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1979-02-03 第87回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月三日(土曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 竹下  登君   理事 伊東 正義君 理事 小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田村  元君       谷川 寛三君    中川 一郎君       野呂 恭一君    羽田野忠文君       藤田 義光君    藤波 孝生君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       安宅 常彦君    井上 普方君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    兒玉 末男君       平林  剛君    安井 吉典君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    正木 良明君       矢野 絢也君    大内 啓伍君       塚本 三郎君    東中 光雄君       不破 哲三君    正森 成二君       大原 一三君    菊池福治郎君       山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      佐々木孝男君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 副島 有年君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         食糧庁長官   澤邊  守君         通商産業大臣官         房長      藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房長 中村 四郎君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         運輸省自動車局         長       梶原  清君         運輸省自動車局         整備部長    小林 育夫君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         郵政省人事局長 守住 有信君         労働大臣官房長 関  英夫君         労働省労政局長 桑原 敬一君         労働省労働基準         局長      岩崎 隆造君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      石井 甲二君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     谷川 寛三君   小林 政子君     東中 光雄君   寺前  巖君     正森 成二君   山口 敏夫君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     正示啓次郎君   東中 光雄君     不破 哲三君   菊池福治郎君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質議を行います。  矢野絢也君
  3. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党国民会議を代表いたしまして、総理大臣並びに関連大臣に御質問いたしたいと思います。  この国会で、公明党といたしましては、グラマン問題、これは徹底的に追及しなければならぬ、資料の公開、証人喚問あるいは集中審議などぜひ必要である、特にE2Cは疑惑に包まれておるわけでありまして、この購入は見合わせるべきである、予算から削除すべきであると、こういった立場をとっております。  とともに、あわせて重要なのは国民生活に重大な関係のある予算審議に──不況が長引いており、失業がふえておるときに、この予算審議に当たって予算修正を私たちは求めなくてはならぬと考えておるわけであります。少なくとも物価調整減税は三千億円ぐらい、所得減税は二千億、合計五千億円、さらに老齢福祉年金は少しばかり今回金額はふえましたけれども、これを二万円にすべきである、あるいは雇用対策住宅対策等々を含めて、先ほどの五千億と合わせて約一兆円規模の予算修正をぜひやるべきだ、こういう考えを持っております。  特に雇用問題につきましては、定年延長年齢差別禁止法案。わが党は、一昨年でしたかこの法案の大綱を発表しておりますが、この定年延長、六十五歳までを将来の展望としながら、差し当たり六十歳までということを考えております。雇用に当たって年齢差別をすべきではない、あるいは高齢者雇用の義務づけの強化、この率の強化と未達成企業への罰則規定を設けるべきである、身障者雇用義務の率をもっと高めるべきである、雇用創出機構の確立あるいは職種ごと労働需給実態について一元的に把握できる情報センターといったものをぜひやるべきである、こういう立場でこの国会にわが党としては臨みたいと考えておるわけでありますけれども、こういう具体論につきましては追い追いお尋ねをしていきたいと思っております。  最初グラマン問題について伺いたいのですけれども日米司法共助によって検察当局アメリカから入手される資料、それはマル秘の扱いになっておる。しかし、そういう資料でも、他の政府部局がみずからの努力解明される、資料を手に入れられる、そういう他の政府部局がみずから解明資料として入手したもの、これは国会提出されるべきである。アメリカから来た資料とたとえそれが重複しておっても、日本政府としての御努力で確保された資料については、公表もしくは国会提出すべきであると思いますけれども、その点についての御見解、お差し支えはないと私は思うのですけれども、これは法務大臣から伺いたいと思います。
  4. 古井喜實

    古井国務大臣 お尋ね政府部内からの資料というものにつきましては、これは実は私がどうこう申す守備範囲ではありませんので、私の方は、司法共助によって得ます資料また捜査中の資料というものだけは、こっちの考えを聞いていただいて尊重していただきたいと思っておる、こういう状況でございます。
  5. 矢野絢也

    矢野委員 つまり、法務大臣としては、司法共助による約束があって、法務省アメリカからもらう資料については、これはちょっとぐあいが悪い、約束がある、しかし、他の政府機関においてそれぞれの立場で入手した資料はそういう司法共助によって制約されるものではない、こういう御判断だろうと私は思うわけでございますが、そこで、各省庁の国会に対する協力の姿勢について伺いたいわけでありますが、まず、防衛庁に伺いたいのですけれども資料要求です。  先日、グラマン社オラム社長が持ってこられた四通の資料確約書、五十三年二月二十八日付の解約通知書、それから五十三年四月五日付の解約通知確認書、それからカーン氏とのコンサルタント契約書、それから日商岩井からとっているグラマン社日商岩井との代理店契約、それからRF4E十四機に関する日商岩井ダグラス社との契約書一切、これを日商岩井からとって提出をしていただきたい。防衛庁、いかがでございますか。
  6. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  私どももこの真相はぜひとも解明したいと思っておるわけでございまして、御指摘の点につきましても、資料等については御趣旨に沿って提出させていただきたいと思っております。  特に、この一月二十五日にグラマン・インターナショナル社防衛庁提出いたしました確約書、五十三年二月二十八日付解約通知書、五十三年四月五日付解約通知確認書、それからカーン氏とのコンサルタント契約書、これは国会に直ちに出させていただきます。  そしてまた、可能な限り関連資料提出させていただきますが、いま後ほど御指摘になりましたものにつきましては、実は、これはそれぞれの企業秘密と申しますか、たとえば日商岩井グラマン・インターナショナル社との間の代理店契約書とか、あるいは日商岩井ダグラス社との契約書というものは、もちろん私どもとしてはできるだけ資料公表に協力すべきでございますけれども、実は、商慣習上あるいは営業上の秘密に属することにつきましては、これは御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 大体同じような御返事が出るのだろうと思いますから要求だけ申し上げておきたいと思いますが、運輸省関係では、ガルフストリームⅡ型機に関しまして米国住商グラマン社との契約、それから米国住商住友商事との契約運輸省住友商事との契約、これの御提出を願いたい。  それから公正取引委員会には、カーン氏と日商岩井との国際契約について、公正取引委員会はとっておるのかどうなのかを明らかにして、もしなければ関係者よりそれを入手して提出をいただく。  国税庁につきましては、住友商事日商岩井、三井物産のボーイング、ダグラスグラマン関係コミッション受領についての調査内容公表を願いたい。  外務省につきましては、ハワイ会談に関して、グリーン元国務次官米国務省にあると発言をしておる記録の提出を願いたい。  これは委員長の方で後ほど御配慮願いたいと思うわけでございます。ここで出せ、出さぬでは時間がかかるだけですから。  なぜ私がこういう資料要求をするかという理由は、ただやみくもに出せと言っておるわけじゃないのでございまして、こういうものがなければ真相解明ができないということを以下具体的に立証してみたいと私は思うわけでございます。  外国の企業日本代理店で、あらかじめ代理店契約に基づいて成功報酬としてのコミッションをいただくという約束がある。日本政府に対してはそういう種類のコミッション契約秘密にされておったわけであります。政府にはないしょにして、そしてアメリカ航空会社からコミッションをもらう、それで商売をする、しかも日本政府からは別に正規の手数料ももらう、こういう仕組みになっておるわけであります。政府だけはこの事実を本当は知っておるのか知らないのか、後ほど明らかにしたいと思いますが、少なくともそういう巨額のコミッション日本商社アメリカ会社との間にあるのだということにあえて目をつぶって取引をしておる。こういう不思議な現象があるわけでございまして、そこで、このSEC報告に書かれておるガルフストリームⅡ型機のグラマン社住友商事関係、これをまず最初の例として運輸省お尋ねをしたいわけであります。  グラマン社米国住商に売り、米国住商が東京の住友商事に売り、それを運輸省が購入したということになっておるガルフストリーム、これは運輸省住友商事幾ら代金払いましたか。三回払いになっておるわけでございますが、いつ、幾らずつ払ったか、その説明をしてください。
  8. 森山欽司

    森山国務大臣 細かい数字でありますから、航空局長からお答えさせます。
  9. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  ガルフストリームにつきましての契約をいたしましたのは、昭和四十八年の三月二十七日でございます。そのときに、四十七年度の補正予算として成立しておりました額の中で、四十七年度に現金化を認められておりました五億八百二十万円については頭金として支払っております。  四十七年度の補正予算はあくまで歳出の……(矢野委員「御説明はいいです。何月何日、何ぼで結構です」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。──その後四十九年の九月に残額の精算をいたしております。その時点におきまして払いました額が十五億三千五十八万五千円。  したがって、最初払いました頭金と合わせて二十億三千八百七十八万五千円、これが本体、予備エンジン及び搭載用予備機を含む無線機器、その総額についての支払い額でございます。
  10. 矢野絢也

    矢野委員 大分数字をあれこれいろいろな部品を合わせて御説明されておるようでございますが、私ども調査では若干金額が違う。  それで、住友商事に対する手数料、これは入っておりましたか。入っておれば幾らでしたか。
  11. 松本操

    松本(操)政府委員 住友商事契約をいたしましたときには手数料というふうなものを特掲しておるわけではございませんので、総額勘定をいたします場合の中の積み上げ計算の一項目といたしまして手数料というものを勘定しております。  したがいまして、総額を積み上げました場合の私ども勘定のいたし方を御説明申し上げた方が早いかと存じますが……(矢野委員「簡単にやってください。金額幾らですかということです」と呼ぶ)はい。まず、工場渡し価格ドルで出しまして、それに運賃その他の費用、所要の経費ドルで算入いたしまして、それを邦貨に換算いたしまして十四億八千四百六十一万三千五百三十三円というのを算出いたしました。それに保険料それから関税その他の租税、それから国内諸経費といたしまして保証金及びユーザンス金利通関諸掛かり、それを計上いたしまして、最後に業者取扱手数料というものを算入いたしております。  これらを足して私どもの方としては契約の元値を出して、これによって見積もり合わせをした、こういう次第でございます。
  12. 矢野絢也

    矢野委員 いかにも回りくどい御返事ですが、私ども計算では、住友商事に対する手数料は七百万円という計算になっております。そして、これ以外に教育訓練費として二千七百六十一万五千円というものが出ておる。合わせて私ども計算では十五億四千十九万五千円、これが住友商事に支払われた、こういう計算になるわけでございます。これ以外にいろいろなことをつけ加えていらっしゃるから金額は若干違うのだろうと思うのです。  さて、そこで、この問題を余り議論しても仕方がありません。後で関係がございますから念を押したわけでございますが、SEC報告には、日本政府に知られない形で三十万ドルコミッションが支払われたとあるわけですけれども、いま運輸省が言われた金額あるいは私がいま指摘しました十五億四千十九万五千円の中にこの三十万ドルコミッションが含まれておるのか、含まれておらないのか、この点について明らかにしていただきたい。
  13. 松本操

    松本(操)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、工場渡し価格に諸般の経費を積み上げて出したわけでございまして、私どもは、その時点において、グラマンから住商に払われるコミッションというふうなものを特掲して考えてはおりませんでした。
  14. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、知らなかったということですか。もう一度答えてください。  そういう三十万ドルコミッションがあったということはその当時御存じなかったということですか。
  15. 松本操

    松本(操)政府委員 三十万ドル云々の件につきましては、一月四日の新聞報道を見て直ちに住商を呼び、その時点においてそういうものがございましたということを私ども承知いたしました。
  16. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、この飛行機を購入するに当たって、日本政府として複雑な計算をなさって住友商事に対する手数料というのが出ておる。私ども計算ではこれは七百万円だ。そして、ことしになって三十万ドルコミッションがあるということを御存じになった。契約当時は御存じなかった。もし知っておれば、その分当然値引きさせることができるし、値段交渉に当たってもっと値段を安くすべきじゃないか。三十万ドルそのままでなくても、たとえば二十万ドル、もっと安くすべきじゃないかという交渉ができる。  つまり、日本政府として住商手数料払い、かつ三十万ドルグラマンからコミッションで、これは二重払いになっておる。知らなかったということは、その時点日本政府は、運輸省はだまされておった。こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  17. 松本操

    松本(操)政府委員 契約時に私どもが基礎に算入いたしました、先生のおっしゃる約七百万円でございますが、これは通関輸入手続等に関する手数料というふうに私どもは心得ておったわけでございます。もとになりました価格は、住商を経由してでございますが、グラマン社から徴しました工場渡し価格というのが根っこになっております。  したがって、その工場渡し価格の内訳の中にどのようなものが入っているかという点については、私どもとして、その時点において委細調査をする能力も持っておりませんので、他の二、三の販売実績というものについての数字に徴しまして、大体似たり寄ったりの数字であるということ  で確認をしたわけです。
  18. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、その時点グラマン社住友商事契約内容については運輸省は知らなかったということを意味しているのですか。
  19. 松本操

    松本(操)政府委員 通常、この種のものを輸入いたします場合に、取扱商社と私どもとの間で行います通常のやり方が、いま私が御説明したような姿でございますので、先生がいまおっしゃいますような形で、しからばその時点グラマン住商の間にいかなる取り決めがどうなっていたかというふうなことまで突っ込んだ議論はいたしておりません。
  20. 矢野絢也

    矢野委員 要するに、三十万ドルコミッションがあったということはその当時は知らなかった、その契約内容も知らなかった、こういうことのようでございますが、問題はもっと重大な点が後にあるわけですが、このこと自体私は問題だと思うのですよね。本当はその時点で三十万ドルコミッションがある、そのことを運輸省が知るべきである、契約内容をチェックして知った上で、もう少し適正な値段になるような交渉運輸省としてなさるべきである。どういう値段構成になって、どういう契約になっているかも実は知らなかった。これはちょっといいかげん過ぎるのじゃないか、話の外じゃないかと私は思います。  そこで、先ほど申された、この飛行機で言うと金額、これは私ども計算によりますと、いろいろとその日その時点でのドルの換算レートがございますから一律には計算ができませんが、私ども計算では、運輸省として払われたお金がそのまま住友商事からグラマンに渡るという前提でその計算をいたしますと、五百三十七万ドルになるわけでございます。念のため、その支払われた日付のときのレートを申し上げますと、四十八年三月二十九日は二百六十五円、四十九年七月十二日二百九十二円、四十九年九月二十七日二百九十七円、四十九年九月三十日二百九十八円。この計算でいきますと五百三十七万ドルということになります。これはいますぐ計算せいと言ったって無理でしょうが、計算してみてください。  そこで、私は資料をお示ししたいわけでございますけれども、この資料は、わが党のグラマン問題のプロジェクトチームがアメリカに照会をいたしまして、黒柳参議院議員からニューヨークのグラマン・インターナショナル社長のピーター・オラム氏に文書で質問をしたものについての回答、返事が来ております。きわめて興味のある内容がたくさんございますが、その全部をやるわけにいきません。その一部について私は聞きたいと思うのですけれども資料を差し上げてください。総理、それから法務大臣、運輸大臣に。  これは一月二十九日の日付で回答が来ております。これによりますと、こういう表現があるのです。ナンバー三、三ページのところで十番というのがございますが、「ガルフストリームⅡの販売に関して日本が支払った金額は三十万ドル手数料コミッション)を含め五百三十六万九千ドルでした。またこれには付属品、予備部品及び教育訓練も含まれています。これは当時(一九七二年)の取引きの通常金額で、六パーセントに幾分満たない手数料コミッション)もまた通常のものです。」云々とあるわけですが、先ほど、私は、運輸省から住友商事に支払い住友商事からアメリカに支払われておる金額は、その時点でのレートで換算すると五百三十七万ドルということを申し上げました。ちょうどオラムさんの返事も五百三十六万九千ドル、これは朝と夕方とのレートの違いがあるでしょうから、千ドル程度の違いは、これは問題ないと思います。つまり、五百三十七万ドルをこれは意味しておると思います。  その五百三十七万ドルの中に三十万ドルコミッションが含まれておるのだ、そういったことが契約されておるのだという意味のことがここに明確にあるわけですが、本来、先ほど申し上げたとおり、最初からその契約内容について運輸省がチェックをしておられれば、一方で七百万円の手数料払い、一方で三十万ドルものコミッションを取られ、はっきり言えば、この三十万ドルは五百三十七万ドルの中からグラマン住商さんにキックバックした金であるということがここにきわめて明確にあらわれておるわけでございますが、この点について運輸省のお考えを承りたいと思います。
  21. 松本操

    松本(操)政府委員 ドルの換算その他刻々変わっておりますので、多少数字が違っておるかもしれませんが、私のいま持っております資料によりますと、グラマンに対して支払われましたものは、ドル勘定で申しますと、工場渡し価格と運賃その他経費を含めまして五百三十七万二千二十七ドル五十五セントというのが払った数字でございます。  これに対しまして、いまの先生の御指摘の三十万ドルというものが一体何であるかという点について、私どもは、あの事件以来住商を何回も呼んで議論を聞いておりますが、一応私どもが現時点で承知をしております範囲を御説明申し上げますと、約十七万ドルは、これは住商グラマン社に立てかえた前渡し金の金利である。何でそういう現象が起こったか。私どもは、先ほど御説明しましたように頭金は三割しか払いません。それに対してグラマンは、一定の比率で精算前に九割相当の前金を払ってほしいということを申し出た。間に入りました仲介者としての住商としては、メーカーの方の要望に対応するために、私どもの払った三割の頭金グラマン側の要求いたします九割の前金との差額の六割相当分について、一遍にではございませんが、何回かに分けて払っております。これは当然前払い金でございますので、利息を生んでまいりますので、この利息について当然払い戻してもらってしかるべきである、これが十六万九千何がし、約十七万ドルである、こういうふうに説明をしております。  これは私ども払いました五億の頭金につきましても利息計算をして、精算のときにはカットしておりますので、住商がそのような立てかえをしたとすれば、そのような形で利息分を逆に徴収しても支障はないだろう、残りの十三万ドルが、いわゆる先生のおっしゃるところのコミッションであるというふうに説明を聞いております。
  22. 矢野絢也

    矢野委員 このSEC報告によりますと、先ほど私が申し上げたようなことがるる書いてございますが、「そのさい、三十万ドルを超えるコミッション及び同商社の米国にある子会社に対するその他の利得が支出されたが、(その仕組みは、この支払いが)日本政府に知られないように行われたことを示している。」日本政府にわからないようにこの三十万ドルの支払いが行われたと、こういうことがSECの報告書にあるわけです。  その、日本政府に知らさないようにどういうやり方で行われたかということを、私はいまのこのオラムさんの文章で、教えてあげているというと僣越ですけれども、明らかにしておるわけでございますが、いまお聞きすれば、確かにSECで言うとおり、日本政府は、購入の時点では、三十万ドルコミッションがあるということを知らない形で──いま、何だか、十何万ドルがどうとかこうとかなんとか、えらい住商さんの代弁者みたいな御説明をされましたけれども、少なくともその契約時点ではそういうことは御存じなかった。契約内容御存じなかった。私は、国民の税金を使って政府の飛行機をお買いなさるからには、もう少しきちっとした契約時点における調査をなさるべきであるということ、これが第一点、問題であると思うのです。  それから、あわせていまこの金利云々ということを指摘されましたけれども、私ども調査によれば、そういう金利は一般管理費、経費として別に計上されるのがアメリカの商習慣であるということも聞いております。  何だかえらく代弁していろいろと説明されましたが、私は、ここでちょっと話を変えまして会計検査院に聞いてみたいのですけれども住商グラマンとの契約書を検査されましたか。
  23. 竹下登

    竹下委員長 会計検査院はおりますか。──矢野委員に申し上げますが、会計検査院、もうちょっと時間がかかるそうでございます。
  24. 矢野絢也

    矢野委員 わかりました。会計検査院が来られてから質問したいと思います。  次に進めますけれども、この資料のその前のくだり、八番目というところ、三ページですね、「SEC(米連邦証券取引委員会)に対するわが社の報告書によれば「商社の変更は日本政府職員(日本のオフィシャル)の示唆によるものとする可能性があるように思えた。」としています。」こういう表現がございます。それで、SEC報告の方は「一九六九年に一人の日本政府高官の提案にもとづき、GI社は日本の販売代理店を変更した。このことは、高級幹部二人も知っていたと見られる。」こういう表現がここにございます。 つまり、私どもがわかっておるのは、SECがSECのレポートとして、これは判断ということですね、「一人の日本政府高官の提案にもとづき、GI社は日本の販売代理店を変更した。」これはE2Cの問題ですよ。そのことは高級幹部も「知っていたと見られる。」こういう表現になっておるわけでございますが、いま私がお示ししておるこの資料によれば、「見られる。」というこの言葉の意味は、明らかに「SECに対するわが社の報告書によれば」つまりグラマンの報告の中に、「商社の変更は日本政府職員(日本のオフィシャル)の示唆によるものとする可能性があるように思えた。」つまり、これはSECの「と見られる。」という判断じゃなしに、SECがそう見た根拠は、グラマン社の報告書の中にこういう表現があるということを意味しておるわけでございます。つまり、SECの勝手な想像じゃなしに、そのようにSECが見たのは、SECが入手しておるグラマンからの報告書に、ここにありますとおり、政府高官の提案に基づいて日本の販売代理店を変更した、こういう判断をSECが持ったということなんです。もっともこの後で「日本人報道関係者から私に報告されたところによれば、」というところがございますが、これは伝聞によればということですね。マスコミからの伝聞によれば、「チータム博士の所見はこれを否定しています。その報告によれば、チータム博士はその決定を「販売においてわが社を助力する新しい商社の能力に対する同氏の評価に基づいて行い、それは純粋にビジネス上の決定であったと述べている。」としています。」つまり、これはチータムさんが、SECの報告書では、商社を変更したのは日本政府高官の提案なんだとここにあるけれども、チータムさんは、いや、その人の話はビジネス的に商社変更をするに当たっての判断の参考になる話をその方から聞いているんだ。その方が直接商社を変えろと言ったわけじゃないんだ。要するに、チータムさんはトーンダウンをする立場で物を言っておられるということをここに書いてあるわけですけれども、それはオラムさんの話によれば、単なる伝聞としてここにつけ加えているにすぎないのでありまして、伝聞として、「日本人報道関係者から私に報告されたところによれば、」その前段は、日本政府高官が商社を変えろというアドバイスをしたんだ、提案をしたんだというSECの判断は、グラマン社の正式の報告書によってそういう判断をしたんだということが書いてあるわけです。つまり、日本政府高官が商社を変えたらどうだ、E2Cについて、こういう示唆をしましたということをグラマン社の責任者が正式に認めておる。このことについて法務省の御見解を伺いたいと思うわけです。
  25. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように、グラマン社自身が認めた問題だと思います。
  26. 矢野絢也

    矢野委員 これはきわめて重大なことになるわけでございまして、私、日本の新聞を拝見している限り、チータムさん、おしゃべりチータムさんなどとあだ名がついているようでありますけれども、一生懸命しゃべっておられる。それは単なる商社変更の判断の参考にすぎないんだという、トーンダウンしてチータムさんは言っているのですけれども、いま私が申し上げたとおり、日本政府高官がこれに絡んでおるというSECの「と見られる。」という、見ているこの判断は、グラマン社の報告によって、グラマン社の正式のレポートによって行われたということをいまお認めいただいたわけでございまして、その辺の捜査はその後どうなっておるかについてお聞かせいただければと思うわけです。これはきわめて重大な問題だと私は思います。
  27. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 一九六九年当時、一人のいわゆる政府関係者の示唆によって代理店を変更した、こういうことはそのこと自体見ますと、一応犯罪になったとしても時効になっておるという関係のことでございますけれども、本件SECの公表資料全体を通じて事態の真相を見ていきませんと、最近のことでありましても明らかにならない面もございますので、御指摘のような点を含めて現在検察当局で鋭意検討しておるはずでございます。
  28. 矢野絢也

    矢野委員 非常に重要なお話を承りました。引き続き集中審議でこの問題は御質問したいと思います。  いま会計検査院がお越しいただいたようでございますので──まあいままでの事情を御存じないということだろうと思います、質問の。問題は、住友商事グラマン社とのガルフストリームに関する契約書、これを会計検査院として検査されたかどうか、このことを伺いたいわけでございます。
  29. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 お答えをいたします。  運輸省グラマン社から購入いたしましたガルフストリームにつきましては、当年度におきまして検査をいたしたわけでございます。その調達計画、それから契約内容契約価格等について当時検査をいたしたのでございますが、その当時におきましては、私どもは特にこれについて指摘するようなものはございませんでした。  ただ、現在この購入につきまして三十万ドルコミッション云々の問題が論議をされておりまして、このコミッションがどういう性格のものであるか、特に購入価格にいかなるかかわり合いを持つかという点につきまして、現在徹底した見直し検査を実施している最中でございます。現在の段階におきましては、私どもがぜひ手に入れてほしいと思っております住友商事グラマン社との代理店契約、そういうものはまだ見る段階に至っておりません。
  30. 矢野絢也

    矢野委員 それは見る段階に至っていないと……。運輸省要求をされても来ないということですか。
  31. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 まだでございます。それをぜひとっていただくようにいまやっているところでございます。
  32. 矢野絢也

    矢野委員 それは当然のことでございますね。  運輸省に伺わなくてはならないのですけれども、これはどういうわけなんですか。これだけの疑惑がありながら、会計検査院として当然の調査をなさりたい、これはもうよくわかるわけです。にもかかわらずお出しにならない。どういうことでございますか。
  33. 松本操

    松本(操)政府委員 私どもが持っているものをお見せしないということではございませんで、これは住友とグラマンとの間の私契約でもございますので、私どもの方からは住友に対して提出するように要求をしております。それに対して住友の方は、関係者間の合意を得た後に提出することとさせてもらいたい、こういうことでございますので、私どもの方はなおそれに対して強く要求をしている、あらゆる努力を払っている、こういう段階でございます。
  34. 矢野絢也

    矢野委員 先ほどこの三十万のコミッション以下の問題がないという意味の御説明をなさっておった。問題のない契約書なら、さっさと出せるはずなんです。先ほど申し上げた五百三十七万ドル、その中に三十万ドル手数料が含まれておる、これは社長から私どもの方の黒柳君の方にそう回答が来ておる。これはきちっと説明のできる三十万ドルならそんなに隠す必要はない。なぜそれを出さないか。その契約書が非常に不明朗な内容だからですよ。その三十万ドルが非常に不明朗なことになっておるから出せないのです。  しかも運輸省は、それを知らぬということをさっきから何遍も繰り返して言っておられるのですけれども、冗談じゃありませんよ、この手紙の最後を読んでください。三ページ目の「私は東京に於て報告書を読みましたが、それによれば日本政府は明らかに手数料コミッション)が支払われることを知っていたことが示されています。」と書いてあるじゃないですか。知らない、知らないとおっしゃっていますけれどもグラマンの社長は、日本政府はその三十万ドルコミッションが支払われたことを知っていたことが示されていますと、知らないはずないじゃありませんか。これはどういうことですか。
  35. 松本操

    松本(操)政府委員 冒頭お答え申し上げましたように、私どもとしては全く承知をいたしておりません。ただ、住商に事件後いろいろと究明いたしましたるところ、この金についてはちゃんと住商としては入金扱いをしてある、したがって税理関係の手続はきちっとしてある、こういうことを申しておりますので、そういう意味においてはあるいは税務関係の方では御承知であったかも存じません。私どもは承知をいたしておりませんでした。
  36. 矢野絢也

    矢野委員 この文脈からいけばそんなことじゃないんですよ。もう私、同じことを何遍も言いたくありませんけれども、三十万ドル手数料がこの契約の五百三十七万ドルの中に含まれておるとするならば、明らかに日本政府はだまされて高い買い物をしたということになるのです。しかも、別に七百万円手数料を払っているのです。御丁寧なことです。  しかも、そのことをSECの方で、日本政府が知らない仕組みでそういうことが行われておった、本当にSECも親切な書き方なんですね。そのことをるる経過をいま御説明申し上げた。何だかずいぶんわかっているような御答弁をなさっているじゃありませんか。しかし、その時点では知りませんでしたということを言っておられるわけだけれども、この手紙では日本政府は明らかに知っておる、そのことをオラム社長はちゃんと報告書を見た上で述べているんですよ。それを国税庁は知っておったかもわかりませんが、運輸省は知りません、そんないいかげんな答弁でこの問題は済みますか。
  37. 松本操

    松本(操)政府委員 きつい御指摘でございますが、私どもが承知をしていなかったことは事実でございます。したがって、五百万何がしの中にそのようなコミッションがあったという点について、その当時知らなかったことは事実でございますが、いまの時点で、先生おっしゃるような御指摘を受けてよく考えてみますと、工場渡し価格というものの構成の要件がどうなっておるかという点について、非常に細かなところまで分けて議論することが可能であれば、御指摘のようなことはあるいはその時点において知り得たであろうと私も思います。  ただ、その時点におきましては、一般に購入する場合に見積もり合わせをいたすわけでございますが、工場渡し価格というものが、単に一件だけで拾いますと非常に危険でございますので、類似の工場渡し価格というものを調査した上でその数字を出した、こういうことでございますので、その時点のやり方といたしましては、私は担当の者としてしかるべき努力はしたということであったかと思います。ただ、御指摘のような点について今後なお、私どもは住友を通じて究明をいたしておりますので、その状況については私どももいずれはっきりさせたい、このように考えております。
  38. 矢野絢也

    矢野委員 どう言ったらいいんでしょうかね。よく考えてみますとだんだんわかったみたいなお話をされておるようでありますけれども、もし仮に、契約時点住商アメリカ会社との契約書をごらんになって三十万ドルコミッションが含まれておるということがわかったら、運輸省は、そうかそうか、しっかりもうけておるな、大したものだということで、おまけに別に七百万円も手数料を払う、そんなことをなさいますか、どうでしょうか、これは。
  39. 松本操

    松本(操)政府委員 その時点にさかのぼってどういう判断をしたかという点は、私もなかなか明快にはお答えしにくいのでございますが、私ども払いました手数料は、輸入手続にかかる諸雑費及び若干の利益を含まないと言えば私はうそだと思います。若干の利益ということであったと理解しておりますし、いまでもそのように考えております。したがって、三十万ドルであったかどうかは別といたしまして、メーカーと商社との間において何がしかの利潤のやりとりがあったということがわかった場合に、直ちにこれをもって先生仰せのような結論になったかどうかについては、私、必ずしもいまここで明快にお答えできない。何となれば、中間的に取り扱い商社があります以上、そこにおいて何がしかの中間マージンというものが出てくる可能性がございます。ですから、それが常識をはずれた巨額なものであるというふうなことであれば、これは当然問題であろうかと思います。ですから、その時点においてもしそういうことを知り得たとすれば、一般的に言って、商社とメーカーとの間におけるそういったやりとりの場合に、どの程度の率あるいはどの程度の額をもってそのような行為がなされ、それが一般に容認される商慣習であるのかどうかというふうな点について、その当時以上に細かな配慮をしたであろうということだけは私、申し上げ得るかと思います。
  40. 矢野絢也

    矢野委員 ですから私は、政府がそういう国民の税金で飛行機を買いなさるときには、商社の営業秘密だなんということを言わないで、きちっとどういう契約になっておるのだということまでチェックなさって契約金額を決め、政府商社契約なさっておれば、SECに言われておるように「(その仕組みは、この支払いが)日本政府に知られないようおこなわれたことを示している。」なんという妙なことを書かれなくとも済むのです。いいかげんなことをやっておるからこういうことになる。しかし、それがなぜ日本政府に教えてくれないか、商社が、その契約を。それはその金がキックバックしておる。大げさな言い方をすれば、それがダーティーマネーになる、その可能性があるから、商社日本政府に、この場合であれば運輸省にその説明をしないのじゃありませんか。  法務大臣、このことについて御見解を承りたいと思います。
  41. 古井喜實

    古井国務大臣 問題は、その金の行方の問題になっていくのでありまして、その点を、金の流れ、行方を究明しない分には、犯罪かどうかの問題には来ませんので、ですから、いまのところだけではわれわれがどうこう言う問題にはならないわけであります。
  42. 矢野絢也

    矢野委員 しかし、法務大臣は、こういうケースは構造的なことなのだという意味のことを御発言なさっていますね。私は一つの例として、住商さんには大変気の毒なのかもわかりませんけれども、やっておりまして、こういうやり方がE2Cにもいろいろな飛行機にも全部当てはまっておるのですよ。法務大臣が構造的なんだと申されておるのは、こういうやり方があらゆる軍用機なり飛行機の取引に全部共通した現象である、政府には知らさないで、商社アメリカ航空会社の間でコミッション、キックバック、つまりバックペイ、リベートというのか、そういう契約が結ばれておるところにこういう問題が出てくる最大の原因がある。法務大臣は、前に構造的と御発言なさいましたけれども、私は、先ほどからるる申し上げておるケースからE2Cその他のことについての御判断、これを承りたいと思うのです。契約書というのは、最初からきちっと政府に見せるべきじゃありませんか。
  43. 古井喜實

    古井国務大臣 E2Cとかいろいろ問題が、おっしゃるようにあるわけであります。そこで、毎毎申しますように、私どもは犯罪になる事実があるかどうかということを本当に冷静に周到に究明してはっきりさせる、これは全責任を負いたいと思っておるのですよ。しかし、前にも申しましたように、この全体の出来事を見て、犯罪の究明だけでこの問題を考えて足るものかどうか、そこは個人的ですけれども私は疑問を持ちますもので、だから構造的と言ったかどうか知りませんけれども、もっと広い視野から見ないというと繰り返す、再発防止ということも考え得ない、こういうふうに思っておるわけで、こっちのやることはまだこれでも足らぬとお気づきがあったらおっしゃっていただきたい。私の方は、もうやれるだけのことはやっておりますし、早手回しにやっておるつもりであります。
  44. 矢野絢也

    矢野委員 もうこの問題、最後の一問で終わりたいと思いますが、先ほど刑事局長にも御答弁願ったわけでありますけれども法務大臣、重ねてお尋ねいたします。  政府高官の提案に基づいて代理店の変更をしたと見られる、こういう意味のSEC報告に対して、グラマンの正式の報告書に基づいたSECの判断である、つまり、商社の変更は日本のオフィシャルの示唆によるものとする可能性があるように思えた、こういうことを書いたグラマンの正式の報告書がSECに出ていっておるわけであります。事実はきわめて明確になってきたわけでありまして、ここに当然政府高官が商社変更についての介在をしたということが明らかになったわけでありますが、時効云々という問題もあろうかと思います。しかし、それはそれとして、これについての法務大臣としての御所感を承りたいと思います。
  45. 古井喜實

    古井国務大臣 だれかの示唆によって商社を変更したとかということになっておる。だれだかわかりませんが、なっておるわけでありますが、そのこと自体はわれわれの守備範囲の問題ではなくて、それが何を生んでいるかというところが問題になってくる。これに伴って生まれておったか、生まれないか、そこが問題になってくる。それがわれわれの関係する範囲になっておることでありますから、変更自体をどうこう、これはあることでもありましょうし、言うわけにはいかぬと思います。
  46. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、集中審議もあることでございますから、私は問題提起にとどめておきたいと思います。先ほどの答弁も余りにもいいかげんですから、ちょっと決着をつけたいような気持ちもするわけでございますが、予算審議の方がありますから……。  ただ委員長、そういうわけですから、冒頭に私が要求いたしましたいろいろな契約書資料御存じなかったわけなんですが、こういう疑惑が出てきておるわけでございまして、会計検査院の方もまだ見せてもらってないということではお仕事にならないというわけでございますから、私が各省庁にお願いいたしました資料、なぜ出さねばならぬかという理由が委員長においても御理解いただけたかと思いますので、ぜひひとつ御協力をいただきたい。そうしていただきたい。  委員長の御見解を承っておきたいと思います。
  47. 竹下登

    竹下委員長 ただいまの矢野委員の御趣旨については十分協力をいたします。
  48. 矢野絢也

    矢野委員 ありがとうございます。  さて、予算案の問題に移りたいと思います。  総理は、雇用、物価、財政再建、三匹のウサギを追うという気持ちなんだ。しかし、私どもが見た範囲では、三匹のウサギどころか、失業の増大、インフレの危険、不況の長引き、それから増税といったような恐ろしいオオカミが出てくる予算ではないか、こんな心配を私どもはしておるわけでございまして、この予算を見ますといろいろな問題がございます。緊縮型予算、つまりこれで不況克服の力のある予算なのかどうかという心配が一つある。さらに、生活関連を軽視した予算。公共投資の伸び、これは二〇・五%を見ておられるが、社会保障は一二・五%しか伸びておらぬというような調子で、どうも生活関連を無視した予算、一方、公共料金は大幅に値上げを考えていらっしゃる、こういうわけですから、どうも国民無視の予算ではないかという判断を、大変失礼ですけれども、持たざるを得ない。  そこで、質問をしたい点の第一点は、総理は安上がりの政府、財政の節約ということをよく強調なさっておる。そして、本年度予算につきましては、一般歳出規模が五十三年度二〇・三%増であったけれども、五十四年度は一二・六%に一般歳出規模を抑えた、だから安上がり政府は一歩前進ということなんだということをおっしゃっておるわけでございますが、果たして本当にそうかしらということを私、計算したわけでございます。  そこで、国債費は約四兆円です。経常部門の経費の中から国債費を除いてみますと、五十四年度予算は八・七%の伸びになっておるわけですね。これはよろしゅうございますね。昨年、五十二年度は一五・一%の伸び率を見ておる。一五・一%と八・七%の違い、約倍ぐらい違うじゃないか、節約した、こういうことなんだろうと思うのですよ、言いたいことは。しかし、余り説得力がないのです。というのは、よく見ますと、地方交付税が全然金額的に伸びてない。だから、地方交付税が伸びてないから、一見経費の伸びを抑えたように見えるだけでありまして、こういう経常部門から国債費とか地方交付税を控除して比較してみますと、その差がはっきりするのです。つまり、経常部門から国債費の控除をしたものをまず申し上げると、昨年が一五・一%、ことしは八・七%。大分削減しましたということですけれども、経常部門から国債費と地方交付税を引きますと、五十三年は経常部門の伸びは一四・七%なんです。ことしは一一・九なんです。わずか三%しか減ってないのですよ。大して減っておるわけではない。しかも、この経常部門というのは物価によってスライドして上がっていく部分が多いわけでありまして、ここに物価の要素を加味して考えますと、五十三年は一四・七%伸びました。そのときの消費者物価上昇率は六・七%ですから、この六・七%の物価上昇と経常経費の伸び一四・七%との差は二・二倍ということになります、この計数は。ことしの場合、五十四年は一一・九%経常経費が伸びた。もちろん国債費と地方交付税を控除したものですね。しかし、消費者物価は四%ですから、この差は約三倍になるわけです。つまり、消費者物価の値上がりというものを考えれば、五十四年度予算の経常部門の経費は少しも圧縮されていない、消費者物価の関係から見たらむしろ水ぶくれになっておるという判断を持つのですけれども、総理、私の考えは間違っておるでしょうか。それとも、本当に大幅に圧縮できたなんて御自慢をなさるつもりでしょうか。私は圧縮どころか水ぶくれだと思いますけれども、どうでしょうか。
  49. 金子一平

    金子(一)国務大臣 矢野さんのいまの御指摘、地方交付税を引いたところで見たら、CPIの関係等から見て節約の度合いが少ないじゃないかという御指摘でございます。  まさに数字的にはそういうことになっておる面もあります。しかし、三ポイントの節約がそういった計算でもできておるということは、これは金額にいたしますと五千億を超えます、相当な圧縮であることはお認めいただきたいのです。のみならず、その一般経常部門でも物価の上昇以上に相当大きく伸ばしておるものがいろいろございます。たとえば厚生年金、国民年金の増額、老齢福祉年金の単価の引き上げ、生活保護基準の引き上げでございますとか、それから文教関係で申しましたら私学の助成、育英奨学事業の増額等は物価上昇をはるかに上回った金額をつけておるのでございまして、そういうポイントポイントに相当ウエートを置いてやっておりまするから、必ずしも物価の上昇以下に抑えた経常部門とは言えないと考えておる次第でございます。
  50. 矢野絢也

    矢野委員 歳出の問題にいま入っておるわけでございますけれども、歳出、いろいろございます。この中で医療関係経費について、果たしてこれが政府のお考えになっておる安上がり、効率的な政府ということになろうかということについてお尋ねしてみたいのです。  医療関係経費、その予算の持つ所得移転、これは非常に社会的に容認できないほど大きいということ、浪費が多いということ、しかも必要なところには金が余り向いていないという、この三点が私は問題であろうと思います。  たとえば一般会計の歳出で医療関係経費を見ますと、五十三年度のあれでいきますと、社会保障関係経費の約半分が医療関係経費になっておる。五十三年度で言うと約三兆円が医療関係経費。この三兆円の約四割が薬代だと言われておる。しかも一説によると、その薬代の半分がむだだと指摘されておるわけでございます。としますと、三兆の四割の一兆二千億、その半分、つまり約六千億がむだになっておるということになるんですね、総理、薬代の中で。ことしの予算でいきますと、六千五百億円むだになっておるという計算になるわけです。仮にこれが正しいとするならば、この六千億円、あるいは五十四年度では六千五百億円がむだ。要するに国民から税金を取って、お医者さんと製薬会社に全くむだな、不公正な所得移転を行っておるということになると私は思うのです。  私が申し上げたこの数字、四割だとかその半分がむだだとかいうのは厚生大臣お認めになりますか。
  51. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 お答えを申し上げます。  五十一年度の実績で見ますと、国民医療費総額七兆六千六百八十四億円の中で、薬剤費が積み上げてみますと二兆六千億、大体三三・九%になります。その手法を用いますと、先生指摘のように、五十三年度、推計でありますが大体国民医療費十兆四千億円、その中で占めます薬剤費約三兆五千億円ぐらい、大体三三・七%。五十四年度、これは完全に推計でございますけれども、国民医療費十一兆六千三百億円程度、そのうち薬剤費の占める割合は三兆九千億程度、大体三三・五%程度というふうに見られております。  なお、五十四年度の一般会計予算の中におきます医療費の補助金等、これは各種の公費負担医療等までを含めまして三兆三千五百億円というふうに推計をいたしております。
  52. 矢野絢也

