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1979-05-29 第87回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十九日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 木原  実君    理事 戸沢 政方君 理事 福島 譲二君    理事 向山 一人君 理事 島本 虎三君    理事 水田  稔君 理事 瀬野栄次郎君       相沢 英之君    西田  司君       岩垂寿喜男君    土井たか子君       野口 幸一君    竹内 勝彦君       津川 武一君    工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁長官官房         審議官     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁自然保護         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      山本 宜正君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君         通商産業大臣官         房審議官    原田  稔君  委員外出席者         外務省国際連合         局企画調整課長 小西 芳三君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      高瀬 和夫君         運輸省航空局飛         行場部長    田代 雅也君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   田口 一男君     野口 幸一君   東中 光雄君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   野口 幸一君     田口 一男君   津川 武一君     東中 光雄君     ――――――――――――― 四月三日  二酸化窒素の新環境基準撤回等に関する請願  (安藤巖君紹介)(第二七〇七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  二酸化窒素の新環境基準撤回等に関する陳情書  外六件(第二  二一号)  奈良県香芝町における超低周波空気振動等によ  る公害原因究明に関する陳情書  (第二二二号) 五月十二日  仙台湾地域公害防止計画による事業実施期間延  長に関する陳情書  (第二六一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 木原実

    木原委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  3. 水田稔

    水田委員 政府環境影響評価法案提出すると国会説明してから今回で四回実は流産したわけです。ことしの二月二十七日に私は長官に、ことしこそ出すのかどうか、こういう質問をしたわけであります。そのとき大臣は、三月十六日をめど努力している、こういうことで若干の日はあったわけですが、その後全く出てくる気配もないままに四月二十七日の閣議で八十七国会での提出は見送らざるを得ない、こういう長官発言があって了承された、こういう報告がされておるわけでありますが、前回の私の質問に対して、私も聞いておりましてまさに余り自信のあるような御答弁ではない、客観的にいろいろほかの情報を聞いておりますと、どうもできないのではないかという心配をしておったわけでありますが、結果的にはその悪い予測どおりになってしまったわけであります。東京サミットも近々開かれる。先進国が集まる。多くの国でそういう環境問題については制度化がされておるという中で、日本では四回にわたって政府国会提出するということを約束しながら出していない、まことに私は遺憾に思うわけであります。  そこで、この経緯について、一体どういうことで今回も見送らざるを得ないのか、これは詳しく私は大臣に御説明願いたい。単に通り一遍の、いろいろ調整をしたけれどもできませんでしたというようなことでは、国会はもちろんのことでありますが、国民全体が納得しない、私はこういうぐあいに思うわけでありますから、ひとつ詳しくこの点の御説明を願いたい、こういうぐあいに思います。
  4. 上村千一郎

    上村国務大臣 環境影響評価法案につきましてその後どうなっておるかということでございますし、できるだけ詳細に報告をするようにというこ・とでございます。ごもっともな御質問だと思います。  これはもう委員もよく御存じだと思いますが、私も再三予算委員会なりあるいは公環特先生方の御質問に対してお答えはしておるわけでございまして、二重になる点もあるかと思いますが、昨年の五月十八日に実は自民党政調会としまして一応意見が発表されたわけです。と申しますのは、環境アセスメント制度についてこれを確立するということは既定方針だけれども、現在の状態においてはいろいろな意見があるけれども法制化は時期尚早である、しかしながら、引き続いてこれを検討する、こういう意見政調会としまして発表された、これは何回も申し上げておるとおりであります。  私は昨年の暮れに環境庁長官を拝命したわけでございますが、環境庁としましては、とにかく環境影響評価法制化するということは、そうあるべきであろうという考えを持っておりましたので、直ちに、昨年の十二月でございましたが、党の河本政調会長にお目にかかりまして、五月十八日付の政調会の御見解の時期尚早という意味は、各省庁間の意見調整がまだできていない、あるいは関係団体との意見調整ができていないという意味に解釈をして、精力的に各省庁あるいは関係団体との間の調整を進めていってよろしいかというお話をしましたところが、それでよろしいというお話でございました。それで環境庁としましては、直ちに各省庁あるいは関係団体の方へその話を進めてまいったわけです。  しかしながら、このいきさつからいいまして、党の環境部会というのがございますが、その部会の御意見、御討議は非常に大きなウエートを持っておるわけです。これは当然のことでございまして、環境庁法案提出しよう、政府法案提出しようとする場合に、現在の仕組みとしましては、与党内の政調総務会の議を経まして法案閣議決定していくというプロセスになっております。ですから、党の方にもお願いをしまして、これの精力的な御検討をお願いし、あらゆる資料あるいはその他の点がございましたならば、環境庁としまして考えておること、調査しておることを全部御報告をしてまいりますから、こういういきさつで入ったわけでございます。そして三月十六日までに、予算法案はもっと前でございますが、予算関連法案以外の法案については大体三月十六日をめどにしてほしいということでございました。  私、実は環境庁へ参りました後、そういうようないきさつになっておりますから、法案を確実に提出できるということを申し上げるわけにいかない。調整がある。ですから、先生方の御熱心な御質問あるいは予算委員会でも、その時期その他のことを申されておりますが、事情がわかっておりますので、全努力を挙げてまいるわけでございますが、いつと申しましても、五月十八日のそういう御決定になっておりますので、全努力を挙げる、こういう意味で申し上げたわけでございます。けれども提出予定法案として入れさせていただいた。その間に調整がついた際にすぐ出せるようにという考えで行ったわけです。  それでございましたが、三月十六日を過ぎましても、それまでに未調整な分が出てきておるということでございます。けれども、従来、昨年の五月十八日の政調会の御意見の中にもありまするが、科学的指針、そういうものが未成熟であるというような御指摘もございますので、環境庁としましては、要は、準備いたしておりますところの科学的技術指針というものを提出したわけです。そうしてこれをぜひ御討議をしていただきたい、各省へもそのことを提示いたしました。それからその他こちらか考えておりますところの法案の大体の骨格あるいはそういうような草案というものも御提示を申し上げておる。こういうふうにしまして、環境庁としましては、考えておりますできるだけの資料考え方というものを御提示して調整を進めていったというわけでございます。  ところが三月十六日の期間が経過をしましても、その調整がまだできていないというわけで、三月十六日を過ぎますけれどもという意味で延期のことを閣議の方へお願いした。こういうわけで進んでまいったわけです。  ところがこの四月二十五日に自由民主党政務調査会環境部会の御方針が出たわけです。というのは、もう物理的に会期の終了が迫ってまいっておりますから、私の方としましても、部会の方としましてこの段階でお考えをとにかくまとめてほしいということを御要請を申し上げたわけです。そういうことで四月二十五日に党の環境部会は御方針を発表されました。それは資料としましても幾らでもこちらにありますから……。そうしたところが、まだ検討をしていくという趣旨です。そういうことで、実はこの四月二十五日におきます段階におきましては調整はまだできていないということになるわけです。  そういうことを踏んまえまして、もう物理的に時間は迫ってまいりますし、それから私もOECD閣僚会議へ出発するぎりぎりになってきております。そういう際に、こちらを不在にしておく際に、会期は刻々と迫ってきておるという態勢でございますから、この際、実は閣議の方へ、今国会は物理的に見送らざるを得なくなった。  それから、四月十日に中央公害審議会環境アセスメント、「環境影響評価制度のあり方について」という御答申が出たわけです。そのときに私のところへ会長がお見えになりまして、もっと早く出るとよかったのですけれども、なかなか内部の詰め、いろいろなことできょうになりましたということのお話がございました。そしてよくこの点について尊重してやっていただきたいという話だったのです。ですから私は、もちろんでしょう、昭和五十年の十二月に諮問を申し上げた、そして学識経験の豊かな皆様方が三年有半お考えになってお出しになった答申である、だから、私の方も当然これについてよく尊重してやっていくつもりです、こういうことを申し上げたわけです。それが四月十日になっております。  でございますので、今国会法案は物理的に見送らざるを得なくなっておる、けれども中公審の御答申が出ましたので、そういうことですから、これをよく検討して、鋭意私どもはこれを引き続いて検討してまいりたいと思います、こういうことで閣議に御報告を申し上げたといういきさつになっておるわけでございます。
  5. 水田稔

    水田委員 長官、長々と御答弁いただきましたが、自民党環境部会の中でまとまらないということだけです。二月二十七日に大臣は、アセスメント制度というものについて確立すべしというのはコンセンサスかできていると私は思いますと言われた。コンセンサスができているということは、主語はついていませんけれども、恐らく国民全体としてコンセンサスができている。いまの大臣答弁から言えば、自民党内部でこれをつぶしている、こういうことになるわけですね。私は、日本自然環境を守り国民の命や健康を守る環境を所管する大臣としては、国民に対してそれでは責任は果たせないと思うのです。  そこで、私は時間の関係もありますからもう多くを申し上げませんが、昨年の五月の自民党部会決定も、各省庁間の意見調整ということに主力を注がれたと思うのです。もちろん各団体意見も聞かれたかもしれませんけれども。いま大臣の言われた中公審答申にはこう書いてあるのですね、途中は省略しますけれども。法律によることが最も適当である、アセスメント法案をつくってやらなければ本当に環境影響評価というのは実効が上がらないということを、これは端的に言っておるわけですね。ですから、国民が一番知りたいのは、国民全部がつくれというコンセンサスができておるということを大臣も言われるわけでありますから、どこの省庁との間で何が一番問題になって法案提出できなかったか、国民が知りたいのはそこのところなんですね。ですから大臣、その点を率直に答えていただきたいと思うのです。
  6. 上村千一郎

    上村国務大臣 いま委員のおっしゃるコンセンサスというやつは、私は法制度化コンセンサスができておるということはどこでも発言をしておりません。要するに、環境影響制度確立についてはコンセンサスができておる、こういう発言をしておるわけです。  ところで、なぜそういうことを言うかといいますと、これは自民党自身も昨年の五月十八日に、環境影響評価制度確立をするということは既定方針であるということをはっきり言っておるわけでございますので、党の幹部会がいまコンセンサスを踏みにじっておる、こういう意味には私は受け取っておりません。ただ、環境庁としましては、環境影響評価制度にはあるいは行政的な積み上げでやる方がよろしいと言っておるのもあります。今度のOECD環境閣僚会議レベルにおきましても、具体的な討議はされませんけれども、勧告の中にはいろいろな部面も書いてあるわけです。ですから、この環境影響評価制度確立ということについてはコンセンサスができておる。しかし、法制度化というものにつきましては、これはまだ私はコンセンサスを得ておるということを言っておるわけではありません。ただ、環境庁としましては、これが法制度化の線を行くことが望ましいのだ、というのは、いまの段階としては法というような国民的なレベルにおいてルール化する方がいいという考えを持っておりますので、それでその努力を進めておる、こういうわけでございます。  なお、各省庁間につきましては、これは役所の者がやっておりますが、今後こういう各省庁間の見方を一々これがどうとかこうとかということは、きっと各事務局もこれはお互いに言わないということでございましょう。
  7. 水田稔

    水田委員 私たちは代議士会議運からの報告を聞いております。いわゆるアセスメント法案が何回となく提出ということで流れた、今回四回目じゃないか、議運へ来て説明しろ、こういうことで官房長官が呼ばれまして、その中でわが党の理事からの質問に対して、通産省です、こういう答弁が出ておる。われわれはそういう報告を受けておる。いかがです。それは違いますか。
  8. 上村千一郎

    上村国務大臣 私が直に各省庁との間をやったということではございません。けれども大臣の間におきましては、いま事務レベルで大いにやっているからということで、予算委員会でも通産大臣にも御質問され、私の意見とも変わりのないことを御答弁され、それから田中官房長官もそういう趣旨答弁をされておりますね。が、具体的にどういうふうにしていくかということにつきましては、私が当たってはおりませんけれども通産省との間に主に調整がつかない部分が多かったということは察せられます。
  9. 水田稔

    水田委員 それでは通産省、来ていただいていますね。いま私が環境庁長官質問しましたように、われわれは、議運官房長官から通産省反対でまとまらなかった、こういう報告を受けておるわけでありますが、通産省、それはお認めになりますか。
  10. 原田稔

    原田政府委員 まず、環境影響評価をやることの重要性につきましては、通産省もかねてから深く認識しております。したがいまして、電力につきましては省議決定というようなかっこうですでに実施をしております。  この環境影響評価法案につきましては、この法案取り扱い等につきまして環境庁から申し入れを受けまして、当省としても鋭意検討を行ってきたところであったわけでございますが、先ほど大臣からの御答弁にありましたように、今国会の残る会期を考慮いたしまして、環境庁として今国会への提案は一応取りやめるというような判断をされたのではないかと思います。  私どもは、従来、環境庁ともいろいろと法案取り扱い等について相談をしてきておりますが、反対とかなんとかということじゃなくて、特に環境影響評価をめぐるいろいろな技術的な手法なり何なりがまだ十分に確立していないという問題があるではないかというような問題指摘などをしてきたわけでございまして、そんなような点を中心に環境庁とも相談をしてまいったというのが実態でございます。
  11. 水田稔

    水田委員 通産省として、環境庁から出された、たとえば「技術的事項について」というようなものですね、そういう点について意見がまとまらなかったら、結局内閣全体でまとまらなかったんだろう、こういう答弁ですが、これはどこに問題があるのですか、具体的に言ってください。何と何に問題があって通産省はこれを法制化することについて同意ができなかったのか。予測手法技術なのか。技術ならどういうところに問題があるのか。あるいは通産省所官の中で何と何の業種がこういう点では技術的に問題がある、具体的にお答えいただきたいと思うのです。  それから、もう一つ申し上げておきます。電力についてはすでにやっておるということについて私も触れましたし、これは顧問が審査をしておる、その氏名は発表できない、こう言って、私ども岩垂委員から、これは本にも出ておったじゃないかということで、出しなさい、出さないということで、結果的には通産省が出したといういきさつがありますね。しかも、それは電力会社の研究とのかかわりの深い人ということが指摘されて、まだ最終的な詰めばできておりませんけれども、そういうことまで明らかになってきている。それでいいとは国民は決して思わぬわけですね。ですから、協議が調わなかったという内容について、四回にわたって流れたのは一体何だというのを国民はみんな知りたがっているわけです。本当に政府は、日本自然環境なり、あるいは国民の命や健康を守るために法制化してやろうという姿勢を示してもらいたい。しかし、それがなかなかできない。一遍なら、それは協議が十分できなかった、時間がなかったということもわかりますけれども、四回ということは何年という年月を経ておるわけですね。その間に両方にやろうという意欲があるならばできないということはないと思うのですね。四回も流れたことにみんな不信を持っておるわけです。だから、どこに問題があるか明らかにして、それは通産省の言うのも無理はないという、国民に理解ができるような説明をしてほしいと思う。だから、技術的なことは一体どことどこにあるのか、環境庁の言っておるのは。  それからもう一つは、どういう業種についてこの法制化の中でアセスメントをやることに問題があるというなら、その問題点を明らかにしてもらいたい。この委員会だけじゃなくて、国民に対して明らかにしてもらいたいと思うのです。
  12. 原田稔

    原田政府委員 法案取り扱いをめぐります各省庁の折衝の中身は、従来からの慣例等もございまして、余り詳細に御説明申し上げるというのは、ちょっと私御遠慮させていただきたいと思いますが、ただ、先生からいま御指摘のありました技術指針の問題でございますけれども環境庁は確かにことしになりまして「環境影響評価に係る技術的事項について」ということで、この技術指針につきましての一応の指針を取りまとめております。これは私ども中でいろいろ検討いたしまして、従来のむつ関係につきましてのアセスメントに際して環境庁から一応出ております指針に比べて、かなり進んだものではないかという評価をしております。  ただ、この資料と申しますか、この指針の性格は、その前文にも書いてありますとおり、どういうものかと申しますと、「環境影響評価に係る調査予測及び評価の基本的な考え方手法等について技術面からの整理を行ったもの」でございます。ちょっと私、そのたとえがいいかどうかよくわかりませんが、たとえば額縁と申しますか、要するに絵で言いますと額縁のようなものに相当するのではないかという感じを持っております。そういったたとえがいいかどうか、これはまた一つの問題があると思います。したがいまして、この指針に基づきまして具体的に環境影響評価を行う場合に、どういう項目につきましてどの程度まで調査を行うのか、どの範囲まで調査を行うかというのは、これは目下のところは全くケース・バイ・ケースで、具体的なそのいろいろな対象に応じましてやっているわけでございます。  問題は、どういう項目についてどの程度まで行うのか、あるいは評価を行う場合に、たとえばある事項について影響がないようにしろといったような場合に、その事項の中に環境基準のようなものがある場合には、それは環境基準一つ指針になりますが、そういうものがないような場合には、一体どういう手法評価を行うかというのは、これはなかなか議論のあるところでございます。電力などにつきましては、一応いまの技術的な状態で最先端の水準にあるというようなものを用いましてやるわけでございますけれども、しかし、どうしてもまだそこに一つ確立されたコンセンサスというものがないわけでございます。これは環境影響評価という、こういう仕事自身がまだ始められて若いという点も私はあると思います。そういったような状況、そんなようなことにつきまして、環境庁ともいろいろ意見を交換してきたというのが実態であるわけでございます。
  13. 水田稔

    水田委員 業種の問題を聞いたのですが、答弁漏れですからひとつおっしゃってください。
  14. 原田稔

    原田政府委員 業種につきましては、現在は、御案内のとおり、一般的に言いますと設備投資がかなり沈滞しております。したがいまして、現在、環境影響評価やり方等をめぐりましていろいろ問題になっておりますのは、電力が主たる業種ではないかと私ども考えております。
  15. 水田稔

    水田委員 時間の関係がありますので、いま説明のありました、この環境庁の「環境影響評価に係る技術的事項について」に対応する、たとえば電気事業に関してのアセスメントの具体的な技術的なもの全部含めて、私、資料としていただきたいと思うのです。
  16. 木原実

    木原委員長 よろしゅうございますか。
  17. 原田稔

    原田政府委員 現在、電力につきましての環境影響評価をやる場合の技術的なやり方等につきまして、これはもうずっと前から実は環境庁調整中でございまして、近く調整手続が終了することになると思います。これはもう非常に近い段階ではないかと思いますが、環境庁調整を終わり次第、それは資料として提出することができる、かように思います。
  18. 水田稔

    水田委員 環境庁の、大体これに基づいていままでの協議がなされておったわけですね。それよりは通産省はりっぱなことをやっておるという答弁なんですから、それを出して事実かどうか確認をして国民の前に明らかにすることは、通産省の言い分が正しいかどうかを一番見やすい資料なんです。技術的なことだけですよ。現にそれはやって発電所の設置をどんどん認めているわけです。それが国民の前に出せないということはないと思うのですよ、やっておるのですから。たとえばこの間島本委員から質問のあったような町とかなんとか、そんな問題ではない。純然たる技術的な問題ですからね。環境庁との協議が調うとか云々は関係ない、いまやっておる、いままでやってきた技術的なものを出すことは全く問題はないと私は思いますので、ぜひそれを出していただくようにお願いいたします。
  19. 原田稔

    原田政府委員 事実上調整は終了しているようでございますので、なお環境庁とも調整の上、なるべく早い段階提出させていただきたいと思います。
  20. 木原実

    木原委員長 よろしゅうございますか。
  21. 水田稔

    水田委員 それでは、環境庁の方に公害健康被害補償地域指定の問題についてお伺いしたいと思います。  五月八日の新聞報道で、本田保健部長が七日に大気汚染測定運動東京連絡会の代表の方々と会って、環境庁でいわゆる地域指定の解除についての追跡調査を進めておる、今秋前ですから近い時期ですが、を目標に中公審に指定解除の物差しづくりを諮問する、こういうふうに報道されたわけです。これは、私どもとしては、それでなくても昨年の窒素酸化物の基準の緩和の問題あるいは複合汚染について解明されていないにもかかわらず、物差しがSOxだけということで新しい指定もされないというようなことで問題だ、こういうぐあいに見ておったところ、アセスメント法案も出さない、そして指定解除もやっていこう、こういう後ろ向きの姿勢がどんどん出てくる、大変なことだ、こういうぐあいに受けとめたわけでありますが、実際にそのような作業を進めておられるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  22. 本田正

    ○本田政府委員 五月七日にいまおっしゃっていただきました患者さん方の一団体と一時間ほどお会いいたしまして、いろいろ公害健康被害補償制度に関する話し合いをする場があったわけでございます。  その中で、私とすれば地域指定の解除要件だけを検討していると言ったつもりではなかったのでございます。つまり公害健康被害補償制度を私どもが担当しておるわけでございまして、これは目的にもございますように、公害患者の「迅速かつ公正な保護を図る」ということが目的でございまして、そういった法律をよりうまく運用と申しますか、この制度を運用いたしますために、これは当然いろいろな検討をしているんだという話のさなかにそういう問題が出てまいったわけでございます。私どもとすれば、地域指定の解除要件を検討する、そういうことだけじゃありませんで、ほかにも公害健康被害補償制度というものは現状いろいろな問題がございます。そういったことを真摯に検討しているんだ、こういったことを申し上げました。それが真意でございます。
  23. 水田稔

    水田委員 ほかのことはいいんです。私がお伺いしたのは、解除の条件を、新聞に報道されたようなことを検討し、今秋前を目標に中公審に指定解除の物差しづくりを諮問する、そういう考え方でやっておられるのかどうか、そのことを聞いたわけです。
  24. 本田正

    ○本田政府委員 地域指定の要件だけを検討しているということはございません。  申し上げましたように、いろいろな問題がございますので、それらを含めて検討しているのであって、中公審に対します諮問の時期も、技術的なことでございますから、できるだけ早い時期にということを申し上げたつもりであったわけでございます。今秋とかあるいは来年とかいう時期については、まだ検討している段階でございますので、未定でございます。
  25. 水田稔

