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1979-05-25 第87回国会 衆議院 文教委員会逓信委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十五日(金曜日)     午前十時開議  出席委員   文教委員会    委員長 坂本三十次君    理事 石橋 一弥君 理事 小島 静馬君    理事 近藤 鉄雄君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 中野 寛成君       唐沢俊二郎君    久保田円次君       坂田 道太君    菅波  茂君       塚原 俊平君    長谷川 峻君       藤波 孝生君    小川 仁一君       千葉千代世君    中西 績介君       長谷川正三君    湯山  勇君       池田 克也君    鍛冶  清君       伏屋 修治君    玉置 一弥君       山原健二郎君    西岡 武夫君   逓信委員会    委員長 石野 久男君    理事 加藤常太郎君 理事 左藤  恵君    理事 宮崎 茂一君 理事 渡辺 秀央君    理事 久保  等君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 青山  丘君       伊藤宗一郎君    阿部未喜男君       鈴木  強君    武部  文君       田中 昭二君    竹内 勝彦君       藤原ひろ子君    伊藤 公介君  出席国務大臣         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君  出席政府委員         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         郵政大臣官房長 林  乙也君         郵政省電波監理         局長      平野 正雄君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      新藤 恒男君         参  考  人         (日本放送協会         技師長)    沢村 吉克君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   堀 四志男君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  放送大学学園法案内閣提出第四四号)      ————◇—————
  2. 坂本三十次

    ○坂本委員長 これより文教委員会逓信委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  放送大学学園法案を議題といたします。  本案の趣旨説明については、これを省略し、お手元に配付してあります資料によって御承知願うことといたします。     —————————————  放送大学学園法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 坂本三十次

    ○坂本委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員 放送大学学園法案につきまして、若干の質疑をいたしたいと思います。  まず、放送法との関連についてでございますが、御承知のように、放送法は表現の自由を確保するために、政府資金その他は一切お断りして、政府の関与もないような形で成り立っているわけです。つまり、公共放送民間放送という二本立てでございまして、公共放送はいわゆる各戸から料金を徴収するという形で、民間放送広告料によって成立をしていくという形でございまして、今回、教育の方からの要請だと思いますが、放送大学学園法というものが政府から出されておるわけでございますが、放送法の方から見ますとこれは非常に特異な内容でございまして、いまいわゆる二本立てと称しております放送体系にさらに新しい体系を加えるものだと私は理解をしております。つまり、ほとんど国庫の支出によりますところの放送局でございます。したがいまして、これは放送法から申し上げますと非常に重要な問題だというふうに受けとめざるを得ないわけでございます。いろいろ理由はあったのでしょうが、本来ならば放送法改正してやるべきじゃないか。放送法体系からいきますとそのくらい重要な問題でございます。  政府提出の方は御存じのように放送大学学園法附則でもって放送法を修正するという形になっているわけでございますが、この郵政省関係でお伺いしたいのは、そういうふうにならざるを得なかったと申しますか、多分時間がなかったのじゃないかと私は思いますけれども、そういうふうにならざるを得なかった、こういうような改正の形をとったということについて簡単に御説明お願いいたしたいと思います。
  5. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申されましたように、放送法全面改正の問題はもちろんあるわけでございますけれども、このたび提案申し上げました放送大学学園法につきましては、従来、文部省郵政省の間で長年にわたりまして検討をしてまいった結果、放送の方から申し上げますと、放送の持ちます教育機能を十分に発揮いたしまして、しかも国民各層が望んでおります大学教育に対する要望に沿っていくという放送大学学園趣旨郵政省としても賛同いたしたわけでございまして、その結果、放送大学学園目的あるいはあり方に即応をいたしました放送法改正を行う必要があるというところから、この放送大学学園目的あり方に非常に密着をした放送法の部分、これを附則によって改正することが適当であるという判断によりまして御提案を申し上げたわけでございます。  なお、電波法の全面的改正問題につきましては、御承知のように、国連の宇宙平和利用委員会におきましてまだ検討中でございます放送衛星の問題がございます。あるいはNHK財政改善と申しますか、態様をどのように持っていくかという問題がございます。あるいはまたテレビジョンの多重放送を将来どのような方向に持っていくかという問題があるわけでございますが、それぞれまだきわめて流動的な状況でございまして、郵政省といたしましては、そのような状況をできるだけ見きわめた上で放送法電波法改正考慮すべきではないかということで、現在鋭意検討をしておるわけでございます。  何分にも放送法電波法全面改正ということになりますと、事は言論の問題でございますので、きわめて慎重にできるだけ多くの方々の御意見を伺いながら、世論を踏まえて御提案を申し上げる必要があろうというふうに存じておるところでございます。
  6. 宮崎茂一

    宮崎委員 いま、附則改正することの方がベターだと思ったというような言い方がございましたが、いまの話のように放送法全面改正という問題は非常にむずかしい問題で時間がかかる、だから今回はひとつ放送大学要請にこたえて、次善の策ではあるけれどもこうするということではないかと思うわけですが、もう一回伺いますが、これが一番ベターだとお考えになるのか。  今回はどうしても放送大学設置するという方の考え方を入れて、いまの放送法改正するとすれば時間的にもこれしかないんじゃないかという結論じゃないかと思いますが、大臣、この辺はいかがですか。
  7. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送大学学園放送につきましては、これを放送法上どのような位置づけにするか等の放送の規律の仕方につきまして、放送大学学園目的なり業務と密接不可分な関係にあるわけでございます。  しかも、いま先生が申されましたように時期的な問題もあるわけでございますが、この全面改正に持っていくほどの、いわゆる現行の法秩序に対する基本的な関係がないような考慮を払うことが可能であるということもございまして、このたび学園法附則改正をするということにいたしたわけでございます。
  8. 宮崎茂一

    宮崎委員 それはそういうふうに承っておきます。  先ほど局長から話のございましたように、実はこのほかに放送法自体改正したいとか、いろいろな問題が前々からあったわけですね。二十五年につくった法律でございますから時代が大分変わっておりますし、当時進駐軍の影響もあったのかどうかわかりませんけれども、そういったような観点から時代の変遷に従いましていろいろと改正しなければならぬだろう。一部改正全面改正かわかりませんけれども、NHKの問題やその他の問題につきましてそういうような情勢にあるわけですから、この放送大学学園法案を契機にいたしまして、先ほどちょっと局長も言いましたけれども、これから基本的に放送法自体を見直していき、検討していくということが必要だろうと思いますが、その点はそういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  9. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が申されました放送法電波法改正につきましては、省を挙げまして鋭意検討をしておるわけでございまして、今後さらに積極的に検討を継続してまいりたい、このように存じております。
  10. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは文部省関係にお尋ねいたしたいのですが、この放送大学構想でございますが、まず、順序として関東一円からお始めになるというふうに聞いております。  いままでたびたび文教委員会で御審議や御議論があったのだろうと思いますが、私はこの関東一円から手始めにスタートするということには多少疑義を持っているわけでございます。と申しますのは、東京地方、この辺は学問をしよう勉強をしようと思えば幾らでもそういった機会に恵まれるわけです。ところが、大臣も御承知のように、教育基本法教育機会均等というような原則もございます。私は、放送大学をつくるゆえんのものは、これがスタートしたのは、大学教育を受けたいという人にはどこででもだれにでもその機会を与えるということが一番重要なことではないかと思うのです。したがいまして、日本の辺地のところ、大都会とか太平洋ベルト地帯でないようなところ、私は出身が鹿児島ですけれども、たとえば鹿児島あるいは北海道というようなところからこれはスタートするのが当然じゃないかと私は思いますが、これは法律運用上の問題になりますけれども、これについてはどういうふうにお考えになりますか。  それから、いま一つ、これはまた後でも質問しますが、計画の中にも関東の次は東北、東海、近畿、四国というふうにありまして、ほかのところはやらないのかな、九州とか北海道はやらないのかなというような疑念もわくのですが、そういう観点から、放送大学設置順序と申しますか、それについてひとつ御見解をお述べいただきたい。
  11. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおり、放送大学構想スタートさせる場合に、どの地域対象とすべきかということはむずかしい課題でございます。  これについては、放送大学創設準備に関する調査研究会議で御案内のように「放送大学基本計画に関する報告」を取りまとめておりますが、その中で、学習希望者の実際の就学状況が明らかになり、将来の拡充方針を決定するに足りる資料が得られるような内容規模事業実施することを目標とする、その目標を達成することができる範囲内で、電波網整備等に要する経費が過大とならないで、しかもいろいろな資料ができるだけ豊富に得られるような地域をまず対象とする、と、そういう趣旨が述べられているわけでございます。文部省としては、これが一番最初と申しますか、初めての事業でございますし、十分慎重な対応をしながら進めていく必要がございますので、このような基本計画考え方に沿って、送信所として東京タワー利用できるということにも留意をいたしまして、まず関東地区対象地域とし、そしてそこで得られる就学の問題その他多数の資料というものを十分に吟味し、検討しながら次の拡充計画を立てていきたいと考えているわけでございます。  それから、御指摘の将来の問題でございますけれども、基本計画の中ではもちろん九州、中国、北陸、北海道を含めて、全国ブロック放送大学カバーすることを前提といたしております。計画で述べているところによりますと、全国ブロック世帯数の約八〇%をカバーする、それを目途として全国の約二百の地点に送信所を建てていくという、そういう考え方が述べられているわけでございます。  問題は、全国にどのようにそういった放送大学地域を広げていくかという、そのステップの問題でございますが、これについては、確かに基本計画におきましては、第一期の事業計画といたしまして、東京、名古屋、大阪の広域送信所のほかに、東日本西日本から一ブロックずつ選んで、そこに県域送信所整備していくという考え方を示しております。現在お願いをいたしております放送大学具体構想では、そこのところを、いま申しましたような趣旨に従って、東京タワーから電波の届く範囲ということ、それからさらに関東地域にもう一カ所県域送信所を建てるということでスタートをしたいというように、いわば修正をしているわけでございます。したがって、仮にそれ以降の拡張計画考えるということになりますと、基本計画が示している第一期の事業計画程度規模がまず目標になるということが基本計画趣旨からすれば考えられるわけでございます。  これについては、第一期の関東地域における実施状況を十分に見定める必要があるということ、あるいは、基本計画放送衛星の問題については将来の課題であるとして放送網整備していく場合の考え方の中に取り入れておりませんけれども、具体的にはやはり放送衛星の問題を考えてこれからを考えなければなりませんし、そういった点を十分に踏まえながら今後関係省庁協議をし、改めて検討していくべき課題であると、そのように考えているわけでございます。
  12. 宮崎茂一

    宮崎委員 関東地方から始めるのは経費が少ないからというふうに受けとれるわけでございますが、将来は全体計画としては日本国じゅう全部にそういう設備をなさるわけですから、全体の工費というものは変わらないのじゃないかと思うのですね。ですから、関東地方からやるということは、一つ試験的な意味もあるようなふうにお伺いをしたのですが、そうであれば、試験試験でやってでも、教育機会均等という原則に照らして、何でもかんでも東京あるいは東海道ベルト地帯からということではなしに、教育はたとえば長崎県からとか鹿児島県からとか北海道からとか、そうやってもいいのじゃないかと私は思うのですね。  一番初めは自民党の方でもそういったことじゃなかったかというふうに、ちょっと勘違いかもしれませんけれども、そういった過疎地の方からも始めるというふうに私は理解をしておったわけでありますが、それは誤解でしょうか。それとも、いまお話しのようにやはり関東から自然にやって、第一期計画が終わってからでは九州北海道というのはうんと後になりますが、こういうことでございますか。
  13. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、放送大学構想検討されている過程で、最初の試みであるから慎重な対応が必要であるということで、第一期の事業計画規模というのはいきなり全国というわけにはいかないということは自明のことでございますが、そのときに、先ほど申しましたように、放送大学のこれからの計画を十分に進めていくために必要ないろいろなデータを確保するという意味からすると、どうしても人口の集積の多い地域というものを考えなければなるまい、しかし、同時に、教育機会均等という観点からするならば、いまの先生の御指摘のように僻地というものを考えていかなければなるまいというような御議論があったことは私も十分に承知をしております。  今度の第一期の計画考える場合におきましても、東京タワーから電波の届く範囲ということだけではなくて、関東の周辺の地域一つ県域送信所を建てていくという考え方をとったのもそういった方向考えてのことでございます。  もちろん、関東地域対象とする第一期の計画というものに続く、全国各地にネットを広げていく作業というものは、一期の計画実施状況を十分に勘案しながら進めるわけでございますけれども、御指摘のような機会均等要請がある、その上に立って放送網の拡大についての強い御要請があるということも十分承知をしておりますので、今後各省庁検討を重ねて、なるべく早く御要望にこたえるようにいたしたいと思っております。
  14. 宮崎茂一

    宮崎委員 そういたしますと、いま文部省で出しておられます「放送大学基本計画に関する報告」というのがございますが、この中に、今後の計画事業規模試算みたいなものがございますが、この第一期事業計画というのはきちっと固まったものなのですか。それともまだこれから各省と話し合いをしながら、あるいはその順番その他については運用段階検討していく、そしてまたやりようによっては変えていく、こういうことでございますか。もう一遍ひとつ……。
  15. 佐野文一郎

    佐野政府委員 基本計画で提示をしております第一期の事業計画規模よりも、今回私どもが具体考えている発足の姿はもっと規模を小さくしてございます。  今度スタートしようとする第一期計画に続く拡張計画考える場合には、もちろん東日本西日本から一ブロックずつ選んで放送網整備考えていくという基本計画考え方留意はしなければなりませんけれども、では具体的にどこのブロックからスタートをするかということについては今後さらに検討をしていかなければならないことだと思っております。
  16. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは、この放送大学ネットワークのつくり方と予算、これは非常に重要な問題ですが、大体何年ぐらいででき上がるのか、およその見当はついておられるのだろうと思いますが、ここに全国八〇%をカバーするのに八百九十億円の投資が要る、そしてこれは経常費で年々大体二百九十億円ですか、このくらい要るのだというような計画がございます。  これは全体の八〇%ですから、北海道を除くとか、そんなものじゃなくて、難視聴の区域がたくさんありますから、その分を除いて大体全国的にやれるということだと思いますが、この計画は非常に熟した計画と見てよろしゅうございますか。
  17. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、この基本計画考えている全世帯の八〇%をカバーするという考え方は、いわゆる地上局全国に約二百設置いたしまして、それで八〇%のカバーをするという考え方でございます。  放送衛星をどのように使うかということについては考慮に入れないでつくっております。したがって、これからの放送衛星実用化段階が進むということを考えますと、郵政当局と十分に御相談をしながら、今後の放送網整備に当たって放送衛星をどのように利用することができるかということを含めて検討する必要がございますから、全国にわたって放送大学のエリアを広げるということについては全く変わりがございませんけれども、こういう形で広めていくかどうかについてはさらに検討を要することだと考えております。
  18. 宮崎茂一

    宮崎委員 放送衛星御存じのように昭和五十八年ですか、打ち上げる予定になっております。ですから、いまの答弁によりますと、この計画は一部進めていくのだけれども、放送衛星が打ち上げられればまたその時点で変えるのだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 佐野文一郎

    佐野政府委員 現在お願いをいたしております法律案成立をいたしますれば、ことしの十月に法人をつくり、来年大学設置を認可し、五十六年には放送局の免許をちょうだいして、五十七年の四月に学生を受け入れたいというのが現在われわれが考えている日程でございます。  五十七年に入ってくる学生が四年で卒業する。最初の卒業の時期を迎える。もちろん全部が四年で卒業するわけではございませんが、その時期というのは六十年度をもっていわば完成年次に達するわけでございます。ここまでを関東地域対象とする第一期の事業計画として考えているわけでございますから、この第一期の事業計画の場合に衛星課題というものはなかなか出てまいらないと思いますけれども、第一期の計画に続く拡充ということを考える場合には衛星ということを当然考慮に入れなければならない。それをどのような形で考慮に入れることができるかということについては現在はまだ未確定でございますし、今後郵政当局と十分に御協議をしながら、また財政当局その他とも慎重に協議を重ねながら、どのような形で利用をしていくかということを検討する。その限りにおいては、基本計画が示しております地上局をもって全国八〇%をカバーするという考え方をそのままとることになるとは、この段階では申し上げかねるわけでございます。
  20. 宮崎茂一

    宮崎委員 放送衛星が入りましたのでちょっと議論があちこちしているわけですが、文部省でお立てになった試算長期計画の八〇%カバー試算は、放送衛星考えていないときの試算でございますが、それで全国カバーするのに八百九十億。私は素人でございますけれども、いま民放をつくるのにも一カ所大体三十億かかります。ですから、各県に一つずつおつくりになっても千五百億くらいかかるのじゃないかと思うのです。ということは、八百九十億というのは非常に少な過ぎるのじゃないか、二千億くらいかかるのじゃないかというような感じがするわけです。  放送衛星は五十八年に打ち上げますけれども、波の余裕は多分ないのじゃないか、その次に打ち上げる衛星でないと波はこっちの方に回されないのじゃないかと思うのです。しかし、これはまた先のことですからわからないわけですね。ですから、一応は文部省放送衛星なしにお考えになったこの計画、八百九十億というのは大丈夫なのかどうか。私は二千億近くかかるのじゃないかと思うのですが、その点は、先ほどから申し上げておりますように、この計画というのが果たしてきちっとこれだけいくのかどうか。それであれば財政の方から考えて、全国をやるのに五年かかるとか十年かかるとか、全体の放送衛星に依存しない場合の計画期限、つまり何カ年間でネットワークを完成して全国の勉強しようという人たちの御期待に沿えるようにできるのか、その点をひとつ明確にお答え願いたい。
  21. 佐野文一郎

    佐野政府委員 いま御指摘予算見積もり額というのは、これは地上局送信所設置する経費だけではなくて、全体の学習センター等を含めた経費でございます。  その計画をつくりますときに、郵政当局の御協力もいただきながら関係専門委員会試算をしたところによりますと、全国約二百の送信所を建てる、そのことに限って言えば、要する費用は四百二十億くらいという試算になっておりまして、これはもちろん五十年の価格の問題でございます。  これからどのように第一期計画以降の整備考えていくかという課題が出てまいるわけでございますし、そのことについては、御指摘のように急がなければならないことでございますけれども、先ほどお答え申しておりますように、なお放送衛星の問題その他これから確定していく事柄が多いわけでございますので、そういった状況を十分に勘案しながら、関係省庁協議をして改めて検討をいたしたい。現在の時点では、いつまでにということを申し上げることが非常にむずかしいということを御理解いただきたいと存じます。
  22. 宮崎茂一

    宮崎委員 数字はいろいろなことから八百九十億が現在の時点では正しいということでもいいのですが、文部省としては全体を十カ年なら十カ年、七カ年なら七カ年で、それが延びても仕方のないことですが、一応これだけやりたいという目標はないのですか。  とにかく法律を通してもらって関東地方からやって、後はわからぬけれども全国的に広げていきますという話なのか。それとも、大体これは十カ年間で沖繩県から北海道まで全部やるようにしたいという強い決意があるのか。どうも前の方のような感じがしますが、いかがですか。
  23. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これまでの文教委員会における御審議におきましても、その点については、文部省としての今後の計画目途を明らかにすべきであるという強い御指摘をいただいております。できるだけその点についても検討を急ぐというお答えをしているわけでございます。  もちろん、できるだけ早く全国放送大学教育網を広げなければいけないと考えておりますけれども、現在なおその点については検討中でございますので、明確にいつまでということがこの段階では申し上げられないことをお許しいただきたいと存じます。
  24. 宮崎茂一

    宮崎委員 そういうことかもしれませんが、やはり過疎地の者としては、今度は東京から始めるけれども七年後にはおれのところにもできるのだという、何かそういう明るい希望がないと、いつになるかわからぬ、関東地方とか近畿地方ばかりこういう放送大学の恩恵にあずかるのだということでは非常に心もとないと思います。  いまおっしゃいましたように、これは早急に計画を立ててこういうふうにするのだと、文部省としてはそういうつもりで、この法案ができましたらすぐやるべきじゃないでしょうか。もう一遍お答え願います。やる決意があるかどうか、きちっとやれるかどうか、文部大臣、ひとつお答えいただきたい。
  25. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 御趣旨の点はよくわかりますので、せいぜい努力いたします。
  26. 宮崎茂一

    宮崎委員 これは大臣が大体こうしたいということであれば、そうむずかしいことではないと私は思うのです。  たとえば道路整備五カ年計画、これは公共事業では全部ちゃんと計画をつくっているわけです。そしてその中におれの方は入っている——漁港でも何でも五カ年計画をつくっているわけですから、たとえばその五カ年計画が実際予算の問題で七カ年になったとしてもよろしゅうございますけれども、これはこうしたいと、目標だけはきちっとしておいていただきたい。これは強く要請をしておきます。  大蔵省の方に伺いますが、ことしから予算がついているのですけれども、いま申し上げましたように、文部省としてもスタートしたい、発車してそれからという話のようでございます。大蔵省は予算をおつけになったわけでございますから、公共事業と同じようにことしは非常に少ないけれども、来年からはどのくらい要るのだ——八百九十億という数字は少ないにしても、一応八百九十億という投資が出ているわけですが、何カ年間でやるのか。大蔵省は予算をお出しになって放送大学というものをお認めになるということですから、賢明な大蔵省としてはまあこのぐらいというような腹づもりがあるのかどうか、また、ことしの予算をどういうおつもりでつけておられるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  27. 新藤恒男

    ○新藤説明員 ただいまの御質問でございますけれども、五十四年度につきましては、特殊法人を設立するための経費といたしまして所要の計上をしておるわけでございます。  ただ、今後の放送大学具体的な進め方につきましては、財源措置も含めまして五十五年度以降の予算編成等を通じて検討していくというふうに考えておりまして、その点につきましては、先ほどございましたような第一期計画の八百数十億という数字は私どもとしては検討しておりませんし、今後予算編成の過程での課題だと考えております。  なお、全国的に将来の対象地区をどうするかという問題につきましては、先ほど文部省からも御答弁がございましたけれども、関東地区対象にいたしました放送大学実施状況等諸般の状況を勘案いたしまして、改めて慎重に検討していきたいと考えております。
  28. 宮崎茂一

    宮崎委員 公共事業計画がありますが、全体計画文部省の方でもはっきりしないから、まだそこまでいっていないわけですね。  だから、おたくの方でも、まあスタートさせて、ひとつ来年から、文部省の方できちっとしてきたら、それに対応して予算をつけようということですね。
  29. 新藤恒男

    ○新藤説明員 本件につきましては公共事業のように計画があるわけではございませんで、私どもといたしましては、今年度につきましては所要の経費を計上いたしましたけれども、来年度以降の経費につきましては、全体の予算の枠の中で財政状況等を勘案しながら検討させていただく、こういうふうに考えております。
  30. 宮崎茂一

    宮崎委員 いま大蔵省もそういう答弁をしておりますが、私どもが考えておりますところの、全国的になるべく早くそういうネットワークをつくっていただきたいという気持ちとは大分現実の問題は離れておるわけでございます。これは一にかかって文部省、特に大臣の熱意によって、どうしてもやるという信念がないと、いまの大蔵省みたいに、ことしは二億かそこらだったけれども来年は五億ぐらいにしようかということになってしまうのじゃないかと思うのです。ですから、先ほども申し上げましたから答弁は要りませんが、これに取りかかる以上は、大臣、どうかひとつ信念を持ってやっていただきたい。これを要望しておきます。  次に、この資本金は全額国費で出すわけですが、あと、運営ですか、「一部を補助することができる。」というふうになっておりますが、これは経常費は全部授業料か何かで賄って、投資だけを国費で賄うということですか。その辺ははっきりしているわけですか。  つまり、最盛期四十五万ぐらいの学生が来たときには二百九十億の経常費が要る、その経常費は全部学生の授業料か何かで賄うのだと、そういう計画なのですか。また、一人当たりどのくらい授業料に該当するものをお取りになるのですか。
  31. 佐野文一郎

    佐野政府委員 授業料をどのくらいの額にするかということは、大学が発足したときにその当局が決めることではございますけれども、私立大学の通信教育部が現在徴収している授業料と見合ったものとするということが、放送大学と私大通信教育との関係考えてまいります場合におきましても最も適切であろうと考えております。  それで考えますと、いま私大の通信教育部が徴収しております授業料は、平均をいたしますと年に六万円くらいでございます。それがやはり一つ目途になると考えております。それでもっていろいろな仮定を置いて試算をしなければなりませんけれども、授業料を学生から徴収いたしましても、もちろん経常経費の全部をカバーをするというようなことはできません。恐らくは四〇%台程度のものになるのではなかろうかと考えます。  したがって、放送大学事業を進めていく場合には、やはり経常的な経費についても一部国の助成を考えざるを得ないということになると思います。
  32. 宮崎茂一

    宮崎委員 経常費の一部も国から出す。放送法の立場から言いますと、国からは金はもらわないということになっているわけですが、これは大学教育の方でしょうから、あるいは私立大学と比較するという手もございましょうし、いろいろそういった観点からの物の考え方かもしれません。  NHKの方が来ておられますが、NHK大学程度の放送をやっておられますね。これは郵政省にお聞きした方がいいのかもしれませんが、NHK教育放送とこの放送大学のこれとはどういうふうに違うのですか。大体の概念を得るために聞くのですが、まだ将来のことだから、その大学ができなければわからぬというふうにあるいはおっしゃるかもわかりませんけれども、大体どんなものなのですか。  私ども大学講座というものをNHKで見ておりますが、これは一般教養の講座だと思うのですけれども、それとどう違うのでしょうか。やはり大学の授業をそのまま放送をするのか、あるいは程度というものはNHK放送内容とどんなに違うのか、もっとうんと高等なのかどうか、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  33. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送大学学園放送は、大学教育のための放送、言いかえますと、主として放送大学の定める教育課程に準拠した放送を行うわけでございまして、NHKが広く幼稚園から大学までの各層を対象とした学校教育番組及び社会教育番組から構成されておりますのとはかなり異なるのではないかというふうに存じております。  しかしながら、具体の問題につきましては、一層の教育放送の充実を期するためには、番組内容について関係者の間での調整が将来必要になってくるかもしれないというふうに考えております。
  34. 宮崎茂一

    宮崎委員 ちょっとよくわからないのですけれども、NHKの番組の中でもやはり大学講座に類するものはあるわけですね。  NHKに対しては国は一銭も補助しない。放送大学に対しては補助をする。相当な国費が出る。ところが、これは放送ですから大学の教室内における授業と違いまして、一般の人もチャンネルをぱっとひねれば出てくるわけですね。その辺何か不均衡になるのではないかなというような感じがいたしますが、そうすると、NHK大学放送の方には影響はあるのかないのか、それはもう全然やらないことになるのか、その辺はいかがでございますか。
  35. 平野正雄

    平野政府委員 先生がおっしゃいますように、現在NHK教育放送をいたしておるわけでございますが、教育放送だけではないわけでございまして、民放とあわせまして、言論機関と申しますか、言論報道機関というような態様になっておるわけでございます。  それで、NHK教育放送に対しまして国の資金を用いることが是か非かという問題が一つございますけれども、御承知のように、言論機関というたてまえからいたしまして、NHKは受信料によってその維持、運営を行うことに相なっておるわけでございます。したがいまして、現行の放送法のたてまえからいたしまして、NHKに国が金を出すということは予定されていないというふうに存ずるわけでして、仮に国の資金を用いるということを考える場合には、それに伴う業務の範囲でございますとかあるいは新たな規制面、そういったことを考慮する必要がございまして、NHK政府からの独立性の担保につきましてはきわめて慎重に検討する必要があるのではないか、こういうふうに存じております。  一方、学園につきましては、同じ特殊法人ではございますけれども、NHKの番組等との関連、いわゆる既設の放送法秩序との関連からいたしまして、いわゆる大学教育番組に限る、正規の大学による大学教育の番組に限る、その手段としてその放送を行うのである、こういうたてまえをとっておるわけでございます。したがいまして、大学教育放送によって行う、それも先ほど先生が御指摘になりましたように、教育機会均等ということもございまして、全国できるだけ広く放送しようということに相なりますと、御指摘にございますように相当な経費がかかるわけでございます。また、一方、国公私立大学等にもこの学園の放送利用供与すると申しますか、使わせるという非常に新しい構想に基づく学園の放送業務ということに相なるわけでございますので、やはり国が指導をいたしまして、そしてそのための経費を国が負担していくということが望ましいのではないかというふうに考えたわけでございます。ただ、国が金を出すからといいましても、やはり、大学の自治と申しますか、あるいはその番組の自立性と申しますか、そういったところに対する関与はできるだけ遠ざけるというたてまえを、これは法案の中で貫かれておるというふうに存じております。  また、一方、郵政大臣等いわゆる主務大臣が関与する部門につきましても国が経費を負担するということに相なりますので、財務、会計面に限る、これは現在の一般の国立大学もそのようになっておるわけでございまして、そうあることがいわゆる大学の自治でございますとか学閥の自由にはさわりにならないというふうに存じておるわけでございますので、いわゆる学園には国が国費を負担していく、NHKにつきましてはその経営基盤を聴取料によって賄っていく、こういうことに相なるものというふうに考えております。
  36. 宮崎茂一

    宮崎委員 もう時間も余りないのですが、文教委員会でもこれは非常に議論されたと聞いておりますが、いわゆる放送法の問題と学問の自由というものが両立するのかどうなのか。大学の学問の自由というのは放送法とどうなんだということが非常に議論されたようでございます。  私もその点は多少の疑問を持っているわけでございますが、いわゆる放送法の第四十四条第三項、そのうちで政治的な公平という問題と、いろいろなそういった問題について対立する意見のある場合にはほかの意見も述べてやる、これは放送法のたてまえ、NHK放送のたてまえですが、これを準用するということになっているわけですが、これは準用じゃなくて、そのまま全部一〇〇%適用になるのじゃないか。つまり、この大学放送法違反をしちゃいかぬのじゃないか。一〇〇%これを適用するということですね。ちょっと文部省から……。
  37. 佐野文一郎

