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1979-07-11 第87回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年七月十一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 佐藤 文生君    理事 青木 正久君 理事 鳩山 邦夫君    理事 濱野 清吾君 理事 山崎武三郎君    理事 西宮  弘君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君       木村 武雄君    田中伊三次君       下平 正一君    武藤 山治君       飯田 忠雄君    長谷雄幸久君       柴田 睦夫君    小林 正巳君       阿部 昭吾君  委員外出席者         法務大臣官房長 前田  宏君         法務大臣官房人         事課長     吉田 淳一君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         法務省訟務局長 蓑田 速夫君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         文部省体育局ス         ポーツ課長   戸村 敏雄君         文化庁文化部宗         務課長     安藤 幸男君         参  考  人         (プロフェショ         ナルベースボー         ルコミッショ         ナー)     下田 武三君         参  考  人         (セントラル野         球連盟会長)  鈴木 龍二君         参  考  人         (パシフイック         野球連盟会長) 工藤信一良君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 七月十一日  辞任         補欠選任   正森 成二君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     正森 成二君     ————————————— 六月十四日  一、裁判所の司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件(ドラフト制度問題)      ————◇—————
  2. 佐藤文生

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  人権擁護に関する件について調査を進めます。  本日は、プロ野球ドラフト制度問題について、参考人としてプロフェッショナルベースボールコミッショナー下田武三君、セントラル野球連盟会長鈴木龍二君、パシフィック野球連盟会長工藤信一良君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見の開陳は、委員質疑に対してお答えいただく形式で行いたいと存じますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  まず、委員長から下田コミッショナーにお尋ね申し上げます。  昭和四十二年以来、衆議院、参議院の法務委員会あるいは文教委員会で本問題が論議をされましたことは御承知のとおりでございます。ドラフト制度問題について、その後どのようなお考えで運営をされ、また改正をする意思が今後ともあるのかないのか、まずお尋ね申し上げたいと思います。
  3. 下田武三

    下田参考人 一言で私の考えを申し上げさせていただきますと、私は、ドラフト制度というものは当然生まれるべくして生まれた制度であると考えております。その理由につきましては、後刻御質問に応じてお答えしたいと思いますが、当然必要によって生まれた制度である、そう考えております。
  4. 佐藤文生

  5. 青木正久

    青木委員 参考人皆様には、お忙しいところ出席いただきまして、ありがとうございました。  プロ野球ドラフト問題についてお伺いするわけでありますけれども、私は、この問題は政治の問題ではなく、あるいは行政が介入すべき問題ではないと本来的には思っておるわけでございます。したがいまして、憲法違反の問題でもないと思いますし、人権に関するとも思いません。ただ、いわゆる江川問題で大きく言えば国論が二分したような社会問題になったために、この点、プロ野球の健全な発展という立場に立って、幾つかの御質問をいたしたいと思うわけでございます。  まず、下田参考人にお伺いしますけれども下田さんは江川問題が決着してから御就任になったわけでございます。しかしながら、御報告は聞いていると思いますし、また御感想もあると思いますので、お伺いするわけでございますけれども、江川問題の経過、特にいわゆる一日の空白、それに続いて一種のトレードを前提と思われるような阪神から巨人へ移ったそのいきさつについて、御説明願いたいと思います。
  6. 下田武三

    下田参考人 江川問題のいきさつは、私がコミッショナー就任する前にすべて起こったことでありまして、また、その事件の結末も、私の就任前に前のコミッショナーの金子さんによって行われたことでありまして、裁判官式考え方で申しますと一事不再理、一たん判決を下した事件についてはもう蒸し返さないという考え方から、私、後任者といたしまして、前コミッショナー時代に起こりましたことの経緯を御説明する立場にもありませんし、また前コミッショナーの下した裁決を批判する地位にも、また、いわんやそれを蒸し返す地位にもない、そういう私の根本的な立場がございますので、その点につきまして御了承を得たいと思います。  なお、当委員会の御審議の必要上、江川問題の経緯について説明をお求めでございましたら、当時ずっと当たっておりましたコミッショナー事務局井原局長が来ておりますので、必要がございましたら、あるいは参考人ではございませんが説明員というような立場で、必要に応じて発言をお許し願ったらどうかと思っております。
  7. 青木正久

    青木委員 お立場はわかりますけれどもドラフト問題というのは、私どもも勉強いたしましても、特に素人ではよくわからないわけでございます。  では、ひとつ具体的にお伺いしますけれども江川選手が一遍阪神に入って、それからまた巨人に移籍したというのは、野球協約の百四十二条により禁止されているのじゃないかと思いますけれども、これはいかがでございますか。
  8. 下田武三

    下田参考人 野球協約の百四十二条との関係になりますと、どうしても前のコミッショナー裁決の批判にならざるを得ないのでありますが、私は、野球協約に限らず、およそ法令規則というものは、単なる文字形式だけにとらわれるべきでなくて、なぜそういう法令規則ができておるかという、その裏にある根本精神に立脚して判断すべきものだと考えておるのでありますが、江川問題についてあれだけ国論が喚起されましたのは、どうも取り扱い方が法令規則文字形式にとらわれているのじゃないか、悪く言いますと三百代言的に、ある法の欠陥をついて、それに立脚して処理したのではないか、それよりも大事な法の根本精神に反するのではないか。  国民の皆さんは、直感的に法の根本精神に反することはそれに対して非常に反発されるものでありますが、江川問題の経緯を私全く第三者として見ておりまして、これはやはり規則根本精神に反したことが行われた、それに対する国民のごく自然な反発ではないかというように私は見ておったのであります。ただいま私、後任立場にありますので、それ以上を申し上げることを控えさせていただきますが、私の申し上げたことによって、私の真意はあるいは御推測願えるのじゃないかと思います。
  9. 青木正久

    青木委員 お考えは大体わかりますけれども就任前のことだとおっしゃるわけでございますけれども、それでは今後同様の問題が起こった場合、下田さんはこれをお認めになりますか。いまの御発言だと、認めないという方向に受け取られるのでございますが、いかがでございましょう。
  10. 下田武三

    下田参考人 まあ同じような問題が起こるとは思いませんが、私は、最高裁におりましたときから、法令の適用については常にその根本精神に立脚して判断すべきであるという持論でございますので、仮に同様な事件が起きましても、私は、私なりの別個の判断をせざるを得ないと思っております。
  11. 青木正久

    青木委員 いずれにいたしましても、江川選手は一年ばかりかけましてとにもかくにも目的を達して巨人に入ったというわけでございまして、ドラフト制度を現状のままほうっておきますと、今後はいかなる選手自分の好きな球団に入れるという前例ができたのじゃないか、こう思うのであります。  したがって、ドラフト制度を存続する以上、何らかの野球協約手直しをしなければ、協約があっても有名無実になると思うわけでございますけれども、さしあたって江川問題の第一のステップとなったいわゆる一日の空白、あれを今後このまま放置しておくおつもりかどうか、お伺いしたいと思います。
  12. 下田武三

    下田参考人 非常に具体的な点、一日の空白の点に青木委員はお触れになりましたが、私は、率直に言って、これは法の欠陥であると思います。  御承知のように、プロ野球には、野球協約を初め付属の規則全体を通じまして、常に再検討するための規約委員会という委員会がございます。したがいまして、人間のつくった制度でございますから、一〇〇%完全無欠制度というのはあり得ないのでありまして、プロ野球協約規則にはときどきそういう穴が発見されるのでありますが、そういう欠陥は、この規約委員会を中心といたしまして、順次改正する必要があると思っております。
  13. 青木正久

    青木委員 きわめて明白に改正をされるというお話でございますけれども、このドラフト制度をつくるときに、選手意向は全然聞いてないという話でございますが、やはり選手意向ドラフト問題につきまして少しは聞いた方がいいのじゃないか。  選手希望を少しはかなえられるような幅といいますか、たとえばその出身地近くの球団に優先的に入れるとか、私ども立場をとりましても、たとえば選挙の場合、私は埼玉県でございますけれども埼玉県から出てはいけない、青森県からしか出てはいけないと言われると、立候補できないということになりまして、これは出身地に近い、地元に近いところに入るというのが、日本人として当然の気持ちじゃないかと思うわけでございます。江川選手も遠くの方だからいやだと断ったいきさつがあるわけでございます。  ドラフト制度というのはアメリカの翻訳だと言われますが、翻訳そのままでは日本の実情に適さない。こういった出身地のことぐらいは少しは参考に入れるような、そういう方向手直しをすべきではないかと思うのですけれども下田さんの御意見をお伺いしたいと思います。
  14. 下田武三

    下田参考人 青木委員の御見解、まことにごもっともだと思います。  先ほど申し上げましたように、人間のつくったいかなる制度にも完全無欠なものはない、ドラフト制度自体完全無欠なものでないと存じます。したがいまして、現在のドラフト制度に固着することなく、柔軟な姿勢でもってこれが改善を常に図らなければならないと思っております。  御指摘の、球団側が一方的に選手指名して、肝心の選手の方は、自分が入りたい球団について希望を述べることができないではないかという点、これも非常にごもっともな点でございます。そういう点を含めまして、規約委員会を通じて今後も検討しなければならないと思います。  ただ、そういう考え方は前から実は関係者の間にございまして、選手に二、三の球団希望を書かせて、そして球団側の採用の希望選手入団希望とが合致しだ、少なくとも合致することを前提とするという考え方は、非常に合理的な考え方でございますが、ただ実際問題としますと、ドラフト問題を生んだ事情、それと同じ事情が、今度は選手におれの球団入団希望しろということで、選手本人、その父兄、その所属する学校にまた猛烈な運動、つまりおれの球団希望を出せ、そういう形で、ドラフト制度が生まれる前に生じた大混乱、大混迷を同じように惹起する可能性があるのじゃないか、そういう憂慮から、理論的には非常に合理的な考え方でございますが、実際問題として、それが採用可能かどうかという点が実は非常に問題であると考えられるのでございます。
  15. 青木正久

    青木委員 ドラフト制度には改正しなければならない点が多々あるとおっしゃるわけでございますけれども、一日の空白の問題以外に幾つ問題点があると思うのです。あるいは契約金の上限を撤廃したこととか、いろいろあると思うのですけれども下田さんは、ほかにどういう改正しなければならない問題点があるとお考えか、お伺いしたいと思います。
  16. 下田武三

    下田参考人 私、仕事を始めてからまだ一月ちょっとでございまして、検討が足りません。  したがいまして、いま私の口から、他にいかなるドラフト制度の不備な点があるかということを指摘させていただくのは、いささかちゅうちょを感ずるわけでございますが、その点はお許し、あるいは必要に応じましたら、井原局長からでも御説明したいと思います。
  17. 佐藤文生

    佐藤委員長 下田参考人に申し上げます。  本委員会参考人以外の発言を許してございませんので、もしも不明の点がございましたら、関係者と御相談の上に御答弁をお願い申し上げます。
  18. 下田武三

    下田参考人 はい、わかりました。
  19. 青木正久

    青木委員 終わります。
  20. 佐藤文生

  21. 鳩山邦夫

    鳩山委員 下田コミッショナーの御意見はわかりましたので、セ、パ両リーグ会長から一言ずつお答えをいただきたいのですが、現在のドラフト制度を、これで一応完全なものであろうと思っておられるか、思っておられないか、一言だけお答えください。
  22. 工藤信一良

    工藤参考人 輪番制で、本年はちょうど私が実行委員会の議長をやっておりますので、鈴木会長は長年の御経験があるのですが、とりあえず私から先に御答弁させていただきます。  私も、逃げ口上のようでございますけれども、昨年の十月就任いたして日が浅いので、ことに昨年のドラフト制度改正経過につきましては、これを伝聞し、あるいは記録で読んでおるだけでございまして、直接タッチしておりませんので、つまびらかにいたさないのでございますが、どういう制度でも欠陥は必ず出てくるものでありまして、これをよりよいように改善していくことは当然だと思うのであります。規約改正の小委員会というのがございまして、これを近い機会に開きまして、そこである程度煮詰めて実行委員会に諮っていきたいと思っております。
  23. 鈴木龍二

    鈴木参考人 ただいまの工藤パシフィック会長の申し上げたことに尽きておりますが、とにかく現在のドラフト制度は、日本野球の企業のたてまえといたしまして、十二球団のバランスという上から、一番これがいいのじゃないかというので、四十一年かに実施されたのでございまして、現在のところは、これ以上のものはないと私は考えております。  しかし、ドラフト委員会協約委員会があるからには、ことしも委員会を開きまして、よりベターなものがあるならば、また考える余地があるのじゃないかと考えております。
  24. 鳩山邦夫

    鳩山委員 私、ここで指摘したいのは、これは参考人皆様方お詳しいと思いますので、委員長を初めとする委員皆様に御報告申し上げますが、昭和四十年にドラフト制度ができまして、今日まで指名を受けた総数は、昨年の時点までで千三百七十九人なんでございます。  たとえば昨年の場合は、一球団四名しか指名をしておりませんから、一年間で四十八人ということでありますから、大変なエリート指名されていると言っていいと思うのです。国会議員になるよりも、ドラフト指名される方がよほどエリートだというぐらい、少ない人数だと思います。というのは、政治を志望する人間よりも、プロ野球選手になりたいなと言って野球をやっておる人の方がはるかに多いわけでございます。高校野球大学野球、ノンプロ、おびただしい野球人口の中から、たった四十八人が昨年の場合指名された。いままでの総数で千三百七十九人でありますから、ドラフト指名を受けるということは大変な名誉だと私は思うわけであります。  ところが、そのうち、そのような光栄ある指名を受けて、指名球団入団を拒否してプロ野球界に入らなかった人数が五百十二人もいるというのは、いかにも多い。比率にして三七%を超えるわけでありますから、十人指名されて四人が野球に入らないわけであります。なぜだろう。いろいろなことが考えられると思います。生涯の生活保障がないということもありましょう。しかし、自分希望する球団に入れないということもその要素にあると思うのでありますが、下田コミッショナーは、約四割の人間指名を受けながら入団をしない、その原因をいかがお考えでございましょうか。
  25. 下田武三

    下田参考人 御指摘の点が、現在のドラフト制度一つの大きな問題点であると存じます。ただ、その点を是正する方法がなかなかないわけでございます。  しかし、規約委員会という委員会がございまして、それを一生懸命に検討いたしておりますので、何かいい案がございましたら、将来採用することが必要であろうと思います。実は、御指摘の点こそ根本の問題だと私も考えております。
  26. 鳩山邦夫

    鳩山委員 全く同感でございまして、たとえば第二の王貞治となり得る素質のある人間が、野球はいやだなと言って、指名を受けながらたとえばどこかの会社で働いておる。将来スピードガンで百五十キロを記録するような第二の小松辰雄プロ野球に入らないで、体力を認められてどこかでセールスマンをやるかもしれない。  これは、国民的なスポーツとなったプロ野球にとって大変な損失であろうと思うわけでございます。同様の点につきまして、鈴木会長はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  27. 鈴木龍二

    鈴木参考人 おっしゃるとおり、王選手は本当に日本で不世出の選手で、恐らくこの後はないと思っていますが、小松君にいたしましても、いまや、新人からドラゴンズにあっての第一人者と言われるような投手になっております。  ことしは、ともあれ王選手とかそういう選手は別といたしまして、小松君そのほかで大分新人が出ております。これは、各十二球団ファームチームをよく育てて、新人を出すという意欲が強くなったので、こういう傾向になったのではないか、今後も新人をなるべく出してもらいたいというのが私の希望でございます。
  28. 鳩山邦夫

    鳩山委員 昭和五十三年三月二十八日に、プロ野球実行委員会ドラフト審議委員会を設置したわけでございます。  この委員会野球協約第十八条に基づくものでございましょうか、いかがでございますか。専門委員会という項目がありますが、コミッショナーにお願いいたします。
  29. 下田武三

    下田参考人 御指摘のとおりであろうと思います。十八条による委員会であろうと思います。
  30. 鳩山邦夫

    鳩山委員 そこで、法律専門家でもあられるコミッショナーにお尋ねいたします。  私も野球協約をざっと見させていただきましたが、こういう専門委員会にどういう力、どういう権能が与えられておるわけでありましょうか。つまり、この専門委員会で決めたことは、プロ野球のあらゆる出来事を縛る拘束力があるのかないのかということでございます。
  31. 下田武三

    下田参考人 専門委員会は、実行委員会下部機構といたしまして、ある特定の事項について審議する目的のものでございますので、専門委員会がある結論を出しますと、それを実行委員会に報告しまして、実行委員会がこれを決定するわけでございます。実行委員会は、ちょっとおかしいのですが、英語のエグゼキュティブコミッティー、これが最高の権威を持っております。そこで採択されて初めて拘束力を発生する、そういう関係になっております。
  32. 鳩山邦夫

    鳩山委員 ということは、ドラフト審議委員会は特別な権限、権能は持っていないということだろうと思うのです。  そこで、昨年の場合、四月二十八日の第一回会合から六月二十九日の第六回会合まで、六回にわたってドラフト審議委員会ドラフトについて審議をいたしたわけであります。私も、その記録を一応全部読ましていただきましたが、大変揺れ動いているわけですね。選手の側からの球団選択権を与える方向に持っていこうとしたり、いや、ちょっと持てよというので、非常に揺れておる。しかしながら、第三回の昨年の五月三十一日の会合で、選手球団を選択する権利を一応与えようという方向意見の一致を見た、こういうことなんであります。  第六回まで会合を開きまして、結局七月十一日に、上部団体であるプロ野球実行委員会がすべてを、それはだめだと言ってつぶしてしまって、実質的には何の改正も行われないまま昨年のドラフト会議を迎えたわけでありますが、国民はそれにちょっと納得がいかないと思っているのです。  新聞を見ていると、どうも球団選択権選手の側に与えられそうな気配に何度となくなりながら、最終的には全然なくなってしまった。ただ、ドラフト指名される人数が六人から四人になった、それくらいの違いしかない。このいきさつをもう少し国民に納得できるような形で御説明をいただきたいと思うのですが、これは、コミッショナーは最近就任されたばかりでありますから、鈴木会長にお願いできますか。
  33. 鈴木龍二

    鈴木参考人 ただいまの御質問なんでありますが、昨年、数回にわたってドラフト委員会を開きました。  おっしゃるとおり、ドラフト審議委員会のすべての決定事項のうち、一部を実行委員会で修正されたことは事実でございます。しかし、私の考えといたしましては、四人になった、さらにそれより大きいのは、これは私の考えでございますが、従来は、ドラフトされた選手は向こう一年間、一シーズンはほかの球団に行くことができなかったのであります。これを一年間ということを去りまして、そのシーズンが開幕になればトレードすることができるということに昨年改めたのでございます。これは、昨年のドラフト審議委員会において一番考えたものじゃないかというふうに私は考えております。
  34. 鳩山邦夫

    鳩山委員 そこで、コミッショナーに伺いますが、昨年のドラフト審議委員会は、鈴木岡野セ、パ両リーグ会長、長谷川、中川、それから阪急の代表日本ハムの代表というメンバーでございまして、各球団代表会長方ということであります。  これは完全に実行委員会の内部的な色彩が強いわけでありますが、これをひとつ外部から人間を入れて、学者、ファン代表とか、そういう外部からいろいろな人間を入れて、本物のドラフト審議する委員会のようなものをつくって、そこに諮問をして答申を受けて、プロ野球としてはその答申を最大限に尊重する、そういうような法的な仕組みというものを、これは法律ではありません、野球協約上の問題でありましょうが、そういうような仕組みをおつくりになるようなお考えはありませんか。
  35. 下田武三

    下田参考人 外部意見を徴したらどうかという御意見、ごもっともでございますが、実行委員会あるいはその下部機構専門委員会内に入れるかどうかは別といたしまして、たとえばコミッショナーは顧問というものを持ち得るわけでございまして、そういう識者の御意見を徴する機会はほかにあるわけでございます。  その上で、実行委員会なり専門委員会にそれを反映させるということはありますが、その委員メンバーとして内部に入れるかどうかという点は、もう少し検討を要するかと存じます。
  36. 鳩山邦夫

    鳩山委員 それでは、これは私の一つの提案というふうに受けとめていただきたいと思います。  もちろん私は、プロ野球に対して何の強制力も持っておりませんが、内閣もいろいろな形で審議会調査会を持っておられますので、そのような形のものをおつくりになって、外部からいろいろな意見を入れて、ドラフトについて審議をされたらいかがかと思っております。  それから、いわゆるウエイバー方式というのがあります。ドラフト制度において、日本シリーズで負けたリーグの最下位球団から一人ずつ指名をしていく。これは非常に意識的に、意図的に球団の実力をならしていこうということだと思います。いまのドラフト以上に、意図的にこれをならそうという方法であります。それと、全く選手との入団契約は自由だ、これは恐らく両極端だと思いますね。  いまのドラフト制度というのは、その中間にあるわけでありますけれども、たとえばこのウエイバー方式のように、意図的に山をならして各球団の平等化、実力の平均化を図るという理念につきまして、コミッショナーはいかがお考えでございましょうか。
  37. 下田武三

    下田参考人 いまお触れになった点が、実はドラフトの大きな根本問題であろうと思うのでございますが、ドラフト制度についての考え方は、一つは、ああいうものはなくていいのだ、強いものをますます強くするべきである、そしてしまいには、野球協約の第三条に書いてありますように、世界選手権を日本が握るべきである。現に記録を拝見しますと、過去、当委員会におきまして川上名監督が、強いものはますます強くしていいのだと言われた。それが一つの大きな理念の流れだと思います。  もう一つは、それはいかぬのだ、強いチームが出て、そのチームが出れば必ず勝つのだ、どこもすべて負けるのだ、それではゲームとしてのおもしろさがなくなるではないかという理念。したがって、本年のようにセ・リーグのトップとビリとがたった二ゲームの差、そういう乱セ、混セ、それでつばぜり合いをやるからこそおもしろいのだという考え方が第二の理念でございます。  ウエイバー方式はむしろ第二の理念に立脚しておるので、私は、両方それぞれの理由があると思います。その両方の理念をどう調整し、どう均衡のとれた制度にするかというのが根本問題であって、その見地に立って規約委員会が目下検討を続けておる、そういう現状だと思います。
  38. 鳩山邦夫

