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1979-05-08 第87回国会 衆議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月八日(火曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員   委員長 加藤 清二君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 津島 雄二君 理事 森  美秀君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君 理事 塚本 三郎君       玉生 孝久君    西田  司君       野田 卯一君    高田 富之君       楯 兼次郎君    春田 重昭君       山原健二郎君    田川 誠一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁長官官房         審議官     四柳  修君         国土庁長官官房         会計課長    佐藤 毅三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁水資源局         長       北野  章君         国土庁大都市圏         整備局長    堺  徳吾君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君  委員外出席者         科学技術庁長官         官房審議官   加藤 泰丸君         科学技術庁研究         調整局生活科学         技術課長    平野 拓也君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         気象庁観測部長 末広 重二君         消防庁地域防災         課長      中川  登君         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         参  考  人         (地域振興整備         公団総裁)  三橋 信一君         参  考  人         (地域振興整備         公団理事)   石川 邦夫君         参  考  人         (地域振興整備         公団理事)   黒田 四郎君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     力武 常次君         参  考  人         (日本地震予知         クラブ会長)  亀井 義次君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ───────────── 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     安藤 巖君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管国土庁)〕      ────◇─────
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管国土庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として地域振興整備公団総裁三橋信一君、理事石川邦夫君、理事黒田四郎君、東京工業大学教授力武常次君及び日本地震予知クラブ会長亀井義次君の出席を求め、意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承願います。
  4. 加藤清二

    加藤委員長 それでは、国土庁長官から概要説明を求めます。中野国土庁長官
  5. 中野四郎

    中野国務大臣 国土庁昭和五十一年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十一年度の当初歳出予算額は、千三百五十六億六千百八十九万円余でありましたが、これに予算補正追加額五十八億七百六十八万円余、予算補正修正減少額十二億八千四百三十万円余、予算移替増加額二百四十七万円余、予算移替減少額六百四十六億三千八百二十四万円余、前年度からの繰越額十六億三千三百十六万円余、流用等増加額二千三百十三万円余を増減いたしますと、昭和五十一年度歳出予算現額は、七百七十二億五百八十一万円余となります。この歳出予算現額に対し、支出済歳出額七百二十七億八千八百三十一万円余、翌年度への繰越額二十九億三千百八十四万円余、不用額十四億八千五百六十五万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なものは、離島振興事業費百九十四億一千百七十七万円余、水資源開発事業費百七十五億五千七百三十万円余、揮発油税等財源離島道路整備事業費百十六億七千三百万円、国土調査費五十五億四千二百十七万円余、国土総合開発事業調整費四十六億四千二百四十七万円余、小笠原諸島復興事業費二十四億三百十一万円余、航空機燃料税財源離島空港整備事業費十億六千六百二十二万円、国土計画基礎調査費六億三千八百六万円余、国土庁一般経費八十六億四千八百二万円余等であります。  さらに、翌年度へ繰り越した主なものは、水資源開発事業費十九億六千二百八十万円、離島振興事業費四億七千七百二十三万円余等であります。  また、不用額の主なものは、防災集団移転促進事業費補助金七億一千三百七十九万円余、土地利用規制等対策費補助金三億九千百三十四万円余等であります。  以上、昭和五十一年度国土庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  6. 加藤清二

    加藤委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。岩井会計検査院第一局長
  7. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 昭和五十一年度国土庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 加藤清二

    加藤委員長 これにて説明聴取を終わります。     ─────────────
  9. 加藤清二

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは力武先生どうもありがとうございました。前回、昨年の八月でしたか、ちょうどフランスにおいでになっておりましてお伺いすることができませんでしたが、きょうそれにも少し関連いたしまして、最初先生からお伺いをしたいと考えています。  先生は、昨年ですか、中国に、学者先生六人と一緒に三週間ぐらい、各地で専門家大衆地震予知は必ずできるのだという大変な意気込みで調査をやっている、学者一般国民が一体となってやっているところを見て回られたわけです。いわゆる専群結合とあちらでは言うのだそうですが、専門家一般国民結びつき一つ特徴だとは思うのですが、多数の一般国民専門家指導のもとに自作の簡単な観測機器などをつくったり、あるいは井戸水地磁気観測を行っている、また近代的な地球物理学的な観測もあわせ加えて、それに動物の異常な動きだとか井戸水の変化その他いろいろの問題、現象等をとらえて地震予知をやるというふうなことが大分宣伝をされておりますしわれわれもそれを見ておりますが、先生はこれをごらんになりまして、予知という点で何か中国のこの専群結合というものの特徴、しかも相当の効果があったものもあり、あるいはそうでないものもあると思うのですが、行った感想をひとつ簡潔に先にちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  11. 力武常次

    力武参考人 ただいまの原先生お話にお答え申し上げます。  私は昨年度中国に参りまして、北京周辺それから瀋陽、旧満州の、東北地区でございますが、そこに参りまして、海城地震という一九七五年に世界で初めて予知をされました破壊的地震場所、さらに四川省に参りまして成都から山奥へ三百キロほど入って、松潘平武地震というのが一九七六年にございました。マグニチュード七・二という地震ですが、そういうものの予知状況を見学することができました。  一口に申しますと、中国は非常に熱心に予知事業を進めておるということでございます。国家地震局がございまして、各省に省の地震局がございます。さらに小さな都市に参りますと地震隊というようなものがあって大変観測をよくやっているというふうに思います。  その一般大衆との触れ合いと申しますか大衆の寄与という点でございますが、若干日本に伝えられているのと違った印象を受けて帰ってまいりました。日本では非常に精神的な面が強調されております。つまり、一介の農夫がたとえばひもなどをぶら下げて井戸の水の深さをはかってそれを報告するというような面が強調されておりますが、実はそうでないようでございまして、非常に強調されておりますのは、高度の技術を持ちましたたとえば発電工場である、あるいは歯車工場である、あるいは地質調査隊、そういうところに研究観測をやらしているわけでございます。この点、全く自発的にやっているのかあるいは上層部からの指令があったのかについては、私はよくわかりませんでした。やっておりますことは非常に高度なことをやっておりまして、場合によっては地震計も自分で旋盤を回してつくるのだ、こういうようなことでございます。そのデータは省の地震局に集中されましていろいろ予知を理解するのに役に立っているわけであります。もう少し下級の技術を持った人間、たとえば人民公社などに郵便局がございますが、そこには交換手がいるわけでございます。その交換手の横には地電流計といいまして、日本でやっておるような非常にりっぱな記録装置を使っているわけではないのですが、メーターをときどき読むというようなことが行われております。これがどれだけ役に立っているのかという点は中国専門家も若干言葉を濁しておりました。私の判断では、むしろそういうことを通じて地震知識の普及を大いにねらっているのだというふうに感じたわけでございます。むろん有効なものは使うということだと思います。  それから、動物の異常その他でございますが、これは中国では宏観現象と申しております。つまり特別な計器を用いなくともその目あるいは耳等で観察ができる異常な現象を宏観異常というふうに言っております。日本でも大変適切な言葉ではないかと思うわけでございますけれども、そういうものは非常に顕著にあらわれるようでございます。  これは日本とはちょっと様子が違いまして、たとえば地震の数カ月前にすごく離れたところ、三百キロも離れたところの地下水が下がる、同時に小動物が騒ぎ出すというような報告が入ってまいります。これは四川省地震の話でございますが、それから一月ぐらい経過いたしまして地震の一月ぐらい前になりますと地面から火の玉が出るのだそうです。この四川省というのは大変天然ガスの豊富なところでございまして、成都を走っておりますバスの屋根には袋が積んでございます。あれは何だと聞きましたら、天然ガス燃料に使っているのだ、つまり高圧のボンベに入れるようなことをしないでそのまま使っているという、そのぐらいたくさんある。ですから、地面に力が加わってまいりますとガスが出て発火をして火の玉になって飛ぶというようなことがあるようでございます。これは地震局専門家がちゃんと現地に行って調べましてその目で見ております。それから地震の一週間ぐらい前になりますと、だんだんと瀋陽付近にそういう宏観現象報告が集中してまいりまして、件数も非常にたくさんになる。むろん地球物理学的な観測地磁気であるとか土地の傾斜であるとか、そういうものも断然異常を示してくるわけでございます。そしていよいよあした、あさってぐらいに起こるに違いないというような総合判断に至る、こういうようなことでございます。  ですから、そういう宏観現象というようなことも全く無視はできませんで、中国のように非常にノイズのないところという点もあるかと思いますが、日本でもそういう方面も決して無視はしないで努力をすべきだというふうに考えております。  とりあえず以上です。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 わが国でも民間で大変自発的な協力が行われまして、地震予知クラブ会ができるとか、いろいろ団体なり個人で興味を持ち、ある意味でその人自身では科学的なものを取り入れながら地震予知に相当協力している、こういうものもあるわけですが、中国ごらんになった先生もいまおっしゃったように、わが国も国の立場民間のこうした協力が少しでも有効に役に立つように組織化をして、それに専門家指導も加えながら、何か一つのびしっとした、国が中心的にそういった民間協力的ないわゆる予知研究というものを吸い上げるというようなことをしていく場をつくりませんと、現在のままだと、学者先生から言わせると大した効果がないというように思われるものもずいぶんあると思うのですが、それでも中国である程度のそういった協力をもとにした効果を上げた事実はあるわけですから、したがってわが国もこの緊急の地震対策あるいは予知考えたときには、ぜひそういった組織的な場をつくる、国が中心的に、しかも力武先生のような方が音頭をとりながら、ある種の専群結合ではありませんが、専門家一般国民との間の結合というものを図っていただいて、しかも国は国でそのグループにある程度の予算的な裏づけを行い、励みを与え、より効果的なものにしてやるということをやる必要があるように思うのですが、その点先生はいかがお思いになりますか。私の立場では、ぜひそういったものを組織化する、国の立場で有効に利用をするということをすべきだと思うのですが、いかがですか。
  13. 力武常次

    力武参考人 ただいまの件でございますけれども、原先生の御意見に賛成でございます。中国のみならずアメリカ等におきましても、地震予知予算の〇・五%を動物異常行動研究に充てております。日本においても、東大名誉教授末広恭先生グループ科学研究費助成金が出ております。  だからと申しまして、非常に大々的に行うという点につきましては若干疑問がないわけでもございません。つまり、私の考えでは、やはり本筋は地球物理学的あるいは地球化学的な研究地震先行現象をとらえるのが本筋ではなかろうかと思っておるわけでございます。ですから、それを凌駕するように動物なら動物に金をつぎ込むというようなことにはいささか賛成しかねるわけでございます。しかしながら、民間の意識を高めることは非常に大切なことでございまして、妥当な予算額というものは当然あってしかるべきと思います。  組織化の点でございますけれども、これはすでに科学技術庁の方から特別調査費が出ておりまして、さるシンクタンクに命じて研究が進行しております。私はその委員会委員長をやっておるわけでございますが、目標といたしましては、とりあえず地方公共団体あるいは学校、さらには私企業も含むわけでございますが、そういうところからどれだけ協力が得られるだろうかという調査を進めております。その結果、まずまず相当やれるのではないか。これはいろいろ条件がございます。人間が足らぬとか場所がないとかということは若干あります。しかし、精神的には、大変協力の精神があるように承っております。  ということで、私の考えといたしましては、民間地震予知研究組織化というものは推進すべきであるというわけでございますけれども、とりあえずは個人プレーはしばらく後にして、そういう能力といいますか技術の高いところを選んでまずお願いするというのがよろしいのではないかと思います。  実は非常にむずかしい点がございまして、動物の異常を観察すると申しましても、ただナマズが暴れたといっても、人によって何をもって暴れたと言うか違うわけでございます。ですから、これを何とかして定量化して、国内的あるいは国際的にデータが比較できるというような方向に持っていかなければならないわけでございます。  それからもう一つは、民間でいろいろ言われておるところでは、現在の物理学等でまず否定されるような現象を追求している方もおられるようでございまして、これはその方の御趣味としておやりになることは大変結構でございますけれども、学者間等余りサポートのないようなものに非常にお金を使うという点には問題があろうかと思います。  というわけで、予知計画の一環として民間の方をお願いするということはよろしいことではないかと思いますが、その場合にはいま申し上げたような配慮をしなければならないかと思います。  以上です。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 ここで大臣にお伺いしますが、いま力武先生からも条件づきで組織化というような方向へ賛意を表されたわけなのですが、これはぜひ日本でも大臣あたりが肝いりで正式に取り上げていかないとまずいと思うので、この点、大臣お聞きになっていた感想をひとつ。
  15. 中野四郎

    中野国務大臣 いま力武先生の御報告を伺っておりまして、これは今後大いに研究し、その方向に向かって努力をすべきものだ、かように考えております。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、御承知の大規模地震対策特別措置法に関連して先生にお伺いをしておきたいと思うのです。  巨大地震に対する直前予知防災体制を連結した効果を上げるためにこの法律もできましたし、ようやく総理諮問に対する中央防災会議答申が近く正式に出されてくると聞いております。先生も関係されているこの中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会が、静岡中心東海大地震で甚大な被害が起きそうな山梨長野神奈川愛知岐阜の六県、計百五十から百六十市町村に及ぶ危険区域線引きをされたと聞いておりますが、これについてぜひ先生にお伺いしたい点が二、三あるのですが、その一つは、昨年十二月二十八日付で御承知のように第一回目の中央防災会議への総理諮問が行われたわけです。現在までに先ほどの専門委員会におきまして東海地震に関する強化地域範囲が検討されてまいりました。当面は一般建築物の受ける被害を前提といたしまして、静岡県を中心神奈川山梨長野愛知三重の各県の一部が指定対象地域として挙げられていたはずなのですが、最近では三重県が岐阜県にかわったように思うのですが、どんな理由で三重県が外されて岐阜県になったのか、そこのところを先生からお伺いしたい。
  17. 力武常次

