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1979-02-20 第87回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二十日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 佐藤  隆君    理事 今井  勇君 理事 羽田  孜君    理事 山崎平八郎君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 稲富 稜人君       久野 忠治君    熊谷 義雄君       玉沢徳一郎君    津島 雄二君       中村喜四郎君    福島 譲二君       堀之内久男君    森   清君       森田 欽二君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       新盛 辰雄君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       日野 市朗君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  渡辺美智雄君  出席政府委員         農林水産政務次         官       片岡 清一君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省アジア局         北東アジア課長 股野 景親君         運輸省船員局労         政課長     松木 洋三君         海上保安庁警備         救難部長    村田 光吉君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   竹内  猛君     稲葉 誠一君 同日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     竹内  猛君 同月十九日  辞任         補欠選任   吉浦 忠治君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     吉浦 忠治君     ――――――――――――― 二月十三日  沿岸漁業改善資金助成法案内閣提出第二五号)  は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十五日  農業基本政策確立に関する陳情書外二件  (第  五〇号)  農業生産基盤整備等に関する陳情書  (第五一号)  予約限度超過米全量買い上げに関する陳情書  外三件(第五  二号)  イネミズゾウムシの防除対策に関する陳情書外  一件  (第五三号)  農畜産物輸入に関する陳情書外二件  (第五四号)  国有林野事業特別整備計画実施反対等に関する  陳情書  (第五五号)  マツクイムシ防除対策に関する陳情書  (第五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 佐藤隆

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  農産物価格等に関する調査のため小委員十九名よりなる農産物価格等に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次に、小委員及び小委員長辞任の許可、補欠選任並びに小委員会におきまして参考人出席を求め意見を聴取する必要が生じた場合は、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  6. 佐藤隆

    佐藤委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  7. 柴田健治

    柴田(健)委員 五十四年度の予算審議がいま続行しておるわけですが、われわれ農林委員会農林大臣に対する質疑を行っていきたい、こういうことで、きょうはトップバッター大臣に直接御質問を申し上げたいと思うのであります。  農林大臣がかわるたびに、この総合農政論の中でのいろいろと持ち味が違っておるわけでありますが、前の中川農林大臣、彼の農政の進め方と、今度渡辺農林大臣になって、あなたの今度の所信表明の中でどうも余り変わった点が見受けられないという気がするわけですが、多少この文の中に二、三カ所変わった点もございますけれども、どうもぴんとこない。こういう気がしますのは、中川農政渡辺農政とどこを違えていこうとするのか、同じような道を歩むのか、その点をひとつ所信を聞かしていただきたいと思うのであります。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論的に言うと、中川農政と私の考えは大差はないと思います。と申しますのは、私も中川君も総合農政推進派でございまして、過去十年間一緒にやってきておるわけであります。したがって、私も党の方の農林部会長等もやりましたし、農林政務次官を二回ほどやらしていただいておって、常に裏と表みたいなものであります。したがいまして、私はその所信表明の中で申し上げたとおり、基本的には中川路線を踏襲するということを言っておるわけでございます。もちろん、人が違いますから多少のニュアンスの違いというものはあろうかと存じますが、基本的な考え方に大きな隔たりはない、かように御承知いただいて結構でございます。
  9. 柴田健治

    柴田(健)委員 簡潔に御説明願ったのですが、中川農政と変わらない、要するに、一般の日本農民の中には、日本農政青嵐会農政という言葉をよく聞くのです。あなたも青嵐会所属のようでありますから、変わった点はない。総合農政というのでなしに、青嵐会農政の中でわれわれはこれからどう対応していくか、対処していくかということを真剣に考えざるを得ないわけでありますから、そういう立場からひとつ論戦をしてみたい、こう思うのであります。  まず、あなたはいまの日本農村全国三千三百ほどの市町村の中で特に長い歴史を持ってきたこの農業という一つ基幹産業、要するにそれを本業としてやってきた地域、いま大体三分の一は完全な農業地域であります。第一次産業地域であります。約千二百の、たとえば一方では過疎地域とも言われておる、三分の一地域の完全なる第一次産業基幹産業として黙々としてやってきたのが、今日それが本業ではない、半ば農業は副業である。農家所得から見て農業所得比重というものはもはや三割台だ、もう半分にも満たないという。極端な地域はもう三割だ、こういう農家所得の中の比重であります。だから、他に所得を求めていくという実態、こういう地域における、これからあなたが農家安定生活を図る、こういう言葉でそこに表現されておりますが、依然としていまの農業には魅力がないという立場から、農家所得をどうしてふやすか、農業外所得だけに力点を置くのなら、農政よりはみ出していかなければならぬ。そういう農業所得をもっと充実するためには、いまのような、あなたが継承していこうとする青嵐会農政中川農政というものでは見通しは明るくない、だんだん暗くなってくるとわれわれは言わざるを得ないのですが、そういう本業なき農村地域をどうして所得向上させていこうとするのか、その見解を聞いておきたいのであります。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 青嵐会農政という言葉を初めてお伺いをいたしまして……(「いつも使っているじゃないか」と呼ぶ者あり)私は使ったことはないのです。私は総合農政という言葉は使ったことがございます。  私は、ここのところをよく知っていただかなければならないのだけれども、基本的な考え方としては、まず、農村というものは民族の苗代だ。第二番目は、したがって、やはり日本古来文化というものは農村に根源がある。そういうようないい面はちゃんと残したらいいだろう。それからもう一つは、やはり日本政治というものは、食糧の安定的な確保なくして政治はあり得ないのでありますから、食糧安定的確保政治基本である。これも間違いない。したがって、どうして安定的に確保するか、しかし、国家安全保障の見地から、国内生産できるものは極力国内生産するように努力しなければならぬ、これも一つ基本であります。だからといって、ただ価格政策だけで国内生産を高めるというのでなく、価格支持政策も必要だけれども、それ以上にやはり農業近代化あるいは生産性の向上、こういうものもやっていかなければならぬ。不足のものはこれは一部輸入に頼ることを避けるわけにはいかない。それから、農村で、住みよくするためにいろいろな農村環境整備とか文化施設とかそういうものをこしらえて、住みよい農村をつくる。うんと簡単に要約すれば大体そういうふうなことが基本になっておるわけであります。  いまのお話は、結局二次産業、三次産業というのがふえちゃっておって、農業所得増大しないじゃないか、農業所得増大させるためにはどうするんだ、こういうお話だと思います。したがって、農業基本法で言っていることは、専業農家を育成して規模拡大を図って選択的な作物の拡大を図っていくのだというようなことを言っておるが、そのとおりうまく進まなかったじゃないか。確かに進んだ部分もあるし、条件整備が整わないでうまくいかない部分もあるし、いろいろございます。そういう点はやはり反省をして、直すべきものは直さなければならぬ。農業規模拡大ができ、もっと近代化が進むためにはどうしたらいいのか、そこで邪魔になっているものは何と何なのか、こういうようなものは洗い出してもう一遍再検討する必要がある。しかしながら、農家所得増大というものを図るためには、個人の所有面積拡大を図るということは言うべくしてそう簡単なものじゃない。  それからまたもう一つは、私は兼業農家が悪いなんて思ってないのです。私はやはり兼業農家があっていいと思うのです。みんな専業農家にするといっても、現実土地が五百六十万とか、幾ら開墾してもあと百五十万くらいしか十年以内にはなかなか開墾できないという現実から見れば、農家就労人口をふやしていって規模拡大ができるわけもないしするから、したがって、土地生産性を高めるためには、高度経済成長に伴って農業就労人口が減ってくるということがむしろ農業近代化だ、こう言われた時代のあったことは皆さん御承知のとおりです。一町歩土地を二人で耕す場合と一町歩を一人で耕す場合では生産性はまるっきり違うわけですから、したがって、ある程度人間の値打ちが高くなって一人で耕す面積が多くなるということは、その人の所得増大をするということにつながるわけですから、そういう近代化方向というものは否定することはできない。しかしながら、土地を買い取って広げるということもむずかしい。私は、兼業農家があってもいいし、その兼業農家の中でも、土地を手放して兼業するということよりも、むしろ生産性の低い兼業農家があるとすれば、土地と経験を農家が持ったまま農作業から解放されるというような形でのいわゆる兼業農家というものがふえて、しかも、農外収入が主たるものになって、それで安定生活が営めて、その地域におって、しかも収入がふえて中産階級として残る、こういうような形になれば、兼業農家があって非常によいことではないのかというふうにむしろ思っておるわけであります。要するに、片っ方においては兼業農家から土地を借りたりあるいは賃耕をやったりして専業農家規模拡大を図れる、いわゆる中核的担い手として農業生産の中心になっていくというような形で、私は総合的に見て農村が豊かになるようなことを考えていく。そのためには、農村工業導入というふうなものもあわせて、全部行い得るわけではないが、許された地域にはそういうものも求め、農村から人口が流出しないで、その自分地域、または通勤可能なところに職場が求められるというようなチャンスを与えるような政策誘導、これが必要ではないか、かように考えておるわけであります。
  11. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうもわかったようなわからぬような所信表明なんですが、兼業農家を大いに認めた論陣であります。  農村工業導入という言葉が出た。今日まで、あなたの前任者、その前の前任者まで、いろいろと農村工業導入ということで政策的に導入したそれぞれの企業がどれだけ倒産しておるかということを見ても、皆さん農林省が本気でそういう企業の育成なりそういう施策十分手を打っておるとは言えない。そういう矛盾をどう感じておられるかということもわれわれは農林省大臣に強く求めておきたい、こう思うのです。  いま農業基本法の問題が出たのですが、選択的拡大という言葉。ところが、いま、米をつくるな、生産調整に入っている。この生産調整農民選択の自由を束縛しておる。農業基本法では選択的拡大だから選択の自由。それにはまあ大体米と果樹と畜産ということで、これを思い切ってやりなさいという選択の自由。片っ方は米の生産調整ですから選択の自由を規制していくわけです。こういう矛盾を平気でやっておるところに、私は、総合農政という言葉日本農民にとっては一つごまかし農政だ、こう言わざるを得ない。  私は、そういう点をあなたと論戦していると時間がない、たった六十分ですから、次に進みたいと思うのですが、あなたは、いま農業担い手論を言った。担い手を育成することは中川農政も言うてきた。あなたもまた言う。農業担い手後継者育成、これにも関連するわけですが、いま日本農業を背負うて立っておる中堅の年齢というのはほとんど五十五歳を越している、六十歳。こうした老齢化をどうして防ぐかということになれば、やはり若い層を農村に定着させていかなければならない。いまUターン現象が起きているなんというのは一時的な現象で、長い目で見ればこのUターン現象が定着するとは思えない。若い時分から農業魅力を持ち、希望を持ち、夢を持って残って働いていくというのが本当の農業後継者である。いま全国で一年間にもはや一万人を割ってしまった。毎年毎年八千人か九千人前後。こういう実態で、将来、十年、二十年、三十年たった場合に、農業担い手として、後継者としてどれだけの農家戸数が残るのであろうかということを考える。いまもう五十五歳以上が九〇%以上で老齢化しておるわけです。それがいま中堅就労人口として皆さん方が握っておる数字であります。そういう九〇%以上老齢化した農家就労人口昭和四十四年が農業漁業合わせて九百四十六万人、それが四十八年では七百五万人、五十二年では六百三十四万人、五十三年では六百三十三万人、年々減っておるわけです。その中で、林業、漁業は言いませんが農業が今日、五十三年度で五百六十九万人。これは一人ではない、夫婦で就労しているわけですから、実際、いま四百九十何万戸の農家。六百万農家がだんだん縮小され、首切りされて、合理化されて、いま五百万を割っているわけですから、その中で五百六十九万の就労人口夫婦と見た場合に、本当に農家で働いておる戸数というものはもうその半分以下だ。三百万戸以下になってしまった。残りは、人に委託しておるか、人を頼んでやっておるか、もはやたんぼをささやかに維持して、相当の賃金その他を支払って、届けば農家としての届けになっているけれども実態自分でやってないという農家がふえておる。こういう実態大臣はどう理解をして、この担い手育成なり後継者育成にはどういう手を使いたいか。この食糧問題は、民族基本の問題として、国際安全保障という立場からとらえて、もっと真剣にやらなければならぬとあなたは言われるけれども、実態は大きな違いがある。この点のとらえ方を聞かせていただきたい。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本農業に夢がないと言う人がありますが、私はそう思いません。何といったって一億一千万の消費人口を持っているという現実があるわけですね。大変旺盛な消費能力があるわけです。そこにもってきてこれらの人々は豊かです。幾ら人口が多くても、本当にささやかなものしか買わない、生活を維持できる最小限度のものしか買わないというような人口では、市場として魅力がありません。ところが、日本至近距離の中で一億一千万という旺盛な消費人口を持っておる、所得がある、これは大変な将来の夢と希望だと私は思う。世界じゅうが日本に殺到しようとしておるのはそこにあるわけです。だから、外国と対抗できるような農業体質改善を行えば、日本農業相当なものになれる。しかし、問題は、常に消費者の意向、動向は変わっているわけです。それを無視して、消費者が大体米を食べなくなってきた、それをともかく選択的拡大だから米を食え米を食えと言っても、消費者あっての生産者であり、消費者がなくては生産者はないわけですから、やはり消費者所得状況経済状況、それから嗜好の変動、こういうものを先取りして、そういうものに対応するような生産体制というものを組んでいかなければならぬ、私はそう思っておるのです。  そこで、就労人口が減ったことが農業がだめになったことだ、私はそう思わないのです。文明国家であるか、先進国家であるかないかの一つのバロメーターというものは、農業就労人口が多いか少ないかが一つの標準になってきた。明治時代大正時代には五〇%、昭和でも終戦前後の非常に苦しかった時代就労人口は四〇%というような状態であった。中国とかインドとかいうような国になれば、いわゆる発展途上国は五〇%とか六〇%というような農業就労人口を持っておる。フランスとか日本は似たようなところでしょう。ドイツが五%ぐらいですか、日本は一一%を割った、約一〇%ぐらいでしょう。アメリカはもっと低い。しかし、イギリスまで低くすると問題があると私は思っておるのです。したがって、大体一〇%ぐらいの農業就労人口というものはまあまあいいのじゃないかなという気が私はしておるのです。問題は、土地面積が同じであれば、そこで働く人の数がふえるというのは一人当たり収入が減るということですから、ある程度そういうところから、次男三男も全部分家、分家でさせる、農業就労人口を多くするということ、それは農村発展農業所得増大にはつながらない。それは、一人一人の生活というものを考えた場合に他産業均衡がとれない。一方では他産業均衡をとりなさい、こう言っているわけですから、そういうことになれば、どうしても耕作農民一人当たりの耕す土地面積がある程度ふえなければならぬ。その土地の中でもさらに、そうふやすことはできないから、結局生産性を上げなければならぬ、経費を少なくしなければならぬ、高く売れるものをつくらなければならぬということになれば──イチゴをつくれば一反歩三十万円になる。米をつくるよりもイチゴをつくった方がいい人にはどんどんイチゴをつくってもらう、こういうことで、同じ十アール当たり面積でも生産金額が違う、したがって所得が違うということになれば、その所得の多いところを選択的に拡大していく、こういうことをわれわれは主張しておるわけであります。  また、私どもは、農村次男三男を全部農業に就職させるのだ、こうは思っておりません。長男であっても場合によっては、それは三反歩とか五反歩しかない、それだけで農業専業ではなかなか生活を上げられない、上げろと言っても上げる道を教えることができない、そういう場合には、その土地の有効的な利用をお勧めすることがあります。そして、別に職があって農協なり役場なり工場なりに勤めておる、しかし片方も中途半端、農業も中途半端ではかえって困るという人があるならば、これはどちらかに変えてもらった方がいいのじゃありませんかということも言っておるわけです。そのためには、しかしながら、土地というものが財産価値を持っておって、人に貸したりすればもう返ってこないのじゃないかという不安、返してもらうときには離作料を取られるのじゃないかという不安、こういう不安があったのでは人に土地を貸す人はない、したがって、そういう不安をどうしたら取り除くことができるか、それによって利用権の集積というものを考えていく必要がある。  いずれにいたしましても、農村地帯から人口がどんどん流出しないで、次男三男というものも農村のどこかに住んでおる、通勤の可能性のあるところに工場とかその他の就労機会の場をつくってもらえれば、親子水入らずとまではいかないけれども、みんな兄弟が、ちょっとほいと声をかければ届くぐらいのところに住んでおることは家庭生活上いいことですから、そういうような地方の工場その他の分散を図っていくということはいいことじゃないか、私はかように考えて言っておるわけであります。したがって、農業就労人口が減ったから日本農政が後退した、そういうことにはならない、私はそう思っております。
  13. 柴田健治

    柴田(健)委員 いままで米をつくれ、つくれと言うから米を主体として、米を生産する労働時間というものは非常に短縮された。今度は米をやめてほかに転作ということですね。大豆をつくるにしても野菜その他でも、労働時間がたくさんかかるようになった。農林省はみずから労働時間がたくさんかかるような品目にいま切りかえておる。そして、米はある程度の保証価格というものがある。ほかのものは、多少の基準価格制度をつくって補給金制度をつくっておる、そういうものがございます。しかし、労働時間がたくさんかかるような方向へいま大きく転換させようとしておるのじゃないですか。それから見て、米なら長い間の経験なり、なれておるから、労働時間が非常に短縮されておるから、この余剰労働力というものを他に向けて所得を求めている、そういう形で歩んできたのが、今度は、大豆をつくっても米以上に労働時間がたくさんかかる、野菜をつくってもそうだし、その他農林省が決めた指定品目をつくっても相当労働時間がかかるようになってきた。そういうときに、年寄りでもうできない、米ならやれるかもしらないけれども、若い人がおらないとできないという農政の大きな転換を求めておるのに、ただ兼業農家で結構でございます、それから、いや、いまの老齢化現象をそのままでよろしいというようなことでは農民は理解してくれないだろう、私はそう思うのですよ。これは、時間がございませんから次に飛びますが、中途半端な論戦になりますが、私は、何としても後継者育成に──ちょっと角度を変えて、いまのように金を貸してやるからしっかりやりなさいという融資一本の後継者育成というものはもうやめた方がいい。もっと形を変えて、主要農畜産物価格保証を将来はこういう方法でやっていきたい、いま段階的にはこうだということで、何らかの形で農産物価格保証というものを、夢を描いて、そういう方向農林省も真剣に考えるべきじゃないか、それによって若い人に農業という産業魅力を持ってもらう。ただ、金を貸してやるからという融資制度だけで後継者育成というのは、もうこの辺で考え直す必要がある、こう思っておるのですが、大臣はどうでしょうか。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 減反問題については、これは御承知のとおり、農業でも産業ですから、産業でつくられるものは商品的性格が非常に強い。したがって、消費者が必要なものをつくらなければ、つくった農作物というものがとうとばれるということはないわけです。農作物がとうとばれるためには、消費者が必要で喜ぶものをつくるということが基本なわけですね。ところが、米の場合は、御承知のとおり過剰生産になっておる、しかしながら食管制度かあるから──なければこれは暴落ですよ。しかし食管制度があるから価格が維持されておる。したがって、食管制度を守れという声は農民の間に非常に強いわけです。しかし、これを守っていくためには、これは統制経済の制度でございますから、際限もなくつくられても、こういうような国家財政の厳しい折に無制限に政府が買い上げて倉庫にしまっておくというわけにはとてもいかないという現実を考えれば、これは生産の調整というものはやむを得ない。そして、不足したものをこしらえる方向政策誘導することは当然過ぎるほど当然のことだと私は存じます。  ただ、問題は、だれにこれをさせるのかという問題については、適地適産ということもわれわれは考えておりますから、たとえば新潟県のようなところは減反率が少ないとか、あるいは別なところは減反率が多いとかというように割りつけているわけですね。それに準じて、今度は県知事が、湿地帯のところは減反率を少なくして、乾田地帯は減反率を多くしてというようなことをやっておるわけです。町村長がまたそれをまねて、やはり人によっては、減反が非常にしづらい人には恐らく少なくしているのでしょうし、やりやすい人にはよけいに希望者を募ってやっているでしょうし、そういうようにして、個人的に転作しやすい人としやすくない人とでお互いが創意工夫をしてやっているわけですね。ですから、村の中でも共補償なんかしまして、私は米をつくるけれどもそのかわり米をつくらない人には幾ら出しましょうとかいうことで、お互いが助け合い運動で、農協なんかがそれのお手伝いをしているのかどうか知りませんが、そういうことで、円満に村全体としては転作率をこなしながら、中では非常に現実的に話を進めておるところもございます。したがって、そういうことが一番理想的にいいのじゃないか、こういうように私は考えておるわけであります。  後継者の問題につきましては、私が先ほど言ったように、日本という国は一億一千万の消費人口を持っておる裕福な消費人口の国だから、つくり方によっては相当たくさんのものが高価なものでも消化されますよ。日光イチゴなんというのは一箱四百円とか幾らで売っていますが、これは豊かだからそれでもどんどん売れる。しかしながら、豊かでなかったら、一粒二百円の伊予カンが飛ぶようになんか売れませんよ、食うや食わずだったら。豊かだからこれは売れておるという現実なので、やはりそういうように消費者が喜ぶようなものを選択的につくっていけばいい。そのつくり方については、いろいろな助成措置を講じたり、生産性の上がるような工夫をしたりしながら、後継者の育成というものを図っていかなければならぬ。ただ、価格の保証をみんなやれと言われましても、あらゆる農作物について政府がみんな価格保証をするなんということは、自由経済を基調とするわが国においてこれは言うべくしてできないことだ、私はそう思っております。
  15. 柴田健治