    水田委員 私は時間の関係で多く申し上げませんが、いま患者は、たとえば東京では事実上道路沿線とそうでないところと若干違う。しかし、指定されている地域は一つの区でされているわけですね。ですから、外れている区がある。しかも、都市部はいわゆる工場排ガスかあるいは自動車排ガスかというと、一般的には排ガスの量から考えれば自動車排ガスの方が多いというような矛盾はまだまだあるわけですね。ですから、その地域は厳として指定しないということで、もう指標をSOxだけでやっているものですから、やらない。そして賦課金も前年の徴収と給付の率を見て二分の一ずつ調整していく、こういうやり方をしておりますけれども、こういう点では、この法律ができて実際に実効のある——本当に被害者救済という点から言えば、金の徴収の問題にしろ、地域指定の問題にしろ、あるいは複合汚染を考えれば、指標がSOxだけでいいのかどうかという、内容をよくしていくための検討の方がまだむしろ多いと思うわけです。ですから、解除等については、実は患者の数がどういうぐあいに——いわゆる横ばいくらいになったとか、まだまだふえておる、一年間に一万人近く患者がふえておるわけです。そういう中で、ほかに充実すべき問題点があることの検討の方が優先さるべきなのに、解除の条件等という後ろ向きの検討が表へ出てくるというのは、私は環境庁のとるべき態度でないと思うわけです。ですから、むしろそういうものの方を検討すべきではないだろうかと思うのですが、その点御見解はいかがですか。
  26. 本田正

    ○本田政府委員 いろいろと検討していると申し上げましたけれども、いろいろの中にいま御指摘の件もございます。地域指定の要件というのは、かつて中公審から指定するときの物差しが示されておりますけれども、その中にたとえば窒素酸化物の汚染をどういうふうに評価していくかというような重要な問題も当然含んでおります。
  27. 水田稔

    水田委員 その点は、少なくともいま患者の救済がまだまだ十分に行われておるとは思えない、そういう中で後ろ向きの検討を積極的にやるということは厳に慎んでもらいたい。これは答弁は結構ですから、そういう私の要望だけにとどめておきたいと思います。  もう時間がありませんから、最後に長官に、私が冒頭触れましたように、四回にわたるアセスメント法案の流産、そして昨年の窒素酸化物の規制緩和の問題、そしてまたいま聞きましてもいわゆる公害健康被害補償法による地域指定の解除等、まさに環境庁は後ろ向きの姿勢を国民の前に明らかにしてきておる。そして私ども、地方で聞きますれば、こんなやり方をするのだったら環境庁は厚生省へ行ってしまうのか、こういういやなことをたくさん聞くわけです。私どもは、いままでの四十年代のたれ流しというのがいまようやく歯どめが効いた。これから本格的に日本の国土の自然環境を守り、そして、エネルギー問題も大変ですが、そういう中で日本国民が人間らしい暮らしをしていく、健康を守っていく、そういうためには、まさに環境庁が先頭に立ってやっていくのだという決意で取り組んでもらわなければ大変だと思うのです。国民はそういう見方をしておりますし、あるいは地方団体でも、私ども行きますと、そういう意見は出ます。  そこで、それに対する大臣の決意を最後にお伺いして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  28. 上村千一郎

    上村国務大臣 いま水田委員がおっしゃる最終的な結論、私は同感なのです。また、OECD閣僚会議におきましても、環境問題というものを強く主張しておる。これは世界的な一つコンセンサスだろうと私は思っておるのです。  アセスの法制化の問題につきましては、先ほど申し上げたとおりで、決して私どもは熱意を失っているわけではございません。しかも、この四月十日にあれだけの答申が出てまいっております。これは重要な内容を含んでおりますから、これに取っ組んでまいります。  それから、いま部長が御説明しておりました地域指定解除の問題。私はあれが新聞に出てびっくりしたのです。というのは、飛行機の中で拝見しました。そんなふうでないのです。それで部長も非常に心配したと見えまして、私が飛行場から帰って役所に着くと同時に私のところへ来まして、いまのようなお話がございました。それはそうだろう。それを取り出してどうのこうのということは、いまだ庁内において論議されたことはないのです。ただ、現実にその指定を何とか見直してほしいという陳情がありました。しかし、現状のままではやめてほしい、指定を解除するとかそんな検討よりは、まだ患者救済の方なり対策というものが多いのだから、ほかのものを検討しろ、こういう問題もございました。いろいろな問題がいっぱい来ております。  それ以外にも、たとえばいまちょっと触れられましたが、窒素酸化物汚染を地域指定要件においてどう評価していくか、これはいろいろな意見が出ております。それから大気汚染の改善状況に照らしまして、現行の暴露要件を見直す必要があるのかないのか、あるいは大気汚染による健康被害の予防及び治療のためにいかなる施策を講ずることができるのか、自動車の負担のあり方というものはどうあるか、いろいろな問題がいっぱいあるのです。これは各種団体からも陳情がありますし、政党からの御意見もいろいろございます。それを私どもの方は、御承知のように公害健康被害補償法の趣旨にのっとりまして検討をしていくという状態にあります。そして公害対策審議会の中のこれに対応する部会におきましても、実はいろいろと御検討されております問題で、その方面の意見もしんしゃくしながら、こちらも考えながら、ある一定の煮詰まりを来した際に、いよいよこの問題をどうしぼるか、どういう諮問方法をするかということになると思いますので、その範囲が決まらないでおるわけですから、時期その他は未確定であることは間違いない。そういう際にああいう新聞が出ましたので、部長もちょっとびっくりしたという実情でございます。  ですから、いま御指摘のように、とにかく先頭を切ってやっていくべきものである。だから、環境保全というものは本当に崇高な使命を持っているものでございますから、その意図でやっていきたいと思っております。
  29. 水田稔

    水田委員 終わります。
  30. 木原実

  31. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 最初に運輸省にお尋ねをいたしたいと思います。  川崎市当局及び市民の陳情を受けて、私は一九七四年から東京国際空港のジェットエンジンテストの騒音問題を取り上げて、運輸省にその対策を迫ってまいったことは御承知のとおりでございますが、この問題は、深夜午前零時ごろから明け方までエンジンテストを繰り返すために、突然飛行機が離陸するときと同じような騒音が、ひどいときには何分置きという状態で、寝静まった川崎市の市民の耳をつんざくような状況があったわけであります。その結果として、市民の安眠を妨げるだけではなしに、赤ちゃんが引きつけを起こすような状態も例としてあったわけであります。そこで、あれはたしか一九七四年の三月二十八日、私が運輸省、空港あるいは川崎市の協議をお願いして、三カ所あったエンジンテスト場の、うちの一カ所を廃止して、他の二カ所のテスト場を海寄りに移転して、さらに川崎市の繁華街に向いている噴射口をコンビナートあるいは海の方向に振り向けるという対策をとっていただきました。その結果としてかなりの改善が見られたわけでありますけれども、その後、夏場はともかくとして、冬場には八十ホンを超えるようなジェット騒音が真夜中の三時とか明け方の五時とかいう時間に繰り返して発生するという状態がいまだに続いているわけであります。そこで運輸省当局に改善方を要求してきたわけでありますが、この点は市民の訴えで市議会でも取り上げられていますし、市当局も独自の調査を行ってまいりました。運輸省航空局もこの市民の要請に対して調査、そしてその対策を進めようとしてこられたわけでありますが、その調査の結果を簡単で結構ですから御説明いただきたいと思います。
  32. 田代雅也

    ○田代説明員 羽田国際空港の試運転の状況につきましては、いま先生の御指摘のとおりの経緯でございまして、私どもといたしましては、夜間における試運転というのは、飛行機の整備、安全の確保の上から非常に重要な意味を持っておりますけれども、それに伴いまして周辺の住民の方々に御迷惑をかけてはいけないということでいろいろ対策を講じてきたわけでございます。しかしながら、何分にも、従来羽田空港というのは非常に手狭でございまして、その試運転場の位置あるいはそれに対する施設等につきましていろいろ手が打てないでおりました。その間に、御指摘がございましたように、二度にわたって機軸を海の方に振りまして、できるだけ音が陸に触れないように措置をしてきたわけでございます。しかしながら、特に冬場におきまして、御指摘のように住民の方々に非常に御迷惑をかけるような音が出てきたことは事実でございます。したがいまして、私どもとしましては、国際線が羽田から成田に移転いたしまして、昨年の冬から十二月、二月、三月と三度にわたりまして、当該地区におきます試運転、それに伴います川崎市の騒音につきまして、川崎市と協力していろいろ検討してきたわけでざいます。  おっしゃいますように、特に冬場の夜間におきましては逆転層に当たって意外に遠いところまで音が影響を与えるということもございまして、これを何とかしたい、そのために三度の調査においてどのような方法が一番効果があるかということを検討いたしまして、現在、通常U地区と言われておりますけれども、U地区において行いますエンジンテストの音、それを約三百メートル多摩川の河口の方に出しまして、しかも機軸をできるだけ海に向けて同じような調査をいたしました。その結果、場所によってばらつきはございますけれども、おおむね五ホンから十五ホン程度、位置を移し、かつ機軸を海の方に向けることによって内陸に対する音の影響を軽減することができる、そのような調査結果が出てまいったわけでございます。
  33. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 後ほどその調査のデータを拝見させていただきたいと思います。いまでなくて結構です。  このデータによって、三百メートル移して、噴射口を海に向けることによってかなり改善されるということになるのだそうでありますが、その経過を市民が納得のいくようにちょっと御説明いただけますか。
  34. 田代雅也

    ○田代説明員 従来から川崎市と共同して毎年調査をしてきたことは事実でございますけれども、特に昨年の十二月に、まず現位置におきましてエンジンテストを行いまして、その結果、川崎市内の六地点におきます騒音の状況をまず調べました。その次に二月九日に多摩川河口の、通常A1地区と申しております場所に飛行機を移しまして、そこでボーイング727型のエンジンテストを行いまして、それに対する騒音というものを調べました。それから三月十四日に、大型機でございますダグラスDC10というものをA1地区におきましてその音を調べました。その結果、五か所、若干状況は違いますけれども、おおむね五ホンから十五ホン程度音が低くなる。特にA1地区において行うときに、アイドル状態では、ほとんど周辺の暗騒音と申しますか、周りの音と変わりない状況を把握したわけでございます。
  35. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 いま田代さんからお話がありましたけれども、場所を移し、噴射口を海に向けるということによって、おおむね暗騒音と区別できない状態というものが見られるという結論が得られたようでありますが、それによって、何らかの改善措置が確立するとすれば、やはり場所を移してそういう措置をとるべきだと思いますので、このことをぜひ要請をいたしますが、それについてどのようにお考えになっておるか。またその際予算はどのくらいかかるのか。工事を進めるとすれば、その完了の時期をおおむねどの辺に置いているか、御答弁をお願いいたします。
  36. 田代雅也

    ○田代説明員 エンジンテストの騒音を防ぐ方法としては、私ども幾つか検討したわけでございます。もちろん、機軸を変えることは従来もやってきたわけでございますけれども、そのほかに、テスト場のところに高い防音壁をつくることも考えておりました。しかし、現在の場所におきましては、防音壁を置く十分なスペースがない。あるいは地下にいろいろな埋設物がございまして工事が十分できない。それから実際問題としまして、高いへいをつくりましても音が回折いたしましたり、あるいは冬場の気象条件によりましては逆転層というようなところにぶつかって、現在の段階では、必ずしもその効果が十分期待できないということもございまして、私どもとしましては、この三回のエンジンテストの結果を踏まえまして、A1地区にエンジンテスト場を移設したいと考えておるわけでございます。ところがこの場所は、現在羽田におきまして駐機場として使われております。そこにエンジンテスト場を設けるためには、大体三機程度の駐機場というものをつぶさなければならないわけでございます。しかしながら、その駐機場を他の場所に持っていくことができないだろうか。現在羽田におきましては、成田開港後、エプロン、誘導路等の舗装のやり直しを行っておるわけでございますけれども、その過程におきまして、現在A1地区にございます駐機場を他の場所に持っていくことを検討いたしまして、一応そのめどがついてきたわけでございます。  費用の点でございますけれども、これは羽田の全体の整備計画とも絡むわけでございますが、A1地区にエンジンテスト場を置くために、若干そのあたりの舗装等手直しをする必要がございます。この関係の費用としまして、これは大ざっぱでございますけれども、一億円足らずの費用が要ると思います。それからもう一つ新しく三機の駐機場を設けるために、これも非常に大ざっぱでございますけれども、二億から三億程度の費用が要るのではないかと思っております。  私どもといたしましては、周辺の住民の方々にエンジンテストの騒音で御迷惑をかけないように、ぜひともこの次の冬場までには間に合わせるつもりで、いま鋭意検討しておるわけでございます。
  37. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 川崎市当局とこれから協議をなされることになろうと思いますけれども、被害住民の苦情の窓口になっている市当局の意向もひとつ十分に配慮して、できるだけ速やかにその協議を調えていただきたいものだというふうに思います。もうすぐ協議が始まりますか。その点が一点と、いずれにせよ市民は、国際線が成田へ移転したんだから、これで安眠ができると安心していたわけであります。しかし、依然として静かな夜を取り戻すことができないということに対する不満が非常に強いわけでございますので、市民の納得のできるような対策を早急に実現することを要請をして、一点だけ、その協議の始まる段取りを明らかにしていただきたいと思います。
  38. 田代雅也

    ○田代説明員 本件につきましては、川崎市当局が住民の方々のために、従来から非常にいろんな検討あるいは私どもに対しますアドバイス、要望をいただいておるわけでございまして、ただいま申しました騒音調査に当たりましても、市と共同して行っておるわけでございます。この結果を踏まえまして、A1地区に移転し、かつ機軸を沖に振ることが非常に効果があるということが判明いたしましたので、この線に基づきまして、早急に川崎市と協議に入りたいと考えております。
  39. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ちょっと、ついでで恐縮ですが、いまDC10の話が出ましたけれども、いま問題になっているアメリカのシカゴ空港での惨事に関連をいたしまして、日本航空がDC10を使っているわけでございますが、昨晩遅くにアメリカの航空局の勧告で、全機を停止して点検をするということが出たわけであります。きのう午後に森山運輸大臣が、日航、全日空、東亜国内航空に対して、DC10の機種にかかわりなく事故防止に特段の注意を払ってほしいという手当てをなさったそうでございますが、新しい事態でございますので、一体運輸省はこのアメリカの航空局の措置と関連させて、市民の安全を守っていくために、どのようにDC10の対応をなさるおつもりか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  40. 田代雅也

    ○田代説明員 私、直接担当でございませんので、的確なお答えができるかどうかあれでございますけれども、言うまでもなく、飛行機の安全を守るということは、私ども航空行政に携わる者といたしまして最大の使命でございます。従来から、飛行機の安全ということにつきましてはいろいろな措置、いろいろな対策等講じてきたわけでございますけれども、今回DC10がアメリカにおきまして非常に不幸な、悲惨な事故を起こしたわけでございます。日本でも、現在日航がDC10を九機持っております。この九機といいますのは、今回アメリカで事故を起こしました機材とは、厳密に申しますとエンジンが違う等で、全くの同型機ではございませんけれども、今回アメリカの調べによりますと、事故は、エンジンを翼からつるす部分のボルトに若干の欠陥があったということが、何となく現在までの調べでわかっているわけでございまして、私どもといたしましては、アメリカのそのような情報をもとに、直ちに日航に対しまして、持っておりますDC10九機全部につきまして、当該部分の検討を速やかに、本日二十九日でございますけれども、本日じゆうに全部のボルトについて点検を行うように指示したところでございます。日航はそれを受けまして、ただいま就航しております飛行機をとめまして、当該部分の検討を行っておりますので、安全確保のための措置が十分できると思っておるわけでございます。
  41. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 運輸省、ありがとうございました。忙しいでしょうから、どうぞ。  次に、ワシントン条約の批准についてお尋ねをしたいと思います。  私どもが、かねてからワシントン条約の早期批准を関係方面に働きかけてきたことも御存じのとおりでございますが、その中で私は、昨年の五月十二日、バードウイークに当たって、公環特で、この条約の早期批准に関連をして、愛鳥週間の最大のプレゼントとして、この次の国会で批准の手続をとるように決意を述べていただきたいと、山田環境庁長官に申し上げました。長官は、「できるだけそういうことで対処する方針で臨みたいと思います。」と答弁をされ、さらに当時の大鷹政務次官は、「鳥や動物の取り扱い方とか態度が、国際的に見まして日本は決して文明国の一国として扱われていない、文明国までいっていないということを私はふだんからいろいろなことで体験しておりますので、岩垂先生のおっしゃいましたように本当にラムサー条約もこのワシントン条約も一日も早く締結してほしい、批准してほしいということで、私も一生懸命努力させていただきます。」と答えておられます。その後、日本野鳥の会が、国際条約批准促進の国際シンポジウムを開きまして、その席上でも、私どもは、国際自然保護連合や地球共存会など、国際的な団体、機関とともに、関係省庁にこの御努力をお願いをしてまいりました。また自然保護議員連盟の大石会長を初め社会党、公明党、民社党、自民党ももちろんでありますが、共産党、新自由クラブを含めてそれぞれの代表が皆さんに重ねて要請をしてきたことも御理解のとおりであります。  しかし、当初の通常国会会期中には提案されずに、延長された今日でもまだ国会提出されてはいません。やはり今国会でも無理だというふうに私ども判断をせざるを得ませんが、五月二十九日現在、環境庁長官、この問題について私どもはどういうふうに判断をすればよろしいでしょうか。
  42. 上村千一郎

    上村国務大臣 岩垂委員からいろいろとお話がございました。山田前長官が言われたことと私も同様に思います。そのとおりです。  それから、最近、国際会議へ出ましても、特に環境関係大臣ということもあるかもわかりませんが、日本の外国に対するイメージということを考えますと、どうも日本は経済一点張りとか、そういうふうなイメージが最近御承知のように強いのです。だから、いわゆる摩擦関係も起きる。そこへ、自然保護だとか野生鳥獣の保護というようなことに関心を抱いて進めておるという姿勢は、日本の非常にいいイメージを諸外国に与えるということは、私は実感を持って感じております。そのとおりだと思います。  それで、ワシントン条約の問題につきまして、これは早期にぜひ批准をしてほしい、提出するようにやってほしいという姿勢なんです。外務省が一応、条約関係でございますから、窓口になっておられるわけです。それでうちの方の局長も一生懸命になったりしましてやっておるのです。ところが、聞くところによりますというと、通産関係の業界との間の調整がまだはっきりしていない、こういうことらしいのです。それで外務省の方もきっと何とかというふうに思われます。この前も外務省の役所の方が来まして、そういうことを言っておりましたですが、とにかく人類共有の財産である貴重な野生動植物の保護というものにつきまして、国際協力を推進することがきわめて重要である、こういう認識のもとにワシントン条約は一刻も早く批准されるということを願っておるというのが環境庁の姿勢でございます。
  43. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 外務省に伺いたい。  事実上もう国会は終わりですね。間に合わないでしょう。はっきりさせてください。それならばその後の質問もまたしたいと思います。
  44. 小西芳三

    ○小西説明員 この条約をまとめるに当たりまして、二つの問題点がございますが、一つは国内法の整備の関係、これにつきましては、大体のめどがついておりまして、まず準備ができておるという状態でございます。ただ、いま長官からお話がありましたように、業界の関係で若干留保の品目をどの程度にしぼるかということにつきまして、かなりギャップは縮まってきておりますけれども、まだ残っておる。したがいまして、そういう状況であれば、今度の通常国会提出するということは時間的にちょっと無理ではないかというふうに考えております。
  45. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ワシントン条約は四十八年に署名されているわけですが、あれからもう六年の歳月が流れています。私どもは六年の歳月を無為に送ったのではないかというふうに実は言わざるを得ないわけでございますが、環境庁は、振り返ってみてこの月日というのが批准に短過ぎるとお考えになっていらっしゃるのか、長過ぎるとお考えになっているのか、ちょうどいいとお考えになっているのか、その辺を担当局長で結構ですが、これはもう六年という歳月がたっていますから、その点の率直な判断をお答えをいただきたいと思います。
  46. 金子太郎

    ○金子政府委員 私どもといたしましては、長過ぎると思っております。
  47. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 この三月にコスタリカで開かれた野生動植物取引規制条約締約国会議に出席した奈良大使から、外務省に何と言ってきているか、外務省、教えてください。
  48. 小西芳三

    ○小西説明員 この会議には奈良大使が代表として出席しました。日本はメンバーでございませんのでオブザーバーであったわけですが、ただ、オブザーバーとしてではありますけれども日本としては、この条約を早期に批准することが非常に重要であると考えておる、できるだけ早く国会の承認を得て、そのメンバー国になるように努力しているということを発言しております。
  49. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 なるべく早くの国会ではないでしょう。今国会における本条約の承認がぜひとも実現されるようお願いをする、こういうことじゃないですか。
  50. 小西芳三

    ○小西説明員 そのとおりでございます。
  51. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日本の早期加盟について、アメリカのオズボーン協会やイギリスにある鳥類保護協会など国際的な環境保護団体が決議を行っていること、また、今国会での批准がむずかしいという状況に対して、WWFと申しますが、世界野生生物基金のスイスの本部から日本野鳥の会に、条約促進のキャンペーンのために五千五百ドル、約百二十万円前後ですが、の緊急援助を決めたということが伝えられています。こういう国際的な世論の動向について外務省はどのようにお考えになっていらっしゃるか、率直に御答弁をいただきたいと思います。
  52. 小西芳三

    ○小西説明員 先ほど長官からお話がありましたように、この種の自然保護の条約につきまして、自然保護を国際的に協力してやっていくということにつきましては、これは一つの大きな国際世論がございまして、いま先生指摘のそういう関係団体も含めまして非常に大きな自然保護の流れというものがございます。したがいまして、外務省としては、このワシントン条約、それからラムサール条約につきまして早急に批准するということが、そういう国際的な流れにこたえていく道であるというふうに考えております。
  53. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もう一遍外務省にお尋ねしますが、条約批准の手続について、現在の進捗状況はいまおおむね聞きましたけれども、それも含めて、今国会での批准が無理だとすれば、一体いつごろをめどにどのような詰めをして、そうしてはっきりこれからどうしていくという方針を示していただきたいと思います。
  54. 小西芳三

    ○小西説明員 私どもとしては、今度の通常国会で御承認を得るということが目標であったわけです。実際には、先ほど申し上げたような事情で今度の国会に出せないということでございますが、これはきわめて残念なことであるというふうに考えております。したがいまして、最後の残りました詰めを早急に——今度の国会に出す、出さないに関係なく、その作業は非常にスピードアップして早急に終える。終え次第、次の国会、それが通常国会であるか、あるいは臨時国会であるかは存じませんが、とにかく次の議会にこの条約の批准を求めるということで努力していきたいというふうに考えております。
  55. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 環境庁長官、それはよろしいですね。それをバックアップしてやってください。
  56. 上村千一郎

