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1979-02-07 第87回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月七日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 竹下  登君   理事 伊東 正義君 理事 小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田村  元君       谷川 寛三君    中川 一郎君       中西 啓介君    根本龍太郎君       野呂 恭一君    羽田野忠文君       藤田 義光君    藤波 孝生君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       安宅 常彦君    井上 普方君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    兒玉 末男君       平林  剛君    安井 吉典君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    正木 良明君       吉浦 忠治君    大内 啓伍君       小平  忠君    田中美智子君       寺前  巖君    三谷 秀治君       大原 一三君    菊池福治郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君  出席政府委員         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         総理府統計局長 島村 史郎君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局審議官         兼物価局審議官 戸田 博愛君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    堺  徳吾君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省人権擁護         局長     鬼塚 賢太郎君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         文部大臣官房会         計課長     西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君        通商産業省立地        公害局長    伊勢谷三樹郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         運輸大臣官房長 中村 四郎君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         運輸省海運局長 真島  健君         運輸省港湾局長 鮫島 泰佑君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省人事局長 守住 有信君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省行政局長 柳沢 長治君         自治省行政局選         挙部長     大橋茂二郎君         自治省財政局長 森岡  厳君         自治省税務局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     谷川 寛三君   藤波 孝生君     中西 啓介君   矢野 絢也君     吉浦 忠治君   柴田 睦夫君     田中美智子君   山口 敏夫君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     正示啓次郎君   中西 啓介君     藤波 孝生君   吉浦 忠治君     矢野 絢也君   田中美智子君     三谷 秀治君   菊池福治郎君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。井上普方君。
  3. 井上普方

    井上(普)委員 早速でございますが、大平総理大臣は、先ほど中国鄧小平首相とお目にかかっていろいろとお話しになったようでございます。南北朝鮮の問題、あるいは東南アジアの問題、あるいはまた米中接近の問題、国交回復の問題等々、目まぐるしい外交問題がいま動いております。その中において、少なくとも子々孫々まで善隣友好関係を結ばなければならない日中のトップ会談が行われ、何か新しいことがあるのではないか、このように考えますので、きょうのお話をひとつわれわれに御報告していただきたい、こう思います。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 今朝八時から官邸におきまして、鄧小平首相会談を持ちました。会談の内容は、今回の鄧小平氏の訪米におきまして米中両国がどういうお話をしたかということについて報告を承ったのであります。  それから、日中両国関係の増進につきまして話し合いました。新しいことは特段ございませんが、私の中国訪問について希望が述べられ、当方から華国鋒主席の御訪日を強く希望いたしたわけでございます。これに対しまして、私の訪中を大変希望いたしておる、それが実現した暁におきまして主席訪日につきまして十分考えたいということでございました。  それから、アジア情勢全般につきまして意見の交換を行いました。井上さんの言われる特に新しいことはございませんで、中国の従来の立場をより鮮明に伺ったことでございます。  それから、世界情勢全体につきましてどう見ておるかということにつきまして、これまた中国の従来の見方というものをこの会談を通じて確かめることができたと思っております。
  5. 井上普方

    井上(普)委員 特に南北朝鮮の統一につきまして、あるいは日本政府に対して橋渡しというようなこともあったやに承るのでございますが、その点はいかがでございますか。
  6. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 南北朝鮮の対話の機運が出てまいりましたことを歓迎しておる、またその実現を望んでおるということでございまして、それ以上のお話は別にございません。
  7. 井上普方

    井上(普)委員 大体わかりました。  それでは次に、予定の質問に入りたいと思います。  総理田園都市構想なるものを発表されまして、実は私どもも何をおっしゃっておられるのか、意図しておられるのかわからなかったのであります。これは私どもだけでなく、お役人、中央官庁、諸官庁におきましても、一体何を大平さんは言われておるのかというので各省とも右往左往いたしております。その証拠に、大平総裁、これはまあ福田さんが総理で続いていくのだろうという大方の予想のもとに、大平政治というものに対する勉強が足らなかったのだろうと思うのでございますが、各省庁とも、特に国土庁のごときは、田園都市構想とは一体どんなものだという解説書まで書いておるのであります。しかも、この間のテレビ放送で承りますと、高坂さんとの対談でございましたが、田園都市構想というのは北斗七星のようなものなんだと言われるに及んで、一体田園都市構想というのは何を意図しておられるのか、いままでのたとえば定住圏構想、あるいはまた自治省の考えておりました広域行政圏、あるいは建設省が考えておりました生活圏構想、これらとどういうふうに密接に結んでいくのだろうか、このように悩んでおるのが実情じゃないかと思うのでございます。しかも総理大臣演説を承りますと、どうも私どもにはわからない。ただ言えることは、田園が持っておるよさと都市の持っておるよさとミックスしたような社会をつくりたい、こういう意図だけのように思われるのですが、いかがですか。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 田園都市構想というのは、文字どおり構想でございまして、具体的な政策にまでなっておるものではございません。今日やっておりまするいろいろの政策をこういう構想角度からもう一遍見直してみる必要があるのではないかというのが私の提言の趣旨でございます。すなわち、いま行われておる住宅政策でございますとか公共事業計画でございますとか、もろもろのことをやっておるわけでございますけれども、そういったものを見る目をもっと洗練された目にして、ただにハードウエアといいますか公共事業計画というようなものばかりでなく、目に見えないいろいろの文化価値を実現していくことも考えなければなりませんので、いろいろな角度からいままでの政策を見直す目をひとつみがいてみようということでございます。したがって、各省がおわかりにならぬのはあたりまえだと思うのです。これから田園都市構想というものをわれわれでみがき上げて、こういう構想によっていままでの政策を見直して、よりすばらしいものにしていくよすがにしようということで検討を始めておるわけでございます。したがって、具体的な政策を嚮導する理念というか、そういうものでございます。  したがって、いま言われる定住圏構想その他は、一つのそれを具体化した政策でございまして、りっぱにその理念を具体化できるかどうかという点を見直すところに意味があると考えておるわけでございます。いま政府におきましても、各省でもいろいろ検討いたしておりますし、私の手元でも学界その他のお力をかりましてそういった問題について検討を進めておりまするし、党内におきましても特別の委員会をつくりまして検討を進めておるわけでございまして、漸次、井上さんの言われる田園構想がこういうものだというようにだんだんと明らかにしていくようにいたしたいと考えておりまするし、そうなった場合にまたそれはそういうものとしてひとつ御批判をいただきたいものと思っております。
  9. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、そういうような漠然としたものでございますと、こうおっしゃるのでございますけれども、実は、国土庁田園構想というものはどんなものかという解説書を部内に流しておるのであります。それほどまでに田園構想というのが省庁を大きく衝撃させて、大平政治はどういうようになるだろうかということで、こういうようなパンフレットを各局各課に流しておるというようなのが実情でございます。  しかし、大平総理がいまおっしゃられましたけれども、これは構想であって具体的なものはないのだ、こうおっしゃいますが、「政治複合力を」という総裁選挙前のこれを拝見いたしますと、かなり具体的なことまで私は踏み込んでおるのじゃないか、こう思います。  たとえて申しますならば、「地方政治については、行政中央集権への傾斜を改め、地方自治体による独自で機動的な行政力に委ねるよう措置する。」措置するまで入っております。あるいはまた、「行政肥大化タテ割り主義による非能率化を改め、安くつく効率のよい」行政を実現するとも申されております。特に具体的に申されておりますのは、「税財源雇用機会教育文化機能首都東京都をはじめとする地方自治体に配分し、福祉等行政機能も大幅に地方に移譲する。それぞれの地域に高次の自治機能をもたせ、多様な地場産業を育成、個性ある文化の花を咲かせる。」こう言っておられるのであります。具体的に、地方に権限を、特に福祉行政のごときは移譲するとまでおっしゃられておるのであります。私は、これは当然のことだと思います。いままでの政治と大きく変わるのじゃなかろうかと、私どもは大きな期待を持っておるのであります。いかがでございますか。政策まで踏み込んだ発表をなさっておるじゃございませんか。構想だけじゃなしに、また昭和四十六年、宏池会の議員研修会におきましての田園都市国家構想についてというのでございましたならば、これは具体的な手法にまでも入られておるじゃありませんか。総理になられましてから、あなたのお考え方は大きく後退しておるのじゃないか、このように考えるのですが、いかがでございますか。
  10. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 大きく後退しておるのじゃなくて、前進しておるのです。四十六年当時、私が考えました当時から、だんだんと私自身も考えてまいりまして、今度出しましたのは、その当時から趣旨を詳細にごらんいただきますとやや前進させていただいておると思うのでございますが、井上さんがいみじくも御指摘になりますように、理念と具体的な政策とがごっちゃになった姿で出しておりますので御理解がいただけないのじゃないかと思いますけれども、まあそういう段階、非常に不完全なものでございますけれども、過去百年間、日本近代化の道をいろいろだどってきて、しかもそれが中央集権がいよいよ進んできて、都市化が進んできてという、この過去百年間の歴史の進行に対しまして、一応応急的な措置を講じながらやってきたわけでございますけれども、この機会でもう一遍見直してみて、国土全体についてあり方を考えなければならぬじゃないか。そして、それはハードウエアの面ばかりでなく、われわれの精神生活におきましても、もっとゆとりと余裕、人間性というものをくみ取るような仕組みを考えなければいかぬじゃないかというようなことにだんだんなってまいりましたので、ここで一体、今日求められておるこの田園都市構想というのはどういうようなものかということをいま掘り下げて整理をいたしておるところでございます。そして先ほど申しましたように、それが党、政府を通じまして十分のみがきをかけました段階におきましてまた御批判を仰がなければならぬと考えておりますが、そういう構想をいま練りつつある段階であるということで御了承願いたいと思います。
  11. 井上普方

    井上(普)委員 総理、あなたの任期は二年なんですよ、二年しかない。しかもいやしくも宰相になったならば、自分が持つ抱負経綸というものを、これを政治の上に及ぼさなければならない。こういう抱負はいずれも政治に携わる者はこれを持っておる。やりたいものだと思っておる。あなたの田園都市構想というものも恐らくそうであったろうと思う。とってみたところが、いや、前進したので、これから構想を固めるのだというのでは、任期二年の総理大臣、まあ自民党の総裁としましてはこれはちょっと無責任過ぎるのじゃないかと思うのでございますが、それはともかくといたしまして、大平さんの総理大臣演説で、この田園都市構想のところで、わからないところが二、三ございますので、ひとつ教えていただきたいのです。  「私は、都市の持つ高い生産性、良質な情報と、民族の苗代ともいうべき田園の持つ豊かな自然、」点々と美辞麗句を並べておられて、「田園都市づくり構想を進めてまいりたいと考えております。」と、こうおっしゃるのですが、この「都市の持つ高い生産性、良質な情報と、」こう言うのです。「都市の持つ高い生産性」はわかるのでございますが、「良質な情報」というのは一体何でございますか。言葉意味がわからないので、ひとつお伺いするのです。
  12. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 情報知識というのは、われわれの生活にとりまして大変な栄養でございます。これは教育科学技術の面におきまして都市は大変高い水準の知識情報を手にしておると思うのでございます。田舎の場合はそうでもございません。したがいまして、人口が都市に集中する一つの大きな誘因をつくっておると思うのでございます。そういったことでなくて、地方におきましても十分の良質な情報知識を吸収するだけの構えができますれば、そういった誘因はだんだん減殺されてくるわけでございます。そういうことをわれわれの構想には考えなければならぬのじゃないかという問題意識を述べたのでございます。
  13. 井上普方

    井上(普)委員 良質な情報などと言いますと、これは反対の言葉は悪質な情報ということになるのです。田舎の方には悪質な情報ということにもなりかねないのです。これはともかくもっと──言葉を選んでおられる大平さんなんだから、良質な情報なんという言葉はどうもそぐわないんじゃないか、いまおっしゃる言葉でございましたならば。特に権力者が良質だ悪質だ、情報について区分けをするということは厳に慎まなければならないところなんだと私は思っておるのです。これはさておきまして、ともかくそういう高い技術あるいはハイレベルの知識というものが都会に集中しておる、これをひとつ田舎の方に、田園に分散させなければならないという意味でありましたならば私もわかります。こういうような言葉はひとつもう少しわかりやすい言葉お話しになっていただきたい、このように要望しておく次第でございます。  そこで、いままでの日本地域開発というものを考えてまいりましたならば、これは一言で言いますと、過去には産業政策があって、あるいは工業政策があって、農業政策あるいはまた水産業政策、こういうものがなかった。ただあるのは産業政策だけがあって都市政策もなかった。ここに日本の現在の都市荒廃があり、かつまた田舎荒廃がある、私はこのように思うのでございます。そして、過疎過密という現象があらわれてきた。ここで私どもは、どういたしましても日本の国土を再建するには新しい地域社会というものを建設しなければならない。それには何を申しましてもコミュニティー、これの再建ということが必要なんじゃなかろうか。隣は何をする人ぞというようなのは単に都会だけではなくなってきております。田舎が持っておった、田園が持っておったコミュニティー社会というものが崩壊しつつあると私は感ずるのであります。それはなぜだといいますと、やはりこの急激なる経済の及ぼした影響、これは大平さんは衝撃波という言葉をお使いになっておられますけれども、これによって人間疎外が行われてまいった。われわれはここに人間疎外を排除して、人間を尊重した地域社会の建設を図らなければならない、こう私どもは思うのでございます。したがって、これをつくるにはコミュニティーの再建ということを中心に置いて物事を考えなければならない。そのコミュニティーの再建ということは、もちろんその地域その地域の方々の自発的な参加によってそれがなされなければならないし、それが地方分権につながるゆえんであると私どもは考えるのであります。  そこで、そういうコミュニティーをつくっていくことによって初めて連帯感というものも生まれてくるし、ここに新しい郷土愛というものも生まれてくるでありましょう。こういう観点に立って国土づくりをやるべきだということをわが党は昭和四十五年以来唱えてまいったところであります。特に安井議員あるいは阪上議員などは盛んにこのことをこの予算委員会において、国土開発の点においては強調してまいったのであります。私は、大平さんのおっしゃる田舎のよさと都会のよさとをミックスした地域社会を建設するのだ、単にそれは田舎だけじゃない、都市にもそれをつくりたいのだ、こういうのはもっともなことで、こういう原点に立つならば、コミュニティー社会というものを、地域社会というものをいかに住民の間から自発的に沸き起こさせてくるかということがなければならないと思うのですが、いかがでございます。
  14. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 全く同感に存じます。コミュニティーの仲間である、帰属意識が非常に強い、あるいはコミュニティーに対する愛情、郷土愛が強いということは大変大事なことでございまして、私の構想の中にも一つの大きな柱にそれをしなければならぬものと考えております。
  15. 井上普方

    井上(普)委員 そこから出てまいりますのは、何を申しましても住民参加という方式が出てくると私は思います。この住民参加の問題につきましては、これは昭和四十三年でございましたか、都市計画法が審議されました際に、実は私どもは、自分の町をつくるのだから、住民の意思というものを住民の参加によってつくらなければならないのじゃないかということを盛んに申したのでございますが、原案には入っておりませんでした。その原案に入っていないのを、私どもが住民参加を強く主張いたしまして、当時の建設大臣でございました保利茂さんが、これはまことにもっともだということで、都市計画法の手法の中に住民参加の手法を一応入れたのでございますが、しかしこれは何としてもまだ不十分でございます。その後地域立法がたくさんできてまいりました。土地利用計画法であるとかあるいは公有水面埋立法であるとかいう法律もその後出てまいりましたけれども都市計画法の住民参加の手法、それから一歩も出ていないのが現状であります。しかしこれでも、都市計画法の手法はまことに不十分な住民参加の方法であると私は思います。大平さんは特にコミュニティー社会の再建ということを考えるならば、住民参加ということをお考えになって当然だと思うのですが、いかがでございます。
  16. 中野四郎

    ○中野国務大臣 御指摘の点、全く同感であります。三全総におきましても、地方公共団体とか地域住民の創意と工夫を軸にして望ましい地域づくりを進めることとしておりまして、地域の開発における住民の役割りについても十分認識しておりますので、今回もそのような措置をとっていきたいと考えております。
  17. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま国土庁長官からもお話がありましたように、そういう心構えでいかなければならぬと存じます。  それで、参加は当然のことでございますけれども、参加をさらに一歩進めまして、いろいろ、もろもろのコミュニティーに絡まる計画を主体的にコミュニティー自身が考えていく、それに対しまして中央がお手伝いをするというような仕組みが本当は望ましいことじゃないかと思うのでございまして、漸次あなたのいわゆるコミニティーが自主性、主体性を高めていく方向にいくべきであると私は思います。
  18. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、現実の問題となるのでございますが、当然これからの政治のあり方というものは住民参加あるいはコミュニティーが自発的にともかく物事を考えていく、自主的に考えていくというようなことでなければならぬと思います。  そこで、現実的な問題といたしまして出てまいっておりますのが環境アセスメント法なのであります。環境アセスメント法、これはその住民参加の方法として公聴会を開くあるいはまた意見を述べるというような手法を入れておるのでございますが、どうもこれが産業界にごきげんが悪くて、通産省はこれに反対する。さらに三年間もこれは国会に提出されずに来ておるのが現実であります。もう限界なんです。この環境アセスメント法について、今国会には予定法案として出されておりますけれども、実際、総理大臣はお出しになりますか。問題がこの住民参加のところでひっかかっておるのです。どうでございます。
  19. 上村千一郎

    上村国務大臣 総理からお答えをする前に、担当の環境庁といたしまして考え方をお答え申し上げておきたいと思います。  環境影響評価法、いわゆる環境アセスメントの法案につきましては、環境庁としましては、ぜひ早期に法制化をいたしたいという心組みで現在精力的に調整を行っておるわけでございます。  それで、井上さんもおっしゃったように、昭和五十一年以来、環境庁としましてもこの法案に取っ組んでおりまして、いわゆる法案というものにつきまして真正面に取っ組んでいくのが四回目ということになります。今国会におきましても、何とか各省庁間あるいはその他の合意を得まして、そして立法化の運びにいたしたい、こう思って鋭意取っ組んでおるわけでございます。
  20. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この問題は長い懸案でございまして、政府、党を通じまして十分検討を遂げまして処理いたしたいと思いますので、いま直ちに、いつ出すかというようなことについて、まだ答える用意はございませんけれども、鋭意調整を進めておるところでございます。
  21. 井上普方

    井上(普)委員 問題は、なぜこれが出されないかというと、住民参加のところに産業界が反対し、通産省が反対しておるところに問題があるのです。住民参加の手法が、これから地域立法については必ず必要なんだということをあなたもお認めになっておる。問題になるこの住民参加を盛り込んでおる環境アセスメント法、この環境アセスメント法はそこが問題になっているのです。これは、住民参加の方法をさらに進めてくれと私は申しません。もうすでに四年目ですから、幾つかの案が出ているのです。成案もできているのです。ただ、それが産業界あるいは通産省の反対に遭って法案提出までに至ってないのです。総理はコンダクターだとおっしゃる。だから私は、これはもう総理が通産省と環境庁とのハーモニーを直して、早速にひとつお出しになっていただきたいと思うのですが、どうでございますか。
  22. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 よく検討いたします。
  23. 井上普方

    井上(普)委員 よく検討するとおっしゃいますが、本当なんですよ。もう住民参加というのは、本筋として政治の進まなければならない方向なんです。これをきらう勢力が、ともかくアセスメント法をつぶしにかかっておるのです。省庁間のコンダクターですから簡単ですな。もうこれであれば、部下なんだから、リーダーとしての指導力を発揮していただいて、今国会に提出していただきたい。これは約束していただけますか、どうでございますか。
  24. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 承っております。鋭意検討を進めます。
  25. 井上普方

    井上(普)委員 大平さんは慎重な方で、検討ということをおっしゃられるのですが、もう昨年の予算委員会におきましても、山田環境庁長官は、今国会には提出いたしますと明言されておったのです。もうことしは三年目でございますので必ず出します、こう申されておった。それがつぶされている。つぶすのは住民参加をきらう勢力にほかならないのであります。住民参加を推し進めていこうとする総理とすれば、私は当然この国会に出すということをここで表明していただけるものだと思っておったのでございますが、検討するでは、私どもはどうも納得いたしかねるのであります。いかがですか。
  26. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 鋭意検討いたします。
  27. 井上普方

    井上(普)委員 通産大臣、ああして検討するとおっしゃっておるのですが、一番反対勢力は通産省なんです。これはわかってきておるのです。いままであなたは隣と話をしていて何もわからなかったかもしれないけれども大平内閣の通産大臣としても、やはり住民参加による地域開発というものをやらなければならないのだ、地域社会の建設というものをやらなければならないのだという観点からするならば、住民参加ということが大平政治の最大の命題でなければならない。その住民参加のこの法案を通産省は反対し続けるおつもりなんですか、どうなんですか。  そしてまた環境庁は、いつも腰の弱い役所のようだ。毅然とした態度をとってもらいたいと思うのですが、いかがでございます。
  28. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 地域政治に住民参加が必要なことは、私も全く賛成であります。それからまた、総理の言われる田園都市構想をつくっていく上に大事なのは、地域においてバランスのとれた形で雇用が創出される、そういう意味では、地域社会産業政策をどう転換していくかというビジョンづくりの費用なども通産省にはございますね。こういったものもやはり利用されていいのではないか。そして本当に住みよい、心の上にも生活環境にもゆとりのある地域づくり、これは大事なことだと思います。(井上(普)委員「環境アセスメントはどうした」と呼ぶ)失礼しました。その部分は環境庁長官お話があったかと思いまして、私省略したわけですが、この問題については、目下両省間においても、また関係省庁間においても意見の調整中であります。私も先ごろまでは党の政調会長をいたしておりまして、常にこの問題については関心を払い、調整をしておるというわけでありまするから、今後といえども、鋭意調整をしまして、成案を得るようにしたいと思います。
  29. 上村千一郎

    上村国務大臣 井上さんから力強い御発言がございました。実は環境庁としましては、環境汚染というものを未然に防止するということ、これはもう私はコンセンサスができておると思うのであります。そういう意味であるのに、なぜこうして法制化がおくれるのであろうかという問題でございます。その中の一つに、いま御発言のことが入っておることも確かであろう、こう思っております。  それで、いまこのアセスメント法案の骨子となっておるものは、これは井上さんも十分御承知だと思いまするが……(井上(普)委員「もういい」と呼ぶ)よろしゅうございましょうか。住民参加のルールというものは一つの大きな柱になっております。この環境影響の評価というものをあらかじめ行って、そして一度破壊された環境を取り戻すということは非常にむずかしいものであり、あるいは不可能になる場合もある、こういうことで、事前にきめの細かい、間違いのない計画を立てていくという必要があると思うのです。それだけ範囲が広く幅が広くございますので、問題になる個所はまだいろいろあるわけなんです。  それで、昨年の五月に与党の政調会におきましても、この環境アセスメント制度の確立ということは確かにやらなければならぬ問題だ、だからこれは精力的に党と政府が一体となって検討を開始すべきである、進めるべきであるということになっておりまするが、しかし、そのいろいろな話し合いのまだ未調整の場合が残っておる、そういうような意味において、あの時点においては時期尚早であろうというような結論になっておるわけです。でございまして、その後環境庁としましても、精力的にその問題点を煮詰めて、そして何とかひとつ早期に法制化をいたして、環境アセスメント制度を確立いたしたい、こういう方針でございます。
  30. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにしましても、ともかく住民参加のところでひっかかっている。通産省は反対する。そこで環境庁長官、去年だって、法案はできておるのでございます、いつ国会に出すかというところでございますとまで山田環境庁長官はおっしゃったのです。成案ができたらじゃないのです。できているのだけれども、それに続いて反対する勢力が、特に通産省が反対しているからどうも出してこれないというのが実情じゃないですか。しかも、住民参加というのは大平内閣の一つの大きな柱とまで私どもは考えておる。その中において、これは毅然とした態度を持って臨まれんことを、大平総理も早くこれを出されるように、私は強く要求しておきたいと思います。  そこで、大平さんの「政治複合力を」というのを見てみますと、福祉行政なんかはもう地方に分権するのだ、福祉行政などというのはその方がいいんじゃないかというような記述がございます。そこで、これで公的負担を一体どの線に引くのか。そしてまた日本的福祉社会、もちろんこれは地域社会を含んでおるのだろうと私は思うのですが、そこで私は、ナショナルミニマムというものを確立しなければならない、ナショナルミニマム、これを公的負担で補う、それ以上のものを地域あるいはまた福祉家庭におぶさすということでなければならないと思うのであります。単にコミュニティーの再建と申しましたら、昔の田舎にありました頼母子講、あるいはまた、私らのくににあります、恐らく香川県にもございましょうが、講中という制度、こういうような封建的な形じゃなくて、新しいコミュニティーというものを、近隣社会というものを築いていかなければいかぬ。それにはやはりこの新しいコミュニティーは、しかもそれが一面福祉というものを担う点も私は認めます。しかし、少なくともナショナルミニマムというものは公的負担でやっていくのだ、できないところはひとつお願いするのだという態度を持つ必要があると思うのございます。どうでございますか、この点は。
  31. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 総理のお答えの前に、そのナショナルミニマムについて一言申し上げておきたいと思うのです。  われわれもナショナルミニマムというものをどの線に引くべきかということは種々検討いたしております。しかし、これはなかなか凡百の問題について設定をしなければならないし、あるいはその平均値をとるということも非常にむずかしいことだと私は思うのです。もちろん皆様が御主張になっていらっしゃるナショナルミニマムというものを、われわれが提案いたしましたこの基本構想の中で、これから本作業に入るわけでありますが、その御主張も取り入れながら計画をひとつ練ってみたい、そのような考えであります。
  32. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 井上さんの言われる場合、負担と執行ということをどのようにお考えになっておられるのか。私が申し上げておりますのは、全国的に経済力が必ずしもまんべんにございませんので、財政調整というのはどうしても必要だと思うのでございます。したがって、公的負担ということの負担力がないところには公的負担が多くまいらない。ミニマムを満たすと言ってもできないことだと思うのでございます。したがって、そういう財政調整というのは、経済力の地域的アンバランスというものを漸次格差を埋めていく方向に施策するとしても、相当長くこれは残る問題でございましょうから、財政調整という問題、公費の負担の調整という問題は残ると思うのでございます。  一方、執行でございますが、執行はやはり地域の事情をよく知っておる者がやる方が望ましいわけでございます。できるだけ地域のコミュニティーの、よくその事情に通じた方々が執行に参加する、あるいは執行するというような方向に漸次持っていくべきじゃないかと思うのでございます。政府におきましても、中央の出先機関というものを漸次整理縮小いたしておりまして、ことしなんかも千ばかりの小さい出先機構の整理をやっておるわけでございますが、これは政府のサービスがその分だけ少なくなるというよりは、むしろ地方地域団体によるサービスにだんだん置きかえていくということも期待しながらやっておるわけでございまして、財政面と執行面と両面からあなたの言われる御趣旨を生かすようにやらなければならないのじゃないかと思います。
  33. 井上普方

    井上(普)委員 ナショナルミニマムなるものを早急に制定していかなければいかぬ、そして、それは憲法の関係から文化的な最低生活を保障することが国家としての責任である、こういう点から、それに足らざるものにつきましても地域社会において補っていく、コミュニティーで補っていくという考え方が私は本筋じゃなかろうかと思うのであります。しかし、この七カ年計画を拝見いたしまして、果たしてこれでできるのだろうか。昭和六十年には──新しい言葉をつくられるのですな、お役人というのは、社会保障移転とかいうような言葉を使われる。何を言っているのかなと思ったら、何のことはない、政府の出す金のことをそんなむずかしい言葉をお使いになりまして人民をごまかすといいますか、わからなくしていくのがお手の物のようでありますけれども、それはともかくといたしまして、昭和六十年に国民所得の一四・五で社会保障移転ですか、それを行うと言うが、どうも足らぬのじゃないか。この根拠を、あなた方はおつくりになっておると思うのですが、いかがでございますか。年金とかあるいはまた医療保障とか、あらゆる面においてこれで十分できるのでございましょうか。いかがでございます。
  34. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 六十年度において一四カ二分の一程度というものの見込みの基礎にいま立てておりますのは、人口の非常な高齢化と制度が成熟することによって計画期間中の年金受給者が非常に増加することとか、医療給付費の増大、三番目には社会福祉サービス関連給付の増大、こうしたものを見込んでおるわけでございまして、これらが今後この計画期間中に国民所得に対してどの程度増加するかということにつきましての一応の目安といたしまして、年金部門では約一%程度、医療部門におきましてやはり約一%程度、社会福祉その他の部門で約二・三%から〇・三%ぐらい上昇するということをめどに作業をやったわけでございます。
  35. 井上普方

    井上(普)委員 私は、もっと支出は多くなってくるのじゃないかと考えるので、一四・五では足らなくなってくるのじゃないかと考えるのですが、これは財政再建との関連においてつくられたものでございましょうから、それ以上のことは後ほどほかの同僚議員が質問すると思いますので、この程度にとどめておきます。  いずれにいたしましても、地域社会を建設する、こういうことになりますと、地場産業の育成のみならず産業再配置という問題が私は起こってくるのじゃなかろうかと思うのです。総理、幾ら田園都市構想と申されましても、やはり産業再配置というものが一つの大きな眼目になってくると思います。と同時に、地場産業の育成ということもこれまた大きな問題になってくると思うのです。  私どもの方に椿泊という一つの漁村がございまして、これは町が大体三キロぐらい長さがありまして、小型の自動車しか入れないというような純然たる昔の田舎町です。昭和四十二年に私その町に参りましたところ、家が大体三分の一は空き家だったのです。そして、消防団も女でなければ消防団がつくれない。そこの氏神様のお祭りは、みこしを海の中にはうり込んで実に勇壮なお祭りだった。それもできないというような状況でございました。ところが、五、六年たって行ってみますと、その町は六百戸ですか、それも全部家が詰まっておる。全部そこに若者が帰ってきた。ハマチの養殖だったのです。ハマチの養殖によって町中に全部──新築の家までも建つようになってきた。これを見まして、過疎過密の現象といいますものの、やはり地域住民がそこで生活できる経済的基盤、これを確立しなければ、幾ら定住圏構想と申しても、あるいはまた田園都市構想と申しましても、これは確立は無理であると私は思うのです。  そこで、産業再配置というような問題もこれからの大きなテーマになってくるでありましょう。これに対する大平さんのお考え方をひとつ承りたいのであります。
  36. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど通産大臣も申し上げたように、各地域におきまして雇用の機会が造出されて、そこで住民が定着していくという経済的基盤がなければ、田園都市といっても成り立つことはできないこと、あなたの御指摘のとおりでございます。したがって、地場産業の維持、育成の問題、新しい産業の導入の問題、そういう問題はこの構想の重要な柱の一つだと私も考えております。
  37. 井上普方

    井上(普)委員 これが摩擦がないようにやっていくには、やはり先ほども申しましたように、コミュニティーあるいは住民参加というものがなければならないと私は考えるのであります。そういう観点から今後も政策を進めていかれることを強く望んでやみません。  そのほかに、大平総理大臣の演説を承って──経済企画庁長官、七カ年計画の基本構想大平さんの考え方を基礎にしてつくったものでございましょうか。
  38. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 これはちょうど内閣の交代が十二月でございましたので、それから急遽、従来積み上げておりました各省のデータに対しまして、ただいま委員からお話のございましたような、あるいはまた総理からお答え申し上げましたような点を極力色濃く入れるつもりで、また入れたつもりで一部の修正をやってもらっております。
  39. 井上普方

