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1979-04-25 第87回国会 衆議院 逓信委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月二十五日(水曜日)     午前十一時五十七分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 加藤常太郎君 理事 左藤  恵君    理事 宮崎 茂一君 理事 渡辺 秀央君    理事 久保  等君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 青山  丘君       安倍晋太郎君    伊藤宗一郎君       石川 要三君    亀岡 高夫君       玉生 孝久君    玉沢徳一郎君       長谷川四郎君    堀之内久男君       村上  勇君    森  喜朗君       阿部未喜男君    鈴木  強君       武部  文君    米田 東吾君       大野  潔君    田中 昭二君       竹内 勝彦君    山本悌二郎君       藤原ひろ子君    伊藤 公介君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君  出席政府委員         外務省経済局長 手島れい志君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         郵政政務次官  亀井 久興君         郵政大臣官房長 林  乙也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省電波監理         局長      平野 正雄君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    国広 道彦君         外務省経済局外         務参事官    遠藤  実君         通商産業省通商         政策局国際経済         部長      真野  温君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         日本電信電話公         社総務理事   山本 正司君         日本電信電話公         社総務理事   好本  巧君         日本電信電話公         社総務理事   山内 正彌君         日本電信電話公         社総務理事   長田 武彦君         日本電信電話公         社総務理事   玉野 義雄君         日本電信電話公         社技術局長   前田 光治君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     森  喜朗君   倉石 忠雄君     玉生 孝久君   河本 敏夫君     石川 要三君   椎名悦三郎君     玉沢徳一郎君   廣瀬 正雄君     大坪健一郎君   小宮 武喜君     山本悌二郎君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     河本 敏夫君   大坪健一郎君     廣瀬 正雄君   玉生 孝久君     倉石 忠雄君   玉沢徳一郎君     椎名悦三郎君   森  喜朗君     足立 篤郎君   山本悌二郎君     小宮 武喜君     ――――――――――――― 四月十一日  弱視児用拡大図書郵送料免除に関する請願  (千葉千代世紹介)(第二九五六号) 同月二十日  弱視児用拡大図書郵送料免除に関する請願  (竹内猛紹介)(第三〇六二号)  同(千葉千代世紹介)(第三〇六三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通信放送衛星機構法案内閣提出第三三号)  逓信行政に関する件(日本電信電話公社の資材  調達問題)      ――――◇―――――
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  通信放送衛星機構法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員 この通信放送衛星機構法案でございますが、いままで日本におきましては、この十数年来いろいろな宇宙開発研究をしてまいったわけですが、これを踏まえまして、国民生活の向上のために実用衛星分野に初めて手をかけるわけでございます。したがいまして、これは宇宙開発日本の歴史の中で非常に重要な一時代を画するとともに、やはりこういったことが日本科学技術全体の進歩発展のために非常な意義があるということになるわけでございまして、この重要な意義を担っているこの機関をどうするかということでございますから、本機構が成立するというようなことになりますとこれは大変な問題、非常に重要な問題でございますので、基本的な問題について二、三御質問を申し上げてみたいと思うわけでございます。  最近におきますところの宇宙利用宇宙開発、こういった問題は世界情勢が非常に進んでおります。ですから、日本もこれにおくれることはないように積極的にひとつやらなければならないと思っておるわけですが、その中でも、国民生活に必要な通信衛星並びに放送衛星の問題でございまして、まず第一に、私は通信衛星についてお尋ねいたしたいのですが、通信衛星の国際的な現状と申しますか、開発途上国においてもこの通信衛星を打ち上げている。あるいはまた、米ソ両国においても非常に発達しているということでございますから、簡単にひとつ、世界におきます通信衛星利用現状を御説明願いたいと思います。
  4. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  通信衛星宇宙利用の中で最も早く実用化された分野でございまして、まず国際通信の面におきましては、現在、国際電気通信衛星機構インテルサットというふうに呼んでおりますが、この機構が幾つかの衛星を打ち上げまして、グローバルな回線系を構成をしておるわけでございます。約四千回線電話または十二チャンネルのテレビ伝送できるいわゆる四号系衛星を六個打ち上げております。また、電話六千回線通信容量を有する四A号系衛星を五個配置いたしております。さらにインテルサットは、将来の通信需要を賄うためにさらに大容量通信容量を有する五号系衛星を一九七九年には打ち上げようという予定にしておるわけでございます。  また、ソ連中心とする国際的な組織といたしまして、いわゆるインタースプートニクというのがございます。この組織による衛星インテルサットとは異なりまして、十二時間周期の移動型の衛星を使用しておったわけでございますが、最近静止型衛星も導入しておるというふうに聞いております。  一方、各国における国内通信用衛星につきましても相当な発展が見られておるわけでございまして、カナダは一九七二年に最初の衛星アニクAを打ち上げまして以来、三個の衛星実用に供してまいりましたが、昨年十二月には第二シリーズのアニクB衛星を打ち上げております。  またアメリカにおきましては、国内通信衛星に関する政策が一九七二年FCCによって決定された後、相次いで数種の国内通信衛星システム建設申請が行われまして、現在三つのグループがそれぞれ二個の衛星を打ち上げまして国内通信の用に供しておるほか、さらに二つのグループが独自の衛星を打ち上げる計画を進めておるという状況でございます。  またヨーロッパにおきましては、フランスと西ドイツが共同して実験用通信衛星を打ち上げ、イタリアも実験用通信衛星を打ち上げております。  また、ヨーロッパ宇宙機関といたしましてESA、イーサというふうに呼んでおります組織がございますが、このESA衛星技術の確立を目的とした軌道試験衛星を一九七八年に打ち上げております。この機関は、この軌道試験衛星を基礎といたしまして、一九八〇年代早期ヨーロッパ地域用大型通信衛星ECSの打ち上げを計画しておるというふうに聞いております。  また、先ほど先生から御指摘ございました開発途上国におきましても、衛星利用した国内通信網建設計画を意欲的に進めておるところでございまして、すでにインドネシアでは一九七六年にパラパ衛星を打ち上げまして、現在二個の衛星を使って国内衛星通信システムを運用しております。余剰の通信回線をフィリピンに賃貸することにしておるというふうに聞いておるわけでございます。  このほか、最近、船舶を対象とする海上通信衛星計画が急速に具体化してまいっておる状況でございます。  以上でございます。
  5. 宮崎茂一

    宮崎委員 通信衛星の方は世界の大勢がわかりましたが、放送衛星についてでございます。これは技術的にも非常にむずかしい、こういうふうに言われておりますが、いま世界各国におきまして研究段階だというふうな話がございますが、この放送衛星についての実態はどうか。時間がございませんのでごく簡単でいいですから、ひとつ世界情勢説明願いたいと思います。
  6. 平野正雄

    平野政府委員 それでは、放送衛星につきまして概要を申し上げたいと思います。  放送衛星からの電波を各家庭で受信できるようにするためには、通信衛星に比較をいたしましてきわめて大きな送信出力を有する衛星と、できるだけ簡易でかつ安価な受信機が必要になるわけでございます。  アメリカは一九七四年に応用技術衛星を打ち上げまして、アラスカ、ロッキー、アパラチア地域で一年間の保健教育放送等実験を行いました。また引き続きまして、この衛星をインド洋の方に持ってまいりまして、教育放送実験を一九七六年まで行いまして大きな成果をおさめておるわけでございます。  またカナダにおきましても、一九七六年には通信技術衛星、いわゆるCTSというのを打ち上げまして衛星放送実験を行っておるわけでございます。  ソ連におきましても、一九七六年には放送衛星エクランというのを打ち上げまして、主としてシベリア及び極北地方における共同受信ネットワークに対しましてテレビジョン放送実験を行っている模様でございますが、詳細は不明でございます。  このほか、先ほど申しました欧州宇宙機関ESAにおきましては、一九八二年ごろに実験用衛星を打ち上げることといたしまして、また、北欧諸国におきましても、一九八〇年代中ごろに実用衛星を打ち上げようとしておるというような状況でございます。  このほかにも、イランあるいはインド等におきまして、通信放送を兼ねたような衛星計画を持っておるというふうに承知をいたしております。
  7. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは、日本通信衛星並びに放送衛星現状についてお尋ねいたしたいと思います。  郵政省の方で、CSとかBSという実験用衛星を打ち上げられておるわけですね。「さくら」とか「ゆり」とかいうのを打ち上げられております。これが大丈夫だというめどがついたからこの機構もおつくりになるということだと思うのですが、この実用化が果たして大丈夫かどうか、この実験過程での経験を通じて大丈夫かどうかという点をひとつ御説明していただきたい。  そしてまた、できればひとつ具体的に、この実験用に使った衛星は絵がかいてありますからわかりますけれども、今度実用で打ち上げられるのはどういうところにどのぐらいのものを打ち上げるのか、大体これと同じなのかどうか、そういった実態的な点までひとつ御説明を願いたい。  私が申し上げているのは、実験を通じて本当に実用衛星を打ち上げる可能性について自信があるかどうかということと、どんなものかということがわかっておれば、またついでに費用はどのくらいかかるのか、その辺のことを詳しくひとつわかるように御説明を願いたいと思います。
  8. 平野正雄

    平野政府委員 まず実験用容量静止通信衛星でございますが、CSあるいは「さくら」と呼んでおりますけれども先生承知のように五十二年十二月に打ち上げられまして、昨年五月から郵政省中心として実験をいたしております。現在きわめて順調に実験が行われておるという状況でございます。  具体的にちょっと申し上げますと、電波研究所鹿島支所主局中心といたしまして、電電公社通研が横須賀にございますが、そこに副送受信局、仙台に簡易型の送受信局離島などに可搬型送受信局、あるいは各地を移動する車載型の送受信局、こういったものを使用いたしまして、一つ衛星を用いて同時に多数の地球局相互通信を行う実験、あるいは車載型送受信局を用いて全国各地域から臨時通信回線設定する実験、あるいは準ミリ波帯電波の伝わり方に関する実験、その他必要な実験を順次行っているわけでございます。  現在までの実験によりますと、衛星に搭載しております通信機器はきわめて良好に動作をしておりまして、通話の状態は良好で、陸上の電話回線を使用した場合と同程度品質が得られておるということでございます。  また、準ミリ波帯電波の伝わり方に関する実験でございますが、周波数が非常に短いものでございますので、長時間の降雨による影響等データを得る必要かあるわけでございますが、現在、短期間の実験では十分な評価はできないわけでございますけれども、現在までのところ、当初予測をしたデータにほぼ近い測定値が得られておるという状況でございます。  これらの実験は三年間にわたって行われるわけでございますが、これまでの実験結果から、同衛星はおおむね予測どおり性能を有しておるということが確認されたわけでございまして、通信衛星をできるだけ早期実用化できる見通しを得たいというふうに考えておるわけでございます。  一方、実験用中型放送衛星、これはBSあるいは「ゆり」というふうに呼んでおりますけれども、これは通信衛星に若干おくれまして五十三年の四月に打ち上げられまして、七月から、これも郵政省中心になって実験を開始をし、現在まで順調に実験が行われております。  具体的には、電波研究所鹿島支所主局から各種のテストパターンや、あるいはテレビジョン画質評価用に作成をいたしました技術評価試験信号を送出をいたしまして、BSからの電波全国各地に設置をした簡易受信局受信専門局、可搬型送受信局によって受信をして各種実験を取り進めておるわけでございます。  BS実験状況といたしましては、全国的に実施をした受信可能区域測定実験によりますと、晴天時において日本本土の大部分の地域では、パラボラアンテナ直径メーター級簡易受信装置で良好に受信ができておる。いずれも、五段階評価評価程度の鮮明な映像が得られておるという状況でございます。電界強度が低くなる小笠原などの離島におきましては、一メーターアンテナではなくて、直径四・五メーター級アンテナで受けるわけでございますが、同じく評価程度映像が得られておるという状況でございまして、これらの状況は、いずれも当初予測をいたしました計算値に近いものというふうに考えております。  次に、可搬型送受信局によりまして全国どのような地域から送信した場合でも衛星放送ができるかどうか、また、その際テレビ信号の切りかえが円滑に行えるかどうか、いわゆる割り込み中継可能性でございますが、そのような実験全国各地において実施をいたしましたが、いずれも良好な結果を得ておるということでございます。  また、降雨、降雪時における衛星電波受信に与える影響などにつきましてもデータ取得を行っておるところでございます。  そのほか、将来の新しい放送方式を検討いたしますために、高品質ステレオ音声信号伝送あるいは高品位テレビ信号伝送あるいはまた静止画放送方式伝送等実験を行ったわけでございますが、これらの実験は三年間にわたって継続することにいたしております。いずれも相当良好な成果を得ておるということでございまして、これまでの実験結果から、同衛星はおおむね予期どおり性能を有しておるということが確認されておるわけでございまして、できるだけ早期実用化できる見通しがついたというふうに存じておるわけでございます。  次に、お尋ねのございました経費関係でございますけれども通信衛星二号、いわゆる第一代目の実用衛星でございますけれども昭和五十七年度にいわゆる実用通信衛星の本機を打ち上げる、一年おくれまして昭和五十八年度に予備機を打ち上げる予定にいたしておりますが、その製作、打ち上げの所要経費は約五百四十億円でございます。その内訳といたしましては、衛星製作費に約二百二十億円、ロケットの製作費に約百九十億円、打ち上げから静止衛星投入までの諸経費、これが約百三十億円でございます。  以上でございます。
  9. 宮崎茂一

    宮崎委員 非常に膨大な金がかかるわけですが、大臣科学技術というのは、この前一遍「あやめ」ですが、失敗したということもございましたが、これは打ち上げの技術だと思いますけれども、非常に先端の科学技術実験して本物に乗せよう――いま、自信があるのだ、こういう話ですが、非常に金がかかるわけですね。これはやはり大臣政治力で本当にやるのだという気がないと、途中で一遍失敗したからということを考えているとこれはなかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。私はそれを非常に心配しているので、どこまでも、これは世界各国でもどんどんやっているのだから、日本科学技術の第一線からおくれないように、金はかかってもやるという大臣の決意のほどを聞かしていただきたい、こういうふうに思っておりますが、どうですか。
  10. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 御指摘のとおり相当の金がかかる問題でございますので、私どももいろいろ気を配りながら関係各省と折衝をしているところでございますが、幸い、宇宙開発事業団の方でも熱意を込めてやりたいということでありますので、当然私どもも一生懸命これが成功するまで続けていきたいと考えております。
  11. 宮崎茂一

    宮崎委員 それではこのCS2、BS2についてお尋ねいたしたいと思いますが、CS2、この新しい通信衛星を導入することによりまして、いままでの通信体系が大分変わるのじゃないか、あるいは一部において不要なのができるのかどうか、私にもよくわかりませんが、こういった影響が非常に大きいと思うわけでございますが、その点はCS2の利用目的についてどういうお考えを持っておいでになるのかお伺いいたしたい。  また、ついでに、余り時間がないそうでございますので、BS2についても、その利用について、これも既存放送地上局既存地上放送に与える影響が非常に大きいのじゃないか、あるいはこれはどうなるのかな、混乱するのかなというような心配もいたすのですが、その辺も明快に、新しく衛星を打ち上げてもこうなんだということを簡単にひとつ説明を願いたいと思います。
  12. 平野正雄

    平野政府委員 まず通信衛星二号の利用目的でございますけれども通信衛星は、将来におきましては衛星通信技術発展及び通信需要の増加と多様化によりまして各種利用形態が考えられるわけでございますけれども、第一世代の通信衛星二号につきましては、建設省、警察庁、消防庁といった行政機関等国民の人命、財産の保護等のために開設をいたします公共業務用通信回線、及び電電公社開設をいたします国内公衆通信業務用回線として使用いたしまして、おおむね次に申し上げるような目的利用することといたしておるわけでございます。  まず一番目には、非常災害時等に備えまして地上系重要回線予備回線設定するとともに、事故現場等との連絡回線設定するということでございます。第二番目には、地上系通信システムでは通信設定が困難な離島及び辺地等との通信回線を確保することでございます。なおこのほか、特殊な催し物等の行われる現場との通信のために必要となる臨時回線設定であるとか、あるいは地上系通信回線が一時的に集中した場合の迂回ルート用通信回線設定にも利用することができるというふうに考えております。  要は、通信衛星赤道上空三万六千キロメートルというようなところに静止をいたしておるわけでございますので、地上回線とは違ったメリットがある。いわゆる地上におきまして非常災害が起きますことに対処いたしまして、有線と無線とを相互にループ化いたしましたり対応させて考えておるのに対しまして、さらに宇宙一つ中継局ができた、しかも高角度通信回線が得られますので日本全国至るところから通信ができるというような点に着目をいたしまして、ただいま申し上げましたような使用方法を現在考えておるということでございます。  次に、実用放送衛星利用目的でございますけれども放送衛星につきましては、全国あまねく普及させることが放送法によって要請されておりますNHKテレビジョン放送の難視聴解消のために使用することを当面の目的としております。できる限り早期実用放送衛星を打ち上げるために、その設計、製作に必要な基本的事項について関係機関か協力をして研究を進めていくことになっております。  また、放送衛星教育分野における利用効果はきわめて大きいものがあろうというふうに考えられるわけでございまして、ことに衛星利用した場合は、従来の地上系を用いた場合に比べまして全国的規模で同一時期に実施が可能であり、かつ経済的にも有利であるというふうに考えられますので、今後における需要動向を十分把握しながら衛星利用計画を決定していく必要があろうというふうに考えております。  この放送衛星につきましても、先生承知のように非常に高角度放送日本列島に降ってまいりますので、難視聴対策等には非常にいいばかりではなくて、同一の番組が全国同時に放送できる、そういうメリットがあるというふうに考えておるわけでございます。
  13. 宮崎茂一

    宮崎委員 衛星の打ち上げは五十七年と五十八年というふうに聞いておりますけれども、まだ三年くらい余裕がありますが、どうしてもこの五十四年度で衛星機構をつくらなければならぬか、今国会でやらなければならぬかどうか、その点をひとつお伺いいたしたい。
  14. 平野正雄

    平野政府委員 お答え申し上げます。  わが国の宇宙開発成果をできるだけ早く国民に還元しようということでございまして、実用通信衛星につきましては昭和五十七年度に打ち上げるということが宇宙開発計画で決定されておるわけでございますし、また実用放送衛星につきましても同じ趣旨から五十八年度をめどに現在各関係機関と調整中という状況でございます。このような状況に対処をして、これらの実用衛星管理等を行ういわゆる通信放送衛星機構をできるだけ早く設立をして体制を整える必要があるわけでございますけれども、これは衛星製作、打ち上げにどうしても四年かかるわけでございます。また、地上施設用敷地取得局舎及び設備の建設並びに施設を運用する要員の訓練、そういったことを考えますとどうしても四年を要しますので、本機構昭和五十四年度に設立したいというふうに考えるわけでございます。
  15. 宮崎茂一

    宮崎委員 次に、出資の問題ですが、これは政府政府以外の者が出資するということになっているわけです。そしてまた電電公社法律改正とか日本放送協会法律改正が出ておりますが、そういったところも出資するのだろうと思いますが、出資はどうなっているのか、どこが幾ら出すということがはっきりと決まっているのか、比率が決まっているのか、あるいはまた、民間の方で出したいという人があったらそれを受け入れるのか、その点についてひとつ簡単に説明願います。
  16. 平野正雄

    平野政府委員 機構の初年度の資本金は八億四千万円となっておりまして、政府及び政府以外の者が四億二千万円ずつ出資をするということにいたしております。この政府以外の出資者といたしましては、当面、電電公社NHK及び国際電電の三者が見込まれておるわけでございます。
  17. 宮崎茂一

    宮崎委員 その三者以外のところで、あるかないかわかりませんけれども民間出資したいというときには、この後の条文を読んでみますとそういうことが可能なような気がしますが、いまのところ予定はしていないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  18. 平野正雄

    平野政府委員 現在は先ほど申し上げたいわゆる三者を考えておるわけでございますが、これは先ほども説明申し上げましたように、いわゆるきわめて公共性の高い業務としてスタートするわけでございます。したがいまして、電電公社国際電電あるいはNHKといった、直接すぐに公衆通信利用していくあるいは放送利用していく、あるいは将来の利用が見込まれる者を当面考えておるわけでございまして、それ以外の出資者につきましては将来の問題として慎重に検討を進めてまいりたい、こういうように考えております。
  19. 宮崎茂一

    宮崎委員 出資者利用者という問題がありますね。地上局をつくって宇宙局をつくって利用する人、これは新聞社とかいろいろな情報機関その他も利用したいということになると思いますが、出資者だけしか利用できないのか、そのほかの人は後からでも十分な利用ができるのか、利用しようという人に対して何か郵政大臣が制限を加えるのかどうか、認可になるのか、その辺のところ、出資者利用者の関係についてちょっと説明を願いたいと思います。
  20. 平野正雄

    平野政府委員 機構通信衛星または放送衛星に搭載された無線設備を利用するための資格といたしましては、本法案の第二十八条第一項第三号の規定によりまして当該無線設備を用いて無線局を開設する者となっているだけでございまして、機構への出資の有無によって利用に制限を設けることは現在考えてないわけでございます。したがいまして、機構出資者であるか否かを問わず、機構衛星利用契約を締結するとともに、当該無線設備を用いて無線局を開設することにつき、電波法によりまして郵政大臣の免許を得た者は機構通信衛星または放送衛星に搭載された無線設備を利用することができるということになっておりまして、機構出資者となる特定の機関しか利用できないというふうには考えていないわけでございます。
  21. 宮崎茂一