    鳩山委員 全くおっしゃるとおりだと思いますが、ただ、いわゆるウエイバー方式的なものは、球団の努力というか企業努力というものをせぬでもいいぞという色彩が多少あると思いますので、私は、ウエイバー方式からかなり遠いようなやり方を期待するわけであります。  最後に、ちょっと関係のないことを、せっかくの機会でありますので、一つだけセ・リーグ会長にお尋ねいたしたいのです。  最近の週刊現代が「「岡田、丸山、大里」は本当に”巨人派審判”なのか」という妙な記事を出しておるわけです。私、実はこの記事を見る前から若干疑問を持っておった点があるのです。調べておいたのですが、たまたま週刊誌に先を越されてしまったわけです。この内容は大したことないし、実際にこんなことが、不正が行われているとは私思っておりませんが、ただ、この中で島審判部長が「巨人戦に特定の人が多いことはないと思いますが」とおっしゃっておるわけです。つまり、巨人戦に特定の人が多く審判をするわけではないと思うがとおっしゃっているのですが、これは特定の人が多いのです。  私、調べたのです。いまセ・リーグの審判は島部長を含む二十九名ですが、審判部長は審判いたしません。したがって二十八名が審判をやるわけですが、このうち一番問題になるのはいわゆる主審、チーフアンパイアだと思います。  昭和五十三年度で、巨人戦百三十試合の主審を務めた人数はたった十二人なのです。残りの十六人は、巨人戦のチーフアンパイア、ストライクだボールだというのをやらせてもらえないのですね。中日ドラゴンズの行った百三十試合では、ちゃんと二十人が主審をやっているわけですから、八人だけはやってないということでしょうか。大洋ホエールズの場合だと、やはり十八人がチーフアンパイアをやっておるわけです。巨人だけが十二人しかチーフアンパイアをやってない。ということは、その十二人に大きく偏っておるわけです。  松橋さん十七回、久保田さん十七回、岡田さん十六回、富沢さん十五回と、大変多いわけです。たとえば富沢さんは、十五回も巨人のチーフアンパイアを昨年やっている。昔から巨人戦に非常に多いと言われている。中日ドラゴンズは富沢さんの主審で去年何試合やっているかというと六試合。ところが、その六試合のうちの三試合は中日・巨人戦ですから、向こうに含まれるわけです。富沢さんは、大洋戦のチーフアンパイアは八回なさっています。この八回のうちの五回はやはり巨人戦なのです。ということは、特定の人が多くなっている。  その理由はあると思います。巨人戦は一番観客が入るわけですから、主審が上がってしまったり未熟だったりすると、大騒ぎになる。それはわかるのですけれども、このように偏りますと、同じ人間が多くやれば情が移るということもあるかと思いますので、審判については、審判の技術とかそういうものを無視して、完全なローテーションの方式になさる方がよいと私は思っておりますが、会長の御意見をひとつ。
  39. 鈴木龍二

    鈴木参考人 審判につきまして、私は週刊誌を読んだのですが、雑誌の人に悪いですけれども、単なるゴシップであるというふうにとっております。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 審判はあくまで公正でありまして、一チームに偏することなく、また審判の割り当てをいたします島部長におきましては、御承知のとおりの正しい篤実な男でありまして、これはやはり一定のローテーションのもとに組んでおります。巨人だからあるいは中日だからこれを向けるとか、大試合とか小試合とか、そういう区別は断じてしておりません。たとえ六位のチームと五位のチームがいたします場合でも、やはり一定のローテーションのもとに球審を務めさせるというふうにやっておりまして、このチームに対して云々ということは毛頭考えておりません。
  40. 鳩山邦夫

    鳩山委員 質問を終えようと思ったのですが、最後に一つだけ、もう一回申し上げます。  確かに、私もゴシップだと思いますし、そんなことは信じたくないのですが、ただ巨人戦だけ同じような方が何度もやっているという事実は、ここ数年来あるいはことしをとってみてもそういう傾向があるものですから、ほかの球団と同じように、もっとばらばらに、いろいろな人を主審に振り向けていただきたい。関係ないことでありますが、それだけ要望いたしまして、質問を終わります。
  41. 青木正久

    青木委員長代理 横山利秋君。
  42. 横山利秋

    ○横山委員 御苦労さまでございます。  三参考人も大体御想像がつきますように、このドラフト制度につきまして法務委員会においでを願いました私ども立場というものは、与野党ないのであります。自民党だから、社会党だから、あるいは何党だから、ドラフト制度に賛成する、反対するということはないのであります。また、好きな球団も全部各党ばらばらであります。同じ党の中でも意見の違う者があるという条件下で、なぜ法務委員会においでを願ったか。  これは言うまでもございませんが、江川問題というものが提起をいたしました問題が、国民的スポーツ、健全な国民の慰安、娯楽、そういうものについて忌まわしい印象を余りにも投げかけた。  それは要すれば三点ある。一つは、私ども法務委員会の主たる所管でございますが、人権を阻害するおそれはないかという問題が提起されたことであります。もう一つは、余りにも金が動き過ぎるのではないかということであります。もう一つは、何か政治的な駆け引きが球団内部あるいは球団外からもあり過ぎるのではないか。このことが、健全な日本国民的スポーツである野球に対する青少年のイメージにダメージを与えた余りにも大きな問題ではないか。そういうことが私ども国会としても、党派は違いましても、趣味は違いましても、好きな球団が違いましても、一遍おいでを願おうということになったのにほかならないと私は判断しております。  さて、私の意見を先に言っては恐縮でございますが、人権問題についてドラフト制度との関連において考えますときに、江川君が自分の主張をして自分人権を訴えたときに、トレードされました小林君の人権は一体どうなっているのだろう。江川だけでなくて、空港からやにわにおまえはあそこへ行けと言われて服従をして、そしていまきわめて成績を上げているその小林君の人権はどうなるのか、内部的な問題が提起をされておると私は思います。  第二番目の余りにも金が動くというのは、二軍だとかエリートでない選手の問題がなおざりになっているのではないかというところに、私どもは第二番目の問題があると思う。  第三番目の政治的な駆け引きというものは、たとえば先ほど下田さんがお答えになりました空白の一日ですね。ああいう物の考え方というものが、一体野球とどういう関係があるのか等々の問題がございまして、これは一遍おいでを願って、その辺の実態、お考えも明らかにしてもらう必要があるのではないか、そう私どもとしても考えたわけであります。  そこで、その前提を土台にいたしまして、私がまず下田さんにお伺いしたいのは、私は名古屋でございますから、中日のひいきの人たちが圧倒的に多いのでございますけれども、それぞれ球団精神というものがある。その球団精神が強固になればなるほど、このトレードについて問題が生ずる。一生懸命に中日のために骨を折っていた人が、今度は逆の競争相手のところへ行って、またその球団のために一生懸命にがんばる、どうなっているのだとひいきは思う。その問題を解決する理論、精神というのはどういうものだろうか。  言葉は適当ではないかもしれませんが、全野球集団意識といいますか、企業意識といいますか、そういう一つの大きな全野球という意味における、この枠の中における配置転換なりあるいは転勤なり、そういうものなのだ、気楽に運営がされるそういう理論というものが確立されなければ、いつまでたっても同じではないか。つまり、一つ一つ球団が愛団精神で一生懸命にやるけれども、全野球が繁栄する、国民の共感を得るためには、もう一つ高い理論というものがあって、そこで一つの配置転換が行われ、転勤がスムーズに行われていくのだという理論、システムというものを確立しなければならないのではないか。  ドラフト制度検討するに当たって、それが一番大事なことなのではないかという感じが私はするのですが、その点、下田さんどうお考えでございましょうか。
  43. 下田武三

    下田参考人 ただいまのトレードに関する御見解は、私どももそのとおりに存じております。  トレードの問題につきましては、当該球団の利益とプロ野球全体の利益と、両方の見地から考えなければならないと思いますが、トレードという制度の本来の目的は、球団によって、内野手ばかり多くなってみたり、あるいは反対に外野手ばかり多くなってみたり、そういう事態が起こった場合に、その事態をどう解決するか。たまたま当球団には内野手がだぶついておるけれども、他の球団には内野手が足らなくて困っておるところがある、そういうふうな場合に両方の合意で成立するわけでございまして、それによって関係球団の均衡のとれた構成ができるという利益があると思います。  同時に、プロ野球全体の見地から見ましても、それによって各球団の実力の均衡がとれて、おもしろい試合が展開されるようになるということは結構なことなのでございまして、そういう両面の角度から、トレード制度の存在理由があるのではないかというように考えております。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 その点について、鈴木さん、工藤さんの御意見を簡単に伺いたいと思うのです。
  45. 工藤信一良

    工藤参考人 トレードに関しては、いま下田コミッショナーがおっしゃったのと私も全く同意見でございます。  球団によって、いろいろなでこぼこがございまして、これを一様にならしてしまってもいけないのでしょうが、やはり球団によって、うちはひとつ打力でやっていこうとか、あるいは守備を固めていこうとか、皆一つの意欲を持っておるのでございまして、そういういろいろな意欲を持っておって、その両球団意見が合致したときに、トレードというものは成立するのでございまして、その意味では、トレードというものは、試合を非常におもしろくし、各球団に特徴を持たせるという意味で、非常に大事なものだと思います。  ただ、その際に、選手本人の意思というものがどうなるかという点は、これはちょうど、最初のドラフトのときに球団の選定権が選手にあるかないかという問題と同様に、非常に大きな一つ問題点だとは思います。  しかし、いま先生おっしゃったように、全体の野球界というものを一つとして考えますと、その中で選手は統一契約に従って野球の機構の中へ入ってきておるのでございますから、そういうことを承知の上でのトレードということで、この制度はやはり存続させていかなければならない、日本球団全体が正常な発達を遂げて、ファンに喜んでもらえる試合ができるというためには、どうしても必要だというふうに思っております。
  46. 鈴木龍二

    鈴木参考人 私は、ただいまおっしゃったように、トレード大賛成です。トレードのみならずウエイバーも大いにやってもらいたい。  自分のチームにいたから、チームの台所を知っているから、よそへ行くとちょっと困るのではないかというようなちっぽけな考えでなく、トレードあるいはウエイバーを大いにやって、そうして球団のバランスをとって、いい試合をやってもらいたいということが私の考えでございます。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、私が先ほど申しました三点に沿って、まず人権、職業選択の自由の点についてお伺いをいたしますと、先ほど申しましたように、江川選手がみずからの主張をしたことについて、私ども人権を担当しておる着にとりましては、それならば江川君は二浪も三浪も覚悟して、法廷闘争でもやって、あくまでがんばるということであればよかったのになという逆の気持ちがするわけです。そうでなくして簡単に、いろいろな経緯を経て、そういう意味で目的を達したことが問題ではないか。  また、江川選手目的のために、小林選手は一体どういう心境で自分人権を犠牲にしたのかという点を逆に考えるわけであります。この問題が、一人一人の選手意向ドラフト制度、トレードの中において、どういう生き方、生かせ方をしたらいいかというのが知恵の出しどころだと思うのであります。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 その意味では、本人、選手一人一人の意見ももちろんさはさりながら、選手会なり選手の組織の意向を常に平素あるいは時に当たって十分にくみ取ることが必要ではないかと思うのですが、下田さん、この点についてどういう知恵がございますか。
  48. 下田武三

    下田参考人 横山先生は基本的人権一つである職業選択の自由の問題を江川につき御指摘になり、それから小林選手については、自分が何も阪神なんかに行きたくないのに無理やりに行かされたという点で、小林選手の意思がじゅうりんされておるではないか、これは多少意味の違う人権の問題だと思います。  第一は、江川が巨人に入りたいにもかかわらずなかなかそれができなかった、江川については職業選択の自由が否定されておったのではないかという問題であろうかと思うのでございます。  私、最高裁にしばらくおりまして、憲法裁判にもたびたび携わらせていただいたのでございますが、その経験を通じて得ました結論は、いかなる憲法の基本的自由の規定も、絶対的な権利は一つもないということでございます。私から申し上げる必要もないと思いますが、労働基本権である争議権にいたしましても、これは国鉄なり郵便を利用している国民の利益を考えなければならない。労働基本権と国鉄なり郵便を利用する国民大多数の利益との調和をどこで図るかという問題。あるいは表現の自由で何を書いてもいいというわけではない。わいせつな文章を書くことによって社会の善良なる風俗に害を及ぼしてはいかぬ。そこの調和をどこで図るか。  職業選択の自由についても、全く同じことであると思います。プロ野球選手について、自分の欲する地位につく自由が一体あるのかどうか、これは法律的とまた事実上の二つの制約があると私は思います。  法律的には、先ほど申しましたように、何人にとっても絶対的な職業選択の自由なんというものはあり得ない。プロ野球の場合に、何がその個人の職業選択の自由に対応する利益かというと、これは申すまでもなく、四千万と言われ五千万と言われる膨大な数の野球のファンにとっておもしろい健全娯楽を保存しなければいけないという、プロ野球協約第三条にある不朽の国技としてプロ野球を維持、護持する、そういう場合に、先ほど申しましたように、強い球団はあくまでも強くなっていいのだ、金のある球団はあくまでも金に物を言わせて強い選手をとっていいのだという考え方もあるのでございますが、もしそういう考え方が横行いたしました場合は、その強くなったチームは常に必ず勝つ、そうなった場合には健全娯楽ではなく、むしろファンはつまらなくて見に行かなくなるわけでございますね。  ですから、江川がどんなにあるチームに入りたくても、またそれを入れようとするチーム、球団がどんなに金があろうとも、その自由を無制限に行使させることは、プロ野球全体の護持に反するものである。そこでやはり大きな制約がある。選手個人の欲する球団に入りたいという自由と、それから、いやいや、それを横行させた場合にはプロ野球全体の健全娯楽としての成立が困難になる、それを護持しなければならぬということ、その調和をどこで図るかという問題であると私は考えます。  それから第二の、小林につきましての、自分の意思に反して阪神に入れられてしまった。これは非常に気の毒な場合の例かもしれませんが、プロ野球に入るということは、先ほど鳩山先生もおっしゃいましたように、毎年たった四十八人のドラフトの対象者であるわけですね。  これは言ってみるならば、歌舞伎の役者が、おれは菊五郎の方に入りたい、あるいは団十郎のグループに入りたいという希望もあるでしょうけれども、しかし歌舞伎役者は歌舞伎全体のために働いておるのだという見地があるわけで、プロ野球ドラフトの対象となって球団に入り、一たびプロ野球選手となったならば、どこの球団に所属しようと、日本の四千万、五千万のファンのために自分プロ野球選手として働いておるのだ。だから、絶対に自分の好きな球団でなければプロ野球選手として働かぬというようなことはちょっと許されない。あるいは不満があるかもしれないけれども、よし、この球団にやらされたならば、その球団で全力を発揮するぞ。現に小林は全力を発揮しております。りっぱにやっております。それこそプロ野球選手としての翼のスポーツマン精神に合致したやり方である。  本当に小林選手の心情は同情すべきものがございますが、彼はりっぱにその苦境を打開して、いま非常にりっぱな行動をしております。これこそ、阪神選手であると同時に、日本の国技であるプロ野球全体に奉仕しておる姿である。私はその意味で、彼自身もみずから慰めておるのではないか、私どももまた、それでいいのではないかと考えております。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問の趣旨もあなたと同じ趣旨で質問したので、江川選手については批判的で、小林選手については同情的な立場で申し上げておるわけであります。  時間がなくなりましたが、さて、そういう選手諸君の問題自身なんですが、私の承知するところによりますと、年俸は一軍の最低基準が三百六十万円であるが、現実には二百四十万円の選手もいると言われる。投手が一回四万円、野手で二万円が特別に支給されているが、ボーナスの支給はなく、退職金制度も存在していない。年金制度はあるが、最低十年の勤務がその支給条件となっており、十年でわずか十万円、最高三十六万円を支給されるにすぎない。支給開始年齢は五十歳であるから、一般に比較して定年の争いプロ野球選手にはかなりの空白期間が存在する。また補償制度については、労働条件の最低基準を決めた労働基準法の規定並み、ないしはそれ以下の補償がなされているにすぎない。それから交通費の支給もされておらない。  要するに、年金、退職金制度、災害補償、交通費など最低一般の企業並みの条件を整える努力をした上で、いまあなたの言われるようなそういう運営がなさるべきではないかということがあり、私が先ほど結論的に申しましたように、趣旨はそれでいいのだけれども、一体、コミッショナーなり野球連盟の二人の会長がその運営をするに当たって、そういう理論的な体系が本当に全野球界に確立しておるか、そういうシチテムが全野球界に本当に確立しているか、そういう権限、運営能力がいまのコミッショナーの中にあるのかどうかという点が私の意見であり、最後の質問でございますが、下田さんどうですか。
  50. 下田武三

    下田参考人 御指摘の、選手の待遇を含むいまのプロ野球制度全体につきまして、私、横山先生と全く同感でございます。  私も、コミッショナーになりまして、協約を見まして驚いたのでございますが、参稼報酬年額六十万円でございますね。月五万円ということ。それがそのまま現代も残っておる。これは、外国から日本人はウサギ小屋に入っていると言われるけれども、ウサギ小屋そのものじゃないですか。野球選手が月五万円なんというものがいまだに残っておる。早くこういうものは——現に規約委員会でこういうことを直そうと検討しておりますが、おっしゃるとおりでございまして、特に日本の社会人野球の方との関係を見ますと、社会人野球に入れば、野球選手として働かなくても会社員として定年まで働けるのでございますから、どんどんそちらの方にいい選手がとられるということになりましたならば、プロ野球全体の存立にも響くことなのであって、そういう意味からも、選手の待遇の改善ということは非常に重要なことではないか、現に、これはプロ野球機構内で熱心に検討中の問題でございます。
  51. 佐藤文生

    佐藤委員長 武藤山治君。
  52. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 最初に下田コミッショナーに伺いますが、ドラフト問題が国会で議論されたのは昭和四十二年の七月が最初で、当時、松前重義さん、東海大学の学長でありますが、この方が一番最初に国会で取り上げて、その後七回、法務委員会文教委員会などで取り上げられ、きょうが八回目であります。  すべての議事録に目を通す時間はなかったと思いますが、この間、昨年の参議院の法務委員会で二月十六日と三月二日に各党がすべて意見を開陳し、ドラフト制度のあるべき姿、中には廃止論もありますが、大部分は廃止論じゃありません。改善点は何であるかという観点からの質問でありますが、さらに、いま横山先輩がおっしゃった選手の待遇改善の問題、老後の年金保障の問題、それからいまの利益の配分のあり方の問題、さまざまな角度から法務委員会で議論されているわけでありますが、せめて、コミッショナー就任されて、この昨年の二月十六日と三月三日の分ぐらいは目を通したのでしょうか、全くそういうものには関心を寄せずに、きょうここに御出席をされておるのでしょうか。冒頭にその点をちょっと伺いたいと思います。
  53. 下田武三

    下田参考人 私は、過去におきまして、衆議院及び参議院の関係委員会におきまして行われました七回の討議の全議事録を拝見しております。
  54. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、法務委員会において文部大臣は、これはプロ野球の所管官庁だという立場から、就職の機会均等という面から見ても、いまのドラフト制度のあり方は排他的である、こういうことをはっきり、文相が議事録にとどめた発言をしております。それから法務大臣は、世間で批判も多く、改善を望むという意見を述べております。  そういう点から、両大臣の見解は、青少年に夢と希望を大きく持たせたい、あるいはまた人権というものが即法律に違反しないまでも、やはり先ほどコミッショナーがおっしゃいました法の精神、いわゆる職業選択の自由とか人権の擁護とかあるいは生存権的基本権とか、そういういまの法の精神から見たときに、現状のままのドラフト制度では少々改善をする余地があるのではないか、こういうことが両大臣の真意だと私は思うのでありますが、この両大臣の答弁について、コミッショナーとして、いかような御感想をお持ちでございますか。
  55. 下田武三

    下田参考人 過去の議事録を拝見しまして、文部大臣、法務大臣の発言も私承知しておりまして、法務大臣の発言は私ども考えとそう違わないと思いましたが、内藤文部大臣の発言は、ちょっと私どもから考えてあるいは困るのではないかと思いまして、先日、内藤文部大臣に会いまして、あなたと私はやがて衆議院の法務委員会でお答えしなければならぬ場合に口裏が合わないようでは困ると言って、内藤文部大臣の真意を尋ねました。  文部大臣は、実は指定校の問題があるので言ったのだけれどもドラフトのことは余り自分は専門でもないので、あるいは多少誘導尋問に乗ったかもしれないけれども、そう困ることは私は言った覚えはないということでありまして、私は、私のお答えしようとするものは、ドラフト制度人間のつくった一つでありますから完全無欠なものはない、もし欠陥が発見されたら、どんどんそれを改善していくにやぶさかでないという柔軟性を持っていきたい、だから、こういう問題は政府よりもやはり野球関係者自分の責任で解決していくべき問題であると考えるということを内藤大臣に申しまして、それはそのとおりでいいということで、政府側と私どもとは全然意見の食い違いはない状態になっています。
  56. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 意見の食い違いがないということは、冒頭に青木委員協約規則の再検討をするかどうかという質問に対して、下田さんは、再検討する、規約委員会で順次改正する必要がある、そういうことで目下取り組んでいる、こういう答弁がありますから、ドラフト制そのものが現状のままでいいとは思ってないわけですね。
  57. 下田武三

    下田参考人 それではどこが悪いのだということを指摘することは、ただいま私の立場としてできませんが、やはり一番の根本の問題は、肝心の選手の本人の意思が何ら表示されないじゃないか、ドラフトの全制度のいかなる段階においても、全く一方的に球団側の指定で行われるじゃないか、その点は、法の根本精神から申しましても、実は一番痛い点だろうと思います。  その痛い点をどう改善すべきかという点は、いま規約委員会検討中でございますので、成案ができましたら、実行委員会でこれを採択することになると思います。
  58. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこのところなんですけれども規約委員会審議をし案をつくっても、いまの体質では、これが実行委員会で通らぬのですね。  というのは、最初が去年の三月二十八日ですか、ドラフト審議委員会新設。そのときにどういうことを言っておるかというと「ドラフト制度はどのようにしたら世論に受け入れられるかなどを検討一つの指針を打ち出すことを決めた。」これが三月二十八日。そしてその指針を決めて何回もおやりになりまして、五月三十一日に審議委員会が内容を決めて発表しましたね。  その内容を見ると、結局、新人の選択権を認めようというところに比重があるわけですね。その方法論まで決めたわけでしょう。それは「各球団の一位に指名された選手の中で、入団拒否の者には、入団希望する球団をセ、パ両リーグから二つずつ選択させる」これが第一。第二が「その上で選択された四チームで抽選し、入団先を決める」これが第二点。第三点は「その場合、最初のドラフトですんなり入団した選手と再ドラフト選手との間には、契約金で差をつけ、再ドラフト選手契約金は、あらかじめ定めた上限の八〇%程度とし、その差し引き分は、最初に指名して拒否された球団に与える」というものである。  これが一応五月三十一日の審議委員会で決断を下した改善案の内容なんですね。したがって、これは新人選手の選択権というものを少々見てやろうという発想になっているのですよ。私どもはこの新聞を見ていて、ははあ、なかなか一生懸命野球界もやっておるな、こういうことで、実はこの記事を読んだときには私も、これはいい方向だ、こう思ったわけであります。しかも、そういう論議の中で、真偽のほどはわかりませんが、この報道によると「こうした経過のあと開かれたこの日の会議では「選手に選択権を与えなければ、国会にまで取り上げられた問題の解決策にならないし、世間も納得しない」として」次の会合で、きちっとまた決めるわけですね。  こういうことを決めておきながら、いよいよそれが今度実行委員会の方から茶々が入ってきて、去年の七月三十一日ですかの実行委員会で、これまたもとのもくあみで、新人選手の選択権は全く認めずという結論になるのですね。ちゃんと四回も五回も会議をして決めた結論が、今度実行委員会へ行ったら、弊履のごとくそんな決定はパアなんであります。  これでは、いまここでコミッショナーが、今後規約委員会でいろいろ検討します、改善の方向で改善すべき点は検討する、いまここでその中身は答えられない、もっと時間が欲しいということを先ほど鳩山さんに答えていますからね。私は、その中身までいまあなたを追及しようなんとは思っていないのですけれども、こういう去年の経過にかんがみると、どうもこれまた、規約委員会なり審議委員会で答えを出しても、実際の経営者である十二球団のマネーの力を持ったところの発言権で、専門的に一生懸命積み上げた改善案が結局弊履のごとくまた捨て去られるのじゃないですか。  今度は、日本における最も権威ある最高裁判所裁判官までおやりになり、外務次官までおやりになったこんなりっぱな人がコミッショナーなんだから、今度は絶対心配ないと国民に安心していただけるでしょうかね。ちょっとその辺、見解を聞かしてください。
  59. 下田武三

