日から五百日ぐらいは心配がない、こういうようなお答えがあったわけでございますが、けさの新聞を拝見いたしますと、一月末から今月にかけまして民間備蓄が約五日減少しているようでございますが、今後のイラン情勢との関係で心配がないのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  85. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点は、石油備蓄法というのに基づきまして五十三年度は八十日を常時備蓄する、来年度すなわち五十四年度四月一日には八十五日の備蓄をしなければならない、それから年度末には九十日、こういうことで進んできたわけでございまするが、御承知のようにイランからの輸入が全面ストップという形になっておりまするために、三月までは大体八十日分は維持される見込みでありまするが、四月一日に八十五日分をということになりますると、これは困難性がある。  何遍もここで繰り返し申し上げておりまするので改めて説明は省略いたしまするが、一応景気の動向、それから物価の動向、こういったものも十分配慮しながら今後節約をどうしていくのかという点には弾力的に対応していきたい。とりあえずは、一——三月期においては七千二百万キロリットル、昨年の一——三月分を入船できる見通しが立ちましたので、最盛期は三月をもって終わるわけですから、後は極力節約をする方針はあくまで貫いてまいりますが、当分は買いだめとか買い急ぎとかいうことがなければ心配はない、こういうことを言っておるわけであります。  しかし、これが長期に及べば、もとより大変な影響が出てくるわけでありまするが、ことしの最盛期、十月まではどうやらこれでやっていけるのではないか。それからまたイランにおきましても、今度の新首相が、今朝の新聞などにもちょっと出ておりまするが、日産六百万バレル程度の石油を生産しなければならないという国の方針を示したという報道がなされております。私どもの方へもそういう電報が入っておりまするが、それが早く政局が安定して現実の問題になることを、まさに神かけて祈るというような心境でございます。
  86. 古寺宏

    古寺委員 次に、石油公団における石油国家備蓄事業の進捗状態についてお伺いしたいのでございます。  NHKの先日の報道によりますと、フィージビリティースタディーがすでに終わって、陸上基地については内定した、こういうふうに報道されておりますが、最終的な地点の決定についてはいつ発表するのか、その内容についてお伺いしたいと思います。
  87. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 石油公団による国家備蓄の候補地点につきましては、地元の県から正式に要請が出されておること、第二点は昭和五十七年度末までに完工する見込みがあること、こういうことを考慮に入れまして検討しました結果、昨年の十月、むつ小川原地区、福井地区、白島地区、上五島の四地点を有力な検討対象候補地点として決定をした次第であります。  この候補地点につきましては、さらに技術的に経済的な側面をより詳細に検討した上でなければ、現実にさてということにはなりませんが、外部の中立的専門機関にフィージビリティースタディーを委託したところであり、近くその結果がまとめられるという段取りで進んでおります。それがまとまり次第石油公団に報告される予定である。そして最終的な地点決定は、フィージビリティースタディーの結果及び地元の情勢、こういったものを踏まえながらできるだけ早く決定をしたいと考えております。
  88. 古寺宏

    古寺委員 この決定につきましては二月中旬というふうに承っておったわけでございますが、もうすでに中旬を経過しているわけでございます。陸上基地につきましてはすでに最終報告ができていると思うのでございますが、おくれている理由は何でございますか。
  89. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 四カ地点ございまして、中にはいろいろ技術的に細部の詰めを行わなければならない問題あるいは地元の調整等についていろいろ配慮をしなければいけない問題等がございまして、予定より若干おくれているような状況でございます。
  90. 古寺宏

    古寺委員 次に農林大臣にお伺いいたします。  昭和四十六年の六月に農村地域工業導入促進法が施行されまして、四十六年度から五十年度の目標としまして出荷額で九兆円、雇用労働力で百万人、工場用地で一万五千ヘクタールを見込んだわけでございます。一応現在この土地は、各市町村におきまして土地を造成し、確保しているわけでございますが、オイルショック以来の景気の低迷によりまして思うように工場、企業の進出がなされていない。そういうことで、地方自治体は農工団地の利子補給あるいはその造成費の返還等で財政が非常に圧迫をされているわけでございますが、これに対して農林省は今後どういうふうに対処されるお考えか、承りたいと思います。
  91. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御指摘のように農村に工業導入を図って農村の雇用の拡大をやろうということでスタートしたわけですが、御指摘のようなオイルショック以来の不景気によって思うようにいかなかったということは事実でございます。そこで、五十一年度以降市町村の実施計画の見直しを実は行っておりまして、実情に即してその実施計画の変更をしなければならぬということで現在指導中でございます。
  92. 古寺宏

    古寺委員 現在減反政策によりまして、安定転換作物がないために、現地の市町村は一日も早く企業に進出していただきたい、こういうふうに希望いたしているわけでございますが、通産省としてはどういう対策をお考えでしょうか。
  93. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御承知のように、四十六年に法制定をしましてから、税制、金融の優遇措置を講じて今日に至っておりますが、いま農林大臣が申しましたように、まさに不況の反映もあってなかなか思うに任せない。しかし、現実には、これは四十八年からの資料がここにありまするが、四十八年は導入企業数が四百九十四、四十九年は三百二十四、それから昭和五十年が二百五、五十一年は二百十二、五十二年はがくんと減りまして二十二という僅少ない数字に変貌を示しております。そこで、財団法人農村地域工業導入促進センターを活用しながら企業の立地動向を把握する、それと同時に、立地情報を企業とか、特に地方自治体に提供するというような比較的きめ細かい対策をとっておるわけであります。五十三年三月末までには、四十六年以来の累積を全部加えますると、それでも千七百社余りが進出をした。しかし、まだ現実に地方の工業団地というのはあいておるところもあります。それから特に、法律に示したところの、農村地域工業導入促進法に基づく導入というものがスローダウンいたしておりまするので、景気がここで回復基調に入っておりまするので、旺盛にひとつ自治体などとも連携をとりながら、どうかして農村への工場誘致を促進するように努力してまいりたい、また、それには希望を持っておるという次第でございます。
  94. 古寺宏

    古寺委員 現在、農協の系統資金につきましては、二%の利子補給がなされているわけでございますが、市中銀行の借り入れについては全く利子補給がないわけでございます。さらに、土地の活用の問題でございますが、農工団地として以外には使用を認めない、こういう方針のようでございますが、今後住宅用地なりあるいは公共施設の用地として活用する面についてもやはり見直すべきではないか、こう思うわけでございまして、この利子補給の増額あるいは市中銀行から借り入れの利子補給について、また土地の活用についてどういうふうにお考えになっているのか承りたいと思います。
  95. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 できることなら利子補給をもっとしていただきたいわけでございますが、現在のところ非常に、これ以上に金利を下げるということは、ほかの金利とのバランスもあってなかなかむずかしいと思います。しかしながら、償還方法については七カ年の均等償還にはなっておりますが、しかし、これはいまのところは不景気だから少なくして、景気が出てきた方にしわ寄せしますか、そういうようなこと等によってその支払いがしやすくなるようなことなどは弾力的に検討したい。  それから、用地の転用の問題ですが、これは全体の実施計画の見直しの中で検討をしてまいりたいと思っております。
  96. 古寺宏

    古寺委員 当時は非常に高金利の時代でございますので、これを借りかえの措置とかあるいはいま見直しをなさるというお話がございましたが、具体的なお答えがなかったので、実際に現在農工団地以外の使用は認めていないのかどうか、この点について承りたいと思います。
  97. 大場敏彦

    ○大場政府委員 御指摘の農協系統資金だけの利子補給に限っているかということにつきましては、これは私どものやっております、農林省関係の取り扱っておりますものは、農協系統資金に対する利子補給をやっておるわけでございます。それはいま御指摘のありましたように、末端金利といいますか、利子補給をした結果、町村が負担する金利というものは逐年下げてきております。四十九年以降、たとえば四十九年で申し上げますれば、七・三%でありましたのが現在では五・八%というぐあいに金利の引き下げは累次努力はしているつもりであります。  それから市中銀行等から原資を仰いでいる、そういったものにつきましては、これは私ども直ちに所管はしておりませんが、通産省の工業再配置関係の資金でこれも利子補給をいたしておるというふうに聞いております。これはうちの方とかなり地域的にダブっているというところもありますので、実質的にはかなりカバーしているというふうに理解しております。
  98. 古寺宏

    古寺委員 いま土地の使用の問題についてはっきりした答弁がなかったのですが、この点について再度承りたいと思います。
  99. 大場敏彦

    ○大場政府委員 初め工業用地として導入を予定しておりました地域がその後なかなか工場が入らないというために、住宅用地あるいはたとえば学校用地に用途を変更いたしたいという場合は、私ども実施計画の変更ということを弾力的に運用して対応していきたい。それからまた造成済みでない農地につきましては農地転用という問題がございますが、これも地元の実情に応じて適正な形で弾力的におこたえしていきたい、かように考えております。
  100. 古寺宏

    古寺委員 農林大臣にお伺いしますが、わが国の主食である米の消費拡大について非常に御熱心にこれから取り組まれるということが新聞に報道されておりましたが、具体的にどういうふうにお進めになるのか。また、医師会の協力を得てということも報道されておりましたが、これは医師会とはどういうような連絡をとった上でお進めになっているのか、承りたいと思います。
  101. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 米の消費拡大については、一つは何と言っても米の質をよくしなければ消費者が喜ばないわけですから、ですから良質米運動、これは良質米をつくってもらう。その次は、米を食うのを忘れては困りますから、それで学校給食等についても、ことしは週一回初めてやるというところは七割引というような倍以上の値引き率をもって値引きする。それから週二回以上やるところは六割引きということで、大幅な値引きによって学校給食に米を充当するというようなことをやっておるわけであります。  なお、そのほか、医師とか栄養士等の専門家、婦人団体、こういうような方にもお話をして、米の見直しということについてやはり一番宣伝力がありますから、米を食ったらばかになると言われたら困るのでして、そんなのはでたらめだ、米はやはり日本人の体質に非常に合うというようなことを専門家に言ってもらう。こういうようなことをやったり、地域ぐるみで米消費拡大問題に取り組んでいくための予算をとっているとか、それから米の加工食品の開発というようなことをやらしたり、いろいろな研究をやらしたり、こういうこともやっているわけです。それからやはり米をとぐのがめんどうくさい、マニキュアがはげちまうとか、そういう人があるわけですから、したがって無洗米というようなものもやはり私はこれから宣伝をしてやったらいいのじゃないか。それぞれの自主流通米等においては胚芽米は健康上非常にいいですよとか、いろいろ宣伝もしておりますし、政府としてもそういうものに対する応援をしておるということであります。
  102. 古寺宏

    古寺委員 政府は非常にこの消費拡大に力を入れているということでございますが、まだ消費の拡大が十分になされていない現状でございますので、今後大いにひとつ消費拡大に力を入れていただきたいのですが、先ほどお話しございました学校給食につきまして、現在週二回しか認められていないというようなお話を承っているわけでございますが、農林大臣のお話ですと、学校給食には非常に安くお米を提供してくださるというお話でございますので、週二回にこだわらず、希望に応じてどんどん学校給食の米飯給食を今後拡大していく必要がある、こういうふうに思うわけでございますが、文部大臣にお伺いしたいと思います。
  103. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私も米飯給食推進論者の一人でございまして、実は昭和五十一年度から学校給食に導入したのでございまして、昭和五十六年度までに週二回の実施を目途に、いま計画的にその推進を図っているのでございます。  これはどういうわけかというと、いままでパン食で来ておりましたもので、なかなか一遍の切りかえが困難なんです。その結果、五十一年度には三六・五%の学校が米飯給食をしておりましたが、最近では、五十三年度現在で七〇・八%の学校が米飯給食をやっているわけです。特にいま渡辺農林大臣は大変御熱心でございまして、いままで引き下げ率が三六%だった、これを思い切って六〇%引き下げにしていただいたので、私は五十六年度までに計画どおり週二回は完全にできると思いますので、それから先を検討したいと思いますが、とりあえずは週二回を完全実施したいと思っております。
  104. 古寺宏

    古寺委員 週二回にこだわらずに、ひとつ希望している学校にはどんどん拡大するように、これは両大臣にお願いを申し上げておきます。  次に、新幹線の公害問題に移りますが、先日、群馬県の水上町に行ってまいりました。大清水トンネルが貫通をいたしたわけでございますが、水上町の温泉あるいは水道の水源の渇水の問題が起きておりまして、トンネルが現在の温泉の層の五十メートルくらい下にございます関係上、将来全くこの温泉の湧出量がなくなってしまうのじゃないか、こういうことが心配をされているわけでございます。ところが、向こう側の新潟県の湯沢町の方は、このトンネルによりましてやはりお湯が少なくなったわけでございますが、四億四千七百万円で温泉の集中管理をやって、補償が完了しているわけでございます。  この水上町の今後のこのトンネルによる公害について鉄建公団はどういうふうに対処なさるおつもりなのか、なぜ湯沢町の方は完了しているのに水上町の方だけがこういうような結果になっているのか、あわせてお伺いしたいと思うわけでございます。
  105. 篠原武司

    ○篠原参考人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。  大清水トンネルは延長二十二キロ二百ございますが、新潟県の方が十五キロで、これは早くから工事ができ上がっておりまして、群馬県側の七キロ二百がいま工事を盛んにやっておるわけでございます。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕  それで、大清水トンネルの湯沢方について申しますと、湯沢温泉の一部で温泉源の枯渇があったわけでありますけれども、海沢町に調査を委託いたしましていろいろ協議の結果、工事も早く終わっておりました関係で、もうすでに解決しております。  次に、ただいま工事中の水上方につきましては、水上温泉それから谷川温泉の温泉源が一部減水したという申し出がございましたので、その原因調査のため水上町と協議して町に調査を委託いたしまして、現在原因を究明するために調査中でございます。  それから、水上町の水道につきましては、水源が減水したという申し出がございまして、早速調査し、応急対策として、トンネルからの湧水を浄化の上、町の導水管に供給する措置を行っております。いずれも応急対策によりまして地元になるべく御迷惑をかけないよう努力しておりますが、トンネル完成が近づいておりまして、水源の減水が回復する、減水の復水の状況などを勘案いたしまして恒久対策を決定すべき段階が近づいておりますので、これらの対策については地元の要望を十分しんしゃくしながら解決に努力する所存でございます。
  106. 古寺宏

    古寺委員 一日も早く地元の御要望にこたえていただきたいと思いますが、今後、新幹線建設工事には、環境影響調査の影響評価というものがある程度取り入れられまして事前の調査が行われるわけでございますので、このようなことを二度と起こさないためにもアセスメントはひとつきちんとやっていただきたいわけでございます。  東北新幹線の盛岡以北の工事の中に八甲田山トンネルというのが予定をされております。このトシネルに関しましては、青森市側においては水資源の汚染の問題、さらにまた太平洋側においては、今後予定されておりますむつ小川原工業開発に伴う小川原湖の淡水化、あるいは相坂川左岸の灌排事業、その他地域住民の水資源の問題等々、いろいろな公害が心配をされているわけでございまして、昨年、私がこの問題について公環特でお話を申し上げました際に、国鉄としましては関係省庁と協議の上今年の四月から事前調査を行う、こういうお話があったわけでございますが、関係省庁あるいは地方自治体と十分協議をなさったかどうか。また、今後の調査の時点において、この大清水トンネルのような公害が再び引き起こされないためにも、十分なアセスメントを行うべきであると考えますが、国鉄総裁にこの点について承りたいと思います。
  107. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御提示がありました地域につきましていろいろ問題があることは私も承っております。それで、いまお尋ねがございましたように、関係省庁はもちろんでございますけれども、いろいろ専門家の方々の御意見を承るというようなことで勉強を続けておるわけでございます。  環境影響評価という手法は、やはりいまお話しのように、そのような工事によって地域にいろいろな意味での御迷惑がかからないように事前に徹底をした調査をし、それについての御意見を広く承るための制度であるというふうに考えておりますので、今後の開発といいますか、そういう工事の施行につきましては、環境影響評価の調査というものをおざなりでなしに意味のあるものになりますように取り組んでまいりたい。よってもってそのようなことが今後起こりませんように十分心がけてまいりたいと思っております。
  108. 古寺宏

    古寺委員 このトンネル掘削を行ういわゆる事前評価をやる前にルートを決定しなければならないわけでございますが、このルートの決定に当たっては、一遍ルートを決定してアセスメントを行ってしまいますと、どうしてもそのルートに固執をするわけでございます。したがいまして、ルート決定以前にやはり将来予想される公害というものを事前に調査をいたしまして、ルートは決定していただきたいと思うわけでございますが、先ほど申し上げました八甲田トンネルの場合におきましても、このルートのいわゆるとり方によりまして、水資源の問題あるいは公害の問題等も非常に大きく変わるわけでございます。しかしながら駅舎の問題、ルートの問題に国鉄側が固執をするために、いろいろな面で将来の公害について専門家その他からも意見が出ているわけでございます。したがいまして、ルート決定に当たりましては、事前にわかる面についてはそういうようなルートは極力避ける、そして安全なルートを選んだ上でアセスメントを十分に行う、こういうふうにしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  109. 高木文雄

    ○高木説明員 私どももいまお示しのような考え方で取り組んでおります。特に八甲田山の場合には、いろいろ地質その他、鉱石あるいは昔の廃坑といったようなものがいろいろございますので、余り固執した考えでなしに、それらを十分調査した上でルートを決めるというつもりでございますので、御懸念がないようにいたしたいと思います。
  110. 古寺宏

    古寺委員 運輸大臣に、今回環境調査の指針が出たわけでございますが、先ほどの大清水トンネルのような公害が二度と出ないように運輸省として十分に指導監督していただきたいと思いますが、大臣の御決意を承りたいと思います。
  111. 森山欽司

    森山国務大臣 整備五線の当面の方針を立てますに際しまして、この一月の二十三日に環境影響評価の指針、アセスメントの指針を決めまして、これを国鉄並びに鉄建公団の方に通達をいたしました。  この指針におきまして、トンネルを掘削する場合は、水資源等についてトンネル周辺の詳細な現地調査を行って、その結果により所要の対策を検討させることにしておりますが、お話がございましたように、大清水トンネル付近等にいろいろな問題があった経過も十分考慮いたしまして、運輸省といたしましては、今後とも沿線地域の環境保全について十分留意して、遺憾なきを期するように国鉄を指導してまいりたい、そういうつもりでございます。
  112. 古寺宏

    古寺委員 次に、環境庁長官にお尋ねしたいのですが、環境アセスメント法案は三回流産をして未提出になっているわけでございますが、今国会においてはこのアセスメント法は提案なさるおつもりかどうか、また、提案をなさるとすれば、いつごろまでに提案をなさるのか、その点について承りたいと思います。
  113. 上村千一郎

    上村国務大臣 環境アセスメントの法案につきまして、これを今国会に提出するのかどうか、するとすればいつごろかというお尋ねでございます。環境アセスメントの立法化につきましては、環境庁としましては、意欲的に各省庁間、あるいは昨年の五月に与党の政務調査会でも方針が出ておりますが、党とのいろいろな調整ということで鋭意検討努力をしておる次第でございます。  環境汚染につきまして、これを未然に防止しなければならぬということにつきましては、これは当然のことであり、私は環境アセスメントの制度化を図るということは、もう各方面のコンセンサスができておるという認識に立っておるのです。そうしたところが、いまの環境アセスメントの制度を法制化をするかどうか、いまの制度のままで充実を図りながら一定の時期で法制化を図っていくのかどうか、あるいはいまの制度をもっと拡充しながら検討していってはどうかとか、いや、法制化に踏み切るべきじゃないかとか、いろいろな論議が実は交わされておるわけでございます。  環境庁としての考え方は、とにかく自然環境というものにつきましても、一度破壊されますと取り返しがつかない事態になる場合、またこれをもとへ戻そうとしても、ほとんど不可能な場合が生じてくる、こういうことを考えてみて、しかもなおかつ、先ほどこの五新幹線の整備の場合におきましても、運輸大臣がお話しになりましたように、環境アセスメントの指針というものを出されておるわけであります。こういうふうにみんなその必要ということを感じておりますけれども、いまこれをどういうふうな制度として法制化するかということにつきまして、鋭意努力をしておるわけです。それで今国会における提出予定法案としましてお取り上げを賜っております。  環境庁としましては、早期に何とか法制化をひとつ実現したい。そのためには、どうしても各省庁間の調整あるいは党との調整を図っていきたい。それから、三月十六日までに、予算関連法案以外の法案につきましては、提出をそこら辺を目途としてということになっておりますので、何とかひとつそれに間に合うように調整を進めていただきたいということで、いま鋭意努力をいたしておるわけでございます。
  114. 古寺宏

    古寺委員 時間がないのでこれ以上は申し上げませんが、今度委員会でお話ししたいと思いますが、長官が腹を決めないことにはこの法案は出ませんよ。周囲のいろいろなお話をしたり——御自分がおやりになるという決意がなければできないのです。もうすでに地方自治体が条例でやっているでしょう。各省庁もいろいろなアセスメントの指針というものを出している。一番大事な環境庁が決意をしないために、こういうふうに法制化に踏み切ることができないわけですから、ひとつ長官は腹を決めて、どうかこの法案が今国会に提案されるように真剣に取り組んでいただきたいということを特にお願い申し上げておきます。  次に、時間の関係がございますので、先に実子特例法のことにつきまして法務大臣にお伺いしたいわけでございます。  日本から悲惨な子殺しあるいは子捨て、こういうような不幸をなくするために、養親の戸籍に実子として入籍できるいわゆる実子特例法を制定すべきである、こういうふうに石巻市の菊田昇医師がこれを提唱いたしまして、国会においても昨年わが党の飯田議員も法務委員会においてこの問題を取り上げております。私も調査をしたところ、EC諸国のすべてあるいは東欧のすべて、それからまたアメリカ各州におきましても南米におきましてももうほとんど、世界各国がこの法制化を実現をしているわけでございますが、残念ながらわが国においてはまだ実現を見ておりません。いろいろとお聞きしましたところが、昭和三十年代に法制審議会で審議をされたことがございまして留保事項になっているそうでございますが、もうすでに二十年以上も経過しているわけでございますし、またこの国際化の時代、そしてまた今年は国際児童年でもございますので、どうかひとつ、法制審議会におきましてこの問題についてはいろいろな障害や問題があるかとは思いますが、審議をしていただいて、でき得るならば一日も早くこの法制化を実現していただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、法務大臣の御所見を承りたいと思います。
  115. 古井喜實

    ○古井国務大臣 特別養子制度の問題でありますが、何かこれは解決しなければならぬ、ほっとくわけにいかぬ問題のように私も思っております。  いまおっしゃったように、法制審議会で昭和二十九年から数年間、親族法改正の中の一つの問題点として検討をいたしたわけでありますけれども、最後的な結論は得られないで懸案になってしまったわけであります。  それが現状でありますが、この問題、戸籍制度とか親族法、相続法の根幹に触れる点もあるわけでありまして、だから議論もいろいろとあったのであろうと思うのであります。けれども、いま申しましたように、いつまでも未解決に置くべき問題でないように思いますので、やはりこれはまた法制審議会で検討してもらって、こういうところだ、こういう妥当な結論を出したいものだ、こういうふうに思っております。
  116. 古寺宏

    古寺委員 次に、国土庁長官にお伺いしたいわけでございますが、三全総では人口の定住圏構想というものを目玉として打ち出しておりますが、その受けざらとして北海道、東北、いわゆる積雪寒冷の厳しい地帯を非常に重視しているわけでございますが、この豪雪地帯の整備が今後の緊急課題である、こういうふうに思うわけでございますが、思い切った財政措置を講じませんと、この三全総はまた絵にかいたもちに終わってしまうわけでございます。したがって、こういうような東北、北海道につきましてはやはり公共投資等の傾斜配分を行うとか、あるいは財政的な思い切った措置を講ずるというようなことが緊急の課題であると思うわけでございます。そういう観点に立ちまして、建設省としてこの三全総をどういうふうにお進めになっていくお考えか、国土庁長官と建設大臣にお伺いします。
  117. 中野四郎

    中野国務大臣 お答えを申し上げます。  三全総の定住構想を推進するに当たっては、豪雪地帯対策をば重視することはお説のとおりであります。豪雪地帯対策特別措置法に基づきまして交通、通信の確保を初め、各般にわたる施策の推進が図られてきております。国土庁といたしましては、関係各省の協力を得ましてその円滑な推進に努めるとともに、豪雪地帯対策特別事業といたしまして、先生はもう専門の委員会に長年御関係をいただいておりますが、基礎集落圏防雪体制整備事業、これは一地区六千万円以上の事業に対しまして二分の一の補助をする。それから、もうちょっと小さい山間等におけるところの自動車の通れないというような場面、冬期孤立集落機能維持施設整備事業を実施してきておりますることは御承知のとおりであります。  今後におきましては、定住構想を具体的に推進するに当たりまして、長期的な視点に立って総合的な対策を検討する必要がございます。このため本年度から基礎的な調査研究に着手したところでありまするが、明年度はさらにこれを拡充実施をしてまいる決意でございます。
  118. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 三全総の中におきまして私たちの治山治水、道路、下水道、公園、住宅その他一般につきましてこれを強力に推進していくということを実施いたしておりますが、その中でも、古寺委員御指摘の積雪地帯につきましては、特に日常生活、社会経済活動に最も必要な道路整備ということに重点を置きまして、除雪の問題あるいはなだれ防止の問題あるいは融雪溝、除雪機械の整備その他につきまして格段の努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  119. 古寺宏

