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1979-06-01 第87回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年六月一日(金曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 木原  実君    理事 登坂重次郎君 理事 福島 譲二君    理事 向山 一人君 理事 島本 虎三君    理事 水田  稔君 理事 瀬野栄次郎君    理事 中井  洽君       戸井田三郎君    西田  司君       藤本 孝雄君    鈴木  強君       馬場  昇君    古寺  宏君       竹内 勝彦君    安藤  巖君       工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁自然保護         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      山本 宜正君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁次長   恩田 幸雄君         通商産業大臣官         房審議官    原田  稔君         建設省道路局長 山根  孟君  委員外出席者         防衛施設庁総務         部施設調査官  白根  洋君         国土庁地方振興         局東北開発室長 城  宏明君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 七野  護君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         農林水産大臣官         房公害環境保全         対策室長    斎藤 哲夫君         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫         課長      栗田 年代君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     児玉 幸治君         資源エネルギー         庁石油部石油備         蓄対策室長   森清 圀生君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       竹内 征司君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     岡松壯三郎君         運輸省港湾局計         画課長     小池  力君         海上保安庁警備         救難部長    野呂  隆君         自治省財政局財         政課長     矢野浩一郎君         自治省財政局調         整室長     井上 孝男君         参  考  人        (森林開発公団         理事長)    福田 省一君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   田口 一男君     馬場  昇君   土井たか子君     鈴木  強君   坂口  力君     古寺  宏君   東中 光雄君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   鈴木  強君     土井たか子君   馬場  昇君     田口 一男君   古寺  宏君     坂口  力君   安藤  巖君     東中 光雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ————◇—————
  2. 木原実

    木原委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件調査のため、本日、森林開発公団理事長福田省一君を参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木原実

    木原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 木原実

    木原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  5. 島本虎三

    島本委員 きょうは、環境白書を中心として最近の環境庁姿勢、ここに重点を置いて、いわゆるアセスメント法、そして環境破壊と思われるようなスーパー林道の問題その他に言及して政府姿勢を問いただしたい、お聞きしたい、こう思っている次第であります。  まず、環境影響事前評価法でございましょうか、いわゆるアセスメント法であります。この問題についての政府姿勢官房長官に一応きちっとお伺いしておきたいと思います。  一九七九年五月七日から八日までパリで開かれたOECD会議、それと同時に、一月二十五日に第八十七回国会大平内閣総理大臣施政方針演説が行われたのであります。これはすでに皆さんの方ではっきりこの内容等についても知っておる状態でありますからあえてくどくは申しません。このOECD会議、これは法制化というのじゃなくて制度化、こういう表現が使われたようであります。そして八十七回国会における大平内閣総理大臣施政方針演説の中には、文化時代の到来、そして「自然と人間との調和」、こういう言葉が随所に見られるのであります。そして信頼と合意の政治、こういうふうにして、本当に哲学的な、一つの貫かれた信念というものもこの中にはっきり見抜くことがわれわれとしてはできるのであります。  こういうふうにして見ます場合には、やはりこの中に何かもたらさなければならない大きなものが当然あるわけであります。「都市の持つ高い生産性、良質な情報と、民族の苗代ともいうべき田園の持つ豊かな自然、潤いのある人間関係とを結合させ、健康でゆとりのある田園都市づくり構想を進めてまいりたい」、こういうようなことから発想して、全部行政の中にこれが貫かれてきているわけであります。内閣総理大臣施政演説を通じての姿勢、そしてパリで開かれたOECD会議での環境庁長官演説、こういうふうにしてみる場合には、どうもこの点ははっきりしないものはありまするけれども環境庁長官所信とそれから大平内閣総理大臣施政演説、この中でアセスメント法ということが強く国民の前にはっきり示されておると思うのであります。言葉にははっきり出ている、これが環境庁長官所信表明であります。  そうして一月の段階では、いわゆるアセスメント法案重要法案、こういうことになって、内閣提出予定法律案になっておったのであります。しかし、今回四たびこれが提出されないということになったようであります。内閣全体の問題でありますけれども、こういうようなことに対しては内閣は一体どうなのでしょうか。少なくとも閣僚の一員として環境庁長官がこれで四回強力な意思表示をしているのであります。内閣の総意として施政方針演説の中にもそういうような言葉が貫かれているのであります。しかしながらそれが出てこない。これは私としてはちょっと解しかねるのであります。これは内閣全体の問題だと思うのであります。総理言葉を聞くことはできませんが、かわって内閣官房長官、これに対しての姿勢をお伺いしておきたいと思うのでありますが、どうなのでしょうか。四回も出す出すと言って国民を欺いていいものでしょうか。その場合には環境庁長官はでくの坊なのでしょうか。私はそう思いたくないのでありますが、これで現実に四回だめになったことになりますから、これについて的確に判断を聞かしてもらいたいと思います。
  6. 田中六助

    田中国務大臣 大平内閣になりまして、文化時代あるいは田園都市構想地球化時代大平総理考え方の底流には自然環境を大事にする、そういうことが大平哲学の中にあるわけでございます。国際会議におきましても、上村環境庁長官が、環境問題について各国ともども重大な問題として指摘しているわけでございまして、内外の規定が自然環境保護、維持というものにあることは痛いほど身にしみてわかっておるわけでございます。したがって、それならばこれを法制化するアセスメント法案が四回ももたもたしているのはおかしいじゃないかという島本議員のお話でございまして、私ももっともだというふうに考えます。  しかし、全国一律にこれを規定する、つまり法制化するということにつきましては、この物差しと申しますか、環境の保持をする、影響を与える、そういうものに対する科学的な尺度と申しますか、そういうもののはっきりしたものが、模索しておってもなかなか困難だ。地方住民との関係あるいは地方自治体との関係、いろいろな問題がございまして、私も議運でもたびたび申し上げたのでございますが、各省庁との調整をお願いしているわけでございます。これとても実は怠っておるわけではなくて、環境庁長官の御努力もあって鋭意調整は進んでおるわけでございますが、やはり党側意向どもあってなかなかコンクリートにならないのが現状でございまして、私もたびたびどういうふうになっておるのだろうかということは聞きただしております。現時点の段階ではそれがコンクリートになっていない、そのことを申し上げる以外答えようがないわけでございますが、といって私ども努力をしていないということではないわけでございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 長官の言われることは私は了解できるのでありますが、参議院でも、議運理事会でも長官としてはこれに対して発言があるわけであります。その発言をもとにして、私ども手元にも資料として届いておる若干のものがあるのでありますけれども、この中で無視できないのは、上村環境庁長官も出席したOECD経済協力開発機構でございますか、「日本の経験 環境政策は成功したか」というレポートの中で「日本は、数多くの公害防除の戦闘を勝ちとったが、環境の質を高めるための戦争ではまだ勝利をおさめてはいない。」として明確に申し述べられているのであります。そして、同じく環境アセスメントは、単独法ばかりではなく、これはOECDではありませんけれども、「基本法に根拠を持つ場合はより強力となるものである。これまでの公害対策はともかく後追い、アフターケアが多かった。しかし、十の治療よりも一つ予防がまさることは国民が全部知っている。」こういうようにはっきりと論じている論説もあるのであります。十の治療よりも一つ予防の方がまさる、その予防がいわゆるアセスメントなのであります。  これに対しては長官もずいぶん関心を持たれているのでありますが、われわれもあらゆる場所で、国会対策場所であるいはまた本会議場所参議院のそれぞれの同志を通じて聞いているのでありますが、これに対して国土庁賛成だと言っている。運輸省賛成だと言っている。その他の官庁でも反対だと言ってはいないけれども、なぜこれができないのですか。直接賛成だと言っている官庁が多いのに、なぜこれができないのですか。やはり十の治療よりも一つ予防がまさるのじゃありませんか。そのまさる予防にだれが反対しているのですか。ここを調整してきちっとやらせるのが総理であり、その事務的な強力なかなめの役を果たすのが官房長官じゃないかと思うのであります。この点がどうもわれわれは不可解でありますが、この点をはっきりさせてもらいたいと思っておるのであります。ここで決意を聞かしてもらいたいと思います。
  8. 田中六助

    田中国務大臣 島本委員指摘のように、まさしく十の治療よりも一つ予防だというお言葉、私も考え方としてはそのように思います。しかも、それは一日も早く法制化をしろということに通ずるわけでございますが、調整という言葉で逃げるわけではございませんが、一応環境庁長官あるいは事務当局他省との調整、党との調整、先ほど申しました各面からの調整をお願いしているわけでございます。私も実はぼうっとしておるわけじゃなくて、この委員会は初めてでございますが、衆参両院議運あるいは国対に出されまして、法案を予定どおり出さないのはおかしい、あるいは予定法案のそれはどうなっておるかという中で、やはりこのアセスメント法案は、一番強い関心を持っておる国会でございますので、たびたび聞かれるわけでございます。その場合、私も環境庁事務当局あるいは長官大臣に、どうでしょうかということはお聞きしているのですが、調整がなかなかそこまでいっていないということでございます。もう何でもかんでもでっち上げていくということとその調整のプロセスというものとの価値判断をしますときに、やはり法制化つまり法律化ということは非常に重大なことでございますので、これは法律になった以上は大きな束縛がございますと同時に、どうにも動きのとれないこともありますので、その間に話し合いというものを重要視して、法案そのものが皆様の意向に沿わずに提出されなくても、そこで調整の方にウエートを置いた方が法律が将来成立した後でもいいのじゃないか。法律ひとり歩きということが私どもの頭にございますし、日本全国に適用される問題でございますので、調整ということにウエートを置いておることを率直に申し上げなければならないと考えます。
  9. 島本虎三

    島本委員 やはり長官もその必要性を認めながら、法律ひとり歩きが困るのだ、いまこのような御発言があったようでございます。ひとり歩きじゃないのですよ。まだまだ麗しい自然が残っていると思われている日本列島のうちの北海道でも、もうすでに条例が五十三年の七月十九日に公布されて五十四年一月十八日に施行されているのです。これをやっても人畜に何ら被害を及ぼしていませんよ。神奈川では検討中であるけれども、同じ神奈川県の中の川崎市ではもうすでに五十一年十月四日に公布してあって、五十二年七月一日から施行しているのであります。こういうふうにしてみると、一番おくれているのは勧進元である。そしてこれを一本にすると困るような考え方もおありのようでありますけれども、もしそうであるとすると、もう少し官房長官として詰めてもらいたいと思う。一本にして困るものは一つもありません。困る官庁があるとするなら何で困るのか、その辺にメスを入れてもらいたいのであります。  先般の参議院の同じ公環特の中でも、国土庁でも建設省でも運輸省でも全部賛成しておるのであります。通産省だけが反対だというのであります。ほとんどの方が賛成してひとり一省だけが反対だという。それも調整できないような大平内閣ではないと思うのであります。ましてやほかの方では、自治体自身が独自でその必要性を認めてもうすでに条例をつくっているのであります。もう実施している市もあるのであります。関係がないと思われている北海道でさえもすでに条例が施行されているのであります。こういうふうにして見ると、一番おくれているのは国じゃありませんか。いまこそこれは調整すべきではありませんか。  こういうようなことからして、長官議運でたびたび発言されているようでありますが、その議運での発言をいま一たび聞かせていただきたいと思います。
  10. 田中六助

    田中国務大臣 ちょっと忘れた部分がございまして定かには答えられないと思いますが、私が議運などで申し上げた趣旨は、環境庁、具体的には通産省でございましょうが、そういうところとの調整をまって、それから態度を決めたいというようなことを申し上げたのじゃないかと思います。しかし、その調整も、私自身もそれが早く調整ができるように早急にそういうふうな方向結論を出したいというようなことを申し上げたかと思います。
  11. 島本虎三

    島本委員 もっと具体的に議運理事会で御発言があったように私は聞いているのであります。それは、長官の口からその内容についてあえて聞かせてもらいたいというのは、私が主導権をとってこの問題でやるよりも、長官自身発言を聞きたかったのであります。私が聞いたのは、それに反対しているのは通産省なんだ、通産省反対でこれができないのだということを二度にわたって議運理事会で御発言があったと聞いているのでありますが、いまこの席でそういうふうに聞かせてもらえないのは残念でありますが、私の認識、間違いありませんか。
  12. 田中六助

    田中国務大臣 島本委員認識に間違いはないかと問われましてもちょっと困るのでありますが、それに近いような発言をしたのじゃないかと思います。
  13. 島本虎三

    島本委員 証人じゃないのですから、ここでもっとはっきり具体的に言っても私は差し支えないと思うのでありまして、この点ひとつ私からお願いしておきたいと思うのであります。そうかたくならぬでもいいです。  大平総理環境問題に対してはいままではっきり一こういうような具体的にいい論旨はずっと述べているのでありますが、環境問題、それから環境アセスメントという具体的な言葉表現として出てこないのですね。これは何も言っていないのであります。その点、いま言ったように、環境庁やれと言う。官房長官、四年間も流れるということは、四年間も同じようにして所信表明のときにはやると言っているのでありますが、国民閣僚の一人が欺くことになりませんですか。そうすると、政府部内としても環境アセスメントに対してどのような最大公約数を持っているのか、出したのか。これはすべて逃げの一手じゃなかったのか。これはもう情報でありますからつまびらかでありません。しかし、間違いであるならば、これは訂正してもらいたいのであります。  上村長官大平総理に直接話をするために一回ならず会った、こういうようなことを聞いているのであります。しかし、その場合には通産大臣が先回りしてそれをぶち壊している、こういうことも報道機関などからわれわれは聞かされるのでありますが、これは一体だれがそうさせるのですか。政府には統一した見解、意見というものはないのでしょうか。もし二つあるならばそれを一つにするのが官房長官としての任務じゃないでしょうか。これが大平内閣環境行政か、こう思われることがないようにしておくのが本当じゃないですか。歴代の環境庁長官は代々閣僚として国民の前にうそをついた、こういうことになるじゃございませんか。私は、国民の前にそういう印象を払拭してもらいたい、今度こそはそうじゃないということを官房長官としてきちっと言明してもらいたい、こう思っているのであります。  私がこういうふうに言っても、官房長官の方では困るのじゃないか、こう思うのでありますけれども、これは国内だけの問題じゃないということであります。いま言いましたけれどもOECD環境庁長官が出席していますよ。そして予見的環境政策、こういうことを言っていますよ。先進国法制化している。しかし日本では、同じに行った環境庁長官政府の高官も行っているでしょう、通産省も行っているでしょう、法制化すべしと言わないで制度化が望ましい。この言葉の裏に何か大平内閣の弱さがございませんか。弱腰、こういうふうに思われませんか。環境庁法制化の文字を当然入れるべきです。その決意をあらわすべきです。これが通産省ですか、反対で入れられなかった。外務省では調整してくれという態度待ちであった。法制化がだめならせめて制度化にした。通産が独自のものでやっているからいいんだ、運輸省も自信がないけれどもやっているからいいんだ、指針があるからこれでいいじゃないか、こういうふうに言われているだろうと思います。しかし、通産自身行政としてやっている指針は、官房長官、これは明らかじゃないのです。この委員会でさえも委員の質問にもまともに答えていないのであります。ただ、ある、やっている、ある、やっている、これだけなんであります。その内容はつまびらかにされておらない。そしてこの事態はこれでいいんだと。  もし、そうするならば、行政の紊乱はどういたしますか。国に一本の方針がないために、地方一つの仕事をやるために勝手なアセスメントの方法をやっている。あの和歌山県の御坊火力発電所によってこれははっきりしているのであります。関西電力にかわって市がアセスメントをやる。金はつけを回して全部そっちから二けた、何十億という金が動いている。予算にまでこれが入っている。議事録にまで載っている。そして賛成住民だけにこれをやって、反対住民の方はボイコットしている。反対運動は当然起きる。四十三年にやったものがいまだにできておらない。ないがために行政上これだけの間違いと損失を犯しているわけであります。いまこそきちっとしたものがないことには行政にもマイナスだということがはっきりしているわけであります。  したがって、国民が待望しているのは法制化でありますから、日本も強力に主張できなかったのは政府部内の法制化のコンセンサスがなかったからだ、私はそのように判断しているのであります。内閣かなめである官房長官、外国に対してもこういう先進国としての態度を示しておいて、弱腰であって、これで大平内閣健全なりと言えましょうか。ほかの国はそれをそういうふうに見るでしょうか。私は、そういうような点からして、長官にきょう無理にお出ましを願って、大平内閣かなめとしてのあなたの決意を聞いておきたいのであります。私はそれでは困ると思っている。もっと積極的にやらなければならない問題だと思っているのであります。これに対しては長官どうでしょうか。  私は、これは大平内閣目玉ではないかと思っているのです。もう解散もうわさされ、口の端にも上った、少しまたすうっとなってきておりますけれども、いずれにしてもこれが目玉なはずです。どうしてこの目玉を出せないのですか。それほど経済界に、それほど通産省に弱い内閣ではないと思うのでありますが、目玉であるこの法案提出、これに対して当然やるべきではないのかと思うのでありますが、この辺、私の考え方は過ぎているでしょうか。この点では、私は激励の意味でいま質問したわけでありますが、長官いかがですか。
  14. 田中六助

    田中国務大臣 法制化をしないということを私どもは考えているわけではないわけでございますが、その過程においてやはり調整というものが必要——委員指摘のように、長年時間がかかっておかしいではないかとおっしゃいますが、長年時間がかかるところにやはり逆に言えば問題があるわけでございまして、じんぜんと日々を過ごしているわけではございませんで、いかにしたら調整できるかということにそれぞれが苦労しているわけでございまして、別に通産省がどうの環境庁がどうのということではなくて、環境庁通産省も何とかうまい調整ができまいかという苦労がむしろ時間をとっているのではないかと私は思います。  法制化という方向は変わっていないと私は思いますし、私どももこれからはこの法制化に鋭意努めていきたい、そういう考えを持っております。
  15. 島本虎三

    島本委員 これはやはり重ねて、長官でないと聞けないことなんでありますから、わざわざ来てもらって聞くのでありますけれども、やはりいろいろ意見のあるのはわかるのでありますけれども、二月二十日に自民党本部の七〇六号室環境部会が開かれてそれぞれやった、こういうことに対してもわれわれもそれぞれ聞き及んでいるのであります。その時に出された結論、こういうものについても、いま私の手元にあるのであります。  しかしながら、これを見ますと、依然として、法制化については予測手法などの技術水準現状地元住民による関与、地方公共団体における条例化動きなどの問題点について詳細かつ具体的に論議を尽くした次第であるが、今後事業特殊性に応じた科学的予測手法開発を図り、行政運用の積み重ね、環境保全の万全を期するとともに、環境影響評価の実効ある制度の確立を目指す、鋭意努力すべきである、この結論もまさに玉虫色ではございませんか。政府の責任で閣法として出して、政府の責任としてやるのかどうか、私はこの強い決意が必要だと思うのであります。これは自民党の政務調査会の環境部会結論によると、依然として玉虫色だ、こう思わざるを得ません。政府の責任においてこれはきちっとしてやるか、または自民党にやらせるべきだ、議院内閣ですから、私はそう思っているのであります。玉虫色ですよ。幾ら言ったってこの玉虫色では進みません。まして私はこの中でいろんなことを聞いて、いまのままにしておいて、反対漁民があってもしょうちゅう一本持っていけば済むじゃないか、こういうような言葉さえも出ておったということは、国民の前にこれは明らかにできないことです。環境影響調査というものをそう軽く見てはいけないと思うのであります。十の優秀な治療よりもたった一つ予防の方がまさるということを再び長官考え直してみてください。  そういうようなことからして、玉虫色の結論ですけれども政府の責任できちっとこうやる、このことだけは私としてははっきりこの際お伺いしておきたいのでありますが、長官いかがですか。
  16. 田中六助

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、法制化という一つの目標、一つ方向というものは確定しておりますし、それは島本委員の考え、それからその強い御質問と少しも私は不一致ではないし、私どももその方向でぜひとも努力していくということを確約申し上げたいと思います。
  17. 島本虎三

    島本委員 いままでの情勢はおわかりだと思うのです。くどく申しません。  ただ一つ結論として、これはやはり環境庁長官、四回出すと言って流れていますから、国民を欺いたことになります。今後は、提出するということを進んで言えないような段階にいまやなっておる。「仏の顔も三度」と言われますが、四回ですからこれは救いようがないと国民が思うでしょう。やはり官房長官の方にこれが行く、内閣かなめの方に重点がかかるのであります。来国会には大平内閣としてぜひこれは提出しますという約束を願いたいと思います。これが内閣国民に対する姿勢だと思います。あえて内閣官房長官にこの点をお伺いしたい。
  18. 田中六助

    田中国務大臣 できるだけ調整努力いたしまして、島本委員の御指摘方向努力していきたいと思います。
  19. 島本虎三

    島本委員 本当はこれで終わるのですが、これは法廷じゃないのですから、もう少しこっちへ近寄ったような表現はありませんか。では、来国会大平内閣としてはぜひ提出するように約束してもらいたいというのが私なんです。ところが、努力をするというのですが、努力の上に形容詞をつけませんか。努力の下にもう少し述語なんかつきませんか。もう少しそこを私の期待に沿うようにできませんか。
  20. 田中六助

    田中国務大臣 心情としては、私はそのまま島本委員のおっしゃるとおりにしたいわけでございます。そういうように発言すれば御満足かと思います。しかし、私自身この環境問題について、重要だと思う反面、それだけに実は私の認識、経験、勉強、そういうものが島本委員のように、あるいは環境庁長官のように、あるいは環境庁事務当局のように、それほど深い勉強をしてないわけでございます。  したがって、それを、実は調整がついていないのに、未調整のままの現況であるのに、私が次の国会で必ずそれを法制化したものを出しますと言うことは、むしろ私は自分の偽善もさることながら、国会に対してそういう約束が、確約ができないことを遺憾に思います。しかし、島本委員のおっしゃるように一生懸命内閣として努力していくということを確約申し上げたいと思います。
  21. 島本虎三

    島本委員 結論としては同じなんでありますけれども、それにつけ加えてください。  官房長官がいかなる状態のもとにかわっても、出すという強い決意をこの委員会に表明したことを引き継ぐ、これくらい言えるでしょう。
  22. 田中六助

    田中国務大臣 もちろん内閣の持続性ということもありますので、その点は引き継いでいこうというふうに考えます。
  23. 島本虎三

    島本委員 持続性があるから永久に持続して、その間出さない、こういうような意味にもとられる言葉でありますが、なお悪くなったのですが、そこへ一つ一つだけですもの、ぽとんとパチンコの玉を落としてくださいよ。
  24. 田中六助

    田中国務大臣 それを引き継ぐということをお約束申し上げます。
  25. 島本虎三

    島本委員 では、来国会には大平内閣としてはぜひ提出すると約束するまでに強い表現があった、こういうように解釈しておきたいと思います。  これでよければ答弁は要りません。議事録に載ります。したがって、帰ってもよろしゅうございますが……。御苦労さんでございます。  長官、いま聞いておられて、あなたも閣僚の一人なんです。そうなってまいりますと、あなたが四人目のうそつきだということになってしまいます。いま強い表現は一応あったわけでありますけれども、この問題に対してはどうですか、いま長官がそういうように言ったのでありますけれども反対しているのは通産省だけだ、これはもうわかり切っていることです。しかし、技術的な点でもあなたなぜ説得できないのですか。向こうは指針があると言うのでしょう。環境庁にもちゃんと行政的な指針があるでしょう。向こうは向こうでやっている、こっちはこっちでやっている、これじゃ困るから一本にしてやって、それが法制化したならばアセスメント法でしょう。あなた閣僚じゃありませんか。なぜそういう行政の末端まであなたが提出を求めてやれないのですか。環境庁設置法に基づいてきちっと提出させて、総理の責任においてあなたやらせることができるのに、なぜばらばらなことをやらせているのですか。なぜそれを許しているのですか。これはいけません。いまいろいろ聞いておって、あなたも決意を新たにしたと思うのであります。どうですか。
  26. 上村千一郎

    上村国務大臣 島本委員十分御承知だと思いますが、この前の公環特でも経過は詳細に申し上げておりますので、ここで改めて申し上げません。  なお、いま島本委員から田中官房長官にずっとお話しされた。官房長官もそういう意図だと思います。と申しますのは、この前衆議院の予算委員会におきまして私も申し上げ、それから官房長官もいまのような趣旨を申し上げております。  御承知のように、いろいろな事情はございましたが、昨年の五月十八日にああいう与党の政調会の御意見が出て、その後昨年の末におきまして、私どもは時期尚早という問題の内容につきまして政調会長に、その内容は各省庁間あるいは各団体あるいは党関係調整が十分できていないという意味に解釈してよろしいか、そしてそういう意味において鋭意努力を再開するということを申し上げて御了承を得て入ったわけです。入りましたが、何しろいろいろの御意見が出てきておる。それはもうすでに公環特なりあるいは予算委員会でもいろいろ御質疑の中に出ておると思います。  私の方としましては、とにかく四回目のことでもありますし、従来技術指針は提示されておりませんでしたけれども、というのは、各省庁間に全部了解がついておるものではございませんが、とにかく環境庁として考えておる技術指針は提示した。それから法案の骨子だけでなくてその内容全体を提示した、こういう態度をとってきておるわけです。そしてあらゆる努力をいたしてまいっておりましたけれども調整が全部済むというわけにいかない、進んではまいっておりますが、済まない。  その後、前と違いましたのは、この四月十日に三年有半にわたりまして有識者、経験者が御検討された環境影響評価のあり方についての御答申を受けました。こういうような線が出てきた。こういうことで私どもそれを検討しながらいろいろと調整を進めたわけでございますが、物理的に今国会への提出が非常にむずかしくなってきたということで、この四月二十七日の閣議で発言をいたしまして、残念であるが見送らざるを得ないけれども、中公審の答申も出たことでもあるし、精力的に調整を進めますという発言をいたしておるわけでございまして、官房長官も触れておりますが、何とか早期に法制化の実現を図りたい、こういう姿勢でございます。
  27. 島本虎三

    島本委員 このように大臣があっちへ行ったりこっちへ行ったりしているとはっきりしたことを一貫して言えないのですね。また参議院の方へも行くのですか。
  28. 木原実

    木原委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  29. 木原実

    木原委員長 速記を始めて。
  30. 島本虎三

    島本委員 いわゆる環境白書、こういう分厚いものがわれわれの手元に入りました。これに対してのいろいろな評判はかってないほど悪いのであります。それは楽観的な環境白書だ、あるいは自賛環境白書であるというわけであります。これならば程度は低いのであります。しかしその中で、危機的な状況は去ったと思っている、こういうように言うのでありますが、これはうそじゃありませんか。アメニティーにかかろう、こう言っておるのであります。かかるのはいいのでありますが、この考え方は逆じゃありませんか。環境基準を設定するのは何か十か十五あったはずでありますが、何一つ満足な環境基準達成がないじゃありませんか。S02だってNOxだって、ばいじんだって、騒音にしても水にしても、その他一〇〇%基準達成したものはない。これは数字であってそんなことはあり得ない、結構でしょう。それなら九八%、こういうのに対してもどうなんですか。九〇%以上満足しているから合格点だ。そうだとすると、残りの一〇%が人口棚密地帯である場合には、人口の半分くらいがその被害者だということになるのであります。数字だけでこれを言ってはいけません。この中にはやはり若干まやかしがある、長官、私はこういうふうにはっきりと指摘しておきたい、こう思うのであります。  環境をよくするための環境庁が出す一年間の総締めくくりの環境白書、この中にまやかしやうそがあってはいけません。私はそれを指摘したいと思います。「二酸化窒素に係る環境基準が改定されるなど、環境政策の多くの分野で環境保全施策の一層の推進が図られた。」二十三ページにそれがきちっと載っています。二酸化窒素の環境基準緩和を環境行政の進展ととらえている。この環境基準の緩和によって新環境基準の上限値〇・〇六PPmを超える測定局は四・六%、百三十三ページにあるでしょう、こういうふうになっているのであります。環境濃度が悪化、または横ばいの測定局が全測定局の九一・三%に上るような実情だと百三十一ページにある。年々大気汚染系の公害病患者が増大している。これはもう環境の実態が改善されたとどこをどう押してこれが言えるのですか。これは言えないじゃありませんか。実態は少しもよくなっておらない。こういうような中にあえてよくなったのだ、こんなことをいけずうずうしくも言って書いて出した環境庁、おかしいじゃありませんか。またN02だけじゃありません。S02でもばいじんでも粉じんでも、複合汚染を十分研究して、単一の物質ごとに規制はもちろん必要でありますけれども、全体としての健康被害を生じないような大気環境をもたらすような姿勢のあり方と複合汚染に対処する、相乗作用がいかに起きているか、こういうようなことに対処するように改めるのが環境基準の緩和よりも先じゃありませんか。その前に環境基準を緩和してしまって、環境よくなっているからこれでいいのだと手放しで喜んでいる、こんなことでいいのですか。格調の高い環境庁と言えますか。もう環境基準の緩和がどうして行政の進展と言えるのですか。これを答えてください。長官環境基準の緩和がどうして行政の進展だと言えるのですか。もし環境基準の緩和、改定、これが行政の進展であるとするのであれば、具体的にどうであるということを言ってみてください。緩和したのは全部一〇〇%なりますよ。患者がふえている、病人がふえている。にもかかわらずこれがりっぱだと言う。どうして行政の進展になりますか。
  31. 上村千一郎