    下田参考人 ただいま武藤先生のお読みになりました案は、確かにそういう案があったということを聞いております。けれども、それは委員会で採択されたものではなくて、いろいろな案が出ましたものの一つであるというように伺っております。  実行委員会で結局選手の意思を表明させる制度が採択にならなかった理由は、先ほどもちょっと申し上げましたが、ドラフトの生まれます前にあったスカウトの暗躍、それこそ金に物を言わせたスカウトの暗躍が、今度は選手をして自分球団希望させる目的で動きはしないか、実行委員会委員ドラフト前の昔の混乱状況を経験なさった方がたくさんおいでになるわけなんでございますが、そういう過去の経験に照らして、自分球団希望させるがために、今度は逆に金がまた動きはしないかという非常に大きな憂慮が、その案の採択を妨げた大きな理由であったというように伺っております。  でございますから、そういうような憂慮を巻き起こすことなく、選手の意思が多少でも尊重されるような改善方法がございますれば、私は、それを採用する方向に向かっていくのが本筋ではないかと存じております。
  60. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 コミッショナー野球のことばかりじゃなくていろいろなことを考えているから、事務局長にある程度任せてしまうのでしょうから、いまのような歯がゆい、どうも歯切れの悪い答弁になるのだと思いますけれどもコミッショナーというのは、いろいろ読んでみると、一つのオールマイティなんですね。  したがって、下田さんがいかなる判断を下すかということが、日本野球界全体の今後の発展なり今後の体質なりの方向性を決めるのですね。ですから、マンネリ化した事務局長の言うなりになっていたのでは、コミッショナーは必要ないと思うのですよ。どうもいまの答弁を聞くと、あなた自身の意思なり判断で物を言ってないですね。  先ほどは、なかなか正直なことを答えているのですよ。検討の時間が足りない、どこをどう改正するかまでは、きょうはまだ答えられる段階でない。だから、審議委員会としての最終決定案ですからね。ただ、実行委員会として決定しないうちは、これはあくまで試案なんだと言えば、そういう解釈かもしらぬが、しかし選択権を少しでも認めようじゃないかとして発足をした審議委員会が、三つのそういう案を出したら、実行委員会で全然これを尊重されないというのは、機関なり組織なりに任せて審議さしてきたことが、全くおかしくなるのじゃないですかね。そういう体質自体にも問題があるのじゃないでしょうかね。  下田さんは結局、検討時間が足りないということと、それから是正する方法がない、いい案があったら改善するのだ。しかしいい案は、いまよりはよりいい——絶対なんというのはないですよ。だから、新人の選択権を認める問題で、いまよりも少しでも前進をし、よくするという、そういうものはもう現に審議委員会で示されているじゃありませんか。なぜそれが採用できないのだろうかという疑問が、私の頭から抜け切れないのであります。  鈴木さんは、先ほど、いや検討した、そして幾らか改善をしたのだ、それは一年間トレードを禁止していたのを次のシーズンの開幕日まで認めたじゃないか、こんなのは改善した組にならぬですよ。六名の指名を四名にしたではないか、この二点のこんな改善では、国会の意見国民の批判にこたえるためにできた審議委員会審議目的から見て、改善案にならぬですよ、鈴木さん。私は、これを新聞で見る限りでは、どうも誠意がない、熱意がない。それとも、一も二も金、三も金、阿弥陀も光る金の世の中、金を持ったところの球団に給料ももらっておるのだし、報酬をもらっているのだから、これの意向ですべてが、積み上げた議論も全部水泡になってしまうという、この体質ですね、これはやはり直さぬといかぬと思うのですよ。  そういう意味で、私は、これから規約委員会で改善をするというのですから、きょうそういう約束をここでいまコミッショナーからもいただいたわけでありますから、ひとつ新人選手の選択権というものはもう一回検討し直す、こういう約束がいただけるのかどうか。そもそも去年の審議委員会の発足のときの最初の決定はそう言っているのですよ。新人選手の選択権について十分ひとつ検討をするということから出発している。そして世論に受け入れられるかどうかを検討する一つの指針を打ち出すことをまず決めた、ここから出発しているのです。ところが、それには最終的には実行委員会が一切触れない、そういう改善案、これは改善に値しないと思うのですが、いかがですか。  これはどなたが答えるのが一番適正でしょうか。ずっと携わってきた鈴木会長ですか。鈴木会長、去年の改善案とこれからの改善案についての前向きの方針というのは、一体あなた自身はどう考えますか。
  61. 鈴木龍二

    鈴木参考人 どうも武藤先生からおしかりのような御忠言をちょうだいしました。ありがとうございます。  私、ドラフト云々につきましては、先ほど下田コミッショナーがおっしゃったことと全く同じでございます。これをもし、全然廃止ということも考えられませんけれども、先ほどコミッショナーがおっしゃったごとく、もしこれを妙に改めますと、ひとしきり世間にしきりに言われました「あなた買います」の時代になりまして、それこそ一人の選手を十二球団が引っ張りだこになる。金で飽かすか、物で落とすか(武藤(山)委員「そんなにならぬのです」と呼ぶ)いや、そういうことが実際あったのでございます。  ですから、とにかく武藤先生のおっしやること、私よく考えまして、これからドラフト委員会及び実行委員会を開きますから、十分真剣に考えさしていただきたい、こう思っております。ありがとうございました。
  62. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうですね、会長さん。ドラフト審議委員会が発足したそもそもの精神を忘れないということ、これが肝心だと思うのですよ。  いまのお約束で、これからそういう検討をするとおっしゃいますから、私はこの質問は終わりますが、最後に、そういたしますと、またそろそろ十一月が近づいてくると、ドラフトの時期に入ってまいります。ことしのドラフトはやはり従来どおりの形でいくのか、新人選手の選択権を、たとえば二つくらいの希望球団を書かして出すとか、あるいは三つくらいの球団希望を出させる。そして抽せんの仕方は、今度は昨年一番下位だったチームから順に抽せんを引かせる、そういうような形、あるいはまたアメリカのように、一年間のうちに二回ドラフトをやるような制度にするかとか、いろいろこれからあると思いますが、せめて新人選手の選択権を少し認める、何かそういう案を十一月までに早急に審議会考えて、ことしのドラフトの場合には従前とは少々違うという形になったもので臨みますか。それとも、ことしはもう従来どおりのドラフト制で乗り切ろうとするのか。その辺の決意のほどと見通しをちょっと聞かして下さい。
  63. 工藤信一良

    工藤参考人 私が議長になってこれからのなにを取り運んでいくので、その立場から御答弁いたしますけれども、これはあくまで専門の小委員会並びに最後に決定する実行委員会の権限でございまして、いまここでわれわれといたしまして、これに先立って、こういう方針で臨むということは申し上げることはできないと思います。しかし、早い機会にやるということは、ことしのドラフト会議に、改むべき点があれば改めて臨みたいという決意のあらわれだと御了解願って差し支えないと思います。  ただ私、いまそんなことを言いながら、自分意見を申し上げて非常に恐縮でございますけれども選手に選択権をなにするということは、これは非常に結構なことだと思うのですが、同時にそのとき、たとえば現実の問題として具体的なことを言いますと、岡田なら岡田という選手がおりますが、これがもう恐らく本当の取り合いになるだろうと思うのですね。  そのときに、仮に岡田にある意思表示をさすと  いうこと、これは岡田だけにさすわけではないの  ですが、そういう指名された選手に意思表示をさすということを、どういう形で、これを非常にうまいぐあいに認めるか認めないか、あるいは認めたとしたときに、その意思表示をしてもらうための事前運動、事前工作並びに先ほどおっしゃいましたお金の実にいやらしい関係がここに非常な勢いで入ってきて、往年の混乱をもたらさぬわけでもない。これは当事者として非常に真剣に考えておることだと思います。そういう点も含めまして、今後の検討を十分慎重にいたしたいと思います。
  64. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 割り当ての時間でありますから、コミッショナー以下会長さんにも、ひとつ国会の八回にわたる審議の真意を十分にくみ取っていただいて、今後の一層の善処方を強く期待いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  65. 佐藤文生

    佐藤委員長 沖本泰幸君。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大体お伺いしたいような内容については、武藤先生がほとんどお話しになられたわけでございますけれども、余り重複しないようにお伺いしてみたいと思うのです。  昨年の二月の参議院の法務委員会の議論の際に、わが党の白木議員から、ドラフト制度の制定当時に選手側の意思が十分取り入れられたかということに対して、鈴木会長は、率直に申し上げると選手側の意向は取り入れられていないというお答えがあったわけで、その点について鈴木会長は、質問の要旨を実行委員会に伝えて善処するという発電をしておられるわけですけれども、それが、先ほどからのお話のやりとりの中で、お伝えになって実行委員会でそういうお話が進められたのか、あるいはそういう向きで国会でのいろいろな質問の内容を重視しながら検討が加えられていって、そして結論としては、結局は先ほど武藤先生のお話のとおりに認めないという形で、またもとのままになったということになるのか。  その辺の鈴木会長の昨年のお答えなり、あるいはこの制度そのものに対する先ほどからのお答えと、それから下田コミッショナーのお話の内容とについて、この制度は置いておくけれども、その中身についての改善という点についてはさほど手を加えなくてもいい、このままでいくのだというお考えなのか、その辺がお二方の御意見がきちっとそろった点で将来に向かって改善が加えられるのか、どういうことになるのか。  それは、きょうのお話を御検討なさりながら、さらに後にもっと検討なさって御意見を合わしていかれるのか。どうもさっきから伺っておって、もうひとつ私なりにぴんとこない点があるものですから、この制度に対して鈴木会長のお持ちになっているお考えと、それから下田コミッショナーのお考えとは別々なのか、あるいは御意見なり何なりの御検討、話し合いというものは、現在まで相当いろいろと御関係筋でなさってきた結果この場に臨んでおられるものなのか、その辺がもうひとつぴんとこないものですから、改めてお伺いしたいと思います。
  67. 鈴木龍二

    鈴木参考人 ドラフト問題につきましては、先ほど武藤先生ですか御質問がありましたが、四十何年に松前重義先生からこの質問がありまして、私、たまたま松前先生と非常に御懇意に願っているものですから、松前先生の意のあるところを十分拝聴に伺ったわけでございまして、したがって、私はドラフト問題について無関心であることは絶対にありません。  昨年も、私たまたま議長だったものですから、十数回にわたって委員会も開きましたし、またドラフト問題だけの実行委員会にもかけ、いろいろ中間報告もいたしました。また選手意向というものもよくわかっておりますので、ドラフト問題を無視して、これをごまかすとかなんとかという意思は全くありません。  しかし、先ほどから申し上げておるように、われわれ審議委員会として相当議論も尽くしました。ところが実行委員会で、実行委員会は御承知のとおり満場一致を理想といたしますけれども、場合によっては四分の三ということで決める場合もございまして、実行委員会において反対な方もありましたので、委員会意見というものは実行委員会で承認されなかったわけでございます。  しかし、今度は議会でも取り上げられましたし、さらに新コミッショナーも迎えまして、コミッショナーの御意見も伺っておりますので、これから決してこれを無にすることなく、ドラフト問題いかがになりますか、その結果は、私はここでは申し上げられませんし、わかりませんが、しかし意を十分に尽くして、プロ野球界の改善ができるならばしたいということは考えております。それだけでございます。
  68. 下田武三

    下田参考人 ただいま鈴木会長から申し上げましたところと全く私も同じでございまして、ドラフト問題に対する基本的姿勢といたしまして、現在の制度完全無欠であるというようなことは毛頭考えておりません。  人間のつくった制度でございますから、謙虚な、そうして柔軟な姿勢を持ちまして、常に改善の方向に向かうべきである。ただ現段階において、どうしたら改善されるという具体案がまだ持ち得ないという現状でございます。
  69. 沖本泰幸

    ○沖本委員 当然、プロの選手を育てるわけですから、その選手自体にしても、それで一生涯名を上げて人生をそこへかけていくということになるわけですし、そういう選手を発掘していって、よりすぐれた選手を世の中に出して、プロ選手として育てていき、それから国民大多数のファンの期待にこたえるような選手個人を育てていき、そういうことによって球団自体がレベルを上げていくなり、あるいは試合一つ一つがいいものになっていくということはきわめて常識的なお話で、すべてのファンが一番期待しているわけなのですね。  そのスタートが崩れていって、四千万、五千万のファンから不安がられて、そして心配かけてどうなるのだというふうなことになってもらっては困るわけですし、そういうものが凝集されて、国会の一日をつぶして貴重なお時間をいただいてお答えをいただいておるわけですから、これがうやむやにならないように、びしっとした結論を出していただくということも大事なことだと考えるわけです。  ですから、工藤会長さんのお話もありました。次の選手をこれから決めていくについて、金銭的なものなりあるいはいろいろな交渉なり、そういうものは想像できないようないろいろなことが絡んでいくわけですけれども、そのこと自体がりっぱな裁定機関とし、一番公平な判断のある場所としてこれから定着して、安心して見られるようにしていただかないと、下田コミッショナーが最高裁長官という資格をもって臨まれると、先ほどからおっしゃっておられるわけでもあるわけですし、そういうものが定着するように私たちは期待したいわけです。  ですから、こんなようなことを申し上げておるのは、大体議論されたことがことしじゅうに結論がほぼ得られるか。完全なものはできない、こうおっしゃっておられる。これはわかりますけれども、大体ことしじゅうぐらいには結論は得られることになるのでしょうか、どうでしょうか。その辺をお伺いしたいと思うのです。
  70. 工藤信一良

    工藤参考人 改善の道があり、あるいは非常に適当な方法があれば、ぜひそれは取り入れたいと思っておるのですが、これから時間をかけて懸命に努力をしてみるつもりでございます。
  71. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう内容は、いわゆる球団側なりドラフトの機構の中で話し合われ、問題が消化されていって、それで結論だけが後でわかってくるのでしょうか、あるいは都度都度わかりやすいような形で国民の目に触れるような内容で進められていくのでしょうか、その辺はどうなのでしょうか。
  72. 工藤信一良

    工藤参考人 小委員会専門委員会と申しますか、規約に関する委員会と言われますが、これは無論非公開でありまして、本当に隔意なき話し合いをするためにも、これを一々発表するというわけには相なるまいと思います。  成案ができますれば、これは最後に実行委員会に諮る。実行委員会の結果というものは、これは実行委員会自身は公開いたしませんけれども、結果については議長から発表いたしたいと思っております。
  73. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ただ心配するのは、実行委員会そのものがほとんど経営側の方ばかりで固められると、その方ばかりの考えが主力になっていくおそれがあるわけですね。  そうしないように努力はなさるでしょうけれども、どうしてもそういう形の結論が出てくるのじゃないだろうかというようなことを心配すると、結局同じような結論がまた出てくるのではないかという心配もあるわけですが、そういう点についてはどうなのでしょうか。
  74. 工藤信一良

    工藤参考人 無論、実行委員会の構成は各球団代表でございまして、この野球規約自身が経営者側の一種の申し合わせなのでございまして、経営者側の意見が中心になるのはもとよりでございますが、実行委員会にはコミッショナーにも御列席を願うし、われわれ両会長もおりますから、世論の動向も十分反映したものに、結論としてはなるようにいたしたいと思っております。今日まで大体そういう方向で来たのだろうと思います。
  75. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうでないような御意見もないことはないのです、見ている方の側から言いますと。そういう向きもあるわけですから、そういう点についてある程度のお考えを含めておいていただく必要があるのじゃないか、こう考えます。  余り時間もありませんが、この質問をすることについてずいぶん電話がかかってきまして、ファンという立場から、これだけ言っておいてもらいたいという注文がありましたので、申し上げておきたいのです。  テレビなんですけれども、先ほどコミッショナーがお話しのように、四千万、五千万のファンがみんなナイターにかじりつくわけですね。ところが、あれはコマーシャルが多過ぎるのじゃないですか。コマーシャルの中に野球が入れられているのか、野球の中にコマーシャルが入っているのか、わけがわからぬときがありますね。とにかくホームランシーンをビデオで見させられるようなばかな話はないと思いますね。これじゃ健全スポーツとかプロスポーツとか言うていられないと思うわけです、コマーシャルの方が多いわけですから。  これは、余りにもテレビ局へ売るあれが高いのじゃないですか。それを消化するためには、スポンサーをたくさん入れないとテレビは放映できない。そのためには、見ている人の感情やそういうものは抜きにして、どんどんコマーシャルを間にはさんでくる、そういうことになるのじゃないでしょうか。こうなったら、スポーツ精神もプロスポーツもあったものじゃないと思うのです、現実にあるのですから。  それから、スポンサーの協力によって放映時間を延長させていただきますというのがありますが、あれは見ている人がおるから延びるのと違うのですか。視聴者がおるから延びるのでしょう。その見ている人を当て込んでコマーシャルがあるのじゃないですか。これはテレビ局の方も放送するアナウンサーの人も考えていただきたいと思いますね。この辺、コミッショナーはどういうふうにお考えですか。
  76. 下田武三

    下田参考人 コミッショナーには、そちらの方の規制、統制をする権限は実はないのでございますが、ただ、おっしゃったことはまことにもっともでございます。  しかし、改善の緒はあるのではないでしょうか。二、三年前までは、ホームランが出そうなときにもかかわらずぷつんと切れてしまいましたが、いまおっしゃいましたように、このごろは、スポンサーの了解を得て引き続き放映するというケースがだんだん多くなってきておるように見かけます。これは、いま御指摘のファンの希望がだんだん取り入れられていきつつある現象ではないかと考えております。
  77. 沖本泰幸

    ○沖本委員 コミッショナーは最近変わったと言いますが、私はついこの間、目の前でホームランシーンをビデオで見させられた経験があるのです。それで、ばかにしていると思って頭にきたわけなんですけれども……。  以上で終わります。
  78. 佐藤文生

  79. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 きょうは、ドラフト制に関する問題での参考人質問ということになっておりますが、現在のドラフト制は、プロ野球の健全な発展に努めるという目的をもってアメリカの制度を導入して、昭和四十年から実施されたというふうに聞いているわけです。  そして今日まで大分時がたちました。なおドラフト制の是非については、いろいろな議論があります。しかし、今日ここに御出席参考人の方々は、プロ野球界の重要な役職におられる方ばかりでありますから、私は、ドラフト問題に限らず、プロ野球全体の発展のために、いま一体何が必要なのかということを高い立場から考えていただきたいと思うのであります。選手が安心して試合に打ち込め、技術を高め、試合をおもしろくし、ファンも心から楽しめる、こういうプロ野球にするために、いまどんなことを行う必要があるのかという問題です。  ある調査によりますと、ドラフト制導入後昨年の二月現在までに、プロ野球志望者でドラフト指名された者が千三百三十二名いるそうです。そのうち、プロ野球球団入団した者が八百三十六人で、残り五百人近い者が入団をお断りしたそうですが、私も、この入団を断った人について、過去の報道などで、どういう理由で入団を拒否したのかいろいろと調べてみましたところ、好きな球団に行けないからというのは案外少ない。ごくわずかでありました。問題になった江川選手や荒川選手の例は特殊、まれな例であると言えるのではないか。もっとほかに入団できない本当の理由があるのではないか、こういう感じがするわけであります。  ちょっと私の意見を述べましたが、ドラフト制に限らず、プロ野球全体の発展のためにいま何が必要か。いままでの質疑の中で、いろいろお答えをされている部分もありますけれども、きわめて一般的な質問といたしまして、プロ野球の発展のためにいま何をすることが必要かということで下田参考人に伺って、ほかの参考人の方もつけ加えることがあればお聞きしたい、そういうふうに考えます。
  80. 下田武三

    下田参考人 私、就任のときに、プロ野球の世界には醜いこと、汚いこと、曲がったことは絶対にないようにしたいということを申し上げました。それで終始一貫したいと思っております。  ドラフト制が問題になりますのも、そこに何か曲がった点があるのじゃないかという国民皆様の率直な気持ちから問題になっているのだろう。その点は私ども当事者として常に深く反省し、柔軟な、謙虚な姿勢を持って対処しなければならぬと思います。  そこで、ただいま何が一番の問題か。こういうドラフト制を含め現行制度、決してすべて完全無欠なものはあり得ないのでありまして、謙虚な気持ちで常に改善を心がけるということが第一でございましょう。  第二に、私は先ほどちょっと触れましたが、選手の待遇改善。いまの規約に載っておるような六十万円なんという数字は、実はもう国辱であります。あれを英語に訳して外国人に見せられたものじゃないのですね。私は、そういう点で選手に少なくとも後顧の憂いなく、妻子の養育に不安を感じないような待遇を確保するのでなければ、日本プロ野球の発展はあり得ない、そう個人的には考えております。この待遇改善問題も重要な問題の一つであると考えております。
  81. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いま下田参考人の力強い御意見を伺ったわけですが、プロ野球というものは選手あってのものですから、あくまで選手が基本であり、選手の意思、やる気がどうなのか、このやる気の前提となる選手の生活、権利の保障の面で、現在のプロ野球がどうなっているのかということが非常に重要であると私は思うわけであります。     〔委員長退席、鳩山委員長代理着席〕 私も、この質問を準備するに当たりまして、最近プロ野球選手の生活の実態というものを初めて勉強したわけでありますが、華々しく見えるプロ野球選手の生活がこれほど厳しいものであったのかと改めて驚きました。  松原選手会長のインタビュー記事などを読んでみますと、選手の収入、参稼報酬のことですが、これは最低保障額が、先ほどもおっしゃいましたように、二軍の人で年額六十万円、一軍の人で年額二百四十万円になっておりますが、実際には、二軍のバッティングピッチャーなどで月十万円程度、一軍では二十万程度の人がいると聞いております。しかも、そういった人たちが、ボールとユニフォーム以外の用具はすべて個人持ちで、バットなどの用具費に年間二十万から三十万円が必要だ、こう語っております。だから、中には奥さんの働きに助けられて選手生活をするという選手もいるわけです。アメリカの方を見てみますと、協約では最低保障が二万一千ドル、約四百万円を超える数字になるわけですが、これと比べてみても、日本選手がいかに待遇が悪いかということがよくわかると思うわけです。  さらに、退職金などは全くなく、年金も、この前国会に参考人として出席されたときの話では、川上前巨人軍監督でさえ、三十年間もプロ野球でユニフォームを着て、プロ野球の発展に尽くしてきたのに、月二万五千円しか年金をもらっていない、こういうお答えでありました。  私は、先ほど、入団拒否をした者の大多数について、その理由というものについて、断定的に申し上げませんでしたけれども、やはり待遇が悪い、将来の展望がない、退団後の保障がないからというのが圧倒的に多かったというように判断しております。  最近、選手たちも統一選手会をつくって、その法人化を考えているようですが、今後のプロ野球の発展のためにも、よい選手入団し、生活のことを心配せずに試合に打ち込めるということが、プロ野球発展の前提になるのではないかと思うわけです。  この選手の待遇の改善についての問題ですが、いま下田参考人から御意見がありましたけれども、それでは今度は鈴木参考人の方から、この点についてどういうお考えを持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  82. 鈴木龍二