    井上(普)委員 私は一つの問題提起をいたしたいと思うのであります。  郵政省における労使の紛争というのは深刻なものがございます。そこで、私も田舎へ参りまして、全逓の組合事務所へ行ってみました。そうしますと、これは白浜さん、聞いていただきたいのですが、自転車置き場の一角をブロックで築いて、そしてそこを組合事務所として提供しておるのでございます。上は波形のスレートである。夏行ってごらんなさい。かんかん照りになって中へ入れない。冷房機は全然効かない。扇風機が吹いたところで、これは余り効かない。こういう事務所しか郵政省は貸してないのです。まだ新しい庁舎、それもりっぱな鉄筋の庁舎ですよ。そこの組合事務所へ私ら行きましたところが、地下です。十五平米くらいの狭いところで、しかも暗い。そこで事務をとらしておる。これがいまの郵政省の全逓に対する姿勢なんです。白浜さん、あなたも私も医者の端くれですね。特に白浜さんは長崎だと承っていますが、大体長崎の医学というのはポンペの医学というものをずっと伝承しておる。ポンペの医学というのはともかく一番衛生ということを重点に置いたものである。白浜さん、あなた、組合事務所をごらんになったことがありますか。自転車置き場の一角にあるやつは暑くてネズミも入りませんよ。人間の住める状況じゃないですよ。そういうような状況に置いておるのが郵政省の立場なんです。ここに労使紛争の根本原因がある。どうでございますか、郵政大臣。
  40. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 お答えいたします。  私は見たことがあるかと言えば、見たことはございません。また、いまの御質問の点については、いろいろ経過があるのだろうと思いますが、私どものところで勤務される方は、勤務中はそこで居住されるわけではないと思いますので、恐らく別の意味で御使用になっているのじゃないかと思いますから、その点については事務当局からお答えさせます。
  41. 井上普方

    井上(普)委員 お知りにならぬならお知りにならぬでいいのです。そのまま聞いていただければいいのです。ともかく、波形のスレートがありますな。あの下でブロックを築いて、自転車置き場の一角につくっているのですよ。ネズミも入りませんよ。人間扱いをしてない。ここに郵政紛争の原点があるのです。郵政紛争の一面は人権闘争なんです。だから私は言っているのです。ここは居住じゃないからと言いますけれども、夏の五時になってごらんなさい、そこへ集まるのです。私らはそこに三分とおることができません。これが原点となって紛争が起こっているのです。どうです。おわかりになりますか。  だから、このたびの郵政職員の中の不満を見ましても、私らが考えますと、実に近代社会では考えられぬようなことが行われている。お茶を飲んでおりますと、もってのほかだと言って大声でどなってみたり、あるいはまた便所へ行きますと言って便所へ行った、本当に行っておるか行っておらぬかのぞきに来るというのですから。本当なんです。これは全国にあるのです。あるいはまた、えらい体の大きい郵政職員がおる。官給のジャンパーが着られなかった。やむを得ず自分の持っておる全逓のマークのついたジャンパーを着ておったところが、おい、ジャンパーを脱げといって寒い日に脱がされて、とうとうかぜを引いたというような実例がある。いや、本当なんだ。そして医者に行きます、病欠をいたしますと言うと、上司がやってきて、こいつはずる休みしておるのじゃないかというので、薬袋を出してみろと言って要求しておる。こういう事例がたくさんあるのです。たくさんというか、ほとんどなんだ。昔のしゅうとめの嫁いびりのようなやり方をやっておる。考えてごらんなさいよ。三六協定を結ばない。がんばっておる。三六協定を結ばないということはどんなことですか。年末の繁忙手当をもらわないということなんです。残業手当をもらわないということなんです。月給十二、三万の職員が繁忙手当とさらにはまた残業手当を──大体十万円になります、のどから手が出るほど欲しい、欲しいけれども、自分らの人権を守るためだと言ってがんばっておるのがあの年末闘争じゃございませんか。ここに原因があるのです。  また、安全対策にいたしましても、公務災害の件数を見てみますと、現に一番多いじゃないですか。林野庁とおたくが一番多いじゃないですか。安全対策をやってくれと言ったってそれをやらない。だから腕が折れたというようなケースも出てきておるじゃないですか。また、年末におきましては、ともかくあの狭い四十五坪のバラック建てのところに百五十人も人間を押し込んで、アルバイトの職員をやらせて、二階の座板が落ちて何人けがしていますか。重傷を負っていますか。こういうふうに人間らしい労務政策を行っていないところに郵政の労務紛争があるのだと私は考える。 ここの経済七カ年計画の構想の中に、「職場のほか、家庭や近隣社会における潤いのある人間関係の上にうちたてられなければならない。」と「新しい日本型福祉社会の実現」にはこういうことを書いてございます。いまのままでありましたならば、これは空念仏なんだ。早く紛争を解決するように、そして潤いのある人間関係を打ち立てることこそ私は必要だと思う。総理大臣、いかがでございますか。
  42. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの郵政労使間のお話は、きわめて特殊ではないかと思うのです。私も長いこと産業界におりましたし、現在の民間においては、いまお話しのような事態というものはほとんどないのではないかと思います。全体として見て、日本の労使環境というものは戦後三十年の間にいろいろな意味で非常に発展をしておると思うわけでございまして、私はそういう事態を踏まえて、特殊なケースは別といたしましても、やはり日本社会の持つ一つのお互いの信頼感というものを大切にするということ、そうしたものを基盤にしてのこれからの経済を考え、日本社会を考えたい、こうしたことをわれわれはこの七カ年計画の中で申しておるわけでございまして、その点につきましては、ただいまの御指摘の郵政関係が全体ではないという認識でございますので、御了解いただきたいと思います。
  43. 井上普方

    井上(普)委員 何でのこのこ企画庁長官が出てきたのかわからないのです。  とにかく……
  44. 竹下登

    竹下委員長 井上君に申し上げますが、郵政大臣を指名いたしますので……。白浜郵政大臣。
  45. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 井上委員から御指摘された問題につきましては、私も詳しくは存じませんので事務当局からお答えさせますけれども、どうも余りにもわれわれが知ることと差異があるようで、私も驚いておるところであります。したがいまして、いま聞かされた問題などについては十分調査をさせていただきたいと思いますが、なお公労委の方に提訴されている問題もあるようでありますから、そちらの方からの点も解明されてまいるだろうと思います。したがいまして、事務当局からもお答えさせます。
  46. 井上普方

    井上(普)委員 その前に、大臣、あなたは何もお知りにならずに、初めて聞くことが多いとおっしゃる。そのとおりなんです。あなたは組合とお話ししたことありますか。組合とあなた自身がお話しになったことがありますか。あなたの前には郵政官僚が壁をつくって会わせないじゃありませんか。あなたに会いたいということを組合が言っても、郵政省の役人どもがかきをつくってあなたに会わせないじゃないですか。そこに信頼関係が生まれてきますか。
  47. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 組合の代表の諸君と会う機会はありませんでしたけれども社会党のここにおるそうそうたる方々とも二回もお会いしていろいろ承っておりますし、また私の方の事務当局の諸君も、そうまんざら私にうそを申しておるとは私は考えておりません。
  48. 守住有信

    守住政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな点の御指摘がございまして、当初は組合事務室その他いろいろな点があったわけでございますが、組合事務室の点についてだけまず申し上げますと、勤務時間中は職員は仕事優先ということでございます。したがいまして、便宜供与という意味でそれぞれの庁舎の中で考えておるわけでございます。ただし新しい庁舎等になりました場合はもちろん環境のよいところへ、ただし一階の場合はお客様優先でございますので、窓口だとか郵便の業務だとかということになりまして、場所の点はなかなか思うようにいかない点があるということでございます。  それからまた、最後の大臣と全逓幹部との会見でございますが、年末においてもそういうことを考えたわけでございますが、大臣の場所で決裂になってしまうという状況ではかえっていかがなものかということで、そういう場を設営しようということで考えたわけでございます。  それからまた現在も非公式にも全逓との間に接触を持って考えておるわけでございますが、まだ、なおいろいろな違法行為の問題の処理というふうなこともはだかっておりまして、その間でいま一つ合意ができていない。ただし、いろいろな合意の道を探っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  49. 井上普方

    井上(普)委員 便宜供与とおっしゃいますが、それは規則で何とか言いましたらそうなるでしょう。しかし、人間らしい関係、これが一番基礎じゃございませんか。大平さんのおっしゃる信頼がともかくできるような世の中にしようじゃありませんか。それさえやっていないんだ。この組合事務所にいたしましても、自転車置き場の一角ですよ。これは私の方にあります阿波池田の郵便局、それから小松島の郵便局、私の方には四つしか組合はございませんからね、この二つは自転車置き場の一角ですよ、ブロックを積み上げて。下からはすうすう風が来る、上から風が来る。夏は、上が先ほど申しました波形のスレートのやつですから、かんかんくる。ここには当然組合が雇った書記局の人間もおります。年じゅう勤めておるんです。人間らしい扱いをやっていないじゃないですか。それから、新しい庁舎にいたしましても、地下でやっています。三階のいいところはどこが使っておるかというと散髪屋に使わしておる。散髪屋は、月に二回しか使わぬところに、三階のいいところを使わしておる。組合の事務所は地下の一階、しかも外からの自動車の排気ガスがぶんぶん入るようなところを使わしておる。十五坪ですよ。こんなことをやっているんだ。こんなことをやっておって、そうして組合幹部が大臣に──役人というのは、これはもう小じゅうとみたいにして、あるいはしゅうとめのようにして組合員をいじめておる。だから、もうこれは信頼がない。特に本省の役人はそうなんです。だから、大臣に会わしてくれと言ったら、待ったと言ってともかく会わせない。そういうようなことができますか。  あなたの方の公務災害を見てごらんなさい。いかに多いか。これは公務災害の補償の統計なんですが、郵政省は一万一千二百八十、林野庁ですら三千五百です。「国家公務員災害補償統計」というものがあります。これを見てみますと、総数一万七千四百四十七のところで一万一千二百八十、これが郵政省の公務災害です。どうです、あなたも医者の端くれだ。これを見てどう思います。このことについて、あなたの人間としての御見解を承りたい。
  50. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 医者の端くれかどうかわかりませんけれども、確かに災害の数から言うと非常に多いと思いまして、私が承っておるところでは交通災害が非常に多いということを承っておりますから、そのような点については、今後十分労使話し合いの上で解決をしてもらいたい、それを念願いたします。
  51. 井上普方

    井上(普)委員 労使の話し合いと言ったって、あなたは使の方の大将でしょう。キャップでしょう。至急にキャップ同士でお話しになったらどうですか。やらなければならぬでしょう。どうです。早急におやりになりますか。
  52. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 今度の闘争の基本に触れる問題は、私どもの経営管理上の基本の問題、人事管理の基本の問題に触れる問題でございまして、それに対してノーかイエスか言わなければこの闘争をやめるとかやめないとかという問題がありましたので、いま人事局長が申し上げましたように、その問題ならばこれはお会いしてもなかなか解決する問題ではないということで、どっちも代表が会って、お互い信頼し合って話し合ってみたらどうだ、私はそのことを申しておるわけであります。これは同じ職員同士でありますから、決してかたき同士でも何でもないわけでございますから、信頼の上に立って話し合ってもらいたいということを私は念願し、そのことをお願いしているわけであります。
  53. 井上普方

    井上(普)委員 だから、あなたがどうして会わないのですか。あなたに対してはまだシロだから、白浜さんがシロだから、ひとつ会って実情を訴えたいというのであれば、あなたはそれを素直に──一回会っただけで解決するとは私どもは思っておりませんよ。あたりまえの話です。あなたが会って、話し合いをしてごらんなさい。根本には、先ほど申しましたように、これは人権闘争という一面があるのです。これは大臣、局長に相談しなければ話ができぬというのでは困る。  大平さん、どうです。これだけの闘争に全然大臣は会ってないのですよ。大平さん、どうです。内閣を預かる者として、これだけの大きな闘争が起こって、あなた指導力を発揮させたらどうですか。
  54. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 いま申し上げましたように、私が会う会わぬという問題よりかも、十分信頼の上に立って話していただければ了解することだと思いますから、どうぞそういうふうな点で皆様方もひとつ組合側の方をお勧めしていただきたいと思います。
  55. 井上普方

    井上(普)委員 自分でやらずに、あなた、そこの最高の責任者でしょう。何を言っているのです。  総理にお伺いします。あなたも潤いのある人間関係をつくり上げようというお気持ちを持っておる。官僚がともかくああいうように大臣の意思というものを左右させるのです。会うと言うなら何回でも会ったらいいじゃないですか。だから、総理、指導力を発揮しなさいよ。
  56. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 私が代表の方とお会いして、その解決の糸口を見つけたいと思いますから、その機会をぜひつくるように皆様方も御努力願いたいと思います。
  57. 井上普方

    井上(普)委員 ともかく一つの糸口ができてくると私は思う。その答弁をするのに何遍行き来するのです。役人が抵抗しているのですか。早急にひとつ会っていただいて、糸口をともかくつかんでいただきたい、実情を認識していただいてやっていただきたいことをお願いいたしたいと思います。  続きましては、明るい社会をつくるということは、これは当然のことでございます。いま日本社会におきましては、同和問題という暗い一面があることも御存じのとおりであります。対策措置法ができまして、去年の臨時国会で三年間延長になりました。しかし、私どもはどうもいまの措置法では不十分なところがたくさんあると思います。私の同和問題に対する基本的な考え方を申し上げて総理の御認識を得たいと思うのであります。  総理も学生時代、若いクリスチャンの学生大平正芳さんは、高松高商時代に高松事件に遭遇せられて、若い血潮をわかしただろうと思うのです。十分御存じだろうと私は思います。  この同和問題は、なぜこういうようになってきたかといえば、これは封建時代の遺物であるし、いわれなき職業差別であった。ところが、明治以来、職業の制限というものは依然として残り、専売事業が、大資本がどんどん入ってきて事業をほかに取られてしまう。のみならず、居住の制限というものがあった。依然としてずっと続いてきた。だから、貧困と環境の悪化、これとさらに差別の三つが悪循環して今日に至ったと思うのです。でございますから、平和憲法のもと、基本的人権を守らなければならない現在におきましても依然としてある。これを直す一つの方法として、環境をよくしようではないかということで四十四年に措置法ができたのだと私は認識するし、大いに歓迎したものでございます。  昭和十年に調査をいたしますというと、部落は大体五千カ所あったのです。ところが、総理府が調べておるのは四千カ所になっているのです。あるいはまた十年間にやった仕事も、たくさん仕事が残っておる。  この附帯決議におきましても、一つは実態の把握に努めろということを強く要求いたしております。あるいはまた、法の総合的な改正及び運営の改善について検討することと申しております。まだ不十分であります。現に福島県におきましては指定地域一つもないのです。全然ないのです。石川県もないのです。いかに実態調査ができていないかという証拠じゃないかと私は思います。私のくににおいてもまだ未指定地域があります。当然仕事をやらなければならないところをやっていない。未指定になっておるところがあります。私が知っておるだけで二カ所です。こういうような実態でございますので、三原長官はこの附帯決議をいかにお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思うのであります。  前の稲村長官はこう申されております。「このたびの三年間の延長というのは、これをもって打ち切るというものではありません。そういう意味で、この三年間の中で、今後同和対策事業をどう進めていくか。たとえば、基本的な問題、あるいは人権的な問題、教育問題、こういったことが、この三年の中で、いろいろ研究していただいたり、あるいはまた、現地の実態をいろいろ調べていただいたりして、そして、この三年間の中で、これから同和対策事業をどう進めるのか、こういうことが、今度の三年の延長に意味があると私はこう思います。」そのとおりでございますか、どうでございますか。
  58. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 同和問題についての基本的な考え方、私は井上議員と全く同じ気持ちでおるわけでございます。今回の三年延長につきましても、皆さん方と一緒にこの延長に取り組んでまいりました。したがって稲村長官のいまの御発言も、私もその気持ちは十分承知をいたしておりまするし、引き継いでまいっておるわけでございます。  したがいまして、三つの内容につきましても、たとえば実態の把握にいたしましても、いまいろいろ申されましたように、現状におきまする事業の問題あるいは事業量の問題、あるいは新しくできた地域の問題等もあるわけでございます。それから運営の問題もございます。効率的な運営を執行面ではやってまいりましたけれども、やはりまだ運用面で問題のあることも承知をいたしておるわけでございます。そういう点で、私は実際に見直さねばならぬ点もあるかどうかというようなことも実態把握をしなければならぬと思いまするし、また、そういう面で現行法でやっていけるのか、あるいはいま言われたように、総合的に判断をすれば法の改正も必要かどうかという付帯条項の第一点がございます。  それから第二点は、地方財政の負担が過重負担になっておるぞという御指摘でございます。この点につきましては、私どもも予算の増でございまするとか事業の拡大というような点で、ことしの予算も一二三%というような増額予算を厳しい中で組んでまいっておるわけでございます。しかし問題は、単独事業でやっていただいておるような問題もあるわけでございます。それがやはり同和対策の一環としてとるべきかどうかというような問題についても、検討を要する問題であろうと思っているわけでございます。  それから次には、啓蒙でございます。これは、私も実は長い間同和問題と取り組んでまいっておる一人でございますが、そういう点でやはりいま言われるように啓蒙の点は国民的な課題でございますし、やはり国民全体のそうした御理解、御協力が必要だと思っておるわけでございます。これは各関係省庁はもちろんでございますが、地方公共団体等とも絶えず連絡をとりながら進めてまいらなければならぬ課題である、そう受けとめてまいっておるところでございます。
  59. 井上普方

    井上(普)委員 私は日本の民主主義を発達させるためには、やはり基本的人権というものを中心に据えたものでなければ絶対ならないと思います。その基本的人権が侵されておるこの実態、これは世界にも恥ずかしいことだと思います。十年間で事業ができておりません。環境問題においてもまだ不十分です。それから法の運営におきましても、確かにまだまだ問題があると思います。この大臣の答弁、大体納得できたのでありますが、法の運営についての改善、これについてはどう考えられておりますか、ひとつお伺いしたいと思います。
  60. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 法の運営につきましては、一つは運用の面とも関係がございまするし、なおまた、事業あるいは地域指定等の問題等についても、もっと検討を要する問題がある。それから予算的な措置につきましても、いま単独事業でやっている面というものは非常に莫大なものでありますから、これを法的にどう見るのかというような問題もあるわけでございます。そういう点、総合的に判断をする必要があると考えておるところでございます。そういう点で、現行法でまず考えてみたいと思いまするけれども、現行法ではどうしても賄えないのかどうかというような点についていま、関係省庁とも連絡をしながら鋭意検討を進めさせておるところでございます。
  61. 井上普方

    井上(普)委員 まだまだ措置法が不十分なものがあります。特に啓蒙活動につきましては、はなはだ不十分なものがあると思います。またまた地名総鑑が新しく出されたやにも承っておるのであります。こういうような差別助長のものがなお後を絶たない。まことに嘆かわしい次第であります。こういうような面を十分お考えの上で、さらにせっかくのひとつ御努力をお願いいたす次第であります。  続いて、経済問題について、物価の安定について質問をいたします。これも先ほど来物価の安定ということはたくさんの方々が質問されておりますので、私は限って申してみたいと思います。  そこで、円高差益は大体五十二年、五十三年度で七兆円ある、こう言っておるのですが、この七兆円は、ほとんど流通過程と大企業の赤字減らしにつぶされてしまったと私は思うのであります。これはともかくといたしまして、五十四年度には円高差益というのは一体どれくらいあると予想されますか、お答え願いたいのであります。
  62. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 五十四年度の円が幾らになるかということは、われわれの計画をつくる時点では大体百九十円と計算しておりますが、御承知のように、ここ一カ月の間にも相当に変動があるわけでありまして、正確に把握できません。  もう一つは、日本の輸入が、もちろんふやしていかなければなりませんけれども、それが一応の想定はございますけれども正確にはまだ把握できない状態でもございますので、大体概算して申し上げると九千億程度になってしまうのではないか。非常に少ないだろうというようなことを一応想定いたしております。
  63. 井上普方

    井上(普)委員 九千億円はともかく円高差益があるだろう、こう申されました。ところが、やはりこれはともかく九千億円あるというのですから、これを消費者に還元させるような方策を講じていただきたいと思うのであります。  そこで、日本の円というものは国際ドル交換においてはえらい高くなったけれども、実際において円の購買力というものはどんどんと低下しつつある、こう私は思うのであります。  ここに経済企画庁が出しております経済白書があるのです。この数字を見ましたら、おい本当かいなというような数字ばかり並べているのです。これは五十三年度の「新しい暮らしと地域のなかの連帯」と申されまして、そして「円高と暮らし」というところがあるのですが、これはもうともかくひどいものだなと思って私は感心したのであります。たとえてみますというと、ここにあります、この六十六ページから七ページにかけてのこの数字、まあいいかげんなものをよく書いたものだなと思うのです。これが、レモン一つとってみますというと、日本で四百十七円、ニューヨークでは四百五円というのです。そういう値段が常識的に考えられますか。それについては、あそこでは当時レモンの不足が起こっておった、飢饉だったのだから日本と差がなかったんだと言います。東京で四百十七円、ニューヨークで四百五円、常識では私ら考えられぬです。ただし、逃げ道はちゃんとつくっているんですね。一番最後に小さい字で、品質、規格は必ずしも一致しないと書いてある。そうして、政府のものですから、いかにも円高が暮らしの中に及んだのだという書き方をしているのです。一つレモンを例にとりますというと、これはきのうもまた企画庁の役人にこんなでたらめな数字があるかと言いましたら、それじゃひとつ調べ直してみますと言いまして、五十三年の十一月には東京は三百四十八円で、そしてニューヨークでは百五十一円だったというから、これが本当だろうなといって私は申したのであります。  これを麗々しくこういうふうに書いているのです。ここに数字がたくさんあるのです。ですから、もう少し企画庁、こういう数字につきましては、本当に客観性のあるものをひとつお出しになるようにお願いいたしたいと思うのです。国民は迷いますよ、こんなことを出しますと。  それから、もう一つ申しますと、カラーテレビが日本では十二万一千円、アメリカでは十万四千円。大平さん、アメリカの方がカラーテレビが安いのですよ。これは二百四十円の当時ですが、二万円安いです。それで実際は、調べてみますとえらい差がある。どうです、この国内の十二万一千円、これを下げようじゃないですか、うんと。  実は私、シアーズといいまして、向こうの販売会社で、百貨店とスーパーとのあいのこみたいなところの価格表を手に入れて調べたのです。ともかくびっくりするような安さです。そして経済企画庁は、これを持っているのだ、私はこういうので調べているのだが、持っているかと言ったら、持っていませんと言うのです。だから、やむを得ずこれにいたしましても、ジェトロの職員に頼んで調べたのだ、こう言う。そして品質、規格は必ずしも一致しないと言いますから、ひどいものです。  さすが労働省はこの資料を持っていまして統計資料をつくっております。なるほどな、労働省はやっぱり調べているのだな、やっぱり役所は何千人とおるから中にはちっとましなのもおるんだなと思って私は感心いたしたのであります。もう少しこういうことは的確にやっていただきたい。  通産大臣、これを見ていただきたいと思うのです。委員長、よろしゅうございますか。
  64. 竹下登

    竹下委員長 はい、結構です。
  65. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにいたしましても、ともかく国内の価格が高過ぎる。冷蔵庫にいたしましても、向こうの倍です。電子レンジにいたしましても高過ぎます。こういうのをひとつ通産省、きのうの新聞を見ますと、これから物を安くするような方向で物価安定のために力を入れると申していますが、国内産品を下げるような努力をひとつやったらどうです。
  66. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 国内価格を下げるように行政的にはこういう業界に大いに注意喚起をしておるところです。ただ、何といっても日本の国内は競争が激しゅうございまして、品質とかそういう面では相当競争も激しく、いい物を提供しております、こういう申しわけもあるわけですが、なおひとつ将来に向かって価格引き下げの粘り強い行政指導をしていきたいというふうに考えます。
  67. 井上普方

    井上(普)委員 品質がいいなんと言ったって、使いもしないUHFのものをくっつけて値段を高くしているのです。今度は世界に先駆けて多重放送なんというのをやる。消費者のともかく買いかえを促進させるような政策をいままでとってきているのですよ。これは悪いとは私は申しませんよ。悪いとは申しませんけれども、そういうように、それをつけることによって価格をうんと上げる。こういうことで買いかえを促進させていって、ともかくやろうとしておる。値段を下げるような努力をひとつやっていただきたいと思うのであります。  公取、どうでございますか。ちょっと私は高過ぎるように思うのだ。お調べになるおつもりありますか。
  68. 橋口收

    ○橋口政府委員 家電製品は三兆円を超える巨大な市場でございますし、たまたまいまカラーテレビについてお話がございましたが、昭和五十年に公正取引委員会におきましては、家電製品の主なものにつきましての生産、流通、販売の実態を調査したことがございますが、その間に取引の形態等に全く問題がないわけではございませんので、しばらく調査の期間があいておりますから、昭和五十四年度には家電製品全般についての生産、流通、販売の実態について調査をいたしたいというふうに考えております。
  69. 井上普方

    井上(普)委員 ともかく円は交換レートにおいては高くなった。しかし、購買力はどんどんと下がっておる。これは購買力平価が下がっておるわけでございます。購買力平価につきましてはいろいろと資料が出ておりますが、経団連におきましても、購買力がえらい下がった、アメリカの半分だ、円はドルの半分だ、西ドイツよりも七割近く高いという計算を出しております。私はそこまでとは思いませんけれども、これは労働省の統計情報部の試算でございまして、御苦労をしていただいたのでありますが、この結果、購買力平価は、アメリカと比べてみますとアメリカは二九七という数字が出ています。まことに客観的に出ていると思うのです。それから西ドイツにつきましては一一五という数字が出てきています。こういうようなところをひとつお考え願いまして、しかも労働賃金は世界の水準並みになったなんと言いますけれども、使える円の価値というのは、先ほども申し述べましたようにアメリカの半分、西ドイツの七割というようなことで、労働者、勤労者の生活というのはまだ世界の一流に達していない。これが今後の春闘においてどういうようにやられるか。一方、国際競争力というような問題もある。なかなかむずかしい問題だと私は思いますけれども、実態はこういうものなんだ。だから私がここで言いたいのは、これは本当は企画庁でやるべき仕事なんですよ。ところが、それをやらずに労働省統計情報部が購買力平価を計算するなんということは間違っていると思うのですよ。消費者保護の仕事は企画庁にあるでしょう。こういうような統計をおやりになったらどうでございますか。
  70. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 円の平価がどうだという問題につきましては、われわれも非常に関心を持っておりますが、現時点で世界を通じての統計と申しましょうか、それを計算するのには余りにもいろいろな問題が複雑過ぎまして、結局二、三のサンプルをとってそれだけを比較するということは可能だというわけでありますが、全般でそれを推定することができないので、その報告にもありますように、ジェトロの数字を出しておるわけです。  これはお尋ねではございませんけれども、われわれも大いに考えていることは、結局食料品が非常に高いということだけはきわめて重大なことであって、消費者保護あるいは一般の国民の生活水準を考えた場合に、やはり食料品を何としても下げていく努力をすることがきわめて重要だという基本的な認識を持って消費者行政を進めてまいりたいと思っております。
  71. 井上普方

    井上(普)委員 食料品が高いことはそのとおりでありますが、食料品だけではありませんよ。企画庁はこれもお持ちになっておらぬらしいから貸してあげますよ。調べてごらんなさい。衣料品にしても日本がはるかに高いのです。それは海外を旅行してみまして、皆さんいかにも安いなあという実感をお持ちだろうと思うのです。衣料品だって安いのです。もうあらゆる製品が日本よりも安いというのが先進工業国の実態じゃございませんでしょうか。われわれはそれに近づけなければいかぬ、そして円高というものが国民生活によい結果をもたらすような方法を私らは講じていきたい、講じなければならぬ、それが政治の責任だと私は思うのです。といいますのは、考えてもごらんなさい。輸出業者がどんどん輸出して、それで円がたまった。円がたまることは国としては結構なことだけれども、その見返りに向こうにどんどんつぶされるような産業も出てきているのですよ。ですから、ここはやはりそういう面からいたしますならば、消費者に還元さすのだ、国民に円高を還元さすのだということをお考え願いたいと思うのであります。  この問題につきましては、公共料金では当然起こってこなければいかぬのでございますが、政府は一体いままで何をやったか。もう航空運賃は、これは円高で航空運賃が一番高いのはわかり切った話なんで、まあ少し下げるようでございます。早いことひとつやっていただきたい。運輸大臣、よろしゅうございますね。海外料金が高いのを安くしていただきたい。  それから、去年の通常国会におきまして、私は、国際電電の電話料金をもう少し下げたらどうだ、こう申したのであります。白浜さん、またやるのでまことにお気の毒なんですが、お許し願いたいと思うのです。  国際電電は、ニューヨークから日本へ電話をかけてくるときに三分間三千二百五十円なんです。日本から向こうへ三分間電話かけたら千八百円なんで寒「逆だ、逆」と呼ぶ者あり)こっちからニューヨークへ電話しますと千八百円なんです。(「逆なんだよ」と呼ぶ者あり)ああ、そうか、逆だ。逆なんです。これは日本から電話しまして、着払いにします、向こうで払ってくれと言ったら千八百円で済むのです。これは直しなさいと言いましたら、直しますと当時の郵政大臣は私に約束したのです。証人は──きょうは来ておらぬな。そこの藤田さんが当時主査をやっておりまして、ああ当然だ、下げなければいかぬということになった。下げてないのですね。ところが、会社はどうなんだといいますと、これはまたもうけにもうけて、これほどいい会社というのは日本ではちょっと少ないんじゃないかというぐらいもうけているのです。これも言いますと、四十七期ですから昭和五十三年の三月期ですか、税引き前のその期の利益というのは二百二十三億円です。資本金百六十五億円ですから、その期の利益は二二五%あるのです。それから税引き後の利益は九十二億でございまして、五五%もうけているのです。それから別途積立金というのはためにためています。大体四十七期において対資本金四四%を別途積立金にしておるのです。それで別途積立金の合計は、去年の三月期、資本金百六十五億で六百十二億の別途積立金を積み立てています。小坂さん、信越化学がこんな会社だったらあなたも政界に出てくるという気持ちを起こさぬだったのではないかと、私はすぐにあなたの顔を思い浮かべたのであります。内容はこれほどいいのです。どうして値段を下げないのです。約束不履行、しかも国会において値下げさせますと言っておるのです。なぜやらないのです。これはあなたはおわかりにならぬだろうなと思うんだけれども、ま、どうぞ。
  72. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 前大臣が井上委員に値下げをしようという御発言をされておること、私もほんの二、三日前に承知をいたしたわけでございます。経過を見ますと、また内容を調べてみましても、なかなかそう簡単にいかない。特に円高の問題の勘定といいますか、そういうようなものは、私は聞いてもなかなかわからないところでもありますので、これは事務当局に御説明させますが、いま御指摘のこともありますので、私どもも今度は検討して一層真剣に値下げに取り組んでいきたいと考えております。御了承を願います。
  73. 寺島角夫

    ○寺島政府委員 ただいまKDDの利益の状況につきましてお話ございました。御指摘のとおり、確かに国内の他のいろいろな企業と比べますと高い利益を上げておることはそのとおりでございます。ただ、KDDは、御案内のとおり国際の電気通信関係を独占的に行っておる会社でございまして、日本にちょっと比較するものがございませんので、外国の同種の企業と比較をいたしますと、それに比べました場合には決して高いところにはないわけでございまして、そういうこともあわせて今後検討してまいりたいと考えております。
  74. 井上普方

    井上(普)委員 こういうように大臣が一度約束しておることを一年たってもやっておらない。のみならず、会社の利益というのは、会社が赤字であるというのであれば私らも考える、まだ言いわけが立つところもあるが、大体七百億も資本金百六十五億の会社が別途積立金と言って積み立てておる。資産内容を見てみたら、資産のうちで一番高いのが建物とある。新宿の一等地にあんな大きなものを建てて、これが資産のうちで一番高いんですよ。機械やあるいは海底ケーブルやあるいは衛星中継のあの権利とか、こんなものと比べてもはるかに高いんですよ。こんな会社なんです。値下げしなさいよ。  ともかく時間が参りましたのでこれでおきますけれども、まだまだ言いたいことがございますが、住宅問題あるいはまた土地問題につきましては別の機会にいたしたいと思う次第であります。  以上をもちまして終わります。
  75. 竹下登