    上村国務大臣 五十三年度の環境白書につきましていろいろと御指摘がございました。私も各報道関係の論説その他全部目を通させていただきました。その中には、多少楽観的であるというような口調がございます。これは非常に私どもはよく受けとめて反省していかなければならぬ、こういうふうに思っております。が、しかし、アメニティーの問題については、これは異論がないだろう。これはほとんど全部の論調になっております。  私、この環境白書につきましてよく見ましたところが、環境白書というのは五十三年度の行政施策なり行政状態を客観的に記述しておる、こういうふうに見ていいと思うのです。そういう際に、いま御指摘になったように、五十三年度が環境政策の進展の年というような表現がある。もちろんその「進展」という言葉自体につきまして、いろいろと楽観的という御批判を受けておる、これは表現上非常に気をつけなければならない。が、NO2の問題は、委員も御承知のように、公害対策基本法第九条第三号に、常に科学的な判断というものを考えて、そして見直さなければならぬというふうに規定されておるわけであります。それで、中公審にその旨直接にN02の問題について、その名前を出して諮問はされておられぬようでございますが、それを含む諮問をされ、答申に基づいてそういうことをされたわけであります。私、その当時まだ環境庁に参っておりませんけれども行政の一体化としましてこれを検討し、いろいろしまするとそういうふうになる。そういうことでございまして、これはなるほど〇・〇二PPmが〇・〇四ないし〇・〇六ということになる、緩和されておる実態になることは間違いございません。けれども、科学的な判断として、それで健康を守っていき得るというふうに御答申を得たので踏み切ったというふうに受けとめておる、こういう次第であります。  それ以外に、五十三年度にはいろいろな行政施策がある、こういうような発展段階を白書で書いてある。そこに「進展」という字がありますから、非常に楽観的、もしそういうふうなことがあったのでは大変である。環境というものは複雑であり、また……(島本委員「二十三ページにそう書いてありますよ」と呼ぶ)そういう文句があります。それで御批判がありますけれども、あと全部ずっと見てきますと、五十三年度のいろいろな施策というものを述べておる、こういうわけでございます。この表現について、もしそういうふうな感じを持ち、また心にそういうことがあるとすれば、これは御批評のとおり、環境庁としては楽観的なことがあってはいかぬ。まして公害問題を中心とし、その他環境問題はきわめて複雑多様化し、深刻化してくるのだから、これはしっかりやっていかなければいかぬという反省を持っておるわけです。ただ、いまの五十三年度は進展の年であったというような表現、この点につきまして報道関係におきましても、楽観しておるじゃないかというので、現にその文句を摘示されておられる点があります。これは十分われわれは反省していかなければいかぬぞということを言っておるわけです。けれども、趣旨は、いまのように五十三年度の行政というものを客観的に記述をしておる、これが白書の内容でございます。御指摘の点を十分に注意していきたい、こう思っております。
  32. 島本虎三

    島本委員 わかりましたが、この続きがありますから、すぐ来てください。ただ、いま長官の言ったこと、自分で気がつきませんか。いまあなたが言っているのをよく聞いたら、おんぼろの家ができていて、それでペンキを塗りかえてきれいな家になりましたということ、気がつきませんか。こういうことではだめだということです。この続きやりますから、行ってください。こういうふうに、おんぼろじゃなく、ぼろぼろになったような質問はいやなんですね、委員長。  じゃ、今度はスーパー林道、これも環境破壊につながります。皆さんそろっておられますか。  まず先にお伺いしておきますが、私どもは一応は南ア・スーパー林道については、一九七九年五月二十六、二十七日の二日間、山梨県、長野県の中にある北沢峠、これは第一種の特別地帯ですが、こういうようなのも十分調査してまいりました。その調査に基づいての質問であります。  まず、その前にお聞きしておきたいのでありますけれども、五十二年八月二十五日にスーパー林道の問題について環境庁長官は談話を公表して、そして森林開発公団に対して自然環境保全の観点から条件を付して本道路の施行を認めた、こういうようなことになっておるのであります。そうすると環境庁、まず環境庁談話というのは何ですか。長い談話ですね。歴代の環境庁長官の中で一番長い談話。何のためにこの長文の談話が必要なのですか。そしてこの談話の後に許可しておるわけでありますが、この談話は拘束力があるのですか、ないのですか。この談話の地位について、拘束力についてまず伺います。環境庁です。
  33. 金子太郎

    ○金子政府委員 大臣談話というものは、重大な決定なでのありました場合に、当該官庁考え方、あるいは決定を下されました大臣考え方などを広くわかっていただくために発表するものだと理解いたしております。また場合によりましては、記者クラブなどから御要請がありまして、それにこたえて談話を出すということもございます。これはあくまでも談話でございまして、拘束力とかなんとかはないものと考えております。
  34. 島本虎三

    島本委員 拘束力がない、談話だ——その談話のすぐ後に許可をしている。昭和五十三年八月十五日に、長官が、長野県知事及び山梨県副知事に、本林道の維持管理、観光道路化の防止のための交通対策、保護の強化について要請するとともに、林野庁長官に対しても、五十三年八月十七日に、道路計画の変更その他同様の事項について要請した。そして昭和五十三年八月二十二日に長野県、山梨県両県から、その要請に対して同意する旨回答があった、こういうことになっております。  そうすると、これは何になるのですか。談話のすぐ後に出されておりますから、通達ですか通牒ですか。要請に対して同意したというと、いまでもこれがきちっと守られて実施されておりますか。これは林野庁。
  35. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生お読みになっておわかりだと思いますけれども、この環境庁の談話を見ますと、この林道をつくった場合に維持管理が十分行われることが前提になるということと、災害の防止あるいは骨材の移動、労働力の確保、こういうことにこの林道が役に立つということ、そのほか、森林管理、過疎対策、そして最後に公園の管理という面からも意味があるということが書かれております。  このスーパー林道につきましては、ただいま工事中でございますし、それから先生が最後に御指摘になりました、県等に環境庁からいろいろお話しされました問題については、今後林道ができたときにそれぞれの県が検討して、十分その辺に対応していこう、そういう同じような考え方でやりましょうということでございまして、ただいま林野庁が公団に実施させております林道の工事そのものと現時点で結びつくものではないというふうに考えております。
  36. 島本虎三

    島本委員 環境庁どうなんです。
  37. 金子太郎

    ○金子政府委員 両県知事に対して書面をもって通知を出しまして、それに対して、両県知事から書面をもって回答があったということは、それによって、本件の同意にかかわる条件を付すことができたものであると考えております。その条件の具体的な内容を固めるのは、この林道ができ上がるまでの間に必要な調査その他の調整を行いまして固める、こういう予定でございます。
  38. 島本虎三

    島本委員 わけのわかったようなわからないような、ぺらぺら言っても肝心のところに対してはさっぱりわからない。あえて私の方で調査してきた段階に沿って——いまの条件を認めたものである、こういう考え方の上に立っていま工事を実施しているのが森林開発公団なんです。  一つだけ聞いておきますけれども、あなたの方から出されてきたこの資料の中にはっきりと、八月十五日に「本林道の維持管理、観光道路化の防止のための交通規制、保護の強化について要請するとともに、林野庁長官に対しても」同様なことを要請した、こういうことになっているわけです。両県知事からオーケーが来た、こうなんでありますが、この条件を守っておるのですか、このとおりいっているのですか。よけいなこと言わなくてもこのとおり、イエスだ、ノーだでいいんですよ。もう一回ちょっと言ってください。
  39. 金子太郎

    ○金子政府委員 昨年の秋の工事再開以来今日までのところ、この条件はよく守られていると判断いたしております。
  40. 島本虎三

    島本委員 それは将来守られなくてもいいという意味ですか。
  41. 金子太郎

    ○金子政府委員 今後とも条件は必ず守ってもらうつもりでおります。
  42. 島本虎三

    島本委員 結構です。初めていい答弁です。いつもそういうのをきちっと言えばいいんです。  そうすると森林公団、いまの条件を守ってやっていますか。
  43. 福田省一

    福田参考人 環境庁から示されました工事に関する基準をよく守って実行いたしております。
  44. 島本虎三

    島本委員 では次の点についてお伺いいたします。  この地帯は中央構造線と糸魚川と静岡線の西麓部線というのですか、それによって区切られたくさび状帯ということになっているわけですね。なかなかむずかしい。しかし、特にこの地帯は、最大級の崩壊地帯と言われていますね。それから道路建設は最も危険な場所だ、こう言われていますね。それから大災害発生の危険性もあると言われています。そして急坂、急カーブの道路になるために安全性がなかなか保たれないし、治山治水、防災のためには維持管理に膨大な費用を必要とする場所だと言われておりますが、道路の推持と交通の安全は完全に保障できる体制でしょうか。同時にこの原生林に対して、貴重な高山植物を枯死させることがないような対策もきちっととられているでしょうか。それと同時に、山梨県の広河原から全域が水源涵養保安林に指定されておりますが、この林道をつくることによって水源地帯が汚染されることがないかどうか、この三つについてはっきりしたデータをつくってやっておりますか。
  45. 福田省一

    福田参考人 御指摘の点につきましては、細心の注意をいたしまして、特に治山事業と林道事業とを並行いたしましてそういうおそれのないような工事を実施しておるわけでございますが、念のためにそれぞれの専門家に調査を依頼しまして、その結果を見ながら工事を実施しているのでございます。
  46. 島本虎三

    島本委員 何か自信ないような答弁ですね。林野庁長官のとき、あなたはもっと元気がよかったのですが、もっと自信ある答弁をしてくださいよ。もともとここは自信のない個所なんですね。
  47. 福田省一

    福田参考人 これは先生ただいま御指摘ございましたように、中央構造線の中にあります有名な破砕地帯でございます。それは野呂川林道建設の当時から十分わかっておったことではございます。ですから、林道工事というのは大体山の地帯を走っておりますので、いろいろといま御指摘のような問題が発生するわけでございます。  野呂川林道工事が終わりまして、スーパー林道として両県にまたがる工事を再開いたします時点から、その点についての工事の事前の調査等を十分に考えて実施したのでございますが、その後、山梨県側、長野県側両方にまたがって崩壊地等数カ所ございます。これらについては治山事業と並行いたしまして工事を完了しております。  私も、昭和五十年の秋と去年の秋、二度にわたって現地を見てまいりました。最初見ましたときに比べまして、昨年行きましたときには、いま先生御指摘の工事の危険個所についても十分修復ができておりまして、緑も相当回復いたしております。  それから道路の安全の問題につきましても、現在林業土木施設研究所というところの専門家に委嘱しまして、山梨県あるいは長野県も入れまして、交通安全のための道路の交通規制のあり方、あるいは管理のあり方等についても現在その結果を待っておるところでございますけれども調査を依頼しております。そういったようなことで、崩壊に関する問題、それから交通安全に関する問題、また御指摘の貴重な植物の問題はどうなるかということでございますが、これはすでに環境庁から出されました基準の中にございますので、たとえば道路の幅を狭くするとかあるいは場所を変える、そういったようなことにつきまして十分配慮いたしまして工事を実施しておるところでございますから、私はこれで十分であるというふうに確信を持っておる次第でございます。
  48. 島本虎三

    島本委員 十分な自信がありそうですね。それにしてもおかしいですね。四十三年ごろにスーパー林道が計画されたんですが、いま必要性がありますか。これは林野庁でしょうか、林業の限界は千六百メーターくらいだ、こう言われていましたけれども、二千メーター級の高山に林業のための林道は必要でしょうか。この地帯はまた急峻ですから、林業の施業困難地帯でございましょう。それにまた今度甲府と伊那との間を短絡するんだ、こう言っていますけれども、紆余曲折の危険の多い場所、そしてもっと早く行けるための国道二十号と二百五十六号線が現存しているわけでありまして、そういうようなところに危険性の多いこのスーパー林道が必要でしょうか。いまや不必要な存在になっていませんか。そしてこれも短期間であります。六月十日から五カ月くらいの季節的な利用にすぎません。そうすると、利用のできない方が多い、いわば季節山岳道路だということになります。それと過疎対策だということになりますけれども、いま戸台と芦安間の距離は五十キロでしょう。五十キロもあるその間に集落が一つもない。それは生活道路ではない。遠くはるか離れた過疎地を同じように結んで、これでどうなんでございましょうか。悲願だと言っている。徳川時代の悲願かもしれぬが、もうすでに代行する道路ができ上がっておる。そうすると、本当に過疎対策上必要だとするならば、もっともっと農業、林業政策、これはもう農山村民が生活できるような、これこそ必要なんであって、いまこの地帯に道路をつけるということは必要でなくなってしまっている、そういうようなことになるわけであります。そうすると、当然この問題に対しては、南アルプススーパー林道を建設する目的は計画当時とは現在は変化している、こう言わざるを得ないわけでありますけれども、どうしてこの北沢峠を開通しなければならない理由があるのかということ。大分いま四十三年に比べたら、十年以上たっていますからもうすでにぼけてしまっているということになりませんか。それを環境破壊までして貫かなければならないという理由は、当初の、この去年の要件にもとることをしなければならないことになるんじゃないかと思いますが、林野庁長官、いまでもこれは必要性あるんですか。
  49. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 御指摘になりました南アルプスのスーパー林道でございますが、延長が大体五十七キロぐらいございます。四十三年から工事にかかっておりまして、もうすでに十年以上たったわけでございますが、最終的に問題になりましたのは、先生御存じのとおり一・七キロ地帯の中に国立公園地帯があるということで、そこにどういう工法でこの道を通すかということで環境庁に工事の内容を御説明し、その工事の内容についていろいろと環境庁から御意見をいただいて、最終的には昨年許可をいただいて工事を進めておるというのが実態でございます。そういう観点から、確かに時期は長くなりました。しかし御存じのとおり、山村と申しますのはどこに行きましても山奥のところでございます。特にこの地域につきましては山梨県側は県有林、長野県側はほとんどが国有林、こういう形で県有林と国有林がその大半を占めておるわけでございます。したがいまして、これからの森林、林業というものの維持管理という面から、現在山梨県側では治山の直轄事業をあの野呂川沿いにやってきております。従前から非常に荒れる川でございましたから治山をやっておりますし、そういう観点から見まして、逆にあの辺には骨材もないという問題もございます。ところが長野県側の戸台川の方には骨材があるという問題もございます。従前からその辺の問題もございまして、あの道をあけることによりまして治山事業も円骨に推進し得るというような観点もございました。  さらに林業の問題でございますけれども、確かにいま申し上げましたように、あの両地域は国有林と県有林がほとんど持っておりますから、国有林あるいは県有林の森林施業を見ますと、あの北沢峠付近を直接森林を伐採するということは現在時点では計画は組んでおりません。しかしながら、森林の維持管理と申しますのは、木を切ることだけではなくて、やはりそれなりの管理維持あるいは手入れというものが必要でございます。そういう観点から見ましても、全体の森林の維持管理のためにあの林道が必要であろうということ。さらに先生がおっしゃいましたように、あそこには山梨県側が芦安村、それから長野県側が長谷村、この二つの村がございまして、この二つの村が隣でありながらお互いになかなか行き来ができない。そしていま先生がおっしゃいましたように、ほかに国道があるというお話でございますが、確かに二十号線がございますし、それからもう一本いま高速道路も建設中やに聞いております。しかし、芦安村あるいは長谷村からそこに到達してそちらに回るということになりますと、結構時間もかかるわけでございます。そういう観点から、地元としてはこの道をあけてほしいという要望が前からあったわけでございまして、私ども確かに十年たちますと経済情勢というものが変化がないとは申しませんけれども、山村におけるいろいろなあり方、特にこれから山村を振興しなければいけない立場を考えますと、あそこに道をあけて、これから環境庁の御指摘の中で十分有効に使うということは、われわれとしては意義があるというふうに考えております。
  50. 島本虎三

    島本委員 その考え方も若干修正を要すると思います。しかし、もう少し先の方へ行って、最後にもう一回戻ります。  この林道完成後、この道路の維持管理は地元の自治体で行うことになるだろうと思います。当然公団法によってできたならばそのまま自治体の方に移管することになりましょう。そうすると、負担は過疎地にも当然及ぶことになります。自治体の財政をますます圧迫することになりませんか。管理するためには四メートルの道路であるならば一メートル二百二十円で交付税によって支給されることになるでしょう。それぐらいで間に合いますか。同時に今度は金がない。したがって、これはもう高率補助は災害を待つよりしようがないということになる。いつでも災害待ちの道路、こういうことになってしまうわけであります。もうすでにこういうことは富士のスバルラインとか各地で大きい問題になっておりますから、それ以外にも御存じのとおりなんであります。そのほかになおいろいろの付随する第二次公害に悩まされるのであります。この管理形態は自治体に任してしまうということになった場合には、これはどうなりましょうか。公団にそのまま国の方が管理をさせるのか、自治体に任せるのか。自治体に任せたならば一メーターについて二百二十円、これによって維持することになりますから、当然足りない。足りないとまた御法度の観光道路にしてこれを利用するということにまた順繰り順繰りにくることになるじゃありませんか。この管理形態、これは重要だと思うのであります。この管理形態に対しては、これは林道でありますからあくまでも林野庁だと思うのであります。これは林野庁自身かまたは公団自身が最後まで管理する、そうでなければ話し合いをつけて、スーパーと上につきますから建設省にこれを管理させて管理の十全を期す、自治体の方にいまの状態のままではやらない、これくらいの配慮は当然必要じゃありませんか。国の資源を守り、そしてこの得がたいような環境を守るためにも、自然を守るためにも、そういうふうな配慮が必要だと思うのであります。各省庁から来ておりますが、林野庁、建設省、自治省それぞれのお立場から御意見を伺います。
  51. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま維持管理が地方公共団体ではできないのではなかろうかという御指摘でございますが、この林道は、完成いたしました暁には長野県なり山梨県なりそれぞれの地方公共団体で維持管理していただくことになっております。  ところで、現在まで森林開発公団で、この道はすでに五十七キロのうちの約五十六キロ近いものができ上がっておりまして、その維持管理の実態を見ておりますと、四十九年度から五十二年度にかけまして年間メーター当たり約二百五十円、五十三年度は百十七円という形で林道の維持をやっております。これはまだ車が通っておりませんから、そういう点では少ないという点もあろうかと思いますけれども、五十七キロという長い距離をメーターで割りますと、メーター当たりの単価は決して私どもそんなに多額の金でなくて維持できると考えておりますし、さらに、これが完成する暁まではいろいろな点につきまして公団の方で十分必要な工事あるいは必要な施設、こういうものを設置いたしておりまして、維持管理につきましては、最小限の維持管理でできるような工事をして地方公共団体に引き渡すという考え方で工事をいたしておりますので、私どもの考えから見れば、地方公共団体に移管されましても維持管理はできるものというふうに考えております。
  52. 山根孟

    ○山根政府委員 お答え申し上げます。  南アルプススーパー林道につきましては、その詳細については存じておらないところでございますが、林道として建設されたものでございますから、完成後においてもやはり林道として管理をなさっていくのがたてまえではないかというぐあいに考えております。しかしながら、地方公共団体等から道路法上の道路にするというようなことについて協議を仮に受けるといたしますならば、その場合には道路法上に定めますいろいろな認定条件等を勘案して、たとえば県道等が適切であるかどうかといった認定の可否を検討するということになろうと思いますが、現段階では協議を受けておりませんので、的確な御返事はできないわけでございます。
  53. 矢野浩一郎

    ○矢野説明員 林道に関する経費につきましては、従前は受益者負担という考え方が強かったわけでございますが、最近の実態から見ますと、府県なりあるいは市町村が管理を行いかっ経費をも負担をするという実態がございます。  先ほど先生御指摘のように、そういう観点から、実態を勘案いたしまして普通交付税におきましては御指摘のような財政需要額の算定を行っておるところでございます。ただ、普通交付税は国庫補助金ではございませんので、普通交付税に算定しておりますところの単価というのはあくまでも全国的な平均的な状態をもとにしたものでございます。幅員によって区分はいたしておりますけれども、特に維持管理経費が多額にかかるというような点を個別に措置しているというものではございません。  先ほどから御論議の対象になっております南アルプススーパー林道につきましては、今後の問題であろうかと思いますが、地方公共団体がこれを管理するということになる場合には、私どもの方としては、地方財政の状況等にかんがみまして、地方団体の維持管理についてできるだけ負担の少ないような工事の方法あるいは管理のやり方、こういう点を考慮すべきではないか、こう考えておるところでございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 そういうような考えのあることは承りました。しかし、これは相当考えておかないと、地方はどこでも財政上の問題で行き詰まるのでありますから、これは少なくとも国立公園の第一種特別地域、こういうようなことでありますから、ここを汚してしまったりしてしまえばとんでもないことになり、許可したことが時代に逆行することになるわけでありますから、これは金が不足でどうにも管理できない、こういうようなことがないように十分当たらなければならないと思います。これは林野庁でも自治省でも建設省でも十分これを考えておいてもらわないといけない問題ですから、その点は強く要請して、最後にもう一回意思を確かめたいと思うのであります。  いまここに環境庁も、はっきり申しましたように、八月十五日に観光道路防止のための交通規制やその保護の強化についてきちんと要請し、両県知事もこれに対して賛成した、了解した、こういうようなことであります。しかし、国立公園の第一種特別地帯に車道をつくる。この保守の厳しさ、困難さ、このままにしておいたら時代に逆行するような破壊が行われるおそれがある。この林道そのものは森林開発の美名に隠れて大自然を破壊する山岳観光道路、こういうようなことになるのじゃないか、そういう意図があるのじゃないか。しかも地元民による観光開発じゃない。外部からの大資本による開発、こういうようなものを地方住民を先頭に立てて、その名において開発しようとしているのじゃないか、私はこういうような点を恐れるのであります。私の手元にあるのはその一つの資料であります。これをもって環境庁、十全だと考えておりますか。これによって林野庁、十分だと考えられておりますか。  、長野県側に長谷村があります。そこには多目的ダムの美和ダムがつくられております。そして地元分担金が長谷村に課せられたのであります。村は負担金がなかなか支払えないということで、これは鹿嶺高原、ここに村有地、遊牧地がありますので、県の企画局のあっせんで、伊藤忠へ百四十ヘクタール売却しているのであります。金銭は数億だと承っておるのであります。そうなった場合は、伊藤忠も、土地は買った、しかしただ買っておいてはどうにもなりませんので、そこでクレームが入った。山の中で、土地だけを買っても無意味であるから別荘地として開発したいが、そのために道路が必要である。長野県側へこれをぶっつけた。長野県でも、売却の費用の中から道路の改修工事を行った。そして長谷村へは諸経費を引いて五千万円ほど還元された。その後別荘地として数億の金をかけていま造成中である。その別荘のためには道路の開発が必要であり、これが林道につながるものであり、それでいまこの造成を急いでいるものだ。山梨県側は山梨県側で、これも広河原ロッジがある。これはロッキードで問題になった小佐野賢治の国際興業が経営しておる。そしてこの路線バスも山梨交通が運営している。この両者が拍車をかけて、当初地元からはスーパー林道の要請はなかったのでありますが、地元の要請がなければこれはできませんので、地元の強い願望ということでついにこれは開始することになった、これが事の真相である、こういうふうに私は承ったのであります。  そうすると、もうすでにこの問題に対しては、言葉では何と言っても、裏に隠されているのは条件無視ではございませんか。観光道路にするためだ、山岳観光道路にするためだ、こういうようなことになってしまっているではありませんか。国会で答弁したことは全部うそだということになってしまうじゃありませんか。いまの私のこの指摘は知っておられますか、どうですか。
  55. 金子太郎

    ○金子政府委員 御指摘の件は、現在開発が計画されております鹿嶺高原のことかと存じます。この鹿嶺高原の地域は、小黒川流域でございまして、北沢峠とは沢が違いますし、そもそもこの地区は国立公園の外でございます。したがいまして、国立公園行政とは関係のないことでございますが、なお長野県は、県の自然保護条例開発調整地域といたしまして、開発に際しては適正な環境保全が保たれるように、自然保護協定を締結しているというふうに承っております。  それから、山梨県側の広河原のロッジでございますが、あれは国民宿舎として建てたものかと思いますが、その経営がなかなかむずかしい、採算に合わないというようなこともありまして、山梨交通に経営管理を委託しているものであるというふうに聞いておりまして、いずれもスーパー林道の問題とは関連のないものと了承いたしております。
  56. 島本虎三

    島本委員 関連のないはずの地元の市町村の中には、観光道路として利用したいという声もあるのです。林野庁の計画には観光目的は含まれているのですか。また、これはもう環境庁の許可条件と反するのでありますが、この点を解明してもらいたいと思います。両方から……。
  57. 金子太郎

    ○金子政府委員 環境庁といたしましては、同意の条件として、観光道路にはしない、したがって幅員は三・五メートルにするとか、マイカー規制及び観光バスはシーズン中、シーズン中しか参りませんが、入れない、こういうことを基本として、両県及び地元市町村と約束をしている、こういうことでございます。
  58. 木原実

