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工藤(晃)
委員(新自) それだけの
大臣の御説明では、果たして
日本の将来に安定した
雇用が獲得できるのかどうか、ちょっと疑問な感じがいたします。ということは、先ほど
大臣もおっしゃいましたように経済成長六・三%を確保しなければならぬ、確かにそれはそうなんだけれ
ども、しかしながら一方において、産業構造の変化に伴うそのどうにもならない業態をどう転換するかという、こういう問題を抱えているので、経済成長だけに頼れないということ、まことにそのとおりでございまして、そうなると産業構造の転換というのは、言うはやすく行うは大変むずかしい問題だろうと思うのです。
と申しますのは、たとえば
昭和四十年に同じような、いまのような類似した産業構造の変化に伴う不況がございました。そのときにはたとえば石炭産業とかあるいは黄麻とか、その他数え上げれば切りがないのですが、そういう産業構造の変化に伴う不況感が出てまいりましたけれ
ども、その転換を図るために非常に政府もそのときは苦労された。ところが、そういう業態の中で、たとえば石炭産業もこれは完全な斜陽になってしまう。福岡においては生活保護の
適用者が他の県に比べて非常に極端に多いという
実態がいまでもあります。これはその前身は炭鉱
労働者が非常に多いわけで、そうすると、産業構造の変化に伴って転換をするのだと言っても、
実態は、あれから十数年たちましてもいまだにそのつめ跡を大きく国民の中に残している、こういう
実態があります。ですから一言で言って、産業構造の転換を行うことによって
雇用を創出するのだという、こういう
考え方は、非常に言葉の上のあやのように聞こえて仕方がないのです。
そこで、そういう長い年月で徐々に円満に転換をしていかなければ、その
雇用の問題は大変危険な
状態に追い込まれるわけですから、たとえば省エネルギー政策とか、あるいは知識集約型産業だとか、あるいは国際分業論だとか、当面する
問題解決のためにいろいろな意見が出ておりますけれ
ども、そのどれを取り上げてもやはりそれなりの苦労と努力と、それから長期にわたるたゆまない継続がなされなければ、そういう言葉の結果にはならない。
そうすると一方では、そういうふうな問題を抱えて長期の
雇用対策を考えなければならない。しかしながら一方では、あっという間に平均
年齢は、いまから十五年たちますと、いま七十五歳の平均寿命が八十歳まで延びると言われている。そうするとまたそこで
高齢者の
雇用問題が大きくクローズアップされてくる。そうすると、一方では産業構造の転換を図るために長い年月をかけなければならないし、一方では大急ぎで長寿社会、高齢化社会が来てしまう、このギャップをどのように埋めるかということが大変大きな問題であり、そこら辺に、いま
大臣がおっしゃいましたようなお答えでは果たしてそのギャップを埋めることが可能なのかどうか、大変私は疑問に思うわけでございます。
そこで、できるだけ社会にショックを与えないような形で職業転換がスムーズに円滑に図られるということが大事なことであって、新しい
雇用を創出するということは、いまの段階、低成長の将来の見通しにおいても景気の回復というのは大変暇がかかるのじゃないか、あるいは低成長時代にもう入ってしまっているんだから、高度成長のような期待は持てない、こういう見込みを大多数の方がしておる
現状においては、やはり新しい分野の
雇用をどんどん開発し創出していくということには大変むずかしいいまのような問題がありますから、さしあたりは、やはり現在長い間続いております百二十万前後の完全
失業者をいかに救済していくかという当面の緊急課題を解決しながら、高齢化社会の問題を抱えた中高
年齢層の
雇用対策というものもあわせて考えていかなければならない。こういう大変困難なことであろうと思いますけれ
ども、しかしながら、これは国民のすべてが不安な日々を送っているわけでございまして、先行き見込みも大変暗い、こういう実感を生活の実感として持っているわけであります。そういう時代に一方では、国民の側から見れば、高齢化社会というものに対応するためにいかに健康を守っていくか、この健康の保障と生活の保障というものと生きがいというような三つの条件をどのように対応させてくれるのかということが、国民の切なる願いだろうと思います。そういう
