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1979-05-29 第87回国会 衆議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十九日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 竹中 修一君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 吉田 之久君       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       塚原 俊平君    福田  一君       上田 卓三君    岡田 春夫君       栂野 泰二君    八百板 正君       山花 貞夫君    鈴切 康雄君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁総務         部長      奥山 正也君         防衛施設庁施設         部長      多田 欣二君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   広谷 干城君         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         沖繩開発庁総務         局企画課長   金子  清君         外務大臣官房審         議官      大鷹  正君         外務大臣官房総         務課長     中平  立君         外務大臣官房領         事移住部領事第         一課長     池田 右二君         外務省情報文化         局文化事業部外         務参事官    平岡 千之君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部留学生課長  光田 明正君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       鈴木玄八郎君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   塚原 俊平君     稻葉  修君   柴田 睦夫君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     塚原 俊平君   東中 光雄君     柴田 睦夫君 同月二十九日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   小林 政子君     柴田 睦夫君     ――――――――――――― 五月二十八日  元号の法制化反対に関する請願上田卓三君紹  介)(第四三九六号)  同(小林政子紹介)(第四四一九号)  傷病恩給等改善に関する請願砂田重民君紹  介)(第四三九七号)  同(田中龍夫紹介)(第四三九八号)  同(原健三郎紹介)(第四三九九号)  同(藤本孝雄紹介)(第四四〇〇号)  同(松野頼三君紹介)(第四四〇一号)  同(小宮山重四郎紹介)(第四四二〇号)  同(渡海元三郎紹介)(第四四二一号)  同(本名武紹介)(第四四二二号)  同(水平豊彦紹介)(第四四二三号)  同(森下元晴君紹介)(第四四二四号)  遺族年金扶助料改善に関する請願外一件  (松野頼三君紹介)(第四四〇二号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願(受田新  吉君紹介)(第四四一八号)  救護看護婦処遇改善に関する請願塩川正十  郎君紹介)(第四四二五号)  同外九件(細田吉藏紹介)(第四四二六号)  有事立法及び日米共同作戦態勢強化反対に関  する請願瀬長亀次郎紹介)(第四四二七  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 藏内修治

    藏内委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚原俊平君。
  3. 塚原俊平

    塚原委員 大変におくれてまいりましたので、御迷惑をおかけいたしまして申しわけございませんでした。  いろいろと日本の国にとりまして重要な問題、国会審議をする問題というのは、当然大変重要な問題なんですけれども、日本はいま議会制民主主義ということで、選挙に受からなければ国会審議をさせてもらえないというようなことで、いままできわめて重要な問題と言われているものに取り組んでも、なかなか票にならないというようなこともあったのも事実だと思います。たとえば本当に一昔前までは、原子力についてとうとうと選挙立会演説で一生懸命しゃべっても、反対立場でしゃべればいいんですけれども、それが大変にすばらしいものだということを皆様にわかってもらおうとしても、それは結局、票に結びつかないで逆な結果が出てしまう、あるいは外交もきわめて重要な問題ですけれども、たとえば外務大臣経験者はなかなか選挙のときは票に結びつかないとか、あるいは外務政務次官をすると落選するとか、そういうきわめて重要な問題であるにもかかわらず、なかなか国民皆様方から評価をされないというような一つの大きな問題点というのがあったと思うのです。  しかし、ここに参りまして大変に生活多様化と申しますか、一つ一つの事実、一つ外国で起こった事実というのがすぐ自分生活影響をしてくるというような現在になりまして、国民皆様方も大変に外交というものの重要性理解してくださっているというのが最近だと思います。そのことは、日本にとりましても大変にすばらしいことだと思います。  そういう意味におきましても、今回、中南米局というものを外務省が新しく設けられるということは、またある一つ意味で大きな進歩であるとは思うのでございます。しかし、ここで国民皆様方中南米というものをいまより以上に、過去におけるすばらしい歴史でございますとか、あるいはこれからのすばらしい可能性というようなものを、もう一度いままでのことを深く思い返して、そしてここで、さらに将来に向けてすばらしいものとしていくために、この法律が提出されたのを契機によく皆様に知っていただくということはきわめて重要なことであると思います。  そのような観点から幾つか質問をさせていただきますけれども、まず現在、外務省におきまして中南米外交実施体制というものはどうなっているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  4. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 お答え申し上げます。  現在、外務本省におきましては、中南米地域関係事務は、法制アメリカ局の一部として処理されるたてまえとなっておりまして、アメリカ局の中に中南米担当外務参事官中南米第一課、中南米第二課が置かれておりますが、アメリカ局長日米日加関係のほかに中南米関係事務を統括するのは実際上不可能でございますので、アメリカ局長にかわって官房審議官をして便宜的に処理せしめているのが実情でございます。この官房審議官外務省内では中南米審議官と称しております。  他方中南米地域には、現在、二十の大使館、五つの総領事館、二つの領事館、二つの駐在官事務所設置されております。
  5. 塚原俊平

    塚原委員 いまのような状況の中で、ここであえて中南米局設置されるということでございますけれども、そのことに対する必要性というものは果たしてどれくらいなものがあるのでございましょうか。また、設置したことによるメリットというものについてお答えをいただきたいと思います。
  6. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 中南米地域には、その域内に二十九の独立国を擁しております。近年、独自の政治体制の確立と経済社会開発のための努力を通じまして政治的、経済的にその国際的影響力を増大させつつございます。また、これら中南米諸国は、北米地域とは歴史的、文化的に国情を異にいたしておりまして、相互連帯意識が強く、国際的に一つグループを形成していることから、わが国といたしましても、おのずから北米地域に対するものとは違った外交施策を行う必要が痛感されてきた次第でございます。  さらに、もう少し詳しく申し上げますと、わが国との関係について、まず第一に、同地域鉄鉱石食糧を初めとします重要資源わが国に対する主要な供給先であります。さらにアジア北米地域と並ぶわが国の主要な投資地域でございます。第三に、約九十万に及ぶ日系人が定住しておりまして、対日感情もきわめて良好である、わが国にとってきわめて重要な地域でございます。また、広大な土地と豊かな資源に恵まれた同地域の潜在的な発展性からいっても、今後とも、ますますわが国にとっての重要性は増していくものと考えられます。  このような状況にかんがみ、外務省としては、従来から中南米外交を一層強化し、同地域実情に即応した政策を総合的、機能的かつ統一的に統括するために、中南米局設置をお願いいたしておったわけでございますが、今回ようやく実現することになっておりますので、この点について何とぞ御理解を得たいと存じます。
  7. 塚原俊平

    塚原委員 大変わが国にとって重要な地域であるということは十分理解できるのでございますけれども、やはり必要な、基本的なものの一つとして、経済関係というものがあると思うのでございますけれども、現在、中南米諸国との経済関係というものがどういうふうになっているか、またアルゼンチンというものに対する御評価がどういうふうになっているのかという点につきまして、お答えをいただければ幸いでございます。
  8. 大鷹正

    大鷹説明員 わが国中南米諸国とは、経済的に相互依存関係にありまして、わが国鉱工業原材料食糧等の一次産品を中南米諸国に依存し、他方中南米諸国が自国の経済社会開発推進するに当たり、わが国の資本、技術を必要とする関係が定着しております。このような相互依存関係を基盤に、たとえば過去十年間にわが国の対中南米貿易が五倍に、また対中南米年間投資額が十倍に増加していること等の事実からもうかがわれますとおり、わが国中南米諸国経済関係は、近年とみに緊密化してきております。  それから、アルゼンチンとの関係でございますけれども、わが国アルゼンチンとの間の経済関係は、ラ米の中でも大きな貿易額を持っている国でございまして、ことしの十月にはアルゼンチン大統領日本に来られる予定となっておりますし、最近には、日本アルゼンチンとの間の民間の貿易合同委員会が開かれます等、非常に緊密な関係になっております。
  9. 園田直

    園田国務大臣 いまの事務当局発言に加えて申し上げたいと存じます。  御承知のとおり、中南米日本歴史というのは、非常に伝統があります。かつまた、距離的には一番遠いわけでありますが、にもかかわらず、過去ずっとさかのぼって、日本から中南米移住をして向こうで働いている人が多い、こういう気候、風土、人文的な面からいっても格別な関係にあるわけであります。  わが国は、中南米資源国家として目を向けることではなくて、すぐ近くに北米、アメリカ合衆国という大国を持っているわけでありますが、この関係はきわめて微妙でありまして、やはり近くの大国には、それぞれ影響力があるわけであります。したがいまして、中南米諸国日本に期待するところがきわめて多く、中南米諸国大統領首脳者が逐次きびすを接して日本においでになっておるのもそういう関係であります。  経済問題については、国々によって違いますけれども、個々経済問題、個々資源ということよりも、中南米諸国というものは、自分国づくりということを非常に深く考えております。したがいまして、一つのパッケージとして日本といろいろ相談したいという機運が濃厚であります。  そういうわけで、中南米に対しては、近来、特に西欧諸国その他も目を向けているわけでありますが、今後ますます、いままでの伝統を拡大して中南米日本が緊密に関係を進めていきますことは、単に資源のみならず、政治的にも外交的にも非常に重要なことであると考えておるわけでありますので、御理解を願いたいと存じます。
  10. 塚原俊平

    塚原委員 大臣、大変丁寧な御答弁をいただきまして、本当にありがとうございます。  大臣の口からもきわめて重要な地域というお言葉があったわけですけれども、その中南米は、特に移民関係で大変に歴史が古いのでございますけれども、日本政府といたしまして、いわゆる政府のえらい方が行かれて、これは私の記憶違いかもしれませんけれども、日本の国と中南米というものがマスコミに報道されたのは、田中先生総理大臣のときが一番最初だったような気がするのです。そのあと福田先生が副総理のときにも行かれたような気がするのですけれども、余り正式の政府高官が行かれるということがなかったみたいなんです。もし違っていたらちょっと御訂正をいただきたいのですけれども、今後果たしてそういうような派遣のようなことはどういうふうにお考えになっているのか、御答弁をいただければ……。
  11. 園田直

    園田国務大臣 いま御発言されました各種のミッションを送るよう検討いたしておりますが、私自身もでき得ればなるべく早く、八月ごろには中南米諸国を訪問したいと考えております。
  12. 塚原俊平

    塚原委員 今回の中南米局設置というのは、中南米諸国も無論全然知らないというようなことはないと思うのですけれども、今回の外務省のこのやり方に対して、先方は果たしてどういう御評価なのか、具体的なものでもございましたら、お教えいただければ幸いでございます。
  13. 園田直

    園田国務大臣 中南米局設置をいま御審議願っておるわけでありますが、この御審議に先立って、予算編成時期には、もう欠かさず中南米諸国から局を設置しろという強い要望を受けておるわけでありまして、この御審議を願うならば、多年の中南米諸国要望にもこたえるわけでありますので、非常に高い評価を受けるものと存じております。
  14. 塚原俊平

    塚原委員 中南米局設置をされるということに伴いまして、何といいましても日本行政機構を整理しなければいけない、これは当然のことなんでございます。外務省は御英断をなさいまして、文化事業部をたしか廃止なさったというふうになっておりますけれども、日本歴史というか、世界のそれぞれの国々を見ますと、文化経済政治、この三つがうまくかみ合うのが一番理想的な姿なんだそうですけれども、どうも明治維新以来見ましても、戦争が始まる前は政治が常に先行してくる。それから、戦後ずっと復興してくるときにはやはり経済が先行してくる。これは、私は何かが表面に出ていくというのはやむを得ない現象だと思うのです。  それでここへ参りまして、政治が先行し、経済が先行し、それなりに評価される点はありましたけれども、やはり批判をされる点もあったというようなことで、最近文化というものが非常に表面に出てきている。これはすばらしいことだと思うのですけれども、これは名前が文化事業部となっているからということじゃないのですが、文化外交という面において、やはり大変に大きな役割りを果たしてきた一つのセクションだと私は思うのです。これから日本の国内で文化を中心にするとき、いままでの歴史を見ましても、政治が本当に表面に出るときは政治というものでの世界のおつき合い、経済表面に出るときは経済のおつき合いというものが、当然より密接なものがあったわけなんですけれども、今後文化外交というものは果たしてどういうような形で推進をなさってまいるのか、御答弁をいただきたいと思うのです。
  15. 園田直

    園田国務大臣 外交では政治経済文化、これが歯車のごとくうまく調整されて進めることが理想ではありますけれども、いま御発言のとおり、最も大事なものは文化交流であると考えております。文化交流から入った外交関係というものは、それに経済性がついていった場合にはなかなか手がたく、しかも深くお互いがかみ合うことであります。したがいまして、今後は文化交流というものを先頭に立てる、これはどこの国でもそうでありますが、特に中南米にとっては必要であると考えております。  そこで、この局の設置と相まって行政管理というものの方針に従い、わが方は文化局部というのをなくしたわけでありますが、一方、時勢の重点ということから考えましても、情報文化局の中にこれを繰り入れまして、いままで以上に能力を発揮するように、渾身の努力をいたす所存でございます。
  16. 塚原俊平

    塚原委員 本当に一つ一つ御丁寧に御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  時間もおくれてまいりましたので、ここで質問は終了させていただきますけれども、冒頭にも申しましたように、いままで外国は大変に遠い存在から近い存在に変わってまいった。いま大変に重要な時期だと思うのですけれども、どうも外務関係になりますと、本来の趣旨から反した、ちょっと生臭い話題が大変に多いようでございます。今回の中南米局の御審議は、国民皆様方に新しい日本の将来の外交というものも御理解をいただく、そして興味を持っていただくという点で、非常にすばらしい一つのいいきっかけであろうと考えております。どうか大臣初め外務省当局も、今回のこの審議を十分に、すばらしい結論を得るように、御答弁もひとつ丁寧に、そして国民皆様方に御納得いくようにお進めをいただきたいということを御要望申し上げまして、終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。
  17. 藏内修治

  18. 上原康助

    上原委員 最初に、法案について少しお尋ねをさしていただきたいと思います。  いまもお尋ねがあったのですが、まず最初に、外務省設置法の一部改正について、少しお尋ねをしたいのです。  御承知のように、今回、昭和四十三年ですか、廃止になった中南米局を新たにまた復活をさせる、設置をするというのが、この設置法一部改正の主要な点になっているわけです。御説明はいろいろ受けたのですが、かつて一省庁一局削減という行政改革方針の中で中南米局廃止になって、それから約十年経過して、いろいろ中南米諸国との交流わが国との関係等も非常に大事な面になっていることはわからないわけでもありませんが、一度廃止になった局をどうしても復活をさせねばならなかった要因といいますか、その背景といいますか、主な点について、もう少し明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  19. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 昭和四十三年に廃止されましたのは、中南米移住局でございまして、移住関係につきましては、御高承のとおり、外務省では領事関係と一緒に領事移住部で扱っておるわけでございます。そして、中南米関係事務につきましては、先ほど申し上げましたように、アメリカ局で所掌するたてまえとなっておるわけでございますが、実際にやってみますと、アメリカ局長の仕事として、対米関係、対カナダ関係が非常に多うございまして、中南米関係を十分見切れない。  先ほども申し上げましたように、中南米にはいまや二十九の独立国があるわけでございます。また、この地域北米大陸とはおのずから異なったグループを形成しております。これは歴史的、文化的な伝統もあるわけでございまして、これらの国に対するきめ細かい施策推進していくためには、どうしても独立の局が必要であるということをわれわれとしても痛感いたした次第でございます。また、中南米諸国からも、日本中南米地域を重視するならばなぜ独立の局を持っていないのかということをたびたび指摘されてまいった次第でございます。  そういうわけで、外務省といたしましては、昭和四十三年に各省一律に一局を削減せよということで、やむを得ず中南米移住局廃止したわけでございますが、何とかこれを独立の局にしたいということで、長年越しで政府関係方面に働きかけまして、やっと今回、正直言って日の目を見るに至ったわけでございます。そういうわけで、中南米地域は全くほかの地域とは違った一つの単位であり、グループであり、また、その重要性につきましては、先ほど中南米審議官から詳しく申し上げたとおりでございます。そういうわけで、今回中南米局設置をお願いいたした次第でございます。
  20. 上原康助

    上原委員 われわれも、その必要性について全く否定をするものではないのですが、政府機構改革といいますか、そういうことが朝令暮改とは言わないまでも、どうも一貫性がない。あるいは力関係とかによって左右される、また、外務省なら外務省独自の御判断というよりも、中南米諸国なりほかの局との横並び的に局に昇格をしたい、設置をしたいという向きがなきにしもあらず、そういう印象も若干受けざるを得ませんので、そういうことが今後ないように御配慮をいただきたいと思います。  そこで、この局の設置と関連をして、この説明でも出されておりますように、改正の第三点として、特に情報文化局文化事業部廃止をする、アジア局次長及び外務省大阪連絡事務所中南米に伴う機構改革として廃止になる。これはこういう廃止をして支障は来さないですか。  もちろん、これも一つの局を設置するにはスクラップ・アンド・ビルドというか、そういう面でやむを得ない立場廃止をせざるを得なかったと思うのですが、特に文化交流の問題、文化事業というのは、先ほども指摘がありましたが、国際間において大変重要な分野だと私たちは見ているわけですが、この点については、どのようにその分野を全うしていかれようとするのか、御説明を賜りたいと思います。
  21. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 中南米局設置必要性につきましては、先ほどから御説明申し上げたとおりでございます。ただ、現在の厳しい内外の情勢下におきまして、一つの局を設置するに当たっては、行政改革基本方針にのっとってスクラップ・アンド・ビルドでやるべきであるということでございまして、その関係で、われわれとしましては、文化事業部あるいはアジア局次長あるいは外務省大阪連絡事務所廃止することといたした次第でございます。  ことに文化事業部に関しましては、これが文化外交の軽視であるというふうな一部の御批判も耳にいたしておりますが、これは実態はそうではございません。われわれとしましては、文化外交はますます重視していくつもりでございます。ただ、そういうわけで何らかの代償を出さなければならないということでございましたので文化事業部廃止いたしましたけれども、今後は情報文化局長がみずからこの文化交流事務を所掌いたしまして、事務の一層効率的な運用に当たりたいと思っております。われわれとしましては、この文化事業部廃止がいささかもわが方の文化外交推進のマイナスにならないよう、いろいろな意味で工夫をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  22. 上原康助

    上原委員 次に、在外公館の点。後でまとめて大臣の方から一言お考えも聞いておきたいのですが、在外公館設置問題、在外公館に勤務をする方々の勤務条件、治安の安全確保の問題、あるいは子女の教育環境の整備の問題等については、かねがね本委員会でもいろいろ議論がありましたし、昨年は、附帯決議等もなされておるのは御承知のとおりなんです。それを受けてさらに海外の在外公館、教育施設設備の調査にも本委員会から派遣をして、私もその一員として七カ国にわたっていろいろ見聞をさせていただいたわけです。  在外公館の現状というのは、発展途上国と先進国といろいろ相違があるのは指摘をするまでもないと思うのですが、発展途上国においては、かなりいろいろな面で御苦労をしておられる、御不便を感じておられる。特に子女の教育問題については、海外に何らかの都合でといいますか、お仕事で駐在勤務をしなければいけない御父兄の方々にとっては非常に大きな課題、悩みだというふうに聞かされて、改めて、単なる企業とかそこに勤務をしておられる在外勤務者の問題じゃなくして、一つの国の外交政策というか教育分野としてとらえていかなければいけない面もあるような気がいたしました。  そこで、端的にお伺いをしたいのですが、今回の改正案の中でもその面の改善策も出されているようですが、外務省としては、昨年の附帯決議あるいは調査団の報告書等を受けてどのようにそういう面についての改善策を進めてこられたのか、また、今後はどういうお立場で進めていかれようとしておられるのか、ひとつ御見解を聞かせていただきたいと思います。
  23. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 在外子女の教育問題については、後ほど担当の者からも少し説明をいたさせますが、昨年衆議院内閣委員会の附帯決議をいただきまして、われわれとしても、この御趣旨に沿いまして種々の改善策を講じてまいったわけでございます。  去年の附帯決議の第一項で「我が国外交活動の基盤を強化するため、効率的な人事運用、人材の登用、研修の充実等に一層意を用いること。」というふうに書いてございます。この趣旨を体しまして、わが方としましては、人事運用面では、できる限り適材適所の運用を図るよう心がけておることはもちろんでございますが、人材の登用につきましては、外務省としましては、昭和五十年度から勤務成績のきわめて優秀な者につきましては上級登用ないし中級登用を図ってまいっております。さらに、研修制度につきましても、初任者の研修期間を延長したり、専門職の試験合格者の在外研修期間の延長等の措置を講じております。  次に、第二項として「勤務環境整備の必要がある地域に勤務する在外職員の勤務条件等について、引き続き格別な配慮をすること。」という御趣旨がございます。この御趣旨を受けまして、われわれといたしましては、特に不健康地に勤務する者の環境整備につきましては、例年外務省予算の重点事項に掲げて、その拡充に努めております。昭和五十四年度予算におきましては、従来から実施しております各種の不健康地対策、すなわち、健康管理休暇制度あるいは高地に勤務する者の健康保護対策等を実施いたしておるわけでございます。さらに、上原先生もケニア等でごらんいただいたと思いますが、このごろは在外においても治安が非常に悪化いたしまして、簡易宿舎等で強盗に襲われるというようなことも続発いたしておりますので、簡易宿舎の防犯対策の実施についても、今回は若干の予算をいただいた次第でございます。  若干はしょって申し上げますが、次に「在外公館に勤務する職員が、安んじて職務に専念しうるよう警備の強化、補償制度の充実等適切な措置を講ずること。」ということがございます。職員が公務上災害を受けた場合には、国家公務員災害補償法によって補償されますが、特に戦争、内乱その他の異常事態が発生しました場合におきまして、職務を遂行してそのために災害を受けた場合につきましては、一般の災害補償の約五割増しの特例措置をいたしております。さらに、それとは別に、そういうふうな場合に、不幸にも死亡または不具廃疾になった者に対しては、表彰制度の一環として賞じゅつ制度を設けることにいたしました。そういうふうに処置をいたしております。  さらに第四項として「在外公館事務所及び公邸の国有化を推進するとともに在外職員宿舎の整備に努めること。」この点につきましては、従来から外務省は非常に努力いたしておりますが、最近は特に予算をいただきまして、スピードアップを図っておるということを申し上げたいと思います。  それから「在外公館の査察を一層強化すること。」この点につきましては、現在は、三年に一回は全在外公館が査察できるように査察の頻度を年五回程度にして、くまなく査察するようにいたしております。  在外子女の教育問題については、担当の課長から若干説明させます。
  24. 池田右二

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  在外子女の教育につきましては、先生おっしゃいましたとおり、近年とみにその重要性が増しておりまして、外務省といたしましても、予算の重点事項の一つの柱に掲げておりまして、その充実に力を尽くしておるわけであります。たとえば五十四年度予算で申しますと、その総額四十六億六千万ということで、対前年比二〇%以上増しということで努力をしておりまして、たとえば新設校の数は、本年は七校というふうになっております。  それから、決議の中でも指摘されました施設の点に対する援助でございますが、これも従来、校舎等を建築し、あるいは買い取る場合に補助率が二分の一であったのを、中小規模の学校で困っておるところは三分の二に引き上げるというふうに大幅な予算の増額をしておるわけであります。  そのほか、教員の数もなるべく国内の定員並みに近づけるというふうに、昨年は八十九名の増員をしておる。  その他細かい点におきましても、きめ細かに充実を図るというふうに施策を講じておるわけでありまして、今後とも、この問題は重要な問題としましてできる限りの努力を文部当局とも協力の上やっていこうと考えておる次第であります。
  25. 上原康助

    上原委員 後ほど御専門の小宮山先生からもいろいろまたあると思いますから、私は概略だけお尋ねしておきたいと思います。  そこで、外務大臣に、この在外公館の件と中南米局設置の問題との関連で、政府外交方針といいますか、政策について、少しお尋ねしておきたいと思うのです。  確かに、中南米というのは、日系の方々が大変多うございます。特に私の郷土の沖繩なんかは、全国でも多い方に入っていると思うのです。移住をしていかれた方々、一世、二世はもちろん、今後日本との関係においては非常に深いつながりを持つ、文化交流とかいろいろな面で、より友好を深めていかなければいかない国々だと思うのです、もちろん中南米に限ったことではないと思いますが。そういう意味で、今後も移民政策といいますか、かつてのような立場でなくして、特に雇用面からしても、あるいは技術交流の面からしても非常に重要な政策として取り入れていかなければいかない問題じゃないかという感じがするわけですね。  それには、すでに移住しておられる方々に対して、政府としていろいろな援助といいますか、をやらなければいかない面もあるでしょうし、そういった面がなかなか政治の表の面に出てきていないのじゃないか。こういう局を設置をするからには、単なる横並びで、ほかにも局があるから、中南米だけに局がないというのは困るからという権威の問題ではなくて、中身を充実させた方向に今後持っていかなければいかぬと思うのですね。それに対しては、どういうふうにやっていかれようとするのか。  あるいはまた、もう一点は、在外公館の子女教育の問題なり、職員の勤務条件の改善策を通じてこそ相手国との友好関係というものは深まっていくし、外交の主要な柱になると思うのですね。こういった点については、最近外国を訪問された大臣としては、何か園田さんが一番の記録保持者になりつつある、相当各国を回っていらっしゃるようなんですが、そういう面からして、いろいろお考えになっておられる点があると思いますので、ひとつまとめて所見をお伺いしておきたいと思います。
  26. 園田直