    竹下委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  76. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 午前中、総理鄧小平首相会談をされたわけでございます。朝、若干の御報告があったわけでございますが、その中から何点かお伺いをしたい、このように考えております。  まず、総理は、訪中を希望されたということを話されたわけでございますが、いつごろの時期を訪中の時期と総理としてはお考えでございますか。
  78. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まだそういうことを具体的に考えておりません。国会中でございますので国会に専念せねばなりませんので、そういうことはまた国会が終わった後で考えてみたいと思っております。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 もちろんこの予算審議に集中をし、余裕もないかもわかりませんけれども総理として今後の日程を考えてみますと、東京サミット等も六月にあるわけですが、それ以後であるのか以前であるのか、大体の総理としての、もちろん政府との調整も当然なさるわけでございますが、大体の希望というものはあると思いますが、いかがでございますか。
  80. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会に専念いたしておりますので、国会の見当がつきました暁に考えさせていただきたいと思っております。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 平行線になると思います。  朝鮮半島の問題としまして、中韓関係につきまして韓国の意向を総理が伝えたということが報道されておるわけでございます。そのときに鄧小平首相は、中国としては北朝鮮を支持しており、朝鮮問題に余り深入りしない方がよい、そういうようにお答えになったように伝えられておるわけでございますが、総理の感触として、これは仲介を実質的に断ったのか、中韓国交改善を望んでいないということなのですか、その辺はどのように受け取りましたか。
  82. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仲介をするとかしないとかいう、そういう問題ではなくて、こういう機会に意見の交換を遂げるということでございます。私の方から、朝鮮問題については南北の対話が実現することを望んでおる、わが国は北朝鮮とは貿易、文化面で関係を持っておる、韓国は中国との交流を望んでおる、少なくともこの段階で経済交流を望んでおるということを述べました。これに対しまして鄧小平氏からは、北朝鮮の立場を支持する従来の中国の立場をお述べになりまして、南北間に軍事的な衝突の危険は存在しないのではないか、また、南北間の問題には介入しない方がよいと思うので、この段階では慎重な態度でおるべきだというような趣旨お話がございました。でございますから、私が、韓国が中国との交流、せめても経済交流を望んでおるということに対しまして、直接の反応はございませんでした。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府は常に、朝鮮問題の平和的な解決のために、この国際環境づくりを政府としては行いたいということを再三おっしゃっておられるわけでございますが、具体的に何をすることがこの国際環境づくりであるのか、ちょうどいい機会ですのでお伺いをしておきたいと思います。内容を少しはっきりしていただきたいと思うのです。
  84. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 朝鮮半島の問題は、第一義的には当然朝鮮の方々の問題でございまして、かねがね私どもが申し上げておるとおり、南北間の対話が実現して、平和的な話し合いが進むことをわれわれは希望いたしておるわけでございます。したがって、そういうことが進むような国際的環境の形成ということに、わが国も応分の御協力をするということであろうと思うのでございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、そのことを聞いているわけなのですよ。この国際的な環境づくりということに対して、わが国としてどういうことをしたいのかということについてお伺いしておるわけです。
  86. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 つまり、そういうこと、南北の話し合い、対話というもの、それを損ねるようなことがないようにわれわれは行動せねばいかぬわけでございますので、したがって、私どもは、南北両当局がこの問題に真剣にお取り組みになるということを阻害しないようにまず考えるということが第一だろうと思います。それから、積極的にそういう国際環境というものの形成、具体的にどこがどうと言うわけにはまいりませんが、そういうことを念頭に置いて、われわれは、あらゆる外交活動を展開する場合にそれを念頭に置いてやらなければならぬと考えております。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 阻害することのないように行動するということは、具体的にはどういうようなことですか。
  88. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本とあるいは韓国との間の信頼関係というようなものが損なわれるというようなことになりますと、これは土台がいけないわけでございますので、そういう信頼関係は常に堅持しながら、北鮮との交流におきましてもその信頼関係を壊さないようにしながら、貿易、文化等の交流を慎重に対処していくということをいまいたしておるわけでございまして、私どもがやっていることはそういう趣旨で理解されるのではないかと考えております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、きょうの会談の中で、ベトナム問題・インドシナ半島の問題が出たようでございますが、この中越問題については、報道機関からの伝えるところによりますと、中国は、ベトナムの問題をアジアだけでなく世界の問題として取り組んでおり、ベトナムの態度は制裁を加える必要があるというような発言をなさったと伝えられたということを聞いておるわけでございますが、これは、総理がお聞きになって、中国がベトナムの武力制裁というものを意図していることを明らかにした、このように受け取られたわけですか。どういうように受け取られましたか。その鄧小平首相の発言をどのように受け取られたわけですか。
  90. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 従来の中国の対越姿勢というものを繰り返して明らかにされたにすぎないので、新しい御見解であるとは思っておりません。これが直ちに武力的制裁というものを意味するというようには私ども受け取っておりません。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう心配があるというようにも感じましたですか。
  92. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いや別に、従来の態度を繰り返し述べられたという以上のものではございません。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれ心配しておりますのは、もし中越紛争というもの、こういう武力紛争が起きるというようなことになってまいりますると、これはアジア情勢ということから考えまして非常に混乱する。われわれ日本としても非常にこれは心配なことでございます。そういう点、きょう鄧小平氏に会われたときにそういう発言があったわけですから、政府としては、武力紛争等はぜひ避けてもらうようにというような、そういう自制を求めるようなお話はされましたですか、いかがでしょうか。
  94. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本は従来とも、インドシナ半島の問題は平和的解決を望んでおる旨、強く日本の希望を先方に伝えておきました。これに対しまして中国側の見解は、従来の態度、姿勢を繰り返し表明されたわけでございますが、そこに言う制裁は、それが直ちに武力的制裁というようなものとは受け取れませんでした。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした武力紛争ということにつきましては、中国だけではなく、ベトナムに対しても、わが国として何らかの要請をされるべきであると思うのですけれども、こういう点は、政府としてはどういうようになされるのでございますか。
  96. 園田直

    ○園田国務大臣 ベトナムに対しても、平和的に解決するよう、しばしば強く要請をしているところでございます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 一月十六日、中国の符浩大使が園田外相に対して、民主カンボジア政府を支援してほしいという要請を行ったということが伝えられておるわけですが、そのとき外相は、立場の相違を明確にした上で、現状では対ベトナム援助は見合わせざるを得ない、このようにお述べになったということが伝えられております。一方でモスクワ放送は、日本のベトナム援助凍結について非難しておる。こういうことから考えますと、日本のベトナム政策というものは非常にむずかしいものがあると思うのです。この点、きょうは、総理鄧小平首相との会談で何らかの要請がございましたか。
  98. 園田直

    ○園田国務大臣 本日の会談では特別に要請はございません。こちらから、外相会談で私、それから一般会談総理から、中国には慎重に行動してもらいたい、平和的に解決してもらいたいという申し入れがございました。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 慎重に対処ということは、これは当然でございますし、基本的なわが国の立場、原則というものを明確にして、いたずらに中越、中ソ対立等に巻き込まれないようにすることが大事だと私は思うのです。その点、もう一度外相からお答えいただきたいと思います。
  100. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御発言は十分注意しているところでありまして、ベトナムと話のできる数少ないわが日本でありますから、ベトナムには平和的に解決するよう要請をしながらも、一方にはこの話し合いのできるきずなを断ち切らないように、十分注意してやりたいと考えております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一つお聞きしておきたいと思いますが、カンボジアにおきます政変につきまして、政府としてどういうようにごらんになっておられるか。この武力紛争というものを内政問題として見るか、あるいは外国勢力の介入によって起こされておるのか、その辺、政府の判断を聞きたいと思うのです。また、このことによって、カンボジアの紛争によって対カンボジア政策はどのように変わっていくか。また、ベトナムに対する政策に何らかの変更を考えておるのか、この点につきまして簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  102. 園田直

    ○園田国務大臣 ベトナムとカンボジアの言い分は真っ向から対立をいたしております。しかし、国連の安保理事会で大多数の国々は、今度の騒動がベトナムの非常に強い影響力によって起こったということは各国が主張しているところでございます。また、カンボジアの内情については、ここ数日来いろいろな連絡あるいは無電の設置等ができまして、遊撃戦が組織的にできたようでありますが、依然としてこの見通しについては予測しがたいものがございます。したがいまして、わが国は、ベトナム、カンボジア両方に対し、平和的にこれが解決するよう、少なくともアジアの平和の撹乱の導火線にならぬように、ASEANの国々と緊密に連絡をとりつつ、状態を見ながら対処していきたいと考えております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 米中の国交正常化あるいは鄧小平首相の訪米というものは、一面で、中国の米中日の反ソ同盟を意識したものじゃないかということを一部では言われておるわけですが、ソ連もこの点に対して強い警戒心を示しておると思うのです。こうした情勢というものは、好むと好まざるにかかわらずインドシナ問題にも影響してまいりますし、日本の対ソ外交も非常にむずかしくしてくる。今後の動向いかんによっては対中関係にも影響が出てくるのではないか、こういう心配をするわけです。  そこで、ソ連の懸念について、ソ連がそういうように思っておるということに対してどう考えておられるか。二点として、こうした中で、わが国の対ソ外交は非常に困難になるおそれがあるわけですが、政府としてどういう展望、政策を持っておられるか。その二点についてお伺いしたいと思います。
  104. 園田直

    ○園田国務大臣 鄧小平主席の米国訪問については、すでに御承知のとおり、米国としては、米中正常化が対ソ包囲網ではないということに相当配慮をしたようでございます。副主席からの話でも、意見が合ったものと合わないものとあった、しかしきわめて成功であった、こういうことを言っておられるわけでありまして、米中及びそれに先駆けた日中というものが対ソ戦略ではないということは、今後ことごとにわれわれは明確にしなければならぬ点だと考えております。  日ソの関係はいろいろむずかしい問題が起こっております。第一には領土という問題があるわけで、非常に困難をきわめておりますが、実務的な話し合いはだんだんと進んでおるわけでありまして、両国間に共通の利害である実務的な問題を一つずつ積み重ねることによって日ソの友好を深め、その話し合いに基づいて、本来の大前提である領土問題を含むその他の問題の話し合いを続けていきたいと考えております。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、鄧小平首相来日に関しましての質問事項は終えまして、次に移りたいと思います。  昨日、本委員会におきまして、外相の方からE2Cの問題についての御報告があったわけでございます。正直申し上げまして、いわゆるこの雑談の中で出てきたということ自体、私非常に疑念が残るわけです。  第一は、米側が公式の記録をとっている会議が、雑談ということが言えるかという問題が一つであります。  第二には、外相らは退席したわけですけれども、鶴見外務審議官は当時日本側の事務方の最高責任者、グリーン国務次官補は米国の東アジア担当の責任者であるわけです。ほかに随員も残っている席でのこの話がどうして雑談になるのかという問題です。そこに同席していた職員たちも、何といいますか、記憶等においても非常にあやふやである。また、鶴見氏は死亡なさっているわけでございますけれども、なぜ、アメリカ側が記録にしておって鶴見氏は記録をしなかったか、また外相に対しても報告をしなかったか、こういう問題なんです。  こういう点、雑談の中でということをおっしゃっているわけですが、非常にその点がわれわれとしては納得しかねるわけでございますが、外相の方から、私が疑問点について申し上げたわけでございますが、御答弁をいただきたいと思います。
  106. 園田直

    ○園田国務大臣 場所は、公式、非公式の会談ではなくて、外務大臣が総理大臣会談の席に出られた後、後に残っておった事務当局がそれぞれ出入りをしておった場所であります。したがって、これはいかなる会談でもなくて、まさに雑談であって、であるからこそ、こちらには記録がなかった。しかし、今後の問題からすれば、雑談であってもそういうことはきわめて大事でありますから、記録を残すように注意をすべきであるとは考えておりますけれども、そういう意味で正式の申し入れではなくて、国務次官補からこちらの審議官に対してきのう報告しましたような話があり、審議官はああいう返答をしたわけであります。したがいまして、これは実務者会談という会談ではございません。まさに大臣が出られた後、両国の事務当局者が出入りをしている際に話された雑談であることは間違いがございません。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした問題は集中審議等もございますので、そこで詳しくお聞きしたいと思います。  あと一、二点、ちょっとお聞きしておきたいと思うのですが、きのうの発表では、米国務省の「報告書の末尾にE2C航空機への言及部分を見出した。」このようにあるわけですが、このE2Cだけであったのか、他の航空機はなかったのかどうか、この点についていかがですか。
  108. 園田直

    ○園田国務大臣 米国側の記録というよりもメモに残っていることでは、外務大臣、ジョンソン次官、インガソル大使、こういう人々が出た後、「日米貿易に関する幅広い論議の一環として、E2早期警戒システムを日本が購入してはどうか」こういう話があり、鶴見審議官からは「四次防がどのようなものになるか見通しのたたない現段階では、その点についてはなんとも言えないと返答した」ということでありまして、向こうの記録についても、このように示唆したという記録でございます。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 きのうの報告では、七三年の五月、ハワイ会談より九カ月後の鶴見審議官とインガソル駐日大使との会談におきまして、いわゆるE2C等の話が出ておるということなんですね。ハワイ会談において記録になっていないのが、なぜこの九カ月後の七三年五月の鶴見・イソガソル会談において話が出てきたか、しかも記録になっておるか、こういうこと。  初めは、政府は全然そんなことはありませんありませんと言っておったのが、アメリカ側の資料から出てきた。調査をしてきて、雑談の中でというようなそういう発表があったのですが、いま焦点になっておりますこういう問題に対しまして、やはりこういうことを聞けば国民はますます疑念というものは広がるし、深まると思うのですよ。ですから、政府としても、いままで何回もそういうことについては指摘もされておるわけでございますから、指摘されるまでもなく、やはりこういうことはすべてを明らかにしていく、そういう姿勢がなければいけないと私は思うのです。ですから、今後の解明に当たりましても、言われて明らかにするという姿勢ではなくして、すべてを国民の前に明白にしていく、こういう姿勢でひとつやっていただきたい、このように思うのです。基本姿勢をお伺いして、この件は終わりたいと思います。
  110. 園田直

    ○園田国務大臣 今朝の新聞では、外務省が一転をして記録があったと言ったというような書き出しでありますが、これは委員会の記録等をごらんいただいてもわかりますとおり、私は、こういうグリーン発言があったから、当委員会から追及を受ける前に直ちに調査をせよ、こう命じて、そうして記録を探し、記録にありませんので、当時の随員を一人一人、メモはないか、記憶はないかという点検をして、ない、ないけれども、グリーン発言と食い違っておるからこの点は米国に照会中でございます、その返答があり次第報告しますということで、本件に関しては、わが外務省は御指示がある前に調査を初め、さらに、全然ないとは言っておりませんで、わが方としては証拠はないが、グリーン発言と食い違っておるから照会をいたします、それで、照会の結果わかりましたから、直ちに発言を求めてこちらから報告をし、さらに、お尋ねのなかったハワイ会談後についてもこちらの記録その他を調べて報告もしたわけでございますので、わが外務省として、本件に関し小出しに出したとか、あるいはないと言っておって急にあると言い出したとかということはございませんので、この点は御了承を願いたいと思います。  なお、ハワイ会談後約半年して、インガソル大使その他のことがあったわけでありますが、これは正式の話があったわけでありますから記録に残っておるわけであります。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 このいま焦点のいわゆるE2C航空機問題の解明につきましては、いま外相が代表してお述べになったわけでございますけれども、今後ともひとつ積極的に取り組んでいただきたい、これは強く要望いたしておきます。  次に、政治姿勢ということでお聞きしたいと思うのですが、総理は初めてお迎えになられる通常国会でございます。そういう意味におきまして、総理の姿勢また政府の姿勢というものにつきましてお伺いしたいと思うわけです。  総理はかねて「信頼と合意」という理念のもとに政治を行っていくとしばしば表明されておられるわけですが、この保革伯仲の国会情勢のもとにおきまして、国政運営という点につきまして基本的にどのようにお考えか、簡潔にお伺いしたいと思うのです。国会運営ですね。
  112. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 与野党の間で相互の信頼、相互の尊敬の念を持ちまして、しんぼう強い話し合いを遂げて、できるだけ広くコンセンサスを求めていくという方針で臨んでおりまするし、終始この姿勢を崩さないつもりでおります。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、このE2Cの問題等をめぐりまして、ロッキード事件に続いての今回の事件でございます。そういうことで、非常に国民といたしましてもこの解明につきましては強い関心を持っておられるわけでございます。しばしば総理は、疑惑があれば責任をとるということを示唆されておられるわけですね。政治生命をかけて疑惑解明に当たるとか、いろいろおっしゃっているわけですが、疑惑があれば責任をとるとおっしゃっているその真意というものはどういうものですか。
  114. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 疑惑があれば責任をとるなんて申し上げておりません。疑惑があれば、疑惑が残らないように徹底的に解明しなければならぬということを申しております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままで責任をとるということをおっしゃっていませんか。
  116. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 E2Cの導入につきまして、私が決断をいたしたわけでございますから、それ相当の政治責任をとりますのは当然のことと思っております。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 ロッキード事件あるいは今回のこうした航空機輸入をめぐる事件、こういうものは、何といいましても政治と金の癒着といいますか、総理がおっしゃっておられます「信頼と合意の政治」という理念からいきますと、これは全く、こういうことがきれいにならずして、また解明されずして、幾ら「信頼と合意の政治」ということをお述べになっても、国民は信頼もできなければ、信頼がなければ合意というか協力というか、そういう姿勢は得ることはできないわけです。したがいまして、この解明に当たりましては、先ほど総理もおっしゃったように、本当に責任を持ってやっていただきたいということを重ねて申し上げるわけでございますが、いままで「信頼と合意の政治」という目標だけは示されておられるわけでございますが、それでは具体的に政治と金の癒着を断ち切る方策というものにつきまして明示されておられないわけですね。これを断行される決意はお持ちですか、いかがでしょう。
  118. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまダグラス、グラマン問題につきましては疑惑が問われておるわけでございます。したがって、いまの段階は、これを解明いたしまして、疑惑を残さないようにするということでございます。  後段御質問がございました政治資金の問題は、これはグラマン問題が起こる前から終始あるわけでございまして、この政治資金の取り扱いを厳正にしてまいらなければならぬということはわれわれが常に心がけていなければならぬ課題でございます。近江さんの御質問の意味は、恐らく政治資金規正法というものでいま律せられておる今日の状態について、こういう問題も出てきたわけでございますから、改めるつもりはないかというお尋ねだろうと思うのでございます。  政治資金規正法ができまして何年かたってまいったわけでございまして、五年たちますと、この経過を見て、ひとつ改正について考え、検討しようということに相なっております。いままでこの法律によりまして出された報告は二年分ございます。ことしの年初に三年分の、三回目の報告があるはずでございます。私どもとしてはこういう報告の実態をよく検討いたしまして、改正すべき点があれば考えてみたいと思っております。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 自民党さんは五十年の二月二十八日午前十時から臨時総務会を開いて、「選挙調査会が決定した政治資金規正法改正案大綱を了承、また三木首相が強く要請していた「五年以内に党経常費を党費、個人の寄付でまかなう」との企業献金辞退決議をした。」このように各紙にも報道されておったわけですが、やはり総理が決断をもって金と政治のそうした癒着を切るというような点からいかれるならば──このように自民党さんでお決めになっておるわけですね、もう来年でこれはちょうど五年になるわけでございますが、こういう点は強く実施ができるように総理としては臨んでいかれるおつもりですか、いかがでしょう。
  120. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 改正後の政治資金規正法の運用状況を見まして、五年後にさらに検討を加えるということになっておりますので、そのラインに沿って検討を加えて、改正すべき点があれば考えなければならぬと思っております。  それから、いま自民党が法人の寄付に多くを依存いたしておりますことでございまして、これを漸次個人に移していくということでございまして、急いですぐ切りかえていくというようなことは実際上できない相談でございますので、できるだけ早くそういう状態になりますように、年々歳歳改善の方向で措置いたしておるわけでございまして、今後その努力は精力的に続けてまいるつもりでございます。自民党が党改革をやりまして、広く党員をお願いし、党友をお願いしておるゆえんのものも、そういう方向にわが党の財政の構造を変えていかなければいかぬということの趣旨にほかならないわけでございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう点をきちっとしていくことが政治を浄化していくことになるわけでございますから、ひとつ総理、勇気を持って改革に当たっていただきたい。強く要望いたします。  それから、政治、外交の面から金大中事件についてちょっとお聞きしてみたいと思うのですが、すでに政府は、これは決着のついた問題だと取り合ってこなかったわけでございますが、昨年末、金大中氏が長期拘留から釈放された時点での新聞記者会見では、真相究明のため当時の外務大臣であった大平総理の善処を期待する、このように述べたと報道されているわけです。総理の「信頼と合意」という理念からいきますると、この金大中事件については全く国民としては釈然としないものを持っておるわけです。これは法務大臣も当時はそのように思ったということをおっしゃっておられると思うのですね。これは国民みんなの気持ちであったと思うのですね。この点について総理はどのようにお考えでございますか。
  122. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この問題は両国政府の間で政治的な決着をつけた事件でございます。したがって、両国の信義の上から申しまして、この問題を政府のレベルで取り上げるという立場にないわけでございます。けれども、この政治的決着をつける場合に、これまでいろいろ調べたけれども、韓国の公権力によるわが方の主権侵害の証拠は見つからなかったという前提でやっておるわけでございまして、新たな事実が判明いたしますならば問題を提起することあるべしということになっておるわけでございまして、私の立場は、そういう事実が出てまいりますならばこれを取り上げていかなければならぬことになっておりますが、いままでの捜査の状況から見まして新たな証拠は出ておりません。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 出ないのを政府としてはむしろ望んでおるかもわからぬわけですね。だから、そういう解明に当たっては、しばしば予算委員会でも問題にされておるわけでございますし、政府としてこれだけの釈然としない事件でございますし、今後ともそうした捜査といいますか、調査といいますか、それについては全力を挙げて取り組むのは当然であると思うのです。総理の取り組みの姿勢についてもう一度お伺いしたいと思います。
  124. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そのとおり心得ております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 この「信頼と合意」というのは、国内だけではなく、国際社会においても、当然総理が根本理念として置かれている理念だと思います。  そこで、いろいろと報道もされておるわけでございますが、アメリカ大統領よりわが国に対して、経済問題について遺憾とする中身の親書が数回にわたって届いておるということがささやかれておるわけです。この事実を私は確認したいと思うのです。差し支えない範囲で御答弁をいただきたいと思うのです。これは外務大臣の所管ですか。
  126. 園田直

    ○園田国務大臣 大統領から数回の、日本の経済成長に対する懸念の表明があったということは聞いておりませんが、何回来たか、内容はどうであったかということはつまびらかにする自由はございません。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、これはいかがなんですか。カーター大統領からお受け取りになっておられるわけですか。
  128. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米間には政府レベルでいろいろ情報の交換、意見の交換をいたしておるわけでございまして、その中におきまして、わが方の世界的に見まして対外経済の不均衡がはなはだしいということ、対米関係におきまして、それがきわめて顕著であるということに関連いたしましていろいろな問題が取り上げられておることは事実でございます。これに対しまして、わが方からそれなりの説明をその都度いたしておるわけでございまして、日米間に了解が漸次ついてまいりましたこともございますし、また依然として解けない問題もあるわけでございますけれども、残った問題につきましては鋭意その解決に努力しておるというのがいまの実情でございます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 日米間の通常のやりとり、いわゆる文書交換といいますか、そういう中で述べておって、いわゆる親書でない、こういうことですか。
  130. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いろいろな形で日米間の意見の交換が行われておるということを申し上げたわけでございます。どれを指して親書とおっしゃっておるのか、私にちょっと理解があれでございますが、大統領と私との書簡の交換の中で特に抗議があったとか、そういう性質のものではございません。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府としてすべて公にできないということがあることもよく承知はいたしておりますが、いずれにしても、何もなければマスコミでもああいうふうな報道はされないと思うのですね。ですから、日米関係というのは政府が常に御答弁になっておるように、外交案件においても基軸とすべきであるといつもおっしゃっておるわけですが、そういう点で摩擦が目立つように思うのです。福田総理は、七%五十三年度達成を先進国首脳会議においても、日米会談においても公約されてきた。今回六%に見直しをした。ですからこういう間におきましても、国際的にも「信頼と合意」ですか、おっしゃっておるわけですから、そういう外国からの介入といいますか、そういう印象を与えるようなぶざまなことではなくして、それであるならばこうこうこういう理由でありましてとか、やはりわが国の政府の立場というものについて、そうしたことも事前によく説明するとか、そういうぎすぎすしたものにならないようにやっていく必要があるのではないかと思うのです。こういう点はわが国の外交として、また政府全体として今後反省しなければならぬ問題だと私は思うのです。いかがでしょうか、両方から答えてください。
  132. 園田直