    柴田(健)委員 渡辺大臣の御意見を聞いておると、ますますわからないようになってくるのです。先ほど食管制度を統制経済だなんというとらえ方をしておるというのは、およそ時代おくれ。われわれはいまの食管法というものは社会保障という立場でとらえて取り組んでおるわけで、あなたの言葉を聞くと、統制経済なんて戦争中の言葉なんで、官僚統制、そういうとらえ方で食管会計を見ておるとするならば、これはもうわれわれとかみ合わないのでありまして、これはもう、青嵐会農政というものは仕方がないなとあきらめざるを得ない。私は日本農業というもの──近ごろ国際分業論という言葉がなくなった。これは意図的か意識的かわかりませんが、国際分業論という言葉はあらゆるところで消えました。しかし実態はそうじゃない。実態は依然として国際分業論の方向で歩んでおる。それから、いまの日本農政の姿は、果物をつくっても何をつくっても、りっぱな品物のいいのをつくりなさい、これがもう前段に出てくる。品物のいいのをつくるということはコストが高くなるということだ。コストが高くなるということは消費者にとってはありがたいことではない。これはもう、所得の高い者はぜいたくで何でも高くても買うて食うかしれないが、所得の低い層にはもはや日本人がつくる農作物は食えないという事態をつくり出していくようなものです。貧乏人の方、所得の低い者は外国の安いものを買うて食いなさい、金のある者は日本人がつくるコストの高いいい品物を買うて食いなさい、そういう現象をみずからつくり出していくような農政は、これは厳に慎んでもらいたい、こう思うのです。そういうコストが高くなるような方向で品質の高いものをつくらす、そういうやり方は考えてもらわなければ困る、こう私は思っておるわけです。  私は、米の過剰問題でちょっと言いますが、この過剰対策で大臣はいろいろと所信を述べられた。ところが、生産調整が一番の過剰対策の基本になって、その次は古々米の処理をやる、今年度もそういうことで、三カ年、百七十万トンの生産調整の数量、面積は依然として同じであっても、今度は自主的に一〇%お願いをするという姿勢の予算のようであります。そこで、自主的にお願いをすると言うが、結果的には割り当て方式なり押しつけということになるのではなかろうかという一つの心配がある。これが第一点。  それからもう一つは、生産調整であるとか古々米の処理、それもわかります。わかりますが、もっと消費拡大に力を入れるということ。そのためには、学校給食その他も多少前進を見ておりますが、もっと国民に米を食うてもらう運動をやって、そこは民族意識があるかないかの問題になってくると思うのですが、日本人なら米を食おうではないか、大臣みずからそういう心構えを基調として推進しないと、いまあなたの論を聞いておるとお好みに合わせていくと言う、そんなことでこの米の消費拡大はできない。お好みに合わせていくのなら大臣も何も要らない。それではだれがやってもいいんだ。それで、私、新しい提案として申し上げるが、都道府県に、これだけは人口があるのだからこれだけは米を食いなさい──それは生産県と消費県とは違いましょう。それはバランスを考えて、これ以上一万トン、二万トン、オーバーして食うた分については、消費拡大に協力した県にはその一万トンに対して一割の、値引きということにはいかないけれども奨励金を出しましょう、それで各都道府県のあらゆる知恵を使って米の消費拡大をやりなさい、こういうぐあいに考えたら、一つの方法としてある程度の消費拡大に役立つのではなかろうかという、これは私の発想であります。  そういうことで、この生産調整、古々米の処理ということも当面は考えられますけれども、何としても消費拡大をしないとこれは困る、これに力点を置くべきではないか。こういう点で大臣所信を聞いておきたい。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 消費拡大に力点を置くということ、私も大賛成なんです。その点はもう一致しているのです。ただ、消費者のお好みに合わせるということはけしからぬこうおっしゃいますが、消費者が食いたくないものを極端に食わせると言ったって、それは言うだけであって、現実はむずかしいですよ。農家の方に、自分で米をつくっているんだからパンも食っちゃいけません、うどんも食っちゃいけませんと言ったって、農家の人だってうどん食っていますよ。たまにはうどんも食いたいし、いろいろなものも食べたいわけです。ですから、消費者に逆らうということは──やってできないことはないですよ。たとえば、それじゃ外麦をうんと値上げしちゃうとか、パンは三倍くらいに値上げするとか極端なことをやれば、高いから、うどんやパンは食べたいけれども大変だ、じゃ米を食おうかということもできるでしょう。しかし、そういうことは理屈だけであって、現実にはなかなか──それは自民党の中だってそういう主張をする人はありますよ、もっと外麦を値上げしろと。しかし、政治としては非常にむずかしい問題で、そういうことはやるべきものではない。やはりなるべく消費者の好みに合わせていくということが必要だ。  ただ、米がいいことが忘れられちゃって、一時のように、米を食ったら頭が悪くなるとかでたらめのデマ宣伝をして、そしてパンとか何かを宣伝、普及したという時代があったように私は思う。こういう間違ったものは直してもらわなければならない。米が一番日本民族に合って、しかも日本の主食として一番適当なものである。昔の人は特に玄米を食っておって、かなりよろいかぶとを着たって──いまの人はとても着られませんよ、あんなでかくて重いものを。何であんなものを着て歩いたのか。私は米を食って、しかも玄米食をよけい食ったせいじゃないかと思っているのですが、そういう体力の時代があったわけです、歴史を見てもわかるように。そんなうまいものばかり食ったわけじゃない。したがって、米の見直しというのは非常に必要である。したがって、そういうようないろいろなPRなり認識をしてもらったりする創意工夫は私は非常に大切だと思う。  したがいまして、学校の子供が、お父さん、お母さんが朝パンを食って、学校へ来てもパンを食って、帰ったらうどんを食ってということでは米を食うことを忘れる民族になってしまう。これは困る。こういう点から、やはり一つは習慣の問題ですから、どうしても学校では週二回くらいはひとつお米を食べていただきたい。そして、うちで当分米を食べないような家庭の子供は、米を忘れないようにしてもらわなければ困る。こういうような点から、学校給食については予想外の大幅値引きがあったわけですよ。今回は、初めてやる人は一年間七割値引きをする、普通いままでやっている人は六〇%値引きをするというようなことを大幅にやって、学校給食で米を取り入れるようにしてもらっているわけです。しかも、私は、極力うまい米をやった方がいいと思うのですよ。何だ、学校で食べたところが米はまずかった、パンの方がうまかったということを子供に印象づけますと、米というものはまずいものたということになっては困るのです。やはり米はおいしいものだというようにする必要がある、こう私は考えておるわけであります。  府県に対して、一定の消費をしたものについては補助金か何かを出せというお話でございますが、これについては極力われわれも考えてはおりますが、なかなか給食について補助金を出すということはむずかしい。消費拡大の補助金、ある一定量以上のものを食ったものに補助金を出すというのは、何を基準でどういうふうにやるかという技術的な問題もございますから非常にむずかしいのではないか、私はかように考えます。
  17. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣の意見をお尋ねしても何か時間が長くかかるのですが、今度は尋ねる方も簡潔に申し上げますから簡潔に答弁願いたい。  第二の項で、「活力に満ち、豊かで住みよい地域社会とするため、農山漁村における定住条件の整備」、こう言う。この「定住」という言葉をあなた農林大臣として初めて使われるのですが、定住圏の問題ということになると、国土庁はモデル定住圏構想、自治省が新広域市町村圏構想、建設省が地方生活圏構想、今度は大平総理大臣は田園都市構想と、四つ出てきている。これもあなたの論理でいけば、お好みでございますからどうぞ選択してください、こうなるでしょう。それから市町村の方は、補助金の多いのは国土庁かな、起債の多いのは自治省の関係かな、こう言うて、より好みで一番都合のいいやつをやろうかなと、こうなる。こんなことで本当に生活圏構想の中でそうした田園都市というものができるかどうか疑問であります。そういうものがいまの大平内閣の内部事情によるよたよた内閣の姿だろうと思いますけれども、農林省としては、そうした田園都市構想との関係はどうなるのか、簡潔にお答え願いたいと思う。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 簡潔にお答えいたします。  田園都市構想というものについて、具体的にこれとこれとこうだということは、この予算編成当時ははっきりしておりません。しかしながら、農村を住みよくするというような考え方から、われわれは農山漁村の生活環境の整備を図る、あるいはコミュニティー活動を促進するためのいろいろな施設をこしらえる、あるいは農村就労機会をつくってやって兼業農家所得増大に資するようなことを考えるというようなことなどを含めて、住みよい農村をつくるというように理解をしておって、そういう予算措置を講じておるわけであります。
  19. 柴田健治

    柴田(健)委員 各省が、国土庁にしろ、自治省にしろ、建設省にしろ、総理府にしろ、いろいろな新しいアイデアというか、名前は出すのですが、何としても常に農民が犠牲になっているのですよ。それから、上からおろすそうした構想というのは、これは中央集権的な構想であって、分権的な構想に変えていかなければならぬ。農林省はその先頭に立つべきだという気がするわけです。農村を犠牲にするそうした都市構想というものはもうやめてもらいたい、こういう気がするので付言しておきたいと思います。  次に、また東京ラウンドだとか東京サミットだとかがあるが、いろいろな国際会議、国際情勢を踏まえて、そうした動きの中で日本農業というものが常にしわ寄せ、圧迫を受けてきた、これは事実であります。今度はアメリカのごきげん伺いに急遽東京サミットの前に大平総理大臣が訪米をするという。どうも日本の国民のごきげんよりかアメリカのごきげんの方が大事なようですが、とにかくわれわれから言うと、アメリカは勝手過ぎる。肉を買わなければごきげんが悪い、オレンジを買わなければどうだ、今度は電電公社のいろいろな機械の備品を買わなければどうだ、石炭を買わなければどうだ、一々不満じゃ不満じゃと言うて、それを御無理ごもっともでアメリカへ飛んでいかなければならぬという政府の姿を見ておると、日本農民の声から言うと、何のことだ、そこまでアメリカのごきげん伺いしなければ日本の国はもたないのかという問いが出てくるわけです。どう答えたらいいのかわれわれは困るのですが、また大平さんがあわててアメリカのごきげん伺いに行く。その話し合いの中で、牛場さんがどう言ったのか、中川さんがどういう約束をして帰っておるのか知らないが、また日本農産物に影響があるのかどうかという心配があるわけですよ。この点、心配があるのかないのか、なければないと大臣ちょっと言っていただきたい。
  20. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私はきょう、日米間の問題について、農産物については昨年一年かかりまして五年間の話し合いはついたわけでありますから、これは解決済みでありますということを御記憶くださいということを閣議でも言っておるわけであります。
  21. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣、ことしの農産物の価格問題、特に米価、畜産物、いろいろ言われたんですが、いまの予算措置から見ると余り期待が持てない。いずれ三月三十日までには畜産物の価格を決めるときが来るわけです。もう一カ月余りです。この畜産物の価格を、聞くところによればまた数字で抑えていこうという動きがあるように、そういう声が流れている。畜産農民は非常に心配しておる。またそれに合わせて米価も上がらない、賃金も上がらないということになるわけですが、適正な価格という言葉を使っておる。適正というものは引き下げるのも適正かもしらぬ。ところが、われわれは、適正な価格といったら物価上昇率に合わせて当然上げるものだという、そういう理解の仕方。その点について、ことしの農産物の価格についてどういう取り組みをせられるのか。ただこの文章のあなたの説明だけじゃよくわからない、簡単にお答え願いたい。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 三月中に決めるいわゆる政府の関与している畜産物の価格については、需給事情それから生産事情、生産費の動向、それから経済事情等を勘案をして決めます。目下それらの材料を収集中でございます。
  23. 柴田健治

    柴田(健)委員 それなら、いまもう引き下げるというような声が流れていますが、下がるようなことは断じてないということですね。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは計算をしてみないとわかりませんが、そんなに下がるという要素はないように思います。
  25. 柴田健治

    柴田(健)委員 もう時間がございませんが、次に二点ほど、われわれは農民の健康管理というものに非常に目を向けておるわけですが、だんだんと老齢化してくるし、農作業中におけるけが、農機具の使用中に不注意か何かでとにかくけがもする、病気もふえる、いろいろな形で、農家の主婦なりまた男子を含めて非常に事故が多い。特にまたその点から見て、もっと健康管理に力を入れるべきではなかろうかという気がするわけですが、大臣所信を聞いておきたいと思います。
  26. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 近年農業労働の環境の変化等によりまして、老人なり婦人なり病気、けがというものがふえておると言われております。ふえている要因としましては、農業労働力の婦人化、老齢化というものの進展ということもございますし、もう一つ農業機械化の進展というのもございます。それからハウス栽培の増加というような農作業条件の変化というようなことが考えられます。したがいまして、こういう農村の婦人なり老人なりの健康管理のあり方という問題につきましては、当然、一般的には厚生省の方の関係の医療保健体制の整備というものに期待するという点もあるわけでございますが、農林水産省独自といたしましても、やはり健康対策というものにつきましては強力にこれを展開していく必要があるであろう、こう思っております。  一つは、生活改良普及員、全国に約二千名おりますが、この生活改良普及員によります一般の普及活動というものを通じまして、この健康の問題を啓蒙をするということ。それから具体的な事業といたしましては、農業者健康モデル地区育成事業というものを、これも五十年度からやっておりますが、こういうような、健康診断をやったり、それから健康管理の生活設計を立てるというようなことなどもやっておりますし、特に五十四年度からは農村の婦人と高齢者を対象にしました農村婦人等健康推進特別事業というものを実施することにいたしております。それから、他面、農業機械化が進展しておりますので、そちらの面でのけが等もございますので、農作業の安全対策というものにつきましても、これも並行して啓蒙なりをしていきたいということで対策を考えておるわけ  でございます。
  27. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣、これから農業所得をどうして上げるかということも考えていかなければならぬという立場から新しい提案をしたいのですが、たとえば、水稲と林業、水稲と畜産、水稲と果樹といういろいろと組み合わせ、日本のいろいろな農業経営の中で営農のあり方がそれぞれの地域で違いますけれども、私は、今度特用林の問題も考えたらどうかということと、それから内水面漁業と一般農業というものを組み合わせた一つの新しい組み合わせの営農を考えたらどうか、そういう点で農林省はいろいろ検討されたことがあるのか、それから検討したいのか、いいのか悪いのか、私の提案をひとつ簡潔に──この内水面漁業、要するに漁業農業との組み合わせをひとつこの辺で考えて農業所得の向上を図ったらどうかという気がするので、ひとつお答えを願いたい、こう思います。  それから、これは地域的な問題ですが、御承知のように、干拓事業は、日本の干拓技術というものは世界最高でありますが、そういう世界最高の技術をもって農林省の予算でいま数多くの干拓地を長い年月の中でつくってきた。八郎潟でもそうですが、福島潟干拓でもそうです。いま、岡山県の広島県境に笠岡市というところがございますが、笠岡湾干拓は長い年月をかけており、もうほぼ完成であります。それは農林省の予算でやりますから、完全なる農用地造成であります。それが高度の政治的な動きというか、いろいろな動きがいま出てきておる。多目的利用ということの運動を帯びておる。この多目的利用を許すということは、われわれは断じて認めることができないという立場をとっておる。あくまでも農用地造成をしたものなら農用地として利用すべきであって、多目的に宅地だとか工場用地だとかに使うと、やはりそこにまた利権というものが絡んでくる。また、そういういろいろな問題が提起されてくる可能性がある。この問題については、大臣から、多目的に利用しない、こういうことのお答えを願いたいという気持ちでお尋ねを申し上げる。以上二点にお答えを願いたいと思います。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 内水面の問題は、私は大賛成です。漁業振興というのは非常に重要なことであるし、特に内水面の問題は、私のところは海がないものですから、内水面問題というものは真剣に考えて、川をきれいにしたりその他いろいろなことの創意工夫をこらしてやってまいりたい。  それから干拓の問題については、原則的には農業用としてつくられたものは農業用に使うというのが原則だと思いますが、いろいろなケース・バイ・ケースの問題もあろうかと思います。
  29. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうも最後がおかしいのですね。ケース・バイ・ケースということになると、非常に幅があるということですね。そういうことで、笠岡湾の干拓の農地造成がほかに利用されるという可能性も含んでおるということになると、これはもう大変なことだと私は思う。そういうことは私は農林省のとるべき態度でない、そういう発言は私は軽率だと思うのですよ。いまここに局長もおられるのですが、もっと大臣、はっきりしておいていただきたい、こう思います。
  30. 大場敏彦

    ○大場政府委員 大臣は一般論としてお答えになったわけでありますが、御指摘の笠岡の干拓につきましては、早ければ五十四年、できれば五十四年度いっぱいぐらいに管理計画を、これは土地利用計画と配分計画を含んだもの、あるいは営農計画を含んだものでありますが、つくりたいと思っております。われわれの考え方といたしましては、やはり背後地の農業のモデルになるような形での農業を前提とした管理計画というものを考えて検討している最中であります。
  31. 柴田健治

    柴田(健)委員 以上で終わります。
  32. 佐藤隆

    佐藤委員長 野坂浩賢君。
  33. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま同僚議員から農業問題の基本構想についてただされたわけでありますが、それの足らざる点について大臣にお尋ねをしてまいりたい、こういうふうに考えます。  大臣所信表明をお聞きいたしましたが、国民生活の安全保障だ、したがって、食糧の安定的供給が最も必要で基礎的なものであるというお話がございました。最近、各党から中期経済計画といいますか、向こう五年ないし十年間の経済計画がそれぞれの立場で提出をされております。政府も、「新経済社会七カ年計画の基本構想」というものが閣議で決定をされて、「ゆとりと生きがいのある社会を求めて」という副題をつけて、われわれに示されております。この内容は、経済成長を大体六%、それから失業率は現在から一・七%に引き下げていく、そして週休二日制を実施していくということがこれの柱になっておるように承知をするわけであります。  これは、渡辺大臣も確認をして、このとおりの方策で農業政策を進めるということでしょうか。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経済計画は一応の目標を示したものでございまして、その大綱についてはそれに沿うようにやるというのがたてまえであります。
  35. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、たとえば具体的に工場の場合を例にとってみますと、生産計画を立てる場合に、たとえば有給休暇というものもありますね、ILO条約批准によりまして。そして週休二日というと、五日働いて二日休むということでありますから、そういうシステムで生産計画をこれからお立てになるということになるだろうと思うのですね。農業の場合は、人に使われてやるということではないわけですから自主的なことでありますけれども、それに見合った労働なり、それに見合った──労働者の場合は賃金でありますが、農家の場合は賃金が価格の中に含まれるわけでございますから、農畜産物価格、そういう考え方でこれからの農政を進められるというふうに考えていいわけですね。
  36. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 価格はイコール賃金ではありません。価格の中に賃金は含まれております。したがって、価格がうんと高くなればそれはもうかったかというと、そうはなりません。数量が減っちゃって、数量が二分の一になって価格が倍になると同じですから。数量が一定で価格が倍になれば、それは所得がふえるかもしらぬが、しかし、非常にそのために不経済な肥料をやったり、不経済な人をよけい使ったということになれば、必ずしも賃金にならない。したがって、私は、価格の中に賃金は含まれるが、価格それ自体は賃金ではない、したがって、その賃金に当たる部分は、生産性向上で労働時間数を減らすとか、あるいは経費を減らすということで、一定の価格水準が維持できれば純所得はふえる、つまり賃金部分はふえるわけですから、したがって、経済計画で考えられても価格はそれに従って全部上がるのだというようには解釈できないわけであります。
  37. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、価格即賃金だと言っておるわけではありません。大臣が価格の中に賃金は含むとおっしゃった意味と全く同感であります。それは一致しておるわけです。いまの減収増益の時代から、これからインフレの様相が濃くなって増収増益という企業体質に変わりつつあるというのが今日の現状であります。したがって、農家所得も、価格の中に賃金が含まれておるわけですから、生活をしていかなければならぬ、潤いのある豊かな農村づくり、緑の農村をつくる、緑の村づくりという意味でも、ある程度のゆとりがなければ、金がなければ、先ほどお話しがあったうまいものでも食べられないというのが現状でありますから、それらに対する政策が農政である、いわゆる農業者が自主的にいろいろなことを考えてやるということも必要でありましょうが、それを誘導する農政は大きな意義がある、こういうふうに思っておるわけです。その方向で進めていただくのだなと、そういうふうに、あなたの所信表明演説を聞き、この新経済社会七カ年計画を見て私はそういう解釈をしておるのですが、それでよろしゅうございますね。
  38. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政府の関与するものは農作物のうち限られたものでございます。政府の関与する農作物の価格決定等にあたりましては、需給事情、それからいま言ったような経済事情、生産事情等は十分に考慮してまいりたい、そう思っております。
  39. 野坂浩賢

