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1979-02-20 第87回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二十日(火曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員                 委員長 佐藤 文生君     理事 青木 正久君  理事 鳩山 邦夫君     理事 濱野 清吾君  理事 山崎武三郎君     理事 西宮  弘君  理事 横山 利秋君     理事 沖本 泰幸君  理事 中村 正雄君         篠田 弘作君      田中伊三次君         福永 健司君      村山 達雄君         木原  実君      下平 正一君         飯田 忠雄君      東中 光雄君         小林 正巳君  出席国務大臣         法 務 大 臣     古井 喜實君  出席政府委員         法務政務次官      最上  進君         法務大臣官房長     前田  宏君         法務大臣官房司法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長     伊藤 榮樹君         法務省人権擁護局長   鬼塚賢太郎君  委員外出席者         最高裁判所事務総局総務局長 大西 勝也君         最高裁判所事務総局人事局長 勝見 嘉美君         最高裁判所事務総局刑事局長 岡垣  勲君         法務委員会調査室長       清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任          補欠選任   村山 喜一君     横路 孝弘君   長谷雄幸久君     正木 良明君   正森 成二君     不破 哲三君 同月十五日  辞任          補欠選任   正木 良明君     長谷雄幸久君   不破 哲三君     正森 成二君   小林 正巳君     甘利  正君 同日  辞任          補欠選任   正森 成二君     不破 哲三君   甘利  正君      小林 正巳君 同月十六日  辞任          補欠選任   不破 哲三君     正森成二君 同月二十日  辞任          補欠選任   正森 成二君     東中 光雄君 同日  辞任           補欠選任   東中 光雄君      正森 成二君     ――――――――――――― 二月十九日  犯罪被害補償法案沖本泰幸君外二名提出衆法第二号)  刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案沖本泰幸君外二名提出衆法第三号) 同月十四日  刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案反対に関する請願(横山利秋紹介)(第一〇一三号)  同外二件(横山利秋紹介)(第一〇三六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十五日  刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案反対に関する陳情書(第一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出第三号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤文生

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所大西総務局長勝見人事局長岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤文生

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 佐藤文生

    佐藤委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、同じく下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許し奮す。横山利秋君。
  5. 横山利秋

    横山委員 先般、古井法務大臣が当委員会において所信表明をされました。毎年、大臣所信表明につきまして注意深く熟読をいたし、その所信表明についての御意見をお伺いするのを慣例といたしておるのでありますが、本日も、この古井大臣所信表明について若干の質問をさせていただきます。  まず第一に、大臣は、この所信表明の柱として、法秩序維持国民権利保全ということを大黒柱にしておられるようであります。かねて私が申し上げておりますように、法務省というところば二つ側面を持っておる。一つは、権力を背景にする権力行政という側面であり、もう一つは、国民権利国民人権を守るという、いわばサービス行政側面である。しかし、国民考えておる法務省というものはその前者、法秩序維持、つまり権力行政ということ、国民は、法務省はそういうものだというふうに認めておるわけであります。きわめて残念なことで、大臣は、国民権利保全ということが法務省二つ大黒柱一つであるとおっしやっておるわけでありますが、これは当然だと思います。しかし、そうは言いながら、所信表明の以下私が考えております諸問題として取り上げておられるのは、この法秩序維持権力行政という側面がきわめて多いということを、私は大変残念に思うわけであります。  特に人権の問題をここに力説をしたいのであります。カーター大統領就任早々、世界に向かって人権を呼びかけました。国際外交の基本についても人権を呼びかけました。今日、日本の国内において、人権という問題は一体だれが担当するかといえば、私は法務大臣をおいてほかはないと思っておるわけであります。さればこそ、金大中事件があったときに、当時の田中法務大臣閣議の中で金大中人権という問題について力説されたことを私は記憶をいたしております。  また今日、国際人権規約批准段階を迎えようといたしております。先般各省を呼んで、国際人権規約についての各省態度を求めましたところ、要するに、日本の今日の行政の中で批准が適当であるもの、保留するもの、解釈で何とかなるものというふうに、区分けをしたにすぎないと思われます。国際人権規約批准機会に、目本における人権を百尺竿頭一歩を進めようとする努力は何らないのであります。だれがそれを推進するのであろうかと考えますと、私は、法務大臣をおいてほかはないと思われるわけであります。  また、いま人権擁護委員法というものはある。憲法に規定はあるけれども、しかし法律をもっての人権についての基本的な基礎法というものは、わが国においてはまだないのであります。これもまた法務大臣としてお考え願わなければならぬことではないかと思われます。  その意味で、この所信表明を通読いたしまして、人権擁護行政についても一たん触れてはおるのでありますが、きわめて現実的、きわめて次元の、低いというのは悪い意味で言うのではありませんが、低い感覚人権をとらえておられる。法務大臣として、法務省の大きな仕事は、国民権利保全、特に人権の問題について数々のなさるべきことがあるのではないかということは、歴代の本委員会で私ども力説をいたしておるところでありますが、法務大臣はどうお考えになっておられますか。
  6. 古井喜實

    古井国務大臣 一つには、ぎりぎりの問題として、法秩序を守らなければならない、その責任の一端をわれわれは担っておるわけでありまして、これは本当に、ときには心を鬼にしてでも守らなければならぬ一面であります。しかしながら、一方人権尊重の問題は、おっしゃるとおり、実にわれわれの民主社会が発展した一番出発点は、そもそも人権宣言だったと私は思うのです。人権を尊重する、そこからこういう民主的な諸制度が発展したり、社会が発展しておるのでありますから、これは申すまでもないことですけれども出発点とも言うべき非常に基本的な大事な問題だと思うのです。だから憲法がこれを大原則にしておるわけであります。  だから、そういう意味で、われわれが仕事をいたします上にも、この憲法が大原則にしておる人権尊重をあらゆる面において頭に置きながらやらなければならぬ。しかしこれは、私は法務省だけとは思っておりません。横山さんは、法務省に全責任だあるようにおっしやるけれども国会だってそうだと私は思うのです。みんなが憲法もとにある限りは、人権尊重ということは一緒に考えなければならぬ問題だと思うのであります。  それで、実際問題はむずかしいのでありまして、一方においては法秩序維持、一方においては人権尊重、どうしたらいいか。私は機会あるたびに、まだ日は浅いですけれども部内の会合などにも申すのでありますが、とにかく月給もらって仕事をしていると、上から物を見る頭になってしまう。国民一人一人が生きていくために一体どういう苦労をしているのだ、この苦労努力というものをよくかみしめて理解しなければいけないのではないか、そういう気持ちを持ってくれ、そこから機会あるたびに始めておるのですけれども、これは部内からなるべくそういう考え方にしたいものだと思うために、そう言っておる。  それから、対外的にそういう考え方でなすべきことは、私もまだ十分わかっておらぬと思いますけれども、だんだんたくさんあるように思っております。まあそういう方向でできるだけ努力をしていきたい、こういうふうに思っております。
  7. 横山利秋

    横山委員 私が、人権問題について大臣に、また法務省に要求したいのは、二つ側面があるわけであります。  一つは、法務省所管でなくても、事人権については、あなたが国民に対して守るべき憲法上の、法律上の責任があるのではないか。たとえば金大中事件しかり、たとえば先ほど例を挙げました国際人権規約完全実施についても、人権の問題でございますからしかり、各省に対する要望しかり、たとえば最近問題になっておりますベトナム難民の問題しかり、こういう法務省所管でなくても事人権に関しては、あなたが閣議において、あるいは各省に対して、人権について発言をしないということはいけませんよ、こう言っているわけで、これが一つであります。  もう一つは、法務省内部における人権問題の行政のありようであります。権利保全とあなたは言っておられる。ところが、本法務委員会でたび重なる問題として、たび重なる質問として諸君からしばしば言われておりますものに、たとえば民事行政事務登記事務が逐年増大しておる、土地台帳などの問題は百年河清を待つようなことで、累次の附帯決議になっておるのにかかわりませず、これがとにかく一歩も進展してないと言ったら過言であるか知りませんけれども、容易なことではない。権利保全は、登記事務において十分とはなしがたいということが言われておる。人権擁護局仕事はどうだろうか。関係者を前にして失礼ではありますけれども、言われればやる、権限がないから、やろうと思ってもなかなかできない。年々歳々、人権擁護仕事は地をはうような状況の仕事は続けておると言われましても、しかし、事人権擁護局発足の歴史から言うならば、だんだん下細りにされていくよう状態ではないか。また、監獄法の改正もいつのことだかわからない。こういうように、法務行政の中においても事人権の問題について、人員の増加や予算の増加遅々として進まない。権力行政の問題についてはかなりの進展があるといえども、目の当たらない人権問題に関するところの法務行政は、きわめて遅々慢々たるところがある。  この二面について私は指摘しておるのでありますが、重ねて御意見をお伺いいたします。
  8. 古井喜實

