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1979-02-02 第87回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 竹下  登君   理事 伊東 正義君 理事 小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       北川 石松君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田村  元君       谷川 寛三君    中川 一郎君       根本龍太郎君    野呂 恭一君       羽田野忠文君    藤田 義光君       藤波 孝生君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    安宅 常彦君       井上 普方君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       兒玉 末男君    平林  剛君       武藤 山治君    安井 吉典君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    正木 良明君       大内 啓伍君    塚本 三郎君       小林 政子君    寺前  巖君       大原 一三君    川合  武君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君  出席政府委員         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         総理府統計局長 島村 史郎君         警察庁刑事局長 小林  朴君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      佐々木孝男君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省情報文化         局長      加賀美秀夫君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       名本 公洲君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君         社会保険庁年金         保険部長    持永 和見君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         通商産業大臣官         房長      藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房長 中村 四郎君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         運輸省海運局長 真島  健君         運輸省港湾局長 鮫島 泰佑君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房長 林  乙也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省人事局長 守住 有信君         労働省労政局長 桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      石井 甲二君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省行政局長 柳沢 長治君         自治省行政局公         務員部長    砂子田 隆君         自治省行政局選         挙部長     大橋茂二郎君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     北川 石松君   正示啓次郎君     谷川 寛三君   武藤 山治君     兒玉 末男君   浦井  洋君     小林 政子君   山口 敏夫君     川合  武君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     海部 俊樹君   谷川 寛三君     正示啓次郎君   川合  武君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  この際、質疑に先立ちまして、委員長から一言申し上げます。  昨日の予算審議において、E2Cの予算削除の提案がありましたが、後日、この取り扱いについて、各党間で国民の納得を得るよう協議いたします。  これより総括質疑を行います。  昨日の武藤君の質疑に関しまして、政府から答弁を求めます。田中内閣官房長官
  3. 田中六助

    田中国務大臣 昨日の武藤委員質問でございますが、総理大臣から御指示がございましたので、お答えしたいと思います。  きのう正午ごろ塚田徹議員に電話をいたしまして聞きましたところ、塚田氏は、記憶が現在定かではないので年月はわかりませんが、大体七、八年前、海部共同お尋ね土地を購入いたしました。この購入価格は約一千四百万円である。塚田氏としては、当初手付金二百万円を支払い、その後資金の工面をして、残金五百万円を支払った。この支払い時期は現在よく記憶していないということでございます。  それから、五十二年七月ごろ、運輸省に対し約六千万円で売却した。塚田氏は売却代金として約三千万円を受け取ったということでございます。  なお、税関係については事務当局からお答えをしたいと思います。
  4. 竹下登

  5. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま官房長官から御報告いたしました苫小牧土地譲渡の件につきまして、税務上の処理を申し上げます。  海部氏、それからまた塚田氏両方とも、いずれも所轄の税務署に対しまして、五十二年分の確定申告において申告の手続がとられております。ただ、その当該譲渡というのは北海道開発局に対する譲渡でありまして、また、土地収用法等適用対象にもなり得る土地でございますので、租税特別措置法第三十三条の四の条項を適用いたしまして、特別控除の三千万円がそれぞれ控除になっておりますので、結果としては課税所得がゼロとなっておる、そういうことでございます。  それからなお、昨日の武藤先生に対する私の答弁で違っております点を一点訂正させていただきます。それは海部氏の公示所得金額でありますが、四十九年分につきまして、千八百八十万五千円と申し上げましたけれども、公示所得は千七百五十八万二千円でございます。  以上、訂正させていただきます。
  6. 竹下登

  7. 森山欽司

    森山国務大臣 調査の結果を航空局長より報告いたさせます。
  8. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  新千歳空港につきましての全空港予定面積は七百四ヘクタール、うち買収対象面積が五百四ヘクタールでございます。  その中で、昨日御質問のございました海部塚田両氏に係ります所有の土地は、面積八万二千七百二十七平方メートル、ヘクタールで申しまして約八・二ヘクタールでございます。  国有財産、つまり運輸省の用地といたしまして登記いたしました日が昭和五十二年三月二十五日、代価を支払いました日が昭和五十二年四月七日、代価、つまり買収価格は六千万三千七百十円。  以上のとおりでございます。
  9. 竹下登

  10. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいま政府から報告のありました諸案件につきましては、今後同僚の委員から、グラマン問題を中心にした質疑の中でさらに取り上げていきたいと思います。  きょう私は、経済問題を中心にして、大平内閣の姿勢を政治経済、外交にわたってお尋ねをいたしたいと思っておりますが、時間が一時間十分しかありませんから、通告いたしました諸項目についてすべて質疑をすることは不可能だと思いますので、通告をしておいた大臣諸公には大変申しわけありませんが、冒頭に御了承いただきたいと存じます。  まず最初に、大平さんが総理大臣になって、日本の五十四年度の経済はどうなるだろうか、国民暮らしは一体どういう状態になるのだろうか、国民はいろいろな不安と期待と相交差する心境であろうと思うのであります。  そこで、まず冒頭お尋ねをいたしたいのは、総理大臣はことしの一月五日、経済四団体の新年祝賀会出席をされまして、日本財界の面々のいる前で新年のごあいさつをしたようであります。新聞の報ずるところによると、このあいさつの中で、ことしは政治経済ともしんどい年になると言ったようであります。このしんどい年とはどんな年なのか。国民は希望が持てないのですよという意味なのか、ことしはうんと苦しいんだという意味なのか。その程度、しんどい内容ですね、総理はどんな気持ちでこういうごあいさつをなすったのですか。これは日本国民全体の期待にこたえなければならぬという意味から、まずこの言葉意味をちょっと説明していただきたいと思うのであります。
  11. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ただいま日本経済が直面している問題は、まず物価安定基調を維持してまいらなければならない。その中にありまして雇用拡大、内需の拡大を通じまして景気を回復していくことが期待されておるわけでございます。しかし同時に、財政再建に対して備え得る用意がなければならぬわけでございますし、海外からの厳しい批判に対しましても、わが国役割り、責任というものを果たしていかなければならないという大変めんどうな課題を担った年でございます。したがいまして、率直に申しまして、大変しんどい年であるということを申し上げたのであります。
  12. 武藤山治

    武藤(山)委員 しんどいというのは関西語で、関東の方では余り使わぬのでありますが、これは苦しいという意味なんですか、それとも大変むずかしいという意味なんですか、ことしは。どちらなんですか。
  13. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 大変むずかしい年でございますし、大変苦しい年でもございまして、相当しんぼうが要る年だと考えます。
  14. 武藤山治

    武藤(山)委員 さらにその席で、大蔵予算原案を内示したが、気のきいた予算にはならなかった、こう言っているのですね。気のきいた予算にならなかったということは、気がさいていない予算ができてしまったということです。どういう点が気がきいていない予算なのか、これをちょっと明らかにしてください。
  15. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま申し上げましたように、多くの目的を追求しなければならないわけでございます。しかも、財源は大変窮屈な状況でございますので、一つ政策目的を追うだけでございますならば、気のきいた答えが出せたかもしれませんけれども、多くの目的を同時に追求しなければならぬというめんどうな課題を背負った予算編成でございますので、気のきいた手当てが一つ一つについてできたとは思っていないという意味でございます。
  16. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、大平さんが総理大臣をやっている間、これから長期政権になるか、三木さんや福田さんのように二年で終わりになるか、これは神のみぞ知るでありますが、いずれにしても、あなたが総理大臣をやっている間は多くの目的を同時に実現をしなければならない。財政均衡、需給の均衡雇用均衡国際収支均衡、そういう均衡点を目指していくということは当分続きますね、日本経済は。そうすると、当分こういう気のきかない予算が続くのだということになりますか。
  17. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 気のきく、気のきかぬという、表現の巧拙の問題はあろうかと思いますけれども、当面大変むずかしい課題を同時に解決を迫られる環境が続くものと私は思います。
  18. 武藤山治

    武藤(山)委員 もう一つ、ことしは繁栄期待する年ではない、こう述べてあるのですね。そうすると、ことしは繁栄しないのですね、国民暮らし生活状態経済も。何が繁栄しないということなんですか。暮らしですか、収益ですか、企業ですか。ことしは何が繁栄しないのですか。また、繁栄程度、どこまでいったら繁栄とあなたは考えるのか。六・三%の経済成長では繁栄と言えないのか。これが八になれば繁栄と言えるのか。何か物差しが頭にあってこういうことを言っているのですか。ことしは繁栄期待する年ではないというその発想の根本、根拠が私にはよくわからない。これをちょっと説明してください。
  19. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いままでわれわれが記録しつつある経済成長も、諸外国に比べまして、とりわけ先進諸国に比べまして相当高い水準にあるわけでございまして、そういう国際的な比較から申しますと、日本のいまの状態というものは繁栄でないと言えないかもしれません。しかしながら、これまで相当順調な高度成長を遂げてまいりましたわが国といたしまして、そういう状況に相当なれてまいりました国民から見ますと、いまの状態というのはどうも繁栄とは言うことができないのではないかということでございます。それは一部の層に言っておるわけではなくて、国全体といたしまして、民間におきましてもまた政府におきましても、中央におきましても地方におきましても、それから国民の各層にわたりまして大きな成長、発展を記録することはなかなかむずかしいのではないか。だから私はその財界との懇談会でも申し上げたのでございますが、百花繚乱たる春は期待できないけれども、ことしは寒梅のような品位のある、活力のある経済を望みたいということを、そういう意味で述べたつもりでございます。
  20. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局、経済の問題を集約して大平さんはあいさつしたのですね。しんどい年だ、予算は気がきいたものにはならなかった、繁栄期待する年ではない。というと、やはりこの逆を日本は実現しなければいかぬですね。国民期待からすると、繁栄のある年にしたい、しんどくない、いい年になりたい、逆を国民期待しているわけですね。やはり中心課題経済ですね。にもかかわらず、なぜあなたは施政方針演説冒頭に「文化時代の到来」、経済からそらせてなぜ文化論転換をしたのですか。冒頭文化論ですね。  そこで、一体総理の考える文化とは何ぞや、文化とは何ですか。
  21. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、経済が大変大事であり経済基礎であることは私も武藤さんと同感でございます。  私が申し上げておるのは、経済至上主義というか、経済を第一義的な価値として追求することではなくて、ほかの価値も追求しなければならぬのじゃないか。それから逆にまた、いまから経済価値を追求していくにつきましても、他の文化を重視する、人間性を重視するというようなことをやらないと、そのこと自体もうまくいかない時代になったのではないか、そういうことを申し上げたわけでございます。
  22. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、文化とは人間性を重視することですか。文化とは何ですかといま私は聞いている。総理の考えている文化とは何か、まだそれに答えていないです。経済至上主義はやめた、文化をもっと尊重することはわかった。その文化とは何か、これを聞いているのです。
  23. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 経済、物質以外の目に見えない精神のとうとさ、それから目に見えない人間関係のとうとさ、そういったものを総括いたしまして文化という日本語で申し上げても間違いはないのじゃないかと思っております。
  24. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理はNHKの座談会で、文化の定義を、ゆとり品位、落ちつき、そういうものが文化だ、こう言っている。私も同感のところあるのです。それと、総理がクリスチャンで、人はパンのみにて生きるものにあらずという言葉を、総理大臣として政治の中に少しでも反映させたいというその崇高な理念はわかる。私は理解できるのですよ。できるけれども、余りにも安易に経済から文化への転換論をすることは、経済から逃避することを意味するものだから、ここで少し文化論を聞きたい、こう思っているわけですね。したがって、文化とは結局は社会構成員生活の仕方だ、社会を構成する人々の生活の仕方、これが文化なんだ。だとなると、総理の言うような抽象的なゆとり品位や落ちつきというものでは表現できない、もっと具体性のあるものが求められなければいけない。  そこで社会党は、これからの中期的な、長期的な社会を展望したときに、一口で言うならば、われわれは主体転換と名づけているわけであります。従来の主体から新しい主体への転換時代が来たのだ。言うなれば、官僚の政治から庶民の政治への転換である。中央集権権力から分権自治社会を目指す時代が来た。支配と服従に閉じ込められた企業倫理から、連帯と参加、共同決定企業への転換、これは民主主義経済の面に徹底をしていく新しい社会の方向である。そういうものを目指していくのが、そういう人間の生き方、仕方を構想していくところに文化という言葉が使えるのである。総理の言う文化には、そういう構造的な、体系的なものが根底にあるのかないのか大変疑わしいのであります。私どもの考える主体転換というこの構想と、総理の考える文化論というのはどんなに違うのでしょうか。総理、ちょっと見解を聞かせてください。
  25. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 非常に簡単に申し上げますと、生活の物質的な側面も大事でございますけれども、そればかりにこだわっておってはいけないので、やはり質的な向上、充実というものを考えなければならぬということを申し上げておるわけでございまして、そういう意味におきまして、いまあなたがおっしゃるように、政策の力点をどこに置いていくかという課題も、確かにそういう観点からわれわれが十分検討しなければならぬ問題であると思います。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 各論を論述する時間がありませんから、残念ながら田園都市構想、日本型福祉社会、これといまの主体転換論というものは、私は、絡み合う今後われわれが追求しなければならぬ大きな問題点であると思っておるのです。しかし、きょうはそれを追及する時間がありませんから省略をいたしますが、総理、十分ひとつ具体性のある構想を文化論の中でも展開をしていただきたいと思うのであります。  次に、五十四年度、ことしはもう石油ショックから六年目に入りました。ちょっと日銀の統計を調べてみましたら、この五年間に銀行取引停止処分を受けた企業並びに個人は三十三万七千八百件、これだけの人たちが銀行取引停止処分を食っているのですね。倒産と同じですよね。これだけの多くの人たちが倒産をし、さらに職のない失業者が百二十万人の水準で三年間続いている。この二つの犠牲が自然淘汰の自由経済の犠牲者として出たわけであります。したがって、これだけの犠牲が出れば、経済は自然とある程度バランスがとれるようになるのは、これは理の当然であります。不幸にして三木さんは物価狂乱のときに総理大臣になり、対外均衡赤字のときの苦しいときの総理大臣が三木さんでありました。その次の福田さんは、対外均衡が逆に黒字になり過ぎて、円高ショックによる大変な摩擦現象で苦労した総理大臣であります。大平さんは、この前二者の総理大臣と比較して、大変恵まれた環境の総理大臣に就任された方であると私は認識をする。というのは、今日の経済諸指標を私なりに検討してみると、経済環境は大変好転をし、上向いており、大平さんは恵まれた環境の総理だなと私は現状認識をするのでありますが、あなた、いかがでございますか。
  27. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 安定した経済のもとにおきましても、各産業部門におきまして新陳代謝という姿で倒産現象というものは見られたわけでございますけれども、ここ数年来、石油ショック以来構造変化が、産業構造の変革が相当なスピードで進んでおるだけに、いま御指摘の問題はさらに深刻になっておると思います。  それで、いまあなたが言われるように、それが応の一段落を告げたのではないかということでございますけれども、私はまだその構造変化はいま相当進んでおると思っておるのでございまして、なお産業構造が新たな水準で安定してきたとまだ考えておりません。しかし、御指摘のように、だんだんと経済環境がおかげさまで明るい方向に向いてきておるということ、雇用状況もかすかでございますけれども改善を見つつある、生産その他の状況におきましても、緩慢ながら回復の状況が見られるということは御指摘のとおりでございます。けれども、まだそういう変革期でございますので、十分注意して経済運営に当たらなければならぬことは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理、いまの経済動向は非常によろしい。しかし、このよろしい状態が定着をして五十四年度後半まで続いていくのか、後半でまたダウンするのか、その辺が大変むずかしい観測の問題ですね。専門家の宮崎調整局長いらっしゃると思いますが、この辺が私は今後の経済運営に非常に重要なポイントになると思うのであります。  ちなみに鉱工業生産の最近の動向を見ると、昭和五十二年の十月-十二月は二・一、それが去年の一-三月が四・二、四-六が六・一、七-九が六・七、十月が七・九、十一月が六・八、五二年の水準の二・一から比較すると大変な鉱工業生産の伸びの状況である。あるいは消費などを見ても、ことしは特別に暑かったから電気器具など、エアコンなど、冷蔵庫、そういうものがたくさん売れたとはいえ、この売り上げの伸び状況を見ても大変な従来とはさま変わりでありますね。あるいは機械受注の状況を見ても、前年、五十一年や二年と比較したら、全く数字のけた違いの伸びを示しているわけであります。伸びてないのは労働者の賃金ぐらいなものですね。こういうような諸指標から見ると、ことしの経済は従来から見ると、超高度経済成長のときと比較すれば別でありましょうが、この不況の五年間と比較をしていくとかなり上向いてきている。したがって、企業の利益もかなり上向いて、会社はもう、もうかってどうしようもない。ほくほくの会社もあるわけですね。もうかり過ぎて金の使い道がなくて、証券投資へどんどん金をつぎ込んで、もう過剰流動性が発生をしている企業もあるわけですね。そういうような状況が一体どこで失速をするだろうか。政府の政策がどういう点で対応できなかったときにこの状況というものが急変をし、また六・五%はむずかしくなるという見通しになるか。そういう欠陥が起こらぬように政府はどう弾力的に、迅速に対応するかというところが問題である。企画庁長官よりも一橋大学出身の総理大臣の方が経済は明るいと思うのだけれども、まあ担当責任の企画庁長官にその辺の後半への見通しを明らかにしていただきたいと思います。
  29. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  後半の問題につきましては、だんだんといまようやく経済が暖まりかけております。もちろん御指摘のように失業の問題も深刻でございますし、また一方、多少の物価に対する懸念も国民が表示しているところでございます。このような問題を前広に、また手際よく処理したいということの中で、経済が前進するエネルギーを失わないようにしていくということが大事ではないか。私は、やはり今年度はスロー・バット・ステディで、徐々に徐々に上げていく。でありますから、非常に目立った華々しい成長とか何かはないと思います。同時にまた、申し上げましたような失業の問題、就職の問題あるいは物価の問題につきましては、大きな手は打つことは余りないのでありまして、むしろ細かい事象にそれぞれ敏速に対応していく。でありますから、言うなれば経済運営に関する基本的な姿勢は、やはり民間企業が今日までやってきたような努力をまともに受けて、小まめに努力をしていく、その積み重ねの中からわれわれの期待する六・三%程度の実現、同時にまた失業をこれ以上ふやさないという結論を得たいし、また対外調整に関しましてもやはり国際的な日本の立場を十分理解してもらえるような協力もしていく等々のことを進めてまいる所存でございます。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理も企画庁長官も民間の活力、民間の活力ということを盛んに言うわけであります。それは自由経済ですから当然であります。国の財政なんというのは、GNPの中の一五%かその辺であります。ことしはもっと小さいかもしらぬ。でありますから、やはり民間がその気にならぬことには失業問題も片づかない。  ところが新聞の報道によると、この一月二十三日午後、首相官邸で開かれた経団連の土光会長以下首脳と大平総理大臣との懇談が二時間続いたと報道しておりますが、その中で、雇用問題で経団連側は、政府雇用対策をどんどんやるものだから、政府が受けざらをつくってくれれば思い切って過剰雇用のうみを出そうという企業が多い、こういう厚かましいことを財界総理に言ったというのです、新聞報道によると。不況カルテルの延長問題ばかりではなくて、雇用でそういう注文が出た。これでは政府がせっかく給付金制度を拡大して失業者を一人でもよけい吸収しよう、何とか雇用を新しくつくっていこうと努力しても、財界側が、政府がそんなに雇用対策をやってくれるんならどんどん減量経営を進めますという感覚では、これはしり抜けだね。ざるに水を入れるようなものだね。  総理財界の首脳がそういう注文をつけたときに総理がどう答えたかということは、書いてない。総理はこういう財界の考え方に対してどう思いますか。
  31. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 民間においても雇用問題は最大の問題と心得ておられるようでございます。したがって、いわゆる企業内の雇用機会をどのようにしてこの不況の中でも維持していくかということにつきましては、それ相当の苦心をいたしているところでございまして、また最近、幸いに増大する労働人口に対しましてもその手当てが逐次ついてまいりまして、雇用情勢にやや明るい局面が出てまいりましたのも、民間の努力というものを相当高く評価しなければならぬものと考えております。  先般の土光さんたちとの懇談におきまして、どんどん雇用政策を進めてくれ、そうすればわれわれは減量経営で余剰人員の整理をやるからというような、そういう愚劣なことは、その人たちからの発言は全然ございませんでした。ただ、雇用政策につきましては、予算編成前にも大変強い要請がございましたし、編成後の予算の説明におきましても、この問題について民間が大変関心を持っておるということは事実でございまして、官民一緒になりましてこのむずかしい雇用問題の解決に当たろうじゃないかという意見の一致は見ましたけれども、いま仰せのような御発言は私どもにはございませんでした。
  32. 武藤山治