    力武参考人 お答え申し上げます。  実はまだ最終的には決定がされていないと私は理解しておりますが、現在の地震学考えられます断層モデルを妥当と思われるものをつくりまして、それによって地震が発生したときにどの強さの震動がどこに起こるであろうかということを地震工学の方々を中心に検討してきておるわけでございます。  その結果想像されますことは、静岡県下等は当然震度六、場所によっては七というようなことになる、これは一般の常識でございますが、周辺見積もりようによって多少変わると思います。いろいろ考え方があるのですが、地震が起きますと巨大な津波が起こるわけでございます。当初、一八五四年、安政元年安政東海地震とほぼ同じものが起こると考えました場合には、三重県は相当な津波被害に遭うだろうということであったわけでございます。しかし、専門委員会委員の検討を経ました結果、実は断層の破壊する個所を少し南の方にはみ出して計算したのではないかと思われるに至ったわけでございます。南の部分には起こらないで恐らくもう少し北の部分に来るであろう、そういたしますと津波は小さくなります。したがって、三重県はとりあえずは大津波というところには該当しないのではないかと考えているというのが実情ではないかと思います。  岐阜県につきましては、いまの震動見積もりに地盤の影響を加えてやりました結果、飛び地といいますか少し離れたところも震動が大きくなるところがあるわけでございまして、岐阜県が入っていたかどうか、実は私も正式の図面はいただいておりませんので十分記憶しておりませんが、静岡周辺では、震度としてはわれわれの見積もりに該当するところが入ってくる、そういうことでございます。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 ちょうど先生がお出かけになっている間に審議はどんどん進んだのかもしれませんが、しかし結果的には、ごらんになっていると思うのですが、岐阜県は中津川が入っているように聞いているわけです。  いまのお話にありましたように、いわゆる震源モデルといいますか、あるいは断層モデルといいますか、これが一応中心になって地震波動きその他を検討された結果、やがて近く答申もされるという段階になっていると思うのですが、この震源モデルあるいは断層モデルといいますか、これのつくり方、とり方も、今回の線引きをもし行うとすると、線引きに非常に影響があるだろうと思うのです。当初、私どもの聞いておりました範囲では、このモデルのつくり方も石橋さんなどを中心考えられた相当広範囲なものになっていたのを、先生方討議の結果このモデルそのものを大変小さくされた、そうして南から少し北へという傾向も出ていたように思うのですが、このモデルのつくり方いかんによっては大変大きな影響がプラスあるいはマイナス面として出てくると思うのです。  一体なぜこの最初モデル構想が、現在使われているようなモデル構想にある意味で上下を縮め、左右は少し右へずらせる、そういうことになったのか。その点、素人でわかりませんが、大変関心がありますから率直にお教えをいただきたい。
  19. 力武常次

    力武参考人 お答え申し上げます。  すでに起こった地震ですらも、その断層がどういう大きさであってどれだけの速さで滑ったかということを求めることはかなりむずかしい問題でございます。ましてや、まだ起こらない地震についてそういうことをやらなければならない羽目になっているわけでありまして、この点、絶対に正しいというものができるということは全く期待できないと思います。  討議の間にだんだん変更があったというふうに先生はおっしゃいましたが、そういう面も多少ございました。しかし、その出発点となった大きな断層面というものは、実はここ二、三年よりもう少し前のときに考えられておったことでございまして、安政東海地震被害状況を詳しく調べるために古文書の発掘を行いまして、それによって再度評価し直してみたところ、従来想像されておったよりもその震源域が東に寄っている、しかも駿河湾の奥に入ってくるというふうに考えられる、こういうことでございます。そして西の部分は、昭和十九年東南海地震マグニチュード八・〇という地震が起こっておりますが、それによってかなりエネルギーを解放されておる、まだそれ以来三十何年で十分たまってはいないだろう、こういう判断でございます。ですから、われわれとすれば東南海のときよりも東へ寄るのではなかろうか、ここは百二十何年もエネルギーがたまり続けておるから十分たまっておるということで、意識的に縮めたのではなくて、そういう判断を加えて現在のモデルができた、こういうふうに思うわけでございます。  私の個人的見解では多少皆さんと違っておりまして、実はもう少し遠州灘の沖合いが割れるのではないかという気がちょっとするのでございますけれども、部会の公式的な意見としては従来よりは若干狭まったものになっております。しかし、規模としてはどうしてもかれこれマグニチュード八に達するということに思われます。  以上です。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 だから現在は駿河湾遠州灘、それから静岡県の中南部、震源域としては一応そこを設定される。エリアとしては五千から六千平方キロぐらいということになったのですが、私は、これこそ素人の見解を申し上げますが、近く発表されるであろう線引き答申の内容がいま予想されるようなものであったときには、たとえば大都市の名古屋市、東京都等に住む人間は何かほっとしてしまう感じがある。先ほど三重県の話も出ましたが、三重県の津波のごときも、このモデルの置き方がもう少し変わっていれば相当真剣な津波に対する対策を三重県に要望する、それに対する対策の計画策定もさせる。ところがいまのモデルを使ったために、三重県に対する津波というものは三重県の県民全体あるいは理事者にも何かほっとした感じを与える。名古屋も東京も恐らくこの線引きでは震源域に入ってこない、ここでも何かほっとする感じがある。一般の住民は、特に東京なんかも地震に対しては相当敏感になり始めた。最近、私はいいことだと思うのですが、ちょいちょいNHKその他が地震の問題を取り上げて、それとなく、来るぞ来るぞではありませんが用心しろと言わんばかりのPRがされていることは非常にいいことだと思うのです。非常にソフトにしみ渡ってきておるから、何となく頭のすみに地震に対する対策というものが恐らく十人のうち五人くらいはもうこびりつくほどになってきただろうと思うのです。  このときに、この十二日に答申が出され、総理大臣が告示をするというようなことが今月、来月に行われるとしますと、いまのような六県、百五、六十市町村という線引きがそのままに発表されたときには、私は、東京なり名古屋に住む住民、三重県の海岸線の人たちに対しては何となくほっとした感じを与えるという危険が大変あると思うのですね。ですから、こういった線引きをやがて発表しなければいけませんし、してもらわなければいけないのですが、大変いま言ったような意味のデメリットが予想されますので、これに対する対策というものを同時に考えておかないといけないのではないか。やがて追加検討をして、一年かかるか二年かかるか知りませんが、その周辺に対しての影響度というものは後刻発表するのだということで一年なり一年半のブランクがあるとその間に、発表された後、いま申し上げた東京、名古屋あるいは三重県の沿岸線にいる人々の考え方というものは、何となくほっとした感じがずうっとある程度蔓延してくることは非常に危険だ。その間にやはり何か、線引きに発表されないからといって安心じゃないんだ、こういう危険があるんだ、こういうことも予想されるのだということがぴしっと出てこないと、これは非常に危険だと思うのですね。  この件に関しては後で詳しく大臣にまた別途にきょうお伺いいたしますが、力武先生から私はお伺いしたいと思います最後の点は、ぜひ何らかの配慮をしないと、私の言っているような大変マイナスの危険があるんじゃないか。せっかく地震に対してそう恐怖を持たないで、そろそろと徐々にクリーピングに頭にしみ込んできた地震に対する気持ちに緩みを与えてしまう危険がある。しかし、いま実際に想定されているマグニチュード八というような地震が起きたときには、名古屋、東京が影響なしなんということは絶対ないと私は思う。震度が六になるか五になるか、五と四の間になるか知りませんが、相当な被害、それに精神的なパニック状態から来る被害というものも考えなければいけないということを考えると、どうしてもこの線引きの発表というものに対するいま私が申し上げたような配慮が相当ないといけないんじゃないかと考えますが、先生、どうお考えでしょうか。
  21. 力武常次

    力武参考人 原先生のおっしゃるとおりだと私は思います。  名古屋、東京等は恐らく震度五という範囲に入ってくるんだろうと思いますが、実はこの線引きにつきましては抜けている点がございまして、これはごく通常の家屋を想定して線引きをやるということでございます。木造家屋というようになるかと思いますが、しかし東京、名古屋等におきましては超高層ビルがあるわけであります。これには、通常問題になっております一番力が大きくなるような震動のほかに、もう少し揺れ方がゆっくりしておりますが、たとえば霞が関ビルをキングコングが来て引っ張って倒したといたしますと大体三秒か四秒でふらりふらり揺れると思います。ちょうどそのくらいの周期の波がかなりの振幅をもって発生することが期待されるわけであります。それがやってまいりまして、東京の霞が関ビルの下で振幅がどれくらいになりましょうか、恐らくセンチメートルのオーダーになると思いますが、揺すったときに、てっぺんは一メートルというふうに、私専門でございませんからよくわかりませんが、その程度の揺れを示すのではないかと思うのでございます。そういたしますと、これはちょっと考えても大変なことでございますので、そういう長い周期に対する配慮ということは、当然専門部会の方で、今回は間に合っておらないようでございますが、今後検討して追加発表があると思います。ですから、どこか飛び地的に離れてここは危険であるという場所が幾つか出てくることが期待されるわけでございます。  さらには、流砂現象というのがございまして、地盤が揺すぶられますと水のように流れてし重い、そこに建っているものがぶくぶく沈むとか傾くということが起こるわけでございますが、この要素も今回の決定には入っていないというふうに思っております。  ですから、このようなことは十分注意しなければいけない面でございまして、繰り返し繰り返しPRして、これより外はもう安全なんだというのでは決してないんだ——昨年の宮城県沖地震を目ましても、高層建築は震度五でありながらかなりの被害が出ているところがございます。あるい肝埋立地でありますとか盛り土してつくった住宅地が相当ひどい目に遭っているわけでございますから、そういうところは東京、神奈川愛知県等に相当あるわけでありまして、その辺のことをちゃんとカバーできるようにしなければいけないと思います。  ただ、私どもは、純粋に学術的あるいは技術的に判断をいたしまして御答申申し上げるわけでございまして、それに行政判断を加えて実際に行政に反映させるということは政府の方のお話だと思いますので、私は実は余り詳しいことは申し上げられないと思います。  以上でございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に先生にもう一間だけお伺いしたいのですが、いま東海地震を想定して専門部会で検討されているのですが、東海地震以外には、どこかの地域を想定して部会としてこれから手をつけるとかあるいは現在検討しているとかという地域があるかどうか。これはグループの一員としての先生にお伺いするのと、先生御自身が個人でお考えになりまして、東海地域をいま盛んにあげつらっていますけれども、これ以外に相当注意しなければいけない地域としてここがあるというようなお考えがもしありましたら、この際お聞かせをいただきたい。
  23. 力武常次

    力武参考人 私が所属しております専門部会においては、東海地域以外には議題になっておりません。つまりマグニチュード八クラスの地震を対象にするということでございますと、現在しぼられるのは東海地域だけのようでございます。  実は房総の沖合い等にかなりエネルギーがたまっているのではないかという議論もないことはございません。たとえば元禄十六年、一七〇三年の地震というようなマグニチュード八・二というのが起こっておりまして、その後起こっておらないわけでございます。もう二百何年たっておりますから、そこにたまっているのではないかという議論がございます。しかし、これは何分遠い海底のことでございまして、現在の技術では実は判断の材料がないということでございます。  それから、いわゆる直下型の地震と申しまして、マグニチュードは六クラスであるけれども、その真上にいる人はひどい目に遭うという地震がございます。これは東京に起こるのではないかというような心配もあるわけでございますが、この方につきましても具体的な観測データがございません。こういう過密都市は非常に観測がしにくい。これは実はもう八十年余り東京の直下型地震というのはないわけでございますね、一八九四年以来ないわけでございますから、これは起こるものと思って対処するべきだという程度のことしかわかっておりません。  やや具体的に危険性がわかっておりますのは伊豆半島でございます。これは一九七四年に伊豆半島沖地震というのが伊豆半島の南端にございまして、それから群発地震活動が中部に起こり、中伊豆に異常隆起を発生いたしました。昨年は伊豆大島近海地震が起こりまして被害が出た。さらに昨年の十二月ごろには伊東の南、川奈崎の辺に群発地震活動が起こっております。そして一九三〇年にマグニチュード七・〇の地震がありました北伊豆地震、あのときは丹那断層という断層が出たわけでございますが、その周辺でひずみの蓄積が非常に大きいというデータが出ておりまして、その南端のところが異常に隆起しているわけであります。過去の歴史を見ますと小田原が災害をこうむったというような記事はたくさんございまして、何となく伊豆半島では地震活動が北上してきているような感じでございます。いますぐどこに起こるというようなことは、実は判定する材料はないわけでございますけれども、地震予知連絡会のグループとしては北伊豆等に重点的に監視の目を光らしている、そういう事態でございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 先生、貴重な時間をどうもありがとうございました。少し時間が延びましたけれども、お帰りいただいて結構でございます。どうもありがとうございました。
  25. 加藤清二

    加藤委員長 力武参考人には御多用中のところ本委員会に御出席くださいましてありがとうございました。どうぞ御退席ください。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 この間に、末広先生おいでになっているのでちょっとお伺いしておきたいのですが、いまも力武先生から、海底地震に対して房総沖はまだ調査ができそうもない状態にあるというお話があった。昨年ですか、海底地震に対して特別に予算をつけて、調査が始まったのか相当進んでいるのか知りませんが、どうなっているんでしょう。特に海底地震に対する観測に力を注いでいるように聞いていますが、いまどうなっていますか。先生御存じですか。
  27. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  日本周辺で起こります地震のうち特に大きいものはほとんど太平洋岸沖の海の下で起こるわけでございまして、これは先生御指摘のとおりでございます。特にいま力武参考人もおっしゃいましたとおり、一番私どもが危険である、ここをきちっと見張っていなければならないと思っておりますのは東海沖でございまして、私どもは昭和四十九年から五カ年計画で海底地震常時観測システムというものを開発いたしまして、本年四月一日から業務観測を開始いたしました。これは御前崎の沖合いから約百五十キロ海底ケーブルを引きまして、そこに地震計を全部で四個途中に設置してあるわけでございますが、現在それを東京で常時二十四時間監視できるようになっておりまして、これで先生御指摘の東海沖に懸念しております地震もさることながら、伊豆近海の地震も十分前兆を把握できると私ども思っております。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 亀井先生おいでいただきましてどうもありがとうございました。先生がいままで研究をされてまいりました内容なりあるいはグループとしてお取り上げになりました研究の中の、一一言うと鳥類もあり地上動物もあり地中の動物もありあるいは異常地下水の問題もあり等々いろいろあると思うのですが、少なくとも地震予知という点で亀井先生がいままで手がけてまいりました中で、これは確かに予知として効果があったというようなものを二、三御説明をまずちょうだいしたいと思うのです。
  29. 亀井義次