    古井国務大臣 基本的な考え方先ほども申し上げたとおりに思っております。で、実際問題でおっしゃるように、人権尊重擁護という方面の施策、仕事が着々発展しておるかどうか、こういうことになるだろうと思うのでありますが、これについては、あるいは御満足ぶいくようにぐんぐん発展をしておらぬかもしらぬという気も私もします。これは、さっきのよう考えもとにして、ただここで口先で申すだけでなしに、できることを前向きに考えて進めていきたい、そういうふうに思っております。
  9. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんから、きょうは問題提起一つその角度からしておきたいのでありますが、この間、三菱銀行事件の梅川でありますかの報道を読みまして、十五歳のときに殺人をしたことが問題になっておる。それに銃砲刀剣免許を与えたことが問題になっております。私は、そのときにふと感じたことでありますが、一体、犯罪歴前科というものはどういうものなのかということを感じました。また、広島の三十九歳の人がある問題を生じたのでありますが、これまた十九歳のときに広島で無免許運転罰金二千円、二十年前の問題が新聞に出ておったことを目にとめました。  前科というものが犯罪捜査に使われることは、私も承知しておるわけでありますが、刑を終了すれば、それによって、その犯罪についての罪は終わるというふうに理解をしておるわけでありますが、最近交通違反どもコンピューターにずっと入るわけであります。未来永劫前科は消えないという行政の結果になっておると思うのでありますが、これは法律的にはどう考えたらいいのでありましょうか。人権角度からお伺いをいたしたいと思います。
  10. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 少年法六十条を持ち出すまでもなく、少年のときに犯しました犯罪につきましては、刑の執行を終われば、大人になってからはいわゆる前科としては扱わない。人の資格に関する諸問題については、前科としては扱わない。したがって、少年のときに交通違反を犯して罰金に処せられた、あるいは強盗殺人でありましても、刑をつとめ終えたといいます揚合には、そういういわゆる前科があることを理由に、あるいは許認可あるいは資格に関する申請、請求等を拒むということは許されないわけでございます。これは申し上げるまでもなく、少年時に罪を犯したといたしましても、少年というまだ人格も固まらない間に行われたものでございますから、当該少年がだんだん大きくなって更生していくという観点から妨げになるようなことは、国としてやらないようにしよう、こういうことであろうと思います。そういう意味におきまして、この少年法精神というものは十分尊重しなければならぬのではないかと思っておるわけでございます。  ただ、しかしながら、ただいま御指摘にございました銃砲の所持の許可というようなことに相なりますると、これは、銃刀法にも書いてありますように、その者が今日ただいま危険性を有するかどうかということを問題にするわけでございまして、その危険性の有無を判断する際に、過去に全く無辜の人を殺して金を奪ったという事実、また、この事実によって象徴されます本人の資質というものを全くネグレクトするわけにはまいらないわけでございまして、そういう少年法精神を十分踏まえながら、過去にあった事実は事実として、その後の生育歴あるいは環境の変化等を十分慎重に吟味して許否を決定する、こういうことになろうかと思います。  いずれにいたしましても、御指摘よう少年時代犯罪についての少年法精神というものは、関係者十分心にとめていかなければならぬことであろうと思います。
  11. 横山利秋

    横山委員 本件はまた別の角度で後刻質問をいたしたいと思いますが、私の承知しておる限りは、警察なり検察庁で持っております前科歴というものが、就職なりいろいろな角度で漏れておる。そして、あなたがおっしゃるようなことではなくして、さまざまな角度前科が生涯ともにその人生を左右しておるということを私は痛感をしておるわけであります。いずれ機会を改めたいと思います。  次に、所信表明の中で大臣弁護人抜き裁判の問題に触れて、「これを防止し得る具体性実効性のある方策が見出せない現状においては、」という冠詞をもって、「事態変更はない」と言われておるわけであります。一体この冠詞をお使いになりました、「これを防止し得る具体性実効性のある方策」があれば考慮の余地があるという感覚を少しお出しになっておられるようでありますが、何かその間題について大臣考えておられることがあったら言うていただきたいと思います。
  12. 古井喜實

    古井国務大臣 いまの弁護人不在裁判特例法の問題でありますが、かねがね、一般論としてですけれども弁護人のいない裁判というものは、どうもはなはだ望ましくないと私は思っておるのです。被告人の立場に立ってみると、弁護人がおらぬそういう裁判というのが一体いいことだろうか、はなはだこれは人権を守っていく上から見ても気になる問題で、望ましくないことだというふうに思っている。これは一般論です。  そこで、しかしながら必要的弁護人、どうしても弁護人がいなければいかぬという事件について、どうにもそこがひっかかってしまって弁護人がやめてしまう、あるいは出てこないとか、どうにも裁判が動かぬ、こういう揚合が起こりますと、それじゃ裁判はもうしないでいいのか、こういうことになると、これは法が守れない。それでは困る。そこで、どうにも裁判が動かぬというような場合があるといたしますればそれに対して弁護人がここに出てくるよう保証がついて、もう心配ないということにでもなればあれだけれども、どうにもその保証がつかぬということになると、じゃ法を空文にしてしまっていいかというと、どうもそうはいかぬ。そこで、いまのところ、そういう必ず弁護人保証されるということになるのかならぬのかということについて、私はどうにもいままでのところは自信がつかぬのです。いまのところ、必ず保証がつくというふうによう考えないのです。だから、そうとなれば、これは好ましくないけれども仕方がない。何かそこによい、保証がつくかつかぬか、いま具体的にそういう、こうで大丈夫だということが出てこぬのです。そこなんです、問題は。あれば大変望ましい、こういう気持ちを持っておる、こういう意味でございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 きわめてデリケートな質問をいたしておるのでありますが、要するに、実効性具体性のある方策が見出せることを期待するということに受け取ってよろしゅうございますね。  次に、弁護人抜きについてはそういうデリケートなことで、しかもはっきりおっしゃっておるのにかかわらず、「現在継続審議中の刑法の一部を改正する法律案につきましても、よろしく御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。」ここに「よろしく」と書いてあるのはどういう意味ですか。
  14. 古井喜實

    古井国務大臣 先ほど来のようなわけでありますので、いまのところどうにも大丈夫だ……。
  15. 横山利秋

    横山委員 ちょっと話が違うのですよ。贈収賄法律ですよ、いま伺っているのは。
  16. 古井喜實

    古井国務大臣 失礼しました。贈収賄の刑を加重するあの法律の......。
  17. 横山利秋

    横山委員 それに「よろしく」と書いてあるが、「よろしく」とはどういう意味だと聞いているのです。
  18. 古井喜實

    古井国務大臣 これはどうも失礼しました。ちょっと問題を取り違えておりまして……。  「よろしく」というのはごらんのとおりのことであって、提案をしているのですから、前向きにひとつよろしく御審議を願いたい、こういう意味であります。
  19. 横山利秋

    横山委員 法務大臣所信表明となれば、かなり手が入っていると私は思うのであります。なかなか名文も入っていると思うのであります。ほかの法案のところには、速やかに可決されたいとか、あるいはいま話のあるよう事態変更はないと、デリケートな雰囲気は出しながらはっきり言っておられるのに、法案審議に当たってよろしくという――日本語で言えば、よろしくというのはまあよろしくであって、いいかげんな気持ちもあるわけであります。  刑法の一部を改正する法律案というものは、これはロッキードの問題の中で出てきた問題である。先般も野党理事懇談会をいたしまして、野党としては、こぞって刑法の一部を改正する法律案については賛成しよう、前国会も言い、本国会もここで明らかにいたします。野党はこぞって、よろしくじゃない、直ちに御審議、御可決をしたいと言っておるのであります。われわれがそう言っておるのに、よろしくとは何事ですか。よろしくということは与党に気がねして、実は与党によろしくと言っているんじゃないですか。野党はよろしく、これは必要がありませんよ。よろしくというのは、あいまいな法務省態度をここで暴露しておる。  大体、法案提案理由なりいろんな中で、よろしくという言葉を聞いたことがないですよ、私は。「よろしく」を削除しなさい。よろしくという意味があいまいな、また継続審議をしてくれというよう意味であったとすれば言語道断ではありませんか、政府態度として。「よろしく」というのはおかしなよろしくではない、速やかに審議、可決してくれ、こういう意味だとはっきりおっしゃいよ。
  20. 古井喜實

