運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-05-30 第87回国会 衆議院 航空機輸入に関する調査特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月三十日(水曜日)    午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 羽田野忠文君 理事 増田甲子七君    理事 松永  光君 理事 山崎武三郎君    理事 小林  進君 理事 坂本 恭一君    理事 坂井 弘一君 理事 大内 啓伍君       越智 伊平君    大西 正男君       國場 幸昌君    塩崎  潤君       島村 宜伸君    羽田  孜君       武藤 嘉文君    渡部 恒三君       大出  俊君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    横路 孝弘君       横山 利秋君    池田 克也君       長谷雄幸久君    林  孝矩君       米沢  隆君    正森 成二君       加地  和君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君  委員外出席者         航空機輸入に関         する調査特別委         員会調査室長  長崎  寛君     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空機輸入に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  航空機輸入に関する件について調査を進めます。  この際、法務省伊藤刑事局長から、航空機購入に絡む犯罪等捜査処理に関する報告を求めます。伊藤刑事局長
  3. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 航空機購入に絡む犯罪等捜査処理に関する御報告を申し上げます。  まず、捜査処理経過について申し上げます。  最初捜査の開始についてであります。  検察当局は、昨年十二月十五日及び本年一月五日に米国証券取引委員会、SECが行ったマクダネル・ダグラス社及びグラマン社についての申立書、両社の月例報告書、いわゆる8K報告書等の公表を契機として、わが国航空機購入に絡んで犯罪が介在したのではないかとの心証を抱くに至ったので、本年一月九日、これについての捜査を開始いたしました。  次に、司法取り決め締結についてであります。  同日、検察当局から米側非公開資料入手方要請があったので、法務省としては、これを受けて、外務省を通じ、米国司法省との間で、資料入手のための日米司法取り決め締結のため折衝を行った結果、ロッキード事件の際に締結された日米司法取り決めを右二社の問題に拡大適用することとして、一月十九日の閣議決定を受け、同月二十三日ワシントンにおいていわゆるダグラス、グラマン問題に関する司法取り決め締結いたしました。  この司法取り決めに基づき二月十六日にグラマン社問題に関する米側資料、三月十六日にダグラス社問題に関する米側資料がそれぞれわが国に到着いたしました。  次に、捜査経過の概況を申し上げます。  検察当局は、航空機購入に絡む疑惑解明のため、国会において論議された事項等各方面において指摘された多くの問題についても相応の関心を払いつつ、司法取り決めに基づき米側から入手した非公開資料にあわせて、国内関係者の取り調べ関係証拠収集等鋭意捜査を進め、三月十四日、日商岩井東京本社航空機部長山岡昭一外国為替及び外国貿易管理法違反、私文書偽造容疑で、同部次長今村雄二郎を私文書偽造容疑でそれぞれ逮捕するとともに、日商岩井東京本社等数カ所捜索を行い、四月二日、同社前副社長海部八郎外為法違反容疑で逮捕し、同人方などの捜索を行い、同月四日、右山岡及び今村逮捕容疑等で起訴し、山岡については、同月七日背任容疑で再逮捕し、さらに同日及び同月九日に海部所有のマンションなど数カ所捜索し、四月二十三日、同人逮捕容疑で起訴し、翌二十四日、同人を、参議院予算委員会から同月四日告発のなされた議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反偽証容疑で再逮捕し、四月二十八日、山岡業務横領容疑で追起訴するなどしてきましたが、五月十五日、海部議院証言法違反偽証容疑で追起訴するとともに、衆議院予算委員会から三月八日告発のなされた有森國雄に対する同法違反証言拒否容疑についても、同日起訴し、これをもって、捜査の過程で提起された疑惑についてほぼその全容を解明し、捜査は実質的に終了するに至りました。なお、各公訴事実の要旨は省略いたします。  次に、捜査体制等でありますが、今回の事件捜査に従事しましたのは、検察官二十二名及び検察事務官四十二名であり、捜索場所は二十五カ所、押収証拠資料の点数は約三万五千点、取り調べ人員は、実人員五百十五名、延べ人員千六百名であります。  次に、捜査結果について報告いたします。  まず、8K報告書で指摘された事項についてであります。  マグダネル・ダグラス社及びグラマン社のいわゆる8K報告書で指摘された事項につきましては、いずれも犯罪容疑を認めることができませんでした。  なお、E2Cに関しては、8K報告書で、一九六九年グラマン社はE2Cの売り込みに関し、一日本政府関係者の示唆により日本における代理店を変更したこと及び一九七五年同社日商岩井手数料の一部を米人コンサルタントに支払う可能性があり、その一部がさらに日本の公務員に支払われる可能性があることを知ったことが問題がある事項として指摘されておりますが、前者については、代理店の変更の経緯は判明しましたものの、その事柄自体犯罪を構成するものではなく、後者につきましては、いまだグラマン社から日商岩井にE2Cに関する販売手数料が支払われた事実がなく、また、日商岩井手数料の一部を米人コンサルタントに支払う旨の契約が存在した事実は認められますものの、これに関して犯罪容疑を認めるには至りませんでした。  次に、ダグラス社関係の二百三十八万ドルについてであります。  この金の支払い名目事務所経費とされておりますが、実質はダグラス社から日商岩井に対して支払う販売手数料であり、日商岩井経理処理の際、右販売手数料であることが秘匿され、他の名目収入金として同社及び米国日商岩井正規の帳簿に全額計上されておりますが、この金の一部四十五万ドルの経理操作に関して山岡及び今村が私文書偽造、同行使の事実で起訴されております。  なお、右のような不正な経理操作が行われた理由は、海部らが日商岩井航空機販売活動に関連して、ある単数の政治家に対し、F4Eファントム機の対日売り込みのための工作費として約五億円を米国日商岩井などを通じて支出項目を粉飾仮装して支出していた事実があり、その穴埋めをする必要があったことと、防衛庁に対し多額の手数料ダグラス社から取得していることを秘匿する必要があったことによるものと認められます。  次に、ボーイング社関係の百五万ドルについてであります。  国税庁の調査費途不明交際費等として税務処理がなされた四十七万ドルも含めて、この百五万ドルの資金の流れはおおむね解明されており、この四十七万ドルの一部は航空機販売活動資金に充てられておりますが、これが政界ないし政治家に流れた形跡は認められません。  この百五万ドルは、B747SR七機の日航に対する売り込みに関し、ボーイング社から日商岩井に対して支払われた追加手数料でありますが、これが簿外資金として米国内の銀行に預金され、簿外経費として使用されるなどしていたところ、ロッキード事件発生後、その一部三十万ドルを日商岩井正規経理に計上する必要が生じ、そのための経理操作に関連して、海部外為法違反山岡が同法違反及び私文書偽造、同行使の各容疑事実で起訴されております。  なお、この四十七万ドルの使途について、日商岩井側税務当局に対して申し立てたサウジアラビア及びインドネシア関係営業経費に充てた旨の弁明は事実に反します。  次に、海部メモ関係についてであります。  検察当局は、いわゆる海部メモと称して巷間流布されていた一九六五年七月二十四日付川崎重工業砂野社長あて次期戦闘機問題等に関する書簡写し及び昭和四十一年三月十八日付経理部長あて外国銀行への送金依頼書写し各一通の原本の作成者海部八郎自身であることのほか、右文書作成の目的、内容の真偽につき、おおむね解明を遂げております。  捜査結果によりますと、一九六五年七月二十四日付メモについては、これが名あて人に対するクレーンの売り込みに関するデモンストレーションの意味で戦術的に作成されたものであることもあって、内容は、真偽取りまぜて書かれているものと認められます。すなわち、このメモのうち、一九六五年七月二十三日ごろ、アメリカサンフランシスコフォーサイス氏、海部らが岸氏に面会し、フォーサイス氏らからF4Eファントム売り込み陳情をした事実は認められますが、「三次防として最低一〇〇機」とか「三年間に二〇〇機」という機数の話が出た事実は認められず、また「岸氏にイニシエーションフィーとして二万ドル支払ひました」「四機輸入の場合の謝礼等フィツクスしました」との記載は事実と相違いたします。  昭和四十一年三月十八日付メモについては、メモ記載銀行口座に対し、記載金額が送金された事実は認められますが、岸氏から支払い方連絡してきたとの記載及び「松野福田両氏に対する支払ひ」との記載は事実と相違いたします。  なお、海部メモに関連する福田赳夫氏の氏名不詳者に対する告訴事件については、なお捜査を尽くすべき事項が若干残っており、その処理には多少の日時を要する見込みであります。  その他でございます。  有森に対する議院証言法違反証言拒否事件については、検察当局は、事実関係を詳細に捜査した結果、証言拒否の正当な理由はないものとの判断をいたしまして同人を起訴いたしました。  また、パシフィック・サウスウエスト・エアライン、PSA及びその子会社ジェットエア・リーシング社が全日空に旅客機を賃貸したことにつき、両者から日商岩井に支払われた仲介手数料に関する事項について捜査を遂げました結果、山岡がそのうち十万ドル余をほしいままに領得したことが判明し、同人業務横領で起訴しております。  また、ボーイング社から韓国、大韓航空関係に三百六十万ドル支払われたとの事項につきましては、犯罪容疑は認められませんでした。  最後に、千歳空港予定地に係るいわゆる土地の転売に関する事項に関しては、犯罪容疑は認められませんでした。  以上でございます。     —————————————
  4. 永田亮一

    永田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  5. 渋沢利久

    渋沢委員 端的にお尋ねをしてまいりたいと思いますが、きのう衆議院法務委員会におきましても、初めにありき五億円の、その初めのありようについてただされておるわけでありますが、まずこの点からお尋ねしたいと思うのです。  これは、端的に言いまして、松野氏から先に日商に対して五億円という額を示して要望があった、こう理解してよろしいですか。
  6. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野氏の方からその程度の金額についての御要望があって、これにこたえたということのようでございます。
  7. 渋沢利久

    渋沢委員 要望があって、海部氏がこれを受け入れる、五億の調達を約束する、こういう成り行きだと思うのですが、いわばそういう意味での合意がされた時期は、これはいつごろでしょうか。
  8. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 合意がなされたというお話がいまございましたけれども、そういうことではなくて、御要望にこたえて逐次五億円に満つるまで支出をしたということでございまして、その時期につきましては、前から申し上げておりますように、五億円の最初が四十二年の秋、最後が四十六年の終わりごろというところから御理解いただきたいと思います。
  9. 渋沢利久

    渋沢委員 松野氏の側から金額を示して要望があったことは事実だけれども、その要望に逐次こたえた、こういうことですが、この金の話し合いに立ち会われた、あるいはかかわった松野海部氏以外の方というのはございますか。
  10. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何しろ大きな金でございますので、その金を払っていいものかどうか、結局、平たく言えば払って損をするようなことになりはしないかとか、採算上の問題もございましょうし、それからいかにしてその金を捻出するかという問題もございますから、社内においてそれ相応の相談をされたようでございます。
  11. 渋沢利久

    渋沢委員 中村長芳氏の紹介で松野氏が海部氏と会いまして、当然のことながらF4ファントム売り込みについての日商の方針、海部氏の願望といいましょうか要請といいましょうか、そういうものが松野氏に対して伝えられたということは、当然まずある。初めに五億円ありきの前に、まずファントム売り込み要請海部松野氏の間ではありき、こう考えるのが自然だと思うのですが、そうでしょうか。
  12. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもの方もそう厳密に事実関係を固めておるわけではございませんが、松野氏の御証言を伺っておりましたら、四十二年の四月ごろとおっしゃいましたでしょうか、海部氏が二、三百万の金を持ってあいさつか何かに来たという話がございましたが、まあ、航空機の話というものはそのころから陳情の形で出ておったものと認められます。
  13. 渋沢利久

    渋沢委員 海部氏が松野氏に何を期待しているか、何で接触があるのか、中村氏を煩わして会うその接触の意図、相手の立場というものは、金の話の前に松野氏が理解しておったというふうに受け取れるわけであります。そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  14. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私がお答え申し上げたとおりに御理解いただけたらと思います。
  15. 渋沢利久

    渋沢委員 松野氏はこの五億円の趣旨について、これは高畑誠一氏の好意だ、この好意をいわば持ち運ぶ役目を海部氏や島田三敬氏が代行してくれたのだという趣旨証言をしておられるわけであります。しかし、すでに局長も他のいろいろな機会に明らかにしておりますように、五億円の捻出を組み立て、これを実行したのは海部氏であって、この五億円には高畑誠一氏は全く関係がない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  16. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 五億円と高畑氏とは関係がないように思います。
  17. 渋沢利久

    渋沢委員 刑事局長は二十五日の参議院航特で、この五億円の授受に関して、一部がアメリカヨーロッパで渡されている、こういうふうに言われております。きのうの衆議院法務委員会で、私もちょっとのぞいてみたのですが、海外で受領したのは数万ドルずつ数回、こういう説明をされておるわけであります。数万ドル数回というのは大変わかりにくい御説明でありまして、三万ドルを三回とも六万ドルを六回とも読めるのですが、もう少しわかりやすくお話し願えないでしょうか。
  18. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 お断り申し上げておきますが、この五億円の問題は、二百三十八万ドルに関します海部氏の偽証問題の証拠を固めますために、どういうわけで二百三十八万ドルという、事務所経費などというわからぬものが出てきたのかということを調べていきますと、五億円の穴があいておった、これを埋めるつもりでやったのであるということで、したがって、その穴のあいたゆえんを調べざるを得なくなって調べたわけでございます。したがって、日商岩井が五億円を経理上いかなる操作をして、いつ、どこで、幾ら支出したかということは確定をいたしておるわけでございますが、これらの事項は、やがて始まります海部氏の偽証の公判で立証していかなければなりませんので、ある程度踏み込んだお答えはしておりますものの、個々具体的な金額日時等については御容赦をいただきたいと思うのでございます。
  19. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、いずれにしてもこの金は外国送金の形をとっている。アメリカヨーロッパ松野さんの口座があって、そこへ送られたはずだろう、こういうふうに常識的に思うわけです。いかがですか。
  20. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 外国松野さんの口座があるということは確認されておりません。したがって、ただいまお尋ねのように外国松野さんの口座があって、そこへ送金されたというものではございません。
  21. 渋沢利久

    渋沢委員 外国松野さんの銀行口座はないとおっしゃる。しかし、これは日商から数万ドル、数回にわたって送金された、こういうことでありますから、たとえばアメリカ日商にこれが送られて、それから松野氏に渡されたというようなケースもあり得るというふうには類推できますが、そういうことですか。
  22. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 外国日商あるいは日商関係者口座はあるわけでございまして、そういう御理解をいただいても余り事実と相違しないと思います。
  23. 渋沢利久