    古寺委員 国土庁長官は、三全総というものを進めるためには、地域を開発するための関連の立法が私、必要だと思います。これは検討していただきたいのです。  それから、建設大臣に申し上げたいのは、三全総の中でも一部指摘をしてございますが、積雪寒冷地におきましては、道路の構造そのものからこれは再検討しなければならない問題でございますので、どうかひとつこの積雪寒冷地の事情というものを十分に調査、御検討の上、今後思い切った財政措置というものをお考えになっていただきたい、こういうふうに御要望申し上げます。  それから次に厚生大臣にお伺いを申し上げますが、政管健保と組合健保の財政調整という問題について厚生大臣はどういうふうにお考えになっているか、承りたいと思います。
  120. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 政府は現在国会に健康保険法の改正案を提出し、御審議をお願いをしておるところでありますが、その中におきましても、将来別の立法措置をもって政府管掌健康保険、組合管掌健康保険のみならず、共済をも含めた全被用者保険問の財政調整というものを実施することを予定をいたしております。しかし、これを実施するためには、各制度ともに給付また負担及び管理運営面等においての条件の違いを同じような形にしていくことが必要でありますし、また累積赤字をどう処理していくかといったような問題もありますので、制度間の財政調整はこれらの条件整備が段階的に図られていきましたその結論としての問題と受けとめ、当面は健康保険組合間の内部における財政調整を考えておる次第であります。
  121. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、先日自民党の齋藤幹事長と武見日本医師会長との間に、自民党の方からこれは提案をされているわけでございます、今国会中にこの政管健保と組合健保の財政調整を行うというふうに自民党の齋藤幹事長からお話があったように承っておりますが、この点については厚生大臣はどういうふうにお考えですか。
  122. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党の齋藤幹事長と武見日本医師会長の間におきまして、政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の負担、給付の公平化、すなわち社会的公正の確保という点につきまして合意がなされたということは私も承知をいたしております。ただし、その際、私も最後の段階どういう状況か、飛び込みましたときにその合意のお話を伺いまして、政府としては現在健康保険法改正案を国会に審議をお願いしているやさきでありますし、またいま申し上げましたような諸般の情勢を踏まえて、政府としてはこれはとうていできませんよということは両方に申し上げ、政府としてはそうであろうという御了解もいただきました。この問題は党レベルの問題でありますし、きわめて重要な内容を含んでおる問題でありますから、政府としては党の結論が出た段階において慎重に対処し、党側とも御相談をしてまいりたいと考えております。私どもとしては、現在継続審議中になっております健康保険改正法案の成立の一日も早いことを心から願っておる次第でございます。
  123. 古寺宏

    古寺委員 次に分娩費の問題でございますが、現在現金給付として国民健康保険は六万円、政管健保は十万円とかばらばらに行われているわけでございます。これを同じ基準まで引き上げることができないのか。現在地方の場合でございますというと、普通、お産は一週間ぐらい入院して、大体十六万円ぐらいだそうでございますが、大都市になりますと二十万円前後かかるそうでございます。この分娩費が各保険によりまして全部違うのですね。ことしは国際児童年でございまして、りっぱな赤ちゃんを産むためには、やはり母子保健というものは非常に重要な問題でございまして、この分娩費の支給について一律に、格差なしに二十万なら二十万、十五万なら十五万というふうに厚生省として決めることができないのかどうか、この点を承りたいと思います。
  124. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ことし国際児童年でありますだけに、母子保健対策にいままで以上に力を入れろという御指摘については、私どもそのとおりに考えております。ただ、先生いま御指摘になりました分娩費の支給を一律に、言いかえれば現物給付のような形にということにつきましては、これはなかなか問題があろうかと思います。ことに、いまお話がありましたように、分娩の慣行料金については個々に相当差がございますし、基準料金を設定すること自体がなかなかむずかしい。また現行の慣行料金、これは平均で見ましても、現在の診療報酬体系との間には差が相当ございます。また、もしそういう形をとりました場合に、現行制度では認められております医療機関外の、たとえば助産婦による分娩のようなもの、これをどのように位置づけたらいいかというような問題もございます。そういう状況を踏まえて、関係者の協力を全面的に得ることにもなかなか問題がありまして、私ども、いま御指摘のような方向で分娩給付を現物給付化するというのにはなかなか困難があろうか、そのように考えております。
  125. 古寺宏

    古寺委員 ILOの百二号条約というのがございますでしょう、その中で義務をまだ受諾していないのは、母性給付の場合は、一番大きな問題はこの分娩の問題なのです。日本のお母さんぐらい虐げられているというか、非常に冷たく扱われている国はないわけです。厚生省はもっと国際的ないわゆる母性給付の水準というものを考えて——私は何も現物給付にこだわるわけではないのです。同じような水準で分娩費の支給なりあるいは出産手当の支給というものができないのか、なぜ国際的な水準まで引き上げることができないのか、こういう点をお伺いしているわけでございます。それは出産をなさる方の御希望によって、病院で出産する場合も、あるいはまた助産婦さんのところで分娩をなさる場合もあると思います。いずれにいたしましても、この分娩費というものをある線まで統一をして、そして各保険者間のこういうような格差というものをなくして、日本のすべてのお母さんが安心してりっぱなお子さんを産めるようにできないか、そういうことをお伺いしているわけでございます。
  126. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たまたま現物給付そのものをお引きになりましたものですから、ちょっと私の方が受けとめを間違えたかもしれません。その点はおわびをいたします。  そこで、私どもことし国際児童年に当たって、厚生省としてお祭り騒ぎはしたくない、将来に残るような仕事をしたいということから、現行の母子保健法の全面的な見直し、母子保健対策の全面的な見直しを図り、総合的に対策の組みかえをやろうということを現在考えております。そうした中におきまして当然、いま御指摘のような問題点についても、専門家の方々に各方面のいろいろな角度からの御議論を願いたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  127. 古寺宏

    古寺委員 ちょうどいいお話が出ましたので申し上げますが、全国の各自治体では、大部分の都道府県が乳幼児の医療費の無料化というのをもう何年も前から実施しているのです。これに対して、一向に厚生省の方からは無料化については積極的な姿勢が見られない。全く残念なことなんです。ことしは国際児童年でございますので、すべての乳幼児といっても大変でございますから、最初は零歳児に限るとかあるいは段階的に二歳まで引き上げるとか、いろいろな方法はあろうかと思いますので、乳幼児の医療費の無料化については、厚生大臣はどういうふうにお考えになっているか、承りたいと思います。
  128. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 古寺委員よく御承知のように、乳幼児の特別な疾病につきましては、従来から未熟児の養育医療あるいは身体障害児の育成医療、また小児慢性疾患、これらのものを対象にした治療費の公費負担制度をすでに私どもはつくっているわけでございます。こういう特殊なケースに対して国ができるだけの手助けをしていくという考え方は、私は今後ともに推進してまいりたいと思いますけれども、乳幼児の一般疾病についての医療費負担というものは、皆保険下における状態としては、私どもは医療保険制度の中において対処すべきものであるというふうに受けとめておりまして、乳幼児の一般疾病についてまで公費負担医療の対象とする考え方は、私どもとしてはいかがかと考えております。
  129. 古寺宏

    古寺委員 すべての自治体がほとんど実施しているのに厚生大臣がいかがかと思うことは、あなた、国民の世論にこたえないことになる。そういう姿勢ではいかぬと思いますので、よく全国の実情をお調べになって、ひとつ再検討していただきたいと思います。  それから、老人医療制度でございますが、五十四年度から実施をする、こういうことを前厚生大臣が約束をしておられたわけでございますが、まだ実施するようなお話がございません。まあ現在検討中でございましょうが、いつから実施する予定なのか、そのスケジュールについてお話し願いたいと思います。
  130. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 新しい老人保健医療制度について五十四年度中の実施を目標に準備を進めるということで参りましたものが、現在まだ作業が停とんをいたしておりまして間に合いませんことは、これは最初におわび申し上げます。  本格的な高齢化社会の到来というものを踏まえて、慎重な検討を今日まで続けてまいったわけでありますが、関係する分野が非常に多岐にわたりまして、なかなか現在具体案の作成に至るまでの作業が当初の予定より大分実はおくれております。今後なお、できるだけ早い機会に具体案を取りまとめられるよう関係各方面との折衝を急ぎ、できるだけ早い機会に実施ができるように努力をいたしたいということで、実施時期等についてまでいまお答えできるほど作業が進んでおりません。大変申しわけないとおわびをいたします。
  131. 古寺宏

    古寺委員 これは非常に大事な問題でございまして、前もって前の大臣は五十四年度から実施すると、全国にこういうような報道がなされたわけでございますので、非常に期待が大きかったのですが、ただいまの御答弁によりますと、まだまだ難航しそうなお話でございますが、前の大臣がせっかく約束をし、老人問題に対する懇談会等からも答申が出ているわけでございますので、医師会等の案もあるようでございますが、一日も早くわが国に合った老人の医療保健制度、こういうものをひとつぜひ考えていただきたいと思うわけでございます。  よくこの国会でも、医療費が非常に膨張いたしまして五十八年度には二十兆円になる、こういうようなことがしょっちゅう言われているわけでございますが、その医療費を節減する一つの方法としては、現在日本の医療費の中で一番大きなウエートを占めているのがいわゆる成人病です。がんですとかあるいは脳卒中でございますとか心臓疾患でございますとか、こういうような病気によって高額医療の患者が非常にふえている。この病気を予防することによって医療費の節減ができるわけです。毎年十四万五千人ずつのがんの患者さんが死亡しておりますために、前の厚生大臣の時代にがん対策審議会というものを五十四年度から発足をさせる、こういうお約束をしたわけでございますが、引き継いでございますか。
  132. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに引き継ぎを受けております。そして現在、がん予防対策を検討するための打合会の設置について準備を進めておりまして、三月中ぐらいに発足できるようなつもりでいま作業を進めておる最中でございます。
  133. 古寺宏

    古寺委員 次に、年金の抜本改正の問題でございますが、年金制度基本構想懇談会が三年間審議をいたしまして、一昨年の十二月九日に中間意見を発表したわけでございますが、まだいまだに答申がまとまらないという理由は一体どこにございますか。
  134. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私ども年金制度基本構想懇談会に御審議を願い、近々御答申をいただける、報告書をいただけると期待をしておる状況の中でありまして、その過程において、その作業でどこがどうということはちょっと私から申し上げるだけ懇談会の中身を私は承知いたしておりません。もし必要でありましたら政府委員から御答弁をさせることでお許しをいただきたいと思います。
  135. 古寺宏

    古寺委員 政府委員から答弁がある前に、それでは私の方から申し上げますが、仄聞するところによりますと、基本懇内の意見がまとまらない。どういうわけかと申しますと、制度審議会が基本年金構想というものを福田総理の時代に建議をいたしております。そういう基本年金構想というものがまたわが党にもございます。こういうりっぱな年金に対する構想がありながら、現在ある八つの年金制度に固執をする、そういうような委員の方々もいらっしゃる、こういうふうにお聞きしているわけでございますが、これであってはいつまでたっても基本懇の結論というものはまとまらないと思うのです。いつごろまでに基本懇というものの構想がまとまるのか。また、制度審の方から出されておりますところの基本年金構想というものについては、厚生省としてはどういうふうにお考えになっているのか。この二点をあわせてお答え願いたいと思います。
  136. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 社会保障制度審議会からちょうだいをいたしております御意見につきましては、大変貴重な一つの御意見として受けとめております。  また、作業の内容等、私、細かい点まで懇談会の状況を存じませんけれども、近いうちに報告書をいただけると考えております。中身につきましては、政府委員の方からお答えをさせたいと思います。
  137. 木暮保成

    ○木暮政府委員 基本懇の審議状況につきましては、結論が出る前でございますので、その状況につきまして御報告申し上げるのはお許しをいただきたいと思いますが、基本懇で主たる検討事項になっておる問題につきまして申し上げたいと思います。  第一番は、ただいま先生から御指摘もございました年金制度の基本的な構造をどうすべきかという点でございます。御指摘のように、ただいま日本の年金制度は八つの制度に分かれておるわけでございますが、これを一本にしていくのか、あるいは一本にすることが適当でないとするならば、部分的に統合する、あるいは財政調整を考えていくか、そういう問題でございます。さらに、これに絡みまして、制度審議会等で御提案いただいております基礎年金制度は税を財源といたしておるわけでございますが、今後年金制度の財源を税に求めていくか、あるいは従来どおり社会保険料に中心を置いていくかという点が問題であるわけでございます。  それから第二の問題点といたしましては、給付水準のあり方でございまして、年金の給付水準、これは老後生活の実態とかあるいは保険料負担がどの程度できるかとか、いろいろの点に関連をいたしていくわけでございますが、そういう年金の水準を長期的にどういうふうにしていくかということが検討課題でございます。これに関連をいたしまして、経過年金等の給付水準をどういうふうに考えていくか、あるいは引き上げをするとすればどういう方法によるべきかということを御議論いただいておる次第でございます。  それから三番目に、支給開始年齢でございますが、老齢化社会が進むにつれまして給付の財源が非常に膨大になるわけでございますが、こういう点に関連しまして、現在各制度支給開始年齢がばらばらでございますが、それを合わせていく必要があるかどうか、あるいは長期的にこの支給開始年齢を引き上げていく必要があるかどうか、そういう点をめぐって御検討をいただいておるわけでございます。  四番目は、婦人の年金保障の問題でございまして、現在の厚生年金あるいは共済組合の遺族年金の水準はこれでいいのかどうか、あるいはまたサラリーマンの妻の年金の問題、あるいはまた離婚をした妻の年金をどういうふうに考えていくか、こういう点をめぐりまして、婦人の年金のあり方につきまして御議論をいただいておるわけでございます。  それから五番目といたしまして、老齢社会が到来するにつれまして、年金の財源が大変な負担になるわけでございますけれども、国民の理解を得ながら、どのように財源を得ていくかという点を御議論いただいておるわけでございます。  主として議題になっておるのは以上のような点でございますが、なお、ほかにもいろいろな問題を御検討いただいておるわけでございます。
  138. 古寺宏

    古寺委員 これは厚生大臣にお伺いしますが、あなたは先日、わが党の広沢委員の老齢福祉年金二万円の引き上げの問題について、これも基本懇の問題であるというようなお話がございましたが、これは全く違うのでございまして、これは政府のいわゆる三木総理あるいは田中厚生大臣の時代に、わが党の大橋議員に二万円の老齢福祉年金は約束をしているわけです。そして先日、具体的な提案を広沢委員の方からなさったわけでございまして、この二万円の老齢福祉年金はあなたがおやりになろうと、こうまず決意をされることが先決問題でございます。政府として公約を実現するかどうかという問題でございますので、この点についてどうなさるおつもりか、承りたいと思います。  それから、婦人で年金権に結びつかない者がたくさんいるわけでございますが、この婦人の年金保障についてどう考えているか。この二点について承りたいと思います。
  139. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 一つ古寺さん誤解がおありではないかと思いますのは、広沢委員から御質問がありました老齢福祉年金の中には二つありまして、一つはいままさに御指摘の、三木内閣当時にそういう御議論をした福祉年金を今年度で二万円に上げろというお話でありました。それと同時に、将来における福祉年金のあり方についての御質問と、二つあったと私は理解をいたしております。  ことし私どもは、物価の上昇率を上回る九・一%の老齢福祉年金に対する引き上げを行ったところでありますけれども、これをさらに二万円の線まで引き上げろと言われますことについては、そのときも申し上げましたが、必要な財源が非常に巨額に上ること、また、拠出制国民年金の五年年金と福祉年金との差が二百八円しかない状況の中で、拠出制国民年金の金額も全部連動させなければならないといったようなバランスの問題等がありまして、なかなか簡単にはできません、五十四年度においてこれ以上の引き上げを図ることは困難でありますということを申し上げました。同時に、今後における老齢福祉年金など経過的な年金の問題を含めた今後の年金水準のあり方については、年金制度基本構想懇談会の御議論を待って方針を決めたいというお答えを申し上げたわけであります。  それから婦人の年金権の問題につきましては、現在、よく御承知のように、自営業者また農家の主婦の方々などは国民年金に加入をしていただくことになっておりますし、被用者の妻も、夫が加入している年金制度でカバーされている以外に、国民年金に任意加入をすることによって妻自身の年金権を持つこともできるわけであります。また被用者の妻で、国民年金に任意加入をしていない期間について、通算老齢年金の資格期間として算入されると、たとえば結婚前やあるいは離婚後の公的年金の加入期間が老後において年金に結びつくような仕組みになっておるわけであります。  ただ、理論的には、国民年金に任意に加入をしなかった奥さんが高齢で御主人と離婚をされた場合等に、老後において年金の保障がない場合もこれは確かに考えられます。こうした問題を含めて婦人の年金保障のあり方というものは、これは公的年金制度全体にわたる基本的な問題でありますし、また将来の年金制度のあり方の大きな一つの問題として、先ほどから何回もお話に出ております年金制度基本構想懇談会においての専門的な見地からの御検討を待って、そしてその結論を得て考えてまいりたい、そのように考えておる次第であります。
  140. 古寺宏

    古寺委員 時間がありませんので、人事院の方にお伺いしたいと思いますが、一昨年暮れの行政改革の一環として、公務員にも定年制をということで閣議で方針が決まりました。それを受けまして、総理府長官から人事院総裁に対して、定年制の検討を昨年の二月に依頼を受けていたわけでございますが、本日の新聞を拝見いたしますというと、国家公務員の六十歳定年に大体踏み切るというお考えのようでございますが、この点について承りたいと思います。
  141. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お答えをいたします。  国家公務員の定年制については、いま御指摘になりましたように、一昨年の暮れの閣議でもって基本的な方針が決定せられた、すなわち導入をしていくという方針が決められまして、それを受けて昨年の二月三日に総務長官の方から私あてに、事は公務員の身分に関する重要な問題であるので、ひとつ人事院の意見を聞かしてもらいたいという書簡が参りました。従来から人事院といたしましても、この問題はいずれ避けて通れない事柄であるという認識のもとに、いろいろな角度から検討は進めてきておったのでございますが、正式に議題に上ってまいったということもございまして、それ以来非常に精力的に真剣に、各周辺の問題を含めて、この問題の検討に当たっておる次第でございます。まだいまのところ検討中でございますので、どういう具体的な方向を打ち出してまいるかということについて、いまのところ申し上げる段階ではございませんし、また、いずれにいたしましても、この問題は、報告あるいは勧告というような形になりますれば、当然これは国会内閣に対して申し上げるということに相なるわけでございまして、それまでの段階でわれわれの方針が決定されるということではございません。新聞に載りましたことは、私も見ましたですが、それは一種の取材活動の問題として、いろいろな推測等も交えて記事になされておるのではないかというふうに考えた次第でございまして、いまのところ検討中であり、具体的な方向として六十歳というようなことで踏み切るかどうかということは、まだ決定の段階ではございません。
  142. 古寺宏

    古寺委員 そうすると、この新聞の記事は、これは全然違うわけでございますね。
  143. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 恐らく取材活動の結果としていろいろの予測等も交えて行われたのでございます。したがいまして、いまこの段階では、それが間違いであるとも、またそのとおりであるとも、申し上げる段階ではないということを申し上げておる次第でございます。
  144. 古寺宏

    古寺委員 それでは週休二日制の問題でございますが、現在大蔵省では銀行の週休二日制について検討をしているということを承っておりますが、この問題について大蔵大臣はどういうふうにお考えになっているか、承りたいと思います。
  145. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 銀行の週休二日制は、先進各国でもすでにやっておることでございますし、前々から委員会におきましても問題を取り上げられてまいっておるのでありますが、問題が二つあります。  一つは、中小企業にはまだ週休二日制が実施されてないものですから、銀行を土曜日休みにした場合に、その影響がどうか。いわば、そういった、週休二日制をやってないところのコンセンサスをどういうふうに得るかという問題が一つございます。  それから、金融機関ということになりますと、これは銀行だけじゃございませんで、郵便局なり農協の扱いをどうするか、やはり歩調を合わせないと困るという問題があるものですから、そういう問題も絡めて、いま銀行法の改正の一環として、金融制度調査会で取り上げております。  私自身は、これはもう前向きに取り組まなければいかぬと考えておるのでございますが、ことしの前半には恐らく結論が出ると思いますので、結論を待って法改正をやりたいと考えております。
  146. 古寺宏

    古寺委員 時間がありませんので、労働大臣に定年の延長の問題について。  過日、大平総理は、わが党の二宮議員の質問に対しまして、高齢化社会を想定するならば定年延長は必要である、こういうことを述べておりますが、あるいはまた労働大臣も同様趣旨のことをお話しになっておりますが、この定年制の問題につきまして、具体的に大体何歳ぐらいを目標に、そしてまた、どういうふうにこれを実現なさるお考えか、承りたいと思います。
  147. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 定年を延長するということは、御指摘のとおり、これからの高齢化社会に向かいまして、どうしてもやらなければならぬ。したがいまして、六十歳をめどとして、それまで定年を延長することをまず精力的にやっていきたい。具体的にはどの層が一番主になるかといいますと、御案内のとおり、これは高齢者を対象としてやるということでございます。  これは御質問にはございませんけれども、実は昨日、経済界の代表の方々とも会いましたが、定年延長の問題については強く要請もし、また経済界自体といたしましても、この問題については精力的に取り組みたい。いろいろ年功序列賃金等の問題はありますけれども、そこら辺を踏まえた上で、よくやっていきたいということでございます。
  148. 古寺宏

    古寺委員 労働の問題につきましては、時間がございませんので、委員会でまた引き続き御質問申し上げますが、最後に一つ、大蔵大臣に、現在、健康保険組合、共済組合、いろいろございますが、法人税法の中では、健康保険組合の方が第一表、それから共済組合等は第二表になっているわけでございます。これは、いろいろお話を承りますと、当初からの関係でずっと引き続きこうなっているということでございますが、やはりいろいろな問題や誤解を生じますので、これを何とか整理して、同じような第一表なり第二表なりにまとめることができないのかどうか、この点を承っておきたいと思います。
  149. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いろいろな経過がございまして、第一表、第二表というようなことになっておることは、御承知のとおりでございます。結果において取り扱いが余り変わらないというようなことからも、いまのままになっておるわけですけれども、これは十分ひとつ検討させていただきます。
  150. 竹下登

    竹下委員長 これにて古寺君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  151. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川合武君。
  152. 川合武

    川合委員 私の質問に関連いたしまして、伊藤公介君が質問をさせていただくわけでございますが、出席要求をしております外務大臣の時間の御都合で、伊藤公介君を先に質問させていただきたく、よろしくお願いを申し上げます。
  153. 竹下登

    竹下委員長 それでは、川合君の持ち時間の範囲内で、伊藤君の質疑を許します。伊藤公介君。
  154. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 大臣の御都合があるというお話を伺いましたので、外務大臣に質問をさせていただきたいと思います。  もうニュースで御承知のとおり、中国軍のベトナム攻撃で緊張の度を加えておりますけれども、中国、ベトナム、ソ連の三国が、まさに威信とメンツをかけて、このまま深入りをしていけば、加速的に危険な状態をさらに高めていくのではないかという心配をしているわけでありますけれども、その後外務省が入手をしている状況、また、そうした状況に対してどのように対応されるのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  155. 園田直

    ○園田国務大臣 現状は御承知のとおりでありまして、北部山間地帯に“中国軍は深いところで二十キロ、浅いところで十キロ付近で戦闘を継続いたしております。  なお、ベトナム正規軍が北方に動いたとか、あるいは中国が撤退を開始したとかという話がありますが、これは全く不確認情報であって、いまのところ状況の変化はさしたるものはございません。  わが政府は、御承知のとおり、中国、ベトナム、ソ連等にそれぞれ申し入れをいたしてございます。  中国に対しては、まことに遺憾であって、速やかに停戦、軍の撤退、そうして平和的な話し合いに移られるよう、強く要請をしております。これに対して中国側は、やむを得ずやったことであるが、話し合いをしたいと思っているという返答であります。  ベトナムにも同様趣旨の申し入れをしてございます。  なお、ソ連に対しては昨日総理、その前に私から在京ポリャンスキー氏に、これが拡大をして大規模な戦争にならないように、アジアの平和の障害にならないように協力を要請し、自重を申し入れたところでありますが、ソ連の方はきわめて穏便でありまして、戦争反対、拡大防止はソ連の一貫した方針である、こういうような状態でございます。
  156. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 二十一日にはASEAN議長のインドネシアのモフタル外相が来日をされると伺っておりますけれども、外相が来日をされて、日本側としてはどのような話し合いをされるのか、今度の中国、ベトナムの問題について具体的な御提案をされるのか、お伺いをしたいと思います。
  157. 園田直

    ○園田国務大臣 わが方はあらゆる努力をして、この事件の平和的解決を望んでいるところでありますが、特にASEANの諸国とは意思を相通じ、足並みをそろえていきたいと考えております。ASEANには、御承知のとおり外相会議をやろうかという意見もあったようでありますが、それはまだ決定しておりません。インドネシアはちょうどいま議長国でありまして、ASEANの国々を回って訪日をされますので、この問題のASEANの意向あるいはUNCTADあるいはASEAN会議等、万般の問題について話し合いたいと考えております。
  158. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今度の事態は、もちろん日本だけではなくて、特にASEANの諸国は非常に緊張して見守っているわけでありますけれども、こうしたASEANの国々との連携が非常に大事だと思っておるわけでありますけれども、今後事態の進展によってはASEANの国々と具体的な話し合いなり御提案をされて、そういう機会をつくるという用意があるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  159. 園田直