    木原委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。鈴木強君。
  59. 鈴木強

    鈴木(強)委員 お許しをいただきまして、南ア・スーパー林道の問題について若干質問いたします。関連で時間が少のうございますので、質問は一括していたしますので、環境庁、林野庁、森林公団、それぞれお答えをいただきたいと思います。  質問の第一は、南ア・スーパー林道の全線開通の時期はいつになるのか。供用開始はいつになるのか。開通後、どの時期に山梨、長野両県に管理を移管するのか、これを明らかにしてもらいたい。  第二は、移管に際して、山梨、長野の両県は、森林開発公団に対して幾らの負担金を支払わなければならないのか。また、その支払いの方法はどうなるのか。  第三は、林道の交通規制については、特定の車両を除き、シーズン中は山梨県側の旧野呂川林道の終点付近から、長野県側の国立公園外の適当な場所までの区間は乗り入れを禁止する、こうなっておりますが、長野県側の適当な場所というのはどこなのか。またシーズン中というのは何月から何月までを考えておるのか。  第四、この地帯は、いま島本委員からもお話がありましたように、亜高山地帯でございまして、しかも急傾斜地でございます。崩壊のしやすい脆弱な地形、地質でございまして、移管後の維持管理というのは非常に大変だと思います。いまお話を聞きますと、修理というのは、二百二十円パーメーター国から補助されるようですが、私は非常に少ないのではないかと思います。したがって、大きな荷物を地方自治体に押しつけられてはたまりませんので、お話を承っておりますと弾力性もあるように思いますので、実情を十分考えた上で適切な補助をしていただくようにお願いしておきます。なお、全般的な補助額の増額というのは、当然ひとつこれからも検討していただきたい、こう思います。  それから第五は、車の乗り入れを認めることになりますと、お話のように、この林道というのは、もはや林道ではなくして、山岳観光道路になるということは、これはだれが見ても考えられることでございますから、そうなりますと、ごみとか汚物とかの投棄、これをどうするか、あるいは植物の踏圧、盗採等の問題をどうするのか、こういう点を考えておられるかどうか。  それからもう一つ、最後に、この地域は御承知のように南アの国立公園地帯でございまして、自然保護の強化は一層強くしなければなりませんし、同時にまた、利用の適正化ということも登山者のために考えなければなりません。そういう地域でありますから、環境庁におきましても、国立公園の計画の見直しをするというお話を承っておりますが、その構想がありましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。  いずれにしても、大部分は国立公園地帯を通る林道でございますから、自然の美を損なうということになりますと、これは大変なことでありますので、この林道の今後の維持管理については慎重な配慮をしていただきたい、そういうことを私は強く望みまして、お答えをいただきたいと思います。
  60. 金子太郎

    ○金子政府委員 私から第三点と第五点と第六点についてお答え申し上げたいと思います。  第三点は、山梨県側の旧野呂川林道終点付近、すなわち広河原でありますから、そこから長野県側の国立公園外の適切な場所までの、その適切な場所はどこかという御質問かと存じますが、一応現在のところ、歌宿沢を考えております。長谷村の方でございます。  それから第五点の、ごみなどが散らかるとかあるいは貴重な植物などが痛めつけられるという心配は、私どもも全く同意見で、いまから懸念いたしておりますが、本件につきましては、私ども、現地の担当管理員はもとより、山梨県及び長野県の自然保護課の方々とよく相談いたしまして、また、地元市町村にも、以下、管理について遺憾のない体制をつくれるように、これから対策を考え、体制を整えるべく努力してまいりたいと思っております。  それから第六点の、公園計画の見直しでございますが、この地域は昭和三十九年に公園になっておりまして、それ以来十五年たっておりますので、現在、公園計画の見直し中でございまして、山梨県及び長野県両県当局に協議中でございます。主たる内容は、この許可の条件ともかかわるわけでございますが、私ども、長さ七百メートル、幅三・五メートルの道路を特別地域の中に認めざるを符なかったということにも顧み、北沢峠の長野県側に非常な天然林の美林がございますので、そこをできることならば、特別地域のかなり厳しいグレードのものに指定していただいて、保護の強化を図りたい。本件について、林野庁側の格段の御配意を得たい、こういうふうに考えております。
  61. 福田省一

    福田参考人 公団の方から、工事の完成の時期のお問い合わせがございましたので、お答えしておきますが、これはことしの十一月三十日、十一月末までに完成させたいと考えております。  それから、公団の林道の移管の問題でございますけれども、これは山梨県と長野県と十分協議いたしまして、できるだけ早い機会に移管いたしたい。でき得れば年度内に完了したい、こう考えております。  それから、移管後の維持管理の問題については、先ほど島本先生の方から御質問がございましたので、答弁は林野庁長官からありましたけれども、私からお答えする必要はございましょうか。——それでは、これは省略させていただきます。  それでは、重複するかもしれませんけれども、移管後の管理の問題につきましては、公団といたしましては、本年度と前年度、つまり五十三年度と五十四年度二年にわたりまして、できるだけ移管後に管理費がかからぬようにという考えから、約七億円を投資しまして、治山工事あるいは橋のかけかえ、のり面のいろいろな防護とかそういう工事をいたしております。したがいまして、先ほど林野庁長官からお答えいたしましたように、一般の管理維持費で今後は十分管理できるであろうというふうに考えておるところでございます。  それから、交通の渋滞をなくするための退避所のことについてちょっと御発言があったかと思いますけれども、これにつきましては、長野県側の野呂川林道の終点の付近、それから山梨県側の野呂川の終点の付近と、長野県側の国立公園の境目付近に土砂を切り取ったものをまとめて捨てておりますので、そういったような場所とか河原を利用して、ここに駐車場のようなものを設けて渋滞をなくしたい、こういうようにいま計画しているところでございます。
  62. 鈴木強

    鈴木(強)委員 負担金はだれがすることになっていますか。
  63. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 私の方から負担の問題を御説明申し上げますと、負担につきましては、総額が、補助金が大体三十四億でございますけれども、県の負担が山梨県と長野県と合わせまして六億二千万、受益者の負担が七億七千五百万というふうになっております。このうちの受益者の負担でございますが、これはほとんどが国有林並びに県有林でございますから、大半はそれに該当するということになろうと思います。
  64. 鈴木強

    鈴木(強)委員 じゃ、具体的に、長野県と山梨県と額を幾ら負担するの。
  65. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま申し上げましたように、県合計で申し上げましたけれども、山梨県の負担としては二億九千三百万、それから長野県の負担といたしましては一二億二千八百万、そのほかに受益者賦課金といたしまして山梨県側が四億八千五百万、長野県側が二億九千万という形になっております。
  66. 鈴木強

    鈴木(強)委員 交通規制はどこでやるの。シーズン中というのはいつのことを言うの。
  67. 金子太郎

    ○金子政府委員 どうも答弁が欠落いたしまして申しわけございません。シーズン中ということで一応地元公共団体と合意を得ているわけでございますが、私どもは夏山でにぎわう時期及びもみじの時期をシーズン中というふうに考えております。  なお、何日から何日まで、あるいは何月と何月というような決め方ができれば一番いいわけでございまして、最終的にはそういうふうにしなければならないと思っておりますが、なお、利用動態などについて十分なデータがございませんので、現在、県当局にその利用動態にかかわる調査をお願いいたしておりまして、そのデータが出てまいりました段階で、工事完了までの間に具体的に決めたいというふうに考えております。
  68. 鈴木強

    鈴木(強)委員 もう時間がありませんから、私、これで終わりますけれども、ただ一言だけ申し上げておきたいのは、いまの交通規制の問題についても、当面何か工事を再開するに際してつけたような感じがするのですよ。恒久的にどうなるかというとさらに検討すると。現在でももしこれが本当の林道の目的を達成するならば、山岳観光道路的なものにしてはいけないのでしょう。ですから、私はここのところが非常にくせ者だと思うのですよ。  シーズンとは一体いつなのか。われわれは五、六、七、八、九、十、もみじが見えるころまではシーズンと考えるわけですよ。その期間をシーズンとすれば、一般の車は入れないわけですから、すなわち、あなた方が言っている林道としての目的に少なくとも沿っていくわけですよ。ところが、その間に相当の期間一般の車を入れることになれば、さっき言ったような問題が出てきまして美観を損するということにもなるわけですから、この辺は十分にひとつ慎重に配慮をして決めてほしい、こう思います。  これで終わります。ありがとうございました。
  69. 島本虎三

    島本委員 いま本当に地元でその方に詳しい鈴木委員からの質問もあったわけでありますが、甘いですよ、考え方が。現に、私も初めてですが、この足で探査してみて、やはりこういうようなりっぱな場所、あれはやるべきじゃありませんよ。しかし、いまさらそれはやるべきじゃないと言ったって、やってしまっているのでありますが、これは最善の保守に対する手を尽くすべきだ、こういうふうに思うわけであります。トンネル化せいと言ってもしない。そしてやはり自然破壊、こういうおそれのあるような林道建設をやっている。それも林野庁だ。どうもこういうふうにしてみます場合には、われわれはいまこの問題に対する重大な関心を再び払わざるを得ないような状態になったわけであります。日本の自然全体の運命に暗影を投ずるようなものじゃないかとさえ思うのでありまして、今後この問題に対しては、まず国も県も当初の目的どおりに、観光道路じゃないのだと言いながらも、諸情勢が全部観光道路にするような状態を認めている。環境庁がこれを認めることはいけませんよ。そういうのはだめです。ましてそれをやりながら、公団があるのだから存在価値を示すために、ただどこでも道路をつければいいんだ、こういうような森林公団の考え方もこれは困ったものであります。さりとて、これはもう全山の緑を守るはずの林野庁が山を荒らしている、こういうふうなことは困ったことであります。日本の政治全体がいまやすでに日本の自然に対しては暗影を投じている、こう言わざるを得ないのであります。私は再びこれを調査したいと思います。しかしながら、行政が初め考えているとおりにいま進んでいません。今後も間違った方向へ行くことは、私としてはあってはいけないことだし、厳重に監視していきたい、こう思います。いまこれに対してどうのということになりませんけれども、少し時間がおかしくなってしまったのです。  まだあるのですが、自然環境の方だけはこれで終わって、あとは長官が来てからやることにいたしまして、こういう細切れ質問はいやなんだ、委員長。しかし、やむを得ないからやめますけれども、どうも委員長、これで終わります。——いま言ったのは、自然環境の林道に対する質問は一応終わっておりますけれども、まだ白書に関する質問が大臣いない以上進みませんので、これはそのまま留保しておきまして、これで終わりという意味であります。
  70. 木原実

    木原委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。水田稔君。
  71. 水田稔

    ○水田委員 島本委員の白書に対する質問の中で、カドミの汚染米の問題が出る予定で、それに関連してと、こういうことでありますけれども大臣がおられぬわけでありまして、ちょっと関連というより単独の質問みたいになりますが、三月二十九日に参議院の予算委員会の分科会で、いわゆるカドミによるイタイイタイ病の原因について、昭和四十三年に出された厚生省の見解についていろいろ論議をやった経過があります。そしてその最後のきわめて重要なのは、誤解を招くというのか、本当に環境庁がそう思っておるのかという一番大事なところは、こういう質問があります。「因果関係を割り切ったという厚生省の見解はやはり崩れたんだ」「これは認めざるを待ないでしょう、」こういう質問に対して保健部長はずばり何にも言っていません。「そのとおりだと思います。」こう答えておるわけです。まさにこれは、厚生省の四十三年の見解は崩れた、こういうぐあいに環境庁が考えておる。これは公のいわゆる予算委員会の分科会の論議における記録でありますから、大変なことだと思うわけであります。  時間がありませんから……。私はもうこれに対して環境庁がそうなのか、あるいはそうでないのならきちっと否定をして、今日におけるカドミとイタイイタイ病との関連が——四十三年の見解というのは、四十六年に環境庁ができてこちらへ全部資料も来ておるし、恐らく当時の厚生省の見解ですが、いまは環境庁の見解、こう言って差し支えないものだと思うのですが、昭和三十八年あるいは四十年、四十二年に調査した。そしてこの質疑のもとになったのが昭和五十年の環境庁の委託にかかわる日本公衆衛生協会の一つの文献学的な研究というものによって論議をされておると思うのです。そこらを総合していまカドミとイタイイタイ病の関係について環境庁の見解を明らかにしてもらいたい。これが一つ。  それからもう一つは、そういう論議の中から、この汚染された地域が三千ヘクタールの調査で千五百・六ヘクタールをいわゆる地域指定をして、今年度から百ヘクタールをパイロット事業として汚染土の除去という事業をやろう、こういう計画もあるわけですが、地元では、そういう論議の中で、これもどうも後ろへ後退するのではないか、そういう心配をしておるわけであります。これは環境庁と農林水産省の方で、実際の仕事は農林水産省でやられると思うのですが、そこらあたりがどのように進められようとしておるのか、この二つを、時間がありませんから、もうまとめてお伺いします。
  72. 本田正

    ○本田政府委員 イタイイタイ病の原因に関します見解についていまお尋ねいただいたわけであります。  御指摘のように、厚生省の見解は当時におきましてすべてのいわゆる科学的な調査研究、それから公的機関等の資料等を詳細に検討した結果、公害行政という立場からまとめられたものでございまして、私の当時の答弁はそれを踏まえた上で、その後にいろいろ意見があるのは事実でございます。学界において論争があるということについて実は言及したつもりであったわけでございます。したがいまして、もとより厚生省見解を否定するだけの明らかな根拠が生じたことを申したものでもございませんし、また否定することを言ったものでもございません。
  73. 馬場道夫

    馬場政府委員 土壌汚染対策の問題でございますが、神通川流域の土壌汚染の指定面積、全体で千五百ヘクタールぐらいあるわけでございます。大変大きな面積でございますので、この計画の策定に当たりましては関係農家の意向も十分尊重するということはもちろんでございますが、やはり地域の実情に即しました対策工法の検討であるとか、あるいは膨大な客土を要するわけでございますので、その客土の土の確保の問題あるいは土地利用計画の問題、いろいろ検討すべき問題があるわけでございます。その中でとりあえず百ヘクタールにつきまして、これは上流部でございますけれども、そこにつきまして対策計画を策定をしてやろうということでございまして、私どももなるべく早期に着工できるよう対策計画が策定されるようにいろいろ打ち合わせてまいりたいと思っておるわけでございます。
  74. 斎藤哲夫

    ○斎藤説明員 農林水産省といたしましても、環境庁と十分連絡をとりながら、先ほど環境庁からお話のありましたような方向で対策を進めるよう富山県を指導しているところでございます。
  75. 水田稔

    ○水田委員 保健部長にもう一遍最終的に確認したいのです。  三十八年、四十年、四十二年、いろいろ調査した。五十年の調査もある。それらの総合的な、いわゆる科学的な知見に基づいて、四十三年当時の厚生省見解というカドミウムとイタイイタイ病との因果関係については、その見解は今日も正しい、そういう理解の上で対策を進めていく、こういうぐあいに環境庁は考えていると理解してよろしいですか。イエスかノーかだけで結構です。
  76. 本田正

    ○本田政府委員 四十三年の厚生省見解は変わってございません。
  77. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  78. 木原実

    木原委員長 馬場昇君。
  79. 馬場昇

    馬場(昇)委員 水俣病対策について四点ぐらい質問をいたします。  まず第一点は、チッソの金融支援措置の問題、具体的に言うと熊本県の県債発行の問題でございます。  五十三年度の下期分として二十二億二千万の熊本県債を発行するということ、これが発行されますと、上期が三十三億五千万発行しておりますから、合計五十三年度分として五十五億七千万になるわけですけれども、この下期に二十二億二千万熊本県債を発行するということが、チッソ金融支援措置に関する協議会、これは上村さんが座長だそうでございますが、そこで決定したと報道されておりますが、これは事実でございますか。
  80. 上村一

    上村政府委員 五月二十一日の協議会で、チッソに対する融資額について二十二億二千万円とすることが適当であると了解されました。
  81. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この協議会には熊本県の副知事がメンバーとして出ておると思うのですが、この熊本県の副知事も二十二億二千万が適当であると了解したのですか。
  82. 上村一

    上村政府委員 お話のように、熊本県副知事、協議会の構成員でございまして、協議会としてそういうことを了解したわけでございます。
  83. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで質問をしたいのですけれども、熊本県議会が昨年の十二月の県議会で、第一回分の、さっき言いました上期の三十三億五千万の県債発行を議決しますときに、とにかくこのことは熊本県政史上に例を見ない異例な措置であり、緊急避難措置である、こういう前提に立ちまして、もろもろの付帯条件をつけたわけでございます。そして七項目ぐらい、県知事部局に対しても政府に対しても、いろいろそれが重なった部分もありますけれども、七項目ぐらいの付帯決議をつけて、それに対して特に政府にかかわる部分について——県にかかわる部分も付帯決議全部書いてあります、ここにありますけれども、ことしの一月に要望書として政府の各省庁、環境庁長官にも来ていますが、一月、要望書として出ております。この文章の中に、この要望書に対して政府が十分対処していただかなければ次回以降の県債発行は困難である、こういうようなことが附帯決議の第八項目に入っているわけでございますが、この要望書をあなた方いただいておられるのかということと、この要望書に、政府の対処が十分でなければ次回からの県債発行は困難であるということがついておりますが、これは御存じですか。
  84. 上村一

    上村政府委員 熊本県議会が昨年の十二月十九日附帯決議をされた、その決議されました内容について、いま御質問にもございましたように、県知事から書類をいただいておるわけでございます。その附帯決議の八番目に「各項目の実現が不十分であれば、次回の県債発行については、今回の措置は前例としない。」というふうに書いてあることも承知いたしております。
  85. 馬場昇

    馬場(昇)委員 今回の措置を前例としないということは、県債は三十三億五千万発行したわけですから、それを前例としないということですから、常に発行することじゃない、発行しないこともあり得るという意味なんです。私もそれを陳情を受けて聞きました。  そこでその中で、きょうは七項目全部やりたかったわけですけれども、時間がございませんので、ポイントの一つ二つ、政府にかかわる部分についてお尋ねしておきたいのですが、まずその要望の第一点、附帯決議の第一点に、現在その水俣病の申請者が三十一都府県にわたっています。そして今日大体九千人ぐらいまだ処分を待っておる申請者がおります。この三十一都府県をずっと見てみますと、たとえばお隣の鹿児島はもちろんですが、福岡県、多いところは大阪なんか百名を超しています。このことにつきまして、これは自治省にも最初お尋ねするのですけれども、熊本県は、この要望書、附帯決議の中で、説明しますと、熊本県が県債を出して何で大阪府あるいは鹿児島県民を救済しなければいけないのか、そういうことについて、鹿児島県の補償金を受ける人は、鹿児島県が県債を出してそれをチッソに貸して救済を受ければいいじゃないか、何で熊本県が他府県のものまで県債を出してやらなければいけないのか、こういう疑問が率直にあって、このことについて住民と地方自治体との権利義務関係において法的に疑義があるというような見解も示されておるのです。これについて法的に義務はないかどうかということ。  それから、これは大臣がおれば大臣に聞くのだったのですけれども、もう大臣がおりませんから法的の問題は自治省に聞きます。三十一都府県にもわたっていれば国の責任において措置すべきだ、一熊本県の自治体に押しつけることはおかしいという議論もあります。これについて、地方債の関係ですからこれも自治省に聞きます。  それから、環境庁には、たくさんの借金を熊本県民がするわけですから、そういう熊本県民の要望、その気持ちをあなた方は理解できますかどうか、そのことを聞きます。  以上です。
  86. 井上孝男

    ○井上説明員 御指摘の熊本県債の発行によりますチッソに対する金融支援措置につきましては、まことに異例の措置ではございますけれども、チッソの経営が困難になりました場合におきまして、水俣病患者に対する補償金の支払いに支障が生じたりあるいは地域の経済社会に多大の影響を与えるおそれがあるわけでございますので、そのような事態を回避いたしますために、やむを得ない措置として今回の金融支援措置が行われることになったものでございます。したがいまして、認定患者が三十一都府県に及んでおりますけれども、患者発生の原因となりました水俣工場が所在し、かつ最も多く居住しております熊本県、そしてまた万一チッソの経営に不測の事態が生じるような場合には、地域経済社会に最も大きな影響を受けることとなります熊本県におきまして金融支援措置を行うということに相なった次第でございます。このような経緯のもとに先般の措置が講ぜられておるわけでございますが、特に熊本県が三十一都府県にかわってこのような措置を行ったということが現行法の規定に特に抵触するというふうには考えておらないわけでございます。  なお、今回、熊本県が金融支援措置として発行いたします県債につきましては、できる限り政府資金の引き受けというふうな措置を講じておるわけでございますし、さらにまた、万一県債の償還財源の確保に困難が生じましたような場合には、国において十分な措置を講ずるよう配慮するというふうに関係省庁申し合わせておるところでございます。自治省といたしましては、地方債の発行によりまして熊本県の財政が悪影響を受けることのないように関係省庁と十分協議をいたしまして、今後ともあらゆる努力を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  87. 上村一

    上村政府委員 熊本県自身があるいは熊本県民の方々が熊本県内で起きました非常に大きな公害事件に深刻な気持ちを持っておられるというふうなこと、それから熊本県だけでこれを処理するのは大変だという気持ちを持っておられるということにつきましてはよく理解できるわけでございます。県の人々の代表であります県議会の特別委員会でも、先ほど来引用されておりますような附帯決議がなされておるぐらいでありますし、さらに知事さんも再々お見えになりまして、そういう苦衷を訴えられるわけでございますから、いま申し上げましたようによくわかるわけでございます。
  88. 馬場昇

    馬場(昇)委員 深刻な気持ちはよくわかる。水俣病でいじめられて、また借金を背負わされる。もう熊本県民は踏んだりけったりです。原因はチッソがやったわけですからね。それから三十一都府県のめんどうまで熊本県が見なければいかぬ。それは万一の場合があったとき非常に困るわけですから、やはり国がやるべきだ。三十一都府県にわたっているのですから国がやるべきだということは主張しておきます。  そこで、一番心配していることがこの要望書にも書いてあるわけでございます。これは自治省にも聞きますけれども、いまも自治省は質問しないのに答弁していただいたのですが、あなたが言ったことです。五十三年六月にチッソ支援の閣議了解に基づきまして関係省庁の次官の覚書がございますが、その覚書の中にいまあなたが言いましたことがあります。「熊本県の地方債による融資について、万一チッソ株式会社からの返済が履行されない事態が生じた場合には、熊本県の当該地方債に係る元利償還財源については、国において十分の措置を講ずるよう配慮するものとする。」、こうあるわけでございますが、これは地方債の元利償還財源ということで当面自治省に関係あると思うのです。要望書にはこうあるのです。熊本県議会の附帯決議はこうなんです。「国において一〇〇%の措置をすること。県民の負担となる一般財源による償還は行わないものとすべきである。」、これが熊本県議会の決定ですけれども、ここで言う「十分の措置を講ずる」というのは、万一の場合が起きた場合に、熊本県債を出しておった、チッソが返済できない、そのときに熊本県が出した県債の一〇〇%を国がめんどう見るという意味ですか、この覚書というのは。これは自治省はどう考えておられますか。
  89. 井上孝男

    ○井上説明員 御指摘の県債が返済されないような場合には、先ほどもおっしゃいましたように、地方債の償還財源について国において所要の措置を講ずるものとするということでございますが、その具体策は、その時点におきまして関係大臣が協議の上決定するということになっておるわけでございます。さらに関係省庁間の覚書におきまして、その場合における熊本県の財政に対しましては国において十分な措置を講ずるよう配慮するというふうに確認がなされておるわけでございます。  自治省といたしましては、そのような場合には熊本県も納得し得る十分な措置が国においてとられるものというふうに確信いたしておるところでございます。
  90. 馬場昇

    馬場(昇)委員 熊本県も納得させる十分の措置をとるということは、熊本県議会が決議をしておるわけですから、国において一〇〇%措置させろ、これが熊本県民の、要望です。これを納得させるということは一〇〇%ということですか。それとももう一つは、いまの答弁によりますと、現在は一〇〇%とも九〇%とも決まっていない、その時点でこのことは考えるんだというのでペンディングにしてあるんだ、こういうことなんですか。熊本県にとってみますと、だんだん出しましたら三百億とか四百億とか出ていくと思うのです。一割熊本で見ろと言われた場合、三百億出しておったら三十億ですね。そういう点で納得させる措置というのは一〇〇%だということですか。それとも一〇〇%ということはいま決まっていない、その時点で考える、一〇〇%とも九〇%とも決まっていない、こういうことでございますか、どうですか。
  91. 井上孝男

    ○井上説明員 御指摘のように、熊本県あるいは熊本県民は、今回の起債につきまして万が一の場合には一〇〇%の措置をするということを強く要望しておることは政府全体として承知いたしておるところでございます。そしてまた今回の県債が臨時異例の措置であることも、また関係者十分承知いたしておるところでございますので、そのような背景なり熊本県側の気持ちを十分尊重いたしまして、その時点におきまして十分な措置が講ぜられるというふうに考えておるところでございます。
  92. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ちょっとはっきりしないのですけれども、この県議会の要望が一月に自治省にも出ておりますね、知事の名前でも出ております。この一〇〇%、万一の場合ということについて一月以降熊本県でお話し合いになりましたか。それが第一です。  第二の問題は、六月県議会で、一〇〇%かどうかわからないということがひっかかって多分相当な問題を起こすだろうと私は思うのですけれども、いや、そうじゃない、このことについてはもう自治省なりあるいは熊本県と一月以降話し合って大体納得しておるんだ、こういう状況ですか、いや、全然まだ話がついていないというのが事実ですか、どちらですか。
  93. 井上孝男

    ○井上説明員 この要望書は、一月に私ども受け取ったわけでございますが、それ以降一〇〇%という措置について自治省と県当局が話をしたかということでございますが、この陳情書を受け取ります際あるいはそれ以降事務的に接触があります際、たびたびこの問題が出ておるところでございますので、話し合いは十分いたしておるというつもりでございます。今後六月県会で予算が提案されますと、やはりその償還措置につきまして、いろいろ県議会におきまして御論議があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、先ほど来答弁いたしておりますような線を御理解いただきまして、円満な御可決をお願いいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  94. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣、最初から質問を聞いておられなかったからちょっと無理かもしれません。局長でもいいです。  六月県議会はスムーズに二十二億二千万が通るという見通しを持っておられるのですか。それが一つです。  それからもう一つ。いま、よく知りませんが、大蔵省の事務次官は大倉さんというのですね。四月十九日に熊本に来ておられるのですよ。それで記者会見をしておられるのですが、その中で、第二次判決が出た後ですけれども、金融支援は県債方向でよいか、見直すべきか、これからの問題だと言って、この熊本県債を出しておる方式を見直すべきかどうか、ちょっと検討しておるみたいな発言が出ておるのです。これについてそういう動きがあるのかないのか。たとえばあなた方の協議会とかあるいは閣僚会議とかそういうところで、この熊本県が出しておるいまの県債方式、チッソ金融支援方式を検討し直そうという動きがあるのかないのか。これはあるのかないのかということだけで結構ですから、聞いておきたいと思うのです。
  95. 井上孝男

    ○井上説明員 去年の暮れに、県債によりましてチッソの金融支援をするというのは、あくまでも水俣病患者の救済に万全を期したいという気持ちから出ました異例の措置であるわけでございます。したがいまして、熊本県が非常につらい状況にあるということは、先ほどお答え申し上げましたように私ども重々承知しておりますけれども、そういった趣旨を踏まえて、熊本県議会で六月県債の発行が無事に行われるように期待しておるところでございます。  それから、大倉次官が熊本市でお話しになったことにつきましては新聞で承知しておるわけでございますが、県債を発行することによってチッソを支援して、そして補償金を支払ってまいるということにつきましては、昨年の六月の閣議了解で決まった方針でございまして、しかも県債自身昨年の十二月に最初に発行されたものでございます。したがいまして、協議会等でこの問題につきまして検討しておる状況ではございません。
  96. 馬場昇

    馬場(昇)委員 熊本県の県会が六月の八日から始まる。だから、この要望書、附帯決議についてはもう政府と熊本県と話し合いをつけておらなければ大変なことだと私は思うのですが、いま聞いたところによりますとまだついておりません。これはぜひ精力的に話をして、国の責任ということを表にあらゆる方法で出さなければ納得できないと思うのですけれども、そういう方向でお願いしておきたいと思うのです。  そこで、時間がございませんので、第二の問題、水俣病の臨時審査会についてお尋ねいたします。これは長官にもここで後で質問いたします。よく聞いておいていただきたいと思うのです。  臨時措置法が制定されまして、そして施行されましてからちょうど三カ月半ぐらいいまたっておるわけでございます。そこで、二月十四日からこの臨時審査会に対して申請の受け付けが始まったわけでございますが、該当者が千五百人近くおるわけでございます。申請瀞は環境庁の臨時審査会に二月から申請の受け付けを始めたが、二、三、四、五、月別に何名申請があったかということを明らかにしていただきたい。
  97. 本田正