    上村国務大臣 環境庁としては、先ほど申し上げたような姿勢でございますから、バックアップしていく所存であります。
  57. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ワシントン条約の批准について本格的な協議が始まったのはごく最近のことなんですね、本格的には。六年という歳月がある中での最近だということを強調しておきたいと思うのですが、外務省や環境庁通産省、三者協議の中で、いまお話をいただいたように、環境庁なり外務省が、不十分ではありますけれども、それなりに努力をしたことを私は否定しようとは思いません。しかし、通産省の態度というのは、私は大変遺憾だと言わざるを得ないのであります。きょうこういうやりとりをしているときにも、絶滅のおそれのある動植物が、エコノミックアニマルではございませんけれども日本人の商売人の利益のために捕殺されているということについて、一体通産省はどのように考えていらっしゃるかということ、その責任を問わざるを得ません。  そこで、伺いますが、通産省は一体どのくらい保留したら気が済むのですか。種類、品目をはっきりさせていただきたいと思うのです。私の漏れ承るところによると、日本関係のない品目を含めて三十品目だなどということをおっしゃっておられた時期もあるようでありますが、その点、この際明確に御答弁をいただきたいと思います。
  58. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 通産省といたしましても、国際社会における日本の立場、あるいは問題になっております事業、主に爬虫類の革なめし事業でございますが、その原材料のほとんど一〇〇%を海外からの供給に仰いでおるという実情からいたしまして、国際的な理解なしにはこの事業も立ち行かない、原材料が全く輸入されなくなれば事業自身も立ち行かなくなるということも十分認識しておるわけでございます。これは関係業界も同様でございます。ただ、一方におきまして、この革なめし事業というのがきわめて零細規模の企業によって構成されており、また非常に就業環境その他劣悪でございまして、国内的に抜本的な対策を必要とするような実態にございます。したがいまして、できるだけこういった業界に悪影響、修復のつかないような影響が出ないようにということは、当然事業所管省としては考えざるを得ないわけでございます。こういった二つの命題の中でバランスをとりながら批准に向かって努力をしていくとい、う姿勢は、従来も続けておりますし、今後も続けていくつもりでおります。  いまの留保の数につきましては、そういった対外的な問題の認識と国内的に必要とされる対策、これの認識によりまして変わり得る要素もあるのじゃないかと思います。特に重要な問題となっております国内的な諸施策につきまして、いま関係者の間でその認識の一致を図るべく努力が続けられておるわけでございまして、こういった努力の結果を待ちまして、留保についても関係業界あるいは関係省庁調整を図ってまいりたい、かように考えております。
  59. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ワシントン条約の対象種の保留状況というのは、国際的に見て、御存じのとおりに、カナダが七種、フランスが六種、ソ連が三種、オーストラリアが二種、南アフリカが二種、ボツワナが一種。これに去りますと、日本のいま予想されている、あるいは通産省考えている種類、私の方から聞きますけれども、十品目前後でしょう。それはもう一遍後で答えていただきますが、それでも世界一の保留国に実はなってしまうのであります。したがって、いつまでも保留をするということは許されないと私は思うのです。それならば、たとえば加盟をして二年ないし三年、それは年月もありましょうけれども、そういう期間で保留を解除していくというふうな努力は当然すべきだろうと私は思うのです。いまになって、業界の状態か大変深刻だから。なぜもっと早くからお取り組みにならないのですか。ごく最近じゃないですか、業界団体と話をしたのは。そういう点で、この際保留を考えている通産省の品目の数、それからいまのような、加盟をして一定の期間を置いて保留を解除していくというような形を含めて、世界で最大の保留国だなどと言われないような手続を考えるべきだろうと私は思いますが、その点をちょっと簡単に御答弁いただきたいと思います。
  60. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 先ほど申し上げましたように、日本の置かれておる国際的な立場、あるいは業界の置かれておる国際的な関係等からいたしますと、批准はできるだけ早い方がいいというふうに判断されます。また留保の数もできるだけ少ないにこしたことはないという判断もなされようと思います。  ただ、いままで通産省として、このワシントン条約署名後何も業界について指導をしていなかったということではございませんで、たとえばタイマイにつきましては、署名された同じ年にタイマイ関係調査団を海外に派遣し、また爬虫類につきましても、四十九年、五十一年あるいは五十三年と三回にわたり海外に業界関係者から成ります調査団を派遣いたしまして、実態調査あるいは養殖の可能性等も調べてもらっているわけでございます。  ただ、当時と基本的に異なりますのが、この養殖の態様でございますが、たとえば卵を持ってきてそれをふ化し育てる、あるいは生まれたばかりの小さなものを持ってきて飼育するということでは、国際的な商取引の対象には認められないという実態が明らかになりつつあるわけでございまして、いままで特に爬虫類の業界が考えておりましたような養殖ではとても対応できないということから、今回の問題が持ち上がってきておるわけでございます。したがいまして、こういった従来の努力に重ねまして、今後、これは通産省だけではできない点もございますので、担当省、関係省庁とも相談いたしまして、どういう形でこれから対応できるかという点については努力を続けてまいりたいというように考えております。  したがいまして、その品目の数につきましては、まだ完全にどういう形での養殖が可能かというふうな技術的な検討が済みませんと、どれだけでいいということがこの段階では断言できないという状況でございます。
  61. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 そのおおむねの数は言えるでしょう。大体私も業界と皆さんが話し合ったことを知っていますよ。だから、そこをぼかさないで、十とか十一とかそんな数に上っているでしょう、その程度と判断してよろしいかと私は聞いているのです。それにはお答えくださいよ。
  62. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 ほかの関係省庁と同様に、われわれもできるだけ早く、しかも留保の数を少なく批准のための手続をとるべきであるというように考えております。いまこの段階で幾らぐらいということを明確にすることがかえってそういった方向を危うくするという可能性も否定できませんので、今後の努力にひとつ時間をかしていただきたいというように思います。
  63. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これはもう一遍、くどいようですけれども、やはり数が非常に大きな意味を持つわけですから、私が想像している程度のものだというふうにお答えをいただければいいわけでありまして、どうしても十だとか十一だとか言うことが影響があるとすれば、そういう質問を私はしているのですから、その点に配慮しての御答弁をいただきたいと思います。  それから、条約に加盟すればワニとかヘビなどの皮は輸入できなくなるという状態があるわけで、これは当然のことでありますが、加盟しなくても、実は資源的には非常に先細りの状態にあることは業者自身も知っていますよ。このままいけば加盟するかしないかの問題ではなしに、これはもうだめになるという見当をつけていますよ。そういう意味で、いま必要なのは、いま高瀬さんからお話がありましたけれども、養殖の可能性とか現状の把握とか、そういう問題についての調査団を派遣してほしい。これが一点。  二点目は、発展途上国の政治情勢などを配慮して、養殖事業を安定した軌道に乗せるためには、国が積極的な指導というものに乗り出してほしい。そうすれば、業界も対応するというふうに考えていますので、その点が二点。  三点目は、養殖基地というのを一単に海外だけでなしに、沖繩などを初めとする気象条件の共通なところを生かして設けることができるような研究をやるべきではないだろうか、こんな提案を私から申し上げたいと思います。  これは若干そういう筋の方々から意見を伺っているわけでございますが、その点について、これは業界に対するあなた方の誠意のある態度の一環でもございますので、誠意を持って御答弁を煩わしたいと思います。
  64. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 まず第一点の品目の問題でございますが、これにつきましては、かつて三月下旬でしたか四月上旬でしたか、定かに覚えてはおりませんが、各省庁の連絡会議のかなり前の段階で、一度十品目から十二品目ぐらい、ただいま先生が御指摘の数にほぼ該当する品目について、必要最低限これだけの留保が必要であるということを通産省の立場から申し上げたことがございます。ただ、その後にいろいろ行き違いといいますか、感情的な問題等も起こりまして、その後の業界との調整が難航しておるという実態でございますが、一たんそういう数が出ておりますので、それが今後の収拾を図るという上での少なくとも一つの目安にはなるのではないだろうか。これは必ずこういうふうになりますということはとても申し上げられる段階ではございませんが、われわれの一つの目標というふうには申し上げられるのではないかというふうに考えます。  それから、あと調査団の派遣あるいは海外における養殖事業のほかに、国内においてもしかるべき措置をとるようにというお話でございます。先ほども申し上げましたように、ここ六カ年の間にも調査団を派遣しておりますが、今後も引き続き、できる限り、できる範囲内で、効果を上げるような形での調査団の派遣というのは考えてまいりたいと思っております。  それから、国内につきましては、すでに東京都におかれまして、小笠原諸島の近くで、これはタイマイではございませんがアオウミガメ、ウミガメの一部についてテストされておる。それから長崎県におきましても、これはべっこうの主産地ということもございまして、技術的なむずかしい問題もあるようでございますが、タイマイの養殖ができないかどうかという御検討もなさっておるように聞いております。  いずれにいたしましても、これはいままでの四回にわたる調査団の派遣を通じても経験したことでございますが、まず業界、事業者のやる気が一番でございます。こういう状況になってきており、また業界、団体といたしましても、国際的な環境が一層厳しくなっておるという事態も認識いただきつつあるように思いますので、なお一層業界の主体性を出してもらいまして、それに政府が協力していくという形での対応を今後考えてまいりたいというふうに思います。
  65. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 国が積極的に指導していくかどうか。
  66. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 その点につきましては、関係省庁とも話をいたしまして、できるだけのバックアップはしてまいりたいというふうに思っております。
  67. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 高瀬さんだけ責めて大変恐縮なんですが、いまを除けばまたチャンスがかなり延びちゃうと思うのですよ。ここが大詰めだと思いますので、窓口が開いて、統一した形で業界との話し合いができるというルールが皆さんの努力ででき上がってきているわけですから、これは責任を持って、さっき外務省から御答弁いただいた形に通産省としてもこたえる、そのことを御答弁いただきたいと思います。
  68. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 たとえばタイマイを主原材料といたしますべっこう製造業におきましては、従来から組合が幾つにも分かれておりまして、そういった前向きの事業を業界としてやるにつきましても、足並みがなかなかそろわないというような実績も過去にあったわけでございますが、最近、ばらばらであった業界、グループも少なくともそういう前向き対策については足並みをそろえなければいけないというふうな気運がようやく出てきております。また爬虫類につきましても、従来のような対応ではいけないという認識も深まっているようにわれわれ受けとめておりますので、まず、そういった業界の結束を固めて、その上でできるだけ積極的に必要な諸施策を講じていくというようにしてまいりたいと思います。
  69. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 最後にもう一遍。環境庁長官、いまのような話です。次期国会、よろしく頼みます。御答弁を煩わしたいと思います。
  70. 上村千一郎

    上村国務大臣 先ほどバックアップというようなことがございましたが、実は、この野生の鳥獣の保護というのは、私の方の重要な役目にもなっておりますので、いま御指摘のような点をも踏んまえまして、近いうちに野生鳥獣関係の専門家の方に私の方で集まっていただいて、そうして、いろいろ国際的な野生鳥獣の保護という問題、ワシントン条約の関係ももちろんございます。とともに、国内にもトキの問題、ヤマネコの問題あるいはいろいろな問題が最近起きております。これにつきまして専門家の方から御意見を聞いて、そして積極的に取っ組んでいこうという姿勢でございますので、先ほどああいうふうに申させていただいたわけでございます。
  71. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 次期国会……。
  72. 上村千一郎

    上村国務大臣 これはいま言うとおり、何としましても早い時期にやらなくちゃならない、こう思っております。時期を失しますと、いろいろな問題が起きてきまずから……。
  73. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もう一遍くどいようですが、山田さんの御答弁があって、私はかなり期待して、それなりにバックアップをするつもりでやってきたのですが、こういうことになってしまったので、次期国会を目指して最大限の努力をするという御答弁を……。
  74. 上村千一郎

    上村国務大臣 御趣旨に沿いまして、最大限の努力をさせていただきます。
  75. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 次に、先ほど水田委員からも御質問がございましたが、公害健康被害補償法の地域指定の問題について伺いたいと思います。  川崎も市民の間に大変いろいろな反響が起こっておりまして、深刻な波紋が広がっていることは御理解のとおりでございます。もう一遍伺いますが、五月八日付の各紙に報道された、これは火のないところに煙が立たないはずでございますが、そういう説明というか、回答の仕方などを含めて、問題があったと私は言わざるを得ないわけですけれども、従来と変わらない、いま改めてここで一歩踏み込んだものではない、こういうふうに理解してようございますか。
  76. 本田正

    ○本田政府委員 先ほども水田委員の御質問にお答え申し上げましたとおり、私ども公害健康被害補償法を担当しておりまして、その目的というのは、公害患者の「迅速かつ公正な保護を図る」ということでございます。そういう観点から、この法を適正に、よりうまく運営していくという方策は、当然これは事務当局として従来から考えているところでございます。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕 その中にたまたまいま御指摘の件が入るわけでございますけれども、私どもとすれば、地域指定の解除要件だけを取り上げて検討を進めているというわけでは決してございませんで、制度万般にわたりまして検討を進めているのは事実でございます。
  77. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 制度万般の中身についてもう一遍、くどいようですが、御答弁をいただきたいと思います。
  78. 本田正

    ○本田政府委員 公害健康被害補償法が四十八年にできまして、一つ二つ、あるいはたくさんの割り切りのもとに出発しております。その中で、現在いろいろと検討すべき事項が申し上げましたようにあるわけでございます。これは長官からも御答弁なさいましたが、そのとおりでございまして、中公審においても自主的に検討が進められている現状でございます。  具体的にというお話でございますが、たくさんな項目があります。たとえば地域を指定する要件というのが四十九年に中公審から答申をいただいておりますが、その要件において窒素酸化物をどういうふうに評価するのかというような重要な問題ももちろんございますし、それから大気の汚染の改善状況に照らしまして、現行のいわゆる暴露要件といったものを見直す必要がないだろうか、そういう検討、それからまた、大気汚染による健康被害の予防とか、あるいは治療のためにどういった施策というものが必要であるかというようなこともございますし、また事業者負担のあり方をどう考えるべきか等々の問題がございます。
  79. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 川崎のことだけを申し上げて恐縮ですが、市の医師会で調査したことをこの前も申し上げたことがございます。小児ぜんそくの患者が非常に多いということが指摘されています。SO2は大いに改善されたにもかかわらず、NO2の濃度が改善されていないという状況、あるいは工場地帯ではないのですけれども、東名高速や第三京浜が通っている高津区というところ、川崎の北の方でございますが、小児ぜんそくの患者が多発しているというふうなことを考えますと、NO2の人体への影響が深刻であるということを現実のデータが示しているわけでございます。昨年議論になりましたNO2の環境基準の緩和に対して私どもが強く反対をしてきた理由というのは、実はここにもあるわけでございます。こうした時期に指定の解除というのは重大な問題だと言わざるを得ませんので、その点は反対をする立場を強調しておきたいと思います。しかし、NO2を認定の指定の指標とでもいうのですか、それに加えることの妥当性というのはもうお認めになっていらっしゃるわけでしょう。いかがですか。
  80. 本田正

    ○本田政府委員 NO2を指定要件の中にどう取り込むかということにつきましては、まだ明確な結論は持っておりません。申し上げましたように、公害健康被害補償法上のいわゆる指定地域という観点からどういうふうに評価するのかという問題を検討しておるというのが現状でございます。
  81. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 しかし、いま私川崎の実例をあえて申し上げましたけれども、そういう傾向というものは全国的にもあると思うのです。その点はお認めになりますね。
  82. 本田正

    ○本田政府委員 NO2によるところの健康被害であるかどうかということにつきましては、いま御指摘の地域について、小児ぜんそくというお言葉をいただきましたけれども、あるいはそれに類する例の四つの疾病、いずれも非特異疾患でございますが、そういったところをよく調査してみないと直ちにNO2によるところの影響であるかどうか、非特異疾患でございますのできわめてむずかしい問題だと思います。そういったことも含めまして予防、治療の観点からも検討を進めているのが現状でございます。
  83. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 本田さんが保健部長におなりになる前から何回か調査をなさってきたわけでしょう。いつごろまでに結論をお出しになるつもりなんですか。タイムテーブルをお示しください。
  84. 本田正

    ○本田政府委員 いまのは自動車沿道調査のことだと存じますが、そういったものもやっております。ところが、NOxにつきましては、当時、調査の結果からの御指摘一つといたしまして、例のBMRCという調査様式が、非常に不都合と申しますか、ぴたっといかない調査一つ手法であるというところから、BMRCというのをNOx用にひとつ整理検討する必要があるのじゃなかろうかという御指摘もあったわけでございます。それに基づきまして、いま私どもでBMRCに見合うようなNOxにふさわしい調査方式といいますか、これはアンケート調査でございますけれども、そういった方式の開発をいま専門家にお願いしているところでございます。
  85. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 指定解除の関連で、いま御答弁いただいた指定四疾病の中から、たとえばぜんそく性の気管支炎というものを外すというような議論は起こっていますか。
  86. 本田正

    ○本田政府委員 主として小児に多いぜんそん性気管支炎というのはいろいろな説がございまして、本当の学名としての疾病として一つ確立した病気であるかという説、それから、いやいやそうじゃない国際疾病新分類等にも名前が載っている以上は病気である、学会で認められたいわゆる俗名じゃないというようないろいろな意見があるわけでございます。そういうところをどういうふうに——外すとか外さぬとかそういう検討じゃもちろんございませんけれども、学問的にどういった方が適切であるかという検討は専門家等の意見を聞きながら、検討と言うと大げさでございますが、そういう勉強も私どもはしておるのは事実でございます。
  87. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 時間がありませんから、それ以上詰めませんか、本田さんが患者団体と話し合われたあの後、関係の患者団体ともう一遍お目にかかっていますが、今度の報道によって患者の皆さんに誤解を与えて御心配をかけたことは申しわけない、いますぐ解除するつもりはない、いまこんなに患者さんがいるのにやろうとしてもそれは無理だ、こういう意味のことをおっしゃっておられます。大変謙虚な態度だと思いますが、そのとおり信用してよろしゅうございますか。
  88. 本田正

    ○本田政府委員 その辺が非常に誤解を招いたところだと思います。地域指定をいきなり取り消すとか取り消さないということは、非常に科学的な、学問的な根拠というものが要るわけでございます。それを判断いたしますために物差しとしての解除要件というものが要るのでありまして、その物差しを決めて、そしてずっと後になってその当てはめが行われるということでございますから、御心配なさいますように、たとえば川崎とか四日市を爼上に上げて地域指定を直ちに取り消すのか取り消さぬのか、そういう段階ではないということを御了解いただきたいと存じます。
  89. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私があえて環境庁に伺いたいのは、環境庁がこれまで公害病の回復のためにどれだけの御研究をなさってきたかということであります。公害病を全治させる有効な治療方法がまだ見当たらない、療養センターの設置もむずかしいということでは、私はどうにもならぬと思うのであります。解除を迫っているのは、経団連などに代表されるいわば加害者の企業であります。回復のために国がもっと積極的に対策を進めてほしいというのは、弱い立場に立っている被害者である国民の非痛な訴えであります。環境庁は加害者の圧力に押されて弱い立場に立たされた国民を押しつぶさないように努力する必要があると思うのであります。  長官に伺いますが、そういう立場というものを行政の姿勢としてひとつしっかり貫いてほしいものだと私は思うのであります。環境庁があってもなくても同じだなんてことに国民が思うようになっては、環境庁の存在理由がないと私は思うのであります。率直に言って、環境庁の職員がおれたちは国民の健康や生命や日本の当然を守るために、国際的にも責任を果たしていくためにがんばっていくと胸を張ってやっていた時代から、いまは恐らくは霞が関の中でもちょっと肩をすぼめて小さくなって歩かなければならぬというふうな状態になっている実態長官が御配慮願って、再び胸を張って国民の健康や生命を守ることができるような環境庁の威信といいましょうか、威信というのは余りいい言葉じゃありませんが、権威というものあるいは信頼というものを取り戻すために努力を願いたい。そのことを含めて、この解除の問題に関連をしての御答弁をいただきたいと思います。
  90. 上村千一郎

    上村国務大臣 解除の問題につきましては、水田委員の御質問の際にも申し上げましたし、またただいま部長も申し上げておりますので、そういうふうに受けとめていただきたいと思います。  なおいま御指摘の、たとえば強い者の言いなりになって弱い立場の人の信頼を失う、これはもうあってはならぬと思うのです。元来、法の趣旨からいいましてもわれわれの姿勢からいいましても、公害は未然防止をする、それから公害の被害者の方については本当に誠心誠意救済に努力する、これが大きな柱だと思うのです。そういう意味からとかくいろいろと御批評があるということは耳にします。が、それを私どもは深く反省しまして、そして御期待に沿うように全努力を挙げていく所存でございます。
  91. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 最後に一言だけ。  入門規制の問題について、私はかねて問題提起をしたことがございます。この間もとがめられました。黙ってすっと入っていったら、どこへ行くのですか、とやられまして、謝って頭を下げてきました。この間の患者団体の皆さんがお目にかかりたいというときにも、実は全国各地の代表や団体の数が多いものですから、かなりしぼって調整してみても結局三十三人になってしまった。そしたら環境庁は、いや、二十人でなければ困りますということで、結果的に十三人の人たちは外で待っているということになるわけであります。患者の皆さんが外で立っている、こういう状態が生まれるわけであります。解除の問題、これは入門規制の解除ですよ。私はかねて要請をしてきたことでございますけれども、あれから長い月日がたっていますから、もうそろそろ御検討を願ったかどうか、そしてそれがどうなっているか、御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  92. 正田泰央

    ○正田政府委員 入門規制につきましては、かねがね先生からいろいろここでも御要請がございましたし、また別途いろいろな話を承っておりまして、現状につきまして、率直に申し上げまして、部内で常時検討いたしております。  ただ、目標といたしますところは、いろいろ御意見があるとは存じますが、何と申しますか、陳情、要請その他につきまして、ある程度考え方、ルールみたいなものが定着してほしいな、こういう気持ちがございます。そういったような事態ができますればいろいろ考えなくちゃいかぬ。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕 また現状がどうかという点につきましても、そういう観点から照らしてどうなんだろう、あるいは中身におきましてももっと工夫がないかとか、そんなようなことを考えておりますので、御要請の向きは常々頭に置いてやっているつもりでございます。よろしくお願いします。
  93. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私は入門規制という物理的なことだけを申し上げているのではなしに、環境庁というものが開かれた役所であるという機能を、国民に対してもいつもそういう姿勢をとっていくということが大事だと思いますので、入門規制の問題は一つの象徴みたいな形になっているわけですが、願わくは早急にそういう対策をお考えいただいて、解除への段取りをとっていただきたい。  以上で終わります。
  94. 木原実