    亀井参考人 二、三と言いますけれども、私のいままでの調べでは二、三に限らない、どれもこれも重要となっています。いろいろありますが、雲とか気象の方からいろいろ地震予知を図っている、それとかいろいろの動物から予知を図っている方もありますし、それからネムの木の電位測定、ネムの木の枝のところとその近くの土地のところを測定器でつなぐとごく弱い電流が流れているわけですが、それが地震の前に非常に異常な反応を示すわけです。それは私たちの会員の東京女子大の鳥山英雄教授が発見したわけです。この「自然」の七九年五月号にも宮城県沖地震の前の異常のデータが出ています。普通のときは平常の状態ですけれども、宮城県沖地震のときはこのように異常が出ています。それから地震の前には太陽に異常があらわれたり、また月が変形して見えたりもします。  それから私は地震の古い記録とかいろいろの資料から地震の前の異常を集めましたが、動物であるとか魚、鳥、非常に多くの異常が出ています。関東地震の前なんかは三カ月くらい前からネズミが練馬とか石神井で集団移動したり、また井戸水が品川の漁師町のところで二カ月ぐらい前に、これは掘り抜き五尺掘り抜き井戸というのは岩盤を通して自噴する井戸ですが、それが二カ月以上前から水が出なくなって、そのときの有名な地震学者、中村左衛門太郎博土にはがきで問い合わせた、そのような資料もあります。それから関東地震の前にはイワシが横浜あたりでどんどん川をさかのぼったりとか、またウナギが川の石の間という間から頭を出して動かなかったので簡単につかまえられたとか、非常に多くの異常が出ています。  それで、二つ三つだけ挙げるというわけにいかなくて、そのような異常全部を総合すれば、地震があるようにわかるように思います。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 大変御苦労さまですが、民間のそういった予知に関する研究をお進めいただくことは非常に私どもの立場でもいいことだと思いますし、これからも推進していただきたいと思うのですが、先生のいまおっしゃったように二、三じゃちょっと質問が悪かったのですが、いろいろなお出しになったものあるいは書かれたものを私も実は見せていただいておりますので、私は大体よく知っておりますからあえてそれはお伺いしないで結構でございますが、いまおやりになっている研究はすべて、クラブであろうと個人であろうと自費でおやりになっているというふうに聞いているんですが、国の立場で、たとえば先ほどもちょっと力武先生からお話がありましたが末広博士のナマズのごときにはぴしっと調査費を出す、助成をするということをやっていますが、先生も、おやりになっている内容等からいってせめてこういう問題には、せめてこういうグループ研究に対しては、このくらいの政府からの予算づけがほしいものだというふうにお考えになっていることがおありだと思うのですが、どのくらいの額をどういうふうにどんな方向に予算づけが欲しいのか、もし御希望があったらまずそれを先にお聞かせをいただきたい。
  31. 亀井義次

    亀井参考人 昨年の二月に科学技術庁とか建設省、国土庁等、首相官邸へも行って陳情書を出しましたが、そのときにいろいろ予算を書いているのです。これは東海大地震、それから関東直下型の地震予知するには初年度の最低額を陳情したわけです。それには、先ほどの鳥山先生研究しておられる、それを皆さんでやるネムの木の電位自動測定器二十台、単価が二十三万で四百六十万、それの取りつけ費用が二十台で二万で四十万、地中ラドンの測定、これが五十カ所で五千円ずつ二十五万、顕微鏡、そのラドンの調べの顕微鏡ですが、三台、五万の十五万、それから天体、月等を観測する望遠鏡二台、二十万ずつの四十万、それから井戸水観測十カ所で一万ずつの十万、複写機一台五十万、それからガリ版印刷機、いろいろ発送するのにガリ版なんかも必要ですから、それが五万、地震計が東京、神奈川静岡、三台で百万ずつの三百万。この設備費合計が九百四十五万。  それから初年度のいろいろの経費ですが、ネムの木の観測の二十名で五千円ずつで一カ月の経費が十万で百二十万。ラドンの測定五十人で五百円ずつで一カ月二万五千円で三十万。ラドンの処理、測定したのを処理するのが三名で一万ずつの三万で年に三十六万。雲及び天体の観測、これが十名で一人五万ずつで一カ月五十万でこれは六百万。それから井戸水調査が十名で千円ずつで一カ月経費一万で十二万。出張調査費十名で一人一万として一カ月十万、これが百二十万。資料代、いろいろ写真とか本とか新聞、十五名の一万円ずつで十五万、これが一年百八十万。それからアンケート調査費、これが年五万円ですね。通信費、年六十万円。事務費二名分計上して、八万ずつで月十六万、年間百九十二万。合計千三百五十五万。  それで、設備費と初年度の経費合計が二千三百万。これは最低の費用ですが、このように陳情して、現在もこれくらいのなにがあればいいと思って、まあ最低できると思います。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 それは日本地震予知クラブとしてのあれですね。
  33. 亀井義次

    亀井参考人 はい、そうです。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 そうですね。  昨年、科学技術庁その他へ陳情されたその結果はどうなったのですか。
  35. 亀井義次

    亀井参考人 各省回りまして、結局科学技術庁研究調整局生活科学課、そこの中野さんというところへ行けと言われまして、そしてこれが二月の一日だったわけです。それでそこへ行きましたが、ちょうど中野さんがお留守であって、電話でいろいろ打ち合わせしまして、二月の九日午後三時に中野さんと会う約束をして、私たち会員が五名で参りました。しかし、中野さんは筑波の方へ行かれてとうとう会うことができませんでした。それで、後でいろいろ電話で話しましたが、結局これは文部省の管轄じゃないかというようなことから、これはそのままさたやみになりました。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 科学技術庁平野さん、おいでいただいているのですね。いまお聞きになったような、中野さんは恐らくあなたの課の人だと思うのですが、会えなかった、電話で何回も話した、しかし結果的には文部省の管轄ではなかったのかというようなことでうやむやになっているようですが、はっきり課長としてどうですか。
  37. 平野拓也

    ○平野説明員 お答え申し上げます。  いま亀井会長がお話になりましたが、実はその前に私どもの記録では一月の初旬にやはり予知クラブの皆さんがおいでになりまして、居合わせました担当者にいろいろお話をされて帰っておられるわけでございます。その後いま御説明になりましたような予算等について書いた陳情書を私どもちょうだいいたしたということでございます。これにつきましては、口頭で電話その他でいろいろ御説明を申し上げたわけでございますが、私どもといたしましては、この民間情報の活用ということにつきましては、これはやはり補足的に活用できるのじゃないかという考えは持っておるわけでございます。  それで、その当時におきましても、先生御案内のように五十二年からでございますが、一部特別研究調整費等を活用いたしまして、神奈川県の温泉地学研究所に委託いたしまして、そこからやはり民間の有志の方々の御協力を得て、地下水位の研究といいますか、そういうものと、それから地震発生の因果関係というようなものの基礎的な研究を行っているということでございます。  ただ、私どもの立場といたしましては、いまのところこの民間情報につきまして、やはり余り一時に手を広げてあれもこれもやるということよりも、先ほど力武先生がおっしゃいましたように、ひとつその収集のシステムとか窓口とかはいかにあるべきかというような根本的なことをフレームワークというものをがっちりと固めるのが先決であろうということで、そういうふうな判断に立ちまして、残念ながら御要望には沿いかねるというふうな趣旨の御返事を申し上げたと承知しておるわけでございます。  なお、その民間情報の活用につきましては、昨年のたしか秋だと思いますけれども、当委員会におきまして先生から種々御質問ございまして、その際に私ども前熊谷大臣その他からいろいろ御答弁申し上げた経緯もあるわけでございますが、そういうことも踏まえまして、先ほど力武先生がおっしゃいましたような、いわゆる民間情報収集のシステムをいかにすべきかというようなことを含めまして、三カ年計画で現在その計画を進めておるという段階でございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 そのいまの三カ年計画で進めた三カ年目はいつですか。
  39. 平野拓也

    ○平野説明員 この研究は昨年の十二月から始めたわけでございまして、五十三、四、五年と、この三カ年で計画的に進めるということに相なっておるわけでございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどちょっと亀井先生が言われたような、文部省の管轄じゃないかというようなことを言ったことはないわけですね。
  41. 平野拓也

    ○平野説明員 実は私も最近着任したばかりでございまして、その間の事情をいろいろ聞いたわけでございますけれども、まあ口頭でのやりとりでやったわけでございますので、いろいろなことをお話しは申し上げたのじゃなかろうかと思いますけれども、あるいはそういうことを言ったかもしれませんし、その辺のところは実は余り記録がないものでございますから定かではないというのが実態でございます。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 この種の問題を相談に行くのは科学技術庁でいいということで理解していいですね。
  43. 平野拓也

    ○平野説明員 私どもも一応地震予知研究推進という立場からいろいろな問題について勉強もし必要な施策を講じておるという意味におきまして、あるいはそういう民間情報の今後の取り扱いということにつきましていろいろな検討を加えていくという立場にあることは事実でございます。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 日本の縦割り行政の悪いところで、何かしらあいまいで、どこへ行ったらいいかわからないのがよくあるのですよ。いまはっきりした御答弁があったので、亀井先生科学技術庁を相手にして、まあ進言もするし要求もする、相談も持ちかけるということを今後もおやりになっていただいた方がいいというふうに思うのです。  ここで大臣にちょっとお伺いするのですが、いまお聞きになったような亀井先生方民間情報、これは活用する意義はあるわけですが、この程度の——まあたとえ一円でも十円でもむだに使ってはいけないのですが、これはというものをどういうふうな、いわゆる焦点を決めてやるかということを先ほど力武先生にもお願いし、先生も同感だと言い、平野課長からもいまそういった方向で検討していると言うのですが、国土庁としてもそういったフレームワークを大至急にやって、単に科学技術庁中心でやっているのを待つのではなくて、国土庁としてもこういった問題に対して大きな関心を持ち、推進の役目を果たしていく必要があるだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  45. 中野四郎

    中野国務大臣 地震予知に関して、民間においていろいろに研究をしていただくことは大変有意義なことである。たてまえとしては科学技術庁の方でありますけれども、十分検討する余地があるのです。こういう研究というものを総合して、そしてまず震災に備えるということは大事なことだと私も思っております。御意見を拝聴しておりまして、検討すべき問題である、こういうふうに思っております。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に亀井先生にお伺いするのですが、いま民間に、先生が会長をされておる日本地震予知クラブのほかに、この種の団体はまだ幾つかあるのでしょうか。それから、その団体に加盟するしないを含めて、個人として、日本全体で非常に関心を持ち協力的な研究をしている人数はどのくらいになるものか、もし概算でわかりましたらお願いします。
  47. 亀井義次

    亀井参考人 私の方の日本地震予知クラブのほかには、神奈川県にナマズの会があります。それから千葉に日本地震予知予報研究会というのがあります。このナマズの会とか日本地震予知予報研究会は水位の調査ですね。  それからいろいろありますが、会に入ってない方で研究している方というのは、私は余り知らないわけです。有名な、雲で予知する鍵田奈良市長、あの方も私たちの会員になっていただいておりますし、大抵の方はどこかの会に所属していると思います。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 亀井先生、どうもありがとうございました。貴重な時間をちょうだいしましたけれども、また個人的にいろいろお会いして、後日お教えいただくことがずいぶんあると思うのですが、そのときはまたよろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  49. 加藤清二

    加藤委員長 亀井参考人には、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいましてありがとうございました。どうぞ御退席ください。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 ここで長官を中心にお伺いをしてまいりますが、先ほど力武先生にも少しお伺いいたしましたが、東海地震中心危険区域線引き、すでにわずかな時間で正式発表の時期を迎えているというふうに考えます。実は、四月二十七日の閣議で、国土庁がまとめた五十四年版の防災白書というのがございますが、これを閣議了解したわけであります。その中で、本年度で特に重視したのは地震対策だということが特記されているわけであります。  昨年末には、大規模地震対策特別措置法、これが施行されまして、地震予知研究地震観測施設の整備強化を重点的に取り上げていくのだ、こういうことがうたってあります。  震災対策の研究には、前年度比四〇%増、五十八億円を計上して、その大半は地震予知強化に関する研究、関東・東海地域での地殻変動の研究地震予知観測情報センターと海底地震観測施設の設置などによる地震予知の基礎研究、測地測量の方法による地殻変動調査というものが、行われる重要な項目になっているわけであります。  このほか、地震観測施設などの整備に約十一億円、前年度比三八%増、防災拠点の整備に四十億円、同じく六〇%増、避難地、避難路の整備に三百八十六億円、同じく三六%増を投入することになっていることはあえて申し上げるまでもないはずであります。  確かに、予算面でも本格的な力を入れ始めたことがこれでわかりますが、まだまだ十全ではないと私は思う。少しは前進した、こういうふうに理解をいたしています。今日までもう十数年、やかましく地震対策に対して発言をしてまいりました。非常に遅過ぎてじりじりしてまいりましたのが、ようやくここまで来たということはいいことだと思います。地震対策全般に対する一元化が進み始めたという意味でも非常に評価されると思うので、いいことだと思っているのです。  さて、地震予知についてなんですが、いつ、どこで、どんな大きさのという要素、なかなかいつというのはまだはっきりしない。こんなことを言うと、ここに大ぜい先生方がいるから怒られるかもしれませんが、どうも素人が考えてみて、時間をかけて一生懸命やっていただいているのだけれども、いつという問題に対しては、そのうち起こるはずだ、そのうち起きそうだ、集約するとそんな答えにしかなってこない。あるいはいま言えませんとか、とにかく予知の中の第一の要素に対しては、われわれにとっては大変心もとないというか、大変不満足な感じを持っているわけであります。  どこでということについては、これはもうかなり予知できるようになったと思うのですが、そのどこでということに対しては、先ほど力武先生にお伺いして、個人的な見解もお述べいただきまして、東海地域のほかに伊豆半島なり房総沖という指摘をちょうだいいたしました。こういう点で、どこでという点だけは、東海地震以外にもぴしっと的確にわかっているのだという状態にいまなっているかどうか。現在すでに指定をされたといいますか、いわゆる特定観測地域だとか観測集中地域、これはまだないと思いますが、観測強化地域というものが一応指定されているのですが、指定されたところと指定されていないところ、あるいはまた東海大地震中心危険区域線引きがいまここでいきなり出てまいりますと、ほかの地域が何か忘れられるといいますか、先ほどに関連して同じことを言うのですが、もうほかにはそう危険な地域はないのだという感じをどうしても大衆は受けてしまうおそれがあると思いますが、いつはさておいて、どこでという点では、ぴしっといまつかめるものはつかんでいるから、現在までの調査研究の結果、どこで起きそうだ、この地域で起きそうだということが言えるようになっているのかどうかについて、これは末広先生がよろしいなら、先生からひとつお答えをいただきたい。
  51. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  先ほど力武参考人もおっしゃいましたが、日本は、北海道から九州まで全部ながめまして、地震から安全であるという地域はないわけでございます。被害を起こすような地震と申しますと、マグニチュード七あるいはそれ以上でございますけれども、現在われわれの技術、学問で前兆をつかんで予知情報が出せるというのはマグニチュード八クラス、この程度の地震でございますと、一たん起きた場合には数県にわたって被害を生ずるという地震でございまして、そういったようないわゆる大規模地震は、地域的には東海沖以外には当分の間考えられないというのが現在のわれわれの認識でございます。おっしゃいますとおりマグニチュード七程度、これはたとえば昨年に起こりました伊豆大島近海地震でございますけれども、こういったものは日本国じゅういつ起こってもおかしくないと申しますか起こる可能性があるわけでございまして、これに対する前兆現象をつかむところまでは、残念ながら学問、技術がまだそこまで行ってないわけでございます。  したがいまして、今回の法律でございますけれども、これはあくまで一たん起これば数県にまたがるような被害が起こるという地震を対象にしているわけでございまして、東海沖以外でございましても直下型というような地震は、これは十分起こることを覚悟してわれわれはいかなければならないと思っております。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 マグニチュード七以下のことをいま聞いてもいたし方がありませんし、確かに大規模地震中心できょうはお話を聞いて結構ですから、いまの御答弁で非常によくわかりました。  そこで、国土庁にお伺いしますが、これは大臣でなくて局長でも結構ですが、やがて防災会議国土庁と相談をいたしまして総理への答申が正式に近く出る、これは事実だと思うのですが、それもお答えをいただきたいのと、それができました後の手順というもの、総理大臣の告示がその後されて、それからどうなるのかという手順をひとつ二つ目にお伺いをしたいと思います。
  53. 四柳修

