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1979-05-29 第87回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十九日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 野中 英二君 理事 武藤 嘉文君    理事 山下 徳夫君 理事 渡部 恒三君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 岡本 富夫君 理事 宮田 早苗君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       始関 伊平君    島村 宜伸君       辻  英雄君    楢橋  進君       松永  光君    山田 久就君       渡辺 秀央君    後藤  茂君       上坂  昇君    清水  勇君       田口 一男君    塚田 庄平君       中村 重光君    飯田 忠雄君       玉城 栄一君    宮井 泰良君       荒木  宏君    工藤  晃君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  江崎 真澄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中島源太郎君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省生活         産業局長    栗原 昭平君         中小企業庁長官 左近友三郎君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局小学校教         育課長     中島 章夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   長田 武士君     飯田 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   飯田 忠雄君     長田 武士君     ————————————— 五月二十八日  出版物再販制廃止反対に関する請願(岡田利  春君紹介)(第四五四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産地中小企業対策臨時措置法案内閣提出第四  八号)      ————◇—————
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出産地中小企業対策臨時措置法案を議題といたします。提案理由説明を聴取いたします。江崎通商産業大臣。     —————————————
  3. 江崎真澄

    江崎国務大臣 産地中小企業対策臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  御案内のとおり、最近における経済情勢は、全体としては景気回復の足取りを強めておりますものの、今般の円相場高騰により、大きな影響を受けている輸出関連等特定産地におきましては、産地中小企業事業活動支障を生じており、このまま放置した場合には、将来多くの産地中小企業が疲弊し、これに伴う経済社会問題が発生するという事態が憂慮される状況であります。  政府といたしましては、これまで、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法中心とした金融税制上の措置等の、緊急かつ総合的な対策を進めることにより、円高関連中小企業の経営と雇用の安定を図ってきたところでありますが、さらに、近時これらの産地中小企業において、中長期的な展望を踏まえて、その創造力適応力をもって事業合理化計画的かつ速やかに進めようとする意欲が盛り上がりつつあることに呼応して、中小企業信用保険法特例その他の措置を講ずることにより、産地中小企業のこのような自助努力を助長し、これらの産地中小企業の新たな経済的環境への適応を促進するため、本法案を立案したものであります。その概要は、次のとおりであります。  まず、本法案目的は、特定業種に属する事業特定産地において行う中小企業者が、円相場高騰その他の最近における経済的事情の著しい変化に対処して、その事業合理化計画的かつ速やかに進めるための措置等を講ずることにより、これらの中小企業者の新たな経済的環境への適応を促進することであります。  次に、本法案においては、第一に、円相場高騰その他の経済的事情の著しい変化によって大きな影響を受けている中小企業性業種であって、産地を形成しているものを特定業種として、地域を限って指定することとしています。  第二に、特定業種に属する事業を、その特定業種に係る特定産地において行う中小企業者構成員とする産地組合は、それぞれ、または関連事業者もしくは関連組合と共同して新商品または新技術開発需要開拓その他、その構成員たる中小企業者事業振興に関する事項について振興計画を作成し、都道府県知事承認を受けることができることとしています。  第三に、振興計画について承認を受けた産地組合構成員たる中小企業者等産地中小企業者は、それぞれ、または共同して新商品または新技術開発または企業化需要開拓、生産の合理化に寄与する設備の設置特定産地内における事業転換、その他事業合理化に関する事項について、事業合理化計画を作成し、当該振興計画承認をした都道府県知事承認を受けることができることとしています。  第四に、承認を受けた産地組合等及び産地中小企業者に対し、種々の助成措置を講ずることとしております。助成措置内容は、具体的には、振興事業または合理化事業実施に必要な資金の確保、中小企業信用保険法近代化保険制度適用とその付保限度額特例措置を講じ、産地組合等及び産地中小企業者に対する金融円滑化を図ることとしております。また、産地組合または産地中小企業者の行う振興事業または合理化事業のために、税制上の特例措置を講ずることとしております。  第五に、円相場高騰その他の経済的事情変化により、事業活動縮小等を余儀なくされた産地中小企業従業者雇用の安定を図るために必要な措置職業訓練実施等に努めるとともに、振興事業または合理化事業適確実施に必要な指導及び助言を行うこととしております。  以上が、この法案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  4. 橋口隆

    橋口委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 橋口隆

    橋口委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鹿野道彦君。
  6. 鹿野道彦

    鹿野委員 ただいま産地中小企業対策臨時措置法案提案理由大臣からお聞きしたわけでありますけれども、五十三年の五月から不況業種対策として特定不況産業安定臨時措置法、それから五十三年の二月からは円高対策として円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、それから五十三年の十一月から特定不況地域中小企業対策臨時措置法というものが施行されておるわけであります。  そこで、今回の産地中小企業対策臨時措置法案というものは、五十三年度からいま申し上げた三つ法律が施行されておる中において、なぜこの法案提案されたかというところがいま一つはっきりしないのでありますけれども、その辺の基本的なところの違いというものをお聞かせいただきたいと思います。
  7. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のございました従来の法律と、今回御提案申し上げております法律との差について申し上げたいと思います。  いま御指摘のありました三つ法律は、いずれも、たとえば構造不況とかあるいは円高というふうないろいろな不況要因に基づきまして、そういう不況要因に襲われた中小企業あるいは産業に対しまして緊急対策を講ずるということが主眼でございまして、そういう不況回復させるという、たとえて言えば後ろ向き対策というのが主眼になっておったわけでございますが、今回御提案を申し上げております産地中小企業対策臨時措置法は、むしろそういう不況をある程度克服した段階において、今後の新たな経済環境、これは不況を経過いたしまして経済環境が変わってまいりましたので、そういう新たな経済環境に円滑に適応できるように中小企業体質改善を図っていこうという、言ってみれば前向きの対策ということでございます。その他細かいところは違いますが、考え方としてはそういうことで、今後いろいろな状態が起こってまいりますが、新しい事態に対応できるように中小企業体質改善を図っていくというのがこの法律趣旨でございます。
  8. 鹿野道彦

    鹿野委員 この法案は三月十四日に国会に出されたわけでありますけれども、その後、経済動きというふうなものがいろいろな面におきまして変化を遂げておるわけであります。御案内のとおりに公定歩合引き上げが四月に行われましたし、また幾分なりの円安基調というふうな形が出ておるわけでありますし、また、石油の価格の値上げ問題そういうふうな動きが今日まであったわけでありますけれども、その動きによって、この法案内容に対して基本的な考え方変化があるのでございましょうか。
  9. 左近友三郎

    左近政府委員 この法案を立案をし、国会に御提案申し上げた時点から、経済情勢はそれ以前からと大分変わってきたということは御指摘のとおりでございまして、円高にいたしましても、かつては百七、八十円という段階まで円高になりましたものが、現在は二百十円、二百二十円という段階になっております。そういう差がございます。  ただ、円高について申し上げますと、円高傾向が始まりました五十二年の中ごろには、平均的に見ますと二百八十円ぐらいでございました。したがいまして、現在の水準でもその当時に比べれば六十円ぐらい高いということでございますので、そういう円高傾向は若干緩和できたけれども、まだ基調としてあるということは申し上げられます。  また、公定歩合引き上げにつきましても、これはやはり経済不況回復が安定的にいくようにということで、卸売物価上昇等を予防するという意味においてなされたわけでございますので、経済拡大基調と、不況をだんだん脱却しつつある基調は変わらないというふうに考えております。  また、石油問題については、これは将来のことはなかなか予測しにくいわけでございますが、これについては今後の推移によりまして、 エネルギーの節約その他によって対応していくということになろうかと思います。  いずれにいたしましても、確かに若干状態は変わっておりますが、この法律目的が、先ほど申しましたように経済環境が変わったものに対して、弾力的かつ円滑に適応できるような体質をつくるということでございますので、状態が変わるということに応じて中小企業が新製品をつくり、新技術開発して適応するということでございますので、現在の状況では、この法案内容目的を変える必要はないし、むしろこういうふうに先行きがはっきりしないときにおいてこそ、こういう企業体質改善をなるべく早く進める必要があるということであろうかと思います。
  10. 鹿野道彦

    鹿野委員 ただいま長官より、この法案は前向きの姿勢、考え方によって積極的に推し進めていく意味合いがあるのだというお言葉でありましたけれども、大臣がお席を立たれるということでございますから、ちょっと一つだけお聞きしたいのでございます。  産地において行われておるところの、いろいろな支障を来たすところに対しての措置だということでありますけれども、いま、地方時代とか地域社会時代だと言われておるわけであります。大平総理大臣田園都市構想というものを提唱されておるわけでありますけれども、そのような前向きというふうなことでありますならば、田園都市構想なら田園都市構想、あるいは定住構想というふうなものが、しっかりと具体的に進めていくことができるような思い切った施策をしていかなければならない、そのような意味がこの法律の中に含まれていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。そして、そのことによってその地域に新しい活力なり自主性というふうなものを生み出していかなければならない、こんなふうに考えるわけであります。  また、もう一つは、たとえば過日大臣がIEAの総会に行かれまして、省エネルギーというふうなものを非常に国民に対して訴えられておるわけであります。事業転換なら事業転換をしていくというふうなこれからの場合に、省エネルギーのような場合については、税制の特別なる優遇をするんだというような思い切ったことを、これからいろいろな法律をつくっていく場合に、省エネルギーの問題を常にその中に含んでいきながら考えていかなければならないのじゃないか、こんなふうに思うわけですけれども、その辺のところの大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまお話しのように、総合的にたとえば田園都市構想などとも結びつけて産地中小企業振興を図るべきではないかという御意見については、御意見としてよく拝聴いたしました。  これは、中小企業庁長官も申しますように、構造改善がしきりに言われますときに、中小企業組合等々、その地域ぐるみで前向きに創意工夫をこらしたり、新たな企業努力によって新しい製品開発をしたりというような努力は今後とも継続しなければ、いわゆる経済大国などと、実際は蓄積の少ない日本でありますが、世界的には大きく評価をされております、その根底をなす中小企業体質に力をつけることは、何としてもわが国にとって不可欠の喫緊事であるというふうに認識をいたしております。そういう点で、あらゆる面でできるだけの行政措置によって中小企業の前向きな努力に協力していこう、これがこの法案趣旨根底の思想であります。したがいまして、いまおっしゃるような意味を含めまして、今後とも一層この効果を上げていきたいというふうに考えます。
  12. 鹿野道彦

    鹿野委員 そこで具体的にお聞きするわけでありますけれども、その特定業種というものについて地域を限って指定する、こういうふうなことでありますが、この基準はどういうふうになるのでしょうか。
  13. 左近友三郎

    左近政府委員 この業種指定は、いまおっしゃったように地域指定しまして、何市と何市の何町のたとえば絹織物とかあるいは陶磁器というふうな形で指定をするわけでございますが、その指定するに当たりましてどういう基準があるかということでございます。これは法律の二条の二項に三つばかり基準が挙げられております。一つは、やはりその業種中小企業性業種でなければいけないということ、それから、その地域、つまり中小企業が一定の地域に集中しておるというふうなこと、それから、その地域中小企業が、円相場高騰その他、これはいろいろ政令事由を定めることになっておりますが、そういう事由で現在事業活動に非常に支障を生じておる、あるいは支障を生ずるおそれがあるというふうな、いわば現在非常に困っておるというふうな事態というものを挙げておるわけでございますが、実際問題といたしましては、先生御指摘のようにその地域地域によっていろいろな事情がございます。そしてまた、地域事情というのは、中央におりますよりも地方の県とか市町村というものが十分把握をいたしておりますので、現実の指定に当たりましては、県等地方公共団体なり地元意見を十分尊重しながら指定をしていくということにいたしております。したがいまして、一応こういう法律の規定がございますが、その中で十分実際の実情に即した指定をしていきたい。そのために府県知事意見を聞くとかあるいは審議会意見を聞くとかということにいたしまして、そういう弾力的な活用が図られるように配慮をしておるところでございます。
  14. 鹿野道彦

    鹿野委員 いまの長官のお話によりますと、弾力的な考え方でやっていきたい、こういうことでありますけれども、たとえばその判断もなかなか一むずかしいと思うのであります。前年に比べて何%以上の売り上げが減ったとかというような一つ判断基準はないのでしょうか。その辺のところはどうなんでしょうか。
  15. 左近友三郎

    左近政府委員 われわれの内規といいますか、内々の準則といたしましては、いまのような売り上げ減少というもの、これは現在というよりは、こういう円高なら円高影響を受けて、一番悪くなったときが前年に比べてということになりますが、そういう場合に大体五%以下の減少というようなことを一応の基準に考えておるということはございます。しかしながら、先ほど申しましたように、そういう一応の基準を持ちながら弾力的に実施していきたいというのがわれわれの態度でございます。
  16. 鹿野道彦

    鹿野委員 特に中小企業ということになりますと、経済情勢影響をもろに受けやすいわけでありまして、足腰がしっかりしないというふうなところから、いろいろな形でその影響を非常に受けやすいわけでありますけれども、ただ、この法律を施行していく場合に、全国的に画一的な考え方というふうなものは、私は考え直していかなければならないんじゃないかと思うわけであります。それぞれ、たとえば私の選挙区であります山形とかあるいは北海道あるいは九州、沖繩、そういうふうな地域地方によりまして、いわゆる円高なりあるいはその他の経済的な事情、著しい変化による影響というふうなものも、その受ける度合いがやはり違うと思うのであります。そのテンポも違うわけであります。ですから、すべて画一的に全国を考えていくのだということでなしに、その辺のところはまさにいま長官がおっしゃられたように、特にその地域の特性なり事情というふうなものに即応してやっていただきたい、こういうように思うわけでありますけれども、その辺のところの御見解をお聞きしたいと思います。
  17. 左近友三郎

    左近政府委員 その地域実情に即して判定をするということは、御指摘のとおりにいたしたいと思っております。  先ほど申し上げました法律の第二条の第二項の第三号というところで、事業活動支障というところの条文の中にも、その地域内においてそういう事業活動支障を生じということで、全国的な判断でなくて、地域内における判断ということに特にしておるわけでございます。したがいまして、そういう趣旨も生かしながら地域実情に応じた指定を進めていきたい。またその振興策自身も、たとえば繊維なら繊維をとりましても、全国画一的に新製品をつくるのじゃなくて、その産地産地実情に合った新製品をつくっていくというふうな計画をわれわれが指導していく、あるいは地元計画を推進していくということになろうかと考えております。
  18. 鹿野道彦

    鹿野委員 まことに前向きな、弾力的な考え方で結構だと思います。  ただ、ここでもう一つ確認をさせていただきますが、今日、先ほど申し上げましたとおりに、地方時代あるいは雇用の年であるとかいうふうな言葉が盛んに使われておるわけです。まさにそれぞれ地域地域によって経済的に苦しんでおるわけでありますけれども、たとえば東北地方のようなところにおきまして、芽を出そうとするいろいろな業種があるわけであります。せっかくそういうふうなものが育つ段階に来ている中で、円高の問題なり、あるいはその他の経済的事情影響によって大変困っておるというふうなことがあるわけでございます。そういうふうなものを一つ一つ押し上げていくというふうなものがこの法律一つの哲学に結びつくのではないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、もう一度お聞きしますが、いわゆる数というふうなもので指定なりそういうふうなものを制限しようとすることはないわけでございますね。
  19. 左近友三郎

    左近政府委員 この指定要件の中で、先ほど申し上げましたように、一つはやはり産地を形成しておるという要件がございます。したがいまして、全くその地域にその業種中小企業が、たとえば非常に極端な例では一つとか二つしかないということになりますれば、これはやはりこの法律適用ははなはだむずかしいかと存じます。しかしながら、それがある程度、これはその程度問題でございますけれども、その地域において産地と言えるというようなものがありますれば、それは十分生かしていきたいというふうに考えております。  ただそのときに、いま申し上げましたように、極端な例で一、二の企業しかない、しかしながらその地域を将来産地として守り立てていくためには非常に有望な企業である、あるいは有望な業種であるというようなことも確かに御指摘のとおりあろうかと思いますが、これにつきましては、一つは現在近代化促進法というようなものもございます。そのほかいろいろ中小企業対策手段もございますので、そういう形の、この法律によらない手段助成をしていくということも考えたいと思いますし、実は現在各都道府県といろいろ御相談をしている過程で明らかになったのでございますけれども、やはり府県府県事業として、そういう新しい産業の育成というような事業もやっております。したがいまして、そういう事業を県とわれわれとが共同してやっていくというようなことにもいたしたいし、そういう点についてこの法律指定に極力含めていくようにいたしますが、どうしても指定に入りにくいというものについては、別途の方策でそういう新しい産業の芽を伸ばしていくということを努力していきたいというふうに考えております。
  20. 鹿野道彦

    鹿野委員 円高影響というふうなことは、輸出産業だけではなしに、むしろ輸入によって影響を受けた産業が、特に競争が一層強くなってきたというようなことで、そういう影響を受けているものに対しても積極的に指定というふうなことをやるべきだと思うのであります。  そこで、具体的にお聞きしますが、たとえば木工のようなものでありますけれども、これなんかはその最たる例でありますが、たとえば私のところにおきましても木工関係は百三十六あるわけでありますけれども、それぞれその組合が違っておるわけであります。そういうふうな形で、性格が違うからなかなかまとまらない。そういうふうなときには、まとまらないと指定を受けにくいというふうな、指定が受けられないというようなことにもなってくるわけなのですけれども、その辺のところはやはり弾力的にお考えいただけるわけでしょうか。
  21. 左近友三郎

    左近政府委員 産地対策を進めていく過程におきましては、やはり中核になる組合がありまして、その組合がいろいろな計画を立て、それに従って組合員なり関連事業者が具体的な計画を進めていくというのがこの法律で考えておるところでございます。したがいまして、対策をやる過程においては、やはり中心になる組合が存在するということが非常に必要なのでございますが、いまのようなケースもいろいろ具体的にはございます。したがいまして、これについては、この法律を成立させていただいた暁において、実情を一番把握しております県等とよく相談をいたしまして、具体的にどういう形であればこの指定ができるかというようなことを十分検討いたしまして、その問題の解決をいたしたいというふうに考えております。決して、全く一つでなければだめだということでもございませんが、ただ、また余りばらばらでもこれはちょっと対策がむずかしゅうございますので、その辺は具体的なケースに即してひとつ検討いたしてみたいというふうに考えます。
  22. 鹿野道彦

    鹿野委員 もう一つ二つ具体的にお聞きしますけれども、たとえば日本酒なんかでありますけれども、米どころでございますから、私のところは日本酒を相当つくっているわけであります。円高による影響ではなしに、その他の経済的事情の著しい変化というふうなものに当てはまるかどうかというふうなことになりますと疑問でありますが、やはり日本酒はなかなか売れなくなってまいりました。御案内のとおりであります。そうすると、いまはやりのワインとかあるいはしょうちゅうとかというふうな方向に切りかえをしていきたいというような方々もおるわけであります。そういうふうなことにつきましては、積極的に指定というふうな方向には行かないのでしょうか。
  23. 左近友三郎

    左近政府委員 これもやはりもう少し具体的に、地域に即して議論をいたしたいと思いますが、一般的に申しまして、現在この法律に基づきましてとりあえず政令で条件を指定しようとしておりますのは、円高によって輸出減少するというふうな影響を受けたもの、あるいは円高によって国内の出荷がその輸入品によって減少したものというふうなものを指定することにいたしておりますので、その中に包括して考えられるかどうかという問題であろうかと思います。  また、今後の課題といたしましては、経済状態はどんどん変わってまいりますので、必ずしもその二つだけに限定しないで、もう少し広い範囲の問題を検討いたしたいという、来年度以降の検討課題にいたしておりますので、そういうものも含めて、ひとつ具体的なケースとして検討させていただきたいというふうに考えております。
  24. 鹿野道彦

    鹿野委員 産地形成をなしておる、こういうふうなのが基本ということでありますけれども、私のような地方におきましては、なかなかまとまって産地を形成しておるというのは少ないのであります。やはりばらばらな形で、ある程度の範囲内において産地が形成されておるというふうなことでありますので、ひとつその辺のところの実態というふうなものをお考えいただきまして、この指定というふうなものについては考えていただきたいというふうに思います。  そこで、先ほどもちょっと触れたわけでありますけれども、公定歩合引き上げが四月に行われましたけれども、そのことによって金利というふうなものはどのような状態になるのでございましょうか。
  25. 左近友三郎

    左近政府委員 公定歩合引き上げられましたことに伴いまして預金金利が引き上げられました。したがいまして、一般の市中の金融機関の貸し出し金利も上昇傾向にございますし、また、商工中金のように原資を金融債に仰いでいるものについては、原資の金融債の利率の上昇に伴いまして貸し付け金利の上昇を実施しつつございます。ただ、政府系の金融機関、たとえば中小企業金融公庫とかあるいは国民金融公庫につきましては、その原資でございます資金運用部資金の金利がまだ決まっておりませんので、その資金運用部の金利が決まりますときにこの貸し付け金利も変更いたしたいということで、現在中小企業庁も大蔵省といろいろ検討中でございますが、近日この資金運用部の金利の上昇が決まりますので、それに応じて対応していきたいというように考えております。
  26. 鹿野道彦

    鹿野委員 金利は、非常に大蔵省はガードがかたいわけでありますけれども、中小企業にとりまして一番これは負担になってくるわけであります。いまおっしゃられたような形で今後ともお考えいただく。また、設備資金と運転資金というふうなことになるわけでありますけれども、特に、もちろん設備資金も必要でありますが、中小企業者にとりましては、望まれるのは、事業転換なんかしていく場合においてはその運転資金が欲しいのだ、こういうふうな強い要望があるわけであります。その辺のところに対しましていままでと違った考え方に立つことができるかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  27. 左近友三郎

    左近政府委員 中小企業にとりまして運転資金が必要なことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、運転資金につきましてもなるべく低利で供給をしようということで、今回のこの法律に基づきまして承認を受けた事業計画によって事業実施する中小企業につきましては、運転資金についても特例措置を考えようということでございまして、たとえば内需転換などで販路を変更いたします。そういたしますと、需要開拓をしている間は回収条件が長期化するというようなことがございまして、長期運転資金が要るという事態がございます。したがいまして、そういうものについては一般の通利よりは安い運転資金を提供いたしたいということで、この制度をこしらえることにいたしております。ただ、その金利につきましては、いま申しましたように金利が現在変わりますので、その変わります事態に応じて決めていきたいと思っておりますが、少なくとも、たとえば中小企業金融公庫の一般金利よりは安い金利で提供できるようにいたしたいということを考えております。
  28. 鹿野道彦

    鹿野委員 振興計画につきましてお尋ねいたしますが、地方におきまして産地を形成しておるというふうな中においては、その産業が非常にレベルの低い産業が多いわけであります。そこで、発展途上国からの追い上げ等というふうなものも考えた場合に、これからの日本の基本的な産業構造というふうなものを考えた場合に、やはり思い切ってこの法律によってレベルを上げていくというふうなことが非常に意義あることだと思うのです。たとえば航空機関連の産業なりあるいは医療機器関連の産業なりというふうな形で、思い切って転換をしていくことができるように、そういうふうな振興計画を立てていくような一つの指導をすべきである、こういうふうに思うのでございますが、いかがでございましょう。
  29. 左近友三郎