    園田国務大臣 各先輩が苦労してよその国に移住をされて、その国の国民としてそれぞれ活躍されておる、その日本から出ていかれた日系の方々に対する母国というか、日本の国のあり方というものは、御発言のとおり、反省をし、もっともっとこういう方々がその国の国民の一人として活躍されると同時に、母国ともつながりがあるようにいろいろな面で施策を施し、努力をする必要があると考えます。  かつまた、そういうところにおられる方は、年に一回の国帰りであるとか、あるいはその功績に対する叙勲であるとか、あるいは特に社会保障面についてのいろいろな要望等もありますので、こういう点を十分考えて、向こうにおられる方々が苦労をされて、その国の国民として活躍されている、そういう方々とつながりを深く持つことがまた外交の一番大事な根底になると思いますので、今後ともそういう点について十分努力をしたいと考えております。  在外公館の職員の待遇は、これはほかの公務員とは全然別個でありまして、御承知のごとく近ごろいろいろな国々で生命、身体の危険さえ感ずる場所もあるわけであります。かつまた、地域によっては疫病、風土病等々に冒される人もある、こういうことで、特に子女の教育を初めとして十分活躍できるようにしなければならぬと考えております。財政当局はつらいところでありますが、近時だんだんその点を理解をされて一歩一歩と改善をされておりますが、なお、いまだに完全でないこともたくさんあるわけでありますから、今後とも十分努力をして、こういう方面で外交官が十分な活躍ができるようにやると同時に、外交官自体の能力、その国に対する愛情、その国に働いておられる日系の先輩、こういう方々に対する交際がうまくまいりますよう努力する覚悟でございます。
  27. 上原康助

    上原委員 法案に直接関係するものについては以上で、まだほかにもありますけれども、時間の都合もありますから、先に進めさしていただきたいと思います。  そこで、せっかく外務大臣ご出席ですから、金大中事件について少しばかりお尋ねをさしていただきたいと思うのです。私は、この件については余り勉強を深めておりませんので、ほかの委員会でもすでにいろいろ議論されているようですから、簡単に触れておきたいのです。  問題は、いろいろ日韓関係あるいは米韓関係日米関係にまたがる問題であるわけですが、一九七三年八月に白昼公然と金大中氏が拉致をされた。その当初からこれについてはいろいろな疑惑が持たれてきたわけですね。私たちは、当初から韓国の中央情報部、すなわちKCIAの公権力が介入した疑いがある、そういう立場で、政府にもそれなりの捜査、あるいは政治的に金大中氏の人権保護ということあるいはわが国の主権ということを踏まえてこの問題については対処すべきだということを主張してまいりましたが、残念ながらそういう方向にならなかった。  しかし、私たちが当初から疑問視をし、指摘をしてまいりましたように、最近になって、米国務省の秘密公式文書によると、同事件が韓国中央情報部、いわゆるKCIAの犯行であると断定していたということ、また韓国政府当局も米国政府に対しては、公権力の介入があった、すなわちKCIAが介入をしておったということを認めた、こういうことが明らかにされてきているわけですね。ここまでアメリカ側の秘密文書のやりとり、米国と韓国とのやりとりが表ざたにされて、なおかつ、昨日の外務委員会なり参議院の決算委員会大臣は、一たん政治決着をつけたことを見直す新しい材料にはならないのだということを言っておられる。国民はこれでは納得しないと私は思うのですね。  いろいろむずかしいことはあるでしょうが、金大中氏が何者かによって拉致されて韓国に送還されていったのは事実であるし、その犯人がだれであるかくらいは、日本外交官の能力あるいは警察の能力からして明らかにできないことではないと私は思うのです。それをうやむやにしようとしているところにますます疑惑があり、政治に対する不信というものがつのっておるのではないでしょうか。そういう意味で、改めてこの金大中事件に対して外務省当局は、外務大臣としては、長い間のこの事件に対する疑惑、日韓関係の本当の友好親善を深めていくという意味でも解明していかなければならないという国民の強い要求、要望に対して、政府国会もこたえていく義務があると私は思うのです。そういう意味で、大臣のお考えをもう少し明確にしていただきたいと思います。
  28. 園田直

    園田国務大臣 今回、金大中事件に関する米国務省文書が公開されたことに対しましては、政府は、米側より公開された文書を入手し、まず、その内容の分析、検討を進めるとともに、捜査当局にもその検討のためにこの資料を提出し、国会にも提出をしてございます。また、米韓両国政府に対し、本件文書についてとりあえずの見解を照会いたしました。  これまでのところ、米側は、政府も、それからスナイダー大使もコメントできないという態度を持しております。また他方、韓国からは、スナイダー大使電報に言う金東祚元外務大臣とスナイダー元大使との会談の記録は存在しない、また金元外相に聞いてみたが、記憶はないという回答がありました。しかしながら、議員の方の情報によりますと、この記録がないのは米軍のゴルフ場で話したのだ、したがって記録がない、こういうことであるから、さらに当事者に照会しろという御意見もあります。  米側から提供を受けた文書について、右のような米韓双方への照会を含め、これまでにとりあえず分析してみた結果では、わが国主権の侵害となる公権力の行使を明白に裏づけるようなものは見出されていないとの感触でありますが、いろいろな情報もありまするし、なお、さらに分析、検討を続け、あるいは照会するものは照会をし、捜査当局の意見も十分聴取しつつ、今後の対応ぶりを慎重に検討したいと考えております。
  29. 上原康助

    上原委員 文書がやりとりされた内容まで一々入りませんが、要するに公権力の介入があったかどうかの判断というものは、韓国政府に問い合わせるとか問い合わせないとかいうことではなくして、日本政府自体がどう判断するかということではないですか。私はそうだと思うのですね。米韓間でやりとりした秘密文書のコピーなり、保管されているかどうかということよりも、公権力の介入があったかどうかの判断は、そういうことが明らかになった時点で日本政府自体がまさにやるべきことではないでしょうか。そこを私たちは問題にしているのです。  そこで、警察庁から来ていらしていると思うのですが、金東雲当時の一等書記官、在日韓国大使館要員というのがKCIAの要員であったということは判明しているのですか、いないのですか。
  30. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 私ども捜査当局といたしましては、犯罪発生以後鋭意捜査を進めてまいったところでございますが、これまで、当時の、金東雲韓国大使館元一等書記官を犯人の一人として、指紋その他の証拠により割り出しを行っているということでございます。しかし、この人物がどういう背景を持つかということについて当時よりいろいろな話もございまして、そういったことにつきましても、私ども捜査の考慮に入れながら進めてまいったところでございますが、現在までのところ、この人物がいわゆるKCIA、韓国中央情報部員であるということについての証拠は把握しておらないというところでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 そこらが警察、捜査当局を含めて非常に不信を抱かせている大きな理由だと思うのですね。アメリカ側の言い分は、日本の捜査当局も事件後遠くない時期、事件後直ちにという表現でしたか、それを知っておったということを言っておるし、また現に昨日、衆参においてこの事件を取り上げられており、また金大中氏も、田参議院議員との電話でのお話し合いによって、公的機関が介在した、介入したことは間違いないと、断定的なことを改めて示唆したということが報道されております。  こうなりますと、アメリカと韓国間では公権力が介入したと認めている、日本政府は認めない、また日本の捜査当局もそれを知っておったであろうということが新聞に報道される、どう見たって国民の方は納得がいかなくなりますよ。日本の警察の捜査能力というのは、私はいろいろな面でそんなに劣っていないと思うのですね。むしろ世界的にも評価されていると思うのです。それが、これだけの材料が明らかにされて疑惑があるのに否定なさるというところは、ますます介入をした、介在したということが暗に証明されているということになりませんか。それでは、そういう意味でいまの御答弁は、まだ捜査中であるというふうに理解していいですか。結論を出したわけではないですね。
  32. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 犯罪の捜査と申しますのは、俗な言葉で下手人と申しますか、その犯人を追及することのみならず、その犯行の動機、背後関係、そういったものにつきましても捜査を進めるわけでございまして、この犯人、被疑者が金東雲元一等書記官であるということは、私どもすでに申し上げておるわけでございますが、容疑濃厚ということを申し上げておるわけでございますが、彼が一体どういう背後関係を持つのかということについては、これまた捜査の一環といたしまして、私ども引き続き捜査を継続いたしておるところでございます。そういった捜査の継続の過程においてどういったことが明らかになるか、私いまにわかに予測はできませんが、いろいろなそういった点についても解明してまいりたいと考えておるわけでございます。
  33. 上原康助

    上原委員 そこで外務大臣、いま捜査当局も捜査を打ち切ったわけじゃなくして継続して、金東雲元一等書記官の身分、背景あるいはどういうふうにこの事件にかかわってきているかということは継続してなさるということですから、またこれだけの材料が出てきた以上は、先ほど答弁もありましたが、やはり解明していただかなければいかぬと思うのですね。金大中氏の身分の原状回復の問題もあるでしょう。あるいはいろいろ日韓問で話し合わなければいかないことも出てくると思うのですね。政治決着でもう終わったんだというお立場にはない。もっとこの事件の解明に、外務大臣としては積極的に今後も対処していかれる、こういうふうに理解してよろしいですか。  それとも、もう全く政府がとってきた政治決着をつけたということについては、見直しとか――見直しという表現にこだわる必要はないとも思いますが、要するに、この事件がどういうふうに真相が明らかになって、公権力の介入があったのかどうか、これを明確にした上でその後どうするかという問題もまた出てくると思うのですね。もちろん私たちの主張はありますよ。この件について改めて見解を承っておきたいと思うのです。
  34. 園田直

    園田国務大臣 本件は、御承知のごとく、当時日本の警察は金東雲の指紋等も割り出しまして、嫌疑きわめて濃厚であったわけでありますが、それ以上の証拠が挙がらない、そういうことも含めて日韓特別の関係のために政治的決着をやったわけでありますが、その決着とは四つの前提条件がありまして、最後の条件は、しかし新たなる事実が出てきた場合には見直すということ、捜査はお互いに続けるという合憲があるわけでありますから、警察の方で申し上げましたとおり、捜査本部があって捜査を続けておるわけであります。特に、伝聞証拠とは申しますものの、こういうことも出てきたわけでありますから、今後、外務省としては全力を挙げて真相究明の資料照会等を続け、捜査当局と協力していく所存でございます。
  35. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつこの問題の真相の解明、公権力の介入の実態について捜査当局とも十分御連絡をとっていただいて明らかにしていただくことを強く要求をしておきたいと思います。これをうやむやにして、日韓関係の正常化とか友好とかいうのはあり得ませんよ、国民の側からしますと。何でもかんでも時間のたつのをただ待つだけではいかぬと思うのですね。その点、捜査当局も含めて鋭意御努力を強く求めておきたいと思います。  そこで、きょうはこの次に、ちょっと北方問題をお尋ねし、そしてまた尖閣列島の問題についてお尋ねする予定なんですが、時間の流れがどうなるかよくわかりませんが、防衛施設庁長官の時間の都合があるということをたびたび言われておりますので、先に、外務省とも関係いたし、ますので、地位協定の問題と沖繩の基地にかかわる件でちょっとお尋ねをさしていただきたいと思うのです。  まず、私は本委員会でも、さらに沖繩北方対策特別委員会でもしばしば取り上げてきたことなんですが、この沖繩の基地の現状というのが、復帰後も使用形態、使用条件といいますか、基地の態様、使用条件が全く本土並みになっていないとわれわれは見ているわけですね。たびたびそういう議論をしてきたのですが、なかなか政府の御見解というものとのすれ違いが出ておる感じがいたします。  そこで最初お尋ねしたい点は、要するに米軍は演習をするとか軍事行為、軍事行動をするのは安保条約並びにその地位協定の箱囲内でしかできないのではないのかというふうに、私は理解しているわけですね。条約局長もきょうはおいでいただいていると思うのですが、その点からひとつ御見解を明らかにしていただきたいと思うのです。
  36. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 お答え申し上げます。  まさに先生のおっしゃられるとおり、日本国における米軍の行動は、安保条約及びこれに基づく地位協定、これらの関連取り決めによって規律せられるものでございますから、アメリカの行動は演習であれ何であれ、安保条約及び地位協定の枠内でのみ認められる、こういうことでございま社。
  37. 上原康助

    上原委員 地位協定の枠内、その範囲内ということになりますと、裏を返せば、言葉をかえて言うと、地位協定に基づいてしか施設、区域というものは米側に提供されていないわけですね。したがって、提供されている施設、区域内においてしか演習とか軍事行為というものは原則的にはできない、こういう解釈になりますね。
  38. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 この前もほかの委員会でその点についての御討議があったわけでございますが、その際にも私申し上げたことでございますが、先生よく御承知のとおり、地位協定は演習という概念を取り上げてそれによって規定を設けておる、そういうやり方をしておらないわけでございます。したがいまして、演習その他の軍事行動といまおっしゃられたものが、実態が何をお考えであるかということに即して、それが地位協定の関係条文に即して認められ得るものであるか否かということを判断していくことになると思います。  その観点から、いまとりあえずの御質問についてお答え申し上げますと、アメリカは施設、区域の使用を認められて、そこで施設、区域に関する第三条その他の条文があるわけでございますから、施設、区域の中ではその条文に従い、かつ施設の使用条件として合同委員会で認められたるところに従って軍事的な使用を行うわけでございまして、それ以外の地域において何ができるかということになれば、これはまた地位協定の第三条にいうところの施設への出入の便とかその近傍における権限とか、それから地位協定の第五条にいうところの施設間及び施設と飛行場、港との間の軍隊の移動というような条項に従ってアメリカがなし得るところを行う、こういうことになると思います。
  39. 上原康助

    上原委員 アメリカ局長、私はなるべく議論をかみ合わすように努力しているつもりなんですよ。  そこで、おっしゃること、わかります。第三条、私も読んで、地位協定も少し勉強してきております。確かに基地の外、基地以外の地域での演習をしていいとか悪いとかいうことは地位協定に書いてない。群いてないということは、私流に理解をすれば、できないということにも解釈はとれますね。だから施設、区域は提供するわけでしょう。区切って、決めて、特定用地で施設は提供するわけだから、だから最初に言ったように、私が「原則的」とあえて言ったのは、基地から基地に移動するとか、基地以外の区域を使うことはあり得ますよ。部隊ですから移動がある、私もそこは一応前提として置くわけです。  しかし、原則的には、軍事演習をするとか米軍が行動をとるのは施設内ということになるわけでしょう、解釈上は。それは合理的解釈ではないのですか。そこまでうやむやにしたら、あなたの方に少し予見がありますよ。それを明らかにしていただきたいということなんです、私が言っているのは。
  40. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 まさにおっしゃられるとおりだろうと思います。いわゆる軍事的な使用というのは基地において行われる、これが原川ということはおっしゃられるとおりでございます。
  41. 上原康助

    上原委員 そこで、それを前提にして考えた場合に、さらにいまさっき御引用なされた第三条一項の後段にありますよね、部隊間の移動の問題とかあるいはまた第三項では航海、航空、通信の問題ですね。  第二項ではこのように定められている。「合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によっては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。」これは電波法とか、いろいろ関係してくるでしょう。あるいは基地の外での行動がもしあるとするならば、いま引用したものや、その他の行軍等については当然関係法令、それは日本国の法令を遵守をする、あるいはその範囲内でしかできないというのが地位協定の解釈として生まれてきませんか、そこを明確にしてください。
  42. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 ただいまの先生の御提起の問題は恐らく地位協定の第五条の二項に言うところの施設間の移動というところに一番よく典型的に当てはまる問題であろうかと思います。  先生御承知のように、地位協定第五条の二項では、米軍による施設閥の移動を認めているわけでございます。そしてそれを受けまして、地位協定の合意議事録の第五条に関するところの第四項には、その移動等に当たって日本国の法令が適用されるということが了解されておるわけでございます。したがいまして、基地の間を米軍が移動するといっても無制限に、無制約に移動できるということではありませんで、移動する場合には通行の秩序を維持しつつ移動をする、こういうことに相なると思います。
  43. 上原康助

    上原委員 そうですね、第五条にもそれがある。  そうしますと、原則としては基地内の、施設、区域内での演習、軍事行動しかできない、これはわかった、あるいは基地から移動していく、どうしても基地の外を利用しなければいかない場合は、日本国の法令の範囲内でしかできない、この点も明らかになったわけですね。そのはみ出している分野がたくさんあるわけですよ、沖繩のいまの基地の実態というものは。そこを百歩譲って、いろいろ安保を認める、認めないの問題はあるとしても、はみ出ている部分は、皆さんはどういうふうに理解しているか。当然、法令上の問題もあるし、政治的な判断というのもそこでは出てきますね。それが今日まで議論されてきたことなんですよ。  たとえば砲弾の破片の問題にしても、演習場として特定されている地での演習行為によって起こるもの、演習場内に破片が落ちるのは弾を撃てば破裂して落ちてくるのはあたりまえでしょう。しかし、それが基地の外にまで、民家の近くまで落ちてくるという問題が出てくる。あるいは行軍の隊伍を組んで、しかも左側だけじゃなくして右左に隊伍を組んで三百名、場合によっては五、六百名の隊伍を組んで県道、国道を行軍する。これは明らかに地位協定上もはみ出ているし、わが国の法令も犯していますね。どうですか。そこの解釈は間違っていないと思う。自信を持っていますよ。そこいらはどうなんですか。  基地の外に破片が落ちたり、照明弾の燃えかすと皆さんおっしゃるが、照明弾が落ちたり、こういうことは地位協定、安保条約の範囲を超えているわけでしょう。このことは問題じゃないのですか。少なくともこういう軍事演習のあり方はやめなさいと言っているわけです。何回も言うまでもなく、人の住んでいる家にまで機関銃の弾がぼんぼん入るなんという、地位協定のどこにそんなことが書いてありますか。それは明らかに基地の使用条件とか、使用のあり方に問題があるわけでしょう。それは要するに、地位協定の規定が使用する側にりっぱに守られていない、これが沖繩の基地の実態であるということを理解してもらわなければいけないと思うのですね。いまの私の考え方に対して、皆さんはどういうふうにお考えですか、どう解釈しておられるの。これは簡単に、明らかにしてください。
  44. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先生おっしゃられるように、事故がある、基地の外に破片が飛び出す、弾が飛び出してくるというようなことがあっていいはずはないわけでございます。したがいまして、そのような事故が起こらないように、その都度アメリカ側にも防止策を申し入れておりますし、私どもとしましては、防衛施設庁の現地当局を初めといたしまして、その事故が少しでも少なくなるように、また事故が起こった場合にはこれの再発を防ぐために万全の努力を米側にも協力を要請し、米側にも申し入れをし、最善の努力をしておる。決して私は、先ほど事故があってよろしいということを申し上げたつもりでは全くないわけでございます。
  45. 上原康助

    上原委員 そこは、ちょっとまだ納得しかねる点がある。私の言い回しがあるいはよくないかもしれませんが、そういうことがたびたび起きるということは、要するに基地の使用条件の問題ですよね。そのことはまた進めていきますが、きょうはそういうことを一つ一つ少し明確にしながら議論をできるだけ詰めてみたいと思うのです。  そこで、警察庁いらしていますね。さっき、あくまで日本国の法令の枠内でしかできない、地位協定は施設内、施設外は日本国の法令の範囲でということになると、米軍の無許可行軍、無許可というか行軍は無制限にできるわけじゃないわけですね。まず、この点を道交法なりそういう面から照らしてはっきりさせておいてください。
  46. 広谷干城

    ○広谷説明員 米軍の公道上の通行につきましては、ただいまお話がございましたように道交法の適用はあるというふうに解しております。したがいまして、一般交通に著しい影響を与えるおそれのあるような集団行進である場合には、所要の手続に従うことが必要であると考えております。
  47. 上原康助

    上原委員 もう少し歯切れよく、自信を持って言ってもよさそうなものだ、警察ともあろうものが何でそんなにおどおどしておっしゃっるのですか。  そうしますと、規制の対象になるということですね、一般の交通に著しい影響を及ぼすというその解釈はあるにしても。たしか道交法では五十名以上ですか、幾らからは著しい影響があるの。要するに集団行為をやろうという場合は届け出が必要ということでしょう、簡単に言うと。そういう解釈でいいですね。
  48. 広谷干城

    ○広谷説明員 道路交通に著しい影響があるかどうかということは、人数の問題もございますけれども、同時にその時間帯であるとか道路の交通の状況であるとか、いろいろの諸要素というものがかみ合わされまして、著しい影響があるかどうかということは判断をされるわけでございます。それで、そういうふうな観点から判断をいたしまして、道路交通に与える影響というものに著しい影響があるというふうに考えられます場合には、所要の手続に従っていただく必要がある、こういうことでございます。
  49. 上原康助

    上原委員 だんだん後退して……。  では逆に、たとえば私が中心になって宜野座から金武までデモをしたい、数は三百名だ、仮にですよ。あなたのいまのような御答弁なら、たとえば深夜だと自動車は余り通りませんわね。深夜だから、交通にさほど邪魔にならないだろう、人も余り通らぬだろう。組合旗を上げて労働歌を歌って歩いていいですか。時間帯のいかんを問わず、届け出の対象になるわけでしょう。事前に届け出をしなければいかぬわけでしょう。二十四時間前でしたかね。いまのことについて答弁してみてください。
  50. 広谷干城

    ○広谷説明員 ただいまも答弁をいたしましたように、具体的な状況につきまして判断をいたさなければならない問題でございますので、確たる答弁はできませんけれども、たとえ真夜中であろうと、労働歌を歌い、あるいは旗を掲げて行進をするというふうな場合には、道路交通に影響があるものというふうに考えられます。
  51. 上原康助

    上原委員 そうすると、労働歌も歌わぬで旗も持たないで、葬式デモならいいのですか。
  52. 広谷干城

    ○広谷説明員 一般の算式とかあるいは行列に類するようなものにつきましては、届け出は必要でございません。
  53. 上原康助

    上原委員 あなたはそういう答弁――私が葬式デモと言ったのは、本当のお葬式のことを言っているのじゃないのだよ。労働組合なり民主団体が、さっきは労働歌をと言ったものだから、あなたは届け出が必要だと言った。黙って歩いたらいいのですか、何名、何干名歩こうが。そんな議論までしないでも、要するにアメリカ軍の行軍にしたって、日本国の法令を適用するというなら規制の対象になるということではないのですかと私は聞いている、簡単に言うと。そこに区別はないわけでしょう。
  54. 広谷干城

    ○広谷説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、道路交通に影響がある場合には当然届け出の対象といいますか、所要の手続に従ってもらう必要があるわけでございます。米軍の行進でございましても、同様でございます。
  55. 上原康助

    上原委員 ようやくそこまで……。  そこで、最近そういうことでない例が多いわけですね。そうなりますと、米軍の行軍であっても、いまの御答弁からいたしますと規制の対象になる、届け出の必要性がある。今後は事前の届け出制を米側に申し入れるのか。規制をするということを聞いておるわけですが、どういう申し入れをなさるおつもりなのか。沖繩県警本部で考えておられることは、私が仄聞いたしますと、一つは、隊列は右側行進とする、事両との並列は認めない、多人数の場合は複数の指揮官を置く、少なくともこの三点ぐらいについては米側に善処、対処するよう申し入れる。また事前の届け出についてもやるということを伺っているのです。  その点については、本庁とも協議の上で今月末まで、いわゆる月末までにでも米軍のしかるべき担当官というか責任者に文書で通告、申し入れをするということが報道もされ、そういう動きがあるということを私は聞いたのですが、本庁としてはどのような相談を受けられたのか、また外務省なり警察当局は、これを現地県警に実施させるお考えなのか。この点もいまの御答弁からすると当然そうなると私は思うのだが、改めて御見解を明らかにしてください。
  56. 広谷干城

    ○広谷説明員 先ほども申し上げましたように、米軍の道路上の行進そのほかが道路交通に著しい影響を与えるというふうなことがあってはならないわけでございまして、そういう意味で、具体的にどういうふうな場合にどういうふうにするというような点につきましては、現在、沖繩県警察本部と現地の米軍との間でいろいろと話し合いをいたしておるわけでございますし、いま先生がお話しになりましたような具体的なケースについてどういうふうなことにするという具体的な問題につきましては、私、現在まだ聞き及んでおりません。したがいまして、それらの詳細につきましては、現在沖繩県におきまして警察と米軍とがいろいろと話し合いをしておるということで御理解をいただきたい、かように考えております。  なお、届け出云々という問題でございますけれども、届け出をするかしないかというふうな問題ではなしに、現実に実態として道路交通に影響を及ぼさないような形で演習なり行軍をしてもらう、そのための話し合いを現在現地で行っているというふうに御理解をいただきたいと考えます。
  57. 上原康助

    上原委員 またちょっとおかしいですね。アメリカ局長が少し耳打ちしたから、また悪くなったよ。あなた向こうまで行かないでいいのに。  そうしますと、逆にいまおっしゃったあなたの御答弁からすると、届け出はもう実態に即してやる。しかし、現に届け出もしないで交通に影響を及ぼしている行軍があるならば、それは規制の対象になるわけですね、明らかに。
  58. 広谷干城

    ○広谷説明員 行軍そのほかで現実に道路の交通に対して影響が出てくる場合等につきましては、現場の警察官がそれぞれ米軍の指揮官なりに対しまして現場でそういうふうな状態を解消させるような措置をとる、こういうことでございます。
  59. 上原康助

    上原委員 米軍の指揮官なりがそれを聞き入れなかった場合は、どういう処置がとられるのですか。
  60. 広谷干城

    ○広谷説明員 現場でそれを聞き入れなかった場合に直ちに実力行使をするというふうなことにはまいらないかと思いますけれども、これはいずれにいたしましても国際信義の問題として、当然米軍の方で、われわれ現場におきまして交通に与える影響が大きい、そういうふうな行軍のやり方を変えてもらうという指示につきましては、聞いていただくということになろうかと思います。
  61. 上原康助