    ○四柳政府委員 前段の点でございますけれども、今週の土曜日に先生方研究会の最終会合をお願いいたしまして、研究会の方から研究報告をいただく形になります。その報告中央防災会議の関係省庁の方でいわば御議論いただきまして、その上で来週早々にでも総理の方に中防の方から御答申がいただけると思います。  それから後の手続でございますけれども、一つは御答申いただきました結果につきまして関係府県に御連絡いたしまして、関係県の知事の意見を聞く。知事は当然関係市町村長の意見を聞きまして、大体原案どおりになるのかあるいは一部追加要望等があるのか、いろいろあろうかと思いますが、そういったものの調整を経た上で、できれば今月末か来月早々にでもその関係地域の決定をいたしまして、それを告示いたしたいと考えております。  それから、その後の手続でございますけれども、その後は、これによりましてこの法律の強化地域指定されたわけでございますから、国としましてはこの強化地域にかかわります地震防災基本計画をつくらなければなりません。この作業は、実は本日も関係の先生方お集まりいただきまして御検討いただくことにしておりますけれども、早々につくりまして、基本計画を中央防災会議で御決定いただくことになります。  この計画をベースにしまして、各省が現在お持ちの防災業務計画、あるいは指定公共機関がお持ちの防災業務計画、さらには関係地方公共団体がお持ちの地域防災計画、それぞれの中にこの基本計画を受けました地震防災計画のいわは地震編といいますか、そういったものをお書きいただく。さらに関係地域内にございます民間の、たとえば百貨店ですとかあるいは病院ですとか、いろいろ危険施設をお持ちの方々は、先ほど申し上げました告示後六カ月以内にそれぞれの地震防災応急計画をおつくりいただく。それらの作業が、先ほど申しました六月ということを想定いたしますと年内にそれぞれの計画が全部できる形になろうかと思います。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 大体ことしの末にはそういったものができ上がるという説明ですね。そこで、たとえば地域が指定をされる。そして各自治体もそうですが、個人の企業もそうですが、国の立場でもこれに対する予算どりというものが当然行われなければいけませんが、少なくとも予算の裏づけのない絵にかいたもちでは意味がないのでありまして、せっかくやった以上は、ぴちっとこれが早期に実際の全国的ないわゆるアクションが起きるようにしなければいけない。それにはやはり金の裏づけがなければいけないわけです。  予算というものを考えると、地方自治体だって、年末にようようそれが決定をいたします。すぐに次の年度の予算というわけにいかないでしょう。国の立場ではなおさらそうだと思う。そうすると、予算的な裏づけができてそれが実際に発動し、動き出すというのは、いまが五十四年で、五十五年度ということになりますか。
  55. 四柳修

    ○四柳政府委員 ただいまのお尋ねの予算的裏づけ、実は二つあるだろうと思います。  一つは、そういった計画づくりの作業ですとかそれに関連した指導、PRの問題があろうかと思います。これは国の方も、あるいは関係県等もそれぞれ従来ベースより若干ふやしましてそれぞれ準備しておりますから、対応可能だと思います。  それから二番目に、その計画に盛りました関係施設の整備等の問題があろうかと思います。そこで実は五十四年度の予算では、一部の省庁でございますけれども、たとえば消防庁につきまして関係地域内の消防施設の整備の補助金を通常より二分の一を三分の二にするとか、あるいは多分住民の方々が避難の場所にお使いになります学校等の老朽校舎の改築につきまして、通常の老朽校舎の改築よりはより有利な条件で、それほど老朽してなくてもある程度採択する、こういうような予算的な措置がされております。そのほか、たとえば危険地域のがけ下等の住宅の移転ですとかそういったものにつきましても、一応とりあえずのものにつきましては五十四年度で予算措置されていますけれども、なおそれ以外のものにつきましてはやはり五十五年度以降の問題になろうかと思います。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、もうすでに先取りをして国の負担分を多くし、あるいは老朽校舎の問題にしても自治体が先行して、余り老朽してなくても、たとえば指定を受けたときには危険だというそういう考えのもとにやはりきちっと予算づけをやっているというふうに理解してよろしいわけですか。
  57. 中野四郎

    中野国務大臣 一例を申し上げますと、静岡県なんかはすでに単県でそれぞれこれを補って、そして来年度からのいわゆる国費をそれ相当要求をいたしたい、かような見地から、ことしの秋になればそれぞれの下相談に来られるような状態になっております。まあ一つの例であります。参考までに申し上げておきます。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣は一番危険なところにいてよくわかりますね。ということは、たとえば今度の強化指定が行われる、その行われた地域の自治体に対しては、施設の内容によって国が幾ら、自治体がどのくらいということが、この指定後の予算措置がすでにもう決められていると見てよろしいですか、これから決めるのですか。
  59. 四柳修

    ○四柳政府委員 具体的には指定後に地震防災計画をつくられるわけでございますけれども、その防災計画の中に多分盛り込まれるであろう緊急施設の消防ですとか学校等につきましてはできるだけ前倒しにしてはどうだという形で、部分的に五十四年度に国庫補助が用意されているということでございます。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 その五十四年度に用意されているもあの率が今後もずっと行われるのですか、あるいは指定が完全に行われて作業が進みまして、そして自治体は自治体独自のこういった事業を行うといったときの、いろいろな事業がありますから、それの予算措置までぴしっと国と自治体の持つ率というものはもうすでに決まっているのか、五十四年度でいま前倒しでやっている率がそのままずっと移行するのか、これはどうなんでしょう。  なぜこういうことを聞くかと言いますと、大臣静岡のことをよく御存じでいまお話があったので、その面もあります。長野県でもやっています。しかし、まだまだ実際には、本当に指定を受ける段階になると、あれもやりたい、これもやりたいというものがあるのです。あるのだけれども、さてその予算は全部自治体で持つのか、あるいは国がどのくらい持ってもらえるのか、これがわからないと本腰を入れてやるときに非常に渋るのですね。したがって、県議会でこれをいろいろ取り上げてみましても、ある問題に対してはやはり国に聞いて国の予算措置がどうなるかを知ってからでなければ決められないという問題が出てくるわけです。  それが予測されているのですから、告示までに予算に対しては想像できるものは大体わかっているのですから、何がやりたいのか各県ごとにわかっているのですから、それに対してはこういう国と自治体のいわゆる配分でやっていくのだという予算措置の裏づけを前もって告示と同時くらいに知らせてやると自治体は自治体独自の仕事ができるというようなことを考えて、いまの御質問をしているのですが、それに対してお答えをいただきたい。
  61. 四柳修

    ○四柳政府委員 先生御指摘のところを私どももできるだけそういう前倒しの考え方をとりたいと思いますけれども、現実の問題としまして、六月に告示になりますと、各県、市町村が計画をおつくりになりましてそれをおまとめになりますのがどうしても秋になるだろうと思います。そういう過程の中で片一方では国の予算編成が進んでいく。そういうものを並行して考えますと、やはりいろいろの形で国も地方もあるいは全国知事会等もあるいは関係府県等も一緒になりまして何らか前向きに、そういった計画の中で特に重点的なものは何なのだろうか、あるいは緊急に整備する五カ年計画的なものは何なのだろうかとか、あるいは各県間のバランスですとか、あるいは広域的な整備が必要なものであるとか、いろいろなものがあろうかと思います。それをいま申し上げました避難施設と消防施設以外のものにつきましてもどういうものを優先的に取り上げるのだろうか、こういう議論は私どもも検討しなければならないと思いますし、関係各省庁もそういうつもりでこの問題には取り組んでいるだろうと思います。
  62. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうつもりで各省庁とも取り組んでいるだろうと思います、国土庁もそのつもりでおります、そういうことになると思うのです。取り組んでいるだろうと思うのじゃ困るので、ここで大臣に確たる御答弁をちょうだいしたいのですが、この問題に対しては推進役の国土庁長官としては、自治体もこの種の問題に関してはある程度予算のこういう手当てができるということもわかるように、思うのじゃなくて早期に推進をしていただいて、ぴしっと決めてやるということをやっていただくと大変早くこの手当てができるわけですが、その点ひとつ大臣に推進役としてぴしっと早期に決めていただくということを御答弁いただきたい。
  63. 中野四郎

    中野国務大臣 むろん、その推進の先達として最善の努力をいたします。
  64. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、この指定を受けますとその地域は危険区域というような受け取り方ができるわけですね。危険区域というレッテルを張られるわけですから、自治体が盛んに工場誘致だ、それ何だと言っているその工場も誘致されない、二の足を踏む、その他地価は下がる等々の問題が起きてくることは避けられないと思うのです。  これに対して、特に第一の工場誘致等の問題はいま自治体が、特に長野県の場合なんかは必死になって、静岡はもう満タンでそんな必要ないかどうか知りませんが、全国的には工場誘致は自治体が大変真剣なわけです。雇用不安のこの状態の中でなおさらにこの工場誘致というものは推進しにくい状況になっている。そこへもってきてここは危険だよというレッテルを張られたわけですから、工場誘致なんという問題を一つ例にとりましても大変困難が加わってくるわけですね。  しかし、考えようによってはマグニチュード八以上という想定で指定がされましても、先ほども力武先生あるいは末広先生もちょっとおっしゃったように、地盤の非常にしっかりしたところ、非常に緩いところではあの宮城県でも大変な被害の相違があったわけですから、ただエリアが決まって指定されました、だから危険地域だというレッテルを張られたんだというので逃げ腰になるのではなくて、そうは言ってもここは地盤がしっかりしているから大丈夫な場所だというようなところに工場誘致というものはしていかざるを得ない。そのとき、呼ばれている工場も、そうは言っても全体的に指定を受けた地域だから危険だと思うのでなかなか行きたがらない。こういう工場が誘致されるときには、従来の各自治体の工場誘致条例以外に何かを考慮してやる。危険だというレッテルを張ったその地域に工場が誘致されるというような場合には、そこに対する助成を自治体がどのくらいあるいは国からもどのくらいという、これはもう率の問題、額の問題でなくて、非常に違った意味で、いろいろな意味でこの工場が渇望していることなんですが、そういった呼び水的な援助というものをしてやらないといけないだろうと私は思うのですね。  地価が値下がりをするという問題に関してはちょっと防ぎようがないだろうと思うのです。この問題は従来、全部知っているわけではありませんが、私の知っている小さな範囲では、半年ぐらいたちますと、地震はないじゃないかということでだんだんまたもとへ返るのですね。とにかく土地が欲しくてしようがないのですから、どうしても人間が出ていきますから、私は地価の値下がりに対してはそう長い間固定的に下がったままという状態ではないような気がします。これは当たっているかどうかわかりませんよ。  しかし、工場誘致等の問題に関しては人為的な手を加えて誘致がしやすいように配慮してやらないと、いまもう取りっこですから、また事実工場を持ってこなければ困るのですから、そういう配慮が必要だと思うのですが、こういう特別な配慮をぜひしていくという前提をおつくりいただいて、各省庁にもそういった立案をさせるようなことを、ぜひ考えていただきたいと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  65. 中野四郎

