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1979-05-23 第87回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十三日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 佐藤 文生君    理事 青木 正久君 理事 鳩山 邦夫君    理事 山崎武三郎君 理事 西宮  弘君    理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君       稻葉  修君    田中伊三次君       福永 健司君    村山 達雄君       稲葉 誠一君    下平 正一君       武藤 山治君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    正森 成二君       小林 正巳君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         法 務 大 臣 古井 喜實君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         法務大臣官房長 前田  宏君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         国税庁調査査察         部長      西野 襄一君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   加藤  晶君         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         最高裁判所事務         総局行政局長  西山 俊彦君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 佐藤文生

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所西山行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤文生

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 佐藤文生

    佐藤委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
  5. 西宮弘

    西宮委員 私は、例の航空機汚職問題に関連をして、若干お尋ねしたいと思うのです。  まず冒頭に、この前五月九日でありましたか、あのとき私が質問をしたのに対して、伊藤刑事局長答弁の中で次のように言っておられるので、ちょっとそこを朗読してみます。  今回の事件と申しますのは、昨年暮れからのSECの最初の資料の公表から端を発しまして、非常に国民注目を引きあるいは関心を呼んでおる、いわゆる疑惑と言われる諸問題でございます。   さて、一応の捜査終結しあるいは終結に近づきました場合に、国民に対する関係で、これらの諸問題に対して検察がどんな感触を得ておるのかというようなことをお話しするのが相当ではないかという声も一部にあるわけでございます。   それらの点も踏まえまして、もうこの十五日、海部氏の勾留満期のころまでには、検察国民に対する何らかの対応ぶりについての考え方もまとめなければならない、かように考えておるわけでございます。これがそのときの御答弁の一節であります。  これだけの御答弁の中で、今回のこの問題は「非常に国民注目を引きあるいは関心を呼んでおる、いわゆる疑惑」だ、あるいは「国民に対する関係で、これらの諸問題に対して」云々、そしてまた「国民に対する何らかの対応ぶりについての考え方もまとめなければならない、」こういうふうに言っておられるわけですね。国民関心国民立場ということを三回も述べておるわけですよ。国民立場に対して非常に配慮をしているという点については、私もこの御答弁を大変評価している。その点は私は大変結構だと思うのでありますけれども、さて、そういう意味で、十五日の発表を刮目して待っておったわけであります。  ところが、あのときに発表された発表内容では、局長が言われるような国民に対する配慮という点について、決して十分ではないというふうに私は考えるわけです。とても国民があれで満足をした、あるいは納得をした、そういう状況でないことは明らかだと思うのであります。  それで私は、あのときの発表国民がなおかつ疑問を持っておる、あるいは納得しかねているというような点について、もっぱらお尋ねをしたいと思いますので、どうか、あなたが言われましたように、非常に国民注目を引きあるいは関心を呼んでおる問題、こういう立場を踏まえて、ぜひ国民納得が得られるような回答をしていただきたいというふうに、まずもってお願いしておきたいと思います。  第一にお尋ねをしたいのは、日商岩井から贈った金、そして同時に、それが単数政治家が受け取った金、こういうことでありますが、これについては金額その他、その他というのは何回にも分けて贈ったりもらったりしておるわけでありますが、そういったような点等も含めて、この点については両者の言い分食い違いはないのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  6. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、私、この問題につきましては、刑事訴訟法精神等が許す範囲において、なるべく国民の前に御説明を申し上げる態度がいいのではないかと思っておったわけでございまして、検察当局もある程度発表をしたようでございます。しかしながら、さらに国民を代表されます国会が国政調査権に基づいていろいろ今後お尋ねになるといたしますれば、もう少し踏み込んで言える範囲のぎりぎりのところまで御説明申し上げたいと思っております。ただ、それで御満足いただけるかどうか、私も自信がございませんが、誠意を持ってお答えをしたいと思っておるわけでございます。  そこで、ただいまのお尋ねは、捜査終結に当たりまして検察当局発表いたしました中のRF4Eのいわゆる事務所経費と言われますものの性格に関することであろうと思います。  RF4Eのいわゆる事務所経費と言われました二百三十八万ドル、この金は、一つには、これよりさき航空機売り込み工作のために相当額資金を要しておりまして、これを粉飾経理の形で支出をしておった、その穴埋めに充てるためにという目的一つと、それから、そんなに多額裏口銭のようなものをもらっておることを防衛庁に知られたくないという理由と、二つの理由から名目を変えて経理に計上した、こういうことでございます。  さて、そのRF4E事務所経費が入ってくるのに先立って、航空機売り込み工作のために資金を要した中身でございますが、この中身は、ただいまの御質問の中にもすでに御指摘がございましたように、昭和四十二年から四十六年にかけまして単数政治家に渡されたと認められる、そういう資金でございまして、金額はおおむね五億円というふうに認められます。回数も十数回に及んでおるようでございます。  ただ御質問最後に、お互い言い分について食い違いがないかというお尋ねがございましたけれども、この点になりますと、具体的な各人の供述の問題になりますので、この点は御容赦いただきたいと思っております。
  7. 西宮弘

    西宮委員 いまの御答弁は主として金の性格ですね、そういう点についてお答えがあったわけですけれども、私はまず第一に確認をしておきたいと思うのは、もらった方、贈った方、その両方について、金額については少なくとも大きな違いはない、こういうふうにまずその点を明確にしておきたいと思うのですが、もう一遍その点を答えてください。
  8. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 お互いに受取を交わすようなお金ではなかったように思われますので、それと古いことでございますから、多少金額認識についてのそごはお互いにあり得るような、そういう事情のものでございますけれども大筋においては間違いないと思います。
  9. 西宮弘

    西宮委員 それじゃ第一点は、細部についてはともかくとして、大筋については金額についても間違いがない、両方言い分食い違いはない、そういうことを確認ができたわけであります。  第二は、金の性格の問題ですが、これはいま局長F4Eファントム売り込みに関連してと、こういうことで、その金を支弁した方、つまり二百三十八万ドルですか、あの事務所経費の中でやりくりをして前に使った金の穴埋めをした、こういう大変回りくどいやり方をしておるわけだけれども、しかしその金は、いずれにしても目的は、その贈った方の側ではあくまでも航空機売り込みに関連してそれを成功させよう、そういう目的のために支出をした金だ、こういうことは間違いがないわけですね。
  10. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 最初にお断りいたしておきますけれども、結局、先ほど申し上げました政治家の方につきまして刑事訴追をいたしませんでした。することができなかったわけでございます。したがいまして、裁判上確定するような厳密な証拠の積み重ねというものは必ずしも遂げていない面があるわけでございます。  そのことをまず御理解いただきたいと思いますが、私どもの見るところでは、その相当額お金当該方面に流されました趣旨は、会社側としては、F4ファントム売り込み工作あるいはその売り込み工作が成功したということに関連して渡されたものというふうに認めております。
  11. 西宮弘

    西宮委員 大体その答弁で、会社側がどういう性格の金として理解をしているか一認識をしているかということは明らかになったので、その点はそれでよろしいと思いますが、ただ、いま一方の政治家について刑事訴追ができないから、したがってその調査も必ずしも十分な積み上げにはなっておらぬというお答えでしたけれども、少なくとも金を支出した方、そっちの方は刑事訴追を受けているわけですから、これは綿密な調査が行われているに違いないというので、私はそういう立場質問するのですが、それでは受けた方の側、いわゆる単数政治家と言われる、こちらの方ではもっぱら政治献金だ、こういうふうに言っているわけですが、その点について、どうかというお尋ねをすると、いまのように、これは刑事訴追の対象ではないのだから、そこまでわれわれは究明しておらない、そういう返事をされるかもしれませんけれども捜査側検察側認識というか理解というか、ないしは感触でも結構ですけれども、そういう立場では、これを単なる政治献金というふうに見ておられますか、どうですか。
  12. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 政治献金というものが全く無色透明、無味無臭のものでなければならないかという問題は一つありますけれども、私どもの一応の認定といたしましては、先ほど申し上げましたように、F4ファントム工作関係である。常識的に言いましても、数億という金を出すからには、一応それなりの理由がなければならないわけでございましてそういう意味から、先ほどお答えしたように認めておるわけでございます。
  13. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、その点については出した方の側の日商岩井の方でF4Eファントム売り込みについて、それを成功させるあるいはまた成功したことに対する、そのために支弁した金だと言っておるということを前に局長答弁をされて、私が、さてそれではその受け取った側はもっぱら政治献金だということを言っておるけれども、それはどうかということに対して、もう一遍——贈った方のそういう考え方、それを認めながら、常識的にもそうだろうというふうに言われたので、私はこれ以上追及するつもりはありません。  いま局長も、あんな大金を単なる純然たる無色透明の金として出すというようなことは、常識的にも考えられないわけですね。もしそれが本当の全く完全な意味で無色透明の金だ、何の意図も野心も持たない金だということであれば、恐らくこれは出した会社の方は背任罪に問われるべきだと思うのですね。つまり、会社にとって何のメリットもない金を、しかも大量の金を使ったということになれば、その責任者は当然背任罪を構成すると言ってよろしいのじゃないか。  だから、そういう点で、あの金の性格は、もらった方でも単なる政治献金と認めることはできないというふうに私は考えるわけですが、いまの局長の御答弁も、表現の仕方は違いましたけれども、大体それと同じ種類の同じようなお答えだったが、確認意味で、もう一遍答えてください。
  14. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 それぞれの被疑者とか参考人がどんなことを述べたかということは申し上げるわけにいかないのでございまして、そういう意味において、先ほど私がわれわれの認めた性格というのを申し上げましたが、そのとおりに御理解いただきたいと思います。
  15. 西宮弘

    西宮委員 それでは、五億に近い金というわけでありますが、一遍入った金が今度はどういうふうに出ていったかという点については、これは本人からお聞きになった分もありましょうし、捜査側で独自に調査をした点もあると思うのだけれども、それは大体どの程度に解明をされていますか。
  16. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 率直に言って余り解明されておりません。  と申しますのは、公訴を提起しました関係は、この二百三十八万ドルの後始末の一番最後の方で、交互計算勘定をするのに私文書が偽造されたという末端の出来事、あるいは海部氏の二百三十八万ドルについては関知しなかったという偽証の関係でございまして、その関係の裏づけのために、二百三十八万ドルがどうしてそういう形で処理されたかということを調べなければならない、そこで、そのよって来るゆえんを調べたということでございまして、そうしたら、行き着くところが五億程度の金の流れ、こういうことでございまして、そのものが確かにそういう方向へ流れておるという心証さえ得られれば、それから先はもう間接事実の間接事実の、また間接事実というようなことになりますので、いわゆる詰めた調べは当然行っていないわけでございます。  また、ある程度のことがございましても、これは受け取られた方の供述といいますか、そういうことに触れることになりますので、一応余り解明されていない、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  17. 西宮弘

    西宮委員 余り解明されておらないというお答えでありますが、それは解明された部分だけでもいいですから、どの程度であるか聞かせてください。
  18. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 当該多額の金の行方につきましては、先ほど余り解明されていないと申しましたが、それでは、ほとんど解明されていない、こういうふうに申し上げます。
  19. 西宮弘

    西宮委員 たとえば、これはほんの一例でありますけれども、何か新聞報道等によりますと、そのうちの一部がパリに在住する芸能人の手に渡っているという話も聞いているわけです。  私は、そういう問題をここでせんさくするつもりは毛頭ありませんけれども、ただ、そういうことになれば、それは伝えられるところでは三百万ともいい数百万ともいい、その程度金額ですね。その程度金額といっても、私は二様の解釈ができると思う。つまり、三百万なり四百万という金は、五億の中から見たらきわめて小さい金だと思いますね。しかし、この前のロッキード問題のときに黒い高官灰色高官と言われた人たちは、やはりこれも何百万の単位ですね。それで刑事訴追を受けている人もある。こういうことになると、百万の単位といえども軽く見逃すことはできない金だ。そういう意味では、まさに大金だということも言えると思うのだけれども、とにかく五億の中から見たらほんの小さな金だと思いますが、そういうことまで明らかになっている捜査当局が、ほとんど解明できないというのは大変おかしいと思う。わかっているだけでも答えてください。
  20. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま、わかっているはずではないかという一例として、女性の関係お話がございましたが、その約五億の金からそういうところへ流れた事実は全くございません。
  21. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、そういう事実がない、新聞等はこれはかなり興味本位に扱った点もありますけれども、話題としてはずいぶん世間をにぎわしたわけですけれども、それが全くないというのならば、やはり五億の使い道について全部点検をした、こういうことでなければ、そういう答えは出ないと思うのですね。どうなんですか。
  22. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その問題につきましては、しばらく前から週刊誌その他にも出ておった問題でございますから、意識して調べております。  しかしながら、先ほどお答えしましたように、そういう方向にさらに流れたという事実はないようでございます。まず時期的な問題もございましょうし、それから、その中身においてほとんど解明されていないと申しましたが、ごく一部は解明されておるわけでございますが、その関係につきましては、まさに刑事訴追を受けることのない方の個人的な事柄でございますので、お答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  23. 西宮弘

    西宮委員 いまの問題は、刑事訴追を受けることのないその人の個人的な問題だという点は私も全く同じ認識です。  ただ、私が言いたいのは、そういう細かい金までわかったということであるならば、その事実があったのかなかったのか、どっちにしてもそういう点が明確になったということであれば、五億の金について総ざらいをしたというふうに考えざるを得ないではないか、それだけのことはやっているのじゃないかという立場お尋ねをしたのですが、しかし大半はわからないのだ、こういう話でありますから、それでは、十五日の発表の際に、その金のうちの一部は数名の政治家に渡った、こういうことは発表されたわけですね。その内容は、どういうことですか。
  24. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 検察当局がさようなことを発表した事実は全くございません。  その後、私、新聞紙を見ておりまして、私が、衆参いずれかの航空機特別委員会秘密理事会で、ただいまのお尋ねに当たるらしいようなことを申したように記事になっておりましたが、秘密理事会で申し上げたことがずっと記事になっておるのもどうかと思いましたけれども、私、そういうことを申し上げた記憶が全然ございません。
  25. 西宮弘

    西宮委員 これは、直後にあらゆるマスコミ秘密理事会内容について、それはどういうルートを通してキャッチしたか、私どもにはわかりませんけれども、しかし、あらゆるマスコミがその点については漏れなしに報道しているわけですよ。少ないけれども少数政治家に渡っている、こういうことはどのマスコミにも漏れなしに書かれているわけです。あるいはテレビ等でも言われているわけです。  局長は、それは全然記憶がないといういまのお答えなんだけれども、ちょうどロッキードの証人みたいな言い方なんだけれども記憶がないというのはおかしいと思うのです。
  26. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 あらゆる報道機関が報道したとしましても、ニュースソースが一点でございました場合には余り意味がないわけで、私、記憶がないと申し上げましたのは、大変不謹慎な話ですが、居眠りをして寝言でも言いましたらともかく、そういう重大なことについて、軽々に根拠のない発言をするわけはないのでございまして、あるいは私若干疲れておりまして、言い回しが——そういうふうに聞こえる言い回しであるはずはないのですけれども、私の言い方がきわめてまずかったのか何かではなかろうかと思います。私は申した覚えはありません。
  27. 西宮弘

    西宮委員 それでは、秘密理事会における局長の報告としてはなかったと仮定しても、どうなんですか、数名の政治家に渡っているというような事実は、お調べになった過程で出てきませんか。
  28. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 出ておりません。
  29. 西宮弘

    西宮委員 私は、さっき冒頭に申し上げたように、局長自身国民最大関心事だということを強く言っておられた。私も全くそのとおりに思うわけです。しかし国民の知りたいことは、航空機売り込みについて、しかも軍用機ですね、軍用機売り込みについて、どういう政治工作が行われたかということが国民の知りたい最大の問題であるわけですが、そういう点について、これは本気で調べなければ、全く国民関心にこたえることにはならないじゃないですか。  その金がどういうふうに使われたかということについて、そっちの方を調べなければ、局長の言う国民関心にこたえるというようなことには全くならないと思う。これは全然わからないのですか。あるいは、わかっているけれども、いわゆる捜査の段階では秘密を守らなければならぬというようなことで、制約をされているわけですか。
  30. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもとしては、法に従って権限を行使して、いろいろ捜査活動をいたしまして、その結果、ある程度の事実関係を把握することができる立場におるわけでございまして、権限に基づいて捜査し、把握した事実に関しまして、なるべく国民のいわゆる知る権利にこたえるような姿勢で、法の許す範囲で御説明申し上げる、こういうふうな考えでおるわけでございますが、さて、国民関心を満たすために捜査ができるかというと、そうではございませんで、犯罪がない場合に捜査はできないわけでございます。  そういう意味におきまして、先ほども説明いたしましたように、犯罪として処理すべきものでない、そういう方の事柄につきまして、どんどん踏み込んでいって調べるというようなことは、とうていできないわけでございます。
  31. 西宮弘

    西宮委員 もちろん、限度を踏み越えると、いわゆる検察ファッショというような問題にもなりましょうから、そういうことはわれわれ期待をしておりません。しかし、少なくともいまのどういう政治工作が行われたのだということは、これは国民であらずとも、恐らく検察としてもそれが終局のねらいではなかったかと思う。一月の九日に捜査を開始するという、ああいう宣言を発して始まったこの捜査としては、当然それは終局のねらいだったと思うのです。  それでは、そういう議論をしておっても仕方がないので、中村長芳氏あるいは川部美智雄氏、こういう人については、参考人として事情聴取をされたことはありますか。
  32. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモの問題、その他いろいろな問題に関連しまして、検察が必要と認めました方につきましては、事情をそれぞれ伺っておるわけでございますが、特定の方につきまして事情聴取をしたかどうかというお尋ねに対しては、残念ながらお答えを御容赦いただきたいと思います。
  33. 西宮弘

    西宮委員 これは恐らく聞かれても参考人として事情聴取するということでしょうから、私は、そういう事実があるならば発表して一向に差し支えないと思う。しかし、いま別に否定もされなかったので、この二人など一もっとも川部さんはここにいないから、一遍東京に戻ってきたけれども、その時期にでもつかまえなければ調査ができなかったと思いますが、少なくとも中村長芳氏のごときは簡単にできるわけですから、この人などは、参考人としてはいろいろお聞きになったのじゃないですか。
  34. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 どういう方からお話をお聞きしたかということは、明らかにしないことにいたしております。
  35. 西宮弘

    西宮委員 私の時間がいっぱいになりましたので、終わりにいたしますが、いまの中村長芳氏とか川部美智雄氏とか、これは岸元総理大臣にきわめて近い人ですね。したがって、こういうところを調査をしたりいろいろすると、累が岸元総理に及ぶのではないかというようなことで、大分遠慮をしておったのじゃないかということを私は非常に危惧するわけです。そういう気持ちはなかったのかどうか。  それから航空機売り込みについて、売り込む側は単数政治家に五億の金を贈ったというのですけれども、そういう大きな仕事がたった一人だけを相手にして工作をするというようなことは、常識的にも考えられないわけですね。私は、さっき申し上げた少数政治家云々というようなことも、そういう常識から考えても、何人かの複数の政治家が介在をするということは、きわめて当然だと思うわけですけれども、その点いかがですか。
  36. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確かにおっしゃいますように、いろいろな物の売り込みにつきましては、いろいろな人に接触し、陳情するというようなことが必要な場合が多かろうと思いますけれども、私ども立場としましては、金の流れを追いかけるという捜査をいたしたわけでございまして、そういう意味で、お一人だけの存在ということを申し上げておる次第でございます。  それからなお、先ほど岸先生のお名前をお出しになりまして、遠慮したのじゃないかというお尋ねがございましたけれども、そういうことは一切ございません。
  37. 西宮弘