    上原委員 そんなに海兵隊に聞いていただけるかどうか、ぼくは疑問ですがね。まさか警察機動隊と相撲を取るわけにいかぬでしょう。一遍やってみるのもいいかもしらぬですね。警察機動隊と海兵隊、弾を撃たぬで相撲くらい取って……。まあ冗談は別として、こうなりますと、これはやはり外務省の合同委員会の問題じゃないでしょうかね、アメリカ局長。だから問題は、警察は実態を見てしか、交通の邪魔になっているかどうかの警察に与えられている権限の範囲でしか、規制なりいろいろコントロールというのはできないわけですね。それは当然だと思う。  だが、アメリカは、現に行軍をしているわけですよ。だから、それは日米合同委員会に上げるべき問題じゃないですか。さっきの地位協定の解釈からいうと、やっちゃいかぬわけでしょう。やる場合も少なくとも日本の法令に従わなきゃいかぬわけでしょう。それを犯しているということについては、まさに国際信義で、そうなんだ。これは外交なんだよ。その点は政府として、そういうことのないようにやっぱり申し入れなきゃいけないのじゃないですか。どうですか。
  62. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 まず、先生の問題にしておられます具体的な事案につきましては、具体的にどのような通行が行われ、どのような点が問題点であったのかという点につきまして、私どもといたしましては、施設庁の現地当局を通じまして実態の把握に努めておる、こういうことでございます。  なお、一般論として申し上げれば、先ほど私が申し上げましたように、米軍は日本の通行秩序、交通秩序を維持するために協力することが必要なたてまえになっておるわけでございますから、当然に交通秩序の維持のために米側としてもなすべきことをする。そのために必要な意思疎通を、ただいまの警察のお話によりますと、現地の警察当局と米側との間で打ち合わせておられる、こういうことになっているわけでございます。  もし、そのような交通秩序全体を乱すというような行為が米側にあるとすれば、これはまさに米軍は外国政府の国家機関でございますから、それを国内法を適用して処罰をするとか、実力を行使するとかいう問題ではなくて、それは先ほどお話がありましたような国際信義の問題とか、地位協定の定めたところの履行の問題とか、そういうことになって、地位協定の枠内でこれを取り上げるということになり、最終的には、先生のおっしゃられるように、合同委員会の取り上げるべき問題ということにも相なる、こういうことであろうと思います。
  63. 上原康助

    上原委員 具体的な事例を挙げて一々やるべきかもしれませんが、そのことについてはせんだっての委員会でも問題がありましたし、申し上げるまでもないと思うのですが、要するに、金武村伊芸からキャンプ・ハンセン第一ゲートまでの国道三百二十九号線で二、三百人規模の行軍が相次いだほか、去る五月十八日には名護市で深夜約六百人が気勢を上げながら住民地域を行軍し、住民の反発を買っている、こういう事例があるわけですね。これはいまはやりの道義的面から考えても問題ですよ。深夜こういう気勢を上げる。民主団体がこんなことをしたらすぐひっつかまっちゃう。  こういう事例については、やっぱりアメリカ側にどうだったかと事実関係を確かめていただいて、明らかに地位協定上はみ出ているということであるならば、注意を喚起をすると同時に、場合によっては、事実関係のいかんによっては、日米合同委員会で取り上げて善処を求める、こういうお考えであるという、まあここは否定しないと思うのですが、どうですか、当然そうなりますね。
  64. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、米軍は、地位協定によりまして施設の間を移動する権利を有しているわけでございます。したがいまして、移動すること自身を、これを否認するわけにはいかないわけでございます。問題は、その移動するに際して、先ほど来お話のありますような交通秩序、通行秩序というものを乱しておるという実態があるかどうかということになるわけでございます。  その点のいまの具体的な問題につきましては、いま現地の当局間でお話し合いが行われておるというふうに承知いたしておりますし、私どもも、実際上どういうことであったのかということを必ずしも的確につかんでおりませんので、その具体的な事例についていまどうこうということを申し上げる立場にはないわけでございますが、理論的に申し上げれば、いまのような通行秩序を乱すというようなことが起こってくれば、これは日米間で討議すべき問題、そういう意味では合同委員会にまで上がってき得べき問題であるというふうに考えるわけでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 ぜひそうしていただきたいと思うのですね。  移動の問題も、ちょっと概念のこれは解釈の問題ですが、移動というのは、どういうふうにするのか。A部隊からB部隊に移動。移動というのは、少なくとも移動して、たとえば朝九時に出ていって、すぐまた五時には帰ってくる、これも移動になるのか。移動というのは、明らかに部隊の任務の、二、三日そこに行って演習するとか、そういう概念じゃないかと思うのですね。一つの部隊からこうぐるぐる回ってきて、歩いて、行軍するの、これも移動ですかね。ぼくはそう思わないですね。そんな解釈も、なるわけですね、疑問があるわけですよ。地位協定上の移動というのは一体どういうことかということも含めて御検討いただいて、当然そうなるのだ、最終的には合同委員会で話し合うべきものだということですから、それはそれなりにやっていただきたいのです。  そうしますと、警察にもう一遍確かめておきたいのですが、今後、たとえばそういう集団的な行軍がなされたという場合については、これまでのような無制限で見過ごすということじゃないわけですね。当然、規制の対象か、その行為の事実関係については十分監視をして、しかるべき措置をとる。とりつつ、アメリカ局長がおっしゃったように、場合によっては日米合同委員会でも話し合う、持っていく、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  66. 広谷干城

    ○広谷説明員 基本的に申し上げますと、そういうふうな状況にならないことが一番大切なことでございまして、ならないようにするための詳細な話し合いを現在現地でやっておるわけでございますし、そういう方向で指導をいたしたい、かように考えております。
  67. 上原康助

    上原委員 そういうふうにならないためには、アメリカの駐留をなくしたら、すぐならなくなるのです。  そこで、もう一つは、去る五月二日に起きた砲弾破片落下事故の問題ですが、施設庁は、五月十五日に私が防衛施設庁長官玉木さんにお会いをして、その週末までには施設庁の調査結果についてはできるだけ明らかにしたいというお考えを言っておられましたね。きょうはもう二十九日ですから、ほぼ二週間経過している。その後また連絡がありまして、どうも五月十五日のその週にはできない、翌週いっぱいはかかるだろうということでした。この間、沖特では、今週もだめです。きのう聞いてみると、またきょうもだめです。皆さんは、結局うやむやにしたいということね、アメリカも一緒になって。砲弾が、あれだけの破片が落ちてきた、その落ちてきた理由、また、もし米軍演習による破片でないとするならば、じゃなぜそこに砲弾があったのか。そういう原因は解明できたのですか。お答えください。
  68. 玉木清司

    ○玉木政府委員 五月二日の伊芸のサービスエリアに砲弾の破片が飛んでまいりました事件につきまして、まず最初お尋ねは、その事故調査が大変おくれているのではないかというおしかりでございますが、私ども、この調査につきまして、防衛施設庁がわれわれの任務として独自にやってまいりましたいろんな調査の中で一番肝心なのは、やはり弾痕を正確に把握するということでございますので、精密な航空写真の撮影とその解読をしなければならないということで取り組んでまいりました。  事故直後から、写真撮影用の航空機を待機させまして、一刻も早く航空写真の撮影を終わりたいということで対処してまいりましたが、先生御郷里で御承知のとおり、ただいま沖繩は梅雨どきでございまして、那覇が晴れておっても現場付近は雲が低くて撮影に不適であるという日々が十数日続いたわけでございます。したがいまして、今日のように遅くなってまいりました。  しかし、先週、航空写真も完成しましたし、昨日の夜遅くまで陸上自衛隊の調査学校の写真解読の専門家によって繰り返し繰り返し判読をいたしました。やっと終わっておりますので、これらを中心にいたしまして取りまとめ、御報告することができるのは一両日中のことと予定しております。
  69. 上原康助

    上原委員 まとめるのはどうまとまるかわからないわけですが、皆さんがやっておられることなんで……。問題は原因なんですよ。破片が落下をしてきたというそれについては、政府はどう見ておられるのですか。
  70. 玉木清司

    ○玉木政府委員 先般の内閣委員会お尋ねのときも、この件につきまして米軍が行いました調査結果について若干御報告をしたところでございますが、米軍自身の調べによりましては、その当時くだんの八インチりゅう弾砲については射撃を開始していない時期であるから、また仮に米軍自身の時間の問題について不安があっても、米軍自身で調べました伊芸のサービスエリアの周辺に落下の痕跡がないし、したがって、米軍は自分が本日演習をしたためにはねた破片とは思えない、これを確信するというふうな通報がございまして、しかしそれにしても、現に砲弾の破片がそこに飛び込んできておりますし、住民には不安が残っておりますから、私どもは、それとはまた別個の立場で客観的にこれを調査してみようということで調査にかかったわけでございます。  私どもでやりましたのは、米軍の調査結果の発表後の時点でございますけれども、当日の射撃の仕方がどのように行われたかを詳細にわたって掌握すること、落下現場やその周辺の人々にお会いする、あるいはその落下の現場付近のものの調査をする。それから入ってまいりました破片の微細な照合、確認をする。航空写真をもって弾痕の調査を行う、こういうような項目を行ってまいりまして、それらの調査の結果に対しまして、陸上自衛隊や防衛庁の技術研究本部におります専門家の協力を得まして、分析をやってきたわけでございます。現在、私自身の印象としましては、これは当日の砲撃による砲弾破片の飛来というふうに推測するには非常に大きな無理があるという見解でおります。
  71. 上原康助

    上原委員 ますますもっておかしいんじゃないですか。当日の演習による破片の飛来であるというのは非常に大きな無理がある、明らかに否定ですね。そうすると、それは何かそれを実証する原因というものは明らかにされているのですか。その面の捜査も進めているわけですか。おかしいんじゃないですか、あなた方。どう考えたってそれじゃ納得しませんよ、県民は。現に県会も全会一致の決議をやって、いま上京しているわけでしょう。反証の証拠はあるんですか。
  72. 玉木清司

    ○玉木政府委員 これは、最終的に取りまとめましたところで外部に対する御報告をしようと思っておりますが、総じて言えば、大変無理があるという印象を持っております。しかし、それでは米軍以外のだれが、何者がこのことを惹起させたかという点につきましては、私どもは調査の対象にしておりません。
  73. 上原康助

    上原委員 それじゃますますもっておかしいじゃないですか。うやむやにするつもりじゃないですか。それじゃ納得できませんよ。一両日中に明らかにするということですから、皆さんがこれだけははっきりさせていただきたい。皆さんが米軍に提供を求めた資料、データですね。どういうものを求めたのか、あるいはどういう資料に基づいて施設庁は独自の調査をしたのか。その全容について、資料として提出いただけますね。米軍が当日やった演習の時間帯ですね。それから使用した砲弾、火砲の種類、そういうのを一切、この間も私が要求いたしましたが、まだ何の反応もない、資料提供も。
  74. 玉木清司

    ○玉木政府委員 そのような事実関係のすべてにつきまして一両日中に取りまとめて公表したいと思っておりますが、お急ぎの場合ならば、ただいまお求めの米軍の当日の射撃の状態に関する資料に限って急げという御注文ならば、それに応じて対処したいと思います。
  75. 上原康助

    上原委員 そこで、前々から問題になってまいりましたように、こういうミステリーじみたことが起きて、その原因さえ解明されないとなると、ますますもってこの種の取り扱いについては、県民は納得できないわけです。引用するまでもありませんが、県議会も全会一致で、  一 事故の原因を徹底的に究明し、その責任の所在を明らかにすること。  二 砲座の全面点検を行い、住民地域に被害を与えるおそれのある砲座を撤去し、それが実現するまで一切の実弾射撃演習を中止すること。  三 演習等により生ずる被害については完全に補償すること。 これは当然です。こういう決議を具体的になさっているわけでしょう。  あるいはまた、爆音被害の問題、  一 住民地域での飛行訓練を中止すること。  二 深夜、早朝のエンジン調整をやめること。 これは全会一致でされているわけですよ。  だれも米軍の演習以外の破片落下とは思っていないですよ、沖繩の県民は。皆さんがいままでどういうことをやったかわからないけれども、アメリカと口裏を合わせて言ってみても。失礼な言い分かもしれません。しかも、それを反証することについての捜査はしないということになると、いよいよもっておかしいじゃないですか。そういう事件が起きるのも、最初に申し上げましたように、いまの沖繩の米軍基地の使用のあり方が地位協定上はみ出ているところに問題があると結論づけられると思う。  本来、基地の施設、区域内に、演習場内に破片が落ちるのはあり得ること。また現に焼け野原になっておる。しかし、しばしば演習場外に、あるいは民家に落ちてみたり、レストランの駐車場に落ちてみたり、こうなりますと、現在の基地の使用条件のあり方そのものを問題にしなければいけないと思うのです。これを私たちは、今日まで五・一五メモと言ってきた。そこで、ぼくは非常に重要視していることが一つあるわけです。五・一五メモの見直しとの関連において、最近よく引用されております三者協議会の設置の問題が出ているわけですが、まず、これの性格は、政府としてはどういうふうに受けとめておられるのか。これはどういう権限を持たせようとしているのか、そういう面から少し御説明をいただきたいと思うのです。
  76. 玉木清司

    ○玉木政府委員 私どもの職責は、基地周辺住民の生活と演習場あるいは基地との関連を調和させることにございまして、今回の事故に対する取り組み方につきましても、米側と同調するような立場で行うとかいうふうなことは厳に戒めてきておりまして、あくまでも住民の安全、不安を解消するという立場からどうすればいいかという立場で対処しておるところでございます。  次に、お尋ねの三者協議会の問題でございますが、先日、沖繩県知事からこういうお話がございまして、伺ったところでございますが、三者協議会のねらいとしておりますのは、基地から派生いたします被害や不安を除去して、周辺住民の生活の安定を図っていこうということをねらいといたしまして、私どもの那覇施設局長と沖繩県の代表者、米軍の代表者で協議連絡の機関を設けよう、こういう趣旨でございます。  そして、その協議連絡の機関の運び方等を口頭でございますが、伺ったところでは、当然に合同委員会の所掌いたします国対国の問題、こういう問題の枠の外であります現場におきます使用の状態を相談をした上で、こうすればもっと安全が図れるのではないかというふうな話し合いをいたしまして、その話し合いに基づいて、それぞれの意思によって対処していくというための対話の場であるというふうに私どもは理解しております。
  77. 上原康助

    上原委員 そこが、だから私が前から指摘をしたように、協議会の性格いかんが問題ですよということを私は指摘したのです。  そうしますと、いまの対話の場、これも全然ないよりはいいかもしれませんね。私も、それは知事の御権限というか、お考えでやられるわけですから御自由でしょう。そこまでとやかく言う立場にはありませんし、言うつもりもありませんが、合同委員会とは無関係というか、合同委員会のあくまで枠外に設置されるわけですね。それはもう当然ですよ。合同委員会との関係は、どうなるのですか。
  78. 玉木清司

    ○玉木政府委員 合同委員会は、政府相互の問題でございます。
  79. 上原康助

    上原委員 では、その協議会がもし設置をされて――その前に協議会、施設局と沖繩県と米軍というのだが、米軍の大将はだれになるのですか。米軍はだれが代表するのか。米軍と言ったって陸軍もおれば海兵隊もおるし、空軍もおれば海軍もいますわな。一番問題を起こしておるのは海兵隊なんだが、米軍はだれが大将になるのか。
  80. 玉木清司

    ○玉木政府委員 私ども、この問題は那覇施設局長を私どもの代表としては出そうと思っておりますが、米側の代表がだれになるのか、恐らく現地米軍が協議いたしまして、最もこの目的にふさわしい官職の者を指定してくると思いますが、確定したことを聞いておりません。
  81. 上原康助

    上原委員 では、その機関で協議をされるのは、合同委員会に提示をされるとか、提案をするとか、意見を具申をするとか、あるいは合同委員会で協議をされる事項は、この協議会にも通達なりいろいろされるのか、そこいらのコオーディネーションというか連携ですね、これはどうなるのですか。
  82. 玉木清司

    ○玉木政府委員 先ほど申しましたように、合同委員会は本来定められた合同委員会の責任がございますので、この問題は、合同委員会で取り上げるような問題と直接の関係はないと思います。また、あり得るはずもございませんで、申しましたように、現実にその基地を運営していく際に、周辺の住民との問でどうすればよりよく調和できるかということを、それぞれの立場で対話を通じて意思を疎通させながら、現在よりも向上させていこうということがねらいであるというふうに理解しております。
  83. 上原康助

    上原委員 まあ大体どの程度のものかわかるわけですが、そうしますと、その協議会では、いうところの五・一五メモの検討なりそれを改定をしたいとか、あるいはいろいろ基地の使用条件をもっと緩和すると制約するとか、そういうこともできますか。
  84. 玉木清司

    ○玉木政府委員 この協議会で五・一五メモのたとえば是か非かとか、適とか不適とか、こういうことを直接にお話をし合うということは、これはないと思います。しかし、基地の運営につきまして、周辺住民との間で派生してまいります問題を共通の場で対話いたすわけでございますから、そこでしぼり出されてくる問題の中で、もし政府として対応しなければならないというような問題が発生いたしましたならば、それはこの協議会にかかわりませず、他の防衛施設行政一般の問題と同じようにわれわれは対処していこう、こういうふうに考えております。
  85. 上原康助

    上原委員 そこで、この性格を明らかにされたわけですが、私は、それでは問題解決につながらないと思うのですよ。根本的な解決にならない。だから、時間をかけて、これだけ回りくどくいろいろ尋ねてみたわけですが、その関係との関連で私が非常に重視をしている一つのことは、これは新聞報道ですから、これが事実かどうかは皆さんの見解も聞かなければなりませんが、この三者協議会の設置ということと、五・一五メモについての協議会の性格にしたい、五・一五メモを含めて協議ができる性格にしたいというのが言われているわけですが、五月二十四日の現地の報道によりますと、この協議会の性格について、「5・15メモの具体的な見直し、演習等から派生する被害や事故等の未然防止について協議し、その具体策については走らせながら詰めていく」、これが県の方針らしいですね。  しかし、いまのやりとりからすると、そういうことにはなりませんね。事故の未然防止ということについては、お話し合いをいろいろやってみましょう、五・一五メモの見直しとかそういうのは無関係ですよ。こういう県側の言い分に対して、現地の根本防衛施設局長は、こういう言い方をしているのですね。「本土で米軍基地を提供する場合、関係都道府県があらかじめ地元の意思を吸収し、そのなかで使用協定を結んでいる。」そういう事例があれば明らかにしていただきたい。「沖繩も当然そうすべきだと思い復帰前、屋良主席(当時)に「地元の意思を聴いてくれ」と依頼したがやってくれなかった。このため5・15メモには、住民意思は反映されていない」、だから同メモの見直しの必要性があるのだと強調した。私は、これは聞き捨てならない言い方だと非常に問題視しているわけですよ。  まず、根本さんがそう言っておることに対してどう思うかということと、本土では本当に米軍基地を提供する場合、関係都道府県があらかじめ地元の意思を吸収し、その中で使用協定を結んでおりますか。それが二点目ですね。  さらに、沖繩も当然そうすべきだと思って、復帰前、当時の屋良主席に地元の意思を聞いてくれと――あるいは地元と言うと金武村とか名護市とかそういうことかもしらぬが、依頼したがやってくれなかった、だからこういう五・一五メモの内容になったのだ。あたかも基地の使用によって、米軍の演習によって事故が起こっているのは、当時の屋良主席が米政府の言い分を聞かなかったからこうなったんだということを言っているんですね。これは私の方に二、三回も問い合わせがあったんですよ。当時の県の首脳はそんな事実はないと言っている。これはどうなんですか、それをはっきりさせてください。そういう申し入れをやったことが本当にあるのですか。
  86. 玉木清司

    ○玉木政府委員 施設局長発言として、屋良主席に申し入れたけれども、できなかったから住民の意思が入ってないという言葉があったというふうに承りますが、そのような発言を施設局長がしたかどうか、私自身、今日掌握しておりません。しかし、遠い歴史のことでございますので、その歴史に対するいろいろな見方は、それぞれの立場においてあろうかと思いますが、それは当時の知事であられた屋良さんのためであるというふうな認識を持っておるとすれば、それは歴史に対する正確な理解とは言えないのじゃないかなと思います。  なお、使用協定を本土でやっておるのかというふうなお尋ねでございますが、一番典型的な例は東富士演習場、北富士演習場等におきましては、そういう協定を結んで管理運営をしているという状態でございます。
  87. 上原康助

    上原委員 こういう事実はないわけでしょう、皆さん。そうであるならば、だから私が回りくどく聞いたのです。この協議会で五・一五メモの見直しもできるんだ、何か保守知事になればみんな解決するみたいなことを言っている。そんなばかなことがありますか。演習は激化しているじゃありませんか。  だから、この間も、総務部長きょういますか。――照明弾は危険じゃないのだ、頭の上に落ちても、頭の上とは言わなかったけれども、落ちても危険ではない、火事がない。現に金武村に行ってみたら、ビニールハウスが焼けたとか、畑のすみの草むらが焼けた、いろいろな事故があるわけです。火の玉が落ちてきて危険じゃないというばかな話があるか。あなたの部下は、公式の場でもそんなことを言っているのです。出先の方で局長もこういう政治発言をして、あたかも演習が激化して弾が飛んできたり破片がおっこちるのは、革新が、当時の五・一五メモを結ぶとき住民の意思を反映させようと政府が言ったけれども、拒否したからできなかったんだ、こういう曲解されたことをやるということは、私は絶対に承服できない。その事実関係を明らかにして、報告してください。いいですね。
  88. 玉木清司

    ○玉木政府委員 施設局長がどのようなお話をしましたか、これにつきましては、お求めでございますから、確認をして御報告をしてみたいと思います。  ただ、いろいろ御指摘ございますが、長い沖繩の防衛施設行政の歴史を振り返ってみますと、県民の意思を一緒にして、政府の出先機関と県民の御意思が一体となって、基地周辺の安定を増進させていく施策推進しようということで、防衛施設庁の出先機関はその考え方で貫かれて運営してきているように私は観察しております。しかし、今度西銘知事から御提案のありました協議会等の構想、こういうふうな構想が県民を代表する立場で発議されまして、対話の場ができ、それを通じて従前よりもさらに飛躍的にそういう方面の施策が充実していくであろうということは、沖繩の復帰後の長い歴史を見ますときに、大変意義深いことじゃないかというふうに私は考えております。
  89. 上原康助

    上原委員 それはまだ海のものとも山のものとも言えない状況では、そんな評価はできませんよ。十分関心を持っておきましょう。  住民の意思を尊重するというのは、先ほど私が読み上げた県議会で決議されたもの、これが全く住民のりっぱな意思なんです。それを即刻あなた方は実行しなさいよ。そうじゃありませんか。  そこで、外務大臣もいろいろやりとりをお聞きになったと思うのですが、要するに、いまの基地のあり方、実態、態様そのものが問題なんですよ。そうであるとすると、結局これは外交案件じゃないですか。日米合同委員会でもう一遍沖繩の基地の使用条件等について、個々のケースでもいいです、基地ごとに再点検をしてみて、特に問題の起きているキャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブあるいは爆音問題の嘉手納空軍基地、こういうことについては日米間で十分話を詰めて、五・一五メモなるものを総ざらいして、その内容、全容も国民の前に明らかにした中で条件のあり方というものを再検討しないと、さっきから私が指摘している幾つかの問題、いまのあり方は明らかに地位協定からはみ出ているわけですよ。それをやってくださいと私たちは要請してきたわけだ。  同時に地位協定の二十七条には、「いずれの政府も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものどする。」はっきりと地位協定上改正もできるということをうたわれているじゃありませんか。なぜそういうことをやろうとしないで、民家に弾が飛んだり、駐車場に破片がおっこちたり、基地の外に照明弾が落ちたり、何百名と隊伍を組んで完全武装した兵隊が通ったり、沖繩は戦場ではないですよ。こういうことについて、五・一五メモの全容を明らかにするということと、その内容の再検討ということがどうしてできないのですか。  それをやらない限り、幾ら三者協議会をつくっても、合同委員会とは関係がない、その範囲内でしかできないということになると、一定の前進はあるかもしれませんが、意思の疎通を密にしていくという面では、成果はあるにしても根本的問題解決にならないですね。したがって、それをどうしてもやらなければいけない段階に立たされていると思うのですが、これについて外務大臣、私は、ここでもう少し政府の主体的姿勢というものを明らかにしていただきたいのです。そうせぬと、沖繩は合点できませんよ。また、皆さんがどんな安全対策をやると言ったって、二、三カ月すると、あるいはそれを待たないかもしれぬ、いまのような状態では、また必ず大きな事故が起きますよ。どうですか、それをおやりになるおつもりはありますか。
  90. 玉木清司

    ○玉木政府委員 五・一五メモを公表するという問題について御指摘でございますが、この五・一五メモと称せられております使用条件の取り決めにつきまして、地位協定上の性格、それからこれの取り扱い上必要な注意、これは何度も申し上げているとおり、御通知のとおりだと思います。  御記憶と思いますが、昭和五十三年の五月に「施設及び区域の使用条件等について」ということで分厚な資料を国会に提出いたしました。これと復帰当時あるいは講和条約発効当時に出されました官報公告、こういうものを合わせますと、現在この問題につきましてほとんどすべてが、特に住民の生活や安全に関係のある問題に限って言いますならば、その意味の使用条件ならばまずすべて尽くされておるというふうに私どもは理解しておるところでございます。
  91. 園田直

    園田国務大臣 基地に対する問題、これに対して日米合同委員会等があるわけでありますが、この目的は、地域住民の協力を得ながら米軍が基地使用できる、こういうことでありまして、米軍が基地を使用するについて米軍の言い分を通すというために日米合同委員会があるわけではございません。  いま先生の発言の中に、日本外務省が中心になって主体性を持ってやれとおっしゃいましたが、その一言はきわめて大事でありまして、もちろん施設庁、警察、法務省、わが外務省と合同してやっておるわけでありますが、いままで反省をいたしますと、主体性を持って、地域住民の協力を得るように、心はありながらも、五分五分に米軍とやり合っているかどうか、交渉しているかどうかという問題がある。  私は反省しますに、たとえば、一番上原先生詳しいわけでありますが、交通事故があります。その場合、米軍は公務執行中ということでほとんどこれを押し通す。それが過去の例においては、ほとんどそのまま通っておる。ごく最近、これを日本の法務省、警察その他関係省が押し返して二、三回押し問答しているうちに米軍は撤回をして、これは公務執行中ではなかったということになった例があります。私は、こういうことが一番大事であると思います。したがいまして、いまの三者協議会でありますが、これはもうしばしばやった方がいいと思う。そして話し合いがつけばよし、そこで話し合いがつかないものは日米合同委員会で取り上げて、これを地域住民が協力できるような体制に逐次改正していくということはおっしゃるとおりだと思います。  いま全般的な見直しということがありましたが、この全般的な見直しというのは、日本側から言えば基地使用について地域住民の協力なり要望がある、それを逐次達成できない場合の最後の手段であると思いまして、まだ全般的に見直す時期であるとは考えておりませんが、逐次合同委員会が主体性を発揮をして、そして地域住民の側に立ち、米軍の基地使用に協力できるように一つ一つを積み重ねて改正していくべきであると考えております。
  92. 上原康助