    中野国務大臣 大変貴重な問題点でありますけれども、非常にむずかしい問題でして、私らもかなり長い間、地震の大きいのに際会した経験を持っている一人でありますが、線引き指定というのは初めてやることでありまして、その与えられる影響というものがどのくらいの範囲に及ぶかということを非常に心配しておる一人なんです。もしこの線引きが正式に発表されますと、先ほどから原先生お話のように線引き外のものはちょっとほっとしましょうが、線引き内に指定されたものはこれは非常なショックです。そしてその現象としていま仰せのような問題が出てくる可能性が十分にあるのでありまして、これに対しては十分考えなければならぬ問題である。  ただ、これに助成をする云々ということになりますと相当な検討の必要がありますので、貴重な御意見として拝承して、今後の線引きに対しましてその意見をお伝えし、できるだけの道を開きたい、このように考えておるわけでございます。
  66. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。十分に検討して前向きにあらゆる問題を想定しながら、告示というようなものに対する慎重な配慮をしませんと、起きてから、しまったじゃ遅いものですから、そのことはぜひ大臣がおっしゃるように検討していただきたい。  そこで、先ほど力武先生にもお話し申し上げたのですが、指定がされますその周辺ですが、東京、名古屋の問題は先ほど申し上げましたが、その周辺大臣も言われたように指定内と指定外ではいろいろな意味で社会的な違いが出てきます。ただ、一番私が恐れているのは、地震に対して何かほっとするような感じを周辺が持ってしまうおそれがある。せっかく真剣に訓練しようあるいは地震に対してはこういう対策をと考え個人に至るまでが、どこかで力を抜いていく感じになる、これは非常に恐ろしいと思う。  さっき言ったような断層モデルとか震源モデルというものは絶対じゃないのですから、あれの置き方、あれのエリアのとり方によってえらい違いがあるのですから、いま専門部会のつくったそれが絶対じゃありません。したがって、ちょっと動かしただけでも非常な違いがある。事実地震が起きたとき、未知の地震ですからその影響はわかりませんと言うのにもかかわらず、百五十から百六十市町村の地域指定が行われると、それ以外の大衆は、ほっとすると同時に、地震に対する警戒心なり、あったときにどうするとせっかく考えて訓練していたことをすっと力を抜いていく危険があると私は思います。  恐らく今度の答申もそうでしょうが、六県の指定を行う、その周辺に対しては、検討しますと、半年か一年たった後に追加をするんだというようなことにきっとなると思うのです。その間のブランクがこわいのです。ですから、そのブランクが生じないように配慮した告示をしないと、告示をしました、あと一年たったら追加指定がありますからそれまで待ちなさいと言って、いま言ったほっとする地域の膨大なものをつくったら大変だと私は思う。地震というのはそういうものだと思います。したがって、これに対する特段の配慮をする。ブランクを生じないために告示と同時に発表するようにいまから十分な準備をしておかないといけないと思いますが、大臣から確たる御返事をいただきたい。
  67. 中野四郎

    中野国務大臣 線引きをいたします段階において、この問題は、諸般の問題とともどもに十分検討、努力をいたします。地域指定を受けたところと受けないところの住民の心情というものは、仰せのとおりなのです。  それから、つけ加えて申し上げれば、地震国と言われる日本で、当面先ほど専門家先生のおっしゃるような東海地区だけを考えておりますと、案外な結果の生まれるおそれもあるのです。そういうようなことを含めて線引きの設定、確定に当たりたい、こう思っております。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、この秋に東海地域を中心にした大規模地震対策訓練をされると国土庁はすでに決めておられる。間違いありませんか。
  69. 四柳修

    ○四柳政府委員 御案内のように、この法律が規定しているところによりますと、強化地域の中では交通規制をしても訓練ができます。一つの県の一地域でなくて、たとえば県単位であるとか東海道沿いであるとか、そういった形が本来の訓練として望ましいものだろうと思います。しかし、残念ながらいまの段階では、行政側の方も住民側の方もそこまで準備ができておりません。  そこで、従来は関係県が、たとえば昨年は半田市、おととしは富士市というような形でおやりになりましたときに、国の方も中央防災会議の現地本部という形で御一緒に参加させていただきましたけれども、そういう形とは別に、いま御指摘のような問題を総合的にやるために、せめて関係行政機関なり公共機関だけでも集まりまして図上訓練を徹底してやってみたい。御案内のように、いままでの訓練の場合にはいわばシナリオがございまして、シナリオどおりにやっているのではまずいのじゃないだろうか、こういう意見もございます。そういったことを考えまして、できるだけ関係県、単数でなくて複数で、国の方も一緒になりまして徹底した図上検討をやった上で可能なところからそれを帯状にやるとか全県的にやるとか、そういうふうに広げてまいりたいということにしております。そういう意味で、ことしは実際のものは不可能だろうと思います。
  70. 中野四郎

    中野国務大臣 それにつきましては、かねて静岡県知事から、もしそういうような線引き指定のあった場合を配慮いたしまして、一万戸くらいを対象としたいわゆる防災訓練をしておるという報告がありまして、できれば関係市町村との連携を緊密にする上からもぜひ一度国土庁長官に視察に来てくれ。私の方も、お隣の愛知県あるいは岐阜県、三重県、長野県というようなところの防災的な措置をとる上におきましてどの程度のものがいま行われておるか、ぜひこの目で確かめて、そして各県との連携を緊密にいたしたい、かような考えから、きわめて近い将来現地に参りましてつぶさに視察もし、見きわめてきたい。さらに、悪いことがあればこれを新たに考え直していくというような考えております。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、単なる図上訓練ではなくて今秋実際の訓練をするようにある新聞報道があったのは間違いですね。それは実際にはない、図上訓練だけはする、そういうふうに解釈していいですか。
  72. 四柳修

    ○四柳政府委員 現在私ども関係省庁とすでに図上訓練の検討を始めております。そういうことで実際の訓練は不可能だろうと思います。  それから、私、先ほど半田市と申し上げましたが、これは知多市の誤りでございますから、訂正させていただきたいと思います。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、図上訓練も必要ですからおやりになって、実際の各県にまたがった訓練を大至急にやった方がいいと思うのです。やらなければいけないと思います。一度でも二度でも三度でもやらなければいけない、やってほしいのですが、そのときにいま言った周辺の問題ですね。周辺はこれは関係ないのだということでやったら、先ほど言った大変悪い面が出てまいりますから、図上訓練の場合も実際の訓練の場合も、いまの指定地域以外の周辺に対しても訓練としては全く同じようなことをやってもらうような配慮までしてもらいたいものだと思うのでわざわざ聞いたわけですが、そういう配慮をしていただけますか。
  74. 中野四郎

    中野国務大臣 お説のとおりでありますから、そのような周辺地域も同時に訓練に参加するような道を開きたい、かように思っております。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 これは末広先生にお聞きした方がいいのかどうか知りませんが、直前予知が発せられる、これはもう実際にあると決まったとき、予知が発せられるとき、警報が出されるとき、そのときの時間のゆとりというものをある程度考えてないと、これは大変なんですね。  たとえば、急に危険が迫ってきたというので、いろいろと審議した結果よし何日の何時と発表しようと決めた場合でも、最小限度三時間ないし五時間くらいのゆとりを持って発表しませんと大変われわれ困ってしまうわけですね。特に、先月だか何か地震学会かの総会で、ある先生が発言されていたと仄聞したのですが、地下街にいる人、地下の駅にいる人、それから地上に働いているわれわれ、同時に三時間前なら三時間前にその警報を受け取ると、地下街の者はまあ地上へということが当然数多くある、地上の者はうちへ帰るのだ、その他の用で地下へというのもあるというので、一例だがここでも大変な混乱が起きるのだ、したがって、発令をするのでもその場所によっては時間に差をつけておく必要があるだろう、同時に、最小限度三時間以上は余裕を持たせて発令しないと大変なパニックが起きるというようなことを、どなたが言ったのか私覚えていませんが、報告されたということを仄聞したのですが、これは末広先生どうでしょう、実際の直前予知、いよいよこれで警報発令だといったようなときには、いま私が申し上げたような最小限度三時間以上のものあるいは何時間以上のものは余裕を持って発令するのだ、あるいはもう時によっては何日も前に発令というようなことを考えておいでになるのかどうか、それをひとつお伺いしたい。
  76. 末広重二

    末広説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の問題は大変重大なことでございまして、この法律は積極防災ということを目的にしているわけでございまして、それを生かすためには、いまおっしゃいましたようなことをどういうふうに地域住民の方にお知らせしたらいいかということが大変問題でございます。この件につきましては、やはり報道関係、特に電波を媒体としておりますテレビ、ラジオの報道関係の方と緊密に連絡をいたしまして、一緒のテーブルに着いて、異常事態が検知された場合にどういうふうな方法でどういう時点で国民の皆様にお知らせするかということで実はいま鋭意詰めております。これは国土庁の方からも一御説明ございましたとおり、来月の恐らく初めだと思いますが、地域指定が法律的になされます段階において、どういった方法で国民の皆様に御説明するのが一番パニックを防ぎ積極防災に結びつくかということを、実はいままで何回も報道関係の方と詰めておりますので、御趣旨を生かしまして、何とか法律の趣旨を生かすようにやってまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 これが質問の最後になると思うのですが、一つ一つでなくて四つばかりまとめてお伺いします。  国土庁では、地震予知情報の社会、経済に与える影響に関する調査研究に着手するとともに、中央防災会議の事務局に設置されている大都市震災対策連絡会議中心に、地震直前予知情報が出された場合に、各防災関係機関、民間の企業、住民などがどのような措置や対策をとるべきかについて検討を行い、妥当と認められる計画を作成すべくいま作業を行っているが、この検討は次の四つが問題になっているというのであります。その四つが検討の結果一体どうなったかをお言えいただきたい。  第一に、現在の地震予知技術水準で、大規模地震に関しどの程度の地震予知が可能なのか。特に発生時間と予知の確度。さらには、その技術水準を前提とした場合、どの程度の防災対応措置を実施することが妥当なのかという点が第一の問題点だといって検討されてまいったようであります。これに対してどうなっているのかをお聞きしたい。  二つ目に、地震予知に当たって、いわゆる当たり外れが当然あります。これがある以上、予知に失敗した場合の責任あるいは経済的な損失の負担をだれが負うのが妥当なのかという点が二つ目の問題とされている。十分検討をしたはずであります。  第三に、災害対策基本法を初めとする現行法令が、地震予知が行われた事態を予定していなかった、各種の防災対応措置を実施する上で必ずしも十分な根拠規定と言えなかったのではないかという点、これに対して検討をされた結果、どういうお答えを出したのか。  最後の第四に、地震予知に関して、すでに整備されている直前予知体制と防災側の対応体制とをどういう形で連結させれば最も円滑かつ迅速な体制が整備できるかという点。  この四つを大変真剣に長い間検討をされてきたはずであります。これはもう避けて通ることのできない点だというので検討されたようですが、その結論がどうなったかを四つに分けてお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  78. 四柳修

    ○四柳政府委員 ただいま先生お尋ねの点、過去の決算委員会での御質問に関連したことと承ったのでありますが、第一点の予知情報の確度の問題ですとか、あるいはそれに対しました防災側の対応措置について、たとえば国民がどういう期待をしているかとか、そういった点でございますが、これはその後の問題としまして、実は私どもの方から東大の新聞研に対しまして調査を委託しております。そういう中で、先般一部の新聞にも部分的に発表されましたけれども、国民がどう受けとめ、あるいはどういう確度で予知情報を信頼し、どういう活動をするかというようなことが近々正式な報告として伺えるかと思います。そういう形で報告が出ました場合に、それをお届けする形で御了承いただきたいと思います。  それから第二点の当たり外れ、あるいはそれに対する経済的負担、損失の問題でございますが、これは実は、この大規模地震対策特別措置法ができますときにいろいろ御議論がございまして、やはり空振りはしても見逃しをしてはいけないという一つの信念といいますか、そういう前提で、空振りがあっても地震が来なくてよかったじゃないか、こういう御発想で、それぞれの防災対策を講じます国も地方公共団体も企業も国民も、それぞれがやはりまあよかったという意味で負担を甘受していただきたいというふうに法律的には割り切っております。  それから第三点の、その予知を前提としていなかった云々という点は、そういう形でいまの特別措置法の中でそういった仕組みが一応取り込まれてまいりましたものですから、ただ、いま先生がおっしゃいました幾つかの点につきましても、これから計画をつくる段階の中でやはり十分検討して措置しなくてはならないと考えております。  それから、最後の直前予知と防災側の体制との問題でございますが、先ほど気象庁の末広部長の方から御答弁ございましたように、実は私どももその会議にいつも参加しておりまして、御案内のように、異常が発見されまして、現在の仕組みですと東海判定会の先生方が気象庁にお集まりになります。そのお集まりになるということ自体が一つのニュースでございます。その上で判定の結果が発表され、それが気象庁長官の御責任におきまして総理大臣地震予知情報として伝えられ、報告される、その結果地震警戒宣言が出されるというプロセスになりますものですから、そういうプロセスの中で私ども防災側も必要最小限度の対応はしたい。特に発表があった段階でのパニックなり交通混乱というものをどうしても防ぐために、あるいはそういったこと自体が実はいつ来るかもわからないという危険性の予測でございますから、その危険性に対しましても、警察、消防各機関が対応できますように、事前にいわばスタンバイの態勢で動員をかけます。そういった動員をかけるタイミングといまの報道関係のタイミングと、それらをどう調整するか、あるいは夜間の場合、日中の場合、いろいろあろうかと思います。それらにつきまして、現在とりあえず入り口の報道関係の話を一生懸命鋭意詰めておりますが、今後の問題としましては、それを受けましてそれぞれがどういう対応をするか、どういうマニュアルをつくったらいいのか、その対応につきまして国民に正確に知っていただくためにも、報道機関の御協力を得まして、正しい適切な報道メモといいますか、手引きといいますか、そういうものを報道機関と御協議の上つくりまして、そういう中でできるだけ混乱を避けたいと考えております。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。あとはこれが指定をされまして、年末にいろいろな意味でぴしっとその体制が動き始めますが、その前後の状態で、きょう申し上げた私の危惧なども含めて不十分な点だと私が思いました点は、その後にまたお伺いをしたい。個人的にも国土庁へ行って、大臣にも、この点はやらなければだめじゃないかと申し上げ、あるいはお願いを申し上げますという陳情等もこれからの推移を見た上でさせていただきたいと思います。  とにかく地震はいつ来るかわかりませんので、大規模地震に対するばかりでなくて、十分な責任ある対策を国土庁としては推進していただくようにお願いをして、終わります。  ありがとうございました。
  80. 加藤清二

    加藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ────◇─────     午後二時二分開議
  81. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場猪太郎君。
  82. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 昨年の暮れ十一月の終わりに告示されました近畿圏整備法に基づく内容についての御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、数回の改定を経ておりますけれども、昨年暮れ改定されましたものの一ページの初めの方に「近畿圏整備の基礎条件の変化」ということが言われておりますけれども、どういうふうな変化ととらえていらっしゃるのか、内容についてお伺いいたしたいと存じます。
  83. 堺徳吾

