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1979-02-14 第87回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月十四日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 野中 英二君 理事 武藤 嘉文君    理事 山下 徳夫君 理事 渡部 恒三君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 岡本 富夫君 理事 宮田 早苗君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       島村 宜伸君    原田昇左右君       渡辺 秀央君    後藤  茂君       上坂  昇君    清水  勇君       田口 一男君    中村 重光君       長田 武士君    玉城 栄一君       宮井 泰良君    荒木  宏君       工藤  晃君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      佐々木孝男君         通商産業政務次         官       中島源太郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         資源エネルギー         庁公益事業部長 豊島  格君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   加藤  晶君         警察庁交通局交         通指導課長   矢部 昭治君         日本電信電話公         社技術局長   前田 光治君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 二月十四日  中小業者経営と生活安定に関する請願荒木  宏君紹介)(第九六二号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第九六三号)  中小業者経営及び生活安定に関する請願(小  川新一郎紹介)(第九六四号)  同(岡本富夫紹介)(第九六五号)  同(長田武士紹介)(第九六六号)  同(鍛冶清紹介)(第九六七号)  同(草野威紹介)(第九六八号)  同(古寺宏紹介)(第九六九号)  同(坂口力紹介)(第一〇二九号)  特許管理士法制定反対に関する請願荒松清  十郎君紹介)(第一〇〇八号)  灯油・プロパンの値下げ等に関する請願荒木  宏君紹介)(第一〇〇九号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第一〇一〇号)  同(津川武一紹介)(第一〇一一号)  円高差益還元に関する請願西中清紹介)  (第一〇七一号)  同(野村光雄紹介)(第一〇七二号)  同(長谷雄幸久紹介)(第一〇七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水勇君。
  3. 清水勇

    清水委員 きのう両大臣は、所信表明の中で、五十四年度の経済運営の基調として、物価の安定、雇用の改善、内需の回復、つまり景気回復ということでしょう。それに対外均衡回復、こういったものを強調されておりました。長引く不況やあるいは深刻な雇用不安をどう打開をするか、また同時に、最近特に物価騰勢が急激に起こってきている、こういう状況の中で、国民生活に新たにどう不安を来さないようにしていくか、つまり政策手段を講じていくか、こういうことが当面非常な課題だと思います。  そこで私は、きのう板川委員経済成長率を初め、基本問題で質疑をされておりますので、きょうは少し問題をしぼって、物価あるいは雇用、さらに、エネルギー問題は非常に大きな問題ですけれども、わけても非常におくれていると私が見ている新エネルギーの開発、この三点を中心にお尋ねをしたいと思います。  さて、そこで、五十三年度の物価についてちょっと考えてみたいのですけれども、これは予期せざる円高によって一応鎮静を見ることができたと私も思います。しかし、それはあくまでも円高の持つデフレ効果、たとえば二〇%の円高は恐らく物価を四・一%くらい押し下げる、そういう効果を持っているのではないか、こういうふうに見ているわけでありますが、つまり、五十三年度の物価の落ちつきというものは、そうした点に負うところが非常に大きかったのじゃないかと思うわけでありますが、まず最初に経企庁長官からその辺の御見解を承りたい、こう思います。
  4. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  いま清水委員の御指摘のとおりだと私は思います。特に円高によるメリットデメリットは、デメリットはやはり不況の立ち直りに時間がかかる。また、メリットの方はいわゆる物価に対する引き下げ効果、これが非常に大きかった。私は、その両々相まって、なかなか景気回復しないといういら立ちを国民に与えたと思いますが、物価面では、委員の仰せられたような効果のあったものと私も推定いたします。
  5. 清水勇

    清水委員 そうだとすると、こういうことも実は考えられるのじゃないか。五十三年度の物価動きを、これは仮定に属する話ですけれども、別な見方で見ていく場合、仮に円高がなかった、したがって、いま申し上げたような四・一%前後のマイナス効果もなかったとした場合、政府がいま五十三年度の消費者物価について、最終的に四%程度におさまるのじゃないか、こういう見方をされておりますけれども、実際にはこの四%にプラスをして四・一%といった上乗せがあり、結果するどころ八%台の物価上昇が現出をしていたのではなかろうか、こんな感じもするわけなんです。これは仮説ですけれども、そういう考え方というものはどうでしょう、間違っているのでしょうか。
  6. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 委員のお考えが間違いであるというほど私も自信がございません。ただ、もしもこれで円高というものがないと、一方五十三年度は猛烈な公共投資をやっておりますし、大変な勢いで公債を出して公共事業をやっておりますので、そうした状況と、いわゆる世界全体の経済動向とのにらみ合いを考えた場合に、非常に深刻な、私は、物価高の不景気と申しましょうか、非常にまずい状態になったのではないかと推測はいたします。  ただ、物価問題だけに限って申しますと、ちょっと私はそうしたことに対する十分な用意もございませんので、お答えしかねるわけでございます。
  7. 清水勇

    清水委員 わかりました。  ところで、重ねて長官お尋ねをしたいのですけれども、五十四年度を見通す場合、五十三年度のような円高は多分ないだろう、こういうふうに見るのが昨今の常識ではないかというふうに思います。そうしますと、五十三年度のような、円高による物価押し下げ要因というものは期待できないというふうに見ていいのでしょうか。
  8. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 現状の百九十円がらみというのは、われわれにとりましては大変好ましい円相場であると思いますが、しかし、これが今後も全く安定するかどうかという見通しは、いまのところ立ちにくい。われわれはそうした非常に困難な世界的な経済情勢、あるいは言うところのオイルマネーなどがうんとだぶついている世界経済の中で考えます場合に、見通しを立てるときに、やはり計画の初期に当たります百九十円というものを、計算のすべての基礎に置いておりますので、これは今後こうした数値の中で、多少の幅はありましても、動いていくということを期待するわけです。そうなりますと、お説のように、円高メリットというものは恐らく出てこないというふうに考えます。しかし、実際の物価を扱う考え方の中におきましては、五十四年の前半は、いわゆる五十三年度の円高というものがまだ相当に効果を発揮しておるというふうに考えておりますので、ストレートに、百九十円というものから円高メリットが全くすぐなくなるというふうには考えておりません。
  9. 清水勇

    清水委員 ところで、昨年末から卸売物価が反転をして高騰に向かっている。この点については、長官も最近の月例報告で、いわば物価についての赤信号を出しておられるわけであります。  ところで、この卸売物価値上げ要因というものは、これは幾つかあるわけでありましょうが、大ざっぱに言って、たとえば非鉄金属を初め、海外の商品市況高騰による、そういうものが一つ挙げられるでしょうし、また、最近公共事業関連資材といいましょうか、これが著しく高騰を見せている、こういうものにも負うところが大きいのじゃないか。さらに私は、きのうも議論がございましたけれども、今後さらにイラン情勢を反映した形で、石油価格というものがやっぱり大きな押し上げ要因になってくるのじゃないか、こう思います。  ところが、これらについては、なかなか実際問題として歯どめをかけて、これをチェックしていくというようなことがむずかしいのじゃないか、こんな感じがしてならないわけでありますが、何かいま申し上げたような点について打つ手は考えておられましょうか。
  10. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま清水委員の仰せられたようなファクターは、全くそのとおりでございます。同時にまた、いまわれわれは自由主義体制の中で運営をいたしておりますから、物価の統制というようなものを直接的に手がけるわけにはまいりません。したがいまして、その方法といたしましては、いま御指摘のような建設資材値上がりというものに対して、われわれはすぐ注意を向ける、そしてまた同業組合等においていろいろと内部事情もあると思いますが、そうした事態に対して、同業組合等注意を喚起するということをいたしております。  また、石油OPEC値上げは、これはもうやむを得ないことでございますが、これの大体の物価に対する影響を、卸売物価で〇・七程度消費者物価で〇・三程度を織り込んでおるわけでございますが、それ以上に、石油関連商品値上げしようという現在の各石油会社希望的表明が諸所でなされておりますが、これにつきましては通産大臣とよく御連絡を申し上げながら、その内容について、そしてまたそうしたことの一般国民物価高への心理的な影響等も十分配慮してもらうように注意をいたしておるところであります。  なお、公共料金につきましては、真にやむを得ない国鉄の赤字の問題もございます。これらにつきましては、四月一日の予算編成に際して、五月二十日までそれを繰り延べるということ、また上げ幅等につきましては、運輸省十分連絡をして、極力抑えてもらうということ、また、消費者米価値上げ、これは五十四年度ではない、五十三年度でございますが、この消費者米価による食管の赤字を三年で消そうという提案がございましたが、われわれはこれを五年で消してくれ、ということは、つまり消費者米価値上げのもたらす国民生活への影響が、心理的に非常に大きいということ等考えまして、その中間をとったというわけでございますが、四・数%の値上げにとどめる、しかし、国民生活にいま深く浸透しております麦の消費価格は据え置くということを条件にいたしまして、米だけで今度はそれをしのいだ等々、いろいろと公共料金的なものにつきましても考えを述べております。また私鉄の方は二十数%の要求に対してそれを半減する、実施時期を年末年始を避けたというような配慮をいたしておりますし、またタクシー料金等につきましても、運輸省は、いま申請が出ておるようでありますが、これをただ機械的には認めないという等々で、公共料金につきましては、なお言い忘れた点があるかと思いますが、厳重な査定をし、かつまた慎重にこれに対処するということ等をいたしておるわけでございます。
  11. 清水勇

    清水委員 いまのお答えに触れて一、二重ねて聞きたいと思いますが、その前に通産大臣に御所見を承りたいことがございます。  いま長官からの答弁の中でOPEC既往値上がりについては予算織り込み済みである、こういうことですけれども、問題は、イラン情勢を反映して、最近、たとえばスポット物などが高騰というよりも暴騰を示している。御承知のようにロンドン市場で、時によってはバレル当たり五ドルだとか六ドルだとかというようなプレミアムがつく。しかもこのことは単に一時的ではなしに、既往OPEC値上げの上に、何とかそういう騰勢を今後反映していきたい、こういった動きもサウジその他で示されておられるようでありますし、また加えて、けさなどの新聞報道によると、仮にイランが新政権のもと石油生産を再開しても、ある程度生産量を低く抑えて、逆に価格の面で収入をカバーしていくのだ、こういったようなことが提起をされようとしている。そうすると、全体としていますでに長官説明をされている以上の価格値上がりが起こるのではないか、またそういう機運が、いわゆる石油製品価格便乗値上がりを誘発するというようなことになりはしないか。私は、せんだっての通産大臣の厳に便乗値上げを抑制するという発言は、率直に言って賛意を表していたのでありますが、その後エネルギー庁長官等発言を通じてややうやむやになったかのような感なしともしない。こんな感じがいたしますが、その辺について、いま長官が言われた上にやはり影響というようなものを想定をされているかどうか、こういった点をちょっと聞かしていただきたい。
  12. 江崎真澄

    江崎国務大臣 今後石油価格がどう推移するか、これは私ども情報を的確に把握しながら、値上がりを最小限にとめる努力を今後とも鋭意続けていきたいというふうに考えております。  いま御指摘のように、スポット物が異常な高騰をたどっております。これは、たとえば日本の場合でもイランに一九%程度輸入を仰いでおるわけです。そのイラン石油を主として扱っておる商社は、業界同士の融通というわけにもまいりませんから、従来の備蓄分、それに加えて顧客をつなぎとめようということになれば、高いことを承知でもスポット物を買わなければならぬということになりますね。ただ、全体的に見ますと、日本の場合は長期契約がほとんどでありまして、スポットに依存する度合いというものはわずか三%程度ということが言われております。しかし、日本にも九州石油その他数社がイラン石油を主として扱っておるというような傾向がありまするから、その値上がりが引き金となって石油業界全体の値上げを誘うことがあってはならぬ、こういう点を言っておられるのですね。全く同感です。  そこで、私どもは節約を呼びかける一方、買い急ぎをしないように、買いだめをしないように、まずことしは、さっき経企長官にも御質問があり、お答えがあったように、景気回復をどう持続するか、そして雇用の安定をどう図っていくか。一方、国際的には為替相場の安定を確保すると同時に、国内的には物価を安定させる、これがことしの内閣としての経済政策の四本の柱だろう、四本の柱と言っても言い過ぎじゃないと思うのですね。このために私どもは汗の出る思いをしながらも備蓄状況、今後の積み増しその他の入手状況等をしさいに判断して、一−三月は七千二百万キロリットルの前年同期並みの石油入手ができた。これで当面最盛期の手当てはまず何とかなる。あと四月から十月までは少なくとも大口規制であるとか消費規制であるとかというような、力で消費を規制するようなことはしなくても済むぞという見通しに立って、できるだけそういうことを避けていこうと努力をしております。  それから後段の御質問の、通産省側意見表明が、石油価格アップをめぐって二途に出たのではないかという御疑念ですが、私はそういう意味はないと思うのです。私はやはり経済担当閣僚として物価全体のことをにらみ合わせながら、かりそめにも便乗値上げ的なものがあってはならない。もしさようなことがあるならば、これは行政的に物申す場面もありましょうということを主張したわけです。一方、エネルギー庁長官を初め関係者は、もともと石油値段というものは、需給の原則に従って需要者供給者との間、両者で値段が決まるものであります、いきなり通産省値段に介入するという段階ではございません、彼らが要求してきておる点はこれこれこれこれ、時間がないからもう繰り返しませんが、こういう理由に基づくものです、しかし、それが不当な便乗値上げというようなものであれば、これは通産省としては黙っておれません、こういうふうに結んでおりますね。ですから、私は物価全体をにらみながら便乗値上げを警告したものであり、一方また、エネルギー庁側としては、需給手続石油価格形成手続について物を申したいというふうに御理解を賜りたいと思います。
  13. 清水勇

    清水委員 次に、先ほどの長官答弁に触れて、どうしても気になるものですから申し上げておかざるを得ないのでありますが、たとえばいま言われるような形で、公共料金についてもできるだけセーブすべきものはセーブをしてきているんだ、こういうふうに言われるのだけれども、     〔委員長退席野中委員長代理着席〕 どうも長官が強調される、あるいは政府が強調をされる物価安定路線というものを堅持をしていく、こういう点からいくと、いささか一連公共料金メジロ押し値上げは、相矛盾を国民に与えるのではないか。ですから、物価安定に努力しているのだと言われるけれども、どうもそのことが空念仏に終わりはしないのか、こういうことを実は感じざるを得ないわけであります。  そこで、ごく最近の卸売物価騰勢等を通じて、たとえば公共料金ばかりではなしに、ガソリン税値上げであるとかたばこ値上げであるとか、いわゆる一連増税路線というものは、物価騰勢に将来拍車をかけるのではないかと懸念をするわけであります。こういう点については、もう一回慎重に再検討をするくらいの気構えがあってしかるべきではないのかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  14. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまの御指摘たばこ、これは財政的要望でございまして、われわれ現在の政府提案のとおりに国会で御承認いただくといたしましても、〇・三程度消費者物価へのはね返り、それからガソリン税でございますが、これも政府提案のとおり二五%引き上げられた場合を想定いたしましても、消費者物価への影響は〇・一程度という推測をいたしております。しかし、これはいずれも財政的な要求の強い製品でございますし、今度の予算編成におきましては、金額といたしましてもかなりの量を占めておりますので、いまこれを引っ込めることはなかなかできないわけでございます。  ただいま委員が仰せられました公共料金メジロ押し値上げというのでありますが、五十三年度と五十四年度を比べてみましても、数におきましてもそんなにふえておらないのです。この点につきましては、もっと詳しくひとつ何かの機会に出させていただきたい。ここ数年来の公共料金値上げが、ことしだけがメジロ押しであるという表現が使われておりますが、これはいささか当を得ないのではないかと私は考えておりまして、その実態につきまして明確にその計数を出しまして、またそれが物価にどのような影響を与えるかということをきちんと出して、委員の御疑問あるいは一般国民の御疑問に答えたいと考えております。  しかし、この公共料金一連予算に計上いたしました部分並びに御承知のように通産大臣に非常に御苦労いただきまして、電力ガス料金はともかく特別な円高差益還元をこの三月で終わるものですから、四月以降の電力料金につきましては、いろいろな情勢があっても五十三年度と同じに据え置くという基本的方針を、非常に努力していただいておりますので、この部分、五十三年度から五十四年度に変わる場合の円高差益還元部分がなくなるといたしましても、これは〇・一程度である。  その他まだ要求が出ていないが、いろいろと伝えられる値上げがございます。地方自治体においてもいろいろございます。そうしたものをいろいろと換算をいたしまして、われわれ一・五%程度押し上げということを計算いたしておりますが、五十三年度におきましても公共料金全体として一%の押し上げになっております。五十三年度と五十四年度を比較する場合においては、指数では一・五程度押し上げになるが、五十三年度は一%程度押し上げの実績があるわけでございます。したがいまして、五十三年度と五十四年度を比較する場合においては、〇・五程度影響消費者物価にあると思っておりますので、この辺先般来の私らの説明がやや不足しておった点もあると認めます。しかし、いま申し上げたことが、われわれが四・九程度上昇に食いとめるという一つの大きな根拠になっておりますので、御説明させていただきました。
  15. 清水勇

    清水委員 いま長官は、公共料金値上げに伴う物価押し上げ率は、厳密に言うと一・五三と経企庁では言われていると思いますが、まあ一・五くらいである。しかし私はどうも実感との乖離といいましょうか、これが余りにも大き過ぎるのじゃないか。たとえばガソリン税二五%の引き上げで〇・一%しか影響はないだろう、こう言われますが、私はそういう数字の出し方自身、試算に実は大変な疑問を感じているんです。  社会党としても公共料金メジロ押しということをただ抽象的に言っているのではなしに、具体的な数字を出しながらこれを解明をしているわけです。たとえば経企庁調査によると、家計調査の結果、ガソリン年間消費量世帯当たり百八十三リットルである、値上がり額が九円十銭である、これを掛け算をして年間負担増は一世帯当たり千六百六十九円である、大したことはないというような出し方をなさっておられるのですけれども、そういう出し方はどうも間違っているのじゃないか。たとえば政府の出している産業連関表というのがございます。この産業連関表もと家庭用消費量が大体三八%というふうにいま押さえられていると思いますけれども、五十二年度の全販売量掛ける伸び率が六%くらいとしても、五十三年度のガソリンの全販売量は三千三百万キロリットルくらいじゃないか。その三八%を掛け、九円十銭を掛け、そして全世帯数である三千九十三万世帯で割って得られた三千八百五十七円が実は一世帯当たり負担増になるのじゃないか。  たとえば、家計調査もとになさっておられるのでしょうけれども、主としてガソリンを購入されるのは出勤の途上などの御亭主なんですね。きょうは三十リットル買ったよなんということを、うちに帰って一々報告するというようなこともない。そういう意味ではなかなかあらわれてこない部分が実際の消費量に実は隠されている。ですから私は、そういうことを考えてみると、経企庁では千六百六十九円しか影響はないよと言うけれども、実際は三千八百五十七円プッシュになるのじゃないか。余りにも実態と出された数字との間の乖離が大き過ぎはしないか。一事が万事とは言いませんけれどもたばこの場合でもあるいは定期券以外の車馬賃などについても、実はそういうふうに記帳漏れと言いましょうか、家計調査にあらわれてこないようなものがずいぶん含まれている。そうすると、実際は一・五三%程度ではなしに、これは推測の限りでありますけれども、二倍前後の物価押し上げ寄与率というようなものを想定をせざるを得ないのじゃないか、こういうことを感ずるわけですが、いかがでしょうか。
  16. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先般の予算委員会のときに、社会党の計算の試案をいただきました。実はこれはわれわれに非常にためになりました。われわれも計算をいたしておりますが、社会党の計算の根拠とわれわれの数字が突き合わされることができた、こういう問題と、もう一つはいま御指摘の波及効果というものに対する見方でございますが、私は、非常に影響が強いのだという議論、いや余りないんだという議論をしても不毛な議論でございまして、あそこに二・八程度の非常に大きな波及効果を計算していらっしゃる、われわれはこれをただ物価が上がるんだという理由づけなどというふうにはとらないで、いま清水委員のおっしゃったような形で、生活実感への影響というようなものも十分今度は考えて、そうしてもっと議論を近づけてみたいというふうに思っておりまして、その意味で、本日の委員の御質問には今後われわれも十分配意して、物価問題については常に超党派と申しては何でございますが、国民生活全般に影響することでございますので、十分なる御審議とお話し合いのできる機会を持ちたい、そのように考えております。  詳しいことはまた物価局長からお答えいたします。
  17. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 大臣の御答弁にちょっと補足させていただきます。  御指摘の項目につきまして、たとえば小遣いから出されているものがあるではないかというお話でございましたが、実は家計調査の際に、いまおっしゃったようなガソリンとかたばことか交通費等、そういう小遣いの中から出ておりますものを推定いたしまして、そして消費者物価の指数を計算するときのウエートの方にはそれを加えておりまして、そういう調整は現在いたしております。  一応私どもとしてはいまの消費者物価指数のウエートというのは、家計調査を採用しているということでございますが、その理由といたしましては、家計調査は、調査世帯について、毎日詳細にその実態を克明に記帳したものをとっているということでございますので、現在の消費生活の実態には一番合っているのじゃないか。そういう意味家計調査を採用しているということでございますが、ただいま申し上げましたような調整はいたしております。     〔野中委員長代理退席、委員長着席〕
  18. 清水勇