    渋沢委員 そうすると、外国にある日商口座、ここへ松野さんが直接運び出しに行ったわけではありますまいから、当然そこにいろいろな人が介在をしたと見られるわけであります。まあ、そのころには島田三敬氏がアメリカにおったとか、あるいは伊大知、久保氏というような人たちがかかわっているとかいないとかいうささやきもあるわけですが、その辺はどういう形でしかと松野氏に授受されたのか。これは当局の認識を御説明いただきたいと思います。
  24. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大変具体的なお尋ねでございましてお答えしにくいわけですが、一般論として申し上げますが、松野氏に総計ほぼ五億円の金が渡っておるわけでございまして、その松野氏にということの中には、松野氏の指図にかかわる人というような者も当然入り得るわけでございまして、そういう意味松野氏に五億円ということを申し上げておるわけでございます。
  25. 渋沢利久

    渋沢委員 松野さんの指図で動いてくれる方が、そういう大変際どい仕事をやられる方がおった。しかし、これは外国のことですから大変理解しにくいことです。国内ですとわりあいに理解しやすいのですが、送られる時期にたまたまそういう作業を引き受ける、こういうかかわりのある方があるというのはなかなか理解しにくいのですが、その辺はもう少しわかるようなお話が願えないでしょうか。
  26. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 まあ、そういう方といいますか、松野氏のかわりに受け取られた方がおるといたしまして、そういう方は松野氏と私的な関係でそういうことをしておられますので、そのお名前は差し控えさせていただきたいわけでございます。
  27. 渋沢利久

    渋沢委員 それでは、松野さんが参議院航特で言っておりました五千ドル、五千ドル、計一万ドルプラスロンドン一千ドル、これは五億の枠外だというお話のようですけれども、そういうことですね。
  28. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野氏がどういう事実を指して、どういう事実についての御記憶からそういうことをおっしゃったかしかといたしませんが、松野氏がおっしゃるような受け取り方一つ受け取り方方法ではあろうと思いますけれども金額が大分違いますので、恐らく私が御答弁申し上げているものとは違うものではないかという感じを持っております。いずれにいたしましても、御証言のときに余りその辺は詰められておらなかったように思います。
  29. 渋沢利久

    渋沢委員 時間がありませんので話題を変えまして、今度の事件の中で何といいましても重みのある主役の役を演じた一つ海部メモというものがあると思います。その一、川崎重工の社長あてに出された一九六五年七月二十四日付のメモにありますようなフォーサイス海部岸会談と言われるサンフランシスコにおける会談について、報告書F4ファントム売り込みに関して海部氏がフォーサイス氏を岸氏に引き会わせ陳情を行ったということを確認しておられるわけですけれども、このことを明らかにするためには岸元総理からの直接の確認をとらなければならぬ事案といいましょうか性質のものだと思うわけであります。岸さんをどういう方法でお調べになったのか、参考人という形か文書の提出を求めたか、何らか直接のお調べ確認があったと思うのですが、いかがでしょう。
  30. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 冒頭にも御報告申し上げましたように、この内容真実性について、福田赳夫氏からの告訴もありまして必要を感じて所要の捜査をしておるわけでありますが、個々具体的な方について取り調べをしたかしないかというような点については御勘弁いただきたいと思います。
  31. 渋沢利久

    渋沢委員 報告書によれば、百機、二百機という機数の話は出ていないと明確に断定をされているわけでありますが、それにしても陳情という言葉もいろいろな意味がございましょうが、ファントム売り込みの働きかけがあった場であることだけは間違いのないことでありまして、これに対して陳情と言ってもいいですが、その陳情に対して岸元総理がどういうふうに対応されたのか。メモに書いてあるように引き受けるとおっしゃったのか、お断りをするということであったのか、検討しようと言ったのか、その辺の内容をひとつわかっている範囲でお知らせ願いたい。
  32. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 フォーサイス氏からF4ファントム性能等についていろいろ説明があり採用してほしいという陳情があったことはわかっておりますが、それに対して岸さんがどういう返事をされたか、この辺まではわかっておりません。何分大変十五年近く昔のことでございまして、会話のニュアンスまで再現することは不可能でございます。
  33. 渋沢利久

    渋沢委員 いずれにいたしましても、三十九年の十一月、これは岸さんの実弟の佐藤さんが総理大臣になられる、そしてその翌年の六月には当時岸さんの直系などと言われた松野さんが防衛庁長官になられる、その翌月にアメリカで行われたこの会談であるということ、この背景が一つである。もう一つは、そういう意味で言うと、当時岸元総理政府・与党内における大変大きな政治的な影響力行使し得る立場。この元総理とこの関係者会談という特徴がある。  もう一つは、メモ内容に百機、二百機の議論はないというのですけれども、しかしその後の推移は、事実が示すものは、この輸入もあるいは国内生産業者の指定、その分担比率は、おおむねこのメモの指摘するものにかなり近い状態で事実はその後推移しているという中身が一つ。  この二つだけの理由を考えましても、やはり今回のこの事件事件といいましても、その事件を金銭の授受にかかわる犯罪構成のあった部分という意味に局限しないで、まさに安全保障、国防という政府が国家の名において行ういわば国務にかかわって、商社や政治家がこれにどう不正にかかわったかあるいはどう不当にかかわったかということをきわめるという事件、そういう意味でこの事件をとらえるならば、このアメリカ会談は、この事件とのかかわりの中で大変高い位置を持っている。今度の事件を正しく知る意味では、非常に重要なかかわりのある位置を持った会談だというふうに受けとめざるを得ない。これは局長の所見を伺っておきたい。
  34. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのは一つの政治的な御判断、御推論だと思いますが、私の立場としては、犯罪捜査に関連して証拠によって認定したところを申し上げる以外はないわけでございます。
  35. 渋沢利久

    渋沢委員 海部メモの二枚目の問題点に移りたいと思います。四十一年三月十八日付。  改めて伺いますが、二百万円、これはスイス海部氏の口座に入っているのですか。
  36. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 これは当時スイスに存在した海部氏の口座であろうと思います。
  37. 渋沢利久

    渋沢委員 ここに入っているとすると、これはだれがどういうふうにして送って、それから入ってから先はどうなっているのですか。
  38. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 この金は、一応の私ども調べました限りでは、外国航空機以外の業者に対するリベートとして使われたように認めております。
  39. 渋沢利久

    渋沢委員 この西ドイツ、ドレスナー銀行への一千万円、これはだれの口座ですか。これは日本館口座じゃありませんか。
  40. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その点は確認されておりません。
  41. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、これは確認されていないというのも理解ができないわけでして、かなりお調べをいただいたはずだと思うのです。私、この段階で出所を明らかにすることは差し控えますけれども、この一千万円は四十一年の三月に西ドイツのドレスナー銀行日本館口座に送られ、四十一年十月四日に日本館日本に向けて振り込み、日本にはその月の七日に着いたと言われる話があるわけですが、こういう金の流れについてお聞きになったりお調べになったことはございますか。
  42. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 この一千万円の口は、航空機以外の外国におきますある商談に関連いたしましてある人から便益を受けたということで、海部が一千万円をこのメモによりまして経理から引き出して、その人の指定する口座へ振り込んだ、こういうことでございますが、一音申し上げさせていただきますと、スイス及び西ドイツにおきましては銀行調査を行うことができません状況にございますので、その辺は調べがついていないわけでございます。  と申しますのは、まずもってスイスは、ある程度御承知かと思いますが、ヒットラー時代のナチスから照会されても銀行照会に応じなかった名誉を有するというような国のようでございまして、捜査当局からの依頼に対しても峻拒してまいりましたし、西ドイツにおきましても、国内法の制約から私どもの方でその銀行口座について調べるということはできなかった、こういう事情でございます。
  43. 渋沢利久

    渋沢委員 日本館での口座ではない、こうももちろん言えないわけですね。
  44. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何とも申し上げかねます。
  45. 渋沢利久

    渋沢委員 大変残念ですが時間がありませんので先に進めさせていただきますが、海部メモの三枚目、新海部メモというのは、実にメモが多いので驚くのですけれども、五月二十五日、これは伊藤局長参議院航特でおっしゃっていること、この新海部メモ海部の書いたものとわかっている、しかし海部の書いたものにははったりとデモンストレーションに満ちたものがあり、知っている政治家の名前を挙げてみたりすることがある、記載内容すべて事実と判断するのはどんなものか、しかし、海部メモに書いたような考えを持っていたことは信じざるを得ない、政治家にそういう力があると信じてアクションを起こしていたとも思う、こういうふうに言われておりますが、こういう趣旨で受けとめてよろしいですか。
  46. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大体そのようなことでございますが、要するに海部氏としてはこういった一連の人事にあずかって力のあった人がいるというようなことを思っておったのではないかと思われます。
  47. 渋沢利久

    渋沢委員 このメモに出てくるこの政治家の名前が何人かありますが、この方々については事情をお聞きになったのでしょうかということが一つ。それから松野氏のこの人事に関する介入、これはほぼ認めてよろしいでしょうか。
  48. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 第一点でございますが、この「岸先生、増田、田中六助の合作劇」という、ただいま申しました三人の方々、この方々についてはこの件について事情を聞いていないはずでございます。と申しますのは、海部が勝手に名前を挙げただけだということがわかっておるからでございます。  それから、松野氏がこの人事問題を含め、F4ファントム等の問題についてどういうような動きをされたかということにつきましては、私どもとしては余り捜査ができておりません。
  49. 渋沢利久

    渋沢委員 他の委員会において、ここのメモに出ている何人かのうちでこの何人かの方はいわば関知せずということでお消しになっておる。松野さんはちゃんと残しておられる。これは松野さんについてはこういうかかわりがあった、これに近いかかわりがあったというふうにごらんになっているのじゃないですか。
  50. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏としてはそういうように思っておったものと認められます。
  51. 渋沢利久

    渋沢委員 それでは、その海部メモというのは、一、二、三と出たわけですけれども、さらにほかにも幾つかあるというふうに言われておるわけであります。たとえばその一つに四十二年の一月十七日付、中村長芳先生侍史ということになっている文章。ここでは表題がついておりまして、空幕長牟田空将早期退陣のうわさの件、こういう表題のついた手紙。いま一つは、四十二年三月二十四日付で、同じくこれは松野頼三先生侍史、こうなっている手紙、こういうものがあるというふうに聞いておりますけれども、これらはごらんになってお調べになっておられますか。どんな内容のものでしょう。海部氏自身が出されたものでありますか。
  52. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういうものがあるということは私も新聞等で拝見しておりますが、実は検察当局がそういうものについてどの程度の解明をしたか、まだ報告を受けておりません。
  53. 渋沢利久

    渋沢委員 これは海部氏が確かに出したものというふうに理解されておりますか。
  54. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その点も含めて、まだ報告を受けておりません。
  55. 渋沢利久

    渋沢委員 最後に、このSEC報告が指摘をいたしましたE2C機の代理店変更に介在いたしました政府高官、これがだれか。これはもう明らかにされてはどうか。教えていただきたい。
  56. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 SECが公表資料で指摘しましたその一人の政府関係者に当たる方はどうやらこの人らしいということはわかっておりますけれども、そのこと自体犯罪を構成するものでございませんので、その名前を明らかにすることは御勘弁いただきたいと思います。
  57. 渋沢利久

    渋沢委員 グラマン本社を訪ねた日本政治家に、松野頼三氏のほかにどなたかいらっしゃるというふうに承知しておりますか。
  58. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 恐らくはかにもおられると思いますが、私記憶しておりません。
  59. 渋沢利久

    渋沢委員 チータム氏やカーン氏は非常に重要な発言をこの件の解明にかかわってしておられるのですね。非常に重要な発言をしておられる。この二人の嘱託尋問をおやりにならなかったのはどういうわけなのか。ロッキードではコーチャン氏の嘱託尋問をやっておる。これがどんなに大きな役割りを果たしたかということは自明のことであります。どういうことでしょうか。
  60. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 嘱託尋問というのは、その前提として、起訴前の証人尋問請求を裁判所に対して行うことが前提でございます。裁判所に対して起訴前の証人尋問の請求をいたします場合には、犯罪事実を特定しまして、その犯罪事実と当該証人となるべき人との関連性を明らかにして裁判所に申請する必要があるわけでございますが、お尋ねの人物につきましては、そういう特定の犯罪事実というものとの具体的な結びつき、これが明らかになるというような状況でございませんでしたので、嘱託証人尋問の手続をとっていない、こういうことでございます。
  61. 渋沢利久

    渋沢委員 原田検事も大分長くアメリカに行っておられたようですが、このチータム氏やカーン氏と接触をしていろいろ事情、状況を知るというような努力もされなかったわけですか。
  62. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 原田検事は、三回目にアメリカへ行きましたとき、相当長く向こうに滞在いたしまして所要の補充的な調査をいたしております。その調査のやり方は、自分で直接関係者接触するというようなことでなく、司法省の検事にお願いしまして事情を聞いてもらうというようなことをやってきたわけでございます。ただ、その中身におきまして、司法省検事をしてどんな方と接触をしてもらったかというような点は御容赦いただきたいと思います。
  63. 渋沢利久

    渋沢委員 終わります。
  64. 永田亮一

    永田委員長 横路孝弘君。
  65. 横路孝弘

    ○横路委員 いまの渋沢さんの質問に関連して若干確認をいただきたいと思いますが、初めに、その五億円を松野氏側から要求をした時期について、支払われたのが四十二年の秋から四十六年だから、四十二年の秋の前だろうというようなお答えだったわけですけれども、これはその時期について、たとえば松野氏が防衛庁長官であった在任当時とか、その金の支払いよりもうちょっと前の方だったのじゃないでしょうか。
  66. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏がさる人の紹介で初めて松野氏と会うようになりますのが四十二年の初めでございます。したがって、ただいまのお尋ねのような事情はございません。
  67. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、松野さんと日商岩井との接触はその四十二年の初めからだということでよろしいですか。そして紹介の点ですけれども、本人の証言ですと、岸事務所の中村さんの紹介だということですが、それはいまの局長の答弁と一致しているのでしょうか。
  68. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野さんと海部氏と引き合わせた人というのは、あのときに証言でも言っておられたと思いますけれども中村さん以前にいるわけでございます。その方の紹介で会っておるわけでございます。それで、その方というのは全くの民間人でございます。
  69. 横路孝弘

    ○横路委員 松野証言によりますと、四十二年一月選挙後の早い時期に、選挙でお金がかかったろうということで三百万を海部さんが持ってきた、こういうことになっているわけですが、従来の御答弁から言いますと、これは五億というのとは別のお金だというように判断してよろしいのでしょうか。
  70. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 宣誓の上御証言になっておりますから、そういう事実があったと思いますが、それは五億円と別の話でございます。
  71. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、この五億円の授受なんですけれども、四十二年秋から四十六年というかなり広い範囲で十数回という漠然としたことになっておるわけですね。これは、一つは多分松野さん側の供述がはっきりいついつということではないからだと思うのですけれども、ただ日商側の資料によれば——局長がいままで答弁しているのは、銀行そのほかもきちんと調べておる、その上での発言だということですね。そうすると、何年の何月何日ということまではいいのですけれども、私たちこれから、いま当面松野さんの政治的道義的な責任ということが国会の問題になっている時点で一体どうなのかということを判断するに当たっては、その日付と金額の特定をもう少ししていただけないものか。つまり、四十二年の秋というのは大体十二月なら十二月くらいに大体最初は幾らくらいとか、四十三年の何月くらいにはどのくらいというような形で特定をしていただけないものかと思うのです。それはもちろんおわかりになっていることだと思うのですが、いかがでしょうか。
  72. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほども申しましたように、具体的な日時金額と申しますのが海部氏の偽証の公判の立証事項になってまいりますので、この段階で明らかにすることは御勘弁いただきたいと思いますが、四十二年はごくわずかでございまして、三、四、五、六とその四年間が中心でございます。ある年はきわめて少なくというようなこともないようでございます。
  73. 横路孝弘

