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○森下
委員長 これより会議を開きます。
内閣
提出、医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する
法律案、両案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
島本虎三君。
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○
島本委員 厚生大臣に、先般行われましたあの札幌スモン裁判の件について、いま
提出されております薬関係二法にのっとって質問を展開さしてもらいたいと思う次第です。
その第一は、今回の北海道スモン訴訟の判決、これは十日の午後二時、ちょうどこの日に質問を予定しておったのでありますが、ダグラス、グラマン関係の証人喚問問題で暗礁に乗り上げてきょうになったわけであります。したがって、この質問は当時準備されたその質問にのっとって、患者や国民の声をそのまま質問にかえて、厚生大臣の善処をお願いしたいと思っている次第であります。
この判決はいままでと若干の違いがあるようであります。患者数六十名全員についての請求を容認されておるのであります。それと、国のみに対する、いわゆる投薬証明のない患者についても請求が認められた。こういうような裁判所の判断もこれからだんだん続くであろうと思うのであります。
したがいまして、この判決の定着しておる部分としては、すでにこの点ははっきり大臣のこの前の答弁にもあるのでありますが、スモンとキノホルムとの因果関係は明白だということ、第二番目には製薬会社と国の法的責任が確定したということ、第三番目にはいわゆる投薬証明のない患者についても国の責任が認められたということであります。こういうような点からいたしまして、引き続いて被告、特に国の救済対策の立ちおくれが指摘されているところであります。
国は、過去における判決の都度、早期に全面解決をこの場所で約束しているのであります。本年の二月二十二日、
大原同僚議員に対する答弁におきましても、それをはっきり言明しておるのであります。ほんの三カ月前だったのでありますが、その後これをどう扱い、この判決に対してどういうふうに受けとめ、対処をしようとしているのか、まず大臣の決意を聞かせてもらいたいと思います。
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○橋本国務大臣
島本委員が御指摘になりましたように、札幌地裁で出されました今回の判決は、広島地裁に次いで、国としては非常に厳しい内容のものと受けとめております。
ただ、法律上の問題点としての論議は、国としてなお係属し判断を上級審にゆだねたい部分がございますので、その点についての控訴はすでにいたしました。
ただ、それとは別の問題として、このスモンの患者の方々の実態を考え、一日も早い全面一括解決を求めたい、そのための作業を進めたいということを本院でちょうど広島地裁の判決の直後に申し上げましてから、今日まで、私どもなりに一生懸命に努力をしてまいったつもりでございます。
当時、全面一括解決を図る場合に最大の問題点となっておりましたのは、一つは、田辺製薬がいわゆる可部和解に参加をしておらなかった点、もう一つは、投薬証明のない患者の方々にどう対応するかといった問題、さらに恒久対策について今後どう整理をしていくかということでありました。
当時、投薬証明のない患者の方々に対する対応は、可部和解の延長線上の問題として、東京地裁にその御判断を願っておったわけでありますが、やはり東京地裁としても、田辺製薬が参加をしていない状況のもとで作業がなかなかむずかしいといったこともありまして、今日までまだ御判断をちょうだいできておらないわけであります。
ただ、本院また参議院の多くの方々の大変な内面外面からの御協力をいただきましたおかげで、田辺製薬が東京地裁において先般和解に調印をいたしました。私は、このおかげで、全面一括解決という方向を目指してきた中でのまず第一の壁を越えた、そのように受けとめております。
今後、順次各地裁において、田辺製薬関係も、国また武田、チバ両社のとってまいりましたと同じような形で、和解の作業が順次進めていかれるものと期待をいたしております。
同時に、田辺製薬が東京地裁における和解を受諾をいたしまして調印をいたしました結果、東京地裁として、投薬証明のない患者の方々に対する可部和解の延長線上の問題としての見解をおつくりをいただくことについての支障がなくなりましたので、遠くない将来において何らかの判断がお示しをいただけるものと考えております。私どもといたしましては、その御判断を受けまして、この投薬証明のない患者の方々に対する問題に対処をしたい、そのように考えております。
もう一つ残っておりますのは、今度はその恒久対策についての問題でございますが、私といたしましては、本日、この
社会労働委員会の休憩時間を利しまして、武田、チバ、田辺の三社の社長を呼びまして、恒久対策についての話し合いを早急に行うようにという指示をいたしたい、そのように考えております。
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○
島本委員 だんだんに御答弁で明らかになってきたのでありますが、やはり薬事法の一部を改正する
法律案、医薬品副作用被害救済基金法案、この二法を出しておるという現実にかんがみて、再び将来こういうような薬害を起こさない、こういうようなことが決意の底にこもっていなければならないと思うわけであります。そしてそのための方針が示されたものだ、こういうふうに思っておるのであります。しかしながら、その内容を見る場合には薬害根絶への道は遠く、スモン患者への救済の道はなかなか険しい、こういうような現状であります。今回のこの判決、今度こそはいまの答弁そのものを実行に移して、本腰を入れて薬害の絶滅とスモン患者の救済、これと取っ組むべきじゃなかろうか。いろいろなことを言っても、やはりスモン患者、こういうような薬害患者の救済なくしては二十世紀は終わらないのだ、こういうようなことで、現厚生大臣はこれと取っ組むべきじゃなかろうかと思っている次第であります。
なお、法的な責任もすでに定着したように思います。国もその責任を認めているようであります。そうである場合には、もうすでに控訴をした、こういうような御答弁もあるわけでありますが、そういうようなのを取り下げてでも、スモン患者の早期救済と全面解決、これにつながる道を考究すべきじゃないか、こういうように考えているのであります。近い将来判断した上でこれを決めたい、こういうような考えじゃなしに、直ちにこの問題と取っ組む、大臣が先頭に立って全省内を挙げてこの対策のために取っ組むような姿勢もいまこそ必要なんじゃなかろうか、こういうふうに思っている次第であります。若干マンマンデじゃなかろうか、こういうように思うのでありますが、いま私はその必要性を痛切に感ずるのでありますが、判決とあわせて大臣にもう一回これに対する決意を、まあやかましゅうございましょうが、国民の前にはっきりさせてもらいたいと思うのであります。
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○橋本国務大臣
島本委員の御指摘になるそのお気持ちは私もよくわかるつもりであります。ですから、そうした気持ちで今後ともに努力をしてまいりたいと思いますが、ただ、国は、御承知のように、可部裁判長時代の東京地裁における和解というものを根底に置き、今日まで患者の方々との話し合いを続けてまいりました。その中で、投薬証明のない患者の方々に対する国としての対応、またそれぞれの企業の対応というものは、やはり私は、可部和解の延長線上の問題として裁判所の御判断を仰ぐことが適当であろうと思います。ただ今回、田辺製薬がその和解に参加をいたしました時点で、東京地裁としても御判断をお示しをいただく体制ができたわけでありますから、私どもとしては、そう遠くない将来においてその見解というものが示されるということを確信をいたしておりまして、それをちょうだいした時点において忠実に実行をしてまいりたい、そのように考えております。御了承いただきたいと思います。
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○
島本委員 依然として何か慎重さ、その慎重さの余り、大臣の年齢的な若さが厚生行政の中に直接反映されておらぬのじゃないか。若いし、元気があるし、年寄りではできない意気があるはずなんですが、若年寄りになっちゃいけない、こういうような見地から、再度この問題に対してもう一回聞くわけでありますが、厚生省がいわゆるキノホルムの製造を許可した昭和三十一年一月十七日からもうすでに二十三年を超えている、その間に何回も判決が出て、最後には投薬証明の患者の救済責任、こういうようなものに対しても明らかにされているわけであります。その間の患者のこの苦しみ、これを見る場合には耐えがたいものをわれわれとして感ずるわけでありまして、大臣もわれわれ以上にその責務をつくづく感じているだろうと思うのであります。しかし、それだけじゃなく、遺伝説やウイルス説、このために悲惨な夫婦別れであるとか一家離散、こういうような事態もわれわれとしては聞いているのでありますし、また、望みを失って今度は生活を破壊されて、どん底の苦しみ、中にはあえて自分で世の中からの生存を断ち切ってしまった、こういうような人もあったのであります。こういうような実態を味わってきたいままでの苦しい状態のスモン患者、公害列島日本がいまや薬害列島日本になっている、こういうようなことからして、西独ではただ四人、日本を除いて世界では六十五人というのに、四十七年で日本は一万一千人もの被害が起きている、現在は二万人を超えているというではございませんか。いま訴訟している人が四千人、そうすると、あとの残りの人はほっておいてもいいということにはなりません。重大な社会問題を蔵していることになるのであります。したがって、既発生患者をこのままにしておけない特殊な事情がある。このことは十分大臣ももう気がついておるはずであります。今回の基金法案の中にも、スモンなどの既発生のいわば薬害被害者は救済対象になっておらないというような現状であります。しかも、この基金法案が上程されるに至ったいきさつは、スモン患者の全面的な救済から発想が始まっているのであります。そうだとすると、当然スモンなどの既発生被害制度を対象にすべきでありますが、一顧だにされておらないというのはまことに不可解である、こう言わざるを得ないのであります。この救済に対して私は蛮勇をふるってもいいのだ、こういうふうに思うのであります。慎重さの余り、余りにもこういう患者の苦しみに対して少し無視するような、これは言葉が過ぎるかもしれぬのでありますが、これから遠ざかるような、こういうようなお考えではだめだと思うのであります。いまこそ大臣は、蛮勇をふるってでもこの全面解決のために突進してもらいたい。そこに残されたあなたの重大な社会的使命があるのだ、こう思っているわけでありますが、再度大臣の決意を伺わせてもらいます。
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○橋本国務大臣 若年寄りになるなと言われましたが、むしろ中年増の心境でありまして、しかも蛮勇と申しますけれども、私は小心翼々と毎日を過ごしておることも御承知のとおりであります。
ただ、冗談は抜いて、私は
島本さんの言われるお気持ちがわからぬわけではありません。ですから、少なくとも一生懸命に田辺製薬も説得し、今日までの事態をつくってまいりました。
ただ、その制度的な問題についてお話しになりましたけれども、たとえば西ドイツにおける救済制度におきましても、制度創設以後の発生患者を対象としてつくられておる制度であることは、よく
島本さんも御承知のとおりであります。私どももこの立法の過程においていろいろな工夫をしてみましたが、最終的に、法制上新たな制度が創設された後のものを対象とせざるを得ないということで、今回こういう形で国会に御提案を申し上げました。
ただ、最初から申し上げておりますように、私どもとして与えられました条件の中で最善は尽くしてきたつもりでありますけれども、私はこの形にこだわるつもりはない。本院また参議院の御審議を通じて、より前進ができるものであれば、私は、与野党の御意見が一致をすればそれを取り入れていくことにやぶさかではありませんということも、最初から申し上げております。そしてこうした制度がつくられますことは、患者の方々、また今後万が一こうした問題が発生をした場合に被害を受けた方々が、少しでもその苦痛を減らすためにつくられる制度なのでありますから、より前進をしたものに改定をしていく努力というものを私は決して否定をいたしておりません。
-
○
島本委員 既発生被害者、これあたりも制度的な対象にすべきであるし、それはもう国会の意向を尊重するのだ、こういうような意味に私は解釈できる答弁だ、こう思っているのであります。それならばもう一歩を進めて、今度はやはり大臣の重大な決意の一端にもなろうかと思うのでありますけれども、この判決または和解でスモン被害者の得た賠償一時金というもの、これは各種の一時金があるわけであります。これはもう一時金をもらったからいいんだという考え方ではないと思うのでありますけれども、その実態を調査してみます場合には、罹患後十数年間放置され続けてきた結果患者として得た金でありますから、借金その他の返済に消えてしまい、ほとんどの患者にとっては焼け石に水というような状態だというのであります。特に、若年層の罹患の患者にとっては、これから三十年、四十年をどうやって生きていくのか、全く暗やみの状態じゃなかろうか。すでに今度の判決によって国が責任をはっきり認めるというならば、今後この患者が人間らしく暮らしていけるためには、どうしても必要な措置をとってやらなければならないと思います。
年金制度的なものの
確立、たとえば健康管理手当というものを要求されておるのだそうであります。しかし、これはあえて言うと、ささいなものであっても、こういうような制度は患者にとっては不可欠な要素じゃなかろうか。これを考えてやらないということはまさに残酷に過ぎるのじゃないかとさえ思うのであります。あえて言うと、この点一つでも、今回は進歩的な、恐らくは患者に十全ではないまでも、はっきりした厚生省の責任ある態度としてこれを取り入れたんだということを示すべきではなかろうかと思うのであります。この点に対しては大臣はどうお考えですか。
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○橋本国務大臣 先ほども申し上げましたように、本日、本
社会労働委員会の休憩時間を利して武田薬品、チバ、そして田辺の三社の社長を、この恒久対策について至急に検討し、患者の方々の代表の人たちとその問題を詰めろということで、呼びつけておるということを先ほども申し上げておるわけでありまして、この問題を何も放置するとは私は一切申し上げておりません。先ほど申し上げましたように、きょう三社を呼んでおりますと申し上げております。
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○
島本委員 それで大概私は了解できるのであります。しかしながら、十数年来の患者の苦しみというような点をあえて考える場合には、呼びつけてある、したがってその後の結果を信頼してくれ、やることはやりますよ、大臣はそういうような決意を持って、やわらかな答弁をしておるのじゃないかと思います。それはわかるのであります。わかるけれども、しかし、わかる上にもう一回はっきりわかっておかなければならないし、大臣のはっきりした答弁をこれに付加しておかなければならないと思うのであります。したがって、そういうような点を三社を呼び集めて話をするんだ、そのためにはいま患者が求めている健康管理手当、一つのささいなものであっても、制度的なもの、こういうような不可欠なものを考えながら解決してやるんだ、こういうような点を十分含んでいるんだ、こういうようなふうに、私ははっきり自分の良心に照らしてそう考えているのでありますが、私の良心に照らして、大体大臣の答弁もこれに間違いないか。これだけ一言聞いておきます。イエス、ノーで結構であります。
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○橋本国務大臣 ですから、最初に申し上げましたとおり、恒久対策の問題を至急に患者の代表の方々と詰めるべく、三社の社長を呼びつけておると申し上げております。
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○
島本委員 どうも行政の衝にある人はわからない。呼びつけてあるから、その点安心してくれと一言言えばいいんだけれども、後のがないのですね。呼びつけてある、呼びつけてあると言うが、それで全部いいんですかね。私は一歩その後が欲しいのですが、後と言ったら、呼びつけてある、そこで切れるのですね。私は野党であって、行政の席に上がったことは一回もないのでありますけれども、それでいいものですか。呼びつけてあるから大丈夫なんだ、こういうようなことで了解していいんですか。ちょっとくどいけれども、呼びつけてあるからいいんだ、そこらあたりは十分わかっているんだ、やるんだ、こういうようなことでいいんですか。
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○橋本国務大臣 たびたび同じことを繰り返して恐縮でありますが、冒頭に申し上げましたように、患者の方々の恒久対策というものについての御要求が出ておる内容を踏まえて、それをどう実現していくかのために三社の社長を呼んでおるのでありますから、いまこれから、きょうのこの休憩時間を利してその話をしようとしておるところでありまして、私は、だから一生懸命努力をいたしますということを最初に申し上げております。
-
○
島本委員 三回にしてようやく私は納得できたようであります。(橋本国務大臣「一番最初から言っているじゃないか」と呼ぶ)
それならばこの保健
福祉事業、たとえば治療の開発だとかリハビリテーションですか、こういうようなものも恒久補償対策の中にはっきり入るわけであります。恐らくはこういうようなものが入ることを予期して、こういうようなものに対しては大綱にまで盛られておったし、今度は公害健康被害補償法にもはっきり盛られておるし、療養手当として健康管理手当に該当するようなものも盛られておるのでありますけれども、今度の場合はっきりこれは漏れているのであります。
こういうふうにして見ると、那辺に厚生省の考え方があるのか、この点は、以後は信用してもいいのでありますが、私はやはりくどいけれども、二度、三度はっきりさせておかなければならない必要性があると思うのです。なぜこれは入れなかったのか。特に入れなかった理由があったのか。まあ、いま大臣の言われるとおりに、この恒久補償対策、こういうようなものをこれからやるのだから安心せい、こういうようなことでありますから、今後はそれに期待して安心しています。しかし
局長、これはもうこういうふうにして大綱にまで盛っておった。それで、公害健康被害補償法にもはっきり盛られておる。なぜこの大事な保健
福祉事業、こういうのが本法に盛っていけなかったのか。こういうような点も、今後の点はいいけれども、なぜ盛らなかったのですか。
-
○中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。
実は、今回の
医療品の副作用による健康被害の救済に関する仕組みにおきましては、何分にも、前例といたしまして西ドイツの薬事法による賠償義務の規定が立法上の先例としてございまして、この運用について、私どもといたしましては私らなりに、一体それがどう動いているのかという情報の収集に努めたわけでございます。もちろん、西ドイツ方式によりましては、先生御指摘のような
福祉事業的なものは入っておりません。しかしながら、西ドイツの例によりますと、実はその西ドイツの先例は、法律上も私どもの目から見ますと非常に不備がございまして、たとえば副作用の警告が能書に書かれてある場合においては、その副作用事故が発現をいたしましても一切救済対象にならないというふうな考え方を関係者が持っておりまして、すべて訴訟に持ち込まれるというふうな危惧の念があるわけでございます。
そこで私どもといたしましては、何と申しますか、全世界的に前例のないこの種の基金をつくることに決断をしたわけでございますが、この基金の事業といたしましては、やはり最大の問題はいわば金銭的救済ということに主眼が置かれておりまして、かように決断をしますこと自身に、非常に大きな問題があったわけであります。
私どもの考え方といたしましては、この基金の事業をさらに前進させていく過程におきまして、当然基金の機能が発動しますことに伴う、それによって収集される副作用事故の中身の、たとえば臨床医家に対する伝達であるとか情報収集によりまして、この副作用事故の発現を事前に予防するというような種類の事業、さらには先生御指摘のようないわゆる保健
福祉事業等も、当然、この基金の業務のあり方を考えます際の、一つの大きな問題点であるということは十分に認識をいたしております。これは先回の当委員会における大臣の御答弁にもありましたように、私どもといたしましては、まずこの基金の制度によりまして、金銭的な面における給付と申しますかこれを先行させ、この基金事業がうまく軌道に乗るかどうか、乗った場合に、さらに第二段の問題として、さような保健
福祉事業あるいは副作用事故の予防に関するような基金の活動事項というようなものを、その段階において考えていきたいというのがわれわれの率直な判断でございます。
しかしながら、これについては、いろいろな関係方面の御意向等もあり、基金法の中身がどのようになるか、これは先ほど大臣の御答弁にもありましたように、当院における御議論の結果を踏まえてという感じの取り扱いになるのではなかろうか、かように考えております。
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○
島本委員 金銭的な救済が問題だというような点はわかります。それならば、医薬品の副作用被害基金法、これは金を支払う側に立つと思われる人が支払うべきか否かを判断するという、この基金法案の考え方、これはいろいろな参考意見を徴した際に、患者側から物すごい抵抗があったことをわれわれとしてはいま思い出すわけであります。ナンセンスじゃないか、こういうような言葉さえあえて出たのであります。
そういうふうにして見ます場合には、認定制度というようなものに対しては、考え方からやり方から根本的にきちっと変えていかなければならない、修正の必要があるんではないか、こう考えられるのであります。薬事審議会の中に、運用の一面として判定部会は構成されるようであります。そうすると、その構成の要件が大事だと思うのであります。製薬団体等をこれに入れて考えるのですか、入れない考えなのですか。まず、この点を明確にしてもらいたいと思います。
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○中野(徹)政府委員 まず第一に、これは私どもの法案につきましての御説明が不十分であったところから生じた問題でございまして、その点はあらかじめおわびをいたしておきたいと存じます。
まず第一に、基金のいわば評議機構に業界の参加を求めるという点は、業界側に拠出金を割りつけるわけでございます。この割りつける場合の業界内部における、たとえば大衆薬とか、あるいは新薬、あるいは注射とか、内服とか、剤型の相違等によりまして、いわば賦課金の賦課率が、剤型あるいは医薬品の特殊性に応じまして変わり得るという前提にわれわれは立っておるわけでございます。したがいまして、業界に対する総負担の業界内部におけるところの適正な割りつけというようなものについての、いわば関係者の意向が反映されなければならないことは当然でございまして、この評議機構というものは、業界内部の、その製造している医薬品の特殊性によるところの、いわば傾斜的な割りつけのために考えたわけでございまして、この評議機構が個々の給付について抑制的な作用を及ぼすというようなことは全く考えておりません。
第二に、法律上の構成といたしましては、医学的、薬学的な専門技術的判断を要する事項につきましては、基金から「厚生大臣に判定を申し出ることができる。」という規定が置かれていることは御承知のとおりでございます。この「できる」という言葉の表現につきまして、実は先回当院におきましても
矢山先生から強い御質問があったわけでございますが、「できる」というのは、大臣に対して申し出をする権能を基金に付与するという意味であって、私は、
矢山先生の御質問に対しまして明確にお答えしたところでございますけれども、これは全ケースについて判定を申し出るという意味であるというふうに申し上げたわけでございます。
そこで、さらに判定に当たる判定部会でございますが、これは当然、利害関係者である製薬業界の判断がそこに入るなどということは全く考えておりません。
判定部会には、当院における御答弁で明らかにしたところでございますけれども、五十四年度、すなわち現年度でございますが、この現年度は、給付開始が五十五年度でございますので、これに先立って、いわば相当程度のガイドラインと申しますか、ルールづくりをして、五十五年度以降の給付開始に備えて、これが円滑にかつ迅速に行われるように、ガイドラインづくりをする必要がある、そのために三名の判定部会のための正委員を予定し、さらに三十名の専門的な委員の方を予定をいたしております。これはいずれも医学、薬学及び法学の立場の専門家をお願いをするつもりでございます。
実際に業務が動き出します五十五年度以降は、個別認定の問題をめぐりまして、さらにこの機構を
拡充する必要があるというように考えておりますが、この判定問題に対して拠出を行うべき製薬業界の関係者を入れるなどという考えは毛頭ございません。
-
○
島本委員 毛頭ないということで、了解いたしておきたいと思います。
それで、考え方になりますから、これは大臣だと思いますが、今回のスモン病判決に見られるように、国が製造承認に当たって安全性を確認すべきを怠った結果こういうようなことになったのである、スモンは国の過失によるものであるということ、したがって今度は基金法で、救済は法的な責任ではないんだ、社会的な必要性であり恩恵的なものと考えるんだ、こういうような考え方が吐露されたのでありますが、それじゃ国の責任というものに対してどういうふうに考えているのであるか、これはやはり問題だと思うのであります。これは薬づけになった結果生んだ一つの被害であります。そういうふうになりますと、国に当然責任があるのであります。PPPの原則からしても、やはり製薬業者と同時に国もその加害者の一人に該当するのではないか、こういうような考えも当然生まれるのであります。そうすると、今後の基金の負担ということ、これは考え方はやはりPPPの原則適用以前の問題もあり、そうして現行においては、判決以後は国もその責任があるのじゃないか、この責任を付与されたのじゃないか、したがって今後はこれに対しても国は重大なる対処をここに辿られたんじゃないか、こういうように思うのであります。この認識について大臣はいかようにお考えでありましょうか、この際篤と承りたいと思います。
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○橋本国務大臣 この救済基金の制度をつくりますに際しましては、いろいろな考え方を私どもなりに検討したということを先ほども申し上げました。いま
島本さんがおっしゃいましたようにPPP、いわゆる製造物責任というような考え方をとりましたが、(
島本委員「原因者負担」と呼ぶ)もともとは原因者負担でありますけれども、それは結局突き詰めていけば製造物責任ということですね。製造物責任というような考え方をとりました場合には、これは一切の責任はそのメーカーそのものにかかっていくわけでありまして、現に西独の救済制度はそういう形になっております。そうしますと、いま
島本さんがお話しになりましたように「国も」ということは入ってこないわけでありまして、私どもは、いろいろな立法体系を考えていく中でそうした考え方も検討はいたしてみました。しかし、従来からずっと示されております、地裁段階とは言え幾つかの判例の積み重ねの中で、国の責任というものも加味された状況になっておることは御承知のとおりでありまして、仮に今後救済制度を創設する場合、一切を原因者負担の原則、すなわち製造物責任を採用して、メーカーに押しつけて国は関係ないんだという制度をつくりますことが、日本の現在の社会の認識の中で認められ得るものかどうかという点についても、私どもは相当いろいろ考えさせられるものを持っておったわけであります。最終的には、いま御審議をいただきますような、民法上の問題ではなく、純粋に患者の救済というものにポイントをしぼった基金制度というものが最も妥当なものであろう、こういうことになったわけであります。
ただ、いま
島本さん、恩恵的という言葉を使われましたが、恩恵的などということは私どもは一切申しておりませんし、また考えてもおりません。純粋に患者の救済という点にポイントをしぼって考えれば、いま御審議をいただいておりますような形が最もふさわしいのではなかろうかということで、この立法に踏み切った次第であります。
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○
島本委員 国は考えていない、こういま大臣がおっしゃったのでありますが、先般の参考意見の開陳を願った際に、参考人の製薬メーカーの関係の人、それから薬剤師の関係の人、こういうような人たちは、やはりこれは社会的必要性であり恩恵的な制度だ、こういうように理解しておりますというはっきりした意見の開陳があったわけであります。大臣はそういうように考えておらない。しかしながら、これに携わる人たちがそう考えているとしたならば、その間のコミュニケーションがもちろん不足しておるのでしょうけれども、大臣の考えがそのまま伝わっておらないということになり、今後の法の運営にも事欠くようなことになると思うのであります。したがってこの際は、はっきりした考え方を持って、救済は法的な責任があるからやるんだ、決してこれは恩恵的なものじゃないんだ、単なる社会的必要性によって国がやるだけの問題でもないんだ、この点は判決ではっきりしたはずなんですから、もうすでにそこまで踏み切っていいと思う。いままではそうでなくてもよかったと思います。しかし札幌判決が出た以後は、今後はこういうことは許されないと思うのでありますが、この考え方についてもまだまだ甘い考え方が業者の中にあるんです。したがってこの際きちっとしておいた方がいいから、あえて高邁なる厚生大臣の意見を伺ったわけなんであります。私がそう考えているからというならそれで結構でありますが、それなら全部徹底させてやらなければならぬじゃないか、こう思いますが、いま言ったように、やはり救済は法的な責任があるんだ、これは判決によって認められたんだ、決してこれは恩恵的なものではないんだ、こういうような考え方をこの際もなおはっきりさせておくべきだと思いますが、いかがです。
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○中野(徹)政府委員 国が各種の判決について問題にいたしております点は、地裁レベルでの判決で認められましたところのいわゆる加害責任、あるいは国家賠償法上の責任問題についての法理論を争っているというふうに御理解をいただきたいと存じます。
今回の基金制度の性格は、当然医薬品というものの特殊性にかんがみまして、政府としてこのような制度が必要だという判断が根っこにあるわけでございますが、この基金制度が作動いたします段階におきましては、当然基金法に基づくところの請求権というようなものが発生するわけでございまして、これは基金法という特別法によるところの請求権である、ここのところはだれも否認しがたいところでございます。根っこのところの民法上の責任論とか国家賠償法上の責任論という点については、政府は地裁の判決と残念ながら意見を異にしておりますが、この基金制度は、これが作動しました場合には恩恵的なというような性格のものでは全くない、基金法に基づくところの明確な公法上の請求権を持つものである、かように御理解いただきたいと思います。
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○
島本委員 それならば今後は、やはり救済を対象とする以上、これは軽微な患者も当然含めるべきである、このことも言明しておくべきだろうと思います。はり、きゅうを六カ月以上行う場合等の、
医療保険では対象とならない
医療も救済の給付の対象にすべきだ、こういうふうに思うのでありますが、この点あえてはっきりさせておきたいと思いまして聞くわけでありますが、これはどうですか、
局長。
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○中野(徹)政府委員 これも実は当院におきまして御質問のあった点でございますが、私どもは、
医療に関しましては、先生御承知のように、国民皆保険下におきまして必要な
医療は、原則的に社会保険
医療によってカバーをされておるというふうに考えております。したがいまして、いやしくも
医療として必要なものであるならば、それは医薬品の副作用による健康被害であっても、当然にそこには社会保険
医療が働くべきものであるというふうに考えます。
しかしながら、医薬品の被害によるところの健康被害に特殊な性格が仮にあったとして、この特殊な性格に対応する給付として、医・療保険のカバレージ以外の分野が仮にあったといたしまして、それが必要なものであるとすれば、それを取り込むことにやぶさかではないわけでございます。
-
○
島本委員 この点は、あえてもう一回、最後に、厚生当局に具体的な問題で要請をしておきたいと思います。
それは今回出されているこの二法の問題、この中にスモン患者、これらの救済問題も含めて、そして全面的にこれを修正して、国会の意向と行政当局の意向がここに完全に一致したようにして、今後もう薬害はないのだ、こういうようなところまできちっと今回この国会で、この委員会でこの二法案の取り扱いをしてもらいたい。またすべきだと思います。そして、今回、それなしには二十世紀は終わらないのだというふうにして、厚生大臣のもとにきちっとこの問題の解決だけはして終わってもらいたい。心からこの点を要請して、私のつたない質問でありましたが、私は誠意を込めて質問したつもりでありますから、やはりこれで二十世紀を終わらせるために、この完全な終末だけはっけてもらいたい。このことを心からお願いし、最後に大臣の決意を伺って、私は終わりたいと思います。
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○橋本国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもは、政府としてできるだけの考え方の整理をし、その中で最善と思われるものを御提案申し上げたわけでございますが、それが完全にこれですべて問題を尽くしておるとは私も思っておりません。それだけに、スモンを例に引かれましたけれども、既往の薬害に対してどう対処するかといった点につきましても、与野党の御議論がまとまりまして一定の方向が示されれば、私どもとしてはそうした方向に努力をしていくことに決してやぶさかではございません。ただ、こうした問題を解決していきます上において、本当に今日まで党派を超えて御協力をいただいてきたわけでありますが、委員の方々の御協力というものがなくては、これは行政府だけで解決のできない部分を持っておりますだけに、今後ともの御協力を心からお願い申し上げます。
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○
大原(亨)委員 先日来の質問に引き続きまして質問を続けたいと思うのですが、ポイントにつきましてはかなり審議が進んでおるというふうに理解をいたします。そこで、別の観点あるいは新しい観点で続けていきたいと思います。
最初に、いまの薬害副作用被害者の救済法と薬事法の改正、この問題を審議するに当たって、大臣の意見を聞きたいのです。
総括的に、日本では、サリドマイドでとどまらないで、スモン病という、歴史的にも国際的にも類例のない薬害事件がなぜ発生したのであるか。欧米のスモンの薬害被害の例を想定いたしましても八十四、五件でありますが、日本は一万一千も政府の統計だけでもある。ということは、一体どこに原因があるのか。この二法案で、これからの薬事行政の有効性とともにある安全性の問題について、これを再び繰り返さないような薬事法の行政が展開できるか。あるいは、もし万一不幸にしてあった場合に、薬害救済法があるわけですけれども、そういう観点を踏まえて、なぜ一体日本においてはこんな大きな薬害があったのか、こういう問題について、大局から見てどういうお考えを持っておられるか、その点を明らかにしてもらいたい。
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○橋本国務大臣 非常にむずかしい御質問でありますが、私なりに考えておるところを率直にお聞きをいただきたいと思います。
御承知のように、現在薬事法の改正案を御審議を願っておるわけでありますが、前回の薬事法の全面改正というものは昭和三十五年に行われたと承知をいたしております。当時私どもまだ国会におらない時代でありますから、むしろその経緯は
大原さんやなんかの方が詳しいと思いますけれども、その時代においては、医薬品というものはまず第一に安全であるということが一つの前提であり、同時に、特殊な医薬品について、延命効果その他の上で非常に効果があるものについては、ある程度の副作用があってもやむを得ないんだというような考え方が基本にあったのではないだろうか。そしてそういう中で、とにかく基本的に医薬品というものは安全なんだ、安全性がまず前提なんだということが根底にあって、その上で、むしろ有効性の部分についていろいろな規定を加えた現行の薬事法がつくられたのではないだろうか、私はそのように想像をいたしております。
当時、世界各国において薬事法というものの改正作業が進められておったわけでありますが、その中で、日本は比較的早い時期にその薬事法改正の作業を終了した。ところが、その翌年に御承知のようにサリドマイド事件が発生をし、非常に大きなショックを世間に与えたわけでございます。そして、それ以来、現行の薬事法の規定を使いながら、行政行為によってその足らざるところを補いつつ、今日まで薬事行政というものは進められてきたと私は承知をいたしておりますが、その中において、一方では
医療制度全体との絡みの中で、またあるいは、国民的に薬というものに対する信頼感が非常に強かった等の原因もあって、いろいろな原因が積み重なって、今日の非常に厳しい御批判を世間から浴びるような情勢を惹起したのではなかろうか、私はそのように考えております。
