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佐野政府委員 結局、
放送大学設立の目的として掲げていることに尽きるわけではございますけれども、若干補足して申し上げますと、いろいろな観点からわれわれは
放送大学に対して期待をしているわけでございます。
一つは生涯学習の観点がございます。これについては、まず、正規の
大学教育としてレベルの高い生涯学習の機会を提供するということがございます。それは、
一つは、
社会人なり家庭婦人に対して生涯の任意の時期における
大学進学の機会を保障するということでございますし、また
大学進学という形をとらなくても、
大学教育のレベルでそれぞれ
社会人、家庭婦人が
放送大学の
放送を通じて勉強をしていくことが可能になるということでございます。
それから、これも御
議論が出ておりますように、高等
学校の卒業生がこれまでのように十八歳という時期において
大学進学にかけるというようなことではなくて、いわばこれらの人々に対して、これまた生涯の任意の時点で
大学進学の機会を保障することが可能になるわけでございますから、これによって自分の自発的な意思に支えられた進学の気風というものをつくり出していくことができるのではないか、そしてそれが高等
学校へのいまのような進学の
構造をより弾力的なものにし、流動的なものにすることができるのではないかということがございます。
それから、そうした
放送大学の
放送に対する期待と同時に、
放送大学はいろいろな利用の
可能性のある
大学教育のレベルでの教材を提供することが可能でございます。これは
印刷教材もそうでございますし、ビデオカセットあるいはオーディオカセットの形で
放送大学の
教育の内容を提供することが可能でございますから、これを
社会教育の
関係なりあるいは企業内の
教育なり、そういった面で積極的に利用することができればまたそういう方向が開かれるわけでございますから、それによって生涯学習という観点から見た
社会教育なりあるいは企業内
教育の新しい展開をより充実していくということに
放送大学の機能を活用することができると思います。
それから、もう
一つは、
既存の
大学教育の改善ということがございます。これも
一つには
放送大学のそうした
印刷教材なり視聴覚教材というものを提供する、それを各
大学が自主的に自発的に利用してそれぞれの
大学における
教育の方法、内容の改善というものを進めるということが可能でございます。これはすでに実験番組の段階でも、ある
大学においては積極的にそのビデオテープを活用することによって一般
教育の内容の改善を図っている実例等もあるわけでございます。また、
既設の
大学の
教育における
教育方法の改善ということについても、
放送大学で進めているさまざまな
教育工学的な成果の導入といったものが十分お役に立つだろうとは思うわけでございます。
それから、もう
一つは、やはり
大学とのかかわりで、単位の互換といったものを進めるという面における
大学の現在の
あり方をより開かれたものにしていくという、その道があるわけでございます。これについては、
放送大学の側でまず
既設の
大学なり短大なりですでに修得をした単位を認定をする。それは
放送大学の側においての判断でできるわけでございますからそういう形が
一つ進められるでございましょうし、さらに
既設の
大学と
放送大学との間の単位の互換というものが考えられる。あるいはそれが
既設大学相互間の単位の互換の推進にも資する結果になる。それを期待するわけでございます。
それで、ここまでは現行の
制度のもとでできるわけでございますが、現在、いわゆるこれからの
高等教育ということを考える場合に、いわば中等
教育後の
教育として、広い広がりを持ってその
あり方を考えていくということが当然に
課題になることが一般に識者に
指摘をされているわけですが、そのときに、たとえば専修
学校というものと正規のこれまでの
大学教育の機関とがどのような相互の役割り分担をし連携を持つかというようなことがあるわけでございますけれども、専修
学校での学習成果を
大学側が評価するということを今後考えるとすれば、まずその
検討の場として最も適切なのは
放送大学ではなかろうかと思います。
そのことは、さらに進んで、これもその必要性が非常に言われております単位の累積加算制というようなものを考える場合におきましても、
放送大学というものはそういう単位の累積加算のもとにおける学位の授与機関としては最も適当な機能を果たし得るものではなかろうか。これらのことは今後の
課題でございますから、もちろん十分に慎重な
検討を経ながら事を進めなければなりませんけれども、
可能性としてはそういうものが
放送大学についてはあると私たちは考えているわけでございます。
それから、これもきのう御
議論がございましたように、学習
センターというものがそれぞれの地域に開かれるわけでございますから、その学習
センターにおける
教育活動というものを通じて、これがいわば
放送大学のそれぞれの地域の拠点というものになり、単にそこで受動的に
スクーリングが行われるということだけではなくて、より積極的に、そこに集まる
方々がそこでそれぞれの地域の文化なりの観点から積極的な活動をされる場になるということも期待できることであろうかと思います。
それから、これも御
議論になったことでございますけれども、通信
教育なり夜間
教育というようなものを今後より充実していくという観点からしましても、
放送大学の
放送教材を活用する、あるいは学習
センターを利用する、
放送大学との単位の互換を行うといったことを通じて、
既設の通信
教育あるいは夜間
教育の充実ということについても
放送大学は十分に機能を果たすであろうということを期待するわけでございます。
いま申し上げましたようなことは、直ちにそれができるものと、十分なる
検討を重ね、あるいは実績を見ながら進めなければならないものとございますけれども、いずれにしても、
放送大学を通じあるいは
放送大学を場として、さまざまな
高等教育の改善のための試みを前向きに進めることができるということについては私たちは非常に大きな期待を持っているわけでございます。