    宮崎委員 それで大体わかったような気がしますが、なるべく利用したいという人は今後も利用させるようにした方がいいと思うわけであります。  それから第二十八条にございますが、業務内容ですが、いままで宇宙開発事業団というようなものもございますし、そういったような関係利用機関との関係、それがどういうふうになっているのかちょっとわかりにくいのですが、そういった問題。  それからいま一つ、この前から経緯を聞きますと、これは認可法人になっているわけですね。特殊法人にはしなかったのか、その点の問題。  あるいはまた、宇宙開発事業団というのがあるわけですから、機構上それにはやらせられないのか。  つまり私が申し上げているのは、新しい機構をどうしてもつくらなければいかぬかどうか、いままで類似な宇宙開発事業団もございますし、また、新しいものをつくるにしてもそういった特殊法人ではできないのか、どうして認可法人ということにしたのか、その辺のことを、私も多少は知っておりますけれども、はっきりとひとつ御答弁願いたいと思います。
  22. 平野正雄

    平野政府委員 まず、特殊法人としないで認可法人とした理由でございますけれども通信放送衛星機構の主要な業務というものが、ただいま先生が読み上げられました業務といたしまして定まっておるわけでございまして、衛星利用して通信放送を行おうとする利用機関に対して衛星搭載無線設備を提供することでございます。事業経営的な性格を非常に持っておる。したがいまして、民間の創意工夫と協力によりまして一層の発展が期待されますので、民間の発意により民間の事業として行うことが適当である。一方、宇宙条約等から参ります国の役割、あるいはやっと実用の緒につくということでございまして、宇宙通信利用の促進というふうな面を考慮いたしましたときに、特殊法人というよりも認可法人ということが最も適当であろうというふうに考えたわけでございます。  また、宇宙開発事業団がありながらこの機構をつくる必要性についてでございますけれども宇宙開発事業団は、先生よく御承知のように、採算にとらわれないで、国が出資する経費によって宇宙開発業務を実施するものでございまして、いわゆる収支相償の原則によって最も効率的に運用されることを要する実用衛星施設提供業務といったものとはその業務の性格が基本的に異なっておるというふうに存ずるわけでございます。また、昨年の三月に宇宙開発委員会によってまとめられました宇宙開発政策大綱によりますと、宇宙の実利用段階での人工衛星の管理につきましては、その人工衛星を用いて事業を行うものが適切な能力を持つ場合には、みずから実施をしていくことの方針が決定されたわけでございます。このような理由から、実用衛星の管理運用に当たりましては、宇宙通信政策上、わが国の衛星通信及び衛星放送の円滑な発展を期するために、通信及び放送分野における各利用機関技術、資金等を集約するとともに、各利用機関の利害を中立的な立場から調整するようないわゆる法人を新たに設立しようとするものでございます。
  23. 宮崎茂一

    宮崎委員 最後に大臣に一問お尋ねいたしたいのですが、この法案を読んでみますと「郵政大臣」というのが大分出てまいります。つまり私はこう考えるのですが、郵政大臣の認可許可といった面が非常に多い、それは反対から見ますと、それだけに国は、これは新しい問題ですからやはり金を相当出していかなければならぬ。いろいろとございますけれども、これを成功させるために監督を強化すればするほど、やはり金をうんと出すというようなことでやらなければいかぬのじゃないかと思いますが、そういうことについて御所感を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 御指摘のとおり、相当額国が負担をしなければならぬということは覚悟いたしておりますので、関係各省と十分連絡しながら、いま折衝を続けようといたしておるところでございます。
  25. 宮崎茂一

    宮崎委員 以上で終わります。
  26. 石野久男

    石野委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十一分開議
  27. 石野久男

    石野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。久保等君。
  28. 久保等

    ○久保(等)委員 ただいまは通信放送衛星機構法案の審議中なんですが、その中で取り上げるのはいささか門違いなんですが、しかし一応そういう形で、東京ラウンドの問題に関連いたします通信機器の開放問題についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  本年の二月二十二日の当委員会で、私やはりこの問題についてお聞きをいたしました。しかし、二月二十二日の当時の情勢と今日とでは非常に激しい動きがございました。特に大平総理がこの三十日にアメリカを訪問するという事態を前にいたしまして、きわめて異例と思われるような急ピッチに事態が動いてまいっておるようでありますが、私ども、かねがねこの通信機器開放問題について、将来の日本にとって非常にゆゆしい事態を引き起こすことを憂えてこの前も質問をいたしたのですが、最近までの動きを見ますると、非常に無原則的な、譲歩に譲歩を重ねて、結局通信機器調達の問題について一部の本体にかかわる開放をするといったようなことが伝えられておりますが、果たしてどの程度の一部本体の開放を図るのか、われわれ新聞等で若干の状況は見たり聞いたりいたしておるわけですが、定かなことはわかりません。やはりあの三月二十九日に行われました日本から参った牛場さん、アメリカのストラウスさん、この間における会談。以前の問題は別として、この会談そのものが、当時決裂をしたと申しますか、物別れに終わった、こういうことであったようですが、外務省おいでになっていますか。――それで、この当時の日本側の具体的な提案というものはどういうものであったのか。詳細なことは別として、できるだけ具体的に、しかもこの間の経緯についてひとつ当時の情勢の御説明を願いたいと思います。
  29. 国広道彦

    ○国広説明員 三月末に牛場代表がワシントンに参りまして、交渉を詰め切れないままに戻って来られたことは御存じのとおりでございます。その後、今月の初めに園田外務大臣が訪米されました際に、アメリカ側の考え方が果たして那辺にありや、どの程度のところで交渉をまとめるつもりであるかというような点につきまして、大臣いろいろな方面に会われましてその真意を探る努力をしてこられました。その大臣の御判断は詳細にわたっては私つまびらかにしておりませんが、その大臣の御判断に基づきまして、来る大平総理の訪米の前に、できるものならこの具体的問題は解決したいということが日米双方の意向であるから、その解決のために政府双方でできる最大限の努力をしようという方針を立てたのでございます。その方針に基づきまして過去数日間、ワシントンのわが方大使館の東郷大使とストラウス特別代表、その他ストラウス代表のもとにある関係幹部との間におきまして非公式に何度か会合が行われております。  その最終的会合に、現時点まで私どもとして申せますのは、いまだ具体的な結論を得るに至っていないのでございます。交渉中のといいますか、折衝中のことでございますので、詳しいことは申し上げられずに残念でございますけれども、日米双方にとりまして最も都合のよい状態と申しますのは、総理の訪米の前に一定の具体的解決案を得まして、それを仕上げるためにたとえばストラウス特別代表が日本に来られてそこで確認をするとか、そういう手順が踏めれば一番よいということで、その準備をしているわけでございます。しかしながら、本日すでに二十五日でございますが、具体的結論を得るに至っていないのが現状でございます。
  30. 久保等

    ○久保(等)委員 政府調達コードは一九八一年、すなわち明後年の一月一日から発効するというような性格のもののようですが、したがって日米間の妥協点を見出す努力はもちろん一層努めてまいらなければなりませんが、大平総理が訪米をされるところに焦点を合わせて今日までいろいろ努力をしてこられたのでしょうが、その中身は外務省の方から、妥結をした状態でないからということで具体的な経過の説明がないのは、私も外務省の立場としてはある程度理解できます。しかし、少なくともこれは公知といいますか、新聞その他の報道機関が伝えまするように、大変な譲歩に譲歩を重ねてまいっておる。これが一体どういう根拠でこういうアメリカ側の要求、またそれに対してこちら側がだんだんとそれこそバナナのたたき売りのような形でもって譲歩に譲歩を重ねていくというようなことは全くわれわれには理解できないわけでして、すでに四月十二日にジュネーブにおけるECとの間におけるこの東京ラウンドの問題について一応妥結を見て仮調印がなされた。これは一体どういう中身になっていますか、アメリカ側の要求と対比して。
  31. 国広道彦

    ○国広説明員 四月十二日にこの東京ラウンド交渉は全体として実質妥結をいたしました。その妥結の重要な一つの要素といたしまして、現在御討議の政府調達関係の規約づくりがございます。そこで合意されておりますことは、規約の枠組みについてでございます。この枠組みについてはわが政府としても別に異存はございませんで、種々話し合いの結果、わが方といたしましても合意し得るラインというものが出たのでございます。しかしながら、それの適応の対象となる物資が何であるか、機関が何であるかということについて今後確定をしていくわけでございます。それを今年中に大体確定をしまして、その確定した内容を相互に見合いまして、仮にECの出すものと日本が出すものとの間におきまして均衡がとれてないというようなことになりますと、極端な場合には、EC側は日本に対してこのコードを相互に適用しないという状態が生ずるわけでございます。  また、同様のことはアメリカについても同じでございまして、ほぼ均衡がとれた実質を得るということがこれからの作業でございまして、いまアメリカとの間でやっております電電公社中心としました政府調達の交渉というのは、まさにこれから仕上がっていくものは相互に満足し得るものであるかどうかということに達するための努力でございまして、四月十二日の枠組みの次の段階の話でございます。
  32. 久保等

    ○久保(等)委員 ちょっと不分明なお答えなんですが、ジュネーブで仮調印されたEC諸国との間の東京ラウンド交渉では、政府関係調達物資は門戸開放の対象からお互いに電気通信施設については外すのだということを確認し合っているんじゃないですか。
  33. 国広道彦

    ○国広説明員 お答え申し上げます。  EC側としましては、電気通信施設は今回の適用の外であるというふうに申しております。
  34. 久保等

    ○久保(等)委員 申しておるだけじゃなくて、これは合意したのでしょう。
  35. 国広道彦

    ○国広説明員 合意したのは政府調達の取り決めの枠組みでございます。コードそのものでございます。コードの適用となるものにつきましてECの方が電気通信施設を対象外とすると言っていることは、われわれとして承知しておるわけでございます。
  36. 久保等

    ○久保(等)委員 それに対して日本側の態度はどうなんですか。
  37. 国広道彦

    ○国広説明員 目下この電気通信施設につきましては日本自身がアメリカ側と交渉しているところでございます。したがいまして、日本がどの程度この政府調達の中に電気通信施設を含めるかという点について日本自身が今後決定をするわけでございますので、われわれはECに対しましてはこれから決定するわけでございます。
  38. 久保等

    ○久保(等)委員 そういう態度そのものもきわめて不可解千万な話です。それが非常に不満であるならこれはもちろん将来に問題を残すことは結構ですが、われわれの理解するところ、また当然そうあるべきだと思うのですが、電気通信施設を外そうというときに、日本の現在の通信機器技術水準の問題、日本の現在における通信ネットワークの現状、そういった問題から考えて、こっちの方がひとつ大いに開放しようじゃないかというような提案をするようなそんなばかなことはこれはあり得ないし、またそんなことは考えてないと思うのですが、結局アメリカとの交渉があって煮詰まっていないから、向こうの方から申し出があるけれども、こっちの方ではこれを現在のところはひとつたな上げしておこう、そういう態度にしかとれないのですが、なぜ好ましい契約というか、お互いの話し合いがまとまればまとまったでけじめをつけていかないのですか。むしろそういう情勢の中で、アメリカに対して不当な要求に対しては理論的にも現実的にもきっちり断るという態度をとるべきだと思うのですが、なぜわざわざそういう申し出があるものを未解決のままに放置するのか、これはどうしても納得できない。いま御答弁のあったようなそういった考え方なんですか。
  39. 国広道彦

    ○国広説明員 ただいま私が申しました電気通信施設をECの政府調達の提案の中に含めないということは、ECの決定でございます。それに対してわが方がいかなる態度をとるかは決めておらないと申し上げたのでございます。  アメリカとの関係に関する御質問の部分でございますが、アメリカとの関係におきましては、この政府調達の問題は、一つには政府調達の対象とすべき金額全体の問題と、それからもう一つは、日米間の経済関係全体における電気通信機器に関する貿易の問題と双方がございまして、その双方から考慮しまして、電電公社の調達に入札できるようにしてほしいという米側の強い要求にどういうふうに対処するかという観点からも取り扱っておるわけでございます。
  40. 久保等

    ○久保(等)委員 アメリカの問題はまたアメリカの問題としてお尋ねしますけれども、しかし、少なくともEC諸国との関係における問題は、新聞等では合意したというふうに伝えられておったのですが、それは誤報ですか、お尋ねします。
  41. 国広道彦

    ○国広説明員 大変失礼でございますが、ちょっと質問が聞き取れませんで……。
  42. 久保等

    ○久保(等)委員 私が少なくとも新聞等で聞き及んでいる限りにおいては、いま私のお尋ねしている電気通信機器の問題について、電気通信設備を外すというようなことについては合意したというふうに聞き及んでいるのですが、新聞等でそう伝えられたことは誤りだったということですか。
  43. 国広道彦

    ○国広説明員 ECは電気通信施設を含まないという決定をして、その決定の上でECの提案を出しておるわけでございます。それはわが方として合意するしないの前に、ECはその方針をもう変えないということでございますので、あとはわが方がオファーをするときにどういうオファーをするかという問題でございまして、合意したのは枠組みでございます。
  44. 久保等

    ○久保(等)委員 事実がそういうことであれば事実は事実としてお聞きいたしますが、とても理解に苦しむところです。これはまた、総理も後でおいでになりますから、そのときにお尋ねすることにしたいと思います。  ECがそういう態度をとっておることも、いままでの過去の経験に徴してそういった考え方にならざるを得ないのだと私は思うのです。かつてイギリスの問題、当委員会でこの前も質問の中でちょっとお尋ねしましたが、一度随意契約を競争入札という形でやってみたが非常にうまくいかなかった、そういう経験にかんがみてまたこれをもとへ戻して今日随意契約という形でやっておる。そういったような経験なり苦い体験等から出ている、これはイギリスの例なんですけれども、そういったことだろうと思うし、それからまた、技術的に外国から導入しなければならぬほど技術水準が低ければ別ですよ。そうでもないとすると、これはイギリスあたりのそういった苦い経験からして、ECの場合にはいまお話があったようにすでにEC間においては一つの決定というか結論的なものを明確に出しておるということがいまのお話で理解できるわけなんですが、そういった一つの提案があったものを、あえて日本がこれに対して待ってくれというような形で、その問題についての合意というところには持っていっておらない、そういう外交の進め方自体にも問題があると私は思いますが、これは議論になりますからここでは差し控えます。  同時に、アメリカ自体の場合についても、一体アメリカ自体の現状はどうなんだということを考えてみますと、これも私が申し上げるまでもなく、ATTそのものが自分の子会社、ウエスタン・エレクトリックでもって随意契約でやっておる。またさらにその他の部分についても、これは子会社じゃないけれども他の会社に随意契約でやっておる。言いかえれば競争入札でやっている部分はほとんどないと言ってもいいような状況に置かれておるのです。これは民間であるとか政府調達であるとかということを抜きにして、電気通信事業、電気通信機器というものを考えたときには、施設そのものの持つ重要性あるいは公共性というようなものには変わりはないと思うのです。形式的に民間会社であるからこれはひとつ開放せい、あるいは政府調達であるから開放せい、民間会社であったらそれはいいんだ――その国にとっての通信設備の重要性というものは、これはもう民営であろうと、あるいは公共企業体であろうと、国営であろうと変わらないと思うのですね。だから、そういう点から考えるならば、アメリカみずからが開放しないでおいて、日本にだけ開放しろと言うこと自体がきわめて一方的であり、理不尽であるというふうにわれわれは考えるのですが、外務省は一体その点についてはどうお考えですか。
  45. 国広道彦

    ○国広説明員 御存じのことでございましょうが、米国の電電会社は民営の会社でありまして、いま直ちに政府調達の対象となる会社ではございません。この点は、先生御存じの上での御質問と思います。  その民間会社であるATTに対しましてアメリカ政府は独禁法上の観点から、すでに、余り独占的な契約をしないように、自由公開入札の手続を踏んだ調達が多くなるように、司法的な面から圧力を加えておると言うと変な言葉になりますが、指導を試みております。正確な数字は残念ながら把握し得ませんが、アメリカ側の言っている数字ですと、すでにATTは現在でも一〇%から二〇%近くの調達を外国から行っているということを言っております。これは確認に努力しておりますが、正確なところは確認できないでおります。日本電電公社がカバーする分野のものにつきまして、わか方はアメリカに対してかなり多くの輸出をすでに行っております。  実は、米側としては、わが方に何とかして、現在の大幅な出入アンバランスにかんがみ、日本側に輸出をふやしたいという努力をしております。その一環としまして、一番有望な電子通信機器において何とかして輸出をふやしたいという努力をしますと、やはりこの電電公社の調達問題というものにどうしてもぶち当たりますので、ここで何とかその入札手続に加えてもらう手だてをしてほしいというのがアメリカ側の要望でございまして、そういう日米の貿易関係からいいますと、アメリカの目から見ますと、アメリカが最も得意とするところで、形式上政府の輸入制限はなくても、実質上、非常に輸出しがたくなっているという点が非常に大きな問題となっておりまして、この解決につきまして日本政府の協力を求めてきておるのでございます。
  46. 久保等

    ○久保(等)委員 だから、民間のものであるから対象外だとか、あるいは政府調達関係だから対象になるんだとかいう議論は、あくまでもそれは政府調達規約の面からだけ見ればそういうことになるのでしょう。しかし、その一国にとって電気通信の持つ重要性というものは、民営であろうと、あるいはさっきも申し上げたように国営であろうと公企体であろうと、変わらないわけですよ。だから、そういったものを外国から――一体その技術が非常に劣っているのなら、これは私は導入することはあり得ると思うのです。それを無理やりに、ごり押しに、あれをよこせ、これをよこせといったような物の言い方で開放を求めるというようなことは、私に言わせれば内政干渉だと思うのですよ、率直に言って。しかも、通信というものは、私が申し上げるまでもなく、これは何といったって、その一国にとっての神経系統と言われる基幹的な事業ですね。しかもまた、その持つ使命というものは、余り最近そういったことは言われないけれども通信の秘密確保という問題はこれはプライバシー確保という点から取り上げられておるけれども、単にプライバシーだけの問題じゃなくて、通信の秘密保持という問題は、国家間における秘密ももちろんあるわけです。だから、そういう意味では、通信の持つ秘密保持の問題は国家にとって非常に大変な重要性のある問題だと私は思うのですよ。だから、そういった特殊な任務を持った、しかも公共事業であるわけですね、その中の通信設備の、しかも本体、それでもまだ手ぬるいといったようなことで、かさにがかったような形で次々と吹っかけてくる。これはどう考えても私は普通の常識では理解できませんね。  だから、それが単に政府調達規約の面から見ると、いやそれは民間であるから対象にならぬ、政府になっているからどう、そんな理屈は全く形式的な議論であって、実体というものを見詰めて、その重要性を考えたときにどう扱うべきか。いい例が、いま申し上げたように欧州の場合もそうでない。アメリカ自体も、それは形式的には民間だから対象にならぬとは言っているけれども……。  それから、数字的な問題について必ずしも明確にして把握しておられないようですが、たまたま御答弁になっておられる方がそういったことについてつまびらかでないということならなんですが、外務省として、そういったことについて実態把握はできているのですか、できていないのですか。一〇%とか二〇%だとか、いいかげんな数字を言っておられるが……。
  47. 国広道彦

    ○国広説明員 先ほどの数字で、米側は一〇%ないし二〇%近くと申しておりますが、私どもとしては種々努力しておりますが、非常に正確なところは把握できないでおりますと申し上げましたのは、私個人ではございませんで、外務省ないしほかの機関を通じましても統計的にそこを非常に正確なところまではわからないと申し上げておりますが、一〇%以上とかそういうふうな面ではそう間違いはないだろうという推定でおります。  最初に御指摘の点につきましては、まさに御指摘のとおりの問題意識が私どもにございまして、そういうわれわれ交渉当事者としまして注意しなければいけないことをできるだけ勉強しまして、そこを守りつつ解決の道をたどろうとしておりますそのために、話し合いがいつまでも時間を要し、何度話しても困難をきわめているというのは、まさに私ども自身にそういう意識があるからでございます。
  48. 久保等