そうした中で、今日、私どもは、薬事法改正の一番の急務の部分として、その安全性の問題に着目をし、従来行政行為で行ってまいりましたものをきちっと法律の中に取り込むことによって前進を図りたいということを考えて、現在御審議を願っておるという状況だろうと思います。
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○
大原(亨)委員 順次質問を進めてまいりますが、この基金法ですが、基金の法的な性格について、行政管理庁やその他の方針があって新しい法人をつくるのにはなかなか苦労したと思うのですが、この基金法に基づく基金は民法上の「法人」というように、準拠の法律を条文の中に入れておるわけですが、たとえば従来の公団、公社などのようないわゆる公法人、こういうものと違う点あるいは同じ点、類似した点、こういう点を頭に置きながら、基金の法的な性格について御答弁をいただきたい。
-
○中野(徹)政府委員 これは先生御指摘のように、いわゆる行政管理庁のとっておられる姿勢の問題が微妙に関連してくる問題であることは事実でございますが、私どもといたしましては、一つの考え方といたしまして、この基金制度は、いわば医薬品の特殊性に基づくところの社会的対処についての公的使命を持っているものだというふうに考えております。そのような公的使命を持った医薬品の特殊性に基づく社会的な対償のいわば処理を行う機関というふうに観念をいたしておるわけでございまして、このようなものを先生御指摘のようにたとえばいわゆる特殊法人と申しますか、このようなものとして構成することが適当であろうというふうに考えた時期は確かにあったわけでございます。さような形のものといたしましては、たとえば公庫、公団あるいは各種事業団あるいは各種の基金といったような、法律に基づく直接の設立の法人形態もございます。私どもといたしましては実はそのような形のものを念頭に置いて準備作業を行ってきたわけでございますが、政府の一般方針といたしまして、この種の特殊法人についての取り扱いが非常に厳しくなりつつあることは先生御承知のとおりでございまして、私どもなりに判断をいたしまして、いわゆる認可法人と言われている形態のものでございますが、この認可法人の形態をとることについて政府部内で意見が一致をいたしたわけでございます。しかし、私どもといたしましては、この認可法人であるかあるいは特殊法人であるかということを問わずに、結局この法律の条文に即して考えました場合に、特殊な公的権能を有し、また公的責任を有する、公的義務も有するという形のものが構成されるならば、私どもとしてはその法律の形態についてはあえて云々する必要もないわけでございまして、先生御承知のとおりに、この法人は、企業からの拠出金を強制徴収権能まで付与されている法人でございます。認可法人にこの種の強制徴収権能を付与した例はほとんどございませんので、先例としては一、二の例があるのみでございます。私どもといたしましては、この公的な責務を遂行する際に、どうしてもその裏打ちとしての強制徴収権能が必要だ、それが確保されるならばあえて、いわゆる特殊法人あるいは政府関係機関等認可法人、いろいろな法人形態が立法上ありますけれども、私どもとしては、その目的が達成されるならば、特に公的徴収権能が確保されるのであれば、認可法人でも差し支えないというふうに判断をして、この形態に踏み切ったという経緯でございます。
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○
大原(亨)委員 きょうは大蔵省の出席を求めているのですが、いま政府のこの資料の中にもありますが、日本には、厚生大臣が承認をいたしました医薬品の製造業は大体何カ所あるのですか、まずそれを答弁してください。
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○本橋政府委員 現在、日本にございます医薬品製造業は約二千社でございます。
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○
大原(亨)委員 日本に二千社ほどある、こういうのですが、その中には、医薬品の副作用被害を起こし薬害を発生した場合に、支払い能力の完全にないであろうと思われるようなものも含まれておりますか、どうですか。これはこれからの薬害救済問題を議論する前提ですけれども、そういうものは頭に置いて製造承認をしてきたか、あるいはこれからするような方向について考えておるのかどうか。
-
○中野(徹)政府委員 二千社と申しますのは概数でございますが、その中には、先生御承知のとおりに非常に歴史的な由緒のある、たとえば俗に言う家伝薬とか、こういったような大衆薬でございますね、こういうものを細々としてつくっているという企業も含まれておるわけでございます。
しかしながら、この種の企業に製造承認を与えておるわけでございますが、それらの企業につくらせておりますところのいわゆる大衆薬は、先生御承知のとおりに副作用の可能性がきわめて薄いと申しますか、つまり安全性の観点からいって、いわばその中身、薬の有効成分なり何なりにつきまして、副作用被害のきわめて薄いものを大衆薬として認めているわけでございまして、私といたしましては、それらの零細製薬メーカーというようなものがその副作用被害の重大な原因になり得る可能性というものはきわめて少ないものというふうに判断をいたしております。
しかしながら、そのような可能性は絶無ではございません。絶無ではございませんので、結局、そのような大衆薬によって生じたその副作用被害をも救済をするという形に相なりますれば、先ほど審
議官の方からお答え申し上げました零細企業も含めての企業の参加を求めて、大衆薬も含めてこの基金の救済対象にすべきであるというふうに考えておるわけでございます。
さような副作用発生確率がきわめて低い大衆薬については、危険のいわば確率の差に基づきまして徴収金も格差をつけるべきことは当然でございますけれども、その低い確率に応じた低い拠出ということはございますが、そのような二千社すべてが、仮にいやしくも医薬品を製造する者であれば、全面的にこの基金に参加をし、この救済事業にいわば参加をしてもらう、かような仕組みで考えているところでございます。
-
○
大原(亨)委員 この認可法人は強制徴収権を持っているというふうに御答弁になりましたし、そういうふうに書いてあります。
それで、強制徴収する場合には、一般的な前年度の販売数量の販売価額の二%以内で決めるというのがありますが、しかし、被害が特定の企業の製品であるというふうに特定できる場合においては、特別に徴収をするという二段構えになっておりますね。
日本のように、いまは漢方薬の伝統があって、小さいメーカーがあるということも事実でありますが、また逆に、医薬品が非常に高度に、合成化学の発達によりまして、薬効のあるものが生産されると一階に、副作用も出てくるわけですけれども、たとえば特定のそういう高度の化学合成医薬品を生産している小さなメーカーが特定の納付について資金力がない、そういう場合が想定し縛ると思うわけです。抗生物質からずっといま副作用があるわけですから、鎮痛剤、解熱剤からあるいは麻酔剤に至るまであるわけですから。日本はそういう外国の製造業についての承認基準が非常に緩くて、そして企業数が非常に多いわけです。ですから、開発能力とか副作用の追跡能力などがない企業であって、もしこういう大きな薬害事件の原因である医薬品を生産したという場合に、支払い能力がないというふうな場合が想定できるわけであります、日本のような状況においては。そういうときに、基金といたしましては、やはり認可法人、公的な法人といたしまして、制度の性質上、国といたしましての責任があると私は思うわけですね。
時間を節約いたしますから、大蔵省に聞いてみますが、この基金を運営するに当たって、スモンの判決文にずっと出ておりますけれども、製造業者の製造物責任論、これを中心といたしておりますが、しかし国も薬事行政上の連帯責任がある、あるいは和解におきましては三分の一という数字を出しております。で、基金を運営する場合には、いま議論をいたしております、過去の既発生の薬害に対しても対象を限定しながらでも遡及をいたしまして適用していこうということになるわけですが、基金運営において、国は財政上の問題を含めて公法人と同じような考え方でこの基金の運営ができるという、国が保証することが必要であると思うわけです。そして製造責任を明確にしていくことが必要であると思うわけですね。そういう基金の運営の基本について大蔵省は十分理解をしているかどうか、こういう点について大蔵省の見解を聞きます。
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○安原説明員 医薬品の副作用による被害に対する責任の問題につきましては、現在具体的なケースにつきましては裁判所で争われている状況でございまして、今回の制度はその問題には触れていないわけでございます。直接医薬品の副作用によって被害が生じた場合、その被害者に対して早期に救済を図る、そういう救済制度を創設するということでございます。
そこで、この救済制度の性格でございますが、先ほど来
厚生省薬務局長から御答弁がございましたように、救済のやり方といたしまして、医薬品につきましては副作用が避けられないという特殊性がございますので、そこで、直接有効で安全な医薬品を供給するという社会的責任を負っております製薬企業を加入者といたしまして、いわゆる保険システムで対処するのが適当であるということでございまして、その保険が一定のルールのもとに、公的な規制のもとに公正に行われる必要がある、そういうことで、製薬企業等の関係者がそういう保険制度をつくることについて合意が前提とならなければなりません。したがって、その民間の発意を受けて、そして一定の特別の法律に基づく仕組みの枠内でそれが運営される、そういうことでございますので、認可法人という形態が最もこの場合に適しておるという判断をしたわけでございます。
そこで、そういう保険メカニズムとしてこれが運営されていくわけでございますが、国としましても被害者の救済を早期に円滑に行われるように行政的な責任を果たしていく必要がある、したがってそういう制度を創設する、それから公正に行われるということの基本でございます判定の問題につきましては、専門的知識も要求されますので、基金から申し出があればそれを国の方で判断していく、それから一定の大きな被害が生じました場合におきましてもこの救済給付が確実に継続されるということが必要であろうということで、そういう例外的な場合につきましては国も応分の財政助成をやっていく、そういうことで国としての責任を果たしていきたい、かように考えております。
-
○
大原(亨)委員 あなたは政府が出した議案に基づいて答弁されたと言うのです。そのこと以上については、いま審議中でありますから、立ち入っては議論をいたしません。これはあとで引き続いて議論をいたしますから。
そこで、将来の問題として、日本の企業の実態から言いますと、原因者が特定している場合でも支払い能力のない場合があるのですね、日本の場合には。これは十分想定できるわけです。ですから、そういう将来も予想し得る場合において、そういう場合の負担はどこでやるかということを明確にしておかないと、迅速に救済措置をとるという基金法の第一条の目的を達成することはできないと思いますが、これは薬務
局長でよろしいと思うのですが、いかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 基金法のいわば財政運営と申しますか、それに関する御質問であろうかと思います。
お手元にございます基金法の仕組みは、たとえば一つの方法として、先生の御指摘のように、一般的な徴収金がございまして、一般的な徴収金は一定の基準で算定をいたしましたところのいわば出荷額と申しますか売上高と申しますか、そういうものに対して先生御指摘のように千分の二の上限を設けまして、その限界内において一般的な拠出金を徴収いたします。これはすなわち、この部分は、全製薬業界連帯でその医薬品の特性に応じて製薬業界の社会的責務を遂行するということの趣旨に対応する拠出部分でございます。
それ以外に、先生御指摘のように特別の徴収金を設けまして、特定関与企業、すなわちその健康被害の原因となりましたところの医薬品のメーカーでございますが、これから一定部分の拠出を求めるという形に相なります。この特別の拠出金につきましては、法律の条文上も明らかでございますが、これは政令がかぶっておるところでございまして、これの上限は法文上は設定をいたしておりません。しかしながら、やはり先生御指摘のように、個別企業としての零細企業を含めますれば、当然そこに売上高の、仮にたとえば一プロとか二プロという数字に零細企業の場合にはなる場合があり得るかと思います。
非常に具体的な例を申し上げますと、たとえば特殊なワクチン等を製造しているものであって、そのワクチンが予防接種法のらち外のものであったといたしまして、非常に特殊なそのような小さなメーカーもあり縛るわけでございます。そういたしますと、そのメーカーの売上高自身は、非常に重要な社会的責務を果たしながらワクチン類を製造しているわけでございますけれども、しかし売上高は小さい。したがって、それに伴う予防接種事故以外の副作用につきましての救済責務を特別徴収金で徴収いたします場合には、その比率が売上高に対して非常に大きなものになるおそれはあります。それは、たとえばその経常利益率が売上高に対しまして五、六プロというようなところが普通の薬業界の常識であろうかと思いますけれども、そこに、五、六プロという経常利益の限界を超えるというふうなケースが発生し得るわけでございます。そのような場合には、当然、連帯といたしましてこの一般拠出金自身はそのような危険事態に対する準備積み立てをするわけでございますから、その場合におきましては、その種零細企業の特別拠出金の負担限界を超える部分については、一般拠出の中からの準備積み立て分からの充当によりまして、当然にこれを解決し縛るというふうに考えます。つまり二段構えになっておるわけでございまして、そのような零細企業の負担限界を超えた部分も、この資金手当て上はその一般拠出、つまり全業界からの拠出金によって原則的にこれを充当し得るものというふうに考えます。
しかしながら、先ほど大蔵省当局からも御説明のありましたように、これがたとえばサリドマイドとかスモンとかいうふうな巨大被害、これは私どもそういう事態はあり得ないと思いますけれども、仮にそういう事態が生ずるとすれば、そこに当然その国としての関与の仕方の道も考え得る、かようなおぜん立てになっておるわけでございます。
-
○
大原(亨)委員 これからやはり、医薬品メーカーは非常に大きな責任を持つことになると思うのです。それと一緒に、製造承認、事業所の承認を与える際あるいは新薬の許可を与える際、そういう際にはやはり副作用についての追跡能力のない、言うならば一面においては技術開発の能力とうらはらの関係であると思うのですが、そういう能力のないものについては、やはりそういう点を条件に考えながら、双方の場合でやっていくということが必要ではないかと思うわけです。これは外国に比べて十倍近く事業所が多いわけですけれども、これは私どもは、独占化の弊害と一緒に、ゾロゾロメーカーとか類似医薬品をどんどんつくって、そして、薬効の新しい新薬の開発とか副作用の追跡等については関係なしに、どんどん売り込むという風潮もあるわけですから、企業の社会的な責任を明確にするという意味において、そういう能力のない中小企業等は、合併するとか共同化するとかいうふうにして、そういう能力を持つような、そういう側面からの、やはり企業が責任を持つ体制を明確にしながら、企業の実態が掌握できるような措置を進めることが必要ではないかと思いますが、どうですか。
-
○中野(徹)政府委員 先生御承知のとおりに、わが国の特殊性といたしまして、浜方系統の零細家伝薬メーカーというものがございます。このメーカーにつきまして、いやしくも薬というものの特殊性にかんがみれば、そのような、たとえばもしも副作用問題に対する対償能力が低いとかあるいはその副作用情報の収集能力が低いとかいうようなことから考えますれば、この種零細企業が果たして、特殊な使命を持っております医薬品というもののメーカーとして適当かどうかということについては、問題はあろうかと思います。その点においては
大原先生と私は全く同意見でございます。
しかしながら、これは一種のいわば日本の製薬業界の産業構造のあり方論と申しますか、その問題が密接に絡まってくるわけでございまして、方向といたしましては、先生御承知のとおりに、やはり近促法等を活用いたしましてその種の零細メーカーの合併なりあるいは協業化なりを図りまして、先生御指摘のような十分な能力を持った医薬品産業に発展的に変身をしていく方向に誘導するというのが事柄の筋であろうと思いますし、また現にその方向で、近促法を活用いたしまして協業化の実例は着々と挙がりつつあるというふうに私ども判断いたしております。
今後の薬務行政の方向づけといたしましては、全面的に
大原先生のおっしゃるところと同感でございます。
-
○
大原(亨)委員 あと問題点をまとめてやるのですが、もう一つ議論しておかなければならぬ点は、戦後抗生物質等が非常に発達いたしまして、結核とか肺炎とかというふうなものはどんどん減っていったわけです。そういう側面があるわけです。しかしそれと一緒に、耐性菌とかそういう各医薬品等の体内における作用等によりまして、医薬品が高度化すればするほど、副作用が悪循環してふえるという危険性があるわけです。
それで、医薬品の副作用による被害、薬害とは何かということについて私どもははっきりした概念規定をしておかないと、この運営は大きな問題に逢着するのではないか。そういう点は薬理学的な点からの解明、こういう問題が一つ。薬害とは何かという問題。それから、その背景にある日本の医薬品の生産過剰あるいは薬づけ
医療、こう言われる生産から流通販売に至るまでの、患者の手に渡るまでのそういう日本の特殊な背景について、どのように考えていくかという点を頭に置かないと、薬害の根絶はできないのではないかと思うわけです。
そこで、私が調べているときに問題として感じた一、二の例についてお聞きします。
専門家の医務
局長もきょうは見えているはずですから、医者としてどれだけの権威があるかということは私はよく承知しておりませんが、抗生物質でペニシリンショックというのがありますね。ペニシリンショックによりまして致命的なあるいは死亡という事故がありましたら、当然薬害による副作用といたしまして措置をされる、こういうふうに考えてよろしいですか。
-
○中野(徹)政府委員 医務
局長の御答弁に先立ちまして、この基金法の観点から救済が行われるかどうかという点にしぼりまして、私からあらかじめ御答弁申し上げます。
ペシリン等については、いわゆるアレルギー、過敏症等の問題がございまして、これにつきましては、ペニシリン等のショックの危険性のある場合には、医師として当然あとう限りのチェックをすべきものだと思います。しかしながら、このチェックをしてもなおかつペニシリンショックが予知し得ないケースがあると、私どもは専門家から聞いておるわけでございます。
たとえば非常に緊急な場合には、事前のペニシリンショック等についての患者の過敏症あるいはその他のアレルギーの万全なチェック、これは当院においても御質問があったところでありますけれども、医師が緊急に手配をするという場合に、医師が十分な注意を払ってもなおかつ把握できなかった場合、あるいはその医師の側に事態の緊急性にかんがみてそれをするいとまがなかった場合等のことも、十分に考えられます。そこで、当該ケースにつきましては、それが医師の側において当然払うべき注意義務を果たしたかどうかということを基準といたしまして、実際に起きた事故の実態に即して判断をする以外に方法はないわけでございまして、その判定は当然臨床医家も含めた問題になろうかと思います。
したがって、先生御指摘の適正使用という概念は、当院においても御答弁申し上げましたように、日本の
医療の一般的レベル及び、当該ケースの置かれている状況等の判断によって流動的であるという面が出てくるわけでございます。私どもの基金の運用としては、さように解釈をいたしております。
-
○佐分利政府委員 使用いたしましたペニシリンが薬事法に基づく正常なペニシリンである場合には、ただいま薬務
局長がお答えしたとおりでございます。ただ、ペニシリンに不純物がまじっていたとかなんとか別な問題がございますと、また別の考え方になってまいります。
-
○
大原(亨)委員 その場合に薬害、医薬品の副作用、それから
医療事故との関係については、ここに適正使用という条文があるわけです。そういう関係の中における患者の立場を保護する、権利を保護するという法律運用上の配慮については、いままで若干議論されました。しかしこの点について、そういう適正使用における
医療事故については完全な結論が出ていないが、そういう場合においては基金法の緊急救済の対象になる、こういうふうに理解してよろしいか。
-
○中野(徹)政府委員 これも当院におきまして、過日の審議の際に大きな問題点として指摘された点でございますが、私どもは、明らかでないという概念が使用し得るケースは、製薬メーカー側に賠償責任があるかどうかというケースに限定して考えております。したがいまして、
医療事故か適正な使用による副作用かということの分かれ目は、この判定部会において明確に仕分けすべきものだと考えます。筋といたしまして、
医療事故に属すべきもの、すなわち医師が賠償責任を負うべきケースについて、この基金がそれに対して医師の立てかえ払い的なことをするという考え方はとっておりませんし、またそれは筋の通らない話だとわれわれとしては考えております。
ただし、再三にわたって申し上げましたように、患者の迅速な救済それから日本の実際の
医療環境の現実をあわせ考えて、副作用事故による患者の救済を行うというのが趣旨でございますので、これは判定部会のその線に沿った良識ある御判断にまつ、こういう考え方でございます。
-
○
大原(亨)委員 判定部会の判断が出る、その判定について紛争になる、裁判になる、そういうふうな場合には、基金法は救済措置を発動できますか。裁判が解決できなければこの問題については基金法の発動はないのですか。
-
○中野(徹)政府委員 お答え申し上げましたように、医師側の事故と薬の側の事故というものをまず二つに分けて考える。薬の側の事故である場合には、製薬会社に対する損害賠償請求権は独自にこれを遡及していただくことは何ら差し支えございませんし、また、製薬会社側の賠償責任が訴訟上確定するまでの間はこの基金の給付は行うというふうに、すでにお答えをしておるわけでございます。
〔
委員長退席、
竹内(黎)
委員長代理着席〕
しかしながら、
医療事故との振り分けは判定部会において振り分けをする、その際に、繰り返しになりますが、日本の
医療の現実のレベル、日本の
医療環境をあわせ考えて、それが医師の手によって適正に使用されたものと判定されるかどうかということにかかっているわけでありますが、そこは、この制度の目的とするところが患者の迅速な救済ということでございますので、そのような筋を踏まえつつ、判定部会の良識ある判断にまつということでございます。
-
○
大原(亨)委員 その点はまだ問題が残っておりますが、またこれは後で他の委員からでも……。
一つ例を挙げてみるのですが、たとえば鎮痛剤によるショックがいままであったことがあります。特にアンプル入りのかぜ薬のとき等があります。アミノピリンとかスルピリンとかいう劇薬は鎮痛・下熱剤としては非常に有効である。ただし、これはかぜのビールスを退治するのじゃない、治療には関係ない、鎮痛・下熱の作用がある。それをたとえば
医療機関、薬局を二つ、三つのところで投与を受けましたり買ったりいたしまして飲む。そういう場合には過剰投与というか相互作用といいますか、そういうことになります。一つ一つの
医療機関は使用規定を守って適正に使用しておっても、これは患者側の責任と言う人もあるだろうが、
医療機関の場合はちゃんと医師が診断してやるわけですから、そういう場合に、医師からもらった薬を全部飲みますと、医薬品の相互作用、過剰投与、相乗作用というのか、専門的にはわかりませんが、そういうことで事故を起こす例がたくさんある。いままでも剤型の問題で、アンプル入りのかぜ薬の問題を議論したことがあります。これは規制をいたしたことがありまするが、そういう
医療機関を通じてやった場合には、適正に医薬品が使用されたと判断をして、その場合の事故等は適用になりますかどうですか。例を挙げてほしい。
-
○中野(徹)政府委員 先生の御指摘のケース、私はちょっと二つのケースが一緒になっているような気がするわけですが、ケースを二つに分けて考えまして、薬局等において大衆薬を購入したという例と、それから
医療機関側の例と二つ含まれているように思います。
医療機関側の例をとりますと、
医療機関側が当該
医療機関の側において適正な使用であったというふうに判断されれば、結果的に起きた事故については、これは判定部会において医薬品の副作用というふうに判定されると思います。
それから第二の薬局等で購入をした場合、これは先生よく御承知のとおりに、従前のいろいろなショック等の問題もございまして、大衆薬については現在厳重な副作用問題についての監視をし、またそのような確率が非常に低い、つまり非常にオーバーな言い方をすれば多少の過剰使用があっても危険のないような形で、大衆薬については厳重なコントロールがされているものと考えておりますが、その場合も、いわば患者が使用上の注意事項をよく読んでお使いくださいというようなことがテレビのコマーシャルにもよく書いてございますが、その使用上の注意事項というものが一応前提になります。
しかし、医師の一般レベルの問題と同じように、いわば患者側の一般レベルというものもそこに加味して考えられて、患者の迅速な救済を行うということが趣旨でございまして、私のいま申し上げたようなことの線で、判定部会が適切な判断をしていただけるものというふうに考えておるわけでございます。
-
○
大原(亨)委員 それは、実際問題として被害を受けました患者は途方に迷うような答弁です、いまのあなたのは。
アメリカではこういう場合があるのですね。薬害を受けた場合、FDAは非常に厳しい、患者側に立っているというふうに国際的に評価されている。そうでない裏もあるのかもしらぬけれども、日本の厚生省薬務局よりもよほどしゃんとしているというふうに言われておる。薬害を受けた人が、一名だけでなしにお互いに受けたという人が複数以上おりましたら、これこれの薬害を受けましたといって、その場合にいろいろな手による救済措置があるわけです。救済法をこのままやるとは限らぬわけです。それで、救済措置を
請願をいたしますと、一定期間内に必ず答弁をしなければならぬ。そして、その薬害の例については全国的に調査網、情報網を発動して情報を集めて、適確な処理を一定の期間にしなければならぬというふうな、そういう規制を加えております。
今回の基金法の運営の場合に、薬害を受けたら、血圧降下剤とかホルモンとかいっぱいあるわけですから、医薬品が高度化すればするほど細心の注意が必要ですし、微妙な副作用が累増いたしておるわけですから、そういう場合、そういうふうな害を受けた人の立場、
請願権というか、問題を持ち出す権利を手続上保証するという問題について、私はいまアメリカの例を挙げましたけれども、検討したことがあるかどうか。
-
○中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。
事実上の問題としまして、FDAのケースを引かれたわけでございますが、アメリカ合衆国に関して申せば、たとえば裁判上はいわゆる企業の厳格責任論による判例は数多く出ております。しかしながら、アメリカ合衆国政府がこの薬害について一銭でも金を出したというケースは全く聞いておりません。手続論といたしまして、先生のおっしゃるような、何と申しましょうか、患者さんからのお話がある、それを公開をするということは、すべてそのようなケースについては現実に厚生省で現にやっておるわけでございまして、これは厚生省の通常の行政活動の中で十分吸収し得るし、またより厳格なシステムによるところのモニタリングシステムを現にやっているわけでございまして、またさらに、お手元の薬事法の草案によれば……
-
○
大原(亨)委員 そういうよけいなことはいい。アメリカの場合、薬害救済法があるないの問題でなしに、たとえばメーカーに対して措置をとるとか、あるいは法廷上の手続について判断を出すとか、そういう点について、薬害を受けた人に対しては適確に、どういうふうに処理をしたらいいかという問題を法律上明らかにしている。私が聞きたいのは、日本の基金法を運営する場合に、薬害を受けたという国民ですね、患者、これは具体的にどういう内容の手続を経て、そして薬害の救済の措置がなされるのかという点を思者の立場で説明してください。
-
○中野(徹)政府委員 この問題につきましても当院で御議論のあった点でございますが、現在までの状況といたしましては、当院でも御指摘のありましたように、一体この種の問題について医師の協力が得られるかどうかということについて、非常に御議論があった点でございます。私どもは、適正使用である限りにおきましては医薬品の副作用の救済が図られるという、いわば他国に例を見ない立法が、今回無事通過成立いたしますれば施行されるわけでございますから、この副作用問題についての医薬品をめぐる環境というものは一変をするというふうに考えております。
したがいまして、たとえば医師の診断書を入手する、あるいは投薬の経過を明らかにするということはきわめて容易になるものというふうに考えております。それらの資料を添えて基金に対して請求を行いまして、基金が当該医学的あるいは薬学的判断を要する部分について厚生大臣に対して判定の申し出をいたしまして、これをケース・バイ・ケース、個々のケースについて判定部会に付して判断を仰ぎ、最終的に厚生大臣が判定をする、厚生大臣が判定をいたしました場合には迅速に基金が所定の給付の支払いをする、かような手続関係でございます。
-
○
大原(亨)委員 そういう手続については、将来政令でやるわけですか。
-
○中野(徹)政府委員 実態はいま申し上げたようなことでございますが、そのような筋に沿いまして、必要なものは政令、省令で具体的に明確にいたす所存でございます。
-
○
大原(亨)委員 次にもう一つは、時間がないのですけれども、大切な例なのですが、いわゆるアレルギー体質の問題です。いろいろな専門家の意見を聞いてみますと、非常に微妙な問題ですけれども、アレルギー体質では体質とかあるいは体調ですね、そういう状況によって薬の副作用被害が発生する。そういう薬品はいま非常に多い。たとえばいま日本の
医療の状況を見てみますと、開業医一人の一日の能力は、医者の諸君に聞いてみましても、普通五十人ぐらいが限界だと言うのですが、これを百人とか二百人もやっておるところがあるわけです。神風ドクターもあるわけです。体調とか体質とかいうアレルギー体質の問題を含めまして、そういう相対的な関係で薬害が発生した際に、いろいろ問題になると思うわけです。そういう
医療機関の機能が分化されていない、ホームドクター的なもの、健康管理的な
医療機関と専門病院や総合病院的な機関というふうに、
医療機関の機能が分化していない。したがって薬をやたらに出して、かぜを引いたといっても九つ、十くらいも出したというのが大阪の例にあった。こういう相乗作用、相互作用を含めまして、体質やアレルギーの問題について、非常に過敏な状況に現代人はますますなりつつある。こういう状況の中で発生いたしました薬害があり得るわけです。そういう場合には、いまのように、薬害患者は薬害が発生いたしましたならば基金に対して申し出て、救済の措置を受けるという道はふさがれていない、道は通じておる、こういうふうに理解してよろしいか。
-
○中野(徹)政府委員 私、専門家ではございませんのであれでございますが、通常、医薬品の副作用を解説した書物を読みますと、当然そこには特異体質とかアレルギーの問題が書いてございます。医薬品の副作用は、その適正使用のもとで起こるところの副作用の中には、特異体質あるいはアレルギー問題も含んでいるということは自明の理であろうかと存じます。
それから、さらに同時に、先ほどから再三申し上げておりますように、日本の
医療の実態に即して判断されるだろうということを申し上げておるわけでございまして、そこには、日本の
医療の実態ということは、非常に多忙をきわめているところの第一線の臨床家の実態をも踏まえて、という意味に御理解いただきたいと思います。
-
○
大原(亨)委員 フランスやイタリーの薬事法を見てみますと、フランスなんか典型的ですが、フランスの薬務
局長は、十年選手でございまして薬剤師でありました。——違うか。私が会った人は薬剤師ですよ。十年ぐらい勤務しておった。日本のは法律家です。私の議論は、薬務
局長、やっぱり薬剤師の社会的な地位や責任を明確にすることが私は安全性の問題の一つだと思うのですが、フランスのことはこれは余談になりましたが、このことは大臣も念頭に置いておいてください。前の渡辺厚生大臣だったかな、私の意見に賛成だと言ったけれども、これは時間がないからやめておこうと思います。
フランスの薬事法の体系は、製造から販売、使用のところの末端に至るまで、薬剤師にきちっとした厳しい責任を課しておるわけです。製造の段階においてもそうです。管理責任です。ですから、有効性と一緒に安全性については、もう薬剤師は、全部じゃありませんけれども半分以上の責任を持っているようなシステムになっておる。イタリーもそうですし、フランスもそうですし、フィリピンもそれに近いようです。フィリピンはいろいろ問題があるでしょうが、調べてみますとそうです。
私は医薬分業の突っ込んだ話、時間はありませんけれども、昭和三十五年に薬事法を改正いたしますまでは、薬剤師の規定は薬事法の中にあったわけです。そういうところで改正いたしましたけれども、つまり末端で、たとえば開業医や診療機関等でお医者さんが処方せんを書く。要指示薬にいたしましても、皆お医者さんが指示する。そして調剤をするのは、
家族の人とか看護婦さんとかあるいは資格のない看護婦さんがやっている。薬剤師は最後は全然タッチしていないという状況が日本では非常に多いわけです。だから、薬剤師の法的なあるいは社会的な責任を明確にいたしますと、製造承認の基準を今度法律を変えてかなり
改善いたしておりますが、ずっと末端までおりてくるのではないか。
たとえば、アメリカにおいてはキノホルムはアメーバ赤痢というふうに対象疾病を限定したが、日本では、大量療法の考え方が医者の中にはびこって、試験薬的にどんどんやっちゃった。それに対する規制もなかった。アメリカではアメーバ赤痢、しかも量を非常に限定をして使っていくということをやって、一けた台のスモン患者が出ている。こういうことですが、そういうこと等を考えてみて、私は、医薬分業ということは安全性の観点から、人命尊重、患者の主権尊重という観点から、計画的に薬事法の全体系、薬務行政の体系の中で進めていかなければならぬというふうに思います。計画的にやらなきゃならぬと思います。それなくして、この薬事法をいろいろ検討いたしてみますと、目的を達することはできないというふうに私は考えますが、これは
医療全体の改革の問題で一番大きな焦点の問題でもありますけれども、この点について、これから薬害を再び発生させないという強い決意でこの法律の改定と運営を
改善しようという場合には、この問題はきわめて重要な問題であると思いますが、いかがです。
-
○中野(徹)政府委員 医薬分業に関する先生の御意見は、私はもう全面的にそのとおりであろうかと思います。
医薬分業が行われました際には、いわば世上言われている医薬品のたとえば価格差ですね、購入価格と請求価格の差によるところの経済的ないわばインセンティブというようなものが医師側の手には残らない、したがってそのようなインセンティブによるところの過剰処方が防ぎ得るのではないかという意見が一方にございます。その意見については、私は個人的な見解は別としまして、そういう意見もございます。それから一方、処方せんが発行されるという事態におきましては、いわば処方が公開されるわけでございまして、この処方公開の原則のもとで、薬剤師が、いわば医薬品の副作用等を含めました十分な知識を現実に薬剤師が持っていると申し上げたいわけじゃございませんが、仮に薬剤師がいわゆるドラッグインフォメーションというものに精通しているのであれば、その処方に対するいわば医師のブレーンワーク以外に薬剤師の手によるダブルチェックが行われる、しかもその処方は公開されるということでございまして、その意味において、副作用被害の防止のために医薬分業の果たすべき使命はきわめて大きいというふうに私は判断いたしております。
その意味において、この医薬分業というものを計画的に推進すべきである、それが医薬品をめぐる問題の
改善の大きな一つの柱であるということは、もう全く先生と私は同意見でございます。
-
○
大原(亨)委員 よく薬剤師が勉強しないし責任感や能力がない、こういう批判があるのです。私も全部が全部ではないが、当たっている点もあると思うのです。日本では、お医者さんが薬を売って、薬剤師が化粧品やちり紙を売るというふうな風潮がずっとあるものですから、薬剤師の社会的な責任というものが明確になっていないから、大学教育においてもあるいは——きょうは文部省も見えておるのですが、そういう時間がないようだけれども、これは別の機会に私も議論したことがあるのですが、とにかく卒業後の生涯教育等を通じましても、一定の目標を示しながら、患者中心、国民の主権中心の考え方で、医薬分業の問題を目的的に、計画的に進めていくということが、私はこの薬害根絶の非常に大きなポイントではないかと思います。
これは、いまのそういう方向と現状というものは非常な乖離があるわけでありますが、しかし、法律の原則は薬剤師法の十九条にもぴしゃっと書いておるわけですから、つまり、医薬品は高度化すればするほどチェックするシステムが必要だ、特に日本のような
医療の機能が分化されていない場合には、どこかの薬剤師に決めておきましてここでチェックさせる手も患者といたしましてはあるわけですから、いまあちらこちらへ行っていっぱい馬に食わせるほど薬をもらって、そして持って帰ったら捨てている人もたくさんあるわけですから、ですから、そういう重複診療や重複投与という問題を、いまの
医療改革の立場や、薬学が非常に高度に発達した場合における患者の人権を守るという立場から、もう一回日本においては見直して、計画的にこの政策を進めていく必要があると思います。
数少ないことですが、いま薬務
局長と私の意見が一致いたしました。厚生大臣はこの点についてどういう見解を持っておられるか、お聞きをいたします。
-
○橋本国務大臣 非常に結構な御意見だと拝聴いたしております。
-
○
大原(亨)委員 拝聴しただけではいけない。拝聴しただけで、そして実際にはやらないということではまだいけない。
〔