    西宮委員 恐らく私の質問に対してそういうお答えが返ってくるだろうということは、私も十分予想してお尋ねをしたわけですけれども、少なくとも世間では、そういう疑いを多分に持っているわけです。問題は、むしろいま問題になっておる単数政治家だけではなしに、そういうところにそもそもの根源を発しているということ、世間の大半の人はそう思っている。したがって、これは、これから先もぜひそういう根源に迫って問題を探求していく、そういう姿勢を持ってもらいたいということを申し上げたいと思います。  昭和四十七年十月に全国の検察長官会同があって、その際に特に「検察の現状と将来の方向について」というテーマでディスカッションをされている。これには出席する人からあらかじめ二千字意見というのを出させて、それをテーマにして議論をした、こういうことが報道されておるわけです。つまり、いわゆる眠れる検察ということから脱却をしなければならぬというのがそのときのテーマであったというふうに、当時の、昭和四十七年の新聞でさえ「眠れる検察」という大きな見出しで報道しておるわけです。  私は、そういうことのないように適時適切に捜査をする、しかも、そういう問題の根源にさかのぼって調査のメスをふるう、こういうことが検察の当然の姿勢だということを強調して、ぜひそうあってほしいということを希望して、終わりにいたします。
  38. 佐藤文生

    佐藤委員長 横山利秋君。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 かねてから私ども党として、この真相究明とそれに対する腐敗防止の基本的なあり方について、私どもの意見を踏まえて言っておるのですが、きのう本会議総理大臣並びに法務大臣から、政府の対応いたすべき機構の発表がありました。  たびたび伊藤さんの答弁を聞いておりまして、あなたが検察陣の一員として報告する限界ということを踏まえていらっしゃるようでありますが、少なくとも当委員会あるいは他の委員会におきまして、刑事犯罪に該当しなくてもこの汚職構造というものはどういうものなのか、どういうふうに金が流れて、どういうふうに対応しなければならないものかという点を、われわれとしては知らなければ対応策が出てこないのでありますから、その点であなたに最大限の協力をしてもらわぬと、自分のしゃべれる限界だとか、多少政治的にかかわる、政策的にかかわる点だから言えないとか、そういうことでは困るのであります。その点で御質問をいたしますから、ぜひ御協力を願いたいと思うのであります。  岸さんの名前が出ておりまして、いま質疑応答を聞いておったわけですが、アメリカのホテルで岸・海部会談が行われたということは御存じだと思うのでありますが、この点についての調査はございましたか。言うまでもなく、それは航空機売り込みあるいは機種選定に関する諸問題だと思うのですが、この点はどうなんですか。
  40. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまお尋ねの点は、いわゆる海部メモの記載の一部として流布されておりますので、お答えできる範囲お答えいたしてみたいと思いますが、一九六五年七月二十三日に海部氏がマクダネル社のフォーサイス氏を岸元総理に紹介をしまして、そこでF4ファントムの性能等について陳情が行われた事実はあるようでございます。場所はサンフランシスコのようでございます。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 したがって、金の授受は第二段として、岸さんが海部を中心といたします戦闘機売り込み、機種選定に関する問題に介入をしておったという点は、この実証をもっても明らかだと思いますが、いかがですか。
  42. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 介入というのがどういうことか、私もよくわかりませんけれども、先ほど申しましたように、フォーサイス氏からサンフランシスコで陳情を受けたという事実はあるようでございます。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 岸信介秘書中村長芳、いまも話がございましたが、死んだ島田常務の持っておりましたものの中に、この中村長芳の「有難く拝受」という名刺があったそうであります。それが明らかに領収的な意味を持っておるということは、客観的に言い得られることだと思うのであります。  いま同僚委員の質問に答えて、あなたは、特定のことには、名前には触れたくないとおっしゃいましたが、この事実は御存じでございましょうか。
  44. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一部報道によりまして、そういう名刺が存在するらしいということは承知をいたしております。  先般来申し上げておりますように、今回の問題をめぐる金の動きというのは、いろいろ解明をしたわけでございまして、そういう意味で、ある程度の解明は遂げておるわけでございますが、これに関連して特定の方のお名前を出すということは、いかにもしかねることでございますので、その程度で御容赦をいただきたいと思います。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 構造を知るためには、先ほどの質問の答えにありましたように、いま国民が一番聞きたいことは何かといいますと、率直に言いますけれども、五億円はどういう方法で授受されたか、だれとだれに渡ったか、何のためにそれが渡されたか、そういうことが知りたいことと、それから岸信介さんはどこまでかかわり合いがあったのだろうか、いろいろありますけれども、いまの国民的な関心の焦点は、その二つにあるのじゃないかと私は思うのです。  海部氏と岸さんの関係というものはもう次第に明らかになって、その真ん中に中村長芳が介在し、そしてその名刺に「有難く拝受」と書いてある。そして報道によりますと、その名刺の印刷先から中村長芳の談話まで、きわめて明らかなのであります。このルートというものが、どうして一体その五億円の収受と結びついていかないのであろうかということを考えますが、その点はお調べになりましたか。
  46. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 航空機売り込みをめぐる金の流れ、またその動きにつきましては、できる限りの解明をいたしまして、ほとんど解明できておるつもりでおりますが、ただいまお尋ねの趣旨が必ずしも私によくわかりませんけれども、五億円の問題と関連がほかに何かあるようなお尋ねでございましたけれども、ちょっとその点につきましては、私、十分理解しかねております。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、きわめて単純にお伺いをいたしますが、五億円は何回ぐらいに分けて授受されたのか。  それから、それでいま焦点になっているのが松野頼三氏でございますね。その五億円というのは松野以外には名前があり得ないものであるかどうか、これが二点でございます。  それから、松野氏はそれをもらって本人の所得にしたものかどうか、あるいは他の政治家に渡ったものであるか、どうか、あるいはさらに、そう言っては語弊がありますが、聞くために言うのですが、政治資金として党に繰り入れたものであるかどうか、その他どういう方法でその五億円は流れたのか、その点を国民にわかりやすく、ひとつ説明をしてください。
  48. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま何か固有名詞を仰せになりましたようでございますが、私は、固有名詞を申し上げたことはないわけでありまして、単数政治家に約五億円が工作資金という趣旨で渡されたというふうに認めておるということを申し上げておるわけでございます。  その回数は、先ほど申し上げましたように、昭和四十二年から四十六年までの間に十数回でございます。単数政治家にと申し上げておりますことからおわかりのように、直接ほかの方に渡るというようなことはなかったと認めております。  それから、その政治家が受け取られました所得になったのだろうと思います。  それから先どこへ行ったかは、先ほども申し上げましたように、ほとんど解明されておりません。他の人あるいは政党とかいうようなことも仰せになりましたけれども、その辺は解明されていないのでございます。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、時効の問題にぶち当たっていくわけでありますが、単数政治家とおっしゃるから、それでもいいです。単数政治家が、十数回にわたってでもいいのであるが、五億円という大変な金を仮に収受をしたといたします。収受したことは時効になっておるけれども、その金は何らかの形でほかに流れている証拠がないとすれば、税法上も法律上も、本人の所得であるというふうに判断をせざるを得なくなります。  もしそうだとすれば、その五億円になんなんとする金は、現在もまだ存在をしておるというふうに考えるのが常識的であります。それが事業に使われておるのか、あるいはまた株になっておるのか、不動産になっておるのかというところから生ずる利益、生ずる所得というものは、現在においてもそれがもし単数の人の所得だとすれば、脱税に発展をするわけであります。四十二年から四十六年の間に単数政治家の所得の増減を調べれば、その流れがどこへ行っておるかということがわかるはずでありますが、その方法はお用いになりましたか。
  50. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのようなことをやれば、資産増減法によれば、たとえば税をきちんと納められたかどうかというようなこともわかるでございましょうが、先ほども西宮委員お尋ねに対して申し上げましたように、この関係は訴追をいたしました事実からしますと間接事実の間接事実になりまして、さらにまたその間接事実というようなところまでは調べるのに相当範囲を超えるという点もありまして、おのずからにしてわかってくるもの以外、ことさら根掘り葉掘り調べるというようなことはいたさなかったわけでございます。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 そのいたさなかったところに、多少問題があると私は思うのであります。  あなたは検察の側でございますから税法の立場ではありません。私ども税法をずっとやっております者として、調査の方法は必ずある。御本人があしたどういう御意見をおっしゃるか知らない。恐らく収受はしていないとおっしゃるかもしれぬ。あるいは収受をしたけれども政治献金に使ったとおっしゃるかもしれない。やはり政治献金として収受をしたとおっしゃるかもしれない。その使途をおっしゃらないかもしれない。そういうことを考えますと、この後追跡調査をする方法は資産増減法しかないと私は思うのであります。  そこで、その方法がなぜ検察陣と国税庁との間に連携プレーができなかったのであるか、あなたの方から御注文なさらなかったのであるか、その辺はどういうおつもりでありましたか。
  52. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 平素からそうしておるわけでございますが、国税当局も、税務調査関係で知り得た事項については検察当局への通報をいたしませんし、また検察当局も、捜査の過程で知り得たことを税務調査のために通報するということはいたしておりません。  お互いにそういうことをいたしますと、捜査に対する協力が将来得られなくなるということ、あるいは税務当局の方に伺いますと、税務調査の結果が逐一捜査機関に通報されるというようなことであれば、将来の課税上支障があるというようなことのようでございまして、お互いに材料の交換をいたさない。  ただ例外として、いわゆる脱税容疑で国税当局が査察立件するような場合、あるいは検察当局で脱税の刑事事件であるというふうに認めて国税の査察部門に協力をお願いする場合、こういう場合は密接に連絡をとるわけでございますが、それ以外は、先ほど申したような原則に従ってやっておりますので、国税当局が現在この問題についてどういうふうに取り組んでおられるか、まだ承知をしていない状態でございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 私は、原則としては、何から何まで検察陣と国税当局との連携プレーをやれというわけではありません。しかし、かかるような大問題、国民を衝撃に陥れるような問題については、当然それが行われてしかるべきだと思うのであります。  それと同じように、ボーイング社からの百五万ドル、これはたしかあなたの方では政治家に流れていないという判断をなさったようでありますね。そうですか。
  54. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 百五万ドルの中のいわゆる使途不明金と言われます四十七万ドル、これにつきまして流れを解明しておりますが、政治家に流れたと認められるものはございません。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、国税当局としては使途不明金として処理するよりほかはない。自分たちにはさらにその使途を追及する権能もなければ、向こうが、脱税と認定されるならば仕方がない、罰金も払います、重加算も払いますということですからというわけで、国税当局としては処理してしまったわけですね。  その後は、あなたの方が使途不明金では困る、この問題が政治を明るくするためにどうしたらいいかということの追及は、あなたの方の所管でなければならないと思うのですが、この点については一切杳としてその後御報告いただいていないわけでございます。調査は継続されているのですか。どういう結果になりましたか。
  56. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 四十七万ドルにつきましては、そのうちの相当部分が航空機売り込み工作資金といいますか、売り込み運動資金と申しますか、そんなような性格をもちまして複数の民間人の方に流れているというふうに認められます。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 民間に流れた、政治家には流れていない、こうおっしゃるわけであります。  くどいようでありますが、売り込み資金というならば、ある意味では裏金でありますから、かなりのところへいろいろ使われておると思うのであります。そういう点が、政治家にだけは流れていないという断定をなさる理由は何でございますか。
  58. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その金の使途が判明しておるからでございます。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、その使途を言ってください。
  60. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その複数の方のプライベートなことでございますので、細かい話は御容赦いただきますが、それらの方々の資産となっております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 またしかし、これも時効になっておればともかくといたしまして、私どもとしては、単に政治家のみならず、この種の売り込み資金というものが日本の企業、日本の産業を毒するものであるという判断に立っておるわけであります。  したがいまして、特定の名前が挙げられないというならば、それはいたし方ございませんけれども、私どもとしては、政治家のみならず日本の産業全体の公正な競争、そのためにはどうあればいいかということを考えておって、法案づくりもいたしておるわけでありますから、そういう点にもっと御協力をお願いしたいと思うのであります。  そこで、対応策についてお伺いをいたしたいと思うのです。  大臣がまだおいでになりませんから、あなたに聞くのはあるいはやぼな話かもしれませんが、きのうの大臣のお話を要約いたしますと、一つは刑罰の部面、一つは行政機構の部面、一つは法律と行政のありようといいますか、そういうようなことを真相を調査して問題点を摘出するというわけでありますが、その委員会でありますか、そこにはこの航空機疑惑についての状況を詳細に御報告をなさるおつもりでしょうね。
  62. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 今度できるといいますのか、できたといいますのか、懇談会につきましては、基本的に私ども伺っておりますのは、およそ再発防止対策というようなことを役人どもが集まって相談しても、何も出てこないに違いない、結局、前回のロッキード再発防止対策に書いてあること以外に出てくる可能性はどうもないように、古井大臣などは考えておられるわけで、私も大体そうではないか、いろいろなことを言ってみても、いろいろな役所がみんな足を引っ張って、だめになってしまうというものであろうと思うのでございます。  そこで、そういう役人どもの介在を排して、大所高所に立って政治的に根本的な対策というものをお考えになろう、こういうことであろうと思います。その会合がどのような運営になりますか、それらの方々がお集まりになってお決めいただくことでございますが、もし将来、この事件の経過を通じてどんなことが感じられたかというようなお尋ねがあれば、ただいま当委員会でお答えしておるような範囲におきまして、御説明を十分申し上げたいと思っております。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 私が先般も指摘したのですが、今回のこの航空機汚職の法務委員会としての一つのポイントは、あなた方も突き当たられた時効の問題がどうしてもある。第二番目に職務権限の問題がある。第三番目に、海外からの情報によって作業が開始されるという問題がある。それから政治献金とは一体何だという問題があると思うのであります。  その点について、私どもなりの防止政策の基本要綱を提案をしておるわけでありますが、これは、いまあなたは、役人どもが集まったって何もならぬとおっしゃるのだけれども、ロッキードのときの閣僚協、あれは役人じゃなくて政治家が集まってつくったわけです。それから民間の人も入っておるわけであります。ですから、これはもう新聞、マスコミの中で、あれは航空機に関する予算の凍結解除の隠れみのではないかという批評すら出ておるわけであります。  一番調査の中心になった検察陣として、今回の経験によって、時効の問題を一体どういうふうに考えるべきか、職務権限の問題を突破するにはどうしたらいいか、海外の情報で仕事をするばかなような今日の航空機国際汚職にどうあればいいか、あるいは政治献金だと言ってしまえば、それで済んでしまうというような問題を、どう考えたらいいのかという点については、現実、ロッキードから今日に至りますまでの検察陣の苦労といいますか歯ぎしりといいますか、初め脱兎のごとく終わり処女のごとしと批評されるような今日の問題について、いささか検察陣としてこうあらねばならぬという問題点が、あるいは事務当局の立場で越権だと思われても、問題点提起としては勇敢でなければならぬと思うのでありますが、その点お考えを伺いたいと思います。
  64. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまの御指摘は、いずれも私どもにとって貴重な御指摘でございまして、実は昨日、本日の二日間、全国の検事正、検事長を集めまして検察長官会同を開催しておりますが、昨日その冒頭におきまして、私、指示を述べる機会がございまして、そのとき会同員の皆さんに申し上げたのでございますが、今回の事件の捜査は非常に困難な前提から出発しまして一応の解明を遂げたという意味において、検察としては一応悔いはない、しかしながら、われわれとして考えなければならないことは、二度までも海外からの情報に基づいて捜査が初めて開始されたということ、またその関係で、相当古くなった出来事について捜査に着手しなければならなくなったこと、これは反省を要するのではないか、常に目と耳を研ぎ澄ませて、新しいうちに自前で事件を見つけてやっていくことが何よりも大事ではなかろうか、こういうふうに申し上げたのでございますが、まさに、それが私自身のいま一番考えておることでございます。  なるほど、ぐちめいた話をいたしますれば、昭和四十四年から四十六年にかけましては、七〇年安保、沖繩返還等の出来事をめぐりまして、毎年何千人という検挙者をいわゆる公安事件で見ておりまして、検察庁も特捜部も、全部その処理に忙殺されたという事情はございますけれども、やはりそれはそれとして、こういう水面下にひそんでおるような犯罪につきましては、常に注目をして端緒を得るようにしなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。  なお、時効の問題、職務権限の問題等々仰せになりましたけれども、今回の五億近い金が渡されました政治家の方は、時効といいますより、むしろ職務権限の問題で犯罪とならない、しかも非常に古いことであるというようなことが、いろいろ御指摘を受けるような結果になっておるわけでございます。  ところで、それではそういうようなケースもみな処罰の対象になるような犯罪構成要件を考えたらどうかというようなことも一つ考え方でございますが、この前もちょっとお答えをしたかと記憶しておりますけれども、公選公務員の政治活動、なかんずくその中のいわゆる陳情活動と言われますような部分について、不当な制約がかかるような構成要件でも困りますし、これは私どもも将来に向かっていろいろ検討さしていただきたいと思っておるわけでございます。  それから今回は、いま申し上げましたように、時効の問題というのはストレートには出てまいりませんでしたけれども、やはり一つの観点から、国民感情からして特定犯罪についての時効期間が現在のままでいいかどうか、これは真剣に検討すべき問題であろうと思うわけでございます。これはよその所管でございますが、税法上の除斥期間の問題等もございますし、そういう問題も考えていかなければなりませんが、さしあたって私ども事務当局としては、現在御提案申し上げておる刑法の一部改正、これだけでも早期に実現すればと念願しておるわけでございます。  それから、もう一つ御指摘になりました海外の情報に基づいて云々という点は先ほど申し上げましたが、これに関連いたしまして、今回の事件を捜査いたしてみました結果、国外にあります会社あるいは銀行等の調査が非常に重要でございました。そういう関係からいたしまして、検察当局としても、どこの国はどの程度海外からの協力要請に応ずる体制になっておるかというようなことをわきまえておかなければなりませんでしょうし、法務省といたしましては、すでに毎々御指摘をいただいておりますように、司法共助のあり方につきまして、なお諸外国と詰めていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。  第四点として、政治献金の問題についてお触れになりましたけれども、この問題につきましては、私ども的確な意見を申し上げる立場にはおりませんので、この点については省略させていただきます。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  66. 佐藤文生

    佐藤委員長 飯田忠雄君。
  67. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私は、現在問題になっておりまする航空機汚職の問題について質問申し上げるわけですが、この問題につきましては、主として航空機汚職の調査特別委員会がございますので、その方面となるだけ重複しない分野、つまり法務委員として、法律に関係した部分について特にお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、四つの問題についてお尋ねするわけですが、国の機構で汚職が起こってくる、そういう余地がどこに一体あるのかという問題についてお尋ねをいたします。それから第二番目は、大臣が自分の地位を利用して政治献金を受け取るということは、これは収賄となるのか、ならないのかという問題であります。それから第三番目は、訴訟手続に現在欠けたところがないかという問題。第四番目が民間人の人権保障をどう考えておるか、こういう問題でございます。  そこで、最初まず防衛庁の方及び法務省の方にお尋ねをいたしますが、その内容は、防衛庁航空機購入に当たって契約担当官というのがございますが、その役割り及び契約の相手方、こういうものがあるはずなんです。これにつきまして捜査をしたかどうかという問題について、お尋ねをいたします。
  68. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 SECの公表資料で指摘されましたいろいろな飛行機あるいは訴追の対象としましたものに関連いたしますF4ファントムあるいはRF4E、これらについての契約状況等については、詳細捜査をいたしております。
  69. 飯田忠雄