    ○園田国務大臣 モフタル外務大臣とも話し合って、いろいろ検討したいと思いますが、状況の推移を見守りながら、ASEANの国々とは緊密に連絡するようにしたいと考えております。
  160. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 このベトナムの問題に関連をしてでございますけれども、実は在日をしているベトナムの留学生の皆さんからいろいろなお話が私どものところにもございました。  ベトナムの旧政権の崩壊によって国籍を失ってしまって、法的に言えば日本においては無国籍というような状態にいるわけでありますけれども、こうした在日をしているベトナムの留学生の皆さんが五百ないし六百人おられるというお話でありますけれども、すでに留学生の大半は卒業をされております。しかし、ビザの申請をしても、帰国を希望しても非常にむずかしい、あるいは在日をする希望者も非常に多いようでありますけれども、在日をする方々も法的な地位は確保されていないということで、もう働かなければ、国からの仕送りもとだえて生活すら脅かされる、こういう状況になっているわけであります。学生の皆さんの要求の中で、留学生のビザの更新の期間を、現在は六ヵ月になっているわけでございますけれども、これを一年以上にしてほしい、こういう主張をされているようでございますけれども、当局としてはどのような応対を今後されるおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  161. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりに、昭和五十年、ベトナムの情勢の変化によって留学生、特に私費留学生の取り扱い及び生活等に非常な困難を来しております。同年閣議了解で、授業料の減免あるいはアルバイトのあっせん等いろいろ努力をし、法務省とも相談をして、格別な好意で日本在住の資格その他の取り扱いについては便宜を計らってもらっているところでありますが、それにしてもなかなか大変な問題であります。今後とも文部省その他関係省と連絡をして検討したいと考えております。  なお、ベトナム政府に対しては、帰国希望者は引き取られるように要請をして、努力をしているところでございます。
  162. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 現実に在日をされている留学生の皆さんは、大体二十代の半ばから三十半ばという方々が非常に多いというお話を伺っておりまして、一方では仕事はしなければならない、同時に、すでに結婚適齢期を迎えているという方々も現実にいるわけでございまして、法的な地位というものを確保してあげないと生活すらもできないという現実が、在日をして留学生の生活をされている皆さんの中にそうした問題がすでに起きているわけでございまして、ビザの更新期間を延期してもらいたいという要望や、あるいは出入国を自由化してもらいたい、これは留学生の皆さんが、たまたまもう政権がかわってしまって、祖国には、違った社会体制のもとには帰りたくない、そこで海外に住んでいられる自分の知人あるいは親戚等を訪問したい、あるいはそうした方々のところに行って住みたい、こういう希望がありましても、なかなかそれが自由にならないという問題もあるわけでございます。  たしか昨年の四月だったと思いますけれども、福田内閣のもとで、初めて日本でも難民の定住ということが認められたわけでございますけれども、ある意味からいえば、国の体制がかわって、しかも祖国には帰らない、こうした若いアジアの留学生に対して十分な配慮をしなければならないのではないかというふうに思うわけであります。特に私も外務委員会で当時外務大臣とそういう質疑をした中でも、外相がASEANに参りまして、これから海外の援助、特にASEANにおける援助を倍増していく等々の御発言もあったわけでありますけれども、外国の、特にASEANの国々に対してそうした海外援助をすることはもちろんでございますけれども、少なくとも私たちの足元にいる、現実にいま日本の国に住んでいる、しかもアジアにとっては非常に前途有為なそうした若い人たちが、日本の国の中で快適に生活ができるという道を法的にも開いてあげるということが、もっと身近なASEANに対するわれわれの果たす役割りではないのかというふうに思っておりますけれども、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  163. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりでありますので、今後とも関係省庁と連絡をして努力をいたします。
  164. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 在日をしているベトナムの留学生の状況について、日本文部大臣としては、この状況をどのように把握をされているか、お尋ねをいたしたいと思います。
  165. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、いま私どもで承知しておるのは、ベトナムからの留学生は二百三十四名、そのうち国費留学生が三十九人です。それから奨学財団から援助していただいている者が四十七人、そのほかに、大学院に入れば大学院の待遇をいたすようにできるだけのことはいたしたいと思って、お話しのとおり、せっかく日本に来ていらっしゃるのだから、やはり日本人が親切にして、そして快適な生活ができるようにさせたいと思っております。詳細は局長から御報告させます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  166. 篠澤公平

    篠澤政府委員 ただいまの状況につきましては、大臣から御答弁を申し上げたとおりでございます。  二百三十四名現在おりまして、そのうち国費留学生が三十九人、学部及び大学院で勉強いたしております。さらに私費がその残りの百九十五人となるわけでございますが、そのうちの大部分が国立学校の研究留学生あるいは学部留学生として勉強しているわけでございます。大臣が申しました私費留学生のうちの四十七名——ロータリー米山記念奨学金というのがございまして、ロータリー米山記念奨学金を受領しておりますのが四十七名、それから先生も御案内のとおり、私費留学生につきましては、先般来、私費留学生のための奨励費を支給するという制度も実は五十三年度からできておりますので、それにつきましては希望する私費のベトナム留学生に対しては、実は十五名おりまして、十五名に対して月額四万円の奨学金を支給するという手だてを講じております。  さらに、学部から大学院に進むというようなケースにおきまして、私費である者を国費の留学生の身分に切りかえるといったようなことをいろいろ手だてを考えまして、できるだけ大ぜいの学生を救済したい。  さらに、授業料の減免につきましても、国立大学におります私費留学生につきましては、ほぼ九〇%程度の学生につきましては授業料の減免をいたしておるようなわけでございます。
  167. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私の伺っているベトナムの留学生の在日の数とはかなりかけ離れているようでございますので、実態をよく調査をされて、これは国費、私費を問わず、現実の問題でございますので、しゃくし定規でなくて、ぜひ温かい法的な御配慮をお願いしたいと思います。難民の定住を認めても、多くの難民の中でわずか三人しか日本には現実に定住しない、そのほとんどはアメリカなり日本以外の国を希望していられるという現状を見ましても、日本のこうした外国の身近な方々に対する配慮というものが、いささか欠けていたのではないかという私も気がいたしますので、十分そうした血の通った温かい御配慮をお願い申し上げたいと思います。  大臣、お急ぎのようでございますので、次に、実は東京ラウンドの日米協議で、いま最大の焦点になっております電電公社の資材調達について、お尋ねをいたしたいと思います。  まず、外務省の考え方は、政府調達は三十億ドル、ECでは百五億ドル、アメリカでは百六十億ドル、したがって日本は非常に少ないのではないか、こういう御指摘をされているようでありますけれども、それでは、このECの百五億ドルの中には電気通信設備は現実に入っているかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  168. 手島れい志

    ○手島政府委員 ECのオファーの中には入っておりません。
  169. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、なぜ電気通信設備が入っていないのに百五億ドルに現実になっているのでしょうか。
  170. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  それぞれの各国政府ないし政府の関係機関がどういうものを調達するかというのは、それぞれ国ごとによって違っておるわけでございますが、ECの九ヵ国が、主として中央省庁でございますが、そこで調達している総額、そうしてこのMTNでオファーされている総額を計算いたしますと、約百五億ドルぐらいになるわけでございます。
  171. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 大臣お急ぎのようでございますから、かなり細かな質問になっておりますから、お引き取りをされる前に、外務省ではすでにいろいろな御発言をされて、新聞紙上にも載っておりますけれども、この電電公社の資材購入に関して外務大臣のお考えをお尋ねして、御退席をいただきたいと思います。
  172. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、日米関係は政治的には非常に緊密になっておりますが、経済問題をめぐってなかなか緊張した状態にあります。その煮詰めたものが政府調達機関、それから関税の問題、これの前提に黒字圧縮の問題があるわけでありますが、そこで、これを逆算いたしますと、東京サミットがあります。その前に東京ラウンドがあります。これをうまくまとめるためには、どうしてもいまの問題を日米の間で相互理解をして解決する必要があるわけであります。しかしまた一方、日本の優秀な電気技術というものを守るためにはうかつな開放もできないわけでありますので、この点は十分話し合って、最後には何とか両方が納得できる解決をしなければならぬと、いま鋭意努力をしているところでございます。
  173. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 先ほどの質問に関連をして、重ねてお尋ねをしたいのでありますけれども、ECの百五億ドルの中には防衛関係費はどのくらい入っておるでしょうか。
  174. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  ECの調達体の範囲は、先ほど申し上げましたように主として中央省庁でございまして、ほぼ百億ドルの調達額ということになっておりますけれども、そのうちで国防関係省庁の国防費、国防調達というものの数字が約三十七から三十八億ドルというふうに承知しております。
  175. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうしますと、私がいま調べた中ではもう少し多くなっているわけでありますが、いずれにしても、この残りの分をEC全体のGNPに比較をしますと大体何%くらいになりますか。
  176. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  いまECが約百億ドルということで計算いたしますと、私どもの試算では〇・六八%でございます。
  177. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 御答弁では〇・六八%というお話でございますが、私が調べたあれでは防衛関係費が四十二・五億、約四十三億くらい、ですからその計算でしますと六十二・五億か六十三億ぐらいになるだろうと思います。いずれにしても、〇・五ないし〇・六%ちょっとぐらいですね。  それでは、日本のいまいろいろ御議論をされております三十億ドルですが、これはGNPの何%になるのでしょうか。
  178. 手島れい志

    ○手島政府委員 先ほど御答弁申し上げましたECについての試算は一九七七年の数字でございますが、同じ年につきまして日本のオファーを三十から四十の間、三十五ということで計算いたしますと、そのときのドルの換算レートいかんにもよりますが、現在の一ドル二百円ということで計算いたしますと〇・三九%でございます。
  179. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 数字をお伺いした中でいま〇・三九%とおっしゃいましたね。そうしますと、そちらの計算でいけば〇・六八%ということですけれども、どういう形でその差を詰めていこうというお考えでいまいらっしゃるのでしょうか。
  180. 手島れい志

    ○手島政府委員 その差がゼロになるように努めるということを考えておるわけではございません。ただ、いままで外国から言われておりますことは、いかにもこの差が大き過ぎるから、そこで何らかの努力をしてほしいということを強く要望されております。
  181. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 通産大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、新聞紙上では一〇%ぐらいを公開入札したらどうか、こう言われておるようでございますけれども、一〇%ということになりますとまずどんなものが具体的に対象になるかお尋ねをいたしたいと思います。
  182. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 その新聞を私見ておりませんが、一〇%程度を公開入札にしたらどうかという発言をした記憶は私ありません。というのは、恐らく何かの間違いだと思いまするが、それは安川特派大使がこちらへ戻ってまいりまして、アメリカの電信施設を経営しておる、これは民営の会社ですね、そこが八〇%ぐらいは指名で調達しておる、二〇%程度は公開入札にゆだねておる、こういう報告がありました。それが何か間違って推測記事になったのではないかというふうに思います。
  183. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 公社、公団は数多くあるわけであります。現実にアメリカの方では百四十近くを挙げているわけですね。この百四十ぐらいの特殊法人について具体的に検討しろということを迫ってきているわけでありますけれども、現状で公団その他の政府機関等については何らかお考えになっていらっしゃるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  184. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  日本は、先ほど申し上げましたように、中央省庁を交渉の対象として考えておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような理由もあり、よそからは政府の直接監督下にあります三公社初めその他の政府関係の機関も調達コードの対象とするよう要請を受けております。
  185. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 電電公社の総裁においでいただいておりますからお尋ねをしたいのでありますけれども、アメリカ側は電電公社の物品調達を開放してほしい、開放すべきだ、非常に強い姿勢で要求をしているわけでありますが、まず電電公社の考え方はどうか。つい先日も大変大きな広告を出されているようでありますが、これは製造業界にも大きな影響があるということをこの広告ではうたっておるわけでありますが、まずお考え方を伺いたいと思います。
  186. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答えします。  電電公社はかねてから巨大な通信器材を数十年来随意契約でやっております。今後も随意契約が公社のためあるいは通信の確保、通信の品質を向上するため、それから経済的にするためには一番いい方法であるというふうに信じまして、一にこの方針を郵政大臣あるいは外務大臣にお願いしまして、外交場裏で御検討願っておりますが、この説明も一言に申し上げるのは非常にむずかしい問題でございまして、時間をかけないとなかなかわかりにくい問題であるということは私どもを非常に困難にさせておる一つの理由だと思っております。しかし、もうすでに山場へ来ましたので、きょうも閣僚懇談会も開かれたという模様でございますので、最終的には電電公社の主張と政府の大きな立場からの見解との調和を図らなければならぬというような段階に来ているのではなかろうかと思いますが、今日まで終始一貫、随意契約方式でなければ電気通信事業にはなじまないのだ、かつまた、世界各国がみんなそういう形でやっているのだということによって御説明し、御検討願っているわけでございます。
  187. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 一般新聞紙上に書かれていることでございますし、先ほど大臣も御答弁ありましたけれども、総裁に重ねてお尋ねをしますけれども、もし物品調達額三十億ドルの一〇%ぐらいを公開入札した場合、関連企業に対して現実にどういう影響が出てくるかお尋ねをいたしたいと思います。
  188. 秋草篤二

    ○秋草説明員 先ほど通産大臣がお答えしましたように、一〇%とか三〇%というふうには私ども外務省からも郵政省からも何ら聞いた覚えはないのであります。  この先生の御質問、仮に電電公社の現在六千数百億の中で一〇%だけを競争契約にするということになると、どういう品物を分けるかという問題が一つあります。  それから海外でオープンにするならば国内も当然オープンにしなければなりません。これは相当な大問題でありまして、いま仮定の数字を先生おっしゃられたのだと思いますけれども、いずれにしましても、そういう問題を、いま私がここでどういう業者を対象にするとか、何%にするかということは、軽々にはちょっとお答えは控えさせていただきたいと思っております。
  189. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは政府調達問題に対して、公社としてはいまどのような対応策をお持ちになっていらっしゃるでしょうか。
  190. 秋草篤二

    ○秋草説明員 重ねて申すとおりでございますが、ただいままで電電公社の通信器材の調達に対しましては、政府関係から除外してほしいというのを前からお願いして、また牛場代表以下関係者の方々も、そのとおり懸命に努力してくださっておる、現在まで続いております。
  191. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もしこういう形で門戸を開放していった場合に、私は日本の国内の中小企業に対して非常に大きな影響があるのではないかというように思いますけれども、総裁、将来の見通しの中で中小企業に対してはどのような影響があるか、お答えになれる範囲内で御説明をいただきたいと思います。
  192. 秋草篤二

    ○秋草説明員 私どもの関連するメーカー、大まかなところでお許し願いたいと思いますが、二百社ぐらいございます。中小企業と申すのは、一応資本金一億というふうな前提で申しますと、五〇%以上は中小企業になると思います。一億という会社も今日ではそう大きな会社ではございません。これらが皆二社なり三社あるいは五社の物品を長い間専門な工場を持ってやっておりまして、これを競争契約にかけるということになりますと、御案内のように、競争契約というものは仕様書を一定にして価格で勝負するということになりますから、これは大変な大きな破綻というか、喜ぶ人もございますけれども、また一年間あるいは半年なり操業は停止されるというような非常に困った問題ができることは当然でございます。電電公社の仕事の注文する製品というものは、一番わかりやすく言えることは、マーケットが電電公社しかないという品物をつくっているのでありまして、どこにも売ることができない、これは家電とか自動車と大分違うところでございます。それだけに競争契約で毎年歳々指名を受けるということになれば、契約の方式も多少弾力的なやり方はあろうと思いますが、これは大変大きな労働不安というか、経営者に非常に大きな打撃を与えることは事実だと思っております。
  193. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総裁のお話でございますと、中小企業は五〇%ぐらい、日本の国内の中小企業に与える影響は非常に大きい、こう考えなければならないと思うわけであります。通産大臣は中小企業を育成し守るというお立場にいらっしゃるわけでありますが、この中小企業を今後どういう形で救済をしていくのか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  194. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 まだ最終決定になりませんから、さてどうするかということをいまちょっとここでお答えするのは先走り過ぎるように思いますが、しかし現実の問題として、やはり自由競争入札というような形が一部分にしろとられるということになって——中小企業が競争力のあるものもありましょう、また、競争力の全く皆無なものもありましょう。これはやはりケース・バイ・ケースで、従来とっております対策を十分配慮しながらとっていく、こういうことだと思います。
  195. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本のこの技術は世界的なレベルにもなっている。したがって、非常に高い日本の技術というものを一挙に開放していくということに対しては、非常に慎重でなければならないという気は私もするわけでありますが、総裁にもう一度お尋ねをしたいのであります。もちろんこれはまだ正式な話ではないわけでありますけれども、アメリカ側の方にも、完全競争入札ではなくて随意契約でもいいから、もう少しガラス張りにして、その枠を広げていくということはできないかという柔軟な姿勢も見られるというお話も伺っているわけであります。いずれにしても、日本の高い技術水準というものを守ると同時に、国際的な視野に立って事を進めなければならないという一面もあるわけでございまして、総裁としては、こうした——私も後ほど質問しようと思いましたけれども、時間がありませんからこの質問はいたしませんけれども、ジョーンズ委員長の報告を見ましても、日本に来られて「我々は電電公社の上層部と会談したが、残念ながら失望した。電電公社は二国間の重大な問題に気づいていないようであり、協力的な姿勢が感じられなかった。日本訪問のうち電電公社訪問は最低のものであった。日本は自国の通信技術の発展のために、自国の市場を確保しながら一方では米国の開放された市場に急速に進出し、米国市場への日本の電気通信機器輸入が増大している。このことが電電公社の問題をますます深刻化している。電気通信市場は未来産業であり、このような不公平な貿易競争を強いることは問題であり、疑いもなく報復措置や輸入制限をもたらすかもしれない。」こういう報告書が出ているわけでございまして、やはりわれわれは国際性にも立って問題に対処しなければならないと思うわけでありますが、総裁の今後の見通しを重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
  196. 秋草篤二

    ○秋草説明員 ジョーンズさんがお見えになるとき、たまたま表敬にお見えになるということで、私も喜んでお会いするという約束をしておったのですが、ちょうど国会が開かれまして朝から一日国会にいまして、その旨を副総裁並びに列席の局長から丁重に謝罪を兼ねてお断りしたわけでございます。そのときの模様を聞いてみますと、そんなとげとげしい応対は何もなかった、ただ来て、多少物を、ひとつこういう物を買わぬかというような話があったようでございまして、一回だけ来て、直ちにすぐ買いますというわけにはいきませんですから、そういうやりとりがあったわけでありますけれども、私もまた会えばもっと意を尽くしたあいさつができたと思いますが、私は会っておりません。  ただ、きょう私、某新聞記者、りっぱな方から、ニューヨークから帰ってきた方の報告によりまして、私と会えなかった理由が、秋草総裁は私との面会を拒否して逃避したというようなことが、ニューズウイークに堂々と出ておるのです。これを見たのですが、私は非常に不愉快に思いまして、そのことだけはぜひ伝えてください、それはうそですよということを言ったら、そのことを確かに言った、そうしたら、口をつぐんで黙っていたということであります。このジョーンズさんの報告を私も拝見しましたけれども、かなりりっぱなものでございますが、誤解も多少ございますし、また認識の違った点もございます。これは改めて外務省の方にも私たちの意見は申し上げておると思いますが、いずれにしましても、日米間の大きな問題、長い間の友好関係を持続するという高い視野から物を考えてみなければならぬということは、私も十分わかっているつもりでございます。
  197. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最後に、所管大臣として郵政大臣にお尋ねをしたいと思いますが、電電公社が主張されるように、日本の国益上、世界一局いと言われるわが国の電気通信技術のノーハウというものが、過去三十年築き上げてきたものが非常に簡単に外国に流出をしていくということに対しては、もちろん電電公社ばかりではなくて配慮しなければならないと思っておるわけでありますけれども、所管の大臣としてはこの問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  198. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 先ほどから総裁からお話がございましたとおり、いま話し合いの最中でもありますし、いろいろなことは心配しながら私どもあけすけに申し上げるわけにもまいらないところでありますが、御指摘のとおり長い間かかって非常な技術の開発も進み、国民の皆様方に安定した、安心して使える通信機器を提供して、そうして電話事業は順調に進んでまいったところでありますが、同時に、国際的なこうした大きな問題に直面して、どうしたならばアメリカ側の理解を得るかということにいま一生懸命になっているところであります。  先ほどお話も出ましたジョーンズ報告というものもいろいろ経緯を私も承りましたが、どうも誤解も非常に多いことでありますし、特に技術的な問題でありますので、素人の私どもにもなかなかわからないというようなところがあるわけでありまして、アメリカのATTという会社あたりも一〇〇%自分の出資している会社から八〇%以上八五%も随意契約で買っている。その残余は日本から輸入しているといっても、それ自体は、どうもアメリカでつくるよりも日本の会社の方がいいという先方さんの都合で入れているというふうなことも考えられるような、そういうふうな話も私も承っております。  けさほども私ども関係閣僚の会合をやりまして、そうして今度の問題にどう対処していくかということを取り上げて検討している最中であります。御心配いただいているようなことがなるたけ不発に終わるようにということで、外務大臣、通産大臣を初め関係閣僚の各位と一生懸命努力をしている最中であります。
  199. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので私の質問は終わりたいと思いますけれども、総裁のお話にもございましたとおりアメリカ側からは門戸を開放せよ、アメリカを初め外国に対して門戸を開放せよという強い要求があるわけでありますけれども、同時に国内におきましても、それぞれの中小の企業にもその門戸をもっと開放していただきたいという強い要請があるわけでございます。たとえば、電気通信の工事用の資材を購入する際に、特定のメーカーから買っているというような御指摘もあるようでございますし、あるいはNFOH、これは大きな企業の頭文字だけをとったものでありますが、大手から購入している。購入額の九六%はこうした特定の大きな企業から買っている。随意契約の方式から、納入資材によってはもっと入札制度を導入していく必要があるのではないか、国内にも門戸を開放せよという声があるわけでございますので、こうした道をも、先ほどのお話にも一点触れられておりましたけれども、ぜひ開かれますように強く要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  200. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 次は川合君。
  201. 川合武

    川合委員 私は最初に大地震対策について質問を申し上げたいと思いますが、自治大臣に御質問したいと思います。自治大臣お答えをいただくならばなお結構でございますが、消防庁長官も見えておるようでございますので、どちらでも結構でございます。  第一に空中消火、航空機で空から火を消す空中消火の方法につきましては十数年前から消防研究所で研究開発が進められておる、国の予算もついておる、こういうふうに承っておりますが、その研究開発の現状また実用化にどの程度めどがついておるのかということについて伺いたいと思います。
  202. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 お答えいたします。  消防庁におきましては、空中消火につきまして昭和三十九年以降、消防研究所を中心として鋭意検討を進めておるところでございますが、ヘリコプターを使っての空中消火、山林火災につきましては、その実用の見通しがついておりまして、昭和五十年以降実施に移しております。現在のところ毎年十件程度の出動件数がございます。  最近の例で申しますと、昨年の十月広島県下で百ヘクタールぐらい山林を焼いたケースがございますが、そのときは自衛隊の方に御依頼申し上げまして、六機のヘリコプターが消火に参加しておる、そういう状況でございます。  一方数年前から、こういった山林火災ではなくて、大震火災に対して空中消火ということができないものかということで検討を始めたわけでございますが、具体的には昭和四十九年にカナダから消防飛行艇一機を借用いたしまして実験を行いました。さらに昭和五十年から五十三年まで三年間、自衛隊のPS1型の対潜哨戒機を消防用に改造いたしまして実験を行ったところでございます。  まあいろいろな実験を行いまして、現在そのデータが出そろっておりますので、昭和五十四年度におきましてはそれを分析いたしまして実用化できるものかどうかの検討を進めていきたい、そういう段階にございます。
  203. 川合武

    川合委員 諸外国ではどの程度この空中消火の研究開発が進んでおるのか、ごく簡単で結構でございますから御説明いただきたい、こう思います。
  204. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 諸外国の空中消火の実例としましては、一九五六年、昭和三十一年かと思いますが、アメリカが初めて森林火災に空中消火の方法を採用したと聞いております。その後カナダあるいはフランス等におきましても、森林火災につきましては空中消火というのは非常に効果があるということで大いに採用されておるということを聞いております。ただ、森林火災以外の建物火災ということになりますと、アメリカあるいはカナダで一、二件出動したケースがございますけれども、まだその効果が十分、これでいけるんだというところまではいっておらない、検討の段階であるというふうに聞いております。
  205. 川合武

    川合委員 なるほど、火災は非常に言うに言われない威力を持ったもので、これを簡単に消火するといっても山林火災と違って、また一般の火災は特殊な姿を呈しますからなかなかむずかしいと思います。しかし大震災対策の大きな解決方法として空中消火の方法、これは私どもの志さなければならないところだ、こう思います。非常に諸外国、世界じゅうにおいてその力を誇っておると言われておる日本の消防でございますから、どうか研究開発をさらにエネルギッシュに進めていただきたい、こう希望を申し上げます。  ところで、私は航空機を活用しての大震災対策というものは、空中消火は将来の問題といたしまして、現在において避難誘導の最上の方法は上空からの航空機による避難誘導だ、こういうふうに思うのです。  日本の災害の歴史の中で一番悲惨だと言われておりますところの大正の関東大震災における本所被服廠跡の一挙に四万人死んだ——御承知のとおりでございますね。あの状況を聞きますと、四万人の人が本所被服廠跡に避難いたしまして、ここでもう安心だ、大丈夫だと思っておりましたところ、気がついてみたら四方から紅蓮の炎に囲まれてしまった。どうしようもなくて、ほとんど全滅でございますね。こういう悲惨な姿を呈したと聞いております。しかし、航空機で上空から避難誘導すれば、まさか木所被服廠跡のときのように、気がついてみたら四方から火が来ていたというようなことはないわけでございまして、航空機による上空からの避難誘導、これがいまの災害対策として非常に重要なことだと思いますが、消防庁長官、この避難誘導の方策が現在の消防においていかに実際的にその体制がとられておるか、お答えをいただきたいと思います。
  206. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 大震火災時におきまして、まず住民の生命を守るということが一番大事でございまして、そのためには、いま現在火災がどこで発生しておるかという状況を刻々把握して、そして避難誘導のための道路を確保するということが必要でございます。  そこで、航空機がそういったものについて非常に役立つということは、先生の御指摘のとおりでございます。現在、全国でヘリコプターの数が十一機でございますが、御承知のように東京初め大都市の消防で配属されておるところにつきましては、たとえば東京消防庁などはヘリコプターに無線及びテレビを積んでおりまして、防災情報センターとの間を結んでおりまして、それによって刻刻の状況がわかるというような体制づくりをしておるわけでございます。ただ、いずれにいたしましてもヘリコプターの数が十一機というのではまことに不十分でございます。そのほか警察が三十七機持っておるわけでございますが、そういったものと連携をとりながら万全の策を講じていきたいと思っております。ただいずれにしても、今後の問題としては、重立った消防署にはヘリコプターを配置するということが必要だと思いまして、要望の向きには国庫補助金も交付するというような措置も拡充してまいりたいと思っております。
  207. 川合武

    川合委員 消防の十一機のヘリコプターがあるのはどことどこですか。
  208. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 大都市でございます。具体的には東京、大阪、京都、神戸、名古屋、福岡の都市でございます。
  209. 川合武