    ○久保(等)委員 ですから、そのことは、これは総理に申し上げなければならぬことだと思うし、郵政大臣にももちろん申し上げなければいかぬか、なぜそんなに急いで――政府調達コートの発効が明後年、一九八一年ということになっているようですからね。それをなぜ急いでここのところを、しかも四月二十日なら四月二十日夕方までだとか、何月何日の何時までにまとめなければならぬとか、なぜそんなことを――しかも、フィフティー・フィフティーのお互いに譲歩しようじゃないかというなら、これはまた話はわかりますよ。相手の方はどんどん押す一方で来て、こっちの方だけが何月何日までに結論を出そうと言えば、それは向こうの言う考え方を受けざるを得ない。これは私はどう考えてもまことに理解できないし、これは国民自体も理解できない。けさの毎日新聞じゃないですが、論説を見ても出ておるように、非常にわからない。見出しは「わかりにくい政府調達問題」、よくわからないと。しかも、時間がないならそれこそもうECを含めて、とにかく八月なら八月に発効するんだからというようなら話はわかりますよ。再来年でしょう、それをアメリカだけ特別なケースみたいに扱って、あす、あさってにでも片づけなければならぬ、今度はたまたま大平総理がおいでになるから、大平総理のその訪米までに間に合わせるように片づけよう。そんなあわてることはないし、しかも百年の大計に関する重要な問題ですからね。それで、もともと出ているのが赤字解消の問題なら、赤字解消の問題としてなぜ取り組まないのか。  私は通産の方へお伺いしたいと思うのですが、アメリカ側にすれば日本からの出超によって大変な赤字になっているわけですが、一体この原因というのは、自動車等がアメリカ側から見れば大変な赤字になる最大の原因だと思うのですが、これらの問題に対して一体どう考えているのですかね。それで、とんでもない、通信の非常に重要部分の、中枢神経と言われる通信問題に持ってきている。これはもう私、非常に重大な問題だと思いますよ。だから通産の方にお尋ねしたいと思うのですが、赤字を赤字として、その原因になっている問題について一体どう赤字を解消するのか、そういったことをまず第一義的に考えるべきだと思うのです。その問題に手をつけないで、いわば全く縁もゆかりもないところへ話を持ってきて、もしやられるならば――もちろん通信機器について若干のアンバランスかあるようですが、これもどの程度数字を把握しているのか知らぬけれども、ジョーンズという昨年の年末やってきたあの委員長の報告による資料から見ても、せいぜい日本から行っているのは〇・三億ドル、一億ドルにもならぬですわ。それから、日本の方へ入ってきているのは十数億程度ですから、さらにそれより少ないようですが、とにかくいずれにしたって一億ドルにならぬ話ですよ。それをとにかく最初の案では六億ドル、六億ドルからさらに九億積み上げて十五億ドル、十五億ドルからさらにまた積み上げて二十億ドルあるいはまた二十五億ドルを超えるんじゃないかと伝えられておりますね。それで、とにかくいまの段階でもきわめて厳しい情勢に東郷大使そのものがおられると私は思うのですよ。一体どこにそこまで次々次々と押されなければならぬ理由があるのか。全く主体性がないというどころじゃなくて、これは大変な問題だと私思うのですね。だから、その点は総理はすっかり頭に入れて訪米をされてもらいたいと思うのですよ。  それで、総理がおいでになるまでに何か問題を残しておくとはなはだ申しわけないあるいは恐れ多いからなんという考え方が若干でもあるのならとんでもない話で、総理が行ってカーター大統領と直接――そういった問題かネックになっているのなら、真のパートナーシップというものは本当にお互いに腹を割って理解し合うところにあると私は思うのですね。どちらかが無理をして押し切るなんというのはもってのほかだと私は思います。だから通産として、アメリカから見れば大変な集中豪雨的だと言われる日本側の立場から言っての黒字ですね、その問題についてはそのものずばりで対策なり何か考えておられるんですか。一体どういうことになっていますか、通産は。
  49. 真野温

    ○真野説明員 ただいま久保先生の御質問の日米の貿易赤字の状況でございますが、これは数字等はもう再三御承知のことだと思いますが、昨年、一昨年と百億ドル、昨年は百億ドル超える対米黒字になっておることは事実でございます。ただ一つ基本的に最初の動向としては、対米黒字のみならず、日本全体の貿易の黒字というのが減少、縮小の傾向にある。これはいろいろな原因がございますけれども、そういうことがまず一つあろうかと思います。  それで、先ほど先生から御指摘ありました対米黒字をどう解消するかという基本的な課題でございますが、現在日本アメリカの間に相当日本の出超、アメリカの入超という事態、これはどういう事態になるかと申しますと、われわれが一番避けねばいけないのは、アメリカの中において日本に対する輸入制限というような保護主義の動きが出てくることをまず絶対避けたい、こう考えておるわけであります。したがって、日米の貿易の赤字についてはできるだけ拡大均衡の方向で物を考えていきたい。つまり、アメリカに対するわが国の輸出が制限されるような事態は避ける、これは日本の産業に非常に大きい影響がございますので、それは避けたい。同時に、そうかといって、こういうような赤字が累積することは、アメリカの国内に保護主義なり、いろいろな面での不満、個別の業界からの不満等も累積しておるのは事実でございますから、そういう不満に対してわが国は直接個々の業界に対してはいろいろ話し合いもしたり了解もとっておりますけれども、やはりアメリカ側の日本に対する製品輸出もふえるというような拡大均衡のかっこうでいく、これがお互いの産業活動なり雇用の関係から見て一番望ましい姿だ、こういうふうに考えております。したがって、私どもとしてはそういう意味で日米の関係相互の貿易の拡大の中で均衡していくという考え方でございます。  しかしながら、現状先ほど先生指摘でございましたように、ここ一、二年の間の日米の貿易のインバランスというものがアメリカの国内に非常に一種のいら立ちを生じておるのは事実でございまして、アメリカとしてはやはり日本に対して、象徴的な意味で市場の開放性、日本の市場は閉鎖的でないか、保護主義でないか、こういう意味で市場の開放を求めてくる、こういう状況にあるのは事実でございまして、私どもとしては、そういうような要らざる疑いを避けるためには、日本として、アメリカに対してのみならず世界各国、後進国も含めて開放されているという方向をやはり着実に積み重ねていく、こういう方向でしか解決できないと基本的には考えております。  ただ、先ほどお話しございました電電公社あるいは政府調達問題については、やはり向こう側としては機会均等といいますか、自分らもそういう機会を与えてもらうことを非常に希望しております。そういう意味での市場開放の向こう側の一種の象徴的な要求になっておる形でございます。  私どもの考え方は以上申し上げたとおりでございます。
  50. 久保等

    ○久保(等)委員 考え方だけではなくて、やはり実効上がるように。  問題は、赤字なら赤字で、アメリカ側の立場に立って、日本から大変な出超でもって赤字が出る、それならそれなりにまず第一義的にはそこに重点を置いた解決を図らなければ、それこそ自動車やその他の問題を全く性格の違うところへ持ってきて、しかもそれが強引に一方的に持ってくるなんということは、これは本来通産の問題ですよ。だから通産が中心になって解決しなければならぬと私は思うのです。外務省は窓口ですからそういう立場で外交上やっているんだけれども、問題の本質的な解決というのは、これは通産政策にあるわけでしょう。通商問題にあるわけですから、その点をしっかり踏まえて解決するように。それで仮に徐々に改善の方向に向かっているのなら改善の方向に向かっているで、五年なり十年なりという長期的な計画でも立てるなりして納得させる。全く理屈も何も立たないところで話を持ち込まれて、そういったことに対してこれはまた唯々諾々と、まあ唯々諾々じゃないかもしらぬが、いやだいやだと言いながら結果的には全く御無理ごもっともで話を進めている。しかも、それでもいい顔をまだしてないのですね、率直に言って。私は一体どこらに真意があるのかよくわからないのです。  ところで、この電気通信回線の問題通信のネットワークの問題についてはアメリカが従来からもちろん関心を持っていることは事実ですよ。関心を持つことは結構なんだけれども、最近、今月の十四日ですが、アメリカにある大手の情報処理業者のコントロール・データ・コーポレーション、CDCというんだそうですが、このCDCが連邦通信委員会に異議を申し立てた。その理由は、要するに国際電電が専用線に対しての使用制限をしていた、専用線を開放しろということがアメリカの会社の言い分のようですが、これはひとりこの問題がたまたま出たというだけじゃなくて、従来から回線開放の問題が非常に強くアメリカ側から出てまいっております。これは特に窓口になるのは国際電電だと思うのですが、しかし通信は御承知のように国内だとか国際だとかいうのは何もありません。とにかく世界グローバルにつながるわけだし、したがってそういう点では日本の国内問題とも全く同じなんですけれども、要するに通信回線の開放をしろということをかねがね主張しているわけですよ。そこへもってきて、いま言うコンピューターその他の通信機器の本体をぜひひとつアメリカの物資に開放しろというような問題が出ているわけですよ。そういう問題との関連を無視して今回の通信機器の開放問題を考えるわけにはまいらないです。これはだれが考えても、歴史的に考えてもそういう関係があるわけです。  そうなってくると、ますます日本の電気通信というものに対する日本の立場として、一つの独立国家として、通信回線というものが他国の意向によって実質的に支配されるなんという状態は、少なくとも独立国家としては独立国家の要件を欠くことに私はなると思っています。そういう問題にも私は関連があると思ってきわめて重要視しているわけでして、決して電電ファミリーだとか逓信ファミリーだとかそんないろいろな論説、論説ではございませんが、いろいろなことを言う向きもあるようでありますが、日本の電気通信事業というものをどう守っていくか、どう一体発展をさせていくかという問題は、単に私がいま取り上げた国際電電の問題――日本は情報社会の中で孤立化するのじゃないか、もし通信の秘密が守られる意味で孤立化するなら私はそれで結構だと思うのです。  何か業界も、どんどん開放してもらうことさえやってもらえばいいんだというような考え方ではこの通信回線に対する理解が十分だとは言えないのじゃないかと思っております。最近の風潮は情報データ何でも開放しなさい、それで何でもだれでも自由にやれるようにすべきなんだというような意見が非常に強いのですけれども、一体電気通信というものは本来そういう性格のものであっていいのかどうか。私はそれでは困ると思うのですね。回線そのもの、ある程度通信の秩序という面、それから一元的に運営することによってそれこそ資源的にもむだのないネットワークというものがっくり上げられる。それからまた、乱立することによってはこれは申し上げるまでもなく大変いろいろな弊害が出てくるわけですし、資本投下の面から言ったって大変な資本を要するわけですから、そういう点では、この米大手業者が連邦通信委員会データサービスの問題で異議を申し立てたというつい最近のニュースですけれども、こういったこと等も考え合わせますと、ますますもってこの電気通信機器の、しかも本体に触れて開放しろなどというような問題について、これに簡単に承諾を与えるというようなことは私は断じてあってはならぬと思います。  時間か来ておりまして、実は質問がまだ大分残っておるのですが、私の与えられた時間はきわめてわずかでありますししますので、省略をいたしてまた別の機会にでもお聞きしたいと思うのですが、ただ総理訪米を直前にしていまそれこそ大変なつばぜり合いみたいなかっこうになっているようですけれども、ぜひその根本を誤らないようにしてもらいたいと思うのですね。きょうは本来なら外務大臣あるいは通産大臣に直接御出席を願って、申し上げたりお聞きもしたいと思ったのですが、これは唐突の委員会で取り上げたような形になっておるものですからそれはやむを得ないと思うのですが、とにかくそういう将来の重要な問題をぜひ誤らないようにお願いしたいと思います。  それから、時間がありませんが、最後に郵政大臣に。  郵政大臣のお考えというものは、私は当初の取り組み方についてはよく了承しているつもりです。しかし、その後、先ほど来申し上げますように非常に事態が変わった。その事態が変わった中で時々対応された姿というものは必ずしもりっぱだとは言えないし、特に最近の心境、どういう方針でおられるのかちょっとお聞きしたいと思うのです。簡単にお答え願いたい。
  51. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 私どもと同じ久保委員の考え方をるる承りまして、感銘深く承ったところでありますが、事は外交折衝の問題でもありますので、いま御指摘のとおり、私も非常な複雑な心境のもとにいまおるということを申し上げておきます。  具体的に私も申し上げたいことがございますが、外交交渉でいまつばぜり合いの最中でありますのでできるだけ発言を控えておきたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  52. 久保等

    ○久保(等)委員 終わります。
  53. 石野久男

    石野委員長 次に、武部文君。
  54. 武部文

    ○武部委員 最初に外務省にお伺いいたしますが、いま久保委員からの質問にお答えがありましたけれども電電公社に後で関係いたしますからお聞きするわけです。  譲歩による内容をもとにしてアメリカで東郷・ストラウス会談が行われた。しかしこれは進展をしていない。しかし、外務省の今日までの発表によりますと、そのストラウス・東郷会談の結果を受けて、二十五日、六日、きょう、あした、ストラウス代表の訪日が予定されておる。それは大平総理の三十日の訪米を前にしてそういう計画がある。これはだれも承知しておるところですが、いまのあなたのお話を聞きますと、アメリカにおける東郷・ストラウス会談は不調になった。きょうは二十五日。したがって、大平総理の訪米前のストラウス代表の来日は不可能になった。このように理解していいかどうか、これを聞きたい。
  55. 国広道彦

    ○国広説明員 実は当初最も順調に筋書きがいきますときには、二十五日ごろにはストラウス代表が日本に来るような段取りになるかという筋書きもございましたのですが、先ほども説明しましたように、双方の非公式な話し合いは具体的な結論を得る段階に至っておりません。あと一日ぐらいの間でそういう段階に至りますれば、トンボ返りでストラウス代表が日本に来るということも不可能ではございませんが、いまのところそういうふうな予定を立て得る状態ではございません。
  56. 武部文

    ○武部委員 それではまず最初に、私は去る二月二十八日当委員会で、この公社の資材調達問題について質問をいたしました。当時電電公社が部分開放に同意したというような報道がされました。公社の従来の方針が変わったのか、こういうことを質問をしたわけですが、これに対して公社の秋草総裁は「新聞報道など、私たちは責任を持ったお答えはできません。変わっておりません。」こういう答弁でございました。私は、変わっておらなければ結構だ、それでひとつ進んでほしい、こういうことを述べました。郵政大臣も同様に、このとき私は質問いたしましたが、私どもも心配をし皆さんもいろいろ心配しておられるようなことについては、私どももとうてい許容し得ない問題だというようなことを明確に答えられたわけです。ところが総裁は去る二十日、田中官房長官との会談で、アメリカ側の要求の焦点となっている通信機本体の開放に同意した、こういう報道がされたわけです。これは事実かどうか、これをまず一点。  それから、田中官房長官が秋草総裁を呼んでそのような要求をし、いま申し上げたようなことにあなたが同意したということになっておるわけですが、官房長官が秋草総裁を招いて本体の開放を強く要請したという件について、一体郵政大臣はそういう相談に乗っておったのか、それを御承知だったのか、これをお二人からお聞きしたいのです。
  57. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答え申し上げます。  私は、御案内のように先般辞意を表明した次第もございますので、今日こうした国会の場で答弁をするという資格があるかどうかということを危惧するものでございますが、郵政大臣から切なる依頼もありまして今日まで職にとどまっておりますが、きょうも、それは心配ないからぜひ出席しろということで出てまいりました。このことを前もってお断りしておきます。  ただいまの御質問でございますが、確かにそういう要請がありました。それで私は同意いたしました。事実でございます。
  58. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 ただいま総裁から御答弁申し上げたとおりでございますが、私が承知をしておったのかという問題につきましては、ちょうどあいにくの逓信記念日でございまして、私は外におったというようなことで連絡が十分にまいらない関係もありまして、事後承諾の形になったということでございますので、御了承をお願いしたいと思います。
  59. 武部文

    ○武部委員 いま秋草総裁が述べられたことに関連いたしますが、総裁は、電気通信施設本体の国際公開入札の問題についてついに踏み切らざるを得なくなった、こういう立場からそれに関連をして白浜郵政大臣に総理あての辞表を提出された、こういうことが報じられておりますが、いまもお話しになったわけですが、これについてはいまの私が申し述べたことで全く間違いございませんか。一体あなたの真意は何であるか、それをちょっとこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  60. 秋草篤二

    ○秋草説明員 私はここ長くては六カ月、終始一貫公社の主張を懸命に各委員会に臨みまして述べました。今日まで与野党を問わず電電公社の主張に対しましては御後援、応援していただきまして、また公社も今日の電気通信事業を築き上げるまでには並み並みならぬ先輩の努力というものもあります。この後にはたくさんの従業員も私を叱咜激励して、今日まで世界でも一流の電気通信事業を築き上げることができた。その歴史もございますし、今日まで、いままで私どもの主張したことは少しも間違ってはいなかったということを私は確信を持って言えると思うのでございますが、第一次案、第二次案というものになって、第二次案も非常に忍びがたきを忍んで出したのでございますが、これが意外にも新聞に発表されてしまったし、もうこれで十分いけるという確信を持っておったのですが、意外にまた最後の要請が来た。ちょうど当時私はさっと頭に浮かんだのは、郵政大臣にとにかく相談しなくてはいけないと思ったのですが、時間もきょうの夕方までに出発するんだというようなときでございまして、逓信記念日の四月二十日でございますが、十時半ごろ電話がありまして、すぐ頭に浮かんだのは郵政大臣でございますが、郵政大臣はちょうど式場で大きな式典をやっていらっしゃる、急遽決意するということもなかなか大変で戸惑ったのでございますが、副総裁とだけは相談して、ここまで来ればやむを得ない、大変私は自責の念に駆られますし、特にここ数カ月にわたって与野党を問わず、また与党の方からもわざわざアメリカまで出向かれて、左藤団長以下五人の方まであれだけ御苦労なさった方々に対して本当に申しわけないということで、帰ってきて直ちに郵政大臣におわびと御報告を申し上げまして、私の決意を披瀝した次第であります。
  61. 武部文

    ○武部委員 総裁は、この辞意を漏らされた直後に記者会見ですか、あなたがおっしゃった言葉が報ぜられておりますが、外套を取られた上に次は上着も取られて、最終的にここまで来てしまった、こういうことが報ぜられました。その外套を取り、上着を取った者は、官房長官を窓口とした政府だというふうに私は理解しておりますが、そういうふうにあなたも理解しておられますか。
  62. 秋草篤二

    ○秋草説明員 政府が取れと言っているわけじゃない。これは外交交渉で、アメリカの要請からこの問題が起こったことはもう当然であります。何も政府が喜んで取っているわけではございません。その点は外交交渉の立場でアメリカの要請であるというふうに私は思っております。
  63. 武部文

    ○武部委員 あなたの今日まで一貫してとってこられた当委員会での発言やその他の事情を私どもよく承知をいたしております。したがって、この段階で大変苦渋に満ちておられることもよくわかります。こういうような紛争を起こした責任をとって自分は辞任をする、こういうことを述べておられるようでありますが、少なくとも紛糾させた責任というのは政府側にあると私は思うのです。当委員会も一貫して、各党とも同じようなことを主張し、電電公社も一貫して、郵政大臣も同じ立場でこれを主張し続けてきた。それが今日こういう段階になった。そういう紛糾を起こしたものは文字どおり私は政府側にあると思うのです。先ほど久保委員からの発言があったように、アメリカ側の不当な圧力に屈した、そういう態度が今日この事態を起こしたのであって、そのようにとらなければならぬ。あなたのいろいろな立場から、大変官房長官や大平総理にも意向はよくくんでもらってありがたいと思っておるとか、政府に盾突くつもりはないとか、いろいろなことをおっしゃっておる。それはそれなりに私もあなたの立場からわかります。しかし、現実に起きておるこの事態というのは、われわれから考えれば、いま私が申し上げた以外にはないと思うのです。そういう意味で、あなたは一貫して今日もなお公社の主張してきた態度は誤りないという気持ちを持っておられるか、再度お伺いしたい。
  64. 秋草篤二

    ○秋草説明員 繰り返し申しますが、いままで主張したことは正しい、そういう信念を持っております。  それから、大平総理も当時福岡に行っていらっしゃって、記者会見でその報道を受けて、政府の責任だとおっしゃいますけれども、私は政府にかわって責任をとるなんという大それた、大げさな気持ちは毛頭ございません。私は、電電公社の長く築き上げた歴史と輝かしい現状と、それから私を応援してくださった従業員、幹部、これに対して本当に申しわけない。それから郵政大臣はむしろ私以上に情熱を持って、終始一貫私を叱咜督励し、また応援してくださった、この点は私自身としても狭い意味の電電公社の中でも非常に大きな責任を感じているということでございます。
  65. 武部文

    ○武部委員 大臣はこの秋草総裁の辞意表明についてどのようにお考えですか。どういうふうにいまそれを処理されておるか。さらに、この問題を一つの契機にして政府側の意思統一をさらに図る意思があるかないか、それはどうでしょうか。
  66. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 私も政府の一員であることは間違いがございません。今回の秋草総裁がとりました一連の行為に対しましては、十分私もその立場も尊重しながら、また気持ちも承りながら、私自体もなるほどなと感心をいたしたのでありますが、何しろ先ほどからるる申し上げましたとおり外交折衝のさなかでありますし、また、日本だけのことで解決できる問題でもないというふうな、そうした事態を踏まえまして、従来のような気持ちを失わずにひとつ努力してもらいたいということで、いま慰留という言葉はどうかと思いますけれども、一体となって今後も努力しようではないかということをお互いに話し合っている最中であります。
  67. 武部文

    ○武部委員 それじゃ、ちょっと角度を変えて御質問いたしますが、今日まで公社は一貫して本体の開放は反対だという主張を続けてこられたわけです。したがって、われわれも現在の日本通信機構の中においてはそれは当然だ、世界の慣行から見てもそれは誤りだということで、そういう意見も述べてきたわけですが、電話機だけではなしに本体開放に応じたという報道だけしかわれわれのところに入ってこないわけですけれども、一体通信機器の本体というのはどういうふうにわれわれは理解したらよろしいか、本体の開放をどの程度まであなた方としては認められたのか、これをひとつ具体的に述べてください。
  68. 前田光治