    ○飯田委員 防衛庁の方にお尋ねしますが、まず自衛隊の航空機を購入される場合に、これはどういう契約方式によっておりますか。
  70. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 防衛庁が導入いたします航空機につきましては、非常に大きなプロジェクト、主として戦闘機というようなものにつきましては、これはほとんどライセンス生産をやっているわけでございまして、これにつきましては、日本国内のメーカーと製造委託の契約を行うということでございます。  それから、あと例外的にと申しますか、完成品としての航空機を導入する場合におきましては、アメリカ政府との間のいわゆるFMS契約と申しますか、直接の取引でございますが、これによる方法と、それから商社を通じて導入する方法とあるわけでございます。  以上でございます。
  71. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私がお尋ねしましたのは、競争入札でやっているのか随意契約でやっているのかということをお尋ねしたのですが、この点どうですか。
  72. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 商社を通じて輸入する場合には、事柄の性質上随意契約でございます。
  73. 飯田忠雄

    ○飯田委員 このたびの航空機の輸入価格というものは、どのぐらいのものでございますか。
  74. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 RF4Eについて申しますと、契約額が百九十五億七千万円余でございまして、これは契約の相手方が日商岩井ということで、そのほか偵察関係のレーダー装置につきましては住友商事、あるいはレーダー警戒装置につきましては東京計器というふうな契約も付随的に行っております。  以上でございます。
  75. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いま金額については仰せにならなかったのですが、私が推測するところでは、こういう航空機の値段というものは、ずいぶん値段が高いと思うのです、部品にしましても。  会計法では、一体随意契約を結び得る場合は、どういう場合となっておりますか。
  76. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 私どもが先ほど申しました随意契約を航空機について行っております場合には、会計法の二十九条の三によりまして「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。」ここでやっております。(飯田委員「その政令は」と呼ぶ)ちょっとお待ちいただきたいと思います。  政令では、いろいろ細かい条文がございますが、たとえば「外国で契約をするとき。」とか、あるいは「予定価格が百六十万円を超えない財産を買い入れるとき。」とか、いろいろたくさんございます。御質問の趣旨が……。
  77. 飯田忠雄

    ○飯田委員 航空機を外国から購入する場合、これは外国で契約を結ぶ場合にだけ随意契約が許されておるはずです。  もし防衛庁が会計法によらないで、あるいは予算決算令によらないで契約を結び得るという特別の規定があれば別ですが、特別の規定がありますか。
  78. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 マクダネル・ダグラス社の航空機につきましては、その総代理権を持っている会社日商岩井でございましたので、日商岩井は国内の会社でございますので、そういう意味で契約を結んだわけでございます。
  79. 飯田忠雄

    ○飯田委員 国の機関が外国と契約を結ぶ場合に、もしそれを随意契約で結ぶ場合には、外国で契約を結ばねばならないのですから、当然契約担当官を外国へ派遣して契約を結ばなければならないはずであります。  ただいまの政府委員お話によりますと、日商岩井という代理店と契約を結んだ、こういう話でございましたが、その日商岩井という代理店は日本にある会社でございますが、日本で契約を結ばれたのかどうか、その点をお伺いします。
  80. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 いま先生申されたとおりでございます。
  81. 飯田忠雄

    ○飯田委員 日本の日商岩井防衛庁航空機のような高額な品物を随意契約で購入されるということは、明らかに会計法違反であります。予算決算令違反であるわけですね。  こういう問題について、法務省は捜査されたことがありますか。
  82. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 捜査したことはございません。
  83. 飯田忠雄

    ○飯田委員 今般の航空機汚職が起こってまいりました根本的な問題は、わが国の行政機関がこうした会計法というものを非常にないがしろにして契約を結ぶという慣習があったからではないかと私は思いますが、過去における防衛庁航空機等の購入に当たりまして、あるいは艦船でもいいのですが、この場合のアメリカからの購入については、常に代理店を通しておられたのか、あるいは直接購入されたのか、お伺いいたします。
  84. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 先ほど申し上げましたように、代理店契約によりまして外国メーカーと日本の商社が契約を結びまして、独占的に販売権を持っておるというようなものにつきましては、商社を契約の相手方として導入をいたしておるわけでございます。  それから、先ほど先生申されました会計法上違反ではないかという問題につきまして、私どもは従来からもその点につきましては会計検査院からの御指摘もございませんし、私どもとしては、先ほど申しました随契の要件に合致しているものというふうに考えておりますので、念のため申し上げたいと思います。
  85. 飯田忠雄

    ○飯田委員 会計法のもとにおける政令の予算決算令、これの中には、随意契約をなし得る場合というのが全部個条書きに書いてあるのですよ。そして、その中の十五だったか何かはっきり覚えておりませんが、そこに初めて、随意契約をなし得る場合で、外国で契約を結ぶ場合ということが書いてあるのです。そのほかの場合には、金額が少ない場合は随意契約をやってもいいのですよ、特別の場合があれば。  ところが、航空機のようなあるいは軍艦のような高額のものを随意契約で勝手に日本の商社とやるということは、会計法違反になるのは明らかです。この点どうですか。
  86. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもは、二十九条の三の四項に基づいてやっているというふうに解しております。
  87. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それでは、この少額という額の問題だと思います、いまおっしゃっているのは。  高額と少額のその基準はどこで決めるのでしょうか。航空機を一機買うと幾らかかるか、おっしゃってください。
  88. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 いま先生申されましたのは、二十九条の三の五項ではないかと思うわけでございますが、私どもは四項の方ではないかというふうに思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
  89. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それは何です。
  90. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 会計法でございます。
  91. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いや、政令でしょう。
  92. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 これは手続が定められていると思いますが、この点は後ほどまた詳細に御報告に参りたいと思います。
  93. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この政令は明らかに随意契約をなし得る場合を決めておるのですよ。そこで、会計法だけでやられては困るので、随意契約をなし得る場合というのは政令にゆだねておる、政令というのは予算決算令ですね。  ですから、これは防衛庁が従来から会計検査院が指摘しなかったから正しいと思っておった、こういうことでありますので、これ以上追及はいたしませんが、私は、会計検査院は一体何をしているかということを疑いたい。つまり、防衛庁のような大金を扱う官庁におけるこういう会計問題について、会計検査院の監査がおかしいのではないかと私は思います。いま、きょう会計検査院がおられないから、お聞きするわけにいきませんが、時間の関係で、この程度で次にいきます。  そこでお尋ねをいたしますが、今度の航空機は何回お買いになったかわかりませんが、これにつきまして契約担当官をアメリカに派遣されたことがありますか。
  94. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 今度の航空機と申されました、その範囲が必ずしもちょっと明確でないのでございますが、F4とRF4Eというふうに考えてよろしゅうございますか。
  95. 飯田忠雄

    ○飯田委員 今度の航空機と言うたのは、漠然として問題があると思います。これは、このたび航空機汚職として疑惑にのせられてきておる航空機、こういうものはどういうものであったか、まずお伺いしましょう。  それから、それについてはどういう契約を結んだかをお聞きします。どういう飛行機がいま問題になっていますか。
  96. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 いろいろ報道されておる機種というふうに考えますと、F4あるいはRF4Eがいろいろ報道の面におきましては話題になっておるというふうに思っております。  本件につきまして、先生の御質問された御趣旨に対応して、私ども立場としてはちょっと答えにくいわけでございますが、報道の面から見ますと、そういうふうに思うということをお答えいたしたいと思います。
  97. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この問題は、私は非常に疑念を持つのですが、時間の関係で次の問題に入りたいと思いますので、先にいきます。  どういう航空機を購入するかという問題について防衛庁でお決めになる場合に、これは恐らく庁議を開いてお決めになると思いますが、その庁議における大臣の発言権の強さはどういうものであったか、お尋ねいたします。
  98. 上野隆史

    ○上野政府委員 お答え申し上げます。  主要な航空機の機種決定につきましては、まず使用者側であります航空幕僚監部あるいは海上幕僚監部とございますが、それが飛行性能、それから戦闘能力などについて適合性、安全性、将来性といったような各般の分野にわたりまして、もっぱら専門的、技術的な観点から分析、検討の上、幕僚監部としての案を作成いたしまして、幕僚長がこれを防衛庁長官に上申をいたします。防衛庁長官は、その上申を踏まえまして、導入の緊急性、導入に伴う防衛上の影響等々、高い見地から総合的に判断をいたしまして、防衛庁としての案を決定いたします。  この防衛庁の案は「内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」というものに該当する事項といたしまして国防会議に諮りまして、そして政府案として決定された後に政府予算案に計上され、国会におきます審議を経て最終的に決定される、こういう段取りを踏んでおるわけでございます。  その際の防衛庁長官の役割りにつきましては、ただいま申し上げましたようなことでございます。
  99. 飯田忠雄

    ○飯田委員 防衛庁長官は、その庁議で決定になりました問題を、後ほど防衛庁長官の自由な意思で変更になった事実がありますか。
  100. 上野隆史

    ○上野政府委員 御質問の趣旨が、幕僚監部等事務的に上げた案を、防衛庁長官の恣意によって変更したことがあるかということでありますとすれば、そういう事例はいままでに一度もございません。
  101. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それでは次に入りますが、航空機の購入価格につきまして、防衛庁調査しておられるのかどうか。調査して発注をしておられるのか、あるいは先方の商社の言うなりの値段で発注しておられるのか、この点についてはいかがですか。
  102. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 航空機の価格につきましては、たとえばライセンス生産等国内で生産する場合あるいは完成品として輸入する場合等いろいろございますが、基本的には、その航空機に関連しますいろいろな価格に関する情報というものを十分集めまして、たとえばアメリカでの調達価格でありますとか、あるいはほかの国の調達価格、あるいはまた同じような機種についてライセンス生産しておる実績があるというような場合には、それとの比較というようなものを十分調査いたしまして、価格が適正に決定されるようにいたしております。
  103. 飯田忠雄

    ○飯田委員 その調査につきまして、先ほど同僚委員の質問に対して、たとえば日商岩井売り込みをやったというお話でございましたね。日商岩井売り込みをやったということは値段も言うてきたのでしょう。その値段を聞いて、それを調査内容としたのではありませんか。
  104. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 防衛庁航空機の機種を選定し、またその価格について適正であるかどうかというのを調べます場合には、軍用機につきましては、その性能その他につきまして秘密の部分がたくさんございます。  そういった意味で、秘密の資料というものは商社が扱えないわけでございまして、直接、アメリカの場合ですと米軍、こういうものを通じまして、そういった秘密の資料を取り寄せ、そして性能のいろいろな分析、評価等をやりまして、そういう面から見て、いろいろな価格が適当であるかどうかというふうなことも、あるいはまた先ほど申しました各国の調達価格との比較等もやりまして行いますので、そういう意味での商社の介入というものはないと言っていいと思います。
  105. 飯田忠雄

    ○飯田委員 航空機を購入されるときに、大体その値段というものは幾らかということは、原価計算をしたり、あるいは各国の情報をおとりになればわかるはずなんですね。  実際に契約を結ばれるときに、その金額を見られて、これは少し高いということを気づかれるはずだと思いますが、そういうことはなかったでしょうか。
  106. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 先ほど申したとおりでございまして、その価格について、いろいろな類似価格あるいは前例価格あるいは外国の同機種の価格等をにらみまして、もちろん疑点があれば正すということで、調査をやった上で決めておるわけでございます。
  107. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それでは、最後防衛庁にもう一つお聞きしますが、このたびの航空機——このたびというと語弊がありますが、先ほどあなたがおっしゃった航空機、この航空機を購入するに当たりまして、その契約は日商岩井と契約なさったのか、あるいはグラマン社あるいはダグラス社、そういうところと契約なさったのか、いかがです。
  108. 倉部行雄

    ○倉部政府委員 防衛庁といたしまして、先ほど申しましたように、疑惑との関連について申し上げる立場にないわけでございますが、F4とRF4Eについて申し上げますと、F4につきましては、先ほど申しましたように国内のメーカー、これは三菱重工でございますが、この会社と製造請負、いわゆるライセンス生産の契約をやっておるわけでございますし、それからRF4Eにつきましては、ただいま御指摘の日商岩井と契約をいたしたわけでございます。  念のために申し上げますが、私どもとしては、この機種について疑惑があるというふうな立場で申し上げているわけではないということを御了承いただきたいと思います。
  109. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは非常に重大な問題だと思います。航空機のような高額な品物を、外国で契約を結べというふうに法が決めておりますものを、わが国の商社と日本で契約を結んだということになりますと、これは重大な問題だと思いますが、これは後ほどの将来の問題として、ここではこの程度にしておきます。  そこで、次の問題としまして、先ほどから問題になっております時効の問題がございますが、時効の壁があるということが新聞には書いてあります。これは実際に法務省が時効の壁があるというふうにお考えになっておるかどうか知りませんが、新聞にはそう書いてある。  そこで、この時効といいますのは、公訴の時効を指すのかあるいは捜査の時効を指すのか、この点いかがでしょうか。
  110. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私は、時効の壁ということを申し上げたことはないのでございますが、お尋ねに即して申し上げれば、世上時効の壁と言われておるものは、多分公訴の時効のことをお考えではないかと思います。
  111. 飯田忠雄

    ○飯田委員 このたびの疑惑事件につきまして、法務省では、そうした時効の問題について捜査をなさったことがございましょうか。もしおありになるなら、その時効がどういうふうになっておるというように結果が出たのでございましょうか、お尋ねします。
  112. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよくわかりません。
  113. 飯田忠雄

    ○飯田委員 犯罪というものは、御承知のように公訴の時効がございますね。  公訴の時効があるのですが、今度の事件、いま海部さんを取り調べられましたね。これは議院証言法違反だけの問題なのか、あるいは外為法違反を含めての問題なのか、あるいは贈収賄の問題まで含まれておったのか、実は私ははっきりしないので、まずこの問題からお尋ねいたしたいと思います。いかがですか。
  114. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏を調べました容疑は、最初外為法違反でございます。後に議院証言法違反でございます。
  115. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それでは、この海部氏については、贈収賄の件は一切お調べにはなっていないのですか、お尋ねします。
  116. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏が収賄の容疑ということはあり得ないわけでございますので、あり得るとすれば贈賄の容疑でございますが、そういう容疑は発見いたしませんでした。
  117. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それでは次に移りますが、日商岩井から松野氏に提供されたというふうに称されております五億円というものが不正献金となるというようなことについて、捜査をなさったことはありますか。
  118. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井がと申しますか、日商岩井関係者がと言った方が正確かもしれませんが、F4ファントム売り込み工作に関する趣旨で、ある政治家に約五億円の金を贈ったことは事実として認められます。  その金の性格については、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、F4ファントム売り込み工作に関する趣旨で渡ったものというふうに認めております。
  119. 飯田忠雄

    ○飯田委員 その金につきまして、賄賂性があるかどうかということについて捜査なさったでしょうか。
  120. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その金を受け取られた政治家の方につきまして、職務に関するという構成要件に当たる資格関係がございませんでしたので、収賄罪には当たらないというふうに認めております。
  121. 飯田忠雄

    ○飯田委員 このたびの事件につきまして、世の中の人は大変な疑いを持っておるようなんです。つまり、小さな問題を大きくしてしまったのではないかというふうに疑う人もおるし、あるいは政治的な一つの問題としてこれをとらえていく人たち考え方は、捜査のやり方がまずかったから、結局明らかにするものが明らかにされなかったというふうにおっしゃる方も、どうもあるようなんです。  私どもは、人権保障の問題というものは当然法務委員会で取り上げるべき問題だと思いますが、いま私は、ここであえて人権保障の問題は取り上げません。これは非常に誤解を招くので取り上げませんが、このたびのこのいろいろの捜査のやり方あるいは決着のつけ方というものに、国民側としては何となく割り切れないものを非常に感じておることは事実でございます。こういう点につきまして、法務省ではどのようにお考えでしょうか、お尋ねします。
  122. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもは、どうもそれを論評する立場にございません。
  123. 飯田忠雄

    ○飯田委員 こうした問題につきまして、法務省におきましては、法務大臣にお伺いした方がいいかもしれませんが、どのような今後の処置を講じていくべきだというふうにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  124. 古井喜實

    ○古井国務大臣 今回の問題につきましては、捜査当局はやれるだけのことは全力を尽くしてやったと思っております。それに対しては、別に何らかの圧力とか、そういうものが加わったとは思っておりませんし、全く捜査当局が自分たちの責任上の立場から捜査を遂げたと思っております。  その結末につきまして、純朴、素朴な国民の受け取り方は、これは大体罪になるとかならぬとかいう、犯罪とかそういうことに限って何も国民は考えていると思いません。ですから、そういう意味では何か飽き足らぬなというか、割り切れないなというような感情が残ったのじゃないかと私は思うのです。これは法律問題とかいうことの枠の中での問題じゃない、全体としての問題だと思います。  法律問題の関係においては、まずこれは手は尽くした、その結果がああだった、あとは国民が求めておるのは、政治的なあるいは道義的な関係であって、そこまでひっくるめて国民は考えてみているのじゃないか、そういう関係になるのではないかと私は思っております。
  125. 飯田忠雄