    佐野政府委員 もとより、四十四条三項は放送大学学園実施をする放送についても適用されるものでございます。
  38. 宮崎茂一

    宮崎委員 そうすると、学閥の自由と、放送法といえども表現の自由ということをたてまえにしてやっているわけですから、大部分のところは両立するのじゃないかと私は思うのですが、しかし、完全にうまくいくのかな。そこに運用上の問題かどうかわかりませんけれども、非常に疑問を私は持っているわけです。  学問の自由と、大学の一人の教授の方が大学の構内で講義されるようなことを放送でおやりになって、そしてそれが放送法に触れないでいけるものかどうか。私もこれは非常に疑問があるなと思っているのですが、その点についてはどういうふうに調和を図っていかれるのか。一〇〇%大丈夫だということになるのか。その辺の意見をひとつお聞かせ願いたいのです。
  39. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、四十四条三項の規定と大学の教授の自由の問題との間には非常に微妙な問題がございます。そのことは事実でございますけれども、四十四条三項四号に規定をいたしておりますところの、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」という、この規定につきましては、放送大学の場合、意見の対立している問題を取り上げる場合に、その論点を明らかにするために、特定の意見の提示に傾くことなしに、対立する見解をできるだけ公正に広く提示することを要求している。その上で講義を担当する講師が自分の学問的見解を述べることまでを許していないというものではないと理解をしております。  そのことは衆議院文教委員会における参考人の見解でもそういった趣旨が述べられております。したがって、この四号の規定については、論点を明らかにする方策についての特別の規定という意味におきまして、講義の方法に対する一つの制約とも言えるものと考えますけれども、講師の学問的見解を述べることを禁止するものではございませんので、これによって教授の自由が否定されるものではないと考えるわけであります。  しかしながら、問題となっている事項がさらに政治的な問題にかかわる場合には、講師が自分の学問的見解を述べるということが二号の「政治的に公平であること。」という規定との関係でさらに問題になるということがございます。この点については、やはり大学における教授の自由と放送法四十四条三項の規定の趣旨に十分留意をして、大学側において適正な自制のもとに対処をするということになろうかと存じます。これによって大学がみずからの問題として対処をしていくということでございますので、教授の自由の本質を損なうことなく対処できるというふうに考えているわけでございます。
  40. 宮崎茂一

    宮崎委員 ときどきNHKの番組を見ておりますと、私どもの方から言うとこれは政治的公平を欠くのじゃなかろうか、あるいはまた反対党の方から言うとそれは妥当で、私どもが妥当だと思っていることが少し政治的公平を欠くのじゃないかと、そういう意見もあろうかと思いますが、さほどにNHKが二十年間もやっておられても政治的な公平という問題は非常にむずかしい問題だと思うのです。  ですから、運営に当たっては、これは番組編成とかあるいは良質な優秀な放送関係者というもののよほどの協力がないと非常に問題が起きるのじゃないかと思うのですが、こういう放送関係者の扱いと申しますか、あるいは大学ですから教授会によって決められるというのが普通のようでございますが、それとの調和というのですか、それをどういうふうにお考えなのか。  これは非常にむずかしい問題で、現実にNHKさんでもときどき私どもがそれは国益に反するのじゃないかと思うようなことをニュースで言われたり、あるいはまたこれはちょっとどうかなと思うこともやっていることもあるわけです。そこいらの運営は非常にむずかしいのじゃないかと思うのですが、それはどういうふうに調和されていかれるのか。
  41. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおり、放送大学学園の業務を円滑適正に運営していくためには、大学関係者だけでなくて放送関係者の参加を得ることがどうしても必要であると考えております。そのことから、役員の中に放送関係の学識経験者の参加を得るということを予定しておりますほか、理事長の諮問機関である運営審議会の委員につきましても、二十人の構成員のうちに放送関係の学識経験者の参加を得ることを予定しております。  そういう運営の仕組みはもちろん考えますけれども、さらに具体の番組を作成していく場合におきましても、これは普通の大学で一人の教官が教室で自分の講義をするというような形で事柄が進むのではなくて、複数の教員がいわばチームを組んで、十分な議論をしながら教育内容というものを固めていく、さらにそれを放送番組につくっていく過程におきましては、その講師チームの中に放送関係の技術者が参加をする、プロデューサー、ディレクター等が参加をして、大学側のスタッフと十分に論議をしながら台本をつくり、それをビデオテープなりオーディオテープに固定をし、番組として送り出す、そういう進め方が当然考えられるわけでございます。  このことは、いままでの実験番組を進めてきます過程においても、そういう方法をとることが適当であるし、そういう方法をとることによって効果を期待できるということが出てきておりますので、大学においても、そのような細心の配慮のもとに、御指摘のような点に十分留意をした運営がされるように期待をしているわけでございます。
  42. 宮崎茂一

    宮崎委員 いままでときどき郵政省の御意見も伺ったのですが、最後に、こういう放送大学学園放送について、郵政省としてどういうふうにこれを位置づけ、評価をしておられるのか、総括的な意味お答えを願いたいと思います。
  43. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  学園は、先ほど来申し上げておりますように、大学教育機会に対する広範な国民の要請にこたえることを目的としておりまして、郵政省といたしましても、この意義及び放送の持つ教育的機能を発揮する上におきまして有効な施策であるということに着目をいたしまして、学園による放送を認めることが適当と判断いたしております。  ところで、放送大学学園は、正規の大学である放送大学設置いたしますとともに、全国的な大学教育のための放送を行うことをその業務としており、その施設運営には多額の経費を必要といたしますため、国の資金を用いざるを得ないものというふうに考えております。  この場合、設置形態につきましては、放送大学設置に関する調査研究会議関係方面における検討結果も十分勘案をいたしまして、特殊法人が現実的かつ最善であると考えた次第でございます。  このような前提のもとに郵政省といたしましてもその規律の態様を検討したわけでございますが、特殊法人放送大学学園につきましては、その放送が三分の一というふうに聞いておりますけれども、数学の一環として放送されるものでございますため、大学の自治を高度に保障する見地から、番組基準策定の義務づけでございますとか番組審議機関の義務づけの排除をいたしました。また、広告放送の禁止をいたしました。このようにいたしまして、NHK及び一般放送事業者とは異なる規律の態様をとることが適当であろうと考えまして、放送法に新たに一章を設けることにしたわけでございます。  同時に、放送大学学園の法案の策定の過程におきまして、郵政省といたしましても、既存の放送秩序に及ぼす影響を最小限にとどめる必要があると考えまして、関係者の意見を十分に勘案をいたしまして、具体的にはNHKの意見も要望も聞いたわけでございますが、その放送大学教育のための放送に限定をいたしますとともに、広告放送を禁止いたしますことによってNHK及び一般放送事業者に与える影響についても配慮したわけでございます。したがいまして、NHK、一般放送事業者の既存の放送体制に及ぼす影響はないものと考えておりますが、この点につきましては運用の中でさらに必要であれば十分な配慮をしてまいるつもりでございます。  また、国の資金を用いる放送事業者を認めることは先ほど先生に御回答申し上げたとおりでございますけれども、大学の自治により、その自律性、国からの独立性を十分に担保されてまいるものと考えておるわけでございます。したがいまして、国の資金によって運営されます特殊法人放送大学学園放送を認めたといたしましても、放送事業者の自律性あるいは国からの独立性の確保を期する放送法第一条の精神に違背することはないものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  44. 宮崎茂一

    宮崎委員 終わります。
  45. 坂本三十次

    ○坂本委員長 武部文君。     〔坂本委員長退席、石野委員長着席〕
  46. 武部文

    ○武部委員 私は、去る三月十六日、衆議院の逓信委員会におきまして、今回の放送大学構想について幾つかの問題点を指摘いたしました。しかし、残念ながら納得できる答弁が得られなかったのでありまして、この機会に改めて問題点を指摘いたしますが、限られた時間ですから明快に御答弁をいただきたいと思います。  そもそもこの放送大学構想が国会で問題にされましたのは昭和四十四年ごろであります。当時NHKは非常に積極的で、イギリスのBBCの公開大学構想を参考にしながら前田会長は市民大学構想というものを発表されまして、われわれは逓信委員会でこの問題を大変長い間論争いたしました。そういう意味ではNHK放送施設もあるし、BBCの持っておる公開大学構想が参考になるというので、われわれ自身もイギリスのBBCの問題を調査した経過があります。ところが、いつの間にやらこのNHK大学構想は影をひそめて、今日こういう形で文部省放送大学の法案を提出してきた。私はその間の経過がいまだによく理解できないのです。NHKがなぜこの問題を放棄したのか、いつごろから文部省がこの問題に力を入れてきたのか、文部省昭和四十四年ごろにはほとんどこの問題に関心を示していなかった、そういう経過を私は承知しておるのであります。  それはそれとして、この法案が出てきたわけでありますが、あのときに論議をいたしましたのは大学紛争があった直後であります。したがって、この新しい構想による大学考え方が、少なくとも大学紛争の落とし子だとかあるいはその副産物というような不純な動機で放送大学考えてもらっては困る。少なくとも、放送大学という一つの学問の府をつくるという大所高所に立ってりっぱな大学をつくり上げるようにすべきであるということを私は発言をしたことをいまでも覚えておるのであります。そういう経過から、私は放送大学について大変関心を持ってきた者の一人であります。  そこで、この内容をいろいろ検討してまいりましたが、残念ながら検討すればするほど疑問点が多いのであります。私が当時主張した理想とは大きくかけ離れておりまして、こういう大学構想ではすんなりと認めるわけにいかない。私はこういう気持ちを持っています。  そこで、まず、この法案の最大の問題点は文部大臣の権限をきわめて強く持たせるようにしておること、これが大変大きな問題点だと私は思います。四月十七日に朝日新聞に「論壇」がございましたが、この朝日新聞の「論壇」で、憲法学者の石村善治福岡大学教授が、憲法理念に反する文部大臣の強権だと指摘をしておられました。お読みになったかどうかわかりませんが、私はあの内容を見て、まさにそのとおりだと思いました。それはどうしてかというと、この放送大学の学園の理事長、監事は文部大臣が直接任命する、理事についても文部大臣の認可を受けて任命するというふうになっています。そして、さらに、理事長の諮問機関である業務運営の重要事項を審議する運営審議会が設置されることになっていますが、この委員についても文部大臣が任命するということになっています。また、学長も、「理事長の申出に基づいて、文部大臣が任命する。」ということになっています。  こういうことになると、文部大臣の意向、すなわち政府の意向というものが十分に作用されてこの放送大学学園というものが操作可能な体制になってくるのではないかと見ざるを得ないのでありまして、まさに教育の国家統制につながるおそれがある、大学の自主性の尊重とか政治的な公平というものの確保という点が国家権力の意向に流される危険性があるではないかということが懸念されるわけですが、文部大臣はこの問題についてどういう見解を持っておられるか、それを最初にお伺いしたいのです。
  47. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 いろいろ御心配の点もございますけれども、特殊法人の場合に大体こういうことをやっておりますので、私どもはこれは慎重にやって、そういう御懸念のないようにいたしたいつもりでございます。
  48. 武部文

    ○武部委員 あなたは、特殊法人だからそういうことにはならない、慎重にやるというようなことをおっしゃっておるが、いま私が述べましたことは、まさに教育の国家統制につながるおそれがある。これは学者の皆さんだってそう思っているのですよ。特殊法人ということを言っておられますけれども、これは国費を主な財源としますね。したがって、文部大臣が強力な権限を持って、実質的には国営放送です。後でも放送の問題に触れますが、これはまさに実質的には国営放送と言っていいと、このように見ざるを得ないのであります。したがって政府の意向によって運営される危険性がある。だれもそういうふうに考えますよ。あなたはきわめて慎重にやるなんということをおっしゃっているけれども、そんなことではわれわれは納得できないのであります。  さらに、それではもう一つ問題点を指摘いたしますが、第十二条に「役員の欠格条項」がございますね。これは放送法第十六条第四項の問題に関係いたしますが、この第四項は一号から七号まで禁止条項があります。この中の第四号の「政党の役員」、これが一体なぜ除かれておるのか、私は大変これを疑問に思うのです。  この欠格条項の中からなぜことさらに政党の役員を除外したのか、この点について、私は三月十六日の衆議院の逓信委員会でこの問題を取り上げたわけですが、この答弁はどういう答弁だったかというと、最近設置されている新しい特殊法人では政党の役員を欠格条項としていないので、その例にならって規定したという答弁がありました。私は納得できないのであります。少なくとも放送の政治的公平を保つためにも、一般の特殊法人の例にならうのではなくてNHK——現在NHKはこの欠格条項を適用されておりますが、こういう欠格条項の例を参考にすべきだと思うのですが、文部省の見解を承りたいと思います。
  49. 佐野文一郎

    佐野政府委員 いまの先生の御指摘のとおり、特殊法人における役員の欠格条項についての近時の立法例に照らして政党の役員を欠格条項に掲げないこととしたということももちろん理由でございますけれども、また、実質的に考えまして、学園が大学設置者であるということを考慮いたしまして、役員の欠格条項としては、禁治産者、準禁治産者、禁錮以上の刑に処せられたる者あるいは教員の免許状の取り上げ処分を受けた者等を掲げておりますけれども、これらの者が役員として不適格であることは言うまでもございません。しかし、これらと並べて政党の役員を掲げるということについては、事柄が質的に異なりますので、あえて政党の役員を欠格条項に掲げないということにしたわけでございます。  しかし、もちろん放送大学学園大学設置放送実施事業といたします。大学については、教育基本法八条二項の規定によりまして、特定の政党を支持し、あるいはこれに反対するための政治教育その他の政治活動を行うことが禁止をされております。また、放送事業については、先ほど議論のありました放送法四十四条三項の規定がございまして、「政治的に公平であること。」が要請をされております。したがって、政党の役員というものを欠格条項に掲げなかったということは、政党の役員を積極的に学園の役員として迎えるということで掲げている趣旨ではなく、むしろそうした放送大学の性質にかんがみまして、政党の役員を、仮に適格者がいるといたしましても学園の役員に任命をするということについては十分慎重な配慮を要する、そのことは十分承知をいたしております。
  50. 武部文

    ○武部委員 あなたのいまの答弁を聞いておりますと、運用上といいましょうか、配慮するというような言葉が出たわけですが、先ほどから私がずっと述べておりますように、文部大臣の権限が非常に強いし、国家的な統制力を持った放送になる危険がある。そのように国民も見る。  私もそう見ていますが、少なくとも政治的な公平が侵される危険性というものを除くためにも、この欠格条項の中の第四項の「政党の役員」の条文の問題についてはあくまでも修正すべきだというふうに思いますが、文部大臣はどのようなお考えを持っておられるか、重ねてお聞きしたいと思います。
  51. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 御趣旨の点よくわかるのですけれども、政党の役員だから排除するということは従来の特殊法人の場合にはやっていないのですよ。ですから、先ほど局長が答弁しましたように、これは慎重にやらなければいかぬと私は思うのです。  御指摘のように、国立大学につきましても文部省はほとんど関与してはいけないでしょう。全部大学の自治に任しておりますから、いわんや特殊法人の場合においてはこれは慎重にやりますが、従来特殊法人の場合に政党の役員を排除している例がなかったのでたまたまこれも排除しなかったのだけれども、実際に行う場合においては、先ほど局長が申しましたように、教育基本法の中の、特定の政党を支持し、反対するための政治教育及び政治活動をしてはいかぬということはこれは原則ですから、これは慎重な配慮をいたしますから、御指摘の点は私はよくわかりますので、心がけていきたいと思います。
  52. 武部文

    ○武部委員 私と見解が違うようでありますから、これはそれだけにしておきましょう。しかし、NHKそのものが、この放送法十六条第四項四号の点については、現実にはっきりとこの条文そのものをどんずばり適用しておるということから見て、私は、まず冒頭から申し上げたような点に関連をして、この問題については反対だということを申し上げておきたいと思います。  ところで、放送大学が発足をいたしますと、わが国の放送体制というのは、昭和二十五年放送法制定以来今日まで約三十年経過をしたわけでありますが、ここでNHK、民放の二本立て体制からいわゆる三本立て体制に入る、変わる、このようになると思いますが、こういうふうに理解して間違いないか。これは郵政省にお聞きをしたい。
  53. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送大学学園放送は、大学教育の手段として放送を用いるものでございますため、大学の自治を高度に保障する見地から、番組審議機関の設置、番組基準の策定等の義務づけを行わないことなど、既存の一般放送事業者とは異なる規律を行うことが適当であるというふうに考えまして一章を設けたわけでございます。  この意味におきましては三本立てと言っていいわけでございますが、放送大学学園法案の策定の過程におきましては、郵政省といたしましても既存の放送秩序に与える影響を最小限にとどめる必要があるというふうに考えまして、NHK要望も十分に勘案をいたしまして、その放送大学教育のための放送に限定をいたしました。  また、広告放送を禁止いたしますことによりまして、一般放送事業者に与える影響についても配慮したものでございます。したがいまして、NHK、一般放送事業者の並存する既存の放送体制に及ぼす影響は少ないというふうに考えております。
  54. 武部文

    ○武部委員 私は後のことは聞いていないのですよ。三本立てになるかどうかということについて、郵政省はそのとおりだというふうにおっしゃればいいので、後のことはこれから言うことなんです。後のことまで先に答弁してもらっては困るね。  だから、三本立てになるということはあなたもお認めになったのですよ。そうすると、少なくとも二十五年に放送法が制定されて今日まで三十年、その間に放送法改正というのはほんの小幅のものが一回あっただけなんですよ。それはあなたも御存じだと思うのですが、少なくとも放送法は三十年という長い歴史を持っておるが、現実は非常に変わってきておる。だから、放送法改正というものが二十数年来議題になって、私どもの逓信委員会にはこの放送法改正の小委員会まで設けていま論議しておる最中なんですよ。これはそういう非常に重大な問題にかかわるのです。ですから、放送あり方が、現在の放送制度が二本立てから三本立てになった。これは放送行政上根幹にかかわる大きな問題なんです。こういう問題の変化が起きておるのに、全然国民のコンセンサスを得ないで、ただ附則の中に放送法改正なんということをたった一行だけ書いて、この重大な問題をこの一行で解決しようなんということは私どもにとっては全く納得できない。郵政省がどうしてこんな重要な問題に対して簡単に応諾したのか、理解に苦しむのです。  そこで、われわれがいま反省して考えてみると、この十年間の間に放送大学といういわゆる教育制度の面については非常に論議が交わされたけれども、放送制度の面についてはほとんど何にもされていなかったと指摘をせざるを得ないのです。放送大学構想は、さっき申し上げるようにNHKの問題が出てきて、イギリスの問題が出てきて、われわれも一生懸命勉強してきたが、放送制度の問題は残念ながら置いてきぼりにされて、教育問題だけが取り上げられてきた。この点について郵政省は怠慢であったと、そのように私は理解せざるを得ないのです。少なくとも放送制度の問題は、この教育制度の問題と同様にもっともっと真剣に研究すべきではなかったか。  この点について郵政省は大変大きな怠慢を犯したと思いますが、郵政大臣はどのようにお考えでしょうか。
  55. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  かつて臨時放送関係法制調査会がございまして、その調査会の中におきまして、いわゆるテレビジョンによる教育機能というものが今後ますます大きくなるであろう、また、そのためには必要な周波数は確保しておく必要がある等の一連の答申を得ておるわけでございまして、私ども、基本的にはこの臨放調の流れに沿ってこの問題に対応していくことにしておったわけでございます。  一方、昭和四十一年の五十五国会かと思いますけれども、電波法放送法改正法案が廃案になりまして以降、この問題につきまして郵政省内に委員会をつくりまして、各種の関係者と検討を続けてまいってきたわけでございます。  一方、文部省郵政省の共管になりますこの放送によりまして大学教育を行うという問題につきまして、もろもろの発想と申しますか、議論が行われてまいったわけでございますけれども、またその後におきましても、具体的な構想を得るために、文部省が各種の委員会を設置されまして、部外有識者の御意見も取りまとめられるということに相なりまして、郵政省といたしましては、先ほども申しましたように、この放送大学構想に賛同をいたしますが、しかしながら、先ほど先生から御指摘がございましたように、放送法電波法のたてまえというものとの関連につきましてはどうしても譲ることができないという面がたくさんあるわけでございまして、そういった点につきましては、郵政省考え方文部省側あるいは学識経験者の方々に十二分に開陳をいたしまして、議論を尽くして現在に至ったわけでございます。  したがいまして、郵政省といたしましては、臨放調以来の放送による大学構想というものにつきましては、文部省とも十二分に連絡を保ちながら、また必要な学識経験者の方々の御意見をお伺いをしながら検討を十二分に行ってまいったというふうに存じておるわけでございます。
  56. 武部文

    ○武部委員 いや、私はそうは思いません。私は郵政省が怠慢だったと思うのです。  少なくとも、放送法のこういう重大な問題が起きる前にすでにNHKと民放というものが出てきて、放送体制というものが変わってきたときから改正の問題というのは出てきておった。そのことについては逓信委員会でももう長い間この問題は論議になっておるんですよ。そういうところへもってきて、放送大学学園法などという法律が出るということになれば、これは放送法の根幹に触れる問題なんですよ。そういう問題を一つも論議しないで、そしてただ一行だけ附則に加えて改正するというようなことは、私はどうしても納得できません。この論議はこれ以上できませんから、私は、郵政省が怠慢であったということ、これだけは明確に指摘をしておきたいと思います。  そこで、従来のNHKと民放の二本立てに加えて新たに放送大学放送が加わるわけでありますが、放送大学放送範囲、これが明確でないとこれからのわが国の放送秩序に大きな混乱を与えることになると、このように私は理解をするわけですが、その放送大学放送範囲について郵政省はどのように理解をしておられるか、これをお聞きしたい。
  57. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  学園の行う放送業務につきましては、学園の業務について規定をいたしております学園法第二十条に定めてございまして、具体的には放送大学の定める教育課程に準拠した教育放送並びに当該教育を行う上で必要とされる放送大学の入学案内等の告知放送のほか、目的達成業務といたしまして、他大学教育のための放送を予定しているところでございまして、基本的には大学教育番組に限定されておるところでございます。
  58. 武部文

    ○武部委員 この放送範囲というのは、先ほどから申し上げるように、この放送の秩序という面から非常に大事だと思うから私はこういう質問をしておるのです。  いまのあなたの答弁によりますと他大学ということをおっしゃったが、これは、この後、二十条三項の問題に関連をいたしますが、少なくとも、教育に必要であるというようなことを利用してどんどん範囲を拡大をしていくと無用な混乱や摩擦を起こすことになる。教育に必要だということは、何でもできる。これも教育に必要だ、これも教育に必要だということになれば範囲がどんどん広がってくる。御承知のように、これは教育、教養、娯楽等いろいろな番組がありますね。放送範囲の中にはそういうものがある。それを逐次拡大をしていけば、これはもう秩序もくそもない。そこに摩擦と混乱が起きる危険性がある。こういう点については、基本的に放送大学放送はあくまでも教育番組に限ると、このように考えるべきだと思いますが、そのように理解をしてよろしいか、さらに重ねてお伺いしたい。
  59. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が申されましたように、基本的には大学教育番組に限る、相当厳しく考えていくべきであるというふうに考えております。
  60. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、放送大学放送というのは教育番組に限定するということならば、いわゆる放送大学放送局の免許に当たっては、電波法に定められました放送事項、この放送事項は教育に限定して、その性格を明らかにすべきだ、このように思いますが、いかがですか。
  61. 平野正雄

    平野政府委員 仰せのとおり、教育に限定する必要があろうと考えております。
  62. 武部文

    ○武部委員 先ほど質疑を聞いておりましたところ、NHKの問題が出ておったようであります。この放送大学の発足というものはNHKの経営に対して直接的、間接的に非常に影響が大きいと私どもは見ておるのであります。広告料、いわゆるCM料を財源とする民放、そしてNHKのように聴視料をもって財源とするもの、そこへ新たに国費を主財源とするところの放送大学が加わる。こういうことになってくると、NHKの受信料の不払いというものがさらに拡大をするおそれがありはしないか、これをわれわれは恐れるのであります。  先般のNHK予算審議の際にも、不払い運動というものが何か一連の動きがあるとか、あるいは若干ふえておるとかいろいろなことが言われました。NHK予算も赤字予算を組んでおる。こういうような事態も論議の中で出てきたわけですが、少なくともこれはNHKの言論、報道の保障制度である受信料制度の崩壊にもつながるおそれがありはしないか。このように考えて、これは大変重大なことだと思うわけですが、この意味においても、放送大学放送範囲というものは、いま局長からお話がございましたように、最小限明確に教育というものに限定をして免許を与えるべきだと思いますが、いまの答弁で私は了承いたしたいと思います。  そこで、次に、先般の逓信委員会質疑を聞いておりましたところ、第二十条三項で通信大学との関係について質疑が行われまして、その際の文部省の答弁の中にこういう答弁がございました。続み上げてみますと、学園の業務として、主務大臣の認可を受けて必要な業務を付加することができる規定を置いているわけだが、この部分については、あいている時間帯に私立大学の通信教育関係の方がぜひ自分たちの大学放送をしたいと希望される場合にはそれにこたえ得るということを配慮したものであると、こういう答弁をされておりますが、二十条第三項はそのような内容を含んでおるというふうに文部省理解をされておるかどうか、これを重ねてお伺いしたい。
  63. 佐野文一郎

    佐野政府委員 主務大臣の認可を受けて、この規定によって私立大学の通信教育のための放送実施するということを考えております。
  64. 武部文

    ○武部委員 そういうことになりますと、放送大学放送局を他人の用に供することになると私は思うのです。放送大学放送局を他人の用に供する。電波法によりますと、そのようなことができるのは電電公社とKDDだけであります。  郵政省は、いま文部省が答弁されたことについて一体どのようにお考えでしょうか。
  65. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  学園の目的となっておりますところの「大学教育のための放送の普及発達を図る」という必要がございました場合に、目的達成業務といたしまして放送大学以外の大学教育のための放送を行うことは差し支えない、こういうふうに存じております。
  66. 武部文

    ○武部委員 電波法第四条の二項は、いま申し上げましたように、無線局で他人の用に供することができるものは電電公社とKDDだけだということになっておりますね。それがこのように二十条三項によってこの電波法というものが拡大解釈をされて、他人の用に供することができるというようなことになってくると、この第二十条第三項を安易に考えてどんどん範囲を拡大していくということになれば、まさにこれこそ放送の秩序というものが混乱するではないかと思いますが、二十条三項と電波法関係をもう一回郵政省から説明をしていただきたい。
  67. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  学園が他大学教育のために必要な放送を行う場合でございましても、その放送は学園の番組編集責任のもとに、学園自体の放送として行うわけでございますので、無線設備を用いて他人の通信を媒介する公衆通信業務にはならないというふうに考えております。
  68. 武部文

    ○武部委員 私と見解が違います。私はそう思いません。  この放送大学は、二十条に「業務」として一項、二項、三項がございますが、少なくともその三項の中で、いまあなたがおっしゃったように、これは電波法に抵触しないとか、そういう拡大解釈をすることはむしろこの放送に混乱をもたらすことになりはしないかという懸念があるわけです。したがって、見解は異なりますが、これは非常に慎重にやってもらわなければ困る。先ほど申し上げたような教育に限定をするということにも関連をいたしますが、慎重にやらないとこれは放送に混乱を招くことになる。このように思いますから、見解も異なりますが、慎重にやってもらいたいということは私から特に指摘をしておきたいと思います。  そこで、先ほど来いろいろ質疑も聞いておりまして、私もよくわかりませんから重ねてお伺いをいたしますが、この放送大学学園法によって放送大学がつくられ、学園もつくられるわけですが、これに要する総額の費用というものは概略一体どのくらいな金がこのものに使われる予定なのか、エリアが全部にずっとまんべんなく行き渡ったときの最後の段階までに一体どのくらいな金がこのものによって使われるのか、これをお伺いしたい。
  69. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほどお答えをいたしましたように、その点についての試算と申しますのは、基本計画において示されているものがございます。資本的経費の総額が約八百六十八億という数字がございます。これは先ほどお答えをいたしましたように全国に約二百の送信所設置して、全世帯の八〇%をカバーするということを前提にした試算でございます。
  70. 武部文

    ○武部委員 八百億のことはわかりました。  そこで、もう一つ、私もわかりませんから、これはできれば明確にお答えをいただきたいのですが、東京タワーからまず電波を発していけば、関東一円は大体エリアとして入りますね。それは初年度、したがって昭和六十年にはこの関東一円のエリアの人たちはみんなこの放送大学放送を見ることができるという、そのような説明最初にあったように聞いたわけですが、それでよろしいですか。
  71. 佐野文一郎

    佐野政府委員 関東全域の方がいまの一期の計画放送大学放送を視聴できるという状況にはならないわけであります。  東京タワーから電波の到達する範囲ということであって、各県別の送信所を建てることを、一期の計画では周辺地域に一カ所だけ予定をいたしておりますので、関東全域に県別の送信所を建てていくということは放送大学の二期以降の計画課題になるわけでございます。
  72. 武部文

    ○武部委員 私も変だと思って聞いておったのですが、ここの東京タワーから電波が出たって、これは関東一円に行くわけがないんです。ですから、ごく限られたところの人たちしか初年度には、この放送大学具体的にチャンネルをひねって見ることができない。その数は一体何人ぐらいですか。  そういたしますと、少なくとも関東一円が県別に一ここに書いてあるが、この送信所をつくることになっていますけれども、この東京タワーがまず第一発でやると、その次はどこなんですか。
  73. 佐野文一郎

    佐野政府委員 東京タワーと、それから関東地域における県別の送信所一カ所に続いてどのように広げていくかということがまさに課題になるわけでございます。  基本計画が示しております第一期の事業計画というのは、私どもがいま考えている一期の事業計画よりも広くて、東京と名古屋と大阪の広域送信所と、それに加えて東日本西日本から一カ所一ブロックを選んでそこに県別送信所を備えるという考え方でございます。東日本西日本につきましては、それぞれの地域における大学の収容力が最も少ないという点に着目をして、四国と東北ということを基本計画では考えているわけでございます。  これについては、基本計画がそういう考え方をとっているということには十分留意をする必要がありますけれども、具体的に二期以降の計画考えていく場合、基本計画指摘をした一期計画程度の事業規模というものはもちろん考えなければならないと思いますけれども、具体にどのブロックを取り上げて次のステップを切るかということについては、なお今後の高等教育計画的な整備の進行状況なりあるいは三期計画に着手できる段階における放送衛星実用化の問題等を考えてさらに検討を要するところと思っております。
  74. 武部文