    ○野坂委員 十一時二十分までしか質問ができませんが、まだ非常に合わない点があります。  経済事情なりいろいろな変動がある、需給の関係、経済の変転ということがありますが、他の場合の生産計画としては、いま私がお話しをしたとおりの生産計画の方向でいく、企業は減収増益が増収増益の方向に向かいつつある、その場合農業だけは減益方式というものは考えられないから、それに合わせる政策というものは農政の中でとり得べきものである、こういうふうに判断をしておるわけです。  大体そういうふうに大臣もお考えのようでありますから、次に質問を進めてまいりたいと思うのでありますが、この七カ年計画の基本構想の中で、資源は有限であるということが強調されております。特に、「食糧等の長期的な供給事情の基調変化や土地、水、環境等国土資源の有限性等を踏まえて、」これからの経済成長を考えていかなければならぬということと、まず大事なことは国内の供給体制の整備だ、これが一番。二番目に「輸入の安定化等経済的安全に留意した」、あなたは経済が非常に、計理士もやっていらっしゃいますからすぐそろばんをされると思うのでありますけれども、まず国内における供給体制の整備、これが基本でありますから、歴代の総理大臣が施政方針演説あるいは質問に答えてお述べになっておりますことは、国内で自給できるものは、いわゆる価格問題を乗り越えて、まず食糧の安全保障ということで国内での自給体制を整えていく、いわゆる自給の向上を図っていく、不足するものについては外国から入れなければならぬだろう、こういうことを述べておられるわけであります。だから、この方式は一貫して渡辺農政も踏襲をされるものであろう、またこれにもそう書いてあります。そういうふうに確認をしてもよろしゅうございましょうか。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国内で不足をするようなものは、これは輸入しなければならぬ。しかしながら、極力国内生産をさせる努力はいたします。しかし、値段は幾ら高くなってもいいですよと、そういうわけにいきません。これはおのずから外国から入るものを国家権力で抑えておるようなことが多いわけですから、消費者立場も考えて、それはやはり生産者の努力もしてもらわなければなりません。生産性の向上に努めていただくというものを並行的にやらせていただきたい、かように考えております。
  41. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農業者の皆さん生産に対して努力をし、生産性向上のためにだれよりも努力をしておる、私はこういうふうに理解をしております。ただ、国土との関係あるいは向こうのいろいろな賃金その他省力化の問題等、土地の狭いとか広いとかいう問題等を踏まえて若干は違いましょうけれども、日本の中の他産業との比較ということになりますと、日本国内の他産業生活実態あるいは賃金実態、そういうものを比べて、他産業と比較をして同じようにするための政策というものが必要なんですから、その方向農業者は一生懸命に生産性の向上をやっております。それはお認めだと思います。生産性の向上で努力しておるということは否定されていないと思います。  そういう実態を踏まえて、他の産業と同じようにするということは、農林大臣生産者の味方ですし、代表なんですから、そのとおりお考えだろうと私は信じて疑いませんが、そのとおりでよろしゅうございましょうか。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農家所得を他産業と同じように均衡させる努力は継続的にやらなければいかぬ。しかしながら、その農家でも、専業の農家と、それから早い話が土地が二反歩しかない農家、それに他産業と同じ所得を与えなさいと言っても、これはなかなかむずかしい。したがって、こういうような土地条件に制約されておるような農家については、就労の機会を求めるようなことをあわせて、農家全体の所得として他産業の一家の所得と同じように均衡をとらせる、これはぜひしていかなければならぬ、かように考えております。
  43. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣は、いわゆる兼業農家論といいますか、農家所得が向上すればいいのだ、農業所得はなかなか見合わないかもしれないというふうなお考えのようでありますが、農業だけで食える農業というのがわれわれの目標でもあります。だから、専業農家皆さん等は当然他産業と同じようにしなければならぬ。そのために、あなたの、農家担い手等が老齢化しておる、だから農業の脆弱化をしておる体質をこれから強化するのだ、こういう提言だと私は理解をして読んでおったわけでありますが、そういうことでありますね。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま申し上げましたとおり、全体としての農業所得と他産業所得との均衡をとらせるようにする。専業農家についてはもちろんでございますが、兼業農家については、農業部門だけを取り上げて他産業並みに一致をさせると言っても、これはできる人もあるし、できない人もある。したがって、極力農家として専業農家が他産業並みの所得確保できるようにしなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけです。
  45. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これから高等学校の受験が始まるのですが、農業高等学校の受験生は無競争というのがほとんど全国の様相ですね。それほど普通高校に行って農業高校に行かないという現象が、締め切り日の今日あらわれております。御承知のとおりだと思うのです。  高等学校や中学校あるいは大学を御卒業になりまして、すぐに農業に就労される方というのは把握されておると思いますが、ここ三年間ぐらいどういう傾向を示しておるかということをお話しをいただきたいと思うのです。
  46. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 新規学卒者の就農状況について申し上げます。  四十五年には、卒業者総数百十六万一千六百人、そのうち就業者四十九万六千六百人、その中で就農者が三万六千九百人でございまして、七・四%の率に相なっております。いまのが四十五年でございます。  最近の時点になりますと、五十二年で申し上げますと、卒業者総数が八十四万八千四百人、うち就業者が二十九万八千二百人、そのうち就農者が一万二千人、パーセンテージにしますと四%でございます。  それから五十三年は、卒業者総数が七十六万三千人、就業者が二十七万四千人、就農者が九千人、三・三%の比率になっております。  ただ、五十二年度までと五十三年度では、調査時期が若干ずれておりますので、完全には連結はいたさないわけでございますが、大体こういうような数字に相なっております。
  47. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣は非常に現実家でありますから、理想を追う現実家だと思いますが、現実だけでやられては困るのですが、いま局長お話しになりましたように、四十五年、五十年、五十一年、五十二年、五十三年と、年々、まあ五十一年と五十二年は千五百人ほど多くなっているのではないか、こういう議論もあろうと思いますが、特に注釈をつけて五十三年度は九千人というお話がございました。どっちにしても、体質を強化するための若い労働力は一万人程度だ。  そういたしますと、たとえば三十年で世代交代期を迎える、あるいは四十年というとり方もあろうかと思うのですが、中核的な担い手というのは、都会からのUターンや、あるいは農林省を卒業して高級官僚はみんないいところに就職をするわけですが、下級官僚の皆さんは家に帰って百姓をするということになりますと、老齢化してさらに脆弱化しておる、鍛えてない体でやるわけでありますから。そうすると、いまの一万人の皆さんが、三十年を世代交代期、あるいは四十年にしても、四十万なり五十万──いま柴田議員からお話かあったように、五百万農家というのがどうなるかという議論もありましたが、そういう方が中核になって五百五十万程度の耕地面積をやっていく。これが中核的な役割りを果たす。いや、君はそう言うけれども、第二種兼業というものがあるのだから、これが六割も七割も占めるというような反論があろうかと思いますが、しかし、体質を強化をして中核的に農業発展させるというのはこれだけでいいものだろうかということを、私は非常に疑問を持つわけです、これからのあなたがおっしゃるような農業発展させるという意味で。  それならば、どの程度その中核的な、いわゆる学卒者が就農するというのは何人ぐらいが適当だろう、こういうふうにお考えになっておりますか。これで本当に日本農業を守り得るということが、今日の若い労働力から考えて、改めて見直され考え直されなければならぬのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  48. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実はこれも非常にむずかしい問題なんです。そこらのところは、いろいろな農作物の消費動向の見直しなども含めて、一遍試算をし直す必要がある。私は、中核的な農家というものはそうなにたくさんはふえないと思います。農家戸数も私は意外と減らないと思う。土地の値段がこれだけ高いというのは、日本の特殊事情ですから、財産ですからね。またそれを取り上げるということも私はよくない、こう思っておりますので、やはり兼業農家が混在することは私はいいと思うのです。どういうようにしてその土地を有効に利用するかということが問題でございますから、専業農家が四十万戸ぐらいでいいのかどうか、中核的な農家がそれでいいかどうかということはここで断定いたしかねますが、一遍検討してみたい、かように考えております。
  49. 野坂浩賢

    ○野坂委員 検討してください。  午前の質問はこれで終わって、午後お尋ねをいたします。
  50. 佐藤隆

    佐藤委員長 この際、午後二時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時二十一分休憩。      ――――◇―――――     午後二時二十九分開議
  51. 佐藤隆

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  52. 野坂浩賢

    ○野坂委員 午前中に引き続いて質疑を続行いたしますが、農林大臣の御答弁をいままで集約をいたしますと、農畜産物の価格に賃金は入っておるけれども、生産性の向上等をやってこれから進めていきたい、あるいは後継者の養成については、改めて基幹人員等については再検討するというようなお話があったわけでありますが、そういうことを総合いたしますと、まだまだ不十分な農政と言わなければならぬと思います。  そこで、私は次の質問に入りたいと思うのでありますが、昨年生産調整を実施されて、どの程度作目が転換をされ、そしてその価格はどのように推移をしたであろうか。最近、農産物の価格は、暖冬の状況もございまして非常に低価格で、生産者生活に大きな影響をもたらしておる、こういうふうに私どもも考えておりますが、三十九万一千ヘクタール、実質一一三%の実施によりまして約四十四万ヘクタールが転換をされたわけですが、作目別に価格と面積の状態を御説明をいただきたいと思います。
  53. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  五十三年度の転作等目標面積が三十九万一千ヘクタールでございますが、九月現在の実施見込みによりますと、四十三万九千五百三十六ヘクタール、約四十四万ヘクタールに相なっております。  それで、この内訳でございますけれども、いわゆる転作というものと水田預託と土地改良というのがあるわけでございますけれども、転作の方の分の作物別の面積を申し上げます。大豆が六万九千六百九十七ヘクタールでございます。約七万ヘクタール。それから飼料作物が十一万六千九百二十四ヘクタール……(野坂委員「時間がかかりますからパーセントで言ってください」と呼ぶ)パーセントで申し上げますと、全体を、四十三万九千五百三十六ヘクタールを一〇〇といたしますと、大豆が一五・九%、飼料作物が二六・六%、麦が九・五%、ソバが四・二%、てん菜が一・〇%、それから果樹が一・九%、桑が〇・一%、その他の永年性作物が〇・二%、それから野菜が一八・二%、豆類が二・九%、たばこが一・五%、林地等が一・〇%、その他五・三%というのが転作等の面積のウェートでございます。  それから価格の方は、大豆がこの転作も含めまして五十三年産十二万七千ヘクタールという大きな面積になりましたので、価格は現在、前年に比べますと相当下がっております。ただ問題は、大豆につきましては大豆なたね交付金法がございますので、いわゆる不足払いをやるということで、今年度の予算にもなたねも含めまして八十八億の交付金の予算を組んでおります。価格は若干下がってまいっております。それから麦の方は、これは政府の方が買い上げるものでございますから、買い上げ価格そのものが九千六百円ちょっとになっております。それからソバは作付面積も非常にふえたものですから、ソバの価格の方は五十一年、五十二年が相当高かったわけですが、五十三年は相当価格が下がってまいっております。北海道産で七千一百円ぐらい、これは四十五キロ一袋でございますが、その程度のものに相なっております。  いまのところは大体そんなことでございます。
  54. 野坂浩賢

    ○野坂委員 約四十四万ヘクタールの構成比率で、パーセントで示していただいたのですが、五十二年の耕作面積と五十三年の耕作面積とを比較いたしますと、たとえば大豆は五・六倍であった、あるいは飼料作物は二・一倍になった、麦は十数倍に及んだ、ソバは二・五倍の面積になった、こういう経緯でございますね。  そういたしますと、それぞれ渡辺大臣が言っていらっしゃる総合生産体制といいますか、農業生産体制の総合整備とでもいいますか、それが第一に挙げられておりますが、一つの姿が出てきたということだと思います。  いまも局長からお話がありましたように、大豆の基準価格あるいは麦の買い入れ価格あるいはてん菜の基準価格、そういうものが一つの歯どめをかけておるということが実態でありますが、政府が生産調整の中で打ち出しました戦略作物といいますか特定作物──ソバは二・五倍の面積確保されて七万円なり七万五千円というものが奨励金として出されました。しかし、これには指定価格といいますか価格の支持制度がないものでありますから、一万一千円ないし一万二千円のソバ価格というものは六千円なり七千百円ということに下がってまいりました。農家皆さんは、いわゆる政府が指定をした作物に懸命に努力をしたのだから、それは麦と同じようにやはり支持してもらわなければならぬ、こういう議論は私は当然出てくると思うのですね。それを見て五十四年度に対策を立てられたわけでありますね。たとえば特産農産物価格といいますか、安定基金制度といいますか、二億八千万円ばかりありますが、それに間違いありませんか。ソバは、それでは戦略作物としてやったのですから、どのような方策を五十四年度には打ち出せるか、二億八千万円の中身についてお尋ねしたいと思うのです。
  55. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ソバでございますが、これは特定作物になっておる中で価格の対策といいますかそういう仕組みが実はいままでなかったわけでございます。そこで今回、このソバにつきまして新たにソバ流通安定化対策という名前の一種の価格補てん事業、これを仕組んでみたわけでございます。これはいわゆる契約栽培というものを前提にいたしまして、契約価格の上下一〇%の範囲を超えて高騰または低落した場合に、その分につきまして一定の造成した金から補てんをするということにいたしておりまして、その造成資金の二分の一を国が助成をするということにいたしております。  それで、この価格補てん事業の予算といいますものは、地域農業生産総合振興事業ということで、今回総計五百億ということでの新規の事業を予算化いたしておるわけでございますが、その中にソバの関係分ということで二億八千万織り込んでございます。  これの内訳でございますけれども、これは一つ基本額といたしまして二億六千百万円がございます。この二億六千百万円の中に集団育成等ということで契約栽培の活動促進なりあるいは集荷促進なり品質向上なり、そういうものを含めた集団育成等に一億二千二百万円、それから二番目に流通安定化対策というのに一億一千五百万円、この流通安定化対策というのが、先ほど申し上げましたソバの価格補てん事業の造成費に対する国の補助の分でございます。それからその他に二千四百万、以上が基本額でございます。そのほかに、もう一本別立てとしまして地力対策の関係がございます。これは有機物の増投ということで、その関係が千九百万、以上でソバ関係の事業費二億八千万円ということになるわけでございます。  なお申し上げますと、実はこの流通安定化対策という一億一千五百万でございますけれども、今後こういうことを県単位で基金をつくるというのがふえます場合には、必ずしもこの一億一千五百万にこだわりませずに、そこは弾力的に助成をしていきたいという考え方でございます。
  56. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一歩前進だと思うのですが、大臣もお考えになったと思うのですけれども、おととしよりも去年が生産調整によって下がるようなものがあっては困る。だから、それはせめてその前年度、生産調整する前以上の価格は保証しなければ農家は安心してついてこられないということから、五十四年度の予算にこのようなことが計上されたと思うのです。そういう方式でこれからの農政というものは進められる、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか、大臣
  57. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 非常に不足をしておるものなどで特定なものについてはそのような考えでやっておりますが、農民がそれぞれの地域によって損する場合もあるけれどももっともうかる場合もあるというようなものも中にあるわけですね。したがって、生産調整でどの作物にするかということについては政府は固定的には考えておりません。ただ、特定作物等についてはむしろ奨励をしておる、その他についてはその地域の自主性、農家の自主性にお任せをしてある、こういうことでございます。
  58. 野坂浩賢

    ○野坂委員 上手に追及がはぐらかされるようにお述べになったのですが、たとえばタマネギなんかはおととしは八十四円で去年は六十七円、あるいはネギは百六十九円が百三十八円、ナスは二百一円が百九十六円、これはあくまでも東京の市場でやられたもので、全国はもっとおととしより去年の方が下がっておるという、いま統計資料はまだ出ておりませんか、そういう実態なんです。上がったものもありますけれども、これは間違いないのです。そういう事情であるということを頭の中に入れておいていただきたいと思うのです。  そこで、われわれのところでもなかなか引き合わないという現象が起きているのです。ことしの春なんかは、皆さんも御承知のとおり、非常に肥料価格、労働力、賃金というものが加算されない程度に落ちてきたということで、ことしはまた、政府がわれわれと約束を三年間固定しておるものですから、農協を使嗾して農協に一〇%やらせよう、こういう魂胆ですね。その中で三億五千九百万ばかり予算がたしかあったと思うのですが、それを入れ込んで推進をさせたい、こういうふうにお考えだと思うのです。  それで、農家の場合は緑肥ですね、いま局長は有機物の増投を図っていきたいというお話をされましたが、野菜をつくるよりもむしろその方がいいじゃないか、こういう意見が地域で非常に多い。生産調整をする場合は、緑肥をつくって、それを土の中にまき込んで有機質の土地にして、あなたがおっしゃる生産性向上につながる、こういうかっこうにしたらどうかという提言が、地域を歩きますとたくさん意見として出ております。そういうことも転作として認めるべきではないかと思います。需給のバランスから考えて、農家が自主的に知恵を出し合って考えたところであるわけでありますから、そういう方式も当然考えるべきだと思うのですが、その点はどうでしょう。提言です。
  59. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 緑肥作物、結局すき込むものでございますが、これも転作の対象作物に認めてはどうかというお話でございますが、現在の考え方といたしましては、作物の生産振興という角度でこの問題を考えておりますので、すき込むという形の緑肥等については転作対象作物ということにするのはやや困難であろう、このように考えます。
  60. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私はおかしいと思うのですが、これは事務当局に言ってもしようがないわけで、渡辺さんと話し合いたいと思うのですが、いま申し上げましたように、あなたのコンピューター方式で考えると、需給のバランス、なぜ値崩れがするのか、それは供給体制の方が需要よりも多いから崩れる。それをみずから調整をしてやろうとする農家、しかも無機質を有機質にするという状況、そして生産性向上につなげる、あなたのおっしゃる方向で具体的にやろうとする農家皆さんに対して、それを否定して、それは転作でない、生産にならぬものだ、土の中にまき込むものは世に出てこないというような議論だけでは農政の進展ということにならぬじゃないか、私はそう思うのです。あなた方に協力をしておるそういう方については、余るのならそれを土の中にまき込む、そういうことだって当然考えなければならぬじゃないかと私は思います。たとえば通年施行だって、別に生産がないけれども、ちゃんと奨励金を四万円出す、農協に転作をお願いするとそれを出す、こう言っておるわけですから、その程度のことで将来の有機質なり農業生産生産性向上につながるならば、緑肥対策というものは当然転作作物として認めるべきだと私は思いますが、大臣なり、補佐の政務次官もおいでいただいておるわけですから、よく相談して、やはり将来展望をする。だから私は、新経済七カ年計画を中心にちゃんと初めからお尋ねをして、こういうふうになるなと考えておるから提言をしておるわけです。その点どうですか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つのアイデアであることは間違いありません。ありませんが、特定作物にはできませんね。普通作物にするかという問題でも、これはバランスの問題がいろいろございます。しかしながら、土地をよくするということは結構なことである。レンゲソウをまくとか、恐らくあなたのおっしゃる話はそういうことでしょう。そういうことの奨励の方法は別途何か考えたらいいんじゃないか。一つの方法だけれども、これはことしの予算ではいずれにしても間に合わない。よく検討してみます。
  62. 野坂浩賢

    ○野坂委員 補正でも考えていただきたいと思うのです。渡辺さんは力があるのですから、そのぐらいのことをやらぬようだったらもうおやめになった方がいいと思うのですね。  それから、生産調整については一三%程度が目標だったですね、一五・三だったかな、そのとおりですね。去年の四月六日の農林次官の通達によりますと、今度予算に出ております新農業構造改善事業、こういうものについては水田面積のおおむね三〇%はいわゆる転換面積とせよ、あるいは農村地域構造改善事業にあっては総体として事業実施地区の水田面積の二五%は転換面積にせよ、こういう指示を流しておりますね。全体で一三や一五であればいいのに三〇とか二五、そういう指示をした積算の根拠、そして将来それをどのような方向でやるのか、それをやった者についてはちゃんと奨励金を付与するという方向で打ち出すのかどうか、その点はどうですか。
  63. 大場敏彦

    ○大場政府委員 基盤整備事業あるいは新農業構造改善事業等を実施した場合に、いま御指摘のように一定の転作率というものをお願いして事業計画の中に盛り込んでいただいて御協力を願っておるということでありますが、これはことし五十三年度から始めたわけでは実はございませんで、四十六年度からつとに一部の事業につきましてはやっております。  その趣旨は、やはりすべての農政施策というものは転作あるいは構造改善、そういった課題に集中して活用していく、こういった考え方から発しているわけでありまして、基盤整備事業は当然転作の条件整備ということでありますから、そのために圃場整備事業をやったところにつきましては、当初のねらいどおり一定の転作率をお願いする、こういった趣旨で発しているわけであります。  ほかの地区より高いというのは、圃場整備をやれは、当然それは転作の条件整備というためにやるわけでありますから、そのために国費を出している、こういう観点から、やや高目の転作率をお願いしているということであります。  それから、事業によってたとえば三〇%の転作率をお願いしているところもあり、それから一五%ということで差はありますが、たとえば圃場整備事業、これは御存じのとおり面の事業でございますから、やれば転作条件が非常にやりやすくなる、こういったことでありますからわりあい高い転作率をお願いしている。あるいは、たとえばほかの線の事業、土地灌排事業だとか、そういった線の事業は、やはり水路とかそういったもので排水路という関係でありますから、圃場整備ほどはすぐ、転作条件の整備ということの程度はやや低いということで一五%とか二〇%、そういったことで差等をつけている、こういうことであります。  新農業構造改善事業等につきましてはわりあい高い転作率をお願いしておりますのは、まあいわば転作のためのモデル事業という形で当初から設計しておりますので、高い転作率をお願いしている、こういったことでございます。
  64. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やや高いとか二五%とか、灌漑用排水の場合は一〇%とかいろいろございますね。ありますが、積算根拠は非常に不明確なんですね。これは積算根拠があれは文書で出してほしいということをまず委員長にお願いしておきます。いいですね。
  65. 佐藤隆