    武藤(山)委員 ございませんでしたと言うけれども、新聞はそういう報道をしているから、火のないところに煙は立たぬでしょう。だれかあったに違いない。だから、河本政調会長も本会議場で、経営者に対して今後は減量経営についての一つのルールを考えなければならぬだろう、こう提言をしている。私も同感なんだ。通産大臣もそれに答えて、財界に対して、減量経営ばかり推し進められたのでは困るということで、財界と十分話し合いもしたいと答えている。いまの財界が減量経営をどんどんやって、利益さえ積み上げればいいというような考え方はやめてもらわなければ困る。苦しいときには苦しさの分担をするということが、資本主義経済社会における経営者の姿勢でなければならない。いまの時代は、苦しさの分担あるいは乏しさの分担の時代なんだ。それを企業が私的利益の追求のみにきゅうきゅうとして、もうかればいい、労働者が路頭に迷って、失業者が百三十万人もおってもいい、こんな考え方を経営者がもし持っておるとするならば断じて許し得ない。自由主義、資本主義経済が維持できるのは、目に見えない、手につかむことのできない神の手によって導かれる社会だとアダム・スミスは言っているのだ。したがって、そういう神の手に導かれるような良心がなければ、調和を図り得る企業家の精神がない限り、資本主義の運営というのはでこぼこが発生し、不公平が拡大され、弱き者が切り捨てられ、いじめられるのであります。いまの日本自由経済はまさにそうじゃありませんか。零細中小企業はばたばたとつぶれて、労働者は減量経営の中で路頭に迷わされて、賃金はGNPの三分の一しかベースアップは認められないで、弱き者にすべての犠牲がいっておる社会じゃありませんか。この資本主義の弱肉強食の今日のありさまを、いかに経営者にブレーキをかけ、ルールをつくり、全体の調和の中で乏しさをいかに分担をするか、苦しさを分け合うか、そういう連帯と共同の精神がない限り労働者は浮かばれませんね。私はそう思うが、総理はそれらの社会の変革に対していかなるリーダーシップを発揮するか、総理の御所見を承りたいと思います。
  33. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまの経営者が弱肉強食であって私利追求に余念がないというような方々でないと私は思うのでありまして、先ほど申しますように、今日の雇用問題の深刻な面につきまして十分の認識を持ち、企業社会的責任はそれぞれ心得られて苦心されていることと思うのでございます。しかし仰せのように、雇用機会の維持それから造出は官民協力してやらなければなりませんので、その上になお私どもといたしましては各企業雇用機会の造出に対しまして御協力をいただかなければなりませんので、それを精力的に求めておるつもりでございまするし、労働団体その他に対しましてもその趣旨を申し述べまして御協力をお願いしておるところでございまして、今後もこの雇用問題の解決、雇用造出の問題につきましては、なお一層官民の間に連携を密にいたしましてこれに当たらなければなりませんし、もろもろの工夫をこらしてまいるつもりであります。
  34. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、物価の問題に入りますが、これは宮崎さんあるいはお答えいただくことになると思いますので、一緒に聞いていてください。  ことし景気はやや良好に転じていると先ほど申しましたが、一番心配なのは、やはり物価問題と雇用問題ですね。物価の問題を一わたりざっと拾い上げてみただけでも、物価が上がる要因が六つ、七つありますね。  一つは、円高メリットがことしはなくなるということですね。去年は円高三〇%、おととし円高が二〇%、二年間で約五〇%の円高利益があって、それが卸売物価を引き下げる作用をかなりしたわけですね。輸入物資だけだって四兆二千億円ぐらい値段が安くなったわけですから。そういうメリットがことしはもうなくなる。  第二は、OPECが一四・五%の石油値上げを決定した。恐らく年内には一〇%は確実に上げられる。それにもう右へならえで日本石油は値上げを決めるわ、大協石油も値上げを決める、今度はエッソも決める。この石油が上がると、石油を使う関連の商品というのは四百十五品目ありますね。四百十五品目は皆連鎖反応的に多少なり全部影響を受けますね。これの総和の消費者物価へのはね返りはかなり大きい。  さらに公共料金、政府の公共料金的負担あるいは認可、許可あるいは今度のたばこ税、そういうもの。公共料金や認可、許可料金や医療費やそういう国民の負担増、後で詳しく中身やります。  第四番目は、不況カルテルが、かなり収益が上がるようになっても、一たび甘味を吸うとなかなか不況カルテルの廃止ができない。これが必要以上に継続をされる可能性がある。これも物価を押し上げている。上位硬直性の問題がある。  五番目は、大法人の過剰流動性がいろいろ見せかけの価格上昇をもたらす。株などはいい例であります。やがてこれが土地に回ったら大変なことになる心配がある。この過剰流動性の問題をいかにうまく誘導するかも政策手段として重要であります。  さらに、国債増発による資金のタイトの問題が起こり得る可能性もある。景気がちょっと上昇して現先市場の自由金利がちょっと上がれば、国債を持っていることによって銀行は損をする。損をするのはつらいから、できるだけ日銀に圧力がかかり、買いオペを広げざるを得ない。買いオペを拡大をしたときには必ずマネーサプライは上昇して、これはインフレ要因になる。そういう要因もこの年度内にはかなり強くなると私は見ている。したがって、成長率、名目九・五%をはるかに超えるマネーサプライになり得る可能性が本年はあります。現在九・五%の名目経済成長率を大平内閣は決めたが、マネーサプライは現在は一二ちょっと超えている、一二・三ぐらいになっている。本来なら日銀は、名目成長率プラス二%ぐらいのところでマネーサプライをとめたいと言っているのでありますが、現況はとまる勢いではない。これはインフレ要因になる。  さらに、最近は鉄材、鋼材、鉄骨、木材、こういう公共関連事業がかなり伸びたことによってこれらの卸売物価がべらぼうに高くなっている、はね上がっている。  個々の商品名もここにありますが、申し上げる時間ありませんが、こういう七つばかりの物価上昇要因があって一体四・九%の物価上昇率でおさまるだろうか。社会党の試算の結論では、おさまらないという結論であります。正直言って、政治的配慮を加えないでまじめに国民に報告をするという立場に立ってこれに答えるとしたら、四・九%は心配のない数字なのかどうなのか、これは宮崎調整局長の純理論的学問的見地から、ひとつ余り政治的配慮を加えない答えを出していただきたい。
  35. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先生が御指摘の五十四年度の物価についての七つの問題点、私どもも当然注目をしなければいけないというふうに考えております。  今回の政府の見通しの四・九%の消費者物価の中でただいま御指摘になりました円高メリットが剥落するという点でございますが、一応仮の仮定といたしまして一ドル百九十円ということを前提にしておりますので、先生御指摘のようにこの部分は直接的には少なくなってまいります。ただ、間接的なメリットと申しますのは、むしろことしの前半において強く出てくるという点がございます。  それからOPECの値上げにつきましては、いろいろ最近のイラン情勢等もありまして考え方が分かれているわけでございますが、この見通しでは、一応OPECが年平均一〇%四段階に分けて価格を引き上げるという前提をとっております。それは卸売物価について〇・七%、消費者物価について約〇・三%の影響があるというふうに考えております。  それから不況カルテル、あるいは後の方でお述べになりました、最近市況商品が上がっているということの関連につきましては、常時ウオッチをしていって、そういうことがないようにということで、最近の公共投資推進本部の会合でもその点が強調されております。  それから過剰流動性につきましては、御指摘のように、最近のところM2で見ますと、一年前に比べて一二%程度で、名目の成長率を若干上回っております。したがいまして、今後とも金融政策に非常に注意をしていかなければいけないということでございますが、具体的に何%、これを絶対超えたらいけないというのは、いろいろその時点におきます景気の状況その他諸般の状況がありますので、一概には言えないというふうに考えております。  それから公共料金につきましては、御指摘のように、五十四年度につきましては五十三年度より若干寄与率が高まるというふうに考えております。その点は消費者物価の四・九%の上昇の範囲内におさまるというふうに考えております。
  36. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁の役人ですから、総理の目の前で四・九はむずかしいと思いますなんて言えないと思うのでありますが、これは総理、いろいろ検討してみると、物価問題はことしはやはり大平内閣のアキレス腱になる心配の課題ですね。したがって、いま私が申し上げたような物価上昇要因がいろいろある。七項目挙げましたが、これ以外にもまだある、そういう状況の中でありますから、物価問題については相当神経を細かに配慮して取り組まないと、これは国民に迷惑をかけることになります。いま私が取り上げた物価上昇要因の項目を聞いて、大平さん自身どんなことをこれはやらなければいかぬな、そういう感じを何か持ちましたか、心構えでも結構です。
  37. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、この物価政策の運用は細心周到でなければならぬ、厳しい課題であると考えております。
  38. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう物価が上昇する危険を感ずるときに、今回政府の提出した予算案を見ると、かなり国民負担がふえる予算であります。  まず健康保険法の改正案が継続で出されておりますが、これによって初診料は六百円が千円。一日入院するといま二百円が一挙に五倍の一日千円。おまけに薬代を半額患者が負担をしろというのです。この負担だけでも大変な負担になる。さらに料率変更で今度はボーナスも月給と同じように合計して保険料率を掛ける。それによる増収、社会党の試算では、まず前段で千五百一億円。料率変更で三千五百八十六億円国民から取り上げる。国鉄運賃八%すでにアップ決定、千九百億円。たばこ二〇%値上げ四千百億円。ガソリン税二五%値上げ三千百億円。これに今度はガソリンが皆また上がるね。一リットル十円四十銭から十一円くらい、マイカーのガソリンが全部上がる、民間では。いまのは税金だけ。さらにガソリンの道路税五百四十億円。航空機燃料税二百四十億円。消費者米価、これは渡辺農林大臣、大臣就任早々から消費者米価四・二上げるというので余りいま評判よくない、これが八百六十億円。それから国立学校の入学金、受験料の値上げでこれが二十九億円。雇用保険料の引上げで六百三十七億円。締めて幾ら国民からトータルで取り上げるかというと、一兆六千四百九十三億円であります。いま私が各省の幾らか関連する金額を申し上げて、そんなべらぼうな数字はない、間違っておると思うところはひとつ訂正してください。
  39. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま社会党で試算されましたもの、私の手元に一兆七千九百億円になっておりますが、この試算はともかくといたしまして、それに対応いたします各省で取りまとめてみましたそれによりますと、大体一兆円程度の負担増加ということになると思います。詳細につきましては、各省からお願いしたいと思います。
  40. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間があればこれは各大臣全部個々に答えてもらいたいのですが、いまの一兆円というのはどこが違うのか。企画庁長官、まずさっき私が言った大きな金額だけで六千億円違うのですが、どれですか、そんなに違うの。おかしいよ、常識で考えて。一千億か五百億の違いならわかるけれども、六千億も違うなんておかしいね。ちょっと言ってみてください、あなたの項目別に。あなたがいま持っているもの。
  41. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 物価局長からお答えします。
  42. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 お答え申し上げます。  各項目で大体合っているのでございますけれども、大きく違うといいますか、差がございますのは健保の改正に伴います保険料についての関係でございますが、これは政管健保全体で八百八十七億円という数字が私どもの推定としてございます。それが大きく違う点でございます。  それからもう一つは、たばこでございますが、社会党の数字で四千百億円というふうになっておりますが、これにつきましては、五十四年度に増収を見込みました数字が二千六百四十四億円でございます。その辺が大きな違いのあるところでございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは地方のたばこ税の方も全部入れての話ですか、物価局長。それと健保の計算も政府からもらったのがあるのですよ、保険庁から。資料をいま部屋に置いてきちゃったのでありますが、このたばこの場合、地方の分も入っていますか、物価局長
  44. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 専売公社の増収額でございますので、入っておると思います。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 個々に全部をだあっと答えさせればいいんですが、いずれにしても認可、許可を入れると、総理、これよりもまだまだはるかに多くなる。これをちょっと聞いてみますよ、今度ぼくの方から言わずに。  まず私鉄の運賃の値上げ一二・八%、これはすでに運輸大臣もう許可をしていますね。これで一年間どのくらい昨年より増収になりますか。ということは国民負担になりますからね。それからバスが関東平均一四・八値上げ、これがどのくらいになりますか。それからタクシー料金はまだ決めてないようでありますが、三百三十円の基本料金を三百九十円にしようという申請がいまさみだれ的に出ているようでありますが、これはいつから許可する気ですか、運輸大臣は。その金額が大体どのくらいになりましょうか。さらに、大平さんは減税しないということで、昨年実施した三千億の戻し減税がことしはないものだから、もろにその分が、あれは臨時措置でやったから自動的に増税になってしまいますね。せめて三千億の去年やった分をやらないと、あれは本則に入っていませんから、またもとに戻ってしまうわけですね。そういうような負担がまだかなりある。厚生年金もある。そういうようなものを個々に全部出してみてください。今度は政府側から出してみてください。
  46. 森山欽司

    森山国務大臣 私の担当の国鉄運賃、私鉄運賃、ローカルでありまして全国的ではありませんがバス料金、それからタクシー料金、これは六大都市、その経過報告をちょっといたしますが、国鉄は千九百億というふうに武藤委員からお話がありましたが、千六百五十億、五月の二十日から。他の公共料金の値上げ等も勘案し、私どもの気持ちとしては五月の連休時期を外したい、どういうこともありまして、千六百五十億であります。  それから私鉄運賃の値上げは、昨年の十二月二十日という当初の事務的予定でありましたが、年末年始を避けて一月八日から実施をいたしまして、今年度は大体五百五十億くらいに相なるであろうと思っております。  それからバスは、ローカルでありまして、まだ全国的ではありませんから、ちょっとこの際申し上げるのを差し控えさしていただきます。  いまタクシーが問題になっております。これは六大都市でありますが、これは二年のローテーションでタクシー料金の検討をするということになっておりますが、御案内のとおり、最近二年間の消費者物価の上昇率、卸売物価の上昇率、要するに物価水準の上昇率、それから賃金の上昇率等はその前の二年ないし二年半に比べたら問題にならないほど、けた違いに低いわけであります。それはもちろんタクシー業者は国鉄のような親方日の丸じゃございませんから、やはり商売ですから、そろばんが合わなければならぬことは私どもよくわかっております。しかしそうは言っても、二年ごとにチェックするのはいいんですが、その前の二年ないし二年半と、最近の二年半とはけた違いに低いわけでありますから、直ちにもって事業者の立場ばかり考えて値上げをしていいかどうか。やはり車に乗る人の立場も考えなければいけませんし、運転手の立場も考えなければいかぬということで、いま業界が二割ぐらい五月ぐらいから上げてくれとは言っておりますが、現段階において私はその業界の要求をそのままのむ気持ちはありません。したがって、いま何でも全部上がるようにおっしゃいますが、必ずしもそういうふうに考えているわけではないのであります。しかし、公共料金全体と申しましても運輸省が扱っているのはその全部ではございませんから、その全体の方はひとつ経済企画庁長官の方からでもお聞き取り願いたいと思います。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 森山さん、いま重大なことを言ったが、値上げを考えているわけではない、ただ申請は二〇%ぐらい、六大都市であるが──値上げをしないと国民にここで約束できますか。五十四年度タクシーの値上げは許可しないと約束できますか。あなたは値上げを考えているわけじゃない、こう反論しておるが、必ず実行できますか、値上げは認めないと。
  48. 森山欽司

    森山国務大臣 タクシーの運賃の値上げの問題につきましては、二年ごとに検討するということでありますから、検討はしなければいかぬとは思っています。しかし、直ちにもって新聞紙上に出るように、五月になったら二割上げるのだというようなことは今年は考えていないということを言っているのであります。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 五十四年度中はどうかと聞いておる。あなたがいま大臣をやっている五十四年度予算のことをやっておるのだから。
  50. 森山欽司

    森山国務大臣 それは極力物価政策の観点から物を考えていかなければならないわけでありまして、検討の結果によると思っております。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 さっき言ったのは、何でもみんな物が上がるように考えては困る、タクシーは値上げを考えていないのだ、最初あなたはそう言ったんだよ。今度は検討してと言うのだ。前言を取り消しますか。おかしいでしょう、これは。
  52. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、二割の値上げを五月から実施をするということは考えていない、そういうふうに私は申し上げておる、そういう真意でありますから……。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 そんなことは言わなかった。では、前のは取り消しなさい。前のは値上げしないと考えていると言ったのだから、訂正しなければいかぬでしょう。議事録を見たらおかしいから。
  54. 森山欽司

    森山国務大臣 そういう真意でございますから、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 御了解をと言ったって、議事録に載っていますよ。あなたが最初説明したときは、タクシーの料金は六大都市から申請はあるが、タクシーの値上げは考えていない。私もメモしたのだから。最初そう答えた。そしたら、今度私が質問したら検討してと言う。今度は値上げしないとは言わない。五月はしないなんて最初はあなたは言ってないんだよ。最初はタクシーの値上げはしない、考えていないと答えた。今度は五月は考えていないという形に後退した。休憩して議事録を調べてもらってもいいよ。メモしてあるのだから。だから、前言を議事録から消さなければいかぬでしょうが、もしそれが事実でないなら。考えていないというところは消しますということを委員長にちゃんと諮らなければいかぬでしょうが。委員長、そうでしょう。
  56. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま運輸大臣の申された真意は、われわれも物価の安定には非常な決意を持って臨んでおるわけでございまして、それが二年ごとの申請をできるような状態であるということは一種の慣行になっておるわけでございますから、運輸大臣とされてはその申請を受け付けないわけにはいかぬが、検討はよくする。さらに、それを幾らにするかということにつきましては、われわれ関係閣僚が全部寄りまして十分審議して決めてまいりたい、そのような方向でございます。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がなくなりますから先に進みますけれども、どうもいまの答弁なんかあやふやで、テレビを見ている国民は、一体森山運輸大臣は五月は認めないが、じゃ八月ごろは認めるんだなという印象を受けますよ。初めはタクシーの料金の値上げはしない、こう答えた。五月なんて言わなかった、一番最初こう言ったときは。だめですよ、そういうごまかしでは。やはり物事は一回言ったら、間違ったら男らしくきちんと取り消すのです。いいかげんな答弁は困る。  そういうような国民負担が激増する年であります。これは大平総理大臣政府主導でいまのようにかなりの国民負担がふえてくる。国民生活は大変圧迫をされるわけですね。それを補うのは賃金が上がるか、減税で国がめんどう見るかしかないのです、庶民のふところぐあいが潤うようになるためには。しかし、減税はもう大平さんは財政不如意で、そんなことはできない。だとすれば、収益の上がっている企業は賃上げの方にできるだけ配慮していくという方向以外、個人のふところぐあいは悪くなる一方だ。取られっ放しだ。  一年間の勤労者の所得、雇用者所得は幾ら伸びますか。五十四年度に雇用者、勤労者全体の給与総額がどのくらいふえると思いますか、総理。正確な数字じゃなくても、このくらい一年間に勤労者、雇用者の所得がふえるのだなくらいは常識ですから、大体は覚えているでしょう、総理。どのくらいふえると思いますか。雇用者所得の増、五十四年度、幾らふえるのですか。もしわからなければ局長でいいです。
  58. 宮崎勇

    宮崎(勇)政府委員 数字的なことでございますので、私からお答えいたします。  雇用者所得の伸び率は、昭和五十三年度が七%、五十四年度も大体七%でございます。ただし、就業者の伸び率が違いますので、一人当たりの雇用者所得の伸びにいたしますと五十三年度の見通しが六%、五十四年度が五・九%でございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 伸び率を聞いているのじゃないんだ。伸び率は、去年よりも五・九%個人の雇用者所得がふえる。いま私は絶対額で言っているわけだ、公共料金やいろんなものが絶対額でいま出たものだから。所得がどのくらいふえて、そのうち、どのくらい公共料金や許可、認可権の方の金に取られてしまうかという比較をいましているわけだから。それでいくと、いま宮崎さんの五・九%の伸び率、雇用者所得全体では七%、その計算で見ると、五十三年度は雇用者全体の所得が百十兆、それが五十四年は百十七兆七千億円、そうすると一年間に七兆七千億円雇用者の所得はふえる。七兆七千億円ふえる中で、先ほど申し上げた公共料金的な負担、認可、許可、米、そういうようなものの負担増がわれわれの試算では一兆六千億円国民から吸い上げる。七兆七千億から一兆六千億を引かれると、ふえる率に対する負担割合というのはかなり重い。おまけに大平さんは、来年は今度は一般消費税をこれに三兆円また取ろうというのだから、これは国民から見ると踏んだりけったりだね。こういうことを国民がどう感じているか。重大な問題です、これは。  しかも、日本の現在の円の購買力というものは非常に低い。これは総理もいろんな書物で知っているでしょう。この間もかなり大きく日本の購買力の世界的比較が出ている。日本の賃金はドル表示ではアメリカの次だ、もう賃金は十分なんだなんという感覚は間違いですね。日本の購買力は世界でいま何番目だ、この調査の結果がこの間、東洋経済の統計できれいに出ている。世界じゅうを商社の出先機関を通じて品目別に調べたものですから、かなり事実に基づいた調査ですね。これで見ると、日本の円の購買力は世界で第十八番目なんだ。ドイツ・マルクの約五〇%なんだ。肉は高い。家賃が高い。建物をつくるのも高い。そういう物価が皆高いために、同じドルでドイツで生活するのと日本生活するのでは日本の円は半分の価値しかない。したがって世界十八番目だと出ている。だから、ドル表示で名目所得は高いのだからもう賃上げなんかがまんしていいんだとか、所得はこれで世界上位なんだという考え方はやめてもらわなければならない。総理、どう思いますか。
  60. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私ども、国民の負担が非常に深刻な問題であることは十分心得ておるつもりでございますが、ことしの予算の編成に当たりまして、かねがね申し上げておりますように、ただいまの財政状況に照らしまして、財政再建の契機を何とかつかまなければならないという問題を提起いたしておりますので、ことしの予算の中でも極力抑制はいたしますけれども、微調整を公共料金の分野でやらせていただきたいと念願しておるわけでございます。しかし、国民生活は公共料金ばかりの問題ではなくて物価全体の課題であろうと思うのでございまして、先ほど御論議をいただきました四・九%という消費者物価の一応の目安を考えておりますが、これをどのように実現してまいるかということが容易ならぬ課題であることは先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもそれに全力投球いたしまして、何としてもこれを守り抜いて、庶民の生活を守り抜かなければならぬのではないかと考えております。  それから一方、日本の円の購買力平価でございますが、御指摘のように、相対的に非常に低いということは仰せのとおりだと思います。これは食料費とか住居費とかいう日本経済の特異な環境、日本経済の構造から来ておることでございまして、一朝一夕で是正することはできませんけれども、御指摘のように、円が購買力平価において非常に低目に位しておるということは、政府としても十分頭に置いて経済政策の運営に当たらなければならぬと考えております。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと七分しかありませんから細かい論述はできませんが、総理はいま、財政再建の契機をつかみたいから国民の応分の負担はやむを得ないし、増税もやむを得ないという心境を述べられた。物事には順序がなければいけない、優先順序が。一般消費税を五十五年度中に実施したいということを総理はしきりにいままで言っておる。それより先にやるべきことはいっばいあるのに、なぜ急いで一般消費税と言わなければならぬのか、総理。  私は大蔵委員会に十五年ばかり所属しておったので、税の方を専門にやってまいりました。われわれは、池田さんが総理大臣までは日本の税制の総合課税方式を紊乱してはならぬということで、池田さんは守り通してきた。それがいまずたずたに紊乱されて、日本財政はなっておらぬ。それは歴代の総理大臣が真に財政というものを本気で考えていなかったからなんだ。そういうものをまたもとの原則に皆戻す、税の本体系に戻す、そういう努力を先にやらなければいかぬのです。一般消費税はすべての国民からわからぬように物の価格の中で取り上げるから取りやすい。脱税もない。徴税費も比較的安くできる。だから一般消費税が一番安易な道を選ぶ政治にとっては好都合である。かけられた国民の立場に立ったらたまったものではない。七兆円しかふえない一年間の所得のうち、三兆円が消費税で取られるなどというばかげた税法を直ちに導入することに承知できますか。国民の合意が得られますか。  その前に政府は、五十二年十月の税制調査会の答申、「今後の税制のあり方についての答申」の中で何と言っていますか。日本の法人税率は国際的に比較してまだ低い、低いと認めざるを得ない。今後適当な機会に法人税に負担の増加を求める余地があると考える。なぜやらぬのですか。土地成金の土地の税金を安くしたり、投資減税には熱心になるが、なぜ税調の答申を実行しようとしないのですか。富裕税についても、利子配当の総合課税についても、「基本的には総合課税に移行することにより解決されるべき問題であると考える。」改善の方向をちゃん言っておるのだ、五十二年の税調は。さらにわが党の提案の富裕税について、税制調査会は「一般消費税が導入されることとなる場合にそれとの組合せで検討することが適当である」「引き続き検討を重ねた上で結論を得ること」、富裕税を一般消費税とセットで考えなければ、公正、公平は期せられないということを政府の税調がちゃんと答申しているのだ。なぜやらぬのですか。やろうと思えば、去年もできた、ことしもできる。こういういますぐやれることをやらぬで、なぜ来年の税金のことを先取りして一般消費税にしがみつくのですか。この態度が「信頼と合意の政治」と言えるか。国民から見たら、これを何と感じますか。怠慢のそしりを免れません。総理は、これに対していかなる見解を持つか。
  62. 金子一平

    金子(一)国務大臣 武藤さんにお答えいたします。  御承知のとおり、最近の財政支出は急激に膨張しております。特に国民の各方面のニーズが高いものですから、福祉予算中心に相当大きく伸びておるわけでありまするが、それをカバーするのに現在の租税体系では賄い切れないところに来ておるというふうにお考えいただきたいと思うのであります。先ほどお話のございました高度成長時代でございますと、累進課税の所得税制が十分機能いたすのでございまするけれども、石油ショック以来、中成長に入ったものですから、自然増収がなかなか出てこない。そういう意味で一般消費税を導入しないと、国民の御要望になかなかこたえられないぞというのが政府税調の物の考え方でございます。  いま御指摘のございました富裕税あるいは法人税の引き上げ、あるいは利子配当の総合課税の問題につきましては、十分検討いたしております。特に利子配当の総合につきましては、五十五年度改正で実施することで政府税調の方でも諸般の検討を進めておる次第でございます。  ただ、法人税は、御承知のとおり、仮に幾らかの引き上げをやりましても、諸外国並みに引き上げましても、税額自体では相当大きな金額を期待できない。また富裕税自身につきましても、技術的な問題と同時に、税収の大きなことが期待できないという問題があるものですから、この際一般消費税についても御検討をお願いしたい、こういうことで言っておる次第でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 金子さん、物の順序なんだ。優先順位なんだ。乏しきを憂えず、等しからざるを憂える。税は公平、公正でなければいかぬのだ。なぜ庶民大衆だけ、先に取りやすいところから一般消費税を取るかという優先順位の問題だ。法人税率も富裕税も利子配当の総合課税も同時に考えて、そうして一般消費税の税率は五%にしないで二%にするとか、ほかの税目でこれだけ取り上げるとか、もっと不労所得、資産所得、担税力のある大企業、そういうところを優先的に先に取るべきじゃないですか。それが政治じゃないですか。そういう点の優先順位を誤って、一般消費税を何が何でもやろうという姿勢が公平、公正でないと言うのですよ。国民の合意は得られないと言うのですよ。まだ一年あるのだから、これらの五十二年税調の答申した検討項目について、速やかに検討の結果を国民の前に明らかにして、なるほどと思ったときに実行すべきであります。まだ日はある。総理総理の決断です。この優先順位なり方向性というのは一大蔵大臣にはできない。国を預かる総理大臣の方向性の問題なんです。あなたの哲学の問題なんだ、優先順位を決める。そういう意味において、大平総理の明快な決断を私は聞きたい。
  64. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、物事に順序があるということ、私も痛いほどそれを感じておるわけでございます。さればこそ、財政再建に当たりましても、いきなり一般消費税のような大きな歳入をお願いいたしておるわけではないのでありまして、ことしの予算におきましても、租税特別措置の主なるアイテムにつきましては、専門家のあなたがよく御承知のように、かなりの改善をいたしたつもりでございます。また歳出につきましても、その見直しを鋭意行ってきておるところでございまして、こういった努力が十分でないではないかという御批判はあろうかと思いますけれども、精いっぱいやっておるということでございます。したがって、あなたがおっしゃるように、ことし一年こういう問題につきまして十分御審議を願い、論議を深めていただきまして、この大問題につきましては対処するということにいたしたいので、ひとつ御理解と激励を賜りたいと思います。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと一分でありますから、たくさん質問項目は用意しましたがもうやめますが、最後に栗原労働大臣に。  今度われわれが希望し、要求をしていた雇用対策にかなり力を入れたことは認めます。これは評価します。もしこの給付金制度が全国に徹底をし、企業にも理解をされて――いままでは理解されなかったから予算執行はできなかったのですね。残ったですね。今度は鳴り物入りで雇用対策がこれだけ国民の前に明らかになると、百五、六十万の法人、企業は、ああこういう制度があるのかということをようやくわかってくれたと思うのであります。  そこで、五万五千人の雇用創出では少な過ぎる。もし需要が本当にこれを超える七万、十万となったときに、政府は思い切って予備費の中からでも三百億、五百億という金を追加しても雇用対策に取り組む熱意があるか、決意があるか、最後に決意のほどを聞きたい。
  66. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 雇用会計の予算でございますので、弾力的に対処いたしたい、こう考えております。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですからやめます。
  68. 竹下登

    竹下委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  69. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野呂恭一君
  70. 野呂恭一