    矢野委員 非常に御親切に、私は一般会計の予算の中の金額だけで申し上げましたけれども、国民総医療費という立場からの、つまり保険料で賄われておる部分の金額までお含めいただいて御返事をいただいた。これは大変前向きの姿勢で結構だと思うのですけれども、そのあれによりますと、五十四年度は薬に向いているのが三兆九千億円、約四兆円。これは仮説になりますが、その半分がむだだという説があるわけでございます。そうすると二兆円、何となく持って帰ったままどこかへ消えてしまっている。乱診乱療二兆円。予算の範囲で申し上げれば私が申し上げた約六千億から七千億のむだ、こういうことになっているわけですよ。どうも医療保険制度というのは、重病のときには差額の部屋代とか付添看護婦さんのお金とか、月数十万円が必要になる。かぜや二日酔い、こういうのは非常に便利だけれども、長期の重病になったときには家族の、家計の壊滅を意味する、そういう負担が一方でかかるわけです。国民はそれで困っている。しかも一方、いま申し上げた、いまの厚生大臣のお話では約二兆円という薬代のむだがある。この辺のところによくメスを加えてやっていただかなければ、一方では大増税だ、大赤字国債だなどというような、本当にいまにも日本財政も破産宣告を受けるみたいな大げさな宣伝をなさいますけれども、歳出部門においてこういう壮大な、しかも不公平な所得移転が行われておる。ことしの予算を見ますと、確かに、難病対策費が前年度に比べて九%伸びましたと言うけれども金額はわずか四十一億円です。僻地医療対策費は二二・二%伸びましたと言いますけれども、たった四十二億円。看護婦さんの確保対策費一一・四%伸ばしたと言うけれども金額では四百二十億です。救急医療対策費の伸びは五・三四%ですが、金額八十九億。伸びた、伸びた、伸びたと、先ほど大蔵大臣えらい、必要なところは物価の伸び以上に伸ばしましたとおっしゃいますけれども、一体これは何ですか。伸び率で言うと確かに何%というのは大変な伸びですね。金額は四十一億円とか四十三億円とか。しかも一方では、先ほど申し上げた、しかも厚生大臣お認めなさったような、予算で申し上げても六千億から七千億という薬代のむだがある。国民総医療費の立場からは約二兆円のむだがある。そういうむだを一方で放任しておいて、そして伸ばしました、伸ばしましたと言っても、これは国民は納得できないと思うのですが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  53. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま御指摘の点は非常に大事な問題でございまして、今後も医療費の問題につきましては、厚生省と相談しながら十分に検討を加えてまいる所存でございます。
  54. 矢野絢也

    矢野委員 何かこの国会で、患者さんがお医者さんに行ったときには薬代を半分持たなくちゃならぬ、こういう改正をやられようとしておるようでございます。恐らくそういうふうにすれば、患者さんは自分の身銭を切ることになるので余り行かなくなる、おなかが痛いときにはおなかを押さえてじっとがまんして行かないようになる、そうすると薬代のむだも省ける、こういう御発想でそういうようなことが出てきているのかもわかりません、これは私わかりません。しかしそんな、患者さんに負担させるよりも、こういうむだは患者さんの問題じゃないのですよ。医療のシステム、支払いのシステムに問題があるわけなんです。これは患者さんの自己負担、薬代の自己負担をふやしたとかふやさなかったという問題じゃない。確かに、自己負担がふえればお金を取られるからやめておこうということで行かなくなるという面がある。これはしかしひどいやり方ですよ。そんなところに負担をふやさないで、医療のシステムとか支払いのシステムにメスを加え、このむだを省くべきであると私は思うのです。  しかも、患者さんが行った場合お医者さんがいろいろ親切に治療をなさってくれる。先生、その薬要りません、自己負担の分がふえますから。そんな薬についての選択権なんか患者にないのです。もう痛いからお医者さんに行くのですから、とにかく先生、早く治してくださいということでしょう、これは。そういう立場の者が、いや先生、自己負担を半分取られるのはいやですから、できるだけ安く安く、そんなこと言えますか。もっと悪いとらえ方をすれば、患者さんが腹痛でも、少々のことでは来なくなった、患者さんの数が減った、そうすると、そんなことはないと思いたいけれども、お医者さんの方はその分高い薬を使うことでカバーできる、こういうことだってあるのです。  つまり問題は、患者さんに半分負担させるというやり方では解決しない。医療システムとか支払いのシステムにメスを加えなければ、この壮大なむだ、所得移転、浪費、これは解決しないのですよ。大蔵大臣、厚生大臣、お答えください。
  55. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いまお話のありました薬剤費、完全に半分だという前提でお話しいただきますが、正直、私どもむだがないとは決して申しません。ただ、どの程度のむだがあるかということについては、これは把握ができません。  そこで、いま御指摘のように、確かに医療費の増高、同時にそれによって惹起される健康保険の赤字は私どもにとって大問題でありまして、一昨年国会に御提示をいたしました医療保険制度の抜本改正の方向に従って、その第一着手である現在国会に提案中の健康保険法の改正案、昨年の通常国会政府としては御提案を申し上げたわけであります。ただ、それと同時に、いま御指摘のように医療費のむだの排除をしなければならぬことはそのとおりでありまして、先日、一月二十五日付で保険局長から「保険診療適正化のための指導、監査等の推進について」という新しい通達を出しました。  実は、従来不正請求の疑いがあるものばかりがほとんど中心でありました指導、監査につきまして、むしろ保険診療の適正化を図る見地から、特殊な性格、機能を有するたとえばがんセンターとか循環器センターのような病院は別でありますけれども、そうでない場所におきまして、医学常識から見て極端に診療点数の高いもの、あるいは一人の患者さんに十も二十も診断名をくっつけて検査を非常にたくさんやっているようなお医者さん、あるいは一件当たりの点数が非常に高いケース、また漫然と長期にわたって診察を続けて投薬を続けているようなケース、あるいは時間外診療とか往診とか自家診療が異常に常時多いケース、あるいは一番問題の多いものとして、このごろ非常に指摘を受けております腎透析におけるダイアライザーの不正使用といったもの、これを完全に指導、監査の対象とする。同時に、ことにこのダイアライザー系統のものなどにつきましては、購入伝票とか在庫状況までを含めて指導、監査を行うというところまで踏み切りましたわけでありまして、今後できるだけ努力をしてまいりたいと考えております。
  56. 矢野絢也

    矢野委員 ことし平年度で約六千億円の増税が行われているのですね。五十四年度は四千三百四十億ですね。一方、公共料金が大幅に値上げが行われているのですね。特に、増税もある、公共料金の値上げもある、にもかかわらず、全部の国債が十五兆円というようなことになるのですよ。増税はやった、公共料金は上げました、少しは国債の方は減りましたというなら、少しは理屈もわかるのですよ。これはそうじゃない。増税もやる、公共料金も上げる、赤字国債はそれこそ十五兆円というようなむちゃくちゃな大増発になるのです。その原因はどこにあるかという議論を、私は政府の揚げ足取りの意味で申し上げているのじゃないのですよ。歳出をもっと効率的に、もっと国民のニーズにこたえた形で改めていかなければ、増税も公共料金もやるけれども国債は減らぬということになるのですよ、ということを総理大臣にわかってもらいたいから私は申し上げているのです。  私は、この後財政収支試算の問題に触れたいと思っておりますけれども、五十四年度予算においてもすでにこうなっておる。増税もやり公共料金を上げても、赤字国債は未曾有にふえる。この体質が改まらない限り、財政収支試算なんて全然ナンセンスになってくる。それはまた後で申し上げます。  そこで、歳出の議論でちょっと横道に入るようで恐縮ですけれども、医師の優遇税制の問題、これは歳入の関係になるのですけれども、きょうは渡辺国務大臣がいらっしゃるわけで、あなたはかつて厚生大臣をなさっておった。あなたは記者会見でいろいろなことについて御意見を述べていらっしゃる。渡辺メモというのがある。総理、自民党にはりっぱな大臣がいますよ。  渡辺国務大臣のお話によりますと、医師優遇税制度の継続は社会悪の拡大である、医療の正常化を阻害しておると発言をされ、そして開業医師の所得は昭和二十九年に比べて二十四倍、その間サラリーマンはわずか八・六倍しか所得はふえておらぬ。しかし、開業医師の所得は二十九年に比べて二十四倍になっておる。サラリーマンの約三倍足らずですかね。それから、特例経費の率は七二%になっておるけれども、実質の経費率は五二%となっておる。会計検査院の調べでも架空経費は二〇%もあるのだ。総医療費、五十二年で九兆円だ。その九兆円ということで考えると特例適用は三兆五千億円、その二〇%は七千億円だ。この七千億円が架空経費、つまり非課税所得になっておる。一方、薬の過剰投与、薬害の温床になっておるなど、これは私が言っているのじゃありませんよ。渡辺前厚生大臣が正式の場でお述べになったことを私は引用して申し上げている。非常にこのメモは私ショッキングなんですよ、実は。  そこで、渡辺国務大臣にお尋ねをしたいのでありますけれども、三点伺いたいのですけれども、第一点は、当時の所管大臣としてこれは真実を述べられたと受け取っていいものなのかどうか、ひとつ伺いたい。  二つ、五十四年度の税制改革は、そのような見地からこの不公平を是正したと見れるかどうかということについて、御意見をちょうだいしたい。  第三点は、特にこの法案、五十四年度の税制改革は、期限がついていない。しかし、たしか自民党の三役会議では、昭和五十二年度にやめるということを明確に合意されたはずである。ところが、この法案は期限がついてない。つまり所得の段階ごとにパーセンテージを変えてやるというこのやり方、これは期限がついてない。ほっておくと、十年も二十年も三十年も続く可能性がある。私は、この法案についてはきちっと自民党三役の合意どおりやめるべきだと思いますけれども、百歩譲ってそれでいくとしても、期限をつけるべきじゃないかという気がするのです。  この三点、渡辺国務大臣の御意見を承りたい。
  57. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私が何かであっちこっちでしゃべっていますから、十年も前じゃなかったので、これはなかなか違うとは申せないわけであります。大体、おおよそそのような趣旨のことを申し上げたことは事実でございます。どうしてそういうことを言ったかというと、たとえば二〇%しか経費がかかっていない場合でも、七二%経費を認めるという事例もありますから、そうなりますと、それは五二%は免税所得になる、不正請求を慫慂することになるというようなことを言ったことは事実であります。したがって、これは医療の正常化を妨げる、こういうことも言ったのは事実でございます。したがって、これは是正さるべきものだ、そういうようなことを申しました。したがって、党といたしましては、いろいろ私も税調の委員をやっておって、今回は大臣になる予定は全然なかったわけですから、その席でも主張もしました。しかしながら、大体皆さんの方も御同意がいただけて、長い歴史のあることなので、一応これを是正をするということに決まったのは、私は大きな前進であろう、かように思います。  それから、期限の問題でございますが、これは、できることならばそういうことが望ましいということももちろん言ったわけでございます。しかし、私は自民党の渡辺でございまして、自民党は渡辺の自民党じゃないわけでありますから、私が言ったからといって、総裁だってなかなか自由にならないのですから、これは。そんなに一遍にはならない、これはやむを得ざるものである、こういうふうに御了解をいただきます。
  58. 矢野絢也

    矢野委員 何だかすっかり渡辺さん歯切れが悪くなってしまって……。  これは大蔵大臣、お立場があってかなり遠慮して言っておられるようですけれども、やはり期限を付した方がいいという御見解のように私は思うのですよ。どうですか。期限つけないでなさるつもりですか。
  59. 金子一平

    金子(一)国務大臣 お答えします。  期限の問題はいろいろ見方もあると思うのですけれども、今度は政府提案ということで出ておりますから、経済情勢がまた変わってくればそのときに検討してしかるべき問題ではなかろうか。とにかく二十五年間手つかずでございましたのがやっとここまで来たわけでございますから、しかも、一般に言われておる五二%のところまで、五千万以上でございますけれども圧縮できましたし、しばらく情勢を見ながらさらに改善すべき点は改善を進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
  60. 矢野絢也

    矢野委員 よく考えたらまだ総理に一遍もお答えいただいてないので、御質問したいと思います。  私は、歳出の問題で、公共事業も限界効率が来ているのじゃないかとか、いろいろ議論申し上げたいわけでございますけれども、歳出の問題を取り上げたのは、先ほども言ったとおり、チープガバメントの根本はその辺の見直しにあるということを申し上げているわけです。スクラップ・アンド・ビルドなんてよく言いますけれども、一つもスクラップなさってないで、しかもむだなところを積み増しなさっておる。薬代で申し上げれば二兆円、予算内部のあれで言えば約六千億から七千億むだがある。歳入の面でも、いま私が指摘したように、非常に医師優遇税是正の不徹底ですよ。渡辺さん、渡辺メモなんてなまに読んだら、どぎついこと言うてはります、ほんまに。そうでしょう。いまの御答弁、あなた不本意でしょう。お立場上まあいいですよ、それは。というふうに、歳入の面も不徹底ですよ。特に歳出では不徹底ですね。その結果、何遍も言うようですけれども、増税だとか公共料金、五十四年度においても実施されておる。結局勤労者だとか弱者にしわ寄せが行っておる。しかも地方財政もいじめておる。しかも、一方で国債が減ったかと言えば、国債は全然減ってないで、国債が十五兆円というようにべらぼうにふえておる。総理がぜひ御検討願いたいとおっしゃっておる一般消費税、これ議論せいと言ったって、こういう歳出の体質が続く限り、あるいは歳入の体質が続く限り、一般消費税を議論せいというそんな状況だろうかしらと私は思うのですよ。もっとやることをちゃんとやった上で、なおかつ足りません、どうしても財政再建のためには足らないので御協力願いたいというなら、まだ話はわかる。壮大なむだ、壮大な不公平な所得を得て、こういうものが一方で放任されておって、これじゃやはりいかぬと思うのです。国民は、必要なものなら負担する気持ちはお持ちだろうと私は思います。しかし、その前には、それだけの国民に御納得のいただける状況をまず財政の姿から示していく必要がある。公共事業だって、もう時間がないからきょうは議論を省略いたしましたけれども、本当にむちゃくちゃなことですよ。需給ギャップがあるから、この需給ギャップを埋めるために公共事業が必要ですとおっしゃいますけれども、需給ギャップは確実にもういま埋まりつつあるのです。製造部門の需給ギャップは埋まりつつある。不況カルテルの関係もあるかもわかりませんけれども……。とともに、そういう製造部門ではもう投資する意欲を現時点においては持ってない。銀行の貸し出しの状況を見ましても、非製造部門に対しては貸し出しはどんどんふえておりますけれども、製造部門に対する貸し出しは日を追って減っておるのですね。事実、そういった公共事業の景気対策としての限界効率あるいは国土開発としての限界効率も大幅に低下しておるのです。時間があれば私はもっと具体的に、資料がございますから申し上げたいくらいなんです。そういう景気対策としても、国土をよくするためという目的であっても、その公共事業の限界効率はまさしく低下しておる。一方、福祉とか教育とか雇用とか、ここにお金を入れれば景気対策としての限界効率も高い。国民福祉という意味での限界効率も高いのです。そういう限界効率の高いところに歳出を向けないで、限界効率の低いところに一生懸命お金をぶち込んでおる。しかもそれが不公正になっておる。このことを私は申し上げたいわけなんです。  そこで、総理に伺いたいことは、すべての歳出の部門について、費目につきまして、たとえばこの経費は三年後に半分になります、この部門は二年後には三分の一になります、これは五年後にはゼロになります、アメリカで言うようなサンセット法案とでも申しましょうか、太陽は必ず沈む、同じように、あらゆる政府予算経費につきまして、太陽が沈むごとくこの経費のなくなるタイムリミットを設ける、こういうやり方をおとりなさらない限り、いまの日本の財政体質は変わらないと私は思うのですよ。チープガバメントだなんて言ったって口先だけじゃありませんか、私が先ほどるる申し上げておるとおり。こういうサンセット方式──ある人いわく、日本の歳出は白夜の太陽だ、沈むことがない。白夜の太陽。そういうサンセット方式をおとりなさるお気持ちがあるかどうか、総理大臣、お答えください。
  61. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 矢野さんの御論議を承りまして、私は大変きょうの御質疑に感謝いたしております。  と申しますのは、国会における御論議、えてして政府の掲げる項目について、歳出面で努力が足りない、予算のつけ方が少ないという議論がいままで非常に多かったわけでございます。けれども、今日あなたは、歳出の思い切った洗い直しを提言されておるわけでございまして、その点、私ども、鞭撻していただいているわけでございますから、まずもって感謝しなければいかぬと思います。  しかしながら、効率的な政府に向けての努力が一向に見られないじゃないかという御指摘でございます。私どもいま提案しておりまする予算案につきまして、そのことが十分なされて御審議をいただいておると自負いたしておるわけでは決してございません。今日、各省庁におきましても、現実の問題として去年の予算定額を割り込むということに対する抵抗は大変強いわけでございます。また、予算に関連いたします各種民間の団体におきましても、いままで享受いたしました利益はどうしても守り抜こうという現状維持の思想が非常に強い、これも人間でございますからある程度やむを得ないわけでございます。したがって、いままでのようなやり方、制度、慣行を維持しておったのではとても歳出の洗い直し、歳出に切り込みまして効率的な政府を実現するなんということはできないと思うのでございます。  そこで、どのようにしてそういうことを実現してまいるかということでございますが、これは、いま政府だけが努力いたしましてもできないことでございまして、国民の理解がなければならない。協力までいかなくても、理解を求めなければとうていできないことでございます。したがって、財政の現況につきまして率直にありのままを述べまして、みんなで考えていただくようにしようじゃないかという努力をいたしておるわけでございます。これからも精力的にやってまいりまして、国民に理解を一層深めていただかなければならぬと思いまして、それを背景にいたしまして、私どもいままでやってまいりました慣行、制度というようなものを思い切って見直す、そして国会の各党、各派からも御協力をいただきまして、そのようにしてまいらなければならぬと思っております。  いままで私どもが出しております予算案、そういう意味におきまして、まことに不満足なものでございまして、矢野さんの御指摘をまつまでもなく、とてもこれで歳出が洗い直せたものだなどと自負しているわけでは決してございません。したがって、これをどのようにやってまいりますか、計画的に、しかも執拗にこの問題については取り組んでいかなければならぬと考えております。したがって、ことしの予算の御審議を通じまして問題を御提起いただき、私どもを叱咜していただく、私どももまたそれに応じまして懸命な努力を積み重ねてまいらなければならぬと思っております。  しかし、そういうことはいわばあたりまえのことでございまして、いま急に言うことはいかがかということだろうと思うのでございますが、御案内のように、石油ショックがございましたときに、私もたまたま財政をお預かりしたことがございます。矢野さんの御記憶にもあろうかと思いますけれども政府の見積もりました歳入が三兆八千億の歳入欠陥を記録したことがございました。本来、財政のやり方といたしましては、そういうときにもう一度歳出に思い切ったなたをふるいまして、財政のバランスを中央、地方を通じましてとらなければならぬことは当然の道行きだったと思うのでございますけれども、あの当時の状況は、石油ショック、通貨不安、それからそれに伴う大きな物価の動揺、世界経済の大変な混乱でございまして、このショックを一遍財政で吸収してしまって、それで本来もとの姿に時間をかけて回復を図るより手はないということを考えまして、国民の生活にはできるだけ支障を来さないように、一切の波はまず財政が受けていこうという、その選択がよかったか悪かったかは別にいたしまして、そういう選択をわれわれはしたわけでございます。したがって、本来そのときにスタートすべき財政再建のチャンスをわれわれは政策的に延ばしたわけでございます。私が大蔵大臣をやっておったときには、それでも五十三年度からは再建にかからなければならぬということで、中期の展望をお出しいたしまして御審議をいただいたことがございますが、景気の回復が延びまして、五十三年度にもつかめないで、五十四年度もつかめないで、私どもとしてはどんなに遅くとも五十五年度からは本格的にやらしていただかなければならぬ。五十四年度は、そういう意味で財政再建について私ども施政演説で申しましたように、論議を深めていただいて、五十五年からの財政再建に立ち向かう踊り場と申しますか、議論をどんどん深めていただく年にしたいということでお願いいたしておるわけでございます。  大変回りくどい答弁でございますけれども、私の言わんとするところは御理解いただけるのじゃないかと思います。
  62. 矢野絢也

    矢野委員 失礼だけれども、少しもわかっていらっしゃらない感じでございまして、叱咜勉励せいとおっしゃいますけれども、私は毎年この席でこの問題を、叱咜なんてえらそうなことは言いませんけれども指摘をしているつもりなんですが、ぬかにくぎというやつです。  要するに財政が大変だという状況において、大蔵省を中心として、すぐそれは増税の方向への唱道と申しますか、赤字公債が出ておるというのは大変だということは十分わかっていますけれども、増税の方向にいま走ろうとなさっている。ちょっと待て、こう言っているわけなんですよ。歳出を見直すべきだ。その歳出の見直しも、何でもかんでも削れと言っているわけではないのです。これからの国民のニーズに対してこたえるべき歳出は大胆にふやしなさい、これはふやすべきだと私は思います。しかし、先ほども具体例を一つ、医療費という立場指摘しましたけれども、そういうたぐいのものは国民の迷惑する話と違うのですよ。健康保険制度をやめろと言っているわけではないのでして、そういう歳出のむだというものをなくする対策をおやりなさい。一方、必要なものはどんどん出しなさい。それこそ納税者として納得ができる。その辺の仕事を、いま総理、踊り場とおっしゃいましたけれども、その踊り場においてあなたは胸を張って、ここでこうやりましたと大演説をぶててこそ増税の論議に入ることができるのですよ。うにゃうにゃと言っただけであります、大変失礼ですけれども。そこで言いたいことは増税が必要だみたいなことを言いたい。そこにぼくは根本的な姿勢の誤りがあるのじゃないか。石油ショック以来云々というお話をなさいましたけれども、財政が経済に対して一定の責任を持つフィスカルポリシーとしての役割りも否定しない、財政がふえることも構わないと思いますよ。ふえ方だって、その内部の構成が、その段階において国民のニーズにこたえたようなふえ方になっておらなくてはいかぬのと違いますか。一方、壮大な所得移転、浪費、むだが放任されておって、それで増税だと言われたって、これは納得できぬということを私は申し上げておるのです。だからサンセットという方向、考え方は、一つの考え方じゃないかということを申し上げている。それは一つもお答えになっていませんよ。
  63. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 だから、白夜の太陽であっていいなんということは毛頭考えていないばかりか、あなたに劣らずこの財政危機を早く打開しなければならぬということでございまして、あなたのおっしゃるように、まずそのために歳出の思い切った見直し、削減、効率化が大事だということは全く同感でございまして、いやあ、それはなかなかむずかしいのでございます、そういうことをやらないのでございますなんて全然言っていないわけでございまして、私は、そのことを精いっぱいやることについてひとつ御声援を賜りたいというわけでございますが、大体この歳出の削減問題というのは、ちょうど総論賛成、各論反対という方式で、それは結構だ結構だとみんな言っているのだけれども、おれのところだけはまずむだがないんだ、こう言うんですよ。そこを切り込まなければいかぬわけなんでございまして、それにはよほどの構えが必要なんでございます。財政当局も、また各省庁もそれなりの努力はしておるのでございますけれども、なかなか切り込めない。しかしそんなことを言ったのでは財政の再建はできない。ですから、ことしはここまでやりました、しかし、先ほど申しましたように、これは不十分なものでございます。だから、ことしは国会の内外、大いに財政の論議をやりますし、私どもも一生懸命になって財政再建に取り組みますので、政府の誠意もおくみ取りいただいて、ひとつ鞭撻を願いたいと思います。
  64. 矢野絢也

    矢野委員 話はまた変わりますけれども、厚生大臣に伺いたい。あるいは大蔵大臣でもいいのですけれども、どちらでしょうか、お医者さんの、開業医の青色申告、内科だとか外科だとか何とか科だとかいう科目ごとの青色申告の状況についての御説明、それから段階的な経費率を優遇税制度について設定をされたわけでございますが、収入の段階別、階層別の分布状況はどうなっておるのか、これについて御説明を願いたい。これは余り言うと、何だということになるわけでありますけれども、私は、まず診療報酬というのを大幅に上げて、そして乱診乱療と申しますか、薬のむだ使いをなくする、そういう立場での改革を公明党要求しているわけなんです。技術料と申しますか、診療報酬、これは大幅に上げるべきだ。これは、私は正当なペイだと思います。そういう立場でこの資料を分析をさせていただきたいと思うわけです。これは、ひとついまわかれば教えてください。
  65. 金子一平

    金子(一)国務大臣 お答え申し上げますが、現在の段階で申しますと……(矢野委員資料がなくていいんですか、各内科とか外科とかの青色申告の状況」と呼ぶ)青色申告の資料は、まだ整理したものができていないかもしれませんから、でき次第これは御検討いただきたいと思います。  それから今度の改正案による段階の区分で言いますと、これはごく大ざっぱな数字でございますけれども、保険医の二分の一が三千万円以下、診療報酬の課税の対象になるお医者様の数で言えば、三千万円以下が二分の一。それから五千万円未満、五千万円から三千万円が残りの二分の一の半分、四分の一。それから五千万円超が残りの四分の一。大体そう御承知いただけば結構です。数字は追って差し上げます。
  66. 矢野絢也

    矢野委員 財政収支試算の御提出をいただいておるわけでございまして、昨年まで私はこの問題、財政再建の問題との絡みで問題提起をいたしました。毎年同じ問題をやるのは、私もいささか気がひけるのでありますけれども、昨年申し上げた問題提起に対して余りお答えをいただいていないと、大変残念な気持ちがしておるわけでございまして、まず一日も早く財政計画というものを作成するということを私は昨年お願いをしておいたわけです。大蔵省として、歳出部門のこの費目はこうなります、ああなりますというような、たとえば三年後にはこうなりますというたぐいの財政計画、これをおつくり願いたいとお願いしたわけでございますが、まだできていないみたい。財政収支試算というのをちょうだいしたわけで、これは、本当に言っては申しわけないのだけれども、余りまじめな仕事とは思いません。この試算を見ますと、昨年同様に大増税のキャンペーンの目的意識だけが、体よりもその気持ちの方が先走ってしまいまして、それを正当化するための大増税の資料。そして、この財政収支試算は、経企庁のおつくりになった新経済社会七カ年計画の基本構想が六十年度に想定しておる公共事業、あるいは社会保障移転支出、政府最終消費あるいはGNPの見通し、こういったものを七カ年計画、六十年度まで決めておられるわけですね。そこで、六十年度予算の規模を先にはじき出しておいて、それと五十四年度と線を引いて機械的に案分された、こういうことだろうとぼくは思うんですよ。つまり、この財政収支試算の前提になっているのは、新七カ年計画の六十年度時点における計数、これが土台になっているわけです。その特徴は、五十九年度に赤字公債の発行をゼロにしたい、こういう設定がございます。そして、五十九年度以降は、もう増税はしたくありません、それまでは増税はやむを得ません、こういう前提がついているわけです。それで、五十五年以降は、GNPの伸びは名目で一〇・四%だ、こういう想定になっているわけですね。租税負担率は、昭和六十年度の予測値として、国民所得比の二六・五%だという、だあっと税金をかける、こういうことになっている。そこで、各五十五年、六年、七年、八年、九年の増税計画と申しますか、さすがに増税という言葉をお使いなさらないで、これはなかなかうまいこと表現してありますね。つまり、増税をしないで、名目GNPの伸びがございまして、名目GNPが一〇・四伸びますと、弾性値が一・二働きますという形で、増税なしの税収はこれこれこれこれしかじかですという数字を参考ケースAという形でお示しなさいまして、そして一方、六十年時点での税収というものをばんと先に出しておいて、これは自動的に決まってくる。それを案分した各年度の税収額というものは、増税をしない、自然増収だけの税収とはギャップが出てくる、差が出てくる。その差額は、五十五年が一兆二千六百億円でございます、五十六年は一兆五千億でございます、五十七年は一兆七千七百億でございますと、こういう数字があるわけで、これは当然前年度の増税分は、次年度においては税収になってきておるわけでございますから、累積した形で、五十五年に一兆二千六百億を増税すれば、五十六年は、この一兆二千六百億円は、一定の弾性値をもって税収となって入ってくる。それに加うるに一兆五千億また増税するんだ、来年もそうだ、再来年もそうだということで、五十九年度には九兆一千百億円五十四年度に比べたら増税になりますよ、増税という言葉は使っていないのですね。足りませんよ、こう書いてあるわけですよ。これは増税に決まっていますわな。増税をする御意図があるからそういうことになっておる。しかもそういう五十九年時点において五十四年度に比べて九兆一千一百億円大増税、物すごい大増税を予定されておきながら、一方の社会保障移転支出の伸び、要するに福祉ですな、この伸びは平均一〇・九%、ことしよりも少ないですな、これは。ことしはたしか一二・何%でしたっけ、それよりも低い福祉の伸びです、これは。地方財政も、これはその他のところに入っているのだろうと思いますけれども、九・四の伸びですか、これは。一方で大増税をしておるけれども、福祉はことしよりも少ないのです。地方交付税を含んでおるその他のところも低い伸びです。そしてそれだけの大増税をしても、なおかつ建設国債は毎年一〇・四%伸ばすのだ、六十年度の時点では十三兆円出る。国債残高は累計で百三十九兆円になる。GNPに対して三三%、名目GNPの三分の一が国債残高です。この国債残高六十年時点の百三十九兆というのは、六十年時点予算の、つまり七十二兆円ですね、約二倍の国債残高になるというのは、見ただけでも、これはもう日本の将来が心配になるような大変なデータをお出しになっているわけです。私は野党でありますけれども、やはりこういう問題の立て方には大きな異論があります。これは後ほど申し上げますけれども、財政再建というのは日本の政治家として真剣に取り組まなくてはならぬ、こう思いますので、あえて私はこの問題について真っ正面から御質問したいと思うのです。  財政収支試算の今回出ました基本的な性格、目的ということでまず伺うのですが、昨年は、私はあれやこれや御指摘申し上げて、しどろもどろにおなりあそばされまして、その結果、財政の困難を理解してもらうためのものでございます、決してそれ以上のものではございません、あるいはまた財政の傾向を示すものでございますというような言い方をなさったわけでございます、整合性がとれなかったものだから。ことしは一本にしぼって出してきたわけでございまして、かなり自信満満の体にお見受けするわけでございますが、ことしの財政収支試算の性格、目的はどういうものでございましょうか、大蔵大臣。
  67. 金子一平

    金子(一)国務大臣 お答え申し上げます。  ことしの財政収支試算は、企画庁中心でおつくりになりました新経済社会七カ年計画の基本構想に基づきまして、六十年度の経済のあるべき姿を、いろいろな仮説を置いておるのだろうと思うのでありますけれども、想定いたしました。たとえばいま御指摘のございましたような社会保障の関係は、五十三年度は国民所得に対し一二・三%であったものを一四カ二分の一程度に引き上げたい、あるいは公共投資はどうだ、いろいろな六十年度のあるべき姿を数値化して出しておるのですが、それは基本計画で五つの目的をうたっております。御承知のとおり、国民生活の安定でございますとか、その中の一つに財政の再建、金融の弾力化と申しますか、そういう項目が出ておりますが、それによりますと……(矢野委員「どういう性格、目的だということを伺っておるのですよ。この財政収支試算は単なる傾向ですか」と呼ぶ)ですから、六十年度のあるべき姿を想定して、財政収支の考え方としては、この数値に出ておりますように、租税負担率は二六カ二分の一程度にぜひ持っていきたい。それをすることによって赤字特例公債の脱却を五十九年度で図りたい。と申しますのは、六十年度になりますと償還期が来るものですから、そういう姿を描き出したわけでございまして、五十五年から五十九年までの数字は、これは矢野さんも御指摘のとおり、その至る段階を細かくやっておるわけじゃございませんで、機械的に伸ばしておる。しかし、最終的な六十年度の姿は、一つの政策の目標になっております。こういうことに御理解賜りたいと思います。
  68. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、一つのケースに参考表をつけた、ケースAとか。そうすると、本案というのでしょうかね、この案は、これからの財政再建の基本的なコースがこの収支試算によって政府内部で確定したものである、こう受けとめてよろしゅうございますか。
  69. 金子一平

    金子(一)国務大臣 目標が決まっておるということであります。メニューとしては、そういう一体化の、整合性のとれた姿で財政再建を図るという意味において政府の意思は統一されておりますと申し上げたいと思います。
  70. 矢野絢也

    矢野委員 五十五年から五十九年度の増税必要額ということですよね、この表に載っている分は。各年度の税収見込み額と名目GNPに対して弾性値一・二とした場合の差額というもの、つまり増税必要額ということですね。これは累計で九兆一千一百億円ということになっていますが、これはどういう税金の増税をお考えなさっているのでしょうか、大蔵大臣。
  71. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは先ほども申しましたように、国民所得に対する税負担を六十年度の目標値に達成しようと思えば、各年度の税の弾性値を掛けて考えればこういう数字だということに機械的にはじいたわけでございまして、その中身を詰めるのは、そのときどきの情勢に応じて具体的に考えていかなければならぬと考えておりますが、たとえて申しますと、五十五年度では、いまお願いをしておりますように、一般消費税をぜひ導入していただきたいということでございます。
  72. 矢野絢也

    矢野委員 五十九年時点におきまして九兆一千一百億円、この増税の中身はまだ決めているわけじゃございません、しかし、五十五年度につきましては一般消費税ですということらしいのですけれども、これは取り立てる税の中身によりましては、たとえば法人税をふやすとか、個人所得税をふやすとか、あるいは一般消費税でいくとか、あるいは野党が主張しておるような土地の増価分、価値がふえた、それに対して課税するとか、いろいろな増税のやり方が論理的にはあり得るわけですけれども、その増税のやり方によっては、全然消費に対する影響力とか、設備投資に対する影響力とか、GNPに対する影響力とか、みんな違うのです、ここで私が初歩的なことを言わなくても。増税の中身も決まらぬと、名目GNPが一〇・四で伸びまして、それに対する税収がこれでございましてなんて、そんな──また整合性の話になって恐縮だけれども、中身も決まらぬでどないして七カ年計画の数値を大蔵当局として達成できるという──目標とおっしゃったのでしょう。その税の中身が決まらぬ限り、すべての項目が変わってくるわけですから、目標とするというそのお言葉自身が、これは目標放棄になるのじゃないでしょうかね、大臣。増税になる税は決まっているのでしょう。それでなければそんな計算できないはずですよ。正直におっしゃったらどうですか。
  73. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは矢野先生御承知のとおり、ことしの税制を決めるだけでも半年以上の日数を要して決めるようなことでございますので、ましてや、七年間の増税を段階的にどう見ていくかというようなことは、とても簡単に作業できるわけではございませんので、そのときどきの経済事情によって自然増収が相当出ることもございましょうし、あるいはまた自然増収が出ないこともございましょう。そういったところはやはりその年に具体的に検討して国会の御審議をいただく、こういうことになろうかと思うのでございます。  それで、先ほど冒頭に矢野さんから御指摘のございました財政計画をしっかり立てろよというお話、昨年の九月から財政制度審議会におきましてこの問題は取り上げていただいております。今後の歳出、歳入のあり方についてどう持っていくのか、計画を進めてもらっておるのですが、関連する事項が非常に多いものですから、まだ審議の最中でございまして、いつお手元に差し上げられるか、ちょっと見込みが立ちませんが、大蔵省としては最大限の努力を重ねておることを御了承賜りたいと思います。
  74. 竹下登

    竹下委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  75. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほどの矢野君の質疑中における資料要求の件につきまして国税庁長官の発言を求めます。磯邊長官。
  76. 磯邊律男

    磯邊政府委員 午前中に矢野先生の方から御要求がありました、国税庁におけるSECの発表に関連した税務調査のことにつきまして、ただいままでの税務調査の結果を御報告させていただきます。  まず、グラマン社関係でありますが、一つには、ガルフストリームⅡの売り込みに関連いたしまして三十万ドルを超えるコミッション及びその他の利得があったという件でございます。  これは私たちの調査したところによりますと、住友商事関係で申し上げますと、四十九年の九月期に住友商事として利益の計上があるわけであります。利益の計上額は九万一千三十五ドルでありまして、円貨換算いたしまして二千七百六万一千円であります。この収益を計上いたしました科目といたしましては、仕入れ値引きということになっておるわけであります。  それから、この三十万ドルにつきましては、まず現地の子会社である米国の住友商事がこの支払い代金を立てかえておりますので、まずその立てかえにつきましての金利を十六万九千百二十三ドル、現地法人に住友商事から払いまして、その三十万ドルの残りを本社と子会社で六、四の割合に分けております。したがいまして、本社におきましては、ただいま申しましたように、利益計上額といたしまして九万一千ドル余でありますけれども、子会社におきましては利益計上額として七万二千ドル余を計上いたしております。その他の利得といいますのが、保険料の割り戻しその他で四万一千三百四十五ドルございます。  それから一方、運輸省に、これは仕切りで売っておりますので、その運輸省に対する売り上げとして売買利益が、住友商事の本社におきましてやはり同様に昭和四十九年九月期におきまして七百十七万一千円の売買益の計上があるわけであります。  それから、その次の軍用機部品にかかります十四万ドルの件でありますけれども、これはリベート収益額につきましては現在確認中でありますけれども、おおよそそういった手数料その他の関係が一〇%あるということが言われておりますが、昭和四十五年から五十二年までの間に防衛庁に納入いたしました軍用磯部品等の納入額が、FOBで申しまして、われわれの調査では百四十四万ドルございますので、これの一〇%を見ると、おおよそその十四万ドルというものが住商に入ったであろうというふうにわれわれは考えておりますが、これについては現在調査中でございます。  それから、E2C機の売り込みに関連いたしましては、これは何ら資料がございませんので、現段階においてはまだ私の方でお答えするに至っておりません。  それから、ダグラス関係でありますが、昭和四十五年ごろに一万五千ドルの販売促進料、それから五万ドルのコンサルタント料、それからさらにまた五万ドルの独立した商業コンサルタントに支払われたという件でございますけれども、これは何分古いことでありますし、現在までのところ、われわれはこの点については把握いたしておりません。  それから、航空機の売り込み手数料といたしまして百八十万ドルの件がございますが、これは日商岩井と三井物産、両社に分かれております。  三井物産についてまず申し上げますと、これは御高承のように、四十九年五月から五十二年四月までにDC9をTDAに十五機売っております。これに対する手数料が五十万ドル、それからDC10、これをJALに六機売っておりますが、これに関する手数料が九十万、合計いたしまして百四十万ドルというのが三井物産の方の収益に計上されております。勘定科目は受取手数料であります。  それから、日商岩井につきましては、これは四十四年九月から五十三年四月にかけまして、ダグラス社との手数料が全体で二百四十万ドル程度あるわけでありますけれども、そのうちに利益計上額といたしまして言えますのは、RF4Eに係るものが四十三万一千ドルあるわけでありまして、これは対応する期に受取手数料という勘定科目で収益が計上されておるわけであります。  なお、そのほか日商岩井は──ちょっと前後いたしました。三井物産におきましては、東亜国内からの手数料額として一億六千八百万程度の受取手数料がございます。  それからまた、日商岩井は、対防衛庁に対します、これは仕切り売買でありますから、売買益として四千九百九十七万七千円の利益が計上されておる。  現在までのところ、このSECの発表に関連いたしまして私たちが調査し、把握しておる事項は以上のとおりでございます。
  77. 竹下登

    竹下委員長 質疑を続行いたします。矢野絢也君
  78. 矢野絢也

    矢野委員 お願いをいたしました資料につきまして国税庁から御協力をいただきましたことを感謝したいと思います。  いまお話しの諸データによりましても、きわめて重要な問題が多々あろうかと思います。すべては集中審議にゆだねたいと思うわけでございますが、それ以外のお願いをしておる資料についてもぜひお願いをしたい。  刑事局長にもう一点だけ追加で聞かせていただきたいと思うのでございますが、先ほど私がお示ししましたオラムさんからの書簡第一ページに、「カーン氏はグラマンの販売コンサルタントを一九六九年から一九七八年四月一日まで約十年間つとめました。」とこういう表現がございます。  昨日、社会党の委員さんからの御質問に対しまして、日商岩井とハリー・カーン氏の密約が失効した時期のずれをきわめて重要な見方をしていらっしゃる、こういうことのようでございますが、日商岩井さんは解約時期を五十一年と言われる。SECの資料では五十二年、こういうふうになっておる。しかし、いま私が申し上げておるように、グラマンの責任者からは明確に七八年四月一日まで十年間務めております、こういうふうに述べておるわけでございまして、このずれ、これは恐らく時効との関係できわめて重要な意味がある、こう思うわけでございますが、いまお示ししておるオラム氏の資料をごらんいただきましてどのようなお考えをお持ちか、この一点だけをお尋ねしたいと思います。
  79. 竹下登

    竹下委員長 伊藤刑事局長おられますか。
  80. 矢野絢也

    矢野委員 おらない。──では法務大臣から。
  81. 古井喜實

    古井国務大臣 いまのコンサルタントの期限のおしまいのところに食い違いがある、大事なところだという、あそこでございますね。(矢野委員「ここでもはっきりなっているのですよね、この手紙でも」と呼ぶ)これはちょっと食い違いがあるのですから、どっちかこっちかもっと詰めて、どっちが本当か、こういうことでいくしかないですから、そういうふうにするほかありません。やはり時効にも関係があるというようなこともあるかもしらぬし、それに伴う問題もあるかもしらぬですけれども、私はよくわかりませんから、来ましたらよろしく……。
  82. 矢野絢也

    矢野委員 いらっしゃらないようだから、よくわかる方に、私の質問時間中に、終わりがけで結構でございますから、御答弁いただくようにお手配願いたいと思います。
  83. 竹下登