    ○飯田委員 時間が参りましたので終わります。
  126. 佐藤文生

    佐藤委員長 稲葉誠一君。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 刑事局長お尋ねするわけですが、五月九日の法務委員会で、同僚議員が岸信介氏の事情聴取云々についてお聞きになったときに、あなたが  私としては、お尋ねの人物を調べますとか調べませんとかいうふうに申し上げるわけにいきませんけれども調べる必要がないというふうにお答えした範囲には含まれない方だというふうな程度で御了解をいただきたいと思うわけでございます。 こう言っているのですね。これはどういう意味なんですか。余りうま過ぎてというのかどういうのか、回りくどいというのかよくわかりませんが、どういうことですか。
  128. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 国会から告発のありました海部氏の偽証の関係に関連しまして、海部メモの問題があるわけですが、その海部メモには岸前総理というはっきりした記載がございます。そういうことからいたしますと、頭から調べる必要がないというふうに片づけてしまう人ではない、こういうことでございます。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、頭から片づけないでどういうふうに片づけた——片づけたというのは言葉は悪いが、これはどういうふうにしたの。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモをめぐる諸問題につきましては所要の捜査を尽くした、こういうことでございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、岸さんについてはあれですか、事情聴取、呼んでお聞きをすることはしなかったとしても、項目を示して上申書か何かを出して御答弁を願った、こういうふうなことじゃなかろうかと思いますが、そういうふうなことでしょうか。
  132. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 特定の人から事情を聞いたとか聞かないとかいう点についてのお答えは、御容赦いただきたいと思います。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だけれども、聞かなければ——聞くというよりか、いまの聞いたという言葉が悪ければ、上申書か何かで答えてもらったというか、何かそういう形をとらなければ、いまの聞く必要がある範囲内にあるのだというような意味答弁とは、矛盾するのじゃないでしょうか。
  134. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 冒頭にお読み上げになりました速記録につきましては、その前に私があいまいもこたるお答えをいたしましたところが、岸氏を調べないことを示唆したというような報道がされまして、これではちょっと困るというので、言葉は悪うございますが、苦し紛れにそれを訂正させていただいたわけでございまして、そのことをとらえられまして、調べたかどうか、上申書を出させたかどうかというふうにお尋ねいただきましても、私、そういった点についてお答えできませんので、はなはだ窮地に立つわけであります。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃ、岸さんとかなんとかという名前は出しませんね。  海部メモに記載されておる名前の方については、事情聴取をされるなりあるいはそれにかわる方法をとられて、海部メモの真偽ということについてお調べになった、これはあたりまえのことですが、そういうふうなことならばお答え願えるのじゃないでしょうか。
  136. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモの中には事実と相違する記載があるわけでございますが、そういう事実と相違する記載としてお名前の出てきておられるような方については、必ずしも事情を伺う必要はない、事実と合致する部分のところにお名前の出ている方については、調べないで済ませることは適当でない場合が多いであろうと思います。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、七月二十三日にサンフランシスコで海部さんと岸さんとフォーサイスが会ったということは事実でしたね。そこからずっと引っ張って考えると、あなたのお答えは自然に出てきた、こういうふうに理解してよろしいですね。
  138. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いかようにも御理解いただいて結構でございます。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いかようにもと言ったって、ぼくの言うのは正しいよ。それでなければおかしいものね。  そこで、七月二十三日の海部メモのサンフランシスコのこれについて、これはどういう経過で、お二人が一緒にフォーサイスのところへ行ったんですか、そこら辺のところをもう少し事情調べないというと、それはあれじゃないですか、国民に対して相済まぬのじゃないですか。
  140. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大変広く海部メモというものがコピーによりまして流布されておりますので、ただいまそれに関連するお尋ねでございますので、ある程度突っ込んでお答えするわけでございますが、先ほども申し上げましたように、このシアトルのオリンピックホテルの用せんに記載されましたメモ、これにつきましては、この記載内容を一応吟味いたしておりますが、岸元総理がサンフランシスコに立ち寄られたときに、海部がマクダネル社のフォーサイス氏を連れまして、岸元総理の泊まっておられるホテルへ出向きましてフォーサイスを紹介し、フォーサイスからF4ファントムの性能につきまして説明し、一種の陳情を試みた、こういう経緯のようでございます。  その状況につきましても、事実と異なるところがある程度ございまして、たとえば一等上に中村秘書が同席したようになっております点は、事実と異なるように思いますし、それから「三年間に二百機(五〇、五〇国産化)」とかなんとか、この辺は事実と相違をいたしておりますし、それから「イニシエーション・フィーとして二万ドル支払ひました。」とか、その他「四機輸入の場合の謝礼等フィックスしました。」とかなんとか、こういうようなあたりは事実と相違するようでございます。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、事実と合っているところというのは、百機買ってほしいという陳情を受けたということは、それはそこに出ていないけれども、世上言われておるところのことは合っているわけですか。
  142. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 原文に即して申し上げますと、「拝啓」というところから始まりまして「七月二十三日午前九時より岸前総理中村秘書マクダネル、V・P・フォーサイス、海部、他に日商社員一名を交へて次期戦闘機につき」ここまでが真実のようでございます。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 「次期戦闘機につき」までが真実ならば、その後何かあったのでしょう。
  144. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その点は、先ほど申し上げましたように、フォーサイス氏がF4ファントムの性能等を説明しまして、この導入方について陳情をした、こういうことのようでございます。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから導入方というのは、百機買ってくれということまで出ていたのではないでしょうか。そこまでの調べはできていませんか。
  146. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 捜査内容の詳細をそのままむき出しに申し上げるわけにまいりませんが、捜査の結果を私なりに判断いたしますところによりますと、ここに書いてありますが、メモにあるように「岸前総理より、必ず輸入する旨確認があり三次防として最低百機三年間に二百機(五〇、五〇国産化)する事にしようと確認ありました。」これははったりの記載で、事実とは相違するように思います。
  147. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、はったりの記載だということは、全然ないということですか。ある程度あって、それを上乗せしてしゃべっている、こういう意味でしょうか。はったりというのは普通そういうふうに言うのだな。それは全然ないという意味ではないようだな。
  148. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 陳情をしたことは事実のようでございます。その陳情の中で機数などは出ていないと思います。
  149. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 出ていないと思いますということは、一体どうしてあなたわかるのですか。そんなことどうしてわかるのですか。岸さんに聞かないで、そんなことわかるのですか。海部の言うことだけでわかるのですか。フォーサイスを調べたのですか。海部の言うことだけ聞いて、ああそうですかというわけには、検察庁としてはいかぬでしょう。  それに対応するので、岸さんについて、事情を聴取したかどうかはいいですよ、ぼくは、恐らく電話かあるいは上申書かあるいは秘書か何かの何か出させたのではないかと、こう思います。それでなければ、話はおかしいのではないですか。
  150. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 個々の被疑者あるいは参考人供述あるいは証拠の内容を申し上げることができませんので、それを総合しました私の判断として申し上げているわけでございます。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 岸さんはそれに対して何と返事したというのですか。それだけですか。
  152. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何と返事をしたかということについては、それを申し上げますと個々の供述が出てしまいますから、私が申し上げましたように、陳情をして、それをお聞きになった、こういうことでございます。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、海部さんと岸さんとはどういうわけでサンフランシスコで一緒になるようなことになったのですか、前から何か打ち合わせでもあったのですか。
  154. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 要するに、フォーサイスを紹介するわけでありますから、岸さんがアメリカへ行っておられる機会に、海部がフォーサイス氏を連れて宿へ伺った、こういう経緯のようでございます。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 岸さんがこういう宿に泊まっているということは、どうして海部にわかったのですか。
  156. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういう細かい点までいまちょっと記憶しておりませんが、いろいろなことで調べてわかったのではないかと思います。
  157. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それを受けて岸さんは何をしたのですか。これは受けっ放しですか。
  158. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 陳情を聞かれた、こういうことのようでございます。
  159. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはわかったのですよ。その後どうしたのですかと聞いているのです。
  160. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その後は、別れて旅行されたのではないかと思います。
  161. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはあたりまえの話です。答弁はなかなかうまいね。刑事局長ともなると、なかなか大変だよね。これはあなたの後の刑事局長はなかなか大変だぞ。  別れて旅行したのだろうと思うのだけれども、そのフォーサイスとみんなが、その三人が会ったのは一回ですか二回ですか。
  162. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一回です。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃ、ちょっと質問を変えましょうか。同じところに  中村長芳氏につきまして、この方は調べますとか調べましたとか調べませんとか、ここで申し上げるわけにいきませんけれども、全く関心の外に置いてよろしいという人ではなかろうと思います。 こう言っているんですね。そうすると、関心の中にあって、この人に対してどうしたのですか。これは調べたわけでしょう。
  164. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまお読み上げになりましたとおりでございまして、現実にその方から事情を聞いたかどうか、これは申し上げられません。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 こういう答えが出ているのですから、どうやら問題は出ているというふうに思うわけです。  私どもが疑問に思うのは、岸さんのところへなぜ連れていったのかということです。海部さんがフォーサイスをなぜ岸さんのところに連れていったのかということについて、海部さんはどういうふうにしゃべっているのですか。これは事件には関係ないわけでしょう。直接その事実に関係ないのですか、あるいは起訴事実の発端として冒陳に出てくるところでですか。どっちなんですか。
  166. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモについて全く関知していないという海部氏の証言が偽証に問われておるわけでございます。  そのほかに、福田赳夫氏からの名誉棄損の告訴がございまして、この福田氏の名誉棄損の告訴の内容は、もう一枚の海部メモに関するものでございますけれども、二枚一緒に出回っておりますから、ある程度その内容の真実性を確認せざるを得ないわけであります。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでは、いずれこの問題についてはまた別の委員会でやろうと思います。きょうは刑事局長はよく答弁してくれた方ですね。ぼくもそう思う。いままでよりも、きょうの方がよく答弁していますね。  そこで、大臣に別のことでちょっとお伺いしたいのですが、金大中氏の事件、これについて、事実についてのあなたのお考え、それから、日本政府のこれの処理の仕方のお考え、これについては、大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  168. 古井喜實

    ○古井国務大臣 この問題につきましては、もう予算委員会などでも、大分前になりますけれどもお話があったりいたしましたが、とにかくいままでの経緯において政府として政治的な決着をつけて、これで政治的、外交的に済んだということにしたわけであります。二回にわたってそういうことになっておりますね。  そういうことでありますから、この政府の決着については、これは私どもとして尊重しなければいかぬ、こう思っております。ただし、また別個の新しい事態、事柄がはっきり起こればということは残っておりますが、いまの政治決着をまず尊重する、こういうことできょうは考えております。新しいことが起こるか起こらぬかは、また究明されてわかってくることだろうと思いますけれども、きょうははっきり新しい事実が起こった、確認された、こういうことには私は聞いておりませんので、いまのようなことでおるわけであります。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは後でまた別な機会にいたします。  そこで、ちょっとあちこちちょん切れて申しわけないのですが、ソウル地下鉄の問題に関連して、私の理解しておるところでは、日本に還流した金、フレーザー委員会の報告では、百二十万ドルと百万ドルと三十万ドルですね。これは国税庁の方、それから刑事局長もお考えください。そのほかに別枠に、全く別に百万ドルの資金が流れている。それで初めの百二十万ドルというのは、フレーザー委員会の報告では、これは使途は出てますね。それからこの百万ドルについては、国税庁の方の捜査ではというか、コマーシャルベースの金ではないかというふうに認識しておる「こういうふうに言っておられますね。  そうすると、三十万ドルの資金の流れについては、これは四十八年の五月に四回に分けて入金されておって、ただこれの出金等については、その当時の出金に関する伝票等が欠落しておる。それからもう一つ、全く別の百万ドルの資金  この百万ドルがどういうものであるかということについては全く見当はつきませんけれども、ただこの百万ドルにつきましても、その出金関係の伝票等は欠落いたしております。 これが、ことし二月二日の予算委員会における磯邊国税庁長官の答弁ですね。  だから問題は、このフレーザー委員会の報告にある三十万ドルと全く別個の百万ドル、この問題が解明されていないということになると思います。それについて国税庁の方では「現在まだ調査中であります。」こういうふうなことを言っておりますので、二月二日以後の調査内容について御報告をお願いをいたしたい、こういうふうに思います。
  170. 西野襄一

    ○西野政府委員 お答えいたします。  ただいま稲葉先生から御指摘のございました三十万ドルと、それからコマーシャルベースではないところの百万ドルの件につきまして、お答えをさせていただきます。  先ほどお話のございましたように、三十万ドルにつきましては、韓国外換銀行ニューヨーク支店から同行の東京支店の口座に四回に分けて入金をされているわけでございますけれども、これらの出金に関しまする帳票類の保管状況がよくございませんで、その先の出金の行方というのが把握できない状況にあるということでございます。  それからまた、フレーザー委員会が指摘されましたのとは全く別に、韓国外換銀行ニューヨーク支店から韓国外換銀行の東京支店の口座に百万ドルの資金が入金されている事実を突きとめたということを申し上げておりますけれども、これにつきましても先ほど申し上げました三十万ドルと同様でございまして、この出金に関する帳票類の保管状況がよくないということで、出金先の把握が現在までできない状態でございます。  こういったふうな状態につきましては、韓国外換銀行に対しまして関係帳票類の提示を強く再三求めてきたところでございますけれども、韓国外換銀行の東京支店の方では、この関係帳票類を探索中であるというふうな答弁が返ってきているということでございまして、まだその提示がございません。そういうことで調査は進展をいたしておりません。以上でございます。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで刑事局長お尋ねをするわけですが、いまの三十万ドルと別個の百万ドル、この二つの金が還流してきて、どこへ流れたかわからない、こういうふうなことですが、それに関連をして、去年の二月にあなたが検察当局も深い関心を持っておるというふうに表明されたように聞いているのです。  そこで、検察当局のこれに対する対応の仕方をお尋ねしたいのですが、私の聞いている範囲では、数次にわたって、これに関連をしていろいろのお調べをある程度なさっておられたように聞いてはおるのですが、検察当局として、どういう態度をとってきたかということですね。
  172. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまも御指摘がありましたように、検察当局関心を寄せておったわけでございまして、現在でも関心を持っておるわけで、結局、捜査を開始いたしますためには何らかの犯罪の容疑がなければなりません。その前提として、御承知のとおり捜査の開始前に内偵という準備段階があるわけでございますが、そんな段階で現在まで推移しておるようでございます。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、国税庁にお聞きしますけれども、この調査をやっている中で、東京地検の方と連絡をとっておるわけですか。だから、恐らくこれは令状を持って家宅捜索もまだ何にもやっていないわけですね。  あなたは、不完全だ、不完全だと言うけれども、不完全を通り越して、ないのじゃないですか、その帳簿類が。肝心なところの出金関係がどこかへ行っちゃったのじゃないの。だから検察庁とどういうような連絡をとってやっているかということが一つ。  それから、なぜ家宅捜索をやらぬのかということですよ。
  174. 西野襄一

    ○西野政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、三十万ドルと百万ドルの金の意味につきまして、帳簿に載っているということは確認をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう意味で私どもの税務調査におきましては、この韓国外換銀行の所得計算につきましては、正しく記帳がされているということでございまして、そこに税金が漏れているとかというような事実には結びついておらないわけでございます。  そういうことでございますので、一般の税務調査として調査を行っておるところでございます。  検察当局について、こちらの税務の方から手続をとるというのは、犯則調査に関して手続をとるということでございまして、そういうことには結びついておりませんので、検察当局には連絡はいたしておりません。  以上でございます。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、それは手続をとるときに連絡をするのじゃなくて、普通その前に連絡しておいて、最終的に検察当局と連絡をするわけですね。実務上そういうふうにやっておるわけですが、それはいいとして、刑事局長にくどいようですが念を押します。  いまのソウル地下鉄の事件は、一部に伝えられておりますのは、何か贈収賄の立件を時効と職務権限の壁で断念したというふうに伝えられていますね。そういうことはない、まだ捜査の前の段階の内偵中だ、こういうふうに承ってよろしいわけですか。
  176. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先般一つの新聞に虚報が流れましたが、そのようなことは全くございません。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いやいや、虚報というのは何が虚報なんだい。贈収賄立件を断念したということが虚報なのかね。それから、何とかどこかに金が渡ったということが虚報なの。どこかへ金が渡ったということはまだ調べていないんだから、虚報とかなんとかということは言えないでしょう。どこが虚報なの、これは。
  178. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 書いてあることが大体虚報であろうと思います。  実際は先ほどお答えしたとおりでございまして、どういう観点からそういう記事ができ上がるものか、はなはだ興味深く思っておるわけであります。
  179. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 記事のことはまあいいのですが、私が聞くのはそういうことではなくて、そうすると、この三十万ドルと百万ドルの件については、なお内偵中であるということをあなたが言われたのだから、だから贈収賄立件を断念したということは虚報なんでしょうね、こう聞いているわけですよ。
  180. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その部分も虚報であります。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その部分も虚報であるというと、ほかの人に金が渡った分も虚報だということになれば、あなたの方で調べたということでしょう。調べなければ、その金が渡ったところの点が虚報であるかないかわからぬでしょう。調べたということでしょう。調べた結果、その点についても虚報だったということなんですか。調べないけれども虚報だ、こう言うんですか。
  182. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私は一べつをして、こう斜めに見まして、もう全然取るに足らない記事であるというふうに思いましたので、その一行、一行をただいまのように御指摘いただきますと、当惑をするわけでございますが、検察当局としては、先ほど申し上げたような段階でございます。  たとえば贈収賄の嫌疑があるのかないのか、そういうことがもしあるとすれば、すぐもう捜査の対象になるわけですから、捜査が始まります。しかし、そういうことにはなっていないということを申し上げているわけであります。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、大臣もう一つ。  田中伊三次さんがいるといいのですが、またもとに戻ってしまいますけれども、何か金大中事件で新しい証拠が出た云々とかいう話がありましたが、「公研」というのの五月号に、田中伊三次さんが「金大中事件”秘話”」としてこう言っているのですね。これを読んでみますから、お聞きになっていてくれませんかね。 ——金大中事件も、印象に深いんじゃないですか。これは四十八年の八月八日。そのときの法務大臣ですね。   田中 そうです。そのときに某高官が、ノックもせずに法務省の大臣室へ入ってきた。名は言えないが秘書官も通さず入ってくる人だから、よっぽど大物に違いない。   「大臣、たいへんですよ、金大中が拉致されました」「ほー、金大中、聞いたことあるな、どんな男や」「どんな男じゃありませんよ、有名な朴大統領と鎬を削って争うた、前の大統領候補ですよ」「反朴やな」「反朴です。それが拉致された。どこへ行ったかわからん。多分殺されるでしょう」と、こう言うんだね。   「犯人の見当はついてるのか」と言うたら、私のそばへ寄って来て、低い声で「韓国政府ですよ、韓国政府が朴大統領の機嫌をとって、殺すんですよ」と、こう言うから「そんなことは俺は聞かんことにするよ、よしよし」ということで、私が便所へ行くときに出て行く出口があるから、「こっちから帰れ、もう二度と来るな。電話でなんでも話ができるじゃないか」ということで帰した。これが”第六感”の根拠になったものですよ。うら話だね。   それから数時間たったら、こんどは電話がかかってきた。私の知り合いの、日本の韓国居留民団の中の反朴——親金大中だな。「大臣、ご安心下さい。殺されないことだけ保証できます」と。「どこからそれを知ったのか」「某大国の秘密警察が、殺してはいかん、と韓国秘密警察に指令を出した。その結果、殺すのはやめます、という返事があった。これで殺される心配はないですよ」と。殺して海中に捨てようという考えだったようですね。   その翌日国会に呼び出され、私の所見をきかれたので、私の第六感では、この事件は、某国国家機関の仕業であること、正に間違いはないと答弁した。それが第六感発言ということで大騒ぎになり、「第六感の根拠を言え」というから「根拠がないから第六感なんだ。私の第六感による発言の内容は、後日に至って調べれば調べるほどこれは的中してくる一これだけは間違いない」と答弁した。   爾来、指紋も出てきた。大体の経路も見通しがついてきた。某国政府の国家機関と言ったが、それは国家機関中の国家機関でした。思い出の深い話ですね。   ——この問題の決着のつけ方が曖昧ですが。   田中 それは話にならんですな。日本政府の主権の及ぶ領土内に存在しておる人間を、日本政府の了解なしに、外国の国家機関が身体を拉致する。殺しておらんからいいようなものの、これは主権の侵犯ですね。そこに本件の重要性がある。それを指紋まででているのに「この指紋は犯人の指紋であることは否定しないが、犯行とは関係がない」などと韓国に言われて「ああ、そうですか」と言って引き下ってくるような政治決着はお話にならん。   これほど筋の通らん話は、近代政治の上にないですよ。外国に荒されて文句が言えない。そんなばかな話はない。 こう言っているのですね。これはきのうあなたに差し上げておいたから、お読みになったと思うのですが、いま読んだことに対して、大臣の御感想といってもあれかもわからぬけれども、どういうような感じをお持ちですか。ひとつフランクにお話しを願いたいと思うのですね。  ことに第一と第二に分けて、事件事実と、それから前にもちょっと聞きましたけれども、第二の——田中さんはっきり言っていますね。こういう決着のつけ方はけしからぬと言っているのですから、その点について、大臣からもう一遍お答え願えませんか。
  184. 古井喜實

