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1979-05-24 第87回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十四日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 鈴木  強君    理事 愛知 和男君 理事 青木 正久君    理事 島村 宜伸君 理事 堀内 光雄君    理事 金子 みつ君 理事 武部  文君    理事 中川 嘉美君 理事 中野 寛成君       鹿野 道彦君    佐野 嘉吉君       中村  靖君    小川 仁一君       馬場猪太郎君    草川 昭三君       宮地 正介君    藤原ひろ子君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  佐野 国臣君         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         文部省大学局学         生課長     石井 久夫君         文化庁文化部宗         務課長     安藤 幸男君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 岡部 祥治君         厚生省社会局老         人福祉課長   大西 孝夫君         厚生省児童家庭         局企画課長   朝本 信明君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 川崎 幸雄君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       芝田  博君         自治大臣官房企         画室長     金子 憲五君         自治省税務局府         県税課長    吉住 俊彦君         特別委員会第二         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   長田 武士君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     長田 武士君     ――――――――――――― 四月三日  公共料金値上げ抑制に関する請願(亀岡高夫  君紹介)(第二六五一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  為替差益還元による物価安定に関する陳情書  外十一件(第  二二三号) 五月十二日  公共料金値上げ抑制に関する陳情書外三件  (第二六二号)  為替差益還元に関する陳情書外一件  (第二六三号)  北海道における生活必需品物価対策等に関す  る陳情書(第二六四  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 鈴木強

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 当委員会で約一年半かかりまして、各党の御協力を得て無限連鎖講防止に関する法律というのが議員立法成立をいたしました。昨年の十一月十一日に公布をされまして去る五月十一日から施行されたわけであります。この法律の審議を通じまして私どもネズミ講防止に関して各省庁、特に関係する七省庁啓蒙活動に十分力を入れてほしい、こういうことをお願いをしてきたわけであります。各省庁でどういう啓蒙活動をやっていただいたのか、この点を最初経企庁警察庁文部省自治省、この四つの省庁から簡単に御説明をいただきたいと思います。
  4. 井川博

    井川政府委員 経済企画庁ネズミ講防止に関する啓発総合調整に従前どおり当たるということになっておりまして、われわれといたしましても十一月に本法公布されました直後から関係省庁といろいろな連絡をとりながらそのPRに当たったわけであります。  私たち経済企画庁関係でやりましたことを簡単に申し上げますと、一つは、自治体等を通じて一般周知徹底をする必要があるというふうなことから自治省とも連絡をし、そして共同通達を出しますと同時に、都道府県広報担当課長会議であるとか、あるいはわれわれが持っております消費者行政地方ブロック会議等を通じまして都道府県周知をいたしました。それとは別に総理府広報の方にお願いいたしまして新聞広告を中央、地方、それぞれ十一月あるいはさらに四月というふうなことでやったわけでございますし、週刊誌も十二月、三月、四月と、ネズミ講禁止されている、そしてそういうものが危険であるというふうなPRをやりました。さらに総理府広報を通じましてのテレビも十一月、十二月、一月、三月というふうな、ほとんど毎月にわたってやったわけでございます。  さらに、私たち国民生活センター地方消費生活センターを通じて消費者教育啓発というふうなことをやっておるわけでございますが、この国民生活センターにおきましても、ネズミ講禁止というふうなリーフレットを十万部ばかりつくりまして、関係方面に配付いたしましたが、さらにテレビで十二月、一月と三回にわたってネズミ講禁止されたという趣旨の放映をいたしました。ラジオでも十一月に五回にわたってTBS系ラジオで放送いたしましたが、そのほか、テレホンサービスであるとか、生活行政情報というふうな手段を通じまして、一般方々ネズミ講というのは危険があり、かつまた、これは法律禁止されたのだというふうなことをPRいたした次第でございます。
  5. 佐野国臣

    佐野説明員 広報宣伝につきましては、ただいま経企庁の方からお話がございましたいろいろな方法がございますが、この種の方法を講ずるに当たりまして、事前に私どもの方からも資料を提出いたしましたり、あるいはやり方についての御相談に応ずるというふうな形で、いわば共同的な広報宣伝に寄与させていただいておるという問題、それから、都道府県でもそれぞれの知事部局各種広報の方には警察庁共同名義で、あるいは名前は特に出しませんが、実態的には共同というふうな形で、各種広報宣伝をするという形で対処してまいっております。
  6. 石井久夫

    石井説明員 文部省といたしましては、ネズミ講に加入する学生につきまして周知徹底を図るということで、まず五十三年の六月十六日付で「「ねずみ講」に係る学生啓発について」という通知全国の国・公・私立の大学長あて、それから高専高等学校長あて局長名ネズミ講危険性についての周知徹底方の要請をいたしております。  それから、法律施行になります直前でございますが、五十三年の十二月二十五日付で、同じく全国学長それから高専校長あてに「ネズミ講マルチ商法に関する学生啓発について」、無限連鎖講防止に関する法律周知徹底方を要請した次第でございます。  それから、昨年の十月から十一月ぐらいにかけて全国規模学生に関する厚生補導のいろいろな会議がある際に、このネズミ講のこと、それから無限連鎖講防止法律に関することについていろいろ趣旨説明をし、学生への周知徹底をお願いした次第でございます。  特に、関西地区につきましては、京神地区私立大学学長懇談会方々に昨年十一月十七日に特にお集まりいただきまして、ネズミ講禁止法趣旨説明をお願いいたして周知徹底をお願いしたということをいたしております。  それから、私どもの方で「厚生補導」という機関誌を発行しておりますが、これによりまして五十三年の十月号と五十三年十二月号におきまして、ネズミ講の問題、それから法律趣旨成立経緯等につきまして、いろいろ周知徹底を図りまして、学生への周知徹底を各国・公・私立大学にお願いした次第でございます。
  7. 金子憲五

    金子説明員 地方公共団体啓蒙活動についてでございますが、先ほど経済企画庁の方から御説明がございましたように、企画庁あるいは総理府広報室の方から直接地方公共団体に対して指導が行われているところでございますが、それ以外に経済企画庁の方と私どもの方とで連名で、「無限連鎖講防止に関する啓発活動について」ということで地方団体文書を流しております。それ以外に知事会会議を通じまして、都道府県への広報公聴活動を活発に行うようにという趣旨通知をいたしております。  それ以外、広報公聴事務担当者会議通達趣旨徹底を図るということを行いまして、現在各府県におきましては、新聞を通じての啓発活動を行っている県が十四、テレビラジオによりましての啓発活動を行っている県が十九県、それから刊行物によるところが三十九県、その他有線放送あるいはテレホンサービス、カセットテープ、こういったものを使いましてやっているところが九県というふうなことで、ほとんどの府県におきまして無限連鎖講に関する啓発活動をやっておるという状況でございます。
  8. 武部文

    武部委員 いま四省庁からそれぞれの啓蒙活動実態についてお話をいただいたわけでありますが、特に経企庁のいままで出されたパンフレットの中で、これ一番りっぱにできているだろうと思っております。大変好評のようであります。また、文部省大学局の方は、数回にわたって局長名通達を出していただいて、関西における学生被害が相当減った、非常に効果があったというようにも理解ができるわけでありまして、そういう御努力に対しては私ども関係者としては感謝を申し上げたいと思っております。それについても、この啓蒙活動というものは経済企画庁総合調整をやっていくということが必要でありますから、いよいよこの法律施行になったわけでありまして、ネズミ講はこれで完全に禁止をされる、また同時に、違反をしないようにという啓蒙活動が重要になってくると思います。  この間、五月二十一日の朝日新聞に次のようなことが載っておりました。私は企画庁長官にちょっと感想をお伺いしたいのですが、この五月二十一日の朝日新聞は何と書いておるかというと、このような法律施行されたのに再び「天下一家の会の被害者を救う」と称するネズミ講が今度出てきたというようなことから、被害がつい先日出たわけであります。そのことに関連してこう書いてあります。「政府やマスコミは、こうしたいわば消費者犯罪について啓発しつつあるが、さらにひとつ提案したい。高校三年の卒業前にホームルームで一時間か二時間、都会に巣食うワルの実態を教える。新卒生を受け入れた企業も、同様の新人教育をする。大学の新入生に対するオリエンテーションもしかり。消費者行政消費者運動とも、消費者犯罪を、正面から取り上げていないのだから。」こういう記事がついこの間載っておりました。  私は、これを見て全く同感でありまして、問題になりましたマルチネズミ防止の問題については、啓蒙というのは一省庁だけの問題ではない。したがって、政府も民間も団体も挙げてこういう問題に取り組むべきだ、このように思うのであります。私は後で、起きておる具体的な問題を言いますから、そういうことがありますから、この啓蒙というものが大変必要な段階になったと思うので、その取りまとめ役である経企庁長官としての見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  9. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この法律の精神を生かすという意味のみならず、社会的ないろいろな害悪が現実に過去においても出ておったわけでございまして、こうしたことに対する啓蒙活動はきわめて重要なことであると思います。関係省庁とも十分連絡をいたしまして積極的に当たってまいりたいと思います。
  10. 武部文

    武部委員 私どもがこの法律をつくるときに一番心配をしたのが例の駆け込み勧誘の問題でありました。最後にこの法律公布をいつからにするかということで各党間で意見の相違があったのですが、制定から公布の日まで約六カ月間という日時を置いたのであります。その間に駆け込み勧誘というものが出てくる心配がある、あるいはまたネズミ講自身内部紛争が一番心配だということも申し上げたわけであります。  そこで、これから具体的な問題をお伺いするわけですが、私ども承知している例の熊本県にあります宗教法人大観宮、これがやっております大師講太子講なるネズミ講ですが、このものが、法律が制定された後、三月、四月のころにもやはりネズミ講活動をしておる。この具体的な例として、当委員会参考人として出席をいたしました悪徳商法被害者対策委員会、こういうもののところに相変わらずこういう被害が出ておる、これはことしの三月、四月の被害者相談事ですが、そういうものが法律施行されてからでもいまだに出ておる。こういう具体的な事実が発生をするということは、私どもとしては非常に残念でならぬわけであります。  そこで、四月二十七日の読売新聞の夕刊に出ておりましたが、千葉県で新手ネズミ講が出てきて被害者が出ておる。それは先ほどちょっと朝日新聞記事を読んだ中にございましたこの問題に関連するのですが、日来御堂陽講委員会、こういうものができております。防止法施行された今日、すでに千葉県警ではこのネズミ講監視の目を強めておられるわけですが、五月十五日の京葉読売版で報道されております日来御堂というのは、日来御堂と書いてピラミッドと読むのだそうであります。まことにうまく考えついたもので、日来御堂ピラミッドと読むようになっている。ちゃんとここにございますが、そういうものが発生をしております。これはどういうことかといいますと、この新聞によりますと、同会の活動を重視した県警生活課は、すでにこの代表の藤平という男から事情聴取を行っておるということであります。私が持っております日来御堂ピラミッド資料によりますと、ネズミ講やり方宣伝文句、これらはすでに問題になりました天下一家の会と全く同じものであります。内容は全く同じことがここに書いてあります。いわゆる行動する実践団体である。助け合い運動だ。「人口には限りがあるとお思いでしょうが、次々に子供が生まれ人口は将来に向かって無限であり最後ということはありません。」と言っている。これはまさに天下一家の会と同じことを言っているのであります。この文句はまさにうり二つの内容を持っておる、このように見てよかろうと思います。  さらに、五月十日には東京でクローバー商事というのが警視庁摘発をされました。また、大阪では生活環境改善国民協会というネズミ講があって、悪徳商法被害者対策委員会がすでにこの内容を入手しているということもわれわれは聞いております。  警察庁が今日までいろいろと御苦労をなさったということはわれわれもよく承知をしておりますが、いま私が申し上げたような具体的な動き千葉県なり大阪方面現実に起きておる。また、先ほどから申し上げるように相変わらず被害が出ておるということがございますが、このネズミ講の数と活動状況あるいはネズミ講内部紛争状況、また、先ほど申し上げました千葉県の新手ネズミ講が、施行されました法律第二条の構成要件に該当するかどうか、この点について警察庁はどのように思っておられるか、このことをお伺いしたいし、取り締まりの体制が現在どのようになっておるか、これを警察庁からお答えいただきたいと思います。
  11. 佐野国臣