    清水委員 時間も余りあるわけではありませんから、この物価問題については一ぜひ別の一般質問の際に少し掘り下げて、詳細にお尋ねをしていきたいというふうに思います。  そこでいま一つお尋ねをしておきたいことは、最近、七日でしたか、日銀総裁が記者会見の中で、俗に言うM2の過剰流動性などとの兼ね合いで、土地の投機といいましょうか、これらを通じて地価の高騰といったような傾向が出ている、金融引き締めとまでは言わないけれども、多少将来そういう措置が必要ではないかといったようなニュアンスの示唆を感じたわけです。まあ日銀は日銀として対処してもらえばいいのでありますが、そういう傾向というものは、つまり過剰流動性といったものが生み出す傾向というものは、やはりインフレ懸念を国民に与えることは避けられない。また先ほど来申し上げているような、公共料金だとか、やれイラン情勢を踏まえた石油価格だとか、一々例を挙げる時間もありませんが、そういうものを趨勢として見てきた場合、五十四年度の消費者物価を四・九%に抑えるということは非常にむずかしいのじゃないか、不可能と言っては言い過ぎでありましょうけれども、それに近い困難さがあるのじゃないかと私は思うのです。  そこで、もし仮に見通しに狂いを来したような場合、具体的に何か新しい物価政策といいましょうか、手だてをお考えになられるつもりであるかどうか、お聞かせを願っておきたいと思います。
  19. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま御指摘のような事態が特にわれわれの目につき始めたのは、この正月からでございます。もう少し言うならば、十二月時点で少し何か景気が温まってきたなという感じ。これは、物価というものは、委員も御承知のように、やはり民間経済の活力の表現みたいなものでございます。われわれはこうしたものを見たときに、これは少し景気がよくなってきたなと思うと同時に、これは物価もと思ったときが、ちょうどわれわれが土地に目をつけ、あるいはまたその他の物資、建設資材値上がり等が非常に目立ってきた時点でございまして、ただいまの日銀総裁の土地に対する融資についてということは、これはもちろんその前の閣議におきまして私らから発言をし、大蔵省としてもその問題について、土地融資については特に今後は十分注意をしていこうということになったことを受けてのことでございますが、われわれいま考えておりますことは、総合的な計画をまず立てていく。御指摘のようにM2なんというものは、日本の現在の財政運営の中では、公債をあれだけ出さざるを得ないという状態でございますので、これが消化できるかできないかということに最大の関心がかかっています。消化を促進するということが、単に技術的な問題よりもインフレ的な傾向を国民に与えないというためにも、それらのものを一括して、総括的な、総合的な政策を立てて、そしてここ二、三カ月は注意深く物価動向を監視していく。そして結論的に申し上げるならば、四・九%程度消費者物価上昇の限度にひとつ食いとめたいということを努力してまいるつもりでございます。
  20. 清水勇

    清水委員 いずれにせよ、物価上昇というものは国民生活にとって非常に深いかかわり合いがあるわけでありますし、また、この運営のいかんでは景気政策に直接連動していく、そういう性格を持っているわけでありますから、政府は臨機応変といいましょうか、危険が感じられる場合には機敏に行動をとっていただくように、強く要請をしておきたいと思います。  さて次に、最近しばしば両大臣雇用の安定ということを強調されております。当然と言えば当然なことなんでありますが、そこで、雇用問題について若干お尋ねをいたします。  いずれにしても、雇用の改善を図るという課題を立てておられるわけでありますが、にもかかわらず、経企庁は、五十三年の見通しが最終的に失業率二・二%、百二十万前後の失業ということでおさまるのでありましょうけれども、それにもかかわらず、改善を口にされながら、五十四年度の見通しとしては失業率二・三%、完全失業者百三十万人という想定をなさっている。どうもその辺に私は納得のいかない実感を持つのでありますが、どういうことなんでありましょうか。
  21. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 五十三年度、ことしの三月まででございますが、この十二月、一月の雇用状況を見ますと、大分改善されてきております。有効求人倍率も高まっておりますし、また製造業等におきましても新しい雇用がふえておるというようなことで、傾向としては非常によろしいのでありますが、これは季節調整をいたしまして出した数字が百二十七万強で、二・三%の完全失業率という計算をしておるわけであります。この理由は、就業者数は、労働力調査によりますと、五十三年の四月から十二月までにおいて前年同月に比べて一・五%、六十六万人ぐらいふえておりますが、この期間に労働力人口も一・五%ふえて、八十一万人増加を見せております。この内容は、中高年と女性のものでございますが、こうしたことで遺憾ながら、実数は少しずつよくなっておりますけれども実態はよくなっておりますが、五十三年度として見た場合の季節調整値は、いま申し上げたような二・三%の数字にならざるを得ない。  五十四年度でございますけれども、われわれはもちろん非常に努力をしなければなりませんが、やはり同じような経済の落ち込みがなお続く、それほど景気が急にぱっとよくならないということを考えておりますが、就業者数も、就業希望者でありますか、やはり五十四年度は前年比一・二%、六十五万人ぐらい増加する。われわれ努力して、六十万人程度の就業をやろうじゃないかということでございますので、結局残高が残ってしまう。それで二・三%ということであります。しかしこれは五十四年度ですから、来年の三月までの様子をよく見ていかなければ軽々には申せないと思いますが、いまのような少しずつ民間の活力が出てまいりますと、やはり失業率はこうした計画よりも下回っていくというふうに期待をし、努力をし、またそれなりの方法を現在労働省及び内閣においても、いろいろな手を使ってできるだけ雇用の増大を図るという方向で努力をいたしているところであります。
  22. 清水勇

    清水委員 さて、少し具体的に通産大臣に承りたいことがございます。  私は、最近大臣が記者会見でしたかどこかの場所で、企業の減量経営について厳しい発言をなさっておられる、大変結構だと思うのです。というのは、たとえば石油危機以来、四十八年から五十二年くらいまでの数字しか出ておりませんけれども、製造業を見てみると、四十八年度時点で千四百五十九万人の就労者がありましたけれども、これが五十二年度には千三百三十九万人に減少をしている。これは何といっても高成長時代から低成長時代へ移行するという過程で、減量経営が強力に推進をされる。その結果、いわゆる合理化、雇用縮少、なかんずく中高年層に犠牲がかかる、こういう傾向が深刻に起こってきていると思います。  そこで、最近、たとえば金融機関筋の見方を見ても、製造業における投資機運というものがある程度出てきている。だが、しかし、その中身はどうかというと、ほとんどすべてと言っていいくらいが合理化投資という傾向がある。いよいよもって投資を通じて、さらに中高年層を企業の外へ吐き出していくというような傾向がうかがわれる。これを放置しておいては、雇用の安定というようなことを幾ら言ってみても、これはまさに口頭禅に終わらざるを得ないというふうに思いますので、大臣発言を私は結構なことだと思っておるわけですが、問題は具体的にどうなさるのか、お聞かせをいただきたいと思うわけであります。  ついでですが、申し上げると、労働省が最近、企業が中高年雇用率六%を守らない傾向が非常に強い。とりわけ大企業に多い。そこで大企業の六百社程度を抽出して、六%の雇用率を達成させるということを聞かない企業は、社名を公表して社会的に制裁をするなんというようなことを言われている。これはこれでやってもらわなければなりませんが、残念なことに、企業サイドで見ると、どうも労働省に対しては冷ややかな態度しかとらないというような傾向がある。これは非常に正しくないことなんですけれども、そういう傾向がある。それに引きかえ通産当局に対しては、産業政策等々を通してかかわり合いを感じているわけでありましょうが、非常に注意深く言うことを聞こうというような姿勢が企業の側にうかがわれる。そういう現実の状況があるわけでありますから、私は、雇用問題は労働省の所管だなどということではなしに、この際やはり通産省としてもこれに積極的に対応していく、あるいは企業に対する指導を加えていく、こういう決意が示されてしかるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  23. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点はきわめて重要な問題だというふうに私は認識します。お示しのように、ここに私手持ちの資料でも、石油ショックの始まりました年の製造業千四百四十三万人、これが五十三年では千三百二十六万人に減っておる。いわゆる減量経営が人の整理というような形で、百十七万人四年間のうちに減員しておるという統計があらわれておりますね。これはやはり企業というものが自由経済だからといって、簡単に希望退職という、名目はどうであるにしろ、首切りを行っては困ると思うのです。やはり雇用の維持、雇用の創出、こういったものの社会的意義というものを企業経営者は十分考えてもらいたい。これはもう私ばかりじゃなくて、歴代の通産大臣がしきりに業界に対して声を大にしてきたところであります。もとより企業が人員整理をするといいましても、これはやはり労使間の話し合いということが最前提でなければならぬことは言うまでもありません。  そこで、いま御指摘の、もっと労使というものを一体的に考えたらどうか、その点私は同感なんです。大体企業というものは経営者と労働者によって成り立っておる。企業の方をリードしたり相談を受けたりというのが通産省、労働者、勤労者の側を担当するのが労働省というわけですが、実は一月の、日にちはちょっと失念しましたが、中旬に、労働大臣を初め労働省のスタッフ、それから私を初め通産省の関係局長、十数人が一堂に会しまして、とりあえず来年度予算における両省側の考え方、それからまた予算措置、財政対策、こういったものについて詳細に実は情報交換をしたところであります。そうして、それをただ一回の集まりに終わらせないで、今後も情報交換と同時に、労働対策について通産省側としてもよくよく協調をしていこう、また同時に労働者と密接不離である労働省側も、こういう時代であるだけに、やはり高能率、高生産合理化、こういったことは職場において度外視できませんね、先進国として生き残っていくためには。そういう面には勤労者の側も十分理解を示してもらうことによって、労使が本当に協調体制をとろう、口だけじゃなくて、現実にそういう体制をとっていこうという基本を固めていこうじゃないかという話し合いをしたわけでございます。今月もいますでに中旬ですが、まだ日ははっきり決めておりませんが、下旬を目指しまして、一度製造業を中心とした経済関係団体に集まってもらって、企業の雇用の維持、また創出、こういった面に積極的な協力を願う場を、ただに労働大臣だけでなしに、私の方からも出まして、また企業には企業でいろいろ困難な事情がありましょう。そういったことをひとつ率直に承りながら、話し合いの場面をつくりたいなということで、いま両省間の事務当局が相談をしておるわけであります。これは、いまあなたの志向される方向に一歩を進めるものというふうに私は考えております。
  24. 清水勇

    清水委員 いずれにしても、最近の傾向としては中高年層へ大変な犠牲がかぶさってくる。このことは、単に減量経営メリットというものを追求するのでありましょうけれども、長期的に見ると、企業側にとって私は大変なデメリットという結果が招来されるのじゃないか。たとえばニクソン・ショックのときにも日本の企業は非常に強いと言われた。その強さは、言ってみればどこに背景があったかといえば、それはいろいろの見方はありましょう。ありましょうけれども、やはり一つは日本雇用形態の特徴ともいわれるたとえば終身雇用制、これがある意味で言えば、そういう危機に立つと企業において労使という立場を越えて、時には集団的求心力といったような機能を発揮する。ところがいまのように、やれ減量経営だといって、次から次へ長い間企業に貢献をしてきておる中高年層を吐き出していくというような施策がまかり通るということになりますと、日本の企業が持っているこれまでの強さというようなものを結果的に失うのじゃないか。これは一時的なメリットを追求して、長期的に見れば大変なマイナスを生み出すのじゃないか。これは一企業に任せておける性質のものではなしに、わが国の将来の経済とか産業とかというようなものを展望しながら、やはり雇用のあるべき方向というものを、通産省としても大いにひとつ強調をしていただかなければならないのじゃないか、こう思うのですが、一言だけで結構ですが、大臣の所信をお聞かせ願いたい。
  25. 江崎真澄

    江崎国務大臣 社会的な意義を経営者側に認識してもらうことはもとより必要なことだと思いますが、通産省としてはその企業に活力を与える、これがなければいけませんね。そこで、今度のエネルギーの問題などでも、節約はしなければならぬが、通産政策として大口規制は当分やらないということで、汗をかきながらでも臨んでいこう、これなどもやはり雇用と密接不離の関係に立って配慮をしておる。とにかく一口で言うならば、企業に活力をどう与えていくか、これは大事な問題だと認識しております。
  26. 清水勇

    清水委員 さて、そこでさっきの長官説明を聞きましても、五十三年度において数十万、厳密に言うと六十一方前後の就労増というものを確保できた。これはこれで私はいいと思うのです。ただ問題は、手放しでそのことを評価できないのじゃないか。中身が問題だと思うのです。御承知のように常用雇用というものが昨年も大変減少した。これにかわってふえた部分はパートと呼ばれる不安定雇用層なんです。あるいは過去三、四年の推移を見てもそうですけれども雇用増の大きかった分野というのは、たとえば卸だとか小売だとか飲食店だとかパチンコ屋を中心としたサービス業、特に小売とか飲食店などというのは、過去四年に約一七万軒もふえておるわけですね。しかし皆従業員規模は二人ないし三人という零細規模、そこへ仮に雇用増といいましょうか、就業増があったといっても、これは雇用の安定というものをストレートに意味しない。ある意味でいえば、不安定雇用層がそれだけ増大をしたということで受け取めていかなければいけないのじゃないか。ですから、そういったようなことを考えると、水が低きに流れるような方向に、安易にその推移を見るというのではなしに、将来のあるべき経済の方向を描きながら、経企庁あたりでこれから求める雇用構造というものは那辺であるかといったようなことを追求をなさるべきじゃないのか、どんなふうに御所見を持っておられるか、承りたいと思います。
  27. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 雇用問題でございますが、五十三年度の労働力人口は五千五百五十五万人です。五十四年度にはこれが五千六百二十万人ぐらいにふえるであろうという予定にしております。就業総数が五十三年度で五千四百二十五万人で、これを五十四年度には五千四百九十万人に持っていく、それでやっと二・三%のつじつまが合うわけであります。  まず第一に、現在の日本の抱えている労働力人口というものは大変に巨大なものだということです。西独なんかに比べれば倍でございますね。こうした巨大な労働力人口を合理的に配分し、しかもそれが雇用の安定と生活の安定につながるということを考えた場合に、それが大きな産業政策と申しますか、構造政策につながってこなければ安定は得られないのじゃないか。これは皆様方もいろいろな面で御指摘いただいておりますが、これからの雇用が、パート的な、一時的な、いわゆる不完全雇用と申しましょうか、こうしたものに頼る政策を早く切りかえて、もっとこれから国民のニーズに合う方向に組織がえをしていく、これが非常に大きな産業構造と申しますか、日本の構造変化につながるものだと私は思うのです。そうした面から、昨年の末から企画庁におきましては一応第三次産業と称するもの、各省担当してやっておりますが、これを全部集めていろいろと検討してみました。  結論を申し上げるならば、われわれはこれから雇用の新しい創出部面を、福祉部門の拡充に置きたいという方向をいま練っておるところでございまして、これにはいろいろな面で、予算の配分等も今年は間に合わないといたしましても、来年度からはこうした日本の構造変化というものと雇用というものを色濃く結びつけていくということが第一点。  第二点は、非常に有能な技能工がたくさんおるわけであります。特にいま先生御指摘のような、中高年の人たちの職場がなくなってきたというようなことは、同時に非常に有力な技能の人を工場の外に去らせるということでありますから、こうした技能のある人々に対してまだまだ働いていただく余地がたくさんある。これには、たとえば政府のやっております公共事業等において、特にこうした方々に活動してもらうということを、さしあたりの問題点として追求してまいりたいというふうに思っております。
  28. 清水勇

    清水委員 いま、今後の雇用構造を考える場合に、福祉部門にということを言われたわけで、私はその点同感なんです。とりわけ最近の福祉向上志向というものが国民のニーズになっているわけですし、わが国のレベルは非常に低い。この部分雇用率も、アメリカなりEC諸国と比較をしても非常に落ち込んでいる。ですから、この辺に新規雇用を開拓する、こういうことのためにひとつ力いっぱいの努力を払っていただくように要望をして次に移りたいと思います。  さて、時間も残り少なくなってまいりました。エネルギー問題についていろいろお尋ねをしたいことがございますけれども、私は、新エネルギーの開発にかかわる資金対策の関係にしぼって大臣の所信を承りたいと思います。  いずれにしても、通産当局は新エネルギーの開発を強力に推進をするという立場で、サンシャイン計画推進本部であるとか、あるいは在野の知能も集めていろいろな調査会や委員会を持たれるとか、努力をなさっておられるわけであります。しかし現実には資金の裏づけがまことにりょうりょうたるものであるというふうに私は思わざるを得ない。  そこで最初にお尋ねをしたいのですが、最近の主要国における新エネルギー開発予算、全部言ってもらうと時間がかかりますから太陽だけで結構ですが、どういう状況であるか、まずお聞かせを願いたいと思います。
  29. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 お答えいたします。  たとえば太陽エネルギーで申し上げますと、五十三年度の予算日本では二十億でございまして、これに対しまして、アメリカでは二億二千万ドル、西独におきましては三千万マルク、フランスにおきましては二億五千万フラン、イギリスにおきましては百七十ポンドというような数字が出ております。
  30. 清水勇

    清水委員 ドル、マルク、フランというような言われ方をするのでにわかにあれですけれども、しかしこれを円に換算をするとアメリカが四百四十億、西ドイツが三十億ですか、フランスが百二十億でしょうか、いずれにしても日本に対してアメリカのごときは二十二倍、フランスも六倍。さらに石炭エネルギーなんというのを見てみますと、特にわが国はアメリカなり西ドイツやイギリスなんかと比べても、いまの太陽の比率よりもまだ落ち込んでいる。わが国のエネルギーというものは、もう大部分が輸入によって賄わざるを得ない。需給関係が非常に悪い。しかし、アメリカでも西ドイツでもあるいはイギリスあたりでもそうですが、わが国と比べるとその需給関係はかなり優位に立っていると見てもいいんじゃないか。ところが、優位に立っている国が、物によってはわが国の二十倍、三十倍というような予算を計上して、それこそ一生懸命に新エネルギーの開発に当たっている。わが国は相変わらず大事だ大事だと言いながら、実験、研究段階なんというようなことを重ねていて、いささかもこれが実用化へ進まないというような感かなきにしもあらず。特に太陽熱利用のソーラーハウスなんというのは、八〇年度からできれば実用化をしたいというふうにお考えになっていたと思うのですけれども、結局思うように進まないんじゃないか。  そこで、実力ある江崎通産大臣なんですから、こうした資金計画、昭和六十年までに七千四百億は必要だと言っているわけでしょう。ところが、もうその一割にも満たないという程度予算しか組まれていない。これでは私は、口先で言われるだけであって、さっぱりエネルギーのことを心配なさっておらないんじゃないか、極端ですけれどもそう言わざるを得ない。特に資金問題について、ひとつ大臣の見解を承りたいと思います。
  31. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点は、経済大国と言われるだけに、国際的に一体どういう努力をしておるかという見地から言っても、非常に予算措置においては乏しいものがあるというふうに私も思います。ただ、問題なのは、乏しい中でもどれくらいの研究の成果が上がるか、これも大事な点ですね。そういう点では幸いわが国の研究はおかげでだんだん進んでおります。五十三年度までにサンシャイン計画そのものも二百六十億円の国家資金が投入された。すでに主要なプロジェクトについては基礎的研究段階から、もうプラント開発の段階に進んでおる、こういうふうに聞いておるわけです。これはぜひやはりどんどん進めてもらいたいものでありまして、いま手元の資料によりましても、五十三年度総額としては乏しいということではありまするが、今度、五十四年度は五十三年度予算の約五割増し百二十億円を計上しておるわけです。先ほどの各国比率から言えば、これも微々たるものだと言えばそれまででありまするが、今後もこの需要の増大が見込まれまするので、受益者負担ということも考慮に入れながら、資金源を確保、調達していくという方向であります。  ちなみに五十四年度の予算政府原案を申し上げますると、一般会計では七十億五千九百万円、十九億三千五百万円、約百二十億円、こういうことになるわけでございまして、今後とも十分御趣旨の線を体しながら、私ども予算措置については熱意を傾けて、大いに予算化するような努力を図りたいというように考えます。
  32. 清水勇

    清水委員 時間がなくなりましたので、最後に要望を申し上げて終わることにしたいと思いますが、工業技術院を中心にスタッフが大変な御苦労をなさっている、その成果を着々と上げつつあるということは私もよく承知をしている。ただしかし、先立つものがないためになかなか思うようなところまでいかない。それからいま大臣は、五十三年度予算に比べて五十四年度では五割増しの予算を組んだと言うけれども、これはもとが低いから、五割増しと言われてもいま言われた数字にしかならない。いずれにしても新エネルギーの開発を重視するという立場から、総合エネルギー調査会等でも、六十年度までに七千四百億の資金というものは必要不可欠である、こういうことを言われておりながら、いまの御説明のとおり五十三年度までで二百六十億、新年度分を足しても四百億に欠けるという状況積み残し分が七千億もある、こういうことでは、プラント段階に移行する時期にあるものは来ていると言ってみても、なかなかこれは実用化をしないのではないか。私は別な、一般質問か何かの機会にソーラーハウスに対する税法上の優遇措置であるとか、あるいは交付金の助成措置であるとか等々についてもお尋ねをしたいし、また意見を申し上げたいと思いますが、ぜひひとつせっかく言われるとおり、思い切って予算措置については努力をしていただきたい、こういうことを重ねて希望を申し上げ、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  33. 橋口隆