    ○野呂委員 国民の待望の中に、新しい手法によりまして自由民主党の総裁公選が行われ、その結果大平内閣が誕生いたしたわけであります。この新内閣に対する国民期待は大変大きなものがあると思います。  最近の新聞の調査によりましても、その世論調査には大変高い支持率を示しておる。これは、いかに国民大平内閣に対しての期待が大きいかを物語っておると私は思うのであります。しかし、それだけに、この国民期待にどうこたえていくか、大平内閣として、総理として大変大きな責任と、また重さがあると思うのでございます。私は、自由民主党を代表いたしまして、この国民の大きな期待にどうこたえていくか、またその政治姿勢はどうなのか、経済財政、外交、福祉などにつきまして質問をいたしたいと思うのでございます。  先ごろの施政方針演説におきまして、経済中心時代から文化を重視する時代に入ったと、地球全体を運命共同体としてとらえて、「信頼と合意の政治」を強調されたのであります。国民のその「信頼と合意」にこたえるためには、政治が一体何をどうするか、あすへの展望が示されてこそ初めて「信頼と合意」という政治が生まれるのではないかと私は思うのでございます。  この間のテレビ対談を私は見ましたが、リーダーシップよりもコンダクターの政治を自分は求めておるのだというお話でございます。私はそういうふうに受け取ったのであります。内外の情勢が大変厳しい中にありまして、国民が一体何を望み、何を求めているか、これを敏感に受けとめて、それを実現するために創造的な指導力を発揮してこそ「信頼と合意の政治」が生まれると、私はかように思うのであります。したがいまして、国民がいま政治に求めているものは一体何であろうか。私は、第一に生活の安定であると考えるのでございます。つまり、日常の暮らしの中におきまする心配事あるいは悩み事、これを取り除くことでなかろうかと思うのでございます。同時にまた、新しい社会の建設にどう取り組んでいくか、地球社会におきまする日本をどういうふうに総理は持っていこうとするのか、まず総理のこの「信頼と合意」という理念に立った政治姿勢についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治根本は、国民政治の間において信頼が失われるようなことがあってはならないと思うのでございまして、まず国民に対する信頼の上に立ちまして、国民のニーズを仰せのようにできるだけ敏感にとらえて、これを政治に反映するように鋭意努めてまいらなければならぬと思います。その場合、強いリーダーシップを発揮することがあるいは望ましいのかもしれませんけれども、私は、日本のような国は、国民自体が非常に活力のある、創造的活力を持った民族でございますので、国民の先頭に立ってこれを指揮するというようなことよりは、国民の中にうつぼつとございまする活力というものに道をつけていくというような姿勢がこの際望ましいのではないかという意味で、リーダーシップというよりは、むしろコンダクターとして心得てまいる方が適切ではないかという趣旨のことを申し上げておるわけでございます。  第二に、しかし仰せのように大変むずかしい時期でございますので、国民のニーズをどのようにくみ上げてまいるかということは鋭意政治が努めなければならぬ課題であろうと思います。しかし問題は大変むずかしゅうございまして、的確な道標を打ち立てるということがどんなに困難であるかは、野呂さん自身も御感得いただいておることと思うのであります。しかし、こういう不透明な時代におきまして、できるだけ不透明感を払拭するようにわれわれは考えなければならぬわけでございますので、当面の問題の処理と並行いたしまして、中長期にわたる展望の道を開きながら、国民と一緒に歩んでまいる努力を果たしてまいらなければいかぬと考えております。  第三には、こういう国際化時代でございまするので、そしてわが国が世界の中での名誉ある生存を続けてまいる上におきまして、わが国自身が国際的な責任を果たさなければなりませんし、国際的信用を確立してまいらなければなりませんので、姿勢の上におきまして国際的責任を果たす、国際的信用を維持してまいるということに大きな力点を置かなければならぬと考えておりますが、しかし、すべてのことは国民生活の安定に帰一しなければならぬことは仰せのとおりでございます。そういうことのために微力でございますけれども力を傾けてまいるつもりでございます。
  72. 野呂恭一

    ○野呂委員 総理の姿勢につきましては、この「信頼と合意」という政治をかち取るためにどのように展開していくか、一つ一つの問題について今後お伺いをしてまいることにいたしたいと思います。  まず申し上げなければならぬことは、ダグラス、グラマンの問題の疑惑についてでございます。さきのロッキード事件に引き続いて再びこのような問題が起こったことは大変遺憾に存ずるわけであります。政治に対する国民の信頼がこのことによって大きく失われるのではないか、こういうことを私は憂慮いたすものでございます。すでに日米政府間におきまして司法取り決めが行われておるわけでございます。どんどんこれから究明されることになりますが、この問題に対しましては政府は毅然たる態度でもって臨んでいただきたいということでございます。ことに自衛隊に絡んでおる問題でございますから、事態の解明に最善の努力をするということだけでは、これは許されないものだと思うのであります。しかし、このことに対する総理の御決意あるいはそれに対するお考えは、本会議におきましてもたびたび明確にされておるのであります。徹底的に究明をする、あるいは国政の調査権についてはできるだけの協力を惜しまないと申しておられるわけでございまして、重ねて答弁を私は求めません。しかし、今日の政権政党に対して国民が清潔な政治を求めるのは当然過ぎるほど当然であるということでございます。スキャンダルの陰にはいつも政治が介入しておるという風潮、これをどう自制していこうとするのか。金にまつわる不信だけに、徹底的な究明がなされることを国民が強く望んでおるということを申し上げておきたいのでございます。  そこで、政府は五十四年度予算でグラマン社から早期警戒機E2Cを四機買い入れる予定にいたしておるわけであります。これをめぐりまして、不正な疑いがあればまず疑いを解くことの方が先決である、あるいは疑惑が解明されないならば、それが解明されるまで予算は凍結すべきであるという意見が出てまいっておるのであります。これに対して、グラマンの問題の疑惑と早期警戒機E2Cの購入とは切り離して考えるべきだとする意図は私は十分に理解できるのであります。がしかし、なぜ急ぐのかということに対する説明が十分でないところにこういう議論が展開されるのではないだろうか。単に防衛上の見地に立ってということだけでは国民の合意と支持を私は得ることはできないと思うのでございます。E2Cの導入に対する予算計上に際して、予算閣議の前に国防会議を開いて慎重に検討されたということも聞いておるわけでございます。この問題に対しまして、総理及び防衛庁長官の所信を伺いたいのであります。
  73. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  このたびの予算に早期警戒機といたしましてE2Cを四機導入することにつきまして、国会の御審議をお願いいたしておることにつきましては、ただいま御指摘のとおりに、この一月の国防会議の議を経ましてお願い申し上げておる次第でございます。先ほどのお話にもございますように、私どもといたしましても、国民の信頼にこたえるためにも、疑惑は疑惑として徹底的に究明していただくということにつきましては、総理もたびたび御答弁のとおりでございまして、私からもあえて申すまでもないことでございますが、ただ、なぜ本年にこのE2Cの導入をお願いするかという点につきましては、実はこの早期警戒機につきましては早くからこの必要性が認識されておりました。そして、五十一年の十月、いま私どもが持っておりますところの「防衛計画の大綱」におきましてすでに警戒飛行部隊、この早期警戒機でございますが、これを導入することを決めていただいているわけでございまして、私どもは自来、純防衛的な見地から専門的に技術的に検討してまいりまして、このたびようやく本年の国防会議において正式決定いただいたわけでございます。  実はいまわが国の防衛上一つ大きな欠陥と申しますか穴がございます。それは、最近非常に飛行機の技術が発達いたしまして、超低空で入ってこれるという状態になりまして、そのために地上のレーダーだけではなかなか捕捉ができない。したがいまして、飛行機にレーダーを持ちまして、そして早期に捕捉するということが大事でございます。申すまでもなく、五十一年にミグ事件というのがございまして、国民の関心も非常に深まっておるわけでございまして、私どもは国の防衛ということにつきまして責任を持たされておるわけでございますけれども、そうした責任の立場上、この日本の防衛上に欠陥があるとするならば、これをこのままに置いておくことはできない、一日も早くこうした欠陥に対しまして対処するということが大事である、こう思っているわけでございまして、そのためにこのE2Cを早くからお願いしたかったのでございますが、ようやくことしになりましてお願いした、こういうわけでございまして、どうぞひとつそうした立場におきまして、疑惑は疑惑としながら、この早期導入につきましては格別の御審議の上御理解を賜りたい、このように思う次第でございます。
  74. 野呂恭一

    ○野呂委員 防衛庁長官、ソ連の戦闘機が低空から入ってきたいわゆるミグ事件、こういうことから考えてまいりましても、わが国の防衛、防空体制には一つの欠陥がある、これを補うために警戒監視レーダーを積んだE2Cというものが必要なのだ、しかもその警戒機についての機種決定は長い間かかって、長期的に専門的に技術的に検討をしてきたのである、こう言われておるのですが、この防衛体制の上における欠陥と申しましても一体どういうことなのだろうか、国民には理解が得られないのではないか。どうしてもこの飛行機を買わなければわが国の防衛体制はなっていけません、やはりその防衛体制というものの中におきまするE2Cの持つ役割り、これを十分に国民に理解の得られるような御説明を私は願いたいと思う。
  75. 山下元利

    山下国務大臣 技術的な問題につきましてはまた政府委員から御説明させていただきたいと思いますが、率直に申しまして、ミグ事件が起こりましたときに、実は地上のレーダーでは見失ってしまったわけでございまして、そして急に入ってまいったという事情がございます。この地上のレーダーというものは、わが国におきましては現在二十八のレーダーサイトがございまして、日夜努力はいたしておりますけれども、超低空で入ってきます飛行機につきましてはそのレーダーだけでは捕捉ができない。そこで、このアメリカで開発されましたところのE2Cという、これはもうこれしかない飛行機なのでございますけれども、これを導入して、これが上空を飛ぶことによりまして早期にそうした侵入を捕捉できる、こうしたことが私ども国の防衛上抑止力として非常に大事な点であろうと思うわけでございます。実はこの点につきまして昨日もお話がございましたけれども、もちろんこれをどの程度導入するかにつきましてはいろいろ問題がございますけれども、国力、国情に応じて整備を図っていく立場からいたしまして、国の財政事情等も勘案し、本年は四機の導入をお願いいたしたわけでございまして、これはもちろんこれですべて十分とは申せません。私どもさらにまたお願いもせねばならぬと思いますけれども、少なくともこの四機を導入して、この哨戒機が日本のある地点に配備せられるということが日本の防空上どうしても必要なのでございます。このことがございませんと、やはり日本の防衛上欠陥がある。この欠陥をわれわれは承知しながら、そしてこれに対処する方法があることを知りながら、そのままにしておくことは、防衛の責任を果たすことにはならない、このように思う次第でございまして、御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  76. 野呂恭一

    ○野呂委員 どうもこの五十四年度の予算にどうしても計上して、国会の承認を得てやっていかなければ、これは防衛上大きな問題になるんだ、つまり、その緊急性ということが国民によくわかるのであろうか、これをもう一度はっきりと申していただきたいと思います。
  77. 山下元利

    山下国務大臣 昭和五十四年度の予算案に計上いたしております経費は十一億五千万円でございまして、四機の導入につきましては総額三百四十三億要るわけでございます。これは国庫債務負担行為でお願いしておるわけでございます。  と申しますのは、この飛行機を実はアメリカの政府日本政府との間で契約をいたしまして、そして導入するわけでございますが、この飛行機を製造するにつきまして大変時間がかかるのでございます。しかもこれについてパイロット等の訓練にも時間がかかりますので、こうして御審議の上、もし御決定いただくならば、本年アメリカの政府と契約いたします。そして実際にこのE2Cが日本に入ってまいりますのは五十七年に二機でございます。五十八年に二機でございます。そして五十八年にようやくこれが働き得るという状況でございますので、したがいまして、それじゃことしは出なくてもいいじゃないか、そういう御意見もございますけれども、そういうふうな飛行機でございますので、今年にお願いしたいというのは、そうした事情からいたしまして時間のかかる飛行機であるし、またこれを日本が持つということが日本の防衛上大事なことである。その点で、どうしても五十四年にこの四機導入分として、前金として十一億をお願いいたしておるというわけでございます。
  78. 野呂恭一

    ○野呂委員 要するに、E2Cの購入については防衛上、防空上緊急かつ欠くことのできないものなんだ、こういうことであります。だから予算閣議に先立って国防会議でもお決めになったわけでございます。その国防会議の議長は総理なんです。そしてまた防衛庁長官はその主要なメンバーであり重要なメンバーである。官房長官もまたメンバーである。ところがその官房長官がこの間の日曜日のテレビ討論で、国会の決定に従います、そんなことは当然のことであります。しかしこれを聞いていると、まるで人ごとのように受け取れないわけでもないのでございます。こういう政府の態度に、何か弱さ──どうも国民に徹底した理解が得られるような説得力、そういうものがないということを私は心配するのです。それだけに、削減だの凍結だのという議論が出てくるのではないか。E2Cの装備は疑惑の解明とは別個に、防衛上の必要から慎重に検討した結果、来年度の予算に計上したというのでありますから、専門的、技術的に検討した内容をこの機会に国民に理解が得られるように説明していただきたい、かように私は思うのであります。したがいまして、たとえばE2C選定のいきさつ、それからまた購入上の今後の手続はどうなっていくのか、こういうことが国民に理解が得られるように私は説明を願いたい。そういうことであれば、いろいろ反対の意見もあるけれども、切り離して、この予算は認めてやるべきだという国民の理解が生まれてくる、かように私は思うのでございます。
  79. 原徹

    ○原政府委員 ただいま長官から御説明がございましたが、選定の経緯等について御説明いたします。  まず四十年ごろから、早期警戒機をどうするかということはいろいろ研究していたわけでございます。しかしながら、四次防が終わります五十一年でございますが、四十七年から五十一年が四次防の期間でございましたが、結局四次防期間では装備をするということが認められておりませんです。そうしているときに、五十一年にミグの事件がございまして、重大な欠陥があるということになりまして、そこで私どもはできるだけ早くこれを整備しなければならぬということで、海外に調査団を派遣いたしました。そのときにはいわゆるE3AというAWACSと今回のE2Cと、この二つの飛行機について調査をいたしたわけでございますが、E3Aというのは単なる防空作戦だけでなく、その地域におきます陸海空の指揮までできる機能を持っております。私どもの防空作戦のためにはちょっと機能が大き過ぎる、値段も一機約三百億円いたしますし、重さもたしか百五十トンで、いまの自衛隊の基地では使えない、そういうようなこともございます。それからE2Cは特に海軍機でございまして、海面反射についてのいわゆるシークラッターの除去というものは非常に性能がよろしい、そういうようなこともございまして、まずE2Cがよかろうということになったのでございますが、五十二年度にやろうかと思ったのでございますが、さらにバッジシステムとの連接が必ずしも研究不十分だということもございまして、五十三年度は見送って五十四年度に予算の要求をいたしたわけでございます。  そこで、確かに一月四日にSECの報告がございまして、SECの報告の中に代理店手数料がいろいろ回り回って政府高官に行くかもしれないという記事がございました。私どもいろいろ調べてみたわけでございますが、私どもがこれからやろうといたしますのはFMSという、アメリカ政府と契約をいたします。アメリカ政府と契約いたしますFMSによりますということは、問題になっているのは代理店手数料であろうと思うのでございますが、今回FMSで買うことによりまして、グラマン社から代理店、すなわち日商岩井になるわけでございますが、それに代理店手数料が支払われるということはないわけでございます。でございますので、そういう過去においていろいろあったのかどうかという点は疑惑がございますわけでございますから、それはもう徹底的にお調べいただくのが望ましいと思いますし、私ども本当に率直に申しまして、何か飛行機を買うごとにそういうお話があるということは、私どもとしても大変耐えられないような気持がいたすわけでございます。そういうことでございますのでひとつ疑惑は切り離して、防衛庁は全く技術的な見地で選んだものでございますので、そこは切り離して御審議を願いたい、こういうことでございます。
  80. 野呂恭一

    ○野呂委員 防衛庁長官、これは裏を返して私は聞きたいのですが、仮に五十四年度にこの予算が認められなかった場合、あるいはまた、いま問題になっておりますように、グラマン、ダグラス問題の疑惑が解明されるまで予算が凍結される、そしておくれていく、こういった場合に、防衛上どんな問題が起こって国民に迷惑をかけるのか、わが国の防衛体制にどういう欠陥が生まれてくるのか、これをひとつわかるように御説明を願っておきたいと思うのです。
  81. 山下元利

    山下国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおりに、率直に申しまして、いまの航空機の発達の状況からいたしまして、超低空で侵入してくる飛行機につきましては、現在わが国で二十八のレーダーサイトでは十分捕捉できないことははっきりいたしております。したがいまして、早期警戒機が必要であるということは大体どの国も認めておるようでございます。私どもも実は五十一年にあのような事件が起こりまして、現実にそういう欠陥があったことははっきりしておるわけでございます。かようなことが再々あっては困るわけでございます。われわれはないことを望んでおりますし、また、そういうことが起こらないようにふだんの備えをせねばならない、これが防衛庁に課せられた責任であると思っております。そういたしますと、現在の地上のレーダーサイトだけではとうていその責務を果たし得ない。そこで国費をお願いするわけでございますけれども、国の防衛上欠陥がはっきりいたしておりますので、その欠陥についてはこういうふうに日本の国は対処するのだということをはっきりいたしますことが、私は国の防衛上まことに大事な点であると思います。もちろん、こうしたことにつきましては国民の皆様の御理解を得て、その御判断によるわけでございます。  私ども防衛庁としては、国を守るという大事な責務を果たす関係上、現実にこういうことがあるとした場合に、これを一日も早く解決していただきたい、このように思っておるわけでございまして、先ほど防衛局長からも説明いたしましたように、技術的には実はこのE2Cが最適でございます。私、先ほどこれしかございませんと申しましたのは、日本の国にとりまして適当な機種としてはこれでございます。あとE3Aがございますけれども、これは一機で三百億近いお金が要るわけでございます。しかもその機能は、わが国の防衛という立場からするならば、何と申しますか、ここまでは必要でないのじゃないか。しかしE2Cは、どうしてもそうした現実に欠陥のあるのを埋めるためには大事な機種でございます。そこで実はお願いしておるということでございます。  しかも、重ねて申すのはなんでございますけれども、これは政府政府の間の契約でございますので、これが間について商社が介在する余地はない、不正な手数料が入る余地はない、この点は自信を持って申し上げられるわけでございますし、また、機種選定の経緯につきましては、先ほども局長からも御説明いたしましたように、その間いささかも不正はございません。もしそのようなことが仮にあるとするならば、防衛庁長官としてはこんなことは原案としてもお願いできることじゃございません。したがいまして、繰り返して申すようでございますけれども、そのような国の防衛上必要なものをどうか御理解いただいて、われわれのためにこの防衛の仕事に万全を期させていただきたい、しかもその間不正はございません、こういうのが趣旨でございます。  しかも、飛行機と申しますのはいろいろずっと発達してまいります。それからまた、それに対する技術も発達いたしますので、これをやはりことし予算で入れていただきまして、五十七年、五十八年に導入される、それが余りおくれましたときにはアメリカの生産関係の問題もございますので、やはり今年にどうしてもお願いせねばならぬというふうに考えているわけでございます。  いろいろ申し上げましたけれども、なぜ本年にこれを急ぐのかと申しますと、実は率直に申しまして、むしろこれは遅きに失しているのだ、五十一年にあのような事態が起こりまして、それから本当に必要なのを、私どもおくれておった、申しわけないというくらいに思っておるわけでございますので、御理解いただきたいと思う次第でございます。
  82. 野呂恭一

    ○野呂委員 時間がありませんので、この問題はこの程度にいたしておきますが、やはりまだ国民では理解のできない緊急性、防衛上どうしても欠くことのできないものだという何か迫力ある御説明でないように実は思うのであります。しかし、この後、各党からもいろいろな意見の開陳もあることだと思いますから、政府は粘り強く国民の理解が得られるように、そして今国会において適切な結論の得られることを私は期待いたしたい、かように思うのでございます。  そこで防衛庁長官、この機会に国民の生存と安全に直接かかわりのある問題として、北方領土におきまするソ連軍の最近の動きについてお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  昨年の栗栖前統幕議長の択捉演習説を初め、一昨々日の新聞にも出ておりましたが、国後、択捉ではソ連の基地建設が本格的に進んでおるということが明らかにされたのであります。この問題はわが国の安全保障にとってきわめて重要な問題でございます。国後、択捉はわが国の領土であるということ、もう一つは北海道にきわめて近い距離にあるということでございます。十八年ぶりということでありますが、再びソ連が地上軍部隊を配置した。これが事実であるとするならば、私はこれは看過できないまことに重大な問題であると言わなければなりません。このソ連軍の国後、択捉島におきまする地上部隊の配置、基地建設という事実関係を防衛庁長官から的確にひとつ御説明を願いたいと思うのでございます。  同時に、この問題は日ソ関係の進展にも大きな影響を持っておるわけでございます。ソ連がこうした地上軍を配置したというのはどういう意図があるのか、この動きを政府としてはどう見るのか、外務大臣からもお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  83. 山下元利

    山下国務大臣 国後、択捉両島におきましては、第二次大戦後、一九六〇年でございますから昭和三十五年ですか、昭和三十五年夏ごろまではこの地域に地上軍一個軍団を初めといたしまして、防空戦闘機部隊あるいは国境警備部隊を配備いたしておりましたが、実は昭和三十五年夏に地上軍部隊は本土に撤収しておりました。そして、国境警備隊程度のものが存在いたしておったわけでございますけれども、昨年の夏以来大分動きがございました。実は私どもいろいろの情報を集めておりますけれども、各種の情報から判断いたしまして、いまの昭和三十五年撤収いたしましてそれからずっとそのままでございましたのが、去年の夏以来、この両島地域に相当規模のソ連地上軍部隊が配備せられたり、また基地の建設が行われているものと推定されることが確実になってまいりました。現在、その規模、種類等につきましては引き続き確認の努力はいたしておりますけれども、大体一月の末になりますると結氷期になりまして、宗谷海峡が通航ができなくなるようでございます。したがいまして、そうした通航ができない状況にあるにかかわらず、夏以来の部隊、それから基地がそのままであるということからいたしまして、私どもは、引き続き努力はいたしておりますけれども、やはりこの時期においてこうしたことを確認できた以上、御指摘のように、わが国の安全につきましてもまことに重大な関心を寄せるところでございますし、また、われわれの主張いたしております北方領土でございますので、このことをこの段階において明らかにすることが必要であると思いまして、あえて公表いたした次第でございます。  なお、現在配備されました規模、装備等につきましては、参事官の方からもう少し詳しく御説明させていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  84. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 現在択捉、国後地域に配備されております部隊の規模を確定するには、現状におきましてはまだ種々技術的困難が伴うのでございますけれども、大隊規模以上、強いて言えば旅団クラスの部隊ではないかと推定しております。  また、装備につきましては、戦車及び各種の火砲を装備している模様でございます。  また、建設が行われている地域といたしましては、国後島中部及び南部並びに択捉島の中部でございます。
  85. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの防衛庁の情報は、各方面の情報を総合するとほぼ当たっているのではなかろうかと想像いたしております。ただし潜水艦その他の基地建設の模様はいまのところないようだと判断をいたしております。  この問題はわが国としては冷静に、しかも事を過たずやる必要があります。外務大臣から言えば、わが国の固有の領土であると主張しているところであり、この返還を迫っているところでありますから、この地域に兵力の増強または基地の建設をされることは無関心ではあり得ませんので、これについては当然外務省からソ連に対して相当の対応処置をしたいと考えておりますが、また一面考えなければならぬのは、これを直ちに日本に対するどうこうであるということで騒ぎ立てることが、真に今日米ソの関係の緊張緩和を願うわれわれとして賢明であるかどうかということも考えなければならぬところでありますが、そういう点を冷静に判断しつつ、関係省とも連絡をしつつ対応の処置をしたいと考えております。
  86. 野呂恭一

    ○野呂委員 防衛庁長官に伺いますが、この国後、択捉のソ連の地上部隊の配置に対して、今後わが国として防衛計画を修正する必要があるのかないのか、これをどうお考えになりますか。
  87. 山下元利

    山下国務大臣 私どもといたしましては、ただいま私並びに参事官から説明いたしましたような状況であることはほぼ確認されるわけでございます。しかし、それがどのような性格のものであるかにつきましては、これはなかなか推定はむずかしいのでございますけれども、直ちにわが国の防衛計画をこのために修正せねばならぬような状態ではないだろうと思うわけでございまして、冷静に、動きを絶えずキャッチすることによりまして、私どもとしてはその点をはっきりさせておく必要がございますけれども、防衛庁といたしましては防衛計画を直ちに修正するというようなことではない、この両島におきますところの配備もその島嶼防衛的なものではないか、その両島地域から私どもの北海道は大変近いものでございますから、いろいろな推測はなされる方もありますけれども、私はそれはいささか考え過ぎではないか、このように思っておるわけでございます。しかし防衛庁といたしましては、確かに国の安全にとって大事なところでございますので、引き続きこの確認をいたしまして、冷静に対処してまいりたい、このように思っている次第でございます。
  88. 野呂恭一

    ○野呂委員 次に、国内におきまする事件ものでございますが、さきの三菱銀行事件に引き続きまして、昨日の午前一時、神奈川県の横須賀市におきまして、自動車修理工が猟銃でスナックの経営者を射殺して自分も自殺したという事件が起こったのでございます。この男は四十五年と五十三年の二回にわたりまして銃砲所持の許可を持っておりますが、二丁も猟銃の許可を持っておるわけでございます。それで、一丁で撃ち殺した後友人に預けて、もう一丁で自殺をしたと私は聞いておるわけでございます。  まず、大阪の三菱銀行の事件におきまする目に余る凶悪犯罪でありますが、四十二時間、二昼夜、この事件が報ぜられましたテレビの前に私はくぎづけになって、はらはらしながらとうとう二昼夜、朝までこれを見ておったわけでございますが、このことは私一人ではないと思うのです。国民の多くの人々がきっと私はそうであったと思うのでございます。不幸にしてこの事件で殉職されました二名の警察官、そして犠牲となられた方々に対しまして心から哀悼の意を表したいと思います。  金銭目当てのこの犯罪が相次いで起こっている背景には、景気が悪いということもさることながら、お金や物だけがすべてであるという社会的な風潮が背景になっておるのではないだろうか。三菱銀行事件の犯人は過去に強盗殺人を犯していながら、当局は簡単に猟銃所持の許可を与えたというところに問題がありはしないだろうか。私は、過去に罪を犯しても、更生して社会に復帰した者を温かく迎えてやるということは当然だと思います。しかし、再び犯罪を起こすような可能性のあるような者、これに対して銃刀の所持の許可を軽軽しく与えてはならない。いま申しました二つの事件で見られますように、最近、こうした銃砲による凶悪犯罪が多発しております。この面での厳しい処置をとらなければ国民は安心して暮らせないのではないか。銃砲の所持に対する許可は言うまでもなく都道府県の公安委員会が行っておるのでありますが、今度の事件の教訓からいたしましても、今後この許可条件及び運用はどうしていくのか、どのように考えておるのか、銃砲刀剣類の所持取り締まりに対しての改正の必要がありはしないのか、こういう点をお伺いいたしておきたいと思います。
  89. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お答えいたします。  今回の大阪市、三菱銀行支店の事件は、犯罪史上におきましてもまれに見る凶悪、残忍な事件でございまして、まことに残念のきわみであります。この事件の犠牲となられました四名の方々に対しましては、謹んで弔意を表すると同時に御冥福をお祈りする次第であります。  御質問でございますが、私は大体あなたと同じような考えを持っております。そこで、二十六日に事件が発生したわけでございますが、二十七日、翌日でありますが、直ちに全国の都道府県に指令を出しまして、銃砲の所持許可を凶悪の前歴を持った者に対しては当分留保しなさい、それから許可のやり方、これは厳しくやるようにという指示を直ちに出したわけであります。  それで、参考までに申し上げますと、散弾銃の所持許可を受けておる物が大体七十一万丁を超えておるわけです。去年が七十万丁でございますから、一年間で約一万丁近くふえておるという事態ですね。言うまでもなく銃砲はもう直ちに凶器になるわけでありますから、こういう状態を一体現行法のままでいいのかどうか、法改正も含めて根本的に検討してまいりたい、私はかように考えております。
  90. 野呂恭一