    ○本田政府委員 いま御指摘のように、この二月の後半から受け付けられるようになったわけでございますが、三月に一件でございます。それから四月はございませんで、五月に入りましてきのう三十一日まで十八件ございます。合わせて十九件でございます。
  98. 馬場昇

    馬場(昇)委員 認定を促進するために臨時措置法ができたわけで、そして臨時審査会が国にできて、該当者が千五百人近くおるわけですけれども、三カ月半で十九名ということでございます。  ちょっと角度を変えてもう一つ質問いたしますけれども、本田さん、あなたは、この前私がここで三月二十三日、その当時は認定申請者で審査待ちの者、滞留しておる者が六千人ぐらいおりましたが、この未処分者をいつまでに処分できるのですかと質問いたしましたところ、あと申請する者は別にして、いまあるこの六千人は四、五年かかったら大体処分ができると思います、具体的に言いますと五十七年、遅くとも五十八年にはこの六千人は全部処分できると思います、こういう御答弁をなさいました。そしてその中で、いま月に百五十人検診で百二十人審査している、こういうことが理由の一つだ、もう一つは、臨時審査会で審査をするから四、五年でいけるのだというような答弁をなさっているわけでございます。あとまたどんどん追加して現在八千人ぐらいおるわけですけれども、とにかく四、五年で六千人、この中で千五百人ぐらいは旧法適用者で臨時審査会に申請できる者がおるわけですから、新法の人たちは百五十人検診、百二十人審査体制でいく。旧法の千四百人の中で環境庁に申請する者が大体こういうくらいな申請ということになって四、五年で終わるのだということですが、実は臨時審査会に申請してくる者をどういう見込みの計算をして四、五年ということをやられたのか、それを簡単に聞きたい。
  99. 本田正

    ○本田政府委員 御指摘のように四、五年ということを申し上げましたが、その前に私お断りしておると思いますけれども、いろいろ試算の方法はございますけれども、お尋ねが、何年ごろまでかかるかということをはっきりせい、こういう御質問であったために、私の試算の一つとして申し上げたと存じます。当時六千名の未処分者がございまして、この臨時措置法の対象になるのが当時千四百数十名だったと思います。現在は千二百七十九名に落ちておりますけれども、それを臨時水俣病審査会の対象にし、かつは新法につきましては熊本県等におけるところの審査をお願いするということから、また御指摘のように百五十人検診、百二十人審査、これもこの四月からでございますが百三十人審査になったやに聞いておりますが、そういった審査の促進も一方にあるわけです。そういったことをいろいろ応募率等も勘案いたしまして、大体それくらいの見当になるんじゃなかろうかという試算をしたわけでございます。
  100. 馬場昇

    馬場(昇)委員 千四百人、現在千二百人が臨時審査会に申請する資格者ですけれども、いまの本田部長の話を聞いておりますと、新法の人は全部熊本県でやる。そうすると千四百人。それはこの臨時審査会に来てだんだん消化していく。そういう試算でもって四、五年ということを言ったというぐあいに聞いたのですが、実は千四、五百人いるのに三カ月半たって十九名というのは余りにも少ない。ここに私は問題を感ずるわけでございます。  そこで、これはこの法律を審議いたしましたときに私が何回でも質問いたしまして、認定促進の臨時措置法と熊本県債は別だと言いましたら、公式的には別となっているのです。ところが、提案者の方からは公式的には別です、だけれども、実際的にはこれを通してもらうということが県債の発行の、条件とは言いませんけれども、うまくいくというようなお話もあったわけでございますが、実は熊本県としては当然そう思っておったわけです。臨時措置法でどんどん不作為違法行為がなくなっていく、そういうことがあれば県債も発行しようということですが、全然いまこれはとまっているわけですよ。申請者がないわけですよ。そういうことを裏返して言うと、熊本県債発行の条件というのはここで停滞している、こうも見れるわけでございますが、これは議論ですからきょうは議論いたしませんが、そうなるのです、熊本県民の感情としては。  そこで、長官、せっかくつくった法律が何でこんなに申請者が少ないと思っておられますか。私は長官ともここでお話ししまして、水俣病の行政というのは患者の心の上に立った行政をしなければだめですよ。長官もそのとおりでございますと言われましたけれども、水俣病患者の心をつかんでいないと私は思うのです、まだこの法律は。その証拠には、説明に行かれたが説明もできなかったのです。  そこで、長官、時間がありませんから一つ聞きますけれども、あなたは二回にわたって水俣に行くとおっしゃったのです。こういう状態ならば不作為違法解消にならないのですよ。だから、あなたが直接水俣に行って、そして水俣の患者さんと信頼を回復する、信頼関係をつくる、そういうことなしにはこの法律はつくったってしようがない、どうにも効果を上げないと私は思うのです。そういうことについて大臣はどう考えておられるのか。  それから、本田さんはこういうことを私に答弁されているのですよ。機会あるごとに説明会を持ちます、そして理解を深めて信頼関係を高めますというようなことを言っておられる。ところが、一回水俣に説明会に行って説明もできずにそのまま戻ってきて、その後全然行ってもいない。理解を深め、信頼を高める行為をしていないじゃないですか。こういう点についてはあと言うと長くなるから、そのことも含めて大臣の見解を聞きたいと思うのです。
  101. 上村千一郎

    上村国務大臣 水俣病の患者の方の救済を遺漏ないようにしたい、またすべきであるという思想、考え方のもとに県債の問題あるいは国のいろいろな援助体制というようなことを考えるのは、環境庁としましてはそういう考え方なんですね。要するに、被害患者の方の救済、そういうものが万般よくいくように財政上のことも金銭上のことも考えなければいかぬというわけで、姿勢を打ち出しております。  それから、水俣病というものに対しまして、この認定促進をさせるということは当然のことであるし、何とかしなければいかぬ。また、現実に不作為の関係の訴訟のあれもございますし、それから法律もつくっていただいておりますから、これ一は何とかしなければいかぬということです。それで基本的には、もちろん御指摘のように患者の人の心というものをどういうふうにくみ取っていくかということだと思います。役所の者も一生懸命になっておると思いますし、私もそのことを終始言ってもおるわけです。  それで、この前民事の判決ですけれども、判決が出まして、その当時判決書というものについては、最初原告団の方々と……(馬場(昇)委員「時間がありませんから、水俣に行ってやってくれるかどうかということを」と呼ぶ)そうですか。水俣につきましてはお邪魔をするということを申し上げておるわけです。  私は一度参っておりまして、大体様子は知っておりますけれども、その後はテレビだとか委員の方々の御質問、そういうような内容でしみじみ感じております。けれども長官に就任した後行っておりませんけれども国会がまだこういうふうに進んでおる際ですから、これが終わった後におきまして、できるだけ早い時期にお邪魔をいたしたい、こういう考えです。
  102. 馬場昇

    馬場(昇)委員 本田部長に聞きますけれども、いま十九名審査に来ているわけでございますが、私が二月二十八日に質問いたしましたときには、いろいろのことを言いながら、第一回目はいつやるんだ、審査会はいつ開くんだという質問をいたしましたが、できるだけ早い時期に開催したいということをあなたは答弁なさっておるわけでございます。  そこで、いま長官は、国会が終わってなるべく早い時期というと、国会は六月十四日に終わるわけです。これは長官、私は二回ここで言って全部水俣の人は知っているのです。長官が私の質問に、来ると言ったということは知っているのです。ところが、前の前の長官、前の長官、とうとう行かなかった。だから、六月中ぐらいに行っていただくと、こういうぐあいに理解していいのですかということを聞いて、今度は県民の期待、水俣病患者の期待を裏切らないようにということで——六月いっぱいぐらいに行かれるのですか、あるいは七月になるのですか。もう少し、くどいようですけれども、もう三回目でございますので、念を押しておきたいと思うのです。  そこで本田さん、一回目開くと言っておられるわけですから、これもまたいつごろ開くという予定で第一回の審査会は考えておられるのか。この二点について。
  103. 本田正

    ○本田政府委員 審査会を開きますには、やはり審査委員の方々に審査をしていただく資料が必要なのは当然でございます。申請がいま出てきた段階でございまして、その資料をある程度そろえなくちゃいけないと思います。そういう時間が若干要ると思います。それが済み次第できるだけ早くということしかこの場で言えないと存じますけれども、早く開きたいと存じております。
  104. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたはこの前も、できるだけ早く、できるだけ早くと、何でこういうのは計画を持たないのですか。こういうぐあいにして資料をとったら大体このくらいに開かれる、これは滞留者がある、それは違法行為をあなた方と熊本県が犯している。だから、その違法行為をなくするために大いにやろうといって特別の法律をつくったのです。なるべく早く、なるべく早く、こんなぐあいに引き延ばしておいて、法律の意味も成り立たない。だから、こういうぐあいにして資料を集めたら、この後何月ぐらいにはできるということは、計画を持って仕事をしなければだめじゃないですか。そういうことを言ったら患者が阻止しに来るとか妨害をするとか、だから秘密にやらなければならぬ、そんなことではこの審査会はだめですよ。秘密だということではないのですか、計画を持たないのですか、どっちですか。大臣は、何月ごろということを言ってください。
  105. 上村千一郎

    上村国務大臣 国会がこういう状態になっておりますから、何月ということでなくて、国会終了後できるだけ早い時期にと、こういうふうにこちらは誠意を持って申し上げておるわけですから、御了承賜りたいと思います。
  106. 本田正

    ○本田政府委員 せっかくこの水俣病の臨時審査会が法律に基づきましてできたわけでございます。私どもとすれば、これはもう一刻も早くそういうのが軌道に乗ることでないと御非難を各方面から受けるのは当然でありまして、そのために、できるだけ早く開けるように努力をしております。先生いま御指摘のようなことがあるから、秘密に開きたいから、そういうことでは決して決してございません。  ただ、審査会を開きますには、いまの申請者、現在PR不足もこれあり、まだ十九名しかございませんけれども、十九名の申請者の方々を見てみますと、全部熊本県でございますが、熊本県の審査会で保留になった方々です。保留になるということは、申請者によりましては、次にこういった検査をして、また審査しようということで、いろいろな検査をする必要がある方々が大部分でございます。したがって、その検査が済みませんと、熊本県で審査をいただいた既存の審査資料だけじゃなしに、保留になった理由がそうでございますので、そういう書類が取りそろいましてからでないと審査ができないわけであります。したがって、検診の日程等がございますので、確たる期日を言われないのでございますけれども、とにかくそういったことを県にもよくお願いをして、できるだけ早く検査を済ませて一刻も早く審査会を開たきい、こういうふうに思っております。
  107. 馬場昇

    馬場(昇)委員 物事をやる場合には、このことは大体いつごろまでで終わろうかとか、いつごろを目標にということで作業をするわけですよね。あなたは目標を持たないで作業をしているのですか。やってみなければ先はわからぬ。そんな行政をあなたはやっているのですか。あなたのはそういう答弁ですね。早く、早くと言っているけれども、気はせくけれども、いつごろやりたいということでそこに合わせて仕事をしていないのですよ。そのことについては後でまた答弁がありますときに答えてください。  そこで、次にチッソの経常の問題と、チッソが提出しております中期計画についてお尋ねしたいと思うのです。  先ほどからお話がございましたように、チッソを金融支援する理由というのは、水俣病患者の補償金の支払いに支障がないようにということと、たとえばチッソに万一のことがあった場合は、熊本県の地域経済社会に多大な影響を及ぼす事態を回避するというためであったということは、さっき言われたとおりです。それじゃ何で熊本県に県債を出させたのかと聞きますと、患者発生の原因になった水俣工場が熊本県にあるからだ、熊本県に一番患者が多いからだ。それからチッソに万一のことがあった場合には、熊本県の地域経済社会が一番困るからだ、だから熊本県に県債を出させたのだ、こういうような説明でございましたが、私もそのとおり理解しておるのです。  そこで、チッソは五十四年から五十六年までの経営の中期計画案というのを二月十三日に労働組合にも提示いたしております。その中身を見てみますと、五十三年度に計画を提示して、五十四年度中にこれを確定して、五十六年には一千億の売り上げをやりたい、そして三十億円の利益を計上したい、そういう計画を組合にも提示いたしております。多分通産省、熊本県等にも提示しておるのじゃないかと思うのです。  ところが、その計画を私がよく見てみましたら、何とこの中期計画というのは水俣工場を縮小、撤退させるというような方向の計画に見えるのです。そのことについて通産省にお聞きしたいわけでございますが、この計画は、水俣工場について、たとえばあそこの塩ビを、水島とか五井とかそこで販売を拡大して利益を上げたいということが基本になっている。それで水俣工場の塩ビは、たとえば五井とか水島に集中するというような方向で出ておるようでございます。そして水俣の塩ビポリマ一等の工場を大幅に縮小する。それに伴って水俣にありますカリ変成とかモノマーという工場を撤収するということがうかがわれるような内容になっております。いろいろな情報によりますと、五十六年にこれを撤退するというような方向で計画ができておる、こういうことになっておりますが、事実であるかどうかということをお聞きしたい。これが第一点です。  第二点は、全農が五十五年−五十七年の三カ年計画で全国二十六カ所にBB工場、バルクブレンディング工場をつくる計画があって、九州では宮崎と鹿児島と佐賀に肥料工場をつくるわけでございますが、熊本は抜けているのです。チッソの肥料というのもあそこを縮小しようというような計画があるようでございますが、通産省は全農等と話してチッソの肥料部門が生産を拡大し収益を上げるように拡大するというような話し合いをしたことがあるのかないのかということであります。  第三点は、たとえばいまチッソには一千名近い従業員がおるのですけれども、退職者が出たら後補充しないということで、三年間で百六十名ぐらい減らすのだ、五年後には半分の五百名足らずの町工場みたいにしてしまうのだ、そういうような計画が出ておるようであります。新規事業もあるようですけれども、これは人手が要らないというようなことで出ておるようでございますが、この辺について、事実であるかどうかということと、全農なんかとどう話をしておられるかということを通産省に聞きます。  それから、これは大臣に聞きたいのですけれども、実は熊本県債を発行するというのは、先ほど言いましたように、患者の補償と熊本県の地域経済社会に与える影響ということですが、それで歴代の長官に、あるいは通産省にも話しているのですけれども、地域社会について考えれば、水俣工場を縮小、撤退したら県債を出す意味もないわけです。だから少なくとも、公害を発生した工場ですが、これを強化、拡充、発展させるという前提でチッソなんかを指導したいということを政府方針として何回も答弁をいただいておるのですけれども、その方針にいま変わりはないか。それでいま私の言ったのが通産省から答弁があって事実とすれば、このことは重大な問題だと思うし、県債発行にも問題があります。それに対して長官としてはチッソ等にそういうことがないように、水俣工場は縮小、撤退はしない、強化、拡充、発展させるという方向で考えていただくようにチッソに働きかける気持ちがあるかないか、このことについて御質問いたします。
  108. 児玉幸治

    ○児玉説明員 三点の御質問でございます。  最初のチッソの中期の経営の合理化計画の関係でございますが、五十六年売り上げ一千億、利益三十億というのは、売り上げは一つ努力目標、それから利益につきましては、製造業一般で売上高利益率はどれぐらいかというふうなことで、一応三%ぐらいは収益を上げないようではどうにもならないだろうということで決められた目標でございます。  それから、それではそういう経営合理化の中で水俣工場が具体的にどういうような形になるかということでございますが、チッソは御承知のように千葉とか水島とか水俣あるいは守山、北九州といろいろなところに工場を持っているわけでございまして、全体として収益を上げていくためには、どの工場におきましても基本的には経営の合理化のために最善の努力をすべきことは間違いのないところでございます。そういう意味におきまして、水俣の工場につきましても単に現状のままで推移していいということにはならないわけでございまして、現在の工場の体質を逐次強くしながら今後の発展に備えていかなければならないわけでございます。  たまたま先ほどお話の出ました塩化ビニールでございますけれども、塩化ビニールは水俣工場の主力の製品でございまして、この塩ビにつきましてもどうやってコストダウンをし水俣工場の競争力をつけていくかというのは、今回の合理化計画の中でも重要なテーマであることは間違いございません。ただし、いま先生がおっしゃいましたように、塩ビの部門を撤退いたしまして、それをたとえば水島とか千葉の方に集中生産をするというような形は、現在のところ決まっているわけではないように私ども聞いております。ただ問題は、それではいまの塩ビの事業そのままで非常に採算性がいいかというと、そうではございません。ここをどういうふうに改善していくか、あるいは何か別にいい方法がないかどうか、こういうことを研究しているというのが現状であろうというふうに私は了解しております。  それから第二点の肥料の問題でございます。これも水俣工場の主力の製品でございます。先ほどバルクブレンディングという方式で全農が最近あっちこっちに工場を建てているという話がございました。私どももその帰趨がチッソの水俣工場の肥料にどういう影響があるかということについては重大な関心を持っております。実は全農との関係につきましては、昨年の六月にチッソ救済の基本方針が決まりました後、直ちに農林省とも御相談をいたしまして、いろいろチッソのために配慮をしていただくような措置をとっているわけでございまして、たとえば九州地区における全農のチッソからの肥料の買い上げをふやすための契約もしていただいているようなわけでございまして、全農自身がこのチッソの問題について全く理解がないというふうには思いません。したがって、この問題につきましては、今後農林省を通じながら、どういうふうにしていくのが両々並び立つために一番いいのか十分相談をしてまいりたいというふうに思っております。  それから三番目の雇用の点でございます。これにつきましては、私どもがチッソから聞いておりますところでは、水俣工場につきましては、定年で退職をなさった方々の補充は当面しない、ただし、それ以外に自分の都合等でやめられるいわゆる自然減というのがございますが、こういう自然減につきましては、新規の採用で補充をしていくという方針を立てておりまして、先ほど先生がお話しになられましたような、水俣工場の従業員の数が非常に急激に減っていくというふうなことは考えられないというふうに思っております。  それからなお、新規の事業につきましては、こういう形で、県債も発行する形が進みつつあるわけでございますので、私どもも、チッソに何か収益性の高い、余り金のかからないいい事業を考えるようにいろいろ注文をつけております。社内でも積極的に現在検討中でございます。
  109. 上村千一郎

    上村国務大臣 昨年の六月二十日の閣議了解のチッソ株式会社に対する金融支援の措置、これは御指摘のとおりだと思います。それで、同社の経営基盤の維持強化を通じまして患者に対する補償金支払いに支障がないようにいたしたい、また、  一面地域経済社会の安定に資するようにというような趣旨、御指摘のとおりだと思います。それで、私としましても、チッソ株式会社の経営基盤の維持、強化、とりわけ水俣工場の充実につきましては、重大な関心を持っておるわけです。直接な指導、いろいろなことになれば通産省でございますが、私の方は、閣議了解、この趣旨に沿いまして、水俣工場が充実されることにつきましては重大な関心を持っております。
  110. 馬場昇

    馬場(昇)委員 定年退職を補充しませんから、三年で百六十人は減るのです。五年たったら五百人近くは減るのです。あの年齢構成を見て私は計算をしているのです。そうしたら、五年後には半分の工場になってしまうという計画なんですよ。だから大臣、これはきょうは議論はいたしませんが、もう少し詳しいチッソの合理化計画、水俣の縮少撤退計画というのが極秘に検討されておるようです。それも聞いておるのですけれども、これは後日質問いたしたいと思うのですが、大臣、ぜひ水俣工場を、あそこを強化、拡充、発展せずして、あそこをつぶして、たとえばどこで収益を上げたって、これは世論も実情も許さないと思うので、水俣工場を拡大強化する方向で、いま言われたとおりがんばっていただきたいと思うのです。  そこで最後に、これはまだ質問が残ったのですが、一つだけお聞きしておきますが、水俣病の総合調査の問題で、大体新聞によりますと、五月の連休明けから環境庁の中で汚染の広がりと被害の実態を把握するため熊本、鹿児島を中心に総合調査を実施したい、その方針を決めるため実施方法等を検討したいということが新聞に載っておったわけですが、これは、この前の国会で総合調査法を社会党から提案いたしました。そして立法措置も必要だろう、総合調査をする必要があるということはもうこの委員会で決まっているのです。そのためには行政措置が必要であろう、立法措置も必要であろう、立法措置はこういう中身を検討しようということまで実は決議されているわけでございますが、当然それに基づきまして行政措置として環境庁が始められたのであろうと思うのですが、この総合調査の検討の段階が現在どこまで来ているかということを最後に聞きたいと思います。
  111. 本田正

    ○本田政府委員 この委員会におきますところのいまおっしゃいました委員会決議、それから委員会におけるところのいろいろな議論を踏まえまして、私どもとしてもそれに対応することが当然であろうと存じます。そこで総合調査につきまして、いろいろ項目があるわけでございますけれども、どのような調査が必要であるかということ、またどのような調査が可能であるかということを具体的にやっぱり詰めてみぬといかぬと思います。そういった検討を私ども環境保健部の中で始めたところでございます。
  112. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大平総理大臣が実は四月二十一日に熊本に来たんです。それで報道関係者との会見で言っておられるのですけれども、「有明・不知火海の総合実態調査は、どのような問題を調査するのか、また、調査が、可能かの検討を始めると聞いている。」こういうようなことを言って、何か、調査が必要であるか必要でないかを調査するみたいな発言をなさっているのです。これを聞いて熊本県民の人はあきれて物が言えないというようなことが、実は新聞の社説にも書いてございます。そういうことでございますので、これはもう調査は必要であるということは本委員会で決議しておるわけですから、具体的にどうするかということで立法的、行政的措置を検討するんですから、ましていわんや調査が必要であるかどうかを検討することなんかはもってのほかでございますから、これは総理大臣がよく御存じじゃないんだと思うんですよ、決議なんかを。だから長官、これは総理大臣によく注意しておいて、誤解を受けておりますから、何だったらあなたが注意して、どこかで弁解を、説明をするようにしてもらわぬと大変ですよ。航空機とか何とかでいろいろ大変なことがあっているのですけれども、評判の悪くなった方がいいかもしれませんけれども、これはもう言いませんが、そういうことで、これはぜひ積極的に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げます。  それからもう一つ、これは委員長にお願いいたしたいのですが、この前、私は島本委員、水田委員と三人で、前の国会で水俣病問題総合調査法の議員立法を出しております。この前のこの委員会委員長にこれを審議してくださいということをお願い申し上げましたら、理事会で検討するということのお約束をいただいておりますが、ぜひ理事会で検討されまして、本国会中に審議して、成立する、せぬは各党の態度でしょうけれども、審議していただきますように心からお願いいたしまして、質問を終わります。(拍手)
  113. 木原実

  114. 島本虎三

    島本委員 環境庁長官おりますか。今度はいなくなりませんか。先ほど来いろいろやって、大臣が他出したために質問が中断しておりました環境白書についての考え方について伺いたいと、こう思っているわけであります。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕  この環境白書の問題については、前にも半分ばかり申しましたが、どうも楽観している。ただ書けばいいだけの問題じゃないんだ。中には、何か薄汚れて、そしてもうほとんどつぶれかけた家をペンキを塗りかえて、りっぱな家であります、ごらんくださいといった環境庁に等しいような、そんなような白書ではだめでありまして、もっと内容をきちっとして、悪いものは悪いとして批判を仰げばいいのです。そして、その上に立って完全な環境行政をやっていくような姿勢が必要です。弱いからといって、そんなどこまでも後退する必要はないと思う。まず自分の気位くらいはきちっと持ってもらいたい。総理大臣に無視されるようなことがないように、きちっとしておいてもらいたいと思うのです。「昭和五十三年度は環境行政にとって大きな進展の年であった。」二十三ページにあるこの問題でありますけれども、これはもう長官からも先ほどいろいろな意見の開陳があったからいいんです。そのうちでも環境影響評価法案については、いろいろと官房長官と渡り合いましたから、これはいいとしておいて、しかし、五十一年から四回国会提出が見送られたというようなこの事実、これは長官国民を欺いたことになります。なぜ法案提出に失敗したのか、環境庁の見通しが不十分であったのか、国民はいろいろ考えていますから、国民のこの疑問に答えるような、こういうような記述がなぜないのですか。なぜそういうようなところを隠すのですか。大臣、その理由を承ります。
  115. 上村千一郎

    上村国務大臣 島本委員御承知のとおりでございますし、私も環境白書というものについては客観的にできるだけそれを記述し、そしていろいろと将来のための政策の進展に資し、また反省にもするというものだと思うのです。そのためには、たとえば楽観とかどうとかというのは主観的な要素の問題でありますから、その表現の仕方というものにつきましては、いろいろな御指摘を受けるような表現というものは気をつけなければいかぬ、こういうふうに思っておるのです。基本的にはそういう考えを持っております。  それから、環境アセスの問題につきましても、そういうようないまの決意なり私ども考え方というのは再三ここで申し上げておるわけでございます。そして前と違ってまいっておりますのは、御承知のように四月十日に中公審からああいう答申が出たということです。要は過去になかったということです。正式な審議会の御答申を受けるということになりますれば、おのずからそこに対する心構えというものも一層考えていかなければならぬというふうな意味におきまして、この環境アセスの問題につきまして国民の方々の御期待に沿うような方向で全努力を挙げたい、こういうふうに思っておるわけです。  環境白書の方へどういうふうに記述してあるかという意図につきましては局長から説明をさせます。
  116. 上村一

    上村政府委員 御案内のように、この環境白書、主要部分というのは五十三年度に政府が公害の防止に関しまして講じました施策を報告するものでございまして、環境影響評価につきましても、そういう観点から昭和五十三年度に講じました施策を明らかにしておるわけでございます。  たとえて申し上げますと、白書では総説の第二章第三節では「国における個別法、行政指導等や地方公共団体における条例、要綱等により、環境影響評価の制度等の体制の整備への努力がなされてきたが、」というふうな現状を述べました上で、今後の課題といたしまして「制度等の体制の整備」ということを挙げたわけでございます。そしてそういった環境影響評価につきました議論を整理しました上で、これまでの環境影響評価の実績その他、わが国の実情を踏まえました中央公害対策審議会の答申もあるということを述べておるわけでございまして、政府としましては、環境影響評価について可能な限りの報告は白書の中に盛り込んだつもりでございます。
  117. 島本虎三

    島本委員 この白書の中でも、私の考え方はいま長官に言ったとおりなんです。ですから、長官もいろいろな観点から悪いものは悪い、いいものはいいと、これは評価してくれというふうに出すんだ。悪いものは言わないで、いいものばかり出して、前進であるとか言ったって、私は本物ではないと思っているのです。  だって、そのためには、水質汚濁防止法の改正によって総量規制の導入というのが大きな問題としてあったわけであります。これは皆さん全部関心を持っているのです。しかし、これは二十三ページにきちっと載っていますね。その中で燐の規制、こういうようなことについても、産業界それぞれからいろいろな意見もあるわけでありますけれども、これが除外されておる。総量規制についても現実的に対応可能な範囲で目標値を決めるんだという。これは中公審の答申によると言いながらも、できるものをやったんだからできるのはあたりまえだ。総量規制といっても環境の自然浄化能力に対応するもの、ここまで上がっていますか。自然還元サイクルに乗っていつでも自浄能力は発揮できるんだ、こういうようなものになって初めて評価できるんじゃありませんか、大臣。水の場合は常にそれなんです。  したがって、一歩前進、どちらへ向かって前進しておるのか。対応可能な範囲の目標値を決めながら行政の大きな進展だ、こう言うのは少し恥ずかしくないですか。やらなかったらむしろ怠慢だ。こういうような点で高く評価する必要のない記述だと思うのでありまして、大臣、今後この点気をつけることにしましょう。お互いに少し自省しましょう。これは官僚の方はいいですから、大臣だけ答弁してください。
  118. 上村千一郎