    ○古井国務大臣 田中伊三次先生は、自分でも自信を持っておられるように、第六感のすぐれた人のようでありますから、御発言は大きにわれわれも参考として、よく玩味して、なお読み直してもみたいくらいに思います。  ただ、政治決着の問題はさっき申し上げたとおりでありまして、はっきりした新しい事実が確認されたということは、まだ私は聞いてもおらないししますので、きょうのこの段階においては、政治決着は政治決着というふうに、これを尊重するという以外にはない、そう思っております。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最後に一言だけ。  いまの、きょうの段階ではというところに一つ意味があるというふうに、私なりに理解をしてよろしゅうございますか。
  186. 古井喜實

    ○古井国務大臣 それほど深い意味があって、いまの段階と言ったわけじゃない。  きょうまでのところ、新しい事実が確認されたということは私はまだ聞いておらぬ。将来のことはそれはわかりません。なおまた、そういうことがあったということが出てくるかどうかは、この瞬間までのところで、まだ聞いておらぬということであります。
  187. 佐藤文生

    佐藤委員長 正森成二君。
  188. 正森成二

    ○正森委員 先ほど来同僚委員が質問をしておりますが、単数政治家に、昭和四十二年から四十六年にかけて約五億円、日商岩井からお金が渡されたということはたびたびおっしゃいました。  そこで念のために、昭和四十二年の始期と四十六年の終期ですね、月までおわかりであろうと思いますから、それだけはおっしゃっていただきたいと思います。
  189. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 申しわけありません。始期はちょっと込み入っておりまして、いま簡単にお答えできないのですが、いま資料を探します。  終期は四十六年の終わりごろでございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 これからの公判の必要上おっしゃれない点があると思いますが、その単数政治家というのは、伊藤刑事局長防衛庁長官を経験したことのある方ですか。
  191. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういう人名を特定するような事項については、御容赦いただきたいと思います。
  192. 正森成二

    ○正森委員 私は人名を特定してないので、防衛庁長官というのは歴代二十人余りおりますから、防衛庁長官を経験した人ですかと聞いているのです。
  193. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何ともお答えいたしかねます。
  194. 正森成二

    ○正森委員 国民の知る権利に対して、実際上新聞にはあれほどリークしておきながら、国権の最高機関である国会に対して、それぐらいのことも言えないなんというのは、私は非常に遺憾であるというように言うておかなければならぬと思うのです。  そこで伺いますが、あなたの方の御説明でありますと、このお金は四十二年から四十六年の間に出たのだけれどもRF4E事務所経費日商岩井が言っている二百三十八万ドルで穴埋めをされたのだという御説明であります。われわれの調べでは、検察調べでもそうだと思いますが、RF4Eというのは昭和四十八年から五十三年にかけて事務所経費が支払われたと聞いておりますが、そうですか。
  195. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 おおむねそのようでございます。
  196. 正森成二

    ○正森委員 そうだとしますと、四十二年から、始期は後で調べお答えになるということでしたが、四十六年の終わりまでに支払われたことについて、四十八年以降でなければ埋め合わせをしないというのは、会社経理の上からいっても、いかにも不自然であります。  私らが理解しているのでは、アメリカへも行って調べてまいりましたが、四十四年からすでにF4Eファントムについて毎年二十万ドル、為替レートから言いますと約七千二百万円の額が、マクダネル・ダグラス社から売り込みについての成功報酬として払われておるわけであります。  また、御承知のように、三菱がライセンス生産をしておりますが、委託買い付け業務についての契約を日商は結んでおりまして、おおむね四十四年から現在に至るまで手数料を受け取っております。その額は、われわれの調べでは約七億九千万を下らないであろう、こう言われているわけであります。そのお金も四十四年から入っております。しかるに、そういうところから埋め合わせをしないで、わざわざ長い間たったRF4Eから埋め合わせをするということは、会社経理上も理屈の上からも、なかなか納得しがたいことなのですね。  そこで、果たしてそれがそうなのかどうか、なぜそんなことが行われたのか、国民にもう少しわかるように答えてください。
  197. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまの問題にお答えいたします前に、お断りいたしますが、先ほど五億円の始期についてちょっと調べてみると申し上げましたが、四十二年の秋ごろからでございます。  それからもう一つ、先ほど特定の名前をリークしておきながらというようなお話がありましたけれども、そういうことは全く心外でございますので、お返しをいたしておきます。  それから穴埋めの問題でございますが、お尋ねでございますので、率直にお答えいたしますと、ただいまF4ファントムの成功報酬、毎年二十万ドルという御指摘がございました。これがたしか全部で百九十八万五千ドルになっていると思います。実はこの五億円の穴埋めは、当初このF4ファントムの成功報酬で埋めておったのです。ところが額が多過ぎて埋め切れないというところから、RF4E事務所経費名義の二百三十八万ドルが出てきた、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  198. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、F4Eファントムの毎年の二十万ドルで埋めていた時期もあるというように伺ってもよろしいですか。
  199. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その一部で順次埋めておった時期もございます。
  200. 正森成二

    ○正森委員 五億円の点について、先ほど同僚委員の質問に対して、時効というよりはむしろ職務権限がないようにとれる答弁をされました。  確かに昭和四十二年というと、われわれが思っている松野頼三氏でありますと、すでに防衛庁長官をやめておりますけれども、しかし仮に、あなたがお答えにならないから質問の仕方がむずかしいけれども防衛庁長官の在職中に職務権限関係のあることについても依頼を受けておって、あるいは陳情を受けておって、そして四十二年の秋になってからお金を受け取ったということになれば、これは今回のロッキード事件でも、請託を受けたときには運輸大臣あった、しかし金をもらったときには運輸大臣はやめておるという人は、ばっちり職務権限があるということで起訴をされている例があるわけであります。ですから、時効の点は別として、一概に職務権限は全くなかったというように言い切るには非常に大きな困難がある。少なくともそれを言い切るためには、犯罪捜査と同じだけの詳細な捜査をしてからでなければ言えないことであるというように私は思いますが、いかがです。
  201. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確かに一つの御指摘であろうと思います。     〔委員長退席、鳩山委員長代理着席〕  検察当局としては、職務権限の問題がまず外れるというふうに判断しておるわけでございますが、当面の問題になっております海部氏と、私が申し上げております単数政治家が知り合いました時期がこの四十二年に接着しておりまして、そういう諸般の状況から、ただいま私は固有名詞は申しませんし、正森委員は固有名詞をお挙げになりまして、その辺にそごがございますけれども、そごしながらも御指摘になりましたような関係には認められません。
  202. 正森成二

    ○正森委員 私の方はある程度名前を挙げなければ、そもそも質問にならないわけで、だから、そこら辺は理解されて答弁をしないと、余りかたくなな態度をとっておると質問にも何にもならないと思うのです。そこら辺はわれわれもある程度考慮して言うているわけですから、あなたも余りかたくならないで答えていただきたいと思うのです。それぐらいは刑事局長としても、法務大臣からも総理からも許されると思うのです。心配しなくてもいいです。  そこでお伺いしますが、あなたは秘密理事会で言うておらないというように答えましたね。確かに五月十五日の衆議院の理事会では言われませんでした。私はそこにおりまして全部メモしておりますから、詳細に存じております。しかし念のために、こういうことはかた苦しく言うつもりはありませんが、あなたが衆議院では秘密理事会にしてくれと言われたので、あなたもおられたから居眠りしておらなければ御記憶だと思いますが、私は、自分は国会議員団の一員だから国対委員長に報告する、それもできないようなら伊藤刑事局長の報告は聞く必要がない、こういうように言いましたら、伊藤刑事局長は、いやこれは三時半から検察が記者会見をするので、それまで外にお漏らしにならないようにということでございますということをお答えになったので、それではということで続いたわけですね。  ですから、あなたが秘密理事会で言ったことがちょっと漏れるのはどういうことかと思うというのは、少なくとも衆議院に関する限りは理由がないというように思いますが、その点をはっきり答えてください。
  203. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 恐らく衆議院の理事会はそういうお扱いになったものと思います。  したがいまして、先ほど私が申し上げましたことが正確でなかったとすれば、おわびをいたします。参議院の方は、明らかに秘密理事会というふうに、そういうたてまえで話すようにという委員長からのお話でございました。もっともそのときも、この扱いはまた後で相談をしようなどということも二、三の方が言っておられましたので、どうなったかよくわかりません。
  204. 正森成二

    ○正森委員 いまの点は国会のやりとりですから、それ以上はあなたには責任がないことであります。  しかし、それを前提にして申しますと、あなたが、衆議院では言われませんでしたが、参議院の理事会の中で、五億円の先について、大体わかっております、その中に政治家はいるのか、政治家はおります、数は多くありません、こういうように答えたというのは、参議院の理事確認しているのですね。私は、先ほどあなたの答弁があったから、伝令を走らしてもう一遍確認した。そうすると、参議院の野党の理事である野田哲委員は、あなたの言われたことを書いたメモまで持っておるというのです。またわが党の神谷委員も、十分に記憶しておる、こう言うのです。ですから私は、参議院でこう言ったから言いなさいというような言い方はしませんけれども、五億円の先の中に何人かの政治家がおるということは事実ではありませんか。
  205. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、五億円の行き先についてはほとんど解明されておりません。したがいまして、その先に特定の政治家の名前が出ておるとか、あるいは政党の名前が出ておるというような事実はございません。
  206. 正森成二

    ○正森委員 公式にはあなたはそういうぐあいに答えるでしょうけれども、参議院の理事会では明白にそういうように答えておるということで、あなたが、すでに調べておることについても、法務委員会においては国民の知る権利にこたえておらないということを非常に遺憾に思います。  したがって、われわれは捜査結果についての質疑としてこの委員会は持っておりますけれども、いま法務大臣がいないから、出てこられたら改めて伺ってもよろしいが、ロッキード事件のときにも、灰色高官の問題については相当詳細に報告を受けております。そういう点から考えて、現在の法務省、検察の態度は非常に遺憾であるということを言うておかなければならないと思うのです。しかも、国会の航空機特別委員会で報告したことについては、刑事局長たる者は一定の責任を持たなければならぬ。そこではああ言い、こちらではこう言うというようなことは決していいことではない。しかも、これを秘密にするかどうかの扱いは、参議院では相談をするということで、確実に秘密でなければならぬという約束のもとでなしに言うておることですから、それについては責任を持ってやはり答えるべきことは答えていただきたいというように申し上げておきたいと思います。  そこで、次の問題に移りたいと思いますが、あなたは先ほどから海部メモについてお答えになりました。そこで、海部メモについて伺いますが、この名あて人は川崎重工業の砂野社長であります。同僚の大出委員からもお聞きになりまして、あなたは、あの聞かれたときには、まだ微妙な問題があるので御容赦願いたいということでしたが、この砂野社長あての手紙というのは届いているのですか。
  207. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確認できません。
  208. 正森成二

    ○正森委員 それは現在でも確認できないのですか。それとも、確認しておるけれども、まだ公判の必要上答えられないということですか。その二つは重要に意味が違いますよ。
  209. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 きょう私は、公判の関係お答えできないというようなことは、一つも申し上げなかったのでございまして、なるべく申し上げようと思っておるのです。  今日ただいまでも、届いたかどうかは確認できておりません。
  210. 正森成二

    ○正森委員 あなたは、衆議院の航特では、この手紙はいろんな商売上の戦術的な意味をもって作成された、当時川重に日商岩井は大型クレーンを売り込もうとしておるので、虚勢を張ったものだと思われるという意味のことを言われたと思います。幾ら大型クレーンを売る必要があったとしても、ここまでの内容のことを言うというようなことは、そのためだけだとしたら、私は常識的には考えられないと思うのですね。  あなたは、一九六五年の七月二十三日に岸元総理海部八郎、フォーサイス、ほかに日商社員一名を交えて、次期戦闘機について、FXの輸入について、性能の説明並びに陳情があったということだけは認められたと思うのですね。しかも、ここに書いてある四機輸入とかあるいは百機をライセンス生産するとかいうようなことは、その後皆事実として実現しているのですね。  ですから私は、単なる陳情ではなしに、この内容相当部分が話し合われたのでなければ、こういう文書は作成できないはずであり、まして砂野社長に送るなどというようなことは、商売上の信義からいってもできないことである。単に大型クレーンを売り込むというためだけなら、こんなことは普通はやることではない、これは常識だと思うのですね。  また、大型クレーンを売り込むためであるとすれば、これは砂野さんに通じているはずですね。砂野さんに渡ってなければ、大型クレーン売り込み作戦の商売上の戦術だとしても、それは意味のないことなんですから、だから相手に届いているはずだ。届いているとして、全くのうそ八百を書くとすれば、かえってそれは商売上の信義に反することだ。しかもこの内容は、おおむねその後実現しておるということになれば、この内容に近いことが話し合われたというように見るのが自然じゃないですか。
  211. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私は、いろいろ捜査の結果の報告を聞いた、それを総合して判断を申し上げておるわけでございまして、ただいま御指摘のような推理というのも、一つの推理であろうと思いますが、私は、なるべく事実に即して申し上げているつもりであります。
  212. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、あなたは、依然として、百機の問題あるいは四機の輸入の問題は、その席では出ていないというのですか。しかし、出ていないというためには、先ほど稲葉先生からもお話がありましたが、海部八郎とフォーサイスと岸氏の三人で、中村は同席していなかった。そうすると、残りは、ほかの日商岩井社員一名であります。  そうすると、海部八郎から聞いたことだけで断定するということはできないはずですね。ほかに日商岩井社員一名、それからフォーサイス。岸氏は別として。そういう人から何らかの供述を得ていなければ、そんなことは話し合われていないということは断定できないはずであります。フォーサイス氏とは特定しませんけれども海部八郎氏以外から、その点について何らかの確認をされているのですか。供述内容は結構です。
  213. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど私、海部メモに書いてある中村秘書というのは事実と相違するというふうに申し上げましたが、それではそういった性格の人がいなかったというふうには申し上げていないので、何人かの人がいるわけでございまして、いろいろ必要な捜査を尽くした上での、その結果についてお話ししているわけです。
  214. 正森成二

    ○正森委員 それでは、中村秘書はいなかったけれども、ほかに聞くべき人が同席したことは否定しない、それらの人から聞いておるというように承りたいと思います。  それでは、海部メモの二枚目についてですが、これは、それらのお金政治家には渡されていないというのが、航空機特別委員会での御説明でありました。  そこで伺いますが、これらのお金が海外に送金されたことは事実ですか。
  215. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 このメモは事実と相違する部分が少のうございまして、事実と相違する部分を読みますと「松野、福田両氏に対する」という部分と「岸氏より」という部分が事実と相違いたしております。  そのほかは、この記載内容はおおむね事実でございまして、それぞれの銀行へこのとおりお金が送られたことがおおむね確認されております。
  216. 正森成二

    ○正森委員 それでは、送られたことの確認がございましたが、政治家に渡されていないというあなたのお言葉の中には、政治家の秘書やあるいは政治家の秘書が関係している会社は含まれるのですか、それとも含まれないのですか。
  217. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 まあ、とにかく政治家ではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  218. 正森成二

    ○正森委員 政治家ではないということですから、政治家の秘書や政治家の秘書が関係する会社は送られたかもしらぬというお答えだと、私は、日本人として普通に日本語を解釈して、理解しておきたいというように思います。  しかし、そうだとすると、この事件のいろいろな経緯から言えば、それは実際は政治家に贈られたのと同じことなんですね。一説には、これは某々秘書に贈られたとかあるいはジュッセルドルフの何々館に贈られたとかということが言われているわけで、ある巨悪の人が、ろ過器を通さないでお金をもらうということはいけないのだ、ろ過器を通さないから引っかかるのだと言っている。まさに、ろ過器のところで検察がやめてしまったということにならざるを得ないと思うのです。私は、もしそうだとすれば、そのことは非常に残念であるというように指摘しておきたいと思います。  そこで、次に伺いますが、F4Eファントム売り込みのために、昭和四十年、四十一年に怪文書が乱れ飛びました。そして防衛庁の人事に介入を行ったわけですが、それについては、その怪文書を頒布した者だけは二、三名逮捕されて、当時裁判にかけられましたが、その背後関係については、ついに明らかになりませんでした。  現在の時点では、それは日商岩井が介入したということ、あるいは海部八郎氏もしくは島田氏も関与したということが明らかになっているはずでありますが、それはいかがですか。
  219. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 正確を期する上からは、もっと他の言い方をしなければならぬかもしれませんが、ただいまの御指摘のような感じでございます。
  220. 正森成二

    ○正森委員 日商岩井が背後で介入をしていた、あるいは関与していたということは明らかだと思います。  もう一つ伺いますが、E2Cを含む8Kレポートについては、犯罪の容疑がなかったということを御報告になりました。しかしE2Cについては、四十二年から四十六年にかけて五億円のお金が流れていた真っ最中の昭和四十四年八月に、住友商事から日商岩井に商社変更がされております。それはSECの報告では、日本政府高官の示唆によって、商社変更が行われたということになっているわけですね。その日本政府高官というのは判明いたしましたか。その方と五億円を受け取られた方とは関係がありますか。
  221. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 商社の変更そのもの、これが犯罪になるわけではございませんので、その関係で名前が出てくる一人の政府高官の名前を申し上げることは、控えさせていただきたいと思います。
  222. 正森成二

    ○正森委員 あなたのお答え意味もわからないではありませんが、それでは、もうしばらく聞いていきましょう。  日商岩井とハリー・カーンとの間にいわゆる密約があったと言われました。これについては島田常務が、ことしの一月二十五日に、その密約は確かに存在した、日商岩井の取り分のうち四〇%をハリー・カーンに渡す約束であった、こう言っております。そしてSEC報告によれば、その四〇%からさらに、SEC報告では四〇%とは言っていないけれども、さらに一人もしくは数名の日本政府高官に渡る可能性があった、こう言っているのですね。そうだとすると、これは非常に贈収賄事件の疑いが濃いわけですね。もし約束が行われていれば、約束罪として、少なくともその時点では犯罪は成立しているはずであります。時効になっているかどうかは別です。ですから、この問題については、あなた方は真剣にお調べになったはずであります。  そこで私は、そういう点とも関係して、こういう密約は確かにあったのであろうか、そして恐らくそれと密接な関係のある商社変更に示唆を与えたとされる政治家、その政治家をお調べになったかどうか、つまり突きとめられたかどうかという点について、もしその名前を言えないというなら、その事実だけについてお答え願いたいと思います。
  223. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井とハリー・カーン氏とのいわゆる密約と言われますのは、コンサルタント契約であるわけでございます。  当然、ただいま御指摘のように、公表資料に書いてありますように、一人または複数の政府高官に金が流れる可能性があったということが現実的な問題であったといたしますと、約束だけいたしましても贈収賄の構成要件に当たる場合がありますから、その点は十分詰めておりますが、何ら具体性がなかったということのようでございます。
  224. 正森成二

    ○正森委員 ほぼお答え願いましたが、重ねて伺います。  商社変更について一人の日本政府高官の示唆により、こうなっておりますが、名前は結構ですが、その点についてもお調べになりましたか。
  225. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 おおむね明らかになっております。
  226. 正森成二