    橋口委員長 田口一男君。
  34. 田口一男

    ○田口委員 まず通産大臣にお伺いをいたしますが、最近の経済新聞、新聞の経済欄などを見ますと、先ほども質問がありましたけれども景気がすでに回復過程に入った、こういう表現をする新聞もありますし、きのうの大臣所信表明を伺いますと、緩やかながら回復過程に入りつつある、いずれにいたしましても明るい徴候が見え出してきたということは言えると思うのです。  そこで、こういったように一ころ大変青い顔をしておった業界が、景気回復でやや明るい顔になってきたというその根拠を一体どうとらえておるのか、景気上昇の根拠というものをまずお示しをいただきたいと思います。同時に、同じような言い方でありますけれども、順調な景気回復を示しておるその中身を分析した結果、どういった問題があるのか、こういうことについてもひとつお聞かせをいただきたいと思います。  これは、今月六日の朝日新聞にこういう表現が出ておるのです。日清紡績の山本啓四郎社長は、長期不況に悩んだ繊維業界の最近の景況について、紡績、織物については景気はよいと言って差し支えないと言い切った、こういう新聞記事も出ているのですけれども、このことで、私がちょっと市況が回復した業種を見て気のつくことは、去年まで構造不況産業、構造不況業種と言ってきたような産業、業種が、いい悪いは別にして、この景気回復の中に頭を出してきておる。造船以外の産業、たとえば合繊の場合には前年対比一〇・六%、紙・パルプにつきましては前年対比六・六%の伸びを示しておる、こういった数字を見るのですが、大臣、さっき申し上げましたように、順調な回復を示した原因は何なのであるか。さらに、その中に構造不況業種が見えておるけれども、言うならば、昨年成立を見ました特定不況産業安定臨時措置法というものの一連の産業政策がもうはや功を奏した、こういうふうに見ておるのか、この辺のところをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 江崎真澄

    江崎国務大臣 政府は、財政事情のきわめて困難の中にも、たとえば昨年度は実質三七・六%程度の公債を発行しながらも景気浮揚策をとってまいりました。ことしもまた三九・六%、まさに四〇%の公債依存度。予算の総領に比べて、公共事業費などは二二・五と言っておりますが、これは去年の三四・五%増の、そのまた二二・五%増ですから、大変な財政主導型の景気浮揚、景気維持政策というものを活発にとってまいったわけであります。こういった呼び水的な措置は、やはり経済全体に大きな影響をもたらしたのではないか。財政的には非常に苦しい思いをして政府は対処しておるわけでありますが、その間に企業の合理化は進み、減量経営は進み、今日ようやく低成長時代、安定成長時代に合うような企業体質に近づきつつある。  一方、構造不況業種などにつきましては、通産省を中心にきめ細かな配慮をしておることは御存じのとおりでありますが、それにも増して、企業全体があの石油ショック後、四〇%程度赤字基調であると言われておったものが、消費者物価卸売物価にいまの円高メリットが大きく影響したと同様に、企業の体質改善にも貢献をしておるわけであります。それから一方では、御承知のとおり政府は、史上最低と言われるくらいの低金利政策を続けて今日に至っております。これなども企業の体質がだんだん改善される上に大きく役立ったものである。  そのほか、数えればいろいろありますが、くどくなりまするから差し控えまするが、そういうことで所期の目的は大体達成されつつある。政府が悪い財政事情にもかかわらず、汗をかきながら景気浮揚を図ったり、構造不況業種に対するいろいろな助成、奨励措置をとってきたことの効き目が着実にあらわれてきた、こう言って差し支えないというふうに思います。
  36. 田口一男

    ○田口委員 その辺のところ、もう一遍後で具体的にお聞きをしたいと思うのです。  次に経済企画庁、大臣に私は要求をしてないのですが、同席ですからお答えをいただきたいと思います。  経企庁が今月七日に新聞発表いたしました法人企業投資動向調査、これは昨年十二月の調査であります。これによりますと、石油危機以来低迷していた製造業の設備投資も底を打ち、上向きに転じたものと言えよう、こういうコメントを付しております、それから、一−三月の機械の受注見通しの発表を見ますと、やはり前期に比べて六六・三%増という数字を言っております。同時に、一−三月の製造業の在庫投資見通しを見ましても、マイナス二千十七億と、在庫を減らしておる。こういった、言うならば経済界にとって大変明るい数字がそれぞれ発表されておるのです。  また、それを受けて、二月十三日付のエコノミストに、稼働率も上昇に転じた、昨年十一月の製造業の稼働率指数を見ても「十一月の前年同月比は六%ポイントの上昇である。」こういったことを言っておるのです。  私は、このいい傾向ということから、いま通産大臣お答えになったように、諸般の施策がそれぞれ総合的に功を奏してきた、こういう見方に立つならば、一体雇用の面にこれがどう影響してくるだろうか。かつて、昭和三十年代のように、投資が投資を呼ぶというふうなことは今日望むべくもないにしても、いま言ったような対前年比の指数がそれぞれ伸びてきておる、これが雇用にどう響くのか、どう影響を及ぼすだろうか、これをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 佐々木孝男

    ○佐々木(孝)政府委員 ただいま御指摘のございました経済企画庁調べの法人企業投資動向調査、これは五十三年十二月の調査でございまして、五十三年度の設備投資額の実績見込みが、前年度比一七・五%という数字になっております。この調査は、十月−十二月につきましては実績の見込みでございまして、一−三月につきましては見通し、こういう性質がございます。  先ほどもう一つ御指摘いただきました機械受注の伸びも見通しでございまして、これまでの傾向でございますと、各会社はそれぞれ年度計画がございまして、どうもその分が年末にしわ寄せするというような傾向がありまして、そのためにこの数字が全部そのまま実現するという性質のものではございません。なお今後の推移を見守る必要があろうと思います。  しかし、ほかの調査をずっと見てまいりましても 昨年の春ごろから設備投資は着実に増加している。しかし、その内容を申しますと、電力を中心といたします非製造業の設備投資が中心でございます。こういうところから雇用にどういう影響があるかと申しますと、これは二つの面があろうかと思います。  一つは、いま設備をつくります投資財メーカーに対する需要でございます。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 この点につきましては、この設備増資関連の業界は、石油危機以来非常に落ち込みが大きゅうございまして、まだ十分回復していない。そういう点から余剰生産力もまたかなりございまして、いま申しましたように、仮にいま二けたの設備投資が実現するといたしましても、高度成長期に見られましたような雇用に対する波及効果というものはないものと考えております。  もう一方の雇用の面でございますが、これはいわば設備投資をする側でございまして、これにつきましては昨年来続いております非製造業の設備投資がふえております。御承知のとおり、非製造業におきましては、むしろ雇用吸収率の高い産業でございますから、こういう産業が実際、設備投資の段階じゃなくて、営業活動をするというようなことになりますと、その効果というものは労働市場の改善にかなり寄与するものと考えております。
  38. 田口一男

    ○田口委員 いまお答えいただきましたように、景気動向が明るくなってきておるとはいうものの、雇用にはすぐに結びつかない。そこで、こういう言い方、見方もできると言うのですね。これは先ほど清水委員質問に対するお答えにもあったと思うのですけれども、今日の市況回復が大きくなってきたのは、結局、公共事業の面もあるでしょうけれども、はっきり言って不況カルテルや減産、こういったことによって供給量が制限されてきたためではないのか、企業が明るい顔をしてきたのは。  そこで、以下三つほど大臣お尋ねをしたいのですけれども、意見を含めて申し上げますと、第一に、いま言ったように、市況回復の一大要因は減産、減量経営にある。換言をいたしますと、労働者の大量離職ということによってつくられたものだと言っても言い過ぎでないと思うのですね。言うならば、昔のことわざどおり、一将功成って万骨枯るという状態が、今日の市況回復ということの一面を示しておるのではないか。ですから、完全雇用の維持ということが国の経済政策の最大眼目であるとするならば、これは日本経済全体を見て、一企業が経営危機を回復したけれども雇用は依然として問題を持っておるということは余り好ましいことではないのじゃないか。一方は笑顔、一方は青息吐息、労働者の方は。そういう状態でありますから、これは好ましいことではないと思うのですが、完全雇用の面からいってどうなのか。  それから第二番目の問題は、きめ細かい指導をやってきておると言われます特定不況業種の扱いなんですけれども、この安定臨時措置法というものに対して、今日一部の業界の中で不協和音が目立ってきた、これは否定できないと思うのですね。こういうふうに締めつけたから、減産をしたから、設備廃棄をしたから業績が回復をした、これならばおれのところもひとつもう一旗上げようじゃないかという傾向が出てきておると思うのです。となると、昨年立法いたしました特定不況産業安定臨時措置法の精神からいって、もとのもくあみということになりはしないのか。ですから、きめ細かいという表現を使ってはおりますけれども、いまのまま自由経済だということで、業績が回復することはいいことだといって手を緩めたならば、ことしか来年の早々には、もう一遍特定不況産業安定臨時措置法を立法した当時のような状態に逆戻りをするおそれがあるのではないか、こういう点についての見通しをお聞かせいただきたいと思います。  それから第三番目は、経済企画庁物価局長にお聞きをしたいと思うのですけれども物価安定の立場から、この市況回復ということをどうつかんでみえるのか。角をためて牛を殺すという言い方があるのですが、余り市況回復を野放しにしておくとインフレにつながる。といって、ここで締めてしまうとまた沈んでしまう、これは日本経済の特質だと思うのですけれども物価安定という面から、今日の市況回復をどのように見ておるのか、どういう手を打とうとしておるのか、これをもう  一度お聞かせをいただきたいと思います。  以上、三つです。
  39. 江崎真澄

    江崎国務大臣 先ほど申し上げましたように、各種のいろんな要因が作用しまして、景気はどうやらだんだん明るさを取り戻しつつある、それは不況カルテルによるものではないか、もとよりそういう影響もありましょう。ありましょうが、これは昨年の時点で独禁法に基づく不況カルテルが十二業種あったものを、もう半数の六業種に縮めて、やはり実情に即応した形で手を打っておるわけです。したがって、これが不当な値上がりを誘うということには厳しく注目いたしておりまするので、今後ともそういうことのないような配慮はしていかなければならぬと思います。  それから、雇用情勢、決してよくないことは私どももよくわかります。ところが、十二月の完全失業者数というのは百十六万人、完全失業率二・二〇%、前月の二・三一%に比べますると、わずかではありまするが改善は見せておるというわけであります。したがって、ただに企業の減量経営ということが首切りだけではない。これはやはり私ども今後とも企業にも力をつけるような努力を続けなければならぬ。それには御承知の内需の振興を図る。今度の予算編成の方向もそれに合致しておるわけですね。  問題は油の行方なんです。しかし、それもほとんど外国に仰ぎながら、なお景気の問題、雇用の問題ということを配慮しながら、買いだめ、買いあさりをしなければ、当面心配は要らないということで、政府としては国民に節約を呼びかけながらも不安の解消に努めておる。これも間接的には雇用対策の重要な一環としての発言であり、政府の方向明示であるというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。  そして、なお、当省としては、御質問にありましたように、構造不況対策あるいは中小企業対策、特定不況地域対策というような方面について、言葉だけでなしに本当に役に立つ対策をきめ細かに措置する、これは目下の重要な産業政策の一環としても、その責任は果たしていかなければならぬというふうに考えております。
  40. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 最近の商品市況上昇は、いろいろ原因はあるかと思いますが、コスト面からいいますと、海外物価が上がってきているということ。それから、従来円高でございましたのが一服して、その上昇がストレートに出てきているということもございます。それから、トラックの過積み規制の強化に伴うものがございます。それから、需要面ではやはり需要が堅調化するということで、需給の改善がそれに伴っているということではないかと思いますが、こういう商品市況上昇というものがさらに長く続きまして、そしてこれがインフレマインドを醸成するというようなことは警戒しなければならないと思います。  当面、私どもとしては商品市況を監視していくという立場をとっておりますが、特に建設資材等につきましては、政府部内にいろいろその監視の体制ができております。それを通じて価格の動向を見まして、適時に対策を打っていくということかと思いますが、たとえば合板などの場合におきましては、一月末に農林省の方で保有しております備蓄を放出したことによりまして、やや鎮静化しているということもあります。そういう点、十分配慮しながらこれからやっていきたいと思います。
  41. 田口一男

    ○田口委員 私は、景気動向とそれに直接結びつく雇用の問題にしぼってお尋ねをしておるのですけれども、先ほども新聞の切り抜きを引用いたしましたように、日清紡の社長が景気よい繊維業界、こういう新聞記事がありましたから言うんじゃありませんけれども、東京、大阪、名古屋の三証券取引所に上場している全企業の中から、累積赤字を背負っている企業、その中でも繊維関係を取り上げてみますと、これは東洋経済の統計月報に載っておった数字なんですが、昭和四十九年度から五十二年度までの間に、繊維関係のいま言った上場企業で一体何人離職をしておるか。端数は省略をしますが、ざっと五万人離職をしておるわけですね。その五万人離職をした繊維業界が、くどいようですけれども、もう景気回復をした。もちろん離職者だけで企業の経営改善ということじゃないでしょうけれども、利子の問題、その他いろんな問題を努力をしてなったということは認めますけれども、やはり繊維業界だけで五万人になんなんとする失業者、この上に今日の業績の回復ということのあったことは否定ができない。しかも、その五万人の離職者が繊維だけでいるのですよ。他に職を求めて安んじて生活をしておるというならばいいでしょうけれども、もうこの三月、四月には雇用保険の日が切れる、給付が切れる、こういう状態の上に、企業の経営回復が来たからいいんだということは手放しには喜べぬじゃないか。ここを私は、一将功成って万骨枯る、こういう表現をするわけであります。  こういう状態が定着をしていく、減量経営というものが定着をしていく、これは日本経済全体から見て好ましいことではないと思うのですね。企業に明るい見通しがついてきた、労働者にも明るい見通しがついてきたと言えるような状態にするにはどうすればいいのか、そこのところを私は重ねてお伺いをしたいわけです。
  42. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、全般的に最近景気回復をしておりますけれども雇用情勢は、新規の求人倍率等で若干の改善は見られますけれども、まだ全般的に厳しい状況にございます。中でも御指摘の構造不況業種につきましては、厳しい情勢が続いているわけで、たとえば従業者の数で申しまして、一番新しいときをとりますと、ただいま御指摘の繊維産業では、依然として前年同期に比べてマイナス五・八%、あるいはアルミ関係の産業では、同じく九月の数字でございますが、前年に比べて五%、特に不況が厳しい船舶の関係では、ことしの六月は一年前に比べて二一%減っているというような状況でございます。  ただし、最近景気回復してまいるにつれて、産業別に若干でこぼこはございますけれども、これらの構造不況業種の生産におきましても、船舶等は特殊でございますけれども、だんだん回復状況が見られております。そういうことを受けまして、新規の求人数でも造船の方はまだ減少が続いておりますけれども、従来、大幅な減少を続けておりました繊維産業でも、若干求人がふえてくるというような状況にはなっております。しかし全体的に、御指摘のように特に不況業種においては、雇用情勢は厳しい状況が続いておるわけでございます。これは御指摘のように、企業の減量経営がかなり長く続いているわけでございます。しかし景気にもようやく回復の兆しが見えているわけでございまして、こういうことで企業の方にも活力がよみがえってくる。雇用調整というのがそういう意味では一段落してまいるというふうに考えております。
  43. 田口一男

    ○田口委員 それで今度は、通産省の産業ビジョンに関連をして、いまの雇用からちょっとお聞きをしたいのですが、私は今日の雇用状態を見て、仮に構造不況産業が一時的に景気がよくなっても、減量経営ということが定着をしていくだろう。そこに大きな雇用増ということは期待ができない。となると一体どこに雇用を創出すべきか。これを早急に、政策的にもまたいろいろな手段を講じて、そういった新しい雇用を吸収する産業を育てていかなければならぬ。その場合に第三次産業とよく言われるのですけれども通産省の方で第三次産業と一口に言いますけれども、一体どういう産業に新しく雇用を吸収できるであろうと望んでおるのか、そこのところをずばりお聞かせをいただきたいのです。  たとえば最近政府から出しておるいろいろな資料の数字を見ますと、第三次産業はこういうことで期待できるだろうと言っておるのですけれども、所得が伸びたからサービスの需要も伸びてきた、それに対応する産業がふえる、これはいいと思うのです。しかし、今日の不況の中で、所得の向上に伴ってサービスの増ということは多少停滞をしております。  それから二つ目は、社会的分業ということが進んでまいりましたから、いままで同じ会社でやっておったいろいろなリースであるとか、建物の管理であるとか、情報の部門であるとか、こういう問題を全部分けてしまって、そこに新しく第三次産業として労働者を雇用する、こういうことも言われております。  そして三番目には、去年の政府の方針で大々的に打ち上げられております第三の道、教育、医療、福祉、こういうところにこれから雇用が吸収できるんじゃないかと言われておるのですけれども、一面、通産省の方でどう見ておるか、ここを聞きたいのですが、いまの日本のこれからの労働力の内容は、いわゆる高学歴化、学歴が高くなっている。それから当然にホワイトカラーを志向する、そして三つ目は高齢化する、こういう労働力の中身を見た場合に、いま言った第三次産業の三つの方向にこれがうまいこと行くだろうか。どこを探しても出てこぬわけですね。高学歴だから、社会的分業のリースだ、情報だ、不動産の管理だということはいいだろう。ところが年寄りはだめだ、こういう面がありますね。教育、福祉、医療の面でこれから人をふやしていかなければならぬ。大いに結構です。ところが中高年の者は向かない。あれやこれや考えますと、第三次産業待望論というものが盛んでありますけれども、どうも言うだけに終わってしまうのではないか、そうして、それを無理をすると、不安定雇用をふやすことだけになってしまうのではないか、こう思うのですが、通産省としては、将来ではなくて、ここ二、三年を見通して、第三次産業に雇用を吸収しようとする確たるものがあるのかどうか、これを事務当局としてどういう作業をやっておるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 お答えをいたします。  いわば、今後の雇用の吸収先を第三次産業に期待しているけれども、それの実態はどうなのか、また、それに対して相当自信を持てるのかという趣旨のお尋ねと思います。産業構造審議会が五十三年度の長期ビジョンを出しましたときに、いま御指摘のように、長期的な展望の中で第三次産業へ雇用吸収先を求めたい、求めるべきだという答申が出されているわけでございまして、この場合は、先ほど大臣が申し上げましたように、最近の産業別就業者の推移を見ますと、製造業で、要するに四十八年、石油ショックの時期から五十三年までに百十七万の減がある、しかし、それを卸、小売あるいはサービス業でほぼ二百四十万ばかりの雇用の確保があったというような一つの傾向ということと、産業連関表を用いていまのような三次産業へという期待を、実はこのとき分析をしたということでございます。しかし、私どもの方は必ずしも卸、小売、サービスというようなことの三次ではなくて、先ほど先生御指摘のように、いわば公共サービスと申しますか、いわゆる教育あるいは文化、医療、病院といったような保健関係、こういうようなところについての社会的ニーズ、新しい社会福祉国家というような体制から、そういうところへの部門というものを拡大をする余地は十分ある、そこへできるだけ吸収をすべきだ、こういう考えでございますが、具体的に中高年齢層との絡みがどうなるかという点は、現在私どもの方も一九八〇年代のいわば通商産業行政のあり方ということをまとめる段階をいま進めておりまして、昭和五十五年の三月までに結論を出したい、その中でそういったきめの細かいあり方というものも議論をしたいということでございます。  おっしゃるとおり、こういった産構審のビジョンがございますけれども、本当に三次産業のいまの体制、これは必要だと思いますが、具体的にどういうふうに吸収できるのか、必ずしもすぐにそうなるかということは非常に疑問がございます。私どもはむしろそれと並行いたしまして、現在の第二次産業、いわば製造業の中でも、最近で御承知のように、合繊でも薄物合繊、ジョーゼットというようなものがいわば国民及び世界人類、非常に大きなことになりますが、こういったニーズに対する技術開発で、非常に円高にもかかわらず輸出もできたというような実態もございます。  そういうふうなことで、やはり技術開発というものをベースとしまして、いわば国民及び世界一般にいわゆるニーズを発掘をして、製造業の中でもそういうふうな技術開発、あるいは創造力主導型と私は勝手に呼んでおりますけれども、こういった産業というものも十分余地もあるのではないか。そういうようなことで、いわば構造不況の産業からはみ出してくると申しますか、そういった失業というふうなものを、そういうところでも当面救う余地はないかというようなことでいろいろと考えていきたいということで、三次産業ばかりに期待するということが適切かは、なお今後の検討課題でございますけれども、いろいろと再検討と申しますか、反省をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  45. 田口一男