    竹下委員長 手配いたします。
  84. 矢野絢也

    矢野委員 わかっている方に聞いた方がよさそうですから。法務大臣もわかっているのにわざと言わないのでしょうけれどもね。  それから、財政収支試算に戻りたいと思いますが、もう時間もございません。てきぱき進めていきたいと思います。  いずれにしても膨大な増税を計画していらっしゃる、それは恐らく一般消費税である、こう見ざるを得ないわけでございます。  たとえば地方交付税関係、これは資料をごらんいただきたいわけでございますが、これは歳出の中の「その他」のところに地方交付税が含まれておる。しかし、本案によりますと、五十九年度の時点では二十五兆九千八百億円。各年九・四%でふえておって「その他」の経費は五十九年で二十五兆九千八百億、こういう金額になっております。ところが、いわゆる増税を想定しておらない参考ケースA、この表によりましても、地方交付税を含むこの「その他」のところの五十九年度時点金額は二十五兆九千八百億、つまり増税をする案も増税をしない案も、地方交付税を含む金額は同じ数字で述べておる、こういうことになっております。これは、逆の立場から言いますと、増税をしても地方交付税、地方にはやらぬのだという前提に立った計算になっておる。  たとえば五十九年時点で九兆一千一百億増税になっている。常識的に言えば、たとえば三二%ということにすれば、三兆円くらい増税をした本案の場合は「その他」のところがふえておらなくちゃならない。ところが、増税をしていないケースと全く同じ金額だ。ということは、大蔵省は大増税はお考えなさっているけれども、地方にはびた一文やらぬというお考えでこの計画をお立てになっているのですか。これはまた裏返して言えば、この増税は、たとえば所得税、法人税、酒税などのように三二%を地方に配分するという義務づけのないたとえば一般消費税。だから、増税してもしなくても地方交付税のくだりはふえていないんだというふうに理解した方がいいのですか、どっちですか、それは。
  85. 金子一平

    金子(一)国務大臣 矢野さんのいまのお尋ね、多分に技術的な問題がございますので、政府委員に答弁をさせます。
  86. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  今回御提出申し上げました財政収支試算の本表の「その他」には交付税が含まれておりますけれども、これを特掲しなかった大きな理由といたしまして、ただいま御指摘のようにこの経過期間中に増税と申しますか、国民の租税負担の増加を求めなければならない。その場合に、仮に一般消費税が入ってまいりますといたしますと、それを国と地方でどう分けるかというのが非常に大問題と申しますか、重要な問題でございます。それを現時点において私ども大蔵省、自治省との間でもまだ検討が済んでおりません。そういうようなことから、この「その他」の中に交付税を特掲せずに含めたということでございます。  そこで、御指摘のケースAの方にはそれではどうなるのだということでございますが、これは率直に申し上げまして、参考のケースA、Bと申しますのは非常に単純な前提を置いた試算でございまして、矢野委員の御指摘の点から申しますと、参考ケースAの「その他」は本表の「その他」よりも若干甘くなる可能性がある。と申しますのは、増税がなければ交付税は本表の場合よりも少なくて済むだろうということになりますと、除いた「その他」の方が多くなるわけでございますから、参考ケースAの「その他」は、今後の増税いかんにより、また、地方交付税の地方財政に回ります金額のふえ方いかんにより、本表の「その他」の地方財政を除くものよりも少しゆとりがあるということをお認めせざるを得ないと思います。
  87. 矢野絢也

    矢野委員 それはまさに逆でございまして、一般消費税を国と地方にどう配分するかわからないから、「その他」の地方交付税を含む欄の数字は地方に上げる金額を含まないで計算をなさっておる、そう見た方が私は正しいと思うのですよ。これはいまの主計局長のお答えはまさに詭弁だと私は思うのです。  いずれにしても増税をする、その分をどのようにして地方へ配分するかということは、これまたその時点における、たとえば六十年度目標にされておるもろもろのデータに重大な影響を及ぼしてくる。地方財政が逼迫する、景気が悪くなるという影響が出てきますね。そういう要素もお考えなさっていない。この議論は、地方交付税、地方に対する配分を無視したやり方である。まことにけしからぬという指摘にとどめておきたい。  それからもう一点は、一般消費税と仮定いたしましょう、恐らくそうだろうと思いますから。そうすると五十九年度の増税は九兆一千一百億円、全部が全部一般消費税とは申しませんけれども、まさか所得税をこれ以上どかんと上げるということも恐らくお考えなさっていないだろうという気もする。その他政府のいままでの御発言の中で一般消費税以外に九兆一千一百億円の増税分を埋めるほどの政策的なお考えを承ったことがない。こうなりますと、六十年時点で申し上げれば、名目GNPが四百二十兆円です。消費はそのGNPの約半分強でございますが、大ざっぱに言いまして四百二十兆円の半分、二百十兆円。課税対象、非課税対象両方がございますから、これまた大ざっぱに申し上げまして課税対象になる消費はその半分、こういたしますと百五兆円。百五兆円の課税対象額の消費に対して九兆一千一百億円という、一般消費税すべてとは申しませんが、これだけで約九%、一〇%近い一般消費税にこれはなるのですよね。しかも地方への配分を別途考えるのだということになりますと、地方に何%やるか、これはこれからの議論だろうと思う。たとえば五%を地方に上げるのだという前提に立てば──いま一般消費税の税率一〇%ということを仮説で申し上げました。恐らくこの数字そう間違いない。五%やるとすれば一五%、国と地方と半分ずつするのだといえば、この九兆一千一百億と同じ金額をとらなければいかぬという理屈になります。二〇%という一般消費税になります。これは私の仮説で申し上げておる。いずれにしても百円の物を買うのに二十円が一般消費税、これはむちゃくちやな話。これは私の仮説です。いずれにしても地方へ国の増税分と同じだけを配分する、そういった場合の一般消費税の税率は五十九年度時点幾らになるんだ。あるいは地方へ国の増税分の半分だけ、つまり国が二、地方が一、こういう場合には一般消費税の税率は幾らになる、この計算をひとつ大蔵大臣、聞かせてください。
  88. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 お答えします。  昨年の十二月二十七日に政府の税制調査会から提出されました五十四年度税制改正の答申の中に一般消費税の大綱というものが入っております。その趣旨に従って御説明申し上げますと、新税の中で地方団体へ配分される額の一部を新たに設ける地方消費税、これは道府県税でございます、仮称でございます、とするということでございまして、その大綱の税率のところでは「五%の単一税率」と書いてございますが、「地方消費税を含む。」となっております。したがいまして、政府の税制調査会の考え方では、五%の地方消費税を含む一般消費税、こういうことでございます。
  89. 矢野絢也

    矢野委員 いま五%の一般消費税の税率とおっしゃいましたが、大蔵大臣、たとえばその五%でいきまして、五十九年時点で九兆一千一百億円のこの足らぬ前、これ補てんできますか。それだけお答えください。
  90. 金子一平

    金子(一)国務大臣 九兆一千億を五%の税率の一般消費税でカバーできないことは当然でございます。
  91. 矢野絢也

    矢野委員 としますと、毎年たとえば一兆二千五百億とか、その次は一兆五千億とかいうような増税を考えていらっしゃいますけれども、少なくとも五%と言われている一般消費税では、この財政収支試算を賄う、この赤字、足らぬ前を賄うことができない。それ以上の一般消費税の増税をしなくちゃやっていけぬということが明らかになったと思うのです。  それからもう一つは、この欄の「社会保障移転支出」のくだりでございますが、これまた増税を予定しない参考ケースA、増税を見込んでおるこの本案、いずれも五十九年時点で十五兆二千三百億、毎年平均一〇・九%で伸びておる、こういう想定になっております。たとえばこの一般消費税なり何なりで大増税をいたしましても、福祉税というような形で将来の庶民大衆の生活の安定にこの取られる税金が役に立つのだ、こういうことなら、これから九兆一千一百億大増税されても──しかも一般消費税というのは逆進性があります。お金持ちよりも所得の少ない方の方へきつく租税の負担率がかかってくる。そういう面から見ましても、福祉がふえるというこの見通しがあるのなら、その分だけ貯蓄が減って消費が減らないということが期待できる。いま何のために庶民大衆は貯蓄しているか。お粗末な社会保障だから老後の心配がある、病気になったときの心配がある等々いろんな心配があるから、乏しい家計の中で貯蓄をせざるを得ない。泣きの涙で貯蓄しておる。しかし、これからの一般消費税という大増税が福祉に向かうんだ、たとえば福祉税という形で、それならその不安がなくなるから貯蓄を減らしてということになる。このデータでいきますと、増税した場合も増税しない場合も五十九年は十五兆二千三百億の社会保障移転支出、つまり増税しても福祉はふやしませんという前提に立っておる。  こういう立場でいきますと、取られる方から言いますと税金はたくさん取られるが、だからといって福祉関係は決してふえやせぬ。これは貯蓄をもっとしなくてはならぬということとあわせて消費を削らなくてはならぬ、逆進性がさらにここに効いてきますから。となりますと、今度は逆に、この財政収支試算で七カ年計画の六十年時点での計数に合わせて財政を組み立ててみたのですとおっしゃいますけれども、消費が減ってきたら、今度は逆にこの七カ年計画の方の数値がおかしくなってくるという結果が出てくるのです。私は、そういった点についての整合性をどうお考えになっているか、ひとつ御意見を聞かしてもらいたい。全く整合性がとれてないじゃありませんか。
  92. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま仰せのとおり、高齢化社会を迎えて、これから一番大きい財政支出を考えなければいかぬのは福祉予算であると思います。それで、これは好むと好まざるとにかかわらず、これからの財政運営に当たっては一番重点を置いて考えていかなければいかぬ。その財源はこれは切るわけにいきませんから、ほかの方はうんと圧縮いたしましても。となると、これからの税の増収を重点的に充てていくのはその方面でございます。とにかく活動できる人間が全部でお年寄りを支えるのだ、そういう意味で一般消費税というようなものも御検討いただきたい、こういうことでございまして、おっしゃるとおりの気持ちで私ども考えております。
  93. 矢野絢也

    矢野委員 答弁になっていないのですよね。増税した場合も増税しない場合も福祉関係の歳出は同じだ、これじゃ取られる方はたまったものじゃないですね。  もう一つは、そういうことによって出てくるデフレ効果、つまり貯蓄の減少につながらないで消費の削減につながるということ。あるいはこれは企業だってそうですよ。一般消費税を取られる。デフレ効果が出てきます、そっちの方も。そういうデフレ効果というのはどういうふうに計算されたのか。御説明では、あくまでも経企庁がつくったこの六十年時点でのGNPの伸びだとかその他のあれに合わせてつくりましたと言うけれども、これは財政の姿が逆に経企庁のこれを規制してくるじゃありませんか。実現しないじゃありませんか。その辺どうなっているのですか。
  94. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  財政収支試算の本表、これは先ほど来御説明も申し上げておりますように、新経済社会七カ年計画で想定いたしました昭和六十年度の社会保障の水準を念頭に置いて、また租税負担率もふえるということを念頭に置いて作成したものでございます。  それと、末尾についております参考ケースA、参考ケースBでございますが、これは昨年この場で矢野委員から御指摘を受けまして、経済計画との整合性があるかということが問題になったわけでございますが、私ども、この参考ケースのA、Bをつくるに当たりましては、「「新経済社会七カ年計画の基本構想」における経済の姿との整合性を考慮せず、極端な仮定を置いて試算したものである。」ということは、結局歳出の内容においては、ケースAは新経済社会七カ年計画の水準に昭和六十年度到達するものと仮定しながら、租税負担率を高めないで特例公債に依存をしていけば公債がこれだけふえますということを仮に試算をしたものでございまして、そういう意味において、ただいま御指摘のように、新経済社会七カ年計画とは整合性がないということは正直に申し上げます。そういう意味の表でございます。
  95. 矢野絢也

    矢野委員 素直に整合性がないと認められてしまったんじゃこれは上げた手のやり場に困るわけでありますが、そういう整合性のないものをなぜ──大平総理は一般消費税についてこの国会で論議してください、こうよくおっしゃるわけでありますけれども、もう少し論議に耐えるような資料をお出しいただかなくちゃ論議できないじゃありませんか。  それからもう一つは、もう重ねて申し上げます、先ほど増税の中身ははっきり言えないみたいなことをおっしゃいましたが、心は一般消費税だということなんですけれども、これだっておかしいのですよ。どんな税でいくかということがわからぬ限り、どの数値がどう変わってくるかということだってこれは決まるはずないです。法人税でいくのか固定資産税でいくのか、個人所得税でいくのか土地増価税でいくのか一般消費税でいくのか、それすらここで明確におっしゃらないようなことじゃ、参考ケースA、これはいいですよ、この表自体がおかしくなってくるじゃありませんか。  それからもう一つは、本案の五十九年度の税収、一遍見てください、大蔵大臣。四十七兆九千九百億円、これは毎年増税を行って、五十九年度の増収額が九兆一千一百億という説明が後へついておる、こういう形です。ところが増税をしないケース、つまりケースA、これは特別の増税は考えない。しかし名目GNPが毎年ふえます、弾性値が一・二で租税収入がふえますという形で計算をされた五十九年度の税収は三十六兆七千五百億。これは要するに増税した場合と増税しない場合との差額が十一兆二千四百億円あるわけです。これはもう間違いなく十一兆二千四百億円差額が出てくる。一方は、五十九年度の増収分は九兆一千一百億だとおっしゃっておりますから、十一兆二千四百億の足らぬ前を増税分で九兆一千一百億補てんされるわけですから、二兆一千三百億円差が出てくる。この差がおかしいなどと私は言いません。この二兆一千三百億円、どうしても出てくるこの差は恐らく、前年度増税しました、この前年度の増収は今年になると税収に含まれてくるわけでありますから、それも名目GNPがふえ、弾性値一・二がきくから、たとえば去年一兆二千四百億増税いたしましても、ことしはそれが大きくなっておりますという形でこの二兆一千三百億の差を埋めていらっしゃるのだろう、こう思うのですよ。大蔵大臣、わかりますか、私が言っている意味。これはそういう計算でしょう。そうでなければ、それこそそうでないとおっしゃったのなら、これは初めから計算が間違っている。そうですね、主計局長。この差額の二兆一千三百億は、前年度増税した分が名目GNP掛ける一・二の税でくる、こういうことでしょう。しかしこれは本当にナンセンスなことになってくるのですよ。  といいますことは、名目GNPが一〇・四%、それ掛ける一・二、つまりこれは一二・四八の倍率で前年度の増収分は今年度の税収になっておる。そこへたとえば五十六年の場合は一兆五千億上積みするのです、こういう計算ですね。しかし一般消費税に弾性値なんかつくのでしょうか、皆さん。少なくとも私の考えによれば、租税収入に弾性値を加味して考える、私の乏しい知識から申し上げれば、たとえば個人所得税、相続税、贈与税はこの金額がふえれば累進課税率がきいてくる。だからその場合は総額がふえたのに合わせて累進課税の率がきいてくるから、一・二というものが期待できる、ともかく一・〇以上は期待できる。あるいはまた法人税の場合は名目GNPの伸び以上に企業の収益が上がれば、これまた弾性値一・〇以上のものがきいてくる、こういった場合、私は十分理解できるのです。一般消費税の場合は、前年度増税した分は今年度消費がふえた分だけの増税はできると思います。それは消費がふえるのですから、それに対して一〇%の一般消費税ならふえるでしょう。しかし、それに一・二を掛けるということであるならば、名目GNP以上に消費が伸びなければ一・二などという大それた弾性値は掛けられないはずなんですよ。この差額の金額二兆一千三百億、これはどう考えても私はおかしい、いまのような立論で申し上げると。(「考えなくたっておかしい」と呼ぶ者あり)それは考えなければいかぬわけですけれどもね。  というわけで、これはもう少し、五十九年度の増税は、単純に計算しましても九兆一千一百億以上になるのじゃないか。弾性値一・二を増税分に掛けるなんて、とんでもないことですよ。名目GNP一〇・四を掛けるぐらいならこれはいいと思いますよ。名目GNPの伸び一〇・四を前年度増収分に掛けて計算するというなら納得しますけれども、それに対して一・二の弾性値をお掛けなさるというのはどういう根拠なのか、教えてください。
  96. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 お答えします。  先ほど大蔵大臣からもお答え申し上げましたように、九兆一千一百億という今後のいわば一種の要増税所要額でございますが、この内容につきましては全く想定を置いていないわけでございます。したがいまして、現在直間各税を取り合わせまして長期的に見ますと、一・二という弾性値が、総合いたしまして期待できる。その弾性値をそのまま今後につきましても適用いたしたわけでございます。  なお、今後の、五十五年から以降の税の内容につきましては、経済企画庁の試算におきましても、私が伺っておるところでは、直間比率をほぼ固定しておるというふうに伺っております。
  97. 矢野絢也

    矢野委員 御答弁になってないように思うのですけれどもね。  つまり、一・二の弾性値のきく増税をお考えなさっているということなんですか。それでなければこれは全然計算合わないです。一・二の増税分について、前年度増税分が今年度にふえる、そのふえ方は名目GNP一〇・四掛ける一・二で計算されておることは間違いない。そうすると、弾性値のきく増税を考えていらっしゃるとなると、私の常識では個人所得税、これは弾性値きくでしょう。相続税もきくでしょう。贈与税もきくでしょう。法人税は恐らくききませんぜ。名目GNPの伸び以上に企業収益がふえれば弾性値がきいてきますけれども、恐らくそんな状況じゃないですよ、この想定する経済は。  これはどんな増税を考えているのですか。一般消費税は弾性値一・二きかぬことはお認めなさっておると思いますよ。一・二の弾性値のきく増税とは何ですか、教えてください。ぼくはさっぱりわからないんだ、これは。
  98. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは矢野さん御承知のとおり、経済のそのときどきの動きによって弾性値は大きく変わってくるわけでございまして、間接税といえども、景気が上向き、活発なときには一を十分超すだろうと思うのでございます。それで、先ほども申し上げておりますように、消費税だけでの今後の増税でいくか、あるいはその他の取り合わせを考えるかはこれからの問題でございますけれども、六%台の、ずっと落ちついた経済の姿を考えるときに、この程度の弾性値が出るというのが、企画庁を含めてのわれわれの結論でございましたから、御理解をいただきたいと思います。
  99. 矢野絢也

    矢野委員 私は、法人税とか所得税とか、つまり現在税収になっている部分に一・二を掛けちゃいかぬなんて、そんなことを言ってないのですよ。これから増税する分についてなぜ一・二の弾性値をお掛けなさるんですかということを聞いているのであって、でたらめじゃありませんか、それは。  もう一つ、あわせて申し上げますけれども、本当はこういう財政収支試算をお出しなさる場合には、私は午前中に歳出部門のことでるる申し上げました、たとえば五十四年度予算について言えば、平年度六千億の増税をやっておる、五十四年度については四千三百四十億でしたか。公共料金も上げておる。それだけ国民に負担をふやしておきながら、赤字国債は十五兆も出ているんです。これは少しも財政再建になってないですよ。つまり歳出の洗い直しをしなければ、幾ら増税計画を立ててもこれは取りっ放しになるだけです。取りましたけれども国債は減りません、一般消費税は導入しましたけれども赤字国債は減りません、こういうことになるんです。  ですから、こういうでたらめな数字じゃなしに、たとえばイギリスでやっております、西ドイツでやっております、これは財政当局は来年のこの費目についてはこれだけにします、三年後にはここまでします、削ります、ふやしますということをきちっとつくっているのですよ。社会福祉関係は、あるいは公共事業関係は、人件費関係はというふうに。経企庁のつくったこんなもの大体当たりっこないですよ。大体去年見通しを当初やって、年末にはもうむちゃくちゃな改定をしているではありませんか。一年のことも当たらぬような経済見通し、それを七年後の数字、そんなものではなしに、いまの財政のあり方から見て、歳出はこのようにするのだという政策判断を含めた財政計画、そこまで言わなくてもいいですよ、それに準じたものをお出しなさってこそ、総理がおっしゃっておる一般消費税導入の是非について御議論願いたいという資料が出てくるのですよ。その資料もお出しなさらないで、私がここで短時間の間に数点指摘しましたそういう矛盾が多々ある。しかも、歳出についての何の具体的な計画も示していない。たとえばサンセット的なやり方もするとか、そんなことも書いてない。そんなもので増税計画を議論をせいというのは無理ではありませんか。大蔵大臣、私が要望したような資料を出してください。そうすれば、私はまじめに財政再建の、たとえば増税が必要なのかという議論に応じますよ。それをお出しください。
  100. 金子一平

    金子(一)国務大臣 その点は先ほども申し上げましたように、政府の財政制度審議会でいま御検討いただいて、結論を急いでいただいておる最中でございますが、それにいたしましても、明年度一般消費税の導入をお願いするに当たりましては、ある程度、こういった姿でいきますということを、歳出削減等についての姿をお示しする必要があると思います。  ただ、今度御提示いたしました財政収支試算は、六十年のあるべき姿を考えればこういうかっこうになりますという全体の姿をひとつごらんいただきたいということで、個々の年度について、機械的にはじいておりますから、これは来年はこうか、再来年はこうかというところまで踏み込まれると、答弁がなかなかむずかしいと思うのでございます。
  101. 矢野絢也

    矢野委員 来年どうか、再来年どうかという議論に踏み込まれては困るとおっしゃいますけれども、一般消費税は来年やろうという御計画でしょう。踏み込まざるを得ないじゃありませんか。しかも、五十四年度予算を見れば、増税もする、公共料金も上げる、福祉の伸びは少なくなっております、こんな状況で、しかも赤字国債は一向に減っておらぬ、むちゃくちゃふえておる、これは何遍も言いますけれども。そういう状況を一方に置いて、そして来年、再来年のことに踏み込まれて議論をされてもそんなことは答えられませんと言いながら、増税のことについては踏み込んで議論せい、これはむちゃくちゃではありませんか、総理大臣。その資料をお出しなさい。
  102. 金子一平

    金子(一)国務大臣 一般消費税の導入に当たりましては、歳出削減を含めた見通しを御提示申し上げるつもりでおります。
  103. 矢野絢也

    矢野委員 それはいりお出しいただけるのですか。
  104. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  財政計画と財政収支試算の一番基本的な相違と申しますのは、財政収支試算は大蔵省が試算をいたしたものでございますけれども、財政計画となりますと、政府として閣議の決定なり御了解なりを得てつくるものだと理解いたしております。イギリス、西ドイツ、アメリカ皆そうでございます。そういう意味におきまして、大蔵省だけでの財政再建計画ではなくて、政府としての財政再建計画を求めていかなければならない、これが一番問題だと思います。  それをやります場合に、各国の例を見ますと、今回御提出を申し上げております財政収支試算のような歳入歳出の区分よりも、相当程度詳しく細分いたしまして、しかも各年度ごとに積み上げ計算をやっております。これは率直に申し上げまして、大変むずかしい問題でございます。各国ともやっておりますのは、まず後年度負担、当該年度もしくは翌年度の予算案を前提として、その予算を延ばした場合に後年度どのくらいの負担になるかという後年度負担型からスタートをいたしております。私どもは、何とか五十五年度の予算編成に間に合わせるように、後年度負担型の試算をつくってみたいというふうには考えておりますけれども、まだ五十五年度には必ず財政計画が御提出できるということをお答え申し上げる自信はございません。
  105. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵省よりもこれは政府の問題だということなんですけれども、総理、一般消費税、これは日本の税制度始まって以来の大増税、九兆一千百億をこれから五十九年度までにやろうというのでしょう。それだのにそういうものもお出しなさらないで、総理は本会議やその他で御論議願いたい、御論議願いたい。これは論議できませんよ。お答えください。この予算委員会の開会中にお出しいただけますか。もう少し論理的なものを出してもらわなければだめですよ。これでは増税の議論なんかできやせぬじゃありませんか。
  106. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは一般消費税の御提案を申し上げるのと同時に、大体こういう姿でということの説明だけは十分にさせていただきたいと思います。いま主計局長が申し上げましたように、財政計画ということになりますと、やはりなかなか日数を要しますし、短時間ででっち上げのもので御審議いただくような気持ちは私ども毛頭ございません。必ず御納得いただけるような姿で、法案の審議と同時に並行して進めていただくように持っていっていただきたい、このことをお願い申し上げます。
  107. 矢野絢也

    矢野委員 それではこの財政収支試算は、いま総理がおっしゃっておる来年度の増税の参考資料という意味はございませんと、これは七カ年計画のできている計数に対して便宜上つくり出した資料でございまして、来年の一般消費税を御審議願う資料としての意味は一切ございませんと、こういうことですね。
  108. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大変大事な資料で、私どもは一般消費税を導入いただきたいとお願いしているのは、やはり六十年度の姿はこうなりますから、ぜひひとつ御検討いただきたいということでございまして、細かい点につきましては、まだ消費税の法案も固まってない段階でございますので、それとあわせて御審議いただけるように極力努力してまいりたいと思います。
  109. 矢野絢也

    矢野委員 日銀総裁に承りたいのですが、最近国債価格が連日下落というようなことになっているわけでございます。これは十年ものの長期国債を発行しておられる。しかし市場は短期資金の需給によって、銀行さんも短期資金が要るという場合はその十年ものの国債を売りに出さなければならぬ、短期資金の需給に応じて長期国債を売らなければならぬということになりますから、どうしたって短期資金は市中にたくさんある、短期資金の金利は低下しておるという状況におきながら国債の価格は下落しておる、つまり利回りは上がっておるという、まさにこれは異常現象でございます。つまり十年ものの長期国債は価格下落、利回りは上がる、短期資金、これは金融緩和下において金利が下がっておる、こういう異常現象をどうごらんになりますか。  それとあわせて、いま議論しておりますこれによりますと、また莫大な国債が将来出るのです。五十九年度におきましては、百三十九兆でございましたか、とにかくGNPに対して三三%というような気が遠くなるような国債がこれからまだ、増税をしてなおかつ出るわけです。この国債というのはマネーサプライをものすごくふやしまして悪性インフレにつながると思っておりますが、日銀総裁の御答弁をお願いしたいと思うのです。
  110. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  ことしの一月から上場いたしました六分一厘ものの取引所の市場における価格が、発行条件よりも価格の低落を見ておりますことは御指摘のとおりでございます。ただし、いまの市場の動きにはやや思惑的な動きもございまして、ごく少量の取引値段が下がっているということがございますので、果たして実勢がどこかということはいましばらく見きわめを要するのではないかと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、金融市場の実情に応じて国債の発行量なり発行条件なり満期の種類を決めていただくということが必要なわけでございますので、政府において考えておられますように、満期種類をもう少し多様化していく、そしてできるならば入札制を拡充していただく、それからシ団が引き受けますものにつきましても、やはりその実勢がどこかを見きわめました上で発行条件の適正化を図っていただくということが、この際必要な事項になってきておるのではないかと思うわけでございまして、大蔵当局に対しましてもその辺の実情はよく申し上げて要請もいたしておるところでございます。  なお、試算を前提として巨額に発行される国債の消化が大丈夫かというお尋ねだと思いますが、国債の消化はやはりそのときどきの経済情勢、金融情勢に支配されるところが多いわけでございますので、いまから確たる見通しを申し上げるわけにはいかないのでございますけれども、いま金融が非常に緩和しておるそのさなかにおいても国債発行問題が起こっておるわけでございますので、今後といえどもやはりいろいろな問題が起こってくる場合もあろうかと思います。それにはやはり金融市場の実態に応じて発行量を決め、発行条件を定め、期間を定めるというような弾力化がぜひとも必要な状態になってくるのではないか。国債がいい例でございますが、国債以外におきましても、金融政策の効果を上げますためには金利の弾力化、自由化ということがどうしても必要になってくるわけでございまして、それによって国債の消化も円滑になり、またマネーサプライのコントロールも可能になり、ひいてはインフレーションの再燃も防ぎ得るわけでございますので、私どもといたしましては、そういう面での配慮を十分しながら、国債の消化についても万全を期さなければならない、そう思っておる次第でございます。
  111. 矢野絢也

    矢野委員 いずれにしても莫大な国債を発行して政府としては金を調達しなければならぬ。しかし、その国債が市場で、九十九円五十銭ですか、それが九十五円とか六円とかということになってしまう。これではそれこそお金の調達すらもできない。こうなってまいりますと、総裁、余り価格が下落いたしますと、日銀として何とかこれを維持しなければならぬみたいなことになってくるわけでございまして、いままで以上に買い支えをやってでも国債価格の維持をされようというお気持ちがあるのかどうか、これが一点。  もう一つは、仰せのとおり市中の金融の資金の需給状況に合わせた、市中状況に合わせた国債の発行でなければならぬ。短期資金が潤沢である、あるいは短期資金の金利が安い、そういうときには、やはり十年と言わないで、もっと銘柄を多様化されてやった方がいいのではないか。たとえば、去年一兆円ほど短期債をお出しになったら倍の応募者があったというじゃありませんか。希望者が殺到したというじゃありませんか。そういうようなことをもう少し弾力的に考えなければならぬと思うのですよ。これは日銀総裁、どうですか。  それからもう一つ、公定歩合の変更をお考えなさっておるかどうかもあわせてお答え願いたいと思います。
  112. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  国債の市価が下がりました場合に、それでは日本銀行引き受けでいったらどうかとか、あるいは、引き受けは財政法上禁止されておりますので論外でございますが、そのかわりにオペレーションで買い上げて価格支持的な効果をねらったらどうかとか、とかくそういう議論が行われがちでございますが、これはマネーサプライの増加に直結いたしまして、それこそインフレーションの再燃の火種になるわけでございますので、私どもといたしましては、絶対にそういうことは回避しなければならないと期しております。  もちろん、そのときどきの金融市場の情勢に応じて不足資金を国債の買いオペで供給する、いわゆる金融調節の意味の買いオペは従来も行ってまいっておりますし、今後も必要かと思いますが、それはあくまでも不足資金の調節、もう一つ言葉をかえて申しますと、経済の成長に必要な通貨の供給という限度に厳にとどめるべきでございますので、いま前段でお話がございましたような価格支持的な意味でのオペレーションは絶対に避けなければならないと思っております。  ただ、先ほども申し上げましたが、金融緩和下において短期資金は非常にニードがあるわけでございます。それに反して、金利の底入れ感もございまして長期ものが評判が悪い。そういう事態に際しましては、やはり国債の発行に当たり満期の多様化、短いものを活用する、長いものについても条件の改定は必要でございますけれども、やはり満期の多様化ということをやらなければならぬわけでございまして、昨年から大蔵省でも三年ものを発行しておられるのでございますが、ことしはさらにそれを拡充するという方針のようでございます。私は、ぜひともその辺を実行していただいて、資金の流れの変化に即するような国債発行に努めていただくことを切に希望しておる次第でございます。
  113. 矢野絢也

    矢野委員 公定歩合はいかがでございますか。
  114. 森永貞一郎

    ○森永参考人 金融政策のあり方といたしまして、そのときどきの金融情勢、経済情勢に即しまして、こだわりなく、機動的に弾力的に実行していかなければならないことは当然でございますが、当面はこれ以上緩和を促進するのは必要でもなく、また適当でもないと考えておる次第でございまして、現在程度の緩和基調を維持するというのが私どもの現在の政策のスタンスでございます。  その理由はいろいろございますが、景気も底がたい動きをとり始めたようでございますし、他面物価の面では、物価をめぐる環境が大変厳しくなってきております。さらにまた、マネーサプライも一ころに比べますと少しふえてきております。にわかに大きな急激な変化があるとは思いませんが、やはり注意を要する問題でございますし、また、マネーサプライ以外にも企業の短期保有有価証券が非常にふえておりますしまた、金融機関も貸し出しに積極的な感じを出し始めておりますし、企業の借り入れ、アベーラビリティーが非常にふえておりますので、この辺でやはりこれ以上流動性をふやさないということが必要ではないか。  私どもといたしましては、いずれにいたしましても、物価が上がらないように、インフレーションを再燃させないようにということが施策の根本でございますので、そういう趣旨から今後の経済推移をよく見守って誤りなきを期したいと思っておる次第でございます。
  115. 矢野絢也

    矢野委員 GNPに対する国債の残高は五十二年度で三〇%、アメリカは三〇%を超えておりますけれども日本はほぼそれに接近しつつあるわけです。しかし、アメリカは本格的な国債管理政策というのをとっておるわけです。ところが、確かに昨年は一兆円の短期債をお出しになった。ことしは恐らく二兆七千億程度の短期債でしょう。しかし十二兆三千億はやはり長期債です。こういうやり方では、先ほどから何遍も申し上げておるとおり、国債価格の下落を招くことは間違いないです。  ところが、また財政収支試算に戻ってえらい恐縮ですけれども、この財政収支試算は従来の国債発行の条件どおりでやるという前提でこれまたお出しになっておる。こんなもので百三十九兆円の国債消化ができますか。こういうものをお出しになるときには、国債発行についてはこれだけの大きな発行高になるので、こういう国債管理政策でやっていくのですというものをつけてこそ、財政収支試算の整合性というものが出てくるのですよ。先ほどからあれやこれや言っておりますが、これはもう撤回なさったらどうですか。撤回してください、大蔵大臣。こんな不十分なものはだめですよ。従来と同じでしょう。
  116. 金子一平

    金子(一)国務大臣 公債の発行につきましては、弾力的にそのときどきの市場の実勢に応じた条件を考えていかなければいかぬと思いますので、ことしは御承知のとおり十五兆二千何百億、これはいま話が出ておりましたように中期債を相当増額して、あとの長期債はシンジケート団で引き受けますということで、これは一兆円ぐらいの増加になります。そういうことでやっておりますから、それがだんだんと減少するように持っていこうという努力を重ねておるわけでございまして、全体としての経済の姿、国民所得の中の公債ということで考えておりますので、これは全くの予測でございますけれども、六十年の姿はぜひこういった姿に持っていきたい、こういうことでございます。
  117. 矢野絢也

    矢野委員 先ほどからるる、たとえば地方交付税との絡み、国は取るけれども地方にやらぬ、あるいは福祉はふやさないけれども一般消費税はもうがっぽりいただく、これでは貯蓄は減りませんよ。消費が減りますよ。デフレ効果が出てきますよ。さらにまた増税分の自然増収、弾性値一・二を掛けるのはおかしいじゃないか等々、一つもまともな答えをなさってないのです。そして国債についてもこれだけの莫大な国債が出る、国債管理政策が確立されておらぬ。歳出部門についても、先ほどるるお伺いしてみれば、もうちょっと先になります。一方では来年の増税について御検討願いたい、これはむちゃじゃありませんか、総理。増税の議論をしてくださいという総理のお気持ちはわかりますけれども、こういうようなやり方は行政府の立法府に対する姿勢でしょうか。これは撤回してください。そして少なくとも私が申し上げておる条件、こんなりっぱなイギリスや西ドイツみたいなものをつくれったって、去年から言っておるのにできてないのです。初めからやる気がないんだ。大蔵省、去年からできておるわけではないですよ。もう何十年も前からあるのにいまだにできてない。わかり切ったことができてない。やる気がないのです。こういうりっぱなものをつくれったって、そんなぜいたくなことを日本の政治家が日本政府に頼んでも無理みたいな感じですから、せめて私が先ほど申し上げた程度くらいの資料を出してください、これを撤回して。お約束いただけますか。
  118. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは大蔵省怠慢だというおしかりでございまするけれども、一月二十五日にやっと決まった新経済社会七カ年計画の基本構想に基づいて、七年先の最も望ましい姿に平仄を合わせた財政収支の計算国会審議の手がかりにしていただきたいということで出したわけでございます。操り返して申しますように、社会保障も五十二年の一二・三%から六十年には一四・五にするとかいろいろな工夫をしながら、そのためにはしかし公債はやるし、税はある程度一般消費税で増額しなければいかぬというような姿を出したわけでございまして、御指摘の点につきましてはまた改めて資料をもって説明いたしまするけれども、いまの点につきましては、毎年毎年のは機械的にとりあえずはじき出したことでございますということを操り返して申し上げておるわけでございまして、六十年度の姿がわれわれとして政策の達成したい望ましい姿でございます。そのためにはほっておいたんでは財政がパンクするのですから、何とかわれわれ知恵を出し合ってこの問題を片づけなければいかぬ、こういう気持ちでやっておることを御了承賜りたいと思います。
  119. 矢野絢也

    矢野委員 時間が来ましたのであれですから終わりますけれども、六十年六十年でなしに、私は少なくともここ三年くらいの歳出歳入についての大蔵省の御計画をきちっとお決めなさって、たとえば増税するにしても、これだけこちらの歳出部分が減ってというふうなこと、そしてまた必要なところ、ニーズのあるところにはこういうふうに歳出をふやします、こういう、六十年ではなしに、二年でも三年でもいいです、そういう財政再建に本気で取り組んだ計画をお出しなさらなくちゃだめです。委員長、そういう資料をお出しいただけるように委員長の方で御手配を願いたいと思います。  なお、時間が参りましたが、先ほど伊藤刑事局長お尋ねをした件について御答弁をいただいて私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  120. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 いわゆる米人コンサルタントと日商岩井との間の密約といわれますもの、これがいつまで存続したか、こういう点につきましては、犯罪の存否と直接関連はいたしませんとしても、背景事情としてきわめて大きな意味があると思うのでございます。そういう意味で検察当局も重大な関心を払っておるように聞いております。その点に関しまして、公表資料を見ましても、SECとグラマン社の共通の認識といたしまして、「当該コンサルタントがその後その販売代理店との関係は終了した旨グラマン社に報告したが、一九七八年同社はそのコンサルタントが引き続き同販売代理店との関係を維持していることを確認した。そこで、同社はそのコンサルタントとの契約を破棄した。」こう明記しております。こういうふうに明記しております以上は、SECの手持ち資料の中にこれを裏づける十分な資料があるものとも考えられるわけでございまして、今後検察当局といたしましては、やがて入手することになりますSECの非公開資料等をも参考にしながら鋭意その辺の詰めをするものと考えております。
  121. 竹下登

    竹下委員長 近江君。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 ただいま矢野委員に対しまして委員長から取り計らうというお話がございましたが、もう一つはっきりしないわけでございます。  矢野委員は、この整合性のないいわゆる財政収支試算につきまして撤回をせよ、そして改めて出し直しをしろということを強く迫っております。政府の答弁は何かあいまいで、資料等を後でお出しするとか、その点が非常に不明確であります。したがいまして、もう一度、撤回を要求しておるわけでございますから、撤回をするのかしないのか、さらに緊急にその整合性のあるものを出されるのか出されないのか、ひとつ明確にしていただきたい。このことを要望いたします。いかがですか。
  123. 金子一平

    金子(一)国務大臣 撤回をしろというお話でございますが、これは一つの政策目標を持っている財政収支試算でございますので、政府考えている姿としてこれは意味はあります。そういう点で今後も国会審議の手がかりにしていただきたいと存じます。  それから、矢野さんからお話のございましたいろいろな問題につきましては、今後も必要に応じて補足説明なりあるいは資料をもってお答えしたい、かように存じます。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 矢野委員は何回も申し上げておりますように、言葉悪く言えば、こういうでたらめな収支試算表では今後の審議はできない、そういうものをそのまま放置しておる、こういう態度はわれわれとしては承認できません。この点は私は強く撤回を求めたいと思います。再提出をしていただきたいと思います、もっと整合性のあるものを。これははっきりとした答弁が出ぬ限りは、この矢野委員の質疑を終わるわけにはいかないと思います。直ちに理事会をやっていただきたいと思います。
  125. 竹下登

    竹下委員長 ただいまの矢野君の発言に関連する近江君の発言につきましては、前段の問題は大蔵大臣のお答えでそれなりの趣旨は委員長は理解したと思います。が、新たなる資料等の問題につきましては、後刻理事会において協議をいたすことといたしたいと思います。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 後刻理事会にそれの検討を諮りますが、いま直ちに一度各党の理事を招集していただきまして、はっきりとした確認をしていただきたいと思うのです。そうしなければ締めくくりはできないと思います。
  127. 矢野絢也

    矢野委員 委員長、ちょっと申し上げます。  いまの大臣のお話で、六十年を想定してこういうものをつくったんだとおっしゃっているわけでありますが、このこと自体、この表自体が整合性がとれておらぬということを私は数点にわたって指摘をしておるわけです。それとは別に増税を議論するには、この整合性はとれてないとれているは別といたしまして、これじゃなしに、財政のここ二、三年ぐらいの、こういう政策的意図を持って削るべきところは削り、ふやすべきところはふやす、そういうものを出せ、それは出すとおっしゃった。しかし、この表自体が整合性がとれておらぬ。これはこれで百点の取れるものだというようなお立場をとられる以上は、私は納得できないということを先ほどから何遍も言っているわけなんです。そのことを御理解いただいて、いまの委員長の御発言はお取り消しをいただきたいと思います。
  128. 竹下登

    竹下委員長 それでは委員長から発言をいたします。  ただいまの矢野委員の質問の趣旨に沿う資料提出につきましては、早急に理事会を開き、協議をいたします。
  129. 矢野絢也