    ○横路委員 この五億円について、いままでの御答弁ですと工作費と成功報酬という言葉を使われているのですけれども最初の段階からうまくいった場合にはというような話があったのでしょうか。
  74. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 最初からそういう話はなかったようでございます。  私も従来申し上げておりますのは、日商岩井側の考え方として、四十三年の十一月に導入が決定されておりますから、それより以前に渡した分は工作をお願いするような気持ちの金であり、それから後はありがとうございますというような気持ちの金になる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  75. 横路孝弘

    ○横路委員 それを分けるとどのくらいになりますか。つまり、その決定以前と以後とに分けると、以前の分はどのくらいなんでしょう。
  76. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大体一対三くらいの割合になるのじゃないでしょうか。
  77. 横路孝弘

    ○横路委員 それでもやはり事前の段階、つまり工作の段階でもかなりお金を使っているんだということだろうと思うのですが、ただ成功してから後の段階でどうなんですか。ファントムだけに限られるものなのか。途中でグラマンの関係代理店契約を日商が結ぶ四十四年の夏、E2Cの売り込みが入るということになりますと、その辺のニュアンスというのはこの五億円の中に入ってくるのでしょうか。それともやはりそれはあくまでもファントムならファントムの線でずっといったものか、その辺はいかがでしょうか。
  78. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 客観的に見てみますと、ファントムの利益採算を計算して五億円を出そうということを決めております。現実に最初のうちファントム手数料で穴埋めをしておるわけで、それで余り額が多くて埋め切れないものですから、RF4Eで一遍に埋める、こういうことになったわけでございまして、そんな点からも日商岩井としてはもっぱらF4ファントムのことのみが念頭にあったように思われます。
  79. 横路孝弘

    ○横路委員 その五億円の根拠なんですけれども松野さん側からの要望があったという話と、それからいまのファントムの利益を計算をしてというお話があったわけですけれども日商としては五億円の内訳、何かファントム機数によって一機当たり幾らとか、そういうような計算でもなさっていたのでしょうか。いまのファントムの利益採算という点についてもう少しお話しいただければと思うのですが。
  80. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いろいろ細かい話に立ち入りますと、捜査資料の生の中身が出てしまいますので、御勘弁いただきたいと思うのですけれども、すでに国会の御論議で出ておる問題としては、たしか正森委員が一度利益計算書みたいなメモ島田メモとおっしゃってお示しになっておりましたが、そういうようなものを見ますと、航空機部としてどれくらい今後利益が伸びていくかというようなことを書いておりますが、要するに航空磯部でこんなにかせいでいるんだからこのくらいは言うことを聞いてくれというようなあれはメモだと思うのですが、そういうような感覚で検討をしておったようでございます。
  81. 横路孝弘

    ○横路委員 つまりその五億円というのは最初の段階の話ですから、その最初の段階でそういう利・益の計算をも行って日商としてはオーケーを出したといいますか、提供した、こういうことですね。
  82. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 五億円の要望があって、それじゃ五億円出しましょうというような話にはなっていないわけでございまして、日商岩井側としては採算を見ながら逐次出していって結局五億円出した、こういうことでございます。
  83. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、その要望というのは何回かに分かれてなされているわけですか。最初の段階は最初の段階にあったとして、後は、たとえば四十三年の決定なら決定した段階でまた要望が出てくるとか、こういうことでしょうか。
  84. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういうことではございません。まあこれから先は日商岩井の者の気持ちにならないとわからないのですけれども、そんたくするのに、五億円というお話があったけれども、出せれば出したいところでありましょうけれども、もうけがなくて出せなければ出せないわけで、そこら辺をいろいろ勘案しながら結局五億円出したんじゃないかと思います。
  85. 横路孝弘

    ○横路委員 その日商の方のことについては後でまたお尋ねしたいと思うのですが、五億円について工作費と成功報酬との割合が大体一対三ぐらいというお話だったわけですけれども、この金について日商の方から表に出さないでくれということで松野さんの方も届けをしなかったということですが、先ほど議論された海外で数万ドルずつ数回ということですね。この海外で受け取ったということは、これは日商の都合によってそうしたのか、松野さん側の都合によってそうしたのか、これはどういう事情なんでしょうか。
  86. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 実際に金の授受をほとんどやりました島田さんが亡くなっておりますので、その辺の細かいことが必ずしもわからないのでございます。
  87. 横路孝弘

    ○横路委員 これは海外でというのは、何か国内よりは海外の方が隠しやすい、つまり表に出にくいだろう、こういう意図がやはり双方にあってのことなんでしょうか。
  88. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 どういうことか、私にはよくわかりません。
  89. 横路孝弘

    ○横路委員 この海外で受け取ったお金というのは、また国内に持ち込まれているのですか。
  90. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その使い方については調べができておりません。
  91. 横路孝弘

    ○横路委員 これは場合によっては外為法の関係——もちろん時効の問題もあるでしょうが、形態によっては外為法の関係も出てくるのじゃないでしょうか。
  92. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 昭和四十四年の外為法の関係省令等の改正以前でございますと、ストレートに外為法違反が成立いたしますし、その以後でございますと、きわめて複雑な規定になっておりまして、単純贈与ならならない場合もあるし、あるいはなる場合もある、非常に複雑な為替管理になっておりますので、一概に申し上げかねます。
  93. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、松野さんの場合は参考人としての事情聴取であって被疑者としての事情聴取にはなっていないように聞いていますが、いまのお話ですと時効の問題ありますしそういう法律適用の非常にむずかしい問題があるとしても、やはりそれに違反するおそれは十分にあったのではないでしょうか。つまり検察庁の方で事情聴取する場合に、海外で相当大きなお金が授受されているということになりますと、その形態によっては法律に触れてくる大変な問題があるということになれば、それは当然被疑者として事情聴取をするということになれば、事情聴取の仕方も大分変わってきたのではないかと思うのですけれども、そこはどうですか。
  94. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 仮に外為法違反ということを考えるにいたしましても、時効が完成して長くたっておる問題でございます。そういうことで被疑者扱いすることはできないと思います。
  95. 横路孝弘

    ○横路委員 この五億というお金なんですが、日商岩井ファントムについての工作の姿は一体どうなっていたのかということが、この報告書にも全然出てこないわけですね。皆さんが捜査をされる初めというのは、アメリカ側の資料を含めて航空機購入に絡む疑惑解明するのだという大変な意気込みだったわけですが、その日商の工作そのものがどうもはっきりしてこないわけです、もちろん捜査はされていると思うのですけれども。  そこで、若干お尋ねしたいと思うのですが、三十九年に日商岩井代理店になって、それから工作が始まったろうと思うのです。四十年、四十一年、四十二年ということで、先ほど来のお話ですと四十二年から松野さんがいわば中心的な役割りを政界工作の中で果たしていくわけですが、これ以前の日商のいわば工作の姿といったものは皆さんの方で当然捜査されたと思うのですけれども松野さんが登場する以前からいわゆる工作は始まっていたと理解していいと思うのですが、よろしいでしょうか。
  96. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 常識的に考えますと、代理店になれば当然売り込みの努力をするものであろうと思いますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように私ども犯罪を追い求めてその証拠を固めているわけでございまして、ファントムについて昭和四十年代の初めごろあるいは三十九年前後に日商岩井がいつどういうところへ話を持っていったとか、そういうことは調べておりません。
  97. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、四十年の七月にはもうすでに先ほど来の海部メモが出てくるわけですね。そして海部メモについては皆さん方捜査をされておるわけです。それから防衛庁のいろいろな人事についても海部メモという形で出てきていますから、その辺のところは、皆さん方四十年、四十一年について捜査していないはずはないと思うのですね。それは犯罪を構成するかどうかは別にして、いわゆる海部メモという形で捜査をされているだろうと思うのですけれども、たとえば松野さんとの接触についても四十二年以降だということですが、四十一年三月十八日の海部メモでは松野さんに対する支払いという形で出ているわけですね。その内容は事実じゃないという先ほどの報告がありましたが、少なくとも松野さんに対する支払いだということで経理で通用した、それでオーケーということで金を払ったということはやはりそれなりの理由日商の内部にあったということじゃないでしょうか。つまり、経理の方にこれは松野さんに対する払いだよと言えばそれでわかったということになる社内のファントム売り込みに対する対応があって、そこでオーケーが出るということではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  98. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういうお話になりますと、むしろ日商岩井の方をお呼びいただいてお聞き取りいただいた方がいいと思います。
  99. 横路孝弘

    ○横路委員 日商をさらに呼んでというのも大変貴重な示唆だと思うのですけれども、しかし同時に皆さんの方で捜査された結果も私たち国政調査権として使わせてもらうこともできるわけでありまして、ぜひ御答弁をいただきたいと思うのであります。何かここ二、三日局長の方に大分風当たりが強いようでありますが……。  たとえば海部さんを岸事務所の中村さんが紹介したとか、あるいは川部氏がカーン氏を紹介したということが松野さんの証言ではっきりしているわけですね。岸事務所と日商岩井とのかかわり合い、つまりこうやって、御本人は別にして秘書の人たちはいろいろ動いている。つまりこれは何らかの関係日商岩井との間にあったということだろうと思うのですけれども、そこら辺はいかがでしょうか。
  100. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど申し上げましたように、訴追すべき事実と関係のないことまでむやみやたらと調べ回るというようなことは検察としてはできないわけでございまして、そうかといって、いろいろな人から話を聞いているうちに、犯罪証拠を集めるという観点でお聞きしているわけではないのに、たまたま聞き知ったということまで私がこの席で述べるということはきわめて適当でないと思うわけでございまして、それはうそも隠しもなく犯罪事実と余りに縁遠いことは調べておりませんので、率直に申し上げておるわけでございます。
  101. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、たとえば松野さんと海部さんが中村氏に紹介されて会った目的であるとか、川部氏が紹介をしてハリー・カーンと松野さんが会った会談の目的であるとかいうようなことについては検察としては捜査していないということですか。
  102. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういった点を焦点として捜査はしておりません。
  103. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、岸さんの方には金が行ってないのだという海部メモに関しての先ほどの御答弁がありましたが、これはどういう捜査の結果でございましょう。
  104. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 今回の疑惑に取り組む検察の姿勢としては、終始申し上げておりますように怪しい金が流れておりはしないかということで簿外の金とされたものの行方を全部追い求めておるわけでございます。追い求めた結果、そういう簿外の金から岸さんというような人に金が流れた事実は全くない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  105. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほどの渋沢さんの質問に関連しますが、四十一年三月十八日付のメモですね、銀行口座について、ユニオン銀行については海部口座であるが、もう一つドレスナー銀行の方はよくわからないと言ったのか、調べはついていないのだということを先ほど御答弁されながら、つまりスイス銀行というのは大変口がかたいのでということをおっしゃると同時に、何か海部氏が商談で世話になった関係のところだというような御答弁をされたわけですが、これは判明しているのかしていないのか、どっちなんでしょう。判明しているけれども言えないということなのか。
  106. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 商談について尽力した人の名前がわかっております。その人の要求によってその人の指定する口座へ一千万円払い込んでもらった、こういうことでございまして、判明しております。ただ、その口座のナンバーはメモ自体でわかりますけれども口座の名義人までは私、確信を持ってお答えするだけの裏づけ資料がありませんので、推測だけを申し上げるわけにいかないのでお答えしていないわけでございます。
  107. 横路孝弘

    ○横路委員 これはしかし問題は、松野福田両氏に対する支払いということになっていて、この文書については福田赳夫さんの方から告訴をされているということですね。そうするとこれは両者の関係者じゃないのだあるいは政治家関係者じゃないというのか、いや政治家関係ではあったけれども松野福田両氏関係がないというのか、その辺のところは非常に大事なところなんで、いままでの局長の答弁だと裏づけをとれないから、海部の言うことだけでは信用できないからお答えできないということのようなんですけれども、私たちが持っているような一つの疑いがありますね、つまり、日商の政界工作に関連した金ではないか。いま商談、商談ということですが、どういう商談なのか、やはり疑いを持たざるを得ないわけでありまして、これはファントム売り込みには関係ないのですか。
  108. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 飛行機とは全く関係ありません。あえて一言だけ申し上げますと、アフリカ方面の商談の関係でございまして、全く飛行機とは関係ありません。
  109. 横路孝弘

    ○横路委員 工作資金、それから成功報酬ということですが、工作ということですね、これもいわば犯罪事実と関係ないと言われてしまうのかもしれませんが、工作といった場合には、やはり決定する権限を持っているところへの働きかけということになろうかと思うのですね。たとえば四十三年に決定するに当たって、防衛庁調査団を出したというようなFX調査団に対する働きかけとか、松野さんというのはその五億円に見合うどんな活動をしたのかということになるわけです。皆さんの方は金が五億円行ったということだけで終わっているわけですけれども、私たち国会としては、どういう工作をしたのかということをはっきりして、やはりこういう不正事件が起きないような措置というものがもし立法的にとれるものならとっていくということで、いま議論しているわけですね。したがって、五億円の授受そのものが職務権限の問題であるとか時効の問題で犯罪行為にならないとしても、どういう工作をしたのかということはやはりぜひ明らかにしてもらいたい。五億円に見合う何をやったのかということですね。たとえば、調査団に対する何らかの働きかけというのはあったのでしょうか。あるいはそれも捜査していないというのか、いかがでしょう。
  110. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野氏が日商岩井の期待するところのF4ファントムに関しましてどういう動きをされたか、この点については捜査ができておりません。
  111. 横路孝弘

    ○横路委員 そのできていないというのは、しなかったということですか。
  112. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 間接事実の間接事実のそのまた先でございまして、検察権を行使する限界を超えておるということで調べておりません。
  113. 横路孝弘