    鈴木参考人 ただいま先生からお尋ねがありましたが、協約の不備もございまして、当然改正されなければならない文字がそのままになっております。  そういうようなことがいろいろ世間から誤解されているのじゃないか、こう思っておりますが、先ほどの六十万円云々ということに対しては、いまはもう大分改善されていまして、現在選手会との交渉をやっておりますが、これはもう六十万円とかなんとかということは全然問題でなく、選手会からも相当な要求も出ています。また、われわれ委員会としましても、先ほど下田コミッショナーがおっしゃったごとく、選手の待遇については十分考慮しなければならぬということで、いま折衝をしておりますが、近く具体的な取り組みができるだろうと思っています。  それから、先ほどバット云々とございましたが、バットは大体みんな球団給与ですね。球団によりまして自分でやるところもありますけれども、十分球団でもって給与を援助しているはずでございます。  ともあれ、選手の待遇につきましては、もちろんわれわれも現在焦眉の問題として、五、六日うちに福祉委員会も開かなければなりませんし、そのときには、十分選手の意をまた聞きまして、われわれとしての考え選手に理解してもらって、選手の待遇のことについては改善をしていく覚悟でございます。どうぞひとつ御了解を願いたいと思います。
  83. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 協約の中身のとおりの待遇では現実にはない。  ですから、一定程度上がっているわけですけれども、普通のサラリーマンと比べてみても、決していい方ではないというのが一般的で、現在でもそうであると思うわけです。そういう意味で、特殊な能力を持ち、そしてまたその能力を開発させていかなければならないこの選手たちでありますから、その待遇については特に考えなければならない。  それから、いまのバットの問題についても、球団によって支給されているところもあるというように聞きますけれども、こうした問題についても、やはりプロ野球全体として考慮するようなことが必要ではないかというように考えるわけです。  もう一つは、選手の権利の問題ですが、現在統一契約書によって、ある球団入団したら、選手は引退するまで球団に身柄を拘束されるということになっているわけですが、これは、ドラフト制の問題以前に、選手の権利の問題として重要であると思うわけです。  かつて、一九五一年、昭和三十六年までにプロ野球に入った選手については、十年選手ということで、十年以上プレーした選手自分球団を選択する権利を与えていたことがありました。アメリカの大リーグでは、いまも六年で所属球団自分で変えることができるようになっていると聞いております。十年選手制の撤廃は、そういう意味で明らかに選手の権利の切り下げだったように私は思うわけでありますが、ドラフト制の是非論もありますが、まず、このような十年選手の権利を復活させるといったことなど、選手の権利保障についての改善について、どのように考えておられるのか。  特に私は、選手球団とが対等な立場で、働く条件、仕事をする条件について話し合えるようになるということが理想的であると思いますけれども、この権利保障についての改善問題について、どのように考えておられるのか、これは工藤参考人にお聞きしたいと思います。
  84. 工藤信一良

    工藤参考人 選手の権利を含めた福祉の問題については、福祉委員会というものを設けまして、いま検討中でございます。  特に選手会の方も最近非常に活発になってきましたので、話し合う機会もできておりますので、これから検討していきたいと思っております。御趣旨はよくわかります。
  85. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの協約などを見てみますと、やはり生活、権利の問題など重要な問題があると私自身も考えるわけでありますけれども、その問題についてこれから本格的に取り組んで、選手もファンもプロ野球を心から楽しめるにはどうしたらよいかということを、ここにいらっしゃる、重要な役職にいらっしゃる方を中心にして、真剣にお考えいただいて、改善の措置を一刻も早くとっていただきたいということを最後に要望いたしまして、終わらせていただきます。
  86. 鳩山邦夫

    鳩山委員長代理 次に、小林正巳君。
  87. 小林正巳

    ○小林(正)委員 下田コミッショナードラフト制度は必要だという先ほどの話でございましたが、それはプロ野球というものが国民の中に非常に多くのファン層を持っておる。そういう層の厚さからの公共性に準拠されて言っていらっしゃるのではないかと思うのですね。しかし、このプロ野球に限らず、公共性にかかわる分野というのは大変多いわけでございます。  たとえば役人、官庁職員ですね。これは公務員、すなわちきわめて公共的な仕事をしておるわけでございます。そういった意味では、大蔵省であろうが郵政省であろうが何省であろうが、それはすべて公共性の高い部門として、優秀な人材がそれぞれにあんばいされるといいますか、それぞれ配置されるのが本来的に望ましいわけでございます。  これはプロ野球とは違いますが、たとえば上級職の公務員の試験、コミッショナーは外交官試験でお入りになっていますから事情は違いますが、一般には上級職の公務員の試験を卒業するときに受けて合格した者が、たとえば大蔵省へ行きたいとか何とか省へ行きたいとか、第三志望ぐらいまで出しておるようでございます。それに対して各省がそれぞれに人材を求める。いままでの傾向でございますと、比較的成績のいい人がかなり集中的に大蔵省を希望する、大蔵省の方もそういう中から自由に選択をしていく、こういうことになりますね。  そうすると、実質的に、第三志望まで出しておりますが、やはり各省の人気といいますか、それぞれに優秀な人材が、まあ一遍の試験で優秀ということを決めつけるわけにいきませんが、上級職公務員試験の成績のいい者は比較的人気のある官庁に優先的に採られていく、こういうことになるわけでございます。  人材がそういう意味では偏るかもしれない。こういう部門こそ最も公共性が高いということも言えるわけですからこれをドラフトにかけて、各省それぞれに指名制にして、成績のいい順からばらまいていく、そうすると各省の人材は大体平均化する、こういうことになりますが、コミッショナーは、ちょっと違った外交官出身でいらっしゃいますが、そういうやり方はどういうふうにお思いになりますか。
  88. 下田武三

    下田参考人 先ほど、職業選択の自由という憲法上の自由権、その自由権はあくまでも絶対的なものではないのだ、その理由として、先生のおっしゃる公共性、つまりプロ野球を数千万の日本のファンのために国技として護持する利益、それをどこで線を引くかという問題だと申し上げたわけでございますが、公務員の場合には公共性がありますが、いま職業選択の自由の限界として申しました意味の公共性とは、またこれは違う別個の問題だろうと思います。  先ほど、法律的な制約という意味で、公共性を職業選択の自由に対抗する利益として申し上げたのですが、もう一つ、職業選択の自由について事実上の大きな制約がございます。  元来、職業選択の自由というのは、昔のように、お寺に生まれた子は必ず坊さんにならなければいかぬとか、お医者の家に生まれた者は必ず家業の医者を継がなければならぬ、そういうことはないのだというのが職業選択の自由。それから、昔のように、士族でなければ役人になれないのだ、そういうことはいかぬというのが最も基本的な意味の職業選択の自由でございますね。そういう職業選択の自由に対する制約というものは、全部現在はもうなくなっております。しかし、だからといって何人も大蔵省の役人になる権利はないわけなんでありまして、大蔵省も年に二、三十人でしょう、外務省は年に二十五人、そういう、まず数の制約がございます。能力の制約もございます。  そう考えてまいりますと、プロ野球選手というものは、これまた実に限られた、各球団四人でございますから四十八人の問題でございますね。四十八人の中に入る自由なんというものはないのであって、その意味で、プロ野球選手というのは歌舞伎の役者みたいに、つまり芸能人的な要素があるわけでございますね。     〔鳩山委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、どだい、そういう能力のない人は、いかに職業選択の自由を主張しても、それはなり得ないものである。その点では、何人も大蔵省の役人になるあるいは外交官になる自由というものはない。ですから、私が先ほど申しました公共性という問題と、ちょっと次元の違う問題ではないかと思いますが……。
  89. 小林正巳

    ○小林(正)委員 次元が違うことは承知で伺っておるわけでございますが、工藤会長は毎日新聞の大先輩でいらっしゃいますが、工藤会長は、学生時代ジャーナリストを志された、あるどこかの新聞に入って、ひとつ健筆をふるいたい、こういうお考えであったろうと思いますが、恐らくどこでもいいということではなかったのだろうと思うのですね、ジャーナリストを目指されたとしても。  毎日新聞だけに入って、毎日新聞だけでやりたいとお考えになって、たまたま毎日新聞にお入りになったのかどうかわかりませんが、毎日新聞にお入りになりたいと思ったけれどもドラフト制で新聞記者は登録制になっておって、あるいは九州や北海道の新聞社から指名されるということもあり得る。これはちょっと遠くて家の都合で行けないということになれば、一年間就職は放棄するということになります。  鈴木会長もジャーナリストの大先輩でございますが、国民新聞と伺っておりますが、恐らく国民新聞を志望されて入られたのではないかと思うのです。  それがあらゆる社会の内部で、いや、これは公共性が高い、公共性はいろいろ理屈はどうにでもつきますから、公共性が高いのだから、ここの部門ではひとつドラフトにかける、こういうことになったら大変えらいことになるのではないか。仮に沖繩の出で沖繩の新聞にどうしても入りたい、家庭の事情から沖繩の新聞でひとつ働きたい——ジャーナリストを志す人間が北海道から指名されることもあるし東京から指名されることもあると同じように、これは私は必ずしも全く同一の例として申し上げているのではありませんが、そういうことがこの世の中まかり通るということは大変おかしなことではないか、こう基本的に考えるわけでございます。  私は、何もこのドラフトというものが民法九十条の公序良俗に反するというふうなことまでは申しませんが、しかし、これは単にプロ野球界だけのことだから何ということはないということで済むかもわかりませんが、あらゆる日本の社会のいろいろな分野でこういうドラフト的なものがまかり通るようになれば、それはまさしく公序良俗に反するということで、社会問題になることは必至でございます。  新聞界でそんなことを適用したら、えらいことになるだろうと思いますが、プロ野球界だけがそうした問題に特権的であり得るという根拠はどこにあるか、ちょっと工藤先輩に伺いたいと思います。
  90. 工藤信一良

    工藤参考人 私は、ドラフト野球界だけの特権的なものだとは決して思っておりません。  一球団の支配下の選手が六十人なんです。そうすると、十二球団全部寄せましても七百人、もう本当に小さな世帯なんでございますね。ここで、この小さな世帯で数千万のファンを持っている、社会的には非常に大きな影響力を持つものですが、企業自体といたしましては非常に小さい、従業員七百名の十二球団なんでございまして、それが共存共栄していくために、こういう制度が生まれるべくして生まれたので、決してこれは野球界の特権というふうには私は思っておりません。  いま、私事で非常に恐縮ございますけれども、私は新聞社へ入るときには、それは新聞記者になりたいと思ったので、別に毎日新聞に入りたいとも朝日新聞に入りたいとも思ったわけではございません。新聞社へ入れれば、新聞記者になりたいと思ってきたので、そのときにたまたま入社試験で通りましたから、なんですが、地域の問題でこの間も非常に問題になっておったので、自分の好きなところでやりたいということはわかるのですけれども、新聞社の例を申しましても、私、新聞社の入社試験の委員長を数回やっておりまして、新聞社というのは、毎日とか朝日とかいう全国紙になりますと、沖繩から北海道まで人の配置をしております。  そこで、もしも入社試験である程度の成績を上げますと、その後は面接ということで最後決定をするわけですね。そのときに、私は北海道でなければ困るとか、私は東京でなければ困るとか、地方転勤はいやだと言ったら、それはまことに失礼だけれどもお断りいたしますというわけでございまして、そういう事情があって、ドラフト制度野球界だけの特権というふうには決して考えないわけでございます。
  91. 小林正巳

    ○小林(正)委員 ちょっと混同していらっしゃるように思うのですが、たとえば新聞界なら新聞界に入るまでの問題と、入ってからの問題とは全然違うわけでございます。  それは、仮に某新聞に入って、その人が総務に回されるか、あるいは同じ編集内部の政治部へ行くか、社会部へ行くか、運動部へ行くか、あるいは地方の支局へ行かされるか、通信部へ行くか、それは経営者側の御都合の問題であって、社の方針の問題でございますから、それに従うのは当然でございます。しかし、入るまでの場合にその論理は通用しない、私はこういうふうに思います。ですから私は、ドラフトの問題とトレードの問題というのは、おのずから性質が全く違う、こういうふうに思うわけでございます。  それから、ドラフト問題というのは、言うならば球団という大きい資本、その論理がまかり通っておるものだ。球団自体は市場経済の原理の中に発展をしてきておるわけでございます。ですから、人気球団もあれば人気のない球団もあるでしょう、相対的な問題ですが。まさに市場経済の原理の中に生きてきておる。それでありながら、今度は外部から人をとる段になると、この市場経済の原理は認められない。そうして球団側の都合のルールを入ってくる者に押しつける。これは、私は自己矛盾じゃないかと思いますが、どうでしょうか、鈴木会長
  92. 鈴木龍二

    鈴木参考人 先ほど工藤会長のおっしゃったように、プロ野球選手は本当に特殊な技術を持っている者で、またそこに年齢の問題もございますし、一般のサラリーマンとは大分性格を異にしているのじゃないかと私は考えるのでございます。  したがって、プロ野球の生活のなにはきわめて短期間なんでございますね。それだけに待遇その他について、プロ野球プロ野球なりに十分考えなければいけないということは当然であり、それをいまになって交渉をするのは遅いじゃないかというおしかりがあるかもしれませんけれども、いま選手会も組合として、できるならば社団法人の性格を持って連盟と交渉したいというふうに出ておりますし、これはもっともなことでございます。私の方もこれを受け入れまして、選手の待遇について十分考慮しようということを考えておりますので、一般の俸給生活者とちょっとそこは趣を異にしているのではないかと私は考えております。
  93. 小林正巳

    ○小林(正)委員 もう一つ申し上げれば、ドラフト制というのは、本来球団自体の内部で自律的に解決すべき問題を他に押しつけておるということだろうと思うのですね。  たとえば下田コミッショナーは、先ほど、これを野放しにすると、やたらに金が飛び交って選手争奪のために醜いことになる、こうおっしゃるけれども、それをするのは球団自身でございます。それは球団の内部で自律、自制をする。違反した球団があればペナルティーを科するということだって、球団内部でできることですね。  そうしたことはお手上げにして、これはもうしようがないのだ、いい選手がおってルールなしにすれば、やたらに金を積み上げてよくないことになる。そうする球団自身のことは不問に付して、それはしようがないのだ、そうしてそうならないように外部に対して一つのルールをつくる、この辺が大変不遜なルールではないかというふうに私は思います。  それから、おもしろくするために選手の実力を均衡化する、ある球団がやたらに勝ってしまう、常に勝つとおもしろくない、こういうことをおっしゃいましたが、球団というのは、球団を強くするということが目的ではないと思うのです。これは手段だと思うのです。目的は、球団といえどもこれは企業経営ですから、お金もうけでやっておるわけでございましょう。趣味でやっておるわけではない。何らかの形で、それが対価を生む、金銭的な価値を生むという企業の論理を追求しておるわけでございますから、ある球団がやたらに強過ぎる、強くなり過ぎると、人は見に来なくなるかもしれません。人気は低下するでしょう。ある球団が飛び抜けて強いことによって人気は低下をして、全体も含めて、その球団自体の経営状態がよくなくなる。  このトップのやたらに強過ぎる球団はどうするでしょう。恐らく自律的に自分球団の力を弱めるでしょう。力を落とすことによって均衡化を図り、そうしてあるバランスに戻る、そういう努力をするだろうと私は思うのです。やたらに強くすることで、逆に自分のところの経営を悪化させる、そんなばかなことはあり得ない。これは見えざる手によって操作、自律、自動的に動くであろう、こう思いますね。  それを他から規制をする必要は全くない、むしろそういった自然の流れに任しておいたって、そうなるだろうと私は思うわけでございます。下田コミッショナーはどうお思いですか。
  94. 下田武三

    下田参考人 ただいま小林先生は、自由経済の原則に立つべき企業である球団の内部に発生した矛盾という点を御指摘になりまして、非常に参考になったのでございますが、確かに、おっしゃるように各球団すべて株式会社で、これは営利企業でございますね。  ここにおいでになる両リーグ会長は、それぞれの、パシフィックリーグの六球団の上に立たれ、セントラルリーグの六球団の上に立たれ、ある特定の球団だけをひいきするというようなことは全然なさらないで、高いところから全体のなにをにらんでおいでになるわけで、私のコミッショナーというのは営利事業ではございません。営利事業の球団の連盟とは全く独立に、第三者と申しますか、野球協約に申します国技としての、そして数千万のファンの欲する形のプロ野球というものをどうしてつくろうかということに日夜頭を痛めておる、それがコミッショナーの使命だと私は思うのです。  そこで、いま御指摘の矛盾を考えますと、なるほど各球団は営利事業でございますが、スポーツという特殊の分野に従事する組織であります。でございまするから、あたかも国技である相撲に相撲精神があるように、各球団にもやはりスポーツマンシップというものがあるわけでございます。それが、ほかの営利事業とは全く違ういい面だと私思うのでございます。王選手のようなりっぱな選手は、人間としてもりっぱであるという話を聞いております。これはやはりスポーツマンシップがっくり上げた形であると思います。私どもは、そこにプロ野球の非常に大きな意義を認めるものでありまして、そういうりっぱな選手が戦うからこそ、国民にアピールするものを持ち、数千万のファンを擁するに至ったものであろうと思うのであります。  ただ、最後におっしゃいました、ある球団がどんどん力が強くなれば、それでプロ野球というものが成り立たないなら、今度は自律的に自分の意思でその弊をためるであろうという点、その点は私、そうは思わないのでありまして、これを市場経済に放任いたしますと、金のある球団は、あくまでも金に物を言わせて強い選手をどんどんとろうとする。実は、ドラフト制度というものは、その市場経済、経済の原則が野放しに働かないようにするために、均衡を保つための制度であると思うのでございます。  その点で、当初来申しましたように、ドラフト制度は生まれるべくして生まれた制度でございますが、そこで一番大きな反対の見地は、よし、それはわかるけれども選手個人の意思が完全に無視されておるではないかという点でございます。これが実は大きな矛盾で、困難な点であると私は思いますので、その点をどう解決するかというのが一番大きな問題だ、そういうように存じておるわけでございます。
  95. 小林正巳

    ○小林(正)委員 私は、江川問題というのが、制度欠陥をついたということから、非常に情緒的な反発を買った、これは当然のことだろうと思います。それによって逆に、何かドラフト制度というのは非常に正当なものであって、それに違反したやつが悪いのだというふうな考え、そういう風潮になるとすれば、これは間違っておると思いますね。  本来的には、ドラフト制度というのは天下にこれは当然のものだと言って余りいばれる制度ではない、こういうふうに思いますが、しかし、それなりの歴史的背景、経緯によって、必要性によって生まれたものだというのは、これは私も認めます。しかし、いまのような制度であっていいわけはない。プロ野球を志す学生にも、やはり選択の自由があってしかるべきです。片や球団という大きな資本、片や一高校生、一大学生ですね。全然力関係が違う。世の中は全然わかりませんから、少しは世の中のことのわかる人に相談をしよう、不安ですからそういうことになるわけでございます。  そこで、このお三方が会長なりコミッショナーにおなりになったというゆえんは、球団経営者でないということから、請われておなりになったのだろうと思うのですね。それならば、やはり球団同士で話をさすと、これは利害関係がうまくいきませんから、まとまる話もまとまらなくなるわけでございます。  そうした意味で、下田コミッショナーなり鈴木、工藤会長が、球団経営者という狭い視野でなくて、言うならば学識経験者的な立場でおなりになっておるわけでございますから、そうした球団の内部においてもっと指導性を発揮されるべきではないか。専門ばかという言葉がございますが、プロ野球の世界のことはほかの人にはわからないのだというふうなことで、矛盾した制度をそのまま通用させては、何のために下田さんなり鈴木、工藤さんがコミッショナーなり会長におなりになったか、意味がないわけでございます。  去年の審議会経緯が、最後に逆転をした、少しは風穴をあけようといったのが逆転をしたということも、それは、そういった皆さんの指導性が内部においてよく発揮されなかったうらみがあるのじゃないか。要するに、素人の判断が必要だ。ただ、両会長コミッショナーの存在がプロ球界の客観性を装うための隠れみのみたいなことになったのでは、大変りっぱな大先輩にお気の毒なことになるわけでございまして、ことしもまた改善すべき点は改善されるということでございますから、ぜひそうした面で指導性を発揮してくださいますようにお願いを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  96. 佐藤文生

    佐藤委員長 濱野清吾君。
  97. 濱野清吾

    ○濱野委員 二分間ばかり時間をかりて、下田さんにお伺いいたします。  もう同僚の質疑応答で大体は言い尽くしておりますが、あなたが同僚の、質問にお答えして、将来、球界の規則あるいは協約等に関して十分検討して改正をしたいと思う、こういう答弁ですから、私どもはそれで満足だと思います。  ただ一つ考えておきたいのは、下田さん、きのう若乃花と三重ノ海の勝負をごらんになりましたか。大関が横綱を倒した、あの勝負はごらんになりましたか。
  98. 下田武三