    佐野説明員 本法施行の前と現時点では相手方の動き方には相当差があるように見受けられます。ただいま委員から御指摘がありました千葉県のピラミッド建設に名をかりたいわゆるネズミ講まがいの事案でございますが、この点につきましても、昨年の九月からことしの一、二月にかけてある程度動きはあったようでございます。そして新聞などで、あるいは先生からもいま御指摘がありましたような、そのまま続けると本法にひっかかるという可能性が多分にございましたので、一応県警察の方からも関係者にある程度の実態などを事情聴取いたしました結果、そのまま継続すれば違反になりかねないということで警告をいたしてございます。それから会の内部でも、本法施行になる間際になりまして、世論その他警察動きというものを踏まえて、やはり会の運営としてはやめるべきではないかという異論が出まして、現在では、会の方針としては、新法施行後はこの種の活動を停止するというふうに取り決められたということを私ども聞いております。そこで私どもの方も、そういう形で本当におやめになるならば、従来使っておったような看板だとかそういったものは引っ込めろという警告をいたしておりますが、現在そういった趣旨に従いまして看板も外しておるという状況がございます。  なお、法律関係の問題で申し上げますと、確かに御指摘のとおり、本人は元天下一家の会のいわばネズミ講に入っておった会員でございますので、その手法はおおむね天下一家の会ないしは大師講でやっておったような形の講の運営といいますか、そういう形でございましたので、法律的には相当問題があるという観点で私どもは対処してきた次第でございます。ただ、いずれにしましても、新法施行後は活動を停止するという取り決めないしはそういった状況にございますので、これはその後の状況を私どもも十分把握してまいりたいというつもりでおります。  次に、警視庁関係の、いわゆるパーフェクト・メンバーズ・クラブという団体があったという問題でございますが、これも活動はもっぱら昨年の暮れからことしに入ってもせいぜい一、二月ごろまでの段階であったように思います。ただ、これにつきましては、いろいろ事情調査いたしました結果、本法の適用はないが、いわゆる出資法関係違反という事実が確認できましたので、出資法違反という形で先般処理いたしたという状況でございます。  それから、大阪の方にもまだあるのではないかという問題でございますが、この問題につきましても、現在と過去の経緯というものをにらみ合わせながら、現在なおどの程度やっておるか、これの調査あるいはそういったものに対して関心を持って見守っておるという状況でございます。   ほかにもいろいろ御質問がございましたが、たとえば施行前後あるいは法の公布前後に何か特別な動きがあったかという問題でございますけれども、法が公布された直後には、私の現在の記憶では、数字は正確に持っておりますが、全国で三件ほど、講の内部で、金を返せ、返さないというふうな講の会員同士の間でのトラブルは若干ございました。ただ、講元に対する取りつけ騒ぎ的な形で  の大きなものはなかったように聞いております。  なお、府県の各支部段階で今後の継続の問題を議論した際に、いろいろ口頭でホットな議論がなされたというふうな状況は聞いておりますし、いわゆる取りつけ騒ぎあるいは暴行、傷害ざたというような関係で二、三件問題がありましたが、あとその他のものは大体無事に、いろいろな中止の決議なり、そういった方針を比較的平穏に決議しているような状況承知しております。  それから、現在どんな状況かという問題でございますが、若干さかのぼって申しますと、昨年十一月に法が公布された当時、警察が把握しておりました無限連鎖講組織というものは、天下一家の会あるいは第一相研支部が三十一あって、都道府県では五十九というふうに申し上げたと思います。その他の組織が九都道府県に九組織ということでございましたが、現時点で私ども承知しております事務所なり連絡所などが残っておるものは、いわゆる天下一家会関係では十二都府県で十六ということになっております。先ほどの三十一、五十九という数字が、一応十二、十六という形に置きかわってきておるというように承知しております。  それから、その他の組織で申し上げますと、一県一、過去の九県九という数字が一県一というふうな状況でございます。これにつきましては、天下一家の会以外のその他の組織の中では、大阪の例と同様、私どもの方もある程度関心を持って見ておるわけでございますが、いずれにしても、法施行後の現在、なおネズミ講を継続する疑いがあり、しかも看板などがかかっているものに関しては、まず看板なり事務所の閉鎖ということを私どもの方でも指導してまいってございます。現在のネズミ講関係の情勢は、大ざっぱに言いますと以上のようでございます。  総括的に申し上げますと、やはり段階的に、昨年の法公布当時にはまだいささか残っておったというような状況が、法の施行直前あるいは施行後になりますと、日を追ってそういった活動のいわば形式的な面、少なくとも事務所とか看板といったものも減ってきておりますし、活動実態もそういった外形に合わせてなくなってきているという状況があろうかと思います。もちろん特異な例も二、三私どもの方でも関心を持って見ておるものもございますが、全般的には法の効果が相当発揮されておったというような感じでございます。
  12. 武部文

    武部委員 確かにこの問題は、駆け込み勧誘の問題や、内部抗争や、あるいは姿を変えて形を変えて出てくるという、いろいろなことが予想されてきました。われわれは、この法律を一日も早く施行することによって、将来発生するであろう被害を食いとめなければならぬ。どこかで線を引けば、それだけの被害者が出て損をする人が出るということは、残念ながら、これは仕方がない事実だということも承知の上で、この法律議員立法に踏み切ったわけです。  この問題を取り扱っておられる弁護士の推定では、被害者六十万人、被害金額約二千億円という膨大な損害を残して、ネズミ軍団はついに壊滅するというようなことが新聞にも報道されておりますが、被害総額二千億というのは、推定して大体そういう金額になるというわけです。問題は、この法律施行された後も、網の目をくぐって、これに類似したようなことが、すでに申し上げたように出ておるわけですから、厳重に監視をし、そしてこの法律趣旨に基づいて、警察庁としては徹底的に摘発をしていただきたいということを特に要望しておきたいと思います。  そこで、これから私は宗教法人大観宮の問題について質問を逐次やっていきたいと思いますが、まず文化庁宗務課長にお伺いをいたします。  あなたは、昨年の十二月四日付で熊本総務部長あて文書を出しておられますが、この中で、「施行前といえども」――もちろんこれは禁止法のことですけれども、「宗教法人活動としてふさわしくない行為のなされることのないように指導方よろしくお願いします。」こういうことをこの文書の中で述べておられます。あなたは、この宗教法人大観宮というものは、大師講ないしは太子講なるネズミ講をやっておった事実を知っておられて、それが宗教法人活動としてはふさわしくないというふうに言っておられるわけですが、このことは、文化庁の発行しておる「文化庁月報」百二十六号の中にも、これはあなたの署名ですが、「宗教法人はその本来の使命を自覚し、かかる法律の有無に関係なく公共福祉を害するような行為のないよう深く自戒する必要があろうと思われる」こういうことを述べておられます。あなたは、こういう認識の上に立って、熊本県に対してこの文書を出されたわけですが、これを受けた熊本県は、一体どのようなことをやったというふうに承知しておられるでしょうか。それを最初に伺いたい。
  13. 安藤幸男

    安藤説明員 熊本県に昨年の十二月四日付をもちまして、無限連鎖講防止に関する法律について通達を出したところでございますが、その後熊本県は、この大観宮に対しまして、直ちには処置を講じることはなかったのでございますが、この無限連鎖講がなされないようにということについて見守っておったのでございます。  幸いにして、ことしの四月十一日に至りまして、ネズミ講終結宣言というものが出されましたわけでございます。そこで、この法律施行の翌日になりまして、熊本県は大観宮に職員を派遣いたしまして、内村健一氏に対して、この法律違反することのないようにという直接指導を行ったというふうに聞いております。また、内村健一氏からも、太子講は今後一切行わないという回答があったというふうに、熊本県から報告を聞いております。熊本県は今後とも、大観宮の動向につきまして十分注意して見守っていきたいというふうに報告をしてまいっております。
  14. 武部文

    武部委員 あなたの文書は、去年の十二月四日付であります。その後、ことしの四月十一日の彼らの総代会の話が、いまあなたの口から出たわけですが、それまでの間に、この宗教法人大観宮というものが、ネズミ講である大師講なり太子講というものをやって被害が出ておったという事実は、あなたもよく承知の上だと思います。したがって熊本県は、あなたの文書が出されてから大観宮がやっておることについて、何にも警告なり、あるいはそれに対する処置をしていなかった、たまたま向こうが、このための法律ができて、これに対してとてもこれからネズミ講を存続することは不可能だというので、自発的に総代会を持って、終結宣言を一カ月前の四月十一日にやった、こういうことのようです。したがって、あなたの趣旨というものは、熊本県によって、その後何にも生かされていなかったというふうに、私はいまのあなたのお答えを聞いておって、そのように理解いたします。それはそれで結構です。  そこで問題は、宗教法人というものは、第六条の規定によって、公益事業のほかに収益事業を行うことができます。しかし、宗教法人は本来非営利法人でありますから、宗教法人の行う事業、そういうものもおのずからその種類なり運営方法なりそういうものについてのあり方があるはずだというふうに思います。ですから、宗教法人が事業を行うためには、事業の種類、収益金の使途、それを記載して所轄庁の認証を得ることになっているわけです。宗教法人法第十二条七号でこういうことになっておるわけですが、大観宮の規則にネズミ講という事業が書いてありましょうか。あなたはそれを御承知でしょうか。
  15. 安藤幸男

    安藤説明員 書いてございません。
  16. 武部文

    武部委員 これのどこを見てもそういうことは書いてないのです。したがって、所轄庁の認証のない事業をやっておって熊本県はこれに対して何らの措置もしていなかった、こういうことだけは間違いない。これは不法な行為だというふうにあなたはお認めになりましょうか。
  17. 安藤幸男

    安藤説明員 法律施行された以後になりますれば確かに違法行為ということが言えるかと存じますが、施行前の段階では違法行為ということまでは言えないのではないかというふうに考えております。
  18. 武部文

    武部委員 それはどういうことですか。宗教法人がやってはならぬことをやっておる。宗教法人上の問題として私は申し上げておるのであって、宗教法人としてやってはならぬことをやっておるということについては、この法律施行されようが施行されまいがそのこととは関係なく、宗教法人としての行為は逸脱しておるというふうに私は指摘をするわけですが、いかがですか、その点は。
  19. 安藤幸男

    安藤説明員 仰せのとおりきわめて遺憾な行為であるというふうには考えるのでございますが、直ちに違法な行為であるかということになりますと、法律施行されません段階におきましてはそこまでは言えないのではないかというふうに考える次第でございます。
  20. 武部文

    武部委員 私とあなたと見解が違います。それではこれから具体的にその話を進めてみたいと思います。  宗教法人は、公益事業にしろ収益事業にしろ事業をやる場合には、常に事務所に事業に関する書類を備えつけておかなければならない、これは法律二十五条二項五号にそれを義務づけておるわけです。したがって、これに違反する場合には八十八条四号で罰則があるわけですが、もちろん調べてみなければわかりませんが、一体そういうものが、書類が備えつけてあるというふうにお考えでしょうか、それとも全然そういうものかないというふうにお考えでしょうか、どうでしょうか。
  21. 安藤幸男

    安藤説明員 法律に従いまして必要な書類及び帳簿については備えつけていなければならないものと考えております。
  22. 武部文

    武部委員 それは、あるかないかということはあなたの方は調べられたことがありましょうか、ないですか。
  23. 安藤幸男

    安藤説明員 熊本県は調査した事実はないようでございます。
  24. 武部文

    武部委員 所轄庁には立入調査権というものはありますか、ございませんか。
  25. 安藤幸男

    安藤説明員 ございません。
  26. 鈴木強

    鈴木委員長 答弁者は、委員長の許可を得て発言してください。
  27. 武部文

    武部委員 宗教法人には年次報告義務がありますか、ございませんか。
  28. 安藤幸男

    安藤説明員 それもございません。
  29. 武部文

    武部委員 宗教法人には所轄庁の立入調査権もない、年次報告の義務もない、こういうことになりますと、設立された後の宗教法人内容ということについてはほとんど何にもわからない、いまのあなた方の御答弁を聞いておって私はそのように思います。これは大変おかしいことだと思うのです。  宗教法人法八十五条に、調停、干渉、勧告、誘導する権限を与えるものと解してはならないというのがあります。このことは、信仰、規律、慣習、そういうものは宗教上の事項とか役職員の任免等についてであって、事業運営が違法であったり適正を欠いておるという場合にも行政指導というものができないというふうにこの八十五条を理解しておられるのでしょうか。その点はいかがですか。いま私が申し上げたように全く違法なことをやっておる、適正を欠いたやり方をやっておるということについても、宗教法人法の八十五条のいま私の申し上げたそういう内容についてあなた方がどういう理解をされておるか、これをちょっとお聞きしたい。
  30. 安藤幸男