    矢野委員 ありがとうございました。
  130. 竹下登

    竹下委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  131. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外の問題につきまして質問をいたします。  まず第一に、ただいま議論になっております航空機導入につきまして、民社党の態度を申し上げてみます。政府が購入せんとしている早期警戒機E2Cの予算化に対して、私ども民社党は党の基本的態度を表明いたします。  相次ぐ航空機の輸入をめぐって、さきにはロッキード、そして今回はダグラスグラマン機がアメリカに端を発して不正購入の疑いが持たれております。これらの不正らしきものが相手国アメリカよりの情報に基づいてのみその端緒を得ることはきわめて遺憾であります。しかし、それらの問題は、司法の解明と並行して国会で十分に審議すべきは当然であります。よって、わが民社党は十分に審議を尽くすこと、特に各党が合意された集中審議の結果を得るまでは、国民が納得されるよう事態の解明に努め、その結果なお疑惑が解かれない場合には、その部分の予算の凍結あるいは修正などの態度を決めたいと思います。詳細は集中審議にゆだねることにして、私は基本的な問題だけ二、三の点について御質問いたします。  まず商社活動でありますが、巨額な内外の取引に伴って起こる政財界の構造汚職に必ずと言ってよいほどわが国の代表商社が大きな役割りを果たすのはどういうことでしょうか。総合商社の中には、かつて土地や生活物資の買い占めで厳しい社会的批判を浴びたものがあるではありませんか。日本貿易会は昭和四十八年、総合商社行動基準をまとめました。その活動に際しては「常に組織の末端に至るまで、社会的使命の自覚を浸透させ、社会的責任を基盤に自己を管理規制する。」とお互いに戒め合ったのであります。「その活動に際して、法的規制はもちろん、国際信義や商業道徳を尊重」すると彼らは決めておるのであります。にもかかわらず、一向にそれがまとまらずに、またしても今回このような疑惑を持たれるような行動が発覚をしてまいりました。商社が表向き申し合わせたその基準と現実とのきわめて相違の大きいことに驚いております。この点総理は御見解をどのようにお持ちでしょうか、お伺いしたいと思います。
  132. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 総合商社という企業形態が犯罪の温床にいままでよくなったではないかという御指摘でございます。これについてどのように対応していくのが政治の正しい対応の仕方かという御質問でございます。  総合商社という日本に特有の一つ大きな企業形態でございますが、それと犯罪との関係が直接結びつくとは私は考えておりません。生産を業とする企業であれ流通を業とする企業であれ、それぞれその企業体の役職員の問題でございまして、企業形態そのものの問題ではないと思うのであります。しかしながら、各企業体の中におきまして、それぞれモラルの基準をつくりまして対応していただくのが一番適切な対応の仕方だと思うのでございます。政府の方で有権的にこれを規制してまいるというようなことはいかがかと考えておるわけでございます。ただ、いろいろな検討の結果、どうしても立法措置が必要であるというようなものにつきましては、この前のロッキード事件の後の処理において見られますように、検討の上、法改正を求めておるものもありまするし、いま検討中のものもあると聞いておりまするけれども、原則として事態に対する対応は、各企業体みずからの自主的な規制にまつのが王道であると考えます。
  133. 塚本三郎

    ○塚本委員 私どもも、法的規制や政府がその中に介入すると申し上げるつもりはありません。しかしながら、またしてもという感じがしないではございませんので、特に大きな商社の中には、必ずと言っていいほど、かつて政府役員でここに並んでおった諸君がトップクラスに例外なく連なっております。この点を十分御留意されて、いわゆる国民経済に役立つように指導していただくことを、まず御注文申し上げておきます。  仮にも、企業防衛の立場から今回のごとく不正な事態を隠したり見逃すようなことがあれば、経営者の責任は重大であります。それとともに、いま私どもが明らかにしてほしいというのは、日本政府高官に渡されるかもしれぬ不正の金について、商社と政治家との関係が取りざたされているということでございます。商社活動の中のことでありまするならば、時にリベートが何だというふうな声も、われわれは介入する意思はございませんが、それが実は裏をくぐって政府及び高官に渡されるかもしれない、あるいは一部が渡されたかもしれないというような声があることが、本委員会における重要な問題だと言わなければなりません。政治家は、法的にもその責めを問われることはもちろん、道義的責任をも明らかにしなければならないのであります。よって、この際、疑惑を持たれている人に対して、自民党の総裁として進んで事態を明らかにするの決意を私は表明していただきたいと思います。  多く名前が出ておりまするうわさの人たちは、ことごとく政府高官名は、自民党の党籍をお持ちの方でございます。私たち野党が寄ってたかってつっつき回って、そうして商社を通じてその人名を明らかにせよと言うことは、同じ政治家として恥ずかしいことであります。総理は決意を明らかにせられましたが、すべてこれいわゆる報道の中で明らかにされた自民党籍をお持ちの方でありまするので、自主的に総裁としての立場から御解明をなさることがまず一番大切ではなかろうか。そうして、本委員会でこういうことをつつく時間を実は省いていただくのが国民の期待でもないかと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 事件そのものは、捜査が始まったばかりでございまして、政府のいまの立場は、たびたび申し上げておりますように、事実の解明をいたしまして疑惑を解いていくということであろうと思うのでございます。そのためには、当面捜査当局の活動を援助し、またそれの促進を期待しておるということだと思います。  しかし、これが捜査が進みまして、事案が明らかになってまいりまして、刑事責任を問うような者が仮にあったとすれば、それはそれとして措置がとられることと思うのでございます。そういたしますと、残った問題は、そういう段階になりまして道義的、政治的な問題が残ると思うのでございまして、その問題についての対応につきましては、党としても考慮しなければならぬ問題が出るかもしれませんけれども、いまの段階におきましてどうするということにつきましては、まだ時期尚早であろうと考えております。
  135. 塚本三郎

    ○塚本委員 会社側と、うわさの当事者が真実を語ってさえいただければ事件は解明されますし、また潔白であればこんな幸せなことはないのであります。  大平総理、たとえばわが党の国会議員さんの中に、もしうわさされたとするならば、と私は一党の幹部として振り返るのであります。委員長と私どもがその議員さんと相談をして、本当のことを語ってちょうだい、そうしていわゆる報道陣なり国民の前に疑惑をもし持たれたり名前が報道されたとするならば、進んでそれを解明するのがわが党の立場だと申し上げておきます。  しかし、かつてのロッキード事件におきましても、あらゆる部面から報道陣からつつき、そうして野党の諸君がここでもって逃げられないところに追い詰められなければ、実は名前が出てこない。われわれは、国政よりもアメリカへ飛んでいってみたり、新聞社の裏から情報をもらうことに時間を費やして、そのことの方が大切なように国民は受けとってしまわれて、国会何してるんだ、こういう気分さえも与えてはまずいと思うのです。ですから、自民党さんだけが幸か不幸か政権を担当しておいでになったがために、うわさされることもあるでしょう。あるいはそれとの関係においてついついということもなきにしもあらず。であるとするならば、総裁として、先ほど私が提起いたしましたように、ひとり法に触れる者だけではなく、道義的責任の立場から、これをまずみずからの手ではっきりとなさって、そして、もしうわさだけであるならば、報道陣などにでかでかと名前を出されるようなことは御本人にとってもきわめて御迷惑だと申し上げなければなりません。それは同僚として調査をおやりになるべきではございませんか。それを、いわゆる法的な法的なと言って捜査に任せる、捜査に任せるのは犯罪の立場であります。われらはやはり国民の代表として、まずは犯罪に至らなくても道義的責任としてそれを行うことが、国会議員の国民に対する責任であるとともに、公党としての総裁の責任であろうと信じております。どうぞ総裁、その立場から、国会では総理大臣としては私はそのつもりだけれども、党のことは議会に任してください、こんな二枚分けの仕方は私はまずいと思うのです。自民党さんとして友情の立場からもそうなさるべきだと御提言申し上げますが、いかがでしょう。
  136. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 いま申し上げましたように、事件に対する調査が、捜査が始まったばかりでございまして、どういう事件なのかということも漠としてまだわからぬわけでございます。それぞれの立場で捜査当局を初め関係当局が解明していくことでございまして、その解明に応じてそれぞれの措置がとられていくことと思うのでございます。そこで問題が残るのは道義的、政治的責任というようなものが後で残るかもしれない、そういうものがなければ幸いでございますが。そういった場合につきましてどうするかは、これは事案がもっとはっきりしないとまだ何とも言えないわけでございます。いまの段階におきまして、いま塚本さんがおっしゃるようなことをやるということは、政党としても私は適当でないと思います。
  137. 塚本三郎

    ○塚本委員 自民党という政党としては適当でないということでしょうか。私ども民社党ならば、新聞でもしうわさが立ったならば、それは委員長が中心になられて、そしてその議員さんを呼んで、こういうふうだ、こうだということをきちっと、疑惑を持たれたら君のためにもまずい、わが党のためにもよろしくない、こういう立場で積極的に話し合いして、そうして潔白なら潔白、きちっとそういう点は外に表明するつもりでございます。自民党さんだけはそれはまずいんですか。政党としてまずいということは私はないと思うのです。そうなさることが国民の政治に対する信頼を回復することだから、まず御自分の手で、そうして自分の党の議員さんであり、しかも逃げておるような人をつかまえてくるのじゃなくして、れっきとした党の幹部の方もおいでになるし、しかもそれが新聞で名前まで出てしまっておるということになるならば、進んでそれをおやりになることの方が、これは自民党さんだけではなく、ひいてはわれら国会議員の名誉のためにも必要だと思います。重ねて御要望申し上げます。
  138. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 民主主義というのは個人の人格を尊重せなければならないわけでございまして、政党としてまずいとかなんとかいうのではなくて、民主主義という政治の体制の中で、いまおっしゃったようなことはやるべきでないと思います。
  139. 塚本三郎

    ○塚本委員 総理は取り違えておいでになるのですよ。私は、この場へ来て並べて、つついて、いわゆる白状させようと申し上げておるのではないのですよ。先輩とし大幹部として、党員の中で、議員さんの中できちっと話し合って、御本人の意見を聞いてこうだとおっしゃればいいわけでございます。そして後日それがうそであるならば、それは責任をとっていただけるでしょうから。全然それをなさらずにおるものだから、おかしいじゃないかおかしいじゃないかと言って、この委員会の半分は捜査捕り物陣のような形に変わってしまうじゃございませんか。だから先に、この舞台じゃなくて──個人の人権を申し上げている。私どもそんなことをここの場でやってくださいと申し上げるのじゃないですよ。自民党の中できちっと秘密でおやりになって、その結果だけ御報告なさったら、私たちはそれを、捜査が進むまでじっとお待ち申し上げておって結構だと思うのでございますよ。そういうふうになさるのがいわゆる世間一般の、あるいは私たち民社党の立場から考えても正しい行き方だ。あるいはそれはうそを言っておいでになるかもしれない。それはしようがございません。司直の手でいわゆる裁かれたとぎに違っておったならば、責任をおとりいただけば結構なことでございますから、進んでそういうことをなさることが必要だと思って申し上げたわけでございます。ところがそれをいま総理は、民主主義と個人の人権の尊重だ。何もリンチにかけて白状させるということを申し上げておるつもりもありません。総理が国会におきましておっしゃったことは、捜査や国会審議を妨害や遅延をしないという消極的な態度でおっしゃったにすぎないのでしょうか。疑惑の解明をするために積極的に誠心誠意とお答えをなさったんだが、大平内閣総理大臣は、誠心誠意ということは妨害しないことであり、おくらせないというだけのことでしょうか。もう一度お答えいただきたいと思います。
  140. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 積極的に解明努力せねばなりませんし、その解明をやる当局その他に対しましては積極的に協力をしなければならぬと思います。その問題といまのあなたの言われる問題とは全然性質が違うわけでございまして、あなたの言われる御意見として承っておきますけれども、私はそういうことはすべきでないと思います。
  141. 塚本三郎

    ○塚本委員 自民党という政党はそういう政党だということならば、私どもはいたし方ないと思っております。他党の先生方に介入するつもりはございません。しかし総理、いまそういう御意思であるとするならば、今日議会運営の理事会においても問題になっております国会決議の案文づくりの中でも、やはり自民党さん逃げのような態度で固執しておいでになるのです。内閣総理大臣としてしておいでになるわけじゃございませんけれども、その案文の中で、いま自民党さんからおつくりいただいたまだ草稿の途中のようでございますが、ダグラスグラマン問題に関する一切の資料の提供について、という文章の中で、政府高官名を含む一切の資料の提供、こういうところで資料の提供をしてほしいと野党が要求をし、アメリカにもそのことを依頼しようといたしております。そのときに、一切の資料という中に政府高官名を含むと、こういう名前をはっきりと入れたものをいただくようにという決議の案文を野党の各党が御要望申し上げておりますけれども、それは適当ではないと言って、自民党の理事さんが今日ただいまの段階ではお受け入れをいただけないという段階になっております。そうすると、やっぱり逃げるのかと、こうなってしまうのですよ。これは、ロッキードの決議の中でもきちっと「政府高官名を含む」と出ているのです。今回に限って、総理があんなにごりっぱに誠心誠意とおっしゃったのにかかわらず、その国会における決議文の案文の中へわれら野党が、高官名を含むという人名の問題を依頼したら、やはりまずい、こういうふうにおっしゃるのです。その点はやはり総理大臣であるとともに自民党総裁として、潔白だろうと思う、だから名前もあるなら出してちょうだいというふうに、やはり総裁として御指導なさって国会で御答弁なさる、誠心誠意という実を上げるためにここでお約束をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  142. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 資料の問題は、公開の資料はすでに提供申し上げておるわけでございます。非公開のものにつきまして、アメリカとの間の司法共助取り決めによって入手するもの、これには塚本さんも御承知のように、今度入手する場合の条件がございまして、その条件を守らなければいかぬと考えておるわけでございます。その他の資料につきましては、政府としては法令の許す範囲で国会の国政調査権に協力するという立場でございます。これは政府立場でございます。  それで、自民党の立場についてのお尋ねでございますが、自民党はいま予算委員会の理事会の場におきまして各党と協議中と心得ておりまして、まだ結論が出たとは聞いておりませんし、私に対しまして、どうしようかという御相談もまだ受けていない、これは一つのプロセスだと思いますので、その途中におきまして私がかれこれ申し上げるのはいかがかと思います。
  143. 塚本三郎

    ○塚本委員 予算委員会ではなくして、議会運営委員会の理事会でいま案文の詰めを行っておる最中でございます。したがいまして、この意向をぜひ総裁として反映していただきまして、かつてロッキードのときにも「政府高官名を含む」というふうな文書にしてアメリカにお願いをいたしました経緯がありますから、その点を含んでいただきまして、そのように御指導いただくことを強く希望申し上げておきます。  そこで、今回予算案に計上されているE2Cは、五十七年に二機、五十八年に二機という計四機がまず予算化をされておる、こういうことでありますが、先日来の当委員会におきまして、たった四機ばかりで防衛なんかどうなるものでもないじゃないか、こんな意見がございました。一ポイントとして最低限五機必要なんだ、日本列島をおおむねカバーできるとするならば最低限二十機だというふうな議論もなされて、防衛庁長官もその方向はお認めのようでございます。しからば、四機ばかりを、しかも五十七年に二機、五十八年に二機導入するためになぜこんなにお急ぎになったのか。防衛庁長官、ここで半年ほどいわゆるおくらして、疑惑を解明せよという野党の意見に対してどう御説明なさいますか。
  144. 山下元利

    山下国務大臣 この早期警戒機は、理想的には二十機以上ございますれば、これはその機能によりまして十分なことができると思います。ただ、現時点におきまして申し上げますと、この問題につきましては、五十一年の十月の「防衛計画の大綱」におきましていろいろ別表がございますが、そこに警戒飛行部隊一個飛行隊というのをすでに掲げておりますが、まだその欄だけが空白なのでございます。いま「防衛計画の大綱」につきましては、大体それはおさまっておりますけれども、その警戒飛行部隊が欠落しておる。これはすなわち防衛上一つの欠陥でございます。そして私どもは、この欠陥がはっきりいたしております以上は、一日も早くこれに対処せねばならぬと考えているわけでございます。もとより防衛というのは一朝一夕に成り立つものではございませんで、着実に積み上げていかねばならないのであります。したがいまして、この昭和五十四年度予算案におきまして四機をお願いいたしておりますゆえんのものは、もちろん二十機をお願いできれば一番よろしいのでございますけれども、しかし四機をもちましても一個哨戒点というもの、これは達成できる。そういたしますと、それをどの地点に配備するかということはまだこれからの問題でございますけれども、これは配置されましたところにおきましては十分低空飛行で入ってくることは抑止できる。その意味におきまして、防衛上の欠陥を埋めることができるわけでございます。私どもはもちろん四機で十分と思いませんので、引き続きまた国防会議の議を経てお願いしたいと思っておりますけれども、少なくともいまの「防衛計画の大綱」に示されております線を一日も早く成就するためには、どうしても本年の予算で計上していただきたい。  そしてまたこのE2Cの調達は、アメリカ政府から調達するものでございます。したがいまして、四機で三百四十三億でございますけれども昭和五十四年度の予算では十一億五千万円の前金を払うことになっております。なぜ前金を払うかと申しますと、アメリカ政府との契約でございますので、武器管理法でございますか、その法律によりましてどうしても前金を払わなければならない。そして、実はこの飛行機はなかなかむずかしい飛行機でございまして、この会社でもなかなか多くつくれないそうでございます。しかも日にちが大体三年近くかかるわけでございます。したがいまして、それは三年近くかかる飛行機でございます。しかもパイロットも養成しなければなりませんので、五十四年にお願いいたしましても、五十七年にようやく二機入ってくるという形であります。  そうして、いま最後に御指摘の点につきまして申し上げますと、アメリカ政府会社の方へこの飛行機を調達しますにつきましては、本年の十月ごろにはそれを進めていかなければならない。ところが、政府がこれを発注するにつきましては、アメリカの法律によりまして国会の承認手続が要るわけでございます。国会の承認手続が少なくとも二カ月程度要するといたしますならば、それに間に合うような形において私どもとしては契約を進めていかなければならないということがございます。そうしたことを勘案いたしますならば、今度の国会においてこのE2Cの導入については大変御議論いただいておりますけれども、幸いにして御理解が得られますものであるならば、どうしてもそれに間に合うようにするためには、凍結というようなことがありましては、本年あるいは本年に引き続きましてこの飛行機の調達をすることはむずかしいというふうに考えておるわけでございます。  以上につきましてどうぞ御理解を賜りまして、よろしくお願いしたいと思います。
  145. 塚本三郎

    ○塚本委員 長官、ちょっとそこにおってちょうだい。  私ども民社党の立場から言いますと、国防を決しておろそかにする意思はありません。だから買い方が悪いとするならば、買い方の問題。しかし、防衛上これがぜひとも必要だ、しかもその早期警戒の点が欠落しておると長官ははっきりおっしゃった。その欠落しておるのにかかわらず、その二機と二機、しかもいまようやく五十四年に入ったばかりですよ。それで五十七年に二機、五十八年に二機で、二十機が大体をカバーするというのに、国防というのはそんなにいいかげんなものであるかという疑問を私たちは持つのですよ。長官よろしいか。いや、あればあるにこしたことはないけれども、なくたって差し支えないよ、こういう問題ならばこれはまた別でございますが、それは欠落しておるということであって、二十機だと、もう野党の見識ある方々までその意見が出てきておるのです。そのときに、三年先にやっと二機、こうなのでございます。国民はこの欠落しておることに対して大変心配しておる。もし二機ないし四機はできたとしても、あと十六機は何で穴を埋めるおつもりなのか、こういう疑問が国民にわいてまいりますが、どうですか。
  146. 山下元利

    山下国務大臣 実は二十機というのは、そういうことがございましたので申しましたのでございますが、ただいま冒頭に申しましたように、今回のこの調達計画は、五十一年十月に決められております「防衛計画の大綱」によりまして、警戒飛行部隊一個飛行隊ということの計画によりまして進めておるわけでございます。そのときのことにつきましては、大体二個哨戒点あればいいかという考えでございます。二個哨戒点となっております。一個哨戒点については四機が必要なのでございます。したがいまして、いずれその次の四機につきましては、改めてお願いをいたすつもりでございますけれども、この四機というものは一個哨戒点にどうしても必要なものでございまして、これを五十四年にお願いいたすわけでございます。
  147. 原徹

    ○原政府委員 先ほど二十機のうちの四機というお話でございましたが、私たち例の「防衛計画の大綱」、私たちのいまやろうといたしていることは、例の限定的小規模の侵略に対処する、そういうことでございます。でありますから、本格的な侵攻に対処する必要があるということになりますと二十機ということでございますけれども、いまは「防衛計画の大綱」で限定的小規模の侵略に対処する、そのために必要な哨戒ポイントは二個ポイントであろうと思っております。ですから……
  148. 塚本三郎

    ○塚本委員 時間がなくなってくるからもういいよ。  長官、二ポイントで四機ずつで八機だとおっしゃるならば、あとの四機はいつ導入する計画ですか。
  149. 山下元利

    山下国務大臣 次の早い機会に、国防会議の議を経てお願いいたしたいと思っております。実は、これはやはりこの飛行機自身の生産に大変時間がかかりますのと、それからいろいろまた国の財政事情等もございますので、本年につきましては一個哨戒点をお認め願って、原案でございますが、これを国会で御審議いただいておるわけでございますが、さらに私は一個哨戒点、これを次の機会にまたお願いいたしたいと思っております。
  150. 塚本三郎

    ○塚本委員 私ども素人から判断いたしますると、二つが最小限だとおっしゃるならば、その二つをもう少しじっくりと計画を練っていただきまして、それで一年か二年おくれてもいいから八機をちょうだい、こういうふうにした方が合理的じゃありませんか。いわゆる半分でとりあえず練習に使ってみるとおっしゃるならば別ですよ。二ポイントでもって最小限とおっしゃるならば、最小限の半分で、ではあとの防衛はどうするのだというのだったら、こんなところで半年か一年間ぐらいのことでがたがたとなさって、しかも汚れた飛行機を、いまここでもったいないという声も出ましたが、私ども政治家として気分が悪いのです。お聞きいただく国民の立場から考えて、一年きちっとするまで予算を削除してお待ちいたします、そのかわり来年八機をきちっとしてお願いしまするから、ひとつ一緒にやってちょうだい、この方がわれわれ野党の立場から申し上げても、これはきちっとしておる正論だと思いますが、これは長官よりも総理御回答いただいたらどうでしょうか。
  151. 山下元利

    山下国務大臣 お言葉を返すようでございますが、汚れた飛行機というふうに仰せでございますけれども、その点につきましては今後御解明願うことにいたしたいと思っておりますが、私は、一個哨戒点はどうしても早期に必要である。そしてそれはなぜかといいますと、この飛行機は発注してすぐにできないのでございます。一年間の生産能力が非常に少ないものでございまして、ようやく今年十一億五千万円の前金を払ってアメリカ政府契約して、そして工事が始まりまして、ようやく五十七年に二機入ってまいるわけでございます。したがいまして、もちろん疑惑は疑惑でございますから御解明願いますけれども、五十一年の秋低空で侵入してきた飛行機があった、これは国の防衛上欠落があるということははっきりいたしております。私どもは欠陥があるということをこれほどはっきりと国民の皆様に申し上げましたときに、それでは一年待ってよろしゅうございますということはとても言えないのであります。防衛というものは一朝一夕にしてできませんので、ぜひとも本年原案に盛られております一個哨戒点に必要な四機の導入について御審議を賜りたいと思っておる次第でございます。
  152. 塚本三郎

    ○塚本委員 私ども民社党は、重ねて申し上げますが、防衛にその担当責任者が必要だとおっしゃるものを拒否するだけの資料を持っておりませんし、国の安全は必要だという立場でこのことを申し上げております。だから、しからばいま申し上げたように、私たちは四機のものを八機でもしてあげようじゃないか、それは国民に対する私たちの政治の責任だと思っております。そのかわり、いわゆる疑惑を持たれておる間だけはストップしておいていただいて、きれいになったならば、必ずおくれた分だけは補わさせていただきましょう、こういう決意でありますから、この際、私はいま結論を出すことは避けさせていただきますること、冒頭申し上げたとおりであります。真偽が国民の前に解明されなかったときは、潔くその点は、日本の防衛計画は防衛庁の計画から狂わせることのないようにさせていただくことをお約束いたしますので、ぜひひとつ予算に対してちゅうちょなくあるいはこだわることなく、疑惑解明ができなかったときは潔い態度をとっていただくことを希望申し上げます。総理、その点はいかがでしょうか。
  153. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 民社党の立場として承っておきます。
  154. 塚本三郎

    ○塚本委員 問題を次に移します。  今国会は、私ども民社党の立場では、雇用問題の国会と銘を打って取り組んでまいっております。政府は赤字国債を増発されて、そうして公共事業に大変な御努力をいただきました。にもかかわらず、雇用不安は徐々に増大していくという残念な結果を招いております。かつて、高度成長、所得倍増、設備増強の政府の音頭につられて、各企業は先を争って大量生産の波に乗ってまいりました。しかし、石油ショックを契機に安定成長へと政府は急カーブを切りました。それは減速経済となり、減量経営という名の人減らしが続いております。とりわけ、中高年齢層の失業は再雇用をきわめて困難にしております。今国会雇用国会というべき重大な使命をもって再開されたものと、私ども民社党は受けとめております。政府雇用不安の容易ならざる事態を直視され、中高年齢雇用開発給付金の制度を新たに創設されましたことは、一歩前進だと評価いたします。  そこで、この際私どもは、民間産業に働く労働組合とともに、直面している失業の危険を避け、新たなる雇用をつくり出すために真剣な討議が重ねられました。ここに私たち民社党は雇用創出機構の設置を提案いたします。これはさきにわが党佐々木委員長が本会議においても御提案を申し上げたのでありますが、総理はみずからがっくり出された雇用開発給付金で事足れりというような御答弁がありましたけれども、いまや雇用創出機構なるものは、きのうのニュースによりますると、ひとりわが民社党の仲間でありまする同盟だけではなく、総評さんを含めて労働四団体が、この同盟の考え方に賛成していこうではないかということが報道されております。さらに、経団連もまた、これからの失業問題を解決する道はこの方法以外にはない、こういうふうな意向を打ち出しております。もはや民間産業におきましては、ことごとく労使間におきまして双方からこの声がわき上がってきたことは大いなる見識だと思います。総理がお考えいただきました一歩前進の開発給付金からさらに前進をしていただいて、おくれない先にこの機構について真剣に取り組んでいただきたいと御提案申し上げます。いかがでしょうか。
  155. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 政府の打ち出しました中高年齢者の雇用開発給付金につきまして、御評価をいただきましたことをまずもって感謝をいたします。  それで、私ども考えておりますのは、この緊急対策を打ち出したから、それによって雇用問題、特に中高年齢層の問題が解決するなどとは考えておりません、労働省のみならず政府一体となって雇用の創出に当たらなければならぬ。しかし、政府だけではいけない。やはりこの際は、民間まで含めまして各界各層の方々の御意見を承る。特に労働界からそのような御意見を私どもも承っておりまして、その趣旨におきましては全く賛成でございます。ただ、いわゆる雇用創出機構という機構の問題になりますと、機構をつくればそれによって解決するという問題じゃない。どういうことをするのか、どういうようなことをすればうまくいくのかという内容、実体がはっきりしなければならない。そういう観点から、大変参考になりますので、それらを今後検討しながら御趣旨を生かしていきたい。当面の問題といたしましては、政府といたしまして雇用問題政策会議、これを提案をいたしまして、総理大臣を中心として各界各層の方々の御意見を集約して善処してまいりたい、こういうことでございます。
  156. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、もう政策会議というところから一歩踏み出していかなければいけない段階になってきているということを私は申し上げるのです。なぜこういうことに踏み切ったのか。政府努力している公共投資そのものが、もはや雇用拡大への波及効果が限界に来ておるということが第一であります。もうたくさん借金なさっても雇用が余り拡大していかないというような状態になっておることは、こんな膨大な、三七%の借金、ことしは四〇%近い借金、国債を発行して公共事業に投資をなさったけれども、なおかつ低落していきつつあるという雇用の実態でございます。だから、公共事業への過大な依存は財政の硬直化現象をますます助長させてきたことは、先ほどから前委員指摘のとおりであります。雇用拡大への展望を、逆に借金だからもう何もすることできないよという形に、むしろ公共投資というものは雇用拡大の展望を失わせてしまうような結果になってしまいました。この見通しが大臣、大事なんです。  もちろん私ども民社党は、公共事業を含む財政運営を通ずる需要の拡大が多くの分野で、今日まで雇用拡大をするという伝統的な経済政策の重要性が失われておるわけじゃないのです。だから、公共投資はだめだと申し上げるつもりはございません。しかし、それはもはや限界が来て、特にこれ以上借金をしてまで公共投資をするということでは、これはもはや政府と国家の能力の限界を超えたという認識に立つのでございます。したがって、こういう観点に立ったとき、従来の政策の延長のみをもってしては完全雇用は期しがたいという見通しに立って、雇用創出の意義を力説しておるわけでございます。おわかりいただけたと思います。  民社党が同盟と一緒になって主張いたしまする雇用創出とはこういうことなんです。新たに公共事業をするというのじゃないのです。潜在している需要を掘り起こし、成長性のある、活力ある事業を主としていこうとするところにあります。本当は、もっと国民の中ではこういうこともやるべきだ、こういうこともやるべきだ、たとえば公害に対する問題にいたしましても、あるいは福祉の問題にいたしましても、あるいはまた地域における教育問題にいたしましても、本当は大都会と同じように需要があるのですけれども、地域によって、あるいはいわゆる規模のメリット、小さいがために採算が合わないというような、国家、国民の立場からはやってほしいことがたくさんあります。にもかかわらず、いわゆる採算として企業は成り立たない、こういうものがたくさんあるのです。そういう潜在的な需要を掘り起こすことに中心が置かれておる。それはようございますか。こういう考え方に立っておる。これはすばらしい見識だというふうに評価していただきたい。不況が深刻化し、失業が多発している地域において積極的に需要を開拓し、中高年齢の職域を創出する、そういう機構を、特にそこへは中高年齢層を少なくとも七〇%以上は吸収することを前提にしてやったらどうであろうか。大都市圏と異なって、不況地域は需要の層が薄いのです。だから、やりたくても採算に合わないというときに、まとまった規模の事業家が、困難な面もあるけれども、それを国や県とあるいは市が一緒になって開拓する事業によって、ここにいわゆる国民の需要を拡大させ、そしてまた潜在の失業者をここに吸収させることによって、失業問題と中高年齢層に対する問題の解決になると私たちは提起しておるわけでございます。  こういうことは、政府が行う第二失業対策事業じゃない。民間がある程度、政府や地方自治体がやろうとするときに、そういう公共団体に支援をするならば、しばらくの間これを応援していけば大体自立できるという。やはり失対であると、永続的にいつまでも長くかかるというとしかられますけれども、いわゆる少しの時間さえ勤めればただで上げるよりいいやと、こんなことで非能率を慢性化させるのではなくして、企業が一定の期間だけ政府に協力していただければ──たとえば賃金に対して二分の一だけを今度のいわゆる中高年齢層の雇用開発でも出しておいでになる。これを民間ベースの中に送り込んで、そうしていわゆる一年ないし一年半という政府の構想ではなく、それから先少なくとも五年間くらいは特にそういう規模とお客様の少ない、いわゆる採算に合わない地域でありますから、こういうことをお考えになってみたらどうであろうか、こういう考え方なんでございます。したがって、積極的にせっかく今度出していただきました開発給付金、これも生かして、そして今度の創出機構の中で政府も真剣に、労組と経営者と政府と、政労使が一体となってこれと取り組んでいただいて、そうして民間産業に対する完全雇用を目指しての危機を乗り切るための努力をしてほしい、こういうことでございます。これに労働大臣は大体おわかりのようですが、総理、ちょっとお答えいただけませんか。
  157. 竹下登

    竹下委員長 労働大臣。
  158. 塚本三郎

    ○塚本委員 いや、私、総理に聞こうと思っているのです。
  159. 竹下登

    竹下委員長 いま労働大臣から特に発言の希望がございましたので……。
  160. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 先生の御意見、私は趣旨において先ほど申しましたとおり全く同感でございます。特に、民間の活力をフルに利用するという点につきましては大変りっぱなお説だと思います。これに同感でございます。  ただ、私申し上げておりますとおり、具体的に何をするのか、どういうふうにするのかというようなことについてもう少し詰めていかなければならない、そういう点もございますので、これは決して逃げたりなんかするのではないのです。いま雇用の問題は本当に全国民挙げての問題でございますから、検討して、しかるべき結論を出したいというのが私どもの偽らざる心境でございます。
  161. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。  大臣はここではそういうふうにお答えになっておいでになりますけれども、具体的にはこれ恐らくどうせ御勉強なさったでしょうね。特に、高い知的能力による分野だとか、専門的知識による分野だとか、医療関係の分野、たとえば休日深夜診療だとか、老人、身障者に対する医療だとか、僻地に対する医療、お医者様がたくさんおいでになっても行き手がない、幾つかそういう問題等が、採算に合わないけれども、国民にとっては要望されている事項があります。あるいは教育関係でも、保育園から、あるいは身障者から、あるいは職業訓練から幾つかの事業等が、まだまだこれから力を入れていかなければならないところがあります。情報関係から、文化芸能関係から、環境保全から、あるいはまた資源再利用から、申し上げてみますならば、資源の乏しい国において、日本が施設を持ち、設備を持ち、能力を持ち、技術を持っておりながら大都会だけに偏在してしまっておる、こういうようなアンバランスはまさにこれら政労使三者が一体となって、そして労働者に対しては自立できるまでは一定の期間だけ給与に対する補給を行う。そうして、事業主体に対しましては金利であるとか、あるいは税制であるとか、金融であるとか、こういうことでもって地域需要にこたえてつくってあげて、そうして一定の期間の間に自立しなさい、先ほどのいつまでもではなくして、もう三年なら三年、五年なら五年、だんだんと薄くではあるが、五年ほどの間はめんどうを見てあげなさい、こういうふうないわゆる中期的展望を持ってこういうことを検討してくださいということでもって、しかもそれらの問題は、政府労働者も学者もあるいは経営者も、三者か四者が一体となってこういう機構をつくり上げて、こういう問題を具体的に、いま政府が組んでくださった開発給付金等も大事に使っていただいて、そうして展望を立てていただくことが必要だと思っております。さあ、総理、お願いします。
  162. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 御趣旨賛成でございまして、御提言の趣旨は政府におきましても産労懇等を通じまして御相談しておるようでございますから、そういう方向にできることから実行していかなければならぬと思います。
  163. 塚本三郎

    ○塚本委員 ぜひひとつ、直ちに相談に移っていただくことを希望申し上げておきます。  次に、私ども昨日発表いたしました年齢による雇用差別禁止法の制定、このことについてお尋ねをいたします。  人生わずか五十年と言われた当時に、われわれの寿命が五十歳のときに、五十五歳までの定年制というものが社会慣例として実施されてきたことは御承知のとおりであります。幸い人生すでに七十五年という、二十五年も寿命が延びてきたことは大変喜ばしいことであります。しかし、世界でも例のないような高齢化社会へ超スピードで延びてまいりました。これは結構なことです。しかし、それだけに老人問題が、政府あるいは受け入れるところの経済社会というものが追いついていかないという状態になっておることも御認識のとおりであります。アメリカのスピードの四倍、イギリスのスピードの三倍、こういう形になってきております。しかも日本の終身雇用制はいいところが発揮されましたけれども、そのことがいまや問題になってしまったわけでございます。したがいまして、どうしても中高年齢層に対する求人倍率は〇・一どころか〇・〇九というふうな形になってしまって、この数字で見ますると全くひどい状態になっております。十人に一人も就職の希望が達せられません。せめてはお互いに少ない仕事であるならば、一面において雇用を創出するということを御提案申し上げますと同時に、一面においては定年はこの際は、理想は六十五でありますけれども、ひとまず段階的という意味で六十歳にまで上げていただいたらどうであろうか。もちろん、本来ならば労使間におけるところの協議の場で行っておるところの、労働組合がしっかりしたところは大体そういうことができつつあるようでございますが、いまだなかなかそういう状態になっておりません。  私ども民社党は、一挙にこれを六十歳にしなさいと申し上げるつもりはありません。順次でいいからひとまず中期的に六十歳にし、やがては六十五歳にするという展望を持って、この際、そういう段階的に延ばすという中身で結構だから、民間の会社等を指導する意味におきまして、仮称でありますけれども、民社党が提案いたしております年齢による雇用差別禁止法の制定、いわば俗に言います定年延長に対する何らかの指導的な意味を含めた法律案を制定していただきたい、こういうふうに御提案申し上げるわけであります。いかがでしょうか。
  164. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 好むと好まざるとにかかわらず、高年者が非常にふえてきておりますので、ここで定年延長という問題については、本当に真剣に取り組まなければならないと考えております。  ただ、いまお話のあったとおり、定年延長につきましては、日本の年功賃金慣行がございます。この慣行がネックになっておりまして、ここら辺が是正をされないという間におきましてはなかなか前進しない。前進しないから、法的規制をしたらどうだという議論も出てくるわけでありますけれども、やはり私どもはいまの段階では、そういう定年延長せざるを得ない、延長してもらいたいという社会的な風潮をバックにいたしまして行政指導をしっかりやっていきたい。その上でいろいろと考えるところが出てくるものではないか、こう考えております。
  165. 塚本三郎

    ○塚本委員 その点はやはり私たちも心配をいたしております。肉体労働的に劣ってきておるのにかかわらず、賃金だけが上昇カーブをいつまでも下げないというような問題等は、すでに心ある労働組合においてはみずから、いわゆる昇給はストップするとか、あるいは若干ダウンしてもやむを得ないというふうな、まあ五十五歳で定年になってから自分たちの全く知らないところへ素人として入っていって、給与が半分になって、そうして人生で一番、子供がちょうど高校生か大学に行ってお金の要るときに、精神的に一番がんばらなければいけないときに、本人がそういう全く知らない職場に給与半分で、そしてかつては自分の部下であった、あるいは自分が指導しておったところの子会社などに使われていく、こういう精神的なショックは大変大きいと思うのです。そういうことを考えたら、定年をストップする、あるいはまたボーナスに対しても考える、それは多くの条件を出してみても、労働者の諸君は受け入れてくださると思うのです。精神的に大変大きないわゆる打撃を受ける、これが中高年齢層におけるところの諸君のいまの一番大きな、しかもこの層がどんどんとこれから広がってくるのでございます。考えてみますと、戦争中を苦労なさって、そして戦後三十年間この国を支えた諸君をそういうみじめな状態に置くということは、これは政治家としては耐えられないことなのだというふうに考えていただきまして、ぜひともひとつこれが具体化について強く推し進めていただきたい。  それとともに、年金自身も、実はこんな状態でまいりますると、納める人が早くやめてしまって、いただく人がどっとできてしまいますると、これは昭和七十年になりますると一・八人に一人ずつ実は養わなければならない。だから、年金はパンクするという計算が成り立つそうでございますね。だから、年金の立場からも、定年延長されればいただくのがかえってむしろ納める側に回るのでございますから、どう考えても国家といたしましてはそういう労働者の理解を得つつ強力に指導し、まず強制的なことは少なくして、政府はこうすべきだという法律をつくることが最も手っ取り早いのじゃございませんか。どうでしょうか。
  166. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 年金と定年とをリンクされるという問題につきましては、厚生省とも関係ございますが、労働省の立場からいたしますと、定年後、年金にリンクする、そういう形は望ましい形態だと思います。そういうように推進をしていかなければならぬと思っています。ただ、たびたびお話がございます御趣旨はよくわかります。私も真剣にいま検討を加えておりますが、いまこの現段階におきまして法律によるということを申し上げるわけにはまいらない。行政指導を徹底してまいりたいということでお許しをいただきたいと思います。
  167. 塚本三郎

    ○塚本委員 なかなか間に合わぬのですよね。だから、強い会社はもうやっているのです。私もこのことを党内で諮りましたら、法律に頼らなければならぬ労働組合なんて頼りないな、こういうことを言った労働組合の幹部もおります。ごりっぱな労働組合はそれでいくことができますけれども、しかし、にもかかわらずそう言い得る会社は、労働組合は下請を押しつけることもできる強い企業なのでございます。だから、本当にいわゆる定年で泣いておるところの労働組合というのは法律に頼らなければならない、こういうことでございます。おわかりでしょう。ですから、それはいまのところとおっしゃらずに、いまから御検討いただかないと、せっかく御苦労いただいたあの戦中派の諸君が、ここへ来て社会からおっぽり出されてしまうというような体制はまずいと私は思うのでございます。強くこのことを要望申し上げておきます。  それと、小さいことになりまするけれども、これは総理にお尋ねいたしますが、政府には各種審議会というのが二百五十ほどありますね。その審議会のメンバー、かつて私も議運でその国会承認を見たのでございますが、出てくるメンバーはほとんどお役人様のお古様とそれから学者でございます。それから、産業人が若干入っております。この際労働者の代表も、特に経済関係のところへはもう少し参加をさせたらいかがでございましょうか。人間というのは変なものでして、決まったものに従えではだめなのです。計画に参加すれば決定には潔く従う、これが民主主議の原則なのです。したがって、そういう意味で、国会と違いまして決定に参加させるわけにいきませんけれども、審議会で意見具申の段階でもって、もう少し生産者の立場から経済関係については労働者の代表をこの中に入れることを、若干入っておりますが、ふやし、そしてまた消費者の立場からこういう問題の委員の中にもっと参加をさせる、こういうことが必要だと判断いたします。若干入っておりまするけれども、この際大幅に入れることによって、政府の経済政策に対して参加をさせることによって責任と協力を求める、こういう態度をおとりになるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  168. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 労働者の皆さんの生活に重大な関係のあるという問題について、審議会に労働者の代表者を入れるということは望ましいことでございます。現に労働関係につきましては、ほとんどの審議会に労働者の代表の方々が入っております。なお、労働者の生活に関係する問題につきましても、いまお説のとおり、労働者の方々の意見をいろいろ反映するということが望ましい、そういうように考えております。
  169. 塚本三郎