    川合委員 ただいま消防庁長官の御説明を聞きまして思うのですけれども、現在十一機ある。しかし、主な都市に全部あるわけでもないのですね。東京に五機、大阪に二機というようなお話もございましたが、全部あるわけでもない。また、いまの長官のお話では情報を把握するということなんかに主に使われているような感じもしましたけれども、それはそうといたしまして避難誘導の訓練あるいは演習といいますか、私ども寡聞にして余りやったという話も聞かないのですね、やっておられるのかもしれませんが。  そこで、私は消防がヘリコプター、航空機をたくさん持つことはこれは無論結構なことだと思います。ただ、航空機をもって避難誘導する、警察が云々とおっしゃったけれども、震災が来たからいきなり飛び出していったってこれはなかなかできるものでもない。十分な体制と準備と練習がなくちゃいけないと思うのですね。私が申し上げるまでもございませんが、もうもうたる煙の中から上からのぞいて見るようなことになるわけですから、赤外線装置というようなものも必要でございましょうし。そこで、消防の航空機というものがこれは責任を持ってその研究、準備をやらなければならないが、しかし、いまのお話を聞きますと、全国で十一機でございますから、数からいっても大震災の場合にとても間に合わないのじゃないか、こう思われます。  ことに、いまの考え方で広域避難場所というのが設けられておりますが、なるほどその広域避難場所は輻射熱のことも考えて十分安全な避難地だと思いますけれども、何分遠い距離にある。でございますから、どうしても現実の町の姿を見ますと、町内会や何かの考えで第一次集合所といいますか、そこにとりあえず避難しろ、こういうようなことになっております。しかし、これはいま申しましたように、紅蓮の炎に囲まれれば危ない。ですから、先ほどからくどく申しますように、上空からの避難誘導で安全なところへ避難していく、こういうことをしなければならない。その場合に、とてもいまある全国で十一機程度のものではやれない。私はやはり自衛隊の航空機の応援も求めてやらなければならないのじゃないか、こう思います。しかし、あしたもし地震があった場合に、すぐ自衛隊の航空機に飛んできてもらったって、これはその力を発揮することはできない。やはり消防の航空機が責任者になって、自衛隊の航空機とも日ごろの連携、準備、体制を整えておく、そしていざというときに備えなければならない。あすにでもないとは限らない大地震でございますから、先ほどの空中消火、これは将来の問題でございますが、この航空機による避難誘導はやろうと思えばでき得る問題でございますから、そういう点についてもう少し実際的な体制、実際的な訓練を消防庁に望みたいと思います。  そこで、次の問題でございますけれども、大地震の最悪の状態になったという場合に、たとえば東京都内あるいは横浜市内でもって物資を住民に配給すると申しますか、飲料水の配給、食糧の配給あるいは屎尿処理というようなことに必要な人員あるいは物資そのもの、こういうものも、壊滅した東京の都内でこれを賄おうと思っても不可能ではないか、少なくとも二、三日は不可能ではないか。そうなれば、地震の規模、範囲によりますけれども、たとえば栃木県あるいは群馬県、近隣の無傷のところから広域の応援を得なければならないのではないか、こう思いますが、その体制、その計画が具体的にできているかどうか消防庁に伺いたいと思います。
  210. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 緊急の事態におきましては他の府県からの応援を消防庁長官は求めることができるという規定が消防組織法にございますけれども、その規定を発動する前に、大地震が起きた場合に隣県協力し合うというのは当然のことでございます。  そこで、地震時におけるところの応援協定を結ぶということになるわけでございますが、現時点におきましては、都道府県におきましては二十七都道県、それから全国主要都市、これは県庁所在地及び人口二十万以上の都市、百二十三都市のうちで七十六都市において現在応援協定を結んでおります。そのうちで、五十二年の六月に結ばれました関東地区におきましては、関東の十県が非常事態におきます人員及び物資の配置につきまして窓口を決め、要請の方法、費用負担、そういったことについて詳細な取り決めを行っております。こういうことはただ単に二十七都道県のみならず全国に押し及ぼす必要があると私ども思っておりますので、今後とも十分指導してまいりたいと思っております。
  211. 川合武

    川合委員 長官の前段のお答えは、それは消防機関同士の応援協定ではございませんですか。私がお尋ねしているのは、それもさることながら、壊滅した、たとえば東京都ですが、あるいは横浜市でも川崎市でも同様でございましょうが、壊滅した東京都における応急対策を講ずるのに、民生安定のための物資も人員も食糧その他含めまして、応急対策というものの応援計画が果たして具体的にあるのかどうか、こういうことでございます。  それは災害対策基本法によって、私の承知しているところでは、間違っていたら訂正していただきたいが、各省庁間の総合調整といいますか、は、災害対策基本法に関する限りは現在は国土庁がやっていられる。そして都道府県との関係においては自治省がやっていられる、なかんずく消防庁がやっていられる、こういうふうに聞いております。そうですね。そこで、たとえば農林関係の物資、あるいは商工通産関係の物資、こういうものは日ごろにおいては、私どもに言わせればはなはだ残念ながらでございますが非常に縦割り行政が強い。しかし、災害というような応急の非常に極限の場合においては、やはり都道府県の知事が一種の調整権を持っているというふうにこの災害対策基本法の考え方、思想もなっているわけでございますね。  そこで、それを考慮しつつ、各都道府県の間でいまの応援協定、なかんずく首都がやられた場合には無傷のところからとこか——千葉もやられているかもしれないからその場合にはもっと無傷の県から、そういう総合した応援計画、応援体制というものが具体的につくられていなければならないのではないか、こう思うのですが、もしそれが具体的にできておると長官が言うのでございましたら、それはいまでなくて、この場でなくて結構でございますから、どうぞその具体的な計画を見せていただきまして、またそれに応じて後日お尋ねをいたしたいと思います。  これは自治大臣にひとつ申し上げたいのですが、私ども災害対策を考えますときに、なるほど地震の予知も非常に大事なことでございます、あるいは防災に適合するように町づくりをするということも非常に大事でございます。しかしこれはやはり時間がかかると申さざるを得ない。残念ながら技術の世界、研究開発がまだそこまでいってないことでもございます。しかし、一方災害というものはあすにでも、大地震はあすにでもないとは保証できない。     〔毛利委員長代理退席、伊東委員長代理     着席〕 それならば、ただいま私が申し上げましたような問題は、役所あるいは政府がただいまでもやろうと思えばできることであるわけでございますね。そしてまたやらなければならないことであるし、また、もし準備ができてなくてそしてあすにでも災害があったならば、懈怠の罪を問われなければならないことだろうと思います。  さらに言わしていただきますならば、大震災は私ども個人一人一人が防ごうと思っても努力の限界を越えたものでございますから、こういう問題にこそ政治、政府、役所というものが力を尽くさなければならない、こう思うときに、どうも私の推測でございますが、ただいま申しました避難誘導の問題にいたしましても、無傷の県からの広域応援にいたしましても、果たしてあすにでも動くという具体的な計画があるのかどうか、何だかちょっと心細いような感じもいたしますので、早急にその点に取り組んでいただきたいということを自治大臣に要望したいと思いますが、自治大臣、ちょっと一言その考え方を述べていただきたいと思います。
  212. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、地震はあすにでも起きるかもわからないわけでございますから、それに対する体制というものはもう一日も早く整備しなければならぬ、それはまた政治の責任であるという御指摘は全く同感であります。  私どもといたしましては、先ほど消防庁長官からお答えをいたしましたように、毎年熱心に予算の増額等に努めてその体制の強化に努めてまいっているわけでございますが、先ほどのヘリコプターの例一つ見ても、全国というものを考えますると保有台数もまだまだ足りない、そういう点でまだまだわれわれが努力をしなければならぬ余地がいっぱい残っておるわけでございます。しかしながら、事は人命、財産、そういったものに大きく影響を与える災害でございますので、政府機関はもちろん緊密な連絡をとって、少しでもそういった欠陥が埋まるように真剣に努力を積み重ねてまいりたいと考えております。
  213. 川合武

    川合委員 次に国土庁長官に伺いたいと思います。  災害対策基本法の第百九条、「緊急措置」の規定でございます。これはごらんいただいたと思いますが、災害対策基本法の中でも非常に特色のある規定でございまして、簡単に申しますならば、大震災などのような非常事態におきまして国会の機能がとまったときに、物資の配給統制、物価の統制あるいはモラトリアムというものを、法律によらずして緊急政令でなし得るという規定でございます。かつては、旧憲法の時代には緊急勅令がございましたけれども、現在の法体系の中では、この災害対策基本法第百九条を除いてはかような緊急政令というものは認められてないわけでございまして、伝説によると、時の法制局長官の林修三さんがみずから書いたというふうに伝えられておりますが、これは余談でございまして、国会の審議におきましてもわれわれの先輩が非常に論議された、そして、現在の法体系の中では唯一の例外として認められた緊急政令、逆に言いますならば、そういう異例のものを認めたということも、大震災のときにおいてはいまのような物資統制、物価統制、モラトリアムというものを政令で認める必要があるということで、特殊の例外として認められた規定と承知いたしますが、しかし、考えてみますると、国会が機能がとまったとき、大震災のとき、そういうときには、役所においても、とても各省間で協議して、そして緊急政令をつくるというような暇も時間も、そういう場面もむずかしいのじゃないか、こう思うわけでございます。したがって、この非常に異例とも言える百九条があるのでございますから、国土庁が中心になって、いざというときにすぐ政令を出せる、政令の効力を発するのはむろん大災害時の緊急事態というような限定したときでございますけれども、日ごろから準備としての何らかの案があられるのかどうか、それを伺いたいと思います。
  214. 中野四郎

    中野国務大臣 先ほどから伺っておりますると、さすが見識ある御意見が一つ一つ出ております。実は、私もこの災害、地震対策ということにはひときわ関心を深めておる一人であります。それは、身をもって大正十二年の震災を十六歳のときに体験した一人であります。同時に、私らの故郷におきましては十三号台風、伊勢湾台風というような、災害にもかなり深い体験を持っております。  そこで、いま御指摘のような緊急処置は、関東大震災クラスの災害が発生しまして、災害の緊急事態の布告がなされた場合に適用されるものでございますのは御承知のとおりでございます。このため、政府としましては、いま、御心配でありましたようでありまするが、関係十八省庁の連絡会議において、そのような事態が発生した場合の処置について検討を進めてまいっておる次第であります。災害緊急事態発生時の組織や情報伝達等については事務的に案をまとめてまいっております。たまたま東海地域の大地震の発生説もありまして、大規模地震対策特別措置法が制定、施行されておりますので、現在同法に基づく作業を進めておりまして、御指摘のような政令、大綱については、当面は同法に基づく地震防災計画の作成によって対処できると信じております。その後、万一発災した場合に備えて、災害対策基本法に基づく大綱等の検討に入りたいという決意を持っておる次第であります。
  215. 川合武

    川合委員 どうも、もっと大臣に突っ込んでお聞きしたいのですけれども、時間も制限がございますもので、またいずれの機会にさせていただきます。  それでは次に、大臣は長官になられてから余り間がないので、大臣にいろいろ申し上げるのも恐縮な点もございますけれども、しかしこれは大事なお仕事でございますからひとつお答えをいただきたいと思いますが、同じく災害対策基本法の十一条に「非常災害に際し一時的に必要とする緊急措置の大綱」というのを内閣総理大臣は中央防災会議に諮問しなければならないという規定がございます。やはりこれも大震災時を想定したものだと思われますが、いままで諮問されたことがあるのかどうか、またその答申案があるのかどうか、これは内容は結構でございますが、あればまた後日見せていただきたいのですが、あるかないかの、有無をお尋ねいたしたいと思います。  それから、同じく十一条に、中央防災会議は「非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、及びその実務を推進すること。」とありますが、この「非常災害に際し、緊急措置に関する計画」を、現在作成されてその案があるのかないのか、案といいますか、その計画があるのかないか、その有無をお尋ねいたします。
  216. 四柳修

    ○四柳政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣が後段でお答え申し上げましたように、現在そういった災害対策基本法に基づきます大綱、政令案等はございません。その前段措置としまして、大規模地震対策特別措置法に基づきます計画なりそういったものをつくった上で、それは御案内のように警戒宣言が出た場合の、発災前の場合でございますが、発災後の問題としまして、大臣後段で御答弁申し上げましたように、それらの政令案なり計画の大綱等をその後の措置として検討してまいりたいという予定でございます。
  217. 川合武

    川合委員 ただいまの御答弁は私、不満でございます。あるかないかをお聞きしたかったのでございますけれども、不満でございまして、まず第一点は、私をして言わしめるならば、この緊急政令の案というものの、それはなるほど緊急政令のそのものの案と言えば、これは発生した後にでき上がるものでございましょうけれども、私が言いたいのは、急な場合に、大震災の混乱時に役所間で協議してやれるような場面はとてもないのじゃなかろうかとこう思いますので、そのひな形といいますか、案でもつくっておいて、そして、さらに言えば、国民にこれはこういうことになるのだと示しておいても決しておかしくないのじゃないか。その方がこの法の趣旨に合うのじゃなかろうか。発動するのは、なるほどこういう非常な厳格な条件のもとにおいてでなければ緊急政令というものはやたらやるべきものでないことは当然ですが、しかしその姿というものだけは国民に、こうなった場合はこうだということを示しておく方がむしろ親切であり、法の趣旨にも沿うのじゃないか。その具体的な計画というものがあるかないかということをお聞きしたかったのと、後の、非常災害に関するいまの計画とかあるいは非常災害に際しての緊急措置の大綱というようなものは、これは現時点において、いまでもつくっておかなければならないので、いざというときにできるものとは私は思いません。それならば、一体総理大臣は、中央防災会議に非常災害に関する一時的に必要とする緊急措置の大綱を、大震災が起きて混乱して、国会もとまるというようなときにおいて諮問しなければならないのか。私は、そんなことはあり得ないと思う。この後の方の非常災害に関する計画等は、これは現在においてつくられでなければ怠慢じゃないか、私はこういうふうに思います。  最後にお尋ねいたしますけれども、中央防災会議は最近一体いつ開かれて、たとえば昨年は何回開かれたかということをお尋ねいたしたいと思います。
  218. 四柳修

    ○四柳政府委員 前段の御意見の部分に当たりまして恐縮でございますけれども、私どもの方も、御指摘のように緊急の場合に集まり切れないという前提で、やはりそういったものはこの大規模地震法に基づきます措置ができました後に、政令案等の問題につきましても関係省庁で検討してまいりたいと考えておりますが、具体的な各省庁の対応につきましては、現在の各省の業務計画で定めておるとおりで動くと思います。  それから後段の中央防災会議の開催状況でございますけれども、いままでたとえば激甚災害の指定基準でございますとか、防災基本計画でございますとか、そういった基本的な問題を御審議いただきますために七回開いているほかは、毎年毎年のたとえば激甚災害の指定の問題ですとか、あるいは活動火山対策特別措置法に基づきます避難施設緊急整備地域の指定の問題ですとか、そういった問題につきましては持ち回りで現在まで四十三回開いております。
  219. 川合武

    川合委員 去年何回開いているのですか。
  220. 四柳修

    ○四柳政府委員 ちょっと正確な数字をとっていませんけれども、後ほど御連絡いたします。
  221. 中野四郎

    中野国務大臣 就任間がないことではありますけれども、先ほど来先生の御発言の中、特に前段のお話は全く私らも意を同じゅうするものでありますが、でき得るだけ速やかな機会にそのような措置をとりたいという気持ちでおることを私は御理解いただきたいと存じます。
  222. 川合武

    川合委員 ただいまの問題につきましては、もう少し私はお尋ねをしたい点もあって、やや答弁に不満でございますが、後日また機会を得て御質問をいたすことにいたしまして、最後に、大蔵大臣と自治大臣にお伺いいたしたいと思います。  これは災害対策でございませんで、地方財政の問題でございます。  今回、交付税法の改正案が提案されるわけでございますが、その内容は一言で申しますと、無論交付税率の引き上げはございませんですね。それでまた去年と同じあるいは例年のごとく、地方財源の不足分につきましては交付税特別会計が資金運用部資金から借りて、そしてそれを逐年返すときに臨特で補てんする、こういう仕組みで、これは昨年もそうでございましたし、またことしも同じ方式、金額は違いますけれども同じ方式だというふうにお見かけいたします。  そこで私どもは、こういうややっこしい方式と申しますか、こういう方式でなくて、本当は国と地方団体との間の事務配分を責任範囲をはっきりして、財源の裏づけもはっきりする、地方分権の理念に基づいた地方財政対策を行うべきだ。また少なくともそれに一歩でも近づくような方法をとるべきである。ことに大平大臣は地方の時代なんということをおっしゃってもいらっしゃるのでございますから、一歩でも近づく方式をとるべきだと思いますが、それはまあここにさておきまして、時間の関係もございますので、いずれかの議論にして、とりあえずお伺いいたしたいのは、この交付税特会が資金運用部資金から借りて、そして政府がそれを臨特で補てんするという回りくどい方式をとらないで、一般会計がその足りない分を借りて、そして交付税特別会計に臨特でこれを補てんする、臨特で入れる、こういう方式でいいんじゃないか。私は五十二年の十月でございましたが、地方行政委員会でこの問題を尋ねましたときに、当時の自治大臣は、公債の依存度は三〇%、この関門をどうしても守りたいので、そこでこういう方式をとるんだ、ひとつ了承してもらいたいというお話でございましたが、三〇%の関門もついに突破されている現状でございますし、またことしもこういうややっこしい方式をとられるのか。何か私に言わせますと、自治省と大蔵省とが、役所同士がメンツの立て合いでこういうややっこしい方式をとっておって、本当の財源調整でなくて、大蔵省と自治省との間の調整の結果生まれたもののように感じますけれども、大蔵大臣と自治大臣にお答えをいただきたいと思います。
  223. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 御指摘の一般会計から直接出したら回りくどくなくていいじゃないかという問題、これはそのとおりだと思うのですけれども、去年よりは公債依存度はもっと悪化いたしまして、三九%幾らというようなことになりまして、しかもこれ以上の国債の消化にはかげりが生じそうだというような情勢でございますので、ああいう回りくどいやり方をすることにした、その苦心のほどを、あなた専門家ですから、ひとつお察しいただきたいと思います。
  224. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 ただいま大蔵大臣から答弁申し上げたとおりでございます。
  225. 川合武

    川合委員 終わります。
  226. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 これにて川合君、伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  227. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日韓の漁業問題に関する水産庁の次長会談が十五、十六日に行われたと伺っております。この結果、韓国漁船の操業問題について何らか進展があったのかどうか、進展がないとすれば、今後政府間レベルでこれらの問題の解決についてはどのように対処するのか承りたいと思います。
  228. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御指摘のとおり次長の会談をやったわけでございますが、平行線で実は結論が出なかったというのが、遺憾ながらそういう現実でございます。したがいまして、私たちは今回の結果に基づいて、向こうでは帰ってから上に報告するというようなことになっておりまして、まあ長官同士——長官といいますか、向こうの水産庁長官とこちらの長官ですね、それとの会談をやるかどうか、いずれにしてもこれは至急に解決しなければならない問題であるし、最終的には二百海里の設定というものも検討しなければならぬという、そういうような状態に参っております。
  229. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いずれにしましても、聞くところによりますと三月には長官会談が予定をされて、いわゆる政府間レベルで問題を解決するように強力な交渉をするように、この機会にさらに重ねて強く要望いたしておきたいと思います。  同時にまた、サケ・マス漁業の交渉が来月行われるわけですが、特に私はこの機会に、小型サケ・マスの四分の一減船が今日水産庁あるいは北海道庁で合意をされておるわけです。したがって、四分の一の減船は避け得られないのでありますが、これらの乗組員に対しては、二百海里関連の離職者臨時措置法の適用を一体するのかどうか、承っておきたいと思います。
  230. 森整治

    ○森政府委員 当然条件に該当する場合には、離職者の適用を労働省並びに運輸省に対して要請をいたすつもりでございます。
  231. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨今乳製品の過剰問題が言われておるわけですが、この機会に、昭和五十三年度の外国からの乳製品の輸入は生乳換算で一体どの程度になると見込まれておるか、承っておきたいと思います。
  232. 松本作衛

    松本(作)政府委員 輸入乳製品の数量につきましては、生乳換算をいたしまして二百四十九万八千トンに相当いたします。これは五十三年度でございます。
  233. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そのうち特にココア調製品目あるいはまた調製食用油脂、これらは一体どういう国々から現在入ってきておるのか、また、この輸入された製品はもちろんAA品目でありますけれども、一体どういうところに使われておるのか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  234. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ココア調製品等の輸入については、五十三年で見ますと、わが国の輸入数量というのは一万三千三百六十六トンで、主な輸入先はベルギーの六千三百五十五トン、ニュージーランドの六千二百四十三トンであります。主として製菓、製パン等の原料として使用されているというのが実情です。
  235. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま大臣の言われたのは油脂の関係ではないでしょうか。ココア調整品目は別で、加糖が一万一千四百五十七トン、無糖が一万七千十九トンでしょう。  そこで、この中で特に私が注目をするのは、いずれについてもシンガポールからそれぞれ輸入実績があるわけです。シンガポールというのは別に農業国でもないわけです。シンガポールからこれらのものが輸入されておるのは一体どういう理由か、承っておきたいと思うのです。
  236. 杉山克己

    ○杉山政府委員 大変申しわけございませんが、個別に各国からどういう事情でもって日本に輸出が行われているかということは、特別な調査も行っておりませんのでわかりませんが、推定するところでは、自分のところの生産というよりは、貿易商があって三国問貿易、取り次ぎの貿易を行っているのではないかというように考えられます。
  237. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ただいまの質問で明らかになりましたように、二百四十九万トンの乳製品が五十三年度に輸入をされる。五十二年度の実績二百二十四万トンに比べれば実に一〇%に及ぶ伸び率を示す輸入が行われているということが明らかになったと私は思います。  そこで私は、昭和五十三年度の生乳の生産量の見込みは一体どうなのか、同時にまた加工原料乳の生産についてはどういう見込みか、承りたいと思います。
  238. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産量の区分は年度でもって仕切っております。この三月末までの数量はその時点になってみないと確定したことは申し上げられないわけでございますが、現在までのところ、私どもの推定では総量六百万トンをやや超えるのではないかというふうに見込まれております。  それから加工原料乳につきましては、現在までのところ、限度数量として当初見込んだものは百八十三万トンでございます。これを十七万トンから二十万トン近くまでオーバーするような、要するに二百万トンあるいはそれを若干超えるかと思われるような生産見込みの数量になっておるわけでございます。
  239. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 すでに農林省が発表した昭和五十三年暦年の生乳の生産量は六百十二万トンという数字が発表されておるわけです。そして加工原料乳についてはいま述べられた百八十三万トンであります。したがって、私は昨年の伸び率を見ますと、五十二年は五十一年に比べて九%の対前年度比の伸びを示しておるわけです。この動向を見ますと、昨年の審議会において政府が提出をしました今年度六百十二万トン、この生産量は若干過小見積もりではなかったのか。同時にまた、飲料乳の過大見積もりが行われたのではないか。そういう意味で飲料乳の消費が停滞をしている。このように理解することはきわめて当然ではないかと思いますが、いかがですか。
  240. 杉山克己

    ○杉山政府委員 五十一年、五十二年、引き続きまして五十三年、生乳の需給関係はやや供給が需要をオーバーしているという事情が出てまいっております。  毎年、年度の初めに加工原料乳の限度数量を算定するに当たりまして需給見通しを立てるわけでございます。  このようなギャップが生じました理由といたしましては、需要面にももちろん理由はございますが、供給面でも見込みを上回って生産が行われたというような事情があるわけでございます。五十一年度は対前年で比べますと七・二%、五十二年度は八・九%、五十三年度、これは四月から十二月まででございますが、六・三%というように、いずれも前年を大きく上回る生産の伸びが見られているわけでございます。これに対しまして飲用の需要、これは生乳生産の伸びほどには伸びておりませんが、それなりにある程度の伸びは見せております。五十一年度は二・二%、五十二年度は五・三%、五十三年は四月から十二月までで二・五%の増加となっております。これは、全体の供給の見込みを上回るような、特に対前年を大きく上回る伸びが見られたこと、需要面では停滞が、伸びてはおりますものの、生産の伸びに比べれば停滞が見られるというようなことからそういうギャップが生じてきているということが言えると思います。
  241. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 五十二年度は畜産振興事業団の輸入差益額は三百九十二億八千八百万円でありました。五十三年度末にはどの程度の金額になる見込みですか。
  242. 杉山克己

    ○杉山政府委員 これも三月末にならなければ確定の数字は申し上げられないわけでございますが、現在までの状況で私どもが見込んでおりますところ、ほぼ前年度と同額程度、三百九十三、四億円というふうに考えられます。
  243. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 飲料乳の停滞によって、昨今バター、脱脂粉乳の生産ストックが非常にふえておるわけであります。バターにして一万トン、脱脂粉乳にして二万七千トン、昨年在庫から上積みされた量がいま申し上げた数字であります。したがって、畜産振興事業団としては従来の例に従ってこれらは当然買い上げされるものと判断しますが、いかがですか。
  244. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、生乳の生産が需要を大きく上回る、その結果、しわ寄せといたしまして乳製品の生産、これは貯蔵性がありますのでこれが行われる、その乳製品について需要が十分なければこれは在庫となるということで、市中に在庫が累積する、価格も低落するという状態が出てまいるわけでございます。これについて畜産振興事業団において買い入れを行うべきではないか、どう考えているかということでございますが、実はこの問題は、来年の需給全体をどういうふうに見通すかということともかかわってくる問題でございます。つまり、昨年の三月に脱脂粉乳一万四千トンを買い入れたわけでございますが、この処分についての見通しがないままに今日に至っておるわけでございます。ここで引き続いて今年度も相当量の乳製品を買い入れるということになりますと、その将来の処分の見通しはどうなるのか、それからまた、その根っこになりますところの生乳自身の供給なり需要なり、したがって、また乳製品に回ってくる見通しはどうなるのか、そこら辺の全体の見通しを立てて、近く価格決定の時期が参るわけでございますが、これらの問題もあわせまして全体として検討した上でその措置を決定すべきであるというふうに考え、慎重に目下検討しているところでございます。
  245. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、順序よく質問しましたように、今年度の外国からの乳製品の輸入は、昨年の前年度対比五・三%に対して一〇%の伸びを示している。そういう状況の中で国内生産のいわゆる乳製品の過剰生産の動向が出てきた。そしてまた、当初の生産量の見込み、あるいは飲料乳の需要見込みがどうも政府の場合には非常に甘かった、非常に過大な期待がかけられた。そういう集積が今日のこういう結果になったのだと私は思うわけです。そういう認識については、先ほど質問をして答弁を聞いておりますので、私は間違いがないと思うわけです。そうしますと、原料乳の限度数量の問題についても、あるいはまた乳製品の輸入、国内生産の調整についても、これは当然調整ができ得る内容のものである、こう判断することは無理でしょうか。
  246. 杉山克己