    古井国務大臣 「よろしく」はどうでもいいという意味じゃありません。継続審議になって、どうでもいいという意味じゃないのです。いやしくも出しております以上、ぜひ前向きに審議をしていただきたい、こういうことにほかなりません。  なお、この再発防止の問題については、皆さん方も広範に、広い視野からどうしたらいいかということは考えていただきたい。これはつけ加えて、別によろしくと直接関係ありませんよ。「よろしく」はいま申し上げたとおりですから、よろしくお願いします。
  21. 横山利秋

    横山委員 そんな、冗談じゃありませんよ。こういう「よろしくしなんという言葉が、こういう法案について国会へ、あらゆる委員会でもそうでありますが、言葉がついたためしがないんですよ、本当にいままで。調べたことがありますか。「よろしく御審議の上、」なんということは一回も使ったことはないですよ。それを、恐らく法務省の中でこの所信表明審議なさる上において、なぜ「よろしく」がついたのか、失礼千万だと私どもは思っています。この問題については厳重に――国会ばかにしておる。むしろ野党ばかにしておる。われわれは、満揚一致でなくて、野党こぞって早く上げてよろしいと言っておる。それを与党及びその提案をした政府があいまいもことして、すでに二国会放置されておる問題である。よろしくなんということは言語道断である。私はきつくしかっておきます。  いまお話がございましたダグラス、グラマン問題について、所信表明を読んでおりますと、結語として「検察当局を信頼し、事態の速やかな解明を期待しております。」こう書いてあるだけです。あなたがいま口頭で言われました今後の防止策については、一言も言及してないというのはどういう理由でありますか。
  22. 古井喜實

    古井国務大臣 当面、真相を解明して、とにかくこの問題に対しての結末をつけなければならぬことは申すまでもありません。そこで、われわれ法務検察分野におきましては、もう本当に、ああそうか、十分究明をしたが、それがこういうことであったのか、こういうことを、やるだけやってこうかということを知っていただくまで十分に究明したいと思っておるのでありますが、これは当面の処理ですね。  それから、今後この種のことが繰り返して発生しないようにという防止策の問題につきましては、これはまだ、これから国会でもいろいろ御論議になるでしょうし、広範な論議、これをもとにして、今後の再発防丘方策というものは考えなければいかぬ。いつでもこういうことが起こるというようなことでは困った話ですから、これはわれわれの分野だけの問題と思わぬのです。これは法務検察だけの話と思おぬのです。広い範囲にわたって再発防止策というものを考えて、これを実現しなければいかぬ、こう思うのでありまして、ここではまだそういう段階でもありませんが、当然の問題で、防止策国会の方でもあのとおりに審議をされておるのですから、大いに防止策については論議をしていただいて、こうしたらいい、こういうことにぜひしていただきたい、こういうふうに思っております。
  23. 横山利秋

    横山委員 それに関連して、先般、アメリカから司法共助による資料を入手されました。その資料についての解明状態、分析の状態を御報告願いたいと思います。
  24. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ダグラス関係の資料はちょっとおくれておりますが、グラマン関係の資料は、御指摘のとおり去る十六日の夜、検察当局のところへ到着いたしまして、以来、東京地検が中心となりまして、すべて英文のものでございますが、その分析、検討を続けておる、現在まだその作業の最中である、こういうふうに報告を受けております。
  25. 横山利秋

    横山委員 いま防止政策について、大臣、議会側でもとおっしゃいました。  そこで、現在の事態の進展に伴いまして、私どもとしての考え方なりの若干をお話しして、大臣意見を伺いたいと思うのであります。  まず、五十一年、ロッキード閣僚協で決定したというか、あるいは確認したというか、さまざまな角度のロッキード閣僚協の結論があるわけであります。それが一向実現がされない、第一のよろしくの問題のものだけがいま国会に出たけれども、いわゆるよろしくで政府与党にちっと込熱意がない、これがロッキード閣僚協の第一の問題であります。  第二の問題は、周旋第三者収賄罪の新設の問題であります。この周旋第三者収賄罪については二十八国会附帯決議にもなっており、改正草案の百四十二条のとおりでもあります。この周旋第三者収賄罪について一体どうなのか。  三番目は、国外犯規定であります。いま日本は、ロッキードにしてもグラマンにしてもダグラスにしても、もらう方であります。収賄の方であります。しかし、五十五万ドルを大阪国税局の調査によってどこへ使ったかと言ったら、あれは東南アジアあるいは中近東へ使ったと言うが、証拠がないので損金にせず重加算税を付した。あれが一体どう使われておるか、国内で贈賄しておるのか国外で贈賄しておるのか、いずれにしても贈賄に使っておるだろうと容易に想像がつくわけであります。したがって、第三の贈賄罪に関する国外犯規定の新設がいま必要ではないかということについてはどうか。  賄賂罪の推定規定の新設については、これも閣僚協で結論がついているわけであります。しかし、この問題については多少問題がなしとしないと、刑法審議会ですか、あそこで言われてはおりますが、少なくとも閣僚協の結論の刑法関係四点について、何らの進展をいましていないのであります。  まず、この点について現状を踏まえながら、この四点についての法務省の御意見を簡潔に伺いたい。
  26. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 御指摘閣議了解につきましては、先ほど指摘刑法一部改正の提案をいたすとか、あるいは日米犯罪人引渡し条約の改正その他これに関連する法改正等をお願いし、一部、は成立を見ておるわけでございますが、そこで一つの懸案事項となっておりました諸点につきまして、現在の私ども考え方を簡単に御説明いたします。  まず、周旋第三者収賄罪の新設の問題につきましては、刑法の一部改正を提案たいします際にも十分検討を加えたわけでございますが、構成要件の定め方になかなか微妙なものがございまして、定め方いかんによりましては、いわゆる公選による公務員の政治活動あるいはいわゆる陳情と申しますか活動ともいいますか、そういった諸問題に微妙に影響を及ぼしてくるおそれぶみる。構成要件の定め方によっては行き過ぎになるおそれもある。したがって、なお十分検討すべきであるということで、とりあえずの措置としては見送ったわけでございまして、御指摘刑法全面改正の剛環として、現在なお鋭意検討を続けているところでございます。  次に、贈賄罪についての国外犯処罰の関係でございますが、これはロッキード事件の成り行きにかんがみまして、当面緊急に必要とされるとは認められなかったのでございますが、先ほど指摘ような案件を考えてみましても、この贈賄の国外犯処罰規定を設けましても、やはり収賄の主体はわが国の公務員に限られるわけでございまして、この問題は観点をもう少し転換いたしまして、外国公務員に対する贈賄的行為、こういうものも処罰の対象とすることによって、わが国の企業等の姿勢を正すべきかどうか、そういう観点から政府全体としてもう一回真剣に見直していくことが先決であろう、こういうふうに考えられるわけでございまして、そういう意味で、現在私どもでも、国連におきます多国籍企業の腐敗行為防止に関する協定作成作業に参加しておりますので、それらの推移も見守りながら研究を続けているところでございます。  それから、贈賄罪に関します推定規定の問題につきましても、これはただいま御指摘ございましたように、刑法全面改正を審議いたします法制審議会でも種々議論があったところでございまして、果たしてこの推定規定を置くことにより行き過ぎた結果が生じないか、あるいは規定の置き方によっては書いても余り働かないのではないか、そういう非常に具体的な技術的な点も含めめまして、なお十分検討する必要があろう、こういうことで、これまた周旋第三者収賄の問題と同様に刑法全面改正作業の一環として、現在鋭意研究を続けている次第でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 大臣、数々の問題提起なり私ども意見を言いますが、いま伊藤刑事局長のお話は、経過、いまの結果を御説明になったにすぎません。しかし、ロッキードのときに閣僚協で決定があって実行が全然されない上に、グラマン、ダグラスができたのですから、ここで百尺竿頭一歩を進めなければならぬという態度をやはり持ってもらわなければいかぬ、この前提でお伺いします。  それからその次は、これは法務大臣直接の関係ではございませんが、公職選挙法の改正によって、執行猶予になった場合でも公民権の停止をしたらどうかという問題であります。  いまロッキード裁判をやっている。田中角榮氏が五億円をもらったか、もらわぬかという問題になっている。恐らく五億円はもらったことになるであろう。しかし、職務権限がないという可能性で議論がされたとする、そうして執行猶予になる。執行猶予になれば、公民権の停止は贈収賄ではないわけでありますね。これは国民がどうしても納得しないところであります。贈収賄事件というものは執行猶予になる可能性がきわめて多いのであります。圧倒的に執行猶予になる。贈収賄罪というのは公務員に非常に多い問題であります。政治家にまた多い問題であります。これはすでに戦前では停止をされておったわけであります。  したがって、この贈収賄に対する罪というもの、国民の批判というものを踏まえるならば、執行猶予中といえども公民権の停止をすべきではないかという点は、今回のこの種の一連の事件を踏まえて考えるべき点であろうと思いますが、いかがですか。
  28. 古井喜實