    ○横路委員 やはり五億円の授受犯罪を構成しないとしても、政治献金の枠を越えて賄賂性を非常に持っているかどうかというところというのは問題でありますし、一体どういう工作をしたのかという点が大きな問題になるわけですけれども海部の供述調書とか、日商岩井ファントム売り込みに関する工作を示す資料であるとか、あるいは関係者の供述というものは、これだけたくさんの、五百人を超える人に聞いておるわけでありますし、押収の資料だけでも大変なものがあるわけですから、つまり、捜査として役立たなくても、国会としては大変役に立つ資料がたくさんあるだろうと思うのです。  そこで、これは委員長要望したいのでありますが、刑事局長の方は、今後海部等の公判で明らかにするものも一部ある、しかし、それ以外の部分については捜査の秘密であるから資料を公開しないというようなことを法務委員会で御答弁されているようですけれども、刑訴法四十七条のただし書きの趣旨からいっても、あるいは国会が国権の最高機関であるというところからいっても、委員会としてやはり正式に資料要求を私はぜひしていただきたい。  その資料要求の内容は、一つは、特に五億円に限って工作と成功報酬の関係ですが、五億円に関する日商側の海部を含めた関係者の供述調書と日商の内部の資料という点。それからもう一つは、いわゆる日商ファントム売り込みに当たっていかなる工作というものを行ってきたのか、昭和三十九年代理店になって以降の動き、それを示す資料というものについて、ぜひ委員会として法務省の方に資料の提出を求めてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  114. 永田亮一

    永田委員長 ただいまの横路君の御要求につきましては、後刻理事会において諮って協議をいたしたいと思います。
  115. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、きょう法務大臣がおられないので、刑事局長捜査内容について比較的国会でも御報告はいただいたと思うのですけれども、ちょっと観点が法務省捜査当局と私たちとやはり違いますので、皆さんの方が役に立たないと言っている資料でも、私たちが非常に必要としている資料というのもあるわけです。刑訴法四十七条のただし書きからいえば、国会が国政調査権の関係として議決するということがまさに公益目的であるというように、これは私たちも解釈しますし、最近法律家の解釈も、かなり積極的に資料の公開といいますか、特に国会に対する協力ということを言っているようでありまして、ぜひ御検討をいただきたいものだというように私は思います。この辺は何か大分厳しいようですが、皆さんの方の態度は変わらずということなんでしょうか、少しは協力してくれる姿勢というのがあるのでしょうか。
  116. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 昨日法務委員会でもちょっと妙な言い方をしてしまったわけでございますが、私は、国政調査というものが大変重要なものであるという認識のもとに立ちまして、大臣とも御相談の上、明らかにし得るぎりぎりのところまでお答えをしてきたつもりでおるわけでございまして、そこまでお答えをするとさらにまた持っているものをみんな出せと言われると、私としてもまことにつろうございます。  のみならず、今後にわたります公判の運営、さらには将来永劫に捜査という仕事は続けなければなりません。その捜査に協力してもらう方々の立場というものも考えなければなりません。  そこで、もっと具体的な御提案でもございました場合には、大臣と御相談をすることもあると思いますけれども、ただいま仰せになりましたような漠とした、何でも要らないものはみんな出せというようなことは、断じてどうも御協力いたしかねると申し上げざるを得ないのでございます。
  117. 横路孝弘

    ○横路委員 漠然と言っているわけじゃなくて、特に五億円を日商の方から渡した意味とか意図とかいうものは、特に中心になっていたのは海部さんでありますから、その供述調書の中にそういう工作の過程であるとか、金員を渡した意味だとか、先ほど言ったファントムの利益計算みたいなものをどうやってやったのかとかいうような点がきわめて詳細に出ているのじゃないかと思うのです。これは理事会で検討するということでございましたが、法務省の方もそういうことでありますから、私たちも後で理事を通じて、かなり特定をして具体的な項目を挙げて要求いたしたいと思いますので、委員長の方でお取り計らいを願いたいというように思います。  時間が来ましたので、最後一つだけちょっとお尋ねしたいのですが、有森関係ですね。証言拒否罪で起訴されたのですが、ただ常識的に考えると、全く外為法違反の事実がないのに、弁護士もついておって証言を拒否したということは、ちょっと理解がしづらいわけで、少なくとも日商の、たとえば先ほどの海部メモにあらわれたような金額の送金であるとか、あるいは本人も良心に恥じる行為があると言っていましたけれども、やはり何らかの行為には本人は関与していたのじゃないでしょうか。つまり、証言拒否罪というのをどの辺でとらえるかというのは大変むずかしいところだと思うのですけれども、本人には外為法違反というのは時効の問題は除いて全くなかった、全く何の心配もないのに、本人が要するに述べたくないから述べなかったんだということなのか、この細かい議論をすると別になりますが、どうなんでしょうか。どうもよく理解ができないわけです。
  118. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その点が、恐らく随伴者であられた弁護士さんが弁護人になられるでありましょうから、公判の一つの争点になると思われますので、細かいことは申し上げかねますけれども、要するに、有森氏が実際自分が関与したことをそのまま正直に弁護士に御相談になれば、証言拒絶の理由はないという助言が得られたであろうと思われるわけでございます。自分がやったことでもないことをいかにも自分が何でもかんでも関係したように弁護士さんにお話しになれば、弁護士さんもそれは外為法違反の疑いがあるかもしれぬというふうなことはおっしゃると思いますけれども、もう外為法の時効云々を論ずるまでもなく、証言拒絶の正当な理由はないというふうに考えております。  なお、先ほど資料の問題で供述調書とかなんとかまた重ねて仰せになっておりましたけれども、およそ供述調書などというものは門外不出これにきわまるものでございまして、それこそ海部の調書を出せとおっしゃるのなら、むしろ海部氏をもう一回国会で直接お調べになった方が直接主義の原則にもかなうのじゃないかと思います。そういう意味におきまして、生の資料をそっくり出せというような御要求はやはり私どもとして、これは大臣が何とおっしゃいますか知りませんが、私、大臣と相談いたしましても出せとはおっしゃらないと思います。
  119. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと最後に一言。局長がよけいなことを言われるから……。  私たちは海部氏を呼ぶことに大賛成なんです。そういうときに、法務省の方から、公判に差しさわりがあるとかというような横やりが入って、自民党がそれを受けて証人喚問ができないということなんでありまして、いまの局長のお答えだと、起訴した被告人についても国会で大いにやってくれということですから、これから公判を理由にしてクレームをつけられることだけはなさそうでありますので、私たちもその趣旨で大いにやっていきたいと思います。よろしく。
  120. 永田亮一

    永田委員長 坂井弘一君。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 捜査処理報告をいただきましたが、報告に従いまして若干お尋ねしたいと思います。  E2Cに関して、いわゆる8K報告で、日本政府関係者の示唆により日本における代理店を変更した、このことにつきましては、代理店の変更の経緯は判明したものの、その事柄自体犯罪を構成するものではなかった、こういう結果の報告でございます。先ほどのやりとりをお伺いいたしますと、およそだれが介在したか、それはわかっておるけれども言えない、こういうことでございますが、この8K報告に示された日本政府関係者の示唆があって、そして結果的に介在して、それが成功して代理店の変更がなされた、こう理解してよろしゅうございましょうか。  同時に、この際の日本政府高官というのは単数ですか複数ですか。
  122. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 SECが公表しました8K報告書と申しますのは、グラマン社が提出した報告でございまして、そこに書かれておることからわかりますように、グラマン社としては一人の日本政府関係者の示唆によって代理店を変更した、こういう認識でおるようでございます。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 捜査結果もそのとおりであった、こういうことでよろしいのですね。
  124. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 グラマン社が申しておりますその人に当たると思われる人は特定されております。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 それは、その人の示唆があった、こういうことであったという理解で間違いございませんか。
  126. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 比較的正確に申せば、その人の示唆もあってというようなことであると思います。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 なるほど、示唆もあって……。先方の意思もあるのでしょうから、同時にその人のそれを受けた示唆もあったということだろうと理解いたします。  次に、「日商岩井手数料の一部を米人コンサルタントに支払う可能性があり、その一部が更に日本の公務員に支払われる可能性がある」という8Kレポートの指摘でございますが、このことに関しましては、「いまだグラマン社から日商岩井にE2Cに関する販売手数料が支払われた事実がなく、また、日商岩井手数料の一部を米人コンサルタントに支払う旨の契約が存在した事実は認められるものの、これに関して犯罪容疑を認めるには至らなかった。」という捜査結果の報告でございまして、ちょっと答えになりづらい感じがございますのでお伺いいたしますけれども、結果的にはこういうことだったという報告ですが、「支払われる可能性」ということは、やはりある種の約束めいたことはあったのでしょうか。それとも約束までには至らないけれども少なくとも先方の意思としてこれこれの金をその場合にはお支払いしましょう、こういう話はあったということでしょうか。及び、この場合はやはり複数と理解してよろしゅうございますか。
  128. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 8Kレポートが公表されました当時、国会でも約束罪というものもあるのでというような御論議がございまして、私もそれを肯定した経緯がございます。ですから、検察当局におきましては約束罪というようなものの成否も含めて検討したわけでございます。  結果的には、米人コンサルタントに支払われます歩合というものが利益の四〇%に及ぶという大きなものでございます。したがって、その米人コンサルタントはその中からいろいろ工作費として使うであろうということが想定されておったようでございます。そういうことからグラマン社がそれを指摘し、後にコンサルタント契約を解除するように迫った、こういうことでありますようで、要するに、そこに書かれておる政府関係者というのは当時不特定である、こういうように考えられます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 約束がここでできたというところまではいっていないということですか。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 さようでございます。特定の政府関係者というものがはっきり浮かんでおったわけではなくて、売り込みが成功すれば当該米人コンサルタントは若干の人たちにお金を持って  いくかもしれない、そういう危険性があるという  ことを関係者が察知した、こういうことのようでございます。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 特定されておりませんが、商社変更に介在をし示唆をした政府高官と——特定されないという後段の方についてはお答えでございますけれども、これはやはり何らかのつながりがございますね。
  132. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何分特定されておりませんから、つながるともつながらないともちょっとお答えをいたしかねます。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 ボーイングの方で百五万ドルのうちの使途不明金の「四七万ドルの一部は航空機販売活動資金に充てられているが、これが政界ないし政治家に流れた形跡は認められない。」こういう報告でございます。四十七万ドルの一部については航空機販売活動資金に充てられた、この一部というのはどれぐらいの額になりますか。そしてこれは民間人を指すのでしょう。どれぐらいの額になりますか。それから、そうでありますと四十七万ドルの大半と言えるかどうか、まあ相当部分と言った方がいいのですかどうですか、いずれにしてもこの一部以外の部分については解明されていないということなのか。同時に、解明されていないとするならば、その中には政界ないし政治家に流されていないという断言はちょっとできないだろうと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。つまり、可能性としては政界ないし政治家に流れる可能性も全くないとは言えない、こういう答えになりますか、それともいや、この部分についても全く政界、政治家関係ない、こういうことでしょうか。
  134. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 この報告では「四七万ドルの一部」という記載をいたしましたけれども、これは全部でないという意味の一部でございまして、四十七万ドルの相当部分、もちろん半分をはるかに超える部分は複数の民間人に民間機の売り込みに関連して流されております。したがって、ごく一部が残りの問題になるわけですけれども、その点は、島田三敬氏がお亡くなりになっておりますために判明いたしません。したがって、そこから政界へ流れた可能性が全くゼロ%であるのかと仰せになりますと、それを否定するだけの資料もないわけでございますが、その残りの部分につきまして、島田氏が関与しておる関与の状況からしますと、そういった方面の金に使われたのではほとんどあるまいというふうに思っております。  いずれにいたしましてもこれは、海部氏の偽証事件等の公判でこの辺は明らかになってまいると思います。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 若干整理と確認意味お尋ねしたいと思いますが、いわゆる五億の金についてでございますが、刑事局長、先ほどからのやりとりを伺いながらですが、初めに五億ありき、この初めの五億というのは、松野氏が五億の要求をして実際それが支払われる四十二年の秋、この四十二年の秋以前の時期にこの五億の要求が松野氏から出た。実際支払われる四十二年の秋の直前と見ていいのですか。かなり前ですか。五億の要求が出された時期……。
  136. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 まあ、大体そのころというふうに理解していただいて結構だと思います。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 大体そのころといいますと、四十二年の秋に近い時期ということだろうと思いますが、そうしますと、初めに五億ありきのその前にもう一つの初めがなきゃおかしいのでありまして、初めに工作ありき、この初めに工作ありきの時期は四十二年の春、こういうことでしょうか。
  138. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そこのところは、松野氏が証言しておられましたように、四十二年の春に二、三百万円持ってあいさつに来た、その辺から海部氏と松野氏との接触が始まるわけでございます。海部氏も商売人ですから、ただ黙って顔を合わせるだけではなくて、当時彼の一番念頭にありましたのはF4ファントムの件でありますから、そういった話は出ておったものと思われます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 それは物の道理でしょうし、非常に自然な話だ。ですから、四十二年の春だろうというお答えだと理解をしておきたいと思います。  そこで、この五億円につきましては、F4ファントム売り込みの工作資金、それから成功報酬、これは結果的にこの二つに性格づけられるのではないかという先ほどの伊藤刑事局長の御答弁でございますが、まず工作の方は後にいたしまして成功報酬——どっちの意味も含めても結構でございますが、つまり五億、これはF4ファントム売り込みのための金である、日商岩井側の意思ですね、それを認定する根拠は海部の供述あるいは日商部内の捜査捜索、押収資料、それからいま一つ松野氏からの事情聴取によってもそのことを立証できるということに相なりますか。いや、そうではなくて、海部供述、その他日商岩井関係捜査捜索、資料、あるいはその他、そういうものによってこのことは証明されるのであって、松野氏の事情聴取はこれを認定する根拠にはなっていない、こういうことでしょうか。
  140. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井側が、ファントムの導入について力のある方からのお申し越しであるという認識のもとに五億円を逐次出しましたことは、日商岩井関係者の話あるいは先ほど来申し上げております大変困難な経理操作をやっておりますその間におけるいろんな資料、こういうものを総合して一致して認められるところでございます。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 松野氏からの事情聴取では、その辺のことについては聞かれたのでしょうか、どうなんでしょうか。
  142. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私まだその松野氏を検察庁で調べたあるいは事情聴取をしたということを認めておらないのでございます。まあ仮に、金の受け渡しの問題でございますから、渡した人がおれば受け取った人がおる。いろいろ調べを尽くしていくのが検察の常道でございます。ただ、具体的にどういう方から事情をお聞きしたかあるいはその中身はどうであったかというお尋ねには、ちょっとお答えをいたしかねるわけでございます。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 刑事局長せっかくの御答弁、まあお答えいたしかねると、その辺の事情わからぬではございませんが、これは非常に重要なポイントだろうと実は私思うわけでございまして、少なくともこうは言えますか。松野氏の事情聴取において松野氏御自身は明確にこれを否定したということでは少なくともないというあたりまではお答えできないものでしょうか。そうではないならそうではない。F4ファントム売り込みのための五億であったのだということは、どういう形であれ松野氏の事情聴取においてその辺も立証できておるという立場をとられるか、いや、そうではなくて真っ向から松野氏は成功報酬あるいは工作資金ということについては否定をされた、つまりそれは純粋なる政治献金である、こういう主張をされたのかどうなのか。この辺のいきさつについて若干聞かしていただければ、こういうことでございます。
  144. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 検察庁における調べ内容を、一般論ですが、申し上げるということは、厳に慎ませていただいておるわけでございますが、松野氏も宣誓の上証人として二回にわたって証言しておられるようでございまして、松野氏の認識は御証言のようなことであろうかと思っております。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 この五億が、事前に支払いの要求が松野氏から出された、必ずしもその時点で五億を渡しますということを日商側は合意したわけではない、結果的にだんだんだんだんと渡していくうちに五億になった、こういうことでございますが、ここら辺のところちょっとどうも釈然としないわけです。やっぱり五億の要求が出されたならば、それ鶴出すのか出さないのか、出す側にはやはりこれはふところ勘定もございましてね、一般常識としては。それはちょっと無理だよとか、いやその額ならばまあ何とかでは出しましょうとかいうようなことが、通常一般社会常識といいますか観念ではこれは通常だろうと思うのです。この種の問題は別としましてもね。刑事局長は先ほど、日商岩井側松野氏の要求の五億をそこでのんで、つまり合意したのではない、こういう趣旨の御答弁でございましたが、それはそのとおりなんでしょうか。若干私がいま申しましたような疑問等も含めて、いま少し親切にお答えいただければと思います。
  146. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 推測でございますが、仮に  ファントムの導入が決定しなくてほかの機種が導入されておりましたら、途中で当然打ち切られたのではないかと思います。  それをうかがわせるものとしては、日商岩井の中で、ときどき、採算に関する計算書をつくって、出してももうかるといいますか、というようなことを説明しながら出していっておりますので、まあそういうことではないかと思います。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 五億の金を要求をした、そして四十二年秋からだんだんその金が入ってくる。で、まあ最初のころは工作資金であったんだろう、結果的にですね。それが三分の一。それから、決定した四十三年の十一月以降については成功報酬、これは一対三ですか。前の分が一、後の分は三。これは比率は別といたしまして、まあそういう形で金が入ってくるといたしますと、要求をした側とすればこれはやはり何かしなければ、全く何もしないで、それも五億ありきの前に工作ありき、・一それで要求をした、その金が入ってくる、そうすると当然相手方の意向を受けて何らかの働きというものはしなければならないだろうというのは、これはまた世間の常識だろうと思うのです。何もしなかったということになると、これはまたきわめて不自然なことでありまして、不自然というのですか何というのでしょうか、これはちょっと常識では考えられないわけです。したがって、何らかの働きかけをしたであろう、この何らかの働きかけというのは、たとえば政府部内、たとえば政界等々、何かの動きはしたというようないきさつについては多少ともその辺のお調べはされたものでしょうか。されるのが常識だろうと思うのですけれども、いかがなものでしょう。
  148. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井側では力になっていただいているという認識があったと思いますけれども、果たして松野氏がどのような動きをされたかについては、先ほども申し上げましたように捜査が尽くされておりません。結局、金の流れを確認するというところで必要な捜査の範囲が限られてしまった、こういうことでございます。
  149. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、この件に限らずもっと幅広い、つまり8Kレポートに指摘されました事項等につきまして、E2Cの問題等も含めて防衛庁部内から事情聴取をされたということは当然おありでしょうね。
  150. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 8Kレポートに書いてあることの中身につきましては十分分析いたしまして、犯罪の存否を究明したところでございます。  なお、二百三十八万ドルに始まりますこの五億円の問題は、8Kレポートでは指摘されていない問題でございます。
  151. 坂井弘一