    ○園田国務大臣 わが国の本年度の経済成長七%程度ということは、この前のボンの会議の共同宣言をごらんになっても数字は入っておりません。会議のいきさつで七%ということを数字を入れたらどうだという意見もありました。そのときに日本側はこれを強く否定して、国内的な目標はわれわれは持っておる、しかしながら、共同宣言でよその国が全部自己の責任を数字を出して約束するなら別として、日本だけ数字を挙げるわけにまいらぬ、これは国内的の目標であるということを主張して数字が入ってなかったわけでございます。 そこで、七%成長が困難であると言ったのに対して、先般、西独のシュミット総理は、自分は過去数回のサミットで経済成長に対する、数字に対する批判はしたことがない、日本は今度七%成長は困難であるということであるが、それにしても、かかる世界経済情勢の中で六%台の経済成長をしたことは、われわれは日本の努力を非常に多とする、これがヨーロッパであったら英雄である、こういう言葉を使って言われました。米国から来書ました親書の内容は申し上げるわけにはまいりませんけれども、その内容も、七%成長が公約であったが、その公約を破るのかという干渉がましい意味のものでは決してなくて、世界経済不況のために、自分の方はドルの安定のためにこういうふうに努力しておる、日本の方も努力を願いたいという趣旨のものであったと私は記憶をいたしております。いずれにいたしましても、経済成長何%というのは、これと関連をする雇用の改善、そして日本の黒字幅の圧縮、経常収支の権衡、こういうものが大きな問題でありまするので、これについては、それぞれ機関を通じあるいは使いをやって、アメリカと緊密に連絡をとって進めておるところでございます。もっと早くやれ、こういった点は今後十分注意をして、もっと早く手を打つようにいたします。
  133. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 事前にも事後にも十分説明をいたしまして理解を深めていくことは、当然われわれの任務であると心得ておりまして、今後もそういう趣旨でやってまいるつもりです。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 わが国は全方位外交ということもおっしゃっているわけですから、これは何もアメリカだけに限らず、諸外国との、そうした「信頼と合意」という理念からしましても、今後はもっと政府全体としてそうした取り組みというものを強く要望しておきます。  それで、国内経済の問題として政治姿勢をお伺いしたいと思うのです。  一般消費税の問題につきまして、わが党は反対であります。これは恐らく他の野党の皆さん方もこぞって反対ではないかと思うのです。これは全く「信頼と合意」という理念からしまして──総理は、国会運営におきましてもそれを基軸にしていくということをおっしゃっているわけです。野党みんなが反対しているわけですね。この間総理は、社会党さんが反対するならこれは非常にむずかしい、今後努力したいということをおっしゃっているわけですが、公明党は絶対反対しておるのです。意味わかりますか。そういうことで、野党のそういう合意がないものを五十五年度からやりたいなんということは、理念に全く外れておると私は思うのです。ですから、総理がこれは一方的に踏みにじることになると思うのです。わが公明党としては、絶対反対を申し上げます。この一般消費税の導入につきまして、総理としての御見解を改めてひとつ承りたいと思うのです。
  135. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 社会党の委員の方から御質問がありましたので、社会党が反対されるということになると非常にやりにくくなってくる。いままた近江さんの公明党が反対ということになると、なおやりにくくなるわけであります。しかし、これはいまの時点において反対だということだろうと思うのでございます。私どもも、いまの時点でやろうとしているわけではないのでありまして、五十四年度いっぱい財政再建に対する論議をあらゆる角度で深めていただきまして、御理解を得て、いよいよ五十五年度には皆さんの御賛成をできれば得たい、御賛成が得られないまでも反対はしないというところまでぜひ御理解をいただくべく努力したいと考えておるわけでございまして、いろいろ御審議をいただくにつきまして誠心誠意その御審議に応じてまいるつもりでございますので、いまから絶対反対などとおっしゃらないようにお願いしたいと思います。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後政府に相当一生懸命努力をしていただいてもなかなか希望の方向には沿いがたいということを、私は確信を持って申し上げておきます。  それから、きょうの午前中の井上委員の質問に対して環境アセスメントの問題があったわけですが、これは総理として鋭意検討するということをおっしゃっておりますね。今国会で四たび目ですよ。この問題だけでも、やっていけば一時間、二時間かかるわけですから、もう出ておりますから申し上げませんけれども、これは世界的にもOECD等におきましても、もうすでに大きな問題になってきております。総理田園都市構想、三全総の問題等から考えましても、これはあらゆる点からいって一日も早く成立をさせなければならない法律であります。これを鋭意検討する、これでは私は非常に手ぬるいと思うのです。今国会に提出できるように最大限に努力をします、イコールこれが鋭意検討ということですか。鋭意検討ということは、今国会に提出できるよう全力を挙げますという意味ですか、いかがですか。環境庁長官は出したいという希望を持っておるわけです。ところがそれにブレーキをかける大臣がいかに多いかということが問題であるわけですが、しかし、何といいましても総理の決断というものが動かしていくわけです。ですから、鋭意検討、こういうのらくらした態度、姿勢、言葉遣い、これでは国民としては納得できぬと思うのです。ですから、今国会中に提出できるように最大に努力をいたしておりますということが鋭意検討ということですかということを聞いておるのです。いかがですか、総理
  137. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 これはみんな怠けておるわけでは決してないのでございまして、検討いたしておりますけれども、最終的に上程に至らないという経緯がございます。そういう経緯も一応ほぐしまして、そして前進させなければならぬわけでございますので、その点につきましては鋭意検討するという私の言葉でひとつ御信頼をいただきたいと思います。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 とにかく総理は初めて今国会に臨んでおられるわけですから、国民の皆さんも非常に注目しているわけです。そういう点で大平総理のこの実行、国民に対していかに誠実であるかということが、一つ一つが問われておるわけですから、この場だけで答弁ということじゃないわけでございますから、その点をしっかりと腹に据えていただきたい、こういうことを申し上げておきます。  次に、経済問題に入りたいと思います。  まず、経済運営についてお聞きしたいと思いますが、五十三年度のいわゆる経済成長は、七%成長から六%成長ということでダウンしたわけですね。政府としては、年間を通じての円高が見通しに大幅な狂いを出したとか、いろいろなことをおっしゃっておるわけですね。ところが、われわれが見たところ、原因が相当あるのですね。福田総理は、当時、この予算委員会におきましても、私どもは七%達成は無理だ、第二次補正予算も組んだらいかがですかと言ったのですが、その必要はない、絶対に達成し切ります、これは先進国首脳会議でもいわば国際的な公約にもなっております、絶対やりますということをおっしゃっておられた。当時の幹事長はだれか、大平総理ですよ。幹事長と総理総裁は一体であると、常にあらゆるところで明言されておったのです。それだけの責任のある立場におられたわけですよ。この六%の成長率ばかりにこだわるわけではございませんけれども、わが国の信用、またそのことが今日の雇用不安とか不況とかにやはり大きく関連もしてきておるわけですよ。したがいまして、当時の幹事長として、現総理として大平総理の反省を込めた御感想をもう一回ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  139. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 五十三年度七%の成長を目指しまして、補正予算まで組みましてこれに対応いたしましたわけでございます。その結果、数字的に七%を達成することはむずかしかったけれども、しかしわが国の経済の対外的な均衡化の方向には大変寄与いたしたわけでございます。内需の拡大には大変顕著な成果をおさめたわけでございます。このことは、国の内外を通じまして前内閣の事績は相当高く評価されておると思うのであります。しかし、去年一年は大変大きな為替の乱高下を記録した年でございまして、対外余剰の面におきましてはもくろみどおりいかなかったということは明らかでございまして、その辺の事情は国の内外によく説明をいたしまして、漸次御理解を得つつあるわけでございます。したがって私は、この七%成長を掲げて今日にまで経過してまいりましたわが党政府のやりましたことは間違いでなかったと思うのでございまして、その点について反省せよということでございますけれども、誠心誠意やりました結果、為替市場の状況からして思うに任せなかったことは大変残念であったと申し上げるほかないと存じます。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 民間住宅部門とか政府の資本支出におきまして、これは当初見通しを下回っているわけです。そういう点からいきますと、政府の時宜を得たそういう対策があったならば内需において拡大はできたのじゃないかと私は思うのです。  総理はいわゆる円高の問題のところを焦点としておっしゃっておるわけですが、そういう点からいけば、余り反省することもない、われわれとしては一生懸命やったのだと言っておりますけれども、これは政府としては大いに反省すべきなんですよ。経企庁長官、いかがですか。
  141. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま総理からきわめて概括的なお話がありましたのですが、実態も大体われわれが六%程度に推定をいたしたものと余り違わない。問題はただいまあなたが御指摘になりました国内需要についてでありますが、これはわれわれの計算でも、また前内閣において予定された計算も八%強を目指しておるわけです。われわれの推計によりますと、五十三年度は内需は大体八・三%くらいにいくのじゃないかという推計をいたしておりまして、これはむしろ全般から見て相当効果が後半になって出たというふうに考えます。  現在の民間住宅なども、伸び率は、予定は一二%程度のものが一〇%程度であったわけでありまして、その点についてはやや開きが出たと思いますが、いわゆる国民の総消費支出はほとんど計画どおりの伸びを示しております。また民間の設備投資はむしろこの期間において後半から伸びまして当初の予定よりもふえたのでありますが、もう一つの問題点は在庫の増加が予定よりも進まなかった、これはやはり円高のせいもあったと思います。  いずれにいたしましても、内需は八%にいくであろうという推測を持っておりますが、先ほど総理からも御説明申し上げましたとおり、特に輸出が相当なダメージを受けました。前内閣でもこの輸出についてはやはり減少するということを見込んでおったのでありますが、余りにひどい円高のために行き足が大変鈍ったためだと思いますが、大幅に輸出が減少した。それで逆に輸入が、国内需要が多少ふえたので、予定よりも相当ふえた。これはいずれもマイナス効果になって、その結果が六%程度というふうにわれわれいま推計をしているところでございます。  いずれにいたしましても、当初立てました内需の振興と失業問題に対する対策、そうしたものを踏まえての貿易収支の改善ということは、これは申し上げますると、五十二年度においては貿易収支は大体五兆一千億くらいの黒字であって、経常収支がやはり三兆五千億くらいの黒字でございます。これがこの五十三年度の計画で現在われわれが推計いたしておりますのは、一ドル百九十円でございますが、貿易収支が四兆三千億程度、経常収支が二兆七千億程度に減ってきておる。  こうしたことは、先ほどから外務大臣並びに総理から申し上げているように、日本の努力政策目標というものは、率は達せなかったかもしれないが着実に実現しつつあるという方向ではないかと思うわけでございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然、輸出等の問題円高等の問題で大きなハンディが出てきておるわけですから、やはり追加措置を内需の点におきましてもっとやっておればこういう六%というようなことにもならずに、またアメリカからいわゆる親書を突きつけられるというぶざまなことにもならなかった。ですから、いわゆる内需の点については八%あったと言っているけれども、やはりカバーという点から考えればもっとやればいいわけですよ。それだけの追加措置をとるべきだったのです。それが今日の雇用不安であり、まだまだ不況という点におきまして厳しい情勢が続いておる。こういう点につきましてやはり長官としては大いに反省をするべきではないか、これを申し上げておきます。  それから次に、五十四年度の見通しについてお伺いしたいと思います。  昭和五十三年度経済見通し六%をベースとしまして五十四年度六・三%の成長を見込んでいるわけでありますけれども、この五十四年度の経済見通しにつきまして民間機関の見通しというのは大体四%から五・五%なんですね。非常に政府の見通しというものが甘いじゃないか、これはもうほとんどが指摘しておるわけです。また五十三年度の六%についても高過ぎるというのが大体の指摘であります。  そこで、大平総理が七%成長断念を語られたころに「目標達成のために非常な無理をし新たな問題を生んだり後遺症まで残すようなやり方には疑問を感ずる」このようにお述べになったわけですね、御自分が話されたのですから覚えておられると思いますが。そこでお聞きしますが、この六・三%の成長目標というものは、無理でもなく新たな問題も生まれないで達成できると見ておられるのか、この点につきましてまずお伺いしたいと思います。総理
  143. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 現時点のいろいろな経済の動向を詳細に見ておりますると、むしろわれわれが六・三%程度を決定する時点とはまた様相が少し変わっていると思います。  一方におきましては多少物価騰貴ということが心配でございますし、また同時に、民間の活動もここのところ相当に動き始めております。そうしたことをいろいろと考え、物価の安定をやはり重点的な方向として経済運営をいましばらく考えた方がいいということを考えておりますが、問題は、内需は前年のような八%という高い数字にはならないと思いますが、これは六・六%ないし七%のあたりがいける。また輸出入に関しましては、前半の輸出はやはり昨年来のいわゆる円高のショックがまだ残っておりますので、全体として見て大体横ばいくらい、輸入も大体並行的な形ということで考えております。民間の方々はこの輸出の減少を非常に大きく評価しておられます。大体内需につきましては同じような成長率が出ておりますが、貿易面での輸入の増大とまた輸出の大幅な減少ということを非常に大きく評価しておられるために、平均的に五%というような成長率になっておるので、この点については民間の方々のいろいろな考え方というものはもちろんよく踏まえてまいりたいと私は思いますが、政策目標としての努力は六・三%に向かってまいりたい、そのように考えております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、同じ問題で。
  145. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この目標の設定は、そんなに背伸びをしたものとは考えておりませんで、各経済官庁におきましても、そういう感覚で積算をいたしたものでございまして、よほどの事情、条件の変化がない限りは達成ができるものと私は思います。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の予算編成におきまして、財政当局としては財政危機というのを非常にPRしておったと思うのですね。そういうことで、政府の経済見通しにおきます政府支出部門の寄与度というものが、昭和五十三年度から比べますと非常に大幅に減少しておる。したがいまして、他の項目によります成長率の拡大が期待されるということになるわけですけれども一つ一つ項目別にざっと見てみますと、雇用が非常に深刻化しておる。こういう中で毎年春闘でベースアップということになるわけですが、これだって非常に心配な問題があるわけです。  こういう中で、民間消費支出の伸びというものが本当に政府が期待するようなところに来るかという問題なんですね。あるいは民間住宅におきましても、いまそういう厳しい情勢ですから、新規購入等につきましても全体としては非常に停滞ぎみである。また、政府予算におきますいわゆる住宅金融公庫等への融資枠というものは、やはり減少しておる。そういう点から見ますと、民間住宅等もやはり鈍化の傾向がある。設備投資はどうかと言えば、電力投資等の頭打ちというものが予想されるわけです。そうしますと、民間設備もまあ停滞だ。そうなってくると今度は、いま問題になっております経常収支、ここにまた入ってくるということになってきますと、また国際摩擦というようなことにもなってくるわけです。  ですから、こういう点から見てまいりますと、六・三%の達成ということは非常に困難じゃないか、民間だって最高のところで五・五ですよ、四%あるいは五%、大体その辺なんです。重ねて聞きますけれども、どうなのですか、長官。
  147. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 仰せのように、政府支出は前年度に比べて大幅に少ないということ、これはもう財政事情からやむを得なかったと思います。  ただ、われわれは、いわゆる財政支出の中でも財投関係では色濃く、皆様が御指摘のような国民の足元への投資ということに大いに意を配ったつもりでございます。こうしたような国民の実生活に近い面に非常に努力を傾けて、いわゆる公共投資等も大幅にそこをふやしていくというような努力が一面なされておるので、その波及効果というものは、私は多少評価されていいのではないかと思うのであります。  同時にまた、内需が六%ないしは七%の中間程度の伸びが予測される限りにおいては、いわゆる経常収支もわれわれの計算だと一兆四千億くらいで、五十三年に比べてはさらに一兆三千億程度の減少になるということを目標にしておるわけでございまして、民間の予測というものは、明らかに大きく食い違っておるのはいわゆる円高の評価でありまして、これの及ぼす輸出への影響と輸入への影響というものの評価の違いでございます。したがいまして、その辺のことを日本の経済界がどう受けとめて、どうそれをこなしていくかというところがこの成長率の決定にはきわめて重要な意義があると思います。  同時にまた、われわれはこの際に重大なことは、御承知のような世界の物価水準が、多少OPECの値上げとかあるいは銅地金、アルミの値上げというようないろいろな海外要因も含まれてきておりまして、前年度は卸売物価は非常な安定を示して、むしろマイナスになったのでありますが、これを一・六%程度の上昇に食いとめるということが非常に大きな問題点であるし、また消費者物価も今年は四・九%程度にぜひ抑えたいということで、いろいろと公共料金の値上げ等の要求もありますけれども、それに闘っていくというようなことすべてを踏まえて、それから失業も百三十万程度以上には出さないというようなことで、これらの要件を満たすために六・三%程度の成長というものを全般として確保していくということを政策目標に掲げておるわけでございます。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 水かけ論かもしれませんけれども、経企庁長官の御答弁を聞いておりましても、なかなかそのとおりいくのかなという大きな疑問がわくわけです。私たち心配しておりますのはやはり国際摩擦、どうしても経常収支の拡大、政府は何とか努力をしようとしておるけれども、そっちの方向に走るという傾向がやはりあるわけでございます。そういうことになってきますと、それを抑えていく、しかしなかなか六・三の達成ということはむずかしい。となってくれば、やはり財政を中心とする政府支出の増加ということが今後問題になってくるのじゃないか、このように思うわけです。  総理は、六・三%はこのまま推移すればほぼ確実だろうというようなことをおっしゃっているわけですけれども、中間時点、いろんなポイントにおいて検討されると思うのですけれども、非常にこれは達成がむずかしい、こう判断されたときには、政府支出を増加する、そういう方策をお考えになるのか、あるいは六・三%というものについては断念の道を選ばれるのか、どちらの道をとられますか。これは総理にお願いします。
  149. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まだいま御審議をいただいておりまして、年度が始まっておりません。われわれといたしましては、この予算の成立を急いでいただいて、ここに用意いたしておりまする政策手段を適時に駆使いたしまして事態に対処してまいりますならば、新たな手段を考えなくて処理できるのではないかと思っておりますので、いまそれがうまくいかなかった場合にどうするかというような点につきましては、考えておりません。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、この経常収支の問題についてお伺いしたいと思いますが、現在、米国のドル防衛策もありまして、やや相場が安定しておるようでございますけれども、この経常収支の動向によってはさらに心配があるわけです。円ベース、数量ベースの減少があったとしても、ドルベースの輸出というものは増加しておるわけですね。増加の幅というものは多少は減少しておるかしれませんけれども、増加しておるというのが実態であります。特にアメリカの議会筋等は対日貿易の赤字を非常に気にしておるということが盛んに報道されておるわけですけれども、この政府見通しにおきます対米貿易の収支はどのくらいを見ておられるわけですか。また、今後この貿易収支の改善ということについてどのようにお考えであるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  151. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 対米貿易の関係につきましては、一応実績と五十三年の予測とを申し上げておきたいのでありますが、五十四年度につきましては、いわゆる対米貿易の輸出入というものを概定するということはいたしておりません。と申しますのは、これは経済的に見て各国がこの点に非常に注目いたしておりますので、こうしたことのトラブルが起こることも避けたいという配慮がございます。  実績を申し上げますと、五十二年度は輸出が二百十三億ドル、輸入が百二十四億ドル、その収支は八十九億ドルの輸出超過。五十三年度は輸出が二百四十九億ドル、輸入が百四十八億ドル、これは輸出超過が百一億ドルと、実は前年よりふえております。こういうような予測でございます。まだ最終の統計がそろっておりませんので、五十三年は予測でございます。  いずれにいたしましてもそのような形でございますが、実は対米関係はわれわれもいま非常に心配をいたしておりまして、単純な貿易収支だけではないので、アメリカの議会筋あたりでは個々の製品について非常に深い関心を示しておりますので、そうした個々の製品について担当各省はそれぞれの努力をしてもらっておりますが、そうしたことの成り行き等につきまして一応先方にも事情を説明をするということ、また安川大使にもそうした事態についての一応の説明を先方の議会筋にもしてもらうというような努力をいまいたしておるところでございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは同じ問題で通産大臣から御答弁いただきたいと思います。
  153. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま経企長官から申し上げたとおりであります。したがって、わが方としては、やはり臨時異例の措置ではありますが、緊急輸入を達成しようということで鋭意努力をしておる。これは御承知のとおり濃縮ウランの手当て、その加工、石油のタンカー備蓄、それから航空機のリース。これは四十億ドルぐらいを当初計画しておりましたが、昨年十二月でIMFベース二十億ドルはすでに達成をいたしました。年度内に何とかしてもうあと十億ドル程度は達成したいし、またできるのではないか。これは輸銀などへの推薦、申請といったものから割り出しておるわけでございます。なお、あと残余の十億ドルにつきましても、何とか達成する方向で鋭意努力中というのが現在の状況でございます。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 昭和五十四年度の経常収支の黒字幅というのはドルベースで七十五億ドル、ただし緊急輸入二十億ドルの実施を前提としておるわけでございますけれども昭和五十三年度で策定されましたいわゆる緊急輸入、先ほど大臣から御答弁があったわけですが、四十億ドル、それで、いままで二十億ドル達成して、あと十億ドルは今年度いっぱいでいけるだろう、あとの十億ドルはさらに努力するというお話でございましたが、品目別、金額別、もう少し詳細にお聞きしたいと思うのです。
  155. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 すでに実行されましたものを申し上げますると、ウラン鉱石等が十億八千七百万ドル、それからタンカー備蓄が四億一千四百万ドル、鉄鉱ペレットが五千七百万ドル、ニッケル、クロムが二千四百万ドル、航空機のリースが一億七千三百万ドル、医療機器が、これは二十万ドルくらいです。それから仕組み船が比較的大きくて二億ドル、ヘリコプターが百万、合わせまして十九億五千五百万ドル、約二十億ドルと申し上げたわけでございます。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、この三月いっぱいまでに十億ドルやりたいとおっしゃっていますが、その中身といいますか、お考えになっているその実行案というものについてもう一度お聞きしたいと思います。
  157. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今後の計画でございまするので、事務当局からお答えをさせます。
  158. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 一-三月の緊急輸入の見通しでございますけれども、まず鉄鉱石のペレットにつきまして、昨年中に二億二千万ドルの推薦を行っておりますが、昨年中に入りましたのは、先ほど大臣から御答弁いたしました五千七百万ドルでございまして、残りにつきましては一-三月に入ってくるものと思っております。  それからニッケル、クロム等につきましても、昨年中に五千五百万ドル推薦いたしておりますけれども、入りましたのが二千四百万ドルでございますので、残余が一-三月に入ってくると期待しております。  それから航空機リースにつきましても、先ほど大臣から一億七千三百万ドルという御答弁をいたしたわけでございますけれども、一月末までにすでにイギリス、シンガポールあるいはスペイン、ギリシャ等、十機、約三億二千七百万ドル程度のものが行われておりまして、今後もさらに三億ドルないし四億ドルのものを期待しておるわけでございます。  そのほか鉄鉱石焼結鉱等で二千六百万ドル程度のものを期待しております。  そのほか解体船あるいは仕組み船につきましては、運輸省の方から御答弁いただけると思います。
  159. 森山欽司

    森山国務大臣 運輸省における五十三年度緊急輸入の達成見込み及び五十四年度の計画について申し上げます。  民間航空機については、当初二十二機、約六億八千五百万ドルが計画されておりましたが、その後三機、約一億三千万ドルが追加され、合計二十五機となって、約八億一千五百万ドル、すべて確定契約が締結をされております。これらの飛行機の輸入時期は、五十四年度引き渡し二十三機、七億七千七百万ドル、五十五年度引き渡し二機、ここで合計二十五機になりますが、三千八百万ドル。また仕組み船につきましては、海運企業全体で昭和五十三年度中に三十九隻、約六億五千万ドル前後の買い戻しが検討されておりますが、現時点におきまする進捗状況は、運輸省から輸銀に対して推薦済みのものが二十五隻、約三億七千二百万ドルとなっており、その他については目下海運企業において外国銀行と交渉を行っていると聞いております。  なお、五十四年度の計画はまだ決まっておりません。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど御答弁を聞きまして、この四十億ドルの達成ということは非常にむずかしい、三十億ドルでとまるということを大臣が御答弁になったわけですが、そうなってきますと、経常収支の黒字幅が増加するということになるわけです。そうしますと、昭和五十三年度の経常収支の見通しは、いま二月もほぼ中旬に達しておるわけですから大体おわかりだと思います。政府として見通しをどのようにお立てになっているわけですか。このことが、また円高ドル安の原因にはなりませんか。あわせて御答弁いただきたいと思います。
  161. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 大体五十三年度の経常収支の黒字が二億七千万円ぐらい、百九十円で換算いたしまして百三十三億ドル程度ではないかと推測をいたしておりますが、私は、これが直接また円高の口火になるかどうかということは、アメリカのドル防衛策がどれぐらい効果を奏するかということ、もう一つは、やはり世界貿易が現状より多少動きが活発になるかどうかというようなこと等の問題とともに、オイルマネーの動き等がございますので、いま私がこれを予測することができないわけでございます。しかし、日本のこれだけの企業努力と、ほとんど財政だけによってここまで持ってきた日本政策的努力というものは、これは十分に国外に説明をして各国の理解を得、また、各国の経済界の理解も得る努力をいたす必要があるというふうに考えます。  失礼いたしました。経常収支黒字幅は約二兆円でございます。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした経常収支の黒字減少について、政府はそれなりに努力されておると思うわけですけれども、こういうことが、さらにまた円高を招くというきわめて強い不安を持つわけであります。  そこで、五十三年度分積み残しの十億ドル、さらに、五十四年度におきましていわゆる二十億ドルの緊急輸入ということになってくるわけですが、この二十億ドルの具体的な計画と実行時期というものについて、ひとつ詳しくお聞きしたいと思います。
  163. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは御承知のように、日本輸出入銀行による緊急輸入外貨貸付制度を五十四年九月まで延長をいたしました。内容については、先ほど御報告を申し上げたような濃縮ウランの手当てとか、石油の備蓄の上積みであるとか、航空機のリースであるとか、大体同じようなケースが重点であるというふうに思いまするが、これは来年度のことでございますので、目下各省庁で調整中というのが現状でございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは、九月までということをおっしゃっているわけですが、九月までにできるのですか。できない場合は延長等の措置は考えているのですか。
  165. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 やはり努力をしなければなりませんので、九月までと、できるだけ早い期間に成約をするという意味で九月としておりますが、事の次第によっては延長することもあり得る。しかし、なるべく早い時期に設定しておきますことが、事を促進する上に重要でありまして、九月とした次第でございます。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、非常に問題になっております雇用問題について若干お聞きしたいと思います。  五十四年度の経済見通しによりますと六・三%、この成長の場合の失業者数及び失業率、これについてもう一度確認しておきたいと思うのです。どの程度に見込んでおられますか。それから五十二年度、六%成長の場合ですね。
  167. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 失業率は二・三%でございます。五十三年度並びに五十四年度それぞれ二・三%、大体実数として百三十万人レス、以下のところです。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 労働大臣、いま経企庁長官が御答弁になったわけですが、二・三、二・三、百三十万のベースですか、五十四年も。
  169. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 さようでございます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、これは一つも改善がされないということになるわけですね。この予算編成前に大蔵省は、成長率が一%の伸びで失業者数は四万人の減少しかできない、こう言うのですね。そのときに、成長率で雇用対策をするよりも、いわゆる失業救済策を充実する方が財政面から見ればプラスである、こういう発想から今回の予算が盛られたということを聞いておるわけでございますが、この成長率一%の伸びで失業者の減少四万人ということは、これは財政当局の見解であるのか、政府全体の見解であるのか、この辺はっきりひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  171. 米里恕

    ○米里政府委員 中期経済計画を改定するに当たりまして、私ども関係各省でいろいろな面のいろいろな計算をいたしました。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 その中の一つといたしまして、私どもで関数計算をいたしまして、一つのモデルでやりました結果が、他のいろいろな事情の前提はございますが、そういう前提のもとでは、成長率一%で失業者の減少が約四万人くらいになるという数字を出したことはございますが、これはもちろん大蔵省の公式の計算でもございませんし、いわんや政府の計算でもございません。ただ試算の一つでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 単なる試算である、政府として確とした数値でないという御答弁があったわけでございますが、これだけ今年度手を打っておるということをおっしゃっても、いわゆる横ばいというようなことで、やはり国民の雇用不安というものは解決しないと思うのです。それは政府としてはそれなりの、いままでにない手を打っているのだということをおっしゃるわけでございますが、実態はこうなんですね。ですから、ここにおきまして、雇用の問題という点につきましては何らかの雇用創出、これは本当に政府を挙げて私は取っ組んでいかなければいけないのじゃないか、このように思うのです。個々の対策と同時に、いまは政府の対策というのは結果論としては非常に枝末の政策じゃないかと私思うわけでございますが、その点、雇用創出につきまして、今後これは政府全体の大きな問題になってくるわけですが、このままでただ漫然と推移を見守るという姿勢でいいのか、その点をしかとひとつお伺いしたいと思うのです。
  173. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 毎々申し上げておりますとおり、雇用の維持あるいは拡大ということは非常に重要なことでございまして、いまもお話がございましたように、緊急雇用対策として中高年齢層を中心として大幅な助成を考えたわけでございます。最近の傾向を見ますと、いろいろこういう労働省でやる施策というものが余り実効を上げていないじゃないかという御指摘をいただいておりますけれども、今度のこの対策によりますと、景気が非常に沈滞しているときに大幅な助成をしましても、なかなかこれで雇わない。また、景気のいいときにやりましても、これはむだでございます。ちょうど製造業あるいは建設業を中心といたしまして求人がふえてきておりますので、今度の制度は相当利用されまして雇用拡大に役立つのではないか。そのほか、政府といたしましては、公共事業あるいは社会福祉、教育情報、そういう方面にもいろいろと力を注いでおりまして、全力を尽くして雇用開発に努めていきたい、こう考えております。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 新しい答弁でもなかったように思います。与えられた時間もあとわずかですので、今年度、公共料金等の引き上げ等もございまして、物価の問題等、非常に厳しい、そういう状態が続くのではないか、このように思うわけですが、また増税という点におきましても、今回非常にいろいろな引き上げが図られておるわけでございます。さらには、来年度、一般消費税を導入しようというような、そういう政府の考えがあるわけです。片一方、これだけの国債増発ということで、これまたインフレの大きな危惧があるわけです。  そこで、この国債増発と増税、私は増税インフレという言葉をあえて使いたいと思うのですが、一般消費税の導入となってまいりますと、私は、これは大変なことになると思うのです。この国債増発と増税インフレの影響について、どういうように比較されておられるか、この点について大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  175. 金子一平

    金子(一)国務大臣 今日の段階では、国債消化につきましては最善の努力を尽くしますから、いま直ちにインフレの心配をする必要はないと思います。ただ、これが消化不良になったり、あるいは市中の消化の限界を超えて今後さらに公債を発行しなければならぬようなことになりますと、それが回り回って経済を硬直させ、インフレに飛び込む心配がある。ぜひここでこれ以上の公債を発行しないような歯どめをかけてまいりたいという気持ちを持っておるわけでございます。  それから、増税の効果でございますが、これは一応デフレ効果は生ずるかもしれませんが、同時に、それは歳出予算において歳出に組み込まれれば、私は、デフレ効果を減殺していく効果は十分に発揮できるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、当面の私どもの最大の関心事は、いかにしてこれ以上の公債の増発を食いとめるかという一点にかかっておると御理解いただきたいと思います。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 この増税という点につきましては、これも非常に物価の引き上げ要因になってくる。ですから、増税インフレということの懸念は非常に大きいわけです。大臣は、それは大したことないんだというような御見解ですが、これは絶対違うということを、もう時間がありませんから、私は申し上げておきます。いずれまた時間を見て論議をしたい、このように思います。  最後に、御承知のようにエネルギーの問題でございます。非常に国民も心配をしておるわけです。特にイラン情勢もああいうような状態でございます。政府としては絶対に国民に心配をかけない、前回のようなああいうぶざまなことはしてはならぬ、このように思うのです。そういう点、政府としての、国民が安心できるそういう対応をいかにおとりになっていかれるか、これを最後にお聞きして質問を終わりたいと思います。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは、この場所でも数次お答えいたしましたように、前回の石油ショックのときにはわずか五十九日分弱という備蓄しかございませんでした。今日は、民間、政府入れて九十二日分備蓄があります。したがって、当面、国民が買いだめをしたりとか、買いあさったりとか、そういう必要はさらにないというふうに断定して差し支えないと思います。ただ、イランの国際情勢が長期にわたりますると、これはやはり影響をしてくるわけでありまして、先行きを、的確な情報を入れながら私ども注視しておるというのが率直な現状であります。  そこで、本日も、私どもの真野国際経済部長がIEAに参りまして、最も新しい情報を持ってまいりました。これによりますると、イランの石油に世界が依存しておる比率、これは約一二%です。全世界の依存度ですね。わが国の場合は、製品を交えまして一九%強、まあ二〇%とも一口に言われておるわけです。ピーク時には三四、五%をイランに依存しておりましたが、だんだんだんだん低下しておる。これは非常に望ましいことでありますね。そこで、IEAとしては、七三年の、いわゆる昭和四十八年の石油危機との対比というような形で安定度を増しておる要因、これには北海油田であるとか、それからアラスカの油田というものが開発された。その後、エネルギーの多様化というわけで原子力発電の進捗が見られた、あるいは石炭火力重視の政策が世界的にとられておるというようなこと、それから各国の備蓄水準が前回の様子にこりて非常に高まったということ、それからIEAにおいて、緊急事態が発生した場合には相互間において融通をし合うという話し合いが行われております。まだいま現段階ではその必要はさらにないが、こういった話し合いが整備されておるという点、それからOPECの国々が協力的で、増産をしてくれたということ、これはサウジなどにおいては平生ベースに戻そう、こういうことにはなっておりまするが、しかし非常に誠意を持って、あのイランの輸出がとまりましてから応対してくれたことは事実ですね。これは、いつも異常な作業をして増産ベースを続けろということは、労働者の側からいっても、その国の政策からいっても、そういつまでもとり続けられることではない。しかし、サウジとしても、その他の国においても最大限の努力を払っておってくれるということ、これなどは一つの安定度を増した理由の中に数えられております。  その一面、不安定な要因として数えられるのは何か、これは、省エネルギーが叫ばれて久しいものがありまするが、油が非常に高くなったということで、それぞれの生産会社等においては相当な節約をしておる。したがって、このエネルギーの多様化というものが現実的にどんどん推進されない限りは、石油の節約とは言い条、これ以上節約することが果たしてできるであろうかという一つの不安感、しかし、これは昭和四十八年以来、約六年目になるわけでありまするが、満五年間ずっと同じような消費ベースが世界的には続いてきたということは、石油に関する限りの省エネルギーが相当進んでおるということが言えるかと思います。  ただ、もう一つ不安な点は、イランの政情不安がいつまでも続きますると、湾岸諸国にどういう影響を与えるか、この点など不安定要因として数えられるわけでありまするが、何せわが国としては、今後ともやはり省エネルギー、特に石油の節約を相当推進しなければならないということはもとよりだと思いまするが、にわかに国民に迷惑をかけることはないということを申し上げてよろしいかと思います。
  178. 竹下登

    竹下委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、河村勝君。
  179. 河村勝

    ○河村委員 きょうは、私は主として経済問題を中心にお尋ねをしたいと思っておりますが、初めに二点、今回のグラマン、ダグラス問題に関連をしてお尋ねをいたします。  まず、総理に、昨日公明党の坂井委員の方から、五十一年のちょうど予算委員会の最中、ロッキード事件の起こったときですね、あのときの国会正常化に対する衆参両院議長裁定を引用しまして、「本件にかかわる政治的道義的責任の有無について」国会の国政調査権を行使する際には、「事態の推移をみて、刑事訴訟法の立法趣旨をも踏まえた上で事件の解明に最善の協力を行う」という文書を引用して、それに対する総理の見解を求めたのに対しまして、あなたは、法令の許す限り政府が協力するのは当然だ、そういうふうにお答えになりましたね。  そこで、刑事訴訟法の立法趣旨を踏まえてということは、具体的に申しますと、刑事訴訟法四十七条ただし書き「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」これが本文。「但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」この四十七条ただし書きというものを適用いたしまして、そこで、犯罪にはならないけれども政治家としての政治的道義的責任をあらわすに必要な資料を提供するというのが本文の趣旨でございます。したがって、あなたが法令の許す限り政府が協力するのは当然というのは、これまた当然のことながら、四十七条ただし書きの適用というものを前提としてお答えになった、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  180. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  181. 河村勝

    ○河村委員 それならば結構でございます。念を入れて申し上げておきますが、ロッキード事件にいたしましても、今回の事件にいたしましても、事柄の性質上どうしても時効あるいは職務権限その他の関係で、政治的道義的責任はあっても、事件としては成立しないものがある。それに対して国会が解明をする義務がございますけれども、国会には強制調査権もございませんし、したがって、そこには限界がございます。したがって、当時こういう趣旨の裁定をつくりまして、それによって政府がそれに対応する、こういう約束を行ったわけでございます。したがって、いまそのとおりでございますという御答弁でございますので、私どもはこれでロッキード事件と同様の処理ができるもの、こういうふうに確信をしております。それでよろしゅうございますね。──それじゃそれで結構でございます。  次に、E2Cに関する予算をなぜこれだけ国民の疑惑に包まれている中で急いで今年度の予算に組み込まなければならなかったかということについて幾つかの質問がございましたが、その中で、自民党の野呂さんが質問されて、与党の野呂さんでさえ、とてもこれは緊急性というものについて国民の納得するものではない、こういう発言がございましたが、私どもも同様のことを考えておりまして、この事件の解明ができない限りは本予算案から当然削除または凍結すべきものだと考えております。  しかし、その問題はそれといたしまして、そのときのやりとりで防衛庁長官がちょっと不思議なことをおっしゃったので、ちょっとその点を、どういう意味であったか、確認をしておきたいと思います。  なぜ急いで導入する必要があるかということに対して、防衛庁長官は三つ例を挙げまして、一つはレーダーサイト現在の二十八ではカバーできないということが一つと、もう一つはミグ25のような事件の再発を防ぐため、この二つは別段、防衛上の欠陥を指摘するものではあっても、緊急性と関係のあるものではございません。三つ目として、兵器技術の発達ということもあって、おくれればアメリカの生産関係が問題だということをおっしゃいましたが、これははなはだしく微妙な発言でありますが、一体何を言っているのか、それをお尋ねをします。
  182. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  私が兵器技術のことに触れましたのは、近年におきますところの航空技術等は非常に進歩いたしておりまして、そのために、航続距離も非常に延びておりますし、また、航法装置も発達いたしております。したがいまして、世界の主要な航空機、戦闘機であるとか戦闘爆撃機は、もう現在におきましては、夜間でありましても、それから悪天候下でございましても、どのような状況下におきましても、低空で侵入し得るというぐらいにまで発展しているわけでございます。このような低空で侵入し得るということにつきまして、それに対処する方法は早期警戒機による以外にないということを申し上げた次第でございまして、それが現在の世界の航空技術の趨勢であるということを私は兵器技術の状況について申したのでございまして、そしてまた、早期警戒機につきましては、わが国といたしましては昭和四十年ごろからその導入の必要性を考えまして十分に努力してまいりまして、慎重に慎重を重ねて、ようやく本年の予算に計上し、御審議を願っているわけでございまして、むしろ国の防衛上欠陥があるにつきましては遅きに失しているというぐらいに思うわけでございますが、その点につきましても、いまの航空技術の進展はそのようになっておりますということを申し上げた次第であります。  なお、お触れになりましたアメリカの生産ということにつきましては、直ちに結びつくわけではございませんでして、これは実は本年もしこの御審議の結果お認めいただきますならば、早速アメリカ政府と契約をいたしますけれども、それにいたしましても、この飛行機は相当、大体三年近く製造にかかるわけでございますので、その生産の関係もございますので、どうしても本年にお認め願いたい、このようなことを申しましたので、兵器技術とアメリカの生産とは直接結びついた語法で申しておるわけではございませんが、以上が私のお答え申し上げた真意でございます。
  183. 河村勝