    ○前田説明員 お答えいたします。  公衆電気通信設備の本体という言葉を米国側がよく使っておりますが、これは非常に厳密にどこからどこまでという世界的な合意のある言葉ではございませんが、いままでの経緯から察しまするに、われわれは電話機から伝送設備、交換設備を経て相手の電話機に至るすべて一電話機から電話機までのものを通信の本体であるというふうに考えております。  そこで、先ほどお話がありましたように、本件の一部について政府の強い御要請もありまして案として提出はしてあるわけでございますが、現在この案についてまさに交渉の最中でございますので、その詳細についての発言は御遠慮させていただきたいと思っております。
  69. 武部文

    ○武部委員 そこが実は問題なんです。一番の問題点なんですよ。この本体の一部、おっしゃるように電話機から一番最後の末端の電話機、そこの間のものをみんな本体、これは大体われわれもよくわかっているんだが、本体の一部ということが私は問題だと思うのです。たとえば、その中に一番重要な問題として占めるのは、たとえばクロスバーの交換機であるとかあるいは電子交換機を含む通信関連のコンピューター、そういうもの、あるいは同軸ケーブルの問題、そういうものがいま日米間の開放の対象になっているというふうに理解していいのかどうか、それはどうですか。
  70. 前田光治

    ○前田説明員 お答え申し上げます。  現在問題になっておりますその一部というものがどういう品物であるかということを申し上げますると、結局現在交渉途中の案の内容が公表されることになりまするので、その詳細については控えさせていただきたいと思っておりますが、われわれはこれを選定するに際しましては、とにかく今後そのようなことが行われました場合に、国民に対するサービスの影響度がなるべく少ないもの、あるいはこれに対して今後われわれが知恵をしぼってまいりますと、あるいは努力をしてまいりますと、その影響をなるべく防ぎ得るようなもの、そういったような観点に立って選定をいたしております。
  71. 武部文

    ○武部委員 交渉の最中ですからこれ以上のことを聞いてもお答えがならぬようですからそれ以上のことは申し上げませんが、私ども承知しておるところでは、最初はやはり金額の上積みの問題が中心であったように理解をしておりました。ですから、金額の総額において足らぬ、だからもっと上積みしろ、それには一体何を開放すべきかというのでいろいろなことが出ておりました。これは重複いたしますから避けますが、問題は、私は量もさることながら質の問題だと思うのです。さっき久保委員もおっしゃったような現在の日本通信機器の実情から見て、非常に世界の高水準をいっている日本の水準から見ると、私は、量もさることながら質の問題というのは大変重要だと思うのです。したがって、通信性能そのものを左右する質の問題というものについて、これからの世界における技術水準の競争、そういうものを考えると、質ということは譲れない大きな内容を持っていると私は思うのです。したがって、これ以上のことは言いませんが、私は少なくとも量の問題と質の問題というものは、むしろ質の問題にこそ大きな重点を置くべきではないだろうかというように思うので、その点を特に要望しておきたいと思いますが、これ以上のことは申し上げません。  そこでもう一つ、量の問題ですが、開放品目の総額についていろいろな金額がいま出ております。いろいろな金額が出てきて、やれ二十三億ドルとか二十五億ドルとかいろいろなことが言われておりますが、最終的にいま現在この開放の品目の総額は大体幾らくらいで東郷・ストラウス会談の中に持ち込まれておるか、この点はいかがでしょうか。これはわかっておれば外務省でも結構ですが、わからなければ電電でも結構です。
  72. 遠藤実

    ○遠藤説明員 現在交渉の対象になっております開放額その他につきましても、交渉の内容にわたりますので発言を差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、一つだけ申し上げられますことは、日本の全体のオファーの額が、前回の交渉のころ大体五十とか五十五とかそういう数字でございました。それに対して質量ともにその後オファーとして改善をしてきているということでございます。
  73. 武部文

    ○武部委員 あなた、いま全然金額のことについて述べられませんでしたが、金額はもうすでに当初からずっと積み上げられてきましたね。最近総裁も一次とか二次とか言われているんだが、これは明らかに金額はつきまとっておるのですから間違いないのですから。現在の段階で総額幾らくらいということであなた方はアメリカと折衝中、このことがなぜ言えないのですか。
  74. 遠藤実

    ○遠藤説明員 現在、折衝が質とともに量の問題もやはり絡んでおります。その意味で交渉の内容にわたりますので、大変申しわけございませんが発言を控えさせていただきたいと思います。
  75. 武部文

    ○武部委員 私はちょっと了解できませんが、あなたとやりとりしたって言わぬものはしようがない。現実には二十五億ドル、約五千億というふうに新聞報道はもうそれを出しておりますね。大体二十五億ドルというのが一番高い最近の数字になっておるようですが、これは約五千億円です。こういう莫大な金額の内容のものが開放されるということがすでにアメリカでやられておる、そうしてそれになお不満で会談は成功しておらぬ。全くわれわれにとっては納得できない事態だと思うのです。このことは私は後で大平総理に申し上げなければならぬと思っておりますからこれ以上触れません。  そこで、本体が競争入札の対象になるということは、われわれの承知しておるところでは、いま競争入札をやっておるのはスウェーデンとスイスというようなことを聞いておったわけですが、この二つの国でも本質的には競争入札ではないと見てよかろう。そうすると、全く世界に例を見ない競争入札というものが日本で行われる、日本のみの市場開放、こういうことになるわけです。そういう不公平なことを日本の市場に持ち込むということになってくると、通信機器の事業に携わっておる労働者にとっては非常に深刻な雇用不安を招くことは当然予想されるわけです。すでにそういう諸君は、この機器開放について雇用問題をめぐっての反対の申し入れを政府にやっておる、これも事実であります。もし仮にいまうわさされておるような機器の開放がなされて競争入札になった場合に、わが国の電電公社を取り巻く関連事業の中でどういう数の企業がこの対象になり、そして一体何人ぐらいの諸君がこの余波を受けて雇用不安にさらされるというふうに見ておるか、この点はいかがですか。これは電電公社というよりも政府側から聞かなければならぬのですが、通産省でわかりますか。
  76. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私どもで大まかなところは大体把握しておるつもりでございますが、ただ開放の範囲がいまの段階でまだ決定いたしておりませんので、どういう影響が具体的に出てくるかにつきましては詰めを行っておりません。
  77. 武部文

    ○武部委員 それでは、時間が来ましたから最後にもう一つ。  そうすると雇用不安が起きるということは当然予想されるわけですが、この雇用不安に対して、開放ばかりじゃないのですから、開放によって起きるそういう現象について、政府側としてその対策を立てておるか、考えておるか。これは大臣、いかがですか。そういう話が当然出ておると思うのですが、いかがでしょうか。
  78. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 種々の場合を考慮しながら政府としては案を立てまして、いま練っておる最中でございますが、いま通産省から答弁がありましたとおり、まだ具体的に範囲がわからないということでございますので、ここで具体的に申し上げるところではございません。
  79. 武部文

    ○武部委員 あとの問題は総理にいたしますから、終わります。
  80. 石野久男

    石野委員長 次に、鈴木強君。
  81. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私も若干の質疑をいたしたいと思います。  非常に残念な事態を迎えておるのでございますが、しかしいまからでもこの問題に対して根本的な対応策を練り直してもよかろう、こう私は思いますから、そのことを中心関係者にお伺いをいたします。  昨年の夏以前の段階でジュネーブで東京ラウンドの交渉が行われておりまして、その一環として電電の開放問題というのが出ておったわけでありますから、われわれも何回かこの委員会でその態勢に立ちおくれないようにしっかり政府としてもひとつ腰を据えてやってほしいという要求を強くしておったわけでございます。その後、本年に入りまして大変雲行きが怪しくなりましたので、二月二十二日ですか、この委員会でもさらに質疑が行われたという経過になっておるのであります。いま最終的な政府案といいますか、一つの案がまとまって、これが東郷・ストラウス会談の中で合意に達するかどうかわかりませんが、この点ちょっとはっきりしたいのですが、額あるいは通信機器本体の開放はどういうものなのか、それがわれわれつまびらかにできませんので非常に残念でございますが、外交交渉上やむを得ないと思いますからそれはおきますが、ストラウスさんは当初日本に二十五日ころ参るというような予定があったのですが、ヨーロッパの方に行っておられたのでございますか、それで帰ってこられてその後日本に来られるというような様子だったのですが、二十三日ですか四日ですか、ストラウスさんと東郷さん、会っていますね。その際に、一応日本から示された案については即答を避けて保留しておるわけですが、それに対してまだ正式な態度の表明はなかったのでしょうか。
  82. 遠藤実

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  二十三日、月曜日でございましたか、東郷大使よりストラウス大使に日本側の提案を提示いたしました。それに対して、ただいま御指摘ございましたように先方で検討する、こういうことでございまして、その後いろいろなコメントは出てきております。出てきておりますけれども、まだ最終的に話が煮詰まっているということではございません。
  83. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 総理は三十日に羽田を出発されてカーター会談に出かけるわけですね。ですから外務省の読みとして、このストラウス通商特別代表から、示された案に対する回答はいつごろになるのか、そしてそれを受けて総理の渡米との関係、こういう点はどうなるのですか。
  84. 遠藤実

    ○遠藤説明員 できるだけ早く実質的な交渉をまとめたいという考えでおりまして、これが先決であると考えております。ただ、いろいろ問題が技術的にもむずかしいということがございまして、事務的なレベルでのいわゆるクラリフィケーションと申しますか、こういったことに時間をまだ費やしておりまして、まだ最終的にはっきりした形が出てきておりません。
  85. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 先般、園田外務大臣が訪米された際に、新聞の記事で見たのですけれども、当然この問題も話題になるだろう、したがって、一九八一年にコードが発効するわけですから、もし非常に問題があれば後にしてもいいんじゃないだろうか、向こうの意見を聞いてくるんだというような御発言があったように聞いておりますけれども、園田さんが訪米された際のアメリカ側の意向というのは、やはり今度の総理の訪米の際に決着をすべきである、遅くも東京サミット前に決着すべきである、そういうふうなアメリカ側の感触を得てきておるのでございましょうか、その点はどうなんですか。
  86. 遠藤実

    ○遠藤説明員 この問題はアメリカ側も、日本側もでございますが、できるだけ早急に話をまとめるべきである、もちろん日本側といたしましては当然主張すべきことは多くあるわけでございますし、妥当な結論を出すべきであるという観点から、互譲の精神でまとめるということを常に先方に強く申し入れておりますけれども、解決自体は一日も早くする必要がある。これは、現在アメリカヨーロッパ、特にアメリカの議会を中心といたしましていろいろ対日輸入制限の動きがある、こういった非常に深刻な事態を前にいたしまして、できるだけ早く解決すべきである、こういう点につきましては双方とも同じ意見であるというふうに理解いたしました。
  87. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 そこで非常に問題になるのは、この電電公社通信機器の開放問題というものが日米間の貿易のアンバランス、こういうところから基本的に出てきておるのだということをつくづく感ずるのですね。現在、日米間の貿易収支の額を見ると、輸出が二百四十九億ドル、輸入が百四十八億ドルですから、差し引き百一億ドルの日本側の黒字になっておる。この黒字をアメリカはどうしても減らそうということからして、非常に日本通信政策上曲げてはならないものを曲げさしてきている、私はそういうふうに考えざるを得ないのです。ですから、いままでの政府の対応策を見ておっても、白浜郵政大臣は電電の所管大臣ですから電気通信設備、電気通信機器の本体、こういうものは何か当然よく勉強されておる、だから従来の随契方式でなければならないのだ――戦後三十数年間、三千万以上の電話をつけて、全国自動ダイヤルをなし遂げた、その陰で民間とタイアップして共同研究もし、いろいろな努力をして、どこの国にも負けない通信機器の開発をしてきたのだ、その開発したものを一緒にやったメーカーの諸君がつくって、それを随契で買う方が非常にいいのだということは、これはもう不動の通信政策なんです。一時は、この問題について国会の中でも随契はおかしいじゃないかという意見もありました。しかしわれわれは、もう二十数年の間深い論議を重ねてとり来っている方針というのが通信政策上ベターだという考え方で進んできておるわけです。郵政大臣はそういう方針で電電公社と一体になったと思うのですね。  ところが通産省が、電気通信設備、電気通信機器の本体とは一体何か、こういうことに対しての認識がどうも足りない。私はそれを非常に遺憾に思うのです。頭がもう、何とかして貿易収支の黒字を減らそう、これは一面ではわかりますよ。日本アメリカとの不動の関係を維持改善し、前進していかなければならぬのですから、それはわかりますけれども、しかし問題にはほどがある。そういう無理なことを押しつけて、それが入れられなければ保護貿易政策をとるというような、自由主義経済を志向する大アメリカがこんなところにまで意見を押しつけてくるということは私はとるべきことではないと思うのですよ。ですから、それには通産というものが、本当に電気通信設備を今後も維持発展していくためには従来のような方針しかないのだ、アメリカが無理を言って門戸開放するといったって、この維持管理その他についてもう無理なんだということをもっともっと理解させる努力が足りなかったのではないだろうか。そしてそれを外交ベースに乗せてやるべきじゃないでしょうか。そういう点が非常にちぐはぐになっておった。だから結果的には、官房長官が電電公社の総裁を呼んで、頭からこうしなさい、本体の開放をしなければいけないのだということを押しつけて、政府の方針ですから総裁はそれに従わざるを得なかったということだと思うのですよ。そこに今日の総裁の辞任問題も出てきておるわけでありまして、本当にこの電気通信事業を知らないということの恐ろしさをつくづく感じた。と同時に、貿易の国際的な圧力というものが非常に強いことも私は知りました。そういう意味においては、われわれを含めて、電電の立場に立ってきた真に電気通信事業を思う人たちの情勢判断の甘さということが多少あったかもしれない。しかし、われわれはそれが正しいと思ってやってきたわけですね。ですから私は非常に残念に思うのです。イギリスが門戸を開放してやってみたところが、納入期間が長引いたり、標準的な作業がうんとおくれたり、それからイギリスの電子産業自体にも悪い影響を与えているというので、開放してみたけれども実質上はそれをやってない、そういう事実もあるのですね。ですから通産の方に、大臣が来ていただいておらないので非常に残念ですけれども、商工委員会などで答弁している議事録なんかを拝見しましても、とにかく日米間の摩擦を解消するためには早期開放をやるべきだ、ただ一本やりで主張してきているのです。それを受けて、齋藤幹事長あたりもどこか都内のホテルで講演をやってそんな趣旨のことを言ったようですけれども、要するに随意契約制度というものを競争入札にすべきだと。そういうところに、知らない者が無理やりに押しつけているようなことが出てきておって、通産と郵政との意見の食い違いというものもあった。一体それらの点について、大臣でないと政策の面ですからちょっとむずかしいと思いますけれども局長はどうなんですか。僕はあなたは専門家だと見ているのです。ですから立場上大変苦しい場面もあったかもしれないし、主張は主張してくれたと思いますけれども、どうなんです。大臣がそういうことをよく理解して、最終的な田中官房長官との話し合いもあったと思いますけれども、その辺どうなんでしょうか。
  88. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 電気通信に関する権威の鈴木先生に私から反論めいたことを申し上げるのは大変失礼かとは存じますが、通産省の立場というものをこの席で説明をさしていただきたいと存じます。  電気通信事業は御承知のとおり郵政省電電公社でやっていただいているわけでございますけれども、電気通信事業に用いますハードウェアにつきましては通産省が所掌をするということもございますので、従来から私ども郵政省電電公社とは大変一体の関係で行政を進めるという姿勢で進めておったわけでございます。ところが、たまたま政府調達の問題が起こってまいりまして、特にアメリカから強い要求が電電公社に対して出されたという問題を契機にいたしまして、大変私どもも悩んだわけでございます。と申しますのは、わが国の電気通信事業というものを健全に発展させるという立場と、それから通産省の立場といたしましては通商関係を円滑にするという立場がございますので、その間の調整をどうするかという問題がまずあったと思います。  それからもう一つは、私どもが担当いたしております電気通信機器メーカーの育成につきましては、電電公社に納入しておられます業者の方以外の方々も私どもの責任範囲であるという問題もございますので、そういう方々に対しまして非常な打撃を与えるような、つまりアメリカあたりで言われておりますようないわゆる課徴金とか輸入制限問題が起こりますと、そういう方々に対して多大な御迷惑がかかるのではないか、こういう観点を考えまして、できるだけ早くアメリカの主張と日本側の現実とを調和させる必要があるのではないか、したがいまして、私どもは早くその接点を見つけていただきたいということが基本的なポリシーであったわけでございまして、通産大臣が商工委員会並びに予算委員会におきまして御説明申し上げました点はすべてそういう趣旨からスタートしたわけでございまして、決して一概に開放してしまえということを申し上げたつもりはございません。あくまでもアメリカの要求と日本側の現実とを調和させて、早くその接点を見つけるべきであるということが通産省の基本的な態度であったわけでございますし、また今後ともそういう態度をとってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  89. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 森山さんもその方面の権威者ですから、ハードもあなたとはずいぶん長いこと論争もしてきましたけれども、行き着くところは意見は一致するのですよ。こんなものは正当性だとかそんなものではないんですからね。ですから、あなたのいまの苦しい御答弁はわかりましたよ。しかしその中で、やはり政治的に解決してもらわなければならぬ問題、純然たる技術者の立場から見ると忍びない問題が一方にはある。同時にまた、国際的な立場に立って日米の貿易のギャップを埋めるという大きな国策の上に立つと、またその面も全然無視はできないというので、非常に苦しい立場に立たされているということはよくわかるんですよ。  だけれども、そこでひとつ考えてほしいのは電気通信設備ですね。ハードなんかの問題は一たんおくとしても、一応設備そのものに対して通産省が、従来日本におきましては通信政策上かくかくの立場で来た、随意契約というものが一番いいんだ、そういう方針で来たところへ、アメリカが、自分の国でさえ開放してないものを今度は日本にやれと言うのだからむちゃくちゃなんですよ。そういうことをあなた方が言うのは無理じゃないですか、日本の電気通信機器がこれだけ飛躍的な世界に負けない発展をしたのは、こういうふうな努力を積み重ねてきたところに今日のレベルアップができたんだということをよく理解してもらって、少なくともアメリカですからね、日本とのパートナーです。われわれが一番大きく信頼しなければならぬ国だと思います。ですからそれだけに、そういう事態をよく考えてくれればそんな無理なことは私は言わぬと思いますよ。現に業者の代表の方もこれは大変なことですから――さっきどのくらいの人が減るのか、中小のメーカーにどういう打撃を与えるのか、こういう点について武部委員から質問がありましたけれども、適切な答えはありません。しかし通信電線機材メーカーの人たちは大変な騒ぎをしているわけですよ。東京で反対の大会も開いて政府にも陳情し、みずからもアメリカに行っておる。それから自由民主党の議員団の方々も左藤先生を団長に一行五人が向こうに行かれておりますよ。私はその行かれた報告を正式に聞いたわけじゃありませんけれども、三月十九日の電経新聞というのがございまして、その新聞、ここに記事がありますが、拝見すると、向こうでは何か大変よく日本のことを理解してくれているのですね。言っていることがちぐはぐなんですよ。たとえばちょっと読んでみますと「十六日帰国した伊藤宗一郎代議士は「米国側に売らんかなの姿勢がありありとみえたが、長期的な電気通信機器の安定供給という点では信頼できないとみた」」こういうふうに述べておりますね。それで  「アメリカの貿易赤字の三分の一が対日赤字ということもあって、何でもいいから日本政府調達七十五億ドルを開放しろ、と言っている。もはや昔日のアメリカではない。日本に対するヒガミや焦りもあるようだ。アメリカの危機感はわかるが、外国にものを売るには日本のように努力をしなければいけない。根本的に考え方を改めなければならないだろう。米議会関係者は電電公社と指定していない。」この調達について、開放については。  「とにかく買ってくれという態度だ。米政府は、各国GNPなどから米国百二十五億ドル、EC百五億ドル、日本七十五億ドルの政府調達開放を要求している。これまでにまとまった日本政府の三十-四十億ドルを七十五億ドルにまで増やすには電電公社を入れなければならないが、現実に七十五億ドル買うということではなく、枠を七十五億ドルにしろということのようだ。従って米国が実際に受注できるかどうかは別問題だ。」非常に優秀な電気通信機器についてもこういうことを言っているのですね。「日本の電気通信機器は優秀で、百加入当たり一カ月〇・六件と故障の少なさは世界一で、アメリカよりはるかに優れている。それにネットワークは統一した設計思想のもとに一貫した有機的なシステムとして構築されるものであるから、外国の機器は入れられない。それはベル・システムも同じではないか、と主張したのだか「故障を起こすような機器しかアメリカは作れないと言うのか。故障なんてどうということもない」と開き直るし、どうも信頼がおけない印象を受けた。」こういうような報告が載っているわけですね。それから、もう一人前田先生が一緒に行かれたようですけれども、東京ラウンドの問題、昨年八月にオレンジ、牛乳のものがありましたね。ミッションが来たりしました、米国にも行ったり。ところが、今度の電電公社の資材調達の問題については、少なくとも皆さんの感触としては、米国の電子工業とか通信工業界が主体性を持って、どうしても電電公社の資材調達を取り上げてくれ――オレンジだとか牛乳のときには向こうの農民がこぞってやったわけですね。ところが今回の場合にはそうでない、こう言っているのですね。ですから、いろいろ政治的な関係でとにかく無理難題を押しつけてきているというのが今日のこの開放問題ではないかと思うのですよ。ですから、そういう点をようく考えていただいていくならば、もう少し――赤字のしわ寄せを農畜産物に持っていった、それでも足りない、今度はどこかないか、政府調達品だ。政府調達品でも、もっと政府が考えてみて、電電公社の電気通信政策というものを基本的に守りつつ、できるだけの協力はしなければいかぬと私も思いますよ。しかし、本質的な、基本的な思想、政策を変えることは許されない。そういう点では、もっとアメリカと相談をしていけばアメリカもわかってくれるのではないか、その努力が不十分ではなかったかと私はつくづく思うのです。その辺を通産大臣が本当にどれだけ理解しておってくれたのかということについて、私は疑問を持つ。外務省もそういうことはよくわかりません。結局外務省というのは国際政治の方にどうしても引きずられますよ。ですから、通商関係を主体にするあなた方と、国際関係の問題とが絡んで、そして正しい政策というのがゆがめられていく、そういうことになっているのが今日の実情ではないでしょうか。私はそう思わざるを得ない。その点あなたは大臣じゃないからちょっと気の毒だな。政治屋じゃないからちょっと気の毒だけれども、それがよく江崎さんにわかっているだろうか。私は商工委員会の議事録も読みましたけれども、わかっていれば、われわれがもう少し納得できるような答弁をしてくれてしかるべきではないか。自民党の中にも、実際に行ってみた人たちはアメリカの事情はよく知っているのですよ、私たちは残念ながら行けませんでしたけれども。そういう事情を通産省、よく知っていますか。
  90. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私も通産省の政府委員でございまして、通産大臣の答弁に際しましては私も全部立ち会っております。通産大臣に対するレクチュアも私の責任でございます。したがいまして、私は大臣に対しまして、十分な理解を得ていただいたものというふうに考えておるわけでございます。  先ほど鈴木先生から御指摘のございました、欧米における電気通信事業と日本の電気通信事業との違い、まさにおっしゃるとおりでございまして、日本だけが開放させられることは大変おかしいということは、外務省もよく理解をしていただきまして交渉に当たっていただいたと思います。ワシントンにございます現地の日本大使以下外務省の関係の方々、十分なる外交折衝をしていただきまして、アメリカ側もそれは理解をしておると思うわけでございます。しかしながら、なおかつ開放を求めてくるというところに問題の本質があるのではないかということでございまして、この問題の本質をどう見るかというのは、実は大変な問題ではないか。これは、わが通産省といたしましてもいろいろな見方があると思います。したがいまして、現実の問題をどう対処するかにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、通産省として早く関係各省でその接点を見つけていただきたいというのが基本姿勢でございまして、十分ではないかもしれませんが、私どもなりの理解はしておるつもりでございます。
  91. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 あなたがついているのだから、かなりわかっているのだろうけれども、実際にああいうところで答弁するときには通商関係が先に来てしまうものだから、早く開放すべきだというようなことに力が入るから非常に誤解を受けたのだと思うが、まだ本当にはわかってもらっているかどうか、私は疑問に思いますよ。いずれにしても、郵政省と通産省の意見の完全な一致というものがないままやられたこと、これは事実でしょう。郵政大臣はそんなことは知らぬでしょう。少なくとも主管である郵政大臣が相談に乗ったのですか、どうですか大臣
  92. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、あいにく私は二十日の日には、逓信記念日でございまして外におりまして、どうも官房長官からの連絡がうまくまいりませんで秋草総裁との連絡がうまくいかなかったということで、事後承諾というような形になりましたことを先ほど申し上げたのでございまして、いろいろ御心配をおかけしましたことを申しわけなく思っております。
  93. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 その点は大臣、よくわかっておりますが、要するに田中官房長官が秋草総裁を呼んで、通信機器の本体の開放をすべきである、新聞なんかの内容を見ますと、こういうことを言ったと思うのです。先ほどのお話を聞いてみると、その前にもきっと何か若干の受け入れ策というものは公社も考えておったようですね。最終的に本体の開放、そのときに、政府の官房長官が秋草総裁に伝達する場合に、これは政府としての見解ですから、公社は政府機関ですから、相当重みがあるわけですね。     〔委員長退席、野口委員長代理着席〕 ですから、そういう大事な話をするときに、少なくとも本体開放ということに対して、その時点であなたと相談をして、それではこういうようにしようじゃないかというようにするのが政府の役目じゃないですか。われわれから見ると通産と郵政とが意見が分かれてきた。それを調整して完全に一致したなら、これはいいですよ。そうでないですね、あなたは二月二十二日にここで答えてくれたような見解をまだ持っていると思いますから。そうであるならば、そういうものを総裁に伝達する前に話をすべきではないですか。少なくともあなたは閣僚でしょう。白浜郵政大臣でしょう。その所管している大臣に何も相談しないで、通商の方だけ向いて、それで自分の意見をまとめてそれでやった。そういう秘密的な運用をしていいのですか。
  94. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 いいか悪いかという意見を私が申し上げるのもどうかと思いますが、政府の立場として官房長官がとり行ったことについて私どもがいろいろ批判をする、そうした立場にはないわけでありますから、秋草総裁を初め公社の幹部の諸君がいろいろ連絡の上、打ち合わせてやったことに対しては、私も十分、事後承諾の上ではありますけれども、そのことを信頼いたしておるわけでありまして、したがって、これは御質問ではございませんけれども、秋草総裁がその後にとりました行為に対しては、私は一心同体だから心配するなということで、一生懸命今後の対策を立てているというところでございます。     〔野口委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 あなたは閣僚ですし、国務大臣でもあるし、内閣の責任者は総理大臣でしょうね。総理大臣の意向を受けて官房長官がやったというふうになるのかどうなのか、その点私はよくはわかりませんが、いずれにしても、いま聞いてみると、当該の所管大臣に全然話をしなかったわけですね。話もしないで大事な、基本的にあなたの考え方と違うようなものをぽかっと出されて、それで自分の意見は内閣が決めたのだから言えませんというような、そんなことなんですか。それはたまげたですね。そんなばかなことはないでしょう。あなたは官房長官に、どうしてわしにも一言言うてくれないのだ、おれも一生懸命で来たじゃないか、それぐらいのことは言えないのですか。官房長官が決めてしまえば、何を決めてもあなたは言えないのですか。そんなに閣僚というものは弱いものですか。それじゃ独裁じゃないですか。
  96. 白浜仁吉