    上村国務大臣 御指摘のように、白書についていい点と悪い点と、そういうようなことで悪い点を伏せておくというのではいかぬと思います。というのは、客観的に五十三年度の環境政策なり進展を率直に述べていくという姿勢でなければいかぬ。そこへ主観的なものが入りますものですから、非常に御指摘をいま受けておるわけです。今後そういった表現、その他というもの、あるいはもし心に沿えぬようなことが生ずるおそれがあるということについては厳に反省していくべきものだ、こういうふうに思っております。
  119. 島本虎三

    島本委員 同じような段階、状態で、もう一つ、二百八十七ページ、これを見て私も実際この点では感ずるところがあったわけでございます。大臣もそうだと思うのです。公害病認定患者の問題です。いま馬場委員の方からも、具体的に地域を限り、具体的な問題として、水俣病という有機水銀中毒患者に限っての問題提起があったわけでありますが、これは昭和五十四年一月末で七万三千百八十九人、こういったような数字が出ております。そうすると年々増加しておる。昭和五十一年の二月末には三万三千四百六十六人、翌年五十二年三月末には五万五千百四名、翌年の五十三年一月末には六万三千七百四十一名、五十四年の一月末で七万三千百八十九名、著しい増加、こう見ていいと思うのでありますが、その理由についての解明や説明はなぜつけないのですか。  地域指定解除要件について環境庁はいろいろ討議されておるのであります。部長なんかいまその焦点に立って自由に発言されておるようであります。しかしながら、この地域指定の解除要件について環境庁ではいろいろ検討しているのだ、こう言っていますけれども、この制度上の問題点があるならば、それについてはっきりこれがそうなんだという指摘をなぜしないのですか。きれい事ばかりずっと書いておいて、これが白書であります、何も書かないと真っ白だ、これも白書、そんな問題じゃない、白書という意味は。何も今後の課題に触れない。これがいいのではないのであります。もしあえて言うならば、本田部長あたりしょっちゅう言うように、地域指定解除の要件はどうなんだ。同時にNOxを指定要件に加え得るのかどうかの問題もあるのだ、あなたが言っておるように。それから自動車にかかる費用負担の問題もあるのだ。不公平だと言われておるのだ。それから指定地域ごとの収支のバランスの問題もある・ともう少し率直な白書にしてもらいたいのだ。公害病の予防治療の問題はもちろんあるのだ。こういうような今後の課題になぜ触れないのですか。触れてはぐあいが悪いのですか。当然こういう問題になる問題は出すべきじゃないですか。きちっと自分の考えを述べる。批判も受ける。これでなければならないと思います。こういうような点からして楽観的な環境白書、それもありますが、抜けておるところの多い環境白書だ、こうあえて指摘せざるを得ないと思います。あえて言うと、現状を糊塗するために別な観点から、考え方からそれを塗ってきれいになりました、りっぱな家ですと言うに等しいようなものだ。こういう点から今後の重大な要件、こういうものを若干指摘し、まだ残っていますが、私としては細切れになったのが残念でしょうがないのでありますが、情勢上やむを得ませんが、これだけはきちっとすべきだと思うのであります。大臣、なぜこういうような問題を指摘して正規に批判を受けないのですか。白書とはそういうものじゃないですか。いま言ったような点、なぜきちっとしないのですか。これは官僚の方だろうか。
  120. 上村一

    上村政府委員 この白書の性格でございますが、私から申し上げるまでもなく、とにかく五十三年度に政府が講じました施策に中心を置いて書いておるわけでございます。そして関係省庁でも講じられております施策を取りまとめまして、政府から国会の方に出しておるのが環境白書でございます。白書の性格から見まして、目下検討しております問題についてまで出すことが果たして妥当かどうか、これはちょっと検討させていただかなければならない問題ではないかというふうに思うわけでございます。
  121. 島本虎三

    島本委員 じゃ時間で終わらざるを得ないのでありますけれども、とにかく逃げるに逃げているような、こういう感じがする環境白書であります。こういうような白書なら国民を惑わすことにつながりますから、もっと慎重に考えて、困るなら困る、やるならやる、できなかったらできないともう少し率直な白書にしてもらいたい、このことだけは要請しておきたいと私は思います。  ことに大臣、これは大事だと思いますから、ここで同じ字を書いてもウエムラ、カミムラ、両方で言い合ったってしょうがないのでありまして、この辺で終わりにしておきますが、これは大事な問題でありますので、今後はひとつ十分考えておいてもらいたい、こういうふうに思います。大臣の答弁は要りませんけれども環境白書一つ書くにもいろいろまだ問題点がありますので、その点を考えて今後の宿題にして、ひとつ大いにがんばってください。一つ一つの問題でそういうように隠すに隠していれば、総理大臣にまで無視されるようなことになります。官房長官もああまでわれわれに決意して言ったのですから、今度だけはきちっとした態度でこの環境白書を背景にして行政の上でがんばってもらいたい、こう思うのであります。  少なくとも、後ろ向きであるとか弱腰であるとか言われないようなりっぱな環境行政を自信を持って実施するような環境庁長官であることを私は心から祈念しまして、私の質問はこれで終わらしてもらう次第であります。御健闘を祈ります。
  122. 水田稔

    ○水田委員長代理 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  123. 木原実

    木原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古寺宏君。
  124. 古寺宏

    古寺委員 最初に海上保安庁にお尋ねを申し上げますが、去る四月二十九日の午後に青森県の下北郡の風間浦村の易国間から蛇浦海岸にかけまして大量の廃油が漂着をしたわけでございます。たまたまフノリ、ワカメの収穫以前でございますので、非常に被害が出たということを承っておりますが、その後の状況はどういうふうになっているか、御報告をお願いしたいと思います。
  125. 野呂隆

    ○野呂説明員 四月二十九日の十七時ごろ、下北郡の風間浦役場から連絡がございました、ただいま先生御指摘の漂着油の状況でございますが、その後の私どもの捜査の状況を御報告いたします。  二十九日に村役場職員が採取いたしました流出油を海上保安試験センターで分析いたしました結果、この漂着油は一日ないし三日の経時変化したB重油またはC重油と判明いたしました。それと河川、陸岸からの流出の有無について調査いたしましたところ、その形跡は認められませんでした。したがいまして、付近航行船舶から出された油だというふうに考えております。直ちに当時その付近を通航いたしました船舶手配をいたしまして、現在まで七隻の船舶につきまして油試料を採取いたしまして分析を行っております。このうち三隻については浮流油とは全く類似しておりませんが、他の四隻については類似性の有無についてなお判定しがたい状況でありまして、現在詳細に分析、検討中でございます。
  126. 古寺宏

    古寺委員 海上保安庁は、民間からこういうような被害があるという届け出を受けた場合に、二十九日の午後に届け出をしているわけでございますが、これは翌日現場に行くことになっているのですか。
  127. 野呂隆

    ○野呂説明員 当日夜連絡を受けましたので、付近行動中の巡視艇を直ちに現場の方に派遣いたしましたが、当日は荒天のため陸岸の方に近寄れず、残念ながら陸岸に漂着した油の状況は詳細に調査することができませんでした。したがいまして、翌日直ちに職員を陸上から派遣いたしまして調査を行っております。
  128. 古寺宏

    古寺委員 海上保安庁法によりますと、海上保安庁は海洋の汚染の防止も行うということになっておりますが、どういうような防止を行ったのですか。
  129. 野呂隆

    ○野呂説明員 翌朝からの巡視船並びに航空機あるいは陸上職員からの調査結果、当時はすでに海上にはもう浮流油は認められませんでした。陸岸の岩間等に漂着しました灰色状の漂着油があったということでございます。そういうことでございまして、処理できるものは防除作業をいたしますが、処理できないような状況でございましたので、一応調査にとどめました。
  130. 古寺宏

    古寺委員 土十九日の夜に連絡があったというようなお話でございますが、私が現地へ行ってお聞きした範囲におきましては、ちょっと時間的なずれがあるわけです。  それからこういう沿岸約三・五キロでございますが、漂流している際にオイルフェンスなりあるいはいろいろな方法でもって、当然これは防除ができる油の漂着であると思うのです。そういうものに対して全然何ら措置をしませんで、ただ監視しているだけではこれはどうにもならぬじゃないですか。そういうような海洋の汚染を防止するような体制が青森の海上保安部なりあるいはその付近の函館なり八戸、そういうところにあるのですか。
  131. 野呂隆

    ○野呂説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、当時は風潮流が強うございまして、すでにその油が拡散いたしておりましたので、処理作業はいたしておりません。  先生御指摘の青森海上保安部あるいは函館海上保安部にそういう防除資機材等の備蓄があるかという御質問でございますが、青森海上保安部並びに函館海上保安部及び函館航空基地には巡視船艇、航空機を配備いたしておりまして、オイルフェンスあるいは油除去の資機材等は配備いたしてございます。
  132. 古寺宏

    古寺委員 私がお聞きした範囲では、四月二十九日の午後五時に漁業協同組合から連絡をいたしているわけでございますが、同じ県内であって翌日でなければ現地に行けないというようなことでは、これは原因者も当然いるわけでございません。そういうような対応の仕方でよろしいのですか。
  133. 野呂隆

    ○野呂説明員 お答えいたします。  巡視船は直ちに派遣いたしました。それから航空機は夜間とそれから風の都合等で翌日派遣いたしております。
  134. 古寺宏

    古寺委員 こういう場合に、この海洋汚染の防止ということは、これは当然海上保安庁としてやるべき任務なんですか。やらなければならないのですか。やらなくてもいいのですか。
  135. 野呂隆

    ○野呂説明員 応急的な措置は当然海上保安庁がやるべきだと思います。
  136. 古寺宏

    古寺委員 それでは、水産庁にお尋ねいたしますが、今回のこの風間浦村の被害のその後の状況はどうなっているか、お尋ねします。
  137. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 ただいま御指摘のございました四月二十九日の風間浦におきます油濁の被害につきまして、現在青森県その他とともに調査を実施している段階でございます。一応数量的には約九千八百キロ程度のフノリが油をかぶりまして、実際の価値を失ったということで焼却処分といたしておりますので、これらにつきまして、現在原因者がまだわかりませんので、財団法人でございます漁場油濁被害救済基金から救済措置をやるようにいろいろ手はずを進めております。  なお、具体的には、第一回の青森県におきます地方審査会、これは被害額の算定を行うための審査会でございますが、これを五月二十四日に開催いたしております。
  138. 古寺宏

    古寺委員 被害額はどのくらいになりますか。
  139. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 現在、フノリの価格がはっきりいたしておりませんので、昨年の価格で一応算定いたしますと、約一千六百万円程度のものではないかというふうに考えておりますが、今後、先ほど申し上げました青森の地方審査会を通じまして、正確な被害金額を出したいと考えております。
  140. 古寺宏

    古寺委員 当初の金額から見ますと、これはもうずいぶん少ない金額になっておりますが、これはどういうわけなんですか。
  141. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 被害金額につきましては、当初恐らく組合から出された数字がございますと思いますが、私どもがその審査会、これは県の調査その他を踏んまえまして、審査会で一応現在はっきりしておりますのは、先ほど申し上げた数字でございます。
  142. 古寺宏

    古寺委員 被害が少なくなったのは幸いでございますが、海上保安庁に申し上げたいのは、四月三十日には波浪が高いということで自動車で現地に行っておりますね。五月一日のお昼ごろに飛行機で試料を現地から持っていっているわけだ。五月二日に「たつた」が現地に参りまして、ボートをおろして調査を行っている。現地の住民にしてみますというと、漁民にしてみますというと、海上保安庁の対応がどうも何か非常にのろのろしているという感じがするわけでございますが、こういうふうな被害は、時間的にもっと早く出動すれば十分に油の防除もできるし、あるいは汚染の原因者も発見することが可能であると思うのです。そういうことが現時点においてはなされないために、いろいろと油の汚染が方々で発生しているわけです。こういうような海上保安部の体制を今後やはり改めていく必要があると思うのですが、いかがですか。
  143. 野呂隆

    ○野呂説明員 先生御指摘のとおり、当時の気象条件等に左右されまして、若干私どもの対応がおくれましたことは、まことに申しわけないと思っております。しかしながら、いずれの場合におきましても、流出油の事故がありました場合には、直ちに巡視船艇、航空機を現場に派遣いたしまして、所要の措置は現在までのところとるようにいたしております。今後もなおそのようにいたしたいと思います。
  144. 古寺宏

    古寺委員 水産庁にまたお尋ねしますが、この汚染地域の今後の養殖事業あるいは沿岸漁業の問題については、どういうふうに対処なさるお考えですか。
  145. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 風間浦におきます漁業の概況は、漁船数五百五十三隻、このうち三トン未満がほとんど九割以上を占めておりますが、そういうような小型船を主体とした漁業でございまして、その生産も、生産数量から申し上げますと、コンブ、スルメイカ、アワビ、サクラマス、ウニというような順序になっておるようでございます。  私どもといたしましては、このような漁村でございますので、いわゆる浜に着いております地先の漁業、魚介類の増産、こういうことをやはりまず真っ先にやるべきだということで、沿岸漁場整備開発事業等を実施することにしておりまして、具体的に申し上げますと、すでに大規模増殖場開発事業、これはアワビを対象としたものでございますが、昨年度から調査に入っておりまして、事業は五十五年から実施する予定でございますし、そのほか、本年度大型魚礁を設置する。これはヒラメ、カレイ、タイ、こういうものを対象といたしたものでございますが、これらの設置を五十四年度に実施したいと考えておりますし、そのほか、さらに大規模な人工礁につきまして五十四年度から調査に入っておりまして、五十五年度から事業を実施というふうに考えております。さらにサクラマスにつきましては、ここにございます易国間川、これが未利用の河川で、人工ふ化等やってなかったわけでございますが、今後そういう事業化に入る前提といたしまして、本年度から調査に入りたいというふうに考えております。
  146. 古寺宏

    古寺委員 この蛇浦あるいは易国間に私が参りまして、防波堤あるいは漁港、こういうものが非常に原始的な状態に置かれているんですね。せめて防波堤がある程度完成しているとか漁港が整備されておれば、海上保安部の船が来なくても、現地の住民である程度のものは防除できるんです。そういうことができないような現状になっているわけですよ。そういう防波堤とかあるいは漁港の問題にはいまお触れになりませんでしたが、これらの問題についてはどうお考えですか。
  147. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 現在風間浦村には漁港法により指定を受けております漁港が四港ございます。下風呂、易国間、蛇浦、桑畑の四つでございます。現在、五十二年から五十七年度までに行われます第六次漁港整備計画によりまして、下風呂、易国間、蛇浦の三港についていろいろ工事を進めているわけでございます。このうち、下風呂と易国間につきましては、一応港の基本形、大体の形ができるところまで整備が進んでおりますけれども、蛇浦漁港につきましては、五十三年度から工事に着手したばかりでございまして、まだ十分な施設ができているとは思っておりませんが、今後ともこれらの漁港の促進について一層努めてまいりたいというふうに考えております。
  148. 古寺宏

    古寺委員 いま一番被害を受けた蛇浦が五十三年から一それから桑畑というのは、漁港というのは名前だけなんですよ。何にもないんですよ。漁港というのは名前だけで何にもございません。こういうものは、やはり予算の配分その他の関係もございますでしょうが、何にもない漁港というのはおかしいんですから、名前だけの漁港というのはこれはどうにもなりませんので、こういうものは早く解消するように努めていただきたいと思うのです。  それで、全国的に油濁によるこういうような漁業に対する被害というものは、年間どのくらい件数があるのか。その中で原因者が不明のものはどのくらいあるのか。しかも、被害額というものは一体どのくらいになっているのか。その点について水産庁からお願いします。
  149. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 現在私どもの掌握しております数字、これは都道府県から報告を受けたものでございますが、昭和五十二年度に発生しました油濁によります漁業被害は、発生件数が百三件、このうち十一件は被害額は不明でございます。これはわずかな被害であるというふうに私どもは理解しておりますが、それによります被害額二十億八千三百万円というふうになっております。  なお、このうち原因者不明のものにつきましては、発生件数八十件、うち四件は被害額の不明なきわめて微細なものであると思いますが、被害額全体といたしましては一億六千三百万ということでございます。
  150. 古寺宏

    古寺委員 そういうような原因者がはっきりしない場合には、先ほどお話がございました漁場油濁被害救済基金というものがあるわけでございますが、これくらいの制度でもってこういうあらゆる油濁被害について補償できるのでございますか。これは以前から法制化すべきであるとか、いろいろな基金に対する要望が出されております。そういう問題について現在どういうふうに対処していらっしゃるのですか。
  151. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 先生御指摘のとおり、原因者不明によります漁場油濁被害に対する救済制度につきましては、とりあえず昭和四十九年度から暫定措置として実施してまいったわけでございまして、その後各省庁と御相談いたしまして、五十一年度からさらに改善して現在に至っているわけでございます。その間におきます原因者不明の油濁によります漁業被害に対しまして防除費あるいは救済金を支給いたしたわけでございますが、現在のところこれらは円滑に行われていまして、現在の基金で対応できるのではないかというふうに考えております。  なお、五十年度から五十三年度までの救済金及び防除費の支給実績について申し上げますと、救済資金につきましては業界からの拠出によるものでございますが、これが約七億三千三百万ほどになっておりまして、現在のところ、救済資金については現在の程度でよろしいのではないかと考えておりますし、防除資金につきましては、造成額が三億四千六百万に対しまして支給実績三億三千万ということで、大体とんとんのようなかっこうで現在進んでおるわけでございます。  それで御指摘のように、さらにこれを法制化するということもわれわれの段階でいろいろ議論があったわけでございますが、何分にも費用をだれから取るか、直接の原因者ではない企業から強制徴収するということにつきましては、原因者負担の原則からいきましてもまたいろいろ問題がございますし、そのようなこともございまして、石油業界あるいは海運業界あるいは水産業界の拠出による現在の方式をそのままとっているわけでございます。現在のところ、先ほど申し上げましたように、一応順調に現段階までは進んでおりますので、大体この線でいいのではなかろうかと思っておりますが、今後とも制度運営の実態を踏まえて必要に応じてその改善を図り、被害漁業者の救済に万全を期したいと考えておる次第でございます。
  152. 古寺宏

    古寺委員 これは国会用の答弁でございますから、あなたはそういうような心配のないようなお話をなさっておりますが、この問題についてはいままでもたびたび検討されている問題でございまして、やはりこれは法制化方向に進めていかなければならない問題だと思うのですよ。ですから、今後さらに検討をしていただきまして、現在薬害の方でも救済の基金法が国会にかかっておりますが、きちっとしたものをこれからつくっておく必要がある、こう思いますので、その点については御要望を申し上げておきたいと思います。  次は、統計研究会の公害研究委員会、これは委員長は都留重人さんでございまして、三月二十八日に調査団が青森県のむつ小川原に参ったわけでございます。その際に、田尻東京都公害局水質保全部長さんが、現在計画中のむつ小川原港は三十万から五十万トン級のタンカーが出入りをする、ここで大事故が発生すれば青森県独自の問題ではない、それなのに太平洋という荒波の外洋に港をつくることが問題で、しかも風も強く、防波堤になるものがない、まさに欠陥港で、検討すべき必要がある、こういう指摘をしていらっしゃるわけでございますが、このむつ小川原港が港湾審議会を通って、現在大臣も認可をしてこれは建設中でございますが、この審議会の過程におきまして、特に大事故が発生すれば青森県独自の問題ではない、こういうふうにおっしゃっているわけでございますので、海上保安庁としてはこの点についてどういうように指摘をしていらっしゃるのか、検討していらっしゃるのか、そこからまずお話を承りたいと思います。
  153. 野呂隆

    ○野呂説明員 むつ小川原の港湾計画につきましては、五十二年十月に青森県知事から八戸海上保安部長あて意見照会がございました。同計画では、御指摘のとおり三十万トン級の係船浮標二基の設置が計画されておるようでございます。当該施設の安全、衛生等につきましては、港湾局の方ですでに十分な検討がなされまして所要の技術基準等が定められておりますが、海上保安庁におきましても、当該シーバースの建造位置につきまして、まず海上交通の安全確保の観点から、付近の船舶交通の状況、それから地象、海象状況、地理的条件、こういうものを総合的に検討いたしまして、一応異議のない旨回答いたしております。  なお、その際に、シーバースを含みます危険物専用バースについての防災、公害防止安全対策、こういうものの確立について十分配慮するように、あわせて申し入れいたしております。
  154. 古寺宏

    古寺委員 その後にさらに、濃霧の日も多く、小型船舶と衝突事故も起こしかねない、タンカーは必ず油を流すし、そのための船舶アセスメントも実施するほか、アセスメントの県条例を制定してもらいたい、こういう要望が出ているわけでございます。タンカーは必ず油を流す、そのための船舶アセスメントも実施する必要がある、それから県自体でもってアセスメントの県条例をつくる必要がある、こういう指摘をしているわけでございますが、海上保安庁としてはこの点についてはどういうふうにお考えですか。
  155. 野呂隆

    ○野呂説明員 一点係留シーバースにつきましては、油が流れた場合のオイルフェンス展張等が固定しましたシーパースに比べまして展張しにくい等の理由から、多点係留の施設よりも防除作業がやりにくいという指摘もございますけれども、オイルフェンス等をあらかじめ十分準備いたしまして、またなお風潮流によるこれらの作業が十分できない場合には、そのための第二次的な展張措置等も考慮いたしまして、それに防災船等を配備いたしまして万一の事故に備えて十分警戒するように指導いたしております。
  156. 古寺宏

    古寺委員 三十万トンあるいは五十万トンのタンカーが流出事故を起こした場合に、オイルフェンスとかそういうもので防除できますか、どうですか。
  157. 野呂隆

    ○野呂説明員 お答えいたします。  オイルフェンスを十分張ることによりまして当面の流出はとめることができると思います。  なお、オイルフェンス展張でとめるばかりでなく、オイルフェンスで一応拡散を防ぎまして、それを回収あるいはその他の方法によりまして除去するという方策をとっております。
  158. 古寺宏

    古寺委員 一昨年でございますか、フランスでもタンカーの事故がございました。そういう場合には何千人という人を動員し、いろいろな手段を尽くしてもなおかつ物すごい油の公害が出ているわけですね。そういうものを、あの辺の海上保安部にオイルフェンスを用意しておいて防除できるというふうにあなたはお考えになっていらっしゃるのですか。
  159. 野呂隆

    ○野呂説明員 そういう大量の流出事故がないように事前の安全対策を指導いたしております。
  160. 古寺宏

    古寺委員 それはないにこしたことはございませんよ。しかしながら、この調査団が指摘していることは、防波堤もない、港湾というものは当然静かな場所にきちっとつくるべきであって、太平洋の外洋にそういうものをつくって、しかも一点係留シーバースでもって油の荷揚げをするなんということは非常に危険である、こういう指摘をしていらっしゃるわけなんです。ですから、事故の発生の危険性というのは高いわけですね。事故を起こさぬようにと思っても、事故が発生した場合にはこれはどうしようもないですね。その場合には対応できないでしょう、どうですか。
  161. 野呂隆

    ○野呂説明員 シーバースの建造につきましては、港湾局等で技術基準等を設け慎重に検討されまして、そういう事故のないように建造されるように聞いております。  それからまた、私の方は船舶交通の安全の観点から、先ほど申しましたように地理的条件も十分踏まえて検討しておりますので、そういう事故の発生がないように指導いたしております。
  162. 古寺宏

    古寺委員 いま海上保安庁とお話を進めてまいりましたが、これは運輸省は計画段階でそういうようないろいろな考えられる公害等の問題について検討なさいましたか。
  163. 小池力

    ○小池説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、むつ小川原港の原油の受け入れ施設と申しますのは、やはり地形上一点係留ブイという形をとっております。水深約三十メーターのところに三十万トンを対象にいたしました一点係留ブイを二バース計画するようにしてございますが、御指摘のとおり外洋に面する部分のブイでございますので、これに関しましては過去数年にわたりまして構造的な面それからメンテナンス、保守的な面、管理面、あるいは先ほど御指摘のございました漏油対策といったようなことにつきまして、私どもといたしましては、運輸省の港湾局といたしましても調査をいたしました。また港湾管理者であります青森県の方もやってございます。特に、日本の知識だけでなく海外調査もいたしまして、むつ小川原よりもさらに条件の悪い北海で現実にそういう例がございます。その他イギリス、アメリカ等の例も調べまして、一点係留ブイの安全性その他につきまして十分に研究をしたところでございます。こういった調査に基づきましてむつ小川原の港湾計画が五十二年十月に運輸大臣に出てまいりましたので、御指摘の特に防波堤の外に一点係留ブイを設けるといった安全性につきましては、気象、海象条件を初めといたしまして地理的条件、施設の配置の計画、付近の船舶交通の状況等を総合的に検討いたしまして、おおむね支障ないというふうに判断したところでございます。  なお、五十二年十一月には港湾審議会第八十回計画部会でこの港湾計画の審議がなされたわけでございますけれども、この審議会の席上におきましても、一点係留ブイに限らず全般的な船舶の安全上の問題について海事関係の学識経験者の委員の方から御質問もあり、慎重審議をいたしまして、適切なものであるという答申をいただいているところでございます。この答申を受けまして、運輸省といたしましては港湾計画が適切であると考えて承認をしたという経緯でございます。
  164. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、承認した後においてこの調査団が現地に参りまして、欠陥港であるというふうに指摘しているのですよ。  それから、船舶のアセスメントをやるべきである、県も条例もつくるべきである、こういうふうに指摘をしておりますが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  165. 小池力

    ○小池説明員 この三月青森県におきまして田尻さんからそういういま先生御指摘の御発言がありましたことを私どもも聞いております。ただ、田尻さんのお考えは、波、風がかなり多いということから防波堤の外に一点係留ブイをつくるということは非常にむずかしいのじゃないかという指摘がまずございました。  これにつきましては、私ども四十六年から五十年の五カ年にわたります波、風の資料に基づきまして、また大型タンカーの係留に関しましては海上保安庁の方もたとえば風速二十メーター以上になるとそれはもうブイから離れて安全なところに避泊をしなさいといったような運用の基準がございます。そういったものと過去五年間の気象海象データと突き合わせまして、大体いまの防波堤の外の係留ブイでも年間八割の稼働率は大丈夫だというふうに考えているところでございます。  第二点の安全上の船舶のアセスメントということでございますが、船舶のアセスメントという意味、なかなかむずかしいかと思いますけれども、特に先ほど来先生御指摘のとおり、シーバースの場合、油流出の問題は非常に大事なものになろうかと思います。施設の構造に欠陥がないということがまず第一でございますし、保守、点検を大事にする、あるいは自然条件等に対しまして利用基準をきちんと決めておく、あるいは事故がありましたときの即応体制というものをつくっておく、あるいは事前の十分な教育を徹底させておく必要があるといったような視点でこのシーバースに対します施設の安全性を図っていく必要がございますが、これらの項目につきまして港湾管理者であります青森県は学識経験者、専門家の協力を得ましていろいろな調査を進めております。  なお、バースの整備はこれから始まるわけでございますので、実施に至ります間に事業者、港湾管理者、その他関係官庁から成ります防災対策会議というものを設置いたしまして、そうして防災対策について十分な措置をとってまいりたいというふうに青森県の方は考えておりますし、私ども運輸省といたしましても、このような必要な措置について十分指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  166. 古寺宏

    古寺委員 次に、むつ小川原は石油の国家備蓄の候補地になっているわけでございますが、これは通産省でございますか、いつごろに具体化する予定でございますか。
  167. 森清圀生