    ○正森委員 私は、航空機特別委員会で前回伺いましたが、「グラマン社は日本政府の一人あるいは複数の人物から同社が抱えているアメリカ人コンサルタントどの取引をやめるべきだといわれたと話していた。」これは一九七八年にグラマンがハリー・カーンとの契約を解除した、それに絡んでハリー・カーンがある新聞社に述べたところであります。  私がそれを伺いましたら、伊藤刑事局長は、原田検事もアメリカに派遣しておることであり、その点は抜かりなく調べていると思うというようなことでございましたが、もしお調べでありましたら、言える範囲で、その点について答えていただきたい。
  227. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 原田検事が帰ってまいりまして、いろいろ聞いてみますと、同検事が直接アメリカ在住の人たちから事情を聞いたという、そういう活動は一切しなかったようでございます。彼が行いました捜査活動に類することがあるとすれば、すべて司法省にお願いをしてやっていただいたようでございます。
  228. 正森成二

    ○正森委員 その結果はいかがでしたか。
  229. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどの質問、ちょっと忘れてしまいましたので……。
  230. 正森成二

    ○正森委員 結局、去年あたりに、ハリー・カーン氏とグラマン社との間のコンサルタント契約が解約された。それを解約するに当たっては、グラマン社に日本政府の高官の一人ないしは数名から、解約した方がいいのじゃないかという言葉があったというようにグラマン社から聞いておる、こういうことです。
  231. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういう点もある程度明らかになっておるようでございますが、その政府高官というカテゴリーが多少違うのじゃないかという気もしますけれども、いずれにしろ、その辺は確かめてきておるようでございます。
  232. 正森成二

    ○正森委員 その政府の一人というのは、住友商事から日商岩井に商社変更をするのに示唆を与えた人物と関係があるのですか。
  233. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 それは関係ないと思います。
  234. 正森成二

    ○正森委員 それでは、国税庁がおられますから、国税庁に伺いますが、ソウル地下鉄の問題で先ほど稲葉委員がお尋ねになりました。私も予算委員会で、二、三回質問しましたので、この点について聞かせていただきたいというように思います。  私どもが承知しておるところでは、最初フレーザー委員会が言いました百万ドルと三十万ドルというのはどうやら違うようだ、百万ドルについては、むしろずばり韓国外換銀行のニューヨーク支店から韓国外換銀行の東京支店というところへ、二月一日にS・K・キムという口座に払い込まれておるというように私ども理解しておりますが、そのとおりですか。
  235. 西野襄一

    ○西野政府委員 お答えいたします。  フレーザー委員会が指摘しました百万ドルにつきましては、韓国外換銀行ニューヨーク支店からチェース・マンハッタン東京支店を経由しまして、三井銀行本店、バンク・オブ・アメリカ東京店へと流れたものと見られておりますが、これは全くコマーシャルベースの金ではないかとわれわれは認識している。そういう意味では、先ほど先生がおっしゃいましたこの百三十万ドルのうちの百万ドルにつきましては、違っているのではないかということでございます。だが、残りの三十万ドルにつきましては、このフレーザー・レポートが触れておりますように、韓国外換銀行ニューヨーク支店から同行の東京支店の口座に四十八年に四回に分けて入金されている、これは事実でございます。この出金につきましての保管状況がよくないために、その出金差額が把握できない状態である、こういうことでございます。  それから、フレーザー委員会が指摘しておりませんでした全く別の百万ドルというものが、韓国外換銀行ニューヨーク支店から韓国外換銀行の東京支店の口座に入金されている事実を突きとめたということを、先ほど申し上げたところでございます。この百万ドルにつきましても、この出金に関しまする帳票類の保管状況がよくないということで、その出金先を把握できない状態にある、こういうことでございます。
  236. 正森成二

    ○正森委員 すでに予算委員会で、この百万ドルについては、被仕向け送金案内到達通知書というものを示して大出委員が質問をしております。  そして、それにはS・K・キムもしくはその代理人ということで受取人が指定されておるのだということまで指摘されておりますが、そのことは確認なさいますか。
  237. 西野襄一

    ○西野政府委員 お答えいたします。  S・K・キムもしくはその代理人に支払えというような指示がついておりますのは、三十万ドルについてではないかと思います。
  238. 正森成二

    ○正森委員 この別口であるとされる百万ドルについて、それが実際はSBC、スイス・バンク・コーポレーション、これは三菱商事の本店と同じビルの一階にあって、三菱と非常に縁の深い会社だそうでありますが、このスイス・バンク・コーポレーションのスイスの口座に払い込まれておる、こういう事実を国税庁はつかんでおるのではありませんか。
  239. 西野襄一

    ○西野政府委員 私どもの方では把握をいたしておりません。
  240. 正森成二

    ○正森委員 あなたの方では、正式の査察では把握しなかったけれども、別のルートからの調査でその事実を把握した、あるいは対人間関係でのいろいろの情報を調べている間に、そういう事実を把握したというのが事実ではありませんか。  スイス・バンク・コーポレーション、そしてそこへ送ったのは、S・K・キムがその当時日本にはおりませんでしたから、S・K・キムの代理人として韓国銀行に非常によく顔のきいておる人物、すなわち公的な人物——韓国で公的な人物といいますと、日本におる韓国大使館員である。その韓国大使館員が、スイス・バンク・コーポレーションのある日本人の口座に百万ドルを送金したという事実を、あなた方は何らかの形でつかんでいるのではありませんか。
  241. 西野襄一

    ○西野政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の点は、全く把握をいたしておりません。
  242. 正森成二

    ○正森委員 把握していないということだそうでありますが、私たちのところにはそれと違う情報もありますから、十分に調べていただきたいと思うのです。  そこで検察庁に伺いますが、四十八年の二月に、韓国外換銀行のニューヨーク支店から東京支店に振り込まれたわけですが、それが最終受領者に渡った時期いかんによっては、これはたとえば四十八年の三月、四月ごろ渡っていたとすると、国税の届け出は四十九年ですね、三月十五日。そうすると、五年間の時期がもう過ぎておりますけれども、たとえばこれが法人であるとすると、決算時期によっては七月までまだ時効にならないという点がありますし、もし賄賂性を帯びておるということになれば、請託を受けておる場合あるいは枉法収賄の場合にはもちろんまだ時効は来ていないということになるわけですから、検察としては、先ほど十分に関心を持って内偵しておるということでありましたが、国税庁と連絡を十分にとって、いま私が指摘したような点についても御捜査になる、あるいは内偵をなさるということが必要ではないかと思いますが、どう考えておられますか。
  243. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御質問で御指摘のような点は、検察当局に連絡をしておきたいと思います。  ただ、国税当局と検察当局とが一般の調査案件につきまして接触を保つということは、大局的に見て適当でないと思いますので、検察検察として独自でやるならやりたいと思います。
  244. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので、これで終わらしていただきますが、一点だけ伊藤刑事局長に伺います。  ボーイングの百五万ドルについて、四十七万ドルについて使途不明であるということです。われわれが報道その他で聞いておるのでは、十五万ドルが久保なる人物に、二十五万ドルが島田三敬氏のところにとどまり、残り七万ドルが不明であるというふうに、われわれはマスコミその他を通じて知っておるのですが、四十七万ドルについては解明されたとおっしゃり、かつ、それは政治家に流れていないということでしたので、お答えになれる程度でコンファームしていただきたいと思います。
  245. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私、先ほどお答えします際には、島田氏を入れないで複数の民間人というふうに申し上げたつもりでおりますので、その点御理解いただきたいと思います。
  246. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、島田氏から先の流れもわかって、それも民間人であるという意味ですか。
  247. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 非常に厳密に言いますと、島田氏が亡くなられておりますので、一〇〇%保証はできませんけれども、痕跡の残っておる限り究明しておるところでございます。
  248. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  249. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員長代理 次に、横山利秋君。
  250. 横山利秋

    ○横山委員 金大中事件について、法務大臣に伺います。  きのうの本会議における政府の説明で、言うならば、今回の米国政府の情報の自由に関する法律に基づいた秘密指定未解除の文書を解除したということは、今日まで政府がとってまいりました立場、すなわち大平さんが当時言った、韓国の公権力がわが国の主権を侵したという証拠をつかむに至らなかった、もし証拠が出れば見直しをする。これに該当するかしないかということがポイントだと思うのですが、政府は、これに該当しないから、いまのところもう一遍政治決着を考え直すということにはならぬという趣旨だと理解しますが、いろいろ質疑応答の前提として、まず考え方を明らかにしてもらいたい。
  251. 古井喜實

    ○古井国務大臣 総理が本会議お答えいたしましたとおりで、その後、外交的に韓国に対して問い合わせをしたりなどもしたのだろうと思いますけれども、私ははっきり知りませんけれども、それできょうまでのところでは、公権力が関与したという、しかとした事実が出てきていない、確認するに至っていない。そこで前の、一応政治的に決着がついたのだ、もうこの線のとおりでありますということだろうと思いますし、私もそう思っております。
  252. 横山利秋

    ○横山委員 法務大臣は、外務省情報文化局が発表いたしました五つのアメリカ本国と在韓米大使館との往復文書、全部ごらんになったのでしょうね。
  253. 古井喜實

    ○古井国務大臣 すみからすみまで正確に読んだとまではよう言いませんけれども、大体目を通しました。
  254. 横山利秋

    ○横山委員 「一九七三年八月二十一日 在韓国大使館発国務長官あて」その一部を引用いたしますと  金大中事件においても韓国CIAが関与していることを示す新聞報道は基本的に正しい。   本使は、あらゆる適当な機会をとらえて、韓国の指導者に対し、金大中事件と韓国CIAの活動に対する外部の反応の重大さを認識させるよう内々に働きかけている。 そして  金(大中)等をまきこむ不都合な行動が今後なされないように政府指導層に対し警告している。 これが第一。  第二番目は「一九七四年二月二十二日 在韓国大使館発国務長官あて」これは、金大中が在韓米大使館に庇護を求めてくる可能性があるが、そのときにはなるべく断わるようにするという意味の趣旨。それに対して国務長官が、一九七四年三月八日に「一時的な避難はまた金のような著名人で庇護を求める者にも認めることができる。」つまり、大使からなるべく逃げてきても追っ払うようにするということに対して、いや逃げてきたら一時はかくまえ、こういう意味ですね。  一九七五年一月十日、これが問題の文書でありますが、在韓国アメリカ大使館から国務長官あてに、金東作氏が一月九日、本使つまり大使と会った際に言った内容でありますが、  三木新政権がとった最初の姿勢に極めて満足しており、 さらに  金(外相)は金大中拉致に責任のある在日韓国CIA要員の金東雲は韓国CIAから静かに解任されることになっている旨述べた。申CIA部長は、外相の要請に応えてこの措置をとったところ、金に対して法的措置をとった方が良かったであろうが、これを行うには遅過ぎるとの感触であった。   外相は、本件情報はくれぐれも内密に願いたい旨述べた。                スナイダー スナイダーというのは大使ですね。お手元にごらんのとおりであります。  これは外務省情報文化局の文書でございますが、これが発表されたに際して  これに対し韓国側より、通常外務部長官が韓国駐在の大使と会見した時は記録が作成されるが、本件電報において言及されている一九七五年一月九日の金東作外務部長官(当時)とスナイダー駐韓米大使(当時)の会見の記録は存在しない旨の回答があった。 存在しないということは、いつもは記録はしておるけれども、いまはそれがどういうわけだかないということでありまして、この事実が完全に否定されているとは言えないと思うのでありますが、少なくとも在韓米大使が国務長官あてに打った内容がうそである、自分が会って自分が聞いたことを国務長官に極秘電報で打ったことがうそであるとは思えないと思います。その点はどうですか。
  255. 古井喜實

    ○古井国務大臣 少々お尋ねがむずかしいので、うそであるとは思えないとか、これはそういう見方も立つのでしょうし、まあめいめいの見方だろうと思います。だから、うそと思うか本当と思うか、そこまではどうもちょっとむずかしいと思います。
  256. 横山利秋

    ○横山委員 では大臣、ここのところは、あなた法務大臣ですから、先ほども田中元法務大臣の当時の出処進退についての話が出ましたが、このスナイダー氏がアメリカの本国の国務長官に打った電報、公式の電報ですよ。  しかもその電報は、外務省が正式にアメリカ政府から入手した。そしてそれを確認をした。そこまでが公式的なものですよ。その公式的なものをどう判断するか。それは事実であると、あなたが判断するかしないか、ちゅうちょされる必要はないと思うのですよ。なぜちゅうちょをされるのですか。このスナイダーの打った電報が事実であるという判断に立つのか立たないのか、どうなんですか。
  257. 古井喜實

    ○古井国務大臣 それに対して、韓国の方では記録がない、それは間違っておるとまでは言ってないですけれども、記録がないというのが返事らしいのですね。  記録がない、だからはっきりしない、こういうふうに一方では言っておるのですから、そういう経緯を踏まえて、これをどう判断するかというのは、これは外交にも関係する大事な問題ですから、やはりこの点は外交の関係の責任の方で判断をしておるべき筋合いのものだと思います。
  258. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ、外務省の三宅次長の見解を伺いましょう。
  259. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、お答えします前に、外務省といたしましては、現在、百四十二点、この五点を含めまして膨大な資料全体について検討しております。  そこで、まずアメリカに対しては、この電報の事実を確認いたしまして、この電報を受け取り、現在その膨大なものを検討している。韓国につきましても、この事実を照会したわけでございます。それに対しまして、まず記録がない、それから金東作に確認したところ、本人は記憶がないという回答でございます。  先生御指摘のとおり、それじゃ外務省の判断はいかんということでございますが、あくまでも、これが事実であるかどうかということは、いわば金東作がスナイダー大使に対してどのようなことを言ったか言わないかということでございまして、まずその事実確認を見た上でなければ、私たちが第三者的にこれに対して判断を下すということは適当でないという観点から、まず膨大なものを現在鋭意検討しているということでございます。
  260. 横山利秋

    ○横山委員 けれども、この文書を見ますと、末尾にあるように「外相は、本件情報はくれぐれも内密に願いたい旨述べた。」とまで書いてあって、そうして本文も、疑わしきような書き方でなくて、きわめて簡明率直に  金大中拉致に責任のある在日韓国CIA要員の金東雲は韓国CIAから静かに解任されることになっている旨述べた。申CIA部長は、外相の要請に応えてこの措置をとったところ、金に対して法的措置をとった方が良かったであろうが、これを行うには遅過ぎるとの感触であった。 この記述の内容というものは、伝聞証拠だとかあるいはまたあやふやなことでなくして、その場の雰囲気がありありと述べられておる。容易にそれは信憑性が首肯できるという内容のものですよ。  それから、金東作外務部長官なりあるいは現在の韓国政府が会見の記録が存在しない旨という意味も、これはきわめて政治的な判断から出たものと首肯される。その会見は事実である、その内容はここが違っておる、こういうようなことはきわめて重大な発表になると思うから、記録が存在しない旨の回答があったというのは、韓国政府としてとりそうなことだ。事実は別としても、外交的配慮その他の影響を考慮して、会見の記録は存在しない、普通はとるのだけれども、存在しないということの行間における意味というものは、容易にくみ取れるものではないか。  これは、あなたの言うように、ほかの文書を探したらこの真実が裏づけられる、そうでないか裏づけられるというような問題ではないではないか。ここはまさに判断の問題ではないかと思うのですが、外務省はそんなにいつまでたってもふらふらしておるのですか。
  261. 三宅和助

    ○三宅政府委員 政府といたしまして、これをどう評価するという前に、まず膨大な今回の文書というものを慎重に十分検討いたしまして、その中でも、さらに確認を要するべき問題につきましては、韓国、アメリカにそれぞれさらに照会するということにいたしたいと思いまして、少なくとも現在の段階で、現在膨大な資料を検討しているという中で、日本がこの電報につきまして一方的に解釈をするということは適当でないと考えております。
  262. 横山利秋

    ○横山委員 そういう態度が国民からして非常に不明朗な印象を受ける。金大中の事件が勃発いたしました際における決断というものが、西独政府の有名になった、韓国人十四名を西独から拉致したという、あの瞬間的な西独政府の態度と比べますと、金大中事件に関しての日本政府の優柔不断さ、あいまいさ、そして国民を瞞着したような態度とは全く百八十度の違いだと言われるゆえんであります。  ここで法務大臣にお伺いいたしますが、問題は、かつての福田総理大臣も言っておりますように「日本の主権侵犯という事実が明らかになりますれば、そのときはまた政治決着について考え直す、こういう考えです。」五十三年十月六日の記録であります。一体「日本の主権侵犯という事実」というのは、主権侵犯というのは、法務大臣はどういう場合だとお考えになりますか。
  263. 古井喜實

    ○古井国務大臣 きょうの問題とすれば、公権力が関与しておるかどうかが大事な点だと思うのですね。  それからなお、ついでで恐縮ですが、横山さんも大政治家だから、政治家としての御判断はあろうと思うのですけれども、この問題は、外交上また国内の政治の上でも非常に重大な問題ですね。ですから、外務省の当局とされても、十分検討すべきものは検討し、されなければならぬし、そうされておるわけですね。それを簡単明瞭に早くこうだああだ言ってしまえと言われるのは、問題の性格からいって、そう簡単に言われても困る点があるのじゃないでしょうか。それはあなただって政治家としておわかりだろうと思うので、その辺はひとつよくお考え願って、また次をお願いしたいと思います。
  264. 横山利秋

    ○横山委員 そういう態度がおかしいと私は思うのです。  私に対するおほめの言葉のような、ひやかしのような言葉でありますが、たとえば一九六七年の七月に西独で韓国人の集団蒸発事件が起きたときに、西独政府がどういう手を打ったかと言いますと、七月四日に韓国大使館が治安上帰国するように説得したと言ったその瞬間、七月十二日には西独が経済援助の調印を延期し、越えて十八日には駐韓西独大使の帰国命令を出した。七月四日に起きたやつが五日、その翌日には、すでに警察権の行使について西独政府は注意を喚起した。七月二十日に金中央情報部長が陳謝をしたにかかわらず、経済援助調印を延期し、十八日には駐韓大使の帰国命令を出した。  間髪を入れささない主権行使に関する西独政府の断固たる態度が全員帰させた。そのうち二人は死刑判決までされている。引っ張っていかれて韓国で死刑判決を受けておる。それまで撤回させる西独政府の態度と、今日、金大中に対する日本政府のだらしのない態度というものは、まさに百八十度の違いがある。いまこういう問題が惹起して、改めて日本の国民が政府の優柔不断な態度を責めておることは、あなたは耳に、頭に、心に映じないのですか。  私は、いま質問しておる国家主権の侵犯ということは、あなたと同じですけれども、他国の権力的な機関がその国以外の国の中で権力的な行使をすることを排除する、そういうふうに私は理解しておるわけであります。それは、他国の権力的な機関というものが、中央の指令であろうが、あるいはその大使館、高官の人間であろうが、中央の指示によろうがそうでなかろうが、少なくともわが国の中で他国の高官が他国の意思をもってこの種の主権を侵犯する事実については、どうして日本政府があいまいな態度をとるのかわからぬ。  現に東京の真っ昼間、ホテルの中に金大中氏はおったのですよ。その次の瞬間に金大中は韓国におった。これが公権力がやったのか、民間がやったのかという第二番目の問題ですね。  その次、金東雲は大使館の館員であった。その指紋がその部屋にある。その日についたことも明白ではありませんか。そして、今度それを裏づける新しいスナイダーの文書がある。ここまで明白な事実をなぜ主権の侵犯だと言えないのでしょうか。なぜそれが言えないのでしょうか。  たった一つ理由がある。日韓の友好関係を阻害する。そのことと、この主権侵犯の事実と、どちらが優先するかという政治的判断だろうと思うのであります。それならばそれで、国家の主権は侵犯されたけれども、日韓の友好のためには、これは忍ぶ決心をしたと明白に言うなら、それも相対的な比較の問題だ。国家の主権がこれほど侵犯されながら、主権が侵犯されていないがごとき論理を展開するのは言語道断だと私は思う。事態を明らかにして、そして見直すべきことはこの際見直す、なぜそれが言えぬのか。  それを最も言う立場にある者は、当時の田中法務大臣の閣内における立場、本法務委員会における言明、それを踏まえるならば、あなたがいまそれを言わずして、どうして一体法務大臣がお役に立ちますか。     〔鳩山委員長代理退席、委員長着席〕 あなたがまず真っ先に言わなければならぬときじゃありませんか。外務省が何と言おうが、政府筋の中で何と言おうが、主権侵犯、人権じゅうりんの問題について、あなたが最も言うべき立場にあるじゃありませんか。法務大臣の決断をひとつ求めたい。
  265. 古井喜實