  95. 野口幸一

    野口委員 私は、与えられました時間がきわめて短いので、後ほどまたこういう機会を与えられましたならば改めて討論させていただきたいと考えておりますが、とりあえず琵琶湖の水質保全問題について若干の御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  恐らくこの問題につきましては当委員会でも、またその他の委員会でも課題として取り上げられたことたびたびあるだろうと思うのでありますが、琵琶湖の水質保全対策につきましては、地元の滋賀県も特に力を注ぎまして、鋭意努力いたしておりますが、また国にいたしましても、このことについては特段の御配意をいただいておるようでありまして、多とするところでございます。琵琶湖総合開発特別措置法が昭和四十七年に制定されまして、もう七、八年になるわけでありますが、以来国や県があらゆる角度から琵琶湖というものをながめ直して検討を続けてきておられることにつきましては、もちろんこの法の趣旨から考えましても当然ではありますが、公害防止条例の改正等によりまして規制の強化、またこの総合開発計画の見直しというものが行われている現段階にありまして、琵琶湖を取り巻く環境情勢の変化と申しますか、こういうものが改めて爼上に上る今日であるということを考えますときに、ひとつ環境庁としても、この琵琶湖問題というのを単なる滋賀県という単県の問題ではなくて、日本の湖沼における水質保全という問題からも、また日本で一番大きい琵琶湖という特質から考えましても重要ではないかと思うのであります。  昨年瀬戸内海環境保全臨時措置法、また水質汚濁防止法の一部改正が行われまして、国におきましても、東京湾、伊勢湾あるいはまた瀬戸内海等の閉鎖水域におけるところの総量規制の問題が考えられておりますが、こういった水質保全対策、なかんずく湖沼も含めまして今日までの水質保全という課題につきまして、主要なる経過といいますか、今日までのたどってきました道筋というものを長官からひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
  96. 上村千一郎

    上村国務大臣 いま野口委員からおっしゃいました琵琶湖の対策というものを滋賀県単県だけの問題というふうには考えていないわけです。この前、私も総理と御一緒に滋賀県へ参りましたときも、いろいろと各方面からも熱心なお話がございました際に、私も申し上げて、これはとにかく近畿圏の飲料水その他の用水の供給源にもなっておるだけでなくて、その風光の点から言いあらゆる点から言い、それからその規模の問題から言って、これは滋賀県だけでなくして日本の宝という認識のもとに国も対処すべきであると思うし、私どももそういうふうな考え方であるということを申し上げたわけです。  その際に、それならば、水質汚濁防止法が昨年の六月に改正されまして総量規制が導入されたが、琵琶湖はやる意思があるのかないのかという御質問がございました。それで、そのときに、それは本年の六月に導入をするということで法律上そうなっておりますので、やる、けれども、いまのところまだ琵琶湖を対象にはしておりません、いまは東京湾、それから伊勢湾、瀬戸内海、こういう三つを当面対象といたしまして総量規制を実施してまいるつもりですが、それだからといって琵琶湖に対しますところの関心を決して軽く見ておるわけじゃない、私どもは大きな関心を持ってやる。実はここ数年来赤潮が、委員はお地元だからもちろん御承知のわけだと思いますが、あのきれいな琵琶湖に発生しておりますね。それでこの五十四年度から淡水赤潮に関する調査実施するというわけで予算措置をしてきておる、こういうようなことがある。それからいろいろな問題があの対策についてきっと指摘されておると思います。それで、琵琶湖総合開発特別措置法というあれがあるわけです。これは御承知のように、いま、もうあと二、三年ですか、三年くらいになっておる。これを延長するのかどうかというような御質問もございました。けれども、まだ日があるから経過を見てやるが、とにかく琵琶湖問題については私どもは真正面から取っ組んでいく姿勢である、こういうようなことを申し上げた、その考えに変わりはございません。
  97. 野口幸一

    野口委員 いま長官から御指摘ございましたので、重ねて言う必要はないと思いますけれども、もちろんわが国第一の湖でありますし、二百七十五億立方メートルという貯水量は、わが国の産業上から見ましても、またおっしゃいました生活用水といたしましても非常に重要なものでございます。実は先におっしゃいましたが、総量規制の問題は、琵琶湖というものについてはある一定の時間によって水が変わっているのではないか、そういうような考え方をお持ちの方かあるのではないかということ、これは恐らく専門家の方は御存じだと思うのでありますけれども、琵琶湖は他の湖に例のない一つの還流というのがございまして、水温の躍層傾斜に基づく圧力勾配、それから地球の自転による転向力と、それからそれの回転に伴う遠心力、この三つによりまして水流があるわけでありますが、しかし、これによりまして琵琶湖の水が一巡いたしまするのに大体五カ年かかる、こう言われておるのであります。そうなりますと、順次下流に落ちているとは言いながら、いわゆる閉鎖水域と言っても過言ではない。だから、先ほどおっしゃいましたように、東京湾、伊勢湾等と同時にこの琵琶湖の総量規制という問題に取っ組んでもらいたい。少なくともこの問題に早期に取り組むということをお示しいただくことが、まず琵琶湖の水質保全の第一番の課題であろう、こういうように私は思うわけであります。したがいまして、いつごろ、どのような形でこの問題を解決しようとされておるのか、この問題についてひとつ少しく突っ込んで御答弁をいただきたい。
  98. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 ただいまの琵琶湖の総量規制の問題でございますが、先ほど長官がお答え申し上げましたように、ことしの六月に施行が予定されております水質汚濁防止法によりまして、とりあえず瀬戸内海と東京湾、伊勢湾の三水域を対象にすることで準備を進めているわけでございます。琵琶湖につきましても、御指摘のように法律の要件には合致をしておるわけでございます。また琵琶湖自体は一県でございますが、その水は近畿の非常に多数の方々の飲料水その他に利用されているということで、大変重要な湖でございます。それから一方、最近の水質の状況を見てまいりますと、やはり湖沼が非常に問題が多いということでございます。琵琶湖であればまだ打つ手はいろいろあろうかと思います。そういう意味で、私ども琵琶湖問題は非常に重要に考えておるわけでございます。  ただ、総量規制の実施につきましては、やはり若干の準備が要るのではなかろうかということを考えておりまして、私どもも、琵琶湖の総量規制ということを念頭には置いて実は調査をしておるわけでございまして、四十九年以降琵琶湖を対象にケーススタディーを実施いたしますとともに、環境容量の把握というような調査を続行中でございます。そういう意味で、私どもも今後さらに検討を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  ただ、先ほど来御指摘がございましたように、琵琶湖につきましては、また別の法律もあるわけでございますので、その辺の検討なりアフターケアなり、そういう面と絡み合わせながら検討を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  99. 野口幸一

    野口委員 いまお答えをいただいたように、環境庁も決して琵琶湖を放置しているわけではないというお答えは、私も県に参りましていろいろと相談をいたしますとたびたび出てくる話でございまして、その御努力に対しては敬意を表しますが、さらに一歩進んで、先ほどもお答えの中に若干出てまいりましたように、いわゆる総合開発の特別措置法があと二、三年といいますか、四十七年ですから五十七年で終わるわけであります。それの継続という問題もさることながら、この琵琶湖総合開発特別措置法ができました四十七年当時も水質問題は非常に課題になっておったわけでありまするけれども、今日ほどではなかったと言っては過言かもわかりませんが、特に今日の時点ではよけいにその部分は大きく取り上げなくてはならないものだということになってきておるわけであります。国としても重要施策の一つであるという考え方をお持ちのようでありまするが、この際、瀬戸内海と同様に有効な施策を推進するために、特別立法をもって措置すべきではないだろうか、こういう考え方を私は持っておりまするが、環境庁としては、瀬戸内海の環境保全の立法と同じような形を琵琶湖にとるということについてどのようにとらまえておられますか、ひとつその点も伺っておきたいと思うのであります。
  100. 上村千一郎

    上村国務大臣 いま環境庁としまして、それならば琵琶湖に対して特別立法を考えてという段階には、そういうところへはまだ検討はしておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、琵琶湖というものは非常に重要なものであるし、これは国としても当然力を入れていかなければならぬ、この姿勢があればこそ、琵琶湖総合開発特別措置法という法律がほかと違ってできておるのですからね。しかし、水質の総量規制なんかも導入しなければならぬ。既存の法律はある、要はそれをどういうふうにやるか、これをいま真剣に検討しておると思います。  それから、これはもちろん委員御承知だと思いますが、瀬戸内の場合は各議員の方、地域の方が主力になりまして、そうしてああいう法律が醸成されたということは御承知だと思います。私どもは、あの瀬戸内海は魚類の宝庫でもありますし、景勝としましてもすばらしい景勝を持ち、関係府県も非常に大きいということでああいうふうになってきたと思います。それから琵琶湖も、これは滋賀県単県だけのものではございません。いろいろな方面に大きな影響と貢献をしておるという認識のもとにいろいろな調査はしておりますが、率直に申し上げまして、単独の立法をいま琵琶湖に考えておるかというと、そういう作業はまだ考えていない、こういう実情でございます。
  101. 野口幸一

    野口委員 瀬戸内海の場合は関係する府県が非常に大きく、また議員もたくさんいられまして、その意味では非常に強力なのでありますが、琵琶湖といえば滋賀県だけしかもとがないわけでありまして、そういう意味では非力であります。したがって、関係する府県は二府四県、近畿地方それぞれにあるとはいいながら、やはり国の立場から推進をしてもらうということがどうしても必要ではないだろうかと私どもも思います。  したがいまして、これは御答弁はいただかなくても結構でありまするが、琵琶湖の重要性ということは、先ほど来長官も、また関係の方々もそのようにおっしゃっておられるわけでありまするから、その上に立ちまして、また単なる単県の問題ではないという御認識がありますならば、総量規制の問題にいたしましても、あるいはまた琵琶湖総合開発特別措置法が改正される、あるいはまたその継続が見込まれる際に合わせて、少なくともそれまでには環境保全の立場からの立法をひとつお考えいただきたい。それがないと、幾ら口でいろいろ言ってみましても、琵琶湖そのものの水質保全というのは守られていくのだろうかということに対して、私は非常に大きな危惧を持つものであります。  私はたまたま琵琶湖の付近に住んでおりまするから、日常変わっていく湖の色を本当に心配げにながめておる一人でありまするけれども、五十一年ごろまでは、正直申し上げて水質はやや横ばい状態でありました。五十二年から、ウログレナを優占種といたしますプランクトンが広域にわたりまして異常発生いたしまして、いわゆる赤潮でありまするけれども、これはもう御調査いただいておるようでありまするからよく御存じだと思いますが、富栄養化の現象が出ております。昨年もことしもそうでありますが、ことしは私は実は実態を見てまいりまして、その異常な状態を目の当たりにいたしまして、これは大変だ、湖といえども内海の赤潮と少しも変わらない状況が起こっているのではないか、まさしく新しい局面が出ている、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、今日の状態の中にありまして、プランクトンの異常発生のメカニズムにつきましての早期解明を急がれていると思いますが、その現状と防止対策の調査はどのようになっておるのかということにつきましてお伺いいたしたい。
  102. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 先生指摘のように、琵琶湖につきましても、この数年来、持にウログレナの赤潮が発生しておるわけでございまして、これは日本では非常に珍しい状況でございます。琵琶湖に限らず、湖につきましてはかなり富栄養化が進行しておるわけでございますが、富栄養化につきましては、その要因物質でございます燐、窒素の発生源、工場だけじゃなくていろいろ農地、山林あるいは畜産あるいは生活排水といろいろなあれから出てきておるわけでございますが、その燐、窒素等のいわゆる栄養塩類に、あるいはそれに対しまして気温であるとか日照であるとかあるいは水温であるとかそういうものの変化、あるいは微量物質のビタミンであるとかそういうものの作用が加わりまして、異常なプランクトンの発生に結びつくということが言われておるわけでございます。そういうものの定量的な関係なりその辺の機構が未解明でございます。  そこで、私ども特に湖沼を中心にいたしましては国立公害研が筑波にあるわけでございますが、国立公害研の中にアクアトロンという施設等も設けまして、淡水の赤潮富栄養化の機構解明を現在かなりの金と人員をかけてやっておるわけでございます。また一方、霞ヶ浦では実際にそういうものをやろうということであるわけでございますが、それと同時に、やはり琵琶湖につきましては、先ほど申し上げましたように、県と一体になりまして、持にウログレナを中心といたします淡水赤潮の機構の解明に全力を尽くしてまいりたいというように考えておるわけでございます。  海につきましても、瀬戸内海ではいろいろ赤潮が発生をいたしまして、養殖漁業の被害等が出ておるわけでございますが、それにつきましても、その発生のメカニズムが必ずしも十分ではございません。そういう意味におきまして、海域と淡水域両方合わせまして現在その調査に取り組んでおるわけでございます。  そういう意味におきまして、現在精力的に取り組んでおりますので、その辺の結論的なことはまだ大分先になるわけでございますが、そういう面でその機構の発生の解明、それからまたそれによる対策の問題、これはやはりある程度機構の解明が進みませんとなかなか対策もとりにくいということでございますので、そういう点をあわせて検討してまいりたいと思っておるわけでございます。
  103. 野口幸一

    野口委員 ことし、淡水赤潮対策調査費約千五百万円ですか、お立てになりまして、琵琶湖の赤潮を中心として調査をしようという姿勢に対しまして感謝をいたしますが、さらに窒素、燐の規制につきましての行政指針がいまだ確立されていないように思われます。これはどのようにお考えになって今日の状況をながめていられるのか。あるいはまた環境基準の早期設定というものが急がれてしかるべきではないかと思うのでありますけれども、この辺の今日の段階における環境庁の御見解をひとついただきたいと思います。
  104. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 窒素、燐の規制に関連するわけでございますが、環境基準の問題でございますが、湖沼の自然条件あるいは栄養塩類と赤潮の関係、先ほど申し上げましたように必ずしも十分わかってないわけでございます。そういう意味で、現在ほかのものにとられておりますような、いわゆる環境基準といたしまして数字で画一的に決めるという状況にはまだ至っておらないわけでございますが、環境庁といたしましては、窒素と燐両方あるわけでございますが、どちらかといいますと窒素については非常にむずかしいという状況でございます。技術的にもまだ解明されない点が多々ございますし、また空中窒素の固定ということで海中に入るというようないろいろなメカニズムもございます。そういう意味におきまして、窒素につきましてはまだかなり時間がかかろうかと思いますが、燐につきましては、それに比べますと比較的除去技術も窒素よりは容易であるというようなことでございます。一応の技術的な見通しはあるわけでございますので、そこで燐につきまして環境指導指針あるいは燐の排水処理技術の指導指針、そういう策定のための調査を現在実施をいたしておるわけでございます。その調査結果なりあるいはその他のいろいろの文献等によりまして、燐の環境上の目的並びにレベルといいますか、そういうものはなるべく早く利水目的に応じて考えてまいりたいというように考えておるわけでございますが、何分にもまだ他の環境基準のようにこれだというところまでは若干時間がかかろうかと思います。  そこで、湖ではございませんが、瀬戸内海の新しく改正されました瀬戸内海環境保全臨時措置法におきましては、やはり富栄養化防止が法律上うたわれておるわけでございまして、そこで燐を指定物質にいたしまして、削減計画を知事さんがおつくりになるということで、計画的に削減をしていくということになるわけでございますが、私どもも現状のレベルに維持するということを目的にいたしまして、燐のレベルにつきましていろいろ検討をいたしておるわけでございます。そういう意味で、そういうレベルを設定をいたしまして行政指導によって極力発生源を抑えていくというような形で現在検討を進めているわけでございます。いずれにいたしましても大変大事な問題でございますので、精力的に取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。
  105. 野口幸一

    野口委員 そこで、これは要望になるわけでありますけれども、水質に関する調査研究機関とさらにまた監視、測定関係、これは建設省その他いろいろの機関がおやりになっておるわけでありますが、ひとつこれは環境庁として調査研究機関というものを常設をして、指導的な立場の中でこれらの問題を調査するような統合機関といいますか、そういうようなものをお設けになる考え方はないものでしょうか。その辺のところが非常に必要なのではないだろうか。私はどうもばらばらな調査だとかあるいはまた測定だとかいうものが行われているような気がしてならないわけであります。これは私の素人考えかもわかりませんけれども、いろいろな測定個所、測定機関あるいはまたそれらを総合して、今度は調査に入る段階の連係プレーといいますか、そういうようなものが——建設省の立場あるいはまた環境庁の立場、水質保全局との連携など、また県独自、そういうようなものが何かそれぞれがそれぞれの立場でいろいろやっておられることは理解をいたすのでありますが、総合的な調査研究機関というものを常設する考え方、これはないものだろうか。この辺についてお考えを伺いたい。
  106. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 水質の測定調査の問題でございますが、公共用水域の水質汚濁の状況に関します監視、測定につきましては、水質汚濁防止法に基づきまして知事が測定計画を立てまして、それに基づきまして県が独自にやる、あるいは国の地方行政機関の長と協議をしてつくるというたてまえになっているわけであります。  そういうことで、環境基準等の測定につきましては、これはたとえば琵琶湖の例で申し上げますと、環境基準点は九地区やっているわけでございまして、環境基準点九地区につきましては滋賀県が、それから補助地点の三十九地点では滋賀県と近畿地方建設局がやっているという状況でございまして、ただ、これにつきましては、知事がつくります測定計画に基づいて実施をしておるわけでございまして、このデータは当然のことながら知事が全部抑えておるわけであります。ただ、そのほかに建設省の出先であるとか、あるいは下流県の大阪府であるとか京都府であるとか、それもやはり独自の行政目的に従いまして調査をやっていることも事実でございます。これは建設省も近畿地建等がやはり琵琶湖の水位の問題であるとか水質の問題、これもやはり河川行政なりいろいろな問題から、水行政の観点からやっておるわけでございますし、それから大阪府も、これは歴史が非常に古いようでございますが、何か聞くところによりますと、大正年代からやっているという話でございますけれども、上水道、下水道の行政当局者でございますので……(野口委員「京都もやってますね」と呼ぶ)ああ、京都もそういうことですね、そういうことでやっておるわけでございます。したがいまして、私どもやはりそういうそれぞれの行政の必要性がやっているものまで統合というのはなかなかむずかしいのではなかろうか。ただ、やはりそういうデータは極力交換し合うとか連絡調整をよくするとかいうことが必要ではなかろうかというように考えておりますので、そういう面ではやはり連絡調整をよくするようなことでいろいろ関係機関の御協力を願いたいということで、私どもも滋賀県なり関係機関に要請をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、直接のあれではないかもしれませんが、研究機関につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、基礎研究につきましては、国立の公害研究所におきまして、私ども関係で申し上げますと水質土壌環境部というのがございまして、そこで基礎的な研究をかなりやっておるわけでございます。それからまた各公害県等で研究あるいは調査等もやっておるわけでございまして、やはりその辺の基礎研究と、国の研究機関と地方の研究機関といかに連絡をとりながらそこを円滑に進めていくかということがこれからの課題ではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  107. 野口幸一

    野口委員 大体環境庁がお考えになっていることはわかりましたが、私は少しく、先ほど来の質問でもありませんけれども環境庁という役所が国民の生活というものを守っていこうという立場から存在をしているということでありますならば、やはり進んで水質なら水質保全という問題を他の省庁に先んじて手をつけ、そして関係する省庁を逆に指導をするというような力強いものがあってほしいと思うわけでありますけれども、たとえば水質という問題は、これは非常に広い問題でありまして、これは言うまでもなく建設省を初めとする各省庁に大きな影響があるわけでございます。  私は一つだけ次に取り上げてみたいと思うわけでございますけれども環境庁自身がどういう姿勢をお示しになるかということによって、私どももまたそれぞれの対策をとります際に大きな指標となるわけでありまして、そのためには、やはり環境庁自身が前向きの姿勢をお持ちになっていただく、積極的な姿勢をお出しになる、このことがぜひとも必要ではないだろうかと私は思うのであります。  滋賀県では合成洗剤をひとつ県条例を制定してでも締め出しをしよう、こういう考え方を示しているわけであります。これはまた大きな波紋を呼ぶだろうと思うのでありますけれども、特に滋賀県はすりばちのような県でありまして、すべての河川が全部琵琶湖に注がれる、すべての生活排水も全部琵琶湖に注がれる、こういった中で構成されている琵琶湖というものの水質を守ろうとするならば、そこに居住する県民の皆さんに御協力をいただいて、水質保全のために合成洗剤は使わない、油脂性の石けんを使っていこうということを積極的に推進しよう、この考え方は私は正しいと思うわけであります。これに対して環境庁として、あるいはまた国として、こういう施策を行うに当たって積極的な御援助といいますか、それに対する姿勢と申しますか、そういうものをお示しをいただくわけにはいかぬだろうか。これは概念的なことのようなことを申し上げるのでありますけれども、数字的にどのようなたとえば援助をしろとかあるいはまた住民に対してこういうようなことでというような具体的なものはとにかくといたしまして、まず環境庁として、こういうような施策をとろうとしておる滋賀県をどのような観点でとらえて見ておられるかということをひとまずお聞きをしておきたいと思うのであります。
  108. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 大変むずかしい問題でございますが、合成洗剤が閉鎖性水域の富栄養化に寄与しておることは事実でございまして、そういう意味で、私どもも富栄養化防止の観点から、通産省に対しまして、あるいは業界に対しましても、合成洗剤におきます燐の含有量の低下あるいは無燐化ということを強く要請いたしておるわけでございます。  そこで業界の自主規制でございますが、燐の含有率を一〇%以下に抑えるということで、ことしの一月から実施しているわけでございまして、前は二〇%ぐらいあったわけですが、半分ぐらいになっておる。これをさらに低燐化あるいは無燐化に進めていくという努力を私どもも要請しておるわけでございます。  それから、もう一つは、やはり使用量がどうしても過大になっている。これを適正使用といいますか、そういうことを強く指導する、こういうことか現在私どもの一般的な方針でございます。  そこで、琵琶湖の問題が出たわけでございますが、私どもも滋賀県からいろいろ御相談は受けておるわけでございます。確かに合成洗剤を使わせないということを滋賀県ではお考えになっておるわけでございますが、私どもは方向としてはそれは結構なことでございますが、ただ、それを条例等でやることが制度的にどうかという問題、これはさらに詰めなければならぬ問題がいろいろございます。そういう意味で、この問題はさらにいろいろ滋賀県と連絡をとりながら進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  109. 野口幸一