    ○田口委員 昭和五十五年をめどにしてそういった結論を出したいというのですから、もっと急いでほしいと思うのですが、そこで私は重ねて要望をしておいて、この点については終わります。  高学歴化、ホワイトカラー化、これはどうしようもないのですけれども、それはうまくこなせると思うのですが、中高年労働者を第三次産業にどう吸収をするかという問題をはっきりしないと、さっきも言いましたように、低所得、不安定雇用といった状態の第三次産業ということになってしまいかねない。この辺のところについて、ひとつ納得のいくような方針、方法、それに対する道筋を早急に打ち出してもらいたい。  それから最後に、いまの問題にも関連をしますし、最近の物価上昇ということにも大いに関係をするのですが、特に今回の値上げ動きか急な中で見逃せないことが一つございます。これ、ひとつ大臣もお聞きをいただきたいのですが、さっき言ったように、生産を制限したから、減量経営をしたから多少物が上がった。これは経済の常として、いい悪いは別として、私はあり得ると思うのですね。ところが、新聞をごらんになっておるでしょうけれども、昨年十二月の道路交通法の改正によって、トラックの過積み規制が強化をされたために値上げをするのだということが出てくるのですね。法律を変えたから値上げをするのだ。ちょっと私は、風が吹けばおけ屋がもうかる式の言い方になるのじゃないかと思って、ずっと調べてみますと、全部が全部じゃありませんけれども、生コンクリート、これは公共事業に関係がありますからお聞きをいただきたいのですが、一立米七百五十円すでに上がったということです。その七百五十円値上げをした理由は、原材料となる骨材、砂利の輸送費が上昇をした。この輸送費が上昇をした。この輸送費の上昇した理由は過積みが厳しくなったからだ。さらに小形棒鋼の場合、これも公共事業に大きなウエートを占めるのですが、トン当たり三千円から四千円、これは上げようとしているそうであります。その値上げの理由は、スクラップの輸送費が上がったから、同様に過積み規制が強化をされたから上げざるを得ないのだ、だから規制を緩めてもらいたいなんという声が一部に出ているそうであります。  ですから、ここで、警察庁交通指導課長に来てもらっておりますけれども、この法改正の以前、去年十一月以前に一体どれだけ過積みをしておったのか、物価値上げにまで大きく影響するぐらい過積みをしておったのかどうか、改正前に過積みということは違法ではなかったのかどうか、そしてこの過積みが原因になって事故なんか起こしたような状況はないのか、まずそこをお聞かせをいただきたいと思います。  そして、もう時間がありませんから続けて答弁をいただきたいのですが、私はもしこういう事態で多少規制を緩めようじゃないかというような、まあこれは万々ないだろうと思いますが、仮に規制を緩めるようなことがあるとすれば、通産省の所管である計量法という升、はかりの法律がありますね。その計量法の取り締まりをきつくしたために小売物価が上がるというようなことになりかねないですよ、こういう風潮を許しておいては。ですから、緩めてくれというふうな動きがあるけれども、これは運輸行政でしょうが、大臣としてもこういう動き、またこれによって輸送費が上がった場合にだれがそれを負担をするのか。原因とかなんとかについては私はあえてここでは言いませんけれども、はっきり言って運輸行政運送業者の過当競争、それをいいことにして荷主が物流コストを軽減をする、こういったことが回り回ってツケは国民に来るのではないか、公共事業費そのものの中身を食ってしまうのではないか、こう思いますから、だめだと言ってしまってもこれは解決策にならぬのでしょうが、といって規制を曲げるわけにはまいらぬだろう。その辺の解決策と、先ほど警察庁にお尋ねをしました三つのことについてお答えをいただいて終わりたいと思います。
  46. 江崎真澄

    江崎国務大臣 過積みの問題は、道路交通法の改正で始まったわけです。これはオイルショック以後経済不況段階に入ってきた、輸送業者が整理淘汰された、したがっていろいろ財政措置などによって景気がだんだん回復傾向に向かった。ところが、輸送力が足りない。したがって、違反とは知りながら過積みをしておったということだろうと思うのです。しかし、それが交通事故につながるから、道路交通法で厳重な規制をした。これが物価にはね返る。これがいわゆる便乗値上げであってはならぬということだと思いますね。やはり輸送事情が悪いということのためにある程度コストアップにつながるということは一面ありましょうが、だからといって、それに便乗する値上げは許されないというふうに考えます。したがって、わが省におきましても、公共事業関連物資等を十分検討する委員会を持っておりますので、そういった委員会などにおいて、資材が偏在しないように地域バランスがとれるように、常に配慮をしておるところです。また、政府全体としても大蔵大臣公共事業推進に遺憾なからしめるための委員会を持っておりまして、その責任者をしております。こういったものを活用しながら、便乗値上げは厳に取り締まっていくということであろうかというふうに私思います。
  47. 矢部昭治

    ○矢部説明員 ただいまお尋ねの法改正前の過積みの状況でございますが、昨年の十二月一日から新道交法が施行されたわけでございますが、取り締まり件数では昨年の十一月、改正前の一カ月でございますが、全国規模で行いました二回の取り締まり結果では、一万四千六百八十七台について重量測定を実施いたしまして、過積載で検挙いたしたものは三千百四十三台ということで、違反率は二一・四%でございました。なお、検挙いたしたものの超過割合でございますが、この三千百四十三件について見ますと、十割以上超過が一八・六%、五百八十六件、五割以上十割未満が四六・九%、千四百七十四件、五割未満が三四・五%、千八十三件という状況でございます。  この取り締まりにつきましては、この法改正前から、いわゆる超過度合いの著しいもの、または危険性の高いもの、こういったものを重点に取り締まりを行うように徹底を期しておるところでございますが、今回法改正が行われました後において、特別に取り締まりを強化したとかいうことはございませんで、従来同様の基準で取り締まりをいたしておるという状況でございます。
  48. 田口一男

    ○田口委員 警察庁、過積みが原因で事故があったかどうか、そういうことです。
  49. 矢部昭治

    ○矢部説明員 お尋ねの過積みに絡む事故でございますが、昭和五十三年におきまして、貨物自動車が第一当事者となった死亡事故は、二千六百五十一件ございます。これは全死亡事故の三二%でございます。この中で、いわゆるライトバンとか軽自動車を除きました貨物自動車の死亡事故について、これは千九百九十二件でございますが、この千九百九十二件について見ますと、死亡事故に過積載が絡んでおると思われるものがちょうど一〇%、一割の百九十九件でございます。これらの死亡事故について見ますと、過積載のために、停止距離が長くなって追突事故を起こしたり、ハンドル操作の自由が失われたり、あるいは荷崩れやタイヤのバーストが生じたりというような危険な事例が多数含まれておるわけでございます。  この百九十九件につきましてその内訳を見ますと、自家用が百十八件で五九%、事業用が八十一件で四一%ということで、自家用が六割を占めております。  車種別では、特定大型が百二十九件で六五%、普通トラックが六十三件で三二%ということで、この二種が非常に高い比率を占めております。  事故の類型別で見ますと、追突が二十六件で一三%、出会い頭の衝突が二十六件で同じく一三%、正面衝突が二十三件で一二%、路外に逸脱あるいは転倒が九件で五%というものが目立っております。これは先ほど申し上げたように、停止距離が延びたりあるいはハンドル操作の自由が失われたり、こういったようなことが直接間接起因しているものが多く含まれておると思われます。  また、積み荷の種類別で見ますと、土砂が六十五件で三三%と、三分の一ばかりを占めております。このほか鋼材が十七件で九%、木材が十四件で七%、石材が十件で五%、こういったものが主なものでございます。
  50. 田口一男

    ○田口委員 これは要望ですが、いまお答えがあったように、結局去年の十一月までは同じように過積みが違反であっても、物価だ何だかんだということは言ってなかった。それはお聞きのように、五割、十割も過積みをしておって、人命の犠牲の上になっておったということも言えるわけですから、ひとつ過積み規制を強める、それに便乗かどうかは別として、値段が上がる、その上がるものはだれが負担をするのか、そういった点についても、これは通産のサイドだけではなかなか無理でしょうが、だからといって、もとに戻すことのないように、それだけを強く要望いたしまして、私の質問は終わります。
  51. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  52. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  53. 長田武士

    長田委員 本論に入る前に、去る十日、都内豊島区南池袋一丁目カドラー白銀マンションで発生いたしました、ガス大爆発事故の概要並びに被害状況について警察庁にお尋ねをいたします。
  54. 加藤晶

    ○加藤説明員 お答えいたします。  本年の二月十日午前九時五十五分ごろ、ただいま御指摘のありました豊島区南池袋の七階建てカドラーマンションの三階三一一号室におきまして、漏出しておりました都市ガスに引火、爆発して、同マンションの居住者、通行人、それから小学校の児童ら合わせて三十二名が、爆風やそれによる落下物、飛散物、ガラス破片等によりまして重軽傷を負ったほか、同マンション及び付近民家など九十四むねの窓ガラスや器具などが破損したものでございます。  それで、現在までの警視庁の調査によりますと、ただいまも申し上げましたとおり、重軽傷三十二名を出しておりますけれども、この内訳は重傷者が一名で軽傷者が三十一名でございます。現在入院中の者が一名、医療機関で治療した者が十八名、学校とか自宅で治療いたしました者が十三名ということになっております。これの負傷程度について見ますと、三一一号室居住の女性が全身火傷によりまして、これは重傷でございます。他の三十一名は、ほとんどの者が落下物とか飛散物、ガラス破片等によりまして、切創とか挫創等を負ったわけでございまして、全治一週間から三日程度ということでございます。  また、こういう負傷者の受傷時の態様といいますか、それについて見ますと、現場マンションの在室者が六名、この中に先ほど申し上げました重傷の方が一名含まれておりまして、あとは軽傷でございます。爆発時の現場付近通行人が六名、現場周辺の居住者が十一名、それから現場向かい側の小学校でございますが、そこで授業を受けておりました小学生が九名、いずれも軽傷を負っておるというふうな状況でございます。
  55. 長田武士

    長田委員 原因がまだはっきりしてないようでありますけれども、現在までの調査状況を報告してください。
  56. 加藤晶

    ○加藤説明員 いままでの警視庁の捜査によりますると、この三一一号室の台所のガスコンロ用の二口カランのうち、右の一個が開放された状態になっておりまして、そこからガスが流れ出まして室内に充満した状態になり、そのガスに何らかのかげんによって引火、爆発したというふうに認められるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、この爆発のもとになりました部屋に住んでおりました女性の方が、現在重傷を負って入院しておりますので、直接事情を詳しく聞くことはできません。それで現在、周辺からその辺の捜査を引き続きやっておるという状況でございます。
  57. 長田武士

    長田委員 最近、マンションなど共同住宅の大きなガス爆発事故が起きておるようでありますが、どのように把握されていらっしゃるか、概要を御説明願いたいと思います。
  58. 加藤晶

    ○加藤説明員 ことしに入りましてからのいわゆるこういうガス爆発の発生状況でございますけれども、当庁に報告のございましたものがきょうまでで、ただいま御質問の件を含めまして六件でございます。  個別に申し上げますと、一月五日、愛媛県松山市の住宅密集地の鉄筋ブロック二階建てアパートの階下居室でプロパンガスが爆発した。このために階下に居住しておりました人が一名死亡、三名が重軽傷、それから二階居住者三名が軽傷を負ったということがございます。そのほか物的な被害が近隣民家に出ております。五むねが大破、八むねが中破し、現場の半径約五十メートルくらいの民家十五むねの窓ガラス等が破損したというのが起きております。  それから一月二十四日、埼玉県岩槻市のやはり鉄筋三階建ての雑居ビルのマージャン店で都市ガスが爆発いたしまして、このマージャン店の経営者一名が焼死して二名が負傷したということがございます。物的被害といたしましては、同店内を全焼したということがございます。隣接の建物被害は余りございませんでした。これは爆発の状況がそれほど強くなかったということと、距離が若干隣接の建物まであったということだと思います。  それから二月五日に愛知県額田郡幸田町の財団法人日本勤労福祉センター経営の、レクリエーションセンター三河ハイツ地下一階のレストランでプロパンガスが爆発して、たまたまそこで宴会をやっておりました従業員二名が死亡し、十九名が負傷した。そのほかレストラン内部を中破した事故というのがございます。これは近隣が山中でございまして、隣接の建物の被害というのはございません。  それから昨日三重県の津市の高茶屋のやはりハイツ二階でプロパンガスの爆発がございまして、男女各一名、合わせて二名が焼死したという事故が報告になってございますし、また同日和歌山の西牟婁郡の白浜町で、別荘地でございますけれども、そこのビラ三号館というもので同じような爆発、火災がございまして、泊まっておりました会社社長が火傷を負って、そして隣接の二部屋を焼燬したというふうな事案が報告になっております。
  59. 長田武士

    長田委員 私も、事故発生後直ちに現地に直行いたしました。ガス爆発の恐ろしさを、私はこの目でまざまざと見せつけられて帰ったわけであります。電柱には布団がぶら下がっておりまして、もう付近一帯の商店という商店、民家という民家は、ガラスというガラスはほとんど粉砕されておる状況でありました。改めて私は爆風の恐ろしさをいやと言うほど見せつけられたわけであります。このような状況下で、警察、消防、東京ガス、東京電力、町会、商店会等、関係諸団体の方々によりまして復旧作業が行われておりました。しかし、被災者の人々はどこにも訴えるすべもなく、ただ茫然としておるだけでありました。  そこで、ガス供給事業者である東京ガスは、負傷者及び近隣家屋の損壊等の被害に遭われた方々に対して手を打たれたということも聞いておりますけれども、どのような対処をされたかお尋ねをいたします。
  60. 豊島格

    ○豊島政府委員 東京ガスから報告を受けたところによりますと、同社は、ガス爆発の連絡を受けた後、直ちに現場に職員を派遣いたしまして、マンションのガスの供給を遮断いたしました。その後マンションの内管検査を行いまして安全を確認した上、ガスの再供給をいたしました。これは安全上の措置でございます。それからさらに、近隣の九十数戸につきまして内管の検査を行って、これも安全を確認いたしました。  いま御指摘の近隣の被害につきましては、被害をこうむった方々の家に対してガラスの取りかえをいたしました。それから食事等の支給をした、あるいはマンションへ帰られない、自分の家に帰られない方に対しては宿舎その他の手配もいたした。このように報告を受けております。
  61. 長田武士

    長田委員 こうした都市ガスの爆発は、周辺の民家多数が被害を受け、密閉性の高いマンションの構造が爆発力を高めていると思われるわけであります。いずれにしても、爆発元の被害はともかく、周辺の民家にも被害が広がっているということがマンション、団地などのガス爆発の特徴であろうかと思います。今回の南池袋の事故の原因はまだ不明であるとのことでありますが、事故の原因とは全く関係のない第三者に被害を及ぼす事例が目立っております。こうした中で、不幸中の幸いというか、死者はありませんでしたが、現行法において第三者の被害を救済することが困難な実情になっておるわけであります。  ところで、LPガスに関する第三者損害賠償については、昨年の十月、基金制度が発足しておるわけでありますが、都市ガスにおける第三者の被害救済策はどうなっておるのか、この点をお尋ねいたします。
  62. 豊島格

    ○豊島政府委員 事故の原因が都市ガス事業者である、都市ガス事業者の責任があるという場合は、当然のことでございますが、その損害は事業者が賠償するということでございまして、このために現在ほとんどの事業者は、損害賠償責任を担保するガス事業者損害賠償責任保険に加入しておりまして、この場合に第三者への救済は十分行われていると思われます。  それから次に、原因がはっきりしない場合、ガス事業者でもなければあるいは使用者のミスでもない、そこがはっきりしない場合の救済につきましては、ガス事業者は現在、その状況に応じまして先ほど申し上げましたような見舞い金を支払うということをいたしまして、金だけじゃなくて現物もあるわけでございますが、そういうことでその地域社会で事業を行っております責任をそれなりに果たしておると思います。いままでのところ、この点で特にトラブルが起こったということの報告は聞いておりません。  一番問題となりますのは、使用者がミスをしたというときでございまして、この場合につきましては当然その使用者が第三者に損害賠償の責任を負うということでございますが、しかし、その使用者がその能力があるかどうかということが一番問題でございまして、こういう場合を含めましてどのように対処したらいいかということで、昨年以来LPガスにおける第三者被害救済金制度というものも含めて、その制度がいいのか、あるいはさらにほかの制度が適当であるのか、その辺を含めまして、現在、ガス事業者に対して検討するように指導をしておるところでございます。
  63. 長田武士

    長田委員 都市ガスに対する対策が非常におくれておると私は思うのですね。LPガスの業者に比べて、都市ガスの場合はるかに大きな経営規模を持っておるわけであります。そうして安定もしておるわけでありますから、こうした第三者の被害に対する救済策を持たないということは、私は非常に残念だと思うのですね。したがって、これに対して早急に救済策の結論を出すべきであろう、私はそのように考えておるのですが、通産大臣どうでしょうか。
  64. 江崎真澄

    江崎国務大臣 やはり重要なエネルギー源ですし、特に家庭などにおいて重宝されるだけに、おっしゃる意味は十分私も理解いたします。対策の万全を期したいと思います。
  65. 長田武士

    長田委員 今回のこの事故で私感じますのは、爆発の前夜からこの白銀マンションの住人がガス漏れに気づいておったということも実は報道されております。しかし、それが大きな事故につながったわけでありますが、私は、このような発見をもっと速やかにすべく、警報器などの開発が当然行われていいのではないか、また、住宅を建てる場合そういうことも義務づけるというような方向性が必要じゃないかという感じがいたすわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  66. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま御指摘のガス警報器の件でございますが、都市ガスの特性として、現在まで開発されておりますもので果たして十分な機能が果たせるかどうかという問題はあるのではございますが、非常に大事なことでございますので、五十三年度から予算も二千万円ばかりとりまして、現在、日本ガス機器検査協会に委託いたしまして調査検討をいたしておるところでございますが、その早急なる結論を待ちまして十分対処いたしたい、このように考えております。
  67. 長田武士

    長田委員 次に、本論に入り、国内景気についてお尋ねをいたします。  初めに、景気見通しについてでありますが、ことしの景気は一体どうなるのかということであります。政府経済見通しでは、五十四年度はGNPの実質成長率を六・三%と設定をいたしまして、民間設備投資、民間消費も堅調を続け、伸びは鈍化するが、民間住宅投資も順調と見込んでおるわけであります。また、卸売物価も安定状態が続くと判断しておるようでありますが、経企庁長官景気見通しについてはいかがでしょうか。
  68. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  この三月までの状態を申し上げますと、年末来、私は大変活気が出てきたと思います。ただ、これが非常に本格的なものであるかどうかということは、いましばらく見なければなりませんが、少なくとも、過去における相当膨大な公共投資等の影響がありまして、まあこの辺で少し景気がよくなるという方向をたどっているのではないか。いろいろなデータを見ましても、十二月以来少しずつ従来よりも上向きになっている点は認められます。ただ問題は、雇用関係がまだなかなかそう思ったように改善されていないということが一つ、それからもう一つは、やはり物価動向が多少気になる傾向を持っておると思いますが、しかしこれも早手回しに対策をとりながら、物価上昇というものをできるだけ抑えていくという方向をとっていくならば、五十四年度は大体われわれが予測しておりますような六・三%程度の成長には行くというふうに考えております。
  69. 長田武士

    長田委員 しかし民間各機関の見通しは非常に厳しいものがあるわけであります。成長率では最高が国民経済研究協会の五・五%、最低では三菱総研の四%、大部分は五%前後であります。このように政府見通しとの差が非常に目立つわけであります。民間設備投資については、五十三年度の柱であった電力投資の頭打ちの影響が大きい。製造業の一部回復はあっても、増勢本格化にはつながらないのではないだろうか、そういう観測がなされております。民間住宅投資においては、前年度の伸びをかなり下回るのではないかという見込みが立てられておるわけであります。  また一方においては、民間消費支出が名目で八・八%から一一%、実質では四・五%から五・五%と、政府見通しとの差はそれほどではないのでありますけれども消費者米価、健保、国鉄の値上げ、それにガソリン税の引き上げ、さらにはOPEC石油価格のアップの影響が下期には出てくるだろうとの予想は——政府部内でも、消費者物価上昇は目標の四・九%では恐らくおさまらないであろうというような見方もあるようですね。  このように経済見通しでは全く官高民低で、その差が大きいことはかつてないほどではなかろうかと思います。またこれに加えて民間機関は四十兆円近い予算規模を前提といたしておるわけであります。これが圧縮されてはとうてい六・三%は無理であろうと私は考えるのでありますが、経企庁長官、もう一度ひとつ決意のほどをお伺いしたいと思います。
  70. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 民間各社の調査それぞれとわれわれの見通しを比較することよりも、民間の有力なところの平均値をとらえて一応見てみましたが、大体おっしゃるように国内需要については、われわれの方も六%強、民間も六%ちょっとのところで、ほとんど同じような趨勢です。ただ、御指摘になりました民間住宅は、民間の方がわれわれよりもやや伸び率が少ない。それから設備投資も民間の方がやや渋い。一番大きな違いは、民間の在庫の増加でございます。この在庫は、われわれの方は景気回復等を背景にいたしまして相当大幅に伸びるという見通しに対して、民間の方はわりあいに低く見ている。それらの相違がございますが、大体国内需要は六%強のところで足並みはそろっているように思います。  ただ、最終の国民総支出においての五%台と六・三%程度の一番大きな差は、民間の方は輸出がさらに非常に落ち込むという見通しを立てております。これは民間の方が一ドルを百七十円、百八十円で計算しているようであります。われわれの方はこの計画を立てた時点で百九十円というところで押さえておりまして、百八十円、百九十円、百七十円というその円レートの差による輸出が、民間は非常に大きく落ち込むことを計算し、また輸入もわれわれよりわりあいに高く計算をするわけです。その貿易関係の状態が六・三%程度と五%台という差に一番はっきりとあらわれておりまして、この辺のところの見方の相違、円が幾らになるか、われわれは百九十円程度ということで計算をしておりますが、百七十円で計算をすれば恐らくこういうような状態もあるかもしれません。その辺のところでございまして、われわれは何も民間の方とわれわれの方と数字が違うからいけないとかなんとかいう考えでなしに、民間の練達な組織によっていろいろ計算してくれたこの数字を、やはりわれわれは目標は六・三%程度を掲げてまいりますが、民間でもこのような調査をしてくれたということを十分腹に押さえながら、その時点時点でもしもこの達成率あるいは伸び率等が非常に落ち込んでいる場合には、そこにてこ入れをしていくということで相補って、六・三%の目標達成をしたいというふうに考えております。
  71. 長田武士