竹内(黎)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そこで、そういうことから、薬事法の第一条について、しばしば議論がありますように、その目的を、公害その他とは違った特殊性があるとは言いながら、有効性と安全性の問題について、患者や国民が安心できるような薬務行政としての目標を明確に示す必要がある。いまの第一条は非常に抽象的でございまして「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び
医療用具に関する事項を規制し、その適正をはかることを目的とする。」何を書いているかわからぬ第一条であります。ですから、これをいまの議論等を踏まえてやっていく、こういう改正をしていくということについて、法の基本を決めるという意味において、大臣はいままでの議論をどのように受けとめておられるか、お聞きをいたします。
-
○橋本国務大臣 いま
大原委員のいろいろな角度からの御指摘があったわけでありますが、最初に申し上げましたように、今回の薬事法の改正というものが、従来の不良医薬品等の取り締まりを主眼とした薬事法から、これにとどまらず、承認時はもちろんでありますけれども、承認後におきましても、有効性のないあるいは安全でない医薬品等が流通するのを防止するために、必要な規定の整備を図ろうとしているわけであります。
そういう考え方というものは、私は、現行の薬事法の第一条の目的において十分読み取れるものであると考えておりますけれども、先ほどからの御意見もあるわけでありますし、本院の御審議の経過において何らかの方向が与野党の中で御意見の一致を見る場合がありましたならば、決して私どもは別にそれに固執をするものではありません。
-
○
大原(亨)委員 大蔵省主計局は手持ちぶさたのようだから質問いたしますが、中央薬事審議会の問題は本委員会においても議論がありました。中央薬事審議会の権限を強化して、たとえばスタッフを強化するあるいは付属の調査機能を設けるあるいは予算をもって委託調査する、そういうふうに、これは、この薬事法の改正の中におきましては、現在もそうですが、非常に大きな専門的な役割りを果たすわけです。一部の意見では、これを行政委員会的なものにして、行政から独立した機能を、たとえば公取とか人事院のような機能を果たさしてはどうかという議論すらあるのですが、それはともかくといたしまして、機能の自主性とあるいは予算上のスタッフの充実等の問題について発想を変えていくということが必要である。このことについては、大きな方向といたしましては本委員会におきましても質疑応答の中で出てきたことです。大蔵省がありますし、行政管理庁もあると思うのですが、やはりこのスモンの問題一つをとりましても一千億、二千億というふうに一時金対策、恒久対策等で要るわけです。どのくらいか私はまだ詰めておりませんが、莫大なものです。国民が負担をしている総
医療費は本年は十一兆六千三百億円です。莫大な、言うなれば、十五兆円の国債を除きましたら、三十八兆円の予算の中の半分は
医療費が占めておるという状況です。そういう中において、中央薬事審議会の機能をぴしゃっとする、国民が財政負担、税金を負担いたしましてこれをきちっとするならば、これはかなりいままでの議論した点が消化をされるというふうに思うわけです。大蔵省はこの問題について前向きに考える意思があるかないか、お答えいただきます。
-
○安原説明員
医療がむだなく、本当に必要な形で供給されなければならないという点につきましては、基本的に先生のおっしゃっているとおりだと思います。その面でいろいろ工夫をしていかなければならないと考えております。
いま具体的に御指摘の薬事審議会につきましてでございますが、われわれ承っているところでは、薬事審議会が適正に運営されておると聞いております。今後さらに薬事審議会が一層適正な形で運営されるよう、必要な場合、厚生省の方から協議がありました場合には、その段階で十分検討さしていただきたいと考えております。
-
○
大原(亨)委員 それは前向きに考えるということですか、と言っているのです。
-
○安原説明員 ただいまのところ具体的な問題として承っておりませんので、厚生省の方から協議がございましたならば、その段階で十分検討させていただきたいと思います。
-
○
大原(亨)委員 何をあなたは言ってるんだ。厚生省から言わなければだめなのか。大蔵省が自分で進んでやることがあってもいいでしょう。大蔵省は何でもかんでも削るだけじゃだめだ、大切なものはちゃんとやっていかなければ。これは大切なもののうちに入るじゃないか。大切なもののうちへ入るということがわかるか、わからぬかということを答弁してください。
-
○安原説明員 薬事行政につきましては、厚生省が第一義的な行政責任を負って運営に当たっていらっしゃるわけでございます。われわれはその財政面について検討する立場にございますので、厚生省の方からの意見がございました場合には、それについて十分検討させていただきたい、かようなことでございます。
-
○
大原(亨)委員 十四条の第二項第二号の、有害な作用を有するおそれがあるときは承認の除外に加えるという議論はあったわけですね。有害なおそれ、つまりそういう危惧がはっきりしている場合には除外対象にするんだという、承認の十四条問題、この点は時間がないから簡単に質問いたしますが、これは条文として修正した方がいいんじゃないですか。いま書いてある法律を「著しく」というのではなしに、こういう「おそれがある場合」もやはり一つの項目に入れるということはいかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 私どもといたしましては、お手元に
提出してございますところの条文案につきましては、万全の検討を加えて最善と思われるものを
提出してあるわけでございます。
先生よく御承知のとおりに、どの木をお読みいただきましても、副作用のない薬はないというふうにあらゆる本に書いてあるわけでございまして、その副作用というのは、要するに健康に有害ないわば副作用のことを言っているわけでございます。問題は、現在どこの世界の専門家の意見を聞きましても、結局は薬というものはその有用性とその副作用リスクのバランスの上に立っておるということは、どこの学者も同じように言っているわけでございまして、単に副作用があるということのゆえに、有効性を無視して、その薬の審査承認はできないわけでございます。したがいまして、副作用という問題が重大な判断事項の一つになることは否認いたしませんが、あくまでもそれはその薬の有用性と副作用リスクとのバランスの判断の問題である、さように考えておりますので、私といたしましては、現段階ではお手元に差し上げてある条文がベストだと判断をいたしております。
-
○
大原(亨)委員 時間が来ましたから、最後にまた基金法に返るのですが、二つ質問しておきますが、制がん剤等の取り扱いについては特別に挙げておるわけですが、それによって薬害が発生した場合においても何らかの救済措置を基金はとる、こういう除外例を設けた場合でも薬害が発生した場合には何らかの措置をとる、たとえば一時金等の措置をとる、こういう場合等があると思う。生命との関係でこれは使用するという場合ですけれども、そういう点についてはどうか、これは運営上の問題が一つありますけれども。
それからもう一つは、救済給付金の生活保護とかあるいは老齢
福祉年金との併給の問題です。これは立法の趣旨が違うわけですから、たとえば原爆二法等の場合におきましては、特別手当や健康管理手当や保健手当は立法の趣旨が違う、範疇が違うわけです。そこで併給の問題があるわけです。明らかにそういう問題においては併給し得るものと考えてよろしいのではないか、こういう点についての見解。
二つの点について見解を求めます。
-
○中野(徹)政府委員 前段の方が私らの方の担当の問題でございますが、先生の第一の御指摘の制がん剤等のケースにつきましては、もちろん制がん剤のあらゆるものではございませんで、制がん剤の一部に、ごく特殊な制がん剤といたしまして、たとえば細胞増殖作用を抑制するような薬がございます。これはがん細胞の増殖を抑制するために使うわけでございますが、これががん細胞だけを選択的に増殖抑制するということは不可能でございますので、その副作用が当然に及ぶというケースがございます。これはがんという非常にフェータルな病気のためにやむを得ず使うケースでございまして、たとえば悪性の腫瘍とか脱疽とかによりまして足を切断せざるを得ない、切断せざるを得ないことによって当然身体障害も起こる、これはやむを得ずやるわけでございます。その場合に、足を失うというようなことが必ず切断手術には伴うわけでございます。非常にわかりやすい比喩をもって言えばそういうケースでございまして、ただし、このように必ず障害作用を伴うというような薬はごく特殊なものでございまして、制がん剤の中でも、たとえば免疫療法剤等は別でございます。そういう特殊な、危険を十分承知の上であえて使うという場合は、致死的ながんというものの性格との関連におきましては、当然副作用というのは受忍限界内にあるというふうにわれわれとしては判断いたします。これは西独の薬事法等におきましても、医学的に容認し得る程度を超えた副作用というふうに書いてありまして、それが一々裁判所にかかって、恐らく実際には薬事法は機能しないだろうと言われている点でございますが、患者の救済の観点から、除外例を明示することによって争いを避け、迅速に救済を行うというのがわれわれの趣旨でございます。
この点は、先般の参考人の意見聴取の際にも、専門家から、明確にそのような薬が存在するということはお聞き取り願えたはずだというふうに考えております。
-
○山下政府委員 生活保護について申し上げます。
専門家であられます先生もよく御承知のとおりに、生活保護制度は、前提といたしまして、受給者が持っておりますあらゆる資力、能力、所得というものを活用するということを前提といたしまして保護することにいたしておるわけでございまして、そういう観点からは、そのように考えなければならぬと思うわけでございます。
ただ、これも御承知のとおりに、各種の制度の給付の中には、見舞い金のようこ慰謝・激励的なものでありますとか、あるいはそのものの特別の必要に即充てるというふうな性質の給付がございまして、一般の生活に充てるというふうに認定するのが必ずしも適当でないというような場合もあるわけでございまして、そういう場合につきましては、御承知のとおりの特別の措置を講じてきているわけでございます。
この救済給付につきまして、いかに取り扱うかということにつきましては、この給付の性格をよく踏まえまして、また、現在各種の加算、控除等の制度がございますので、そういったものとの関係、あるいは受給者の生活の実態というようなもの等を考慮いたしまして、この当該給付の趣旨に即しました取り扱いをするようにいたしたいということで、検討してまいりたいと考えております。
-
○持永政府委員 老齢
福祉年金との関係の問題でございますけれども、先生御承知のとおり、
福祉年金はある一定以上の所得がございますと支給制限をいたすことになっております。ただ、この支給制限の場合の所得の範囲と申しますのは、あくまで税法上の課税所得の範囲でございます。
今回の救済給付につきましては、法案の五十条に租税その他の公課は課さないというような規定がございます。したがいまして、
福祉年金の関係で申しますと、今回の救済給付の対象となる給付は公課の対象になりません。したがって課税所得の範囲に入らない、したがって
福祉年金の所得制限の対象としての所得に入らない、こういうことでございます。
-
○
大原(亨)委員 あとは、同僚委員から引き続いて、ダブらないように質問いたします。
終わります。
-
-
○
工藤(晃)委員(新自) きょうは薬二法について質疑をさせていただきますが、この前の委員会の質疑は、大臣がスモンの救済のために大変大事な用事が突発したのでぜひ便宜を図れということで、私は質疑を中断いたしました。その残りの部分の時間をきょうやるわけでございます。そういうわけでございまして、きょうの質疑は、薬事法の改正についてこの間一部やり残した部分と、それから医薬品副作用被害救済基金法案、この二つについて、時間の許す限り質疑をさせていただきます。
まず第一番に、薬事法の改正については、一言で申せば目的規制の中に医薬品の有効性、安全性の確保という言葉が一切入っていない。これはぜひ入れるべきであって、もしこれが入っていなければ、結局有効性、安全性という言葉の遊びに終わるのではないかというふうな趣旨の話をしたはずでございます。この問題については、やはり葉裏法改正の一番重要なところであるということも指摘申し上げました。それについて大臣に一曹、その問題についての御見解をもう一度承りたいと思います。
-
○橋本国務大臣 答弁を申し上げます前に、お礼を申し上げます。
先般、質疑の中断というお願いをいたしまして、大変御迷惑をかけました。しかし、ちょうどあの日、田辺製薬説得のぎりぎりの交渉をしておりましたために、大変失礼をしたことを改めておわびを申し上げます。同時に、その御協力のおかげで、ようやく和解が成立をいたしましたということも、あわせてお礼を申し上げたいと思います。
さて、いま御指摘になりました、薬事法の第一条についての問題点、前回も御指摘があったところでありますが、私どもとしては、従来行政措置で対応しておりましたものを、正式に今回改正法の中に取り入れていくことによって、その安全性の担保というものを実現をしようということでまいったわけでありまして、その限りにおいて、私は、強いて従来の第一条を変更する必要はないのではないかということを先般も申し上げました。しかし、重ねての御指摘でありますし、本院の御審議の過程におきまして、与野党いろいろな御意見が出ておるわけでありますから、そうした点についても、各党の中での御相談がまとまりました場合には、必ずしも私は従来の見解に固執はいたしません。
-
○
工藤(晃)委員(新自) 大変柔軟な御回答をいただきましたが、ぜひこの点だけは今回の改正で盛り込んでいただきたいということを特に強くお願いをします。
続きまして、薬事法の改正について、この間質疑いたしました続きとして、各論的にお聞きをしてみたいと思います。
まず医薬部外品の件でございますけれども、パーマネントウエーブ用剤を用いて、パーマネントウエーブ用剤以外の効能、効果をうたって消費者に施術をしている業者があるという問題については、この取り扱いについて、三月一日の
社会労働委員会でも
村山委員が取り上げて、政府の見解を問うております。私もその問題に関連いたしまして、これは大変大事な問題だろうというふうにとらえているわけですが、どの点が一番大事かというと、使用目的以外の目的をもって営業目的に利用しながら、善意の第三者に、たとえば頭部の円形脱毛症とかはげに効くとか、血液の浄化作用があるとか、疲労回復があるとか、こういう目的をも含めて、全身美容だというふうな形で、コールドパーマネント用剤を用いて営業しているという事実関係については、これは大変憂慮しなければならない問題だと考えるわけです。
それで、何の目的のためにパーマネント溶液については使用目的を明記させているかということを考えますと、やはり安全性を確保するという立場からそういうものを明記させているわけでございます。しかし、その目的を他の目的に使用して営業するということになりますと、安全性を確保するという根底の問題が非常に不安定な状態になり、あるいはまた、そういうことによって消費者が被害を受けるということが出てまいります。しかし、そういうふうなことに対して薬事法上の規制がない。使用者に対する規制がいまの薬事法では欠落しているということでございます。ですから、目的以外のものに使っていいということはどこにも書いていないし、また使ってはいけないということを承知しながら消費者に営業目的で使用するということになれば、この薬事法そのものが全くざる法になってしまう可能性がある。
同時にまた、そういうことに対して一例を挙げての問題提起でございますけれども、今後ともにいろいろな形でこういう問題が将来出てきた場合に、これは法の盲点であるから規制のしようがないのだということで片づけてしまえるものかどうか。あるいはまた、そういうことによって何か被害が起きてからそういう問題の規制を始めたのでは、今回こういうふうに真剣に質疑をし、あるいはまたスモンの被害者の方々もきょうはたくさん見えていますが、そういう被害者の方々をつくり出してから何かをしていかなければならないということは大変残念なことでございますから、ノー・モア・スモンという患者さんの切なる気持ちもくんで、今度の薬事法改正の中で、こういう問題に対する予防措置あるいは規制措置というものを十分検討する必要があるのではないか。
たとえば、こういう問題については当然医師法違反の疑い、あるいは
医療法違反の疑い、あるいは誇大広告等々、いろいろな形でその違反の疑いはありますけれども、少なくとも薬事法改正の主たる目的である有効性と安全性を確保していくという精神からいけば、この薬事法の中にもそういう問題について歯どめをかけていくという考え方がどうしても必要だろう、こう考えるわけでございます。その点についてひとつ大臣、お答え願います。
-
○本橋政府委員 ただいま御指摘の、パーマネントウエーブ用剤を全身美容その他の異なった目的に使うという問題でございますが、チオグリコール酸を含有いたしますこのコールドパーマ液につきましては、現在、毛髪にウエーブを持たせるというような効能が承認をされておりまして、全身美容に有効というような効能は全くないわけでございまして、こういうことはまことに遺憾なことでございます。
そこで、このコールドパーマ液につきましては、皮膚に付着いたしますとかぶれ等の皮膚障害を起こすということも知られておりますので、昭和四十一年以降、こういった事項を盛り込みました使用上の注意を出しておるわけでございます。
また、先生御指摘のいろいろな広告まがいの宣伝につきましても、美容雑誌等の記事に載っておるというようなこともありまして、薬事法で直ちに虚偽誇大な広告というふうに決めつけるのはなかなかむずかしい面もあるわけでございますが、できるだけ調査をいたしまして、そういったことのないよう指導してまいりたいというふうに考えております。
また、新しい薬事法によりますと、医薬部外品につきましても副作用報告を徴取できたり、あるいは使用上の注意につきましても、従来小さいという御批判もあったわけでございますが、これは、できるだけ大きく記載させるという法規制の対象になるわけでございます。
それから、美容師さんがこういったものを業務のためにもお使いになるということにつきましては、われわれといたしましては、十分この使用上の注意に従って、またその使用目的に従って使っていただくということを前提にしておるわけでございますが、そういった御理解の徹底を図りますために、関係局あるいは業界等とも協議いたしまして、十分な指導をしてまいりたいというふうに考えておりますし、また、虚偽誇大等の広告の禁止につきましても厳しく対処してまいりたいと考えております。
-
○
工藤(晃)委員(新自) いま話が出ましたけれども、私もここにひな形を持ってまいりました。「パーマネントウエーブ用剤の使用上の注意」こういうふうに書いてあるのですが、とてもじゃないけれども私には読めないような小さな字で、こういうぺら紙一枚が入っている。安全を確保させるためにいろいろな配慮をしても、できるだけ目立たないようにこういうものを入れていく業者があるとすれば、やはり使用上の注意をできるだけわかりやすく、目に入りやすくさせるという規制も逆に必要ではないか。何でもいいから書いておけばいい、それで法律は適用されているのだということであれば、せっかくの目的から逸脱してしまうのではないか、こう思いますので、いま話が出ましたからついでに申し上げますが、こういうことに対して今後十分配慮していただきたい。これが一点。
それから、三月一日の
村山委員の質問の最後に、大臣から「近い将来において御審議を願うことになるであろう薬事法の中において、いま審
議官にも確かめてみましたが、そうした部分に対応できる準備を整えておるということでありますので、そうした角度からの御議論が願えるであろうと思います。」こういう回答が出ているのです。つまり、三月一日の時点において、これからはこういう問題について対応するという姿勢を厚生省も積極的に持っておるということを表明されておるのですが、その後この問題についてはどうなりましたか。
-
○本橋政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、新薬事法を検討いたします際に、この医薬部外品につきまして、従来業界の自主的な指導で自主規制をやっておりましたいわゆる使用上の注意等の記載につきましても、法律上法的な規制の対象にするということを議論してまいりましたし、また、ただいまの使用上の注意につきましても十分理解を徹底させる、あるいはそういう部外品につきまして副作用を生じた場合でも、副作用の報告義務を課するというふうなことで議論をしてまいったわけでございます。
-
○
工藤(晃)委員(新自) そういうことが有効であるかどうかということは私は疑問ですが、時間がないから、この問題はきょう終わるとは思いませんので、また次回にこの後を続けてまいりたいと思います。
しかし、使用目的をちゃんと承知しながら、そういうことに違反して、そして他の目的に使用し、そして営業するということに対する規制が何もできないというところに問題があるわけですから、幾ら大きな字で看板に書いてみたところで、そんなものは承知していてやる、そういう業者に対してどうするのかということを私は聞いている。そういうことがわかるようにしますということを私は聞いているのじゃない。わかって承知してやっているのだから、わかって承知してやることに対してどうしますか、そういうことを承知してやっている人に対して、安全性確保という立場からどうしますかということを私は問うているわけですから、あなたの答えは答えになっていない。きょうは時間がございませんので、この問題は次に続けてやります。
きょうは、あとは医薬品副作用被害救済基金法案、この問題について、あと残された時間を、短い時間でございますけれども要領よくひとつ答えてください。
まず、この問題については私は大変憂慮すべき問題であろうと考えましたので、実は五十二年八月十一日に私の
工藤試案として、この薬害の救済基金設置法案の試案を厚生省の方にも
提出して、お考えいただきたい、こういうことを申し上げてまいりました。その内容については、時間がございませんが一言で申しますと、先ほどからも薬務
局長が言われておるように薬の両面性、有効性というものと安全性というものはもろ刃の剣のようなものであろうということを考えて、だれに責任があるかどうかという問題よりも、もっと前に、無過失責任によって起きた被害に対してどのように救済するかということがもっと大事なことじゃないか。そういうことを考えますと、開発から製造、販売、それから使用者、あるいは受ける患者さんまで含めて、もし不幸にしてそういう問題が起きたら、そういうものに対してすべてが保険し合っていくというこういう考え方で、できるだけ救済の原資を大きくとっていくべきではないか。もちろん、その中において最も重要なことは、国がそういうことに対して最も責任を持って指導的な立場に立たなければいかぬけれども、しかしそういうことについては、すべてがそういうことについて保険し合っていく
社会保障的な考え方でやっていったらどうか、ということが私の骨子でございました。しかし、国の方から出てまいりました救済基金法案につきましては、ほとんどが製造責任に救済の主たる点を置かれた法案でございまして、そういう意味においてはこの法案そのものに私ははなはだ不満足であります。もっともっと国の責任もその中に十分積極的な役割りを果たしていくという、もちろんこれは許認可していく責任においても当然のことでありますけれども、やはりもっと本当の救済に対して、十分な手当てができるような救済基金法を考えるべきであるということをまず申し上げたいということが一点。
それから二点目には、こういう問題について既発の被害者に対する手当てが一切この法案の中に含まれていないという点が、これは大変大きな問題であると同時に、スモン患者を初めとして、いろいろな副作用による被害者の最も憤激にたえないところでもあろうと思います。そういう点についてぜひこの際に、そういうことの患者の切なる願いを何らかの形で救済するというところへ踏み出してもらいたい。そういうことをどういうふうに考えられているのか、まずお聞きをいたしたい。
時間の都合で、私は全部自分の質問を先に言ってしまいますが、
第三点は、これはぜひ政府に忠告をしておきたいのですが、水俣病の場合にもやはり認定の問題については大変いろいろな問題が出てまいりました。そのために患者救済というものが大変おくれてしまった。そのためにその患者が大変被害を受け、その上に救済されないという大変困った状態を長い間続けてきた実例もございます。この問題についてもやはり、その面を
改善していかなければならないというふうなことは委員会でも討議されてきた実例がございますので、同じような発想で物を考えなければならないこの医薬品の副作用の救済に対しても、十分、前轍を踏まないように、まず救済のための必要な措置が迅速に行われることが第一番であろう。その次に、認定については十分公正で公平な認定が行われるような、そういう制度をつくり上げなければ竜を描いて目を描かない、こういう形になろうかと思います。そういう点においては、この医薬品被害救済基金法案の案の中では、この二十九条は非常に玉虫色になっておりますので、この点についてはっきりとひとつ修正していただきたいというのが私の考えなんです。
この二十九条は「医学的薬学的判定を要すると認められる事項に関し、厚生大臣に判定を申し出ることができる。」、基金がそういうことはできるということ、こういうことが書かれているわけです。二番目には「厚生大臣は、前項の規定による判定の申出があったときは、中央薬事審議会の意見を聴いて判定を行い、」こう書いてあるのです。だから、申し出がなかった場合にはやらなくてもいいということです。そうなると、主として認定業務は基金の中でやるのか、あるいはまた別途に、この認定業務については基金はそういう仕事はしないということを前提にやるのか、そこのところがはっきりしない。これが大変将来いろいろな問題を醸し出す原点になろうかというふうな危険を私は持ちますので、この際見解を明らかにしていただきたいし、また可能であればこういう問題ははっきりと法案の中に盛り込んでもらいたい、こういうふうに思います。
この三点について簡単にお答えをいただきたい。
-
○橋本国務大臣 どれも非常に大事な問題なのでなかなか簡単には申し上げられませんけれども、順番をひっくり返して、最後に御指摘をいただきました部分から逆にお答えを申し上げたいと思います。
これは実質的に、私は、基金からは厚生大臣に対して全部のケースについて申し出があると考えております。また基金は、医学的なあるいは薬学的な判定については一切タッチをいたしません。ですから、私は、中央薬事審議会に設けます判定部会において専門家の十分な御検討がいただけるもの、そのように考えております。
そこで、いま御指摘のありましたような誤解があるとこれは困りますので、私ども答弁の中で何回かその点については申し上げてきたところでありますが、こうした点、与野党の中で御相談をいただきますことについて、私どもは決してそれに対して否定をいたすつもりはございません。その点を最初に申し上げておきたいと思います。
そこで、かつての水俣病の患者救済の際の混乱、あるいは手順の食い違い等による救済のおくれというものを引かれて、この基金がそういう状態にならないことを十分考えるべきだという御指摘をいただきましたが、私どももそのように考えております。そこで、基金がいわゆるお金の面について業務を開始いたしますのは五十五年四月一日からでありますけれども、基金そのものの設立は十月に予定をいたしておりまして、その半年間に十分準備をしておいていただくということをいま考えております。そうして、患者の方々が救済を求められるのに対して迅速な対応ができる事前準備に十分な時間をかけておきたい、それによって現実に業務の動き出しました時点にトラブルの発生することがないような工夫をしてまいりたい、そのように考えております。
また、スモンその他既発生の薬害について、これを制度に取り込んでいけという御主張とともに、五十二年の時点において
工藤さんがみずから発表されました試案と対比しながらの御意見の開陳をいただきました。私も当時大変興味深くあの御提案を拝見をいたしたわけでありますが、私の記憶に間違いがなければ、たしか
工藤さんの御意見の中には、いわゆる
医療過誤に類するものもこの制度の中に取り込むことを前提に、全体を組み立てておられたような記憶がございます。
今回の場合に、私どもは、
医療過誤と、適正に医薬品が使用されながら、あるいは不適正に使用された場合ももちろんあるわけでありますけれども、適正に使用されながら薬害が発生をした場合のその救済の問題、つまり
医療過誤と薬害の救済というものは実は分けて考えざるを得ないだろう、制度の仕組みとしてそう考える方が正常ではなかろうかということに割り切りをかけました。結局本制度自身が、将来いつ、どの医薬品から副作用による健康被害が発生するかもしれないという認識のもとに、すべての医薬品の製造業者が一定の拠出により被害発生時の被害者の救済に備えておく、いわばある意味では製薬企業による一つの保険的な体系という姿をとっておるわけでございます。そういう制度の仕組みからしまして、一つは
医療過誤というものが対象から外れ、同時に新たな制度の創設ということから、原因医薬品が判明しております既発生のものについては、このシステムの救済対象とはなり得なかったわけであります。
その過程において私どもはいろいろな議論をしてまいりましたが、いま
工藤さんの御意見のように、国も相当程度の拠出をしろという御意見も確かにございました。同時に、やはりメーカーが全部の責任を負うべきではないか、そして国が余りこの救済制度に、たとえば給付費の中に国庫負担を持ち込みますようなことは企業の救済じゃないかというような御議論も一方にありまして、そういうものに対しては厳重に対応すべきだという厳しい御意見もちょうだいをいたしました。いろいろな角度からの御意見があったわけでありますが、私どもとしては、現在地裁段階で幾つかの判例がすでに示されておりますように、国として何らかの責任はやはりとらなければいかぬ、製造物責任論的な割り切りばなかなかできないということで、こういう制度を工夫したわけでありまして、そうした点にも御理解をいただきたいと思います。
したがいまして、実はスモンを初めとする既発生の被害者の方々を本制度の対象とするということは、私どもが国会にこの
法律案を提案いたします段階までの過程においては、制度的にも実は無理でありました。西独の法律におきましても既往のものにはさかのぼっておりません。ただ、私どもとしては最善を尽くしたつもりでありますけれども、薬害によって被害を受けられた方々の救済により資するものであれば、私どもは、本院の御議論を踏まえ、各党の御意見の一致を見た部分について前進を図っていくことには、何らやぶさかではありませんということを申し上げてきたわけでありまして、今後国会における御論議を踏まえ、与野党の御意見の一致をまって私どもとしても対処いたしたい、そのように考えております。
-
○
工藤(晃)委員(新自) 過去のことでございますので、大臣、やはり私が主張いたしましたところにおいて、多少誤って記憶されているようでございます。私のは
医療過誤はその中に含んでおりませんで、あくまでも薬害、無過失による薬害の救済という考え方で試案をつくったはずでございます。それはいずれにしても、御回答をちょうだいいたしましたので結構でございます。
それに関連して、時間がもうわずかしかございませんので大変残念ですけれども、残された問題としましては、スモンの被害者が大体推定一万一千人ぐらいいらっしゃるだろう。その中で、提訴されている方が四千五百人前後いらっしゃるはずでございます。そうしますと、残るところは五千五百人ぐらいがまだ未提訴の状態にあろうと思います。そういう方々が当然今後救済を訴えられるはずでございます。そういうことについてはどのように国が対応するのか。これもやはり水俣のときにも大変いろいろ問題があったところでございますので、その点についてどのようになさるか、時間がございませんので一言で結構でございますから、その点のお答えをいただきたい。
それからもう一点、しつこいようですが、そうすると、二十九条はあくまでも中央薬事審議会の中で認定業務を行うということと解釈してよろしいですね。
その二点について、最後の時間をお答え願いたいと思います。
-
○中野(徹)政府委員 先生の前段の御質問の既発の薬害をどう吸収していくかという問題がございますが、それは別といたしまして、現行行われている訴訟に関して申し上げれば、われわれといたしましては、現在未提訴の患者さんたちをどのように救済をしていくかということにつきましては、救済法の審議問題とは別に、国といたしましては、東京地裁の可部和解の線によってすべてのものを全国統一的に処理をしていくという方針がございます。仮に既発生薬害をこの法案の中に盛り込むというふうなことになりました場合には、そういう既存の国の方針による処理をいわば仕組みとして、その中に吸収をしていくというふうな感じになろうかと思います。
それから、もしもさような場合におきまして、もちろん本則に基づく認定業務は、つまり将来に向かっての副作用被害の救済に関しましては、すべて中央薬事審議会の判定部会の権能でございますが、スモン患者の救済につきましては、先生御承知のとおりにすでに十五人の専門家、主として神経内科系の専門家が多いわけでございますが、この神経内科系の専門家の手による鑑定という方式がすでに
確立をしておるところでございます。この鑑定を迅速に行いまして、これは特殊なスモン専門の鑑定団がすでに編成されておりますので、この鑑定の迅速化によりまして、その患者救済を迅速に行うというのが政府の方針でございます。
-
○
工藤(晃)委員(新自) 一つ、最後に残りました質問について、大臣お答えを願いたいと思います。
要するに、基金では認定業務を行わない。そして中央薬事審議会の中で認定業務を行うということをおっしゃったのですが、その点もう一遍確かめますが、はっきりお答え願います。
-
○橋本国務大臣 先ほど申し上げましたように、医学的、薬学的な判定につきましては基金では行いません。中央薬事審議会の判定部会が責任を持って行っていただくということであります。
-
○
工藤(晃)委員(新自) それでは、その点もひとつ修正していただきたいと思います。
時間が参りましたので、私の質疑を終わります。
-
○森下
委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。
午後零時三十八分休憩
————◇—————
午後二時十分
開議
-
○森下
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する
法律案、両案に対する質疑を続行いたします。
金子みつ君。
-
○
金子(み)委員 先般来審議が続けられています薬事法と医薬品副作用被害救済基金法案、この二つの法案は大変に関連の深い法案でございますので、本日は別々に切り離さないで一緒に考えて、そして幾つかの質問をさせていただきたいというふうに私は考えております。
まず初めに、総論的なことで厚生大臣の御所見を伺いたいと思うことがございます。それは申し上げるまでもないことですけれども、医薬品につきましては、その機能が人体の健康に大きな影響を及ぼしますし、ときには生命をも失わしめることがある。そういうものでありますがゆえに、その効用性もさることながら、まず安全性をこそ第一義として取り扱わなくてはならないというふうに私は考えるわけでございます。
従来、わが国の薬事行政というのは、その視点をどちらかと申しますと薬の効能であるとか効果、あるいはまた業界の育成というところに重点を注いできているように思われます。その結果が、スモンの例に見るように、外国には例を見ないようなはなはだしい薬害の被害を引き起こしてきているというような状態でございます。そこで、遅きに失するという感がありますけれども、今回、その取り扱いについて法制的にきちっと立て直しをするということを考えられたことは評価できると思います。
そこで、今回、その立て直しをいたすにつきましても、政府はその視点を薬の安全性というところにはっきりと切りかえをしていかなければならないのじゃないかというふうに私は思います。いままで幾つかございましたスモン訴訟における裁判所の判決などを読んでみましてもございますように、いままでの薬事法は不良医薬品を取り締まるだけの消極的な警察法規といったような性格のものであったから、厚生大臣に医薬品の安全性確保の法的義務を課すことができなかったというような大変苦しい可部発言もございます。キノホルムへの厚生省の関与が、その有効性と安全性の確認について何の措置をもとらなかったことの歴史ということすら言っているのでありまして、これは、言うなれば安全不在の薬事行政を過ごしてきたというふうに言えることだと思うのです。このことについて、国はその事実を認め、反省して、そして新たな決意を持って今回の措置に取りかからなければならないというふうに思うわけでありますが、その点について厚生大臣とされましてはどのように反省もなされ、決意もお持ちになったかということで、一言まず伺わせていただきたいと思います。
-
○橋本国務大臣 いま
金子さんがお話しになりましたように、確かに、現行の薬事法は、占領下において
制定をされておりました旧薬事法を全面的に改正をして、昭和三十五年に
制定をされたわけでありますが、その時点における規制の主眼というものは、不良医薬品等の取り締まりに置かれておった、これは事実そのとおりのことでございます。ところが、その後、医薬品というものを取り巻く環境が非常に大きく変わってまいりました。ことにサリドマイド事件、またわが国におけるスモン事件の発生というものは、世界的に非常に大きな衝撃を与えた事件でありまして、医薬品の有効性、安全性の確保というものが薬事行政の最大の課題として登場した、そして改めてその重要性というものが深く認識をされるに至ったということも御指摘のとおりであります。
厚生省として、従来、そうした状況に対応して、四十二年の基本通知を初めとして、新薬承認についての厳格化でありますとか、副作用情報の義務づけでありますとか、報告の義務づけでありますとか、あるいは医薬品の再評価の実施、GMPの遵守の指導等、各般にわたる施策をずっと展開をしてきたわけでありますが、今回、私どもとしては、これらの実績を踏まえて薬事法の改正を行い、さらに医薬品等の有効性、安全性の確保というものに万全を期してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
-
○
金子(み)委員 すでに起きた薬害の被害者を救済するということは言うまでもありません。当然のことだと思いますけれども、薬害を未然に防止することの方がもっと重要なことだというふうに思います。そこで、そのことを考えますと、そのためにも、国が、いま大臣が御披瀝になりましたような考え方をはっきりと示される必要があるのです。先ほども同僚議員の