    野口委員 ちょっと仄聞するところでは、この県条例で合成洗剤の使用をさせないようにしていこうという県の考え方に対して、環境庁反対をしておられるというようなことを耳にしたわけでございますが、まさかそのようなことを御指導されることはないでしょうね。その辺いかがですか。
  110. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 反対という意思表示はしていないつもりでございまして、今後さらにそれの妥当性の問題を詰めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  111. 野口幸一

    野口委員 それでは、もう時間も余りありませんので、最後になりまするが、汚濁除去対策としてはたくさんの課題がございますが、それぞれ先ほどからもお答えになっておりますように、関係省庁との関連がございます。そこで、私は、環境庁としての立場というものをより強くより明確にお出しをいただいて、それぞれの省庁に対して指導をしていただく。いまの合成洗剤の通産省対策もそうでありまするが、たとえば下水道対策、屎尿処理対策、家畜ふん尿処理対策、ごみ処理、産業廃棄物の処理対策等々、これはもちろん国全体としての問題もありましょうけれども、特に水質保全という立場、湖沼、しかも滋賀県の場合は全県的に特質的なものが、水そのものが全部琵琶湖に注がれている、そしてその水が下流へ流れて、二府三県ですかに利用されていくという特質から考えまして、これはいろいろと問題があるわけでありまするけれども、国庫補助率の引き上げという問題を特別に琵琶湖に関連をしてとかということはむずかしいでありましょうけれども環境庁として水質保全の立場からという特別の措置というものは求めることはできないものであろうか、この辺のところの見通しを、非常にむずかしい言い方であろうかと思いますけれども、お答えをいただけないであろうかと思うのであります。  それと同時に、そういうことを考えてまいりますと、先ほど来申し上げておりまするように、他の環境保全問題、持に水質保全問題というのは、瀬戸内海と同様な特別立法をしなくてはならないのであろうかとか、あるいはまた総量規制の問題も含めて琵琶湖総合開発法の改定という問題も考えなくてはならぬだろうかということも頭に浮かんでくるわけでありまするけれども、総合的に見まして、これらを今後どのように環境庁としては進めていくお考えであられるのか、このことを余り時間がありませんので、ついでにまとめてお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  112. 馬場道夫

    ○馬場政府委員 いろいろな水質保全のための各種事業等の補助率等の問題でございますが、これは国の財政に関係する問題でございますし、また各省それぞれがやっておられるわけでございますので、なかなかむずかしいわけでございますが、私どもの立場は、やはり琵琶湖あるいはその他の閉鎖性水域におきまして、これらの事業が円滑に進行するような手だては何らか考えてほしいというのが私どもの立場でございます。  建設省におかれましては、下水道につきまして下水道財政のためのいろいろ研究会等も開催をされておるようでございます。そういう意味で、私どもなるべくそういうものが円滑にさらに進捗するように希望してまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、全体の問題でございますが、これは長官からお答えいただいた方がいいかと思いますが、私ども、閉鎖性水域の現在の水質の状況あるいは今後の動向等を考えますと、やはりこの問題は非常に真剣に取り組んでいかなければならぬというように考えておるわけでございまして、水保全の立場から言いましても、最重点にこういう問題を持っていきたいというように考えておるわけでございます。
  113. 上村千一郎

    上村国務大臣 いまいろいろと御質疑をよく承っておりまして、とにかく琵琶湖に対する総量規制というものは早期に導入するように検討を進めていくということが必要であろう、そうしませんと、そこらじゅうから入ってきますから。そして、その経過を見ながら今後の対策をやっていくということをしみじみ思いましたので、できるだけ早期に導入ができるような調査の進め方をやっていきたい、こう思っております。
  114. 野口幸一

    野口委員 終わります。
  115. 木原実

    木原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  116. 木原実

    木原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境行政について環境庁長官並びに通産省、外務省当局に質問いたします。  経済協力開発機構、OECDの第二回環境閣僚会議は五月七日、八日の二日間にわたりパリのOECD本部で開かれ、先進工業国における八〇年代の経済活動で環境政策はいかにあるべきかをテーマに討議されたわけであります。その結果、これまでの対症療法的公害対策環境保全措置から一歩進めた「予見的環境政策に関する宣言」を採択し、八日閉幕したのでございます。  今回のOECD第二回環境閣僚会議では米、仏、西独などに比べ日本の立ちおくれが目立っている環境アセスメント法制化義務づけのほか、三つの理事会の勧告等も採択されまして、五年後の次回環境閣僚会議までの基本的な方針確立されたようでございますが、会議日本を代表して出席された上村環境庁長官は、この会議に臨むに当たりましてどういうように受けとめてこられたか、感想を含めてまず御報告をいただきたい、最初にお尋ねするわけでございます。
  118. 上村千一郎

    上村国務大臣 去る五月七日、八日の二日にわたりましてOECD環境委員会閣僚レベル会議、いわゆる環境担当大臣会議OECD本部のパリで開催されたことは、いま御発言のとおりでございます。私は、この会議日本政府を代表いたしまして、副議長としまして議長を補佐して会議の運営に当たるとともに、わが国の環境実態と政策について積極的な発言をしてまいった次第でございます。  御承知のように、この会議昭和四十九年に第一回の閣僚レベル会議がございまして、五年ぶりの第二回の閣僚レベル会議でございます。会議は御承知のようにOECD加盟の二十四カ国の環境政策担当の最高責任者が出席して行われました。  これの主なテーマといたしまするのは、変化しつつある経済情勢のもとにおける今後の環境政策のあり方について真剣に討議が重ねられたわけでございます。この会議におきまして、一つの宣言と四つの勧告が行われたことは確かでございます。そしてその宣言が予見的環境政策というものにつきまして行われておることもそのとおりでございます。  四つの勧告と申しますのは、これはまず第一に環境の状況に関する勧告でございます。それは環境政策の発展のため環境の状況に関する科学的知見、情報等の改善のための努力を一層強化すべきことを内容とする勧告でございます。  第二の勧告は、環境と観光に関する勧告でございまして、観光開発政策の早い段階環境への配慮を加えるべきことなどを中心とする勧告でございます。  第三の勧告は、環境に重要な影響を与える事業の評価に関する勧告、いわゆる環境アセスメント関係において、その環境に与える影響を事前に評価することが環境政策の不可欠な要素であり、各国により多様な法律的、制度的、行政的枠組みを有していることを認識しつつ環境に重要な影響を与える事業の企画、政策決定過程に対し、環境面からの配慮を組み込むべきことを中心としますところの勧告でございます。  第四の勧告は、石炭と環境に関する勧告でございまして、石炭の生産と使用の拡大という趨勢にかんがみまして、総合的環境、エネルギー政策を達成するため計画と政策の立案の段階から有効な環境対策を開発、改善すべきことを中心とする勧告でございます。  こういうことが行われました。そしてこの「予見的環境政策に関する宣言」につきましては、環境面の重要な影響を有する可能性のあるすべての経済的、社会的分野におけるあらゆる決定の早期の段階環境的考慮が組み入れられることを確保するよう努力すること。要するに環境影響評価の問題です。  それから、二点としましては、政策決定を他の分野の諸政策と一体化するためのより効果的な制度上の手段、経済上の手段等を追求することなど、計十項目を加盟各国政府として宣言をいたしたものがこの「予見的環境政策に関する宣言」でございます。  いま御質問の中に日本環境政策というものにつきましてのお尋ねがございましたが、日本環境政策そのものにつきまして、従来の日本環境政策の状況、そういう問題点につきまして私は演説をしたわけです。その演説の趣旨は、大体五十一年度に日本環境政策につきましてOECDがレビューを行っておりますが、その線に基づいておるわけでございます。と申しますのは、日本環境政策というものは公害、特に企業公害を中心としまして、そしてこの対策から発展をしておる。ですから、公害基本法の制定が行われ、それに基づきまして環境庁というものが発足しておる。ところが公害というものにつきまして漸次企業の側におきましてもいろいろとこれに対策を講じてくる、努力が行われる、そういうことから危機的な状態からは脱したというふうに思われるけれども、しかし、公害そのものとしましては様相が複雑化してまいりまして、企業公害、産業公害とは別個にあるいは生活公害というようないろいろな問題も含んできて、当初のように加害者と被害者というものが歴然と分かれるという状態ではなくて、ある場合においては加害者になりある場合においては被害者になるというような一つの様相を呈してきた。それから自然環境保全の場合におきましても、日本はきわめて国土が狭くて人口が多い。しかも生活し得る、住居し得るところの地域というものは国土の比例として非常に少ない。その中で経済的な豊かさとかいろいろなものを追求する以上は開発行為というものがいろいろ行われる。それと自然破壊というものがあってはいけませんから、そういうもののバランスをとりながらいくという新しい問題が提起される。そこへもってきて生活のいわゆる質の向上というものが行われてきますと、住む環境を中心としますところのいわゆる快適な環境づくりというアメニティーの問題が非常に叫ばれてくる。たとえば日照権にしましても眺望権の問題にしましても近隣騒音の問題にしても、そういうような動きにいまずっと包摂されてきておる。だから、いまの段階としては日本の置かれておる立場が世界的な意味においても一つの共通する問題じゃないだろうか。そうするならば、環境保全というものについて、それを包摂する一つの理念とか哲学というものを世界的に検討する時期に立っておるのではなかろうかという趣旨のようなことを私は演説をやったわけでございます。  そういうことは、大体五十一年の日本環境政策に対するOECDのレビューの骨子をなしておるものでございますので、その考え方、情勢につきましてはOECDとしましては高く評価したものだと私は受けとめております。と申しますのは、その席上におきまして議長は、日本報告はすばらしかったということを発言しておるわけでございまして、議事録にもあるわけでございますので、そういうふうに受けとめておるわけでございます。しかし、環境問題につきましては非常に崇高な理念を含んでおりますので、国民のニーズに沿うように、これを一歩でも前進させなければならぬという姿勢でおるわけでございます。  感想としましては、副議長もやりましたし、ちょうど国会議運みたいなところの要素もありますので、朝、議長国と副議長国と集まりまして問題点をどういうふうに整理していくか、どういう点をやっていくかというようなところへ入っておりまして、そこでも私発言しておりましたので、こういう場を通じまして国際的な理解を非常に深めたということにおきましていい会合であったというふうに私は受けとめております。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁長官からOECD第二回の環境閣僚会議の概要について御報告をいただいたわけです。五年ごとに行われる会議で、私たちも大変な関心を持ってこれを見守っておったわけでございますが、ただいま御説明をいただいて一応のことは理解できたわけでございます。  そこで、今回の会議で「予見的環境政策に関する宣言」及び四つの理事会勧告がなされたことはいまも御報告があったわけですが、大臣は演説の中でいろいろ日本の立場を申されたということで若干触れておられますけれども、この宣言と勧告に日本政府はこたえていく義務がある、かように私は思うわけでございます。そういった意味から環境庁として今後どのように対処していく方針であるか、会議を終わられた後、どういうように決意をしておられるのか、その点をさらに改めて大臣から承っておきたい、かように思います。
  120. 上村千一郎

    上村国務大臣 委員も御承知だと思いますが、OECDの勧告につきましては法的拘束力は持っておりませんけれども、ともかくみんなが全部合意をいたしたことでございますから、これを尊重し、そしてこれを忠実に遂行していくという責任は私は感ずるわけであります。それで、いまの勧告の線、宣言の線につきましては、大体わが国がとっておる方針と方向は決してたがうものではございませんので、この宣言、勧告の線に沿いまして環境行政を一層充実、発展させていきたい、私はこういう考え方でございます。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 予見的環境政策という言葉で象徴されますように、宣言と勧告の内容の中心は、ただいま環境庁長官からるる御報告ありましたように環境アセスメントであるわけでございます。宣言では「環境面に重大な影響をおよぼす可能性のある経済的、社会的あらゆる活動に対して早い段階から対策を講じ、そのための規制措置や財政措置をとること、重要な環境面の影響を伴う計画については住民参加を認めるほか、同計画の危険性、費用、便益に関する情報提供を行うこと、」などをうたっているように私たちは報道を通じて承知したわけでございます。さらに理事会勧告では、一つには環境アセスメントの具体的措置を公的機関が確立すること、二つには事業主側が完全な事前分析を行う、三つには実際的な監視機関を設けることなど環境アセスメントについてのかなり具体的提案が論議された、また盛り込まれておる、こういうように思いますし、また長官からもただいまそういうような報告があったわけです。  そこで、お伺いしたいのですけれども環境アセスメント法制化ないしは制度化についてはどのような話し合いがなされたのか、その点について具体的な議題としていろいろお話があったと思いますので、後ほどお伺いする日本における環境アセスメント法の問題にも関係がございますので、この機会に大臣からその点を明快にお答えいただきたい、かように思います。
  122. 上村千一郎

    上村国務大臣 いま御指摘のような宣言、勧告でございます。ただ、環境影響評価のことの重要性につきましては議論は全然ございません。  それから、これをどういうふうな、要するに法制度でいくのかあるいは他の制度でいくのか行政の積み上げでいくのかということは、論議は交わされませんでした。と思いますのは、とにかく環境アセスの重要性ということは国内的にも国際的にもコンセンサスはできておる、私はそう思っておるのです。ただ、それを法制度でいくのか、法制度の場合にどういう形態の法制度でいくのか、あるいはこれが他の制度でできるのか、行政の積み上げでいくのかということは参加国において非常にニュアンスが変わっております。ですから、これを論じて、いまどれがこうあるべきかというところまでは論議をしなかったわけでございます。ですから、そこは並列的に書いてあります。たとえば法制度とか制度的とか行政的とかというような表現で宣言がなされておるわけでございます。  私は、午前中の委員の御質問に対してもお答えしておるのですが、環境庁としましては、現在の段階ではこの環境影響評価国民全部に通用するルールづけが必要じゃないか、要するに法制度化の方がいいんじゃないかという考えを持っておるわけです。この前もNHKの世論調査でございましたか、各地方自治団体どもほとんどそういうようなことを望んでおるということもありました。ですから、環境庁としましては法制度化の線を進めておる。四月十日に中央公害審議会ですか、中公審答申、要するに環境影響評価のあり方についての答申が出ております。これは昭和五十年十二月に諮問いたしておりますけれども、三年有半、りっぱな有識者、経験者から御検討された結果が出ております。それはいろいろと論議されておりますが、法制度化を速やかにやるという結論のようでございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 加盟各国の中にはアメリカ、スウェーデンとか西独、フランスのように法制化を行っている国があったわけです。それらの国々と法制化のメリット、デメリットなどについて、正式の会議はともかくとして、またいろいろ懇談とか食事をする際とか時間もあったと思いますので、そういったときに環境庁長官としては意見交換をされたと思いますが、公式、非公式にせよそういったことでなさったかどうか。また、環境庁としてももっと、国内でもこういうふうに問題になっているわけですから、積極的な姿勢でこれらの国と意見交換をして、法制化に対する今後のいろいろな参考にするという姿勢であってほしかった、かように実は思っておるわけですけれども、その点さらにこの機会に長官から御答弁をいただきたいと思います。
  124. 上村千一郎

    上村国務大臣 私は七日、八日とあるその前日に、副議長でもありますし、この大会をどう運営するのか、議長と御相談する必要もあると思いましたから、アメリカの環境大臣のコスル氏に、いまからお邪魔していろいろお話ししたい、こう言ったところか、自分の方から行くと言いまして、スタッフを三名連れて私のホテルへ見えました。そのときにはあるいは原子力事故の問題だとか化学品の問題とかそういうようないろいろな問題、あるいはどういうふうに大体運営していくかというふうなことについてそのときは話がありました。それは私と議長と向こうはスタッフが三名いる。こっちもその席には私に随行した幹部の者も同席をいたしておりました。そのときには環境アセスの問題の法制化についてどうだこうだということはお話ししませんでした。けれども、しょっちゅう会っておりますから、環境アセスの法制化についてどういう運営になっておるかということは、これは四角ばったわけじゃございません。いわゆるロビー外交と言われているようなもので、食事をしながらいろいろなことを言いましたが、いまの法制化をされておることについては、少なくとも議長国、副議長国、これはいま御指摘のように大体法制化されておるわけです。それは法制化に行っておるのは当然だという観念のようです。ですから、法制化されておるために変なことが起きておるとかそんなようなことは出ておりませんね。二十四カ国の中にはいろいろな段階がございますけれども、議長団と言われておるところは大体法制化の様子ですね。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 第二回のOECD閣僚会議の問題については以上承っておきまして、時間の制約もございますので、それらを確認した上で若干次のことを質問してまいりたいと思います。  四月十日に中央公害対策審議会の環境アセスメント答申がございまして、これは「環境影響評価制度のあり方について」という答申であったと思いますが、こういった答申を尊重して速やかに法制化を図っていくべきであるが、法制化はさらに先に延ばされたわけでございます。  そこで、答申においては、付属資料の二十一、二十二ページに「環境影響評価法制度化がなされるまでの間においても、本答申等の趣旨を盛り込んだ閣議決定を行うなどの方法で国の事業等については統一的な環境影響評価実施することとし、」云々ということが述べられておりますが、これは現在各省庁、各地域でばらばらに行われている環境アセスメントを統一して行うという提案であるが、環境庁としては閣議で提案したのかどうか、その点ひとつここで明確にお答えをいただきたいと思う。
  126. 上村千一郎

    上村国務大臣 閣議で、いまこうこうこういう内容でというような具体案を出して御相談したことはございません。  ただ、あれは四月二十七日かと思いますが、その前の二十五日に与党の方の環境部会で御意見が発表されまして、そしてどうしても物理的に今国会ではこの法案は、それまでに意見調整が時期的に間に合わぬということを踏んまえまして、こちらもOECDに出発をする日も迫ってきておりますので、二十七日の閣議発言をいたしました。要するに、この法案については物理的に今国会は見送らざるを得ない、しかし、中公審の方から答申が出ておりますから、それを鋭意検討してこれに取っ組んでいくつもりでございます、こういう発言を私はいたしておるわけです。  その後、環境庁としましては、OECDの勧告あるいは宣言なども分析し、それから中公審答申というものも分析しまして、それに基づいて少なくとも閣議発言する以上は、事務レベルにおきましてもある程度省庁間の意見調整をしておきませんと発言したままになってしまいますし、それから閣議ということになると思いますけれども、それはそういうふうな方針でいくのか、あるいはとにかく答申の分析、そういうふうな検討をいま進めておるという段階でございまして、これはいま法制化の線をどういうふうに持っていくかということも検討し、その間に内容の問題がだんだん煮詰まっていきますから、そこで各省庁間の一応の合意を得ておきませんと、直ちに閣議へ出しましてもこれが必ずしも成果が上がるとも考えませんから、そういう作業を進めておるという段階でございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私がお尋ねしたいのは、政府が統一的基準を出す、閣議には提案してないということでございますが、私は、この統一的基準は国の事業についてのみやるべきであって、地方自治体については自主性に任せるべきである、かように思うわけです。すなわち、統一的基準をつくって地方自治体を縛るべきでない、かように思うのですが、その点は環境庁長官は十分認識しておられますか、その点ひとつ御答弁いただきたい。
  128. 上村千一郎

    上村国務大臣 委員も御承知だと思いますが、すでに国のレベルでやる公共事業につきましてはアセスをやる閣議了解ができておるわけですね。基準はできておるわけです。  それで、地方団体についてはどうかということです。これは条例のことなんですね。条例を出されるということは、適正、適法で条例ということになり、地方議会の議決を経ていかれることであるから、これはとにかく尊重していくべきであろう、そして地方には地方でなければわからないまた特殊性もあるだろうから、これは尊重していくという姿勢をとる、しかしながら、日本全体を規制するというような場合においては、地方としましてもそれは考慮に入れていただかなければならぬ。ですから、条例をやられる場合においては、国全体の方針というものも頭に入れながら条例というものは出されるものだという前提のもとに尊重していくべきだ、こういうふうなことを申し上げておるわけであります。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いまもるる説明がありましたように、その法制化が先に延ばされたことによりまして、地方自治体の動向が注目されるところでございます。と申しますのは、法制化されるまで条例や要綱の制定を地方自治体は見合わせるところがほとんどではないか、こういうふうに私は推測するわけです。また当然そういったことが起きると思うのです。  そこで、答申の付属資料の二十二ページに、「地方公共団体についても制度化が促進されるよう国において適切な措置を講じることが望ましい」云々とありますように、環境庁としては条例制定を呼びかけるべきではないか。今後地方自治体に対してはそういったことを指導、促進を図っていくという立場でなくてはならぬ、かようにも思うのですが、その点についてはどういうように対処される方針なのか、この機会にあわせてお伺いしておきたい。
  130. 上村千一郎

    上村国務大臣 実は、地方としましては統一的な方針を出してほしい、そういう意味法制化というものを望まれておるというのがこの前のNHKや何かの世論調査の中で出ておるわけです。ですから、私どもの方はこの法制化を進めようとしておるわけです。それだけじゃございませんよ、いろいろな考えもありますけれども法制化を進めようとしておるわけです。ところがこれが調整がまだつかないというわけです。それかといって地方の方々の、自治団体のお心持ちもわかりますので、環境庁としてはこういうことを考えておるのだという意味技術指針を発表したわけです。いままでは御相談が来たたびにこちらからそれに基づきまして御相談しておったのですが、要は正式に発表してしまった。それから法案の内容、骨子、環境庁はこう思っておるのだというものを発表したのです。しかし、法律化し、政府なら政府の全体として発表するに際しては、各省庁間の話し合いができませんとそれに踏み切れませんから、いま各省庁間あるいは党、関係団体という調整を進めておる段階でございます。その間、多少間隔はございます。その間に非常に御心配をかけるから、とりあえず環境庁としてはこういう技術指針を持っておるのですよ、こういう考え方ですよということを申し上げておるという実情でございます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は地方自治体の条例制定については、こういうふうに環境アセスメント法案が延びたわけでございますので、これらはひとつ促進を図る方向で今後とも環境庁努力していただきたいと思います。と同時に、環境アセスメント法の早期法制化をぜひ早くやってもらいたい、かように思うのです。  そこで、いろいろ長官にお伺いしてきましたので、その中にもいろいろ出てきましたから若干質問をはしょってお伺いするわけですけれども、いままでのことを踏まえまして、わが国における環境アセスメント法案提出の問題でございますけれども、午前中から論議してまいりましたように、四たびこれが流産したわけでございます。これに対する環境庁長官としての責任はどう感じておられるかということを私は改めてお伺いしておきたい。  さらにつけ加えまして、環境庁としては環境アセスメント法案に対して取り組む姿勢が弱いということは言うまでもありませんが、通産省等にも押されっ放しである。また通産省や財界を説得するだけの理論武装もしていない、かように私は思うのであります。従来から環境庁答弁、また長官答弁をしばしば聞いていてもそういったことをしみじみ感じております。そこで、プロジェクトチームを組んで理論武装をし、一つ一つの問題を徹底的に究明して克服する、こういうふうな姿勢でなくてはならぬ。そうしないと、またぞろ五たび流れるということになりかねない。次の国会にはぜひこれを成立させるように努力するとおっしゃっていますけれども、その場限りの答弁では、私は、絶対に成立はおぼつかない、かように思えてなりません。そういったことを含めて、私はずっとことし二月から環境庁の見解を承ってまいりましたが、そういうふうに考えるわけでございますけれども、四たび流れた環境アセスメント法に対する環境庁長官のいわゆる責任、またどういうふうに感じておられるかということと、いま提案した問題等についてあわせて長官から国民の前に答弁を求めるものであります。
  132. 上村千一郎