    上原委員 ちょっと納得しかねますが、それも一つの方法、手法でしょう。  そこで、時間も押し迫ってまいりましたので、要するに、あくまでも日米で取り決めている五・一五メモの全容を明らかにしなさいという要求ですね。これをやりなさい。  いま外務大臣のお考え一つの手法でしょうが、少なくともこれまでいろんな事故が起きていますね。こういうことについては、事故防止という面から考えても、再発防止という面から考えても、あるいは地域住民の協力を得るのが大事だということであるならば、そういうことがないように、少なくとも外交案件として外務省はアメリカ側に申し入れるぐらいのことをやってもいいのじゃないですか。そして、その真相をもう一遍アメリカも独自に解明せよ、そして、今後協議会のあり方についても、もっと現地でも円満に運営できるようにアメリカも努力をやれ、そういう申し入ればできないですか。できますね。  それと同時に、もう一点は、しからば協議会が設置をされて、この協議会の方でどうしても基地の使用条件について、こうこうこういう基地についてはもっと再検討すべきだという意見が出た場合は、それを受けて合同委員会に皆さんはかけますね。  この三点について……。
  93. 園田直

    園田国務大臣 私が申しましたのは、いまおっしゃったことについて積極的にやるべきだ、こういうことであります。同意見であります。
  94. 上原康助

    上原委員 同意見というより、それを具体的にやるということを言わなければ、何が同意見だかわからないではないですか。
  95. 園田直

    園田国務大臣 いま発言されたことは、積極的にやります。
  96. 上原康助

    上原委員 いままでの事故があったことについて、アメリカ側に申し入れしますね。
  97. 園田直

    園田国務大臣 全部聞いておりましたから、そのとおりいたします。
  98. 上原康助

    上原委員 あと嘉手納のキビ作の黙認耕作地の問題も取り上げたかったのですが、時間が来ましたので、これはせんだって施設部長にいろいろ要望してありますので、その取り扱いも――これも町議会で全会一致で決議されている、むしろ、残念なことに嘉手納は保守部落なんだけれども、保守の方が先頭になって、こんなのはまかりならぬと育っている。爆音で痛めつけておいて――外務大臣は一言だけ聞いておってください。これは三十年、黙認耕作地でキビ作ができたのだ。これも今度はやるなと言っているわけですよ。これはやはりよくない。いまあなたは協力を得られるように基地の使用をやりたいと言われたが、協力を得られませんよ。だから、十分御報告を聞いてないかもしれませんが、こういうことについても、やはりアメリカ側の理解を求めるように、施設庁も外務省も一緒に黙認耕作地の継続使用を努力してみたらどうでしょうか。これはよろしいですね。――早く答えてください、尖閣の問題で一言、二言聞きたいですから。
  99. 玉木清司

    ○玉木政府委員 黙認耕作地の性格、この取り扱いの法的基準というようなものについては、もう篤と御承知のところと思いますが、私どもも、耕作者と米軍との間の利害が対立しておる状態にありますので、これを円満に解決するように努力をしてみたいと思います。
  100. 上原康助

    上原委員 これは外務省も施設庁に基地管理という立場だけで任せずに、よくアメリカ側の理解を求めるようにやっていただきたい。これは私がいろいろな調査を聞いてみると、アメリカ側よりもむしろ政府に問題があると見ている。いいですね、アメリカ局長
  101. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 施設庁と協力いたしまして、必要に応じアメリカ側に十分に話をするというつもりでございます。
  102. 上原康助

    上原委員 そこで、最後になるかもしれませんが、きょうは北方領土、日ソの問題について、せっかくですから、外務大臣にちょっとお尋ねしたかったのですが、また何か防衛の審議ができれば、そのときにでもやりたいと思います。  尖閣列島の問題についてちょっとお尋ねをしておきたいのですが、今回御承知のように、二十八日からでしたか、尖閣列島のいわゆる陸上部門、魚釣島、南小島、北小島の三島とその周辺、この陸上地質、それから植物、動物、表流水源、水質等々について調査を実施するということで、これはわが国固有の領土の一部ですから当然だと思うのですが、その後、その他の海底油田、地下資源調査というものも継続して、この陸上調査の後にやるのかどうかということです。これを明らかにしていただきたいと思います。――防衛施設庁は結構です。どうも長時間ありがとうございました。
  103. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 東シナ海南部の石油資源の問題につきましては、すでに鉱業法に基づきまして四社から申請を受け付けているところでございます。これは尖閣も基点の一つといたしまして中国との間に一応中間線を想定いたしまして、そこまでの範囲内につきまして鉱業法に基づく出願を受け付けているところでございます。  この地域につきましては、四十三年のエカフェの調査によりまして一躍石油の資源が非常に豊富にある可能性があるということで注目されたところでございますが、この探査につきましては、大陸棚でございますので中国との外交問題もございますから、慎重に対処すべきであるというふうに当面は考えているところでございます。
  104. 上原康助

    上原委員 そこで外務省お尋ねしたいのですが、尖閣列島の領有問題については、私たちは政府の見解と異なっておりません。これは日本固有の領土であるという立場で、開発問題、いろいろ推進をしていくべきだと思うのですが、同時に、大陸棚の問題、海底資源の開発ということになると、中国との友好関係を維持し、あるいは場合によっては協力をするという立場でなければ推進できない面も出てこないとも限りません。  そういう意味で、今回この陸上部門の調査に対して、中国政府は正式の論評は避けているけれども、何か同政府高官は、双方が領有権はたな上げにしているのだ、昨年、鄧小平副主席が訪日なさった場合も、この問題については大変話題をまきました。今回、日本政府独自の調査で、また固有の領土であるという立場からすると、中国側に今度調査しますとかあるいは伺いをするとか連絡するというような、場合によっては筋合いのものではないかもしれませんが、日中友好という立場からすると、将来の開発面から考えても、何らかの意見交換といいますか、あるいは外交的なアプローチというのが必要かもしれません。そういう面があったのかどうかというのが一つです。  また、中国側から日本側の今度の調査をやるという具体的な行為に対して、何らかの反応なり御意見等があったのかどうか。そこいらの点を明確にしておいていただきたいと思います。
  105. 園田直

    園田国務大臣 大陸棚の開発については、先ほど関係省より申し上げたとおりでありまして、法的には問題はないとしても、現実には友好関係上慎重にやらなければならぬことは当然であります。  なおまた、現在の沖繩開発庁が中心になっておる尖閣列島の調査開発でありますが、これは御承知のとおりに、私が参りましたときにはわが国立場を主張をして、そしてこの前のような、ああいう行動があっては困る、こう言ったことに対して、中国側は前のようなことは断じて行わない、いまのままで結構だと言ったことで、これはなかなか微妙であります。したがいまして、いま台湾それから中国政府が尖閣列島はわが方の領土であると主張した事実は消えてないわけでありますから、こちらが正式に問い合わせるということは、これまたかえって問題を起こすと考えております。  調査開発について何らの通報はございませんけれども、中国外交部筋で慎重に行動してほしいという言動があったやの情報は聞きますが、その気持ちは外務大臣としては十分理解し得るものでありまして、尖閣列島の置かれた立場、現在有効支配をしておる、わが国の領土である、そういうものを中国がいまのままで黙って見ておるということは、中国側からすれば大変な、友情であるか何かわかりませんが、私はそういうものであると思います。したがいまして、これについて刺激的な、しかも宣伝的な行動は慎むべきであり、国内政治的に必要なもののみを慎重に冷静にやるべきだと考えております。
  106. 上原康助

    上原委員 外務大臣のお立場として、あるいはお考えとしては、その慎重なお考えあるいは姿勢というのは私は必要があると思います、中国を刺激しないで友好的に今後進めていくということ。  そこで、もう時間ですから、今回の調査というのは、そうしますと、言われているわが国の実効支配を意図というか、そういうことを含めての調査というふうに受けとめるのか、あくまでさっき引用しましたそういった学術的といいますか、今後の開発を推進をしていく、それは話し合いはいろいろあるでしょうが、推進するための基礎的な調査と見ていいのか、そこいらを、もしよろしければ、明らかにしておいていただきたいと思います。
  107. 金子清

    ○金子説明員 今回の調査は、先生申されましたような尖閣諸島の実効支配を意図したというようなものではございませんで、先生先ほど読み上げられましたように今後の利用開発可能性を検討するためのいろいろな基礎資料を得るための調査でございます。そういう目的で今回の調査を実施いたしておりますので、御理解いただきたいと思います。
  108. 園田直

    園田国務大臣 大事なことでありますから、私も付言しておきます。  いまの御質問、非常に大事なところでありまして、先ほど申し上げましたような事情から、尖閣列島の調査開発が有効支配というものを示すものであるとするならば、外務大臣としてはこれは反対であり、あくまで国内行政上純粋の漁民の保護、安全、こういうことからやられるものであると私は閣議でも主張し、そういうふうに解釈をしております。これはきわめて大事なところでありまして、この前の中国の船団の事件がありましたが、あれは、中国側に言わせると、お互いに主張し合っておる、そこへおれのものだ、おれのものだと言われれば黙っておるわけにはいかぬじゃないかというのが本心でございますから、この点は、日本国の実益を得るという意味において、現在でも有効支配しておって、中国の漁船団は近寄ってないわけでありますから、この点は十分冷静に実際の効果というものを考えて進めていくべきだということを一言申し上げておきます。
  109. 上原康助

    上原委員 終わります。
  110. 藏内修治

    藏内委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時十八分開議
  111. 藏内修治

    藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。八百板正君。
  112. 八百板正

    ○八百板委員 どうも皆さん御苦労さんでございます。  この外務公務員というのは、日本国内の公務員とどんなふうな違いがあるというふうに考えてよろしいでしょうか。ちょっとこの点、お聞かせを願いたいと思います。どなたからでも……。
  113. 中平立

    ○中平説明員 お答えいたします。  外務公務員法第二条におきまして、「「外務公務員」とは、左に掲げる者をいう。」ということになっておりまして、第一に「特命全権大使」、第二に「特命全権公使」、第三に「特派大使」、第四に「政府代表」、第五に「全権委員」、第六に「政府代表又は全権委員の代理並びに特派大使、政府代表又は全権委員の顧問及び随員」、第七に「外務職員」ということになっております。
  114. 八百板正

    ○八百板委員 私がお尋ねしているのは、そういう方々だというのではなくて、日本国内の公務員とはどういうふうな違った取り扱いを受けておるかという点であります。国外に外交官として行っていることによって特別の何かがあるかというふうな点をお尋ねしておるわけであります。  それでは、この点はまたおいおい明らかにしていただくといたしまして、一般の公務員と給与の体系と申しましょうか、かなり違っておるわけですが、一般公務員と外務公務員給与体系が著しく異なる理由と申しましょうか、その辺のところをひとつ御説明いただきたいと思います。
  115. 中平立

    ○中平説明員 お答え申し上げます。  外務公務員は、一般公務員の給与のほかに、在外に勤務する際におきましては、外交活動の遂行及び大使館、領事館員としての体面維持のために、特別手当を、在外基本給の形で受けておるわけでございます。
  116. 八百板正

    ○八百板委員 だれでもわかっているような話ではなくて、やや外交上の、外務公務員立場について、もう少しお聞きしたいと思ったのであります。たとえば、その国々によって物価も違いまするし、それから貨幣価値もいろいろ変動がありますから、そういうふうな点は全然考慮なしに、いまお話しのように外交活動を進める上に、あるいは国の代表としての、外交官としての体面の保持のためにというふうな形で一律に出されるものでしょうか。それとも何かそういう場合の基準とか、国々によって皆別々に出るのですか。その辺はどうなりますか。  つまり外地手当と申しますか辺地手当と申しますか、そういう基準みたいなものがあると思うのですが、それは一律にやるのか、それとも国々の事情をしんしゃくして、それぞれ実績がある上に調整してつくり上げていくものか、その辺のところをお願いします。
  117. 中平立

    ○中平説明員 お答え申し上げます。  在勤基本手当の額につきましては、各国の消費者物価の上昇、為替相場の変動、本俸の上昇等を勘案いたしまして、毎年改定されるわけでございますが、具体的には次のような方法によるわけでございます。  これはかなり技術的なあれでございますが、在勤三号というのを算定の基準にいたしまして、その額を米国の消費者物価指数、米ドルの為替相場等を基礎といたしまして算定いたしました生計費分というものがございますが、その生計費から本俸の額を差し引いたものを在勤基本手当とするわけでございます。そこで、次にワシントンを一〇〇といたしまして、各在外公館地域差指数というものを定めておりまして、その地域差指数を掛けまして各在外公館の在勤俸の数字を算出するわけでございます。たとえば風土、衛生状況等が非常に悪いというようなところでは、いわゆる瘴癘地加算と称しまして一定のパーセンテージの加算が行われるわけでございます。
  118. 八百板正

    ○八百板委員 そういうふうな調整は絶えず行って変えていく、こういうことでしょうか。同時に、その中にはその国の物価が考慮されるのだから、当然に賃金水準なども考慮されると思うのですが、日本と物価あるいは賃金水準が著しく違うという場合に、そこに派遣された日本外交官の給与が、たとえば、その国の公務員の最高の給与よりもはるかに高いというような場合が当然にあるわけでございます。そういうふうな場合、そこの住民感情と申しましょうか、そういうものも考慮して何らかの調整をそれぞれやる、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。  日本は、いま物価は高いからそういう立場ですけれども、ある場合には、日本の方が安くてその国の方がはるかに高いというふうな場合だってあり得るわけですから、そういう点の配慮も含めて、調整係数みたいなものを出してやっていく、こういうことなのでしょうかね。そうすると、それは何年ごとにとか、あるいはまた、変化が著しくあらわれた場合にやるとかいうふうなことになるのでしょうかね。
  119. 中平立

    ○中平説明員 在勤俸の改定につきましては、最近数年間は毎年やっておるわけでございます。最初、基本になりました数字というものは、諸般の事情を勘案いたしましてつくられた数字でございますが、その後最近のように為替、通貨が変動しておる現状におきまして、たとえば昨年のように著しく円高になったという場合におきましては、在勤基本手当が円表示で支払われることになっておりますので、円高になった分を相当勘案いたしまして、実態的には本年度につきましては円表示では減額になっているのが実情でございます。しかしながら、今後円の相場がどういうことになるかということもございますので、円の動向等、それから任国の物価指数というものを勘案いたしまして、今後とも算定していくことになるかと思います。
  120. 八百板正

    ○八百板委員 在外邦人のための日本人学校というのが現在どのくらいあるのでしょうか。
  121. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 在外邦人のために全日制学校、日本の教育と同じ方式の学校が六十二校、及び補習授業校といたしまして全部で六十九校、現在ございます。
  122. 八百板正

    ○八百板委員 それは全世界ですか。
  123. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 全世界でございます。
  124. 八百板正

    ○八百板委員 日本語学校というふうなものを含んでおりますか。
  125. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 ただいまの全日制学校六十二校というのは、ちょうど日本における義務教育課程の学校、たとえばタイ国バンコクにおけるがごとく全部の教科課程について教育しているものでございます。補習学校はこれとは別に、通常はその所在の学校に子弟を勉強に出しておりまして、土曜日に限りまして、大体算数、国漢、主にそういうふうなものを重点的に補習的に教育を施しているところでございます。
  126. 八百板正

    ○八百板委員 現在、この在外邦人というのは何万人ぐらい数えられておりますか。
  127. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 長期滞在者は二百十七万人と承知しております。
  128. 八百板正

    ○八百板委員 ちょっと数が多いでしょう。
  129. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 いや、失礼申し上げました。  数が多過ぎました。長期滞在者は十七万人でございます。
  130. 八百板正

    ○八百板委員 この在外公務員、在外公務員といいますか外務公務員といいますか、家族を日本に残していく場合、それから子供を日本の学校に残していく場合、それから向こうに留学みたいに、向こうへ行って学校に入る場合、いろいろな場合があると思うのですが、向こうに長くおって日本に戻ってきた場合に、子女が帰国後に日本の学校教育とすぐに結びつくというふうな点で問題ありませんか。
  131. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 いろいろと語学のハンディキャップその他は十分ございますけれども、その辺を顧慮いたしまして文部省当局が国内の帰国子女の受け入れ体制及びこれに対する特別の教育、その他を非常に重点的に行いまして、ほぼそれらの困難、障害というものはなくす方向で最大の努力をしている実情でございます。
  132. 八百板正

    ○八百板委員 教育基本法によって、あらゆる場所、あらゆる機会に、機会均等と申しましょうか、そういう立場にあるわけでありますから、この日本に戻っていろいろな日本の学校とつないでいく上に起こってくる問題を、ただ単にお金を幾らか出せばいいというだけでは片がつかない問題があるだろうと思うので、そういうふうな点の配慮も十分されておると思うのでありますが、この点はひとつ申し上げておきます。  それから、在外公館日本の自衛官が派遣されておると思うのですが、きょうは防衛庁の方は御連絡しなかったからいらっしゃらないと思うのですが、これはどういう説明になっているのでしょうか。
  133. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 御案内のとおり、最近在外公館の警備、これは大使館、総領事館、その在外公館及びこれらの公邸を含めまして十分その安全、セキュリティーを確保する意味合いにおきまして、本年一月から自衛官、警察出身者及び防衛庁出身者、全部合わせてたしかあれは五十二、三名になったかと思いますけれども、これを重点公館に配置いたしまして、先ほど申し上げました公館及び公邸の安全、セキュリティーの維持に万全を期している、こういう状況でございます。
  134. 八百板正

    ○八百板委員 そういう在外公館の身辺と申しましょうか、それを護衛する、こういう立場だけではないのじゃないですか。その辺どうです。
  135. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 御指摘のとおり、ただいま公館警備を主たる職務といたしておりますけれども、所在の日本航空会社あるいは進出企業の会社の皆さんに対しましても、逐次それらの情報を伝達するなり、また警備体制なんかの指導もサイド的にはなさっておる、こう承知しております。
  136. 八百板正

    ○八百板委員 この外交官の人数とか分担と申しましょうか、そういう点については、やはりその国と話をする場合には当然に、こちらの方から何人やる、そちらの方からは何人受け入れる、こういうような形で大体において双方平等の立場外交官を交換しているんだと思うのですが、その中に、当然に外国から日本外交機関に対してたとえば武官を何人出す、それに対して、それに見合う形で日本でも何人か出す、こういうふうな形の話し合いの結果としてこういうことが起こっている、こういうふうになっているのではないですか。この辺のところ……。
  137. 中平立

    ○中平説明員 現在、昭和五十四年度におきまして世界各国にありますわが大使館に派遣されております防衛駐在官の数は、合計で三十名でございます。
  138. 八百板正

    ○八百板委員 いや、私のお尋ねしておるのは、国と国の対等の話し合いの上に、見合いという意味で、向こうから武官が来る、それならばこちらからもそれに見合ってそういう人を出す、こういうふうなかっこうでこれが行われておるのでないですかと、こういう意味です。
  139. 中平立

    ○中平説明員 防衛駐在官の数につきまして相手国と相談して決めるという場合もございますが、通常はそういうことではございません。
  140. 八百板正

    ○八百板委員 向こうに行っている場合は、私どもの聞くところによると、当然に武官としての待遇を受けて、日本にいるよりも気分がいいなんというような話を聞くのですが、日本にいる場合は、いわゆる武官というふうなそういう扱いはどういうことなんでしょうか。ちょっと言葉の上ではそういうことは問題だと思うのでありますが、外国に行けば当然に武官の処遇を受ける、こういう形になっておるように伺うのですが、そうなんでしょう。
  141. 中平立

    ○中平説明員 お答えいたします。  すべての場所におきまして先生のおっしゃるようなことになっておるかどうか、私も定かでございませんが、たとえば最近私がおりましたロンドンあたりでは防衛駐在営団というものは特にないわけですけれども、実際上は防衛駐在官の方々が集まって、その人たちだけで非常に交際しているというケースが見られました。
  142. 八百板正

    ○八百板委員 私ちょっとわからない点ですから、おいおい伺っていきますが、きょうの機会に限らず伺いたいと思うのですが、それから通産省とかその他の役所から在外大使館に出向と申しましょうか、そういう形で行っておりますね。それから銀行員とかそういう民間人が大使館員として、経済情報の収集という立場でもあるでしょうか、そういう立場で当たっているという事実があるというふうに私は聞いているのですが、これはどうでしょうか。
  143. 中平立

    ○中平説明員 お答えいたします。  在外における経済活動のために、大使館員として民間企業等から派遣されております人たちの数は約二十名おります。しかしながら、その方々は、その親元の銀行、メーカー、商社等々を一たん退職いたしまして、外務省員として派遣されておるわけでございます。
  144. 八百板正

    ○八百板委員 そういう形で外務省員として採用されるという勤務状況でも、そこをやめた場合にまたもとに戻って民間に再就職するという事例はないのですか。あった場合には、外務省としての対応はどういうふうになりますか。
  145. 中平立

    ○中平説明員 お答えいたします。  在外勤務から日本へ帰ってまいりました場合には、親元に再就職することになるわけでございます。
  146. 八百板正

    ○八百板委員 そうするともとのところに戻るということになると、結局在外大使館なりについているときだけ便宜上職を離れた形にしていくということになれば、実質的に民間人を在外公館が雇い入れたといいますか、逆に言うと、民間企業なりの利用のために在外公館を便宜供与した、こういうことになりませんか。
  147. 中平立

    ○中平説明員 この方々は、民間会社を一たん退職いたしまして、国家公務員である外務公務員として派遣されるわけでございまして、その問は他の外務公務員と同様に守秘義務その他があるわけでございまして、実際上はそういう人たちにつきまして何ら問題はないと私ども確信しております。
  148. 八百板正

    ○八百板委員 妙なところで確信なんて力まれても困るのだけれども、えてして企業、財界人というのは、なかなか外務省のお役人よりも上手ですから、外務省という地位、立場、国の出先の公館、こういう立場を利用して、企業の在外活動をやって、そして、早く言えば月給まで国のお金をもらって、あらゆる便宜の供与を受けて在外活動をやって、適当に覚え込んだところでまたもとへ戻ってきて企業の中に戻ってしまうというのでは、まるで在外公館を企業の利便のために提供した、こういうことになってしまうのですが、そんなふうにはお考えになりませんか。
  149. 中平立

    ○中平説明員 これらの方々が在外公館の館員として勤務しておる期間におきましては、在外公館長である大使の指揮監督のもとに勤務しておるわけでございまして、われわれ外務省といたしまして、先生のおっしゃるようなことを心配しているわけでは決してございませんで、その点われわれといたしまして、在外公館長のもとにあるということで、民間企業の利益を図るというようなことはないものと考えております。
  150. 八百板正

    ○八百板委員 ちょっと独断的にそう言われても客観性が、説得力がないのですが、いずれにしましても、国会議員とか財界の実力者というふうな者が大使館あるいは大使館員を私的に使う、こういうふうな疑わしい例を私ども耳にするものですから、そういう意味でけじめをつけるという注意が必要ではないか、下手をすると、何々株式会社イギリス出張所とかロンドン出張所とかいうふうになった形で企業のために利用されるということになりますと、これは大変なことですから、そういう意味でこの点を指摘して、これは一つの問題として、今後もまたそちらの方でも御検討いただきたい、私の方でも検討いたします。  それから、私は余り細かい数字はわからないのだけれども、今度の給与のあれで、メダン、スラバヤの数字が二ランク以下は同じになっているが、一ランクのところだけちょっと上がっている。恐らくこの数字というのはいいんだと思うのですが、一般に給与関係は円建てといいますか、ドル建てといいますか、どんなような形で統一されておるか。そしてまた、いまのちょっと指摘した点、これは私もよくわからぬから、ほかの方はほとんど同じなのに、メダン、スラバヤだけ一ランクの分だけ上がって、二ランク以下はほとんど同じだ、どういう意味かなと思って、そういう意味で取り上げて伺っておきます。
  151. 中平立

    ○中平説明員 お答えいたします。  メダンとスラバヤにつきましては、五十三年度現在は領事館でございますが、現在御審議いただいておりますいわゆる名称位置法をお認めいただくことになるならば、スラバヤ及びメダンは総領事館に格上げになるわけでございまして、そういう意味におきまして、総領事の給与ということで記載させていただいておるわけでございます。
  152. 八百板正

    ○八百板委員 終戦後の日本の各国に支払った、あるいは何らかの形で処置した賠償または賠償に類する支出、そういうふうな点をひとつ大まかに説明を願いたいと思います。
  153. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  戦後賠償として支払いましたものはビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナムの四カ国でございまして、これはいずれもドルが正式の表示でございましたので、ドル建てで総額十億千二百万ドルばかりの数字になるわけでございます。  それから、賠償そのものではございませんが、賠償に準ずるものとしての無償援助を行いました国が八カ国ございまして、この供与額は、正式には円建てのもの、ドル建てのもの混在しておりますが、便宜七ドルに換算して統一いたしましたものを足しますと、合計四億九千五百七十八万九千ドルくらいの数字になりまして、両者合わせました総合計は約十五億ドルということになります。
  154. 八百板正

    ○八百板委員 このほかに、そういうことがなければ支出せぬでも済んだのに、そういう戦後処理という立場があるために何らかの形で処置されたお金というようなものがありませんか。
  155. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 戦後処理の一環といたしまして、戦争中日本軍が加えました被害、これを賠償ないし補償するという意味におきましての戦後処理といたしまして供与をいたしました賠償、あるいは賠償に準ずる無償協力につきましては、ただいま申し上げたものがすべてでございます。
  156. 八百板正

    ○八百板委員 第二次世界戦争のために日本が加えた被害というような意味合いにおいて、たとえばアメリカ、真珠湾攻撃がありますね。それから中国、こういう国々に対して与えた損害をもし賠償という形で、あるいはその他の形で処理するとするならば、どのくらいのものになったであろうかというふうな点について、何か考えがありましたらひとつ……。
  157. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 アメリカは、もちろん日本に対しまして賠償請求権を放棄しているわけでございまして、賠償の問題は生じないわけでございますが、もし賠償を請求したらという御質問は大変むずかしい質問でございまして、一経済協力局長、よくお答えできませんので、お許しいただきたいと存じます。
  158. 八百板正