    佐藤委員長 はい。
  66. 野坂浩賢

    ○野坂委員 出して、いただきたいと思います。  それから、基盤整備をやります場合に、全部すぐ転作ができるかというと、この前に大場さんにも質問したのですが、私どものところで、隣の町なんですけれども、やったところは、座って田植えをいたします。座らないと、立っておればずぶずぶと入りますから、座ってなるべく抵抗力のあるようにする。刈り取りのときはいかだを浮かべてやる。それは、表土が農道になり、心土が上がって表土になってなかなか排水できないからです。そこで、そういうことがたくさんあるものでありますから、わが国の中で用排水の事業をやろうというのが非常に目立ってできるようになったのですね。そういうところは三〇%もできませんね。それはやはり地域によって画一的にやるということは問題があろう、こういうふうに私どもは指摘をするわけです。それについては、原則は考えておるけれども、そういうところはやむを得ない、こういうふうにしてもらわなければ何をつくることもできぬのですから。種を植えれば、水に浮くのですから、そういう点についてはそのような措置が、渡辺さんがおっしゃるように、現実対応主義だ、こういうふうに私は思うのです。できないところをやれというのは、これは机の上の計算だけで見ないで処理してもらってはなりませんということを私は提言をしますが、それでいいですか。
  67. 佐藤隆

    佐藤委員長 ただいまの野坂君の資料要求について先に答弁をしてください。
  68. 大場敏彦

    ○大場政府委員 事業によりまして転作率がいろいろ差等があるということでございますが、たとえば圃場整備事業につきましては、新規地区二五%、灌漑排水事業につきましては一五%ということでございますが、これはなぜ二五であるか、二六ではなくて二五であるかとか、そういったことにつきましては、下から積み上げた数字ではございません。客観的に一五ないし二五、こういった形で決めておるものであります。  それからいま御指摘になりました地区によっていろいろ条件に差があるということは御指摘のとおりだと思います。ですから、私どもは、いま事業別に申し上げました転作率も、これはどこの地区もみんな一律にこうするということでは必ずしもございません。地区によって差等はつける。トータルとしてこういった国全体としてたとえば圃場整備事業につきましては二五%になるような形で、その辺のところの調整といいますか、調和というものを図っていく、現在そういうふうに実施しております。
  69. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確認をしておきますが、いわゆる三〇%というものは提示しておるけれども、無理は絶対しない、その地域の実情に合わせて実施をするというふうに考えてもよろしゅうございますね。
  70. 大場敏彦

    ○大場政府委員 資料のことにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、積み上げした根拠というものはございませんので出せません。ですけれども、事業別にどういうふうになっているかということについては改めて御連絡申し上げたいと思います。  それから差等をつけるということにつきましては、これは極端な差等をつけますとやはり実施上いろいろ問題が起きますけれども、地域の実情というものを考慮して差等はつけていきたいというふうに考えております。
  71. 野坂浩賢

    ○野坂委員 強制はしないということですね。
  72. 大場敏彦

    ○大場政府委員 もちろんこれは強制ではございません。
  73. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私はあと十五分しかないのです。それで理事の方に指示されておりました林業の問題について次にお尋ねします。  林業は非常に簡単に書いてありますね、大臣。「林業につきましても、近年、外材輸入増大や木材需要が伸び悩みの傾向にあるなど国内林業を取り巻く諸条件は厳しいものがあります。」これで終わり。  そこでお尋ねをしたいのは、最近需要の伸び悩みの傾向など国内林業は厳しいとありますが、最近のベニヤ、合板というようなものは、仮需要の傾向もあるでしょうが、非常に値上がりをしておる、最近下がっておるが。それから国内産材等も当初予測をされておったよりも一〇%程度上がっておる。この推移と動向はどのように展望していらっしゃるか。この所信表明を書いた時期の問題もありましょうけれども、若干違っておるのではないかということを私は申し上げておるわけです。どうですか。
  74. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 林業の問題は、いま言ったのは総理の所信表明かな──総理大臣所信表明には余り農業のことが入っていなかったのを、私が交渉してたくさん入れさせたのです。  それから私の所信表明では林業は十六ページ、十七ページ、十八ページにわたって書いてあります。この当時と比べ木材が多少上がったことは確かに事実でありますが、余り落ち込み過ぎておったことも事実なんです。だから、ある程度上がるのは仕方がないと私は思うのです。これ以上上がるということは問題がありますので、ベニヤの放出とかいろいろなことをやりまして、つい最近に至っては横ばい状態ということで、大体うまくいっているのではないか、これが続くかどうかというところに問題があるし、これ以上余り急激に上がることは困る、こう思っております。
  75. 野坂浩賢

    ○野坂委員 困るとか見通しはそうだということ、いろいろありますが、大臣としては、政策的にこういう価格面で推移するように行政指導なり施策は打っていく、こういうことでございますね。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 材種にもよりますが、いままで急激に上がったことを批判されておるわけですから。しかし五、六年前の水準から見ると、そんなにうんと上がったというわけでもない。そこで余り上からないように──しかし暴落も困るのです、林家にとっては。大体いま程度のところで多少のでこぼこはあってもいいところじゃないか、私はこう思っております。
  77. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これから進めていただくわけですが、そのために、この林業というのは自然を守るという意味において非常に重要だ、こういうことをお話しになりました。  そこで、これから山づくりを本格的にやらなければならぬ。この間の国会で国有林野事業改善特別措置法とかあるいは活用法とかそれぞれやってまいったわけですが、いまの民有林の状況から見て、農業と同じように後継者育成というのには非常に問題があって、若い労働力というものが減退をし、減少しておるというのが今日の実情であります。したがって、間伐の必要なところというのは七五年で二百二十六万ヘクタールくらいありますし、八〇年になりますと三百六十二万ヘクタールというようなことにもなっておる。この後継者対策というものは一体どうしたらいいのかということは、農業と同じように考えるわけですね。この点については大臣どうお考えですか。
  78. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御指摘のとおり、林業に魅力を持たせなければならぬ。しかし、現実には三十年とか四十年とかという長い間待たなければお金にならぬ。そのために山が荒廃しても困るという点から、ことしは総合整備的な考え方で千ヘクタールくらいの区域を限って、まずかなりの数のものを植栽から保育、間伐まで助成をしていこう、これは第一年度です、これから毎年続けるわけですから。そういうようなことによって林業に興味を持たせる、あるいは融資の期間等も二十五年据え置き四十五年というような世界にも例のないような融資制度をつくって、そうして金の心配をしなくても安心してすぐに木が植えられるというようなことなどいろいろ織り込んで、林業の後継者育成の基盤にしたい、こう考えておるわけです。
  79. 野坂浩賢

    ○野坂委員 特に民有林の場合、賃金も安いし、それから最近は国有林と同じほど白ろう病といいますか、振動病が出てまいりましたね。相当な人数に上ってきておるわけです。このごろリモコンでやるチェーンソーとかいろいろ開発をされておりますけれども、なかなか後を断たない。国有林よりも民有林の方がこれからもっと多くなるという傾向が強い。したがって、いまそういう皆さんの声というのは、特定専門の病院といいますか、そういうものをつくってほしいという声をよく聞くんですよ、回ってみますと。九つの営林局があるからそこに一個ずっといってもなかなか財政が間に合わぬ。だから、日本一つくらいは、相当の人数がいらっしゃるわけですから、そういう対策が必要ではないか、こういうふうに私は患者の皆さんの声を聞きながら、その病院病院で手当てをするということもいま行われておるけれども、専門的にやる必要があるのではなかろうかというふうに思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。厚生省とも相談をされて、特に大臣はこの間厚生大臣をやって、いろいろ本も出ておりますけれども、そういうことをお考えになったらもっと株は上がるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  80. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま御指摘になりましたように、振動障害につきましては、民有林におきましても最近少し増加傾向にございます。  そこで、林野庁といたしましては、国有林の場合につきましては予防から一部治療もやっておりますけれども、民有林を含めまして林野庁は積極的に予防対策をやるということで考えておりますし、治療につきましては、林野庁でも、機械その他についてはできるだけ厚生省、労働省等のお力をかりながら、林野庁のやる持ち分につきましては対応いたしますけれども、主体を厚生省、労働省にやっていただこうということで、一昨年労働省、厚生省の関係局長と私と三者で一応いろいろな協議をいたしました。その結果、各県にこの対策の協議会を設けていただいて、そしてその協議会の中で、関係者が集まって、その地域地域一つのネットワークをつくり、そのネットワークの中で国立病院なりあるいは労済病院なりそういういろいろな関係病院に御協力いただいて対応していくのがベターであろうということで、ただいま都道府県を指導いたしております。すでに都道府県の中では、そういうことで協議会を設けて対応している県も数県出てまいりました。今後ともそういう形で労働省、厚生省のお力をかりながら治療対策については万全を期していくような努力をしたいし、予防につきましては林野庁におきまして積極的に対応してまいりたいというように考えております。
  81. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんから、ほとんど最後ですから大臣にお尋ねをいたします。  いまお話がありましたように、今度、たとえば造林の場合は長期資金として三十五年を四十五年にする、あるいは林道は二十年を二十五年にする、こういう法案も出てまいります。利息も造林その他については、私有林、公有林は大体三・五%ですね。国有林というのは高度成長時代に過伐、乱伐をやって高度成長を支えてきた、一般会計にぶち込んできた。いまは一般会計から、去年は四十億、ことしは八十億、そのかわり首、いわゆる合理化というものを大蔵省にのまされておる。そして借入金は千百八十億くる、こういうかっこうですけれども、その利子は六・五%ですね。民間の造林事業の場合は、民有林にはざっと二千六百億、そして国有林には三百億、こういうかっこうですから利息等でも二百十三億程度かかるわけですね。それならばこの六・五%というものを公有林並み、私有林並みにしていかなければ、これから十年間、いわゆる事業改善法というものでやるわけですから、活用法等を適用して。この六・五%は高過ぎる。そうしなければこれからの林野行政は大変ですよということになるのじゃないかということが一点。  それから、林野庁長官にお尋ねをいたしますけれども、たとえば更新とか補植とか保育とかありますね、山づくりする場合に。これを全部言うと大変ですが、たとえば造林をする、更新の場合、昭和三十二年ごろは一ヘクタールあたりつくるのに大体四十二・一六人だったですね。最近は二十五・四六人、こういうふうにだんだん合理化をした。ただし、おかしいことには、三十七年とか四十五年に造林の方針がそれぞれ変わってくるのですね。予算が少なくなると方針が変わってくる。いまはこんなものじゃないのですね。渡辺大臣がくしくもおっしゃったように、造林とか山づくりというものは三十年、四十年とか四十五年のものだ。それならば、そういう一定の方向でなければ、その都度その都度金に合わせてやることが変わる、しかもそれは現場の声ではなしに机の上で──先ほど大場局長がおっしゃったように、いや、下から積み上げたものでなくて勘でやったのだ、こういうかっこうが農政にも林政にもあらわれておる、こういうことですよ。それならば、その辺はやはりきちんとしてもらわなければならぬ、こういうふうに思うのです。だから、いわゆる造林事業の方針、さらに大臣には、この利率、こういうものの引き下げをやっていただかなければ林野行政というものはむずかしくなってくるだろう、こういうことを私は心配をします。  それについてのそれぞれの御見解を承っておきたいと思います。
  82. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 初めに利率の問題についてお答えいたしますけれども、国有林は財投から金を拝借いたしております。これは六・〇五%という形になっております。  いま先生の御指摘は、民間の非補助の融資については三・五%くらいだから、それに比べて高いという御指摘だろうと思います。ただし私ども、国有林の場合につきましては、御存じのように一般会計からの繰り入れもいただいております。したがいまして、民間の非補助、補助残の場合には、やはり同じような補助残につきましての融資については六・〇五になっておりますので、そういう点では私どもは決して国有林の利率が不利になっているというふうには考えておりません。  それから造林の問題でございますが、造林につきましては、御指摘のとおりやはりこれからの山づくりの基本になるわけでございまして、私ども先生御指摘のように、金がないから造林のやり方を簡単にする等々ということは毛頭考えておりませんで、その方針についてはいま御指摘の各営林局に造林の方針書をつくっております。これについては四十年代に一部改定は確かに各営林局やっておりますけれども、これは御存じのように、その当時環境保全なり自然保護なりいろいろそういう問題がございました。そういう観点から確かに一部修正したものもございますが、私どもこれからも造林については、国有林事業の重点として積極的にいい山づくりになるような技術基準で対応してまいりたいというふうに考えております。
  83. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体林野庁長官の言ったようなことではないかと思います。
  84. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もうこれで時間ありませんから申し上げませんが、利息は六・五と三・五と違っても、一般会計から入っておるというそういう認識ですね。しかし、高度成長のころ、たとえば森林事業団等には、御存じのとおりにあなたの方の特別会計から一千億も出ておるのですよ。だから、この程度はあたりまえだと思っておるのですよ。そして二百十三億も利息を払うということになれば、借入金を増大するだけで安定的な経営はできませんよ、実際問題として。できぬでしょうが、十年間やってみて。高くてもいいのだなんてそんなことは、民有林の方だったらこんなことは大問題になりますよ。そうやってもらわなければならぬ。それをやってもらうかということは大臣にはっきりしてもらわなければならぬ。それから造林事業の計画は、自然の保護とかそういうかっこうで三十七年四月につくった造林事業方針を四十六年四月に変えたということですけれども、たとえばそれまでは下刈りはきれいにやれ、これが保育の一番の要素である、こういうのを金がないから坪刈りでいい、その場合ちょっとやっておけ、あとはぼうぼうだ、こういうようなかっこうに変わっておるのですよ。あなたの言っておることと全く逆な運営事業方針というものが出ておるのです。ごらんになったと思うのです。読み上げてもいいのですけれども、時間がありませんから……。  そういうふうに、悪くなるように財政に合わせて造林方針がむしろ悪い方向に向くということは重大問題である。その点については、はっきりこの利息の問題は大臣の力量において大蔵省と折衝しなければ、これからの林野行政はさらに困難になるということを明確に言っておくわけです、わかっておるのですから。その点については、予算委員会に出られるそうですから多くを申し上げませんが、善処をする方向で御検討いただくことを要望しておきます。答えられれば答えていただきたい、こう思います。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは国有林の問題ですから、私は当然ペイしない部分があったっていいと思うのです。場所によっては当然切らなくていい、普通なら切っても、国有林だから切らなくたっていいという場合があり得るわけです。しかし、だからといって一般の作業能力や何かが民間よりもかなり落ちておる、これは困る。そういうものをにらみ合わせてやればいいのであって、金利が高いために赤字になるというのなら、その金利の部分だけを取り上げれば、それは赤字になったって仕方がない話だと私は思う。全体として物を見なければいかぬ、こういうように考えております。
  86. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで私の質問を終わりますが、すべて全体を見て、悪いところは部門部門とってそういう措置をしていくことがいま林野行政においても必要であろう、こういうふうに私は思うわけであります。  さらに、農業問題についても、中核的な人間の問題なり、あるいは基盤整備、構造改善の問題、あるいは生産調整によって来る農民に対するしわ寄せ、こういうものについて十分検討されて、揺るぎのない農政体制を築いていただくように要望して、私の質問をこれで終わります。
  87. 佐藤隆

    佐藤委員長 新盛辰雄君。
  88. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣が予算委員会の方に時間を割愛される時間もありまして、三十分、三十分ということになってどうも腰を折られるようなことになるようですが、この農林水産大臣所信表明の内容から見て、一口に言ってこれは何を言っているのか、そのことにかかわるわけでありますが、いま国民の水産たん白質の確保のために、食糧産業としての漁業の位置づけというのを、新しく大臣になられて水産行政を重視したいと力説をしておられる大臣はどうお考えになっているのか。さらに、いま二百海里時代の三年目に入ったわけでありますが、現在は生産者の魚価の低迷、無秩序な輸入増大あるいは外国漁船による二百海里内領海十二海里まできわめて遺憾な状況が発生をしているという事情、あるいは最近入漁料の問題でいろいろ交渉が重ねられているわけでありますが、こうした現実の問題をどういうふうに解決をしていくのかという基本的なことについてお伺いをしたわけです。  いまこうした状況の中で、経営不安、漁業者の雇用の面においてもきわめて不安な状況が出されておるわけでありますし、そのことによって最近わが国の漁業をもう一回見直してみようじゃないか。その意味で、わが国周辺水域の開発あるいは水産資源培養管理型と言われる漁業の推進ということが力説をされているようである。そのことが今度新しく法律に出されようとしています沿岸漁業改善資金制度、こうしたものも生まれてきているわけでありますが、その主点となるものは、いまのこうした混迷をしている近海の沿岸漁業の中における内部整備、外洋における遠洋漁業の外交面での問題、そうしたことが多くあるわけでありますが、端的に言って、大臣は今後水産行政をどういうふうに進めていかれるのか、まずその所信をお聞かせいただきたいと思います。
  89. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私の所信は、いまあなたがずっと申し上げられたその点に重点を置いてやっていこう、一口で言えばそういうことであります。何といっても日本のたん白質資源の面で一千万トンという数字は大変な数字でありますから、これを守っていかなければならぬ。したがって、二百海里の問題については、それぞれいままでの漁業の権利を守っていけるような漁業外交の展開をまず図っていく、それから新漁場の調査とか開発、こういうものもやる、沿岸漁業振興もやる、それから内水面の見直しもやるというようなことなど、増殖、養殖、放流一切の、いまあなたがおっしゃったようなものについて全面的に対策を講じてまいるというのが私の考え方であります。
  90. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間がないので、随時その内容について大臣の見解をひとつお願いしたいと思います。  最近特に問題になっておりますのは韓国漁船の操業のあり方であります。現在北海道周辺海域における操業状況大臣はどういうふうに認識をしておられるのでしょうか。五十二年三月にソ連が二百海里を設定しました。北洋海域における出漁のトロール漁船団がこのことによって、韓国船でありますが、南下してきましたし、太平洋の各沿岸にまで出ております。そして日本の漁船が、操業の規制や隻数やトン数やあるいは漁法における規制などを設けながら、資源を確保しながら魚をとっているわけであります。ところが、韓国の船は五百トンから二千トン級の大型トロール船等によって一網打尽、それこそ資源が枯渇するのじゃなかろうかと心配されるほどめちゃくちゃにとっていると報じられております。そのことに対して漁民は怒り心頭に達している。しかし、政府はどうしてそれに対する手だてをしないのだろうか。この漁業被害、北海道周辺の分だけでも沿岸漁業者がこうむった被害というのは、四十九年から今日まですでに件数にして約一千三百件、被害額は約五億円に上る。漁具の損壊やあるいは被害を受けて休漁のやむなきに至っているものとか、あるいはまた北海道周辺海域における沿岸漁業、沖合い底びきの漁業者、長年にわたる歴史的な経過を踏まえてとっておられた方々の生活権まで脅かされるという状況が発生しているわけです。こういうような状況に対して十五、十六日でしたか、水産省次長クラスと韓国の次長クラスの交渉をおやりになったはずです。ところが決裂をしている。日本側が自主規制をと言っても、韓国は絶対にそれを受け付けない。とするならば、この北海道水域にわたる、私どもがつくりました漁業水域に関する暫定措置法、いわゆる二百海里法でありますが、この第五条に「漁業等の禁止」「外国人は、漁業水域のうち次に掲げる海域において」云々と取り決めてあるわけです。しかし、これは韓国漁船などは二百海里を設定するとお互いの国同士が競合するという面で、共同水域という面、あるいは日韓漁業協定、そうしたもので一応過渡的にこの法律は適用除外ということにしてあるわけです。しかし、もはやがまんし切れない。やるとするならば、北海道の沖合いにも共同規制水域を設ける方法があるでしょう。あるいは日韓漁業協定等を別にして政府間における協定交渉を結んでやる方法もありましょう。しかし、いずれをも韓国側は受け付けない。そういう場合には、もはや方法はないわけでありますから、二百海里のこの法律の適用除外から外す、解除するという形をとらない限り、これはどうにもならぬじゃないか。  とするならば、韓国は当然二百海里を設定してくるであろう。そうすると、西日本関係の対馬や壱岐の周辺における漁業者に大きな損失が起こるであろう。こちらの方にも痛手をこうむるであろう。だからそこのところはがまんをしてほしいということでありますが、最近私のところへ来ております陳情によりますと、西日本皆さんももはやがまんし切れない、日本の権益を守るためにこれは断固たる姿勢でやらなきゃ困るのだという結論を出しておられるわけであります。  それはいろいろ問題はあります。それに竹島周辺における取り扱いも問題であります。同島周辺の十二海里、日本漁船は依然としてこの島の周辺から締め出されております。韓国は、領土権を持っているのか知りませんが、もうすでに現実的に領土化したような形で日本の漁船を締め出しておる。これは重大な問題じゃないかと思うのです。外務省も、そしてまた水産庁も、こうしたことについてはもうさわらぬ神にたたりなしと、何か厳しいので困るということを言っておられるようでありますが、どういうふうに深刻に受けとめておられるのか、そして今後どうされるのか。東経百三十度線あるいは百三十五度線まで何とか水域を設定してほしいという声もあるわけでありますから、そういうことに対してどういうふうにお考えになっているのか、ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  91. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体実情はあなたのいまのお話の中で全部尽きておると思います。二百海里を日本がしけば向こうもしくに決まっておるわけですから、その場合の利害関係、これも西日本漁業者がそれでいいということなら話は簡単かもわからぬ。実際はそこらが問題なんです。私どもはそこまでやらぬても何とか──韓国でもともかくそういうふうな資源保護上どうしても国内の船も入れないのだという地域があるとすれば、日本の船もそこから出ろ、それは仕方がないことだ。しかし、そういうものもなくて、日本で禁止をして、ソビエトも出てもらっているところへあなた方が来てとるから騒ぎになるのだから大変なことだということを、私からも実は非公式にも話をしておるのです。これは私は何とかなる、話がつきそうだと見ているのですがね。次長会談は決裂なんです。その上の政治会談に持っていくか、長官同士の会談で話がつくか、引き続き時間をかけないで話を煮詰めていって、最終的には二百海里問題等も慎重に検討したい、そう思います。
  92. 新盛辰雄