    上村国務大臣 これは午前中に、詳細に経過を述べろというわけですからお述べしました。と申しますのは、いま、委員も御承知のとおりでございますが、議院内閣制であり、自民党は与党なんですね。それで、政府提案といいましても、与党の政審、総務会を通って、それから閣議決定になっていかなければ法案は正式に出せないわけです。ところが、昨年の五月十八日の与党の政調の御意見は、環境アセスメント制度確立することは既定方針であるけれども、現在の段階としては法制度化は時期尚早であるという結論を出されておるわけです。私が環境庁長官に就任しましたのは昨年の十二月でございます。けれども環境庁としてもまた日本環境行政としても、法制化する、要するに、いまの段階としては、環境の基本的な部面にしても国民サイド全体の一つの通用するルールを確立していくということが必要じゃないかという感じを持っておりまして、従来環境庁もその法制化の線をずっと進めております。またそういう受け継ぎにもなっております問題、私はそれはもっともだと思う。けれども、時期尚早というやつがあるわけですから、就任後直ちに私は政調会長の河本さんにお目にかかって、時期尚早という意味は要するに時期的なことを言うのでなくて、現在各省庁間とか各団体、党関係調整が未調整になっておるという意味と理解する、まだ話がつかない、だからつける、こういうことでいいのかということで御了解を申し上げたところが、それでよろしいということですから、直ちに各省間の折衝を開始したということなんです。  それから、党の方としましても一環境部会を御中心に非常に熱心な御討議がされてきた、こういう実情なんです。ですが、そういう五月十八日の御決定もございますので、必ず出せるとも言えないし、またいつ調整がつくかもわからぬということですから、われわれの方は全努力を挙げて早く法制化をしようということです。ですから、提出予定法案に組み入れていただいたわけです。ところが、その提出予定法案は予算関連以外のものは三月十六日ですか、それまでをめどにということでもございましたので、日は切迫するという状態でございましたので、極力、私の方としましては技術指針というものも発表する、法案環境庁として考えておりますあらゆる資料なり考え方を発表した、そして御検討を願う、こういう状態に入ってきた。入ったところが、なかなかお話が、まだ調整がつかない。各省庁間においてもついたところもあればつかぬところもあるというような状態なんですね。それで、いよいよ切迫してきたので、今会期中は残り少なくなってきたものですから、何とか御意見をということを申し上げたところが、四月二十五日に与党の環境部会でその当時の御見解を発表された。  それを見ますと、まだこれから検討を進めていくんだという趣旨のものです。そうすると、これはとても間に合わぬ。そこへもってきてOECDには出発しなければならぬということで、いま言った四月二十七日に閣議で私は発言をしました。物理的に見送らざるを得ません。しかし、いままでなかった中公審答申が四月十日に出てきております。これはいままでなかったのです。それにはいま御指摘のような具体的なものが全部書かれておる。それで私はもっと早くそれが出ればと思っておって、いろいろ申し上げたのです。ですから、そのとき御答申を持ってこられた会長先生方も、もっと早いとよかったのですが、みんな一生懸命ですが、煮詰めるのにおくれましたと、こういうお話でした。それはもう三年有半一生懸命におやりになられたことですから。ですが、とにかく出てきたのは四月十日でございますので、それで閣議発言の際にも、今国会においては物理的に提出は無理だ、見送らざるを得ませんけれども、とにかく三年有半有識者が検討された中公審答申は得られましたから、これを中心に鋭意検討を進めてまいります、こういうことを申し上げて、その線で進んでおるということでございますから、四たび流れたということがございましょうが、今度ほど内容に突っ込んで討議を進められたということはないと私は思います。まして中公審答申が出たのはこの四月十日に初めてですから、そうすると、今国会提出ができなかったということは申しわけない、また残念に思っておりますけれども、しかし、いろいろな討議、いろいろな問題はいままでの状態とは違って大きく実質的に前進しておるというふうに私は受けとめておるわけでございます。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境アセスメント法については環境庁長官もずいぶん重大な決意で臨んでおられるようだし、第二回のOECD閣僚会議にも出席されて、そういったことが中心議題で、身にしみて感じておられるようでございます。午前中から論議してきたところでございますので、これ以上くどくは申しません。まことに残念なことになりましたけれども、四月の中公審答申も出ておるし、またいまだかつてない検討を進めておるということでございますから、先ほど私が提案しましたような一つ一つの問題を克服するためにプロジェクトチーム等をつくるなり、いろいろなことを考えて真剣に取り組んで、もっと早くこれが成立できるように最大の努力を今後拍車をかけてやっていただきたいということを強く要望して、一応この問題は打ち切ります。  時間の関係もございますので、通告しました問題数点についてお伺いしてまいります。  公害病認定地域の指定解除問題について、環境庁長官にお伺いします。  私は、党を代表しまして去る五月九日、指定解除反対のために環境庁長官に五項目の申し入れを行ったのであります。長官もちょうどパリから帰ったばかりでいろいろ取り込んでおられた関係もございましたので、当時本田環境保健部長に申し入れを行いました。  すなわち、環境庁は去る五月七日公害健康被害補償制度のうち大気汚染系公害病指定地域の指定解除を行っていく方針を明らかにし、これに対し大気汚染系公害病患者団体から強い反発があったのであります。環境庁は近く中央公害対策審議会に諮問するということが伝えられておるわけでございまして、ちなみに申し上げますと、東京、大阪、四日市など全国に四十一ある指定地域内の大気汚染度が以前よりも改善されているにもかかわらず、公害病患者が増加し、企業の負担する補償費に地域的アンバランスが生じているとして産業界、自治体等から強く見直し要求が出ておるのも私たちは新聞その他で散見していることも事実であります。  こういうときにこのような方針は、公害病認定患者がまさに大変な憤りを感じて環境庁に詰め寄ってまいりましたように、現在七万人を突破しているわけでございますが、こういった大気汚染系の公害病患者団体としましては、今後さらに増大する傾向にある中で地域指定の拡大と被害者救済の充実が先じゃないかということで叫んでおられるわけであります。こういった現状を一方的に無視するようなこういった方針は承服できないということで私は申し入れを行ったわけでありますが、公害防止と公害被害者救済の責任を持っている環境庁公害補償費の軽減や補償責任の不当な転嫁を図ろうとする企業の意向を露骨に代弁するものではないか、かように申し入れの際私は部長にも申し上げたわけです。  そこで、わが党として、一つには、大気汚染が改善されていると言われながらも公害病認定患者が七万人を突破し、さらに増加の傾向にある現状にかんがみて、環境庁はその原因を真剣に調査して考慮すべきであるということと、さらに、大気汚染系疾病はSOxのみの影響ではなく、NOx、ばいじん、HC等広範な汚染物質の複合汚染によるものであることが広く指摘されておるわけでございますから、したがって、SOxの改善をもって指定解除を図ることは非科学的であり、また不合理であるなど五項目の申し入れを行ったわけでございます。  これに対して本田部長からも当日いろいろ弁明がございました。長官がパリから帰られた後でもあったので、もっと早い委員会でこれらを明らかにすべきだったのですけれども、御存じのようにグラマン等の航空機疑獄事件等の関係もあって国会が空転し、今日初めて委員会が開かれたわけでございます。当日約束した経緯もございまして、ここに改めて、全国の七万余の心配している患者の皆さん方の前に、環境庁長官として、これらに対する環境庁考えをはっきりと御答弁いただきたい、かように思うわけでございます。
  134. 上村千一郎

    上村国務大臣 公害健康被害補償法の地域指定の解除の件につきまして、実は私、パリから来る飛行機の中で新聞を拝見しまして、これはまたどういう記事かいな、こう思っておりました。というのは、そういうふうに環境庁が指定解除の件について中公審に諮問するとか、時期がどうのとか、そんなことは全然討議されたことはないです。それですから、どうしてこんなふうにと思っておりました。飛行場から役所へ着いたらすぐ本田保健部長からこれに対する経過の説明がございました。多少舌足らずのところがあったのかどうか知りませんが、決してそれを特に取り出して、そしてそれを諮問するとかどうとか、そんなような趣旨ではなかったんだということだった。そうだろう、そんなことは別段話になったわけじゃございませんから。こういうことなんですよ。  それで、実はいろいろと御陳情のあることは間違いないです。たとえば指定解除や何かで、これだけ努力してきれいにしたんだから、後々負担がどんどんふえていったってこれは困ると言って、早く解除してくれという陳情のあることは間違いないです。そういう方もある。それかといって、いま委員からも御指摘のように、とにかく患者の数が減っておるわけじゃない。横ばいの傾向もあるかもわかりませんが、減っておるわけじゃない。そういう際に患者の救済ということも考えずに、そんなことはもってのほかだという御意見もいろいろあるわけです。これは指定解除だけの点につきましてそういう御陳情があるだけでなくて、実は窒素酸化物汚染を地域指定要件においてどう評価すべきかという点につきましてもいろいろな問題点指摘されるわけです。あるいは大気汚染の改善状況に照らして現行の暴露要件を見直す必要がないのかどうかというような問題の指摘だとか、大気汚染による健康被害の予防及び治療のためにいかなる施策を講ずることができるかというような指摘、あるいは自動車の負担のあり方というものはどう考えるべきかとか、いろいろな問題が提起されてきておるわけです。これは環境庁としましても、この公害健康被害補償法の適正な運用、そういうことを常に考えていく使命を持っているわけです。基本的に言えば、公害を未然に防止するとともに、被害の患者に対してはもう何をおいても救済措置をきちっとしていかなければならないという考え方です。けれども、いろいろな御指摘がございますれば、これを常に検討しながらいくということは間違いありません。それから中公審の中にもこれに対応いたしまして御検討されている向きがある、こういうわけです。その中にはあるいは指定解除や何かの陳情があります、それはいかぬという陳情もありますから、結論をどうするという意味じゃありませんが、一つ問題点になったということを部長が言ったのじゃないかと思います。  それで、いま環境庁としましては、どの範囲でどういうふうにしぼっていく、それじゃどういう問題を考える、こういうところまで煮詰まっておりません。いろいろと中公審の中の御意見ども承り、こちらの検討も合わせまして、そうしてある程度の問題範囲というものを煮詰めて、そして最後に腹を決めるときには中公審に諮問をして御答申いただく、こういう段取りになるというだけで、いまのところ全然、どの範囲の問題を考えているとかあるいはいつどうするかということではございません。いろいろな御陳情や問題点が提起されておりますから、検討しているという段階でございます。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そういうことで経団連あたりから直接大臣のところへいろいろ要望とか何か参っておりますか。時間もございませんから簡潔なお答えで結構です。
  136. 上村千一郎

    上村国務大臣 私のところへは来ておりません。ただ、私が言った陳情は、静岡県の富士市か何かの方々が見えたのです。あそこに製紙のあれがたくさんあるでしょう。あの地域の市長さん方が見えたというのが直に会った記憶なんです。それから署名や何かではいろいろ来ておるかと思いますが、経団連からじかに私のところへということはございません。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約がありますので、次の問題に入ってまいりたいと思います。  ただいまの公害病認定地域の指定解除に対しての問題については長官からかたい決意で見解の開陳がございましたので、一応了としまして、今後十分ひとつ患者の要望にこたえて対処していただきたいと思います。  次に、質問してまいりたいのは、野生の動物及び植物で絶滅のおそれのある種の国際取引に関する条約、すなわち通称ワシントン条約というものでございますが、この批准についてお伺いいたします。  私は日本鳥類保護連盟の理事並びに評議員をいたしておりますし、国会内においては鳥類保護議員懇話会の世話人代表の一人でもございます。去る五月十日に衆議院の会議室で緊急世話人会を開催し、ワシントン条約、さらには現在参議院で審議しておりますラムサール条約等の批准について対策のための協議をいたしたわけであります。ラムサール条約もぜひ本国会で通していただきたいし、またワシントン条約もラムサールと同じようにペアで通していただきたい法案でございますが、今国会はちょっとむずかしくなってきた状況下でございますけれども、この機会に、ワシントン条約に対する問題点指摘しながら、次の国会にはぜひとも成立できるように促進を図る意味から、以下質問をしてまいりたいと思います。  この絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制するためのワシントン条約は、人間環境会議の勧告を受けて一九七三年三月ワシントンで採択されましたが、このとき調印したのが日本を含む六十カ国で、日本はその時点では調印の音頭を取る側に立って積極的に動いておりますけれども、みずからの加盟については調印後今日まで空白のままであるわけです。三月現在で五十一カ国が批准をしているというふうに報告を受けておりますが、野生生物の輸入超大国でもあるわが国に対する各国の非難も一段と厳しくなっているわけでございまして、今回国会提出の見通しが無理ということになってきたわけですけれども、これの一番ネックになっている点は、環境庁としてはどの点にあると考えているか、ひとつ率直にお答えをいただきたい。
  138. 金子太郎

    ○金子政府委員 ワシントン条約の問題は大分煮詰まってまいったのでございますが、最終的には問題品目を輸入している業界との調整の問題が残っているわけでございます。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この種の条約はできるだけ多くの国が足並みをそろえて批准しないと効果がないわけです。理由は明白でございまして、批准しない国が野放しで危機に陥った動物を買いまくり、批准した国々での規制が効果をあらわさないからでございます。  一例を挙げますと、アメリカではかつてアメリカシロヅルの捕獲規制が近いうちに行われるそうだといううわさが流れただけでアメリカシロヅルの殺傷が激化したという事例がございます。また南米のペルーでも、ビクーナの捕獲規制をしたところ、その規制のない隣国のボリビアが密猟品処理の好適な市場とみなされ、かえってペルーでのビクーナ密猟が激化したという事例もございます。  このように、一つの規制法や条約がかえって目指す動物の滅亡に拍車をかけた例は世界に多く、この種の法律や条約は基本精神が動物保護を目指すものでありながら、やり方を誤ると逆に動物の滅亡を促進するものになるわけです。その最も致命的な誤りは、批准をするぞするぞ、国内法を整備するすると言いながらかけ声ばかりが大きくて何もやらない、この点を私は心配するものでございます。  今回のわが国でのワシントン条約の批准たな上げは本当に残念であると同時に、動植物の滅亡を促進する、こういうようなことになりかねない、私はかように思うのですが、その点の反省は当局はどういうふうに考えておられますか、改めて承りたい。
  140. 金子太郎

    ○金子政府委員 ワシントン条約に調印いたしましたのが一九七三年でございますから、すでに六年を経過しているわけでございます。その間、私どもの方の批准への努力が不十分であったという点は率直に認めざるを得ないと考えております。また絶滅に瀕する野生動植物の保護などについて声を大にすることがしばしばマイナス効果を生むということは確かにあるわけでございますから、その辺は私どもも心して取り組まなければならないと考えておりますが、本件に関する限りは、私どもが声を大にして各界を説得しなければ批准そのものへの動きはさっぱり進まない、こういう情勢にございましたので、まことにやむを得ない事情であったというふうに御了承いただきたいと思います。  なお、先生指摘のとおり、東南アジアあるいはアフリカの諸国がワシントン条約に加入して、絶滅に瀕する動植物、特に鳥類、野獣などの捕獲と輸出を禁止しているにもかかわらず、わが国の業者が買いあさるものですから、密猟、密輸出がそれらの国で行われ、それらの国でわが国に対する非難が高まっているという点は、本当に一日も早く是正しなければならないと考えておる次第でございます。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三月末、中米コスタリカで開かれたワシントン条約会議でも、まだこの条約を批准していない日本に対して、非政府組織、NGO十九団体が、日本の態度を批判し、早期批准を求める決議文を採択しております。当局も十分御承知のことだと思いますが、日本はこれまでも野生動植物や、その製品の世界一の輸入国として国際的な非難を浴びてきたところでございますが、国際会議で名指しで条約批准を迫られたのは異例のことではないかと私は思いますけれども、この点はどういうふうに受けとめておられますか。
  142. 金子太郎

    ○金子政府委員 まことに御指摘のとおり異例のことでございまして、経済協力などでわが国が低開発諸国に対していろいろな施策を講じておりますけれども、そのような施策と努力が、このような事態によって水のあわに帰するようなことになるのはまことに残念だと思っております。それにつけましても、なるべく早くワシントン条約が批准できますように、引き続き努力をいたしたいと思っております。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこではしょって申し上げますが、つい先日、五月十日の午前中に、通産省、外務省、農林水産省、環境庁の四省庁で業界との懇談会をなされたはずであります。そこで業界とかなり突っ込んだ論議をされたと思うのです一このことについては、私は、事前に金子自然保護局長からも議員連盟の懇談会の席でお伺いしておりますが、その結果、認識の一致を見たのかどうか、業界はどのような団体がそのときに出席したのか、懇談の内容等について、どうだったか、それらをひとつ、簡潔で結構ですから、要点を御報告いただきたいと思う。
  144. 金子太郎

    ○金子政府委員 五月十日の会合におきましては、このような問題及び業界に対する政府の基本的な認識というものについてどうであるかということがまず最初の大きなテーマでございまして、その点については政府側の認識は一応評価できるというふうに見てもらったと考えております。それからあとはいわゆる品目別の調整ということになるわけでございますが、基本的な考え方においてはお互いに違わない、しかし、個別的な内容においてなお隔たるところがある、こういうことだと思います。そのほか、政府におきまして、このような動植物の資源賦存量調査などを積極的に進めるとか、あるいは養殖の可能性などについて研究調査を進め、場合によっては事業化を図るとか、その他、低開発国に対する援助あるいは経済協力の中においてできるだけのことをするとか、このような施策を政府側が打ち出していくならば業界との調整ができるのではないか、このような感触を得た次第でございます。
  145. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務省もその席に出席なさったと思いますけれども、このワシントン条約については、外務省はいま法案をたくさん抱えておりまして順番がなかなか回ってこない、また提出もおくれているということで、この条約に対する取り扱いに苦慮しておられる、こう思うのですが、これは、通産省または農林水産省、環境庁、こういった話がまとまれば、外務省としては一刻も早くこれを批准したいという考えに変わりないのか、その点の方針と、去る五月十日の会議、懇談に出られて、どういうふうな感触を受けておられるか、外務省からの見解を承っておきたい。
  146. 小西芳三

    ○小西説明員 外務省といたしましては、早期に批准するという考えにつきまして全く変更がございません。  ただいま先生、外務省関係の案件が国会に上がっているというお話がございましたけれども、今度の国会にちょっと時間的に無理であるというのは、そのためではございませんで、国会に出す以上は、一つは対外的に説明のつくようなかっこうで出したいということ、それからもう一つは、業界の関係の方々にもやはり納得していただいた上で出す、つまり国民的なコンセンサスがあって出すという形にしたい、無理な形はちょっといけないのだ、そういう認識を持っております。ただ、早期にやらなければいかぬという点については、全く変わっておりません。  それから、ただいま御指摘の会合につきましては、すでに金子局長の方からお話がありましたとおりでございまして、私ども、加えて業界の実態等も視察させていただいたわけですけれども、それはやはり今度のこの条約をまとめる上で一つの非常に貴重な経験であった、その点も考慮してやっていきたいというふうに考えております。
  147. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 通産省の高瀬文化用品課長にお伺いしますけれども、五月十日に、先ほど言いましたように四省庁の皆さん方と業界といろいろ認識の一致を見るべく検討なさったわけですが、そのときの感触と、通産省はなかなか重い腰を上げようとしておりませんけれども、われわれが仄聞するところでは、現時点ではべっこう材料のタイマイ、アオウミガメや皮革材料のトカゲ、ワニ類など十二品目を条約の適用対象から除外、保留すべきだ、こういうようなことを言っているやにお伺いするわけでございますけれども、その点を含めて通産省はどういうふうな考えであるのか、どういうふうになれば批准に賛成できるのか、また先ほど言いましたように、五月十日の業界との懇談、四省庁の懇談でどういうふうに感じ取っておられるか、それを含めてひとつお答えをいただきたい。
  148. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 いままで、昭和四十八年に本条約が署名されましてから、関係業界ともたびたび接触を持つ機会があったわけでございまして、特に昨年の暮れ以降、この条約の今国会における批准の問題が具体化いたしまして以来、何回となく業界と接触を持ち、公式、非公式にいろいろな話をいたしました。また委員指摘の五月十日の会合にも代表が出席いたしまして業界との懇談をいたしたわけでございますが、そういった経緯を通じて、現時点で得ておりますわれわれの印象といたしましては、なお国内の重要な問題についての基本認識に若干のギャップがあるということでございます。これについては、関係者の間でなお共通認識を持つべく努力が続けられているところでございまして、この努力の結果を待ちまして、いま特に問題になっております留保の品目あるいは留保自体をどういうふうになすべきかというようなことについても関係省庁相談してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。通産省も、また特にいま問題になっている爬虫類をなめしております鞣製業界も、わが国が置かれております国際的な立場は十分認識しておるつもりでございますし、またこのなめし材料のほとんどすべてを輸入に依存しておるという実態も十分わきまえておるつもりでございます。したがいまして、国際的な協調の姿勢を抜きにしては、事業自体も立ち行かなくなるという認識をいたしておりまして、批准そのものには反対をいたしておりません。むしろ、批准はできるだけ早いにこしたことはないという判断でありますし、また留保せざるを得ない品目も、少なくできるにこしたことはない。これは基本認識でございまして、それはほかの省庁とも変わりはないかと思います。  ただ、皮革産業、鞣製業というのが、日本国内において非常に解決のむずかしい社会問題と密接不可分な関係にございまして、修復のできないような形で大きな被害を生ずるというのは、事業所管省としてはできるだけ避けたいということで従来から考えてきておるわけでございます。したがいまして、野生の動植物を保護すべきであるという国際的、国内的要請と、そういった革なめし業をこれからも守り、育てなければならないという国際的要請、この二つの均衡の中でできるだけ早く批准が行われるように解決点を見出していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この養殖の現状については、どういうふうに把握しておられるかという点と、大阪とか沖繩とかでアオウミガメを養殖したりしていることも、私いろいろ見て知っておりますが、そういったことに対しても対策を講じなければならぬと思うし、また国が積極的な対策をいろいろ講ずると同時に、通産省としては、職業転換の補償等を含めて対策をいろいろ考えていただかなければならぬと思うのです。この問題が提起されてから六年、いわば空白のままで通産省はこれらに対する答えを出していない。そこに問題があると思うのです。時間もないのではしょって申し上げましたが、それを含めて簡潔な答弁をいただきたい。
  150. 高瀬和夫