    安藤説明員 八十五条につきましては、これは行政庁の行政指導を排除するという規定であるというように理解しております。
  31. 武部文

    武部委員 この八十五条というのは、「この法律のいかなる規定も、文部大臣、都道府県知事及び裁判所に対し、宗教団体における信仰、規律、慣習等宗教上の事項についていかなる形においても調停し、若しくは干渉する権限を与え、又は宗教上の役職員の任免その他の進退を勧告し、誘導し、若しくはこれに干渉する権限を与えるものと解釈してはならない。」こういうふうになっておりますね。それはいま私の申し上げたとおりです。  しかし、現実にこのような違法行為をやり、不当なことをやっていることについて、都道府県知事あるいは所轄官庁がこれに対して何らの措置をとることができないというふうにあなた方は理解しておられるのですか、そういう考え方で何もしなかったということですか。
  32. 安藤幸男

    安藤説明員 もちろん法律違反するような事実があれば、これはこの解釈規定のいかんにかかわらず、当該法律の観点からその違法性を指摘するということはできるかと思います。今回のネズミ講につきましては、そこまでまだ違法性の事実がないということでございますので、宗教法人法が信仰の自由と政教の分離という観点から定められている趣旨に従いまして、まずは宗教法人の自主的な改善の措置を見守るということで見守っておったわけでございます。
  33. 武部文

    武部委員 余り長いやりとりは時間をとっていけませんから、私が端的に聞きたいのは、ネズミ講というものは、後で申し上げますが、長野判決が出たり、静岡判決が出たりして、まさにこれは公共の秩序に反するとか不当だとかいろいろなことが出たわけですね。こういう宗教法人が、そういう大師講だとか太子講というネズミ講をやっておる、それ自体が間違いじゃないか、そういうことは宗教法人としてはやるべきことじゃない。それをあなたの方は知っておりながら、なぜ、所轄官庁である熊本県を指導してこれについての警告を与えたり停止を勧告したり、そういうことをしなかったか、このことを聞いておるのであります。
  34. 安藤幸男

    安藤説明員 熊本県に対しましては、この法律施行直後に、先ほど御指摘のありましたとおり文書をもって指導通達を出しておるわけでございます。ただ、その後熊本県が直接に大観宮に対して何らの措置をしなかったということについては、きわめて遺憾に思っております。
  35. 武部文

    武部委員 あなたと私のやりとりが行き違いになっておるようですけれども、余り時間もないようですから、次に移ります。  この宗教法人についていろいろな問題が起きておることは私も承知しております。しかしこの問題は、財産の処分問題とかあるいは文化財の処分に関する問題とか人事の問題とか、そういう問題で宗教法人が世間の不評を買うとかいろいろなことがあるということは承知しております。しかし、その問題というのは、どちらかというと法人意識の欠如とか管理能力の不足とかあるいは独善的な運営が原因だとか、そういうことが宗教法人にいろいろな問題が起きておるところの内容のようです。  しかし、今度の私がいま問題にしている宗教法人大観宮ネズミ講問題というのは全くそういうこととは異質のものであります。あなたは、宗教法人にとってふさわしくない行為、こういうふうに言われておるわけです。ふさわしくない行為どころかやってはならない行為、それがネズミ講だ、宗教法人としてそういうことはやってはならぬ、そういう行為です。ですから、もっと端的に言えば、倫理に照らしてはやれない行為だというふうに見なければならぬ、こう思います。何人もやってはならぬ行為だ、これは私が先ほど申し上げたように、長野地裁で公序良俗に反する、こういう判決がありました。静岡地裁では不法行為であるという判決です。静岡地裁の方はさらに一歩出ておるわけですね。そういう判決が出たわけです。  あなたがおっしゃるように、信仰の自由というのは憲法第二十条でまさに保障されております。しかし、宗教法人法の第一条第二項、この中で、「この法律のいかなる規定も、教義をひろめ、儀式行事を行い、その他宗教上の行為を行うことを制限するものと解釈してはならない。」こういうふうに言っておりますね。また同時に八十五条においては、先ほどちょっと触れましたけれども、この法律のいかなる規定も文部大臣、都道府県知事等に対して調停権や干渉権や勧告権、誘導権を与えるものと解してはならないとして、最大限に信教の自由というものを保障しておる。これは確かにそのとおりです。しかし、これらの規定というものはあくまでも宗教法人の宗教上の行為あるいは人事に関し、そういうものであって、その他のことで違法なことや適正を欠くことがあれば当然行政権が介入して指導していけるというふうに私は思うのですが、なぜあなた方は大観宮ネズミ講をやめさせるような強力な指導ができなかったのか。熊本県や文化庁は何でそんな弱腰で、この問題について措置をしなかったのか。私はこれをあなた方に聞きたいのです。答えてください。
  36. 安藤幸男

    安藤説明員 熊本県に対しましては、先ほどのとおり指導通達を出して、かかる行為が行われないようにという指導をしたわけでございますが、熊本県当局としては、所轄庁としてやはり最大限に宗教法人の持つ信仰の自由を尊重するという観点から、法律施行に至るまでは一応監視を続けるという態度でいたものと考えております。したがって、法律施行の直後に至りまして、先ほど申し上げましたとおり、大観宮に直接職員を派遣して代表役員に対してそのような行為のないようにということを申し入れを行っておるわけでございます。したがって、所轄庁としてとった態度としては、明らかに違法であるということが言えない段階ではやや指導の鋭さを欠いたというきらいがあるのではないかというふうに考えております。
  37. 武部文

    武部委員 私はあなたのおっしゃることがよくわからぬのだが、宗教法人ネズミ講などをやるということは違法だと思っていないのですか。私はさっきからずっと述べておるのだが、宗教法人大観宮なるものがああいう講をやっておったということは違法だとは思っておられないのですか。あなたはさっき違法であると断定できぬということをおっしゃったが、いまでもそう思っておりますか。
  38. 安藤幸男

    安藤説明員 法律施行されますれば明らかに違法になるわけでございますが、施行されるまでは、その事実をもって直ちに違法であるということは言えないのではないか、こういうふうに考えます。
  39. 武部文

    武部委員 私の質問とあなたの答えはちょっと違うのですよ。ネズミ講は確かにこの法律によって禁止されることになりました。私が言っておるのは、宗教法人なるものが――本来の宗教法人というものは、おわかりだと思うのですが、さっきから述べるようにもっとほかのことをすることなんですよ。そうでない、全く定款に何にも書いてない、はっきり言えば金もうけのために人をだましてそういうことをやっておることが宗教法人として正しいことですかということを聞いておるのですよ。そうだと思っておりますか。
  40. 安藤幸男

    安藤説明員 ネズミ講に類する行為、もちろんそれは望ましい行為だとは思っておりませんし、宗教法人としてやめるべき行為であるというふうに考えております。したがいまして、昨年の十二月の通達におきましても、施行前といえども宗教法人としてふさわしくない行為については、そのようなことがないようにということで指導通達を出したわけでございます。
  41. 武部文

    武部委員 その通達を出されるまではよかったのですが、その通達を出されたって熊本県は何にもやってないのですよ。確かにあなたの方の文書は、ふさわしくない行為だから注意せよということをおやりになっておるが、私も調べてみました。熊本県は何にもやってない。何にもやってないから大観宮はわがままに好きほうだいなことをやって、そして太子講大師講をやっていまだに被害者が出ておる。宗教法人という名に隠れてこういうことをやっておるのですよ。そのことをあなた方に言いたかったのですよ。ですから、あなたとここでやりとりしていると話が食い違いになってしまって時間ばかりたってしまいますが、われわれはこの問題について大変大きな関心を持っておるのです。  それでは、このことについてもう一点お伺いいたしますが、われわれは宗教法人の皮をかぶったいわゆるネズミ講だと見ておるわけです。財団法人天下一家の会という名前でネズミ講がやられましたが、あのときも財団法人という名前が非常に問題になりました。幸いにしてこれは職権で抹消されまして、東京の靖国神社の後ろにある十階建てのネズミ講の本拠のビルの屋上にある財団法人天下一家の会という大きな看板も財団法人というのが真っ白に塗られて天下一家の会だけになりました。私はあそこを毎日通っておるからよく見ておる。ようやく財団法人というのが抹消されました。財団法人という名に隠れて彼らはこのネズミ講全国的に非常に普及させた。また、財団法人という名にだまされてたくさんの人が入った。これは被害者の多くの真実の声の中に出てきておるわけです。今度も宗教法人という名前で一これは見てもわかるように同じことなんです。これは三位一体、判決の文章に出ておるとおりですよ。大観宮天下一家の会・第一相研、この三つは同じなんです。そして大会をやればみんな同じようにスローガンを書いて、三位一体でこういう大会をやっておる。これは何も大観宮だけが特別に別な組織でも何でもないのですよ。ましてやその責任者は同じ人間なんです。だから長野地裁の判決でも静岡地裁の判決でも同様に、これは同じものだ、不法だ、公序良俗に反するという明確な判決が出ておるのです。にもかかわらず、彼らは今度は宗教法人という名前でネズミ講を広めて多額の金を巻き上げようとした。このことについて、宗教法人の取り締まり官庁であるあなた方の方はただ一片の通達を出して、全然何もされておらない。そして被害はどんどん出ておった。幸いにして当委員会でこの法律が満場一致で通って施行されたわけで、このことは明らかに全国民的なコンセンサスがあるからこそわれわれはここで各党全員一致でこの法律を通したわけです。そういうことを考えますと、いままで天下一家の会というものが財団法人の皮をかぶった、そういうことをわれわれははいだわけですが、同じように宗教法人を前面に出してきて普及活動をやっておる、こういうことは間違いない。したがって、ただいま申し上げましたように、宗教法人という名にだまされて入った、そして宗教法人という名前を使って普及活動をやった。これは宗教の布教活動だというようなことを彼らは若干言っておるようですけれども、とんでもない間違いだ、そのようにきめつけてよかろうと思います。まさに宗教の自由、信仰の自由という権利の乱用だ、そして公共福祉を著しく害する行為だと見てよかろうと思います。したがって、これは宗教法人法の主たる目的、第二条「教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成する」こういう目的とは全く似ても似つかぬことだと言ってよかろうと思います。したがって文化庁は、熊本県を督励して宗教法人法第八十一条一項二号、これを発動させて解散させるべきだ、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  42. 安藤幸男

    安藤説明員 八十一条の一項二号と申しますと「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたってその目的のための行為をしないこと。」という二つの要件があるわけでございますが、宗教法人法に規定された解散命令というものは、従来きわめて限定的な解釈をいたしておるわけでございます。したがいまして、大観宮が明らかに宗教法人法その他の法令に違反し、かつ著しく公共福祉を害するということが明白に認められる場合にはこの第八十一条の規定も含めて考えていかなければならないというふうに考えております。
  43. 武部文

    武部委員 先ほど申し上げましたように、宗教法人大観宮の規則にもそういうことをやるというのは一つも書いてありませんね、あなたもお認めになったとおり。そして、何遍も言うので口が酸っぱくなるほどですが、公序良俗に反するとか不法だとかという判決が出た、そういう行為をやっておったということは紛れもない事実なんです。あなたも大師講なり太子講というものを彼らがやっておったということはお認めになっておるわけですし、現実にここに彼らのパンフレットもあるわけで、そういうことをやっておった。これは全く目的を著しく逸脱しておることは間違いないのです。宗教法人の仮面をかぶってそういうことをやっておったということが紛れもない事実だとするならば、八十一条一項二号によって所管官庁である文化庁熊本県に対して督促をしてこの条文を実行させる、そして解散をさせる、こういうことをやるのは当然じゃないですか。私はそう思いますけれども、いかがですか。
  44. 安藤幸男

    安藤説明員 御指摘のように「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした」というふうに書いてございますので、著しく逸脱した行為に該当するかどうかということを検討してまいらなければならないというふうには考えております。
  45. 武部文