    長田委員 日銀は去る九日、最近の経済動向をまとめた金融経済概観を発表いたしたわけであります。それによりますと、公共投資、個人消費などの国内需要は増勢を続け、しかも最近になって企業に在庫補充の動きが出てきておると指摘をいたしております。こうしたことから日銀では、景気は着実に上昇しておるという判断をしているものの、物価押し上げ要因がふえているため、物価をめぐる環境にはいろんな面で厳しさが加わっておると指摘をいたしております。物価注視の姿勢を重ねてここで強調いたしておるわけであります。日銀がこうした物価上昇につながる不安材料として取り上げている点は、円相場が安定しつつあるために、円高による物価押し下げ要因がなくなったほか、海外市況高、国内需要関係の改善、企業の在庫積み増しの動き公共料金の引き上げなどを挙げておるわけであります。さらに、大量の国債発行によって、マネーサプライが増勢を強めそうなことも大きな不安材料として挙げております。物価の動向は注目しなければならないと、日銀自体も警告をいたしておるわけであります。最近商品市況の急騰が特に目立つわけでありますが、特に公共事業関連物資の価格値上げ、それから品不足、価格上昇につながる傾向というのが非常に顕著であります。またこれに加えて石油製品便乗値上げが目立ってきたわけであります。  そこで、五十四年度における政府の政策課題の大きな柱の一つが物価安定であると私は考えるわけでありますが、経企庁長官は、日銀のこうした判断についてどのように考えていらっしゃるのか、もう一度お尋ねをいたします。
  72. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまお挙げになりました諸点について、いずれも私も非常な心配をしております。ただ、その心配が本物にならないようにわれわれとしましてはできるだけ前広にそうした可能性に対して、あるいは予見に対しても対応をしていこうという考えでおりまして、むしろ日銀のマネーサプライの問題、これは公債の消化の問題につながりますし、また一般の建設資材等の値上がりもわれわれは事前によく把握をいたしておりますが、こうしたものに対して自重を求めることを、通産省を通じてやっていただいたり等々いたしておるわけでございまして、基本的に言うとOPEC値上げ、それから円高の一応の安定、円高の安定ということは大変望ましいことでありますが、物価に対しては期待感が薄れるということでございますが、少なくとも今日まで相当量の輸入が原材料においてなされておりますし、いわゆる円高メリットというものは、五十四年の前半は十分続くというふうに見ておりますので等々ございますけれども、楽観をしないで、われわれとして考えられる、また、いま委員の仰せられました諸点は、いずれもわれわれが非常に注目しておる項目でございますので、そうしたことをできるだけ閣内において統一的にその問題について取り組んでいくということをしながら、四・九%のラインを守っていきたいというふうに考えております。
  73. 長田武士

    長田委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、公共料金値上げが及ぼす消費者物価への寄与度はどのように見ていらっしゃるのか。
  74. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 全体としまして、不確定要素と申しますか、まだ申請の出てないものもございますし、また一部は地方自治体で認可するものもございますが、いま出そろっているというか、いまいろいろと世上言われているものも含めまして、われわれとしましては今度の予算案関連事項としては、健康保険の改正の問題とそれからその他のもので〇・八ぐらいの押し上げ要因、さらに先般円高メリット還元ということで、電力ガス料金の割り引きをいたしておりましたが、これが三月からなくなるものですから、それの影響が〇・二ぐらい、それと先ほど申し上げました地方自治体等において認可、許可をするであろうと思われるようなものを平均的に集めまして、それが〇・五ぐらい。一・五%程度押し上げ要因というふうに見ております。それからまた、OPEC値上げによる消費者物価へのはね返りは〇・三ぐらいというふうに見ておりまして、そうしたものを全体総合いたしまして四・九という数値をはじきました。
  75. 長田武士

    長田委員 石油関連を除いて一・五%の寄与度、こういうことでありますが、各公共料金ごとの寄与度はいま大体お示しいただきました。これは公共料金値上げの波及効果を含んでおるのかどうか、この点どうでしょうか。
  76. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 公共料金値上げ影響を算定いたしますときに、現在消費者物価指数のウエートを使いまして、その寄与度を出しておるわけでございます。ただいまおっしゃいました波及効果につきましては、これらの公共料金につきましては、それがさらにどういうふうに波及していくかということについては、需給の関係その他等がございまして、きわめて予測が困難でございますので、公共料金につきましての寄与度は直接影響のものをとっております。ただ、毎月発表される消費者物価指数、さらには全体の消費者物価につきましては、そのような動きも当然反映されてまいるわけでございます。
  77. 長田武士

    長田委員 公共料金値上げについては、歴代の経企庁長官も、また現小坂長官も、極力抑制すると言ってきたわけであります。しかし、公共料金赤字を理由にいつも安易に引き上げられてきたというのが実情であります。こうした中にあって、一・五%の公共料金の寄与度の中には、今秋予定されておりますところの消費者米価あるいは麦価、これが含まれていないわけですね。こうしたことを考えますと、消費者物価に対する四・九%という政府の目標どおりおさまるとはとうてい私は考えられないわけであります。政府の目標の四・九%以内におさめる自信がおありになるのかどうか、もう一度ひとつお答えを願いたいと思います。
  78. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま仰せになりました消費者米価の方の引き上げも、大変農林省には泣いてもらったわけでございまして、この上昇率、引き上げ率につきましては四一二%に抑えたわけでございます。しかし、そのかわりに麦価ですか、麦の方はこれは一切据え置きにいたしました。そこでバランスをとったわけでございまして、この消費者米価だけでの大体の影響力は〇・一程度と算定をしております。  いずれにいたしましても、仰せのように歴代企画庁長官は、公共料金については絶対ということを盛んに申しておりますが、なかなかそれが実現しないのは、たとえば今度われわれが子算の中でお願いしております国鉄の値上げでございますね、これなども国鉄の現在の赤字が余り大きいので、これを何とかしないといけないし、また国鉄運賃法によりましても、あるたな上げした程度以上のものについては、それを何とか料金でカバーしろというふうになっておることもございまして、われわれとしましてはこの四月一日から国鉄料金を上げるということであったのですが、これを五月二十日まで上げないということで、予算の編成も五月二十日からというふうに組むとか、あるいはまたたばこ値上げでございますけれども、これは税収面でやはり非常に財政が苦しいのでしようがないじゃないかというような面もございまして、このたばこ値上げというものと、もう一つは健康保険でございますが、これなどもやはり受益者負担の増高によらないとなかなか今後の運営もむずかしい等々の理由から、この三つのものについて一応予算ではお願いをしているわけでございまして、それぞれ大変に努力をして、公共料金は安易に上がるものではないという原則は貫いたつもりでございます。
  79. 長田武士

    長田委員 公共料金の寄与度がきわめて大きいわけでありますが、したがって五十四年度の物価上昇の大きな要因公共料金値上げということになるのじゃないか、いわば政府主導型の物価高ということが言えるのではないかと私は思うのです。物価騰勢が激しくなるのに、政府みずからの値上げは私は好ましくないのじゃないかと思うのですね。たとえば公共料金消費者物価指数の上昇、五十年を一〇〇として比較をいたしますと、消費者物価は総合指数で見ますと五十三年十一月で一二三・五%、これに対しまして公共料金は一四八・五%というように、消費者物価指数を実は大きく上回っておるのですね、長官。特に公共料金のうち公共事業体である国鉄運賃は一六三・一%、郵便料金は一九八・三%、電報料金は二〇〇%、電話一七一・四%、たばこ一四九%、食塩一九七というように、消費者物価指数を大幅に上回っておるわけであります。これらの実態から見ましても、特に公共事業体の値上げを安易に認め過ぎるのじゃないか、この点どうでしょうか。
  80. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまのは昭和五十年を基準にしてのお話でございますが、実は昨年度は相当大幅な国鉄運賃の値上げ、その他をやっております。そのような大きな値上げをしながらもなお赤字が出ている公共企業体、特に国鉄の体質というものに対しては、非常に私は困ったものだと思うのでありますが、この点についても運輸大臣は非常に心を使っておりまして、その合理化等については、今般の予算で約五十日後ろにずらしたけれども、それをさらに実施するかどうかについては一層厳重に国鉄の体質改善を求めて、それに対して満足な回答を得るというようなことを条件にして、運輸省ではいろいろと配慮してもらっているわけでございまして、必ずしも非常に安易な値上げというふうには私は考えておりませんが、しかし一方を見ますと、民間の企業努力は大変なものでありまして、そうした民間の企業努力に比べて公企体の経営態度はいささか甘いということは御指摘のとおりであろうと思います。
  81. 長田武士

    長田委員 さらに小坂長官は一月二十日、札幌での記者会見で、「物価騰貴のおそれが少しでも出たら手おくれにならないよう素早く対策をとり、インフレを予防するシステムをつくる必要がある」と発言した旨の報道がなされました。どのようなシステムをつくられるのか、お尋ねをいたします。
  82. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 現状のような経済体制でございますと、統制というわけにもちろんまいりません。しかしやはり常識的な線というものがございますし、また特に政府としましては四・九%程度の今年度の上昇、それを守るという観点から、それぞれ現在、先ほど一番最初にあなたが御指摘になりました諸点について、その傾向が出た場合には直ちに発動していくということをしてまいりたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、たとえばマネーサプライの問題、これは日銀だけに任して、あるいは大蔵省だけに任しても仕方がない。やはりこうした問題については政府全体がこの問題に関心を持ち、その改善に努めるというようなこと、あるいはまた実感としての高い食料品の値下げあるいはもっと安定的な供給を図っていく方法について、農林省その他と大いに協力をするということも手でございましょう。あるいはまた不況カルテル等によりまして、もうすでに事態が改善されておると認められるものについては、いつまでも不況カルテルをしてもらっては困るというようなこと、これは公正取引委員会とも連絡をとるというようなことなどを積み上げてまいりたいと思うのでありますが、私は、それが政府の意思によって、それらの個々の政策が総合的に運営されていくという中で、物価上昇の可能性に対しては対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  83. 長田武士

    長田委員 また小坂長官は、一月十二日に日本記者クラブで講演されておるわけでありますが、その中で国債インフレを予防するため、通貨供給量に何らかの警報措置を考えたいと述べられ、さらにいま直ちに国債インフレのおそれがあるとは考えていないが、国債の市中消化状況いかんでは、先行きそのおそれが出てこないとは限らないので、国債消化問題には極端に神経質になっておると述べておるわけであります。この予防措置の必要性を強調したと報道されておりますが、具体的にはどういうことでしょうか。
  84. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 たまたま日本記者クラブで話しました後に、実は先々週あたりから東京周辺の土地が非常に値上がりが大きいわけであります。こうしたようなことが閣議でも話題になりまして、そこから一つの抑制的な効果としての土地融資について、大蔵大臣もまた日銀総裁もそれに協力しようということになったわけでございますが、お尋ねのマネーサプライについての警報措置というのは、現時点のマネーサプライが十二月で大体一二%ちょっとのところまできておりますが、この状態をただ見過ごさないで、通貨流通量そのものに対してわれわれが常に心を配っていく。何%がいいのか、何%が一つの危険ラインかということについては、なかなか現状では判定のむずかしい点もございます。したがいまして、現状においては警報措置というよりも、むしろあらゆる政府機関がそうした国債の消化というもの、それとまたM2という流通量についての関心を常に持っておって、それが異常に高くなりそうであるとか、あるいはなったとかいう時点においては、直ちに金融的な措置あるいはまた通貨量の規制というようなものを考えて行動していくという意味で申し上げたわけであります。
  85. 長田武士

    長田委員 私は、物価情勢考えますと、マネーサプライの目標というものを設定したらどうかと思うのであります。そうしませんと、あの狂乱物価の二の舞を招くような結果になるのではないかと私は考えるのですが、その点はどうでしょうか。
  86. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまわれわれとしましては、目標値をつくるということはなお時期が未熟であるというふうに考えております。同時にまた、現状程度であれば、これが狂乱物価に直ちにつながるような量でもないと判断しておりまして、また同時に、円のレートがどうなるかとか、いろいろな情勢、そしてまた同時に経済活動そのものがアップターンにいま切りかわっておりますが、これがどこまでいくか等々の情勢を見きわめませんと、量としての規制と申しますか、リミットをつくるということは大変むずかしいという判断でございまして、いずれにいたしましてもそういう事態を常に注意深く監視をし、そして異常があれば直ちに行動するというようなことでまいりたいというふうに考えております。
  87. 長田武士

    長田委員 次に、通産大臣お尋ねをいたします。  昨年末以来、市況商品、建設、住宅関係資材は急ピッチで価格上昇いたしておるわけであります。今後においても市況関連商品の価格は、需給の改善や円高メリットが小さくなる、あるいは石油価格上昇、トラックの過積み規制等のコストアップ要因メジロ押しでありますし、市況商品の著しい上昇卸売物価上昇を招いております。ひいては、公共事業景気対策、企業収益等にも大きな影響を与えることに当然なってくると思うのですね。  そこで、今後における市況商品、建設、住宅資材の価格動向をどのように見ておられるのか、またその原因は何か、今後どのような対策を講ずるおつもりなのか、その点をお尋ねをいたします。
  88. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の資材が、物によって上がったものもございます。これはたとえば丸棒などの場合は、需要が刺激したその効果が徐々にあらわれてきたところへ、過積みの問題が出てまいりました。海外市場のくず鉄値段が上がったというようなことで、一時値上がりが顕著でありましたが、その後の足取りを見ておりますると、大体落ちついてきた。これは一々の品物について、もし詳しく必要があれば事務当局からお答えをさせますが、いまのところそんなに過熱はしていない。たとえば、セメントなども一時値上がり傾向が顕著でありましたが、これもむしろ最近、一月から二月にかけては値下がり傾向もあるというわけでありまして、今後消費財などについては、これは消費者が直接抗議をしたりすることができませんので、特に公共事業関連物資の動向を監視する委員会を当省は持っておりまするので、こういった機関がよく現状を把握しまして、適切な措置をとるように努力していきたいと思っております。
  89. 長田武士

    長田委員 これらの物資に対しまして、政府としては増産やあるいは出荷促進の指導をしていくわけでありますけれども、一方では企業は、減量経営や金利の低下などによりまして、企業の損益分岐点、売上高が低い状態でも経営できるような状態に実はなっておるわけですね。したがって、通産省から指導がありましても、増産にすぐ応じなくても十分企業としては対応できる、そういう状況下ではないかと私は考えるわけであります。このような業界に対しまして、通産省といたしまして増産をきちっと指導できるのかどうなのか、この点どうでございましょうか。
  90. 江崎真澄

    江崎国務大臣 まだ需給ギャップは相当なものがあります。これは経企庁が出します稼働率指数を見ましても、稼働率は五十年を一〇〇として一二とか一一二とかという程度であります。これは普通実際稼働率は七を掛けろ、こう言っておりまするが、八〇%程度というわけで、もし供給が足りない場合には行政的に十分指導することはできるというふうに確信いたします。
  91. 長田武士

    長田委員 次は、トラックの過積みの規制が資材価格上昇を招いているようでありますけれども便乗値上げの疑いがこの点はないかどうか、この点について調査したことがあるかどうか、この点をお尋ねをいたします。
  92. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣が御答弁いたしましたように、省内に公共事業関連物資についての対策本部というのが設けられております。そこで、公共事業関連の資材につきましての状況需給価格の動向というのをそれぞれの各担当のところで集めて、そのときの状況を検討するということをやっております。つい先月もこの本部を開きまして、特にこの過積み問題についての各物資の状況というのを、それぞれ報告を求めて検討したという状況でございます。
  93. 長田武士

    長田委員 それでは、時間がありませんから、次に参ります。  公取委にお伺いをいたします。  不況カルテルは現在六品目実施されておるわけでありますが、全般的な市況商品の値上げという状況もとで、この取り扱いをどういうふうにするのか、期間が終わるまで認める方向でいくのかどうか、この点いかがでしょうか。
  94. 橋口收

    橋口政府委員 不況カルテル一般について申しますと、これは競争政策に対する重大な例外の措置でございますから、業界から申請がございました場合には、業界の実情を把握する等必要な調査を行い、法律の要件に照らして認可をいたしておるわけでございまして、個別物資の需給の状態がどうなるか、それに関連しまして価格動向がどうなるか、また在庫の水準がどう変化するかというような問題につきましては、認可後におきましても常時監視の体制をとっているわけでございます。また認可されました案件につきましても、需給の緊張とかあるいは価格の騰貴があります場合には、いつでも共同行為を廃止する、こういう念書もとっておりますので、現在進行中の六品目につきまして、需給実態、損益の状態等につきまして調査をいたしておるところでございまして、そのうち二つは二月で期限が参りますし、三つは三月で期限、四月末が一件ということでございまして、現在検討いたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、仮に打ち切るということになりますと、業界との合意が必要になるわけでございまして、一方的に政府が打ち切るということはできないわけでございますから、よく需給状況価格動向を念査をいたしまして、誤りなきような措置をとりたいというふうに考えております。
  95. 長田武士

    長田委員 資材の値上げに関連いたしまして、板ガラスの値上げについてお尋ねをいたします。  板ガラスの国内市場は、旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子で一〇〇%のシェアを占めておるわけでありますが、それぞれのシェアはどのようになっておるのかお尋ねをいたします。
  96. 橋口收

    橋口政府委員 旭硝子が大体四五%程度でございます。それから日本板硝子が三二%程度、残りがセントラル硝子というふうに記憶いたしております。違っておりましたら後ほど訂正をいたしたいと思います。
  97. 長田武士

    長田委員 板ガラスは独禁法第十八条の二の、同調的値上げ監視対象品目になっておる物資であるわけであります。この板ガラスについて、日本板硝子は五十三年十二月中旬に、セントラル硝子は五十四年一月から一二%の値上げを発表したわけでありますが、この値上げは一月の段階では市場で実施されていないようでもあります。しかし、二月から五〇%のシェアを持つ旭硝子が一〇%の値上げを発表したことによりまして、板ガラスの値上げは二月から恐らく一〇%程度値上がりが行われるのではないか、このように考えられるわけであります。そこで、値上げ状況について、どのようになっておるのか、お尋ねをいたします。
  98. 橋口收

    橋口政府委員 三社で一〇〇%の市場占拠率を持っておるわけでございますし、独禁法の独占的状態のガイドラインの指定業種にもなっておりますし、また同調的値上げの報告聴収の対象業種にもなっておるところでございますから、一般的に申しまして常時監視をするという体制をとっておるところでございますが、いまお話がございましたように価格の引き上げについての発表があったようでございますし、また個々の取引先に対して通知もされたようでございますが、実際に通知された価格の実現を見ておるかどうかという点につきましては、まだ確認をいたしておらないところでございまして、取引の実態価格状況等について予備的な調査を行いつつあるというところでございます。
  99. 長田武士

    長田委員 独禁法の第十八条の二は同調的値上げの報告の徴収を行える要件といたしまして、同種の商品または役務の最近一暦年の国内総供給価格が三百億円超、上位三事業者の市場占拠率の合計が七〇%という市場構造要件を満たすと認められる事業分野において、首位事業者を含む二以上の主要事業者が「取引の基準として用いる価格について、三箇月以内に、同一又は近似の額又は率の引上げをした」場合となっておりますが、今回の板ガラス事業者の値上げは、当然この十八条の二の価格の同調的値上げに該当するものと私は考えるのですが、この点どうでしょうか。
  100. 橋口收

    橋口政府委員 市場構造要件にはもちろん該当いたしておるわけでありますが、実際の値上げの行為が要件に該当するかどうか、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、予備的な調査をいたしておるところでございまして、法律の適用の問題として考えますと、恐らくは「三箇月以内」という要件は満たしておると思います。それから、片方が一二%で、一方が一〇%ということでありますから、これがいわゆる近似の率あるいは額に該当するかどうか、この点はよく調べてみないと何とも言えないと思うわけであります。ただ、先ほども申し上げましたように、実際に公表した価格あるいは取引先に通知した価格ではなくて、実際に取引に使われた価格の比較になりますので、これは値上げが実現した後で本当の姿というものが確認できるのではないか。それの確認の結果としてあるいは同調値上げに該当する場合もあり得るというふうに考えております。
  101. 長田武士

    長田委員 これは、十八条の二の規定の運用基準を見ますと、「近似の額又は率」というのがございます。「おおむね一〇パーセント程度の差異がある場合をいう。」ということですね。この計算方法をちょっと教えていただけませんか。
  102. 橋口收