    ○堺政府委員 昨年十一月に改定いたしました近畿圏の基本整備計画でございますが、改定前の計画は四十六年に作成したものでございまして、その後御存じのように、オイルショック等によりまして非常に経済、社会情勢が変化をしてきたということから、四十九年ごろに総理大臣から近畿圏整備審議会に今後の近畿圏整備の基本的なあり方について諮問をいたしまして、それで十数回にわたる専門部会による審議の結果、答申をいただきまして作成したものでございます。  先生の御指摘のどういう変化があったかという問題でございますが、これは基礎的な条件としていろいろ変化している問題を申しますと、一つは、人口の動向が非常に大きく変わってきたという問題がございます。これは大都市地域の人口の増加が鈍化をしてきております。それで地方都市の方への定住の兆しといいますか、そちらの方のふえ方が大きくなってきている。具体的に申しますと、近畿圏の大都市地域で四十年から四十五年にかけましては、実は一三・一%の増加が四十五年には九・一に落ちてきております。それから地方地域では二・七%が五・二%にふえているというような、こういう地方定住の兆しが大きくなっているという問題が一つございます。  それからもう一つは、御存じのように経済成長の鈍化といいますか、これは全国的な問題でございますけれども、御存じのように全国ベースの問題でございますけれども、四十二年から四十九年までの成長率が八・三%でございましたけれども、その後四十九年から五十二年にかけまして四・八%にまで落ちてきている。  それから三番目の変化といたしましては、非常に住民意識の変化と申しますか、こういったものが変わってきておるわけでございます。具体的には、住民の中に生活の安定という問題でございますとか、身近な生活環境の充実を図ろうという意欲とか、そういったものが非常に高まってきておるという問題がございます。  それから四番目といたしましては、土地とか水等の国土資源の有限性の顕在化というものが非常に大きくなってきておることは御承知のとおりでございます。  それからさらに五番目といたしましては、国際化とか情報化の進展というのが非常に大きいわけでございまして、こういった変化というものも受けてきておるわけでございます。  こういった変化に対応いたしまして、近畿圏の整備の方針というものもかなり鈍化した形で地道にやっていかなければいかぬというようなことで、改定をいたしたものでございます。
  84. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま申し述べられたような五つの変化があるということで、それに対応して京阪神を中心とする近畿圏が国際的、国内的経済環境の変化に対して産業構造の円滑な対応もおくれ、あるいは「高次の経済、文化等の諸機能の集積が首都圏におけるほど充分に進んでいない」、こういうことも述べられておりますが、具体的にひとつ御説明をいただきたい。
  85. 堺徳吾

    ○堺政府委員 最初一般的な問題を申しますと、産業構造の対応とか経済、文化等の諸機能の集積のおくれとございますけれども、この問題は資源エネルギーの制約でございますとか、発展途上国による繊維産業等の追い上げと申しますか、こういったために国際的、国内的な経済環境の変化に対して近畿圏の産業構造が繊維、鉄鋼等の産業に特化しておりまして、前述のようなこういう環境の変化に対する対応がおくれてきた、こういったことが一般論でございます。  さらに、中枢管理機能の集積の状況も首都圏に比べましておくれているという問題があるわけでございます。  具体的な数字でちょっと申し上げますと、たとえば本社とか本店の立地の状況でございますが、これは東京圏と大阪圏を比較して申しますと、東京圏では四十年度で全国比が六一・一%、これが五十二年度には五九・〇%と若干下がっておるわけでございます。これは全国的な分散の傾向があるわけでございますけれども、これに対して大阪圏は四十年度が二二・三%の全国構成でございました。これが五十二年度の全国比では一八・六%というふうに、かなり下がり方が大きいという問題が一つ。本社機能が減っている。  それからもう一つ、全国の銀行の貸出残高の比較でございますけれども、これがやはり昭和四十年末で東京圏で四六・七%、これが五十二年度には四九・二%というような全国構成でございます。これに対しまして大阪圏は、四十年末では二二・七%の全国構成でございますが、これが五十二年末では一九・六%まで落ちてきておるというような問題がございます。  それから年間の卸売販売額でございますけれども、昭和四十一年でございますが、東京圏で三八・五%の全国比が五十一年度でも三八・八%ということで、これは大体横ばい傾向でございますが、大阪圏につきましては四十一年が二五・四%に対して五十一年で二二・〇%というふうに下がっている。  それから工業出荷額につきますと、昭和四十年で東京圏で三〇%、これが五十一年で二六・六というふうに若干落ちていますが、大阪圏では四十年に二一・〇%が五十一年では一六・九%というふうに下がり方が大きいという問題がございます。  こういったことを指しておるわけでございます。
  86. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いわゆる地盤沈下現象と言われておるわけですが、そういうふうな結果に至った原因というのはどういうふうに分析していらっしゃるのでしょうか。
  87. 堺徳吾

    ○堺政府委員 端的に申しますと、やはり東京一点集中型の土地利用構造と申しますか、そういったことが一番大きいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  88. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ単に土地利用構造だけで、銀行のシェアにしても、あるいはまた卸売販売額にしても、本社機能にしても、そういうふうに下がるわけじゃないでしょう。もっと広範な経済的な背景というものがあると思いますが……。
  89. 堺徳吾

    ○堺政府委員 近畿圏自身においての、先ほど申しましたようなそういう経済変化に対するいろいろな対応のおくれの問題もあるかとわれわれは思います。その地域における努力という問題、それからやはり東京に余りにも集中し過ぎていて、中枢管理機能が東京向きになっているという問題、私ども自体といたしましても、近畿圏をより高めるためには東京圏における首都問題と取り組んでいかなければいかぬというふうに考えておるわけでございまして、大阪だけでも処理できないし、東京の問題も含めて考えぬといかぬというふうに考えておるわけでございます。
  90. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 結果的には第一次、第二次全総、そして第三次全総、国のそういう政策が結局東京に対する一点集中的な結果を招いたということになるんじゃないですか。
  91. 堺徳吾

    ○堺政府委員 これまでの総合開発計画自身は拠点主義とかいろいろやってきておるわけでございますけれども、そういった反省にかんがみまして、三全総というものが生まれて地方定住をやろうということになってきておると思うわけでございます。
  92. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 だから三全総に至るまでの政策が結局そういう中央集権的な結果を招いた、それが、東京にすべて機能を集中させるということが地方の衰微を招いた、地盤沈下を招いたという結果になるわけですね。
  93. 堺徳吾

    ○堺政府委員 日本の近代化を進める上においての中央集権的なやり方自身が、効率という問題といいますか、そういった問題のプラス面もありますものですから、まあプラス面が逆にマイナス的な効果があったかとも考えるわけでございます。
  94. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 プラスもマイナスもあるけれども、結局は、第三次全総で見直しをやらなければならなかったということは、第一次ないし第二次の全国総合計画が間違ったと言えば過言であるかもわかりませんけれども、地方の衰微を招いたという結果になるのじゃないですか。
  95. 堺徳吾

    ○堺政府委員 見直しをせねばならぬようになったということでございます。
  96. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 結果的にはそういうことだと思います。  そこで、その見直しをするに当たって、いろいろの基本計画を策定されていらっしゃるのですが、この基本計画の中で、たとえば人口問題を考えますと、近畿圏全体の大都市周辺で五十年から六十年の間に百四十八万の人口、地方に大体百九万ふえるというふうな策定がなされていますけれども、この京阪神を中心とする百四十八万の人口の今後の増、五十年から六十年までですからもうすでに三年たっているわけですから、あと七年間にこれだけの人口がこの大都市地域にさらにふえるという予想、これに基づいて、土地や住宅やあるいは水、先ほどちょっと言われたけれども、そういった限られた資源が果たしてこれだけの人口を養うに足るような情勢にあるというふうに分析をなさっておるわけでしょうか。
  97. 堺徳吾

    ○堺政府委員 この計画策定のときに、先ほど人口の大都市への流入鈍化という問題を申し上げたわけでございますけれども、実は昭和五十年のときにつくりました前の改定計画では、昭和六十年では二千八百四十五万人、今度の改定では二千三百八十万人ということで、増は増でございますけれども、現実には四百六十五万人の減ということを大都市地域で計画として打ち出しておるわけでございますし、それから地方地域では逆に、当初では七百八十六万人の六十年計画だったわけでございますけれども、今度の改定では八百三十万にふえるだろう、これは四十四万人増でございますけれども、こういった見直しをやったわけでございます。  それで、この人口に対する土地の問題、それから水の問題も、私どもはこの近畿圏の整備計画自身は三全総と整合させておるわけでございまして、これに見合った水の需給計画というものを一応整合を立てておるわけでございまして、昨年の八月に国土庁で水資源の見通しを発表したわけでございますけれども、それによりますと、近畿圏の臨海部で六十年までの純増が大体二十億トンぐらいを考えておるわけでございますけれども、それに対して十九億何ぼということで、若干供給が不足するというような見通しでございまして、そういう意味でなかなか苦しいということを計画ではうたっておるわけでございます。それから住宅計画も、建設省の方の住宅計画と一応整合を保って、住宅の二百万戸でございますとか、宅地の面積等についても一応整合を保った形となっております。
  98. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 数字の上で整合を保っておると言われるのですが、では実際に、この京阪神等大都市圏で五十年から六十年の間に千四百二万が千五百五十万で百四十八万の増と見てあるわけでしょう。この京阪神大都市周辺で大体どれくらいの人口配置が適当だと見ておるわけですか。
  99. 堺徳吾

    ○堺政府委員 私どもとしては、その増加する人口に対する対応策として、施設整備をやっていくという考え方に立っておるわけでございます。
  100. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この京阪神以外の地方のところの百九万というのは幾らでも収容能力がありますね。土地もあるでしょうし、水資源もそこそこあるような地域が多いと思うのです。しかし、この京阪神地域に百四十八万がさらに増加し続けるとなれば、言われる数字のように水資源も土地も果たしてあるのでしょうか。数字の上であると言われるのですが、実際具体的に可能なんでしょうか。たとえば、現在でもほとんど琵琶湖に頼っている水資源だけではどうにもならないし、比較的余剰のあるのは紀の川であるとか新宮川であるとか、いわば和歌山方面だけしかないわけでしょう。水資源だけ考えても、現状でもいっぱいいっぱいだと言われておるのですが、百四十八万の人口がふえてもなお水資源は足りると分析しておられるわけでしょうか。
  101. 堺徳吾

    ○堺政府委員 現在計画しているものがスムーズに完成すれば、どうにかやっていけるという見通しでございます。
  102. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 現在計画しているというのは、どういう方面のことが主に計画されていますか。
  103. 堺徳吾

    ○堺政府委員 水資源の発表のときには、たとえば五十二年度までに現実に着手したものがスムーズにできればというような前提でいろいろ計算をいたしておるわけでございます。
  104. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 計算の基礎になる、どういう地域の開発によってどの地域でどれだけの水が確保できるかという前提になるものがあるわけでしょう。どういう計画なんですか。
  105. 堺徳吾

    ○堺政府委員 整備計画の二十一ページの方に書いておるわけでございますけれども、琵琶湖の総合開発を初めといたしまして、いろいろな排水の規制でございますとか森林の涵養とか地下水の有効利用とかいろいろあるわけでございます。そのほか、新宮川でございますとか紀の川でございますとか円山川等の水資源の開発余力のある流域、淀川、大和川等の水需給の逼迫した流域等、水資源の賦存に対しても地域的な水需要の偏在化が顕著になってきておるわけでございまして、こういうことから、流域内で行うことは原則であるわけでございますけれども、やはり広域的な運用を図る必要があるだろうということを考えて、今後の開発余力をそういうところにも向けるということも含めておるわけでございます。
  106. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一応この基本計画にはそう書いてあるのですよ。ところが、たとえば琵琶湖総合開発計画だっておくれにおくれているでしょう。何年くらいおくれているのですか。わざわざ近畿開発促進協議会の中から「琵琶湖総合開発事業等の推進について」という陳情、予算復活要求も出ているぐらい非常におくれているわけでしょう。そして、いま余剰のあると言われる新宮川とか紀の川というのは和歌山の一番南の端の方ですよね。水の要るのは京阪神中心でしょう。どうしてそういう水を持ってくるようなことが簡単にいくのでしょうか。現在でも非常に困難な情勢であるということがおわかりであるにもかかわらず、作文の上では簡単ですけれども、もし紀の川の水を大阪府が引こうと思えば大変なことですよ。ここに書いてありますが、五年や十年でやれることでしょうか。
  107. 堺徳吾

    ○堺政府委員 大阪の大都市地域というのは必ずしも大阪府だけではございません。もうちょっと広範囲でございまして、和歌山近くまでも及んでおるわけでございますし、現実に和歌山の紀の川の河口ぜきの問題も先生御存じのようにいろいろ進んでおるわけでございます。  それからもう一つは、不安定ではございますけれども、暫定水利ということで、非常に渇水時には不足するわけでございますけれども、一応安定的な水利権以外の水利というのでかなり水が使われておるわけでございます。そういった問題でもつなぎができるわけでございまして、一応やっていけるだろうというふうに見ておるわけでございます。
  108. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 作文では非常に簡単ですけれども、水資源というのはなかなかそう簡単にいかないのじゃないですか。これは非常に広範な問題でもあるし、ここで結論が出るような問題ではありませんけれども、非常に簡単にここに書いてあります。非常に安易に取り組めるように書いてあるけれども、水資源一つだけ考えてみても大変な仕事だろうと思いますし、ひとつ指摘だけしておきたいと思います。  さらにまた、宅地問題についても、最近は土地政策の中では木造住宅の建てかえ、改良等、再開発によって市街地に新しい土地を求めるとか、あるいは海面の埋め立てによって大阪南港、芦屋浜、ポートアイランド等に宅地を求めるなどと書いてあるけれども、この間芦屋浜の公団住宅で、水の問題、学校の問題等々で兵庫県と西宮市ともめましたね。結局地方の自治体同士で争わなければならないような問題を控えながらこういう上位計画が進んでいっているというのですから、作文で書くことは非常に簡単ですけれども、実施するそれぞれの自治体の立場に立ってみれば大変な計画の策定だと思うのですが、海面埋め立て一つにしてもあるいはまた建てかえ事業にいたしましても、そんなに安易なものなんでしょうか。
  109. 堺徳吾