    ○野呂委員 国民の側から見ますると、この所持規定が甘いのじゃないか、所持の許可に対する審査、これも十分行われておるのかどうか、あるいは保管や管理がやはりルーズではないかというような心配、疑いがあると思うのです。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 どうか国家公安委員長におかれましては、この種の事件というものは連鎖反応を起こす危険があると私は思うのでございます。これこそ社会不安であると思いますので、十分国民の心配に沿って、法改正をする必要があるならば、これにひとつ取り組んでいただきたいということをお願い申し上げておく次第でございます。  次に、元号法制化の問題でございますが、申すまでもなく、この元号は千三百年に及びまするわが国の独自の伝統文化であります。今日の国民の日常生活の中で生き続けてきておる文化遺産であると申しても過言でございません。したがって、その法制化には多くの国民がこれを望んでまいったわけでございます。政府は、きょう閣議で御決定になって国会に提出をされたようでございますが、何とぞこの元号法案の早期成立のために総力を挙げていただきたいということを御要望申し上げておきたいと思うのであります。  さて次に、いまいろいろお伺いしましたように、防衛体制が確立して国民の平和と安全が保障され、そして国内におきまする凶悪犯罪などが防止され治安が維持されていったとしても、国民にはなお幾つかの心配があるということでございます。したがいまして、私は国民生活の安定という問題に入ってまいりたいと思います。  いま国民が一番暮らしの中で心配しておることは、この先以降景気がよくなるのか、どうなっていくんだ、いまより少しはよくなるのか、それとももっと悪くなるのか、あるいはこのままで続いていくのであろうか、こういった不安と期待というものが入りまじっておるというのが偽らない気持ちでなかろうかと私は思うのでございます。今日の不況はオイルショック以後の世界的なものでございます。アメリカは少しは持ち直したというけれども、インフレと貿易の赤字で非常に悩んでおるということでありましょう。またドイツは、物価は比較的安定しているけれども景気拡大日本には及ばない。イギリスやフランスはそれほどぱっとしない。これが現状だと思いますが、その中で日本物価は比較的安定しておる。景気は悪いと言っても、経済成長率は先進国仲間では第一位を示しておるということ。最近の経済の動向を考えてみましても、製造業の生産というものは徐徐に回復してまいりまして、個人消費も伸びてきておる。このままで行くと、ことしは景気回復にある程度期待が持てるのではないか、こういう感じがいたすのでございます。しかし、これは国民の側から見ますると暮らしはそう楽でない。就業難と失業の不安がある。景気はそう簡単に回復しないのじゃないだろうかというのが、私は実感でないだろうかというふうに思うのでございます。総理は、こうした日本経済の現状に立って、この経済のかじをどういうふうに取っていこうとするのであるか、私はここに関心が集まっておると思うのであります。海外経済の見通しとわが国の景気回復に対する総理の決意と自信のほどをお示し願いたいと思います。
  91. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 野呂さん御指摘のように、わが国経済は諸外国に比較いたしまして決してひけをとらないだけの回復状況にありますことは御指摘のとおりだと思うのであります。物価状態も比較的安定した状態、相対的には比較的安定した状態でございます。成長率も際立って高い成長率を記録いたしておるわけでございます。しかし、これはいわばマクロ的に見た状態でございまして、だからといって安心できる性質のものではないと思うのでございまして、国内の経済を見ましても、マクロ的に見る限りにおきましては仰せのように生産も出荷も在庫整理も順調に進んでおります。物価は一応安定基調をたどっておるわけでございます。したがって、マクロ的に見る限りにおきましてはそう深刻な状態にあるとは言えないと思うのでありますが、しかし問題はあなたも言われましたように、今日の不況の局面におきまして将来に活路が見えない不況産業というものがあります。特定不況業種、そういうものが大変集まっておる不況地域の問題がございます。それから雇用でございますが、去年一年なかなか頭が重く、その改善の兆しが見えなかったわけでございますが、ことしになりましてようやく多少の改善の徴候が出ておりまするけれども、失業率におきましても大変まだ高い状態でございます。とりわけ中高年齢層の失業問題というのは大変深刻だと考えておるわけでございます。  したがいまして、こういう事態に処しまして、私ども経済運営に当たります第一の心構えは、マクロ的に見て物価安定基調というものを何としても守っていかなければならないのではないかということが第一でございます。  第二の点におきましては、ミクロ的に見まして不況産業に対する対策あるいは雇用問題に対する対策というものに特に注意をしなければならないのではないかと考えておるわけでございます。  第三には、このようにわが国経済が回復基調にあるとはいえ、国際経済の目から見ますと、わが国の対外経済の不均衡状態というのは放置できないことであると各国からも指摘をされておるわけでございます。この均衡化の問題は大変むずかしい問題でございますけれども、何としても対外経済均衡化の方向にことしも相当事績を上げないと、国際的な期待と信頼にこたえられないことになるのではないかと考えておるわけでございまして、そういった点に特に注意をして運営に当たらなければならぬと考えております。
  92. 野呂恭一

    ○野呂委員 さて、景気の回復に関連いたしまして具体的な経済成長率の問題であります。  五十三年度は七%の経済成長率を持っておったわけでありますが、それが大平内閣が発足した直後に一%下げて六%にした、いわゆる下方修正であります。これは対外的に大きな影響をもたらしたことはいまさら申すまでもありませんが、この対外影響を考慮せずに修正に踏み切った。この結果、非常な国際信用にかかわる問題をも惹起したのではないだろうか。したがいまして、私は国際公約というものはよほど慎重に考えていかなければならぬと思うのです。また大平内閣が誕生した当時、あと三カ月もあったわけでございますから、いろんな手当てをしながら七%という目標に向かって努力をすべきであったのではないか。単に六%に下げましたというようなことを軽々にやるべきでないと私は考えておるのでございます。  そこで、これからこの六%に修正したものを達成する自信がおありなのか。またこれも修正をしなければなりませんということではないだろうと私は思いますが、円レートも安定しております。また住宅などの伸びも期待されるわけでございますから、私は六%は確実に実施できる、こう考えるのでございますが、総理の自信のほどをひとつお示し願いたいと思うのでございます。
  93. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  大平内閣成立以後に、七%を公的に六%にしたということは何ら申したことはないと私は記憶しております。この点が非常に何か誤解を生んでいるように思いますが、しかしそれとは別に、われわれとしましては、新内閣になりましてから現状について詳細な分析をいたしておるのでありますが、やはり国内需要は二年間にわたる相当大胆な公共投資その他財政投融資がありましたので、成長率といたしましては国内需要は八%程度にまで高まっております。しかし問題は、昨年に起こりました急激な円高と申しましょうか、それによりまして輸出その他が計画よりも相当なダウンをしておるということでありまして、その結果が六%程度になるであろうという予測をいま持っておるところであります。
  94. 野呂恭一

    ○野呂委員 五十四年度の経済成長率を六・三%と見込んでおるのですが、その根拠は一体どこにあるのか。民間はそれよりもはるかに低い四%からあるいは五%という数字を示しておるのでございます。これが五十四年度精いっぱいじゃないだろうかという見方が強いわけでございます。もともと政府は常に経済成長を高く見る、民間は常に低い、そのパターンをずっと今日まで繰り返してきた。ですから、とかく政府成長率というものはどうも間違いだらけでないかというような批判すら起こってまいっておるわけでございます。ことしの六月は言うまでもなく主要先進国首脳者会議が開かれるわけであります。この会議においてやはり問題になるのはわが国経済成長率でないだろうか。こういう点を考えますと、政府は六・三%の達成に自信があるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  95. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  五十四年度における六・三%の算定の基礎は、私は大体この程度はいけるものだと思います。ただいま御指摘の民間各社で行いました予測と個別に比較をいたしてみましたが、その結果においては国内需要はほとんど同じような成長率、六%、わが方は六・六%でございますが、民間の平均は六・三%程度でございます。この国内需要についてはほとんど同じような数値でございますが、貿易の問題になりまして非常に数値が違ってきております。われわれがこの計画をつくりました当時の為替レートは百九十円台でございましたので、百九十円で計算をいたしておりますが、民間の調査機関は百七十円、百八十円というようなところで計算をしておりますので、この円が高いということによる輸出の大幅な減少を民間調査機関は強く計算をいたしておりまして、われわれは百九十円で、国内の体制が非常につらいところであっても、輸出産業はそれでもなおがんばっていけるような体質が徐々に整っておるというような観点から、この輸出の伸びとまた輸入の伸びとを平均的なものとして計算をしておりまして、その結果が民間の方が五%程度、私らの方が六・三%程度という計算の違いになっております。これはもちろん手放しでわれわれの計算が実現できると胸を張るわけにもまいりません。経済は生き物でございまして、いろいろなファクターがこの間にある。たとえば現状におきましてもすでに円は二百円になっておるというようなことで、それがいかに不安定なものかということを考えますると、この予測というもののむずかしさをしみじみ感じておりますが、われわれといたしましては、先ほど総理がお答え申し上げたように、失業を食いとめるということと、景気の先行きを少し夜明けのように明るくしたいということ、それとまた特に問題でございます対米関係あるいは対外関係の調整と申しましょうか、それらの問題をなし遂げるためにも、逆に言うと六%程度成長をどうしてもやっていかなければならぬというような面もございまして、いずれにいたしましても、先ほどの総理のお答えのように、マクロ的な問題よりもむしろミクロの、きめの細かい非常な努力を積み重ねてこの数字は達成いたしたい、そんな意欲を持っておるわけでございます。
  96. 野呂恭一

    ○野呂委員 さて、国民暮らしの中で景気がぱっとしないということで一番心配なのはやはり雇用問題であると思います。  総理、会社が人員整理をした、あるいは倒産した、そういうときに再就職しようとしてもなかなか職場が見つからないのです。これは大きな社会問題にもなっていく心配があると私は思います。それでありますから、そういう雇用不安、これに対してどう積極的に対応するか。私は、今度の予算におきまして一番柱になっているのは、この雇用拡大の問題であったと思うのでございます。特に中高年齢層の雇用機会の確保を中心とする雇用開発のことに予算措置を講じてまいったことは、これは従来になかった雇用政策を取り上げた点を評価しなければならないと思うのでございます。ただ、中高年齢者層の雇用対策については、役人的と申しますか、役所的な手法が大変この問題のさばきになっておるように思うのでございます。役所的な手法に終わらないように注意をしていただきたいと思いますし、同時に今日の雇用不安に対処をして、財政面の援助だけでは解消されるものでございません。いかにしてこの厳しい雇用不安の情勢に対処していくつもりであるのか、総理の真剣な姿勢をこの際示していただきたい、こういうふうに思います。
  97. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いま、私どもが出しました中高年齢層の開発給付金につきまして御評価いただきましたことに感謝を申し上げます。ただ、その際に役人的な手法に流れないようにという御注意でございますけれども、そういう制度をとっても消化されないのではないか、そういう意味で御激励の意味もあると思いますが、さようなことにならぬように弾力的に、この制度が消化されるように運用いたしたい、こう考えております。
  98. 野呂恭一

    ○野呂委員 雇用問題を解決する決め手は、働きたい人が働く職場をどんどんつくり出していく、つまり雇用の創出ということであると思うのでございます。それをどういうふうに工夫していくか。今後政府におかれましても、いろいろ不況業種もございますし、ことに問題になっております減量経営という面からも雇用の機会が狭められてきておることは大変遺憾なことでございます。もっと新しい工夫と創意を持っていただきたいと思うのでございます。私は、労働力を必要とするチャンスがまだほかに必ずあるのじゃないだろうかというふうに考えるのでございます。  なお、もう一つこの機会に申し上げたいのは減量経営という問題でございますが、減量経営の結果、企業の業績はかなりよくなっておるということを企業側は考えておると思うのです。また、当面この不況を乗り切るためにはやむを得ない一つの方法ではないかということにもなると思うのでございますが、しかしこの減量経営が長く続いてまいりますと、日本経済全体がしぼんでしまう、また物の供給不足という需給アンバランスによりまして物価が値上がりするということにもなりかねないのでございます。私は企業にも大きな社会的な責任があるというふうに思うのでございます。政府は民間の経済力を活用して一層雇用問題に対処願いたいということを申し上げておきたいのでございます。  次に、物価の問題でございますが、何といたしましても、物価の安定は国民生活にとって大変大事なものであります。インフレになっては元も子もなくなるということでございますから、この物価問題に対しては本当に総力を挙げて対処しなければならないと思うのであります。国民の間には物価に対する不安が最も大きいのでございまして、物価対策への注文が圧倒的に多いわけであります。原油価格の大幅引き上げやあるいは国鉄運賃、米価、たばこなど、公共料金が相次いで値上げされておるわけでございます。これが引き金になって物価の上昇になるのではないかという不安が国民の間に高まっておることは事実であります。五十四年度の政府の見通しでは、卸売物価が一・六の上昇、消費者物価が四・九の上昇と見ておるわけでございます。最近の全国の土地価格を見ましても、値上がりの兆しがあります。また建設資材が値上がりの傾向にあるということでございます。一方、国債の大量発行によってインフレの懸念もあるわけでございます。  こういうふうに、景気回復というものが物価上昇への引き金にならないように配慮しなければならないのでございまして、それがためには、政府は、この際便乗値上げ等に対しては徹底した行政指導をやっていただきたい。物価の安定に対して今後どういうふうに対処するのか、具体的な方策を大蔵大臣及び経済企画庁長官からお伺いいたしたい、かように考えるのであります。
  99. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの野呂委員の御指摘は非常に適切なものであるし、われわれもそれらの要因につきまして、いまこれがどうなっていくか、それをどう調整するかということに苦慮しているところでございます。いずれにいたしましても、われわれの最終目標としての社会生活の安定というものにつながることは、消費者物価を四・九%程度の上昇に食いとめるということでございます。そのためにも、できる限りの努力をいたしまして、個々の商品につき、あるいは個々の業界について、われわれそれぞれ担当、手分けをいたしまして、物価引き上げの要因がある場合には、それを調整をするということで努力を積み重ねてまいりたいと思っております。  また、特にOPECの値上げとか、あるいはまた海外要因による銅、アルミ等の値上げというものは、これは確かにわが国にも相当な影響を卸売物価に与えることを踏まえておりまして、これらの面から見ましても、物価を安定させるということについては全力を挙げて対処してまいりたいと思います。
  100. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいま国債の大量発行に伴うインフレの心配についての御質疑がございましたけれども、何といっても心理的に大きな影響を与える問題でございますので、これは国債管理政策の適切な運営によりまして完全な消化に努めるようにいたしますとともに、マネーサプライ、先ほどもお話が出ておりましたけれども、最近は一二ぐらいでございまして、まだかつての狂乱物価のときのような大きな動きはございませんが、しかし今後十分にこのマネーサプライの動向に注意いたしまして慎重な配慮を加えてまいりたい。インフレをやったらもうおしまいでございますので、われわれといたしましてはそこまで事が運ばないように全力を尽くしたいと思っておる次第でございます。
  101. 野呂恭一

    ○野呂委員 国民生活の中で、いま非常に心配していることは石油の問題だと思います。エネルギー問題の中で、私は石油にしぼってお伺いをしてまいりたいと思うのでございます。  わが国は、エネルギーの大半を石油に頼らざるを得ないし、同時に石油をすべて輸入に依存しておるということでございます。したがって、当分の間はやはり石油時代というものが続いていくのではないだろうか。中には脱石油時代などと言っておりますけれども、今日、石油の安定供給、これを確保することが非常にエネルギー問題における中心課題でないだろうかというふうに思うのでございます。  御承知のとおり、世界第二の石油輸出国であるイランの政治情勢が著しく緊迫化してまいりました。こういうふうに考えてまいりますと、国際石油情勢がただならぬ不安を与えておるわけでございまして、加えて本年の一月からOPECによる一四・五%に及ぶ衝撃的な原油の値上げが実施されておるわけでございます。わが国国民生活及び産業経済は、オイルショック以来重大な危機に立たされるおそれなしとしないのでございます。こうした深刻な状況の中にあるにもかかわらず、石油政策に対する政府の取り組み方は必ずしも私は十分でないのではないだろうかという心配を持つものでございます。産油国の中東諸国に対する外交関係も含めて、政府の取り組み方が必ずしも十分でない。石油安定供給確保に対して政府はどう対処するのか、これは総理から承っておきたいと思うのであります。
  102. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、石油問題がエネルギー問題の中で最大の問題でございますし、わが国にとって一番深刻な問題であることは、御指摘のとおりでございます。  幸いに去年いっぱいは順調な入荷が期待できまして、むしろ市場はだぶつきぎみでもございますし、円高の影響もありまして、灯油、ガソリン等は前年に比べまして値下がりの傾向さえ示しておりましたことは御案内のとおりでございます。けれども、年末になりまして、イランの情勢が御承知のような事態になりまして、入荷の計画に相当のそごが見えかけたのでございますけれども、これは供給先を分散することに成功いたしまして、去年いっぱいは大きな支障なく経過することができたわけでございます。  ことしになりますと、イラン情勢はなお深刻化いたしてきましたし、OPECによる値上げもアナウンスされてきておる状況でございまして、ことしは、エネルギー対策は真剣な、周到な取り組み方をしなければならぬと存じておりまして、どのように供給を考えているか、消費についていまどのように措置しようとしておるか、通産大臣から御説明をいただきたいと思います。
  103. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点はきわめて重要だと思います。御承知のとおり、一次エネルギー源としては、わが国の場合七〇%が石油でございます。しかもその八〇%が中近東地方から輸入されておりまするので、イランの情勢の混乱が長く続くことは、やはり非常な影響をもたらすものというふうに思います。  そこで、十二月にはイランからの輸出が全面ストップしました。これは、御承知のように、隣接諸国の努力によりまして、ある程度カバーされたり、積み増しができたということはありますが、本当はその時点でも警告を発したかったわけであります。真冬に向かっての灯油の手当て期でもありまするので、国民の自覚にまちながら情勢を見守っておったわけでありまするが、年がかわりまして一月の中旬、通産省として国民に節約の協力を求め、一月の二十二日に省エネルギー・省資源対策推進会議に正式にかけまして、まず隗より始めろで官公庁が節約の模範を示す、そしてまた民間の協力も求める。これは民間は石油ショックで石油が四倍になり、その製品が五倍になったという段階で相当節約意識は徹底いたしております。ただ一般民間においては、これは文化生活の高まりもありましょうが、あの石油を一番消費したショック前よりも四%近い消費の伸びを示しておるということで、節約協力を求めた、そして今日に至っておる、事態の推移によってはそれぞれ適切な協力体制を求めてまいりたいというふうに考えております。
  104. 野呂恭一

    ○野呂委員 総理、アメリカをごらんいただきたいと思うのですがね。カーター大統領はみずから陣頭指揮しまして、こういう国際情勢下の中で、将来石油がどんどん詰まってくるということになれば、エネルギーの節約は当然のことであって、これから配給制にしようではないか、あるいはまた使用制限までやるというようなことを明らかにしておるわけです。先ほど通産大臣から御説明ございましたが、わが国においても節約運動を展開していることは事実でありますが、何かやはりまだ精神面的な域を脱していないのではないかというように私は考えるわけでございます。ですから、総理、あなたがかねてから言われるように、あるがままの厳しい現実を国民に訴えて、脂汗をかいて説得する中で合意を求むるべきである、こう申されておるのでありますが、この石油に対して私は脂汗をかいていただきたいと、こう思うのでございます。いまこそ国民の先頭に立ってエネルギーの節約を強力に訴えていかなければならないと私は思うのであります。  ところで、今度は石油の開発の問題でございますが、政府の取り組み方についてお尋ねしておる時間がございません。ただ一言だけ、輸入国の多角化ということ、これは非常に大事なことでありまして、中東諸国に依存するのでなくて、中国やそれからメキシコからの輸入も拡大しなければならないのは当然でございます。特に中国は近い国でございます。昨年の二月に、長期にわたる貿易協定が民間ベースで決められたわけであります。そして五十七年には千五百万トン、将来にはこれを五千万トンまで持っていこうではないかというのが中国の期待だと私は思います。日中貿易の軸はここにあると思います。日本が石油をどのように買うかということが、私はこの日中貿易の決め手になるのではなかろうかと思うのでございます。  この間私が中国に参りました際に持ってきたのが、これが中国の重質油であります。こうして振ってもなかなか動かない。これは通産大臣は御存じだ。総理はこれを見たことはございませんでしょう。この重質油に対して、世界的にはそういう傾向にあるわけでございますが、わが国がこの重質油を受け入れるいわゆる体制というものが、いま十分に整っていないと思うのです。したがいまして、生だきにさえ使ったらいいということになりますと、電力業者にも限界が来ていると私は思うのです。この分解装置には相当な金が要るわけであります。民間に任しておけばいいというものではない。政府がもっとやはりこれに真剣に取り組んでいかなければ、世界の石油の自由化傾向に対応できないのではないか、私はこういうことを心配いたすのでございます。政府のこの中国の石油輸入におきまする重質油問題、これをどういうふうに受け入れていくかということに対しての心構えを伺いたい、かように思います。
  105. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように、供給地の多様化はまことに必要な問題だと思います。そこで、本会議でもちょっとお答えいたしましたが、昭和六十五年を目途に、アジア地域で三〇%強供給できるようにしたいというのが目下の計画でございます。  それから、いまそこにお示しになりました重質油の分解の研究でありまするが、これはきわめて重要な問題です。これも、サウジなどでもそういった重質油を従来の軽質油に抱き合わせで引き取ってもらわなければならぬ時代が来ておるということを警告してきております。したがいまして、とりあえずの対象は中国でありまするが、やはりこの問題を早急に結論づけなければなりません。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、政府としては、五十四年度予算の中に十七億円計上をいたしました。使用者側にしてみまするというと、これは非常に研究メリットが少ない。国策の上でそういうものを輸入してたかなければならぬというわけでありまするので、助成率としては四分の三というきわめて高い実は助成率で研究開発に資せよう、そしてわが国が望むガソリンであるとかあるいは灯油であるとかいうようなものをその重質油から分解する技術を速やかに開発したいというので、真剣に取り組んでおるのが現況でございます。
  106. 野呂恭一

    ○野呂委員 まだこのエネルギー問題についてはお伺いしたいことがございますが、時間もありませんので、次に、国民生活の安定につながる諸問題、それから政治は新しい社会にどう対応するか、これが私は大事な課題であると思うのでございます。総理施政方針演説で、経済中心時代から文化重視の時代に入った、人間性の回復を目指して家庭基盤の充実、田園都市構想を推進して、日本型福祉社会の建設を提唱されたのであります。この理想に対して私は大変賛成をいたすものでございますが、新しい社会づくりという、これをどのようにしてつくっていくのかという具体的な施策がない限りは絵にかいたもちに終わってしまう心配がございます。わが国社会を支えるものはやはり家庭の役割りというものが大変大事だと、かように考えますが、高齢化社会を迎える日本におきまして家庭がどのようにあるべきか。戦後は特に親は親、子は子という個人的な風潮というものが家庭を支配してまいったと思います。これでは家庭が行き詰まってしまうわけでございまして、ヨーロッパを見ましても、家庭のあり方を見直そうということになりまして、ドイツやスウェーデンでは家庭省までつくって家庭問題に取り組んでおるということを私どもは知っておるわけでございます。日本におきましてもこの家庭に対してのあり方、これを見直さなければならないときに来ったということでございまして、これに対応する措置も今度の予算になされてまいっておりますが、大平総理は、この家庭というものをどのように持っていったらいいのか、これをひとつ、御所見を承っておきたいと思うのでございます。そうでなければ家庭基盤の充実ということを抽象的に言われても国民には理解できにくいのではないか、一体家庭をどう見るのかということでございます。
  107. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 常識的に申しまして、家庭はわれわれの生活にとりましてかけがえのないオアシスだと思います。ここには打算とか嫉妬とかいうようなものはございません。善意と献身があるわけでございまして、ここで初めてわれわれは安らぎが得られるわけでございます。人生にとって非常に大事なオアシスだと思います。また社会にとりましても、ここがしっかりしていないといい社会ができないことは当然でございまするし、国にとりましても家庭がしっかりしていなくて何事もできないし、国の基礎は固まらないものと思うのございます。しかし幸いにいたしまして、わが国におきましては、その家庭自体がそのことについて自覚的に対応していただいておるから、政府の政策が必ずしも十分でなくても、今日家庭の社会的な役割り、国家的な役割りというものは果たしてきてくれたと思うのでございます。しかし自主的な国民自体の貢献にまつだけでなくて、公的な施策の面からあるいは住宅において、あるいは老人対策あるいは母子対策、あるいは生活環境対策あるいは教育政策その他万般の施策におきまして、大事な家庭基盤がいよいよしっかりしたものになるように政府の政策は持っていかなければならぬという意味で、私は家庭基盤の充実という政策理念を提唱いたしたわけでございまして、現在まで行われているいろいろな施策をもう一度見直して、それに力をつけていく、方向を定めていく、政策の材質をよく再検討して、家庭基盤の充実に役立つようなものにしていきたいものだという念願を込めて提唱いたしているわけでございます。
  108. 野呂恭一