    ○古井国務大臣 まずもって、田中法務大臣ほどりっぱな法務大臣じゃありませんから、それはそう間違いがないようにひとつお願いいたしますが、それよりも、この問題は政治的に考えましても実に重大です。  一体一公権力で主権が侵犯されたかどうか、そういうことがあるとすると、問題自体がきわめて重大なことでしょう。それへもっていって、外交的にもこれは重大です。それから国内でもこのとおり、あなたを初めやっておられるように、重大な政治問題でしょう。そこで一方では、韓国の方は記録がないというような返事をしているということもあるのですし、やはり事柄調べられるだけ調べて、本当にどうだったかわかるところまで究明する、それぐらいのことはするのが事の重大性にかんがみてあたりまえだと私は思うのですよ。何もぐずぐずしている、優柔不断という問題じゃない、事柄の重要性がそうだと私は思うのですよ。  それから西ドイツの話ですが、西ドイツは西ドイツ、日本は日本でしょう。ハイジャックの問題だって、西ドイツは日本とまた違った実に果断な処置までやります。だから、こっちはこっちの、日本の政治上の問題でもありますから、そうおっしゃらずに、外務省も一生懸命検討しておるというのですから、検討させていただいたらどんなものでしょうか、そういうふうに思います。
  266. 横山利秋

    ○横山委員 法務大臣、この場でそういうことをおっしゃるけれども、私は御忠告したいのです。  外務省がこれから、ほかにまだたくさん文書をもらったから調べると言っているのだが、核心に触れた問題がほかにそんなに出ると私は予想しない。警察庁が来ておみえになりますけれども、時間がないからもう御質問しませんけれども、警察庁がこの機会に改めて調べ直すと言っても、新しい問題が出る可能性は少ないと私は思うのです。この機を逃して、あと十日たつ、二十たつ、一月たとうものなら、もうあなた方は結局ほとぼりのさめるのを待つことになるのじゃないか。そして、そのころになって何の材料もないから、主権が侵害されたとあなた方が判断するチャンスを逸してしまう。  したがって、いまあいまいでもう少し調べようと言うならば、調べるべき材料、調べるべき値打ちのある資料、理論的にもその必要性、そういうものが明白でなくて、何となくまた慎重に調べようと言っている限りは、政府の主権侵犯に対する、金大中事件に対する国民のごうごうたる非難を結局避けて通って、ほとぼりのさめるのを待って、まあまあということになってしまう、そういうことを私は非常に恐れ、この問題に対する政府、特に法務大臣の優柔不断な態度を責めまして、質問を終わることにいたします。
  267. 佐藤文生

    佐藤委員長 飯田忠雄君。
  268. 飯田忠雄

    ○飯田委員 法制局長官、最高裁の責任者の方おいででしょうか。本日は、最高裁判所の違憲審査権の問題及び衆議院の解散権の問題について、御質問を申し上げます。  今日まで、衆議院の解散は十回に及んで行われておりますが、それはいずれの場合も、内閣に衆議院の解散権がある、こういうことで行われております。それに関しまして、従来、最高裁判所は憲法判断を回避しております。この憲法判断を回避しました一番大きな理由は、衆議院の解散という問題は及ぼすところが政治的に非常に大きいので、したがって無効という判決をすれば大変なことになる、だから最高裁としてはそれをなし得ないのだ、こういう意向のように受け取れるわけでありまするが、しかしこの問題は、過去において憲法違反が行われた、だからその影響が大きいから、将来とも憲法違反を許しておくということであってはならないと私は思うのです。内閣が今後、過去のことは問わず、これからは憲法違反を犯さないということで、そういう了解のもとに決着をつけることができないかという問題に結論として持っていこうとして、質問を申し上げるわけであります。  そこで、最高裁判所お尋ねをいたしますが、憲法八十一条の規定がございます。「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」こうあります。この条文は、最高裁判所性格、任務を決めた条文であるというふうに、私どもには読めるわけでありますが、これが従来から、そのように読まれていないのではないかという疑いがあります。最高裁判所ではどのような御見解でしょうか、お尋ねいたします。
  269. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 最高裁判所の判決で、いま先生が申されましたような点について、どういうふうな見解をとっているかということにつきましては、御承知のように、警察予備隊の設置等に関する昭和二十七年十月八日の判決と、衆議院解散に関する昭和二十八年四月十五日の判決とがございます。  警察予備隊の事件の判決は、こういうふうに言っております。  わが裁判所が現行の制度上与えられているのは  司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。わが裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。 以上のように書いております。  そういうことでございまして、具体的な争訟を離れて抽象的に、憲法その他の法律、命令について、憲法に適合するかどうかということについての判断をする権能を有しないという立場をとっているというふうに解せられるわけでございます。
  270. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この憲法の問題につきましては、きょうは詳しく論ずる余裕がありませんので、後日論じますが、最高裁は、衆議院の解散について、これは政治的な問題が大きいので司法判断を避ける、こういうふうに聞いております。これは全く政府の責任であると私は思うのですが、きょうここで論ずる暇がありませんので、せっかく長官がおいでですので、長官にお聞きする事項を進めたいと思います。  まず、憲法の三権分立の規定がございますが、この三権分立の規定は、三権を所管しておる国会、内閣、裁判所、この三者の問にも適用になるのではないか、つまり国会は司法を侵さない、内閣は国会を侵さない、そういうこともあるのではないかと考えられまするが、その点についての御見解を承ります。
  271. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えを申し上げたいと存じます。  ただいま御指摘になりましたように、現在の日本国憲法は、国会、内閣、裁判所、詳しく言えば会計検査というような機関もございますけれども、それは別にいたしまして、ただいま申しました三つの機関、つまり三権の分立、権限の分配という構造をとっておりますが、お互いに侵し合わないというのではなくて、お互いに抑制し合うといいますか、いわゆるチェック・アンド・バランスの思想の上に立っているというふうに、私たちも理解しているわけでございます。
  272. 飯田忠雄

    ○飯田委員 お互いに抑制し合うという場合には、これは国の三つの大きな機関、根本機関の問題でございますので、したがって憲法に明文の規定がなければならぬのではないでしょうか、お尋ねします。
  273. 真田秀夫

    ○真田政府委員 もちろん、三権の相互間のチェ ック・アンド・バランスのあり方につきましては、憲法の規定及び憲法の精神をよく踏まえて解決しなければならない問題であるというふうに考える次第でございます。
  274. 飯田忠雄

    ○飯田委員 憲法に明文があるかどうか、まず内閣が衆議院を解散し得るという、そういう明文は憲法にございましょうか。
  275. 真田秀夫

    ○真田政府委員 衆議院の解散につきましては、憲法の第七条に天皇の国事行為として挙がっておりまして、天皇の国事に関するすべての行為については、内閣の助言と承認を必要とするという明文の規定もございますので、これらをかみ合わせてよく読めば、これは衆議院の解散については、内閣の助言と承認によって、天皇の国事行為として行われるというふうに読めるわけでございます。
  276. 飯田忠雄

    ○飯田委員 国事行為というものは国政行為と同じでしょうか、お尋ねします。
  277. 真田秀夫

    ○真田政府委員 憲法は、その明文にありますように、天皇は、この憲法に定める国事行為のみを行って、国政に関する権能は有しない、こうなっております。  したがいまして、六条もありますが七条について申しますと、七条に列挙してある国事行為のうち政治性の非常に強い部分、解散のことを御指摘になりましたが、衆議院を解散するということは、大変な政治的な影響のある国の行為でございますので、天皇の国事行為のうち実体的な部分、つまり非常に政治的要素の強い実体的な解散の決定権と言っては語弊があるのですが、実質的に衆議院の解散を決めるという行為は内閣の助言と承認による、したがって天皇は、その内閣の助言と承認をお受けになって、そして詔書の公布という形式で解散行為を行われる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  278. 飯田忠雄

    ○飯田委員 長官の御説明は、ちょっと私は納得しかねるのですが、旧憲法の第七条というのを御存じでしょう。  旧憲法の第七条には、天皇の衆議院解散命令権の規定がございました。衆議院の解散命令権があるから、当時の内閣は国務大臣によって構成されておりますので、国務大臣は御承知のように輔弼機関でありまして、輔弼機関として天皇の解散権を実際に輔弼するために決定した、こういうことであることはもう明らかなんです。そういう解釈は間違いでしょうか。
  279. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま御指摘になりましたように、旧憲法には第七条に「天皇ハ」「衆議院ノ解散ヲ命ス」という明文の規定がございました。そして、この天皇の当時の衆議院解散命令権は、国務大臣の輔弼によって行われるということになっておりました。  いまの憲法になりまして、旧憲法第七条に相当する「解散ヲ命ス」という天皇の大権の規定がなくなった、なぜだろうかという御質問だろうと思うのですが、これも物の本によりますと、どうも昔の憲法のもとにおける帝国議会は、天皇の立法権についての協賛の機関であった、ところがいまの憲法では、国会はそういうものではなくて、国権の最高機関であるという関係もございますし、それから先ほど申しました三権分立の思想を条文上明らかにするというような趣旨から、明文をもって解散を命ずとか解散を内閣が行うというようなことを書いたのでは、その三権分立の思想を徹底しようとしている日本国憲法の趣旨にそぐわないということで、天皇の国事行為に仕立て上げて、その実体は内閣の助言と承認という形で行うというふうになったのであろうということを解説している本が幾つかございますし、私も、それが正しい考え方であるというふうに思う次第でございます。
  280. 飯田忠雄

    ○飯田委員 旧憲法は、天皇の衆議院解散命令権があったから、国務大臣によって構成されておる内閣に実質的に解散を決める権限があったのです。  今度の憲法では、そういう天皇の衆議院解散命令権というのはなくなって、国事行為としての衆議院解散、この国事行為としての衆議院の解散ということは、衆議院に対して解散を命ずることではないのです。それは衆議院の解散がどこかで決定されたときに、そのことを儀式としてあらわすために、国のいわば行事としてやるための権限であるわけです。  したがいまして、この場合に衆議院の解散について内閣が助言と承認を行うという、その助言と承認の内容は天皇の行為の内容に限られる。天皇の行為を逸脱した分野についてまで適当なことを言うて天皇にやってもらうということでは、これは憲法の先ほどおっしゃいました三権分立の根本性格を損なうことになる、これはもう当然のことであります。  したがいまして、第七条の問題をいまここに持ち出して、私の質問に対して答弁をなさろうとするのは見当違いではないか。つまり私は、三権分立のこの現在の憲法において、三権を分立しておる各機関をやはりお互いに侵し合わないのが原則ではないか、侵し合う場合には、これは必ず憲法に明文の規定がなければならぬ。  たとえば例を挙げますと、総理大臣を指名する場合に、これは衆議院及び参議院において指名を行う、こうなっているのですが、それは内閣という一つの構成体に対する構成上の干渉でありますので、明らかに憲法に明文があるわけです。それからまた、国会の臨時会は内閣がこれを召集する、こうなっておる。これも国会の召集というものは、元来衆議院なり参議院なりがみずから行うことであります。それを内閣にやらせるから、あの規定が特別に置かれておる、こういうように、どんな場合でもそうなっております。たとえば最高裁の規則制定権、これをわざわざ設けたのは、立法行為に参画させることになるから、憲法に明文があるわけです。  どんな場合でも必ず憲法に明文がなければ、ほかの機関を侵し得る、ほかの機関を左右し得るといったような、そういうことはあり得るはずがないわけなんです。だから、そういう憲法の根本問題から第七条というものは解釈しなければいけないのだというふうに私は考えるのですが、長官の解釈は、七条を根拠にして憲法の根本問題まで左右しよう、こうなさる。そこに、現在の憲法の構造からは承認されがたいものがあるのではないかと私は思うのですが、この問題について、それはもう学者はいろいろなことを言うておりますが、学者の中にも、もし無効と言うたら、その及ぼす影響が大きいということから、内閣のいままでやった憲法違反を是認するという形の学説をつくっておる、そういう学説もあることはよく存じております。しかし、そういう問題と、過去における問題を救済するために将来まで永久に憲法違反を許すという問題とは違う、私はこう考えます。ただ、別にそういう何らかの手段を講すればいい問題であろうと思うわけです。  そこで第七条の解釈、あの中の「助言と承認」というのは、天皇が詔書に判をおつきになる、名前をお書きになる、そのことをいいか悪いか、それは実際にどこかで解散決定がしてある、そのとおりやっておられるかどうか、これをまず見て助言をしたり承認をしたりする問題であって、解散をするかどうかを内閣に決定権を与える、そういう根拠にはなりがたいと考えるのが、これは憲法の構造上から当然ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  281. 真田秀夫

    ○真田政府委員 三権分立に関しまして、飯田委員が、お互いに三権は侵し合わない、衆議院の解散は衆議院が決議を行うことによって解散が行われるべきだというお考えをお持ちになっておることは、私も知っております。  それに対しまして、もしここで私から一言反論することをお許しいただきますと、こういうことになるのです。  決議で行うということになりますと、これは多数決ということに相なるわけでございまして、その多数決によって、衆議院がいわゆる自律権と申しますか、先生のおっしゃる自律権で、そこで解散という効果が出て、そして天皇が詔書をお出しになるということになりますと、その多数決で敗れた、つまり少数説の衆議院の議員さんの任期も切れてしまう、これはむしろ憲法の規定の明文に実は反するので、やはりそういうことは許されないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  そこで従来の、御存じの例の両院法規委員会の勧告にしろ、あるいは先般の問題になっておりまする保利書簡にしろ、それはいろいろ言い方としては、乱用すべきじゃないとか、あるいは党利党略をもって解散を行うべきでないとか、あるいは大義名分のない解散は行うべきでないとか、表現の言い回し方はいろいろありますけれども、いずれもそれは内閣に衆議院の解散権があるということを前提にして、そして、これは非常に大事な国家行為であって、国民の信を問うという制度でありますから、これは慎重にやって、しかるべき理由がなければ、つまり保利書簡によりますと、六十九条に匹敵するような事由がある場合でなければ、それはやたらに解散は行うべきでないのだというようなことが書いてありまするが、それはいずれも政府に衆議院解散権があるということを当然の前提にして考えていらっしゃるに違いないというふうに思うわけでございます。  そこで、また七条に戻りますが、七条には天皇の国事行為として十幾つかの号が立ててございますが、しさいに見ますと、その条項自体が非常に形式的な行為である。「儀式を行ふこと。」というのが最後にございますが、これなんかもその典型的なものなんです。ところが「國會を召集すること。」とか「衆議院を解散すること。」ということは、そのこと自体を見ると、これは非常に政治的な内容のものなんです。しかしながら、天皇は国政に関する権能は有しないということから、国政に影響のある実体面については、それは内閣の助言と承認をもってまず定まって、そして、それの詔書の公布という形式行為だけがあそこに残ってくる、こういうふうに考えざるを得ないというのが私たちの解釈でございます。
  282. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いま七条で、衆議院のところだけは実体問題を含むが、ほかは形式的だ、こうおっしゃいました。形式的な問題でも助言と承認を必要とするのですよ。国事行為は全部助言と承認を必要とする、形式的な問題だから要らぬということにはならない。ですから、いまの御議論はおかしい。  それからもう一つ、根本的な問題を考えていただかなければならぬのは、内閣というのは行政機関でしょう。国会、衆議院というのは立法機関なんです。しかも衆議院を構成する場合には、衆議院議員がみずから構成している。何も内閣から命ぜられて構成したわけじゃないのですよ。国民から選挙されて出てきた衆議院議員は、選挙されたことによって任命されている。決して内閣から任命を受けたのではない。そして衆議院を構成する場合も、衆議院が自分で構成した。もちろん、その衆議院を解散するときは自分で解散するのですよ。昔の旧憲法時代でも、なぜ天皇の解散命令権とあったかと言いますと、これは天皇は解散を命令するだけなんだ。解散行為自体は衆議院がやったのです。解散を命令されるから、それに従って解散しているので、解散ということは組織を解くことなんです。組織を解くことは、構成した者がみずからが解くのがあたりまえだ、私はこう考えるのです。  それからもう一つ言いますと、きょうは時間がないから、この次にまた論ずるとして、一つだけ申しますと、内閣総理大臣は国会によって指名されるのですよ。国会によって指名された人、その人が任命してつくったのが内閣なんです。だから、この内閣というのは、いわば国会で指名された人によってつくられたものであって、一番の主人公は国会なんですね。その国会を解散してしまうという権利が内閣にあるなんということは、法理論上出てくるはずがない。これは、当然そういうことがあるというのなら、憲法に規定がなければいかぬ、私はこう思います。憲法に規定がないのに、そんな大それたことを一体できるかということだと思いますが、どうですか。
  283. 真田秀夫

    ○真田政府委員 なるほど、それは内閣は内閣総理大臣が組織いたします。その内閣総理大臣は国会によって指名され、衆議院の優越性が憲法に書いてございます。  さればと言って、内閣が衆議院を解散すること、それが本末転倒じゃないかというふうには直ちにはならないのであって、その場合に憲法の解釈としては、冒頭に申し上げました三権のお互いのチェック・アンド・バランスという原理、それがやはり基礎にあるわけなんで、だから、先ほども申しましたように、それはやたらに解散をしてはいけませんよ。やたらに解散をしてはいけないことは当然でございまして、新しく国民の意思を問うというにふさわしい事由がある場合、たとえば六十九条の場合のほかに、それに匹敵するような場合というふうに保利書簡にはありますが、それはどうももう少し広くてもいいのじゃないかという気は私はいたします。たとえば予算が否決されたとか、あるいは内閣が基本的重要な政策として御提出した法案が廃案になってしまったとか、あるいは国会と、特に衆議院と内閣との間で政策についての意見が真っ向から対立して、国会の運営がスムーズにいかない、停滞してしまっているというような場合に、一体、内閣の言うのが正しいのか、衆議院のおっしゃることが正しいのかという点について、改めて国民の総意を問うという制度があってしかるべきなんで、それがチェック・アンド・バランスの一つのあらわれであろうというふうに考える次第でございまして、任命をされた者が、つまり、子供が親を殺すなどということはこれは本末転倒だというふうには、私は考えておらないのでございます。
  284. 飯田忠雄