    ○新盛委員 現在までわれわれも、サケ・マス交渉等できわめて漁獲量を低く抑えられたり、それによって減船になって漁業者は大変な被害を受けたし、あるいはそれの転換要請とかいろいろやって、二百海里という問題で厳しい条件を強いられているわけですよ。だから、海上保安庁あたりは当然、この法律の中に定められておるように、自国の権益のために漁船を守らなければならぬし、また他の韓国漁船などの、領海十二海里外は公海である、自由なんだという認識の上に立ってやっておるわけですが、その被害というのは今日までどういうふうになっているのか。北海道沖合いの周辺における拿捕状況におきましても、これはソビエトの方との関係もあります、あるいはオホーツク海を初めとするアメリカとの関係もあります、カナダとの関係もあります。しかし現実は、韓国の漁船がいわゆる拡網板を使用したオッタートロールというめちゃくちゃな漁法でもってやってくるということに対して何らか規制をしなければ──ただ政府の方に強く要求しているのだ。いま大臣おっしゃったように、それは西日本の方が了解すれば話は早いのだよ。しかし、竹島の周辺だって、これは日本の固有の領土だと言っているわれわれが実は向こうに侵されているというのを、漁業外交として、その手段の一環として考えていくならば、二百海里の適用除外、これはもう恐らく与党の側の水産議員の皆さん方も強い不満を持っておるのじゃないかと思うのですよ。だから、せっかくつくってある漁業水域に関する暫定措置法の第五条のいわゆる適用除外を解除するという姿勢を見せない限り、あなたがおっしゃるようにうまくいくかもしれない、次長クラスの話し合いは決裂したけれども、今度はおれらが出ていけば何とかなるだろう──あなたは特に韓国の方とはどうか知りませんけれども、何とかそういうふうな面で大臣として本当にどうするのだということをひとつ示してくださいよ。ただ何とかなるじゃ困るのです。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはいままでの懸案事項でありまして、中川大臣のときからも大変心配をしてやってきておるわけです。北海道の漁民にしてみれは、特に怒るのはあたりまえだと私は思うのです。われわれもこういう状態は長く置けないから、しかしスケジュールが決まっておって、次長会談をやることになっておるのに、それをやらなくていいというわけにもいかない。それでやって、引き続き上に上げて、それで解決の方向で私は急ぎたい、こう思っています。
  94. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これは外務省あたりの見解としてどうなんですか。この第五条の解釈ですが、これは適用除外ということを、いわゆる二百海里の設定という韓国側にも及ぼす影響、そういうことについて第五条の、すべての外国船、これをもいわゆる二百海里、自国のわれわれが設定している水域法によってこれを拘束することができるというふうに外交手段としてならないのでしょうか。  それから、海上保安庁、いままでの実績、状況、いま竹島周辺を含めまして西日本の関係も含めてそうでありますが、北海道沖のこうした韓国船の状況等も把握をしておられると思いますが、そのことについて簡潔にひとつお示しを願いたいと思います。
  95. 股野景親

    股野説明員 お答え申し上げます。  ただいまの適用水域の一部除外の問題でございますが、これは現在、先生御承知のとおり、日韓間には漁業協定がございまして、その漁業協定というものを中心に日韓間の漁業秩序というものがつくられておるわけでございます。この日韓間の漁業秩序というものを正常に維持していくということの精神でこの漁業協定というのもつくられておりますたてまえでもございますし、精神でもございますので、それを踏まえて協定のもとでいまの北海道沖あるいはそのほかの沿岸の問題を解決できないかということを考えておるわけでございまして、適用除外の問題につきましては、ただいまの協定の問題等の関係もございますので、この点は私どもとして慎重に考えなければならない問題だと思っております。
  96. 村田光吉

    ○村田説明員 北海道周辺海域における韓国漁船の操業は、例年ちょうどいま時分、冬の季節は道南海域に集中いたしております。海上保安庁といたしましては、巡視船及び航空機を現場に派遣いたしまして、最近では苫小牧沖に一日平均十五、六隻の韓国漁船を現認いたしております。これはすべて船の種類、船名、その他完全に把握いたしております。  海上保安庁といたしましては、この道南海域の哨戒要領は、航空機によりまして天候状態が許す限り一日一回飛行いたしまして、外国漁船が集中操業している海域に巡視船を派遣いたしまして、現在は苫小牧沖に巡視船を常時二ないし三隻配備いたしまして、水産庁の監視船、道の取締船、これらと協力しながら、領海侵犯の防止あるいは日本漁船の漁具被害の防止あるいは日韓漁船間の紛争の防止に当たっておるわけでございます。  なお、先ほど西日本海域でのお話もございましたので、対馬周辺海域には常時四隻程度の巡視船艇を配備いたしまして監視を行っております。  昨年、昭和五十三年じゅうに、わが海上保安庁の巡視船艇及び航空機が視認したわが国領海内及び日韓漁業協定に基づくわが国の漁業専管水域内で操業中の韓国漁船は、延べ二百八十五隻という数字を現認いたしております。これら韓国漁船につきましては、悪質なものにつきましては検挙、その他のものにつきましては二度とこういうところに入ってこないという誓約書を徴取いたしまして、韓国海洋警察隊へ引き渡しまたは警告、退去というふうな措置をとっております。  なお、竹島周辺のお話もございましたが、竹島周辺は、目下のところ、日本漁船の出漁は認められておりません。が、竹島を含む隠岐諸島北方海域に常時一隻以上の巡視船を配置いたしております。今後竹島付近の各種漁業の漁期、漁業のシーズンでございますが、それと日本漁船の出漁状況等を考慮しつつ、さらに巡視船を増強あるいは哨戒重点海域の指定等によりまして、きめの細かい哨戒を実施してまいりたい、このように考えております。
  97. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間がありませんので、一つ聞いておきますが、外務省は東経百三十五度以西の海域にも二百海里専管水域法、これを適用するという気はありませんか。西日本の方でいろいろ問題はありましょうから、当面は東経百三十度のところまでという御検討をされていることもありますか、一言聞かせてください。
  98. 井口武夫

    ○井口説明員 考えておりません。
  99. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今後の問題ですから、また次回この問題について追及していきたいと思います。  あと五分しかありませんので、同じく漁業外交の一環として、最近、南太平洋いわゆるフォーラム諸国を中心にして、入漁料の問題等を含める交渉が非常にデッドロックに乗り上げているようであります。最近では日本とオーストラリアの交渉が、これも日豪漁業協定が切れまして、キャンベラでこの十九日から三回目の漁業外交交渉が行われると聞いています。内容的には、いわゆる入漁料の問題と農畜産物のバーターの問題もありますけれども、特に入漁料の一括前払い方式、それがどうもひっかかっているようであります。さらには、ミクロネシア、ここもホノルルで二月二十三日からですから、これはまだいまから始まるわけでしょうが、これも相当高額な入漁料を吹っかけられる。  こういうようなことで、矢継ぎ早に最近入漁料の問題で政府も立ち往生しているようでありますが、実はこれは生産者のコストに加味するものだという、前回私がここで確かめた問題の中では、お答えがありました。しかし、今度の予算では、南太平洋漁業振興基金として九億円、新規に金をおつけになったわけであります。これは過大な入漁料に対して助成措置を講じたということになっておりますが、最近この実績主義でやるのか。いわゆる米国、カナダなどは漁獲実績相当分の徴収、いわゆる実績主義であります。しかし、南太平洋の各諸国は、漁獲の有無にかかわらずこれは一括前払い方式であります。すでに入漁料協定を結んだニュージーランド、ソロモンあるいはギルバートなどの入漁料についても、これは大日本水産会に南太平洋漁業振興基金として今度の九億円が入って、これが国が漁業団体に九億共同出資するという形をとっておられるわけです。これはすべて借入金であります。いわゆる入漁料一括払いをする際は借入金として四%の利子補給、入漁料一括払いが、やっておったのだが、何らかの理由で魚がとれなかった、休漁した、そういう場合の未利用の漁場については二五%を融資するとなっています。漁業協定に基づく漁獲量をとり残した場合、入漁料の五%を融資する、すべて融資制度であります。融資制度ということは、結局、返せということであります。いまの漁業者は経営を維持するのに、油は高くなる、今度は油もなくなる、遠洋に出ようったって、つってきた魚が、これはもう大変過剰になった場合には、その調整保管で問題になる。いろいろな問題があって、これは借金を返すわけにはいかぬから、二百海里時代に入ったんだから、これは国が国庫助成としてやったって国民には理屈の通る話じゃないか、こう思うのです。  このことについて大臣、これからの交渉もありますので、基本的な姿勢として政府はどういうふうに、漁業外交を推進する上で入漁料の問題をお考えになっているのか。あなたは、安くして何とか負担のかからないようにしたいと本会議で答弁しておられるわけですが、どういう構想ですか。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 入漁料は、御承知のとおり、日本のだれが入ってもどの船会社が入っても一律にかかるわけですから、競争条件は同じなわけです。したがいまして、原則的には入漁料は経営コストになるべきものである、こういうように考えております。アメリカのように売り上げの一・四%ぐらいで、しかも、いまあなたがおっしゃったように、とらなかった分は精算払いだ、こういうのはもうあたりまえだと思うのですね。ところが南方は違う。まして入漁料の率が高い。したがって、第一には入漁料の金額がこんなに高くて、八%とか五%とか、だめです、こんなものは、こういう交渉をまず第一に行う。それで決まった場合は三カ年分の一括払いというようなことですから、幾らコストと言ったってなかなかそんなに払えるものではないということで、それについては融資の道も講じ、利子補給の方法も講じますということで、極力入漁料の軽減に努めておるというところでございます。
  101. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が来ましたので、あとカツオの問題、それから生産、流通、需給の問題、こうしたことについてお伺いします。  一応、中断します。
  102. 佐藤隆

    佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後三時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後四時十六分開議
  103. 佐藤隆

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森水産庁長官
  104. 森整治

    ○森政府委員 先ほどの入漁料に関します大臣と新盛先生との御質疑の中で、若干補足させていただきたい点がございますので、お許しをいただきたいと思います。  先生がいろいろ前払いという問題につきまして疑問を呈されておりますけれども、これはいろいろアメリカ等と違いまして、何と申しますか、管理あるいは監視、そういうシステムが非常に弱いということから、ともかく割り当て量に応じて入漁料の支払いを求めているということが一つあろうかと思います。  それともう一つ、前払いといたしましても、毎年前払いをするということでございまして、三年間というのは、政府の制度としてそういうものを三年分見ていろいろ今度新しい予算を考えておりますということでございまして、その辺、若干補足させていただきたいと思います。
  105. 新盛辰雄

    ○新盛委員 入漁料の問題、いまオーストラリアあるいはミクロネシアあるいはパプア・ニューギニアなどの例もこれあり、交渉は続行されているわけですから、その駆け引きもいろいろあろうと思いますが、当面的にやはり将来国が助成をするという方向をおつくりになるように、これは要望しておきます。  そこで、これはカツオの問題がかかわり合いがあるわけでありまして、もう毎回私から申し上げておるのですが、現実は御承知のように昨年三十九万トン、ことし、五十三年四十三万トン、豊漁が続いているために逆に値段が非常に下がりました。一昨年の半分に、いまキロ当たり百四十円ということですから大変なことになっております。しかし、日本的な、かつ伝統的な一本釣りカツオの漁船というのは、いま経営の面で、余剰カツオを買い上げてくれれば何とか当面しのげるというような話も出ておりまして、まず第一に聞きたいのは、この余剰カツオについて、これは全漁連がおまとめになったようでありますが、このカツオ漁業緊急再建対策の一環として、キロ当たり百九十円でカツオを当面三万トンぐらい買い上げて、これをかん詰め工場で委託加工して、自衛隊あるいは災害の備蓄の救援物資あるいは外国向けの救援物質という形で買い上げられたらどうかという要求が出ています。昨年、私はこの議論で、最近では外務省の海外援助物資の中に水産物品としてカツオも入ったというように言われておりますし、このことについて余剰カツオをどの程度政府としては、かん詰め化していくわけでありますが、買い上げられるおつもりなのか。そしてまた、これまでの生産、調整保管の面に相当こういう業者は協力をしました。休漁したり、十日だ、二十日だ、六十日だといって休漁して、その間の休漁補償、そういうものもいろいろと議論がありましたが、そういう面での実績の中ですでにもう一本釣りのカツオ業者はこれからは立っていけないだろう、少なくとも休漁はしておるが減船というところまでは絶対やらないと言っておりますけれども、反面、最近海外漁業の中でモーリシャスというカツオかん詰め合弁会社が申請しましたカツオまき網漁船の四百九十九トン型でありますが、これを水産庁は御認可なされております。昨年、森水産庁長官はこの議論の中で、現存海外まき網漁船は十一隻おる、あと三隻ですか実験船がいるのでこれ以上はふやさないとおっしゃっていたのですが、このようになりますと、もう一本釣り生産者は、いわゆるカツオさお釣りの皆さんは、これからの生産意欲を失うのじゃないか。このことに対して、海外まき網漁業が、合弁会社をつくってこれからどんどん拡大をしていくのか、もう方向転換をしてまき網漁業にカツオ・マグロの漁業は全部移しかえるのか、やはり伝統的な一本釣りカツオというのは、世の流れ、二百海里の時代においてはもう対応できないというように認識しておられるのか、そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。
  106. 森整治

    ○森政府委員 最初の御質問の余剰カツオにつきましての全漁連の構想についてでございますが、昨年の暮れにそういう構想が出まして、私どもも検討させていただきました。  先生御承知のように、現在は冷凍のカツオを調整保管をしておるということでございますが、御指摘のように、カツオをかん詰めに加工しまして調整保管をしたらどうか、こういうことでございました。これにつきましては確かに保管経費が安い、あるいは長期間保管にたえられる、品質の低下が少ないというメリットはあるわけでございますけれども、かん詰めでやる場合に、今度は逆に、あたりまえの話でございますがかん代がかかる、それから加工賃がかかるということでございまして、それからかん詰めにいたしました場合に、当然かん詰め用ということで、国内のあるいは輸出のかん詰めにしか使えないというようなことがあるわけでございます。  結局、かん詰め保管をいたしました場合に、その量がどのくらいになるかということにもよりますが、たとえて言いますと、カツオの三万トンをかん詰めにいたしますと、現在の年間生産量の約六割に当たるということになるわけでございます。相当膨大なかん詰め量に相なるわけでございまして、結局かえってかん詰めの市況を凍結させてしまう。それから、かつおぶし等には振り向けられないというような不利な点が出てまいる。それから、先ほど申しましたように、いろいろそろばん──そろばんというのはおかしいのですか、経費がどうなるかということになりますと、案外冷凍のカツオで持っていてもそう違わないということになるわけでございます。そういうような点でこの対策は、要するに全面的にかん詰めにかえてしまうということはちょっと無理なんではなかろうかという結論に達したわけでございます。  しかし、先生御指摘のように、無償援助といたしまして十二億五千万円、カツオ・マグロ優先で外務省にいろいろお願いをするということで、その程度のものでございますが、一応そういうことで対応をしておる。それから、冷凍のカツオを調整保管をするという形での調整保管につきましては、さらに予算も拡充し、それについての手当てをしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、後段の御質問のモーリシャスに対する合弁事業でございますが、これにつきましてはいま御指摘のように、モーリシャスで四百九十九トンのまき網漁船一隻を現物出資をしたいということでございます。しかし、この地域はカツオの一本釣りの漁船の漁場と競合のおそれはない。逆に言いますと、一本釣りは出ておらないという地域でございます。それから、そこでとりましたものはすべてかん詰めに加工いたしましてEC諸国へ輸出するということで、流通面でも競合はないということでございまして、このケースに限って別にわが国のカツオ漁業に影響はなかろうということで、その合弁事業を進めるということについて了承をしておるということでございます。
  107. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これはこれからの問題でもありますから、十分、一本釣り、さお釣りの皆さんを含める漁業者の保護という面でもひとつ御尽力をいただきたいと思います。  そこで、水産物調整保管事業の問題で、どうなんですか、この魚価安定基金の中で五十年四月から実行されるところの調整保管事業が、基本財産五億を中心にして、昨年二十八億ですが、今度は幾らおつけになったのですか。五十四年度は幾らですか。
  108. 森整治

    ○森政府委員 二十一億です。
  109. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この調整保管事業というのがどうも問題があるわけであります。結果的には政府が、水協法に基づく五団体等にこの調整保管事業資金としてあるわけでありますが、金利、倉敷、そうした問題もありますけれども、買い付けあるいはまた放出、そういう時期の設定というのは、これは物価の動向に非常に影響あるわけです。だから、魚価の問題というのは、生産者を保護するための調整事業あるいは消費者に渡っては今度は魚が高くなるという状況の中で、どっちを保護しているのだ、よく聞かれることでありますが、水産団体の意見等も分かれております。もう調整保管事業やめてしまえ。しかし、やはりこれがあった方が豊漁のときはいいとしても、もし魚がとれなくなる時期が来たらどうなるのだ、そういういわゆる食管会計と同じような状況にもつながる話でありまして、この調整保管事業を政府側も積極的に介入をして、金だけやっちゃったから、後おまえたち水産団体でやれというような調子じゃいけないと思うのだが、どうなんだろう。大臣、これお答えできますか。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは本当にある意味ではいまあなたのおっしゃったような考えを持たれかねない。したがって、やはり金を出す以上、政府が助成をしてそれで物価つり上げの本人みたいに思われては困るわけですから、こういう点はやはり市価の状況や保管の内容等はよく悉知をしておって適切な行政指導を行うということは欠かせない、かように思います。
  111. 森整治

    ○森政府委員 大臣のお答えで尽きていると思うのでございますが、私ども調整保管ですべてを解決しようとは思っておりません。確かにいろいろ問題があるとは思いますが、需給全体、大変申しわけないのですが、生産調整もやり、消費も拡大する、その間で調整保管をしかるべく運用するということで、非常に硬直的になってはいけないということ、また大臣がおっしゃるような点を十分留意して運用すべきものと考えております。
  112. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今度の予算の目玉の一つになっているのですが、漁業環境のあり方という面で最近いろいろ議論がされておるようでありますが、いわゆる原子力発電所とか石油備蓄基地あるいは大型プロジェクト、工業開発を含める問題でありますが、ほとんど沿岸の漁民とのかかわり合いが出てくるわけです。原子力発電所は冷却水を入れてそれを放出をすれば温排水となって海に流れる。あるいはまた石油備蓄基地においても漁業とのトラブルが当然起きてくる現状。絶対反対の現地のいろんな動きもあれば、金をもらえばもう漁業権を放棄して後はどうでもなれというふうなことに、大体最近そうなっているようでありますし、鹿児島の新大隅開発なども、白砂青松のああいう大変六十七、八キロもつながっているようなりっぱな漁場でそういう大型プロジェクトができれば漁民との関係ではどうなるのか。いままでは共存できないというその立場に立ってそれぞれの活動、反対が漁民の間にもあったのですが、最近は、沿岸整備事業計画など今度新しく法律も出るわけですけれども、二百海里時代になって遠洋から沖合い、沖合いから沿岸に帰ってくるという状況現実の問題として出ています。資源培養管理型漁業、そんなふうにも言われている最近の状況で、ヘドロがこの海岸域に沈んでいるわ、原発の温排水は流れるわ、あるいは油が流れてくるわというような環境で果たして共存路線というのは、魚とこうした開発と科学的な進行性の中での調和というのは果たしてとれるのか。安全性を保障できれば何とかなるのじゃないか。漁業団体の中でもエネルギー特別対策委員会などというのを設けられて、規制をうまくやれば、環境アセスをうまくやれば、評価基準がその位置に明確に示されるならばわれわれも共存できるというようなことをおっしゃっている向きもあります。  大臣、これは田園都市構想のいろんな問題もありますけれども、いまは原発あるいは石油備蓄、大型プロジェクト、新大隅開発というこうしたものと漁民とのかかわり合いは当然出てくるわけでありますから、どういうふうに政府としてはお考えですか。
  113. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これも非常にむずかしい問題であります。石油の備蓄は要らぬという人はありません。やはり万一の場合に日本は石油がなくなっちゃ大変だから、これは備蓄はしなさい。また、省エネルギーという観点から、原子力発電所は要らないというようなこともなかなか言い切れない。国民生活に重大な影響がある。とすれば、どこかに必要最小限度のものはつくらなきゃならぬ。そのために漁業への影響が非常に出てくる。これも困る。そこで、何としてもそういうような公害の問題が起きないように安全にするということが一番先決問題であって、そういうところにこそ金もかけ、科学の粋も集めて、それで十分に監視をしながら漁民との理解と協力も得られるような形ができれば一番いいわけです。したがって、政府といたしましては、その二つの問題が両方解決できるような形で進めていく、これ以外にはもう方法がないのじゃないか、かように思います。
  114. 新盛辰雄