    橋口政府委員 「おおむね一〇パーセント程度の差異がある場合をいう。」というふうになっておりますが、これはあくまでも例示でございまして、その前に「「近似の額又は率」とは、その差異によって顧客の移動が生じない程度のものをいう。」というのが原則的な考え方でございます。たとえば三割とか四割とか価格の水準が異なっておりますと、当然高い方から安い方にお客が移動するわけでありますから、したがってその移動が行われない、生じない程度のものはどの程度かということで、品質に差のないような同一価格の商品の場合には、一〇%程度ということを言っておるわけでございまして、これはあくまでも説明でございます。したがいまして、製品差別化が進んでおりますようなものにつきましては、一〇%以上の価格差であってもお客の移動が生じない場合があり得るわけでありますから、これは一〇%を超える場合には絶対に対象にならないという趣旨ではございません。お客の移動が生じないような場合であれば、一〇%を超えていても対象になる、こういう解釈でございます。
  103. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、今回この板ガラスの問題は、先発値上げの発表三社は一二%、それから後で発表いたしました旭硝子は一〇%ということでありますが、これは公取が調査して、実際取引が行われておる、そういう事実がありますと、これは価格の同調的引き上げ規定に関する運用基準に言っておりますところの「近似の額又は率」に当たるのでしょうか当たらないのでしょうか。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  104. 橋口收

    橋口政府委員 一般的に申しまして、弱小な会社が値上げの意思決定なりあるいは公表をいたしましても、首位事業者その他市場支配力を持っております会社の値上げか決まりませんと、実際に弱小会社の値上げは浸透しない、実現しないというのが普通の姿であろうと思います。したがいまして、いま断定的なことは申し上げにくいのでございますが、下位業者が仮に一三%の値上げを宣言いたしましても、首位事業者が一〇%という場合には、一三%の値上げは本当に実現するかどうかについては疑いがあるわけでございまして、値上げが実現した後よく調べてみました結果として、実は一二%の値上げは二%程度にとどまった、あるいは一〇%強にとどまったということもあり得るわけでございますから、したがいまして先ほど申し上げましたように、現段階において確定的なことは申し上げにくいのでございますが、将来調査をいたしました結果としては、この基準に該当する場合があり得るというふうに考えております。
  105. 長田武士

    長田委員 それでは時間がありませんので、関連をいたしまして伺っておきますが、私は五十二年十一月二十五日の本委員会において、冠婚葬祭互助会の名称について、都道府県名あるいは市の名称を使って、あたかも都道府県や市が行っておるかの誤認識を招き、独占禁止法上の疑義がある点を指摘をいたしたわけであります。この点について公取委では検討するというお話でありましたけれども、その後の経過について御説明をいただきたいと思います。
  106. 橋口收

    橋口政府委員 冠婚葬祭互助会につきましては、あたかも地方公共団体と関係のある公的な機関であるような信用誤認というものを一般のお客に与えて、有利な条件でサービスを提供するような事例があったわけでございまして、この点につきましては先生から一昨年の十一月に御質問いただいたところでございます。その後いろいろ調査をいたしまして、ある特定の業者につきまして近いうちに厳重な警告を出すことにいたしております。と同時に、業界の団体に対しましても表示の方法の適正化について指導をすることにいたしておりますし、また通産御当局ともいま相談をいたしておる最中でございます。したがいまして、ある特定の事業者につきましては、一般的な警告も含めた厳重警告を出す予定でございますし、業界全体に対しても指導を強化したい。  さらに〇〇市冠婚葬祭互助会とかあるいは何々県冠婚葬祭互助会というような、地方公共団体の名称を付した事業者の名称を使うことにつきましては、問題があるというふうに考えておりますので、将来の問題といたしましては、景品表示法第四条第三号による不当な表示の指定を行うということも検討しつつあるところでございます。
  107. 長田武士

    長田委員 次に、石油問題について一、二問お尋ねをいたします。  イランにおける原油輸出全面停止以前に比べ、わが国の石油輸入量は不足しておるわけであります。このような事態に対しまして通産省はどのように対応をされる考えでありますか、この点をお尋ねいたします。
  108. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 お答えいたします。  イランが危機以前におきまして産出しておりました量が五百七十万バレル・パー・デー、うち七十万が内需でございますので、五百万バレルくらいが輸出されておったわけでございます。ちなみに全世界石油生産量はおおむね六千万バレル、うち自由世界分が四千六、七百万バレルというようなところでございます。この五百万がゼロになったわけでございますが、他方、サウジアラビア、イラク、クウェート、ナイジェリア等の増産がございまして、この増産が大体三百万バレルと見てよろしいかと思います。したがいまして、五百マイナス三百で、二百くらいの穴があいておるというのが現状でございます。  他方、日本に関しましては、十−十二月につきましては予定より入手量が大体四%くらい少なかったということで、十−十二月につきましては影響は軽微でございました。それから一−三月につきましては、ごく最近調査をしたところによりますと、到着ベースで七千二百万キロリットルということでございまして、これは前年同期とおおむね横すべりということでございます。経済成長及びそれに伴う需要増等を考えますと、七千二百万で十分というわけではございませんが、しかし現在のような状況ではまあまあよく入手できたというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、一−三月につきましては、窮屈ではございますけれどもそう重大な問題になることはあり得ない。四−六月、七−九月は不需要期でございますから、これも何とか切り抜けることが可能ではなかろうかというふうに考えております。  なお、御承知のとおり備蓄につきましては十二月末現在で九十二日分の備蓄を持っておる、こういうことでございますので、現段階におきましては、イランの動乱に基づく輸入減によりまして、短期の需給にシリアスな危険が起こる可能性は少ない。ただし一つだけ重要な条件がございまして、国内で買いだめ、買いあさり、売り惜しみというようなことが起こりますとこれは問題でございますが、現在はそういうことをやるような必要は、客観的に見ますと毛頭ない、そういう需給状況になっておるわけでございます。  それから国際的に見ますと、先ほど申し上げましたサウジアラビア等の増産が続くということも非常に重要な要件でございますので、これらのOPECイラン以外の産油国につきましては、消費国といたしまして今後とも増産して協力をしていただけるようにお願いをしなければならない、こういうふうに考えております。  それからなお、御承知のとおりこの前の石油危機の教訓によりまして、消費国の間で十九カ国が加盟しておるIEAという組織がございまして、このIEAにおきましては、国際的によく情報を交換し相談をしながら、石油供給の削減というような事態に対処いたしまして妥当な方策をとる、緊急事態には緊急の措置を発動するというような組織になっておりますので、この国際的な協調ということも大いに尊重しながら、事態に対処していきたいと考えております。
  109. 長田武士

    長田委員 それでは、原油価格の動向や、石油製品値上げ問題などについてお伺いする予定でありましたけれども、時間が参りましたので次の機会に譲りたいと思っております。  いま長官からお話がありましたとおり、現在、石油状況考えますと、一番気がかりなのは企業が買い占めあるいは売り惜しみ、そういう挙に出るということがあるわけであります。こうした点については通産省は十分監視体制をとっていかなければならないと考えます。そこで、どのような監視体制を整えておられるのか、最後に一つお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。
  110. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほど申し上げましたように、現段階におきましてはわれわれはまだ重大な危機的な状態ではないというふうに考えております。したがいまして、余り国民の危機感をあおるというようなことはなるべく避けた方がよろしいのではないか、こういうふうに考えております。他方、昭和四十八年のあの石油危機の際のパニック、狂乱物価が起こりました原因を考えてみますと、あれは国民の心の準備がないところに、不意打ちでああいう事態が起こってきた、そこで周章ろうばいしたということがあるのではないかというふうに考えております。  そこで、現段階におきましては、国民の皆様にイラン情勢その他につきまして、実情をよく御認識いただくということがまず第一番に必要であろう。それから第二番に、石油危機以前のように石油の供給が豊富、低廉に、無限にあるというような事態ではない、エネルギーが希少資源になりつつあるということでございますので、気持ちの持ち方、倫理観それから価値観、こういうものを転換していただくことが必要であるということで、一月二十二日には省エネルギー対策推進本部におきまして、特に官公庁を中心といたしまして省エネルギー運動を展開し、推進していくというようなことを決めております。  しかし、この辺のところは、いまの段階におきましては日本政府もそれからIEAの加盟国の政府も、まだ強制的な節約とかそういうことをやる段階ではないというふうに判断をしておる次第でございます。いまの景気状況等を見てみますと、余り厳しい統制的なことをやりますと、非常にデリケートな段階にある景気に対しまして悪い影響を与えるのではないかというふうに恐れております。したがいまして、現状におきましては、各業界等における石油需給動き、こういうものを通産省の機構を動員いたしましてよくウォッチしておる、こういう段階でございます。現段階におきまして、特にわれわれは国内で異常な動きがあるというふうな判断はいたしておりません。
  111. 長田武士

    長田委員 終わります。
  112. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 工藤晃君。
  113. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 日本共産党・革新共同を代表して質問します。  最初に物価問題について伺います。  もうすでに各方面からも指摘されてきたことでありますし、また、当委員会におきましてもいろいろ御答弁あった点でありますが、一口で言っていまの物価情勢は、一九七二年、七三年ごろを繰り返してはならないという角度からも、いろいろ論ぜられているように思います。過剰流動性の問題、日本列島改造型公共事業が非常に行われてきておる問題海外市況の問題があります。片や大企業の減量経営があり、同時に特定不況産業安定法などに基づく、設備を共同で減らすような動きもあります。そして、そこへ非常に大型な国債の増発が行われるというところに来ているわけであります。  きょうはこれらの問題すべてにわたって伺うわけではありませんが、ともかく御売物価が三カ月連続上昇になってきている中で、OPEC諸国の原油の値上げが決められまして、それがいよいよ行われる年になっているわけであります。これが一月から、それから後は四半期ごとに行われまして、年平均で言いますと一〇%、最終的には一四・五%の値上げということですが、問題は、これと同時に石油各社が値上げを一斉に発表したわけです。日石を見ますと、一月三十一日の発表で、三月十六日から全油種平均で一四・六%、一キロリットル当たり三千五百五十円で、ガソリンの場合は一万一千二百円の値上げ、出光の場合は二月二日の発表で、三月二十一日から全油種平均で一四・三%、やはり一キロリットル当たり三千五百円、ガソリンは一万一千円、三菱石油の場合は二月八日に決めまして、三月一日からキロリットル当たり三千五百円上げる。ガソリンは一万一千円です。  大変よく似ているので、ここらあたり公取委員長にも後で伺わなければならないわけでありますが、ここでもすでに問題になったことでありますが、通産大臣が二月二日の朝、閣議後の記者会見で、OPECの原油最終値上げの幅の分を一挙に値上げしようというのはおかしい、値上げ幅圧縮を行政指導するということを表明したと伝えられたわけです。値上げ幅圧縮の行政指導をしなければいけないということは、どういう根拠で言われたのか、そして、一四・五%というのは最後の値上げであるにもかかわらず、もう早々にしてそういう値上げ幅での値上げを持ち出したことを大臣はおかしいと思われたのか。というのは、今度の石油値上げ問題に対する対処の仕方、これは大平内閣の物価政策の試金石の一つだ、そう思うから伺うわけです。エネルギー庁長官との矛盾とか、そういうことはここでは私は言いませんが、ともかく大臣はそのときどういう根拠で言われたのか、そこをお聞かせ願いたいと存じます。
  114. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、経済担当閣僚として物価の動向にはやはり細心の配慮をしていく立場にある。したがって、小坂経企庁長官からの警告に関して、もし不当な便乗的値上げの様相があるならばこれは行政指導をしなければならぬ、こういうことを申したわけであります。したがって、それが記者会見にもあらわれたというわけです。  いまお尋ねの点でありまするが、新聞等にも報ぜられておりまするように、業者側はOPEC値上げ分の五%、それからその後の円安に伴う値段修正、これは現実には〇・五%ぐらいのものだと思いまするがその円安分、それから従来不当に値が下がり過ぎたということで、その修正を迫るというのが理由だというふうに承知いたしております。その積算がたまたまOPEC諸国の最終値上げの積算数値と似たようなものになっておるというわけでありまするが、こういう時期だけに、特に石油がいろいろな公益事業その他諸物価に与える影響、こういった社会的な一つの意義を業者の皆さんには十分理解してもらいたいということを含めながら、私の発言になったわけであります。しかも、この業界の特異な情勢としては、あの値上げ発表があった翌日に、いわゆる末端の石油スタンドなどなどで結成いたしておりまする商業協同組合が機関紙を持っておりますが、その機関紙に、いま一四・五%とか六%とか、こんな不当な値上げが必要であろうかというトップ見出しで、小売業界の機関紙にそういう抗議めいた値上げに対する反対記事が載るというような事態、、こういったことを考えてみましても、石油精製、元売りの皆さん方には、社会的意義というものをよくよく考えていただく必要があるというふうに私は思っております。
  115. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまの大臣の御答弁は、もし不当な便乗値上げ的な様相があるならばとか、社会的な意義、そういうことからいって問題があるならば、やはり一定の行政指導が必要であるという御発言と受けとめましたが、それに引き続きまして、今度のOPEC値上げ影響、それはこれまでの日本の原油の輸入価格、これは入関のときの円価格でいいですが、その最高水準の上にだんだん上がっていって、一四・五%上がるのではなしに、実は七七年の三月から非常に円高その他の影響がありまして、いわば水際のところでの円建ての輸入価格がずっと下がってきまして、これはちょうど昨年十一月までに三三%低下して、それから十二月に若干上昇したが、それでも七七年三月の一番高いときに比べれば、原油の輸入価格そのものは約三〇%下がったというところから出発して、これから上がるというわけですね。いま、一月から上がるのでも、これは三カ月のタイムラグがありますから、一月のものは四月から出てくるとかそういうことですから、実際に最終的に一四・五%、これの影響があらわれるのは本当は来年になるわけでありますが、それでも一番高かったときに比べると大体二〇%低いところで、上げたところでも過去の最高のものよりも二〇%低い価格だということを前提に、この問題を見なければいけないと思いまして——これはちょっと遠くてごらんになりにくいかもしれませんが、このグラフで描いても価格がずっと下がったわけですね。ですから、最高時に比べまして、これから上がっていくのではないということを見るときに、一挙に、突然一四・五%分の値上げをやるというのは大変不当であるというふうに私たちは考えますし、また先ほど大臣石油業界の側のいろいろな言い分、これは私も新聞で見ました。いろいろ言っておりますが、ともかく石油九社は昨年九月の中間決算を見ましても大体経常利益四百六十五億円といって、いま不況の中の他の業界から見ればかなりうらやむような状態があるわけなんですから、実際に原油価格動きその他、そういうこともよく調査して、それからタイムラグなどを調査して、こういう石油価格に対しての御指導をされるべきだと思いますが、その辺どうでしょうか。
  116. 江崎真澄

    江崎国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。  ただ、事務当局が記者会見をして、何だか私と意見が違ったような印象を持たれたようでありまするが、事務当局側は、いますぐ値段に介入するものではない、これは需要と供給の原則によって話し合いが行われる、どんなに石油業者が値上げをしようと言ったって、大手の需要者がそれは不当だと言えば思うような値上げはできない、そしてまた、その場面で便乗的な値上げがあればこれは行政指導に出なければならぬが、まず通産省としては、この需給の原則に従って、双方の業者間で話し合いされることが最前提である、これはそのとおりでございまして、事の順序、手続説明した、こういうふうに私は理解しているのです。したがって、私どもはやはり政治的責任を持っておる者として、何となく一四・五%ないし六%といったような石油値上げの最終値段に符節するような値上げは、どういう事情があるにしろ、便乗値上げと思われてもどうもいたし方のないようなにおいもするし、これはよくよく考えてもらいたいということを含んで責任者としての発言になった、こういうわけです。
  117. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまの大臣発言は少し問題にしなければいかぬ。責任者として、値段のつけ方、上げ方に対していろいろ指導しなければならぬということと、市場での競争待ちであるということと、両方まぜて言われましたので、先ほどの答弁よりか一層ちょっとあいまいな感じもありますが、この問題ばかりやっておれませんので、ともかくこういう現下の原油価格動きその他を見て、そしてやはり影響がある問題に対してはっきりとした指導を行うということを再度要求いたしまして、公取委員長に伺います。  先ほど私が読み上げましたように、日石にしろ出光にしろ三菱石油にしろ、大変上げ方がよく似ていますね。全油種で平均約一四・六%、それから三千五百円アップ、ガソリンで言うと一万円ぐらい。大変よく似たのが一斉に出てきたし、時期も同じでありますが、これはどうなんですか。二重にやみカルテルか何かがあるのではないだろうかという疑いがあります。協議して出てきたのではないだろうか、これが一つ。  それからもう一つ。確かに昨年来ガソリンなど大分値下がりがあったでありましょうが、これはどちらかと言うと乱売もあったし、いろいろ市況が崩れたという状況があった。そうだとすると、そういう競争的な価格であるならば、それを一方的に上げるということができないのに、あえて上げるということを発表するというのは、ここにやはりやみカルテル的なもので押し上げようという意図も私は感じられるのですが、これに対してどのように対処されますか、伺います。
  118. 橋口收