    左近政府委員 産地振興を図っていきます場合には、やはりその産地で従来つくってまいりました製品を高度化すると申しますか、つまり新製品をつくって他の産地にまねのできないものをつくっていくというふうな行き方と、それからいま御指摘のように事業転換をいたしまして、そして新しい事業分野に進出するというふうな、二つの行き方があろうかと思いますし、また産地企業によっても、ある企業は従来の事業を継続をしながら事業内容を高度化していくということにもなりましょうし、ある企業転換をするということにもなろうかと思いますが、一般に事業転換につきましては、事業転換対策法律によりまして国が助成をすることにしております。しかしながら、産地の中で事業転換をしていただく場合には、産地自身の振興対策にもなるものでございますから、一般の事業転換法に基づくいろいろな援助に加えまして、本法の適用を受ける企業については、企業事業転換をする場合にはさらに優遇をしようということで、事業転換対策のたとえば融資についても、特段に低い金利で資金を提供しようというようなことも考えておりますが、いずれにしましても御指摘のとおり、新しい産業、また付加価値の高い産業というふうなものを導入をいたしまして、発展途上国が追い上げてきてもびくともしないというふうな体制を築き上げることが必要だというふうに考えておりますので、そういう点の事業転換を促進していきたいということでございます。また、その場合に、産地の業者の方にこういう事業をやればいいというふうな、いろいろな情報を提供する必要があろうかと思いますが、現在中小企業振興事業団等でその事業転換の事例を集めたりあるいは学者、学識経験者等を集めまして、有望な事業はどういうものかというようなことも研究をいたしておりまして、そういう研究成果も府県を通じていろいろ組合あるいはその組合構成員に流すというようなことによりまして、事業転換の促進を図っていきたいというふうに考えております。
  30. 鹿野道彦

    鹿野委員 もう一つは、そういうふうな事業転換と同時に、たとえばその産地形成の中でも、ねじならねじとか歯車なら歯車というふうな形で、部分だけを生産しておるというふうなところが多いと思うのであります。やはりそれではいつまでたっても向上がありませんので、総合的な、一貫性のある産地形成をしていくというような形に事業転換をしながら持っていくという、そういう一つの指導も必要だと思うのですが、いかがでしょう。
  31. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほど申し上げましたように、今後高付加価値的な産業というものを推進していくということになりますと、どうしても機械産業等々が中心になろうかと思いますが、その場合、御指摘のとおり部品工業というようなものが相当なウエートを占めると思います。その場合に、先ほどお話のありましたように歯車とかねじとかというふうな、部品の一部分だけをつくっていくというだけでは確かに付加価値も高くなりませんし、また非常に変動要素が強いということでございますので、むしろ部品についてもある程度の完成品をつくる。たとえば自動車にいたしますれば、ブレーキの部分を完成したものをつくるとか、そのほかいろいろなことがございますが、そういうふうにだんだん完成度を高めるということがやはり下請企業対策として大きな目標でございますので、この産地対策の中におきましてもそういう趣旨を織り込んで実施していくというふうなことを、振興計画をつくるような場合にわれわれも指導していきたいというふうに考えております。
  32. 鹿野道彦

    鹿野委員 この法案内容を見ますと、どちらかというとこういう法律というものは融資というふうなものが中心になるわけであります。ただ、中小企業の方は、もう本当に先ほど申し上げましたとおりに足腰が弱っておりますので、融資を受けたくとも、どうやって金を返していったらいいかという計画がなかなか立たない。こんなようなことで、融資よりはどちらかというと仕事が欲しいというふうな傾向だと思うのであります。そういうふうな中小企業者の要望、考え方というふうなものを、この法律を施行していく場合に具体的にどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  33. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほどから申し上げておりますが、この法律の目標は、産地中小企業経済状態の変動に応じて、それに適応できるように新製品をつくっていくとかあるいは新技術開発していくとか、あるいは新しい市場を開発していくというふうな対策を応援していくわけでございまして、この新製品開発自体が新しい需要を喚起するという意味で、仕事の拡大ということをねらっておるわけでございます。したがいまして、もちろんそういう新製品が売れるまでにはやはり金融の裏づけというのも必要でございますが、いたずらに膨大な設備を導入してその後償還に苦しむというふうな事態にならないように、むしろいまの言葉で言いますればソフト面の応援をいろいろやりまして、そして新しい市場を開拓する、新しい需要開拓するという面に重点を置いてまいりたいということで、いま御指摘のような問題点を乗り越えていきたいというように考えているわけでございます。
  34. 鹿野道彦

    鹿野委員 長官から先ほどお話をお聞きしまして、事業転換によることが、とにかく新製品開発、新分野における開発というふうなことで厳しい経済情勢を乗り切っていくためには必要なんだ、こういうふうなことでありますが、たとえば最初のあれに戻りますけれども、原油の価格の上昇というふうなものはどちらかというと成長を抑えようとする要因があるわけでありますし、それから卸売物価の上昇というふうなものは、景気政策の転換があるのではないかというような一つの危惧を深めて、投資に対してはマイナス要因になると思うのであります。また現在の円安というような傾向も、いわゆる輸入の素原材料の価格の上昇というものから、素材の関連産業の収益が縮小していくという、こういうようなことでありますので、果たして長官がおっしゃられるような新製品開発なりあるいはその事業転換によって新しい生き方をしていくという、思い切ってそこまでこの法律の中身だけでやっていけるだろうかというような気がするのですけれども、いかがでしょうか。
  35. 左近友三郎

    左近政府委員 いまの御指摘のようないろいろな問題については、確かに今後の成長に対しまして一つの制約要件になる部分も含まれております。ただ、公定歩合引き上げ等につきましては、現在円安傾向によります原材料の価格の増大、それからエネルギー、ことに石油の問題によります原油価格の上昇の影響をいわば便乗させないような、いわゆる便乗値上げを抑えるという意味での公定歩合引き上げという目的ということになっておりますので、そういう点がうまく働きますればこれは景気のなだらかな上昇というものに資すると思いますが、それ以外の点につきましては、確かに若干成長が過去に考えたよりはうまくいきにくいという要因になることは事実でございます。しかしながら、また考えてまいりますと、そういうふうな事態というものは、やはりわれわれ日本経済にとって避けて通ることのできない問題でございますので、そういう問題を、高付加価値化と言いますか知識集約化と申しますか、そういう形で、たとえばエネルギー問題につきますればエネルギーの原単位の低いような製品開発していくということでかわしていくということにならざるを得ないわけでございますので、そういう外部のいろいろな要因を乗り越えながら中小企業が発展するためには、やはりわれわれとしてはこの法律目的にしておりますような新製品開発とか、新技術開発というふうなものを進めていかざるを得ないと考えております。したがいまして、客観情勢がそれに非常に有利に働くかどうかということは、状態変化によっていろいろ変わるかと思いますが、日本経済が、そしてまた中小企業が生きていくとすれば、この道を努力するしかないのじゃないかということをわれわれは考えておりますので、政府としても大いに力を入れてこの政策を十分実施していきたいというふうに考えておるというところでございます。
  36. 鹿野道彦

    鹿野委員 不況対策なりあるいは経済情勢の著しい変化によってということで、今日までもいろいろな意味におきまして、中小零細企業に対する融資なり、円高とかあるいはまたオイルショックなどに対処したところの制度融資の実施なり、あるいは官公需発注の中小企業への傾斜なり、あるいは下請企業に対する受注のあっせんなり、あるいは連鎖倒産の防止なり、あるいは地方公共団体の支援、その他政府金融機関によるところの信用補完制度の活用など、いろいろな形で実施されてきたわけですけれども、それは、一番最初長官がおっしゃられたとおりに、あえて申し上げますならば災害対策的な応急措置であると思うのであります。この法律はあくまでも前向きというふうなことでございますので、これから地域時代地方時代、そして田園都市構想というふうな中において、日本の限られた国土の均衡ある発展というふうなものを遂げていかなければならないわけでありまして、実態に応ぜられた形でその地域のそういう景気事情、情勢というものを重視していただきながら、ひとつ大胆に対応していただきますことを強く要望いたしまして、時間でございますので私の質問を終わります。
  37. 橋口隆

    橋口委員長 上坂昇君。
  38. 上坂昇

    ○上坂委員 産地中小企業対策臨時措置法案について質問をいたします。  初めに、この法案は、いわゆる円高によるところの影響を受ける輸出関連の中小企業に対して特に適用をする、当てはめていくという趣旨なのかどうか、その辺のところをお伺いをいたしたい。
  39. 左近友三郎

    左近政府委員 この法案につきましては、目的にも掲げておりますように、「円相場高騰その他の最近における経済的事情の著しい変化に対処して」ということでございまして、円相場高騰、それからそれに基づきます輸出減少というのは一つの例示でございまして、われわれといたしましてはそれに限定をするということは考えておりません。ただし最近の、ここ二、三年の傾向では、中小企業に一番打撃を与えましたのは円相場高騰に伴います輸出減少ということでございましたし、また、それに対してはいわゆる円高対策法というものを国会でも成立させていただきまして、応急対策を講じております。しかしながら、あれはまさに応急対策でございまして、それに引き続いて将来の、円高に悩む中小企業体質を強化するという対策が後に続く必要がございまして、後に続かなければ、応急対策だけでは問題が生ずるということでございますので、そういう意味では、円高により輸出減少をした産地というものを主たる対象に考えておるということは事実でございますが、たとえば円高によって輸入品が入ってまいりまして、内需向けの生産が減少をしたというものについても、この法律はとりあえず適用しようというようにも考えておりますし、その他、今後の検討課題といたしまして、その他の経済事情の変動についても政令指定をする可能性が残されておるということでございます。
  40. 上坂昇

    ○上坂委員 円高対策としての中小企業政策といいますか、これは一九七一年のいわゆるスミソニアン体制といいますか、それに基づいて第一次ドル対策法ができたわけですね。その後四十八年の二月に円のフロートの問題が出てきまして、そこで第二次のドル対策法の改正となったと思うのです。当時中小企業、特に輸出関連については非常に大きな影響があるだろうと見られておりまして、特に二百六十円台にレートが上がったときにはかなりの倒産も予想される状況だったのですが、このころの中小企業の実態は、われわれが調べたりいろいろ伺っているところでは、それに対応する体制が整って、予想されるほどの影響がなかった、むしろ数量的には輸出がふえているという状況があったと認識しているわけであります。  その後五十一年、石油ショックとの絡みもありまして非常に不況が深刻になってきて、売るにしても、原料を仕入れるにしても、お金を借りるにしても大変な状況が出てきて、それが中小企業に対して特に大きな影響を及ぼした。こういう状況の中で現在に至り、ますますそれが深刻化している状況があると思うのですが、七一年−七三、四年あたりの状況と、その後七五年以降今日までの状況の中で、中小企業、特に輸出関連の中小企業の実態はどういうふうになっているか、これについて説明をいただきたいと思います。
  41. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘がございましたように前回、スミソニアン調整と申し上げておきますが、いわゆるスミソニアン調整のときと今回の円高のときとの比較でございますが、円の切り上げ率が前回は一六・九%だったと言われておりますが、今回は、最も高くなりました昨年の十月末で比べますと、これは五十二年の九月対比でございますが、五一%、五〇%台、その後若干緩和いたしましたが、そういう事態になったということで、円高の差が違ったということが一つございます。それから、客観情勢といたしまして、今回の円高については、内外の景気の停滞期と重なりました。一般不況円高が重なったということで、それだけ中小企業には厳しかったということが言えると思います。したがいまして、相対的に申しますとやはり中小企業がこうむりました影響は前回よりも相当厳しい、深刻であるということが言えると思います。  その実例といたしまして一、二の数字を挙げさせていただきますと、スミソニアン調整後の輸出状態は、中小企業製品輸出につきましては、二、三%でございますが、むしろ若干伸びておる、つまり減少しなかったという結果が出ております。ところが、昭和五十三年度を見てみますと、中小企業製品の対前年度の輸出額は八%減少しておるというふうな数字もございますし、しかも月別に見ますと、たとえば去年の七—九月とか十—十二月につきましては一〇%以上の減少という数字も出ております。したがいまして、輸出についての実際の打撃が大きかったということが言えると思います。それからまた別の数字でございますが、倒産関連の数字を見ますと、前回のときにはいわばドルショック倒産という分類で数字が挙がっておりますが、これが四十六年、四十七年の二年間で大体百件余りでございますが、今回は、五十二年七月からことしの四月までをとってみますと、いわゆる円高倒産というのは三百六十五件という数字が出ております。     〔委員長退席、野中委員長代理着席〕 それやこれやを考え合わせますと、前回よりは今回の方が非常に深刻であったということでございますし、前回そういうことがあった上でまた今回こういうことになって、そういう円高に対応するためのコスト低減努力などが前回にさらに加重して必要になったということから、今回がさらに苦しいという要素もあろうかと考えております。
  42. 上坂昇

    ○上坂委員 七一年−七三年くらいまでは円高影響についてもわりあいに対応ができて、輸出減少というのはなかった、むしろ伸びていたということでありますね。それから、今回のものは大変大きな影響を受けているということでありまして、そういうところから七六年十一月に中小企業事業転換対策臨時措置法が制定されたのだと思いますが、いわゆるニクソン・ショック以来いままで約七、八年の間に、輸出中小企業産地の対応していたものを考えますと、四つぐらいになるのじゃないかと思うのです。  その一つは、市場の転換だと思うのです。大体日本輸出構造というのはアメリカ依存度が非常に高いわけでありまして、したがってアメリカの動向に非常に左右される。製品別に見ましてもアメリカ向け製品という形になっていて、他の地域に対する対応がなかなか困難である。したがって、国内需要への転換も非常にむずかしい。しかし、アメリカがドル防衛の関係から、輸入課徴金の問題やらいろいろな保護貿易政策をとってくるということになりますと、どうしてもアメリカに輸出できない。そこで、海外の市場を転換していかなければならないという形になってきますと、必然ヨーロッパなり中東なり共産圏へ指向していくようになるだろうと思うのですが、そういう海外市場の変化はいままで一体どういうふうになってきているのかということが第一点です。  それから、先ほど申し上げましたように、輸出関連企業の場合には内需に転換することが非常にむずかしいわけでありますが、特に国内の不況の深刻化に伴って、内需に転換することがよけいむずかしいと私は思うのです。こういうことに対してはどういうような対応がなされているのか、また行政的にはどのような指導が行われて、その効果はどんなふうにあらわれてきているのかということについても御説明をいただきたいと思うのです。
  43. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のように、輸出中小企業円高というような事態あるいは従来の市場におけるいろいろな問題を乗り越えるために、市場転換ということを相当重視して従来からも実施しておりました。従来の市場というのは、東南アジアというものもございましたけれども、北米つまりアメリカが一番中心でございます。最近は、中小企業白書でもいろいろ調べておりますが、輸出市場の多角化ということを志しておりまして、たとえば北米に輸出しておったものがヨーロッパに伸びる、あるいは中国とかその他のアジアの共産圏に伸ばすあるいは中近東に伸ばすとかいうふうな努力が出てきております。最近調査いたしましたところでも、たとえば婦人服地のメーカーが、従来はアメリカ、ヨーロッパを中心にやっておったわけでございますが、ジェトロの情報に基づきまして中近東の市場開拓をいたしまして、その中近東の市場開拓に成功したという例もございますし、あるいはまた、従来は北米一辺倒であったものがヨーロッパ市場を開拓したという例も挙がっておりますが、こういう形で、やはりこれからは中南米、アフリカ、中近東あるいは共産圏というふうなところが、この新しい市場開拓をできる可能性のあるところではないかというふうに考えておりますので、そういう点を、いま申しましたようにジェトロの情報なども相当利用されておりますが、そういうもの、そのほかのことで推進をしてまいりたいというふうに考えております。  それから内需転換でございますが、確かに御指摘のとおり、国内の不況時には内需転換と申しましてもなかなかやりにくい点もございましたけれども、昨年の後半以降内需の盛り上がりというものがある程度出てまいりましたので、その中で、この機運をとらえて内需転換を図ったという事例が相当ございます。たとえば静岡県の別珍、コールテンの業界などでは、従来の別珍、コールテンよりももう少し細番手のもので、従来冬物だけだったのですけれども、合い着用のものをつくってそれが結構売れておるとか、あるいは単に着るものだけではなくて、手提げかばんとか帽子とか、そういうものに転換して内需をふやしておる、いろいろな例が出てきておりますし、また、シガレットライターなどは、使い捨てのシガレットライターは従来輸出が専門でございましたが、輸出が大分減少いたしましたので国内向けにも内需転換で一生懸命出しまして、これは町をお歩きになったら目に触れると思いますが、内需でも相当売れておるというような事情もございます。  そのほか、昨年の後半以降、輸出産地が内需転換にいろいろ努力をしたいというような申し出もございましたので、実は昨年の補正予算で、産地組合に対しまして内需向けに転換するための見本市の開催をする場合の補助金等々を新たに設けまして、それによって、たとえば福井県でございますが、鯖江のめがね枠などは大阪で内需向けの見本市を開いて、相当の成果を上げたというような実例も聞いております。  そのように、この内需向けも昨年の後半からことしにかけて相当な努力が実ってきておりますので、この産地法に基づきますいろいろな組合に対する助成についてもそういう市場転換、これは大きく言えば国際的な市場調査あるいは内需転換向けのいろいろな見本市の開催等でございますが、そういうものが円滑に行われていくような補助金制度というものもこの産地法の枠の中で考えておりますので、そういうものを実施いたしまして、こういう転換が円滑にいくように実施していきたいというふうに考えております。
  44. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの問題と絡んで、いまの御説明にありましたいわゆる品種の改良といいますか、多様化といいますか、あるいは高級化、新製品開発、そういうところに向けられて新しい内需が喚起されているということについては、傾向としては非常にいいと思うのですが、これをやる場合にもう一つ問題になってくるのは事業転換の問題であろうと思うのであります。  事業転換法の施行で業種指定となっているのが、全国業種が九十八、地域が九業種ということになっておりまして、合わせて百七業種に上っております。それから事業転換計画承認件数というのが現在で百四十九件程度あるということを聞いておるわけでありますが、この事業転換で果たして実態的にどんなふうに成果が上がっているのかということについて、御説明をいただきたいわけであります。  というのは、事業転換という言葉をとった場合に、その事業転換というのは一体何を指しているのかということで、いままでの中で非常に疑問に思うことがあるわけです。普通一般に事業転換という場合には、品種の転換、それから業種転換、もう一つは業態の転換という三つに大体分類されているというふうに言われておりますが、中小企業白書による定義は、最近変わっているかどうか知りませんが、前には「事業内容の流動化現象が最主要生産品目の変更にまで達した段階」、こういうふうな定義をされていたわけであります。この「最主要品目の生産変更」というのは何かというと、「製造業中、中分類二十業種間で移動することを指す」、こういうふうになっておる。産業分類にあるわけですが、この分類でいきますと、いわゆる品種転換あるいは市場転換、業態転換というものは含まれなくなるわけであります。いまこういうものをやはり含めて事業転換として考えて、それに対するところのいろいろな政策を打ち出す、こういう方向に来るべきだと思うし、来ているのではないかと思いますが、その辺のところをひとつ御説明をいただきたいと思うのです。     〔野中委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  45. 左近友三郎

    左近政府委員 事業転換という概念につきましては、とり方がいろいろございます。いま御指摘のとおりでございまして、中小企業白書は若干広くとらえております。事業転換法に基づくよりは広くとらえております。  事業転換法によります対象は、非常に優遇措置を考えておりましたので、ある程度しぼりまして、業種転換というところを中心にやっておったわけでございます。しかしながら、いま御指摘のように、これからの行き方というのは、まあ定義の仕方でいろいろございますが、とにかく従来つくっているものをそのままつくっていくということではうまくいかない時代でございます。したがいまして、転換というところまでいかないにしても、新製品をつくる、つまりより高級なものをつくるとかいうふうなものもございます。それは事業転換とまではいきませんが、それからやりまして、そして完全に商売を変えてしまうまでの幅の中でいろいろな変化を求める必要があるというのが現状だと思います。したがいまして、今回やります産地法では、その点は非常に幅を持って考えておりまして、この振興計画等でつくります場合にはその辺は自由に変換の内容を考えていただく、そしてそれに即して応援をいたしていくということでございます。  ただ、事業転換法で考えました転換については、いわば転換の度合いとしては相当高度な転換でございますので、そういう意味法律をつくったわけでございますから、この産地法の適用業種で、しかも事業転換法の要件に合致するものについてはさらに優遇をしようということで、一般的な事業転換法の優遇措置に加えて、この産地法に基づく指定を受けた企業については優遇程度をより高めていくという配慮もいたしております。しかしながら、全般的に申しますと、振興計画内容は、いま御指摘のように非常に範囲の広い事業転換内容を実態に応じて進めていくということが、実はむしろ計画中心になっていくのではないかというふうにわれわれは予想しておるわけでございます。
  46. 上坂昇

    ○上坂委員 この事業転換が、業種を変えて転換をするということと、いま部分転換の問題が出ているわけでありますが、部分転換という場合には、いままでの経営をずっと維持しながら転換をしていくことができる、しかし、業種転換になりますと、旧来のものをすっかり変えていかねばならぬという状況が出てくると思うので、これは非常に困難だと思うのです。  そこで、そういうことで成功した例について、幾つか挙げていただきたい。
  47. 左近友三郎

    左近政府委員 事業転換につきましては、先ほど御指摘がありましたように、五月十五日現在で事業転換法施行後百四十九件の認定件数がございます。具体的なケースとしていろいろ白書等で調べておりますが、成功したケースはいろいろございます。  構造不況業種とか円高関連業種事業転換をする、これは必要に迫られてやるということでございますが、その中である程度成功した例を申し上げますと、繊維産業で、いままで織物をつくっておったものがアパレル部門に進出をしてきたというものがございまして、たとえば婦人服の製造業に進出してきたということで、いままでの単なる織物の時代よりは非常によくなったというような例もございます。  それから、御承知の一番打撃の大きゅうございました造船関連の下請業なども、たとえば解撤業に変わったとか、あるいは造船関連の下請業というのは、いわば労働者を雇用するというふうな点の中心でございますので、土木工事業に変わったというようなことでしのいだという例も挙がっております。  それから、最近もう一つの分野は、これは輸出関連でございますが、金属製品の分野では、従来のものから金属加工技術を生かして転換をする例がございまして、顕著な例といたしましては、たとえば新潟県の燕あたりは、カーブミラーと申しまして曲りくねった道路についております鏡がございますが、これなんかに進出した。従来はカーブミラーというのはガラスでできておったのですが、ガラスでございますと、いたずらでよく壊れるということがありましたが、燕はステンレスのみがき加工の技術がございますので、曲面を持った、しかも表面が鏡のような滑らかな大きなカーブミラーができるという特殊技術を生かして、そういう方面に進出しているという例もございます。  以上のようなものが最近挙がりましたものでございますが、そのほか、実は中小企業振興事業団で転換の成功例というのを集めております。これは何カ月かに一遍まとめて出しておりますが、最近私が目にしたものでは、たとえば相当な大転換でございますが、ケミカルシューズの製造、販売、ことに販売をやっておったものがうどん屋さんに転換して成功した。ケミカルシューズの販売店がたまたま駅前のいい場所にあったということにもよるようでありますが、そういう事例も挙げられております。
  48. 上坂昇