    ○武部委員 これはよくわかりませんね。どういうことでしょうか。  この放送大学が鳴り物入りで出てきて放送局がつくられて、東京タワーから電波が出て、そこまではわかるのですよ。そこまではここから始まるなということがわかるが、その後がかいもくわからない。やみの中に手を突っ込んで探すようなものです。何のことかてんでわけがわからぬ。  そうすると、全国放送大学がりっぱなものができる、たくさんの国費をつぎ込んでできるが、一体われわれのところはいつ見られるのだろうか、五十七年だろうか五十八年だろうか、六十年だろうかということがかいもくこの中からは知ることができないのです。そういうものが一体計画と言えるでしょうか。少なくともそれは一つ構想ですからね。変更もあったり、いろいろな障害も出てくるかもしれませんが、五十八年度に実用放送衛星が上がるのです。われわれはこの法案を衆議院で通したのですよ。放送実用衛星が上がったらどうなるかということはもうわかっています。どこが全部どういうふうになるかということはわかっているのです。放送衛星が上がって、そこにチャンネルが何ぼあってということだけはもう論議したのですからね。そうなれば当然五十八年度は実用放送衛星が上がっておる。  それを想定して、沖繩には五十八年度ではだめなら六十年度とか六十一年度とか、そんな構想が全部明らかにされ得るじゃないでしょうか。それがどうしてできないのでしょうか。その原因は何でしょうか。それをお聞きしたい。
  75. 佐野文一郎

    佐野政府委員 一つには、放送大学教育活動というのはわが国で初めて試みる重要なプロジェクトでございます。これが全国的にネットを広げていく、その時期を急がなければならないということも事実でございますけれども、同時に、それを広げていく場合には十分な資料をもって実際に学生教育を行っていく、そこの間に生ずるさまざまな問題について対応をしながら事を進めていくという慎重な配慮が要るわけでございます。  そういう意味で第一期の事業計画規模というものを考えているわけでございますが、この一期の事業計画のもとで学生が卒業年次を迎えるのは、われわれの現在考えている五十七年四月に学生を入れるというステップからいたしますと六十一年の四月ということになるわけであります。その六十一年四月までの一期の事業計画期間の中でさらに十分な放送大学教育活動についての検討を加えながら、その後におけるステップの進め方を考えていかなければならないわけであります。  先ほども大蔵省からお答えをいたしておりますように、放送大学というものの予算を現在計上しているわけではもちろんございません。放送大学予算具体課題になりますのは五十五年度の概算要求の時点からということにもなるような事情がございます。私どもはそういうことも頭に入れながら、しかも御指摘のように、国民の方々が放送大学教育網というものがどういうステップで今後広がっていくのかということを少なくとも目途として示せという、その点はわれわれも十分こたえなければならないことであると考えておりますし、文教委員会でも強い御指摘のあるところでありますから、二期以降の計画目途というものをできる限り早く示したいと考え検討しているところでございます。  なお、この六十一年四月までの一期の計画期間につきましては、もちろんこれは郵政当局の御判断によるところであり、郵政省と御相談をしなければならないことではございますけれども、恐らくは放送衛星のプロジェクトを放送大学に使うということは非常にむずかしいであろう、放送衛星放送大学のプロジェクトに活用していくということは一期計画に続く二期計画段階での課題になるのではなかろうか、と考えているわけであります。
  76. 武部文

    ○武部委員 五十七年四月に一期生が入りますね。そうすると五十八年四月には二期生が入るでしょう。そういうふうに次から次へと毎年入れる構想がありますね。卒業年度も決まっておりますよ。そうなれば一期、二期、三期という構想があって、大学生の数は大体このくらいだという想定をされて計画というものは立つのでしょう。当然それは立てられると思っておるのですよ。われわれ素人でもそう思いますよ。それがあなたの方ではこの法案を提出するときになぜ第一期までしか説明できないのかということが私どもは疑問なんです。  放送衛星が上がる。ところがすぐには使うことがむずかしいといまあなたがおっしゃったが、この放送衛星を使うのはだれか、これはもう明らかにNHKの難視聴対策に使うということは説明の中にあったのですよ。それで、これは当然この放送大学にも使いますよ。そういう提案理由の説明がありました。われわれはそう承ったのです。したがって、放送衛星が上がってくれば、実用衛星は五十八年に上がるわけですから、そのままこれが放送大学に使われるであろうというふうにわれわれも理解いたしました。そうすると五十八年度以降には、これは鹿児島だろうが北海道だろうがこの実用衛星によってこの電波が受けられるというふうに単純に理解しておるのですよ。そういうことがなぜ構想の中に盛り込まれておらないのかということが大変不思議なんです。  ですから、先ほど宮崎委員の質問がございましたが、あの人は鹿児島だそうですけれども、私のところだったらいつ放送大学の画面が見られるか、チャンネルが見られるかという質問は当然あるのですよ。答えるにも答えられないでしょう。いつか、わけがわからぬのだからね。こんなことでは、この法案の審議に真剣に参加して、いやいつごろには全国こうなります、大体何期に分けてこうなります、全国がエリアに入るのは何年でございますと、こういうことが発表されなければこんなものに私どもは真剣に審議できないじゃないですか。その点はどうでしょうか。
  77. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の点は私も十分に承知をいたしております。非常にむずかしい諸条件があるわけでございますけれども、そういう諸条件に対してこれまた多くの仮定を置かなければなりませんけれども、そうした仮定を置きながら、文部省としてはこういうステップで放送大学の完成を目指したいという、その目途をできるだけ早く明らかにすべく現在検討をしております。
  78. 武部文

    ○武部委員 どうもよくわかりませんが、これだけの疑問点や疑点がどんどん出てきておるのに何でこんなに急いで放送大学をつくろうとされるのかということが私どもはよくわからないのです。計画も明らかでない。将来の構想についてはこれから検討してみなければ全くわからぬ。衛星が上がっても、その衛星具体的に使われる時期もあなた方は明言をされない。そういうことになってくると、何でこんなに急いでつくる必要があるだろうか。  ましてや、先ほど電波監理局長は、放送法改正については省を挙げて検討しておるというお話がございました。先ほどそういう答弁がございました。この放送法というものは省を挙げて検討するほど重要な問題なんです。これはあなたもお認めになったとおりです。現在の放送体制の上からいってこれは当然なんです。  そういう重要な問題が置いてきぼりにされて、何でこんなに急いで放送法の根幹に触れるような問題を、これは何遍も言って大変失礼だけれども、たった一行の附則で処理をしてしまって、放送大学を一日も早く実現させようという、その意味が私はよくわからない。われわれは放送大学に反対するのではないのです。放送大学については賛成なんです。しかし、内容がこういう疑問があるならばもっともっと時間をかけて——ましてやわれわれ逓信委員会の側の者としてみれば放送法の根幹に触れる問題ですから、もっともっと真剣に討議をして、そして国民の前に明らかにして、放送が三本立てになるとこれはこういうことになりますよということを明らかにしてからでも遅くはないではないか。  これが私のこの問題に対する見解でありますが、この点はいかがでしょうか。それだけ聞いて私は質問を終わります。
  79. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学構想につきましては、御案内のように四十四年以来郵政省当局とも十分に御協議を申し上げながら、学識経験者の参加を得て、その実施の準備を進めてきたわけでございます。これまでのところで、いわゆる準備段階で作業をするという点についてはほぼ限界に達してきておると考えます。これから先の具体的な構想をどう進めるという点につきましては、学園の当局あるいは大学の当局がみずからの問題として検討をし、関係の国公私立大学とも協議をしていく、そういうことをどうしても必要とする課題が非常にたくさんあるわけでございます。  それから、また、具体にそのようなことを進めていくためにも放送大学というものをつくり、そしてその進め方を万全を期するために関東をまず対象地域としてスタートをして、十分な検証を重ねるということが必要でございます。そういうことから、私どもは、できるだけ早く放送大学設置主体となる放送大学学園の設立を見たい そのように考えているわけでございます。
  80. 武部文

    ○武部委員 放送法の問題について、郵政省はどういう御見解ですか。
  81. 平野正雄

    平野政府委員 ただいま文部省の方から説明がございましたように、学園のスタートを早くしたい。私どもといたしましても、現行の放送体制下におけるNHKあるいは民放に与える影響が最小限になっておるという確信を実は持っておるわけでございますので、全体的な電波放送法改正につきましては、今後この学園法をお認めいただいた上におきまして、さらに積極的に取り組んで御趣旨に沿いたいと考えております。
  82. 武部文

    ○武部委員 終わります。
  83. 石野久男

    ○石野委員長 次に、鈴木強君。
  84. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 放送大学の設立につきましては、各委員御指摘のように、約十年間慎重な検討を続けてこられたのでございます。私も早くからこの問題につきましては深い関心を持ち、また意見も述べてまいったつもりでございます。今回一応の結論が出まして、この国会に放送大学法案として御提案になったわけでございますが、私は、この間における関係各位の御労苦には深く感謝をいたします。  放送大学は、経済的あるいは地理的あるいはその他の理由によりまして、向学心はあっても大学で勉強できないという勤労青年あるいは社会人に対して大学教育機会を与えようというのであります。同町に、単位を取れば大学卒の資格を与えるというのでありますから、私どもはこの趣旨、意義には賛成なんです。  そういう立場で私たちは見守ってまいったのでありますが、今度提案された法案の内容を見ますと、いまも御指摘のように、教育制度の基本問題にもかかわるような学園の自由、学問の研究の自由というものと放送コードとの関係が抵触しないのかどうか、あるいは大学の自治の保障というもものが実際にあるのかどうか、人材の確保がこれで十分できるのかという点に疑問を感ずる。また、機会均等という第一条の精神に基づいて放送が始まるのですけれども、いまも御指摘のように関東地区のわずかのエリアしか最初はできない。しかも、この計画がいつ何どきどうなっていくかという展望すら示されておちない。また、勤労学生にとりましては、大学で勉強する場合には当然自分の休暇だけでは足りないでしょう。したがって、そういうことについても深い配慮をして、この法案が成立を見て動き出した場合に本当に全国民の期待にこたえるようなものでなければならぬと私は思うのです。  文教委員会においても大変御苦労をいただいて、放送大学に関する小委員会までつくっていただいたようです。そして一つ報告を私も聞いておりますが、非常に重要なところがやはり指摘されていると思います。同時に、多くの学者、有識者の方もこの内容ではという疑問を持っておられると思うのであります。私は、そういう立場に立ちまして、よりよい放送大学学園をつくり、画期的な放送大学というものをりっぱなものにしたいという熱意を込めての質問でございます。ですから、時間も少ないので多くをお伺いすることもできないと思いますが、大体三つくらいに分けてお尋ねしてみたいと思います。  その第一は、いまも問題になりました放送法上の問題と教育制度上の問題でございますが、私たち逓信委員会の者どもにとりましては電波放送法改正は長い間の懸案でありまして、この解決をまだ見ないうちに日本放送体系の基本にかかわるものが——従来のNHK公共放送民間放送に加えて、形は特殊法人になっておりますが、国営放送と言っていいと思うのでありますが、そういった系統の放送系列がここに誕生するわけでありますが、そういった基本的な問題をこの法案の附則にくっつけてお茶を濁そうなどという態度に対して私たちは心から不満を持っておるわけであります。  そこで、教育放送とは一体何なのか。いままで放送法上いろいろ問題がございまして、私たちも意見を述べてきました。さっきも指摘されたように、昭和三十九年の放送関係法制調査会の御答申の中にもこの点については触れられておりますが、わが国における放送体制は、御承知のように、第一は日本放送協会がいわば独占的に放送業務を行っていたわけでありますが、戦後民放がこれに加わりました。武部委員の御指摘のように、昭和二十五年に放送法がつくられまして以来今日まで、日本におきましては公共放送と民放の二本立てという体制で放送が行われておりました。これはなぜ国に免許を与えなかったかというと、思想統制を排除するために国営放送は認められないという基本方針があったからでありますね。このことについてもいろいろ論議がありましたが、臨時放送関係法制調査会の結論はやはり二本立てがいいのだということをはっきりと認め、この制度を将来に向かって維持していけという結論が一つあるわけですね。  ところが、そういうものが今回文部、郵政のどこで決められたか知りませんがぶん曲げられまして、三本立ての制度が取り入れられた。これは重複するようでございますが、そうなっていますね。特に放送につきましては、テレビを教育のために利用することの重要性はいよいよ高まっている、しかし、現行放送法上の性格は、ラジオについては全くの任意的事業であり、テレビにあっては免許の条件となっているにすぎない、そこで教育放送NHKの本来的業務とするよう勧告すると、実はこういう答申が出ています。  また、民間放送につきましては、御承知のとおり、科学財団の十二チャンネル、それから十チャンネルの、この二つの教育専門局がございましたが、いずれも経営上行き詰まりまして、いまは総合放送的な性格に変わっております。しかし、今日、民放では四、六、八チャンネルは教育放送一〇%、教養放送二〇%、それから十と十二チャンネルは教育二〇、教養三〇と、こういう番組の中における教養、教育番組の条件が免許のときにつけられているわけですね。NHKは、総合は教育一〇、教養一〇で、二〇ですね。教育の方は教育放送が七五%、教養が一五%と、九〇%が全体の放送番組の中に占める割合でなければならぬということが免許を与えるときの条件になっているのですね。そういった問題が一つ放送法上あるわけであります。  今回放送大学ができた場合、さっき郵政省は民放やNHKには余り影響がないというようにおっしゃっておりますが、それじゃ私はここではっきり確認をしておきたいのですが、いまの教育放送、教養放送の基準というものは法律で定められているわけではないのです。免許のときの郵政省の条件だけでございますからどうでも変更できるのでありますが、少なくとも、NHKを含めまして現在の教育放送、教養放送の番組全体における比率は今後も絶対に変わらないということを明確に言えますか。
  85. 平野正雄

    平野政府委員 現在NHK及び民放が行っております教育放送、ただいま先生がパーセンテージを挙げられましたけれども、臨放調の答申の中にもございますように、今後ますます必要性が増えてくるであろうというふうに考えておりまして、義務づけを改めるつもりはございません。
  86. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 この臨放調の方の報告の中では、確かに民間における教育放送については非常にむずかしい、だから専門局ないし準専門局は将来に向かってもこれは扱わぬ方がいいと、こういう方針でございますね。ただし、今度はそういう民放に対してもある一定の時間を供出していただいて、あなたのところはこれだけの教育放送をやってほしい、やるべきだというような義務づけをむしろ法律的にやったらどうかという答申がございますね。NHKについては、本来の教育放送としてやるようにしなさいと勧告をしておる。  この二つの点についてはどうでしょうか。
  87. 平野正雄

    平野政府委員 テレビジョンを教育のために利用することの重要性がいよいよ高まっているという点につきましては、先生の御指摘のように臨放調が答申の中で述べておるわけでございます。さらに、UHF帯をこのために十分留保する必要があるということも述べておるわけでございます。また、教育専門局を営利法人によって理想的に運営することが不可能であることが経験的に認められておりまして、今後は教育専門局につきましては、非営利組織であって、スポンサー制度以外の点に存立の基盤を置くものに限り認めることが適当であるということも先生の御指摘のとおり臨放調の答申の中に述べられておるわけでございます。  この学園の大学教育に限定をいたしました放送、これがさらにはNHK教育放送、民放の教育放送といったものと相伴って、これから臨放調の答申にございますような新たな方向に進むことが望ましいわけでございまして、教育放送の多様化と申しますか、それぞれ学園の放送NHK放送、民放の放送が国民の要望に基づく多様化というところでバランスがとれていくということをわれわれは非常に望んでおるわけでございまして、法律で規制をしていくということのためにはやはりもう少し時間をかけまして、その対応を見守ってまいりたいといふうに考えておるわけでございます。
  88. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 もう一つ。あなたの方では民放、NHKに影響はないとおっしゃるが、われわれは影響があると見ているのですね。今度は関東地区から始めるのだそうでして、こんなスタートの仕方はないですよ。これはもう国費のむだ遣いになってしまう。それはまた後でやりますが、将来全国的にカバレージが一〇〇%になる。全国系に普及された場合に必ず二本立てから三本立てになり、放送大学放送というものが日本全体の放送体制を変えるようになると私は思うのですよ。ですから、NHK教育番組あるいは教養番組というものに対して影響がないということは私は考えられない。  なぜならば、国営放送的な大学放送ができまして、そこで少し程度は高いでしょうが、教養、教育的な内容を含んだ教養学部のこういうものがどんどん放送される。番組が流れてくる。こっちはただですね。NHKはさっき武部委員がおっしゃったようにやはり受信料を払わなければならぬ。こういうわけで、将来どんどんと放送大学を見ることになるとNHK放送の視聴率というものは下がっていくでありましょうし、またいろいろな理由をつけて受信料の不払いということが出てくる危険性がないとは言えないと私は思うのですね。そういうことがございますから、少なくとも放送大学における放送教育に必要な教育番組に限定するということをはっきりとここで明言をしておいていただきたい。それで、これから免許をする場合にもそういう点は明らかにしておいていただきたい。  これは重ねての、質問ですけれども、その点はいかがでしょうか。
  89. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送大学学園放送内容大学教育のための放送に限定いたします。また、免許に当たりましてもそれに伴う処置をとってまいりたいというふうに存じております。
  90. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私は、根本の放送法改正附則でやったということに対して深い不満を持っているわけです。先ほどからの委員の質問で郵政省考え方もわかりましたが、私としてはこれはとても納得できない。特にこの放送大学については、UHF帯を一波早い時期に留保して、FMと一緒にいつでも提供できる体制をつくってきたわけですから、文部省側ももう少しそれらの点を十分に配慮しながらやればよかったと思いますけれども、いずれにしてもそういう体制がわかっておるわけですから、それならば早目に逓信委員会の方に放送法改正として、二十五年以来三十年にわたる放送電波界の変動に対する適切な改正ということがやられてしかるべきだったと思うのです。  そういうことをさぼっておったことについては本当に腹が立つわけですが、どうもこの問題は、平行線のようでございますから、大臣、今後一刻も早くこれを検討して、総体的の臨放調の答申を含めて、時代に沿う電波放送法改正をするということを明言できますか。これは十年間も出す出すと言って出さないのですからね。
  91. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 両院の逓信委員会におきまして、委員の先生方の御主張を私もたびたびるる承りまして、いま御指摘放送法電波法についての改正については、時代に合うように一生懸命努力して改正をしなければならぬということを省内でもいま話している最中でございますので、十分努力して御期待に沿いたいと思います。
  92. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これはくどいようですけれども、私たちが出すかと言うと出すと言って、大臣の所信表明で出しますと言って出さない。また来年も出しますと言って出さない。それを十年間も続けてきた。そういう事実の上に立って私は申し上げているわけです。大臣の答弁の後で言うのは失礼かと思いますけれども、われわれとしてはこれは許すことのできないことでありますから、もう一度念を押して申し上げておくわけです。  NHKにおいでいただきましたが、さっき武部委員からもお話しのように、NHKは前田会長当時からこの放送大学NHK一つ教育放送としてやったらどうかという思想を持っておられたことは私も知っております。それが文部省NHKとのいろいろな駆け引きがあったかどうかは私は知りませんけれども、いつの間にか文部省サイドにこれが入ってしまったというようにも聞いておるわけです。聞いておるというより、私はそう思うのです。したがって、NHKとも相談をしてこの問題については提案をしておるということをさっき郵政当局から言われておりましたが、二本立てから三本立てになり、将来この教育大学放送NHKの本来固有の教育放送に何がしかの影響を与えるのではないかと私どもは心配をしておるのです。いま監理局長から明確な御答弁もありましたので、その点については大丈夫かという気持ちも若干するわけですけれども、なお時代が変わっていくわけですから、法律か何かできちっとやってくれればいいのですが、それがまだできておりませんのでわれわれとしては心配をいたします。  今後も監視はしていきますけれども、堀さんとして、NHK側の意見があればこの機会に聞かせておいてもらいたい。お忙しいところを済みませんでしたが、おいでいただいたので……。
  93. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  政府当局から現在の放送秩序に対する影響を最小限にとどめるというお話でございますし、私たちもそのことを強く希望しております。  そして、なお、この前、最近のNHK側のこの問題に対する答弁の中で山本参考人から、この放送大学法案は、番組面あるいは受信料体制の面で必ずしも看過し得ない重大な問題として受けとめておる、そして現在重大な問題であるという認識を持っておる段階であるというふうに説明されましたが、私も全く同様のことと考え、重要な問題ではあるが、NHKは今後とも教育放送を含めてますます国民に親しまれ、かつ信頼される放送を続けていく所存でございます。
  94. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 心配はあるがやむを得ない、しかし将来危惧は残る、というふうに理解していいですか。
  95. 堀四志男

    ○堀参考人 将来のことでございますので、余りに楽観的になることは経営の責任から申しておかしなことだと思いますので、将来の危惧を含めてわれわれは対処する準備を進めているというふうにお答えいたします。
  96. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私も同感ですから、国会レベルの方ともタイアップしてこれから監視の目を強めていきたいと思います。  それから、文部省にお尋ねいたしますが、学校教育法で言うところの国公立、それに学校法人の私立、その上に今度特殊法人立というものができるわけですね。これをつくるに際して、たとえばいま十二ある私立の通信教育を持っている大学——たしか九つは短大で持っていると思いましたが、そういう学校への影響がかなり出てくるように思うし、さらには国立、私立、公立を問わず、一般の大学に対しても、将来この制度が完璧になれば進学率が——この大学に入れば進学率はふえるでしょうけれども、一般の既設の大学は入学者が減っていくというようなことが考えられると思うのです。特に、通信教育との関連でそういう関係大学の方とコンセンサスが十分にできているのかどうなのか。新しい制度でございますから十分に配慮されていると私は思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  97. 佐野文一郎

    佐野政府委員 率直に申しまして、放送大学構想検討された途中の段階におきましては、私立大学関係者、特に通信教育関係の方々からは、それが私大通信教育に対して大きな影響を及ぼすのではないかということから強い危惧の念が表明された時期がございます。しかし、その後調査会に私大通信教育協会の方にも御参加をいただきまして、具体構想検討していく過程で通信教育協会側の十分な御理解を得ることはできたと存じております。  むしろ、これを機会に私大通信教育放送大学とがいわば相携えて、ともに発展することができるような方途を考えようということで法案の内容についても御相談を申しているわけでございますけれども、先ほど指摘のありました私大通信教育のための放送放送大学学園がみずからの放送として実施をするというようなことであるとか、あるいは放送大学の学習センターを私大通信教育利用に供することであるとか、あるいは放送大学学園の運営審議会等に私大通信教育の方々にも御参加をいただいて相ともに運営について考えていこうとか、そういったむしろ前向きの方向でお互いに協力をしていく、そういう合意が成立をしていると考えております。
  98. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 その辺はこれからの運用の妙味を発揮できるかどうかということにかかってくると思いますから、本来の通信教育制度がこのことによって損なわれないような配慮を文部当局としても十分にやっておいてほしいと思います。  この放送大学学園の設立につきましては、最初から一番もめたのは経営主体をどうするかということでございました。これは最後まで残ったのです。結局、法律に基づく大学をつくり、特殊法人と銘打ってこれが経営に当たるということになったわけですけれども、この特殊法人放送大学というものは一般に言う教育制度の中では私立大学というふうに扱われていくのか、どうなるのか、この辺はどう解釈するのでしょうか。
  99. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、従来の大学設置形態としては特殊法人立というものはなかったわけであります。今回、大学設置主体と放送の主体というものを一つのものとして構想するということから、特殊法人立という特殊な設置形態を考えたわけでございます。  この大学の場合は、そういう意味ではもちろん国立でも私立でもない大学ではございますけれども、実態としては御指摘のようにかなり私立大学に近い性格を持っているということも言えるわけでございます。しかし、一面では、現在私立大学について私立学校法が設けているような規定とは違った配慮のもとに、たとえば、特に放送大学の組織といたしまして評議会を置くというような規定を設けて大学の自治の保障を考えるというようなことも配慮する、これはむしろ教育公務員特例法の趣旨を木大学については考えて規定をする、そういった配慮をしているわけであります。
  100. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 その辺が非常にあいまいと言えばあいまいなんです。国立、私立の場合には、いい悪いは別としまして、きちっとした制度がございます。ところが今回の場合には、評議会の任命あるいは理事長の任命、その他いろいろ国立の大学なんかと違った任命の制度をとっておるわけです。ですから、われわれとしては国立なのか私立なのかよくわからないのだが、要するに電波の免許を受けなければならないという立場に立つと国立ではいけない、したがって私立と考えるというような適当な解釈をしているのではないでしょうか。厳密に特殊法人立というものに位置づけておるかどうかはっきりしておいてもらいたい。  そして、これには学校教育法、教育基本法、それから職員の特別人事法がありますね。教育公務員特例法ですか。そういったものが準用されておるのか、あるいは一部だけそこへ持ってきて法律の中に入れてあるのか、その辺がよく理解できない点もあるのですが、そういう点はどうなのですか。これはさっき武部委員からお話がありましたけれども……。
  101. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように従来の設置形態にない大学をつくるわけでございますから、法令において国立、公立、私立によって取り扱いが異なる事項について、放送大学をどのように扱うかということが問題になるわけでありますが、この点については、放送大学法律によって設立される特殊法人を設置者として国の出資を得て設置されるということ、他方、放送大学設置については公私立大学と同じように文部大臣の認可を要するものであること、そういった点に留意をいたしまして先ほども申し上げましたような配慮をしたわけでございます。  学校教育法六十四条につきましては、公私立大学と同様の取り扱いにする、文部大臣の所轄ということにしておりますし、また、御指摘教育基本法の九条二項につきましては、国公立大学と同様に取り扱うこととしまして宗教的な活動は禁止する、そのような措置を講じて、いわば現在国公私立によって取り扱いの異なる事柄については、放送大学の性格に基づいて最も適切と考えられる措置をとっているわけであります。(鈴木(強)委員「教育公務員特例法との関係は」と呼ぶ)  この大学はもちろん国家公務員法あるいは国家公務員法の規定の適用を受ける大学ではございませんから、したがって、教育公務員特例法が適用され、あるいは準用されるというようなことではございません。しかし、先ほど申しましたように、やはりこの大学の自治というものが非常に重要であるということにかんがみまして、特に「評議会」というような規定を設けて、教員の人事というものについての規定を設けたわけであります。
  102. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 この点はまだ疑問の点がございますが、時間の関係で次に移ります。  この学問の自由とコードとの関係で、先ほども御意見がありましたが、放送法銅四十四条三項の放送番組の編集の項が教育大学放送にも準用されてくるわけでございます。そうなりますと、本来の教育の自由、学問研究の自由というものが損なわれるようなことにならないだろうかというように私も思うわけですが、皆さんの方はその点は大丈夫だとおっしゃるわけです。  一つだけ具体的な問題でお伺いしますが、放送法第四十四条三項の四に、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」とございますね。先生が自分の意見を述べる。こういう意見もある、こういう意見もあると言って、そのときに最終的に、その教授が自分はこう考えると、そういう自分が持っている固有の意見というものは発表することができるのですか。この条項から言うとそれはできないようにも思うのですね。何せキャンパスがないわけですからね。キャンパスがあれば学生と教授が対話できますし、疑問があれば質問ができます。しかしそういうことができない。片一方放送になりますね。確かに放送ですから放送法上のある程度のコードが必要だと思いますけれども、こういう新しい電波を媒体にした大学ができるわけですから、この四十四条三項についてもう少し検討すべきだと私は思うのですが、その点は検討していないのですか。  既設の四十四条三項というものを放送大学では何かぼかしてしまったような気がしてならないのですよ。教育の自由ということを守るならば、たとえ放送であっても、この自由を守るための抜け穴といいますか、そういったものが放送法上もう少し認められていくような措置をとっておけばこういう心配はなくて済んだと思うのです。機械的に従来の二十五年以上も前につくったものをひっかぶせてきておるものですから、私たちとしては非常に疑問を持つわけですね。文部省、その点はどうですか。
  103. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の点はもとより郵政省当局において十分に御検討が進められていたわけでございますけれども、文部省の方でも、放送大学構想検討するに当たって問題点として非常に意識をし、学識経験者の間で議論をいただいていた点でございます。その結果として私どもは、郵政省当局の御見解のとおり、四十四条三項の規定というものは放送大学放送についても適用あってしかるべしというように考えたわけであります。  もちろん、そのことは、放送大学放送を用いて授業を行うという、その性格にかんがみてのことでございますし、また、御指摘のように、放送大学における教学の立場と申しますか、教授の自由というものとの調整に十分留意をした上でやはりそういうふうな点の結論を得たわけでございます。このことは、結局特定の意見の提示に傾いてはいけない、対立する見解をできるだけ公平公正に広く提示するということ、それを四十四条の三項は要求を聖いるわけであります。そのことには大学の講義といえどもこたえなければいけないし、それはまたこたえることができる。  しかし、この規定は、先ほどお答えを申し上げましたように、私どもは、講義を担当する講師がこうした配慮のもとで対立する見解をできるだけ公正に提示をし、その上で自分の学問的見解を述べることまでを禁止しているという趣旨のものではないと理解をしております。そのことはまた学識経験者もそのような見解をとっていると考えております。
  104. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 郵政省の見解はいかがですか。
  105. 平野正雄

    平野政府委員 郵政省といたしましては、ただいまの件につきまして、自己の見解が一方的に提示されるのではなく、反対意見も十分に示しながら、全体として公平を損なわなければ、放送大学学園放送番組の中で教授が自己の学説を述べることについては問題はないというふうに存じておるわけでございます。  なお、この公平につきましては、必ずしも個々の放送番組の中だけで考えるべきではなくて、一定期間内における放送番組全体を通じて確保されることが必要であろうというように考えております。  なお、この点につきましては、運用に当たりまして十二分に連携を保ちながら進めてまいるべき問題であろうというふうに考えております。
  106. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 純粋に放送法第四十四条の三項というものを理解する限りにおいては、いま文部省郵政省が述べたような解釈ではないと思うのです。これは論議が残ると思いますね。  この書かれておる文面を見ると、教授が自己の意見を述べるということはできない。「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」ということ、これはすなわち一般の放送事業者が放送する場合の一つのコードなんですよ。放送大学なんていうものが全然ないときにつくったものなんです。したがって、そういう解釈はこじつけなんです。将来この問題が必ず出てくることを私は恐れるのです。きょう文部、郵政両省がここで明確にそういう御見解を述べられたわけですから、拡大解釈というか、法律解釈としてそういう解釈もあるのかなと私は思うのですけれども、厳密な立場から言うと問題があると思うのですよ。  だから、このことについては、法案を提案するまでに両省でどのくらい検討をしたわけですか。どんな意見があったのですか。差し支えなかったらここで発表してもらいたいのですよ。それはどっちが妥協したのか知らぬが、結論に達するまでには私がいま言ったような問題だって当然論議されなければならぬことですよ。一群基本の問題ですからね。
  107. 佐野文一郎