    ○河村委員 それは答弁おかしいのではありませんか。全く違う事柄を、わざわざ兵器技術の発達ということもあって、おくれればアメリカの生産関係に影響が出る、こう言われたのですよ。違うことをなぜくっつける必要があるのですか。兵器技術の発達というならば、すでに兵器技術が発達しているから、だからE2Cが必要なわけでしょう、超低空で入ってくる飛行機があるから。これから発達するわけではありませんね。ところが、いまあなたの発言は、兵器技術の発達ということがあるから、これ以上おくれるとアメリカの生産関係に影響すると言うのですから、これは普通にとれば、どんどん兵器が発達してしまうので、ほうっておくとアメリカの方ではE2Cを生産しなくなってしまう、そういうふうにとるのが常識ですよ。どう考えても、この二つのものが離れたものだと言うのは、あなた、論弁じゃありませんか。いかがですか。
  184. 山下元利

    山下国務大臣 一般的な航空技術の進展につきまして申し上げたことは御理解いただいたと思うわけでございます。それと、ただいま御指摘のような点につきましては、私の説明がいささか至らなかったかと思いますが、ただ、製造に時間のかかる飛行機でございますし、できるだけ早く発注いたしまして防空上の欠陥を埋めたい、それについては現在の航法の技術の発展はこうでありますということも申し上げながら、大変言葉の至らぬ点がございまして、その点は御理解賜りたいと思う次第でございます。
  185. 河村勝

    ○河村委員 ちょっといまの答弁では納得できないので、速記録を私は持っておりません、耳で聞いたものですから。ですから、いますぐここに速記録が取り寄せられればちょっと待ちますけれども、そうでなければ取り寄せてもらうことにして、後刻その速記録が来たときにこれをもう一遍尋ねることにしたいと思いますので、手配をいただきたいと思います。──それではこの問題は後で速記録が来たときにもう一遍お尋ねすることにします。  それでは本題の経済問題に入ります。  先ほど近江委員の質問で、七%成長についての問題がございました。あなたは、為替相場の乱高下が余りにもあったから七%成長が達成できなかった、それから経済企画庁長官は、余りひどい円高が起きたもので七%成長が達成できなかった、こうおっしゃいましたね。これは速記録を取り寄せなくても間違いございませんね。本当ですか。昨年の九月、補正予算を組んだ時期の対ドル円の相場と、現在下半期ですね、下半期の円の相場とはどういう関係になっておりますか。──これは簡単でしょう。百九十円台変わらないでしょう。
  186. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 お答え申し上げます。  八月の事態のインターバンクの中心相場、平均で百八十八円四十七銭でございます。一月の平均の相場が百九十七円三十七銭でございます。
  187. 河村勝

    ○河村委員 いかがでございますか。これでも、円安になっているじゃないですか。企画庁長官、余りにもひどい円高が進んだというのはどういう意味ですか。昨年の九月、補正を組んだとき、九月ですよ、そのころから後のことですよ。
  188. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 九月の時点と現在を見ればまあまあというところですね。しかし、われわれが申し上げているのは、五十三年度の情勢の中で、あの当時の円高というものは一体どこまでいくのかわからぬという急激な変化がありました。そうしたことが心理的に非常に影響して、結局輸出ドライブがうんと減ったということは事実だと思います。
  189. 河村勝

    ○河村委員 そういういいかげんな答弁は許しません。これは当然、補正予算を組んだ時点で、そのときの相場から、そのときには二兆五千億の事業規模の補正を組みました。これで七%成長できるとおっしゃったわけだ。その後異常な円高でも進まない限りは七%成長できるとおっしゃった。福田総理ですけれどもね。だから、その時点から、その後にさらに相場が低下したというならこれは理由があるけれども、その後はむしろ円安に進んでいるという状態で達成できないということは、補正における二兆五千億という補正が不足であったということしかならないでしょう。いかがですか。
  190. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 河村委員の御趣旨がよくわからないのでありますが、補正予算の額が少なかったから効果がなかったという御指摘ではないかと思いますが、そうですか。
  191. 河村勝

    ○河村委員 ともかく、二兆五千億の補正を組んだときに、今後円高が進まない限りはこれで七%成長できます、こうおっしゃったわけだ。円高が進んでいない、むしろ円安になっている、それにもかかわらず達成できないというのは、どこに理由があるのです。
  192. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 やはり、経済実態が補正予算を組んだ時点で、その予算が執行される時点でまだ十分に熟してなかったのだろうと思います。おくれたということ……。
  193. 河村勝

    ○河村委員 そういうばかなことはないでしょう。円高は逆に円安になってきている。それで、さっきの御説明では、逆に内需は後半回復をして高くなった、こう言っているのでしょう。それならいい材料しかないじゃないですか。一体、どういうことなんです。
  194. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、八月の対ドルレートは百八十八円四十七銭で、最近百九十円台でございますが、九月の改定試算七%の実質成長率を考えましたときには、この動きの継続性等に問題がありまして、事実、その後十月には百八十四円五十八銭というところまでいっているわけでございまして、その継続性等を考慮しまして違いが出てきているわけでございます。  具体的に数字で申しますと、九月時点の輸出等の受け取りは、前年度に比べてマイナス一%という想定でございましたが、その後の状況を入れまして、輸出等の伸びがマイナス二・三%に大きくなっております。これは成長率を引き下げる要因になりますし、輸入等の方が九月時点でプラス九%、今回改定いたしましたのでプラス一一%ということで、これはGNPのマイナス要因でございますので、結論的に海外要因から来ます海外経常余剰の差によって七%から六%に引き下げたということでございます。
  195. 河村勝

    ○河村委員 過程で多少の問題はあったかもしれないけれども、とにかく、余りにも円高になったとか余りの乱高下に遭ったということは全く理由がないのですね。私は後になってこう言っているわけじゃないのですよ。私は昨年の九月の臨時国会の際にこの席で福田さんに申し上げたことは、この二兆五千億の事業規模の補正予算では、七%成長にははるかに手が届かないものになる。その理由は、一つは、大体円高が百九十円になったのが昨年の七月です。七月ごろから百九十円台になったものが、企画庁の方々がおっしゃるようなJカーブ効果で、必ずこれは下半期にはその影響はかえってよけい出てくるはずだ。だから、宮澤さんは、円ベースで年度を通じて一%か二%しか対前年度輸出は下がらないとおっしゃったけれども、私は、必ず五%以上下がるはずだ。だから、その差を内需でカバーしなければならないから、それをやらなければ必ず七%成長には穴が出るということが一つです。  それからもう一つは住宅投資なのですね。二兆五千億の事業規模の補正予算という中の八千五百億は住宅なのです。住宅金融公庫の融資幅の拡大による需要増ですね。これに対して政府の方は、当初対前年一三・六%の住宅建設を見ておったものを、この改定によって一五%伸びまで改定見通しをつくったのですね。それが七%成長できるという根拠になっているのです。私は、それはだめだと言った。いままでの、五十二年度からのトレンドをずっと見ますと、いまのような給与の上昇率が低い段階では、民間自力建設というものは伸びない。だから、住宅金融公庫の融資額の増大、ふやすのは民間自力建設の落ち込み分をカバーするだけであって、これはプラスにはならないし、われわれの試算によれば、当初の政府見通し一三・六%よりも下回るはずだ、こういうことを申し上げたのです。結果はいかがでございました。どっちも本当でしょう。改定見通しは……。答弁してください。
  196. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  国民所得ベースで、実数で申しますと、実は一番最初の七%成長は旧SNAでございます。したがいまして、分類が多少違いますので比べることはできませんが、伸び率で申しますと、先生御指摘のように、当初の名目の伸び率一三・九%に対しまして、九月の改定で一五・一%、今回一二・六%になっております。これは、公的資金による住宅の方は伸びているわけでございますが、この予想で考えました民間へのシフトというものが非常に大きく出てまいりまして、全体として戸数としてはそれほど伸びなかった。ただし、質の向上というのがございまして、そのために今回でも一二・六%で約一三%、当初と名目ではそれほど違っておりません。  なお、先ほどのレートの場合でございますが、昨年九月の改定試算は、その時点のレートは百八十八円でございましたが、計算は一応百九十八円でやっております。
  197. 河村勝

    ○河村委員 いろいろおっしゃいますが、私は非常に疑問に思うのですよ。私は自信を持って申し上げた、絶対にこうなると。そのくらい自信を持って言えるぐらいの常識になっていることが、なぜ政府にそれがおわかりにならないか。これはわからないのじゃないのですね。あの当時、政府はどうしても春に決まった三千億の減税分、それに対応する赤字国債は別だけれども、それ以上は一切国債は増発しないという枠を、そういう前提を最初につくってしまったわけです。要するに帳じり合わせ、数字合わせで、二兆五千億で七%成長ができる、そういうことを言ったわけですね。ですから、初めからできないものをつくって、それで七%成長できるのだ、こう言ったのじゃありませんか。大蔵大臣、いかがですか。  どうも、総理以下全部かわってしまったものですからね。だから反省を求めるのに本当に不自由をいたしますが、内閣というのは継続しているのですから、知っていなければならないはずです。いかがですか。
  198. 金子一平

    金子(一)国務大臣 的確な答弁になるかどうかわかりませんが、今日、一-三月で、たとえば公共事業の手持ち数量は三兆数千億に達しております。いまそれを消化して、やっと年末から景気が上向きになったところを支えておるわけです。それを五十四年度予算につなごうということでいまやっておるような状況でございまして、現実問題として、河村さんはいまのようにおっしゃいますけれども、財源的な余裕もないし、こういったのがあるからということで五十四年度予算につなぐ計画を立ててきたのだと私は考えております。  また、為替レートの関係も、先ほどお話がございましたけれども、非常に大きな乱高下がございましたから、その間どうしても商談はストップいたしますから、それが落ちついて、やっといま今日のような状況になってきたということで、それが大きく外需の足を引っ張った、経済見通しの足を引っ張ったことは事実であろうと私は考えております。
  199. 河村勝

    ○河村委員 いまいみじくも財源に制約があるからとおっしゃいましたね。それなら、正直にそう言ったらいいのですよ。もうこれ以上出せないから、これは七%成長にはとても及びません、だけれども、国の財政上どうしてもだめだからこれでやっていくのだと言うなら、それで一つの見識ですよ。それをあたかも二兆五千億で、それを実行しても五・七%の成長にしかならないものが、二兆五千億でありますとぴったり七%になりますなどというようなことを言うからいけないのでしょう。それでなおかつ、アメリカから二回も大統領からの親書が来る。外務大臣の説によると、これは抗議ではなくて、何か懇切丁寧なものだというようなことをおっしゃっていますが、その親書を見せられるものなら一遍見せてください。やはりこれは抗議でしょう。そういう異常な事態まで招いている。  大平さんは、それでなおかつ、いまアメリカに安川政府代表を派遣しておりますね。これは私、直接聞いたわけではありませんから、事実を教えていただきたいと思いますが、七%成長については最大限努力したが、結果としてむずかしい。新内閣でも、福田内閣と変わらず内需拡大を中心とした景気刺激策をとり、経常収支黒字削減に努力を続けることをアメリカに行ってじっくり説明をします。これは大平総理の意思でもある、こういうことでございますが、大平さんは安川君に、アメリカに行く際に、そういう説明をしろ、細かい点は別にして、趣旨としては大体こういうことをおっしゃったわけでございますか。
  200. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  201. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、ここに大うそがあるわけですね。七%成長については最大限努力したが、結果としてむずかしい。努力をされるというならば、大平内閣成立後に、一月にでも少なくとも第二次補正ぐらい組むのは当然でございますね。何かおやりになったのでしょうか、最大限努力したとおっしゃる意味は。何もやってないんじゃないでしょうか。福田さんも九月以降何もおやりにならなかった。大平さんも何もおやりにならなかった。そうじゃありませんか。
  202. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 福田さんから私にかけまして、最大限努力いたしておるわけでございます。
  203. 河村勝

    ○河村委員 努力というのは何か具体的に形であらわれなければ努力とは言えないわけですね。精神でがんばっているんだ、がんばっているんだと言ったって、それは努力したことにはなりませんですね。実際は何もしておられない。何かおやりになったでしょうか。
  204. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 河村さんのおっしゃるように、第二次補正を仮に考えるといたしまして、そういう財源も仮に用意ができたとしてやりましても、本年度内に成果を上げるということはおぼつかない話でございます。かたがた、いまそういうわれわれの手にある財源はございませんで、そういう第二次補正を考える余地は私はなかったのであります。ただ、たまたま五十四年度の予算の編成期に差しかかりましたので、この努力を継続して続けなければならぬ。われわれは七%成長がむずかしかったからといって政策の姿勢を変えたわけじゃないのですから、この姿勢を貫いて、五十四年度予算、これはあらゆる努力を傾注して編成いたしました。これも努力の一環でございます。
  205. 河村勝

    ○河村委員 五十四年度予算が内需刺激型の予算であるかどうかということは後から論議をいたします。しかし、こうなりますとやはり経常収支黒字幅の縮小ということは非常な対外的な責任になりますね。ですから七十五億ドルの黒に抑えるというのはこれはどうしてもやらなければならぬ、そういう状態にいま逢着しているんだろうと思います。もし七十五億ドル黒におさまりそうもなかった場合には、あなたがおっしゃったように、内需拡大を中心として景気刺激策をとって黒字幅の縮小をしますというこの本旨に従って、やはり何らかの措置をとらなければならないということになりますね。それだけの覚悟はお持ちでございますか。
  206. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど近江さんの御質疑にもお答え申し上げましたとおり、まず予算を編成して、提出して、御審議をいただいているわけでございまして、われわれはこの予算で対応ができると考えておるわけでございまして、対応ができない場合のことのお尋ねでございますが、いまそういう対応ができると思っておりますし、そのような方向で努力することが私どもの任務だと思っております。
  207. 河村勝

    ○河村委員 これからアメリカからの特使が来たり、六月はサミットですね。これに向けてやはりこの問題が一つの大きなテーマにもなります。ですからわれわれは非常に心配をしているわけであります。  そこでちょっと関連をしてお尋ねをいたしますが、もう一つサミットで大きな議題になるであろうと思われる経済協力問題ですね。これにつきましてすでに福田さんの時代に、一九七七年六月のCIECの会議で、五年間ODA倍増、政府開発援助倍増、それから翌年七八年五月の日米首脳会談で、ODA三年間倍増、これを宣言をされました。私どもは前々から、この経済協力というものを日本の国家目標として中心に置かなければならぬという主張を持っておりまして、遅まきですけれども、それも国際摩擦というものに強いられた形であるかもしれないけれども、それでも非常に前向きになったことは歓迎をしておりますが、一体この三年間倍増というのはドルベースなんですか円ベースなんですか、どっちなんですか。
  208. 園田直

    ○園田国務大臣 五十二年の援助実績を基準としてドルベースでございます。
  209. 河村勝

    ○河村委員 五十二年基準でトルベースだと──その後の円の平価の変化を考えますと、円ベースで言うと、まあ百九十円にしましょう、百九十円でいきますと何割増になるのですか。
  210. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 五十二年の実績を基準にいたしまして三年の倍増でございますので、五十五年ということになるわけでございますが、五十五年を平均しての円の為替相場がどういうことになりますか、私どもの方で推定いたしておりませんので、いまお尋ねの質問にちょっといますぐお答えできません。
  211. 河村勝

    ○河村委員 そうではなしに、ドルベースだといいますと、最終年次の円の相場でいいことになっちゃうわけですね。だから、五十五年百九十円で計算したら何%増になるか、恐らく三〇%増に満たないのじゃないかと思いますが、そうでしょう。
  212. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 手元にいまお示しのような計算がございませんので、早速計算いたしましてお答えいたします。
  213. 河村勝

    ○河村委員 これは暗算でもできる計算です。だから、いやだから、恥ずかしいから言わないだけですね。
  214. 金子一平

    金子(一)国務大臣 五十二年度の執行率七〇%を現在の支出官レート百九十五円ということで計算してみますと、大体五十二年度実績値の一・八倍くらいになるのじゃなかろうかと一応の試算をいたしております。
  215. 河村勝

    ○河村委員 一・八倍になるわけはないですな。どうもその勘定は違いましょう。これは私がもう少し自分で計算してくればよかったけれども、そうはならぬはずですよ。私、少し意地悪く聞いたんですけれども、もともと円ベースかドルベースかということではずいぶん政府部内で議論があったようですね。これは多分間違いないんでしょう。一九七七年、五十二年ですね、五十二年基準の援助実績を三年間で倍増することを目標、ドルベースとするが、今後の予算編成に際してODAの対GNP比率を改善し、国際水準を目指して努力するというのが政府の最終的な合意だそうですが、そのとおりですか。
  216. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりでございます。  ちなみに、GNP比率は本年度の予算面では〇・三一、国際目標は〇・七ということでございます。
  217. 河村勝

    ○河村委員 そういうことでございますね。だから私は、こういうまやかしもいけないと思うのです。政府開発援助の国際目標というのは、常にGNP対比で議論をされておりますね。GNP対比で議論をされているということは、日本の場合では円ベースでなければならないのですね。そうでしょう。いかがですか。
  218. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 GNPの比率を計算をいたしますのは、GNPを円でとりますれば援助実績も円で、円と円ということになります。それから、ドルで計算いたしますとGNPもまたドルに換算いたしまして、結局は同じことになると存じます。
  219. 河村勝

    ○河村委員 いや、それはそのとおりです。そのかわりあれですよ、平価の変更はそこに入ってこなくなるから、だからそういうへ理屈は別にして、とにかくGNPそのものを円で計算すれば、円が上がればGNPがふえるから、それは同じことは同じことさ。だからぼくが聞き方が悪かったかもしれないけれども、要するにドルベースで、GNPと切り離してドルベースで倍増なんというのは本当にナンセンスなんですね。当然GNP対比で何%であるかということで議論をすべきものですよね。こういうことも国際的な信用を失うゆえんです。ですから、国際公約であるかどうかは知らないけれども、そうでないとさっきしきりに外務大臣は力説をしておられましたが、七%成長にしても実質的には国際公約です。だから、それをいいかげんな扱いをもって目標を変更してはいけないし、こういう経済協力の目標なぞは当然に正直に、大体円が自然に上がったら、もし円の為替が倍増したら何もふやさないでも経済協力が倍増する、そんなばかなことはないですものね。何も努力は要らないわけですからね。そういうことはやめておいきにならないというと、だんだん国際信用を落とすゆえんになります。そういうことを警告をしておきます。  これは何ですか、「野呂君の議事録はあす配付予定のため目下入手できない」そうですか。この、あす配付予定だから入手できないというのはどういうことなんですかね。
  220. 竹下登

    竹下委員長 委員長から申し上げますが、完成したものを印刷に付して、印刷に付して返ってくるまでは院には何もなくなるのだそうでございます。したがいまして、理事会で協議いたしまして、質問は留保といいますか、よって善処いたします。
  221. 河村勝

    ○河村委員 わかりました。ではやむを得ません。それじゃこの分は、後刻できた段階でもって理事会で、どうせまたもう一遍お尋ねしなければなりませんので、その分だけ保留させていただきます。
  222. 竹下登

    竹下委員長 結構でございます。
  223. 河村勝

    ○河村委員 残念ですけれども仕方ありません。これ以上時間を空費するのはむだでしょうからやめましょう。  それでは次に、五十四年度予算に入りたいと思います。  五十三年度は六・三%成長を目標に組んでありますが、その前提として、今年度六%成長を達成するということが前提になっておりますね。先ほどからの質問で、五十三年度六%成長は確実にできると、こういうお話でございました。国民所得統計の速報、QEですね。これによりますと、第一・四半期と第二・四半期はそれぞれ成長率一%ですね。年率に換算いたしますと四%くらいでしょうか。そうしますというと、実質六%成長をするためには、下半期相当高率な成長をしなければ六%は達成できないはずでございます。一体第三  四半期、第四・四半期の成長見込み、まだこれは統計はできてないのでしょうが、どう見ておりますか。
  224. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 四半期別の見通しはつくっておりませんが、上期、下期に分けて考えますと、上期はQEの実績が出ておりますので、前期比二・六%、したがいまして下期は三・八%ということになります。
  225. 河村勝

    ○河村委員 四半期別にいつでも出しているでしょう。それがどうして下半期でなければ出ないとおっしゃるのです。それがよくわからない。まあいいでしょう。  三・八%というと、年率に換算すると大体この倍ですか、それでよろしいわけですね。だから下半期は八%近い成長をしないとならないわけですね。本当にそんなになるのでしょうか。私が非常に疑問に思っておりますことは、特に第四・四半期一-三月です。昨年の一-三月は、あのときは第二次補正を組みまして三千六百六十四億の公共投資の追加が行われましたね。それで六・七%を目標にして、結局できなかったわけですけれども、第三・四半期はかなり上がりました。同時に、この間は輸出が異常なくらい高い期間でしたね。それと大体同じくらいの成長率で経済拡大しないと六%成長できない、そういう計算になると思うのですけれども、本当にそういうような、去年の一-三月に比べてことしの一-三月がよいという、何か当てがあるのでしょうか。
  226. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 先ほど下期の増加率三・八%と申しましたが、仮に四半期同じ同じだといたしますと、二・二%ずつでございます。それで上期と下期と国内需要の主な項目を比べてみますと、たとえばGNPの半分を占めます個人消費につきましては、年度で実質五・三%と見ておりますが、上期ですでに三%、下期も大体三・一%で同じぐらいに見ております。それから民間住宅の方は、むしろ下期が伸び率は下がるというかっこうになっております。設備投資の方が、最近の機械受注その他の資料によりまして若干上方修正されておりますので、やや上がっております。それから在庫品の増加につきましては、在庫調整がほぼ一巡するということで、そろそろ積み増しが始まるということで前期のマイナスからプラスに転じております。それから政府支出については、上期が大体実質で八%程度、下期が八・五%程度でございまして、先ほど先生御指摘のように、去年の暦年の一-三月の輸出が非常に上昇しておりまして、その反動でむしろ輸出は下半期はマイナスが大きくなる、そういうふうに考えておりまして、全体として二・二%ずつの四半期ベースでいきまして三・八%の下期の上昇ということになります。
  227. 河村勝

    ○河村委員 私は大きな疑問を持っておりますが、これはいずれ実績が出てくることでありますから、ここでもってこれ以上の議論はやめます。  そうしますと、下半期非常に大きな成長率を予測をしておりますから、当然今年度の六・三%成長のげたになる部分というのは相当高いわけですね。これは幾らですか。
  228. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 GNP全体のげたは三ポイントでございます。
  229. 河村勝

    ○河村委員 三%のげたをはいた六・三%、そうすると年度内上昇率は三・三%ということになるわけですね。年度内上昇率三・三%というのは、さっき大平さんがおっしゃったような内需を刺激するほどのものではないというふうに考えられます。現実に先ほども指摘がありましたけれども、民間消費支出も政府の目標がそのまま達成できるとしましても前年度より下がる。住宅も下がる。設備投資も下がる。政府資本支出に至っては五十三年度に対して半分ですね。各需要項目全体が五十三年よりもずっと悪い。そうすると、一体これでもって本当に景気は順調に回復するのでしょうか。一体民間自律回復力というのはそんなに強いものなんでしょうか。この各需要項目の数字だけ見ますると、五十三年の終わりのころの経済実態というのはそんなに明るいものではなさそうに思われますが、政府としてはどういう見通しでおられるのですか。
  230. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 われわれの五十四年度の見通しは、いまあなたがおっしゃったような数値に基づいて計算はしております。しかし、私は、この数値の中からも貿易関係、輸出入がわりあいにバランスとれてプラスに動いているということを前提に考えているわけですが、やはり一般の民間の経済界の活力というものが、こうした時点の中で政府の財政支出だけに頼り切れないというところから大きく伸びてくる気配を私は強く感じておるわけです。もちろんそれは計数的にはなかなか把握できません。しかし、現状をごらんになりましても、少なくとも一月以降の動きというものは、それはマイナスの面もありますけれども、大分私は民間の活力が動いているように感じられます。こうした民間の活力を邪魔しないようにして伸ばしていくということが、一方から言うならば財政収支の非常に悪いこの事態の中でも一つの活路になるというふうに考えておるわけです。要するに、日本の経済のこれからの進みぐあいに対する国民の深い理解を前提にして、そして六・三%の成長の実績を上げたいという考えでございます。
  231. 河村勝

    ○河村委員 私も、もし六%成長が五十三年度達成できるようなら、年度内三・三%の成長ぐらいは個々の項目は別にしてできるだろうと思うのですよ。それが一体そんなに明るいものなのかどうか。どうも昨今政府の中でも、企業がだんだん減量経営を進めて五%くらいの成長でもやっていける体質になってきた、刺激状態がよくなってきた、だからもう成長率論争はどうでもいいんだ、そんなに六%とかなんとか言わなくとも五%台でもやっていけるんだというような感じをお持ちになってきているのではないか。私どもは五十三、五十四年度引き続いて高目の成長率、七%近い成長をすべし、成長政策をとるべしというのが民社党の考え方でございますが、それは一応おくとしましても、なるべく六%の高目の方に持っていかなければならぬと主張している理由は、一つはさっき申し上げた国際収支、経常収支の黒字幅の削減であり、もう一つは雇用なのですよ。政府はそういったような感じでお進めになっているのではないか。一体雇用というものはそれでやっていけるのか、雇用摩擦を起こさずに済むのか、その辺の見当は一体どうお考えになっているのですか。
  232. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 来年度の経済見通しではいまあなたのおっしゃったとおりのこと、つまり雇用をきわめて重視しているということ、それとまた一方においては国際収支というもの、これはちょっと考え方を述べさせていただきますと、経常収支だけの問題ではなくて、むしろわれわれがいろいろな面で経済協力を他国に行うということを踏生えて、基礎収支で均衡ということもぜひ議論の一つの中に入れてもらいたいということを言っておるわけでございますが、問題は、やはりいまおっしゃいましたように、対外的な調整と国内の失業問題、そしてまた最近は特にやや物価騰貴の傾向も出てきておるので、こうしたことを三方にらみながら運営をしていくということでありますが、その基礎になっておる数字がただいま申し上げた六・三%程度、もちろんこれは高いにこしたことはないと思います。しかし、現状の財政事情というものが実はわれわれが驚くほど悪化しているものですから、こうしたことを踏まえて、ぎりぎりいっぱいのところの財政投融資というもので考えざるを得なかったという点も御了解いただきたいと思っております。
  233. 河村勝

    ○河村委員 さっきも御説明ありましたように、五十四年度は完全失業者は百三十万横ばい、六十五万人雇用者はふえるけれども、六十五万人労働力人口がふえるから、だからとんとんで二・三%失業率だ、こういうことですね。私は、そういう数字だけで、まあまあ失業は悪化しないのだ、だからそんなに内需の拡大、成長率を考えなくても個別政策をやっていれば何とかなるんだという思想がどうもいまの政府におありのように思うのです。一体、仮にいま労働力人口がふえて六十五万人就業人口がふえるというのを前提にしましても、その中身というものをどれほど御認識になっているかということを伺いたいのであります。  これは総理府総務長官、余り御答弁ないようですからお尋ねいたしますが、おたくの五十三年度の「労働力調査報告」というものがございますね。それを見ますと、五十三年度で男子の常用雇用、これは六十六万人就業者がふえるということに統計上なっているけれども、常用雇用者という一家の本当の世帯主、これは逆に五万人減っているのですね。この実態を一体どういうふうに分析をしておられますか。
  234. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御指摘のように、私の方の統計局の労働力調査の五十三年度の平均は五千四百八万人で、六十六万人の増加ではございます。しかしその内容は、いま御指摘のように七割が女子でございます。そしていまの常用関係で、これは農業関係を除いて見るわけでございますが、そうしますと、〇・二%の減少になっております。そして臨時及び日雇い関係は、それぞれ七・八%、四・五%の増加でございます。女子の方で見てまいりますと、常用が一・七%増でございまして、臨時、日雇いがそれぞれ六・九%、三・四%の増加をしている、こういう状態でございます。  なお、詳しい数字につきましては政府委員から説明させます。
  235. 河村勝

    ○河村委員 詳しい説明は結構でございますが、とにかく就業人口がふえるといいましても、男子と女子の比率、女子が圧倒的に多いわけですね。男子が十六万人に対して女子が五十万人、五十万人といってもその中の本当に常用雇用の割合は六〇%余り、あとはパートというようなことですね。ですから、表面にあらわれた就業人口あるいは失業とは、中身はずいぶんかけ離れたものになっている。この実態は労働省としてはもちろん御認識なんでしょうね。それなら一体、この統計数字の百三十万人失業者横ばいというのはそれとして、本当はもっと減らす方に持っていかないといけないのですけれども、一応その問題は別にいたしまして、これは一体中身を五十四年度どういうふうに持っていこうと考えておられますか。
  236. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 御指摘のとおり中身が問題でございます。しかし全体的に見ますと、私どもは経済成長率を相当高く持っていかなければいけないのじゃないかということでいろいろ意見を言うたわけでございますが、財政の許す範囲内では六・三%というのはまあまあの線ではないかということで、私どもも考えております。  ところで、いわゆる就労者の実態を見ますと、いま御指摘のあったとおりでございまして、問題は男子、特に中高年齢層をどうするかという問題が非常に大きな問題でございます。そこで個別の問題として、中高年齢層には御案内のとおり特別な助成措置を講ずるということをやっておるわけでございます。そういう意味合いで、これにはきめ細かい対策を立てているつもりでございまして、労働省だけでできませんけれども、労働省としてはできる限りの対策を講じておる、こう考えております。
  237. 河村勝

    ○河村委員 それにしては雇用創出についていささか冷淡なようですね。雇用開発給付金の増額あるいは給付期間の延長、これはそれなりに評価をいたしますが、それは、そういう雇用ができたときにそこに行く人が行きやすいようにするという効果はあるけれども、新しく雇用を創出する効果はございませんね。ですから、やはり雇用を創出する機会があったら、もっと積極的にそれを取り上げるべきであって、先般来、同盟あるいはわれわれが主張しております雇用創出機構といものにつきましても、何か機構をつくることに消極的なようでありますが、私どもも雇用創出というのはそんなに簡単にできることだとは思っておりません。おりませんけれども、そういう積極的な意欲が出てきて、およそこういう金を失対事業的なものに投下するぐらいむだなものはございませんからね、ですから本当に企業をつくって生かしていく機会をつくろうというものがあれば、それを育てていくことを考えるべきだと思うのですね。ですから、すぐにつくらぬでもいいですよ、機構をつくるという決定をしなくてもね。つくるための相談をする。どういうものをつくったらいいか、そのぐらいのことは当然やるべきだと思いますがいかがでございますか。
  238. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ただいまも申し上げましたとおり、私ども政府、特に労働省の出した緊急雇用対策だけですべて解決つくと思っておりません。労働組合の方からも、またこの委員会におきまして各党からもそれぞれ御案内のとおり雇用創出機構についての御提案がございました。機構をつくること自体に問題があるのじゃない、何をやるか、内容が問題でございまして、いま河村さんがおっしゃったとおり、内容を詰めて、聞く耳を持てということについては全く同感でございまして、政府が今度雇用問題政策会議というものをつくって、総理大臣のもとに各界の方々の御意見を承ろうというのもその趣旨でございまして、十分積極的に内容を詰めてまいりたい、こう考えております。
  239. 河村勝