    ○塚本委員 総理、これは労働大臣としては非常に希望するところだと思います。しかし、いまおっしゃった限定的には若干入っていることは承知しておるのです。健康保険など、そういう関係で支払い側の立場に立って入っていることも承知しておるのです。しかしきわめて限定的でございますね。少なくとも生産に関係するようなところへ、消費に関係するところにもう少し食い込んで、そして積極的に理解と協力を求めるということが必要だと思うのです。この点総理からお答えいただけませんか。
  170. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 労使それから学識経験者、三者構成のようなところには全部入っておられますことは御承知のとおりでございます。労働者の生活に関係することばかりでなく、政策の審議に労働者の代表の方々の経験、知識を吸収するような審議、もっと大胆にやれということでございます。そういう趣旨でできるだけ努力してみます。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 それから、小さいことですけれども、ついでですから労働大臣にお願い申し上げます。これは労働大臣より大蔵大臣の方が必要かもしれません。国際会議におきまするILOで、労働者代表のこの席でちょっと聞いてびっくりしたのでございますけれども日本日本語が公用語になっていないというのです。しかも世界でILOに対する分担金は日本が二番だそうです。一番がソ連だそうです。アメリカがいたのですが、アメリカは抜けてしまいました。したがって、自由世界では日本は一位だそうでございます。しかし公用語五カ国の中には日本語は入っていない。準公用語十二カ国の中にも日本語は入っていない、こういうことだそうでございます。いかにもこれは日本人として国際的に視野の狭い考え方で、通訳を連れていってもなかなかこれははかどりません。聞くところによりますると、二、三億の金さえ都合すれば、その施設等さえ整備すれば、その金さえ出せば、いわゆる世界の中における日本のことですから、すぐそれができるのだそうでございます。したがって、それくらいのこと、日本の産業を背負っておる労働者の代表として肩身の狭い思いをさせることのないように、直ちにこんな金額ならば予備費の中からでも出すことができると思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  172. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 この御要求労働団体の方々からも直接承りました。その際、私申し上げたのでありまするけれども、ILOで日本語の問題でございますが、私どもは結構じゃないかと思っておったのでありますが、聞いてみますと、ILOの方で、いわゆる施設の問題とかあるいは日本語を入れるとほかの外国語をどうするか、そういう問題があるようでございます。したがいまして、問題はILO側にいろいろ問題があるようでございますので、政府の方からも参りまして、そこら辺の隘路を片づけたいと思います。前向きに検討いたしたい、こう考えております。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 これはそれでは、それさえなければ問題なく直ちに実施するというふうに受けとめていいですね。前向きじゃなくても、こんなこと直ちにというふうにお約束しておいていただいたらどうでしょう。外務大臣がいるようですから、外務大臣、ILOにおける国際会議の席で日本語が公用語となっていないということですが、その通訳の施設等、二、三億の金さえ出せばこれができるということが労働者側の意見であります。しかし、労働大臣は、そうじゃない、ILO側に実は問題があるということですから、ILO側の問題さえなければ日本政府としては直ちに実施するように、その予算化、わずか二、三億のようでございますから、予備費の中でも出せるじゃないかということで御答弁をいただきたい。
  174. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のことは私もそのとおりに考えておるところでありまして、金額は二、三億までは要らないところであります。これはいろいろやればできないこともないわけでありますから、逐次その方向に努力したいと考えております。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは次に移ります。  一般消費税についてお尋ねをいたします。  いま各業界からこの問題について大変な、いわゆる悲鳴に近いような反対の意見が出てきております。莫大な国債を抱えて何らかの形で財政再建に無関心でおれないことは、わが党も承知をいたしております。しかし、この消費税なるものは、ただ単にお金が足りないからだけであろうか、ここが問題のところです。お金が足りないとするならば、もっともっと節約をする方法もあるし、特に今年のごときときに、もっときりっと締めた体制をとっていくのが正しい姿勢であります。私は今度の予算を見ておって──大蔵大臣よく聞いていただきたい。意地の悪い判断かもしれませんけれども、まあやれるだけやってみな、もうどうしようもなくなったから、一般消費税を導入しなければならぬと国民も観念するだろうというところで大盤振る舞いをやっておいて、そうしてどうにもなりませんぞと、いわば金の問題よりも国民生活の中に大蔵省がどっかと入り込んでくるといういわゆる別の問題がひそんでおると私は判断をいたしております。昭和二十五年に行われたシャウプ税制以来のわが国税制の大改革と言うべきであります。そして、一たん導入されてしまえば、朝起きてから寝るまで税金と縁の切れない時代が確実にやってくる。それが一般消費税というものだと言うべきでありましょう。  戦後の日本はきわめて自由でありました。そしてだれにも監視されない、そういう生活を営み、営業活動を続けてまいりました。もちろん日本国民として納税の義務は当然であります。しかし、今日までの税金は──総理、よく聞いてください。生活の最低限には税をかけないことを国の誇りとし、もっぱら利益や資産にのみ課してまいりました。最低の国民生活には税をかけない、それが私たち政治家の誇りであった。これはひとり野党だけではなく、与党の先生方も同じ自負心であったかと受けとめております。もちろん酒、たばこなどの奢侈品やぜいたく品に対する物品税や輸入等、限られた分野にのみ手を伸ばし、あるいは車やガソリン税のごとく目的税に対して新たなる税を積み上げることはいたし方がないことだとしてまいりました。これはきわめて限定的な税であると受けとめております。  しかし、今度の一般消費税が導入されるということは、お金の問題よりも、静かな市民生活の中に国の税が土足で入り込むようなことは決して許してはいけない、私はこういうふうに受けとめております。今回導入されんとする一般消費税なるものは、国に必要な税金をふやすという金高の問題のみにとどめて議論すべきではないというのが私の受けとめ方でございます。金が必要ならば、ほかにふやすべき方法は幾らでもあると思っております。今回の一般消費税は、静かなる市民生活の中に国家の権力がどっかと腰をおろし、市民生活を監視している姿を想像させるのでございます。まして営業活動を行っている大きいものから中小に至りまするまで、事業家は、常に戦前の警察国家ならずして戦後の税務国家になったという圧迫感を抱かざるを得ないのであります。警察と税務は捜査令状を持ってくれば市民生活の中に入り込むことができます。ここが問題のところであります。戦前の警察国家と同じように税務官僚国家になることを、私どもは金の問題以上に神経質にならざるを得ない、ここが私どもの最もこの問題に対して神経質になっておるゆえんであります。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 わずかの例外を除いて、すべてのものが、国内において事業を行う者が、対価を得て国内で財貨を引き渡し、あるいはサービスを提供する者が対象とされる、あるいは輸入のものも同様であります。言ってみるならば、市民生活のどんな動きの中でも、わずかの例外を除いてはすべて税の対象になるというのがこの一般消費税に対する税制の大綱のようであります。  わかりやすく言えば、事業家が販売、加工、サービス及び輸入に税を課されるので、これらを業とする者は、いわゆる商売人はと言えば税金の徴収係であり、納入責任者に決定づけられるわけでございます。よろしゅうございますか。サービスをしても、売っても、運んでも、何をやってもそれは税の徴収係としていわゆる国家の一面の仕事を義務づけられるということであり、納入責任者としての役目を位置づけられるという性格を決定的に与えてしまうというのがその一つであります。  そうして一般市民は支払いの義務者にさせられてしまう。物を買えば必ず、あるいはまたサービスを受けてありがとうさんと言えばこれは税金の支払い側に立つ。国家はまさにこれが実施のために、本当に税金を徴収したのか、本当に納入するのかという業者に対する監督者の立場に立ち、われら市民はまた、税金を本当に払ったか払わないかと、いわゆる監督されるところの納入義務者に立てられてしまって、その両者の中に大蔵省はどっかと監督者の位置を無条件で築くことになります。この問題は、私は全国民からごうごうたる反対が出てくるのも当然だと思います。  お金を欲しいならいままでの税率を上げてちょうだい、不公平ならばそれを改めてちょうだい、どんな方法で補ってもいいけれども、生活の中のすべてに対して、業者に対しては納入義務者であり、あるいは徴収責任者、そしてまた一般の市民は支払い義務者にさせられて、その中間に税務署がどっかりとこれを監督するというような、戦前の警察国家ならざる税務国家を確立する、それがためにいやおうなしに一般消費税を導入しなければならないという形に追い込んだ大蔵省の諸君の魂胆を、私は決して軽々に見てはいけないというふうに考えておるわけであります。総理大臣、どうお受けとめになりますか。
  176. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 一般消費税という形で巨額の歳入を期待しなければならないような財政状態であるという認識を政府は事実持っております。しかしながら、この問題は、期待する歳入額が相当大きいばかりでなく、いま塚本さんがおっしゃるように、税体系といたしましても多くの問題をはらんでおりますことはわれわれもよく承知いたしておるわけでございます。したがいまして、これの導入をお願いするにつきましては、あらゆる角度から御検討いただかなければなりませんし、それに対しまして政府側も十分解明するところがなければならぬと考えております。したがって、財政自体につきましては、先ほども御検討いただいておりましたように、これから精力的な御検討をいただき、われわれもそれに対しまして十分の御審議にこたえるだけの用意をしていかなければいかぬと考えております。  しかる上におきまして、こういう形において歳入を期待することについて御理解が得られるということかどうかということは、税体系に絡まるいま御指摘のような問題もあろうかと思うのでございます。私がこれまで伺っておるところによりますと、そういうことを念頭に置きまして、一般消費税については相当苦心いたしておると聞いておりますけれども、なお詳細の点につきましては大蔵当局、国税当局等からお聞き取りをいただきたいと思います。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 大蔵大臣、お金の問題だけならば別の方法でやってほしい、これが市民の願いなんです。よろしゅうございますか、いま一番神経をとがらしているのは、何度も申し上げるように、われら政治家としては、静かなる一般市民の中に、警察や捜査令状を持った税務官吏が入ってきていただきたくない、この決定的な戦後における三十年間の日本の自由は政治家は失ってはならない、この責任感を痛感するからであります。しかしながら、どんな市民生活の中でも、タクシーに乗ったときでさえもそういうことが出てくるようになったら大変でございます。もちろん今度は公共料金なんか外すとかいう形が出てくるでしょう。しかし、そういうふうに外すとおっしゃるのはいまだけでありまするから、だんだんふやしていく。そうして食料品も来るでしょう。二千万円も、これはもう少しといってまた伸ばしてくる。だからこそ一・二という先ほどの公明党さんの、試算がいわゆる魂胆が出ておるものだから、そういうことをつつかれたら実は皆様方だって答えられなくなってしまうのじゃございませんか。私どもは、そういう形ではなくして、少なくとも生活の中には国家権力は決して触れてはいけない。したがって、税でもやはり最低限から超える所得についてあるいは資産について、あるいはぜいたく品についてあるいは目的のものについてだけ国民の理解のもとに、これが税の大本でなければなりません。もうアメリカや西ドイツのごとく連邦国家においては、それは国家として別々ですから、ここが四%であり、ここが六%であるといって国ごとに別に取る方法はそれしかない。それは連邦国家としての特殊性であって、単一国家の日本の国においてはまだまだ直税として幾らでも取る方法はあると思うのです。したがって、もはや間接税でここまで手を入れるということは、いわゆる日本の国家の成り立ちからして無理がある。それをあえて推し進めようとすることには、私は大蔵省のそういう魂胆をあばかざるを得ないわけであります。大蔵大臣どうですか。
  178. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大蔵省が今度の予算編成で魂胆を見せておるじゃないかとおっしゃいますけれども、それは全くの誤解でございまして、景気がこういう状況でございますから、私どもとしましてはもう精いっぱいの景気維持、刺激的な予算を組むような財政的な余裕はございません。とにかく今日の経済水準だけは何とか維持して、安定成長につなぎたいという精いっぱいの努力予算でやってきたわけです。しかし、同時に財政収入、つまり税収はもうすっかり限界に来ておりますし、公債十五兆というようなことでやっと予算編成を終わったわけでございますが、もう限界ぎりぎりまで赤字財政というか、サラ金財政の綱渡りのところまで来ておるわけでございます。しかも、先ほど来るる申し上げておりますように、今後高齢化社会を迎えて大ぜいのお年寄りを養わなければならぬという段階になりまして、このままほっておくわけにまいりません。考えられることは所得税を増税することか、その他のもろもろの、いま政府税制調査会で取り上げられているような富裕税その他の税を取り込むかということでございますけれども、いろいろ専門的に検討してみますと、とても赤字財政を脱却するだけの財源はこういった新税によっては得られません。率直に申しまして、日本の課税水準はEC各国の大体半分ぐらいとお考えいただいたらいいのではないか、今度増税いたしましたからちょっと日本も高くなりましたけれども。しかし、高度成長時代の惰性になれて、ずいぶん減税減税でやってまいりましたから、今日、中成長の時代に入りますと、なかなか国民の皆様の御期待にこたえられるような安い負担で、低い負担でというわけにまいらなくなってしまったということはひとつお認めいただきたいと思うのでございます。  そこで、ちょっと、もう一つだけ先生、私の申し上げたいのは、高度成長時代に機能してきた、役立ってきた直接税水準の税制は、中成長、低成長になりますと機能しないのです。したがって、そういうところからヨーロッパ各国、アメリカ等でも、特にヨーロッパでは間接税に重点を置いて、直間比率は大体五分五分、フランスのごときは間接税が七割を占めているような状況でございます。日本では、これは全く御承知のとおり売上税、消費税的な税制にはなれていませんから、こういった税制を取り入れるということについては非常な抵抗があることは私どもも十分承知をいたしております。しかし、できるだけ摩擦を少なくして、わかりやすい、執行の容易な、これならば納得いただけるというような一般消費税という形で案をつくれば、中身はこういうことになりますよというものをいませっかく一生懸命に事務当局が詰めておる最中でございますから、中身、世間に発表しないものですから、疑心暗鬼で大変御心配をかけておる点は相済まないと思っているのですが、一刻も早く関係各業界との連絡もとった上で御提案申し上げて、皆様のまた御意見を承りたい、こういうふうに考えておることを申し上げておきます。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は大綱は何度も読んだのでございます。だから、ずぼらで申し上げておるわけじゃございません。たとえば今度だって七%成長さえしておればもっと自然増収がいったのですよ。それを簡単にあきらめて──私はこの点も論及してみたいと思いましたが、もう時間が少なくなってまいりまするから、過ぎ去ったことを申し上げるつもりはありませんけれども、しかし、幾つかの手を打つことによって総合的にいわゆる自然増収をさせる、さらにまた行政の節約をする、そのほかで、たとえばいわゆる法人税を二%ふやす、幾つかの施策をとっていけば完全にカバーできるということを何度も提起したのでございますけれども約束だけでせずにおいて、こうしておって、そしてもうこうする以外にはないという形に追い詰めちゃうのですよ。本当に何度ここでもって各党の先生方が論ぜられても、言いわけだけしておいて、全然約束をせずにおいて、それで伝家の宝刀で、これを聞かなかったら国家は分裂する、借金財政、サラ金財政。一体だれがサラ金財政にしたのですか。野党のどこかの政党が一度でも参画してやったことがありますか。サラ金財政なんて、大蔵大臣はこんな恥ずかしい言葉をお使いになって、その責任を一度でもおとりになったことがありますか。何度このことを各党の代表がこの席でもって御注意申し上げたことがあるかわかりません。今度だって七%成長をしておればどれだけの成長ができたか。それをいとも簡単に弊履のごとく捨てられてしまっている。  それじゃお尋ねいたしまするが、五十七年までに赤字国債を解消するという約束ができますか。大蔵大臣、どうでしょう。
  180. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいまの中期経済計画に基づく財政収支試算では五十九年までに脱却したい。六十年には償還期限が来ますから、その前に少なくとも特例公債だけは整理したい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうでしょう。五十七年という約束をなさったとき、無理じゃないかと言って、われわれは、六十年までしか無理です、だから六十年に向ってこういうふうにすべきだと長中期的展望を申し上げておるのに、もうすでに五十七年が五十九年か六十年、こうおっしゃるのでしょう。いわゆるできないことだけは私たちが心配したとおりになるのです。しかし、それでも消費税を導入しなくていいようにするためにこうしなさいと言って何度御提案申し上げても、お言葉は濁しておいて、そうしておいてがばっとこういう税務国家をつくるようなことになると言わざるを得なくなってしまうじゃありませんか。それなら、一度だって政府は国民の前に、今回は済みませんでしたと総辞職なさるくらいの責任をおとりになったことがありますか。全然ないでしょう。それじゃ国民が、一体政治家は何をやっておるんだということになってしまうじゃございませんか。  私は多くこの一般消費税のかわりに提言すべきことがありましたけれども、時間が少なくなってまいりましたので、そのかわりに少なくともこの際、何らかの形で増税を余儀なくされるとするならば、先ほど公明党矢野さんから御提示なさったように、もっと使うことを節約することをお考えになったらいかがでしょうか。もちろん役人さんの立場から言えば、できません、できませんばかりですよ。そんなことで一般の会社は立ち行かないのですよ。そんな理屈を言っておってやっていける日本企業は一つもないんです。主権者として税金を納める私たちが本当にぜい肉を取るためにどんなに涙ぐましい──それがために下請に憎まれても、人をおどしつけてみたり、そういう、私たちから考えると大企業横暴だというけれども、それでも、実はしたくないけれどもそこまでしなければ立ち行かぬという形が民間の企業の実態じゃありませんか。この際二〇%政府は全部一括切り捨てる。暴論だとおっしゃるでしょうけれども日本企業みんなやっているのですよ。お役人様のどこが削れるでしょう、こんなことを言っていて削ることはできません。二〇%いきなり削ってしまいます、その中でどうしてもというものだけを復活させましょう、こういう手法をとらなければ国民に対して申しわけないとお思いになりませんか。プラス一五%で持ってこい、こんな一番初めからの折衝がありますか。これが借金王国、サラ金財政、二年半分の借金を抱えておる日本国家株式会社のやることでしょうか。専務取締役であるところの大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  182. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは一般消費税を明年度お願いするということになりますれば、当然、先ほど来御議論のありましたような行政経費の節減については相当思い切った手を講じて皆様の御納得をいただかなければならぬと考えております。それだけを申し上げておきます。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 この予算の中でもうすぐに実行なさったらどうでしょうか。
  184. 金子一平

    金子(一)国務大臣 不十分のおしかりはいただかざるを得ないかもしれませんけれども、この予算につきましても、先ほど来申し上げておりますように、景気を維持しながらしかも福祉充実をさせる等のために、あるいは公共事業を充実させるために、相当経常的経費につきましては切り込みまして、役所の生活費に当たる部分は八%前後というようなところまで節減を強いておりますし、それからいろいろな政策的経費につきましても、スクラップ・アンド・ビルドで、いろいろな事業を大体三分の一くらいに圧縮いたしております。また補助金等の圧縮も例年ずっとやっておりまするが、ことしは特に厳しく取り扱って、行政経費全体の節減のことしは第一年ということで手をつけたことはひとつお認めおきいただきたいと思うのでございます。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 行政管理庁長官はどなたですか。──民社党は何度でも提案いたしておりますが、また昨年のこと、同じことを繰り返して申し上げますけれども、この際、地方の出先機関なんかみんな取っ払っちゃったらどうでしょうか。こんなもの、昭和十二年、日支事変のときに設けたのでしょう。私は名古屋におりますけれども、当時はいわゆる行くだけで一日がかり、電話だって半日待たなければ通じません。大体電話なんてあるところが少なかったのですよ。いま新幹線で通勤ができます。大阪までだったら飛行機で通勤できます。福岡も同じです。なぜこんな中二階みたいなものを置いておくのでしょうか。特に大蔵省のごときまずそれを考えられたらどうでしょうか。わが名古屋には国税局長さん、財務局長さん、税関長さん、私が知っておるだけでも三人の局長さんがおいでになるのです。こんなのは一つになさったらどうでしょうか。こんな行政事務、税務署長さんいっぱいおいでになるのでございますから、こんな中二階なんか幾つも置いておく必要はないじゃございませんか。そして何千万円までは署長さん、それから上は局長さんの管轄、こんなぶざまなことをいつまでもやってなくたっていいじゃございませんか。どうでしょうか。
  186. 金子一平

    金子(一)国務大臣 役所の出先の話がいま出ましたが、これは行政管理庁で従来からいろいろ構想を練っていただいて、漸次縮小の方向に行っております。ただ、いまお話しの大蔵省関係の役所、これは従来からやはり仕事の性格が違っておりまするし、たとえば税関は船の輸出入の関係がありますから、築港に置いておかなければいかぬし、国税局ですと市内の真ん中に置かなければいかぬとか、いろいろな問題がございますよ。しかし、それはそれとして、やはり地方の出先につきましては、これは本当に真剣に今後あり方を検討する必要があると思うのでございます。行政管理庁と十分連絡をとってやります。
  187. 塚本三郎

    ○塚本委員 それじゃ、空港には税関長おりませんよ、港におるのですから。港に税関長おって、空港に出張って、税関長おる必要はないじゃありませんか。だからそんなことは、どこだってそういうことはあるのです、みんな遊んでおるわけじゃないのですから。しかし民間の企業はそれでも頭からばっさりと、いわゆる収入が少なかったならば二〇%切るということで、どう兼務させるかということを言うのですよ。そんなものをわれもわれもやっておったら、できるはずがないじゃございませんか。納税者の、民間の立場になって考えてやっていただきたいということを申し上げるのです。地方には農政局があります。あるいはまた営林局があります。通産局があります。医務局があります。陸運局があります。なぜこんなものをいつまでも、何百人も五階建て六階建ての大きな建物を取ってでんと置いておくのでしょうか。こんなことをいつまでもやっておらなければならぬというような、しかも裕福なときならいいのです。これだけ国民がいわゆる税に対して心配しておるときに、いまだにお役所だけが国家を支配するようなかっこうをなさって、足りなければ税で取り立てる。少なくとも、われわれは何割カットさせていただきました、しかしそれでこれだけ足りませんとおっしゃるのがお役所の努めじゃありませんか。この際どうでしょうか。こういう中間のものはばっさり切るということを言って、それで後どう事務的に補うか、こういうことをなさったならば、一般消費税も私たちは渋々でも考えてみようじゃありませんか。総理、いかがでしょう。
  188. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 歳出を洗うという、とりわけ行政機構に思い切ったメスを入れるという御趣旨でございまして、私も建設的な御提言に対しまして大変ありがたいことだと思います。そういう方向で政府もいままで一生懸命にやってきたわけでございます。お気に召すような状況にまだなっておりませんが、そういう方向に鋭意施策を進めてまいるつもりでございます。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  また、それと並行いたしまして、税の問題も御審議をいただくようにお願いします。
  189. 塚本三郎

    ○塚本委員 これ各省ごとに私全部やろうと思ったのですが、時間がきわめて限定されてまいりますので残念でございます。たとえば農林省などでも、お米をつくってないのにかかわらず、農林省の職員が八万何千人いるのですよね。お役人様に米をつくれるあれはありません。ところが、地方出先と全部関係を入れますと、六十何万人になるのですよ。専業農家が六十何万人だから、一人で一戸ずつをめんどう見ているのです。マン・ツー・マン行政と、こう言うのだそうです。私は農家のために相当の金を犠牲にすることは、これは各党ともにそんなに文句を言わないのですよ。しかし、その農家の収入を支えるためにいわゆる八万何千人のマン・ツー・マンの人たちを、食糧だって二万何千人おいでになるじゃありませんか。もうこの人件費だけだって年間一千億ですよ。もう大抵にしておいていただきたい。一人に対して一人ずつついている計算になっているんですよ。こんな国が世界でありますか。石炭会計や食管会計を廃止することができないとするならば、もはやお役人さんの配置がえでもなさって、その一千億だけでも国民のために減税していただくなりほかにお使いいただけませんか。そしてお米のお守りぐらいは農協さんにお任せしたらどうでしょうか。これぐらい考えていただかぬと、こんなにお金がないと言っているときにばかにするなという、週刊誌ごらんください。どんなひどいこと書いておりますか。政治家何をやっているかと言われますよ。管理庁長官どうでしょう。
  190. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいま農林省関係の機関についてお話がございましたが、全機関につきましてできるだけこれを簡素化するという方針を持ちまして、本年の一月十六日に行政の簡素化並びに効率化についての閣議了解を得まして、その方向によりまして整理をするということで進んでおる次第でございます。
  191. 塚本三郎

    ○塚本委員 事業団なんかでも、これは出向した各省庁からの管理職に、天下っていったところですよ、普通の管理手当のほかに二五%以上の法人管理職手当がそれと別に支給されておる、こういう状態。民間企業はこの不況で天下りをいい顔で受け入れないので、特殊法人がかっこうの受けざらとしてねらわれておる。特殊法人は役員の定数も給与も退職金の基準も実に無原則で、いわばお手盛りになっている。高級天下り官僚たちは特殊法人をまるで植民地か何かのように考えておる、まさにそういう状態。しかもそれが中間管理職にまで及んでしまっておる。しかも三十九年のいわゆる管理庁の答申によりますと、もはや、だからそういうところの生え抜きの諸君、やる気がないというのですよ。みんな上から来てしまって、すうっと退職金だけ持っていってしまって、二、三年で行ってしまう。中間管理職までなっておる。たまに一人ぐらいが上へ行かれると、彼は希望の星だ、こうなんですよ。そんなばかなことが政府で行われておる。一般の手当のほかにまた天下り料というものがいく。二五%も余分に金を取っておる。  大体、事業団など考えてちょうだい。畜産振興事業団、本当ならば、ストレートで入ってくるならばもっと安いやつをがばっと金を取っておる。農家補助だけにしておいていただきたい。それが中間でどうも変なことになってしまう、つり上げられてしまう。その利ざやの中でおやりになるならまだいいのだけれども、そのほかにまだ政府の金までつぎ込んでおる。絹なんかどうでしょうか。一キロ当たり五千円のものが一万五千円ですよ。その金だけは国の方へ戻してくださったらどうでしょうか。京都を初めとする伝統産業で、和装産業の諸君が、法律までつくったのにかかわらず、五千円の糸が一万五千円につり上げられてしまって、どうして伝統産業の保護になりましょうか。これが実態じゃありませんか。みんな高級お役人さんの植民地と称されるような形の中で、しかもなおそこへ六十億の金がつぎ込まれておる。これは一体どうなっておるのでしょうか。もう少し真剣に、大臣さんたちは一年でおかわりになるかもしれませんけれども、しかし総理を初めトップの皆様方は何度でも大臣をおやりになっており、ここでいやというほどこれをお聞きになっておいでになるのだから、閣議一体としてこの問題と取り組んでいただくわけにまいりませんか。われわれ政治家何をやっているのだと言われても答えようがないではございませんか。総理大臣いかがでしょう。
  192. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、政府も、私の内閣ばかりではなく、歴代内閣そのことのために相当苦心をいたしまして施策をしてきたものでございます。  すなわち、まず塚本さんも御承知のように、政府の行政機構につきましていろいろ御不満でございますけれども、この十年間を一応ごらんいただきましてもおわかりのように、仕事の分量、業務の分量はふえましたけれども、機構はふやしておりません。この膨張を抑止するためにそれは非常に神経質なまでに努力をしてまいっております。それから毎年定員の一般的な削減をやってまいりまして、必要な部面について新たな定員を認めておりますけれども、都合いたしまして、結局この十年間に定員は若干減らしてきております。したがいまして、政府は何もやっていないのではなくて、そういう苦心をずっと重ねてきておるのでございます。しかし、いまあなたが言われたように大胆に機構の荒削りな改革をやる、あるいは定員をうんと削減をするということはなかなかむずかしいことでございまして、これに対しまして徐々にそういう状況をつくりながら努力をいたしておるわけでございます。しかし、このように財政も苦しくなってまいりましたし、民間もあなたのおっしゃるように減量経営で厳しい対応をいたしておるときでございまして、政府はぬくぬくしておるわけにもまいりません。したがって、いま行管の長官も御報告いたしましたように、新たな計画を立てましてこれに取り組もうといたしておるわけでございます。いろいろ足らないところがございますけれども国会の方も応援をいただきまして、そういう方向にもっと大胆にわれわれが進むことができますようにひとつ御協力を願いたいと思います。
  193. 塚本三郎

    ○塚本委員 文部省、もう一つだけ最後に取り上げてみます。  みんなおわかりなんですけれども勇気がないのですね。これを実行するということは私よりも賢明な大臣諸公でございますからおわかりなんです。けれども御身御大切となってしまうのです。ここが問題のところだと思うのです。東大の医学部精神科病棟における問題は十年間放置されておりますね。昭和四十四年九月無法者によって占拠されました。いまだにそれが続いておるではありませんか。昨年も向坊学長を初めとして何度も国会に来て御注意申し上げたことは御承知のとおりであります。しかし、いまだにこれは解決されないではありませんか。ほうってあるのでございますよ。病床が足りない。日本で一番信頼される東大の病院といったらだれだって入りたい。けれども一人も入れないではありませんか。そんなままで十年間放置してあるのですよ。彼らに説得とか話し合いなんて、相手ではないのですから、全然無法者の彼らでしょう。そんなことは十年の歴史が物語っているではありませんか。一体こんなばかなことをそのまま放置しておいていいのですか。最後には正常化に向かいつつあります、どうしたかしらと思ったら、総理よく聞いてください、占領したところの無法者を正規の職員に任命したということですよ。何ですか、このやり方は。そしてしかも教授、助教授の診察があった人を入院させるというシステムが全然とられずに、よそ者だけが入って、よその病院から送られてくるのが東大病院ではありませんか。六月までに解決するということを文部大臣と立ち会いのもとに決算委員会で約束をいたしました。いまだに解決してないではありませんか。そう言って逃げ切るために、その男に対して正規に助手という資格を与えているではありませんか。国費のむだ使いも行政の紊乱もきわまれりと言うべきではありませんか。文部大臣どうですか。
  194. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 東大の精神神経科病棟の問題についてお尋ねがございましたが、文部省も早期正常化について今日まで強く指導してまいりました。東大当局も特にこの点に注意いたしまして正常化について努力いたしまして、二つの点が進展を見ました。本年一月十六日、長く欠員中であった精神医学講座の担当の教授、助教授を任命して教育、研究、診療の責任体制を確立したこと、これが第一点でございます。  第二点は、いまお話しの患者の入院でございますが、担当の教授、助教授が外来で診察した者の中から入院をさせるという方針を決定いたしましたので、今度は御指摘のように正常化できると私は思っておりますから、私も一生懸命やらせていただきますから、いましばらくお待ちいただきたいと思います。どうぞよろしく。
  195. 塚本三郎

    ○塚本委員 お聞きのように、まだ数名のよそから入ってきたお医者さんがおるのですよ。そして、四十人という病床の中で半分しか、しかも半分もよそからで、こちらのは一人も入ってきてないのです。さわらずにおいて、こちらだけ任命してできた、こうなんですよ。なぜこれを追っ払えないのですか。日本の国、東大の中は治外法権ですか。国家公安委員長、一体これはどうなっているのですか。大学の当局からの要請がなければならぬとするなら、十年間なぜほうっておいたのですか。こういう状態なんです。  総理、よく考えていただいて、あちらこちらにおけるむだというものをきちっと省いていただかなければならぬと思うのですよ。それなのにかかわらず、新しくいわゆる一般消費税のためにまた八千人の税務職員を雇うというような新聞記事まで見てきますると、冗談言ってくれるなと国民は言いたくなるのはあたりまえじゃございませんか。各省ごとに一つ一つきちっとそういうことをおやりになってから御相談にあずかろうじゃございませんか。総理、いかがです。
  196. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 各省庁を通じ、また政府機関を通じまして、いま仰せのような問題が、東大ばかりじゃございませんで、いろいろ渋滞がございますということでございますので、そういう点につきましては鋭意解決に努力をいたしまして御期待に沿うようにしたいと思います。
  197. 塚本三郎

    ○塚本委員 話を変えます。  中小企業問題に移りますが、昨年、当委員会におきまして中小企業の相続税について実は御提案申し上げておきました。戦後三十年たちました。戦後自由経済として新しく日本経済が出発をいたしましたが、そろそろ世代交代の時期がやってまいりました。三十五ないし四十歳の新しい経営者がすでに六十代末から七十代になってまいりました。したがって、その企業を次の世代に移そうといたしまするとき膨大な相続税が課せられることになります。それは正規の相続税じゃないのです。いわゆる中小企業といいまするのは、いや、使ってしまえばいいというのじゃなくして、銀行にお世話にならなくていいように、こういう不況になって銀行からお金を借りる、身動きならなければ必ず支店長さんの古手が乗り込んできて乗っ取られてしまう、これが中小企業のいまの運命でございます。したがって、そうさせられないためにも、もうかったときに配当金を取らずに企業の中に留保しておるのでございます。だから相当に資産がふくらんでくる。健全なオーナーであればあるほどそういう問題がある。そうすると一株五十円のものが三百円、五百円のものが三千円、こうふくらんでくるのですね。そのときに、実は工場を半分切り売りすれば事業の運営は成り立たぬということから、税制の緩和を提起しておきました。大蔵省は相当に御検討いただいて、一個の回答案をつくっていただけたようでございますから、その結果をここで御報告いただきたいと思います。時間がございませんから、できるだけわかりやすく、簡単に明快に答えていただきたい。
  198. 磯邊律男

    磯邊政府委員 昨年の国会におきまして、塚本先生の方から、中小同族会社の株式の評価の問題につきまして改正するよう御指摘がございましたことはおっしゃられたとおりでございます。その御意見を受けまして、私どもは次のような作業をいたしまして改正いたしました。  御承知のように、取引相場のない株式といいますのは、会社の規模に応じまして、原則として類似業種比準方式、純資産価額方式またはその両者の併用によって、その評価をすることとしておるわけでありますけれども、これに対していろいろと不備な点もございますので、一昨年来、学識経験者の意見を聞くなど検討を重ねまして、昨年四月一日付をもってその実態を踏まえて次のように改正いたしたわけであります。  それはまず第一点には、配当還元方式の適用範囲の拡大であります。これは通達改正前におきましては、同族株主につきましてはすべて原則的評価方式を適用してまいりましたけれども、今回の改正におきまして、同族株主のうち会社主宰者との親族関係も遠く、それから持ち株割合が少ない株主にありましては、会社経営における地位等を勘案いたしまして、従業員株主など零細株主に特例的に適用しております配当還元方式を適用することにしたわけであります。  また、同族株主のうち少数株式所有者に配当還元方式を適用することとしたことに伴いまして、同族株主のいない会社の株式につきましても、これとの整合性を保つ必要から、配当還元方式の適用範囲を拡大いたしました。  それから第二点といたしましては、純資産価額方式に係る特例であります。純資産価額方式により株式を評価する場合におきましては、持ち株割合五〇%未満の株主グループにつきましては、一グループで五〇%以上の株式を所有している場合に比較いたしまして、会社経営面について異なる事情があると認められますので、そのグループに属する株主の取得株式については二〇%の評価減を行うことにいたしました。  それから第三点は、類似業種比準方式における利益の計算に関する特例であります。これにつきましては、この比準要素であります利益金額については、従来、直前期末以前一年間の利益をもととして計算しておったわけでありますけれども、利益変動が株式評価に与える影響はきわめて大きいということから、これを直前期末以前二年間の平均利益をもととして計算する、このようにしたことであります。  ただ、この計算の方式といいますのは、昭和五十三年一月一日以降の相続もしくは贈与に係るものから適用するということになっておりますので、この結果どういうふうに負担の軽減あるいは合理化がなされたかということにつきましては、まだわれわれはその結果は見きわめておりませんけれども、できるだけ実情に合うようにこの問題の合理化に努めてまいりたい、かように考えております。
  199. 塚本三郎

    ○塚本委員 中小企業の人はいまの長官のお話を聞いて何のことかわからぬと思うのです。しかし、ずっと私聞いてみましたら相当に軽減されておるということで納得がいきましたので、これはぜひ親切に、こういう計算方法によっていままでと比べて小さい人は半減しておりますよ、あるいは相当の持ち株の人でもいままでのように五三%を控除し、その上なお二〇%を特別に控除いたしました、持ち株五〇%以下の人には。だから、子供二人あるいはまた三人等に分けてやる場合においては相当に軽減されましたという中身だと受けとめます。したがって、これはやはり相当不安を持っておりますから、いまここでただすと時間がございませんから、ぜひ親切に、各国税局に徹底方を御依頼申し上げておきます。  それと、私はきょうは同じようなことで、いわゆる中小企業の部類でございますが、いわゆる病院の相続税についても一つ触れておきたいと思います。持ち分の定めのある社団たる医療法人に係る相続税について提言申し上げておきます。  今日、日本の医療は国公立及び医療法人たる病院及び開業医の三者によって行われております。大体診療は三等分のようでございます。私が提起するのはいわゆるこの病院でございます。これはいわゆる不公平税制と騒がれておりまするお医者様のあの七二%の適用は全然一件も受けておりません。この人たちがやはり同じような状態でもって、特に病院などはいいところにあるのです。あるいは病院ができることによって、周囲がよくなってくることによって資産が非常に大きくなってしまっておる。ところが、これの経営を受け継ごうといたしますると十億、十五億というような資産になってしまっておるのです。これを売ってしまえば、資産でございますけれども、あとやはり公共性のある医療として受け継ごうといたしますると、三等分しても一人五億円ぐらいになりますると、税金にしても億という金がかかってしまうのです。そうすると、これは納められないのです。だから、少なくとも医療を継続する間だけは、ふえた資産に対しては、これは解散のときに税を払うということにして、いわゆる持ち株分だけを相続税の対象にするという厚生省の案を自民党さんも受け入れておられるけれども、実は大蔵省がうんとおっしゃらないということです。しかし、もはやそろそろ交代期に来ております。これは中小企業の一般とどこが違うかと言いますと、中小企業の場合は配当して、配当金でもって、おやじさんが子供へ譲って、そして今度それで相続税を払うということができますが、これは配当が禁止されておるでしょう。だからこれができないのです。だから確実に世代がかわるときは解散をするか、医療の経験のない金持ちに病院を渡して、金もうけの病院に渡さなければならないという形になってきている。これは困るのです。したがって、これはそのことを中小企業の状態と同じようにさせていくべきだと考えておりますが、どうでしょうか。
  200. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 ただいまお示しの医療法人の相続税の問題でございますが、医療法人につきましては、確かに医療法の規定によりまして、いまお話しのございましたように配当が禁止されております。そのことと、お話の中にもございましたように比較的優等な立地をしておられるということから、かなりの含み資産がある。それが現実に相続税の課税上問題になって、医療の継続上支障が起こっておるという御指摘でございます。私どももお話がございましていろいろ検討を加えてみたわけでございますが、業態、業種によって税負担が変わってまいるということは、非常に税の体系としては問題が多いと思います。  いまお話しの、配当が禁止されておるから、したがって留保が多くなる、その点を考慮してはどうかという御提言だと思いますが、医療法人の持ち分は一般の会社の出資と同様に譲渡が可能でございます。したがいまして、含み資産を持ったまま、または将来の事業に対する支配権という形で相応の資産価値を持っておりまして、これを処分されてしまいますと、たとえばその場合に相続税の納税を猶予したままで処分されてしまいますと、また非常に課税の公平を害するような困った事態が起こってくるというふうに思います。現在、租税特別措置法の規定によりまして、診療報酬の単価を比較的低額に抑えるとか、医療に対する人的な支配が及ばないようにするとか、持ち分を全く持たないとか、そういう特定医療法人という制度が設けられております。医療法人が特定医療法人に移行いたしますれば、これはそもそも持ち分がないわけでございますから課税という問題は起こらない。それが一番基本的な解決かというふうに存ずる次第でございます。
  201. 塚本三郎

    ○塚本委員 それはいかぬのですよ。あなた、そう言って逃げるのだけれども、二千五、六百件の中で百件ないのですよ、特定のは。というのは、持ち分がなくなってしまえば公平のようでございますけれども企業というのは持ち分によって支配権が及ぶのです。公立病院見てみなさい、みんな赤字になってしまうのです、無責任体制になってしまって。同じ料金取っておってもなぜ公立病院は赤字になるのですか。持ち分がはっきりしていませんから、自分の医療だ、自分の企業だという意識がお医者様の中でもなくなってしまうから、赤字ばかりになってしまうのじゃありませんか。また、要らぬこと言うなと言ってお医者さん同士がばらばらになってしまいますよ。だから持ち分は放したくない。それがあるからこそ企業経営が健全になっているのじゃありませんか。無責任体制に病院を追い込もうとするのですか。その折衷案として厚生省が苦労なさったのだし、自民党の社会部会だって御承認いただいておるのですよ。この際はっきりと踏み切られたらどうですか。  もう一遍答弁してください。
  202. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 お答えいたします。  定款によりまして、たとえば持ち分を持たないということにいたします。出資額面を超える部分は払い戻しをしない、それから解散の際には、その部分は国、地方公共団体に帰属するということを定款で決めたら、それについては相続税の納税を猶予してはどうかということでございますけれども、これにつきましても、やはり定款でございますから、医療法人の定款変更によって税の負担の回避を図るということが可能になるわけでございます。したがいまして、定款だけで保障されておるという制度につきましては、やはり問題が残ろうかというふうに考えておる次第であります。
  203. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、それは役人さんの答弁を聞いておると、いつまでたってもこんななんですよ。だれが考えたって合理的な厚生省案をそのままのめばいいんでしょう。そして解散したときにがっぽり取ったら同じことじゃありませんか、小さいのを少しずつ取るよりも、そうして健全にした方が。いまのような状態で、株を売ればいいに決まっております。お医者さんでないような一般の事業家が、やることがないから病院の株を買ってやろうじゃないか、どこかの企業が乗り出したようでございますけれども、そんなことをされたら医療はごちゃごちゃになってしまいますよ。大蔵大臣、この際はやはり厚生省の考え方をすぱっとお受けになるべきだということを思いますけれども、どうでしょうか。
  204. 金子一平

    金子(一)国務大臣 税のたてまえに関するいろんな問題を含んでおるようでございますから、今後ひとつ厚生省とも連絡しながら、十分検討させていただきます。
  205. 塚本三郎