大原先輩が、そしてまた前回はたしか
矢山委員から発言があったことだと思いますけれども、けさもあったわけですが、この薬事法の第一条が非常にはっきりしない条文でございますから、この薬事法の第一条に目的をはっきりと明記されるように、私はぜひ修正を提案したいと思います。国民の生命を守り、健康の維持増進をすることが目的でありますが、そのことのために医薬品の有効性と安全性を確保するということをきちっと明記されて、そして、国の責任の所在を明らかにされることが必要だと思います。言葉の使い方は専門的にどのようにおやりになりましても結構だと思いますが、その趣旨をきちっと踏まえて改めてくださるということについての御所見は、いかがでございましょうか。
-
○橋本国務大臣 私どもは、政府として改正薬事法の御審議を願います段階においては、従来の条文においても別に支障がないという考え方をとっておりました。しかし、本日までの院の御論議の中で、こうした点についてのいろいろな御見解が出されております。何回も申し上げておりますように、私どもは私どもなりにベストを尽くしたつもりでありますが、こうした法律の性格から考えましても、より前進できる部分は前進をすることの方が望ましいことでありますから、私は、国会の御意見が一つにまとまれば、それに対して決して異議を申し述べるものではございません。
-
○
金子(み)委員 ぜひお願いしたいと思います。
それから、薬事行政の問題に関係することだと思うのですけれども、従来から問題になっております安全性や有効性を確認するということの目的のためにも、医薬品の承認の問題と新薬の承認の問題、それからこれをチェックする問題について、チェック機関を新設する方がいいのじゃないかという意見はあちこちに出ておりました。先般の参考人の方の御意見の中にも、これはたしか日本薬剤師会の石館会長の御意見だったと思いますけれども、別途権威のある認定機関を設置すべきであるというふうな御意見もあったと記憶しております。私も、それらの御意見を伺って確かにそのとおりだと思いました。
現在は中央薬事審議会というのがございまして、中央薬事審議会がその機能を持っているわけでありますけれども、薬事審議会は厚生大臣の諮問機関でございますから、大臣の諮問機関としての機能を行いそして答申をするわけでありますが、薬事審議会から答申されたその内容を厚生大臣はうのみにする必要はない、こういう姿勢もあるわけでございますね。薬事審議会の答申は絶対のものではないということがあるわけです。したがって、この医薬品の安全性に関するチェック、あるいは被害の判定なんということに関しましては、やはり絶対的な権限のある機関でこれを実施してもらわないと、国民の健康を守っていくことにはならないと思うわけです。
そこで、そういった権威のある機関を設置するということが望ましいと思うわけでありますが、その方法は薬事審議会を強化
拡充して、そしてそれとは別枠に特効な機関を設置することがいいのか、あるいはどういう形にするのがいいのかということはもっと考えてみる必要があるかと思いますが、いずれにいたしましても、いまの形のままの薬事審議会でこのことをするということでなく、別枠のものを準備するということを私は主張したいと思うのでありますが、そのことについての御見解はいかがでしょうか。
-
○中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。
参考人の方からの意見聴取の中に、たしか日弁連の萬羽参考人の御発言といたしまして、たとえば行政委員会系統のような独立した行政権限を持つという構想についての言及があったことは、私もその場で聞いておるわけでございます。
私どもの考え方といたしましては、新薬の承認、それから新薬の安全性、有効性のフォローアップとかいうもの、またそれに伴う各種の各レベルにおけるいわば規制というようなものは、私どもの考え方によりますと、これは一貫性を持っていなければいけない。たとえば独立の行政権限を持った機関がございまして、それ以外にまた別系統の薬事行政を担当する政府機関があるということでは、結局行政が二元化をするという問題がございます。
そこで、私どもといたしましては、あくまでもその薬の安全性、有効性の確認を含めた製造承認、あるいはその後のフォローアップとか再評価とか、そういうものを厚生大臣の行政的な権限、行政的な責任のもとにおいて一元的に処理をすることが最も適切な方法であると考えておりますが、その際に、当然、事柄の性質といたしまして、先生御指摘のように、高度の専門技術を持った問題であるという事実がございます。高度の専門技術性を持った問題であるだけに、その特殊な分野についての深い造詣を持った方々の専門学術的な御意見によって、これを受けて、これを尊重して、厚生大臣が一元的な行政責任のもとにおいて事柄に対処するというのが、最も適切であるというふうに考えておるところでございまして、その意味において、私どもは、今後とも必要に応じまして、中央薬事審議会の権限と申しますか、その権限が、諮問機関ではございますけれども、この中央薬事審議会がより適切にかつ周到に機能し得るように、中央薬事審議会の強化と申しますか充実と申しますか、これを図っていくということについては、完全に先生の御意見と同様に私どもも考えておるところでございます。
なお、かつまた、事柄の専門技術性ということにかんがみまして、いやしくも行政の立場において、その技術的な事項についてのそれぞれの専門家の御意見をねじ曲げるというようなことは、あり得ないことであるというふうに考えておるところでございまして、そういう行政の立場というものも、行政の一元性、一貫性という観点から御理解を賜りたい、かように考えております。
-
○
金子(み)委員 わかりました。
次に、被害の判定の問題でございますけれども、被害の判定は、けさほどの御答弁を伺っておりますと、医薬品に関する専門的なものに関する判定は基金がするのではなくて、これは国がするというふうに御答弁があったと思います。これはそのとおりだと思いますし、そうなければならないと思いますが、そうだといたしますと、いまの法案の中の文章では、基金は、その専門的な判定について、厚生大臣に申請することができると書いてあるわけですね。ですから、その文章は、もし国が判定をするというふうに方針を固めていらっしゃるのだとすれば、申請することができるのではなくて、これは申請しなくてはならないに直すべきではないかという気がするわけです。これは素人的な発言かもしれません。法文のつくり方というのはいろいろあるようでございますから、することができるとしておいても、するのである、こういうふうに理解するのかもしれませんけれども、一般的には、することができるという言葉の裏には、しないことができるというふうにもとれるわけですね。そうすると、しなくてもいいというふうにも解釈できますので、そうでなくて、もっとはっきりと、しなければならないというふうに直すべきではないかと思います。そして、それを受けて、厚生大臣はその審議会の、あるいはその他の機関の意見を聴いて、その結果を通知しなくてはならない、こういうふうになるのがはっきりするのじゃないかと思うのですが、その辺はどうでしょう。
-
○橋本国務大臣 私ども、内閣法制局の見解をただして条文を整理いたします段階では、医学的、薬学的な専門の判断というものは、当然国の方に見解をただす、そしてまた、判定部会の方で責任を持った判定をしていただくという考え方で整理をいたしておりまして、御質問の趣旨のとおりで実は考えておったわけでありますが、条文整理上、いまのような表現になったわけであります。
確かに、することができるというのと、するものとする、しなければならないでは、法律用語としてのいろいろな使い分けの問題はありましょうが、私どももこうした点、誤解を生じないような工夫はしてまいらなければいけないのではないか。もう一度考えてみたいと思います。
-
○
金子(み)委員 ぜひお願いしたいと思います。
それから、判定についてもう一つですが、今度の法案の中には、判定基準とか認定基準というものが明確にされておりませんね。そこで、これは多分政令にゆだねるというようなことになるのかしらと思ったりもするのですけれども、これは大変に重要な機能なんでして、これがもしあいまいになったりいたしますと、救済を否定するということにも結びついてくるという結果になりますから、これは非常に重要だと思います。そこで私は、ぜひはっきりした判定基準を法文に明記していただきたいと思うわけですが、中央薬事審議会でもそう言っていますね。認定の要件は法令に決定することが望ましいと中央薬事審議会でも言っているわけでありますから、私は、当然これははっきりした判定基準というものを法文の中に示していただかなければならないのじゃないかというふうに考えておりますが、それはいかがでしょう。
-
○中野(徹)政府委員 判定基準の問題につきましては、私どもといたしましては、午前中の御質問にもあった点でございますけれども、われわれがこの案を作成します段階におきまして、参考としましては、世界的に唯一の立法例である西独の薬事法を精査したわけでございます。この西独の薬事法による賠償責任につきましては、医学的に容認できる程度を超えた健康被害という用語が使ってございます。そこで、その医学的に容認できる限度を超えた被害が何であるかということを一切裁判所の判断にゆだねるという、場合によっては現状よりもはるかにむずかしい事態を、いわば裁判所の責任にゆだねたということになっております。その結果といたしまして、西独の薬事法による賠償規定は解釈が非常に区々になり、たとえば能書等におきましてその副作用警告があるものであれば、一切責任はないのではないかというふうな議論すら生まれておるわけでございます。
そういう前例にかんがみまして、私どもは、結局医学的に容認できる程度を超えたいわば健康被害というようなものを明確にしない限りは、この救済はスムーズに動かないというふうに判断したわけでございまして、したがいまして、一般的に救済を行う前提のもとで、特殊な除外例を設けるという形において、西独におけるような事態の複雑化を避けたいというふうに考えたわけでございます。
その結果が、お手元の、たとえば先ほども御議論のありましたような、制がん剤等の特殊なケースを除くという形におきまして、政省令段階でいわば特殊例外として救済対象の除外するものを明示的に明らかにする、そういうことによって、西独の薬事法が陥るような、一々それが訴訟手続に係るような複雑な事態を避けたいと考えておるわけでございまして、そのような趣旨に基づきまして、政令、省令のつまり救済対象の除外例を極小限にしぼるという形で、事態を明確化したいといふうに考えております。
これにつきましては、たとえば午前中も御答弁申し上げましたように、制がん剤と免疫抑制剤等の非常に特殊な医薬品がございまして、これは一〇〇%リスクをかけて使うという形の医薬品でございます。こういうものは中央薬事審議会におきまして十分御議論を願うとともに、患者救済を主眼としまして、これをごく例外的なものとして明示をするということに落ちつけたいと考えております。
なおかつ、やはり特定の医薬品と特定の副作用の一般因果関係のようなものを明確にいわばルールづくりをする必要がある。このルールづくりをしまして、申請がありました場合にこれを迅速に消化する必要があると考えておりまして、そのために、中央薬事審議会における判定部会を本年十月に発足をさせまして、半年間の期間をかけて、迅速かつ正確な受件処理を図るための事前のルールあるいはガイドラインのごときものを作成して、患者救済を迅速化しようと考えておるところでございます。
そういう趣旨で、われわれとしては今後とも、先生の御指摘の趣旨に沿うように万全の努力を重ねてまいりたいと考えております。
-
○
金子(み)委員 いまの御説明の中の御趣旨はよくわかったのですが、そうすると、判定部会の中でいろいろなルールづくりもしていきたいというお話がありますが、判定部会というものの位置づけはどうなっているのでしょうか。
-
○中野(徹)政府委員 先生御承知のように、実は中央薬事審議会というものは非常に膨大な機構でございます。その中には各種の調査会、特別部会がございますが、それぞれが独立して機能するとともに、それを最高機関でありますところの常任部会が統括をしているという形になっております。
具体的な例を挙げますと、中央薬事審議会においては、一方に医薬品特別部会がございまして、その下に新薬の承認に携わるところの機関がある。一方に安全性特別部会というものがあって、これは副作用の情報を収集し、再評価等を行うということがございます。かように、同一の中央薬事審議会の中にそれぞれ権威のある独立した部会があって、それを常任部会において調整をしているという形でございます。
これは先生御承知のように、医薬品を承認いたしました場合に、承認後のいろいろな医薬品情報に基づきまして、たとえば添付文書等を常に訂正しなければいかぬ、新しい副作用情報の収集によりまして、添付文書などを時々刻々変えていかなければいかぬという問題がございます。そういう意味におきまして、同一の中央薬事審議会の機構ではございますが、たとえば判定部会における判定というのは、当然副作用に係っているわけでございまして、この副作用の情報が、救済制度の進行と同時に収集されるという仕組みになります。これをやはり他の部会にフィードバックをいたしまして、第一線の臨床家の注意事項として伝達するというふうに、すべてが相互循環的に働いていかなければ、実は医薬品の行政が一元的に行われないものでございますから、したがって、包括的に、中央薬事審議会の中に各種の特別部会を設けてそれぞれを機能させ、これを常任部会ですべての情報あるいは製造承認に当たっての情報との突合とか、そういうことを円満に、スムーズにやっていかなければならぬということがございます。
そういう意味におきまして、いろいろと御意見はあるかと思うのでございますけれども、医薬品のそういう情報収集等がいわば一元的にうまく循環するという意味におきまして、中央薬事審議会の特別部会として判定部会を設けて、その情報が中央薬事審議会内にすべて完全に伝達をされるように配慮するというのが、われわれの構想でございます。
-
○
金子(み)委員 わかりました。その点につきましては、いまの状態でいいのかどうかよくわかりませんが、さらに定員を増加するなりあるいは常任の人を置くなりして、強化した形に仕上げていただいたらもっとやりやすくなるのじゃないかと思いますので、その点はお願いしておきたいと思います。
それから、これはいままでの議員の方々の御質問の中にも出てきたのですが、この法案にはなじまないという意味の御答弁があった問題があります。それは無過失責任の問題なのですけれども、無過失責任の問題はこの法案にはなじまないということはわかったわけですが、それだったら、医薬品の問題は、危険性の度合いから言えば他の場合とちっとも変わらないと思います。非常に危険性のあるものでありますし、ことに人間の健康という点に関しては同様なものでありますから、そういう意味からいきましたら非常に重大な問題ですから、この法案にはなじまないかもしれないけれども、別途立法措置ということを考えていらっしゃるかどうか、その点を聞かしていただきたい。
-
○橋本国務大臣 これは一般的に民法全体の基本原則に係る問題として従来から論議されておりまして、厚生省自身が直接に所管し論ずるという立場にはございません。ただ、わが国の法制上、無過失賠償責任を採用するかどうかというのは、たとえば公害罪法の
制定の前後から法務省当局においてもずいぶん論議され、種々の検討が加えられつつあるというふうに私は承知をいたしております。
-
○
金子(み)委員 それでは話を先へ進めます。
医薬品の副作用によって被害を受けた人たちに対する国の責任という問題があるわけですけれども、国はいろいろな形で責任を持っておるわけです。たとえば国民の健康とか
福祉を増進する行政上の責任があるとか、あるいは医薬品の製造、流通の承認であるとか許可であるとか、指導であるとかいうような立場を持っていらっしゃいますから、そういう責任を持っております。したがって、高度の安全性を確認する義務というものがなければならないと思うわけです。
そこで、今度の問題についても国はどこまで責任を持つつもりなのかという質問になるわけですけれども、法案によりますと、国が責任を持つ範囲とか度合いとかいうのは、必要な場合に基金に対して補助金を出すことができるということがございますね。これが国が持とうとしている責任の範囲なのだろうというふうに解釈するわけですけれども、国の責任というのは非常にむずかしいので、どういう形でその責任をあらわしたらいいかということにもなってくる。ただ単に予算を流すことだけが責任だというふうには思わないわけです。ですから、そういう意味では、私はこれでいいと思うのですけれども、この補助金がまた非常にはっきりしていないのですね。その取り扱いあるいは補助金をどの程度にするか、たとえば補助率をどれぐらいにするとか、特に必要な場合というのはどんな場合なのかとか、著しい健康障害というのは何を指すのかということについてまだ細かい決めができていないのが、一般的には大変に不安だと思われているわけです。当然のことながら、これは政令で決められることだとは思いますけれども、現時点ではまだそこのところがはっきりしていないということに大変に不安を持つわけであります。この点は、いまここですぐ、どのようにという御答弁は無理なのかもしれませんが、いつの時点までにはっきりさせてくださるのかということが知りたいわけです。それはいかがでしょう。
-
○橋本国務大臣 この点は、実は本会議で趣旨説明をいたしました際、各党から代表の方々の御質問をいただきました時点でもお答えを申し上げましたように、私ども自体が非常に迷った部分でございます。そして、たとえば製造物責任論を西ドイツのように採用いたしました場合には、これはむしろ、企業の限定された支出の中に全部埋没してしまって国の責任分野はなくなってしまうということから、こういう考え方も日本には合わないだろう。それならこういう方法は、ああいう方法はと、いろいろ考えてまいりました結果、国もやはり何らかの責任は負わなければならない。しかし、その範囲というものについて、これはもう行政当局の私どもだけで決定をすることもいかがなものだろう、むしろ国会の御意見を伺った中で最終的に決めようではないか、そういう考え方を持っておりますということを申し上げたわけであります。
そして、いままでずっと各委員の御意見を伺ってまいります中におきましても、非常にこの点についてはいろいろな御意見をお持ちの方々がおありのように感じます。ある方々からは、患者救済ということに着目をすれば国は相当程度の負担をすべきではないかというようなお考えもございました。また、やはり製薬メーカーの責任というものを厳しく追及するというたてまえからいくならば、極端な言い方をすれば、その原因発生企業が倒産するくらいのところまで行ってからでなければ国は負担をすべきではない、それに近い強い御意見もあったわけでございます。
まだ、私ども最終的にその点に対する結論を出しておりません。ただ、いま私どもが考えておりますことは、たとえばサリドマイド程度の被害金額になるようなものであれば、国がそれに対する負担をしても、非常に厳しく企業責任を追及される側の方々からもおしかりを受けることはないのではなかろうか、その程度のところには国はすぐにも給付をすべきではないだろうかということをいま原則的に考えております。
なお、本院に引き続き参議院の御審議もあるわけでありますが、私どもは、基金が業務を開始いたします時点までにはその点は明快にしなければならぬ責任もあるわけでありまして、なお両院の御審議の経過を踏まえて十分に検討していきたい。ただ、いま考えておりますのは、少なくともサリドマイド程度のところから国は負担を開始すべきではなかろうか、そのように考えております。
-
○
金子(み)委員 わかりました。先に行きます。
次は給付の問題について、少し幾つか具体的なものをわからせていただきたいと思います。
その一つは、これはもうどなたも発言していらっしゃいますので、国の方の姿勢もだんだん私どもものみ込んでくることができたのですが、被害者の方の中で、いわゆる既発生の被害者の方も切り捨てないで対象として給付をするという問題でございます。これは研究会報告でも言っております。しかし国はそれを切り捨ててしまったというところがあるわけなんですが、国の姿勢はだんだんに変わってきていらっしゃるようにも見受けられますので、この既発生の被害者の人たちのことも考えて、そして対象として取り上げられるというふうに進められていくべきではないかと思いますが、これはけさほどの御答弁でもそのように伺っておりましたので、そのように解釈をしたいと私も思っております。
そこで、そのことと関連してお尋ねしたいと思いますことは、スモンの患者さんの中で和解の成立した方たちがございますね。この方たちは、そのことで賠償金だとかあるいは介護手当だとか、そういうものは全部獲得できるようになっておられると思います。そこで今度、いま私が取り上げました既発生の被害者も含めるという方針で国がお進みになるとすれば、そういうふうに私どもはそのことを要請しているわけでありますから、そのようにされるであろうと私は期待したいわけですし、この問題は当然のことですから期待しながら申し上げるのですが、そうだといたしますと、いま申し上げた和解が成立した人たちも含まれてきますね。既発生の人が取り上げられるということになりますと、これは時期的な問題として含まれてくるんじゃないでしょうか、含まれてまいりますね。その場合に、この法案で決められたいろいろな給付の種類がございます。これが、すでに和解成立した人たちは別の形で賠償金や介護手当などをもらっていらっしゃいますが、もし既発生の人も含めるとなると、その人たちに対する給付ということも当然この法律の中から発生してくると思うのですね。そうすると、そういう方たちにもやはり給付はなさる御方針でございましょうか、どうでございましょうか。こういうことでございます。
-
○中野(徹)政府委員 現在御
提出申し上げておりますところの法案に含まれていない部分についての御質問でございますので、私どもとしていわば確定的な御返事がしかねる面がございますけれども、今回の案の前提になっておりました研究会レポートがございます。この研究会レポートには、もともと既発薬害について、特別会計を設けてその救済を処理するという構想が含まれておりました。これについて、実は私どもがこの原案を
提出します際にこれを含めなかった理由は、この特別会計を設けて処理する場合におきましては、当然民間企業の責任部分がそこに入ってまいります。その民間企業が、いわば新規の法律によりまして過去にさかのぼって義務を強制されるということは、憲法上の原則からして許されませんので、結局のところ、民間企業の自発的な意思によりましてその特別会計に参加をするという条件が必要でございます。
そういうような意味におきまして、すでにこの法案を
提出いたしましたときには、一部の和解は進行しておりましたが、田辺製薬という関連企業の有力なる一本の柱が和解に参加をいたしておりませんでした。したがいまして、その段階においてこの特別会計制度を設けましても、法律をもって田辺に対して、さかのぼって過去の事件についてある種の拠出を強制するということは、憲法上できないわけでございます。あくまでも田辺が和解に参加をし、その田辺の自発的な参加によりましてその特別会計制度が運営されねばならないという問題もございましたので、したがってこの法案にはそういう特別会計制度を入れなかったわけでございます。
しかしながら、現大臣及び国会関係の方々の非常な御協力によりまして、田辺の和解参加がすでに実現をいたしました。したがいまして、関連の国及び製薬三社の姿勢がこの件処理については一致をいたしたわけでございます。したがいまして、これがいわば一線上に並んだかっこうになりますので、研究会レポートにあるような特別会計制度を設けることの現実性が出てまいったというふうに、私どもは理解しておるわけでございます。
そこで、特別会計制度をつくって既発薬害の処理に当たります場合におきましては、当然に本則によるところの救済事業とは性格を異にするものでございまして、本則、つまり将来薬害についての救済は、和解によるたとえば事件解決といったようなことではなしに、いわば責任論を抜きにした一種の予防接種法の規定によるところの救済に類似した性格のものでございまして、これを権利関係としてそれ自身確定をするものでございます。現在進行しております中には、一方において東京地裁における可部和解がございますし、また一方に、患者の方々の一つのグループは全国一括解決という形で、いずれにせよ当時者間の合意によりましてこの中身を決めていこうという形になっておりまして、そこでその内容が確定いたしました場合に、その確定しました中身をいわば附則に基づくところの特別会計制度の中に盛り込みまして、その特別会計がこれを処理し得るという体制をつくるというようなことが、恐らく法制的に可能な唯一の方法ではなかろうか、かように考えております。
そこで、そういう全体的な当事者の合意に基づきまして、既発薬害の救済が行われるというような事態になりました場合には、その合意内容に即した給付が行われるわけでございまして、本則に基づくところの各種の給付とは性格を異にするものでございます。
ただし、先生御指摘のように、そこで救済が行われるようになりますれば、これはいわゆる恒久対策の一環の問題といたしまして、すでに和解を終えた方々にも当然それが及ぶことになるという点におきましては、先生の御指摘のとおりでございます。
-
○
金子(み)委員 わかりました。それはそれで安心しました。
ではその次ですが、やはり給付の問題に関連してですが、この給付をする場合の条件として、いつにさかのぼってその給付の期限を起算するかという問題がありますね。いつからこれを起算するかという問題がありますが、このことがどこにも明らかにされていないので非常に不安定な要素になっておりますが、政府はどこまでさかのぼるというふうにいま考えていらっしゃるのかどうか、教えてください。
-
○中野(徹)政府委員 私どもの考え方といたしましては、これは申請主義の給付でございますので、申請時点にさかのぼるというふうに考えております。
その理由といたしましては、もう一つさかのぼれば、たとえば発症というふうな時点も考えられるわけでございますけれども、申請前のその発症時点というのは、恐らく申請時よりも時間的な間隔が相当古い場合があり得ると思います。そうしますと、その時点における症度であるとか症状等の証明というのは、恐らく物理的に不可能であろうというふうに考えておりまして、物理的に証明可能な限度において、申請時点にさかのぼって給付を行うというのが当面の考え方でございます。
-
○
金子(み)委員 お話はわかりましたけれども、私としてはできればこれは発症の時点にさかのぼっていただきたい。いまのお話しのように大変むずかしいとは思います。ですけれども、発症の時点がどこであるかということを厳格に究明することは困難かもしれませんけれども、できるだけ研究を進めてみて、そしてわかった範囲の時点でそれを対象として取り上げていただく。少なくとも申請の時点でということでなくしてもらいたい、こういう意味なんです。そういうふうに考えていただけないでしょうか、御検討を進めていただけないでしょうかということです。
-
○中野(徹)政府委員 申請主義という一つのルールもございますし、その客観的証明の困難性ということもございます。たとえば発症の時点がいつであるかというようなことを事後的に、医学的に確定をするということは非常に困難な点であるかと思いますが、いずれにせよ、申請時点というわれわれの現在の姿勢はそれといたしまして、患者救済の実を上げるということが趣旨でございますから、いろいろ工夫はしてみたいとは思います。
-
○
金子(み)委員 どうかひとつ御検討になっていただきたいと思います。むずかしいということはわかりますけれども、それが本当の希望でもあり願いでもございますので、お願いしたいと思います。
それから、給付の条件として、いまの法案では「医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合」は対象になりますね。しかし、そこで伺いたいと思いますのは、「適正な使用目的に従い適正に使用された場合」というのは、だれがどんな機関でどんな権限で「適正」と決めるのかということが非常に疑問なんですが、これはどういうふうに考えたらいいでしょう。
-
○中野(徹)政府委員 これに対応します西ドイツの薬事法の条文は、当委員会におきましても私はお答え申し上げたことがあるわけでございますが「規定に従って使用された」という言葉が西独の薬事法にはございます。この「規定」というのは、結局わが国の例で言えば能書あるいはその記載事項、添付文書における注意事項等を指しておるわけでございますけれども、したがいまして、医師に与えられたその当該医薬品についての製薬企業の責任において行われたもの、その中には当然国の承認に係るものもございますが、その効能、用法、用量等の問題もございますし、いわゆる適応の問題がございます。あるいはその逆のコントラインディケーションもあるわけですが、あるいはその注意事項もございます。これらに従って薬が使われておるということを言っておるわけでございます。
ただ、この場合に非常に重要な問題は、結局その適正な目的のもとに適正に使われたという場合に、たとえば医薬品の副作用情報というようなものは時々刻々に蓄積されることは御承知のとおりでございまして、結局事後的に、その医薬品の副作用被害というようなものが後から判明するというケースもあるわけでございます。したがって、何が適正であるか適正でないかということは、その時点における医学的、薬学的知見という流動的な要素がございます。それ以外に、やはり何と申しましても、実際論といたしましては、医師にどこまでの注意義務を要求し得るかという問題が一つあるわけでございまして、これは日本の
医療の実態、いわば一口に申せば、日本の
医療の平均的なレベルということを考えて、この適正使用というものを判定せざるを得ない。そういう非常に微妙な問題があるわけでございますが、その点を結局、西独の薬事法はすべて裁判所の判断に任したという形になっております。それでは、結局患者救済の実は全く上がり得ないとわれわれは判断したわけでございまして、そこのきわめて技術的な部面をその判定部会の判定にゆだね、その判定部会の中には一般の臨床医家のお立場も代表する方、日本の
医療の実態について十分の認識をお持ちの方も含めて、非常にむずかしいこの判定を行い、それをルール化していって迅速な患者救済を図りたい、かように考えているわけでございます。
-
○
金子(み)委員 非常にむずかしいことだと思いますけれども、第三者が聞いた場合に疑問を差しはさまないような内容で、ルール化していただきたいというふうに思います。
それと関連するのですけれども、いまのは適正に使用された場合の話ですが、その逆の場合がありますね。たとえば使用ミスとか調剤ミスとかいうのが出てきますね。この場合は対象にならない。これはわかっているのですけれども、そこで使用ミスとか調剤ミスとかいうのは、これは別の形で、
医療事故か何かで取り上げられるのかもしれませんけれども、いずれにいたしましてもこれは対象にならない。ところが、もしこれは
医療事故として取り上げられるようなことになるのだとすれば、その関係者が責任を果たしていない場合、あるいはまたその損害賠償責任というようなものが判明しない、それまでの間は、基金がこれを助けるということは考えられますか。全然考えられませんか。その辺を教えてください。
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○中野(徹)政府委員 この点も、この法案の御審議に際しまして再三御疑問の提示された点でございますが、まず第一に、
医療過誤との関係におきましては、この判定部会で、入り口で二つに分ける。そういたしますと、
医療過誤でないものの中には結局、たとえば製薬メーカー側の責任に、つまり神様の目から見ればということでございますが、神様の目から見れば製薬会社側の責任に帰すべきものがあり得るわけでございます。したがいまして、さような場合は、いわば
医療過誤でないところの第三者責任があり得るケースについては、この場合はこの救済給付を先行させまして、この第三者責任についての訴訟が起き得る、あるいは並行してあり得るというふうに考えます。最終的にその第三者の賠償責任というものが明らかになった場合には、そちらの賠償の方にいわば事柄は移るわけでございますが、この明らかになった場合というのは、私どもといたしましては、その訴訟が起こされて、その訴訟が判決が確定した時点というふうに考えているわけでございまして、したがってその訴訟と並行し得る、それによって、その医薬品の側の事故につきましてはわれわれとしましては救済が迅速に行われ、またそれが訴訟とも並列し得る、並行し得るというふうに考えておるわけでございます。
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○
金子(み)委員 給付に対しましては、いま一つだけですが、これは何人もの方々からも質疑並びに要望が出ておりましたので、国もそれなりに考えてくだすっているだろうと思いますけれども、いわゆる保健
福祉事業ですね。被害者の方たちの健康回復のための、健康維持、増進あるいはリハビリテーションだとか、家庭における療養に必要な用具とかそういうものに対する支給、そういったものに関する費用、これは当然考えていただけるものだと私どもも考えるのですが、その点に関してはいかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 現在の給付といたしましては、予防接種事故の救済に関するものをほぼ考えておりまして、予防接種事故は、先生御承知のとおりに、ワクチンという一種の同じ医薬品の使用に伴うものでございます。しかしながら、予防接種の場合には予防接種が公権力的に強制されておるという点がございまして、その公権力的強制という背景を踏まえて、この予防接種事故による救済が行われるという形になります。
私どもは、今回の医薬品の救済はそういう公権力的背景なしに、日常的な
医療の中で発生してくる事故を、事柄の性質上、当然ある程度のリスクを伴うところの医薬品をあえて使わざるを得ないような、そういう
医療環境のもとで発生するものについていわば救済を行うという発想でございまして、事情といたしましては、公権力的強制というものが働いているところの予防接種事故は、それよりもはるかに何と申しますかいわば公的な責任が強いものだろうと考えますが、給付の中身及び給付の責任については、同様の医薬品によるところの事故であるというところに着目いたしまして、予防接種法によるところの救済と同レベル、同種類のものを考えるということでございまして、その中にはいわゆる
医療手当も含まれておるわけでございます。
一方、保健
福祉事業の問題につきましては、これは再三大臣からも御答弁申し上げておるわけでございますが、基金の関連事業といたしまして、副作用情報の収集とか伝達といったような、いわばこの種の副作用事故の予防に資するような形の事業をも加えるべきではないかという御意見が、一方で有力にあるわけでございまして、これは参考人からの意見聴取で石館薬剤師会会長が陳述ざれたところでございます。また一方に、この保健
福祉事業という発想もございます。この二つのものは、私どもといたしましては、この基金の運営が軌道に乗った段階において考えるべきものではないかというふうに申し上げてきたわけでございますし、また、現時点ではそのように考えておりますが、それについての先ほどの大臣の御発言もありましたので、私としましてはそれ以上の発言は差し控えさせていただきたいと思います。
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○
金子(み)委員 先へ急ぎまして、次に情報の関係なんですが、いろいろございますけれども、時間もありませんので一口にして御意見を伺いたいと思いますのは、被害を未然に防ぐためにも、たとえば副作用に関する情報は当然のことでありますけれども、そのほかに、薬の承認とか再審査とかあるいは再評価とか、こういった医薬品などの審査の経過、そういったものを一般の人にわかるように公表するということが必要なんじゃないかと私は思うわけです。というのは、これは医薬品だけでなくて、医薬部外品もそうですし化粧品も同じだと思うのですけれども、使っているのは、あるいは服用しているのは一般の国民なんでありまして、ごく一部にだけ、決められた特定の機関にだけ公表されるとか、知らされるということだけでは足りないわけです。あるいは、事件が起こったときに緊急命令を出してその医薬品を回収するというような問題についても、もちろん
医療機関は当然でしょうけれども、町中にある薬種問屋、薬屋さんのところへもそれが通達されて、そして回収するというかっこうになるのでしょうが、そこから先は出ていないわけです。一般の消費者、国民には伝わっていないということで、あらかじめそういうものをすでに持っているのは国民たち自身ですから、使っていけないものを持っている可能性がありますし、そしてそれを使ってしまうという危険性もあるわけですから、こういう場合にはすべて、こういった医薬品に関する情報は、たてまえとしてこれを公表するというふうにすべきだと私は強く思うわけです。これが危険を防止する一番いい方法であるというふうに私は考えておりますが、その点についていかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 原則的に、医薬品に関する特に副作用情報等については、これを一般に周知徹底をすべきであるという原則論については、私は先生の御指摘の趣旨のとおりに考えております。
ただし問題は、たとえば副作用というものが一部あったといたしまして、この副作用情報がある一定のルートから、たとえば中央官庁である厚生省が入手をいたしますとしますと、この副作用情報をいわば因果関係的にある特定の医薬品に結びつけるということについては、当然専門家の因果関係に関する判断が必要でございます。軽々に、ある薬が副作用があるといういわば生の情報をそのまま右から左へ流すということは、行政庁としての責任としてできないことでございまして、それを学術的評価を行うということがまず第一のステップとしてあるわけでございます。こういう副作用の評価の機構も中央薬事審議会の中に
確立されておるわけでございまして、これを通過しました、いわば評価を受けた副作用情報というものは原則的にこれを公開しております。
また一方では、新薬の承認等に当たりましては、そのいわゆる安全性に関するところの基礎実験あるいは治験等につきましては、すべてこれは公開された学術雑誌掲載のものしか、判断材料としては採用いたしておらないわけでございます。したがいまして、その安全性、有効性に関してはすでに学術雑誌を通ずる形で情報は公開されているというのがわれわれの立場でございまして、一般的な副作用情報の周知徹底については現在われわれなりに最大限にできる努力をしているところでございますが、なおその周知徹底方については行政の立場におきましてさらに努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