    ○河村委員 それともう一つ、雇用差別禁止法ですね、定年延長法、これに対しても法律化ということに非常に否定的な態度をおとりになっている。これは間違いじゃないのでしょうか。中高年齢層の失業を救済するというだけではなくて、年金財政がやがてパンクしますね、それとのつなぎを考えなければなりませんね。厚生大臣、やがて年金の給付は六十五歳以上でなければ、年金の給付内容の改善もできなければ、財政も破綻するようになるはずだと思うが、一体何年ぐらいまでに、何年以後ぐらいまでに給付開始年齢六十五歳にしなければならないと考えていますか。
  240. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに御指摘のとおりの状況は一つの課題としてございます。そして、私ども将来の年金というものを考えました場合に、一つの考えるべき問題として現在懇談会においても検討をしていただいておりますけれども、それにいたしましても、やはり年金そのものが老後生活一つの柱である現実と、それから現実の雇用情勢というものを考えてみますと、そうした事態を十分に考えてでなければ、その計画というものはちょっといま簡単に言えるものではないと考えております。  いつから引き上げるかということについては、いままだ申し上げられるほどの雇用情勢にもなっておらぬというのが実は私は一つ頭の中にあるわけでありまして、将来改正しなければならぬことは間違いありません。しかし、現在の時点でいつから改正するかと言われますと、ちょっとお答えしづらい問題だと思います。
  241. 河村勝

    ○河村委員 これはぼくはそんな細かい計算を言っているんじゃないですよ。これから国民年金はだんだん厚生年金に近づけていく。そういうことをやりながらだんだん給付年齢を延ばす。大ざっぱに言って、人口の老齢化の比率、こういうものを見れば、大体十年か十五年かそのくらいまでに給付開始年齢を六十五歳にしなければならぬという見当はつくはずです。それを何かえらい慎重に言っているけれども、当面の雇用情勢と直接関係ないのですよ。ただ一般的にどう考えておるのか。
  242. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先生そうおっしゃいますけれども、当面の雇用情勢と関係ないことは決してないと私は思います。それと同時に恐らく先生、前回の支給開始年齢引き上げのときを頭に置かれてひとつ御議論をいただいているのだと思うのですが、あの当時はある意味ではモデル年金はかっちりしておりましたけれども、受給者はほとんどなかった。現在すでに受給者が発生しておるという状況になりますと、やはりそれだけの慎重な考え方はとらざるを得ないと思います。ですから、先般来何回かお答えを申し上げておりますが、年金制度基本構想懇談会で御検討いただいており、近く御結論をいただくということであります。それを踏まえて私どもとして考え方を決定いたしたい、そのように思っております。
  243. 河村勝

    ○河村委員 大変慎重過ぎて、少し見当がつきにくいのですが、いずれにしてもそう遠いことではない。私どもは、簡単に申しましてこの定年延長法を提唱するにしても、ことし法律をつくったらその年から施行しろなんていうことを言っているのではないですよ。そのくらい非現実的なことはありませんからね。定年延長というのは、中高年の失業防止にはなるけれども、その事業の規模が拡大をしない限りは若年労働者の就業員数をそれだけ抑えますから、一遍にできるものではないわけです。ですから、一般の企業の定年が五十七歳ならば三年でいいでしょうけれども、もし五十五歳であれば五年先にこれを施行することにして、それまでに労使がそれに合わせるような体制をとっておかなければならないんですよ。それまでは強制をしない、そういう方法をとらなければ、実際的にできないわけですね。だから、あなたは何か来年やったらすぐ来年から定年が六十になるんじゃないかというようなことをお考えになって、むやみといまの雇用情勢では反対だとおっしゃっているのじゃないかと思うのですね。そうではなしに、仮に五年先だとすれば、六十なら五年先でしょう。年金との関係でさらに十年先に六十五にしなければならぬと言えば、それからまた五年かかるわけでしょう。ですから、早過ぎるということはないし、仮に五年の猶予期間があれば、その間に労使で対応の姿勢をとれるわけでしょう。むしろ私は、いまの時点で法律をつくって覚悟を決めさせるわけですね、そこに、五年の間に対応の姿勢をとらせる、そういうことがより現実的な方法だと思うのですね。それならそういま直ちに、いまの企業の情勢ですか、それを考えなくてもいいだろう、そう思いますが、いかがですか。
  244. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 定年延長のやつを法的にいますぐに規制するということは非常にむずかしい、そういうお話のように承りますけれども、いわゆる定年延長というのは、御案内のとおり年功賃金的な慣行がございますので、よく労使の間で話をしなければならない、そういう観点から私どもいま行政指導をしているのです。性急なことは考えていない、そういうふうに誘導していけ、またそのために法制化を考えたらどうだというお話につきましては、誘導を強力にやっていくという意味で大変ありがたい御意見だと承ります。なお最近は、関西の財界、労働者の間にも定年延長という機運があらわれてきたやに聞いておりまして、私どもはこういう機運を盛り上げるために、いままでの行政指導にさらに検討を加えて積極的にやっていきたい、こう考えております。
  245. 河村勝

    ○河村委員 どうしてそうこだわるのでしょうかね。大体五年先ぐらいまでには六十定年にしておかないと、その先六十五までなかなかいけませんよね。ですから法律でつくったからといって、ゆっくり毎年それに対応していくのですから、そんなに恐れる、気がねをする必要が私はないように思うんだけれども、もう少しこいつは検討の要があるんじゃありませんか、どうなんです。これは労働大臣以外に返事する人はないわけですね。総理大臣に聞いてもこれはおわかりにならないでしょうね。
  246. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 御提言の趣旨を生かすように、いろいろ検討してみたいと思います。
  247. 河村勝

    ○河村委員 次に参ります。  物価と景気の関係をお尋ねいたします。今度の予算は、当初政府は景気回復と財政再建と両にらみ予算だとおっしゃっておりましたね。どうもわれわれから見るというと、財政再建の方にはかりがうんと重くて、景気回復の方には余りないという感じがしますが、一体これはどっちに比重を置いておつくりになったのですか。
  248. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は、気持ちはむしろ景気回復の方に力点を置いたわけでございまして、財政再建ということにもう少し大胆に考えなければならぬ時期でございますが、当面、景気回復を軌道に乗せねばいかぬという点に力点を置いて、財政再建の方を若干犠牲にせざるを得なかった予算であると承知しています。
  249. 河村勝

    ○河村委員 どうもそれにしては増税、公共料金の引き上げ、これが合計一兆円か一兆五千億か、その辺計算のしようによりましょうけれども、最近は景気と物価と両にらみという言葉がまた出てまいりましたね。物価のことをあわせ考えれば、ことし短期の均衡──均衡までいかないのでしょうけれども、恐らく国債の依存度四〇%は絶対超えさせまいというそういう財政意識から、そこに足りない分を取りやすいところから税金で取り、公共料金の引き上げをやった、こういう感じですね。いま一番大事な時期ですからね。景気の問題にしても物価の問題にしても、物価ははね返ってまた景気にも影響いたします。こういう短期の、増税で言えば五千億かそこらのところを無理にやって、景気の足を引っ張ったり物価を上げたりするのは、それにかわる国債を五千億や六千億増発するのに比べてはるかに害がある、私はそう思いますが、いかがでございます。
  250. 金子一平

    金子(一)国務大臣 河村さんのお立場は、先ほど来伺っておりますると、むしろもっと財政で景気刺激的な予算を組んだらよかったじゃないかというお立場に立っていらっしゃいまするけれども、その立場をとりながらことしいっぱいまでやってきたわけです。それでそのつけが国債に回ったというのが現実の姿でございまして、もうぎりぎりのところまできていると私どもは考えております。御承知のとおり国債もちょっと消化にいろいろの支障を生じている面もございますので、今度御審議をお願いいたしております十五兆というのはぎりぎりのところではないかと思うのでございます。かといって、増税によらなければもっとこれは十五兆の国債がふえるわけでございますので、そこら辺を勘案して、物価に対する影響も考えながら公共料金も抑え抑え、あるいは実施を先に延ばす、限度を抑えるというようなことで、今度の御審議をいただいておる公共料金の改正に持ってきた、こういうふうに御理解賜りたいと思うのでございます。  問題は、景気刺激によって財政の体質が翌年度ですぐ変わるような経済情勢ではなくて、それだけ高度成長時代といまの減速経済というか、中成長時代と経済の与件が変わってきたのだ、そういうふうに私どもは認識いたしておる次第でございます。
  251. 河村勝

    ○河村委員 私どもも中期的な財政均衡というのは考え過ぎるくらい考えております。一般消費税の今日導入には反対をいたしますし、一般消費税というものが適切であるかどうかということは別だと考える。だけれども、景気が安定成長の軌道に乗ったときには何かの形で税負担の増加、社会保険料負担の増加をしなければならぬことは、われわれの中期経済計画の中でも織り込んでおります。だけれども、ことしの問題と中期の問題とは違うわけですね。ことしはまだ、最近はさっき申し上げたように企業収益が回復したからもう五%成長でもいいやという時期ではなくて、それでは縮小均衡であって、まだことし一年は、財政がもう一年がんばってもいい。その一年をがんばるために若干の国債の増発になっても、それは物価を押し上げたり何かするよりはよっぽどいいはずだというのが私どもの意見なんですよね。最近では物価をいままでよりもはるかによけい注意しなければならないという話がございましたが、この公共料金、米、たばこ、国鉄その他、これらの公共料金の引き上げによって物価上昇寄与率、物価を何%押し上げますか。
  252. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 消費者米価は大体〇・一程度、それから国立大学の授業料その他とかいろいろございますが、五十四年度の予算に計上しておりますのは、とりあえず国鉄と健保と、それからたばこの改定ですが、それは国鉄が〇・一、健康保険が〇・三、たばこが〇・三七、大体〇・八くらいの押し上げ要因、ここまでを一応予算の中では考えておるわけです。
  253. 河村勝

    ○河村委員 どうも私のいただいた資料とは違うな。四・九%のうち一・五%じゃないのですか。
  254. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 あなたのお手元にある資料は、その他のいわゆる地方公共団体、公共企業体とか、これから申請が出てくるであろうというその他のものを含めて、予測されるものを一応考えてみて、全体として一・五程度かなという資料だと思います。
  255. 河村勝

    ○河村委員 これが大問題ですが、物価がこれほど心配な時期に一・五%の上昇寄与率を持つ公共料金を引き上げる。これは物価そのものの問題があると同時に、消費支出にも当然響いてきますね。そうした増税と公共料金の引き上げ、これの物価あるいは景気に及ぼす全体の影響というのは一体どうお考えになっているのですか。
  256. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま不確定要素まで入れて一・五くらいの押し上げがあるかもしれないという予測でございますが、大体それを踏まえても、今年度の消費者物価の上昇を四・九%程度に抑えたいということが基本的な姿勢であります。  それから増税と言われたのが、ガソリン税が二五%というのですが、それが今度の予算で成立いたしまして全部そのまま実現するといたしましても、これは〇・一程度であります。それから航空燃料の課税の引き上げ、これはほとんど一般消費者物価には影響ない、こういう程度であります。
  257. 河村勝

    ○河村委員 ちょうど国鉄総裁がおいでになっておられるのでお尋ねをいたしますが、国鉄の運賃引き上げ一〇%ですか、八%ですか、これで一体幾ら収入増加を見込んでおりますか。
  258. 高木文雄

    ○高木説明員 いまの政府の予算案では、五月二十日から引き上げてはどうかということを前提といたしまして、そして上げ幅は八%ということで、金額的には千六百五十億円でございます。
  259. 河村勝

    ○河村委員 基本的な問題としてお尋ねをいたしますが、一体これは運賃値上げの効果があるのでしょうかね。大体他の競争機関との関係からいって、国鉄の運賃値上げというものは、一昨年の四〇%値上げ、昨年の十何%かの値上げ、これでもうぎりぎりまで来てしまっている。だから、こういうものをやるというのはどういうことなんでしょうかね。ただ物価を押し上げて、物価に悪い影響を与える。国鉄で千六百五十億なんて本当にもうかりますか。絶対に収入は上がらない、私はそう思いますが、何か手品のような方法があるんでしょうか。
  260. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま国鉄の値上げについて消費者物価への押し上げパーセントを申し上げましたが、われわれとしましては、できることならばやめてほしいわけです。それで、今度の予算計上も実は運輸省とお話をしまして、四月一日からのものを五月二十日からということで、その間約一カ月余引き延ばしをかけたわけであります。また同時に、その時点になりまして、さらに具体的に幾らどうするかという場合には、よく運輸省と御相談をさせていただきたいということも申しておるわけであります。
  261. 河村勝

    ○河村委員 運輸大臣、これで千六百五十億もうかりますか。
  262. 森山欽司

    森山国務大臣 四月から運賃の値上げをすれば千九百億ということになっておるわけでありますが、いまの経済企画庁長官のような話がありまして、五月二十日から実施をする。それで千六百五十億という数字になり、それが物価に及ぼす影響は〇・一%程度である。それで、まあ去年運賃を上げてことし上げるのはどうか、また、上げただけのことがあるかという心配はありますが、しかし「日本国有鉄道の再建の基本方針」というのがおととしの十二月二十九日閣議了解、それから国会でいろいろもんででき上がった国有鉄道運賃法、その法律によって国鉄の収支が現在以上悪化することを防止する、そして徹底的な経営の改善に努力することによって経費増を極力防止するとともに、適時適切に運賃改定を実施することとし、その場合の運賃改定による増収見込みは、物価等の上昇による経費の増加見込み額を超えないものとする、こういう考え方に基づいて運輸省及び国鉄は、五十四年度予算案において、最終的に五月二十日実施、したがって、当初の四月一日実施から約五十日おくれて千六百五十億の増収をめどにしてやったわけであります。  それで、この運賃の増収のめどによる運賃の引き上げパーセンテージは、先ほど国鉄総裁が初めに話しましたように八%ということでありまして、ともかく国鉄を立て直さなければならない。国鉄自身もがんばるが運賃の収入の方も、とにかく増収も図れるだけ図って、それなりの効果があるというふうに考えましてこのたびの増収に踏み切ったわけであります。これは去年上げたばかりでありますが、ことし上げなければ上げないにこしたことはないと思っております。しかし、国鉄の経営状態はあなたも御存じのとおり、すでに実質一兆円を超える赤字でありまして、これを早急に立て直していくためには、国鉄自身も経営努力をすることは当然でありますけれども、同時に運賃も、上げただけの効果があるようにという範囲内において今度の運賃増収ということを考えたわけでありまして、私は、経済企画庁長官が言うように、上げたってそれだけの意味がないなどということはいささかも考えておりません。ただし、上げるということの国民に与える影響等も考えまして、まあ五月の連休ぐらい見送ったらどうだという程度の妥協をいたしたというだけのことであります。
  263. 河村勝

    ○河村委員 私は、運賃を値上げしてまるきり収入がふえないとは言わないのですよ。それはやりようによってね。だけれども、値上げをするということは大変なことで、国民には迷惑をかける。それにふさわしいほどの収入増加があるかということになったら、それとの比較の問題ですよね。国鉄総裁、いかがです。恐らくこんな千六百五十億の増収なんというのは夢にも考えられないのではないですか。私はこういうのはやめたらいいと思うのですよ。
  264. 高木文雄

    ○高木説明員 最近しばしば値上げをさせていただいておるという関係もございまして、他の輸送機関との競争関係からいいましてなかなか厳しい状況にあり、その厳しさがだんだん増しつつあるということは否定できない事実でございます。したがいまして、千六百億というのはかなり巨額な金額でございますし、八%と申しましてもなかなか容易でないというふうには考えております。しかし、それでは上げないではどうかということになりますと、現在の経営の状況はちょっと異常に悪いわけでございますので、各般の努力を重ねてまいらなければならぬと思いますけれども、その各般の中の一つとして、利用者の方々には大変御迷惑とは存じますけれども、やはり運賃の改定をやらしていただくということも織り込んでいただかざるを得ない。かなり私どもも深刻な心境になっておりますけれども、何とかそれをやり遂げなければいけないというふうに考えております。
  265. 河村勝

    ○河村委員 総裁としては、請け負ったからには、多少増収になりますと言わざるを得ないのでしょうけれども、本当はむしろ値下げした方がもうかるんじゃないかと思うくらいですね。だからこの辺は、総理大臣、もう一遍考え直された方がいい。  国鉄の再建というのは、私ももと国鉄ですけれども、もはや運賃を値上げしたからもうかるなんという状態ではございませんね。これはもう国鉄の徹底した減量経営と、それでカバーできないところは、構造的欠損を国が補てんをする、この二本立て以外にありません。むしろ国鉄値上げでなしに、下げるところもあって一部上げるところもあって、とんとんぐらいにした方が収入としてはきっとはるかに上がるでしょう。ですから、もう一遍お考え直しになった方がいいですよ。総理大臣、いかがです、これはもう政治問題ですから。
  266. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 御指摘の点につきましては、関係者において篤と検討することを期待します。
  267. 河村勝

    ○河村委員 時間がなくなってしまいまして……。  こういうことを総理にお尋ねをしたいのです。 総理は今度の経済運営の主たる基本方針として、「明確な展望の下に我が国経済社会の安定的な発展を図るための第一歩」とする。昭和五十四年度の予算編成方針ですね。中期的展望のもとに、「安定的な発展を図るための第一歩」という、この第一歩を踏み出す予算ですね。一体、中期的展望を持ったような予算の中身があるとお考えでしょうか。これは総理の意思によって特に入った、こういうふうに聞かされておりますがね。
  268. 金子一平

    金子(一)国務大臣 今度の予算編成に当たりましては、一応経済企画庁から出しております今後の経済七カ年計画による昭和六十年度の姿をある程度目標にしながら編成いたしておりまするから、そういう意味において、五十三年度にどの程度それが実現できたかは別にいたしましても、おおよそこういうかっこうでこれから進まなければいかぬという気持ちを体して予算編成をやったと御了解いただきたいと思います。
  269. 河村勝

    ○河村委員 中期経済計画というのは、具体性が何もないのですね。ただマクロのトレンドがあるだけで、中期的展望に立って経済社会を発展させるというような中身がない。ただそこに書いてあるのは、日本型福祉社会なんということが書いてあるだけですね。一体日本型福祉社会というのは、総理、何でございますか、総理はたびたびおっしゃっておられますが。
  270. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本には慣行として特有なものがございまして、平板に申し上げますと、まあ相互扶助でございますとか、人間的な思いやりでございますとか、惻隠の情とか、そういったものがわれわれの精神的遺産としてあるように思うのでございます。それで、福祉社会を建設するということは、もとより公的な政策によりましてまた公的な財源によりましてやってまいるのが本筋であることはよく承知いたしておりまするけれども、そういう日本の遺産というものを活用しながらやってまいることが適切じゃないかという私の考え方を申し上げたわけでございます。
  271. 河村勝

    ○河村委員 その考え方は私どもも大体似たような考えを持っておりますけれども、中期的に予算とのつながりを考えていく場合には、福祉社会というからには、まだまだおくれた水準の年金とか住宅とかいうものを引き上げていかなければなりませんね。ですから、そういう中期的な構想とその五十四年度予算とをつないでいく、そうした具体性のあるものでなければ、私は第一歩を踏み出したなんということは言えないと思うのですね。こういう福祉の増進というものと経済の安定成長というものは、両方考えまして、中期的に一体日本の経済社会というのはどういう形であるべきか、きょうはもう時間がありませんから、長々としゃべっている時間がございませんが、ごく端的に申しますと、いま非常な貯蓄過剰状態ですね。国民所得統計ベースで言うと、大体二五%です。それで民間の設備投資というものが非常に落ちている。そこの需給ギャップが非常に多い。これがデフレの一番大きな原因で、それを国債によって国が借金をして穴埋めをしているというかっこうですね。だから、このギャップが埋まらないと、いつまでたっても国は赤字でなければならぬという理屈になるわけです。  だから、中期的に見まして、これから政府のおっしゃるような経済社会であればまあ安定成長、やや低成長ですね。こうなりますと、昔のように民間設備投資というものがGNPの二〇%を超すような状態には二度となりません。政府の計画でも昭和六十年度一五%。しかるに民間の貯蓄というのは二五%もある。そうすると、そのギャップを埋めることを考えていかないと、いつまでたっても国は国債を発行して、それで需給ギャップを埋めていかないと安定成長はできないというかっこうになりますね。そうでしょう。それをどうやって埋めていくかということについて、一体中期的な構想がおありかということを伺いたい。
  272. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 貯蓄は、当面は、まあ内需の拡大を招来するための各種の政策手段を動員せなければならぬと思いますが、中期的な展望におきましては、雇用を拡大してまいる、それから社会資本の整備を図ってまいる、生活環境の整備を図ってまいるとか、そういう方面に活用、充当してまいる工夫をこらしていかなければならぬのじゃないかと思います。
  273. 河村勝

    ○河村委員 ですから、過剰貯蓄をだんだんほかの投資や消費に移していかなければならぬ。その一番有力な対象というのは、民間設備投資にかわるものは、これからはやはり投資で言えば住宅産業ですね。消費で言えば年金その他をふやして、それで貯蓄の利用をなくしていく。両方から攻めていかないと、なかなか日本は安定成長の軌道に乗らないと思うのです。そうであれば、昭和五十四年度を、もし中期的な経済運営の第一歩を踏み出すというのであれば、そうした方向づけの第一歩にすべきであるというのが私どもの意見なんです。ですから、いま景気の対策として公共事業一本やりでおやりになって、それも道路を中心の公共事業一本やり。これには限界があることはもうおわかりであるし、であれば、私どもはこの際ぜひとも住宅と年金──年金も中期的な計画というものは当然おありのはずだから、それを少し早めていく。住宅の方も、前々から私どもが申し上げております民間住宅ローンの利子補給、それと関連公共施設の整備による地価の引き下げ、こうしたものをことし並行してやることを、この際ぜひとも提唱したいのです。場合によったら、道路予算など公共事業は少しぐらい削ってもいいと私は思っているのです。むしろそのぐらいにしてやっていくことが大事ではないか、いかがでございますか。
  274. 金子一平

    金子(一)国務大臣 関連公共事業の関係は、本年度に比べて倍額の予算をつけましたけれども、これは少ないと思います。できれば、これからもどんどんふやしていきたい。  住宅ローンの利子補給のお話でございまするけれども、いろいろ私ども検討いたしましたけれども、やはり住宅ローンをやりたい方々に利子補給するということになると、新たなる不公平を生むという問題が生じまするのと、それから大変手数が厄介な問題も現実の問題として出てまいりまして、でき得べくんば、住宅金融公庫の公的な融資を相当ふやしておりまするから、これを利用していただきたいということでことしは決着をつけたような次第でございます。
  275. 河村勝

    ○河村委員 住宅金融公庫融資枠は、一戸当たりの額はふえておりますが、戸数はことしは全然ふえてないですよね。それから住宅関連の公共施設の整備、なるほど去年三百五十億、ことし六百億ですね。しかし、一体三百五十億によってどれだけ宅地の価格の引き下げができましたか。実績がおわかりでしょう。結局、多少は役に立ったかもしらぬけれども、宅地の引き下げの効果はまるっきり出ていないのじゃありませんか。いかがです、建設大臣。
  276. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 お答えいたします。  本年度から実施したわけでございますから、まだ実績は出ておりませんし、宅地の開発につきましては、数年間かかるわけでございますから、その間、この三百億、ことし六百億にふやしていただく予定でございますが、これをつけていただく、こういうことになっておりますから、実績はできておりませんが、われわれの見通しでは、場所によって違いますけれども、大体五%ないし一五%の価格引き下げ効果がある、このように考えておるわけでございます。
  277. 河村勝

    ○河村委員 五%ぐらいは下がるのもあるかもしらぬけれども、一五%なんというのは大うそですね。建設省が、私どもが主張しておりますように、この六百億を補助事業の補助金に使わないで、これを地方公共団体に地方債を出してやらせて、それの利子補給をしてやれというのがわれわれの主張なんですよ。いま建設省の予算ですから、関連公共事業でも学校とか、保育園とか、そういう種類のものは全然入ってこない。ですから、本当の関連施設の整備にはならないのですね。もともとこの種のものは、地方が借金でやりましても、そこに住む人が定着すれば、税金で、十年ぐらいで元が取れるのです。ですから、十年くらいの利子補給方式でやれば、同じ六百億を出しても十倍くらいの効果があるわけです。どうしてこの提案に建設省が応じないのか私は不思議でしようがない。いまも、何かことしはまだやったばかりだから結果はわからぬなんて言っているけれども、本当はわかっていなければならないはずで、実際はせいぜい二、三%の地価の引き下げくらいに当たればいいくらいのものですよ。私どもの方式によれば、少なくとも理論上二五%くらいは下がる、そういう方式を提案しているのですから、きょうはもう時間がございませんが、もう一遍考えてほしいのです。建設大臣、いかがですか。
  278. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 かねがね先生からの御提案でございますので、十分検討させていただきたいと考えております。
  279. 河村勝

    ○河村委員 総理大臣、私はさっき年金と住宅と申しましたが、たとえば老齢福祉年金、それから国民年金の十年年金、五年年金、こうしたものの引き上げをやることは内需の拡大に非常に有効に働くと思います。もしおやりになる気があれば、厚生年金の積立金を一時取り崩してこれに充当する。将来老齢福祉年金等はなくなってしまいますから、国庫の金はその分だけ楽になりますから、将来返還することはそうむずかしいことではない。二十兆円ある厚生年金の積立金を使って、そうすれば大蔵省の御心配になるような財政的負担はない。これによってもう一段と景気の浮揚を図るというのは有効な方法だと思いますが、いかがですか。最後にそれだけ聞いておきます。
  280. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先生の御指摘のような御議論があることは、私も承知をいたしております。ただ、河村委員の御指摘ですが、確かに老齢福祉年金等福祉年金は逓減していくことは間違いありません。同時に、厚生年金はこれから給付はだんだんふえていく一方でありまして、仮にそういう手法を用いたとすると、後代負担は非常に膨大なものになるということも一つの問題だろうと思います。それと同時に、厚生年金そのものは国際水準まで一応参っておるわけでありまして、果たして年金の制度を、そういうふうな国民の貯蓄性向にブレーキをかける使い方というものが年金制度そのものになじむかどうかについては、私はちょっと疑問を持っております。
  281. 河村勝

    ○河村委員 お考えをいただきます。
  282. 竹下登

    竹下委員長 これにて河村君の質疑は、保留分を除いて終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  283. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大分審議が重なりましたが、いままで余り委員会に出ない問題を取り上げて伺いたいと思います。  というのは、青少年の教育問題、家庭の問題、教員の問題等、いろいろ論議がありますが、ちょうどたまたまことしは国際児童年である。政府も計画を立てていらっしゃると思います。それから、あわせて終戦後法律になって、いよいよこの四月一日から障害児童の養護学校の義務化の問題をめぐって、これも全国でかなり波紋を起こしておる問題、皆さん御承知のとおりであります。それから国民医療というか保険組合の問題、自治体は国民健康保険で財政がピンチに陥ってどうにもならないというのは大臣も各位も御承知だと思うのです。それから、農業は昨年の予算委員会で審議がありましたように、初年度まずやってみた、その成果はどうだったろうか、それから今後どうするのか。五番目は、これも大平総理の目玉でありますが、田園都市構想はいまだに列島改造論の後始末というか、土地が遊んでおる、山は穴ぼこになっておる、農地はつぶれてしまっておる。一番典型的なのはむつ小川原。こういった問題と、田園都市構想をいま花火を上げられたわけだが、国民サイドから見ると、これをどうつないだ方がいいのだろうか。以上、大体五つの大きな項目を取り上げて伺いたいと思います。  まず最初に国際児童年、二十年前の国連決議に基づいて日本もこれをやろうとしておるわけですが、ただ、これはオリンピックとか万博とかいったお祭り騒ぎではなくて、これから児童の問題をいかに制度化して、総理から言えば日本型福祉社会というのだが、予算を見るとそれが具体化されているのだろうか、そういったところがあるので、国際児童年の主務大臣からひとつどういったことをもくろんでおるかということから伺っていきたいと思います。
  284. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 国際児童年につきましては、いま御意見のとおり、二十年前、児童権利宣言が設定をされて、ちょうどことしが二十年に当たるわけでございます。  そこで、国連三十一回の総会におきまして、二項目が決定をいたしました。第一は、児童を擁護して福祉向上のためにひとつ努力をしようじゃないか、第二点は、世界全体でございますが、国家、社会を通してみて、児童を大切にしていくことはきわめて大事な点であるというような点をお互いはっきり認識すべきである、そういうような方針が決められて、各国においてことしを国際児童年といたしまして、各国が児童のためにいろいろな行事を考えておるわけでございます。  しかし、御指摘のようにただ行事だけで終わってはならない、ことしをきっかけにして真に児童のための施策を恒久的な施策を含めてやるべきである、そういう方針のもとにこの児童年の計画を進めておるわけでございます。  政府といたしましては、そうしたことを国民自身が理解、認識をしていただく啓蒙運動に一つの力を入れようというのが第一点でございます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  第二点は、これをきっかけにして児童擁護、福祉向上のための諸施策をひとつ実施していこうではないかという点でございます。  第三点は、わが国のような先進国と申しますか、比較的恵まれた状態のところまで発展をいたしておりまする国の立場というものはそれなりの施設ができ、行事ができるわけでございますが、開発途上国のことも考えるべきである。そういう点において、国際的に幅を広げて、ユニセフを中心とする国際協力を児童福祉の向上のためにやろうという三つの柱を立てて計画を進めておるわけでございます。  予算といたしましても、各関係省庁、既存のいろいろな児童福祉向上に対する施策をやっておりまするが、特にことし増加をしたという数字を拾い上げてみますと、約三百六十億程度のものは追加されておるのではなかろうか、そういう状態にあるわけでございます。
  285. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いま大臣がおっしゃった国際協力、三つの中の一つですが、私の具体化というのは、たとえば日本は終戦後、あのように食糧が窮乏して、ああいうような荒廃の時期に、たとえば海外からミルクをかなり援助をされてしのいできたわけであります。ところが、わが国はこのように経済先進国になったわけですけれども、それに対して、果たしてそういうものを具体化する気持ちがあるのか。  あるいは児童手当というのが創設されて数年になる。日本の国は、三人子供がいて三番目、一番上が十八歳、今度の予算を見ると保護世帯で五百円加えて六千五百円、しかもそれは三人目の子供だけ、こういうのです。ところが、厚生省の資料によると、一家のうちの児童数は平均が一・九人なんだ。一・九人なのに三人目に児童手当をやって、国際児童年という決議をしたころは二十年前ですから、もうぼつぼつこの児童手当というのは考えてもいいのじゃないか。私の調べたところによると、三人目にやるという国はまずちょっと見当たらない。  こうやってみると、どうもお題目はりっぱです。こういうしおりもつくって、国連で決議をしたのだから日本もやらざるを得ない、これだけお金持ちになったのだから。ところがそういった姿勢が具体化されてないのではないか、こういうように思うのでございますが、もう一遍総務長官、代表でひとつ……。
  286. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 国際的な面を取り上げてのお尋ねでございますので、この点に触れてまいりますが、確かに私どもが終戦直後におきまする悲惨な状態にあったときに、アメリカあるいはインド等からもいろいろな援助を受けて非常に感謝をした、したがって、児童年の機会に、国民的にそうしたときの援助を受けた感謝の気持ちというようなものをまず持つべきである、そういうことで今回の国際的な幅における協力というものをやるべきだという啓蒙が大事だと思いますが、具体的にはユニセフに対して国際協力関係でいま予定をいたしております資金なども、九億三千万という一つの目標を立てて拠出金の応募にかかっておるわけでございます。そして具体的に、健康の問題あるいは教育の問題等の施設にこれをお使い願おうということで全国的に募集にかかっているわけでございます。県、市町村あたりの協力も得て、ぜひ目標額には達したいという方向で進んでおるわけでございます。
  287. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間があれば後で詰めますが、いま教育問題が出ました。しかし、この教育問題はいままでの審議の中でかなり入りました。しかし、ただ福祉社会という哲学ですか理念ですか、大平総理の話を聞いておって、そこで具体的に──具体的というか、文部大臣にもお伺いしたいところですが、いまの社会というものは子供の目から見たらどう見えるのだろうか。自殺者が絶えない。この前は、おばあちゃんを黄金バットで殴って、自分は自殺した。それに、きのうおとといは、銀行ギャングのまねをした。これは、後ろで聞いてみると、親が悪い、あるいは家庭が悪い、いや先生の方が悪い、こういう論議じゃどうも解決されていかない。というのは、たとえば何が正義か、何が正しいか、何が不正であるかということを、国会というか政治を担当するこの立場からもやはり明らかにしなければならぬじゃないかと思うのです。たとえば私たちの子供のころを皆さん思い出すでしょうけれども総理大臣、これは大変な偉い人、りっぱな人、その人がなわをかけられた、監獄に入った。出てきて、バッジをつけて平然と国会の中にいる、法律をつくっている中に入っている。  それからまた、この間のロッキードじゃないのだが、バッジをつけている人が常にこういう問題に入っておる。バッジをつけていない方は自殺などをしている。あそこで亡くなられて、これから調べようとした人、それは同情の方に入る。それから、このように、落ちた偶像なんというものじゃない、直線的に子供はテレビで入るわけです。大きく入るわけです。あるいはまた、この間灘尾議長が就任された際に、最年長者ということで船田議員が祝辞を述べた。そうすると、祝辞を述べる中で、何となく国会議員の中から江川問題に触れろ、こういうやじが飛ぶ。しかし、われわれは大人であり、国全体で見ている。ある意味においては心臓に毛が生えている人たちなので、そう大したことはない。ところが子供の目から見ると、どうもあれはごり押しではないか、インタビューなんかすると、そのそばにバッジをつけている人が常に座っている、権力とか金の力を持っていると悪が悪でなくなって、むしろいいことなのか、こういうふうに目に映るのではないかと思うのですよ。いまの自殺をする者の統計をとってみると、非常に感受性の強い中学生というのが全部中心なんです。やはり何が悪か、何が善かといったところをえぐるという姿勢が偽政者全員になければ、家庭が悪い、親が悪い、学校の先生が悪いということは不毛の論議になっちゃう。こう思うのですが、総理、その辺どう思われますか。
  288. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 われわれが住んでおる社会を支配している原理は、一つは自由主義だと思うのでありまして、自由主義というのは、それぞれの人の人権をできるだけ尊重していくということであろうと思います。もう一つの原理は、国民主権と申しますか、デモクラシーと申しますか、そういうもので、立法権とか行政権というようなものを国民主権のもとで預かっておる者が守らなければならないルールというものがあろうかと思います。  したがいまして、行政府あるいは立法に携わっておる者の行動、言動というものは大変大事でございまして、国民一般はもとよりでございますけれども、とりわけ非常に敏感な児童の眼に鋭敏に映って、何が正しいかということが問われておると思うのでございます。御指摘のように、自由主義の立場から申しますと、いろいろな立場はありますけれども、すべて平等で自由で人権は守らなければならぬという原理はございますけれども、一方、国民主権という立場から申しますと、いま御指摘になっておられますように、行政、立法に携わる者の言動というものは、非常に厳しく国民の目から問われておるというように思うのでございまして、とりわけ児童の目にそれは非常に敏感に映っておるのではないかということを感じます。
  289. 川俣健二郎