    ○上坂委員 事業転換について非常にむずかしいのは、経営が行き詰まってから転換をする状況と、それから経済の動向なり需要の伸びを予想して、積極的に転身を図っていくという二つの問題があるだろうと思うのです。経営がある程度安定をしている時期におけるところの転換というのはわりあいにやりやすいと思うのですが、行き詰まってからの転換というのは、資金繰りにしても何にしても、にっちもさっちも行かなくなってからの転換でありますから非常にむずかしいと思うのです。いまそういう状況に来ているのが非常に多いのと、もう一つはそういうところへ追い込まれる企業というのが、大体小規模企業と言われるものではないかと私は思うのですね。そういう企業になりますと、なお転換がむずかしい。こういう点について、転換したくてもできない企業群といいますか、産地といいますか、こういうものが非常に多いのではないかと思うのです。その辺のところはどんなふうにお考えになっているか、御説明いただければありがたいと思うのです。
  49. 左近友三郎

    左近政府委員 転換につきましては、最近そういうことが必要であるし、また、そういう転換によって活路を切り開くという面が期待されるものでございますので、実は今年度の中小企業白書で相当突っ込んだアンケート調査をいたしました。その結果は先生御指摘のとおりでございまして、成功例を見ますと、やはり企業が行き詰まってからやるのじゃなくて、事前に情勢を見て転換をする方が成功率が高い。それからまた、転換をやる場合には思い切った転換をする、しかも相当時間をかけて転換をする方が成功率が高いというような実情が出ております。ということは、行き詰まってからじゃなくて、事前に計画的に、しかも余裕のあるうちにやっていくのが望ましいということでございます。  それから規模につきましては、これは必ずしも規模の大小は余り影響がないというふうな結論が出ておりますが、しかし困難さは、力を持ちながら転換するという必要上、小規模企業はなかなか力がございませんから転換がむずかしいということは考えられるというふうに考えます。  そこで問題点は、ある程度余裕を持って転換ができるようにするためには、一つは情報が転換をなさる企業によく伝わっておる。どういうところに行けばいいかというようなことがわからないと、なかなか思い切りがつかないということでございますので、そういう点で、先ほど申しましたように、現在中小企業振興事業団等でいろいろなケースを集めて、そういう転換の成功例というものを府県に流しておりますけれども、これを府県段階あるいは組合段階にとどまらずに、もう少し末端の企業の方々にもよく行き渡るような方策をわれわれ考えたいというふうに考えておりますし、それからまた中小企業振興事業団では、学識経験者を集めまして、いまのような経済情勢あるいは国民の需要の動向というようなものをにらみながら、どういうふうな業種が成功する可能性の高い業種かというふうなことについてもいろいろ検討いたしております。ただ、この業種につきましては、世の中の情勢がなかなかよく変わるものでございますから、絶対的なものではございませんが、一つの参考として見ていただくという意味において、これも府県の指導資料として現在も流しておりますが、さらにそういうものを整備いたしまして、一般の方々にも御参考にしたいというふうに考えております。  それからまた、実際に転換する際には金融上の問題その他いろいろな問題がございますので、これは転換法に基づきますいろいろな助成措置を活用していただくことにいたしたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、産地の中で転換する場合には、さらに産地法の指定を加えて転換をより手厚くしていくということで、この問題を解決していきたいというふうに考えております。
  50. 上坂昇

    ○上坂委員 いまいろいろ御説明いただいたわけでありますが、もう一つ海外進出の問題でございます。円フロートのときに、製造業で海外進出を図った企業が六百件ぐらいに上っていたのではないかと認識しているわけでありますが、これらはいまどんなふうになっているのかということなんです。  もう一つは、最近における海外進出の実態は一体どういうふうに進んでいるのか。海外進出の場合には、中小企業という形だけでなくて、大企業そのものもどんどん進出をしているわけでありまして、それとの関連で市場開拓なり何なりになかなかむずかしい面があるのではないかと思うのでありますが、その件についてひとつお伺いをいたしたいと思うのです。
  51. 左近友三郎

    左近政府委員 中小企業の海外進出、いわゆる対外直接投資でございますが、これは証券投資の許可件数というので把握をしておるわけでございますが、四十八年ごろまではわりあい経済がどんどん伸びましたし、また国際化をいたしましたので急速に伸びまして、たとえば四十八年では四百十一件というふうな数字が出ております。ところが、その後景気の停滞に伴いまして、五十年以降は年間大体八十件とか七十件台というようなものにとどまっておったわけでございますが、五十三年になりまして輸出が非常にできにくくなったものですから、むしろ現地生産というようなことも考えるとかいろいろな状況がございますし、また若干最近景気の回復状態もございますので、五十三年の実績は大体百十二件ということで、四十八年当時には及びませんが、大分回復をしてきたというのが実情でございます。今後相当伸びるんじゃないかと思います。  それからその傾向でございますが、従来はやはり東南アジアが中心でございまして、これは東南アジアの労働力を活用するというような点がございます。平均して大体八割近辺が東南アジアということになっております。ところが最近の傾向、たとえば五十三年一年をとってみますとこれが七割ぐらいに減少しております。そしてふえましたのがやはり北米でございまして、北米が全体で見ますと一割ぐらいでございましたが、五十三年一年を見ますと二割ぐらいに構成比がなっております。このように北米等の先進国向けの進出が大分ふえてきたというのが特徴的なものではないかと思います。  それから、進出をした企業状態でございますが、これは数量的に把握することはなかなかむずかしいわけでございますが、収益面でどうなっているかというのを一応調べたものを、中小企業白書で、アンケート調査でございますので全数調査ではございませんが、それで見ますと、五十二年度の収支でございますが、現地法人のうちで二八%、大体三割近くが現在赤字だということでございます。ただ、進出した企業と国内にございます本社企業とございますので、それを合わせて見ますと大体一二%くらいの企業が赤字、裏返しますと八八%くらいは黒字ということでございまして、まあまあ何とかいっているんじゃないかということでございますし、いま申しました八八%の黒字企業のうちで、大体半分近くは経常利益が対前年度比増加してきたというようなことも報告がございます。そしてこういう企業の進出の場合は、当初進出した一、二年あるいは業種によっては二、三年はどうしても採算がむずかしいということでございますので、それから採算が安定するんではないかということが期待されておるというのが現状でございます。
  52. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのはよくわかりました。いわゆる産地企業といいますか、地場産業でありますが、地場産業の従来の存立の条件といいますか、特徴というのは、一つは豊富で低廉な労働力があるということ、それから原料、資源がその地域に賦存をしていて、手に入れることが容易であるということ、それからもう一つは伝統的な技術の集積がある、大体この三つくらいに見ていいのではないかというふうに思うわけであります。  ところが、これらの条件というものが高度経済成長の中で非常に崩れていった。特に労働力については都市型志向になりまして、地元の地場産業等に勤めて低賃金で働くということがなかなか歓迎されない。そこで新しい労働力の調達が非常に困難になってきている、こういう状況はずっといまも続いているのではないかというふうに思うのです。最近中央に来ている労働力にUターン現象が出ておりますけれども、しかし地方へ帰りますとなかなか就職先がないというところから、やはりがまんをするというような状況になりまして、なかなかむずかしいわけであります。  それから、材料と原料でありますが、これが非常に枯渇をしてきているというのがあらゆる中小企業産地企業の実態だろうと思うのです。したがって、この原材料の手当てについてはどうしても輸入に依存をしなければならない、こういう状況が非常に多くなってきていると思うのですね。そういうところから産地企業そのものの存続条件というのが非常に崩れていっていると思うのです。それからもう一つは、材料の面で見ますと、たとえば繊維工業でナイロンとかビニールあるいは今度は合成樹脂等の大企業の生産品というものを原料にしなければならないというようなところから、いままで使っていた現地調達の材料というものは手に入らなくなるというよりもなくなってしまって、そこで製品を全く変えていかなければならないというような状況というものが出てきていると思うのです。  それからもう一つは、伝統的工芸品の振興法にも出てきましたように、後継者の養成というのが非常にむずかしくて、伝統的技術を存続をさせていく、継続をさせていくということが非常に困難だということから、政策的にもこれを取り上げていかなければならないような状況というものが実際には出てきている、こういうところから産地企業というものの置かれている条件というものは高度経済成長の中で非常に崩れてしまっている。この崩れている条件を回復をして、そして産地企業に対して活力を与えていくということになるわけでありますから、これはなまはんかな政策、なまはんかな手当てではとてもできないのではないか、こういう気がします。  そこで、この辺のところについて、これからどういうふうに政策的に考えていかれるのかという点がお聞きしたいところであります。特に労働力を確保するということについて特に配慮をすることが必要なのではないか、これがないと、どうしてもこれは基本になりますから、企業振興というのはできないと思うので、この辺について所見をいただきたいと思うのです。
  53. 左近友三郎

    左近政府委員 産地を取り巻く条件が変わってまいりまして、問題点が生じておることはもう御指摘のとおりでございます。そこで労働問題についてでございますが、まさに御指摘のとおり、ことしの白書でアンケート調査をいたしましても、昨年のように一般的に不況で、雇用調整が行われたといわれている時代でも実は中小企業は人手不足である、つまり働き手が欲しいけれども得られないというふうなアンケートが出てきております。したがいまして、われわれとしては優秀な労働力が産地中小企業に確保できるということが、こういう時代でも大いに必要であるというふうに考えておるわけでございます。ただ、ことに若い人が働く場として居つくというためには、やはりその産業が発展性を持っておるということで、将来の希望が持てなければなかなか人が集まらないということもございますし、また発展性があり、かつ現在収益力がございませんと、賃金も十分に払えないしあるいは労働環境も整備できないあるいは休日なども十分とれないというような問題もございます。したがいまして、やはり基本は産地産業、その企業が将来性のあるような、力のつくような対策をまずしなければ、なかなか労働対策だけではうまくいかないというのがわれわれの考え方でございます。したがいまして、むしろ産地対策自身を円滑に進めていくということ自身が労働確保に一番基本的に役に立つと思います。しかしながらそれだけではなくて、労働省におきましてもいろいろな労働対策をとっていただいておりますし、われわれ自身といたしましても、研修制度とか技術者の養成制度ということをいたしまして、いわば技術を高度にして、それによってそこに働く場を可能にするというようなことも考えております。したがいまして、そういう点での技能労働者の確保、若い青年の確保という点については、十分な努力をこれからしていきたい。しかし、それはむしろ産地企業が、先ほど申しましたように新製品開発し、新技術開発して、より強くなっていくということがやはり必須条件であろうというふうに考えておるわけでございます。  それから、原材料の問題も御指摘のとおりでございまして、従来の天然産品ではなかなかうまくいかない、もうなかなか入手しにくいということがございます。それに対しては今後どういうふうに転換していくかという問題で、一つは御指摘のとおり輸入に仰いでいくという点もあります。あるいは原料転換をして化学製品というようなものにしていくという点もございますが、こういう点については、この産地対策振興計画の中でいろいろ考えていくという必要があろうかと思いますが、その場合に、大企業製品に依存するという場合に、またいろいろな問題点も出てまいります。したがいまして、そういう点は産地計画に即して、この原材料問題で産地振興がつまずかないような対策ケース・バイ・ケース実施していこうというふうに考えておるわけでございます。  なお、若干余談という形になりますが、この産地対策適用を受けないところにつきましても、実はいろいろな業種組合に対しまして活路開拓調査指導事業というものをやっておりまして、組合が原材料の枯渇問題について調査研究をするというものに対しても助成をやっておりますので、そういうものを一般の地域には適用する、それから産地についてはより手厚く適用するということで実施していきたいというふうに考えております。  それから、伝統的工芸の問題も、やはり産地というものは、伝統的な工芸というものが中心に発達したというケースが非常に多うございます。したがいまして、こういう地域につきましては、いわゆる伝産法によりまして後継者の育成をやるとか、あるいは伝産会館をつくるというようなことで、伝統的な技術の保存に努めていくということを一歩進めておりますけれども、またわれわれの方の産地として考えますと、そういうふうな伝統的な技術を保存するとともに、その地域の中ではそういう伝統的な企業を生かして近代的な製品をつくっていくという芽も育てたい、そしてそれはまたこの産地法の方でそういう点をやっていきたいというふうに考えております。したがいまして、この伝統的な工芸産地も、伝統工芸そのものをやって生きるという企業もあれば、そういう素地を生かして、技術とかあるいはデザインとかそういうものを生かしながら新製品開発するというふうな、二つ相並んでその産地振興するという形が適当ではないのではなかろうかというふうに考えておりますので、そういう点で、やはりこの振興計画内容でわれわれもいろいろ御意見を申し上げ、指導を申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  54. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの御説明をいただいた点が非常に私も心配な点だったわけですね。特に伝統工芸品の場合には、いわゆる大量生産の部面は対象にしないということになっております。しかし、一つ一つつくって非常に数の少ないものではやはり利益も少ないし、なかなか企業を全体的に発展をさせるということはむずかしい、どうしても大量生産の部面というものも取り上げていかなければならない。ところが、破産法の適用をされようと思うと、その方面のところは除いていかなくちゃならぬという苦しみがあると思うのですね。したがって、これが重なって、いわゆる政策的な対象になっていくということであるならば、これは生きる道がもっと大きく出てくるというふうに思うのです。そういう意味で、いま長官の言われたことについては、特にいろいろな新デザインの開発であるとか、新しい製品開発ということについては、これは手づくりだけの問題としてとらえずに、大きくとらえていただくようにお願いをしたいというふうに思うのです。  そこで、法案の方に入らなくちゃなりませんからもう一つだけ伺っておきますが、第二条にいわゆる中小企業の定義というのがあります。この定義についても私は非常に問題があるだろうと思うのですね、特に産地産業の場合には。従来の産地を構成している企業というのは、大体いわゆる零細企業、生業的な企業、家庭内職業的なもの、そういうものがかなりの割合を占めているというふうに思っておるわけであります。企業的な経営の基礎を持っているものがそう多くはないんじゃないかと思うわけでありますが、この割合はどんなふうになっているかということを私は一つお聞きしたいと思うわけであります。非常に生業的なものが多い場合には、いまの中小企業の定義そのものの中でいろいろな施策を考えていくのに適さないのではないかという感じが強いわけであります。この辺についての御所見をいただきたいと思います。
  55. 左近友三郎

    左近政府委員 産地における中小企業状況でございますが、これは産地によって相当変わってまいると思います。と言いますのは、わりあい機械産業、機械工業などで、いわば工場形態をなしておるものが産地をなしておるというところがございます。こういうところはある程度の規模の企業が集中しておるということでございますが、繊維とか雑貨関係の業種では非常に零細企業が多い、それからまた、その下請でいわば家内工業的なものも存在するということも十分御承知のとおりでございます。したがいまして、これはまあ雑多な形態があり得ると思います。たとえば総体的に見ますと小規模企業というものが非常に全国としては多いわけでございますから、小規模企業の数が産地でも多くなるという傾向はあると思います。  そこで対策でございますが、これはやはりそれに応じた対策を講じていくということでございますし、定義といたしましては一定の規模以下ということでございますから、中小企業の上限に達するまでは最も零細な企業から全部対象にいたしますので、対策の範囲の中に入ってまいります。ただ政策のやり方につきましては、この産地振興対策の中では一本の中小企業として見ておりますが、零細企業についてはそのほか小規模企業に対するいろいろな対策がございますので、そういう政策とこの産地対策とをうまく組み合わせまして、振興計画とか個々の事業合理化計画というところで、小規模事業者にはより手厚く施策がいくように考えていきたいというふうに考えております。
  56. 上坂昇

    ○上坂委員 法案内容について少しお伺いいたしますが、二条の二項の二ですが、「その業種に属する事業を行う中小企業者事業活動の一部が特定地域に集中して」と、こういうふうに言われているわけでありますが、この集中するということは、企業数で見ていくのか、従来どおり出資額などで見ていくのか、どの程度の集中があればいいのか。  それから、その次の三の項目でありますが、いわゆる「輸出円相場高騰により減少すること」、それから「その他の経済的事情の著しい変化によって生ずる事態であって政令で定めるものに起因して」と、こう書いてありますが、先ほど「経済的事情の著しい変化」ということについては御説明をいただいたのですが、「政令で定める」ということになりますから、その「政令で定める」というのは一体どういう形で具体的な業種を定めていくのか、状態を定めていくのかということをお聞きしたいと思います。  それから第三条の産地組合のいわゆる関連業種でありますが、関連業種事業者というものをどの範囲でとらえているのか。いわゆる産地でつくっているものを問屋受けして、それを売っている産地問屋あるいは部分的なものをつくっている下請、そういうものがありますので、これらのものをどの辺まで含んでいるのかということについて御説明をいただきたいと思います。
  57. 左近友三郎

    左近政府委員 最初に第二条の第二項の第二号でございますが、特定地域に集中というのはどういう基準でやるのかということでございます。  これは、まず一つ事業者の数で見たいというふうに考えております。大体五十ぐらいある、あるいは全国比で一割ぐらいというふうな、事業者の数で見てみる。それからもう一つは、生産額とか取引高、これは必ずしも生産高に限らずに、取引高というものも見るわけでございますが、これが一定の基準以下、たとえば十億円ぐらいというふうなことも一つ考えておるわけでございます。あるいは全国比で一割というようなことがございます。こういうふうなおおむねの基準を見まして、いずれかに該当しておればいいということでございまして、その中で見ていくということでございます。  それから第二項の第三号の政令で定める事態ということでございますが、これはいまの御質問にございましたが、事態政令で決めるということで、業種を決めるわけではございません。それで、基本的には「輸出円相場高騰により減少すること」というのはまさに例示でございますので、政令の場合は、まず第一の輸出減少というのを一つ政令で決めることになりますが、現在とりあえず決めようと思っておりますのは、円高によって競争関係にある物の輸入がふえてくるということで、輸入がふえて国内の業種の物の出荷が減ってくる、つまり輸入影響というものを決めたいというふうに考えております。  その他いろいろな事態が考えられておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在では中小企業にとって円高による輸出、輸入両面での影響というのが一番厳しいものでございますから、とりあえずこの二つを指定をしていきたいと思いますけれども、今後経済状態に応じていろいろな状態が出てまいると思いますので、これは追加指定を五十五年度以降考えていくということを考えておりまして、その内容といたしましては、ここにございますように、経済事情の著しい変化ということであれば、指定要件としては十分成り立つというふうに考えております。  それからその次は第三条の関連業種でございますが、これは相当広くわれわれは考えたいと思っておりまして、この業種を、たとえば自転車なら自転車というものを考えますと、その部分とか原材料の製造業というものまで入れたいということでございます。製造に関連したいろいろな関連業種、部品をつくる、原材料をつくるというふうなものも入れるということでございますし、今度は物を売る場合の関連事業ということで、たとえば問屋さんとか流通業者も加えるというふうなことも考えております。したがいまして、産地中小企業振興に役立つ範囲で極力広く関連業種は解釈して実施していきたいということで考えております。
  58. 上坂昇

    ○上坂委員 私の住んでいるところは魚がたくさんとれる。したがって、魚の加工業が非常に多い。これは産地を形成している。ところが、最近は大企業の進出でここが非常に圧迫をされる傾向と、スーパーなどの進出で、今度はこれを売る魚屋さんなどが非常に困ってきているというところから、大企業進出、スーパーなどの進出というのが非常に大きな影響を持つわけなんです。そういう点で、この前も質問をいたしまして、大店舗法の改正問題等に絡んで、五百平米までスーパーならスーパーが下げることができるけれども、それ以下のことについては規制ができない。そこで、各自治体がこれを要綱なりあるいは条例なりで規制をする方向に来ている。ところが、最近の指導の傾向は、これをなるべく外しなさいという形に進めているように見えるわけです。私は、これはやってはいけないと思うのですね。法律で決まっているからその法律の範囲内で全部やらせるので、五百平米以下は野放しにしろという形ではなくて、各地域地域に条例が設けられたり指導要綱が設けられたりするということは、その地域の特徴、条件があってそういうものが決められているわけでありますから、これについてはなくすような指導は一切やらないということにしてもらわなければならないと思うのです。この件について一言だけ長官考え方を聞きたいと思うのです。
  59. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘のありました問題につきましては、実は大店法の運用問題でございます。これはわれわれも非常に深くかかわっておりまして、いろいろ内部でも議論をしておりますが、一応所管が産業政策局でございますので、私が確定的な御答弁を申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、大企業によりまして中小小売店が影響を受けるいまのような例につきましては、実は商調法で都道府県知事に申し出ていただきまして、それをあっせんをするといいますか、仲介をするといいますか、紛争処理をする制度がございます。したがいまして、われわれといたしましてはそれを活用していただくというふうなことが望ましいのじゃないかと思っておりますが、大店舗の方の条例の問題につきましては、われわれとしては現在大店法の施行の条件に従って実施していきたいというように考えておりますので、それ以上のことはちょっと私の方の答弁としては御遠慮させていただきたいと思います。
  60. 上坂昇

    ○上坂委員 時間が来ましたから質問をやめますが、私は中小企業庁の長官が答えようと産政局長が答えようと一向差し支えないので、いわゆる大平内閣、政府を代表していると思っているから、そういう意味で質問しているので、あなたが答えられなければ、いまの点については大臣に答えていただきたいと思うのです。  大臣、いま言ったように、せっかくこういう産地振興法をつくっても、そういうものが有効に働かないような状況が大企業なり大型店舗の進出によって出てきているということについてお考えをいただいて、これについては各地域を指導する場合に、持っている条例を廃止したり指導要綱を廃止するような方向に指導をされないということを、ひとつ大臣から言明をしていただきたいと思う。
  61. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点はやはり非常に重要な問題でございます。その実情に応じて適切な対処をすることは必要であると思います。ケース・バイ・ケースで十分判断をいたしたいと考えます。
  62. 上坂昇

    ○上坂委員 質問を終わります。
  63. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 飯田忠雄君。
  64. 飯田忠雄

    飯田委員 中小企業合理化あるいは近代化の必要が言われておりますが、その方法とかその完成像をどのようにとらえておいでになるかという点についてお尋ねをいたしたいと思います。  これは一つの例ですが、産地産業の現状は零細企業の工業、一企業当たり五人か六人程度の従業員の工場が、市街地の居住区に散在しておるというのが現状であるようであります。そのために、音響とかじんあい等の公害問題が発生をいたしております。たとえば、三木市の業界の人たちが申しておるのですが、こういう状態を救うためには、零細企業のための工業団地とかあるいは流通部門を担当する卸商のための団地を造成して、合理化、近代化をする核づくりをしていただきたい、こういうことを言っておりました。こういうような問題を中にはらんで、これだけじゃありませんが、将来における完成像というものはどういうふうにお考えでございましょうか。大臣の御見解を承りたいと思います。
  65. 左近友三郎

