○高橋(壽)
政府委員 四月二十五日、昨日でございますが、未明から夜にかけまして東海道沿岸沿いにあるいは山陽道沿岸沿いに濃霧が
発生いたしまして、これが原因と思われます海難
事故が多数
発生いたしましたので、御報告を申し上げます。
海域別に申し上げますと、この霧は西の方から当然東へ向かって進んできますので、西の方から申し上げますと、時間的に一番早いのが、四月二十五日の午前二時五十五分、松山沖で貨物船とLPGタンカーとが衝突をいたしております。
同じく四時四十分、来島海峡西口におきまして、やはり貨物船とLPGタンカーが衝突をいたしております。
それから、同じく七時四十一分、明石海峡航路内におきまして、カーフェリー「さんふらわあ号」と貨物船明幸丸が衝突いたしております。
それから次に、駿河湾でございますが、ここで十六時三十五分、漁船同士の衝突がございました。
それから三番目は、伊豆大島と伊豆半島の大体間に囲まれた海域でございますが、三件
発生いたしておりまして、二十時二十分、伊豆大島西方におきましてタンカー拓洋丸と貨物船第十五大黒丸、これが衝突をいたしております。
それから、同じく二十時四十五分、伊豆大島西方におきましてタンカーと韓国籍の貨物船が衝突いたしております。
それから最後に、二十一時、伊豆大島西方におきまして貨物船神長丸と漁船第八海正丸、これが衝突いたしました。
合計七件の海難があったわけでございます。
いずれも原因は濃霧によりまして非常に視界が狭かったということであると思われます。場所により、またそれぞれ
事故を起こしました当事者の言い分により多少食い違っておりますが、一番狭い場合で百メーターの視界しかなかったという場所もありますし、さらに数百メーターあったという場所もあるようでございますが、いずれにしましても百メーターないし数百メーターという視界は、特に夜間、船の運航にとりましては一般的にかなり危険な状態であるわけでございます。もちろんそういう状態になったら必ず衝突するわけでありませんで、直接の原因といたしましては、恐らく両方の船舶の相互間におきまする何らかの手違いがあったと思われますが、原因等につきましては海難審判等によっていずれ明らかになると思います。
この七件のうちやはり一番問題でございますのは、最後に申し上げました貨物船と漁船の衝突でございまして、これは伊豆大島西方で
発生いたしたものでございます。昨晩の九時ごろでございますが、大島の測候所から濃霧
注意報が発令されておったそうでございます。現場は雨、視界は百メーター以下であったというふうに言われておりますが、東京から大阪に向かって航行中の貨物船神長丸、九百九十九トン、乗組員十二名、鋼材千トンを積んでおります。船舶所有者は東京都千代田区の栗林近海汽船であります。この船と第八海正丸、これは冷凍運搬船、漁船でございます。冷凍運搬船、四百九十九トン、焼津からアリューシャン向けに航行中でございました。これは空船でございます。積んでおりません。乗組員八名、東京都港区の開成海運通商所属の漁船でございます。これが伊豆大島の西の海域で衝突いたしまして、十二名乗っております方の貨物船神長丸の方が転覆、沈没いたした模様であります。衝突後、漁船の方が一生懸命近所を捜しましたけれ
ども、その被害船舶の救命いかだあるいは浮き輪などを発見しただけでありまして、現在まで乗組員十二名が行方不明になっております。
海上保安庁といたしましては、下田保安部等を中心として巡視船艇、航空機を動員し、また海上自衛隊の航空機も応援を頼みまして目下捜索を続けておりますが、ただいままでのところ手がかりはつかめておりません。
なお、その他の
事故につきましてはいずれも貨物船が多かったわけでありますが、タンカー等で若干の油の流出があったもの以外はそう大きな被害はなかったと思われますが、事によっては被害が出たかもしれないというものにこのカーフェリー「さんふらわあ号」の
事故がございます。これはカーフェリーでございますから、当然お客さんがたくさん乗っております。約千人のお客さんが乗っております。乗組員だけでも四十四名ということでございまして、船も一万一千トンを超える船でございますが、これは明石海峡の航路の外れの辺だと思いますけれ
ども、明幸丸という貨物船、千百トンが濃霧のためにしばらく走るのをやめて漂泊をしておった、エンジンをとめまして。そういう状況のところへ西の方から来た「さんふらわあ号」、これは九州の苅田港から大阪向けに走っておったわけでありますが、それが衝突いたしました。
衝突の状況は、千トンの貨物船の横腹に一万トンのカーフェリーが突っ込んで貨物船の横腹がへこんだという
事故でございますが、へこみ方が小さかったために沈没には至りません。サルベージボートによりましてこの貨物船は曳航されて神戸港に入りました。また、「さんふらわあ号」も人員その他に全然支障はなく、多少時間がおくれまして大阪港に入港いたしまして落着いたしましたけれ
ども、何せ一万トンのカーフェリー、千人を超える人命を乗せている船でございますので、大
事故になる可能性があるいはあったかもしれないということで、原因等を十分調べまして対処をするつもりでございます。
以上、昨日未明から起きました海難七件につきまして概略御報告いたしました。
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