    ○塚本委員 厚生大臣、よく聞いておいてちょうだい。十分意見をくんでやるという大蔵大臣の前向きの回答でございますからね。その点確認をとっておきます。  それから、同じく中小企業の問題として、実は昨年十二月一日からいわゆるトラックの過積み禁止が強化されてまいりました。私はその道交法の改正について、旧法の状態から比べてその罰則の適用を強化したことは決して悪いことではないと思っております。しかしいわゆる、運輸省あるいは警察庁がその当時考えたとは違った形が出てきてしまったということで、気がつかなかったわけじゃないでしょうけれども、法改正実施以来いまだ二カ月の経過にすぎませんが、その現象を述べてみますと、運賃の高騰、それに伴う資材の高騰及び道路の混乱、ひいては車両不足から積み荷の到着遅延、滞貨の増大、そして車を買おうといたしましても七月まで間に合わない。仕方がないからいまの車でもって長時間運転をさせなければならない。むしろこれが危険な状態まで出てきておることは御承知のとおりでございます。  したがって、この際、車両制限令だとか構造令だとか、あるいは運送車両法だとかいうことで決められた昭和二十六年の法律、それは最高が二十トン、こうなっているのですが、あれから比べて車は五十倍でございます。道路予算もおおよそそれくらいだろうと思います。そうして車の強度も五倍ほどになっておるようであります。したがって、少しこれは手直しをしないと無理がある。だから、この点、建設省、運輸省あるいは警察庁等が集まっていただきまして、たとえば二十トンを二十五トンにする、あるいは二トン積みでも三トンまで積むことができれば、三トンまで車検を受け直すことによってそれを可能にするというような形で緩和しないと、これはいけないと思うのです。車をすぐと言ってみたって運転手が間に合いません。車も七月までは一台も手に入らないのですね。みんな業者は大騒動しておるのです。考えてみると、昭和二十六年から道路もすばらしく、車もすばらしくよくなったんだから、車をよけい走らせるよりも、目方は少しぐらい余分に積んでも、その方が日本経済のためにもなるということですから、いわゆる補正みたいに諸般の手直しをするということを提議したいと思いますが、担当大臣、ちょっと答えてください。
  206. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 一般道路の新築並びに改築につきまして、二十トンまたは重量トンにおきまして十四トン、これで今日まで整備を進めておることは、ただいまお述べになったとおりでございます。直ちにこれを重量をふやすことに対しましては、既存の橋梁のかけかえあるいは補強等による巨額の費用、長年月を要しますので、また舗装を早く傷めますこと、このためになお交通公害や交通事故の問題も激化させるおそれがございますので、直ちにこれを変えることはできませんが、建設省といたしましては、現在でも高速道路並びにこれに関連する重要国道については三十四トン、あるいは一般国道の場合二十七トン、それにいまのトレーラー荷重形式を入れさせていただきまして四十三トンまでいけるという方法で、現在の車の需要に応じてまいるという姿で今後ともに進めてまいりたい、かように考えております。
  207. 塚本三郎

    ○塚本委員 お役人さんはそれでいいんだよ、いかなくたって税金取って賄えばいいのだから。だけれども、民間の企業はそんなわけにいかないのですよ、間に合わなければお客様は逃げていってしまうのですから。だから、一々トレーラーのときは許可を取り、進む道まで許可を取る。しかも、それがために二カ月かかっているのですよ。そんなことで一般企業がやっていかれると思いますか。だから、普通のダンプなりトラックなりそういうものについては、いま走っているままでいいから、二十トンを二十五トンぐらいまで改めてやってちょうだい、あるいは二トンのものなら三トンの車検を受けることによってそれで何ともなくなるじゃありませんか、こうやって、びくびく運んでいくというようなことを改めろ、こういうことを申し上げておるのです。そういうことを御検討いただいたらどうでしょうか。
  208. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 御趣旨よくわかりましたから、検討はさせていただきますが、橋梁その他におきましてそれだけの姿ができるかどうか、これは技術的な問題でございますので、私としましてもよく検討させていただきたいと存じます。
  209. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、田舎にある木橋で危ない橋などは、何トン以上は通っていけませんといまでも表示が出ているでしょう。そういうふうにしておけばいいのですよ。だから、そういう措置を講じて前向きにやってやってちょうだい。  それからもう一つ、大臣、トレーラーの場合でも、分離不可能な単体となっておりますけれども、しかし、大きな鉄などのごときはやはりコイルで巻いてある。トラックなら二つ三つ積むことができるけれども、トレーラーは一個でなければいけない、こういうことになっている。一個もいいのですけれども、通路までまた許可を得なければだめだ、こういう形があるのです。いまここでイエス、ノーは言えませんけれども、総合的に、いわゆる過積み規制を強化したために幾つかの問題でひいては社会的に物価高になり交通混乱を来しておる、こういう問題の手直しをやってほしいという提案でございますから、ひとつ前向きに答えていただきたいと思います。これは運輸大臣から答えていただきましょうか。
  210. 森山欽司

    森山国務大臣 昨年の十二月、道交法を改正いたしまして、酔っぱらい運転とか暴走族の取り締まりとか、それとあわせてこの過積みの禁止という問題がやかましくなって、先ほどお話しのようないろいろな問題が出てきたことは事実であります。それで、これをこのままにほうっておけるかという問題は確かにあります。しかし、先ほど建設大臣からお話がありましたように、舗装及び橋梁等を保全するための道路構造令、車両制限令で車両の総重量が決められておる。また、私の方の運輸省関係でも、道路運送車両の保安基準で、車両の安全性を確保する見地から車両の総重量というものを規定しておる。そこで、車両総重量の限度値を引き上げて車両の大型化を図ったり、現在使用されているトラックの最大積載量を引き上げることは、ブレーキ距離の増長とか走行安定性の悪化等、安全性が損なわれることになって、現に過積みをやって重大事故に至った例が数多くあるということであります。  したがって、道路、車両構造について交通安全上多くの難点があるため、いま直ちに積載量を増大することはむずかしいのじゃないかというのが、事務的検討の当面の結論でありますが、一つは、昨年の十二月から始まってまだまる二月間のことでございまして、これからの推移も見ながら、それから、ただいま御心配になられたような問題は、政治家としてこのままでほうっておいていいのかということでございますから、問題を解決するように今後根源的かつ総合的な対策が何かないかということで、積極的にこの問題と取り組んでみたい。しかし、率直に言って、いま直ちに打開策があるという約束はできません。しかし、そういうことは大きな問題である、政治家としてほうっておいていいかという意味でこれに積極的に取り組んで対処をしたい、こういうことでございます。
  211. 塚本三郎

    ○塚本委員 運輸大臣、希望だけ申し上げておきますが、幾つかにひずみができるのです。建設省でも御承知のとおり、砂利だって、過積みでもって実勢価格として納入させ、積載しておるのですよ。それじゃ、十二月一日からいわゆる過積みができなくなった砂利みたいなものは運賃が半分でございます、補正予算で倍に組むだけの腹がありますか、ないでしょう。みんなそういうふうにひずみが、大きいゼネコンから、おまえのところへおまえのところへと押しつけられて、小さいところだけが結局のところ深夜まで運転させられて、むしろ過積みよりも深夜運転の危険の方が大きいということも、大臣、耳に入っているはずなんです。だから、総合的にもう一遍検討してください。それでないと、やはり小さいところへ全部しわが寄ってしまう。もっと言いますなら、スペアタイヤも外しましょう、あるいはまた補助タンクも外しましょう、急ブレーキをかけて後ろからくっと来たら、運転台へ全部なだれ込まぬための鉄のさくもみんな外しましょう、そうして運転が危険になっても積み荷だけは確保しないと採算に合わない、こういうことの危険性の方が増大しておるのですよ。まして車がないから長時間労働で夜までもう一回運ばなければなりません。この居眠り運転の方がこれからこわくなってきますよ。だから考えてみると、一つがいいと思っても、こちらへ波及したら、それを手直しすることがやはり行政の務めではないかという形から御提案申し上げておるわけでございます。  次に、法務大臣、このほど古井法務大臣は北朝鮮代表の入国を許可するがごとき報道がなされております。従来は、スポーツ、文化関係以外の人は国交が回復されていない国については許可を与えていない慣例であります。とりわけ朝鮮半島の問題は、昨年の朝鮮統一のための第二回世界会議の場でも、受け入れ側の信頼できる代表から誓約書が交わされていたのにかかわらず忠実に守られず、法務省が厳重な警告書を出した苦い経験があります。したがって、この際、私たち民社党は入国せしめるべきではないと判断いたしますが、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
  212. 古井喜實

    古井国務大臣 ただいまの問題は、いま外務省とよく御相談して検討中でありますが、いままでの例をおっしゃって、入ってきてから入国条件を守らないとか、こういうことはいつの場合でも困るですから、手放しではいままでも入れておりませんし、今後考えるにしたって、これは厳重な条件、日本政府あるいは日本政府の基本方針の悪口は言わぬとか、そういうふうな条件はつけなければならぬし、厳重に守ってもらわなければならぬのですが、いま当面の問題は、韓国との関係もあったりいたしますもので、実はいま外務省とよく話し合いをしておるところで、その上で結論を出したい、慎重に検討しておる、こういう状況であります。
  213. 塚本三郎

    ○塚本委員 今度の団長さんは金英男という方ですが、ナンバー九だそうでございますが、北朝鮮という国家は、党の地位は、国家の行政よりも党が上に立っておるのです。その指導者がいわゆる日本政府の許可を得て来るということは、やがて日本が北朝鮮と国交を回復することを前提とみなされるわけでございます。それは、総理はすでにそういう腹を固めての措置と受け取れるかどうかという点、総理、どういうふうに御判断なさいますか。
  214. 園田直

    ○園田国務大臣 大平内閣における朝鮮の南北に対する外交方針はいささかも変更ないことをまず第一に申し上げておきます。  第二番目には、いまの入国の問題は、南北対話再開あるいは両方の権衡、こういうことを考えながらよく検討してまいるつもりでございます。
  215. 塚本三郎

    ○塚本委員 外務大臣、それならばお尋ねいたしますが、もっと人道的な問題で私は提起してみたいと思います。  昭和三十四年、日本と北朝鮮との両赤十字間で北朝鮮帰還協定が結ばれ、これに基づいてこれまで九万二千人の在日朝鮮人が北朝鮮に帰還しています。その中には、夫と同行した日本人国籍の妻が約二千人、まあ実数は千八百名ほどと言われています。ところがそのうちの大半が音信不通のため、日本の家族はその安否を気遣っています。たまたま日本の家族に届いた手紙にも「鳥でないのが残念です」という望郷の思いにあふれたものが多く、たとえば次のような手紙が多く届いております。「長ぐつがないと歩けないので送ってほしい」とか「腕時計がないと困るので、質流れのものでもいいから送ってちょうだい」あるいは「私はお母さん、お姉さんたちに会える日を待っております」「お米を食べないから乳が出ないのです、乳首がないので困っております」あるいは「うどん、お魚、一度食べてみたい」こういう手紙等がたくさん届いておるのでございます。一回でもそういうものが届く人はまだいいんです。北朝鮮に行ってから一回も手紙をもらってない人がたくさんあります。里帰りした人は一人もおりません。無事でいるのかどうかも心配であります。確かめたいという家族が集まって、日本人妻自由往来実現運動の会を組織しております。政府国会、朝鮮総連、国連、国際赤十字委員会、国際婦人メキシコ大会などで訴え続けておりまするが、いまだに実現しておりません。本院でもわが党の永末英一議員が三たびにわたって時の外務大臣、大平さん、宮澤さんに訴えられました。日赤の代表も善処方を約束されました。しかし一度もとにかく何らの返事もいただけないという状態であります。  大体、日本の国籍を持って行っておる千八百人の日本人ですよ。日本の旅券を持って行きながら安否を調べられないというこんなばかなこと、赤十字の回答もいただけないというこういう状態になっているのですよ。これは一体どうしたものでございましょうか、外務大臣。
  216. 園田直

    ○園田国務大臣 これは御発言のとおりでありまして、家族から依頼があって、日本の赤十字社を通じ向こうの赤十字会に照会をしておる安否の調査が二百三名、里帰りの依頼が六名でございます。いままでのところ全然回答はございません。これは入国の問題とは別個の問題でありますが、人道上の問題でありますから、南北の動きにも応じつつ、さらにこれを強く要請していきたいと考えております。
  217. 塚本三郎

    ○塚本委員 いまだに日赤でさえも相手にしていただけないということは、これは人道問題として、大平総理も外務大臣のときに御善処方を約束なさったのですが、相手のあることだからいたし方ございませんけれども、この点、しかと腹に置いていただきたい。一体、日本はこれで独立国であろうかというような心配さえもしております。  それから、ついでに古井法務大臣、新聞によりますと、韓国を甘やかし過ぎたという発言が相当問題になっておりまするが、これはどういうことを指しておっしゃるのですか。
  218. 古井喜實

    古井国務大臣 お話しの問題は、私は、朝鮮半島二つが対立して緊張が激化していくという方向でなしに、緊張を緩和し、いつの日にか、なるならなるべく早くこれは一つのものに統一していくという方向に動いていくことが、あそこに住まっておる人々のためにも、また隣におるわれわれの平和のためにも、そういう方向はよいことだと思っておるのです。最近も、南の方にも北の方にも話し合いをしようかという機運が起こっておるかのように聞くのであります。それから取り巻く環境も米中接近なんという大きなことが起こって、やはりその方向を助成するような環境に動いておるように思うのであります。そこで、われわれの方もやはり少しでもそういう方向が早く実現していくようにということをこいねがうことがよいことだ、私はそう思っておるのであります。どういう言葉で言ったか知りませんが、真意はそういうことでありまして、こっちはこっちだ、向こうは向こうだということはないようにしていきたいということ……
  219. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、わかりました。そういう真意なら賛成いたしますから、甘やかし過ぎたという言葉だけはなかったことにしておいていただかないと、何が甘やかしたのだということになりますよ。だから、その御趣旨は私ども賛成なんです。恐らくそれはだれも反対しないのです。だけれども、甘やかし過ぎたと言うと、何か悪いことがあってそれを隠蔽したりかばっているように見えるのですよ。それは困るということなんです。それをもう一度御答弁いただきたい。
  220. 古井喜實

    古井国務大臣 どういう言葉であったか知りませんが、こっちはこっち、あっちはあっちという式にひどく差別的にこっちが考えるような態度はだんだん緩和していく必要があるじゃないか。それについて強いてお尋ねであれば、なぜ新聞記者とのやりとりであれかあれに似たような言葉が出たかと申しますと、たとえば金大中事件にしましても、あれは外交決着を一応つけたわけですな。つけたからこれは尊重しますよ。これをどうこうせいとは言いませんけれども、しかしあれにしたって、私は当時は関係しておりませんけれども、気持ちの上であの経過と措置というのは釈然といたしません。そういうことが通っておるという事実がありますので、何もこれはこっちから先に立って言ったことじゃないんで、話のやりとりのうちにああいうことが出た、こういうことでありますから、そういうように御了解願いたいと思います。
  221. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは法務大臣、あのときは日本政府のやり方が間違っておったという政府に対する批判をなさった、こういうことですか。(発言する者あり)
  222. 古井喜實

    古井国務大臣 いま申し上げましたように、あれはああいうふうに外交的、政治的に決着がついたことですから、それは国際信義からいってもこの事実は尊重しなければならぬ、そう言っているんですよ。ただし、当時の経過についていろいろな感想を持つことはあり得るので、そういうことを話のやりとりのうちに、こっちが決めたものを発表したとかという話じゃないんですから、そういう軽いことなんですから、そういう意味でひとつ御了解願いたいと思うのです。  なお、私も大体宮仕えが少ないものですから、言葉がどうも余り用心深くないものですから、ぜいぜい大平総理を見習ってこれから言葉遣いも慎重にやっていこうと思います。
  223. 塚本三郎

    ○塚本委員 何のことだかわかりませんけれども、最後だけは、言い過ぎたから慎重にやりたいというような若干いわゆる訂正ぎみの結論のようでございますが、しかし、金大中事件というのは私たちも明確に回答しなさいと政府に迫っておるのでございます。それをそれで法務大臣が底意に置いておやりになるならば、法務大臣、もう一遍新しくおやりになるべきだと思いますが、総理、どうでしょうか。(発言する者あり)
  224. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 いま法務大臣政府のとった措置は尊重しなければならぬと言われたことでございますから、御了承いただきます。
  225. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは訂正したものと受けとめてようございますか、法務大臣
  226. 古井喜實

    古井国務大臣 私の真意を先ほど申し上げたのですから、それでこれは御了解願いたいと思うのです。決まったものを発表したのじゃないんですから、新聞のやりとりなんですから、真意を御了解願いたい。
  227. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは甘やかし過ぎたという意見が、こちらの問題ではありませんか、金大中のその処置の問題は。(「金大中問題をやってもらうまで答弁保留して予算委員会中止させた方がいいよ」と呼び、その他発言する者あり)もう一度、法務大臣。(「中断ぜい」と呼び、その他発言する者あり)
  228. 竹下登

    竹下委員長 御静粛に願います。
  229. 塚本三郎

    ○塚本委員 与野党ともに中断せよという話でございますから、ちょっと一度中断していただいて、ちょっと相談させていただきますから……。(発言する者あり)
  230. 竹下登

    竹下委員長 それでは、委員長から申し上げます。  いささか員外発言等もございまして静粛を欠いておりましたので、静粛の中でいま一度塚本委員から御質問をいただき、それに対して法務大臣から答弁をしてもらうことにいたします。塚本君。
  231. 塚本三郎

    ○塚本委員 先ほど申し上げましたように、甘やかし過ぎということはどういうことなのかということについて、結論的には訂正するようなしないようなことがありましたので、その点取り消すなら取り消すとはっきりとしておいていただきたいと思います。
  232. 古井喜實

    古井国務大臣 申すまでもなしに、あの決着は尊重すると、こういうことをいま繰り返して申し上げたので、でありますから真意はこのとおりでありまして、言葉はどういうことを言ったか、新聞記者とのやりとりのことでありますので、ここで申し上げた言葉でもなし、あれは真意に沿わぬ点がある、決着は尊重すると、こういうことですから、それでこれは御了承願いたいと思います。
  233. 塚本三郎

    ○塚本委員 法務大臣、私は金大中事件のことを言っておるんじゃなくて、甘やかし過ぎたということが大きな疑惑を呼んでいる。といいまするのは、私どもは韓国と親しい間柄をとっております。したがって、金大中の事件については、親しいなるがためによけいに厳正に処置しなければならぬということは、別個言っているんです。だけれども政府が甘やかし過ぎたと言うことは容易ならざることだから、どういうことが甘やかし過ぎたと言うのか。あるいはそれがいわゆるつい言葉で来てしまったならば、それは取り消すとか、その甘やかし過ぎたという言葉の尻だけはきちっとしておいていただきたい、こういうことで、金大中のことを私は言っているのじゃないのです。どうですか。
  234. 古井喜實

    古井国務大臣 取り消せとおっしゃるので、取り消すというか新聞とのやりとりでありますから、この議場の問題ではなかったのですけれども──それはそうでありましょう。なかったんですけれども、これが言葉が私の真意に沿わぬものであるということであるなら、その点はそのとおり沿わないものだと──ここで言った言葉でないから取り消す、取り消さぬじゃありませんけれども、それはそういうふうにひとつ御了解願いたいと思います。
  235. 竹下登

    竹下委員長 園田外務大臣。
  236. 園田直

    ○園田国務大臣 恐れ入りますが、発言をお許し願いたいと思います。  いまの問題は二国間に関する問題で、言葉遣いではございますが重大でございまするので、その後私は法務大臣に真意をただし、法務大臣からそのときの模様を承り、その旨を関係国にも通報して了承を得たところでございますので、お許しを願いたいと存じます。
  237. 塚本三郎

    ○塚本委員 ですから、これは真意でなかったから、もしそういう言葉が真意に受け取られるならそれは取り消せというふうに受けとめてようございますね。
  238. 古井喜實

    古井国務大臣 取り消すというか、間違いであったということです、それが真意に沿わぬものであれば。
  239. 塚本三郎

    ○塚本委員 委員長、これで時間も来ちゃったのですけれども、五分ほどお許しをいただけますか。
  240. 竹下登

    竹下委員長 結構です。
  241. 塚本三郎

    ○塚本委員 それじゃ五分間。  総理が本会議におきまして全逓の違法ストにつきまして触れられたとき、議事録につきまして若干訂正の議論が出ております。しかし、ことしの年末からあるいは年始にかけて最も大きなニュースは、年賀状が正月に届くかどうかということでございました。これは重要な国民に対する政治不信の問題につながってまいります。年賀状が元日はおろか三日目にも不十分で、一月九日に至ってなお八五%、ついに十五日のあのお年玉つきの抽せんができませんでした。これは国民にも重要なことです。  ここにある雑誌の一つがありますので、ちょっと読んでみます。「郵便局の「ヨタ者」たち」と、こう書いてあるのです。「全逓が今回の闘争で盛んに使っている「ブツダメ」という言葉を御存じだろうか。たとえば「圧倒的にブツダメを推し進めよう」とか、「ブツダメを背景にマル生闘争勝利へ」とか。聞くところによると「ブツダメ」とは郵便物をためることだそうだ。かの動労でさえ、「順法闘争」と気取っても、「乗客に迷惑かけて当局を困らせる」とまでは、遠慮していわなかった。」この年賀状配達率は九日で八五%というふうな状態でありますけれども、ともかく全郵政、これは民社党を支持しておるところの同盟の労働組合ですが、全郵政と十三万に上るアルバイトによってやっと七割を配ったという状態であります。したがって、二十五万人の職員のうちわずか六万人の全郵政と非組合の諸君でこういうことをなし遂げてきたんです。こういうことが職場において行われるということはきわめて遺憾なことでございます。しかも、どういうふうにしてやっているか。とにかく局によっては、配達員でありながら一日に一通も配達に行かない、そういう局がたくさんある。東京だけでも、世田谷に三十四人、玉川局に二十人、荻窪局に十八人、江戸川局に十五人、城東局に十二人、こういうふうにして、一日に一通か二通しか配らぬ職員はざらだと書いてあるのでございます。  こんなばかな職場があるでございましょうか。こういう状態を放置しておいて、そうして料金だけ上げるなんということになったら大変なことだと言わざるを得ません。しかもこの処分に対して、ほんの目に余るところの者をやっただけ。十万人からの違反者がおりながら、実は累積で一万人か二万人程度。当局に言わせると、さわらぬ神にたたりなしと、こうなんです。許すなら結構です。いままでのやり方が間違っておったと反省してくださるならば、私たちは大いに歓迎であります。しかし、さらに強硬にやろうというような形でやられて、そして当局がさわらぬ神にたたりなしでは、これでは、一生懸命死にもの狂いで配ってくださった全郵政の諸君やあるいは管理職の諸君に申しわけないじゃございませんか。信賞必罰こそがいわゆる職場における規律を正す最も大切なことだというふうに思いますが、担当大臣どうですか。
  242. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘の問題については、多数の郵便局の間には、そうした事態が起こりまして大変御迷惑をおかけしたということを私どもも承知をいたしておりますが、大部分の局については、いま御指摘のようなことも行われた中に一生懸命努力をしていただいて成績をおさめてまいったということもまた御承知のとおりでございます。処分の問題につきましては、当然信賞必罰として、私どもも一生懸命努力をした人に対して、またいろいろな違法行為などが行われたそうしたものに対しましては、十分処分も厳重にして今後の措置に備えていきたい、こういうふうに考えております。
  243. 塚本三郎

    ○塚本委員 一日に五百通配った人と五十通か百通配った人と同じように扱うことが公平だという一部の労働組合の主張でございますけれども、五百配った人は五百配った人、百しか配らなかった人は百しか配らなかった人、局に出てくるけれども配ることを邪魔した人は邪魔した人、それはそれにふさわしいように待遇をするのが公平だと思います。それを同じようにということで解決しようとしたら、いつまでたっても郵政問題は解決いたしません。だから、過半数郵政の諸君がおるところは──わずか半分を超えたところの北陸三県では、一〇〇%全部一日にいわゆる完配をいたしております。それを考えたならば、まじめにやる人たちが昇進できるようにするという今日の態度は厳正に守っていただく。「ヨタ者」と雑誌に書かれる諸君を平等に扱ったならば、まじめに働く諸君がかわいそうであり、国民の郵便の職場が荒廃をする。このことだけきちっとはっきりと言明をしていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わります。大臣、どうぞ。それから総理にも決意のほどを一言。
  244. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 ただいま塚本さんから御指摘の点は、私どももそのように考えて進みたいと思っております。
  245. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 今回の郵政労使の年末交渉に際しまして、全逓はいろいろな態様の闘争戦術を行いました。これらの闘争のうちで、郵便や年賀に多大の影響を与えました戦術である怠業行為等は、国家公務員法や公労法に照らしまして違法なものであったと考えております。私は、今後労使双方がその責任を踏まえまして、平和的に交渉を遂げて労働秩序が回復されるように期待しております。
  246. 塚本三郎

    ○塚本委員 ありがとうございました。
  247. 竹下登

    竹下委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  248. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国政の上の当面の一連の問題について、大平総理初め関係閣僚に質問したいと思います。  まず最初グラマンの問題でありますが、グラマンダグラスの問題は集中審議も予定されており、また、特別委員会も設けられておりますので、私はここでは特に総理に聞く必要のある幾つかの大事な点だけ、政治姿勢の問題も含めて御質問したいと思います。  まず第一に、ハワイ会談の問題ですね。これは以前から問題になっておりましたが、あのロッキードのトライスターの場合にもこのハワイ会談でニクソン、田中両氏の間で話し合われたと言われ、それからまた今度の早期警戒機E2Cの問題についてもやはりこの会談の機会に日米間で話し合われたということがいろいろ情報なり報道として言われております。そして、総理は、この会談に外務大臣として参加されたわけですから、私は総理にその点詳しく伺いたいと思うのですが、総理のこれまでの答弁を伺っておりますと、一つは、もう四、五年前ですか、ロッキードが問題になったときに、ハワイ会談では公式、非公式ともにそういう飛行機の問題は話し合われなかったという答弁がありました。それから、先日の本会議では多少慎重になられて、私が出席した会談ではその話は出なかった、私が出席しなかった会談で話されたことを報告されていないというようにかなり限定的な答弁でありました。それで私、その点について伺いたいのですが、ニクソン大統領と田中角榮氏が会談をされたすべての席に大平さんは出られていたのかどうか、そのことをまず伺いたいと思います。
  249. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 これは、首脳会談は全体会議とそれから全体会議でない会談、すなわち田中・ニクソン会談とそれからロジャース・大平会談という二つに分かれてやりました会合もありました。でございますから、全部の会談に私が出ておったとは言えません。
  250. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、大平さんが出られていないニクソン・田中会談でこの航空機の問題が話し合われたか話し合われなかったかということは、大平さんはどなたからお聞きになったのでしょうか。
  251. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 私は当時外務大臣でございますから、私の出ない会談につきましても、そこに出ておりました者から報告は受けましたし、実務者会談が別にありましたが、その結果につきましても報告は受けました。
  252. 不破哲三

    不破委員 ニクソン・田中会談はさしで行われたとよく言われますけれども、そのニクソン・田中会談について、大平さんが出られなかった会談の中身はだれからお聞きになったのでしょうか。
  253. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 当時駐米大使は牛場さんでありまして、牛場さんは田中さんの方の会談に出ておられまして、だれから聞いたか私も記憶がはっきりいたしませんけれども、本省の方にその結果を皆電報を打ちますので、そういったことにも目を通しまして、こういう会合であったということは私が見まして本省に電報を打ったことでございます。
  254. 不破哲三

    不破委員 しかしこの種の問題は、いま裁判で行われておりますように、話し合われたとしても、話し合われた中身が外務省に打つ電報の中に載るような、そういう性格のものではないわけですね。だからこそ、裁判で果たしてそれが何であったのかということも問題になっているわけで、大平さんは、しばしばハワイ会談には疑惑なしということを言われるのですが、どうもいまのことを伺っておりますと、大平さんがみずから出た会談については直接証言できる立場にあっても、そういうようなややこしいことを、いわば表に出ない形で話し合われた可能性が深い会談、それについてはどうも伝聞証拠しかお持ちでないように思うのですが、その点はいかがでしょう。
  255. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 重要な会談でございますから、その会談の内容につきまして、それを記録いたしまして、大切な外交文書として保存しておく必要もございますので、重要な内容につきましてそれを触れずに置くようなことは私は考えられないと思います。
  256. 不破哲三

    不破委員 しかし、考えられないことが起きたから、一国のかつての総理が、総理時代の行動のためにいま裁判にかけられているわけですから。  私、なお念のために伺いたいのですが、たとえばアメリカのグリーン国務次官補は、首脳会談の際に行われた首脳以外のレベルの会談、つまりアメリカの側ではグリーン国務次官補、それから日本の側ではそれに当たる日本政府高官との間で行われた非公式の会談で、E2Cの問題や対潜哨戒機の問題を話し合ったということを公的な場で述べているわけですね。そういうことをあわせて考えますと、大平さんはあの会談の際に、ニクソン、田中両氏の間で行われた会談や、それからそれ以外の政府高官同士の間で行われた公式、非公式の会談で大平さんに報告されていないことは行われなかった、つまりすべてのことを私、報告を受けているということを国会で責任を持って証言といいますか、確言できるかどうか、そのことを伺いたいのです。
  257. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 私が出ました会合、それから私が受けた報告、それに関する限りにおきましては、国会でも外務大臣を通じて申し上げておりますように、いま問題になっているようなことは議題にも話題にもならなかったと確信しております。
  258. 不破哲三

    不破委員 大平さんがしばしばハワイ会談に疑惑なしということを言われるのですけれども、いま伺ってみても、疑惑なしというのは、公式のルートで外務大臣であった大平さんに報告された限りでは疑惑がないということの以上に出ないと思うのですね。ですから、私はこの点でも、疑惑なしということで簡単に当時の外務大臣の責任や現在の総理の責任を解消しないで、相手はアメリカの当時のやはり当局者がはっきり場所も指定し、どのホテルでどういう時期に日本のどういうレベルの会談でこのことを話したということを証言し、それからまた、工作を頼んだ当のグラマン社に対しても、こういうことを話し合って大体意は通じたからということを言っているわけですから、この点は私は、どんな会談が行われて、公式、非公式のどの会談にだれが出席をして、そしてという詳細ですね、これをぜひこの予算委員会に報告、提出願いたいということを思うのですが、いかがでしょうか。
  259. 園田直

    ○園田国務大臣 ハワイ会談につきましては、予算委員会その他国会で御質問があってから調査をしては、これはあるいは怠慢とおしかりを受けますので、前もって詳細に検討しておるところであります。外務省のまず記録、公式会談、非公式会談その他一切、どの会談でも、外務省があるいは職務上あるいは通訳として出るわけでありますから、記録があるわけでありますが、記録は全然ございません。なお、当時出席をしました外務省の随員、これは首席随員の鶴見君ががんで死亡しておりますが、他は全部健在でございますから、一人一人メモなり記憶があるかという調査をいたしましたが、ございません。しかし、おっしゃるとおり米国の元国務次官補がああいう発言をしておるところでありますから、その記録があるのか、どういう記録かという調査をいましておるところであります。その上でさらに検討するつもりでありますが、ここ数日中に御報告できると存じます。
  260. 不破哲三

    不破委員 先ほどの大平さんの話ですと、いろいろ非公式の会談その他を含めて、大事なことは全部本省に送電している。送電しているというのは記録が残るということなんですね。いまの園田さんのお話を伺いますと、その当時の公式会談以外何の記録もない。何の記録もないようにされたということは、かえって国民の側から見ると一層疑惑に包まれるわけですが、その点はいかがでしょう。
  261. 園田直

    ○園田国務大臣 私の発言とあなたの意見は違うようでありますが、公式、非公式の記録は何もないということではございません。公式会談も非公式会談も、その他の非公式と言えないような会談における記録も、全部調べましたが、それには飛行機の機種の問題その他は一切出ておりません、残っておりません、こういう意味であります。しかし、向こうと食い違っておるからさらに照会をし、検討をもう一回やります、こういうことであります。
  262. 不破哲三

    不破委員 この点は、向こうと食い違っているばかりでなしに、あのロッキード裁判で検事側の冒頭陳述にも、何人かの証人を挙げて、証人といいますか人を挙げて、田中角榮氏から直接ハワイ会談でニクソンから頼まれたということを聞いた話が何人かある。それからまた、アメリカの側では、トライスターの問題についても、E2Cの問題についても、責任あるところからそういう話が繰り返し出ている。ただ、日本外務省の記録だけがそれと合わないという状態なんですね。この点はやはり徹底的に究明を要することなので、きょうはこれ以上申し上げませんが、いままでに外務省が調べ上げられた結果だけでもこの予算委員会に提出願いたいと思うのですが、いかがでしょう。つまり、どんな会議が行われたかという詳細ですね。
  263. 園田直

    ○園田国務大臣 会議その他は後で報告いたしますが、結果は先ほど申し上げた以外に何もありません。
  264. 不破哲三

    不破委員 次の問題は、この疑惑に包まれたE2Cの問題と予算の問題なんですが、大平さんは何遍も、疑惑は疑惑として徹底的に究明するが、しかしE2Cの採用はそういう問題とは別個に、純粋に防衛上の理由から決定したのだから、これはそれとして切り離して扱ってほしい、こう言われておりますね。しかし、この問題に疑惑があることは認められておられるようですが、大平さんが解明をしなければいけないという疑惑はどういう疑惑なのか、それをちょっと伺いたいと思うのです。
  265. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 いや、疑惑があるとして問われておるということを承知しておるわけでございまして、それで捜査当局も捜査を開始したということでございますし、国会におかれましても論議が展開されておるということは承知いたしておるわけでございますが、それはそれといたしまして、そういう疑惑の究明ということはそれとしておやりいただくのは結構でございますけれども予算の計上、執行ということにつきましては、ひとつ政府の方は、防衛上の見地からやらしていただきたい、そういう立場でございます。
  266. 不破哲三

    不破委員 それで、その解明すべき疑惑ですね。これはこれまでSECの報告や、あるいはグラマン社側の証言や、それからまた日商岩井関係から出てきた事実や、そういうものでも明らかなように、E2Cを日本政府、自衛隊に採用させるために工作をしろ、その工作が行われた疑惑なんですね。  それで、私どもの議員団の正森議員や、あるいは参議院の内藤議員がグラマン社の元社長であるチータム氏と会ったときに、どういう意図で工作をしたかということをはっきり言っているわけですが、一つは、要するにE2Cがいかに日本にとって必要なものかということを働きかける。第二に、この早期警戒機を日本が採用する場合、国産から輸入に切りかえるように働きかける。第三に、その場合に日本政府としての採用の順位といいますか、どれだけ早くこれを取り入れるか。必要と認めても後回しにしないで、早く取り入れるように優先順位を先にさせるように働きかける。そして第四に、それを成功させるために、貿易の不均衡の是正、ドル減らしの問題とパッケージで日本政府がこれを採用するように働きかける。この四つのことを目的にして働きかけたのだということを言っているわけですね。つまり、疑惑というのは何かというと、その間にはすでに不幸な自殺事件が出たりしたような日商岩井カーン氏との密約とか、いろいろな汚いことが出ておりますけれども、要するに、目的というのは、日本政府の意思決定過程に働きかけて、そしてチターム氏が目指したようなことをやらせるために、いろいろな代理人も選び、それから金も使い、表に出せない契約も結んで働きかけた。これが本当に言われているとおりであるのかどうか、それともシロなのか、これが私は疑惑だと思うのですが、大体大まかなところ、大平さんもそういうふうに考えられていると考えてよろしいでしょうか。
  267. 山下元利

    山下国務大臣 私から申し上げることについて、ただいまの御質疑に対して申し上げたいと思いますが、このE2Cにつきましては、率直に申しまして、早くからこれは早期警戒機が必要である、したがってある時期においては、もし国産でできるならばそれを研究しようということがございました。また、その裏には、その当時アメリカが開発しておりましたところのE2シリーズのリリースと申しますか、これは日本へ譲ってもらえないかもしれないということがあったわけでございますから、国産にしたいという話もあった。しかし、このような高価な飛行機を日本で独自で開発することはなかなか経費的にも大変だということもあったわけでございます。そのところ、そのうちにこのE2シリーズが日本にリリースしてもいいという意向が伝わってきたのが、たしかあれが昭和四十八年ごろでございます。したがってわれわれは、この事実は、この飛行機は、いろいろございますけれども、競争機種がないのであります。早期警戒機という立場からしますならば、E2Cは実はこれは競争機種はない。したがって、これの導入を私ども考えたわけでございますが、ただ、慎重の上にも慎重を期して、いままでずいぶん調べました。そして、この選定の過程においても不正はない。しかも競争機種はない、どうしても国防上必要であるから、このように国防会議の議を経て御審議をいただいておるわけでございます。したがいまして、いろいろ競争があるとかということでなくて、またあるいは国産を輸入に変えるとかいう問題ではなくて、そうした事情でありますことを私から申し上げておきたいと思うわけであります。
  268. 不破哲三

    不破委員 いま山下さんが説明されたことは、今度の疑惑が起きる前説明されていた筋道なんですね。つまり、大方の方はそういうことで進んでいたんだろうと思っていた。ところが、そのやさきにアメリカのSECの方から、実はその裏に工作があったということが一月四日に発表されて、それが日本では一月五日に報道されて、初めてこのグラマンのE2Cの選定経過に疑惑があるということになったわけですね。ですから、いままで防衛庁関係者説明されていたとおりであったのか、それともSECで発表されたような疑惑の問題がその間に介在をしていたのか、そしてそれが政府の意思決定過程、国防会議の意思決定過程、防衛庁の意思決定過程に影響していたかどうか、これを解明するのが私は疑惑の解明という意味だと思うのですが、いかがでしょうか。これは総理に伺いたいのです。
  269. 山下元利

    山下国務大臣 このSECの報告については、私から申すまでもなく、それはもう翻訳もできておりますし、私どももその文章をしさいに点検いたしまして、なお、この解明につきましては防衛庁だけではできません。それぞれしかるべき官庁において解明が進められておりますし、今後も続くと思いますけれども、私どもも、私どもできる範囲におきましてこのSECの報告につきまして確かめました。あるいは確約書をとるとか何かいたしましたが、前段申し上げましたこととあわせまして、私どもとしては──私どもとしてはですよ、もちろんこれはこれからさらに捜査当局における解明が続きますし、私はぜひとも国民のためにも解明していただきたいと思いますが、私どもの知る限りにおきましては、先ほど申しましたような形で機種は選定せられておりますし、そしてSECの報告につきましてもしさいに点検いたしましたところ、私どもは機種選定については不正はない、このように考えておる次第であります。
  270. 不破哲三

    不破委員 この問題については、防衛庁というのはいわば、言葉は悪いですけれども、意思決定過程が問題になるわけですから、疑惑について、被疑者と言うと悪いけれども、そういう立場にあるわけですね。それで、従来そういう問題が説明されていた。ところが疑惑が出てきた。その疑惑について本当かどうかを解明するわけですから、それを従来の説明だけではわれわれ受け取りかねるわけです。そしてまた、一月の五日にその疑惑がSECとして発表されたものが日本の側に手に入って、翻訳の全文が手に入ったかどうかわかりませんけれども、それが入ったとしても、一月十一日の夜中に疑惑なしということで決定するというのは、私は大変神わざだと思うのですね。  それで、一月十一日に決定したときのことで伺いたいのですが、たとえば日商岩井カーン氏の間に密約があったということについては、この国防会議で決定したときに御存じだったのでしょうか。調べられたのでしょうか。
  271. 山下元利

    山下国務大臣 アメリカのSECの報告書がわが国に報道せられました事実につきましては、いま御指摘のとおりでございます。そして、私どもがこのE2Cの導入について国防会議の議をいたしましたのは一月十一日でございます。その間におきまして私どももできる限りの努力をいたしましたが、ただ、はっきり申し上げますと、いま、防衛庁は何か被疑者というふうな御発言がありましたが、これは大変私は、国の防衛を担当する責任ある官庁といたしまして、そのお言葉をお取り消し願いたいと思います。そして、私はけさほどの委員会審議において申し上げましたけれども、できる限りの資料提出いたしますが、第三者の間におきます問題につきましては、それはそれぞれの問題でございます。そのことをはっきり申し上げまして、私どもとしてはできる限りのことを解明いたしました。なお私どもは、私どもの手の及ばぬ限りにおきますところの問題についてはしかるべく解明が続けられると思いますけれども、先ほどの被疑者という言葉だけははなはだいかがに思います。(不破委員「密約は知っていたのですか」と呼ぶ)そのことについては、私どもは第三者のことについては今日申すことではございません。コメントすることではございません。
  272. 不破哲三

    不破委員 だから私は、言葉は悪いがと言ったのですよ。つまり、疑惑を解明する、国防会議防衛庁がE2Cを採用したりPXLを採用したりする、この採用の決定の過程に疑惑に当たるようなことがあるかないかを調べるのが疑惑の解明なんですから。だからその点では、言葉は悪いが、そういう点を調べなければいけない立場にあるということを申し上げたので、私は取り消す理由は何もないと思うのです。そして、そのことについて言いますと、たとえばそういう疑惑がないということで決定したということになりますと、密約が明らかになって、アメリカ筋から明らかになったのがアメリカで一月十一日ですね。日本で報道されたのが国防会議の決定の翌日ですよ。それからまた、日商岩井の亡くなった島田常務が、それは本当だということを発表したのが一月二十五日ですよ。ですから、私がこれは神わざだと申し上げたのは、あれだけ重大な疑惑が一月五日に日本で報道されて、そしてその疑惑に当たるようなことがあったのかなかったのかということを政府が責任持って調べられたはずがないわけなんです。疑惑の中身はだんだん出てきているわけですから。そして、それがもし疑惑があるとすれば、この疑惑というのは意思決定過程の中に影響を及ぼしたかどうかということが焦点なんですから、もし大平さんが、この点は純粋に疑惑なしに決められたということを断定されてこの予算提出されているんだとしたら、これはもう、疑惑と言葉で言うけれども、シロだということを初めから前提にしてそして国会に臨んでいることになるし、それとも、本当にシロかクロかをはっきりしなければいけない問題が、政治の信義にかかわる問題として、施政方針演説に言われたように、あると考えていたのだったら、これは切り離してやることはできないはずなんです。その点では、大平さんが大蔵大臣だった当時の三木内閣は、あのP3Cの問題が問題になったときに、疑惑の解明なしに機種の選定はないということを方針にして、まあわれわれから言えば不満がありますが、検察当局のこの問題では刑事事件なしという結論を出すまでP3Cの選定、採択の決定を待ったというのがあるわけですが、当時その内閣に属していた大平さんが、今度は、まさに疑惑の解明国会でこれからやろうとしている、大平さん自身もこれは政治の信義にかかわる問題だと言って重視している、その問題の解明を待たずしてシロだという結論を出されたのはどこに理由があるのか、それを伺いたいと思うのです。──総理に聞いているのです。
  273. 山下元利

