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鎌田参考人 鎌田でございます。私は、
エネルギーの
使用の
合理化に関する
法律案に基本的に賛成する
立場から、私の考えを申し述べたいと思います。
基本的に賛成するのは、中長期的な国際
エネルギー情勢の不安定性、その中での
わが国エネルギー事情のもろさから見て、
エネルギー需要面での省
エネルギー対策の
推進が、
エネルギー供給面での他の各種
対策の
推進と並んで
わが国緊急の
課題であること、そして、この
法律案の成立が、そうした省
エネルギー対策の中核として重要かつ不可欠な政策手段と考えられることによるのであります。
以下、賛成理由の個々の点についての私の考え方を明らかにしたいと思います。
まず第一の中長期的な国際
エネルギー情勢の不安定性の問題でありますが、
昭和四十八年秋の
石油危機を
一つの契機にいたしまして、世界の
石油供給構造は不安定性を増し、その結果として、高価格、価格上昇の方向に向かいつつあると見ざるを得ない雲行きになっております。四十八年の
石油危機は世界経済に大きな衝撃を与え、その後遺症が長く尾を引いてきておるわけでございますが、その反面、その後の長期にわたる世界景気の停滞で、世界の
石油消費が伸び悩みとなっているため、とかく一般的には
エネルギー危機の認識が薄れがちのように見受けられてきているのであります。
しかし、昨年来のイランの政情不安と革命によるイラン
石油の供給停止と供給減少は、世界の
石油情勢を大きく揺り動かし、国際
エネルギー情勢がいかに不安定な
状況の上に立っているかを改めて強く印象づけたのであります。イランの政情は鎮静化に向かっているように見えるものの、なお予断を許さぬ
情勢とも言われておりますし、イラン
情勢がサウジアラビアなど、他のOPEC諸国への波紋を広げることも見逃せません。先ごろのOPECの
石油値上げ半年繰り上げ決定は、そうした波紋の
一つとも見られているのでありまして、今後さらに価格が上昇するとの見方も有力であります。しかもエジプト、イスラエルの単独和平に対する他のアラブ諸国の反発、中東をめぐる各国間の角逐などを考えますと、中東ではいつ何が起こるかはかり知れぬとも言われているのであります。
世界最大の
石油輸出国サウジアラビア、世界第二位の
石油輸出国イランを擁し、世界の
石油輸出の大半を占める中東でのこのような政治的軍事的
情勢の不安定性が、世界の
石油供給をいつ混乱に導くかもしれぬ状態にしていることは明らかであり、それと絡んでのOPECの
石油政策の動向が、高価格化、価格上昇への方向へ向かう傾向を内在していることも否定できません。
それならばこうした当面する
情勢の見方を踏まえまして、中長期的な国際
エネルギー情勢をどう見るかという点でございますが、これにつきましては一昨年から昨年にかけまして、各国の
政府機関、調査機関、専門家たちが、将来の
エネルギーの見通しにつきまして、ある者は一九八〇年代と言い、ある者は八五年ないしは九〇年にかけて第二の
エネルギー危機が到来するという警鐘を乱打したのであります。他方、昨年後半あたりからは、長期の世界不況に基づく
石油需給のだぶつきから、将来の
エネルギー見通しについての楽観論が出てきているのであります。
一体これらをどう考えたらいいのか。世界の
エネルギー情勢を見る場合に、それに大きな
影響を与える
要因として、
一つは中東をめぐる政治、軍事
情勢がどう変わるか。第二は世界の
エネルギー需要の見通しと
省エネルギーの進展
状況。第三はOPECの
石油生産政策とその供給
規模。第四はOPEC以外の国々での
石油供給見通し。第五は
米国の
石油需給と
石油輸入の
規模。第六は東欧共産圏に
エネルギーを供給しておりますソ連における
石油輸入の可能性。第七には代替
エネルギーの
開発度合いということになるでありましょう。それらの全体的見通しいかんによりまして、供給量と価格の面での
エネルギー危機が来るか否かの
判断が分かれるのであります。
先ほど申しました警戒論、楽観論、それなりの理由があるわけでありまして、また問題が将来の見通しに属する以上、私といたしましては、どちらが一方的に正しく、他が一方的に間違っているとは言い切れない点があるのであります。しかしながら、はっきり言えることは、中東をめぐる政治的、軍事的
情勢の不安定性、またOPECの
石油資源温存的、
石油制限的な政策動向などから見ました場合に、世界の
エネルギー情勢が中長期的にも不安定性に満ちていること、そして今度のイラン革命の場合に、イランの問題の場合に見られるように、わずかに
一つの前提条件が崩れても全体の展望が崩れてしまうこと、そうした供給の不安定性はほとんど直ちに価格の上昇に結びついていく可能性が強いこと、以上の点は非常にはっきり申し上げられることなのではないかと思うのであります。