-
○
金子(み)委員 もう一つ釈然としませんが、大事な問題が一つ残っていますのでいずれまたあれすることといたしまして、もう一つの問題の御意見をぜひ聞きたいものがあります。それは基金制度と訴訟の関係のことなんです。
基金の救済対象となるのは、過失のない場合あるいは過失の有無が明らかでない場合でございますね。それから基金の救済対象になった場合は、基金が一応過失がないと判定するか、あるいは過失の有無が明らかでないと判定したわけですから、もしその過失責任があるとして損害賠償請求訴訟を起こした場合には、基金の判定がそうでないものですから、裁判上は、過失の有無の認定には不利な影響が起こるんじゃないだろうかというふうに考えられるんですけれどもね。
それからもう一つは、基金が救済対象にならないと判定した場合というのは、因果関係がないとした場合ですね。因果関係がないとした場合、損害賠償責任を追及した訴訟を起こしました場合は、副作用の発生と原因医薬品との因果関係が裁判上認められるのは大変にむずかしくなるんじゃないでしょうか。基金の方で因果関係がないと判断して行っていることがありますので、そういう場合には裁判上、訴訟上不利になるというか、むずかしくなるんじゃないかというふうに思われますけれども、いかがでしょう。
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○中野(徹)政府委員 この問題は二重の問題を含んでいるわけでございますが、たとえばその入り口のところで
医療過誤としからざるものを整理するというお話をいたしました。
医療過誤との関係におきましては、薬の側のものではないという、つまり適正使用であるという観点からの判断でございますから、その判定部会の判定が
医療過誤問題についてはある種の心証をつくり出すことは事実でございます、
医療過誤との関連におきましては。ただし、いわゆる第三者責任あるいはメーカー責任との関係におきましては、これは基金といたしましては明らかでないという判定を、そういうカテゴリーがあるわけでございまして、先ほど御説明しましたように、明らかになるということは訴訟による判決が確定する時点でございますから、訴訟についてのその関連、つまり第三者責任との関連について、当該基金の判定が訴訟上不利な心証をたとえば裁判官等に与えるということはあり得ないと思っております。
-
○
金子(み)委員 時間がありますからやめますけれども、いまの問題はもう少し検討をさせていただきたいと思いますので、さらにまたお話し合いをさせてほしいと思います。
最後に、大臣にお願いしたいことは、医薬品の副作用に基づく薬害の責任のことですけれども、これは当然のことながら、製薬会社もそうですし、政府も責任があると先ほどおっしゃっていらっしゃいましたが、また医師にも責任があるというふうに私は考えるわけです。この三者がそれぞれ責任を課せられているというふうに考えるわけなんですけれども、この制度は、今度二つの制度ができることになるわけなんですけれども、どんな制度がつくられても、その制度が最も適確に運営されるということがキーポイントであって、制度はつくったけれども、それが最も適確に運営されなければ制度は死んだようなものだというふうに考えられると思うのです。だから、その運用の仕方、書案をかえれば法に対する行政の対応の仕方、行政のあり方ということになるわけでありますが、国が安全性確保に対する高度の注意義務をしっかりと踏まえて、そしていま出されております二つの法案がありますが、この二つの法案の的確な改正を含めて、そして適正な
法律案をつくり直してとでも申しますか、つくり直してそしてそれを適確に運営されるということが、これから先の薬害被害を防ぐ一番大きなキーポイントになるんではないだろうかというふうに考えられますので、その二つの問題についての御決意を聞かせていただければと思っております。
-
○橋本国務大臣 医薬品の安全確保につきましては、これは薬務行政に負託された最も重要な事項の一つであるということは間違いありません。ですから、私どもそういう認識のもとに現在二法を
提出し御審議を願い、しかも普通の
法律案の場合と少々異なりまして、私どもなりの最善は尽くしたが、なお国会の御論議等によってつけ加えるべきものあるいは手直しをすべきものがあれば、与野党の御意見がそろえば、私どもはそれについて異議を申し上げないということも申し上げております。
今後においても、有効かつ安全な医薬品の供給に努めさせると同時に、万一不幸にして副作用の被害の発生を見た場合においても、この救済制度の円滑な運営を確保をすることによりまして、迅速な救済が行われるように努力をしてまいりたい。しかし、むしろこの制度が動かないで済めば、そういう不幸な事故を発生することなしに済めばそれにこしたことはないわけでありますから、私どもとして従来以上に努力をしてまいりたい、そのように考えております。
〔
委員長退席、
越智(伊)
委員長代理着席〕
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○草川委員 公明党・国民会議の草川でございます。
まず第一に、私は、いままでの方の質疑と重複する点は避けまして、厚生省にこの薬事法を改正するに当たりましての基本的な考え方というものをお伺いをしたい、こういうように思います。
今度の改正案なりあるいはまた救済法をつくられる場合に、アメリカだとかあるいは西ドイツ等についてもずいぶん参考にされた点が多いと思うのですが、私も薬のことについては全くの素人でございますけれども、アメリカだとか西ドイツの法の体系なり仕組みと比べてみると、今度の法律の組み立て方について何か基本的に少し違うような気がするわけです。
一つの具体的な例を申し上げますけれども、たとえばアメリカの昨年施行されました新医薬品法の第十四節では「学術、宣伝、情報担当者は、サンプルの受取人並びにサンプルの種類、数量及び時期を確認した上でサンプルを配布し、主務官庁の要求があればその記録を提示しなければならない。」いわゆる薬の売り方について大変厳しい規制措置というのがあるわけです。
今度のいろんな薬害の被害のルーツというものを探っていきますと、やはりメーカーの、薬というものを売らんかなとするような姿勢というのがあり過ぎたのではないだろうかという、こういう一つの判断を私は持つわけであります。そういうものが次々と過剰な投与ということになっていく、あるいはまたプロパーというものも、品質、安全というような中身についての宣伝ということよりも、とにもかくにも売り上げをふやさなければならないというような形で、いろんな意味での犠牲というものが倍増をしてきたのではないだろうか。だから、ひとつ本質的には、今度の薬事法改正に当たっていわゆるメーカーの経済性というものをどこかである程度規制をするというような条文を、たくさん多岐にわたってこれは問題提起をしていかないと、後追いの対策になってしまう、結果に対する救済だけのことになってしまう、私はこういうような感じがするわけですが、まずその点についてのお考えは、どういうような考え方でこの法案をつくられたか、お聞かせ願いたいと思います。
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○中野(徹)政府委員 準備に当たりました事務当局としての立場を申し述べます。
先生御指摘のとおりに、諸外国における薬事法は私らなりに十分参照いたしまして、特に一番新しい時点の西独の薬事法、一九七六年
制定の西独の薬事法はしさいに点検をいたしまして、この法案の準備に当たったわけでございます。
全体として、薬事法というのは、まず第一に、実は西独の薬事法は、所管官庁といたしましてはちょうど日本の通商産業大臣に当たる者との共管法律になっております。日本の場合で申しますとこれは
公正取引委員会との関連部分、つまり経済取引に関する部分が西独の薬事法には含まれておるわけでございまして、いわば流通秩序問題が西独の薬事法には含まれているという特殊性がございます。そのような観点から、流通秩序問題、つまりいわば公取の権限に属する事項ですね、これが西独の——もともと法律自身が取引という文字が入っている法律でございまして、その点
公正取引委員会が独立権限を有しておりますところのわが国の事情とは多分に異なっている点がございます。
私どもといたしましては、基本的に衛生法規としての観点での薬事法は、あとう限り現在の諸外国の薬事行政のねらいと同じものをこの法律によって実現をするということで、私らなりに現状を踏まえまして最大限の努力をしたつもりでございます。
しかしながら、先生御指摘のように、衛生法規としての薬の規制というものを通じて、実際に日本の
医療環境のもとにおいて問題とされているものがどこまで片づくかという問題は、非常に重要な問題であり、御指摘のとおりだと思うわけですけれども、これはやはり事柄が第一線における
医療の中身の話に関係をしてまいるところでもございますし、当然先生の御指摘のように、たとえば経済問題としての薬価問題もございます。正直に申し上げまして、これは厚生省内部の問題としましては健康保険法の問題でございます。それからさらに医師の、臨床医家のいわば日本の
医療の日本らしい特色といったようなものもありますでしょう。同時にまた、患者の側の薬に対する観念という問題もございます。それからさらに根っこのところに、非常に大きな問題として医薬分業の問題があるわけでございます。
したがいまして、私どもは私らなりにこの薬事法の改正については万全の努力をしたつもりでございますが、当然問題はすべて、たとえば健康保険法あるいは医薬分業問題あるいは流通秩序問題と絡まっているわけでございまして、私らなりにはその問題もできる限り、衛生法規としての範疇を超えない限度で努力をしたつもりでございますけれども、この薬事法の改正のみによって現在の日本の
医療環境を改革をしていくということは当然不可能なことでございまして、これは包括的にいわば日本の
医療のあり方の問題ということになります。そこには非常に多元的に、健保の問題、医薬分業問題、すべてが絡まってくる、あるいは流通秩序、公取権限の問題も入る、かように御理解をいただきたいわけでございます。
-
○草川委員 いまの
局長のお話は、一般論としてはそのとおりだと思います。確かに非常に幅の広い基本的なものがあるわけでございますが、それではアメリカの薬事法との関係になりますけれども、たとえばプロパーの販売に対する規制ということが非常に明確に出ておるのですよ。たとえばプロパーと言うのですか、向こうではもっと専門的な言葉があるわけでございますけれども、いわゆるプロパーの薬を売る人の資格というものを、もう少し権限を高めていきながら、私の第一番目の質問に戻るわけですけれども、そのことについていま
局長の答弁がないからこういうことを言うわけでございますけれども、診療機関にこういうものがあると言えるくらいに、薬を売る人たちの資格というものがもう少し厳格にあってもいいのではないだろうか。ところが、プロパーに対する規制あるいは資質の向上に関する規定については、
谷口議員が本会議の趣旨説明に対する質問のときに、それはメーターなりの自由規制に任せるというような大臣からの答弁があった、こういうように私どもは思っておるわけでございますが、そういうことだけではなくて、もう少し積極的な意味での指針というものがあってもいいのではないだろうか、私はこう思うのですが、その点はどうでしょうか。
-
○中野(徹)政府委員 いわゆるデテールマンとかプロパーあるいは場合によってはメディカルレプレゼンタティブという言葉も使っておりますけれども、そのような立場の方々の活動及びその実態が、日本においては多分に問題をはらんでおるという点は率直に認めざるを得ない、かように思います。
私どもといたしましては、そのような意味におきまして、実はこの法案の準備段階におきまして、西ドイツにおいてはプロパーの資格規制を新薬事法下においては行っておるわけでございまして、この問題にいかに対処するかということが一つの重要な問題点であるという意識をいたしまして、検討いたしたわけでございます。
現在の日本のプロパーの実情を申し上げますと、全国的に約三万人ぐらいのプロパーがいる。その中にいわゆる薬系、医糸というような学歴を持った方が、正確ではございませんが、私の記憶では大体四割ぐらいであろうかと思います。文科系、法科系の大学卒業者が約四割ぐらいおられるように思います。その他が二割というようなことでございまして、いわば資格問題あるいは一種の研修制度の問題というふうなことはなかなかむずかしい面が現状としてあることは、率直に認めざるを得ないわけでございます。
そこで、私どもといたしましては、これは現実に存在している三万人のプロパーの方々のいわば資格の問題、さらにその活動規制の問題ということに相なるわけでございますが、これにつきましては、結局のところ、一朝一夕にたとえば一年がかりでとか、あるいは半年で現状を変えるということはなかなかむずかしい、非常に難事業であるというふうに判断をいたしました。
そこで、これは業界に対しまして、諸外国の例を参照して、プロパーの自主規制案を取り入れる。これは現実にプロパーの資格制度を持っておりますのは、アメリカの先ほど御指摘の案は別といたしまして、現実に法令上の根拠を明確に持っておるのは、たしか私の記憶では西ドイツのみであると思います。その他の国々はプロパーの資格規制は現実に法的には行っておらず、大半の国は自主規制でこれを行っておりますので、自主規制すら行われていないわが国において、まず自主規制を行うことが第一歩であるというふうに判断をいたしました。
その自主規制の案の内容につきましては、業界に対しまして六月までに具体案を作成し、これは世論の批判にたえ得るものを作成して、自主規制活動に移るようにという要請をいたしております。私どもはくれぐれも業界に注意をいたしておりますのは、そこで出てくるところの業界の自主規制が世論的に納得のいかないものである、あるいは世の批判にたえ得ないものであってはならないということは強く申し伝えてあるわけでございまして、事柄は一挙にいかない面がございますけれども、まず自主規制を業界に要求をする。それでもなおかつ世論の批判にたえ得ないような事態においては、さらにわれわれとしては、その段階でいろいろ決意もしなければいかぬのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
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○草川委員 私は、製薬メーカーの販売促進というものを、まず口元で規制をしていかないと、基本的には過ちを犯すことが多いのではないか、こう思うわけで、そういう趣旨での発言なんです。
アメリカはいまおっしゃられたように、一九七五年にガイドラインを作成しておられます。あるいは英国の場合はプロモーション活動の倫理綱領というものがつくられておる。これは製薬工業協会の訓練コースを経た者、こういうことだそうです。ドイツの場合はいま言われましたように国家試験に合格した者という、非常に厳しいものがあります。カナダも同様なものがあるということでございます。
いまプロパーの文科系、理科系というようなお話しがございましたが、実際この中で薬剤師のライセンスを持った方は一体どの程度いるのか、非常に少ないのではないかと思いますが、この薬剤師のライセンスを持った方の統計数字はあるのですか。あれば後で教えてください。
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○中野(徹)政府委員 いま手元には資料がございませんが、私の記憶では、先ほど申し上げました四割方の数字の大半は薬科系の大学卒業者であったように記憶をいたしております。ただし、薬剤師のライセンスを持っているかどうか、その点はつまびらかではございません。できる限り調べて、御報告申し上げたいと思います。
-
○草川委員 いま
局長は、製薬メーカーの方からの自主規制、六月に回答案というのですか態度が出るというお話しでございましたが、私どもが聞いた範囲内では、どうも業界が厚生省の方に、こういう内容でやりたいという一種のサウンディングというのですか打診があった。ところが厚生省は、それを見たら非常に内容がお粗末だったから突っ返した。こういうように私は聞いておるわけですよ。その内容はどうでもいいのですけれども、問題は、現在の厚生省の考え方だと、先ほど
局長がちょっとおっしゃられたように、自主規制だけではまだ不十分なような状況があると思うのですが、その点は一体どういうように具体的に指示をなされるのか。新たに相当強い方針というのを出されるのかどうか。もう一回お聞かせ願います。
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○中野(徹)政府委員 私どもといたしましては、六月という期限を切って業界に自主規制案の提示を求めているわけでございまして、その業界提示の案が、私どもの判断といたしまして世論の批判にたえ得ないものであるならば、その段階で決意をせざるを得ないというふうに考えております。
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○草川委員 では、それはそれで次に移ります。
これはかなり問題になりましたし、いまもお話しがございましたように、流通の点について第二番目にお伺いをするわけでございます。
今度の法案の中には、流通の規制というのが出ておるわけでございますけれども、流通段階でたとえば卸、現金問屋、
医療機関という流れがあるわけでございますけれども、ここの中でいわゆる不良医薬品というのですか、安全的でないというような薬が実際発見された例があるのかないのか、質問をします。
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○中野(徹)政府委員 遺憾ながら、現金問屋を舞台といたしまして偽造医薬品が出回ったケースがございます。
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○草川委員 これはかなり新聞にも出たことでございますが、その偽造医薬品があったという例、この発見は厚生省の方が発見をしたのか、あるいは業界の中から申告が出たのか、その点についてお聞かせ願います。
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○中野(徹)政府委員 私が記憶しておりますケースは、残念ながら、そのようないわば現金問屋を背景にいたしまして超安値の品が出回っておるという情報を、警察筋が聞いて、これに手入れをしたということが発覚の端緒であったように思います。
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○草川委員 私どもが少し聞いたのは、発覚をしたのは、いわゆる現金問屋、特に中小の現金問屋の方々が、自分たちのルートの中からこういうものが発見された、これはおかしいじゃないかというので、警察の方に届け出たからというふうに聞いておりますが、その点は厚生省はどうお考えになられますか。
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○中野(徹)政府委員 それでは、手元の資料に基づきまして最近のケースを御説明いたします。
昨年三月、神田の医薬品現金問屋街に、にせの抗生物質医薬品が出回ったとの情報が警視庁保安二課に入り、捜査したところ、偽造医薬品であることが判明した。
この中身といたしましては、過去に医薬品会社に勤務したことがある旅行あっせん業者ら五名が、台糖ファイザー社のビブラマイシン類似の包装箱に市販の消化剤を詰め、消化剤というのは胃の薬でございますが、医師であると偽って、神田の現金問屋で売っていたものでございます。
先生御承知のとおりに、現金問屋は氏素性のわからないものを現金で買い取るという商慣習を持っておりますので、こういう事件が起こるわけでございます。これは残念ながら現金問屋を通じてのものでございまして、これが相当出回り、現金問屋におきましてはその販売先等は一切記帳いたしておりません。どのような流通経路でいったかも判明いたしません。したがって、残念ながら回収することができなかったものが相当にございます。このような市場環境というものは、事医薬品に関しては全く許すことのできない市場環境であると、私は判断をいたしておるわけでございます。
-
○草川委員 厚生省は、そういう立場から今回の改正案で記帳義務というのを課した、こう思うのです。省令でどういうような規定をするか、それが流通段階で価格にどうはね返ってくるかというのが、私どもがこれから非常に重要な問題にしなければいけないことだと思いますし、ここで
公正取引委員会との関係というのが出てくる、こう思うのです。
公正取引委員会の方は、法案作成の段階でいろいろと意見表明があったようでございますが、たまたま「国際商業」という雑誌のことしの六月号に「薬事法改正の概要について」というのがございまして、厚生省の下村企画課長が一つの論文の発表をされてみえるわけです。
ここで、流通規制を行うと伝えられておることから、
公正取引委員会の方から疑念が表明されたので、法文上は記録の作成、保存が明記されない形になったけれども、品質保持、回収等の措置を適確に行うため云々というのですね。そして、厚生省令
制定の段階で
公正取引委員会の意見も聞いた上で、新薬や経時変化の著しいもの等必要性の高いものについて規定を設ける、こういうような論文があるわけでございます。
いわゆる衛生法規、安全上の問題、こういうことと、流通段階で記帳義務を課すということは、結局高値安定ということに落ちつくのではないだろうかという、相矛盾をした問題が出てくるわけでございますが、これは前回のこの委員会でも若干議論が出ておるようでございますが、どういう経過から意見を表明されたのか。
公正取引委員会の方から一回お聞かせを願いたいと存じます。
-
○樋口説明員 お答えいたします。
先ほども御
紹介されましたように、現金問屋を中心に不良医薬品、偽造医薬品が流通したということはまことにけしからぬといいますか、事人間の生命・健康に関することであるだけに、非常に問題だと私ども考えているわけでございます。これは法律以前のモラルの問題ではないかと私ども考えております。
このような問題医薬品を回収するということはきわめて重要なことでございまして、ところが回収の方法にもいろいろあるのではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
いまここで改めて申すまでもございませんが、御承知のようにわが国は自由主義経済が経済運営の基本となっているということでございまして、公正かつ自由な競争を維持促進することによって消費者の利益を確保し、国民経済の健全な発展を図る、そういうシステムをとっているわけでございますので、問題医薬品の回収の方法につきましても、できるだけこのような考え方と調和を図ることが必要ではないか、そういう観点から、私ども厚生省御当局にいろいろ御理解いただいているわけでございます。
-
○草川委員 これはことしの三月の参議院予算委員会の議事録でございますけれども、同じような質問があって、橋口政府委員の方からは、この医薬品その他商品の流通管理のために、行き過ぎた行為が、・結果として価格の管理を伴うことは警戒しなければいけない、こういう言い方がございますし、いま公取の方からは、厚生省とはまた別の次元から、回収の仕方についても一つあるじゃないか、こういうお話があるわけです。この点については、大臣、どういうお考えでございますか。
-
○橋本国務大臣 公取さんは公取さんとしてのお考えで物を言っておられるのでありましょうが、実例でお答えを申しますと、五十一年七月にグルタチオンという薬のにせ薬が出回ったことがございます。この偽造数量は約四千五百七十五万錠と伝えられております。その流通経路は東京以外の現金問屋にも流通している疑いが持たれまして、現金問屋が多いと言われている愛知県、大阪府あるいは福岡等の各府県にも当該医薬品のチェックを行ったわけでありますが、結局最終的には、偽造品が流通した形跡のある都道府県は十一にまたがりました。しかし、先ほども申し上げましたように、何ら台帳等もなく取引をされておりますために、回収ができましたものは三百四十万錠であります。四千五百七十五万錠のうち三百四十万錠であります。なお、この事件は二十名の逮捕者を出す事件でありました。
また、先ほど薬務
局長から申しましたケース、ビブラマイシンのにせ物の場合には、回収をいたしましたものは約七万錠でありますが、一体幾らつくられて幾ら現金問屋を通じて流されたのかわかりません。
私は、公取さんが本当にそんないい方法をお持ちであって、ほかにも方法があるであろうとおっしゃるなら、教えていただきたいものだというぐらいの気持ちを持っております。
-
○草川委員 流通の問題でございますから、公取の方も、薬の安全性というものについてそれを無視して物を言っているわけじゃないと思いますが、実はこの問題をあえて取り上げましたのは、私も薬価差益というものを長い間何回か取り上げさせていただいたわけであります。実勢価格と薬価との差益というものはおかしいじゃないか、実勢価格が低ければ薬価を下げるべきじゃないかという主張をいたしておりましたら、結果的にそれが管理価格的にはね上がってきて、実勢価格というのは上がってきておるわけですよね。ですから、薬価というものは本当に実勢価格に近づけるようにしなければいけない。そういう正確な調査なり運営がなされていないから、現金問屋というような異質な流通問屋というものが出てくる。流通の中に現金問屋というものが出てくる。そしていまのような不祥事件というものが出てくる。だから私は、本質的な問題の事の流れをつかまなければいけないと思うのです。
私は私なりに、過日も現金問屋へ行って調べてまいりました。現金問屋に一体どこからそういう不明品が流れてくるのか。盗品なのか。そうしたら、盗品が絶対ないとは言わぬ、一部あるかもわからぬ。しかし、大量に何千万円という商いをするには、明らかに一次問屋から流れてきておるというわけです。
それでは、なぜ一次問屋が現金問屋に薬を流すのか。メーカーの押し込み販売だというわけです。メーカーの押し込み販売があるから一次問屋から現金問屋に流れる。だから現金問屋は現金問屋なりの商売をし、自治体病院に薬を売るわけですよ。だから、自治体病院は現金問屋の実勢価格表が欲しいから、今回のこの流通問題について、公取側の意見についているわけです。
厚生省の方は、安全性という立場から判断をするならば、いま大臣の言ったとおりだ、
局長の言ったとおりだと思うのです。それは何人も否定する者はないと思うのです。しかし、私が言わんとするのは、そのルーツのいわゆるメーカーの押し込み販売について、さあ薬をとにかくつくれ、つくればもうかるという、この姿勢を根本的に規制しないと、今日の薬害被害のあの実態の基本的な原因追求はできぬと私は言うわけですよ。そこら辺をしっかりと考えていただきたい。これは私の意見です。時間がございませんから、意見を申し上げて、第二番目の治験の取り扱いにいきます。
今度、新しい治験については厚生大臣に計画を届け出なければいけないということになりました。私はこれは非常に結構なことだと思うのでございますけれども、この前段で、この治験薬による健康被害がもしも出た場合に救済基金の対象になるのですか、その点についてはどうでしょうか。
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○中野(徹)政府委員 治験薬の段階は、先生御承知のとおりに、いまだ医薬品としての製造承認を得ていない段階でございます。その治験薬段階のリスクというものは、私どもの判断としましては、その治験、いわば開発過程における企業側の一切の費用であるべきだというふうに考えております。そこで、この治験に伴いまして被害が発生しました場合には、これは全面的に治験依頼をしたところの企業負担であるべきだと考えまして、その補償措置等を治験についての遵守事項の中に含めまして、賠償が適正に行われるように措置をしたい、かように考えております。
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○草川委員 本来は、治験計画は単なる届け出制ではなくて、いわゆる患者というのですか、被験者の人権問題があるわけでありますから、認可制にすべきじゃないだろうか。諸外国の例では、かなり厳しい規制がすでにしかれておるというふうに私どもも聞いておるわけです。特に問題になりますのは二重盲検というのがあるわけですが、二重盲検はダブルブラインドテストと言って、これは現在やられておるわけですが、その病院の基本的な計画を持った人しか知らない。投薬をするお医者さんも知らぬわけです。偽薬というのですか、試し薬を使っておるのか、全くの食塩水のようなものを使っておるのか、あるいは新薬を使っておるのか、医者も知らない、患者も知らないというような例があるわけです。先ほどの話じゃないけれども、治験による被害がもし出たときに、患者は治験による被害かどうかもわからぬ場合があるわけです。そういった場合、人権上一体どういう取り扱いをしていくのか、これは非常に重要な問題だと私は思いますが、ひとつその前に法務省の人権擁護局の方から、ダブルブラインドテスト、二重盲検の臨床試験というものが現実に行われているけれども、これは人権擁護上どういう立場をとられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
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○中津川説明員 先生御指摘のダブル盲検について、具体的な事例というのは私の方にまだ上がってきておりませんけれども、この
法律案との関係で八十条の二、あるいはこれとの関係での厚生省令、さらにこの法案全体との関係等から勉強させてもらいまして、人権上将来問題が生ずる余地があるのかないのかという点について検討したい、こういうふうに考えております。
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○草川委員 何のたれべえという個人が申告をしたら、もちろん人権擁護局は具体的な事例として判断をするということだと思いますけれども、ダブル盲検ですから、とにかく相手はわからぬわけですよね。だから第三者からもそれがなかなか認定できないというような事件がもしも今後出たら、私は非常に重大だと思います。
御存じのとおり、ニュールンベルグの原則というのがあるんだそうですね。あるいは世界医師会の場でもヘルシンキ宣言というようなものもあるわけですよ。あるいは一九七三年に日本精神神経学会で、ヘルシンキ宣言に基づいて、人体実験は、実験の目的だとか具体的な内容について相手に詳しく説明し、納得させてから、せめて患者の自筆のサインあるいは
家族の承諾書をとって治験はやるべきではないだろうかということが、一面では言われておるわけです。
今度、治験については従来の
局長通知が厚生大臣への届け出に一段ランクは上がったようですけれども、私は、これは法務省の人権擁護の立場からも重大な関心を持っていただきたい。そして同時に、治験で被害者が出た場合にどういうことを考えられるのか、それはもう明らかにメーカーの責任ですよと言って切ってはおりますけれども、人体実験の現状というものについてもう少し認識を持つ必要があるんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
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○中津川説明員 先生御指摘の点については、当局におきましてもいろいろ検討を重ねたい、こういうふうに思っております。
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○草川委員 では、今度は厚生省に聞きます。
いまの二重盲検の臨床実験ですが、昭和五十二年の十月二十二日に、武田薬品の主催したニコリンの研究講演会が、中伊豆温泉病院長を講師にして開かれておるのですね。二重盲検でニコリンがかくかくしかじかという報告があったら、愛知県の医師会副会長の谷本さんというのが有名な質問をしておるわけですよ。この谷本という先生が講演者の間先生に、ダブルブラインドテストについて患者の了解をとったのか。これはもちろん、とっていないという答弁。ところが、実際どういうような
医療保険の請求をしておるのかという質問があるわけですよ。ダブル盲検ですから、お医者さんは自分が指示する薬を使ったと思い込んでおるわけですよね。だからカルテには当然そう書くでしょう。ところが、それはダブル盲検ですから、実際は食塩水だったわけですよね。食塩水だけれども、医者自身はそれを食塩水と思って注射していない。二重盲検ですから、お医者さんは全く通常使っておる抗生物質だと思って、投薬したり注射をするわけですよね。ところが後で診療報酬の請求のときに、実はあれは二重盲検テストで食塩水なんだ、食塩水と比べてかくかくしかじかの効果があったんだと言って、本来ならば請求点数はマイナスにしなければいかぬわけでしょう。ところが、そういうような請求点数という例はない、おかしいじゃないかという趣旨の質問をして、谷本という愛知県の医師会副会長が講師に説明を求めておるわけです。
この問題については非常にやりとりがあったようでありますけれども、保険庁で、一体二重盲検の臨床実験の保険点数というのはどういう形になっておるのか、これはおわかりの範囲で結構ですから、お知らせ願いたいと思うのです。
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○中野(徹)政府委員 先生御指摘のケースにつきましては、この検査は意識障害治療剤のケースだと思いますが、私どもの承知している範囲内においては、保険請求上は両方とも無料になっておるようでございます。なお正確に調査をいたしまして、御報告をいたしたいと思います。
ただ、現実の問題といたしまして、最近の例としましては、コントロール、つまり対象群としましては、単なるプラセポではなくていわゆるアクティブプラセポと言いまして、要するにすでに有用性が
確立されている薬を使うケースの方が多いというように承知しております。そういうダブルブラインドの対象群に使いましたものが、すでに開発されたアクティブプラセポを使う場合においては、当然保険の請求点数が可能であるというふうには考えております。
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○草川委員 いわゆる新薬の承認を求める段階におけるメーカーと薬事審議会との関係、あるいは治験というのですかいろいろなデータのつくり方、これは調べれば調べるほど複雑であり、かつまた非常にむずかしい問題があるようですね。結局、外部の素人ではわかりかねる複雑な要因があって、薬というものは認定をされていくような気がしてなりません。私は専門家ではございませんからその点についてなかなか明確な意見は言えませんけれども、実はきょう九州大学の医学部の学生の有志からある投書が来まして、いわゆる人体に対する治験に対して一件数百万円のお金がメーカーから医師、学者というよりも教授に渡っておる、しかじかかくかくという非常に長文の、どこかほかの方へも行っておると思うのですが、医師のモラルを高めるために云々とか、大学病院のあり方が云々とかいろいろ書いてあります。きょうはそのことは言いませんけれども、いわゆる治験にまつわりましてメーカーと大学の教授、学会との関係には大変なものがあるようであります。
そういうことを考えていきますと、一つ具体的な例でございますけれども、最近の話題というよりも古い問題ではございますが、制がん剤の研究状況だとか申請状況の中で、有名な丸山ワクチンの承認申請が非常におくれておるという話があります。この丸山ワクチンの申請経過あるいは審査経過は一体どういうような状況になっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
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○本橋政府委員 丸山ワクチンはがんに対する免疫療法剤と言われているものでございまして、がんのこの免疫療法につきましては橘主の要因が大きく関与することがございます。そうして、こういったようなことから、その評価方法が非常にむずかしいわけでございまして、現在、関係学会におきましても、この免疫療法によります治療剤につきましては多くの議論があるところでございます。
丸山ワクチンにつきましては、承認申請が昭和五十一年の十一月二十七日になされておりまして、有効性等についての審査が五十二年以降薬事審議会におきまして行われたわけでございます。五十三年九月の審議の段階におきまして、これまでに
提出されました資料では十分判断が得られてないということで、現在申請者におきましてさらに追加資料の収集が行われておるところでございまして、その
提出を待っているところでございます。
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○草川委員 いま専門的な用語で、宿主の要因が大きく関与する等のことからきわめてむずかしい、現在学会あたりでもいろいろな意見がある、こういうようなお話しでございます。同様な免疫療法剤として呉羽のクレスチン、いわゆるサルノコシカケという内服薬、これは一日分約四千円、非常に高価な薬価に認定されておるわけでございますが、副作用が非常に少ないというので、これもいろいろな意味での評判が非常にいいわけでございますけれども、逆に学会の方から再検討しようじゃないかという声もあるというように聞いております。あるいは中外のピシバニール、溶連菌というのですか、これは注射でございますけれども、こういうようなものも一つの免疫療法剤として片やパスをしておるわけですね。丸山さんの場合はどういうことか知りませんけれども、いろいろとマスコミの話題にもなっておりますから、どちらがどういうことかわかりませんが、何となくテンポが遅いとか、認可されるのはなかなかむずかしかろうなんという話が、巷間非常に飛んでおるわけでございます。そういうような点についてはどうお考えになられますか。
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○本橋政府委員 がんの免疫療法剤の有効無効という判断の中心のところは、腫瘍の縮小効果というところにあろうかと思うわけでございます。先生御指摘のクレスチンあるいはピシバニール等につきましては腫瘍縮小効果が見られたわけでございますが、丸山ワクチンにつきましてはまだ腫瘍縮小効果についてのデータが
提出されておらないということでございまして、現在その
提出を待っておるところでございます。