    ○杉山政府委員 順序といたしまして生乳の限度数量の方から始まるわけでございますが、これにつきましては百八十三万トンということで算定をいたしたわけでございます。現在はそれを上回るような認定数量、加工原料向けの乳量が出てまいっておるわけでございます。その原因としては、生産が予想より大きかった、あるいは需要が停滞したというようなことがございますが、いずれにいたしましても、限度数量ということでは当初想定した数量を上回るというような事態が出てきている。これを安直に見るかどうかということになりますと、昨年、一昨年と引き続いて限度をオーバーしたものに対する手当てを行ったところでございますが、いたずらに生産刺激的な効果をもたらすようなことは避けるべきである、やはり全体としての需要に見合った生産を検討していくべきではないかという問題があるわけでございます。  乳製品につきましても、いま申し上げました生乳、加工原料乳の需給問題との関連においてこれを検討すべきであると考えるわけでございます。そこら辺を、特に構造的な過剰供給をもたらしかねないような今日の時点におきましては、慎重に見定めた上で私どもは結論を出すべきであるというふうに考えております。
  247. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昭和五十年度の酪農家の負債状況を調べてみますと、全国では五百八十九万円、北海道では一千百六十四万円を超えておるわけです。五十三年度についても、特に大型酪専の北海道地域においては、さらに二百万円程度上積みになるのではないか、こう予想されておるわけです。したがって、農家負債については依然として負債増額の傾向にある、こう判断せざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  248. 杉山克己

    ○杉山政府委員 最近におきましては、農家の経営、畜産酪農関係は、飼料価格が下がっている、それから生産資材価格が安定している、全体としての生産性が上がってきているというようなことから、比較的安定した状況にあるわけでございます。こういう農家の負債はどうかということでございますが、五十三年度は、絶対額としては五十二年度に比べてこれはやはり伸びていると思うわけでございます。ただ、五十二年度までは確定した数字ございませんが、五十三年度は数字としてはまだ統計上まとめられておりません。ただこういうふうに推定としてでもふえるわけでございますが、私ども、負債がふえたことが経営が悪化したというふうには考えておらないわけでございます。やはり全体の規模拡大に伴って投資もふくらんだ、その結果として負債もふえたというような事態になっていると考えております。  それから酪農関係の負債の額は、絶対額としては、ただいま先生も御指摘なさいましたように、これは全国の数字でございますが、五十一年末で五百十万、五十二年末で六百三十一万というようなことで、ほかの養鶏とか養豚あるいは稲作に比べて金額的にはかなり大きな額になっております。従来から、こういった酪農家の負債問題につきましては制度金融上の手当ても行う、あるいは特に経営改善資金というようなことで、畜産振興事業団の助成事業による利子補給を行うというようなことによってその負担の軽減を図ってまいっているところでございます。
  249. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ここで農林大臣にお伺いいたしたいと思いますけれども、いま私が質問いたしましたように、今日の乳製品過剰というのは決して構造的なものではない。要は輸入、国内生産のバランスをよく考えて無理のない方向で調整をするならば、これは調整でき得る内容であるということが明らかになったと私は思うわけです。したがって、将来を展望する場合にどうかということは、さらに具体的に見直しをしなければならぬことは当然だと思います。現時点では調整が十分可能な内容になっているというのが私の認識であります。  そういう意味で、今後の酪農政策について、これを踏んまえて、あるいはまた昨年乳価が据え置きされて農民としては生産を上げることによってコストをカバーする、こういう意欲も飼料の安定とともに強く出てきたものと私は思うわけです。そういう意味で、この問題に関する大臣の見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  250. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは非常に大きな問題なんです。御承知のとおり、ココア調製品等の物資は自由化物資になっておりますから、こういう国際環境の中でそれを制限するということは言うべくしてなかなかむずかしい。一方、酪農の生産は上がっておる、消費はそのわりあいに、伸びてはおりますが、それ以上に生産が伸びておる。この状態で、余ったものを全部無制限で限度数量をふやすということになれば、これは米の二の舞になりかねないという危険性があるわけです。あなたのおっしゃるように、乳価を上げないからよけい生産をして所得をかせぐのだ、じゃ、上げたらば生産はしないかという考えの問題が出てくるわけです。私は、やはり生産刺激的な乳価にすればよけいもっとふえるのじゃないかという見方の方が、どちらかというと可能性が大きいのじゃないかという気がします。しかし、乳価の決め方については、これは一定のルールがありますから、そのルールの中でやることであります。ただ、これからの酪農政策の問題については、ただふやしさえすればいいというわけになかなかいかぬだろう。  それから、負債がふえたとおっしゃいますが、経営が困難のために負債がふえたとは限らないのであって、負債に見合う資産がもっとそれ以上ふえておれば、それは純資産がふえたことになるわけですから、そのこと自体は、私は、負債がふえたから必ずしも非常に欠損になっているのだということは言えないだろう。いろいろな点を皆考えながら、総合的にいまのうちに適切な方法を全体としてとっていくことが長生きする酪農に、私は将来とも長く発展する酪農になる、かように考えております。
  251. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから、具体的な議論はできませんけれども、要は、今年度一〇%の輸入が伸びた。これを二百四十万トンを超える輸入量の一〇%をもし輸入を抑えるとすれば、国内の生産と需要のバランスはとれるわけです。そういう意味では構造的な段階には入っていない。ただ、もちろん現在の伸び率ですね、一〇%ずつ伸びていけば構造的な問題も将来出てくるでしょう、立て方がそうなっておりますから。そういう意味で、三月末には審議会に大臣は諮問されるわけですが、その点を十分に踏んまえて、科学的な基礎に立って審議会に大臣として諮問されることを強くこの機会に要望して、終わりたいと思います。どうぞ、いいです。  次に、私は独禁法及び公正取引について伺っておきたいと思います。  すでに不況カルテルの問題については六つの業種に限られて、これは二月末、三月末そして四月末、いずれも期限が来るわけであります。私は、今日景気の動向、そしてまた減量経営が進められて、企業は採算ラインに到達をしたか、もしくは近づいているという状況であろうかと思います。同時にまた、構造不況業種の指定を受けている。安定基本計画がいま着々と組まれて、いわば設備的には長期のカルテルが保障されておる。設備が保障されれば生産カルテルにもつながっていくし、価格の安定にもつながるというのがきわめて常識的だろう、こう思うわけです。そういう判断から考えて、あるいはまた今日、産業の景気だけに気をとられるのではなくして、物価の情勢に十分配慮をするという観点から立つ場合には、いずれもこれらの内容を検討すると、ほぼ全面的に不況カルテルはそれぞれの期限をもって終了すべきものではないか、こう思うのでありますけれども、この機会に公取委員長の見解を承っておきたいと思います。
  252. 橋口收

    ○橋口政府委員 現在進行中のカルテルは、御指摘がございましたように六品目でございまして、昭和四十九年から始まりました不況の最盛期には九品目ございましたのが、現在六品目に縮小いたしてきております。そのうち二月に参ります段ボール関係の二品目は、きょうは二月の二十日でございますから、いまだに申請がございませんから、恐らくはカルテルの延長はなく、そのまま打ち切りになるのではないかというふうに考えております。  三月に参りますのが染料、合成繊維、アルミニウム地金でございまして、このうち合成繊維の中でも市況の回復のかなり著しいものもございますし、まだ市況の低迷している品目もございます。それから染料につきましても、市況がよくなっているものもございますし、まだ依然としてよくないものもございます。それからアルミニウム地金は、これは先行きが明るいと言われておりますが、まだ現在時点では採算ラインまでには到達していないというふうに理解されるわけでございます。  いまお話がございましたように、全体的に市況の回復も続いておりますし、マクロ経済としての先行きにも明るさが出てまいってきておりますし、相当長い期間カルテルが継続いたしておりますから、われわれとしてもできればやめたいなという感じを持っておるわけでございますし、その中に、たとえば合成繊維のように安定基本計画もできておるものもございますし、また、アルミニウム地金等につきましても、将来そういう計画ができるのじゃないかというふうに考えておりますが、そういう長期構造的な設備の凍結なりあるいは廃棄ということが現実の問題になりますと、おっしゃいますように、生産制限カルテルを解除してもいいような事態というものが招来されるのではないか、こういう期待を持っておるところでございます。  ただ、それではその三月末、四月末に全部やめてしまうということをいま明言できるかということになりますと、先ほど申し上げましたように、個々の商品ごとに見ますと、まだ採算ラインに乗っていないものもあるようでございますし、ただ、今後の市況の動きにも注意する必要がございますから、いま途中ではございますが、企業の収支の状態、市況の状態につきまして掘り下げた調査をいたしておるところでございまして、希望としては再延長はなしにしたいというふうに思っておりますが、しかし、法律上の要件に該当いたしております場合には、これを認可しないという理由もないと思いますので、その辺はよく検討いたしたいというふうに思います。
  253. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 独禁法第二十四条の二の項の問題で、法律上再販が認められておるのは、先般商工委員会で問題になりました著作物等の関係であります。ただ、昭和四十二年十二月二十八日の公取委の告示第九十一号でずっと縮小されて、化粧品が二十四品目、医薬品が二十六品目は、いずれもまだ指定をされておるわけです。当初おとり販売等その他の理由でこれが再販に指定をされておるわけでありますけれども、時間的な経緯と今日の実態的な消費動向といいますか、流通動向から考えて、これはもう当然見直しをされる段階に来ておるのではないか。言うなれば指定解除の方向で総見直しをすべきだというのが私の意見であります。特に消費生活協同組合やそれぞれの協同組合の関係は適用除外になっておるわけですし、あるいはまた五%ないし一〇%の上下のアローアンスを設けておるという側面から考えても、再販品目としては大体指定する要件というものはごく薄れてきている、こう私は認識せざるを得ないと思うのですが、公取委員長の見解を承りたいと思います。
  254. 橋口收

    ○橋口政府委員 再販指定商品は、いま御指摘がございましたような品目の数になっておりまして、適用しております業者の数、それから適用金額も年々歳々減ってきておるわけでございまして、いま御指摘がございましたような面も生じておると思います。ことに医薬品等につきましては、実際に値崩れが生じておるようでございますし、また、再販価格を維持するためにはメーカーとして相当な費用が要るわけでございますから、そういう点等を考えますと、実際上医薬品につきましてはすでに再販制度が一部崩れているというふうに評価をしてもよろしいと思うわけでございます。  問題は化粧品でございまして、これは御承知のように千円以下の低い価格のものについてだけ再販価格という制度が認められておるわけでございまして、それを超えるものは自由ということになっております。したがいまして、千円というのが決められましたのは昭和四十九年でございますから、その後の物価の上昇ということを考えますと、この千円の基準というものは必ずしも甘いとは言えないと思うわけでありまして、ある意味ではかなりきつくなってきているというふうにも考えられますので、現状におきましてこの千円の基準をさらに低めるとか、あるいはおっしゃいますように、この際再販指定ということを一切やめてしまうという考え方は、いまのところ持っておりません。ただ、こういう制度が残っておりますと、いろいろ弊害が生ずる場合も考えられますので、この弊害の監視につきましては、従来以上に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  255. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 独禁法二十四条の二の四項では、著作物等の再販の問題について規定されておるわけです。これが今日議論されるという段階に入っておりますので、そういう意味ではやはりこの内容は徹底的に洗い直して、そして減らせるものはできるだけ減らすという方向で鋭意検討すべきだということを申し上げておきたいと思います。  同時に、公正取引委員会は、昭和四十七年以来、独禁法懇談会において大企業集団についての問題を実態について取り上げて、相当その後調査が進んでおると思うわけです。もう七年程度経過しておりますし、そういう意味で、それぞれ大企業のグループのいわば持ち株の状況あるいはまたその実態、あるいはまた構成されている社長会の権限、あるいはまたグループの社長会を中心とするいわば株の持ち合い、こういうことは非常に独禁法の政策上大きな焦点になってきた、私はこう思うわけです。相当な年数もたっておりますので、この成果についてこの機会に御報告を願いたいと思います。
  256. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和四十七年以来四回調査をいたしておるわけでございますけれども、調査の重点は総合商社に関連する調査でございまして、いわゆる企業集団を真正面から取り上げた調査というのは、実は現在やっておる最中のものが初めてでございます。したがいまして、内容的に社長会の権限であるとかあるいは株の持ち合いであるとか、従来調査したものはございますが、今回、包括的に、また徹底的な調査をしたいということで、現在、実態の調査をしているところでございまして、それはいわゆる六大企業集団でございます。  調査の内容といたしましては、実態を把握したいということが中心でございまして、一つは日本経済に占める比重の問題、それから集団の結合度合いといった構造的な側面についての調査というものに重点を置いているわけでございまして、本来であれば、構造面の調査に加えて行動面あるいは市場制覇についての調査も必要になると思いますが、とりあえずは構造面の調査というものを中心にしたい。  こういう調査を本格的に取り上げました問題意識としましては、やはり企業集団による包括的な権力の集中によりまして、自由経済に対してどういう影響があるかというのが第一点でございますし、それから第二点としましては、企業集団の中の意思決定というものが集団の中の協調的な行為を生んで、新しい事業分野への進出を阻害するとか、そういう集団の中に問題があるのではないかというような問題意識を持っておるわけでございまして、これは調査をした上でありませんと断定的なことは申し上げにくいと思いますけれども、そういう意識を持っていま本格的な実態の調査に取り組んでいる最中でございます。
  257. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 同じく、昭和四十七年から公取の懇談会においては、自動車メーカーの系列販売についていろいろ取り上げて調査がされております。そして、昨年以来問題になりましたのは、白地手形の押し込み販売の問題、毎月販売台数の強制割り当て、そして売り上げの規模によるリベートの還元、これらの問題がクローズアップされてまいりましたことは御承知のとおりであります。すでに基礎的な自動車メーカーの系列販売組織についての調査は公取委としては時間をかけて行っているわけですから、これらの問題については早急に結果が出るものと期待をしておるわけです。今日まだこの結果は公表されておりませんけれども、いかがなものでしょうか。
  258. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和四十二年から七年にかけて調査をいたしたのが第一回でございますが、その調査の過程で明らかにされた問題点といたしましては、一つは専売店制の問題でございますし、二つはテリトリー制の問題、三番目からは先生がおっしゃいました押し込み販売、それからリベート政策、白地手形というような五つの項目でございます。  実は、昨年からさらに第二回の調査をいたしておりますのは、主としてメーカーとディーラーとの関係でございまして、ディーラーのサイド千四百五十社に対しましてアンケート調査票を配りまして回収をいたしたのでございますが、回収率も大変良好で、約九〇%の回収がございました。いまその内容につきまして、最終的な分析の作業を進めておるわけでございますが、さらに並行いたしまして、主なディーラー及びメーカーから事情の聴取をしておるところでございます。  したがいまして、今後の段取りといたしましては、アンケート調査の取りまとめとその公表、それに並行いたしまして、ディーラー及びメーカーからヒヤリングを行いまして、独占禁止法上の問題点及び必要な改善措置があれば、できるだけ早い時期に結論を出していきたいというふうに考えておるところでございます。
  259. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 広告業界の実態の問題でありますけれども、これは昨年十月ですか、調査に入ったと聞いておりますが、広告業界では電通の取り扱い高が二五・三%、一社で四分の一を超えているわけです。いわば一位があって、二位、三位がない。大手としては博報堂、あとは中小、こういう状況であります。かつて野田醤油の場合には一二・数%の占有率、東京で三十何%ですか、そういう事件もあったわけですが、広告業界としては非常に異常な構造になっているわけです。この点について、公取としても当然関心を持っておられると思うのですが、この広告業界の寡占体制についてどのように見られておるか、できれば見解を聞いておきたいと思います。
  260. 橋口收

    ○橋口政府委員 市場構造の問題につきましては、製造業についてはかなり調査もいたしておりますが、製造業以外の分野につきましての市場構造面からの調査というのは、実はいままで余りやっておらないわけでございます。  産業構造の変化ということを考えますと、製造業と非製造業とは同じ重さを持ったものとして独禁政策の対象にする必要がある、こういう基本的な認識に立ちまして流通問題等を取り上げておるわけでございますが、さらにその中でも、広告業は一兆六千億を超える巨大な市場でもございますし、その中における構造的な要因につきましての調査も必要だ、こういう考え方のもとに現在調査をいたしておるところでございます。  広告産業につきましては、なかなか的確な資料が得にくいのでございまして、いま先生がおっしゃいました約四分の一のシェアを占めているというのも、実は民間の調査に基づくものでございまして、それも全体としての広告業の中に占める一社の割合でございまして、広告といいましてもいろいろな、テレビ、ラジオ等もございますから、どういう事業分野でこれを判定するかという問題もございます。したがいまして、まず、構造面の調査と広告取引の実態についての調査もいたしておるわけでございます。どういう形態で取引が行われておるか。調査といたしましては、現在新聞、テレビの二大媒体を中心として調査を実施いたしておるわけでございまして、調査は順調に進んでおりまして、取りまとめも大体五、六月ごろにはできるのではないか。したがいまして、繰り返して申しますと、構造面の調査と取引の実態の調査ということをあわせて並行してやっておるわけでございます。
  261. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 著作物の関係は、特に取次店の内容を見ますと、これは日販、東販、そして持ち株の上位十社を見ますと、五社がダブっておるわけですね。いずれもトップは講談社あるいは小学館。そして、五社がダブっておるのが二つの組織で、しかも七三%の本の取り次ぎをしているという実態でありまして、これはやはり取次店が非常に問題だと私は思うのです。この果たしている機能というものを考えますと非常に問題があると思うわけです。この点は、せっかく公取委でいま調査を進められておるわけですから、そういう点で十分御検討のほどをこの機会に願っておきたいと思います。  同時に、拘束預金についてはずいぶん改善の傾向がある、こう言いますけれども、一昨年、昨年の傾向を見ますと、もちろん改善の傾向はあると思います。ただ、その中でも零細企業における改善という問題についてはまだ不十分だと私は思うのですが、この点は大蔵大臣、いかがでしょうか。
  262. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 零細中小企業のにらみ預金と申しますか、拘束性預金につきましては、従来から大蔵省としましても格段の努力を重ねてきておりますので、少しずつ減ってきておるのではなかろうか。拘束性預金の比率全体を調査しましたもの、五十三年五月の数字がございますが、中小企業につきましては、五十二年の五月が六・五%でありましたものが、五十三年の五月には五・五%というような数字が出ております。しかし、この行き過ぎなものにつきましては、私どもは今後も手を緩めずに、これを解消するように努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  263. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんので……。公取の関係では、経済の運営というものが漸次物価抑制型の方向、これのウエートが高まってきておるわけですから、そういう意味でせっかくの今後の御努力をお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。大変どうもありがとうございました。  次に、私は国内航空運賃の問題について伺っておきたいと思うわけです。  国内航空運賃の側面を支える利用率でありますけれども、旅客数は大体どういう推移をたどって、今後どういう見通しに立っておるのか、承っておきたいと思います。
  264. 森山欽司

    森山国務大臣 航空輸送が各種の交通機関の中で時間短縮効果が最も大きいことは御承知のとおりでありますし、わが国の経済社会の発展に伴いまして、中長距離の旅客輸送では航空機の伸び率は最も一高い。いま五十三年度の後半でありますが、五十二年度の実績は三千三百万人、伸び率は前年度に比べて二八%。五十三年度の前半——いま後半でございますが、伸び率は前年ほどにはまいりません。一一%、一千八百五十万人。今後予想される経済成長では従来のような、ただいま申し上げましたような一六%とか一一%とかいうような急激な増加は見込めないのでありますが、現行の空港整備計画でおおむね想定しております昭和六十年度六千五百万人、大体その程度になってくるのではないかということであります。
  265. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、国内航空運賃の立て方についていろいろ勉強してみたわけです。もちろん原価主義、しかも路線別原価主義、総合原価主義、これを基本にして、需要の価格の弾力性、それから通行税の財源賦課措置等によって算出をされる。もちろん路線拡大時の歴史的な事由や、航空会社における路線網の相違とか営業政策の相違、あるいは合算運賃等、いろいろの問題があることも私は承知をいたしておるわけです。だが、しかし、今日の時点で考えますと、これからさらに大衆的な大量運搬手段としてのこの国内三社の体系についてそれぞれ比較検討すると、ずいぶん問題があるのではないか、また運賃そのものについても、われわれ利用者側にとっては疑問を差しはさむ余地がずいぶんある、こう思うのであります。そういう意味では、運輸省としてはこれらについて矛盾を感じていないのか、あるいは今日の三社体制や今後の航空行政というものについても検討しなければならぬ時期に来ていると考えつかれているのか、そういう点についていかがでしょうか。
  266. 森山欽司

    森山国務大臣 国内航空の運営体制につきましては、昭和四十五年に閣議決定で決められました「航空企業の運営体制について」という文書がございます。それによれば、「航空の大量高速輸送の進展に即応しつつ、利用者の利便の増進と安全性の確保を期する観点から、航空企業の運営体制」を定める。それで、国内航空におきましては、第一に「航空企業内容の充実強化を図り、航空の安全性の基礎のうえに、航空機のジェット化・大型化を推進する。」次に「航空輸送需要の多いローカル路線については、原則として、同一路線を二社で運営し、輸送サービスの向上を図る。」という基本方針でやってまいっておりまして、この基本方針はおおむね破綻なく参っておるのではないかと思います。  運賃の賃率についていろいろ御意見があろうと思いますが、ただいま申しましたような基本的な考え方のもとに、いま運輸省事務当局が見ておる見方をちょっと報告いたさせます。
  267. 松本操

    松本(操)政府委員 やや具体的な問題でございますので、私からお答え申し上げます。  基本的な線はいま大臣がお答え申したとおりでございますが、具体的に航空運賃を決めます場合に、賃率というものを先に決めまして、それに免許距離を掛けるという鉄道等のやり方とやや異なりまして、航空運賃の場合には、先生もおっしゃいましたけれども、路線別の採算性、原価と利潤の関係、それから企業全体の採算性の問題、それから非常に問題がございますのは、企業により、路線によりまして使用機材が大変に異なっております。それで、機材の採算性と申しますか、たとえばYS11の場合には非常に採算性が悪い、こういうふうな問題もございます。それから需要の発生の度合いが、需要の発生が非常に高い場合と、これから新たに路線を開発して、むしろこれから需要を開拓していこうというふうな場合とがございます。それからさらに、機材の進展によりまして、従来は中間地点にとまって飛んでおりましたものを、路線としてはそのまま残るのでございますけれども、中間の地点にとまらずに飛んでいくというふうな運営の仕方に変わった場合もございます。そういうふうな意味から、合算運賃というのがわりあいに多用されているという面がございます。そういう点を踏まえまして、いろいろと距離別に運賃をはじきまして、その妥当性というものを見まして、大体において遠距離が逓減になるというふうなとり方はしておりますけれども、個個の運賃について見てまいりました場合に、冒頭申し上げましたように、賃率というものを先にはじいて勘定をするというやり方を従来はとってきておりませんものですから、したがって、現在現存します運賃を逆に営業キロで割ってみますと、路線によっては多少のでこぼこが出ているというふうなことは否めないかと思います。  そういう点につきましては、今後の問題でございますけれども、需要も大分安定をしてまいりましたし、空港事情も安定をしつつございますので、そういう点を踏まえて、全体の航空運賃体系をどうするか、これは非常に大きな問題でもございますので、いま私どもとして勉強を始めたというふうな段階でございます。
  268. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 東京を起点にして、キロ当たり、三社の中でどこの路線が一番運賃が安くて、どこの路線が一番運賃が高いですか。
  269. 松本操

    松本(操)政府委員 距離別によって大変に違ってまいりますので、むずかしいのでございますけれども、類似路線として大体千キロ前後というところで拾ってみますと、東京——帯広の場合に、これはジェット化しているのと、していないのとございますので、いずれもジェット料を外したもので見ますと、東京——帯広が二万三千四百円、東京——旭川が同じく二万三千四百円、東京——札幌が一万八千二百円でございます。
  270. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 質問に答えてもらいたいと思うのです。私言ってあるのですよ。一番安いのは東京から名古屋ですよ。十三円四十五銭ですね。これはB2が飛んでいます。高いのは花巻で、これはキロ当たり二十四円一銭、十円近く差があるわけですよ。十円差があったら五百キロで五千円違うわけですよ。ですからいまの答弁というのは、やはり歴史性とかいろいろあって、また機種も変わってきているわけですから、もう根本的に再検討をしなければならぬ。  私は、これは全部資料を持っているわけですが、私なりに計算してみました。たとえば東京から高松へ飛ぶのと徳島へ飛ぶ場合は、一万四千百円で同額であります。距離から言えば、高松までが六百三十五キロ、徳島までは五百五十八キロですから、高松は二十二円二十銭になって、徳島は二十五円二十七銭。ただし、徳島は国内航空であり、高松は全日空なわけですよ。そうしますと、航空三社があっても運賃の競争というのはないわけですよ。そして、たとえば札幌から東京とか、東京から福岡、ここには日航と全日空が便数多く飛んでおるわけです。そこに国内航空が一便飛ぶわけですが、これは赤字なんですよ。ですから、こういうものが赤字であって、結局地方の路線で運賃を高くしてカバーをする、こういう内容になっているわけですね。たとえば国内航空で言えば、札幌——東京間は赤字ですよね。あるいは全日空がすべている中で一便ですか飛んでいる函館——東京間も赤字であります。それからまた北海道内で見てもそうですし、いろいろ分析、検討してみますと、ずいぶんばらつきがあるわけです。たとえばジェット機を使っておる。私はジェット料金を除いて計算をしておるのですけれども、東京から釧路や旭川や帯広へ飛ぶ場合でも相当の差が出てきている。むしろYSが飛んで、途中におりて飛んだという経過があったものだから、ジェット化されても依然として運賃が高い。あるいはまた札幌から女満別へ同じくYSが五便飛んでいる、釧路にも五便ジェット機が飛んでいる。釧路——東京間はさらに五便あるわけですね。そうするとここはコスト的に安いはずなんです。ところが運賃の面で見れば、女満別は二十三円十二銭で釧路は二十五円七十七銭だ、こういう数字も出るわけですよ。  ですから、いままでの経過もあるが、三千万以上の人間が利用する段階、さらに伸びていくという段階、二五%の燃料の税金を取って空港をさらに整備をしていく、こういう今日的段階では相当見直しをしなければならない。要するに三社競合をやらせて、そこで赤字を出させてほかでカバーするなんというやり方は問題があると思うのですよ。そういう意味では現時点で運輸省として、この中身についてはじっくり十分検討して、国民の期待に沿うように改革すべきだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  271. 森山欽司