    ○八百板委員 これはいろいろな数字なんかが出ているわけですから、外務省としてのこうだという見解はなくとも、たとえばこういう機関ではこんなことを言っている、あるいはこういう人はこんなふうな数字を挙げているというふうな、いままで読んだり聞いたりした中で頭に残っておるのを二つ、三つ挙げていただけませんか。
  159. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 申しわけございませんが、寡聞にいたしまして、そういう民間の方たちの試算のような数字も私、承知いたしておりません。
  160. 八百板正

    ○八百板委員 まあ大臣政治的配慮もあるから、こうだと言いにくいでしょうけれども、相当の被害を与えておるということについては、大まかに考えて、聞いたり何かしたあれがあると思うのですが、どんなふうにお考えでしょうか。大したことないと思っていますか。
  161. 園田直

    園田国務大臣 莫大なものであると存じますけれども、数字は見当がつきません。
  162. 八百板正

    ○八百板委員 莫大ということは、たとえば相手の国の倍数が大きいとか、相手の国の人口がその国と比べて何倍になっておるとかというふうなものにやや比例する程度の大きな被害を与えておるというふうに考えていいでしょうかね。たとえば中国なんかの場合は比較的そういうふうなことが言えるのじゃないかと思うのです。アメリカの場合は、太平洋がはさまっていますから少し違いますけれども。
  163. 園田直

    園田国務大臣 戦争の賠償というのは、御承知のとおりに、相手にどれくらいの被害を与えたかということが基準になって、平和条約締結の際、両国の交渉で決まるものでありまするから、数字を挙げて申し上げるというのはおよそ見当がつかないわけでございます。
  164. 八百板正

    ○八百板委員 外務省が数字を挙げにくいのでは、私の方でもなお一層数字が挙げにくいのですが、これはまた追って次の機会にもう少し論議をしてみたいと思います。  ところで、留学生ですが、外国の留学生は、いま日本にどのくらい来ておりますか。
  165. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  五十三年五月一日現在で五千八百四十九人おります。
  166. 八百板正

    ○八百板委員 留学生の問題でもたくさんお尋ねしたい点があるのですが、細かい話は省略いたしまして、せっかく日本に来て勉強して帰っても、親日的な立場に立たないで反日運動の中心になっているというふうな方もあるのです。現に私も知っているのですが、こういうふうな点については、どういう見解をお持ちでしょうか。
  167. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  私たちそのようなケースを聞くこともございますけれども、また一方、大変喜んで帰って、帰りました後重職についているケースも多々聞くわけでございます。したがいまして、できる限りそういう悪いケースの起こらないように大学での教育を充実したり、世話等を充実させていきたいと思いまして、努力いたしている次第でございます。
  168. 八百板正

    ○八百板委員 よい話は余り特別問題にしなくてもいいのでありまして、悪い方を取り上げて検討するということの方が大事だと思います。そういう意味で留学生の受け入れ、処遇、国の対策等々については、相手国の立場、留学生の立場を十分に考えてやっていただく配慮が必要だろうと思いまして、お尋ねをしておるわけであります。  ところで、留学生の費用について国費、私費、そんな点、ちょっと簡単に実情をお知らせいただきたいのです。
  169. 光田明正

    ○光田説明員 先ほど申し上げました五千八百四十九名のうち千七十五名が国費留学生でございますが、国費留学生につきましては、往復旅費すべて日本政府持ちでございます。それから大学院レベルの学生がこのうち九百以上でございますが、五十四年度で月額十五万四千円奨学金として支給いたしております。これ以外に国立大学につきましては、学生一人につき学生経費というのを支給しているわけでございますが、これは国費、私費にかかわらず、日本人学生以上にチューターの費用とかオリエンテーションの費用とかつけております。また私立大学につきましては、学生数が一定以上になりましたら、特別助成金というのを国費より支出いたしている次第でございます。  以上でございます。
  170. 八百板正

    ○八百板委員 中国の留学生については、実情はどんなふうになっていますか。
  171. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  昨年の夏に、中国政府より、日本を含めまして各国に留学生を大量に派遣したいという要望がなされました。それを受けまして、中国の教育部の副部長を、こちら風に言いますと次官でございますが、団長といたします使節団が参りました。そこで第一次の話し合いを行いまして、その後十二月に、文部省の学術国際局長及び外務省文化事業部長を団長といたします、また労働省を含めました使節団が北京に行きまして、原則的に大いに歓迎するという話し合いに達しまして、その場におきまして五十名分、細かい資料を含めましたリストをもらって帰りました。それを大学等に依頼いたしまして、この四月にすでに百八名ばかり来ております。今後とも、この線に沿って次々に来るものだろうと思いまして、十二分に世話できるよう諸般の条件を整えているところでございます。  以上でございます。
  172. 八百板正

    ○八百板委員 毎年、留学生のためにいろいろな形で日本の国費が支出されておると思うのですが、新しく中国の留学生の問題が出てまいりまして、これに対応する政府施策をいろいろ考えていると思うのですが、いままでの留学生に充てた予算の枠の中から中国の分を削って処理する、こういうふうな扱いに考えているのですか。そこはどうですか。
  173. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  現在約九十カ国から留学生が来ておりますので、中国につきましては、隣国であるという点を十二分に勘案いたしまして意を用いたいと存じておりますけれども、国立学校についての特別会計等につきましては、他の諸国の留学生と同じように措置している次第でございます。
  174. 八百板正

    ○八百板委員 隣国であり、非常に国が大きいという意味で、それから関係が非常に深くなっているという意味で今後大量の留学生を受け入れる立場にあると思うのです。そこで、いままでたとえば五千八百人の留学生を受け入れている。そのために予算的にいろいろな経費を計上しておる。それに関連して組んでおる予算の中から、そこに食い込んで中国の留学生を受け入れるという形に考えておるのか、中国の留学生を大ぜい受け入れるということによって生ずる国費を外枠で大きくふくらましていく、こういう形で考えておるのか、そこのところを聞きたいわけなんです。
  175. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  その意味では、プラスして考えているわけでございます。たとえば国費留学生は従来、先ほど申し上げましたように千七十五名でございました。それにプラスいたしまして中国に現在二十名というオファーをいたしております。また先ほど説明いたしました特別会計につきましても、中国の学生がたとえば五百人来ましたら、その分だけ国立大学に配付するというような形になっておりますので、先生のおっしゃる趣旨に沿いましたら、それは食い込んででなくてプラスしてというふうに御理解いただいてよろしいかと存じます。
  176. 八百板正

    ○八百板委員 日本に来て、中国の留学生は一体何を学ぶことを目的にしておるとお考えでしょうか。
  177. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  中国政府は、主として理工系と言っております。先ほど申し上げました百八名のうち六十三名がテクノロジーとサイエンス、いわゆる理工系でございまして、そのほか医学、農学等、広い意味での自然科学に入りますものが十一名、日本語が二十二名、計九十六名でございまして、プラス十二名は民間の会社等の研究所に行っておりまして、これも理工系と考えてよろしいのではないかと存じます。
  178. 八百板正

    ○八百板委員 いままでの留学生の中で、台湾からとか韓国からとか、国別にすると大変多いようですが、中国の留学生を受け入れるという立場考えていきますと、これは本当に取り組んでいくことになりますと、大変な量になると思うのです。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 世界の人口の二〇%を占めておる中国であります。また、日本に一番近いお隣という関係もあります。それから、今日の国際情勢の中の日本また中国、こういうような関係もあります。そういうふうに考えますと、数字で出すわけにはいかないといたしましても、日本が受け入れる留学生の半分ぐらいは中国の留学生または研修生というふうになって、いわば当然ではないか、あたりまえではないか、こんなふうに考えられるわけであります。  そういう意味で、中国の留学生あるいは研修生等の受け入れにつきましては、いままでの留学生を何十カ国からぽつりぽつりと受け入れておったというような考え方の延長としてつけ加えていくというようなものではなくて、ここで根本的に、中国の近代化の方向と合わせてひとつ大きくこの問題を考えていくという必要があるのではないか、私はそういうように思うのですが、こういう点について大臣の見解を伺っておきたいと思います。  ことに、先ほどお尋ねいたしましたように、日本はそれぞれ戦争の償いをいたしておるわけでありますが、中国は日本に対する賠償を放棄いたしまして、そして日本との新しい関係をつくっていこうという方向を大きく打ち出しておるのでありますから、そういうもろもろの事柄を考え合わせまして、ちょこちょこ起こってきた問題に対処してつじつまを合わせていくというのではなくて、日中両国の学問、技術、技能の研修という面でいわば大きな構想を広げて中国と話し合いをして進めていく、そういう大前提が必要ではないか、こう思うのです。大臣の見解をこの機会に承っておきたい。
  179. 園田直

    園田国務大臣 中国が賠償を放棄したという好意と友情に対し、経済開発あるいは留学生等について好意をもってこたえるということは、わが日本としても当然であると存じます。留学生の問題については、中国の近代化の先端として理工系を中心にしてうんと送りたいということでありましたが、これは金の面ではなくて、中国の方では自分の方が費用を負担してもいいということでありましたけれども、突然急激にふやすということは、国内の学校の受け入れ体制がなかなかできませんので、文部省としても最大限努力をして、いまのようにやっているわけであります。今後とも、そういうわけで一般留学生の延長ではなくて、中国と日本の話し合いで格別にふやしていくよう努力する所存でございます。
  180. 八百板正

    ○八百板委員 受け入れるための学校の施設とかいろいろな準備で制約があるというお話もございましたが、学校というふうに局限して考えずに、日本の全産業なり全機関がもっと幅広く受け入れる、こういう形で留学生、研修生の受け入れ体制を考えるべきではないか、私はそういうふうに思うのであります。現に中国が日本に留学を求めておる、先ほど理工科系が多いというお話がございましたが、なるほどそういうこともそのとおりあらわれておると思います。  しかし、今日中国が国の建設の基本として取り組んでおりますのは、まず第一に農業であります。農業を基礎にしてその上に軽工業、重化学工業、こういうふうに順序をつけて着実にやっていこうというのがただいまの中国の基本方針であります。そういう意味から申しますると、日本の農業の先進性に学んで、まず食糧の完全なる自給体制をつくっていきたいというところに非常に強い中国の要望があることは明らかであります。しかしながら、現実に、さてそれならば農業で日本に学ぶべきものは何か、こういうことで中国の立場をそんたくいたしますと、中国の今日求めておりまするのは、具体的な実際的な役に立つという学問と実践でありまして、そういう意味合いにおいては、中国の研究者なり研修希望者なりがいまの日本の大学なり研究所に入りましても、たとえば農業にいたしましても、日本の学園の研究部門に入りましても、言ってみれば役に立たない、こういうふうな面がありありとあるように私は思うのであります。  日本の大学は、農業だってそうでありまするが、農業を一生懸命大学でやったって、後で農業につく人はありません。農という字のつく大学の問題を専攻いたしてまいりましても、後はレジャー部門の仕事についたり、まるまる関係のない方面に行ったりしてしまう場合が多くて、実践に余り役に立たない、こういう農業の学校の現状であります。農業だけではありません。ほかの場面でも、大学でオーソドックスなアカデミックな基礎理論などを勉強いたしましても、それが果たして実社会とどういうふうに結びつくかというふうに考えますると、日本の大学の場合さっぱり役に立たない。役に立つのは、その人間が一応物を判断するとか物を勉強するとかというそのやり方、そういう一つの能力を身につけたという程度のものであって、それが本当に実社会で役に立つためには、大学を出てから実社会の中で実践の問題に取り組んで、そして十年、二十年たってようやく何とか役に立つ、こういうふうな形の日本の学校制度のように私は見ております。  そういうふうに見てきますと、いま中国が現実に求めようとしておる具体的な生産の発展に役立たせようとし、近代化の方向で日本に学ぶという立場で来ましても、日本の研究室に入っても学んですぐに足しになるものではないという面が非常に多いと思うのであります。でありますから、十年、二十年たってやがて成果を上げるような基礎的勉強も、もちろん並行して必要でありまするけれども、現実にただいまの時点において役に立つ技能的な研修、実践的研修、こういうふうなものをいま非常に求めておる、これが中国の現状であります。そういう意味から申しますと、のどから手が出るように日本の農業に学びたい点はありまするけれども、これを学校に入って学ぶという形では目的を達成することができない、これが率直な今日の現状だと思うのです。  そういう意味で、この留学生の受け入れにつきましては、基礎的な研究、学問の分野でこれを受け入れると同時に、第一線の職場、農業の職場あるいは工場の職場でこれを受け入れて協力するというような考えに立って、留学生、研修生というようなものに余りこだわらないで、大学を出た者を日本の研究所に入れてどうするのだというふうに余りこだわらないで、実効のあるような交流、留学の方法を考えていくべきだと私は思うのであります。この点につきまして、大臣もよく御存じなわけでありまするから、いままでの留学生を受け入れてきた型にとらわれないで、大学のどこにどうだからどうだというのではなくて、もっと広い日本の職場、研究機関、大学、そうしたところでこれを受け入れるという幅の広い総合的な構想があってしかるべきだと思うのですが、こういう点について、大臣はどんなふうにお考えでしょうか。
  181. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言のとおりでありまして、先生は中国のことはよく御存じでございますので、詳しくは申し上げませんけれども、わが方としても民間ベースの技能、技術の研修、それから政府の受け持つべき技能、技術の研修、学校と、三つの面から向こうと相談をして逐次進めているところであります。日本の側も、なかなか急でありましたので、準備ができなかったわけでありますが、中国側も、ただ勉強したいというだけで具体的な案がなかったわけでありますが、逐次その話し合いが、文部省と向こうの文部省、それから農業関係と農業関係政府政府というふうに話を進めているところでございます。
  182. 八百板正

    ○八百板委員 そういうふうなわけでありますから、政府政府との間で進めると同時に、民間同士のいろいろなそういう接触も官民一体となってやっていくというふうな態度でやってほしいと思うのであります。そういう意味で、政府ベースだけではやっていけない面が当然にあるわけですから、官民一体となって、そういう方向の実を上げていくというふうな構想で新機軸をひとつ打ち出していただきたい、こう思うのですが、大臣、この点どうですか。
  183. 園田直

    園田国務大臣 ただいま申し上げたとおりでありますが、さらに新しい協力体制を考えながら進めてまいる決意でございます。
  184. 八百板正

    ○八百板委員 何といっても、日本語がわかりませんと不便でありますから、そういう意味日本語の勉強ということが前提になると思うのです。日本に来ていろいろな研修をするにも、学校に入るにも、前提として日本語の勉強というものが大事だと思うのです。基礎的な研究理論になりますと、あるいは英語とか学術語でもって日本語を飛び越えてじかにそういう面の協力、研究というようなこともあり得るでしょうけれども、やはり本来的には日本語をある程度きちっと勉強してもらって、どの国でもそうでありますが、その上で日本の学術、経験、実際を学ぶ、こういう形の交流、留学、技術研修が望ましいと思うのです。そういうふうな点で日本語の勉強について何か具体的に考えておられますか。
  185. 光田明正

    ○光田説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、日本語が不可欠でございます。したがいまして、去年の夏に向こうが送りたいという申し出をしましたときにこの点をまず指摘いたしましたら、中国の語学教育は大変進んでいる、特に最近は、ラジオを使って非常に普及しているということでございまして、このたび大学院レベルで送ってくる学生については、向こうで日本語の勉強をさせるとはっきりと明言いたしましたので、こちらもそれを信頼いたしまして、先ほど申し上げました九十六名の学生を見ましたところ、事実ある程度習得してきているという面が見えます。しかし、それだけではやはり十分とは言えませんので、私の方といたしましては、大阪外国語大学、東京外国語大学附属日本語学校で、向こうがこちらで研修をしてほしいというときには受けて立てるような用意はいたしております。  しかし、私、実際に今度大阪外国語大学に来ました五名の学生と東京外国語大学府中日本語学校に来ました六名に会いましたところ、これは語学を専攻する学生でありますが、もうほとんど日常会話には不自由しない程度に達成しておりますので、中国における日本語教育の教育法というのも、多々こちらから学ぶところもあるのではないかと思う次第でありますが、先生のおしゃるとおり日本語の研修というのは大変重要なことで、あらゆる場面で気を使っていきたいと存じております。
  186. 八百板正

    ○八百板委員 日本は、まず、古くは中国に学び、近代日本に入るに当たって、徳川の終わりごろからあるいはオランダとかヨーロッパに学んで、そしてやがて欧米、アメリカに学ぶ、こんなような形で今日を迎えておるわけでございますけれども、いまはある意味合いにおいて日本に学ぶという世界の芽が若干出かかっておる、こういう状況だろうと思うのであります。  各国のそういう日本に期待するものにこたえなくてはいかぬという日本の積極的な任務、責任、立場があるわけでありまして、これを発展させていかなければなりませんが、具体的に数多くの人を迎え入れなくてはいかぬ、迎え入れるべきだという立場に立っていけば、やはり中国であります。お隣に日本の十倍の人が、しかも日本との友好親善関係を一層深めなくてはいかぬという立場存在するわけでありまするから、そういう意味では中国人のための日本語の学校、こういうふうなものをもう即刻手がけてつくる、こういうふうな方向を打ち出してしかるべきだと思うのです。これは文部省、外務省みんなで腹を合わしていかなければ実現しない問題だと思うのですが、外務大臣、中国人のための日本語の学校をつくるというお考えはありませんか。持っていただきたいのですがね。
  187. 平岡千之

    ○平岡説明員 中国人のために、中国で日本語を教える制度は本年の三月に吉林の長春というところで発足いたしまして、――日本の教師で教育するケースでございますね、そこで国際交流基金から七名の講師がこの三月に派遣されまして、日本語を教えております。これはさしあたり五十五年度に日本に参ることになっております百名の学部留学生を対象とするものでございます。
  188. 八百板正

    ○八百板委員 吉林省と言えば、日本がかつて中国との間に事を構えた、何か連想する長春でございますが、そういうことにとらわれるわけではございませんけれども、やはり日本の中に中国人のための日本語学校というようなものがあって、そこで勉強して、そしてそれぞれの職場なり学校なりにつく、こういう形のものがあっていいのではないか、私はそういうふうに思うのであります。  吉林省という話が出ましたが、実は吉林省にいま私の方から日本の稲作の主として緯度の似たぐらいの寒いところの寒冷地稲作の専門家を十人余り吉林省公主嶺に送っておりまして、一期作と申しましょうか、植えつけから収穫まで、こういう形で日本の種から肥料から農機具から資材、機材すべてを持ち込んで十ヘクタールの水田の提供を受けて、これにただいま取り組んでおります。また一方、中国の日本の農業に学びたいというふうな人々を現実に私二十六名農家に迎え入れまして、農家の家庭に入って起居をともにしながら農業の研修をやる、こういう形でこれも約刈り取りまでというふうな形で、実際福島、北海道でやっております。  中国がいま求めておりますのは、やはりよく言われておりまするように、実事求是というようなことを中国では言っておりますが、すべて実際のことに、実践の中で学んで真理を求めていくという方向でありますが、そういう意味で、こういう仕事になりまするというと、学校の留学生というよりはいわゆる実地研修生というような形になるのでありまするが、かつては、日本もアメリカに学んだ時代には石黒方式とでも申しましょうか、アメリカの大学やあるいはヨーロッパの大学などに人を出しまして、学んで、そしてまた実地に農場に入ったり、実地に入って研修するというような抱き合わせのやり方をやっておりましたが、いつの間にか少し影が薄くなってまいりました。  いま中国が日本に求めておるものは、ちょうど日本は大学に行って、また実際に実地研修生として現場に入るというふうな形で学んだ、そういうふうな考え方、そんな時期の感覚が中国の要望に見合った、こたえ得る方法ではないか、こんなふうに思うのであります。そういう意味で、民間のそういう協力を受けるという立場考えながら、官民一体になって受け入れていく、そういう大きな構想が私は必要だと思うのです。そういう考え方と、具体的にやはり中国人を日本に受け入れる場合に、事前に一年とか、あるいは少なくとも何カ月とか日本語の勉強をする、そういう機関がやはりきちんとなければ大量の交流、留学をこなしていくということは不可能だと私は思うのです。  そういう意味で、ひとつ具体的にそういう学校をつくっていこう、こういう方向をひとつ大臣考えていただきたい。大臣の直接の所管としてぐあいが悪いというのでありますならば、やはりそういう方向で関係方面と具体化を図っていくように、そういう考えをひとつ漏らしていただきたいと思うのです。と同時に、先ほど繰り返して申し上げますように、官民一体となった一つのそういう構想が実を上げる上には必要ではないか、私はそういうふうに思うのであります。大臣の所見をちょっと伺っておきます。
  189. 園田直

    園田国務大臣 民間と三者一体になった協力、これは当然先ほどから申し上げるとおり、積極的に努力をしてまいります。ただいまの御発言も拝聴いたして、そういう方針を進めていきたいと存じます。
  190. 八百板正

    ○八百板委員 きのうの朝日新聞をちょっと見ましたら、チリに対する外交について、対チリ外交を転換する、こういうふうな見出しの報道を見たのですが、大臣の訪問の予定にはチリは前には入っておらなかったのですか。今度はそれを入れたということになるのですか。そういうふうな関係と、今度の中南米局北米局のかかわり合いなんかはやはりあるのですか、ないのですか。
  191. 大鷹正

    大鷹説明員 大臣に八月に中南米に行っていただくということで、現在検討中でございます。  訪問先につきましては、現在、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリ、ベネズエラの六カ国を考えております。チリを特に後につけ加えたということではございませんで、大臣の出張の期間等を考えて、またその他のいろいろな事情を考えて、この六カ国ということで、いま検討中でございます。
  192. 八百板正

    ○八百板委員 大臣のチリ訪問と、それから来年の六月ですか、チリのピノチェト大統領日本に呼ぶ、こういうふうな話が報道されておりまするが、このとおりですか。
  193. 大鷹正

    大鷹説明員 チリの大統領の訪日のお話でございますけれども、来年の六月ということは、まだ全然決まっておりません。現在検討中というところでございます。
  194. 八百板正

    ○八百板委員 新聞報道によりますと、園田外相もこの間見えたケリー・チリ経済相の要請を受けて、ケリー経済相に来年六月以降のピノチェト大統領の国賓招待を伝えた、こういうふうな報道を見ているのですが、そういうことは事実無根ですか。
  195. 大鷹正

    大鷹説明員 その報道は必ずしも正確ではないと思います。大臣がチリの経済相にお会いになったということは事実でございますけれども、そのときに、先方から非公式に大統領の訪日の希望が出されまして、考えましょうということで終わっております。
  196. 八百板正

    ○八百板委員 大臣は直接いまのように、考えましょうという返事をされたという事情でございましょうか。
  197. 大鷹正

    大鷹説明員 大臣がそのときに検討しましょうというふうにお答えになりました。
  198. 八百板正

    ○八百板委員 大臣、いらっしゃるんだから、大臣はそう言ったというんじゃなくて、大臣御自身何とそこをお答えになったか、ひとつ……。
  199. 園田直

    園田国務大臣 経過の事実でございますから、事務当局から答弁させて失礼をいたしました。そのとおりでございまして、いま検討しているところでございます。
  200. 八百板正

    ○八百板委員 そうすると、そういう要望があって、ノーとは言わなかったわけですね。
  201. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。前向きに検討しますと、こう言ってあります。
  202. 八百板正

    ○八百板委員 このチリとの関係について、いままではどんなことを判断いたしまして相当の距離を置いた対処をしてきたのですか。そこのところをひとつ……。
  203. 大鷹正

    大鷹説明員 特にチリと距離を置いた外交をとってきたということではございません。御承知のとおり、わが国とチリとの間では特に困難な政治的な懸案の問題もございませんし、また経済面ではチリはわが国にとって、鉄鉱石、銅、モリブデン等の鉱産物資源並びに漁業資源の供給国として重要でございますし、中南米地域におけるわが国の重要な貿易相手国として緊密な関係にあるというふうに申し上げられると思います。
  204. 八百板正

    ○八百板委員 七五年の国連の第三十回総会以降、国連でチリの人権抑圧に対する非難の決議がたびたび行われておりまして、これに対しては、日本も当然非難をする立場で賛成をして、今日に至っておるわけなんです。それからまたアメリカとの関係につきましても、アメリカ国内において現ピノチェト政権に反対する立場の人を暗殺したとか、その犯人をアメリカに引き渡せというような問題がありまして、この外交関係がもつれてきておる、そういうふうに伺っておるのでありますが、この日本とチリの外交関係がいままでよくなかったのを改善すると申しましょうか、よくしていくということによって受ける日本の利益は、どういう利益があると判断をされますか。  たとえばいま鉄鉱石とかあるいはモリブデンとかというのを輸入し、資源の供給国として期待しておるというお話がございましたが、それはそれなりに関係が存続しておるわけでございましょうから、それ以上にこの対チリ外交を展開することによって受ける国の利益というものをどういうふうに判断いたしましたでしょうか。
  205. 園田直

    園田国務大臣 チリとアメリカの間には御指摘のような事件もございましたが、日本とチリの間には、そういう経済問題あるいはその他の問題について両方が対決をしたり、懸案になっている事項はないわけであります。かつまた、チリの国内政治も逐次民主化の方へ進んでいる状況等もこれありまするし、地下資源、漁業、こういう問題がありますので、できれば私訪問をし、また検討しますと言いましたが、向こうの大統領も招待をして、この関係を進めていきたい、こう思っておるところでございます。
  206. 八百板正