    ○新盛委員 二兎を追うものは一兎をも得ずということわざがあるように、どちらもうまく立つようにということなんですが、結局はいま、水産庁の中でも海洋生物環境研究所というのがあって、この事前影響評価、テクノロジー・アセスメントという面でいろいろ研究もしておられるようであります。しかし何としても、たとえば原発の場合は出力百万キロワットの大型原発であれば毎秒七十トンから八十トンの温排水が出るわけです。そうすると、稚魚とかあるいは魚卵などが完全に死滅をすると資源がなくなる、こういうような現実の不安というのはあるのですよ。だから、こうした面で一方を言えば一方が立たずということなんですが、これからのこうした安全性の再チェックというので原子力安全委員会が去年の七月に法律改正によって生まれました。この機能を生かされればそれはいいじゃないかという認識に立つわけですか。この安全性がチェックされれば漁業との共存路線は歩かれる。しかし、だめならこれはあくまでもだめ。これは原発の場合ですけれども、工業開発の場合でも起こり得るわけです。いま現に伊勢湾だとか鹿児島湾あたりは必ず六月、七月ごろになりますと赤潮が出るのです。この原因は何であろうかということを一生懸命水産庁でも御研究になっているけれども、まだいまだに原因をつかめない。この原因は何であるかということはおよそ素人でも想像ができるわけですね。いろいろな生活用水の関係もありましょうが、最近のヘドロなりあるいは有機化合物の沈でんだとかいろいろあるわけでして、そういうことに対応しなければ沿岸漁業というのはできないのじゃないか。そのことをやはり明らかにしていただかなければ、これからの漁業の、本当に日本漁業を守るということにならないのじゃないか。そのことを言っているのですが、どうですか。
  115. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは工場の場合も同じでありまして、工場が必要だ、しかし土地はつぶさせないと言われても工場は建たないわけです。ですから、備蓄基地が必要なのか必要でないのかという話から出てこなければならぬ問題で、国民全体の問題として備蓄基地が最小限度必要だということになれば、そういうような公害のないような形で、しかも立地的に一番、全然被害がないということはないわけですから、極端なことを言えば温水が出れば、出たその付近だけは被害が皆無ということはあり得ないと思うのです。したがって、漁業補償の問題も起きてくるわけです。ですから、被害の一番少ないことで国民の全体的な政策判断はどこにするかという問題だと私は思う。でありますから、日本国じゅう全部原子力発電所をつくってしまうわけじゃないのでございますから、必要な最小限度のものは立地とも絡めて、さらに安全性と公害の問題というものをよく考えた上で決めていくというほかに方法はないのじゃないだろうか。原子力もやめた、備蓄もやめた、こういう石油問題もやかましいときに、国民全体の安全保障を考えると、これはなかなかそうも言い切れないということになれば、やはり立地をどこにするかというようなことなどは科学的にもかなり検討して、最小限度漁業の損失で済むようにする必要がある、こう思っております。
  116. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それで、端的に新大隅開発というのは御存じでしょう。これは大隅半島ですよ。南九州の果てですけれども、埋め立てていくわけです。そうすると、あそこでとれる魚、特にチリメンジャコ、バッチ網漁業でやるわけですが、そういうようなものがなくなってしまう。だから、そういうような場合に補償をやればいいじゃないか。当面、先行きどうにもならないので金をもらった方が得だわというので、結局漁業権を放棄する。漁民というのは農業後継者が余りついてこないようなあんばいと一緒で、たん白質を守ろうじゃないかと言いながら、逆の方ではそういうふうに漁民が漁場を失ってしまうという環境をつくらしめないように、水産庁あるいは農林水産大臣として、やはり国土庁なりあるいは運輸省なり、そういうような関係省局、計画をする側に少し厳しく言わないと、何でもかんでも海岸端に出てくればいいというものじゃないと思うのですよ。それはどうですか。
  117. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはできるだけ厳しく申し上げていきたい。しかし、絶対全部だめということもなかなか言えない。電力が必要でダムをつくる、農地がつぶれる、人家が沈む、それも絶対そういうことをしないでダムをつくれと言われたってできないわけですからね。ですから、どっちの需要が大事なのかということは、やはり国民全体の利益が優先をする。ですから、われわれとしては(「農林大臣としては」と呼ぶ者あり)しかし、やはり農林大臣であっても国務大臣ですから、国全体のことも考えなくちゃならぬが、しかし特に何もこんなところでやらなくたってもっと別な、被害の少ないところでできるじゃないかということがある場合には、当然それは主張をしていくつもりです。
  118. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その点はひとつ積極的に、国務大臣じゃなくて農林水産大臣を主にしてやっていただきたいと思うのです。  そこで、今度新しくできます法律のこの関係は法案審議のときに議論をいたしますが、二百海里時代の沿岸漁業振興が見直されたということで、大臣もそういうふうにお考えのようであります。この開発整備、栽培漁業センターができたり、予算面でも相当大幅に沿岸漁業振興というのが組まれているようです。最近言われている資源管理型漁業、まさに当面の問題の提起だろうと思います。この資源培養型漁業の確立、これは漁協や漁業関係者の役割りを法的に制度化していくか整備強化する、そういう面がもう必要になってきたんじゃないか。とればいいという漁業方式から、魚も事業と一緒でありまして、魚をつくり、それをとり、それを消費するという、沿岸漁業の中におけるこれからの一つの事業形態だと思うのです。それが例の資源培養型の漁業にということになったんだろうと思います。  そういう資源があっての漁業をということを基本に踏まえましてこの際新しい視点に立つならば、総合的な漁業基本政策を打ち出すべきではないか。農業基本法というのがありまして、予算委員会大臣は、これはもう新しい時代に向かって少し見直した方がよかろうというふうに同僚議員の質問にお答えになったようでありますが、この際、漁業基本法というような制度化を図るお気持ちはありませんか。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 漁業基本法という法律をつくる考えは目下ございません。ございませんが、いまあなたのおっしゃったようなことは全くそのとおりでございますので、そういうようなつもりで、本題は法律をつくったからうまくいくという問題じゃありませんから、そのような気持ちを実施面に強く反映をさせていくというつもりでやりたい、かように考えます。
  120. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、例の日ソ漁業交渉の際に、北転船を中心にして減船、そして離職、こうした状況が生まれましたし、これから先、南太平洋のカツオ・マグロに至りましても減船もしくは離職者が増大をするんじゃないか。目下の不況の中でこの離職者の行方はどうなったんだろう。私は大体千五十隻くらいは減船になったんじゃないか、人員にして一万四、五千人出ているんじゃないかと思うのですが、これまで二百海里漁業交渉、そういう中で減船なり漁民が離職せざるを得なかったという現状を、労働省なり運輸省の労政課は把握しておられると思います。そして、私どもがつくりました漁業離職者特別臨時措置法によるその後の就職状況、そしてまた失業保険等によって保護されているわけですけれども、その状況、沿岸地域におけるこの漁民を陸に上げていろいろ公共事業に使うといってもなかなかのものであります。だから、沿岸漁業の育成を培養していくというならば、そういう掃海だとかヘドロを取り除くとか、そういうことに雇用の創出を図ることもあっていいじゃないかと思うのですが、まず離職者の数、それから失業保険、あるいは離職者がどこへ行っちゃったか、転換養成を法律でするようになっていたのですが、それはどういうふうに活用されているか、その現状について、運輸省さらには労働省、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  121. 松木洋三

    ○松木説明員 いまお話しの二百海里がらみの離職者の状況でございますが、現在、国際協定法関係の離職者手帳を発給いたしております船員の数は、私ども最近の数では約五千七百名ほどに上っております。そのうち一時的であっても就職されたという方を含めまして就職された方の数としては約三千六百名というふうに相なっておりますが、まだかなりの方が全然就職されてない、こういうような状況でございます。  先生のお話にもございましたように、これらの離職船員の方々につきましては、国際協定の締結等に伴う漁業離職者臨時措置法の定めるところによりまして、船員保険の延長給付でございますとか、あるいは保険が切れた後の一般会計からの就職促進給付金等の手当てをいたしまして、離職船員の生活の安定と再就職の促進に努めておるところでございます。  いまお話にもございましたが、漁場が狭まっておるわけでございますので、私どもとしましても、離職者の相当数の方が陸上の職場へ転換していただくということを期待しておるわけでございますが、労働省の状況なども伺ってみますと、全体としてはまだ海に再就職されたいということで、九割方の方が私ども船員職安の窓口においでになっている、こういう状況でございます。私ども、海上職場の拡大という観点からは、基本的には漁業振興ということにまたなければいけないわけでございますけれども、当面、私どもとしましても水産庁の協力もいただきまして、従来の努力に加えまして全国規模の広域職業紹介にさらに力を入れるというようなこともいたしまして、一人でも多くの方に再就職の機会が与えられるようにさらに努力をしてまいるつもりでございます。
  122. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 特定漁業離職者の大部分の方々は、先ほど運輸省から御答弁申し上げましたように、再び海で働きたいという方が多く、陸上部門へ就職したいということで安定所へ申し込まれた方は六百五十一人となっておるわけでございます。この六百五十一人の大部分の方は東北、北海道等、求人事情の比較的悪い地域で、また地場賃金も低いというようなことで、就職もなかなか順調に推移しているとは申し上げられないわけでございますが、現在百三十三人の方が就職いたしているところでございます。また、現在職業訓練を受講している方が八十四人おるわけでございます。  ちなみに十二月末現在におきますこの手帳の有効な方々の状況を見ますと、四百七十八人の有効な方がおるわけでございますが、このうち保険金を支給している方が二百七十一人、それから促進手当あるいは訓練待期手当を至急している方が百二人、それから訓練手当を支給している方が八十四人、合わせまして四百五十七人の方については何らかの手当等を支給しているところでございます。  今後とも私どもは、職業訓練等を活用しながら、この三年間の手帳の有効期間中に何とか再就職に結びつけるような努力をさせていただきたいと思うわけでございます。
  123. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  124. 佐藤隆

    佐藤委員長 野村光雄君。
  125. 野村光雄

    ○野村委員 ただいまから、昨年就任なさいました渡辺新農林大臣、せっかくお見えでございますので、中心に御質問をいたしたいと思っております。  まず最初に、先般新大臣所信表明を承ったわけでございますけれども、私が申し上げるまでもなく、最近の農林漁業を取り巻く内外の諸情勢というのは非常に厳しい。こういう中で、大臣の課せられました責任は私は非常に重い、こういうふうに認識をいたしておりますし、また新大臣に対する農民の期待も私は大きい、こういうふうに認識をいたしておる次第であります。  しかし、最近の情勢から考えますと、特に米作農家を主体とする農民が一番不安に思っておりますことは、最近の経済界、一部の労働界までが率直に申しまして農業過保護論、こういう風潮が出てまいってきております。大臣よく御存じのとおりでございます。そういう中で、戦前戦後を通して直剣に農業に誇りを持ってまいりました農民が、このような風潮の中で非常に大きな不安にいま耐え忍んでいる。しかも、そのことによって、ともいたしますと生産気力を失い、また農家としての誇りも失いつつあるのが偽らない現況でございます。  このような世論と農家の置かれている立場に対して、新大臣としてどのように認識をなさっていらっしゃるのか。また、このような悲哀の中に、不安の中に打ちひしがれております農民立場に立ってこの問題をどう受けとめ、どう対処なさろうとするのか、この点をまず、不安におののく農民の前にひとつ新大臣として明らかにしていただきたい。
  126. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は農林水産大臣でございますが、それはもちろん生産者のことも考え、消費者のことも考えてやらなければならない立場であります。厚生大臣が医師会のための厚生大臣ではなくして、患者のための厚生大臣でもなくちゃならないということと同じでございます。したがいまして、私といたしましては基本的には農村民族の苗代だという考えが一つあります。それと同時に、やはり日本の一億一千万の食糧を私は確保するようないろんな政策をやらなきゃならない。したがって、国民に安定的に国民食糧確保することをやる。そのために、できるだけのものは、国内でつくれるものは国内でつくる。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 しかしながら、これは国内でできるだけつくるということは、外国から入れないものは入れないという権限でこれは排除しているわけですから、値段だけがどんどん高くなってもいいんだということではこれは消費者に相済まない。したがって、これについては生産性を上げるための助成措置も講じますし、生産者の方々にも御協力をいただく、こういうようなこともやらなきゃならぬ。  いずれにいたしましても、私といたしましては米の問題だけでなくて、国民食糧全体の問題として、できるだけ農家も保護をするところは保護をする、しかし勉強してもらうところは勉強していただく、こういうことでいかなければならぬ。これは農家ばかりではなくて、林家についてもそうだし、漁家についてもそうだし、私は全部そうじゃないか、かように考えるわけであります。  その立場は私はよくわかっておるわけでございますが、ともかく減反の問題がおっしゃりたいところだと思いますけれども、これも余っておったのでは現在の食糧管理制度がおかしくなるというようなことで、やむにやまれずこれは別な方向に、不足の方向に転換してもらうということをやっておるのですということを御理解いただきたいし、農協等もそういうところを御理解いただいておりますから、自発的に政府の政策に一割くらいは何とか乗せられないかというような御協力も自然発生的に出てきているわけでございます。
  127. 野村光雄

    ○野村委員 基本的な大臣のお考え、あらあらわかったわけでございますけれども、ただ私は米のみならず、現在全国農民の置かれている立場と心境、こういうものをもう一遍赤裸々に申し上げて、大臣のお考えを率直に承りたい。  戦前戦後を通して、農家というのは概してわが国農林省基本的な方針どおりそれに沿ってきたんですから、まじめに、米を増産しろと言うから一生懸命米を増産した。また、特に北海道あたりは、北限地帯は何と言っても米でなくて酪農だ、二十頭から五十頭にしろ、こういって言われるとおりにやってきた。言われるとおりにやってきてようやくその目標時点にきたら、やれ米も余る、やれ乳も余る。これは国内だけの問題でなくて、農家はこのような状態にありながら、円高問題等も関連してどんどん海外から農畜産物の押しつけ輸入をさせられている。こういう現況に対して農家は、政府の言うとおり私たちはその方針に基づいてやったんじゃないか、やはりその点に対して政府が長期展望というものに見誤りがあったんじゃないか、こういうものを抱いておるわけです。  こういう点に対して、新大臣に就任なさって、戦後三十数年たどってきた過去の農政というものを振り返りながら反省するものはないのか。この点に対して、農民のそういう不信というものに対してひとつ率直に御意見を承りたい。
  128. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本農家の方が政府の方針に非常に協力的にやっていただいてきた、これは私は事実だと思います。一番よく協力してくださったと思っておる。にもかかわらず、食糧増産時代、その象徴になるものはお米であったわけですが、それが余るようになって減産の世になった。このことは、政府の方針が間違ったと言われればあるいは間違ったのかもわからない。どこに一番の違いがあったかというと所得倍増計画です。所得倍増計画で十年たったら倍にするというのが三倍半になったわけですから、そのために勤労者の生活が非常に豊かになった。豊かになったために、結局食い物に出すお金は出せるということのために消費の動向が変わったということが一番の原因なんです。結局お金を持っているからもう米以外のものを、金さえ出せば何でもある、胃袋は一つだというようなことで、米の消費が落ち込んできたのは事実なんです。これが一番の原因なんです。だけれども、それじゃ一般の勤労大衆の所得が豊かになったことが悪い政策だったか、なかなかそうも言い切れないのじゃないか。ただ、それをうまく見通して、もっと早いうちにブレーキをかければよかったのじゃないか。それが四十五年になってブレーキをかけて、やっと四十九年ごろは生産と消費がツーペイしたのですよね。それがちょっとまた緩んで生産過剰になっちゃった。そこに政府の手抜かりがあったのではないかと言われれば、私は率直に認めていいと思うのです。だから、臨機応変にその消費の動向に対応していけなかった。もう少し厳しく対応すべきところは厳しく対応すべきじゃないかと言われれば、私はもっともであると思います。しかしながら、生産者というものも消費者あっての生産者ですから、やはり消費者をいつも頭に描いていかなければならない。したがって、消費者が豊かになるということは、生産者収入もふえることなんです。消費者が貧乏になってしまえば、牛乳も三本飲むところは二本でいいというようなことになりますと、やはり間接的に影響がある。ミカンをたくさん食べていたのが三日に一つ食べればいいということになると影響があるわけですから、全部相関関係にあるのだというようなことも知っていただいた上で、やはり生産者消費者一体となったものを農林省としては考えていかなければならぬ。反省すべきところはたくさんあると私は思います。
  129. 野村光雄

    ○野村委員 率直な反省がございましたのでこれ以上申し上げる必要はございませんけれども、大臣、勘違いしてもらったら困るのですが、私も戦前戦後を通して長い間農家をやってまいりました一人でございますけれども、生産者というものは自分の経営面積の中で最大の努力をして生産量を上げたい、こういうことで、政府が米なら米、また麦なら麦をつくってくれ、言われるとおりに一生懸命つくっている。そのつくっていること、全体的な状態で需給のバランスがどうなっているのかということは農民自体はわからないで精いっぱいの努力をして生産をしている。全国の耕地面積によってどれくらいの生産量が上がって、現在の経済の推移からいって消費がどうなるかということを、全体のバランスの調整をとるのは政府だ。農民一人一人ではない。そういう点からいって、農民は与えられた、指示された面積なりまたは飼育頭数によって、全力を挙げて政府の方針に向かって努力をした。全体調整がどうだから、たとえばおれの家で牛の乳がこれだけ出るのをこれだけに下げなければいけないという考えでやっているのじゃない。それは為政者の責任なのだ。そういう点、過去を振り返って為政者として率直に反省する一点がない限り、農林省と一体になった本当の農政は行われない、私はこれを強く新大臣に要求しておきたいと思います。  そこで食管法問題これまたいまの農民にとって大きな課題になっております。結局、米の過剰傾向ということでの食管法の改廃、これもやはり大きな論議の的となってきた。そこで、米はわが国古来から持っている自然条件で、特に生産技術の見地からいってわが国に最適の作物なのだ。しかし、今後の国際的食糧の事情、いまベトナム問題いろいろな問題も起きております。石油にしてもイラン問題、何が起きてくるかわからない。今後そういう国際的な変化があって食糧事情が思うとおり、これは米だけでなくて、農畜産物が諸外国からいまのような状態で入ってこないという事態が万一起きたときに、わが国最適、最大の米、これに対して当然依存度が高まってくる時代だってないとは言えないだろう、こういうことを考えたときに、過剰傾向に対応し得る食管制度のあり方、運用、こういうものを再検討すべきじゃないか、廃止するというのじゃなくて。現在の食管法は、私が申し上げるまでもなく、食糧が足りない時代消費者のために需給計画を安定させるためにつくったものだ。ですから、米の過剰なら過剰、米だけでなくて食糧一般の新しい現代傾向に対応する運用方法なりあり方というもの、食管法というものをこの際検討する必要があるのじゃないか、こういうように思うのですが、この点は大臣としていかがでございますか。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農業というものも全体的に見れば産業でございますから、やはり消費者の動向というものは常に考えて生産をしなければならない。  そこで、御承知のとおり、農家の方は確かに一人一人は幾らつくっていいかなかなかわからぬ、これは事実でしょう。したがって、そういうようなことの指示の仕方が遅かったと言われれば、私は率直に認めていいということを先ほどから申し上げているのです。しかし、現在の段階でこれ以上過剰累積はできないので、それで平均七万円くらいの転作補助金を出して、極力不足のものをつくってくださいということをお願いして、それが大部分理解されて去年も一三%増の成績を上げたということは事実なのです。  それから、食管法の問題でございますが、食管法は全くできたいきさつというものが戦時立法で、昭和十七年に配給統制で、言うならば一種の米徴発法ですね。そういう形で生まれたという歴史的背景があることは間違いない。したがって、過剰に対応するようにはできていない、これも事実なのです。したがって、どういうようなことがいいのか私もまだよくわかりませんが、実情に合うようにするにはどうすべきかということについては常に研究はする必要があるだろう、こう考えております。さしずめ食管法があるために農家の方も米の値段が維持されるというような安心感があることは事実なのですから、これはやはり不安を与えてはいけない。したがって、軽々に食管法の改正なんということも口にできない理由はそこにあるわけです。しかし、われわれは米の値段も維持されるような現在の制度を守りながら、また守れるように、過剰累積もつくらないようにしながら、何かまずい点があれば、むだの多い点があれば、それらの点については不安を与えないような形で、むだがあればそのむだはその都度その都度直していく。世の中はどんどん進んでいるわけですから、農業産業ですから、産業である以上経済に支配されないことはない。だから、そういう点は常に研究を怠ってはいかぬと私は思います。
  131. 野村光雄