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○草川委員 大学へ私もほかの用事があって、
救急医療のことについて少し調べようと行ったのですけれども、九州、北海道、全国からすごい、とにかく一日に何百人という方々が、夜行列車に乗ったりして非常に苦労して並んでおみえになるわけですよ。そういう意味では、厚生省の方というのももう少し実態を見て、審査の促進を図らなければいかぬと思うのですよ。日本のように、どこかの大学病院だとか個人的な関係で治験の依頼をするのでなくて、国の膨大なりっぱな試験設備もあるわけですから、本来ならば逆に、そういう国民的な関心を持つようなものがあるならば、治験等の内容についても何かサポートというのですか、少しぐらい促進を図るような形をすべきじゃないだろうか、こう思うのですよ。
ですから、私は、もう一回前に戻って言うとするならば、この新薬承認の薬事審議会というものは、実際どういう形で承認をされるのか。ところが、この薬事審議会のメンバーだけでは結論がつかない場合があるというのですよ。その裏にあるところの学会の影響力が非常に強い。学会の影響力によって薬事審議会が、新薬の判断についてもいろいろなことになるということも言われておるわけですよ。極端な言い方をすると、薬事審議会と学者との間を取り持つのがメーカーの政治力だと言われておるわけですよ。メーカーの政治力によって新薬が承認をされるのかどうか。学会と審議会との間を取り持つ力がない連中は、いかにいい開発をしてもそれが承認をされぬというようなことがあるとするならば問題じゃないか、私はこう思うのですよ。そういうことについての素朴な国民の一人としての質問に対して、どうお答えになりますか。
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○本橋政府委員 ただいま先生御指摘の問題については、私どもは、薬事審議会と学会との間に製薬メーカーが介在しておって、その政治力によって云々ということにつきましては、そういうことは全くないというふうに信じております。新薬の承認に当たりましては、それを評価するに値する十分なデータが
提出されませんと審議会にかからないわけでございまして、そのデータを十分に出すということが製薬メーカーに課されました責務でございますので、中央薬事審議会の審議に当たりましては、特に厳正中立で行っていただくよう常々申し上げておるところでございます。
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○草川委員 時間が来ましたので私はやめますけれども、メーカーの方に先生の方からこういうデータを出しなさいと言って、出したらまた時代が変わった、情勢が変わったから新たにこういうものを出しなさいと、こういう繰り返しだと言うのですよ。早く言うならば、どんどん際限もなく引っ張られていくというような感じだ、こう言うわけですよ。だったら、国民的な非常に関心のある制がん剤とするならば、いまこれだけ薬害という問題もあるわけでありますから、あるいは薬というものについて国民的な関心があるわけですから、横で座っておるのではなくして、それこそ国の方で、もう少し積極的な行政的な関与をそういうところにこそすべきではないだろうか、私はこう思うところであります。
時間が来ましたので、救済基金法の内容について少し質問をしようと思ったのですが、あと七分しかありませんので、ひとつ許可法人と特殊法人の相違点について質問をしたいと思うのです。
先ほども少しあったようでございますけれども、特殊法人と許可法人の境は一体何か。当初の特殊法人ということから許可法人にならざるを得なかったのは、行政管理庁の方との関係だというような話も私は若干聞いております。許可法人ということになると、だれか手を挙げて許可をしてくださいと言わないと、許可法人にならないわけでしょう。ところが現実に、今回のこの救済法の場合に、メーカーの方からぜひこういうものをつくってくれと厚生省の方に言ってきて、許可をするようになったのか。一体その点はどうでしょうか。
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○中野(徹)政府委員 私どもは、いわゆる認可法人といわゆる政府関係機関、さらに特殊法人との区別について、その定義を申し上げる立場ではございませんが、午前中の御質問にありましたように、私どもとしましては、その公共的性格に基づき、それを遂行するに足りるだけの権限が与えられるものであれば、満足せざるを得ない立場でございます。
先ほどの発起の関係でございますが、これは業者の発起ではございません。この特殊な分野についての専門学識を有する者の発起ということでございまして、業界の発起ということではございません。
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○草川委員 最後の質問になりますが、先ほどの、前の社会党の方の質問にちょっと関連をするのですが、まだこれは修正案ができていないことで、先走った質問になって非常に申しわけございませんが、それは前の方の質問の延長ということで聞いていただきたいわけでございます。
たとえば研究会レポートの中で一万一千ですか対象者がいる、裁判をすでに行った方は約四千五百ある、その差の方はあくまで本人の申請主義だというふうに先ほどの質問の場合にお答えになったですね。その差の方々が、もしも新しい修正案が通った場合に、実際問題として救済法の適用を受けようと思うと、あくまでも本人が申請をしなければいけない。ところが、たまたま本人はスモンならスモン、あるいは何とか病なら何とか病だと自覚をしていない場合、しかし研究会の方では登録をされておる、登録をされておるというのですか、調査の対象になっておるが、たまたま本人に当事者能力がない、いろいろな複合汚染になって、極端なことを言えば精神病院に入っている場合もあるかもわからない、あるいは全く廃人のように寝たきりになっている場合があるかもわからない。そういう本人に意識がない場合にへたまたま研究会レポートの方ではその対象になっている場合に、研究会の方から、あなたは登録をされておる、調べられておるから、あなたはこういう申請ができるというようなことを通知をしてくれる親切さがあるのかないのか。そこだけひとつ質問をしたいと思います。
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○中野(徹)政府委員 先ほども御説明いたしましたように、政府のとっている方針は、訴訟上の解決としての和解ということで一貫をしておるわけでございます。
実は、研究会の件でございますが、これは学術的資料としてスモン調査研究協議会が所有しておるものでございますけれども、先生御承知のとおりに、その中には約一五%といわれる非キノホルムでスモン症状だという者も含まれていると聞いております。また、その症状が軽快化して治癒した者も含まれておるというふうに聞いております。それ以上のいわば個別のデータというのは、残念ながら当方では持ち合わせておらないわけでございます。また、これは純学術的な研究資料という了解のもとにコレクトされたものでございまして、私どもとしては残念ながらその研究会の資料そのものを活用できる立場にはございません。
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○草川委員 実は私のいまのこの発言は、患者の方々と少しお話をさせていただいて、かなり具体的な氏名だとか条件ということがわかっておるにもかかわらず、たまたま推定をする場合ですけれども、本人には当事者能力がない、申請する能力がないという場合に、一体どうしたらいいのかという訴えを私も聞いて、このような発言をしておるわけでございます。これは先の話になりますけれども、ぜひそういう患者の方々の立場に立つ行政が展開されるということを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
以上で終わります。どうもありがとうございました。
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古寺委員 きょうの午前中の質疑で大臣から、田辺、武田、チバの三社を呼んで恒久対策について指示をする旨の答弁がございましたが、その会談の模様と話の内容についてお伺いをしたいと思います。
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○橋本国務大臣 本日、ちょうど
社会労働委員会の昼の休憩時間を利しまして、日本チバガイギー、武田薬品、田辺製薬、それぞれの代表者を招きまして、恒久対策について早急に検討し、回答をもらいたいということを私の方から申しました。
御承知のように、田辺製薬がまだ和解に参加をしておりませんでした時点でありましたが、国が間に入りまして、判決派の患者の方々の代表者と製薬三社と国が、直接交渉の舞台につきましたその最初の際に、判決派の患者の方々からの恒久対策についての御要望というものは、すでに伺っておったわけでございます。ただ田辺製薬が東京地裁の和解に応じておりません段階につきましては、和解を求められた患者の方々との恒久対策についてのお話し合いが十分にできる体制になかったわけでありますが、幸いに田辺製薬も東京地裁において和解に参加をするという状態になりましたので、判決派の方々ばかりではなく、和解を求められました患者さん方の恒久対策についての御要望も含めて、製薬三社に対して、恒久対策に対する患者の要望を踏まえた検討を要請する段階が来たと判断をいたしまして、きょうその会合を持ちました。
三社側の対応としましては、まだきょう私の方からいきなりその話を出された段階でありますから、それについて具体的な回答等ができる状況ではございませんでしたが、私どもとしては六月六日前後ぐらいまでには回答をもらいたいということで、一応の時間を切って本日の会談を締めくくっております。当然三社としてもそれなりの相談をされた上で、私どもは何らかの回答がその時点で受け取れるものと考えておりますが、その時点で出てまいります回答が患者の方々の要望に完全に沿ったものであるかどうかということにつきましては、まだ何とも私が申し上げる段階ではございません。しかし、従来からの経緯を踏まえて、患者の方々の要請を踏まえて検討を要請しておりますので、それなりの回答は返ってくるであろうと私としてもいま考えておるところでございます。
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古寺委員 患者の要望に即した恒久対策が大事であるということは、いま大臣がおっしゃったわけでございますが、きょうはその点については大臣としてはどういう指示をなさったわけでございますか。
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○橋本国務大臣 むしろ、本当に昼の休憩時間を利しての話でありますから、そう長い時間をとることもできませんでしたので、従来から承っております患者の方々の要求というものに即して、恒久対策の検討を至急にされたい、そしてその結論というものを来月の六日ぐらいには厚生省に示されたいということでありまして、細かい内容については事務的に今後議論を詰めてもらおうと思っております。三社の方も、それぞれ社長さん方でありますので、余り細かいことまで十分御論議をなされる準備もあるいはなかったかもしれません。細かい問題については議論をいたしておりません。
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古寺委員 このスモンの全面解決の問題につきましては、私はやはり、製薬企業は当然でございますが、厚生大臣が全面解決に向かって真剣に取り組むという姿勢が大事であると思うのです。それが、ただいまのお話を承っておりますと、いままで苦しみを克服して、今日全面解決を待ちわびていらっしゃる患者さんの切実な気持ちを十二分にくんで、大臣がそういうような指示をしたというふうには受け取れないように私はいま感じたのでございますが、恒久対策というのは、第一義的には企業の責任かもわかりませんが、当然これは行政側にも責任があるわけでございますので、この問題を早期に解決するためには、もっと真剣な厚生大臣の取り組み方というものが現時点においては最も大事ではないか、こう考えるのですが、大臣のこの問題に取り組む決意をまずお伺いしたいと思います。
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○橋本国務大臣 ちょうど広島地裁の判決が出されました直後に、私は、全面一括解決に向けて努力をしたいということを申し上げ、その時点において、それでは全面一括解決に向けてどんな問題があるんだという御指摘を当委員会で受けましたときに、一つは田辺製薬の和解参加の問題、一つは投薬証明のない患者の方々にどう対応するかの問題、そしてもう一つは恒久対策の問題ということを申し上げました。
そして、田辺製薬の和解参加ということはようやく実現を見たわけであります。そしてまた、従来から東京地裁に、可部和解の延長線上の問題でありますので、恒久対策についてのお考えをお示しを願いたいということをお願いをしておりましたが、これは田辺製薬が和解に参加をしておらない段階では、東京地裁としてもそれについての確たる考え方をお示しになれないという状況もあったようでありますが、先般田辺製薬が東京地裁において全面的に和解に参加をいたしましたことを踏まえて、私は、投薬証明のない患者の方々に対して、可部和解の延長線上、どう対応すべきかということについての裁判所の御見解というものは、近い将来示していただけるものと考えております。
もちろん、これをちょうだいした場合に、それを実施に移していくことは当然のことであります。そして、私は、そういう意味では、やっと田辺製薬も和解に参加をした、この状況が、恒久対策について話し合いをきちんと詰めていく大事な時期であると思いまして、きょうも三社の社長さんをお招きをして、そのお願いを申し上げたわけであります。
もちろん国も広い意味において責任なしとしないことでありますので、努力をしていくことは当然でありますし、六月六日前後という時間を設定して結論を示してもらいたいと申しておりますのも、私どもとしては何とかして早く解決をいたしたいということからの要請でありますので、今後ともに努力をしてまいりたいと存じます。
同時、これはやはり本院また参議院の社労の関係の各先生方、委員の方々にも従来どおり御協力をいただきたい、側面からの御助力を賜りたいと考えておるところでございます。
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○
古寺委員 そこで、大臣に申し上げたいのですが、札幌判決ももう五月十日には出ております。こういうような情勢からいきまして、やはり全面解決へ持っていくためには、まず国が控訴を取り下げるべきじゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、大臣はこの問題についてはどういうふうにお考えですか。
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○中野(徹)政府委員 大臣の御答弁に先立ちまして、控訴問題について正確な事情を御説明しておきたいと存じます。
国は、各地裁の判決におきますところの国の民事上の責任、不法行為責任あるいは国家賠償法上訴をしているわけでございますが、いずれにせよ、全国統一した条件で、平和裏かつ円満にかつ迅速にこの問題の処理をしたいという熱意は、いささかも変わりはないわけでございます。仮に各地裁の判決を確定させるといたしますと、その金額はまずばらばらであり、かつ、一方で、この恒久対策面の問題は、判決確定によって、判決は一時金しか取れないわけでございまして、当然その付帯している、たとえば東京地裁におけるところの十万円、六万円という介護料すら取れないという事態が生じます。そのようなばらばらの判決、さらには恒久対策面の問題を含めて考えれば、私どもといたしましては、法律論といたしまして、各地裁の問題について、判決について控訴するという問題の是非よりも先に、一刻も早く全国統一的な方針によってこの事件を平和裏、円満裏に、かつ迅速に解決するという現在の政府の方針が最も正しい方針であるというふうに考えております。
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○橋本国務大臣 いま
局長から申し上げましたけれども、事、実問題として、いま
局長の申し上げましたようなポイントについては、
古寺委員にもお認めいただけると思います。ですから、私どもは、患者の救済の問題については、法律的な論争またそれぞれの判決の食い違っておる部分についての問題点とは別にして、全力を挙げて和解に努力をしておるというのが実情でございますので、そういう方向で今後も努力をしてまいりたいと思っております。
-
○
古寺委員 いまのお話を承りますと、できれば円満に和解で解決をしていきたい、こういうような厚生省の意向であるというふうに受け取ったわけでございますが、そういうような条件をつくるためには、やはり控訴を取り下げて、そして全面的な解決に持っていった方が先ほどの御答弁に沿うものと、私はこういうふうに思うのですが、いかがですか。
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○中野(徹)政府委員 仮に判決が確定いたしますと、現在の判決につきましては、先生御承知のとおりに、すべて一時金処理でございます。かつ、賠償責任が確定いたしますれば、
社会保障給付との関連も当然に生じます。このような事態は、むしろ事態の円満解決をおくらせる要因になるというふうにわれわれとしては判断をいたしておるわけでございます。
-
○
古寺委員 それでは、国が考えているスモンの恒久対策というのはどういうものでございますか。
-
○中野(徹)政府委員 恒久対策の問題につきましては、御承知のように東京地方裁判所におきますところの裁判所の勧告、仲裁的勧告でございますが、この仲裁的な和解と申しますか、それによりまして、恒久対策の問題は、民間企業の関与も含めましてその中身を詰めていくという形になっております。
国の責任に属する分野につきましては、われわれとしては、やはりスモンの治療法の
確立、あるいは患者の方々を収容するベッドの確保であるとか、さらには難病対策の一環としてのスモンの治療費の問題、はり、きゅう、マッサージ等の問題等を含めて、行政面で措置し得るものについてはわれわれなりに対処してまいったところでございます。
その他、残りましたところの問題は、和解派の方々もあるいはまた現在の時点におきましては判決派の立場に立っておる方々も、結局恒久対策の中身によりまして円満解決の機が生まれるという情勢であるというふうに、われわれ判断しておるわけでございますので、残された民間企業の参加のもとに、いかなる恒久対策を講じ得るかということが問題解決のポイントになろうか、かように考えておるわけでございます。
-
○
古寺委員 どうも私が考えるには、患者さんが国に対して要求している恒久対策というものと、厚生省の方がお話しをなさっている恒久対策というものが非常にかけ離れているというふうに感ずるのですが、どうなんですか。
-
○中野(徹)政府委員 解決のポイントになる点についての双方の認識は一致していると思います。もちろん、何と申しますか、たとえば現在判決派の立場におられる方々の御要求の恒久対策の中の健康管理対策というような問題がございますが、これについて一体どのような中身のものになるかということが一つのポイントであって、これは同様に、東京地裁の和解の場における恒久対策の中で、これに対応するものはどのように話し合われていくか、こういう二つが並行した状態にございますけれども、私としては中身は一致し得るものというふうに考えております。
-
○
古寺委員 次に移ります。
救済基金法では基金に対する国の補助は限定されているわけでございますが、国も当然応分の負担をしていかなければならないというふうに考えるわけでございます。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
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○橋本国務大臣 医薬品による副作用被害を受けられた方々の救済というものは、第一義的には製薬企業の社会的責務に基づいて行われるべきものと私どもは考えておりますが、国としても、被害者の救済の実現という国に期待される行政的な責任を果たすためには、何らかの対応が必要なことは間違いありません。
そこで私どもとしても、本制度を創設しまして、判定という高度の専門的な知識を必要とする部分についてそれを担当し、同時に、先ほども申し上げましたようにサリドマイド等の規模を一応想定しておりますが、大規模な被害の場合に国庫補助を行うなどの、国としての責任を果たす体制をとろうとしておるわけでございます。
-
○
古寺委員 次に、先ほども質問の中にございましたが、現金問屋ですね。この現金問屋から地方の自治体病院が非常に恩恵を受けている、こういうふうにお聞きしたのでございますが、現金問屋の実態というのはどういうふうになっているわけですか。
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○中野(徹)政府委員 現金問屋の実態といたしましては、業者の数としては全国に二百十五あるというふうに聞いております。この中身としましては、東京に百二十、大阪に四十、名古屋に十五、その他四十ということになっておりまして、その販売額は、これは五十二年の時点における数字でございますが、取り扱い額はその時点におきましては千二百五十億円というふうに言われておりまして、卸の総販売額に占める比率、マーケットシェアとしましては約三%というふうに言われております。この中身は、現金問屋の中の非常に大きなもの、いわゆる大手現金問屋と、さらにそこから品物が動いて
医療機関に納入されるといった感じの小型のものも全部含んだ数字でございます。普通須田町市場と言われているのが東京の現金問屋でございますし、大阪ではたしか平野町という名前を使って呼ばれておるように記憶をいたしております。
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○
古寺委員 私が質問申し上げたのは、自治体病院が非常にこの現金問屋があるために恩恵を受けている、こういうふうにお聞きしているのですが、その実態についてお伺いしたわけでございます。
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○中野(徹)政府委員 ちょっと複雑な事情になるわけでございますが、細かく説明することをお許し願いたいと思います。
大手の病院、特に大学付属病院の系列病院におきましては、先生御承知のようにブランドに執着をするという面がございます。一般的にたとえばある種の同一抗生物質でありましても、信用度の高い、いわゆるブランドイメージの高いものを指名いたしまして、これを買い入れるという傾向がございます。そういたしますと、多数銘柄がございましても、特定銘柄を指名いたしました場合には、結局のところそこに、メーカー側から見まして、そのブランドに執着する限りにおいては、供給独占状態が生ずる。したがって、それが市場の中におきましては高値を呼ぶわけでございます。ブランドに執着して、あるブランドを買い取るという場合、メーカー側あるいは卸側の価格設定については、当然供給独占になりますからやや高目に出ます。その高値を呼ぶ場合に、これが価格折衝におきまして、より低値で同一ブランドが出回っているではないかということがあれば、その価格が崩れるわけでございます。もしも現金問屋に出ております有名ブランド品が現に低値で出ておれば、その限りにおいて、大手病院といえども、そのブランド品を低く売ってくれというネゴシエーションの余地があるという状態が生じます。したがいまして、現金問屋におけるところの供給価格は、一極の高値売買に対する牽制力を持っているということは事実でございます。
そういう面が一面にございまして、同時に、現に安値で販売をrる、単にプライスリストを提示する、流すというだけでなくて、現に安値で供給するということもございまして、そういう意味において、特定ブランドに執着しながらも、いわば供給独占の状態を崩すという感じの現金問屋を利用することによって、結果的に医薬品の安値購入ができるという面が、言われるところの自治体病院がこれによって利益をしているという事柄の実態であろうかというふうに考えております。
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○
古寺委員 まあ、自治体病院というのは赤字が非常に多いわけでございますか、そういう赤字の関係でこういう現金問屋を利用しているわけでございますか。
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○中野(徹)政府委員 自治体病院の経営面で、医薬品をなるたけ安値で購入したいということがあるのは、経営上は当然の話でございまして、それが一つございます。赤字を幾らかでも少なくするためには、有名ブランドに執着をする場合、自治体病院も非常に大きい病院で、特定の大学の医学部から人が派遣されているといったようなことであれば、当然有名ブランド品を臨床医家の立場から要求されるわけでございますから、それとの兼ね合いで、そういう現金問屋の存在というようなものが、いわば高値を崩すという形のものとして評価をされているというふうに考えるわけでございます。
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○
古寺委員 そうしますと、この現金問屋というものは薬価の高騰を防ぐ、実勢価格を下げるという機能を果たしている、そういうふうにただいまのお話しから理解したのでございますが、先ほどのお話しを承っておりますと、何かにせ薬ができまして、そういう問題について
公正取引委員会と意見が食い違っているようでございますが、医薬品の仕入れ、販売先の記帳の問題でございますね。この問題については、そういうことをしますと現金問屋というものを締め出すという結果になるわけですか。どうなんでしょう。
-
○中野(徹)政府委員 現金取引というのは、私は、商慣行の一つとしては、たとえば他のフィールドでもあり得るものでございまして、私どもはその現金取引自身を否定するつもりはさらさらございません。しかしながら、現実の現金問屋のやっておられること自身の状況を見ますと、先ほどのように、もともと現金問屋というのは、その店先に運び込まれたものをキャッシュで買い取る、その出所も明らかでないというものを買い取り、かつ、その供給先も全く明確でない形で処理をしてしまうのが現金取引の実態でございますから、したがいまして、私どもは、そういう種類の流通経路が明らかでないような形の現金取引というものに問題があるというふうに考えておるわけでございます。そのようなことが横行しているところに、結局のところにせ薬というようなものが紛れ込んでまいりまして、中身も開封せずに、外見がビフラマイシンであるためにそれをキャッシュで買い取り、これをすぐ右から左に流してしまうというような商慣行が存在していること自身に、医薬品の流通にふさわしからぬものがあるということを言っているわけでございまして、私どもがその仕入れあるいは販売先の記帳というものをやらなければならないと言うことは、その薬の流通経路が確認され、そのような氏素性の知れない薬が出現することを防ぎ、かつ、流通の各段階において医薬品にふさわしい管理が行われているということを担保するために、その仕入れ先や及びその販売先の記帳をやりたい、こういう立場に立っておるわけでございます。このことは西ドイツの現行薬事法、新薬事法にも入手及びその販売先の記帳義務というものは明確に法律に定められておりまして、私どもとしては医薬品の特性上当然のことであるというふうに考えております。
-
○
古寺委員 そうしますと、
公正取引委員会は、これは現金問屋をつぶしてはいけない、こういう立場から厚生省に対して意見を申し述べているのかどうか。またこの問題については、当初は条文の中に出る予定だったようでございますが、
公正取引委員会の関係でこれは引っ込んだようでございますけれども、どういうようなことを
公正取引委員会としては厚生省に申し入れたか、その点について承りたいと思います。
-
○樋口説明員 お答えいたします。
私どもは、独占禁止法すなわち、公正かつ自由な競争を維持促進することによって、一般消費者の利益を確保し、国民経済の健全な発展を図る、そういう観点からこの問題を見ているわけでございまして、特定の業者とか利益団体とかというものを擁護したりするような気持ちは毛頭ございません。要は公正かつ自由な競争が確保されることが必要だというふうに私ども考えているわけでございます。
そういうような観点から、先生お尋ねの記帳の義務づけということを考えてみますと、製造番号ごとに仕入れ先、販売先、数量等の記帳を義務づけるということは、ただいま薬務
局長さんの方からも御説明がありましたように、医薬品については必要だという点も私ども理解できるわけでございますが、ただ一方で、記帳の義務づけによってメーカーによる販売業者に対する規制、いわゆる流通支配ということになりはしないか。そういうことになりますと、ただいま私どもが取り組んでおります流通問題、流通系列化の問題、そういうものとそごすることになるわけでございまして、独占禁止法上問題があるのではないか、そういうような立場から、厚生省御当局にわれわれの考えを申し上げているわけでございます。
したがいまして、厚生省令で記帳の義務づけを行う場合におきましても、このような私どもの考え方をできるだけ取り入れていただきまして、新医薬品とか経時変化の著しい生物学的薬剤等でありまして保健衛生上特に必要性の強いものに限って、例外的に取り上げていただくというふうにお願いしているところでございます。
-
○
古寺委員 経済優先か人間優先かというような、何か非常に違ったような御意見のように承るのですが、これは大臣はどうなんでございますか。
公正取引委員会との調整はどういうふうにおやりになるおつもりですか。
-
○橋本国務大臣 私は、どうしてもその
公正取引委員会の御主張になることが理解できないわけであります。
現金問屋さんが記帳をきちんとされて、どこに売られたかを確認することが、なぜその商行為を妨害しどうのこうのというお話につながるのか、よくわかりません。これがもう私の率直な感じであります。
同時に、私どもは、仮にもし、いま私どもが考えましたような考え方が独占禁止法にあるいは抵触したかもしれませんけれども、それでもやはり、にせものの抗生物質が出回って、その結果人命に事故を起こすような事態を招くよりは、私どもはそうした事故を防ぐ方に関心を払うのが私どもの責任だと考えております。ですから、条文上はこれを
公正取引委員会の大変強い御意見で譲ったわけでありますが、厚生省令でまとめますことまで公取の方からとやかく言われるのは大変おせっかいなことでありまして、厚生省は厚生省としての判断で必要な医薬品についてのきちんとした対応はいたしたい、そのように考えております。
-
○
古寺委員 最近五年間に製造販売が問題になって中止された医薬品には、どのくらいのものがございますか。
-
○本橋政府委員 最近五年間におきまして製造販売が中止になりました医薬品につきましては、まず再評価で製造販売が中止になったというものがございます。再評価の結果によりますものはこれまでに五年間で四百五十一品目でございまして、その品目が有用性なしという判断で製造販売が中止されております。
それから、安全性を理由といたしまして製造販売を中止いたしました医薬品といたしましては、昭和五十年の二月にジフェナミゾールというのが肝臓障害がふえているということで製造販売を中止しておりますし、また、五十年の七月にウレタンを含有しております注射剤が中止されております。また、五十年の十二月にメゲストロールというのが発ガン性が疑われるということで製造販売が中止をされております。なお、五十二年の九月におきましては、アミノピリンを含有する経口溶剤につきまして、このアミノピリンの亜硝酸によりますニトロフ化反応というものでニトロソアミンを生じまして、それが発ガン性があるという疑いがございますためにアミノピリンを削除し、または他の成分に切りかえるというような処方変更を指導しております。
-
○
古寺委員 それは商品の数にいたしますと何品目になりますか。
-
○本橋政府委員 再評価関係では四百五十一品目は変わりありませんが、安全性を理由にして製造、販売を中止いたしましたものはジフェナミゾールが一品目、ウレタンが十品目、メゲストロールが一品目で、合計十二品目でございます。
-
○
古寺委員 私は、厚生省からいままで問題になったリストをいただいたのですが、ずいぶん数が違うように思うのですが、いかがですか。資料と同じですか。
-
○本橋政府委員 これは最近五年間の数字でございます。それから再評価につきましては、四十八年以来の再評価作業を開始いたしまして公表いたしましてからの数字でございまして、四百五十一品目については変わりございません。
-
○
古寺委員 こういうふうに非常にたくさんの薬が有効性がない、あるいは安全性の問題で製造、販売が中止になっているというのな、いままでの承認とか許可の段階で十分なチェックが行われていなかった、こう言われてもこれはもうやむを得ないのじゃないかと思うのですが、厚生省はどうなんでございますか。
-
○本橋政府委員 ただいま御報告申し上げました品目につきましては、いずれも承認、許可後におきましていろいろな状況変化がございまして、製造、販売が中止されたものでございまして、承認、許可の段階でのチェックが必ずしも十分でなかったということに起因するものではないというふうに考えております。
まず第一に、医薬品再評価についての問題でございますが、これは有用性なしと判定された品目につきましては、承認、許可後に学問の進歩等に伴いまして当該医薬品にかかわります
医療上の必要性が乏しくなったとか、あるいは有用性その他の評価が変わったということによるものであります。
また、安全性を理由といたしまして製造、販売を中止いたしました品目につきましては、承認、許可後に新たに入手された副作用情報等に基づきまして、その安全性に関して新たな問題が提起されたということで、製造、販売の中止に踏み切ったわけでございます。
-
○
古寺委員 一年間に新しく承認になる新薬というのはどのぐらいあるのでございますか。
-
○本橋政府委員 平均いたしましてほぼ三十成分、品目にいたしまして約八十品目ぐらいかと思われます。
-
○
古寺委員 それを承認する場合に、薬事審議会というのは何回開いておりますか。
-
○本橋政府委員 品目によりまして薬事審議会の開催回数が違いますが、大体一品目につきまして調査会段階で五回程度、それからもちろんその上の医薬品特別部会、常任部会等がございまして、一品目当たりにつきましては平均いたしますと十回程度、その他依存性薬物調査会とか、医薬品名称調査会等がございますので、大体七、八回から十回程度というふうに理解しております。
-
○
古寺委員 私がいろいろ専門家の御意見等を総合しますと、薬事審議会において審議をする場合には、自分の関係している専門的な部分については発言ができるけれども、それ以外の問題については発言ができない。非常に薬事審議会の運営の中身が問題になっているわけでございまして、特にわが国の薬事行政をこれから進めるに当たって、せっかくこの法律の改正をやりましても、これに対応する行政の機構なりあるいは予算の裏づけなり、そういうものがないと、先ほど申し上げましたように、途中で製造、販売が問題になるというような新薬がたくさん出てくる可能性が一つはあるわけですね。
それから次に、時間の関係で申し上げますが、新薬を開発するためには、これから非常にむずかしくなってくるわけです。
そういう両面について、厚生省としてはどういうふうに対応していかれるのか、その点を承りたいと思います。
-
○中野(徹)政府委員 前段の御質問に対しましては、私どもといたしましては、中央薬事審議会の各特別部会あるいは調査会等、そこに集まられました高度の専門的な知識を持っておられる方々の御判断にまつという形でございますので、われわれといたしましては、中央薬事審議会の機能の充実強化ということ以外には、事柄の性質上なかなかむずかしい面があろうかと思うわけでございます。したがいまして、当委員会において再三お答えいたしておりますように、今後とも中央薬事審議会の機能の強化、さらにはこれに関連します薬務局側の対応姿勢の強化充実というようなことに配慮してまいりたい、かように考えております。
新薬の開発につきましては、先生御指摘のように、世界各国を通じて非常にむずかしくなってきております。特にサリドマイド事件以降、いわゆる基礎実験、さらに治験について非常に綿密なデータを要求し、それを精査して初めてこれを許可するという体制になってきたわけでございますし、特に今回の薬事法の改正案にもございますように、たとえば治験の場合に、何百例とか千例とかいったようないわゆる人体実験に相当する治験を行うわけでございますが、この副作用の発現確率からいたしますと、何万分の一というようなケースもあり得るわけでございまして、実際に新薬が開発されて市場に登場いたしましても、事後的にその薬の危険性が疑われるというふうな事態を生ずる場合もございます。したがいまして、新薬開発というものが、企業側から見て、当然営利企業が新薬開発の費用を投じまして、それに対する利益というものを追求するということには変わりはないわけでございますけれども、非常にリスキーな活動になっているということも事実でございます。
最近、成功例一件当たりにどれぐらいの費用がかかるかということがしきりに言われるわけでございますけれども、一説によれば十億と二十億の間、あるいは一件三十億というような数字もございまして、このような巨費を投じて新薬開発を行うということが、確かに非常にむずかしい事態になりつつあるということは万人の認めるところでございます。
しかしながら、一方
医療上の需要というものは一刻を争うということもございますし、先生御承知のように、各種の難病の治療薬等、患者の方々からは一刻も早く開発を望まれている薬もございます。さような医学、薬学の進歩の成果を国民
医療に反映させなければならないという緊急な要請も一方にあるわけでございまして、そのような巨費を投じた開発事業というものと、緊急な
医療上の要請というものをいかにかみ合わせていくかということは、きわめて困難な問題であり、これは先進国共通の問題だろうというふうに考えております。
-
○