    ○野呂委員 総理の提唱の家庭基盤の充実に見落としてはならぬことはやはり教育だと思います。  最近、学校の問題が動機となって多くの少年少女がみずからの生命を絶っているという非常に悲しい今日の事実がございます。自殺の動機というものは、進学だけでなくて、家庭とかあるいは友人関係などに絡んでおりまして、きわめて複雑でありますから、単にこれは学校の問題だ、教育の問題だと割り切ることは私はできないと思いますが、しかし親の立場から見ますると、一体いまの子供をどうして育てていったらいいのかというのがお父さん、お母さんの心配だろうと思うのであります。  少年、少女が自殺していくという背景には、やはり現代社会の環境、家庭の環境、これが大きく影響していることは否定できません。しかし、受験地獄、学歴社会、こういう今日の教育の姿というものをどのように改革していくのか。総理、重いランドセル、本をいっぱい背負っていく子供たちというものは、外国ではちょっと見られない風景ではないだろうか。つまり、これは試験地獄、詰め込み教育の実態を物語っておるのではないだろうか、私はかように考えるのでございます。国も社会根本人間でございますから、無限の可能性を秘めた人間能力をどう開発していくかということが教育にあると言わざるを得ません。  こういう機会に教育の自由化、国際化、多様化という考え方でもう一度検討し直す必要がありはしないかということでございます。自由化というのは、確立された教育、六三三制にこだわらないもっと自由な教育の制度があっていいのではないか。あるいは国際化に対応する教育、そういう意味のいろいろな語学を徹底してやるような教育、こういうものが重視されなければならぬのじゃないか。あるいはまたもう一つは、地域の特色に応じた教育を充実すべきではないだろうか。こういう機会に文部大臣にお伺いいたしておきたいと思います。
  109. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 最近、児童生徒の自殺が非常にふえたことは、野呂さんと一緒に私も大変憂慮している問題でございます。それにはいまお話しのように、社会的環境あるいは家庭的環境、いろいろ問題がありますが、学校教育にも責任があるのでございます。  そこで学校教育の問題の中で、いままでは少しむずかし過ぎたので、どうも落ちこぼれが非常に多かったので、教育内容を精選して基礎的、基本的なものにして、人間性豊かな教育をしようというので小中高等学校の教育課程の改正を行いまして、いよいよ教科書がそれに基づいて発行されるようになりましたので、この新教育課程の推進に努力してまいりたいと思います。これが第一です。  第二番目は、やはり何といっても私は教師だと思うのであります。先生が本当に子供を愛して、子供に対する指導力を強化していただきたい。こういう意味で教員の研修活動を活発に今度の予算でも組んでおるのでございます。  第三は、いま野呂さんのおっしゃるように一番大きい問題は試験地獄なので、この試験地獄をどうして緩和していくかという問題が大きな課題でございまして、文部省もようやくことしから第一次の共通テストをやりまして、どうやらこれは済んだのでございますが、この共通一次テストとそのほかにさらに二次テストがあるわけで、いろいろ問題もありますので、今後これを改善していきたいと思っております。  これが学校教育の問題でございますが、やはり子供の自殺の最大の原因は、何といっても家庭教育だと私は思うのであります。家庭がよければそういうことはないのだろう。最近いろいろ問題がございますので、家庭教育相談所、これは文部省が四十七年からやっておりますが、相談事業もやっておりますし、さらにことしから総合セミナーもやることにしました。そしてさらに市町村の家庭学級に対しても国から補助しておるし、「親の目・子の目」の放送にも協力しまして、そして家庭教育のあり方をどうしたらいいか。特に親の最大の関心は、この子供がどうしたらりっぱに、人間性豊かに育つかということが親の最大の関心だと思いますから、そういう意味で家庭教育の問題、先ほど総理がおっしゃった家庭基盤の充実でございますから、学校教育の面から家庭教育の改善を図り、そして、子供たちが伸び伸びとして人間性豊かな教育ができるように最善の努力をいたしたいと思っております。
  110. 野呂恭一

    ○野呂委員 次に田園都市構想についてもお伺いしたいと思いますが、時間がございませんので、先を急ぎますが、総理が提唱された活力ある日本型福祉社会、この構想は文字どおり新しい時代社会のあるべき姿というものを示されたものだと私は思います。大変評価をいたしたいと思います。しかし、日本型とあえてされたのは、福祉社会をつくり出す手だてを日本的なものでいきたいとお考えになっていられるのではないだろうかというふうに思いますが、総理は、日本的な問題の手だてとしてこの日本型福祉社会を考えておられるのかどうか、それをお伺いしておきたいと思います。
  111. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 西洋型の近代合理主義では権利とか義務とかいうようなことで割り切って物を考えるのでございますが、それだけではとても解決できない問題が多いのではないか。日本型と申し上げましたのは、そういうことを超えた相互の助け合い、思いやり、そういったものが考えられなければならぬのではないか。幸いに日本には、相互扶助の仕組みというものが地域にそれぞれ根づいておりまするし、またそれが有効に機能いたしておるわけでございます。また権利義務だけで物を見ようとしないで、もっとトータルな人間として物を見ようとする日本固有の文化の精神があると私は思うのでございまして、そういう意味日本型福祉社会というようなことを申し上げたわけでございます。しかし、それは公的福祉を軽視するとかいうような意味では決してないのでございまして、そういう公的福祉、そういう日本型の福祉の慣行、仕組み、精神、そういったものとが一致いたしまして、もっとりっぱな福祉社会ができるのではないかという考えを述べたわけでございます。
  112. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、日本的な問題の解決の手だてでございますけれども、総理施政方針演説の中で「日本人の持つ自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互扶助の仕組みを守りながら、これに適正な公的福祉を組み合わせた」、こういうように述べられておるわけでございます。この日本型福祉社会の建設の手順にまず自立自助の精神、言いかえるならば個人の努力を強く打ち出しておって、公的福祉をその上に加えるのだというふうに私は受け取れないでもないと思うのでございます。もちろん個人のたゆまざる努力というものは何事においても欠くことのできないものでございます。しかし、個人の力や努力だけではどうにもならぬという多くの矛盾を持っておるのが現代社会だと考えるのであります。したがいまして、福祉社会の建設の基本には、最低保障が約束された公的福祉、すなわちナショナルミニマムを確立しておくことが何よりも真っ先ではなかろうかというふうに私は思うのであります。その上に立って努力すれば、老後は、自分は自分としての希望を持った生活ができるということでございます。したがいまして、自立自助の精神がその上に立って、より発揮されるものであると私は考えておるのでありますが、総理の見解をただしたいと思います。
  113. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございます。ミニマムを確立しなければならぬことは仰せのとおりでございます。  しかし、私の認識では、日本社会保障制度というのは、野呂さんの言われるミニマムはすでに達成できておるのではないかという認識に立っておるということを御承知願います。
  114. 野呂恭一

    ○野呂委員 もちろん福祉というのは打ち出の小づちじゃありませんね。同時にまた、ばらまき福祉であってはならぬと思うのであります。けれども、最低保障が約束された公的福祉、これは補いではないと私は思うのであります。基礎でなければならぬと思うのであります。福祉社会基礎だと私は思うのです。その基礎の上に立って自助努力というものを重ねなければならないということでございます。そうでなければ、総理の言われる日本型福祉社会というものは建設できないと思う。ところが、総理の言われる公的福祉、この姿というものは、私はこういうベースでいくのですというお示しがない限りは、日本型福祉社会の建設は私は大変遠いものがあるのではないかということを申し上げておきたいと思うのでございます。総理の御見解を承りたい。
  115. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ナショナルミニマムというもの自体も、一たん決めたらそれでもうできたのだというものでは決してない。そこは私ちょっと言葉が足りませんでしたが、時代の動きに従いまして、進展に従いまして見直しながらやってまいらなければなりませんし、現に日本はそういたしておるわけでございまして、ミニマムの水準を上げて悪いなどということはないわけでございます。これは年々歳々努力をしながら水準の引き上げに努力してきておるということでございまして、今後もその方向で努力をしながらやってまいらなければならぬし、それに日本型の福祉の精神を加味いたしていけば、もっと十全なものになるのではないかという願いを申し上げておるわけでございます。
  116. 野呂恭一

    ○野呂委員 福祉社会の中で一番問題なのは、これからやってくる高齢化社会にどう対応するかということです。つまり年金制度の問題がここに出てくると思うのでございます。老人に対して報いる精神的な道はたくさんあると思います。しかし、老後の生活を支えるのは、やはり年金制度だと思うのです。わが国の年金制度は、大変な問題にいま直面しておると思うのです。それは、年金を受ける人がだんだんふえてまいります。保険料を支払う人の負担が勢い高くならざるを得ない。同時に国が負担する分もふえてくるわけでありますから、必然的に増税というふうに向かってまいるわけでございます。国民年金を例にとってみましても、月二千七百三十円払えば、二十五年間加入では、いまの貨幣価値にして約三万八千円もらえる約束でございますが、昭和六十五年には、同じ年金をもらうのに月五千三百円を払わなければならぬ。また、昭和八十五年になると月八千六百五十円を払わなければならぬ。しかもこれは五十一年の保険料の貨幣価値で決めたものでございますから、物価が上昇すれば大変な問題が起こってくるわけであります。とてもこれでは払えませんよというようなことになりかねないのでございます。大体国民年金の掛金を掛けている若い人たちの考え方では、四、五千円までは払ってもいいが、それ以上はだめですよというのが圧倒的に多いわけであります。また中には、こんなに高い保険料を払っても自分が年とったらもらえるのかという心配を持っておる者があるわけでございますから、未加入者がまだまだたくさんあるという現実の姿でございます。だから、私は、日本型福祉社会の中におきます年金制度をどう正しく位置づけていくのかということだと思います。だから高福祉高負担であってはならない。また同時に低福祉高負担では、これは許すはずはございません。今後の年金制度というものをどのように充実していくか、もういまこそ改正に取り組まなければならぬ大事なときに来ておると思うのであります。ほっておきますと、この年金制度を維持するために、現在の制度を維持するだけでも、年金をもらう側と保険料を支払う側との間に大きな対立が生じてくるという心配があるわけでございます。将来の具体的なビジョンをいま提言しなければならないときだ、かように私は考えるのでありますが、この点につきましては厚生大臣から承っておきたいと思います。
  117. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま野呂先生が御指摘になりましたように、日本は諸外国に例を見ないほどの急速なスピードで高齢化社会に向かいつつあります。それは確かに御指摘のとおりでございまして、このような人口の構造の高齢化、また制度の成熟化によりまして、わが国の年金制度は、今後現在の年金の水準を実質的に維持するだけで相当程度の費用を長期にわたって負担をしていただく、すなわち負担の上昇というものが避けられないということは事実でありまして、この点については本当に国民の御理解をいただきながら合意を得ていくことが必要なことだと思います。  いまお話にありましたように、給付面につきましては一応すでに国際的に遜色のない水準にまで近寄ってきておりますし、今後必要性の高いところにどうして重点的にそれを給付していくかということが一つの問題でありましょう。御指摘のような適正な給付、適正な負担という考え方が今後の年金制度の改善に当たりまして必要なことは間違いありません。  ただ、いま先生が御指摘になりましたように、確かに昨年の秋実施をいたしました国民年金の被保険者の基礎調査によりますと、被保険者の納入できる保険料は一カ月当たり四千円ないし五千円というお答えが大変多かったわけでありますが、それは、現在の保険料一カ月二千七百三十円というものをベースにいたしまして、どの程度御負担願えますでしょうかという質問に対していただいたお答えでございます。したがって、今後制度が成熟するにつれて本来の年金の受給者が増大し、年金が定着してまいりました段階において、国民の実質所得も上昇していくわけでありますので、国民の合意を得ながら財政再計算のスケジュールを適正に配分し運営をしてまいりたい、そのように考えております。
  118. 野呂恭一

    ○野呂委員 総理日本型福祉社会総理がお説きになるならば、この際大きな問題を抱えております日本型年金制度という青写真を国民に示して、そうして理解を取りつけるべきだ、私はかように思うのでございます。年金財政は大変なことになっております。これを見通して、将来の展望に立ってどうしていくか、真剣な取り組み方を特にお願いしておきたい、かように私は思うのであります。  大変時間がございませんので、外交問題について一言だけお尋ねしておきたいと思うのでございます。  ことし最大の外交課題は、言うまでもなく東京で開かれる先進国首脳会議でございます。この会議は、フランスのランブイエから始まって五回目でございます。アジアにおける初めての会議だということでありまして、どうかこれは大平総理、これに対して真剣な努力を重ねられてぜひ成功をおさめていただきたい。私は、これを国民も願っておると思うのでございます。  総理にお伺いしたいのは、この会議でアジア問題、特に南北問題を主なテーマにしたいという御意向でございますが、どのような取り組み方をもって臨もうとしていられるのか、あるいはその準備が十分にできておるかどうか、これをまず総理からお伺いしておきたいと思うのであります。
  119. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  過去数回のサミットで培われたサミット精神、すなわち国際不況打開のために各国が責任を分担し、国際協調と国際連帯によって解決しようとするこの精神を継承し、その精神のもとにあくまで日本が国際経済のために協力をするという最大の努力、その努力をすることによって参加国の協力を得たい、こういう基本的な考え方のもとにサミットの準備を逐次いたしておるところでございます。したがいましてそのテーマについては、いま準備会等を参加国に連絡をし、討議をしておるところでありまするから、そのうちに決まるところではありますものの、やはり世界経済不況という点から通貨の問題、エネルギーの問題、あるいはいままでやられておりまする諸種の問題が出るわけでありまするが、初めてアジアで開かれるということからも、それから、特に南北問題が非常に大きく大事になってきた、こういう点からも、南北問題は特に取り上げてもらいたいと考えながら準備を進めておるところでございます。
  120. 野呂恭一

    ○野呂委員 その南北問題でございますが、朝鮮半島における対立というものが日本に大きな影響力を持っておることは言うまでもありません。両方とも侵略の意図はないわけでございますが、過度の警戒心を持って軍備を増大してきておる、そしてさらに対立を強めておることは大変遺憾に思うのでございます。日本が南北対話再開を単に喜ぶということでなくて、もう少し南北の平和的共存を促進させるような、そういう国際環境づくりと申しますか、それを果たす役割りというものを日本はどう持っていったらいいのかということであります。  また、アメリカを訪問中の鄧小平副主席が近く日本に立ち寄られることでございますが、中国自身も恐らく、この朝鮮半島におきます南北の対立、これを何とか解決して、双方の平和的共存を望んでおるだろうと私は思うのでございます。この問題について総理及び外務大臣は鄧小平副主席といろいろ話し合いをされることだと思います。このことについて御見解を承っておきたいと思います。
  121. 園田直

    ○園田国務大臣 南北の対話が長く念じられておったところでありますが、御承知のとおりに両方から対話再開に対していろいろ行動を起こしておるところであります。  韓国の方は、当局者同士、いわゆる政府同士、こう主張し、北の方は各種団体、政党、民間、こういうものも含めた話し合いということで、本質的にはまだまだ隔たりがありますものの、少なくとも一方が物を言えば一方がこれにこたえる、七・四の会話の原点に返ろうなどという動きが敏感になってきたことは歓迎すべきことであると考えております。  当然いま御発言のとおり、朝鮮半島に平和と安定が来ますことはわれわれの念願であり、平和の中に両方が話し合いによって統一されることはわれわれも願うところであります。したがいまして、現実を踏まえつつ、両方の均衡が損なわれないようにしつつ、この対話の環境づくりに努力をし、かつまた米国、中国その他ともよく相談をして、御発言のとおりの方向に努力をしたいと考えております。
  122. 野呂恭一

    ○野呂委員 あと対ソ外交の問題あるいは日米外交の問題について申し上げたいと思いますが時間がございません。一言だけ。  この日米外交で、これはわが国外交の基軸であると総理は申されて、そのとおりだと思う。しかし、最近のアメリカと日本の間というものはこういう形で楽観していいのかどうか。特に貿易問題、経常収支の赤字に悩んでおるアメリカでございますから、アメリカの姿勢も大変厳しいものがあると思うのであります。こういう点で、アメリカとの外交問題におきましてももう一度ひとつ認識をし直していく必要があるのではないか。このままで大丈夫でございます、アメリカと日本とは外交の中心でございます、こうほっておけない問題をいまや持っておるのではないかということを私は憂慮するのでございますし、同時にソ連外交におきましても、日中貿易が、外交がどんどん進展し、両国間の友好関係が緊密になればなるだけソ連外交に傷を与えてはならぬということを考えなければならぬと私は思うのでございます。これらに対しまして外務大臣の簡単な御答弁をひとついただきたいと思います。
  123. 園田直

    ○園田国務大臣 日米外交については、これを何とかなるだろうと考えておる人と、相当厳しいものであると考えておる人と両論があるわけであります。これは御指摘のとおりに、政府同士の話し合いではわりに理解が進むわけでありますが、国会、民間、その他の国民の間になりますると相当利害関係を持つので厳しいものがあるわけであります。日米関係が重要である、これが基軸である、この友好関係を進めれば進めるほど、こういう問題がたくさん出てくるわけでありますから、相互理解を深め、相互の利害を調和しつつ、利害の点が政治的問題にならないよう、今後とも最大限の努力をする必要があると考えます。  日ソの問題についても御指摘のとおりでありまして、一方は日中、さらに重要な隣国であるソ連との友好関係を深めることが日本の平和と安定のためにきわめて重要でありまするので、こういう点に留意しつつ、一つ一つ現実を積み重ねて努力をする所存でございます。
  124. 野呂恭一

    ○野呂委員 いよいよ時間がなくなりましたが、最後に財政について、一言だけ申し上げたい。  財政再建根本は、機構を簡素化してむだのない行政を実践するということでございます。いわゆる経費の節減合理化を図ることが第一でございます。したがいまして、それでも賄えないというときに財源の増強について国民の理解と協力を求むるべきではないだろうか。私は、そういう点から、一般消費税の導入につきましてもその趣旨に沿って国民の合意を求めるべきだと思うのでございます。  財政再建の問題はいよいよ緊急な課題になってまいったことでございます。この問題に取り組まなければならないわけでございますが、私は大変困難を持っておると思います。しかしながら総理は、国民に対して十分な理解と協力を求めながら厳しい財政再建への歩みを進めてもらいたいと念願するわけでございます。このことに対しまして、総理財政再建への決意のほどを承っておきたいと思います。
  125. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま御指摘の点は大変大事な問題でございまして、今日の情勢を放てきしておきまするならば、財政の赤字がひいてはインフレ誘発の原因にもなりかねません。したがっていろいろ再建について苦労いたしておるのでございます。一般消費税の導入というような問題も御検討いただくことにしておりまするけれども、その前提としては、やはり相当思い切った行政経費の節減、機構の圧縮、これをやることが当然であると考えます。  新年度の予算編成に当たりましても、経常経費を初め機構あるいは人員の点につきましても相当努力をいたしましたが、さらに重ねてこの点は検討を続けてまいりたいとかたく決意をいたしておる次第でございます。
  126. 野呂恭一

    ○野呂委員 以上、私は、大平内閣に対して主として国民が何を求めているかという立場からお伺いをし、かつまた御要望いたしてまいったわけでございます。  質疑を終わるに当たりまして、総理はリーダーシップよりもコンダクターの政治、こう言われておるのでありますが、国内にはいろいろな既成の事実があります。また、国民の間にはそれぞれの幾つかの利害が横たわっておるというこの現実の社会があります。そのときに、ときにはやはりこういうふうにしたい、こういう総理の強い呼びかけを必要とするのではないだろうか、つまり強いリーダーシップが要るのではないかというのであります。コンダクターというだけでは、何か後片づけばかりに追い回されておるということになりはしないかという心配を私は持つものでございます。そういう意味で、コンダクターの政治を求められておるけれども、いや、むしろ大平総理にはこういうふうにしていくんだから御協力を願いたい、御理解を願いたいという強いリーダーシップがなければならないと私は思うのでございます。この転換期に直面して、政治が求める方向というものを具体的にお示しになられて、積極的に国民に協力を呼びかけるべきではないか、そういうところに政治の理念であります「信頼と合意」という政治が生まれてくるということを私は申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  127. 竹下登

    竹下委員長 これにて野呂君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  128. 大出俊

    ○大出委員 昨日、大変御無礼をいたしましたが、竹下委員長の御発言で決着をつけていただきました。  きょうはさらっと御質問を申し上げたいのでありますが、疑惑解明というのは、道筋が大変長うございますから、あわてることはないと思っております。そこで、その前に、先ほどの質問者の御発言並びにやりとりで多少気になる問題がございますので、承っておきたいのであります。  それは、国後、択捉というところにソビエトが、これは栗栖さんの時代には上陸演習という発表をしたのですが、内局の伊藤圭一さんあたりがそうではないという否定をした。大きな問題になりましたが、どうやら内局の諸君がおっしゃったように、つまり上陸演習ではなくて、何がしかの基地建設の模様がある、こういうわけで、先ほどの質問で園田外務大臣の答弁の中に、相当な措置をとりたいという実は言葉がありましたが、相当な措置とはこれは一体何だ。その前に前提を申し上げておきますが、私もまた千島列島というものは、古来この国、日本の領土である、こういう前提に立っておりますから、確かに放任はできない。領土主権の主張は明確にしておかなければならない。これだけは間違いがないと私は思っております。日本の古来の領土であるから一括返還をと、こう考えております。  そこで相当な措置、先例もありますけれども、一体その相当の措置とは何だ。実は、幾つかの新聞によりますというと、抗議をと書いてあったり、あるいは口上書と言っているところもあったりいたしますが、その辺のところは一体何を近々におやりになろうとお考えになっているのか、明らかにしておいていただきたいのです。
  129. 園田直

    ○園田国務大臣 いま大出委員から発言された趣旨と同じことを私は考えておるわけでありまして、抗議というよりも、むしろ固有の領土であるという日本の主張に支障を来さない程度のことはしておきたい、ただし、これを直ちにとらえて反ソ感情をあおるとか、あるいは日ソ国民の対立を来すようなことは慎むべきである、かように考えております。
  130. 大出俊

    ○大出委員 大体お考えがわかりましたが、私も、これは軽々しく抗議とこう新聞にお書きいただくこともちょっと気になるのでありまして、本来固有の領土なのだからその主権を明確にする。公的権力がここに恒久的な基地をつくる、それは困る、当然でございましょうが。つまり抗議というよりはわれわれの正当な理非を、まず理由を明らかにして相手に非があるとこう言わなければならないわけですから、そこのところを簡単に抗議とこうやられますと、いたずらに安易な民族感情をあおってしまうということになる。これは気をつけなければいかぬ、そういう前提でひとつお進めいただきたい。そう私は理解してよろしいか、御確認いただきたいのです。
  131. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりであります。
  132. 大出俊

    ○大出委員 もう一点、防衛庁の皆さんに承りたいのでありますが、実は、先ほどのお話でC級の旅団、こういうのですね。C級の旅団、ちょっとわからぬのですけれども、確かにソビエトにはA師団、B師団、C師団というのがありますけれども、C級の師団というのは編成五千名なんですね、これは。決して大きなものじゃない。先ほどのC級旅団というのがどういう意味かわかりませんが、仮にC級師団ならばこれは五千名、それがとまりであります。  そうなりますと、これは二つ問題があるのですが、新聞には何か大変なことになった、ソビエトが国後だ択捉だというところに基地をつくる、昔あったわけですけれども、これは大変だから日本の防衛計画を根本的に見直しをしなければならぬとか、大変激しい論調がここにございます。これまたそんなに大騒ぎをすべきものかどうかという点をはっきりしたい。  というのは、確かにサハリンには二個師団ソビエトのC級師団があります、極東軍管区ですが。カムチャツカに一個師団ございます。いずれもC級師団ですから、五千名編成として一万五千人。ということになると、一体日本の北海道にはどれだけ自衛隊の師団があるのか、北海道には四個師団あるはずですが、大体そのほかの特科団を含めてどのくらいのわが方の自衛隊の兵力があるのか、それをまず防衛庁に申し述べていただきたいのですが、そんなに大騒ぎをすべきものかどうかという点をはっきりしたいものですから。
  133. 山下元利

    山下国務大臣 北海道にはただいま御指摘のとおりに、一個の機械化師団を含めますとこれは四個師団。そして、ただいまの国後、択捉両島のソ連軍の部隊並びに配置につきましては、先ほども申し上げましたが、私どもは冷静にこれをキャッチすることは必要であるけれども、直ちにこれをもって防衛計画を修正するというふうなことには至らない。ただ私どもは、この隣接する地域におきますところの、またわが国固有の領土でございますところの状況は冷静に、的確に把握しておかなければなりませんが、直ちにそれをもって防衛計画を修正するようなことになるとは考えておりません。
  134. 大出俊

    ○大出委員 これは確かに、この地域からは日本本土に対して約三十キロでございましょう。だけれども近いだけに、さて奇襲なんという言葉が最近よくはやりますけれども、いやでもわかっちゃう地域であります。そんなに簡単に奇襲なんかできません。北海道東部へと、ここに新聞には書いてありますけれども、そんなわけにいかない、軍事的には。もう一つ、これは兵たんという問題を考えるので奇襲はできない。ということになりますと、ロ領沿海州から北海道東部まで大体何キロくらいございますか。
  135. 原徹

    ○原政府委員 ちょっと聞き取れなかったのでございますけれども……。
  136. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから申し上げますが、おおむね二千キロあります。そうすると、とてもじゃないが、いま北海道の四個師団とおっしゃいました、機械化一個師団──機械化一個師団というのは七師団です。北海道には二師団、五師団、七師団、十一師団とこう四つあります。特科団を入れると、戦車群その他を入れまして四万何千人です。そうすると、C級旅団か師団か、何とおっしゃったかわからぬが、仮にC級師団と大きく見たって五千人なんですね。しかも、これは防衛用の基地というふうに見ていい徴候が幾つかあります。だからまさにこれは、そのために軽々しくこれまた防衛計画の変更を根本的に見直しをなんというようなことを新聞がお書きにならぬように、きちっと防衛庁は新聞の皆さんには物を申し上げる場所があるはずですから、これははっきりしていただかぬと、やはり民族が違いますから、そういうことが外交折衝の面でひょんなことになりかねない要素だってなくはないから、新長官、いま大変御勉強なさっておられて、きちっとお答えいただきましたが、この辺はぜひひとつはっきりしておいていただきたいのですが、いかがですか。
  137. 山下元利