    森清説明員 先生御案内のとおり、むつ小川原を含めまして四地点をいわゆる国家備蓄の候補地点ということで昨年来調査をやってまいったわけでございますが、ことしの三月の初めに最終のフィージビリティースタディ報告が出されまして、それによりますれば、むつ小川原につきましては、基本的にはあの地区における五百六十万キロリッターの備蓄計画が技術的にも経済的にも妥当性を有するという結論になってございます。それを受けまして私どもは、その後青森県及び関係者でございますむつ会社あるいはむつセンター、そういうところと今後の進め方の詳細につきまして鋭意検討してまいっておりまして、近々その辺の詰めを終了することができるんじゃなかろうかと期待をしております。そういたしますれば、むつの五百六十万キロリッターの政府備蓄基地の最終的な完工は五十七年度末になる見込みでございます。
  168. 古寺宏

    古寺委員 このむつ小川原工業開発の主な工場は石油精製工場と石油化学工場ということになっているわけでございますが、最近は石油の問題が、輸入あるいは価格の問題で非常に目まぐるしく変動しているわけでございますが、今後石油精製工場をむつ小川原に誘致をする場合に、現在のわが国の石油精製の需給の関係はどういうふうになっておりますか。
  169. 竹内征司

    竹内説明員 ただいま御指摘のとおり、世界の原油状況というのは、最近特に昨年のイランの政変以来非常に厳しいものになってきてございます。イランの生産が一時ストップしたということによりまして、その間サウジアラビア等が増産しておったわけでございますが、それがその間でも二百万バレルの量が不足しておるというふうな状況にあったわけでございます。その後イランの生産は回復してまいってはおりますが、サウジアラビア等の減産がございまして、世界的な原油の需給状況というのはなおタイトな状況のまま続いていく、このままいけば世界的に消費の方を五%程度は節約しないと需給のバランスがとれない、こういうふうな状況にあるわけでございます。  こういう状況を踏まえまして、わが国の需給の方も非常にタイトな計画になってございます。今年度原油の輸入量は二億九千二百万キロリットルということでございまして、それでもって五%節約を織り込めば大体需給のバランスはとれる、こういうふうな状況でございまして、この限りにおきましては、生産能力も十分ある。原油の見通しも、これだけは何とか努力して確保しなければ需要に追いつかない、こういうふうな全体の状況になっておる次第でございます。
  170. 古寺宏

    古寺委員 いや、私がお聞きしているのは、わが国にはいままですでに石油精製工場がたくさんあるわけですね。こういうような開発を進める地域に新たに石油の精製工場を今後つくっていくような見通しはあるのですかということをお伺いしている。
  171. 森清圀生

    森清説明員 私は備蓄の方の担当でございますが、むつにつきまして、御案内のように当面二十万B/Dの精製工場を持ってきたいというのが第二次基本計画に入っておるのは承知をしておりまして、その関係でこの二十万B/Dの精製プラントの立地の見込みというものにつきましては、私どももかねてから非常に関心を持っておりますけれども、御案内のとおり、この前の四十八年の石油ショック以降わが国の石油の内需が非常に落ちております。さらに今後六十年に向けましても余り大きな伸びは見込めないのではなかろうか。むしろ政策的にも相当石油製品の需要を、いわゆる省エネと申しておりますが、省エネルギー、省石油ということでスローダウンしていかなければならぬという、従来とは違った状況が出てきておりますし、また一方、海外的にも、イランのこの前の政変以来、イラン自体が約五百五十万から六百万B/Dという能力を政策的に落としておりまして、現在四百万を切る生産ですし、サウジも当初期待されておりましたような八〇年代に千百万B/Dというようなペースはとても望めない、現実にも八百五十万B/Dぐらいしか出ておりませんし、そういう海外の方から石油を手当てするという方向でも非常にむずかしい。短期的にはもちろん非常にむずかしいですが、中長期的にも非常にむずかしい状況でございまして、その辺をいろいろ勘案いたしますと、新たな石油精製工場の立地というのは、むつに限らず、従来のように十万とか二十万B/Dという大きなサイズの精製工場の新設は、あるとしましても相当おくれるんじゃなかろうか、かような見通しが一般的な見通しじゃなかろうかと思います。
  172. 古寺宏

    古寺委員 同じくむつ小川原開発に伴いまして火力発電所をつくることになっているのです。昭和六十年には一部操業を開始する、こうなっているわけでございますが、火力発電所をつくるためには、手続や建設の年数から計算いたしまして大体何年ぐらいかかりますか。
  173. 岡松壯三郎

    ○岡松説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のむつ小川原開発に盛られております火力発電所は、一応計画では石油火力ということになっておるわけでございますが、石油火力の場合でございますと、着工から完成まで、運転開始と申しておりますが、それまでが大体三年ということでございます。しかしながら、そこに至る前に基本的な調査環境アセスメントといったようなことをやらなければなりませんし、環境アセスメントは四シーズンやるというのが現在の原則になっておるということから推して考えますと、大体六年ぐらいを見ておかなければならないというのが一般的なケースでございます。
  174. 古寺宏

    古寺委員 現在、むつ小川原の火力発電所の建設計画というのはございますか。手続しておりますか。
  175. 岡松壯三郎

    ○岡松説明員 火力発電所の計画につきましては、むつ小川原開発第二次基本計画というのに盛られておるわけでございますが、これは六十年度の運開をめどにいたしまして、先ほど御質問にもございました石油精製あるいは石油化学というものと一体の計画として六十万キロワットのが二基、百二十万キロというのがございます。しかしながら、ただいま御説明申し上げましたように、石油精製の方あるいは石油化学の方の計画もおくれておりまして、これに伴いまして火力発電所の方の計画も遅延をしておるということでございます。電力会社から毎年、年度初めに当該年度の施設計画というのが出てくるわけでございますが、今年春に提出されました計画の中にもこの計画は盛り込まれていない、六十年度の運転開始分としては盛り込まれていないということでございます。
  176. 古寺宏

    古寺委員 それじゃ、国土庁にお尋ねいたしますが、石油の備蓄基地というのは、この第二次基本計画にはなかったわけです。それから火力発電所は、これはまだ全然手続も行われていないし、電源開発調整審議会にも全然これはまだ出てきていないわけですね。それから先ほどお話がございましたところの石油精製についても今後の見通しは非常に暗い、こういうふうになりますと、このいわゆる第二次基本計画というものは根本的に見直さなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、いかがでございますか。
  177. 城宏明

    ○城説明員 お答えいたします。  ただいま先生御質問の石油の備蓄基地の問題でございますが、これにつきましては一昨年の八月三十日に閣議了解をいただきました青森県が作成いたしておりますむつ小川原開発の第二次基本計画におきましては、工業開発地区内に全体といたしましては二千万キロリットル前後の容量を有しますところの原油等の備蓄タンクを域内にも配置する、こういうような計画になっておりまして、全体として見ました場合には、このむつ小川原工業開発地域というのは相当規模の石油備蓄機能を有している工業基地である、こういうような形になっておりますので、このたびこの地区内におきまして約五百万キロリットル程度の国家備蓄基地を立地させるということに相なりました場合におきましても、この県が作成いたしました第二次基本計画の全体の枠組みに重大な変更を来すものではないのではなかろうかというふうな考え方もできるかとは思いますが、しかし、これは非常に重要な問題でございますので、この点につきましては国家備蓄計画がこれからさらに具体化するに対応いたしまして、むつ小川原総合開発会議を構成しております十三省庁、それから計画の当事者でありますところの青森県とも十分協議をいたしながら、必要な措置を講じてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  それから、もう一点の火力発電あるいは石油精製等の立地が、客観情勢等がございまして現在やや足踏みをしておるという点につきましては、実は一昨年八月に閣議了解をいたします際にも、経済情勢等が非常に低成長時代に向かいまして、工業開発がなかなか思うようにいかないというふうな状況も踏まえまして、閣議で了解いたします際には、青森県が策定をいたしました第二次基本計画のうち、第一期分に当たる約半分程度の規模でございますが、これぐらいの規模について経済情勢その他の客観情勢をにらみながら段階的に立地を図っていくというふうな申し合わせをいたしておるわけでございます。  その後約二年たつわけでございますが、経済情勢は当時に比べましてもそれほど必ずしも好転しているとは言いがたいわけでございますが、このあたりにつきましては、閣議了解の趣旨も踏まえまして、客観情勢を十分勘案しながら関係行政機関と調整を図りながら、今後の進め方をこの十三省庁会議の場を通じまして検討を深めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  178. 古寺宏

    古寺委員 むつ小川原の火力発電所は、石油を燃焼することになっているわけでございますが、IEAの決議によりますと、新規の石油火力発電所は今後認めないというようなことを決議しているようでございますが、現時点においてはまだ手続もしていないわけですから、将来においては、もし建設するとすれば、これは当然石油から石炭なり他のものに変更せざるを得ないのではないかと思うのですが、通産省いかがですか。
  179. 岡松壯三郎

    ○岡松説明員 お答えいたします。  先週行われましたIEAの閣僚理事会で、御指摘のように、今後石油専焼火力は原則として新設を認めないということが決定されたわけでございます。この決定と、いま御指摘のむつ小川原開発における石油火力との関係でございますが、具体的な計画がまだ電気事業者でございます、東北電力になるのかと存じますが、そこから提出されてきておりませんので、何とも申し上げられませんが、青森県側がこの計画について非常に強く要望しておるということ、それから五十二年の八月に閣議の口頭了解がなされているという点も踏まえまして、具体的な計画が出てきた段階で検討してまいりたいというふうに考えております。  しかしながら、客観情勢といたしましては、先ほど石油部の方からも御説明申し上げましたように、石油の需給の状況というものは年々タイトになっていくということでございますので、将来の地域開発ということを考えた基本的な動力源である火力発電所ということになりますと、やはり安定的に燃料を確保できるような体制を整えておくことが必要なんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  180. 古寺宏

    古寺委員 先ほど備蓄基地ができるから精製工場もまた火力発電所も可能であるというような国土庁の御発言があったように聞いたんですが、この備蓄と石油精製と火力発電所というのは関係あるのですか、通産省
  181. 森清圀生

    森清説明員 私どもの備蓄基地にむつ小川原を想定いたしました主たる理由は、先ほど国土庁の御説明にもございましたけれども、閣議口頭了解されております第二次基本計画の中に第一期分として約八百万程度の原油タンクヤードを設置するという計画があるということでございましたものですから、それじゃその枠内で私ども全国的なロケーションという面からも考えて、約五百万程度をむつに立地しようというふうに決定いたしたわけでございまして、私どもとしては、石油備蓄基地が存在するところに、必ずそれに付帯したような精製なりその他の石化なりそういうものが隣接するということが絶対条件であるということは、私どもの備蓄基地の方からは必ずしも出てまいりませんが、私どもとしては、希望的には石油の備蓄基地に伴う各種の施設の有効利用という意味から、望むらくはそれらの有効利用という観点から、関連のそういった業種が近傍に立地されるという第二次基一本計画の図が実現されるということは基本的には望ましい、かように考えております。
  182. 古寺宏

    古寺委員 時間がないので残念なんですが、国土庁にお尋ねしますけれども、七月三十一日に、土地を提供した方々に対して、土地の引き渡しが今度行われまして残金の二〇%が支払われるわけです。長い人はもう十年近くなっておりますね。当時は農転ができないために八割だけ支払いまして二割はそのままになっているわけです。その間、残金につきましては、県があっせんをしまして銀行融資その他で今日まで何とかやってまいったわけでございますが、先日お話を承りますと、昭和四十六年当時の残額そのままに、利息も何もつけずにお支払いをする、こういうふうに承っているわけなんです。ところが新聞で報道されている価格を見ますと、今度の石油備蓄基地は坪四万四千円とか四万五千円というふうに発表になっておりますが、実際に土地を提供した方々は一坪千六百円とか千七百円というのもあるのですね。そのうちの二割、千六百円にいたしますと三百二十円ちょうだいするわけです。十年近く待って一坪三百二十円ちょうだいする。片一方は、もちろん土地の造成やいろいろな付帯工事その他がありますので坪何万という価格になる。そういうことでは住民は納得できないですね。一人一人説明すればいいのでしょうが、七百人以上の人がいるのですから大変なことでございます。そういう住民対策という面が今回行われている開発の中では非常に欠けているのではないか。そういうことで都留団長から、棄民政策もここにきわまれりというふうに指摘されているわけなんですが、この点については国土庁調整をしていらっしゃるわけでございまして、支払うのは会社でございましょうが、どういうふうにこれは調整なさっていらっしゃるのですか、土地の価格の問題。
  183. 城宏明

    ○城説明員 むつ小川原工業開発地域内の用地の買収につきましては、実際に用地買収事務を担当しております財団法人である青森県むつ小川原開発公社が昭和四十七年の二月十三日に用地買収の基準価格を発表いたしまして現在まで買収を進めておるわけでございまして、現在民有地のほぼ九五%程度まで買収を完了しております。なお一部に未買収の土地があるわけでございますが、現在も実は昭和四十七年に定めました統一的な基準価格をもって買収を継続いたしておりまして、その間、価格の改定というものをいたしておらないという事情がございます。  それから一方、買収の予約をいたしております土地の中には農地等もかなり含まれているわけでございますが、そういう土地につきまして現在八割の予約金を払いまして、二〇%は残金として未払いになっていることは先生御指摘のとおりでございます。この買収の予約をいたしております土地につきまして、もし地権者の方から御希望があれば、たとえば農地の場合に引き続き耕作を認めるというような状況でございまして、現在も相当量の土地が現に地権者によりまして耕作をされておるというふうな事情もございますので、この買収に当たっております公社といたしましては、今回清算をいたします二〇%の残金について利息等をつけて支払うという必要はないのではないか、このように考えておる次第でございます。
  184. 古寺宏

    古寺委員 それは山林原野というような一番多いところは除外して、農地だけを強調しているからそういうお話になるのであって、それはもう全然だめですよ。やはり現地の実情に合った住民対策というものをきちんとやりませんと、またいろいろな運動が起きてくるわけです。ですから、そういう住民対策というものをきちっとやるように要望しておきたいと思います。  時間が過ぎたのですが、せっかく呼んでいるので、いまお許しを得て防衛施設庁にお尋ねをしたいのでございますが、天ケ森射爆場、これは米軍の演習時間がいままでの二十時から二十二時まで延長されたのですが、これは現地の住民がぜひやめていただきたい、こういうことを再三再四言っているわけですね。なぜこういうふうに現地の住民を無視して延長しているのか。  それからまた、地元におきましては基地周辺対策の一環として、全室の防音工事あるいは農耕被害、生活保障、コンターの見直し、こういうようないろいろな項目につきまして見直しをしてくださいということを、施設庁にも直接参りましていろいろとお願いをしているわけでございます。そういうような対策、これは今後どういうふうに変えていくのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  185. 白根洋

    ○白根説明員 お答えいたします。  三沢対地射爆撃場のいわゆる訓練時間の延長の件でございますが、先生先刻御案内のとおり、従来射爆場におきます米軍の訓練は午前七時から午後八時まで行っておったわけでございます。ところが昨年の夏に至りまして、米軍から、日没が遅くなるいわゆる夏場の期間につきまして、毎年四月から九月までの間、それぞれ二時間の時間を繰り下げて演習を実施したい、こういう要望が出てきたわけでございます。もちろん繰り下げることのほかに、その日数につきましては一カ月で最大で十五日間、六カ月を通じまして六十日以内という制限があるわけでございます。こういう要求が出てきたわけでございます。当庁といたしましては、これらの問題を十分検討いたしたわけでございますが、御案内のとおり、現在の米軍は安全保障条約に基づきましてわが国に駐留しております。そしてその目的達成のための必要な訓練を行うに際しましては、やはりその練度を維持し向上するということは必要なことである、こういうふうに考えておるわけでございますので、この米軍の要求趣旨はやむを得ないというふうに考えております。そういうことで地元の関係者と折衝いたしまして、今年の九月三十日までの間訓練時間の変更につきまして御同意をいただきまして、この変更の所要の事務手続を了したところでございます。五月十九日に官報告示をいたしたところでございます。  この時間延長につきましては、今回が初めてということではございませんで、五十二年度におきまして約一時間の延長、それから五十三年度におきましても実質十日間でございますが、やはり一時間の延長ということで、地元の御同意を得ましてそういう訓練を実施しております。今回の米軍の要望は、四月から九月までの慶場の期間、やはり二時間の延長をしてくれ、こういうことでございましたので、地元の方々といろいろ御協議、折衝いたしまして、ことしの九月三十日までの間は一応の御同意をいただいた、こういうふうな状況になっております。  それから、先ほど先生からいわゆる三沢射爆場並びに三沢基地のいろいろな補償の問題であるとかあるいは民生安定事業の問題について御質問がございました。三沢基地といいますか、三沢飛行場、射爆場の設置並びに運用に伴います障害の防止等、そういった施策につきましては、従来から防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づきまして積極的に実施してきておるところでございます。今回の時間延長ということがございますので、こういった事態を十分認識いたしまして、環境整備法に基つきます航空機騒音対策に重点を置いた諸施策を推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  186. 古寺宏

    古寺委員 時間がないので、きょうは個々の問題には触れませんが、環境庁に申し上げたいのは、先ほど調査団が指摘しているようなタンカーのアセスメントでございますとか、あるいは当初計画になかった石油備蓄基地ができるとか、いろいろな変更が出てまいります。こういう場合には、やはりきちっとしたアセスメントも行わなければなりませんし、特に環境アセスメントの問題については午前中もいろいろ質疑があったわけでございますので、今後流産ばかりするのではなくして、実際に必要なわけなのですから、ぜひひとつ実現をしていただきたい、そういう立場できょうは御質問を申し上げたのです。環境庁の出番がなくて本当に申しわけないと思っておりますが、次回に譲ることにいたします。  防衛施設庁につきましては、まだまだいろいろあるわけでございますが、一番遺憾な問題は、地域住民の意思を全く無視して、米軍の要請であるからといって一方的に時間でも何でも決めるという方程式は、やはり改める必要があるのではないかと思いますので、こういう面についてはどうか機会あるごとに米軍側にもよくお話をしていただいて、地域住民の生活の安定というものを考えていただきたい、こういうことでございます。  次の先生がお待ちでございますので、きょうは終わりますが、次の機会にまた改めて残された問題については御質問を申し上げたいと思います。  終わります。
  187. 木原実

    木原委員長 中井洽君。
  188. 中井洽

    ○中井委員 おとといですか、自動車公害防止技術に関する第一次報告書というのを私どものところへもお届けをいただきましたし、発表もされたわけでございます。大変分厚いまた専門的な本でございまして、私どもなかなか全部読み切れませんし、理解するというのもむずかしい問題でございますが、目についた幾つかの点だけ御質問申し上げたいと思います。  トラックやバス等の第二段階目標値というものをつくってやっていくのだ、こういう趣旨のようでありますが、現在のトラックやバス等の五十四年規制というものの実施されておる状態はどんなものであるかという御説明と、次の第二段階目標値の設定をし実施をさせていくタイムスケジュールを環境庁はどのようにお考えになっているか、この二点をまず御説明いただきたいと思います。
  189. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先般発表いたしましたのは、技術評価の専門の先生方の報告書が取りまとまりましたので発表させていただきましたが、内容的に粗く申し上げますと、五十四年規制というのを五十二年に発表しておりますが、これの技術的なことがどの程度できるだろうか、こういったようなことも評価の内容にいたしておりまして、現在ディーゼルのトラック等につきましては、新しい型式の車について運輸省の方へ新型式の承認を得るためのものがほぼできつつある段階のようでございます。それにつきましては、騒音の問題、排ガスの問題につきましてもまずできるであろうという評価をしておられます。  次に、五十二年のときに発表いたしました五十四年規制の問題は、第一段階規制という意見が当時中公審の答申で出ているわけでありますが、そのときに第二段階の規制の目標値を答申していただいております。これにつきましては、第一段階規制ができてから数年後、遅くとも五十年代の終わりまで、こういう幅のある縛りができておるわけでございますが、昨年の評価検討会におきまして、これがどの程度現在の技術でできるか、できるものにつきましては早く規制の対象にしようではないか、こういう心づもりで評価をいただきましたところ、いわゆる二・五トンから一・七トンまでの中量トラック、それからライトバンのような軽量トラックについてのNOx対策が第二段階目標に一応到達できるような技術レベルにきているのではないだろうか、こういう評価をいただきましたので、これにつきましては当然リードタイムが必要でございますから、そのリードタイムをしかるべく考えまして、この点につきましては道路運送車両法に基づく保安基準に関係するものでございますから、運輸省と相談をいたしまして、私どものめどといたしましては八月ごろまでには告示の形でいたしたい、かように思っておるわけでございます。  なお、その評価の中では、さらにディーゼルの車そのほかの第二段階目標価につきまして、まだ技術的には無理があるという評価があるものもありますので、これにつきましては、やはり五十年代の後半までには何らかの形で規制対象にしたいと思いまして、この辺はひとつ企業の研究、努力をお願いするという形を考えておるわけでございます。  大変簡単に申し上げました。
  190. 中井洽

    ○中井委員 私も先ほど申し上げましたように、ばらばらっと読ましていただいたわけでありますが、たとえば第一次規制目標に対してここまでいける、第二次規制に対してもこれぐらいいけるのじゃないかと、かなり専門的なことが載っておる。それと同時に、それを達成すると費用的に何%ぐらいかかるのだということも具体的に載っておって、なかなかおもしろいなあというふうに見させていただいたわけでありますが、現在、この諮問がなされた時期あるいは自動車の排ガス規制はどうしてもやらなければならないという形で始まった時期に比べましてはるかに石油エネルギーの問題、省エネルギーの問題がクローズアップされてきているわけであります。この本の中にも燃料消費の率の問題と公害防止の技術との関連に関して幾つか書かれているわけでございますが、こういった排ガス対策というものはどんどん進めていかなければならない。しかし、それと同時に、進めれば進めるほど燃料消費がふえていく。この問題を環境庁としてどのようにかみ合わせて取り組んでいかれるのか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
  191. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 三つほどに分けてお答えができると思います。  かって乗用車の非常にきついNOx規制をいたしたわけでございますが、これは幸いにして日本の技術陣のすぐれた知能によりまして燃費の低下をほとんどしない、要するに、燃費の向上を果たしながら、かつまた排ガスの質をよくすることに成功したわけでございまして、そういった経験からいたしましても、今後の排出ガスを良質にするということにも当然そういった経験が生かされてくるであろうと思うわけでございます。  私ども今回の報告書の中にも書いてございますように、燃費の向上の問題あるいは排ガスの規制をすることによってどの程度コストにはね返るか、あるいは燃費にはね返るか、こういったことも評価の中でお願いいたしておりまして、それを見ながら無理のないようなことをしていかなければならない、かように思っているわけでございますが、御承知のように、排ガス対策というのはあくまでも環境、大気の汚染を良質にしようということの一環でございまして、環境白書の中にも、自動車の排ガス関連の測定局の測定値については新しい環境基準値をもってながめましても、なお三分の一は環境基準をオーバーしているということでございますので、今後とも健康という観点からの環境汚染防止の向上という意味ではひとつ御努力を願って、御協力をいただくよべに技術的にお願いしているという方針でいるわけでございます。
  192. 中井洽

    ○中井委員 先ほどのお話にございました乗用車の排ガス汚染については、世界一厳しい基準が達成されておる。あるいはまた今回中小型のあるいは軽量のトラックについて第二次規制の目標値が達成可能ではないか、こういう形で出てまいりました。しかし、NOxに関して自動車が一番責任があるというならば、私はディーゼルであろうと思うわけであります。ディーゼルのNOx排除技術が本当に可能なのかどうか、そういったところについてお尋ねをしたいと思います。  私事で恐縮でありますが、実は私も省エネルギーということで去年ディーゼルの乗用車にかえたわけであります。しかし、騒音の問題あるいは燃費も、値段は安いですが、キロリットルという形で考えますとそれほど伸びないなという感じもある。自動車業界の方々にこのディーゼルの排ガス対策はどうなんだと聞くと、正直むずかしいということしかおっしゃらないわけであります。この点に関して、この報告書でもNOxを減らしたらほかの問題が出てくるのだということで濁してあるように私は少し感じるわけでありますが、N Oxの低減技術に関してどういう見通しを持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  193. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先般発表いたしました報告書におきましても、ディーゼル車の問題について触れておるわけでございます。五十四年度におきまして、すでに今年度の評価をするためにお願いしている先生方にいろいろな自動車メーカーからヒヤリングをしたり見学をしたり技術的な評価をすでに始めておるわけでございますが、本年はひとつディーゼル車の規制の問題を重点にお願いしょうと思いまして、現在ディーゼル専門メーカーの大手数社をすでに見学しております。  実は、私も先般ある一社に行ってまいりましたが、技術陣といたしまして非常に新しい知恵を出してやっておられますし、いろいろなテストをしておられるわけですが、いろいろな意味でむずかしいということを言っておられる様子でございます。  本年五十四年度の評価の中でその辺をどういうふうに評価していただくか、ディーゼル車の持っております特性は、今日日本では燃費が安いといういい点はございますけれども、それはまた今日大問題になっております省エネルギーともつながるわけでございますけれども、残念ながら現時点においてはNOxについての排出量にかんがみましては、ガソリン車に比べますと数倍の汚染の寄与がございますので、こういった点についての低減ということを何としても図らなければならない。それにはやはりいろいろ技術的に矛盾する点があるようでございまして、私も専門でございませんが、その辺を克服するような努力をお願いしたい。それにつきましては五十四年の評価検討会で真剣に取り組んでいただき、それを見て今後の対策を考えていかなければならぬ、こう思っているわけでございます。
  194. 中井洽

    ○中井委員 ディーゼルの公害対策に関して外国と日本の技術の開きはかなりあるわけですか。
  195. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 実は私、そこまでお答えをするほど技術的なレベルの内容をよく存じませんので、しっかりお答えができないわけでございますけれども、先般私がある一社に参りまして、いろいろ専門技術の方からお聞きした耳学問を中心にいたしましてお答えいたしますが、非常に努力をしておられるし、日本の方が細かい点についての研究を進めているという感じがいたしているわけでございます。
  196. 中井洽

    ○中井委員 先ほどもお答えの中にありましたように、省エネルギーに関しては、これからバス、トラックということだけじゃなしに、乗用車にもディーゼルがどんどんふえてこようかと思うわけであります。特にディーゼルの排ガス対策、そして騒音対策、私などは、買いましてから近所で中井さんはこのごろトラックに乗っているのかと言われて、大変にぎやかな音がいたします。音に関しては、現実に幾つか乗ってみて、外国のディーゼル車の方が少ないような気が私はいたします。この報告書の中にも、ずいぶんタイヤの騒音からいろいろな騒音対策についての報告が述べられておりますが、なかなか騒音対策はむずかしいという書き方がされているように思うわけでございます。  過日、国会へフランスから訪問の国会議員の方が何人か見えて、私ども理事のメンバーと懇談をいたしましたときに、一人の議員の方から、東京へ来て自動車が静かなんでびっくりした、こういう話を聞いて私どもが逆にびっくりしたわけであります。私どもがずいぶんうるさいなと感じる自動車も、外国から見ると静かなのかなあという気もするわけでありますが、しかし、現実に私どもは自動車公害に悩んでいるわけであります。  自動車業界にとってもいま大変な時期でありますが、しかし、公害問題は公害問題であります。こういう技術的なものを大いに進めていただくようにお願いをいたします。と同時に、繰り返しますが、ディーゼルについて一刻も早く対策をおとりいただくように特にお願いを申し上げます。  もう一つは、これらの五十四年規制あるいは第二段階の目標値の設定が進んでまいりますと、自動車公害対策に関しては、日本の対策は世界一になっておる、私はこのように思うわけであります。そういたしますと、海外からの輸入車に対してこれをどう適用していくのかむずかしい問題があると思います。五十三年規制に関しては、外車に対しては対象外としているようでありますが、これからのこの規制を輸入車に対してどう適用していくのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。  特に、円高の問題等がございまして、日本の自動車もどんどん高くなってまいります。外車を入れた方が安いというようなこともございます。あるいはまた余り規制をきつくして、日本軍に対する規制をそのまま輸入単に当てはめますと一台も入らなくなる。そういたしますと、今度は逆に海外から、貿易面において日本はまた障害を設けているのじゃないか、こういう非難を浴びせられるおそれもあるわけであります。そこのところの兼ね合いをどのようにつけていくおつもりかお尋ねをいたします。
  197. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 ディーゼル車の問題につきましてお答えいたします。  私ども今後の予想といたしまして、大型のトラックが物流面で果たす役割りから考えまして、非常にふえていくように見込んでおります。  それからまた、最近の動向といたしまして、全体の保有台数に占める割合は非常に低いわけでありますが、ディーゼル乗用車が最近とみにふえております。非常に大ざっぱに申し上げますが、現時点におきまして全保有車の約一%程度でございますが、ここ二、三年の間に急激に伸びているという状況がございますので、それらを踏まえましてディーゼル乗用車についての規制はなるべく早く考えていかなければいかぬ、こういう姿勢でおります。  それから輸入車の問題でございますが、五十三年規制につきましては、輸入車につきましては五十六年四月からということで二年間の猶予の時間をつけてやらしていただいております。これは私ども直接の所管ではございませんけれども、いろいろ現在の国際的な貿易情勢ということを勘案しての上でございまして、恐らく今後の規制につきましてもある一定のそういった時間的な差をつけるというようなことでいくようになろうと思います。したがいまして、現に五十一年規制は五十三年、昨年の四月から外車については適用になっておるわけですから、そういう意味で二年ほどの差をつけていままでの規制は適用するという形でやっております。
  198. 中井洽