    武部委員 私はいままでたくさんの書類を持ってきて、彼らが発行したものです、私がつくったものじゃないのでして、ここにあるのですから……。そういうことによって被害もたくさん出ておるし、ネズミ講をやっておったことは間違いない。そういうことが宗教法人に許される、そういうことをやってもいい、あなたは宗教法人の所管庁である文化庁の責任者の一人ですが、そう思われるのですか。そんなことを宗教法人がするというようなことは全くの誤りで、そんなことは許されないことだし、国民だれが考えても、そんなことをしておったのか、こういうふうに思うと私は思うのですが、あなたは著しく逸脱した行為だと思われないのですか。文化庁はいまでもそう思っておるのですか。
  46. 安藤幸男

    安藤説明員 ただ、現在そういった行為を行っているかどうかという点になりますと、すでに四月十一日付をもちまして終結宣言も行っておりますし、法律の適用にはならないわけでございます。したがって、現にやっていないと言っておるわけでございますから、それをもってこの条項に該当するから直ちに解散命令を出せということにはならないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  47. 武部文

    武部委員 もうやめましたというから、これは逸脱行為じゃない、そんなばかなことはないのですよ。それじゃどろぼうをして、盗んだ品物を後で返しました、それでどろぼうじゃないということになるのですか。それと同じことじゃないですか。そういう悪いことをしておったのですよ。まさに宗教法人という仮面をかぶってやっておりたのだということははっきりしたのですから、そういうものは宗教法人――それだったらあと言いますが、大観宮は基本財産というのは昭和四十八年十一月にはわずか五千万円だったのですよ。それが去年の九月に基本財産は八十八億七千七百万円にふえておるのですよ。ここにちゃんと資料がありますが、彼らの謄本に記載された金額ですよ。わずか五千万円であった基本財産が五年後に八十八億七千七百万円になっておる。何で八十八億七千七百万になったのでしょうか。これは五十二年三月三十日に長野判決が出た。その長野判決で、公序良俗に反するという判決が出たその直後に彼らは臨時総会を開いて、ネズミが臨時総会を開いて、第一相研から大観宮へ本部の建物と保養所を移すことを決議しておるのですよ。これは必ず手入れがある、そういうふうに見たから今度は財産を全部大観宮に移動しておるのですよ。ですから全くネズミ講と三位一体というのはこのことなんですよ。財産隠しに大観宮というものを使っておる。そういうものをあなた方は調べておるのでしょうかね。そうして、法律ができたのだからこれはもうやめると言ったのだからこのまま見逃すというようなことは許されぬと私は思います。  もう一つまた具体的なことを後で事実を出しますが、そういうことを隠れみのにしてやっておるものを、これからどんどんあっちからこっちから被害者が裁判に訴えるでしょう。訴えても、そういう宗教法人大観宮なるものに財産をみんな隠してしまって、裁判で勝ったって、勝訴になった者は金が入ってこないのですよ、・こういうことをして隠しておるのだから。こういう隠れみのに乗っておる大観宮なんというものが宗教法人の仮面をかぶっておることをあなた方が見逃すということがおかしいのですよ。こんなものは八十一条の規定によって即刻解散を命令すべきであると思うのです。どうでしょうか。もう一遍聞かせてください。
  48. 安藤幸男

    安藤説明員 確かに、御指摘のとおりネズミ講がきわめて遺憾な行為であるということは言えるわけでございますが、それが違法であるというふうには法律施行されるまでは言えないわけでございます。したがいまして、それをもって直ちに解散命令ということは無理なのではないかというふうに考えるわけでございます。
  49. 鈴木強

    鈴木委員長 ちょっとあなた、質問者の質問趣旨をよく理解してやってほしいんですね。あなたは、終結宣言をしちゃったからそれでもう終わった、こう言っているんですね。宣言しても実際に生きておるのかどうなのか。その後の状態について文化庁では調べているのですか。
  50. 安藤幸男

    安藤説明員 調べております。
  51. 鈴木強

    鈴木委員長 では、それをもう少しわかりやすく言ってください。
  52. 安藤幸男

    安藤説明員 先日、と申しますのは五月十六日でございますが、熊本県の総務部文書課長に上京してもらいまして、文化庁におきましてこの大観宮についての種々の事情聴取をしたわけでございます。その際に熊本県の課長が言いましたことは、大観宮は、四月十一日のネズミ講閉塞宣言からではなくて、もうすでにそれ以前からネズミ講については実施しておらない、これは内村健一氏がはっきりと明言をいたしておる事実でございます。したがいまして、熊本県当局としては、いままでやられてきた事実はともかくとして、そのやらないという言明をとりあえずは信用して見守っておる。もちろん、今後ネズミ講を再びやるような事実があればこれをもとに解散命令も含めた措置を考えていきたい。ただし、現在の時点ではそういった事実は認められないので見守っておるということでございます。
  53. 武部文

    武部委員 私の時間はもう十五、六分しかありません。この問題は私は非常に重要だと思っております。さっきから申し上げるように、被害者がどんどん出てきて、推定二千億と先ほどちょっと言いましたけれども、各地で集団訴訟が行われるということから、損失金の返還を求めた訴訟が起きる。各地で勝訴が出ても金が返らぬようにちゃんと財産が隠匿され、分散されておる。その一つが大観宮であることはもう紛れもない事実ですね。宗教法人として彼らが仮面をかぶってやっておるということを知っておりながら、また、調べないで知らぬというなら調べておらぬわけですから、そういうことをしながら宗教法人としてこれは適格だというようなことを言われることはやはり間違いだと私は思うのです。こういうことは許されていいはずはないと思います。あなたと何遍やってておっても同じことですが、この法律施行されたこととは関係ないのですよ。宗教法人としてやっていいか悪いかということを言っておるんですよ、現実にやってはならぬことをやっておったのだから。そういうことがわかっても、これに対して何らの処置もしないというようなことは私は納得できないのです。ですから、改めてこの問題はまた取り上げていきたいと思いますが、もう二つほどございますから、はしょってお伺いいたします。  自治省関係についてお伺いいたしますが、天下一家の会・第一相研が、さっき申し上げるように、裁判に訴えられて各地で破れておりますね。その関係か、従来、天下一家の会・第一相研の資産であった例の本部の建物や十九カ所の保養所、これを宗教法人大観宮に移してしまっておりますね。保養所が全国十九カ所にあったのがみんな今度は大観宮の所有になっておるようです。  そこで伺いたいのですが、不動産取得税というものと固定資産税というものはどういうふうになっておるか。これに課税しておられるでしょうか。これも時間の関係で、答弁をいただく前にこの具体的事実を指摘しますから、御答弁いただきたい。  この課税に対して「各県側の措置はまちまちだ。「神殿などはつくったが、利用形態は以前の保養所と同じ」として青森、新潟、秋田、山形、岩手の五県が不動産取得税を課税。山形県は七百七十万円の差し押さえの強硬策に出た。青森など三県には大観宮側が納税に応じている。だが、北海道と神奈川県は「信者の修練道場」「神主が常駐し、祈とう所を備え、宿泊者は信者」などを理由に宗教施設と、“認定”して非課税と決めた。「虚偽の申告でない限り非課税決定は変更しない」(北海道)という。一方、宮崎県は近く約五百万円の不動産取得税を課税する見込み。熊本、静岡、沖繩など八県は「課税の方向で調査検討中」という。」「大観宮側は青森県などの課税通知に応じて、非宗教活動施設であることを一時認めた形だったが、各県の足並みの乱れを突いて反転、攻勢に出ようとしている。」こういう新聞報道がされました。まさに各県まちまちです。この十九の保養所はネズミの宿泊所です。財産の隠匿です。ですから、自治省は、こういう各県まちまち、てんでんばらばら、税金を取るところ、取らぬところ、向こうの言い分に負けてしまって税金を取らぬというようなところがあるわけですが、これについてどの程度承知しておられますか、これを自治省として指導する考え方がありますか。
  54. 吉住俊彦

    ○吉住説明員 大観宮に対する課税の件でございますが、先生御指摘の十九カ所よりも一カ所実はふえておりまして、ことしの二月末現在ぐらいでございますが、全国で二十カ所の俗に言う保養所と申しますか信者修行所と申しますか、そういうものがあるわけでございます。  その内訳でございますが、結果から申しますと、十五県、二十カ所にわたっておりますが、御指摘のとおり、北海道、神奈川二県、これは非課税の取り扱いをいたしておりまして、あと富山、静岡につきましては現在課税すべきかどうか検討中、その他の十一県が課税をいたしておるという結果でございます。  これに対する私どもの考え方でございますが、武部先生先ほど御引用になりました宗教法人法におきまして、宗教法人は教義を広めるとか儀式行事を行うとか、あるいは信者の教化育成を行うといったようなことをおやりになるわけでございますが、現在の不動産取得税並びに固定資産税の課税のたてまえは、宗教法人がそういうもっぱら本来の用に供するものにつきましては非課税、こういうたてまえをとっているわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げました教義を広めるあるいは儀式行事を行う、そういうことのために実際に使っておるのかどうか、しかももっぱら使用しておるのかどうか、そういう点は厳正に認定をしろ、こういう指導をいたしておるところでございますし、これは法律のたてまえ上、その認定は各地方団体がその権限と責任において行うというためまえになっておるわけでございまして、そういう一般的な指導を行いまして、それに基づきまして各県が対応しているというふうに私ども理解しておりますし、今後さらにそういう傾向は続く、つまり修行所を取得するような傾向はなお続いていこうかと思いますので、この点につきましては、そういう一般的な地方税法の要件に当てはまるかどうかは綿密にかつ厳正に認定をしろという指導の態度は今後とも引き続きとってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  55. 武部文

    武部委員 あなたは先ほどからわれわれのやりとりをお聞きになったと思いますが、天下一家の会ネズミ講が財産隠匿のために保養所二十カ所あるいは本部の建物、そういうものを移した。この間破産の宣告を要求してあの建物に破産の立入検査が行われましたときに、ほとんど中の財産はなかった、財産は皆分散されておったということは新聞に報道されたとおりです。したがって、いまあなたは各都道府県の自主性に任せて、その具体的な事実に基づいてということをおっしゃっておるけれども、少なくとも二十カ所は同じ保養所であって、同じ目的のものにつくられて、そして同じ内容で使われておったというふうにわれわれは理解をしておるわけです。ところが、その各県の保養所の連中がどういうことを言ったかわかりませんが、いまここで申し上げたように、てんでんばらばらに、課税されたところもあるし課税されておらぬところもある。道場だとかいろんなことを言っておる。しかし、これは先ほどから申し上げるように、明らかに財産の隠匿のために行われたことであって、これは信者が集合してそこで勧誘をしたり、あるいは信者が旅行したときに安く泊まれるとか、そういうことに使われておるのであって、あなたがさっきおっしゃったように教義を広め、儀式行事を行い、信者を教育、育成するというようなものとは全く似ても似つかぬものだということはもうだれが見てもそうなんです。ですから、そういうことに惑わされて課税をしないということではなくて、すでにそういうことは明らかに間違いだというので断固として税金を取っいるところがあるわけですから、この点はあなた方の方としてはもっと具体的に調査をして、そして毅然たる態度でこれに対して臨んでもらいたいということを特に要望しておきたいと思います。  時間が参りましたので、まだございましたがまた後ほどにいたしまして、厚生省にせっかく来ていただきましたからお尋ねをいたします。  熊本県に社会福祉法人豊徳会というものがあるそうですが御承知でしょうか。これはいつできて、だれが会長で、資本金が幾らで、何をやっているか、これをちょっとお聞かせ願いたい。
  56. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 ただいま御指摘の社会福祉法人豊徳会、これはお話しのように熊本県にございまして、昭和五十一年九月二十四日に認可を受けまして設立されました社会福祉法人でございます。事業の内容は、児童福祉法に基づきます保育所若草保育園の設置経営でございます。理事長は内村健一でございます。財産といたしましては、基本財産、保育園の敷地九百九平米、保育園舎一棟百七十八平米のほか、運用財産といたしまして土地四千六百平米ばかり、その他有価証券、預金等が約二十三億という状況でございます。
  57. 武部文