    山下国務大臣 私からまず補足的に申し上げます。  総理は、疑惑は疑惑として解明する、しかしこの機種選定については防衛庁の意見にしたのである。それで、いま言われた疑惑の解明なくして選定なしというお話がございましたから私は出てきたわけですけれども、これは、機種選定について疑惑があれば私はいけないと思います。私は、いやしくも一月十一日の国防会議において、このことをどうぞ原案にお入れいただきたいとお願いしました限りは、このわれわれにおける機種選定においていささかの疑惑もないという確信を持ちましたからこそお願いしているわけでございまして、その点だけは申し上げたいと思って参ったわけであります。
  274. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 私は、政府を預かる者といたしまして、防衛庁のことにつきましては防衛庁の責任者の判断をできるだけ尊重しなければならぬと考えております。この問題につきまして、防衛庁の方で、早期導入の必要がある、機種選定について過ちはございません、ぜひ予算化をして早期導入について了承を得たいということでございました。したがって、私は防衛庁の判断を尊重いたしまして予算化をすることにいたしました。これは不破さんから申しますと、これに絡まる疑惑があるのにいたしたということについて軽率だというおしかりがあるのかもしれませんけれども、私といたしましては、防衛庁を信じてそういう決断をいたしたわけでございますが、その決断が最終的にもし間違っておれば、当然私が責任を負わなければいかぬと思っています。
  275. 不破哲三

    不破委員 もっぱら防衛庁を信じての決断だというお話ですが、私は、先ほど山下さんが、機種がいろいろある場合は疑惑があり得るが、機種は一つしかないのだからということはやはり大きな問題だと思うのです。と申しますのは、チータム氏自身が言っておるように、早く買わせる、この国会でも、なぜこんなに急いで買わなければいけないのかということがずいぶん議論になっておりますが、優先順位を先にして早く買わせるように工作をしたということを言っているわけです。ただ、一種類が相手であってもその疑惑は十分あるわけで、これを解明しないまま、疑惑の渦中にある飛行機を買うことを決めたというのは、戦前戦後を通じて大平内閣のこの行為が初めてではないかと私は思うのですが、これは非常に重大なことだ。その点で私どもは、以前からE2C予算の削除を要求しておりますが、このことを重ねて申し上げて、あとの議論は次に譲りたいと思います。  それから、第三に、政治姿勢の問題で伺いたいのですが、私どもがこのロッキードやグラマンの問題を非常に重視いたしますのは、日本の政治の問題としても、これは単なる政治献金一般ではなしに、外国企業の献金が問題になる。つまり、日本の政治に対する外国のいわば介入に属する、日本の政治の自主性にかかわる問題、それだけにこれは重大だというように考えておるわけですが、特に日本では公職選挙法で、現在では政治資金規正法でありますが、そこで、一般の法人からの献金は禁止されていないが、外国人や外国の法人あるいは外国の団体からの献金は、昭和二十九年以来厳重に禁止されているというように考えております。その精神の根本には、やはり日本の政治の自主性を大事にするということがあると思いますが、法務大臣、その点いかがでしょうか。
  276. 古井喜實

    古井国務大臣 私が答弁申し上げるのが適当かどうかわかりませんですけれども、いまの、外国の商社企業などから金が入ってきて、それが日本の政治に影響を及ぼす、こういうことは政治資金規正法などの精神からいっても非常にまずいことであるということはそのとおりだろうと思うのであります。それといま目の前の問題とどう絡んでくるか、それはまた別の問題としてお尋ねなどに応じて見解を申し上げたいと思います。
  277. 不破哲三

    不破委員 それで、政治姿勢の問題として伺いたいのですが、この問題をよく、刑事上の問題と道義上の問題といいますか、両面から考えますけれども、刑事上の問題として扱います場合には、どうしても時効の問題など出てきて、かなり重大な事実があってもいわば裁判になじまぬという問題がありますね。しかし、私は国政に携わる者としての道義上の問題を考えると、たとえば時効の問題なんか抜きにして、やはり外国の企業の金で政治が動かされたり、あるいはアメリカのCIAの資金が流れたという話がかなり責任あるところから何遍か報じられたこともありますけれども、そういう問題が現実に明らかになった場合には、たとえば刑事上の時効の問題があっても、国民や国会の前に政府としてやはり事実を明らかにする、そしてそういう疑惑のようなものは一掃するというのが当然政府としてあるいは総理としてとるべき態度であろうと思うのです。その点、念のために伺っておきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  278. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 いま私どもがその中にある政治体制というのは、一つは民主主義であり、一つは自由主義で、自由主義の立場から申しますと、個人の人権というものをできるだけ尊重しなければならぬことだと思うのでございます。しかし、民主主義の立場からいうと、国民の多数の意思というものをこれまたできるだけ尊重しなければいかぬという立場にあろうかと思います。したがって、政府は、一方におきまして刑事責任を明らかにするという立場が一つあるわけでございます。それは捜査当局が現にやっておられることでございますから、厳正にやっていかなければならない。それに政府が圧力などかけてはいかぬと思います。捜査当局を信頼して、その解明を厳正にやっていただきたいと思います。  そうすると、残った問題は、あなたがいま言われる道義的、政治的責任を民主主義、自由主義の体制下においてどのように政府は心得たらいいか、国会は心得たらいいかという問題が提起されておると思うのでございます。私、この問題は大変むずかしい問題だと思って考えあぐんでおるところでございますが、ただ言えることは、一般の人であれば、できるだけ疑わしきは罰せずというような処置が望ましいのかもしれませんけれども国会議員でございますとかあるいは公務員というような立場になりますと、民主主義の立場からいうと、政治責任、道義責任というようなものをないがしろにしたらいかぬのじゃないかという感じがいたします。それをどのような程度、どのような方法でやっていくべきかということにつきましては、この問題の解明が進んでおるようでございますけれども政府においてもとくとひとつ考えさせていただきたいと思っています。
  279. 不破哲三

    不破委員 つかぬことを伺いますが、大平さんは作家の井上靖さんと御面識がありますか。──大平さんは、作家の井上靖さんと去年対談されたことがありますね。その席で、私ここにその対談の記録を持っているのですが、そういうことに関連して非常に大事なことを言われているのです。というのは、これは実は「一枚の絵」という美術雑誌で、それの去年の六月号なのですが、その中で、この編集者であり美術関係の仕事をされている竹田厳道さんと井上靖さんと大平さんが、たしか去年の四月だと思いますけれども、対談をされている。そして、ここに大平さんがなかなかいい顔で笑われている写真なども載っておるわけですが、ここで田中角榮氏論がやられているのですね。  ちょっと読んでみますと、「僕は田中内閣の外務大臣になって彼のパートナーなんだが、彼はなんでも肝心なところを相談しないから失敗するんだよ。あれはとっくりと相談してくれたらね。」そう言った後で、「私は、こういうことを田中さんに言ったことがある。池田内閣が出来たとき、その時は現役でしたがある政界の先輩が、官房長官だった私にある浪人を紹介して、昭和三十五年の総選挙の時、百万ドル、三億六千万円の現金をとってくれという。自民党は財界から金を集めてやるが、これは国際的にアメリカの金なんです。そういうことは駄目だから、貧乏は貧乏なりに自分で総選挙をやりますと言ったが、全く執拗にやってきて、どうしても取れという。それを断わり抜いたんですよ。するとその人は、大平は別なルートから金をもらっているから断わったんではないかというんですね。僕はロッキード事件など全然意識しないで、こんな話があったと話をしたんですが、彼はそれを聞いていた。どうしてあんなふうになったのか……。まだ糾明されてないが、彼はおもしろ味はあるんだけど、慎重を欠くね。」こういう議論を展開されておるわけですね。  これは、大平さんの田中角榮氏論としても、大平さんは断ったが、田中氏は慎重さを欠いて断らなかったように読み取れる文章なので、私は非常に興味を持ったのですが、それ以上に重大なのは、昭和三十五年、一九六〇年、大平さんが池田内閣の官房長官だったときに、政界のさる先輩から、ある浪人を介して、アメリカの資金百万ドルを受け取れと言って工作をかけられた。大平さんは断られたから、この対談でも、対談の相手は大平さんの政治信条をほめられていますけれども、しかし私は、この事実は非常に重大だと思うのです。そして、これは、推測をいたしますと、昭和三十五年という時点は、第一次ロッキード・グラマン戦争で、本当に新聞の社説でも何遍も書かれたように、アメリカからの資金が飛び回って、その間にいろいろな浪人が介在していたという有名な話です。  また、ある面では、これは昨年でしたか、アメリカのケネディ政権の国務次官補であるヒルズマン氏が、ケネディ政権の国務次官補として就任したときにCIAの報告を受けたら、アイク政権の時代のCIAが日本の政党に金をずっと供給していたのを知って驚いたということがありました。このアイク政権の時代というのが一九六〇年まで続いているわけですね。これはどういうことかわかりませんけれども、航空機汚職としてはあの第一次ロッキード・グラマン戦争が始まりだということは天下周知の事実で、大平さんが、どういうお金になるか知らないが、そういうお金を持った政界のさる先輩からある浪人を介して、断ったにしても工作を受けたというのが事実であるとすれば、私はこれは現在の事実を解明する上でも非常に重大な点だと思うのですね。この点について、大平さんは一体だれからどの浪人を介して、そしてどういう性格の金を提供するという提案を受けたのか述べていただきたいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  280. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 総選挙が三十五年の秋予定されておりまして、その総選挙にお役に立ちたいという話があるがということでございましたので、外国の話でございましたので、総選挙は自分の方の金でやります、それは御免こうむりますというまでの話でございまして、それ以上のものではありません。
  281. 不破哲三

    不破委員 断られた立場はそれでわかりますが、しかし、いまはそういうことから始まった航空機汚職の疑獄の究明が日本の国政上重大な問題なんですね。大平さんは、たとえば黙ってお金を見て、これがアメリカから来たものか日本から来たものかわかるわけないわけですから、説明を受けたと思うのですが、これはどういう性格の金なんですか。
  282. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 どういう性格のお金か、お金も見ないのですから──そういう話があったということでございまして、どんなお金か、だれが出そうとしておるのかということまで私は聞きませんでした。
  283. 不破哲三

    不破委員 しかし、日本の金でなしにアメリカから来たお金だとわかったのでしょう。なぜわかったのですか。
  284. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 来た金でもないのですが、そういう話を持ってきた。そういう話はどうも御免こうむりたいということであったわけです。
  285. 不破哲三

    不破委員 しかし、これがアメリカの資金だということを大平さんがわかったから断られたのでしょう。  では聞き直しますが、浪人というのはだれですか。いまロッキードの裁判で出ているような人と関係がありますか。
  286. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 そういう方はすでに物故された人でございまして、名前は御遠慮いたします。
  287. 不破哲三

    不破委員 しかし、ただ選挙のときに資金を提供したいという話であれば、これが受け取れる財界の金か、それとも大平さんの立場から言って受け取れない外国籍の金か、これはわからないわけでしょう。大平さんはその話を持ってこられたときに、これはアメリカ筋の金だからといってお断りになった。それはなぜわかったかを言っていただければわかるわけですよ。
  288. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 外国筋の金だというような話でありましたから、それはお断りいたしますというまでの話でございまして、どこのどなたのお金か、そこにお金があるわけでも何んでもございませんし、本当の話かどうかもわかりませんし、お断りしたわけです。
  289. 不破哲三

    不破委員 それでは、その浪人を紹介した政界の先輩というのはどなたですか。
  290. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 そういうことは申し上げるわけにまいりません。
  291. 不破哲三

    不破委員 しかし、これは私は非常に重大なことだと思うのですよ。いまのたとえばロッキードにしても、ダグラスにしてもあるいはボーイングにしても、グラマンにしても、日本の民間や自衛隊がアメリカから飛行機を買うというときには必ず汚職の問題、腐敗の問題、疑惑の問題がつきまとう。それはどこから始まったかと言えば、第一次グラマン・ロッキード戦争から始まっていることは隠れもないことなんですね。それでその時期にそうと思われる資金の提供の工作を、大平さんの言葉によれば、全く執拗にやってきたというから一回だけじゃないわけですね。何回も何回も繰り返し受けている。つまり、日本で行われたこの汚職の表に出た限りでは、一番近いところで大平さんは目撃されているわけですから、これをやはり国民と国会の前に明らかにして、そして疑惑の解明にその面から資する、これは当時の官房長官であった大平さんの立場から言っても、あるいは今日疑惑の解明に責任を負っている自民党の総裁の立場から言っても私は非常に重大なことだと思うのですが、その点について、個人の名前は言えないとかというようなことでこの大事な問題を回避される政治姿勢では、日本の政治の信義にかかわる問題として、行数は短かったけれども、あれだけ施政方針演説で強調された大平さんの立場から言っても、私は大変矛盾することだと思うのですが、いかがでしょうか。
  292. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 そんなことまで一々追及されては大変迷惑をいたします。そういうお話があって断ったということにすぎませんので、それを、なぜいまあなたに御報告しなければならぬのか、私はそんな立場でないと思います。
  293. 不破哲三

    不破委員 大平さんが疑惑の中心にいるということを言っているわけではないのですよ。大平さんが日本の国政の責任者として、その当時は官房長官としてそう重大視されなかったかもしれませんが、それから後、これだけ日本の政界が航空機汚職によって腐敗してきている、政財界に腐敗の問題が起きているという事態に照らして見るならば、その真実を目撃者として明らかにされるのは私は当然だと思うのですが、これは委員長にひとつお願いをしたいのですが、この点について、内容の報告をちゃんと大平さんから発言を求めるということをぜひお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
  294. 竹下登

    竹下委員長 いまの質疑の過程においてそれぞれ両者の意見が発表されておりますので、それで私は引き続いて質疑を続行していただきたいと思います。
  295. 不破哲三

    不破委員 この問題について中身は言えないというのが大平さんの立場なんですね。しかし、私はこれは国政上の問題として非常に重大な問題なんで、ここですぐ言えないなら、中身について明らかにするように理事会でぜひ検討願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  296. 竹下登

    竹下委員長 その問題について理事会で相談するということをいまここで確約するわけにはまいりません。(正森委員「当然すべきじゃないですか。ものすごく大事なことじゃないですか。答弁させてください」と呼ぶ)言えないということをちゃんと答弁しておるわけでございますから。
  297. 不破哲三

    不破委員 これは委員会としても非常に大事なことだと思うので、私は重ねて委員長にもお願いをしますし、大平さんにも、疑惑の解明ということはまさにこういうことをふたをしないで、一つ一つ明らかにすることから生まれるわけですから、日本の政治全体に、国民の前で責任を負う政治家なら、ぜひこの点を明らかにしてもらいたいということを重ねて申し上げて、次へ進みたいと思います。  グラマンの問題、いまの問題を含めまして集中審議その他で今後とも追及いたしますが、次の問題は経済の問題です。  経済の問題について、私、大平さんの施政方針演説その他を伺っておりまして非常に一つの違和感を持ちますのは、全体として大体経済の困難は打開された、そして、不況の問題で残っているのは不況感ぐらいだということをテレビの討論で言われております。  確かに生産はある程度回復をしておりますし、それからまた、特に大企業を中心にした企業の経営はかなり好転をして、戦後最高の収益ということも言われておりますけれども、たとえば中小企業の倒産は一カ月千件以上という倒産件数が四十カ月も続いている。あるいは雇用の問題でも、百二十万を超える失業者という状態が非常に長く続いている。こういうのは見通しもない。国民の生活と仕事の面からすれば、これは非常に重大な危機的な状態が続いているわけですね。その点で、大体経済の困難の峠は越したというような形で臨まれたらこれは困るわけで、やはりいまの危機を国民の立場でどう打開するかという点から経済の運営の問題に当たってほしいわけですが、そういう角度から幾つかの問題を取り上げて伺いたいのです。  いまの経済問題で、一つは物価の問題です。  大平さんも施政方針演説の中で、物価の点では慎重に動向を見守る必要がある、なかなかいろいろな危険な要素があるということを言われておりますが、しかし、実際に大平内閣の今度の予算や施策を見ますと、この危険な要素があるという物価問題で、物価を下げるための手だては具体的には何一つ講じられないで、実際に講じられているのは物価の値上げを促進する提案ばかりだと言わざるを得ないと思うのです。たとえば公共料金の値上げですね。これは昨年をはるかに上回って、国民への負担額だけでも一年間で、提案されているだけで一兆円をはるかに超える。あるいはもう一つの重大な問題として、国債によるインフレの危険ですね。これはきのうもきょうもいろいろ議論をされておりますから、一々細かいことは申し上げませんが、この間の大蔵省の試算でも、日本のことしの国債計上額八百億ドルというのは、アメリカとイギリスとドイツとフランス、この四カ国の国債発行額を合わせたよりも大きい。この四カ国を合わせれば、GNPでは日本の四倍を超えるわけですが、その四カ国の合計よりもはるかに大きい国債を日本が発行している。まさに破局的な状態だと思うのです。そしてこのことから来るインフレの危険、買いオペによるインフレの危険、そういうことは非常に多くの人々が心配をして警告をしている。これも今度の政府予算によって生まれた事態ですね。それからまた、これは来年実施すると言われていますが一般消費税、これが物価を直撃する税金であるということは、これを実行したヨーロッパの経験からも明らかなんですね。つまり物価は心配だ心配だと言いながら、政府の施策としては、公共料金の値上げあるいは一般消費税の提案、それからまた、もう限度を超した国債発行によるインフレの、潜在的と言いたいところですが、まさに顕在化しそうな危険、そういう手ばかりが打たれている。そういう中で、大平さんは三つの目標の一つに物価の安定を挙げていますけれども、そういうことを相殺するに足るような物価安定の強力な施策を、一体何をやろうとしているのか、それをひとつ伺いたいと思うのです。
  298. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。  いまの物価の問題でありますけれども、われわれ決して楽観してはおりません。いまあなたが御指摘になった諸点は、非常にそれぞれ物価を引き上げる要因であることを十分踏まえております。同時に、しかしいまわれわれが直面しておりますことは、物価の安定をともかく続けていきたい、そのことが一番日本の国民にとっては幸せになるということを考えて、今年度は大変円高その他の影響で順調に推移しておりますけれども、来年度の予算の編成のときに一番心を砕いたのは、この物価の安定基調を崩してはならぬ、しかし、いま御指摘のような諸点をいろいろ考えまして、それを最小限度の影響に食いとめたいということの配慮の中で、四・九%という上昇率を一応想定しておるわけであります。これを守っていくということが並み大抵でないということはよく認識しておりますし、実は昨日の閣議等におきましても、そうした要因について、さらに内閣挙げて、政府挙げて努力をしようということを決めたりしておるわけでございまして、そうした面から見ますると、決して楽観はしておらないというふうに御認識願いたいと思っております。
  299. 不破哲三

    不破委員 楽観しているかどうかを聞いたんじゃなくて、楽観できない状況の中で、その物価を抑えるためにどういう強力な施策をやろうとしているのか。上げるための施策はなかなか強力なんですよ。政府自身が認めているように、公共料金の値上げは、寄与率が去年よりもはるかに大きいだろうし、国債の圧力も、これは去年とはけた違いな重圧をかけてくるわけですね。強力な物価値上げの手を打ちながら、それを相殺するに足る物価安定の方策は何を考えているのか。いま伺っても、四・九%を容易ならないけれども守る決意ぐらいしか伺えないわけですけれども、ここに、私はいまの大平内閣の経済政策の非常に危険な側面があると思わざるを得ないのです。それで、ちょっと総論的なことですが、幾つかの側面を伺いたいのですが、その強力な施策を言ってくれますか。
  300. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 強力というのは、いろいろな表現があると思いますけれども、強力と言われないまでも、その問題について、いままでは非常に物価が安定していたという安心感がありますが、われわれはそういう安心感ではなしに、これからの趨勢を見きわめて、そして努力しようということ、その心構えが一つであります。  それからもう一つは、やはり国民がこの物価の安定について大きな深い関心を持っておられることはわかるけれども、いまおっしゃったように物価を引き下げるという努力に対してやはり強い要請を持ち、またその協力をしていただくということではないかと思うのです。いまのような日本の大きな経済になり、二百兆円を超すような大世帯になりますと、なかなか政府だけで手の打てるものではないというふうに私は認識しておりますので、日本の経済を多少前向きに大きくしていくためにも、ぜひこの際、民間の方々の協力、活力を大いに伸ばしていただきたいし、また同時に、物価安定についての、たとえばOPECの値上げとかあるいはイランの情勢とか、そうしたものを踏まえてみての石油の価格あるいは石油製品の価格に及ぼすいろいろな影響については、ぜひ業界の方々とも協力して値上げを最小限度に食いとめるということ、さらにまた、今日までのように非常に高い円であるならば輸入政策の活用も非常に効果が出てきておったのですが、しかしまだ二百円程度でございますし、われわれは一応この計画をつくった時点においての数字もありますが、そうしたような面から見て輸入政策というものも大いに積極的に展開したい。こうしたようなことによって、熱し過ぎたものは冷やしていくというようなことを弾力的に、積極的にやりたいというふうに申し上げたいと思います。
  301. 不破哲三

    不破委員 いま二度伺いましても、上げる方の政策がきわめて具体的で影響が非常に明瞭であるのに対して、これを安定させる方の施策というのは、大体旧来言われていることの繰り返しという点で、やはり非常な物価危険内閣だということを痛感せざるを得ないわけですが、ここにいまの経済情勢の、政府の政策とのかかわり合いでの非常に大きな発火点といいますか、問題点があると思うのです。  それからもう一つ伺いたいのは、円高の問題です。いま円が大体ドル二百円前後でいろいろ変動しておりますが、私が去年この予算委員会で福田内閣に質問したときは、二百四十円台でした。一年間で四十円高くなった。  ここで大平さんに伺いたいのは、政府がこれからもいろいろな計画を立て、それから国民にいろいろな生活の計画を求めるといいますか、考えるときに、一体いまのドル二百円前後というこの円レート、これが大体日本の円の実力相応のものだというふうに評価をされて今後の施策をやられるのか、あるいは余りにも実態から言えば高過ぎる、これをもっと大局から言えば引き下げるといいますか、引き下げて調整するのが政府努力方向になると考えられるか、あるいは実力はもっと強いのだから、まだまだ円が高くなってもやむを得ないというように考えられるか。これは政府のこれからの施策としても、それから国民がこれから物を考える基準としても非常に大事な点だと思うのですが、大平さんの──これはほかの大臣じゃないですよ、大平さんのこの円レートの問題についてのお考えはどのようなものかということを伺いたいと思うのです。
  302. 竹下登

    竹下委員長 江崎通産大臣。(不破委員「大平さんにわざわざ伺っておるのに……」と呼ぶ)
  303. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もし必要があれば、後から総理大臣から……(不破委員「もっぱら補足答弁に回る必要はないと思うんですがね」と呼ぶ)  物価の安定に政府はどういう効用を果たしておるのか、大変な効用を果たしておるのです。  それは第一に、一昨年来低金利政策をとってきておりますね。低金利政策をとっています。これは物価の安定にどれくらい大きな影響を与えておるか。まあ円高メリットの還元という問題は、これは外的要因でしょう。しかしその点はどうぞ御理解をお願いしたいと思います。  それから円レートの現状認識でありまするが、これは一昨年来、一年間ぐらいのうちにスミソニアンの呼称で五一%も円高であった。これはまさに不当なものだと言わざるを得ません。そればかりか、投機的な要因もございました。しかし、昨年の十一月一日以来はアメリカ側も強力なドル防衛に向かっております。すでにまた、わが国の国際収支を見ましても、だんだん黒字が縮小傾向をはっきり示しております。これはやはり先進国首脳会議においていろいろ議せられましたように、お互いの国々が積極的に協調し合うことによって適切妥当なレートが保たれるわけです。いま不破さんがおっしゃるように、一体どれくらいの金額が妥当なりや、これは重要な点でありまするが、少なくとも、さっき申し上げたような、投機的な要因を含んで五〇%以上も上がるなんというようなことが妥当とは思えません。しかし、もともとフロートしておりまするので、いまここで公式にこの程度が妥当でありますという金額をはっきり明示するということは困難性がありまするが、少なくとも現在二百一円とか二円とかというところに入っておりまするが、これ以下の形が望ましいということは言い得ると思います。
  304. 不破哲三

    不破委員 同じですか。
  305. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 為替の問題は、どのあたりが妥当かということはなかなか申し上げにくいことで、市場で決めることでございますけれども、いま通産大臣もお話がありましたように、通貨当局のいろいろな協力を通じまして、できるだけ乱高下を防いでいきたい。いま二百円前後でございますけれども、なるべくそれから大きく変動しないような配慮は加えていかなければいけないのではないかと考えております。  それから、最初の物価政策の面でございますが、物資の需給をできるだけ円滑にしなければなりませんので、その中でとりあえず一番大事なのは石油だと思っておりまして、石油の確保ということは物価政策で一番力点を置かなければいかぬことだと考えております。  それから金融面、財政面、非常に慎重に対応していかなければならぬことは当然だと思っています。
  306. 不破哲三

    不破委員 二百円以上に上がるのは食いとめたいというように受け取れるお話だったのですが、私はいまの円の実力ということは、国民の側から言えば円の購買力なんですね。購買力の点で、たとえばドルとの関係を調べてみると、たしか労働省が、これは労働省の一昨年の十二月の統計調査月報ですが、ここでアメリカドル日本の円の国内購買力の比較をやっているわけですね、かなりの調査をやって。それが調べてみますと、一九七五年時点アメリカの一ドル三百六十七円だという。日本の購買力とアメリカの購買力を比較すると三百六十七円だという。それから現在までの物価の上がり方は、消費者物価でアメリカ日本も二四、五%、大体同じですから、そうすると購買力の点から言うと、労働省の調査をもとにすれば大体ドル三百六十七円程度の実力だと出ているわけですね。それから、先日日経連が「賃金労働時間の国際比較」というのを発表したのを見ますと、これも名目的ないまのドルレートで賃金を比較しながら、同時に実購買力はどうかと比較をしている。これから逆算すると、やはり一ドル三百七十七円ぐらいの計算で日経連でも実購買力の比較をやっているわけですよ。これは二つの調査が大体一致したので、私、非常に印象深かったのですが、いま取引上ではドルが二百円だと言われているけれども、実際の購買力は三百六十円から七十円という以前のレート程度のものでしかない。そうすると、こういうものの計算は非常に複雑ですから単純には言えないけれども、やはり実力から、購買力の点から見れば非常にかけ離れた水準で推移していることは明瞭だと思うのですね。私は、いまの経済を困難にしているやはり穴の一つがここにある。つまり購買力がこんなに低いのを、無理やりいろいろな国際収支の関係で二百円前後でとまっているということになれば、これで体制化されていけばいやおうなしに二分の一の切り下げということが進行する。この切り下げに、たとえばコストの面で追いついていけないような中小企業なんかは、絶えず破壊的な圧力を受けざるを得ないわけで、これも円高倒産ということが進まざるを得ないわけですね。ですから、私、去年もこのことを申し上げたんですが、なかなか明確な答えはなかったけれども、それ以後のこういう調査でかなり実情は明確なんですから、私は、この無理ないまの一ドル二百円レートで日本の経済全体がならされて、これをこなし得る大企業だけは生き残るが、これをこなせない中小企業は淘汰されてしまうようなこういう体制は、中小企業が七割を占めるような日本の経済の中では、経済全体に大変破壊的な影響を及ぼす。この点について政府がやはり本格的に取り組まれて、何か一部には、当面の影響を考えて円が安くなるといろんな影響があるから円高への歯どめをかけるのをやめるというような説も流れておりますけれども、やはり経済の大局、国民経済の大局を考えて、単純に現状を固定化するのでない、これは本格的な取り組みを望みたいと思うのですが、その点で総理の御見解はいかがでしょうか。
  307. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 フロート制である以上、相場は市場で立つわけでございまして、これを実勢に合わしたように、いま購買力平価から考えると円は割り高じゃないかということでございますが、それに合わそうといたしましても、この制度を変えねばいけませんけれども、この制度はそう簡単にまいりませんで、これから各通貨当局の長い協力の道程において、どのようによりよい通貨制度を模索していくかの問題だと思います。したがって、急いで間に合わぬと思います。そこで、さしあたっては、乱高下を防いでいく、相場の安定を図りながら経済をどのように持っていくかということを丹念にやっていかねばいかぬと思うのでございます。  その場合、端的に言って、食料品が高いあるいは住居費が高い、これは顕著な二つの例でございます。日本の経済の構造、産業構造から申しまして、農業の問題、それから土地がこのように狭隘であるというようなところからそういう制約を受けているわけでございますが、そういう日本の産業の基礎構造それから基礎条件というものと相場との間にどのようにバランスをとりながら、漸次乖離がないように持っていくかということだと思うのでございます。にわかに持っていこうとしても無理だと思いますけれども、いま御指摘の産業構造の特殊な構造的な問題を十分頭に置いて経済政策は考えていかなければならぬのは当然のわれわれの任務だと思っております。
  308. 不破哲三

    不破委員 いまの問題は、大平さんが言われるように単なる国際間の制度の問題に還元できるものじゃなくて、この制度の中で安くなるところもあれば高くなるところもあるわけですから、その制度の中で日本がなぜ円高になるかという問題は昨年も議論いたしましたし、ほかの機会に述べましたので、きょうやりませんけれども、やはり簡単に言えば、私は日本の大企業の低コスト輸出、輸出が輸入よりもどんどん大きくなる、この問題を考えなければ解決ができないと思っておりますが、ともかくいまの円高の状態を固定化して考えないということで努力を願いたいと思うのです。  それから、三番目のやはり大事な問題は、いま不況の問題と言えば雇用の問題と言われるように、経済が回復しても雇用が回復しない、ここに問題があると思うのですね。実際に工業生産なんか調べてみますと、これは前のピークを上回っているのに、雇用の方ははるかに下がった状態にとどまっている。これははっきり言って、私は以前の不況の状態とかなり違うと思うのですよ。たとえば以前の不況の場合でしたら、不況になれば経済が収縮する、そして、てこ入れをして、生産などが上向けば雇用も拡大をする、それをやるために政府が公共投資をやる、あるいは設備投資を活発にするための投資促進策をやる、そうするとそれに従って産業も活発になれば雇用も回復する、そういうことが繰り返されてきたわけですね。ところが、いまの状態はそこに非常に大きな変化があって、たとえば投資をしても、昔だったら一定の波及効果で雇用拡大になったのだが、公共投資や設備投資をやってもそれが雇用に響かない。これまでの常識だったいろいろな波及係数とか、雇用に対する波及効果をはかる係数が全部役に立たないような事態がいま生まれている。たしかこれは労働省で、これも私の方から言っちゃって恐縮なんですが、ちょっと質問する時間が足りなくなってまいりますので、先に紹介させてもらいます。  たとえば一昨年、労働省が日本企業に、いま生産が一〇%ふえたらあなたのところはどうしますかという質問をしたのに対して、常用労働者をふやすというのは、千人以上の企業では五%しかいなかったわけですね。あとの九五%は、生産が一割ふえても労働者はふやさぬ、ふやしてもせいぜいパートだ、あとは残業をふやして対処するとか、ともかくいまの労働者をよけい働かして対処するとか、要するに生産がふえても労働者をふやさぬというものが、大企業で言えば九五%とられているという結果が労働調査で出ていますが、ここに私は問題があると思うのですね。これが、いわば減量経営という言葉まで出て、一つの企業集団全体の政策といいますか、戦略ラインといいますか、そういう方向でずっとやられている。だから、この減量経営のもとで雇用が減っている状態を調べますと、不況の産業でも減っているが、生産が活発で、たとえば電気機械産業のように生産がむしろずっと上向いているところでも減量が激しいわけですね。大体石油ショック以来減量経営が好、不況を問わず、日本の産業の全般の方針になっている。  それで、ここで四年間に三十万とか数えられる、大企業だけでもそういう大量の労働者が出ていくわけですから、多少周りで雇用対策の手を打っても、これが実際の雇用の安定という政府の目的まで届かぬわけですね。きのうも紹介されましたが、中には政府がそういう雇用対策をやってくれるなら安心して減らそうと言って、あとは大いに政府に任して減量にいそしむという企業も公然とあらわれてくる。こういう状態を正面から見てここに手を打たない限り、幾ら景気対策の基本が雇用安定だと言って声を大にしても、雇用面でいまの失業状態を回復するわけにいかぬ。  特に日本の失業は、失業統計にいろいろ問題がありまして、二・二%とか三%とかいっても、西ドイツ並みの統計にすれば一〇%近いというのが常識ですから、この点ではわれわれは数字だけでは安心できないので、いまの深刻さを考えれば考えるほど、大企業中心にとられている減量経営に対して、やはり社会的な、必要な、道理のある規制をするとか、そういうことを考えないと本当の雇用策はできないと思うのですが、その点について政府考えはいかがでしょうか。
  309. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いま労働省の調査でお話がございましたから申し上げますが、そのときの調査よりも最近の調査では企業の求人はふえております。そういう意味でいきますと、傾向としては有効求人倍率も〇・六三というようになってきておりまするし、全体的に製造業とか建築業を通じましてだんだんよくなってきているという状況でございます。ただ、それだから安心できる状態かというと、お説のとおりなかなか安心できない。特に減量経営に籍口して企業が人減らしをするのじゃないかという点につきましては、私どもも重大な関心を持っております。企業について社会的な責任を持ってもらいたい、そういうことにつきましては、私どもは通産省その他関係の省庁と連絡をいたしまして企業の社会的責任というものを強調したい、またそのような行政指導を強めていきたいと思っておりますが、ただ問題は、これを法律的に規制して、減量経営はいけないというふうにやれるかどうかとなると、なかなか問題だろうと思います。企業が生き延びるためにやむを得ず減量経営をするというものもございますので、こういう問題を一概に、しかも法律をもってやるということは適当でない、こう考えております。
  310. 不破哲三

    不破委員 それで私は、その点で日本の政治はヨーロッパに比べても大分おくれていると思うのですね。たとえばいまの日本では、よく、自由経済だから企業の減量とか解雇とか雇用とか、これは基本的には企業任せがあたりまえじゃないかという考えがかなり強いのですけれども、調べてみますと、たとえば西ドイツなんかでは、もういまから二十数年前ですね、解雇制限法というのができて、解雇制限法の第一条を見ますと、社会的に正当な事由を持たない解雇は無効であるということがうたわれて、そういう点で社会的に正当か不当かということで吟味できるような法体系があるわけですね。それから、たとえばフランスでは、一九七五年に新しい解雇制限法ができまして、これはたとえば大きな企業で五十人以上の解雇をやるようなとぎには全部許可制になっている。それで、政府当局に届け出て、この解雇が正当であるかどうか、言われた手続はちゃんとやられているかどうか、その理由が実質があるかどうか、そういうことを政府当局者が吟味してオーケーとなって、初めてこれは有効だということになる。こういう点では、やはり雇用を重視するという立場から、資本主義国の中でも解雇とか雇用の問題については社会的に必要な規制をする、法的にも措置をとるという考え方がかなり広がっていることを私はやはり日本でも学ぶべきだと思うのですね。  そういう点で、いま労働大臣が言われた点で、すべての減量経営を禁止するわけにいかぬと言われましたが、やはりそういうことを考える場合に、いま日本には基準がありませんが、社会的に不当か正当かという問題を突っ込んで考えてみる必要がある。この点で、少し新しい問題になるかもしれませんが、幾つかの角度から述べてみたいと思うのです。  一つは労働時間の問題です。私も、労働省がこの不況の中で雇用の拡大という点から労働時間問題を重視をして、たとえば各企業なんかに対して所定外労働時間をできるだけ減らせ、あるいは有給休暇は完全にとれというような指導、通達を出していることはよく知っているわけですが、しかし現実に進んでいるのはそれと逆の事態なんですね。たとえば、さっき私、投資をしても波及効果がないと言いましたが、いまの日本で設備投資で一番大きいのは電力投資でしょう。その電力投資をやった場合に一番注文が多いのは重電機部門、これは電気機械産業ですね。ここに一番波及しなければいけないのです。この電気機械産業というのは、注文は減らないのだが、減量経営という点では一番突っ込んでやっているところですね。それで、いろいろ調べてみますと、たとえば私どもが近くで調査してみますと、電機の有力な会社である東芝なんか調べてみると、最近の残業時間が平均四十三時間だ。ひどい人は百時間ぐらい残業をやっている。そういうのが統計で平気で出るわけですね。よく企業では過剰人員と言うのですけれども、これだけ残業で働かせることを前提にして過剰だと言うのは、これはやはり私は社会的に見て道理がないと思う。  それからこの間、大きな企業では最近珍しい、初めての指名解雇として沖電気というところで問題になりましたが、希望退職を募集して千人余り出たのだが、まだ足りないというので三百名指名解雇をやった。指名解雇をやった後の職場を調べてみると、残業と休日出勤が解雇以前よりもはるかに激しく行われている、こういう例が非常にあるわけですね。だから私は、いま別に法の規制があるわけではないが、これだけ雇用が不安なときに、いろいろな点で政治からサポートされて、支持されている企業が、残業なんかを野放しにしたような形で、それを前提にしてこれが過剰人員だと言って減量をするというのは、これは社会的に見て妥当性がない、そういう点は強力な行政指導が必要だというように考えるのです。これは労働の領分ですが、いかがでしょう、労働大臣。
  311. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 労働時間等の短縮の問題につきましては、労使の交渉の問題でございますが、いまお話のあったような事実がもしあるといたしますれば、そういう点について過重な時間外労働をやっておるというような場合には、行政指導を強めなければならぬということは当然でございます。
  312. 不破哲三

    不破委員 それから労働時間の問題で、私は有給休暇の問題が非常に大事だと思うのです。  これは労働省も重視をされていますが、この間の日経連の賃金、労働時間調査でも、日本労働時間がアメリカやヨーロッパに比べてけた違いに長い。そのかなりの部分は有給休暇が短過ぎるからだということを挙げているわけですね。私もいろいろ各国を調べてみると、たとえば日本では労働基準法で有給休暇というのは、勤続一年で六日から始まることになっていますが、これは国際的に言うと一九一二六年のILO条約で、一九七〇年のILO条約では勤続一年で三労働週、六労働日なら十八日、これから始まるということが多数で可決されているわけですね。実際に各国の状態を見ても、これを批准している国、しない国ありますけれども、実情は大体最低三週間というのが多数になりつつある。そういう中で日本はいまだに一九三六年並みの六から始まる有給休暇を持っている。しかもそれが、実際の調査で明らかなように半分ぐらいしか消化されないで済んでいる。これは私は非常に重大な問題だと思うのです。それでその点で特に私が感じますのは、この有給休暇がとれないという状態が、個々の労働者の自由意思じゃなしに、いわば体系的、系統的にやられている。どういうことかといいますと、これは私、自動車産業も調べましたし、電気機械産業も調べましたし、かなりの産業を調べましたが、会社が職場の生産体制を予算で組むときに出勤率を前提にするわけです。そうすると、たとえば松下の出勤率が九六%が普通ですね。日産自動車が九六%が普通。それから日立の場合は九六・五%とか。九六%、九七%という出勤率で生産の計画を組むのがあたりまえになっているのです。これは総評でも計算したことがありますが、ちゃんと有給休暇をとって、それから突発的な欠勤や休日を含めますと、九〇%に達するか達しないかというのが標準なんですね。ところが、生産の方は九六%で全部組んで、それで労働者を動かしているわけですから、これは世界でも非常に短い有給休暇をとろうと思ってもとれないのがあたりまえという体制になっている。私は、これは自然発生的に生まれているのじゃなしに、いわばその意味では生産計画によってかなり計画的、組織的にやられている結果になるわけですから、こういう点こそ労働省は通達でただ言うだけじゃなしに、実際に生産計画を組む場合に、すべての労働者が有給休暇をとれることを前提にして組むような、そういうところまで指導が必要だ。これは中小企業がやむにやまれずやっているのじゃなしに、大規模な企業が全部それでやっているわけですから、そこまでの調査と指導をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  313. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 中小企業と大企業においてやはり有給休暇のとり方というのは違うと思います。また日本人の性向としまして、なかなか休暇をとらない、与えられておってもとらないというところもあると思いますが、いま御指摘のような点、体制的にそうなっておるというような問題につきましては、私まだ事情をつまびらかにしておりませんので、よくそこら辺は調査をいたしまして、その上において適切な検討の上に対処いたしたい、こう考えます。
  314. 不破哲三