    ○中井委員 この報告書につきましては、また次の委員会でも時間がありましたらやらしていただきたいと思います。  次の問題に移らしていただきます。  私、過日当委員会で本田部長に対して公害健康被害補償法の地域指定の解除要件の問題についてお尋ねをいたしました。科学的な条件が整うなら当然指定解除になると考える、こういうお考えをいただいたように思います。その後何か新聞等で見ておりますと、近々中公審に条件等を諮問をするのだというようなことが地域指定の解除を目指すのだというような形で載って騒がれておったようでありますが、この点についていつごろ中公審にこの条件を諮問をなさるおつもりか、委員会できちっと確かめてみたい、このように考えます。
  199. 本田正

    ○本田政府委員 この二月でございましたか、御指摘のように先生からの質問がございまして、そのときに、地域の解除につきましては二つの要件がある、一つは大気の汚染が本当に改善されたかどうか、一つは他の地域に比べて公害患者が発生していないか、この二つの科学的なデータが取りそろいますならば解除というのはあり得るのじゃなかろうかという趣旨の御答弁を申し上げたわけでございます。  御心配いただいております今回の指定解除要件の諮問という件につきましては、実は解除要件だけを検討しているという意味ではございませんで、公害健康被害補償法にまつわりますいろいろな問題があるわけでございます。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 それらの一環として当然、私ども公害健康被害補償法を担当し、実施しているわけでございますから、より適切な運営を図らねばならないという観点、さらには目的が公害患者の迅速かつ公正な保護ということにあるわけでございまして、そういう観点からいろいろ検討をしているわけでございます。他方中公審においても自主的に御検討が進んでいる、そういうことであったわけでございますけれども、たまたま地域指定要件だけが取り上げられたという結果に相なっております。地域指定の解除要件も当然含まれるわけでございますが、そういったもろもろの検討が進みますならば、これは当然きわめて技術的な問題を多く含むことでございますので、いずれ中公審にも御審議をお願いせぬといかぬのじゃなかろうか、こういった趣旨であったわけでございます。
  200. 中井洽

    ○中井委員 それじゃ、もろもろのそういった一連の条件あるいは見直し、こういったものを中公審にいつごろ諮られるおつもりでございますか。
  201. 本田正

    ○本田政府委員 申し上げましたように、いろいろと検討しているわけでございます、この制度を預かっております以上。ただ、そういった検討の方向といいますか、中身というものもある程度煮詰まりませんと、諮問ということはできないと存じます。したがいまして、諮問の時期についてはいまのところ全くわかっておりません。
  202. 中井洽

    ○中井委員 私は前にも、NO2の新しい規制値、基準値を決められるときにも申し上げたわけでありますが、公害問題に関して感情とかそういう問題じゃなしに、科学にのっとっていろいろなものを見直していく、あるいは前につくった法律でも時代時代で考えていく、あるいは新しい要件、条件というものをつけ加えていく、こういったことはあたりまえであるというふうに考えております。したがいまして、たとえば先ほど御質問申し上げました自動車の排ガス規制、これらの問題もどんどんやっていく、そして世界一の水準に達する、そして移動発生源としてまあまあ公害の大気汚染に寄与する分が少なくなってくる。こうなれば、重量税から健康補償法へ出しております三割というこの金額の問題についても、たとえば減らしていくことを一遍検討する、そういったことはあたりまえだというふうに私は考えております。  地域指定解除の要件答申につきまして、私は何も地域指定をするのがあたりまえだとか、あるいは早く地域指定をしろとか、そういったことじゃないわけであります。地域指定という要件がある限り、あるいはまた逆に地域指定の解除の要件というものが書いてある限り、どういう状況になったら解除をするんだ、これをはっきりと明文化していく、あるいは答えを出しておいていただく。それに向かって地域指定を受けた地域行政あるいは政治というものが努力をする。私は当然のことであろうというふうに考えます。  したがいまして、いま現在患者がふえておる、あるいはまだまだ地域指定をしなければならない地区がある、こういったこととは別に、地域指定解除の要件づくりというものはきちっとしておいてほしい、このように考えるわけでありますが、この点に関して大臣、どのようにお考えか、御答弁をいただきたいと思います。
  203. 上村千一郎

    上村国務大臣 中井委員がおっしゃる物の考え方、これは同感です。同じような考えです。  実情をちょっと申し上げますと、実は公害健康被害補償制度につきまして、もちろんこの大気汚染の改善状況とか制度の施行実績等を踏んまえながら、この改善合理化を図っていく、これは環境庁としまして当然調査検討していかなければならぬわけです。この問題につきましていろいろ御意見があるわけですね。御陳情もいろいろあるのです。たとえば解除の問題につきましても、これだけきれいにしていったのだから少し解除してもらいたいという陳情もある。冗談じゃない、それは患者はまだ減っていくわけじゃない、ふえる地区もある、そんなことは困るとか、いろいろなことがあります、解除の関係だけでも。  それ以外にも、たとえば窒素酸化物の汚染を地域的指定要件においてどう評価すべきかとか、あるいは大気汚染の改善状況に照らして現行の暴露要件を見直す必要がないかどうかとか、あるいは大気汚染による健康被害の予防及び治療のためのいかなる施策を講ずべきかどうかとか、あるいは自動車のその負担のあり方をどう考えるべきか、いろいろな問題がたくさん出ておるわけです。  それで、環境庁内部でもこれをいろいろ整理検討しておる。一方、中公審の中でもこれについて御検討を始めておるわけです。いま率直に申し上げまして、これをどの範囲でどうするのか、あるいはそれがどういうふうに煮詰まっておるかというと、それはまだ煮詰まっていないのです。それで中公審の中の御意見ども多少しんしゃくしながら、それから役所の中も整理しながら検討していこう。もちろんこれが煮詰まったりいろいろしますれば正式に中公審に御諮問するという段階になると思いますが、現段階ではその範囲とか時期とか、どういうふうに持っていくかということは検討中でございまして、煮詰まっていないというのが実情でございます。
  204. 中井洽

    ○中井委員 それでは、次にアセスメントの問題について幾つかお尋ねしたいと思います。  各委員からもそれぞれ御質問があったと思うのですが、また今回もアセスメント法案が提案されないままに終わりました。これに対して大臣がどのようにお考えになっておるのかということが一つ。  それと同時に、こういうアセスメント法をいまの環境庁国会へお出しになるのがむずかしい情勢であるということでありますが、それならば環境庁としては、これからの環境行政をこのアセスメント法制化というものを抜きにしてどういう形で進めていくのか、どういう変更をしていくのか、こういったことについて大臣からお答えをいただきたいと思います。
  205. 上村千一郎

    上村国務大臣 環境影響評価法案につきましては、各委員の方から率直な御質問がございますし、私も経過を率直に申し上げておりますので、二重になってはいかがと思いますので、要点だけをお答え申し上げたいと思います。  私は大きく進展していくような気がします。というのは、過去におきましては中公審の答申は出ていなかったのです。これがこの四月十日に審議会から正式に答申が出た。これは審議会制度そのものから言いましても、それから政府が責任を持って環境庁としましても御糾問申し上げたといういきさつもございますから、これは三年有半かかりまして最近出てきたということは、今後の大きな進展になると私は思うのです。  それから、従来技術指針ということがいつも問題になってきた。それでこれの各省庁間、その他のコンセンサスは完全にできたというわけじゃございませんけれども、これをいつまでもそのままにしておいてはというわけで、過般環境庁が考えておる技術指針を発表しました。こういうふうに出してきた。それからOECDの五月七日、八日の閣僚レベルの会議におきましても、予見的環境政策につきまして宣言を採択しております。また勧告もあるということです。この勧告はもちろん法制度化だけとは限っておりません。御承知のように、もちろん法制度化も含みますし、また行政的な積み上げ方も含んでおる。それは各国々のいろいろな枠組みがあるだろうという前提でございますが、アセスメント制度の重要度というものは非常に高いものであるということはコンセンサスができておるというふうに私は見ております。それからこの前のNHKなどの世論調査なんかを見ましても、各地方自治団体の方も国民全体が守るような法制度化の要望が出ておるというような諸般の実情を考えますと、調整上いろいろな問題点は残っております、残ってはおりますけれども、大きく進展し得るものだ、またそういうふうにしなければならぬという考え方です。こういうようなことが午前中の田中官房長官なんかも発言する、こういうことになってきておる、こう思いますので、いろいろな調整関係につきましてはむずかしい問題もたくさんございますけれども、周囲の状態、それから答申が正式に出てきたというようなことを考えますと、私どもは一層努力しなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。
  206. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、環境庁はあくまでも法制化を求めておやりになっていく、こういうことでございますか。
  207. 上村千一郎

    上村国務大臣 中井委員も御承知だと思いますが、答申の内容は、速やかに法制化すべきという御答申になっております。また環境庁もずっとそういう考え方できておりますので、法制度化を目途に進めていくわけです。けれども調整がいっぱいありますから、それができなければアセスメントの制度は進展せんでもいいかというと、そういう考えではございません。各省に対しまして、環境庁が考えておる点につきまして相談がある際には、これについて率直に述べていく、こういう行政的な積み上げはもちろんやっていくわけでございますけれども考え方の基本は答申の線を踏んまえまして検討を進めていく、こういうことでございます。
  208. 中井洽

    ○中井委員 私どもから見ますと、過去の経過あるいはいまの環境庁が置かれている立場、こういったことから考えて、これからも法制化というのは大変むずかしいんじゃないかという感じがいたします。  そうしますと、あるいはまた環境庁のおっしゃるように、法制化に向かってアセス自体が進んでいくんだ、こういうお話でありますが、それはそのとおりで、技術的な手法等進歩していくのでしょうが、その間いろいろな公共事業あるいは政府のおやりになる事業地方自治体のおやりになる事業、その中でアセスメントが実施をされる。そのときに環境庁は幾ら各省あるいは各事業主との間にアセスメントの技法に関して関与していくんだ、環境庁が口を出していくんだ、こう言っても、国民あるいは住民の皆さんから見れば、環境庁が自民党の内部あるいは業界あるいは他の省庁、こういったものとの力関係で破れてアセスメント法案が出せなかった。結局環境庁関係なしに通産通産、建設は建設、電力は電力で自分らの都合のいいようにアセスメントをやるんじゃないか、こういった危惧というものを住民の人たちに植えつけた、あるいはふやした、あるいはぬぐい去れない状況であるというふうに考えるわけであります。  それと同時に、アセスメントの重要さというものはOECDの勧告等を待つまでもなく、これからますます出てくると私は考えるわけであります。日本においてそういうギャップをどういうふうに埋めてやっていくんだ、そのことを実は、心配するわけでございます。住民の側から見れば公害という問題あるいは環境という問題に関して環境庁が前面に出る。もうあたりまえであろうと思うのであります。法制化できない限り前面に出られないわけでありますが、そうすると、これからいろいろなアセスメントにおいて環境庁はどのように各省庁に対して関与していくのか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
  209. 上村千一郎

    上村国務大臣 政府がやります公共事業関係につきましてはアセスをやるものという閣議了解があることは御承知と思います。それから現実におきましても環境庁の方に意見を求めてくるわけです。そういう際に、環境庁としましては、いま考えておる線を申し上げるというわけです。しかし、いま中井委員がおっしゃるように、なかなか心配である、こういう点は確かだと思います。それから国民の方々も非常に心配されておる。これは私もそういうふうに率直に受けとめております。ここを何とかしなければいかぬ。これが答申の中にもすぐ法制化の線——そのギャップの場合に閣議決定をしてはどうだというような線が多少出ております。その間のギャップを埋めていこうという線でございましょう。いろいろな示唆に富む御意見が答申の中に出ております。これをしっかり踏まえてやっていくわけですが、いまのような御指摘は十分頭に入れまして、そして精力的に対処していきたい、こういうふうに思っております。
  210. 中井洽

    ○中井委員 それでは、またほかの問題に移らしていただきますが、いまちょっと閣議了解事項で云々というようなお話がございました。閣議了解事項、それはそれで結構でございますが、閣議了解事項で世の中うまくいけば、たとえば国鉄なんというのはとっくに再建されていなければいかぬ。あれは三回か四回閣議了解事項を変えて国鉄再建のために何かやっているようでございます。大変生意気なことでありますが、ぜひともこれの実現化あるいは環境影響評価の重大さにかんがみて内容の充実に御努力をいただきたいと思います。  もう一つは、先ほどからこれまた御議論ございました白書の問題でございます。先ほどの島本先生、いまそこにお座りでございますが、私は少し立場が違うかもしれません。白書というのはこんなもので、環境あるいは公害対策に関して、私はまあまあ日本環境庁あるいは委員会等、大変な時期から今日までよくやってこられた、あるいはまた、社会も公害というものに対する感覚というものを本当に身につけて、事前に公害問題が起こらないようにやってくるようになったという評価をいたしております。よく環境庁という名前にした。公害問題に対しては、たとえば先ほどの水俣病の問題あるいはきのう私どものところへ何か神通川のイタイイタイ病の関係で来ておられましたが、そういったいろいろな問題が残っております。私の郷里の四日市のぜんそくの患者さんとか残ってはおりますが、これはこれで一つの対処の仕方というものが明確に打ち出されてきておる。それを着実におやりをいただく、こういうことであろうと思います。これから新しくびっくりするような公害問題とかいうものは出てこない。いま出ておるような問題を一つ一つ対処していけばいいのだと考えるわけであります。  それと同時に、環境庁は、それであるがゆえにこれからの環境をどうよく守っていくか、あるいはよりよい環境とは何か、ここに書かれているようなことについて大いにがんばっていただかなければならぬと思うわけであります。しかし問題は、その立場、立場あるいは世代、世代で、環境というものに対する感覚が違うと思うわけであります。たとえば都会の者と田舎の者では環境に対する発想というものが全然違うわけでございます。たとえばここに「快適な環境づくり」というような中で歴史的環境の保全というものをうたわれているわけでございます。都会の方から見れば歴史を訪ねてとか、休日になったらなんだかんだということでいいけれども、そこに住んでおる者にとっては大変な問題とか、そういう調整があろうか、あるいは判断があろうかと思うのであります。そういった判断調整というものを環境庁はどこに基準を置いてやっていかれるのか、このことをお尋ねをしたいと思うのであります。  先ほどのアセスの場合もそうだと思うのであります。一つの物事をやる、あるいは変えていく、そういったときに環境を守る、あるいはよりよい環境にしていく基準というものをどういう形でお考えになっておるのか。あるいはどこにどういう形でおつくりになろうとされておるのか。大変抽象的で恐縮でありますが、お答えをいただきたいと思います。
  211. 上村千一郎

    上村国務大臣 重要な御指摘だと思います。この前、OECD閣僚レベルの会議に出まして私も演説をやったわけでございますが、趣旨はこの前ここで御報告申し上げたと思います。中井委員も御承知だし、私もすぐ近くですから承知しておりますが、四日市のあのぜんそく病、あれは危機的な状況は私は脱したと思うのです。あとに残っていることは確かだけれども、あれで地元の人も県も国も必死になったのですからね。そういうことはある。これはOECDの五十一年度の環境レビューもこれを認めておるわけですね。  それで、日本環境行政というものは公害を中心にして発足したが、公害はもう実に危機的な爆発的な公害の現象があった。それがとにかく危機的な状態は一応脱却しつつある。しかし、今度は新しい公害の複雑化した形態になってきた。たとえば生活公害なりその他いろいろな公害が出てきた。こういう複雑で幅広いものになってきた。一方また自然環境にしましても、日本は土地は狭いし、そこへ人口はふえてくる、住む土地は少ない。これをどういうふうにして国民が経済的な豊かさを持つかということになると、開発行為というものはどうしても出てくる。それと自然環境をどう保全させるかという問題が出てくる。そこへもってきてアメニティーの問題が出てきた。それでこれは日本の場合でも、いま中井委員が御指摘でございましたが、住生活からいろいろな要望が出てくる。そうすると、日照権の問題でも裁判が日照権を権利として認める、あるいは眺望権の問題が出てくる、近隣騒音が出てくるというふうに、統一せずにいろいろと判断が出てくるわけですね。それで環境問題は公害を原点としておるから、もちろんこれは取っ組まなければならぬ、それから自然環境保全も取っ組まなければならぬ、それからアメニティーの問題も取っ組まなければならぬ。しかし、現在の段階としては、これを全部包摂したところの環境保全というものの理念なり哲学というものを世界的にこの場でいろいろ討議する必要がありはせぬかという演説もやったわけですね。  それから、いま御指摘のことはよくわかりますし、さあここが、はっきりした統一したものがまだできていないと思うのです。それで専門家の御参集を賜りまして、環境問題懇話会というものを発足しまして、この五月二十四日でございますか第一回会合をやりました。いま委員のおっしゃるような問題もどんどん出てまいっております。これで二回、三回と続けまして、そして問題点を煮詰め、掘り下げていこうじゃないか、こういうふうになっております。  ただ、この環境問題懇話会は、結論を出すというよりも、とにかくこういう転換期にあってむずかしいのだから、大いにお考えになっておることをおっしゃっていただいて、まとまるものはまとまって結構、無理にまとめる必要はない。しかし、われわれ行政面としてはこれを謙虚に受け入れて、そして日本環境行政の前進、充実のためにやろうというわけで、いまその問題も大きな中心的な一つ問題点になっておるわけでございます。御指摘のようなことは、私どももよく頭に入れて対処していきたい、こう思っております。
  212. 中井洽

    ○中井委員 お話、私はもうそのとおりで結構だと思うのでありますが、たとえば先ほどお話がございました四日市の公害とか水俣病とか、こういう化学の問題は、おっしゃるようにどんどんきているのだ、問題を残しながらもどんどんやり方もわかってきていると思うのです。先ほどから申し上げたように、判断の基準というものが時代時代によって、あるいは人、人によって違うものを、どういう基準をつくって環境庁はやっていこうとしているのか、ここのところについてどなたかからお答えをいただきたいと思います。  ちょっとむずかしいと思うので、これにこだわるわけじゃないのですが、たとえばここに文化保護法なんという法律があります。身近な例を引くのが一番でありますが、過日も私の郷里である山林を所有者が寄付をしてその地区の運動場にしよう、こういうことでやり始めたら、たまたまそこが中世の城郭跡であったわけであります。その小さな町で中世の城郭跡地として県の条例に指定されているのが八十何カ所あるのであります。何があるのだと言ったら水があって、専門家が見たら確かに城郭跡なんです。絶対運動場にしてはなりません、こう言うわけであります。持っている人は持っているだけで、私持っておってもしようがないし、地区のためにお使いください。掘って運動場にしたらいいじゃないかとぼくらは思うわけでありますが、しかし、文化財から見たらそれは絶対歴史的にだめだ、現場をいじったらだめだ、こういう形でいじれない、こういうことであります。そうすると、そういう問題がこれからいっぱい出てくる。太安萬侶さんの墓がどこやらから出てきたわけでありますが、そんなこと言ったら奈良県みたいなところだれも住めなくなっちゃう、何もできなくなっちゃう。そういうところを、たとえば本当に東京なら東京というところに関しては、もう自然というものについては目をつぶってどんどんやっていくんだという割り切り方をするのかあるいは日本全体で見るのか非常にむずかしい問題があろうと思うのであります。そういうところを一体どこで議論、大臣はそういう諮問機関、大臣の私的なあれで議論してもらうんだということでありますが、これからの行政判断の中でどこに基準を求めていくのかあるいはどういうところで基準をつくっていくんだ、こういったところをお考えでございましたらお答えをいただきたいと思います。
  213. 上村千一郎

    上村国務大臣 具体的な問題につきましては局長から御説明申し上げますが、いま中井委員がおっしゃったようなふうに私感じまして、公害関係の問題は、もちろん公害対策基本法第九条第三項にございます。それでこれにはいろいろありますが、現実には国立公害研究所というのが環境庁としましては一番もとになる。それでこれはどうしても世界的レベルのものに持っていかなければいかぬというわけで、十二月就任早々国立公害研究所へ行きまして幹部の方と相談いたしました。そしてこちらの考え方を話しました。そうしたら、それはそうだ。というのは、非常に暴露実験なんかをやってきますと長い。だけれども行政をやってきますと、短兵急みたいですけれども、余り長くかかる結論意見だとちょっとこちらが間に合わぬですね。そういうお話をしたのです。そのためにいろんな施設、予算、人員のことがあったらおっしゃってくださいということでいろいろ懇談しまして、五十四年度につきましては営繕費を含めまして約七十九億国立公害研究所の方にあれしました。それから人員も約二十名増員ということでやって、この前五周年記念をやりましたけれども、とにかくそういう科学的知見というものが一つの中心的な判断になるんだから、そのためにはひとつわれわれの考え方もよく合うようにしてほしい。合うというのは、要するに結論といいますか、判断といいますか、そういう判断ができるだけ早く出てくるようにお願いしたいというようなことを言ったようなわけでございます。  他につきましては、局長から説明させます。
  214. 上村一

    上村政府委員 いま御指摘になりました点、非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、環境白書でも事例を紹介するにとどめざるを得なかったわけでございます。特にその歴史的環境にいたしましても、あるいは町並み景観の保全にいたしましても、そこに現実に人々が生活をしておるわけでございますから、その絡みをどう考えるかというのは非常にむずかしい。したがいまして、快適な環境づくりについては、その地域における住民活動というものを中心に据えながら国なり自治体が応援をしていくという体制をとらざるを得ないのじゃないかというのがことしの環境白書で書いた、非常に抽象的な表現でございますけれども、考えでございます。  ただ、こういった問題につきましては、ことに人々の価値観と申しますか物の見方といいますか、非常に多様になっておりますので、幸い五十四年度予算にも計上いたしましたので、一体望ましい環境像というのはいかなるものであるかということについての意識調査というものをやってみたいというように考えておるわけでございまして、そういった結果をもとにしながら、なかなかつくり切れる基準ではないかもわかりませんけれども、人々が考えていただく素材というものを提供するような努力を積み重ねてまいりたいというように思っております。
  215. 中井洽

    ○中井委員 本当に抽象的な質問でお答えにくかったと思うので申しわけないわけでありますが、たとえば道路一本つくるにしても、東京でつくるあるいは田舎の方でつくるというときに騒音と便利さというもののどちらをとるか、どちらがどれだけ犠牲にならなければならないんだ、こういう問題はそれぞれ違うと思うのであります。皆さん方は行政、都道府県あるいは市町村もそれぞれ行政でいろいろそういう問題に悩んでいるわけであります。日本の場合には情報が発達いたしておりますし、知的水準もかなり同じようなレベルでいろいろな方がおられるわけです。私ども田舎の方に住まいをいたしておりますと、一番困るのは、地域の人たちがニュースとして受け取る大半が私らから言わすと、それは東京のことだよ、大都会のことだよ、こう言うのでありますが、そうはいかずにいろいろの形でやっていく。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 私どもから免れば、少々これくらいがまんすればいいのになという問題がたくさんあるわけであります。そこのところの基準、水準というものをどういうふうにつくっていくのかという自分自身の悩みもあるわけでございます。本来であるならば、アセスメントという形ですべてのものがやられていけばいいわけでしょうが、白書の中に見られるこれからの環境行政の発想で、そういった基準づくりというのは私は非常に重要な気がいたします。ひとつ大いに議論をしていただいて、あるいはまたその議論をひとつ大いに公開をしていただいて、各地各人の意見というものが反映をされるようにしていただきたい。  私見で大変恐縮でありますが、何かといいますと東京にお住まいの学者さんばかりの意見がいろいろな会に出てまいる。過日も私は国鉄の問題で委員会で申し上げたのでありますが、国鉄のローカル線対策ということで四つくらいの案が出てまいったわけであります。それはどこから出したんだと言ったら、国鉄の運輸審議委員の中のローカル線対策の人たちが議論してお決めになった。その人たちをずっと見てみますと、東京にお住まいでローカル線なんて乗ったことのない人ばかりでそういうことを決められておる。別に東京が悪いということではなしに、偏っておると私は思うわけであります。そういった点も十分加味してひとつ基準づくりというものを大いにがんばっていただきたいと思う。何か大変変な、説教みたいな質問になってしまいましてまことに申しわけございません。時間でございますので、終わらしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  216. 木原実