    武部委員 これは、おっしゃるように五十一年九月二十四日に熊本県知事認可で水田寅七という人がこの豊徳会という法人をつくって、翌年、五十二年四月二十日から内村健一にかわったということです。そして若草保育園という保育園を経営しているということです。あなたは、財産は土地四千六百平米、ほかに有価証券、預金等で二十三億、こういうことをおっしゃったわけですが、一保育園、これは保育料としては推定大体年に二千百万円ぐらいしか入ってこない、こういう保育園が、あなたはいま財産二十三億ということをおっしゃったが、そんな財産を一体どうして持っておるというふうにお考えでしょうか。何か御承知でしょうか。
  58. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 当社会福祉法人が行っております保育所経営、ただいま委員からお話がございましたように、その施設経営におきましては二千百万ないしは二千二百万程度の年間事業費でございます。先ほど私が申し上げました運用財産約二十数億ということにつきましては、確かにこの法人が行います社会福祉事業のために当面必要なものというようには考えられないのではなかろうかというふうに思います。
  59. 武部文

    武部委員 この金は、天下一家の会が三十億円寄付しておるのです。そういうことを御存じじゃありませんか。
  60. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 この件に関しまして熊本県に問い合わせいたしましたが、五十二年度におきましてそのような事実があったというふうな話がございました。
  61. 武部文

    武部委員 私は、最初大観宮が五千万円から八十八億七千万円ですかに財産がふえたということを言いました。この若草保育園という小さな保育園が何で三十数億の金を持っておるか、大変疑問に思いました。これは明らかにネズミ講が財産隠匿のためにこの社会福祉法人豊徳会なるものを、設立してから一年もたたない、わずか半年のうちに前任者から買い取ったのか、譲り受けたのか、かすめ取ったのかどうかわからぬが、そういう豊徳会なる社会福祉法人を自分の手に入れて、自分が会長になり、そして天下一家の会の三十億円をここに寄付をしておる。これは紛れもない事実です。一体年間に二千百万円くらいしか要らぬ保育園に何で三十億の財産があるでしょうか。これは明らかに財産隠しです。こういうことがやられておるのですよ。ですから、先ほど申し上げたような大観宮の問題もその一つですし、この問題も一つの例です。私はそれ以上のことをあなたに言いませんが、五十二年、五十三年の年次報告書、財務諸表をつけて資料をひとつぜひ提出していただきたいと思います。いかがでしょうか。
  62. 鈴木強

    鈴木委員長 この点いかがですか。
  63. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 熊本県と協議いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  64. 武部文

    武部委員 それじゃ最後になりました。時間が参りましたので、法務省の刑事課長いらっしゃいますか。――去年の三月三十日に下光軍二弁護士外二名が代理人になって内村健一を詐欺、背任、私文書偽造、公正証書原本不実記載の罪で告訴、告発がされました。われわれは、公正証書原本不実記載の問題は当委員会で何回か取り上げた問題でございましたし、彼がやってきたことについては詐欺、背任、私文書偽造、全くそのとおりだ、このように思って、この裁判の進行を非常に注目しておったわけですが、去る四月二十八日に不起訴処分になったということを新聞で聞いたわけですが、その間の事情をひとつお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 根來泰周

    根來説明員 ただいま御指摘のように、去年の三月三十日に告訴人、告発人八名から、ただいま問題になっている人物を被告訴人といたしまして最高検察庁に告訴がなされております。  その事件は、五十三年の四月四日に問題の人物の居住地であります熊本地方検察庁に移送になりまして、熊本地方検察庁でいろいろ多角的に取り調べ、また私どもの方からもこの委員会の議事録――先生の御発言も入っておるわけでございますが、議事録についても熊本地方検察庁に送付いたしまして捜査の参考にしてもらった。いろいろ捜査を遂げた結果、まず五十三年の四月十九日、五十三年の五月十六日、それからただいま御指摘のありました五十四年の四月二十八日と三回にわたって処分をいたしております。その結果はいずれも不起訴処分ということになっております。
  66. 武部文

    武部委員 終わります。
  67. 鈴木強

  68. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  きょうは、私は、皆さんのお許しを得まして、この委員会で、牛乳の小売店の現状を中心といたしまして、牛乳価格の安定というものが必要ではないだろうかという立場からいろいろと御質問させていただきたい、このようにお願いをするわけでございます。  まず最初に、小坂長官の方に、全体的なことでございますけれども、わが国の最近の生乳生産、いわゆる牛乳の生産というのは非常に順調な伸びを示しておるわけでございますが、それにもかかわらず消費というものがなかなかこれに伴っていないということが非常に大きな問題になっております。また一面、大型店舗等も出てまいりまして、従来の歴史的な小売店というのですか、宅配というような、店舗の価格との乖離というものも非常に大きくなってまいりまして、混乱が起きておるわけでございます。国民の立場からいたしましても非常に栄養価の高い、しかも日常、国民生活にとって非常に重要な牛乳というものに対する、価格に対する不信感というものも非常に出てきておるわけでございます。また同時に、宅配牛乳の販売店の経営というものも著しく困難になってきておるわけであります。ひとつそういうような全体的な立場から、長官の御意見、御感想を賜りたい、このように思います。
  69. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 草川委員の仰せられるとおりに、牛乳は国民の健康維持のためには非常に重要な資源であると考えておりまして、この最近の動向は着実な消費の伸びを示しておると思いますけれども、まだ欧米に比しては非常に少ないということも現状であると思います。まあ私らもよく牛乳の小売店等に参りまして話を聞きますが、やはり非常な重労働であるということ、そしてまたそれに対応した価格が、とても人を雇ってまで配給するほどできない、これはほとんど自分の家族営業にならざるを得ないという非常な苦衷を訴えられておることも事実でございます。一方、量産体制の中での、スーパーその他における牛乳と宅配する牛乳の値段というものが、やはり消費者にとっては安い方がいいということにもなるし、また自分でそれを買いに行くということもだんだんと拡大をしておるようでございまして、その間の事情につきまして、いわゆる零細企業の牛乳店に対する何らかの方策を早く考え出すということは非常に大事なことであるという認識を私は持っておるわけであります。
  70. 草川昭三

    草川委員 いま長官の方から零細企業の牛乳店の声というものを的確に把握をしてみえる御発言がございまして、私は非常に敬意を表するわけでございますし、最後におっしゃられましたように、零細企業の牛乳店の何らかの対策が必要であるというこの言葉を少しこれから具体的に、特に担当でございます農林省の方、あるいはまた価格の面では公正取引委員会、あるいは将来の消費拡大という意味で厚生省の方に、それぞれ意見を聞かさしていただきたいと思うわけです。  そこで、今度は農林省にお伺いをいたしますが、最近の牛乳の需給状況について現状を少しつかんでみたいわけですが、生産量の伸びというのは、どういうような傾向でここ二、三年来伸びておりますか、お聞かせ願います。
  71. 芝田博

    ○芝田説明員 お答え申し上げます。  牛乳の生産は、この五十年にようやく畜産パニックから抜け出しまして、五十一年度以降きわめて高い伸び、大体七%から九%近い伸びを示しているわけでございます。この原因と申しますのは、一方におきます国際的な穀物の価格の安定、それを反映いたしました配合飼料価格の安定ということが非常にあずかって大きいところがあるかと思うわけでございます。これに対しまして、一方、需要の方はなかなか伸びませんで――いや農産物といたしましてはわりあい高い伸びで伸びているというふうに考えてもよろしゅうございますが、生産の伸びが非常に大きいところから、御指摘のような需給のアンバランスが最近起こっているわけでございます。
  72. 草川昭三

    草川委員 この需給のバランスはまた後ほど聞いてまいりますけれども、いま全国的な伸び率が七から九と非常に上がっておるというお話でございますが、地域的なばらつきというものも今後非常に重要な問題点になってまいります。地域的なアンバランスというのですか、ばらつきはどのような現状でございますか。
  73. 芝田博

    ○芝田説明員 生乳生産の伸びは、これは地域的にも差はございますが、なべて申しまして、この三年間の傾向は、全国的に生産が伸びている。北海道のような加工原料乳地帯におきましても伸びてございますが、特に五十三年度におきましては、都府県の市乳地帯におきましてもきわめて高い伸びを示しているということでございます。
  74. 草川昭三

    草川委員 全体的にとにかく非常に大きな伸び率を示しておるということでございますが、また、詳しい点では地域的な若干のバランスもあると私は思うのですけれども、それはさておきまして、では、ここでもう一つ、国内生産だけではなくて、乳製品の輸入原料というものが国内価格にどういうような影響力を与えているか、いわゆる輸入の面からひとつ影響をお伺いするわけでございますが、まず経済企画庁の方に、これも全体的な動向についてお聞かせ願います。
  75. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 乳製品の中で、飼料用等に使われる、要するに食用以外のものを除きまして、現在輸入量は、五十三年で見ますと、約十万トンでございます。それを生乳換算いたしますと、約百十五万トンということになっているわけでございます。輸入乳製品の中では、ナチュラルチーズとか脱脂粉乳等がそのウエートが高いわけですが、もともと乳製品の輸入につきましては国内酪農の保護という観点もございまして、バターとか脱脂粉乳等のものについては自由化品目になっておりません。そういうことでございまして、輸入の量もまた多くないわけでございますが、先ほど申し上げました中のナチュラルチーズにつきましては、自由化品目になっておりまして、これが全体の輸入量の八割を占めるという状況でございますが、このナチュラルチーズについて、私どもも一昨年来、円高効果の反映という点も考えまして調査をしてきたわけですけれども、輸入のナチュラルチーズを多く用いているスライスチーズについて見ますと、小売価格がかなり下がっているということが出てまいっております。  それから、これは食用以外のものですけれども、乳製品について、えさ用に使われるものがございますけれども、こういうものについてはえさの値段を安くするという形で結果的に乳製品価格の方の安定につながっていくのではないか、そういうふうに思うわけでございまして、乳製品輸入の価格の国内に与える効果としましては、当面、そういう食用についてはナチュラルチーズ、それからえさ用については飼料の価格の安定というところで結びついてきておるのではないかと考えております。
  76. 草川昭三

    草川委員 農林省の方、どうですか。
  77. 芝田博

    ○芝田説明員 輸入乳製品の問題でございますが、御存じのとおり、わが国の乳製品の輸入につきましては、その主要なものは畜産振興事業団による一元輸入ということで、これは国内の価格との見合いで輸入するということになっております。そしてまた、その他にも多くIQ品目となっておりまして、そういう意味では、輸入についてはかなり制限的な障壁を設けているわけでございます。その中で、自由化品目といたしましては、ただいま御説明のありました、食用として最も大きなものはナチュラルチーズでございまして、国際価格と国内価格の連動と申しますか、影響が問題になるのは、このナチュラルチーズ及びこれを原料にいたしますプロセスチーズの問題にある程度限定されているということでございまして、このプロセスチーズ、ナチュラルチーズの価格の動向につきましては御説明のあったとおりでございまして、ごく最近は国際価格の高騰が起こっておりますが、円高による価格の低下のまま国内市況はまだ安定したままでいると理解しております。
  78. 草川昭三

    草川委員 いま輸入の面で国内価格が安定をしておるということについては、物価対策上それはそれなりの一つの成果ではございますが、ひとつ逆にそういうような背景の中で、先ほど触れられましたように国内生産の方はふえていくわけでありますから、輸入の結果価格が安定するとは言いながらも、それが実は日本の国内の生産という面の流れからいきますと、どこかで詰まるわけです。そういうものが一体どういう形で価格に反映をしていくかというのがこれから、私ども素人ではございますけれども、実は大変問題になってくるところでございます。  そこで、結論的に申し上げますと、生乳生産は順調な伸びを示しておるのにもかかわらず、一つは消費がそれに追いついていかないという意味、そういうことでございますから、どうしても生産者の方は大量に購入をするところにはかなり価格を割ったような形でそこに卸をしているのではないだろうか。そういう点で宅配牛乳の立場から考えますと、宅配牛乳を購入する価格というものは非常に高値安定の形で購入せざるを得ないという問題が出るわけでございますが、一体国民生活の立場から見て、経企庁の方としてはこのような点についてどのようにお考えになられますか。
  79. 井川博