古寺委員 特に限られた難病のような疾患の新薬の開発ということになりますと、メーカーは全然やりませんよ。営利が目的のメーカーですから、全然やりません。そういうような、たとえばベーチェット氏病であるとかサルコイドージスとかいろいろな難病がございますが、そういう病気の新薬を開発をするという場合に、これを企業にやれと言ったってやるわけがないわけですから、そういう巨額のいわゆる開発費を要する新薬の開発に当たっては、国が当然これに援助をするなり、国が積極的にこういうものの開発を進めていく必要がある、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 その点は先生の御指摘のとおりであろうかと存じます。特に市場性の乏しい難病対策、難病のための治療薬というようなものは、いわば巨額の開発経費を投じましてもそれから得られるところの収益が小さいというところがございまして、これはそれ相応の支援体制を国としてもしかない限り、なかなか市場性の乏しい難病治療薬は登場し得ないという点は、私どもも全くそのとおりであろうというふうに考えております。
〔
越智(伊)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そういうことから、本年度予算に、金額としては二億でございますが、新薬開発のための研究助成経費を計上いたしまして、つい最近、本年度のこの経費を投入しますところの課題を決定したわけでございますけれども、その中には、先生御指摘のような市場性の乏しい、たとえば筋ジストロフィー関係の医薬品の開発も助成をしていくということで含まれておりまして、私どもとしましては、こういう民間企業に依存してはなかなか開発しにくいけれども、国民
医療上緊急性のあるという医薬品の開発には、今後ともそのような形で開発促進の努力を続けてまいりたい、かように考えております。
-
○
古寺委員 時間がないのでこれは残念なんですが、これからいろいろ副作用の情報を集めまして、そしていわゆる第四相試験を行うようになるわけですね。これは厚生省の薬事法改正の概要の中にも書いてございますが、その第四相試験を行うに当たっては莫大な費用がかかるわけです。こういう面について、国として第四相試験なんかを進めていくのに、予算の面その他でどういうふうに対応するおつもりですか。
-
○中野(徹)政府委員 先生御承知のように、医薬品の開発過程におきましてはいわゆる基礎実験、その次に来るものがヒト試験でございます治験でございます。ヒト試験の第一相と申しますのは、結局健康人を使いまして主として安全性のチェックを行うものでございます。第二相というのは、結局フェーズ2と申しますのは、その効果、適応と考えられておりますところの患者を使いまして、その患者に対してその治験を行う。第三相が、結局一口で申せばその薬の有効性についての統計的有意差を発見するための段階でございまして、この段階でいわゆるダブルブラインドテストなども入ってくる、こういうことでございます。第三相が終了しまして、薬の有効性等につきまして統計的有意差が発見されました段階で、この新薬の製造承認が行われるわけでございまして、その後はいわば、この薬は第四相においてすでに市場に登場するわけでございます。市場に登場しました場合に、普通第四相と申しますのはその使用状況、たとえば治験では何百人あるいは千人といったようなオーダーのものが、これが万単位のいわば使用例が出てまいりまして、この第四相においては、そういう医薬品の使用の広がりの中で、それを母数といたしましていかなる副作用が発現するのかとか、あるいは有効性が確認されるのかというのが第四相、フェーズ4の段階でございます。この段階においてはすでに医薬品は市場性を帯びているわけでございまして、この段階では、この第四相でいわば第三相目に至るまでのところの開発経費を償却するということが、企業側の計算になるわけでございます。したがいまして、その第四相における市場が小さければ、要するに第三相に至るまでの開発経費が回収できないという関係から、問題が起きてくるのであるというふうにわれわれとしては理解をしているところでございます。
-
○
古寺委員 たとえば非常に慢性的な疾患、高血圧ですとか糖尿病ですとか、いろいろなものがございます。そういう十年、二十年というふうに持続して服用しなければならない、投薬しなければならない、そういう薬品があるわけでございますが、そういう薬品の第四相試験をやるということになれば、これは巨大な資金になるのですね。十年、二十年も死ぬまで飲むような薬でございますから、そういう場合にはやはり巨大な経費が要るわけでございますが、そういう面について製薬企業はこれはやれないと思うのです。製薬企業ではこれに対応できないと思うのです。そういう問題について、厚生省としてはどういうような対応をお考えになっているかということをお聞きしているわけでございます。
-
○中野(徹)政府委員 御説明をやや繰り返すことになりますが、第四相いわゆるフェーズ4と言われているものは、すでにその商品としての医薬品が広範に発売されている段階であるというふうにわれわれは理解をしておりまして、これが、確かに先生御指摘のように、非常に長期間にわたる連用によって副作用が確認されるというような薬であるといたしますと、結局第四相の時間的な経過が非常に長くなるという感じになろうかと思います。そのためには結局、非常に長期間連用した場合にどうかという結論を事前に求めるといたしますれば、その場合はたとえば二十年間にわたる実験を、ヒト試験を繰り返さない限り新薬は登場しないという結果になるわけでございまして、
医療上の緊急性というものとのいわば兼ね合いの判断の問題でございます。私どもといたしましては、第四相試験はあくまでも市場性を帯びた、開発費用を企業として回収する段階というふうに理解をしておりますので、そこに国費等を投入して第四相試験のサポートをするということは、事柄として適当ではないというふうに考えております。
-
○
古寺委員 十分に議論する時間がなくて残念でございますが、今後ひとつ検討をしていただきたいと思います。
時間の関係で農林水産省がいらしておりますのでお尋ねをいたしますが、医薬品の開発段階で動物実験が行われるわけでございます。この動物実験の適正基準という問題がいろいろ世界的に論議されているわけでございますが、動物用の医薬品について動物の健康管理、健康診断、こういう点については獣医師が責任を持ってやるべきであるというふうに考えるわけでございますが、農林水産省はどういうふうにこれをお考えになっているか、承りたいと思います。
-
○関谷説明員 お答え申し上げます。
動物用医薬品の関係につきましては、その開発等の段階におきまして、動物実験とか臨床試験とか健康検査、こういうような仕事がございまして、その面で、先生のお尋ねもございましたように、動物の疾病の診断治療の専門家でございます獣医師を活用する、これは非常に必要なことでもあり非常に望ましいことと考えておりますので、今後その開発段階の運営の仕方について、実際上の問題として具体的に検討を進めてまいりたいと考えております。
-
○
古寺委員 いま農林水産省の方は、動物用医薬品については獣医師が責任を持って動物の管理をする、こういうお話しがあったわけでございますが、医薬品について厚生省は、獣医師に対してはどういうふうなお考えをお持ちですか。
-
○本橋政府委員 医薬品の開発段階で行われます動物試験につきましては、医学、薬学あるいは獣医学、生物学、細菌学等々、多くの専門の方々の御協力によりまして、いわばチームワークによりまして行われておるわけでございまして、どのような研究分野にどのような資格の者が適任かということになりますと、現在のところ明確なルールがないわけでございます。製薬企業の研究所等におきましても、試験研究の内容と研究者の研究実績というふうなものを考慮いたしまして、ケース・バイ・ケースで試験研究の責任者が指定されているというふうに聞いております。
動物実験に従事いたします研究者の資格問題につきましては、動物試験の信頼性を高める上で非常に重要な課題であることは先生御指摘のとおりでございますが、現在検討を進めております動物試験の実施に関する基準、これはGLPと呼ばれておりますが、GLPの中でどういうふうに御指摘の問題を取り込んでいくかということを今後慎重に検討してまいりたいと考えております。
-
○
古寺委員 そういたしますと、私が申し上げているのは、動物に関しては、健康な動物なのかあるいは実験した後の動物の病変その他がどういうふうになっているかというのは、やはり獣医師でなければこれは診断がつかぬわけですね。それからまた、健康な動物が材料として必要な場合に、その健康管理にはやはり獣医師が必要なわけです。そういう面について、これから動物実験の基準をつくる上で、獣医師という立場を十分に尊重して、研究のスタッフの中に加えていく、そういう方向で検討するという意味でございますか。
-
○本橋政府委員 動物実験で使われます動物の健康管理あるいは診断等につきましては、獣医師が主要な役割りを果たしておる研究所も数多いわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、獣医師以外の者でも、職場研修その他経験を積むことによりまして、実務としてはやれるというふうな場合もかなりあると考えられますので、獣医師だけがこの試験研究の分野で動物の健康管理、診断をやるということにつきましては、今後慎重に検討してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
-
-
○森下
委員長 この際、十分間休憩いたします。
午後五時三分休憩
————◇—————
午後五時二十分
開議
-
○森下
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
和田耕作君。
-
○
和田(耕)委員 同僚委員から、いまほとんど全部の問題についての質疑があったようでございます。私は、いろいろな質疑を聞いておりましてどうしてもわからないのは、被害者の救済基金に国が基金を出す側として参加してないということなんですが、厚生大臣、これはどういう理由ですか。
-
○橋本国務大臣 参加をしておらないわけではございません。いま私どもが考えておりますのは、たとえばサリドマイドクラスの大きな被害を起こしました場合、こういうことは本当にあっては困りますけれども、そういう場合について国はその給付費を補助することができるという規定を生かして、そこに加わるということを考えております。
ただ、実はこれにはいろいろな御意見がありまして、この制度、いずれにしても世界に例のない制度でありますから、こういう制度を組み立てるまでにずいぶんいろいろなことを考えてみました。たとえば西ドイツ方式の製造物責任をとろうか、そういう場合にはどういう問題が出るかとか、あるいは給付に対して国がフラットに負担を入れる方がいいのかとか、いろいろなケースを考えてみたわけであります。
ところが、製造物責任を採用いたしますと、西独の例でもおわかりのとおりに、これは企業が全面的な責任をとるわけでありますから、国はこれに全然関与いたさないことになります。
しかし、従来医薬品による健康被害で訴訟を提起されましたものに対し、地裁段階ではありますけれども示されておりますわが国の判例の中からまいりますと、国もこれに責任がないとはとうてい言えない情勢でありまして、何らかの負担をしないというわけにはまいりません。
ところが、一方では、本院における御議論の中にもありましたけれども、営利企業である製薬メーカーがみずからの営利の追求の手段として薬を製造しているわけでありますから、それによって被害が生じた場合には、本当に会社がつぶれるまで会社に払わせろ、これは非常に乱暴な言い方でありますけれども、そういった大変強い御意見等もあるわけでありまして、私どもも本当に、どういう考え方をとれば最も適切なのか判断がつかないままに、われわれなりに、サリドマイドクラスの被害が出た場合には国もその負担をするという考え方がいいのではないだろうかといま考えているわけでありまして、実は本会議の御質問に対してお答えいたしましたときにも、私どもとしては、国会の御意見を伺い、その御審議の中において出された御意見を参酌しながら、内容を確定いたしたいということを申し上げてきたような次第であります。
-
○
和田(耕)委員 この
法律案でもたくさんの患者、被害者が出たという場合には国が出ていく、責任をとる、そうでない場合は国は知らぬ顔だということは、厚生大臣はかなり筋を通す人ですけれども、どういうふうに説明したらいいのですか。
-
○橋本国務大臣 ですから、いま申し上げましたように、一方には一つの例として、西ドイツの製造物責任による薬害の被害救済の制度がございます。ただし、これは製造物責任でありますから国は何ら関与しないという法体系であります。そして、日本の場合でもし製造物責任を採用いたしたとすれば、やはり同じような形にならざるを得ないでありましょう。また同時に、フラットに給付を入れていくということは逆に企業救済ではないかという御意見もわが国で非常に強く行われていること、これも
和田さんよく御承知のとおりであります。それだけに、私どもとしては、少なくともサリドマイドクラスという言い方を先ほど申し上げましたが、そのような大きな事故が起きたとき、それは、国がやはりある程度の給付の負担をいたしましても、国民の世論としても御納得がいただけるものではないだろうか、それは決して企業救済といったような意味合いからではなく、医薬品による健康被害を受けられた患者の救済という観点から見て至当ではないかということで、こういう判断をしたということであります。
-
○
和田(耕)委員 いま大臣のおっしゃる点は、現行法でも、いまの地裁段階の四つの判決では国の責任を認めておるわけですね。それに不服だから国は控訴しているということなんですけれども、現行法の字句の解釈で国の責任がないから控訴するということじゃなくて、本質的に見て国は薬の問題については責任があるとして、現行法を責任のある方向に改正して、そして国が堂々と責任をとるようなことがなぜできないだろうか。お金がかかれば大蔵省へ堂々と要求すればいいじゃないですか。それはいかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 国の製造承認に伴う責任がいかなるものであるかという法律上の問題点につきましては、私どもといたしましては、国家賠償法上のあるいは民事上の責任はあり得ないという前提で、控訴をいたしておるわけでございます。
しかしながら、それと別に、医薬品の特殊性に即しまして副作用被害の救済を図るべき、いわば社会的あるいは行政上の責務があるというふうに判断いたしておるわけでありまして、そのような趣旨から、スモンあるいはサリドマイド等の和解も行われたというふうに理解をいたしております。
一方、西ドイツの例につきまして大臣から御説明があったわけでございますが、諸外国のきわめて先進的な薬事法規をすでに
制定し実施しております国におきましても、たとえば予防接種事故等の例を除いては、国がこの種のものに金を出しているという例は一つの国もございません。ですから、私どもは、原則的にいわば営利企業としての責任に属すべきものと考えるわけでございます。
しかしながら、それがサリドマイドとかスモンのように非常に大きな被害が発生した場合には、当然そのようなものの事件の解決に、いわば国の行政上の責任という観点からしまして、その資金の一部を国が分担するということは、世論的にも納得されるところではないかというふうに考えておるわけでございます。
繰り返しになるようでございますが、この種のものに安易に国民の税金を投入すべきでないという判断が一方にあるわけでございまして、その点の判断のむずかしさにつきましては、再三大臣が当委員会において申し述べておるとおりでございます。
-
○
和田(耕)委員 そのスモンの裁判の判決でも、たくさんの患者が出ているから国は責任があるとは言ってない。そうでしょう。薬の管理の責任者である国に対して責任を求めている。たくさん患者がおるから責任がある、たくさん患者がないから責任はないというふうなことじゃないでしょう、あの判決は。
-
○中野(徹)政府委員 判決はそのとおりでございますが、その法律判断について国が不服があるがために、控訴しておるわけでございます。
-
○
和田(耕)委員 それでは、もっと上級審に行って、最高裁でいよいよ確定した場合はどういうことをやるのですか。
-
○中野(徹)政府委員 地裁段階のその判決につきましては、先生御承知のように、代表的な東京地裁における判決は、国の現行薬事法上の賠償責任はないという判断が一つございまして、しかるに四十二年の行政通達によって薬事法が変質したことによって、国の三分の一の限定責任が生じたという判決が出ているわけでございます。私どもといたしましては、行政通達によって国の法律上の責任が変更されるというようなことはあり得ないという判断から、その東京地裁の判決に対しましても控訴をしているわけでございまして、そのような地裁における判決そのものも、代表的な東京地裁における判断すら違っているという点をよく御勘案願いたいと思います。
-
○
和田(耕)委員 それでは、この問題と関連してキノホルムの問題を考えた場合に、これをごく適量使えば薬になるけれども、過剰投与するとスモンのような被害者が出る、こういう場合は医者にかなり大きな責任があるというふうにみなされるわけだけれども、厚生省として医者の責任をどういうふうにお考えなんですか。
-
○中野(徹)政府委員 現在まで出ておりますところの判決については、医師の責任を問うた訴えがないわけでございます。
過剰投与云々といういま御指摘がございましたが、精密に資料等を見てみますと、実は少量でも発病している、少量の短期投与でも発病しているというケースがございます。諸外国におけるスモンの発生状況につきましては幾つかの数字がございますが、私どもの承知しておりますのは、ある情報によりますと約二百例、先ほどの委員会における御発言では、国際的な例は八十例とか九十例とか御発言がございましたが、そのような意味におきまして、スモンというものについてのいわば発生機序自身につきましてはいまだ不明な点があるように考えます。
しかし、国としては、スモン研究調査協議会の結論に従いまして、わが国に多発したスモンにつきましては、キノホルムに起因して発生したものだという見解を採用しているわけでございます。しかし、諸外国との比較においてもいろいろな問題があり、特に短期少量の投与でも発症しているという事実がございまして、そのこととの関連から、医師の責任論については軽々には判断ができないところではないかというふうに考えております。
-
○
和田(耕)委員 いまの御答弁で満足するわけではむろんありませんけれども、私どもが常識的に考えた場合に、このスモンの場合はやはり多量投与という結果が一番多いというようなことを考えて、しかしお医者さんにこの責任をとらすということは、他の診療意欲を減殺するとか、あるいはお医者さんとしてはそこまで責任がとり切れないとか、いろいろな問題がある。そういうことが今後の国民の
医療行為についてのマイナスがあるという意味で、そういう問題についてお医者さんに責任をとらしちゃいけないという、十分これは成り立つ意見ですね。そういうふうな場合に、それじゃ、お医者さんが当然負うべき責任があるのに、しかもお医者さんに責任を負わすのは適当でないという結論に達した場合に、一体だれがこの責任をとるのか。そういうものもこういう薬害の問題については国が責任をとるべきだと私は思うのですけれども、いかがでしょうね。
-
○中野(徹)政府委員 医師に仮に過剰投与なりたとえば薬の誤用ということがありまして、ただしその責任を問うことが適当でないから医師の責任を免責にするという考え方はわれわれは持っておりません。やはりあくまでも、その責任の所在というものは責任をとるべき者がとるという話でありまして、
医療の実態から考えて医師に責任を負わせるべきでないというふうな発想は持っておりませんが、結局のところ、大臣の御発言にもありましたように、事柄は自由市場の中における営利企業が行っているところの、それによって生産される薬でございます。われわれの考え方といたしましては、第一次的には、やはり営利企業としてその事柄を行う以上、その営利企業のリスクにおいてこの場合に処理しようというのがわれわれの発想法でございます。
しかし、その際に無過失責任まで負わせるかどうか、製造物責任を負わせるかどうかという問題は、別途に一つの議論としてあろうと思われます。
しかもそれが非常に多発して大きな被害が生じ、たとえばその被害そのものにつきまして、これが非常に規模が大きいために行政的にも社会的にも放置し得ないという場合に、国民の税金をもってこれをサポートするということは世論の納得の得られるところではないかという観点から、従前サリドマイド、スモンについては国が応分の分担をして事柄を解決したということでございまして、営利的な私企業の行う医薬品の生産についての社会的責任は、やはり第一次的には製薬企業にあるものというふうに理解をいたしております。
-
○
和田(耕)委員 その営利企業という問題が出れば、たとえばスモンの問題で田辺が負担能力はないというか少ない、武田は相当負担能力はある。その場合に、田辺の負担は、能力がないからその少ない分だけは国が負担するよりしようがないという議論になりますか。
-
○中野(徹)政府委員 私どもは、私企業の負担能力に限界がある場合にどう対処するかということの議論は、現在いたしておりません。これについてはいろいろな議論があり得るわけでございまして、たとえば非常に政策的な観点から、それに対してどういうサポートをするかというような問題は別途の問題として判断すべきものであって、原則論としては、営利企業たる私企業が第一次的責任を負うべきものであるというのがわれわれの立場でございます。
-
○
和田(耕)委員 そういういろいろ理屈をおっしゃっておられるけれども、結局、薬のメーカーが負担すべきものだという判断からすると、きわめて不公正な一つの結果も出てくるわけですね。負担能力のある薬屋の出した被害は十分薬屋がやるけれども、負担能力がない薬屋が出した被害に対しては、ほとんど薬屋としてはお手上げで、これはもう九州のあの事件でもそうですけれども、そういうふうな問題を考えましても、やはり裁判でもその示唆があるように、国の責任というものをこの際もっと堂々と言った方がいいと思うけれども、堂々と認めるという態勢が必要ではないか。またその十分な理由があるのじゃないか。つまり、薬というのは国が調べて、売る許可をするのですから、それだけだって責任を伴うわけだ。他のいろいろなものとは違う。薬自身の持っている性能で国民の健康が害されるわけですから、他の幾つかの段階を経て被害が起こるわけではないのですから、薬自身の持っている性質によって被害が出る。その薬の販売許可を国がやるというわけですから、その面だけでも国に責任があると見なければならない。それに加えて、いま申し上げたメーカーの問題もあるし、あるいはお医者さんの問題もある。この問題に関連して、負担すべき人では負担し切れない人がおる。こういう問題だって、結局負担し切れないから被害者に対する救済ができないということはできないから、これは当然国が見るべきで、それは近代国家としての役割りだ。そういう問題をもっと前向きに考えたらどうだろうか。私は初めからこの問題はそういうふうに思う。これは厚生省のあなた方の責任とかいうことを言っているわけじゃない。近代国家として、また今後いつどういうものができるかわからないこの薬の問題についての責任を明らかにしないと、ちょうどスモンという事件が起こってきているこの機会に、この責任を明らかにしないと、今後の問題としても私は公正な措置はできないのじゃないかという感じがする。いままでの担当者のあなた方の責任ということは一つも言っておるわけじゃない。あなた方は当然やるべきことをやっている。したがって、いまの法律であれば、いろいろ被害者ができればその法律を改正しなければならないのじゃないか。国の責任というものを認めた上で、改正をした方がいいのじゃないか。その方が、より厚生行政の責任を持つ人の責任を果たすゆえんではないか。こういう議論をしているわけなんです。大臣、一言ひとつお願いします。
-
○橋本国務大臣 ですから、私は
和田さんのようなお考えが成り立ち得ないと申しているわけでは決してありません。ただ、同時に、本日のこの
社会労働委員会におきましても、いわゆる原因者負担、PPPを主張された委員の方もございます。そして現実に、かつてサリドマイド事件のときに特別立法をもって西ドイツで患者救済に踏み切った例が一つございますが、その西ドイツも含めていかなる国も、こうした問題に国費を投入している例はないのです。これはやはりメーカーというものがみずから生産を考え、そしてそれを発売することによって利潤を追求するという性格を持っている以上、国費をもって補てんすべきではないというのが、他の国々の例を見ましても世界的に一般的な考え方ではないかと思います。
ただ、いま各地裁の判例等についてもお触れになりましたけれども、日本の場合にその判断がいろいろ違う部分があるわけでありますから、国は地裁段階において現在上告をし、その法的解釈については争っておりますけれども、患者救済という問題については私ども自身も一日も早くそれに対応しなければならぬと考えておるわけでありまして、同じような大きな事件が起きました場合には、国費を投入することも国民世論としてお許しがいただけるであろう、PPPをおっしゃる方でも御了解がいただけるのではないだろうかという判断を私はしておるわけであります。
-
○
和田(耕)委員 私はどうしてもそういう議論に納得できないし、第一、おやりになる厚生大臣としても変だなと思っておるに違いないと私は思うのだけれども、これはこれ以上主張しましてもあれですけれども、いずれにしても十分な補償が必要な性質のものですね。したがって、多発したときには国がそれに応じた補助をするということに法律はなっているわけですね。
そこで、これはスモンの多くの患者からも出ていることですけれども、大体法律は決まって施行されたときから実行されるわけで、既往にさかのぼるということはなかなかむずかしいことはわかるのですけれども、このような種類の法律は当然既往にさかのぼるという考え方がないと、法に求められる本当の意味の公正さということが果たされないのではないか、こういうように思うのですけれども、この問題はどうでしょうか。
-
○橋本国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは立法過程においていろいろな角度から検討いたしたわけでありますが、最終的に、医薬品というものはどれだけの注意を払いましても何らかの副作用は持っておるわけでありますから、問題の起こる可能性を秘めているそれを、医薬品の製造に従事する全業者がそれぞれの立場から補完する、いわば相互の保険のような形態で、民事の訴訟上の問題等とは切り離して、患者救済というポイントにしぼった法体系を考えたわけでございます。
いま御指摘のように、こうした制度でありますから遡及をしないというのが通例の姿でありまして、西独の場合でも救済割愛の遡及はいたしておりません。
ただ、こういう制度をつくります理由は、それこそ医薬品の副作用によって健康に被害を受けられた方々の救済のためにつくるものでありますから、私どもは私どもなりにベストを尽くしてまとめた案ではありますけれども、その内容に固執するつもりはありません。与野党の御意見の一致があれば、それに対して異議を申し述べることはいたしませんということを何度も答弁を申し上げておるわけでありまして、国会の御意思が決定いたしました段階において、それに私どもは対応していきたい、そのように考えております。
-
○
和田(耕)委員 いまの質疑の中でも出ておりますが、この種の問題は、外国でこうやっているということは余り説得力にならない。これはこれからずっと起こってくる問題なんですから、ドイツでこういうことをやったから日本もこうだという、これは重要な参考ではありますけれども、余りこういうことを念頭に置かないように、今後どんどん、いつ起こってくるかわからないような新しい問題なんですから、この問題については、ぜひとも実情に応じた弾力性のある態度をとっていただきたいと思います。スモンの既往の問題については了解いたします。
それから、スモン患者の中に、基金制度で救済される人の認定の問題について不安を持っておるようですけれども、これは認定はどのようにするのですか。
-
○中野(徹)政府委員 スモン患者の認定問題につきましては、国の統一方針といたしまして、すでに十五名の神経内科の専門家を主としますところの鑑定団が編成されておりますので、その鑑定を迅速に行い、スモン患者の方々の鑑定を迅速化することによりまして、救済を一刻も早く行うというのが政府の基本的な姿勢でございます。
-
○
和田(耕)委員 これはお金との見合いで、現実に適用されるべき人がしぼられて少なくなるようなことのないような配慮、実際被害を受けた人に対しては当然この基金でめんどうを見ていくという心構えで、この法律の運用をぜひともしてもらいたいと思います。
それから、もう時間もなくなりましたので、先ほど公明党の同僚委員から質問のありました現金問屋の問題ですけれども、これは率直に言って、現実にある現金問屋は、悪い役割りを果たすと思われる面もありますけれども、現在の全体の総合的なシステムの中では価格の硬直性をカバーするような、あるいは公取が心配しているような公正な、自由な流通という面から見た価格に対するメリットも確かにあると言われておることですから、この問題に対して大臣は、この法律をどのような含みのある運用をされようとしているのか、そのお気持ちだけをひとつ。
-
○橋本国務大臣 先ほどからのやりとりをお聞きいただいておりまして、基本的な問題点は、公取側もお話しになりましたし、私どもなりに考え方も申しました。私は、それこそ自由主義を標榜する政党の一員として国会に議席を得、現に内閣に列しているわけでありますから、自由経済の原則を何ら無視しようとは考えておりません。その限りにおいて、私は現金問屋について云々というような考え方を持っておるものではないことを最初に申し上げておきたいと思います。
ただ現実に、先ほどからも幾つかのケースを申し上げましたけれども、現金問屋の性格上店頭で買い付け、店頭で流される、そしてそれが、流れていく過程でどこへどういうふうに売られていっているのか捕捉ができない、そのために抗生物質等のにせ薬が発見をされまして、それこそ警察当局の協力によって相当数の逮捕者を出すような事態になりましても、一体どれだけの量がどういうかっこうでどこへ流されたのか判明をしない、回収ができないというようなケースが現実にあったわけであります。ですから私どもは、その流れを、どこから買われたかそしてどこへ売られたかということだけは、少なくともきちんと記帳をしておいていただくことによって、もしそういう事態が起きたときに回収等が確実に行なえる状態を担保いたしたい、これを本当に強く願っておるわけであります。
先刻申し上げました一例のように、四千五百万錠に余る薬が売られ、そしてその関係して売られた先は十一の都府県にまたがる、しかも回収できたものは三百万錠余りという情勢では、本当に国民の健康の上の問題でありますだけに、また生命にも関係する問題でありますだけに、私どもはやはりこうした状態は放置はできない。問題が発見をされた場合きちっと回収のできる体制はつくっておかなければならない、その流れが確認できるような状態をつくっておかなければならないということでありまして、そういう観点から今後もこの問題には当たってまいりたい、そのように思います。
-
○
和田(耕)委員 その問題で、公取の方が見えていますね。
現在の薬の値段を構成する場合のいわゆる現金問屋というものが果たしている役割りというのか、それをどういうふうに公取は見ておられるのか。
-
○樋口説明員 お答えいたします。
私ども、薬品の流通に関しまして必ずしも十分実態を把握しているわけではございません。一応厚生省御当局からいろいろそういう辺の事情を伺っておりますけれども、必ずしも先生にお答えできるほどの実態は承知してないということで、御了承いただければと思います。
-
○
和田(耕)委員 再販制度というのは、いま薬に対してはどういうふうに適用されていますか。
-
○樋口説明員 お答えいたします。
再販制度、再販売価格維持行為は、独占禁止法では原則として禁止されております。ただ、独占禁止法第二十四条の二の規定に基づきまして
公正取引委員会が指定した商品、それからこの二十四条の二で規定されております、法定再販と言っておりますが、著作物につきましては、再販売価格維持行為が認められております。現在
公正取引委員会で指定しております商品には、大きく分けますと化粧品と医薬品がございます。
-
○
和田(耕)委員 この問題は、幾つかの病院の方からかなり真剣な陳情が私どものところにも来ておりまして、そしてまた現金問屋と言われる方からもいろいろと陳情が来ておるわけで、大臣がおっしゃるように、いろんな事故が起こったときにその薬がいつどこでどうして売られておるかという実態を調べる必要があるということはわかるのですけれども、そのことを調べることによって、いろんな理由でできておる現金問屋の営業の仕方そのものが困難になる、ほとんどできなくなるということがあるとするなれば、こういう問題を大臣はどういうようにお考えになっているか。
-
○橋本国務大臣 ですから、私は現金問屋さんが現金問屋さんとしての営業をなさることを悪いと一つも言っておりません。ただ、先ほどもお話がございましたけれども、
公正取引委員会の立場とすれば独占禁止法の守護者としての権威を持ってお話しになっておられますけれども、私どもの立場からいけば医薬品というものの持つ人間の生命、健康に対する役割りというものに着目して行政を行うわけでありますから、私は記帳義務を課していくことが
公正取引委員会のお話しのように独禁法問題にまで絡むようなものだとは決して考えておりませんけれども、仮に人間の生命、健康の保持と独占禁止法が抵触する場合があるとすれば、厚生省の立場としてはためらいなく人間の生命、健康の保持に必要な措置の方を選ぶということであります。
-
○
和田(耕)委員 現実に、現金問屋の現在ある状態から薬害が発生したとかいう事実は多数ありますか。
-
○橋本国務大臣 先ほど例で申し上げました抗生物質の場合でありましても、それがわからぬわけであります。問題が起きたかどうか自体がわからぬわけであります。何十万錠、何百万錠、何千万錠つくられたのかわからない。回収できたものは七万錠。そしてどことどこに売られたかすらもわからない。これが実態で、私どもの一番心配しておる点であります。
-
○
和田(耕)委員 この問題は、正体がよくわからぬというのだからこれ以上質問することはやめますけれども、しかし現実にいろいろ問題があるわけで、余り急激な変化が起こるようなことは避けた方がいいんではないかというふうに思います。特に必要な薬等についてはそういう配慮が必要でしょうけれども、現に現金問屋があるからといってたくさんの生命に不安を与えるような事故がたくさん起こっているかといえば、そう起こっているわけではない。厚生大臣は首をかしげておるけれども、しかし価格に対してはいい影響を与えておるということであるなれば、その問題については妥当な配慮をひとつ……。
これはどういうものを記帳さすかということは、決めるのは政令で決めるのですね。
-
○中野(徹)政府委員 厚生省令でございます。
-
○
和田(耕)委員 そういう問題として、後からいろいろと御意見を申し上げたいと思います。
この際、薬に関係した問題でぜひともこの国会でも発言をしておきたいことが一つあるのです。医薬分業の問題ですね。医薬分業の問題というのは、もうこれは二十年にわたっていろんなことが言われておる。そして、こういう薬の販売等の問題についても関係のあることなんですが、厚生省はもう大分前から積極的に医薬分業を進めていこうというたてまえをとっている。実際の対策は余りやっているように見えないけれども、たてまえはそういうたてまえをとっている。この際に、私どもこれはずっと前から医薬分業を進めていくための具体的な段取りを考えようじゃないかということを言っているのですが、医薬分業を推進していくための関係者の間での協議会のようなものを、厚生大臣ひとつ仲介をしていただいて、何かそういう具体的に進めていく機構を考えないと、たてまえとしてこれはいいことだ、やらなければいかぬということを言うことだけでは一向進まない。また、そういう場合のたとえば薬局等の処置も、あるいは国民に対するPRも、あるいはお医者さんのこれに対する考え方も一向進まない。ただ言うだけでとまっているということですけれども、大臣、ひとつ具体的に前向きにそういうシステムを考える段階だと私は思うのですけれども、いかがでしょうね。端的に御質問申し上げておるのです。
-
○中野(徹)政府委員 医薬分業を推進すべきだという点につきましては、私どもも全く同感でございます。
先生御承知のとおりに、医薬分業の進展を図るための難点と申しますか、それは幾つかございますが、一つは、たとえばある地域におきまして医師が処方せん発行に踏み切ったといたします。そうしますと、その地域にはほかにお医者さんが何軒かおられる。あそこのお医者さんに行くと、処方せんを出されて薬局に行かなければならぬ。しかし、別のお医者さんに行けば、処方せんが出ないですぐお薬がもらえるというふうなことがございますと、患者の心理といたしまして、長い伝統がございますから、結局そこの処方せんを出さないつまり自家調剤をされる診療所の方についつい足が向くというふうなことがございまして、やはり医薬分業体制というものを推進しますためには、患者側の条件が非常に大きく響くわけでございます。したがって、地域ぐるみでこの分業体制というものを推進しませんと、これは抜け駆けで分業をすれば、その分業した医師の側が経済的なダメージを受けるというふうな現象があるわけでございます。
そういう意味におきまして、私どもは、地域の医師会と地域の薬剤師会の密接な協力のもとに、この事柄を推進するのが最も適切な方法であると考えておるわけでございまして、その意味におきまして、地域ぐるみの、いわば県レベルあるいは市町村レベルの薬剤師会及び医師会の徹底した話し合いというようなものが、結局問題のかぎを握っておるのではなかろうかというふうに思っております。
もちろん、厚生省といたしましては従前から、たとえば保険
医療の側面におきましても、処方せんの発行の価格を昭和四十九年に一挙に五倍に引き上げる等、経済的な側面においては、厚生省としても分業推進のために相当手は打ってきているわけでございます。
その結果といたしまして、四十九年十月に
医療保険の側で打ちました手によりまして、現在では、処方せんの発行枚数というのは、その当時のたしか四倍か五倍くらいになっているはずでございます。しかし、まだ比率といたしましては微々たるものでございまして、急速に分業比率というのは上昇しつつはございますが、まだそれは数%、正確に申せば三・何%というような段階あるいは四%程度の段階にとどまっております。、
しかし、急速に処方せん発行が伸びていることは事実でございまして、このような機運を進めていくためには、やはり薬剤師会にもこれを受けて立つところの気力と申しますか、それなりの準備が必要でございますし、その地域における医師会との徹底した話し合い、それによる分業体制の