    木原委員長 工藤晃君。
  217. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ただいま社会労働委員会では薬事法それから医薬品副作用による被害の救済基金法の二法が盛んに審議されているわけでございます。その端緒は、スモンという大きな薬害が発生したということが一つの大きな誘因になってそういう法律がつくられようとしているわけでございます。言えば、犠牲者が出なければこういう問題もなかなか改善されていかないという行政上の一つの欠点を明らかにしている問題であろうというふうにとらえているわけでございます。これも大きな目で見れば一つの公害でございます。そういう意味を含めて、今後の環境行政の中でいろいろ問題があることは私もよく存じておりますけれども、きょうはそういう意味合いからも、特に食品公害、すなわち健康被害に関与する慢性的化学的汚染物質についてただしてみたい、こう思うわけでございます。特に農薬を中心にして質疑をさせていただきたいと思います。  まず最初に、朝日新聞の五月二十九日の「論壇」のところに、日本農業化学研究所所長の福本敬介先生が投稿されている記事がございます。これは私は大変感慨深く読ませていただきましたので、多少蛇足になるかもしれませんけれども、一応これを読んで、その上でこの問題に関連しながら質疑をさせていただければいいのじゃないかと思いますので、多分お目に触れた方もいらっしゃると思いますが、読ませていただきます。  公害の恐ろしさを過大評価しても過小評価してもならない。正当に評価する心構えが大切ではあるが、わたしたち庶民の立場からこの問題を見ると、公害への不安と行政に対する不信感は、いまやその極に達している。  農薬禍の問題は、これまで国会の場でも、国民の健康に重大な配慮をする国会議員によって、くり返し追及されてきた。これに対し政府は、農薬の安全指導員を配置し安全使用推進対策事業を展開しているとか、許容量についても、小動物に一生涯食べさせても安全な量であるとか、最大安全量、最大の無作用量などと、「安全ずくめ」の答弁で追及の矛先をかわしてきた。  しかし農民は、当然のことだが、防除効果をあげて市場出荷を急ぐ作物への薬害の配慮はしても、人体への影響までは意識しない。また、規制を守れば収穫が犠牲になるような基準は、農民は守らないであろう。そして、農薬の濃度を二、三倍に強めたり、異質の毒性をもつ農薬を、二種類あるいは三種類混合して散布する程度は、いまや普通といってよい。  危険防止のための安全規制が守られない——これほど危険なことがあろうか。この不安から、全国のそ菜団地を中心として、営農指導員五百人を対象にアンケートをとってみた。その結果、「農薬の安全使用基準は守られていない」が九一%、「農薬の残留調査は行っていない」一〇〇%で、これではまさに危険な食品のはんらんというほかない。  失明を招くべーチェット病は、原因不明の“ナゾの病気”とされながら、すでに患者は全国に一万三千人とも二万人ともいわれる。しかも年齢的にみると、二十代後半から三十代の男性に発病が多く、一家の柱が突然失明してしまうため、経済的にも打撃が大きく、「最も悲惨な病気」といわれている。  厚生省べーチェット病調査研究班がまとめた五十二年度の報告によると、環境汚染物質との関連を調べている石川哲・北里大学医学部教授(眼科)グループは、「べーチェット病は農薬の有機塩素、有機りん、銅剤の複合による慢性中毒の疑いが強い」と報告している。まさに憂慮していた”新しい恐怖”の襲来である。  また「許容量」の問題であるが、発生遺伝学、生物学、生態学者で、有名なサイレント・スプリングの著者レーチェル・カーソンは、「これならばよい、という量は実際にはあり得ないのだ」と断定し、現代社会におどる科学者や行政官たちのいい加減さを、ずばりついている。  国立がんセンターの調査によると、最近小児がんが多発し、加えて精薄児、一つ目、手足の指の曲がった子、鼻のない子、肛門(こうもん)のない子、心臓奇形などが異常にふえ続け、こうした異常児の後期死産率は、二十年前の十一倍強という驚くべき増加ぶりという。催奇性をもつ農薬の、兄事な慢性的遺伝障害の実証である。  毒物は必ずしも速効的であることを要しない。あらゆる公害の経過が証明するように、われわれが最も恐れ、警戒しなければならないのは、日に見えぬかたちでの少量ずつの、長期的効果であって、国民全体の生命をおびやかし、健康を破壊する具体的な可能性の存在である。  政府当局がいままで強調してきた農薬の安全使用基準も、許容量の規制も、もはや食品公害の安全弁とはなり得ない。なぜならば、それは農薬単体の小動物に対する急性反応だけの根拠にすぎず、毒性の相乗作用、慢性的障害、遺伝的障害という最大の公害原因が、完全にタナ上げされたままだからである。  食品の安全性を確保し、国民の健康を守る姿勢を貫くことが、行政に課せられた至上命題のはずである。  いまのままでは断じていけない。許容量の概念が、全体としてきびしく吟味され、守られていない農薬の安全使用基準に目をつぶることな  く、農薬行政、食品行政の基準規制を根本から  洗い直さない限り、民族の破滅につながる大惨  禍が、時間の経過とともに襲いかかってくるの  は確実である。こういうふうな投稿がなされておりまして、まさに私はこの危険性をひしひしと感ずるわけでございます。もちろんこれを一挙にすべてなくせということは実際面ではむずかしいと思います。しかしながら、こういう危険性を前途に注目しながら、現在の環境行政はどうあるべきか、あるいはまた今後どうしていかなければならないか、こういう問題を含めて環境庁あるいは農林省あるいは厚生省、いろいろな省の責任ある姿勢を問うてみたい、これがきょうの質疑の主な内容でございます。  続きましては、まず第一番に、そういう事柄を含めて、経口的に入ってまいります慢性的化学的汚染物質の対策としてはいろいろあろうと思いますが、現在環境庁としてはどのような対応をなさっているのか、また今後そういう問題についてどのような対応をしていこうというふうにお考えになっていらっしゃるか、簡単で結構でございますから、まず第一番に環境庁から見解をお聞きしたいと思います。
  218. 馬場道夫

    馬場政府委員 農薬問題は、ただいま先生から御指摘のございましたように大変重要な問題であります。農薬につきましては、御承知のように農林水産大臣の登録がないと販売できないという仕組みになっておるわけでございまして、その場合に、環境汚染を防止する観点から、その登録を保留するかどうかという基準を環境庁の方でやっておるわけでございます。  そこで、環境庁といたしましては、農薬の農作物中への残留、土壌中への残留、それから水産被害を防止するための農薬登録の保留基準を設定をしてきておるわけでございます。  まず第一に、農作物への残留問題でございますが、急性善性、慢性毒性あるいは次の世代に及ぼします影響に関する試験等の毒性の試験成績、農薬の使用対象となります作物の残留性に関します試験成績等をもとに全農薬数、これは有効成分数にいたしますと約三百二十の農薬でございますが、そのうち百十三農薬につきまして基準を設定をいたしておるわけでございます。慢性毒性試験を実施をいたしまして、安全率を百、物によりましては二百倍くらい見ておるわけですが、そういうことによりまして基準を設定いたしまして告示をいたしておるわけでございます。  そのほかに、八十の農薬につきまして行政的な指導基準でございます暫定基準を現在定めてございます。これは三カ月の波及性の試験を行いまして、かなり高い安全率、約一千倍程度の安全率を見ておるわけでございます。  そういうことによってやっておるわけですが、これらの措置によりまして、汚染のおそれがきわめて小さいと考えられる農薬を除きまして、ほとんどの農薬につきましては安全性が評価されまして、何らかの基準が定められておるということでございますが、今後とも新たな知見の集積に努めまして、必要に応じて基準の見直し等も検討することといたしておる次第でございます。  それから、暫定基準が決められております農薬につきましても、逐次登録保留基準を設定するための作業を進めておるところでございます。  それから、二番目の土壌残留性の問題でございますが、環境庁の告示によりまして、土壌残留性に係ります試験方法に基づきまして、農薬の成分物質等の土壌中での半減期が一年以上であるというような場合とか、登録を保留するということによりまして土壌残留性の高い農薬の環境汚染の防止を図っておるところでございます。  それから、水産の被害に関する問題でございますが、現行基準ではコイを用いまして、その生物実験によりましてコイに対する毒性の高い農薬につきましては水田使用の登録を認めないというような措置をとっておるわけでございますが、魚の種類によりましては、農薬に対する感受性が異なるあるいは低濃度でも長期間の摂食によりまして魚類に悪影響を及ぼすというような問題もございますので、現在、基準の見直しを行うということで、その他の魚類、ボラでありますとか、ブリでありますとか、ニジマスとか、アユとか、そういうような魚類に対します毒性試験を実施いたしておるところでございます。  それから、先生先ほどお触れになりました複合汚染と申しますか、相乗の毒性作用という問題が大変大きな問題でございますし、またこれからいろいろ検討しなければならぬ問題でございますが、現段階では必ずしも学問的に十分に解明されているということではない状況でございます。そういう意味で、環境庁といたしましては、四十八年から農薬の相乗毒性検定方法確立調査ということで調査検討を行っておる段階でございまして、そういうようなことによりまして、さらに知見の集積に努めて、農薬によります環境汚染の防止につきまして最大の努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  219. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) この分野においては、いまの回答の中で、要点としては、毒物の相乗効果についての検討はいま調査している段階であって、もちろんそれに対しての適正な基準とか、一切そういう行政上の措置は考えられていない、こういう点に一つ問題があります。  それからもう一点は、先ほどから指摘されたように、二百海里を含めて、水産関係のいわゆる魚介類に対する問題が特に今後大事な問題になってこようというふうな感じがいたします。特に天然資源をそのままとってくるのじゃなくて、養殖をし、そういうもので水産資源を補っていく、こういう形が今後とも盛んに行われてくるだろうと思いますので、そういう意味においては、そういう基準というものを一日も早く厳正につくっていただき、それが守られるような努力をしていただかなければならない問題であろう、こういうふうにとらえております。  それで、今度一応全体の網をかぶせて、そういう問題についての現状認識することから質問に入らせていただきたいと思いますが、次は、農林省においでいただいて、農林省から、いま環境庁がおっしゃったような基準にのっとって実際はどのような対応をし、対策をされ、そしてチェックをされているか、そういう部分についてお答えをいただきたいと思います。
  220. 栗田年代

    ○栗田説明員 ただいま先生が御指摘のことでございますが、環境庁等でいろんな保留基準その他を御設定願っているわけでございますが、わが方は農薬取締法に基づきまして農薬の登録制度を行っております。登録した農薬につきまして、今度は安全な使い方を指導してまいります。  最後に、御質問のチェックをどうしているかということについてでございますが、農林水産省といたしましては、昭和四十四年度から都道府県におきまする農薬の残留調査体制を整備するということにいたしまして、農薬の残留分析機械の設置、それから農薬の分析担当者の研修、農薬残留安全追跡調査などにつきまして助成してまいっております。またさらに昭和五十一年度からは生鮮農産物農薬安全使用推進対策事業というものを実施いたしまして、生鮮農産物等の産地に農業協同組合の職員等約六千名を農薬安全使用指導員として委嘱いたし、濃密な指導の徹底と、それから農薬の残留調査を行わせているところでございますが、先生御指摘のとおり、この問題は非常に重要と思いますので、今後ともこれらの施策によりまして農薬安全使用の徹底を一層図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  221. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 確かに制度とかあるいはそれに対応する行政上の処置はとられているんでしょうけれども、ここにも、アンケートをとってみたところが、農薬の安全使用基準は守られていないというのが九一%もあるとか、あるいは農薬の残留調査を行っていないというのが一〇〇%あるとかというようなデータが出てまいりますと、こういうものをやっておりますと言うだけでは十分安全の確保は保てない、こう思います。そういう中で、特にこういう指摘のあるようなところは、いまからも厳重にやっていくんだというような前向きの御答弁がございました。ぜひここだけの答弁でなくて実行に移していただきたい。ある意味においては、実行するということは大変なことだと思います。思いますが、国民の健康を守るという立場から、ぜひともこれはそういう面の今後の努力を私は大いに期待したい、またやっていただかなければならない、こういうふうに考えております。  それに関連いたしまして、簡単なことでございますが、一つここで具体的な大事な提案をしたいと思うのです。ということは、いかに安全基準を決め、使用基準を決めてそれを実行するにしても、要は生産者がそれを守るか守らないか、あるいはそれに対する知識が果たしてどこまであるか、そういう普及効果がどこまで上がっているのか。問題は、要するにそういうものを使用してつくる生産者の意識の問題が相当大きく関与してまいろうと思います。  それからまたもう一点は、要するにそういう伝達手段、PR、こういうことができるだけ的確に行われていく必要があると思うのです。たとえどんなにりっぱな基準を設け、実行いたしますと言ったところで、それが末端にまで正しく伝達されなければ、またそれを実行されなければ、してもしなくても同じという結果になります。  こういう点で、実は私が社会労働委員会においても指摘いたしましたことと同じことがやはり言えるんじゃないかと思います。と申しますのは、薬事法の改正で、使用目的とか使用上の注意を書かなければならない。こういう点を法制化するということで、大変厳しく法律はつくられようとしているわけでございますけれども、実際には入っている使用目的とか使用基準というのは、こんな小さい紙に全く何が書いてあるんだかわからない。虫めがねで大きく拡大して読まなければ字が読めない程度のものが入っているのが現状なんです。これは読んでもらうために必要なんじゃない、入れなければしょうがないから入れているだけで、本来は読んでもらいたくないというのが製造メーカーの考え方であろうというふうに推測されるわけですね。ですから、逆にどんなりっぱなものをつくっても、それが読まれなければ知らないのと同じだし、やらないのと同じですね。それと同じように、そういう表示をしていくあるいは注意を喚起する場合に、その手段が大変大きく効果に影響すると思います。  そういう意味において、やはりここにも一例を提示いたしますが、農薬の家庭用のものだと思うのですけれども、使用上の注意だとか書いてあるのをめがねかけて読みますが、ラベルをよく読んでから御使用ください、こう書いてある。字がこんな小さい、読めやしない。ましてその中身においてはなおさら読めない。こういうものはただ書いてあればいいというだけで皆さん方が許可しているとすれば——農林省、ちょっと聞いてなさい。これは大事なことだと思うのですよ。こういうものは、ただわれわれは指示いたしました、こうしました、ああしましたと言っただけでは、実際には効果が上がっていないのじゃないか、こう思います。ですから、やはりこういう必要な表示はできるだけわかりやすく、そして大きな字で目につきやすく、使用者ができるだけそれを読んでから使用し得るような、そういうふうな形の表示が最も必要だろう。簡単なことですけれども、これを実行させる面においては重要なキーになると思います。そういうことで、ここに一例をお見せいたしましたのも、そういうことが今後とも行政上重要な一つの指導になろうかと思いますので、皆さん方に御披露を申し上げ、そういう点の改善方を強く要望いたしたいと思いますが、御回答いただきます。
  222. 栗田年代

    ○栗田説明員 ただいま御指摘の点は、非常に重要なポイントだと私も考えております。いま御指摘のように、農薬の袋あるいはびんに書いてございます、あるいは添付してございます表示の小さいことは本当にそのとおりでございまして、従来から字をなるべく大きくしよう、あるいはどうしても書けないときは別紙にいろいろ説明を添付するとかという指導を、農薬工業会を通じまして業界筋に指導を行ってきたわけでございますが、先生御指摘のように、これはなお不十分な点があるというふうにわれわれも認識しておる次第でございます。したがいまして、色刷り、色をうまく組み合わせるとか、・あるいは活字の書体をうまくゴチックと普通の明朝と組み合わせてわかりやすくするとか、あるいは活字の大小をうまく利用するとかなどいろいろ工夫をいたしまして、先生御指摘のように、読みやすく理解しやすく、そのようにやってまいりたい。これは今後も業界をそういう面で指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  223. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もう一つ、たとえば袋の大きさに対してそんなに大きな字で書けないじゃないか、こういうこともございます。けれども、これじゃ必要以上に小さ過ぎるわけです。書けないのじゃなくて必要以上に小さく書いておる。これがいまの流通の過程における公害の意識の低さ、重大さを認識しない業者の判断だと思うのです。公的責任あるいは社会的責任を自分たちがどの程度に認識しておるかということは、この字の小ささでわかると私は思う。そういう意味においては、包装において字が読めない程度にしか書けないというなら包装を大きくすればいいですね。何もこの包装に限らない。もっと大きな包装を使ってそこにりっぱに読めるように指導することも一つの方法ですから、これは具体的に皆さん方に申し上げたい、こう思います。  これは、ただ一例にすぎませんけれども、伝達する手段、方法すら皆さん方が真剣に考えておられたら、こういう指導はいまここで指摘されるまでもなくやっておらなければならないはずです。ですから、そういう意味において、他のいろいろな行政指導においてもまだまだ努力しなければならぬ点が多々あるということが類推されるわけですから、できるだけ真剣にやっていただかなければならない、こう思います。  次に、時間がございませんので、厚生省にお聞きいたしますが、要するに、農産物という概念から離れまして、今度は食品として口に入れる部分から厚生省の所管になるということですので、食品としてお聞きいたしますけれども、残留農薬だとかあるいは食品添加物、こういうものが人体に入ってきてどんなふうに被害をもたらすかという慢性毒性についてはどのような評価をされておるのか、あるいは現在どのように対応されているのか、その点について簡単にお聞きをいたしたいと思います。
  224. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物並びに残留農薬の両方につきましては、食品衛生法第七条による規格、基準という立場から、食品添加物等は指定いたしております。指定に当たりましては、慢性毒性等の一般毒性、特殊毒性等の二つの試験の結果、並びに使用の実態、こうしたものを勘案して十分な安全性、いわゆる無作用領域におきまして指定する形をとっております。
  225. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) そういう手段をおとりになっていらっしゃいますけれども、それで問題はどの程度実行されておるのか。実行手段についても簡単にお答えをいただきたい。
  226. 藤井正美

    ○藤井説明員 現在、食品添加物につきましては、三百三十四品目の指定成分を決めております。しかし、この食品添加物につきましては、新しい時代とともに試験法、いわゆる毒性の評価という技術が進歩いたしました関係上、再評価するという形を昭和三十七年からとっておりまして、現在まで約五十品目について再評価を終わっておる次第でございます。  また、残留農薬につきましては、いわゆる食品として出回ったものにつきまして、食品衛生法第七条に基づきます規格、基準に適合しておるかどうか、自治体におきまして食品監視という立場から物質を収去していろいろと試験をやっている結果でございます。年間約一千点の品目について試験が行われております。その結果、残留農薬等について適合するものが九九%でございます。
  227. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 問題はこれだけ多様化された食品で、年間一千点について検査をして、果たしてそれで、合格が九九%、あと一%は不合格だ、こういうデーターを持って健康の安全が十分守られているというふうには考えられない点が一点ございます。もちろん、これは予算の関係その他いろいろありますから、品目に対してすべてやっていけば一番いいんでしょうけれども、そうはいかないにしても、これだけの食品と言われておるものの中から年間一千件を選び出してやって、果たしてこれで十分かどうかということについては、先ほど申し上げましたように大変不安が残るわけでございます。  もう一点は、この食品添加物についてただいま再評価したのが約五十品目ある、こういうお話でございますけれども、五十品目の中で適当でなかったものはどれだけあったのかあるいはどうして適当でなかったのか、そういう点について簡単にお答えを願いたいと思います。
  228. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物の点検についてもう少しお答えさせていただきたいと思います。  現在、食品添加物として指定しておりますのは三百三十四品目でございますが、この中には着香料のようにきわめてわずかしか使わないもの、あるいはまたWHO、世界農業機関等で安全性について評価が十分に行われているもの、あるいはまたアミノ酸のように食品等に由来するものが相当数ございまして、約五十品目、いわゆる保存剤であるとか防ばい剤であるとか、こういものが食品添加物の安全性、合成化学品の安全性という形で問題の対象になるのではないかと考えております。  また、五十品目につきまして大体再評価を全部終わっておりますので、安全性についての確認というのが現在のところ済んでいるというふうに考えている次第でございます。  それから、先生御質問の再評価の結果どういうものが挙がってきたかという点でございますけれども、その点につきましてはAF2が一つの事例として挙げられるかと思います。AF2はネズミにおける実験でございますが、前胃にがんが発生する、五十匹のうちの三匹でございますけれども、対象に比べて、対象がゼロに対して三匹の発生という形から、疑惑という点におきまして禁止、指定を取り消した次第でございます。
  229. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) AF2は豆腐の加工に使われるわけですね。たとえば豆腐と言えば大変日本人が好んで食べる食品であるし、最近の何かの新聞には、脳の動脈硬化に食物性たん白が非常に効くのだから豆腐が好きな人はいいんだとかというようなことが言われている。こういう卑近な食品にこういうふうな発がん性のある物質が発見できたということは、大変幸せなことだというふうに私は思うのですね。やはり再評価した効果があった。これをしないでいたら、やはりそういう発がん性を持った物質が永久に今後とも使用されていくという懸念があるし、常に安全であるということは期待できない。少なくとも現段階における科学的解明によるベストを尽くして安全であると言われるだけであって、本当の安全というものからほど遠いものであろうと思いますから、常にこの再評価作業というのは今後とも——現在安全であってもあす安全という保証は逆にないわけですから、どうかひとつこういう問題、鋭意努力を重ねていただきたいと思います。  同時に、これはお願いをしておきたいのですが、そういう意味から、いま使われている食品添加物が危険だから安全なものに切りかえろという意味でなく、安全性というものが現在の科学において再確認できたものを、できるだけそういう食品添加物に使わしていくという指導が必要ではないか。たとえばAでもBでもいい、どちらを使ってもいいという場合には、できるだけより安全なものを選ばしていくというのがやはり大事な作業だと思います。そういう意味で、現在食品添加物に対してこういう再評価したものをどのように指導し、またどのようにそういうものへの転向をさせようとしておられるのか、そういう点の作業を聞かしていただきたいと思います。
  230. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物につきましては、私ども使用を奨励しているわけではございません。食品そのものが流通等において迅速に渡るならば、添加物は使わない方が妥当であるという考え方をとっているわけでございます。それならば、いわゆるこうした技術革新による、あるいは食品の流通というものが非常に盛んになってまいりました場合に必要な保存剤あるいは殺菌剤、こうしたものの食品添加物に何を選ぶべきかという点に関しましては、一応私どもが指定いたしております添加物については、安全性については十分確認している所存でございますけれども、こうした再評価の結果、AF2のようなものが出てまいりました事例にかんがみ、食品添加物が実際に使われている状況というものを判断いたしまして、使用のきわめて少ないものあるいは全然使われていないものの指定を取り消し、再評価が済んだ安全なものについてそういうものが残るような努力をしているところでございます。
  231. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私はそういうパッシブなやり方じゃなく安全性が再確認できたものをできるだけ市場で使わしていく、そういう指導をしてくださいというお願いをしているのです。だから、そこのところは改めて質問いたしますが、そういうふうな前向きの指導をしてもらいたいということに対する見解を伺いたい、こう思います。
  232. 藤井正美

    ○藤井説明員 食品添加物が必要な食品に対しましては、先生御指摘のように指導していきたい、こういうふうに考えます。
  233. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 時間が迫ってまいりましたので、最後に私はここで皆さんと一緒にお考えをいただきたい今後の問題について問題を提起したいと思います。  貿易という背景から考えて、今後日本の食糧も輸入に頼る部分が非常にふえてまいろう、こう思うわけです。同時に、現在でも食糧に関しては約半分は輸入されているというふうなことも言われております。そういう中で、いかに国内において基準を設け、それを実行することによって公害防止を図っていきましても、食糧というのが日本の国内だけで生産される場合には、それによってある程度の効果は期待できますけれども、しかし、海外からそういう食品を輸入して、そして使用するということになりますと、ただ日本国内だけの問題ではなく、国際的にこの安全というものをどう確保するか、こういうことについて真剣に考えなければならない時代に来ているのじゃないか、こう思うわけです。そういうことについて、特に食肉などについては今後大いに輸入を促進してくれという世界的要望もございますし、また日本も貿易上どうしてもそういう食料品の輸入については積極的姿勢を示さなければならない部分もありましょうから、そういうことについては十分ひとつ日本民族の健康の安全をどう守るか、こういう見地からこの問題に取り組む必要が出てまいろう。特にそういう問題については、国際間のいろいろな協定を結んでもなおかつ十分であるとは言えないですから、そういうものができていない現状においては、より積極的に日本一つの消費国として消費者の立場から安全を守ってもらうような呼びかけを生産国へ向けてしなければならぬ。そういうことについての今後の政府の見解はどのように考えていらっしゃるか、ひとつここでお聞かせを願えればありがたい、こう思います。
  234. 七野護

    ○七野説明員 輸入食品に関しましては、先生御指摘のとおりでございます。ちなみに先生御案内のように、昭和五十二年の統計をとってみますと、輸入食品の輸入件数は約三十一万件、非常に大きな件数でございまして、輸入数量、これはトン数でいきますと約二千三百三十万トンという膨大な量の食糧を日本は輸入しておる。五十二年度でいきますと、全消費量の約四割に当たる食糧を輸入しておるということでございます。そこで、国際貿易、食品の輸入が年々ふえておりますし、今後とも増加の傾向は火を見るより明らかであろう、かように考えております。  そこで、国際間の規格の問題でございます。これについてどう対応しているかということであろうかと思いますが、先生御案内のように、国際的にはFAO、WHO、これが合同で統一的な規格をつくろうということになりまして、昭和三十二年にFAO、WHOの合同食品規格委員会が設立されてございます。そこで日本は昭和四十一年に同委員会に加盟いたしてございまして、以来この合同食品規格委員会、総会であるとか各種部会に代表を送りまして、これに対応してきてございます。特に先ほど先生御指摘の残留農薬につきましても、この委員会の中に残留農薬部会がございますし、そのほか添加物部会もございます。その他もろもろの部会がございますので、そういう部会に代表を送りまして参画いたしておるわけでございます。当然、今後この計画に積極的に参加いたしまして、先生御指摘のように、わが国の食品衛生行政にこの国際的な規格を反映させる、国際的な情勢を的確に把握いたしまして、国内の規格、基準の導入を図る、そういうことで国際的な対応をしていきたい、かように考えております。
  235. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 時間が迫ってまいりました。  最後に、五十四年四月二十七日の内閣総理大臣大平さんの衆議院議長の灘尾さんあての内閣衆質八七第二三号、これは衆議院議員の瀬野栄次郎さんの質問に対して答えていらっしゃる資料がございます。  それを簡単に読みますと、「国内における販売が禁止されている農薬の輸出は、輸入国側の食糧増産等の必要性に応じて行われるものと考えられるが、これら農薬の輸出は「公害の輸出」という批難を受けるおそれもあるところから、昭和四十九年三月、外交ルートを通じて関係輸入国政府に対し、我が国においてこれら農薬の販売が禁止されていること等を説明した。更に、輸出業者に対しては、こうした事情を相手方に説明の上商談を行うこと及び輸出に当たっては輸入国政府が当該農薬の輸入を認めていることを示す書類を添付して事前に通商産業省の確認を受けるよう指導してきており、今後もこの指導を続けてまいりたい。」こういうように答えておられるわけですね。  ということは、逆に言えば、日本で禁止されている農薬、たとえばパラチオンだとかBHC、DDTというようなものも、そういうものを使用する農業国に現在日本で輸出しているわけですね。そういうものを逆にまた日本が輸入しなければならないという、こういう問題に到達しているわけです。ということは、日本の中でこういうものは有害だからといって農薬としては禁止してしまったものが、逆にまだよその国では使われているという現状を示しているわけです。そういうものを今度はまた輸入して日本人が食っていれば、何も日本の国の中でそんなものを禁止したってしなくたって同じじゃないか、極端に言えば、そういうふうにもなるわけですね。ですから、そういう意味において皆さんに問題提起したのは、食肉に限らず、いろいろな意味においてこういうものが世界的にそういう基準が設けられて、有害なものは禁止するという傾向が世界的に強まらなければ、日本一国で公害を守るということはできない、この食品公害を守っていくということはできない、そういう懸念を私は非常に強く持つわけです。ですから、今後ともにこういう問題については今後の公害対策、いわゆる防疫というものの面から見た日本の国内の公害対策をどうするか、食品公害をどう解決していくかということについて強い関心とそれから姿勢を示してもらいたい、これが最後に私がお願いをする問題でございますので、お答えいただきます。
  236. 七野護

    ○七野説明員 先ほど国際的な基準と私たちのそれに対する対応を御説明申し上げたわけですが、先生のおっしゃる趣旨を体しまして、いわゆる国際的な規格につきまして、日本の国情に合うように今後とも努力をしていきたい、かように考えております。
  237. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) これは、最後に大臣も含めてお考えいただかなければならない重要な問題だと思うのですが、ただ、日本国民の健康をどう守るかじゃなくて、公害多発国として、公害防止、逆に言えば先進国として世界にどのように寄与していくかということにも関係するわけですから、どうかそういう意味において、単に厚生省とかあるいは農林省とか、そういう省単位でなく、日本政府として総合的にこういう対策をわが国の国民の健康を守るという立場から、あるいはまた逆に世界の国民の健康を守るという立場へ、要するにそういうアプローチをぜひとも強くしていただきたい、こうお願いをして、時間が参りましたので、質疑を終わります。
  238. 上村千一郎

    上村国務大臣 いまの御指摘でございますが、この五月七日、八日のOECD閣僚レベルの会議で、化学品につきまして、これからいろいろと防疫、それから方々の、国際的になるのだから、長期的な予見的環境政策を施すべきである、これは取り入れられまして、論議をされております。趣旨は同じような趣旨だと思います。こういうものは国際的な協力なくしてはなかなかうまくいかない、こういうことでございます。その際、私、政府の代表として行っておりますので、いまの御趣旨などをよく体しまして対処していきたい、こう思っております。
  239. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 終わります。
  240. 木原実

    木原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会