    佐野政府委員 どちらがどういう意見を主張し、どちらが妥協したということではなくて、法律案を作成するに際して四十四条三項の規定をどのように取り扱うかということについての両省の協議をし、それによりまして、お手元の法案のように措置をするということで合意をしております。その間には特に意見の対立はなかったと私どもは考えております。
  108. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それなら、もしいま郵政省電波監理局長が言われたようにこの条文を解釈するとするならば、その後にそういう趣旨を入れたらいかがだったのですか。教授の固有の学問的な立場に立つ意見を述べられるのだということを、ですね。これだったら述べられないでしょう。明らかにすることだけであって、後はないでしょう。ごまかしておるのです。  だから、その辺に対しての詰めた話し合い、果たしてこの四十四条三項が学問の自由、教育の自由、研究というものを阻害しないのかどうなのか、そういう点について一つ協議がなかったということは、これまたナンセンスだ。どうですか。これは大事なことだからちゃんとしておいてくださいよ。
  109. 平野正雄

    平野政府委員 この点につきましては、文部省調査研究会議の中で郵政省の意見も聞きながら、学者の先生たち、外部の有意義の先生たちの御意見も微しながら、また別途郵政省といたしましては文部省その他関係方面と検討しながら詰めてまいったわけでございます。  なお、現行の四十四条三項の規定の遵守に基づきますNHKあるいは既設の民放でございますけれども、その辺の解釈も、先生承知のように一応統制がしてあるわけでございます。ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  110. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これはやはり問題が残ります。しかし、一応解釈上は御両所がそうおっしゃるのですから、それを了とするわけにはいきませんけれども、その点は今後私も明確にしたいと思います。これだけでは納得できません。  時間がないから次に進みますが、もう一つは、これももう委員が御発言になっておりますが、最初スタートは五十七年四月から関東地区対象にやりたいということでございます。しかし、私は、こんなスタートの仕方は絶対にないと思います。こんなばかなことはないのですよ。さっきも申し上げたように、UHF帯は早い時期から確保しておったわけですから、経営主体がどうなろうとも、NHKはすでに一〇〇%近いカバレージを持っているわけです。ですから、そういう時代にこの放送関東だけに流れてほかの地域に流れないなどということになったら、これは一体どうなるわけでしょうか。そういう点を大臣考えたことがあるのですか。  都にひなにと言うけれども、都の人は勉学の機会はたくさんある。ひなの人たちはこれをうんと願っているわけです。そうであればもっと全国的に、山間僻地にも電波が到達し、そしてみんながこの放送を聞いて大学卒業資格を取ろうという、勉強にいそしめるような態勢をつくるのが当然じゃないですか。同じ金を使っても、その効き目は十分の一になってしまうのですよ。こんなばかな予算の使い方には国民は納得できませんよ。こんなちゃちな、細切れといってもほどがあるような、こんなものは問題にならぬのです。  しかも、UHF帯は関東といっても足が短いのですから、全部の関東に到達するわけではないのですよ。それならFM放送というのがある。FM放送はテレビと違ってある程度経費も安いわけですから、少なくとも北海道なり各県庁所在地くらいに放送局をつくって、そこから一つのカセットにしたものを時間帯に送ってやればできるのじゃないですか。全国はできないとしても、東京、大阪、名古屋、広島、京都というような主要なところとか、あるいはもう少し山の地帯で教育に熱心なところがあるでしょう。皆さんが世論調査をしたのだから、そういう配慮をなぜしなかったのか。  そしていま聞いていると、この後第二次、第三次の計画はどうなるのか、さっぱりわからぬじゃないですか。大蔵省に予算をよこせと言ったって、計画のないところに予算をつけられますか。ちゃんとしたものをつくって、少なくとも五年くらいを一つの期間にして、そしてその期間には必ず全国の希望者に大学放送電波が届くというような配慮をするくらいの決意がないとこれは絶対だめです。国民に笑われますよ。電波が泣きますよ。  そういうきちっとしたものが出ていれば私たちも考えてもいいですけれども、このままのスタートでは私たちは絶対反対ですよ。どうですか。
  111. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど来の御指摘について、私どももその御指摘の点は十分認識いたしておるわけでございます。  ただ、これも重ねてのお答えになって恐縮でございますけれども、このプロジェクトを成功させるためには慎重な対応がどうしても必要である、そのために将来の拡充計画を立てるのに必要な十分な資料を得る、そのステップを踏む、しかも、その資料を得るための最初計画というのが電波網整備に多大の経費を必要としないという、そういう考え方のもとにそれを考えていく、そうすると対象となる学生の数あるいは教官の確保といった点を考えても、関東ということを最初スタート規模として考えるのが最も適切であると、こういう判断に達したわけであります。しかし、それが放送大学のプロジェクトというものを成功させるために、そしてなるべく早くそれを全国にネットするために必要であると考えてそのように対応しているという点についてもぜひ御理解を賜りたいわけであります。  将来の計画については、先ほど来申し上げておりますようにいろいろなむずかしい不確定の条件がございます。そのことのために現時点においては明確にこうするということを申し上げることが非常にむずかしい、今後の各省庁との協議に待たなければならない面が非常に多いという点もあわせて御理解を得たいと思うわけであります。
  112. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私も積極的に推進をしてきた一人なんです。しかし、推進はしても慎重にということで、皆さんの方も慎重慎重と言って十年間慎重にやってきた。出てきたものはこういうものです。これは内容がお粗末過ぎる。それで、いませっかくの局長の御意見ですけれども、それは私はもう返上したいです。もっと積極的な立場に立ってやらなければだめです。  では、いま私が質問したように、もしUHF帯ができないならば、FMというのがあるわけですから、電波はとってあるのですから、せめてFMで、ある主要都市とかある地域だけはカバーしていくということがなぜできなかったのですか。人材確保がむずかしいとかテストケースでやるというような話をおっしゃるけれども、もうすでにNHK放送網を使って十分にテストはしておる。テレビ朝日の放送網を使ってやっているじゃないですか。いまさらその結果を見なければ放送大学がどうしたらいいかわからないというような局長からの答弁は、これは受け取れませんよ。あなたは文教サイドからそういうことを考えているかもしれぬが、事は放送という従来と違ったものです。先生が教室で講義するのじゃなく、講義するものが電波を通じて生徒に伝わってくる。放送というものはそういうむずかしいものだということをあなたは知ってもらわなければ困るのです。だから、教員の確保がむずかしければやめればいいですよ。  こんなものをいまさらテストケースで関東をやらせますなんと言う。全部これは返上しますよ。そんなことでは納得できない。それは取り消しておいた方がいいですよ。
  113. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学のこれまでの準備の過程で、御指摘のように、実験番組等を重ねて放送による大学教育というものを効果的に行うためにはどのような配慮が必要であるかという点については準備を重ねてきているわけであります。そのことについては、放送大学スタートさせるに足りるだけのものを私どもはすでに蓄積をしていると考えております。  また、FMだけの電波網という御提案は、これは確かに一つの案であると考えます。しかしながら、放送大学のプロジェクトというのは、御案内のようにテレビとラジオを活用して、それぞれのメディアの特性を生かしながら、内容の豊かな教育を行うということを趣旨として構想が進められてきております。さらに、対象地域の拡大の問題は、単に電波網整備の問題だけではなくて、それと表裏一体のものとして学習指導体制の整備という問題がございます。これについてやはり慎重な配慮が要るという点を御理解をいただきたいわけであります。
  114. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 趣旨は私もわからないわけではないのですけれども、テスト的な立場に立っての関東エリアというように私は受け取りましたので、それだけは何としても返上しなければならぬと思ったのです。  そこで、時間もないわけですから、これだけじゃとても審議を続けることはできませんから、委員長、もう一回連合審査をふやしてもらって、もう少しわれわれの意見も聞いてもらいたいと思います。  それで、この放送大学学園構想を本当に完璧なものにするためには、学問の自由、大学の自治の保障、人材の確保、それからさっき言ったように  一方交通ですから、面接教授というものをどうしてやるかとか、あるいは勤労学生に休暇を与えてどうするとか、そういったものをちゃんと整備してこれをスタートしなければ、せっかくの放送大学法案というものが絵にかいたもちになる危険性があると私は思うのですよ。  先ほどから申し上げているように、私もこの構想には賛成している者ですから、積極的に推進していきたいという気持ちを持って二十年近く、参議院当時から私はやってきました。ところが出てきたものについては、最初に申し上げましたようにその努力には感謝するけれども、しかし、人間のやることですから落ち度もあるでしょうから、われわれの意見、特に放送のコードと学問の自由との問題、あるいはこのスタートに当たって国民が見てももっときちっとした——とりあえず関東スタートするが、しかし二年たったらどこが来る、三年たったら北海道の人も見れるという、こういう展望がなくてこれをスタートしたら、関東エリアのわずかな人以外の多くの人たちは何のための放送大学かと憤りを持つことは必然だと私は思うのですよ。そんなばかなスタートをすべきではない。もしそれがどうしてもそういうことであれば、いま申し上げたように、逐年で何年たったらこうだということを国民の皆さんに理解していただいて、いま一遍にできなかったのはこういう理由なのだ、しかし二年たったら北海道で見れますよ、三年たったら九州でも見れますよ、それまでがまんしてくださいという誠心誠意の皆さんの考え理解されればまた一面納得できるかもしれませんけれども、このままでもってスタートしたらこれは大変なことになるということを私は申し上げておきます。  ですから、大臣もわれわれの意見の中で間違っている点があったら指摘をしていただき、われわれの意見の中でなるほどと思うところがあれば、先ほどの四十四条三項なんかについてもそういう点を明確にしていただいて、そして国民の心配のないような体制の中で、画期的な歴史的なこの放送大学スタートできるように、ひとつあなたの最高の配慮をお願いしたいのですよ。まあ、郵政大臣ともいろいろ相談してやってください。どうですか。
  115. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 鈴木先生のお話は大変ごもっともだと私は思っていますが、ただ、何しろ放送大学は初めての試みですから、確かに問題点のいろいろあることは私もよく存じ上げていますけれども、われわれとすれば、この法案については郵政省とも相談して、慎重審議をして、関係省庁とも十分協議して出した最善の法案だと思っているのですよ。  ですから、ひとつ御理解いただきたいのですが、しかし、皆さんのおっしゃったことは大変ごもっともな点が多いから、これは今後慎重に対処して御期待にこたえたいと私は思っております。
  116. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 時間がありませんから、終わります。
  117. 石野久男

    ○石野委員長 鈴木委員から委員長要望の件については、後刻理事会にお諮りしたいと思います。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  118. 石野久男

    ○石野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放送大学学園法案について質疑を続行いたします。久保等君。
  119. 久保等

    ○久保(等)委員 文教と逓信の合同委員会で放送大学学園法案について質問をいたすわけですが、きのうも逓信委員会電波法一部改正の問題に関連して若干この問題に触れてお尋ねいたしました。きょうも実はきわめて時間が限られておってはなはだ残念なんですが、しかし、主な点だけをお尋ねをしたいと思うのです。そうなりますと、先ほど来同僚議員の間でいろいろ質疑応答が行われましたが、当然そういう問題と重複をいたすわけですが、しかし、重複をいたしますことは、やはりそれほど間脳が重要であるという意味で繰り返しお尋ねする点もあろうかと思いますけれども、その点はそういう意味で御理解を願いたいと思うのです。  私も率直に、この放送法の一部改正が今回こういう形で、学園法案のいわば附則の中で取り上げられたことを手続的にも非常に遺憾に思っております。それと申しますのも、今回のこの問題に関連する放送法の一部改正とは言いながら、実は、放送法にとって非常に画期的な大変な重要問題をはらんでおりますことは朝からの委員の質問の中でもうかがえたと思うのですが、そういった問題もありますだけに、ダブる点も御了承願いたいと思うのです。  特に、この放送大学の問題につきましては、やはり大学教育という問題、教育に関する重要な問題でありますから、大学の自治、学問、研究の自由というものの確保がなされることは当然だと思うのです。しかし、今回の特殊法人である学園の中身を拝見してみますと、人事権は一にかかって文部大臣の意向によって決定される。特殊法人という名前は何か民間的な衣をかぶってはおりますけれども、中身は大臣の意向を無視した人事というものが一切行われないということになっておる点は、教育の自由という立場から言っても非常に問題があるのじゃないかと私は思うのです。  特に、放送という、一瞬のうちに全国にいわゆるマスメディアとしての大変な威力を示す手段を使っての教育でありますだけに——その点、NHKの例の公共放送は、経営問題については経営委員会というものが設けられております。御承知のように経営委員というものは国会の両院の承認を得て、内閣総理大臣がこれを任命するという形になっておるのですが、この放送大学の学園の人事についてはそういう方法が考えられないのかどうか。放送というものを使っての教育でありますから、先例としていま申し上げた公共放送NHKにおけるような方法があるんですが、こういった方法について文部大臣はどんなふうにお考えになっておるか。文部大臣みずからの権限は大変な威力を発揮できるような構成になっておりますから、文部大臣にお聞きするのは余り適当ではないと思うのでありますが、その点を最初にお伺いしたいと思います。
  120. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この放送大学学園は、放送による大学教育実施するという点におきまして、御指摘のように非常に大事な使命を持っております。その点における大学の自治、学問の自由という点につきましては十分な配意を加え、一つには、けさほどからお答えを申しておりますように、これを学校教育法上の正規の大学として設置をし、その教員の人事、学長の人事につきましては、大学の自治機関である評議会において事を処理するということを特に規定をするというような配意をいたしておるわけでございます。さらに、主務大臣の関与の仕方も財務、会計に限って関与をするというような配慮もいたしました。  そういったことを前提といたしまして、この学園の役員の任命については、従来の特殊法人の役員の任命の例にならって規定を設ける、また、それで十分に大学の自治を守りながら放送を円滑に実施していくということが可能である、と考えたものでございます。
  121. 久保等

    ○久保(等)委員 財務その他の問題について余り大臣のくちばしを差しはさむ余地のないような運営を考えておると言われるんですが、特に私がいま指摘をしておりますのは人事の問題です。日常の業務にあれこれ細かいくちばしを入れる問題については、いま言ったようなことである程度自由に任せるということになっておりましても、問題はやはり人事です。  ところが人事がいま申し上げたように学園の理事長はもちろんのこと、監事あるいはその他理事につきましても、結局は大臣の認可がなければこれが認められないといったようなことで非常に大臣の権限が強いわけですが、私は先ほど一例として申し上げたんですが、この学園には運営審議会というものが設けられて、重要事項について審議をさせるということになっておるようですが、こういったようなものの権限を飛躍的に、先ほども申し上げたようにとにかく理事長あるいは学長等の人事ができるだけ民主的に、という言葉はどうかと思うのですけれども、要するに運営委員、言いかえれば経営委員的なものですが、その運営審議会のメンバーそのものがいわば国会の承認によって任命されるというような形のものにしておいて、その経営委員会的な審議会が最高人事等を行っていくというようなことにするのには非常に適したこの学園の制度ではないかと私は思うのです。  ですから、日常の財務、会計等に対する問題は、大臣のそういった一々くちばしを入れるというようなことを抑制するようなシステムにはなっておっても、問題は、人事権を持っておれば、とにかく思わしくなければ人事権でもって更迭をさせるというようなことはきわめて簡単なことですし、人事を握り、それから財政的には先ほど来お話がありましたが、国がとにかくこれを負担するというようなことになっておりますから、名前は特殊法人であっても実質的には国営の放送であり、具体的に言って国営の大学と現実の問題としては変わらないのではないかと私は思っておるのですが、特殊法人にせっかくした苦心がありとするならば、そういった面でむしろ具体的にさらにこれを発展させるということを考えられてしかるべきではないかと思うのですが、その点再度お答えを願いたいと思うのです。
  122. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学学園の運営について広く関係有識者の意見を求める、それによって学園の運営を公正に進めていくという配慮をしなければならないということは御指摘のとおりであり、また、そのために運営審議会というものを設けることにいたしておるわけでございます。  この運営審議会の委員につきましては、これまでもお答えを申してきているところでございますが、国公私立大学関係者あるいは私大通信教育関係者、社会教育関係者、さらには放送関係の学識経験者といった方々をお願いするということにいたしております。具体にそれらの方々をお願いするについては、当然国公私立の大学を代表する団体等の意見を十分に聞いて委員の人選を進めるというような運びを考えているわけでございます。  この運営審議会が十分に学園の重要事項について機能するということによって、いまの先生の御指摘のような学園全体の運営が公正に保たれるような配慮というものが可能になってまいると考えておるわけであります。
  123. 久保等

    ○久保(等)委員 私は、今度の放送大学というものは規模の面において従来ある国公立の大学とは全然違うと思うのです。それこそ僻地まで電波によって教育を行っていこうという展望の上に立って始まる放送学園であり放送大学ですから、したがってその影響するところはきわめて大きいわけです。したがって、けさほど来問題になっております教育の自由と、そして放送法上求められておる政治的な公平あるいは不偏不党といったような問題等で非常に重複する面、あるいは時と場合によっては衝突をするといいますか、そういった問題も出てまいると思うのです。だから、それだけにその場合の放送大学がどういう人たちによって構成されておるか、どういった人たちというよりも実権をどういうところが持っておるかということは非常に重要な問題だと思うのです。  したがって、私は、従来の大学等とは比較にならない放送を手段とする大学であるだけにこれは大変なものだと思うのですが、さしあたってスタートする第一期計画あたりを見ると大したことはない。とりあえずとにかく東京タワーから電波を出すという程度ですから、むしろわれわれの期待にこたえられるかどうかという問題をあの計画の中身を見ると感ずるぐらいですが、しかし、これが本来の機能を発揮するようになってくると大変な大規模大学で、しかもその大学の人事一切は文部大臣によって握られておるということではまことに大変な影響が将来出てくることが考えられると思うのです。  したがって、先ほども申し上げたように、特にこの運営審議会の委員、名前はどういう名前でもいいのですが、要するに人事権を持つ運営委員というようなものは国会の承認を得て任命をせられるという形の方法をとることがいいのではないか。一つの例として、NHK公共放送なるがゆえにそういった方法をとっておるわけですから、それにならった形でやることの方がはるかにベターではないかというふうに私は考えるわけでありますが、一言、簡単で結構ですが承りたい。内藤文部大臣、いかにお考えになりますか。
  124. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 あなたの御意見も一つの意見だと私も思いますけれども、私どももこれは公共放送ですから十分各方面の意見を聞いて慎重にやるつもりですから、これで御期待にこたえられると私は思うのですがね。
  125. 久保等

    ○久保(等)委員 大臣の御答弁はけさほどから聞いておっても運用面で十分に配慮していくということなんですが、われわれはここで法律制定の審議をしているのですから、法律上あるいは制度上どうするかということで議論をしているわけですから、それは内藤大臣のようなりっぱな大臣がずっとやっておられたらいいのかもしらぬけれども、なかなかそうはまいらない。したがって、制度上きちっとするべきところはきちっとしておかなければならぬと私は思うのですが、いま私が申し上げたことも今後の問題としてぜひ十分にお考え願いたいと思います。  それから、次に、計画のことについて先ほど来いろいろと御質問がありましたが、ちょっと事務的なことになるかもしれませんが私もお尋ねしたいと思っておりますのは、まず、第一期計画についてお聞きしたいと思うのです。  この第一期計画の中で、「放送大学について」というわら半紙の文部省大学局でことしの一月におつくりになったものがあるが、この資料における第一期計画というものは、年次で言いますといつからいつがこの第一期計画になっておるのですか。
  126. 佐野文一郎

    佐野政府委員 私どもの現在目途としております日程では、五十七年四月から学生の受け入れを開始いたしたいということであります。したがって、五十七年四月に入学した学生が最短距離である四年で卒業するということになりますと、六十一年の三月が卒業の時期になります。いわばこの期間が第一期の計画期間ということに相なろうかと存じます。
  127. 久保等

    ○久保(等)委員 それと、さらに五十年の十二月におつくりになった例の「放送大学基本計画に関する報告」の中の三十六ページで言う「第一期事業完了時」というのはいつごろになるわけですか。
  128. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘基本計画が掲げております第一期の事業計画というのは、いま申し上げました「放送大学について」の方で具体計画として私どもが持っておりますものよりも広いわけでございます。東京のほかに名古屋、大阪の広域送信所を建てる。さらにこの基本計画では東北と四国について県別の送信所を建てるというところまでを第一期の計画としておりますから、われわれのいま考えておるものよりは非常に広い。  ただ、この基本計画の場合におきましても、第一期の計画をいつまでに完了するということは述べておりません。しかし、いま私が申し上げましたような形で、学生が入学してから卒業するまでの期間というものを第一期の計画と仮に考えるとすれば、同じようにこの計画期間は卒業生が出るまでの期間という意味においては四年ということが一つあるわけでございます。  しかし、そのことは、基本計画の場合に、この第一期計画を実現するにつきましても逐次県別の送信所を建てていくという考え方をとっておりますので、基本計画は私がいま申しました「放送大学について」の方の一期計画のように四年を計画年次とすることを決めておるものではない、基本計画ではこの一期計画完成年次というものを明示していない、ということであろうと思います。
  129. 久保等

    ○久保(等)委員 いわゆる青表紙の「基本計画」で言われる「第一期事業完了時」というものは、はっきりいつを指すかはまだ必ずしも明確でないようなお話なんです。これはもちろん全国的な規模においてやられる放送大学ですから、第一期事業そのものも当然期間が明確にならなければ——わら半紙でできておる方で東京スタートすることだけがある程度明確に言われておると思うのですが、そうすると全国的な規模は第一期計画そのものがまだはっきりしていないということになるじゃないですか。
  130. 佐野文一郎

    佐野政府委員 具体にこれから放送大学教育網を整備していく場合の第一期の計画として現在私どもが考えておりますのは、東京タワーから電波の届く範囲と、それから関東の周辺に一県別送信所を建てるという考え方でございます。それに続いて全国的に教育網を整備していく計画を立てなければならない。そのときに、基本計画が示している基本計画の方の第一期の事業計画規模、これがその次のステップの一つ目途となるということはわれわれも考えているわけであります。  基本計画の方は、先ほども申しましたように、われわれの計画、第一期計画よりも広い地域を前提としております。逐次情報網の整備ということを考えているわけでございますが、基本計画の方は、先ほども申しましたように、この第一期の事業計画教育情報の伝達網、つまり放送網整備については開校後四年間を目途に進めるということは言っております。それは私どもが考えている一期の計画考え方原則的には同じということでございます。
  131. 久保等

    ○久保(等)委員 だから、現実にやろうとする第一期計画のこの方を本当に四年間かかってやろうとするのなら、こっちの方は第二次計画なら第二次計画でもう少し中身がないと、いつから始まるかわからないというような形の第一期計画だったら大して意味がないですね。そうなってくると、「完成時最大規模」などといって左側の欄に書いてある問題になるとさらに漠然とした話ですね。そこらのところは少なくとも二十年も三十年も先の話じゃない、「第一期事業完了時最大規模」の中にはこの第一期計画そのものが入っているのじゃないかという感じも私はしておったんですが、計画がまだきわめて明確じゃないんですね。  それでは、このわら半紙の方の「第一期計画」が本当の意味の第一期計画で、それからこの青表紙の方の「第一期」というのはその後あたりに来るであろう期間における計画ということですか。
  132. 佐野文一郎

    佐野政府委員 けさほど来お答えを申し上げておりますように、「放送大学について」の方でお示しをしておりますところの、文部省が現在考えている第一期計画に引き続いてどのように全国放送大学教育網を張っていくかという、その計画については、この基本計画で取りまとめられました時点以後において、放送衛星の問題であるとか、そうした状況の変化がございます。また、一期計画実施状況を十分に見定める必要がありますから、現在の時点でいつまでにどのようなステップでということがなかなか申し上げにくいということをぜひ御理解を賜りたいということをお答えしているわけであります。  しかし、この点については、文教委員会においても、全国的にどのようなステップで教育網を広げていくのか、その計画をもう少し具体的に明らかにしろという御指摘がございます。これについてはできるだけ早くそれをお示しするように努力をするということをお答えいたしておりますので、私どもも、そうした委員会での御指摘趣旨に沿いまして現在鋭意検討をいたしているところであります。
  133. 久保等

    ○久保(等)委員 特に、この調査研究会議が五十年に出された「基本計画に関する報告」なのですから、その後もどんどん論議をして、計画を立てるところはどんどん具体的に計画を立てていくということをやってしかるべきじゃないかと思うのです。この報告書そのものもきわめて中身が大ざっぱで、しかも、いま局長の言われた放送衛星云々の問題は一応考慮の外に置いておるようですし、また、技術が将来どう発展するかなどというようなことまで考えたら計画は立ちませんよ。  少なくともそれ以外の問題について予想せられることはできるだけ具体的にしない限り、全国的な問題としての第一期計画そのものがそういった程度で、いつから始まるかわからないといったような漠然とした話では——このいわゆる第一期計画と称するものは、試験的にやる期間においてやり得る問題だと私は思うのです。だから、本格的にスタートするとするならば、やはり青表紙の方の第一期の事業計画がもう少し具体的にきちっと出されなければ、何か紙にかいたもちみたいな話になる可能性が多分にあると思うのですね。  私はそれを前提にして、さらに完成時についてもお尋ねしようと思っておるのですが、完成時は一体何年ぐらい先のことと考えておられるのですか。
  134. 佐野文一郎

    佐野政府委員 大変恐縮でございますが、これからの全国的な放送大学教育網をどのようなステップで広げていくかということは、もちろんそれが最終的に何年次を完成の目途とし、その時点放送で言えばどれだけのカバレージを持つかということをまさに明らかにする必要があるわけでございます。それを明らかにするについては、先ほど来申しておりますように、地上局にどこまでよるのか、あるいは放送衛星をどのように活用するのかということが検討されなければならないわけでございますし、そういう意味で、今日の時点では将来の計画について明確に申し上げることは非常に困難であるということでございます。  ただ、私どもは、放送大学のプロジェクトをスタートさせるということは、いわゆる「放送大学について」で示している第一期計画を完成させればそれで足りるなどとはもちろん毛頭思っておりません。第一期計画に続いて直ちに全国的に教育網を広げていく次の計画に入っていかなければならないということは十分に承知しております。
  135. 久保等

    ○久保(等)委員 どうもまことに不明確で、計画には値しないし、いまのところ構想にもならぬと私は思うのです。何年から始まるというところまでいかないにしても、大体何年ぐらいで、十年か十五年かあるいは二十年か知らぬですが、そういったことぐらいある程度積算をしながら計画というものはつくっていかなければならぬと思うので、こんなものは聞けば聞くほど幻のような話で、とりあえずとにかく東京タワーから出る電波ぐらいのところがほぼはっきりしているが、それ以外のものについては、何年かかってやるのか、いつから始まるのか全くわからぬ。  それで、いままた放送衛星の話をされたのですが、放送衛星放送衛星と言われますが、いま申し上げたようにこれは技術革新の問題ですから、そういった問題とは別にしても、たとえば送信所を二百カ所つくるなら二百カ所つくるとか、そのものも一体どの程度になるのかとか、そういうことをもう少し具体的によく調査をせられたり、もう少し研究をせられた計画をびしっと出す必要があると私は思うのですね。  それで、放送大学の特殊性といいますか、放送大学が特にねらっている趣旨は、大都会とかそういったところではなくて、むしろそういう教学の便に非常に恵まれない地域対象にしてやるのですから、そこらあたりのことについて非常にむずかしい問題はあろうけれども、そういったところに対して一体どういう施設をつくり、どういう方法でそういった方々に教育機会を与えていくかということがこの放送大学に課せられた特別な使命だと思うのですね。だから、それこそこんな第一期計画みたいなのは本来なくていいのです。だけれども、一つのモデルといいますか、一つの経験を積むという意味でやる必要はあるかもしれませんが、しかし、もしそれがあるとすれば、これはよほど先の全体的な構想がまとまった上でやったっていいのですよ。だから、そういう点では本当に計画らしい計画がないと私は判断せざるを得ないのですが、このことばかりやっておるわけにもまいりませんから、次へ移ります。  この報告書に言われておりますし、きのうもちょっとお尋ねしたのですが、施設専門委員会についてもまだ報告がまとまって報告される段階にはきていないというお話なんですが、きのうお聞きしたところ、この施設に関する専門委員会というのは、特に建物、建築物を中心にした施設という話を聞いて、私は、当然この中に通信部会あたりで検討されておる通信施設の問題、放送施設の問題等が含まれておるのだと思ったら、それは含まれておらない。しかし、それもまだ結論が出ていないというお話だったのですが、この五十年の報告が出た後、もうそれこそまるまる三年半ばかりになるわけですが、相変わらずこれ以上具体的な計画はないのですか。報告書といったようなものがまとまってはいないのですか。
  136. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この施設に関する専門委員会は、この調査研究会議に設けられておりますほかの二つの専門委員会教育専門委員会と組織運営専門委員会検討の結論を受けまして、放送大学の本部施設あるいは学習センター施設について具体的な設計作業に入るに当たって必要な諸条件を明らかにしようということで設けられたものでございます。  したがって、この専門委員会検討作業は、施設の専門的な知識、作業能力を有する者の協力が不可欠であり、そういうものとしてこの専門委員会を構成したわけでございますが、同時に、この専門委員会検討と並行しまして、専門の設計業者に委託をして、文部省としても本部施設、学習センター施設のモデル設計を行うということを進めてまいり、そして施設専門委員会に対する専門的な業者の協力の方策を考えたわけでございます。そういった方法によりまして、いわば施設専門委員会検討の結果を集約したものとしてのモデル設計が四十九年、五十年の両年度文部省予算をもって行われたわけでございます。五十年十二月にまとめられました基本計画におきましては、このような検討の成果を取り入れて、施設についての考え方が本部施設、地方センターの面積等において示されております。  ただ、御指摘のように報告の取りまとめの時点においては、前書きに記載しておりますように、後日施設専門委員会がさらに担当部分を報告に追加をするということが予定をされていたわけでありますけれども、この専門委員会検討の作業の進め方につきましては、以上のような事情がございますので予定を変更いたしまして、その後の検討文部省が引き継いだわけでございます。  文部省では引き続いて専門の業者に委託をいたしまして施設に関する検討を進めて、五十一年度には本部施設の敷地候補地についての地質調査を行い、さらに五十二年度には本部施設についての基本的設計を実施するというような形で専門委員会の作業を引き継ぎました。引き続き今後実施設計に着手するという段階に到達をしているわけでございます。  そういったことで、報告の前書きのところに書いてあるような施設専門委員会の設計についての検討の取りまとめというのは行われないで経過をしているわけでございます。
  137. 久保等