    古井国務大臣 横山委員もおっしゃったように、私ども所管とすぐ言ってしまえない、選挙制度が基本でありますから、関係はありますけれども……。ですから、私がどうこう言うのはちょっと逸脱しておるかもしらぬと思いますね。が、それにもかかわらず、いまお話しのような御見解もありましょうし、所管外のことをかれこれ私が言う資格もないわけですけれども再発防止の問題になりますと、ただ刑だ、われわれの所管の枠の中だけ考えたって再発防止ができるかどうかは疑問だと私は思っているのです。ロッキードがあり、ダグラス、グラマンがあり、この繰り返し、また広範なかかわりを持った問題を見ますと、こういうことをなくしようという再発防止ということになりますと、もっと視野を広げて考えなければならぬ。そうでなければ防止できないのじゃないかという気がしてならぬのです。  それで、犯罪になる、ならぬのきょうの問題にしましても、事はせいぜい私ども責任として究明していきたいと思っておりますけれども犯罪にならぬでも、たとえば行政部内に過ちがある、不当なことがある。そういうことについては、われわれの所管ではありませんけれども行政部内に不当なことがないようにするにはどうしたらいいか、そういう問題もあると思うのですね。それについてはだんだん、いままでも議論も出ておるようです。そういうこともありますし、それから行政部内以外に、犯罪にならぬまでも、政界の分野においても、国会論議されておるように、どうしたらいいかという問題もありましょう。犯罪だということでなくても、道義的とかいう問題。それから経済界の方にも……(横山委員「遠回しに言わないで、もっと質問にずばり答えてください」と呼ぶ)私は、相当反省してもらわなけれぱならぬ面があるんじゃないか。目的のためには何をやってもいい、そう企業活動を縛り上げるのはよくないけれども、倫理的なミニマムは守ってもらわなければならぬという意識の問題もあるんじゃないか。すべてこういうことをひっくるめて考えませんと、再発防止にならぬと私は思うのです。  そこで、この問題は、当面は、いまのぶつかっておる問題、事案の処理にわれわれは頭を集中しておるわけですけれども、これは締めくくり的に再発防上の策ということについては、面を広げて、実効のある策を考えていかなければならぬ、こういうふうに思っておるようなことでありまして、本当にどうしたらいいか、すぐきょうの問題というより、もっと締めくくり的な問題になるかもしれませんけれども、いい御案があったら、何ぼでもひとつ啓発をしていただきたい、そう思っております。
  29. 横山利秋

    横山委員 私が再発防止を党内で担当しておるわけでありますが、どうしても、それはもちろん刑法なり法務省の問題が中心にならざるを得ない。しかし、そ札ではとても総合的な再発防止にならないわけであります。だから、大臣のおっしやるように、法務省所管外、法務委員会所管外といえども、総合的に考えなければならぬという立揚は一緒なんであります。一緒ではあるけれども、その中でまず法務省の問題を、そしてお互いに政治家でございますから、政治家としての倫理を含めた規制の周題をお伺いしておるわけであります。  いまの大臣のお話は、結論みたいなことをおつしや冷が、まだ結論に至らぬのであります。私が申し上げたのは、公職選挙法の改正により、執行猶予になった場合でも公民権を停止をするものとする、それが一つ提案なんであります。あなたは所管外とおっしやるけれども、私は、いまあなたが結論をおっしゃったように、私も最終的に結論を言いたいと思つたのは、法務省だけで考えたってだめだから、ロッキード閣僚協があって、あの結論があるのです。あれでは足らぬから、今度のグラマン、ダグラスの問題においても、再発防止の閣僚協の提唱をあなたがなさるべきだというのが、私が結論に申し上げたかったことです。その中で重要な点は法務省傘下の閙題が多いんですよ。だから、よけいにあなたは再発防止閣僚協の設置を堤唱すべきだというのが結論ですが、その結論をあなたが最初に言ってしまったものだから、ついでに聞くのですが、それを提唱なさるお考えはございましょうか。
  30. 古井喜實

    古井国務大臣 再発防止の問題は、本当に真剣に考えなければならぬ問題だと思っておりますが、きょうの段階でそっちの方に行ってしまったら、きょうの目の前の問題の処理を、それでもってお茶を濁してしまう、そういうことになっても困るので、きょうの問題はきょうの問題で、これは目の前のことですから究明していかなければいかぬ。もう再発防止の方に飛んでしまって、きょうのことはたな上げするのか、それはどうも困るんですね。  そこで、おっしやるよう再発防止の問題についてどうするかということを言い出すについても、時期は考えなければいかぬ。そうでしょう。そのぐらいのことはこっちも時期も考えなければならぬし、言うにしても、いろいろ考えておるところでありますので、御了解願っておきたいと思います。
  31. 横山利秋

    横山委員 私も野党として、当然のこととして、それは考えておる。けれども再発防止というものは、きょう集まって、きょう決められる問題じゃない。いまから問題提起して、事態の進行とにらみ合わせながら、私も予算委員会や何かの審議の状況を横目でにらみながら、その質疑応答の中で、一体何をわれわれは考えなければならぬかということを考えながら作業をしておるわけでありますが、これは問題を提起したからといって、きょうすぐに直ちにそれが成案とされるものではない。お互いに与野党政府で研究をしていかなければならぬ問題だと思います。その意味でお伺いしておる。  それと相関連して、あなたも政治家、私も政治家。アメリカでももう政治家の倫理というものがくどく言われておるわけであります。あなたも先ほどおっしやった。政治家と政府高官の資産を年一回公開をする、こういう措置をとったらどうか、立法をしたらどうかということを私は考えるわけであります。政治家というものは、政府高官もそうでありますが、少なくとも国民に対して自分のプライバシーの大部を放棄しておる人種だと私は考えておるわけであります。自分の立侯補に当たっての清潔、身辺、それを公開して、それを国民に訴える、単に政策ばかりでなくて、自分の人間性というものを裸にして訴える、そういうものなのであります。したがって、政治家と政府高官の資産を年一回公開をするということが、政治の腐敗防止の一つの大きな柱になると思いますが、どう思いますか。
  32. 古井喜實

    古井国務大臣 これも従来から論議になっておる問題であります。私が、所管の関係からいって触れて構わぬものかどうか、少々枠を越えておるかもしらぬと思いますけれども、従来から議論になっている。いままで自発的に公開されておる方もあるようです。そこで、そういう意味であのような方式ですね、資産公開、これはりっぱに実行できるか、あるいは何年間かの所得の公開というような形だって考え得るじゃないか、ここらはやはり研究の点があると私は思うのです。形だけやっても、資産公開、これは間違いないと調べたりなどすることが、資産になるとなかなかむずかしい点があると思うのですよ。だから、なるべく的確にいけることでないと、ただ形だけになってしまう。問題は確かに問題だと思いますけれども、これはひっくるめて研究をすべきことであろうと私は思っております。
  33. 横山利秋