    井川政府委員 純粋な消費者の立場からいきますと、良質な製品がいろいろな形で出回っている、好きな形で買える、これがやはり理想だと思います。しかしその場合に、そのことによって価格が非常に乱高下するということになりますと、これは消費そのものに問題がある。そういう意味からいったら安定的な価格でということになりますが、基本的には望ましいいろいろな消費の形があると思いますが、その消費者の好きなかっこうでそういう選択が自由にできる、これが基本的な考え方だろうと思います。
  80. 草川昭三

    草川委員 おっしゃるとおりだと思うのです。消費者の立場からいって、自分でスーパーへ行って安い物を大量に購入をし、大型の冷蔵庫があればそこへ蓄える、あるいはそうではなくて、宅配で毎日一本ずつ子供に飲ませながらというのを好む場合、これは当然差があってしかるべきでしょう。同時に価格にそれだけの――自分がみずから買いに行って安いものを買う場合、自分の家へサービスで持ってきていただく場合には値段が高いのも当然だと思うのです。ただ問題は、その差がいわゆる常識的に認められる範囲内であるかどうかが基本的な問題になってくると私は思うし、しかもこれが一般の機械でいろいろなものを加工するというようなものだとか、洋服を買うとか、そういうものではない基本的な食生活の牛乳という問題になってくるわけですよ。いまの局長の答弁だと、乱高下は決して望ましいものではないとおっしゃったわけでございますが、これはまた後ほど具体的な数字を出しますけれども、その乱高下というものから考えると、現在の牛乳価格をどのように御判断になられますか。
  81. 井川博

    井川政府委員 消費をします形において、消費者というのは長い間にそれぞれの自分の選好を出していく、こういうかっこうがございます。そういう意味からいいますと、どうも農林省からいただいた資料によりますと、やはり宅配というのが少しウエートを下げてきている。これはあくまで推定でございますが、四十九年の場合に三八%であったものが、五十一年度に二五%に下がっているというふうな数字をいただいているわけでございまして、そこらあたりに値段というものが関連をしてきているのか、こういう感じがいたします。あくまでこれは私の方の消費者側の立場でございますけれども、しかし一面において従来どおり自宅で新鮮な牛乳を毎朝飲むというふうな人も多いし、そういうふうに希望する人も多いだろうと思います。そういう意味から、やはり適正な価格、しかし消費者はそれぞれの選択をする自由を持っているので、その選択に任すようなシステムになっていってもらいたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  82. 草川昭三

    草川委員 では今度は農林省の方にお伺いをいたしますけれども、いま国民生活の立場から一つの見解が出ておるわけでございますが、現在の過剰牛乳の対策でございますが、過日渡辺農林水産大臣がこの生産調整に言及をして、生産者団体にも、第二の食管になる可能性があるので自主調整を行うべきではないだろうか、こんなような働きかけがあるようでございますが、農林省として具体的な対応はどのようにされてみえるわけですか。
  83. 芝田博

    ○芝田説明員 申し上げます。  牛乳の需給の見通しがその前提になるわけでございますが、三月末にわれわれが畜産振興審議会にお示しいたしました生産段階における生乳の需給という観点から申し上げますと、五十四年度につきましては、生産を非常に低目に見積もっても五・二%程度の生産の増があるであろう、そういうふうに見通されるわけでございます。そして消費の大宗でございます飲用牛乳につきまして、非常に政策的な努力も織り込んで高目に需要の伸びを見込みましても六・五%程度ということでございまして、これだけを比べますと消費の方が多いわけでございますが、全体のボリューム等からいたしまして、こういたしましてもなお二十一万トン程度の生産過剰と申しますか、いまのままでは需要の当てのない生乳が生産される見通しになる、そういう需給見通しを得ましたところから、政府といたしましては、これを需給上は調整を要する量であるということを率直にお示ししたわけでございます。しかし、おっしゃいます生産調整ということになりますと、これは非常に後にも尾を引く問題でございますし、また生産農家に与える心理的影響も大きいというところから、われわれといたしましてはストレートに生産調整ということでなしに、消費の拡大をも含めた需給の調整ということでございまして、そういうことが望まれるということは申し上げたわけでございます。ただ、生産調整という言葉もその後いろいろなところで聞くわけでございますが、これはむしろそのような政府の需給見通しを受けまして、生産者団体の中におきまして、このままでは生産過剰によって価格の乱れ等から生産者が一番損害を受けるという自覚のもとに計画生産ということを強く打ち出しておられるわけでございます。これが伝えられるところでは生産調整というふうに理解されることになるわけでございますが、消費の拡大と計画生産で需給の調整を行っていきたいそういうことで、生産者団体の中におきまして真剣にこの計画生産の問題が取り上げられており、それについての対策もかなり固められていると聞いております。  政府といたしましては、そのような自主的な動きを受けまして、重要なことでございますので、これをバックアップしていきたい、そういうように考えております。
  84. 草川昭三

    草川委員 生産者の計画生産のことについてはまた別の機会にお伺いすることといたしまして、いずれにいたしましても非常に深刻な状況になってきておる。二十一万トンの生産過剰の見通しも出てきておるわけでございます。いわゆる古米並み、お米と同じような状況になるわけでございますが、生乳だけではなくて、バター等のいわゆる加工製品等の適正在庫量がどの程度かという基本的な問題もあるわけでございますが、大体何倍くらいいま過剰在庫というものを抱えておるということになりますか。
  85. 芝田博

    ○芝田説明員 在庫のどれくらいか適正であり過剰であるかにつきましては、実は当局の見方と業界の見方とで食い違っている点もございまして、なかなか一概には言えないわけでございますが、われわれといたしましては大体バターで二カ月分程度、そして脱脂粉乳で三カ月分程度のものが適正な流通在庫と申しますか、在庫ではないかというふうに申し上げております。  それに対しまして、現在どれくらいの在庫があるのか、最近の数字――ごく最近ではございませんが、そのような数字、実はいろいろ民間の在庫の把握がむずかしい点もございますが、事業団の買い上げましたものを含めまして、大体バターは現在五カ月分程度、脱脂粉乳は九カ月分程度の在庫になっているのではないか、そういうように把握しております。
  86. 草川昭三

    草川委員 二倍から三倍ということになるわけですね。ですから、いずれにいたしましてもかなりむずかしい状況だということになると思います。  消費の動向でございますが、これは先ほど長官の方からも多少というような言い方で伸びの方向が言われておりますけれども、生産に追いつかぬことはいまのお話で十分わかるわけでございますが、ひとつ問題を宅配のところに移していきたい、こう思います。  わが国の宅配の店舗数というのですか、これは私どもも子供のときに、歴史的に牛乳屋さんという言葉があるわけでございますが、非常に国民生活になじみのある店舗だと思うのです。こういうものが全国的に何万軒あるのか、あるいはそれに関連する従業員の数、これは一説によりますと全国で二万店舗前後ではないか、こう言われております。しかも飲用牛乳の全体の中に占める宅配のシェア、最初に長官は何かちょっと数字を言われましたけれども、その数字と私がつかんでおる数字とはちょっと違うようでございますけれども、農林省の方からその具体的なシェアと宅配の規模、このようなことについて一回お聞かせを願います。
  87. 芝田博

    ○芝田説明員 いわゆる宅配、販売業者の数は御指摘のとおり約二万軒、二万一千というふうにもつかんでおりますが、ちょっと古い数字でございますので、約二万軒ということになるかと思います。従業者数は約六万人というふうに把握しております。そしてこの宅配、販売店というものが一方において主要な業務として宅配を行いつつ、また店頭販売店もあるわけでございますが、その宅配部分に限ってそのシェアと申しますかウエートを申し上げますと、飲用牛乳全体の流通を一〇〇といたしまして約二五%、四分の一、そういうふうに把握しております。
  88. 草川昭三

    草川委員 昭和五十年の商業統計では、農林省の推計試算というのがあるのですけれども、店舗数はやはり二万店。飲用牛乳のシェアというのはどの程度のところを占めるかわかりませんけれども、五四%という数字があるのです。いまのお話だと四分の一程度に減ってきておる。必ずしも五四がそのまま同じ条件で二五に下がっているとは私は思いませんけれども、私どもが見ておる限りでは飲用牛乳のウエートというものは宅配は下がってきておることは間違いがないと思うわけです。また全国流通経営講習会というのがつい最近行われておるのですが、この流通経営講習会等では、四十五、六年ごろよりやはりこの宅配というものが非常に減ってきておる。ちょうど高度成長が一定の時期になり量販店が非常に進出をしてくることに比べまして、宅配の位置づけというものが下がってきておることは常識的にも事実だと思いますね。あるいはつい最近の例では、東京都内の中野区だけの例でございますけれども、宅配のお店が三軒ですね。これは去年一年間だけで、ひどい話でございますけれども、夜逃げをしていくという、もう店を畳んでしまうというような現実的な例もあるわけです。これは私は実は非常に深刻な問題ではないだろうか、こう思います。  一方、この生産者の方はかなりいろいろな意味で農林省も真剣ないろいろな助成策というのですか、いろいろな意味での指導というのですか、援助というものを生産者にはやられておるわけでありますが、宅配の方に対する農林省の行政指導というのですか、援助というものはきわめて少ないと思うのです。その点についてはどうでしょうか。
  89. 芝田博

    ○芝田説明員 お答えいたします。  御指摘の五四%という数字は、実はこれは牛乳販売店の扱い高ということでございます。先ほど私もちょっと申し上げましたように、牛乳販売店は宅配のほかに店頭販売ないしは仲卸的な機能も果たしております。それらを合わせますと五四%、その中での宅配、配達されるものはその半ばより少し少ない二五%、そういうふうに御理解いただきたいわけでございます。  しかし、そのような数字は別にいたしまして、御指摘のとおり宅配牛乳というもののウエートが低下してきております。そのことは先ほどの御説明にもあったわけでございますが。そして二五%、四分の一ということは余り大きなウエートではなくなっているわけでございます。  その原因等につきましては、いろいろ人件費の高騰、一方におきます量販店の進出等の理由があるわけでございます。農林省といたしましては、このような牛乳小売店、販売店、特にその宅配の重要性は十分認識しておるところでございます。量販店、スーパー等の需要、販売といいますものは、どういたしましても天候等に支配され、非常に不安定である。それに対して宅配牛乳の消費は非常に安定している。また、消費の観点から見ましても、消費者にとって常に飲みたいときに牛乳があるように宅まで配達されるというようなことから考えましても、牛乳という食品にとりましてこの宅配の意義は非常に大きなものがあると考えているわけでございます。  それに対しまして農林省は、もちろんこの牛乳販売店の経営の合理化、近代化ということを通じてコストの低減が図られつつ経営の発展を図りたい、そういうように考えて種々の施策をしているわけでございますが、御指摘のとおり生産段階に対する助成というものが比較的制度化され、また手段としても多様であるのに対しまして、この小売店経営の改善、それに対する助成というものがなかなか、歴史も浅うございますし、手段としてもむずかしいというところから、御指摘のとおりいろいろな金額的なボリュームといたしましては、生産段階の助成に比して小さなものになっているわけでございます。
  90. 草川昭三