意味においては、一方で健康社会の創出という問題も考えなければいけないし、片一方では、いま申し上げたような非常にむずかしい問題をあわせて解決しながら
雇用の創出をしていく、こういうことになろうかと思います。
そこで
日本の場合に、こういう構造不況、これはほとんど製造業ですから、そういう第二次産業から第三次産業への
雇用の円滑な移動というものが、今後とも大きな政治の課題になると思うのです。それを
一つ誤りますと、今度は第三次産業の中の平衡感覚がなくなってしまう。それによって過当競争が起き、またそこで
失業問題が新たな分野で起きてくる、こういう状況に入る危険性を多分に持っている。しかしながら、一方ではこの第三次産業への
雇用の移転というものが実際に数字の上でもはっきりと出ている。こういう
現状でございます。
そこで、労働
行政の本年度の
予算の概要を見ましても、
雇用という問題は一番先に書いてあるし、最大の目玉であるし、また十万人の
雇用創出という問題が
労働省の目玉商品としてうたわれているわけですね。たとえば「停滞する
雇用情勢に対応する
雇用安定対策の強化」という項目の「緊急
雇用対策の推進等」という項目の中で「
雇用開発
事業の創設」、これは
予算から見ると、十万人
雇用するために四百五十六億ぐらいの金を使うわけです。そうしますと一人頭
幾らの金額かというと、四十五万円ちょっとの金をかけて十万人の
雇用を創出しよう。しかしながら、この
内容を見ますと、たとえば新たに
雇用を創出してくれるような
企業に対しては国がめんどうを見ます、
賃金の二分の一とか三分の一を私
どもが半年なり一年なりあるいは一年半なり見ましょうという形です。
雇用の創出という
意味が、私
どもが言葉から受ける
ニュアンスというのは、何か新しい市場を開拓してそこへどんどん
雇用が吸収されていくというふうな感じを大変受けやすいのだけれ
ども、少なくともこの
予算の方から見ますと、
賃金を安く雇ってもらえるようにしますからどうか余分な人でも入れてくださいよという、あるいはそういうことによって
賃金は安く使えるのだからでは一人余分に使おうという、非常にこそくな対策であるわけです。そういうふうに私は受け取っているわけなんです。病気で言えば応急対策とでも申しますか、カンフル剤の役目は果たせても、少なくとも根治療法にはつながらないのじゃないか。その間に、おてんとうさまが東から上って西へ落ちる間には景気も回復してくるだろうし、高度成長のようなこともまた夢よもう一度と来るかもしれない。それに期待をかけているならこういう
やり方もいいと思うのです。しかしながら、
日本の
雇用の将来というのは大変厳しく、先ほどからるる申しましたような形で訪れてくるだろうとすれば、ことしの
予算をいまから何年か続けている間にどうなるのかということについては、大変不安な感じがするわけでございます。
もう一点は、そういう
雇用の
実態というのは、こういうものが少なくとも第三次産業のどういうところへ流れていくのかということについての調査が、余り行われていないように思うわけです。そうしますと、この間の
社労委でも
大臣にちょっと申し上げたのだけれ
ども、第三次産業への計画的な
雇用の移転というものが行われなければ、閉鎖性水域における産業
廃棄物を含むヘドロのたれ流しのようになってしまうのではないか。第三次産業の方でそれが沈でんしたまったときには、これは大変困った
状態になってしまうのではないかと思う。そういうことについてはどうかひとつ十分御勘案を、願いたいということを申したのですが、やはりきょうもその問題についてもう少し各論的にお話しをしてみたい、こう思うのです。
そういうことで、
大臣に最初に基本的な姿勢をお問い申し上げたわけで、いまから御
質問申し上げるのは、そういう今後の困難な状況の中で、第二次産業から第三次産業への
雇用の移転というものについて、どのように政府はそれを移転されようとしているのか、そういった点についての御
見解を承りたいと思います。