    下田参考人 拝見しませんでした。
  99. 濱野清吾

    ○濱野委員 多くの役員の諸君のうちでは、きっとごらんになったろうと思います。  私は、仮にプロ野球にしましても、ああいう形で競争させ、あるいは心身ともに練摩する、そういうことがスポーツである限りにおいては前提とならなければならない、こう考えておるわけです。  たとえば、高校の子供たちのあの野球におきましても、どろまみれになって真剣にスポーツ精神を発揮しておりますね。それならばこそ、むしろ全国的に沸いてくるのですね。世間では、あれがスポーツ精神だ、そこには邪心がない、こう言って国民は絶賛しているでしょう。相撲などもそうですね。大体は非常に若いうちから心身ともに鍛えられて、そしてとにかく勝負をしていく、それが日本精神にも合うし、精神統一、精神練摩、それがスポーツだと言われてきて今日まで育っているのですね。  ところが、このプロ野球の問題は、それとちょっと趣が違う。しかし、あれがスポーツだというならば、企業の利益追求にのみ走らせることはどうかと思うのです。それですから、ああいうふうに江川だとか、それから御案内のとおりの小林さんだとか、これをとるから、これをこうだというような問題が出てくると私は思うのです。その陰には、また、うわさによると金が飛んでいるというようなことまで出てくると思うのです。日本の政界のように——これは先ほどあなたは、不純であるというようなことはさせない、こうおっしゃったけれども、私は、相撲協会のような、ああいう方向皆様方の機関が協力して、そして日本プロ野球というものを生かしてもらいたい。ある球団の利益追求にのみ走って、そして変な取引をやらぬことが一番いいのじゃないか、それを阻止するのが皆様方のお力だと私ども考えているわけです。  私は、これはあなたが改正するとおっしゃるのだから答弁は要りませんけれども、あなたは外務省の局長から次官になり、アメリカ大使になって、最高裁の、とにかく判決を下す最高機関の立場におありになった人ですから、私はあなたを信じます。ですから、どうぞひとつ忌まわしいことがないように、そして本当にスポーツ、仮にそれがプロであっても、スポーツ精神というものが少なくとも八〇%やそこらなければ、企業の利益追求に左右されるようなことがあってはいけない。まさに、このたびの江川さん、それから小林さんですか、この実例がそうだと思うのです。  それから、もう一つお願いしておきたいことは、それを前提として規約や規則改正してもらいたい。あなたは先ほど、巨人の川上監督の、そういう者が幾ら集まってもいいんじゃないかという説を否定なさって、それでは興味がなくなってしまうじゃないか、たとえスポーツであっても興味がなくなるではないか、そこで、バランスをとる必要から調整する必要もあるじゃないか、こうおっしゃるが、私は、それはまずいと思うのですよ。何といってもスポーツなんですから。大相撲のように、これは精神を統一し、心を豊かにし、そして技術を学び、そこで勝負をするのですから、それがスポーツなんですから、企業の興味本位の、あるいは利益本位のもとにちょっと考えが及ぶと、あなたのおっしゃるように調整しなければならぬということになるだろうと思うのです。  私は、川上さんの考え方が一番正しいと思う。球団球団自分の利益を追求するというならば、どんどんりっぱな者を育てた方がいい、自然に任した方がいい。ちょうどいまの大相撲の各部屋が自分自身の手で、体格がどうだ、骨格がどうだ、精神はどうだということで、各親方衆が全国を歩いて若い人たちを選んでくるのでしょう。そして、成るか成らぬか、何も金を使ってはおりませんよ。これならば見込みがあるというわけで、何年か養って、あるいは関取にし、あるいはまた三役にしているのでしょう。  ですから、そういう方向でひとつ改正を願えるかどうか、これをぜひあなたからお聞きしたい。いかがですか。
  100. 下田武三

    下田参考人 濱野先生の御質問の前段につきましては、私、コミッショナーを引き受けました際に、伝統的な国技に相撲がありますが、外国から伝わったものでありますが、プロ野球というものを不朽の国技とするというところに、大きな意義と使命感を感じまして引き受けたもので、先生のおっしゃったとおりの心組みで進んでまいりたいと思います。  それから第二の点でございますが、当委員会で川上大監督が言ったように、強者はどんどん強くしていいのだ、一つ考え方でございます。現に野球協約の中に、行く行くは世界選手権をやる、つまり覇者たらんとする規約もあるわけでございますね。それはいいと思いますが、ただ、先ほど小林先生も御指摘になりましたように、現在のプロ野球というものは、やはり営利会社である十二の球団から成っておりまして、すでに営利事業である以上は、どうしても経済原則が入ってまいります。自然の経済原則というのは弱肉強食であって、しかも営利事業である以上、金に物を言わせようという現象が起こるのは、これは当然のことでございます。  でございますから、アマチュア野球界なら強者の理論、強い球団はどんどん強くなっていいじゃないか。現に長い間、早慶戦で早稲田が覇を唱え、あるいは慶応が覇を唱え、明治が覇を唱え、それで若い高校生、中学生は、自分は慶応に入って慶応の選手になって覇を唱えたいという希望に燃えたのでございますね。  私は、プロ野球はその点で学生野球や何かとやはり違うと思うのでございます。そこに経済原則が働き、金に物を言わせるという要素が入ってまいりますと、どうしてもこれは野放しにはできない面がある。野放しにした場合に非常な弊害が起こる。現に、その弊害をためるためにドラフト制度というようなものも生まれたわけでございまして、その点だけが濱野先生と多少違うわけでございます。しかし、強い野球をますます強くしていく必要ということは、私は、これは完全に——アメリカの野球がだんだん昔ほどではなくなってまいりました。アメリカンフットボール、最近ではサッカーが強敵となってきております。  日本プロ野球は、ファンの数もふえてどんどん隆盛に向かっております。願わくは、この日本プロ野球を何とか実力の面においても世界に冠たるものに仕上げていく。しかも経済原則の悪い面をためつつ、そういうように進むということが日本プロ野球の理想であると私は思います。ただ、理想はなかなか道遠くて、一挙にはそこに参らないと思いますが、私どもは、その理想に燃えて進むという気持ちを失いたくないと思っております。
  101. 濱野清吾

    ○濱野委員 第一段は賛成してくださったそうでありますが、第二段は、あなたと全く反対です。  営利企業、利益追求のためにスポーツマンシップの精神をおろそかにすることはできません。とかく一つ球団が常利追求のためにできるだけいい選手を育てよう、そうすることがもし彼らの営利につながるとするならば、その努力は、営利事業でなくても大相撲と同じような努力をすべきであると私は思うのですよ。あなたとは、それは全然反対なのです。私は川上さんに賛成なのです。どんどん自分の営利を、名を高めて、そして自分球団が勝った、また優勝したというようなことになれば、それは間接、直接に精神的にも影響があって、その会社なりその事業というものは利益が得られるはずです。これは自然の、原理です。  ですから、川上監督がおっしゃることは正しい。それで行くことが本当のスポーツ精神なんだ。そして、仮に営利事業がそれを経営するにしても、営利事業が損するものではない。私は経営者ですから、それはよくわかるのです。あなたは学者ですからわからないのです。私は、川上監督の言うとおりで、各球団が努力して、そうして大相撲の各部屋のように、適格者を選んでどんどん育てていけば、これは会社の利益につながってきましょう。あなたはどうも生の経済がわからぬようだ。こういうことは先輩の皆様方が御承知でありましょうから、これ以上は申し上げません。この点はあなたと反対でございます。
  102. 佐藤文生

    佐藤委員長 最後に、委員長からお願いと御意見を承りたいと思いますが、特に各委員から熱心な質問がございました。  そして、その応答の中で下田参考人は、現在のドラフト制度というものは完全ではない、よりよきものに柔軟な姿勢で改正していきたい、こういう貴重な御意見がございました。また工藤参考人からは、改善の道を模索中である、したがって今後、改善委員会あるいは実行委員会等を通じまして、現在の模索の中から問題点を引き出していきたい、こういう意味の意見が開陳されました。鈴木参考人からは、選手の意思は絶対無視をしない、そういう基本姿勢を貫きたいという貴重な意見がございました。  したがって、本委員会質疑応答をどのような方法で各指導者に報告をされ、連絡をされ、また改正の道があるとするならば作業に着手されるか、御意見を三人の参考人の方に最後にお聞きしまして終わりたいと思います。
  103. 下田武三

    下田参考人 ただいま委員長が要約してくださいました三点、非常に重要な点でございまして、私ども申し上げたとおりの心組みで進みたいと思います。  本日の委員会の模様は、幸いにして来週実行委員会もございますし、また、次いでオーナー会議もございますので、ぜひオーナー、実行委員会メンバーにお伝えして、今後の善処に向かってまいりたいと思います。ありがとうございました。
  104. 工藤信一良

    工藤参考人 私もコミッショナーと全く同意見でございまして、来るべき実行委員会並びにオーナー会議に逐一本日のやりとりは報告をして、改善すべきものは改善するように努力したいと思います。
  105. 鈴木龍二

    鈴木参考人 皆様の御意見をよく拝聴いたしました。  プロ野球も昔と違いまして、ことに最近においてはファンも非常にふえてきました。企業的にどうというのでなくふえてきました。したがって、われわれはプロ野球というものに対する社会的な意義を十分に味得いたしておりますから、皆さんの御意見等も参考といたしまして、この上ともに、プロ野球のあり方に対して妙な見方をされないように努力することをお約束いたしたいと思います。
  106. 佐藤文生

    佐藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  107. 佐藤文生

    佐藤委員長 引き続き、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 最初に、短い時間、入国管理局長に伺います。  私が受けました情報によりますと、世界基督教統一協会文鮮明氏が通過ビザで最近日本に入国するとの話を聞きました。これに関しまして、この統一協会の被雲者父母の会の全国の皆さんが非常に心配をいたしておるわけであります。本委員会で先般取り上げましたように、一昨々年ございましたか、数百組の合同成約式が埼玉県で行われ、そしていわゆる集団結婚が近く行われるのではないかという予測が一つあるからであります。  二つ目には、四月十六日のニューズウイークでは、韓国のソウルに統一大学が設置され、大学生が一万、院生が五千人、資金は年間二千万ドル、十年間、設立維持のために資金募集をするという話があるからであります。ごらんください。ここに「インチキ募金、押売りお断り」というチェッカーがあるわけでありますが、全国的にすでにいろいろとこの種の状況が起こっておりまして、その統一協会の若い人たちが全国で基金募集にかかる、そこでまたトラブルが起こるおそれがあるからであります。  第三番目に、世界日報の五月下旬のものによりますと、集団結婚を一九八一年、アメリカ・ニューヨーク・マジソンスクエアガーデンで世界から四千組の人を集めて行うというような記事があったという報告を受けております。すでに私のところへ父母のある人から、統一協会会員である子弟が黙って預金通帳をおろしたということを言ってまいりましたし、福島では大理石の坪売りが行われておる、こういう情報があるからであります。  したがいまして、端的に伺いますのは、文鮮明氏がここに入国をいたしますことは、昨年は入国管理局は拒否をされたそうでありますが、本年これを認められるということは、一体どういうことになるか、父母の会はきわめて心配をいたしておるわけであります。  つまり、私が質問をいたしたい趣旨は、承れば宗教活動はしないと理解したから入国を許した、昨年は朝鮮民主主義人民共和国の諸問題があって、政治的に問題があるからお断りをしたとおっしゃるのですけれども、宗教活動をしないと理解したというその理解は一体どういう根拠で行われて、これを許可したのか、また、それによってもし宗教活動をしたり、あるいはこの種のいま私が得ました情報によって、そのための準備活動ということになれば、全国的に募金活動、物売り活動が発展をする可能性、集団結婚で相当な問題に発展をする可能性がある、その端緒となる入国になるのではないかということを心配しておるわけでありますが、その入国を許可した理由並びにそれによって起こり得べき心配があるとすれば、それをどういうふうに除去されるおつもりであるか、伺いたいのであります。
  109. 小杉照夫

    ○小杉説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、文鮮明氏の入国許可申請の事実関係について御説明申し上げますが、同氏は、去る六月二十八日、ニューヨークの日本国総領事館に対しまして、入国目的を通過、予定滞在期間十日間ということで、査証申請を行ってまいりました。この申請に対しまして、査証発給の可否につきまして、外務省からわが法務省に協議がございまして、私どもの方でいろいろ審査をしたわけでございますが、その結果、単純な通過目的以外の活動は一切しないという旨の誓約計を徴した上で入国を認めようということにいたしまして、七月四日付で、査証発給に異存はないという旨を外務省に回答した経緯がございます。  ところが、その後ニューヨークの総領事館におきまして本人に対して誓約書の提出方を求めたわけでございますが、外務省からの連絡によりますると、本日現在、本人から誓約書の提出がいまだなされておらない、したがいまして査証は発給されていない、したがって、入国する可能性も現在のところはないというのが現状でございます。  さらに、当人から徴しようといたしました誓約書の内容でございますけれども、先ほど来先生から御指摘がございましたように、過去においていろいろ問題がございました経緯にかんがみまして、今回の査証発給に際しましては、統一神霊協会、原理運動、国際勝共連合関係のいかなる集合、会合にも出席しないこと、さらに、右団体の活動に関する声明であるとか談話の発表であるとか新聞記者会見というようなものもしないという旨の誓約書を入れるようにということを要求したわけでございます。  現在までのところ、この誓約書を提出することに先方が同意いたしておりませんので、現状においては、入国してくる見通しはないということに相なると思います。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。いまのその方針を堅持して、私が心配いたしましたようなことのないようにお願いをいたしたいと思います。どうぞお帰りください。  刑事局長にお伺いしたいことがございますが、航特があるそうでございますから、途中で御退席願っても、かわりの方にお願いします。  東本願寺の問題であります。先般、本委員会で少し取り上げたことがございますけれども、きょうは時間も余りありませんから、お聞きするよりも、問題点が整理されておりますから一応朗読をいたしまして、この事実関係に間違いがないかどうかを確かめます。  私が提起いたしますのは、真宗大谷派宗務所発行の「宗門問題について」であります。  前文を省略いたします。  一、管長職譲渡の開申と吹原氏等の介入    管長職は、戦後の宗憲で明らかに民意による公選制をとっております。ところが昭和四四年四月二四日、内局には何の相談もなく突如として管長職を新門に譲るから、 長男でございます。   新門に譲るから、その手続きを行うようとの趣旨の「開申」が出されたのであります。しかもこの開申の記者会見には吹原弘宜氏が同席していたと新聞が報じたのであります。なお、吹原弘宜氏は私設秘書としての立場だそうであります。   内局には何の話もなく、しかも宗門としては全く第三者的立場の吹原氏がかかる重大な宗政上の問題に介入していることは正に異常そのものであり、宗門の将来が深く気遣われたことであります。    なお、この年一二月に実施された宗議会議員総選挙では大谷家の猛列な選挙運動により、与党「直道会」は僅少差で過半数を失ない、この後四年間にわたり、いわゆる内事尊重「法主派」と称する人達が政権を担当することになったのであります。    また、前記の宗議会議員選挙の頃、児玉誉士夫氏が、東本願寺門跡顧問と称して一部宗議会議員に強圧的な内容の書翰を送り、そのため宗門人の間に急激に危機感がみなぎるのであります。  二、東山浄苑建設・白紙委任状    昭和四六年三月、三森内局が宗議会議員総会の席上、六条山浄苑建設工事の実状を公表、吹原氏等宗門第三者の宗政介入以来多くの宗門人が危惧していたことが事実となって現れたのであります。この事件も吹原氏及びその知人の六車武信氏の関係する事業であり、京都府知事の行政指導及び宗議会、門徒評議員会の中止決議も無視し、事業主体を本願寺から財団法人真宗大谷派本廟維持財団に移すことによって強行し、現在に至っていますが、当時の三森内局は、内事尊重、法主派を自他共に認める内局であります。その法主派たる三森内局にすら無断で、法主と共に浄苑建設の計画をした人達に白紙委任状を出すような無暴な行為をなぜしなければならなかったのか、正に常軌を逸した事件としか云いようがないのであります。当時既にこの行為に対し背任容疑の告発をすべきであると一部宗門人の間で論議されていましたが、法主、管長の翻意、反省を願う気持の方が強く、告発にはいたらなかったのであります。    さらに途中からこの事業を請負った伊藤万商事株式会社から八億円余の金が六車氏へ支払われたそうでありますが、この金員の明細については、今日にいたるも疑惑が残るのであります。そしてこの頃より、内事(大谷家)に多額の負債があるということが公然の噂となりだしたのであります。    因みに、現在の東山浄苑の事業内容を申しますと、予定の納骨壇の半分ぐらいしか売れず、この事業の受託会社伊藤万商事は、投資金のうち約四〇億円にのぼる資金の回収ができず、現存経営的に非常な苦境に立ちいたっております。    もし、経営主体が変更されることなく、本願寺の事業としてこれを行っていたら宗門は莫大な債務を負うことになっているのであり、慄然とするものを感ずるのであります。因みに、昭和五三年度の宗門の予算は、約三七億円であります。  三、宗教法人「本願寺」規則変更認証申請と嶺藤宗務総長の任命拒否    昭和四八年一二月一二日宗議会議員総選挙が実施されましたが、法主並びに大谷家の専横、殊に六条山浄苑建設にかかる白紙委任状の行為は、宗門人から強い非難を受け、この選挙は、いわゆる法主派といわれる人達の惨敗に終わるのであります。    このように政権の交替が確定するや、新しい宗務総長を選出する臨時宗議会の前日に当時の末広内局は、まるで火事場泥棒のようなやり方で、宗教法人「本願寺」規則の一部変更を行おうとするのであります。即ち、任期切れ直前の参与会の議決を経て、同規則の変更認証申請書を京都府庁へ提出したのであります。この変更の要点は、宗教法人「本願寺」の事務を決定する責任役員について、内局則ち宗務総長及び参務が責任役員に当るという規定等を変更し、法主並びにその取り巻きが自由に責任役員を選ぶことができるように規則を改めようというものであります。即ち、宗門の民意を全く無視し、法主並びに一握りの人達によって本願寺の運営を行おうという意図をもった変更であります。    この規則変更の内容がいかに無暴かつ法規上不当なものであるかは、同規則変更認証申請書が提出以来四年有余を経た今日、未だに府知事の認証が得られないことをもってみても明らかであります。    更に、前記総選挙後の特別議会(昭和四九年二月六日)で宗議会から嶺藤氏が宗務総長に指名され、それを直ちに任命しなければならぬ大谷管長は、嶺藤氏が自分の意に副わないという全く個人的な理由で、宗憲に基いて宗議会が選んだ宗務総長の任命を七〇日余も拒否しつづけ、そのために宗務行政は大混乱におちいり、一時は宗務所の事務の殆が停止するという事態を招いたのであります。     〔委員長退席、沖本委員長代理着席〕  四、本廟維持財団理事長職をめぐる争い    宗派から何時でも離脱できる可能性を含み、かつ、莫大な本願寺財産を法主並びに一部の取り巻きによって自由にできる内容の宗教法人「本願寺」規則の変更が、嶺藤宗務総長の同申請書取り下げによって実現不可能となると、次には財団法人真宗大谷派本廟維持財団の理事長の役職をめぐって熾烈な争奪が始るのであります。    昭和五〇年六月頃より、法主の大谷光暢氏と四男暢道氏は、理事長職にある大谷暢順氏(法主の次男)に対し、同財団理事長職を明け渡すように迫り、いわゆる「骨肉の争い」として新聞紙上を賑わせたのであります。    これほどまでに親子が対立せねばならないのは、宗政上の問題でもなければ暢順氏と教義上の問題があるわけでもなく、明らかに同財団に浄苑建設の永代管理金として入ってきた十六億円といわれる資産やその他の財産を目的とするものとしか考えられないのであります。今にして思えば、昭和四九年一一月に大谷暢道氏が、福田費氏から一億五千万円の借金をしておりますが、この債務返済のため同財団理事長の職を利用しようとしたものであることは、当時の状況から見ても想像に難くないのであります。 ここに言う福田費というのは福田前総理大臣のおいごさんですか……。  五、「大谷の里」事件、五億円の手形乱発    財団法人真宗大谷派本廟維持財団の理事就任が挫折を来すや、遂に翌年二月「大谷の里」事件の表面化となるのであります。「大谷の里」とは、滋賀県に老人及び青少年のための福祉施設の建設をめぐり、本願寺代表役員大谷光暢氏、大谷智子裏方及び大谷暢道氏の三人連名で、五億円の手形が乱発された事件であります。その後、笹川了平氏によって四億円の手形は回収されましたが、 この笹川了平氏は笹川良一氏の弟であります。額面五千万円の手形二枚が不渡りとなり、以後二人の債権者より厳重な手形金の請求がなされ、大切な宗宝である重要文化財の「御伝鉛」康永本、弘願本が差し押えられたり、本山飛地境内の枳殻邸や宗務所職員の役宅の土地建物の競売開始決定がなされるという事態を招いたのであります。    この一億円の手形債務は、昨年末九千万円でもって二人の債権者との間に話し合いが成立したと伝えられていますが、その債務の弁済金は、新たに枳殻邸譲渡担保の債務として依然として残っていることは明らかであり、借財の利息がふえこそすれ、なんら問題の解決になっていないことは明らかであります。    このように宗門の機関にはかることなく手形発行の行為がなされたことを重視した嶺藤内局は、緊急事態対策委員会に諮り、本願寺代表役員大谷光暢氏に対し、「宗門に無断で債務負担及び財産処分の行為をしてはならない」との仮処分命令の申請を京都地裁に求め、昭和五一年五月二五日同地裁より、前記仮処分命令が出されたのであります。  六、嶺藤内局の解任と管長代務者の設置    まさに虚業としかいいようのない「大谷の里」の手形による資金計画が失敗に終わると、法主及び側近の人達は、まるで自暴自棄としかいえないような行動に出られるのであります。    まず、四月一一日突如として宗憲、諸規則を無視し、民法によって嶺藤内局を解任したと通告されたのであります。しかし、宗円の議決機関である宗議会及び門徒評議員会は、このような大谷管長の専横独断を認めるはずもなく、むしろ大谷管長がその職務を自ら放棄したと認定し、嶺藤宗務総長を管長代務者に選出することになり、以来宗円では、いろんな民事訴訟があいついで起ってくるのであります。    次に五月二八日及び同三〇日には、先の京都地裁の「債務負担並びに処分禁止の仮処分」を無視し、本願寺町産である聖護院別邸(約千坪、時価五億円程度)、専修学院の寮(時価八千万円程度)を独断で所有権移転及び抵当権設定の処分行為を行ったのであります。さらに相ついで山科別院の隣接地及び宗務総長役宅も不当に処分し、このことが明るみに出ると、今まで耐えてきた宗門世論も一度に昂まり、また事件の背後関係の複雑さに手を焼いた内局は、遂に京都府警へ告発するの止むなきにいたったのであります。  七、大谷管長解任と新管長推戴    昭和五二年一二月、宗議会議員選挙が行われたが、その結果宗門世論は法主の行為をいよいよ非難し、嶺藤内局の支持は一層の昂りをみせたのであります。即ち、改選前の嶺藤内局支持の与党議員数四八名対野党議員数一七名の対比が、改選後は五〇名対一五名と変動したのであります。この数字は、宗議会議員六五名の四分の三を超えるもので、管長推戴条例に定める管長推戴の法定数に相当するものであります。    翌昭和五三年一月、宗議会議員総選挙後の特別議会が招集され、再び嶺藤亮氏が宗務総長に指名されたのでありますが、大谷管長は、この嶺藤内局の任命行為を拒否する態度に出られたのであります。    このような事態に対し、宗川の世論は急激に大谷管長を解任し、新管長推戴という声が宗門全体にみなぎり、遂に同年三月二六日大谷骨長解任並びに新管長推戴のための宗議会及び門徒評議員会が開催され、宗議会及び門徒評議員会ともに四分の三以上の出席の四分の三以上の多数で大谷管長の解任を議決し、新管長に竹内良恵氏を推戴したのであります。  八、本山本願寺の離脱声明と枳殻邸の不当処分    宗門人にとって大谷管長の解任は、まさに苦衷に満ちたものであったが、管長自身の反省を促すため、敢えて宗議会及び門徒評議員会は、この挙に踏みきったのであります。    しかし、これらの宗門人の正常化を願う切なる思いをよそに、法主・管長はいささかも反省の気配を示されず、遂に昭和五三年七月六日、京都府警は、先に告訴のあった事件について法主並びに大谷暢道氏を背任の容疑で京都地検に書類を送検いたしたのであります。    このような事態を宗門人は、暗港たる思いで受けとめていたところ、宗祖親鸞聖人の御正忌報恩講を目前にした二月六日、法主は記者会見をして、本山本願寺を宗派から離脱させる、即ち、「宗教法人本願寺は、宗教法人真宗大谷派との被包括関係を廃止する」という声明をされたのであります。これは、まさに晴天のへきれきともいうべきで、宗門人にとっては予想だにし得ないできごとであったのであります。    殊にその声明文の中に、「改革派の源流は、明治期の哲学者清沢満之であり、本願寺の伝統の教義・信仰とは全く異質のものであります。」と述べておられますが、あまりにも無茶なこじつけとしかいいようがありません。しかも、その声明の二日後には、既に一 〇月二四日付で、国が指定する名勝「渉成園」通称枳殻邸(本願寺飛地境内約一万坪)が、譲渡担保として所有権移転の手続きが密かに行われていたことが判明し、今度は多額な国庫補助まで受けて改修が成ったばかりの枳殻邸までもということで、みな唖然としたことであります。    いまにも京都地検の処分がなされようかとしているとき、またまた背任に相当する枳殻邸の不当処分をされるということは、いかにたくみに言葉を取繕ってみても、本山離脱の問題が教義や信仰によるものでなく、大谷家の借財によるものであることが明らかであります。  九は「宗門世論の動向」でありますが、これは省略をいたします。  いま読み上げましたのは、真宗大谷派宗務所発行の「宗門問題について」であります。もちろん、この人たちの主張が列挙されたのでありますから、大谷光暢法主を取り巻く人々の言い分がここに入っていないことは言うまでもありません。  私が本日文部省と刑事局においでを願いましたのは、この種の問題は新聞に本当にたくさん出ておるわけでありますが、結局昨年の七月に、京都府警がいま申し上げましたように京都地検に書類送検をした。背任の疑いがあるとして書類送検をしたものを、今日まで京都地検は一体どういう調査をし、どういう結果を得ておるかということが第一の質問であります。
  111. 根來泰周