    山下国務大臣 両島におきますところのソ連軍の部隊は、強いて言えば旅団クラスと先ほど申し上げた次第でございます。  また、北海道におきますところの私どもの自衛隊の配備につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。私どもは、このことにつきまして公表いたしましたことは、そういうことになっているということを情報で確認いたしましたので、冷静に申し上げたわけでございますが、ただ、一部に、それがいかにも何か直ちに防衛計画を修正するような推測も行われておるようでございますが、私どもは決してそのように考えませんが、しかし、これは冷静に問題の把握に努めまして、いたずらな不安を招来せぬようにいたしたいと思っております。
  138. 大出俊

    ○大出委員 先ほどの質問者の応答を聞いておりまして、ちょっと気になりましたから、念のために御確認をいただいたわけでございます。  そこで、グラマンあるいはMDC、マクダネル・ダグラスの疑惑にかかわる問題でございますが、ちょっとどなたに御確認いただいていいのかわかりませんが、まず冒頭に、当該の防衛庁の方の、つまりSECの報告の仮訳がございますが、この仮訳によりますと、E2Cのところが中心でありますけれども、「コンサルタントはそのコミッションの一部を一人又は複数の日本の職員に支払うやも知れないとの可能性に気がついた。」こう書いてある。「支払うやも知れないとの可能性に気がついた。」こうなっている。  私ここに持っておりますのは、国税庁で今回のSEC報告に基づいて税務調査をおやりになった。中心は日商岩井、住友商事であります。「取り扱い注意」と書いてあるのを不用意に取り扱うつもりはないのですけれども、五十四年一月三十日に、詳細なものがここにございますが、この調査の前提になっておりますのはSEC報告でありまして、ここにSEC報告を全部整理して書いてございます。これによりますと、こうなっているのです。「米人コンサルタントのコミッションの一部が日本政府高官に支払われた可能性があることを昭和五十年にグラマン社幹部は知ったのだ」こうなっているのですね。  こちらの方も同じように、「米人コンサルタントからコミッションの一部が支払われた可能性」こうなっている。実は読み方において、「支払われた可能性」というふうに読むのと「支払うやも知れないとの可能性」というのとは違う。これは同じ政府機関でございまして、片や防衛庁、もっとも考えてみると防衛庁が契約の相手方ですから、防衛庁はなるべく「支払うやも知れない」ぐらいがいいのかもしれません。こっちは国税庁ですから、税務署は取る方ですから、こっちの方は「支払われた可能性」になるのかもしれませんけれども、そこのところをひとつ中間でどうですか、伊藤榮樹さん、刑事局長お見えですが、捜査当局はこれはどういうふうに読んでおるわけでございますか。
  139. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 英語の読みの方は、私ども役所で申しますと外務省の方が一番お得意であろうと思いますけれども、私どもとしては、支払う可能性があったというふうに読んでおります。
  140. 大出俊

    ○大出委員 外務省がお得意だというのでありますが、それぞれ違ったのがぼつぼつ出てきたのでは困るので、外務大臣おいでになりますけれども、外務大臣の方はどういうふうにお読みになっているのですか。
  141. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 ただいまの点につきましては、グラマン社の報告、現状報告書の文章の意味の解釈の問題といたしまして、念のため証券取引委員会の方に照会をいたしましたところが、彼らが言っておりますのは、これは支払うかもしれない、そういうアレンジメントがあったという意味である、それを後ほどやめさせた、ブレークアップした、そういうことを説明いたしております。
  142. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、両省違いましたが、支払うかもしれない可能性、外務省がそう言うのですから、そう統一をすべきであろう、こういうふうに思います。  そこで、たくさんございますから、あっち行きこっち行きになりそうな気もするので、整理もしてありませんから、いたしますけれども、国税庁に、いまちょっとこの資料を口に出しましたから、最初に承っておきたいのですが、どうなんですか、今回税務調査をされた中身は、もう時間がありませんからいいですけれども、商社のこの年度、つまり七四年から数年間におけるこれら商社の使途不明金と称するものは、特に日商、住商、どのくらいございますか。それがどうしてもいけない、言いにくいと言うなら、あるいは一つなくなりましたから九大商社になるのでございましょうが、どのくらいの使途不明金がございますか。ずらっと並べていただけませんか。
  143. 磯邊律男

    磯邊政府委員 申し上げます。  個別的な商社についての御答弁はお許し願いたいと思いますので、いわゆる総合商社十社、これは五十三年三月期まで申し上げますと、まだ安宅が入っておりますので十社と申し上げてよろしいかと思いますが、最近五年間におきますいわゆる税務調査等で発見いたしました使途不明金の総額でございますが、四十八年九月期六億五千六百万円、四十九年三月期一億二千二百万円、四十九年九月期二億七千五百万円、五十年三月期六億四千二百万円、五十一年三月期五億一千九百万円、五十二年三月期一億三千七百万円、五十三年三月期四億五千百万円、合計して二十八億二百万円でございます。
  144. 大出俊

    ○大出委員 理由があるんだが、もう一遍聞きますが、日商は──これは取り出して日商、住商と言いましたが、日商だけでいいですが、ボーイングの五十五万ドルというのがございますので、この税務調査とはSEC中心税務調査ですから、関係はありませんが、年度が違いますから……。全体的に物を考えたいので、日商だけ言っていただけませんか、思い切って。いかがですか。
  145. 磯邊律男

    磯邊政府委員 各社別の御答弁を申し上げるのはお許し願いたいと思います。
  146. 大出俊

    ○大出委員 時間をかけて聞きましょう。さらっと聞くといま申し上げましたから、細かいこと申し上げません。  そこで、五十五万ドルについてだけはっきりしておいていただきたいのですが、アメリカに頼まれて御調査なさったわけでありますけれども、この五十五万ドル、この内訳、中東へ送られた金と、単純否認のかっこうで所得税本税にかかわるのでしょうが、米国の子会社に行っている金とある。どうも外国に送ったといってさっぱりわけがわからなくしてある方が多いんですね。五十五万ドルのうちの相当部分になっているんだろうと思いますが、その比率、このくらい言えるでしょう。おっしゃってください。
  147. 磯邊律男

    磯邊政府委員 五十五万ドルのうちの十万ドル以下が海外の子会社に行っております。
  148. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、おおむね四十七、八万ドルくらいが、どこか外国にばらまいたということになっている金ですか。もう一遍答えてください。これ、ちょっと私は、ハリー・カーンという、日商と秘密契約を結んでいる方は、大変大きな功績があったから、これは四〇%、まあふざけた話でありますが、日商の利益の四〇%もやることになっていた。何だといったら、商社の変更等で実は大変お世話になったからだ。ところがこれは、いままでの海部八郎さんなり島田三敬さんなり、亡くなられた方には大変恐縮ですけれども、この方々の言っていることをずっと調べてみますというと、実はハリー・カーン氏には一銭も金をやっていない、やらないままに大変功績のあった人との密約、しかも四〇%も渡すことになっていた密約を切ったわけですよ、これは。だれだって骨を折った人は、ハリー・カーンという人は政府高官じゃない、つまり商社の変更等で大変な功績があったのに、事もあろうに、日商の得た利益の四〇%もやろうという秘密契約をしているというのに、一銭もやらぬままに契約を解除しますと言っても、ハリー・カーン氏が黙ってそうですがと言うはずはない。金で片づける以外に方法はない。その可能性がちらちら幾つかの資料に出てくる。だから、やがてこれは詰めます。詰めますが、日商が相当な金を浮かしておかなければ金で片がつかない。間違いない。そういう意味で、いま子会社には十万ドル以内、こう言いましたが、そう言わずに、海外にばらばらとばらまいたらとんでもないところに金が行って、後でわかったらあなたはもう一遍調べる。これではソウル地下鉄と一緒なんだ。だから、そこのところだけ言ってください。だめですか。
  149. 磯邊律男

    磯邊政府委員 大阪国税局におきまして、昭和五十一年三月期にそういった使途支出金についてそれを否認いたしましたというのも、その使途が明らかでなかったということのゆえをもって損金算入を否認いたしまして、これに対して税金を納め、なおかつ重加算税を課したということでございます。したがいまして、この使途については、わかっておればわれわれもそういった処理をする必要はなかったわけでありますけれども、わからないというゆえをもって損金算入を否認したわけです。  ただ、当該会社の方の一応の説明では、海外の受注の工作等のために使った資金である、そういうことを聞いております。
  150. 大出俊

    ○大出委員 いいですか、海外の受注工作のために使った金と言えば、ソウル地下鉄じゃありませんけれども、二百五十万ドルということだってあるのです。そうでしょう。海外の受注のために使った金。私が調べた限りでは四十七万ドルを超えている。これはべらぼうな金です。どこへ行ったかと言えば、あっちへ行った、こっちへ行ったと言って日商は逃げたでしょう。そうでしょう。あっちへ行った、こっちへ行った、そんな何十カ所も何百カ所も調べられはしませんよ、外国に行っているんだから。その金がもしもあんな何十カ所、何百カ所じゃなくて、ずばり行っていたら、これはどうするのですか。つまり、その使途不明金であっても三つも四つも見方がある。いまお話しになったのは最悪のケースです。だから重加算税をかけたのでしょう。子会社にはかかっていない。本税の修正申告。片一方は重加算税がくっついている。税務調査の面でいってそれだけのことがあるから重加算税をつけた。いまいみじくも口の端にぽっと出た。私が調べた限りでも、とんでもないところに行っている可能性が多分にある。べらぼうな金、四十八万ドル。この点を私は特に伊藤刑事局長さんに御注意を喚起したいのだが、私の知る限りでは、同じボーイング関係でも二十万ドルばかりの金がロッキード事件で全日空との関係であった、これらをお調べになったはずですけれども、この五十五万ドルについてはまだそう調べたと聞いていない。伊藤さんにこの点についての御関心のほどを承りたいのですが、いかがでございますか。
  151. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど来御指摘の五十五万ドルは、ボーイングからの購入機に関しての金のことだと思いますが、その点につきましては、検察当局においては一応吟味済みである、犯罪に該当する部分は見当たらなかった、こういう報告を受けております。
  152. 大出俊

    ○大出委員 私は、人からあなたの方でそういうことを言ったということを聞きましたが、私は二十万ドルの方だろうと思っていたら、いまのお話は五十五万ドル、こうおっしゃる。いまここで言うと長くなりますから、この点はひとつ懸案にさしていただきまして、改めてボーイングのSEC資料、これも出てきそうでありますけれども、この点は一番答弁し得るのは外務省ですか。実は私が聞いた限りでは、一月の二十八日ごろという話がひとしきりあり、二月に延びたという話があり、いたしますけれども、これは一体いつごろ出るというふうに外務省はごらんになっておりますか。
  153. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 私どもが聞いておりますところでは、早ければ二月ごろということ、ただ、事情によっては延びることがあり得る、こういうようなことでございます。
  154. 大出俊

    ○大出委員 大体物の見方が一致しておるようでありますが、どうせまた出てくるわけでありますから、そのときに私の持っている情報を含めてまた承りたい、こういうふうに思っております。非常に気になる五十五万ドルの行方でありまして、しかも、その中の四十七、八万ドルは、これはちょっと普通の調べ方ではわからぬだろうと思うのでありますが、大変広範囲に受注にかかわる経費として使った、こういうことになっているようでありますから、この点は当面これだけにいたしておきます。  それから、あわせて伊藤さんに承りたいのでありますけれども、昨日、私は海部八郎さんに対する取り調べについて承りましたが、島田さん、海部さん、それからもう一人、有森国雄さんという方、三人の方々について私は承りたいのであります。  実は、有森さんという方も日商においでになった方であります。有森さんについてはいままでに調べていないとすれば、私はうそだと思うのでありますが、長い年月にわたっていろいろなことがございますから、調べないのはおかしいはずであります。そこで、有森国雄さんという方は、陸軍中将でおいでになったお父さん、有森三雄さんの御子息だ。日本航空工業会の専務理事、いまは日本航空宇宙工業会、こういうのでありますが、この方はいまの海部八郎さんの直属の部下でございました。航空機部の課長代理か課長補佐、そこまでやっておられた方であります。しかも、お父さんとの関係でこの方はボーイングの代理店めいたことを細々とやっておられた。細々というのは失礼ですが、やっておられた時期がございます。このころから海部氏との関係ができていって日商に入るわけでありますが、この方がやめたのは、私の調べた限りでは、防衛庁においでになりました海原治さんに対する「防衛庁の黒い墓標」以下の幾つかの文書等が流されまして、海原さんが告訴をなさる。そういう中で逮捕された方が文春の記者、朝雲の記者という方でお二人ばかりおいでになった。そういうことでいろいろもめましたが、このときに有森さんがおやめになったような形になっております。いまは御住所は世田谷区成城二の三十一の五、こうなっておりますが、おいでになりまして、ミステックスという会社が代々木にあります、ここと、フェニックスという会社が新宿にありますが、こちらの方のお仕事をなさっている方、当時の事情に私は精通しておられる方だろうと思っています。したがって、私の立場からすれば、国会にお出かけをいただいて事情の御説明をいただきたいと思っている方であります。そういうわけで、この際ひとつ伊藤さんから、海部さんなりあるいはいま私が申し上げました有森さんなり、どういうふうにお考えなのか、御関心のほどをぜひ承りたいのでありますが、いかがでございましょう。
  155. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま名前をお挙げになりましたような方々は、新聞紙上等にも名前が出ておる方々でございます。いずれ検察当局においても何らかの関心を持っておる人たちじゃないかと思いますが、その個々の取り調べ状況等については御容赦いただきます。
  156. 大出俊

    ○大出委員 私も、新聞等で頭文字を使ったり、あるいは本名を使ったり、お書きになっておりますので、御無礼だと思いましたが名前を挙げさしていただきましたが、それなりの御関心をお持ちであるということでございますので、この点は、当面はここまでにいたしておきます。  もう一つ、ここで承っておきたいのでありますけれども、このSEC報告の中身をいろいろ分析をいたしますと、幾つかの問題に分かれます。  一般論として承りたいのでありますが、まず一つは、グラマン社関係で、E2C売り込みに関し、GI社は四十四年日本政府高官、これは一人になっておりますが、その提案で販売代理店を住友商事から日商岩井に変更、次に、五十年、日商岩井は口銭の一部をGI社のコンサルタントに支払い、さらに同コンサルタントが自分の口銭の一部を日本政府高官に支払う可能性を察知した、これはE2C売り込みに関してでございます。私は、あわせて承りたいのですが、このくだり、これは米側資料がやがて日本に来る。ハリー・カーン氏とのコンサルタント契約書から、販売代理店契約の合意書から、あるいは調書類から、領収証類から、メモ類から、グラマン社の報告書から、いろいろ、ロッキード事件の経緯からすれば、なければならぬわけです。とすると、これは一般論でございますけれども、私は、ここで、いま疑惑があるからお調べなんでございましょうけれども、頭の中で考えて、これは一般論でございますから、こういう過程で、もし、支払うかもしれない可能性なんだが、支払っちゃっていた、あるいはいなくても支払う約束があったことが明確になった、相手もわかった、ジャパニーズ・オフィシャルズだれだれとわかったというような場合に、どういう罪名が想定をされるのか、ここのところをまず承っておきたい。つまり、金は支払われていた場合といない場合がありますが、そのいずれもやはり該当する罪名はあるわけでありますが、一般論として、こういうケースについては一体どういうことになるのかという点をちょっと承っておきたいのですが、伊藤さん。
  157. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま一般論ということをおっしゃいます反面、非常に具体的な御指摘をなさっておりますので、大変お答えしにくいわけでございますが、まさに一般論として申し上げますれば、金がいろいろ動いた、外国と日本との間で動いたということになりますと、外国為替管理法の関係がどうなるか、あるいは国内で金が動いた、それがいわゆる公務員あるいは政治家との間に動いたということになりますと、場合によって贈収賄あるいは政治資金規正法というようなものがさしあたり思い浮かぶところでございます。贈収賄の規定を見ますと、申し上げるまでもなく、約束の段階でも犯罪が成立する場合がある、こういうことになっておるのが一般的な問題でございます。
  158. 大出俊

    ○大出委員 お手数をかけて恐縮ですが、これは伊藤さんの分野ではありませんが、所得税法違反という問題だって起こりかねない、一般論としては可能性がある、つけ加えておきますが。  それから、別なケースで、四十八年住友商事に対し、ガルフストリーム型機一機を売却、その際三十万ドルを超える口銭が支払われた、こうなっているんですね。これは、SEC資料にグラマン社の会計帳簿というふうなものが出てくるかもしれない。あるいは領収証というようなものが出てくるかもしれない。あるいは売買契約も出てくるかもしれない。となると、いまいろいろ言っておりますけれども、これはまた全く一般論として、外為法にかかわる問題だとか、国税庁で言えば税金にかかわる問題だとかいうことになりそうな気がするのですが、これが一つ。  もう一つ、四十五年から五十二年末までに、GI社は軍用機部品を住友商事に売却する取り決めを結び、約十四万ドルのリベートが支払われた、こうなっている。これまたグラマン社の会計帳簿や売買契約の書類や領収証がそろったとしたら、その場合に、これまた外為法違反云々という問題を考えなければいかぬ、あるいは税金の問題、こうなりそうな気がする。  もう一つ、時間の関係がありますから、ダグラスの方にも触れさせていただきますが、四十五年、失敗に終わった民間機売り込みのため、販売促進費一万五千ドル、コンサルタント料六万ドルを日本のコンサルタントに支払った、このコンサルタント料はその後五万ドル追加、販売促進費の一部は日本政府高官に支払われた、こっちは。これも外務省に本当のことは確かめなければいけませんが、大体方々支払われたことになっておりますから、これは間違いないのだろうと思いますが、支払われたと伝えられる。これは大変重要なことでございまして、これでダグラス社の会計帳簿だとかコンサルタント契約書だとか領収証あるいはダグラス社の報告書などなどが、もしロッキード事件のときのようにそろうとすると、こちらも、先ほどお答えをいただいたようなことになりかねないのではないか。だからどうというわけじゃありませんが、一般的に言えば。  それからもう一つ、四十四年から五十一年に、航空機売り込みに関し、総額百八十万ドルの口銭を日本側に支払ったというのがもう一つある。ダグラス社のこれまた会計帳簿、代理店契約合意書、メモ類、領収証などなどがそろったとすると、これもまた贈収賄罪であるとか外為法違反だとかあるいは税金の問題、政治資金規正法などというようなことに──それはどうなるかわかりません、一般論ですから。やはりそういう問題を検討してみなければならぬことになりかねない、こういうふうに思うのです。いま四点つけ加えて申し上げましたが、中心のE2Cのところを私、取り上げて、これも全くこのケースという意味で一般論を申し上げたのですが、同じ意味で、簡単で結構ではございますけれども、国民の関心事でございますので、大変御迷惑でございますが、伊藤さんからちょっとこの御答弁をいただきたいのであります。
  159. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 だんだん一般論一般論ということで非常に具体的なところへもう落ち込みそうな感じがして、私も非常に当惑しておるわけでございますが、ただいま御指摘になりましたようなことは、アメリカの国内法に照らしていわゆる不正な支払いであったとされたものでございまして、これを今度はわが国内法に照らしてどういう形で受けておるか、あるいはそれから先、その金の全部または一部がどう動いたか、こういうことをだんだん調べてまいらなければならぬ。そういう過程において何が出てくるかということになりますと、何も出ないか、あるいは御指摘のようなことが出るかどうか、こういうことであろうと思います。
  160. 大出俊

    ○大出委員 一般論として質問したので、いま最後の言葉は、一般論からちょっと先に入りましたが、決してこれは誘導質問したわけではございませんので、お許しをいただきたいのであります。聞いている私がひやっとするようなことをおっしゃられると困るわけでありますが、しかし非常にはっきりしたような気がいたします。だから、この報告等をめぐって九日に捜査宣言、こう新聞はお書きになりますが、これは異例なことでございまして、捜査宣言、これは新聞でお書きになる方方の方がそういうふうにしたのかもしれないのでありますけれども、片や捜査当局の御決意のほどがあるから、こういうふうになったのだという気もするので、つまり、そういう意味のいろいろな容疑があるから、異例な捜査宣言と世上言われるようなことになっていった、こう理解して、伊藤さんよろしゅうございますか。
  161. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確かに御指摘のように、捜査宣言という言葉が新聞紙上使われておりますが、実態は、要するに検察としては捜査を始めます、したがって司法取り決めを結んで資料を取ってください、こういう手順の一環として行われたもので、それが新聞記者発表にも出た、こういうことでございます。  しかしながら、いやしくも検察当局が捜査を始めます以上は、何らかの犯罪の嫌疑があるということでしか捜査は始められないわけでございますから、お尋ねのように御理解いただいてよろしいと思います。
  162. 大出俊

    ○大出委員 総理、ちょっと眠そうでございますからひとつ承りたいのですが、決して私は悪者じゃございませんで、きわめて善人でございますが、いまの伊藤刑事局長さんの御発言からすると、いやしくも検察庁が捜査を始める限りは、いま御指摘のような何がしかの疑いがあるから捜査を始めた、こういう御答弁なんです。そういたしますと、昨日私申し上げましたが、やはり防衛庁は契約の相手方でございまして、その防衛庁の契約の相手方との間で、あるいはフォーリン・ミリタリー・セールという、つまり有償援助ルールにのせるという契約方式であっても、代行は商社がやるわけであります。そういう意味でいきますと、そこに生まれてくる疑惑なんですね。このことを防衛庁が避けて通ろうとお考えだとすれば大変な間違い。防衛庁に重大な責任がある。私はかつて山中貞則防衛庁長官にこの点を強調したら、お認めになったのですよ、当時の問題のときに。それで極力FMSの方式でいきますと、私とほぼ確約めいたことをなさったのですよ、議事録に残っておりますが。それはわが防衛庁に重大な責任がある、そういう前提なんですよ。それをあなたは、しきりに防衛庁は全くのクリーンでございまして――そういうわけにはいかないのです。やはり手をかしたって、たとえば飲酒運転だって、勧めたやつも運転したやつも罰せられるという標語があるように、そうなんですから、その責任の所在を明確にしてくださいよ。山下さん新任で、山下さんの責任ではないけれども、ミスター大蔵省なんだから。しょうがないんだから、これは。やってください。
  163. 山下元利

    山下国務大臣 このたびのE2CがFMS方式によりまして調達せられることはもう御指摘のとおりでございまして、私どもはこの機種選定の経緯につきましては、慎重の上にも慎重にその経緯を調べましたが、われわれの承知する限り、われわれに関する限りにおきましては、不正はないものと信じておるわけでございます。しかしながら、いろいろとSECの報告もございましたので、これはやはり疑惑は疑惑として十分に解明していただきたい、こういうふうに思っておりますが、ただ先生、FMS方式によりますと、これは私から言うのもいかがかと思うのでございますが、一点の、商社が不正な手数料を取り込むという余地も可能性もないわけでございます。その点はそのように御理解賜りたいと思う次第でございます。
  164. 大出俊

    ○大出委員 当時の長官でない山下さんに、しかも新任早々、大変まじめでおいでになる、しかも大変に正直でおいでになる山下さんに、余り申し上げるつもりもないのですけれども、(発言する者あり)やじには応酬をいたしませんが、つまり問題は、一体何を防衛庁に買わせるのか、ここから始まるのですね、機種選定というのは。ロッキード・グラマン戦争という名がついておりますように、そこから始まる。たとえばこの早期警戒機なんというものも、AEWなんというものも、機種はいろいろありますけれども、国産を防げば、後は調べてみればE2Cが一番日本の国情に合うのだから、そうなるだろう、それじゃ国産化方針を吹っ飛ばそう、こういって動かせる、あるいは動く、その背景に生まれてくるのですよ。FMS方式の契約そのものじゃないのですよ。それをあなた大蔵省でわかっていて、大蔵省は税金だって取っているのですよ、あなたはわかっていてそうしらばっくれちゃいけませんな、そこのところは。まじめなくせにそういうことを言っちゃいけません。だから、そこのところはやっぱり防衛庁に重大な責任がある。直接どうのこうのじゃなくて、やはり対国民という意味で、武器を購入する、それが飛行機であるたびにこれじゃ困るんだから、われわれは。国民も。税金を払うんだから。そうでしょう。それならあなた、責任を認めなさいよ。責任継承の原則があるのだから。
  165. 山下元利

    山下国務大臣 私も就任日が浅いものでございますから、また御教示にあずからねばならぬ点が多々あると思いますけれども、この早期警戒機を導入したいということは、もう早くから私ども考えておったわけでございます。それにつきまして、どの機種にするかにつきまして、国産ということも考えた面もございます。その当時の、私もこれは勉強して間もないことでございますけれども、ちょうどアメリカにもE2シリーズという機種がある。これは非常にいいのですけれども、レリーズがもらえるかどうかわからないという段階におきまして、国産ということも考えたようでございますが、しかしそれは大変お金のかかる話であるから、そうしたことも考えながら、とつおいつしておったというのが実情だと思うわけでございますけれども、やはり何回か調査団を出しましたところが、そのうちにE2Cについては向こうの方でレリーズをするというふうなことになりましたので、そこでそれでは導入という方向に持ってきた、しかもE2Cが適当な機種であるということで決まった、そのようなわけでございまして、決して私責任を回避するというふうなことではさらにございませんので、御了承賜りたいと思います。
  166. 大出俊