    森山国務大臣 大変参考になるお話、また数字を伺いました。よく検討をいたしまして、やはり利用者の立場というものを最も第一に考えて運賃は決めていかなければならぬと思います。国内航空運営の基本体制は、四十五年以来むしろ大型化、ジェット化、ダブルトラッキング等でおおよそ軌道に乗ってきたのでありますが、その過程において、運賃等についてはなお検討すべき点があろうかと思います。本日の御質疑の御趣旨を体しまして鋭意勉強してまいりたい、こう思っております。
  272. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日本航空は大蔵大臣が四四・一%の株を持っている。全日空の場合は名鉄、そして東急ですね。これが上位三社である。東亜国内航空の場合は東急、東亜、そして日本航空が第三位である。日本航空が国内航空の株を持っているわけですね。ですから、そういう意味でこの三社の路線というもの、全日空が四便あるところに国内航空を一便飛ばしている。一便だから赤字になるのですよ。今度は国内航空が三便飛んでいるところに全日空を一便入れる。そのために人も必要なわけですから、これは採算上悪いということはあたりまえなんですね。  ですからそういう意味で、せっかくいま大臣の答弁もありましたから、時間もございませんので、ひとつ十分詰めて、現代の情勢に対応できる、国民の期待にこたえる国内航空体制をぜひ築いてほしいということを申し上げておきたいと思います。  次に、医療の問題について若干お聞きいたしたいと思うのです。  文部省は閣議決定に基づいて無医大県の解消計画を進めておられるわけですが、この計画の目的は何でしょうか。
  273. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 四十八年度以来、無医大県解消を進めてまいりまして、十五校ふえまして、本年沖繩につくりましたので十六校になったわけでございます。これで無医大県は全部解消いたしました。そして、十万人に対して百五十人の目標は六十年を待たないで実現できると確信いたしております。
  274. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は目的を聞いたわけです。もちろん医科大学ですから医師の養成ということは第一に挙げられると思うのですね。しかし、無医大県の解消というものはそれ以外の要素があったと思うのですが、それは何でしょうか。
  275. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 無医大県の解消については、お話しのとおり各県いろいろ事情がございますけれども、ともかく無医大県を解消するというのが文部省としては当面の最大の方針でございます。
  276. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 大臣の答弁を補足してお答えを申し上げます。  無医大県の解消によって、必要な医師数の確保を図るということのほかに、医師の地域的な偏在の問題の是正を図る、あるいは国立医科大学の付属病院がその地域の医療センターとしての役割りを果たす、そういったことを考えたものでございます。
  277. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま四十七都道府県のうち、人口百十万人以下の県は幾つぐらいありますか、御存じですか。
  278. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 手元の資料によりますと、福井県、山梨県、鳥取県、島根県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県、それらであろうと思います。
  279. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 人口百十万人以下の県は十五県あるわけですよ。ですから、この点いま名前を挙げられましたけれども、もちろんそれも入っておりますが、十五の県が人口百十万人以下です。沖繩は大体百万の人口であります。  北海道はちょっと普通の県と違いまして、面積的に言うと東北六県プラス新潟、南で言うと九州、四国、山口県プラス広島県というのが北海道の面積であります。そのうち東北海道というのは北海道の約四割の面積があるわけであります。人口は約百十万人おるわけであります。大体面積を申し上げますと、関東七県よりもちょっと大きいのです。  そういう点で、ここの医療水準をずっと検討してまいりますと非常に低いわけです。沖繩が、全国で県別には医師の不足で最低の医療水準にあるわけですが、その沖繩県よりも、たとえばいま北方領土問題で問題になっている根室支庁管内はさらに低いわけです。全国最低のレベルにあるわけです。そういう点で、人口的に見ても地域的に見ても、もちろん医師の養成ということがありますけれども、地域の医療水準を向上させて医療センターとしての役割りを果たしていく、こういう面から考えますと、たとえば行政監察局でも北海道には四つあって、今度統合で一つにして、あとは支局にしたわけです。大体四つか五つのそういう組織が北海道にはあるわけです。ですから、私はそういう意味考えますと、ちょうど沖繩がまだ北海道にあるということなんです。沖繩がまさしく東北海道にそのまま残っている、こういう意味であります。  そういたしますと、無医大県の解消計画は、琉球大学医学部の設置で十六校目で、一応は無医大県はなくなるのでありますけれども、しかしそういう角度から見れば、無医大県というのはまだ北海道に沖繩県が存在している、こういう理解をすることは無理でしょうか、伺っておきたいと思うのです。
  280. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 お話しのように、いま地域的にアンバランスがあることはよく存じ上げていますが、北海道については、札幌に北大とそれから札幌医科大学があるわけですね。それから今回御承知のとおり旭川医科大学をつくって三校になったわけですから、まだ旭川からは卒業生もたくさん出ておりませんが、私は、旭川から卒業生が出てくるようになりますれば、いままでの事情は相当変わってくるのではなかろうかと期待いたしております。
  281. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大臣は、私がいまるる申し上げましたように、実情については理解ができたと思うのです。そういう意味では拙速的にどうのという結論はなかなかむずかしいでしょうけれども、これらの実情については慎重に今後検討していってもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  282. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 ともかくまだ沖繩の問題が八年かかりますので、全体の計画が済んだ後で慎重にさらに検討させていただきます。
  283. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 東北海道というのは四つの支庁がありまして、全国の医師一人当たりの人口は、ちょっと古い統計ですけれども、八百四十五人、北海道は九百二十七人、根室が一番高くて二千二百四十六人なんです。網走は千六百四十一人、十勝は千五百四十二人、釧路は千三百七十一人、平均しても千七百二十人、倍以上ですね。こういう実情にあることを特に御認識願っておきたいと思うのです。  そこで、こういう状況の中で、僻地診療という問題が第一次計画から第四次計画と進められて、第四次計画がいま終わるわけであります。来年度から第五次計画がスタートをするということになっておるわけです。だがしかし、第四次の計画を見れば、僻地の中核病院全国七十七カ所、僻地の診療所、いわばこれを中軸とする、四十三億五千八百七万円の予算のうち、ここに集中的に予算が投下されておるわけです。だがしかし、いま申し上げましたような実態にある。こういう面から考えますと、僻地の医療対策というのは、従来の手法では解決ができないのであって、もう少し新たな次元で第五次計画を立てなければならないのではないか。マクロ的に考えるのではなくして、ミクロも大事にしてやっていかなければならぬじゃないか、こう私は思うわけであります。  そういう意味で、この際厚生大臣に、前に無医大県の解消のときにも、自民党の中で専門家としてこれらの問題に当たってまいられましたし、前段質問したことを含めて、厚生大臣の見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  284. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに旭川医科大学を創設する時点におきまして、将来において道東に医学部を、あるいは医科大学をもう一校設置すべきかどうかという議論が当時あったこと、私もよく存じております。  そこで、いま御指摘になりました僻地医療対策の第四次計画の最終年度に当たって、今後どういうふうに考えていくかということにつきまして、この医科大学の整備が進んでいきますにつれて、文部大臣が言われますように、ある程度改善がされていくことが私ども期待できると考えております。     〔伊東委員長代理退席、毛利委員長代理     着席〕  ただ遺憾ながら、今日の時点において、半径四キロ、人口が五十人以上、歩いて一時間半以上その診療機関にかかるという、いわゆる無医地区というものがまだ全国に千八百カ所前後残っておりまして、これがなかなか解消し切れない責任を私どもは痛感をいたしております。それだけに今後、今度は第五次の僻地医療対策をスタートさせるについて、従来から進めてまいりました僻地中核病院の数をふやしていく、また内容の充実強化を図っていくということは当然でありますけれども、私どもとしては、今後なお計画を煮詰めていく過程において、僻地医療情報システムの活用でありますとか、あるいは町村会等が行っております僻地医師確保対策等について、国としてどうしたら協力ができるか、そうした面も含めてある程度幅広に今後の対策を考えてまいりたいと考えております。
  285. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年、私は岡山県の柵原鉱山の合理化問題で行ってまいったのですが、ここはかつて天皇陛下も参ったのですね。食糧増産のための東洋一の大変な鉱山であったわけです、硫化鉱の山でありますけれども。二千八百人当時おったのが、いま九十人になったわけです。炭鉱病院というのがありまして、この地域のいわゆる医療機関としては炭鉱病院が果たしておった一二千八百人が九十人になって、なおかつ維持することは困難なわけですね。県、国として、こういう点については、せっかくあるものをなくするということになると、また無医地区がふえていくわけですね。同じ岡山県で、お隣りの選挙区でありますから厚生大臣はこれはよく理解されておられると思うわけです。こういうような点について、厚生省として何か特に御意見があったら、この機会に承っておきたいと思います。
  286. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 陛下がおいでになりましたばかりでなく、川俣委員が長いこと奉職しておられた工場であることもよく存じておりまして、むしろ今後県当局を通じながら考えてまいりたいと考えておる課題の一つであります。
  287. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第四次僻地医療対策の目玉商品である僻地中核病院ですね。これは先ほど私が申し上げました北海道だけを見ますと、東北海道には紋別市——紋別市といったらまさしく上の方ですね。いまオホーツク海の流氷が来ているところであります。そこに一つあるのです。あとは先ほど言った医療事情の中でも、中核病院というのは一つもないわけです。まことに不思議なわけですね。もちろんこの事業実施は都道府県でありますから、当然道がやらなければならないわけです。しかし、予算は、そういう全体的な、全国約二千以上あった地域に対して、十分にらみ合わして、政策的に中核病院をつくらしていくというのが国の政策なんですね。ところがこの地域は放置されて、まことに現代の世の中の七不思議の一つではないかと思ったわけですよ。こういう指導についてはどうされておるのか、まことに不可解なんでありますけれども、この機会に厚生省の見解を承っておきたいと思います。
  288. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 僻地医療の拠点でありますこの僻地中核病院、当面の緊急性の高い地域を中心にして整備を進めてきておるわけでありますけれども、各県において、できるだけその地域の実情を勘案して設置要請を出してもらいたいというのが、率直に申して私どもの希望でございます。本来的にその過疎性、医療需要、僻地性、医療供給力、こうした要素を勘案して、緊急度の高いところから国としては設置をしてまいりたい。そういうところでありますが、都道府県の事情等によりまして、医師の確保でありますとか病院の立地条件といったようなさまざまな要素のために、進捗状況がなかなか一律でありません。  ただ、とにかく現在までに六十一カ所を指定してまいりまして、五十四年度七十七カ所の計画ということになっておるわけでありますが、北海道の場合も、実はその六十一の病院の整備の中で、北海道庁の方から御要請がありましたもの七カ所をすでに指定をいたしております。これはもう場所等も先刻御承知のとおりでありまして、私ども決して道東を忘れておるわけではございません。道庁の方から緊急度をつけてこられた順に、国としてのお手伝いをしておるという状況も御理解をいただきたいと思います。
  289. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大蔵大臣、僻地の三種の神器というのがあるわけです。何かというと、一つは道路ですね。それから電気、医療、これを称して僻地の三種の神器というわけです。道路は大体いいですね。ずいぶん整備をされてきました。電気もようやく、無電灯の部落なんというのは本当になくなりましたね。残ったのは結局僻地医療なんですよ。そして、医師というのはまた生涯教育の必要な職業でございまして、ですから、僻地にずっと生涯張りついておるということはなかなか困難です。そう考えますと、やはり私は、医師の生涯教育と、医師が派遣される、こういうのは何か制度を考えないと、非常に問題が解決しないのではないか、こういう気がするわけです。大臣の県も、山の中もあるわけですから、そういう地域があるわけでありまして、そういう点についてこの機会に大臣の所見を聞いておきたいと思うのです。
  290. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 私の郷里も、そういう大変困った僻地をたくさん抱えておりまして、現在でも、医療問題につきましては、お医者様の確保に大変苦労している地域でございます。そういう点から、橋本厚生大臣とも十分連絡をとりまして、こういった地域の医療を、いま十分な対策とは言えないかもしれませんが、数歩ずつ前進させるように、これからも努力してまいりたいと思っております。
  291. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 特に医師の場合には、大学を出てインターンに入って、それぞれ専門職になっていくわけですね。だがしかし、初期診療といいますか、そういうお医者さんというものの必要性は医師会でも認められておるようであります。最近、その点についてずいぶん意見が出されておるわけであります。そういう意味では、この点についてはさらに一歩進んで、当然検討されるべき事項であろうと思います。  同時に、いま申し上げましたように、僻地の医師の確保という問題については、何らかの受けざらをつくって、そして巡回できる、自分の技術もみがくことができる、こういう点がやはり第五次の政策検討に当たっては、徹底的に議論をしなければならないところではないか、こう思うのであります。  そういう意味で、文部大臣と厚生大臣から、いまの私の二つの点に対する意見についての御所見を承っておきたいと思います。
  292. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 初期診療が大切だという御指摘はそのとおりでありまして、私ども、これは僻地であれ、そうでない場所であれ、今後のプライマリーケアというものが大切なことは間違いがない、そのように思います。現在、僻地中核病院というものが、僻地勤務医師の派遣の拠点でありますだけに、ここに所属しているお医者様というものは、一定の期間僻地の診療所で活動していただきますと、その後、今度はその中核病院に戻っていただき、そして中核病院においては診療に従事するだけではなくて、みずから研修、研究に従事していただくわけでありまして、中核病院におけるいま御指摘のような観点からの医師の研修につきましては、国は従来から助成の充実を図ってまいりました。そうした方向には、今後ともこれは努めていかなければならないと思います。ただ、いま岡田さん御指摘になりました僻地医療におけるプライマリーケアの重視というものは当然のことでありますが、僻地であるとないとにかかわらず、今後における初期診療体制の確保というものには私どもは留意をしていかなければならぬ、そのように考えております。
  293. 内藤誉三郎

    内藤国務大臣 私も、どんな僻地におってもやはり医療は一番大事ですから、健康を守るという意味で、お医者さんがどういう僻地にも行っていただくように、文部省としては、医師の養成について厚生省とよく相談して、必要にして十分な医師の供給をいたしたいと思っております。
  294. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日本が世界最長寿国になった。都道府県別の平均寿命を調べますと、私は富山県あたりがいいのかと思ったら、違うのですね。東京都が一番平均寿命が高いのですよ。不思議なことなんですね。こんなストレスのある、排気ガスの多いところで長生きをしている。やはり医療水準の問題だと思うのですね。したがって、そういう数字が出るのだと私は思うのです。そういう意味で、特にこの点について十分認識を深めておいていただきたいと思うのです。  同時に、医師が将来余ってくるじゃないかという議論があるわけです。もちろんこれからの南北問題を考える場合に、私もアフリカや中南米を歩いてきたのですけれども、医療問題というものは大変な、砂漠のような状況にあるわけです。もちろん留学生を入れて教育をして、その援助をするという方法もあります。しかしながら東南アジアなりアフリカ等を考えて、日本がこれから十分国際的な友好なり緊密の度を人的に深めていくという場合に、柔道の親善平和使節が行くのではなくして、やはり医師がそれぞれ行く、そういうことまで高めていかなければならないと思うのですね。そう考えますと、医師が余るという、ナショナルだけではなくてもう少しインターナショナルで考えると、わが国としてやはり医師の養成というものは非常に重要だ、私はこう思うわけです。  私、アフリカのザンビアとザイールの中間に行ったときに、日本の医師がおりまして、大変なもてようなんですね。鈴木さんという医師でありますけれども。子供が生まれると医者の名字と名前を全部つけてしまうというくらいの状況であります。そういう面で、国際的な経済援助という面からもこういう問題を大きく取り上げるべきではないか、こういう気がするのですが、これは大蔵大臣の見解を承っておきたいと思います。
  295. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 大変示唆に富む御見解を承りまして、これからもひとつそういう点につきましては格段の努力をしてまいりたいと考えます。
  296. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いわゆる北方領土、きょうも本会議で決議をされたわけであります。私も昨年の予算委員会でもこの問題を取り上げたわけですが、わが国がサンフランシスコ平和条約を結んだときに施政権を放棄して、信託統治として沖繩、小笠原がアメリカの施政権下にあったわけです。しかし、その後これが返還をされておるわけであります。したがって、政府としても、この返還をされた小笠原、沖繩の漁業者等に対して、それぞれ漁業補償といいますか、そういう措置をとられたと思うのですが、これはどういう内容になっておりますか、承っておきたいと思います。
  297. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  小笠原、沖繩、また特に、岡田先生非常に深く掘り下げて御心配願っております北方四島に関係をいたします漁業問題等について、同一ケースではありませんけれども、類似した点もございますので、一応小笠原、沖繩、北方四島についての漁業問題について申し上げたいと思うのでございます。  まず小笠原の場合でございますが、いずれも漁業権に対する直接の補償はいたしておりません。しかし、漁業権の補償見合い的な措置をいたしてまいっておるわけでございまするが、小笠原の場合は昭和五十二年に二億八千万の基金をつくって融資をいたしておるわけでございます。事業融資として差し上げておるわけでございます。  なお、小笠原の場合、操業ができなかった、もしも操業ができておったとするならばどうであったろうかということで、逸失利益の補償と申しますか、そういうことで当時、返還少し前でございましたが、アメリカに対して要求をしたことがあるわけでございますが、それに対してアメリカから六百万ドルの金をいただきました。しかし、これは漁業ばかりではなく全般的なものでございますが、その中で漁業に対しましては二億八千万に相当する、一つの、なかりせばこうであったろうというようなことで、二億八千万ばかりが出ておるわけでございます。  次には沖繩の場合でございますが、同様、やはり漁業権に対する補償見合いというような立場になるわけでございますが、この場合はちょっと違います。それは琉球政府が実は漁業関係を見ておったわけでございますので、そういう点で、昭和四十七年でございますが、当時の信漁連に対しまして十一億五千万円のそうした事業融資をやっておるということでございます。信漁連に対して水産庁がやっておるわけでございます。  次は、このときに対米請求権——沖繩政府が実は米軍の演習等の処置によりまして漁業操業を制限いたしておりましたので、これに対して、その漁業権につきましては、請求権につきましては放棄いたしておりまするけれども、もしも操業しておったならばどうであろうかというようなことで、私どもそのときに防衛庁長官としてあっせんをいたしましたが、約三十億円をこの沖繩沿岸漁業の振興費として提供をいたしておるわけでございます。  それから北方領土の場合は、もう先生一番よく御存じでございますが、昭和三十六年に法律に基づきまして、これは漁業以外合わせて十億円、漁業権関係の補償見合いといたしましては、うち七億五千万が相当するであろうということで融資をいたして今日に及んでおる、そういう状況でございます。  したがって、この操業ができなかったからという点については、これは小笠原あるいは沖繩と北方四島の場合は、どうもそこに違った立場に立っておるということでございます。その点についてはいろいろ相当長期にもいまわたってまいっております。それから、いつ返還できるかというような見通し等もあるわけでございまして、実際に関係者が苦労しておられるということもわかりますので、それらの沖繩、小笠原というようなもの等を勘案しながら、関係省庁において鋭意検討を進めておるというのが現在の段階でございます。
  298. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 北方の四島については、昭和二十年にいわゆるマッカーサー・ラインがしかれたわけですが、当時、内務省関係では、ここでは当然居住して操業を営め、こういう指示を出した関係上、引き揚げないでその後漁業等を営んでおったわけです。たとえば択捉などは、漁業は択捉漁業会というので一本になってやっていたわけです。しかもこれはわが国の領土であるし、いずれこれは復帰するであろう、したがって引き揚げる必要はないというので、昭和二十三年の夏まではずっと漁業をやっておったわけですよ。それで、二十三年の夏になって、これはソ連の方からも意見が出て、引き揚げるべきだということで、政府の方も引き揚げを受け入れるという形になって全部が引き揚げてきた、こういう経過があって、いわば戦後も漁業を営んでおったという歴史もあるわけであります。  そしてまた、わが国の漁業権の補償の時点でも、これは対象にならないという形で、私はきょう法律論争をする気持ちはないのですけれども、もうここまで来れば何らかの形で解決をしなければならない。昭和三十六年の池田内閣の十億というものは基金であって、十年間で国債で出す、金利だけでやってきたわけですよ。それがいまもう二十年近くにならんとしているわけですね。そういう意味では、他の措置に比べても、この三十年間過ぎた段階ではやはり何らかの形で解決されなければならないと私は思うのです。  そして、地元においては、拿捕漁船に対する救済措置というものを政府はとっているわけです。韓国関係については三十八億八百万円、中国関係については四十八億二千三百万円、北方四島関係については七十三億六十万円、それぞれ拿捕された漁船に対しては補償しているわけですよ。ですから感情としては、いわばわが国の領土だから水際まで行け、こう水産庁が言っておった、そこで拿捕される、これに対してはこういう補償がなされるが、三十三年間たっても、旧島民や漁業権者には何らの救済措置もとられていない。言うなれば、基金制度はありましたけれども、これは完全支給というものではありませんから。そういう点で非常にしびれを切らしてきた。こういうことで、今後の北方関係の問題についてもいい影響を及ぼさないのではないか、実はこういう心配を私は非常にいたしておるわけです。  そういう角度から、いませっかく大臣からも御答弁がございましたが、私の調べたのではちょっと違う数字ですが、小笠原の場合には六百万ドル、これは一応日本からアメリカにやって、アメリカから出されたという、こういう感じの議論も国会でなされて、当時の金に直すと二十二億円、そして漁業者には七億八千万円出された。これは私の調べた数字ですから違いがあるかもしれませんが、そういうことにもなっておるわけであります。  したがって、福田総理は昨年の予算委員会の末日において、この問題は総理府で鋭意検討させるということを約束されておるわけです。もうちょうど一年間過ぎたわけであります。総理府としてその点どういう検討をなされておるのか。前長官からも申し継ぎがあったと思うのでありまして、この機会にその一年間の推移について御説明願えれば幸いだと思うのです。
  299. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、沖繩の場合、小笠原の場合、そして漁民が置かれておりました立場というものも彼此勘案をいたしまして、いま言われたように北方領土はわが国固有の領土である、それにソ連の今日の不法な処置、その結果、長期にわたって元島民の方々がいろいろな被害を受けておられる。そういう点について、沖繩、小笠原の処置等を踏まえながら、特に現在置かれておる時点、たとえば先ほどもお話がございましたように拿捕された漁船に対する処置でございますとか、あるいは二百海里の問題でございますとか、ただ単に固有の領土であるということで、将来の外交問題等も含めて——そういう点で私どもも具体的に処置するということは、将来の外交折衝等も、小笠原の場合等を考えて、非常に困難な事態を持ち出すというようなこともありますけれども、しかし、一万六千人以上おられた方々は、長期にわたりますので、すでに千八百人の方が亡くなっておるというような事態も生じてきておりますし、私どもとしては何らか処置はないのか、法的にあるいは外交的に困難だとするならば、何かその他の方法で対処する道はなかろうかというような点を、ただいま関係省庁で検討を加えておるということでございまして、将来に向かって善処する道を模索しておるという事態でございます。
  300. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は今日のこういう時間的な経過にかんがみて、議員立法で、この問題の解決を立法の形で今国会に提出をしたいなと、こう思っておるわけです。それを中心にして、また各界、政府当局も議論を願いたい、こういう積極的な姿勢を持っておりますことをこの機会に明らかにすると同時に、いわば北方と小笠原、沖繩とは違いもございます。そういう意味で、いませっかく大臣から答弁もございましたので、ぜひこの問題は早急に解決できるように、さらに積極的な検討をこの機会に強く要望をいたしまして終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  301. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷君。
  302. 細谷治嘉

    細谷委員 私は主として、今回の国の予算でとられておる地方財政対策、さらに今月の九日に閣議了承がありました昭和五十四年度の地方財政計画、こういうものを中心にして質問をしたいと思います。  最初にお尋ねいたしたいことは、昨年の十二月二十九日、地方財政対策について大蔵大臣と自治大臣の合意ができまして、覚書が交換されたわけでございます。その覚書の内容につきましては資料としていただいておりますが、拝見いたしますと、昭和五十三年度にも覚書が交換されておるわけでありますけれども、今回は五十三年度と全く同じような覚書が交換されております。一体これは何を意味するのか。まず両大臣にお答えいただきたいと思います。
  303. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お答えをいたします。  御案内のように、五十四年度の地方財政計画につきまして大蔵大臣との間に覚書を交換したのは御指摘のとおりでございます。また、項目についても御指摘のように、五十三年度において交換をした覚書と全く同一であるわけであります。  ただ、先生ベテランでございますから御案内のように、臨時地方特例交付金の内容についても額も違いまするし、特に二項目の問題は五十四年度だけの問題ではなくて、これから五十五年、五十六年と将来にわたっても拘束力を持ってもらわなければならない項目でございますので、そういう点を考慮してこの覚書を交換した、こういうことでございます。
  304. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの大臣の言葉の中に重大な点があるわけですけれども、それは後でゆっくり議論いたしたいと思うのですが、将来に拘束を持つ、それでは五十三年度の覚書というのはどういうことなんですか。今回の覚書の内容というのは、一つは臨時地方特例交付金を千八百億円にするということです。第二点は、地方財政計画上政府資金が六割に満たないものについてはその穴埋めをいたしましょう、金利の補給をいたしましょう、もし万一地方債の確保ができない場合には両大臣が協力しよう、こういうことでありまして、五十三年度、五十二年度に書いたのと一つも変わらないのですよ。おっしゃるように、変わっているのは、昨年は千五百億円であったものが千八百億円になった、公営企業金融公庫の利差、政府資金との差額、そういうものについて数字が違っているだけで、内容としては一つも違っておりませんね。だとするならば、五十三年度のものも拘束力があるのですから、何も五十三年度と同じような内容のものをあえて覚書として交換する意味はないじゃないか、こう私は思います。いかがですか。
  305. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 私どもとしましては、事地方財政全体に関連するきわめて大きな問題でございますので、念を入れて両省との間に確認の意味で覚書を交換した、こういうことでございます。
  306. 細谷治嘉