    横山委員 今度のグラマン、ダグラスでアメリカのSECの活躍というものがきわめて顕著でございます。つくづく考えてみますに、日本の証券取引法の中に、昭和二十八年まではやはり日本SECというものがあったわけであります。これが、もしそのまま生きておったとするならば、われわれが国民からときどき批判を受けますように、何かロッキードといいグラマン、ダグラスといい、アメリカからのことで日本が騒いでおる。一体国会は何しているのかというふうに言われておるわけでありますが、この昔の証券取引法の中における証券取引委員会、それが存在しておったならば、そのまま行われておったならば、かかることはあるまいに、いま予算委員会審議を通じて考えられることは、法務省の刑事局、大蔵省それから通産省、会計検査院、そのチームワークが必ずしもうまくいかぬのではないか。刑事局の作業というものは、内偵はしておっても後追いではないのか。もし行攻指導としての権限を持つ公取のような証券取引委員会というもの。が存在しておったならば、つまリアメリカのSECのようなものが今日、日本にあったならば、そういうことにはならないであろう。もっと積極的に、行政においても国会においても、自発的に問題の粛正が行われるのではないかという批判については、どうお考えになりましょうか。
  34. 古井喜實

    古井国務大臣 私もさっき、経済界の方も、こういうことが起こらぬようにするために、どうも一役買ってもらわなければいかぬのじやないかというようなことをちょっと言いましたが、やたらに企業活動を規制するのは、いわゆる角をためて牛を殺すようなことになりますから困りますけれども、倫理的なミニマムは守ってもらう、こういう基本があり、それに対して、刑事局だの権力機関がすぐさま乗り出すのは、私は考えものだと思っておりますけれども、中立的な行政機関でもあって、そしてルールを越していないかどうかということを調査するとか、それに応じて適切な措置をするとか、そういう問題は、私個人は検討に値すると実は思っております。  断っておきますけれども、これは個人の私見です。そうして、協力してもらわなければいかぬじゃないか。そういう仕組みがないから、国会で何から何まで忙しい中で議論されて時問をつぶされる。予算という急ぐ問題があるのに、議論をしておらなければならぬ。そういうふうなところがあって、そういう仕事を肩がわりをして、じっくりやってもらえるというのなら、国会の方だって助かるじゃないか、本来の機能の方に専念できるじゃないかと思ったりいたしまして、これは本当に検討に値すると私は個人的には思っておるのです。それ以上私はきょうは申し上げる立場でもないし、その程度にしておきたいと思っております。
  35. 横山利秋

    横山委員 それでは商法に関連してお伺いいたします。  われわれは先年、商法改正を本当に慎重審議をいたしました。それをもってしても、前代未聞の不二サッシの莫大な粉飾決算が表へ出ました。われわれは一体、何をここで長時間、長期間にわたって商法を改正したのかということを、自問自答せざるを得ないのであります。それはあなたのおつしやるように、どんな法律をつくっても、企業の倫理性が、自主的な倫理がなければ同じことだという論理は咸り立たぬわけではないのですけれども、しかし、それでは立法府としても、行政のありようとしても済まないのです。  そこで、いまアメリカにおけるSEC、日本における証券取引委員会の復活と相並んで、商法の改正及び公認会計士の監査のあり方について、さらにこの際、百尺竿頭一歩を進めなければならぬのではないかという問題が提起をされている。たとえばその一つに、監査役の権限をさらに強北する、そして取締役会と監査役との問に一線を引く、監査役会が公認会計士を委嘱する。そしてまた、私の意見でありますが、公認会計士と被監査会社との契約というものは買い手市揚でありますから、拝む、頼む、あなたのところの監査をやらせてくれと言うて過当競争するのが今日の実態でございますから、そういう公認会計士がその会社から報酬をもらって、その会社の恥部を探す、非違をたしなめるというようなことは、論理的にどうしても問題が残るわけであります。  そこで、一つの私見でございますけれども、公認会計士協会を監査契約に一枚加える。その加え方には議論がありますが、契約立会人とでもするか、何らかの方法が必要ではないか、非常にたくさんの問題がございます、意味がございますけれども、監査契約のあり方についても改善をすべきではないかと思われますが、これは少し具体的なことでございますから、大臣でなくても、民事局長でも結構でございますが、御意見を伺いたいと思います。
  36. 古井喜實

    古井国務大臣 私では不十分かもしらぬと思うのですが、いいところは玄人が来たときにまたお答えさせていただきたいと思いますが、御案内のように、商法の改正問題に取り組んでおるわけであります。  このほども、会社の株主総会それから取締役及び取締役会、監査役の制度、その辺のことについて試案を法務省で発表して、それで大方の世論の御批判を請うておるのは御承知のとおりであります。その中にもお話しの問題、監査機構の問題は一部分含まれておると思うのであります。それから、まだその後に会社の計算、そういう方のものは第三段に残っておるわけであります。  第一段が例の株式の部分で、中間的な意見を出して世論に問う。それから、いまの会社の機関について世論に問う。それから次は、残っておりますのは計算の部分について、こういうことでいま進めておるわけでありまして、十分か不十分か、大いに世論の公正な御意見を伺って吸収して最後案を決めたい、こういうわけであります。  ですから、御意見のほどはどんどん――そのために世論に問うているのですから。いわんや国会の有力な皆さんのことですから、意見をどんどん出していただいて、よい案を得たい、こういうふうに思っております。もっとしゃんとした話は局長が来まして申し上げますから。
  37. 佐藤文生

    佐藤委員長 横山利秋君に申し上げますが、大臣が予算委員会に出ますので、質問の締めをお願いします。
  38. 横山利秋

    横山委員 途中でありますが、大臣がおでかけになるそうでありますから、一つほかの質問を、あなたでなければいかぬ問題を質問します。  きょうNHKニュースで、金大中氏が拉致されたのはKCIAの六人がやったという証拠を握ったと、NHKが発表したそうであります。そうして拉致途中、二百トンくらいの船の中で手足におもしをつけたことは、海に投げ込もうとしたことであり、その証拠を握った、こういう報道がされた模様でありますが、法務省はこの情報を持っておりますか。
  39. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私ども、まだ寡聞にして聞いておりません。
  40. 横山利秋

    横山委員 私どもは、かねて金大中氏の原状回復を訴えておる。冒頭に言ったように、閣議の中で最もこの問題を主張されたのは、当時の三木さんとそれから田中さん。金大中事件は決してよその国の問題でなくて、白昼堂々と目本の一流のホテルから権力をもって奪い去られる、しかもそこには明白な指紋が残っておる。そして、あらゆる検察陣の努力にもかかわらず、その足取りが杳としてわからなかった。  この際、その金大中事件の問題について、私のきょうの質問の焦点であります人権問題と目本国家の自主性が侵されている、この問題について、さらに法務大臣としては、原状回復に努力をなさるべきだ、真相解明のためにこの際熱心に追求をすべきだ、閣議の中でも主張すべきだと思いますが、いかがですか。
  41. 古井喜實

    古井国務大臣 あの金大中問題は、申すまでもなしに、当時まあ政治的決着をつけたわけでありますね。二回にわたって政治的決着をつけた、こういう経過がありますね。(横山委員「新しい証拠ができたら違うと言ってあります」と呼ぶ。)それで私は、政治的決着は尊重します、こう言っておるわけです。個人的な感想はもう言いません、こういうことを言っておるわけです。  ただ、当時は事実関係があいまいであった。その基礎の上に政治的決着をつけた。また新しいはっきりした事実が起これば、これはまた別だ、こういう経過になっておるようでありますので、ただ、いまのお話がどこまで的確な事実か。まあニュースはありましたよ。それだけでどうというわけにはまだいかぬのです。ですから、そういうたてまえでこの問題には取り組んでいくというか考える、こういうことの筋道だろう、こういうふうに思っております。
  42. 横山利秋

    横山委員 だめを押しますけれども、これは政治的決着がついておるけれども、新しい事実が起これば別だということは、歴代の政府責任者がお答えになっておるところであります。いま新しい事実が起こった。ですから、当然この問題について法務大臣としての責任が生じた、こう考えてよろしいか。新しい事実が起こったのですから、法務大臣としての責任が生じた、解明すべき責任が生じた、こう考えてよろしいか。
  43. 古井喜實