    ○八百板委員 御承知のように、チリの政権は人権無視の、政治的な反対者を拷問したり虐殺したりするというふうなことを行ったことに対する世論の批判を受けまして、国連でも、先ほど申し上げましたとおり非難を受けておる。また、ほかの中南米諸国からも同じように強い批判を受けておる、こういうふうに私は伺っておるのでありますが、そういう関係の国との間の外交関係を急に転換したと申しましょうか、親密な関係に持っていくということによって、何か大きく日本にプラスするものがあるという判断をせられておるのかどうか、この辺をちょっと伺いたいのであります。  伝えられるところによりますと、漁業の権益と申しましょうか、利権と申しましょうか、そういうものを、端的に言って、外交的に孤立しておるチリのいまの立場であるから、こういうときに日本理解のある態度を向けますると、それによって、まあ露骨に言えば、魚をよけいにとらしてもらえる、こういうふうな考えに立ってこの外交の転換が行われたのである、こういうふうな報道を私見ておりまして、そういうふうに考えますと、基本的な人権無視の、政治の秩序として好ましからざる、許されざる方向をとってまいっておりますチリ政権に対して、これを何かこう日本が利権をもらえるからということを理由にして、先駆けてそういう国に対する親密な関係を深めていくということになりますと、言ってみれば、金大中事件のあの人権無視の、もう公然たる残虐な行為を、だれが見ても日本政府として当然ただすべき立場にあるにもかかわらず、一部韓国との利権のつながりのある政治勢力に押されてゆがめられて、そして当然処置すべきことが処置できないという日本立場に立っておる。これはいろいろと説明がありましても、現実を否定するわけにはいかないと思います。  そういうふうなのと同じように、基本的な許すべからざる、譲るべかざるものを譲って、そしてこの現実の利権にゆがめられていくということになりますと、これは日本外交の上に、輝かしい園田外交の上にも一つの汚点をつくることになりかねないのではないかというようなことを私は心配をいたしておりまして、そういう意味お尋ねをしておるのでありまして、この点について、園田外務大臣の明確な見解をこの機会に述べていただきたいと思います。
  207. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御意見はまじめに、深刻に拝聴いたしまして、決して人権無視のやり方を認めるということではなく、かつまた、隣国等の感情等も十分考慮をしてこの問題は検討して進めてまいりたいと思います。ただいま御発言の中にありました漁業その他の問題は、これはやはり私の考慮の中に入っているところでございます。
  208. 八百板正

    ○八百板委員 筋を通す外交がこの利権的なことのために、よこしまな力によってゆがめられるというようなことがないように、そういう毅然たる外交を私は園田外務大臣に特に期待をいたしまして、予定の時間でございますから、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  209. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 鈴切康雄君。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当面する外交課題が山積して、園田外務大臣は大変お忙しいところ大変に御苦労さまでございます。  法案の方に入る前に、時間の都合もありまして、また答弁をする方の時間もございますので、きょうは私、まず昨日衆参両院で質疑が行われました金大中の問題、それから尖閣問題あるいは中越の問題、阿波丸、そして設置法、許せば日ソの問題と、各般にわたって御質問を申し上げたい、このように思っておる次第でございますので、よろしくお願いいたします。  初めに捜査当局の方にお伺いいたしますが、金大中事件に対し、現在捜査はどういうことになっているのか、その後の経過を踏まえて、御説明願いたいと思います。
  211. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 捜査の現状でございますが、捜査当局といたしましては、当時の一等書記官でございました金東雲をこの事件の重要容疑者として割り出し、また当時、横浜の方の総領事館に勤務しておりました劉永福副領事の所有いたしにおりました車が犯行に使用されたという容疑を疑り出すといったようなことで現在に推移いたしておるわけでございます。     〔村田委員長代理退席、唐沢委員長代理     着席〕 捜査につきましては、現在もなお約二十名の捜査体制を維持しておりまして、金大中氏逮捕監禁略取誘拐特別捜査本部ということで捜査に取り組んでおるわけでございます。  捜査の重点は、新たな情報の掘り起こしと裏づけ捜査あるいは関係者の洗い直し捜査あるいは既存捜査資料の再検討と補充捜査というようなことに重点を指向いたしまして、いまだ割れておりません共犯者あるいは連行ルートといったものの割り出しなどに努めておるところでございます。  そのように捜査の体制を組んでやっておるわけでございますが、この事件は御承知のごとく、外国人絡みの事件でございまして、特に被害者及び現場に居合わせた参考人など重要な関係者が国内におらないという特殊な国際事件でもございます。外国との関係はいろいろむずかしい問題もございまして、たとえば自国民不引き渡しの原則というようなこともあるわけでございます。したがいまして、そういった外国の協力がなければなかなか解決が困難でございまして、いま最大の障害というか問題として考えておりますのは、こういった事件の性質そのものが大変なむずかしい障害となっておるというふうに判断いたしております。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 新たな情報等の収集で約二十人からの捜査員が目下これを捜査中であるということでありますけれども、今回のマル秘の公式電報は、捜査に対してはかなり重要なものであると思うわけであります。いままでのような状態ではその真相の解明は非常に困難であった。しかし、ここに来て公式電報が明らかになったということでありますから、先ほどもお話がありましたとおり、被疑者と言われておる金東雲が外国に行っているとか、あるいは金大中さんが韓国におられる等で大変にむずかしい問題があると思うわけでありますけれども、もし金大中あるいは金策雲などの事情聴取が実現されれば真相の解明に役立つのではないだろうか、私はこう思うのですが、捜査当局はどうお考えでしょうか。
  213. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 ただいま被疑者でございます金東雲あるいは被害者でございます金大中氏などから、被疑者については所要の取り調べあるいは被害者の方からは御協力を得て事情の聴取などができますれば、事件の捜査の進展に大変に役立つのではないかというお話がございましたが、全くそのとおりでございまして、私どもも、いわば捜査の常道とでも申しますか、事件捜査を行うに当たりましてはまず被害者の御協力、そしてすでに割れておる被疑者を所要の法的手続をとって取り調べを行うことは当然なすべきことである。今回の事案に関して申しますれば、捜査技術上の観点からもぜひわが国内においてこれを行いたいと考えておるわけでございます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 金大中事件に対しては、外務大臣、昨日の衆参の外務委員会でも取り上げ、政府は現状では政治決着を見直す考えはない旨を明らかにされております。しかし、捜査当局の本件の捜査は、完全に行き詰まっているということはいま御答弁のあったとおりであります。  ですから、このまま推移すれば、本当の決着を見ないままに必ずうやむやになってしまうであろうと予測されます。刑事事件としても決着をさせるためには、わが国の捜査当局を韓国に派遣して、金大中並びに金東雲など関係者の事情聴取をすべきではないか。そのためには政府は、韓国がこの捜査員派遣による事情聴取に協力するよう働きかけるべきではないかと思いますが、政府はどのようにお考えでしょうか。
  215. 園田直

    園田国務大臣 スナイダー電報を初め資料が公開されたわけであります。これは一つの重要な参考資料にはなるわけでございますが、伝聞証拠であって、金東雲氏の容疑濃厚なりということ、指紋等も日本の警察が割り出しました段階で、日韓両国の大局的見地から政治的決着をつけたわけであります。  その際、約四カ条の前提条件がついております。一番最後には、捜査は続行する、そして主権侵害の新しい事実が出てくるならばこれは見直しをすることになっておるというのが今日までの経過でございます。したがいまして、現段階では、その政治的決着を見直すようなことではあるまいというのが私の感じでありますけれども、しかし、その後いろいろな情報も入りますから、さらに資料の収集、それから関係者への照会等極力努力いたしまして、捜査当局と協力をして、真相究明に努力する所存でございます。  韓国に日本の捜査当局を派遣して捜査をするということは、実質上はなかなか効果も上がらないことであると存じまするし、また、これは逆に主権の行使ということにこちらがなりかねませんので、十分関係省とも相談をしなければお答えはできない問題であると存じます。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政治決着をされたということでありますが、なかんずく最後に捜査については続行する、こういうことが番われているわけでありますから、当然捜査に対して外務省は捜査がしやすい方向に努力すべきである、私はそのように思うわけです。捜査の途中に政治決着をするということは必ずしも好ましい状態ではない。今日、このような問題が起こってくるのは、やはりそういう無理したところにいろいろの問題が起こってくるわけでありますから、当然そういう意味において、捜査に対して捜査当局がやりやすいように外務省として応援をするという意味において、いま金大中さんを日本に呼ぶとか、あるいは金東雲さんを日本に呼ぶなんということはなかなかできる問題ではない。そうすれば、当然了解を得てこちらから行って事情を聴取する、これもかなり大きな進展を見せると私は思うのですが、その点についての御協力はされないのでしょうか。
  217. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 真相を解明する立場で捜査当局がいろいろお骨折りになっているわけですが、その一環として、わが国の捜査当局としても、同氏の同意を得た上で金大中氏から事情の聴取を得たいという立場であることは、私どももよく承知しております。  ただ、いまのお尋ねの捜査官の派遣という問題に限って申し上げますと、これは韓国内で任意の事情聴取を行うという問題かと思いますけれども、これはやはり法的には韓国の同意を要する問題でございますし、さらに申しますれば、これは国家間の相互主義の問題ということもあろうかと思いますので、現在直ちにこの問題を取り上げることが適当かどうか、いまだ結論を得ておりません。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは大臣、この問題はうやむやになってしまうおそれが多分にありますね。いま言われたように、任意に事情を聴取するということも、私は、捜査当局はかなりの進展を見せるであろう、そのように思うのです。たとえば韓国等に派遣された人が、もし事情が許されるならば、任意にそういう事情聴取を受けることができるとするならば、私は、捜査当局としては相当前進するのではないかと思うのですが、その点どうお考えでしょうか。
  219. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 私ども捜査当局といたしましては、この事案の真相の究明あるいはこの捜査の進展ということに役立つ事柄でありますれば、どういうことであれこれにトライしてみる、その可能性があるならばそれをやってみたいという考え方でおります。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回のアメリカ国務省の公式電報の内容は、きわめて私は重要な内容を持つものであり、捜査当局としては重大な関心を持つべきものであると思うのでありますが、その点について捜査当局は、今回の公式電報の位置づけについてはどういうふうにお考えになっているのか。  また、アメリカに捜査員を派遣して事実関係関係者から聞くべきではないか。捜査当局としては、あらゆる可能性をたどりながらこれをぜひ解明していきたいと言っておられるわけでありますから、当然そういう配慮があっていいのではないでしょうか。捜査当局、どうでしょうか。
  221. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 第一の点につきましては、米国務省の公電ということの報道がなされまして、直ちに私ども外務省の方にお願いいたしまして、その電文の写しであるとか、その他資料の御提供をお願いいたしたわけでございます。電文等につきましては、逐次御提供をいただき、また承りますと、いま外務省において、その全体的な御検討あるいは事実の御調査ということがなされておるわけでございまして、私どもはその結果を承りながら、私どもとしてこれが捜査に役立つものかどうかという点についての判断を加えていきたいと思っておるわけでございます。     〔唐沢委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、まだ結論という段階ではございませんが、ただいま御提供を受けておりますああいった関係の電文などを拝見する限りにおきましては、その中に盛られております内容につきまして、捜査上から見た場合の新たな捜査の進展のための手がかりといったようなものは含まれていないというように、とりあえずは考えておるわけでございます。  また、アメリカその他に捜査員を派遣するかどうかという点につきましては、これは外国政府への問題でございまして、国と国との関係ということでもございまして、私ども、いま私どもだけの立場でとやこう申し上げることはむずかしいわけでございまして、関係当局ともいろいろ御協議、御検討の上考えてまいりたいというふうにいたしております。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣、捜査当局はかなり苦労しながら捜査を続行されているわけであります。それで、あらゆる可能性を秘めて、あらるる可能性をたどりながら捜査を進めていきたいという意向ですから、外務省としても、当然この問題について捜査当局の方からぜひこういうふうにしたい、これが役立つのだということであれば、それに対して前向きな姿勢でお取り組みになりましょうか。
  223. 園田直

    園田国務大臣 真相究明のために捜査当局から照会または要求があったこと、あるいは自主的に判断する等については、真相究明のために努力をする覚悟でございます。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま社会党の八百板先生からちょっと中国の話が出ましたので、中国について一言だけ聞いておきたいのですけれども、実は中国にある日本大使館ですね、園田外務大臣も行かれて、だれしも大変にお粗末な大使館といいましょうか、建物も古いわけでありまして、私どもも行って、本当に日本大使館というような感じがしないわけであります。  日中平和友好条約が締結されて、日本と中国とは子々孫々非常に友好的な、非常に良好な関係を保っているいま現在、やはり日本大使館も日本大使館らしい陣容を整えると同時に、そういう構想があってしかるべきじゃないだろうか。そして、もしそういうふうな話が進んでおるならば、具体的にどういう話になっているのか。土地を購入するという問題とか、あるいは建物はどれくらいの大きさに考えておられるのか、ぜひそういう点について御構想を承りたいと思います。
  225. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お尋ねは在北京日本大使館の建物のことかと思いますが、七三年の三月に国交正常化後日本大使館が開設されましたときに、最初に中国側から提供ありましたのは非常に狭いものでございました。特に事務所については、著しく狭隘な数名の館員のためのような大使館事務所でございました。そこで、その後約二年にわたりまして先方と種々折衝いたしました結果、別の場所にできておりましたところのより広い、これは事務所、公邸、館員宿舎三つを一つにしてつくった建物でございましたけれども、それを全体を借り受けまして、全体を事務所に改修いたしまして、現在使っているのがごらんになったものかと思います。  他方、大使の公邸につきましては、七三年のときに先方から提供を受けたものをいまでも使っているわけでございますが、これは中国側に言わせますと、ほかの館に比べて必ずしも著しく狭いとは思わないと言われるのでございますけれども、いまも御指摘がありましたように日中関係非常に深い関係があり、人の往来、したがって公邸を利用してのいろいろな行事等も多々ございますので、長期的にこれを使うには余りにも狭いということを申し入れまして、できれば土地の提供を受けて、先方がこちらの希望に応じたものを建ててくれるか、あるいはこちらがみずから建てるかという話は、自来続けているわけでございます。  事務所の方が優先しておりましたのですが、事務所が解決した後は、公邸の建てかえと申しますか、広いところへの移転について折衝を続けております。中国側の返事は、非常に多くの国と国交ができてたくさんの公邸、事務所の需要が多いし、なかなか北京郊外も立て込んできて、あいた土地が少ないので、すぐには応じかねるけれども、日中関係にかんがみて、できるだけ希望に沿う方向で考えたいという返事をいま得ておりますので、今後もその方向でさらに話を続けてまいりたいと思っております。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは尖閣問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、符浩駐日大使が尖閣諸島付近の海域で日中共同で開発を提案したいとの報道がありましたけれども、符浩大使の発言は、中国政府の正式の意向を受けたものであるかどうか、政府はこのことについて、符浩大使あるいは中国政府にその真意をただしたかどうか、その点については、どうでしょうか。
  227. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 そのような報道がございましたので、その直後に大使館員を通しまして、発言について伺ったわけでございますけれども、先方の答えは、新聞に報道されているような発言をしたわけではない、ごく一般的な問題が沖繩で話題になったので話して、新聞に伝えられたような具体的なことを申したのではないというのが、先方の説明でございました。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 報道されるということは、何か言われたからそういうふうに報道されたと思うわけでありますけれども、それでは符浩大使が言われた真意は、どういうふうな内容でしょうか。
  229. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほど紹介しました先方の説明においては、この共同開発の問題は日中政府間で話し合うべき問題であると自分考えておるという趣旨を話したものである、こういうのが御説明でございました。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日中の政府間で話し合われるべきではないだろうかということなんですけれども、あえていわゆる尖閣諸島付近の海域について日中で政府間で話し合われるべきだろうということなんですけれども、もしそういうふうな提案がなされた場合において、共同開発については考慮に値するのか、あるいは拒絶をされるおつもりなんでしょうか。
  231. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 この東シナ海の大陸棚の問題について日中間で最初に問題になりますのは、この境界の画定の問題でございます。この点につきましては、日本側から、かねて中国側にその用意があれば日中間の大陸棚境界画定のための話し合いをいたす用意は日本側にあるということを伝えているわけでございますけれども、それ以上の具体的進展は、いまのところない状況でございます。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうの報道によりますと、中国は、最近渤海湾南部における油田開発の交渉再開を申し入れてきたというふうに言われておるが、それは事実でしょうか。  また、この渤海湾の南部とはどのような水域であるのか、尖閣諸島もこの海域に入るかどうか、いままでどの程度話し合いが行われてきたか、その点についてお伺いいたします。
  233. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 渤海湾における石油の開発につきましては、昨年の六月、石油公団の副総裁が中国に参りましたときに初めて話が出まして、その後、九月に河本通産大臣が行きました話し合いを受けまして、十月には、日本側から石油公団のミッションが現地に参りまして話をいたし、本年の二月には中国から東京にミッションが参りまして、共同開発の方向について検討いたしたわけでございます。二月の十七日に突然中国側は、その後の事情から推察いたしますと、全体のプロジェクトの見直しがあったのではないかと思われますけれども、中国に使節団が帰ったままになっておりまして、もうすでに四カ月になるわけでございます。  本日一部の新聞で話し合いが始まることが決まったというふうに報道されておりますけれども、いまのところ、中国からも特別に人が来たというわけではございませんし、公団からもまだ行ったというわけではございません。いろいろなルートで、どういう形で話し合いを始めるかということについて、いま模索をしているという段階でございます。渤海の共同開発につきましては、いずれにしても、石油の安定供給につながると考えておりますので、できる限り話し合いが早期にまとまるということを期待しているわけでございます。  渤海の共同開発の地域は、渤海湾の南部でございまして、これは全くの渤海湾の中の中国側の地域でございます。日本と中国の共同開発というのは、中国の地域の中における日本の協力ということでございます。尖閣の周辺につきましては、この渤海湾の開発とは全く関係ございません。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま交渉が二月の中旬ごろ突然いわゆる中止をされたということですが、それは中国の大型プロジェクトの見直しということもあったろうということでありますけれども、これは非常に、見直しをされながら、またある程度の条件が満たされれば中国は取り組んでいくという形になってきたわけでありますけれども、そういうことで再びこの問題が俎上にのってきて、そしてかなり進展を見せる、そのように判断していいでしょうか。
  235. 鈴木玄八郎

    ○鈴木説明員 できる限り早く話し合いが始まってまとまるということを期待しておりますが、まだ、いつ、どういう形で話し合いを再開するかという点につきましては、決まっておりません。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、いつかは中国側からそういう提案がされるのではないかというふうに予想をしておりました。  鄧小平副首相の発言によりますと、ここ当分の間は、日中は尖閣諸島に対する領有の主張を凍結しようというのでありますが、その周辺海域の開発はこれとは別の問題だろうというふうに私は思っておりますし、開発の提案はあり得るのではないかと考えられておりましたけれども、政府もこういうような事態を予測されておられるのじゃないかと思いますが、尖閣列島の周辺海域において共同開発のもし中国の方の提案があるとするならば、政府としては前向きにこれに対処されようとされているのでしょうか、その点について……。
  237. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほどお答えしましたように、恐らく、将来のことを考えますと、この地域の大陸棚の将来の開発につきまして、やはり境界線の画定ということが先行しなければならないのではないかと思います。そういう意味におきまして、日本側としては、いっでもこの点について中国側と話し合う用意があるということを申し上げて、まず、境界の画定を日中間で円満に行うことが必要ではないかと思っております。その上に立って、将来先方から、まあ日本側から言うか中国側から言うか、この共同開発の話が出た場合には、それはそのときの問題として検討されるべきものかと考えております。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中国は尖閣諸島の領有権主張は凍結という立場であって、実はこれを撤回を私はしていないと思うのです。すなわち、中国は尖閣諸島の帰属については日中間の係争中のものだという立場を変えていないと私は思います。ただ、その決着を早急に決めようとしないことを鄧小平副首相は述べておりますけれども、将来のいつの日にかは領土権の帰属の決着はつけようということではないかと思うのですが、その点について園田さんちょうど行かれて、日中平和友好条約に鄧小平さんとお会いして決められた当事者でありますので、お聞きしたいと思います。
  239. 園田直

    園田国務大臣 尖閣列島については、日本と中国の立場が違うわけでありまして、わが方はあくまで歴史的にも、その他から見ても尖閣列島はわが国固有の領土である、こういう立場を主張しているわけであります。中国は、自分の方の領土であるという主張をしておるが、いまのままでよろしい、この前のような事件は起こさない、こういうことを言っているわけであります。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 われわれは、尖閣諸島が日本の領有であることに疑いを持たないわけでありますけれども、現在もわが国が実効的支配を行っていることも疑いはないわけであります。しかし同時に、中国も領有権の主張をしており、何らかの形で実効的支配の行動に出た場合の政府の処置というのはどういうふうになるのでしょうか。そういう事態は起こり得ないとお考えでしょうか。
  241. 園田直

    園田国務大臣 現在のままで日本が有効支配をしていることは発言のとおりだと思います。したがいまして、この前の漁船のような事件は起こさない。当分はいまのままでよろしい、こういう私に言った正式の発言でありますから、これがこのまま続くならば事件が起こることはないと思いますけれども、日本がことさらに相手を刺激して何か言わなきゃならぬような、有効支配を誇示するような刺激的な行動をとることは、非常に私は心配をしているところであります。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま園田外務大臣は、実効的支配をさらに拡大をするというような行動は非常に心配する点であるというようにおっしゃったわけでありますけれども、尖閣諸島、いわゆる魚釣島でヘリポート建設に着工したということでございますけれども、このことは日中間のこれからの紛争となるのではないかという心配を私は大変しているわけであります。  政府は、ヘリポートの建設を実効的支配の象徴と考えているのかどうか。現在では尖閣諸島に対する実効的支配は不十分であるから、だからそういう処置に出たんだというふうに私はどうも考えられて仕方がないわけでありますけれども、その点、ヘリポートの建設、そしてしかも昨日の新聞によりますと、約七十人からの方々が魚釣島に行かれたというその問題について、どのようにお思いでございましょうか。
  243. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のとおり、この尖閣諸島がわが国固有の領土であることは歴史的、国際法的にも疑いのないところであるということでございまして、わが国がこの諸島を有効に支配しているわけでございます。今般の沖繩開発庁の所管によるところの尖閣諸島の調査というのは、漁民の保護とか安全のため、ないしは純粋に国内行政上の必要性からいろいろ調査をなさるということと理解しておりまして、これによって有効的支配が不十分なのを十分にする、そういうような意味は全く持っていないものと承知しております。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 魚釣島におけるヘリポート建設の着工によって中国の反応ですが、どういうふうですか。何ら動きはないでしょうか。このことによって何らか反応しておりませんか。新聞によりますと、中国の方も反応を示しておる、台湾の方においてもかなり強硬に反応を示しておる、こういうような報道がなされておりますけれども、全く反応はしていないのか。どういう状況でしょうか。その点について。
  245. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 今般の一連の調査の報道に関しまして、中国側から政府ベースでの反応というものは何もございません。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、私は、現在の状況で尖閣諸島に新たな建設物をつくるということは、日中間の関係にどう反映するかということを十分考慮しなければならないのではないかと思うのですけれども、それについて、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。  また、鄧小平副首相は、尖閣諸島の領有権問題の解決は次の世代の英知に任せるのがよい、このように述べられているわけでありますが、わが国が性急に魚釣島に対して建設物をつくるということは非常に生臭い関係を醸し出すおそれがあるんじゃないか、このように思うわけでありますが、外務大臣は、どうお考えでしょうか。
  247. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、わが日本は、係争中のものではなくて、わが日本の固有の領土だ。中国は中国で、わが方の領土である。私にはそう言いませんけれども、しかし現状のままでこの前のような事件は起こさない、こういう約束があるわけでありますから、私は、静かに現在の有効支配を続けることが日本の実益のためにいいことであると考えております。  しかし、今度のヘリポートが地域の住民なり、漁民の避難場所であるとか、安全のためにつくられるということならばなるべく刺激しないようにやるべきであって、これが有効支配の誇示のためにやることであれば大変なことである。先ほど申し上げたとおり、心配をしておるわけであります。何らの反応がないということと、これに関心がないということとは別個の問題である。中国の方も慎重にやっておられるようでありまして、中国の外交部筋では、日本が慎重に行動されるようにという言葉を漏らしておるという情報はあります。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣は、慎重にと言われた意味は、そこにあろうかと思うのです。魚釣島にヘリポート、建設物をつくるということについて、日本は中国側にこういうものをつくりますよということについての事前の了解を得られたのでしょうか。全く実効的支配があるから構わないのだとおつくりになってしまったのか。あるいは中国側に、水難等でいろいろあった場合に救助に向かわなければならないからということで、ぜひ中国側が理解をしてもらいたい、そういう配慮を外交ルートで求めてお話しになったのでしょうか。それともただ単に、こちらの一方的な考え方でおやりになったのでしょうか。
  249. 園田直

    園田国務大臣 お言葉でありますが、中国と日本立場が違うという現実からして、理解を求むれば向こうはそうは相ならぬと言うことは明白であります。したがいまして、このことについては、了解を求めたり納得を求めたりすることは、かえって毛を吹いて新たな問題を起こすおそれがありますから、何もいたしておりません。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 了解を求めるということは新たな火を吹く、そういう問題には手をつけない方がいいんじゃないかと思います。少なくとも鄧小平副首相と園田さんとの間においてこの問題は大変紳士的に次の世代の英知に任せよう、こういうふうに言われたわけでありますから、そういうトラブルを起こすような、こちらから話をしても向こうの方は拒絶反応を示すような問題に外務大臣として慎重でなければならないと思うのですが、もう一度その点について。
  251. 園田直

    園田国務大臣 先生の御発言でありますが、先ほどから何回も非常に心配をしておるという外務大臣の心境を申し上げたとおりでございます。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中越問題についてお聞きします。  中越の武力紛争及びベトナム、カンボジア問題が東南アジア諸国に与えた心理的影響をどのように認識をされておりましょうか。たとえばASEAN諸国もそれぞれの判断に濃淡があるようでありますけれども、それに対する政府の判断をお聞きいたします。
  253. 園田直

    園田国務大臣 微妙でありますから、私の判断よりもASEANの国々のいま御発言のことを申し上げてみたいと思います。  ASEANの国々は、直接インドシナ半島と国境を接している国、それから離れている国とで若干の濃淡はございますけれども、ベトナムの進攻に対して非常に脅威を感じ、心配をしておるのがASEANの実情であります。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日本政府自身は、その点についてはどういうふうな認識でしょうか。
  255. 園田直

