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春田重昭君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました
昭和五十二
年度決算に関して、現在の
政治状況に深く関係のある幾つかの問題を取り上げ、
総理並びに
関係大臣に
お尋ねいたします。
昭和五十二
年度は、内外とも
経済の年と銘打たれた年でございました。不況下の
物価高という、いわゆるスタグフレーションは、四年を経過してもなお
景気回復のめどすら明らかにはされておらぬ当時の
状況下にあって、多少なりとも、
経済の年という言葉に
国民は期待したのであります。
しかしながら、その後の推移は、八月に景気の中だるみ現象が顕著となり、十一月の急激なる円高に追い打ちをかけられ、日本
経済は完全に低迷してしまったのであります。
政府の言う内外とも
経済の年とは、バラ色どころか、
国民経済を長い暗いトンネルに追い込んだ年でありました。こうした過程は、明らかに、
経済見通しの甘さと
財政運営の適切さを著しく欠いた結果もたらされた
政策ミスと言わねばなりません。
さらに、ここで
指摘しておきたいのは、この
政策の失敗が、経常収支の大幅黒字、急激な円高、デフレ圧力、輸入の伸び悩み、そして再び経常収支の黒字幅拡大という悪循環を形成してしまったことであります。この間、諸外国との
経済摩擦が高まったことは言うまでもありません。期待された、この年の九月三日に
閣議決定された二兆円に及ぶ総合
経済対策の効果も、完全についえ去ったと言わねばなりません。
長引く不況下にあって、
国民生活は厳しい環境にさらされたことは御存じのとおりでありますが、
総理は、こうした過程に対し、いかなる御所見をお持ちか、お
伺いするところでございます。
一方、
昭和五十二
年度の
物価は安定的に推移いたしました。しかし、これは
政府の
努力というよりも、むしろ景気の低迷を映し出した結果であり、成り行き任せの結果にすぎないのであります。
しかも、ここで見逃しにできないのは、現今の卸売
物価高騰は危険ラインに達していることであります。今日、
景気回復は思うに任せぬ
状況下で、卸売
物価のみが先走る趨勢を示していることは、やがて消費者
物価へも波及し、一部では第二の
石油危機さえも懸念され始めているのであります。まことに憂慮すべき事態となっていると言わねばなりません。こうした
状況は、海外要因もさることながら、
物価上昇に手をこまねいている
政府の
責任を追及せずにはおれません。
景気の回復は、
物価の安定が
前提となるのでありますが、
総理は、この
物価について、五十二
年度以降今日までの経緯に対し、どのような見識をお持ちか、お
伺いいたします。
同時に、今後の
物価見通しについて、経企庁長官の御
見解もお
伺いしたいのであります。
次に、昨今の国債市中消化の
状況についてお
伺いいたします。
現在、国債市況は低迷しており、市中に滞留している六・一%国債はおよそ九兆円に及ぶと言われているのであります。大蔵省は、この対応策として、
財政資金を使用しての国債買い上げを図ろうとしておりますが、一たび運用を誤てば、過剰流動性の発生要因ともなり、今日の
物価攻勢をさらに悪化させることは必至であります。
政府は、過剰流動性の懸念に対し、いかなる方策をもって対処するのか、また、今日、国債発行の
多様化を初め、公社債市場の育成など、公債の管理
政策の確立が叫ばれておるのでありますが、
大蔵大臣の御答弁をお願いしたいのであります。
次に、今日、国の
財政のあり方は、いやおうなく、従来の、支出に合わせて収入を考えるという
姿勢から、収入に合わせて支出を考えねばならないという大きな転換点を迎えようとしております。このときに
当たり、支出の節約が
行政水準の低下を招かないようにすることが肝要であります。
わが党は、これまで
決算委員会等の場において、国及び
政府関係機関の契約、支出等のあり方について種々
指摘してきたところでありますが、国等が直接メーカーに発注すべきものまでも、施工能力のない商社あるいは公益法人等に間接発注し、契約、支出等の公正さを欠くきらいが見受けられる事実を
指摘せざるを得ないのであります。妥当性を欠く発注価格、割り高な手数料等がそれであります。このような事例を五点にわたり具体的に挙げ、
政府の
見解を求めるものであります。