    ○飯田委員 時間がないから簡単に申しますが、政治は一体何を基礎にして行うかの問題ですよ。憲法が基礎なのか、政治が基礎なのか、この問題を考えていただかないと困りますね。  これは、日本国はもちろん憲法を基礎にしている。憲法を基礎にして、その上に政治形態が成り立っておるのであって、政治形態、政治をこうしたいから憲法を曲げてしまうなんということは困る。政治から憲法を解釈されては困るので、憲法を基礎にして政治のあり方を決めてもらわないと、私はいかぬと思いますよ。その辺がどうも従来この解散権を議論する人たちは、とかくその問題を忘れて政治問題を出してきている。そして政治問題から憲法を左右しようとする、これは大変なことになります。  それをやりますと、どういうことが起こるかと言いますと、日本の国はファッショ国家になります。たとえば少数政党が政権を握った。自分が多数政党になるまで何回でも解散できる、そういうことをやれば、内閣の意思どおりのものになっていくでしょう。多数政党でも変わりませんよ。自民党がおやりになってもいいです。これがもう自分の気に入るまで解散をどんどん繰り返す、こういうことができることになるじゃありませんか、内閣に解散権があるなら。そんなことは今日の憲法にはどこにも書いてない。憲法に書いてあるのは、御承知のように三権分立です。立法は立法府である国会がやるし、国会の構成は衆議院みずから、参議院みずからが、参議院議員みずから、衆議院議員みずからが行う。解散は、それを解くことですから、それは自由です。  多数決によって決められるというと少数の者が困るとおっしゃるけれども、それは民主政治というものは多数意見に従うのですから、少数の者はやむを得ませんよ。私はそういうことを考えますが、この点、どうですか。
  285. 真田秀夫

    ○真田政府委員 政治と憲法とがどちらがもとかとおっしゃれば、これは憲法に従って政治が行われるべきであることは申すまでもございません。  ただ、その政治のもとになる憲法というものは、明文の規定と、それから合理的に解釈される憲法の趣旨というものを生かして政治が行われるべきなので、ただいまおっしゃいましたように、もし内閣に衆議院の解散権があれば、日本がファッショ化するではないか、何遍でも解散をするではないかというようなことをおっしゃいますが、そういう御心配があるといけないので、先ほど来、やたらに解散はやってはいけないのだということを口を酸っぱくして申し上げている次第でございますので、私の気持をよく御理解願いたいと思います。
  286. 飯田忠雄

    ○飯田委員 最後一つ。  あなたの気持ちはそういう気持ちかもしれぬけれども、政治的議論でもって憲法解釈をゆがめてしまう、たとえば憲法で、日本の国は三権分立で、国会は最高機関だとなっているでしょう。最高機関である国会が、一行政機関である内閣によって自由に変えられてしまうといったような、そういう思想を許しておくこと自体がおかしいじゃありませんか。そういう思想がある限り、日本の国の政治はよくならない。憲法どおりやってもらわぬと困る、私はそう考えますが、いかがですか。
  287. 真田秀夫

    ○真田政府委員 政府が勝手に衆議院の解散をするとはちっとも言ってないのですよ。  憲法に従って政治は行われるべきなんで、その場合の憲法に従うということの意味合いは、その憲法の明文の規定と、それから合理的に憲法の趣旨、精神をよく読み取りまして、そして合理的な解釈をそこへ加えて政治を行うという余地もあっていいわけなんで、これは法律学の御専門ですから釈迦に説法みたいになりますけれども、もともと法律の運用というものはそういうものだろうと私も思っておりますし、その点についても御異論はないと思います。特に、日本がすぐファッショ化するというようなことになろうとは、そういう心配は御不要でございまして、私も先ほどから申しましたように、やたらに解散はしてはいけないということを言っているわけなんで、その辺をよく御洞察願いたいと思います。
  288. 飯田忠雄

    ○飯田委員 もう時間が来ましたので、一つだけ念を押しておきますが、つまり憲法に、内閣が衆議院を解散するという規定が一体どこに書いてあるかという問題です。  第七条には書いてない。それから内閣の所管事項の中にも書いてない。どこを見ましても書いてないのですよ。憲法に書いてないのに、衆議院を解散するというような、国家の大本を揺るがすようなこういう問題を行われるということは、これは許されないと私は思います。もう真田長官は総理大臣の御命令を受けて、とにかくそういうふうに言えというふうになっているので、これ以上追及してもお気の毒だと思いますので追及しませんが、しかし、そういうものだと思いますよ。総理大臣によくおっしゃっていただいて、過去のことは目をつぶるから、問題にしないから、これからはそういうことをやるな、憲法違反をするなということをよく言っていただきたい。そういうことでございます。  時間が来ましたので、これでやめます。
  289. 真田秀夫

    ○真田政府委員 本日の飯田委員のおっしゃった御議論は速記録に載りますので、速記録を私どもから総理にお渡しして、こういう御意見の委員の方がいらっしゃいますということはよく申し伝えておきます。
  290. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それじゃ時間が来ましたのでやめますが、この問題は後日また詳しくやりたいと思います。これはたくさんありますので、二十分じゃできないのです。
  291. 佐藤文生

    佐藤委員長 正森成二君。
  292. 正森成二

    ○正森委員 大分時間が経過いたしましたので、ごく簡単に伺います。  まず警察庁が来ておられると思いますが、愛知県に戸塚宏ジュニアヨットスクールというのがあるようでございますが、ここに登校拒否の癖のある子供を集めてヨットに乗せて、それを矯正するというふれ込みあるいは宣伝のもとに、子供たちを集めて訓練をしておりましたところ、二月十一日から合宿させた何名かのうち、もう死亡しましたから名前を申し上げていいと思いますが、見学という子供がその後発病いたしまして、二月二十四日の午後二時三十分ごろ死亡したという事件が発生いたしました。これは当時地元の新聞のみならず週刊誌等でも報道されましたし、その後、その子供たちの両親が損害賠償の訴訟を起こしたというようなことも新聞に報道されたところだと思います。  私は、本日質問するために質問通告をしておきましたので、この件につきまして、警察庁あるいは警察がどのように捜査をされておるか、特に解剖等についてなさっておれば、現在の段階でお話しできる範囲内で、できるだけ詳しくお話し願えれば幸せだと思います。
  293. 加藤晶

    ○加藤説明員 お答えいたします。  お尋ねの件は、愛知県知多郡の美浜町所在の戸塚ジュニアヨットスクールにおける、いわゆる情緒障害児の矯正訓練をめぐってのことだと思います。  愛知県の半田警察署に一つ告訴が出ておりますが、これは、ただいま御指摘のありました見学という子供さんが、同所で矯正訓練を受けておりまして死亡いたしたということで、業務上過失致死または重過失致死の疑いで、同人の保護者並びに代理人の弁護士の方から告訴されておりまして、三月二十四日受理しております。  それで、これもお話がございましたように、発生いたしましたのが二月二十四日の午後二時三十五分ごろでございまして、場所は美浜町の大字北方にあります戸塚ジュニアヨットスクール名古屋支部合宿所内でございまして、死亡いたしましたのが、大阪に住んでおられます見学さんという人の息子さんで、十三歳になる見学祐次という人でございます。  それで、実は午後二時三十五分過ぎに佐本医院というところから所轄の半田警察署河和駐在所に、戸塚ジュニアヨットスクールの指導員が全身に擦過傷のある中学生を診察に連れてきましたけれども、すでに死亡しておる、その死因に不審と思われる点があるということで電話届けがあった。これによりまして事件を認知したのが発端でございます。  そこで早速半田警察署では、県警本部の刑事調査官、これは検案、死体の監察の専門官でございますけれども、それの派遣、応援を得まして死体を見分いたしました結果、両手、足等に多数の擦過傷が認められるということで、これは事件を解明するために司法解剖をしなければならないということで、司法解剖しておるわけでございます。この司法解剖は、翌二月二十五日名古屋市立大学の高部教授に依頼いたしまして、解剖しておるわけでございます。そしてそれと同時に、関係者から事情を聴取するということで、鋭意捜査を進めておるところでございますが、こういう死亡という重大な結果が出ておる事件でございますので、署の刑事課員全員を当日から数日間はそれに充てて、懸命な捜査をしておるということでございます。  それで、解剖の結果どうかということでございますけれども、現在までのところ、手足その他に相当数の傷があるわけでございますけれども、これは直接の死亡原因にはなっておらないのじゃないかということでございまして、あと化膿性腹膜炎を起こしておる、十二指腸中に小指頭大、小指の先くらいの穴があいておる、これが原因になったのではなかろうかということでございますが、これが外力によってそうなったのか、あるいは純然たる普通の病気といいますか、そういうふうなことによってなったのか、その辺の鑑定をさらに詳しく依頼しておるという状況でございます。
  294. 正森成二

    ○正森委員 いま一定の御報告がございました。  そこで、私から伺いたいのですが、戸塚ジュニアヨットスクールでは、見学さんという人が亡くなっただけでなしに、それ以外にも何人かの子供たちが殴るけるの暴行を受けて、傷害罪で告訴をしていると思うのですね。そして見学君についても、同じように殴られた子供たちが帰って親に言ったところによりますと、非常に激しい殴打を受けたあるいは顔をけられたというようなことを目撃しているわけであります。  そこで、詳細に入る前に一言伺いたいのですが、関係者が大阪におるために、愛知県の半田署なんですが、たとえば子供たちは登校拒否等の情緒障害があったわけですが、それがヨットスクールに行ってこういうひどい目に遭ったので、もう一遍愛知県に行って警察の方に調べてもらうと言っても、容易に家を出ようとしないという事情がございまして、できれば捜査員を派遣してお調べ願いたいという要望があったようですが、どうも重大な事件ではないと思われたのかどうか、なかなか実施してもらえなかったのですが、その点は捜査員を大阪方面に派遣して、子供たちあるいは関係者から事情を聞くという捜査をなさいましたでしょうか。
  295. 加藤晶

    ○加藤説明員 第一点の、ほかに傷害事件の告訴が出ておるかということでございますが、やはり出ております。同じくこの訓練所で矯正訓練を受けておりました少年が傷害を受けたということで、四月七日に告訴がなされまして、これを受理して、これについても捜査中でございます。  それから、被害者が大阪に住んでおられる、被害者の保護者もそこに住んでおられるというふうなことで、捜査がそこまで伸びないのじゃないかというお話でございましたけれども、当初、告訴がなされましたので、署の方に御出頭いただいて事情をお聞かせ願いたいということを申し上げたことは事実でございます。これは、犯罪になるであろうと思われる現場の近くで事情を聞くと、より正確に、詳細に把握できるという理由があったと思いますけれども、ただ、いま先生がおっしゃいましたようなことから、その傷害関係の被害者と言われる児童の方がそこに行くのがいやだということでございましたので、向こうの御都合なども勘案いたしまして、その後四名の捜査員を大阪に派遣いたしまして、その方を含めて関係者からの事情の聴取、調書の作成というものを行っております。
  296. 正森成二

    ○正森委員 私が関係者から伺いましたところでは、この死亡いたしました見学祐次君につきましては、すでに死亡するほぼ一週間前の二月十六日に合宿所で腹痛を訴えて食事もとらない、ヨットの訓練ですから、皆子供たちは喜んでふろに入るわけですが、ふろにも入らないという状態で、医師の診断を受けたいと申し出たのに、これを拒否した。  そうして十八日、十九日には食欲がなくて腹痛を訴えているのに、それをにせの病気だと言って、殴るけるの暴行を加えて訓練を行った。そして二月十九日から二十三日までは中道町の事務所で宿泊していたが、その間にほとんど食事をせず、激しい腹痛を訴え、医師の診察を求めているのに、これを無視して合宿所へ連行した。死亡いたしました二十四日は、午前七時半ごろ重篤な状態にある祐次をさらに戸外へ連れ出して二時間正座させるということをやって、そして医者の診察を受けさせなかったということが、親からあるいは関係の同じように暴行を受けて現在生存しておる子供から訴えられているわけであります。  そういたしますと、私が調べたところでは、子供が合宿を受けておりましたところから一分のところに医院がある、それから数分隔てたところに総合病院がある、こういうように医師の関係は非常に位置的によかったにもかかわらず、腹痛を訴えてから一週間にわたって診察を受けさせなかったという事実がほぼ認められるわけであります。  そこで、関係医師から聞いてみますと、外部的な傷害の痕跡もあるわけですが、死因は、恐らく十二指腸に穴があいて、その結果、化膿性腹膜炎になったので死亡したのであろうという推測がほぼされておるようですが、この穴が生じたときには、普通突発的な激痛がするらしいのですね。顔は苦悶を呈して蒼白で、痛みのために体を曲げなければ耐えられないショック状態になるのが普通であるというのが医者の意見であります。そしてさらに時間が経過すると、循環機能の障害や脱水症状が増悪して鼻がとがり、こめかみがゆがみ、両眼は陥没し、耳は鉛色に冷え、くちびるなどは弛緩して死相に近い特有の顔貌を呈する、これを腹膜炎顔貌と言う、こういうぐあいに言われておるわけであります。それからさらに末期になりますと、腹痛はかえって軽くなるが、中毒症状のために軽い意識障害を来し、恍惚、狂躁状態になることがある、こういうぐあいに言われておるのです。こういうような症状を恐らく順次呈して、ついに死亡に至ったのであろうと思われます。二十四日に朝二時間正座させられたときには、恐らくこの末期の、意識がもうろうとして痛みも訴えることができない症状であっただろう、こういうぐあいに思われるわけです。  そこで、そうだといたしますと、私は決してこの見学さんの弁護士さんと異なった意見を言うわけではありませんが、過失致死あるいは重過失致死ということを言うておられますけれども、私は、暴行を加えたことが間接的な死因になっておれば、これは明白な傷害致死だと思いますが、仮にその点をしばらくおいて、暴行は直接の原因でなくて十二指腸に穴があいておったとしても、親元から離れた十三歳の子供が繰り返し苦痛を訴え、医師に見せてくれと言うのに見せないで一週間放置して、適切な時期に看病すれば治るものを死亡させたとすれば、刑法にいうところの保護責任者遺棄、それに基づき死亡に至らせるということになり得る余地があると思うのですね。  そこで、法律問題ですから法務省の根來事課長に来ていただいておりますが、あなたの方は事実関係を御存じないと思いますが、私が申し上げたようなことを一般的な前提として、保護責任者遺棄という可能性は刑法的には十分に成り立ち得ると思うのですが、いかがですか。
  297. 根來泰周

    根來説明員 ただいまの件につきましては、三月二十六日に名古屋地検の方にも告訴されております。  それで、名古屋地検の方の意見も聞きましたが、名古屋地検の方も、そういうふうな指摘をされており、また一般的にそういう可能性もないわけではございませんので、そういう見地から十分捜査したい、こういうふうに申しております。
  298. 正森成二

    ○正森委員 そこで、第一次的に捜査をなさる警察庁に伺いたいと思います。  このジュニアヨットスクールの全般の責任者である戸塚宏だけでなしに、実際に子供に接した、指導員というのですか、可児という人物と太田という人物が実際に接触したようでありますが、こういう人たちは、当初両親に対しても全くその前後の事情についてうそを言っておるのですね。そこで、単純に病気で死んだという前提で、いままでは捜査されたかもしれませんが、一定の、解剖やあるいは被害者、関係者の供述が得られた現在となっては、一般的なそういう考えだけではなしに、関係者が二人おるわけですから、あるいは主人の戸塚を入れますと三人おるわけですから、証拠隠滅を図ることなどを避けて、場合によったら任意捜査以外の方法も考える必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  299. 加藤晶

    ○加藤説明員 ただいまお話がございましたように、私ども、たしか当初は傷害致死事件、業務上過失傷害というふうな形で調べておりましたけれども、その事情をいろいろ調べていきますと、御指摘のありましたような保護者遺棄あるいは致死というようなことも考えられるということで、そういう面まで含めまして、捜査を進めておるところでございます。  それで、この矯正所の指導員といいますか、教官といいますか、そういうふうな人たち関係しておるのじゃないかということでございますので、当然この人たちについても調べを進めておるところでございます。当時そこに勤務しておりました指導員、これは責任者以外の指導員でございますが、これもあわせまして、一応の調べを現在の段階まで終わっておるわけでございます。  それで、そのほかに第三者的な立場にある目撃者、付近の住民等からも事情を聞いておりますし、それから同時に、同時期に合宿訓練を受けております人たち、この人たちにつきましても、ほとんど全部の調べを進めております。  それで、調べられた指導員の方は真実の供述をしていないのじゃないかというお話でございますけれども、それは繰り返し調べを進めまして、全体としてそういう真実の発見ということに近づくわけでございます。  それで、強制捜査も考慮すべきじゃないかということでございますけれども、現在のところ、そういう供述も出ておりますし、それによって裏づけも進んでおりますし、証拠隠滅という動きも格別ない、逃走のおそれもないということで、任意捜査をもって十分できるのじゃなかろうかと判断しておるところでございます。
  300. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣に最後に一言伺います。  実は、亡くなられた見学さんの御両親が私のところへ来られまして、それで、正直言って学校を三分の一ほど休んだり、できの悪い面もあったけれども、一生懸命学校へ行っていた時期もあるし、二十日ごろに一度耐え切れなくなって合宿所から脱走したことがあるのですね。そのときにこんなにひどいとわかっていたら、こうはさせなかったがと言って、私の目の前でぽろぽろ涙をこぼして泣いておられるわけであります。ところが、このジュニアヨットスクールというのは、情緒障害児を治すということをたてまえにして、五日間で五十万円ほどの合宿費を取るということで、戸塚という人物もテレビに出ておりますが、何ら反省しないで、これからもこういう方針でやるという意味のことを言っておるのですね。  私は、法務省がこういうことの所管だとは思いませんけれども、運輸省が所管かなと思ったら、運輸省もヨット関係のこういうのをやるのに特に取り締まる権限はない。医師法違反かと思って厚生省はどうだと言うたら、厚生省も、何かそういうことを公然と言うておるということでなければ医師法違反の問題も起こらない、こういうわけです。  そこで、これが一回こっきりの事件なら、私もそうも思いませんけれども、ヨットスクールに情緒障害児を十人なり二十人なり集めて、今後も継続的にするということになれば、再びこういう被害が発生したり事故が起こると大変なことだと思いますので、そういう点については大臣も政治的にお考えいただいて、行き過ぎを抑止するという何らかの方法を考えていただきたいと思うのです。大臣に対して、こういうことを私が目の前で申し上げましたので、御所感のほどを承りたいと思います。
  301. 古井喜實

    ○古井国務大臣 この国会の議場でわざわざ御質問になったわけでもありますので、警察当局もさらに入念に調べると思いますが、またそうしてもらいたいと思います。  それから、ジュニアヨットスクールというものがどういうものか私も知らぬのでありまして、何でありますか、各種学校にもなっておるのかなっていないのか、ただのそういう施設であるのかわかりませんが、何らかの教育的な施設であれば、これはそういう面からもその筋の方に、繰り返して同じようなことが将来起こらぬように考慮を頼みたいと思いますけれども、どこが筋か実は実態がよくわからぬので、そこらをよく研究した上で考えさせていただきたいと思います。
  302. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  303. 佐藤文生

    佐藤委員長 次回は、明後二十五旧金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十八分散会