    橋口政府委員 石油元売り各社が、最近石油製品の仕切り価格の引き上げを発表したことは承知いたしておりますし、見ようによっては値上げの幅、率等が似ているということも言えようかと思いますが、同時に、全く斉一的であるかというふうに申しますと、必ずしもそうも言えないのではないかと思うわけでありまして、いまお話がございましたように、各社が談合をするあるいは共同して価格決定をするということであれば、これは当然独占禁止法違反の問題が生ずるわけでございますが、ただ、いろいろ考えてみますと、石油連盟及び石油元売りのうちの相当の数が、昭和四十九年二月の告発事件に伴う訴訟が東京の高裁に係属中でございますから、そういういわば訴訟の被告になっておるわけでありますから、そういう立場、それから、その後改正独禁法施行によりまして、課徴金が課せられるということになった事態の変化等を考えますと、万そういうことはあるまいというふうに思ってはおりますが、しかし、かつて、昭和四十年代になりましてしばしば共同行為の事件を起こしている業界でもございますから、そういう点で、われわれの方としても十分関心を持って、今後監視の体制をとっていきたいというふうに考えております。
  119. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) それでは、そういう業界でありますから監視しなければいけないということをぜひやっていただきたいということを申しまして、次の問題に移りたいと思います。  わが党は、これまで政府経済政策全体に対しまして、特に大企業の減量経営放任、それによっていろいろな悪循環をつくり出したのではないだろうか、ずいぶん問題にしてきました。私も昨年ここの委員会におきまして、たとえば大企業の減量経営の名で人減らし、合理化をやっている、その数というのは大変なものじゃないだろうか、年間で見ても、製造業が大体、労働力調査で、一千人以上の企業で十数万人減らしている。これは年間ですね。下請企業も含めて——下請企業にもいろいろな形で人減らしをやらせる。合わせると二十万人で終わるだろうか、もっと多いではないだろうか、こういうことを問題提起しました。この状況がまだ続いているというのは、最近、一九七八年度事業所統計調査が出てまいりまして、これは三十人以上というので、少しその問題がありますが、ともかく一九七二年から七八年へ、従業員数が五万九千人増の中で、三百人以上の方は六十六万八千人減らしている。大変な量ですね。だから、いま失業者が出ている出ているというけれども、主としてこういう大きな規模の企業から出ているということは、あらゆる政府の統計から明らかになってきたわけであります。  ところで、この大企業の人減らしがなぜやられるか、これは大いに分析してみなければいけない問題ですが、一つ、これを進めているのに、大企業が多国籍企業になっていくということに伴って人減らしが多いということを、これも私は昨年、八十四通常国会の予算委員会指摘してきたわけでありますが、ともかく直接投資が認可ベース累積で、七七年度で二百二十二億ドル、GNPに対しまして三%、アメリカ、イギリスに次ぎ、大体西ドイツと並ぶ規模になってきたわけであります。そういうことで、私は、大企業が多国籍企業になっていくことに伴って行う人減らしや、中小企業に対するいろいろな圧迫というのは、もはや放置できない重大段階にあるのではないかということをまず言いたいわけであります。  そこで、もう少し事実について述べたいと思うのですが、最近も週刊東洋経済、これは臨時増刊号の十一月二日号で、十三業種を挙げまして、日本企業の多国籍企業化がかなり本格的になったということを指摘しているわけであります。  それから、私、手元にも持ってまいりましたけれども、二年前になりますが、アジア経済研究所の調査として「わが国民生用電子機器産業の多国籍企業化戦略」というのが出されまして、これなどは非常に新しい状況調査によって明らかにしていると思います。  一つだけ例を挙げますと、松下電器の場合、発展途上国の現地市場で主に販売するということを目指した投資が十六カ国において行われている。それから、そういう発展途上国を含めて、これはオフショアプロダクションと呼ばれておりますが、アメリカ市場向けの海外生産、これがプエルトリコ、カナダ、韓国、台湾にある。それから日本市場向けの生産、海外に工場を置いて日本市場向けがシンガポールとマレーシアに置かれている。そういうことから、アジア経済研究所の指摘も、いよいよ日本市場向けも加えた総展開の段階に入ったということが言われております。三洋電機についても同様で、三洋電機の社長も、いよいよ国内の生産、それから輸出向けの生産、海外生産を三、三、三にするという、こういう方向に向かっているわけであります。  こういう状況があるときに、実はこれまで私がこの問題を取り上げても、そういう海外事業社がふえていくこと、従業員がふえていくことと、国内の工場で減っていくことと余り関係がないのだという答弁しか政府からいただけなかったわけであります。しかし、こういう調査実態からして、政府としてこの事態を改めて認識し、何らかの対策をとらなければいけないと思いますが、この問題については通産大臣、ちょっとお答え願いたいと思います。
  120. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、御指摘の点は必ずしもそういうことだけではないというふうに思っております。最近一部の先進国等で輸入制限的な動きがある。特にいま御指摘の弱電製品ですね。急激な円高だというようなことで輸出の先行きに困難性が出てきた。こういう事情を背景にして海外に企業が進出する、海外生産の拡大が見られるということであろうというふうに思います。これも非常に厳しい今日の経済情勢、特に対外情勢といいますか、そういう場面から見ますると、輸出減に甘んじておるよりもこれはやはり国際協調にもなるわけで、現地に行ってそして売る、それからまた日本から関連部品を輸入するというようなことで、特に今後海外への資本進出ということはやはりそれなりのリスクもあるが、そうかといってわが国としては国策的には進めていかなければならぬ問題があるというふうに考えます。いまおっしゃったように、雇用面で非常に影響するではないかということもあろうかと思いまするが、極端な場面ではもとよりそれぞれ所要の指導をしていく必要があると思いまするが、現在私ども、あなたが指摘されるような大きな影響はないというふうに考えております。
  121. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 必ずしもそうでないという、どこの部分でそうでないというのかもちょっと不明確なんですが、しかし先ほど私が挙げましたね。事業所統計にしろ何にしろ、大きな企業ほど人減らしが多いというだけでなしに、中小企業の方がむしろふやしているときに大企業の方が減らしている。それが何であるかということの一つとして、多国籍企業化と言っているのであって、その量たるや年間十万、二十万ということになれば、軽視していいなんてそんなことは言えないと思いますね。そういうことは言えないわけであります。  それからまた、必ずしもそうでないというのは、何か海外で展開していることと、国内での人減らしとの因果関係というのは薄いんだというふうにも聞こえたわけでありますが、たとえば先ほど私が松下電器の例を挙げまして、松下電器がずっと人減らしで、七四年三月から七八年三月、一万二千八百二十五人減っていますね。主としてどこで減ったかというと、無線機器部門——無線機器部門といってもテレビ、ラジオ、ステレオ、録音機、電子部品その他、それから家電部門、洗たく機、冷蔵庫、ルームエアコンなどですね。ここで主として減ったというのが松下側の資料で出てくる。これは七五年、七六年から急速に減っているわけです。しかし実はその前に、つまり七三年から七四年にシンガポールに冷蔵庫用のコンプレッサーの工場をつくる、マレーシアにウインドータイプ・ルームエアコンと電子部品、それぞれこれはみんな対日輸出現地法人をつくった。これはもう明らかに関係しているわけで、先ほど挙げた同じ期間に海外で六千七百十一人ふえた。海外企業数は四十三から五十六社になっているわけなんです。  私が先ほど挙げたいろいろな調査によっても、いますぐの影響の評価はいろいろあるにしろ、ともかくいわゆる日本の企業が海外へ進出する場合に、まずその現地の市場で何とか売ろうという形の進出、このときはまだそれほど大きな生産をやらないけれども、ここを拠点にしてアメリカ市場に対してどんどん輸出しよう、日本市場に対してどんどん輸出しようということになりますと、国内からのその輸出の分が奪われるだけでなしに、日本市場にもこれが入ってくるわけですから、非常に影響が大きくなってきているわけなんですね。ですから、いよいよ本格的な展開として、アメリカでもオフショアプロダクションと言っている沖合い生産の形での展開が、特に家電その他で本格化しつつあるときに、現に松下もこういうふうな関係で人減らしが行われている。というのは、海外進出をする、多国籍企業化する企業の側から言えば、世界的な市場へ向けての生産ということだけでなしに、特にアジアの低賃金志向ということからどこに工場を置くか、つまり労働力をどう再配置するか、こういうグローバルな立場でやるわけでしょう。そして国内の労働力をこっちへ移すということで人減らしが起きているわけなんであります。  だから、通産大臣、これはもう大分前の、一九七〇年代の初めのころの産業構造審議会の中間答申の、第三章の第二節にちゃんとあるのですが、この中で、海外投資が雇用機会の減少と国内産業の空洞化をもたらす問題にもうこのとき触れているわけですよ。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 それで米国の例を挙げて、これが現実化してから是正するのではもう遅いんだ、だから注意しなければいけない。七〇年代の最初に産構審でこういう指摘があって、そして最近の調査によるといよいよ本格化が進んでいる。こういうときに、まあそれほどのことはないと言っていいのかどうか。それこそこの産構審の答申が指摘しているように、起きてしまってからでは遅いということに対してどう思われているのか、時間がございませんので、これだけちょっと簡潔に。
  122. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、企業の合理化の一環として海外進出が行われておる、これは何も弱電製品ばかりじゃなくて、鉄鋼の場合もそうですね。ですから海外からその商品をボイコットされないまでも、思うような売れ行きが見られないという形のときに、座してそれこそ会社の倒産を招くというか、疲弊を招くというようなことよりも、やはり現地に出て、そして人員の配置転換もいたしましょう、これは合意の上でするわけです。非常に苦労をしながら、かつての戦争中の経験のある者なら、何か出征兵士を送るような感じで送り出しておられるという実情も私ども知ってはおりますが、企業が何とも人員整理をしなければならぬ、傾いてしまうというのを座して待っておるより、やはり進んで現地と協力をしながら、中小企業にも協力でき、部品産業にも貢献できる。そして部品は新たにその現地で輸入するというようなことで転換を図っていくのも、一つの企業努力だというふうに私は理解しております。
  123. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) どうも大臣、私が挙げた事実について余りお調べになっていないで答えられているんじゃないかと思うのです。座して倒産を待つとか、私いま挙げているのは、松下とか日立とか東芝だとかソニーだとか三菱電機だとか、そういうところを言っているわけですよ。そういう世界でも名だたる、世界に脅威を与えている大企業が倒産を座して待つとかなんとか、そんなこと当たらないわけなんですから、それは誤解なさらないでいただきたい。  それから、私が言った海外へ流出させるというのは、国内から行く人というのは少ないのですよ。国内ではどんどん減らしていっているのです。海外で低賃金の労働者を雇っているのですよ。そういう形で労働力を再配置しているので、出征兵士をやっているということをいま問題にしているわけではございませんから、その辺は誤解ないようにしていただきたいのです。  そこで、いま部品の問題が出ましたので私もその問題に入りますが、実は先ほど挙げたのはどちらかというとセットメーカーですね、松下とか日立とか東芝とか。そういうセットメーカーが、実は一ドル三百六十円の時代から二百円ぐらいになってどんどん輸出ができた、なおかつ輸出ができて黒字をつくって、それがまた円高を招いたというこの経過を見ますと、これはもうすでにわれわれいろいろ指摘したところの職場における労働強化の問題もありますが、それとは別に、下請企業に対してもう次から次へとコストダウン、単価の切り下げをやらせ、それから値下げをやらせてきた、際限なくやらせてきた。その様相はまさに大企業のコストダウン吸収装置みたいな、ちょうど頂点のあるピラミッド型の第二次、第三次、第四次下請、そして一番下は内職になるような、こういう下請群を持っていたというのがこの電気機械産業の特徴になるわけであって、そのこと自体いま円高の中でわれわれ問題にしなければいけないのですが、同時に、そういうオイルショック後の猛烈な合理化で、そして輸出を伸ばすために下請が次から次へとそういう値下げを押しつけられてきたというだけではなしに、実はさっき言いましたように、こういうセットメーカーがオフショアプロダクションに移る、海外生産に移る、それに伴って実は部品メーカーもついていかざるを得ない、こういう形になるわけでしょう。台湾なら台湾についていく、韓国なら韓国についていく。そしてその影響が今度は部品産業に出てくるわけですね。それだけではなしに、実はこのセットメーカーの方が海外にいろいろ工場をつくり出すと、今度海外からどこの部品を買おうか、台湾での日本企業から買った方が安いとか、国内から買った方が安いということになりまして、そこでこういうセットメーカーが海外に進出し、そして部品メーカーも、これは中堅どころですが、海外に行くと、いよいよ国内で一番下の二次、三次、四次下請のところですごい買いたたきが行われるわけであります。これは日経産業新聞の七八年八月十六日に載っておりますが、東芝電気の音響事業部長稲宮達也氏がこういうふうに言っているわけです。「セットメーカーは国内で部品の価格をたたきながら、東南アジアに生産拠点を移し、部品の海外調達を進めている。」これに対してどうだと言っていると、「日本の部品メーカーがコストダウン努力をやめたら、われわれは東南アジアでの部品調達に力を入れるだろう。」こういうことを公然と言っているわけです。ですから、いまセットメーカーがあって、そこへ納める部品の生産があります。この中にも大手があります。この下にいっぱいいろいろな二次、三次、四次があるのですが、それがどういうひどい買いたたきに遭っているのか、最近の状況を調べたことがあるのかどうか、これも通産大臣に伺いたいと思います。
  124. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 お話が電気機械のことになりましたので、私からお答えを申し上げておきたいと思います。  まず、電機メーカーのストラクチュアと申しましょうか、下請企業との関連につきましては、ただいま工藤先生から御指摘のございましたようにピラミッド型ということはそのとおりでございます。典型的なアセンブル産業でございますから、当然にそういった構成で産業というものが成り立っておるわけでございまして、セットメーカーが一部海外へ移転いたしますと、随伴的に一緒になって海外に行かなくちゃならぬという面もあろうかと思います。ただ、その際に、御指摘になりました一番末端の零細企業の方々が、とてもそういうところにはいけないではないかという御指摘もそのとおりだと思いますし、私どもはそういう範疇に属する方々の調査といいますものを網羅的にやったことはございません。網羅的にやったことはございませんが、折に触れていろいろな方の御相談を承っておるところでございます。特に伊那地区、先生よく御承知だと思いますけれども、伊那地区の部品メーカーの方々とは、私の方の原課におきまして再三お話も承っております。そういう苦情もよく承っているつもりでございます。  ただ一般論として申し上げますと、電機メーカーの海外進出、これは御承知のとおり最近の円高に対応するものでございまして、先ほど大臣答弁にございました、座して破産を待つよりもという意味はそういう意味でございまして、別に先生のお挙げになりました大企業が倒産するという意味じゃございませんで、円高によりまして輸出が非常に落ち込んだことの対応策といたしまして海外へ進出する、そのこと自身は私は経済合理性に伴うものでございますから非難すべきものではない、こういうふうに考えます。ただ、そのために多数の零細企業の方が非常に迷惑をこうむるということになりますと、雇用面におきまして大問題になるという危険性もございますので、そういう点についての十分な配慮は当然にしていかなくちゃならぬ、こういうことではないかと思います。  そのほかございますけれども、先ほど申し上げましたように私どもは、この議論はマクロの議論というよりもむしろミクロの議論といたしまして、具体的なケースにおきまして、それぞれの業界の方と御相談に応ずるという基本的な姿勢を持って指導に当たりたい、かように考えておる次第でございます。
  125. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私は、その一番下の内職をやっている人が海外に行きたい、何とか行かしてくれなんて、そんなこと全然言ってませんよ。だから、そういう誤解された答弁をされたらまことに困るわけであります。  それから問題は、まだ雇用に問題が出てないと言うけれども、これはとんでもないです。国民金融公庫の「調査月報」七七年八月号をごらんになってください。国民金融公庫ですから関係があると思いますよ。上伊那管内事業所の中で電子部品工業を中心とした電気機械について池田正孝中央大学教授の調査が載っておりますが、これは七四年六月から七五年六月、このわずか一年間に百九十四社が人員整理をやって、被解雇者数は千六百六十八名。これは電子部品を中心にした電気機械だけですが、そういうことがもうすでに起きているわけであります。  それから、余り具体的な調査はされてないようでありますが、すでにこういう中央大学の池田正孝教授の調査、これはきのういただいたこの中にも載ってますからよく読んでいただきたいのです。それから長野県の中小企業総合指導者の調査もあります。日経産業新聞が去年の十二月十九日から二十三日に出した「底冷えの伊那谷」という調査もあります。  こういう中で私が非常に大変な問題を感じますのは、まさにこの電気機械というのは輸出の一番先頭に立っていった企業で、しかもここで一番大きな企業が形成されたけれども、それがこう急速に成長できた一つの秘密として、一番下はもう農家の納屋工場、それで内職、そういう本当に低賃金低賃金で押さえつけてきた、その上で大きくなって、そうして輸出を伸ばして円高を起こして、今度は円高だからといって海外に行って、さっきの東芝の言い分じゃないですか、まあ東南アジアから幾らでも安いものを買えるさ、もう別に国内の部品産業はいいんだ、こういうことですごい買いたたきをやっているわけなんです。  私は、今度のこの買いたたきのやり方というのは、たとえばこれは日経産業新聞の調査によりましても、ある企業、これは網野電子という名前で日経産業新聞に載っておりますが、「この一年間で商社や国内ユーザーから五〇%の値引きを強いられた。」一年間で五〇%の値引きですよ。それから、われわれのところでも調査しました。まだ事前調査ですが、ある企業でセットメーカーからのコストダウン要求は七七年が一〇%、七八年が六%、さらに一〇%、計三十数%の引き下げを要求された。しかもそれは信英の関係ですね。信英は三洋の系列であって、三洋がアメリカ進出を計画しており、アメリカの工場はこれから商社を通じて世界各国から部品を調達するから、さらに二五%値引きされるだろう、こういうことを言っておるわけですね。  もうすでに失業者がうんと出て、そしてこのところ猛烈な値引きが行われている、こういう事態を政府としてまだはっきりつかんでないのじゃないだろうか。しかも、これはどれだけ値引きがあるのか、この中にも載っておりますね。一〇%以上という値引きが相当ふえておりますね。それが五〇%も値引きをやられる、こういうことが放置されていいのだろうか。  それから、さっきは円高だけが原因であると言うけれども、決してそうじゃないですね。たとえば、特恵関税制度で電子部品がどんどん入るわけでしょう。台湾あるいはシンガポールでもいい。それで本当に発展途上国の現地企業だけが日本へ輸出する分に特恵関税がかかるならともかく、堂々とした日本系企業が日本へ輸出するのが特恵関税で、だからますます進出するわけでしょう。だからこういう問題で私が申したいのは、本当に産地を守る政策をとるというならば、特に大企業の低賃金志向型の海外進出に対しての検討と、それからこういう下請いじめのひどい値下げの要求、強制、これはもうどうしても抑えなければいけないということと、それから特に進出企業、明らかに日本系企業の特恵関税利用、これに対して再検討せよ。この三点について最後に答弁をいただきたいと思います。
  126. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず、事務的なことでございますので、私からお答え申し上げます。  電子部品につきまして、現在日本におきます輸出と輸入の状況を見てみますと、輸入につきましては実は年々減少いたしておりまして、たとえば昨年の一月−十月の状況を見ますと、前年同期に比較いたしまして、日本全体としては約一割ダウンいたしております。なおその中におきまして、東南アジア地域からの輸入が七二%ということでございまして、約二七%ほど減っておるわけでございます。逆に、輸出は日本全体といたしまして五%の伸び、東南アジアに対します輸出の伸びは一〇・三%ということでございまして、私どもといたしますと、むしろ東南アジアから安い部品が入ってきて、日本の部品メーカーの方々が大変お困りになっているということでなくて、逆に日本の部品が東南アジア方面へ輸出されて貢献をしておるというのがマクロの議論ではないか、こう思っておるわけでございます。  ただし、いまのはあくまでもマクロの議論でございまして、先生の御指摘になりました具体的なミクロの議論といたしまして、特定の産地で大変大きな問題を抱えておる。先ほど触れました伊那の部品産地のようなものは、CBトランシーバーの影響を受けまして大変お困りになっておるということもございますので、そういった個々のお困りになっておるケースにつきましては、それぞれに実態に応じた解決策を考えていくのが適切ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  127. 江崎真澄

    江崎国務大臣 きわめて事務的な問題ですから、局長から御答弁したとおりであります。下請企業にことさらにしわ寄せするというような問題等につきましては、下請代金支払遅延防止法とかいろいろな問題で従来でもカバーしておるところでありまするが、われわれとしても十分細心の配慮を払いまして、特に極端なしわ寄せ等々については、今後とも十分配慮したいと思います。
  128. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 先ほど部品のマクロ、ミクロという話がありましたけれども、いまのは部品がこうなっているのですよ。労働集約型のところを海外に持っていって、そしてかなり高度のところを国内でやって、国内でやったものを海外で委託加工してやるから、どうしても東南アジアに輸出がふえる、同時にこれから日本にも来るし海外へ行く、こういう関係なんですから、そういう実情をもう少し御理解いただきたいと思いますし、私の質問に対して、たとえば特恵関税問題など必ずしもお答えにならなかったけれども、もう時間が参りましたので、一応きょうのところはこれで終わります。
  129. 橋口隆

    橋口委員長 大成正雄君。
  130. 大成正雄

    ○大成委員 私は、最初に石油需給の現状と見通しといったことについて承りたいと思います。  昨日来この問題につきましても数々触れられておるわけでありますが、どうもお話を承っておりますと、何かちょっと納得しがたいというか、なるほどという安心感が持てないのでありまして、その辺のところを少し詰めて聞かせていただきたいと思います。  まず第一には、今回のイラン革命を契機とする、あるいはOPEC値上げ等いろいろありますが、そういった世界エネルギー事情に対するアメリカ側の事実認識と、日本側の事実認識にずれがあるのではないだろうか。もちろんあっては困りますけれども、その辺のところからお聞きしていきたいと思うのです。  シュレジンジャー米エネルギー長官の談話として、今回の危機は前回より深刻なものになるかもしれない、こういう警告を発しておりますし、また米国としては、イラン石油生産回復が困難な事態を予想して石油戦略を立てるべきだ、こういう認識の上に立っております。また、昨日のワシントン電等を見ますと、訪米しております橋本審議官に対して、アメリカ政府から、カーター米政府は、イラン情勢の混乱による石油危機に対処するために、先進消費国が今年三%ないし五%の石油を節約するよう協議を始める方針を決定した、日本側の協力を要請した、こういう橋本審議官からの情報であります。来月開催されるIEAの理事会でこの問題も当然重要議題として取り上げられるでしょうし、また東京サミットでもこの問題は議論されると思うのであります。  特に、橋本審議官から、江崎通産相とシュレジンジャー長官の会談を持つことが合意された、こういう話でありますが、長官大臣とのこの会談というものは、いま具体的にどのように受けとめておられるのかも、あわせて承りたいと思います。まず第一にそこまでにしましょう。
  131. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私ども石油供給の前途が楽観的であるなどとは一度も申したことはございません。しかし、ことしの景気持続を図って雇用安定もしなければならぬという状況を配慮しながら、国民に節約を求め、またみずから官庁が節約の範を示しながら、とりあえずは振りかえの輸入増に依存をする、あるいは備蓄を取り崩す、大手の規制はしない、こう言っておるのであって、そのことを直ちに何か先行き楽観をしておるように言われたのでは困ります。しかし私どもとしては、自信があるというふうに申しておるわけですが、そのゆえんのものは、それこそことし日本の大きな役割りである景気回復景気持続、国際協調、こういった面もにらみ合わせながら、この油の問題を多角的に考えておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。  それからシュレジンジャーが何か私との間に会談を持ちたいという話については、まだ正式に何も聞いておりません。
  132. 大成正雄

    ○大成委員 もしアメリカ側からそういう話があった場合に、大臣はどのように対応されるかも後ほど承りたいと思います。  それから、政府がバザルガン新政権の石油政策に対して、どのように理解をしていくかということが非常に重要だと思っております。パーレビ体制時代の石油政策と明らかに違ってくるであろうことだけは、外電等の報ずるところでは私どもも認めざるを得ないと思います。  一例を申し上げますと、ホメイニ師の経済顧問と言われておりますバニサドル氏は、自主独立経済政策への転換を強調して、イラン石油は主として日本とヨーロッパ諸国に輸出されているが、それらの諸国はこれを加工製品化して途方もない値段でわれわれに売り戻してくる、われわれは一方でこれらの製品を買い、他方で強い経済基盤をつくることを同時に行うことは不可能だ、こういう言い方をしておりますし、またこの石油政策の根本的な改革の必要性を力説しながら、世界石油輸出国である役割りの放棄とか、あるいは自国産業の開発育成その他石油収入の削減と適正化とか幾つかの柱を立てて、この革命政権の石油政策の転換をはかり知るような言動が伝えられておるわけであります。もちろんこのバザルガン政権の経済政策の変革というものが、イラン世界との関係を一変させるということは当然であります。特に対米関係においての変革は強いられるだろうと思うのでありますが、この辺の理解はどのように受けとめておられますか。
  133. 江崎真澄