    白浜国務大臣 それほど弱いものではありませんから、私もその後二度三度会っておりますから、私の申し上げることは申し上げているつもりでございます。
  97. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 だから、そういうことを先に言わなければだめですよ。それでなかったら、あなたはまるっきり飾り物みたいになってしまう。それはそうでしょう。あなたの意見に反するものを、一生懸命やっているのに、頭越しにやられたら、あなたはおもしろくないでしょう。人間であればそうでしょう。しかも内閣の職務分限上、そんなことは許されないことです。だから、そういう内閣の不統一の中でちぐはぐなことをやったのだから、私は何もここで急いでやることもないだろう、もうちょっと時間を置いてもう一回やり直して、アメリカとも話し合いをして、なるほどアメリカもわかったというような努力をもう少し重ねていけないのかどうなのかということが、いまここへ来たら政府もわれわれ国会も考えるべきことだと思うのです。そういう意味で、本会議の質問もしたいというのでわれわれは申し入れたわけですけれども、それはできませんでしたが、もう少し大臣もしっかりした態度でやってほしいと思いますね。  それから、森山さんにもう一つ。この本体の開放によって中小メーカーがかなり打撃を受けると思うのですけれども、それに対する対策は何か持っておりますか。
  98. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 基本的には私どもの認識は、日本の電気通信機器メーカーは国際的には相当な力を持っておるという認識でございます。しかしながら、開放の結果、入札あるいは指名、いろいろな開放の様態があろうかと思いますので、その様態のいかんによりましては影響は出てくることは当然ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  そこで、先ほどお答え申し上げましたとおり、電気通信機器に関します責任は通産省でございますので、私どもは業界の育成振興というものを図る責任がございますので、その範囲内におきましてできる限りのことをやってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  99. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それでは総理がお見えになりましたから、もう一つ質問がありましたけれども、それはやめまして、これで終わります。どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  100. 石野久男

    石野委員長 この際、逓信行政に関する件について調査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤恵君。
  101. 左藤恵

    左藤委員 今回の電電公社の資材調達問題に関しまして、私は過日党からの派遣ということで渡米いたしまして、そしてわが国の公衆電気通信の実態をアメリカによく理解していただきたいという立場で、開放するものはできるだけ開放するといたしましても、どうしてもすることができない問題については理解を得てこの問題を解決していきたい、こういう立場でアメリカの議会筋の人あるいはまた政府筋の方々にお目にかかっていろいろお話をいたしたわけでございますが、そのときの印象から申しましても、総理にも御報告申し上げたとおりに、議会筋なりあるいは政府筋でも、国務省とかFCCとかというような立場の人たちは幾らかでも日本の公衆電気通信というものを理解してみようという感触があったと思ったわけでありますけれども、肝心のこの問題の一番アメリカ側の責任者であります大統領府にあります、特別通商交渉部と訳しますかSTRのストラウス大使あるいはウルフ次席大使は、何かわれわれの主張を理解しようという意欲が、意思といいますか、というようなものが全くないという感触を得たので、これは大変な問題だというふうに感じたわけでございます。  われわれとしては日本電話サービスを守っていくということであって、業者をどうするというふうな立場よりもむしろそういった国民電話サービスというものを確保する、こういう見地から、それに支障のあるものはひとつ勘弁していただきたい、安易に開放してもらっては困る、こういうことでありますけれども、できるだけ協力はしていかなければいかぬ、日米の友好親善を阻害するということにしたくないわけでありますが、そういった立場で、私はいま党の政調の通信部会長も仰せつかっておるというふうなこともございまして、過日有志の先生方ともお諮りして、公社として出し得る限度いっぱいのこの試案をまとめて、これで何か交渉していただけないかということをお願いしたわけでございます。  その際に、これはどういうわけか私もよくわかりませんが、外務大臣の方にこのことをお願いしたわけでございますけれども、内容が新聞に漏らされておって、そしてそのことで、外務大臣にいたしましてもあるいは官房長官におかれても、何かこれではアメリカとは十分交渉できないというような一つの不満が述べられた。  それで過日、新聞の伝えますところによると、政調会長あるいは官房長官から電電公社の秋草総裁をお呼びになって、そこで本体の一部開放ということを強く求められて総裁がこれを承諾された、こういうふうに伝えられておるわけであります。この間のいろいろな折衝とかいうことで何か外務省が手のうちを全部先にさらしてしまって、そしてそれでまだ不満であるということも、また新聞の伝えるところでは、そういうことが表に出てくるというふうなことをしてアメリカと折衝された、こういう経緯につきまして、外交の折衝というものはそういうものかというふうなことで非常に不信といいますか不思議な感じを持ちまして、手のうちをさらしてなお交渉があるものかというような感じを持っておるわけでございます。  この点について総理がどういうふうな御決断をされたかということをまずお伺いして、そして、このことについて総理としてはこの経緯を御承知なのかどうかということもあわせてお伺いをしたい、このように最初に思っております。
  102. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 政府調達問題、なかんずく電電公社の購買問題につきまして、与野党を通じまして国会に大変御心配をかけまして、恐縮をしております。  この問題は背景が大変深いわけでございまして、簡単に申しますと、ここ一二年の間に日米間の貿易収支が二百数十億ドルの黒字を記録するというちょっと考えられないような事態が起こってまいりまして、このことはひとり日米間の問題であるばかりではなく、世界経済全体の安定に決して健全な状態でない、何とかこれを改善しなければならないという世論がアメリカにおきましても起こってまいりましたこと、これは私も理解できないわけじゃないと思います。それでアメリカ政府の立場でございますが、とにかくアメリカのコングレス、アメリカの国会に対日批判が強うございます。たまたまこの国会に対しましては、ジュネーブで先般大筋で合意を見ました多角的な関税交渉が終わりまして、それに関連いたしました法案が次々と国会の承認を得なければならないという、日本もそうでございますけれどもアメリカもそういう立場にあるわけで、その場合国会の了承を取りつけるにつきましては、政府がこういう異常な状態を改善するにつきまして努力を払っておるということがないと説得力がないという立場にあるようでございまして、左藤さんが理解されておるように、アメリカ政府当局が非常にかたくなな態度をとられておるという背景にはそういう事情があるのではないかと私は想像いたしております。  したがって、そういう世界的ないろいろな貿易関税交渉の成功を図っていく上から申しましても、また日米間の関係を円滑に運営してまいる上から申しましても、こういう異常なアンバランスは何としても改善されなければならぬ、これは当然のことでございまして、政府は前からそのことを察知いたしまして、前の内閣以来内需の振興を図りまして輸入拡大を図って、本格的に収支のバランスを招来するような手だてを講じてきており、最近になりましてその成果はだんだんと顕著に改善の方向に出てきておることは御案内のとおりでございます。  そういう一般的な対処の方法で済めばよかったのですけれどもアメリカでは日本の市場がどうも閉鎖的でないかということを主張されまして、その象徴的な問題として、いま左藤さんが指摘された問題を取り上げられたわけでございます。これは日本政府が取り上げたわけではないのです。向こうの方がこれはどうだ、問題ではないかということで取り上げられてきたわけでございまして、そこで私どもといたしましては、電電公社にいたしましても国鉄にいたしましても、それぞれ国民に対しまして安全で低廉なサービスを提供する責任があるわけでございまして、これは調達問題ばかりにこだわっているわけにいかない、日米関係の御心配を国鉄や電電にお願いするわけにいかない、電電や国鉄はそういう本来の使命に邁進していただくわけでございますが、このように問題が個別問題として日米間で取り上げられた以上は、どうしても政府としては何とか処理しなければならぬわけでございます。したがって、電電、国鉄の責任というわけではなくて、政府としてたえられる限度はどこなんだという見当をつけさせていただいて対米交渉に当たる、責任は一切政府が負うという決意でもって当たったのでございます。  その過程におきまして、いま左藤さんが仰せになるように、どうも交渉の過程が新聞にばらばらリークされるという事態はみっともないじゃないか、それは日本の国益を損なうばかりでなく、行政のモラルのあり方としてもおかしいではないかということ、御指摘のとおりでございまして、私はそういうことのないようにいつも慎んでおるつもりでございますけれども日本の民主主義というのは相当活力のある民主主義でございまして、きょうも新聞社が大ぜいおいでになっておられますけれども、大変な取材能力を持っております。そしてそれを封殺する力は政府にはございません。そこで、できるだけわれわれは努力をいたしておるつもりでございますけれども、間々リーケージがないという保証はないわけでございますので、今後その点は十分気をつけてまいるつもりでございますけれども、精いっぱい政府か努力しておるけれども、そういうことが間々起こり得るということ、その責任はしかし政府にあるわけでございまして、今後その点は十分慎んでまいりたいと思っております。  しかし、そういう過程を経まして、いよいよこの問題につきましても最終的な段階になりまして、きのうワシントンにおきまして折衝が行われたわけでございますけれども、まだわが方の提案に対しまして先方が満足するに至っておりません。また、この問題どのようにいたしますか、いままた真剣に政府の中で検討をいたしておるところでございます。しかし、いずれにいたしましても、責任は全部政府において行うものであるということ、そして政府の責任において行う以上は、電電あるいは国鉄等がその責任を果たす上におきまして重大な支障を招来するようなことのないようにしなければならぬと考えております。と同時に、日米間におきまして起こってまいりました問題は何とか処理しなければならぬという政府の別途の責任もございますので、そういうことを念頭に置きながら、いませっかく解決への苦慮を重ねておるところでございます。  いままでのいきさつにつきましてはいろいろ御不満の点もあったかと思いますけれども、経過はあらましいま御報告申し上げたようなところでございまして、まだ決着はついていない状態でございますけれども、できるだけ早く解決したいというつもりでいま努力を重ねておるところでございます。
  103. 左藤恵

    左藤委員 いま総理からこの間の経緯についてお話があったわけでありますけれども、私、きょうこのワシントンからの電報ですか、報道を聞いておりますと、アメリカ側は日本側の妥協案といいますか、今度出された案というもので一応、たとえば政府調達の公開入札対象規模とかあるいは関税の引き下げの繰り上げ実施というようなものについては日本側の努力を評価しておるけれども電電公社の開放品目内容はなお不十分である、あくまでも高度技術を伴う品目を開放すべきだという従来の態度を崩さなかったというようなことが言われておるわけであります。そういったことで、私は、最後に全部開放せいということまでやらないことには、金額の問題よりも内容の問題として、アメリカはもうこれで応じないのじゃないかというようなことが非常に心配されるわけであります。こういうことを言い出しましたならば、われわれ先ほどから申し上げましたような公衆電気通信を守っていくという立場から見ても非常に心配が多いわけであります。  そこで、総理のお考えといたしまして、この問題が解決しなかったならば、たとえば今度は訪米されますが、日米首脳会談というようなものはどうしても話がうまくいかない、だからどうしてもこれはそれまでに解決したい、こういうふうにお考えになっておられるのか。さらにもう一つ、六月の終わりには東京サミットが開かれるわけでありますが、その前にもどうしてもこの問題の解決を図る必要がある、このようにお考えになっておられるのか、この点はいかがでございましょうか。
  104. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 私の今度の訪米は、いまそういう問題がありますのでアメリカへ参りまして最高首脳とお目にかかって解決を図るという訪米ではないのです。本来皆様御承知のように、日米首脳の間には間断のない対話が交わされて相互理解が常に保たれておるという状態が望ましいわけでございますので、私も就任以来なるべく早く訪米の機会を得たいと思っておりましたが、たまたま就任早々予算の編成がございましたし、それからすぐ国会が始まりましたので、国会で予算の成立をさせていただいて、関連法案の大体の見当がつき、今国会のあらましの展望が出てまいりまして与野党の御了解が得られるならば、その時期に訪米したいということが私の本来の考え方でございまして、こういう経済案件があるとかないとかということは私の訪米と関係ございません。先方もそのように理解されておると考えております。いわんやサミットの会議という問題はそういう問題とは関係ないわけでございます。  しかし、たまたまこういうタイミングにおいてこの問題が起こっておるわけでございますので、私といたしましては、訪米前に外交チャンネルを通じましてこの問題が解決するということは望ましいと考え、先方もそう考えられておる。で、そういう問題が解決した後でさっぱりした気持ちで会談を持つことができたらと思っておりましたが、なかなか世の中はままなりませんでね、これはそういうぐあいにやりたかったのですけれども、ならない以上はやむを得ませんので、そういうことがこういう状態でも、当初の方針どおり訪米はやらなければならぬと考えておりますが、しかしまだ訪米までに若干時間がありますので、できるだけ努力をなお重ねまして、できることならばそれまでに解決ができないものかと、いまなおまだ一〇〇%断念しておるわけではございません。
  105. 左藤恵

    左藤委員 いま総理のお話がございましたが、私は、この問題は向こうから新しい、何か考え方を変えてくるとかいうことでない限り、もう幾らでも日本の方は押せばそれだけどんどん後退するんじゃないかというような考え方で交渉を進めてくると思いますので、この点についてはわれわれとしても、ひとつ毅然たる態度で当たっていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。  今度の新しい提案を仮に向こうが了承するとかいうような形になった場合でも、その中身がまだ知らされておりませんけれども、われわれ心配いたしておりますのは、このことでわが国の関連いたしております中小企業、これがやはり大きな動揺を来すのじゃないかということもございますので、総理におかれても、これらの人々に対する対策というものを十分御配慮をいただきたい。  また先ほど来、電電公社の総裁がこのことにつきまして辞表を提出されたというふうなことも報道されておりますし、この委員会でもそのことについてはお尋ねがあったわけでありますが、総理はこのことについて何か御感想というか、あるいは今後どういうふうに対処していかれるおつもりか、何かありましたら最後にお聞かせをいただきたいと思います。  それからもう一つ政府当局が今後いろいろ交渉を進めていかれる上において、たとえば国会で何か決議をするとかそういったことがあったりして、その方がやりやすいとかいうふうなことが何かありましたら、われわれも考えていきたいと思いますので、この点についても御意見がございましたら伺わせていただきたいと思います。
  106. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 本件の処理は、先ほど申し上げましたように一〇〇%政府の責任でやっておるわけでございます。電電公社の責任は、決まりました枠組みの中でどのようにして使命を果たされるかというところから出てくるのではないかと思って、いまの段階は政府がその仕事に当たっておるわけでございますが、ただこの問題は、結果として電電の調達秩序というものに甚大な影響を及ぼしかねない問題であるということで公社総裁がいろいろ苦慮を重ねておる気持ちはよく理解できますけれども、責任問題というのはあくまで政府の問題でございまして、その点はひとつ……。したがって、いずれにせよ日米間で出てきた問題でございますから、どういう解決になるか知りませんけれども、解決しなければならぬと考えております。解決の枠組みができましたならば、これを電電初め各政府機関に提示いたしまして、こういうことでやることにしたので、ひとつ協力を願いたい。協力をお願いするにつきましては、政府も素手でお願いするわけにもまいりませんで、一緒に力になって、電電や国鉄が公衆に対するサービスと責任を果たせるように御協力申し上げなければならぬ。そういう責任は、同時に政府は感じておるものでございます。  それから、国会にお願いすることがあれば考えてやろうというありがたい御提言に感謝します。いまこれをやってみまして、もし国会のお力をこういうタイミングで、こういう形でおかりしたらよかろうというようなことがございましたならば、本委員会理事会を通してまた御相談を申し上げたいと思います。
  107. 左藤恵