    草川委員 いずれにいたしましても、私は政府の基本的な畜産政策なりあるいは農業政策の根本的な過ちが今日のその生産過剰を招いてきておると思うのですよ。米の減反政策との絡みで酪農への転換奨励というのはもうずっと出ておるわけでありますし、増産一本やりに農家の方々は当然ならざるを得ぬでしょう。農家の方々、お百姓をやめるというわけにはいきませんから、減反ということになれば勢い牛だとかあるいは豚だとかあるいは鶏だとかというふうに手っ取り早く転換をせざるを得ない。そういうような形でこの今日の牛乳過剰というものを招いておるという根本的な問題を、いますべてしわを寄せられておるのは宅配店の二万軒掛ける三人世帯、六万人の方々にもう全部しわが寄っておると私は思うのですよ。しかも輸入の面については、最近ココア調製品などの疑似乳製品なんかがどんどん入ってくる。メーカーの方も何となくこう付加価値の高い紛らわしいもので何とか収入をふやそうとする。結局国民生活、国民の健康ということからますます離れてどんどん手が打たれていくわけですよ。そうではなくて、本当に原点に戻して国民の健康というものを、あるいは一軒ずつ毎朝牛乳屋さんが配達をするという人間生活の触れ合いというようなものを基盤にしない限り、私どもはこれからのあり方というのはないと思うのです。高度成長に対する一定の反省というのがいま出ておるわけですから、そういう意味で私は、この宅配に対する助成ということも、これは最後になりますけれども、いろいろと訴えておきたいことだ、こう思うのです。  そこでもう一つあれでございますが、農林省にお聞かせ願いたいし、経企庁の方にも聞かせてもらいたいのですが、先ほども円高メリットというような話が若干出ましたけれども、いわゆる輸入の飼料が下がって飼料の価格が安定をしておる。だけれども、非常に農家にとっては牛を生産しやすい条件にあるわけでございますけれども、どうしてこの販売価格が下がらないのか。昨年の八月でございますか、一定の期間を置いて二百㏄で三円ぐらいアップをしておるわけでございますが、末端価格で値上がりをする理由は一体何か、これは経企庁の方にお聞きをします。
  91. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 配合飼料につきましては、昨年三回にわたりまして二四%の引き下げが行われたわけでございまして、これが非常に畜産物価格にもいい影響をもたらしているところでございます。それでいま牛乳のお話がございましたけれども政府の関与しておるものとしては加工原料乳の価格がございます。これは毎年三月に決めますが、そのときの保証価格とか、それから安定指標価格等の決定の際には、この配合飼料価格の値下がりというのが非常に影響いたしまして、一方で自給飼料とか農具等の経費増加がございましたけれども、全体としては据え置きをすることができたわけでございまして、据え置きも二年間いたしましたので三年間同じ価格で推移しているということでございます。こういうこともございまして、いまのところ乳製品、バターとかチーズとか、そういうものの国内価格も昨年に比べてはやや下がっているという状況でございます。飲用乳につきましては、本来これは自由な流通に任せている商品でございますので、政府としてその価格に介入するということはいたしておりません。いま御指摘のように、五十三年の八月に三円ほど値上がりしておりますけれども、これについては当然配合飼料価格の値下がりによる軽減もあるだろうと思いますが、一方五十一年の二月ごろから据え置かれてきているということもあったようでございまして、その間のいろいろな経費の増加等もあってそういう形になったのではないかと推測いたしますけれども、八月以後の状況としてはその後同じ値段で推移してきているというふうに私どもは理解をいたしております。
  92. 草川昭三

    草川委員 農林省の方からもこの点については意見を聞きますが、時間がございませんので後で一緒にお答えを願いたいと思うのですが、いま御答弁がございましたように、いわゆるオンコストというのですか、労働力の対価というのですか、農業労働者の方々も都市労働者と同様に毎年コストを上げていくという要求は当然でございますから、そういうものが反映するということは十分わかるわけです。だから、それは正当なものであればいいのだけれども、問題は、自分が自動車を買いながらあるいは配達をしながら末端で宅配をする方々に同様な待遇というのですか、与えるのが世の中にとって公平ですね。もちろん自由価格だから政府の介入はございませんけれども、一定のところにとにかく価格というものが落ちつかなければいけない。そこで生活をしてみえる方がずいぶんみえるわけですから、それはお互いに消費者も理解をし合いながらそういうものを購入をするという立場にならなければいけないわけでございますが、それが実は安定していないところに問題があるわけです。  そこで公取にお聞かせ願いたいわけですが、いまいわゆる量販店なんかでは、百円だとか百五十円だとかいろいろな千㏄のものが出ておるというので、不当廉売ではないかというように小売店の方からいろいろな訴えが出ておると思いますが、最近の一番安い価格というものはどのようなものが流通をしておるのか、これはひとつ申請をされておる公取の方から数字を出していただきたい、こう思います。
  93. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 御指摘のような量販店等によります牛乳の廉売のために、牛乳の販売にもっぱら依存しておられる専売店の方がお困りになっていらっしゃるという問題がございまして、実は私どもの方へ、大変たくさんのこれは問題ではないかという報告が参っております。大体年間二百件程度来ておるわけであります。私どもの方では価格問題については自由価格ということがございましてなかなかむずかしいのでございますけれども、たくさんの品物を扱っておる量販店がコストを下回るような価格で販売することによりまして、その商品だけに依存している専門店が競争できないというふうな状態はやはり公正な競争の見地から問題があるのじゃないかということで、現状におきましてはそういう御報告がありました際にすぐ量販店の方へ値段を確認いたしまして、それから教字を、幾らで仕入れていらっしゃるかという仕入れコストを伺いまして、仕入れコストを下回っている場合には独禁法上問題がありますよということを警告いたしまして、やめていただいておるというのが実情でございます。先ほども申し上げました二百件程度のうち五十三年度の状況でいきますと、大体百七十件程度がそれに当たるケースであるということでございます。  一番安い値段という御質問でございますけれども、ちょっと手元に持っておりませんが、最近では余りそう極端に低いものは出ていないのではないかというふうに思っておりますが、ちょっと手元に幾らで売っているかという資料は持ち合わせておりませんので、先生の御質問にはそのままお答えはしにくいのでございますけれども、大体の状況はそういうことでございます。
  94. 草川昭三

    草川委員 私の手元にもチラシ広告の具体的な例がたくさん来ておるのです。百五十円とか百四十円とか、開店祝いのときには百円なんというのがあるのだそうですね。ですから、これは常識的に考えたってめちゃめちゃですよ。  そこで、ちょっと途中になりますけれども、厚生省にお聞きいたしたいのですが、牛乳が宅配で二百三十幾らですかという金額がある。あるいはまたいま言ったように、開店だと百円のものもあるということになりますと、やはり公取に調べられるように仕入れ価格を割っていないということになると、そんなに内容に何倍もの差があるというのはどうしてもおかしいので、水で薄めて出しておるのかどうか、常識的に言うならば。こういうことになると思うのですが、厚生省として乳等省令というものがあるのですが、牛乳についてはどういうことになっておるのか、ひとつ解釈をお示し願いたいと思います。
  95. 岡部祥治

    ○岡部説明員 先生御指摘のとおり、食品の衛生につきましては食品衛生法がございまして、牛乳、乳製品につきましては特別な省令、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、こういうものでその規格基準、成分規格等を定めておるわけでございます。  それで、御指摘の牛乳につきましては、御承知のとおり無脂乳固形分が八%以上、乳脂肪分が三%以上、比重が一・〇二八から一・〇三四、酸度が〇・一八以下、細菌数が一ミリリットル当たり五万以下、大腸菌群陰性、こういう成分規格を定めております。  なお、御指摘の水を加えておるのじゃないかということでございますが、これは製造方法の基準におきまして、他物を混入してはならないという規定がございまして、そういうことはないと信じております。
  96. 草川昭三

    草川委員 おっしゃったように、品質、内容は同じだということですね。またそれでなければ困るのですよ。だったら百二十円とか百三十円という、大量販売店では安く購入できるものが、宅配の小売店の仕入れ価格は百八十六円三十二銭だというのですよ、千㏄で。少なくとも宅配の場合には百八十六円三十二銭を払わなければ買えないわけですよ。仕入れられないわけです。ところが、一方では百四十円、百三十円で売っておるという、量販店なるがゆえに。一物二価、三価になるわけですよ。一つの物に対して少なくとも片一方は大量だから安いというのはわかる。大量だから安いのはわかるけれども、しかしそれにしてもその差がひど過ぎるじゃないかということをわれわれは言いたいわけですね。常識的に考えて宅配がやっていけるわけないでしょう。片っ方は家まで持ってきていただけるというサービスを含めても二百四十円払わなければいかぬ。ところが、片っ方は出かけていくというめんどうなことがあるけれども、百数十円出せば買える、宅配がやれるわけがない。当然だと思うのです。だから宅配はこれからつぶれてもいいという方向になるのかどうかというところが私は問題だと思うのですよ。だから、農林省にお聞きしますが、宅配をつぶせと言うなら、つぶしたっていいじゃないですか。そのかわり現在、通産省がやっているように産業構造の転換ということでいろいろな安定計画を立てさせて、そして業種転換をする。一方では、構造不況業種では手厚い保護をやっておるわけでしょう。じゃ一体農林省は宅配はつぶれるのに任せていくのか、いやそうじゃないというのか、どっちかはっきりしてください。
  97. 芝田博

    ○芝田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、農林省といたしましては牛乳販売店の存在、特にその宅配の機能というものを重要と考えております。これによります安定的な消費の拡大、消費者の利便等からいたしましても、宅配業の存続、維持を図ってまいりたい、そういうように考えているわけでございます。  その点につきまして、どのような方法かという点につきましていろいろございますが、この宅配業の一番の問題点は、もちろん一方におきます量販店との競争はございますが、内部の経営といたしましてば非常に人件費の占める割合が大きいこと、経費の六割ないし七割五分が人件費であるというような点がございますので、そのようなもののコストダウンを図るための経営の多角化、また仕入れの共同化等、また経営の合理化のための経営指導等、各般にわたって施策を講じてまいっておるわけでございます。
  98. 草川昭三

    草川委員 農林省にもう一回お聞きをしますが、宅配は大切だということを認めておるわけですが、昭和四十六年五月十日に農林省、当時まだ農林省です。畜産局長の名前で「飲用牛乳の流通合理化の推進について」という通達も出ているんですよ。それで隔日配達の採用普及だとか、店頭販売の拡大だとか、集団飲用の促進だとか、いろいろなことをやっておるのです。だけど、現実には何にも生きてはいないわけですよ、この施策というものは。だから農林省は四十六年からいまと同じようなことを言うことは言っているんですよ。だけれども現実には宅配はつぶれていっておるわけですよ。だから、私がいま言うように、宅配をつぶすならつぶす、はっきりした方がいいと思うのですよ。その方が、後継者教育で宅配だって困ると思うのですよ。もう国は宅配をつぶすと言っておるん、だから子供にはこういうふうにしようじゃないか、そのかわりひとつおれたちも考えなければいかぬという声が出る。しかし、そうじゃない、片っ方は殺さずだ、生かそうということを言うんだから、生かそうと言うならば生かすような方法を私は農林省は考えるべきだと思うし、経企庁も国民生活の上からいっても牛乳というものは目玉商品にしてはいかぬと思うのですよ。お百姓さんが週休二日制もないわけですよ。愛情を込めて牛を育てて乳をしぼり、正月もお盆もなくとにかく乳をしぼりながらそれをメーカーに渡してやる、これはとうとい結晶でしょう。そういうものを開店祝いの目玉商品にすべきじゃないと私は思うのです。大体物の対象が違うんですよ。マッチだとかタオルだとかそういうものなら私はサービス商品にしてもいいと思う。牛乳をそういうものの対象にすべきじゃないと思うのだけれども「そういう点について経済企画庁も国民生活の立場からいいのか悪いのか、一遍感想を聞かせてください。
  99. 井川博

    井川政府委員 先ほどから申し上げますように牛乳というものは、特に食生活がだんだん高度化していく場合にこれからもふえていくであろうというようなことが言われておりますし、栄養の面からも非常に大切な面がある、しかもそうした牛乳が、いろいろな消費者が好むような選択が可能なような方法で手に入る、これが基本的な問題でございます。  それで宅配につきましては、シェアがだんだん低くなってきておるという問題はあるようでございますが、しかしまだ基本的に、先生のお話にございましたように自宅で新鮮なそういうふうなものを欲する、先ほどの選択の一つとして強くそれを希望する、そういう消費者もきわめて多いのではないか。そういうふうな意味から言いますと、宅配について農林省でいろいろの施策を講じておられるようでございますが、そういう施策が功を奏して安定的にそういうふうなものが供給されるという体制は望ましいというふうに考えておるわけでございます。
  100. 草川昭三

    草川委員 では、今度は公取の方にお聞きしますが、小売店の方々の商業組合の方からも、いまのような量販店の方は千㏄の仕入れ価格百八十六円三十二銭を割って購入をしておることは間違いないだろう、公取も調べられてみえるわけですから。そういうことになってくると、差別対価ということになってくるのではないだろうか。  そこで、いろいろな意味で彼らが要求をしておりますように、特殊指定について公取はどのようにお考えになっておみえになるのかお聞かせ願いたいと思います。
  101. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  不公正な取引方法につきましては公正取引委員会は指定することになっております。各業界にほほ大体共通なものは一般指定という形でやっております。特殊な形態の不公正な取引につきましては特殊指定という形でやっておりますけれども、牛乳につきまして昨年業界からも話がございまして検討しましたけれども、どうも特殊な廉売とはちょっと認められない、一般指定で十分ではないかということで現実に、先ほど審査部長がお答えしましたように取り締まっておるわけでございます。  なお、四十八年に一度不当廉売につきまして、これは牛乳全部についてでございますけれども、案を考えたことがございます。ただし、この特殊指定をします場合には公聴会にかけなければならないわけでございますので、その経過から見ますと、学識経験者、消費者等の反対が相当強かったということでネグった経緯もございますので、いまの情勢としましては特殊指定はなかなか考えにくい情勢になっておると考えております。
  102. 草川昭三