    不破委員 これはぜひ調べていただきたいのですが、私調べた限りでは、大多数の企業がそういう生産計画を組んでいます。それで過剰人員だと言うわけですね。  それで、これは実は住友銀行というところで去年の五、六月号の経済月報に、そういう点で解決をしたらどれぐらい雇用が生まれるかということを計算した数字があるのです。これはいわば銀行といいますと私側から言えば体制側のベースですから、誇張された数字とは思われないだろうと思いますのでちょっと紹介をしておきますと、たとえば有給休暇を完全にとった場合、住友銀行の計算だと九十九万人雇用がふえる。いま百万を超える完全失業者がいると言われておりますが、有給休暇を全部の産業で完全にとっただけで、それを前提にした生産を組むだけで九十九万人新しい雇用が生まれる。こういう粗計算をやっているわけですね。それからたとえば残業時間を全部なくした場合三百七十九万人ふえる。これは就業者全体を入れておりますから、私ども雇用者で計算すると二百万人台になると減ると思うのですが、そういうことが出ている。つまり労働省がいま通達で出されていることを本当に実施すると、それだけで三百万、四百万という雇用に影響するようなそういう事態があるのですね。ですから、私は減量経営という場合、過剰労働力論というのを単純に受け取らないで、やはりそこまで突っ込んだ指導が必要だということを重ねて強調したいのです。  二番目に検討したいのは労働の密度の問題です。  これは非常にむずかしい問題で、たとえば人減らしをやる。そうすると、この仕事をこれだけの人間でやるのが妥当かどうかということは、これは一般的には、企業の状況や職場の態様やありましてなかなか言えない問題だから、なかなかいままで労働の基準とかあるいは指導の中でも生まれてき得ない問題なんですけれども、しかしいまの減量経営の中ではこれが非常に大事になると思っているのです。たとえば労働が正常であれば一日働いて一晩休息すればもとへ戻る。これが一番ノーマルな状態ですね。ところがそれが過剰になってくると、これは一晩寝てももとへ戻らないで疲れが残る、これはちょっと労働強化の状態。この疲れが非常に深刻になって病気にまで発展する、これは異常な状態だと思うのですね。  それでその例として、たとえばかなり前からキーパンチャーだとかあるいは電話交換だとかという分野で頸肩腕障害、首と肩と腕の障害ですね、これが大きな問題になったのですが、私いろんな専門家に聞きましたら、外国にはない例だというのですね。つまり外国では自分の疲れがそんなに残って病気に発展するまで働く状態がない。大体それは自分のペースで働くから、いろいろ調べてみてもこういう職業病は外国に生まれないと言うのです。それが日本で生まれるというのは、私はやっぱり日本労働体制を考えてみますと、非常におくれた面の一つだと思うのですが、しかしキーパンチャーだとかあるいは金銭登録機だとか、それから電話交換とかいうところの特に女性労働者の場合にそういう病気がかなり多発をした。これについてはいままでそれは現場ではいろんなでこぼこがありますし、まだまだという問題があるにしても、これは国の政治の問題、行政の問題としてもタッチをされて、こういう例外的にといいますか、労働のテンポとかスピードとか量には余りいままでタッチしていない労働行政だが、ここまで職業病が生まれるぐらい過度になった分野にはいままでタッチをされて、たとえば作業量はこれぐらいにするとかいうことを指導された経験がおありだと思うのですが、ちょっとその点伺いたいのです。
  315. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 御指摘のとおり頸肩腕症状というような職業病が出てきていることは事実であります。それに対しましては、経済が厳しい、経営が厳しくても安全衛生の観点から適切な指導をしなければならない、こういうふうに考えておりますが、その実情につきましては、政府委員より御答弁をさせます。
  316. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 お答え申し上げます。  職業病予防対策につきましては、現在労働省でも労働災害防止計画の最重点の一つとして施策を行っております。いま御指摘のような職業病と言われるものにつきましては、これは最近技術革新による機械の新たなものの採用あるいは労働態様というようなことの変化によりまして、新しい病気として出てまいっておるわけでございますが、いま御指摘の頸肩腕症候群の問題につきましては、すでにキーパンチャーの関係については、昭和三十九年にキーパンチャー作業管理基準、それから昭和四十八年に金銭登録作業指導要領、さらに引き金つき工具作業というものにつきましての指導要領を昭和五十年に定めまして、作業時間の規制あるいは作業環境の整備、また健康診断等の健康管理等の対策を進めて、その結果の成果としては見るべきものがあるというように考えております。
  317. 不破哲三

    不破委員 それで、私大事だと思いますのは、いままでキーパンチャーとか金銭登録機とかあるいは電話交換手とか、非常に特定な分野で起きてきたこの病気が、減量経営の中で生産の基幹部門で生まれている。特にコンベヤー作業労働者ですね。このコンベヤー作業に従事している労働者が減量経営の中でどんどん仕事のピッチを上げられる。そのために、いままで職業病とは余り縁がなかったこの分野で非常に職業病が多発している、こういう状態が生まれているわけです。私は、そこまでやった減量経営というのは、この角度から言ってもやはり社会的に検討する値打ちがあるといいますか、必要があると思うわけです。  ちょっと具体例を言わないとわかりにくいと思いますので、特定な企業を挙げさせてもらいますが、たとえば先日中国から鄧小平氏が来たときに、関東では日産自動車、関西では松下電器のテレビ工場を見られたと思うのですが、あのいわば日本の、財界が考えてか一番代表的な、近代的な企業と言われるところで実は職業病が多発しているわけです。たとえば松下の関係ですが、昭和五十一年から現在までに、このコンベヤー作業労働者の中から十五名の頸肩腕症候群の職業病で認定された患者が生まれているわけですよ。これはちょうど電電公社の初期によく似ているわけですね。それで実際にこの患者たちに会ってみますと、認定されたときの病気の重さというものは相当なもので、私もこれはやはり経験しないとわからないということをさんざん言われたのですけれども、ともかく肩から手が動かない、もう日常不断に重い鉄板を首から肩に乗せられたような状態、それから痛みが頭にまで来て寝られない状態、日常の生活にも事欠くというような状況までかなり進行している患者が多いわけです。  それでその作業の状況、これはこの基準監督署に出された意見書その他から見ても、この作業のピッチはまさに超人的なんですよ。たとえば七時間半働くとすると、秒に数えて二万七千秒あるそうですが、その二万七千秒を一秒も余さずに仕事をさせるというのが基準になるわけです。だからある労働者は、これは女性労働者ですが、たとえばテレビのいろいろな配線をやる、そうすると一台の配線をやるのに、たとえば線を巻くとか、あるいはハンダをつけるとか、ビスを締めつけるとか、違った工具を使って動作を一台について約十八動作やる。その十八動作をやって一台こなすのだが、それを一日に三百二十台こなすというのですね。そうすると、二万七千秒で五千七百六十回の異った作業をやるわけですから、これはまさに息つく間もないわけです。それからまた、これはテレビのトランスを組み立てている作業についている労働者の状況を聞きましたら、一日に千二百八十台の組み立てをやる。これは一台の組み立てに約十八種の動作をやるそうですから計算すると二万五千六百回、一日二万七千秒の中で二万五千六百回の動作を要求されているわけです。これはコンベヤーですから、もうそれに追いついていかなければ、強制をされるわけです。それからまた、別のケースですが、テレビでそうやって配線されたプリントの点検をやる労働者。一台に百カ所点検する場所があるというのです。組み立ててきたものが来る。そうするとそれがハンダがついているかいないか、それから間違ってつけられていないか、その百カ所の点検をやりながら一日に五百台こなさせられる。五万カ所も点検をやるわけですね、二万七千秒の間に。そういうことが実際に減量経営で生産近代化という状態で進行している。  私、専門家の医者に聞きましたら、たとえばひじを上げたままで──ひじをつけて作業できないわけですね。ひじを上げたままで両手で作業して体を曲げて、そういう状態をやっていればこれは病気になるのはあたりまえだ。実際に聞いてみても、病気だということを言うのはなかなか勇気が要るわけです、いろいろ会社からの妨害もありますから。勇気を持って言って、届け出て、そして認定される患者は十五人だが、そこが生まれるまでの周りの労働者の初期症状というのは相当広範なものがあると思うのです。  私はそれを見たときに、日本の工場が近代的に進むのはいいのだが、その陰にこういう、ちょっと常識で考えられないような過密労働が一般的なルールとして強制される、しかもそれがまだ部分ではあるけれども、なかなか回復に時間がかかるようなそういう職業病まで現に生んで、基準監督署から認定を受けている、そういう事態というのは行政の問題としても決して放置できない問題である。  その点で考えてみますと、キーパンチャーとか、それから金銭出納機とか、先ほどの組み立ての一部のものとか、これは問題になっておりますけれども、コンベヤー作業の労働者についてはいまは行政上どんなコントロールもないわけですね。これから減量経営でいやおうなしにそういう方向が激しくなる。それから男子労働者の場合にも頸腕が出ているそうですが、腰痛というのが非常に激しくなって、これは認定でいろいろ議論がありますが、ともかく根源から言うと、いわば人間の限界にその面で挑戦させられる労働強化が原因であるわけで、この点に対する監督と指導というものがやはり求められている状態にあるというように考えているのですが、こういうコンベヤー労働者に対する指導の問題、どうなっているか、伺いたいと思います。
  318. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 コンベヤー労働者の作業時間とかそういった規制につきましては、すでにキーパンチャーに準ずるような、頸肩腕症候群に対する対策と同じような基準で行政指導をしているわけであります。
  319. 不破哲三

    不破委員 ところが、キーパンチャーに対する作業基準を読んでみましたが、そうすると、一日の実働時間は三百分に限る、つまり普通は七時間半の労働の中でも、その作業に従事するのは実働五時間分にせよと書いてあるわけですね。  それから、私電電公社の状態も調べてみましたが、電電公社ではたしか一日の実働時間が六時間五分に、そういう場合は制限されている。  ところが松下の場合で言いますと、それだけの過密労働が全くほかの労働者と、ほかの職場と同じ時間ですね。電電公社で調べてみると、五十分働いたら二十分休憩とかいう特別な状態でこの過密を何とかカバーするという体制がとられているのですが、松下で調べてみますと、百十分働いて十分休憩、そのうち三分が体操で、七分間でトイレへ行け、それからまた百十分働いて食事時間、それから百二十分働いてまた十分の休憩で、また百十分働く。全くほかの労働者と同じ状態の作業がやられているわけですね。だから私、きょう伺って、これはコンベヤー労働者に対してはキーパンチャー並みの作業管理の基準だということを伺ったのは大変収穫だと思うのですが、現実にはそうなっていない。その点でそういう行政指導がやはり必要だし、その行政指導は必ず雇用を生み出すわけですね、スピードに影響してくるわけですから。  それで特にこの点で私調べて、これは非常に大変だと思ったのは、松下では特に四十八年の石油ショックのころからこれが激しくなっているのですが、会社自体が、組み立て職場でそういうことが起きることを予見しているのですね。社内報を読んでみますと、「わが社では、頸肩腕症候群が単にタイピストや電話交換手といった特殊作業者だけの問題でなく、組立工程など製造作業全般にわたり、今後は発生してくる可能性がきわめて強いと認識しています。」社内報にはっきり書いてあるのです。これは四十九年の十月の社内報ですが。  ところが、そうやって社内報で書かれてから実際に患者が生まれて、そしてどうもその疑いがあるといって診断書を持っていっても相手にされないとか、それから休ませてもらえないとか、これを労働基準監督署に職業病で認定してもらおうと思っても、認定に会社が判こを押してくれないとか、とうとう判こを押してくれないまま自分で申請して、そして事実を調べて認定してもらうというようなケースがしばしばあるわけですね。それから、むしろそういうことを言うのは頭がおかしいのじゃないかといって、精神的な調査の方に回されたり、そういう、いわば会社自体予見していながら実際に患者が生まれると、これを抑え込んで、むしろそういうことを申告できる状態を抑え込むという風潮が非常に強い。それで、専門家に聞きますと、こういう病気は一から五まで症状のグループがあるそうですが、一か二の段階で手を打てば比較的簡単に済むものが、そういうやり方で、進行してから手を打ち出すと当人にとっても非常に重くなるということが言われているのですが、そういうことが近代的大企業の真ん中で行われている。  それからまた、そういう症状が起きながらも、さらにコンベヤーのアップも進んでいるわけですね。特に、鄧小平氏が見たテレビの組み立て工場というのは、たしかマザーラインという特別の組み立て工場のようですが、そこでは、最初は左手で取って右手で組み立てるという作業をやられていたのが、今度は途中から、左手を遊ばせるのはもったいないからというので、左手と右手を同時に動かすような作業方式に変えられて、これはきかない手を動かすのですから、病症は非常に重くなるわけですね。  そういうことが現に行われているわけで、これは実は日本の産業で行われている氷山の一角であって、コンベヤー作業がいまのように基準が明示されていなかったり、仮に、先ほど労働省で言われたように、基準があっても、それを実際に実行されていなかったり監督されていなかったりした場合には、ちょうど電電公社で初めは少なかったこの患者がある時期に多発したように、日本の産業の中に多発する危険がある。こういう点ではその面の強力な指導を求めたいし、それが必ずいまの不当な減量経営のいわば規制につながって、この面でも新しい雇用を生むこと間違いないと思いますので、特にそういうスピードの規制や労働時間の規制、さらにほかの分野で行われている健康診断の義務づけとか、そういう問題について労働省が強力な指導に当たられることを、特に雇用の問題と関連しても要望したいと思うのです。
  320. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ただいま御指摘の点に私お答え申し上げましたうち、頸肩腕症候群に関する指導に準じまして、ベルトコンベアーのシステムの労働者について指導をしているということでございますが、一層その点については、私ども実態を把握いたしまして、指導してまいりたいと思います。
  321. 不破哲三

    不破委員 それから、もう一つの減量経営の問題は、雇用の海外流出ということですね。これも非常な問題でして、私ども実際に企業ごとに、国内で減量で労働者を減らしながら、海外で労働者をふやしているという企業をずっと調べてみますと、やはりさっき言いました好況産業の中では電機ですね。それから不況産業の中では繊維が特徴的なんですよ。  たとえば、海外の「プレジデント」という雑誌の計算を使いましたが、電気機械で東芝、日立以下十社で合計してみますと、昭和四十九年から昭和五十二年まで四年間に、国内で雇用が四万五千三百四十三人減っている。同じ期間にこの企業が海外で雇用をふやしたのが二万一千三百四名ですね。それから繊維で言いますと、八社ですが、国内で三万七千二百九十名雇用を減らした企業がある。国外で同じ期間に二万七千六百十九名ふやしている。つまり、国内で減らしながら国外で子会社の工場を拡張してふやしている。これはいわば完全な雇用の輸出なんですね。  たとえば電機の場合で言いますと、輸出市場に工場をつくって、いままで国内でつくって輸出していたものを出先でつくるようにして、その分だけ国内の雇用が余ってくると過剰労働量扱いされるという事態がかなり広く生まれつつありますし、繊維の場合で言いますと、国外に生産基地をつくって、それが国内へ盛んに製品を輸入してくるものですから、これが逆に国内の企業を圧迫をして、そうして倒産とか企業の縮小とか雇用不安をつくり出す。いまの問題は、そういう海外での雇用の拡大が同時に国内の雇用不安のもとになる、こういうことが特徴的に進んでいると思うのです。この面でも、これまで日本企業の海外進出という点では、国内産業保護の立場からまずいものはチェックするという制度が制度としてはちゃんとあるわけですが、実際にはなかなか運用されてこなかった。それに加えて、いまは、そのような産業だけじゃないわけですが、これだけ国を挙げて雇用問題に取り組もうというときに、企業の行動が雇用の輸出という点でもそれに逆行することになっているという事態は、産業政策の上からいっても、これは決して放置しがたい問題だと思うわけです。  そこで、江崎さん、先ほどからお待ちいただきましたが、これは労働問題であると同時に産業問題であるし、江崎さんは特に繊維には大変詳しいと伺っておりますが、そういう雇用危機まで含めた事態を生み出しているような国外への資本の輸出の問題、私は、これはノーチェックでこれから進めるべきではない、いま繊維関係ではその面で非常に輸入も激増していますし、いろいろな分野で不安が増しているわけですが、せっかく政府がつくっている資本の海外輸出のチェックの機構をこういうときにこそ発動して、大いに国内の雇用と産業の発展の実を上げるべきだというふうに考えるのですが、通産大臣としての見解を伺いたいと思うのです。
  322. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点はきわめて深刻な問題だというふうに私どもも受け取っております。ただ問題なのは、もともとが不況産業であるというようなことから、低賃金を求めて中進国に進出するという例が多いわけですね。それが製品化して逆上陸をしてきておる、対策いかん、こういうことですね。  これはなかなか深刻な問題でございまして、低価格のものが多量に入ってくるという場合などについては制限をするやり方もないわけではありません。しかし自由貿易の原則を貫くわが国としましては、これらをチェックしたり制限するということはなかなかむずかしい。しかも中進国の場合は、韓国の場合、五十二年をとりましても、端数切り捨てで、五十億ドルの輸出に、半分程度、二十五億ドルくらいの輸入というようなインバランスもあります、などなど考えます場合に、どうしてもやはりわが国のこの構造改善事業というものに、財政面、金融面、そして税制面などで法律をお願いして、すでに措置をしておるわけでありますから、やはり川下部門と言われるアパレル部門に相当な力を入れる、今度も予算には一億五千万円、わずかではありますが、人材養成を特にアパレル部門に限って、これを目途といたしました予算を計上したわけです。そうして今後、知識集約型の、同じ繊維製品であっても日本の特色のある、しかも競合性のある商品をつくり出そうということで努力をしておるわけであります。  ただ、いま御指摘のように、きわめて先行き日本の市場が圧迫されるということが顕著なもの、これは業種、業態、資本の規模などチェックすることはできますので、そのあたりは配慮をしてまいりたいというふうに考えます。
  323. 不破哲三

    不破委員 これはもう申し上げるまでもないのですが、海外輸出のチェックは、わが国経済に重大な悪影響を及ぼすおそれがあると認められる場合には許可しないことができるという機構がちゃんとつくられているわけですから、それをぜひ──残念ながら、こういうことがありながらいままで一度も使われたことがないということが実態のようでありますから、こういう危機のときにこそ、輸入の制限ということと、それから後で日本経済を圧迫するような資本輸出の制限ということは事柄が違いますから、この点はぜひ厳重な取り組み方を要望したいと思います。  それから、四番目の問題としては、これは下請の問題なんですが、公取委員会の委員長にもお見え願っているはずですけれども、これは去年も問題にしたのですけれども、減量経営の中でやはり下請に対する圧迫が一層激しくなっているわけです。それで去年も二回にわたって通産と公取から、そういう圧迫はせぬようにという通達が出されたことは知っておりますが、しかしなかなか一片の通達では実効が保証されないで。前回問題にしたかんばん方式が広がるとか、単価の切り下げが一般化するとか、それで下請の倒産、減量経営のあれを一遍にかぶるという事態が広く生まれているのはよく知られていることなんですね。私がここで伺いたいのは、そういう問題について去年御質問したときにも、体制が非常に足りない、通達は出すけれども、その結果どうなっているかということを政治として追及をして、追跡をして、それに手を打てるような体制が非常に弱い。具体的に言えば、その面の担当官が非常に少ないということが、通産省の方からも公取委の方からもこの場で報告があったわけです。  いよいよこの問題は重大になっておりますが、もう時間がありませんから内容的に申し上げられませんが、一つだけ伺いたいのは、去年の状態から比べて、そういう面でそれを追跡して手を打てるような体制がどれくらい拡充強化されているか、そのことを公取委の委員長の方から伺っておきたいと思うのです。
  324. 橋口收

    ○橋口政府委員 現下の経済情勢等から見まして、経済的強者の地位の乱用を抑えるということは、独占禁止政策の重要な柱でございまして、昨年の二月三日に不破委員から種々御質問いただきまして、その際、将来展望も含めて公正取引委員会考え方をお示ししたのでございますが、その後の経過は、昭和五十三年度の予算に計上いたしました下請事業者に対する契約単価の不当な切り下げあるいは不当値引き等に対する一般的な調査を行ったわけでございます。そのほかに一般的な申告の事案というものもふえてきております。中小企業庁長官から措置請求の件数もふえてきておるわけでございますが、そういう情勢に対応いたしまして、従来の立入検査を含めました行政指導を強化してまいっておるわけでございまして、最後にお尋ねのございました、どの程度体制の強化ができたかということでございますが、これは昭和五十四年度予算におきまして、本局に下請の係長一名、それから地方事務所に一名、計二名の増員等、予算の額で申しますと、昨年に比べまして約二百万円近くの予算の増加が計上されておるところでございます。
  325. 不破哲三

    不破委員 いまのお話を伺いまして、体制強化したといっても一名ないし二名の強化だ、これは事態の深刻さからいってやはり非常に問題だと私は思うのです。  先日、これは新聞報道ですから真偽のほどはわかりませんが、一般消費税を導入するのに八千人の新しい税務関係の要員が要るということが報道されておりましたが、これだけ天下で悪評さくさくな一般消費税の導入に、もし政府の方で八千人もの人間の増員を考えておられるのだとしたら、それの何分の一でいいから、この下請問題とか、まさにいまの危機の中で国民が求めている分野の要員の拡充のために使っていただきたい、そういう面に回していただきたいということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、大平さん、最後ですが、私は、そうやってずっど労働時間の問題、仕事の密度の健康破壊の問題、それから海外流出の問題、下請に対する圧迫の問題、最後の問題は余り詳しく触れられませんでしたが、減量経営の問題点を検討してまいったわけですけれども、そういう面から見ても、いまの減量経営というのは、いまの日本の制度下においても考えるべきたくさんの問題を抱えていると思うのですね。ですから、これは個々のそういう労働時間の面とか過密の面とかいう点からの規制も、もちろんやっていただかなければいけませんが、そういうことの総合体として、この減量経営をいまこのまま野放しにしておいていいかどうかということは、やはり政治の問題としては共同で考え得る問題だと私は思うのです。  私どもはすべての減量経営に一律にストップしろということを言っているわけではなくて、たとえば、名前はどうでもいいのですが、国と自治体に労働者代表を含む雇用対策委員会を設けて、そこで提案されている解雇や減量経営が一体社会的に不当でないかどうか、妥当かどうかということは吟味できないにしても、不当性がないかどうかということの吟味はそこで公的な立場でして、そしてチェックするということを提案しておりますが、この提案どおりでなくても、もうすでにヨーロッパその他では制度化の始まっているそういう減量経営、解雇に対するチェックの問題について検討を、新しい問題で結構ですから願いたい、こう思うのですが、最後にその点について大平さんの見解を伺って、次の問題に移りたいと思います。
  326. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 いまの厳しい環境のもとにおきまして、経営者も雇用の維持拡大にそれなりに努力をしていただいておると思います。その面については不破さんお触れにならなかったわけでございますけれども、しかし同時に、この減量経営の一面は御指摘のような問題も含んでおるように思います。これはゆるがせにできない問題でございますので、労働省を中心に篤と検討の上、各方面の御協力を得ながら対処していきたいと思います。
  327. 不破哲三

    不破委員 では、次に安保条約の問題に移りたいと思うのです。  昨年、政府アメリカとの間に「日米防衛協力のための指針」を結ばれた。これは日本の安保や防衛と言われる問題を考える上で非常に大事な変化を引き起こしていると私は思うわけです。それで、この指針の内容の一つ一つについて、きょう伺うゆとりはないのですけれども、ともかく一つ言えることは、これまでは在日米軍は主として日本で基地を使っている、基地の使用についての態様とか内容について私ども吟味をしてきたわけですけれども、今度の「日米防衛協力のための指針」ということになりますと、これはいやおうなしにいろいろな事態に備えて自衛隊と在日米軍が共同行動、共同作戦をとる。これは有事の際にそうなるというだけではなしに、有事以前にいまから共同作戦のための共同演習とか、それから諸準備を整えるということになるわけですね。  今度の防衛協力の指針でも、有事の際としては二つのことが想定されている。第二章では日本に対する攻撃があった場合、第三章では日本以外の極東に事態が起きた場合、二つのことが想定されていて、いわば第一章で決められている共同演習とかそういう準備は二章、三章の両方に備える形になっているわけですから、これはいよいよ重大なわけですね。  そうなりますと、われわれが在日米軍の問題を考える場合でも、ただ基地を貸してある相手としてだけではなしに、いざという場合には共同で戦争をし、それからまた、それに向かって日常共同で演習をし態勢をとる、そういう相手として考えなければいけなくなるわけですから、その点では、在日米軍の問題を考える上でも非常に新しい問題がここに生まれていると私は思うわけです。  現に私どもが知っている限りでも、たとえば共同演習で言いますと、日本の海上自衛隊と米海軍の演習などは一昨年あたりから様相を異にしていて、核空母と言われる、ミッドウェーやコンステレーションを日本の海上自衛隊の護衛艦が護衛する訓練まで一昨年、昨年と──一昨年はコンステレーション、昨年はミッドウェーでやられているわけです。そういう事態ですから、私は特に、そういう在日米軍が一体どんな相手なのかという点を含めて、これから具体的な材料を出して政府に御質問したいと思うのです。  それで、きょうここで御質問したいのは、特に、山口県の岩国基地にアメリカの第一海兵航空団という部隊がおりますが、この部隊は、攻撃的な飛行機だけでいいのですが、どんな飛行機部隊から成っていて、そしてどういう任務を持った部隊なのかということを防衛庁から伺いたいと思います。
  328. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 岩国の基地に配備されております米国の第一海兵航空団麾下の航空群といたしましては、第十二海兵航空群と第十五海兵航空群でございます。そのうち戦闘のための機種という御質問でございますが、練習機は除きまして、A4Mが十六機、A6Eが十二機、それからF4J、これは最近ちょっと数字が変わりまして、練習機も若干含むと思うのでございますが、F4Jが二十四機、そのほか偵察機──偵察機はよろしゅうございますか。
  329. 不破哲三

    不破委員 結構です。  それで、この部隊はベトナムの戦争中にも、戦争があるときには必ず全隊がベトナムの現地に行って、そして一番最初に戦闘行動をやる、そういう非常に危険な出撃部隊です。それからまた朝鮮やあるいはかつて台湾海峡やラオスその他で事態が起きても、日本にいる米軍の中で一番先に出動するのがこの部隊だ。これは危険度においては一番最前線の、一番即応的な部隊なんです。そこにいま言われたような飛行機の部隊がある。  それからもう一つ伺いたいのですが、これは国会でも何回か問題になったのですが、この岩国にはMWWUの一、海兵航空団第一兵器部隊といって、兵器管理の特別な部隊があって、これが核部隊ではないかという疑惑が何回か国会でも問題になりましたが、いままで防衛庁調査されたところで、この部隊はどういう部隊であるか、それからまた、いま言ったA4E、要するにA4Mですね、スカイホークあるいはイントルーダー、ファントム、そういう攻撃部隊が核任務を持っておると見られておるかどうか、そこら辺のことを伺いたいと思うのです。
  330. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 お答えいたします。  第一海兵航空団兵器班、これは航空機の整備に当たっているというふうに了解しております。  それからA6、F4でございますけれども、これは核任務は持っていないと了解しております。
  331. 不破哲三

    不破委員 防衛庁に伺いますが、アメリカの軍隊では核に関連する要員に対して「核兵器要員信頼度計画」、これはPRPと呼んでおりますが、そういう計画がある。つまりこれは、核兵器の関連の仕事をする職務についた場合に、いざというときに、おれは核兵器を撃つのは反対だと言われては困りますから、そういうときには必ずちゃんと命令を忠実に守れるとか、それからノイローゼになって狂うと困るので、これはそういう点ではストレスのない人間だとか、聞くところによりますと、子供のときの行状から、家庭のことから全部調べ上げて、この点はこの仕事をやっていても大丈夫だということで、絶えず管理をするシステムがあると聞いておりますが、そのことはどういうシステムか御存じでしょうか。
  332. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いま御質問のシステムにつきましては、申しわけございせんけれども存じておりません。  それから、先ほど第一海兵航空団兵器班につきましては航空機の整備と申し上げましたけれども、航空機に搭載する武器の整備でございます。
  333. 不破哲三

    不破委員 いま資料をお配りしますが、実は私どもが手に入れた資料は、この岩国の基地における、いま私が言いました核兵器要員の名簿なんです。それで岩国には何千人かの部隊がいるわけですけれども、普天間にいる部隊と合わせまして第一海兵航空団の数千名のうち二百五十八名が核兵器要員として指定されておる。  それで、防衛庁が明るくないと言うので私の方から御説明しますが、この核兵器要員というのは、たとえばここに持ってきておりますのは、これは国会図書館にあったものでアメリカの議会の合同原子力委員会の議事録ですけれども、その中にもちゃんとアメリカの国防省から核兵器要員の管理方針というものが提起されているわけですね。その中にはっきり書いてあるのです。これは職務に関連したもので、アメリカの軍隊の中で核兵器に直接携わる職務についた場合、この職務についた人を厳重な、特別な監視下に置く。さっき言いましたように、命令を確実に服従できるかどうかとか、特別なストレスがないかとか、何か精神的な破綻を来さないかとか、そういうことから核兵器の確実な安全と、いざというときに確実に使えることを保障するために、そこのポストについた者は監視下に置くという計画なのです。ですから、どういう人がそのポストに当てられるか、ついているポストを見れば大体そのポストがどういう位置にあるかがわかるわけですね。それで、このポストには、この国防省の米国防総省指示書第五二一〇・四一号という文書によりますと、同じ核兵器要員でも三段階ある。その定義は、お配りした資料の後の方に国防省と陸軍省の両方のものを入れてありますから見ていただきたいのですが、一番緩いのが三番目のコントロールド・ポジション、いわば管理を要する職務ですね。これは別に核兵器を操作するわけじゃないけれども、核兵器に関係した仕事、これをやるポストをコントロールド・ポジションと言っているのです。それから、リミテッド・ポジションというのは、ふだんはそうではないが、特別な指示があれば核兵器を直接動かす、操作する立場に移り得るポジションですね。それで、一番重いのがクリティカル・ポジション、名前もクリティカルで危機的とかいうふうに訳せるのかもしれませんが、これは定義によりますと、核兵器を爆発させる技術的知識を要し、引き金を引く、実際に核兵器を爆発させることが可能なところまで核兵器に接近する職務なのですね。要するにクリティカル・ポジションというのは核兵器を実際に爆発させる、引き金を引けるところまで職務上近づくわけですね。実際に核兵器を爆発させる知識を持っている。だからこれは、アメリカの軍部の体系の中では一番厳重な、一番直接の核兵器要員がこの核兵器要員のIというクリティカル・ポジションなんです。それで、いまお配りした、われわれが手に入れた第一海兵航空団核兵器要員名簿というのは、その二百五十八名の全員について、だれそれは第一段階、だれそれは第二段階、だれそれは第三段階ときわめて明瞭に区分をしてある文書なのです。  それで、私ども調査団の内藤参議院議員がアメリカへ行って、あの証言で有名なラロック元少将に聞きましたところ、これはポストについたもので人についたものではない。だから岩国のこのポストが核兵器要員のIとして指定されているとしたら、これはそのポスト自体が核兵器の直接操作に関係あるポストだという意味であって、たまたまその力を持った人がそこに来たという意味ではない。これは国防省や陸軍省の文書から明瞭です。だからそういうポストが配置されている場合には、これはその部隊が核兵器の任務を持った部隊であることは最も近い証拠といいますか、明瞭だということを聞きました。このラロック氏の証言は、私どもがこういう公文書から調べたPRP計画、核兵器要員計画の取り扱いと合致しているわけですね。そしてこの要員は毎年毎年点検されて、一たんこれがパスしても、まずいということになれば年に大体四%から五%外されている。それぐらい厳重なポストなんですが、それを手に入れて見てみますと、大変驚くわけです。委員長、ちょっと原文を政府側に手交したいのですが、よろしいでしょうか。
  334. 竹下登

    竹下委員長 よろしゅうございます。
  335. 不破哲三

    不破委員 三通あります。  それで、お配りしたものは翻訳ですが、いま政府にその原文をお渡ししました。この原文は軍隊のような符牒で書いてありますが、これはやはり米軍が出している解読表といいますか、それで職名なんか翻訳してありますので間違ってはいないと思います。これを見ると大変驚くべきことなんですね。この時点は一九七六年三月十日のもので、三年前のものです。ベトナム戦争が終わって、あの海兵隊がベトナムから岩国に帰ってきて、いわばポストベトナムで再編成をした時点のものです。三年間ありますから、いろいろ部隊のローテーションが変わっておりまして、たとえばイントルーダーの部隊が別の部隊に変わっているとかいうことはありますけれども、基本的な構成はいまも同じですから、私どもはこの任務は引き継がれていると見ざるを得ないのです。そしてこれを調べてみますと、たとえば航空部隊の中でも、同じ攻撃機隊、戦闘機隊の中でも核を持った部隊と核を持っていない部隊は非常に整然と分かれるわけですね。ファントムというのは核可能なんだけれども、このファントムには核兵器を操作し得るパイロットは一人も配置されていないのです。ところがスカイホークとイントルーダーの部隊には、スカイホーク部隊には十八名、イントルーダー部隊には十五名、これはイントルーダーというのは複座戦闘機で二人の人間が必要ですから、計算してみると、これだけの人間がいれば常時スカイホーク十六機、イントルーダー五機がパイロットの面からいうと同時に発進できるという配備になりますけれども、そういうふうに同じ戦闘機部隊、爆撃機部隊でも任務を持っている者と任務を持っていない者では配置が違う。それから全部のパイロットがその任務を持っているわけじゃなくて、これは飛行機の数とパイロットの数を当てはめてみればわかるのですが、特定の飛行機には核用のパイロットが配置されている。私は、これはそれだけでもきわめて重大な事態だと思うのです。  それからもっと重大なといいますのは、この部隊が、先ほど航空機の持っている兵器を整備する役目だと言われた第一兵器部隊ですね、これを持っているわけですよ。これは前から岩国に関しては疑惑のあるところで、あそこが核じゃないか、建物番号千八百十、千八百十一という建物ですが、前々から疑惑のあるところなんですけれども、そこにいま配置されているこのMWWUの一という部隊は、海兵隊の名簿を見ますと、海兵隊の名簿中に海兵隊機関リストという文書がありますが、全世界の海兵隊を述べた文書の中で核・化学・生物兵器部隊といって、そういうランクに書かれている部隊が三つあるのです。これがMWWUの一と二と三なんです。二と三はアメリカ本国にあるわけですね。それで一だけが日本にある。それで、この部隊は絶えずベトナム戦争のときでもこの攻撃機部隊と一緒に行動しているわけですが、この表を見てみますと、この部隊に一番厳重に核兵器要員が配置されているわけです。私は部隊の全員は知りませんが、この間基地を調べに行きましたら、余り大きな建物じゃありませんから、かなり部隊の全員に近い者が指定されているのじゃないかと思いますが、ただMPですね。あそこにはMP、憲兵はたくさんいます。ところが全部の憲兵の中でこの第一兵器部隊の三名の憲兵だけが核兵器要員に指定されている。つまりその建物をガードすること自体が核兵器関連の仕事と指定されているわけですね。それでこの岩国の部隊はどこにも前進基地を持っていないのです。沖繩の部隊は南朝鮮に持っている。ところが岩国の部隊はどこにも前進基地を持っていないで、これが最前線なんですね。だから、どこかへ出るときにはMUU1という兵器部隊をヘリコプターに乗せて一緒に出かけていくわけです。だから、これが核任務を持っているとしたら、どこかに核の部隊があってそこから核を預かって戦争をするとは思えないわけです。何しろ海兵隊リストの中で三つしかない核兵器部隊の二つは本国にいて残りの一つが岩国にあるわけですから。それでいまその兵器を運ぶヘリコプター部隊は沖繩の普天間にあるのですよ。このヘリコプター部隊の中に、ここでもう詳しいことは言いませんが、ごらんになればわかるように、ちゃんと核要員が配置されている。これはもうきわめて整然と配置されているのです。空中給油部隊は関連職務の三だけ、ところが、兵器の輸送に当たるヘリコプター部隊の中には、いざというときに核兵器の操作ができなければいけませんから、ちゃんといざというときには核兵器の操作ができるという操作可能要員ですね、全部ヘリコプターに配置されているのです。(「見てきたようなこと言うな」と呼ぶ者あり)ちゃんとこれを見ればわかるわけです。見てきたと同じぐらいわかるんで、これはいたし方ないわけです。ですから私どもはこの資料を先ほど原文を大平さんにお渡ししましたが、内容の全訳はこれに書いたとおりです。  それからまた、このクリティカル・ポジション、コントロールド・ポジション、リミテッド・ポジション、それの意味については、そちらでお調べ願えばいいのですけれども、お渡しした文書の中に陸軍省関係と──陸軍省は若干違いますけれども、国防総省の総括文書から取った定義方法を翻訳して入れておりますし、典拠も明らかにしておりますから、これはぜひ政府の方で御吟味願いたいと思うのです。  こういう問題をいままで共産党が調べて提起しますと、一方的な資料だということで取り上げられないことがしばしばでした。去年もそうでしたが、やむを得ませんから私ども沖繩へ行きまして、沖繩の基地の司令官に会いまして確かめました。大体事実であることが、交渉でも明らかになりました。われわれいままで提起してきた資料で、事実でないと米軍から否認されたものは一部もないわけです。これは明白な事実文書であることを私責任を持って申し上げますが、その部隊とガイドラインによってこれから共同作戦しようということになるわけです。これだけのものを、野党ではありますが、私ども調査をして責任を持って政府に提案をしているわけですから、これが一体事実であるのかどうか、事実であるとすればこれは何を意味するのか、核持ち込みがないというアメリカのこれまでの言明はこれによって果たして裏づけられるのかどうか、政府の責任ある調査と対処とをお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  336. 山下元利

    山下国務大臣 日米安保体制か相互の信頼の上に立っていることは申すまでもないことでございまして、米国は核に関するわが国民感情を十分承知いたしておりますし、そして、どのような場合におきましてもわが国は非核三原則を堅持しておりまして、わが国の領域内には核兵器は絶対持ち込ませておらないことも事実でございます。  ただいまお示しの資料は私も初めてこれに接するのでございますが、ただ、従来防衛庁として申しておりますとおりに、アメリカにおいては核を扱う訓練をしている人は確かにあるようでございますが、その核を扱う訓練を受けた人たちがおるということと、先ほど来申し上げておりますところの日米安保条約の相互信頼の中においてわが国は絶対に核兵器を持ち込ませないということとは、私は決して矛盾するものではない。兵員がおることは必ずしも核兵器とはつながらない。それで私は、あくまでも、アメリカとしてはわが国民感情を承知して核兵器は絶対持ち込んでいない。  ところで、実はガイドラインについてのお話がございますが、このことにつきましても、このガイドラインというものはやはり日米両国でその共同作戦の研究をするわけでございます。研究をするわけでございまして、そのことによりましていまの御心配のようなことは絶対にない、このように確信するわけであります。
  337. 不破哲三

    不破委員 私は訓練のことを言っているのじゃないのです。この核兵器要員の職務区分という資料をごらんになればおわかりのように、これこれの人間を訓練するというものじゃないのです。訓練とは別個なんです。核兵器に実際にタッチする人間について監視するシステムなんです、これは。だから、国防総省のあれでは、クリティカル・ポジションといいますと、その職にある者が、核兵器の技術的知識を持ち、完成核兵器への接近を持つ職務と規定されているわけですね。接近とは何かというと、核爆発を引き起こす機会を許容するような、許すような方法での核兵器への物理的接近、要するにそのポストが核兵器に対して、その人の考えいかんでは核兵器の爆発の引き金を引けるような立場にその人を置くポストなんだから、そういうポストに置く者は特別な監視のもとに置かなければいかぬ。どんな人間でも、そのポストから外れたら監視から外れるわけです。そのポストにいる者は監視をして、いざというときに危なくないようにする、こういうものなんですね。まさに属人じゃない、属ポスト的なものなんです。だから、いまお渡ししたので、すぐのみ込めというふうには言いませんが、すべてをわかれというふうには無理かもしれませんから言いませんが、しかし、この核兵器要員管理計画というのは、私どもこの十年来国会で何遍も質問してきたものなのです。その内容国会図書館にちゃんと、翻訳してみるまでもなく納められておるのです。防衛庁当局がこれから日米共同作戦をアメリカとやろうというのに、そういう公表された資料も研究しないで、ただ信頼というそういうことだけを頼りにしてこれから共同作戦をやるのだとすれば、これは悪いけれども、本当に防衛庁当局に国民の信頼性は余りないと言わなければいけないと思うのですが、大平さん、私どもは、これだけのものを野党ではありますが調査をして、これの真実性をあなた方がアメリカ交渉されて調べられるのは結構です。そして、その上でこれがどういう文書であるかを判断されて、そしてこれが重大な内容を持っていたらそれにふさわしい措置をとる、ふさわしい対処をする。何が起ころうが信頼があるのだから、見ざる、聞かざる、言わざるだと、その三猿主義を決め込まれたのでは、これは国民は浮かぶ瀬がないし、非核三原則は全く空文になるわけです。これについて政府としての責任ある調査と取り組みを総理大臣の責任においてお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。
  338. 山下元利

    山下国務大臣 「日米防衛協力のための指針」の前提条件には、「事前協議に関する諸問題、日本の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は、研究・協議の対象としない。」と申しております。先ほど来申しておりますように、(不破委員「しないから危ないのですよ」と呼ぶ)以上で御理解賜りたいと思うのです。  それで、ただいまお示しの名簿でございますが、先ほど来申し上げておりますとおりに、兵員がおるからといって、それが核兵器の存在とは全然関係がないわけでございまして、それだけはるる申しておるわけでありますから……。
  339. 不破哲三

    不破委員 私は大平さんに伺いますが、これだけのことを提起しても調べるつもりはないというのが大平内閣の答えなのかどうか、総理大臣の責任において答えを求めます。
  340. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 防衛庁の見解は、いまお聞き取りいただいたとおりでございます。私は防衛庁を信頼いたしたいと思いますが、なお勉強してみます。
  341. 不破哲三

    不破委員 内閣として調査をするつもりはないというのですか。
  342. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 御提示いただきました材料をどのように処理いたしますか、政府部内で勉強してみます。
  343. 不破哲三

    不破委員 私は、この問題について、内閣がやはり国民の前に責任を負っているわけですから、ただ非核三原則を守る信義があるということを繰り返すだけでなしに、国民の前に責任を負っている内閣として厳重な調査の対象とすることを最後に要求をして、私の質問を終わりたいと思います。
  344. 竹下登

    竹下委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十四分散会