    左近政府委員 中小企業の中で、零細企業で市街地の中に、いわば住工混在という形で存在しているという点で、公害問題等でいろいろな問題を起こしているという点は御指摘のとおりでございますが、われわれといたしましては、中小企業の近代化というのは、そういう企業を団地というようなものに移しまして、そこで集合的な工場団地をつくり、集合的な建物の中に一緒になるとか、あるいは場合によっては個々の工場を団地の中につくるとか、いろいろな形によりまして実施する、あるいは流通業、卸売業についても団地をつくるというような共同的な事業を推進しておりまして、これは中小企業高度化資金融資制度というのがございますし、中小企業振興事業団が低利の金で、たとえば二・七%という低利の金でそういう資金を貸し出すという制度もございます。そういうことでございますので、こういうものを活用しながら、中小企業の現在の御指摘のような事態改善していくということを進めていきたいというふうに考えております。
  66. 飯田忠雄

    飯田委員 政府の方の御計画がどの程度の、いつまでにやるということであるのか、いまの御答弁でははっきりしないのですが、もし計画があるようでしたら、簡単でいいですが、お話をいただきたいと思います。
  67. 左近友三郎

    左近政府委員 これは各地の中小企業の方々が組合をつくって、団地をつくるというお申し出に従ってやるわけでございますので、現在のところは中小企業振興事業団に資金を用意しておきまして、それに応じてやっていくということでございます。制度の内容といたしましては、工場店舗の集団化事業ということ、これは、つまり一つの団地の中へ幾つかの工場を集めるというような事業でございます。それから工場の共同化、これは一つの工場の中に何社か入りまして、そこで生産を続ける、これは比較的零細な企業に対する対策でございます。それから工場共同利用事業というもの、これも小規模企業のために工場をあらかじめつくりまして、そこに小規模事業を入れるというような制度、そういうふうなものを幾つも準備しておりますので、こういうもので地元の御要望に応じて逐次実施をしていきたいというのが現在の考え方でございます。
  68. 飯田忠雄

    飯田委員 大臣の御都合がございますようですので、少し別の問題に入りますが、人材育成の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  つまり後継者づくりをどうするかという問題ですが、今日徒弟制度が崩壊をいたしましたために、後継者づくりが非常に困難となっておるというのが現状でございます。研修機関が必要なんでございますが、そのためにはどういう形で研修機関をつくるかということが問題であろうと思います。これは三木の金物組合の人の提案でございましたが、共同作業場をつくったらどうか、そういう声もございました。また、これは加古川のくつ下組合提案でございましたが、技術者の養成機関として産地またはその付近に工業高校とかあるいは技術員養成所をつくりまして、そこに産地産業科を設けて技術員の養成をしていただきたい、こういう声もございました。このような人材育成の方法につきましてどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  69. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおり、今後の産地産業振興するためには、やはり人材育成ということが非常に大きな要素になろうかと思います。したがいまして、従来とも事業協同組合等が共同施設として研修施設、教育施設をつくる場合には、先ほど申しました高度化資金、要するに中小企業振興事業団の融資制度がございますけれども、さらに産地法に基づきまして振興計画承認を受けて実施する事業については、その資金の融資の金利を無利子にするというような優遇をすることによりまして、さらに産地法によって促進をするということを考えております。  それから技術者の養成につきましては、やはり都道府県の試験研究機関がいろいろ近隣の中小企業技術者の養成を進めておるわけでございますけれども、さらに五十四年度におきましては、地場産業技術者の高度な技術が最近は必要になってまいりますので、したがいまして、周辺の中小企業の大学卒業程度の技術者の養成を試験研究機関でするということも創設をいたしまして、これに対する助成も考えております。したがいまして、これからの政策の内容として、人材づくりというのは相当大きな要素になってきておりますので、われわれといたしましては研修事業とか、あるいは先ほどお話がありました共同作業場も非常に結構だと思いますが、そういうものを産地法の施行段階におきまして助成をいたしましてどんどん充実していきたいというふうに考えております。  なお、工業高校に関しましては文部省の方が見えておりますので、そちらの方からお答えをいただきたいと思います。
  70. 飯田忠雄

    飯田委員 文部省の方、ちょっと御都合が悪いようですので、この問題は後ほどにいたしまして、次の問題に移ります。  いろいろの問題があるのですが、現在小野のそろばんというのがございます。これは原材料が非常に高騰をして困っておるわけですが、その原材料が上がったのは、従来は原木で輸入しておりましたのが、輸入先のインドネシアがこれを製材しなければ輸出しない、こういうふうになったということで、そのために輸入品が高くなった、こういうことを聞いております。こういう問題について政府の方では何らか原木で輸入できるような方法などについて御措置願うようなことはできないでしょうか、お尋ねをいたします。
  71. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいまお話がございましたように、そろばんの原材料はすべて輸入でございまして、インドネシア産のしまコクタンという材料あるいはアフリカ産のコクタン、いずれかを使うということでやってきておるわけでございまして、現在のところインドネシアでは、政府の方針によりましてこれを輸出禁止品目ということで、丸太の輸出を禁止するという措置がとられまして、それに従いまして価格の高騰が見られるということに相なっております。これはインドネシア政府の主権の問題でもございますし、またLDCという国でもございますので、なかなかこの方針の撤回を求めるということは困難であろうというふうに思います。ただ、しかしながらアフリカ産のコクタンの方は依然丸太輸入ということも引き続き行われておりますので、この方はそれほど価格もインドネシア産の物に比べて高騰しておるわけではございませんので、私どもといたしましては、でき得ればそういった原材料の転換といったようなことも考えていただきまして、アフリカ産のコクタンを使用していただくということも一つの方法ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  72. 飯田忠雄

    飯田委員 中小企業振興という問題に関連しまして、たとえば小野のそろばんのごときは、そろばんが売れるような対策を講じてやることが必要ではないかと思われます。  そこで、いろいろの人が申しますには、そろばんというのは、これは人間の頭を訓練するのに非常にいいのだから、人間の教養とか数理能力を強化するという目的のために、初等教育の正課に取り入れたらどうか、こういう議論がなされております。この点につきまして政府ではどのようにお考えでしょうか。
  73. 中島章夫

    中島説明員 お答え申し上げます。  そろばんを小学校教育で教えるということについてでございますが、これは従来から小学校教育では指導をいたしてきております。現在の学習指導要領によりますと、第三学年でそろばんの使い方を習いまして、それで簡単な加法、減法というものを習う。三年、四年の段階でそろばんを習うことになっておりまして、乗法、除法につきましては四年生以降において必要に応じてこれを指導する、こういうことになっておるわけでございます。  なお、文部省では、学習指導要領を現在新しいものに変えることになっておりまして、小学校につきましては昭和五十五年度から新しい学習指導要領に移行するわけでございますが、この中におきましても、そろばんの指導につきましては従来とほぼ同様の取り扱いをする、こういうことになっているわけでございます。
  74. 飯田忠雄

    飯田委員 次はくつ下業界の問題についてお尋ねいたしますが、現在くつ下業界では韓国からの輸入問題が問題になっております。関税の引き下げを中止してもらいたいという要望があるのでございます。たとえば外国との協定は一五%でありますのに、それを一二%まで下げてしまっている。なぜこのように特に低くしてしまうのか、その点の問題があるようでございますが、これにつきましての政府の御見解、御対策をお尋ねいたします。
  75. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 関税の引き下げ交渉が先般MTNで決着をいたしたことは御承知のとおりでございますが、私どもといたしましては、繊維製品は、特に繊維が構造的に不況業種であるということで、繊維製品のうちで輸入によって影響を大きくこうむりそうな品目につきましては、関税を引き下げないという方針で交渉をいたしてまいっております。  結論といたしまして、くつ下につきましては関税を据え置くということで対処をいたすことになっております。現在綿、毛、合繊等によって関税の率は異なりますけれども、たとえば合繊のものは一〇%というような関税でございますけれども、これは据えおく方針でございますので、引き下げというような事態ではございませんので、御了承いただきたいと存じます。
  76. 飯田忠雄

    飯田委員 次に産地中小企業対策といたしまして、産地業種とか地域指定をなされるわけでございますが、その基準をどのように決めるかという問題についてお尋ねをいたします。  特定業種の認定要件としまして、法案第二条第二項第三号に、「その他の経済的事情の著しい変化によって生ずる事態であって政令で定めるもの」、こういうふうに書いてございますが、この具体的内容がどうも明確でございませんのでお尋ねするわけです。政令内容、先ほども質問があったと思いますが、これは具体的にはどういうような内容のものでございましょうか。
  77. 左近友三郎

    左近政府委員 現在政令指定しようと考えております内容は、一つはその業種に属します事業製品輸出が、円相場高騰によって非常に減少してきたというようなことが一つでございます。それから第二は、やはり原因は円相場高騰でございますが、円相場高騰によりまして競争製品の輸入がふえた結果、その業種に属する事業製品需要が減ったという場合でございます。要するに輸出減少ないしは輸入の増加というこの二つを政令指定をしようというふうに考えております。  なお先ほど申しましたように、現在考えておるのはこの二点でございますが、将来につきましては経済事情変化というものを考えながらいろいろ検討してまいりたいということで、来年度以降は、また必要がある場合には適宜追加をしていくということを考えておるわけでございます。
  78. 飯田忠雄

    飯田委員 それでは、たとえば次のものについてはどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたしますが、大島つむぎというのがございます。大島つむぎは指定なさるのかどうか。あるいは小野のそろばん、これも日本では有名なものです。それから三木の金物、こういうものもございますね。それから西脇市を中心としたところの綿、スフ織物、これは指定されるのかどうか。あるいは加古川市を中心としたくつ下。それから小野市のはさみとかあるいは明石市のマッチ製造、こういうようなものがございます。もちろんマッチは明石だけではございません。姫路にもございますが、こういうようなものについてはこれに該当することになるでしょうか、ならないでしょうか。
  79. 左近友三郎

    左近政府委員 この具体的な産地指定につきましては、法律を制定していただきました後で、都道府県がいろいろ実態を調査をいたしまして、そこで都道府県考え方を十分考慮に入れて決定をいたしたいというふうに考えております。したがいまして、いまの御列挙になりましたことについて、個々の事態についてもう少し詳しく調査をしてみないと最終的な結論は出せないと思っておりますけれども、われわれの基本的な態度は、先ほど申しましたように、現地の実情に応じて対策の必要なものはなるべくこの中に入れていこうということで考えておりますので、現地の都道府県当局とよく相談をしながら判定をしてまいりたいということでございます。
  80. 飯田忠雄

    飯田委員 この問題につきまして関連をした質問ですが、産地業種指定する場合のとらえ方の問題でございます。たとえば三木の金物という、そういう言葉でとらえた場合には、産業分類上非常な障害が多いように思われるわけであります。三木の金物といいましても、のみやかんなのような利器だとかあるいはのこぎりだとか、包丁、ナイフといったような刃物、こういうようなもの、いろいろあります。これを一本の振興対策でやっていくのが可能であろうかどうか、非常に疑問があるわけであります。この点につきまして政府の御見解を承りたいわけですが、現地の声は、対策は大枠の実施を希望する、こういうことを言っております。細かく一々決められるとやりにくい、こういう意見でございますが、これにつきましては政府はどういうふうにお考えなのか、お尋ねをいたします。
  81. 左近友三郎

    左近政府委員 この業種指定する範囲でございますが、通常は日本標準産業分類の四けた分類に従って決めようというふうに現在考えておりますけれども、御指摘のような金物というようなことになりますと、実は四けた分類以下に、もう少し細かい分類がたくさんございまして、しかもそれぞれ特殊性があるということも御指摘のとおりだと思います。そこでわれわれ考えておりますのは、産地を余りたくさんの個別指定をするのも実際上むずかしいものでございますので、この指定は一括しておき、そして振興計画をつくる段階で、それぞれ業種に応じた振興計画内容にしていくということにしてはどうであろうかということは考えておりますが、いずれこれはよく県と相談してやりたいと思っております。  ただ、この際申し上げたいのは、今度の振興計画というのは、むしろ産地自主性に応じてやっていくということで、その意味産地がみずからつくり、しかも認定も都道府県知事が認定をするということでございまして、中央が何か一律的な基準を押しつけるという気持ちは絶対ございませんので、産地事情に応じていろいろ計画を工夫してつくっていただく、そしてそれがりっぱなものであれば府県も認定をするということに相なろうかと思いますので、そういう産地自主性において制定をしていただき、またその自主性に応じた計画をつくっていくというのがこの法律主眼であるということでございます。
  82. 飯田忠雄

    飯田委員 最後に一つお尋ねいたしますが、産地組合、これをどのような形でつくっていくかという問題ですが、たとえば三木の金物だとか小野のそろばんというとらえ方で産地組合をつくる場合に、生産者と販売者とが別々になってしまうのではないかという心配があります。一つ企業というものは、たとえば会社ですと生産部門と販売部門が一つにまとまっておりますが、中小企業の場合は生産部門と販売部門は別々の者が経営をしている。これを統一して組合とすることができるのかどうか、あるいは別々でやっていくのかどうか、これは重大な問題であろうと思われます。また、同じ生産の部門にいたしましても、のこぎりと目立てではやはり業種が違うわけでございますが、目立てというのは一体金物の中に入るのかどうか、これも一つの疑問であろうと思いますし、それから手で握る柄の部分、これは木造の部分がございますが、これは金物ではないということになってしまいますので、こういうような点について、一体どこまで含んでどのような形でとらえておられるのかということが問題になるであろうと思います。これは小野の人が言うておったのですが、生産部門と流通部門を一本にまとめて産地産業の発展振興を図るような振興計画を樹立していただけないか、こういうことも言っておりました。今度の法案を見てみますと、この問題についてどうも明らかでないようであります。非常にぼやけておるわけです。生産部門と流通部門は一体一緒にするのか、あるいは一つ組合をつくるにしましても内容は一体どの範囲まで、たとえば金物の範疇に含まれないようなものまで金物に含めてしまうというのはどの範囲までできるのかといったような問題とか、いろいろあります。こういう問題について政府の御見解を承りたいと思います。
  83. 左近友三郎

    左近政府委員 産地振興を図っていくためには、製造業だけではなくて、その製品を売ります販売業も一緒にやっていく必要があるということは、われわれも痛感をしておるところでございます。形といたしまして通常考えておりますのは、製造業を中心とした組合を中核にしてやっていきたいというように考えておりまして、業種指定は製造業を指定する。しかしながら、この法律にもありますように、振興計画のときにはいわゆる関連事業者というものと一緒に振興計画をつくる。そして振興計画をつくりますれば、関連事業者もこの法律の恩典は中心になっております製造業者と同じ恩典を受けられる、こういう制度にしておるわけでございます。したがいまして、通常の場合は製造業を指定いたしまして、その製品を販売する販売業者は関連事業者として一緒になって計画をつくる、そして一緒に恩典を受けるということになろうかと思いますが、これもそれでなければいけないというように考えておるわけではございませんで、組合が一緒の組合をつくってやるという場合でもいいというようにわれわれ考えておりますので、そこは弾力的にやりたいということでございますが、結果として製造業も流通業の方も同じように計画に参加をし、そして同じような恩典を受けられるということにいたしたいというように考えております。  それからまた、事業の範囲の中で、たとえばのこぎりと目立てというものがどうなるかというような問題もございますが、たとえばのこぎりを生産しております金物業の振興を図るためには、目立ても入れる必要があるということでございますれば、それも十分含めてやりたい。柄の部分の問題も同じように考えております。したがいまして、業種の範囲は実情に応じて弾力的に考えていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、そういう点はやはり都道府県が一番実態を把握しておりますので、われわれといたしましては十分都道府県意見を聞き、その意見を尊重して指定をしていきたいというように考えております。
  84. 飯田忠雄

    飯田委員 終わります。
  85. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  86. 野中英二

    ○野中委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田口一男君。
  87. 田口一男

    ○田口委員 この産地中小企業対策臨時措置法の中で、先ほどから同僚議員の質疑がありましたけれども、やはり何と言いましてもこの第一条、第二条関係、この辺についてやはり多少情勢が変わってきておるのですから、もう少し円高云々ということを前提にした表現を改めるべきではないのか、そういう気をますます強くするわけでございます。  たとえば、左近長官が、日経産業新聞だったと思うのですが、こういう言い方をしておるわけですね。各産地円高を前提にした新商品、新技術開発意欲が徐々に盛り上がりを見せてきておるから、それに対して政策的な誘導をやっていかなければならぬのだ。私は、その発言の限りにおいては間違いはないと思うのですね。しかし、円安が定着をしたかどうか、これはもうしばらく見ないと状況はわからないと思うのですけれども、円高を前提にしただけでは産地中小企業の抱えておるような問題について対応していけないのじゃないか。  たとえば、私の属しておる三重県の万古焼というのは、左近長官も御存じだと思うのですけれども、先月、四月になってこういう状況が出てきておるわけですね。たとえば円安の中で運賃が四〇%、油が一五%、包装資材、特にこれは石油化学製品の関係でありますけれども約二〇%、ガス、ブタン関係ですが約三〇%それぞれ値上がりをしておる。しかも、それに便乗したということじゃないのでしょうけれども、原材料の石こうであるとか粘土であるとか、こういったものについても相当値上がりを見せておる。こういった状況は単に万古焼といったような陶磁器に限らずに、他の産地企業についても同じようなことが言えるのではないのか。したがいまして、ここにうたってありますような円高ということが一つの例示ということのお答えがありましたけれども、もう少しその辺のところを、急激な経済の変動といった意味のところにウエートを置いた目的にすべきではないのか、こう思うのでありますけれども、それについて再度お尋ねをいたします。
  88. 左近友三郎

    左近政府委員 この「目的」等にございます経済事情の著しい変化というものに対しまして、その一つの例示といたしまして円相場高騰というものが掲げられております。これは、やはり過去二、三年の間に中小企業がこうむりましたいろいろな厳しい事情がございますが、その一番大きな原因がやはり円高にあったということから、例示として出したわけでございます。実際問題といたしまして、確かに最近の時点で最も円が高かったのが昨年の十月の末でございまして、百七十六円というふうなものが出ておりました。そのときには、実は一昨年の六月に比べまして大体五七%ぐらいの上昇率という計算になったわけでございます。その後、御案内のとおり円は円安に転じまして、現在二百十円から二百二十円という姿になっておりまして、たとえば五月の二十四日の中心レートは二百十九円五十銭でございますが、これは一昨年の六月一日のレートに比べますと二六・三%アップということになっておるわけでございます。したがいまして、確かに極端な円高は、若干円安という状態で、なくなりましたが、やはり一昨年に比べまして現在の状態はいま申しましたように二六%くらいの円高という形勢になっておりまして、やはり為替相場が二年の間に二六%も上がるというのは相当異常な事態でございます。したがいまして、いまの状態もやはり円高影響企業に対して対応を迫っておるという事実は変わらないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。ただ、との円高過程で、企業は一生懸命に対応努力をいたしましたから、現在の事態は相当な対応努力をした上で、若干円が下降したので一服状態でございます。しかし、これで安心をしていられないわけでございます。したがいまして、経済事情の変動に応じていまのうちに体質改善をしていくというのが本法の目的でございます。したがいまして、円高というものが大きな要因になっておりますけれども、われわれといたしましてはそういういろいろな変動要素に対応できる体質をいま固めておくということでございます。  御指摘の万古焼の事情につきましては、私も過去において三重県に奉職しておりましたので、事情もよく存じております。そしてまた最近の事情、運賃、原材料の上昇、そういうものも相当大きいということもございますので、もちろん円高だけではないということは言えると思いますが、こういう点で現在の法律目的自身はこの形でも、現在の事態では何とか十分この法律目的として変わらないのではないかというふうにわれわれは考えておるというのが現状でございます。
  89. 田口一男

    ○田口委員 私はいまの長官のお答えで、第一条に言っておりますように、円相場高騰、これは一つの例示であって、その他の経済事情の著しい変化に対応云々とあるのですけれども、やはりこれが成立をした後、時限立法でありますから、いまのところ原案では七年、七年先のことはいまここで定かにはできないにしても、やはり第一条のこの文言からいくと、円高そのものに相当のウエートがかかる。そのことが原因になって産地中小企業がいろいろな困難な状態に直面をする。そのものに対して指定をしながらやっていくのだ、こうとられやすいと思うのですね、いまの長官のお答えは。七年先まで見通すということはちょっと無理ですけれども。そうなっていくと、さっき私が万古陶磁器の例をちょっと挙げましたけれども、円安ということにはなっていないけれども、OPECの関係で原油が上がってくる、これはもう円高、円安に関係がない。そのことによってすでにさっきも例に挙げましたように、一五%も上がったわけですね。具体的にはトン二万六、七千円であったものが、もう四万円になっておるというわけです。これはちょっと高いじゃないかと思うのですけれども、現実にそうなっておる。そういったところは円高の関係がない。確かに円高の関係で困っておるのは輸出関連が主でありますから、そこで救われるかもしらぬけれども、第一条の目的の限りでは、円高ということではちょっと範囲が狭くなるのじゃないか。そういう意味合いから、私はいま長官のお答えを、円高ばかりは言っていないのだということであるならば、やはり経済、内外情勢の急激な変化といいますか、そういったところにウエートをかけた産地中小企業対策ということにすべきではないのか、こういうふうに思うわけでございます。重ねてなんでありますけれども、もう一遍長官のお考えを伺いたいと思います。
  90. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほど申しましたように、この法律は必ずしも円高だけを対象にしておるわけではございませんし、御指摘のように将来の変動に備えてこの指定要件政令で決めることになっておりまして、必要な事態が起これば政令で、円高というものにとらわれることなく、必要な、つまり重大な経済事情変化というものは取り入れていこうというふうな態度をとっておるわけでございます。基本的な態度はそうでございますが、現在の事態を考えてみますと、先ほどからのように、やはり一昨年ぐらいから比べますと、現在でも円高事情でございます。  それからもう一つ、先ほど申し忘れましたが、実は円高事態に対応するために円高対策法を制定していただきまして、円高緊急融資を実行いたしました。これが一昨年の十月以来ことしの四月までで大体中小企業金融三機関の貸付額が四千億に上っております。との資金はどういうものかと申しますと、実は六年間のつなぎの運転資金でございます。したがいまして、実は輸出が伸びなくて企業の経営が非常に困ったというのを六年間先へ問題を延ばした、つなぎをしただけでございます。したがいまして、過去の円高つまり一昨年以来の円高の傷跡が中小企業にまだ残っておるわけでございまして、ただそれがつなぎ融資でいわば仮の手当てをしておるというだけでございます。したがいまして、今後の産地対策は、やはりその仮の手当てをしたものを、本当の意味において強い状態に立ち変わっていくということをしなければいけないということでございまして、現在円が若干安くなっておりますが、やはり過去の円高の痛手が相当産地に残っておるということは言えると思います。したがいまして、例示として挙げることはやはり一番適当じゃないかと思います。ただ、繰り返して申し上げるように、私の方は今後の運用も円高だけにしぼっていくというようなつもりはございませんので、その点は十分御了承願いたいと思います。
  91. 田口一男