    根來説明員 ただいま御指摘事件でございますけれども事件の告訴の順を追って申し上げますと二つの類型がございまして、一つは、昨年の七月六日に、京都府警察本部から京都地方検察庁に大谷光暢氏及び同人の四男である暢道氏を被告訴人といたしました事件が送付になっております。  その二番目でございますけれども、これは本年一月十三日に、大谷光暢氏ほか四名を被告訴人といたしました事件が京都府警本部から検察庁に送付になっております。  そういうことで、この二つの事件はお互いに関連いたします。また先生からただいま御指摘のありましたように、非常に深い背景がございますので、そういう背景を含めて慎重に捜査しておるところでございます。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 京都の人や一般の国民は、本件について、京都地検について非常に疑っておる。  端的に言いますれば、大谷家は皇室の流れをくんでおる。裏方大谷智子さんは皇后陛下の妹さんである。そういうことから京都地検、高検、最高検の間で、非常に政治的に問題を判断しようとしているのではないかという疑いがきわめて濃いのであります。  本件は決して秘密の問題ではない。あらゆる新聞や週刊誌が公然と取り上げて、どこへ行っても京都の付近だったら知らぬ人はない。そして京都府警が二年有余かかって調べ上げたものを京都地検で握りつぶしをしておるという傾向に対して、深い疑惑を持っておるわけであります。書類送検を受けて以来、どんなことをしましたか。
  113. 根來泰周

    根來説明員 お尋ねの件でございますけれども、京都地検といたしましては、そういういわゆる東本願寺内の内紛を背景といたしまして、こういう事件が発生いたしたという認識の上に立ちまして、そういう背景事実を含めまして、十分捜査をしておるところでありますが、その捜査が日時を要しておる事情と申しますれば、一言で言いますと、事案が複雑であるということでございます。  その事案が、どういう点が複雑であるか、あるいはどういう問題があるかということは、現在捜査中でございますので、ここで公言申し上げることは捜査の支障になるということで、詳しくは申し上げませんけれども、要するに、そういう背景事実あるいは先ほど御指摘にありました真宗大谷派から本願寺派が独立しようとしておること、そういうことが背任の事実関係にどういう影響があるかというようなこと、あるいは先ほど来御指摘のありましたいろいろの民事事件がございます。  そういう民事事件の帰趨等も含めまして、始終捜査しておるところでありまして、最近送付を受けました枳殻邸の事件は、ことしの一月十三日に送付を受けた事件でございまして、そんなに時間がかかっておるとは申し上げにくいわけでございますけれども、鋭意捜査しておるということでございます。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 納得できないのであります。あなた及び刑事局及び高検、地検、最高検は、この問題について相談をされたことがありますか。
  115. 根來泰周

    根來説明員 私どもの内部のことについてお尋ねでございますので、詳しくは申し上げませんけれども、法務省の方に対しても報告がございまして、また最高検あるいは高検、地検の間でも、いろいろ相談があるように聞いております。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 そのよって立つ基盤というものが、いま話があったように民事に関係があるから、宗門の内部に影響があるからということでちゅうちょされておるようでありますが、私自身も、いま宗門の内部の問題についてとやかく申そうとは思いません、ここは法務委員会ですからね。  少なくとも、どんなに内部の紛争があろうとも、法を犯してもらっては困る。違法なことが堂々と行われておっては困る。合法の土俵場で双方が争ってもらわなければ困る。違法が堂々と行われて、その取り締まりをするあなた方が、違法ではあるけれども内部の問題が絡み合っているからちゅうちょするというようなことでは困る。ましてや、皇室の一族だからいいかげんにしようと思ったのではいけませんぞ。  あなた方が審査をしなければならないこと、調査をしなければならないこと、起訴をしなければならないことは、違法なことが行われた限界において、適切に敏速に、外部の疑いを受けないように処理をしなければならぬという一点なんですが、その点はどうなんですか。
  117. 根來泰周

    根來説明員 先ほどの御説明がやや言葉足らずだったと思いますけれども、決して、宗門内部の問題とか被告訴人の身分とか、そういうことを考えて検察庁がちゅうちょしておるというわけではございません。  といいますのは、端的に言いますと、背任罪ということの成否につきまして、背任罪につきましてはいろいろ要件がございます。確かに表面的には、そういう本願寺の規則を破って、そういう財産処分をしたという事実は認められると思いますけれども、そのほかのいろいろの要件がございます。その要件を捜査するについてなお時間が要するということでございまして、検察庁といたしましては、告訴人とか被告訴人の間、どちらにくみするということではなくて、いわゆる厳正公平な立場で捜査をいたしておるのでございまして、その辺御了承願いたい、こういうふうに思うわけでございます。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 福田前内閣総理大臣のおい、福田朞が聖護院別邸を差し押さえておる。一億五千万円をだましとられた、自分が保証したけれども、それを払ってもらえぬから、自分は聖護院別邸を差し押さえた、この問題は事件にもなっておりませんか。
  119. 根來泰周

    根來説明員 聖護院別邸の事件につきましては、所有権の移転登記がなされたということで、背任ということで事件になっております。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 幡新守也氏、これはグアム島の横井庄一氏の奥さんの兄さんでありますが、御存じかと思いますが、金融業。明照院氏及び竹内氏に三千万円を融資して、ために聖護院別邸を買う、学生寮や宗務総長役宅の所有権を差し押さえておる。このことはどうですか。
  121. 根來泰周

    根來説明員 先ほど申し上げましたように、昨年八月十三日に京都府警から送付を受けた事件といいますのは、ただいま御指摘のありました修練舎の事件、聖護院別邸の事件、宗務総長役宅の事件、山科別院関係事件あるいは手形のいわゆる乱発と称せられている事件でございます。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 大谷暢道氏の参謀竹内克麿、この人が、巷間及び新聞その他で見られるところ、最も中心地帯にあると思われる。  そこで、その竹内氏の言い分によれば、これはもう大谷光暢氏を初め四男の暢道を含めてみんなでやったことだと言っておるのだそうでありますが、一方、法主御夫妻は、自分は十分知らなかったことである、これは四男やあるいは竹内克麿の問題ではないかという点については、調査はどうなっていますか。
  123. 根來泰周

    根來説明員 そういう事実も、背任罪の成否について重要な事実でございますので、京都地検では十分捜査をしていると聞いています。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 告発者及び大谷家の中枢について、地検は直接この言い分を聞かれたのですか。
  125. 根來泰周

    根來説明員 まことに申しわけないわけでございますが、現在捜査中でございますので、だれをいつ調べたかということについては答弁をお許しいただきたいと思いますけれども、そういういろいろの関係者についてはいままで聞いておる、しかしまだ不十分であるということで捜査が延びておるわけでございます。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 それでは聞きますけれども、いま私は、京都府民はもちろんですが、全国の一万の末寺の人たちから一番聞きたいことを率直に申すのです。  京都府警は処置をしてくれた。京都の地検や検察庁は何にもしてくれない。もうじき判断が出る、出ると思っておるのだが、何にもしてくれない。一体何しているのだろうか。サボって政治的な判断をしようとしているのではないか。あるいはうわさによれば、新門、御長男ですね、新門を中心にして本願寺の一つの和解があるかもしれないから、だからそれを持っているのではないか。その和解があれば、もうすべて書類送検を受けたものは帳消しにするのではないか。また逆に、それを検察庁が指導しているのではないか。あるいはまた、和解を進めておる人が、検察庁のそういう和解を望むという言い分を自分たちで勝手に解釈をして、和解を進めようとしているのではないか。風説まさに乱れ飛ぶ中に京都地検がおるわけであります。  だから、京都地検が遷延すればするほど、問題はさらに複雑になっていく。そういう矢面に京都地検はおるのですよ。去年の七月から約一年、何をして、一体どういう、いつごろ、その結果が出るのですか。結果はいつごろ京都地検としては結実しようとするのですか。その判断を示してください。
  127. 根來泰周

    根來説明員 すでに御理解を経ていると思いますけれども、私どもの方から、具体的な事件について、いつまでに処理しろというようなことは申し上げる立場ではございませんけれども、いろいろ本日御指摘のあった点につきましては、検察側にもよく伝えまして、できるだけ御要請に応ずるように現地に申し伝えるつもりでおります。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 きょうは大臣が御病気、刑事局長は航空機特別委員会に行かれて、あなた一人の答弁です。  しかし、あなたには、もう二回にわたって私の質問趣旨は話をしてあるのですから、いまさら知らぬ顔をして、きょうあった話は京都へ伝えて、なるべく意向に沿うようにするなんということは白々しいにもほどがある。京都の話はどうなんですか。あなたがこうせいと言わなくても、あなたが連絡をしたら、京都としては、いつごろまでに大体どういう目安でございますということを言っているに違いないと思うのです。あなたが聞かなかったら、あなたはどうかしていると思うのですよ。その点はどうなんですか。
  129. 根來泰周

    根來説明員 前に先生からそういう御指摘がありまして、これは事実上京都のほうにも伝えております。  京都地検の方は、まあこういうことは許されるかどうかは別といたしまして、捜査というのはなかなか思うように進まないわけでございます。いつまでにやるというお約束もなかなかいたしがたい問題でございますので、できるだけ早急に結論を出したい、こういうことは申し述べていることは事実でございます。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 文化庁にお伺いをいたしますが、法主の本願寺独立についての京都府庁に対する申請は、その後どういうふうに京都府庁は取り扱い、文部省はどういう指導をしていますか。
  131. 安藤幸男

    ○安藤説明員 お答え申し上げます。     〔沖本委員長代理退席、委員長着席〕  昭和五十四年の二月二十一日付をもちまして、本願寺代表役員大谷光暢から京都府知事に対しまして、宗教法人本願寺規則の変更認証申請が出てまいっております。  なお、この大谷光暢代表役員からは、昭和四十九年二月六日付をもちましても、別件の宗教法人本願寺規則変更の認証申請が出ておるわけでございます。この昭和四十九年の認証変更の申請につきましては、当時の宗務総長がこれを持ち帰ったり、それから、それにつきまして京都地裁で、それの所属をめぐって裁判が行われたりしたわけでございます。そういったいきさつがございまして、さきの認証申請につきましては、その宗教法人本願寺の意思が那辺にあるかということについて、京都府から申請者に対しまして照会が行われておったところでございます。  ところが、これについて何ら回答がないままに、このたび別の申請が出てまいってきたということでございますので、京都府といたしましては、二重の申請書が提出されたという状態になっておりまして、これについてどちらが正当な申請書であるのかということについて目下照会をいたしております。照会の中身は、そのほかにさらに法律に基づいて適正にこの規則変更の申請がなされておるのかどうか、たとえば宗教法人法第二十七条三号に基づく公告をしたのかどうかというようなことについて、申請書にそういった書類がございませんので、そういうことについて目下照会をいたしておるわけでございます。  なお、この件につきましては、京都府からこういう照会をいたしてもよいかということについて文化庁に協議がありましたので、そのことについて差し支えない旨の回答をいたしております。  以上でございます。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 京都府及び文化庁の公式な態度についてはわかりました。  問題は、一体京都府及び文化庁は、もちろん宗門の内部の問題ではあるけれども法律上の解釈、手続上の解釈で終始して、基本的な解決のために骨折る意思があるのかないのか伺いたい。
  133. 安藤幸男

    ○安藤説明員 御承知のとおり、宗教法人法は、あくまでも宗教団体の自主性、自律性を尊重してつくられておるわけでございます。  したがって、現在行われております真宗大谷派の内局と法主の双方の内紛と申しますか、このことについて直接文化庁が介入するというようなことは考えておりません。あくまでも自主的にこれが解決されることを願っておるわけでございます。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 それはあなたのお考えなのか、文部大臣にもよく御相談されての御返事なのか。  私が心配しておりますのは、先ほど列挙をいたしましたように、まず吹原弘宣、これは一時期で遮断されたようではありますが、吹原弘宣、笹川良一氏の弟の笹川良平氏、それから福田前総理のおいの福田朞、グアム鳥の横井庄一さんの奥さんの兄さんの幡新守也氏、それから松本明重氏、世界救世教外事対策委員長日本民主同志会書記長、巷説には宮本身分帳の陰の黒幕だと言われている人、それから児玉誉士夫氏、それから名前は申しませんけれども政界の少なからぬ与野党の人々、これらの人々が、善意、悪意は別としても、入り乱れておる。しかも、政界は別として、少なくとも民間の人、特に右翼の蠢動というものは、ますますこの東本願寺十年戦争を複雑ならしめておる。  そういうことについて、文化庁が形式的な宗教法人法の手続上の理論だけで一体いいのか悪いのか、文部大臣とよく御相談された上の答弁ですか。
  135. 安藤幸男

    ○安藤説明員 お答え申し上げます。  宗教法人法の第八十五条に解釈規定がございまして、「この法律のいかなる規定も、文部大臣、都道府県知事及び裁判所に対し、宗教団体における信仰、規律、慣習等宗教上の事項についていかなる形においても調停し、若しくは干渉する権限を与え、又は宗教上の役職員の任免その他の進退を勧告し、誘導し、若しくはこれに干渉する権限を与えるものと解釈してはならない。」こういう規定がございますので、この規定に基づいて、文部省は大谷派には介入しないという態度でおるわけでございます。これは文化庁の方針でございます。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。議事録に残るのだから、あなたの答弁が一応法律的にも正しいとしておきましょう。  しかしながら、この日本における宗教界で一番大きな歴史と伝統を持つ東本願寺、その東本願寺が悪質な人々のおもちゃにされ、そして国民の財産と言ってもいいと思われるこの東本願寺の財産が、まことに違法不当にも処分をされたり食い物になっておるという点から考えますと、少なくともあなたのおっしゃるように、宗教法人法の手続について適切な申請であるか、あるいはまた、その内容について瑕瑾はないかという審査をする上においても、一つの判断というものがあってしかるべきだと思うのですよ。わずかなことであるけれども、運用上の手続としてはどうあればいいかという判断があってしかるべきだと私は思うのであります。  しかし、一応あなたの趣旨は趣旨として、そうなりますと、少なくともいま国民が期待をいたしますのは、もう一度前へ戻りまして、刑事局の態度であり、京都地検の態度であります。京都地検が疑われておる。文部省は、法律にあるから仕方がないわという理論もないではない。けれども、京都地検は何をやっておるの、なぜあれさぼっておるの、皇室に気がねしてさぼっておるのか、それとも京都では坊主と学者と祇園には立ち向かえないから、京都地検はもう涙をのんでいるの、等々のうわさがいっぱいで、ロッキードからグラマン、ダグラスで株を上げた刑事局は、東本願寺の問題では全くくそみそに言われておるということをあなた知りませんか。  もっと鋭利な判断で、わしは内紛のことは知らぬけれども、違法なことをしてもらっては困る、背任横領はいかぬ、そういうことについて毅然たる態度をとらなければならないと思うのでありますが、きょうは時間がございませんので、この次には法務大臣、刑事局長においでを願って、一遍明白な御答弁を願いたい。この次の委員会は一カ月先だと思うから、一カ月の間にあなたから十分ひとつ京都地検を督励をして、そして私どもが納得のできる答弁をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  137. 根來泰周

    根來説明員 お言葉に逆らってまことに恐縮でございますけれども、京都地検は決して、そういうほかの外圧といいますか、そういうことに負けて捜査を怠っておるということではございません。了承をいただきたいと思います。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 世間はそう見る。私の質問に答えなければだめよ。
  139. 根來泰周

    根來説明員 御意見は京都地検の方に十分伝えます。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 次の法務委員会で、大臣並びに刑事局長から改めて詳細にお伺いいたしますが、よろしいですね、こう言っているのですよ。
  141. 根來泰周

    根來説明員 一カ月後まで十分調査するように京都地検に伝えておきます。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、本願寺の問題はその程度にいたしまして、一カ月先をひとつ期待をいたします。  次は、民事局の問題であります。  昭和四十一年五月十日、いまから十三年も前の話でありますが、私は、当法務委員会で名古屋市港区南陽町藤高新旧の土地について質問して、当時の新谷民事局長から次の答弁を得ました。私の質問でありますが、  ○横山委員 結論として、先ほど約八項目ばかり法務局として今後なすべき調査事項をあげられました。そうしますと今後はこういうことになるのでありますか、地方税法三百八十一条、地方自治法二百六十条の措置がなくとも、法務局は職権を持ってこれら数項目の調査を行ない、そして私有地であるか、それとも公海であるかという調査をみずから行なう、こういうわけでございますか。  ○新谷政府委員 そのとおりでございます。  ○横山委員 それは何法によって行なわれるわけですか。  ○新谷政府委員 不動産登記法によるわけでございます。 こういう答弁を得てから、かれこれ十三年たちました。十三年たった今日も、この議事録の作業が何にも行われてないということがわかったわけであります。  事は、法務局ではすでに御存じでございますが、この南陽町藤高新田の土地約十三万坪と推定をされるわけでございますが、当時の新谷政府委員によりますと、そこが森分、秋分の日に水面から上に土地が出ておれば、それは土地とみなす、それが水の中に沈んでおればそれは公海とみなす、こういう主たる判断でありました。  ところが、その当時も言っておるわけでありますが、その土地については、それでは早速実際に見てもらいたい、実地調査をしてもらいたいということになり、八項目にわたる新谷政府委員の約束がございましたにかかわらず、一たんはその雰囲気がございましたけれども、その後それがなくなって調査がなくなってしまいました。  当時、その十三万坪の上を名四国道が通過するに際して、中部地建は愛知県に命じて百数十万円でその名四国道に必要な土地を購入をいたしました。国の予算で県に買わせて、国が買ったのであるから法務局に登記をお願いいたしましたところ、法務局はそれを断りました。つまり、それは公海という立場をとったのでありましょう。  したがって、この間名四に関して中部地建の局長に私の調査要望をしておいた趣旨は、国が銭を出して買っておきながら、同じ国の法務局が国の所有ということの登記をがえんじない。よくまあそれで中部地建もまた県も黙っておるね、これはいまだれの土地になっておるのだろう、登記がしてないのだから、登記のしてない所有権のわからないところを国が銭を出しておいて、自動車をどんどん通らしておるということについて、一体中部地建はどうなさるおつもりでありますか、こういう調査の、要請をしておきました。  それから、同じことは県にも言えるわけであります。県は登記を断られて、そのまま知らぬ顔をして異議申請もしないとは一体何事ですかと言って、県にも数項目の調査要望をしておいたわけであります。  一方、その土地は、いまや県も市もまた港の管理組合も非常に期待をしておる土地でありまして、できるならばごみ捨て場に埋め立てて使いたい、あるいはまた、オリンピックがあるかもしれないから、港の発展上そこを計画の中へ入れたい等々の公共的な要望になっておる土地なんであります。  私は、この問題を十三年前どういう偶然で私が取り上げたか、すっかり忘れてしまっておったのですけれども、私の議事録を発見をした人が、このことについてあなたにも責任があるということでございますから、なるほどそうだったなと思い出しまして、いま一生懸命に地元各公共団体及び地主にもお目にかかりまして、私の立場としては、とにかくこれが公海であるのか個人の土地であるのか、極端に言うならばそのいずれでもよろしい、早くこの問題を解決をしないことには港の発展上もおかしいし、それから、国の費用で土地を買って、それが国の土地になっていないというばかげたことが十三年も続くとは何事であるかということなんであります。  一にかかって、これは十三年前新谷民事局長が答えたことが実践されていないところに原因がある。しかも先般名古屋の法務局長ともお会いしたのですし、あるいは中部地建の局長とも会ったのですが、少なくとも三万坪ぐらいは水面から土地が出ておるというのであります。そうだとすれば、民事局の立論を仮に是としたところで、これは個人の土地ではないか。また民事局の立論も、愛知県のトヨタの工場の埋め立てに絡まる紛争の中で国は敗訴をしておる、春分、秋分の口の理論は。国は控訴をしておるそうでありますが、少なくとも地裁の判決では、そういう判断は負けで、水の中に仮にあっても、その地主が管理をする能力があり、あるいは支配をする能力があるならば、個人の土地とみなすべきではないかという論理が地裁であったそうであります。  また、私が承知するところ、豊橋市付近で海岸が浸食されるので、海岸線に沿う個人の土地がだんだんなくなっていくということについて、愛知県は防潮堤なり何なりをつくって、結果として個人の土地を守っておるという施策をしておるとも聞いておるわけであります。放置するならば、そういう場合には個人の土地であったものが、だんだん自然の成り行きによって、天然自然によって公海に沈んでしまうし、あるいは天然自然でそれがどんどん陸地になっていくならば、自然に国は権原を放棄することにもなる。  だから、従来からとっておられる民事局の立論の趣旨というものは、変更する必要に迫られているのではないか。また、そうでなくとも、現実に南陽町におけるこの土地について、現実的な処置を民事局としてはなさるべきではないか。私がお勧めいたしまして、愛知県と中部地建と法務局三者の事務レベルで、法律的解釈、現実的解釈について二編協議をしてほしいと言いましたところ、それはやりましょうということになっておるわけであります。やりましょうについては、結局、一番中心になりますのは法務省民事局でありますから、民事局から、この種の問題についてこういう解決をすべきである、法律なり従来の解釈はこう考えられるべきであるという指導をなさるべき必要があるのではないか。  いろいろ申し上げましたが、民事局としては十分おわかりのことだと思いますから、ひとつ整理をしてきょうはお答えを願いたいと思います。
  143. 香川保一

