○古井国務大臣 まず、
民法及び
民法施行法の一部を改正する
法律案について、その
趣旨を御
説明申し上げます。
この
法律案は、第一に、
民法第十一条の
規定中「聾者」、「唖者」及び「盲者」の文字を削ろうとするものであります。すなわち、現行の
民法第十一条は、聾者、唖者及び富者について準禁治産宣告をすることができるものとしております。その
趣旨は、これらの者が重要な財産上の取引において不利益を受けることがないよう、これらの者を保護しようとすることに尽きるのでありますが、この
規定のもとにおいては、単に聾者、唖者または盲者であるということだけで、これらの者について準禁治産宣告がされるかのような誤解を生じ、ひいては不公平感を生じさせるおそれもあるのみならず、これらの者が社会生活上種々の不利益を受ける懸念もなしとしないのであります。
しかも、この
規定中「聾者」、「唖者」及び「盲者」という文字を削りましても、これらの者について準禁治産宣告による保護をする必要がある場合には、十分対応することができますので、この際同条中これらの文字を削る改正をしようとするものであります。
第二は、
民法法人の実態等にかんがみ、
民法法人に関する
規定の整備をしようとするものであります。すなわち、現行の
民法には、
民法法人でない者が
民法法人であることを示すような名称を用いることを禁止する
規定がないのでありますが、
民法法人でない者が
民法法人であることを示すような名称を用いて
活動することを放置いたしますと、世人に誤解を与え、種々の弊害を出ずるおそれがあるのであります。
そこで、このような弊害を防止するために、社団法人または財団法人でない者かその名称中に「社団法人」もしくは「財団法人」という文字またはこれらと誤認を生じさせるような文字を用いることを林一川止し、かつ、これに違反した者は、
相当額の過料に処するものとする
規定を
民法に新設しようとするものであります。
また、
民法法人の中には、その運営の適正を欠くやに見受けられるものもありますか、そのような状況にかんがみ、
民法法人の運営について規制を強化し、その適正化を図る必要があるのであります。そこで、
民法及び
民法施行法に
所要の改正を加えて、主務官庁が
民法法人に対して監督上必要な命令を発することができることを明確にし、この命令に違反した
理事等を過料に処することができるものとするとともに、
民法法人がこの命令に違反した場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときは、これを解散させることができるものとしようとするものであります。
さらに、
民法法人の中には、長
期間にわたって全く事業
活動を行っておらず、登記上のみ存在するいわゆる休眠法人か
相当数ありますが、これを放置しておきますと、税法上これを悪用するなどの弊害の生ずるおそれがありますので、これらの法人を整理するため、
民法及び
民法施行法に
所要の改正を加えて、
民法法人が正当の事由がないのに引き続き三年以上事業を行わないときは、主務官庁は、これを解散させ、
所要の登記を嘱託することができるものとしようとするものであります。
第三は、
民法の罰則
規定中過料の額を
相当額に引き上げようとするものであります。これは、現行の
民法が制定された明治二十九年以来過料の額が改められずに今日に至ったため、罰則
規定がその機能を果たしておりませんので、現在の経済事情等に照らし、その機能を果たすことができる
程度にまで、過料の額を引き上げようとするものであります。
以上かこの
法律案の
趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
次に、
土地家屋調査士法の一部を改正する
法律案について、その
趣旨を御
説明いたします。
この
法律案は、土地家屋調査士の制度の充実強化を図るため、土地家屋調査士の資格に関する制度を合理化するとともに、その職責、業務等に関する
規定を整備しようとするものであります。
この
法律案の要点を申し上げますと、第一に、土地家屋調査士となる資格について、土地家屋調査士試験に合格した者のほか、法務局または地方法務局において、不動産の表示に関する登記の事務に従事した
期間が通算して十年以上になる者で、法務大臣が土地家屋調査士の業務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認めたものは、土地家屋調査士となる資格を有することとしております。また、未成年者または破産者で復権を得ないものは、土地家屋調査士となる資格を有しないものとするなど欠格事由に関する
規定を整備するとともに、土地家屋調査士試験の方法として筆記試験のほか口述試験を
実施するものとし、これに関する
規定を整備することとしております。
第二に、土地家屋調査士の制度は、不動産の表示に関する登記
手続の円滑な
実施に資し、不動産に係る
国民の権利の明確化に寄与するためのものであること、及び土地家屋調査士は、常に品位を保持し、業務に関連する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行う職責のあることを明らかにすることとしております。
第三に、土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記につき、必要な土地または建物の調査、測量及び申請
手続をするほか、審査請求の
手続もすることができることとしております。
第四に、土地家屋調査士の登録または登録の移転の申請は、土地家屋調査士会を経由してすべきこと、及びその申請をする者は、その申請と同時に、土地家屋調査士会に入会する
手続をとらなければならないこととするとともに、登録制度の適正な運用を図るため、登録に関する
規定を整備することとしております。
第五に、土地家屋調査士の職責の重要性にかんがみ、
懲戒処分による業務の停止の最長
期間を現行の一年から二年に改めるとともに、土地家屋調査士会の自主性の強化を図る見地から、土地家屋調査士会は、法令に違反するおそれがあると認められる所属の
会員に対して、注意勧告をすることができることとし、また、日本土地家屋調査士会
連合会は、土地家屋調査士の業務または制度につき、法務大臣に対する建議等をすることができることとしております。
第六に、
土地家屋調査士法に定める罰金及び過料の多額は、これを定めて以来長年月を経過しておりますので、
相当額に引き上げることとしております。
以上がこの
法律案の
趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。