    細谷委員 両大臣、国務大臣でありますから、内閣の座を占めておる二人が、簡単な、毎年毎年繰り返しているような内容のものを若干の数字の違いぐらい、金利の違いぐらいで覚書を交換しなければいかぬというような筋合いのものではないと私は思うのです。  そこでお尋ねしたいのですが、新聞等の報道によりますと、十二月二十七日に両大臣が地方財政対策について話し合いをしたわけでありますけれども、物別れになっておりますね。その際に自治大臣はどういうことを主張なすったのか。大蔵大臣はどうしていかぬだったのか。二十七日でありますから二十九日の二日前ですね。そして二十七日には物別れになって二十九日に急転直下合意しているわけですから、二十七日にはどういうことを御主張なさったのか、それを大蔵大臣はどうして拒否したのか、お答えいただきたい。
  307. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 二十七日の際に、一番中心の問題となったのは地方公共団体における赤字公債の発行の問題でございました。  それで大蔵大臣からは、国の財政がとにかく巨額な赤字公債に依存せざるを得ない、こういう実態であるから、地方公共団体も赤字地方債の発行に協力をしてもらいたいという要請があったわけであります。これに対しまして自治省としては、赤字地方債の地方団体における発行は、法のたてまえからいっても、それからまた事の内容からいってもお引き受けするわけにはまいりません。逆に当方としては、法のたてまえを踏まえて、地方交付税率の引き上げを要求しておったわけでございますから、それの実現をお願いしたい、当方からはこれを強く主張をしたわけであります。そこで両省との間に意見の一致を見ることができないで、そのままで二十七日の会談は物別れに終わった、こういうことでございます。
  308. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いま自治大臣からお話しのとおりでございます。
  309. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの自治大臣のお答えですと、大蔵大臣からは国も赤字公債を発行しているのだから赤字地方債を発行してくれ、こういうことに対して自治大臣は地方交付税率を上げてほしい、六・五%上げてほしいという要求をなさったのじゃないですか。六・五%でしょう。そうでしょう。それからもう一つは公営企業金融公庫の金利の引き下げも要求したんでしょう。これも断わられたんじゃないですか。
  310. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  311. 細谷治嘉

    細谷委員 そして二日目の二十九日に合意したのですがね。私は自治大臣に申したいのでありますけれども、二十七日には物別れと言っておりますけれども、その前にあなたの方はおりておったのじゃないですか。もう交付税率の引き上げなんて、六・五%要求というのは形だけであって、とてもじゃないがそんなことはできないということでおりておったのじゃないですか。いかがですか。
  312. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 そのような事実はございません。
  313. 細谷治嘉

    細谷委員 そういう事実はないと言うのですけれども、新聞なりその他で報道されておるものでありますけれども、あなたは自治日報の年頭のあいさつで「地方自治体の財政基盤の強化を図るため、新税の創設を含む地方税源の増強、地方交付税の充実確保を図る所存であります。」こういうふうに述べておるのですけれども、二十二日に開かれた全国知事会議では交付税率の引き上げは困難であります、こういうふうに表明しております。同じ日に林事務次官も、たてまえとしては交付税率の改定あるいは交付税対象税目の拡大を要求していく、こういうふうに言っておりますけれども、それは現実できないだろう、こういうことで現実的に困難だから五十三年度の確立したルール方式でいくのだ、赤字地方債については不退転の決意で阻止するのだ、こう言っているのです。すると、もう二十二日の全国知事会議段階でおりておったのじゃないですか。二十七日に六・五%上げてくれなんて大蔵大臣に言っておりますけれども、おりておったのじゃないですか。この証拠はうそですか。全国知事会議でそんなことは言ってないのですか。
  314. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 地方交付税率の引き上げを実現したいというのは自治省としての基本的な主張であったわけでございまして、二十七日の大蔵大臣との会談においても私からはこの点を強く主張しておるわけでございますから、あの段階以前において交付税率の引き上げを断念したという事実は全くございません。  ただ、御指摘のように、全国知事会議での私のあいさつの中で、あるいは交付税率の引き上げは非常に困難であるという発言はあったかもしれません。しかしながら、それは実際問題として現在国の置かれておる財政の実態というものを考えましたときに、私どもの主張はあくまでも正当な主張であると考えておりますけれども、それを実現することはきわめて困難であるということは十分予想されておったことでございますので、そういう点を非常に困難ではあろうということを申し上げたのだと考えております。
  315. 細谷治嘉

    細谷委員 過去のことをいまここで余りしつこくやるつもりはないわけです。だが、問題は、経過を明らかにしておきたい。まあ言ってみますと、報道されておる範囲内においては自治省の主張なんというのは表だけであって、大蔵大臣から足元を見透かされておる、こういうふうに言う以外にはないと思う。  そのころ、二十二日の全国知事会議から二十七日の物別れの際に、地方六団体から十七項目の重点要望があったはずであります。いま私が質問しようとしておるそういう地方財政対策の問題について、十七項目の中でどういうことが六団体から強く要望されたか、お答えいただきたいと思います。
  316. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御指摘の十七項目の資料はちょっといま手元に持ち合わしておりませんが、私の記憶いたしておりますところでは、お話にございました地方交付税率の引き上げ、それから新税が創設される場合には、それを交付税の対象税目にすること、地方債について政府資金を増額すること及び国庫補助負担金の改善合理化、いわゆる超過負担の解消などが基本的な問題として指摘されておったと思います。
  317. 細谷治嘉

    細谷委員 交付税法六条の三の二項に基づいて、法律の規定どおり交付税率を上げてもらいたい、これが一つですね。  もう一つ、あなた重大なことを落としておるわけです。あとでこれと関係が出ますけれども、五十年度から五十三年度間の交付税特別会計借入金の償還金は全額政府が負担してほしいということが入っておりませんか。
  318. 森岡敞

    ○森岡政府委員 大変恐縮でございます。申し落としましたが、御指摘の事柄は入っております。
  319. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで法律の問題になってくるわけでございますけれども、少し大臣なりあるいは事務次官の発言を取り上げて恐縮でございますけれども、大臣、町村週報というのをあなたは御存じでしょう。全国町村会が出しておるわけであります。あなたのところの重要な方が、こういうふうに講演で言っているのですよ。名前を挙げてもいいのですけれども、これを見ればこういうふうに言っているのです。赤字地方債については断固反対である。なぜか。それが地方交付税法六条の三の第二項に違反するのだ、こういうことであります。その講演の日にちはもっと前ですよ。やはりオーソドックスな行き方はだめだろうから、去年のルールでいく以外にないのだ、こういうふうに言っているのですよ。どの証拠も、私も探してみたけれども、あなたが二十七日に言ったような気配は一つもないです。そして二十四日の全国の六団体の要望の線というものは全くけ飛ばされておる。十七項目聞いたけれども、それとは違った動きを自治省がしておる、こう言わなければなりませんが、いかがですか。
  320. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、その講演はだれがいつやったか私は知りませんけれども、非常に困難であろうということは私ももう十分予想をしておったわけでございますが、大臣の私がはっきり申し上げておるわけでありますから、二十七日以前に断念をしたという事実は全くありません。二十七日の会談で、私からは大蔵大臣に対して、ぜひとも交付税率の引き上げを実現してもらいたい、この主張を譲らなかったわけでありますから、そのために結局二十七日は物別れに終わった、これがもう事実でございます。
  321. 細谷治嘉

    細谷委員 ある新聞の社説でこういうふうに言っているのです。「自治体の望む抜本策は生かされていない。」六団体の要求した抜本策は、すべてとは言わぬですよ、その一部すらも生かされておらない。「地方交付税率引き上げをめぐる自治省の大蔵省への攻めの姿勢は弱まった。」ある新聞の社説でこう言っているのですよ。私はここであえて言うのは、そういう自治省のふらふら腰、これがいま地方六団体が大変心配している点だろうと思うのです。結果を見て、自治省よくやってくれたなんてお世辞を言う人がおりますけれども、腹の中ではそうなんですよ。  そこで大臣にお尋ねしたいのですが、いま私が議論を申し上げている、あるいは大臣が六・五%の税率を上げろと言った根拠は、私は、地方交付税法第六条の三の第二項だろうと思うのです。赤字地方債はだめだということで断固大蔵大臣の言うことを聞かなかったのもそれだろうと思うのですが、違いありませんか。
  322. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 そのとおりでございます。
  323. 細谷治嘉

    細谷委員 そこでお尋ねしたい。第二項には「引き続き」、「著しく」、積み上げられた基準財政需要額と収入額との差が著しく大きい、引き続いて大きい、こういう場合には交付税率を変えるか、引き上げるか、地方制度を直すかしなければならぬと明記しておるのです。この「引き続き」とか「著しく」ということについての自治省なり大蔵省の解釈は、私はかつてこの問題についてこの予算委員会でやったこともあるのですが、自治大臣はどうお考えになっているのですか。解釈をもう一度お聞かせいただきたい。
  324. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 「引き続き」ということについての解釈ば、二年間引き続いて財源の過不足があって、さらに三年目においてもそういった著しい過不足があると見込まれたときが「引き続き」、こういうふうに私どもは解釈をいたしております。  それからもう一つは、「著しく」というその程度の問題については、地方交付税総額の過不足額が一割を超えたときに、それは著しいという状態である、かように解釈をしておるわけであります。
  325. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、現在五十三年度、五十四年度はこの六条の三の二項に該当しますね。お答えいただきたい。
  326. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 まさしく該当する状態と存じます。
  327. 細谷治嘉

    細谷委員 該当しているからこそ五十三年度の両大臣の覚書ができて、そして折半方式というのが採用されたわけですね。そこでこれは残念なことには、昨年の国会で野党全部が反対したのでありますけれども、本会議で引っくり返ってこの法律が成立したわけです。これが法律の附則八条の三に書かれておるわけです。八条の三に書かれておる「当分の間」というのとあなたがいま答えた「引き続き」ということは意味が違うのじゃないですか。そうなりましょう。あなたが言う「引き続き」というのは、二年間続いて三年目も確実にそういうようになった状態を「引き続き」と、これはもう前から国会で答えておったのです。八条の三に書いてある「当分の間」というのはどういう関係になりますか。「当分の間」というのといまの「引き続き」というのは違うでしょう。どうですか。
  328. 森岡敞

    ○森岡政府委員 地方交付税法六条の三の二項の「引き続き」という言葉の解釈は、先ほど大臣から申し上げたとおりに私ども考えておりますが、法の附則八条の三第一項の「当分の間」と申しますのは、いわばこれからの問題でございますね。「引き続き」というのは、二年間大幅な財源不足が生じ、三年度目以降も見通しが立たぬ、そういう状況が続くという状態を前提としておるわけでございますから、五十三年度、五十四年度及びそれ以降、こういう状態が続けば「当分の間」ということで八条の三を受けておる、こういうことでございます。
  329. 細谷治嘉

    細谷委員 おかしいじゃないですか。法律の本則には「著しく」と書いてある。「引き続き」と書いてある。「引き続き」というのは二年間続いて三年目もそういう状態のことを言うんだ、現在はそれだと自治大臣が言っているのですよ。それならその法律の「当分の間」というのはどういうことになるか。たとえば地方債は当分の間これを許可制とする、戦後、今日まで三十年以上続いているでしょう。学校に養護教諭を置かなければならぬというのが、当分の間で本則は置くことになっている。置かなければならぬとなって置いているでしょう。地方事務官の問題、国会でもいろいろ問題になったけれども、これも当分の間ですよ。それは現在も続いているでしょう。そうだとすると、「著しく」という有権解釈がはっきりしているのに、附則八条の三で「当分の間」ということでありますから、「当分の間」がいつまで続くかわからぬ。今日の経済財政状態の中ではこれはわからぬ。本則が吹っ飛んでしまっているじゃないですか、「著しく」という有権解釈は。大臣いかがですか。
  330. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように八条の条文は「当分の間」と、こういうことになっておりますから、これは当然暫定的な措置であるということは、もうはっきり法律が示しておるわけであります。私どももそのように受けとめておるわけでございます。
  331. 細谷治嘉

    細谷委員 これは理解できません。ただ、財政状態が悪くてどうにもならぬので附則の八条の三に逃げ込んだのでしょうけれども、本則の六条の三の二項というのは生きておるのです。そして生きておる本則の中の「著しく」というものと「当分の間」というものについては、もはや本則が吹っ飛んじゃって「当分の間」がひとり歩きしている、こういうふうに申し上げる以外にないと思うのです。  もう一つ念のためにお尋ねしますが、地方行政、財政上の制度の改正をしなければならぬ——交付税率を上げなくていいのですよ。たとえば補助率を引き上げる、あるいは地方税を、独立税を充実する、そういう制度を改めるか、交付税率を上げなければならぬ、こう言っているわけです。この制度はどういうふうに改めたのですか。お答えいただきたい。
  332. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 第六条の三は、御指摘のとおり交付税率の引き上げか制度的な改正によって処理しなさいと、こう書いてあるわけでありますから、その点については解釈としては御指摘のとおりだと思います。  それをなぜやらなかったのか、こういう御質問だと思うのでありますが、現在の置かれておる、昨年度の問題ですが、国の財政がとにかく御案内のような状況でございますので、交付税率の引き上げも困難、それから独立の地方税源の充実も困難、国庫負担率の大幅な引き上げも困難、そういうことでこの六条の三が規定しておるようなオーソドックスな、まともからの対応策というものは残念ながら五十三年度においては実現できなかったわけであります。  そこで、暫定措置として、御案内のような五十三年度のあの方式によって制度的な対応をした、かように解釈をしております。
  333. 細谷治嘉

    細谷委員 五十三年度の方式というのは、交付税率を上げるかわりに金を借りようや、特別会計で借りようや、そしてそれは返すときになったならば、国が半分、地方が半分持とうというのが附則の八条の三ですよ。そうですね。そうなってまいりますと、財政事情がそうなんだからやむを得ない、国と地方の財政が両方とも行き詰まってしまっているからどうにもならぬということでありますから、そうしたらそれはいつ、どういう形で本則に返るつもりがあるのですか、「当分の間」ですから。まさか二十年も三十年もやられるのなら本則の六条の三も改めた方がいいでしょう。どうなのですか。「当分の間」というのはいつまで続けるのですか。
  334. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、この「当分の間」というのはあくまでも暫定措置である、こういう解釈に立っております。したがって、その「当分の間」の暫定措置はいつまで続くのか、こういう御質問、二十年も三十年もこの暫定措置でやっていくつもりかという御質問でございますが、私どもは、毛頭そのような考えは持っておりません。暫定措置でありますから、できるだけ早くこの暫定措置を廃止して、六条の三に定めるオーソドックスな対応策を実現をしたい、それはできるだけ早くと、かように考えております。
  335. 細谷治嘉

    細谷委員 きわめて抽象的な問題ですがね。ところが、五十二年度に、当分の間じゃないですよ、五十二年度に限り折半方式だ。そして五十三年度はどうにもならぬものですから、当分の間、一年じゃないぞということで、それを覚書に基づいて法制化したのですね。附則はいまついた八条の三ですよ。大臣、この場合に制度というのを改める場合に、補助率を下げる場合も制度を変えたのですよ。補助率を上げる場合も制度を変えたのですよ。そうでしょう。その場合に、六条の三の制度を改めるということはどういうことかといいますと、地方交付税法一条の精神にのっとって地方財政が運営できるように、計画的に運用できるだけのあれを国が保障する、それが地方交付税法一条の精神でしょう。それを受けて六条の三の二が生まれているわけですから、制度を改めるということは、悪い方に後退させるということでは改めるにならないのですよ。制度を改めるということをどういうふうに理解しているのですか。お答えいただきたい。
  336. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 ただいまお答えしましたように、六条の三の趣旨をその規定の定めるとおりこれを実現することが最も妥当な、適切な対応策であると考えております。ただし、先ほど申し上げたように、残念ながらその条文の示すオーソドックスな対応策が実現できなかった、これはまことに残念であります。しかしながら、現実に国の財政状態はどうしてもそれをやることを許さないという状態にあったと考えておるわけでございまして、そこで、やむを得ざる対応策として御承知のような方式によらざるを得なかった、しかし、それはあくまでも当分の間の暫定措置である、こういうふうに考えておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  337. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣の答弁というのは、苦し紛れに、銭がないから、とにかく法律の本則だけはたな上げしてしまって、ごまかしていこうやということだと思うのです。  さっきの話じゃありませんが、町村週報であなたの部下が講演している。その講演の内容をちょっと読んでみます。「このルールは、」いわゆる二分の一方式は、「要するに一般財源の不足は交付税会計が国の責任において借入れ、地方には迷感をかけないで、」迷感をかけないなんてばかないですよ。二分の一地方に負担させているのですから、迷感をかけているのですよ。「迷感をかけないで、交付税として配分するというルールである。」確かに借りてやりますから、迷惑は半分かけるわけだけれども、交付税として配るわけでありますから、「これが交付税法の許容するぎりぎりの線である。」この制度は合法的だというのですよ。許容できるぎりぎりの線だというのですよ。本当ですか。大臣、そう思うのですか。こういう制度、損はいまのところ——もうかけ始めているのですよ。半分もう五十四年度は持ち始めているのですよ。ことしは二兆三千億ばかり借りるのですけれども、これは六十年から返還するのですよ。六十年にはその分だけで五千億円近い交付税を差っ引かれるのですよ。損はかかっているのですよ。ところが損はかけておらない、これが制度としてぎりぎりの線だ、こういうふうに言っているのですが、そう思いますか。
  338. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 地方団体に損はかけておらぬというその講演の内容は、御指摘のように事実とは違うと思います。これは半分半分負担ということになっておるわけですから、その地方団体の借金として残る二分の一は地方団体の損と言えば損に間違いございませんから、その点は事実と違うのではないかと私は考えます。
  339. 細谷治嘉

    細谷委員 この機会に時間をかけてもしようがありませんから、ちょっと衆議院の法制局の見解を承っておきたいと思うのです。  いま議論しましたように、地方交付税法第六条の三第二項は、引き続き著しい財源不足を生じている場合においては、地方行財政にかかわる制度の改正か、率の変更を行わなければならないことになっている。政府は、昭和五十三年度から当分の間の措置として、交付税法附則第八条の三の規定を新設しましたが、将来償還額の二分の一は地方負担とした点、決して前進した措置と評価することができず、むしろ法の原則に背いていると私は思うのです。  ここで、一つ衆議院の法制局長に伺いたいのですが、交付税法附則八条の三の規定は、同法六条の三第二項の規定に基づき、当分の間の措置としてとられたわけであるが、これによって六条の三第二項の規定に基づく国の財政措置は、当分の間の措置として一応終わっているというようなものではないと考えます。昭和六十年度には特別会計の借入金の償還額の地方分担分は四千四百億円を超える額となり、地方財政の健全運営に重大な支障を及ぼすことになると思われますが、その際六条の三第二項の規定は、地方財源保障を定める規定として当然働く、いわゆる附則八条の三の排除を受けない、こういうふうに思いますが、法制局の御見解を承りたいと思います。
  340. 大井民雄

    ○大井法制局長 本院の法制局長といたしましては、お答えする筋であるかどうかにつきまして私自身ちゅうちょを感じておりますが、法律解釈論としてどうかという御趣旨と承りまして、その点につきまして一言お答え申し上げます。  地方交付税法附則八条の三の規定、つまり特別会計の借入金についての国の二分の一負担制の法定化に関する規定につきましては、これが同法本則の六条の三第二項の規定を排除するものではないと解しております。したがいまして、当面附則第八条の三の定めに基づきます措置がとられることになるわけでございますが、今後も地方財政の状況に応じまして、本則第六条の三第二項の規定に該当するような事態が生じました場合におきましては、同項に基づきます所要の措置が講ぜられるものである、かように理解いたしております。
  341. 細谷治嘉

    細谷委員 附則の八条の三は本則の六条の三の二項を排除するものではない。そうして自治大臣は、現在が第六条の三の二項、本則に該当しておる、こういうことでございますが、法制局の見解としては、現在の事態がそれに該当しているかどうかという判断は行政当局で、法解釈そのものではないと思います。しかし自治大臣はそうお答えしたわけであります。事態が生じた場合にはというお答えですけれども、事態はすでに生じちゃっているのですよ。それを当分の間で逃げているわけですよ。大蔵大臣、どうなさいますか。
  342. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  附則八条の三が本則の六条の三の二項を排除するものでないということはそのとおりであろうと存じます。また、そういうような著しい地方財源不足の状態が引き続いて生じておることも事実でございます。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 ただ私ども国の財政の立場から申しますと、国の財政自体が、財政法でも許されない特例公債法まで国会で審議をお願いいたしまして、特例公債によって支えている異常な状態でございます。その異常な状態のもとにおいて、なおかつ地方財政ができ得る限り円滑に施行されて、国の財政と地方財政とが車の両輪となって景気対策にもうまく機能するようにということで財源対策を講ずるためには、交付税法の六条の三の第二項ではっきりうたわれておりますような基本的な制度改正をするには、国の財政の前提条件として、きわめて異常な状態にあるもとにおいてその措置はとれない。そこで、当分の間ということで、五十二年度のような一年度限りの措置ではなく、五十三年度に附則の八条の三で借入金の二分の一を、借入金の利子まで含めまして国が負担をするという措置をとらせていただいたわけでございます。
  343. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣、主計局長お答えいただきました。実は、二月の十六日に与党の自民党が統一地方選挙公約というのを発表しているのですよ。新聞にも出ております。その中で、地方財政再建のため「地方税、地方交付税等の地方財源の増強、国庫補助負担金の改善による地方超過負担の解消等を図る」、全く方向として私どもも同意できる内容を発表しているのですよ。そうすると、この公約とどうもいまの五十四年度とられた財政対策というのは、国も困っているんだ、地方も困るんだけれども半分半分痛み分けだ、こういうことはいかぬのであって、早く本則に返らなければいかぬと思うのですよ。どう思いますか。
  344. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 細谷さんの先ほど来の御指摘、全くごもっともだと思いますが、いま主計局長が御説明申し上げましたように、これは十分御承知のことでございますが、国の財政も地方財政同様あるいはそれ以上とにかく身動きのとれないところまで参っております。  そういうことで、いまこの異常、異例の際に交付税率をいじるというような制度的な改正をやるのばいささかやはり時宜を得ないのじゃなかろうか。しばらくひとつ景気回復その他あらゆる努力を払って、常道に復したところで必要な措置を講じていくということが私どもは最善の策と考えまして、きょう御指摘いただきましたような覚書というか、解決策をとった次第でございます。
  345. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣も胸の中では大変心痛されておるようでありまして、私の主張もおわかりいただいたと思うのです。  自治大臣、あなたの方の、さっきも町村のこれを見たけれども、地方の人たちがよく読む「地方財政」という雑誌があるのです。これは長々とこれからの地方財政対策はどうするのかということが書いてあるのですが、それを読んでみますと、財政担当者もどう言っているかというと、五十二年度単年度の二分の一方式よりも、五十三年度は「当分の間」で五十四年度も五十五年度も続くから制度としては前進したのだ、こういう認識ですよ。こういう認識があるから先ほど私は冒頭言ったように、腹の中ではオーソドックスがいいと言いながらやる気がない、こういうふうに申す以外の何物でもないと思うのです。そういう認識を改めていただきたい。早く本則にいかにして到達するか。一遍に百里の道を歩けと言っていないのですよ。本則の方向に基づいてやっていただかなければいかぬ。それを二分の一負担しろ、こういうようなことではどうにもならぬと思うのですが、そういう認識をひとつ部下にもきちんとさしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  346. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 先ほど来お答えしておりますように、私どもは八条の三はあくまでもこれは暫定措置である。したがって、できるだけ早く六条の三の本則に示すところの対応策を実現しなければならぬ。これはもう正真正銘そのように考えておるわけでございまして、もし自治省の担当者、関係者の中に、いま御指摘のあったような考え方を持つ者がおるとすれば、これは誤りでございますから、私からはそういった考え方は是正するように強く指示してまいる所存であります。
  347. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、大変な決意を示していただいた。その決意があれば、この八条の三による当面の措置としてとられたものは解決できないことはないのですよ。どうしてかといいますと、ことし二兆三千億ばかり借りるのは六十年から元金を払うわけですよ、利子は国が持つということになっているのですから。そのときに前の年のものは、言ってみますと、五十四年度の二兆二千八百億というのは六十年度に千四百六十億返すことになる。去年五十三年度に借りたものは五十九年度に八百八十億返すことになる。そして全体として六十年度にはいままで借りた分がありますから、八千二百十九億円返すことになるわけですよ。それは半分半分だというわけですよ。大蔵大臣、知恵をつければ、その返すときになってひとつ本則に返ってやろうと両大臣が決意してもらえさえすればできるのですよ。ただし、いままで若干ありますよ、五十二年度分、五十三年度分がありますから、借り分がありますから、それについては別途対応して実害を及ぼさないようにしてやる。今後の問題は、返すそのときになって分割で処理していけばいいわけですから、そういう方法で、おっしゃるように損をかけないように——損とか得という問題ではないですね。地方財政が運営できるような、六条の三の二項という本則が事実そのとおり行われるような事態は、いまからでも遅くない、やろうとすればできるのですが、いかがですか、ひとつ両大臣所信のほどを聞かしていただきたい。
  348. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 貴重な御意見を伺ったわけでございますが、これは相当吟味して検討した上でないと、やれるかやれないか、私ここで即答するわけにはまいりません。貴重な御意見として検討の対象にいたしたいと考えます。
  349. 細谷治嘉

    細谷委員 この法律は、実は私があえて言うのは、五十二年度までは「当分の間」なんというあれは使わないで、毎年度毎年度法律で処理してきた。五十二年度も単年度。それは法制局の権威によってそういう制度だということで、六条の三の二項による制度を改正したんだということでやってきた。ところが一歩前進するということで「当分の間」をつけて、いつまで続くかわからぬようなぬかるみを切り開いて、これが制度として前進ですなんて思っているわけです。そのぬかるみをやがてだんだん整地してやっていけば、返すときになれば、いいわけですから。重大な提言だと言うけれども、そうやらなければ本則にもとるわけですから、ひとつ大蔵大臣やってくださいよ。いかがですか。
  350. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 とにかく大変な国、地方の財政危機に直面しているわけですから、一刻も早くこういう状況を克服してすっきりとした、軌道に乗った財政に国も地方も持っていくように精いっぱいこれから努力してまいります。
  351. 細谷治嘉

    細谷委員 精いっぱい努力するけれども、「当分の間」で、附則があるからこれでいくのだとやられちゃ、これは前向きにやってもらわなければいかぬです。本来ならば、私は単年度ごとに五十二年度はどうだ、五十四年度はどうだということでやっていくのがむしろいいと思うのです、当面の緊急避難ですから。そうじゃないですか。もうちょっと大蔵大臣らしい答弁をひとつ。
  352. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 何と申しますか、いま申しましたように、一刻も早くこういった状況を脱却できるような努力をして、国も地方もとにかく一本立ちになれるように、最善の努力をするように申し上げておきます。
  353. 細谷治嘉