    ○香川説明員 四十一年の当時の新谷民事局長がお約束しました項目につきましては、早速調査をしたわけでございます。いろいろの事情がわかってまいったわけでございますが、その調査の結果をもってしては、問題の解決の決め手が発見できなかったという結果になっておるわけでありまして、その後法務局におきまして、当時の資料等もいろいろ収集いたしまして、問題の土地がどういうふうになってきたかということを丹念に検討いたしております。  簡単に申し上げますと、御承知のとおり、昭和三十一年四月にこの地域について土地区画整理事業が行われておりまして換地処分の認可があるわけでございますが、その換地処分の明細書を見ますと、問題の千鳥の六百八十四番、六百八十五番、六百八十六番の三筆の土地は、恐らくは当時海面下に没しておったために区画整理事業の対象にはしなかったのではないかというふうにもうかがわれるのでございます。ただ、御指摘のありましたように、現在この南陽町の日光川との間の土手、堤の先に国道に沿いまして海面上に土一砂が集積した部分が相当広くあるわけでございます。この部分の土地が果たして従前から海面下に没していなかったのかどうか、没しておったけれども、この締め切り堤が国道のために設けられました結果、いわゆる寄洲的に新たに土砂が集積して、そういうものが生まれてきたのではないかという、いずれかということが問題になるわけでございます。  私ども一つのこの問題の解決は、名四国道をつくりましたときに、付近の土地の土砂を持ってきて、そして締め切り堤をつくったということはどうも確実のようでありまして、その結果、いままで海面上にあったものが土砂が掘られたために海面下に没したのであるといたしますと、これは国と県、当時の所有者との間で法律的に何らかの解決をしなければならぬ問題であるというふうにも考えるわけであります。  もう一つ、この締め切り堤をつくりましたときに、当時この部分が全部海面下に没しておったということでございますれば、公有水面埋立法との関係は一体どうなっておったのかということが、一つ疑問点としてあるわけでございまして、これも県の方に現在照会いたしておるわけでございますが、どうもはっきりしない点があるようでございます。  それで、県が国道をつくるために国の金で土地を買収したということで登記が出てまいった、そのときには、当時の管轄登記所は名古屋法務局の蟹江出張所でございますが、その当時の登記官の判断といたしましては、分筆登記が出てきたわけでございますが、その分筆登記の対象になっておる土地はすでに海面下に没しておる、したがって土地の滅失として扱うべきものであるから分筆登記はできない、こういうことで却下したようでございまして、その結果、県の方は買収した土地について移転登記ができなかった、こういう経緯なんでございます。  そういう、当時の登記官の認定も参考としていろいろ考えてみますと、やはりこの締め切り堤をつくった当時、少なくとも昭和三十六年当時は、問題の個所は、いわゆる春分、秋分の満潮時において海面に没しておる、そういうことで、従来私どもとっております、そういった海面に没した土地はもはや土地でなくなるのだという当時の見解は、それなりに十分うなずけるような感じがいたすわけであります。  いまお説の、海没した場合に土地が滅失したものとして考えるかどうかという、この理論の検討の問題でございますが、私どもは、名古屋地裁の判決が判示されるような、簡単に申しますれば、客観的に明確でない基準で土地がなくなったりできたりするということでは困る、やはり客観的な物差しでもって問題を判断しなければならないということから、従来からの考えどおり、春分、秋分の満潮時に海面下に没する土地は滅失として扱うという考え方は、現在のところは崩していないわけでございます。したがって、例の判決については現在控訴をいたしておるわけであります。  まあ理屈はそういうことといたしましても、お説のように、きわめて長期間問題が解決されないまま今日に至っておるわけでございますので、御指示のありましたような、関係当局が集まって善後策を早急に検討しようということで、ただいま、県それから建設省の出先機関と法務局におきまして、いろいろ資料を持ち寄って、法律的な面あるいはこの案件の具体的な、妥当な解決策というものを探し出すためにいろいろ協議をいたしておるところでございまして、私どもとしては、結局のところは、利害関係を持っておる国、県、それから民間の所有者、この間で何とか合理的な解決ができるように、円満に話し合いで解決するのが一番妥当ではないかというふうに現在考えておりまして、そういった線に沿って今後努力してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 もう時間が超過をしておりますから、きょうはこれだけにとどめたいと思いますが、いまお話しのように、利害関係者、国、県、地主の円満な話し合いを望むということに、私も同感の意を表します。  でき得るならば、またこれから十三年待つことのないように、関係当局の協議が調いましたら地主を呼んでいただいて、そしてできる限り円満な解決になるように、次の機会にまた報告を聞きたいと思います。
  145. 佐藤文生

    佐藤委員長 西宮弘君。
  146. 西宮弘

    ○西宮委員 実は、久方ぶりの法務委員会でありますから、いろいろお尋ねをしたいことがたくさんあるのでありますが、ただ残念ながら肝心の法務大臣が欠席だというので、非常にがっかりいたしました。ただし、病気だそうですからこれは何ともいたし方がありません。どうか関係局長その他で、これから私が申し上げることを十分大臣にも伝えて、十分検討してもらいたいということをまずもってお願いしておきたいと思います。  私がきょう質問に取り上げる問題の第一は、朝鮮半島における南北の再統一あるいは朝鮮民族の再統一といいますか、そういう問題について、まず最初に伺いたいと思います。  ちょうどたまたま、この間カーター大統領が訪韓をいたしまして、その後でいわゆる三者会談というような提案などが行われまして、それで改めて国民の関心を引いておる問題でありますから、このことを法務行政立場で伺うのでありますが、その前提として、外務省からもきょうはおいでを願っております。したがって、まず朝鮮民族の再統一という問題について自主的な、平和的な統一をしたいというのがその民族の願いでもあり、同時にまた、われわれも当然そうあるべきだと思うのでありますが、そういう自主的なあるいは平和的な統一ということを、私どもは大変望ましいことだというふうに考えておりますが、外務当局のそれに対する基本的な姿勢、つまりそういう平和統一が行われるということは大変望ましいかどうかというような点で、どういうふうに考えておられるか、お聞きをいたします。
  147. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、朝鮮半島が南北に分断して時久しいわけでございますけれども、この朝鮮半帰が平和的にかつ自主的に統一が達成される、これは朝鮮民族共通の悲願であることは間違いないことでございまして、当然私どもといたしましても、これは望ましいことであるというふうに考えております。
  148. 西宮弘

    ○西宮委員 実は、私はつい先ごろ、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北の方ですな、そこへ、短い時間でありましたけれども、行ってきたのであります。そして、いま局長の言われたとおりの感想を非常に強く持って帰ってきました。  つまり、この朝鮮半島における朝鮮民族の、再統一ということは、南北を通じて朝鮮民族の非常な強い熱望であるということをはだに感じて帰ってきたわけでありますが、歴史的な経過を少しばかり見てみると、私の理解では、あの三十八度線で分断をされて、それに対して戦争が終わった後に——戦争といいますか、日本が敗戦になりました後、一九四八年の四月十九日でありますが、そのときピョンヤンに、これは北の呼びかけで開かれたようでありますが、南からもイデオロギー的にはかなり右に傾いているというような政党の関係者その他も集まりまして、この日に会議が持たれている。  そこでは、統一した臨時政府をつくろう、あるいは米ソ両軍は撤退をすべきである、こういう決定がなされたようであります。それを受けてソ連は、その年末までに、十二月二十六日までに全部撤退を完了した。ところが逆に、アメリカの方は大量の軍隊がだんだん増強されてきた、こういうことになりまして、それから約二カ年たった六月二十五日に、例の三十八度線で軍事衝突が起こった、こういうことでありまして、私は、もしこのことなかりせば、完全にその時点で再統一が行われて、したがって今日のような悲劇はなかったというふうに考えるわけです。  そこで今回は、カーター大統領の訪問に関連をいたしまして、米韓両政府から三者会談の提案をした。それに対して北の方は拒否をしたというのが、きのうの新聞にも報道されておりますが、これに対して日本の政府はどういう見解をお持ちでしょうか。
  149. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 わが国の政府といたしましても、この南北間の統一が双方の自主的、平和的な努力によって速やかに達成されることが望ましいと考えていることは申し上げたとおりでございまして、そのためには、いろいろな条件が整わなければならないということも事実でございます。  特に、いまもちょっと御指摘がありましたような一九四五年以降の長い歴史を考えますと、そこにいろいろな複雑な経緯がございますので、一朝一夕に統一が実現するということについては、なかなかむずかしいと言わざるを得ないわけでございますが、私どもといたしましては、この統一が実現するためには、南北双方の当事者が率直な話し合いをするということがやはり基本ではないか。南、北それぞれに、この統一問題についてのいろいろな立場、主張、過去の経緯等がありますので、なかなかそれが一致しない要素がございますが、それにもかかわらず、そういう立場や従来の経緯を乗り越えて、双方の当事者が努力することによって早期の統一への道を開く、これが何よりも重要であろうと考えており、またそれに加えて、関係する国々、日本も含め中国、ソ連、さらにはアメリカというような国々が、それなりにその統一のために、あるいは南北対話の推進のために、国際環境づくりと通常申しておるようないろいろな努力を行う、それらが相まって目的がだんだん達成される方向に向かうということを期待し、日本といたしましても、いろいろな機会に努力は払ってきたつもりでございます。  そういう意味におきまして、先般のカーター大統領の訪韓に当たりまして、米国が韓国と話をした上で提唱いたしました三者会談というものは、朝鮮半島の緊張緩和、ひいては対話の促進、さらに統一という目標に向かって、もろもろの努力の一つのあらわれとして、一つの布石として、それが直ちに一挙に実を結ぶことは恐らくむずかしいにせよ、一つの重要な、また意義のある布石であったのではないかというふうに見て、それをそれなりに評価した次第でございます。  残念ながら、七月十日の北朝鮮側の声明によりまして、この提案は非常に非現実的である、道理に合わないという理由を挙げて、これには応じられないという態度を北朝鮮側が明らかにしたわけでございます。非常に残念でございますし、また同時に、朝鮮半島の南北の問題というもののむずかしさを改めて感じさせたのではないかと思うわけでございますが、ただ、この米側の提案に対する北朝鮮側の否定的な反応によって、この試みがすべて死んでしまったとは見ることもないのではないか、これは息の長い今後のいろいろな動きの一こまとしてとらえるべきであって、やがて、この米側提案どおり物事が真っすぐ進むかどうかは別としまして、いろいろな反対提案が出るとか、いろいろな打診が行われるとかいうようなこともまた期待し得るわけであって、そういう意味において今度の三者会談の構想は、それ自体は否定的な反応に会いましたけれども、しかし長期的に見て一つの意味のある提案ではなかったかと考える次第でございます。
  150. 西宮弘

    ○西宮委員 さっき申し上げたように、きわめて短い期間でありましたが、私は北へ行きまして、いろいろお話し合いをいたしました。したがって、そのときの私の感触からすると、恐らくこの間提案されたような三者会談という提案は受け入れないであろうと想像しておったのでありますが、結果はそのとおりになったわけであります。  と申しますのは、北の方の主張によれば、要するに、朝鮮戦争、朝鮮事変の終結のときの休戦協定の相手方は米国であった。今日でも、国連軍の司令官という名のもとに、米国軍の司令官が統帥権を握っているという状態、したがってアメリカを決して第三者とは見ておらないということ。そしてもう一つ一番大きな問題は、アメリカの意図がどこにあるのか。つまり、アメリカの意図は、朝鮮は一つであるというふうに考えるのか、あるいは二つの朝鮮を当然なものとして、いわば固定化していくのか、そういう点について一番強い問題意識を持っているように私は考えたわけです。  これは、日本政府のあなたにお尋ねをするのも無理かもしれませんけれども、その点はどうなんでしょうか、もしおわかりならば答えていただきたいと思うが、アメリカは、あくまでも一つの朝鮮を実現させるという意図のもとに、ああいう行動をとっておるのか。これは北の側で最大の関心事だというふうに私自身が理解をして帰ったので、そのことを私としては確かめたいと思うのだけれども日本政府からその答えができなければできないで結構ですが、お答えできるならばお願いいたします。
  151. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 御指摘のとおり、米国政府の政策について権威を持ってお答えできるかどうかは疑わしいわけでございますけれども、私どもが理解しておりますところでは、米国政府の考え方というのは、朝鮮半島の南北の両当事者が対話等を通じまして究極的には統一された朝鮮というものを達成することを支持するということには間違いないのではないかと思っております。  ただ、北朝鮮の方では、米国は二つの朝鮮をでっち上げる陰謀であるとかいうようなことをしばしば述べられておるわけで、たとえば国際連合に対する同時加盟の案とか、あるいはいわゆるクロス承認論というようなものは、これは、一つの朝鮮と口では言いながら、実は二つの朝鮮を固定化する陰謀ではないかということをしばしば指摘していることは御指摘のとおりでございますが、私どもの理解するところでは、かつこの点は日本政府も大体同じように考えているわけでございますけれども、やはり完全な統一というものには時間がかかる、過去にも、分裂国家が統一に向かっていろいろ努力した歴史的な事例もございまして、対話を通じ、さらに緊張緩和の状態を通じ、あるいは交流を深めるというようなことが進むことが、本当の統一への重要な道程であるというふうに考えますならば、その過渡的なこととして、まずは双方が国連という国際間の平和を維持するための重要な国際機関に入るということも、分断を固定化するのではなくて、統一という目標を達成するための過渡的に有意義な措置として考えていいのではないか、クロス承認というものもまた同じような考えでなかろうか。  そういう意味でこういうことが提唱されているのであるのだろうと思いますので、そういうことが提唱されているから、これは内心分断を永久化しようという意図であると見るのは、必ずしも当たらないのではないかというふうに感ずる次第でございます。
  152. 西宮弘

    ○西宮委員 確かに、国連への同時加盟とかクロス承認とかいうことには、かなり拒否反応を強く持っているようですね。  それは何といいましても、南の方では、あくまでも二分したままこの状態を継続させよう、これを固定化しようという意図が非常に強いというふうに、それが判断の基礎になっているということがありますから、したがって、同時加盟とかクロス承認とかいうことに対しては、かなり強い拒否反応を持っているというふうに私どもにも想像されます。  そしてまた、それが一つのプロセスだということで、それが一つのステップとして役に立つということであるならば、そういうことも考えられないことはないと思うのだけれども、全く独立した立場で同時に国連に加盟するということが、果たして究極的な願いである再統一に役立つかどうかということになると、私どももかなり疑問に思わざるを得ないので、これはそう容易にはいかない。  いま私が申し上げたことは、外務省などは全く御存じないと思いますが、そういうこともあるのか、ないのか。私どもの聞いた話では、たとえば三十八度線にさらにコンクリートの防壁をつくっているというような話もちょっと聞いたのですが、そういうことがもし現実に行われているとすればなおさらのこと、もう将来ともにこの国家は二つの国家で分裂したまま、あくまでもそれを永久化していくのだという意図のあらわれではないか、そういうふうに考えざるを得ないわけですが、そういう事実等については、外務省はあるともないともおわかりじゃないでしょうな。
  153. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 お説のとおり、韓国の国防の第一線のいろいろな措置でございますから、私どもも、うわさとしては、韓国としては北からの南進の危険にも備えなければならないのでいろいろ努力をしている、そのための防衛の態勢の整備というものは図っているという話は聞いておりますし、その一環として、いま御指摘のような措置が軍事上講ぜられているかどうか、うわさとしては聞いておりますけれども、別に確認というようなところには至っておりません。
  154. 西宮弘

    ○西宮委員 そういうことがあるとすれば、ますますお互いの不信感が強くなっていく、あるいは統一ができないということ、だんだんそういう状況が強くなっていくという点を私ども非常に心配せざるを得ないわけです。つまり、そういう状況下にあって同時加盟とかクロス承認とかいうことになると、どうしても警戒せざるを得ないということにならざるを得ないと思うのです。  大体、以上お聞きしたことを前提にして、法務省にお尋ねをしたいと思うのでありますが、先ほど外務省の局長が言われましたように、周囲の国々は、朝鮮民族が再統一できるような条件をつくるために、環境の整備のために、それぞれできる範囲で協力をするのが当然だ、こういうお答えがあったわけであります。  私は、きょう大飯がおらないので、まことに質問の仕方に困っておるのでありますが、とりあえず入国許可の問題、入国管理の問題について、法務省として、いままでもむろん許可した件数もたくさんありまするし、だんだんそういう件数がふえているのだろうと思いますけれども、特に問題になるのは、政治的な団体あるいはまた政治的な意図を持って入ってくる者に対しては、なかなか厳しいチェックが行われるわけですね。  その点について、私は、こういうふうにお互いに何とかして再統一をしようじゃないかというような空気が出てきて、また日本政府としても、そうなることが当然だ、ぜひそうあってほしいというふうに願っておるときならば、この北からの訪日というようなことも、従来とは違った考え方で対処をしてよろしいのではないかというふうに思うのだけれども、いかがですか。
  155. 小杉照夫

    ○小杉説明員 北朝鮮の方々の日本に対する入国の問題ということにつきましては、従前から、当委員会はもちろん、予算委員会あるいは外務委員会等で、再三にわたり私どもの現益の基本的な考え方というのを申し上げておるわけでございますが、現在のところ、北朝鮮とわが国との間に国交関係がないという現実を踏まえまして、親族訪問であるとかあるいは学術、文化、スポーツあるいは経済の交流というようなものを目的とするものについては、具体的な案件ごとに個別審査の上、わが国の国益准考慮して入国を認めるという政策をとってきたわけでございます。  現に、北朝鮮からの日本への入国者の数というものも、そう急激ではございませんが、年々ふえつつある。ただいま御指摘の点でございますけれども、私どもとして現在の時点で一般的に申し上げられることは、朝鮮半島をめぐる諸情勢の推移というものを十分に見きわめながら、それに対応して対処してまいりたい、こういうことに相なろうかと存じます。  私どもといたしまして、北朝鮮との関係でやはり何といっても一番大きいのは、あちらとの間に国交関係がないということでございまして、その点から発生するわけでございますが、北朝鮮の方々の入国問題それ自体が、非常にすぐれて外交政策上の問題というものに相なると考えておるわけでございます。わが国の朝鮮半島に対する基本的な外交政策というものに変化がない場合、ない限りと申しましょうか、入管だけが何か独自に先行して北朝鮮からの入国条件を緩和するというようなわけには、なかなかまいらないというのが現状ではなかろうかというふうに考えております。
  156. 西宮弘

    ○西宮委員 現在国交がない、したがって、これに対しては日本の外交政策がまず検討されねばならぬということ、そのとおりだと思いますね。したがって、きょうは外務省からもおいでを願って一緒にお尋ねをしているわけです。  私は、入国をさせるかさせないかというのは、いま局長の御答弁のとおり、個別に審査をして国益の立場から判断をする、これはいわゆる治安の問題とそれから国益の問題というのが二つの条件であることは私も承知をしております。まず治安の問題は論議する必要がないと思うのです。そういう心配はまずないと思う。日本の警察力が健在でありますから、そういう心配はないと思う。これは外国人が入る一般の場合ですね。  したがって、国益の問題にしぼられると思うのですが、今日まで私ども個別の問題で法務省といろいろお話し合いをしてみますと、日本の国策を批判する、それは困る、これが国益のときに一番出される問題なんですね。日本の政府の政策を批判されるというのは日本の国益に合わない、こういうことが言われるのだけれども、私は、日本の政策を批判されたところで、それで日本政府がつぶれてしまうわけじゃないので、そんなことではびくともしない日本だと思うのですね。だから、そういうことを恐れる必要もないし、またそういうことを口実にする必要も全くないと思う。  私は、だから、表向きのやりとりとしては、政府を批判されるから国益に背く、こういう答弁をいつももらうのでありますが、私はそれ以上に、言葉としてお話しにならないでしょうけれども、韓国との友好関係を損ねる、こういうことが国益に反するというふうに考えられるのじゃないか。これは、外務省でもあるいは法務省でも、そういう点を一番神経を使っているのじゃないか。しかし私は、こういうふうに統一の要請が強くなってくるということになれば、朝鮮半島が統一をするという方がはるかに重大な問題で、それは明らかにアジアの、平和、したがって日本の平和にかかわる問題でありますから、再統一をされるということの方が、韓国のごきげんを損ずるというようなことよりは、はるかに大事な問題だというふうに考えるわけです。  ですから、その意味で、国益の判断というものもそういう立場から判断をしてもらえば、そうむずかしい支障にはならないのじゃないかというふうに考えるのですが、もう一遍お答えください。
  157. 小杉照夫

    ○小杉説明員 だだいまの先生の御質問の御趣旨に必ずしも合致したお答えになるかどうか自信がないのでございますけれども、結局、出入国管理令上私どもしばしば持ち出しますのは、いわゆる利益公安条項というのがあるわけでございますが、利益というのは、このような場合は主として外交上の利益ということに相なろうかと思います。外交上の利益とは何かということについて、明確な定義が必ずしもあるわけではないのでありますけれども、わが国政府の政策を批判することはもちろん、わが国と友好関係にある国との関係ないしはその国の政策批判、それも含むというふうな、かなり広い概念でわれわれはとらえておるわけでございます。  しかしながら、先ほど来私ども申し上げておりますように、北朝鮮との間に現在国交関係がないということから、もっぱら外交上の配慮、外交上の必要性に応じて、私ども現在までのところ、政府の要人というような高度に政治的な色彩の強いと認められる事案については、一般論としてこれは認めないということをやってきておるわけでございまして、その根底にございますのは、やはり外交上の判断であろうというふうに考えておるわけでございます。
  158. 西宮弘