    ○田口委員 じゃ、運用その他についていまのお答えのとおりやっていただきたいと思います。  次に、イロハのような話ですけれども、産地企業、ここで言う産地中小企業というものの定義です。法案の第一条、第二条、特に第二条第二項の一、二、三号に書いてあるのですけれども、今日政府がとってまいりましたこの種の中小企業対策、あえて中小企業にとどまりませんけれども、定義から見た場合に、二通りあると思うのです。たとえば昭和四十二年の中小企業白書で明確に規定をしておりますように、「古くから一定地域に集まって、同一の立地条件で同じ種類の製品を生産し、伝統的な地場産業として発達してきた。こうした産地企業は、中小企業の代表的な存立形態のひとつとなっている。」ここに言っておるようないわゆる中小製造業の集積形態として、産地企業一つ言えると思うのです。それから去年、構造不況産業一つの立法としてにわかに脚光を浴びてまいりましたいわゆる企業城下町、この企業城下町における下請企業集団、この二つが中小企業の集団の特徴的な形ではないかと思います。そうなってまいりますと、今回審議をしております産地中小企業対策臨時措置法というものは、この二つの形態を問わず対象にするのか、それとも四十二年の中小企業白書が言っておりますような伝統的な前者の行き方ですね、そういったものを対象にするのか、ここのところをひとつ。
  92. 左近友三郎

    左近政府委員 一般的に産地の定義はいろいろございまして、中小企業白書に述べておるのも一つの定義でございますが、この法律でどういうものを産地として入れようかということは、いまお話しのございますように二条の第二項に指定要件が出ておりますが、そのうちで一号、二号というのが産地の定義みたいなものでございまして、一つはやはり業種がいわば中小企業性業種でなければいけない。大体全生産額に占める中小企業の生産額が半分くらいはないと中小企業性業種と言えないと思いますが、そういう業種であるということが一点でございます。もう一つは、やはりある特定地域企業が集中していること、これは数においてもあるいは生産高等においても集中していることというような要件を考えておるわけでございます。したがいまして、この集中の要因が歴史的な伝統的な要因によって集中しておるか、あるいはいま申しましたように大企業の下請集団として集中しておるか、あるいはまた別の特殊な何か要件がございまして、機械の産地がここ十年ぐらいの間にその地域に集まってできたか、いろんな要件はあろうかと思いますが、そういう成立の要件を問わず、現に中小企業が集中しておれば取り上げるというのが本法の立場でございますので、中小企業白書が勉強のためにとらえました定義よりはもう少し広いという形でわれわれは考えているわけでございます。
  93. 田口一男

    ○田口委員 そうしますと、なぜ私はしかつめらしく中小企業白書が言っている産地企業であるとか、それから企業城下町と言われておる下請の企業集団、どちらを対象にするかとわかり切ったことを尋ねましたのは、こういう心配をちょいちょい私ども聞かされるわけです。もしこれでこの産地法が通り、そうしてその指定を受ける。その場合に、午前中の質問もちょっと触れておったようでありますけれども、現行の制度の中の、たとえば事業転換法ですね、これと競合するのか、それにかぶせていくのか、そういった例で、先般成立いたしました繊維工業構造改善臨時措置法、こういったものもあるわけです。それから昨年立法されましたいわゆる不況対策立法、網の目のようになればいいけれども、これがあるからこれはだめなんだというふうな心配があるわけですね。そういう点はどうなんでしょう。
  94. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘のように、緊急対策法としても円高対策法、特定不況地域対策法というのがございますし、それから構造改善という意味において繊維法律もございます。あるいはまた、ちょっと違う目的での伝統工芸の保護法、伝産法もございます。こういういろいろな法律がございますが、その中にあって、この産地法との適用関係はどうだという御質問だというように思いますが、われわれといたしましては、原則として重複適用していいというふうに考えているわけでございまして、この産地事情に応じてそういういろいろな法律助成条件をそれぞれ十分活用していただければいいというふうに考えております。ことに事業転換につきましては、産地振興について非常に大きな役割りを果たすというふうに考えております。そこで、産地内で企業事業転換する場合には、単に重複適用するというだけではなくて、両方、つまり産地法と事業転換法の両方の適用を受ける人は、助成条件をより有利にしてあげようということで、金融の金利などはより有利なものを準備するというように考えております。したがいまして、総括して申し上げますと、重複適用はもちろんやりますし、案件によっては重複したゆえにより有利になるような配慮も考えておるというのが、この法律の運用の考え方でございます。
  95. 田口一男

    ○田口委員 では次に、いままでのいろんな報道を見ますと、この臨時措置法が成立をすれば、この七月ごろから作業を初めて、五十四年度に大体九十産地くらい指定するという話が耳に入っておるわけでございますけれども、その基準というのはこの法律基準になるのでしょうけれども、委員会の調査室からいただきました資料を見ましても三百幾つの産地があるわけですね。そうなってまいりますと、ことしは九十ぐらい指定をして、漸次ここに挙げてあるような三百幾つの産地について全部網をかぶせていく、こういう考えなのか、このうちでこれはまあ必要はないだろう、こういうことになるのか、そこのところをひとつ。
  96. 左近友三郎

    左近政府委員 産地指定は、いま御指摘のとおり本年度は予算上九十という目安で考えておりますが、われわれの考え方は、要件さえ整えば今後逐次その産地をふやしていきたいということを考えております。  その場合に、法律上の要件といたしましては、やはり先ほど申し上げましたように、経済上の理由でその地域中小企業が困っておる、あるいは困るおそれがあるというような事情が必要でございまして、現在隆々として非常に発展をしておるというようなものについては指定はできないわけでございますが、そういう客観的な条件のほかに、地域自身の自発性、自発的な計画を生かして助成をするというのが本法の趣旨でございますので、地域が積極的にやる気を出していただいて計画をつくっていただかなければいけません。したがいまして、そういう準備が整ったところを指定するという段取りになります。したがいまして本年九十ということを考えましたのも、実際に適用すべき産地というのはもっとたくさんあるわけでございますが、やはりその地域の中で相談をして企業の方々の意見を合わさなければいけない、あるいは都道府県も準備をしなければいけないということがございますので、準備が整って、ことし計画をつくって発足できるところが九十ばかりだろうという推算をしたわけでございます。したがいまして、当面は先ほどの客観的な基準が必要ではございますが、その客観的な基準を満たすものであれば、準備が整い次第どんどん指定をしていきたいということで、われわれこの法律が施行になりますれば九十を指定するとともに、いろいろ調査をいたしまして、来年度はそういう準備の整いそうなものは十分指定ができるように、極力この指定の枠を広げていきたいというように考えておるわけでございます。
  97. 田口一男

    ○田口委員 そこで、指定の条件、要件が整い次第ひとつ産地として指定をしていく、そういう考えでやっていただきたいのですけれども、問題は本法の有効期間ですね。七年と言っておりますけれども、一つ気にさわることを言いますけれども、先般成立をいたしました繊維工業構造改善特別措置法、この経験から言いますと、第一次が昭和四十二年だったと思うのですけれども、それから延長延長して十三年ですよね。十三年たってなおかつ、繊維にとって酷な言い方ですが、まだまだ法の意図するような状態になっていない。したがいまして、下手をすると、繊維法律は五年間延長いたしましたけれども、五年たった暁、また発展途上国の追い上げであるとか何であるとかといったような条件がより深刻になって、もう一遍延長しなければならぬのじゃないかというふうな声も、これはちまたにあるわけであります。だからというわけじゃありませんけれども、私は、この産地中小企業対策として七年間ということを置いたのは、先ほど冒頭に長官のお答えがありましたように、こういった円高を契機として、この機会に、多少一服の状態はあるけれども、足腰を強くして競争力をつけるようにこちら側が援助をしてやるのだという考えに立つならば、ちょっと七年では中途半端じゃないかという気がするのですね。長ければいいというものではないのですよ。やや中長期の見通しということは必要でありますから、私は繊維構造改善臨時措置法が腰だめ式に、五年また五年といって今日十三年目を迎えたのだとは言いたくありませんけれども、この際、中長期の展望を持つならば、七年という中途半端な有効期間ではなくて、あえて本法成立から十年をもって一区切りとする、その間にひとつ政策的に誘導なり何なりをやってそこで見直していく、こういったことの方が受ける産地の側にとっても、またその産地を抱える都道府県としても腰がすわるんじゃないかという気がいたしますし、またそういった意見もあるわけでございます。まあ七年と十年、五十歩百歩じゃないかと言うかもしれませんけれども、やっぱり法を施行する構えとしても中長期十年、こういったことの方が必要ではないのか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 左近友三郎

    左近政府委員 この法律の期間を七年にいたした理由でございますが、やはり指定をするのは、急ぎましても先ほどのように初年度だけでは済まないということでございますので、法律指定を二年ぐらいで進めたいということでございます。そういたしまして、各計画をつくった後五年ぐらいで計画を完成する、もう少し早く進めばそれは結構でございますが、五年ぐらいのゆとりを見たい、こういうことで七年にしたわけでございます。  結局そういうことで中長期的な対策でございますので、若干の期間が要るわけでございますが、また一方考えますと、経済事情というのは刻々変化をしております。したがいまして、いろんな経済事情にもたえ得るというふうに体質改善するのは余り猶予は許されないという観点もございます。したがいまして、この指定期間を二年ぐらいにして、それから実施を五年間でやっていくというあたりが一番妥当ではないかということで七年にしたわけでございます。
  99. 田口一男

    ○田口委員 七年では短いから、中長期で十年でやったらどうか、その根拠はいろいろ見方、言い方があると思うのですが、私が先ほど申し上げたように腰を据えてひとつやっていこう、こういった意欲、まあ短いうちに駆け込んでやろうという逆の言い方もあると思うのですけれども、やはり意気込みとしては、府県の指導としてもそれを受ける産地組合としても十年ぐらい、これが私の申し上げたい期間延長の理由ですね。  それから、今度は逆な言い方なんですけれども、さっき言いました約三百二十ある、それを単純に算術計算をして、準備の整い次第どんどん指定をしていくというけれども、事務的な関係もあってことしは九十、九十をベースにするでしょう。そうすると三百二十全部しないにしたって、大体三百全部を対象にすると、一年当たり九十とすれば、全部指定するのに三年ないし四年、そういった場合に一産地が大体軌道に乗っていくには、いまの長官のお話じゃないけれども、二年準備、幅を見て三年、そうすると三掛ける三で九、こういう単純な計算で十年ぐらいということにならぬかと思うのです。ちょっと乱暴な言い方ですよ。一年九十カ所指定、それを全部指定をするのに三年かかる。ところが一産地についてまあまあという状態になるまでは三年かかる。そうすると三、三が九、十年、私はこういう話もしておるのですけれども、長いからいいということは私はあえて言いません。しかし、この種の産地企業が今後の経済の荒波、もっともっと厳しくなるでしょうから、それにたえていこうとするためには、本当に腰を据えて取り組めるような期間、そしてそれを見て次から次へおれもやってみようというふうに、いい意味で名のりを上げてくる、それを中小企業庁が政策的に誘導していく、こういったことを考えてみますと、やはり五年、七年では中途半端なことになるのではないのか。したがって最低十年ということを私は申し上げておるわけであります。  くどいようでありますけれども、私は繊維工業の臨時措置法を一つの、これは対外的な要因もあったんでしょうけれども、いつの間にか五年が十三年になってしまって、十三年たってなおかつ所期の目的が達せられない。これは他の要因もあったと思うのですよ。そういうことが産地中小企業の場合に、いま苦い経験があるのですから、一挙にどうだ腰を据えて十年、こういう構えを見せるべきではないのか、くどいようですけれども、私はそういう考えを持っております。したがってその辺のところをもう少し流動的に考えられないのかということです。
  100. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおり、この法の運用をじっくり腰を落ちつけてやるという意味において、七年にこだわるのではなくて十年くらいにしてはどうかというようなことでございますが、先ほど申し上げましたように、確かに中長期的な対策でございますから、必要な期間は要るわけでございますが、また、他面考えますと、国際情勢の変動というものは、われわれがもう予測しがたいような時代になってまいりました。それに影響を受けた国内の経済の情勢も相当変わり得ることが予測されております。したがいまして、この産地振興法でやっていきます産地振興対策自身は、やはり七年ぐらいの期間でひとつ達成をするというふうな意気込みでやっていくべきじゃないかというようにわれわれ考えております。したがいまして、その指定その他も極力弾力的にやりまして、迅速に処理をして、七年の期間で十分所期の効果を上げていきたいというのがわれわれの考えでございます。御趣旨のほどもよくわかりますけれども、われわれといたしましてはやはりこの際そういう最近の経済事情の変転の激しさから見て、ひとつ七年ぐらいで効果を上げてみたいということを考えておるわけでございます。
  101. 田口一男

    ○田口委員 次に、いま一番の問題である雇用面と、それから産地のそれぞれの企業の経営上の問題、こういったところからひとつ問題を提起してお考えをお聞きしたいのですが、まず産地中小企業対策法が雇用の安定という面から見て、私は第八条にうたってあるだけのことではむしろ後ろ向きではないのか、こういう気がいたします。と同時に、今度は経営上の問題から見ますと、雇用の安定という面から見ればちょっと矛盾もある。  具体的な例を二、三申し上げたいのですけれども、ことしの中小企業白書のうちで、百六十ページに、「産地中小企業の経営上の問題点」というのがございます。グラフになっておるのですけれども、そこで問題別に数字を挙げてありますけれども、人件費等経費の増加が五五・四%、国内向けの売り上げ、受注の停滞という五八%に次いで産地中小企業の経営上の問題点として取り上げられております。これは間違いがない。  ところが、一方、雇用面から言うと、こういう状態長官なりそれから中小企業庁の計画課長なんかも御存じだろうと思うのですが、これは東京の渋谷の労政事務所がその管内である渋谷、港、世田谷、目黒、この四区のアパレル企業の労働条件の調査を行いまして、本年の五月一日に発表いたしております。細かい内容は省略いたしますけれども、この労政事務所の発表した概略を言うと、はっきり言って平均賃金は他に比べて高いけれども、時間外賃金や有給休暇、そういった労働条件は劣る、そして華やかなファッション企業の内実は厳しい労働がやられておる。こういう表現で、一言にして言うならば労働条件は大変に悪い。これはアパレルの方の実態なんですけれども、産地中小企業全般を見た場合に、一方で経営上の問題として人件費が高い。ところが、高いと言われておるそこで働いておる労働者は労働条件が悪い、こういう相矛盾をした状態にあるわけですね。そういう面だけをとらえると、この法案の第八条で、いままでも、他の委員会でもこの委員会でも議論をされておりますように、合理化をしなければならぬ。そこで、職を離れる者については一応の受けざらとしていろいろな、きょうの本会議でも言っておりましたけれども、離職者の対策を一応厚くしている、これだけなんですね。しかし、私はもっとそれ以上に産地企業の労働対策としてやっていかなければ、せっかくのこの法案が泣いてしまうのじゃないかという気がするわけです。その一つの例として、こういう報告をしておることをちょっと申し上げたいと思うのです。  これは「四日市ばんと焼産地診断報告書」というものなんですが、それにこういうことを言っておるのですね。「当産地の従業員は高齢化が目立ち、今後の産地発展のためには若い技能工を養成確保し、高齢者の能力開発を進める必要がある」、言うならば、働いておる職人さんが年をとっていくものですから、しかも若い者がなかなか来ない。しかも、これは四日市だけに特有の問題とは思いませんが、高度経済成長時代にコンビナートができました。したがって、そこに若い労働者が吸収をされる。地元のそういった地場産業には労働者は来ない。ある程度賃金を高くする。それが五十二年のショック以降、人件費が重圧になってくる。といって若い者がなかなか来ませんから、困った困ったというのが万古の産地組合実情だろうと私は思うのですね。こういったところに、本法の第八条の規定だけで産地中小企業対策として雇用面、経営面から見て適切かどうか、何か一つ欠いておるのじゃないかという気がするのですが、その辺のところはどうでしょう。
  102. 左近友三郎

    左近政府委員 確かに御指摘のように、産地中小企業の労働問題というものが一つの大きな問題であることは事実でございます。中小企業白書の記述も御指摘になりましたが、また、ことしの中小企業白書で、中小企業のいろいろな部面でアンケート調査した結果もございますが、その中でも、去年のようにいわば労働者が過剰と言われたような時代でも、やはり中小企業にとっては適当な人がないというふうな、つまり人手不足であるという答えの方が多いという実情も出ております。この万古の例もそういうことだろうと思います。したがいまして、八条で考えておりますような離職者対策とかそういう労働面の対策は、これはひとつ労働省にもお願いしてやっていただくということでございまして、われわれもこの八条でやっていただくことにしておりますけれども、御指摘のとおり、それだけで済むものではないということはわれわれも痛感をしております。  しかしながら、基本的に考えますと、やはり若年労働者を吸収するという場合には、労働者が集まるような職場環境というものを考えなくてはいけない、あるいは適切な賃金というものを考えなくてはいけないということで、賃金上昇が経営圧迫になるわけでございますが、結局そこを考えてまいりますと、産地中小企業自体の収益性を高めて、そして、そういう労働環境を整備し、かつ賃金も世間並みのものを払えるというふうにしていかなければならないという基本的な問題に突き当たるわけでございまして、そこがまた、この産地法の一つのねらいでございまして、産地中小企業が新製品開発し、新技術開発して競争力をつける、そして、それの過程においてそれが労働者にも及んでいく、いい労働環境が出ていくということが一つの理想でございます。ただし、これは一つの理想でございますので、では、すぐにこの振興計画実施したから翌年からそういうことになるかと言いますと、これはなかなかむずかしい問題ではございますけれども、過渡的には、したがいまして八条のような雇用政策をやっていただきまして、そうして、ねらいとしては、そういう若年労働者も働けるような、働きの場を提供できるような強い企業になっていただくということにしていきたいと思います。  ただ、その過程で、その振興計画の中でやはりそういう配慮が十分なされておるようにわれわれは見ていかなければいけない。したがいまして、先ほどの御指摘にありましたように、一見繁栄しているかに見えるけれども労働条件が悪いというようなことにはならないように、われわれも十分この計画の指導等々において頭に入れてやらなければいけないというふうには考えるわけでございます。
  103. 田口一男

    ○田口委員 そういう配慮でやっていただきたいものだとお願いをいたしますが、重ねて言いますと、これは御存じだと思うのですが、産地企業の特色というものは、従来は労働力も原材料も特定地域から調達をする、そういうことで、労働力の方は、言うならば地域の農業から供給を受ける。原料はまたそこに特有のものがある。労働集約型の産業産地企業として多いわけですね。これは多分そうだと思うのです、私は万古の例を中心にして申し上げますけれども。そうなってまいりますと、先ほども言いましたように、昭和三十年代から四十年の初めにかけての高度成長の時代に、若年労働力がどんどんとコンビナートの産業なりそういうところに流れていって、そして産地企業、万古で言いますと、万古は、人事といいますか、労働者は停滞をしておる。それが今日さま変わりになってまいりましたけれども、こういう万古なんかの仕事は、他でも産地企業はそうだと思うのですが、きょう覚えたから、一カ月、二カ月訓練を受けたからすぐに間に合うというふうなものではないと思うのです。確かに機械化をされまして、ばたんと押せばこういったものが一つできる、こういうものもありますけれども、工業組合なんかに行って聞きますと、そういったものは台湾であるとか韓国、そういったところからどんどん追い上げられて、馬とかなんとかの置き物は、日本製品はもう太刀打ちできない、こう言っておるわけです。そこで、太刀打ちするためには相当高度の、芸術家はだの職人さんでなきゃ物をつくれぬ、競争ができぬ。その芸術家はだの高度な腕を持った職人さんをどんどん雇おうとすれば賃金が高くなる。そこのところで工業組合なんかは相当困っておる。したがって、そういう特有の産地を持ったところには、県立の試験所なり、それ独特の職業訓練所といったものを設けておるようでありますけれども、そういった試験所、訓練所というものに対しても、この産地対策法律が財政的な援助についてきめ細かくやっていく用意があるのか。さらに人材確保という面についてどういう考えを持ってみえるのか。それはすべて振興計画の中でやりなさい、それをこちらは認めていきましょうという程度のものなのか、どうなんでしょう。
  104. 左近友三郎

    左近政府委員 産地の中での労働の問題、労働者の技能の問題いま万古の例を引いて御説明なり御質問がございましたが、私も万古焼は知っておりますので、御指摘は非常によくわかります。  そこでわれわれ考えますのは、いまちょっとお話しになりましたように、やはり単なる量産品じゃなくて、高級品をつくっていく、そこに製品  の価値を高めるという必要があろうかと思います。そしてまた今度は売り方にも問題がございまして、売り方も従来のように大量製品を安売りするんじゃなくて、高級品としてそれぞれの価値を実現して売っていくという必要があろうかと思いますが、そういう形で収益力を高めて、そしてそれを労働者に還元をしていくということが必要かと思います。しかしその基礎になるのは、いま御指摘のように労働者の技能訓練、技術訓練ということが前提になっております。  したがいまして中小企業庁といたしましても、従来とも地方の公設技術研究所からいろんな技術研修を各中小企業の方々にするというようなこともやっておりますし、あるいは中央の中小企業振興事業団でも研修事業をやるということで、各種の研修事業を進めておるわけでございますけれどもざらに五十四年度につきましては、産地組合が研修事業をやるというような場合にも、これはひとつ補助金をつけるということも考えております。  それから公設試験研究所の教育も、従来はどちらかといいますと高校卒程度の人に大学程度の技術を教えるというふうなことが中心でございましたが、さらにこういうふうな技術の高度化という事情もございますので、むしろ大卒程度の学力を有する人に大学院程度の技能、技術を教えるというふうな研修を新しくつけ加えることにいたしたわけでございます。したがいまして、もちろん振興計画でもいろいろやってもらいますけれども、政府自体の施策といたしましても、今後人材の育成についての施策は大いに推進してまいりたいというふうに考えております。
  105. 田口一男

    ○田口委員 そのことに関連をいたしまして、産地企業というものは、これも御存じだと思うんですけれども、その産地の属する同一市町村の行政区域、その同一市町村内の他の業種にも、その産地企業の伸長が大変な影響を与える。こういった面から、他にもあるのですけれども、話をわかりやすくするために私は万古を言いますが、やはり万古の企業だけを対象にした産地中小企業対策、これではちょっといびつなものになっていきはせぬかという気がするんですね。その産地の中に、雇用問題で言うならばある程度人がはみ出てくる。そのはみ出てくる者を、単に離職者対策として失業手当を出して糊塗するんではなくて、その産地の中に政策的にひとつ異業種を持ってくる。いま言った万古で言うならば、万古の発送なり何なりといったような仕事がついて回るわけですね。そういったような異なった業種も政策的に誘導して持ってきて、そこに労働者を吸収する、こういうことによってその同一市町村内の他の中小企業というものが、両々相まって発展をしていくということが望めるんじゃないかという気がするんですがね。片や雇用対策、片や同一市町村内の他の業種に属する中小企業振興のためにも、私はこの産地中小企業対策というものは、万古なら万古という指定した特定業種だけではなくて、その指定した地域の中にむしろ異なった業種も誘導していく、あるいはそれも対象にしてやっていくということも必要なんじゃないか、こういうふうに思うんです。これは他の法律でやれるじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、その辺の考えをお伺いしたいと思うんです。
  106. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘の、その産地に所在する他の産業の問題でございますが、これは二つの段階に分けて考えておるわけでございまして、一つ産地指定されました業種と直接関連のあるもの、これは関連事業ということで一緒に振興計画をつくり、いろんな恩典も受けられるようにするということをやっております。したがいまして、万古でございますれば万古焼のメーカーだけではなくて、それを取り扱います問屋さんも入るということでございますし、あるいはその原材料を供給するところも入ってくるというようなことになりまして、そういうことで、単なる万古焼という窯元だけを相手にしないで、もう少し範囲を広くしてとるということを一つ考えております。  それから全く異業種のもので、しかしその地域にあってその地域のたとえば雇用の吸収ということに役立つというものにつきましては、実はこの法案には直接出ておりませんが、この地域計画をつくるときに府県に頼みまして、府県振興ビジョンというものをつくることになっております。これは万古でございますれば、やはり四日市地区全体の振興の中でこの万古焼の振興をどうするかということを考えてもらうことになっておりまして、これについてはやはり国がそういう計画をつくるに当たっての補助も用意をしております。したがいまして、そういう内容で、実はじゃほかのどういう産業を持ってきたらいいかということを考えていくということが、その振興ビジョンのねらいになろうかと思います。その際にそういうビジョンに乗りまして出てくるものについて、万古焼をやっておられた方が転換をしてそういうところへ行くということであればこの産地法の適用を受け、さらに事業転換法の適用を受けて、より有利な措置ができるわけでございます。それからそうでない場合には、確かに本法の適用は直接受けませんけれども、県がそういうビジョンを描いてそういう振興をやっていくということになりますので、そういう点で県の対策というところでわれわれも支援をしていきたいというふうに考えております。
  107. 田口一男