次に、冒頭申し上げました第二の点、
わが国エネルギー事情の脆弱性についてでございますが、この点につきましては、
エネルギー消費量、
石油消費量が自由世界第二位の
規模に上っております
わが国の
石油依存度、輸入
エネルギー依存度が、主要先進国中最も高いことを数字に徴してみれば足りると存ずるのであります。
しかも、
エネルギーは
産業活動、
国民生活に欠かせないものでありまして、
わが国経済が雇用、福祉などの面への
配慮から、今後も安定的に成長していく必要があるとの前提に立てば、そのために必要な一定量の
エネルギーは今後も確保していかなければならないわけであります。また
エネルギー開発のリードタイム、
計画から
開発までの懐妊
期間が、いまほぼ十年くらいかかるということを考えますと、十年後に見込まれる危機に対しましてはいまから対処しておかなければ間に合わない。そのときになってあわててもお手上げになるということであります。そうだとすれば、国際
エネルギー情勢の展望、
わが国の
エネルギー事情から見まして、
わが国としては、経済上の安全保障を守るために、将来の危機に備えての総合
エネルギー対策を真剣に
推進しなければならないことは、ほぼ
国民的常識と言えるのではないかと考えるのであります。
そこで、冒頭第三に述べましたように、そうした総合
エネルギー政策の大きな柱となるのが省
エネルギー政策なのであります。
エネルギー供給面における脱
石油、脱中東の政策、つまり脱
石油の代替
エネルギーの
開発と、脱中東を目指す
石油供給の確保と並びまして、需要面での省
エネルギー政策の
推進は、
国民全体がいまや一丸となって取り組むべき国家的命題とさえ言えると思うのであります。
省エネルギーには
エネルギーの有効
利用とむだ遣いをやめる、浪費をやめるという二つの側面があるわけであります。いまありますところの長期
エネルギー需給暫定見通し、これは
情勢の推移によりまして今後見直しが必要であろうと思いますけれ
ども、しかしいま手がかりになるその見通しによりますと、
昭和六十年度には、
対策促進ケースといたしまして一〇・八%の
省エネルギーを見込んでおる。つまり七億四千万キロリットルの需要のうち、八千万キロリットルの
省エネルギーを
達成しようとしておるのであります。
省エネルギーは、きれいな安全な
エネルギーをそれだけ確保したに等しい
効果があるわけでありまして、
エネルギー資源、
石油資源の全く乏しい
わが国の場合、非常に重要な
施策と考えるのであります。
しかしながら、一人
当たりエネルギー消費量が
米国の三分の一で、ぜい肉の少ない体質の
わが国の場合、今後の
省エネルギーには、国全体としてのじみちで息の長い大きな
努力が求められると思います。それだけに今度の
法案によるような各種
対策の
推進がどうしても必要であります。
この
法案は
総合エネルギー調査会省エネルギー部会、私はこの
委員の一人であったわけでありますが、その報告にうたってあります次の
部分、つまり「省
エネルギー政策とは、福祉
水準の
向上、雇用の維持、国際社会で果すべき我が国の責務などの諸々の社会的要請を満しながら、
エネルギーを消費する各
段階で無駄を省き、可能な限り
効率的に
エネルギーを
使用することができるようにするために講ずる
措置であり、割当制の様に
エネルギー消費の絶対量を一定の範囲内に強制的に抑え込もうとするものではない。」という
部分を尊重しているわけでございまして、産業、民生、運輸など
エネルギー各消費部門での自発的な
省エネルギー努力を極力引き出すことを基本にいたしまして
法律をつくっておるわけであります。また、
わが国経済社会全体を
省エネルギー型に変える必要が今後あることや、
省エネルギーの実効性を確保するためには、すべての部門にわたる
省エネルギーの
努力が必要であることなどから、すべての生産活動、消費活動を
省エネルギーの対象にしているわけでございますが、これらの基本的な考え方は妥当であり、
時宜に適したものであるというふうに考えるのであります。
この
法案の成立によりまして、
政府は
省エネルギーの適切な
ガイドラインを示し、
助言、
指導するとともに、
金融、
税制上の
助成措置、
技術開発の画期的な強化、
国民に対する
指導、啓蒙、
普及のための
措置の強化などを推し進めるべきだと考えます。この
法案の早期成立を望む次第でございます。そしてこの
法案の成立が
わが国産業構造を
省エネルギー型に変えていくこと、そしてまた経済社会全体を
省エネルギー型に変えていくことの大きな契機となることを期待する次第でございます。
以上をもちまして、私の陳述を終わらしていただきます。(
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