    左藤委員 時間でございますので、私の質問をこれで終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  108. 石野久男

    石野委員長 次に、久保等君。
  109. 久保等

    ○久保(等)委員 ただいまの日米間における通信機器開放問題、非常に重大な問題であり、当委員会でもすでに何回かこの問題を取り上げていろいろ議論もしてまいりました。この問題について、非常に緊急な問題でもあり、本会議での緊急質問等も希望しておったのですが、本会議での緊急質問は取りやめ、この逓信委員会で取り上げることになりました。本日御多忙の中、わざわざ総理大臣御出席をいただきまして、まことにありがとう存じます。きわめて短時間でございますので、二、三問題を提起して、総理のお考えをお聞きしたいと思うのです。  電気通信機器の問題は、私が申し上げるまでもなく、一国にとってはいわゆる神経系統と言われる基幹的な機能を持っておるわけでありますし、同時に通信の秘密という問題は、申し上げるまでもなく憲法にも保障せられたプライバシー保持の立場からいってもきわめて重要性を持っておりますし、また一国にとっても、通信の秘密という問題はきわめて重要な問題だと思うのであります。  そういう使命を持った公共事業である電気通信事業、これは国民の立場、さらには国家的な立場から、譲るべからざる一つの限度というものがおのずからあると私は思うのであります。したがって、世界各国の例を見ても、ECの場合におきましてもこういった前例はございませんし、またアメリカの国内においても、けさほどからも若干お尋ねをしておったのですが、なるほど民営形態だから、したがって政府調達の中には入らないということを言っております。しかし、これはそういう経営形態がどうであるかという問題だけを区別するならばそういう議論もできると思うのですが、通信の持つ使命、性格といったようなものから考えれば、一国にとって経営形態がどうあるこうあるという問題は、これは私は形式的な問題だと思います。したがってそういう本質的な問題を真に考えてまいりますると、一体アメリカは民営とはいいながら、現在この通信機器調達の問題について開放しておるかということになりますると、現実は開放いたしておりません。先ほども若干数字的にあいまいな話でありましたが、一〇%程度は実は競争入札で調達をしているんじゃないかというようなきわめてあいまいな外務当局からの答弁でありました。しかしまた、私の調べた範囲内においては、ほとんど一〇〇%と言ってもいい、とにかく随意契約でやっております。  それから、ECの問題についてぜひひとつ総理、頭の中に置いていただいて、アメリカに対して十分に説明をしてもらいたいと思うのは、通信に関する限り、たとえば今度ECとの間における扱い方についても、例の四月十二日に仮調印がなされました政府調達物資の問題、これについてはすでに妥結を見ているわけです。先ほどのこれまた政府当局の説明を聞きますると、日本がオーケーはしてないけれども、ECとしてははっきりと、これについては電気通信設備は除外するということを逆に向こうの方が提案してまいっているそうです。ところがそれに対して日本政府は、まあ待ってくれ、その問題をこれからどうするかは、日本側の態度はこれから決めるからというようなことで、仮調印をしたのは、要するに電気通信設備の問題について除外するという提案は一応日本側としては受けてない形。要するにまだはっきり詰めてないという状態。しかしこれはまた両者で相談する問題ではなくて、ECとしてはそういう方針を明確に決めておるわけです。この通信設備の問題について両方でもって相互に随意契約にするとかなんとかというようなことはしないんだ、競争入札にするようなことはしないんだ、そういったようなことは全然考えていない。除外をしようというようなことを提案をしてきているようです。だから私は、こういう問題については、欧州と言わずアメリカと言わず、やっぱり世界一本で、一つの方針できちっと理解をすべきだし、扱っていくべきだと思うんですね。それはもう先ほど申し上げた、電気通信設備、電気通信のネットワークの持つ本質なり使命なりというものから考えて当然そうあるべきではないかと実は思うわけですが、その考え方について総理からも――いま言ったECの問題については一応一つの結論が出ているのですが、その結論と同じような形でのアメリカの理解をぜひ得るような努力を日本としてはすべきじゃないか。  それで、総理が今度たまたまおいでになります時期に、ひとつ何とか事前に解決をしようというようなことでいろいろ御努力されておるんですが、私ども、先ほど左藤さんの方からもいろいろお尋ねがありましたが、まことに不可解というよりも、三月二十九日に例の牛場代表とアメリカのストラウス代表との間で話をされたが決裂した。これが三月二十九日と聞いております。それからまだ一月もたたないのです。その間に一体日本のとってまいった態度というものは、まことに譲歩に譲歩を重ね、譲りに譲って今日、きょうは四月の二十五日になりますが、まだ一月たたない間にそれだけの譲歩をしているんだが、まだしかし現実、きょうだだいまの状況から言っても非常に厳しい。一体どこに基準を置いて開放を求めておるのか。しかもこの赤字問題は、私が申し上げるまでもなく通信機器の問題から出ておる赤字解消の問題ではないわけですね。だからそこらのところをぜひひとつ十分に理解をさせ、もう少し筋道を立てた話ができるように持っていくべきじゃないか、かように私は考えるわけです。  時間が余りありませんから、少し私一方的な話ばかり申し上げて恐縮なんですけれども、例の政府調達問題は、例のコードの問題、規約の問題ですが、この問題については御承知のように明後年の一九八一年一月一日から発効するという問題にもなっておるわけですね。そうだとすれば、この問題についても私はそう一日二日を争う問題ではなくて、じっくりとやっぱりお話しを願って、十分に両者の納得のいくところで問題を解決すべきであって、一日二日を争ってやられることは、それこそ悔いを千載に残すのではないか、そういう感じがいたします。  そういった点について総理のお考えをお尋ねしたいのはECとの関係の問題、それからいま申し上げたほんの二十日余りの中で早々に何とかひとつ――いま総理かおっしゃられる、起きてきた問題なんだから片づけなければならぬというお話、これは全くもっともです。しかし、起きてきた問題ではあるけれども、その起きてきた理由というものは一体何なんだというあたりのところを究明をしていただいて、両者の納得できるところまで十分に議論を重ねていただく、私はそのことだけはぜひお願いをしたいと思うのですが、総理のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  110. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 この問題の解決につきまして、一つ世界的に納得ができるルール、確立した原則というものがございましたならば、それを適用して、日本アメリカもそれに従っていくという解決が一番合理的で素直だと思うのです。ところが、あなたがたまたま言われましたように、ちょうど通信機器産業のあり方も形態が各国それぞれまちまちでございます。したがって、世界的に共通の確立したコードというようなものは別にないわけなんで、それがあれば非常にやさしいわけでございますけれども、それがないという状況でございます。ところが、これは通信機器ばかりではございませんで、どの商品にも言えるわけです。食糧を完全に自由にしているところもあるし、日本のように主食につきましては規制しているところもありまするし、だから食糧の性質によって決めるという性質のものでもないようでございます。  しかし、なぜこれがこういう問題になっているかというと、つまり日本の競争力が非常に強い。だからこういう黒字が出て経常収支の黒字を記録しておるんだが、これを何とかならぬかというところから問題が出発いたしまして、日本のように競争力の強い国はもっと開放すべき余地がこういう方面にあるのじゃないかというところからこれが取り出されたものだと思うのでございます。すなわち、日本の競争力の強さと最近二、三年のこの異常な経常収支の黒字幅が生んだ一つの産物でございまして、したがって彼らといたしましては、そういう国なんだからひとつ相当な雅量を持ってこの調達の市場を開放してしかるべきじゃないかというのが向こうの言い分だと思うのです。私は、それもわからぬわけじゃないのですけれども、先ほど申しましたように、政府並びに政府機関それぞれ任務を持っておるわけでございまして、貿易秩序のためだけでこれが存立しているわけじゃございませんから、両方、貿易ではこうありたいと思うけれども、しかし国内的に申しますと電電のあり方、国鉄のあり方というものはそれぞれまた考えなければいかぬ面がございます。あなたが言われました通信機器の性質というようなものも、これもまた通信機器特有のものがあることは理解できないことはございませんで、そういった問題につきまして、政府としてはいろいろな角度から一遍考えて、妥当なバランスのとれた解決がないだろうかという点を考えておるわけでございます。  ECは承知しておるけれどもアメリカ承知しないということで、日米間でバイの関係でこの問題が残るということになりますと、せっかくこの間できました多角的な関税協定というものにつきまして大きな穴かあくわけでございますので、私どもとしてはできるだけそれは避けたいという意味で、アメリカとの話を早くつけるというところにいまエネルギーを傾けておるところでございます。  それから第二の問題でございますが、そんなに急ぐ必要ないじゃないかという御指摘でございますが、なぜ急いでいるかと申しますと、先ほど左藤さんの御質問にもお答え申しましたように、MTNに関連いたしましたいろいろな協定案を各国とも国会に出すわけでございますが、アメリカも最大の貿易国としてこれを通して世界の貿易秩序をつくり上げると、関税も下がってまいりますしいろいろな非関税障壁も取れるわけでございますから、世界のためになるし自分の国のためにもなるわけでございますから、何としてもこれを国会を通したい。すぐ国会対策、日本もなかなか国会対策は大変でございますけれども、向こうもそれにいま専念をいたしておるようでございまして、それについては日本からはこういう開放をかち取ったということで国会を説得する、この程度では説得ができないというような配慮がアメリカ政府にあるようでございます。われわれといたしましても、多国間の関税その他の協定、これは一日も早く国会の御了承を得るように努力するわけでございますが、アメリカもそれを急いでおるようでございます関係上、いつまでもゆっくりしておれないという事情は御理解をいただきたい。  ただしここは、私が訪米するのが三十日でございますけれども、それまで待てないとかなんとかいうような、その間でなければならぬとかいうような、そんな窮屈なことを私は考えておりません。
  111. 久保等

    ○久保(等)委員 電電のこの物資の調達問題が市場閉鎖性の象徴だとか、あるいはまた経済摩擦の象徴だとか、いろいろな悪玉になったような表現が使われておるわけなんです。しかし先ほども申し上げましたように、通信機器の問題に関する限りは、これは世界各国ともそういう点で言うなら、経済摩擦じゃないですが、とにかく市場閉鎖の象徴的な存在になっていると思うのですね。ひとり日本にそういった形の理屈というものは、これはどう考えても通用しないと私は思うのです。だから、ここらのところをもう少し柔軟な物の考え方て取り組んでもらわぬことには――率直に言って、総理は先日熊本へおいでになったときの記者会見の中で、互譲の精神でひとつ片づけたいというように言っておられたのは、まさにそれは当然の至言だと私は存じます。一〇〇%おれの方の要求を入れろという形では物事は解決しません。これは特に最高首脳の方々にお話しになる機会もあるわけですからその点をひとつ――けさの毎日新聞の社説なんかをちょっと見てみましても、総理、いままでの取り組み方としては総理のおいでになるまでに片づけたいというような構想でお進めになったと思うのですが、今日ただいまの現状からするとそれも非常に困難だというような情勢にあると思うのですけれども、ぜひこれは総理御自身でおいでになるわけですから、向こうの感触を直接お聞きをいただき、また総理としてこのアメリカ側の実態をぜひひとつ十分に御把握願って、やはり言うべきことは総理の方からもカーター大統領にお伝えいただくという御努力もぜひお願いをしたいと私は思っております。  それと、先ほども申し上げましたように、通信というものは一回それを開放しますともとへ戻すということはなかなか言うべくしてできません。しかも相手のあってやることですから。貿易収支の赤字解消の問題という問題なら、これは年々歳々の貿易収支の関係で、適当に右へあるいは左に転換することもできますけれども、一たん通信そのものの機器の開放等が行われますと、これは全くそう簡単に回れ右できない性格のものでして、現にイギリスでちょうどいまから十年前ですが一九六九年に、じゃこれを一遍競争入札にしてみようと随意契約から競争入札に切りかえたのですが、わずか四年にして方向転換をされた。ところが四年たったら、じゃもとへ戻ったかというと、今日電子交換機等の方式についていまだに実は方式を決定することができないという。わずか四年間実施をしたがために混乱を巻き起こして、後一つ見通しの上に立った通信政策が立てられない、通信方式を立てられないという現状もあるわけでして、そういうことを考えますと、事が単に農産物の問題だとかなんとかいうのとは性格が違いますからね。そういう点をひとつ十分に御理解をいただくような御説得を私はお願いを申し上げたいと思うのですが、時間がきわめて限られておりまして、余り意を尽くしてお尋ねすることができませんが、いまの点について総理、特に互譲の精神でひとつこの問題の処理に当たりたいとおっしゃられておりますので、この問題についてやはり特にそういった必要性を私は痛感をするものですから、そういう立場でお話をいただきたい、かように考えるのですが、総理、どんなふうにお考えになりますか。
  112. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、日米間で互譲の精神で、相互理解で解決するより道はないと思っております。したがって、われわれが納得のいく解決になれば早くこれは解決ができましょうし、どうしても踏み越えられない問題がございますならば、これは遺憾ながらすぐ解決するわけにいかぬだろうと思います。したがって、あなたがおっしゃったとおり、アメリカの各方面の理解も、当事者はもとよりでございますけれども、各方面の理解を得られるように最善の努力をいたすつもりでございます。
  113. 久保等

    ○久保(等)委員 現在、元国務長官のキッシンジャー氏もおいでになっているようですが、キッシンジャー氏の言っておられることも、やはり特定品目ごとに処理する個別交渉方式は好ましくないというようなことを言っておられるのですが、要するに特定の問題に的をしぼってこれをとにかくどうしろこうしろというような、そういう解決方法というのは余り適当ではないというようなことをこの問題について何か発言もしておられるようですが、私はだからそういう意味では、どうもアメリカのいま進められておるような強引なやり方というものは一般的な常識からいってもどうしても理解できないと思いますし、ぜひひとつそういう立場で、先ほども申し上げたように、ECとの関係についてはもう仮調印まで行ったという実積もあるわけですから、そういったものをむしろ逆に、逆にと言っては何か対抗的なように聞こえますが、そうではなくて、ECとの話し合った結論というものもこれはやはり一つ世界の常識ですし、先ほども申し上げたような苦い体験の上に立ってECはECとしての態度を決めておられるのですから、そういったものがアメリカでも理解できないということはないと私は思うのですね。ただ、赤字問題の解決はしたがって赤字問題として、それこそ全体の問題として解決を図るべきだと思いますが、ある問題に特に、どうしてもできないものに個別的に強引に持ってこられることについてはどうしても納得するわけにはまいらないと思うのですが、そういう点についても十分にひとつ御理解をいただいてお話を願いたい。では、一言総理の方から最後にお願いをいたして質問を終わります。
  114. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 仰せの点はよく了解できます。そういう点につきましても先方の理解を得られるように努力してまいるつもりです。
  115. 久保等

    ○久保(等)委員 終わります。ありがとうございました。
  116. 石野久男

    石野委員長 次に、武部文君。
  117. 武部文

    ○武部委員 先ほどまでこの委員会でいろいろやりとりをいたしてまいりましたが、一、二点総理の見解を伺いたいと思います。  この資材調達問題というのはかなり以前、少なくとも五十二年の暮れごろからすでにこの問題は取り上げられておって、アメリカは非常に強い関心を示しておった。このことは当委員会で私どもの同僚委員から指摘をされておったところです。ところが、残念ながらこれに対するわが国の対応が非常におくれておる、なかんずくアメリカの真意というものをつかみ切っていなかった、そういうお粗末さが外交交渉の上にあったのじゃないか、そしていま日米の交渉の最大の課題にこの問題がなってきた、このようにわれわれは理解せざるを得ないのであります。  そして電電公社自体は、この問題についてはそれぞれの具体的な理由を挙げて激しく開放について抵抗された。これは総理も御承知のとおりだと思います。ところが官房長官は、総理の訪米の日時を前面に持ち出して、日時が迫ってもうあと余裕がない、そういう理由で電電公社に対して強引に門戸の開放を迫った。これはもうすでにだれもが周知のとおりです。あなたが先ほどの答弁の中で、自分が訪米することと何も関係がない、たまたま行くので、こういう懸案の問題は解決して行った方がいい、こういうように思う、こういうふうにおっしゃった。ところが現実に二十日の日の田中官房長官の電電公社に対するところの強い要請というのは、あなたの訪米とタイムを合わせて、そういう強引な、まさに力づくでねじ伏せて門戸の開放を押し切った、このようにわれわれは理解せざるを得ないのです。今日この質問を通してやりとりいたしますと、電電公社自体はいまだに基本的な考え方は変わっていない。そういう点をあなたは一体どういうふうに理解されるのか。少なくともその問題をめぐって公社の総裁が辞意を表明するというような異常な事態になっておるのです。これはあなたのおっしゃっておることと、官房長官やその他のやっておることと全く違うじゃありませんか。その点いかがですか。
  118. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 物事の処理はなかなか機械的にまいりませんで、たとえば日米首脳会談があるというような一つの契機がございますと、それまでにこの問題は始末しておこうじゃないかとかということは、行政府の仕事のやり方としてよくあるわけでございます。つまり、私が近く行くにつきましては、日米間にこういう問題がある、できたらこれは解決したいと官房長官を初め政府関係者が一生懸命になって解決に努力をいたされたということも私は理解できないことはないのでございまして、ただ問題は、それが理不尽に無理押ししてやるということであれば御批判をいただかなければならぬと思いますけれども、こういうタイミングをつかんで解決を急いでいくということ自体はよくあることでございますし、また事の運び方として、こういう機会を利用して早いところ片づけたいということは悪いことではないと考えておるわけでございます。  それから第二点でございますが、電電公社との関係でございますが、電電公社といたしましては、与えられた条件のもとで国民に対する責任を果たそうとされておるわけでございまして、電電公社が期待できるベストな条件、枠組みを期待されておるのは当然だと思うのです。ただ、先ほども冒頭に申し上げましたように、日米間でこの問題が出てきたということでございますので、この問題について解決せねばならぬ。解決は政府がやらなければならぬ仕事でございまして、政府といたしましては、諸般の状況を見ながら、電電の立場も考えるけれども日米間の立場も考えねばならないわけでございますので、それは政府の責任においてやらしていただきたい。この枠組みが決まりましたならば、ここからまた新たな次元に立って電電と篤と御相談申し上げて、電電公社国民に対する責任を果たすことができるように政府としても全幅の協力をしなければならぬと考えております。
  119. 武部文

    ○武部委員 私はいまの政府のとっておる態度は、理論的にどうしても納得できないのです。一体世界一高い牛肉やオレンジの問題はどこへ行ったのでしょうか。国鉄やたばこにはていよくかわされてしまって、一切のしわ寄せが電電公社に来ておる、このように理解せざるを得ないのです。こういうことをここでやっておったら、また牛肉がどうだとかオレンジがどうだとかということになりますから、それは言いません。そういうふうにして、少なくとも世界的な常識から逸脱するようなやり方が今日現実にこの事態になっておるのですよ。世界の例を見ておったって、先ほどお話があったとおりなんですよ。何でわが国だけにそういう問題が持ち込まれてくるのでしょうか。そういうことを考えると、私は少なくとももっともっと話し合う余地があるじゃないか。先ほどお話があるように一九八一年の一月から発効する問題なんですから、まだ二年近く先のことです。そういう問題なのに、あなたが訪米されることを前提にして、またアメリカの政治事情に左右されて、そしてこの問題で一気に電電公社をねじ伏せるようなやり方というのは、私はどうしても納得できない、そういう気がしてならぬのですが、あなたはどうでしょうか。まだそう思われませんか。
  120. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 こういう問題が出てきたということは、先ほど申しましたように政府が問題を提起したわけじゃないのでして、アメリカから提起された問題でございますから、これは政府の責任において解決せねばならぬというわけでやっておるわけでございまして、電電公社その他の調達問題を取り上げたことは肉その他の関連においておかしいじゃないかということでございますが、これは政府が取り上げたわけではないのです。これはアメリカが取り上げた問題でございますので、それの解決をわれわれとしてはいま急いでおるという立場でございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  121. 武部文

    ○武部委員 アメリカが取り上げた問題だから日本政府は責任がないというような、そういうことは私どもの方としてはいただけません。ただ問題は、そんなことを言っておっても時間がありませんが、すでに現実にいまアメリカで東郷・ストラウス会談というのは不調になっておるのですよ。先ほども左藤さんがおっしゃったけれども、具体的にそうなんですね。そうしてストラウス代表の来日はいまのところ全く未定でしょう。そういう具体的な事実がいまあらわれておるわけです。そして、先ほどちょっと私与党の議員の方のひとり言を聞いておったが、何でここまで退却するか、こんなばかなことがあるかというようなことも言われておるのですよ、現実に。ですから、ここまで理不尽に押し込んでくるものに対して、日本政府が、相手から仕掛けたものだからといって何も応ずる必要はないと思うのです。また先ほどから申し上げるように二年も先のことなんですから、こうなったらもう全く白紙に返してもう一回最初から出直しして、あなたがせっかくお見えになるのですから、日米首脳会談の議題から外すなんということでなくて、この問題をむしろ取り上げて、双方で具体的に積極的にひざ突き合わせて話し合うという気はないでしょうか。
  122. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 日米間には、冒頭にも申しましたように、この問題ばかりではございませんで、巨大な貿易をやっておるわけでございますから、いろいろな問題が過去においては起こりましたし、いまも起こっておるし、将来も起こる可能性が強いわけでございます。そういうことが起こった場合には、それを冷静に解決してまいるということか政府の責任であろうと考えております。この問題につきまして、いま解決を急がぬで原点に返って静かにひとつ取り組み方を考えたらどうかという考え方は私は理解できないわけではございません。しかし、この機会にもし解決のめどがつけば解決して差し支えないのではないかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、いませっかくこういう異常な貿易収支の状況の中で提起された問題でございまして、これに対しまして黒字国として日本はいろいろなことをやっておるわけでございますが、この問題につきましても妥当な解決があればこれは解決しておくということが前向きの姿勢ではなかろうか。いま仰せになるように、原点に返って考え直すという立場は理解できないわけではございません。けれども、私は、もし解決の道があるとすればこの機会に解決しておく方がベターではないかと思っております。
  123. 武部文