    ○久保(等)委員 だから、もう少し活発に積極的に準備、調査を中心にして一あるいはまた設計等の問題もあるでありましょうが、とにかく準備をもう少し全国的に積極的に進める必要があるのじゃないかと思うのですね。  東京からまずスタートして、東海道五十三次をとぼとぼ行くといったようなかっこうで、それで行き着く未来像は約八〇%程度だというようなことでは、先ほど来申し上げますように、放送大学という全く新しい放送の手段を使ってやる教育の学園としては、途中でどういうことになるのかわからぬけれども、恐らく当初の目的というものが十分に達せられないような結果に終わるのじゃないか。特に今日までやってまいった通信教育の経験といったようなものに顧みて考えてみましても、正式に授業料を払って学生になって、そして免許状を取る、学士号を取るということ自体も果たして一体どの程度の成果を上げ得るのか、私はきわめて疑問に思います。  通信教育関係をちょっと私は資料を出してもらって拝見したのですが、これはきわめて大ざっぱな資料ですけれども、とにかく、通信教育大学に在学しておりまする人たちは、これは四年制の大学で短期大学ではありませんが、昭和四十二年に六万四千百五十四名在学しておりましたが、卒業せられた方は同じ年度で二千二百四十一名、十年後の昭和五十年に在学者八万八千三十三名、そして卒業せられた方は千九百三十七名で、在学者に対する比率から言えば二%程度の卒業者というようなことになっておるのですが、こういったようなこと等を考えてみますと、放送大学で実際に学士号を取る人たちが一体果たして何人いるだろうかというようなことについても疑問なしとしないわけなんですね。  世論調査をやって四五・五%まで希望者があるというようなデータが何か出たようにも聞いておりますけれども、あの調査そのものがどの程度調査せられたのかよくわかりませんけれども、とにかくそういった実態といいますか、予想についてもう少し精密な調査をするなり研究をするなりやられる必要があるのじゃないかと思うのですが、そういう点でも大変私は危惧を感じます。時間がございませんからその点の答弁は要りませんが、とにかくもう少し積極的に準備を進めていって、もう少しはっきりした計画をぜひひとつ早急に立てられるように要望しておきたいと思うのです。  次に、郵政省の方にお尋ねしたいと思うのですが、先ほどもちょっと触れましたけれども、重要な放送法第一条に言われる不偏不党、それから四十四条三項に言われる政治的公平、それと教育における学問、研究の自由、こういった問題がもし相入れないというような問題が出たときに、これの調整というものは一体どこがやるのですか。どういうふうにして調整を期待しておるのですか。
  138. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送法は、放送事業者に対しまして番組編集の自由を保障いたしますとともに、放送事業者の自主規律によって番組内容の適正化を図るために、番組審議会の設置であるとか番組基準の作成等を義務づけてまいったわけでありますが、ただいま先生がお示しのように、学園におきましては、学問の自由をより高度に保障する見地から、法律による義務づけよりも大学の自主規律にまつことが適当であると判断をしたわけでございます。  また、政治的公平の確保等の瀞組準則につきましても、放送大学学園放送といえども他のNHK、民放等とのバランスを考慮いたしまして、これを適用することが適当と判断したわけでございます。  ただいま先生が御指摘になりました学問の自由と放送法の整合の問題につきましては以上のような法制上の措置はしたわけでございますけれども、結局、やはり、基本的には大学の権威に裏づけられた自主規律にまつと言わざるを得ないわけでございまして、学園なりあるいは学園が設置をいたします大学、あるいは番組制作に当たりまして、お聞きしておるところによりますと大学の方々と放送人とが番組制作をやられるようでございますが、そういった段階におきまして、この放送法の精神を十二分に体されまして運用をしていただきたいというふうに考えております。
  139. 久保等

    ○久保(等)委員 それから、番組の編集責任は免許主体である学園にあるのだと思うのですが、番組制作は、これは大学で制作をすることになりますか。
  140. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおり、放送番組の編集についての最終責任は放送事業者である学園の側にございます。しかし、その番組が、この大学の場合には、いわば大学教育内容そのものとしてつくられていくところに非常にむずかしさがございます。  そこで、その内容については、まず大学の側でどのようなカリキュラムのもとにどのような授業科目を開設をし、それについてどのような放送教材を準備するかということを検討して具体の作業に入ってまいります。その放送教材作成の過程というのは、まず放送大学側の教官が複数協力をしてチームをつくり、そこで十分な議論をして、大学側としての放送による教育内容を固めていく、それを今度は番組につくっていく段階において、その大学側のチームにプロデューサー、ディレクターというような放送側のスタッフが参加をし、十分な協議を経てそれを放送台本に仕上げ、テープに固定をして番組として送り出す、そういう過程を実際には踏むことになると考えるわけであります。  そういう作業を通じて、いわば大学側は放送法四十四条三項というものに十分に留意をする、放送側のスタッフは大学の側における教授の自由というものについて十分な配慮をする、そういった両者の調整というものがそうしたコースチームの活用を通じて図られていく、そのことによって全体として大学教育のための放送というものが期待にこたえたものとなるという、そのことをわれわれは念願をしますし、またそれを可能にするために、この学園の場合には、放送大学大学設置主体と放送局設置主体とを同一主体をもって考えるということを構想しているわけであります。
  141. 久保等

    ○久保(等)委員 この場合においても、学園と大学との関係において編集の最終責任はもちろんその学園にあるにいたしましても、実際に放送番組をつくる立場は大学が中心になってつくるということになってまいりますと、またそこにもいろいろ意見の不一致といったような問題が出ると思うのですね。これも結論的には良識にまたざるを得ないということになるのでありましょうが、とにかくそういった面でもいろいろとむずかしい問題があろうかと思います。  これも非常に重要な問題として、それこそ学問の自由そのものが侵されることのないように、先ほども申し上げたような人事その他で危惧される問題があるわけでありますが、ぜひ大学本来の使命が達成せられるような運営を重々考えてまいらなければならぬと思いますし、その点を強く指摘をしておきたいと思うのです。  それから、特に今回こうした放送大学ができることによって、従来からあります公共放送でありますNHKとの関係というものはきわめてむずかしい問題が出てまいると私は思います。また微妙な問題も出てまいると思うのですが、そういう点で法律の中にそういった面についてもう少し具体的にきちっとした規定をつくらなければならぬと私は思っております。  放送法に「第二章の二」といったような形で学園をただ一章一条だけ挿入をしているのですが、法体系としてもまことにぶざまな姿ですし、同時に、NHKに対しては影響を及ぼさない、民間放送にも影響を及ぼさないと、まあほとんど影響を及ぼさないんだということを前提にしておりますけれども、これは私が指摘するまでもなくもう大変な影響を及ぼしてまいると思うのです。受信料の問題一つをとってみましてももちろんそうでありますし、またそれ以外に教育放送との関連においてその限界が非常に不分明だといいますか、同じようなことを民間もやるし、NHKもやる、放送大学もやるんだというような多々ますます弁ずるといったような論理では解決しない重要な問題があると私は思うのです。ですから、その分野というものはできるだけそれぞれの特性を生かして、同じ教育あるいはまた教養をやるにしても、やはり限界というものはお互いにきちっとしておかなければならぬと思うのです。法律をつくる場合にはなおさらのことだと思うのですが、そういう配慮が協会の条文については全然触れておらないわけなんです。  私がいま申し上げたように、とにかく教育放送、それからNHKの受信料、こういったような問題については、かつて臨時放送関係法制調査会のときにこの受信料の問題についてももう少し明確に規定しようということで法改正まで準備されたこともあったのですが、こういう機会に、NHKの問題についても、既存のNHKと既存の民放、それと今度新しくできるこの放送大学学園の、この三者について、それぞれの関係についても当然明確に規定すべきだと私は思うのです。ただ学園を一つつくります、したがって「第二章の二」として、本質的には第三章になるのでしょうが、そういう形で一章だけ設けて、あちこち拾ってきて協会関係の条文を準用するという、こういうことはいかにもこそくな方法で、したがって全体の体系として見るとまことにぶざまな体系である。  こういったことについて、郵政省は一体どう考えてこういう形になっているのですか。
  142. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  先生も御承知のように、臨放調の答申の中の、今後のテレビジョン放送における教育機能というものの重要性がますます大きくなるであろうということと、そのために、周波数の確保でございますとか、あるいは従来の経験によりまして営業的なスポンサーをもとにいたしましたようなものではだめだというような答申を踏まえまして、郵政省といたしましては、国立放送の是非、あるいはいろいろな形態の教育放送考えてまいったわけでございます。  一方、文部省郵政省が共管で発足をいたしました後におきましても、文部省サイドで外部の有識者の声を聞かれるような委員会をつくられまして、郵政省といたしましては大学教育放送手段で行うという趣旨に賛同したわけでございますが、しかしながら郵政省といたしましてどうしても譲るわけにいかない放送法制上の問題点あるいは電波法制上の問題点がございまして、そういった問題点につきましてはこの十年間に細大漏らさず要請説明等をいたしまして、その結果が現在の法案になったわけでございますが、法案を作成いたしますときに、ただいま先生から御指摘がございましたようなNHKはもとより民放等、そういう既存の放送事業者に与える影響を最小限にする可能性の有無というのが一つ大きな命題になったことは当然でございます。  また、一方、放送をもって大学教育を行うという限りにおきましては、大学の自治あるいは学問の自由という観点からどのような規制が必要かということも一つの大きな問題点であったわけでございまして、その両者の調和が図れるかどうかということが非常に大きな問題であったわけでございますけれども、結果的には調和が図り得るという結論に達したわけでございます。その結果、先ほど申しましたような、いわゆる現在のNHKと民放とが併存しておるという放送体制に与える影響がきわめて少ない法案としてただいま御審議をいただいております学園法ができ上がったわけでございまして、そういった意味におきましては、お言葉を返すようでございますけれども、現在の法体制のもとにおける訂正、修正というような可能性を私たちは追求し得たというふうに考えておるわけでございます。  御指摘にございますように、なるほど、今後の運用のいかんによりましては、長年の懸案でございます全体の電波法放送法改正に結びつくような問題が出てこないとは限らぬわけでございまして、私たちといたしましては当然省を挙げてその方向検討をすでに行ってきておるという状況でございます。
  143. 久保等

    ○久保(等)委員 時間がないので非常に質問がしにくいのですが、答弁もおのずから簡単に答弁ができないほどこれは非常に重要な問題でありますから、時間もかかるわけなんです。  特に、電波監理局長のお話を聞いておりますと、今回の大学放送というものはとにかく大学教育だけに限るのだというようなことで、非常に限定的なことを言っておられるのですけれども、しかし、教育番組ということになりますと、これは当然学校教育または社会教育といったことが含まれることになると私は思うのですが、そうでしょうね。
  144. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  現在NHK及び民放が行っております教育放送は、まさに先生がおっしゃいましたような学校向けの放送でございますとかあるいは社会教育でございますとか、そういったものが主体でございます。  なお、学園が行いますものは、たとえばNHKが幼稚園から大学までという非常に広い層を相手にいたしまして番組編集をいたしておりますのに対しまして大学教育に徹する、こういう形でございます。
  145. 久保等

    ○久保(等)委員 その大学教育なんですが、大学教育の中に、いま申し上げたように学校教育並びに社会教育というものが当然含まれるのでしょうねと私はお尋ねしているのです。イエスかノーか、簡単にひとつお答え願いたいと思います。
  146. 平野正雄

    平野政府委員 学園におきましては、放送大学教育のために必要な番組、いわゆる大学教育だけでございます。  NHKにおきましては、大学教育放送番組と社会教育番組と教養番組といったものが混在しておるということでございます。
  147. 久保等

    ○久保(等)委員 しかし、そういうややっこしい答弁をせられなくても、放送法の第二条に教育番組についての定義が明確に規定されております。「「教育番組」とは、学校教育又は社会教育のための放送放送番組をいう。」ということになっておるのですから、当然大学放送教育番組を組まれるわけですが、その教育番組の中にはいま言う学校教育関係とそれから社会教育といったものが含まれる。この第二条が適用せられる限りにおいてはそれは当然のことだと思うのです。  したがって、私のお尋ねしていることに対して一体そういったことが言えるのかどうか、明確にしておいてもらいたいと思います。
  148. 平野正雄

    平野政府委員 学園法の二十条の「業務」でございますけれども、「学園は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。」として、「一 放送等により教育を行う大学設置すること。」「二 前号の大学における教育に必要な放送を行うこと。」「三 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。」と、要するに大学教育のための放送に徹する、限定をするということを明定しておるわけでございます。
  149. 久保等

    ○久保(等)委員 ですが、法律を適用しないというなら別ですけれども、放送法そのものを適用する。一条から、少なくとも「総則」そのものはこれは当然適用されるわけであります。  私がいま申し上げている点は、時間がありませんからここでいろいろやりとりができないのははなはだ残念なんですけれども、しかし、こういった問題を明確にしておかなければ、法律をつくってスタートしたって大変ですよ。とにかく法律第二条は、教育番組というものはこういうものなんだと明確に言っているのですから、これに基づいてやることに対して後から違法だとか適当でないとか言うことは許されないと思うのですね。だから、非常に重要な問題ですから、単にここの答弁だけを何とか抽象的な言葉で終わっていいという性格のものじゃないと私は思うのですね。ここらあたりのところはきちっとしておいてもらいたいと思うのです。実は、これは最大の問題であります。  今度の学園、放送大学というものが一体二本立て体系なのか三本立て体系なのか、これらの問題も、とにかくけさあたりからの御答弁では三本立てみたいな答弁なんだけれども、しかし、これも本会議における白浜郵政大臣の答弁では二本立てだという答弁になっておる。だから、もし三本立てということならば、あの本会議における答弁は適当でなかったということも当委員会できちっと明確にしておいてもらわないと、本会議の答弁は本会議、委員会の答弁は委員会の答弁ということでは重大な問題ですから、ぜひひとつここらは——時間が来ておるから私もやめたいのですが、しかし大変な問題だし、これは後の方はいま私が質問している問題とはちょっと変わってさっきの問題を申し上げたわけですから、前段の問題についてひとつ明確にお答え願いたいと思うのです。
  150. 平野正雄

    平野政府委員 教育放送内容についての御質問に対するお答えを先に申し上げたいと思います。  ただいまお示しになりました問題に対しまして、まず、学園法におきましては学園が行います大学教育のための放送に限定するということが明定してあるわけでございます。  一方、教育放送という定義の中には若干それを広げたような表現になっておりますけれども、実は、免許に当たりましては、先生も御承知のように、電波法放送法に基づきます、いわゆる放送局開設の根本基準に従った免許の審査をするわけでございます。  免許の審査に当たりましては、これまた御承知のように、教育、教養、報道、娯楽というもののパーセンテージといったものを審査の対象にいたしまして、そして結果的には、教育番組、教養番組につきましてはそれぞれ放送番組の比率をNHK等に示していることは先生も御承知のとおりでございます。  学園から申請が出てまいりましたときには当然電波法令に従いまして厳重な審査をいたします。その段階におきまして、学園法に明定されております大学教育に限定した形における教育番組を免許の対象にいたしたいと考えておるわけでございますが、先生の御心配の点はよくわかりましたので、その点につきましては法運用上現行の中で十分に処理ができるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  151. 久保等

    ○久保(等)委員 結局法律全体の体系というものを再検討しないからそういう矛盾が出てくるのですよ。それなら第二条の第五号は適用しないとかというふうにして、いま言ったようなことをきちっと学園の章の中で規定しておけばいいのです。  しかし、少なくとも「第一章総則」はとにかく三つの系統全部に適用されるわけですし、そしてその中で、「「教育番組」とは、学校教育又は社会教育のための放送番組をいう。」というのですから、社会教育は当然入るのだといって免許を出されてきたときに、いや電波法ではそうなっていると言ったって、片方ではそうなっていません。法律そのものに非常に整合性がなくなってくるわけです。放送大学の問題については、とにかく何か局部的にだけを手直しする程度ではどうしても無理が出てくるのですよ。「「教育番組」とは」の定義から言って、明らかにこれを除外する理由はないのです。電波法の方でもってそういったものは許可するときにはねるのだと言ってみたって、放送法で明確に規定されている。放送法が規定しているものを行政裁量でもって適当に制約を加えることはできないと私は思うのです。とにかく、この問題はひとつ十分に研究を願うことにして、時間がないので私は質問を終わります。  同時に、あと、二本立てか三本立てかの問題も本質に触れる大変な問題ですが、時間がありませんのでその点も私はここでの質疑は打ち切りますが、特に文教委員長なり逓信委員長お願いしておきたいと思うのは、この放送法改正問題については、けさほどから言われるように、まず昭和三十七年に例の臨法調というものができ、そして足かけ三年かかって答申が出され、それに基づいて法改正が国会に出されたが、そういう経過等を踏まえて考えますと、調査会というものを設けてそういった長い歴史があるのですが、しかも途中で立ち消えになったようなかっこうで本来改正すべき問題までが放置されたままに来ておって、そして今回放送法の大改正の問題が出てきたわけです。したがって、そういう問題を含めて、調査会等でもって十分に議論をして煮つめてまいらなければなかなか結論の出ない問題だと思うのです。  そういう意味で、今回こういう形で附則の中に出されてきたなんということはまことに言語道断だと実は思っております。したがって、二年くらいかけていま申し上げたような問題について徹底的に議論を願う。そして、そのことを通じて国民一般にいろいろ御意見を出していただく。それこそ閉ざされた郵政省の内部で委員会をつくって議論をしてみたって、あるいは文部省の当局の方々と相談をしてみても、国民サイドから見れば密室の中での協議にすぎないと思う。特に、国会でわれわれ自体が逓信委員会でもってずっと小委員会を持っておりますが、その小委員会の中に新しいこういう放送体系が今度できますよといって報告されたことは一遍もない。そういう状態で、しかも今度は文教委員会と連合審査をしてくださいと、こんなばかな法案の扱い方はまことに軽率きわまると私は思っているのです。  そういう意味で、この委員会でなお審議を継続するとするならば、せめて参考人を呼ぶなり——公聴会といっても無理かもしれませんが、参考人を呼ぶなり公聴会なんかを開いて、放送法改正問題に関する専門家、学識経験者等の御意見を拝聴する機会をつくっていただくように文教委員長並びに逓信委員長お願いをし、理事会等でぜひ御検討願いたいと思います。  大変時間を超過しましたことをおわびして、私の質問を終わります。
  152. 石野久男

    ○石野委員長 竹内勝彦君。
  153. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 最初にこの放送大学議論になり出してから、その背景というものは非常に古いものがございます。たとえばNHKの元会長であられた前田義徳さん等がこの放送大学に非常に関心を持って、放送を通じての大学教育ということでアイデアを出され、検討をし、そして文部大臣あるいは郵政大臣といったところにおきまして、双方の機関を設けて放送大学の設立を積極的に進めてきたわけでございますけれども、私は論議を進めるに当たりまして、特にその中におきまして放送部門という問題がいろいろと流動的になってきておりますので、そういった面も含めて、最初に概略経過を御説明いただきたいと思います。
  154. 佐野文一郎

    佐野政府委員 昭和四十四年十月の閣議に文部、郵政両大臣放送大学検討を始めるということについて報告を行いましてから、放送大学構想検討が始められたわけでございます。そして、四十四年の十一月に放送大学問題懇談会という調査会が設けられまして、「大学教育を受ける機会国民各層に提供するための放送大学を積極的に推進すべきである」という意見書を文部、郵政両大臣提出しております。続いて、四十五年の七月に放送大学準備調査会が、放送大学目的教育方法あるいは教育内容等、放送大学構想を示す「放送大学の設立について」という報告をお出しになっております。  率直に申しまして、この段階までは、放送大学ということではございますけれども、どちらかというと社会教育にかなり配意をされた放送検討が進められていたわけでございますが、それがその次の放送大学設置に関する調査研究会議からは、放送大学を果たして正規の大学として構想することができるかということについて、主として大学人がメンバーとなって積極的な検討を開始いたしました。もちろん放送関係の方々にもお入りをいただいて議論が進められ、四十九母の三月に基本的な放送大学構想である「放送大学の基本構想」というものが取りまとめられております。さらに、その基本構想具体化するために放送大学創設準備に関する調査研究会議というのが大学人その他多くの学識経験者によって組織されまして検討が進められた結果、五十年の十二月に「放送大学基本計画に関する報告」というものが取りまとめられたわけでございます。  この間に放送の主体をどのように考えるかという議論が行われまして、四十九年の「放送大学の基本構想」の段階において、放送大学構想を進める場合には大学設置主体と放送局設置主体とを一つの主体にする方がよろしい、そういう意味において放送法制との問題ということを考え設置主体は特殊法人とすると、そういう方向が示されたということでございます。
  155. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、NHKにお伺いさせていただきます。  この放送大学の実験放送という形がNHKあるいはその他の民放におきましても行われてまいりました。そしていろいろと煮詰まっていく段階の中で、特に放送主体を一体どういうような形に持っていったならばよいように考えておったのか、同時に、また、いままでのNHKの実験結果としてどういうような評価としてのまとめをされたのか、これも国民にわかりやすいように御説明をいただきたいと思います。
  156. 堀四志男

    ○堀参考人 NHK文部省の依頼を受けまして、御承知のように、四十六年度から四十九年度の四年間にわたりまして、およそ三億円をやや超える金額を受領いたしましてこの種の実験番組の制作かつその評価を研究したわけでございます。  主として番組をつくって、それをどのくらいの長さで放送したらいいか、あるいは放送者と講義を受ける人との関係はどうあるべきか、放送の時間はどうあるべきか等いろいろ研究したわけで、いわば放送をいかに効果的にすべきかという点を主眼に研究をいたしました。  そして、その結論を大ざっぱに申し上げますと、放送利用しての大学教育の中で、放送という面においてはきわめて興味のある、視聴者の関心を呼ぶような、放送としてきわめて密度の高いものを流すのが一番よろしい、その時間は大体四十五分ぐらいが適当だろうということに大ざっぱな結論が出たわけでございます。もちろん、学科の種類によりあるいはその他により若干の相違はございますが、大略そのようなものでございました。  なお、一番最初にお尋ねになりました放送主体については、われわれは確かに放送大学に対して積極的な関心を当初示したわけでございますが、その際放送面を受け持つ用意があるという点を積極的に述べたわけでございまして、放送を含めて大学ということについては言及を避けていたわけでございます。ところが、先ほど文部省側からお話がありましたように、放送主体とそして大学が一本であるべきだという調査結果が報告された段階で、私たちはかなり消極的にならざるを得なくなった情勢がございます。
  157. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまの放送部門でございますが、いままで一応公共放送としてNHKがやってきておりますけれども、国民の一人として放送大学で学んでいく人は、大学学生として受けていく人は、電波がどこから流れてこようとも、大学自体で放送局をつくって流れてこようとも、あるいはNHKのいままでの経験というものを生かして流れてこようとも、何ら関係のないことでございます。そういう意味も含めて、ましてやいままでのNHKとしての技術、資料の面あるいはモニター制度等いろいろなものを含めても、いままでのものを利用しないということ自体にはいろいろと疑念というものを私も持っております。  これは今後の論議でどういうふうになっていくかわかりませんけれども、その放送部門というものを、本来NHKの方が積極的に参加していきたいというものをこの経過の中で事実上一応見送ってきたという事態になった理由というものを、こういった根本原因があるからこそこれは放送大学そのものでやっていかなければならないのだということを郵政省から御説明いただきたいと思います。
  158. 平野正雄

    平野政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど先生が申されましたところの、NHK側がみずから放送大学にかわる放送をやる意思があるというような発言をされた後におきまして、果たしてそれがNHKのやれるところであるかどうかという反省がNHKの中にも多分あったんではないかというふうに私は実は思うわけでございます。たとえばNHK放送大学構想をみずから実施いたしますためには、放送法上の番組編集権と免許主体の原則的一致の考え方からいたしまして、NHKが正規の大学である放送大学設置して運用することができるかどうかという問題があるわけでございまして、現行の放送法におきましては、NHKが受信料収入によって教育、教養、報道、娯楽の総合的な放送全国あまねく行いますことをその目的といたしておりますので、NHKが正規の大学設置し、これを運用することはこの目的から外れておるという考え方一つございます。  それでは、その放送大学、いわゆる外の放送大学の番組の提供を受けてと申しますか、外の放送大学の番組をNHKの施設で流していくという方法も考えられるかと思いますけれども、この方法は先生も御承知のように放送局放送事業者の基本的な重要な立場といたしまして、番組編集権の自律性といいますかの問題があるわけでありまして、したがって、外からの提供の番組でございましょうとも、NHK放送する限りにおきましてはNHKの番組編棄権に属してしまう、そういうことに相なりますと、もともと番組を制作いたしました外の放送大学では学問の自由、大学の自治というものが保たれ得ない、と、そのようないろいろな検討があったのではなかろうかと、これは私の想像でございます。  一方、このような検討は、先ほど文部省の方から申されておりますような学識経験者の先生たちとの間では検討がなされたように私は承知をしております。
  159. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 先ほどNHKの御答弁の中では、こういったものを放送部門というものに分けていったならばということで積極的に考えておった。ところがこれは全く同じ立場で、その放送主体の中でということで——これはもういままでの論議のとおり、放送法の問題とそれから学問の自由または大学の自治というものがいろいろな面でぶち当たっていく。矛盾の問題が幾つも出てくるのは当然のことでございます。同じように、それは放送には変わりないわけでございますから、大学の中でそれを幾ら一つのものとしてやったとしたって、一たび国民の電波を使って放送として流していくからには、当然これは放送でございます。そういう意味から、この放送法というものにどこまで歩み寄っていくかということが大事になってくるわけでございますので、私は、いまの郵政省の御答弁では納得できません。  なぜこれだけの莫大な金額を使って、しかもなおNHKとまた別にパラレルにそれをつくっていかなければならないのかという問題がある。ましてや、この前も論議がございましたけれども、今後放送衛星ができていき、放送衛星ができていくまでに二百も送信所をつくっていかなければならない。これまた莫大なものでございます。では、その放送衛星ができた後においては、そのつくった送信所というものは一体どうなっていくのか。ましてや毎年多くの金額が使われて、そしてNHKは受信料不払いの問題があり、この前五十一年に受信料値上げをした中でなおかつ赤字という、そういう中に出てきていることを一体考慮に入れておるのかどうか。ましてや、教育テレビにおきましてNHKが長年やってきておるそれとの競合の面が幾つものものが出てくるわけでございますけれども、いまの状態ではそういうように思えますというような回答ではちょっと納得できかねますので、大臣、その辺はどういうように考えているのか、もう一度御答弁ください。
  160. 平野正雄