    ○川俣委員 自由主義尊重ということと人権を大事にするという論議は時を改めてやらなければならぬだろう。それは私はかなり一つの意見があるのだが、ひとつ例が悪いのですが、文部大臣に伺うのですが、例が悪いとかいいとかじゃなく、たとえば江川問題のドラフト、これは法律違反とか立法機関で論議するというあれは、私は毛頭ありません。ただ、巨人、正義の味方、歌まで出た。ちょっとそこにバッヂをつけた偉そうな先生がインタビューについている、ああいう先生方がついていると、これはかなり悪いことをしても平然としているのでないかというようなことを子供の目から見ると──その辺は判断はないと思いますよ。そこを文部大臣はどうお考えでございますか。
  290. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 文部省としては、江川問題については、これは営業政策の問題もありますので、直接タッチしておりませんから聞いておりませんけれども、やっぱりプロ野球がこれだけ国民にもてる時代ですから、プロ野球が健全な発達をすることを願っておりますが、ともかく教育の問題とは非常にむずかしい問題でございますので、私どもも、次代の国民がしっかりするように、最善の努力を尽くしていきたいと思っております。
  291. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもこれ以上文部大臣に伺っても時間があればなんですが、やっぱり家庭が悪い、親が悪い、いや学校の先生が悪いという論議ではなくて、文部大臣は野球に対する知識があるかないかという問題じゃなくて、子供の目から見た場合に、いまの社会情勢がどうなんだということくらいは、やっぱり文部省は文部省なりに、そういう精神的な面を検討するべきだろうと思うので、この問題についてはこれ以上伺いません。  そこで児童問題ですが、ある二、三カ所かなと思いましたが、後で文部省に調べていただきたいと思うのですが、いよいよ四月一日から、障害児の義務学校、養護学校義務化、就学の義務、施設の義務ということで発足するわけです。そこで私はこれを今回の予算委員会、その前の補正予算の委員会、前から準備しておかなければいかぬよということだった。これに対してだんだんに、四月一日の就学時期になるに従って、皆さんの各地方で猛反発のあれが各新聞に出ております。これは、富山とかあちらの方のあれがありますけれども、「保護者ら義務制に猛反発 就学通知を返上」と、こういうあれが出ています。こういうことになりはしないか。というのは、文部大臣、こういうことなんです。いまの障害児は、それぞれ大体一つの村──へんぴなところにも一つの村に一つの小学校がある。そうすると、五体満足なお姉さんに手をつながれて障害児の弟が学校に行って、そして特殊学級というクラスに入る、そして終わったら鐘と同時に手をつないで家へ帰る、これが実態。ところが今度は、二十キロ四方、三十キロ四方に一つ養護学校ができるわけです。それに対して文部省が通達で、国が建てた養護学校に通わなければ修学証書はやらないという通達から、そもそもこれはおかしいんだなという、まあ通達行政からこれは始まったわけなんです。ところが、過去二回の私の質問によって、それは通達だけを見るとそうなんで、いまの質問に対して通知を出します。というのは単に教育委員会から割り当てた、あなたは二十キロ先の養護学校に通いなさい、そしていまの学級から離れなさいということは言わない。じゃ親の意見を聞いて特別な委員会をつくって民主的に運営します。その通知はいつ出すかといったら十一月に出しますと。これは出したようなんです。ところが、文部省はそう思っているかもしらぬけれども、このようににぎにぎしく新聞は、もう各地方間違いない、親の選択なんて、親の意見なんというのはほとんど聞いていない、こういうのが実態なのです。そうすると、私が最初申し上げましたように、やはり案じたとおりじゃないだろうか、こう思うわけです。国際児童年のお題目はいいし、総理大臣の子供に対するあれもいいんだが、実際問題文部省としてはこれをどう取り扱うのか。親がほとんど拒否なんです。近いところはいいですよ。だけれども養護学校なんていうのはぽつんぽつんとあればいいわけですから。私のところの地元にも大体三十キロ四方にぽつんと一つあるわけです。どういうふうにこれを取り扱えばいいのでしょうか。
  292. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 お答えいたします。  御承知のとおり、養護学校が義務制になりましたので、心身障害の種類と程度によって適切な教育を行うというのがこの趣旨でございまして、ではその基準をどうするかというと、就学指導委員会教育的に心理学的にさらに医学的によく検討して、これを配置するようにという指導をしているわけなんでございます。それで、現在小中学校におる子供は特別の事情があればその小学校にいてもいいと、こういうふうにいたしておるのでございます。
  293. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまのような大臣の御答弁を伺うと、悶着が起きるわけがないんですよね。それなのになぜ起きるだろうかということなんです。いま大臣は御就任後間もないんで、担当の方の局長さん、その辺はどうなんですか。全国でかなりあると思いますよ。  後で全国的に電話なりで聞いて、もう間もないわけですから、四月一日ですから、障害児を持った両親にしてみれば大変大きな問題です。この間まで姉さんと一緒に行ったのが、それこそ青少年、子供の目から見ると、法律というのはこういうものだろうかということを感じます。その辺なんです。
  294. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 いま小中学校におりまして、学校教育法の施行令の定めによる障害の程度からして、本来ならば養護学校へ行った方がいいという子供さんが大体二万余おるというふうに考えられておるわけでございます。  そこで経過措置として、そういう子供さんについては、ただいま大臣からお話がありましたように、特別な事情がある場合で引き続いて小中学校に就学した方が適切であるというふうに判断された場合はそれでよろしいのだ。引き続いて小中学校に就学した方が適切だというのはどういうケースかといいますと、私どもの判断の基準として示しておりますのは、一つは、その人が相当障害がありましても、その学校で自分なりに一生懸命勉強しようという意欲と、それからほかの子供さんについていこうという能力といいますか、そういうものがあり、かつ受け入れる小中学校がそれを受け入れるだけの施設なり教授陣容を持っておるという場合は、これはそこに残っておってもいいでしょう。しかし、いま先生御指摘のように、いろいろトラブルがあるという、その実態につきましてわれわれも幾つか実例を聞いておりますけれども、いままで小中学校におっても、とても教育として普通の学校では本人も対応できないし、学校もそれを受け入れるだけの能力がない、こういうケースにつきましては、これはせっかく義務制で新しく養護学校ができるわけでありますから、それはひとつ養護学校へ行ってもらうように指導してほしいというふうに私どもは言っておるわけでありまして、ただ、これが経過措置でございますので、いま御指摘のように、なかなか話はすらっとはいかない。しかし、私は、やはり教育の問題でございますから、規則に決められた期日にこだわらず、できるだけ教育委員会なり学校当局と父兄とよく話し合って、合意の上で養護学校へ行った方がいい方は行くように指導してほしい、こういうふうにいまやっているわけであります。
  295. 川俣健二郎

    ○川俣委員 若干のトラブルとおっしゃいますけれども、若干のトラブルでしたら、後で結構ですから委員長を通じて頼みますけれども、全国的にどのくらいのトラブルがあるか。  それからもう一つ局長がいまおっしゃった中で大事なことは、本来はそうあるべきなんだが、親の期待、希望にこたえたいのだが、そういうような施設もなければ職員もいない段階で、ここなんです。ここが国際児童年を開く姿勢が具体化しているかということなんです。たとえば学校に入る前は、保育所の場合は厚生省の管轄なわけです。厚生省もこの障害児の問題はずいぶん取り上げたわけです。それじゃ厚生省の方の予算を、これをいいサンプルとしておほめ申し上げるわけじゃないのだが、どういうような金額に五十二年、五十三年、五十四年と、障害児の保育所に障害児を入れた場合はどのぐらいの予算をあげるかということのその伸びをちょっと文部省、聞いてみてください、厚生大臣に。
  296. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま川俣さんから障害児保育だけについて御質問がありましたが、障害児保育だけについての資料をちょっと持ち合わせておりません。ただ、全体に厚生省として今回の国際児童年に取り組みました姿勢は、まず第一に心身障害児対策と母子保健対策というものを一つ政策の柱に据えて、今後継続した事業として進めていこうという体制で取り組んでおります。いま御指摘のありました障害児保育、細かい数字につきましてはいま持ち合わせませんので、後刻お届けをさせていただくことでお許しをいただきたいと思いますが、この機会に一言だけ川俣さんの御質問について私に申し上げさせていただきたいと思います。  実は御承知のとおりに私の父親は障害児でありました。そして幼いときから私は父の話をよく聞かされておりました。それだけに私は養護学校の義務設置という事態が行われたこと自体は大変喜んでおります。同時に、一般児童の中で本来教育できるはずの子供さんまで、養護学校の定員をそろえるために往々にして移される傾向があることについては、非常に私は心配をいたしております。厚生省関係の施設、当然この義務教育という問題を控えて対応していかなければなりませんが、少なくとも私どもの所管する分野においてそういう事態は起こしたくない、また起こさぬように努めていくつもりであります。
  297. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さすが厚生大臣ですな、この点だけは。というのは、厚生省から伺った予算をちょっと申し上げますと、五十二年が四千七百万、五十三年が一億一千百万、五十四年が二億六千六百万と、文部省、そういうものなんです。厚生大臣がいま御自分のお父さんのことから話をしていったんだが、文部省の姿勢全般がいいか悪いかと言うほどの知識は私はない。ただ、こういう法律をつくったから、こういう通達を出したから、施設がないから、職員がいないから、いま入っている者まで全部やるという姿勢があなたからうかがわれるわけです。ところが障害児というのは、六歳までは厚生省、それ以上は文部省という年齢的な区分けはあるかもしらぬが、障害児というのは、一般の五体満足な子供との違いはそこにあるわけですよ。これは文部省になじまないことかなとも思ったのですよ。そういう姿勢がなければ、障害児の養護学校というのはいつまでたってもぎくしゃくする。同じ政府機関の中の大臣が抵抗を感ずると言うんだ。大臣が抵抗を感ずるんだもの、いま子供を入れようという親は、とてもじゃないけれども教育委員会の指示があっても、抵抗を感ずるなんというものじゃない。あなたは一部トラブルがあるなんて、とても──委員長、これは後日各地方を調べてその実態を聞かしていただく資料を求めたいと思いますが、いかがですか。
  298. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 そのように相談をいたします。
  299. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、厚生大臣になんですが、今度は余りおほめしたくない問題で恐縮なんですが、さっき申し上げました、いわゆる医療と健保というのは非常に関係があるわけですね。何ぼ健保を上げても、あんなでたらめな請求を払えるかという意見も出てくるし、いや、技術料を認めてくれないから、いつまでたっても薬でもうけるしかない。あるいは、三センチやけどをしても、十センチとカルテに書いてもわかりはせぬ。十日入院したって二十日入院したと書いたってわかりはせぬ。こういう悶着もある。ところが、さりとてこの予算委員会に課せられた問題は、いま提案されておる、あるいはいま審議しておる、あるいは昨年審議しておる健康保険という法案が通っているという前提の予算なんだな、これは。そうですか。
  300. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ぜひ通していただきたい、それを通していただけた時点において八月から保険料改定その他の諸般の措置をとれる、そういう状態にしていただきたいという予算でございます。
  301. 川俣健二郎

    ○川俣委員 通していただけないと言ったって、提案説明もなければ、一年間宙づりになって通していただけないと言ったって、これはとてもじゃないけれども理解できない。ところが、実際問題、これは機械的な受け答えはやめましょうや。  きのうの審議にも出たように、この健康保険法改正をめぐる問題が四つ五つあるわけですね。一つは武見メモというのがあるわけです。これもきのう政府の方はお認めになったのです。さらにもう一つは、齋藤自民党幹事長と武見さんとの合意事項があるわけです。それから、いまの厚生大臣が大臣になる前の橋本私案というのもあるわけです。そして、橋本私案をつくった橋本大臣が厚生大臣についたわけです。だから、政府の案を通してもらいたい、こうおっしゃる。ところが、これは厚生大臣、混乱するんじゃないですか。一年間宙づりになっておるのだけれども、どういうように国会は思えばいいのですか。それとも、この予算は予算で、政府が提案している改正案が通ったという前提で予算をまず通してもらいたい、それで通したあと、自民党の修正案を国会に提示します、こういうスケジュール、こう解釈していいのか。どうなんですか。
  302. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 川俣さん、御質問でありますが、私は健康保険法改正案を通していただきたい、御審議を早くお願いをしたい、そして通していただきたいと、この前からもお願いを申し上げております。  昨日の本委員会でお答えを申し上げましたが、自由民主党齋藤幹事長と日本医師会武見会長との間で二項目のお約束ができたという事実は、私も承知をいたしております。そしてその中の一つのプライマリーケアの項目につきましては、すでに厚生省自身も従来から推進してきた施策の延長線上のものでありますから、これは私どもとして対応していくこともできるわけであります。また、もう一つ政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の間の給付の公平、負担の公平、すなわち社会的公正の確保という項目につきましては、自由民主党の方で御論議を始められたとは伺っておりますが、結論が出たとは私どもは伺っておりません。また、それが、川俣さんの御質問でありますけれども、その予算を云々しなければならないような結果でまとまるとは私は信じておりません。
  303. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこが、自民党の方で審議しているやに伺っておりますがとしゃあしゃあおっしゃいますが、橋本私案を出すぐらいの権威のある大臣なわけです。自民党の議員であり、大臣なわけです。ところがそれに対して、きのうの答弁もそうだが、予算を修正しなければならないような修正案は出ないだろう。それじゃ何のために審議しているのですか。一たん宙づりになっているけれども政府が出している健康保険法、あれではだめだというんで、いろいろとこそこそとメモで合意したりなんかしているわけだ。世間はそう見ているわけだ。それはあなた方、認めているわけだ。そういうふうにして、それでなければいけないという圧力を受けて宙づりになっているわけだ。そうだろう。それを予算が直るほどのものは出ないと思うと厚生大臣が言う。これはどういう想像なの。ある程度知っているというなら、これは修正なんかとてもじゃない。これなら論理が整然としていますよ。知らないと片一方で言っていながら、自民党の方から予算を直すようなものは出ないんだ、こういう言い方はどういうことなんですか。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  304. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いや、理路整然としておらぬとおっしゃいますけれども、実はきわめて理路整然としておるのであります。というのは、健康保険法改正案、確かにその内容について与党の承認がなくて国会に提出をされたという経緯はございました。しかし、五十四年度予算編成に当たりまして、私は、政府管掌健康保険の予算、これは現在国会に継続審議になっております改正法案をもとに編成することについて与党の了承を得ております。また予算案全体につきましても、与党であります自由民主党の正式機関の了承を得ております。私は、健康保険法の改正案というものは、内容については与党の追認をいただいた、御承認をいただいたと考えております。
  305. 川俣健二郎

    ○川俣委員 承認を得て、政党政治ですからそれは当然なんだが、承認を得ているというところにばかに力を入れているところに問題があるんだ。承認を得ているのに、自民党の方で修正しなければならぬから審議を待てということはないでしょう。その辺がどうも理解できないんだ。それはそうじゃないですか、どうですか。承認を得ている。ところが、きのうたまたま社会保障制度審議会をやった。自民党の審議員もいれば社会党の審議員もいる。自民党の審議員の方から、あれは内容は承認していない、この方が理路整然としているよ。だから修正案をいま検討しておるんだ、この方が正直だよ、子供の目から見た場合。この方が針千本にならないよ。そうだと思うよ。ちょっと理屈が合わないじゃないですか。自民党ではあれは承認してないんだ、だから、いま自民党で鋭意検討して修正案を出そうと思っているんだ、この方が正直じゃないですか。
  306. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 せっかくの御意見でありますけれども、いま申し上げましたように、五十四年度予算を編成いたしますに際し、私は、現在継続審査になっております健康保険法改正案で予算を編成することについて党の了承を得ております。また、それに基づいて編成されました予算案そのものも党の正式機関における正式の承認を得ております。  なお、いまお話がありましたが、私ども社会保障制度審議会の事務局の万から聞きましたところでも、いまのところ政府案を進めていくが、党内にも検討せよというような声はある程度のお話だったというふうに伺っておりまして、川俣委員が御引用になったような発言の内容とは私は聞いておりません。
  307. 川俣健二郎

    ○川俣委員 普通はそうなんです。政党政治として、自民党が一たん出した政党政治の案を、このように医師会と往復して、幹事長が行ってみたり山中先生が行ってみたりやっているというのは、みんなあなた方も認めている。しかし橋本私案は、自分が大臣になったんだからある程度のあれはがまんをして、宙づりになっていようが政府案でいこう、こういうことなんです。  ところが、あなたが言われたこの合意事項、さっきくしくも二つ申されたんですが、プライマリーケアという、いわゆる見立てですか、初期診療といいますか、やはり偉い経験のあるお医者さん、さっき端くれという話が出たけれども、そういうことは私は言わないんだが、経験を積んだお医者さんが診る初期診療代というのをやはり技術料として見る、こういうことは合意を得た。ところが、二つ目は、組合健保と政管健保との負担、給付の不公平是正を行うということは、何のことはない、財政調整でしょう。こっちは黒字、こっちは赤字、だから一緒になれ、こういうことなんじゃないの。どうなんですか、これは。
  308. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 プライマリーケアと申しますのは、一次医療の新しい概念でありまして、的確な日本語の翻訳は現在まだ御承知のようにございません。一般に救急措置あるいは健康管理等を含む幅広い医療を住民サイドで行うという中身のものでございます。ですから、これを地域に定着させるということは、当然やっていかなければならない私どもの仕事の一環であります。また、たまたま技術料云々というお話がありましたけれども、そういう受けとめ方を私どもはいたしておりません。  それから、自由民主党の方で合意をされました二つ目の問題点は、ですから、私どもとしても非常に大事な問題だとは受けとめております。ただ、現在御提案を申し上げております健康保健法の改正案の中におきましても、将来においてこれは共済等も含む幅広い総合調整を行うまでの間、組合管掌健康保険の中における財政調整を実施するという形でありまして、方向は私は違っておらない、そのように理解をいたしております。
  309. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さすが、あなたいみじくも大事な問題と言った、二つ目は。これは大事な問題ですよ。保険制度というのは保険主義ですから、保険主義で自分たちのグループでつくって自主的に管理するという、そういう底流が保険主義でしょう。こっちの方のあれが、おまえのところは少し黒字が多過ぎるから赤字の方と調整するというのは、これは恐らく根幹に触れる問題じゃないの。根幹に触れる問題を自民党の責任者である幹事長が合意したものを、あなたが厚生大臣であり、自民党員でないとは言わないだろうけれども、ちょっとその辺は薄い。それだったら、国民と言わなくたって、われわれこれからこの予算が通ってから、本会議から始まるだろうが、担当委員会で審議する態度は──自民党の総裁としては合意事項でしょうが。そうでしょう。幹事長が行って合意したんだから。そうして、政府としては宙づりのやつをやってくれという言い方は私はとても理解できないな。頭が悪いかな。これはおかしいと思うよ。総理大臣どうです。総裁として、幹事長が合意したものとは全然違うものなんだから、いまの政府の提案は。どうです、これは。
  310. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、私の所管部分につきましてのお話でありますから、私からお聞きをいただきたいと思います。  ですから、私は自由民主党の方でそういうふうな作業が始められているとは聞いておりますけれども、その内容が固まったとは聞いておりません。それが固まりました時点において、当然それは私ども十分に御相談はいたします。
  311. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私はだからかっとくるよ。かっとくるというのは、いいですか、医師会はどっちを向いているとか向いていないとかという論議をしているのじゃない、ぼくは。しようとしない。ただ、医師会がこの健康保険改正に重大なあれをいろいろと左右するということで、幹事長がいま政府案が出ておるのに修正案をつくろうと思って、医師会の会長と、責任ある団体と責任のある団体とが合意したんじゃないですか。そんな誠意のないことを言うなよ、あなた。信義のないことを言うなよ。総裁としてと、総理としての二本あるわけだよ。どうなんです。やはり総理大臣の答弁の方がいいんでないですかな。相手が責任ある団体ですよ。こっちも責任ある団体ですよ。大人と大人の合意ですよ。この合意したものを総裁として提案するつもりなのか、前からの宙づりを審議してもらおうとするのか、聞いたっていいじゃないですか。総理大臣、どうですか。
  312. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 非常に込み入ったお話でございますが、厚生大臣を信頼してその処理するところをバックアップしていくつもりです。
  313. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一つで部会長に関連質問してもらいます、私が言い尽くせなければ。これは委員長も聞いていますけれども、やはり医師会と約束したことは、いいか悪いか、守るという姿勢がなければだめでしょう、総裁としては。幹事長が行って判こを押してきたものを、そうじゃないの。これはいいか悪いか、別だよ。いいか悪いか別として、いまの健康保険法を直すのには医師会の意見も尊重しなければならぬということで、幹事長が行って合意したんじゃないですか。また医師会に怒られますよ、そんなことを言ったら。まただめになりますよ。厚生大臣の意見を尊重するんじゃなくて、総裁として一つの案をつくろうとしているわけだよ。ところが、総理の方としての案は宙づりになっているわけです。どうなんですか、それに対して。
  314. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会に対して責任を負っているのは政府でございまして、厚生大臣が諸般の事情を配慮いたしまして国会の審議に当たっておるわけでございますので、御了承をいただきます。
  315. 安井吉典

    ○安井委員 関連して……。総理総裁に伺うわけですが、いま厚生大臣を信頼すると言われたが、大平さんという人は政府では厚生大臣の上にいるし、自由民主党の中では幹事長の上にいるわけですよ。齋藤幹事長と武見医師会長とが話し合いができたということだそうですが、厚生大臣を信頼して齋藤幹事長の党内がどうなろうと厚生大臣の方でいかれる、そういう意味ですか。
  316. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 厚生大臣はいろいろのことを十分承知いたしまして国会の審議に当たっておるわけでございますので、私は齋藤さんからまだそういう御報告は受けておりませんで、これはどのようにこれから展開してまいりますか、今後の推移を見なければならぬと思いますけれども、いずれにいたしましても、対国会は自由民主党でございませんで、政府が責任を負っておるわけでございますので、厚生大臣を信頼してこの処理に当たりたいと思っております。
  317. 安井吉典

    ○安井委員 では厚生大臣に伺いますけれども、自由民主党はこの健保法の提案について賛成したということをさっきもおっしゃいました。ではこれは、全く無修正のままに最後まで法案を国会を通すのだという、そういう了承も受けているのですか、厚生大臣、自由民主党から。
  318. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 お答えを申し上げます。  私ども、国会の御審議の結果までどうこう申し上げるわけにはまいりません。ただ、私どもとしては無修正で通していただきたいという気持ちをいっぱいに持っております。
  319. 安井吉典

    ○安井委員 そうじゃないよ。手続論として自由民主党のいろいろな手続があるでしょう、党内手続が。わが党にもあるし、ほかの党みんなありますよ。その手続としては最後までこの法案を通すのだという、そういう保証まで受けた手続が済んだのかどうかということを聞いているんですよ。
  320. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま申し上げましたように、この五十四年度予算の編成に際しまして、継続審議中の健康保険法改正案をもとに予算編成を行うということで了承を得、でき上がりました予算もそれで了承を得ております。ということは、私は、当然自由民主党として御承認をいただいておると信じております。
  321. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ、社会労働部会とか総務会とか、そういう党議ではどうなんですか。
  322. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは党の政調の関係部会におきましては、これで予算を編成し、まとめ上げていくということで正式に御了解を得ました。またそれに基づきまして、所定の手続を全部終了いたしております。
  323. 安井吉典

    ○安井委員 だから、それをいけしゃあしゃあと言うから私は腹が立つわけですよ。  提案について、予算編成についてはそうだ。しかし、あとはもう新聞に大きく報道しているじゃないですか。医師会と自由民主党との話し合いが済んでいるということですよ。だから、私は一生懸命にいま予算の審議をしているが、それは健保法がそのまま国会を通るということでしょう。そういうことであなた提案している。総理もそう言っている。しかしその裏で、新聞で報ぜられているように医師会との間の密約ができて、そのことによってどういう修正をするかという作業をやっているじゃないですか。ここにもメンバーの人がいないとも限らないと思いますよ。そういう作業をみんなやっているわけですよ。われわれ何のために審議をしているのか。まさに自由民主党と政府は同じじゃないですか。一方はこれを出しながら、その陰でこの法案は全部変えてしまうんだというそういうような作業をやっているということは、私は国会の予算委員会の審議をばかにしているものだと思う。そうじゃないですか。ちっとも予算は変わらぬというが、プライマリーケアのそれを重視する予算、それはどれだけなんですか。あるいはまた財政調整のためのあれはどうなんですか。そういう全体的な資料をこの場に明確にして、そういう裏の交渉までここで明らかにしていただかない限り、私たちは審議を進めるわけにはいきませんよ。
  324. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 プライマリーケアに関します経費は、一つは臨床研修費の充実という項目でありまして、内容は臨床研修費等四十二億三千五百万円でございます。この内容は臨床研修費の補助金……(安井委員「いいです、そんな細かいことは」と呼ぶ)いや、内容を言えというお話でありましたから申し上げかけたのでありますが、それでは合計は、臨床研修費の充実、この関係が四十二億三千五百万、それから臨床研修における指導医の養成で二千四百万、また研修……(安井委員「合計額でいいです、そんなよけいな、時間がもったいないから」と呼ぶ)九十四億七千四百万になります。
  325. 安井吉典

    ○安井委員 委員長、だめですよ。それだけの話を聞いて、いま私が指摘している裏での話と表でも出したものとのその全貌が何も明らかになってないじゃないですか。だめですよ、こんなのじゃ。こういうことで審議を進めろという方が無理じゃないですか。これでは困りますよ。総理、どうです。そういう実態を明確にしてください。自由民主党と政府との間がいかなる状況にあるのか、そういうものを明確にここに出してください。それでなければわれわれは審議を進めるわけにはいきません。
  326. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党と政府の間と申しましても、現実に私は……(安井委員「あなたに聞いているんじゃない」と呼ぶ)はい、私は厚生省の責任者として党側にその了承を得、そしてこの国会において健康保険法の改正案の御審議を早くお願いをし、早く成立をさせていただきたいということで全力を尽くしておる最中でございます。それ以上の話というものはございません。
  327. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この二項は根幹に触れる問題といみじくも厚生大臣専門だから言っているのですよ。私らもそう思います。ところが、総裁として、御自分の方の時の幹事長が行って、最も意見を聞いて修正しなければならないであろうと判断した医師会と合意に達したものを持っているわけだから、それを総理が聞いてないということでは逃げられないのじゃないか。このとおり予算委員会で毎日拘束されているのだからやむを得ないだろうが、幹事長に総裁として伺った統一見解がここに出なければ、政府案をこれから審議するつもりなのか、幹事長が責任ある団体と約束した合意に基づいて審議するということなのか、まだ聞いてないということでは予算の審議としては進めないんじゃないですか。どうです。
  328. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 予算は、予算の編成をする時点におきまして自由民主党と政府との間で一致したことにつきまして予算化いたしまして、御審議をいただいておるわけでございます。楽屋裏で自由民主党と医師会にどういうお話がありますか、また、それは齋藤さんと武見さんがお話し合いがあったということは聞いておりますけれども、その内容が具体的に決まりまして、自由民主党で最終的に決まりまして、政府との間に意見も一致しまして、そういうことでございますならば、それは予算化しなければおかしいわけでございますが、そういうことでなくて、いま予算編成の時点におきまして決まっておるベースの上に立ちまして予算化いたしておるわけでございまして、このほかに自民党として二つの意思があったわけじゃないのでございまして、その予算編成の時点において決まっておるものを予算化してまいったわけでございまして、その後医師会との間にどういうお話し合いが進められておるか、私も詳しくは承知いたしませんけれども、まだそれはお話し合いの段階でございまして、党としてそれを決めて政府と折衝をいたしておるというようにはまだ私は承知いたしておりません。(安井委員「話し合いじゃないよ。ちゃんと合意と書いてある、新聞は。私ども、新聞しかわからぬ。まだ齋藤幹事長にお聞きになっていないなら、齋藤幹事長と十分お打ち合わせを願ってからもう一度ここで御答弁願います。そうでなければわれわれはできません」と呼ぶ)そういうことは私の方にお任せいただきたいと思うのです。  党と政府との連絡というようなことは、一々お指図をいただかないようにしたいと思います。私どもは、私どもが連絡をいたしまして決まったものを予算化し、あるいは法案化いたしまして御審議をいただくわけでございますから、自民党と政府お話し合いは、どうぞひとつ私どもの方へお任せいただきたいと思います。
  329. 竹下登