    細谷委員 これはこの程度にしまして、ひとつやっていただきたいと思います。  もう一つ、これに関連して申し上げておかなければいかぬ点があるわけです。こういうふうにして交付税で借り入れる。税収の落ち込んだ分については、減収補てん債という地方債を認めました。それからもう一つは、従来交付税で措置しておった地方の負担分を地方債で穴埋めしちゃったのです。財源が足りません。そして国の方は、公共事業やれやれということで地方にやらせるわけですから、それは借金してやりなさい。借金してやりますけれども、その分については交付税で元利償還を見てあげます、こういうことになっておるわけです。  そこで、話の順序としてお尋ねいたしたいのでありますけれども、一体いま、五十四年度の初めに当たってその財源対策債なり減収補てんをしたために交付税で見てやっている額は幾らになるつもりか。五十三年度幾らか、五十四年度は幾らか、お答えいただきたい。
  354. 森岡敞

    ○森岡政府委員 財源対策債と減収補てん債につきまして基準財政需要額に算入いたします金額は、現時点では財源対策債が三千五百六十一億円、減収補てん債が千四百三十七億円を見込んでおります。
  355. 細谷治嘉

    細谷委員 それは五十四年度の見込みでしょう。五十三年度はどうなっておりますか。
  356. 森岡敞

    ○森岡政府委員 五十三年度は財源対策債が千五百十二億円、減収補てん債が千三百七億円、県、市町村の合計でございます。
  357. 細谷治嘉

    細谷委員大臣 ここまでは御存じないと思うのですが、いま財政局長が答えたように、借金をして公共事業をやったために、交付税で見ておる基準財政需要額に計入された分が五十三年度は二千八百十八億円、そして五十四年度は四千九百九十五億円、約五千億円見込まれるというのであります。基準財政需要額に計入するわけでありますから、交付税として配ってやるということですよ。これはウナギ登りです。仮に、いま四千九百九十五億円といいますと、公債費の利子、元金等に対して五十四年度は私は七千億円を超えると思うのですよ。そのうちの圧倒的な部分というのが五千億円の財源対策債です。あと二千億円というのは過疎過密とか同和とかそういうところについての交付税で見てやっているものでありまして、これは従来からのものです。この穴埋めのために五千億円を五十四年度では計上するということで、これはことしも借りるわけですからウナギ登りに上っていくわけです。仮にそうだとしますと、どのくらいになってくるか。交付税の基準財政需要額の全体の五%近くなるのです。その五%は一体何かというと、交付税ですよ。交付税の相当部分というのは借金しているのです。過去の借金を返すのにその元利を借金したやつで見てやって、そしてそれは国が半分、地方が半分だ。こういうことになりますと、実質上は地方に半分以上持たせたことになるじゃないですか。交付税で半分地方に負担させておいて、その半分負担させたのを今度は交付税で配ってあげましょう、これはいかに大変なからくりかということを私は思わざるを得ません。  両大臣、お答えいただきたい。こんなやり方でいいんですか。地方に借金させて公共事業に経済の支えをさせておいて、そして借金したものは交付税で見てあげます。交付税で見てあげますけれども、交付税の足らぬ分は借りてあげますよ。そして、その半分は地方が持ちなさいというのですから、これは大変なやり方、国の独善ですよ。六条の三の二項なんて吹っ飛んじゃっておりますよ。附則八条の三なんて、内容からいきますといま申し上げたとおりですよ、私が申し上げたいことは。八条の三の「当分の間」の二分の一方式があるのならば、これを当分の間暫定的に財政難からやっていくというのならば、この交付税に計入された分、財源対策債、減収補てん債については別枠で臨時地方特例交付金として見てやるのが筋じゃないですか。どう思いますか。
  358. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のような臨時地方特例交付金でその分を賄うことができれば、地方財政の立場としてはこれは非常にベターな案であることは言うまでもございません。しかしながら、大蔵大臣からもたびたび申し上げておりますように、国の財政事情がどうしてもそれを許さない、困難である、こういうことでやむを得ず採用している方式でございまして、私どももこれが決していい案であるというようなことは毛頭考えておりません。
  359. 細谷治嘉

    細谷委員 私が言いたいのは、五十四年度に四千九百九十五億円という借金をしたために、返していかなければならない元利がある。それは交付税方式で配分するのはいいけれども、これは別枠が——多々ますます弁ずなんという議論を私は言っているのじゃないのですよ。筋論としてそうなるじゃないか。この筋論がおわかりにならないですか。そうして財政が悪いからと言うのですか。もっと悪くなったらどうするのですか。もう半分も地方へ全部持っていっちゃえ、こうなってくると、何もかも地方にしりぬぐいさせる、そして事業はやれやれ、これから地方財政計画は議論しますけれども、これでは筋が通らないと思うのですよ。  大蔵大臣、あなたは自治大臣よりも金のことは詳しいでしょうが、これはどう思いますか。借金さして仕事をやらして、その返すのは交付税で配ってあげます、体裁はいい。その交付税は借金でございますよ、そうしてその借金は半分おまえの方が持てよ、こんなばかげたことがありますか。
  360. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 細谷さん御指摘のとおり、ことしは大変苦しいやりくりをやらなければならぬことになりまして、その点は大変残念に思いますけれども、とにかく一刻も早く今日の景気を回復さして国、地方の財政の回復を図る、同時にまた、ぜい肉をお互いに落として財政再建に一刻も早くこぎつけることが大事だと思っていろいろ苦労している次第でございますので、もうそこら辺は篤と御了承いただいておると思うのでございますが、お察しをいただきます。
  361. 細谷治嘉

    細谷委員 いかに察するのでも、理屈の通らぬことは、察してもそうですかと言うわけにいかぬですよ。これは留保します。借金さしておいて、やれやれと言ってやらしておいて、そうして今度は払うときは交付税で見たようなかっこうをして、おまえが半分持てよなんて、そんな筋論は許せませんから。これは別枠で処理する以外にないのですよ。六条の三の二項をぴしゃっとやっておけば、こんな事態は起こらぬわけですよ。しかし、そうやらざるを得なかったという財政事情、大蔵大臣の苦しさもわかります。わかるんだが、筋だけは通していただかぬといけないと私は思います。これは問題ですからちょっと留保しておきます。  そこで、次の話に移りますが、ことし私の住んでおる福岡あたりは大変な渇水で、真夏に一日六時間ぐらいしか水が来ないのです。そこで私はお尋ねしたいのでありますけれども、新聞に発表されたところを見ましたらこういうことですよ。どういうことかといいますと、水源で水がなくてまいっておった福岡市は、十トンの基本料金が二百八十円です。そして、一トン当たりの超過料金が四十五円ですよ。福岡の近くに、大部分の水をもらっている甘本市というところがある、その十トン当たりの基本料金は八百五十円ですよ。そして、超過料金は一トン当たり九十五円ですよ。筑後川のすぐ川沿いにあります大木町、城島町、三瀦町あたりは十トン当たり千二百八十円ですよ。そして超過料金は百四十円ですわ。ところが、千二百八十円でもどうにもならぬものですから、それ以上上げなければならぬわけでありますけれども、一般会計から繰り入れておるわけですよ。町の小さな財政で六千万円も八千万円も繰り入れておるわけですよ。水源地にありながら、消費地よりもはるかに高い水を飲んでいる。これは一例として挙げるのですが、東京と群馬県、水源地と利水地の関係は同じですよ。そういう問題があります。それを交付税のうちの特別交付税で穴埋めをしておるというのが高料金対策の一つであります。こういうことであります。  そこで、特別交付税でやりますから、あなたの方ではずっと全体の景色をながめるわけだ。野中の一本杉のように、立っているとちょんと頭を削るのですよ。十二月と三月に、十二月はルール分、三月のものはいわゆる特別交付税、こういうことをやっているのですがね。私はそういうことからいって、こういうものはルールの中で処理してしまって、特別交付税から外すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  362. 関根則之

    ○関根政府委員 高料金水道に対します特別交付税上の措置は、対象団体が限られておりますし、それから現実に繰り入れを行いました団体に対しまして的確に財源措置をする必要がある、こういうようなことから現在十二月分の特別交付税のルール分で算定をいたしておるわけでございます。これは普通交付税で見るべきではないか、こういう御趣旨のようでございますけれども、私どもとしては実態にできるだけ沿うような形で措置をいたしますためには、現在やっております特別交付税で措置をするのが適当ではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  363. 細谷治嘉

    細谷委員 従来、特別交付税というのは二月決定であったのですね。それをもっと実態に即応するようにという形で、手間はかかるけれども十二月と三月にしたのですよ、十二月にはルール分だけをやっていこう。  そうだとするならば、高料金対策は、全国のあまねく市町村ではありませんけれども、十二月には計算できるわけですから、普通交付税と特別交付税の率を変えて、そうして十二月分の方はルール計算でありますからルールの方で——八月と十二月に計算してもいいですよ、ルールの方に入れて、特別交付税の一部をそっちに移した方がいいじゃないか、これが筋じゃないか、こう言っているのですよ。大臣、いかがですか。
  364. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 十分検討いたします。
  365. 細谷治嘉

    細谷委員 もう時間が余りありませんし、防衛庁長官もお待ちのようでありますから……。  二月九日に昭和五十四年度の地方財政計画が確定をいたしました。今度の地方財政計画には、「策定方針」ということで長々と能書きを書いておりますけれども、これも何に重点があるのか、何をねらっているのかわからぬ。強いて言えば田園都市構想を受けたのだという形で新広域市町村圏構想、あるいは不況地域における地域の振興対策として何らかの措置をする、これも全部地方債、さらに公営企業の利子が〇・一%下がりましたよ、こういうような能書きを書いているだけで、あと読んでみても変わったところないのですよ。見ばえしない。見ばえはしませんけれども、中の数字を当たってみますと驚くべきこと、ちょっと申し上げますと、五十四年度は、給与関係費の構成比が二八・六、五十二年度は三三・〇、投資的経費は、五十二年度は三四・八でありましたけれども三九・二、その投資的経費のうち単独事業が、五十二年度は一五・六でありましたけれども今度は一七・五、言ってみますと給与関係費の減り、それが全部投資的経費に行った、そして単独事業をふくらました財政計画だ、こういうふうに思いますが間違っていましょうか。
  366. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 結果的には御指摘のとおりになっているわけであります。
  367. 細谷治嘉

    細谷委員 これは私は全体像をつかんだのですけれども、さらにこれをもっと掘り下げてみますと、五十三年度と比べて、五十四年度に地方財政計画の規模がふえております。幾らふえたかといいますと、去年は三十四兆幾らが今度は三十八兆八千億になったわけですから、大変ふえました。そのふえた分の中で地方費は幾ら要るか、これは財政計画に載っております。金額は三兆二千六百五十七億円、そして三兆二千六百五十七億円去年よりも地方の負担がふえていくわけでありますが、そのうちの借金が八千九百一億円、そして交付税に借り入れました二兆二千八百億円を加えて借金がおおよそ今度ふえた分の九七・一%になっているのですよ。規模はふえました、ふえましたけれども九七%借金でやりなさい、こういう不健全な財政構造を私は見たことがないと思うのですが、自治大臣そう思いませんか。
  368. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、地方財政の悪化は、いままでに例を見ない悪化の徴候を示しておるわけでございますから、御指摘のような結果になっておるわけであります。
  369. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣、地方の方まで構っておられぬ、こういう御心境ですけれども、私が指摘したそういう構造をお認めになりますか。
  370. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 地方のことを構っておられぬというような気持ちでやっておるわけではございませんで、とにかく国と地方の財政は車の両輪のごときものですから、どちらも一日も早く立ち直れるようにぜい肉を落として再建策に取り組むように持っていかなければいかぬという気持でいま一生懸命やっております。
  371. 細谷治嘉

    細谷委員 そうなければならないと私は思います。  そこで、こういう財政構造について、すでにお読みになったと思うのですけれども各紙が、二月九日の閣議でこの問題を了解した際に、翌日の新聞には、一例を申し上げますと、「悪化の一途をたどる財政を立て直すための方策は五十四年度も全く放置されている。」「これは、国と同様、財政危機打開を増税だけに」——一般消費税でしょう、「増税だけに頼るという、安易な態度との批判を招くことになろう。」と警告しております。そういう意味のことがどの新聞にも社説の中でずいぶん取り上げられました。私はこれ以上この問題を取り上げない。  そこで、こんなような財政構造で地方は消化できますか。大臣、どう思いますか。
  372. 森岡敞

    ○森岡政府委員 各種の建設事業、公共事業、単独事業含めましての消化の問題だと思いますが、実は五十三年度は御承知のように大変大幅な、景気対策の観点から、公共事業をふやしました。しかも上半期に七三%まで契約をしてしまうということで、地方も大変苦労いたしまして、所期の目標を若干上回るところまで成約をして事業が進んでまいりました。今回の投資的経費の伸びは五十四年度におきましては二割強でございます。しかし、五十三年度でかなり事業の規模がふくらんだのに、さらに二割でございますから、私どもは、各府県、市町村とも、これを消化していくにつきまして、昨年度にまさる苦労があろうと思います。しかし、全体としての景気の回復を着実なものにしていくと同時に、やはり地域の福祉その他の施設、公共施設を整備していくことは、これはもう当然必要でございますので、あらゆる努力を払ってこの事業の執行を進めていただくようにお願いをし、また、私どもも必要な手助けをしてまいりたい、かように思っております。
  373. 細谷治嘉

    細谷委員 こういう席で、あらゆる努力を払って完全消化に努めます、こういうことをいつもおっしゃるわけです。ところが、財政局長、あなたのところから資料が出て、まだ五十二年度は正確じゃありませんけれども、五十一年度を見てみますと、地方財政計画と実際に執行した決算額、こういうものを比べてみますと、五十一年度では維持補修費は八百六億円当初の計画よりへっこんでいるのですよ。さらに単独事業というのは六千七十八億円間違いなくへっこんでいるのです。そして、国の補助をもらう方はどうかといいますと、五十一年度は当初の計画より七千八百九十一億円ふえているわけですよ。一言で言いますと、国の補助のつくものについては計画を上回って執行しているけれども、維持補修費とか単独事業、こういうものについては大幅に計画を下回っておるわけですよ。住民生活に一番大切なことは、大きな仕事も重要でありますけれども、小さな十万円以下の災害が直らないということがどれほど住民生活に大きな打撃を与えるかということは申すまでもないと思うのです。こういう、五十年も同様です、ずうっと財政計画を洗っていきますと、そういうことになっております。単独事業が軒並み減って、補助事業がふえてきておる、こういうことでありますから、住民生活がよくなろうはずはありません。田園都市構想なんて泣きますよ。そう言わざるを得ないのですよ。ですから、私は五十二年度の実績は見ておりませんけれども、この間出た市町村の決算状況という自治省の資料を見ても、間違いなくへっこんでおります。こういうことでありますから、それを一段輪をかけた構造である、五十四年度の地方財政計画で示された維持補修費や単独事業というのは消化ができないのではないか。したがって、住民の日常生活の充実の方向にこたえることができないのではないか、こういうことを憂慮しております。大臣、自信がありますか。
  374. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いまお話がありましたように、事実関係はまさしくそうでございますが、ただ決算の場合と地方財政計画、これは先生重々御承知のことでございますけれども、整理の区分が必ずしも一致しない。具体的なことを申しますと、いわゆる継ぎ足し単独のようなものが決算の場合に公共事業の方に入っておるというふうな事例もかなりあるものでございますから、公共事業、単独事業合わせたところで見ていただくことも一つ必要だ。そういたしますと、投資的事業は地方財政計画と決算とはそれほど大きな関係はございません。  それから、お話がありましたが、補助事業でも、これはかなりなものが生活関連施設でございますから、それはそれなりに地域のいろいろな施設整備に役立ち、また地域住民の生活環境の整備に非常に役立っておるということは御理解願えるのではないか、かように思います。  なお、維持補修費につきましては、これは私どもは公共施設の維持補修の経費がいままでどうも十分投入されていないという心配をしておるわけでございます。財政計画は、御案内のように、標準的なあるべき姿を描いておるものでございますから、私どもの強い期待を入れまして、維持補修費の増額をかなりいたしておる、こういうことでございます。
  375. 細谷治嘉

    細谷委員 そんな、私は財政計画の計画と決算との乖離、おっしゃったようなことをずっとやっていることを知りながら、全体として言っているわけですよ。ですから、私への答えにならないのだ。しかも、せんだっての五十四年度の財政計画をつくった際に、維持補修費というのはかなり雇用に役立つと思いますから、今回は従来より増額いたしました、計画で増額した、これは結構ですよ。結構でありますけれども、維持補修費は、いつの決算と比較してもへっこんでいる、三角がついているのが実態ですよ。ですから、私にそんな答弁してはいかぬですよ。毎年財政計画を洗っているのですから、そんなばかげたことを言っちゃだめですよ。  そういうことでありますから、大臣、これは覚書の三項で、金が借りられなくなったら大蔵省と一緒に手をつないで金を借りてあげますと言っておりますけれども、地方公共団体の当事者になってまいりますと、とてもじゃないが、そんなに借金ばかりして、仕事をやれやれと、国の言うことを聞いてやったら、財政は破綻してしまいますよ、そうしてあげくの果ては給与を切りなさいということで押しつけられますよ、というようなことでは、どうにもならない。もちろん、私は給与に手を触れちゃいかぬなんということを言っておりませんよ。言っていませんけれども、いままでの例からいって、この五十四年度は、地方財政を一段と破局に陥れる計画であるということをはっきり言っておきたいと思います。  そこで、時間もありませんから、問題の、財政計画にあらわれておりますけれども、ちょっとこれからの田園都市構想についての基本的な考えをお尋ねしておきたいと思うのです。  田園都市構想に絡んで従来から国土庁のモデル定住圏、自治省の広域市町村圏、建設省の地方生活圏、そこへ大平さんの田園都市構想というのが出て、自分のところのものを何とか田園都市構想につながらせよう、つながらせようと、各省なわ張り争いが熾烈である、こういうふうに私は言っていいと思うのです。  この問題は、田園都市構想をどうやっていくかというのも重要でありますけれども、かつて自治省の事務次官をしました広島の宮澤知事はこう言っておるのですよ。田園都市構想、こういうものを推進していくためには、一つは個性のある地域づくりをしなければなりませんよ、それが地方自治の充実ですよと言っています。それから、田園都市構想というのは当然なことながら市町村の自治能力を高めなければなりません、地方の時代と言われておるのは、言ってみますと市町村の時代なんだ、こういうふうに広島の宮澤知事は言っております。それから、第三番目に、地方に思い切った投資が必要ですよ、どんなに開発しても収入がなければいかぬわけでありますから、雇用を確保しなければなりませんよ、教育、文化、医療の充実をやらなければいけませんよ。最後に、官僚体制を反省して、官庁ナショナリズムを止揚して、そして財源的には国庫補助制度というものを、積極的に地方の一般財源化を図っていかなければ田園都市構想はできませんと言っております。言葉をかえて言いますと、従来のような国土政策的観点から出発するのではなくて、地方分権思想を背景とした自治政策的観点から進むべきであると私は思うのですが、自治大臣、どうですか。
  376. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 ただいま御指摘がございました宮澤知事の考え方、細谷委員もこれには全く同感だと言われたのですが、私も全く同感です。そうなければならぬ、かように考えております。
  377. 細谷治嘉

    細谷委員 財布のひもは大蔵大臣が握っているのですが、大蔵大臣は、田園都市構想について澁谷大臣と同じ見解ですか。
  378. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 画一的な国土づくりというのはもうこういった時代にはそぐわないので、やはりそれぞれ個性のある地方都市を育てる、地域を育てるということが大事なことでございますので、各省いろいろ知恵を出し合ってやっておられるようでございますけれども、その地域地域の文化と伝統と産業を育てる、そのためには、いま最後に御指摘がありましたけれども、地方の財源の充実、それは当然考えていくべきことだろうと思います。
  379. 細谷治嘉

    細谷委員 これからの問題でありますけれども、ぜひひとつそういう基本的観点——私は国土政策的な観点というのは全部排除してしまえと言っているのではないのですよ。基本的には地方分権的な思想を背景といたしまして地方の時代を築いていく、それが国土政策とつながっていかなければいかぬ、大きなパイプがつながっていかなければいかぬ、こういう意味で私は申し上げているのですから。  そこで時間もありませんから、防衛庁長官、お待たせしました。そういう田園都市構想というものを推進していくに当たって、今日与野党一致しておる問題は、今日の日本の課題というのはやはり雇用を守っていく、こういうことが必要だろうと思うのです。そのためには雇用の創出ということに積極的に取り組んでいかなければならぬと思うのでありますが、私の知っている範囲で、自治体が財源がありません、金がありませんので、自衛隊に工事を頼むと安上がりでいいからそっちへ行ってしまえ、こういうことですね。どんどん行って、そして自衛隊の方もその方がいいかもしらぬ、私は仕事はあるだろうと思うのですよ。E2Cも買おうというのですから、仕事はあるのだろうと思うのですけれども、地方自治体から頼むと、人気取りか何か知らぬけれども、いいですよ、いいですよと言って、その委託工事を受けてしまう、そういうことで大変な問題になっているのです。私の調べでは西部総監部で、五十三年度九州七県で土木工事を二十九件自衛隊に要請しておるということであります。これでは、いま私が申し上げている福岡県のある市では三千人の実質上の離職者がおると言うのですよ、雇用を待っている人が。ところが自衛隊にそれが行ってしまうわけですから。ところが自衛隊法百条でやってもいいことになっているわけです。やってもいいわけですけれども、自衛隊の目的に適合した場合は、ということでありますが、何でもやることが目的に適合しておるのだということでやっております。これについて防衛庁長官としては、どう対応するのですか。
  380. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘のとおり、自衛隊が地方公共団体から委託工事を受けますのは、訓練の目的に合致するとかあるいは公共的なものに限ることになっておるわけでございますが、ただいまも仰せのとおり、雇用の創出がまことに大事な問題でございます。ただ頼まれたからどんどん受けているというわけのものではございませんで、いつもいろいろ私どもとしては、工事につきましても機械力あるいは爆破技術を要するものでありまして、仕上げ工事等は民間の業者の方にやられるようにするとか、あるいは委託を受けるにつきましては地元の業界の同意を受けるとか、ある意味で民業を圧迫しないように、自衛隊法百条の趣旨に沿ってやっておるわけでございます。  なお、御指摘の西部方面総監部における実情につきましては政府委員からも御答弁させたいと思いますが、決して私どもは民業を圧迫するというつもりでいたしたわけではございません。
  381. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、「自衛隊の訓練の目的に適合する」というところは、テニスコートの整地や学校の運動場の整地なんということではないと思うのですよ。災害で堤防が大きく切れてどうにもならぬとか、あるいは普通の建設では及びもつかぬような土木機械を持ってこなければいかぬというもので、普通の常識で考えられるものについてはすべて建設業者にやるべきです。そうして災害等やむを得ない、そういうものについては自衛隊の協力をいただく、それが百条の精神であろうと思うのですが、何でもかんでも進出する、頼まれたからやるのだ、こういうことではならないと思うのです。  そこで自治大臣、地方公共団体のことですからあなたに責任があるわけです。私のところへある市長が来まして、建設業者のオーケーはとっておりますと必ず言うのですよ。ところが、これも福岡の土木組合連合会の事務局長、建設業者の会の事務局長が言っているのです。地元が了解するといっても自治体には文句が言えないと言うのですよ。言ったらその次に報復するのですから、江戸のかたきを長崎ということはあり得るのですから。弱い立場なのでわかってほしいと切なる声を訴えているのですよ。でありますから、地元も了解した、地元の市長がやることはそれが自治なんだから結構だ、だから安上がりで自衛隊に行ってしまえというような、そんなことではいけませんから、きちんとした指導をひとつしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  382. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 私は、お説には全く同感でございます。自衛隊の訓練の目的に合致する範囲内でというしぼりがあるわけでございますから、当然自衛隊がやり得る仕事というものには一つの節度がなければならぬ、かように考えます。その地元の業者とのコンセンサスという問題は非常に大事なことでございます。ただし実態としては、やはり市町村当局に対して建設業者の立場というのは弱い立場でございますから、確かに表面的には承諾したというかっこうをとっても、内心ではなかなかそうコンセンサスを得ておらない、そういう事実も十分あり得るわけでございますので、十分お説の考え方を体して地方に指導をしてまいる所存であります。
  383. 細谷治嘉

    細谷委員 時間が来たのですが、一言。  先ほど単独事業が地方財政計画上異常にふえたということを言って、これで消化できるだろうかということを私は懸念を申し上げたわけですが、私が懸念をしておる一つ、今度の地方財政計画の中の地方債計画、こういうものを見てみましても、あなたの方から出したものが、大蔵省の最後の査定の段階では一般公共なんというのは八月の要求よりも五千億ぐらいふえてしまっておるのですよ。一体どういう計画で大蔵省に要求したのか。これは大蔵省からなめられますよ、言ってみますと。六二%もふえているのですよ、あなたの要求よりも。そういう地方債計画を作成する、案をつくることがおかしいと私は思っております。  そこで、これは問いませんけれども、あなたの方で決まった地方債計画の中で、一般単独は一兆三千八百三十六億円の地方債をあてがっておるのですよ。その中で政府資金は一二・七%、他は全部縁故資金です。利子が高いのですよ、質が悪いと言われる。補助事業については二一・四%政府資金が充当されます。全体としてこれは低いのですが、全体は三九・三%、そして六〇%で利ざやを見るというわけです。こういう資金配分、政府資金、良質の配分、しかも一般単独というのは小さい仕事が多いわけですから、こういう資金配分にも問題があるのではないか、作成の仕方、資金配分のやり方。あなたの方は口を開けばすぐ、銀行に信用の小さい市町村に対しては政府資金を優先的に上げます、大きな団体は信用があるから借りられるから縁故資金だ、こう言いますけれども、こういう資金の配分ではどうにもならないのじゃないかと思いますが、ひとつ両大臣、この地方債の資金の内容あるいは資金配分、こういうものについてはもっと積極的な取り組みをしていただきたい、こう思うのです。これを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  384. 竹下登

    竹下委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会