    ○高瀬説明員 いままでにも、四十八年に条約の署名が行われまして以来、べっこうにつきましては四十八年、同じ年でございます。それからトカゲ、ワニその他のなめし原材料になります爬虫類につきましては四十九年、五十一年、五十三年と三回にわたりまして現地に調査団を送りまして、養殖の可能性、その他爬虫類の賦存状況等々について調査をしてまいったわけでございますが、当該業界がきわめて零細規模の事業者によって成っておるということ。したがいまして、企業体質もきわめて脆弱であるということから、こういった事業になかなか積極的に取り組めないという基本的な問題点がございます。  また、それとあわせまして、特にこれはべっこうの業界でございますが、いままで主な産地としては東京、大阪、長崎と分かれるわけでございますが、それぞれの産地におきまして、業界としての足並みがなかなかそろわないという問題等もございまして、今度の批准具体化を契機といたしまして、業界の人たちも、前向きに対策をするためには何とかまとまらなければいけない、結束しなければいけないという機運も大分醸成されつつございますので、こういった動きをとらえて、通産省といたしましては、調査についても、少なくとも従来以上の配慮をしなければいけないんじゃないかというふうに考えております。  それから、すでにいままで、東京都においては小笠原、長崎でも一部においてウミガメの養殖の可能性が研究されたこともございます。現にある程度のテストが継続して行われておるわけでございますが、特に今度の批准に関連いたしまして問題になりますタイマイ、それからその他のなめし原材料としての爬虫類でございますが、特にタイマイにつきましては、日本近海での養殖が非常にむずかしく、技術的な問題もございますので、これにつきましては、赤道直下ないしはその周辺の国々において、現在もある程度の養殖は行われておりますけれども、これに日本が協力する形でどういう対応ができるか、さらに今後突っ込んだ研究をいたしたいというふうに考えております。いずれにいたしましても、この養殖事業、あるいはそれに対する協力事業につきましては、通産省単独ではできない面もございますので、関係省庁ともよく相談をしながら、今後の対応を考えてまいりたい、かように考えております。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁長官に、ワシントン条約について総括的にお伺いします。時間がございませんので、まとめてお伺いしますが、五十三年九月初旬に来日しました、ワシントン条約の早期批准を訴えた、英国の世界的な水鳥研究者で、世界野生生物基金理事長のピーター・スコット卿は、人類はこの地球上で野生鳥獣と共存すべきものであって、種を絶滅に追いやる権利を持っていないと、有名な言葉を述べられました。私たちは、野生鳥獣は国民の共有の財産であるということで、議員懇話会においても、また鳥獣保護連盟の会議においても、常に申し上げておるところでございます。  そこで環境庁長官、このワシントン条約は早く批准することが大事であります。この批准がおくれておるということは、まさに国辱的な問題であります。そのネックには、通産省の、零細企業に対する大変な心配があるというようなことが浮き彫りにされておるわけです。それで、十二品目にするか、何品目を保留するかというふうなことがいろいろあるようですが、いずれにしても、ひとつ積極的にこれを解決していただいて、外務省当局も、早くこの案件が国会に提案され、外務委員会等で審議をされて国会の批准ができるように、最大の努力をしてもらいたいと思う。そういった意味で、ワシントン条約はいつごろをめどに、どのような詰めを行っていかれるのか。  その点と、私はいろんな問題があると思うので、とりあえず了解を得た種類をまずその中に組み入れて、最初から全部の要望はかなわなければ、次々に将来これを追加して入れるというようなことで、多少拙速的であっても、この案件を早く通し、世界の皆さん方にこたえていかなければ、最初に申し上げましたように、批准しない国が乱獲をし、商売上からいろいろと利益を上げている、批准した国はますます絶滅に瀕するという、先ほど申し上げたような例もあるわけでありますので、私は、歩み寄りができない問題等は多少後に残してでも、一日も早く批准をやるべきである、かような考えでおるのですが、それを含めて環境庁長官からひとつ御答弁をいただきたい。
  152. 上村千一郎

    上村国務大臣 午前中にも御答弁を申し上げたわけですが、人類共有の財産である貴重な野生動植物を保護すべきであるという認識は、そのとおりであると思います。私もそういうふうに思っております。そういう意味で、この保護のための国際協力を推進するという意味においてワシントン条約が早期に批准されるということは、環境庁としましてもぜひ早期に批准してもらいたい、こう思っております。また特に私も、委員もそうでございましょうが、外国など、また外人から受ける印象からしましても、こういう野生動植物あるいは自然環境の保護について日本が非常に関心を持っておるということは、非常にいいイメージを諸外国に与えると思うんです。そうでないと、何か経済だけしか日本国民なり日本考えていないというような誤解を受けたり、それから無用な摩擦を生ずるというような感じを持っておりますので、ワシントン条約は早期批准すべきだ、こういうふうに思っております。そういう姿勢で環境庁は一貫しておるのです。  ところが、御承知のように窓口は外務省です。外務省御当局も大体そのお考えだと思います。というのは、首脳部の方が私のところへ見えまして私と意見を交わしたときにも、同じ意見なんです。ただ、いま問題になっておるのは、要はどれだけの留保をするかということです。それではどれだけでも留保しておって、それでというわけには——先ほど外務省の係の方がおっしゃったように、世間というか国際並みのことなんで、やりさえすればいいと言ったって、一つの信頼感というものもあるわけでしょうから、こういう点を苦慮しておるんじゃないかと思うのです。それかといって、国内問題として業界に対しましてそれなりの配慮をし、生計なりを考えてあげるということは当然その所管の官庁として考えるべきことだと私は思うのです。そこら辺の組み合わせがまだぴしゃっといっておらぬ。しかしながら、これはもうできるだけ早く批准しなければならぬというふうに思っているので、政治決断はどこでするかということになると思います。  先ほどもお話があったように、諸外国でも留保しておる国はあるのです。大体一けた台になっておるようですね。いろいろなことがある。それはその国々の情勢があるのです。その特殊性というものがある。しかしながら、これは国際の波というものがあるのでございましょうから、そういう点なんかもきっと外務省当局の方もお考えになっておるだろう。私はできるだけ早期に批准ができますように配慮していきたい、こう思っております。
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ワシントン条約については通産省、農林水産省、もちろん外務省とよく連携をとりながら、環境庁長官が申されたように早い批准ができるようにして、日本の屈辱的な立場を早く世界の皆さんに喜んでいただけるように解決していただくように重ねて要望しておきます。  時間がございませんので、最後に、通告しました問題について質問しておきます。  阿蘇国立公園内の阿蘇九重山の一帯の天然記念物でありますミヤマキリシマ、これはツツジの一種でございますが、害虫が大発生し、その被害規模は、ミヤマキリシマが全滅するのではないかと、心配されておりました昭和四十七年当時に酷似しております。このことについて五十三年五月二十日、私は自然保護の立場から阿蘇中岳周辺で虫害の調査を行いました。環境庁など保護関係機関に駆除対策を申し上げたのであります。  ミヤマキリシマは阿蘇国立公園のシンボルにふさわしい花で阿蘇中岳、高岳を初めとする根子岳、外輪山一帯にピンク色の群落が見られます。中でも仙酔峡の群落は約五万本と言われまして大きな観光資源となっております。ところが、ことしはミヤマキリシマの樹勢が弱く、開花も十分でない。原因はキシタエダシャクという害虫が大発生して新芽を食い荒らしておりますため。環境庁自然保護局の加藤穣二阿蘇国立公園管理事務所長は、昨年私が申し上げた際も、三十万本のうち約十万本が被害を受けておると申しておりまして、さらに、大分県の九重山、長崎の雲仙などにも同様の被害が出ている、このため対策についてはお手上げの状態である、こう言っております。  そこで、ことしも阿蘇五岳一帯に自生するミヤマキリシマの害虫防除対策を進めている環境庁の現地調査が阿蘇山山上を皮切りに十七日から始まっております。環境庁が九大農学部に調査、研究を委託して昨年から二カ年計画で行っているものでございまして、対象地域は阿蘇山の古坊中、仙酔峡、九重大船の三地域でございますが、ことしも昨年に引き続き九大昆虫学教室の平嶋義宏教授、同農薬化学教室の江藤教授らが研究班を編成して害虫の生態、効果的な駆除法を確立しようとしておりますが、害虫キシタエダシャクが大量発生、開花前のつぼみや葉を食い荒らす、こういったことについて昨年を上回る大きな被害ということでいま地元でも大変問題になっております。  そこで、この現地調査が二十三日から二十五日まで行われて、十一月まで各教室で十回ずつ繰り返され、来年の二月に研究報告がまとめられるというふうに聞いておりますけれども、これに対して環境庁はどう認識をされ、かつ天然記念物でありますミヤマキリシマの保護について対策をどう考えておられるか、時間もございませんので、簡潔で結構でございますから、お答えをいただきたい。
  154. 金子太郎

    ○金子政府委員 阿蘇のミヤマキリシマは阿蘇の国立公園の景観を構成する非常に重要な要素だと考えております。お説のとおり十数年前から非常に大きな被害が発生しておりまして、薬剤散布などによりましていろいろ対策を講じてまいりましたけれども、なかなか効果が上からないものですから、五十三年度、五十四年度2カ年間、二百万円ずつぐらいでございますけれども研究予算を取りまして、九大に調査を依頼していることはただいまお話しのとおりでございます。  この調査につきましては、すでに中間報告をいただいておりますが、その中間報告では、まだ有効な天敵が何であるかとかどういう薬剤が一番有効であるかとか散布する期間はいつがいいというようなことについて明快な結論が出ておりません。私どもは、来年の春、出るだろう最終報告におきましてその辺かなり明快な御見解がいただけるのではないか、それに即しまして来年度は抜本的な対策を講じてまいりたい、このように考えております。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 あとわずかですのでしばらく御協力いただきたいと思いますが……。  九大の研究班の昨年の調査は主に害虫の生態、被害状況、薬効試験などが繰り返されたわけです。ことしは誘ガ灯の殺虫効果とか天敵ウイルスの具体的な利用法、薬剤の防除効果などについて詳しく調べているところでありますが、いま答弁の中で、これについて詳しくお伺いしたいと思ったのですけれども、時間もございませんし、来年二月の結果を待ってというようなことでございますので、こういうように害虫の生態がはっきりしてないというところに問題があります。ぜひともこれらについて予算の上でも、昨年が二百六万、ことしは地元の要請では二百三十万ぐらいの予算要求だというのですけれども、もっと予算をつけなければとてもこれは解決できないと思うのですけれども、その点はどういうように見ておられますか。
  156. 金子太郎

    ○金子政府委員 本件につきまして一応二百二、三十万円ずつ二年間で調査をしていただけるという見通しで出発いたしておりますが、調査を終わりました段階でなお不足な部分があるとすれば、たとえばウイルスなどに有効なものがあるのではないかという意見もございますので、その関係でさらに突っ込んだ調査が必要であれば、五十五年度以降また対策を講じてまいりたいと考えております。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、生態がわからない、何回消毒しても効かない、こういうふうに地元は言っているわけです。私は、天敵を養う研究等をもっと力を入れてもらいたい、そういった点について予算等ももう少し考えてもらいたいと思う。いわゆるホウネンダワラというハチなんかが天敵としておるわけですけれども、薬害との関係もございますので、その辺の研究もやってもらいたいし、特に阿蘇一帯は野鳥が少ないわけですから、野鳥を呼び戻す研究をしなければいかぬ。そのためには野鳥を生息できるように環境づくりをしなければならぬと思います。すなわち野鳥の水飲み場、また野鳥の好む実のなる木の植栽、こういったものについても、亜硫酸ガスによってこれが育たないじゃいけませんので、亜硫酸ガスに強い野鳥の好む実のなる木、こういったものも研究して植える、いろいろなことを考えて、やはり天敵による駆除ということにも力を入れていかなければ根本的解決にならぬと思います。  時間が参りましたので、その点について局長から答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  158. 金子太郎

    ○金子政府委員 お説のとおり、本件の決め手になりますのは、ハチ等の昆虫を天敵として導入することと、先ほどお話し申し上げましたウイルスを入れること、その二つでございますが、この辺まで研究の範囲が広がってまいりますと、研究内容はよほど広がってまいります。また時間がかかることも考えられます。その辺はあわせまして五十五年度以降十分検討してまいりたいと考えております。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  160. 木原実

  161. 津川武一

    津川委員 最初に、水俣病について若干の質問をしてみますが、大臣は水俣病の患者、その病状、その苦しんでおられる苦悩、その生活を見られたことがございましょうかしら。
  162. 上村千一郎

    上村国務大臣 私は昭和四十三年に水俣地区を視察したことがございます。その当時、いまの外務大臣の園田さんが厚生大臣だったものですから、一緒に行きました。そのとき実情をよく見させていただきました。それから水俣病の政府見解が発表されたと思っております。
  163. 津川武一

    津川委員 昭和四十三年からことしは五十四年、大分また病状も変わっているようですが、大臣になられてからはいかがでございますか。
  164. 上村千一郎

    上村国務大臣 大臣になってからまだお伺いしておりません。
  165. 津川武一

    津川委員 やはりぜひ行ってみて、またかわいそうな患者さんたちを救う気持ちを強くしていただきたいと思うのですが、この点はいかがでございますか。  それからもう一つ、もとの総理大臣の三木さんが環境庁長官のときに行ってみられまして、ちょうど私その十日ほど前にずっと水俣を視察して回ったのですが、帰ってこられてここで議論しましたら、三木さんは入院をされているところをこういう形で見ておいでになって、余り患者さんの苦しみや生活を見ておいでになっていないのです。対策と聞いたら病院ができたからいい、その病院に看護婦さんもお医者さんも整備されていない、こういうかっこうであったので、患者さんの現状、患者さんの病状、患者さんの苦労、入院生活、うちの中における生活などもぜひ見ていただければと思って、質問したわけであります。
  166. 上村千一郎

    上村国務大臣 公害の原点というのは、日本でももちろん公害の原点としましては水俣病だと思います。また世界的にも、今度環境閣僚会議のときにも議長から水俣病のことは触れました。そういうふうに世界的にも関心があるということなんです。ですから、いま国会開会中でございまして、なかなかいろいろな問題がありますけれども、折を見てもう一度お邪魔したいと思います。  それから、いろいろと映画なりニュースなり、最近ずっと放映されておりますが、そういうものもよく拝見させていただいております。しっかり対策を講じていきたいと思っております。
  167. 津川武一

    津川委員 そこで、少し振り返ってもみたいと思いますが、一九三二年からの有機水銀たれ流しによって被害を受けた水俣病被害者たちが、加害企業チッソを問題の元凶として、国、県が一体となって行った原因究明の妨害や数々の患者打ち切り行政に反対して闘っております。一九五六年に大量の患者が発見されてから、いまなお六千人を超える被害者が公害病患者として県の行政認定を待たされております。千人を超える被害者が行政認定で不当にも水俣病患者でないといって棄却されております。そのため、水俣病の被害者は、六七年に第一次裁判を起こして以来、実に十二年間の歳月を民事裁判や行政裁判でチッソと国の行政を相手に争い続けております。この無情、非情な十二年間に及ぶ裁判の歴史自体が、まさしくわが国の公害環境行政の貧困とものすごい非情性を物語っております。  そこで、住民本位の環境づくり、公害まき散らしの規制をさせるために、全国で二十五万人、環境週間全国公害被害者総行動デー実行委員会をつくって、六月十日、十二日に第四回全国公害被害者総行動デーを起こさなければならなくなっております。ここまで患者さんが追い込まれておりますが、この中で去る三月二十八日、水俣病のいわゆる二次訴訟の判決が下されました。判決の結果は言うまでもなく、原告十四名中十二名が水俣病と認められるという原告の全面勝訴となっております。第一次訴訟の判決から再び六年という歳月を要して、ようやくこうした救済されなかった患者の人々がみずからの力で救済の道を切り開いたわけですが、その後チッソは直ちに控訴し、さらに長い闘いが強制されております。チッソの控訴はまことに遺憾であります。この裁判の中身は、原告患者らが直接チッソに対し損害賠償を求めたものであるが、裁判の中でチッソの因果関係及びその過失責任というものが争われなかったのを見てもわかるように、水俣病とは何か、水俣法の病像こそがこの裁判の中身だったのでございます。さらに言うならば、原告患者のほとんどが行政から棄却された人たちであり、国、県の水俣病認定そのものが問われたのでございます。彼らは国県の処置で救済されなかったものを裁判で拾い上げられたのであります。患者救済で国と県は物の用には立たなかったという状態で判決が下ったわけであります。この点で判決が下って、その内容を見て国や県はどんなことを考えて、どう反省しておられるか、この判決をどのように受けとめて、何らかなされたか、この点を答えていただきます。
  168. 上村千一郎

    上村国務大臣 具体的な事実その他につきましては、いろいろまた担当局長から御説明を申し上げますが、水俣病につきましては非常に深い、それから広い広がりを持っておるということ、それからずっと経過を見ましても、どうしても行政が後追いになっておるということですね。そういうことは真摯に受けとめて、一歩でもこの対策を進めていかなければならぬという基本的な考え方を持っておりまして、これはたびたび私、委員先生方からの御質問に対して答えておるわけです。  それで、この前民事判決が出ました。判決が出た即日、予算委員会なんかでもいろいろ御質疑がございました。私まだ判決を見ていないけれども、いろいろ関心を持っておりますから、その判決をよく検討してこれを真摯に受けていきたいという姿勢です。というのは、民事判決は御承知のように、要は当事者間に対して既判力を持っておるわけです。ですから、争いのあるそれの関係の判断、御承知のとおりです。けれども、こういう水俣病というものの対策というものは、あらゆるいろいろな御意見なり資料なりというものを参考にしまして、そしてより一歩でも進めていくという姿勢でございますから、判決それ自身もよく検討していきたいと思う。  ただ、感覚としましては、判断条件というもの、水俣病像というものを描きまして、そして環境庁としてはいろいろな専門家の方々の、いわゆる経験、知見、御判断をもとにだんだん築き上げた判断条件というものがあるわけです。要は、そのことに触れておるのか、おらないのか。見てわかるのは、一応棄却された方で、水俣病と認定されておるという客観的事実がある。これは私どもはよく考えていかなければならぬけれども、判断条件そのものについて、何か別な御判断をされて動いておるのか、そうでない点でこういうふうな結果になっておるのか、この点もよく検討をしながら対処していきたいと思います、こういう御答弁を申し上げておるわけです。  それで、その後ずっと検討さしております。検討されておりますが、私も、双方の準備書面や何かもよく読みました。その方面のことには多少知識がある立場にございますから、読んだところが、判断条件につきましては、とにかくあの裁判はそれを批判したり否定はなさっておらずに、その判断条件の線に沿って御判断をされておると受けとめます。しからば、どうしてそういきながら結果がこういうふうに広がってきたんだろうか。問題はこの点なんですね。それで、これはどういう点がいろいろあるんだろうか。要するに、棄却されたときよりも、御承知のように時期が非常に延びておりましたね。その間の病状というものが、症状があらわれてきておるのか、それともどういうふうに出ておるか、判決の中にもそのことは多少触れておりますね。長引くことによって症状があらわれることもあれば、治癒する状態もあるというところがあるかと思います。こういう諸問題というものについて、その裁判が示しておるということ、それを客観的に私ども検討しまして、そして専門家——何としましても、この方面の専門家でなければ、素人がいろいろ言ったって、これはなかなかどうしようもございませんから、そういう方の御理解というものを経なければ、認定業務というものは進まないわけですから、今度の判決はこういうふうになっておるということを率直に専門家の方にお諮りしまして、そしていきたい、こういう状態でこの判決を受けとめておるわけです。当面は、判断条件そのものについて今度の判決は批判とか否定とか、そういうことをされてはいないというふうに受け取っています。  しかしながら、それでありながらああいうふうな結果になってきますから、その点は私どもは謙虚にどういうふうに受けとめていくかというのが、いま真剣に考えておるところでございます。
  169. 津川武一

    津川委員 棄却された人たちほとんど全部が復活するという。長官が、いま同じ基準で判断されただろう、時期がたっているから重くなっているんだろうと。ところが判決が出たとき、長官自身が国民に答えているのがあるのです。それによると、水俣病の判断条件がもろに問題にされている、判決内容がいまの判断条件にもろに来ている、こういうふうに言って、いまはそうでないようですが……。(上村国務大臣「その点はちょっとお話ししておいた方がいいです」と呼ぶ)そうですか。ではどうぞ言ってください。
  170. 上村千一郎

    上村国務大臣 そんなことはどこも言ったことはございません。それは原告団の方々が見えまして私が会った。そのときはそんなことは全然言ってないです。言っていないのを地元で何かそういうふうなことをやっている。私は、もし会ったらそういうことは一言申し上げたいです。とにかくあのときはほかの人らもみんなおりましたよ。おって、私はそのことを明白に言っておるわけです。判決を見なくて、もろに受けているとか受けていないとか、そんなことは言えるはずはないです。判決が出て、そのときは原告団も私に会うときには判決の原本がまだなかったはずです。そして午後に会ったときに何か飛行機でおとりになったということです。そういう際に私が、判決が判断条件にもろにいっておるかどうとか、そんなことは言ったこと全然ないです。というのは、その時刻に、その後同じ日か知りませんが、予算委員会で緊急質問があったのです。そのときははっきりと議事録がございますから、その点だけははっきり申し上げておいた方が、これから論議なり御質問を進めていく際にいかがかと思いますから、はっきりその点を申し上げておきます。
  171. 津川武一