    竹下委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  330. 竹下登

    竹下委員長 速記を始めて。  川俣健二郎君。
  331. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、話を保留するにしても、ちょっと質問した立場から申しますと、私は決して総理にそちらの舞台裏を見せてくれと言っているのじゃないのです。それは絶対に誤解しないでください。よそ様の台所を見せてくれというのじゃないのです。私が言うのは、厚生大臣はやはり宙づりになっていようがどうであろうが、政府が提案しているわけですからこれはやります、これをお願いしますと言っているわけですよ。これは一つ理路整然としていますよ。ところが、私も社労でやっているわけですから、やはりさすが専門ですよ。プライマリーケアについてはいまのもともとの政府案に載っているけれども、二つ目のものはこれはちょっと重大な問題だと厚生大臣が言っているのは、これは根幹に触れることなんだ。こちらの方の団体のものをこちらの方に持ってこいという財政調整は、保険主義はとてもじゃないが……。そこで、合意メモというのを私は持っているわけですから、この合意メモを齋藤幹事長に聞いてないと言うならよく伺って、私たちがどのように判断すればいいのかということだけは、自分の時間ですからひとつ言わしてもらって次を進めたいと思います。保留させていただきます。  そこで、農業問題で、これも通達問題をめぐっていろいろ論議がありました。面積を金と通達で、強制的でない、最後に協力的なものだと言うが、達成した。三十九万一千ヘクタールに対して一一三%、むしろ一三%もオーバーして達成した。私は、昨年のこの予算委員会で、減反する面積が達成しても生産量は減らないよ、こう言ったら、時の農林大臣が、面積が減ったら生産量が減るのはあたりまえだろう、こうおっしゃった。減らない。それはなぜかというと、農民もやはり緊急避難的に十枚のうち一枚のたんぼ、いわゆるできの悪いたんぼを転作に提供している。九枚のいいたんぼで十枚分をつくるという魂があるんだ。どこかの県知事が一割減反二割増産という合い言葉で減反協力体制をつくった時代もあった。なるほどこれ、とてもじゃないが天候がよかったとは言わせない。したがって、ああいうようにいろいろとやった生産調整は一体どうだったのだろうかということを、皆さんも去年の予算委員の方がほとんどなんで、その後の成果、一年間の成果をここで少し聞かしてもらいたいと思います。いろいろと聞かしてもらいたいと思います。
  332. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 お答えをいたします。  ただいま川俣委員のような点は確かにございます。ございますが、去年は史上まれな天候に恵まれて、全国的に一〇八、それから悪いたんぼもあるわけですよ、そのたんぼもよくとれているわけです。ですから、そういうような点が一番の問題であったわけであります。しかしながら実際問題として、政府が百七十万トンの調整予定をいたしましたところ、それが百九十二万トンと一三%オーバーということになったわけであります。したがってその点は……(川俣委員「面積」と呼ぶ)数量において予定のものをオーバーをしたわけでございます。わが方は数量の問題でありますから。ところが、天候の関係もあって、予定以上にオーバーしながら生産量が千二百五十九万トンと千百七十万トンを上回ったことも事実でございます。  それから成果といたしましては、やはり不足なものをつくるということで麦とか大麦、そういうようなものを指導したわけでございます。その結果は、大豆等においても五十年、五十一年、五十二年というようにずっと自給率がどんどん減ってきたわけでございますけれども、昨年はやっとこれを食いとめまして、ごくわずか、一%ぐらいでございますが、大豆の自給がやや少し持ち直した。それから、小麦にいたしましても、四%台で来たのでございますけれども、これも五十三年度の推計で、まだ正確な調査は出ておりませんが、これも自給率が少しよくなって、大体六%ぐらい行くのではないであろうかというように思っております。大麦、裸麦につきましても、五十年から一〇%、九%、九%と下がってきたわけでありますが、これはかなり向上して一二、三%ぐらいの自給率にどうも上向いていきそうだというようなことであって、いい傾向もあらわれてきておるというのが大体私どもの評価であります。
  333. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、私の方は数量さえ出ればいいのでということじゃないのだよ、去年の論議からいったら。通達事項は、最初は面積を割り当てるところから論議が始まったわけなんですから。それからもう一つは、生産量が出たので自給率が上がったということにはならないのよ。それはなぜかというと、たとえば北海道の場合は四〇%も協力した。なぜ協力しただろうかという問題なんです。それは、もともと北海道は米をつくるよりもでん粉とか芋類、いわゆる豆類の方が適している畑だから、一反歩五、六万や七万ぐらいの奨励金をくれるのならそちらの方に価格保障の金額と見て協力したわけだ。ところがうんと出たわけです、数量が。ところが輸入に歯どめがない。対外調整がない。そこへ出たわけですから、したがって出たものが流通過程に乗って、転作でとれたものが国民の食糧になっておるというならこれは自給率は向上なんだ。その辺、どうなんです。大臣、わかりますか。転作物がふえたということと自給率が向上したこととは違うんだと思います。
  334. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ストレートに結びつくわけではありません。ありませんが、水田であったものに大豆をまいたり、それから麦類をまいたりいたしましたものですから、この在庫量その他が一緒だと仮定をすると、やや自給率がふえる計算になります。もちろん数量はふえておるわけですよ。それはふえた分だけ数量がふえるのは当然ですから。そういうことを申し上げたわけです。
  335. 川俣健二郎

    ○川俣委員 たとえば、大臣、こういう例なんだ。グループでトウガラシを植えようということになってエスビー食品と契約した。それで八千円で契約した。そうしたら韓国から二千円で入ってきたので、あの契約は違約金を払うから要らないということになった。それでいま農家の庭にある。こういう例。一つの例だけれども、生産調整というところに力を入れると同時に、転作物でとれた米以外の農産物をどのような流通の過程に乗せて消費者に回すかということの検討がないわけだ、いまの水田再編対策には。厳重にみんなに注意されたにもかかわらずだ。どうですかその辺、担当でもいいですよ。
  336. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 中にはそういう例は幾つかは確かにあります。したがいまして、なるべく国内で足らないようなもの、麦とか飼料作物とか大豆とか、そういうような安心してつくれるものですね、また、ソバ等につきましても、ことしはいろいろ工夫をしましょうということでやっておるわけですが、しかし、収益の問題がございますから、地域によってはもちろん野菜をつくっているところもあるし、いまおっしゃったようにトウガラシをつくったところもあるでしょう。しかし、その中では、やはりうんと収益率の高い人もあるが、場合によってはそれが損したということもございます。これらにつきましては、やはり全体の関係で個々の作物まで全部政府が指定をするわけにもなかなかいかないということから、大筋の指導はいたしておりますが、どの作物を選定するかは、個々の農家がやはり最終的には判断をしてやる、こういうようなことであって、なるべくそういうような失敗をしないようにしてもらうように、今後とも危なそうなのはなるべく避けた方がいいじゃないかという程度のことは、これは申し上げておきたい、かように思います。
  337. 川俣健二郎

    ○川俣委員 転作物をつくるといったって、気をつけてやれよ、見通しをちゃんとにらんでやれよというのがあるが、やはり商品になるわけですから、国全体として対外調整の心構えがなければ、どうしても青刈りに逃げるかあるいは農協に管理転作させてほったらかしにするか、こういうものしかないんだよね。だから、生産調整で三十九万一千ヘクタール、この三十九万一千ヘクタールという三年固定の面積が、どういうものがどのようにできるだろうかというのは、それはつかんでいるはずです。そうすると、それがどういうふうにいままでの輸入品との関係が出てくるだろうか。こういうようなことを生産調整と結びつける検討の場がないんでしょう。ありますか。そこなんですよ。どうです。
  338. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 輸入品と結びつける話というのは、どういうようなことか、私なりに解釈いたしますと、要するに計画的に転作をさせれば、その分輸入を減らせ、そういう計画をつくれということなのか。結果的に減るではないかということなのか。いずれにいたしましても、農林省としては、不足をしておるもの、国内で不足をして外国から買っているようなものですね、たとえば一番端的なものは大豆とか、えさとか、それから小麦とか大麦、裸麦とか、こういうようなものにつきましては、これは価格も安定をいたしておりますし、おすすめ商品──おすすめ商品と言ってはなんですが、おすすめの作目であります。したがって、その他細かい輸入品のものについて、このものについてはどうだというようなことについては別に指導はいたしておりません。それはそれぞれの地域に応じた作目というものは役所では考えつかないものがありますから、野菜でも、東京では値段が安いけれども北海道ではいいというようなものもあるかもわからぬ。したがって、そういうものはその地域の人が一番よくわかるので、それぞれの地域でひとつ考えて、需給の見通し等も考えてやっていただきたい。農林省等で持っている統計とかそういうものがあれば積極的にどんどん御協力を申し上げます。そういうことにしておるわけであります。
  339. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、大臣、こういうことですか。いまのおすすめ品だけに限りましょう。麦が大麦、小麦を入れていま七百万トンぐらいですが、七百万トンのうちおすすめ品が二百万トン出た。そうすると、そのおすすめ品という二百万トンが出たので、自給率を向上させるためには輸入を五百万トンにするという歯どめが農林省になければ、これはとてもじゃないがおすすめ品だけで終わってしまう。どうです。そうじゃないですか。
  340. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 おすすめ品の分だけ輸入を歯どめをかけろということでございますが、たとえば小麦の例を申し上げますと、食糧庁の場合にはそれは内地の小麦がよけいふえれば必要以外のものは買うわけがないわけですから、内地の小麦がふえれば、それは全部買いますから、だから外国の食糧輸入は自然と減るわけですよ。ここのところがこれは問題なんです。ここのところが問題で、最初から、小麦をこれだけふやしていきます、したがって輸入についてはこれだけずつ減らしていきますなんということを、実際問題としてはそれは言えないですな。だけれども、要らないものは結果的には買わないわけですから、何も国際感情を逆なでするようなことは言う必要もないしするので、そこは、食糧庁が買うのですから、こういうようなものは国内がふえればだんだん自然に減りますよ。それから、えさや何かのものは、国内でふやしてみてもそれはもうはるかに足らないわけですから、それで仮に畜産とか何かが伸びれば国内でつくった以上に需要がふえるわけですね。その分はやはり需要の方に生産が追いつかないということになれば、不足分はそれは輸入せざるを得ない、こういうようなことであります。
  341. 川俣健二郎

    ○川俣委員 要らないものは海外から買わないと簡単に言うけれども、それはできるのですか。それがそう簡単にできないから、農林省は前の農林大臣から苦労しているのじゃないの。それだったら、昭和三十五年のときの自給率、大豆なんかは四七%あった。いまは三%しかなくなった。これは海外から買うという政治をやったからだろうか。それとも農民がつくらないから買わざるを得なかったというのだろうか。
  342. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはむずかしい質問でありまして、鶏が先か卵が先かというような話なんですよ。それはやはり農家がつくらないということは一つありましょう。しかし、つくらないにはつくらない理由があってつくらないわけです。それは結局はもうからない、つくっても採算が合わない、だからつくらない。それよりもほかの仕事をやった方がもうかる。それはそういうことはありますね。農家がつくらなければ、需要があるのですから外国から買わざるを得ない。安く入るということもありました。しかし、今回は、たとえば大豆などにつきましても、たとえば小麦にしても、補助金やったものまで価格に入れて、一俵一万円を超す値段にしたわけですよ。そのほかに転作奨励金が七万円とか、集団でやればね。それでなかったら五万五千円とかつきますから、場所によっては、栃木県などでも六俵もとればそれは米八俵とったよりもはるかにもうかります。そのことに気がついている人もたくさんいるわけですよ。したがって、そういう人は自発的に現在小麦をたくさんつくるようになっておる。われわれもそれを助成するという形でやっておるので、それはどっちが先かと言われましても、なかなかどっちとも言えない話ではないか、こう思います。
  343. 川俣健二郎

    ○川俣委員 先輩各位がやった農政の結果がこうなんだから、そのつくられなくなったために輸入せざるを得なかった、食う量があるのだから。それだったら、これからどうか。ちょうど十二月の福田内閣から大平内閣に移るときの農林大臣が残っていたかな、まだ肩書きを持って日米交渉をやった。あれをめぐる怪文書が出た。ギャング・オブ・91ですか、何のことかなと思ったら、九十一のオレンジ輸入業者のことを指して、それをめぐるあれを、農林大臣が御存じかどうか知らぬけれども……。これはまずやめるにしても、それじゃ、これからオレンジというものを、ミカンと競合するわけですから、これを規制していこうということなんだ。  ところが、一体これから五年後にオレンジというのは──ミカンをつくる、これは畑を命運をかけてあのとおり闘っているわけですから、そうすると、いまの輸入がずっと固定していくものだろうか、それともふえていくものだろうか。食糧庁の政策はふやしていくという方向だろうか。減らしていくのはなかなか容易でない。いまの横ばいを決めたのだろうか、どっちなのだろうか、数字で……。
  344. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それはオレンジの輸入の枠拡大という問題と絡んでお話しのことだと思います。これは、要するに日米間の貿易交渉の問題でございまして、確かに去年交渉の結果は、オレンジ及びホテル牛肉等については、八〇、八一、八二、八三年と少しずつ輸入をふやすということで決めたことは事実でございます。このことについては、これは国全体の経済問題に関係をする問題であって、したがいまして、ともかく日本で、確かにこれは向こうでは自由化しろ、もっと幅をふやせというけんかになったわけですね。そこで交渉が全然まとまらないということになって、日米関係の貿易関係を初め経済関係がもっと悪化をする、保護貿易にもなるということになってまいった方がいいのか、それとも最小限度のところで話がつけばその方がいいのかという、政治判断の問題である。そこで、できるだけ交渉をした結果、最小限度のところで話し合いがついたわけですから、これがもしつかないということになって、景気全体の浮揚が沈むということになってくれば、結局倒産もふえるだろうし、もっと不景気にもなるだろう。そういうことになれば、これは結局消費者が貧乏することですよ。消費者が貧乏しちゃって生産物が高く売れるわけがない。したがって、消費者も貧乏しないようにするための全体の政府政策の一環であって、したがって、そういう点について多少の輸入増が決められたということは、あの程度で決まったことはもう交渉は成功である、私はかように考えております。
  345. 川俣健二郎

    ○川俣委員 前任者の農林大臣の交渉は成功である、御苦労さんでございましたと申し上げたいのだが、経済問題全体の問題のためにとなると、歴史的に国会では重農派という、重農主義ということなのか、何となく、農村に来ると自民党の代議士も農は国の基本なりという演説をぶつ、こう農民に向かっていく。だけれども、そればかり考えられない。  そこで、この論争はやめますが、局長の方から私にちょっと見せてもらった柑橘類のあれが五年後にいまの何倍になるのだろうか。輸入です。
  346. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  オレンジの輸入枠でございますが、日米で合意いたしましたオレンジの輸入枠につきましては、一九七八年、五十三年度でございますけれども、これが四万五千トン。これが先ほど大臣からも申し上げましたように逐次ふえまして、一九八〇年六万八千トン……(川俣委員「二万二千が」と呼ぶ)七八年度が全体で四万五千トンでございます。それが八〇年度に六万八千トン、逐次ふえまして一九八三年度、これが八万二千トンということにオレンジの場合はなります。
  347. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから、そのほかジュースなんか……
  348. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 そのほか、果汁はオレンジジュースが一九七八年度、昭和五十三年度でございますが三千トン、これが一九八〇年度に五千トン、そして逐次ふえまして一九八三年度六千五百トン、それから、グレープフルーツのジュース……
  349. 川俣健二郎

    ○川俣委員 結構です。西暦で言っていただいたのでよくわかるのですが、三千トンが五年後六千五百トンになる、四万五千トンが八万二千トンになる。これは微々たる上昇じゃないのだな、農民から見た場合は。五年後に倍になるわけだ。  これは論議はやめますが、その辺、やはり農林大臣は体を張っても農は国の基本なりという姿勢になってもらって、あと経済企画庁の長官が調整するだろうから、農林大臣から国全体の立場でということでは生産調整が進まないと思います。つくったものの歯どめがなければ、北海道の声を聞いてみなさいよ、でん粉が余っちゃってどうにもならない。  そこで、時間が大分なくなって、では、ちょっと確認しますが、問題は、単作地帯の雪国のことを聞いて悪いのですが、作付面積というか割り当て面積をいま割り当てられつつあって、いろいろとやっているわけです。そこで、この面積に対する通達は、局長でもいいですから、通達事項によると、三十九万一千ヘクタールは三年間固定ということはここで確認したのだけれども、いいのですかね、どうです。
  350. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 農家の方が余り心配しても困るというような点から、三カ年間は転作面積はまあ三十九万一千ヘクタールというものを一応の目標ということにしておるわけです。目標というよりも最低ですね、最低三十九万一千ヘクタール。
  351. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その辺、やはり前の局長の答弁を聞きたいですな、大分やったからね。これは目標じゃなく、三十九万一千ヘクタールを各県の責任で消化せよ、こうなったわけです。ところが結果は、大阪だけは達成しなかったわけです。したがって、大阪には加算してよろしいということになるわけです、これはここの国会で確認したわけだから。そうすると、三十九万一千ヘクタールを各県に配分した、去年やったものがそのままでいいわけですな。その辺どうですか。
  352. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  未達成県に対して加算するという面につきましては、ただいま先生からお話しございましたように、大阪府一県だけになろうかと思います。あとの県は全部達成をいたしております。したがいまして、今度達成した際にその県内で未達成の町村があるというときにどうするか、それから町村が達成をした際に未達成の農業者についてどうするかという問題があるわけでございますが、それはそれぞれ県の知事なり市町村長にお任せをしておるということになっておりますので、国の方の全国ベースの三十九万一千ヘクタールというのは動かさないという考えでございますが、個人ごとには変わることもあり得るということでございます。
  353. 川俣健二郎

    ○川俣委員 国のことだけでいいから。県会とか町会じゃないんだから、ここは。それからこれをちょっと見てください。この半ぺら皆さんにお配りしたんですけれども、それでは、こういうことですかね。この例に竹下、川俣と書かせてもらって恐縮なんですが、そうすると農林省としては、三十九万一千ヘクタールが固定である。ところが昨年は竹下なる者も川俣も三百アール、三町歩ですね。それに対して三十、三十割り当てたが、竹下さんの方は言うことを聞いて二百七十作付した、ところが川俣はだめなやつで言うことを聞かなかった、こういうことなんです。ところが、去年法制局長も煩わして、ペナルティーではない、協力だということで再通達を出した。そうすると、県とか町は別だが、国の方から見た場合、五十四年度の割り当ては竹下も川俣も三十ずつ同じように割り当てがあるんだな、こういうふうに思っていいんですな。
  354. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほどいみじくも川俣委員からお話がありましたように、県の割り当て数量を国は示します。したがって、たとえば秋田県だったら栃木県よりも低いとか、北海道だったら一番高い割り当て数量がいくとかそういうことはもう示してあるわけであります、県によって違いますから。したがって、その県の中で町村でどうするか、町村に割り当てが来たものを竹下さんと川俣さんとどうするかということは、これこそまさに町村の話でございまして、それは町村長に御一任を申し上げてある、こういうことであります。
  355. 川俣健二郎

    ○川俣委員 通達の中の固定化との結びつきを言っているわけであります。三年間固定化なんだから、三十九万一千ヘクタールを達成すれば農林大臣としてはいいわけだから。だから昨年と一緒と思っていいんでしょうと言うんだ。どうなんですか、これは。
  356. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国といたしましては各町村に三年間同じものを割り当ててあります、こういうことでございます。しかし各町村の場合は、町村それぞれ地域の特性によりまして不公正にならないようなことを、生活の知恵で、隣の人がみんな休んだらこっちの人は皆つくってもいいよ、そのかわり休んだ方は船で言う共補償じゃないが幾らか出しなさいとか、いろいろなことをそれぞれの地域で工夫してやっているわけですよ。したがって、農林省としては個々の案件まではタッチはいたしません。こういうことであります。
  357. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の聞いているのは、農林省の態度ですよ。中のあれはいいですよ。県によって希望者がうんと出るかもしれないし。だけれども、去年のあれはペナルティーではないよ、去年やらなかったから加えるということは農林省としては言わないよ、これはまず一つ確認したんです。それから三年間は固定するんだよということもしたんだよ。あとは県とか何かに任せて、いろいろばらつきがあるだろうが、農林省から見た場合はこれが原則だと思っていいんじゃないの。
  358. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 去年もことしも大体同じことを言っていると思うのですが、要するに、県に対する割り当てはことしは動かしません、去年と同じです、そこから下は町村長がいろいろ公平確保の措置をその地域地域に応じてとっていただいて結構であります、こういうことですから、個々の問題まで農林省はどうこうということを、余り差し出がましいことは申し上げない、こういうことにして、何といっても地域の協力がなければできないわけですから、地域の協力があるようにするためには、農協とかいろいろな団体も一緒になって真剣にかかっているわけですから、そういう人の自主性というものを尊重していきたい、こう思っておるわけでございます。
  359. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもそこが、去年とことし同じだといったって、あなたはこの予算委員会にいなかったからあれだろうけれども、そうじゃないんだよ。いいですか。最初は、去年協力しなかった川俣に対してことしの分を上乗せしてやるというのが出たのだよ。これをペナルティーと称するということになったわけだよ。ところが、そうじゃないのだ。いろいろとやったら、これはあくまでも協力願いであって公平を期する意味においていろいろとやる。そうするとペナルティーもかけない、それから三十九万一千ヘクタールは三年間固定である、こういうことを確認していくとこのとおりなんじゃないのかということを言っているのですよ。そうなんだよ。だから、川俣が去年三十やらなかったからことし去年の分も合わせて六十やる。そうすると、三十九万一千ヘクタールが崩れるわけです。崩れるというか多くなるわけです。  それからもう一つの案は、去年竹下さんが、いい子で言うことを聞いたから三十はやる必要はない、川俣が六十やれ、これも一つの話として出たのよ。だけれども、それはいろいろと論議の結果、ペナルティーもかけない、協力願いである、しかし三十九万一千ヘクタールは各県の割り当ての通達である、こういうことまで言って合意をしたのですから、これでいいんじゃないの。
  360. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほどから申し上げているように、各府県の方はみんな割り当て以上に達成をしてくれているわけですよ。したがって農林省としては大阪だけ、大阪一つだけ、ほかは全部同じなんですよ。ほかの府県がみんな達成しておるのに大阪だけが達成しないということについては、公正確保ということにならない。したがって、去年未達成の部分も加えてことしは府としての割り当てをいたします。そうでないと、ほかの県がみんなやっているのに大阪府だけやらなくたっていいのだ、だから私の方はそこまでなんですよ。あと県は町村に対してどういうことをやるか、それは県知事にお任せ。今度は町村の中で隣の人がやったらどうだということは、町村長がどういう考えでやるかは町村長にお任せします、私の方は府県の問題だけをやります、こう言っているわけです。
  361. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の言うのは、通達の中に県がやることとか市町村がやることまで最初はあったのよ。ところが、国としての考え方は三十九万一千ヘクタールを各県に割り当てたものを達成しなさい、こういうことなんです。しかもペナルティーではない、三年間固定化であるという思想が下の方に流れれば農林省としてはいいのでしょうと言うのだ。どうなんですか。これは去年のいきさつから言ってくださいよ。
  362. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  まず一つは、未達成県が出た場合に加算の措置をやるということになりますと、全国的にもその加算した分は翌年度は全国ベースもふえるわけでございます。そして、そのふえたところの県はそれを市町村に、農家の方にさらにその加算をしていく、こういうことを要綱に書いてあるわけでございます。  ところが、達成した県でも市町村間で達成した市町村と達成しない市町村がある、それを一体どうするか。要するに、県の割り当てられた数量は動かさないで、その中の市町村別の配分をどうするか、また町村の場合においては、町村がその割り当てられた面積を動かさずに、その中の農家ごとのをどう動かすか、これは市町村長なり知事さんにお任せをしてあるということを大臣も先ほどから申し上げておるわけでございます。したがいまして、先ほどのあれで、竹下さん、川俣さんのお二人のあれがどうあれするかということは、これは達成市町村であった場合におきましても、農家ごとにそうでないときにこれをどう調整するか、それは市町村長さんにお任せしてある、こういうことを大臣が申し上げておるわけでございます。
  363. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこまでなぜ何回も言わなければできないかというところは、そうじゃないんだよ。それを言うと去年の論議が蒸し返すんだよ。農林省の思想としては、ペナルティーをかけちゃいけない。しかし三十九万一千ヘクタールは全国にやるんで、県知事が責任を持って達成すればいいんだ、こういうことなんだから、あと県とか町がどのようにやるかということをこちらの方からいろいろな公平を期するとかなんとかというと混乱してくるわけですよ。これが混乱の原因ですよ。こんなことを言う必要はないだろう、あなた。
  364. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ですから、達成市町村内におきまして農業者を見た場合に、達成している方と、してない方がある。それを次の年の割り当ての際にどう調整するかというのは市町村長にお任せをしておりますので、私の方からはやれともやらぬともとやかくは申し上げない、こういうことでございます。
  365. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この論議はまた一般質問ということもあるのでやらしてもらいたいのですが、検査院の院長さんに来ていただいておるのですが、今回の生産調整をめぐって検査院に大きく三つお願いしました。  一つは、生産調整を進める上においても、それからうまい米を配給するにしても、古米処理を国を挙げてやる必要がある。こういうことに対して、いまの古米を早く処理するようにということであった。三年という意見もあった。ところが、いま五年という案が出てきた。五百七十万トンのうち六十万トン五十四年度やるんだそうです。そうすると、五十四年度やって五年間でやるとまた保管料と金利が余分なものがかかってくるわけですね。したがって会計検査院としては、これだけ大きな問題だから古米処理をできるだけ早くやってこれを処理せいというあれを重点的にやりますという意見が一つあった。その結果をひとつ知らしてもらいたいのが一つ。  それから、今回の奨励金をめぐって──五十二年度の会計検査報告に対する前の奨励金ですね、名前がちょっと違うけれども減反奨励金には違いない。この奨励金の支給の仕方がどうも一億七千四百万はやっちゃいけないところへ支給しておる。それからもう一つの七億四百万は公社が土地を貸して転作させてそこへ奨励金を出したんでけしからぬ、こういう指摘事項があった。それに対して、それじゃ指摘されたんだからこれは返済するんだろうか、奨励金もらっちゃっているんだから。というのは、簡単に言うと公社のものを一時借りておいて転作して奨励金もらったのはけしからぬという注意をするだけなのか、その件が一つ。 それからもう一つは、生産調整にかける金は十年間で約五兆円なわけです。十年間で約五兆円と私は見ている。去年は三千億でしたけれども、十年間で四兆円から四兆五千億円くらいだと見ています。そうすると、この四兆五千億というのはたんぼの中に、減反したというところに金が支給されます。それに対して、会計検査院は検査をする方法がないのがいままでのたてまえです。なぜかというと、事後検査ですから、五十三年度の決算を検査するときには植わっているものなのか、転作したものなのか、何か植えたかわからないわけです。そうすると、四兆円か五兆円というのは十年間最後まで会計検査院の検査の対象外になるんだろうか、この三つをお願いしたい。院長さんには大変待たせて申しわけないけれども……。
  366. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 会計検査院は決算の検査をする機関でございますから、事後の検査をたてまえといたしますことは当然でございます。しかし、他の作物への転作実施の有無を確認した上で奨励金を出す性格のものにつきまして、いまお話しのように、定着作物なら別でございますが、他の作物は、検査に行ったときには消滅しておって確認できないというようなことがあるのではないかという点、これは確かにそういう一面のあることはおっしゃるとおりかと思います。私どもとしましては、おっしゃるような意味での現年度の検査といいますか、そういうことはむずかしゅうございますが、この補助金は一年限りのものでもございませんし、五十三年度の実地検査は九月ごろまで続きますので、八月、九月に実地検査に参りました際に五十四年度の実情もしかと見てくるというようなことで、担当の局課に検討さしてみたいと思っております。さようなことで御了承賜りたいと思います。  他の二つの問題につきましては、具体的なことでございますので、担当の局長から説明をいたします。
  367. 岡峯佐一郎

    ○岡峯会計検査院説明員 お答え申し上げます。  まず古米処理の問題でございますが、これに対する検査院の態度はどうかという御質問でございますが、過去にも過剰米の問題がございましたし、また、昨年来、先生からもいろいろと御意見をいただいたところでございます。  古米処理につきましては、私どもといたしましては重大な関心を持って検査に当たってきたところでございます。財政上のことなどもございまして、特に検査報告には掲記をいたしておりませんが、しかし、これは大変大きな問題でございますので、今後とも鋭意検査を進めてまいりたい、このように感じている次第でございます。  もう一点の五十二年度決算検査報告に掲記いたしました改善の処置を求めた事項でございますが、ごく簡単に要旨を申し上げます。これは農林水産省で実施されました水田買い入れ事業というのがございますが、その実施とこれに関連いたします水田総合利用奨励補助金の交付の問題でございます。  その一つは、各県にございます農地保有合理化法人が──これからは法人と略称いたしますが、この法人が買い入れました水田の売り渡しと管理の問題でございます。その状況を見ますと、売り渡しが進みませんで長期間にわたって法人において保有している事態が見受けられました。中には休耕地として管理中のものに無断で水稲が栽培されていたり、それから水稲以外の作物をつくることを条件として一時貸し付けされておりながら実態は水稲が栽培されておるもの、また水稲以外のものをつくることが確実な農家の方に売り渡すことになっておりますにもかかわらず、売り渡し後の実情を見ますと、水田に水稲がつくられる、こういった管理の問題があったわけでございます。これはこの制度の趣旨に沿わないわけでございますので、これに対しまして所要の適切な処置を要求いたした次第でございます。  もう一点は、法人におきまして買い入れました水田を農業者が一時借り入れをする場合の問題でございまして、この水田に対してまで重複して転作奨励補助金が出ていたという事態があったわけでございます。  もう少し付言いたしますと、一町貸し付け中の水田は、水稲以外の作物を栽培することを条件として無償で貸しているものでございますが、しかし、この水田につきましては、一方におきまして法人が買い入れましてから処分するまでの間、国の利子の助成がされているわけでございます。したがって、借り受け者はもともと水稲を栽培することができないものであるにもかかわりませず、この一時貸し付け中の水田まで含めまして作付転換があったということで補助金を出すことはいかがなものであろうかということで御指摘をしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、奨励補助金の交付の対象とします水田につきましては、ただいま申し上げました本件の一時貸し付け中の水田にかかわる分、この分につきましては除外してほしいということを求めたわけでございます。  以上が私ども趣旨でございますが、一時貸し付け中の水田につきまして、このように転作奨励補助金の交付を継続しておりますと、水田買い入れ事業の目的とします転作者への売り渡しが進まないことになるわけでございます。このため、国はいつまでもこの法人に対して利子を補給するという事態が出てくるわけでございます。こういった行政上の不合理性、また補助のあり方につきまして、当局に対して質問いたしまして、その改善を求めた次第でございます。
  368. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。
  369. 竹下登

    竹下委員長 これにて川俣君の質疑は、保留分を除いて終了いたしました。     ─────────────
  370. 竹下登

    竹下委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、理事会において協議いたしました結果、公述人は  日興リサーチセンター理事長宍戸寿雄君  日本労働組合総評議会事務局長富塚三夫君  横浜国立大学教授神代和俊君  名古屋大学教授水野正一君  日本大学教授名東孝二君  一橋大学助教授野口悠紀雄君  成蹊大学教授肥後和夫君  全日本労働総同盟書記長前川一男君  全国商工会連合会会長辻弥兵衛君  三菱総合研究所取締役社長中島正樹君  立教大学教授和田八束君  法政大学教授鷲見友好君以上十二名と決定いたしました。  なお、公聴会は、来る十日及び十三日の両日開会いたします。  次回は、明八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十四分散会