    ○西宮委員 その外交上の判断だということも、確かにそのとおりだと思います。  しかし、私が強調したいのは、大分空気が変わってきているという点なのですね。ですから、その変わってきている空気、つまり二つに別れている一つの民族が一つの民族として再統一したい、そういう願いが具体的にあらわれてきている。過去のことを言えば、いままで一つの民族が分断されておって、それが非常に深刻な悲劇を招いている、だから一日も早く一緒になりたい。  こういうようなことが現象面であらわれたのは、日本を舞台にした問題だけでも、例の六四年のオリンピックの際に辛金丹という選手が来て、オリンピックには参加しなかったけれども、帰るときにたった五分間父親に会えた、南にいる父親が日本へ来て会った。それで、その報道が伝わったときに韓国の人たちは大変な興奮をした。「金丹よ 金丹よ 叫ぶ父」「夢かまことか 天も泣き地も泣き叫ぶ」というような歌がソウルにはんらんをしたと当時の新聞記事であります。  あるいは七一年のプレオリンピックの際には、韓弼花という選手が北から参りまして、この選手が南にいる兄と国際電話で対談をした。その録音がソウルで放送されると、朝放送されたらば、どこの職場も遅刻者が続出するというほど、みんな放送にかじりついた。そしてぜひ昼間やれというので、また昼間同じ放送を繰り返して放送した。そうしたら、さらに夜も放送しろという注文が殺到して、ついに韓国政府はこれを禁止してしまった。  こういうのが、いわば日本を舞台にして起こった当時の非常に端的な現象であります。そういう願いが両方の民族の側には熾烈にあると思うのだけれども、それが人為的に阻まれているわけですね。それに対して、いま、どういう形かはともかくとして、アメリカなども腰を上げた、こういう状況ならば、私はやはり、それに即応して、そういう情勢をさらに高めていくという観点から、日本の国益を判断するということがあってよろしいと思うのであります。そうしなければならぬ、そうすべき筋合いのものだと思う。外務省からもお答えがあったら、後でぜひお願いしたいと思います。  ついでに、私ども今度参りまして聞かされたのは、一遍に統一ができないというのならば、とりあえず連邦制でいこう、高麗連邦ということにしていこうということでありましたが、これは決していま始まったことではないので、いわゆる連邦制を提唱したのは六〇年八月十五日、つまり解放十五周年記念というお祝いの際に、連邦制ということが提案をされたわけです。  それで、今度私ども参りましたときに、それについては、いわゆる連邦をつくるためには両政府の同数の代表者が出て執行機関を構成する。二番目には、非同盟中立というものを大方針にして、どこの国の衛星国にもならない。三番目には、南北二つの社会体制はそのまま存続を認める。四番目には、南に投下された外国の資本、外国の権益、主としてアメリカ、日本だと思いますが、外国の権益は保障する、こういう方針でいきたいのだということを言われたわけですね。私の知った範囲では、その最後の第四項目というのは新しい提案じゃないのかなと思いますけれども、いずれにしても、とにかくこの四提案を熱心に主張しておりました。  ですから、これらを踏まえて考えれば、恐らく連邦というようなことも決して空想ではないと考えます。むろん、いままで文字どおり全く氷炭相入れない、そういう主義主張のもとににらみ合ってきた二つの政権ですから、それがたとえ連邦制にしろ、ここまでこぎつけるというのは並み大抵の努力ではないと思いますけれども、いま申し上げた四つの条件、こういうことを前提にするならば、必ずしも不可能ではないという感じがするわけです。これは外務省からお答えいただきましょうか。
  159. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 初めに、情勢の変化に応じて対応もこれに応じた対応をしなければならないだろうという先ほどの御指摘は、御指摘のとおりでございましょう。  最近の一つの情勢といたしましては、東アジアにおけるもろもろの新しい展開、日中平和友好条約もそれでございますし、米中国交正常化という事態もそれでございます。そういう中で、韓国は韓国なりに、北朝鮮は北朝鮮なりに、そういう最近の東南アジアの諸情勢の展開というものを分析し、検討し、それぞれの立場から、朝鮮半島の将来はどういうふうにあるべきかということを模索し、また内部で種々の議論が行われているであろうことは察するに余りあるところでございます。  いま御引用がございました高麗連邦の提唱というのも、かねてより北朝鮮の提唱しているところでございます。従来は韓国の方にもいろいろ統一の提案がありまして、南北の不可侵協定を締結するとか、あるいは経済、文化、社会面の交流を積み上げていって、やがて南北の自由選挙を行うというような提案をした経緯もあるわけでございます。  そういうわけでございますから、今後のことにつきましては、双方もそれなりに最近の情勢の中で物を考えているわけでございまして、最初に私、御答弁申し上げましたとおり、やはりこれは基本的には、南北の双方の当事者が従来のいろいろな経緯の違いを乗り越えて話し合う機会を持つ、対話の機会を持つ、その対話の中から何か一歩一歩でも実りのあるものが出てくるということがございませんと、それぞれの主張にそれぞれがこだわっている限りは、なかなか進展がないというのが実情であろうかと思いますので、そういう意味で、やはり基調は南北双方のそういう努力ということに係るかと思います。  なお、御指摘のありましたように、関連の周辺の国は周辺の国なりに、そういう環境の熟するのに対するそれなりの貢献をするということも、またあわせて必要であろうというふうに考えております。
  160. 西宮弘

    ○西宮委員 これは最高人民会議という北の国家機関でありますが、日本で言う国会みたいなものでしょう。そこでの六二年の決議の中に、つまり、統合なりあるいは連邦なり、そういうものをつくったときに、南で共産主義を実現するかしないかは南の人民自身が決定すべきことであり、「祖国が統一されたのち、わが国にどのような社会制度をうちたてるかは朝鮮人民の総意によって決定される問題である」こういうふうに書かれているわけですね。  ですから、こういう考え方が掛け値なしにそのとおりの考えなのだということであれば、統一なり連邦なり、それはかなり可能性が高いというふうに考えることができると私は思う。そして、分裂した祖国を次の世代に引き渡すことはできないということを書いておりますのは、六七年の十大政綱という中にうたわれている言葉でありますけれども、恐らくこれは、何としてでも世代が交代しないうちに分裂した国家をもとの姿に戻したいという、まことに切実な願いだと思うのです。  いま局長も言われたように、南の方からもいろいろな提案がありました。私も大体は承知をいたしております。北からも今日まで百数十回に及んでいるというのです。その提案の中には、ときによっていろいろな動揺があって、たとえば南の政権は、いまの権力者は相手にできないというような気持ちが根底にあったというようなことが想像されるときもある。したがって、新しい民主勢力が台頭するというのに強く期待するというような考え方もありましょうし、あるいはまた、既成の政党では満足できないというような、もっと激しい考えを持った時代もあったように、私の知る限りでは、そういう経過はあるように思います。したがって、長い間の交渉ですからいろいろなことがありましょうけれども、私は、いま指摘をしたようなことを基本にしていくならば、きっとその統一は可能であるということを確信できると思うのであります。  ちょうど、たまたま私どもが行っております間に、六月の二十五日という日が——六月の二十五日というのは、御承知のように朝鮮戦争の勃発した記念日です。したがって、これはアメリカ軍を相手に戦ったわけでありますから、その六月二十五日というのは反米闘争の大集会が行われた日で、三十万という話でありましたが、それだけの大衆が集まって反米闘争についてのいろいろな演説その他が行われたわけです。  私は、そこで発表されたアピールを実は繰り返し読んでみたのであります。反米闘争の大集会なのでありまするけれども、あくまでもアメリカ軍の撤退を期待しているというのは非常に強く望んでおります。しかし、アメリカ軍を追い出すのだとか出ていけとか、そういう言葉などはもちろん一言もないし、そして、対話を通じてアメリカと話し合っていきたいというようなことが非常に明瞭に述べられているわけです。ですから、このアピール全体を通してみて、非常に柔軟なというか、とげとげしいそういう態度ではなしに、あくまでも話し合いを通じて、そして民主的に、平和的に統一をするのだ、こういう姿勢がきわめて明瞭にうたわれているように私は見ました。  したがって、もうそういう考え方がまず定着をしたのじゃないかというふうに私は思うのですね。アメリカといえども決して未来永劫われわれの敵ではないのだというようなことも述べておりましたし、いままでアメリカ憎しとばかり考えておったような、そういう考え方はいまではないのじゃないか。こういう三十万の人間を動員して開かれた大集会におけるアピールを見ても、アメリカとはあくまでも対話だということで、撤退こそは求めておりますけれども、力で排除しようというようなことなどは全然ないし、私は、この辺に、いままで考えられてきた、あるいは私が引き合いにしたような考え方が定着をしたのじゃないかというふうに思います。お答えがあれば、どっちからでも結構でございますが、一言お答えいただきたい。  それから、もう一つ外務省にお尋ねしたいのですが、この間カーター大統領は、政治犯の扱いについて改善しろというようなことを、三百三十八名のリストを韓国政府に示したというようなことを日本の新聞で見たわけですが、その中身は御承知かどうか。  そして、私が特に指摘をしたいのは、いわゆる在日韓国人の問題です。これは今日まで、私もこの委員会でしばしば人権の問題として在日韓国人の問題を指摘してまいりましたが、私は、アメリカの大統領が韓国に捕らわれておる政治犯について発言をするならば、ましていわんや日本政府は、在日韓国人についてはもっと積極的な姿勢を示していいのじゃないかということを痛感するので、そういう立場でお尋ねをしたわけです。  外務省の方で、この間のカーター大統領のとったことについて何かおわかりでしたら、聞かしてください。
  161. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 最初のお尋ねの、最近、六月二十五日のアピールにもあらわれているように、北の方の態度に柔軟性が見られるのじゃないかという御指摘でございます。  これは私どもも慎重に分析しております。かつて七二年に南北共同声明が出たときにも同じような判断があり、かつ、ある程度南北の対話が進展しましたけれども、またその後の情勢によってこれはとだえたということで、過去にもいろいろ起伏があったわけでございます。  先ほどもちょっと申しましたように、最近の東アジア情勢の展開に伴って、北側もいろいろな考慮から今後のとるべき方向について種々内部で論議もされ、あるいは模索もされているのではないかということでございますけれども、この一月から何回か開かれました南北対話におきましても、確かに南北双方とも従来よりはある程度弾力的な姿勢を持って応対したということは、事実として理解できるわけであります。それにもかかわらず、いまこれが停止してしまったのは残念でございますけれども、基本的には、いま先生の御指摘方向は、一つ可能性として私ども注目しているところでございます。  次に、お尋ねの政治犯の釈放の問題でございますが、カーター大統領が訪韓の際に、カーター・朴会談におきまして、一つの話題として人権問題を取り上げ、大統領の方も日ごろの考えを率直に披瀝し、それに対して朴大統領もまた朴大統領なりに、あるいは韓国政府の立場を述べ合って、後で発表されました共同声明にも、その双方の主張がまとめられて、若干併記されている形でありますけれども書いてあるわけです。  その後のバンス長官の記者会見によりましても、そのような経緯説明されております。このバンス国務長官が、その後たまたまバリ島の拡大ASEAN外相会議に来られて、園田外相と会談が開かれまして、その席でも、バンス長官から米韓会談の内容について説明がありました。大体コミュニケで私ども承知していた内容を裏づけるような御説明であったわけでございます。  その際米側からは、三百三十八名のいわゆる政治犯のリストを提示したという話が伝えられておるわけでございます。そのリストを渡すときに、正確にどのような物の言い方で渡されたかまでは承知しておりませんけれども、米国がこの問題について持っている深い関心を示す一環として、そのようなことが行われたのではないかと思います。  日本政府の姿勢という点のお尋ねでございますけれども、この問題はかねて国会でもしばしば御討議があったように記憶しておりますが、やはり二つの側面があろうかと思います。  一つは、これは韓国人に対する韓国当局の扱う問題であるということでございますので、日本政府あるいは外国政府が、公式にこれにどうこうというふうに介入することは適当でない部分があるという側面でございます。  もう一つの面は、やはり在日韓国人という特殊性、日本に生まれ、あるいは日本に親戚、友人があり、生活の本拠を持っている、その方の身の上に韓国において起こった出来事という意味において、普通の韓国国内における問題とは違うという側面であろうかと思います。  私どもは、その後者の方の側面に即しまして、従来からいろいろ関係者からお話を伺ったり、その他の情報に基づきまして、言い方、扱い方には十分の配慮はいたしてはおりますけれども、私どもとしては、この問題についての日本側の関心というものは常時先方に伝えてまいっておるつもりでございまして、決して、日本政府がこの面において、この問題を軽んじておるということはないつもりでございます。
  162. 西宮弘

    ○西宮委員 いわゆる韓国の内政にかかわる問題について、日本つまり外国がいろいろかれこれ言うということは、内政干渉にわたるという点はわれわれもわかります。  しかし、アメリカの大統領が韓国で起こっている問題についてああいう積極的な発言をしているというならば、ましていわんや、日本に住んでおった、あるいは日本の市民として今日まで生きてきた人たちが、たまたま韓国に帰って政治犯としてつかまってしまった、これが現在でも六十名くらいあるわけでして、そのうち六名は死刑が確定している。こういう人に対して、日本政府はもっと積極的に何らかの態度を明らかにすべきだということを私は繰り返し言ってきたのですが、いま外務省の局長からああいう御答弁がありましたから、私は、ぜひそのことをさらに強く推進をしてもらいたい、そういう希望意見を強く述べて、今後のお扱いを見守っていきたいと思います。  大変時間がなくなってしまいましたので、この問題はこの程度にいたします。  あと、残っておりますわずかの時間で、全く別の問題をお尋ねをしたいのですが、訟務局に一言簡単にお尋ねをしたいことは、スモンの問題について、ああいうせっかくの判決が出たのを、全部またそれを控訴して争う、こういうことになっておるわけですね。国が控訴をするというのは、どう考えてみても、まことに残酷なんですね。あんなに疲れ果てた被害者、それがやっと救われる曙光が見えた。そうすると、途端に国がさらにそれに反発をして控訴をするということは、何という残酷なことであろうか、これは恐らく国民全般もそういう感じじゃないかと思います。  どうしてあれをやめることができないのですか。無論、法務省だけの問題ではないことはわかっていますが、しかし、少なくとも形式的には法務大臣の名において行われるのですから、答えてください。
  163. 蓑田速夫

    蓑田説明員 私ども、訟務を担当しております者といたしましても、スモンの被害に苦しむ患者さん方が一日も早く償いあるいは救済を受けて、しかも、訴訟という煩いから解放されることを願っているわけでございます。  すでに、およそ千六百名の原告の患者さん方との間に和解が成立いたしましたこと、それから、情勢の変化で多少つまずきがございますけれども、さらにスモン訴訟の全面的な解決に向けて動き出す機運が現在なお進行中であるということは、私どもとしても救いを感じているところでございます。  ただ、私ども法律的な事務を担当しておりますので、考え方というものはやはり法律的な対応ということを出られない面がございます。そういう面から見ますと、今回の京都の判決を含めました六次の地方裁判所の判決には、いずれもその内容に国として直ちに承服しがたい点がございますし、また判決理由の中には、今後の行政の指針を定める上においても重大な意味を持つ判断が示されておりますので、関係省庁とも十分協議いたしました上、上級審の判断を受けるのが相当だというふうに判断して控訴したわけでございます。  訟務の立場としては、以上のようにお答えするほかないわけでございます。
  164. 西宮弘

    ○西宮委員 第一、和解も相当に進んでいるという話だったけれども、一方において和解がどんどん進行しながら、さらに法律的に争うということも何となく矛盾を感ずるし、あるいはそれじゃ和解を進行させるためにも片方は訴訟で争う、そういう態度を示しておいた方が和解はしやすい、そういう観点からやっているわけですか。なるべく短くお答えください、時間もないですから。
  165. 蓑田速夫

    蓑田説明員 私どもは、和解を成立させるための圧力として控訴という手段を使うというような気持ちは毛頭ございません。
  166. 西宮弘

    ○西宮委員 恐らく答弁としてはそういう答弁だろうと思うのだけれども、しかし、具体的に現実に和解は進行さしている、一方においてまた裁判で争うというのはまことに矛盾したやり方だし、第一私は、いままでの判決の内容に不服な点があるというお話だけれども、これは被害者の立場からいったらもちろんだけれども、一般国民が、製薬会社は悪かった、したがって同時にそれを監督する側にも責任があったのだ、こういう判断は、これはもう国民の常識としてそうだと思う。  つまり、ああいう判決が出たことに国民は拍手喝采していると思うのですよ。そのときに法務大臣がまた上訴して、したがって、また長い間あの苦労を続けさせるということには、国民としてはもうがまんできない怒りを感じていると思うのですよ。  そのときに、訟務局としては法律的な対応だけしかできないのだというお話だけれども、その条文にあるいは多少そういう点があるのかもしらないが、少なくとも法務大臣という人の立場から考えたら、あんなことはできないのじゃないか、あるいは、やったいままでの訴訟は取り下げるというくらいのことをやって当然じゃないかと思うのだけれども、その意思があるかないか、一言だけ聞いて、この問題は終わりにいたします。
  167. 蓑田速夫

    蓑田説明員 この事件法律的な責任の問題につきましては、行政上あるいは政治上の責任があるということは、これは当然国の側として認めて、訴訟上の対応もしてきておるわけでございます。  ただ、それが不法行為責任であるのかどうかという点につきましては、やはりはっきりした裁判所の御判断を得たいというのが、現在までのところの私どもを含めました関係者の一致した方針でございますので、そのように御了承願いたいと存じます。
  168. 西宮弘

    ○西宮委員 これ以上議論しても仕方がありませんから、今度大臣が出られたときに、大臣にもう  一遍お尋ねをしたいと思います。  次に、残っている時間がわずか三分ばかりでありますが、この間の東京高検の遠藤安夫、現職の検事がいわゆる裏口入学の問題に関連をして多額の金銭を受領したという問題が問題になったわけですけれども、長い時間議論する時間がありませんから、一つだけ言いたいのは、依願免官というのは、国民の常識からすると考えられないのじゃないか。当然もう少し厳重な懲戒措置がとられるべきだと考えるのだが、その点どうですか。
  169. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お尋ねの点については、いろいろ御意見、御批判を承っております。法務当局といたしましては、十分これらの御意見についても耳を傾けているところでございますけれども、この遠藤元検事につきましての辞職を承認いたしました件について御説明いたします。  本人より、書面で辞職願が六月十九日に提出されました。この点について本人に釈明を求めましたところ、斎藤に係る東京ゼミナールの事件との関係で検察庁に迷惑をかけるので、自分は検事をやめさせてもらいたいという趣旨の申し出があったわけでございます。  そこで検察庁といたしましては、同事件との関連性の程度、有無等につきまして十分慎重に調査をいたしたわけでございます。その調査した結果判明いたしましたことは、いわゆる懲戒免職に当たるような処分をすべき事由までは認められない、すなわち斎藤に係る、斎藤の疑いを持たれておりますいわゆる詐欺事件等の共犯とか幇助とか、そういう犯罪行為に加功しているような状況は認められない。もちろん、だからといって、そのなしたことについてはいろいろ非難、批判さるべき点があると思いますけれども、それとは別に、そういう事実までは認められないということが判明いたしましたので、本人の辞職願を速やかに承認するのが妥当であるという結論を得まして、辞職承認をするに至ったわけであります。
  170. 西宮弘

    ○西宮委員 新聞にもそういう説明は出ていましたね。しかし、恐らくそういう願い出が本人から出てきて、それでまだあの時点では世間はだれも知らなかったわけです。したがって、とにかく依願免官でその籍を排除しようということだったのではないかと思う。  それが後で朝日新聞で、これは当時は匿名でありましたけれども、朝日がすっぱ抜いたというようなことで、今度は実名で報道されるというような結果になってきたのだけれども、それで、しかもそれが単に金をもらったというだけでなしに、いわゆる愛人に対する手切れ金だとか、あるいは娘の留学の経費を出させるとか、ずいぶんどうかと思うようなことがあるわけです。特にそれでずいぶん豪遊をきわめて、しばしばそういうところに出入りしておる。出入りをしておる間に、そういう愛人関係ができた。したがって、それに手切れ金を出さなくちゃならぬ。これもずいぶん値切りに値切って、ああいう金額に落ちついたというようなことが新聞に報道されているのですが、そういうことが暴露された今日から見ると、私は、単なる依願免官であっさりやめさせてしまうというような筋合いのものじゃないのじゃないかというふうに思うのだけれども、しかし、これ以上それについてのお尋ねはいたしません、どうせ同じことを繰り返すでしょうから。私は、そういう意味で検察官の倫理観というのをもう少し、国益の代表ならば検察官の倫理観というのが強調されてしかるべきだと思う。  これは、実は時間がありませんから別な機会に、この問題はその問題自体として、その検察官問題とは無関係に別な問題を取り上げていきたいのでありますが、それはいわゆる金の取引、これが非常にブラックマーケットで取引をされて、被害が続出をしているというような問題等があるわけです。  われわれは、しばしばネズミ講の問題あるいはマルチ商法の問題を国会で論議をしてきましたけれども、ちょうどそのネズミとマルチを一緒にしたようなやり方で、善良な市民を大変に苦しめているというような事例があって、私のところにも直接間接かなりたくさんの投書が来ている。百通ぐらい来ているのです。それらを見ると、全く気の毒だと思うのだけれども、それに、やめた検察官ですけれども、吉井文夫という元検事ですが、この人が顧問弁護士としてついておって、検察歴十一年と称して指導をしているわけです。あるいはそういう宣伝文書等にしばしば名前が出てくる。  この人はやめた人ですから、いまの法務省から権限は全く及ばないと私は思いますけれども、長い間公益の代表としてそういう立場にあった人ならば、やめた後も、かつての職責を考えて善良な市民に迷惑をかけるような仕事に参加しないようにしてもらいたいということを願うわけです。  たとえばロッキード問題などが出ても、検察官が非常な苦労をしてあそこまで持ち込んできた。そうすると、直ちに検察官の大先輩が今度は被告の方の弁護に回る。これなどは弁護士ですから何をやっても御自由ですけれども、われわれの一般市民感情としては、検察官の大先輩、大元老が挙げて被告人の弁護に回るということにも、何となく割り切れない気持ちがするわけです。ましていわんや、さっき申し上げたようなことで善良な市民に迷惑をかけている、そういうネズミ講みたいなことに顧問としてかかわっているということは非常に残念に思うのですけれども、この間の遠藤元検事の事件があった機会に、どうか検察官の倫理観というものをもう一遍見直していただきたいという希望だけ申し上げて終わりにします。
  171. 佐藤文生

    佐藤委員長 これにて散会いたします。     午後三時二分散会