    ○坂井委員 だから裏返しに聞いたのですけれども、8Kレポートに指摘されていない二百三十八万ドル、これに関する五億でございますから、この五億については全くこの金の出、あるいはその前にこの金を受け取られた松野氏が何らかの働きかけをしたであろうと思われるわけですけれども、そのこと等については一切調査捜査、事情聴取していない、こういうことでございますか。
  152. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのことは捜査の範囲外であった、こういうことでございます。
  153. 坂井弘一

    ○坂井委員 それから先ほども出ましたが、この五億については、E2Cの代理店変更介在の謝礼的な意味合いというのは、全くそういう性格はない、こう断定できますか。それともそうではなくて、その辺の、先ほど御答弁ございましたからそれはそれなりにわかるわけですけれども、E2Cの商社変更の示唆、介在、それに対する謝礼的な意味もこの五億の金の性格の中にはニュアンスとしてはあるんではないか、こういうお感じでしょうか、どうでしょうか。その辺をひとつ……。
  154. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほども申し上げておりますように、もっぱらファントムわが国導入に関連して出されたものというふうに考えられます。
  155. 坂井弘一

    ○坂井委員 質問を最初のところへ戻しますけれども、五億の要求が出された、その前に日商岩井側からのF4ファントム売り込みの働きかけ、工作がある、そういうことになりますと、やはりここら辺は黙示の合意というような感じですか、そこまではいきませんか、どうでしょうか。
  156. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 工作というのか陳情というのかよくわかりませんけれども、それはともかくといたしまして、人それぞれに主観というものがあるわけでございます。したがって、私が大した根拠もないのにそんたくするということはいかがかと思われるわけでございまして、やはり人それぞれの考えだろうと思います。
  157. 坂井弘一

    ○坂井委員 五億の金を日商がそれに応じまして出していくわけですけれども、この場合に、先ほどお答えになりましたけれども、これは海部氏の一存だけでいくわけではない、かなり広く社内にも声もかけた、それからそれなりの手続をとっているのだろうと思いますが、その場合、たとえば経営者会議でありますとか役員会、そういうところでは報告されているのですか、そういう要求があった、これを出していいかどうかというようなことについて。
  158. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 出すことについてはごく少数のメンバーで決めておりまして、あとは経理担当者がこれを援助してやっておるということでございまして、もちろん取締役会とか経営会議というようなもので報告するようなことはしておらないようでございます。
  159. 坂井弘一

    ○坂井委員 要求側の松野さんの方は松野さん御自身お一人だけで、その他の方を含むというようなことはございませんか。松野さん以外に関与された人というのは全くない、こういうことでしょうか。
  160. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。
  161. 坂井弘一

    ○坂井委員 支払い方法とか支払い時期とか支払いの場所、それについては話し合いでこうしましょうというようなことはなかったのですか。あらかじめ、大体こういう形で、方法、時期、場所、いたしましょうというようなことは合意されておったのでしょうか。
  162. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 特に最初からいつ幾らというような話にはなっていなかったようでございますが、参議院におきます松野氏の御証言でございましたか伺っておりましたら、選挙の近い時期に、選挙だから持ってきてくれというようなことを話したような御証言もあったように思いますが、そういうことではなかったかと思うのでございますが、窓口であった島田さんが亡くなっておられますので、その辺の細かいところはもう一つわかっておらないのでございます。
  163. 坂井弘一

    ○坂井委員 外国で受領をされた数万ドル数回、これは松野氏個人は御本人が受け取ったわけでは全くないですね。つまり松野さんの指示で第三者に渡された、すべてがそういうことでしょうかというのが一点。それからその場合の第三者というのは、政治家は全く含まれませんか。つまり松野氏の、言うなれば私的関係の方、ここに渡った、そこから先のことはわかりません、またお調べになってもないのでしょうか。いま申し上げたような点についてはいかがでしょう。
  164. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野氏以外の方がお受け取りになったものもございますし、だれが最終的に受け取ったかわからないものもございます。いずれにしましても、松野氏にかわって受け取った方の中には政治家の方がおられるかどうかを含めて控えさせていただきたいと思うわけでございまして、その理由は、松野氏と私的な関係にある方であるからでございます。
  165. 坂井弘一

    ○坂井委員 刑事局長にお伺いしてどうかと思うのですが、それは政治献金というような性格のものになりますか、どうですか。
  166. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 政治献金とか工作費とか報酬とか、いろいろ人はお金に名前をつけますけれども、そのことは余り意味がないのではないか。政治献金という名前で授受され、政治資金規正法の届け出がなされたものでも賄賂と認定されて有罪になった例もあるようでございますし、要は渡す人、渡される人が、どういうわけでこういうお金が出され、入ってくるかというそれぞれの主観の問題ではないかと思います。
  167. 坂井弘一

    ○坂井委員 この五億の金については、政治資金規正法上は何ら問題にはなりませんか。
  168. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 必ずしも政治資金規正法の所管をしておるわけではございませんが、当時はこういう個人献金につきましては、企業からのものでありましても届け出の義務はなかったようでございます。
  169. 坂井弘一

    ○坂井委員 松野氏が主張するような、この五億につきましては、すべて献金者の意に沿って政治活動に使った、ないしは選挙に使った、こういう主張は正しいでしょうか。
  170. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 それを判断する材料はございません。
  171. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、金の出の部分につきましてはほとんどが解明されていない、解明されたのは、たとえば海外等におけるごく一部である、こう理解してよろしいでしょうか。
  172. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。
  173. 坂井弘一

    ○坂井委員 四十二年秋から四十六年の暮れにかけての五億、そういたしますと、四十二年の秋以前の献金ということになりますと、たとえば四十二年の春の三百万、政治献金というものがございます。そのほか、四十二年の秋以前の松野氏に対する献金状況についてはお調べになっておられますか。
  174. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 五億円以外の献金等につきましても、その有無を含めまして一応の調査はいたしておりますが、その内容につきましてはこの問題と関係のない、本当の意味のといいますか、政治献金でございますので、明細は御勘弁いただきたいと思います。
  175. 坂井弘一

    ○坂井委員 一間だけ、済みません。  あえて私がなぜそういうことを申し上げたかと申しますと、四十二年秋から四十六年の暮れに至る五億、これはF4ファントム売り込みに対する工作資金であり、成功報酬である。金の性格というのは非常にはっきりいたしております。ただ、この期間に限ってだけ献金がなされたかというと、さにはあらずして、四十二年の春以前、これも献金があったでしょう、それから四十六年暮れ以降においても献金がなされたでありましょう、と思われます。つまり、政治家である松野氏個人に対する献金、こういう形のものが四十二年前、四十六年以降、つまりそういう前後においてなされたかどうかについては少なくともお調べになっていらっしゃるでしょうね、こういうことでございまして、その辺はいかがでございましょうか。調査されているかどうかについてだけお答えいただければ結構でございます。
  176. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 国会での御論議の中で、日商岩井が出した政治献金が十年間で約九億というようなお話も出ておりましたから、それには相応の関心を払って調査をいたしております。
  177. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  178. 永田亮一

    永田委員長 米沢隆君。
  179. 米沢隆

    ○米沢委員 松野さんの証人喚問あるいは衆参両院の各委員会の質疑を通しまして、松野さんが日商からもらった約五億円の金の性格について見解を異にしておることがわかっております。そういうところから、私たちは、松野氏の偽証の疑いが濃厚であると判断をしつつあるわけでありますが、問題は、一つに、松野さんが同じ証言の中で食い違いを指摘されて、検察側の立場は尊重する、賄賂性につきましてみずから否定も肯定もしない微妙な言い回しをしておるところが大変気になります。ひょっとしたら取り調べの過程の中で、政治資金とは言いながら賄賂性そのものを認めておるのかもしれないという疑問と、もう一つは、松野氏は政治献金と言うておられますけれども、その名前、名目はどうであれ、それが松野氏に対して日商の方からF4Eファントムについてよろしく頼むという依頼事があり、そして献金がなされた、あるいはまた、日商岩井のそのような意をくんで松野氏自身がその一部をほかに使ったとするならば即賄賂性がある、こういうことで、私たちは松野氏と日商との談合の問題、それから松野氏の工作した事実の問題、そして松野氏から出ていったお金の性格の問題等々、関心を持って聞いてきたわけであります。  そこで、いままでの質疑の中でそういう面はほぼ解明されつつありますけれども、ここで整理する意味で、刑事局長の方に六点だけ御質問をいたしたいと思います。  その一つは、松野氏は当局参考人という形で調べられたと思いますが、当局調べに対しても、日商岩井からもらった金は純粋な政治献金であるというふうに一貫して主張しておられるのかどうか。第二に、松野氏が日商岩井からF4Eファントム売り込みについて依頼がなされた事実、あるいは昨日の報道では、松野氏から要請があったような答弁をなされておりますが、この点についてかなりの証拠資料が存在すると判断をしていいのか。  三つ、松野氏がF4Eファントム売り込みにどのような役割りを果たしたかが先ほど来議論になっておりますけれども、そのすべてではなくても、一部の事実でもつかんでいると判断をしていいのかどうか。  四つ目に、その一つの中に、例の新しい海部メモで言う人事介入らしきものがあったと判断して差し支えないのかどうか。  五つ、松野氏からの出の問題でありますが、これが一番あいまいもことしてわからないわけでありますが、一つは、F4Eに絡んだ出があったと把握されているかどうか。  もう一つは、これは参議院航特委の秘密理事会で問題になっておるらしいのでありますが、秘密会のことの中でしゃべられたことでありますから、それをネタにして議論するのは信義則に反するかもしれませんが、その点は御容赦願いたいと思うのでありますけれども、その部分について質疑がなされたときに、刑事局長は、秘密会で述べたことは述べた途端に忘れた、忘れざるを得ない立場にある、こういう話をされておるわけで、その話を聞く限り、逆にこの参議院航特の秘密理事会で言われた政治家に流れたというこのことが、非常に真実味を帯びてくるわけであります。そういう意味で、またその他の答弁の中では、一般的に政治家に渡ったと認めるに足る証拠はない、こういう話もされておるわけでありますが、私どもの解釈するところ、一部政治家に渡ったような心証は持っているが、その証拠はないというふうに理解をしてよろしいのかどうか。  以上の点について御説明をいただきたいと思います。
  180. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 多岐にわたる御質問でございましたから、漏れがございましたら御指摘をいただきたいと思います。  第一点の、松野氏の検察庁における供述内容の問題でございますが、私どもは、松野氏から事情を聴取したかどうかを含めましてこれを肯定できない立場におるわけでございまして、このお尋ねには残念ながらお答えできないことを御理解いただきたいと思います。  それから、松野氏の工作の問題あるいは受け取られた金の行方の問題でございますが、これらにつきましては先ほど来お答えいたしておりますように、検察が刑事訴追をしております事実の間接事実の間接事実のそのまた間接事実になりますので、捜査の範囲外ということで調べておりませんので、お答えするだけの材料がございません。  最後に、秘密会云々の問題でございますが、私が、参議院航空機特別委員会におきまして、同委員会秘密理事会での私の発言云々というお尋ねがございました際に、秘密会で申し上げたことは終わった途端に忘れるようにいたしておりますという、多少不謹慎にお受け取りいただけるようなお答えをしたわけでありますが、その真意は、秘密会で申し上げたことが、それも正確でなく、御出席の委員の方からマスコミの方に流れたという事実を私は仄聞いたしまして、私がお答えする際に、秘密会で申し上げたことは申し上げるべき事柄ではありませんというふうに申し上げれば、お話しになった委員の名誉を傷つけることになりますので、私は一役人として、秘密会で言えとおっしゃったのに答えて申し上げたことは、理事会が終われば直ちに忘れるようにいたしております、こういうお答えをしたわけでありまして、そういうお答えをしたからといいまして、私はその理事会で間違ったことを申し上げたはずはないというふうに思っております。  いずれにいたしましても、心証は得られるが証拠がないからというような観点で申し上げているのでは全くございません。先ほど来申し上げておりますように、松野氏からの金の出というものはほとんど解明されていない。一部、たとえば外国での問題等の場合にわかっている部分もありますけれども、それは、それをお受け取りになった方が政治家であるかどうかを含めて、松野氏の私的関係に属しますので、お答えを御容赦願いたい、こう言っておるのでありまして、御理解をいただきたいと思います。
  181. 米沢隆