    ○堺政府委員 先生御指摘のように、この計画自身はこれから十年間に向かっての開発、整備の基本的な指針を示したものでございまして、これは国土庁が簡単にできるというような問題ではございませんし、地元の意向も十分くんで、それから関係各省の意見もくんでつくった指針でございますし、これをつくったからといってなかなかひとりで歩くようなものでもございません。これを指針として関係各省あるいは地方公共団体民間が一致協力してやっていかなければいかぬという、実際はなかなか大変な問題であるということは、われわれ十分認識しているわけでございます。
  110. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 総論的な問題はそういう指摘にとどめたいと思いますけれども、具体的に大阪圏を中心として近畿圏における地位の低下を回復する一つの手段として、高次の学術研究都市を新しく開発しなければならないということが二十六ページと十三ページに書いてございますが、この概要についてお示しをいただきたいと思います。
  111. 堺徳吾

    ○堺政府委員 先生御指摘のように、またこの近畿圏の基本計画でも指摘しておるところでございますけれども、近畿圏が首都圏と並んで活力のある地位を保っていくためには、そのもととなる学術、文化の基礎となる研究機能というものが高められねばならないということでございまして、現実にまた関西で学術研究機能を高めようという研究の懇談会的なものを設けられていろいろ勉強されていることをわれわれ承知していますし、大阪通産局でも産業構造のそういった問題を取り上げておられるわけでございます。  この基本計画自身はまさに近畿圏の意思を反映してつくったものでございまして、そういった関係で私どもも、こういう学術研究機能を高めるそういう都市をつくろうという地元の意向に対して、それを前向きに推進するために、この基本計画の方針に従って今後いろいろな調査を進めていきたいということで、実は今年度一千万ばかりの調査費を確保し、それからどういう機能を持ったものが必要なのか、そういったことを調査していきたいというように考えておるわけでございます。
  112. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一千万の調査費をことしの予算でお決めになった。その予算をお決めになる基礎的な資料をお持ちですね。関西でのいろいろな動きもあるだろうしあるいはまた国土庁自体でもお考えになっていることもあるでしょうし、大体どういうことを予算要求になった基礎資料としてお持ちになってこういう一千万円の調査費を計上なさったのか。大体どういう計画、腹案をお持ちかということです。
  113. 堺徳吾

    ○堺政府委員 基礎資料というお話でございますけれども、関西の学術都市の研究調査でございますけれども、これは先ほど来申しましたように、私どもは基本計画を受けまして検討を進めようということでございまして、近畿圏が首都圏と並びまして全国的に国際的な活動の場であると同時に西日本中心としての機能を発揮していくためには、どうしてもそういうものが必要であるということ。この背景としましては、関西のいろいろな方面での動きというものももちろんわれわれは受けておるわけでございまして、そういったことで、具体的にこういう資料があるからこれを根拠といっていいという趣旨ではございません。
  114. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 調査費を要求なさったわけですから、それでは地域的に見ればどことどこか、何かそういう方向だけでもある程度腹案というものはあるわけなんでしょう。
  115. 堺徳吾

    ○堺政府委員 近畿圏の学術都市の問題というのは、私どもは非常に長期的な観点に立って、まさに二十一世紀に向かって近畿圏のあるべき姿という観点からとらえていくべき問題じゃないかということの発想でございます。現実にはたとえば南山城地区で京都府が一生懸命やっておられることもわれわれは知っております。しかし、場所があるからひとつそういうものをやろうというような考えでの発想ではございません。それよりもまさにどういうものをつくるべきかという中身をわれわれは研究する必要があるんじゃないか。その上で初めてどこがいいかという問題を次の段階として考えるべきじゃないか。現実にはいろいろそういう候補地が出ていることは十分承知の上でございます。
  116. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま民間なり財界なりあるいはまた行政なりでそれぞれの提案なり提言なり陳情なりいろいろあると思うのです。どんなものがいま出ておりますか。
  117. 堺徳吾

    ○堺政府委員 関西の学術都市としていま非常に大きくクローズアップされているのは、先ほどちょっと申しましたけれども、京都府下の南山城地区で府知事が一生懸命総合開発審議会をつくってやっておられるわけでございます。そういった方面からの提案が一つございます。これは私どもは、京都府だけの学園都市というよりもやはり関西地区全体としての問題というふうに理解しておるわけでございます。  それからあとは個別といいますかローカルな考え方といいますか、そういった都市としてはたとえば和歌山の方のかつらぎ地区あたりで学園計画がありますし、それから神戸では聖心ニュータウンのところで学園地区をつくりたい、そういったことは聞いておるわけでございますし、現に和歌山地区では私どものところで五十三年度調査費を若干つけて基本計画の調査をやっておるわけでございます。
  118. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういう各地域の公共団体なり学術団体なりいろいろな角度からの提案あるいはまた調査なりもあるけれども、国土庁があえて国自体としてでも乗り出して調査費を計上されたその具体的な方向というものは、いまのところは全く何もないわけですか。予定はないわけですか。
  119. 堺徳吾

    ○堺政府委員 具体的な場所としてはそこというふうには決めておるわけではございません。
  120. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 場所とかなんとかではございません、方針も含めて……。
  121. 堺徳吾

    ○堺政府委員 方針でございますか。それはまさに近畿圏のこういう基本方針を受けまして、その要望に従って、地元の要望にも従ってどういうものをつくるべきかということをこれからいろいろ調査をやっていこうということで、そういう意味では白紙と申し上げてもいいかと思います。
  122. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 元京大総長の奥田さんのやっていらっしゃる懇談会もございますね。そういう提案なんかも皆参考に取っておいでになりますか。
  123. 堺徳吾

    ○堺政府委員 昨年の十二月でございましたか、奥田委員会から中間報告が出されておりまして、私どもも非常に参考になるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  124. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは、そういう提言とか提案のみであって、国土庁独自のいまこういう方向でこういう角度のものというような考え方はないのですか。たとえば筑波学園都市でこういうのをやったから関西では主にこういった角度を中心にした学問、学術研究というような何かそういう漠然としたものもいまないわけですか。
  125. 堺徳吾

    ○堺政府委員 筑波では御承知のように東京の過密対策ということから東京の試験研究機関なり大学を持っていこうという、持っていった上ではもちろん非常に整備してりっぱな技術水準を高めるという問題があるわけでございますけれども、関西につきましては、いまのところそういう分散して持っていくというようなものはちょっと考えられないんじゃないか。しかし、関西の学術文化の機能を高めるためには、奥田委員会でも提言されておりますように、これから二十一世紀に向かって、これまで世界のいろいろな知識を吸収してきたんだけれども、これから日本がそれをリードしていかなければいかぬというようなそういう新しい機能をこれからそこにつくる必要があるんじゃないか、そういう発想、もちろんかなり長期的な観点からの問題でございますので、現行のいろいろな民間あるいは大学等の機能はだんだん古くなってきますと更新せぬといかぬという問題ももちろんあると思いますけれども、中心としてはもっと新しいものを考える必要があるんじゃないか、そういう模索をしておるわけでございます。
  126. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 基本的なその方針が決まらなければ土地とか地域とかということも決まらないでしょうけれども、ではどういうプログラムになっているのでしょうか。一部の新聞によれば四月ぐらいから調査などと書いてあったんですが、どういう調査なんでしょうか。そういう事実があるのかないのか、あるいはまた基本的な庁内における基本方針とか基本計画というものはもう具体的に進みつつあるんですか。それともまだこれからなんですか、そういう点もお聞かせいただきたい。
  127. 堺徳吾

    ○堺政府委員 新聞では何か四月から土地調査をするということが出ておるという御指摘でございますけれども、そういうことは私どもの調査としては考えておらないわけでございます。私どもは三月来若干予備的なアンケート調査的なものをいま始めておるわけでございますけれども、そういう結果を見ましてさらに本格的などういう方面の意見をいろいろ聞いた方がいいか、われわれとしては関西だけでなくてもっと広い範囲で、東京も含めていろいろな方面の意見を聞いて方向を決めていく必要があるのじゃないかというふうな調査方向を、いま考えておるわけでございます。
  128. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その調査をやって具体的にそれを施策として実現していけるとなると、プログラム的に考えたら、いつごろからそういうことが発足できるのでしょうか。
  129. 堺徳吾

    ○堺政府委員 この調査は、私ども三年ないし四年ぐらいは続けなければいかぬのじゃないか。もちろん並行いたしまして土地の条件でございますか、そういったものもやっていくというふうに考えておるわけでございます。
  130. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃいまのところは本当の白紙の状態で、具体的なものは何もないということなんですね。いまお伺いした範囲では、基本的な方向も決まっておらなければ、もちろん土地の選定とかそういったこともいま全くないということなんですね。
  131. 堺徳吾

    ○堺政府委員 基本方針に基づきましてそういう調査を進めていこうという、そういう方針が決まっているということでございます。
  132. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃこれからの調査を待ってということになりますが、ただ申し上げておきたいのは、京都の山城方面の開発の問題であるとかあるいは大阪における経済団体からの要望、こういったところが目標にしておるところの土地については、ずいぶんと調整地域なんかもございますでしょうし、民間企業体がずいぶんと買い荒らしておりますね。ですから、そういうふうなものに乗って、土地の有効対策のために、民間企業の土地の眠っているのを生かせるためのそういった施策にならないように十分留意しながらこの計画をお進めいただきたいと思います。これはひとつ要望として申し上げておきます。  すでにどれだけの土地の所有が進んでいるかということももう調査なさっていますか。たとえば近鉄がどれだけ買い、企業体がどれだけあの付近の予定候補地になっている南山城地域で土地の先買いが進んでいるかということは御承知ですか。
  133. 堺徳吾

    ○堺政府委員 大体の状況はつかんでおります。
  134. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 結局企業のための学術研究都市にならないように、事前にこれは十分留意した上で、本当に純然たる意味研究都市として近畿の地盤のかさ上げということのために尽くしていただきたいということを、要望だけまず申し上げておきたいと思います。  続いて、国土の保全の問題についてお伺いいたしたいと思います。  二十ページから二十一ページにかけて国土の保全の問題が取り上げられております。これはもうすでに私の方も、ここに指摘してありまする六甲山地、生駒山地あるいは南山城等々、これは私がもう五十二年、五十三年と三回にわたって、環境庁のときにその環境破壊と防災の角度から要望申し上げてまいりました。そしてやっと文章になってきたのがこの基本計画ですが、ここに書かれておりますような、たとえば身近なことでございますので、生駒山地等における国土の保全の施設とか保安林の整備による災害の防止とかあるいは無秩序な開発の抑制とか土石の採取跡地対策等により緑地の保全に努めるという文章になってきたわけでありますが、もちろんこういった対策については国土庁が直接おやりになることじゃないということも私は重々承知はいたしておりますけれども、いままでの私の質問を、三回ないし四回やってきたその議事録は読んでいただいていると思いますけれども、実際にこれを実施する建設省なりあるいはまた環境庁なりあるいはエネルギー庁なりあるいは林野庁を含めて、それぞれの立場では、一つ一つではなかなかいまの荒廃に歯どめをし、そして環境を回復し、防災に努められるというところにいかないということは十分御承知のとおりだと思うのです。  ですから、文章に書いてあるところによれば、「国土保全施設」と書いてあります。「保安林の整備」というふうに書いてあります。たとえば、「保安林の整備」では、どの程度国土庁がリーダーシップをとって林野庁にこういうことができるのですか。
  135. 堺徳吾

    ○堺政府委員 これまでの決算委員会における御審議先生の御指摘のとおりでございまして、私も全部読ませていただいたわけでございます。そういう経緯も踏まえまして、環境庁の方で関係各省の連絡会議が設けられまして、砂防なり保安林なり公園なり、いろいろな法律の網がかぶっておるわけでございますけれども、こういったものの運用を適切に厳正にやるという関係各省通達を出したわけでございます。私どもの方も近畿圏の近郊緑地の指定をしておるわけでございまして、そこの連絡会議から一応まあ検討すべき問題点といいますか検討事項というものもまとまって出されておるわけでございまして、こういった検討事項を今後どういうふうに進めていくかということで、国土庁としても近畿圏整備の立場からこの調整をいたしたいということで現在鋭意調整を図っておるわけでございまして、先生が御指摘のように各種の許可法それ自体では、した荒廃そのものがなかなか回復することもできませんし、それから現実に土石の需要というものが公共事業にも使われておりますので、これはストップをかけるわけにもいかないという問題もございますし、いろいろな問題がたくさんあるわけでございますけれども、これは一つの省だけでなかなかやれる問題ではないので、関係各省が本当に一緒になって取り組んでいかぬといかぬ。建設省、環境庁、農林省、それから国土庁を含めまして、こういったことで寄り寄り相談をいたしておるわけでございまして、国土庁が林野庁にどういう権限を持っているかというようなことではないわけでございます。この点は関係各省も十分了承して、いま相談をいたしているわけでございます。
  136. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 五省庁の連絡会議をお持ちになったけれども、そしてまたそれぞれの縦割り行政ごとの施策が別々ですけれども、危険防止、安全の確保ということについては一応国土庁が窓口になって幹事役を進められる、そういう感じになるわけですか。
  137. 堺徳吾

    ○堺政府委員 災害の防止という観点ももちろんあるわけでございますけれども、国土庁としましては、大都市圏局の方では、まさに近畿圏の大阪に本当に隣接しました残された非常に貴重な緑地でございますので、これをやはり保全し整備していきたい、こういった観点、もちろんそのためには災害の防止とかいろいろな問題ももちろん入っておるわけでございますが、少し広い立場でございます。
  138. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いや、それはわかるのですよ。だから砂防は砂防、治水は治水、そして森林は森林、それぞれの立場で仕事はやられておるのだけれども、まとめ役が結局ないものだから今日まで歯どめせずにずるずる十数年聞きたわけでしょう。そして現状の荒廃を招いたわけでしょう。ですから、これをだれかがまとめ役をやらなければ、ということになれば、その中で災害防止ということになれば国土庁が窓口だということなんでしょう。だからこそ国土庁が幹事役として、その間に入って、今後各省庁の意見調整をしながら事業を進めていくという、そこまでは国土庁が窓口になられたということは認められたわけなんですか、そこまでもいってないわけですか。
  139. 堺徳吾