    園田国務大臣 日本政府としては、ベトナム政府日本関係は御承知のとおりであります。  なお、ベトナムの他国に対する進攻については強く反対をし、そのようなことがないよう注意をしておるところでございます。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうの、二十八日ですか、報道によりますと、ベトナムのファン・バン・ドン首相は、先ごろベトナムを訪問したカウル元インド外相とハノイで会談したときに、東南アジア諸国連合、ASEAN加盟諸国と二国間ないし多国間ベースで不可侵条約を結びたいとの意向を表明したわけでありますけれども、これに対して、こういうことが言われておるわけでありますが、日本政府としては、この問題についてどういうふうにお考えでしょうか。日本政府としては、どういうふうにこの問題をとらえておられるのでしょうか。
  257. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 けさの新聞に伝えられた報道は、まだ私ども新聞で承知した限りでございますから詳しいことはわかりませんけれども、やはり従来からのベトナムの動きを見ておりますと、孤立化すると申しますか、周辺の国との関係が悪くなることに対してはいろいろ懸念を持っておることは事実でございまして、要人を派遣したりその他いろいろ呼びかけを行ったわけでございます。また、できれば経済、貿易関係も発展させたいというような意向を示したこともございます。  したがいまして、不可侵条約という、そのことが直ちにねらいであるかどうかは別といたしまして、現在のインドシナ情勢の中で、特に中越戦争後の情勢の中で、ベトナムがASEANの、ASEANという一つグループというよりも、ASEAN諸国のそれぞれと、それぞれ問題はいろいろ個々に違うかもしれませんけれども、これらの諸国との間の関係改善していく、良好な関係を持っていきたいという気持ちを持っておることは十分想像できるところでございます。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨今のカンボジアの情勢をどのように見ているかという問題でありますけれども、日本が認めておるカンボジアの正統政府は、いまもなおポル・ポト政権であるかどうか。  一説によれば、ポル・ポト政権は海外に移転したと言われているけれども、実相はどうなっているか。また、もしそれが事実であった場合、日本政府はこれを亡命政権として、カンボジアの正統政府として承認を続けるのかどうか、この点については、どうでしょうか。
  259. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 現在、日本政府は、ポル・ポト政権との間に関係を持っているわけでございます。  この政権ないしその政権の首脳が行方不明になったとか、あるいは海外に脱出したというようなうわさは時折ございますけれども、私どもは正確にこれを確認しておりません。現在、引き続きカンボジア国内にこの政権が存在するというふうに理解しております。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府においては、カンボジアの新政権を承認する意思があるのかないのか。一定の承認の条件が整うならば、承認することはあり得るのか。  しかし、いずれにせよ、かつて吉田元総理大臣がダレス氏に中華人民共和国不承認を言明したような愚かさは繰り返すべきではないと私は思いますけれども、あわせて政府の御見解をお聞きいたします。
  261. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 将来の問題といたしまして、サムリン政権が、同政権を承認するに足る一定の国際法上の要件を備えた場合に、そのときは承認するかどうかということになりますと、その条件を備えているかどうかをその時点で見きわめる問題だと思いますが、現在のところ、私どもは、同政権がそれだけの要件を備えていると思っておりません。現在、同政権を承認しております国は十数カ国ということになっております。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、いま承認するかどうかということは、その条件が整うかどうかという問題だというふうにおっしゃったのでありますが、言うならば、その承認をするに機が熟した、そういう条件はどういうふうな形でしょうか。
  263. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国際法上、政府承認ということには一定の条件がございます。  まず第一に、新政権がその国の政府として、はっきりとした権力を確立しているという要件がございます。そして、この要件が満たされない段階におきましてこれを第三国が承認するというようなことは、国際法上、むしろ違法な行為とみなされるわけでございます。  それからもう一つ、新政権が承認するに値するものであるかどうかということの判断の基準といたしましては、国際法を遵守する意思及び能力があるかということでございます。  なお、さらにつけ加えて国際法の一つ政府承認に関します点を、蛇足でございますが、つけ加えますれば、その承認の条件を充足しているといたしましても、国際社会におきます第三国は、その国を承認する義務というものが当然に生ずるわけではないということも、一つ蛇足としてつけ加えさせていただきます。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ベトナムの抗米戦当時は、中国もソ連もベトナムを援助し、ベトナムの中ソ関係は友好的であったのに、ベトナム戦後は中越関係が急速に冷却をしていったというのはどういう理由なんでしょうか。国境紛争やあるいは華僑の難民問題だけではないのじゃないだろうか。これ以外に何か決定的な要素があったのではないかというふうに思うのでありますけれども、政府はどのようにお考えでしょうか。
  265. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のように、ベトナムと中国の関係が悪くなった原因を一つ挙げるということは恐らく困難だと思います。幾つかのもろもろの理由が重なったというのが恐らく正しい説明だろうと思います。深い歴史的な関係、清朝時代、フランスが同地を支配した時代からのいろいろな行きがかりもございます。それから、確かにアメリカとの戦争の時期におきましては中国が支援を行いましたけれども、その間におきましても、インドシナ内部の情勢というのは必ずしもすっきりしたものではなくて、もともと存在しましたカンボジア、ラオスそれからベトナムの民族の間のいろいろな感情というものは、一時的には共通の敵というものを持っていたがゆえに表面化はしなかったわけでございますけれども、潜在的にはいろいろ問題があったのだろうと思います。  それがアメリカと戦うという目標がなくなった後、インドシナ内部におきましても、三つの民族の間のいろいろな行き違いが出てきたという状況で、そういう中で今度は中国とソ連という国がそれぞれベトナムあるいはカンボジアとの関係を深めていくという状況がそこに発生してまいりまして、そういう中でベトナムと中国の関係は、アメリカとの戦争の後、さらにいろいろな問題が重なって悪化してまいりまして、御指摘の華僑問題というのは、確かに一つの大きな要素かと思います。  特にベトナムの政府、ハノイの政権が非常に力を入れました政策の一つが、ベトナムの南部をなるべく早く社会主義化するという政策でございまして、これがなくては本当はベトナムの統一ができない、統一ベトナムの国家としての体をなさないということで、一時予想されたよりも早いテンポでベトナム南部の社会主義化を進めたわけでございました。ところが、その場合にやはり問題になりましたのは、ホーチミン市、もとのサイゴン市に経済力を持っておりました華僑でございまして、この華僑を農村へ移すというようなかなり性急な政策がございまして、これに華僑ないしは中国がひどく反発したという辺が、いまから振り返りますと、両国関係が悪くなった直接の動機のように思われます。  そこへ、もともとやや不確定な要素がありましたところの国境紛争が激化いたしまして、今日になりますと、もう何年か前からそういう紛争があったのだと中越双方とも言っております。顕在化しましたのは一両年前でございますけれども、いずれも、他方が侵略したので追い返した、追跡したということを言って、それがだんだん激しくなっていったという状況でございます。  そういう中でベトナムは、国の建設、経済建設に力を入れる立場から、第一義的には、建国以来社会主義諸国からの支援を得る、その支援で足りない部分は西側の諸国等からも支援を得ると言っておりました、その一番頼りにしておりました社会主義国の中の中国からの援助がある時期になってとめられたということがございまして、ベトナムに言わせますれば、別に好んでではないけれども、やむを得ずソ連に頼る方向に動いていかざるを得なかったのだ、国の経済を建設するためにはそっちの方へ向かわざるを得なかったのだという説明でございますが、中国から言わせますと、これはベトナムが反中的な態度を顕在化してきたあらわれだ、反中的な態度を深めていったあらわれだ、こういうことになりまして、そこでますます両国関係が悪化していったというようなことで、非常にまとまりの悪い御説明で恐縮でございますけれども、これらもろもろの経緯を経て先般の中越戦争というものにまで至ったもの、このように理解しております。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このところ中越紛争が鎮静化の方向に向かっているということは好ましいことでありますけれども、外務省は、独自の情報網を通じて、中越紛争の鎮静化についてかなりの情報をお持ちだと思うわけですが、現在どういうふうになっていましょうか。
  267. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 鎮静化というお話でございましたけれども、先般、両国の外務次官の間で開かれた会談は、五回開いて一時中断ということですが、きょうあたりの報道によりますと、六月の中旬に今度は北京で再開しようかという話があるようでございます。  最初の第一ラウンドと申しますか、五回の会談におきましては、その副産物のような形で捕虜の相互交換が決まって、それだけは逐次実施されているようでございますけれども、それ以上の点、国境問題の解決、さらにそのもとになっております中越間のもろもろの問題の解決というようなことについては、双方ともいろいろ主張はいたしましたけれども、平行線と申しますか、実質的な議論に入らずして今回の第一ラウンドは終わったようでございます。第二ラウンドが開かれて一気かせいに話が進むかどうかということになりますと、第一ラウンドの経緯だけから見ますると、なかなか難航するのではないかという印象は持っております。  ただ、他方、一部には第二次戦争が始まるのではないかというような危惧の声もございますし、現に国境地帯の情報といたしましては、双方の軍隊がかなりな量配置されているという説もございます。これも情報によりまして相当量であるという説と、ある程度量が減っているという説とありまして、必ずしも定かではございませんけれども、双方の軍隊が国境に対峙してかなりいることは否定できないわけでございます。  そういう意味において、これを非常に危険視する声もあながち無視できないわけでございますが、私どもの感じといたしましては、中越双方とも、いま第二回目の武力衝突を行うことは何とか避けたいというのがやはり本音ではないかと思います。雨期が迫ってきて、現実にそういうことができないという要素が一つございますけれども、それを除いて考えましても、ベトナムはいろいろな意味で相当な打撃を受けております。特に、もともと困難な経済建設が今度のことでまたかなり痛手を受けましたし、さらにカンボジアにおけるベトナムのいろいろな活動というものは、ベトナムにとってはいろいろな意味でやはり負担になっているわけでございます。  他方、中国といたしましても、制裁というようなことがあって限定された行動をとりましたけれども、これが中国の内外に与えたいろいろな影響はやはり無視できないのではないかと思います。そういう意味で中国としても、再度そういう力に訴えるということに対してはかなりなちゅうちょがあると申しますか、次官級会談それ自身は相当平行線をたどったり、あるいは会談の議場外における宣伝戦という要素が強かったことは事実でございますけれども、同時に、それがすぐに大きな衝突というようなことに向かう要素は、いま直ちには見られないというふうにとりあえず観測しております。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 園田外務大臣は、ベトナム政府に対して、ベトナム政府がもしソ連の艦船の入港を許すならば、日本政府はベトナム援助を打ち切る旨を申し入れたというふうに聞いているわけでありますが、その事実関係と真意を聞かせていただきたいと思います。
  269. 園田直

    園田国務大臣 私はベトナムの外務大臣には、お互いに自主独立の路線を進もう、進むべきであるということを強調いたしました。したがいまして、一方に偏した路線はとるべきでない、これがアジアの平和のためである、こういうことを言っておりまして、どうこういう場合に援助を打ち切るということは言ってありません。慎重にやられたい。そうしなければ、当初、援助を始めるときに、ASEANの国々がベトナムに対する経済援助協力については非常に慎重であり、それが武力に変わってきて自分が脅威を受けるという意思の表明がありましたから、アジアのASEANの国々が心配するようなことがないようにベトナムの方でも努力をされよということを言っただけでございます。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、ベトナムの方にソ連艦船が入港するということに対して、そのこと自体で直接援助を打ち切るというふうにおっしゃったのではないのだ、あるいはまたベトナムの基地をソ連が使うような事態がもし起きた場合には、まあベトナムの方はいかなる国にも基地を使用するということはさせないのだと言われているわけでありますけれども、ソ連の方は、ベトナムとソ連との間の条約もあり、基地を使用したいという意向が強いわけでありますが、この問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  271. 園田直

    園田国務大臣 他国に対する経済援助で、どういうことをやれば打ち切るとか、どういうことをやればやめるとか言うべき筋合いのものではない。そこで私は、ASEANとの関係もこれあり、わが方が経済援助しにくくなるようなことはされては困る、慎重に自主独立の路線を守ってもらいたいという要望はいたしております。  いまの基地の問題でありますが、先般、日本とソ連の事務レベルの協議を行いました。これは非常に成果があったと存じますが、この場合に実は手違いがありまして、ベトナムとソ連は同盟条約を結んでおるから基地を使うのは当然だということを新聞記事に書かれたわけでありますが、これは間違いでありまして、真相は、友好国であるから、わが国の艦艇が立ち寄ったり出入りしたりするのはあたりまえのことだ、こういう意味であって、これを基地にするのは当然だ、同盟条約で基地にするという約束をしたなどというソ連の言い分はございません。そこで私は、ソ連の艦艇がベトナムの港湾に出入りをし、寄港することには間違いなしに重大な懸念と関心を持っております。持っておりますけれども、しかし艦船が出入りしたからと言って、すぐ基地をつくった、やれどうだこうだと騒ぐことは、これは決して賢い方法ではない。またそのように神経質になってはならぬ、こう考えております。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまもちょっとお話がありましたけれども、過日、日ソの事務クラス会談が行われたわけでありますけれども、フィリュービン外務次官の来日はわが方からの招請によるものでありますか、それともソ連側の発議によったのでしょうか。
  273. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 このような事務レベルの協議をソ連との間に行おうということは、園田外務大臣が昨年の一月モスクワにグロムイコ外務大臣との定期協議のために赴かれましたときに日本側から提案されたものでございます。  それに基づきまして、その後事務レベルにおきまして、大体昨年の八月ごろをめどにソ連側から人に来てもらって、こちらの事務方の代表と話そうというようなことで、こちらからそれとなく誘いはかけておったわけでございますが、その後国際情勢の変遷等もございまして延び延びになっておりましたところが、またこちらから何となく打診をいたしましたところ、ソ連側からそろそろ行こうかというようなことになりまして参った、このような経緯でございます。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この会談はグロムイコ外務大臣の来日の予備会談と解してよろしいか。私は今度の会談そのものを決して否定するものでありませんけれども、すでに合意されている外相会談のすりかえになってはならぬ、そのように思うわけでありますが、政府は、今回の会談をどのように評価されていましょうか。
  275. 園田直

    園田国務大臣 私がこれを提案をし、ようやく実現をいたしました。その私の目的は、日ソ間には領土問題という非常に困難な問題があります、ありますけれども、それだけでこのままやっておくことはなかなか問題でありまして、それ以外の問題では友好的に何回もお互いが会うことが大事であるということはグロムイコ外務大臣も私も合意したところであります。したがいまして、今回は両方とも友好的な雰囲気を出す、この会談自体に意味があるということで両方会談をやったわけであります。これがグロムイコ外務大臣来日の予備会談であるとは受け取っておりませんけれども、一歩一歩そういうふうに近づくようにしたいと考えておるわけであります。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 フィリュービン外務次官との会談で、当然領土問題も話し合われたと思いますが、何らかの進展はありましたか、全く前進は見られませんか。
  277. 園田直

    園田国務大臣 率直に申し上げまして、私は事務当局の当事者には、懸案の問題は一応言うことだけは言え、向こうも言うことだけは言うだろう、しかしそれに固執することなしに他の友好的な問題を論議しろ、こういうことを言ってありますので、主張はしましたが、これはさらっと両方とも主張し、反駁しただけでございます。
  278. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領土問題について主張をされたというわけでありますが、どういうふうなニュアンスで向こうに言われたのでしょうか。
  279. 園田直

    園田国務大臣 いままでの日本立場を述べた、向こうはまたいままでどおりの反論をしたというだけでございます。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国後におけるソ連軍の増強について恐らく何か申し入れたのじゃないかと思います。ソ連のそれに対する意図について、当然日本としては説明を求められているのじゃないかと思いますが、この問題については、こういう国後島におけるところのソ連軍の増強という問題については、日ソ関係必ずしもよい結果にはならないだろうということについて当然日本側として申し述べられたかどうか、それに対してソ連としてはどういう反応があったか、それについてはどうなんでしょうか。
  281. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 国後、択捉のソ連軍の軍備の問題につきましては、本年の二月にすでに属島外務審議官から在京ソ連大使に対しまして日本政府の抗議をいたしまして、さらにその後、衆参両院の本会議におきましてやはり同じ問題について決議が行われましたので、これを二月の末に駐モスクワの魚本大使からフィリュービン外務次官、たまたま同じフィリュービン外務次官でございますが、その決議が行われた事実及びその内容を伝達して、このような出来事は日ソの友好関係のためにも好ましくない、速やかにそのような処置を撤回するとともに、この領土問題の速やかな解決を求める、こういうことを申した経緯がございますが、その後を受けまして今回の事務レベルの協議におきましても、こちらの代表でございます高島外務審議官からフィリュービン外務次官に対しまして再び同様の問題を提起いたしまして、これが解決を要望したわけでございます。  これに対しましてフィリュービン外務次官は、当時モスクワで答えましたのとほぼ同趣旨のことで、そのようなことを日本側が言うのは内政干渉であって、ソ連側にとっては実に驚きである、このような趣旨のことを述べたわけでございます。日本側は、重ねてその立場を主張して、その問題の討議は終わった次第でございます。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 フィリュービン外務次官との会談で、政府は日中平和友好条約の真意について当然説明をされたのじゃないかと思いますが、それによってソ連はどのように反応したか、あるいはソ連の誤解は解けたかどうかという問題については、どういうふうに判断されておりましょうか。
  283. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 日本側の代表が日中条約問題に深く関与しました高島外務審議官でございましたし、先方のフィリュービン次官はアジア担当の外務次官でございますので、意見交換の非常に大きな部分がこの点に集中されたわけでございます。この問題につきまして高島外務審議官から、日中条約の締結について日本がどのように苦心をしたか、特に覇権条項及び対ソ関係の考慮という点についてどのように苦心をし、長い時間をかけたか、このような説明をしたわけでございます。  これに対しましてフィリュービン次官は恐らく、私どもの想像でございます、推察でございますが、日本側に、ソ連側が言うような中国と結託して対ソ対抗の陣を張る、このような意図はないということは恐らくすでにわかっており、またわかったと思いますが、ソ連側といたしましては、このフィリュービン外務次官の口を通じて再び、日本側の説明にかかわらず、ソ連としては日本が中国の対ソ冒険政策に巻き込まれるおそれがあるのではないか、こういう懸念を表明いたした、こういうことでございます。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 阿波丸についてちょっとお聞きいたしたいと思いますが、最近の報道によりますと、阿波丸の遺品が中国の手によって引き揚げられたことを通告されたとのことでありますけれども、それは中国政府からの正式な通告なのか、また、その内容についてはどういうものであったのでしょうか。
  285. 園田直

    園田国務大臣 これは、まず最初は、全く個人的に私のところへ廖承志副委員長から写真とその他の資料が届いてまいりまして、これは阿波丸だと思うがどうだという、全く極秘の話がございました。海底に沈んでいる阿波丸の船体、二つに割れておる。それからその中から一部遺品、遺骨それから物品等が揚げられております。これはきれいに整理をして飾られており、遺骨、遺品は丁重に安置されている、こういうことを知りました。  そこで、阿波丸は一般の船ではなくて、これにはずっと前から遺骨があって、遺族が前々から非常に心配をしている問題だから、表ざたにしてもいいかという内々の話をいたしまして、向こうから交通部長が参りましたから、向こうと連絡をして、そしてこれを正式に外交ルートに乗せて、両方相談をして厚生大臣から遺骨がありますから、発表してもらったわけであります。  なお、これはまだ全部引き揚げが終わったわけではありませんので、あとの荷物あるいはその他は今後また引き揚げる予定で外交ルートを通じてそれぞれ相談をしているところでございます。
  286. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 阿波丸の問題については、今日まで三十数年間海底に眠っていたわけでありますから、その親族の苦衷を察してぜひそういう努力はしていただきたい、そう思うわけでありますが、私がこれから申し上げることについてちょっと御答弁願いたいわけでありますけれども、沈船、沈められた船の所有権がどういうふうになるのかということについてちょっとお伺いをいたしたいわけでありますが、平時において外国の領海内で沈没した船舶の所有権はどうなのか。一般の船舶、軍艦、公艦に分けて御説明していただきたい。またこれらの船舶に積載された貨物の所有権はどうなるのか、また公海にある場合の所有権はどういうふうになるのか、この点について、まず御答弁願います。
  287. 園田直

    園田国務大臣 いままでの交渉の経緯で、これは全く中国の友情と好意によって知らされたものであり、その遺骨も丁寧に安置してございます。今後また引き揚げるべき遺骨、遺品、こういうものは主として厚生大臣が主になって交渉をしておるわけでありますが、他の物品等は沈んでおる場所その他によっていろいろ問題があると思いますので、これは合法的に今後中国の好意も踏まえて解決しなければならないと思いますが、具体的問題については、事務当局からお答えをいたさせます。
  288. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国際法と申しますか、法律的な観点から先ほど先生が一般的な御質問をなさったわけでございまして、私も一般論としてお聞きいただきたいと思うわけでございますが、まず、領海と公海とに区別いたしますと、一般的に船が他国の領海内において沈んだ場合と、公海下に沈んだ場合とでその差異はない。したがって他国、第三国の領海の中で沈んだ船につきましても、それが当然に本来の所有権が消滅して、その領海であるもとの沿岸国のものとなるというようなことはないということが言えると思います。  それから軍艦と民間船と申しますか、商船との区別でございますが、この場合には、軍艦というのはやはり国家主権の象徴として特殊な地位を持っているものでございますので、仮に領海の中にあった場合におきましても、民間の船についての所有権というもののステータスよりはより強く軍艦の所有国の所有権がそこにあらわれるものだというようなことだと思います。
  289. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私質問しましたのは、平時においてはいまのような見解になるかと思いますけれども、それじゃ、戦時に撃沈された外国の領海内での船舶の所有権はどうか、これらの船舶に積載された貨物の所有権はどうか、また公海にある場合の所有権はどうなんでしょうか。
  290. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  私が御答弁申し上げましたのは、先生も御指摘のように平時についてでございますけれども、戦時と平時で、戦争状態があったから撃沈されたといっても、その戦争状態があったがために当然所有権がなくなるというようなことはないと思います。したがって、基本的に平時の場合と大差はないということが言えると思います。
  291. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の阿波丸は中国の領海内において戦時において撃沈されたといういきさつがあるわけでありますけれども、この阿波丸に関する所有物は中国の所有物になるのかあるいは日本の所有物になるのか、政府としては恐らく中国側に何らかの要請をするでしょうけれども、どういうふうな要請をされましょうか。
  292. 園田直

    園田国務大臣 日本側としては阿波丸の引き揚げについてはいろいろ各方面、各団体があったわけであります。しかし現実問題としては領海内でありますから、これはできないわけであります。それを中国が引き揚げたわけであります。したがいまして、まだそういう所有権の問題まではいかずに、遺品と遺骨その他についての相談をしている段階であります。いま事務当局が申し上げましたのはあくまで一般論でありまして、これは合法的な立場に立ちつつ、中国と納得のいくように相談して決めなければならぬ問題であると考えております。また、これは後々の問題であると考えられます。その問題については依然まだまだ交渉を始めてはおりません。
  293. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 阿波丸は赤十字船として国際法に認められた安導券のもとに航行していたわけであります。したがって、これを撃沈した米軍の行動は明らかに国際法違反であったわけでありますが、米国政府もその違法性を認め、戦後賠償の責任に応ずる旨の意思表明がなされていたわけでありますけれども、戦後、日本政府は賠償請求権を放棄したいきさつがあります。  しかし、阿波丸が果たして規定どおりの航行であったかどうかについては、いままでにもいろいろの問題となっておったわけであります。すなわち、阿波丸が赤十字船として安導券が与えられた目的以外の貨物、すなわち戦時禁制品を積んでいたのではないかということがいまだに言われているわけでありますが、もし中国側が阿波丸を引き揚げた結果そういう事実が判明しましたら、政府はどういうふうにされるのでしょうか。
  294. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お尋ねの点でございますが、そのようなうわさがある、阿波丸宝船というようなお話も私は聞いたことがございますけれども、事実はまことに根拠が確かなものではございませんので、実際上積み荷がどんなものであったかということについては、現在外務省にも記録がございません。したがって、これは現実にどんなものが出てきたかというところで、また考えさせていただきたいと思っております。
  295. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり赤十字船ということで安導券を与えられておったわけでありますが、いよいよこれで引き揚げということになりまして、戦時の禁制品が積まれておったということになると、今度は日本側が違法的な行為をやったということになるわけであります。そうなりましたら、やはり私は阿波丸の犠牲者に対するいままでの考え方とはおのずと違う立場になろうかと思いますし、政府の責任ももしそういうふうな問題が出た場合においては再検討しなければならない問題が出てくるのじゃないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  296. 園田直

    園田国務大臣 遺族の方はその点を明確に分けておられまして、遺骨、遺品を揚げてくれた中国の友情、それから自分たち遺族に対する待遇、これは二つ分けて考えているようであります。しかし、何にしても実情はまだ判明いたしません。たとえば撃沈されたと言いますが、中国側の説明、写真等を見ると、どうも撃沈された痕跡がなくて、船体が二つに割れている、これは自爆装置があったのじゃないかなどということも言われておりまして、引き揚げてみなければわからぬことでありますから、その上で検討すべきことであると考えます。
  297. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 遺骨を収集するということと、確かにいま言われました安導券を得ておった赤十字船が撃沈された。それはアメリカの違法行為、国際法違反に基づいて行われたというふうにいま現在なっているわけでありますけれども、しかし、御存じのとおり、もし戦時禁制品が積まれておって、そのもとにおいて撃沈されたということになると、今度日本が逆の立場になるということが考えられるわけであります。そうなった場合に、恐らく阿波丸の犠牲者等も当然それに対するいままでの補償とか、そういう問題もまた出てくるようなかっこうになると私は思うわけでありますが、一言そのことだけはつけ加えておきたいと思います。  さて、法律の方がすっかりあれになってしまったわけでありますが、中南米局を新設するということ自体に対して私どもは異論を持つものではありません。新設する中南米局のスタッフは今後どういうふうになるのか、また、外務省の定員増は必要であるのか、その点についてはどうでしょうか。
  298. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 中南米局設置されますれば、中南米局長のもとに外務参事官一名と中南米第一課と第二課が置かれることになりますが、第一課の定員は十八名、それから第二裸の定員は十四名になっております。今回の中南米局設置に際しまして、定員面ではすべてアメリカ局等からの振りかえで対処いたしておりまして、五十四年度において新規の定員増はございません。
  299. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が余りありませんので、次から次へと聞いていきます。  中南米諸国との経済関係の将来性についての展望はどういうふうに思っておられるのか。中南米諸国との貿易の実態は、いま現在どうなっているか。わが国中南米諸国に対する経済援助の実態はどのようになっているのか。そして、わが国中南米諸国に対する民間投資の実態はどのようになっていましょうか。
  300. 大鷹正