    古井国務大臣 ニュースは非常に貴重なものでありますけれども、それだけでまだはっきり、そういう事実があったかないかは確定できるわけでもありませんし、いわんや公権力の行使が日本の領土内であったかどうか、やはりこれは……(横山委員「あったじゃありませんか、指紋もある、白昼堂々と公権力で奪い去られた」と呼ぶ)だれがやったかといっても、それはまあニュースであって、そこらをちゃんと的確なことがつかめません限りは、まだそのニュースだけでどう、そうはいかぬと思います。
  44. 横山利秋

    横山委員 とにかくニュースを確かめ、そういう事実溺あれば調査をするというふうに理解してよろしいですね。
  45. 古井喜實

    古井国務大臣 よく伺っておきます。
  46. 佐藤文生

    佐藤委員長 よろしゅうございますか。
  47. 横山利秋

    横山委員 はい。お帰りになって結構です。
  48. 佐藤文生

    佐藤委員長 大臣、それじゃ予算委員会に御出席願います。
  49. 横山利秋

    横山委員 最高裁に伺います。  この間新聞に載っておりましたが、二月九日、東京地裁におきまして、法廷におきまして傍聴人がやじった、その中で「ひどいじゃないか、資本家の犬だ」という声が発せられた。そこで裁判長が「いまの発言はだれだ、拘束」と一気にどなって、傍聴者最前列左側を指さした。そこで警備員が声のした方へ近寄って祝という入を拘束した。ところが、周辺の人は祝がやったのではないと力説したにかかわらず、裁判官は祝がやったものとして措置をした。それが人違いの問題であるということがずいぶん騒がれておるわけでありますが、事態はどういうことでありましたか。
  50. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 それではお答え申し上げます。  私どもで承知しておりますのは、この二月九日り午後一時三十五分過ぎごろ、これは判決言い渡し期日でございまナが、そこで、先ほどお話がありましたように、「資本の犬」というふうな発言をした傍聴人がございまして、そこで二月九日、その当日、監置七日という制裁裁判がございました。それに対して、抗告の申し立てが二月九日、同日ございまして、抗告審で二月十五日に抗告を棄却するという決定がございました。  それで、その抗告審の決定によりますと、この制裁裁判に対する抗告というのは、本来は違法というほどの問題でできるのであって、事実問題は直接には問題にはならないわけでございますけれども、しかし、この抗告審の裁判所は、抗告の申し立て人、抗告人の方で言っている、審理を尽くさない違法がある、要するに、十分な証拠もないのに間違った人を認定したのではないかという、その点につきまして、抗告裁判所で次のように言っております。   しかし、本件記録中分昭和五四年二月九日付東京地方裁判所事務局警務課事務官法廷警備員高杉典利作成の「報告書」及び当審における右の高杉典利に対する審問の結果によると、高杉法廷警備員は東京地方裁判所刑事第五〇三号法廷の傍聴席の最前列の右側傍ら これは裁判官席からながめて右側でございますが、  傍らの椅子席に座り傍聴人の方を向いて注視していたところ、判決言い渡しが終了し、裁判長は陪席裁判官と共に在席したまま、傍聴人及び傍聴席後方左側にいた報道記者らに退廷するように促したこと、 後方の左側に報道記者がいたようでありますが、  ところが傍聴席最前列右側の数名の傍聴人がこもごも「こんな理由があるか。」「資本の犬」と発言し、これと同時ごろに最前列右側から四番目の席に座つていた本件申立入が、うつむき加減に「資本の犬」といつたこと、すると裁判長は、すかさず「いま発言したのは誰か。」といったので、高杉法廷警備員は、その位置していた椅子席から立ち上り、そこから約一メートル余はなれた傍聴席に座つている申立人を指示したこと、次に裁判長は「拘束」と命じたので、高杉ほか二名の法廷警備員は申立人席にかけつけたが、申立人は席から容易に立ち上ろうとせず、また自分はそのような発言をしていないとの抗議はしなかつたこと、高杉ら法廷警備員は申立人を裁判官・被告人専用通路に連れて行き、他の法廷警備員に引渡したが、申立人はこの警備員二名に対してはじめて「自分は発言していない。」と述べたことを肯認することができる。   以上の事実によれば申立人が原決定の摘示したと同一の発言をしたことを十分に断定できるといわねばならない。 こういうことになっております。  これがさらに、この高等裁判所の抗告審決定に対しましては、五十四年二月十五目に特別抗告の申し立てに従って、現在最高裁判所に係属中でございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 私は新聞を見ましてから、関係方面からその事態の詳細な資料を聴取をしたわけであります。これで見ますと、明らかに人違いであるという感じがしてならないのであります。  たとえば、いまお話があったように、いま言ったのはだれだと言ったら、監視人がそばに行って、おまえが言ったのかと言ったら、黙っておったからというのが一つ理由になっている。そして、出ていってから、私は言いませんと言ったという。それは、消極的態度であったから、おまえだろうということになった。私が言ったということは一言も言うていない。周辺の人は、それは人違いだ、こちらの人間だということをみんな言うておるのです。それは裁判長が確認したのか、祝であるということを確認したのか、警備員が確認したのか、裁判長が警備員をしてあれだろうと言って、その祝の方へ行ったのか、客観的な証拠というものはきわめて乏しい。しかもこの場合に、少なくとも傍聴席の中から数人の者が発言をしておる。その発言の中の一人が資本家の犬だと言った。それだから、十分な確証のないままに祝を逮捕して、監置七日間。  そして私の入手した資料によりますと、裁判長から七日の監置を言い渡した際に、裁判長は、声が小さかったから七日にしたと言ったそうであります。どういうあいまいな物の考え方でありましょうか。声が小さかったから、そしてあいつだろうというふうなあいまいな認定のもとになされたのでは、これは少し職権乱用といいますか、いかがわしいやり方ではないか。なぜもっと正確に確かめなかったか。そういうことが悔やまれてならぬと私は思うのですが、どうですか。
  52. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私も新聞記事を読みまして、裁判所のおやりになったことでありますが、多少気になりましたので立会検察官に報告を求めました、ところ、立会検察官は、当時傍聴席で何人かの人が発言したようでございますが、先ほど岡垣局長から御説明のように、一人うつむいて際立って発言した人がいて、それが当該申し立て人であるということを検察官自身も現認しております。裁判長は、まさにその人を見ながら指さしておるということでありましたので、私も、一部新聞に出ましたようなことは検察官の側から見ても存在しなかった、聞違いのない監置の御決定であったというふうに了解いたしまして、安心した次第でございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 検察官の話は私も聞いておりません。ただ、法廷で数人の人間がそういう発言をした。たとえば不法じゃないか、不当じゃないか、ひどいじゃないか、不当判決じゃないか、資本家の犬だ、こういうような発言があったときに、資本家の犬と言った、一斉にわあっとなった中で、資本家の犬と言った者だけが問題である、その発言が穏当ではないという点はわかる。けれども、一斉にわあっと言った中で、だれがひどいじやないかと言ったか、だれが不当判決だと言ったか、だれが資本家の犬だと言ったかということは、容易に定かではないと私は判断ができるわけであります。  しかも隣りの人で、おれが言ったという人がいるわけです。あれはおれが言ったんだという人がおるわけです。その人が、あなた方の言い分から言うならば、本当は祝が言ったんだけれども、どうも祝を守るためにおれが言ったんだというように解すると、あなた方はお考えようであります。一緒にわあっと言ったときに、果たして祝が言ったのか、ここに詳細な状況のあれがあるのでありますけれども、まことに本件については適当な措置とは言えない。監置七日間という処分は妥当でない。もう少し問題は究明さるべきだ、こういうふうに思いますし、裁判長から、声が小さかったので七日にしたという補足説明があったに至っては、自信のないことはなはだしいではないか、こう思うわけでありますが、どうですか。
  54. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 委員の方でもいろいろとよく御調査のことと思いますが、甲と言う人があり、いやそうではない、乙と言う人があって、そこで裁判所が裁判するということでありますが、この場合、抗告審の決定が出ておりまして、先ほど申し上げたとおり棄却が決定になっておりますし、そして現在最高裁判所に係属中でございます。  私は、いろいろと御意見はあると存じますけれども先ほど指摘になった、裁判長が自信がなくしてやったなどということは、もちろんあり得ないことだと存じますし、そういう問題になっていることは、やはり抗告裁判所でどうか、最高裁だとどうなるかということによって、最終的には決まるべきものであろうと存じます。
  55. 横山利秋