    津川委員 長官が条件を信ずる、守る、それに対する情熱のほどを伺って、議事録にも載ってあるのだから、長官の気持ちも国民に伝わると思います。その点はそれでいきましょう。  そこで、問題の判決なんです。   水俣病の病像   以上認定した事実によれば、水俣病とは、被告工場におけるアセトアルデヒド製造工程内で生成された有機水銀が工場廃水に含まれて排出され、水俣湾の魚介類を汚染し、右汚染された有機水銀を保有する魚介類を摂取したことにより惹起された中毒性の中枢神経系疾患であるが、右疾患のどの範囲までを水俣病として捉えるかについて検討するに、前判示の如く、有機水銀による魚介類等の汚染が広範囲かつ長年月にわたっており、これらの摂取の量、時期等も各個人によって当然相異すること、有機水銀中毒の症状の出現にも多様性があることを考慮すると、水俣病を単にハンター・ラッセルの主症状を具備したもの、もしくはこれに準ずるものといった狭い範囲に限ることは相当といえず、原告らあるいは患者らがどの程度有機水銀に曝露されてきたのかを出生地、生育歴、食生活の内容等により考察し、さらに各人に有機水銀中毒にみられる症状がどのような組合せで、如何なる程度ででているかを検討し、 ここまでは長官も文句ないかと思いますが、  その結果各人の症状につき有機水銀摂取の影響によるものであることが否定できない場合には、これを本訴において水俣病として捉え、損害賠償の対象となすを相当とするというべきである。 これが一つの判決。もう一つ、   さらに、原告らあるいは患者らが他の病気に罹患しており合併症が存する場合にも、当該症状のすべてが明らかに他の疾患を原因とするものであることが認められる場合を除き、当該症状について前記同様に有機水銀摂取の影響の有無を判断していくものとする。 これが実は条件にもろに来ているのです。というのは、皆さんの条件を読んでみましょう。  これは昭和五十二年七月一日、熊本県知事あてに出した環境庁環境事務次官の「水俣病対策の推進について」という回答であります。そして「後天性水俣病の判断条件について」、こうあります。   これらの症候と水俣病との関連を検討するに当たって考慮すべき事項は次のとおりであること。  (1) 水俣病にみられる症候の組合せの中に共通してみられる症候は、四肢末端ほど強い両側性感覚障害であり、時に口のまわりまでも出現するものであること。  (2) (1)の感覚障害に合わせてよくみられる症候は、主として小脳性と考えられる運動失調であること。 また、小脳・脳幹障害によると考えられる平衡機能障害も多くみられる症候であること。  (3) 両側性の求心性視野狭窄は、比較的重要な症候と考えられること。  (4) 歩行障害及び構音障害は、水俣病による場合には、小脳障害を示す他の症候を伴うものであること。  (5) 筋力低下、振戦、眼球の滑動性追従運動異常、中枢性聴力障害、精神症状などの症候は、(1)の症候及び(2)又は(3)の症候がみられる場合にはそれらの症候と合わせて考慮される症候であること。 その次の大きな2、   1に掲げた症候は、それぞれ単独では一般に非特異的であると考えられるので、水俣病であることを判断するに当たっては、高度の学識と豊富な経験に基づき総合的に検討する必要があるが、次の(1)に掲げる曝露歴を有する者であって次の(2)に掲げる症候の組合せのあるものについては、通常、その者の症候は、水俣病の範囲に含めて考えられるものであること。  判決は、症状があったときにそれを否定するものがない、よろしいと言っている。この症状は、高度の学識と経験を総合的に運用している、しかもたくさんの組み合わせが必要となっている。皆さんが判断基準はこのままでいいと言うなら、これがおかしいのだよ。さらに五十三年七月三日に出した新次官通知なるものがございますが、「水俣病に関する高度の学識と豊富な経験に基づいて総合的に検討し、医学的にみて水俣病である蓋然性が高いと判断される場合には、その者の症候が水俣病の範囲に含まれるというものであること。」こう言っている。判決は、疫学的に正しければ、その結果、否定できない場合にはやりなさ、合併症についても他の疾患を原因とするものであることが認められる場合を除いてやりなさいと言っている。そうすると、皆さんのこれとはもろに来ている、これが現状の実態なんであります。  もう一つ、竹本さん、この判決の中で、感覚障害が一つしかないのです、認定されているのです。長官、だから、いままで皆さんのやったものでは何が得したかと言うと、六千人残る、一千人棄却される、百二十人、一カ月やると十二人ぐらいしか決まらない、もうけているのは皆チッソです。いままで皆さんがやってきたが、だれをもうけさせたか。患者が六千人、一千人棄却されて苦しんでいる、亡くなっている人もいる、もうかったのはチッソなんです。これが皆さんの判決だ、条件だ、診断基準だと言いたいのです。お考えになっていただきたいと思いますが、いかがでございます。
  172. 上村千一郎

    上村国務大臣 詳しいことは後から担当の部長からもお話があると思いますが、私も長官に就任した後、この論議の過去のいきさつなどをずっと拝読させていただきました。公環特でもいろいろ問題になっていますね。たとえば「水俣病認定に係る業務の推進について」というのでさきに保健部長から五十二年七月一日付で出ております。そのときには参考としてやれ、こういうことですね。ところが、五十三年七月三日の環境事務次官通知、この参考という字が抜けております、書いてない。けれども、全趣旨から言ってこれは環境基準ではない、条件なんですね。しかも、いま御指摘になったような論議が過去においてもずっといろいろあったようです。私どもの前長官の時分、前々長官のときにもあったかもわかりませんが、論議がされておった。それで、これをいろいろ拝見しますと、この判断条件というそのものは、いわゆる水俣病に対する高度の学識と豊富な経験に基づいておるそういう経験者の経験なり知見なりそういうものを積み重ねられて次第次第にできてきたものだ、それを一定のときに整理した、それがこの五十二年七月一日の環境保健部長の「後天性水俣病の判断条件について」というふうに思われます。それが、その後事務次官から出したものに多少ニュアンスが変わっておるように思われる点がございますね。ここら辺がいつもいろいろと御陳情の中にも入ったり、言われたりしますが、私は、なるほど表現は多少違っておるけれども、基本的な物の考え方、判断は、従来の学識経験者とかそういう方面の豊富な経験なり知見なりというものの集積によって積み上げられてきておるものである、そして、要は今後もそういう積み重ねの努力は行われるべきものである、こういうふうに受けとめておるのです。ですから、いろいろな症状を書いてありますのも、その学識経験者の方々がよってもって条件とするところを一応整理した、こういうものだと思うのですよ。こういうふうに受けとめておる。  この判決のたとえば森枝さんですか、知覚障害が四肢末端、それから運動失調を認められるとか、筋力低下、軽度とかいうふうなこの分類、分析の線というものをずっと検討してみますと、裁判の判決というものは、環境庁が出しておる水俣病像というものに対する判断条件というものの線に沿って審理なり御判断を進められておる。けれども、御承知のように、裁判そのものは、最後は裁判官の自由心証によって決定されます。どこどこというよりも全体の判断の証拠は列挙しますけれども、それに対する最終の判断というものは自由心証で決められることになっております。そういうところから見ますと、分析の結果、いろいろな動き方というものにつきましては、裁判の判決というものはどうも判断条件というものを頭に入れながら進められておる、私はこういうふうに受けとめておるわけであります。  ただ、先ほど申し上げましたように、もしそのまま行っておるならば、一回棄却されたものが認められていくというそこの問題は、私どもは真剣に受けとめていかなきゃならぬ、こういうことです。ですから、この判決を詳細に検討したものを、専門家の方々にこういうふうに思われるからどうかということを一回御相談してみたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  173. 津川武一

    津川委員 答弁していただく前に、次に私大事な提案がまたあるのです。したがって、この二つの次官通達に対して説明は要りません。  そこで、条件とこの判決か同じものと思っているのかどうか、これが一つ、端的に聞きたい。二つ目は、判決によって条件を考え直すべき必要があると私は思うのだがどうか。あと鑑定に対してかなり大事な私の意見もあるので、簡単にそこのところ二点だけ答えていただきます。
  174. 本田正

    ○本田政府委員 二点とおっしゃっていただきましたけれども、一点目がようわかりませんでしたので、あるいは合わせてということになるかもしれませんが、判断条件といいますものは、先生先ほどお読み上げいただきました判決理由の中にハンター・ラッセル云々という項がございました。あの考え方というものは、私どもがかつて昭和四十六年に事務次官通知を出しました。そこに、否定できない場合は、という言葉があるわけです。四十六年の事務次官通知と現在の、これもお取り上げいただきました去年出しました新しい事務次官通知、その間に判断条件というものもございます。こういったものは一貫して考え方において変わったところはないわけでございます。そういった意味におきまして、判決理由の中で指摘されておりますことは、まさに私ども昭和四十六年以降水俣病の範囲について一貫して示してきた考え方と基本的に相違はしてないというふうに思いますので、これは見直しは必要ないのじゃなかろうか、こう思います。
  175. 津川武一

    津川委員 長官、よくわかりました。恐らく患者さんたちも水俣病の関係の人も日本公害考える人たちは、いまの長官の、環境庁の態度に大抗議が展開されるのじゃないかと思います。六月十日、十二日の日もまたこの点が大きに論議になると思います。  そこで、次の問題に入っていきます。簡単に答えていただきたい。  いま何人認定申請をしていますか。そのうち何人が審査会にかかっておりますか。これが一つ。いままで何人認定されて、何人棄却されましたか。これが二つ。三つ目には、認定を申請して認定が下る前に何人亡くなっておりますか、この三つの点を答えていただきます。
  176. 本田正

    ○本田政府委員 いままでに水俣病の申請をした方々は熊本県、鹿児島県、新潟県、それから新潟市、全部合わせて一万七百三十九名でございます。その中に百七十名の取り下げがございます。それから処理が済んだ、いわゆる認定か棄却かということが処理でございますが、認定を受けた方々は二千百八十一名でございます。申しおくれましたが、ことしの四月末現在の数字でございます。それから棄却された方々は二千二百五十二名です。したがいまして、未処理件数といいますか、いまだに判断を待っておられる方々は六千百三十六名、こういうふうに相なっております。何名が申請をしてから認定を受ける前に亡くなったかという正確な数字はいま持ちませんが、たしか百六十名ぐらいだったか一これは後刻また調べて御連絡申し上げます。
  177. 津川武一

    津川委員 聞かれるような状態で、水俣病の被害者の苦悩というのは大変でございます。これはできるだけ早く、上村さんせっかく長官になられたのだから、問題の解決のレールを早めていただくように——前の長官は必ずしもその点では熱心でなかったので……。  この方策を伺いますが、その前に、審査会は何人でやっておりますか。
  178. 本田正

    ○本田政府委員 各県条例によって審査メンバーが決まっておりますが、おおむね十名でございます。
  179. 津川武一

    津川委員 認定は審査委員の全員一致でやりますか、いかがでございますか。
  180. 本田正

    ○本田政府委員 審査会にはいろいろな専門の、たとえば神経内科、眼科、耳鼻科等の方々が入っておられます。そして原則として全員の意見がまとまりませんと認定するあるいは棄却するということを実質的にはやっておらないと聞いております。
  181. 津川武一

    津川委員 長官、実はこれがチッソが喜んでいる。というのは、水俣病は何かということが議論がある、専門家の意見が分かれている。この公判でも証人に立った人というのは意見が幾つか出ている。どうしてこれが全員一致になるのでしょう。全員一致になるとすれば、私にもわかる——私も専門家なんだけれども、いまは国会に来てわからないが、だれでもがわかるような症状が具備されたものが全員一致になる。だから認定が進まない。いま言われたこの数字が出てくるのはなるほどねとわかる。精神衛生法で政府が強制して精神病院に入院させるときには二人の鑑定でよろしいのです。これじゃ進まないのです。非常に高度な知識というけれども、この点はかなりいまはわかっているのです。私は鹿児島大学に行って鹿児島大学の教授たちと、熊本大学に行っていろいろな人たちと相談した。そこで、現地で扱っている開業医であるならば端的にわかると言うのだ。恐らく一番正しいだろうと言うのです。これだけ議論になったから、水俣病の認定に対しては——その雲の上の議論はわかりません。したがって、鑑定の制度を、全員一致でなく何人かの意見が一致した場合には認定すると、かなり片づきます。もう一つは現地で扱っているお医者さんの申請書を第一に考えていく。これが長官、あなたがせっかく長官になったし、せっかく私もここで議論する、水俣病を早く解決していく一つ方針なんだ。こういう点をひっくるめまして、申請されている人たちをどうしてやるか、棄却された人たち、また今度全部出てくるだろうから、それをどうして拾ってあげるか、亡くなった人たちも今度の場合は認定されましたね、その人たちをどうして救うのか、これをひとつ答えていただきたい。この申請されたものを早く片づけていただく、棄却された者を救ってあげる、死んだ人たちも救ってあげる、そしてこれを早くやるためにそういう形の鑑定制度、審査制度を思い切って抜本的に改正する。これには現地で診断されている、扱っているお医者さんの意見というものを主にして考えて、そこである程度まで通してしまって、めんどうなものだけ、意見の分かれるものだけを審査会にかけるなどということ、審査会の前提としてそういうかっこうのものを、開業医が持ってきたもののを審査会が一度見て通す、そういう形の制度をつくるならばきわめて問題が解決されると思うのであります。この点、長官でもいいし、どちらでもいいですが、お答えいただきたい。
  182. 上村千一郎

    上村国務大臣 これは、この前判決があった直後、結果だけがあって判決文はまだ届いてないときに、原告団が見えまして、私ども長い間いろいろ御陳情を受けたり、私も意見を吐いた。そのときこういうことを一点申し上げたのですよ。まだ判決見ていないのでわかりませんが、要するに判断条件に触れておるのか触れていないのか、まだ見ていないが、あるいはひょっとすると運営問題やなんかのことに示唆を与えておるのじゃないかと思うのだ、これは私運営ということをはっきり言ったのですよ。私はそう言ったのです。それは、もし判断条件がとにかくそのまま批判されずにいっておる、そうすると、結果がそういうふうに異なって出てくることは間違いない。そうすると、ここで考えられるのは、その棄却したときの期間よりも裁判が判断をされたときは時間的にずれておりますね。ですからそこに、ぼくら素人だからはっきりわかりませんが、症状がどういうふうに変化するのか、これは専門的に見なければわかりませんけれども、そういうことも一つ考えられますね。同じときに棄却して、同じときに判決といったって、別の判断が出るということになれば、これはまたはっきりするのですが、非常に長い期間がたったときの判決になっておりますから……。そういうものか、あるいはいろいろ判決や何かずっと検討した結果、運営面というものについて何か示唆を受けるということか、とにかく裁判の判決を前向きに慎重によく検討していきます、そのときこういうお話をしたのです。そこら辺は私どもがあれをしましても、何しろ専門家の方が認定されておりますし、その方々が本当にわかって御協力をしてもらうということでなければ実際上の業務というものは遂行しませんもので、それでいま言ったように、ずっと裁判のいろいろな検討を一回専門家の方にも御相談してみて、そして要は、認定業務の促進関係のことはあるし、不作為の問題がありますからね、現に裁判で。そういうものも謙虚に私どもは受けとめていかなければなりませんから、そういうふうにしていきたい、こういうふうに言ったのです。けれども、いろいろこちらも裁判をあれやこれやと裁判官に聞いておるわけではございませんから、文書を見ながらいろいろな部面でこれは検討しているだけですから、われわれが受けとめたものを専門家にも一たん相談かけて、要は何か患者の方々にもよくそれのニードというものはあるでしょうし、これが即救済のことになるのですから、そういうことを考えておる、こういう考え方であります。
  183. 本田正

    ○本田政府委員 審査会におきますところの全員一致というのは、こういう意味も実はあるわけでございます。水俣病患者を一人でも見落とさないようにという観点から、各高度の学識をお持ちの先生方から成る委員会で、その中で棄却する場合が問題でございます。そういった場合には、当然これは一人でも見落とさない、そういう観点から審議をなさっているわけでございますからお含みおきいただきたいと思います。
  184. 津川武一

    津川委員 部長の話はとんでもないことで、喜んでいるのはチッソなんだよ。これに振られているんだよ。  そこで長官、申請されて未審査のやつ六千百三十六人、それから認定却下された二千二百五十二人。これはもう一回、いまあなたがはしなくも言われたように変わっているかもわからない、裁判で認定されているから。それをもう一回認定してあげる道を開いていく計画、六千百三十六人を早く決めて救済してあげる計画などというものを、ここでひとつあったならば、当面と二、三年の計画をあわせて私に報告して文書で出していただきたいと思います。  それで、次の質問に進んでいきます。時間も来てしまいましたので、最後にアセスメント法案についてですが、私たち共産党は、環境アセスメント制度の基本としてあらゆる開発行為に対して環境に及ぼす影響を事前に科学的に十分に調査する、その調査に基づいて予測する、どんな公害が出てくるか。そうすると、調査予測の結果に基づいて開発の可否を決める、こういう見当で問題を進めていきたいと思っておりますし、住民代表も参加してこういうことを決めていく、このように提起してまいりました。ところが政府自民党は、今国会提出されるべきこの環境評価アセスメント法案国会提出を昨年に続いて四たび見送ってしまったようです。新聞などの伝えるところで政府考えているものを見ますと、発電所建設や都市計画事業をこのアセスメントから外したり公聴会開催の規定を緩和するなど、なかなか容易でないものが計画されて言われているようですが、やはり日本人の住む正しい環境をつくろうとすれば、思い切って出されるのが当然だし、なぜおくれているのか。いま私が申し上げましたように、事前に十分に調査して、その調査の結果に基づいて予測して、それで開発の可否を決める、この決定には住民も参加させる、こういう形で提案されるべきだと思いますが、なぜおくれたのかと、これからこういう気持ちがあるのか、これを二つお伺いします。  もう一つ、青森県のむつ小川原開発第二次基本計画に係る環境影響評価報告書、これは青森県のアセスメントと言われている。これは皆さんからの指導と指示に基づいてつくりました。この中には公聴会が入っていない。住民の参加、決める権利が保障されていないなどきわめて不十分なものであり、今日皆さんがいわゆる報道されているものを考える、既定事実をつくるという役割りをさせられております。  この点をまず指摘しておきながら、しかし、この中には発電所、石油コンビナート、石油備蓄、こういう施設は基本的なアセスメントの中で考える、こうなっているのです。今度皆さんが考えているものの中からこれが抜かれているのです。企業にやらせるという。こういうようですが、やはり入れなければならぬものは発電所やこういう石油企業だと思うのです。この点は緩めてはいけないと思いますし、皆さんの指示というてたくさん苦労して青森県がつくったあの報告書がむだになるのか、むだにしてはいけないと思いますが、ここの点を答えていただいて、私の質問を終わります。
  185. 上村一

    上村政府委員 環境庁考えておりますアセスメントの法制の中で、環境アセスメントの対象事業として考えますのは、国の立場から見まして相当規模が大きい事業で、環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるもの、同時にそういった事業というのは事業者に義務を課するわけでございますから、あらかじめ列記をする形で定めておくことがいいんじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、いま御指摘になりました、たとえば電気事業関係の施設などにつきましては、やはりこの範疇に入るものであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、いわゆる住民の参加という点でございますが、御質問において決定に参加するというふうなお話でございますが、私どもそこまで考えてはおりません。ただ、これからの開発事業については、住民の理解なり協力を得なければ進めていけるものではないということは、開発事業に携わるものであっても相当認識は深めてきていると思うわけでございます。したがいまして、こういった制度をつくります場合には、地域の人々にアセスメントの内容というものを公にし、それから説明し、意見を求め、その意見を事業に反映させていくようにするというふうな仕組みというのは、どうしても必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、御指摘になりましたむつ小川原の関係でございますが、むつ小川原につきましては、昭和五十一年の九月に環境庁から青森県に対しまして指針を、指示をしたわけでございますが、その指針に従いまして青森県でも環境影響評価をいたしました内容というものを公にし、それを人々に見せて、それから意見を求めてやっておるわけでございますから、いま私ども考えておりますその環境アセスメントに地域の人々が関与し得る仕組みとほぼ同じではないかというふうに考えておるわけでございます。
  186. 津川武一

    津川委員 一つだけ具体的に伺って……。  皆さんの指針でつくったのですよ。これは火力発電所と石油コンビナートや石油備蓄装置を県と国でアセスメントをやるという、今度皆さんこれを生かして残しておく、それならいいのです。そうじゃなくして、電力会社と石油会社でアセスメント環境を守る、そういうものをつくらせるのか。せっかくいままで皆さんの指導でつくったものを生かすべきだと思うのです。この点が具体的に、いままで皆さんの言うところだと、どうやら逃れるらしい。それではいけないのです。せっかく作業したから、あれを生かしておいてつかまえていく、どっちなんです。
  187. 上村一

    上村政府委員 どうも御質問意味がつかみかねるわけでございますが、むつ小川原総合開発計画のアセスメントは現に生きておる。そうしてそれが活用されておるものであるというふうに理解しておるわけでございます。ただ若干誤解があるとすれば、私ども考えております法律の中では、アセスメントというものをある開発事業をしようとする事業者に義務づけるというふうな仕組みを考えておりますので、その事業主体がいっぱいある一つの総合計画のようなものというのはなかなかなじみづらいというふうに考えておるわけでございます。
  188. 津川武一

    津川委員 これで終わりますが、具体的に言うと、あそこは火力発電所と備蓄構想なんですよ。この二つの事業が、いままで皆さんが県と一緒になって作業して推進したあの報告書の中で、あのアセスメントで縛れるというならこれでよろしいのです。どうです。あれが生きるというならそれで私は質問を終わります。
  189. 上村一

    上村政府委員 そのむつ小川原総合開発第二次基本計画の内容にあるものについては、あのアセスメントが生きておるものであるというふうに理解をするわけでございますが、それにないものについては改めてアセスメントをするという必要があるかもわかりません。
  190. 津川武一

    津川委員 終わります。
  191. 木原実

    木原委員長 次回は、来たる六月一日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会