    ○大出委員 物の考え方の観点が違い、質問に対する答弁の観点が違うわけですが、時間がかかりますから、日が浅いとおっしゃったから、それでこの点は私の方から責任がありますぞと申し上げて終わっておきます。  もう少し伊藤さんに承りたいのですけれども、今度の疑惑ありといって検察当局が動き出した、島田三敬さんにはたしか一月十七日が最初ですか、二十二日か二十三日かどっちかにもう一回取り調べがありましたね、私のメモを見ますと。しめて六回当日までにございますけれども。  ところで、一体その捜査の重点、中心は何かという問題が一つある。E2Cに関しては、売り込みに成功した場合に日商がグ社から受け取る手数料の四〇%をカーン氏に支払うという内客、これは大変大きなことなんですね。日商の利益の四〇%を払ってしまうというのだから、これは穏やかならぬことです。当時の二十何機で計算をするというと十四億になる──四〇%で計算すると四億ですか。四億になる。当時としては大変な金でございます。そうすると、私はこの密約の背景、渡ったかもしれない、あるいは渡るかもしれない、こういうわけですから、ジャパニーズ・オフィシャルズに。そうすると、この辺は非常に重点なんだろうという気がするのですが、伊藤さん、いかがでございますか。
  167. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 SECが指摘しております問題点は、先ほど網羅的に御指摘になりましたように、非常に多岐にわたっております。ダグラス、グラマン両社にわたっております。したがって、検察当局としては、そのいずれに対しても非常な関心を持って解明に努めておる、こういうことであろうと思います。
  168. 大出俊

    ○大出委員 それでは念のために承りますが、F4ファントムというのは二機、三菱がライセンス生産のために完成機を相手の会社から買った。完成機が入っています。だから、報告によるというと、完成機はやはり対象になる。  ざらに、RF4E、このRF4Eという機種も十四機、これは完成機であります。これもだから対象になる。RF4Eなんというのは激しいんですね。日商が買ってきちゃって、一遍買っちゃって、それから防衛庁に転売なんだ。これは大変に利益が上がっている。だからこれも対象になる。それから、もちろんいま問題になっているE2C、これも対象になる。特に、もう一つF15というのは対象になるのかならないのか。いま私が申し上げた機種を対象にしているのかどうか、特にF15は対象になるのかならないのか、いかがでございますか。
  169. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 検察としましては機種を捜査するわけでございませんで、金の動きに絡んで何か不正なことがないかということを解明していくわけでございますから、お尋ねのような点は今後の問題であろうと思います。
  170. 大出俊

    ○大出委員 じゃ言い直しましょう。  完成機F4ファントムをめぐる金の動き。RF4E十四機、完成機でございますが、これをめぐる金の動き。一つずつつけ加えます。そこで、E2Cに関する金の動き、F15に関する金の動き、これが総和で報告になっている。そうすると、これはみんな対象になるわけでございますね。いかがでございますか。
  171. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 公開資料によりましては、このF15の関係は明らかでございません。前二者の関係も、明記はしておりませんが、諸般の状況から前二者の分は公開資料の中に含まれていると見ざるを得ないと思います。そういうことで御了承願います。
  172. 大出俊

    ○大出委員 なるほど。まあ将来F15も金の動きが出てくれば対象にせざるを得なくなるんだろうと思うわけでありますが、そこを分けておいでになるようです。  次に進めたいと存じます。  古井法務大臣に承りたいのでありますが、法務大臣、昔──昔と申し上げていいのでしょうな、ここに法務大臣の顔写真が入っている、御自身でお書きになった文章がございます。これは昭和四十三年十一月十九日の朝日新聞の朝刊でありまして、「沈滞と腐敗の現状 時代の変化に対応せよ」といって論文を書いておいでになる。  委員長、ちょっと差し上げてよろしゅうございますか。──ありがとうごさいました。  御本人がお書きになっているからお忘れになってはいないと思うのですが、何で「沈滞と腐敗の現状」になるかと言えば、中身を見ると、佐藤さんの、佐藤内閣の政治というのは沈滞と腐敗だというのですよ。ここから始まりまして、しまいの方にはずいぶん思い切ったことを言い切っておられるのです。「片や佐藤政権には、汚職が絶えず、利権臭がふんぷんとしている。その背後には、岸政権以来の金力政治の哲学が顔をのぞかせている。」これは大変なことです。「金力政治の中に身をおく人間はマヒしているだろうが、その悪臭はぬぐえぬ状態にまで達した。」いまやまさに大変なところに達した、こういうわけです。お書きになっているでしょう。自分のお名前が入っていて、その上に「古井喜実」と書いてあるのですから間違いないでしょう。これは第三次佐藤内閣成立の前夜、総裁選挙の前であります。時あたかも四十三年十一月十九日。四十四年にはF4ファントムの決定をしているわけでありますが、これはずばりおっしゃったこのとおりの状況を私はここで再現してみたいと思っているぐらいなんでありまして、ここまでお書きになるからには、法務大臣、いまやまさに法務大臣でおいでになりますが、当時は自民党中堅政治家とここに書いてある。そうなりますと、これはもう一遍読みますが、「片や佐藤政権には、汚職が絶えず、利権臭がふんぷんとしている。」いま私のしゃべっているのも利権臭かもしれないのですけれども、私の方ではありませんけれども、「利権臭がふんぷんとしている。その背後には、岸政権以来の金力政治の哲学が顔をのぞかせている。金力政治の中に身をおく人間はマヒしているだろうが、その悪臭はぬぐえぬ状態にまで達した。」となると、これは大変なことなんですね。そうでしょう。御記憶がございますか。まずそこからひとつ答えてください。ないとは言わせませんよ。
  173. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ただいま御指摘のものは、書いたものじゃなくてしゃべくったものを新聞が載せたはずで、この点は新聞にもそうなっておるように思います。ですから、このとおりに言ったかどうかは知りませんが、似たようなことは言ったかもしれません。私は言葉はよく知らぬ人間ですから、野人みたいな、礼にならわずで、思っていることを、似たようなことを言ったかもしらぬ。具体的の、だれがどうだなんということは別にして、そういうふうな感覚は、正直に私は当時持っておりましたのです。このとおりだとは申しませんよ。それだけ申し上げておきたいと思います。
  174. 大出俊

    ○大出委員 「岸政権以来の金力政治の哲学が顔をのぞかせている。」こう言う。  そこで、ここに一つ書いてあるものがございますから、読みます。「佐藤栄作氏(故人)に防衛庁の利権、特に軍用機利権を伝授したのは佐藤氏の兄、岸信介元首相だったといわれる。」これは私が言っているのじゃないですよ。書いてあるのです。「岸氏は、三十四年に繰り広げられたグラマン対ロッキードの第一次FX戦争で苦杯を喫した経験を持っている。当時、グラマンは伊藤忠商事と組み、川島正次郎氏、大野伴睦氏(いずれも故人)と結び、それに首相だった岸氏の「支持」を得て、次期主力戦闘機として導入「内定」までこぎつけた。ところが、丸紅飯田(現丸紅)が代理店をしていたロッキードが河野一郎氏(故人)と、その盟友だった児玉誉士夫の“協力”のもとに逆襲に出た。ロッキード派の河野氏が「選定過程に疑惑あり」と、国防会議の席上で爆弾宣言したのは、その時であった。その結果、ロッキード-丸紅飯田-河野氏が、グラマン-伊藤忠-岸派を”撃墜”してロッキード「F104」の導入を勝ち得たわけである。」これで「岸さんにしてみれば、このFX戦争で戦闘機がいかに利権になるか、そして、どのようにしたら勝てるかを教訓として知ったわけですよ。ですから、その教訓を生かして、岸-佐藤の兄弟ラインで巧妙に防衛庁を押さえにかかった、」「岸-佐藤兄弟の防衛庁“制圧”の総司令官に選ばれたのが松野氏だったわけである。」こう書いてある。  いかがですか。絵解きをしましたが、古井さん、実感をお述べいただきたい。
  175. 古井喜實

    ○古井国務大臣 いまのは私はもらっておりませんが、拝見してからにしましょう。
  176. 大出俊

    ○大出委員 見てからお答えになるというわけですか。委員長、これを……。
  177. 竹下登

    竹下委員長 結構です。     〔大出委員、資料を示す〕
  178. 古井喜實

    ○古井国務大臣 いまもらったのですが、よくも見ないですけれども、これは何の記事ですか……。週刊サンケイの記事のようでして、これについては何ともどうも申し上げようがないので、こっちが書いたものでもしゃべくったものでもないですから。これは週刊サンケイですね。間違いありませんな。そういうことですから、これはちょっと私には何の関係もないと思います。
  179. 大出俊

    ○大出委員 何も、あなたに関係があると言ったのじゃなくて、当時はこういうことだったと……。これはだれも常識でしょう、みんながそう思っているんだから。ロッキード・グラマン戦争なんだから。それを、あなたがそこまで自分でお書きになっているものがあるから、あなた、自分でお書きになったものとあわせて、利権臭ふんぷんと言っておられるのだから、どうお感じになるかと聞いたのですよ。そうでしょう。おわかりにならないですか。古井さんを相手にすると時間がかかるな。  じゃ、もう一つ申し上げましょう。  これは新評という四十六年十月の、つまり総合雑誌でありますが、これを見ますと、これは中曽根さんの時代なのでありますが、状況を明らかにしておきたいから申し上げておるのですけれども、「中曽根がもし心中ひそかに」、つまり国産、さっきのP3CやE2Cのことであります。中曽根さんが国産化を当時明らかにしたのですが、「中曽根がもし心中ひそかに開発案支持を決めた時期があったとすれば、それは昨年の九月、」これは四十六年ですからその前の年になりますが、「昨年の九月、アメリカから帰ったあとではないかといわれる。向うでは長官としてペンタゴンその他を訪問したが、彼より一カ月ほど前に渡米した松野元防衛庁長官がすでにあちこちにE2輸入案をほのめかして回っており、この話を聞かされた中曽根が露骨に不快な顔色をみせる場面もあった、という。」だから、これは利権戦争ですよ。それで国産と言ったという。この後の方には、「米有力週刊誌の元日本特派員で、戦後その編集長もつとめているH・Cという名のアメリカ人。」ハリー・カーンです。これは四十六年です。ハリー・カーンは「国防省やCIAに友人が多いほか日本の政・財界にも顔がきく」というのです、この人は。このハリー・カーン氏が「最近、参謀格として東芝の「顧問」におさまり(契約料は年間一千万)、岸事務所などにも足しげく出入りしてE2問題で”暗躍”しているというのである。」これは新評という、当時のこれくらい厚い総合誌であります。  私がいま申し上げているのは、当時の状況というのを思い起こしていただきたいから申し上げておる。  もう一点だけ申し上げてあとに移りますが、ここには海原治氏が書いた「日本防衛体制の内幕」というのがありますけれども、「私の手許に、一通の英文の手紙の写しがある。ノブスケ・キシ氏が米国レイセオン社の社長チャールズ・F・アダムス氏宛に書いたもので、一九六六年八月六日付である。キシ氏は、東芝がレイセオン社と提携し、ホーク・ミサイルの国産を実施することになって、その打ち合わせのため、三井物産の代表者が参上するからよろしくたのむ、という趣旨の紹介をしている。」まず「これは自分で持っている岸さんの手紙だ。」こういうふうに前置きをして、「この手紙の中にうそがあった。何も防衛庁は三井物産系統ではなくて、当時三菱電機の系統で進んでいた。干渉がなければ三菱電機に決まっていた。」と書いてある。  ところが、この手紙から始まりまして、防衛庁の人事大異動が行われた。三幕長同時交代なんということが行われた。こうなっているわけですね、これを見るというと。だから、これは何もそこだけに書いてあるのじゃない。いっぱい書いてある。たくさん、幾らでもある。山のようにあるのですよ、古井さん。  ちょっと、委員長、いいですか。
  180. 竹下登

    竹下委員長 はい。     〔大出委員、資料を示す〕
  181. 大出俊

    ○大出委員 古井さん、こっちも見るとおっしゃるなら、これを持っていきますけれども、新評です。四十六年十月、前の年。  そこで、私が承りたいのは、当時の防衛庁の三幕僚長解任などという、一人はもっとも議長になったのですけれども、そういう問題が当時ございました。実は、その防衛庁の中で当時おいでになった方を調べてみたが、みんな偉い方はかわってしまって大蔵防衛庁になってしまいましたから、おまけに総理が大蔵省ときているものだからどうにもならぬわけであります。したがって、なかなか当時の方はおいでにならぬが、「統合幕僚会議議長・杉江一三氏勇退、陸上幕僚長・天野良英氏の議長昇格。」だから陸上幕僚長をやめたわけですな。「海上幕僚長・西村友晴氏勇退。航空幕僚長・浦茂氏勇退」、みんな一遍に「陸・海・空の幕僚長がそろって交代したのは、「防衛庁の歴史初の奇妙な人事」といわれたものだ。更に驚かされたのは、浦空幕長の後任人事だった。慣例上、幕僚長の後任は幕僚副長が昇進する。これからすれば、田中耕二氏が空幕長に昇進するもの、と衆目は一致していたが、なぜか航空総隊司令官の牟田弘国氏が抜擢された。」こうなっておる。一大衝撃を防衛庁内にもたらしたというのだが、お答えいただけなければいたし方ございません。  伊藤さん、きょうおいでいただきましたが、ほかに質問もあるからおいでいただいたのですけれども、当時広報課長さんをやっておられたのじゃなかったかと思いますが、一大衝撃を起こしたこのあたりのことについては御存じでございますか。
  182. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 大変昔のことでございますので記憶がはっきりいたしておりませんけれども、陸海空の幕僚長が同時に交代されたというのは初めてでございました。ただ、総隊司令官から幕僚長になられた人事というのはその前にもございまして、源田さんなどはそういうコースをたどっていたと記憶いたしております。
  183. 大出俊

    ○大出委員 それは後からまた申し上げます。歴代の航空幕僚長がどこに行ったかというところを後から御指摘して質問をいたします。  そこで、このあたりで承っておきたいのでありますけれども、伊藤さんに承りたいのですが、この文書に御記憶がございましょうか。これは伊藤さんに差し上げなければいけませんが、よろしゅうございますか。
  184. 竹下登

    竹下委員長 よろしゅうございます。
  185. 大出俊

    ○大出委員 法務省の伊藤さん、これを見てください。     〔大出委員、資料を示す〕
  186. 大出俊

    ○大出委員 いま差し上げた文書というのは、いま、いろいろな週刊誌から始まりまして、朝日ジャーナルから、やかましくなり過ぎておりますものであります。  ちょっと読み上げますが、新聞にも最近はちらちら出てくるようになりました。日商岩井の用紙に書かれまして、あて名は「川崎重工業砂野社長殿」、いまの海部八郎さんの「海部拜」となっているのです。一九六五年七月二十四日ということなのですかね。「拝啓 七月二十三日午前九時より岸前総理、中村秘書、マクダネル・V・P」、これは「フォーサイス」と読むのでしょうが、社長でございます。「海部、他に日商社員一名を交へて次期戦闘機につき懇談し、四機輸入する件につき話をし、岸前総理より、必ず輸入する旨確認があり、三次防として最低百機、三年間に二百機」、これは五〇、五〇というシェアが書いてありますが、「確認ありました。同時にマクダネルより川重五〇%」、これはシェアです。「(三菱五〇%)異存なき旨岸さんに回答致しました。日商よりは岸氏にイニシエーションフィーとして二万ドル支払ひました。」こうなっているのですが、これが一部です。  片一方は、四十一年三月十八日という日にちが入っておりますが、「経理部長殿 海部八郎」、判こをついた形になっています。これは消してありますが、人の名前が書いてありますので、両氏ということです。何と何と「両氏に対する支払ひ、岸氏より下記に支払ひ方連絡ありましたので御手配方願ひます。ドル払ひで願ひます。」ということで、ここに口座番号等がありまして、西ドイツのドレスナー銀行一千万円、片一方の方はユニオン・バンク・オブ・スイッツァランドということで、こちらも番号が書いてありますが、二百万円。これが実は海部メモと称されるものであります。私も時間をずいぶんかけまして詳細にこれを調べてまいりました。  ところで、伊藤さんに承りたいのですが、刑事局長さんでございますが、このメモについて御存じだと思うのであります。御存じでないはずはないと思っておるのですが、いかがでございますか。
  187. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 これは私自身の記憶でございすが、昭和四十二、三年ごろでございましたでしょうか、そういうようなものが市中にいろいろ持ち回られておったということは個人的な知識として存じております。
  188. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ承りますが、ロッキード事件の前後にごらんになったことはございませんか。──これちょっと配っていただけますか。方方でがたがたしているから明らかにしておきたいのです。済みません。違うものですけれども、二部ありますから。
  189. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねの時期には見たことはございません。
  190. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ承りますが、ちょうど十日ぐらいになりますか、東京の警視庁の捜査四課の警部補の方がある新聞社に参りまして、この二枚のメモをもらいたいということでお出かけになった事実がありますが、警察庁の刑事局長さんお見えでございましたら、そこらについてお答えを願いたいのであります。お名前もすべてわかっておりますが、必要がございませんからいまのような表現をいたしましたが承りたいと思います。
  191. 小林朴

    小林(朴)政府委員 警視庁といたしましても、この事件に関係いたしまして大変関心を持っておるわけでございます。法務省の伊藤刑事局長の方でアメリカとの資料の折衝をなさっておるわけでございますので、私どもの方は主として国内で一般的な情報の収集というようなことをやっておる次第でございます。
  192. 大出俊

    ○大出委員 もう一点承っておきたいのでありますが、先月の、ちょうど十日ぐらい前でありますが、二十一日かそこらでありますけれども、私もすぐ連絡をいただきましてわかったのですが、警部補の方でありますけれども、なぜ一体いまになってもらいに行ったか。これは結論を申し上げておきますと、現物は差し上げていないのですね。写真を二枚ぶつ違えにして写した。これを二つこういうふうにして写した、新聞に将来載せることがあろうといって写してあった写真をお持ち帰りになっているわけです。  なぜと私が疑問を持ちますのは、つまりこういうことです。これも大分確かめてみておりますが、私の耳に別の方から入っております一つの情報として、いま伊藤さんはロッキード事件のときに見かけていないと言うけれども、口事件のときに警視庁がこの資料を入手された、出どころもほぼ見当はついております。そこでこの資料を地検に持っていって御相談をなさった。ところが、当時、御存じのような形で口事件は進行をしようとしておりましたから、ここに書いてあること、お名前等からすると、これはえらいことだというので、これは今回はということで、その資料は当時は地検に行った、こういうかっこうになっている。いろいろこれも調べておりますが、これが私の聞いております一つの中身なんです。この点について伊藤刑事局長さん御存じであれは──そういう事実がなければないでも結構です。お調べいただければそれでもいいですし、ちょっと聞いておきたいのです。
  193. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどは私個人の知識を申し上げましたけれども、今回また週刊誌等で取り上げられるようになりましてから検察当局に確かめてみましたが、検察当局としてはこのものについては現在関知しておらぬ、こういうことでございます。
  194. 大出俊

    ○大出委員 私は、この真偽というのは非常に大きな問題だと思う。そこも、検察当局は関知しておらぬという、それも知っています。私の方もいろいろ調べるところは調べてみた。つまり、この年次が非常に古い。だから、よしんば真否を確かめてみても、これを立件しようとすれば、古いですから、明らかに時効であったりということになる。先ほどいみじくも伊藤さんが言いましたが、F15だとかRF4Eだとかではなくて、犯罪を構成する要素の金の動きだとおっしゃいましたが、つまり、犯罪を構成する要素が、どうしても限られた人員で動くわけですから、中心になる。こういうところに食い違いが出るのです。  いま警察庁の小林さんの方は、大変重大な関心を持っているという表現をなさった。ところが、伊藤さんの方は、関知していない、こういうふうに承知している、こういう御答弁でございます。これは大きく食い違います。どうも、こんなに立ち入ったことを言っては妙ですけれども、私も口事件その他国会という場所で手がけてまいりましたが、間々そういう食い違いが東京地検、警視庁の間にある。どうしてそうなるかということは、私は部内の人間でございませんから多く申し上げませんけれども、私は伊藤さんに申し上げておきたいのだが、これは関心をお持ちいただきたい。  なぜならば、私も幾つかの証拠たるべきものを持っております。これは何種類かに分かれている。真実は一つしかありません。ありませんから原本は一つ。この原本の、ここに線を引いてありますが、線を引かない前のものが一つ。それから、線を引いてあるものを、一応一行全部「両氏に対する」まで消してしまって──ここにございますが、手書きのものが書かれている。つまり、ここに筆跡の違う字で名前を書いているもの。私はその三種類を見ております。しかも三種類とも持っております。これが原本。ただし、ここに線が引いてある、名前がある、こういうわけです。ここに筆跡があり印がついている。これについて私はいろいろ調べてまいりましたが、私なりに一つの確信を持っている、こういうことを申し上げておきます。  この今回のグラマン、ダグラス事件というのはまだ大変長い。集中審議もあれば証人喚問もある。さっきの私と認識は一致ですがボーイングの問題も出てくる。そうすると、大変に長いことになりますから焦る気もありません。だから、今日はここに一つの資料がありますが、私は留保いたしておきますが、私は一つの確信を持っておりますので、これはぜひ改めて御検討を願えないかというふうに思っているのであります。  理由を申し上げますと、皆さんがこれをお調べになってそれなりの根拠が出てくるとすると、これはF4ファントムのときでありまして、書いてあるとおりでありますが、つまり、ここでは岸さんの名前が書いてあって恐縮ですけれども、書いてあるのだから御勘弁願います。私が初めてではなくて、いまいっぱい方々に出始めていますので。そうしますと、このとおり解釈をすれば、F4ファントムというのは岸さんの流れの中で機数その他を含めて決まったことになる。イニシエーションフィーと書いてありますが、もう申し上げるまでもなくイニシエーションフィーというのは着手金です。着手金を二万ドル払ったことになっている。そして番号が、ちょっとけたが云々ということは一つは入っておりますけれども、ある人は、このドレスナー銀行というのは日本館の口座だということを言っている。こっちは、二百万は石油の支払いだと言っているのですけれども。だから、私は一つの確信を持っていると先ほど申し上げておりますが、そうすると、F4ファントムというのはまだ例年入ってきているわけです。さっき申し上げた、古井さんお書きになった、四十三年の十一月、その翌年の四十四年にファントムは決定をして契約を結んだ。この四十四年が三十四機、四十六年が二機プラス四十八、四十七年が八、四十八年が二十四、それから四十九年が二十四、五十年が、これは十二ですか、五十一年十、五十二年十というふうに入ってきて、追加しましたからね。それで本年十機入る。ファントムがことし十機、五十五年、来年さらに十機、五十六年、再来年さらに二機、つまりまだ二十二機入ってくるのですね。二十二機ずっと入ってくるとすると、ここに私は非常に問題があると思っているのです。選定のときにあれだけいろいろグラマン・ロッキード戦争が起こり、それじゃどうも騒ぎが起こってしまうというので、防衛庁人事をその方向の方々にかえていった実は節があると私は思っている。そうすると、その結果として、何機もしも幾らというようなことになっていたとすると、事は今日まで続いていきかねない。のみならず、国民の疑惑を払うという意味の道義的な責任が私どもにはある。  そこで、ひとつ伊藤さんに承りたいのだが、包括一罪という物の原則がございますか。全部まとまって一つの罪である。ずっと続いていた、そのたびに幾らか金が入っていた、なお続いている、ほとんどここから向こうは全部時効だが、ここのところは続いているとすれば、包括一罪で全部とれるという原則があるはずだが、いかがでございますか。原則だけ言ってください、ファントムに関係なしに。
  195. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 どろぼうとか横領なんかの場合に包括一罪という概念があることは確かでございますが、御指摘のような場合にどうなるか、私もちょっとよくわかりません。ただ、先ほど来御指摘の点は十分傾聴さしていただいております。
  196. 大出俊

    ○大出委員 最後のお言葉で、私は当面は、どうも私流に言って恐縮だが、深追いをしないというつもりで実は物を申し上げているので、そういう御答弁をいただくと、ここから下に書いてあることが言えなくなるのですが、まあこの原則はお認めになった。そして十分に尊重して検討する、こうおっしゃるわけですから、いまだにこのF4ファントムは続いている。これはしかとお耳に入れておきたいのですが、五十四年が十、五十五年が十、五十六年まで続いて、五十六年二機入って百四十機になる、こういうことですから、ここのところだけ私は念を押しておきたいと思っているわけであります。  さて、そこで小林刑事局長さんの方にお尋ねをしたいのでありますが、先ほど明確でございませんでしたから、もう一遍ここで念のために承っておきたいのですが、警視庁の方が、捜査四課が私は非常に気になるのですね、二課でなくて捜査四課。捜査四課というのは暴力団の関係だとか総会屋さんの関係だとかいうのを扱っておられるんじゃないかと思うのですが、そちらの方がなぜ天下に有名な社の相当な方のところに──社というのは新聞社という意味でありますが、この二つのものを出してもらいたいということでお出かけになったのか。つまり口事件のときに手にしているものであったはずだと私は思っておりますから、そうすると、さらにそれを取りに行ったということは、当時地検に持っていって、そっちに渡してしまってないということなのか、あるいは再捜査をお考えになったのか。捜査という言葉が強ければ調査でも結構でございますが、そこらが非常に気になります。そういう意味で、ぜひひとつもう一遍お答えをいただきたいのであります。いかがでございましょうか。
  197. 小林朴

    小林(朴)政府委員 実は、捜査四課の人が行ったということはここで初めて聞いたわけでございまして、なぜそういう形になったのか、私の方はよく存じません。一般的には、四課というのはおっしゃるとおり恐喝等の事件、二課の方は汚職というふうに分かれておりますので、ちょっと事情がわからないわけでございます。
  198. 大出俊