    横山委員 それなら、声が小さいから七日間、声が大きかったから十日間ということはどうお考えになりますか。ばかばかしい発言だと思うんです、裁判長として。声が小さいから七日にしてやった、声が大きかったらもっと刑を、監置の期間を長くするんだ、そんなことはどういうことなんでしょうか。これは言ったこと間違いないです。
  56. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 私どもは、そのときの周囲の状況というものを考え裁判所がお聞きになったと思いますので……。(横山委員「本人に裁判官が言ったんだ、声が小さいから七日間」と呼ぶ)その、いま委員のおっしゃっていることは、私ども承知しておりません。
  57. 横山利秋

    横山委員 承知してないと言ったって、ちゃんとこれは裁判所へ出ている。最高裁へちゃんと出ているんですよ、この話は。裁判官に闘いてごらんなさい、あなた、声が小さかったから七日にしたのかと。ちゃんと本人に言い渡したことですから、間違いない事実なんです。声が小さいので七日間、声が大きかったら十日か二十日、そんなでたらめな話があろうものじゃないですよ。  まあ東京地裁で同じような――同じとは違いますけれども裁判長がうそをついておる、このよう裁判はいかぬと言って退廷をした弁護士に対して、問題が生じたわけであります。この点も、きょうは時間がございませんから次回に差しかえたいと思うのですが、私が聞きたい点は、そう言えばおわかりの東京地裁の問題でありますから、一遍お調べ願いたいのは、裁判長はうそを言ったという事実があつたか、なかったかという点であります。弁護士が、裁判長はうそを言ったと言って退廷したので、処分を受けたという事件ですね。うそを言ったと言うことが法廷を、裁判官を侮辱したということで、けしからぬということになったわけです。  それでは、本当に裁判官は約束を履行しなかったのか、その約束は何であったか、なぜ履行できなかったかというところが問題の焦点であります。法廷の秩序というもの、法廷の三者の信頼感というもの、立場の違いはあるけれども、お互いに信頼を持って法廷が進められるということが必須の要件であるとするならば、なぜ一体裁判官はうそを言ったと言われたのか、約束というものは何であったか、どうして履行ができなかったか、一遍次回に御報告を願いたい、こう思います。(岡垣最高裁判所長官代理者「いまでもわかっています」と呼ぶ)わかっていますか。じゃ、どうぞ。余り時間がないので、申しわけない。
  58. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 この弁護人が出るときに、そんなものは裁判と認めない、あなたの判決をとうてい聞く気になれない、裁判長はうそつきであるというふうなことを言って出ていった。そこで決定では、裁判長はうそつきでありますと大声で発言したという点をとらえて、過料三万円という決定になったわけでありますけれども、そのうそを言ったという点につきましては、私どもも、委員指摘のとおり開心を持ちまして、どういう経過であろうかということを調べたわけでありますが、これは実は本当に理解できない言いがかりと言うほかないわけであります。  これはこういうことのようでありますが、第十八回の公判期日で証拠調べを終結した際に、弁護人側の方で、具体的な書証の標目とか被告人質問の日程などを明らかにした書面で証拠調べの再開を申請されるなら、裁判所としては慎重に検討するというふうな告知をして、それで、だから証拠調べは一応打ち切るが、そういう申請があれば、さらに調べますよというふうなことを言ったようであります。その十九回の公判期日で、検察官の方で前科調書等の情状証拠を申請された。そこで裁判所はこれを採用した。ところが、その採用したことが先ほど申し上げたことに反する。どうも言われる趣旨は、これで証拠調べはおしまいにする、弁護人の方だけは出されれば後検討して認めるが、検察官の方は認めないという趣旨にとられたのか、これはちょっと法律常識では全く理解できないことでありますけれども、その点をとらえて、うそをついたというふうに言われているようであります。
  59. 横山利秋

    横山委員 法律常識という問題ももちろんあるでありましょう。しかしながら、あなたのおっしゃるように、その日に弁護側において、具体的に書証の標目とか被告人質問の日程を明らかにした書面で再開を申請されるなら、慎重に検討するということを言ったということは、もうこれで終わりです、弁護人の方で何かあるならば言ってくださいよ、これで終わりですよというふうに、当時の雰囲気としては理解された、ここが争いになるのじゃないのですか。だから、もう全部終わった、あとは弁護側で何かあるならばやってもいいよということは、もう検察側もない、弁護側だけだが、あるならばやってもいいよというふうに弁護人は理解した。それを十九回公判では、検察官が忘れておったことをやった。それについて、その前のときの雰囲気とは違う。そんなものはもう済んでしまって、検察側もない、弁護人もないだろうが、弁護人だけに、もしあるならばやりてもいいよと言っておいたのに、自分の方に黙って、いきなり検察側の言うことを取り上げたということは、この前の雰囲気から言ってうそではないか、こういうことが問題の焦点じゃないのですか。まあこれはやり合うと時間が――そこが問題ですよということです。法理論よりも、むしろ法廷内における相互の信頼感の問題だ、そういうふうに私は理解します。  途中ではございますけれども、余り私ばかり使っても申しわけありませんから、一応質問を終わります。
  60. 佐藤文生

    佐藤委員長 鳩山邦夫君。
  61. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 私は、与党委員としては初めて質問をする次第でございますが、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、幾つかの点について御質問を申し上げます。  今回の改正案によると、判事五人、裁判所書記官八人、裁判所事務官四人、計十七人の増員となっておりますが、当初の増員要求はどれぐらいであったのでございましょうか。  また昨年の本委員会で「裁判官及びその他の裁判所職員の増員、適正な配置、充実等についてより積極的対策を講ずべきである。」との附帯決議がなされておりますが、この附帯決議について、どのような対応がすでにとられたのか、あるいは今後とられる予定であるのか、お答えをいただきたく思います。
  62. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 昨年八月の当初概算要求の時点におきましては、裁判官十七名、それから裁判富以勝の裁判所職員九十六名、合計百十三名の増員の要丸をしたわけでございます。その後の事件の動向、それから職員の充員の見込み等を勘案いたしまして、最終の十二月の段階で、ただいまお話がありました、この法案になっております数の増員ということに落ちついたわけでございます。  それから次に、ただいま御指摘附帯決議でございますが、昨年の第八十四回国会におきまして、お話しのとおりの附帯決議をいただいておるわけでございます。私どもといたしましても、この附帯決議の御趣旨を十分に尊重いたしまして、これを踏まえた上で昭和五十四年度の予算要求、予算の獲得についてできる限りの努力をしたわけでございます。結論として判事五名、それから一般の職員十二名ということになったわけでございますが、この裁判官の関係につきましては、ここしばらくの問はずつと判事補でございましたのが、判事の増員ということで実戦力としてはかなり大きな戦力になると思いますし、一般職員につきましても、ここ一、二年、昨年、一昨年あたりと比べますと人数もふえておるということで、決して十分ということは申せないと思いますが、それはそれなりの成果であったというふうに考えておるわけでございます。  なお、その増員以外の、附帯決議にございます適正な配置、それから充員といったような問題でございますが、配置の関係につきましても、比較的余裕のある裁判所から比較的忙しい裁判所へ裁判官、一般の職員の配置がえをするというふうなこともやっておりますし、充員の関係につきましても、採用時期が大体四月でございますので、退職時期とそれから採用時期がかなりずれるということが従来はあったのですが、そこら辺の関係もできるだけ調整を図りまして、欠員をたくさん抱えないような、そういうことも考えて、充員については昨年以来努力しておりますし、今後も努力を続けてまいりたい、かよう考えておる次第でございます。
  63. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 判事については十年ぶりの増員で、いままでずっと増員がされなかったわけでありますが、その理由、そしてなぜ今回に至って増員することにしたか、お答えいただきたいと思います。
  64. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 従来、裁判官の増員につきましては、その理由といたしまして、特殊事件の処理ということで要求申し上げてきたわけでございます。  なぜ判事について増員をしなかったかというお尋ねでございますが、実は、御承知のように、判事となるためにはそれだけの資格が必要なわけでございます。現実の問題といたしまして、定員をふやしていただいても、いわば充員すべき判事になれる資格のある者がいなかったということでございます。ことしの四月になりまして、十年目の判事補から判事になるわけでございますが、その者が相当数出てまいりましたので、このたびは本来の趣旨に立ち戻りまして、判事の増員をお願いしている次第でございます。
  65. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 ここに裁判官以外の裁判所職員の減員の推移という資料がありますが、裁判所の主に事務官につきまして第一次、第二次、第三次、第四次という減員がなされてきている。このような減員をやることによって事務処理に支障が起きないものかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  66. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいま鳩山委員指摘ように、毎年増員が行われます一方で、順次減員が行われている、そういう事態があるわけでございます。これは、御承知と存じますが、昭和五十一年八月、五十二年十二月等に閣議決定都ございまして、定員削減計画というのを政府の方でお立てになっておるようでございます。裁判所としては、それに拘束されるわけではございませんが、諸般の事情を考えまして、その趣旨を理解し、それに御協力を申し上げるということで、順次計画的な削減を行っておるわけでございます。  ただ、この定員の削減につきましては、お手元に差し上げました資料にも出ておりますが、大体司法行政関係ということで、裁判事務に支障を来してはいけませんので、司法行政部門において順次削減を行ってきておる。司法行政の関係は、一般行攻と違った面はございますが、類似した面も非常に多くございまして、やはり御協力申し上げざるを得ないコ行政の関係でございますから、たとえば事務の機械化を図りますとか、報告事項を少なくしますとかというようなことで合理化を図ることが可能であり、また従来からもそれをやってきたわけでございまして、実際の司法行政事務には影響がないという判断でやってまいりましたし、現にそういう支障は生じていない、そういう実情でございます。
  67. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 最上政務次官に、せっかくお座りでございますので、初答弁をお願いをしたいわけであります。  お聞きになりましたように、この定員法の改正案というのは、大した問題点を持っていないわけであります。ところが、毎年ほんの数名あるいは十数名の増員のために、このような議論がなされる。通常国会は常に法務委員会としても重要な法案を抱えておるわけでありまして、今回でも、継続審議となっております刑事事件公判開廷に関する特例法が控えておるわけでありまして、野党は反対をする方々もおられるとは思いますが、少なくとも土俵の上に乗って一日も早く審議を開始しなければならないのが当然のことでございます。  ところが、この定員法がある。そのために特例法審議開始も大幅におくれることは目に見えておるわけでありますし、また、この定員法の質問の際には、ほとんどが実際の増員あ.るいは減員についての質問ではなくて、裁判あるいは司法行政一般についての質問がなされるわけであります。私は、そういう質問をする機会が年に一遍は必要だから、これを毎年やる意味があるんだという意見には、どうしても賛成できない。そういう裁判あるいは司法行政一般についての質問をするというのであれば、それ億、たとえばこの時期でなくても、何か別に委員会を開いて、そのよう質問をすれぼいいと思うのです。  とにかく、できるだげ早く重要な法案審議にスるためには、毎年これをやるのはロスであるから、しかも司法権というのは、立法権、行政権と多少質が違いますので、世に言う行政改革とは、私は多少距離を置いた位置にあると思う。このことは、昨年もこの法案質問で私は申し上げたわけでありますが、枠というものをうんと広げておいて、当分この定員法の改正を、たとえば五年、十年やらなくても済むようにしておいて、この時期に重要法案審議に入る方がよりベターだと私は思うのですが、政務次官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  68. 最上進