    平野政府委員 先ほどのお尋ねの趣旨が、NHKがそのような主張をしておりながら途中で動いていったといいますか、そういった主張を中止した理由は那辺にあると思うかというようなお尋ねかと思いまして、私は「と思う」という発言をしたわけでございますけれども、郵政省といたしましても、現行の放送法令の中ではNHKがみずから放送大学を建設し運営をしていくことも、法九条一項、二項の面から言いましても適当だとは思っておりませんし、また、いわゆるNHK放送用の機器を他人の用に供するということはできないわけでございますし、さらには、番組の提供を受けて、NHKがみずからの放送として、編集した放送として流していく場合には番組を供給した大学の自治が保たれない、学問の自由、大学の自治が保たれがたいというふうに郵政省としては考えておるわけでございます。
  161. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この問題はちょっとまた後にさせていただきますが、重要な問題でございますので……。  次の関連といたしまして、御承知のように放送法第四十四条の三項に幾つものものが掲げられております。国内放送放送番組の編集に当たってはこういった面によらなければならないということで、「政治的に公平であること。」とか、あるいは「報道は事実をまげないですること。」とか、あるいは「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」というようなことがございます。これは当然のことでございます。  ですが、この教育という面で、大学教育となってきますと当然高度な教育であり、ましてや学士号を与えていくわけで、そういう意味におきまして、その高度な教育の中で、社会科学系統の中で出てくる問題は政治的な問題でございます。どうしてもそこでぶち当たっていく問題は、たとえば憲法の問題であるとか、自衛隊の問題であるとか、天皇制の問題であるとか、現在問題になっておる元号の問題であるとか、そのほか学説が対立しておる問題とか、こういったものに対して、これをいろいろな角度からというように、ただ単にこの問題でその放送をしていったときに、おのずとそこには客観的状況によって当然変わってくるものがございます。たとえばそのときがちょうど選挙であるというようなときに、選挙前と選挙後では大きな差になってまいります。これはその放送を有利に、たとえば右の方の考え方を選挙前に流し、左の方の考え方を選挙後に流したとなれば、これはたとえいろいろな角度から流したとしても大きな問題となることは当然でございます。  そういった意味で、学問の自由というものは当然守っていかなければならないし、また、大学の自治というものは当然守っていかなかったならば大学の存在価値というものはなくなってきますけれども、しかし、一たび放送となったならばそういった面にぶち当たるという問題をどう乗り越えていくつもりなのか。まず、文部大臣にお伺いしたいと思います。
  162. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の点は、放送大学というものを取り進めていく場合の最も重要な問題点の一つであると認識をいたしております。  四十四条三項の規定というのは、御指摘のように放送大学がその授業を放送をもって行うものである限り、大学の教授活動に対する一つの制約として働くということがございましても、やはり全面的に適用があってしかるべきものと考えているわけでございます。  四十四条三項の適用がございましても、多くの意見の対立する問題については、その論点を公正に提示しながら講師が自分の学問的な見解を公正な範囲のもとに述べるということは、これは禁じられていない、許されていることであるというように考えますし、その限りにおいては大学の教授の自由というものは維持できるものと思います。  政治的な公平という点は、それに重ねてさらにむずかしい問題を生ずるわけでございますが、これについても、大学はみずからの問題として自制をするということによってその大学における教授の自由を守っていくということは十分に可能であると考えております。また、それを十分認識しながら、放送大学の場合には、放送側のスタッフと大学側のスタッフとの十分な論議、共同作業を経て放送番組がつくられていく過程をどうしても整えていく必要があると考えております。
  163. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、この放送法第四条に、「その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあった日から二週間以内に請求があったときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消の放送をしなければならない。」とございますが、これに対してはどういう見解をお持ちですか。
  164. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の点については、むしろ放送法の問題として郵政省の方でさらに正しく御説明申し上げるのがしかるべきであると思いますけれども、文部省として理解しているところについて申し上げれば、放送法四条の規定は放送事業者に御指摘の義務を課したものでございますから、形式的に言えば真実でないかどうかの調査は放送事業者としての放送大学学園が行う、そして調査の結果真実でないかどうかの判定も放送大学学園の判断によって行うことになると一応解されるわけであります。  しかしながら、調査の対象となる事項にかかる放送大学の授業としての実質を有するものでございますから、この点に留意をいたしますと、放送局の側においては大学側と密接な連携を保って、実際上大学の側において調査判定を行い、これを放送局の側において尊重するという、そういうシステムがつくられることが望ましいと考えます。  放送大学放送事業者としての放送大学学園設置する機関でございますから、そういう観点からすればこのようなシステムをとりましても四条の趣旨に反するものではない、それによって四条の規定にこたえながら大学の教授の自由というものを考える、大学の自治の立場というものを守っていくことができる、そのように考えております。
  165. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 調査をする人、そしてまた判断をする人、これが同じようにまた放送を流した人が、その者が調査をして、これが何になるのですか。判断してどうなるのですか。  こういったものが出てきたという場合は、民主主義の考え方からいったならば、第三者の機関が判断しなかったならば、それが何をもって判断の基準とするのですか。答えてください。
  166. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘をされているそういう問題というのは、いまも申し上げましたように、大学教育内容について、まさにそのものについての批判であり、指摘であるわけであります。  それを受けとめて、それについてどのように判断をしどのように対処するかということは、これはまさに大学が自分の自治の問題として受けとめていかなければならない。それは基本的なことではなかろうかと私は思います。
  167. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それはちょっと認識の不足じゃないかと思います。  やはり、放送によって権利の侵害を受けた人、これはいろいろな状況考えられます。これはもう言葉上の問題そのものでもそうです。たとえば使ってはならないような言葉がございます。体の欠陥を言うような言葉あるいは汚い言葉等いろいろあります。もちろんそういったものはちゃんときちっと事前におきましてそのチェックはしていくでございましょうけれども、この長い放送の中にあってたとえばその学説と——まあ、学問の自由でございますからいろいろな言い方がございますが、あたかもその学説と反対のような学説を流したような場合には、その学説を書いた人は、たとえばいままで本が売れていたが今度はそういった本の売れ行きがとまってきたというようなことだって当然考えられる結果になるわけなんです。  ですから、これはあくまでも述べたそのものだけのものではなくて、客観的にいろいろな影響が出てくるということを考えなければなりませんが、どうお考えですか。
  168. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送法の問題でございますから私からお答えするのは余り適切ではなかろうと思いますけれども、大学教育の問題について考えていかなければならない文部省といたしましては、いまのような御指摘の点を含めまして、放送大学教育内容というものは放送大学が責任を持って、その教学組織を挙げて作成をしていくものであると考えております。  御指摘があった場合に、大学が自分の中にどのような判定をしチェックをするための機関をつくるかということは、これは大学の判断の問題であり、そのことは、その指摘を受けた授業科目にかかる番組の制作を担当したコースチームの教員以外の教員によって判断されるということは当然のことでございましょうけれども、まず第一義的には大学側が教学の責任において事に対処をする、そして放送局の側においてそれを尊重した処理が行われていくということが望ましいということを私どもは考えるわけでございます。
  169. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 郵政省にお伺いします。  本来、NHKにしましてもあるいは民放にしましてもそうでございますが、放送番組審議会あるいは放送番組向上協議会というようなものを設けて番組の内容検討するものがございます。これは御承知のとおりでございますが、今回こういったものがわざわざ特に抜けております。  こういうものを抜いたその状況の中にあって、郵政省は、この放送大学学園法案について、いまの問題でございますが、一体どういうお考えでございますか。
  170. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  現行の放送法におきましては、自主規制の実を上げ放送番組の適正化を図る見地から、放送事業者に対しまして、お示しの番組審議会の設置を義務づけまして、番組審議会から愚見具申がなされた場合にはこれを尊重して必要な措置をとるということを義務づけております。  学園の放送につきましては、放送大学における教育に必要な放送でございまして、大学の講義としての性格を有するものでございますから、学外者の声に基づいて学園の放送について具体的な措置をとらせることは大学の学問の自由を高度に保障する立場から好ましくないであろう、むしろ、審議会を設置して行う番組自主規制の方策をとるよりも、学問の自由を保障する見地から、大学の権威に裏づけられたいわゆる自律規制に期待することの方が好ましいのではないかというようなことを考え合わせました結果、放送大学学園に対しましては番組審議会の設置義務を課さないことにいたしたわけでございます。  もちろん、重要な問題を含んでおりますので、実際の運用に当たりましては、学園はこの立法の趣旨を十二分に体されまして、放送法の精神にもとることのないように対処されることが望ましいというふうに存じております。
  171. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私は、大学におきまして学問の自由あるいは大学の自治を守らなくてよいというようなことを言っておるのではないのです。  今後、放送衛星が打ち上げられて全国あまねく放送ができるようになってくれば義スイッチをひねればだれでもこの放送大学の講義というものは聞けるわけなんです。したがいまして、これは無差別に不特定多数の人に放送として直接飛び込んでくるわけです。したがって、学問を学んでいく人の自由は当然ございますが、国民の自由がございます。いま私は第三者の例を挙げましたが、国民がそれによって第三者のようなそういう被害が出てきたときに、一体どこで歯どめができるのですか。その意味から言ったならば、この放送法と学問の自由は真っ向からぶち当たってくるのは当然なんです。ですから、放送にすべてを頼っていこうということ自体に問題が出てきます。もちろんスクーリングであるとかあるいは個人教授という形で通信という問題が出てまいりますが、私は、そこの兼ね合いでこれを乗り越えていかなければならないと考えております。  これはあくまでも放送で、どこまでも学問の自由を守りながら、そして放送法もちゃんと調和をとってというような、そんななまやさしい形でいくわけがございません。その点を一体今後どういうふうにしていくのか、文部省考えていますか。
  172. 佐野文一郎

    佐野政府委員 番組審議会を設けなかった趣旨はいま郵政省からお答えを申し上げたとおりでございますけれども、御指摘のとおり、そのことは放送大学がその放送内容に対する批判にこたえなくてもいいということでは毛頭ございません。  むしろ、国民の番組に対する批判、ことに学生の番組に対する意見というものを積極的に受けとめて放送大学教育内容を向上させていく努力が大学によって行われなければならない。その努力というのは、郵政省お答えになりましたように、大学大学の責任において行わなければならないことでございます。大学の中にそのために必要な委員会あるいはその他の機構が大学の判断によって設けられていかなければならないということは、これは容易に考えられることであり、大学はまた当然そのように対応をすると思います。  なお、学園の方に運営審議会がございます。この運営審議会は、広範な学識経験者から学園の公正な運営を確保するために御意見を賜る機構でございます。この運営審議会はもちろん番組審議会にかわる機関ではございませんけれども、その性質上、運営審議会において国民の声を受けとめて御議論が行われるということは、これはあり得ることであり、ある意味ではそれは望ましいことだと私は思います。  しかし、それにしても、先ほど来申し上げておりますように、放送される内容大学教育内容であるということに十分に留意をされて、そして大学側に対して慎重な配慮のもとに運営審議会の意見が伝えられる、そういう配慮を理事長においてなさるべきもの、そのように考えております。
  173. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 大学の中でどんなにいろいろな機関を設けても、それは大学考え方というものがどうしても強いものになってきてしまって、これはやはり第三者というものが入ってこなければなりませんし、またこれは別個のもので、わざわざこの放送法の中におきましても、四十四条の二あるいは四十四条の三で番組審議会というものを設けておるわけでございますので、私は、こういったものに該当するものを今後考えていかなければならない点を申し述べておきたいと思います。  そこで、次に移らせてもらいますが、本学園法の第二十四条でございますが、ここに、「他大学の教員等の参加」ということで、「放送大学においては、その教育及び研究の充実を図るため、他大学その他の教育研究機関と緊密に連携し、これらの機関の教員その他の職員の参加を求めるように努めなければならない。」とございますが、私は、この問題でこの教育研究機関というものはよくわかるわけでございますが、たとえばNHKの経過等を見ましても、教育放送実施し、資料、技術その他施設、無線従事者等あらゆる問題等もかんがみて、そういったものを備えておるものとして、教育研究機関といった教育というものだけに制限を加えないで、そこにさらに放送事業者を含むのかどうなのかと思うわけなんです。  この教育研究機関との緊密な連携というところにさらに放送事業者を含んだ方がよいのではないかと私は考えますが、それも拡大解釈してそうなるのだというのですか。この問題をどのように考えておるか、御答弁願いたいと思うのです。
  174. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように二十四条の規定は、放送大学教育活動というのは、放送をしていく教育内容の作成にいたしましても、あるいは学習センターにおける教育活動を進めていくにいたしましても、広く国公私立の大学の教員等の参加を得て、客員教授等々のお立場においてどうしても御協力をいただく必要があるわけであり、そのことが積極的に活発に進められるかどうかが放送大学のこれからの成否に大きくかかわることであろうと考えるわけであります。  そのことから、放送大学教育研究の充実を図るために他大学その他の教育研究機関と緊密に連携をして、それらの機関の教員その他の職員の参加を得ることが必要であるとして、そのことを特に規定を設けて、放送大学に対してその配慮を求めることといたしたものでございます。  御指摘のように、放送大学がこれから実施をしてまいります授業内容が適切に放送番組として送り出されていきますためには、番組の制作にいたしましてもあるいは放送設備の操作等におきましても、多数の優秀な人材を確保する必要がございます。放送事業者としての学園の業務の充実と円滑な実施を期するためには既存の放送事業者との連携を深めることが必要であることは当然なことであり、そういう意味においては、これまでの多年にわたる、たとえばNHKにおける教育放送の実績の積み上げというものについては、その経験あるいは人材、技術といったものに大きく私どもは協力をお願いしていかなければならないと考えておりますけれども、このことは放送事業者としての学園と既存の放送事業者との関係でございます。  ここで規定をいたしておりますのは放送大学について規定を設けた部分でございますので、ここには放送事業者を掲げておりません。しかし、御指摘のように放送事業者と放送事業者である学園が十分に連携協力をしなければならないということは当然のことであり、また、むしろそれがなくては放送大学というものは十分にこれから発展をすることができない性質のものだと考えております。
  175. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 次に、放送法の一部改正の中でございますが、この放送法一部改正としてうたっているのは、「第十一条 放送法の一部を次のように改正する。」として、そして、「第九条第二項第七月中「必要な資料を」の下に「放送大学学園若しくは」を加える。」というようになっております。  この問題は、放送法では「編集上必要な資料」としておりますが、資料だけでなく技術の提供もできるようにすべきだと私は考えますが、この点はいかがでございますか。
  176. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この問題も放送法の問題でございますから郵政省の方からお答えをいただく方があるいは適切かと考えますが、文部省として理解をしているところを申し上げさせていただきます。  放送法の九条二項七号についてでございますが、御案内のように、この七号はNHK放送番組とその編集上必要な資料を提供できる相手方を一般放送事業者と外国の放送局とに限定をいたしておりますので、このままでは放送大学学園がその対象から除かれることになります。そこで、放送大学学園対象に加えるためにいま御指摘のような改正を行うこととしたわけでございます。  一方、いま御指摘の技術協力の問題につきましては、これは御案内のように二項八号の定めるところによりまして、NHKは委託によって放送設備の設計その他の技術援助等を行うことができるとなっておりまして、この場合は相手方を特定の者に限定をいたす形になっておりません。  そこで、文部省理解としては、NHK側の御理解が得られるならば、特に規定を設けませんでもこの規定によってNHKの技術協力を得られるもの、そのように理解をして特段の措置をしなくても足りると考えておるものでございます。
  177. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 郵政省のお考えを言ってください。
  178. 平野正雄

    平野政府委員 NHKは、先ほどもお話に出ておりましたように長年にわたりまして各般の教育番組の充実に努めてきておりまして、人的技術的蓄積はわが国放送界の中でも屈指のものがございますので、放送大学学園による放送実施に当たってもこの活用を図ってまいることが最も必要ではないかというふうに考えております。  なお、放送法第九条第二項第八号の関係につきましてはただいま文部省の方から御説明がございましたとおりでございまして、自主的に学園がそのように望まれ、NHKと話し合いがつけば、この放送法第九条第二項第八号によりまして先生のお示しの御趣旨が達成できるというふうに理解しております。
  179. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、「役員の欠格条項」の件でただしておきたいと思います。  第十二条の一号に「政府又は地方公共団体の職員」とありますが、この「政府」というのは職員にかかっているのですか、政府そのものですか、ここで切れるのですか、この点を御説明ください。
  180. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この規定は、もとより政府の常勤の職員または地方公共団体の常勤の職員と読むべきものと理解をしております。
  181. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、先ほども論議になりましたが、この第三号の中にある「第十六条第四項第二号又は第五号から第七号までに掲げる者」として、わざわざ政党の役員等を抜いております。つまり、政党の人が役員として入り込んでいくことができるようにしております。  先ほどの御答弁で聞いておったとおりでございますけれども、しかし、教育の中立性及び放送の不偏不党性ということから考えて、政党の役員が学園の役員になれるということはおかしいのではないかと私は考えますが、御見解をお伺いしたい。
  182. 佐野文一郎

    佐野政府委員 午前中にもお答えを申し上げましたように、政党の役員というものを、準禁治産者あるいは禁治産者、禁錮以上の刑に処せられた者、あるいは免許状取り上げの処分を受けた者というような、事の性質上当然に役員たることのできないものと並んで掲げるということについてはいかがかと思われますので除いております。  しかし、そのことは御指摘のような放送大学学園事業の性格にかんがみまして、政党の役員を積極的に学園の役員に御就任願うということを考えているものでは毛頭ございません。それについては別途十分な配慮が必要であると考えております。
  183. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、文部大臣先ほどから文部大臣に言ってもお答えをいただけませんので一言お伺いをします。  この放送法の問題と、先ほどの論議でございますが学問の自由、これは私がいま例を挙げたごとく必ずぶち当たっていく問題が出てまいります。その出てきたときに調和をとっていくのは、これは当然のことですが、調和がとれなかったならばどちらを優先させるのですか。放送はしないのですか、あるいはもっとほかの方法を考えるのですか、その点をお答えください。
  184. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 御指摘の点は非常に大事な問題ですが、これはどうしても調和を図らなければいかぬと思います。
  185. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 調和がとれなかった場合に、学問の自由でどんどんその教授のお考え等が出てきた場合にどうするのかと私は聞いているのです。放送をやめるのですか。あるいはほかの方法をとるのですか。どこまでもとるといっても、どちらもぶち当たっていったならばどうなるのかということを聞いているのです。
  186. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 そういうことのないように最善の努力をして調和を図るべきだと私は思っております。
  187. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 大臣、これはよく御理解いただきたいのですが、イギリスにおきましても公開大学ということで出発いたしました。そもそも最初放送大学でいこうという形で検討をしていったものが、これは放送という事態を考えてみたならばその影響力は非常に大きいという面から、放送大学として出発したものが公開大学という形で、つまり放送部門は、放送していく状況というものはその大学教育の中におきまして一〇%以下に抑えています。それ以外のものに頼っています。つまり、個人教授であるとかスクーリングであるとか通信といった面に頼っていく方にむしろウエートを置いていったというのは、これは私はわかるわけです。  しかし、現在ここで論議されておるこの放送大学学園法案というのは放送大学として出発していくのです。放送というものに物すごいウエートを置いていくのであるがゆえに、ここをはっきりさせておかなかったならば、これは今後非常にむずかしい問題として放送大学学園の将来にかかってくる問題ではないかと私は考えますので、ぜひその辺の明快な御回答をお願いしたいと思います。
  188. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 御指摘の点はよくわかるのですが、とにかく初めての試みですから、私どもとしてもその辺は慎重にやって、大学の自由と学園の自治が守られるように、しかも放送法との関連において円滑にいくように、これは運営の問題だと私は思いますから、御指摘の点はよく心にとめておきます。
  189. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 NHKにお伺いいたしますが、教育放送として市民大学講座であるとか教養番組あるいは趣味を盛り上げていく問題等、いろいろユニークな問題等を入れて長年にわたって努力を積み重ねてきておりますが、視聴者に対する教育放送の効果の実態というものはどうなっていますか。
  190. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  教育放送と申しましても、先ほどから御論議にもありますように社会教育あるいは学校教育を含めておりまして、主として社会教育的なものをねらっております分野、夜の時間帯で申しまして七時半から九時に至る番組についてはかなりの視聴者が定着しつつあるし、また増加しつつございますが、いま御議論になっております放送大学関連に非常に近い大学講座の番組になりますと必ずしもそうではございません。  大ざっぱな調査でございますが、視聴者の数は概略三十万人から五十万人というふうに考えております。その中で特にテキストを求めてこれを勉強するという方の数になりますとさらに減っておりまして、いろいろな番組をやっておりますが、平均して大体三万前後のテキストが売れ、総計で三十五万から四十万のテキストが実際に使われているというふうに私たちは考えております。しかし、これは全体のそういう方の数から見れば決して少ない数ではないと思って、番組制作者もそれなりの緊張を覚えている次第でございます。
  191. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 重ねてお伺いしますが、民放とNHKという形でいままでのわが国の放送体系は長い間行われてきました。御承知のように民放におきましてもNHK総合テレビ等の内容はほぼ得られるという形で、この教育テレビ、つまり教育放送のみが——のみと言ったら過言かもわかりませんが、むしろこういった面が国民にとりましても非常にNHKの特徴であるというように受け取られておったやに私は考えるわけでございます。  そこで、今回こうして放送大学学園として出発していったならば、先ほど同僚委員からも最後のところで問題になりましたけれども、教育ということを言っておりましたが、これは教養という面が入ってきて、もちろんいままでのNHK教育放送との兼ね合いの中からここで競合してくる部分が出てくる。そういう中で今度はNHKのみが受信料を国民からいただいて運営をしていっている。ところが、最近逓信委員会におきましても問題になるのは不払いの問題等がございます。NHKは見ていません、ほかでちゃんとやっていますという形で不払いがふえてきておる。  ましてやNHK財政ということがいろいろと問題になってきておる中で、この放送大学学園放送というものを一体どう位置づけて、NHKは今後この教育放送にどう取り組んでいく考えなのか、その辺の兼ね合いも含めて御説明ください。
  192. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  私たちが行っております大学放送の時日の経過を申し上げますと、この放送はかなり前、昭和三十年代の半ばからラジオ、テレビで始まりまして、現在はテレビだけでございますが、昭和四十七年まで主として通信制大学のための大学講座としてやっておりましたが、四十七年に私立大学全部、約二十校に及ぶ連盤ができました際に、私たちはこの通信制大学との直接的関係なしに大学レベルの放送を充実した方が一般の聴視者を含めて効果的だという判断から、了解を得てそういう編集方針にしてまいったわけでございます。その結果、先ほど申し上げましたテキストの売れ行き等から見ますと約二倍の視聴者を出しております。したがって、新しくできる放送大学及びその放送が現行放送秩序に影響がないように極力大学教育に集中するという点から考えますと、われわれはそういうことが望ましいし、またそういうふうにしていっていただきたいわけでございますが、それとこれとは全く関係がないと言い切るわけにもまいりません。  われわれはそれらの状況を十二分に勘案いたしまして、私たちの存在理由が明確に視聴者の間に認識されるよう努力を続けるつもりでございます。
  193. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまの問題は切実な問題ではないかと私は思います。  そこで、文部省にお伺いしますが、本学園は教養を主体としていくのか、高度な本当の——本当のと言ったらおかしいわけでございますが、いままでの国立大学、私立大学等いろいろなものがございますが、何らそれに劣ることのない、むしろそれを上回るような高度の教育を主体としていくのか、あるいは途中経過におきましても話がありました生涯教育、お年寄りや主婦の人にまで発展させていくのだというものでいくのか、そこのところが非常に微妙な問題で大事な点ではないかと私は思いますけれども、いまのNHKのお考え等を含めて、どういう方向に持っていくのかお答え願いたいと思います。
  194. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この法律が二十条において明らかに規定をいたしておりますように、放送大学学園実施をする放送は、一つ放送大学自体の教育のための放送であり、もう一つ認可を受けて行うことのできる放送もこれまた学園の目的を達成するために必要なものであることを必要といたしますので、大学教育のための放送ということになるわけであります。  したがって、学園が実施をいたします大学教育のための放送というのは、具体大学教育課程に沿った大学教育のための番組がもっぱら出ていく、それ以外のものは出ていかないということになるわけであります。その点ではNHKが現在実施をされておりますいわゆる大学レベルの教育者組とはおのずから性格を異にするところがあるわけでございます。  放送大学教育課程に沿った大学教育のための番組というものはもとより正規の大学教育のための番組であり、その質的な水準の向上ということについてはできるだけの努力をいたさなければなりませんけれども、同時に、いま御指摘のように放送大学学生というのは非常に広範な各層にわたる、これはお年寄りの方もおいでになりますし、かつて旧制中等学校を御卒業になった方々も対象になるわけでございますから、そういった方々の要請にこたえられるような配慮をしつつ、かつ高度のレベルを維持していくという非常にむずかしい問題があるわけでございますが、しかし、方向はそのような形で極力努力をするということでございます。
  195. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまのお答えでは、今後国民の人たちというものは非常に混乱するんじゃないかと思いますよ。いま聞いていても、私はどっちだかわかりません。果たして本当に高度な教育をやっていくのか、あるいは生涯教育というような形のもっと開かれたものになるのか——私はどっちにせいということは言いませんよ。もちろんこれは国民の電波でございますから、むしろお年寄りやあるいは主婦の人たちやみんなが聞いていけて、そして本当に生涯教育というような形に発展していくことを国民は本来なら望んでいると思うのですよ。ですが、いまのNHKがあり、民放があり、そして放送大学学園という形で三本立てになっていったならば、先ほども私の前におきまして論議がございました教育番組ということ自体をとってみても、どうしたって当然そういった分野に入っていく可能性というものは十分あるわけでございます。  そこで、私が最初に言いましたように、NHKといういままで教育放送において経験を積んできたものをなぜ利用しないのか。国民はどこから電波が流れてこようとも一緒なんですよ。ただ、NHKが巨大になっていくというような、そういったものはございますが、しかし、この放送体系自体が三本立てになって混乱することの方がむしろ大きいのではないかと私は思うのと同時に、九百億からの膨大な金額が使われていく、ましてや放送部門にそのうちの多くのものが使われていくということを考えれば、将来放送衛星ができてきますし、そういう時点まででも、いままでのNHKの設備やいろいろなものがあるのですから、利用できるところは利用していくのだというような形で、もっとフランクな意味でお互いに交流を持ってやっていけるようなものにならないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  196. 佐野文一郎

    佐野政府委員 初めの、放送大学教育内容の問題でございますが、これは事前に需要の予測調査等を実施いたしまして、いま国民各層がどのような問題について放送大学によって勉強をしたいと思っているかということについての調査を行い、その上に立って三つのコースを設定いたしまして、広く国民のいろいろな要請にこたえられるものをいわゆる教養学部の形で設けていこうとしているわけでございますが、そのことは大学教育としての質というものを落としていいということでは決してない。そういう非常に広がりを持った、多くの学問領域にわたるような課題について取り組みつつ、かつ水準を落とさない大学教育としての放送による授業を展開していこうというのが放送大学趣旨でございます。  もちろん、NHKのこれまでの豊富な御経験あるいは技術、人材といったものについては私たちはむしろ大いに期待をし、NHKと交流をし、その御協力を得ながら放送大学放送というものは実施をしていかなければならないと考えているところではございますけれども、放送大学がその放送を挙げてNHK実施をしていただくということにつきましては、先ほど郵政省の御当局から御説明がありましたように、番組の編集権の問題と大学の教学サイドにおける教授の自由との間に非常にむずかしい問題を生ずるおそれが十分にあるわけでございます。  そういう意味からして、放送の主体と大学の主体とを同じ特殊法人をもって設定する。それによっていま先生が御指摘になっている放送教育大学放送の問のむずかしい課題を何とか円滑に処理をしたいと考えている。そのことを御理解いただきたいと存じます。
  197. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ぜひこれは御努力のほどをお願いしたいと思います。  時間ですのでこの一問で終わりますが、最後に郵政大臣にお伺いしておきます。  御承知のように、この放送大学放送が加わって、そして三本立て体制でいく。放送大学は準国営放送並みになっていきます。そしてNHKは受信料を取っておる。そういう中でNHKはこの前値上げをして、またさらに赤字が云々されている。そういったことを考えると、この問題は今後ずっと逓信委員会におきましても続いていく重要な問題でございます。  形でいくと、ちょうど真ん中に有料というか受信料を払って聞いていく放送局がある。そして片や、まあこれはコマーシャルが入ってきますが、民放という一応無料で免れる放送があり、片やスイッチをひねれば見れるという——これは大学へ入った人は授業料がありますから別でございますが、大学へ入らない人ならばスイッチをひねればそういった教育放送というものを聞いていくことができるというものがある。非常に複雑で、しかも今後こういった中でこの公共放送あり方自体が問題になってくる。これはNHKの今後の存在基盤にかかわる重要な問題になってくると私は考えるのです。  そこで、郵政大臣としては今後これにどう対処していくのか。このままずっとまたしばらくたっていくとまた受信料の値上げをしていかなければならないというような中でのその問題について、どのようなお考えでこの公共放送を位置づけていこうと考えておるか、その点をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  198. 白浜仁吉

    ○白浜国務大臣 NHKNHKとしての、いわゆるいままでのいき方を続けて努力をしてもらわなければなりませんが、今度発足する放送大学学園放送につきましては、先ほどからいろいろと御意見もありましたことを十分に踏まえながら、間違った方向へ進まないように努力して、国民の期待に沿っていかなければならぬと考えておりますので、私どもも十分注意しながらその方向で進んでまいりたいと思うわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  199. 石野久男

    ○石野委員長 次に、玉置一弥君。
  200. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回の放送大学学園につきましては総論的には賛成でございますけれども、いままで生涯教育あるいは社会教育といった意味ではそういう確立された機関というものが全くなかった。その中でこういう放送大学のような構想が生まれてきたことは非常に喜ばしいことだと私は思っているわけでございます。  文部省の調査によりましても、約四六%前後の方が放送大学利用を希望しているという結果が出ているわけでございます。しかし、個々に細目を見てみますといろいろな点でまだまだ問題点があるのじゃないかと私は考えるわけでございます。  一つは、大学運営の上で必要以上の文部省の介入があるのじゃないか。それと学問の自由と放送法上の制限、その範囲が非常にあいまいじゃないか。そしてこれらに投資されます金額から考えまして、予想されます効果、そしてその正確さといいますか、効果の出る確度、そういうものがまだ非常に不明確のままで終わっているわけでございます。そういった観点から個々にいろいろ質問をいたしてまいりたいと私は思っております。  まず、こういうふうな大学の運営という意味では筑波大学が非常に参考になると思いますけれども、筑波大学を設立されましたときの経験をいかに今回の放送大学に生かされているか。その辺を大学運営の面を比較されてお答え願いたいと思います。
  201. 佐野文一郎

    佐野政府委員 筑波大学は、これまでの大学における教育研究のあり方というものについて十分に考察を加えて、その反省の上から新しい構想大学としてつくられているものでございまして、創設の趣旨に沿って現在発展を続けていると私たちは評価をいたしておりますけれども、御案内のように筑波大学というのは非常にたくさんの専門分野、他の大学で言えば学部を持っている総合的な大学でございます。しかし、今度つくろうとしておる放送大学の場合には、これは教育学部だけのいわば単科の大学でございます。  したがって、両大学の組織運営というのは全く様相を異にするわけでございますし、また、教育研究ということを考える場合にも、放送大学教育研究を考える場合に課題となる事柄というのは筑波大学が問題としたこととはまた様相を異にするものがあるわけでございます。  したがって、同じようにこれまでの高等教育あり方というものについて、放送大学を通じて、たとえばその閉鎖性を何とかもっと打破して、放送大学による活動を通じて高等教育の構造それ自体をより柔軟なものにしていきたいという念願は持っておりますし、そういう意味においては筑波大学と同じように前向きな問題意識を持って取り組んでいく事柄ではございますけれども、具体の組織運営について筑波大学考え方によっているという点は放送大学の場合にはないわけでございます。
  202. 玉置一弥

    ○玉置委員 筑波大学が設立されたときにはかなりいろいろもめたと思うのですけれども、あれは運営上の問題でもめたと思っておりますけれども、いかがですか。
  203. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、筑波大学の組織運営の方法というのは通常の大学の場合とかなり相違をいたしております。そういった筑波大学の組織のもとにおいて大学の自治というものが維持をされるのか、あるいは活発な教育研究というものが展開できるのかという点が争点として議論をされたということは御指摘のとおりでございます。
  204. 玉置一弥