    ○野村委員 大臣、私はなぜこういうことを言うのかというと、大臣御承知のとおり、繰り返す必要はありませんけれども、非常に食糧難のときにつくった食管制度であるだけに、農民立場に立って見れば、その時代、大きな変革によって、生産者を守ってくれる食管法を、先ほど申しましたように、いろいろな世論とかいろいろな状況から言ってこれをなくされるのじゃないかという物すごい不安を持っているわけです。ですから、なくしてはならない。そのために改正すべきときがあったら改正して現時点に合うようなものに若干でもいいから直すようなことにして、いずれにしても基本的な精神は、農民を守るための食管法としてはこの点をこういうふうに改善したから食管法というものはどこまでも堅持するぞ、内容は若干直したけれども心配するな、そして安心を与えて生産もできる。消費者もどうもこんなに余っているのでああすべきだ、こうすべきだという食管法に対して不満を持っている。いや、こういうことが現時点に合うように改正されたので、これならば農家もいいし消費者もいい。この食管法に対して非常に強い制度の改廃論というものが年々高まってくるだけに、農民が不安を抱いているわけでして、その不安を除去するために、私はやはり見直しというものも必要な時代が来ているんじゃないか、こういう意味で言っているのでございまして、その点に対していかがでございますか。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ごもっともな御意見と存じます。
  133. 野村光雄

    ○野村委員 次に、農業構造改善事業につきまして、過日行政管理庁からの勧告が出ておりまして、時間がございませんもので、これに対しまして基本的には、勧告の精神からいきますと、農業事情の変化、これに対応できなくなってきている、端的に言うと、基本的な構造改善事業に対する勧告の主体の意見のようでございますけれども、そういう中でこれらの欠陥というものに対して当然これは再検討していかなければならないんではないか、こういうふうに思うわけでございます。その中で、政府による画一的な押しつけ農政を改めて、地域の実情、農家経営の実態に即した農政への転換をすべきだ。第二番目には、耕地の高度利用、地力の増強、農業機械の利用の効率化、これは非常にむだになっております。次に、農薬や化学肥料の偏重等によって地力の低下がどんどん急速度に進んできた、これは私はこのままで推移いたしますと将来取り返しのできない時代がやってくるのじゃないか、こういう考えをいたしておりますけれども、大臣の率直なこれらに対する御見解をひとつ承りたい。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体同じような考えであります。
  135. 野村光雄

    ○野村委員 それでは、いま申し上げました点に対して、いつまで、どのような方法で改善されるのか、具体的な年度別なり年次計画等を示していただきたい。
  136. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いまお話がございました二次構造改善事業に対する行管の勧告ですが、これは基本的には四十四年からやっております本事業についていろいろ点検して、その教訓を新構造改善事業に生かせ、こういう御趣旨であると思います。  いま先生が御指摘になりました数点につきまして、私どもといたしましては行管からもちろん今回指摘を受けたわけでありますけれども、それ以前に自分自身の問題として点検して、五十三年度から発足しております新農業構造改善事業を設計し、その具体的な運営についてもすでに生かしておるつもりであります。しかし、また改めて行管から御指摘がございましたので、よく点検してその御忠告というものは忠実に生かしていきたい。  それから、行管の御指摘につきましては、三カ月以内にわが方からお答えする、こういったことになっておりますので、一月の末に御指摘がございましたので、三カ月以内には私どもの考え方を改めて行管に御報告をして御理解をしていただきたい、かように考えている次第であります。
  137. 野村光雄

    ○野村委員 特に大臣、ここで強調して改善でひとつ盛り込んでいただきたい、こう私が思う課題は、先ほどの地力の低下でございますが、私も先ほど申しましたように、長い間農家をやってきた一人でありますが、先般私は北海道であるタマネギ専門農家へ参りました。そのお年寄りと茶の間で懇談いたしまして、私はしみじみ日本の将来の大きな課題だと思って聞いてまいりました一つの問題ですが、御存じのとおり、畑作というのは特に金肥、金肥で長年やっておりますために、ちょっとした天候異変、病気、これに対応し切れない。いまの息子たちというのは、まるっきり堆肥というのはうちの屋敷で見たことがない。しかも、近郷農村が幸い水田農家なんだけれども、昔はここへ行ってわらを買ってきては堆肥を積み込んだものだ、それもやらない。昔は馬で馬車をかけて山へ行って牧草を刈ってきて、そして堆肥をつくった。いま便利なトラックがありながら、それもやろうとしない。こういう深刻な、特に畑は、大臣御存じと思いますけれども、年々金肥でもっていきますと、土壌というものがもう作物に耐えられない状態になってくる。お年寄りの一つのぐちではございますけれども、私はこれは見捨ててならない課題だ、日本農業の将来の最大の課題だと思う。ですからできれば、昔の農業はどこのうちにも小家畜が何頭かいて、それで堆肥をとってきた。やはり小家畜でもいいから導入しながら、地力増強というものに力点を置いた、古い考えとおっしゃるかもしれぬけれども、こういうところに最大の力点を置いた農業というものを、農林省みずからが思い切った改革と推進をしていくことが必要なのではないか、私は実感としてこういうように感じておりますけれども、大臣、この点はどんなお考えでございましょうか。
  138. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も同じような実感を実は持っているのですよ。農薬の使い過ぎでイナゴもいなくなっちゃった、ホタルもいないというような、これなどはかなり厳しく規制をしてきたものですから、近ごろはイナゴもかなりふえてきた。これは事実なんです。収奪農業はいけない。しかし、一方で生産性も上げるというような問題があるから、どういうような調和の仕方がいいのか。小家畜を飼わせるのがいいのか、あるいは牧草なんかを植えて輪作をさせるのがいいのか、余り技術的なことは私はわかりませんが、いずれにしてもそういう精神で、この辺でやはり土に対する考え方というものは一偏再検討する必要があるんじゃないかというように思っておりますので、これは専門家に検討してもらいます。
  139. 野村光雄

    ○野村委員 ぜひ重要な課題として今後の農政の一環の中にひとつ強力に推進していただきたいことを御要望申し上げておきます。  次に、まだ時期は早いかもしれませんけれども、基本的な問題として、特に大臣に本年度の生産者米価に対する基本的な考えと、乳価決定の時期を控えておりまして、これに対する基本的な考えをまずお聞きしたいのでありますけれども、大臣の先般の所信表明等を拝見いたしますと、特に米価の決定に当たっては生産者米価と消費者米価の現在の逆ざやを段階的に解消をしたい、こういう意味の表明がなされているようでございますが、これについて、いつまでにどのような方法でこの解消をなさろうとするのか、基本的な見解を承りたいと思います。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実はこれについては、中川農林水産大臣のときからおおむね五年間程度で逆ざやの解消を図るということが定められておるわけでありまして、その一環として、先般来、一食にすると一円二銭程度の消費者米価の引き上げを行ったということであります。
  141. 野村光雄

    ○野村委員 生産者消費者も、これはいずれにしても生産者立場消費者立場はいつでも全く正反対でございますので、大臣としては生産者だけの大臣というわけにはいかないという事情は私もよくわかるわけでございますが、ただ、いま生産者立場に立って私はここで質問に立っているわけでして、その辺からいきますと、御存じのとおり、耕地面積は制限される、そのことによって収量は当然少なくなる、さらに転作ということによって作業量はふえ、その上農機具等いろいろな諸経費が米専門時代よりもかかる。そこで、北海道というのは、御承知のとおり、専業農家が非常に多い、こういう立場の中から、米価の決定というものは農家所得にとって最大の関心事でございますので、本年度の生産者米価に対する基本的な考え、こういうものがございましたらひとつ示していただきたいのであります。
  142. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 生産者米価の決定方式というものは大体決まっておりまして、所得補償方式ということで決まっておりますから、私は従来の方式でいいんじゃないのかというように思っております。また、具体的にどこをどうするというようなことは考えておりません。
  143. 野村光雄

    ○野村委員 いまここではっきりしたことは当然大臣として言いにくい時期と立場でありましょうから……。  次に、乳価につきましてお尋ねをしたいのであります。  乳価は、いずれにしてもこれは間近になってまいりましたけれども、いつも飲用乳乳価の決定に対しましては、特に生産者価格の決定でありますが、これをめぐりまして、乳業メーカーとの間におきまして常に交渉が難航する、こういう傾向をたどっております。わが国の生産者乳価というものを諸外国に比べてみますと、手取り分におきましては、英国でありますとかニュージーランド等におきましては六二%から六七%が手取りになっておる。わが国におきましては四五%程度、こういう低い状態に生産者は置かれておる、こういう傾向にございますけれども、これらの諸外国と対比して、わが国の乳価決定に対する基本的な考えはどのように認識していらっしゃるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  144. 杉山克己

    ○杉山政府委員 三月中に価格決定を行いますところの乳価は、不足払いの対象としておりますところの加工原料乳の価格でございます。もちろんそれと深い関連があるわけでございますが、先生がいまお尋ねの乳価は、飲用乳の生産者と加工処理メーカー、それから販売業者との間でもって行われる価格交渉、それによって決まってくるところの価格の問題であろうかと存じます。  市乳価格、これはほかの商品と異なりまして特殊な価格形成の過程を持っております。毎回その交渉は難航するわけでございますが、当事者、つまり生産者と加工処理メーカーと販売業者の三者間で協議が行われ、長い間かかってようやく決着を見るというようなパターンを繰り返してまいっておるわけでございます。  前回の価格は、一昨年の春から昨年の夏までその交渉が行われ、昨年の八月から九月にかけて引き上げの決定を見たわけでございます。二百㏄当たり五十二円であったものが五十五円に引き上げられたということになっております。その二百㏄五十五円のうち、それぞれの、つまり生産者、加工処理メーカーあるいは販売店の取り分は幾らくらいかということになりますと、それぞれの利害が衝突いたしますのでかなりむずかしい問題となるわけでございます。いま申し上げました昨年の価格改定は、ともあれ、それぞれの当事者が満足したとは言えませんが、やむを得ないということで妥結を見た水準であろうかと思うわけでございます。  そういうことによって決まりました市乳価格のうち、生産者の取り分が比率で見てどのくらいになるかといいますと、先生御指摘のように、最終小売価格の約四五%、小数点一けたまで申し上げますと四四・八%ということになっております。国際的に見てこれがどの程度の水準かといいますと、日本よりももちろん低い国もございますが、おおむねほかの国では、たとえばオランダは五七・八%である、それからフランスは五二・〇%である、それからイギリスはかなり高くて六二・一%である、こういうような水準になっております。  なぜ日本の場合、生産者の取り分の比率が低いかということでございますが、これは一つは取引の形態にあると思います。それは日本の場合は、最近一リッターあるいは五百ミリリッターの容器も普及してまいりましたものの、主流はやはり二百㏄のびんでございます。それから、そういう取引の形態が小さいということのほかに、日本は御存じのように、まだかなりの数量が毎朝戸別に各戸に配達するというような形の宅配による販売が行われております。そういうことから流通段階の経費がかかるというようなこともあって、生産者取り分の比率が低いという状況になっているわけでございます。もちろん生産者が再生産の意欲を失わないよう、価格の交渉に当たっても私どもは円滑な話し合いが行われるよう助言をする、それから生産性を上げる、あるいは流通段階の経費節減を図るというようなことでの生産者の実質手取り分を絶対額的にもそれから比率の上でも向上させるような努力は怠ってはならないと思いますし、いままでも努めておるところでございますが、ほかの諸外国に比べて低いという事情は、いま申し上げたようなところにあるわけでございます。
  145. 野村光雄

    ○野村委員 次に、米の消費拡大問題で一点だけどうしてもお尋ねをしておきたいのですが、大臣所信表明の中にもこれは方針が出ておりまして、私どもが早くから申し上げておりました学校給食等、これらに対してようやく本格的に、米穀の特別な値引き等によりまして米飯学校給食の計画拡充というものが方針として打ち出されております。これらのことにつきまして、果たして受け入れ側であります文部省その他の機関、これとの対応が具体的に整っていらっしゃるのかということと、もう一つは、このことによりまして、さらに米を初めとする新製品の製造設備に対する助成事業の新たな開設、こういうことによりましての需要の具体的な見通しというものがどうなっているのか、もうちょっと具体的にひとつ大臣からお聞きしたいのであります。
  146. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 米の消費拡大というのは、一番根本的な問題は何と言ってもうまい米をつくることですね。米がまずければ幾ら食べなさい、食べなさいと言ったってこれは食べませんから。ですから、私はやはり良質のおいしい米をつくってもらうということを最優先的に考えたい。それから、その次は乾燥の仕方ですね。これは一遍にできない。一遍にできませんが、やはり自然乾燥に近いような形で乾燥した米がおいしいに決まっているのです、同じ品種であっても。同じ生産者であっても味が違う。したがって、これも私は将来の大きな課題にしたい、そう思いますが、差し迫った問題は、学校給食は新しく週一回やるものは七割引き、週二回以上は六割引きというかなり思い切った、これは百何十億円かかるわけですから、それだけの割引をやって、それでやはり米を忘れた国民をつくられたんでは困るものですから、それはひとつ将来の、目先は小さいけれども、将来のために学校給食というものは大々的に普及する、このことは農林省と大蔵省、それから文部省の間で話がついて、これは週二回というものはみんながやるようにいたしましょう、五十六年までに、それで進んでおるわけであります。  あとは、やはり米を炊くのがめんどうくさい、とぐとマニキュアがはげるとか、現実にそういう人がうんといるわけですよ、若い層には。ですから、こういうものもやはり手数がかからないで炊けるような工夫もしてやらなければならぬから、洗わないで済む米というようなものも私はやはり普及したらいいし、それから健康食として、胚芽米とか五分づきとかいうものがスタミナがうんと出るとか美貌につながるとかということも事実なんですから、こういうものも大いにPRしてもらうというようなことで、ともかく医師とか栄養士等、厚生省なんかにも話をするし、農林省生活改善普及員というような方からもやはり宣伝をしてもらう、あるいは業者の団体等にも補助金を出して、米は日本人に一番適している作物です、主食でございますよということもどんどん宣伝をしてもらうというようなことや、いろいろな開発の問題について具体的にどういうプロジェクトでどういうふうなことをやっているかという細かいことは事務当局から答弁させますが、いずれにしても米というものを取り入れやすいような条件をつくって宣伝もするということで、両面から消費拡大を進めてまいりたい、そう思っております。
  147. 野村光雄

    ○野村委員 細かい事務当局はいいです。  大臣言葉を返すようですけれども、おいしいお米をつくりさえすれば消費は自然にある程度までは伸びる、これはもっともです。ただ、せっかくおいしいお米をつくっても、その保管の方法と管理によって、これは農林省で努力しなければならない点がたくさんあるのです。大臣がおっしゃったから、言葉を返すようでありますが、何回か私はここで言っている。一番いいのは、やはり土用を越すお米はもみで保管することですよ。それから、せっかくおいしいお米を農家が精出してつくっても、現在の流通機構を改善しないと、品種ごとに売られておりますか。品種ごとになっていないでしょう。昔よりか等級が拡大したでしょう。農家の努力が消費者にそのまま通じていかない流通機構の問題が改善されない限りだめなんですよ、大臣。いいですか。  それからもう一つは、どうせ余るならできるだけ新米を多く食べさせることですよ。そういう保管、流通機構、こういうものがまだまだ改善されなければならない。政府自体にも問題があるということを、答弁は要りませんけれども、何かおいしい米を無視して生産第一主義に農家が走っているようにも思いますけれども、いま農家も真剣に少しでもおいしい米をつくりたい、量よりか質だという努力はしているのです。もう一つは、おいしいお米というものはやはり金肥第一でなくて、自然の地力増強によって品質の本当のうまみは出てくるのです。こういう、先ほどから言っている本質的な農林省としてとるべき処置ができていない欠陥というものを新大臣は改めて私は認識していただきたい、はっきり言っておきます。答弁は要りません。  次に、私は漁業問題に移ります。  先ほど社会党の方が質問いたしておりました韓国漁船の操業問題です。私は重複を避けますけれども、大臣御存じのとおり、これは北海道の沿岸漁民が長年にわたって苦衷を訴え通してまいった深刻な問題でございます。  一つの実例を申し上げますけれども、昨年、これは十二月の二十日、韓国漁船の船団が室蘭の地球岬沖におきまして約五隻、大きな二千トンクラスの大型トロール船でございます、これに対して、長年の漁具、漁網を傷めつけられました北海道沿岸漁民が、二十トン前後の小さい船が百四十二隻、この韓国漁船を包囲いたしまして、石をぶつけたり、たまりかねて恐ろしい紛争が巻き起こって、こういうトラブルが起きました、御存じと思いますけれども。こういう実態から考えて、私は具体的なことは申し上げませんけれども、もう先般来、十五、十六日行われました次官会議、水産庁の次長会議ですか、これも何か暗礁に乗り上げたようでございます。  私は、そこで大臣にぜひお願いしたいことは、時間がございませんから詳しいことはもう申し上げませんが、まず、わが国全体から見ればいろいろな問題はさっき言ったようにあると思いますけれども、やはり二百海里というものをわが国として北海道のためにこれはひとつ明確にしていただきたい。これはやるべきだ、私はそう思うのであります。  もう一つは、今日までのこの会談の実態では、これは実質的ならちは明かない。やはり外務省なり農林大臣みずからが韓国の担当大臣と直にひとつ会談をして、早急にこの問題の解決を図っていただきたい。これに対する御回答をひとついただきたい。
  148. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ごもっともな話であります。三月上旬に水産庁長官同士の話で決着をつけさせたいと考えております。もし、それができないという場合には、当然これは政治の話であります。  二百海里の指定の問題も慎重に検討します。
  149. 野村光雄

    ○野村委員 非常に前向きな御答弁をいただいたわけでございますけれども、ぜひこの問題は早急にひとつ新大臣の最大の課題として北海道漁民のために先頭に立っていただきたい、これをお願い申し上げておきます。  次に、大臣御存じのとおり、昨年の日ソ漁業交渉が東京で行われましたことによりまして、新たにソ連のトロール漁船が、すなわち棒受け網漁業、それからまき網漁業、これは七月から十一月まで、棒受け網漁業は十月から十一月まで、北海道沿岸すなわちトロールラインまでの操業というものを認めたわけでございます。そのことによりまして、せっかくソ連漁船とのトラブルというものがなくなってやれやれとしておりましたさなかに、新たに本年度から北海道沿岸のオッタートロール線までのソ連漁船の操業ということで、非常に沿岸漁民が心配しております。これについて、先般私は正月早々ソ連にも行ってまいりましてイシコフ漁業相に厳しく申し入れてまいりましたけれども、ソ連漁船が、ぜひひとつわが国とソ連にできております日ソ漁業操業協定というものを厳重に遵守するよう大臣からも申し入れをしていただきたいと同時に、沿岸におけるソ連漁船の操業の監視を強化をしていただきたい、こういうように思いますけれども、大臣の御答弁をいただきたい。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日ソ漁業操業協定を厳重に遵守してもらうように、当然申します。
  151. 野村光雄

    ○野村委員 次に、もう一つ大臣にこの際お願いしたいことは、ソ連漁船によるわが国の漁具、漁網の被害につきまして、御存じのとおり、日ソ間におきまして紛争処理委員会というのがございます。時間ないから簡単に申しますが、ようやくモスクワ委員会に四十三件ですか、送られております。しかし、いまだにただの一銭も弁償してくれない。これは日本の熱意がないとかなんとかというのではなくて、相手がソ連でありますからそう簡単にいかないと思いますけれども、ただ私はこの漁業交渉の中で、先般イシコフ漁業相、まだそのとき大臣でございましたので、直接私は申し入れてまいりましたが、特に白糠町の片山彰さんの船、これの船体沈没という具体的な事犯、四十九年の一月六日でございましたが、これがモスクワ委員会に上っているわけです。この具体的な問題を私はイシコフ漁業相に突きつけまして、明確なこれだけの事犯が、いつ、どこそこで、どの船で、どういうふうになったという被害の実態がありながらこういうものを解決しないで日ソ親善友好とか善隣友好ということを言ったって、わが国としては納得できない、払うものは払うべきだと厳しい申し入れを私はいたしてまいりました。早急に善処したいということで、具体的な問題をぶっつけられまして、相当向こうも戸惑ったようでございますけれども、いずれにしても深刻な実態が初めてわかったような印象を私は受けて帰ってまいりました。  これらの紛争処理の問題に対しても、もうすでに委員会ができて三年もたっているわけですから、具体的な問題から精力的に弁償の解決を具体的につける時期が来ていると思うのです。これに対しての大臣の決意なり考え方をぜひひとつはっきりしていただきたいと思います。
  152. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは何回でも言わなければならぬ、そう思っております。
  153. 野村光雄

    ○野村委員 非常にぶっきらぼうといいますか、決意は決意として私は受け取りますけれども、時間がないからそれをおもんぱかっての決意だと思います。ぜひこれは関係省庁に対しまして具体的に厳しい示唆を与えながら、大臣いつまでおやりになるか私はわかりませんけれども、少なくとも大臣をいままでの過去の例から言うと一年ぐらいおやりになると思いますので、大臣の就任中にひとつおみやげとして、もう三年目ですから、これぐらいのことははっきりけりをつけていただきたいと思うのです。就任中にやる決意、その点はどうですか。
  154. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 もちろん就任中にやる決意であります。
  155. 野村光雄