    ○最上政府委員 お答えをしたいと思います。  やはり現行の法令下におきましては、逐年こうした問題、増員等をお願いをする以外に、現段階で方法はないというふうに考えているわけでございます。私どもも、現在の裁判が大変遅延をしている原因に、一つは、やはり裁判官の人数というものが、年々増加する事件に対応し切れない、そういう現実面をとらえて今回お願いをいたしまして、増員が十年ぶりに実現をしたわけでございます。  まとめて大枠でとれないか、そういう御意見でございますけれども、いまの段階におきましては、私の立場からは、こうした体制の中で、できる限り裁判の遅延をなくすために増員をお願いをしていく以外にないと考えているわけでございます。
  69. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 以上をもちまして、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する質問は終わります。  次に、下級裁判所設立及び管轄区域に閣する法律の一部を改正する法律案について御質問を申し上げます。  本法律は、昭和四十六年に改正されて以来、今回入年ぶりの改正であるが、久しく改正案が提出されなかった理由はどこにあるのか。また、管轄区域等に実質的な変更がない限り、法律を改正しなくても事務上は支障はないように思われるわけですが、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律第三条との関係も含めまして、その内容を御説明をいただきたいと思います。
  70. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいまお話にございましたとおり、この下級裁判所設立及び管轄区域に関 する法律は、昭和四十六年以来改正を見なかったわけでございますけれども、その理由といたしましては、御承知のとおり(昭和二十八年ごろから町村の合併促進法が制定されまして、市町村の廃置分合が非常に頻繁に行われるようになりました。そういたしますと、この法律の別表の表示と実際との間にかなり食い違いが頻繁に出てまいりますので、国民の側にとっても不便であるということから、四十六年まではほとんど毎年のように改正をお願いしておったわけであります。ところが、昭和四十七年に地方自治法の三万人都市の市の指定の規定が失効いたしましたころから、その市町村の廃置分合というものもかなり減ってまいりました。  また一方、ただいま御指摘ように、この法律の第三条に、管轄区域についての変更があっても、当然に裁判所の管轄区域はそれに伴って変更されるというふうな規定もございますために、実質的な問題は生じないということから、毎年の改正ということまではしなくてもということで今日に至ったわけであります。  ところが、今回は実質的な変更、ここに名古屋の簡易裁判所の新設、いま工事中でございますけれども、それに伴いまして所在地を変えていかなければならないというふうな問題もございましたので、この機会に、従来の廃置分合に伴います所在地あるいは管轄区域、また所在地の変更に伴う簡易裁判所の名称の変更等をまとめて整理をして、現状に合わせるようにしたいという考えで、この法案提出した次第でございます。
  71. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 簡裁の中には未開庁という状況に置かれているものがあると伺っておりますが、どの程度あるのでしょうか。全部事務移転を完了した庁を含めて、その動静について御説明をいただきたいと思います。
  72. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 現在、簡易裁判所のうちで未開庁、つまりこれは当初から裁判所法三十八条に基づきまして事務移転をしておる庁でございますが、これが八庁ございまして、その後、開庁後事務移転をいたしましたところが十一庁ございまして、合計十九庁といラ状況でございます。現在そのまま事務移転中ということに相なっております。
  73. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 いわゆる事務移転という場合の基準はどうなっているのでしょうか。事務移転は、その後の状況から整理統合の一環とも考えられるわけですが、いかがでございましょうか。
  74. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、事務移転は、裁判所法三十八条に基づきまして、当該簡易裁判所に特別の事情があります場合に、管轄の地方裁判所がその事務移転をすることができる、こういう規定になっております。その特別事情は何かということでございますが、いろいろ考えられるわけでございます。現在事務移転中の十九庁に限って申しますと、おおむね庁舎の確保困難、狭隘化、代替の庁舎とか敷地の確保が困難だということが主な理由になっております。
  75. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 簡裁の整理統合の問題については、臨時司法制度調査会の意見あるいは日弁連からの要望もあると思いますが、整理統合についての将来的な基本計画があれば、御説明をいただきたいと思います。
  76. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘ように、臨時司法制度調査会におきましても、簡易裁判所の整理統合を検討しろという決議が出ておりますし、日本弁護士連合会からも昭和三十九年に、百数十庁に上る庁名を指定いたしまして、整理統合をしてはどうかということで、法務大臣、最高裁判所長官に文書が参っております。  整理統合の問題は、そもそも簡易裁判所は篤易迅速に軽微な事件をやるということで設立されたものでございますから、全国津々浦々までたくさんあった方恭いいのだという意見もございますし、一方司法の効率という面から見ますと、現在の交通事情等を考えますときには、設立された当時の事情とは大分変わつてきておりますので、もっと少なくした方が効率的である、そういう意見もあるわけでございます。  ただ、何と申しましても、この簡易裁判所の所在の市町村それから当該住民の利益といったようなものがございまして、私どもといたしまして、事務的にはいろいろ考えるところがあるわけでございますが、単に事務的な次元でこれをどうするということができるわけのものでもございません。非常に政治的な要素を含んだものでございまして、そういう意味で、私どもの方といたしまして、現在のところ具体的に簡易裁判所の整理統合計画はないというのが現状でございます。
  77. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 終わります。
  78. 佐藤文生

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十三分散会