    ○田口委員 最後に、大臣見えておりますから、この点だけお伺いして終わりたいと思うのです。いま私が万古の例を挙げましたけれども、新潟の刃物の問題にいたしましても、岐阜の関の刃物の問題にいたしましても、いろんな要因で原材料が上がってくる。人件費が上がる。その値上がり分をすべて製品に転嫁をすれば、これは売れない、買ってもらえない。といって円高ドル安というふうな問題の中でこれを外国に輸出しようと思っても、円高状況でこれまた困る。いまは特に産地企業の皆さんがそこのところで頭を悩ましておるわけですね。特に産地中小対策で、私は、法案の流れから見て、国際競争力をどうつけるかというところにこの法案のねらいというものが置かれておるような気もするわけです。輸出ばかりじゃありませんけれども。国際競争力をどう保持をしていくのか。もう輸出はだめだから国内でやろうと思ったって、逆な言い方をすると、産地中小対策法律によってどんどん国内に製品がかぶってくる。そうすると国内におけるダンピングですね。もう輸出はだめだ、国内へ持っていくと、向こうからもどんどんと同じものが出てくる、もう先行き真っ暗ですなと、この間も私が聞きに行ったら二、三の業者が言っておるわけです。それに対する妙案も特効薬もないと思うのですけれども、こういう中小企業に対して、特に産地中小企業に対して、日本を支える産業ですから、通産大臣としてはここにもつとウエートをかけた通産行政ということをこれからもやっていってもらいたい、やっていく必要があると私は思います。この法律案の審議を契機として、そこら辺の決意のほどをお聞かせをいただきまして、私は質問を終わりたいと思います。
  108. 江崎真澄

    江崎国務大臣 中小企業がだんだん苦しい場面に置かれておることは、私どももよく理解ができます。それだけに、今度の法律によりまして国民のニーズに合った、国民的関心の深い商品を創設したり、何か業種転換ができないものか、それを的確な情報提供をすることによって、一歩でも二歩でも前進をさせるようにしたいというのがこの法律制定の大きな意味だと思います。そして、政府としてできる限りの助成をしたり協力をしたり、税制面でも考えたりというわけであります。おかげで悪い悪いと言いながらわが国の中小企業はここまで来たわけです。この一月に、今度カナダで首相になりましたクラークという青年首相が日本中小企業を見に来たというのですね。日本中小企業対策というものがわが国においても高く評価されておる、活路を見出すために来たというようなことを言っておりました。わが国もそんなことを言われながらも、御指摘のように非常に悪い業種、業態のものもずいぶんたくさんあるわけですから、こういった法律によって前進ができるように、できる限り努力をしたいと思います。しかし、もともと中小企業そのものも自家営業ですから、やはり自己努力ということが中心になりませんと、安易についておったのではやはりぐあいが悪いと思います。ですから、こういう法律による政府側の行政的協力、またそれを受けて立つ側も大いに努力をして、国民的な要請にこたえていくということが理想的であろうかと思います。質問者としてのあなたの御意見、また御心配は十分私どもも理解できまするので、配慮をしながら対応をしてまいりたいと考えます。
  109. 野中英二

    ○野中委員長代理 宮田早苗君。
  110. 宮田早苗

    ○宮田委員 わが国の中小企業の経営環境は、景気全般の回復傾向を反映してかなりの改善が図られつつある、こう思います。しかし、この回復感は中小企業全般に行き渡れるものではないわけで、調整過程にございます構造不況業種や、これらの業種の立地するいわゆる特定不況地域、さらには昨年来の急激な円相場高騰影響をまともに受けている産地等々、非常に厳しい環境下に置かれております企業地域があることを忘れてはならないと思います。本法案提案されたゆえんもこのような中小企業を取り巻く経営実態にあるものと理解をしているわけでございます。  そこで、まず私は、長期にわたります不況対策として、これまでに立法化いたしました諸法あるいは政府の諸政策がどのような効果を上げてきているかを考えてみたいと思うわけです。いわゆる構造不況法、特定地域中小企業対策法、離職者法、転換法、円高法等の立法化があったわけでございますが、これら一連の中小企業施策が中小企業の構造や経営改善にどう寄与しているのか。全般的な分析をひとつお尋ねをしたい、こう思います。
  111. 左近友三郎

    左近政府委員 構造不況、それから円高というふうなものの次々起こりました中小企業にとって苦しい事態に対処いたしまして、構造不況法とか、あるいは特定不況地域対策法、あるいは円高法等々を実施いたしまして対応を図ってきたわけでございます。  たとえば円高法でまいりますと、円高緊急融資というのが対策中心になっておりますけれども、五十二年の十月以降緊急融資を実施いたしまして、本年の四月に至るまで、中小企業政府系三機関、中小企業金融公庫、国民金融公庫、それから商工中金の三機関におきます貸し出し額が大体四千百億程度になっておりまして、これはその時期にわりあい資金需要が少なかったものでございますから、この運転資金のうちで一〇%か二〇%にも及んでおるというふうなことでございまして、この円高緊急融資というのが、中小企業円高によって受けた打撃を緩和するのに相当役立ったのではないかというように考えておりますし、地域の調査をいたしますと、円高融資が役立ったという答えが相当得られておるわけでございます。  それから構造不況対策といたしましては、設備の共同廃棄というふうなことが進行いたしまして、これによって繊維等につきましてもある程度状況回復してくるということがございます。したがいまして、こういう情勢で、たとえば中小企業の鉱工業生産活動そのものも、鉱工業生産指数一つとってみましても、実は大企業についてはすでに過去のピークをオーバーしておるわけでございますけれども、中小企業につきましては、ここ数年過去のピークであります昭和四十九年の時点にはなかなか達しなかったのでございますけれども、大体現在の時点では四十九年の過去のピークに達したというようなことで、生産の回復もできてきております。  以上のようなことで、過去のいろいろな対策法の実施によりまして、ある程度不況からの脱出というのが出てきたという事実は認められるというふうに感ずるわけでございます。
  112. 宮田早苗

    ○宮田委員 特に産地の関係について、ちょっと関連して御質問するわけでございますが、一番関心を持って見ておりますのは、為替レートの問題について、どの程度になればという期待もあったのじゃないかと思うわけです。私どもよく耳にしておりますのは、今日のような二百二十円ですか、二百十円程度ならばまあまあというような産地が多いように見受けておるわけでございます。もちろん業種によってそれぞれ違うわけでございますが、産地という立場から大体どの程度が一番理想的にお考えであるか、その点、感じでよろしいですからお答え願いたいと思います。
  113. 左近友三郎

    左近政府委員 これにつきましては中小企業白書がことしアンケート調査をやっておりまして、その結果を御披露させていただきたいと思いますが、一昨年の末とそれから昨年の末という二つの時点で、昨年は調査の必要上十一月末ということになっておりますが、同じ中小企業者を対象にして調べたわけでございます。  そういたしますと、一昨年の末、つまりその年の中ごろから円が高くなり始めたという時点では、これは大体幾らが採算点でございますかというような問いかけをしたわけでございますが、そういたしますと、二百七十円でなければだめだとかあるいは二百円でもいけるとか、いろいろ答えが出たのですが、一番多かったのが二百四十円という数字がございました。ところが、昨年の十一月末現在でどうですかというふうに聞きましたら、それが二百円でいけるというところと二百二十円でいけるというところが一番多くて、その両方が大体同じくらいの数字でございました。これの意味するところは、一つは、二百四十円でいけるという時代は、実はその時期がレートが大体二百四十円であった時点でございます。したがいまして、一昨年の暮れあたりはその為替の変動に即応して何とかついていけたという状態だと思います。ところが昨年の十一月というのは、円が百八十円——百七十円に十月末に一たん落ちまして、若干戻したですが、円が百七、八十円という相当厳しい時代であったのですが、それにはついていけない。結局、まずいけそうだというのが二百円とか二百二十円という答えであったということでございます。しかし、一昨年末は二百四十円でいけると言ったのが一番多かったのが、二百二十円、二百円が多かったということで、コスト低減とかいろいろな努力をして、その間に適応する円高の数値をある程度高めることができたということは事実でございますが、それにしても、当時のレートではなかなかうまくいかなかったというのが実態であろうかと思います。したがいまして、これは業種により、そういうことで時期にもよるわけでございますが、いま百七、八十円というのを経過した後でございますから、中小企業も相当努力をいたしました結果でございますので、これを見ますと、昨年の末の二百二十円から二百円というようなところの数字よりはもうちょっといいと言いますか、二百円ぐらいのところから二百二十円のところにやはり中小企業の採算点があると見るのが一番妥当じゃないかというのが私の見方でございます。
  114. 宮田早苗

    ○宮田委員 一連の法案がつくられて、施策としていろいろ対策されておるわけでございますが、最近一番問題になっております雇用の問題について、労働省が所管でございますが、私が一番問題にしておりますのは、通産省の施策が雇用問題について直接関係を持っておりますだけにお聞きするわけですが、果たして一連のいま申されましたような施策を実施して雇用改善に役立ってきたというふうに思われるかどうか、お聞きしたいと思います。
  115. 左近友三郎

    左近政府委員 産地法におきましても、第八条に雇用面での対策の配慮規定をやっております。そしてまた、具体的にも労働省を中心雇用対策が進められてきておるわけでございますので、こういうものを今後労働省を中心に十分やっていただくということが必要かというふうに考えておりますけれども、何分労働問題というのはいろいろむずかしい問題もございます。したがいまして、われわれ自身もこの労働問題について十分促進するようにやらないとなかなかむずかしいというふうにわれわれ判断をしております。  そこで先ほども申し上げたのでございますけれども、やはり基本は企業の収益力が高まりまして賃金が十分出せるとか、あるいは労働条件が整備できるとかいうふうな状態が出てきませんと、労働対策というものの政策を進めていきましても、企業がそれに対応することが非常にむずかしいという事態もございます。したがいまして労働対策としてやっていただくと並行いたしまして、やはり中小企業振興対策というものを実施していく、そしてまたそれの対策の効果が上がったときにそういう経営の成果が労働者に均てんするように、われわれがいろいろ中小企業にも働きかけるということが一番大事かと思いますので、これまた今後われわれは十分努力していかなければならない課題であるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  116. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連してまた質問するわけでございますが、具体的な施策効果についてお尋ねをするわけであります。  さきに構造不況法に基づきます過剰設備の廃棄ということでいろいろ対策されたわけでございますが、その状況は一体どうなっておりますか、まずお聞きをいたします。
  117. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 先生御承知のとおり、昨年の七月四日に特定不況産業安定臨時措置法の対象として平電炉を指定いたしまして以降、ことしの四月十四日に段ボール原紙製造業の指定をいたしまして、まず十四業種でこの指定は終わっております。  それに引き続きまして安定基本計画の告示がなされておりますが、これも平電炉が昨年の八月二十八日に告示をされまして以降、今回の段ボール原紙製造、これは本日産業構造審議会の答申をいただくことになっておりますので、この御答申をいただければ六月上旬には指定をするということになってまいります。  そこでいまお尋ねの基本計画の中で最も重要な地位を占めております設備処理の関係でございますが、業種別にというお話でございますのでそれぞれに申し上げますと、平電炉につきましては二百八十五万トンの設備処理でございますが、この計画に対してことしの三月末までの処理済み量を申し上げますと二百二十一万トン、達成率が七七・五%でございます。  それからアルミ製錬業でございますが、これは五十三万トンの計画に対しまして、同じく五十四年三月末の時点でございますけれども、処理済み量四十八万五千トンでございます。達成率九一・五%でございます。  それから合繊でございますが、ナイロン長繊維につきましては七万一千五百トンの計画に対しまして六万九千八百三十五トン、九七・七%の達成率でございます。それからポリアクリロニトリル繊維、これは七万三千二百トンの計画に対しまして六万六千三百五十二トン、九〇・六%でございます。それからポリエステル長繊維でございますが、これは三万六千八百トンの計画に対しまして三万六千百八十八トン、九八・三%の達成率でございます。それからポリエステル短繊維でございますが、六万七千六百トンの計画に対しまして六万七千四百六十八トン、達成率が九九・八%でございまして、合繊についてはほとんど九〇%を超えておる、こういう実態でございます。  それから化学肥料でございますが、アンモニア製造業につきましては百十九万トンの計画でございますが、現在小名浜の日本化成等の合併問題とかいろいろございまして、実は残念ながらこれはいまのところまだ動いておりません。それから尿素でございます。これは百七十九万トンの計画でございます。これもそういったあおりを受けましてまだ一つも手がついていない、ゼロでございます。  それから燐酸製造業でございますが、これは十九万トンでございます。これに対して三万七千トンということで一九・五%の達成率。肥料は総じてまだ余り動いていないというのが実情でございます。  それから紡績業でございますが、綿紡績でございます。これは六万七千百トンに対しまして現在まだこれも動いておりません。これはもっとも指定がことしの四月に行われてございます。したがいまして、まだ始まったばかりということで動いておりません。  それから梳毛紡績でございます。これは一万八千三百トンの計画に対しまして三千二百六十トン、一七・八%の計画処理済みということで、紡績につきましては梳毛においてほぼ二割近くが動いたということでございます。  それから次のフェロシリコンの製造業でございますが、これは十万トンの計画に対しまして十万トンの処理は全部終わりました。一〇〇%終わっております。  それからダンボールの原紙製造業は、計画としましては恐らくきょう決定になるはずでございますが、あえて申しますと百十四万七千トンでございます。これについてはまだこれからのことでございます。  なお、私どもの所管外でございますが、造船業がございます。造船業は三百四十万トンの計画を持っておりますが、現在のところはまだ一つも動いていないというふうに聞いております。  以上、処理状況を申し上げました。
  118. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいまお聞きして感じますことは、合繊あたりは予定どおりの設備廃棄ということなのでございますが、肥料、造船、紡績あたりを見ますと、まだこれからということなのでございます。五十八年までに実施しようということなのでございますが、進展をしない理由というのが、もちろんまだ計画を出してないとか、いろいろ情勢がそぐわないという問題もございましょうけれども、どうも別にあるような気がするわけなのでございますが、その辺はどうお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
  119. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 これは各業種各様でございます。いま申し上げましたように、化学肥料と紡績業が余り進捗してないという結果でございます。それから造船業は私どもの所管ではございませんが、これは御承知のとおり、その前の、むしろ不況カルテルをこれからつくりたいというふうな要請もございまして、そういうようなベースが動いてこないと恐らくなかなか進んでこないのじゃないかというふうに想像しております。  それから紡績あるいは化学肥料、特に化学肥料は、先ほど申しましたように日本化成の小名浜というのがございまして、これがたしか、もう一つの相手方はちょっと忘れてしまいましたけれども、いま合併問題がございます。この辺がまだなかなか進展がうまくいっておりません。これは結局廃棄物処理設備の処理の仕方というのがいろいろ議論があるようでございまして、そのためにアンモニア、尿素ともにおくれておるというふうに私ども理解しております。  それから梳毛につきましては、恐らくこれは五十四年八月までということでございますので、現在の見通しから言いますと、ある程度これから進行するのではないだろうかと思っております。
  120. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣がおいでになりますから、ひとつ要望を兼ねて質問をさせていただくわけでございますが、平電炉の例をいろいろ考えてみますと、不況のときに何とかしなければならぬということでいろいろ対策をする。今度この構造不況法というのができてやっと設備廃棄というものが、これは長い間の不況で何とかしなければならぬというのが一致して、御指導と相まってこういうことになったと思いますが、問題は、今日の状態を考えてみますと、ちょっと景気が上がり目の状態にございますので、せっかく法律をつくってもらったけれども、また景気がよくなったからこのままにしておこうじゃないかという安易な状態が流れて、この次また妙な情勢になったときにまたこういう問題が起きる、繰り返し繰り返しというような傾向というものがずっと続いてきたのじゃないかと思っております。思い切って通産省がこの構造不況法案をつくられて対策をしようということでございまして、これについて非常に成果が上がった業種もあるわけでございますが、成果の上がらない業種については、痛い目に遭わぬうちに、いまが一番チャンスじゃないかと思っておりますので、そういう点について大臣の御指導というのが非常に大きいのじゃないかというふうに思っておるわけでございますので、そういう点についての所見をお伺いしたいと思います。
  121. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私も平電炉業界の実情というのは比較的よく知っておる方の一人だと思っております。確かにそういう雰囲気はありますが、そうかといって、やはり供給能力は十分ありますし、需給バランスは三月末に完了しました設備処理を解除するほどには好転していない。やはり現時点においては、昨年八月に告示された安定基本計画を修正する必要はないというコンセンサスが得られたわけであります。ということは、やはり潜在的には過剰設備を抱えておる、そして過去の累積赤字というものが相当たまっておる状況ですね。だんだんよくなった。確かに少しずつは利潤は上がるが、過去の赤字を解消するには至らないというようなわけであります。したがって、小棒などの需給動向を的確に把握しながら安定基本計画に基づきまして構造改善を進め、そうして経営基盤の確立を図っていくことは依然として必要である、こういう見解に立っておるわけであります。ちょっと暖かくなると、もう要らざるお世話というような雰囲気が出ておることも私は知っておりますが、やはり基盤は決して楽観を許さない情勢にあるという認識でございます。
  122. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣は平電炉だけをとらえておっしゃいましたけれども、決してそういう平電炉だけが対象じゃございませんから、全体の構造不況業種問題については、いままでもいろいろ努力をしていただいておりますが、さらに努力をしていただきたいということをお願いしておく次第です。  そこで、提案されております産地中小企業法案、高度成長から安定成長への移行過程に立法化されるわけでございますが、先ほど申しました種々の法律一つとして位置づけられると思うわけであります。しかし、本案が緊急を要した昨年の円高に伴う輸出の減退、あるいは競合商品の輸入増加といった国際経済の環境とはかなり様相を異にしてきたというのが今日の実情だと思うわけでございます。この点から考えますと、緊急避難的な立法というよりは、むしろ中長期的な産地中小企業振興策と理解をした方がわかりやすいのじゃないか。そこで、対策臨時措置法というよりも、産地中小企業振興法として、時限法でない方が適切だと思うわけでございますが、この点はどうですか。
  123. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のように、この法律を緊急措置法としてとらえないで、中長期的な対策法としてとらえるべきであるという御主張はまことにごもっともでございますし、私どもがこの法律を立案する考え方も、実は緊急措置については円高法その他で措置が済んでおりますので、その緊急事態を抜け出して今後の中小企業の発展を考えるときに、やはり中小企業経済状態に対する適応力を高めるための諸措置実施していくという、中長期対策とするという気持ちでこの法案をつくったわけでございます。しからば、それでなぜ限時法にしておるかということになるかと思いますけれども、実はそういう中長期的な対策を講ずるにいたしましても、世界の経済情勢は相当変転常ならずというのが最近の事情でございますので、そうのんびりもしていられないということでございます。したがいましてやはり一定の期間を区切りまして、その期間の中でそういう中期的な構造改善策を実施していくということが望ましいのではないかというように考えたわけでございます。したがいまして、この七年という時限は臨時的なというふうな気持ちじゃなくて、中小企業体質改善を七年の間に完了して、そうして変転常ないこの経済情勢に対して体質を強めて、いかなる事態にでも耐え抜くような中小企業産地にしていこうというつもりのあらわれでございます。
  124. 宮田早苗

    ○宮田委員 ちょっと逆戻りをするわけでございますが、さっきの円相場のことについてちょっとお問いしたわけでございますが、二百二十円という今日の相場について、妥当なところじゃないかというところがだんだんに多いように承っておるわけでございますが、輸出中小企業の国際競争の力をいまどういうふうにお考えになっておるか。この程度でもいいということなんですか。これより高くなった場合に果たして競争力があるものかどうか、こういう点についてちょっとお尋ねをいたします。
  125. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほどお答えした趣旨は、要するに現在の為替レート二百十円から二百二十円という数字は、過去の円高の洗礼をくぐり抜けた日本中小企業といたしましては、これは業種によっても違いますが、総じて言えば二百十円から二百二十円というのは、現在何とかやっていけるレートではないかということを申し上げたわけでございますが、しかしながら、この為替相場というものは、現在の国際的に合意されております変動相場の形というものはなかなか端倪すべからざる動きをするものでございますので、われわれがそれが望ましいからといって、それに維持するわけにもいかないということでございます。したがいまして、われわれとしては、現在の時点は幸いにも何とかやれる状態ではございますけれども、将来どのようになってもやはり産地中小企業として生き抜けるような体制にしていかなければいけないということでございますので、コストの低減あるいは新製品開発等々によりまして、むしろ円相場が高くなったときにもドル価格を高くして対応できるような、つまりほかの産地がまねのできないような製品をつくっていくというふうな体制をこの際つくっておくということにいたしますれば、円相場が多少乱高下いたしましてもそれに耐え抜けるであろうということを考えておるわけでございますので、この法案のねらいは、円相場が多少変動しても、それに対応できるような姿に持っていこうということでございます。したがいまして、現在の時点は幸いにもまずまず何とかやっている事態ではないか。これは先ほど申しましたように、繰り返し申し上げますが、業種によって違いますが、総じて言えばそうではないかということを申し上げたわけでございます。
  126. 宮田早苗

    ○宮田委員 本法の中身を吟味してみますと、金融税制等でこれまでにない優遇措置が盛り込まれているわけでございますが、従来の中小企業施策を一、二例挙げますと、中小企業近代化促進法繊維工業構造改善臨時措置法、これらとの関連はどうなるのか、この点をお聞きをいたします。
  127. 左近友三郎