    ○米沢委員 ちょっと質問を羅列しましたので要領を得なかったと思います。松野さんが事情聴取されたかどうかも含めてという議論は、もうすでに事情聴取をされたであろうなんということはほぼ公開のものでありまして、そういう意味で、事情聴取をされたかどうかを含めて言えないという議論そのものが、非常に不可解な感じがしてなりません。  そういう意味でもう一度お聞かせいただきたいのでありますが、事情聴取の際に松野さんは、これは一貫して政治献金であるという主張をなされておられるのかどうか。それからもう一つは、松野氏と日商岩井関係者とのF4Eファントムについての談合の証拠資料が抜けておりますが、あるのかないのか。それから、例の海部メモの中で、人事介入らしきものがあったというようなことが他の委員会においてもほぼ認められておるやに聞いておるのでありますが、そこらは少なくとも松野氏が、F4Eファントム売り込みに関して工作した、ある役割りを果たした一つの事実であるというふうに私たちは思うのでありますが、その点について局長の御見解をお述べいただきたいと思います。  それから、秘密理事会の件については、政治家に流れたということを私たちは信じたいと思うのでありますが、そのとおりでよろしいですか。
  182. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま四点お尋ねだと思います。  一般論でございますが、検察庁がどなたか参考人の方から事情を聞いたといたしましても、その内容はだれに聞かれても言わないことにいたしております。  それから、日商松野さんの談合というようなことでお尋ねでございましたが、ちょっと談合という言葉の意味が私にはわかりかねますが、海部氏とか島田氏が、何回か松野さんをお訪ねして、F4ファントムを含めた航空機の話についていろいろ陳情したことはあったものと認めております。  それから、人事介入の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、第三海部メモというものでうかがわれますように、海部氏の側におきましては、松野氏が何らか人事に介入できるような力を持った方だというふうに認識しておったのではないかというふうに思われますけれども、さてそれでは、松野さんが実際にどんなことをされたか、あるいは人事介入をされたかされないか、その辺は先ほどもお答えしましたように、捜査をいたしておりませんのでわかりかねます。  それから、秘密会の関係については、本当に忘れてしまいました。
  183. 米沢隆

    ○米沢委員 いま委員会の中で、結局偽証罪で告発するかどうかという議論がなされておりますが、いま国会が賄賂性を争うこの点の食い違いにおいて、偽証告発をした場合、当局は改めてこの点について再調査、再捜査されて新しい証拠を集める必要性みたいなものは感じておられますか。
  184. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 仮定の上に立ってのお尋ねでございますが、国会から事件告発がございますれば、検察当局としてはこれを受けて、その御趣旨に沿って捜査をするのは当然でございます。
  185. 米沢隆

    ○米沢委員 ぼくが聞いたのは、いま持っておられる証拠でほぼいいのではないかという気持ちで聞いたわけであります。  それからもう一つ、賄賂罪を構成する要件として、金銭の授受、それから請託という行為、そして職務権限というのがあるわけでありますが、いつも壁にぶち当たるのは職務権限というやつでございます。日本の過去の疑獄事件等を調べてみましても、いつも巨悪を取り逃がす、大物はつかまらない。結果的にはその職務権限を持っておるやつに工作するよりも、職務権限を持っておるやつに影響力のあるやつを通してかなりいろいろな工作がなされる、そういうものが最終的には職務権限ない、ということで逃れる大きな要因だと私たちは思っておるわけであります。  そういう意味でお伺いをいたしたいのでありますが、職務権限を直接持たなくても、その人にかなりの影響力行使することのできる人がやったことは、これは職務権限の範囲内に入るのかどうか。  それから、今回の場合、確かに松野さんは防衛庁長官をやめられた後、金銭の授受ということがなされておるわけでありますが、そうした場合、職務権限を持っておる人に松野さん自身が影響力行使できるとするならば、やはりそれは職務権限の範囲内でとらえて、時効の面はありますが、賄賂罪の成立の一要件を満たすとわれわれは解釈したいのでありますけれども、今回捜査の過程におきまして、たとえばF4Eファントムを決定する、そのような職務権限を持っておられる方と松野さんの関係について、あるいはコンタクトした状況について解明された上で、職務権限の壁があってだめだ、こういうふうに言っておられるのかどうか、お聞かせいただきたい。
  186. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在の刑罰法令は、職務権限のある公務員がその職務に関して賄賂を収受するということを収賄罪の成立要件といたしておりまして、これは憲法三十一条の適正手続の保障の規定を持ち出すまでもなく、刑罰法規というものは厳格に解釈しなければならないわけでございますので、そういう尺度に当てはめて考えますと、松野さんは、たとえばファントムの採否について、これを決する何らの権限もお持ちでなかったことは客観的に明らかでございますので、そういう点で職務に関しという要件が欠けておる、こういうふうに認定したわけでございます。
  187. 米沢隆

    ○米沢委員 たとえば職務権限を持っておられるときに、日商といろいろな約束をして、そうして解任された後で金をもらうというのは職務権限に入るわけですね。
  188. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 職務権限のある方が、その職務にあるうちに、その職務に関して賄賂をもらうという約束をされれば、約束罪という収賄罪の一類型が成立をいたします。
  189. 米沢隆

    ○米沢委員 松野さんに関しましては、四十一年の七月三十日までが防衛庁長官ということでありますが、その間に、日商岩井の方から松野さんに対して、F4Eファントム売り込みに関していろいろな陳情等がなされておるはずでありますが、そこらの点については御捜査なさったのでありましょうか。
  190. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど来お答えしておりますように、海部氏が松野氏と初めて接触を持ちましたのは四十二年の春でございますので、ただいまの御質問は前提を欠くようなことになるわけでございます。
  191. 米沢隆

    ○米沢委員 四十二年の春というのは、それ以前においては日商と少なくとも松野さんの間には何らの交流もないと思ってよろしいのですか。
  192. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのように思っております。
  193. 米沢隆

    ○米沢委員 次は、E2Cの問題であります。  E2Cの問題は、予算の凍結も絡みまして大変重要な時期に来ていると思いますので、一応整理する意味でこれまた御質問いたしたいと思います。  先ほど「8K報告書で指摘された事項について」の捜査結果というものを御報告いただきました。その中身を踏まえて御質問をしたいのでありますが、この捜査結果の文章を読ませてもらいますと、たとえば「日商岩井手数料の一部を米人コンサルタントに支払う旨の契約が存在した事実は認められる」、ここまで密約というものについては、その存在があったということを認められたわけでありますけれども、その後SECで指摘しておりますように、米人コンサルタントからその金の一部が一人またはそれ以上のジャパニーズオフィシャルの方に流れていくという約束事の存在は、一体どういう捜査をされて、どういう結論になったのか、教えていただきたい。
  194. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、日商岩井が一人の米人コンサルタントとの間にいわゆる密約というものを結んでおりまして、日商岩井が得る手数料の四〇%という高額なものをその人に差し上げることになっておったようでございます。そこで、そのような高率になっておりますゆえんといたしまして、その米人コンサルタントにおいてしかるべき売り込み工作をするということが予定されておったようでございます。したがって、そういう関係から、E2Cの導入が成功し手数料日商岩井に入りますと、その四〇%が米人コンサルタントに流れ、その米人コンサルタントが何人かの工作の相手方にお金を渡すという可能性があった、こういうことのようでございますが、先ほども申しましたように、その米人コンサルタントの工作の相手方というのは不特定でございまして、特定のだれに幾らやる約束があったという状況ではなかった、こういうことでございます。
  195. 米沢隆

    ○米沢委員 時間がかなりなくなりましたが、もう一つの疑問は、松野さんがもらった約五億円の金とE2Cとは全然絡まなかったのかという問題でございます。  御案内のとおり、代理店契約を結んだのが昭和四十四年八月ごろですから、実際は金をもらっているところとぴったりと符合するわけであります。E2Cに関しましては、四十一年十一月二十八日に国防会議でAEWの研究開発を行うという三次防の大綱が決定されておる。それ以前において松野さんが三次防の原案をまとめる努力をされておる。松野さん自身は、E2Cについては、将来における装備の必要性等あるいはその性能等についてかなりの知識を持っておられるはずなのです。そういう意味松野さんの方に海部さんや島田さん、密約まで結んでやろうという連中がしょっちゅう行って金をやっておったわけですから、その間に、ファントムだけの議論じゃない、E2Cの議論が出てきたはずだと思うのが常識的な判断だ、そう思うのでありますが、日商松野さんの間でE2Cの話が出たことは確認をされておりますか。
  196. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確認いたしておりません。と申しますのは、そのころは島田さんがもっぱら松野さんとコンタクトをしておりまして、その関係で不明な部分が相当あるわけでございます。いずれにしましても、先ほど来申し上げておりますように、日商岩井側のいろいろな資料を見る限りにおきまして、この五億円というものはファントム関係のみで支出が決定された、これはどうも疑う余地がないようでございます。
  197. 米沢隆

    ○米沢委員 島田さんが亡くなられてどうしようもありませんが、ただお金を持っていって、ファントムだけの関係で金を配ったというよりも、少なくともその過程において、今後のAEWはどうなるのでしょうか、その際はぜひ御尽力いただきたい、そういう話を商社の猛者連中がしないはずはない、そういうふうに理解をしなければならぬと思っておるわけであります。  もう一つ、E2シリーズの開発状況等、防衛庁の方から資料をいただきました。御案内のとおりE2Cは、開発開始したのが四十三年六月です。契約されて生産開始されたのが四十五年、量産に入って第一号機で初飛行したのが昭和四十七年、こうなっておるわけであります。ところが、たとえば四十四年八月に住友商事から日商岩井の方に代理店が変更されました。変更されて日商岩井グラマン社との契約によってこのときすでに、まだ四十四年でありますが、扱う商品をE2Cと定めておるわけです。そのあたり、四十三年に開発開始されてまだ米軍が契約生産もしてない段階で、すでに日商岩井にはE2Cを売ってくれという話が決まっておる、この事実に何か奇異な感じを私たちは持つわけでございます。特にこれから先日本防衛庁がE2Cを買うのかE2Bを買うのかということが全然判然としない段階で、すでに日商岩井とグラマンの間でE2Cだけ扱うという契約があること自体——代理店契約の変更に一人の政府高官が携わったと言いますが、ただ単に日商岩井は商売がうまいとかいうだけではなくて、少なくとも日商岩井に対してこの政府高官は代理店を変更させると同時に、これから先の日本の防衛計画の中で、E2Cの位置づけだとか、あるいはE2Cの方向に何とかまとめてみようという話を、すでにグラマン社との間でかなり精度の高い議論をなされた結果、グラマン社日商岩井の間で四十四年ごろ代理店契約の後、このような商品名を特定して扱うようにするということになっていったのではないか。  そういう意味で変更させた人間は、単に変更を示唆しただけではなくて、E2Cを今後必ず日本では買うようになりますよ、そんな話をし得る、アメリカにも顔がきき、政界にも顔がきき、そして防衛問題にもかなりの知識を持った人間ではなかったか。そういう人間が介在したのではないかという意味で、われわれは商社を変更させた人を、単に犯罪が構成されないから明らかにできないというのではなくて、逆にここで明らかにしてもらわないとE2Cの問題は全然前に進まないという感じさえするわけでありますが、局長、お名前を発表する気にはなりませんか。
  198. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま種々政治的な御判断に基づく御立論がございましたけれども、私どもといたしましては、犯罪に何のかかわり合いもない方の名前を明らかにするということは差し控えるべきだと思っております。
  199. 米沢隆

    ○米沢委員 そこまでおっしゃればもうこれ以上おたくに聞くことはありません。しかし、こういう疑惑がまだE2Cに関して全然解明されていない。そういう意味では、いまE2Cの凍結解除みたいなものがかなり議論されておりますけれども、この問題は政治的に大変長引くのではないか、時間のリミットを超してしまうのではないかという感じが私はするわけであります。  最後に、防衛庁長官、余り時間もありませんが、E2Cの凍結解除、いまのような議論をお聞きになって、E2C問題の疑惑解明はまだまだ全然進まない、その結果、幾ら議長さんが議運の理事さんに何とかと言っても前に進まないのではないか。そういうものを踏まえた上で防衛庁長官としてどういう具体的な対処の仕方をするのか、この点を聞かせてほしいと思います。
  200. 山下元利

    ○山下国務大臣 E2C予算の執行につきましては、もう両院議長の御判断が示されなければ執行できないことになっておる次第でございまして、私どもといたしましてはかねがね申し上げておりますとおり、防衛庁といたしましては、純粋に防衛上の見地から専門的、技術的な検討をした上で決定いたしておりまして、その間外部からいかなる不当な圧力の働きもなかったのでございます。その点はそうでございますけれども、しかし、このE2C予算の執行につきましては、あくまで両院議長の御判断が示されなければ執行できないことでございますので、一日も早く御判断をいただきたい、このように念願いたしておる次第でございます。
  201. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  202. 永田亮一

    永田委員長 正森成二君。
  203. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長に伺いたいと思いますが、あなたは最初に五億円ありきということをおっしゃいました。その意味を昨日衆議院法務委員会に聞かれて、五億円の要望があって五億円渡したということだという意味の答弁をされました。そしてさらに最初から五億円という金額を示して要望があったのかという意味の質問に対しては、そういうつもりで答弁をした、こういうように言っておられます。  そこで念のために伺うわけですが、そうすると最初から五億円という数字を示して要望があった、要望された方は松野さんである、こういうように伺ってよろしいですか。
  204. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういうことでございます。
  205. 正森成二

    ○正森委員 要望を受けた日商側の人物は海部八郎氏一人だけですか、それとも海部八郎氏のほかに島田三敬氏等の人物が同席をしてその要望を受けたわけですか。
  206. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏でございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 伊藤刑事局長は、本日の委員会でも、その要望があったのは、四十二年秋から五億円が渡されているが、それにきわめて接近した時期、ほぼ同じ時期であるという意味の答弁をされましたが、その答弁は間違いございませんね。
  208. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのとおりです。
  209. 正森成二

    ○正森委員 そこで、同僚の大出委員が先日お示しになりましたいわゆる第三海部メモと言われているものについて御質問をしたいと思います。  このメモと五億円支払いとの関連について、伊藤刑事局長は昨日のやはり法務委員会で、第三海部メモ内容から言って四十二年夏のころだ、その後秋ごろから五億円の支払いが始まっているという時間的接着の事実についてすこぶる意味深長の答弁をされましたが、この答弁は間違いがありませんか。
  210. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 意味深長の点を除きまして、客観的事実はそのとおりです。
  211. 正森成二