    ○玉置委員 どの点が改善されたかとか、そういうことをお聞きしたいのですけれども、その辺を具体的に言っていただけますか。
  205. 佐野文一郎

    佐野政府委員 筑波大学の場合には、一つは、これまでの大学教育研究の組織というものがいわば学部ということで、教育と研究を一体的に処理するという形になっているものでございますけれども、その教育研究というものをより活発に実施をし、かつ学生教育というものに対してより適切に対応するためには教育と研究の機能的な分離というものを考える必要があるということから、従来の学部という形ではなくて、いわゆる学群、学系というものを設けて、学生教育に当たる学群という組織と研究に対応する学系という組織を設けて、その有機的な関係のもとに教育研究を展開しようということを考えている点がまず一つです。  それから、もう一つは、それに伴って従来の学部教授会というような形での人事ということではなくて、いわゆる人事委員会を設けて、これによって全学の人里を処理するというような体制をとっているという点で、そのような点が従来の大学とはまず大きく異なるところでございます。
  206. 玉置一弥

    ○玉置委員 先ほど申しましたように、既存の大学の学問の自由あるいは研究の自由というものが非常に放送法によって制約されるんじゃないかということがよく言われているわけでございますけれども、郵政省にお伺いしますが、放送法から見て、学問の自由あるいは研究の自由について個々に具体的な例を簡単に挙げていただいて、それをまとめてお答え願いたいのです。
  207. 平野正雄

    平野政府委員 国民共有の財産でございます有限、希少な電波というものを独占的、排他的に利用する立場というものが放送事業者であるという認識をまずいたしております。  この放送が一般公衆に与える影響は、これまた非常に大きいと思うわけでございまして、これらのことから、放送事業者の番組編纂に当たっての最小限の準則を定めましたのが放送法の第四十四条の三項だと考えておるわけでございまして、これは憲法が保障するいわゆる表現の自由に対する制約として許容される範囲内のものであろうというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、放送大学放送も一般視聴者が視聴できるものでございます以上、放送秩序全体のバランスを考慮いたしましてこの規定を適用することが適当であるという判断をいたしたものでございますが、基本的には大学の権威、大学の自治に裏づけられた自主規律によって学問の自由は十分に確保され得るという判断をしておるわけでございます。
  208. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのお答えは、大学がある程度自主的に決めればそのまま放送できるということですか。
  209. 平野正雄

    平野政府委員 四十四条の三項は、ただいま申しましたような理由によりまして、NHKにも民放にも課せられていると同様のものが学園にも課せられる、こういう形になるわけでございます。  ところが、番組に関連をいたしましては、一つは番組基準というものがあるわけでございます。これはNHK、民放に課せられておるわけでございますけれども、今回、学園に対しましては大学の自治、学問の自由ということを考慮いたしまして実は課さなかったわけでございます。これにつきましてはひとつ放送法の精神を十二分に体されまして、学園の方で運用に当たりまして対応していただきたいというふうに存じておるわけでございます。  もう一つは、番組審議会というものを放送法によりましてNHK及び民放各社に義務づけておるわけでございますが、これにつきましても学問の自由ということを考慮いたしまして実は学園には課さなかったわけでございます。これにつきましても、先ほど来御議論がございますように、放送法の意を体されまして学園の方で対応をしていただきたいということを申し上げておるわけでございます。
  210. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのお話ですと一応学園の方に任されている、それも自主的に放送法の精神を尊重して、ということでございますね。  ということは、学園の方で運営審議会である程度番組編成まで責任を持ってやるということになると思いますけれども、文部省の方のいまの基準、大学の学閥の自由と研究、その辺についてのお考えはいかがですか。
  211. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学放送についても四十四条三項は全面的に適用になるわけでございますから、意見の対立する問題については公平にその論点を提示するという点であるとか、あるいは政治的な公平というものについて配慮しなければならないという点は、これは率直に言って大学の講義の方法に対する一つの制約とも言える形で大学は受けとめなければならないことでございます。  しかし、そのことは四十四条三項の規定があるから大学大学たり得るだけのいわゆる教授の自由を持ち得ないかということであれば、決してそういうことではなくて、先ほどお答えを申し上げておりますように、四十四条三項というものを大学がみずからの問題として受けとめて、その大学の自制によって大学の自治というもののもとに教授の自由というものを確保していくということは十分可能なことであると思うわけであります。そのことを大学実施をするその保障は、結局放送大学が正規の大学として設置をされるものであり、したがってその大学がいわゆる他の大学と同じように大学の自治、大学の責任のもとにその教育内容を定めていくというところにあるわけでございます。  しかし、放送番組を編集するその最終責任は理事長にあるわけでございますから、大学側はみずからの教育内容を定めて、そしてそれを放送番組として送り出すまでの放送局との間の十分な共同作業というものが要るわけでございますし、それが大学の教員による教育内容検討、その進行に伴う放送局側のプロデューサー、ディレクター等のスタッフの参加、これらの人々によるコースチームの活動ということを通じて四十四条三項あるいは大学の教授の自由といったものにお互いに配慮をしながら番組がつくられていく、そのことが確保されるであろう、そのように考えているわけであります。
  212. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの話でいきますと理事長の権限が非常に大きいというような感じがするのですけれども、理事長の場合には文部大臣が任命されるということになっておりますけれども、理事長の任命に当たっての基準というものは何かあるわけでしょうか。
  213. 佐野文一郎

    佐野政府委員 文部大臣理事長を任命するということにいたしておりますけれども、理事長は放送大学の教員の人事に関しましては具体的な人事権を持っているものではございません。また、放送大学が学長の統督のもとに対応する教学の内容、いわゆる具体教育内容については理事長は発言権を有するものではございませんから、文部大臣理事長を任命するということによって、文部大臣による放送大学教育の統制が行われるというようなことは毛頭ございませんし、また、理事長が大学教育の中身に介入するというようなことも事の性質上起こり得ないものではございます。  しかし、もちろん理事長は放送番組編集の最終責任者であると同時に、放送大学学園を代表する非常に重要なポストでございますから、これについては広く最も適任な方を求めるという努力をしなければならないわけでございます。しかし、その任命についての具体的な基準というものがあるわけではございません。
  214. 玉置一弥

    ○玉置委員 たとえばNHKの場合には、番組編成の委員とか何か資格みたいなものが決まっていたと思うのですけれども、同程度というか、それ以上の影響力があると思うのですけれども、どうしていままでつくらなかったのかということについて、理事長を任命する任命基準といいますか、選定基準ですね。  影響力の大きいわりにはいままで簡単に——簡単にといいますか、ある程度個人の裁量に任されていたところがあると思うのですけれども、それに対して今回の場合には、特に放送まである程度の影響力が出てくると考えるわけですけれども、そういう意味で認定基準といいますか、そういうものをつくる気があるかどうか、伺いたい。
  215. 佐野文一郎

    佐野政府委員 理事長は放送大学学園理事長としてふさわしい学識経験と力量を持っておられる方を選任するということであります。  放送大学学園理事長としてふさわしい人であるという評価を各界を通じて得られるような、そういう配慮のもとに文部大臣と郵政大臣が御協議になって、形の上では文部大臣が任命をいたしますけれども、両省十分協議をし、さらに各方面の意見も事実上伺いながら適任者を求めるという努力をするということでございます。
  216. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの問答は、選定基準というものをつくらなくていいということでよろしいですね。
  217. 佐野文一郎

    佐野政府委員 特殊法人の理事長の選任について基準を設けると申しましても、欠格条項のようなものはもちろん法定されるわけでありますけれども、積極的にこういう人材を求めるという、その基準というものは、やはりその任に最も適した人を求めるということに結局は帰着をするわけでございます。  十分に慎重に人選を進めなければならないということは十分に意識をいたしております。
  218. 玉置一弥

    ○玉置委員 NHKの場合には選定基準というものがございますですか。
  219. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  NHKは経営委員をもって最終的には運営されておりますから、経常委員は国会の承認を得て内閣総理大臣がこれを任命するということになって、経営委員会の任命によって会長が決まり、そして理事者は経営委員会の承認を得て会長がこれを任命するという組織に相なっております。
  220. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのお話を聞きますと、NHKと全く逆になっているような気がするわけでございますけれども、そういう点でかなり影響力のあるポストだけに、そういう選定基準といいますかあるいは選定のルート、そういうものをつくっていかなければいけないと思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  221. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 お答えします。  あなたのおっしゃることは非常にごもっともですけれども、私はそれだけにやはり文部大臣は責任を負わなければいかぬと思っているのです。これは理事長なり学長は国民が全部見ているのですから非常に慎重にやらなければならぬと思って、それだけ責任が重いから責任の重さを痛感して、全く国民から信頼され尊敬されるようなりっぱな人物を任命する責任と義務があると私は思っておるのであります。
  222. 玉置一弥

    ○玉置委員 内藤文部大臣のときにはそれでいいと思いますけれども、やはり人もかわられますし、基準が非常に変わってくると思うのです。そういう点でわれわれはちょっと心配しているわけなんです。だからぜひ法律でとまではいかなくても、何か暗黙のといいますか、そういうものでもつくっていただければいいのじゃないかと考えるわけでございます。しかし、これは時間がございませんのでまた別の機会お願いしたいと思います。  次に移らせていただきますが、NHKの話が先ほどから出ておりましたけれども、いままでNHK全国ネットあるいは人員というものを利用することを考えたことがあるのかどうか、文部省にお伺いします。
  223. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学構想検討する段階におきまして、その放送実施形態をどうするかということにつきましてはこれまで多年にわたって郵政省とともに検討を行ってきたところでございます。その過程で、先ほどお話がございましたように、NHKの方に放送部門について積極的なお気持ちがおありになった時期があるということは私も承知をいたしておりますが、調査会における検討の経緯というのは、大学教育、研究の自由というものと放送事業者の番組編成の自由との調和を図っていくという観点からいたしますと、NHK電波利用して放送大学教育内容放送していくということにはやはりかなり無理がある、実現困難ではないか、そういう判断に達しているわけでございます。  そういったところから、大学設置主体でもありかつ放送局設置主体でもある放送大学を一体として担当する設置主体というものを考える必要があるということになり、その設置主体を考えるということであるならば国立大学あるいは私立大学というような形によることができないということから、新たに特殊法人として放送大学学園というものを考えていく以外にないと、そのような結論に達しているわけでございます。
  224. 玉置一弥

    ○玉置委員 NHKの方にお伺いしますけれども、NHKさんとしてはいままで放送大学についていろいろと文部省の方から御相談があったと思います。  それに対してどう考えるかというのはちょっとお答えしにくいと思いますので個々にお聞きしたいと思いますが、現在の放送設備ではある程度補充しないとできないというお話を聞いておりますけれども、たとえばいまお話がございましたような番組編成への影響、その辺についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  225. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、今度できる放送大学放送というものは現在の放送秩序に与える影響を最小限にとどめるようにするというお話でございますし、私たちもそれを強く期待しているわけですが、現実にこの放送が出たわけでもございませんので、それに対する影響がどう出るかということについてはいま予測の範囲にとどまるわけでございますが、私たちとしてはいろいろな場合を想定して、そしてNHKの存在意義をより明確に今後もするような努力を続けるという覚悟でおります。
  226. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの質問は番組編成への影響といいますか、いわゆる番組編成の自由といいますか、そういうところへの影響度ということなのですが、たとえばNHK放送大学放送をなさる場合のことなのですけれども……。
  227. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  事、放送番組の編成の責任ということは放送法に明確にうたわれておりますし、また、その主な部分は放送大学にも適用されるということでございますし、ことに私たちがその編集責任に基づく編集の自由の行使に関して特段の影響を受けることはないというふうに考えております。
  228. 玉置一弥

    ○玉置委員 先ほど佐野局長がおっしゃいました番組編成の自由が侵されるというか、影響が出てくるという観点からいきますと、そんなに影響がないような気がするわけです。  それで、私言いたいのは総額で八百六十八億ですか、そういう多大の投資をやりながら先行き不安な面が非常にいっぱいあるわけでございます。そうした意味で、いまのNHKの設備あるいは人というものを活用していくといった意味から、やはりもう一度考え直していかなければならないのじゃないかと思うわけでございます。  その理由といいますといろいろあるわけでございますけれども、年々九十四億という経常経費が出るわけでございます。初期の投資も非常に大きいけれども、経常経費考えますと十年たてば一千億近くになるわけであります。そういうことから考えるとたとえ無理でも——無理でもといいますか、技術的に可能であればぜひそちらの方面で費用の比較をやってもらいたいということなのです。NHKさんに事前にちょっとお聞きしたのですけれども、いまUHFを新設した場合にはやはり新しい設備を相当入れなければならないが、いま文部省考えておられる予算より一〇%近くは下がるだろうというお話もあるわけです。  そして私が考えますには、現在何万人という方がおられるわけでございますけれども、そういう方は番組編成上非常にいままでの長年の経験があるし、あるいは放送技術でありますとか、そういうものがあるが、それがたとえば十あるうち今度ふえたのが三ぐらいだということであれば、まるまる三の人がふえるわけはないわけです。現有の人である程度仕事が吸収できるということを考えますと、経常経費としては非常に安くなるのじゃないかと思うわけでございます。  そういった意味で、初年度といいますか、完成までの費用のみならず、経常経費ということを考えた場合にはNHKさんを活用していくようなことをやはりぜひ考えなければいけないのじゃないかと思うわけでございますが、再考の余地があるのかないのか、あるいはいままでそういう費用の比較をなさったかどうか、お聞きしたい。
  229. 佐野文一郎

    佐野政府委員 仮にNHK放送お願いするといたしましても、使用する波は御案内のようにUHFあるいはFMでございますから、NHKはそれに対してやはり現有の設備とは別途の対応をしなければなりません。したがって、御指摘のように放送大学をもって新たに施設設備の対応をしていくのに比較すれば軽減をする余地はあろうかと思いますけれども、かなりの経費を必要とするという点においては同じでございます。  なお、この点については正確な比較をした資料をいま私は持っておりません。  ただ、そうした経費の問題だけではなくて、先ほども申しましたように、仮にNHK放送実施するということになれば、NHKの番組編成の自由と申しますか、番組編成権というものがあるわけでございます。それと放送大学の方の、いわば大学の教学の立場における教育内容をどう決めていくかという教授の自由の問題との抵触が生ずるわけであります。これは放送大学学園という一つ設置主体のもとで事を進めても基本的にはやはりある問題であり、非常に困難な問題であるということはけさほど来御指摘のとおりではありますけれども、これが同一の設置主体のもとにおいては、これまた先ほども申し上げましたような内部における両者の共同作業、調整ということによってその処理を考えることが可能になるわけでございますけれども、別の主体が放送するということになると、これは事柄がさらに困難になるわけでございます。  NHK放送大学のつくった放送教材をそのまま電波に乗せるということは、これはNHKの番組編成の自主性ということからいってあり得ないことでありましょうし、といってNHKの方の番組編成のお考えに従ってもっぱら放送が行われるということであれば、これまた大学の教授の自由ということの立場との間でむずかしい問題が出てまいります。そういったことについての検討が行われた結果、やはり大学設置主体と放送の主体とは同じ主体にした方がよろしいという結論に達しているわけでございます。  御指摘の点は確かに一つ考え方であるということは十分わかりますけれども、放送大学を円滑に進めていく、放送法の問題と大学の学問の自由、教授の自由の問題とを調整していくという見地に立って事を前向きに考えていくとすると、やはり同一の主体、つまり、放送大学がいまお願いしておりますようにみずから学園を放送事業者として対応するということが最も適切な方法であると考えているわけでございます。
  230. 平野正雄

    平野政府委員 ただいまの件につきまして、あるいは先生のお考えのところと君子御参考になるかもしれないと思いまして申し上げるわけでございますけれども、一つには、先ほどお話がございましたように、NHKは長年にわたりまして各般の教育番組の充実に努めてきておりまして、人的、技術的蓄積が非常にあるわけでございます。したがいまして、放送大学学園放送実施に当たってこの活用を図っていくということは、先ほどもお話がございましたように、放送法第九条第二項第八号によりまして学園とNHKが話し合えばこれは可能でございます。  また、一方、NHKNHKとして番組編集権を持っておりますし、施設を持っておるわけでございます。学園は学園として番組編集権とそれから施設を将来持つことに相なろうかと思います。これはそれぞれ別々に持つわけでございますけれども、NHKがすでに先行しておりますので、たとえば全国の局の施設のための敷地でございますとか、あるいは空中線柱でございますとか、そういったものを持っておりますが、それを後発になります学園が利用したいという場合には、これはNHKと学園とが話し合いまして適当な価格によりまして契約ができれば使用することも不可能ではなかろうというふうに存じております。
  231. 玉置一弥

    ○玉置委員 素人の考えでございますけれども、いまNHKには二つのチャンネルがございますが、もしNHKでやるとすればそれに一つふえるわけですね。そのふえた部分だけを放送大学学園がやると、同じように考えて、ただ番組編成と放送だけをほかの二つと切り離して、全く影響ないようにNHKの組織上できないですか。
  232. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  現行放送法あるいは現行の組織運営のやり方から見ると、分離してやるということははなはだしくなじまないものというふうに私は感じております。
  233. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回放送大学学開法によって放送法がいとも簡単に大きなところで変えられたわけでございますけれども、そういうことができれば、放送法自体の見画しとか、あるいはNHKの内部の規約といいますか、そういうものも変えられるのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  234. 平野正雄

    平野政府委員 現在の放送法電波法制におきましては目的を持って免許を受けるわけでございまして、その目的を遂行するための施設をあわせ持っておるわけでございます。  放送について申し上げますと、番組編集権と同時に施設をその免許人が持っておらなければならないという原則があるわけでございます。これをもし施設を提供するということを目的にいたしました場合には、これは他人の用に供することを目的に免許を受けるということになりまして、たとえば公衆通信がそれでございます。したがいまして、そのような見解からいたしますと、先生が申されるような放送電波法制の改正というものは、既設のNHKあるいは民放のみではなくて通信全般につきましての相当大きな変革に相なろうかと存じまして、郵政省としてはとらないところでございます。
  235. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回の放送大学学園法については附則で処理されていますね。それと同じような処理で済むのじゃないかと思うわけです。  ということは、放送法を変えるということ自体は変わりないわけですから、同一に考えればそういう処理で済むのじゃないかということなんですけれども、いかがですか。
  236. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  現行法体制の中で既設の秩序にできるだけ影響を及ぼさない範囲におきまして放送法改正を、学園の目的あり方、業務内容等と密着した部分の改正附則で行ったわけでございます。  ただいま先生がおっしゃいますいわゆる通信につきましての大変革と申しますか、公衆通信を含んだ大変革の問題につきましては、これはなかなか附則でということには相なりませんで、もし将来検討するといたしましても相当大きな問題に相なろうかというふうに存ずるわけでございます。
  237. 玉置一弥

    ○玉置委員 いままでのいろいろな方の質問を聞いておりましたが、同じ意見が大分出ていたわけでございます。今回放送法改正附則で処理されて、それも何か放送体系が二木から三本になるということでございます。それと同じように考えていまの意見を言ったわけでございますが、これは後ほど別途逓信委員会お願いしたいと思います。  時間がございませんので次に移りたいと思いますが、今回の放送大学を一応受けると予想される方は、勤労者あるいは主婦という方々が非常に多いと思うわけでございます。そうしたときに現在文部省で予想されております人は二十万人あるいは二十三万人というふうに言われておりますけれども、そういう方々が本当に放送大学に入ってそして卒業されるために、特に週一回三時間のスクーリングとか、あるいは見られなかった時間の補習とか、そういうものがあるというお話を聞いておりますけれども、そういうために教育休暇というものが必要かと思います。これは前回木島さんの方からですか、出されたことでございますけれども、いまの放送大学自体を成功させるためにはそういう手段というものをやはり舞曲に考えなければいけないと思うわけでございます。  そういった意味で、労働省あるいは各労働団体の方々とそういうお話をいままでなさっていたかどうか、あるいはどこまで進行しているのか、お聞きしたいと思います。
  238. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の有給教育休暇の制度につきましては、放送大学の場合にとどまらずに、これから高等教育の全体のシステムをより社会に開かれたものにしていく、いわゆるリカレントエデュケーションの要請あるいは生涯教育要請大学全体が対応できるような仕組みを考えていくという上で非常に重要な事柄であると考えておりまして、文部省としてはもちろんそういった積極的な対応が望ましいと考えております。しかし、この問題は御案内のように文部省限りで対応できることではなくて、他省庁にもかかわる非常に大きな問題を含んでおります。  かねて大臣からもお答えを申し上げておりますように、この問題については関係省庁とも御相談をしながら文部省としても前向きに検討をしていかなければならない課題であると考えておりますけれども、現在のところ具体的にどのような進展があるかということが申し上げられるような状況でないことはまことに申しわけないと思います。
  239. 玉置一弥

    ○玉置委員 五十七年から放送大学の入学が始まるわけでございますけれども、そういうもののいろいろな法制化でありますとか、あるいは各団体との意見の一致を見るためには時間的に相当日数がかかると思うわけでございます。そういう意味で、いま局長がおっしゃいましたように前向きにこれから取り組んでいただけると思いますけれども、それをなるべく早い機会具体的に進めていただくようなことをやらないと、入学したけれども卒業できないという方がたくさんふえると思うのです。そういう意味で、ぜひ前向きに早く検討していただきたいと思いますが、それは念押しだけにとどめます。  それから、内藤文部大臣がいつも言われておりましたけれども、学歴社会というものが現在存在するわけでございますが、今回の放送大学の効果が予想どおり出た場合に毎年二十万人前後の学士が誕生するということになるわけですね。そうなりますと、現在でも大学卒というのが四〇%近くになっているわけでございますけれども、そういう大学卒といういわゆる学歴社会というものに対してかなりの影響が出てくるのではないかと思うわけでございます。  これを機会にそういう学歴社会の解消という方面に進んでいけばいいと思うのでございますけれども、文部省としてはいかにお考えになっておられますか。
  240. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、放送大学構想というのは、現右四〇%近い進学率に達している非常に普及をした高等教育の上にまた同じような同質の高等教育を重ねて量の拡大を図るというような趣旨のものではもともとないわけでございます。  もちろん、高等学校卒業者に対してもこれまでとは変わった高等教育への進学の機会というものをいわば用意をするということになるわけでございますけれども、それにとどまらずに、御指摘のように国民のいろいろな年齢層あるいは職業にわたって、放送大学でそれぞれの問題意識をお持ちになっている方がそれぞれのコースを選択して御勉強になるという、そういういままでとはかなり違った高等教育機関になるわけでございます。そういった高等教育機関ができるということは、一つには、現在のともすれば閉鎖的な高等教育あり方というものについていろいろな意味でいい影響を及ぼすことも考えられるということでございます。  文部省としては、この放送大学で勉強をされた方がそれぞれの立場に即して高いレベルの学問的な教養を身につけて国民全般の教育レベルの向上に寄与することと同時に、いわゆる形式的な学歴ではなくて、それぞれの方々の資質なり能力が正しく評価されるようなものになっていくこと、そのことを放送大学を通じて期待もいたしているわけでございます。
  241. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのお話では、放送大学で学士の資格を得た人の立場といいますか、そういうものがまだ非常にあいまいなところがあると思うのです。そういうところをぜひある程度明確にしてもらいたいというのが本当は私の考えなんですけれども、資格がとやかくというよりも、むしろ教養として向学心に燃えた方が自分を満足させるという意味でやっていただければいいと思うのですけれども、それとやはり学歴社会をなくしていきたいという気持ちの絡みがありまして、私自身考えが非常にあいまいです。  時間も終わりということですから、費用の面あるいは将来の効果の不安定さというものを考えた上で、先ほど申しましたNHKの設備といいますか、NHKそのものを放送媒体として活用していくということをぜひお考えいただきまして、そして、特に経常経費なんですけれども、費用が少なくて済むようなことを考えていただきますことをお願いいたしまして質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  242. 石野久男

    ○石野委員長 次に、藤原ひろ子君。
  243. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 関係の皆さん、大変遅くまで御苦労さんでございます。  このたび提案をされました放送大学学園法案につきましては、現行の放送制度の点から見ましても大変重要な問題を含んでいるというふうに私は考えるわけでございます。  日本の歴史の中で、戦前に放送というメディアが国民の戦意高揚というための道具に使われたという、国民にとりましては大変苦い経験をいたしているわけでございますが、そういう教訓の中から、戦後の一定の民主化の中で政府自身が放送事業者になり得ないという不文律が今日国民の中に定着をしてまいってきておると私は考えるわけです。そして、これは日本の民主主義を守ります上で大変重要なことであるというふうに思うわけです。このことは戦前戦後のNHKの歴史を見ましても明らかであると思います。NHKが編さんしておられます「放送五十年史」にはきちんとこのことが明記されているわけでございます。  そこで、まず最初に私は郵政省の方にお尋ねをしたいと思いますが、NHKがこういった公権力の介入のための道を防ぎ、なおかつ放送の自主性を守るためには制度的な保障はどういうことがあるのか、その点のお考えお答えいただきたいと思います。
  244. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  NHKにつきましては、放送法に示されておりますように、ただいまの先生の御指摘の国、いわゆる公権力からできるだけ遠ざける必要があるということを考慮いたしまして現在の体制ができておるかと思いますけれども、毎年度の予算事業計画等をNHKが策定いたしまして郵政大臣提出をされて、郵政大臣は意見を付して国会で御審議をいただくという観点から、いわゆるNHKの経営関係につきましては郵政大臣はただいま申しましたようなものを通じてしか発言する場を持たない、こういう形に相なるわけでございます。
  245. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 現在の放送法は、放送番組の編集につきまして、国家の行政権力による干渉であるとか規制を厳しく排除いたしております。  私は、番組編成の独立性というのは何かというと、これは番組面への他からの介入や干渉を排除することをうたうだけでは本当の番組編成の独立性を保障することができないというふうに考えるわけでございます。つまり、組織、人事の独立と財政の独立がきちんと保障されて初めて真の番組の独立が確保されるというふうに考えるわけでございますが、NHKの実態から見まして、NHK自身はこの考えに対してどういう見解を持っていらっしゃるでしょうか。
  246. 堀四志男

    ○堀参考人 基本においては先生の御指摘のとおりでございまして、編成の自由ということが憲法の表現の自由から発し、そして放送法によって守られているということ、及び聴視料を微収するということで財政的独立を保っているということ、さらに国会の承認を経た経営委員会によって会長が任命される等、諸般の手続によりわれわれの自由というものが実質的にも形式的にも確保されているというふうに考えている次第でございます。
  247. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 この点につきまして郵政省の方はどのようにお考えになっているでしょうか。
  248. 平野正雄

    平野政府委員 放送法におきましては、NHKの重要な基盤と申しますのは、ただいま先生がおっしゃいました番組編集権の自主自律性、それから国からの独立性、こういった点であろうかと思っております。  放送法によってその点が守られておるというふうに考えております。
  249. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、再び郵政省にお尋ねをしたいと思います。  今回提案をされております特殊法人放送大学学園という放送事業者は、一つは、人事、組織の独立というのは一体どうなっているでしょうか。二つ目は、財政の独立というのは一体どうなっているでしょうか。三つ目には、番組編集の独立という点では一体どうなっているでしょうか。  この三つの点につきまして、一つずつ明快にお答えをいただきたいと思います。
  250. 平野正雄

    平野政府委員 放送大学学園は、正規の大学である放送大学設置いたしますとともに、全国的な大学教育のために放送を行うことを目的といたしております。  その施設運営には多額の経費を必要といたしますので、国の資金を用いざるを得ないものというふうに考えております。  しかしながら、放送大学学園政府からの独立性につきましては、国とは別の法人格を有しますいわゆる特殊法人でございますので、財務会計以外につきましては主務大臣も監督命令ができないなど、大学の自治の保障、番組編集の自由の見地から通常の特殊法人にはございませんような配慮がなされておりますとともに、その放送は教学の一部として行われるものでございますので、大学の自治によってその自律性、国からの独立性は十分に担保されておるものというふうに考えます。  また、人事の問題でございますけれども、これにつきましては、先ほど文部省の方から御答弁がございましたように、一般の特殊法人の例にならうという観点から現在のように規制がされておるというふうに承知をいたしております。
  251. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 番組編集の独立の点ではいかがでしょうか。お答えいただきましたでしょうか。私の聞き落としでしたらあれですが……。
  252. 平野正雄

    平野政府委員 番組編集の点につきましてもう少し補足をいたしまして御説明をいたしたいと存じます。  番組編集に当たりましての規範となります放送法四十四条三項は、これは放送の重要性にかんがみまして学園にも遵守をしていただくということにいたしておりますが、大学の自治、学問の自由という観点からいたしまして、番組審議会あるいは番組基準の策定の二点につきましては、それを排除するということにいたしております。  これは先ほど来申しておりますように、大学の権威、自治というものに支えられました学園の自律性に期待をいたしたいと存じておるところでございます。
  253. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは郵政省にお尋ねをいたしますが、国民の税金で運営をいたします放送大学学園という放送事業者を特殊法人とされた理由はどこにあるのでしょうか。
  254. 平野正雄

    平野政府委員 若干補足をしながら御説明を申し上げたいと思います。  この学園は放送を手段として大学教育を行います。また、大学教育を受けまして資格を取るつもりのない一般の方々も聴取をされる、いわゆる放送の普及を図るということを目的にいたしております。学問の機会均等という立場と放送の普及という立場からいたしまして、全国普及ということが図られるべきであろうというふうに郵政省としては考えておるわけでございます。そのためには、全国普及のための放送施設、これには先ほど来話がございますように相当莫大な経費が必要になるというふうに存ずるわけでございます。  また、この学園の目的一つといたしまして、この学園の番組編集権によるとはいいながら、国公私立大学の使用、利用に応ずるという形に相なるわけでございまして、非常に新しい形態の将来性のある大学に相なるわけでございます。そのためには、国が指導いたしながらこの学園の発展を期する必要があるということを考えるわけでございます。  こういう二つの点からいたしまして、国の経費を学園に導入するということが必要であろうというふうに存ずるわけでございます。
  255. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は午前中からの同僚議員の質疑をずっと聞かせていただいたわけでございますが、こういう中で文部大臣は、特殊法人だから権限を振り回すということはいたしません、慎重にやります、というふうに御答弁になりました。また、人事の問題につきましての答弁も、公共放送なのだから慎重にやります、というふうにおっしゃったわけですけれども、しかし、聞いておりまして、これでは何ら具体的な裏づけが私には感じ取れないわけでございます。  放送大学学園という放送事業者の、その財政的な基盤は政府が出資し補助金を出すわけです。また、組織や人事につきましても、学園の最高責任者であります理事長は、法第十条で文部大臣がこれを任命するということになっているわけです。これでは、この放送事業者には財政の独立も組織や人事の独立もそこにはないわけです。慎重にやります、御理解いただきたい、お願いしますと幾ら言われても、法に明記してある点から見ましてそんなものはうかがえないわけです。  これで放送法の第一条に明記されております放送の自主性が一体守られるのかどうか、郵政省放送の自主性が守られるという保障はどこにあると考えておられるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  256. 平野正雄