    ○野村委員 あと五分でございますから。  もう一つ、私はモスクワに参りまして、どうしてもこのことだけはぜひ今後の課題として大臣の方からも考え方をお聞きいたしたいと思う最後の点は、貝殻島周辺区域のコンブ漁業の再開についてでございます。  詳しいことはもう私から説明するまでもございませんが、いち早い再開にこぎつけるべく、これへの対応策を進めるべきだ。今日まで努力なさっていらっしゃることは十分わかりますけれども、これらに対する具体的な新大臣としての対応策並びに日ソ共同事業についての見通しと新大臣としての取り組み方につきましての御決意をひとつ承りたいと思います。
  156. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 皆さんも大体おわかりだと思いますが、私が就任早々、中川農林大臣に私の特使のような形でイシコフさんのところに行ってもらって、話が決まっておってやらないことが幾つもあるわけですから、交渉をしてもらおうと思っておったのです。ところが、イシコフ解任、新大臣ということになって、向こうの体制もまだはっきりしないでしょう。しかし、十何年もやった事務次官が大臣になったわけですから、日本国内のこともよく承知しておられるものと思います。そういう点はかえっていいのじゃないか。したがって、向こうの体制が整い次第、こちらからもいろいろな交渉事についていま下相談をやっておるわけですから、一刻も早く解決するように引き続き努力をしてまいりたいと存じます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 野村光雄

    ○野村委員 限られた時間でございますけれども、渡辺新大臣に対しまして、現在取り巻いておりますところの最大の課題であります農業問題を初めといたしまして、韓国漁船の問題、さらに日ソ漁業の問題等の取り残されております課題等について質問してまいりました。  いずれにいたしましても新大臣の双肩にかかってきたわけでございますので、どうか私の質問を通しまして意図するところを十分おくみ取りいただきまして、確実に一つ一つ具体的な成果をおさめて、まじめにわが国国民の食糧担い手として不眠不休で努力をいたしてまいりました農漁民におこたえいただきたいことを特に御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  158. 佐藤隆

    佐藤委員長 武田一夫君。
  159. 武田一夫

    ○武田委員 私、最後ですのでひとつよろしく。いろいろいままで質問ございましたが、私も、渡辺農林水産大臣所信表明等につきまして、三十分間の時間で二、三質問させていただきます。考えてみますと、いまの日本農業というのは非常に厳しい環境にございます。正直言いまして、米の豊作が喜べない環境、あるいはまた海外からの厳しい農産物輸入の自由化攻勢、特にまた昨今、財界あるいは労働界から食管制度を含んだ農政に対する批判というようなものが起こりまして、内から外から大変な環境である。大臣はそういうときに就任されたわけでありますから、こうした内外の厳しい環境に取り組む相当な決意を持っておいでである、こう私は信じているわけであります。農業のこうした厳しい環境の中で、特に昨今の国内における国民の農業に対する支持、一般の国民大衆の支持を得るということは、これは非常に大事な問題であろう。大臣も年頭所感でしたか、一月四日のときにそうした意味の発言をされていますし、私もそのとおりだ、こう思うわけでありますが、それと関係する、いわゆる昨年の暮れ以来財界とかあるいは経済界に、過保護であるとかあるいは金がかかり過ぎる割りにはうまくいってないではないか、こういう批判でございますが、一般国民はそのとおりだという非常に共鳴を持って聞いているという、実はこわいと思います。これは真実が一面ある。  こういう意味で大臣として労働、財界のそういう批判というものをどう受けとめまして、どのように一般国民に農業というものの重要性等を理解させる努力をしていくつもりか、その一点からお聞きしたい。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 このような非常に厳しい不況下にあって、しかも政府は増税までも考えるというようなことになったものですから、むだ遣いはいかぬという国民風潮になったことは、これは間違いありません。私は、こういうものは率直に受けとめなければいけない、かように思っておるわけであります。しかしながら、どこの国でもそうであるように、日本においても国民食糧安定的確保ということは、これは国家安全保障上重要なことでございますから、そういう意味においてできるだけ自給率も高め、国内で保護もすべきものはある程度保護はせざるを得ないわけであります。しかし、これにも当然限界があるわけでありまして、われわれはそういう点においても農業団体ともいろいろなお話をし、そうして一緒になって国民の期待に沿うような農林水産業をつくり上げていく、こういう考えであります。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 国民一般から納得できる農政というもの、これが今後の一つの大きな課題である、こういう意味でわれわれも一生懸命努力しなければならない。そういう意味で、いままであった甘えというものはやはり厳しく是正しなければいけないんじゃないか。そういう意味ではやはりはっきり言うべきところは言っていただきたい。どうしてもいままでいろいろと利害関係として物事をやってきたところにその甘えの構造が大きくなり過ぎた。これは私は率直に言って、農協等の上層部等にははっきりあらわれてきているわけでありまして、やはりこういうことに一つの大きな勇断をふるう、その他たくさんございましょうが、そういうところから農政全般の改革のスタートを始める必要がある、こういうふうに思うわけでありますが、どうかその決意で臨んでいただきたい、このことをまず要望いたすわけでございます。  そこで、所信表明の中で大臣農林水産業の体質強化を特に強調されておりますが、前農林大臣中川農林大臣もこのことについては触れていますし、われわれは足腰の強い農業というものは必要である、これは皆共通の考えでございます。やはり一つ産業、事業でありますから、よく言われるとおり、事業は人なりでございます。こう考えてまいりますと、まず大事になることは、やはり食糧の安定確保のための担い手としての中核農家の育成、これはもうどうしても絶対欠かせない重大な問題であります。  そこで、率直に言って、大臣がこの人材の育成、中核農家の育成の中でまずこれを最優先にやっていかなければならないと考えているものがございましたら、たくさんあるでしょうが、大臣の心の中でいつもこのことだけは頭から離れないというものがございましたらひとつお聞かせ願いたい、こう思います。
  162. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は農林水産業というのは決して、夢も希望もないなんと言う人があるけれども、おかしいと言っているんですよ。私は非常にやりがいがあるんじゃないか。特に日本というのは一億一千万の国民がおって、しかも至近距離、近いところにおって、しかもお金を持っておって、たくさん、何億もおったって購買力のないところでは売れないわけですから、そういう点で日本はやり方次第で、体質を強化すれば私は魅力ある産業になるという考えを持っておる。その中心になるものはやはりその担い手というものを育成をしていかなければならぬ。そのためにはやはり土地の集積、利用権の集積というようなことを考えてやらなければならない。それの障害になるものは、何が障害になっているのかというようなことなどについて一遍洗いざらいこれは再検討する必要がある。私はそれだけは頭から離れないのです。もう少し勉強させてもらって、そろそろ言いたいことも言わしてもらいたい、そう考えております。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 よくネコの目農政とかいわゆるノー政、こういうことが一つ農業の代名詞みたいに言われてしまった。要するに、不信感がそこに蓄積してしまった。もうこれはぬぐい去れない。一つの事業をやるにしても、どうもその責任というのが、いざとなるとどこに行くのか所在がわからなくなってしまう。それで、そのときに応じていろいろとその施策の変更が余りにもあり過ぎたし、それがいい方に動いていけばいいけれども、結果として農業が衰退してくる、働き手がいなくなるというような環境をつくってしまった。この不信を醸し出してきた要素というのが、やはり人材も不足してくる。どうせまたやっても変わるんだろう、それよりもという、やはりこういう社会ですから、まして昔だったら情報化社会でないですから余り周りのこともわからない。テレビ等もない。せいぜいラジオくらいである。ところが、知識も広まり、情報もたくさん入ってくる世の中になりますと、人間ですから、特に若い者はいい方向へ、いい方向へと流れていく。こういうような一つのいままでの農政というものの反省というものは、やはり十分にあらゆるところから聞き取って、今後の農政の中で生かさなければならないんじゃないか。まあ生かしてきた努力はしているでしょうけれども、それがやはりわれわれのために一生懸命やっているんだというその反応は、若い人たちには敏感に通ずるはずでございます。ここの点が私は欠けていたんじゃないか。ときどき聞かれますが、農林省あるいはいろんな省庁の方々がわれわれのことを一生懸命思って予算をつくり、そして施策をつくるならば、われわれとしてそれに向かって失敗したとしても悔いはないという声を聞くわけでありますが、そのことを農家の若い方々に敏感に感じさせる姿勢は、これは国も地方自治体も改めなくてはいけない。この点にやはり私は一つの大きな精神的なものを見出してほしい、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  164. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 全くそのとおりでございます。私は、農林省生産活動をやるんじゃなくて個々の農林漁家がやっているわけですから、その人たちと同じ気持ちにならなければならぬ。それにはやはり産業であるという認識、日本経済と重大な関係があるという認識、こういう認識に立てば、私はおのずから手段、方法は出てくるんじゃないか。だから、そこのところは大いにお互いに言いたいことを言って議論をしましょう。謙虚にお互いに反省すべきところは反省しましょう。そうしてやれば必ず足腰の強い農業ができますよ。それで、そういう議論はじゃんじゃんやろうということを言っているわけです。したがって、私はあなたと大体同じ考えですから、今後もひとつ御支援を賜りたいと思います。
  165. 武田一夫

    ○武田委員 そういう国と地方自治体あるいは農業団体、農家とのコミュニケーションが、信頼の中で話し合いが進めば、私はその中でいろいろな努力が生かされてくる、こう思います。  そこで、中核農家の育成ということで、高校を出た子供さん方を中心に農業に関して一生懸命いろいろなことをやっておりますね。だけれども、反面、どうでしょうか、林業、水産業というのはどうもお気の毒なくらい少ないと思うのですが、いかがですか、大臣、率直に、予算とかいろいろな施策を見て。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは見方でございますが、確かに林業などの場合は四十年も五十年もたたなければ切れないというようなときにあって、助成の仕方が足りなかったんじゃないかと言う人もある。しかし、やはり日本の山を守っていかなければならぬ、これは公益的機能もあるわけですから。したがって、ことしは画期的な、金融制度にしても四十五年間も融資をする、二十五年間据え置きなんて世界に例がないんじゃないかと思いますけれども、われわれはそういうような制度をこしらえたり、また植栽から間伐までとにかくこれも二十年くらいの間助成するわけですよ。そういうようなことなどもやっていきたいと思っておりますし、漁業につきましても、二百海里というような問題で厳しくなればなるほどわれわれはこれに対しては一層の力を入れていく、そういう決意でおります。
  167. 武田一夫

    ○武田委員 それと同時に、いわゆる若者たちの教育ですね、研修、これを農業だと、たとえてみれば、地域農業後継者特別事業とか指導農業士活動事業とかいろいろありますが、ここに予算をたくさん取って、いろいろなそれなりの研修とかで力を入れておりますが、林業あるいは水産業にもやはり同じようなものをきちっとつくって、われわれとしては皆さん方を一生懸命守って、育てていくんだという、そういうものを見せなければならない。何だ、おれたちは数が少ないからといって、のけものになっているのかという感じはしないとは言えないと私思います。しかも、老齢化が激しいのは農業以上に林業であって、後継者がいないのは農業以上に水産業である。海に働く男がいない。これは深刻です。われわれとしては農業漁業、林業というものが一体になって初めてわれわれの生活の安全というものが保障されるだけにこの点にはもう一段の配慮が欲しい、こう思うのですが、どうでしょう。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 後継者対策は農業関係が一番先に出てきたことは間違いないです。おくればせながら林業、続いて水産業ということで、水産関係も後継者対策というものに初めて本格的に取り組むというのが本年度の予算でございますから、そういう趣旨で今後ともやってまいりたいと存じます。
  169. 武田一夫

    ○武田委員 それから、教育の問題を少し考えてみたいと思うのですが、要するに自然に親しむということは非常に大事なことでございます。土に親しむというのが農業一つの大きな基本ではなかろうか。動物になれ親しむ、木を愛する、あるいは川を愛するというような、そういう心情というものか果たしていまの──きょうは文部省は呼んでおりません、大臣の考えだけをお聞きしたいわけでありまして、呼んでおりませんので、ひとつ考えていただきたいのです。大きくなってこういういろいろなことをやる以前の問題がどうも不足しているんじゃないか。それは家庭でやればいいんだと言っても、いまそういう雰囲気というのは正直言ってございません。極端に言いますと、自分の娘はサラリーマンにやりたいけれども、農家にやりたくない、こういう雰囲気であります。そのくせ長男に嫁が来ないといっては大騒ぎする農業の環境であります。これはどなたも御存じ。しかしながら、農業のよさというのを子供のときから体臭としてしみつくように知っている子供たちは、会っていろいろ話を聞きますと農業に従事しております。いま学童農園ですか、そういうようなものを考えて、学校に行ってはそれを実行している学校があるそうであります。私も文部省の方々にどういうふうに農業というものを理解させる、あるいは自然を、動物を、そうしたものを理解させるカリキュラムを組んでいるかと聞きましたら、一週間に一回、低学年であれば社会とか理科でそれをやっている。学級単位でやっているとかいろいろやっているようであります。それは一時間、高学年と中学校になると二時間。しかしながら、これも学校によっては選択である。せめて私は、農村を中心としたそういう学校等においては、文部省との話し合いの中において、そうした環境の中に本当に自由に入り込めるような環境づくりを農林省はもっと積極的に働きかける必要があるんじゃなかろうか。そして、正直言えば、そこの中に勤労とか農業というもののいろいろなすばらしさというものを子供のときからもうだれの言葉で説明をされなくても自分でこの体で知っているんだ、要するに土が好きなんだ、動物が好きなんだというそういう教育というものも農林省の方からもっとアピールする必要があるんじゃなかろうかなと最近しみじみと思うわけでありますが、大臣のお考え、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  170. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農村におりましても、本当に農業のよさというようなことがよく教えられないというようなことがあるわけです。そこで、後継者育成の一環として農林省でも助成をいたしておりまして、たとえば香川県の長尾町というんですが、そこの小学校の先生方がみんなで編集委員になって副読本としていろいろ農業のことを書いて子供に教えているわけですよ。あるいは高知県の高知市でも「小中学生のための高知市の農業」ということで、これも高知県の農業会議が中心になりまして農業後継者対策特別資料として、わが村の、わが町の農業はどうなっているということを絵入りで、しかもカラーで非常に……(「補助してやらなければだめだ」と呼ぶ者あり)補助してやっているのです。したがって、こういうことは大事なことなので、本当にお父ちゃんのやっている農業というのはいいんだなと喜んで後継者になろうという気持ちを起こさせるということ、お父ちゃんが貧乏ばかりしていて、本当に困った、困ったという話ばかりしているようではなかなか子供は本ばかり読ましたってなりませんから、やはりお父ちゃんの方もしっかりやれるようないろいろな総合的な農業施策というものもやっていかなければならぬ、かように考えております。両方でございます。
  171. 武田一夫

    ○武田委員 非常に結構な答弁でございました。  ところで、そういう人が地域にたくさん存在することが地域農政のかなめではなかろうか、こう思いますが、地域農業ということの振興に非常に力を入れる、これは二年前あたりからいままでのやり方の反省として登場した。画一的ではだめなんだ、地域の実情をよく知って、そして、その地域地域農民あるいは地方自治体の創意工夫の中から、その地域に合った農業というものの中で、経営の合理化もあるいは生産性の向上等もやるべきであろうということでこの事業が始まったのは結構だと私は思うのでありますが、このためには先ほど最初にお話がありましたようなお互いの信頼関係というのがどうしても絶対必要でございます。ですから、国としましては、こういうものを行うためには、きょうは大平総理が、田園都市構想の実施に当たりまして権限の委譲並びに財源の確保については十分な配慮をしなければならない、こうおっしゃったわけでありますが、農林省におきましても、これはもちろんそのとおりのことはしなければどうしても第一線で働く方々の苦労が増すばかり、言うなれば、ほっておけば、国がやれなくなったものだからおれたち地方自治体に押しつけてきたんだということを、口には出さないけれども表情であらわすような人が第一線に出てきたんでは、これは大変なことでございます。  そういう意味で、こうした財源の問題、権限の委譲についてはやはり国は思い切った措置を講ずべきであろうと思いますが、いかがでしょうか。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農林水産業は特に個々の農家が経営をしているわけですから、したがって、その農家の方と直接話ができればいいのですが、そうもいかない。したがって、それらの団体の代表者の方とは農林省は別に大臣といわず課長といわずしょっちゅう接触をして、そして、あるべき姿はどうなのかということについて、まず事態の認識で共通した認識を持ちましょう、こういうことを私は全国農業代表者会議なんかで言っているわけですよ。そのための議論は幾らしてもいい、それでお互いに謙虚にやりましょう、そういうことをやったほかに、できるだけ自主的な、ただ助成で役所が頭の中で考えて画一的にやるというのではなくして、地域生活の知恵で生まれてきたようなものをなるべく生かして拾い上げて助成する、そういうような形がいいのではないか。したがって、そういうふうなことをことしから特に持認事業の幅も大幅につくり、メニュー方式にして、それぞれの地域の人が一番利用しやすくてむだのないような、効果の上がるような事業をさせようということにするつもりでございます。
  173. 武田一夫

    ○武田委員 その際、メニューをいろいろと並べていただきます、しかしながら、われわれ食堂に入ってメニューを見て、ないときはほかに行ってまた食うようにするわけでありまして、地域でこれはどうもわが地域には合わないというように考えて、新しいメニューが出てくる可能性はたくさんあるのではなかろうか。そういうときに、それを最大限に尊重した中で予算措置等も講ずる、そういう弾力性のある行き方を私はお願いしたいのですが、どうでしょうか。
  174. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 とてつもないことを持ってこられても困るわけでございますが、やはりある程度定着しておって、それが成功する可能性の多分にあるものについては、私は少し幅を広げて十分配慮してよろしいのではないか、こう思っております。
  175. 武田一夫

    ○武田委員 今回の予算の中で村づくり予算の最大の事業として、地域農業生産総合振興事業五百億をとっております。これは言うなれば転作と新しい村つくりをドッキングしたものである。ところで、転作で苦労したのは農家よりも自治体です。市町村の行政側のお役人さんが苦労しておるわけです。これは御承知だと思うのです。農協の方々と連携をとりながら何とか国の割り当てを一生懸命やろうとして、おかげさまで宮城県の場合は一一三%くらいまでやった。米どころで一一二%ですから、これは泣く泣くやったというところもずいぶんある。この地域農政を一生懸命進めながらこうした転作をやっていく過程におきまして、やはりそういう苦労というものを国としましても認めてあげなければならないわけだ。そうならば、そういう事業をやるのに支障となるような要素は、国はよくキャッチしまして除いて、仕事をしやすくして、三年間の中で定着を見る転作という事業の推進に一層の努力をよろしく頼むぞ、こういうような温かい配慮が当然必要ではないか、私はこう思うわけであります。  ところで、昨年、ことし、いろいろやってみまして、各地方に行きますと、かなりの超過負担を強いられている。転作における調査活動とか確認作業等の一般会計予算に占める割合が相当大きい。これが非常に負担となっている。一生懸命やっている中で負担が出てくる。まじめにやればやるほど、言うなれば、正確に正確に、法の網をくぐるようなことのないように、たとえば青刈りが宮城県等はたくさんありました。そういうのを調べていけばいくほど時間がかかる。平地ではございませんし、山あり谷ありですから。そういうような実情をよく踏まえての確認調査費あるいは事務推進費ですか、そういうものがつけられているかというと、そうじゃないのですね、大臣。私が知っている二、三の市町村で申し上げますと、ある市ですが、人件費だけで二千万かかっている。幾らもらったんだと言ったら、このくらいだと言って指をこうやるわけです。六百万かと聞いたら六十万だというのです。あるところへ行ったら一千万かかっているという。あなたのところは幾らだと言ったら、このくらいだとやるわけです。二百万かと思ったら二十万だというのです。これでは、ことしもまたかということになる。また、その同僚の思惑もよくないと言うんですね。そのためにわれわれ建設や文教の方で仕事をやろうというのもできないのじゃないかという無言の雰囲気が出ている。これじゃかわいそうじゃないですか。  そういう点、やはりもっと実態をわきまえた上で、これは言うなれば日本農業の成否をかけた大事業ですから、もっとそういう最前線で働く市町村へ惜しみなく予算の面でも努力を示してほしい。私はこのことをひとつ最後にお願いして、二十分までですが、早目に質問を終わります。
  176. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  水田利用再編対策の関係の事務費でございますが、非常に超過負担等もやっておるという実態はよく聞いておりますので、五十四年度の予算面におきましては、推進事務費の方は五割増しの十八億八千八百万、それから交付事務取扱交付金、これは一割増しの十三億五千七百万、予算に計上をいたしておるわけでございます。
  177. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 あなたの質問を聞いておって、大体私と発想がよく似ておる、したがって、もう農林大臣にそっくり座っても私は少しも違わないんじゃないかという気が実はするわけであります。ただ、いまの自治体の問題でございますが、そういうふうな見方もあろうかと存じます。しかしながら、市町村長さんが、これは産業に関する自治体本来の仕事だということで取り組んでおられる方もたくさんあるわけであります。国としてはできるだけ配慮はしたいというふうに考えております。
  178. 佐藤隆

    佐藤委員長 次回は、明二十一日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十七分散会