確立ということが、結局実際上はかぎを握っているのではなかろうかというふうに考えております。
そこで、われわれなりに、薬剤師会側の努力に対しまして、たとえば調剤センターの設置等の予算も確保し、また、分業推進のための指導者講習等を行う等の方法によりまして万全の努力を図ってまいる、かように考えております。
-
○
和田(耕)委員 結局、薬務
局長のおっしゃることはいままでの言っていることとほとんど前進してない。いままで言っているとおりのことを言っておられるわけですけれども、これは実際は法律の趣旨を実行することなんです。だから、これを厚生省がやらないというのは、やっている、やっている、やらなければならないと言うだけで、実際にはやらないということになると法律違反なんです。法律の趣旨はそうなんですから。これはひとつ、そういう法律の趣旨に沿って、それをやれ、やれという指令とかそういうことだけじゃなくて、段取りを考えてやる必要がある。こういうことをやりますと、いまの健康保険法の改正の問題だってもっと前向きな議論ができるのです。こういうことをやらないものだから、薬代の半額負担なんということが出てくる。そういう問題もひとつお考えになって、薬にまつわる問題は、ここで幾つかの大事な問題が出ているのですけれども、厚生省はこういう面についても法律を実行する責任があるのです。しかも医薬分業というのは法律で決めていることなんですから、これを現実にサボっておるのですから、これはひとつ大臣として、このあたりから実行してもらわなければならぬ。
いまの地域のお医者さんなり薬屋さんなりのいろいろな問題を、私も承知しております。いままで厚生省もできるだけ推進しようという姿勢を持っていることも、承知いたしております。しかし、それではほとんど効果を得ていない。いま三%とかいう数字があったのですけれども、内容的に見れば、なかなかその三%の数字自体の示すような成果にもなっていない。そういう問題について、厚生省はもっともっと積極的な姿勢をとるべきだと思う。そのために一つの医薬分業推進協議会のような、何かそういうふうなシステムをつくることをぜひとも検討してもらいたい。少なくとも検討しますくらいの御答弁はあってもしかるべきだ。この法律はやるべきなんです。
-
○橋本国務大臣
和田さんのお住まいになっておられる地域と私の郷里と、大分生活条件その他も違うわけでありますが、私も自分の郷里で、地域のお医者さんたちと地域の薬剤師さんたちとの話し合いをさせてみて、分業が完全にできないかどうか、ずいぶんやってみたことがあります。ところが結局出てきますのが、一つは、今度は薬局の方で、これだけの数をそろえておかないと対応ができないのだとすれば、とてもそれだけの医薬品の備蓄を自分たちでやるのは大変だというような見解なんですね。これは私どもとしては大変困ったことでありまして、調剤センター等をつくりながら、一つ一つの薬局が全部の医薬品を抱えてなくてもいいような体制をつくるように、私ども努力をしてきているわけであります。ところが、それにしましても、もっとたくさん御要望があるかと思っておりましたのが、予算の段階になりまして、たとえば実際五十四年度に幾つつくれるといって詰めていきますと、だんだん関係者の中から自信のないお答えが返ってくる。最終的に十カ所あれば、十カ所はできますというような話になってしまう。そうした点が、先ほど
局長の申した気力といいますか、取り組みの姿勢というような問題点にもなってくるわけであります。
ただ、そうした実態も御承知の上で御提案になっておることでありますから、協議会といった組織が果たして分業を推進する上で有効に働くべきものかどうか。いま私もちょっととっさに判断しかねますけれども、ひとつ研究はしてみたい、そのように思います。
-
○
和田(耕)委員 これは日本医師会の武見さんも、私ども会うたびに、医薬分業は必要だ、自分はやっているのだ、これはやっていかなければいけない、こう言っているのですよ。地方の医師会、私のところの選挙区の医師会でも、私は率直にお医者さんにも言うのですけれども、約三割くらいの人はその方がいい、こう言っている。そういう従来のいろいろなしきたりもありますから、なかなか一律にはいかぬと思いますけれども、ただこの法律を実行する一つの姿勢なんですから、ぜひともひとつ研究していただきたいし、研究の域を超えて実施する態勢で検討してもらいたい、私はそう思います。薬務
局長、いかがですか。
-
○中野(徹)政府委員 大臣の御答弁のとおりでございますが、大臣の御趣旨に沿って努力をいたしたいと存じます。
-
-
-
○
浦井委員 まず最初に、スモン被害者の救済問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、先ほどからの質疑の中で大臣並びに薬務
局長は、田辺が和解という線を出してきたので研究会レポートの既発生の部分については現実性を帯びてきた、こういうふうに言われたわけですね。それで私も、当然スモンを初めとした既発生の部分についてはこの基金法の中で救済の対象とすべきだというふうに考えて主張をするわけでありますけれども、修正ということになると具体的には議会の問題でこれから現実になるわけですが、たとえば附則の修正をやって既発生を含める、そして救済給付の内容についてはそれぞれの当事者間の合意に基づいて必要な部分は政治処理で定める、そういうふうなことの趣旨で修正をすれば、行政府としてはほぼ満足できるわけですか。
-
○橋本国務大臣
浦井さん、それは御無理というものでありまして、国会がどういう修正をするか、それについて行政府は満足するかとお聞きをいただきましても、これは私どもとして答弁のできる範囲を超えております。
-
○
浦井委員 薬務
局長、大臣はそういう話でありますけれども、そういうようなことでこれは私としては考えておるわけなんですが、どうなんですか。
-
○橋本国務大臣 しかし、
局長にお聞きをいただきましても、与野党の中でどういう合意のもとにどういう修正がなされるかは挙げて院の話でありまして、それを
浦井さんは、こういう修正を考えておる、それについてどうかと言われましても、それは各党それぞれにいろいろな御見解をお持ちの中で、それがこれから話し合われていくという中で、ちょっとお答えをさせるというわけには私はいかぬと思うのです。
-
○
浦井委員 それなら主張をしておきますけれども、スモン被害者の恒久的な救済策についてそれぞれまだ詰まっておらない部分もあるだろうと思うのですが、大臣でも薬務
局長でも結構でありますけれども、いまの時点の恒久救済対策についての考え方なり、あるいはその内容なり、これから具体的な手順をどうやっていこうとしておられるのか、ちょっと聞いておきたい。
-
○中野(徹)政府委員 恒久対策につきましては、まず、これは周知の事実でございますけれども、東京地裁民事三十四部における仲裁的和解という形で、和解金の支払いがすでに行われ、国といたしまして、この和解した者の数はすでに千三百名を超えているわけでございますが、田辺が和解に参加をしましたことによりまして、結局被告会社三社の姿勢がこの点においては一致したわけでございまして、したがって、東京地裁における和解の場におきましては、恒久対策の協議が具体的に実り得る条件が整備されたという感じを持っております。
一方におきまして、現在、判決派の立場におられる患者の方々から、各種の恒久対策要求が出てまいっておるわけでございます。私といたしましては、その恒久対策問題につきましては、この東京地裁の和解の場における恒久対策の内容と、いわゆる判決派の立場に立っておられる方々の恒久対策の要求とを同時に満足できる条件が出れば、これは全国一括解決の路線が軌道に乗り得るというふうに解釈をいたしておるわけでございまして、そのように事態を評価しておるわけでございます。
この機運につきましては、すでに大臣が当委員会において何度かにわたって御発言をされておるとおりであります。
-
○
浦井委員 先ほど大臣が言われた、六月六日ぐらいにはひとつ骨子をつくり上げたい、こういうことであったわけでありますけれども、たとえばス全協あるいは実行委員会の皆さん方が、一時金のほかにも介護手当であるとかあるいは健康管理手当であるとかその他の要求をされておるわけでありますが、こういうものも当然国として責任を持って取り込んでいくつもりだというふうに理解してよろしいですか。
-
○中野(徹)政府委員 大臣が申し上げております全国一括解決ということは、平和裏、円満な雰囲気におきまして、円満にかつ平和的にいわば話し合いをつけるということであります。この話し合いをつけるということは、当事者双方があるわけでございまして、その当事者の一方において当然ある種の御要求がある、この御要求に対していかに対応するかという、また一方の当事者の立場もございます。この両当事者の立場が要するに意見として合致する場合にのみ初めて円満解決ができるわけでございまして、私どもとしてはそのような事態に向けて万全なる努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
-
-
○中野(徹)政府委員 もちろん項目として当事者の一方の方々の御要請というものは歴然とあるわけでございまして、それを踏まえて他の当事者がどのようなお答えを出すか、そのお答えによってこの事態の円満解決を図っていきたい、こういうことでございます。
-
○
浦井委員 とにかく、被害者の皆さん方との直接交渉では、国も一方の加害者の一人でありますから、やはり誠意をもって当たるべきだというふうに私は要求をしておきたいと思うわけであります。
具体的な問題でありますが、前回の委員会の審議の中で
局長は、スモン患者の救済については年内に鑑定団などを駆使して解決をしたいというふうに言われておったのですが、きょうは基金そのものが十月の発足だというようなことでありまして、果たしてそれで年内に解決ができるのかどうか、ちょっと時間が短過ぎるのではないか。話が軌道に乗れば、むしろ基金の発足を少し早めるぐらいな努力はできないものかというふうに私は思うのですが、その点はどうですか。
-
○橋本国務大臣 いままでにもしばしばそういう御意見等もちょうだいをいたしております。私どもとしても、国会の御意見というものを尊重して対応していきたいということを申し上げてきておるわけでありますから、その辺で御了察を願いたいと思います。
-
○
浦井委員 それでは次の問題に入ります。
しばしばこの委員会でも問題になっておりまして、
局長自身も十分な認識を持っておられる投薬証明を持たない人の問題。要するに、スモンあるいはスモンの疑いとしての診断書は持っておるという人に対して、これは提訴されておる方についてでありましょうけれども、前回の委員会では、田辺が和解の線に参加をしたときに恐らく東京地裁が何らかの判断を示されるでありましょうというような言い方でありましたけれども、その何らかの判断というのは、東京地裁から何か連絡が厚生省にあったわけですか。
-
○中野(徹)政府委員 現時点においては、まだ東京地裁の感触らしきものをお示しいただいてはおりませんが、何分にも東京地裁は田辺の参加問題でいわば全精力を使われた形になっておりまして、この段階から、現在の段階では、私が先般申し上げましたように、東京地裁としては御感触を示していただけるような状況になりつつあるというふうに判断しております。
その場合に、もちろんその御判断を受けないとわれわれとしては何とも申せませんけれども、事柄に誤解のないように御説明いたしておきますが、われわれとして考えておりますのは、各種の証拠によってキノホルムの使用によるスモン患者であるということが明らかであるけれども、どのブランドを使用したかということが不明である、いわゆる投薬証明書のない方々の取り扱いについての御判断を求めているわけでございます。この場合に、当然、たとえばすでに提訴されているものだけを数えましても、関係企業としては二十社ございます。それ以外にキノホルムの販売実績を持っている会社数は百社に及びます。このような関与企業の数からいたしまして、もちろん裁判所の御感触はいかようなものであるか、これは承ってみなければわからないわけでございますけれども、この種の処理につきましては、裁判所の御感触を得た上で、民間企業も含めてどのように取り扱うかという、非常にむずかしい問題が控えておるわけでございます。しかしながら、そのむずかしい問題であるということを十分承知した上で、私どもといたしましては、国民全体の御納得のいくような解決策をぜひとも模索してまいりたい、かように考えております。
-
○
浦井委員 いまの
局長の後段の問題については後でお尋ねしたいのですが、その前に、提訴をされておられる被害者の方々は、とにもかくにも厚生省としては救済の対象にするという決意を持っておられるわけですね。
-
○中野(徹)政府委員 提訴されている方についてその全員を救済するというのは、論理的に矛盾をしているわけでございまして、私どもの申し上げているのは、提訴しておられる患者の方々について、十五人の専門的鑑定団の鑑定を経て、その鑑定結果を踏まえて円満なる解決を図りたい、かように申し上げているわけでございます。
-
○
浦井委員 そうしたら、もう一つ未提訴の膨大な方がおられるわけなんですが、前回の委員会では、
局長の答弁では、やはりそういう未提訴の方も提訴をしてもらうというようなことにしなければ救済の対象になりにくいのではないかというような御意見であったように私は記憶しておるのですが、この考え方は変わらないのか。変わらないとしたら少々酷ではないか。やはりある程度基金が窓口になって、そこで一定の手続を経て救済対象にしていくというふうな考え方はないのかどうか、ちょっと聞きます。
-
○中野(徹)政府委員 基金によりという御発言でございますが、大臣から申し上げましたように、これは当院における御判断を抜きにして、私どもとしてはこの分については発言できません。
-
○
浦井委員 そうすると、未提訴の方については、何らかの提訴なりそういうアクションをしてもらわなければということは、必ずしもそういう見解は不動のものではないわけですね。
-
○中野(徹)政府委員 現時点においては、その未提訴の方々についての発言は、状況変化が私どもにはわかりませんから何とも発言はできませんが、民間企業がその費用を出すという前提がございます。その場合には、いわば事件としての決着をつけるということが前提でございまして、当然先生御承知のように、たとえば請求権放棄とかいうふうな問題が絡まるわけでございますので、この件についての民事上の決着というものは当然前提になるかと思います。
-
○
浦井委員 先ほどの
局長の後段の問題について、時間がだんだん追ってくるので列挙をいたしますので、ひとつ答えていただきたいと思うわけです。
投薬証明のない方が救済対象になるということになれば、一体一時金というのはすべて国が負担するのか、それとも企業に負担させるのかという問題。それから、企業に負担をさせるとなると、いま
局長の言われたようにブランドが不明であるわけですから、どの企業にどういう割合で負担をさせるのかという問題。被告になっておる企業が二十社ですか、それからキノホルムという錠剤を販売しておったのが百社ですか、そういう数字をいま言われたわけですから、その関係ですね。それで企業に負担をさせるとすれば、一体その根拠というのはどういう考え方に基づいてやるのか。その辺ちょっと
局長に伺いたい。
-
○中野(徹)政府委員 これは東京地裁の御感触を得ないと、私ども軽々に発言できない問題でございます。しかしながら、大臣の御発言にもありましたように、国の姿勢は、いわば可部裁判官によりますところの仲裁的和解の論理的延長線上においてということを再三にわたって大臣は御発言されているわけでございまして、そういう前提を置いて考えますれば、国の責任は限定三分の一ということになっております。
それからブランドが特定しないものの扱いということでございますが、これも仮定のお話でございますが、本来こういう発言は差し控えるべきものと考えますけれども、あえて申せば、そのようなケースの処理の前例といたしましては、サリドマイドにおける関連四社のケースがございます。
-
○
浦井委員 それ以上余り言っても、
局長はこの席でお答えにならないだろうと思いますが。
そこで判定の問題なんです。いま政府の出されておる基金法案によると、基金が支給を決定するということになっておる。これは当然私どもはこの委員会の中で修正をして、既発生を附則でつけ加えるということを前提にして、既発生の部分についても、判定については当事者間の話し合いの中で一つの機構をつくり上げていくというふうにすべきだと思うし、これから発生するであろう薬害については、他の同僚委員からも言われておりますように、独立をした中立の機関で、基金から外して判定をやるべきだ。いままでの答弁では中央薬事審議会の判定部会というような答えが返ってきておるわけでありますけれども、私が心配するのは、これから発生する薬害について相当するだろうと思うのですけれども、基金の機構の中に評議員会というのがある。これはメーカーその他の代表ということになって、これはうわさにすぎないかもわかりませんけれども、評議員会で一定のガイドラインのようなものをつくって、そこでもう門前払いを食らわしてしまって薬害をつくらないのではないか、こういうような心配をされる向きもあるわけであります。そういう点で、そういうことにはならないだろうとは思うのですけれども、その点の確認をとっておきたいことと、それからもう一つは要望でありますけれども、公正、独立の機関で判定をするようにすべきだというように私は思うのですが、それはどうですか。
-
○中野(徹)政府委員 これは先ほどの他の委員からの御質問にもあったわけでございますが、評議員会の権能は、私どもの理解といたしましては、剤型あるいはその薬の特殊性に基づくところの徴収金のいわば割りつけといったようなものを、主たる審議事項にすることになると思うわけでございます。評議員会がガイドラインをつくるというようなことは、それは恐らく、そういう剤型とか薬の特殊性に応じた、いわば費用の分担比率についてのルールみたいなものは、当然その評議員会でおつくりになるだろうと思いますが、要するこ医学的、薬学的判定を要する問題、つまり特定医薬品との一般因果関係、さらにその個別因果関係、症度の判定等は、一切中央薬事審議会における判定部会の判定によるものでございまして、その評議員会がガイドラインをつくってはねるなどということは、およそあり得ないことだと私は考えております。
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○
浦井委員 およそあり得ないことが往々にしてあり得るような形に転化をするわけで、その点ははっきりとさせておいていただきたいと思うわけです。
それからもう一つ、中央薬事審議会の判定部会、これは医学、薬学の専門家その他ということになっておるのですが、また同僚委員からの質問もありましたけれども、専門の法律家なども当然含めるわけですね、参加するということですね。
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○中野(徹)政府委員 五十四年度の問題といたしましては、むしろ先生の先ほどのお話しのガイドラインと申しますか、一般因果関係について、この種の薬剤に対するこのような副作用事故の対応関係といったようなことにつきましての、いわば個別ケースが出てまいります際の、つまり五十五年四月以降の個別案件の処理の迅速化のために、いわばその作業手順あるいはガイドライン、ルールというようなものをつくることに全力投球をするわけでございます。それで、五十五年度からの給付開始に備えて事柄の迅速化を図るわけでございますが、その際の備えといたしましては、ガイドラインづくりの際にも、正委員を三名、これは医学、薬学及び法律というふうに考えておりまして、その他三十名の、それぞれの薬効群別の薬の特殊性に応じたいわばプロジェクトチームみたいなものをつくって、事故に対処する事前の備えをしておこうと考えておりまして、こちらの方の三十名の臨時委員、幾つかのチームに分かれると思いますけれども、これらにつきましては、当然臨床家及び薬学の方々を考えておるわけでございますけれども、一部の意見に、そこにも法律家を加えろという御意見もありますので、そこら辺も含めて慎重に検討封してまいりたい、かように考えております。
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浦井委員 スモン被害者の救済問題については以上でとどめたいわけですが、やはりここで恒久救済対策の、被害者の方々の要求にこたえたそういう対策の出発点をぜひつくり上げなければならぬ。ほとんどの問題はできるだけこの際に解決すべきだというふうに私も思いますので、
局長も地球を回られるようなお話も聞いておるわけで、実際に、長年苦しんでこられた方々の立場に立った対策を立てる原動力になるように努めるべきだというふうに要望しておきたいと思うわけです。大臣ももちろんであります。
そこで、この薬剤二法の問題について少し質問をしたいわけでありますが、各党の意見をお聞きをしておりましても、薬事法の一部改正の中に、当然目的の項の中に、有効性、安全性を確保することを目的とするというような項目が入ってこなければならないだろうと私は思うわけです。そういう点について大臣としても、先ほどからの答弁では、院の合意があればという含みのある発言をされておりますから、これはわれわれ努力しなければならぬというように思うわけですが、そういうふうになった場合に、果たして有効性、安全性について一体だれが国民に対して最も責任を負うのかというふうに大臣、思われますか。
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○橋本国務大臣 これは先ほどから申し上げておりますように、院の御意思として一つの方向が出れば、私はそれに異議を申しませんと申し上げておるわけでありますから、院がどういう形におまとめになるかによっても変わってこようかと思います。
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浦井委員 そうしたら、安全性、有効性を確保するということで、いまの段階で大臣はだれが一番国民に対して責任を持っておると思われますか。
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○橋本国務大臣 私は、やはり第一義的には何と申しましても、営利を目的としてみずから開発し、みずからそれを製造して売ろう、そうしてそれによって利益を得ようという基本を持ってておるわけでありますから、製薬メーカーがその責任を持つべきものだと思います。ただ、広い意味において国はそれに対しての承認その他の権限を行使するわけでありますから、広義の責任というものは当然国にあろうかと思います。
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浦井委員 これもまた修正の問題になりますけれども、日弁連の意見書を見ますと当然「国の義務として、医薬品等の安全性・有効性に関する総合的施策を策定し、医薬品等により国民の健康が侵害されないよう努めなければならない」ということを明記しなさい。それから「事業者の義務としては、その供給する医薬品等について世界最高の科学水準による注意義務をもって安全性を確認し、危害の防止を図り、表示等の事業行為の適正化等必要な措置を講じなければならないことを明らかにする。」というふうに書いてあるわけで、われわれとしては、こういう国なり企業の責務を、目的の項のほかにもやはり挿入すべきだというふうに考えておるということを申し上げておきたいと思うわけです。
そこで、基金法の問題についてでありますけれども、基金法の内容を見ますと、一般拠出金の拠出率が千分の二が最高だという書き方になっておるわけなんですが、千分の二ということになりますと、それだけで年間大体五十億から六十億くらいの拠出になるだろうと思うわけですが、そういう形で案として定められた根拠は一体何なのか。もしそれの根拠になるような試算をされておるならばその数字を示してほしい、こういうように思うわけです。
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○中野(徹)政府委員 もちろん、千分の二というのは上限値でございまして、上限の理論値を計算いたします場合に、私どもの考えといたしましては、個々の医薬品の個別の販売価格というものはなかなかとらまえにくい、あるいは出荷の際の価格についても企業秘密に属する部分もございましてとらまえにくいということがございます。そこで、一定の基準によって一律に計算し得るスタンダードを求めるとすれば、結局のところ
医療保険における薬価基準というものがございますので、薬価基準を使ってこの出荷額の計算をしたい。それについての上限千分の二というものを計算いたしますと、たしか先生御指摘のように五、六十億という数字が出てまいると思います。
それから、さらに特別拠出金がございまして、関与企業が特定しました際にこれに対して一定の拠出金をかけるということがございますので、財源規模としてはおよそその二倍程度のものが、時差はございますが一応確保できると考えます。
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浦井委員 この制度が発足した後、年間に死亡される方がほぼどれくらいで、あるいは障害を受けられた方がどれくらいでというような、具体的な数字を薬務局の方から聞いた記憶があるのですが、そういう試算をされておるのかどうかということなんです。
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○中野(徹)政府委員 もちろん、千分の二という数字を判断いたします場合に、実際に制度が作動しました場合に、たとえば従前は埋没していたような副作用事故が、表面に出てくるという可能性がございます。したがいまして相当の安全率を見て計算したわけでございますが、現実にはこの範囲内において十分に当面の対処ができるであろうとわれわれとしては思っております。ただし、外部に公表できるほどのわれわれとして確信のある数字はございませんが、この上限値自身についてはわれわれとしては行政上の確信を持っております。
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浦井委員 数字を言ってもらわぬと、確信を持って言えないわけですね。たとえばそのときに年間死亡者が百名、あるいは障害を受ける方が百名というような数字を聞いたわけですが、果たして何かそういう実態調査でもして、そういうことを根拠にされたわけですか。
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○中野(徹)政府委員 これにつきましては、の数字をもとにいたしまして、最終的には拠出率自身は基金の評議員会で決めるわけでございますが、また、その拠出率の変更も十分あり得るわけでございます。これは基金発足後に、千分の二の範囲内においてたとえば千分の一になるか、千分の〇・五になるかというふうなことで、流動的な感じのものになるわけでございまして、あくまでも当面の上限値として千分の二を設定するならば当然にファイナンスはつくであろう、われわれはこういうふうに考えているわけでございます。
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浦井委員 私が簡単に試算をしてみたのですが、基金の当初の支出というのは恐らく十数億ぐらいだろう。それを五十億、六十億というふうに拠出をさせて発足をするというのは、何かあるのではないかという感じもするわけです。
たとえば手軽な話、いまもお話が出ておりましたようにダブルブラインド、二重盲検のときの被害というのは、いまのところ基金の救済給付の対象になっておらないわけですね。それを何かすっとこちらの方に滑り込ますというふうなことはないわけですね。
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○中野(徹)政府委員 先ほどから申し上げておりますようにこれは上限値でございまして、五、六十億という数字を取るというようなことは一切申し上げておりません。要するに必要な資金を必要な程度に応じて取るということでございまして、先ほどの話はあくまでも上限値でございます。
それから治験の問題につきましては、先ほどの御質問にもあったわけでございますが、これはあくまでも開発企業の負担において事故に対する賠償を行うべきものであって、製造承認を受けた医薬品の副作用にかかわる基金とは全く関係はございません。
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浦井委員 その点は全く関係ないということなんですが、私は、この際、薬事法の一部改正には安全性、有効性を確保して国民の健康を保持することが目的だ、国の責務、企業の責務はこうこうだということを明記して、国会に出してくるべきだということを主張しておきたいと思うわけです。
具体的な各論が時間がなくなってしまうわけなんでありますけれども、その前に、安全性の問題の一つの例なんですけれども、きょうも傍聴に来ておられるわけですが、ストマイ難聴の問題があります。
ストマイ難聴の場合に、これは御承知のようにオーディオメーターできちんと検査をしていくならば、早期発見が可能になって、かなり防げるわけなんです。ところが、現在は厚生省の指導で、添付文書の中に「観察をしなければならぬ」とか、何かそういう表現になっておると私は見ておるわけです。ここに少なくともオーディオをやることを、義務づけると言えば少しきついかもわかりませんが、オーディオメーターで聴力検査をすべしというような表現にでも、厚生省の方から指導をして、ストマイの添付文書を改めさせるような指導ができないものかどうか、このことをちょっと尋ねたい。
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○本橋政府委員 ただいま御質問の硫酸ストレプトマイシンの使用上の注意につきましては、現在難聴、耳鳴り、それから目まい、眩暈でございますが、眩暈等の第八脳神経障害があらわれることがあるので観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止することが望ましいが、やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与するということを記載させておりまして、観察の具体的な方法の選択については治療に当たる医師の判断によることが適切であると考えておるわけでございまして、診療の内容について使用上の注意で規定をするということは現在の段階では考えておりません。
しかしながら、先生御指摘のオーディオメーターの件につきましては、結核の治療指針、これは昭和三十六年に出ましたもので、さらに四十五年に改正をしたものでございますが、そこには結核の化学療法は長期にわたることをたてまえとするから副作用の問題ば特に重要である、定期的にオーディオメーター等による聴力検査、諸種の肝機能検査、血液検査などを励行しなくてはならないというふうに記載してございます。
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浦井委員 だから、治療指針に載っているのはわかるのですが、それを医師が手軽に見られるような添付文書の中にオーディオの件を書き込めないか。いま言われたのは診療行為ですかということだそうですけれども、一般情報としてその他の項目に記入することは可能なんでしょう。それをひとつ前向きで検討していただけませんか。どうですか。
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○本橋政府委員 御指摘の問題につきましては検討させていただきたいと思います。
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浦井委員 それから、私が質問しようとしておる一番大きな問題なんですが、簡単に申し上げますと、製造承認というのは原案で今度改正をされる。その拒否理由の中にかなりシビアな文句が入っておると思うのです。その中で一方、製造承認ではそういうふうになっておるのに、再評価の問題については再評価をするのだということが条文の中に入っただけで、あと具体的な政省令というようなものはいままでの再評価のやり方と変わらぬわけなんですか、どうですか。
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○本橋政府委員 変わりません。
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浦井委員 変わらないというのは、私は問題だと思うのですよ。こういうふうにせっかく製造承認がシビアになったわけですから、それに見合って再評価の具体的なやり方ももっと厳格にすべきではないかというふうに私は思うわけなんです。というのは、皆さんもよく御承知のように、ことしの二月二日までの第十五次までの再評価の結果内容を見てみますと、実証というのが適応数で二二%、推定が四一・四%、そのほかは有効であると認められないものということになっておるわけでしょう。だから推定、実証のやり方は、医学的な問題はあるにしても、少なくとも推定というのは効かないこともあり得るということになるわけですよね。だからその辺の問題をもっと厳格にして、推定というかっこうでとどめてしまうのではなしに、いつまでも放置しておくのではなしに、実証の段階に近づけるような、そういう政省令なり指導をこの機会にやっていくべきではないかというのが第一点であります。
それからもう一つは、これは実例を挙げると、私、実例を持ってきておるのですが、たとえば「再評価医薬品便覧」というような専門雑誌、こういう書籍には「確証」と「推定」とが区別して書かれておるわけなんです。しかし、一般の臨床医はこういうものを机の上に置いて見るのではなしに、やはり使おうと思う薬は添付文書を見るわけですよ。そうすると、添付文書の中には「推定」も「確証」も全部ごっちゃにして列挙されておる、こういうことなのです。だから、少なくとも現時点でどの適応が確証で、どの適応が推定だということが一般の臨床医がわかるようなかっこうで添付文書に記入すべきではないか、私はそう思うのですが、その二点。
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○本橋政府委員 現在添付文書には、再評価の結果の有用性につきまして、実証あるいは推定というものの区別はさせておりません。これは、有効であることが実証されたものとそれから推定されたものというものの区分は、再評価の審査を行う際の裏づけ資料の内容によって区別をされておるわけでございまして、いずれの場合にしましても、有効性が認められると判断されるものであります。したがって、有効性に非常に問題があるとかあるいは有効性の程度に差があるとか、そういったことを意味するものではないというふうに理解をしております。
しかしながら、先生御指摘のような添付文書に「実証」あるいは「推定」というものを載せるべきだというふうな種々の御意見もあるようでございますので、この法改正を機会に検討させていただきたいというふうに考えております。
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浦井委員 これはぜひ検討していただきたいと思います。
これでおしまいなのですが、先ほども同僚委員から話が出てまいりましたが、第四相試験の問題ですね。疾病構造が変化して慢性病がふえてきておる。長期連用する薬剤も質量ともにふえてきておるわけですね。そういう中で、それについての功罪を国が本腰を入れて調査を始めるべきではないか。これはもう審
議官もよく御承知だと思いますけれども、ラスチノン、トルブタマイドの血糖降下剤あるいはクロフィブレート、アモトリールですかコレステロール降下剤、こういうものについて諸外国でいろんなことが起こっておって、国によってまだばらつきはありますけれども、こういうことが注目をされ出しておるわけです。厚生省の方も、トルブタマイドについては添付文書のその他の項目に書いておると言われるかもわかりませんが、ぜひ本腰を据えて、長期的に見てその薬が果たして有効性、安全性を含めた有用性があるのかどうか、そうして、単に一時的に血糖を降下させるあるいはコレステロールを低くするというローカルだけを見ずに、相当長期的に大規模にやっていくべきではないか。これは第四相試験の問題であろうと思うけれども。それについて最後に厚生省の見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
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○本橋政府委員 御指摘の慢性疾患に用いられます薬剤は、いずれも長期間服用されるわけでございますけれども、これにつきましては、いま先生御指摘のように、いわゆる短期的な効果とそれから長期的な効果と、いずれも本来ならば短期的に有効でありかつ長期的に有効であるということが必要なわけでございますが、短期的な効果と長期的な効果を比較対照する評価の方法というところに、いま問題があるわけでございます。
最近、先生御指摘のようにUGDPのトルブタマイドの問題、それからWHO等が行いましたクロフィブレートの問題等が起こってまいりまして、こういうことに世界的に非常に関心が高くなっておるわけでございまして、これにつきましてはやはり、こういった手法の問題ということもこれから考えていかなければならぬ問題だろうと思うわけでございますが、実際上二十年、三十年にわたって第四相をやるということについては、多少むずかしい点があるんではないかというふうに思っております。今度薬事法がもし成立をいたしますと、六年間の副作用報告義務期間というのがございますので、その中でできるだけそういった考え方も取り入れてやっていきたいというふうに考えております。
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浦井委員 六年の話が出てきましたので、最後に発言しておきたいのですが、これが即第四相試験というようなかっこうにはならぬと私は思うのですよ。やはり国が、いろいろな企業にまたがって相当長期間にわたって大規模にやるというようなことをやらなければ、一つの企業が自分のところで発売されてから後こそこそと調査をするようなことで、長期連用薬の調査というのはとうていできないと私は思うので、六年の先発権の問題にすりかえずに、ひとつ前向きに真剣に取り組んでいただきたい。このことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
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○森下
委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時五十六分散会