    平野政府委員 学園の放送大学教育のための放送に限られるわけでございますし、その制作につきましては、先ほど文部省の方からお話がございましたように、大学で発想いたしまして放送人と相談をしながら番組を編成していくという立場をとられるわけでございます。  しかも、先ほど来申し上げておりますように、放送面から申し上げますと、四十四条の三項は遵守をお願いするけれども、番組審議機関並びに番組基準ということにつきましては放送法の精神をくんでいただいて学園の中でしっかりやってまいりましょうと、こういうお話でございます。しかも、これは番組の編集権と学問の自由というものを踏まえましてこのような措置をとったわけでございますので、最終的にはどうしても大学の自治、学問の自由ということからくる自律作用に期待するところでございます。
  257. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、いま、放送についての全責任を負っている放送大学学園の最高意思決定機関であり、同時に最高の人事権を持っている機関であります理事長あるいは理事がどのように任命されるのかということを問題にしているわけです。  NHKの最高意思決定機関であり、最高の人事権を持つ機関である経営委員会というのは合議制の機関になっております。経営委員長は経営委員会の互選によって定められております。しかも重要なことは、その経営委員の任命というのは政府の直接任命ではなくて、国会の衆参両院の同窓を求める事項ということになっているわけです。このように組織あるいは人事の独立を担保することによって国家の行政権力からの介入の道を防ぐことができる、放送の自主性を保つという制度的な保障があるのだというふうに私は考えるわけです。このような制度的な保障がないままで、お願いしますとか、慎重にいたしますとか、情感に訴えられるようなことだけ幾らおっしゃっても放送の自主性は守られるものではないというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、引き続きお聞きをいたしますが、先ほどからあなた方は大学の自治が保障されているから放送の自主性が守られるというふうに胸を張って言っておられます。けれども、大学の自治というのは一体どういうもので、この法案では大学の自治がどのように保障されているのか、これは免許を与える側の郵政省からお答えをいただきたいと思います。
  258. 平野正雄

    平野政府委員 先ほどお話がございましたように、NHKにおきまして意思決定機関である経営委員会の人事及び事業計画等につきまして、郵政省経由の部分がございますけれども、国会のコントロール下に置いておるわけでございまして、NHKはあまねく全国に広範で多様な放送を行うことを目的としておりますために、政治的に公平が担保されるように経営委員会の人選を行うことが必要である。また、その業務につきまして、その財源が広く国民からの受信料によっておりますため、事業計画等につきましても直接国会のコントロールのもとに置くことにしておるということを申し上げておきたいと思います。  なお、大学の自治の問題につきましては文部省の方から御聴取いただきたいと存じます。
  259. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、大学の自治を守るということは、免許を与える側、郵政省には大変大切な認識が要ると思うわけです。  そこで郵政省に、大学の自治とは一体何でしょうかと聞いているわけです。
  260. 佐野文一郎

    佐野政府委員 私の方から……。
  261. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 文部省には私はその後に聞く予定をいたしておりますので、まず郵政省の方から、大学の自治を守るという点についてどう考えるのかという御意見を、どなたからでも結構でございますから披瀝をしていただきたいと思います。
  262. 平野正雄

    平野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、放送である限り四十四条の三項は遵守をしていただきたいと思うわけでございます。  それで、この四十四条三項の遵守に当たりまして、先ほど来お話が出ておりますように、大学の自治、学問の自由との関連におきましていろいろな問題があることは承知をいたしております。しかしながら、最終的には大学の自治に支えられました学園の自律作用といったものにやはり期待をいたしたい、そういうふうに存じておるわけでございます。
  263. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 文部省から、大学の自治を守るという点がいまの郵政省の答弁で十分であるのかどうか、不十分であればその点を補足願いたいと思います。
  264. 佐野文一郎

    佐野政府委員 法案の作成に当たりまして郵政省当局と協議をして十分慎重に取り進めているわけでございますが、まさに郵政省の御答弁にありますように、正規の大学として放送大学設置をされることがこの放送大学学園の行う放送というものの自主性を保障する一つの重要な要素になるわけでございます。そういう意味で、私の方では十分慎重に検討して法案を考えて、これで大学の自治の保障は大丈夫であるということを郵政省当局には申し上げてございます。  大学における学問の自由あるいは大学の自治の具体的な内容といたしましては、大学の学長あるいは教授、助教授等の選任が大学の自主的な判断に基づいて行われるということが重要な内容をなすものでございます。その意味におきまして、放送大学の教員の人事につきましても大学の自主性が尊重されなければならないということはもとよりでございます。  この見地から、法案におきましては、放送大学の学長、教員の任命方法等について学園の一般の職員と区別し、さらには私立大学の場合に対する法律の手当てとも区別いたしまして、国立大学の教員に係る教育公務員特例法の例にならった特別の規定、つまり評議会というものを設けて、その評議会で教員の人事の基準を定め、教員の人事については評議会の議を経る、議に基づくという手当てをすることによって学長、教員の人事について大学の自主性を尊重することを法律上明確に規定をいたしたわけでございます。
  265. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 大学の自治を守るということは、大学みずからが自律的に大学教育研究にかかわる問題を責任を持って決定する、そして執行できるということを保障することがその大切な自治を守る根幹の一つであるというふうに思うわけですね。このことを保障することだ、これなくして大学の自治は守れない、そういう根幹の重要な一つとして教員人事の規定というものがあると思うわけです。  この法律では教員人事権が教授会にはないのではないですか。制度として保障されていないのではないですか。それでは一般の国公立大学では教員人事はどのように行われているのですか。この点について郵政省の認識はどうなっておりますか。このことを御存じなのですか。知っているか知らないかだけで結構ですから、時間がありませんので、簡単に郵政省からお答えいただきたいと思います。
  266. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  先ほどNHKにおける意思決定機関である経営委員会の人事、事業計画等につきまして御説明をしたわけでございますが、他方、放送大学学園につきましては、本来大学教育は国が行うことができる業務でございまして、放送大学学園大学教育に限って考えてみますと国立大学として実施することが可能なわけでございますが、放送大学放送利用して大学教育を行うという従来の大学と異なる特質を有するものでございますため、これを能率的かつ効率的に運用するために特殊法人としたものでございます。  したがいまして、学園の財務、会計及び学園の役員の人事などにつきましては、国の規制のもとに置くこととした特殊法人の一般例にならうことが適当であろうというふうに存じておる次第でございます。
  267. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 あなたは先ほど同僚議員に対してもずっと答弁をしてこられました中で、放送の自主性を守ります要件の一つ大学の自治を挙げておられたわけです。しかし、大学の自治とは何ですかと中身を聞きましたら内容すら十分に答えられないで、公権力の介入の道を防ぎ、なおかつ放送の自主性を守るというふうな立場がどうして貫かれるのでしょうか。私はいまの御答弁で一層危惧を持つわけでございます。  大学の自治を保障するために教育公務員特例法によりまして教授会にゆだねられた教員人事権を放送大学では教授会から奪っておいて、どうして大学の自治が保障されるのですか。私はこの点は絶対に納得することができません。わずか九人から十五人の評議会によります人事では、教授会の行う人事と比べて恣意が働く余地が残されているではありませんか。私は、郵政省放送の自主性を保障することの一つとして大学の自治を挙げましたので、大学の自治についてお聞きしましたが、きょうの政府答弁では、放送の自主性が守られるのかどうか、そういう点で納得ができないわけです。  それにも増して、放送事業者が、先ほどから指摘してまいりましたように組織や人事の独立さえもない。放送法第一条で明記されているような放送の自主性がこういうことで保たれるのだとは私にはとうてい考えられないわけです。同時に、たくさんの問題点があるということがずっと今日まで判明をしておりますにもかかわらず、文部省は、先ほどの答弁でも、四十四年以来郵政当局と相談をして準備を進めてまいりました、準備段階は限界に達しております、学園のスタートあるのみですというふうな意味の御答弁があったわけです。しかし、今日の論議で明らかになりましたことは、教育に関することは文部省でおやりなさい、電波に関することは郵政省でおやりなさいといっても、一般日常ふだんならばこれで済むと思うのですが、しかし、放送大学学園放送大学と名がついているのですから、このような分担制で放送大学設置を急ぐということに私は大変危惧を感じるわけです。  文部省大学の自治を守るなど教育サイドのことはもちろんのこと、文部大臣を先頭にしてよくよく放送法理解していただきたいと思います。郵政省側は放送事業者に免許を与えるという問題ではなくて、国民のニーズにこたえて教育文化を嵩めていくにはどうあるべきなのかということを、これも大臣を先頭にして十分に認識をしていただく必要があるというふうに思うわけです。こういう両方の見解や認識の統一があって初めて準備完了と言えるのではないでしょうか。これでは、四十四年からやっております、もう十年もやってまいりました、やったやったということにはならないではありませんか。何年やっても準備はまだまだ不十分だというふうに私は思うわけです。  時間が参りましたけれども、まだ、問題点といたしまして、役員の欠格条項、政党人を排除している問題、放送法四十四条三項と教授の自由、発表の自由、あるいはNHKの受信料不払いにつながる問題等々があり、これは同僚議員もずっと質問してこられましたし、私も聞いてまいりましたが、依然としてその疑問を払拭するという御答弁を聞いたようには私は思わないわけです。  ですから、質疑をきょうで終わるのではなくて、きょうが初めてで最後ということになるのではなくて、今後も継続してこの問題について連合審査をするとか、あるいはそうまでできなかったら参考人を呼ぶとか、逓信委員会でも集中審議を行うとか、十分に審議を尽くす場を私は委員長お願いをいたしまして質問を終わりたいと思います。よろしくお願いをいたします。
  268. 石野久男

    ○石野委員長 ただいまの藤原委員からの御要望については、後ほど理事会で御相談いたします。  なお、久保委員からの御要望の件も同様に理事会にお諮りいたすことといたします。  次に、伊藤公介君。
  269. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 放送大学の誕生、スタートは、これまで大学というものが緑のキャンパスの中で行われてきたという大学像から、まさにそれぞれの茶の間で講義を受けられる、しかもどんな地域にあっても、あるいはどんな状況下に置かれてもひとしく高等教育が受けられるという、そういう意味では教育、特に高等教育に対する大きな画期的な作業であることは間違いがないというふうに私は思います。  もちろん、その中ではすでに非常に大きな期待をしている多くの国民もいるわけでございまして、いろいろな将来に対する大きな期待をすでにかけている方々の中には、いままで日本大学は入学することは非常にむずかしいけれども卒業はかなりやさしいという、受験地獄というものもあったわけでありますが、そうしたものがかなり解消されるのではないかという期待、あるいはひいては日本の学歴社会というものに対して非常に大きなインパクトを与えるのではないかという期待があるわけでございます。  実は、文教委員会の議事録を私も読ませていただきましたが、内藤文部大臣は、「いま試験地獄で悩まされている子供たちがだれでも大学に入学できるような機会を与えたい、」という答弁をされているわけでありますが、こうした放送大学に対する国民の期待に対して、将来確実にそうした期待にこたえられるかどうかという展望をまず伺っておきたいと思います。
  270. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 伊藤さんのおっしゃるようにいま時代放送時代ですから、おっしゃるように試験地獄で悩まされているのですから、この放送大学によって国民が試験地獄から解放されて、高い教養を身につけて、国際的に信頼と尊敬をかち得るようなりっぱな日本人をつくりたいというのが私の願いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  271. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 実は、この放送大学構想が生まれたのはまさに日本じゅうを大学紛争が吹き荒れていた時代でありますから、十年前にこの構想スタートしているわけであります。その後、すでに同僚委員のいろいろな質疑の中での御発言がありましたとおり、そうした将来に対する明るい展望と同時に、やはり非常に画期的な作業であるだけに多くの心配な点も含んでいるわけであります。  そこで、高等教育に対する機会均等の場を与えるという非常に強い趣旨があるわけでありますけれども、具体的にいろいろなお話を伺ってまいりますと、本当に日本全国で地理的に恵まれない方々がひとしくこの放送大学の講義を一体いつどういう形で受けられるのかというきちっとした計画がどうも明らかにならないで、放送大学ができるととにかく茶の間で講義が受けられますよ、もう受験地獄に遭わなくても大学を卒業できますよということだけがどんどん一人歩きをしていっているが、それでは九州で、北海道で、あるいは僻地で実際にこの教育を本当に受けられるのだろうか、いつどういう形で受けられるかということに対する具体的な計画について、いまスタートする非常に大事なときでありますので、ひとつきちっとお示しをいただきたいというふうに思います。
  272. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘の点については、けさほど来再三お答えを申し上げておりますように、現時点でそれを具体的に明らかにするということがきわめて困難な状況にあるわけでございます。  しかしながら、重ねてのお答えになりますけれども、文教委員会におきましてもこの点については早急に文部省考え方を示せという御指摘を再三いただいているところでございますので、現在、私どもは、いろいろな仮定を置いてのことにならざるを得ませんけれども、一つ目途を示すべく鋭意努力をしているところでございます。
  273. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 実は、この質疑文教委員会で私ども新自由クラブの西岡幹事長と文部大臣の間での質疑になっておりまして、この審議が終わるまでに具体的な計画を示してもらいたいという強い要望をしてきているわけでありますけれども、この審議が終わるまでにはきちっとした具体的な計画をお示しいただけるのですか。いかがですか。
  274. 佐野文一郎

    佐野政府委員 どこまでの具体性を持ってお答えができるかという点につきましては現在非常に苦慮をしているわけでございますけれども、いまの先生の御指摘の衆議院文教委員会における質疑の経緯というものは私どもは十分踏まえて対応いたしたいと思っております。
  275. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 この構想が出発をしてからすでに十年になるわけでありますし、いまスタートはしようという非常に大事な時期でありますが、そもそもの趣旨が、大都市というよりはむしろ地方の、なかなか高等教育を受けられないという立場の方々にひとしく高等教育をという趣旨が非常に強いわけでありますから、スタートをする前にできるだけきちんとそうした御計画を明らかにしていただきたいというふうに思います。  それから、具体的な問題についてお尋ねをしたいと思いますけれども、実は、日本大学がマスプロ化して、大ぜいの学生に一人の教授がマイクを通して講義をするという傾向が非常に強くなってまいりまして、教授との突っ込んだマンツーマンの話し合いがなかなかできないという悩みを抱えてきたわけでありますが、今度の放送大学はまかり間違えば一方通行になりまして、まさに資格を取るだけのものになってしまうという危険性もないわけではない。  そこで、学習センターというものがどういう役割りを果たすかということも非常に重要な問題だろうと思いますけれども、学習センターについては具体的にどういう形でお進めになるのかをお示しいただきたいと思います。
  276. 佐野文一郎

    佐野政府委員 学習センターにつきましては、現在考えております第一期の計画においては、それぞれ放送実施されます県に一カ所、東京都におきましては二カ所、計六カ所の学習センターを設置して、そこにおいてスクーリングを実施をしようということを考えているわけでございます。卒業要件としての面接授業の履修との関係から申しますと、仮に最短期間の四年間で卒業するとした場合には、卒業を目的とする全科の履修生は、授業科目の種類にもよりますけれども、おおむね毎週一回二時間程度のスクーリングが必要になるわけでございます。こういった学生をそれぞれのセンターにおいて計画的に受け入れてスクーリングを実施していくということになります。  きわめて大ざっぱに申しますと、各センターに所属することになる学生は、第一期計画の場合には全体で三万でございますから、六センターそれぞれ約五千人の学生対象といたしますけれども、実際にスクーリングを受講する学生の数は、これも仮定を置いての話でありますけれども約四千人、これが毎週一回二時間程度の面接授業を受けることに相なるわけでございます。  この四千人を一学級三十人程度のクラス編制をするといたしますと、全部で百三十クラスになります。一日二十一クラスについてスクーリングを行うことで対処できることになるわけでございます。  これによりますと、学習センターに参集する学生の数は、一日平均、平日と日曜日とで違いますけれども大体六百人、多いときで八百人程度のものでございます。これに対して専任の教員並びに非常勤の教員によりまして十分対応することができる、そのように考えております。
  277. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今日の日本大学というものは、ほとんど二十代の年齢の若い人たちに高等教育の場というものは独占されているという状況であります。  これはアメリカだけではありませんけれども、たとえばアメリカの大学のクラスに行けば、三十人から三十五人のクラスの中には必ず五人から、多いところには十人くらい四十代、五十代の人がおり、これは主婦を含めてもちろん資格を取るという方もいらっしゃるし、まさに職場で非常に必要な研究をもう一度若い時代に戻って現役の学生と一緒になって研究して、それをまた職場に持ち帰るとか、あるいは日常生活で本当に教養を身につけたいという方々も大学の教室の中で現実に一緒に講義を受けているというのがあたりまえな光景になっているわけであります。  そういう意味で、放送大学というものは、先ほど申し上げたとおり、日本教育界、特に高等教育に対しては非常に大きな影響力があるだろうと思う。制度の改革、あるいは文部省と日教組のいろいろな話し合いが行われてきましたけれどもなかなか教育の改革は遅々として進まないし、むずかしい問題を含んでいるわけでありますから、そういう時期にこの放送大学がそういう役割りを果たし得るかどうかという非常に大事な問題を含んでいると私は思っているわけです。いよいよこの放送大学スタートしたところが、実質的には最初目的がなかなか達せられなかったという結果になってしまうとこの意味がなくなってしまうわけでありますから、いま学習センターについてのお話を伺いましたけれども、そうした日本の将来の教育、特に高等教育をどうするかということを基本に置いて学習センターの構成というものを今後十分御配慮をいただきたいというふうに思います。  そこで、ちょっと前後いたしますけれども、何かお急ぎのようでございますので、先にNHKさんと郵政大臣一つだけお聞きしたいと思います。  実は、この放送大学が進められてまいりますと、当然、いまはやり言葉のように生涯教育という言葉がずいぶん使われておりますけれども、生涯教育教育文化というものがもう線引きのできない時代に入ってきていると思います。私は実はきょうもNHK教育テレビの番組をずっと見てまいりましたけれども、生涯教育的なものは実際にはもう現実にずいぶんやられているわけであります。  この放送大学がそうした形で進められていったときに、将来NHKのこの教育テレビとの関係は間違いなく大きな問題になる。これはNHKさんも心配をされていると思いますけれども、NHKだけの問題ではなくて、放送大学を進めるに当たっては、NHK教育テレビとの関係を将来どうしていくかということをいまきちっとしておく必要が当然あると私は思っておりますけれども、NHK郵政省にそれぞれのお立場からお話を伺っておきたいと思います。
  278. 堀四志男

    ○堀参考人 お答えいたします。  午前中からの質疑の中で、政府当局からは、放送大学放送放送大学のための放送に限り、そして既存の放送秩序に対して影響を極力少ないようにする、配慮するというお話が繰り返されておりました。私たちはそう期待しております。したがいまして、私たちの行っております教育放送についての影響もそうなるように希望はいたしております。  しかしながら、では全く危惧はないかという点を考えますと、そういう危惧がないというふうに言い切ることは余りに楽観的にすぎると私は思います。私たち経営の責任からもそういう危惧に真剣に対応しなければいけない段階だというふうに承知しておりまして、そういう検討を進めておりますが、いまその結果についてお話し申し上げる段階でないことをお許し願いたいというふうに思っております。
  279. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  放送大学学園法案の策定に当たりましては、従来の経緯、関係者の意見等を十分に踏まえました上で、放送大学学園放送内容大学教育のための放送に限定をいたしまして、現行放送体制に及ぼす影響を最小限にとどめるよう措置をした次第でございまして、報道、教育、教養、娯楽等の総合的な番組を放送いたしますNHK放送とは相当異なるのではないかというふうに存じておるわけでございますが、この点につきましては、将来運用段階におきまして必要な調整が放送事業者間において行われることを期待しておるところでございます。
  280. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、ついでに文部大臣にも伺っておきたいと思いますが、先ほど申し上げたとおり、大先輩の文部大臣に若い世代の私がそんなことを申し上げることは大変恐縮ですけれども、教育はもう大学教育に限るなどという言葉で掌握のできない、そういうところに教育は来ていると思うのですね。つまり、学校の教室の中の教育というものが、もっと現実的な教育、つまり教養とかあるいは文化とか、もっと学校を開放しろという声が非常に強い中でどこで線引きをするかなどということがますますできなくなってくる時代になるのではないかというふうに私は思うのですね。  そうしますと、まさにNHK教育テレビでこの生涯教育あるいは教養講座というものをやっている分野まで大学教育というものが立ち入ってくる。どこまででその歯どめをするなどということがまさにできない時代に来ているのではないかというふうに思いますけれども、文部大臣のお考えはいかがでしょうか。
  281. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 御趣旨の点はよくわかるのですけれども、確かに教育番組が広がってきたことは事実でございますけれども、今回の場合は大学教育のみに限定すると言っているのですから、その一線だけは私どもは絶対に守りたいと思っております。
  282. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 NHKの方、どうぞお帰りください。  この学園の目的あるいは業務について伺いたいのでありますけれども、学園の目的にある「大学教育機会に対する広範な国民の要請にこたえる」ということは、これは生涯教育を行うということになるのですか。そういう意味にとってもよろしいのですか。
  283. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学教育というのはもとより放送大学教育課程に沿って、それに従って行われるものでございます。  大学教育内容そのものではございますけれども、その対象とするところは非常に広範な年齢層にわたり、また職業もいろいろの方が勉強をされるわけであります。しかも勉学をされるされ方も、いわゆる全科の履修生、正規の在学生として卒業までを目的とされる方と、特定の科目なりあるいは科目群を選んで履修をされようとする方と、両方受け入れるわけでございます。したがって、放送大学実施をする大学教育というものがいわゆる生涯教育という面からの要請にこたえるものにならなければならないということは御指摘のとおりだと思います。
  284. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、その学園の行う放送は、放送法第二条の「定義」の第五号の学校教育のための放送ですね。  学校教育のための放送であって、社会教育のための放送ではない。いわゆる生涯教育のための放送ということにはならないのでしょう。
  285. 佐野文一郎

    佐野政府委員 学園の行う放送は、いま申しましたようにまさに教育番組の中の学校教育番組、しかもその中の大学教育の番組に限定をされるわけでございます。しかし、実際にそれを視聴される方は放送大学学生だけではなくて、一般の国民の方ももちろんそれを視聴して勉学をすることができます。ですから、受け手の側から見た場合に、受け手が生涯教育機会にそれを利用するということをお考えになるということはもちろんございますし、放送大学のカリキュラムというものがそういう広範な国民の要請にこたえられるようなものに組み上げられていかなければならないということがございます。  したがって、大学の開設するコースも御案内のような三つのコースを選んでいるわけでございます。しかし、そのことは放送大学の行う教育番組が社会教育番組をも含むものであるということでは毛頭ございません。大学教育大学教育課程に準拠した大学教育内容というものが、視聴者の側からすれば、いま先生が御指摘のような形で活用されることは十分にあるであろうということでございます。
  286. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 確認の意味でお伺いしておきたいのでありますけれども、この学園の行う放送は、放送法第四十四条第五項にうたわれている学校向けのものとこれは同じものなのか。それから学園の目的にある「大学教育のための放送」、その「業務」にある「放送」、その「業務」にある「大学における教育に必要な放送」、これは同じものを指しているのか。確認をしておきたいと思います。
  287. 佐野文一郎

    佐野政府委員 私の御説明があるいは不適切だったかもしれませんけれども、教育番組の中の学校教育番組、その中の大学教育の番組でございます。  ただ、これは大学向け番組ということではないので、放送大学のカリキュラムに準拠をした放送大学学生のための授業が放送を通じて行われる。あるいは認可を受けて行います目的達成のための業務、いわゆる三項の「業務」でございますが、これも特定のたとえば私立大学の通信教育部のための放送実施をするということでございます。
  288. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 放送の運営について一、二点お伺いをしたいのですけれども、放送番組の編集真任は免許主体である学園が負うわけですね。  番組内容について学園と大学の意見が違う場合——いろいろ御議論がありましたけれども、意見が違ったという場合にはどうされるのですか。
  289. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど大臣からもお答えを申し上げましたように、番組編集の最終責任はもちろん学園の側、理事長にあるわけでございます。そして大学教育内容に関しましては、これは大学側が自主的に編成をしていかなければならないという非常にむずかしい問題になるわけでございます。  したがって、これを内部的に円滑に調整していく努力を行いますために、いわゆるコースチームの編成によっての教学側のスタッフによる教学の内容の決定、さらにそれを番組に移していく過程における放送側のスタッフとの協力、その間における両者の意見の調整、それを通じていまの困難な御指摘の問題に対する対応を図っていこう——大臣からお答え申しましたように、両者の意見が対立するということはもちろんございましょうけれども、その対立をいまのような作業を通じてできるだけ論議を闘わせながら一つの結論を得て、両者の合意の上で番組として送り出されていく、そういう形を何としてもとるということ、そういう決意をしておるわけでございます。
  290. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 重要な問題点ですからずいぶん御議論された点でありますけれども、最後に、放送法の不偏不党、政治的な中立と大学における学問の自由との問題、このかかわり合い、放送大学の将来にとってこれは非常に重要な問題でございますけれども、その最終的な判断はどこがされるのか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  291. 佐野文一郎

    佐野政府委員 結局、いまお答えを申し上げたことに尽きるのであろうと私は思います。  具体の番組の内容というものがつくられていく過程というのはいま申したようなことでございますが、大学の教授の自由といま御指摘の四十四条三項との関係というのは、やはり大学における講義の一つの制約として四十四条三項があるということは事実でございますけれども、そのもとにおいて、大学大学たるにふさわしい教授の自由というものを大学の自制のもとに実現をしていくということは可能であると考えているわけでございます。
  292. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 法的な問題ではなくて、具体的な問題でもう一点だけ伺いたいのですけれども、それは授業料の問題です。  たとえば交通遺児の人たちあるいは特別の身障者の方々に対する授業料の免除ということについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  293. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学の授業料は、額自体が、これもお答えを申し上げましたように、私立大学の通信教育において徴収されている平均的な授業料の額ということを考えておりますから、現在の国立大学が徴収している授業料の半額以下のものになるとは思います。しかし、それでもなおかつ授業料の免除ということは御指摘のように考えていかなければならない課題でございますが、この点は今後関係省庁協議をしながら、国立大学の例に準じて措置をしていくという方向検討をしたいと考えております。  現在、御案内のように、国立大学では、経済的理由によって授業料等の納付が困難であってかつ学業優秀という者について、あるいは風水害等の災害を受けて授業料等の納付が困難であるといった場合には授業料を免除することができるということにいたしておりますが、放送大学におきましてもこうした国立大学の例に準じて授業料免除の制度を設ける、その制度の中で御指摘のような場合についても対応するということを考えてまいりたいと思います。
  294. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうした方々に対しまして温かい御配慮をいただくと同時に、放送大学の所期の目的が十分達せられますように、関係省庁の十分な連絡のもとに、当初に御質問させていただきました将来に対する具体的な計画をきちっと示されて、そして多くのいろいろな知恵を集めて、大きな成果が得られますように皆さんの今後の御努力をお願い申し上げまして質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  295. 石野久男

    ○石野委員長 木島喜兵衞君から発言を求められておりますので、これを許します。木島喜兵衞君。
  296. 木島喜兵衞

    ○木島委員 きょう連合審査会を開いていただいて、この問題を専門にやっていらっしゃる先生方のお話を聞いて、所管しておるわれわれ文教委員会からすれば大変勉強になったのでありますけれども、ただ、ぼくらがいままで審議をしてきた面から言うと、新しい解釈なり問題も出てきたように思うのです。  たとえば四十四条三項の解釈にいたしましても、いままで文教でなされた以上の新しい解釈をなされたようでありまして、その二、三のことを申しますれば、一定の長い期間において政治的公平が守られればいいのだ——それは大学計画でありますから、一定の長期のことはできましょうけれども、そのことがもし仮に新しい解釈だとするならば、それでは系統的でない民放やNHKの場合には一体その解釈でいいのかどうかということはわれわれは判断できません。  あるいは放送法の二条による教育放送とは学校教育と社会教育である、しかし認可のときは一〇〇%学校教育とするとおっしゃるけれども、しかし現実的にはだれでもが聞けるのでありますから、学生以外の者が聞けばそれは成人教育であります。レベルが高いか低いかは、成人教育にはレベルの差は幾らでもあるのでありますから、たとえばそういう問題は、これはお聞きしますと放送法の小委員会等もずっと十年も持ってこられたという中で、これを所管をし、この法律に対して結論を出さなければならないわれわれには実はその結論を出し得ない問題が、その他にもありますけれども、きょう審議をした中でもそういう問題が幾つか出てきたと思うのです。  あるいは、もともと言えばこの三本の系列がいいのかどうかということ、このことではNHKでは危惧をという言葉をおっしゃいます。しかし、郵政省は影響は最小であるとおっしゃる。ぼくらはわかりません。そのことが三系列がいいのか二系列がいいのか、今日の放送体系の変革と基本的につながってくる。そのことが今日までの放送法小委員会の議論の中でなされてきたのかどうかわかりませんけれども、そういうものがあったわけであります。  私がこういうことを言いますのは、放送法電波法で、これがいいと専門で審議される皆様がオーケーを出されなければ出発はできないわけです。放送がなければ放送大学はあり得ないわけでありますからね。しかし、そのことは皆さんは専門なんでありますから、このことは先ほど集中審議やあるいは連合の継続やあるいは参考人という話がございましたけれども、その辺はどういうことになるかわかりませんけれども、たまたま委員長席に着いていらっしゃるのは逓信委員長でいらっしゃいますので、どうか理事会で諮って——そういう問題が文教にかかっておるものでありますから、文教にかかっているけれども文教は専門じゃないのでありまして、その問題がわからなければわれわれは結論を出し得ないわけでありますので、どうかそういう点を十分に御勘案いただきたいというお願いを、ここにおります文教側の人たちと相談をしながら実はお願いを申し上げたわけであります。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  297. 石野久男

    ○石野委員長 承りました。  以上をもちまして本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後六時九分散会      ————◇—————