    左近政府委員 近代化促進法につきましては、むしろこの法律近代化促進法のいわば特例法というような形で考えております。したがいまして、優遇措置等近代化促進法よりも優遇度が高いということになっております。  それから繊維構造改善法につきましては、いわば業種的な立法でございまして、この法律と併存し得るということに考えております。したがいまして、実際の実行に当たりましては、繊維構造法での優遇措置とこの法律の優遇措置は並立し得るということでございます。  それから近促法とこの法律との関係では、これはむしろ特別法でございますので、こちらの方が有利になっておりますから、これの適用を受けた方が有利ということになりますが、これも観念的には近促法の適用を排除しているわけではないという結果になっております。ただ、実際的に言いますと、産地法の適用を受けた方が有利なものが多いということでございます。繊維法律は、繰り返しでございますが、これは繊維法律の優遇措置を受けるものと、これの優遇措置を受けるものと、並行してやっていって差し支えないというふうに考えているわけでございます。
  128. 宮田早苗

    ○宮田委員 さっきもおっしゃったように、この法律案は七年の時限立法ということになっておるわけでございますが、まず主務大臣によります特定業種地域指定ということなんでございまして、その後の振興計画の提出、そして承認事業合理化計画の提出、それと承認、そして最終的には新製品の実用化や事業転換となるわけでございますが、すでにございます、さっき言いました近促法に基づく構造改善や、事業転換法等の法の運用から見て、七年ということになりますと中途半端のように思うわけでございますが、もう一度その七年ということについてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  129. 左近友三郎

    左近政府委員 本法におきまして七年という有効期限を付しました理由でございますが、大体業種及び地域指定につきましては、二年の間に順次準備の整ったところから実施していきたい。初年度は、法律を制定していただきまして施行するのが年度の大分進行した中になりますので、大体九十産地、二年度は相当拡大してやっていきたいというようなことでございますが、指定を受けまして、諸般の準備を整えて効果があらわれるのが大体五年間というふうにわれわれは考えておるわけでございます。したがいまして、この指定が完了するまでに二年、それから最後に指定したものが効果を上げるのにその後五年間ということで、七年ということにしたわけでございます。
  130. 宮田早苗

    ○宮田委員 前者の答弁のときにちょっとお聞きして感じたことなんでございますが、まずこの法律ができますと、地域指定約九十地域ということなんでございます。その中で要件が整っておる業種ということでお考えのようでございますが、この要件が整っておるということは、法律に決められております計画承認ということでなしに、やはり今日の実態から情勢が著しく変化ということが要件というように私は聞いたわけです。その点はどうですか。
  131. 左近友三郎

    左近政府委員 法律上の指定要件は、円高その他の理由によりまして経済情勢変化が著しくて、それが産地中小企業に悪影響を及ぼしておる、あるいは悪影響を及ぼすおそれがある、こういうことでございます。しかしながら、具体的に指定をする場合には、必ずしもそういう事態にあるものを全部指定をするというつもりではございませんで、そういうものの中で調査その他が整っておりまして、指定を受ければ直ちに振興計画等々ができそうなものをまず最初に指定をしていく、そして準備の整ったものからそれを指定していくということでございます。したがって、指定の可能性は法律である程度の広がりがございますが、そのうちで自主的にその後のいろいろな手続がやれる可能性のあるものから指定していくということでございます。したがって、二年間をとりますと、この法律指定基準に達したものはほとんどは各産地も準備をされますから指定されてしまうということでございますが、時間的な先後の順序で言いますと、最初はその後の手続の準備が整ったところから指定をしていくということでございます。
  132. 宮田早苗

    ○宮田委員 そうすると、約九十地域というものが要件が整ったということなんですが、あと手続問題でさらに要件を満たさなければならぬということになりますと、いま考えておられます指定地域全部がこの対象になるということではないわけですね。極端に言いますと、五十地域程度になり得る可能性も要件次第では出てくるという解釈でよろしいですね。
  133. 左近友三郎

    左近政府委員 われわれが考えますと、法律要件に適合する地域というのは、実は九十よりもむしろ現時点で考えれば多いだろうと思います。したがって、その中で準備の整ったところから逐次指定をしていき、もし九十より著しく超える場合には、その最後の部分は来年に回ってもらうというふうに考えております。ですから、御質問のように、準備が少しおくれまして九十を欠けるということもあり得るかと思いますが、われわれとしては、せっかく予算でも九十の枠がございますものですから、これはよく地方にも協力をいたしまして、九十には達するようにいたしたいというように考えておりますが、純粋に理屈から考えれば、九十よりも少なくて終わることもあり得ることはあり得るということでございます。
  134. 宮田早苗

    ○宮田委員 産地振興は、言うまでもなくそれぞれ地域経済の大きなウエートを占めておる中小企業の新しい時代への対応策を立てることにあるわけである、こう思います。ここで留意しておかなくてはならないのは、産地中小企業と発展途上国との調整だ、こう思うのです。さきの中小企業白書でも、長期的対応策として国際分業、海外投資の実態等が報告されているのでございますが、本法の制定を機会に、国際化時代への政策をどう展開されていくおつもりか、この点をお伺いいたします。
  135. 左近友三郎

    左近政府委員 国際化時代ということでございますし、最近の情勢は発展途上国の工業化というのも相当促進をしております。したがいまして、たとえばこの繊維、雑貨の分野では、円高によりまして輸入品も増加しておるというような実態もございます。したがいまして、それに対応する対策というのが必要であるということで、これはそういう対応する形として産地対策も大いに考えざるを得ないということでございますが、具体的にはこの繊維なんかの実例を見ましても、やはり、たとえばアメリカ市場で発展途上国と競争した場合にこちらがいわば勝てるものは、やはり発展途上国ではまねのできない製品というものが伸びておるわけでございます。昨年の状態でも、たとえば福井県のジョーゼットなどは、日本の周辺の発展途上国ではそれをつくる織機その他が不足しておりまして、アメリカ市場にはそういうものを出せないという事情がございましたものですから、日本のジョーゼットはアメリカに売れまして、円高になりましてドル価格を上げても売れたというような実例もございます。したがいまして、日本産地が生き抜くためには、やはり他の産地あるいは他の国がまねのできない製品をつくる、いわゆる非価格競争力をつける。つまり価格競争じゃなく、品質で勝負するということがこれから必要になってまいると思いますので、産地対策中心はそういうことになってまいると思いますが、そのことが結果としてやはり国際分業というものを促進する形にもなろうかと思います。したがいまして、われわれといたしましては、新製品開発、新技術開発というものがそういう形で成果を上げることを期待しておるわけでございます。
  136. 宮田早苗

    ○宮田委員 この法案の第八条において雇用の安定がうたわれておるわけでございますが、これまでと異なった対策を特にお持ちなんでございますか。
  137. 左近友三郎

    左近政府委員 産地につきまして、中小企業雇用問題というのは相当重要であるという認識に立ちましてこの条文ができておるわけでございますが、具体的にはこれは労働省がやっていただく政策でございますが、これについていろいろわれわれとしてもお願いをして、この産地法の適用業種については優先的にやっていただく、こういう趣旨でございます。具体的に申しますと、雇用保険法に基づきます景気変動等雇用調整事業というのがございます。あるいは事業転換雇用調整事業というものもございますが、こういうものを実施するに当たりまして対象業種指定することになっておりますが、本法の指定業種については、特に配慮してこれに入れてもらうというようなことをお願いをしたいと思っております。  それから、不幸にして産地中小企業から失業者が発生した場合につきましては、当該失業者に対して職業訓練制度を活用して、職業訓練の機会を確保していただくとか、あるいは公共職業安定所による就職のあっせんをしていただくということになるわけでございますが、これもこういう地域については特段の配慮をしていただくようにあらかじめお願いをしておくということを考えております。  さらに、例の失業給付の個別延長というようなものもございます。これも対象業種が決められることになっておりますが、これについても本法の指定業種について特に配慮していただくように、労働省に要請をするというようなことも考えております。  現在労働省でやっておられますこういうふうな対策について、本法の対象業種が優先して適用されるように、いろいろ労働省にお願いをして働きかけていきたいというように考えているわけでございます。
  138. 宮田早苗

    ○宮田委員 何しろ雇用安定のもとになることでございますだけに、この法律をよく見てみますと、まず振興計画を出す、それでそれを承認する、その次に合理化計画を出す、その合理化計画が条件を満たすということになると承認される。問題はこの合理化計画について、雇用確保ということより雇用創出ということに逆行する合理化計画というものが往々にして出されるという懸念もあるわけでございますけれども、これは労働省も中心になって考えていかなければなりませんが、何しろ通産省がこれをおつくりになるわけでございますので、その点について警戒をしながら私ども答弁をお聞きするわけでございますが、その辺はどうですか。
  139. 左近友三郎

    左近政府委員 指定を受けました事業をやります中小企業事業合理化計画をつくるわけでございますが、その場合に、雇用を十分配慮するようにという御指摘でございます。これはもっともでございまして、われわれといたしましても、都道府県知事承認するに当たっての承認基準という一般的な心得を府県にも指示しようかと思っておりますが、そのときにやはりそういう雇用の問題についても十分配慮するように、つまり単なる労働者の切り捨てというようなことにならないような基準を設けたいと思っております。実は、最近、合理化と申しますと何か雇用調整というふうなことになっておりますので、そういう意味でこの合理化計画というのは、ちょっと見ますとそういうことがあるんじゃないかという御心配が出てくるということは確かに事実でございますが、この合理化計画というのはむしろ近代化というふうなものを中心にしておりまして、雇用調整というよりは、むしろ先ほども申しましたように雇用条件もよくなるような、企業自身の経営をよくする計画という、本来の意味合理化計画をねらっておりますので、安易な雇用調整というものを許すということはわれわれもいたしたくないというふうに考えておりますので、基準その他についても十分注意をいたしたいと思います。
  140. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、大臣おいでになりますので、ただいまの雇用安定の問題について、特に中小企業の経営の方々、どこという意味じゃございませんけれども、合理化と言えば安易に労働者、そこに使用しております人というものが対象になりがちなものでございますから、こういう問題については、いま長官おっしゃいましたような考え方で極力御指導をしていただかないと、逆に非常に大きな問題であります雇用問題に悪い影響を来すということも、運用次第によっては起こり得る可能性もあるわけでございますから、こういう点については特段の御配慮を大臣としてやっていただきますようにお願いをいたしまして、終わらしていただきます。
  141. 野中英二

    ○野中委員長代理 後藤茂君。
  142. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣にまず最初にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、この法案を読んでみますと、産地中小企業振興法という性格を持っていると思うのですね。ところが、法律の名称は産地中小企業対策臨時措置法、しかも七年で一応終わるという法律になっている。この中身と題名、それから通産省として産地中小企業にどういう展望を持って指導し、助成をし、振興をさしていこうとしているのか、これが私はどうももう一つ理解できませんので、最初にひとつ大臣から、この臨時措置法がどうしても必要な背景というものにつきましてお伺いをしたい。私の質問の趣旨というのは、つまり臨時的な措置ではなしに、産地中小企業振興策というものを考えていかなければならない必要性を持っているのではないか。にもかかわらず、これが七年の時限立法になっているし、臨時的措置になってきている。このことについて簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  143. 江崎真澄

    江崎国務大臣 わが国の場合は、特定地域に同じような中小企業が集まっておるという傾向があることは御存じのとおりであります。     〔野中委員長代理退席、渡部(恒)委員長代理着席〕 これが輸出減少であるとかあるいは国民的な要請にこたえられないというようなことで転換を余儀なくされる、これは産地ぐるみの大変な影響でありまして、事業活動支障を生じておる現実は御承知のとおりであります。  そこで、この特定産地中小企業をどういうふうに転換させていくのか、あるいは国民ニーズに合うような新しい製品を創出させるためにどういう協力が行政的にできるのか、これなどを考えながら、こういった法律を制定したわけでございます。  これは先ほどからお答えいたしておりまするように、二年間で指定を行おう、そして五年間で実施に移していこう。これはもともと中小企業というものも自助努力中心になると私は思うのです。こういうことを永久的にやるということになれば、ばらつきが起こりまして思うような成果が上がりません。やはり時限立法にして極力成果の上がるように、それぞれ足並みをそろえて計画をし、また新しい販路を開拓したり新製品をつくり上げる、そういう努力をしなければならぬと思うのですね。  私は、余談でありますが、中小企業の関係者に、地方議員みたいなもので、当選の妙諦いかんなんて言われたって、それはなかなか一口に言い切れるものではない。やはり自分がまず努力をし、その住民のニーズに合ったように行動することが当選の要諦であるというなら、やはり中小企業の生きていく道もそういうことでなければならぬ。しかしそこに党の協力があったりあるいは各種団体の協力があるというように、政府は協力をしようということだ。これは例として必ずしも当たるかどうかは存じませんが、やはりまずみずからが努力をする、それはある程度時限があることによって効果的であるというふうに考えます。
  144. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣の選挙哲学を聞かしていただいたわけですけれども、私も同じ意見なんです。つまり法律でおんぶにだっこしなくても、自助努力でやるべきではないだろうか、こういうように基本的には考えるわけです。  そういたしますと、この法律をどうしても出してこなければならない理由というものが減殺されてくるのではないか。つまりいろいろな法律があって、私もこの法律について質問をするのに調べてみますと、こんがらかるほど円高法から近代化促進法から事業転換法からあるいはまたそれぞれの中小企業関係の法律があるわけです。どれとどれが重複をしており、どれとどれは重複していない、だからこれが必要だということがもう一つ理解ができなかったものですから、そこで大臣にお伺いいたしました。基本的には私も全く賛成です。といたしますと、ここで今度の新しい法律で何が一つのねらいであり、効果を期待しているのかということがまたわかりにくくなってくる。五十三年度の中小企業の年次報告、この白書を読んでみますと、これらの問題に対して政府都道府県はさまざまな施策を行っているというくだりがあるわけなんです。そのさまざまな施策を行っている中に、産地においても産地組合等中心として種々の対策をとっている、その内容を見ると、高級品、新製品開発を挙げる産地が最も多く七一%、それから次いで新規市場の開拓五六%、合理化等製造コストの引き上げ五五%の順になっておる。つまりこれまでの中小企業庁なり通産省の政策の中で、こういった面については大変熱心な指導なり助成なりが行われてきておったのではないか。これに新しくこの法律をつくっていかなければならない理由、これをひとつお答えをいただきたいわけです。
  145. 左近友三郎

    左近政府委員 御案内のとおり、中小企業不況、しかもそれは円高とか構造不況というようなもので、ここ数年間大変苦境にあったわけでございます。それに対しまして緊急措置といたしまして、円高法とか特定不況地域対策法というようなもので対処したわけでございます。しかしこれはあくまでも緊急対策でございまして、その対策内容は緊急融資というのが中心になっておりますが、この緊急融資の内容も、六年間の運転資金を貸し付けて当座の急をしのぐという対策でございます。それは、その時点では、たとえば倒産の危機を救うということで非常に効果があるわけでございますが、六年たったら返さなければいけないという、問題を後に残しておるわけでございます。したがいまして、そういう問題を抱えた中小企業を本格的に強くするためには、実は従来の緊急対策では済まないというのが一つ考え方でございます。そして、それを脱却するためにどうするかということでございますが、いま大臣がおっしゃったように、やはり自助努力に待たなければいけない。そうすると、その自助努力というのはあるかということでございますが、これが先ほどの白書の内容でございまして、実は昨年以来、産地におきましては、円高に対してただ困った困ったと言うだけではいけない、何かこの危機を脱却する方法がないかということで、いろいろの研究がなされて、その動きがそこに出ておりまして、その内容がまさに新技術開発とか新製品開発というわけでございます。それは、つまり現にやっているということではなくて、これからそういうものをやっていきたいという意欲が出てきておるわけでございます。したがって、その意欲を盛り立てて、いまのように傷を抱いている中小企業を本当にしっかりしたものにしていくためには、この法律によりまして、産地ごとに具体的な新製品開発、新技術開発の力をつけていくというのが最も必要じゃないかというのがいまの考えでございます。したがいまして、いまの御指摘のような諸条件を集約して、産地ごとの自主性のもとに発展させていくというねらいを本法が持っておるというふうに御理解願えたらと思うわけでございます。
  146. 後藤茂

    ○後藤委員 そういたしますと、その中身ですけれども、たとえば課税の特例だとかあるいは信用補完制度の特例とかということが出てくるわけですけれども、たとえば課税の特例等は税法の改正でカバーできるではないかと思うのですね。その中にもし書くとすれば、通産大臣が認定したものにかかるものというような一つの枠規定をつければ済むのじゃないだろうかというように、新しい法律をここで考えていかなければならないその中身は薄いというように思えるわけです。一体どこに今度の目玉といいますか、大きな効果が期待できるような、つまり中身というものはどこにあるのか。これは長官の方からお答えをいただきたい。
  147. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおり、そういう個々の助成内容につきましては、確かにそれぞれの分野で、租税については租税特別措置法、信用保険の特例については信用保険の方で措置をするというやり方もございます。純法律的にはそういうことになるかと思いますが、私どもがこの法律をつくるに当たって、やはり一番この法律が必要だと考え、この法律の御審議をお願いをしておるゆえんのものは、やはりこの時代に各産地産地が自主的に振興計画をつくって、それで将来の発展の体制をつくるというその全体のシステムをこの法律によってつくり上げていく。そして、その中で産地企業の方々の自助努力と、それから地方公共団体の援助と、それから国の援助、それからその中間にございます組合のいろいろな事業というものをうまく位置づけて、そうしてこの中小企業振興というものを、産地中小企業振興という観点から推し進めていく一つの体制づくりをこの法律でやってまいりたいということで考えておりますので、そういう意味において個々の、何といいますか、助成法律事項だけを考えれば、単なるそのものの改正で事足りるということでございますけれども、その時点で中小企業振興策を考える上においては、やはりこういう法律があった方がいいのではないかというふうに考えたわけでございます。
  148. 後藤茂

    ○後藤委員 中小企業近代化促進法があるわけですね。いまのいろいろな助成等については、その中小企業近代化促進法の改正なり内容の拡充なりということで済むのではないかと思うわけですけれども、どうもしつこく聞いて恐縮ですが、この法律の必要性の中でもう一つ、いままである法律を改正強化することを超えて新しい法律をつくるということについてお伺いをしたい、これが一点。  それからもう一つは、後でまた中身について聞いてみたいと思うのですけれども、本法の中での補助だとかあるいは助成とか、これは、対象は当面九十とかあるいは三百とかというようにいろいろ言われているわけですけれども、じゃあこれに乗れない場合は一体どういうようになっていくのだろうかということも二番目の問題としてお聞きをしてみたいわけですが、いかがでしょうか。
  149. 左近友三郎

    左近政府委員 本法と近促法の関係でございますが、考え方としては、近促法が一般法といたしますと、この産地がその特別法というふうな形になるかと考えているわけでございますが、要するに、近促法では一般的に近代化の必要な業種指定いたしまして、政府計画をつくり、それによってやっていくということで、産地を形成しておるものも単独のものもあわせて、その業種については近代化を促進するということでございます。ところが、産地法については、最近の実情にかんがみて、産地単位、組合単位に近代化を進めていくということを重点にしておるということでございますが、その産地単位に進めるということは、やはり現在のような、中小企業が非常に困っておる段階を脱却するためには、やはりどこかいわば拠点を設けて、だんだんその拠点から改善をしていくという方が効果があるのではなかろうかということで、その拠点を産地に求めたということでございまして、産地だけをやるわけではございませんで、そのほかの中小企業対策も並行して進めるわけでございますが、現在のように、不況から抜け出して今後の中小企業振興を図るときには、まずその第一の拠点として産地振興から進めていきたいということから、産地法というものを出してきたわけでございます。したがいまして、その形といたしましては、近促法よりは、たとえば組合に対する補助というような条項がつけ加わっておるとか、それから融資事業についての条件がよくなっておるというようなことがございます。  そういうことでございますが、第二の御質問のように、それではこの産地法の適用にならないものはどうするかということでございますけれども、つまり、そういう業種産地を形成していない中小企業でも、その業種が近代化を促進する必要があると認められるものにつきましては、もちろん近促法の適用もございますし、そのほか中小企業対策としてはいろいろな施策がございますから、そういう施策を講じながらその振興を図っていくということでございますが、この今回の産地法では、つまり産地を形成しておる中小企業というものが円高等において非常に被害を受けたという事実も踏まえまして、そういう産地の方から対策を進めていくということでございますので、いわば施策の順序として、まず産地から入っていくということでこの法律が出てきたということを御了承願いたいというふうに思います。
  150. 後藤茂

    ○後藤委員 そういたしますと、その産地の数はどのぐらいあるのでしょうか。
  151. 左近友三郎

    左近政府委員 産地と申しましても、結局同一の業種中小企業がある程度の集積をしておる地域ということになるわけでございますが、これもどの程度のものから産地というかという定義の仕方もいろいろございますが、定義の仕方によって二百なりあるいは三百ぐらいになろうというふうに思います。中小企業白書では三百をちょっと超えるぐらいのものを調査をして報告を出しております。したがいまして、大体二、三百というところが産地としてこの法律の対象になるところではなかろうかと考えております。
  152. 後藤茂

    ○後藤委員 これは朝日の三月十日の記事ですけれども、これを見ますと、「わが国には繊維や陶磁器、金属製品など特定業種中小企業が集中している産地が約千カ所もある。」というふうに書かれているわけですね。この中で、うち輸出関連の約三百産地というところが円高等で困っているというような記事が出ているわけですけれども、これは、いまの長官の御答弁だと、二百ないし三百というように言っておられますけれども、こちらの方の記事が間違っているんでしょうか。それともいま長官産地産地とおっしゃいましたけれども、産地の中での輸出関連、つまり円高為替相場に影響されるところの産地特定しているんだ、こういうように理解してよろしいでしょうか。
  153. 左近友三郎

    左近政府委員 いま申し上げましたように、産地の定義は、たとえばその産地の出荷額を五億円にするか十億円にするかというような定義の仕方によっても変わってまいります。それから御指摘のように、産地ではあるが、現在の円高等で困っていないものは除外するというような考え方もございますが、千というのはわれわれの方では考えておりませんで、どう勘定してもちょっと多過ぎるのではないかというような感じでございます。私の方は、千ということを考えたり申したことはございません。  ただ、一つ思い当たりますのは、たとえば繊維産地などの勘定の仕方で、これは本当の例でございますが、石川県とか北陸の各県は、わりあい一つの県の中で幾つも産地がございます。それを細かく産地として勘定するか、あるいは石川県一円なら石川県一円、福井県一円なら福井県一円ということで一つと勘定するということになると、また数が変わってまいります。われわれといたしましては、余り細かく細分しないで対策を考えたいというような趣旨もございます。したがいまして、われわれ流に考えますと、どうも千というのはやや多過ぎるのではないかという感じでございます。
  154. 後藤茂

    ○後藤委員 恐らくこの記事は通産省の方でレクチュアした記事が出ているので、記者の独自判断で書いているんじゃないと思うのですけれども、そうしますと、この白書で言っておる、年間生産額五億円以上のものを取り上げても全国で約三百四十カ所ということがつまり産地と考えてよろしいわけですね。つまり円高による影響を受けるところということではなくて、出荷額で押さえるわけですか。
  155. 左近友三郎

    左近政府委員 白書で言っているのはお説のとおりでございます。出荷額で言っているわけでございます。したがいまして、その中でこの法案の対象になるものは、要件がございますから、またそれよりも少なくなるということでございます。
  156. 後藤茂