第一は、帯広空港の照明器具を中心とする整備拡張工事であります。この工事で、施工能力のない日商岩井が不落随契で三千七百十二万円で受注しており、これは
補助事業ではございますが、日商岩井がいわばトンネル会社的存在となっているのであります。
第二は、気象観測用機器の購入についてであります。国が過去三年間に財団法人日本気象協会から購入した気象観測用機器の総額は、建設省を初め五省庁合計二千六百万円であります。ところが、この協会は、これら観測用機器の製造を行っておらず、商社的存在として利潤を得ているのであります。国の備品購入のあり方として、極力メーカーから直買いするのが当然であるにもかかわらず、間接買いになっているのであります。さらに、この協会を指導監督すべき運輸省が、これを暗に認めているのが
現状であります。
第三に、郵政省が
昭和四十二
年度から今日まで行っている郵便番号簿調達についてでございます。郵政省は、郵便番号普及のために、毎年郵便番号簿を
国民各戸に配布しているのでありますが、その購入先はすべて財団法人郵便番号普及協会からであります。ところが、協会自体としては、この番号簿の印刷、製本等の能力を持たず、協会から印刷業者に再発注されているのが
現状でございます。毎年七億円にも上る番号簿の発注が協会にすべて任せられているのは、明朗な
予算執行とは言えないのであります。
第四に、国等の行う公共投資の中には約一千億円の調査研究費があると言われており、この調査研究費は、各種研究
機関、民間会社、公益法人等に、調査費、委託費等として支出されているのであります。ところが、これらの調査研究の中には、再委託、再々委託されて、最終的には、その研究の大部分は、国の研究
機関が調査、研究、解析に当たっているケースが見受けられるのであります。いわば調査研究のたらい回しが行われ、途中で、国や地方公共
団体が支出する調査研究費が中間の介在者のところで消えているというのが実態であります。これは、契約時点で相手方の調査研究能力を厳密に審査するとともに、国等の公的研究
機関の調査研究能力を充実させることによって防止できる問題であると思うのであります。
第五に、運輸省は、
昭和四十九年に高々度飛行検査用ガルフストリームII型
航空機改装工事を、日本航空に対し三億八千四百三十九万余円で随意契約をしておりますが、そのうち、二億七千五百四十七万余円は四件の業者に日本航空から外注されております。この四件の発注は、本来運輸省が別契約としておのおの発注すべき性格のものであり、この中には改装工事とは関係のないテスト飛行の契約も含まれているのであります。
これらの事例は、一省庁だけの問題ではなく、ほとんどの省庁において多かれ少なかれ行われているのが実情でございます。
以上、私は、国の契約、支出において間接的発注がなされている実態について五点にわたり
指摘しましたが、
運輸大臣は
関係大臣として、また、
大蔵大臣は五点全体にわたって御答弁を願いたい。また、
総理は、高度
経済成長の惰性がいまなお
行政内部に存在していることとあわせて、いかなる
姿勢でこのような問題を処理されるのか、
基本的方向をお
伺いしたいのであります。
最後に、かねてから懸案の
会計検査院法改正問題についてお
伺いしたいと思います。
ロッキード・グラマン・
ダグラス事件などの一連の問題が多発し、
国民の
政治に対する不信はますます強まっております。今後再びこのような
事件を繰り返さないためには、根本的にあらゆる点から、立法上、
行政上の
対策が必要であることは言うまでもありません。
現在、商社や
航空機会社等は、
政府関係機関である輸銀や開銀から多額の融資を受けておりますが、そこに贈収賄などの不正があっても、
検査院は融資先に直接調査権を及ぼすことができないのが実情であります。
国民の税金や
資金が正しく使用されているのかどうかを監視するのは
検査院の重大な使命であります。
検査院の
権限強化に関して繰り返し
国会決議がなされているにもかかわらず、いまだに院法
改正がなされていないのは
政府の怠慢と言わざるを得ません。
総理は、
改正する意思があるのかどうか、もしありとすれば、いつごろをめどにするのか、明確にしていただきたいのであります。
以上、
総理並びに
関係大臣の誠意ある御答弁を要求して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