    江崎国務大臣 バザルガン新首相は、かつて国営石油公社の総裁であった。それからまた日本の企業との間にもコミュニケーションがあります。そういった点から、石油問題については一応専門家であるという評価はできると思います。ただ、先行きどういうことになるのかということになれば、まずとりあえずは国内の治安でありましょうし、政局の安定でありましょう。しかし、いまあなたがおっしゃるように、石油の専門家であるだけにイランの今後の国家経営という面から考えましても、いまのような生産ストップ、麻痺状態がいつまでも続くことはなかろう、これは願望を交えて私どもも予測をするわけであります。今後的確に情報をキャッチして対応していきたいと考えます。
  134. 大成正雄

    ○大成委員 昨日来政府は、一−三月七千二百万キロリッターが確保できそうだ、これに節約を加え、また他の産油国の協力を仰ぐあるいは新しい生産出荷に期待する、こういったことを述べておられるわけであります。そのことは一応政府の責任ある立場として言っておられるのですから、これはわれわれ国民として安心するといたしましても、この七千二百万キロリッターを確保し得たというその理由は、OPEC値上げを予測しての思惑的な先買い、そういったことも僥幸であったと理解をいたすわけでございます。四月以後秋口までシーズンオフ、この不需要期を過ごして秋以降が心配だ、こう言っておられるわけでありますけれども、いま政府考えている程度の節約が、果たして備蓄を取り崩す条件としてのIEAの節約条件たり得るのかどうか、このことも問題でございます。また同時に、政府がすでに決定しております「長期エネルギー需給暫定見通し」、六十年度をめどとしたこの見通しそのものを、現状及びその将来の展望において改定する必要がないのかあるのか。「対策現状維持ケース」として七億キロリットル、省エネルギー率五・五%、約四千万キロリットルでありますが、今回政府が打ち出した節約奨励と、この五・五%の省エネルギー率の目標達成の兼ね合いは、どのように私どもは位置づけて理解したらいいのか、このことをひとつ承りたいと思います。
  135. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まずIEAの発動基準でございますけれども、これはIEA加盟国十九カ国ございますが、この十九カ国に対する石油輸入量が、基準時の供給量と比べまして七%以上削減された場合に緊急融通スキームが発動される、こういうことになっております。その場合、七%以上でございますから、仮に八%といたしますれば、まず七%までは各国が消費節約をしてください、こういう条件になっておるわけでございますから、ある国がキリギリスみたいで七は節約しない、五しかやりませんということでございますと、そういうキリギリスのような国に対しては緊急融通計画は適用しないことになるわけでございます。これがIEAのいま決められている取り決めでございます。  ところで、いまのところIEAは、現事態はIEAの緊急融通スキームを発動するような危機的状態ではないという判断に立っておるわけでございます。したがいまして、いまの段階で日本がやっておる節約が緊急融通スキーム発動の条件を満たしておるかと言われれば、それは満たしておらない。それはアメリカもヨーロッパも全部同じことでございまして、現在そのような七%の節約を行っている国は、いまの段階では一国もないわけでございます。したがいまして、御質問に対しましては、緊急融通スキームの条件は満たしておらないということでございます。  それから第二番目に、現在のような節約でもって昭和六十年一〇・八%という節約目標を達成し得るかどうかという御質問でございますが、幸か不幸か、いままで不景気だったものですから、昭和五十一年度から昭和六十年度に至る計画の初年度、五十一年度における輸入石油所要量、たしか三億キロリットルくらいと見ておるわけでございますけれども、以後石油の輸入は全然ふえておりません。むしろ減っているくらいの状況でございます。したがいまして、これまでの不景気の結果、意図的な節約というよりも、むしろ不景気に起因するところの節約が行われておりまして、この計画考えておるより予想以上に石油の輸入は伸びていない、停滞しておるというのが現状でございます。したがいまして、いまのこういう状況でありますならば、昭和六十年度四億三千二百万キロリットルという目標以内で輸入量をおさめることは可能であろうと考えております。
  136. 大成正雄

    ○大成委員 備蓄の取り崩しを政府は決定しておるわけでありますが、IEAとの協議をこれがために始めるということでありましょう。しかしながら、いま政府考えている備蓄の取り崩しの計画は、備蓄法第七条、第八条、第九条等の規定からしますと、どのようにわれわれはこれを理解したらよろしいのでしょうか。また同時に、IEAの目標あるいは備蓄のガイドライン等を達成するために、言うならばその取り崩した分は埋め戻しをしなければなりませんが、こういったことに対してどのように考えておられるか、承りたいと思います。
  137. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 わが国の備蓄政策は、IEAの備蓄政策と表裏一体になっております。現在IEAによりますところの備蓄義務量は輸入の七十日分でございます。この七十日は明年、一九八〇年一月一日に九十日まで引き上げなければならないということになっております。  こういうIEAの義務を履行するために備蓄法の備蓄基準も現在八十日になっておるわけでございますけれども、これをことしの四月一日からは八十五日、来年の一月一日からは九十日、こういうふうに上げていくというのが備蓄法のバックにある政策でございます。それからなお、そのほかに、御承知のとおりタンカー備蓄七日分、五百万キロリットルというのがあるわけでございます。  ところで、この七十日から九十日に上げていくというIEAの政策は、これは平常時における政策でございます。今回のようなイランの事態というようなことは想定していない、平常時における備蓄の増加の仕方であるということでございます。しかるに、そういう想定していないイランの危機が起こったわけでございますから、そういう新しい事態に対応してどういう備蓄政策を行うべきか、あるいはどういう備蓄の取り崩し政策を行うべきかということは、今後加盟国の間で十分相談すべきことであろうというふうに考えております。したがいまして、日本の今日の備蓄水準は、民間で八十四・六、政府で七日分でございますが、この民間分につきましては、多分三月末までいきますと八十日ぎりぎりくらいのところまで減るのではないか。それで、四月一日以降八十五日に無理に義務づけをいたしますならば、今度は石油会社スポットマーケットへ出かけていって、買いあさりをしなければならないということになるわけでございます。ところが、現在スポットマーケットは、御承知のとおり公定価格に対しましておおむね九ドルアップというような、異常価格になっておるのみならず、ほとんど玉がないというような状況でございます。したがって、そういうところへ日本石油企業が買いあさりに出かければ、スポット価格をますます暴騰させる。そして、多分それはOPEC価格の再引き上げということを誘発しかねない可能性もあるわけでありますから、現段階において備蓄量を四月一日八十五日というような規定路線のまま、しゃくし定規に進むということはいかがなものであろうかというふうに私ども考えております。したがいまして、一応基準量を八十五日に上げましても、その適用に当たりましては弾力的に対処したいというふうに考えているわけでございます。それと、IEAとのつながりにつきましては、IEAの理事会等がございますので、そこにおきましてよく打ち合わせをしなければならないというふうに考えております。
  138. 大成正雄

    ○大成委員 量の安定確保も大事でございますが、価格動向も重大な問題でございます。イランの減産分に対して、すでにサウジ等においては二重価格制の採用を発表しておりますし、中国を初めとしまして、メキシコあるいはインドネシア等、量の問題よりもさらに価格を重視するといった傾向もありますが、大臣、今年末あたりの価格上昇率というものはどの程度に判断しておられるでしょうか。OPEC値上げ一四・五も含めて、ことしどの程度油が値上がりするというふうに判断しておられるのでしょうか。
  139. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまからこの程度値上がりするであろうなどということは、やはり私、立場からいってもお答えしない方が適当であるというふうに思います。  OPEC値上げ分についてどうであるかということなどについては、事務当局からお答えさせます。
  140. 大成正雄

    ○大成委員 じゃ結構です。  大臣に、これは答弁できることとして承りますが、政府石油税、二五%増、これを道路財源として今回予算化しておりますね。この石油税すべてを道路財源に投入していくという思想は、自民党の政調会長もおやりになっておられたわけでありますが、どういうものでしょうか。特に通産大臣というお立場になられて、石油税を道路財源に持っていくんだというこの思想について、大臣はどのようにお考えでありますか。
  141. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは法律で決めた、目的税にした経緯がありまするから、私がどうこうというよりも、国会としてこの法律をどう判断するかということがやはり背景になるというふうに思います。
  142. 大成正雄

    ○大成委員 私は大臣のことですから、恐らく昨年の政府案の決定段階において相当猛烈に抵抗されたんだろうと思っておるので、もう少し迫力ある答弁を期待しておったのですが、まあ立場上やむを得ないと思います。  それはそれとして、次にナフサの輸入問題について承りたいと思います。  化繊関係の会社がナフサを独自に輸入したいという申請を出したはずでありますが、新聞紙上、ちょっと情報で聞くところによりますと、輸入代行権を与えるというようなあいまいなことで何か決着をつけるような話に聞いているのですが、真相はどうなんでしょう。
  143. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 共同ナフサ輸入会社からの輸入業務の届け出につきましては、私どもは、法律上のたてまえはともかくといたしまして、政策といたしましては届け出業者の数をふやしたくないというふうに基本的に考えておるわけでございます。と申しますのは、御承知のとおり、石油業法に基づきまして石油供給計画なるものがあるわけでございますが、この供給計画計画的に行政に乗せていくためには、輸入業者の数がむやみにふえるということは、私どもとしては政策的に見て余り好ましくないことであるというふうに考えております。ところが、石油化学の方におきましては、いまは違いますが、従来国内のナフサ価格と外国のナフサ価格の間に大きな開きがあって、外国の方が安かった。他方、国内のナフサ価格はなかなか下げてもらえないので、国内のナフサ価格について交渉するためのバーゲニングパワーを持つためには、輸入業者になりたいという主張をしておられたわけでございます。そこで、エネルギー庁と石油化学業界との間でよく話し合いをいたしまして、この届け出は取り下げる、しかし、共同輸入会社は届け出をした輸入業者の代理商として実際の輸入業務を行う、こういうことで石油化学業界としては十分目的を達成できますので、あえて届け出をすることはしないということで、エネ庁との間で完全な了解に達しておりますので、近く届け出は取り下げられるということになるだろうと思っております。
  144. 大成正雄

    ○大成委員 長官、その際輸入枠はどうなんです。その代行分の輸入枠は別途考えるのですか。
  145. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 輸入は供給計画の枠内において行われるということになるだろうと思います。
  146. 大成正雄

    ○大成委員 時間の関係がありますし、電電公社からせっかくおいでいただいていますので、三、四、五をちょっと留保させていただきまして、六番をお聞きします。  この十三日の新聞に、「困った。」といって、でかい字で全紙の広告が出ておるわけですよ。これは、通信機械工業会と通信電線線材協会が、「日本の電話が危機に立たされています。」ということで「困った。」。何が「困った。」か、読むと大体わかるのですけれども、これは何ですか、電電公社の言いたいことを新聞にこういう団体を通じて出させたのですか。「困った。」というのは電電公社の本音なんですか、それともこういう業種団体の本音なんですか、どっちなんですか。
  147. 前田光治

    ○前田説明員 お答えいたします。  その広告は、いま先生御案内のとおり、通信電線線材協会というところと通信機械工業会という製造会社の団体が出しておるものでございます。公社は直接には関与しておりませんが、その広告の内容を私も出ましてからしさいに読んでみたわけでございます。ガットの東京ラウンドの政府調達問題が起きまして、特に最近電電公社をその対象にすべきであるという米国の強い主張が出てきております。これがそのまま通るということになりますと、日本の公衆電気通信サービス、すなわち電電公社が提供しております電信電話等のサービスでございますが、これに非常に大きな混乱、非能率、そういった問題を生ずるわけでございまして、この電電公社の公衆電気通信サービスというものが非常な混乱ということに相なりますと、これに使っております電気通信設備というものを製造しております製造業界というものにも非常に大きな危機が参るということから、そのような趣旨の広告を出したものと推測をいたしております。
  148. 大成正雄

    ○大成委員 電電公社としては、この東京ラウンドに対応して、国際入札は受けざるを得ないという立場に立っておられるのですか。
  149. 前田光治

    ○前田説明員 お答えいたします。  電電公社といたしましては、閣議決定の線もございまして、電電公社が購入いたします物品につきましては、内外無差別の原則にのっとって購入をいたしておりますが、ただ、電気通信設備の特殊性といったものからいたしまして、その購入方法は、競争入札という形では非常に多くの問題点を生ずるわけでございます。したがいまして、その購入方法といたしましては、随意契約という方法に大部分よっておるわけでございます。今回のガット東京ラウンドの政府調達問題は、先生御案内のとおり、これが適用されますと、物品の購入をすべて競争入札でやるということが原則になっておりまして、これを適用されますと、電電公社の業務あるいは日本の公衆電気通信サービスというものに非常に大きな混乱を生ずるおそれがございますので、したがいまして電電公社はガット東京ラウンドの国際規約に、電電公社を適用対象体としないように郵政省、外務省を通じましてお願いをして、交渉に当たっていただいておるわけでございます。
  150. 大成正雄

    ○大成委員 通産大臣、いまお聞きのとおりでございますが、通産大臣のお立場として、この東京ラウンドの対米調整、あるいはよほど困ったのでこのようなでかい広告を出したんだろうと思うのですが、この関係業界、これは大臣の行政の傘下にあるわけですが、そういった業界の将来、こういったことを踏まえながら大臣はどのように決断されますか。
  151. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先生のお示しになりました広告の広告主であります通信機械工業会を所管いたしております局長といたしまして、考え方を申し述べさせていただきたいと存じます。  私も当日の朝これを拝見いたしまして、「困った。」というのを見て、困ったという感じを持ったのが率直な実感でございます。その「困った。」という意味は、この工業会の方々がアピールしたいという気持ちか正確に伝わるのかどうか、かえっておかしなフリクションを起こすのじゃないか、そういう心配があることが私にとって困ったという実感を与えたことでございます。  ちなみに私の方の所管の通信機械工業会がどういう生産及び輸出をやっているかということを簡単に申し上げておきますと、一九七七年、五十二年でございますが、約七千億の受注がございます。そのうち官公需が三千七百億でございます。三千七百億のうち電電公社から注文を受けておりますのが約三千百億。これに対しまして民需と称しますものが約千六百七十億、それから輸出が同じく千六百七十億ということでございます。したがいまして、私ども通産省の立場から申しますと、電電公社に納めておられますウエートは非常に高うございますけれども、外需も案外ばかにならぬほどございますので、こういった面で、先ほど申し上げましたように変な誤解が生じまして、フリクションが起こると大変困る、こういう気持ちはございます。先ほど電電公社の方から御答弁ございました。私どもも電電公社の立場は十分わかっておるつもりでございますが、一方私どもの立場から言いますと、国際協調という問題も大事な問題でございますので、その間につきまして何らかの調整が図られることを、通産省機械情報産業局としてはこいねがっているというのが実情でございます。
  152. 大成正雄

    ○大成委員 大臣、対米調整という立場から、この問題に対してはどのようにお考えになりますか。
  153. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまお答えをしたとおりでありますが、私も率直に言って、国を挙げて特にいま交渉の一番論点になっておる問題で、ああいう広告を業界が出されることは、やはり困った問題だなと率直に思ったわけです。もともとわが国の電気通信システムに製品を出しておりまする通信機の関連メーカーというものは、世界の相当高い水準を行っておることは間違いないと思うのです。したがって、国際競争場裏にさらされる、これはむしろやり方の問題ですね。さらされても相当な競争力はあると思うのです。初めから何もかも全部自由にする、開放する、こういうことでもありますまい。だとすれば、やはり自由経済を志向し、日本の市場をできるだけ開放していくというたてまえをとろうということになれば、やはりそれだけ苦労をしておるんですから、ただ一方的な議論だけでなしに、国策の面からもこういった重要な問題については、協調を願うところは協調願わなければならぬ、いろいろ今後とも話し合いをしていきたいというふうに考えております。  事情については、秋草電電総裁なども私を訪問されまして、詳しく困難性を申し述べられました。それはそれ、しかし、また同時に日本として市場を開放したり、自由貿易の原則にのっとって今後どう市場を開いていくかということは、またおのずと別の問題としてよく検討しなければならぬ問題だというふうに考えます。
  154. 大成正雄

    ○大成委員 予算委員会の総括でも時間がなくて十分聞けなかったのですが、公取の委員長も遅くまでお残りいただいておりますので、せっかくですから承りたいと思うのです。  予算委員会の続きと思ってお聞きいただきたいわけでありますけれども、いま残されておる独禁法あるいは団体法の共同行為、これらについては個々の業態ごとにいろいろ考え方は違うと思うのでございますが、一方において市況の価格の安定、一方においていま国策として進めておる構造政策、この調整、この接点をどこに求めるかということは非常にむずかしいと思うのですが、これらの独禁政策を運用していかれる公取委員長として、どのように判断されるのかを承りたいと思います。  アルミ、合繊、小棒その他個々の問題について、いろいろいまとっておるカルテル、共同行為と、構造政策との兼ね合い等について詳しく聞きたいのですけれども、これは次の機会に譲るとしまして、公取委員長の一つの思想というか、物の考え方、これだけは承っておきたいと思います。
  155. 橋口收

    橋口政府委員 一言で申しますと、独禁法の不況カルテルは短期的な措置でございます。それに対しまして、構造改善策というのは長期的な措置というふうに分けて考えておるわけでございまして、短期的な措置であります不況カルテルは、主として生産量の調整をやりまして需給ギャップを解消して、それに伴って在庫率も下がって適正な在庫率になる、そういう業態の変化をもとにして、一般的な市況が回復される。そうなりますと、企業として安定した経営ができますから、したがって不況カルテルが不要になる、こういう景気の繁閑パターンと平仄を合わせたようなかっこうで動くものが本来の不況カルテルであると思います。  ただ、一般的な情勢に対応しての不況カルテルだけで、日本の産業の長期的な展望というものに対して、十分対応できるかどうかという問題が次にあるわけでございまして、生産数量の制限をやって、いま申し上げましたような過程を経て市況が回復するはずであるにもかかわらず、依然として市況が悪いというような事態が、おととしから去年の初め程度にはあったわけでございまして、それはよく考えてみますと、やはり産業予備軍としての過剰設備というものが、市況に対する圧迫要因になっている。したがって、単に生産量の調整だけをやりましても、基本に過剰設備が存在いたしておりますと、その過剰設備がいつ動き出さぬとも限らない。そういうことが市況に対する圧迫要因となって、依然として特定物資についての市況がよくならない。そういう状態を長期的に解消するためには、やはり設備の廃棄を含む構造改善策が必要だ。それによって長期的な需給のバランスをとろうというのがいわゆる構造政策でございます。したがいまして、考え方としましては、構造政策が行われ、また行われることについての展望がはっきりいたしますれば、市況対策としての不況カルテルは必要なくなるというのが普通の経路であろうかと思います。  ただ、経過的には、いま御指摘のございました、たとえば合繊とかアルミニウム地金については、構造改善策と同時に、生産調整策としての不況カルテルも依然として必要な事態が続いている。希望としましては、構造改善策はそのまま残って、市況対策としての不況カルテルの必要がなくなるというのが、その経済のノーマルな成長のパターンとして、将来は期待されるということになるのではないかというふうに考えております。冒頭に申し上げましたように、一言で申しますと、短期措置と長期措置の違いというふうに考えております。
  156. 大成正雄

    ○大成委員 時間が来ましたので、大変恐縮ですが、もう一問だけ承わらせていただきたいと思います。  大店法、商調法の施行が五月に迫っておるわけでありますが、いろいろ準備をしておられるのでしょうけれども、五百平米以下の問題について野放しになっているということでいいのか、あるいはこの前の委員会の確認において、ゼロまで調整できるという解釈に立っていいのかの問題もありますが、都道府県の指導要綱なり条例なり、こういったものの問題の調整がむずかしいようでございますが、方針だけ承らせていただきたいと思います。
  157. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  改正されました大店法の準備でございますが、現在省内でいろいろ準備作業をやっておるわけでございます。まだ案は固まっていない、目下いろいろ進行中、こういうことでございます。  ところで、お尋ねの条例あるいは要綱と、それから大店法との関係でございますが、これは去年の秋、国会で御審議になりましたときにもいろいろ御議論いただいたところでございまして、そのときに私ども考え方はるる申し上げたわけでございますが、その考え方は特に私どもは変わっていないわけでございます。すなわち、特に五百平米以下の建物を調整対象とする条例、要綱というものにつきましては、これはこの前の改正の御審議の際にも申し述べたわけでございますけれども、最近の小売業をめぐるいろいろな情勢の変化の中で、消費者利益の保護を配慮しながらも、中小小売商の事業活動の機会を適正に確保するという観点からいろいろ検討が行われ、特にどの程度にするかという点については、中小小売商との顧客吸引力の格差というものを検討をし、あるいは最近の小売業をめぐるいろいろな紛争実態というものもいろいろ検討いたしまして、小売問題懇談会等の議を経まして、結局五百平米まで引き下げるということにいたしたわけでございます。  そういった経緯にかんがみますと、私どもといたしましては、こういう大店法、それから商調法という両方の法律の改正も行われました段階におきましては、従来の条例、要綱というものにつきまして、その実態的な必要性というのは乏しくなっているのではないかというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、現行の条例、要綱につきましては廃止する方向で御検討願いたいということで、指導をしてまいりたいと考えておりますが、それぞれ自治体につきましてもいろいろの実情がございますけれども、私どもといたしましては、そういった考え方で今後いろいろ指導をしていきたいというふうに考えております。
  158. 大成正雄

    ○大成委員 大変超過しまして、申しわけありません。ありがとうございました。終わります。
  159. 橋口隆

    橋口委員長 これにて通商産業大臣及び経済企画庁長官の所信に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会