    ○後藤委員 その要件で、特定業種三つばかり出しておりますけれども、押さえていく一番大きな要件というのはやはり円相場高騰ということでしょうか。特に五十四年度九十ばかり考えているというのは、これはほとんどすべて円相場高騰影響するところと読んでよろしいでしょうか。
  157. 左近友三郎

    左近政府委員 この要件は、御指摘のように法律第二条の二項で三つ挙がっております。その第一は、中小企業性業種であるとと、第二は、産地を形成しておることということでございますが、やはり一番きいてくるのは御指摘のとおり第三号でございまして、「輸出円相場高騰により減少することその他の経済的事情の著しい変化によって生ずる事態であって政令で定めるものに起因して、」「事業活動支障を生じ、又は生ずるおそれがある」ということでございます。この場合に、円高によりまして輸出減少するというのが例示で挙がっておりますが、われわれとしては輸出減少だけではなくて、円高によって輸入が増加をいたしまして、そしてその業種製品の出荷が減少したというふうなものも入れたいと思っております。しかし円高での影響ということでございますと輸出、輸入両面ではございますが、今年度はその範囲で考えたいと思っております。しかし来年度またいろいろ経済事情変化というものが、大きいものが出てまいりますれば、それを追加していくということはやぶさかではないというふうに考えております。
  158. 後藤茂

    ○後藤委員 そうしますと、「その他の経済的事情の著しい変化」というのは、今年度はまず押さえるわけにはどうもいきそうにないと理解してよしいでしょうか。
  159. 左近友三郎

    左近政府委員 現在そのように考えております。
  160. 後藤茂

    ○後藤委員 実は私は一番冒頭に大臣にも御質問申し上げましたけれども、どうもやっぱり後ろ向きの法律案のように思えてならないのですね。どうも円相場高騰あるいは輸入の急増によってその影響を著しく受ける産地ということだけが頭に描かれておりまして、私、先ほど白書でも触れている点を読み上げてみたわけですけれども、産地の人々がいま一番考えておりますのは、もちろんカンフル的な対策というものが大変必要だということは私も理解できる。それについてはこれまでもそれぞれの緊急措置が講じられているわけですね。これからこの産地中小企業対策、こういう大上段にかぶっていくとすれば、私は単に円相場高騰なり輸入の急増ということではなくて、一体産地をどのようにこれから育成し、あるいは振興さしていくかということがまず一番大きな目的になっていかなければならないと思うんですね。ところが、こういう第二項の三に挙げております「円相場高騰」だけに、しかも長官も今回はそれだけで押さえざるを得ないということになってまいりますと、私は、いま構造的な産地振興法をその地域地域においては求めているんじゃないかと思うのに対して、これは十分にこたえていないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  161. 左近友三郎

    左近政府委員 この三号の基準は、原因がいまのように円高ということでございますが、実態はその原因によって現に事業活動支障を生じておる、あるいは生ずるおそれがある、つまり非常に困っておるとか、困るおそれがあるというところに重点があるわけでございます。やはりとりあえず実施するのは、これは困っておるところということでございます。そしてその原因として、やはり日本経済で普遍的な事象として起こりましたのが円高でございますので、全国の中小企業の中でこういう事態に追い込まれたものの相当部分というか、大部分はやはり円高によってこういうことになったわけでございます。したがって、当面一番緊急に必要とされるところをまずやっていくというのがわれわれの考え方でございます。しかしながら、非常に例外的に、円高影響がなくてしかも困っておるというものがないとは言い切れません。これはわれわれもよく調査をいたしまして、それに適合するような原因というものがございますればこれは指定していきたいということでございます。  それからまた、円高による影響というものについてもわれわれとしては極力弾力的に理解をして、単に直接輸出減少するとかいうふうなことではなくて、間接輸出というような点も十分考慮をいたしますし、そういうことにいたしますと、実はわれわれが客観的に見て対策が必要だなと思われる産地は大体入ってしまうというのが事実でございます。
  162. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣、私はこう考えるのです。確かに円相場、為替相場の変動によって緊急にやっていかなければならぬということも産地対策としては大切だと思うんですけれども、私たちがこれから考えていかなければならないのは、そのことよりも、むしろぴんぴんして元気な産地であっても、いまよく使われております不確実性の時代と言われる中で、やはり将来展望が実は確信を持てないのですね。だから、むしろ日本の長い歴史と伝統の中で地域経済に大きな影響力を持ってきた、あるいはその地域における雇用の面でも大切な役割りを果たしてきた、いま円相場の変動によって影響は受けてない、しかし、これからの経済の大きな激動の中でどういうようになっていくのだろうかということについて、見通しをはっきり持っていないというところがいっぱいあるわけです。そういう元気なところ、現在はいま長官が御答弁になったような問題はない、しかし中長期を考えてみますとしっかりとした展望を持ち得ないというところもあるわけです。こういうところはこの法律からは、つまり欠けているわけでしょう。現在は元気であるが、しかもその地域においては地域産業の中で非常に大きな影響力を持っておる、ぜひ振興させていきたいというようなことを考えなければならない産地もあるわけです。これは一体この法律とどういうかかわり合いを持つのか、全くかかわり合いは持たないのか。
  163. 左近友三郎

    左近政府委員 確かに御指摘のとおり、元気であるからといって安心はできないというのが現在の時代の特徴でもあろうかと思います。ただ、国が補助金を出し、特別融資を出し、手厚い対策を講ずるということにつきましては、やはり現実に困っているところから実施していくというのが公平の原則からいって適当ではないかということで、この対策が組み立てられているわけでございます。しかしながら、元気なものについて何もやらぬでいいかということになりますと、御指摘のとおりそれではいけないというふうに考えておりまして、実は今年度からこういう組合に対しまして活路開拓調査事業という、これは調査費でございますが、こういうものを補助として出しております。これは組合単位で、その地域が将来の変動する事態に応じて、活路を開拓するためにどうやったらいいかということを勉強するための経費を出しているわけでございます。したがいまして、現在好調なところは、そういうところで大いに勉強していただくということにしていただきたいと思います。そして、もしそういうことで事態が変動してまいりまして、そういうところが、この法律も悪くなるおそれがあるというのが出ておりますから、おそれというものが出てまいりました暁においては、時を失せず政令でそういう事態指定して、この対策に加えていくということにいたしたいと思っておりますので、決してそういうものをなおざりにしておるわけではないというととを申し上げたいと思います。
  164. 後藤茂

    ○後藤委員 それに関連をいたしまして、振興計画は商工組合がつくるわけですね。先ほどから何回も出ておりますが、自助努力によってつくっていくんだ、こういうことですから、当然振興計画というものはその商工組合がつくっていくわけでしょうか、長官
  165. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおり、法律振興計画というのはその地域の商工組合なり、これは協同組合でもよろしゅうございますが、要するに組合がつくっていくわけでございます。
  166. 後藤茂

    ○後藤委員 そういたしますと、その振興計画が申請された場合に、都道府県知事承認をしていくわけですが、この法律を見ますと、「新たな経済的環境に円滑に適応するために有効かつ適切なものであることその他の政令で定める基準に該当する」ということになるわけですね。つまり、都道府県知事は、その振興計画というものが新たな経済的環境適応できるということの判断をすべき一つの答案用紙といいますか、こういうものを持っていなければ、その振興計画が新たな経済的環境適応するのかどうかというのはわかりませんから、都道府県知事というものはそういうものをちゃんと持っておって、商工組合から振興計画ができてきた、うんいい、りっぱな答弁が出てきた、それでやりなさい、あるいはこれはずさんである、もう一回練り直していらっしゃい、こういうことになるのでしょうか。
  167. 左近友三郎

    左近政府委員 都道府県の方で、その産地に対するどうやったらいいかというビジョンが必要なことは申すまでもありません。実はそういう点で、法律には出ておりませんが、われわれ補助事業といたしまして、都道府県産地振興ビジョンを作成するに当たっての経費に対する補助も計上いたしております。つまり、こういう産地振興対策事業を行うに当たっては、当然府県がこういう承認もいたす必要がございますので、ビジョンを行政的な仕事としてつくるということを前提に置いてやっておりますので、これは法律を制定していただきますれば早急に各都道府県に補助金を出しまして、振興ビジョンをつくってもらうということでございます。その振興ビジョン作成の過程に当たりましては、学識経験者の意見を十分聞くということもございますし、また中小企業庁もそれに参画をさしていただくということになっておりますので、中小企業庁なり政府の意思もそこに、地域ごとに生きてくると思いますので、実際に承認をする場合には、そういう一つ基準があらかじめできておるということに相なるかと思います。
  168. 後藤茂

    ○後藤委員 そこのところだけ重ねてお聞きしておきたいのでありますけれども、そういたしますと、商工組合振興計画をつくる、この法律では計画ができた後の指導ということにどうも読めるようなんですけれども、その振興計画をつくる中に、新たな経済的環境というものを十分に見通して、中長期にわたって一つのビジョンを考えて、単に行政庁だけではなくて、学者なりあるいはその地域の歴史と環境を一番よく知っております地方自治体等々の意見を聞くということも、計画作成の過程の前段ではまず十分にやっていけるというように理解してよろしいでしょうか。
  169. 左近友三郎

    左近政府委員 いま申しましたように、府県においても振興ビジョンをつくる経費の補助をして、府県でやってもらうということを考えておりますとともに、組合につきましても、業種指定をいたしますと大体地域がはっきりいたします。そうしますとその地域組合に対しまして、そういう振興計画をつくるに当たって学識経験者を集めて議論をするとかで、いろいろな経費も要りますが、その経費も実は産地振興対策の中に含まれております。したがいまして組合といたしましては、計画をつくってから援助を受けるのじゃなくて、計画をつくる段階でも国なり府県が援助をする。これは経費的にも援助するし、いろいろアイデア的にも援助するということになっております。したがって実は振興計画ができる過程では、国と県と地元組合組合員、それからまた学識経験者がつくったいろいろな検討過程を経てでき上がるということであると御了承願いたいと思います。
  170. 後藤茂

    ○後藤委員 そういう構成は私は理解できるのですけれども、しかし、問題はその中身だと思うのです。こう言っては大変失礼ですけれども、私は、新たな経済的環境というものを見通してこれからの振興ビジョン等をつくり上げていくというような能力は、自治体には大変欠けているんじゃないか、各都道府県を見ましても、商工関係の人材あるいは情報、こういった面はまことに貧弱だと思うのです。そうすると、これからこういった商工組合振興計画をつくっていく、あるいは長期にビジョンを確立していく、いま長官が言われた構成はわかりますけれども、その中身が貧弱であればりっぱな振興計画はできないだろうと思う。ましてこれからの商売、事業にかかわるわけですから、それに十分適応する付加価値の高い知識集約化されたものを望んでいくということは、この激動する世界経済の中においては大変なことだと思うのです。そういたしますと、中央に集中いたしております情報なり人材というようなものを、その産地に責任を持っていく人々のところへ振り向けていかなければならない。そういった考えがおありなのか。  さらにそれと同時に、私は、いまの長官の御説明を聞いておりますと、やはり相当財政的な裏づけがなければそうそうソフトな頭脳を動員することはできないだろうと思うのです。ところが、どうも構想だけは先走っておりますけれども、それを裏づけていくべき、つまり財政、特に新技術開発なんということになってまいりますと、長官、そう簡単にはいかないのじゃないかと思うのです。一体そういう財政的裏づけというものをこの法律は十分に担保しているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  171. 左近友三郎

    左近政府委員 この計画段階で衆知を集めると申しましても、確かに地方だけではなかなかむずかしいということもございます。したがいまして、中央から人材を適宜あっせんするというようなことも十分考えてまいりたいと思っております。そのためには中小企業庁本体あるいは中小企業振興事業団がいろいろな人材をあっせんする、あるいはいろいろな情報を提供するということに努力をいたしたいというふうに考えております。  ただ、また逆に申しますと、この組合なりあるいは業界の中で、海外の市場に精通した人というようなものも現在は相当育ってきておりますので、そういう業界の声も生かして使うということも十分考えたいと思っておりますが、こういう点ではなかなか金のかかることもございますので、そういうことで、そういう調査費にも及ばずながら助成をしておるわけでございます。  それから新技術開発については、おっしゃるとおりこれはなかなか簡単ではないということでございますが、これもやり方がいろいろございまして、組合で共同的な開発をするというケースあるいは個々の企業がいろいろな試験研究所の援助を得ながら自分で開発するというようなケースがございますが、いずれにしても組合でやるような場合には、いわゆる高度化事業中小企業振興事業団がやります共同事業というものになじむケースが非常に多いと思いますので、そういう面での援助をしていくということを考えておりますし、あるいは個々の企業がやる場合には特利融資というようなことも考えておりまして、財政面でも何とかこれがカバーできるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  172. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、産地振興の場合に、やはり中心になりますのはもっと地方自治体というものを動かしていくべきだろうと思うのですね。地方自治体にもう少し政策能力を持たしていく必要があるだろう。その地方自治体のポジションがどうも明確ではないし、それを動かしていく、政策能力を付与していくというものがはっきりしないということが私は一つの不満なのです。  それからもう一つは、この産地は既存の産地、つまり既存の産業の中から新技術なりあるいは経済変動等によって影響を受けたところに活力を与えていきたいということになっておるのだろうと思うのですけれども、これから私たちが考えていきたいのは、田園都市構想とかあるいは地方定住圏構想等も言われておるわけですから、その地域にふさわしい新たな産地というものをどうつくり上げていくかということがいま大切じゃないかと思うのですよ。そういったものに対しては、この法律では十分カバーできないのじゃないかと私は思うのですが、長官、そういったものに対してどのように構想を持っておられるか、これからの施策としてどう考えておられるかをお伺いしたい。
  173. 左近友三郎

    左近政府委員 第一点の、府県にもう少し能力を持たせるようにしむけるべきではないかという御意見でございますが、これについては、われわれも十分そういたしたいということで、この法案については、たとえば業種指定につきまして十分府県知事意見を聞くというような制度にもいたしておりますし、それから事業計画、要するに振興計画とか合理化計画承認府県知事が行うということにいたしまして、府県においてそういうビジョンが必要であるという事態にお願いをしておるわけでございます。したがいまして、従来より以上に府県自主性を尊重するという立場でこの法案ができ上がっておりますので、そういう自主性のある活動の中で、府県の能力がだんだん向上していくのではないかということを考えております。もちろんわれわれが中小企業庁あるいは中小企業振興事業団を通じて府県にいろいろな情報を提供するということによって、府県の能力を高めていくという努力も十分やってまいりたいというふうに思います。  それから、新しい産地を育てていくということについては、われわれも必要性を非常に痛感をいたしておりますけれども、これは現在の産地法ではやや対象外になるだろうと思っております。そこで、これについてはいろいろわれわれもいま検討しておりますが、いまのところまだ成案は正直申しましてございませんが、ことに新しい産業、エレクトロニクスだとかそういうようなものを地域的にどう展開を図るかというような問題もございます。これについては、通産省の立地公害局で地域産業政策ということも検討いたしておりますので、そこともタイアップしながら、この新しく発展する産業が大都市に集中するのではなくて、地方に進出をして、そこの地域の中核産業としてまた新しい産地を形成をし、地域経済、文化に貢献するような形を考えたいということで現在検討中でございますので、もうしばらく時間をいただきたいというふうに思います。
  174. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの地域産業のあるべき方向というのは、ぜひひとつこれは積極的に取り組んでいただきたいと思うのです。  私が先ほどから申し上げましたのは、それぞれの産地というと、昔の教科書に出ているのといまとほとんど変わらない。ただ、繊維等は昔の生糸だとかあるいは綿だとかいうのがアパレルの方に進んでいるということもありますけれども、大体は昔の地理、つまりいまの子供たちで言えば社会科でしょうけれども、それでたとえば燕と言えば洋食器、関と言えば刃物とか、すぐにそれと結びついて、それだけを考えている時代がだんだんむずかしくなってくるのじゃないかと思いますだけに、地域経済の中にどういう構造的な産地振興策を考えていくべきかということは、早急につくっていかなければならないと思うのです。今度のこの法律を見ましても、二年くらいで出して、五年くらいでということを言っておりますけれども、そんなものでは長官が先ほどから言っておられますような、産地振興策にはならぬだろうと私は思うのですね、期限的にも。もっと内容を強化充実するということと、この法律が七年の時限立法というのをもう少し延ばしていくということも考えていかなければならない。もちろん私は先ほど申し上げましたように、産地振興のための新たな包括的な法律ができて、そして税財政なり補助なりにつきましても十分に対応できるものがつくられるという場合は、これが短い期限で切られてもいいと思うのですけれども、そういった地方産業の、特に構造的産地振興策というものを展望していきながら、この法律の運用をぜひ図っていただきたいと思うのです。  最初に私が御質問申し上げまして、この法律はとりあえずは円相場高騰によって影響を受けた産地を対象に考えていく、長官はそういうようにお答えいただいたのですが、「その他の経済的事情の著しい変化によって生ずる事態であって政令で定める」ということも規定をされているわけです。そういたしますと、幾つか、先ほども健康な産地というものも私が指摘をいたしましたが、こういった政令で定める構想の中に、将来展望として大体どのくらい考えていらっしゃるのかお伺いしておきたいと思うのです。
  175. 左近友三郎

    左近政府委員 このいまの御指摘の「政令で定める」ということは、この原因を決めるわけでございまして、構造的な変化が起こるというふうなことをこの事態に応じて考えていくということになろうかと思います。いまのところはまだ出てきておりませんけれども、たとえばエネルギー構造がもっと厳しくなったというような場合に、エネルギー不足の状態に対応するということも将来ではあり得るかもしれないという問題もございます。しかし、これは現在の実情ではまだそこまで行ってないということで、考えておりません。ですが、そういうふうな経済状態の著しい変化というものに絶えず目を光らせておりまして、そういう事態が発生すれば時を移さずして指定をしていく、政令で決めていくということにいたしたいというふうに考えております。
  176. 後藤茂

    ○後藤委員 そういうことと関連いたしまして、たとえば省エネルギー、エネルギー構造の変化等も考えてみますと、たとえばこの法律では直接すぐに対象業種産地になっていかないのでしょうけれども、マッチ産業等もこれは構造変化の大変著しい、つまり「その他の経済的事情の著しい変化」に対応する産業だと私は思うのです。  そこで、このマッチ産業とか、あるいは後でもし時間があればお答えをいただきたいのですけれども、皮革産業等は、一つは皮革の場合には関税措置というもので抑えることもできますけれども、やはりこれからの地場産業といいますか、産地振興のためには大切な産業ではないかと思います。そこで、マッチ産業がこれまで大変な苦況に陥った。自動点火等の普及、あるいは広告媒体としては利用価値がなくなり始めてきているというように言われているわけですけれども、こういった、しかも産地を形成している、こういうものに対してどのような展望をお持ちになっておられるか、お伺いをしたいと思います。
  177. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 マッチ産業は、御承知のとおり兵庫を中心にいたしまして、八割が兵庫県に集中しておるという地域産業でございます。いまお話しになりましたように、最近数年間にこのマッチの生産高というものはほぼ半減に近いぐらいの大幅な需要の減退というものを来しているという状態でございます。その原因といたしましては、やはり不況の長期化もございますけれども、一つには自動点火装置の普及、さらにもう一つは使い捨てライターの普及、こういった二つの点が中心で、需要が非常に大幅に減っておるというのが現況かと思います。  したがいまして、今後どうあるべきかということを考えました場合に、現状の需要内容を分析してみますと、やはり七五%が広告用のマッチとして存在しておるという状況でございまして、今後マッチ産業が一定の需要を満たしながら存在していくためには、やはり広告用の機能というものを最大限に活用していきながら、やはり差別化、高付加価値化というものを追求いたしまして、マッチ産業として生き残っていくということがきわめて重要であろうというふうに考えておるわけでございます。そういった意味で、現在はカンフル注射と申しますか、需要に見合うような設備という意味におきまして共同廃棄をやって、四割ぐらいの設備を廃棄したり、あるいは団体法に基づきまして生産調整、あるいはごく最近時点におきましては価格カルテルというものの認可もいたしまして、辛うじて採算割れぎりぎりのところに抑えておるという状態でございますけれども、やはり今後はそういった新しいニーズに対応した、広告面での機能を活用していくといった方向で進めば、これはある程度の需要というものを確保しながら安定的に発展していけるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  178. 後藤茂

    ○後藤委員 マッチ産業はいま価格カルテルまで行われているわけです。これは大変異常だと思うのですね。公取委の方の所管になるわけですけれども、これが八月いっぱいぐらいまで、八月三十一日までですか、価格カルテルが認められているようですけれども、ただ、どうも、価格カルテルが八月ぐらいでもし仮に切れるとすると、いま御指摘になりましたような構造を持っているわけですから、マッチ産業というものは大変な状況になるのじゃないかと思うわけです。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕 いま高付加価値あるいは新しい広告の市場というように言われましたけれども、その辺でしょうか。もう少しマッチ産業の将来展望を見通してやるような行政の指導なりビジョンというものはございませんでしょうか。お伺いをしたいと思います。
  179. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私どもとしてただいま想定しておりますのは、やはり広告面での機能というものを最大限に活用いたしまして、この面で需要を確保していくということが一つ方向であろうかと考えております。したがいまして、そういった意味におきましての業界の努力に対応いたしましては、いろいろな面で中小企業施策というものも準備されておりますし、こういった施策を活用しながらひとつ後援してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  なお、先ほどお話のございました団体法に基づきます価格カルテルでございますけれども、八月末で切れます。これはまた非常に異常な状態のもとでの特例的な措置でございますので、これにつきましてはその時点で判断をしてまいらざるを得ないと思いますので、この帰趨につきましては現在差し控えさせていただきたいと思います。
  180. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が参りましたので、最後に一点だけお伺いをしておきたいと思うのですけれども、この雇用安定のために昨年来どのような対策を講じてこられて、その効果は一体どうかということが一つと、それから、この法律でこれまでと異なった雇用対策というものが講じられていくのかどうか。第八条で「雇用の安定等」ということも出ておりますけれども、お伺いをしておきたいと思うのです。それと、産地関連の雇用対策、これがこの法律では欠けているのではないかと思うわけですけれども、この三点についてお伺いをいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  181. 左近友三郎

    左近政府委員 雇用安定につきましては、実は昨年来労働省ともいろいろ連絡をとりながら諸般の対策を講じてきたわけでございまして、失業給付についての特例とか、あるいは失業者が発生した場合の職業訓練の強化とか、いろいろなことをやってまいりました。今回の法律におきましてもこういう点を重点的に考えたいということでございます。その成果につきましては、最近の情勢で、たとえば常用求人倍率が好転したとか、いろいろなことが言われておりますけれども、まだまだ全体の情勢としてよくなったとは言えないと思いますが、今後この産地法におきましては、対策としては労働省で実施していただくわけでございますが、現在労働省がやっております諸般の施策の中で、この産地法の適用を受けた企業に関係するものについては優先的に実施していただくということを労働省ともお話をし、労働省もそういうことでやっていこうということの御了解を得ておるわけでございますので、今後はそういう形で新規の、これのための特別の政策というものはございませんが、従来の政策の中でこの産地法に適合する企業については優先的に適用するという形で、手厚くやっていきたいというのが両省間の了解でございます。
  182. 後藤茂

    ○後藤委員 終わります。
  183. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、明三十日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時散会      ————◇—————