    ○武部委員 時間だそうですからいいです。
  124. 石野久男

    石野委員長 次に、鈴木強君。
  125. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 総理は三十日からカーター大統領とお会いするために訪米されるそうですが、御苦労さまです。  いまいろいろ御質疑がありましたが、これはサミット前にカーターさんとお会いしておった方がいいというので、特別な目的を持って行くわけではないのですか。
  126. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 主たる動機は、先ほど申しましたように日米首脳の間には間断ない対話が持たれてしかるべきだ、過去においてそうでございましたし私の場合もそうしたいと思っておりましたのが、たまたまこの機会がタイムリーであると判断して、先方の都合を聞いてこのように決めたわけでございます。それが主でございます。しかしながら、六月末には東京でサミットが開かれる。これはアメリカを初め関係国の協力を得なければならぬ。日米間にはいま御議論いただいておりますように若干の問題があるわけでございますので、そういう時期でもございまするので、私の訪米が何かこういう局面に対して日本が対処する場合に有益であればと思いまして、そういう念願も込めて訪米いたすつもりでございます。
  127. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで、いまこの委員会でも特に訪米に際して問題になっております電気通信機器の開放問題が論議されておりまして、総理に、訪米された際にはぜひカーター大統領にも日本の実情をよく説明をしていただきたいと私は心から願っておる者の一人でございます。いままでやってまいりましたことは総理ももうよく御承知でございますから繰り返しませんが、少なくとも私どもはこの逓信委員会におきまして、長年電気通信事業についてはできるだけ公社を鞭撻し政府を鞭撻しまして、国民の立場からよりよい電気通信事業にしていきたい、こういうことで努力をしてきておるわけですが、今日三千万以上の電話が架設され、全国どこへでもダイヤルで通じるようになりましたね。戦後三十年たちました。これだけのすばらしい成果をおさめたのは、日本の電気通信政策というものはすぐれた通信機器を駆使して全国にネットワークを張ったわけですね、そして通信機器というものは共同開発も民間とともにやってきておる、そしていよいよ生産する場合にも開発したその会社の方々に発注をして随意契約でやってきた、このたてまえというのがあったからこれだけの成果をおさめたと言っても過言ではないのですよ。ところが聞いてみますと、どうしても貿易問題、通商問題が日米間の大きな問題でございますから、その大きな波に押されてしまって理不尽なことがやられておるというふうにわれわれは考えておるわけです。ですから日本の業界も挙げてこれに対して反対をしておる。自由民主党の逓信部会長左藤先生を初め訪米された方々も、向こうに参りましての感触は、オレンジや牛肉と違って、あのときには生産者がこぞって貿易のインバランスをなくしてくれということで先頭に立ってやったらしいのですけれども、今回の場合には電気通信工業界、電子工業会、こういうところは余り動いてないようですね。ですから政府がずっと前に出ているような気がしてならない。そしてやってはならないことを、通信機器の本体まで開放するということを迫るのは、少し酷ではないかと私は思うのですね。そういう点がカーターさんに本当にわかってもらえるのかどうなのか。  われわれが心配するのは、そんなことをされてこれからの電気通信というものがいままで歩んだ道から少なくともテンポをおくらせ、ジグザグをたどるようなことになるという危険性はあるでしょう。ですから、そういうことに対してあなたは、これは政府が責任を持って全部やるのだ、こうおっしゃっておるわけですから、それは政府の責任で、われわれ電電関係通信関係の国会議員や関係者の人たちが反対だというものを、これはやむを得ない、日米間の友好親善のために忍びがたきを忍んでやるのだというそういう政治の一つの大筋というものはわかりますけれども、しかしそれにしても少し酷じゃないか、本体の開放ということは。そういう意味でカーターさんにぜひその点は知っていただいて――内容がどうなのか、外交問題ですからまだよくわかりません。問題は、七十億程度の額になったという新聞報道がございますが、電気通信本体は一体どこを開放するかということは外交上のことですからまだきょう聞かしてもらえないわけです。ですから、七十五億ドルというのが総額としてのアメリカの額のようでございますから、その辺を踏まえてひとつ総理として慎重に対応していただきたいと思うのです。そしておっしゃるように、向こうにわかるようにしていただいて、無理にこれを決めなくても日米間の――むしろそういうことをやることによって特に通信関係の人たちが反発を持つということはアメリカとしても得策ではないと私は思うのです。その点がわかってもらえるかどうかということでございますけれどもね。ひとつぜひその点を含んで総理に、大変御苦労でございますけれども、われわれの意向を伝えていただいて、できるならばもう一回検討していただいたらどうか、こう思うのでございますけれども、同じような質問で恐縮ですが、ひとつお答えを願いたいと思います。
  128. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 電電公社を中核といたしまして、官民の協力のもとでこれまで日本の電気通信事業がすばらしい発展をしてまいりましたことは御同慶にたえません。大変魅力のあるいわば調達市場を形成しておるところでございまして、私どもとしては、この聖域をできたら侵されないで、すぐれた方々の手によって、日本技術によりましてなお一層の発展が期待できることを望みたいわけでございます。したがって、先ほどもおしかりを受けましたけれども政府がここに調達の市場があるじゃないですかと言うて提供したわけじゃないのです。向こうの方から、これはひとつ相談に乗ってくれないかという、一つの魅力のある市場として提起されてきたわけでございます。鈴木さんおっしゃるように、しかしこれは金額とか方式とかいろいろ中身の問題がございまして、いまなかなか折り合いがつかぬ状況にあるわけでございますが、根本はこういう日米関係の懸案事項でございますから、双方の互譲と理解によりまして解決せねばならぬじゃないかということと同時に、電電公社中心といたしまして、せっかくここまで成長、充実してまいりました状況というものを壊すことのないように、こういう契機においてさらに一層発展の契機をつかめるような方向にできるだけ持っていかなければいかぬ、これは政府の責任であると思うわけでございまして、そういう問題性は私どもも十分頭に置いてこの交渉に当たっておるつもりでございますし、今後も当たってまいるつもりでおります。
  129. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 最後に、ぜひそういうふうな方向で、もう少し全体の空気、国論が一致するように望むわけですか、総理が熊本に行かれて記者会見したときにこの問題にちょっと触れられました。私は今後電電事業そのものに対しても、それを支えてまいりました中小メーカー、こういう人たちの領域の中に相当悪影響、問題が出てくると思うのですね。極端に言ったら、雇用の問題まで含めまして相当な問題が出てくると思います。そういうことについて何か総理が、政府としても、政府の責任でそういうことをおやりになるわけですから、今後このことによってこうむる被害についてはまた責任を持っていくべきではないかという趣旨の御説明だと思ったのですが、先ほどの左藤委員の質問にも若干そういう抽象的なお答えがありましたけれども、もしこれによって被害を受けた場合には、政府として、具体的には言えないとしても、何がしかの救済的な措置をとってあげるというような考え方も一面持っておられるのでしょうか。その点だけをはっきりしてください。
  130. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 これは日米間でいずれにいたしましても解決しなければならぬ問題でございますから、この問題についての解決方式が出てまいります。そういたしますと、それを受けてまず電電を中心に対応策をお考えいただかなければならぬと思います。いまの体制で対応できる状況であれば結構でございますけれども、あなたが言われるように、これは多くの企業、多くの雇用に関係があることでございます。先ほども労働組合の代表者の方々からるる御要請を承ったわけでございますが、そういう問題でございますので、まず第一義的に電電が対応するにいたしましても、どうしても足らない面がございますならば政府は座視しておるわけにまいらないと思います。一緒になって問題の解決に当たらなければならぬと思っております。
  131. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 じゃ、これで終わります。ありがとうございました。
  132. 石野久男

    石野委員長 次に、鳥居一雄君。
  133. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 公明党の鳥居一雄です。  私ども、今回の交渉経過を見ておりまして、電気通信機器本体に係る問題につきましては非常に事を急いでいる印象を受けるわけです。短兵急過ぎて、慎重な検討がなされなければならないのに、何か軽はずみに進んでいるように思えてならないのですが、総理はどう受けとめていらっしゃいますか。
  134. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 これは二つの事情がございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、この間ジュネーブでイニシアルを終えました多角的な関税、貿易の協定の批准を急がなければいかぬ、それに関連いたしておりますので、八一年の実施を待つまでもなく、各国が国会の批准を求めるにつきましては、実態的に未解決の問題を残さないようにしておかなければいかぬという事情で、なるべく早くこれを解決しなければならぬという一般的な事情がございます。  それから、日米間におきましてはたまたま私が訪米するということでございますから、こういう問題を抱えて訪米するのではなくて、できたら解決しておいた方がいいのじゃないかという考え方がございまして、政府が相当急いでまいりました事情は私よく承知いたしておるわけでございますが、先ほど申しましたように、残念ながらまだ了解点に至っていないわけでございます。
  135. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 開放に伴う問題点、これは数えれば大変数々指摘できるわけです。製造会社により構成、構造あるいは設計思想が違うために多種の機器が混在することになってしまう、これによってサービスの質を低下させることになる。あるいは開発に協力した製造会社がどんどん蓄積している製造上のノーハウが競争相手である製造会社に流出してしまう。また、電気通信設備は非常に高い信頼度が要求されている、これは購入検査だけで確認できるものではなくて、原材料の購入から完成に至るまでの工程の中で、品質管理あるいは綿密な工場調査というのが行われて確認されなければならない、つまり電気通信設備の信頼性を確保する。あるいは非常に長い期間にわたって増設用設備、補修用部品の供給体制を確立しなければならない、計画的な製造あるいは総合的な経営能率が低下してしまう。こういうさまざまな問題点がいま言われているわけですけれども、こういう重大な支障を来すであろう点については検討されたのでしょうか。
  136. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 どういうところで話をつけますか、そういう事情も頭に置きまして、電電公社がその本来の責任を果たすことに致命的な支障が起きないようにしなければならぬことは、当然われわれの配慮の中にあるわけでございます。
  137. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 さらに、公社の資材の調達額、これは五十三年度を見て見ますと約六千億円強、それで、これは約三百の通信機関連メーカーに発注をされているというおおよその実績があります。大手も含めて見ると、中小企業の数にして約二千社、従業員数で六十万人、こう言われているわけです。これらの中小企業の実際の受注額を見てみますと、この六千億円強のちょうど二分の一に当たる約三千億円、非常に莫大なものです。中小企業の公社に対する依存度、中小企業の特に資本金が中、小と言われる程度のものを見てみますと、公社依存度というのが八〇%、非常に高い率を示しております。  それで、中小企業の場合にどんな受注をしているか。これは、コンピューター本体であるとかあるいは電子交換機、交換機と言われるような大型のものではなくて、電話機であるとか主として端末機器ということになっているわけでありますが、おまけに最近の状況として、五カ年計画の中でほぼ目標を達成して、あとは補修程度の仕事しかない、こういう状況の中で、今回のこの開放という事態は大変大きなショックである、こう現状においては認識せざるを得ません。それで、十七日、経営危機突破大会というのが東商ホールにおいて開かれました。これは単なるデモンストレーションというよりも、中小企業にとりましてはいわゆる死活問題であり、何とかしてこの危機を突破しなければならない、こういう状況に置かれた大変緊迫したものであると私たちは受けとめるのですが、総理は今回のこの開放に伴う被害、これの救済についてはどういうお考えでしょうか。
  138. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 先ほどお答え申し上げましたように、今度、日米間に幸いに一つの解決の枠組みができたとしますと、それを踏まえて、第一義的には電電公社の方において、それに対応策を考えられるわけでございます。電電公社が対応策を考えるに当たりましては、いまあなたが御指摘のような問題も皆含めて、電電がどう対応するかということについてお考えになることと思うのであります。それはどういう状態になるのかということのまだ了解案が出ておりませんので、私は見当つきません。見当つきませんけれども、先ほど御質問にもありましたけれども、電電が対応策を講じられるにつきまして、万般のことを考えておやりになるということでございますが、政府はそれを電電に協力をいたしまして、可能な限り有効な対応策を練り出して、御懸念のないようにしなければならぬのではないかと考えております。
  139. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、中小企業の救済について公社は公社なりに救済策を練られる、これは当然のことだと私たちは思います。しかし、政府の全責任のもとに今回の外交交渉をやっている、そういうお考えですから、私は、総理大臣あるいは通産大臣との間で、政府としての救済策、さまざまあるだろうと思いますが、それをおとりになるお考えというのはありませんでしょうか。電電任せでしょうか。
  140. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、電電の方で対応策は一応考えられるでございましょうけれども、電電だけでできれば大変幸せでございますけれども、どうしても政府の協力を必要とされるというような場合におきましては、われわれは進んで御協力しなければならない立場にあると思います。
  141. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ちょっと変わりますが、ジョーンズ・レポートの中でさまざま指摘されておりますけれども一つは量の問題、質の問題こんなふうな区分けが言われている中で、日本の電気通信政策について大変大きな注文が来ているように私は見受けます。それで、たとえば、米国系のTSS会社が専用線の運用規制を受けたために、技術的に認可されても専用線容量の一〇%程度しか使用できない、そういう運用上の厳しい規制がある。ですから、これを何とか改善させてほしい。これはまさに日本の電気通信政策に変更を求める、そういう趣旨だろうと思うのですが、これに対して政府はどう考えていらっしゃるでしょうか。
  142. 寺島角夫

    ○寺島政府委員 ただいま御指摘のジョーンズ・レポートにございますCDCの問題と思うわけでございますけれども、CDCが何か日本通信法制上特別な扱いを受けたというふうなことに読めるわけでございますけれども、そういうことではございませんで、日本が現在、国際的なCCITTの勧告等に基づきましてとっております回線制度を他のアメリカの業者等にもそのように適用しておるわけでございまして、特にCDCにだけ変わった適用をしたわけではございませんので、その点、CDCのいろいろな言い方に対しまして、現在、理解を求めるべくいろいろ努力をしておる段階でございます。
  143. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはむしろ公社というよりも、国内通信については電電公社、海外通信についてはKDDということですから、郵政省として、国内、国外あわせて検討を迫られているようなそういう問題だと思うのです。  それで、この指摘は、米国の国内におきましてはVAN付加価値通信業者をすでに認め、大幅な自由化を達成している、そういう背景の中で、日本における他人使用、共同使用の制限、これを撤廃要求するという空気は非常に国内的にも強くなっているわけですが、その制限緩和の方向で検討を始める、こういう考え方はないのですか。
  144. 寺島角夫

    ○寺島政府委員 御案内のとおり、このデータ通信と申しますか、これに絡みます回線利用制度のあり方につきましては、世界のそれぞれの国のいろいろな歴史的な事情、背景もございまして、それぞれの国の主権に基づきまして定められておるわけでございます。  御案内のとおり、日本データ通信回線利用制度につきましては、四十六年に公衆電気通信法の改正によりまして一つの制度的な位置づけをして今日に至っておるわけでございます。しかしながら、先生指摘のとおり、その後ほぼ十年近くたちまして、それから後のデータ通信技術の進展あるいはその利用形態多様化といったふうないろいろな客観情勢の変化が出ておることはそのとおりでございまして、こういった客観情勢の変化に対応いたしまして、われわれ、このデータ通信制度の今後のあり方ということにつきましては現在も検討を進めてまいっておるわけでございますが、今後ともそういったものに対応するあり方等につきまして検討を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  145. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 通信ネットワークのメーンの部分という指摘があります。その中に、いわゆるモデム――アメリカから民間が自営モデムとして、両端末につけようということでモデムを輸入してまいりました。それを昨年の四月から、自営モデムというよりも直営の公社モデムといういわば新しい制度にして、誘導的にアメリカモデムを使わないような形にしている、こういう指摘がこのジョーンズ・レポートの中にありますが、今回モデムについては開放の対象でしょうかあるいは対象としてないでしょうか。
  146. 前田光治

    ○前田説明員 いまおっしゃいましたモデムは、一般的な使用方法の場合はいわゆる本体の内部に入ると思っております。本体の一部を対象にしておるということを申し上げておりますが、その内容の物品名を申し上げますのは、ただいま外交交渉の案件になっておりますところでございますので、その点については答弁を御勘弁願いたいと思います。
  147. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 総理にお伺いしたいのですが、一切政府が責任を負うと先ほどの御答弁でおっしゃられているのですが、これはどういうことを意味されているのでしょうか。責任をとって辞意を表明されました秋草総裁の慰留に対して、政府に一切の責任があるんだから絶対に慰留するんだ、こういう御意向の意味なんですか。どういうことでしょうか。
  148. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 今度の政府調達問題は一〇〇%政府の責任でやっていることでございます。電電公社の責任ではございません。したがいまして、総裁におかれてかりそめにも辞任を考えられるというようなことのないように説得をしてまいるつもりです。
  149. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。
  150. 石野久男

    石野委員長 次に、青山丘君。
  151. 青山丘

    ○青山委員 総理、御苦労さまです。  日米間の貿易不均衡を是正して両国間の経済的摩擦を解消するために、政府機関の資材調達の門戸開放を進めることについては、私も大局的に見てきたつもりであります。そこで、電電公社の資材調達についてはある程度の開放があるかもしれないと見てきました。ただしかし、アメリカ側からこの問題が提起されてから現在までの政府の対応を見てまいりますと、アメリカ側が意図しておるその内容について読み違いがあったり、あるいは開放額を小出しに積み増すような交渉態度によって、かえってアメリカに押しまくられてしまったのではないか、結果的には通信機器本体まで開放せざるを得ないような事態を招いてしまった、こうした交渉の過程に問題があったのではないかと私は考えていますが、いかがでしょうか。  さらに、電電公社の秋草総裁が事態紛糾の責任をとって辞意を表明しておられますが、この問題をめぐって政府部内にこうした混乱を招いたような何らかの原因はあったのかどうか、まずお尋ねをいたします。
  152. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 これらの問題が起こりましてからの政府の対応ぶりにつきましては先ほど来各委員から御指摘がございまして、政府側にもいろいろ不始末がございましたことは率直に認めます。私どもといたしましては、先方の意図が必ずしも予見できなかったので、できるだけ小範囲の開放で話か済むようにと念願しておりましたことは事実でございます。御指摘のようにだんだんと先方の要求も高まってまいりました事情、これもあらかじめ予見して、これに対しまして十分前広に対応策を講じなかったということにつきましては、御指摘のとおり私ども非難を甘受しなければならぬと考えております。しかし、この段階になりましたので、われわれといたしましてはこれまでの経過を踏まえた上で慎重にかつ真剣に対応して解決に当たりたいと存じております。  それから電電総裁の辞意問題でございますけれども、私どもとしては先ほど申しましたとおり全責任は政府にあるわけでございますし、総裁におかれては今度この問題が解決した後の電電を率いて対応策を十分練ってもらわなければいかぬわけでございますので、辞意をかりそめにも持たれるというようなことのないようにお願いしたいと思っております。
  153. 青山丘

