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田中(美)
委員 それでは、
誠意ある前向きの
解決をしていただきたいと思います。
次に、
医療社会事業の問題について質問いたします。
日本福祉大学の名誉教授の浅賀ふさ先生、この先生は
日本に初めてMSWを持ってこられた人だと言われています。この先生が定義をしておられますので、ちょっと読み上げてみます。
「
医療社会事業は1単なる
救済事業ではない。2医師を中心とする
医療チームの一員として、
医療の効果を妨げる
患者の物質的・心理的・社会的障害や困難を
解決するよう援助して、その属する
医療(または保健)機関の目的を有効に遂行するために
協力する。3ソシアル・ケースワークの一分野で、
医療(または保健)問題を主要問題とした特殊なケースワークでありケースワーク原理を基礎とした仕事である」このようにMSWの仕事を明確に述べていられます。これか大体の合意事項になっているというふうに私は
理解しています。
次に、
厚生省でも、
公衆衛生局長が都道府県知事や政令市長にあてて「保健所における
医療社会事業の業務指針について」というのを出していられます。この中でMSWの定義を述べています。これによりますと「
医療社会事業とは、
医療並びに保健機関などの
医療チームの一部門として、社会科学の
立場から医師の診断を助けるとともに、疾病の治療、予防、更正の妨げとなる
患者や、その
家族の経済的、精神的あるいは社会的な諸問題を満足に
解決もしくは調整できるように、
患者とその
家族を援助する一連の行為をいう」こういうふうにはっきりと
厚生省も規定しています。こうしたMSWに対する
要求というのがこのところ急激に高まっているということは、
大臣も御存じだと私は思います。
それで、最近の
患者団体の声を少し
紹介してみたいと思います。
全腎協の小林孟史さんという方は「親殺し、子殺しや一家心中などいまの世相を見るにつけ、もっとMSWが多くいて相談できたらいいと思う」、
日本てんかん協会の松本了さんは「てんかんの問題は、医師のみでは
解決しない。他のパラメディスカルスタッフや教育、
福祉の分野の援助が必要だ」、リウマチ友の会の島田広子さんは「リウマチは、古くからある病気なのに専門医か少ないことや、女性に多いということから、障害が重くなると、特に主婦の場合相当の負担が出てくる。大変な困難さを抱えている。MSWがリウマチ
患者の一番の相談相手になってほしい」、こう言っていられます。また、全
日本断酒連盟の霜田一男さんは「
医療の分野だけでアルコール中旬の問題は
解決しない。アルコール中毒はだめだということではなく、アルコール中毒を何とかしようということでMSWに援助してもらいたい」、こういう声が上がっているわけです。
日本学術
会議が
昭和五十二年に勧告を出しています。これによりますと、
医療福祉士、これは仮称で、MSWのことですが「近年
医療の中に
福祉の視点が定着し拡大しつつある。ことに専門職によるチームワークが不可欠となり、リハビリテーション
医療や地域
医療の場で、他の専門技術者と対等の有資格者として、
医療福祉士が参加することは絶対に必要である」、こういうふうに
日本学術
会議でも指摘しているわけです。また、
日本医療社会事業協会では、ことしの初めから、MSWを置いてほしいという運動と
要求を支持する署名活動を始めていますが、これに病院長や保健所長が続々と署名をしているというのがいまの現状です。
それから昨年の十二月八日、NHK教育テレビの「
福祉の時代」で全賢協の代表が難病
患者の問題を取り上げたところが、物すごい反響だった。それでNHKは再び「スタジオ102」でも取り上げたことは御存じだと思いますけれ
ども、その後、全国からNHKに電話相談が二百件以上あったそうです。まだ二カ月ちょっとの間ですね。手紙が六十通も届いている。その中身の問題ですけれ
ども、ほとんどが精神的援助を求めているもの、また多くが相談する場が少ないことを訴えている。ということは、MSWが欲しいということをこんなにたくさんの人がNHKに訴えているということです。
また、ことしの二月十日付の
日本経済新聞には、MSWの仕事かいかに重要かというその仕事ぶりか報道されています。テレビのドラマの中にも、最近はこうしたMSWの方たちが出るというような状態になっているわけです。
さて、なぜこんなにMSWの必置制を
要望する声が強くなっているのか。このところ急激に強くなっているということは
厚生省側もお認めだと思うわけですね。長期の治療を必要とする慢性疾患や難病それから公害病などがふえているように、疾病構造というのは変化しています。かつては結核が病気の王者と言うとおかしいのですけれ
ども、そういう時代もありました。いまは疾病の構造が非常に変わってきている。特に近年、公的な
医療費負担制度、こういう制度が次々と
改善されていったり、施設も少しずつですけれ
ども整備されてきている、その上にこういう制度などが非常に複雑で多様化しているので、なかなか
国民の皆さんには全体を把握するということが困難な状態になってきているわけです。こういう中で
患者や
家族の精神的経済的な負担はますます高まっていますし、その上に
家族構成というものも急激に変わってきています。その中での人間
関係というものが非常に複雑になっている。だからこそ、
患者や
家族の側からも
医療スタッフの側からも、MSWを設置してほしいという強い
要望が出てきているのだというふうに思うわけですね。それで、このような急激な変化に
政府が敏速に対応していかなかったら、せっかく
福祉制度というものを少しでも
改善してもこれが本当に実効あるものにならない、そういうふうに私は思うわけです。敏速に反応していただきたいというふうに思うので、きょうこの質問をしているわけです。
それで、まず社会
局長さんに伺いたいと思います。
昭和四十九年に、無料又は低額診療事業についての通知というのを出されています。これによりますと、社会
福祉法人が経営する病院や診療については
医療ソシアルワーカーの配置が条件だ、MSWを義務づけているわけですね。その後、
厚生省の解釈では、非常に具体的に病院の二百床について一人のMSWを置くべきだと言っているわけです。この通知にあるように義務づけているということは、MSWの必要性を感じたからだと思うのですけれ
ども、どのように必要性を感じていられるのか。簡潔に答えていただきたいと思います。