    ○正森委員 これから意味深長の意味を質問していくわけですから、率直にお答え願いたいと思います。  第三海部メモにはこう書いてあります。「西山社長殿 防衛庁最高幹部人事更迭運動遂に成功し海原氏は防衛庁を出て国防会議へ転出、田中空幕副長は管区司令官、牟田空将(幕僚長)は明年八月迄留任と決定し、伊藤忠派課長級に到る迄移動され、PHANTOMに対する人事はこれにて出来上りました。」こう書いてあります。そして伊藤刑事局長の御答弁では、この書類自身をつくったのは海部八郎に間違いがない。ただし、その中には誇張された部分がある。特に人名が出ているが、「岸先生、増田、田中六助」等についてはこれは関係がないという意味のことを答弁されましたが、そのとおり間違いありませんか。
  212. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いま西山社長というふうにお読みになったと思いますが、西川です。
  213. 正森成二

    ○正森委員 失礼をしました、西川です。
  214. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その他そういう御答弁を申し上げたことは間違いありません。
  215. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、刑事局長の答弁でも、岸先生、増田、田中六助、それから松野頼三の合作劇であるというこの部分は否定されましたが、その中から松野氏が関与していないとはおっしゃっていない。つまり松野氏は関与しているということをにおわしておられるわけであります。そう受け取るのが自然であります。またその他のところでも、少なくとも海部八郎はそういうように松野氏が人事について大きな力を持っておると信じていたことは間違いがないと思う、こういう答弁をしているわけです。そうしますと、もう一度読みますが、「防衛庁最高幹部人事更迭運動遂に成功し海原氏は防衛庁を出て国防会議へ転出」云々、「伊藤忠派課長級に到る迄移動され、PHANTOMに対する人事はこれにて出来上りました。」こうなっておりますと、これは初めに五億円ありき、そして要望があり、逐次出されたということになりますと、これは工作費と成功報酬ということでございましょうが、厳密に言いますと、すでに工作をしてファントムについての運動が成功したという時点から始まっておる。つまり実際上導入が決定したのは四十三年十一月あるいは四十四年一月でございましょうが、海部の認識では、防衛庁最高幹部人事更迭運動がついに成功した、ファントムに対する人事はこれにてでき上がった、あとは経過の進展を待つだけであるという日商岩井ファントム売り込みに対する第一段階の成功した時点から支払われているということにならざるを得ないと思うわけであります。  そうすると、五億円という要望工作費であると同時に、一定の成功したということに着目して要望されたと考えざるを得ないわけですが、いかがですか。
  216. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私が申し上げておりますのは、ファントムが結果的に四十三年十一月に導入が決定されましたから、日商岩井側としてはそれまでファントム関係でお金を出しておるわけですけれども、客観的に見ますと、導入が決定するまでは工作的な意味であったし、決定後は本当の意味の成功の報酬、そういうつもりで出したものと認められる、かように申しておるわけであります。
  217. 正森成二

    ○正森委員 正式な書類の決定から言えば伊藤刑事局長の言われるとおりですが、いまの答弁は、私の第三海部メモに基づく判断についての直接の否定ではなかったと思われます。この第三海部メモ最後のくだりを見ますと、「尚、今回の件に関し、松野、六助、増田氏には多少挨拶したいと思ひます」こう言っております。この「多少挨拶したいと思ひます」と書いたその直後から松野氏にだけは五億円という要望があり、払われているということになりますと、この海部八郎氏のメモ最後のくだりと五億円との関係は十分な相関関係があるというように見ざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  218. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一つの見方だと思います。ただ、「多少」ということになるのかどうか、私もよくわかりません。
  219. 正森成二

    ○正森委員 先日私が松野氏の尋問では、「航空機部利益確定に関し」という航空磯部島田三敬氏の私はメモと申しましたが、それのある部分を読み上げて質問をいたしました。伊藤刑事局長のお耳にも何らかの形で入っておると思います。これが私の秘書が手書きで写したものですが、現物はタイプ印刷のものだそうであります。これについてこの書類の実在を法務省あるいは検察庁は認定しておりましょうか。
  220. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 どういうのかお見せいただけますか。  ただいまお見せいただきましたものは私どもが持っておりますものと内容において若干相違がございますけれども、何か私どもが持っておりますようなものの抜粋したものの写しか、またそれを抜粋したものではないかと思います。
  221. 正森成二

    ○正森委員 ここに書いてあることが大筋において非常に違っているという点はありませんか。
  222. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大変省略されておりますのでちょっと大筋が見えにくうございますが、要するにそういうような形で将来の利益というものを計算しながらお金を出す都合をしておったということは事実でございます。
  223. 正森成二

    ○正森委員 そこでお伺いをしたいと思いますが、何でしたら刑事局長島田メモの現物をお持ちのようでございますからそれを見て答えていただいてもいいのですが、私どもが持っておりますのでは「ここですでに工作費として借用した二億五千万円については、下記の要領で利益から落して行きたい。」こう書いてありまして、これは四十四年三月期は六千二百六十五万七千円、七千円まで出ておりますのは三月期の利益が確定した時点でこの書面が書かれたと思われるからであります。以下はおおよその概算になっておりまして、四十四年九月期は九千三百万円云々、こうなっておるわけです。そうしますと、四十四年に航空機部の軍用機だけでなしに、F4ファントムだけでなしにすべての利益をひっくるめても一億五千万円ぐらいしか利益がない、それなのに五億円を自分に対する献金だか報酬だか知りませんが要望するというのはよくよくのことであります。何らかの自分はそれにふさわしい男であるという自信がなければこういう要望はできないはずだというように私どもとしては考えざるを得ないわけですが、やはり日商岩井側としては当然自分が言えば出すはずだという一定の見込みがあって要望をしたのではないでしょうか。
  224. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 松野さんが日商岩井がどの程度もうかっておるのかというようなことをよく認識しておられたかどうかわかりませんし、またどういうっもりで要望されたのか、これは私ども把握しておりません。
  225. 正森成二

    ○正森委員 それではもう一点聞きますが、同じ文書に「今後発生する分については四十六年九月期と四十七年三月期と九月期で完済する余力を持っている。」こういう意味のことが善かれております。ということは五億円というお金は終期がなしにずるずるべったりに出されるお金ではなしに、少なくとも四十七年以前には払われてしまって、それを四十七年九月期までに完済するということになりますから、何だか知らないけれどもずるずる払われたというのじゃなしに、五億円の要望なりそれを受けて順次払っていった日商岩井側としては、少なくとも四十六年終わりまでかそれよりもお金の都合さえつけばできるだけ早く払うという暗黙の了解があったのではありませんか。
  226. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 特段、できるだけ早くとかいつまでにという約束というようなものはなかったようでございます。
  227. 正森成二

    ○正森委員 しかしこの書面を見ますと、四十七年九月期で完済する余力を持っているということになっておりますから、四十七年九月期よりも後に払うということであれば話のつじつまが合わないということになるのではないですか。
  228. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いま拝見しましたものにも書いてありますように、すでに借用した二億五千万円については、とこう書いてあります。ですからいまのお尋ねはちょっと前提が違ってくるのじゃないでしょうか。私の持っておりますものとちょっと違いますので……。
  229. 正森成二

    ○正森委員 もう一遍見てください。本当ですか。
  230. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 間違いなく違っております。要するに四十七年までに完済するということがいまお示しのものには書いてございますけれども、完済できなかったことは事実でございまして、結局最後RF4Eの金をつぎ込んで完済したわけでございます。したがっていつまでに出していつまでに決済するというようなことではなくて、要するに社内的にこれだけもうかるのだ、これだけの間に利益で埋められるから出したいのだという意味で書いたものでございまして、そういう前提でお読みいただいた方がいいのじゃないかと思います。
  231. 正森成二

    ○正森委員 若干食い違いがあるようですが、時間がございませんので先へ進まさせていただきたいと思います。  松野氏が受け取りました五億円の中には、海外で数万ドルずつ数回にわたって受け取ったという意味のことを言われました。そして当委員会で証言された海外での受け取りは恐らく五億円以外の分であろうというように言われましたが、数回に数万ドルずつというのがヨーロッパアメリカというように漠と言われましたけれども、大体アメリカで何回か、ヨーロッパならヨーロッパのたとえばロンドンならロンドン、ベルリンならベルリンで何回か、というように特定していただければありがたいと思います。
  232. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その辺は実は当該口座等に関係する口座等につきまして補充捜査をいたしておりますので、この際は御容赦いただきたいと思います。
  233. 正森成二

    ○正森委員 そうするとそれは補充捜査をしておられるので、二百三十八万ドルに関連した今度の海部氏の訴訟その他について冒頭陳述等で出てくる可能性があるということですか。
  234. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。
  235. 正森成二

    ○正森委員 それでは別の方面に入りたいと思います。  きょうの御報告の中で二百三十八万ドルのうち四十五万ドルだけについて私文書偽造、同行使で立件しておりますが、二百三十八万ドルが、全体について何らかの形でその受け取った先やら費目を秘匿しようと思えば他の四十五万ドル以外についても何らかの形で隠蔽工作が行われたと思いますが、それが立件されなかったのはどういうわけですか。
  236. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 時効が完成しておるためであります。
  237. 正森成二

    ○正森委員 時効が完成しているということだそうであります。また三十万ドルについては外為法違反をひっつけて起訴しておりますが、四十五万ドルや二百三十八万ドル関係については外為法違反の起訴がございません。これはどういうわけでしょうか、御説明ください。
  238. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 四十五万ドルの方は名目をすりかえておりますけれども正規の金でございます。三十万ドルの方は、一回架空名義の預金口座に入れて性格を変えたものを許可なく国内に持ち込んだわけでございますので、外為法違反になったわけであります。
  239. 正森成二

    ○正森委員 四十五万ドルについてわざわざロンドン支店を使った理由は何でしょうか。
  240. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 起訴しましたものはロンドン支店を経由したものではございません。
  241. 正森成二

    ○正森委員 そのように言っているだけだということですか。
  242. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の分は時効になった分だと思います。
  243. 正森成二

    ○正森委員 きょうの御報告を見ますと、百五万ドルのうちの三十万ドルについては正規経理に載せる必要があったのでこういうことをやったというようになっていますが、正規経理に載せる必要というのはどういう理由でしょうか、もしおっしゃっていただければお答えください。
  244. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井関係者の方が予算委員会で御証言になったような経緯と、各人の内心に、ロッキード事件の発覚ということから簿外預金の存在がわかっては困る、こういう配慮があったようでございます。
  245. 正森成二

    ○正森委員 報告書の九ページに「海部メモに関連する福田赳夫氏の氏名不詳者に対する告訴事件については、なお捜査を尽すべき事項が若干残っており、その処理には多少の日時を要する見込みである。」こう述べられておりますが、海部メモについてはほぼ捜査を尽くされたと思うのですが、なお捜査を尽くすべき若干の事項というのはおおよそどういうことなのでしょうか、お答えください。
  246. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモを東京新聞社あるいは大出氏を通じて流布したという犯人を見つけることでございます。
  247. 正森成二

    ○正森委員 それでは、時間が参りましたので、もう一点だけ伺いますが、松野氏と海部が知り合ったのは四十二年の春ごろである、こう言われました。それで、松野氏は、四十年の大臣になったころに高畑氏から電話があって、海部政治家と近づきにさせたいということがあったので、大臣の仕事が終わった後で会うようになったのだ、こういう意味のことを言っておられます。検察庁では、一方では高畑氏は五億円の受け渡しについて全く関係がないというように言っておられるわけですが、そうすると、海部松野氏に高畑氏が紹介をしたということも検察庁としては認定していない、こういうことでしょうか。
  248. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 高畑氏からお話を伺うことがもはやできませんので確認できておりません。
  249. 正森成二

    ○正森委員 それではもう一つ伺いますが、第二海部メモの一千万円、二百万円、この渡った先というのは政治家ではない、こう言われました。前回も私は多少質問いたしましたが、きょうの御答弁ではアフリカ関係の商談の話である、こう言われましたが、その渡された先に政治家の秘書もしくは秘書の関係している会社というものは絶対にないのですか、それはあり得るのですか。
  250. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その辺は、政治家でない方のことでございますので、何とも申し上げかねます。
  251. 正森成二

    ○正森委員 わかりました。  そうすると、政治家というのは衆議院議員あるいは参議院議員もしくはその予定候補者というたぐいの人物だけである、こういうぐあいに承ってよろしいか。
  252. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 あと県会議員さんなんかも入るかもしれませんが、大体そういうことでございます。
  253. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  254. 永田亮一

    永田委員長 加地和君。
  255. 加地和

    ○加地委員 初めに五億円ありきという話題は何回も出てくるわけでございますが、聞いておってもこれは一向に釈然としないわけでございます。松野頼三氏が最初に五億円を要望した、それに対して日商岩井の方は、出しても元が取れるかどうか、損か得かということなどを相談したということまではわかったのでございますが、松野頼三氏が五億円を要望したというのは、何に必要だから、またおれはなぜ五億円を要求する立場にあるのか、そういうような五億円の趣旨について一番最初松野氏はどのようなことを日商岩井海部八郎氏に言ったのでしょうか。
  256. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そういう特段の説明があったというふうにはなっておりません。
  257. 加地和

    ○加地委員 そうしますと、F4ファントムのことにも関係なし、ただ漠然とおれは五億円欲しいのだ、おまえのところ出さないか、こういうようなたぐいの話でしょうか。
  258. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その場に居合わせたわけではありませんからはっきりしたことは申し上げかねますが、そういうような程度の話であったという印象を受けております。
  259. 加地和

    ○加地委員 これ自身が本筋の事件ではございませんでしたのでしょうけれども、やはり国会におきまして相当な資料、裏づけを持って一政治家の政治的生命にも関する発言はなさっておると思うのですけれども、やはり世の中に動機のない、いわゆるリーズナブルな理由のない話というのは余り信用しがたいのではないかと思うのです。ですからやはり、刑事局長は堂々と自分の立場というものも相当勇気を持ってかけておられる発言が数日間続いておると私は思うのですけれども、やはり五億円ということについては、だれが聞いても、ああなるほどそれならわかる、幾ら関係者が一人、二人が否定してもそういう背景、事実があれば五億円という話が出たとしてもやむを得ないなというような合理的な裏づけ的なもの、これは何もないのですか。
  260. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 再々お断りしておりますように、五億円の金が日商岩井経理に穴をあけたという事実を立証にかかっておるわけでございまして、この五億円の授受自体が何らかの犯罪として訴追の対象になるものでございますれば、ただいま仰せになりました動機等についてもリーズナブルな理解ができるまでとことん追及し、あるいは客観的証拠を集めてかっちり認定をするということが必要でありましょうけれども、そこまでのことは実際問題として尽くしていないわけでございます。  したがって、再々申し上げておりますように、五億円が日商岩井から発射されたというところまでは非常にはっきり固めておりますけれども、それがだれの手によってどういうふうにして渡ったというようなことになりますと、島田さんが亡くなっておられるからわかりませんし、それから、受け取られた方の主観的な問題については検察として深く突っ込んでおりませんから、そういう意味では、別の観点から御調査になります向きでは御不満が残ると思いますけれども、検察の限界というものも御理解いただきたいと思います。
  261. 加地和