    大鷹説明員 まず貿易から申し上げますと、一九七八年度のわが国の対中南米貿易は、輸出が約六十六億ドル、輸入が約三十億ドルを記録いたしまして、わが国の総貿易量に占めるシェアは、輸出が六・八%、輸入が三・八%でありました。対中南米貿易を商品別にながめますと、輸出では重化学製品及び軽工業製品が、輸入では原料品及び食料品が大部分を占め、典型的な相互補完貿易のパターンとなっております。  それから、午前中の御質問にも申し上げましたけれども、中南米日本が必要としているたくさんの資源を持っている国でございますし、他方工業化を進めているということもありまして、いま申し上げましたように相互補完関係にございまして、これからの貿易の将来も非常に明るいというふうに私どもは考えております。  それから経済協力でございますが、わが国の対中南米経済協力は、中南米の国の経済水準が比較的高い事情を反映いたしまして、従来より民間資金中心に行われてきております。一九六〇年から七七年までの累計によります中南米に対する経済協力の実績は、政府開発援助が二億二千百万ドル、シェアといたしましては三%とわりあいに少ないものでございます。他方、民間の直接投資、それから輸出信用は七十一億ドルということで、シェアが三三・六%とアジアに次ぐ実績となっております。それから、技術協力は全世界でも約二〇%のシェアを持っております。  それから、わが国の対中南米の投資は、アジアとそれから北米地域に次ぐ第三位の水準にありまして、七八年の三月末現在で対中南米の投資の累計額は約三十八億ドルでございます。
  301. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、わが国中南米地域に対する経済的進出は、アメリカ資本との摩擦を生ずる懸念はないかという問題でありますが、アメリカは一八二三年末のモンロー主義によって中南米に対しては特殊の関心を持っておるわけであります。日本の進出がアメリカの利益と衝突するおそれが生じないかということは大変に懸念されている問題でありますが、その点についてはどうか。  また、中南米諸国の政情の安定性をどういうふうに見ておられるか、わが国中南米地域における経済進出に果たして懸念はないかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  302. 大鷹正

    大鷹説明員 第一の御質問日本中南米との経済関係がアメリカとの間で摩擦を起こさないかということでございますけれども、現在までのところ、われわれとしてはそういうふうには考えておりません。今後もアメリカとの摩擦が起こるというようなことは、われわれとしては予想いたしておりません。  それから政権の安定度ということでございますけれども、これは非常にむずかしい問題でございます。確かに一部の国では相当安定度を欠く状況にもなっておるように思います。しかし、中南米諸国の政権の安定度のために日本の投資が危険にさらされたとかそういう事例はいままでのところは特には起こっていないというふうに思います。
  303. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中南米諸国におる日本国籍の日本人の数はどういうふうになっておりましょうか。また、日系ブラジル籍の数はどうなっていましょうか。  最近の移住者の実情はどのようになっているか。特に最近における農業移住者の動向はどのようになっていましょうか。たとえば農業移住者以外の技術者の移住の動向についてはどうなっていましょうか。
  304. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答え申し上げます。  昨年の十月一日現在、これは毎年わが方の在外公館を通じて日本人の数などを調べておりますけれども、中南米在留の日本国籍の日本人総数は合計約十八万九千六百人、そのうち中米地域に約五千六百人、南米地域に約十八万四千人、こういう数字になっております。  御質問の第二点でございますけれども、日系ブラジル人の人数は、これも同様昨年十月一日現在の調査によりますれば、合計七十七万八千五百九名でございます。  最後の御質問でございます農業移住者及び技術移住者についてでございますが、最近ブラジルは、開発の進みぐあいいかんによりまして、従来のごとき伝統的農業移住者というよりは、むしろ一定の技術を備え、かつ、資本を持って同国の開発に寄与する、そういった意味合いにおける移住者を積極的に歓迎している、こういう現状でございます。
  305. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大変に時間の制約がありまして、はしょりました。  最後に一つ聞いておきますが、最近の中南米諸国わが国移住者に対する政策はどうなのか。最近は、大変に民族意識が高まりつつあります中南米諸国においては外国人の移住に対する政策を変えつつあるやに聞いておりますが、その実態はどうなのであるか。日本人の移住を制限する動向はどういうふうになっているのか。また、日本政府移住政策はどのように今後お考えになっているか。その点についてお伺いします。
  306. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 先ほども申し上げましたとおり中南米地域には九十一万余の日系移住者がおりますけれども、明治、大正を通じまして初期の移住者は困苦欠乏に耐え、その後これら移住者はきわめて定着の方向に向かっております。  移住政策の将来といたしましては、自己の発意による幸福追求といった移住からその定住国に対する開発協力という意味合いにおきまして、定住国からきわめて高く評価されています。この一つの著例といたしまして、昨年ブラジル移住七十周年の際に当時のガイゼル大統領が、日本国がブラジルに寄与した最大のものは、日本国がブラジルに対して日本移住者を派遣したことであり、これは私の確信であると断言している一事をもってしましても、日本人の移住者に対するブラジルを初めこれら各国の期待がきわめて大きく、したがいまして、ブラジル、パラグアイ、ボリビア等のこれらの地域におけるわが方移住者を歓迎する機運はきわめて高くなっているという実情でございます。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が来たようでございます。大変長時間ありがとうございました。  以上をもって終わります。
  308. 藏内修治

    藏内委員長 吉田之久君。
  309. 吉田之久

    ○吉田委員 今度、中南米局設置するということにつきましては、私どもも大変時宜に適した一つの対応であるというふうに考えているわけでございますが、この際、南米の一国でありますチリとの外交問題につきまして、若干の御質問をいたしたいと思います。  新聞の伝えるところによりますと、八月に予定されている園田外相の中南米訪問の際、チリを訪問するということがすでに伝えられているわけでございますけれども、それは事実でございますか。
  310. 園田直

    園田国務大臣 そのような計画で、ただいま事務当局が検討いたしております。
  311. 吉田之久

    ○吉田委員 その際、チリのピノチェト大統領を来年の六月以降国賓として招待するということも伝えられておりますけれども、そういうお考えでいらっしゃいますか。
  312. 園田直

    園田国務大臣 先ほどお答えしましたとおり、まだ決定しておるわけではありませんが、検討いたしております。
  313. 吉田之久

    ○吉田委員 この際、私たちの脳裏に浮かびますのは、チリのかつてのアジェンデ政権のてんまつでございます。このアジェンデ政権につきましてはそれぞれ評価の分かれるところでございますけれども、しかし現在のピノチェト政権がかなり血なまぐさいクーデターによってつくられた政権である、こういうことでいま国連でも人権抑圧非難決議というものが採択されているやに聞いておりますけれども、そういう問題と今後のチリとの外交の進め方について大臣はいかがお考えでございますか。
  314. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃいますような人権問題、特に米国との間にはいろいろ問題があったわけでありますが、チリ国とわが方との間には特別の懸案事項はないわけであります。かつ、チリの政権は逐次改善の方向に向かっていることも御承知のとおりであります。  中南米を訪問するに際しまして、ABC諸国と言われるように、アルゼンチン、ブラジル、チリ、これが中南米の三大国でございますから、ブラジルとアルゼンチンへ行ってチリを抜かすということは、外交上の点からもいろいろあると考えまして、チリに対する外交政策を転換したわけではありませんけれども、地下資源、漁業、その問題等もありますので、中南米を訪問する際には私が行って向こうの実情を見、今後の方針を検討したい、こういうことでございます。
  315. 吉田之久

    ○吉田委員 転換と申すべきか、あるいは一つの変化と申すべきか、いずれにいたしましても、チリとの外交が進められること自身にわれわれは異論を差しはさむものではありませんけれども、いま申しましたような国際的な世論の背景というものを絶えず慎重に判断されながら、よりよき転換をしていただきたいと思います。  つきましては、新聞等では「人権より漁業実益 水産議員が強い要請」というようなことも伝えられておりますけれども、何か特に漁業、水産関係についての今後のプランがあってのことでございましょうか。
  316. 園田直

    園田国務大臣 確かに漁業、水産関係もございまするが、すでにそういう問題はチリと日本の間には逐次進んでいる問題でありまして、これがあるからどうこうというわけでは決してございません。新聞の記事はやや誇張がございます。
  317. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、東京サミットとエジプト援助等の問題について、若干お聞きいたしたいと思います。  東京サミットのテーマに一般経済、エネルギー、貿易、南北問題、通貨の五つのほかに、非公式テーマとしてエジプト、トルコへの経済援助、それから中国近代化への対応策を含む東西貿易、インドシナ難民救済問題などが取り上げられることになったというふうに伝えられておりますけれども、そのように理解してよろしゅうございますか。
  318. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃいましたことは、残念ながら全然違っております。御承知のとおり、参加各国から準備委員を出して議題なり会議の進行状況について討議をして、ただいま二回目が終わったところであります。私が大事な時期にお許しをいただいてヨーロッパ三国、ECに参りましたのも、サミットを成功に導くための下準備のために参ったわけでありますが、各国とも、今回日本が主になって進めておる準備委員会の準備の進め方は、きわめて高く評価をするというおほめの言葉を向こうからいただいたわけであります。  いま議題は詰まるところでありますから、ここではっきり申し上げるわけにまいりませんけれども、議題となるのは、この前のドイツのボンから引き続いて世界経済に関連する問題、通貨の問題、それから新聞等に言われておりまするような世界各国の深刻な問題であるエネルギーの問題、それからややもすると先進国からは消極的ではないかと心配される南北問題、これはわが日本で初めてサミットをやるわけでありますから、わが方では特にASEANの国々には特使を派遣して、サミットに臨む日本に何らの要望ありやという緊密な連絡をとっておるところであります。  UNCTAD総会のあれもありまして、この南北問題だけはぜひ入れたい、こういうつもりで準備いたしておりますが、そのほかのエジプト問題、難民問題、中国近代化等々の問題が正式の議題になることは大方なかろう。しかし関心のある問題であって、食事のときとか休憩中の話になることはあるかもわかりませんが、サミットの正式の議題になることは可能性としては全然ございません。
  319. 吉田之久

    ○吉田委員 新聞なんかでも非公式テーマとしてというふうに断って書いているわけでございますが、いま大臣がおっしゃったようなそういういろいろなテーブルをはさんでの、晩さん会等での話題、これを非公式テーマということは言えるのでしょうか。
  320. 園田直

    園田国務大臣 私も、いまも飯のときあたりの雑談にはと言いましたけれども、いまの問題はほとんど参加国はもうそれぞれ理解しているところでありますから、雑談になりましても、そう突っ込んだ雑談にはならぬと存じます。
  321. 吉田之久

    ○吉田委員 それでは、サミットでのテーマになるかならないかは別といたしまして、特にエジプト援助問題はかなり国民の関心の深いところでございます。カーター・プラン、つまりサダト大統領が昨年九月のキャンプ・デービッド平和合意後に発表いたしましたエジプト再建計画によりますと、日本には五年間で二十億ドルから三十億ドルの負担を希望することになっているというふうにわれわれは聞いておりますけれども、このような事実はあるのでございましょうか。
  322. 園田直

    園田国務大臣 まず、エジプトの方から援助をしてほしいという話はありましたが、額については向こうから三十億、四十億ドルなどという話は全然ありませんし、わが方も額は全然話しておりません。それから日米首脳者会談あるいはその他の先進国からの話も、エジプトについて経済援助の額をどれくらいという話は公式にも非公式にも雑談にも全然ございません。  ただ、私が米国で申し上げましたことは、エジプトに対しては中東の和平というものを念願をしておる。しかし、わが日本は包括和平をやってこそ初めて効果があると考えるから、エジプトには相応の援助をするつもりであるけれども、アメリカと日本立場は違う。たとえば、エジプト援助にいたしましても、これはよほど考えて、慎重に、具体的に検討してやりませんと、反エジプト・アラブ諸国というものは、これにますます反発を加えるわけでありますから、わが方としては、反エジプト・アラブ諸国にも相当の経済援助をやるということがアメリカとは大分違います。  第二番目は、また私はっきり言っておきましたのは、キャンプ・デービットにつながる和平調停工作に米国がエジプトなりその他と約束をした援助の割り前は全然受け持つわけにはまいりません、日本独自の立場考えてやります、こういうことを私の方からはっきり申し上げてあります。金額その他については全然事実はございません。
  323. 吉田之久

    ○吉田委員 かなり外相の、日本としての立場というものを堅持された対応の仕方を承りまして、大変賛意を表する次第でございますけれども、特に、今後いずれ向こうが援助してほしいと言っていることでもございますから、エジプトに対するいろいろな対応の仕方は、具体的な外交日程になってくるのだろうと思います。しかし、一方において対立する他の関連諸国、しかも、それが日本のエネルギーとも非常に深いかかわりを持っている国々でございますから、よほど日本独自の特殊な立場というものをよく強調されて、そうしてその説得と理解の中で前向きの援助を進められるべきだと思うわけでございます。  つきましては、トルコに対する援助、これもいろいろ国民の中では少し首をかしげている面があるようでございまして、特にトルコとキプロスの対立の問題、そういういろいろな問題の中で、トルコに対しては今後どのような外交の進め方をなさろうとしておるのか、承っておきたいと思います。
  324. 園田直

    園田国務大臣 トルコについては、具体的に援助の額はわが方の額を意思表明いたしました。この経緯を簡単に申し上げます。  第一に、中近東の重要性というのはよくわかるところでありまして、トルコを中心にしたあの地帯が変なかっこうになりますと、わが方のタンカーは片道百杯動いておるわけでありまして、往復二百杯のタンカーが航行自由権を失うという重大なことになりますから、トルコの動向については、外務大臣は非常に懸念と関心を持ってきたところであります。  まず最初は、本年一月ドイツに参りまして、ゲンシャー外務大臣といろいろ会談をいたしました。その際、ゲンシャー外務大臣から、実はトルコというのはきわめて大事であって、トルコの財政事情はまさに危殆に瀕しておる。したがって、日本も応分の援助をしてもらえないかという話がありました。そこで、私は即座にノー、できませんと言った。私が言った言葉をそのまま言いますと、あなた方四人が、英、仏、独、米が島に集まって勝手に決めて、そして、日本に割り前を出せということは、お祭りの寄付でも出せるものではありません、こう言いましたら、ゲンシャー氏は苦笑いをしながら実情を非常に丁重に説明をして、非礼な点はおわびをするということで、一晩かかって懇々と実情の釈明がありました。そして、なお日本に対する礼儀上特使の派遣も考える、こういう話でありましたが、つい一カ月くらい前かわざわざドイツのシュミット総理特使が来日し、丁重に相談がありました。その直前、トルコの方からも正式に文書をもって援助いただきたいという要請がございました。  そこで私は、事の経緯から見て一応反対はいたしましたけれども、援助をすべきだという考え方はもともとあったわけであります。そこで、事務当局は逐次検討をしておりましたから、トルコの方から、外務大臣がわざわざこの相談に来られましたので、延べ払いと両方合わせて三千五百万ドルずつ、七千万ドルの援助をするよう、一応トルコには言い渡し、トルコの方も納得をしてやっているわけであります。ただ、近ごろトルコの現政権がどうもがたがたしそうだという情報がありますので、非常な心配をしておるところでございます。
  325. 吉田之久

    ○吉田委員 キプロスというのですか、この辺とのトラブルがかなり深刻なようにも聞いておりますし、トルコの現状については私どもも心を痛めておる一人でございます。しかし、トルコを援助することによって、先ほどのお話にもありましたように、その隣接する国々、現にトラブルを起こしている国々がまた日本に対して硬化するというようなことになりますと、大変厄介でございます。その辺の御配慮はいかがでございましょう。
  326. 園田直

    園田国務大臣 これも中東問題と同じでありますが、いまの御発言は御注意だと存じまして、ありがたくその御注意をいただき、関係諸国に十分配慮しつつ進めていきたいと考えております。
  327. 吉田之久

    ○吉田委員 インドシナの難民問題もいろんな形で今後国際的なテーマになり、またさらに日本の具体的な対応が迫られることだろうと思うのですけれども、われわれの感じからしますと、日本の今日までの対応というものはかなり後手後手で進んできた。やはり同じ援助をする場合、思い切って、際立ってタイムリーにやるか、まあ諸外国がやっておるから、そしてもうどうにもならないから余儀なくやっているというようなことでは、せっかく援助をいたしましても、外交的には非常にメリットの少ないものになってくると思うのです。この難民救済などにつきまして、今後、日本の外務大臣としてどのようなお考えをお持ちでございましょう。
  328. 園田直

    園田国務大臣 難民対策については、残念ながら各国から日本の立ちおくれは非難をされているところであります。しかし、非難されているからということではなくて、これは人権問題であり、一つにはアジアの平和と安定を阻害する要因になっていることは御承知のとおりであります。かつまた経済問題で、日本が黒字でいろいろ問題を起こしているわけでありますが、これも日本経済協力であるとか難民対策であるとか、こういう国際的な人権問題あるいは開発途上国への援助ということに積極的に大幅に貢献しないというところに黒字に対する非難もあるわけであります。  そういう意味で、遅まきながらつい先般、非常に法体系のむずかしい中を、関係各省の協力を得て五百名、いままで入っている枠は別、留学生も別にして五百名の定住を中心にした総合対策を打ち出したわけであります。これは遅まきながら、高く評価はされませんでしたが、日本がいよいよ踏み出したかという評価は各所で受けたわけで、これは日米首脳者会談の一つのうまくいった理由であると私はひそかに考えております。  なおしかし、それだけでなくて、今後これは拡大するんだろうな、こういうことを言われましたから、これは逐次拡大をする。それから高等弁務官に対する国際協力の基金、これは御承知のごとく逐次追加をいたしまして、他国に劣らぬようにやっておるわけでありますが、おくればせにやったためにこれが光らぬわけであります。今後もこれは増大していくつもりであります。  次に、難民対策について、当初はインドネシアだけでございましたが、インドネシア、フィリピンが島を提供する、そしてここに一時避難難民の収容所をつくろうという案があるわけであります。そこで私は、本当はこういうときこそこれくらいの施設費ぐらいは日本が全部受け持ってもいいのではないかと考えたわけでありますが、事務当局がしかりますので、大部分は受け持ってもいいという意思表明をいたしております。これは関係各省と相談をして、やはりアジアでつくる難民収容所であり、アジアの平和安定の阻害要因でありますから、少なくとも他国よりも日本の方が余分に出して、そしてASEANの国々と協力をしていきたい。と同時に、一方、ベトナムその他については、難民の流出について自制をされたい、特に無統制な難民は非常に困る、秩序あるようにしてもらいたいという要請を再三やっているところであります。  以上、まだ不十分でありますけれども、難民対策というのは単なる人助けという考え方を捨てて、日本がやるべき義務である、こういう考え方から、難民対策は各位の御協力を得て、ますます拡大していきたいと大臣考えているところでございます。
  329. 吉田之久

    ○吉田委員 きょうまでのとかくおくれがちなそういう援助対策に対しまして、大臣みずからが大変反省と批判と検討を加えておられるようでございまして、いまお言葉にありましたように、やはり日本が本当に日本らしく諸外国から尊敬を受けながら、かつ協力もまた日本は受けなければならないわけでありまして、こういう点につきましてタイムリーに、かつかなり思い切ったそういう措置が積極的に講じられるべきであると思うわけでございまして、一層の御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、ソ連の北方領土軍事基地化と中ソ関係についてでございますけれども、ことしの二月、日本政府は国後、択捉両島のソ連軍事基地問題でソ連政府に申し入れをいたしておりますが、その後この問題について、両国間で何らかの動きはあったかどうかということでございます。
  330. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 本年二月初めに、日本政府がソ連政府に対しまして、国後、択捉両島の軍備につきまして抗議をいたし、その撤回を求めるとともに、領土問題に関する日本政府立場を確認しましたその後に、衆参両院本会議の決議を受けまして、在ソ魚本大使からソ連政府にこの決議が行われた事実及びその内容を伝達したわけでございます。これに対しましてソ連政府は、これは内政干渉であるとか、決議が行われたのは日本の国内問題であるというようなことで反発をいたしまして、そのような非現実的な問題をやることは日ソ関係のためによろしくない、こういう立場を表明したわけでございます。  最近行われました日ソ事務レベル協議、今月の十四、十五の両日に行われたわけでございますが、このときに日本側の代表でございます高島外務審議官から、再びこの問題についての日本政府立場を述べたわけでございますが、これに対しましてフィリュービン外務次官から、これは日本政府として非常に内政干渉的な行為である、ソ連政府が軍備を行っておることは別に日本を脅威するためではない、こういうような種類のことを述べて反論をいたしたわけでございます。それが最近の本件に関する日ソ間のやりとりでございます。
  331. 吉田之久

    ○吉田委員 二十四日に日本記者クラブで記者会見いたしましたソ連のジャーナリスト同盟代表団長アファナシェフ共産党機関紙プラウダ編集長は、過去十年間、千島列島で新しい軍事施設の建設は行っていないということを言明したそうでありますけれども、これはわが国が千島列島、特に択捉、国後を含めまして、その辺での最近の著しいソ連の軍事基地の拡充強化の問題と全く相反する見解を述べていると思わざるを得ないわけであります。一体こういう発表に対しては、外務省はどうお考えでございますか。
  332. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま御指摘のアファナシェフという人はプラウダの編集長でございますが、そのような発言をいたしましたことは私も新聞等で読んでおります。ただ、この人は政府の人でございませんので、私どもといたしましてはこれがソ連政府の見解として述べられたものとは考えておりませんので、この発言につきまして直接私ども格別申し述べることはございません。  ただ、御質問の点につきましては、日本政府はこの対ソ抗議をいたしますに当たりましては、十分慎重に諸種の情報を総合いたしまして、その上でいたしたわけでございますので、このアファナシェフの発言ということにつきましては、別に政府の行為について格別考えを改めるということはございません。
  333. 吉田之久

    ○吉田委員 さらに新聞の伝えるところによりますと、中ソ国境で遭遇戦が発生し、二兵士が死んだとソ連側が明らかにしているということでございますけれども、外務省は、こういう事実をつかんでいらっしゃいますか。
  334. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま御指摘の点は、ソ連の国境警備隊のガポニェンコという局長がソ連の「党生活」という雑誌に書いた記事を日本の特派員が電報してまいったものと考えておりますが、私ども外務省といたしましては、そのような事実を確認すべき報道は何ら受け取っておりません。
  335. 吉田之久

    ○吉田委員 では、次に中ソ友好同盟条約についてお聞きしたいわけでございますが、中国は、さきにこれを延長しない旨を決定し、ソ連に通告をしたはずでございますけれども、その後中ソ両国間にさまざまな動きがあると伝えられております。これは、日本にとっても大変重大な関心事であると思います。外務省は、この問題につきましてはどういう動きをつかんでいらっしゃいますか。
  336. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御承知のように、中ソ同盟条約を明年の満三十年の期限の後延長しないという中国側の決定があり、これがソ連側に伝達されたわけでございます。それに対して即座にソ連側は、この中国の決定を非難する声明を発したわけでございます。その後、いまも御指摘がありましたと思いますが、中ソ間には若干のやりとりがございますけれども、この中ソ同盟条約そのものの取り扱いについて、中ソ間に特別な動きがあったということは承知いたしておりません。
  337. 吉田之久

    ○吉田委員 いろいろと新聞などの伝えるところでございますけれども、中国とソ連はだんだん国家関係改善のための交渉を始める動きがあるようでございます。そういたしますと、ただいまの答弁では、いま直ちに中ソ友好同盟条約の延長問題にまでは及ばないと思いますけれども、何がしかの変化があり得るかもしれません。こういう問題は大変重要な問題でございますので、今後外務省としては、一層いろいろとその変化に対して注目されなければならないと思うわけでございます。  最後に、各大使館の勤務員の定数の問題でございます。かなり見直しが絶えずなされなければならないと思うのでございますけれども、その辺の動きはいかがでございましょうか。たとえばギリシャの大使館でございますけれども、去年私どもが参りましたときは、たしか大使以下四名でありました。大分ギリシャに対する日本人の訪問なども多いような現状にあると思います。これは一つの例でございますけれども、そういういろんな条件の変化に対応して在外公館の職員の定数等を逐次いろいろと修正を試みておられるのかどうか、その辺のところをこの際、承っておきたいと思います。
  338. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 外務省の定員は、現在三千三百十一名でございます。これが五十四年度の予算で三千四百名になることになっております。そのうち本省は千五百五十二名、在外は千八百四十八名でございます。  私たちといたしましては、この定員はかねてから非常に不足しておって、在外でこれだけの活動をするには絶対に足りないという感じを持っております。御指摘のとおり、ギリシャの大使館が大使以下六名という御指摘は、われわれとしても非常に不足であるというふうに感じておりまして、実は最近一名増強いたしまして現在七名になっております。これもまだ足りないわけでございますが、何分にも絶対数の不足のために思うに任せない現状でございます。外務省といたしましては今後長期構想を立てて、定員の充足を強力に推進してまいりたいと考えております。
  339. 吉田之久

    ○吉田委員 いよいよ日本世界の重要な役割りを果たす国家として対応していかなければならないときでございますだけに、いろいろと在外公館の職員の配置あるいは定数の検討、絶えず時宜に適して努力検討をされるべきだと思うわけでございまして、一層の御検討をお願い申し上げる次第でございます。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  340. 藏内修治

    藏内委員長 次回は、来る三十一日木曜日午前九時三十分理事会、十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十二分散会