    ○青山委員 私も一昨昨年でしたか、ウルフ次席大使に会って話をしたことがありますが、非常に強硬でした。日本政府の対応に対して本当に不満を持っていたわけです。強い不満を持っていました。したがって、アメリカの抵抗といいますか要求というのはかなりきつい、そういう感じを持ったわけですが、ただこれを経済問題の範囲で考えていくというのは若干危険があるのではないか。先ほど来の質問の中にもありました国家機密の問題、公衆電気通信産業の技術の維持向上という面からもなかなか微妙な問題があります。したがって、アメリカとの貿易不均衡の経済問題としてとらえていくには不適当だと私は実は思っているのです。これをオレンジや肉と同じように取り扱っていくということは問題があるではないかと一つは考えています。その辺の御見解はいかがでしょうか。  それからもう一つ、いまの問題はもうちょっと後で触れていきたいと思いますが、政府がこれまでとってこられた経済政策、福田総理が総理就任直後に諸外国に対して約束されたことが実は実行できなかった。国内政策、経済政策のおくれ、おくれといいますか、効果をあらわさなかったことがこういう形になってきて、そして公衆電気通信産業にまで影響を及ぼしてきた。この経済政策が効果をあらわさなかったその責任というものが政府にあると私は思うのです。確かにそれなりの努力をしてこられたことは私率直に認めてますよ。その後の公定歩合に対しても公債の比率についてもそれなりの評価はしていますが、しかし結果として効果をあらわさなかった、国内需要が十分に喚起しなかった、そのために日米関係の貿易の黒字が全然埋まらなかった、とても赤字になるなんという見通しは立っていない、こういうしわ寄せが結局電気通信産業にまで来てしまった、こういうことになっておると思うのです。その辺の責任に対する御見解はいかがでしょうか。
  154. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 つまりこの政府調達問題の国際収支の中に占めるシェアというのはそんなに大きくない。全部開放してみても、それは収支に決定的な影響を与えるというようなものでないことは御指摘のとおりでございます。その意味で、収支問題だけから問題を取り上げますと、こういう問題を特に取り上げるのは少しバランスを失しているのじゃないかという御指摘は正しいと思います。そのとおりだと思います。しかしながら、この問題はそうでなくて、黒字国というか非常に生産性に腰の強い国の姿勢として、こういう問題についてはもっと大胆に、進んで開放してくれていいじゃないかという黒字国の姿勢としていま問われておると私は思うのであります。したがって、それは一体本当に腰が強いのか強くないのかというようなことは私はなお検討する必要があろうかと思いますけれども、少なくとも相手側にはそのように映っているということは事実でございます。そして、そういう信念を持って取り上げられておる以上は、これに対しまして、日本の事情も勘案しながら、相互理解の上で何とか解決ができないかというのがいま私どもの立場でございます。  それから第二の、経済政策か福田内閣から今日に至るまで成果を上げなかったじゃないかという、これはそうじゃないのです。成果を上げたと私は思っております。すなわち七%成長というのはいろいろな要素から成り立っておりますけれども、本筋は、内需を喚起いたしまして輸入をふやすのだということであったわけでございます。内需は、政府が最初予想しておったよりよけい内需の喚起に成功したわけでございまして、去年も実績が八・二%、内需が対前年ふえているわけでございます。そしてそれが影響いたしまして、去年の秋から貿易収支も経常収支もだんだん改善を見ておりますし、基礎収支や総合収支はもうすでに赤字でございます。そこまで私は成果を上げておると思うのでございます。  ただ一点、余りに為替市場が不安定でございましたために海外余剰の面で大きな狂いが生じたことは御指摘のとおりでございまして、その点は政府は不明はわびなければいかぬと思いますけれども、これは計画経済をやっているわけではございませんし、世界のああいう為替市場が荒れ狂った状態を一内閣の手で支えるなんということはとてもできるはずはございません。したがって私は、前内閣から今日までわれわれが踏襲しておりまする経済政策は、ねらった目標に向かいまして相当程度成果を上げてきたのではないか、そのように世界もだんだん理解をしてきておると私は思うのです。日本政府の立場、努力というものもそれなりには理解していただいておるのではないかと思います。
  155. 青山丘

    ○青山委員 確かにその後の努力の成果を私も率直に認めています。ただしかし、福田総理が就任早々、マイナス七億ドル、赤字を公言されましたが、結果は全く逆であったということですね。これはやはり世界の国々から日本政策に対する不信感を持たれてきた。それが結局あの為替市場を混乱させてきた一つの原因にもなってきていると私は見ているのです。為替市場だけじゃない、その前の問題があるわけですね。  時間がありませんので、用意した質問をまずさせていただきます。横道にそれてもいけません。  先進諸外国の電気通信事業体は官営や民営等その運営形態にはそれぞれ違いがあるものの、資材調達に関してはほとんどが自国メーカーを中心とした随意契約方式をとってきました。これは各国とも、社会的、経済的活動を進める上での中枢神経とも言うべき電気通信事業を保護して、その円滑かつ安定した発展、運営を図ろうとするからでありました。こうした世界情勢の中で、ひとりわが国のみか通信機器本体までも含めた大幅な開放に応ずるということは、わが国の電気通信事業の安定した発展、運営を脅かすし、国益全体から見ても重大なマイナスを招くことになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。これが一つ。  それから、国際的にも経済問題の解決のみを優先させているのではないか。先ほどちょっと触れました。電気通信事業の持つ国益上の重要性、独立国としての、電気通信事業を持っている国の主権及び安全保障の問題、そういった面から見てまいりますと、国益上の重要性を忘れられた安易な措置ではないかという評価を将来受けるのではないかという不安を持ちます。その辺の御見解はいかがでしょうか。
  156. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 通信機器の開放問題というのは、先ほど久保委員の御質問にも答えましたとおり、確固不動の原則がいま世界にあるわけではございませんで、各国通信機器産業の構造も違いますし、強さも違いますし、経営形態も違うわけでございますので、その中に一貫した客観的な法則があるわけじゃないことは御説明申し上げたとおりでございます。  そこで、いま問われておる問題は、結局、このように大幅な黒字国としての責任においてもう少し開放できないかという問題として提起されておるとわれわれは承知しております。したがって、そういう問題としての現実の問題として、原則の問題というより現実の問題として処理しなければいかぬのじゃないかと考えております。  しかしながら、第二に御質問がございましたように、国益を犠牲にする、電電を頂点といたしまする電気通信産業に致命傷を与えるというようなことは、これはできる相談じゃございませんで、そういう点については十分の警戒心を持って当たらなければならぬことは当然と思っています。
  157. 青山丘

    ○青山委員 ぜひひとつその辺の配慮をしていただきたいと思います。  時間がありませんので二、三質問を飛ばしますが、先ほどの質問にもちょっと触れるかもしれません。現在電気通信関連の産業に従事する労働者は六十万人とも百万人とも言われておりますが、これら労働者の相当部分は、電電公社の投資計画や資材調達の動向いかんによって大きく雇用が左右されてきた状況です。また、経営の相当部分を電電公社への資材納入に依存している企業の中には、かなりの数の中小企業があります。そこで、大幅な開放を実施することによって外国メーカーの参入が拡大すれば、中小企業を中心に電気通信関連企業の倒産や、それによる雇用不安の増大が予想されてまいります。この点に関してどのような見通しを持っておられるのか。  第二は、開放によって関連中小企業や労働者に対しそのしわ寄せがなされることのないようにどのような対策が考えられておるのかお尋ねをしたいのであります。  関連しますが、ほとんど日本の企業だけで構成されてきた電電公社の市場ということになります。それが今度は外国から入ってまいりますと事業量も減ってまいりますから、当然のことのように雇用不安が出てまいります。その辺の見通しをどのようにお持ちなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  158. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 まだどのような解決案になりますかわかりません状況でございますから、その問題に対して的確に答えるベースがないわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、原則といたしまして、ある解決案か出た場合に、これに対応して電電を中心にいろいろ対応策を考えなければいけません。その場合におきましては、あなたの言われる雇用問題、中小企業を中心とするいろいろな関連企業の経営の問題など、これは大きな問題になってくると思うのでありまして、そういった問題についてそれぞれの対応が考えられなければならぬと思いますし、政府もそれをお手伝いいたしまして、大きな不安を招来しないように対処しなければならぬと思っています。
  159. 青山丘

    ○青山委員 ぜひひとつその問題については、もしそういう事態になってきたら積極的に取り組んでいただきたいと要望しておきます。  それから、今回のアメリカからの圧力、最初は繊維問題でした。それから一昨々年の七月でしたか、カラーテレビの輸入規制――自主規制でしたけれども、これはありました。それから鉄鋼、農産物、一つ一つ各個撃破されてきて、だんだん追い詰められてきたという状況なんです。こういう攻撃のされ方というのは決して上手なやり方ではない。やはり日本政府が総合的な対応策を持つといいますか、アメリカに対する信頼感を持たれるような、そういう総合プランみたいな形を提示できなければ、これからも各個撃破されるのじゃないかと心配をするのです。こういう各個撃破をされるような事態はひとつ今回で終わりにしていただきたい。今後はこういうことはもうさせないという見通し、決意を総理からお聞かせいただきたいと思います。
  160. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 なかなかむずかしい御質問でございます。つまり、これから日米間の貿易関係がバランスのとれた状態で平穏に推移していけば御心配のようなことがないわけでございますが、過去においてそうでありましたように、そして現在そうでございますように、往々にして相当大幅なインバランスが起こり得るわけでございます。将来起こらないという保証はないと私は思うのでございまして、大事なことはそういうことが起こった場合にそれにどのように適切に対処していくかということだろうと思うのでございまして、問題が起こらないようにしようということよりは、起こった場合にどう対処するかということが現実のわれわれの課題ではないかと思っております。
  161. 青山丘

    ○青山委員 時間が来ましたので、質問を終わります。
  162. 石野久男

    石野委員長 次に、藤原ひろ子君。
  163. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 年間六千億円にも上ります電電公社の物資調達というアメリカ政府の主張、そしてこの問題に対します対応ですが、これは大平内閣最大の懸案にもなっているというふうに思います。今回のアメリカの対日要求を見ます上で注目されますのが、ジョーンズ米下院対日貿易監視小委員長、この人がことしの一月末に発表した報告書だというふうに思うわけです。この報告には、日米両国において貿易不均衡を除去する基本的な変化が生じない限り、危機は再び起こるというふうに警告をしまして、円高による収支の均衡には限界があるというふうに指摘をしております。  そして、六つ言っておりますが、まず一つは輸入カルテル、二つ目は外国銀行の活動への差別、三つ目は政府の調達、四つ目は自動車輸入に対する行政措置、五つ目が農産物の輸入制限、六つ目にコンピューター業界への政府の補助金、こういったものなどを日本の貿易障害というふうにしてやり玉に上げまして、その変更を迫っているわけです。まさにこのような主張といいますのは、日本の産業あるいは経済の仕組みや制度につきましての自主性を侵すものだというふうに私は考えます。これに対して総理はどのようにお考えになっているでしょうか。
  164. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 ジョーンズ報告でございますが、御指摘のように一月三十一日に発表された報告でございます。これにつきましてはいま御説明がございましたが、私ども、この中にはわれわれとして理解できるところもございまするし、また、事実の誤認等もあるのではないかと思われる節もございまして、一つの意見として承ったわけでございます。  これに対しては、いろいろ提言が含まれておりますが、それに対してどう思うかということでございますが、私は世界の自由な貿易体制を進めていく、関税を低めたり貿易障害を除去したりいたしまして、できるだけ自由な貿易の拡大を図っていくことが世界の安定、経済の安定、繁栄のために大切である、そういう方向でわが国の努力が足らぬ点の御指摘でございますならば、これはジョーンズさんばかりでなく、どなたからの批判も謙虚に聞かなければならぬのではないかと思います。しかしながら、いま藤原さんが御指摘のように、それぞれの国にはそれぞれの個性がございますし、事情もございまして、そう言うものの、そういうことがにわかにやるにいたしましてもむずかしい事情もございます。また、やることによりまして多くの深刻な影響が生まれない保証もございません。したがって、そういう場合にそれぞれの主権国家がそれぞれの判断に基づきまして処理していくわけでございまして、日本日本なりに、先ほども申し上げましたように、内需の喚起を通じまして本格的に収支の均衡化に努めて顕著な実績をいまおさめつつあるわけでございます。また、政府調達問題を初めといたしまして個々の問題につきましては日米双方でも話し合いをいたしまして、解決すべきものは解決いたしつつあるわけでございます。言いかえれば、ジョーンズ報告なるものにつきましては、われわれとして参考にすべきものもございますれば、いかがと思われる御意見もありますが、われわれといたしましては自主的に対応していくべきものと考えております。
  165. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 総理、アメリカの対日要求というのはジョーンズ報告の内容にとどまるものではありません。ことしの三月の下旬に来日いたしましたオーエン米大統領特別代表、この人は日本政府に対しまして、輸出主導型の黒字体質を改善するための中長期的な市場の開放、産業、経済構造調整のビジョンを示せ、こういうふうに要求しているわけです。マンスフィールド駐日大使が三月十六日に提案をいたしました日米経済の諸問題を早期に解決するための合同研究グループ設置の構想、これもこうした長期的な対日戦略に沿って日本の経済の運営あるいは産業の政策を監視をする常設機関をつくるということをねらっているわけです。  このようにしました対日戦略の当面の標的となったのが電電公社の資材機材のアメリカ商品への門戸開放問題だ、こういう問題であるわけですけれども、それでも大平総理は、電電公社の資材等をアメリカに門戸開放することによって国内の中小企業が打撃を受けないというふうに断言できるのでしょうか、いかがでしょうか。
  166. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 中長期の展望について研究しようじゃないかとか、あるいはそういう指針が示されることは望ましいじゃないかというような御意見があることは私も承知いたしております。しょっちゅう黒字が出る、赤字が出る、そういう非常に不安定な状態でなくて、中長期にわたりまして日本はどういうことをやる、アメリカはどういうことをやるという展望が出てくれば、おのずからそこに安定した展望が立つじゃないかということは、御指摘になりましたオーエンさん、マンスフィールド大使ばかりでなく、どなたも考えられておることであろうと思うのでございます。問題は、そういうことを日本といたしましてどういう展望がつくれるか、そういう問題がわれわれの問題として検討しなければならぬものと思っております。  ただ、いませっかくの御指摘でございますが、電電公社の問題は中長期の展望との関連においてアメリカが提起しておるというようにお話がございましたが、私はそのようには理解しておりませんで、中長期の展望問題というのは、これから日本が内需を中心にいたしまして産業を輸入指向型に持っていこうということは、金融、税制、産業政策万般にわたりましての総合的なアプローチの問題であろうと思うのでありまして、電電公社の問題というのは、現在黒字国である日本に対しまして、ここにもつと魅力のある市場があるのでこれは黒字国の姿勢として開放することは考えられないかという個別的な問題として提案されておるのではないかと思うのでありまして、それはそれといたしまして、わが国の事情が許す限りどの程度までこれに対応できますか、政府が真剣にいま考えておるところでございます。
  167. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 秋草総裁に質問したいのですが、時間がありませんので要望だけにとどめておきたいと思います。  それは、私はいままで述べました問題とあわせまして、国内における契約のあり方、これにも問題があるというふうに思うわけです。それは、電電公社は大企業との間で契約を結んで、しかも国内調達額の半分以上というのは日本電気、富士通、日立製作所、沖電気工業の四社で占められるというふうに言われているわけです。ですから私は、電電公社国民から負託をされました電気通信サービスを行うという立場に立てば、調達先の企業の公開を初めとした契約制度をガラス張りにすべきではないかという、これは返答いただく時間がありませんので要望したいというふうに思うわけです。  それと同時に、最後に、報道によりますと大平総理は六月の東京サミットを成功裏に乗り切るための譲歩の姿勢というふうにも書かれているわけですが、こういう態度はまさにアメリカへの屈服なんだというふうに思います。日本の経済の主権を売り渡すものだというふうに私は感じております。結局それは国民にツケが回ってくる、犠牲をしわ寄せする、ましてやこの背後には、カーター政権に影響力の強いIBMの国際的な情報独占あるいは通信機器部門への進出などの戦略があるというふうに考えられるわけです。カーター政権のバーンズとかブラウンとかの国務大臣及びハリス住宅都市開発長官、この三人は御存じだろうと思いますがIBMの元取締役をしている人です。これを見ましても、IBMはカーター政権に多くの人材を送り込んで影響力を行使しているというふうに言っても決して過言ではない。まさにこれの仕掛け人はIBMではないか、こういうことです。今回の東京ラウンドに関連しての電電公社の……
  168. 石野久男

    石野委員長 藤原君、時間が超過しておりますから簡略にやってください。
  169. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 わかりました。  電電公社の物資調達の門戸開放という問題はこういう大平内閣の姿勢を問われる問題だと思います。大平内閣はこうした多国籍企業の利潤追求に屈するのなら日本の将来に大変大きな禍根を残すという重大な問題だ。私は、答弁をいただく時間がありませんから、こういう禍根を残すようなことは大変な問題だ、このことを強く指摘をして終わりたいと思います。
  170. 石野久男

    石野委員長 次に、伊藤公介君。
  171. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 さまざまな質問がございましたけれども、私はきょうの夕刊に載っております最も新しい情報について、今後の方針をどのようにお考えになっているか、総理に端的にお尋ねをしていきたいと思います。  東郷・ストラウス第二回会談は、日本側が提示した日米経済案件の一括的な譲歩案に対してアメリカ側が初めて回答を出した。これは日本側の案に対して拒否をされたということですね。これは電気通信の本体が含まれていないということで日本側案の受け入れを拒否したわけであります。特にアメリカ側は、電電公社アメリカ製品に一〇〇%門戸開放するとのたてまえをとらない限り日米間の不公平は解消せず、対日保護貿易主義に傾いているアメリカ議会を納得させるわけにはいかないという意見を述べられた。さらに日本側がこの譲歩をする余地があるかどうかということがこれからの非常に重要な問題だと私は思っておるわけでありますが、東郷大使はそれに対して訓令を求めてきている。日本政府としては前日、アメリカ側に提示をした譲歩案が最終案としてこれ以上譲歩の積み増しはないという方針を決定をしているけれども、同交渉に今後最悪の事態を打開するのにどのような方針で臨んでいくか、これはまさに総理の非常に高度な政治判断という段階に私は来ていると思いますけれども、これ以上の譲歩の余地はない、こう総理はお考えになっていらっしゃるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  172. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 冒頭に新聞報道と本問題の処理についての御注意をちょうだいしたわけでございますが、いままだ交渉が継続中でございまして、新聞の記事に対しまして私は答えるというわけにまいりません。問題は、いま最終の段階に参りまして、政府といたしましてはこの問題の納得のいく処理をしなければならぬと考えて鋭意検討をいたしておるところでございまして、どのようにいたしますかというようなことをいまこの段階で私から申し上げるわけにはまいらぬことをお許しをいただきたいと思います。
  173. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 新聞報道はともかくとして、日本側が提示をしたこの最終案と言われる案をまだ手直しをするという余地があるのかどうか。あるいはずいぶん御議論がありましたが、日本のノーハウをこれ以上オープンにしては――この一線、最後のとりでを守れという意見がずいぶん強い。これは郵政大臣あるいは秋草総裁、辞任をするという決意でこれに臨んでいるわけですから、そうした中で、政府が出した最終案、これに対してもう譲歩する余地はないのか、あるいはなお少しまだ裸になっても譲歩して進めるという用意があるのかどうか、その感触をお尋ねしたい。
  174. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 先ほど申しましたように、一方の極は日米関係を考えるということでございますが、一方の極は電電公社国民に対する責任を果たすということに致命傷を与えてはならぬということでございます。それは十分私ども踏まえた上で決断せにゃいかぬことでございまして、いま鋭意検討をしておるところでございます。
  175. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうしますと、大平総理、訪米されるにもう六日間しかないわけですね。もう東郷大使が最後の訓令を受ける、次の会談が恐らく最終になるのではないかと私は思っているわけですが、そうしますと、総理訪米前にこの問題についてあえて決着をしないで首脳会議に臨むということもあり得るのかどうなのか、御見解を承りたいと思います。
  176. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 われわれ納得がいく解決ができれば、きょうでもあしたでも解決したいと思っておりますけれども、納得がいかない場合には、解決を急がなければならぬという理由はないと思います。
  177. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうしますと、交渉でありますから、現段階で言い得ない部分のあることも私もよく承知をいたしているわけでありますが、私は電電公社の総裁が辞意を示された、そのときの記者会見の一文を見ましても、とにかく力が足りずに残念だ、二十一日昼ごろ官房長官から近く総理に会ってもらうとの趣旨の電話をもらったけれども、私としてはすでにお預けをした身柄だと言うほかはない、こういう立場に追い込まれたことは、私ばかりか全公社員が不満だ、私の行動が政府に盾を突くととられることも考えたが、こうするほかはなかった。これはもう最高責任者として、総理に最後の決断を仰がなくても何とか決着はできますよという意気込みで総裁はやってこられた。郵政大臣を筆頭にして郵政省もそういう姿勢で一生懸命がんばってきた。しかし、いま最後のそのとりでを明けてしまうかどうかという最後の一線に実は来ていると思うわけであります。この貿易の収支のバランスをとらなければならないということは、これはもうほとんどの合意でありますけれども日本のこれだけの、電電公社がまさに世界一と自負している高度なノーハウをこうした形でオープンすることがいいかどうか。たとえば、かつてイギリスも入札を自由にする、競争入札にした、しかるところ、非常に効率が悪いといってこれをまたもとに戻したというケースもある。いま日本とECとの間でも、この電気通信についてはこれを取り除くということでつい十二日に調印をしたばかりですね。なぜアメリカだけに対してこの最後のとりでを明け渡さなければならないのか。各委員が主張されて御質問されたとおり、これはもう牛肉か何かの問題とは違う。日本人の頭脳の問題、しかも電電公社の方々が長い間蓄積をしてきたそのとりでを、どうしても最後の一線は守りたいという強い意思を示されておる。総理はそういう立場に立って最後の御決断をいただきたいというふうに私は思います。  会談はもう時間がそうないわけでありますが、総理訪米前に必ずしも決着をつけなくても、この問題についてはじっくり取り組むといういま御答弁があったと私は承っておりますけれども、いま政府が出した修正案ですね、最終案というものは、現段階で総理はこれは非常にかたいものだという御意思を持っていらっしゃるのかどうか、もう一度重ねてお尋ねしたいと思います。
  178. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 政府は責任を持って交渉いたしておるわけでございまして、安易にみずからの意見を、よほどのことがない限り変えられないわけでございます。私どもといたしましては、この問題、重要性をよく承知いたしておるつもりでございますので、全力を傾けて解決に当たりたいと思いますが、アメリカに十分理解を求めなければなりません。アメリカ側においても日本の立場に対して十分な理解を持って、できたら互譲の精神で納得のいく解決がないものかといまなお思っております。
  179. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。
  180. 石野久男

    石野委員長 次回は、明二十六日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会