    ○加地委員 それでは松野頼三氏から五億円の話があって、これは普通契約で言えば一種の申し込みですね、それに対する承諾的な意思表示は日商岩井からあったのですか、なかったのですか。
  262. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私あえて要望という言葉を使わせていただいておりますのはその辺も意識しておるわけでございまして、法律的に言えば要望を契機とする何回かにわたる贈与があったというようなことで、五億円どうだ、それじゃファントム関係分もありますから五億円お約束しました、こういうような話にはなっていないわけでございます。
  263. 加地和

    ○加地委員 そうしますと日商岩井の内部では、五億円という要求、一種の、まあ大きな金でございますから日商岩井の中ではいろいろな人が知恵をしぼって相談したと思いますが、先ほどおっしゃったのでは経営者会議というようなものあるいは取締役会議ではなしに、ごく少数の人が相談をした、経理がタッチした、こうおっしゃいましたけれども、ごく少数というのはどういう立場のどういう名前の人ですか。
  264. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 日商岩井でそういうことについて決定権を持っておる人の了解がなければできませんから、西川社長も了承されたと思いますし、それから島田氏ももちろん知っておりました。あとは財経本部の責任者の方、こういうところだと思います。
  265. 加地和

    ○加地委員 それで、松野氏の認識問題は別にしまして、日商岩井内部では、結果的に四十三年十一月までに、大体一の割合——五億円を一と三に分けますと、概算一億二千五百万円という一応計算になるわけでございますけれども、ひょっとして成功しなくても、一億二千五百万円を捨ててもいいとか、あるいはいままでの松野頼三氏の防衛庁長官時代からの動きを見ておると、後で採用されなくても一億二千五百万円ぐらいの値打ちがあるなとか、そういうようなかなり突っ込んだ話は、利益を目的とする商社の内部では行われたと思うのですけれども、そこら辺のことについてはどういうぐあいにつかんでおられますか。
  266. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 要するに、ファントムが導入できれば幾らもうかる、それぐらいもうかればこれぐらい出してもよかろうという検討をしておるわけでございまして、その検討の過程におきまして作成されたメモの抜粋のコピーの写しのようなものを先ほど正森委員がお示しになっておったわけでございます。
  267. 加地和

    ○加地委員 それから、結果的に日商岩井の方が金をどんどん払っていっておりますので、好意によって松野頼三氏の要望を受け入れていたことになると思うのですけれども日商岩井も商売人でございますので、分割にして払っていくというのは、それを払うまでの間、松野氏はこの程度の働きはしてくれているという評価もしながら小出しに払っていったというのが実情じゃないのでしょうか。たとえば、五億円ぽんと払ってしまう、後何にもならなかったら五億円損、あるいは四千万円ずつだったら、松野氏が一定の三月なり四月なりの期間に打つべき手を打ってくれているなと日商岩井が感すればこれは五億円のうちの十分の一ぐらいに評価して出そうかとか、こういうぐあいな危険性というものも考えながら出していったんじゃなかろうかと思われますけれども、その点どうでございましょうか。
  268. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 当時の小刻みに出したりなんかします際の心理描写にまで突っ込んで調べが行き届いておりませんが、先ほども言いましたように、ファントム以外の飛行機がもし導入されたんだとすれば恐らくその辺で打ち切っておったであろう、こういうようなものであろうと思います。
  269. 加地和

    ○加地委員 それから、松野氏が外国という土地で受け取った五億円の内訳金額でございますが、これは発表できますか。日本国内ではなしに、外国で五億円の内金として受け取った金、これの金額
  270. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど申し上げましたような補充捜査関係あるいは公判立証の関係がありますから、数万ドルという程度のものを数回、こういう程度で御勘弁いただきたいと思います。
  271. 加地和

    ○加地委員 数万ドル、数回をなぜあえて外国日商岩井は渡す必要があったんでしょうか。
  272. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 島田さんが亡くなっておるのでそういう細かいことがわからないのですけれども、多分外国で欲しいということではなかったかと思います。
  273. 加地和

    ○加地委員 松野証人は、この二十四日の証人喚問の場におきましても、金の授受の際の状況が質問者に対する答弁によって三時間の間に若干変わっていっておるのです。これは意識してかどうかは知りません。一番最初は、金銭の授受のときには何の趣旨もなかったというのが大出さんに対する答えであったように思います。それから私の質問に対する答弁では、常に政治献金だという言葉があった。正確にどういう言葉を使ったかと言って聞きますと、常に松野頼三を育てる政治献金であった、こういう趣旨のもとに金は受け渡しされておるということでございました。いままでの捜査では十数回にわたって常にこの松野頼三を育てる政治献金であったという趣旨が金に対する伝言としてついていたでしょうか。
  274. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 その辺は、実際に渡した島田さんが亡くなっておられますので確定できません。
  275. 加地和

    ○加地委員 日商岩井ファントム売り込みに成功したわけでございますけれども日商岩井はいつごろからどういう方面にわたってファントム売り込み工作をやっていたとつかんでおられますか。
  276. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ファントムを売り込むについての企業努力という問題については、そのこと自体が犯罪立証と関係がありませんから突っ込んだ調べはしてないと思います。  ただ、いずれにしましても、代理店となりましてからそれ相応の企業努力はしておったという程度の調べ内容になっております。
  277. 加地和

    ○加地委員 先ほどからも話が出ておりますけれども防衛庁内部におきます人事をファントムを受け入れてくれやすいような人事に持っていくという工作もしていたというようにつかんでおられますか。
  278. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 防衛庁の人事問題に関します具体的な状況は把握しておりません。
  279. 加地和

    ○加地委員 先ほど五億円の内訳を大体一対三で事前の工作資金と成功報酬というように御発表になりましたけれども、正確な金額は発表できますか。
  280. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大体がその工作のためとか成功後とかいうこと自体が必ずしもそう明快なものではございませんので、先ほどとっさに手持ちの資料によりまして四十三年秋のころまでに渡った分とそれから後で渡った分を大ざっぱに申し上げただけでございまして、そのこと自体に深い意味を持たせたつもりは私はないのでございます。
  281. 加地和

    ○加地委員 それではファントムが決定になるまでに支払われた金額ファントム決定後に支払われた金額、これを数字であらわしていただくということは差し支えないと思いますけれどもね。
  282. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 だんだんそういうふうに刻んでいきますと細かい話になってまいりまして、これから公判で立証する際の支障にもなろうかと思いますので御容赦をいただきたいと思うわけでございます。
  283. 加地和

    ○加地委員 刑事局長立場も理解できないことはありません。しかし、今度の問題については、一人の非常に力のある政治家の政治生命と、検察庁がよもやよいかげんなことを言っているとは国民は思っていないわけでございますが、そこに大きな食い違いがございますために国民は、政治を信頼できないか検察の力を信頼できないかどちらかというジレンマに陥っていることは事実なんでございます。ここまで両方の意見が食い違ってきたという場合には、ただ救い道は一つ、真実を一日も早く国民の前に明らかにすることに尽きてくるんじゃなかろうかと思うのです。  そういう意味から、いままでの刑事局長の答弁をずっといままでの経過から聞いていますと、松野さんという名前にしてもなかなかおっしゃらない。新聞などではよく出ておる。どこかで松野さんという名前が公に出てきた。それを後追いするような形であなたはおっしゃっております。これも一定の公務員としての立場上の考慮かもしれないけれども、私は、何も知っておることを小出しにちょろちょろと出していくのが必ずしもいいことじゃないと思うのです。一対三までおっしゃった以上は数字についてもはっきりとおっしゃって何ら差し支えないと私は思いますけれども、いかがでございましょうか、そこまで大臣は言えとはおっしゃっていないのでしょうか。
  284. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いろいろ小出しにという御指摘ございましたが、厳しい御追及によりまして、本当は申し上げる範囲を超えておるかもしれないと思いながらあえて申し上げておるところでございまして、あらゆることを法務、検察当局の口をして語らしめようというふうなお考えでございましたら、大変申しわけございませんが、私どもは守るべき限度がございまして、人様の秘密中の秘密を扱っておる仕事でございますので、その辺は御理解を賜りたいと思うのでございます。  ただ、ことごとく細かいところまで申し上げないと私の御説明を御信頼いただけないということでございますれば、これはもう私の不徳のいたすところでございまして、その点はおわびをせざるを得ないわけでございますが、とにもかくにも、いろんな方からはあんなにしゃべっていいのかしらというふうに思われる向きもあるぐらいに御協力申し上げて御説明しておるこの誠意だけを御運解いただきたいと思います。
  285. 加地和

    ○加地委員 個人的な誠意はわかるのでございますが、ここまで大騒ぎになっていった以上は、これはやはりすきっと真実を一〇〇%明らかにしていくということ以外には、あなたの本当の意味の——いわゆる世の中を騒がしたとは言いません、騒がせる中に巻き込まれてしまったあなたとして果たせるいわゆる収拾策というのは、一〇〇%真実を明らかにしていただくことであると思いますが、押し問答になりますので次の話に移ります。  新聞などで報道されておるところによりますと、松野さんは昭和四十七年田中内閣ができてから以後海部氏と会っていないということを言っておられます。本当に会っていないんでしょうか、どうですか。
  286. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 たとえば何かのパーティーとかそういうあらゆる場を通じて会っておられないかどうか、私お答えする材料はありませんが、そのころから海部氏と松野氏との間が冷えましてお二人が接触しておられないことは事実のようでございます。
  287. 加地和

    ○加地委員 なぜ四十七年から冷えたんでしょうか。ある新聞では、松野さんは、海部氏はよい意味でも悪い意味でもビジネスマンだという意味のことをおっしゃったりもしております。どういう理由で冷えてしまったんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
  288. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 それは大変お二人の個人的な事情に属することになりますので、こういう公の席で申し上げるのはいかがかと思います。
  289. 加地和

    ○加地委員 最後一つお聞きしたいのですが、福田赳夫さんが告訴しておられる事件というのは、これはいつごろどういう方向で——角度まで言っていただかなくていいですけれども、どういう方向でおさまりそうな見通しですか。
  290. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在、先ほど申しましたようにあのものを流布した犯人というものを捜しておるわけでございますが、それが見つかれば捜査は終了するわけでございます。
  291. 加地和

    ○加地委員 終わります。
  292. 永田亮一

  293. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員 当委員会が終了後、理事会が開かれる予定であります。恐らくその場で問題になるのは松野証言偽証に当たりはしないかということだろうと推測しておりますし、昨日も衆議院法務委員会において偽証の成否が議論になりました。また、当委員会においても偽証の成否についてある種の発言がなされました。私は、松野証言偽証になるかどうか、その一点だけに実はしぼって御質問してみたいと思うわけでございますが、まず刑事局長の大ざっぱな松野証言についての偽証罪の成否についての見解を承りたいと思います。
  294. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 国会における御証言でございますので、それが客観的に偽証に当たるかどうかというようなことにつきまして私どもとしてお答えするのは御容赦いただきたいと思います。
  295. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員 個人としての所感をそれでは承りたいと思います。
  296. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 個人の所感を申し上げる立場にはないのでございますが、法務委員会におきましてうっかりあることをお話し申し上げてしまいましたのでここでは申し上げないというわけにもまいりませんので、私の現場に長くいた検察官の経験からして一つの感想を持っておるということをあえて言わせていただけば、一生懸命御証言になってよくあそこまで述べられたなという印象を私は禁じ得なかったのでございます。これは若干御説明しなければいけないと思いますが、私一線の検事をしておりましたときに政治家の方も相当な人数事情を聞かせていただいたことがございますが、なかなか客観的要件自体もそう簡単にはお述べいただけないものでございました。そういう私の検事時代のしっぽがついておったのでございましょうか、そういう感想をうかつにも法務委員会で申してしまいました。そのことだけ、お尋ねでございますので、申し上げさせていただきます。
  297. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員 いわゆる偽証罪というのは、刑法第百六十九条に「法律ニ依リ宣誓シタル証人虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ」というふうに構成要件が規定されておりますし、ここにも多数の法律家の先生方がお見えでありますし、いかなる場合に偽証罪が成立するかというのは皆さん御承知のはずであります。つまり、虚偽の陳述をするということはみずから認識していることと違った証言をすることというふうに解釈上されております。したがって、みずから認識していることが客観的な事実、あるいは松野証言内容伊藤刑事局長の答弁内容と仮に食い違っていたとしても、それが松野証人の認識していることであるならば、偽証罪は成立しないのではないかというふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。
  298. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 偽証罪の成否の解釈につきましては、ただいま御指摘のとおりだと思います。
  299. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員 そうだとしますと、松野証人が五億の金を政治献金でもらったというふうに言うている内容伊藤刑事局長の答弁内容、つまり工作資金あるいは成功報酬であったということについては大きな隔たりがございます。そこで偽証の疑いが濃いのではないかという議論が発生する余地があるわけでございますが、松野証人そのものが自分がそういうふうに認識しているということであったならば、これはいかに伊藤刑事局長であろうとも、その松野証言の認識内容そのものが客観的に違っているから偽証ではないかということは私は言えないのじゃないかというふうに思うわけでございます。まして、偽証が成立する場合は、恐らく松野証人がほかの場所で、衆議院航空機調査特別委員会の証言内容並びに参議院航空機調査特別委員会における一証言内容があれはうそだったということをだれかに言うかあるいはわれわれに言わない以上は偽証罪は成立することはあり得ないのではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  300. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねに正面からお答えすることになるかどうかわかりませんが、まず客観的事実の関係につきましては、たとえば海部氏なら海部氏の記憶だけに基づいて聞いたとした場合にどうなったであろうかということも考えるわけでございますが、日商岩井関係調べと申しますのは、銀行口座の動きとか帳簿とか証拠資料というような客観的資料をこの十何年来のものを積み重ねた上で認定をしておるわけでございまして、記憶だけに基づいて述べられる場合とおのずから親疎の差は出てくるのじゃないかと思います。  それから、主観的要件につきまして私は再々申し上げておりますように、五億円が日商岩井から松野さんに向けて発射された事実までは鋭意詰めておりまして、したがいまして、発射する側の主観的認識というものについては詳細御説明をしてきたつもりでございます。しかしながら、本件が刑事訴追の対象となるものでございますれば、両者の主観に仮に差があったとした場合には、どうしてそういう差が出るのか合理的な説明がつくまで詰めるわけでございますけれども、そこまで詰め切っていないということも毎々申し上げているところでございまして、要は、国会で御判断になることでございますけれども、その主観の差というものがどういう理解の範囲内に属するか、こういうことではなかろうかと、捜査を担当しました私どもとしては、いわば中途半端な結果を御報告するようなことになりまして大変申しわけなく思っておるわけでございますが、そのような見方を持っておる次第でございます。
  301. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員 終わります。
  302. 永田亮一

    永田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会