    ○大出委員 先ほど伊藤さんが、四十一、二年ごろにこれを見たことが私の経験としてあるという御答弁がございましたが、実は先ほど私が取り上げました文書の中にも、岸さんだ児玉さんだ出てくるわけでありますけれども、つまり捜査四課ということが私の耳に確報として入りましたから、調べてみましたが、そのとおりでございましたので、そういたしますと、これはどうもうわさとして流れている、あるいは一般的市中にあるいろいろな角度のジャーナリストの方々がお書きになっているものに出てくる方角の方々との関係がこの文書はなくはない。そういうことになりかねない。いまの四課というのは確かにそちらの方だとおっしゃっておられますから。そうなりますと、そこから先は、今回は申し上げませんが、そこらの関係が非常に絡み合っている文書だからこそ、非常にこれは表に出しにくい。だから今日まで出てこない。最近、これだけの事件が重なるから書き始めたけれども、ある社の中だって両論があったり、いろいろなことになっている。これは現実です。だから国会にこれは一遍も出てきていない。そんなにあっちこっちで言うんならあるはずなんだから、だれかの手に入ってここに出てきてもおかしくはないのだが、出てきていない。初めてです、こんな長い年月。書いてあるのは岸さんですからね、一つ間違ったらえらいことになるということになるでしょう。それをいままで放任しておいて、先ほど来承っていると否定をなさらない。聞いてみたけれども、検察の関係の方々は関知せずというかっこうにしてあると、こう言う。逆に警察庁の方の方は、警視庁も重大な関心を持っている。そうでしょう。そこに、表に出ずに今日まで来た、岸さんの名前だけで──これは大変偉大な方だから、わが政界の大先輩だ。さっき古井さんがお書きになっている金権哲学をお持ちだというのだから、古井さんそう書いている。そうでしょう。だから私は、本日この時点では私は確信を持っていると、こういうふうに申し上げましたが、真偽をずっと調べていて、ほぼもうそこに近づいています、ほとんどのところに。だから先ほど御両所からお答えをいただきましたが、それを聞いておられてわかると思うのですよ。警視庁の方はうんと関心を持っている。片っ方は、関知せずとは言うけれども、私の言うことをお聞きになって、それを尊重しかつ云々と、こういうふうにおっしゃいましたから、この件はおおむねこの辺にきょうのところはひとつさせていただきまして、ソウル地下鉄でも私は五回も六回も質問させていただいておりますので、またの機会に、まあ集中審議その他もございますから、おおむねわかりましたからこの辺にいたしますが、ぜひひとつ重大な関心をお持ちになっていただいて、包括一罪のみならず、大きな道義的責任が──国民の税金を使って入ってくる兵器でございますから、国防のための武器でございますから、いかに私が非武装中立論を唱える人間とは申しながら捨ておける筋合いではない。そういう意味で、これは大きな関心のもとに、私が持っている確信をやがて裏らけるときが来るというようなふうに私は考えておりますから、ぜひひとつ御関心をお示しをいただきますようにお願いをしておきたいのであります。  そこで、大平さんが一番いいのかもしらぬと思うのですが、ひとつ承りたいのでありますが、まずここに一つ、「武器八億ドルも購入」「政府案を米に提示」、アメリカに政府案を提示したとここにある。これは何だ。岸・ニクソン会談ですね。皆さんの頭の中には田中・ニクソン会談しかないのだろうと思うのでありますけれども、はからずもここに「岸・ニクソン会談」と、こんなに大きく取り上げている当時の新聞がございます。これはぜひ外務省に後で、どういう経緯でこういうことになっていたのかという、会談をなさった限りは記録があるわけでありますから――お許しをいただきます。よろしゅうございますか。
  199. 竹下登

    竹下委員長 はい。     〔大出委員、資料を示す〕
  200. 大出俊

    ○大出委員 「岸・ニクソン会談」、こんな大きな字です。読売新聞、四十六年の十月二十三日でございます。四十六年、いみじくもこれはハワイ会談の前年の年押し詰まるころであります。これはアメリカに岸さんが行っておられて、言うならば佐藤総理の特使ということで、ニクソン大統領に公式にお会いになったということでこれは書いてある。説明もついている。一体何を日本側は提案したか、穏やかでない。第一は、「伸び率のはげしい輸出品に輸出税を課すとともに、自動車、電卓などの自主規制によって対米輸出の増大を抑制する」、これ以上ふやさない。これは当然でしょう。二番目、「電算機、農産物など対米関心品目の輸入自由化を実施する」、これも当然でしょう。三番目が問題。「武器国産化の方針を再検討、四次防期間中にアメリカから少なくとも八億ドルの武器を購入するほか」、武器って何だ。飛行機だ。いいですか。国産化方針を再検討する、はっきりしているでしょう。つまり田中さんがハワイ会談で田中・ニクソン会談をやって国産化を方針変更したんじゃない。明確にここに、日本から提案をした。そうでしょう。だからニクソン大統領に中曽根さんの時代に決めた──松野さんが向こうへ行って下準備しているものだからおもしろくないというようなこともあったようだが、さっき例に挙げたように、中曽根さんは。しかも佐藤派じゃないから。三代佐藤派の防衛庁長官で、佐藤四奉行のお一人を、なんというようなことにあのときなっていたわけだから。そこで、ここで言うところのこの中身というのは、ニクソンさんと岸さんがまずもって武器国産化の方針の再検討、輸入しますという方針を出した、岸さんの方から。この流れが翌年、これは前の年の十月、翌年アメリカからコナリー米財務長官等が来てずうっとやっていった。結果的に鶴見・インガソル会談にもなっている。ここにその中身、全部持っていますが、これが鶴見・インガソル会談の中身。皆さんがこれをなかなかお出しにならなかったいきさつのある問題。飛行機もこの中に入っています。つまり明確なんですね、これは。それならば、イニシアチブはだれがとるのか、アメリカに対して。岸さんでしょう。先鞭をつけておいでになるじゃないですか。ここに、さっきレイセオン社の話も出しましたけれども、一つの路線がございます。これは穏やかでない。そこへもってまいりまして、ここにもう一つございますが、中曽根さんがこのときは防衛庁から通産大臣をおやりになるというふうにかわっておいでになって、つまりこの八億ドルを減らして下げた。金額を落とした。落として田中総理の英断を望むということでハワイ会談の直前、通産省は方針を決めた。これもまた事実であります。そうなると、国産化を主張し続けたはずの中曽根さんがこの時点で態度を変更され、明らかにした、これがもう一つのきっかけですね。五億ドルの緊急輸入、アメリカから武器、これが一番てっぺんでしょう。岸さんはここで八億ドルと言っている。五億ドル。この通産大臣中曽根さんの御発言はこれも明確に、こうなっておりますが、田中総理の英断を望むと。勇断を下してほしい、こういうわけだ。つまり、ここでこの後ハワイ会談がすぐ行われる。これは日にちはいつかといいますと、四十七年の八月の八日です。この後すぐハワイ会談だ。だから、これは外務大臣に聞きたいんだが、ハワイ会談に対するグリーン発言というものには明確に信憑性がある。ハワイ会談出席者の名簿はここにございます。鶴見さんが亡くなられただけです。これを外務省はいいかげんにしちゃいけません。グリーンさんがいまになってうそを言わなければならぬ必然性は何もない。そうでしょう。いかかですか、外務大臣。
  201. 園田直

    ○園田国務大臣 外務省はうそを言うつもりはいささかもございません。外務省はすでに二つの、一つは司法当局が捜査するについての資料の入手、それからもう一つは、いかなる会談でも、公式、雑談にかかわらず外務省に記録か記憶があるはずでありますから、早期に調査を命じております。国会で聞かれてから調査するのではなくて、すでに調査をやれ、こういうことでやっておりますから、現在までのところ、必要であれば事務当局から報告いたさせます。
  202. 大出俊

    ○大出委員 新聞の記事によりますと、まだ大臣には報告をしてないが、捜査をした結果その形跡がない、こういう新聞記事がございましたが、まことにもって不穏当であります。しかし、いま大臣がそういうお話ですから、これはひとつ御検討の上でお知らせください。  それから、先ほど三点ばかり調べてみますという方々がございましたから、これもひとつ次の機会に御返事をいただきたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  203. 竹下登

    竹下委員長 きょう正確な答弁のできなかった問題については、後日、適当な機会に何らかの形でお答えをいたします。
  204. 大出俊

    ○大出委員 どうせ長く続くことになると思いますから、その意味では急ぎもいたしませんし、形式を問いませんが、お出しをいただきたいのであります。  ところで、時間がなくなりましたから次々承ってまいりますから、要点の簡単な答弁をずっといただいてまいりたいのでありますが、まあいまのような脈絡でございますから、チータム発言の信憑性、つまり九日の日のチータム発言の信憑性というものも、どうもそちらに私も寄らざるを得ない感じになっているわけであります。  大平総理は、ニクソン会談、つまり田中・ニクソン会談のときにはたしか外務大臣でおいでになったですかね。大蔵大臣でしたか、忘れましたが、いまの岸さんの武器の緊急輸入、中曽根さんの、総理の勇断を望む、この上に立っておいでになったわけですから、この間のことについて御認識があると思うのであります。つまり、まず岸・ニクソン会談、これがあって、ハワイ会談の直前に中曽根さんの国産化を、ひとつ中曽根さんがまずここで輸入というふうに通産大臣で変更なさって、それからハワイの田中・ニクソン会談、こういう路線であった。いかがでございますか、御存じでしょう。
  205. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ハワイ会談につきましては、前々から国会に御報告申し上げてありますように、私の出席した会談におきましては、飛行機の購入問題があのとき話題になったことも議題になったこともありません。それから、私が出席していない会議につきましても、そういうことが話題になったという報告は受けていないのであります。  ただ、私が承知いたしておりますことは、当時、日米間の貿易のインバランスを縮小しなければならぬとアメリカ側の強い要請がありましたことは承知いたしております。したがいまして、それについて日米政府の間でいろいろ協議が行われておったということでございまして、その会談は、日本における会談からさらにハワイにまで実務者の会談は続いておったと承知いたしております。その実務者会談の結果は、共同コミュニケの形で報告がなされたということでございます。したがって、機種の選定、国産を輸入にするとか、そういった問題は一切話題にも議題にもならなかったと承知しております。
  206. 大出俊

    ○大出委員 まあそうお答えになるだろうと思うのですが、これまた時間が、まだこれからこの問題の解決にはたくさんございますから、ぽつぽつまた攻めさせていただきます。これまた急ぎません。そういう御答弁をしかと耳にとりあえず入れておきます。  次に、先々のことがありますから次々に承りたいのでありますが、一つは、いわゆる密約、密約と言われるものが少しずつこの時期が食い違う。グラマン社及びSEC資料では七八年まで続いていたと、こういうわけですね。日商側は七六年で打ち切られたと、こう言う、島田氏の記者会見。どうも海部さんの言っていることはよくわからぬ。カーン氏の主張、グラマン社に対して七五年末までで切ったと、こう言うのだけれども、ここがわからぬ。三年違う。これは非常に重大だと考えるのだが、伊藤刑事局長に承りたいのです。なぜかといいますと、ちょっと挙げてみますと、賄賂の約束というのは一つの罪を構成しますが、時効三年ということになる。だから簡単でない。悪くとれば、だから日商側は一生懸命時効をねらって早く切れたと言うんだろうし、真実は、実は三年間カーンという大物だから切れないでずるずるっと文書の方は延びて契約はそのままあった。これを一体どうごらんになるかということを伊藤さんに答えていただきたい。
  207. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 E2Cの関係を捜査するといたしますると、ただいま御指摘の点は相当重要な部分でございますので、検察当局もそんな頭でいまやっておるのじゃないかと思います。
  208. 大出俊

    ○大出委員 焦点がはっきりしたように思います。相当重要な部分と言いますが、私がきのうここで申し上げた密着取材メモというのを見ますと、当該の吉永さん等の特捜部長等は、これが実はもう最大メーンである。だから島田三敬さんを五回も六回も呼んだんだ。ところが、私のこの密着取材メモからいくと、また聞きだからわかりませんが、そこのところ相当詳しく島田さんがしゃべってしまっている。それで海部八郎氏が島田氏を問い詰めた、しゃべった全容を言ってくれと言って。そうしたら言えないと断ったというところに大悶着が起こっているんですね、現実に。私は、あるいはこれがお亡くなりになった原因なのかもしらぬという気さえ実はする。最大のポイント。私の方からこのことを指摘しますが、もう一遍伊藤さん、これ答えていただけませんか。私、これを調べたんだから。
  209. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもといたしましては、検察当局が調べの途中にあるわけでございますから、細かいことまでは聞いておりません。
  210. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと私の質問の方が無理のようでございました。先々またぼつぼつ詰めます。  防衛庁に承りたいんだが、また長い答弁しないでくださいね、山下さん。あなたの方は、本当は日商岩井を呼んできて、あるいはグラマンとっつかまえて、どうなったんだ、ここのところはと問い詰めなければいかぬでしょう。グラマンから送ってきた解約通知書というのは、グラマンも防衛庁も罪、疑いはないということを強調しているだけなんだ。これは毎日新聞の夕刊が早く書きましたけれども。つまり、そういうあなた方の都合のいいように解釈している。ところが、中身というのは細かいんですよ。防衛庁はE2CのAECA、こう言った方がわかりいいと思うんですが、武器輸出管理法です、この適用について日商岩井と何回か接触し話し合っているんですね。一説には、当時の装備局長の間淵さんが七七年秋に日商岩井にAECAと商社輸入の比較を試算さしている。金がどっちがもうかって、どのくらい損してどうなるか。これは恐らく御存じないと思うから、表面答弁でもいいです。答弁を一遍しておいてもらわぬと、後でけしからぬじゃないか、うそ言ったじゃないかと言えないから、お答えください。
  211. 山下元利

    山下国務大臣 お尋ねの件につきましては、現在の装備局長から答弁をさせますのでお聞き取りいただきたいと思います。
  212. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと待ってください。ちょっと念を押しておきたい。これは実はAECAと商社輸入の比較を試算しているんですよ。だから私はこの試算まで出してもらいたい。当時の装備局長は間淵さんです。お答えくださいますか、いまの装備局長さん。おかわりになってなかなかどうも……。
  213. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 私本件につきましてまだ承知しておりませんので、調べてみたいと思います。
  214. 大出俊

    ○大出委員 これも先ほどの例にならって委員長、お扱いいただきたいのであります。恐らく知らぬということだろうと思います。そんなことはないとおっしゃられればと思ったんですが、知らぬとおっしゃいますから、記憶にないものは仕方がございません。  RF十四機、RF4Eです、輸入について疑問がいろいろございます。日商岩井が買い取り契約をやったんですね、これ。MDC、つまりマクダネル・ダグラスから一度買い取って、買い切りなんです、買い切って、さあ防衛庁、幾らですよ、とこう言う。どうしても高くなりますよ。非常にこれはうまい契約です。だれが一体こんなことをやったんです。買い取り契約、買い切り契約というのです。日商岩井にとってはこれはうまみがあり過ぎる。なぜそうなったか。これが一つ。  それから七二年一月末にMDCから防衛庁へ、生産ラインを近く停止するので早く発注してほしい、RFですよ、RF4E、偵察機です。生産ライン停止しちゃうぞ、防衛庁早く買ってくれと、こう言う。これは正式文書が届いている。この正式文書を出していただきたい。せかされたんだ。  で、ちょっと聞きたいんだけれども、だからという理由を皆さんはつけて、私もそう聞いたが、MDCは本当に生産ラインを停止したのですか、マクダネル・ダグラスは。ここらどうでございましょう、防衛庁。契約の相手方ですから。
  215. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 ちょっと突然でございますので、調べてみたいと思います。
  216. 大出俊

    ○大出委員 これやっていると一々とまっていっちゃって途中停車になっちゃいますから、また皆さんに怒られてもいけませんから……。これは重大な問題でございまして、実はここに生産ラインを停止するから早く契約をしろと言ったはいいが、調べてみたら、その後トルコが発注しているんです、これ。生産ライン停止していない。停止するという文書をよこしている。それで防衛庁は発注した。十四機一括買っちゃった。本当なら一括十四機なんか買いはしませんよ。F4Eファントムだってそうでしょう。十、十とか二とか四とか、こうなっている。一括十四機買ったなんというのはめったにないことです。なぜか。生産ライン停止してできないことになるから買えと、こう言う。契約して買った、十四機一括。予算組んでわれわれ審議した。ばかみたいな話だが、これは。そうしたら、その後トルコが契約始めて、生産ライン停止していない。こういうことをなぜやるかというんですね。つまり商社の都合、そのバックにいるジャパニーズ・オフィシャルズの都合でこういうことをなさったんじゃ国民は大変な被害をこうむります。許しがたい。断じてこういうことは認めない。だから明確に、これは文書も来ていることを確かめてありますから、出していただきたい。防衛庁の方で早く買わせるという謀略もどこかで仕組んだということになるとすれば、これはなお一大事です。だからこの点はおわかりにならぬのだから、委員長、ひとつこれも改めて理事会等で申し上げますが、お出しいただきますようにお願いをいたします。  それから、防衛庁の機種選定作業とは別に、FXは初めから15に決まっていたとする点でいろんな問題がある。  一つ念のために申し上げますが、松野さんや海部ライン、制服の方々との人事のつながり、白川空幕長というのはどこへ行ったかということと、角田空幕長はどこへ行ったかということと、平野空幕長はどこへ行ったかということをまずお答えをいただきます。
  217. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 お答えいたします。  角田元幕僚長は石川島播磨、白川元幕僚長は三菱電機、それから平野幕僚長は三菱重工、それぞれ顧問でございます。
  218. 大出俊

    ○大出委員 私はこれに疑いを差しはさみます、実は。F15というのは一体どこがこれ請け負うんですか。たとえば機体、これはどこがつくるか。エンジン、これはどこがつくる。電子機器、これはどこがつくりますか。──まあ、いいです。もし無理なら結構です。別に深追いしませんから。
  219. 竹下登

    竹下委員長 それでは、倉部装備局長の指名は取り消します。
  220. 大出俊

    ○大出委員 倉部さん、後で資料をお持ちください。そして私がいま申し上げたことを御確認いただけばいいです。平野幕僚長は、さっきお話しになった三菱重工に行きましたが、ここがF15の機体をつくるのです。角田空幕長は石川島播磨に行きましたが、ここは15のエンジンをつくるのです。白川幕僚長は三菱電機に行きましたが、ここで15の電子機器をつくるのです。これが決まっていく間の歴代の空幕長がみんなF15のポイントをつくるところに、おやめになって顧問で行ったというのは一体どういうことになるか。私はどうもこれは釈然とせぬわけですよ。ある政治家にこれこれの金が流れたなんということが15に絡んで方方で言われるのですね。これもまだ丁場が長いですからいまここで詰めませんけれども、何かこれを外しているというようなことを検察の方々はおっしゃるけれども、疑義があればお調べになるのは当然だと思うのだが、伊藤さんにもう一遍承りたい。
  221. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 十分傾聴させていただいておりますから……。
  222. 大出俊

    ○大出委員 それからもう一つだけ、海部八郎という方がマンションをお持ちになっているんだが、サモア海運マリー・ゴールド・カンパニアというパナマ籍のペーパーカンパニーが登記上の所有者になっておりますね。このペーパーカンパニーと日商あるいは海部さんとの関係、商社のペーパーカンパニーは税務調査の対象になっていますが、これは調べてありますか、国税庁それから検察庁。これは場合によっては背任横領、脱税なんということだって、言い過ぎないように気をつけますが、あるいはという気もしないでもない。いかがでございますか。
  223. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま御指摘になりました青山コーポラスの現在の所有者はパナマ法人のサモア・シッピング・カンパニーという会社でありまして、これはロイズ社発行のレジスター・オブ・シップスという本によりますと、サモア・シッピング・カンパニーは、貨物船サモア号一隻、三百八十一トンを所有している会社であります。  それから音羽マンションの所有者はマリー・ゴールド・コンパニアS・A、パナマ法人でありりますが、社長はニコラウズ・カイリーという人でありまして、この二つの法人、いずれもわが国に事業所を有しておりませんので、わが国の課税対象になっておりません。
  224. 大出俊

    ○大出委員 これは不思議なことに東京経済の海外進出企業一覧などを見ても何にもない。非居住者の場合に、外為法との関係が非居住者なら出てくる、課税対象にはなりませんが。そちらの方はどうですか。
  225. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 取引の実態がわかりませんので、もう少し具体的にお話しいただけましたら御答弁いたしたいと思います。
  226. 大出俊

    ○大出委員 七分しかないので、委員長、具体的にお話ししていると時間がなくなっちゃうのですが、これは後でひとつお調べをいただいて、必要ならば申し上げますが、千丈の堤アリの一穴ということがございまして、こういうところを調べていったら意外なことが出てきたということも口事件のときにはございましたから、ぜひひとつ御関心をお持ちをいただきますようにお願いを申し上げます。  最後、七分しかありませんが、次の機会のことがございますから一つだけ承りますが、ソウル地下鉄の金の流れの一番最後のところは、磯邊さんどうなりましたですか。
  227. 磯邊律男

    磯邊政府委員 結論的に申しまして、一番最後のところは全くわかりません。
  228. 大出俊

    ○大出委員 そのわからぬというところをもう一遍、わからぬところを御説明願いたいのですが、実は私が何なら後ほど資料を差し上げてもいいのですけれども、こういうことになっているのですね。被仕向け送金案内到達通知書というものがございます。これは韓国の方々がおやりになる方式であります。これは銀行に行き、それを持っていけば取れるので、受け取る本人に行きます。最後のところ、全くわからぬとおっしゃるが、そのわからぬところが大事なんで、外換銀行ニューヨーク支店から外換銀行東京支店に百万ドル送られてきた。新聞に出ていた前のやつは間違いであった。その前に三十万ドル来ている、金大中事件の問題とぴたっと合ってきます。つまり三十万ドルは四十八年五月、百万ドルは実は調べてみるとその前の四十八年一月、この間新聞に出ていたのとは違う、こういうことになります。S・K・キム口座からS・K・キムあるいはS・K・キムの代理人に支払うこと、つまりこれが被仕向け送金案内到達通知書の中身であります。これが届いている。入った銀行口座は外換銀行そのものの口座であります。チェース・マンハッタンその他アメリカの銀行のS・K・キム口座から日本に入ってきた二百五十万ドルの片割れである百三十万ドル、これがなぜ一体韓国外換銀行の外換銀行そのものの口座に入って、しかもいま申し上げた通知書がS・K・キムあるいはその代理人に支払うことになっているか、おわかりを願えるだろうと思うのであります。極端なことを言って恐縮ですが、一つ間違うとこれは韓国政府の金かもしれない。被仕向け送金案内到達通知書が行った人が、たとえばそれが東京においでになる非居住者の方々であっても、取りに行けばすぐ払えるようになる、こういう筋書きです。  さて、この東京支店を調べていくと、商法上十年間保存してあるべきこの帳簿が、山のようにある中で、そこだけすぽんと抜けていてない、不思議なことであります。しかもこの外換銀行東京支店の支店長金さん、次長の孫さん、お二人ともすぽんとかわって新しい人。あるべきところに帳簿がなくて、そこは穴になっている。これは一体何だということです。韓国外換銀行の取引は特別国税調査官がお調べになっているはずでありますから、このわからぬところをお答えください。
  229. 磯邊律男

    磯邊政府委員 御高承のように、フレーザー委員会の方で報告ございました金の流れといいますのは、百二十万ドルと百万ドル、三十万ドルの三つのグループがございます。このうちの百二十万ドルにつきましては、四十六年四月、米国にある日本の四つの商社が支払った百二十万ドルでありますけれども、この行方につきましては、すでに時間の経過がございまして、帳簿が破棄されているので不明であるというふうに報告されております。  その次の百万ドルにつきましては、韓国外換銀行ニューヨーク支店に払い込みましたが、それは同行からチェース東京支店を経由して日本にありますFNCB、BOAの東京支店及び三井銀行へ流れた。  それから三十万ドルにつきましては四十八年の五月、韓国外換銀行ニューヨーク支店、S・K・キム口座に支払われまして、それが韓国外換銀行東京へ送られた。こういうことでございまして、東京国税局の特別国税調査官といたしましては、この百万ドルと三十万ドルについての調査をいたしたわけであります。  結論的に申しますと、このフレーザー委員会の指摘いたします百万ドルというのは、これは全くコマーシャルベースの金ではないかというふうにわれわれは認識いたしております。それから三十万ドルの資金の流れにつきましては、これはフレーザー委員会が指摘しておりますように、韓国外換銀行東京支店の口座に、四十八年の五月に四回に分けて入金をされておりまして、同行東京店にこの資金が振りかえられるということを確認したわけでありますけれども、ただこれの出金等につきましては、その当時の出金に関する伝票等が欠落しております。したがいまして、これがどういうふうに支払われているかということはわからないわけでありますけれども、フレーザー委員会のアペンディックスを見ますと、これはS・K・キムもしくはその代理人に支払えというふうな、先ほど御指摘のありましたような指示がございますので、常識的に考えてそのような方向で支払われたのではないかというふうに考えております。  なお、この調査の途中におきまして、フレーザー委員会が指摘いたしましたのとは全く別に、韓国外換銀行ニューヨーク支店から、この三十万と同じように外換銀行東京支店に百万ドルの資金が流れておるということもわれわれは突きとめました。この百万ドルがどういうものであるかということについては全く見当はつきませんけれども、ただこの百万ドルにつきましても、その出金関係の伝票等は欠落いたしております。  それで、こういったことで、現在その出金については全くわからない、そういう状態でありますけれども、現在まだ調査中であります。
  230. 大出俊

    ○大出委員 いろいろございますが、総理が何遍かお話しになっておりますように、時間はかかりましょうけれども、対国民という意味でこの疑惑は晴らさなければいけない。数々御指摘を申し上げましたが、われわれも晴らすべく全力を挙げて協力を申し上げたいと思っておりますので、どうかひとつ総理、先頭に立って御解明をいただく御決意のほどを、御指摘を申し上げた上で承っておきたいのですが、いかがでございますか。
  231. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 疑惑を残さないように、鋭意解明に努めなければならぬと思います。
  232. 大出俊

    ○大出委員 終わります。
  233. 竹下登

    竹下委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会