    草川委員 公取に申し上げますけれども、先ほど言われたように一たん考えられたのですね。業界の方々にもいろいろと意見を聴取せられた経過があるわけです。だから小売店の方にしてみれば、公取がそういうことを聞いてくれたというのでものすごくこの特殊指定ということについては真剣に考えてみえるわけですよ、何とかなるのじゃないだろうかと。ところがそれが途中で変更してしまった、取り下げられてしまったというので、いまはにべもない形で対象外だ、こういうことになっておられるのでますます小売店の方々は困ってみえるわけですよ。だから、希望を与えて後でしっぺ返しをするようなもので、私は公取としては非常に罪なことをやったと思うのです。そういう点では、私がいまるると、つぶすならつぶせなんという非常に乱暴なことを言ったのですが、これは業界の方がそんなことを言ってみえるわけじゃない。これは私の意見なんですけれども、心情とすればそういうところにきていると思うのです。だから私がいま言ったように、扱うものが普通のものと違う、本当にとうとい、農民の方々の血と汗の結晶の作品だ、しかも、それを朝早く起きて個別に宅配をなさる、それこそ特殊な流通形態でありますから、農林省の方もそれをぜひ育てていきたい、こういうことを言っておるわけです。一定の量販店に対抗できないわけですから、片一方は地位が大きいわけですから、それに見合うようなことを考えてもらいたい。特に今日の中小企業基本法第三条の五項の中には、中小企業の取引条件に関する不利の補正、こういうのがあるわけです。同じく十七条には、過度の競争防止というものもあるわけです。いわゆる一定の限度内において自由な競争ができるように――私はすべて統制をするなんということは言いませんけれども、やはりハンディをつけてあげなければ生きる道はないわけでありますから、ハンディというものは当然私は必要ではないだろうか、こういうように思うわけであります。しかも昭和五十二年の十一月十五日衆議院の物価特別委員会においてあるいは五十二年の十一月十七日参議院の商工委員会において、当時の橋口委員長は前向きでこの不公正な取引方法の指定については慎重に検討する、こういうような一応の答弁も出ているわけですから、にべもない立場ではなくて本当に真剣にこの宅配の方々の声も取り上げていただきたい、こういうように思うわけであります。  時間がだんだん迫ってまいりましたので、ひとつ最後に消費拡大について、素人ではございますけれども私なりの提案を含めて意見を聞かせていただきたいわけでございますけれども、厚生省の方は国民栄養の実態調査の中で日本の国民のカルシウムの摂取量というのが非常に欠けておるのではないかというので、昭和五十年からずっと五十五年度の目標を立てまして、栄養必要量というもので約七百カロリーというのですか、カルシウムについての目標値が出ておるわけでございますが、ビタミンも一・一、これらに対してただいまのところではマイナス百四十九あるいはマイナス〇・一二というように摂取量が足らない。これに対しわれわれが牛乳を一本飲むことによって十分カロリーというものあるいはカルシウムというものの摂取量がある、こういうことになるわけでございますが、いま学校給食あるいは妊産婦、乳幼児あるいは老人、いろんな方々に対する対応があるわけでございますが、寝たきり老人が全国で何万人くらいみえるのか、あるいは寝たきり老人に対してどういうような、たとえば牛乳を宅配の方々が戸別訪問をしながら一本ずつ渡すような運動をするならば、大変な実は消費拡大になりあるいはまた本当に人間関係の触れ合いあるいは社会保障という立場からも宅配の方々が寝たきり老人の方々を毎日訪問するというようなことにつながって非常にいい考えではないだろうかといって自画自賛をしておるわけでございますが、寝たきり老人の方々が何万人いるのかあるいはどういうような対策を立ててみえるのか、事実経過だけ簡単に厚生省に報告をしていただきたいと思います。
  103. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えいたします。  寝たきり老人の数でございますが、五十三年度の厚生行政基礎調査調査結果から推計いたしまして、現在在宅の六十五歳以上の寝たきり老人は約二十九万九千と推計されております。それからそのほかにいわゆる特別養護老人ホームというホームがございまして、そこに昨年の十月一日現在の数字でございますが、六万一千五百名ほどの老人が入所されております。  それから、これらの在宅の寝たきり老人に対する対策といたしましては、一つには特殊なベッドでありますとか、あるいは便器等の日常生活に必要な特殊な備品がございますが、こういうものの貸与を行っております。また介護者がいても十分に介護できないというような状況の寝たきり老人に対しましては、ホームヘルパーを派遣いたしております。そのほか五十三年度からは、介護する家族の方が一時的に病気で倒れられたとかあるいはやむを得ない所用で旅行に出るというような場合に、一時期、一週間を限度としておりますが、特別養護老人ホームにお預かりをするという制度もスタートさせております。また五十四年度からは、いわば通園施設と申しますか、マイクロバスでそういう寝たきり老人を老人ホームにお迎えいたしまして入浴をさせるとか食事をさせるというようなサービスをするような制度を始めることになっております。  以上でございます。
  104. 草川昭三

    草川委員 寝たきり老人の方々が約三十万人もおみえになるわけでありますから、これは私きょうのこの委員会の主たる議題にはなりませんけれども、私も厚生省の方に今後牛乳の消費拡大のためにこれを使うという立場ではなくて、本当に寝たきり老人対策のためにも宅配の方々が毎日訪問をしながら呼びかけながら、一声かけながら牛乳を手渡しをすることができるような考えを一遍ぜひ検討していただきたいというように思うわけです。これは要望であります。  同時に、厚生省の母子衛生課の方にもお伺いしますが、現在妊産婦、乳幼児等の栄養強化事業というのがあると思うのです。妊産婦、乳幼児に対してどのような牛乳をいま支給をしておるのか、これも事実として簡単に経過を報告していただきたいと思います。
  105. 朝本信明

    ○朝本説明員 お答えいたします。  この事業は市町村の母子保健事業というものの一環といたしまして、母体の健康を保持する、胎児及び出生後の乳幼児の健全な育成を図るという目的で栄養の援助を必要といたします妊産婦、乳幼児に対して牛乳または乳製品の支給を行っておるわけでございます。  対象者は低所得世帯の妊産婦、乳幼児でございまして、その数は昭和五十二年度で妊産婦が十四万三千人、乳幼児が三万五千人となっております。支給方法は、市町村長が牛乳または乳製品を販売する業者に委託をいたしまして、対象でございます妊産婦、乳幼児の家庭に宅配するという方法で行っております。
  106. 草川昭三

    草川委員 いま言われたように、各市町村によってそれは違いますけれども、宅配ということを現実には妊産婦等で低所得者というのですかいろいろな条件の悪い方々にやられておるわけですよ。だから、やろうと思えば寝たきり老人の場合だって三十万人の対象の方々にやれぬことはないと思いますね。私は本当に素人ですよ。素人だけれども、宅配の方々の声を聞いた、一番最初に長官が言われたように、現実の訴えを聞いたってこういうアイデアが出るわけですよ。だから私は農林省に、昭和四十六年から宅配が大切だという行政指導が出ているんだから、もう少し知恵を出してどんどんやってもらいたいと思うのです。いま農林省の方は、特に大都市近郊では宅配の協業化ということを指導なされ、若干の助成金を出して流通センターというのですか、そういうものをつくろうというような指導をなされておりますけれども、大体都市の近郊の大きな団地なんかを調べてみますと、まだまだ不便だというので埋まってないわけですよ、入居者が。そのために、せっかく流通センターをつくったんだけれども、それを基地として宅配をしようと思ったってできないという条件、がらがらで団地があいておるものですから。そうすると、その協業化に参加したところの宅配の方々は物すごい金利負担に苦しんでみえるわけですよ。だから私は、生産者に対すると同じように宅配業界の方々にも農林省は利子補給なんかを考えてやるべきじゃないだろうか、こう思うのですよ。そういう細かい対策を農林省が考えてやることが本当の宅配に対する指導だと私は思うのです。その点について農林省どうですか、最後に一言。
  107. 芝田博

    ○芝田説明員 御指摘のとおり、農林省といたしまして牛乳の流通合理化のために牛乳販売店の共同事業によりますところの共同保管配送施設、われわれミルクデポと呼んでおりますが、先生がおっしゃった意味のセンターでございます、これの設置に対する助成を行っておるわけでございますが、その点につきましても御指摘のありましたとおり、京都、大阪等の近郊におきまして、計画した時点においてニュータウンの造成及び入居の計画に合わせて計画したところ、それらの計画がおくれた。団地の建設、道路の施設または入居等がおくれてそのためにミルクデポの新設が先行してそれが十分機能していない、そのような事例がございまして、会計検査院の指摘等も受けたわけでございます。これに対しましてわれわれといたしましては、そのような一方におきます公的な計画であるニュータウン建設計画等のおくれから来るところのやむを得ざる面もあるということで会計検査院ともいろいろ話し合っているわけでございます。  このような事例を踏まえまして、先生の御指摘はそれらを含めまして販売業者の金利負担に対する助成ということでございますが、金融につきましては、このような宅配業者と申しますか販売業者も中小企業の一つといたしまして、国民金融公庫、商工組合中央金庫その他の制度融資の対象ともなっておるわけでございまして、その点からの金利面の広い意味での助成等がなされておるという理解のもとに、現在のところそのような利子補給的なことはまだ考えていないわけでございます。
  108. 草川昭三

    草川委員 最後になりますけれども、いま利子補給は考えていないという話ですが、実際私どもがこの一時間の間取り上げた問題等を考えますと、行政というのは差別があってはいかぬと思うのですよ。生産者の方々には農林省は生産者の方々の声を十分聞きながら配慮しておると思う。宅配の方々の切実な訴えについても同様なことをしないと――農林省が宅配はだめだと言っておるわけじゃないのですから、育てようというならば育てるような条件に応ずる柔軟な対応、そういうものをぜひやっていただきたいことを私は強く要望しておきたいと思います。  最後に長官に、ヨーロッパのベルギー、スイス、イギリス、アイルランド、オランダ、いろいろな例があるわけでございますが、英国等は宅配というものを非常に手厚く保護をして、国民生活に牛乳というものが――いわゆる疑似製品の牛乳ではなくて本当の生乳というものを国民が栄養摂取できるようにうまく育ててみえる。宅配がつぶれたところは全体の牛乳の消費量というものは下がりながら、国民の体位向上等についてもマイナス要因になっておる、こういう例があるわけでございます。最初に大体のお考えは聞いておるわけでございますが、最後に長官の意見をお聞きいたしまして私の質問を終わりたい、こういうように思います。
  109. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま草川委員から牛乳問題を踏まえながらも、なおかつ社会的な一種の安定ということ、また国民体位の向上という面にも触れられて大変示唆の多い御質問、御意見を承って、私も特に宅配問題につきましては、基本的な考え方を申し上げますと、零細の第一線の小売店というものはそれ自体が生産者側のものではないのであって、むしろこれは消費側のものだ。私は消費者運動の一環として特にこうした零細商業関係をぜひ消費者保護というような形あるいは消費者を大切にするという形の中でもう一度取り上げるのがきわめて大事な問題であるという認識を持っております。そのような関係から、企画庁におきましても特にこうした第一線の零細商業者の意見を聞く、そのようなことを先般来少しずつやっております。近くまた、牛乳だけとは限りませんが、食品関係方々のお集まりをいただいて、われわれといたしましてはその問題の実態をよく伺って、そうして消費者保護と申しましょうか、消費者行政の一環としての枠内でこれらの問題を考えてみたい。もちろん先ほど御指摘のございました金利の問題とかいろいろなことがございますが、それを生産者側の一環として考えるのと消費者のためとしての考え方とまた違った味があると私は思うので、きょうは大変いい意味での御示唆をいただきましたことを感謝いたします。
  110. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  111. 鈴木強

    鈴木委員長 次回は、来る五月二十九日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五分散会