    ○堺政府委員 国土庁が窓口になった、調整役になったという意味は、その災害の防止という観点だけでなくて、私の言うのはもっと積極的な意味でございまして、あそこの土地の適切な利用という、荒廃した土地を適切に利用するという問題は災害よりももっと広い範囲の問題でございますので、もっと積極的な意味において調整しようという、そういうふうに理解していただきたいと思います。
  140. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、わかりました。環境庁のやる仕事もあるいは建設省のやる仕事も一応調整役としての全体としてのまとめ役になった、そこまでは位置づけははっきりいたしたわけですね。  ここに書いてあるのは文章にしたら簡単ですけれども、なかなか簡単に仕事の方は進まないと思うのですよ。それで五十四年度の予算の中で、どういうことを具体的に計画をしておるのですか。
  141. 堺徳吾

    ○堺政府委員 関係各省それぞれの所管の事項がございますけれども、今後その所管に応じまして保全整備の基本的な方針を今年度に立てる、それから来年度では少なくともその基本計画を策定してしまいたい、大体この二カ年ぐらいにわたって立案をしたい……(馬場(猪)委員「もう一度答えてください」と呼ぶ)私どもは、まとめまして具体策を立てるわけでございますけれども、その具体策を立てる前にはいろいろなそれぞれについての方針を立てないといかぬわけです。その基本方針的なものは今年度立てたい、それから来年度には具体的な案を作成して実施に移すように持っていきたい、そういったことで中身をいろいろ調整いたしておるわけでございます。
  142. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それではその五省庁が寄り集まって、国土庁が一応その五省庁の調整役を買って出て、この地域にはひとつ保安林をやってもらいたいとか、この地域には砂防施設をつくる、その具体策は建設省にやってもらいたい、そういうふうな作業をなさるということですか。
  143. 堺徳吾

    ○堺政府委員 簡単に言えばそういうことになるわけでございます。これらは、たとえば砂防の場合には砂防災害発生の防止の検討問題が一つございますし、それからかなり荒廃した跡地があるわけですけれども、この跡地の地域整備をどうするかという問題、たとえば建設省ではむしろ都市局の方に属するかもしれませんが、そういった問題、それから林野庁では山地災害発生の防止策の検討、環境庁では自然環境破壊とか景観の悪化の防止の検討、そして国土庁がこれの総合調整、取りまとめをやりたい、こういったことを大体二年間にやりたいということでございます。  なお、通産省関係では、あそこで採取する土砂が今後どれぐらい要るかというようなこともあわせて検討しませんと、かなり継続的に長期にわたってなお採取していかないといけないという実態がございますので、そういった見通しの検討も通産省あたりでやっていただくというふうに考えておるわけでございます。
  144. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この前の委員会でも指摘しておりますように、たとえばここへ植林をして保安林をつくるという場合でも、現行法ではそこに限界がありますね。民有地であるために強制できない。ですから、当然ここを保安林にすべきであって、保安林にした方が環境を守るのに役立つのだけれども、強制ができないというような答弁もありますね。そういうふうな問題が出たときに、お互いに意見の調整はできても、法律改正を伴わなければできない問題であるとか、あるいはまた土地を買わなければいけないというような問題があるとき、そういうときにも国土庁中心になって、法律改正をやるならやるように、制度改正をやるならやるように、そこまで推し進められるような調整機能をお持ちなんですか。
  145. 堺徳吾

    ○堺政府委員 この地区は、御存じのように、法律は所管の各省にいろいろまたがっておりますけれども、大部分は知事に委任されておるわけでございます。大阪府も現在一生懸命やっておりますし、それから四条畷市も市長以下一生懸命やっておるわけでございまして、私どもは地元の要望も入れまして、どういうふうにやっていった方がいいかということで調整していきたいと思います。調整する権限があるかないかとおっしゃいますと、それはまさにやってみないと何とも言えないわけでございますけれども、われわれはやれると思っております。
  146. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私、なぜこんなに念を押しますかというと、それぞれ一つ一つの省庁ごとに聞きますと一定の限界でとまってしまうのです。環境庁もあくまで環境を守るという立場であって、一方防災という角度になれば一歩も外へ出ないのです。  そうすると、国土庁が、権限のあるなしにかかわらず、これをやらなければ困るのだということで、ある程度指導的な役割りを果たしてもらえるところまで本当にやっていただけるのかどうか、その点を確かめておきませんと、結局ただ意見の調整だけということにとどまりますと、あれは法律改正を伴うので保安林の指定をしようと思ったけれどもできませんでしたとか、あるいは砂防法の指定によって下流地域に損害を起こさないためにいろいろの対策を講じますけれども、それについては告発するところまで至りませんとか、あるいはまた大阪府に権限を委任してあるからと言われるけれども、大阪府自体が十九の法律なり条例によって縛られておる。府自体が独自でできることであれば、今日までにやれるのです。府自体では独自にできないからこそ、今日まで解決がおくれてきたわけでしょう。ほかの非常に範囲の広い問題については今後の長期間を待ってやれるけれども、特に防災という面については急を要するわけですね。ですから、国土庁がどこまでリーダーシップをとっていただいて、ほかの省庁と協調しながらその事業を進めていただけるか、そしてこの予算の中でそういうことが執行していけるのか、そういうことを特にただしておきたいために、あえて何遍もこういうことを申し上げているのです。  そこまでやれるとおっしゃっておられるわけですが、そこまで本当にリーダーシップをとってやっていただけますね。これはひとつ大臣からも、その点を十分認識していただいておりますので、お答えをいただきたいと思います。
  147. 中野四郎

    中野国務大臣 私は、四条畷が十三号台風で荒れたときに、実は災害委員長として現地視察をした。自乗四条畷に行ったことはございませんが、先生お話なりいろいろの資料を拝見しますと、大変な荒廃の仕方らしいのですね。したがって、先ほどから御質問、それからわが方の応答の内容を伺っておりますると、大変御心配なことがだんだん具体化してまいりまして、そして国土庁が中に入って各省庁との間の調整をとって、その方向に進めていこうということが決まり、またそれに努力をするという考え方を持ってまいったのでございますから、私らもいま伺っておりましてそうするのが最善の方法ではないか、かように考えまして、努力を必ずいたしますということで、ひとつ御了解をいただきたいと存じます。
  148. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 事前に事務局の方からお伺いしたところによると、一応公共事業調整調査費ですか、これによってやるのは北生駒の地区だけだと言われておるのですが、私がたびたび指摘しておる南山城も六甲も皆そうだと思うのです。今回はできないとしても、いずれはそういう調整的な役割りを果たしていただく役所がなければ、これは進まないと思うのです。今後はどういうことになるのでしょう。ただここに限ってということなんでしょうか。
  149. 堺徳吾

    ○堺政府委員 六甲の方でございますと、これは大体砂防指定でございまして、余り関係各省の入り組んだようなややこしい問題はないかと思います。南山城もそうややこしい問題はないのじゃないか。生駒の場合は、まさに先生御指摘のようにいろいろな法律の網をかぶっておって、各省がそれぞれやっていても、それぞれの中では必ずしも解決できないという問題がありますので、私どもがあえて乗り出したということでございまして、そういう調整の必要があればもちろんやるわけでありますけれども、いまのところ、ほかの地区については必ずしも必要はないのじゃないかというふうに考えております。
  150. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それは現状を御存じないからですよ。生駒の裏側は同じですよ。これは南山城の一部、同じように調整を要するところですよ。だから、われわれが住んでおってやかましく言うからそこは取り上げるけれども、やかましく言わないところはやらないという姿勢はおかしいと思いますよ。同じ条件のところはやはりやるという姿勢をとっていただかなければいけないと思うのです。ただ生駒の山の東側と西側で県が違うだけの話で、条件は同じなんですよ。全く違うとおっしゃるけれども、そうじゃないのですよ。砂防法なら砂防法だけで歯どめがきくのじゃないのですよ。全部が寄らなければできないような問題ですよ。本来生駒の山で起こった問題が、世論がやかましくなって、だんだん遠くへいって、南山城から滋賀県まで、そういうふうに及んでいったのですから、どこかできつくやれば、ほかのところでやりますよ。乱開発が進みますよ。  これは予算の問題ですから、どことどこという約束はできないでしょう。しかし、姿勢としてはそういう同じような条件のところは取り上げて、やはり環境破壊を許さない、災害の起こらないような国土保全に努める、こういう姿勢があってしかるべきじゃないでしょうか、大臣
  151. 中野四郎

    中野国務大臣 百聞は一見にしかずで、前大臣も現地へ行かれてそして調査あるいは研究し、これを調整するような段階に進めたようであります。きわめて近い将来に一度現地を見せていただきまして、目で見ないとどうも納得いたしませんから、しかる上でそれぞれの所管の者に命令をするようにいたしたいと存じます。
  152. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  153. 加藤清二

    加藤委員長 高田富之君。
  154. 高田富之

    ○高田委員 時間が余りございませんので、要点だけをお尋ねしますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  まず最初に、せっかくおいでをいただいております参考人の方に、ぜひとも御説明を願っておきたいことがございますのでおいでいただいたわけでありますが、この地域振興整備公団、これは時節柄国土の有効利用という点で非常に大事な仕事の分野を担当しておられる公団でございますし、どんなふうに仕事を進めておられるかと思いまして、実はこの間、ちょっとあなたの方でお出しになっております事業概要、それから決算書などに目を通しましたところ、どうしてもちょっと胴に落ちませんので、これを一度ぜひとも御説明を願いたい、こう思ってお出まし願ったわけでございます。  端的にお尋ねいたしますが、あなたの公団決算で五十年度、五十一年度、五十二年度の予算執行状況でございますが、三年続けて非常に予算に対する執行率が低いわけでございます。五十年度では予算額に対して支出されました額が二八・一%ですね。それから五十一年度では予算額に対して支出されました額が——これは事業が三つございますが、最初に例示しております、ほか大体皆同じなんですが、地方都市開発整備等事業勘定ですね、これをいま例にとって申し上げておるわけですが、二八・一%、それから五十一年度が四〇・六%、五十二年度が八・七%ですね。それで、特殊な事情がおありなんだろうと思うのでございますが、続んでみましたけれども御説明がその点についてはございませんので、どうしてもこれは御説明を要することではなかろうかと思うわけでございます。  なぜこんなに予算をとっておきながら実際の執行率が極端に低いか、そして最後の五十二年度のごときは八・七%という執行率でありまして、その繰り越したのが百三十四億、不用額として消してしまったのは三百九十億というようなことになっておりますね。ですから、これはどういうわけで執行率がそんなに低かったか、そしてそういうふうに年々予算を組んでおきながら最終的には相当多額のものを不用として処置しちゃったということは、計画を立てていたものをよしてしまった、絶望なんでこれはもうやめたというような意味なんでしょうか、どうですか。この点につきまして、納得のいくような御説明をぜひお願いしたいと思うのです。
  155. 三橋信一

    ○三橋参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  御質問の点確かにそのとおりでございまして、私どもただいままでなかなか仕事が進まなかったという点につきましては、御説のとおりこれは事実でございます。  ただ、これにはいろいろ事情がございまして、私どもの公団の仕事は、先ほど仰せられましたように産炭地の振興の仕事、それから工業の再配置の関係の仕事、それからさらには都市整備の仕事、こういうふうに順を追って仕事が加わってまいりました。かつその産炭地と工配の関係の仕事につきましては、これは工業団地を造成する仕事のほかに、融資の仕事がございました。  そこで、実は総論的に申し上げますと、石油ショックのころまで産炭地の仕事はわりに進んでおりましたが、石油ショックの前後からこれが非常に狂いを生じてまいりました。特に御指摘のように工業再配置の仕事、これの仕事と同時に都市の整備の仕事、これは私どもの方の公団では、ほかの公団と違いまして、地方の公共団体からの要請を受けてやる。県及び当該市町村長からの要請を受けてやるという仕組みになっております。  したがいまして、その要請を受ける前にもちろん調査はいたすわけでございますが、調査をいたしましてどうにかいけそうだということになりますと、事業執行の要請を出してまいりますが、その際に、これは造成の方でございますが、県の議会なり市の議会なりでそれぞれ大体において満場一致の議決をしてそして要請をしてこられるわけでございますが、そこで私ども御要請を受けまして実際にこれを始めてみますと、中にいろいろの方がおられて、そしてこれが計画どおりいかないというようなことがほとんど全部の団地でございました。中には、極端なことを申しますと、その地域の推進委員会の重要なメンバーである方がいざとなったら反対に回っておった、そういうような試行錯誤が非常にございまして、その結果、この要請に至るまでの間に非常に時間を要しましたこともございますが、要請を受けてから私どもがいざ仕事をしようとするときに非常に時間がかかったということがございます。  それからさらに、融資の関係でございますが、これにつきましてはオイルショックの後、企業の地方に出ていく意欲が非常に少なくなりました。私ども予定いたしましたのと大分狂いを生じた。これは私どもの見込み違いでございますが、そういうようなことで、非常に繰り越しなり不用を生せざるを得ないということになったわけでございます。  特に、実は私どもの公団の予算の仕組みは先生もよく御存じのとおり、使えなかったものはすべて翌年度に繰り越していけるという仕組みになっておりました。それを実は五十一年度予算までそのとおりやっておったのでございます。したがいまして、ただいま申し上げたようないろいろの事情の狂いから予算が執行できませんでしたものも翌年度の予算に足しまして、これを翌年度の予算現額としてやっておりました。その関係で私どもとしては非常に不面目な事態を生ずることになりました。  そういうようなことで、五十二年度予算からは、これを翌年度使うことが可能な額というものを、要請の地方公共団体の調子あるいは地元のいろいろな状態、そういうようなことをつぶさに調べまして、そして翌年度使えるような額だけを予算として計上するということにしたわけでございます。したがいまして、五十二年度まではお説のとおり要請に至るまでの間のいろいろな状況あるいは要請後の先ほど申しましたようないろいろなトラブル、そういうようなことで事業の執行が非常に鈍かったという状態でございます。  さらにもう一つつけ加えさしていただきますと、当初は計画を立てました際にどのように予算を組んだらいいかということについて実は不案内でございましたので、一定の単価を可能な坪数に掛けてこれを翌年度予算額にするというような仕組みでやっておりましたが、これも五十二年度あたりから改めまして、精密に調査をした実績に基づいて計上するということにいたしております。  したがいまして、ただいま御指摘いただきましたようなことは五十三年度からはこれが非常に進んできておりますので、その点御承知おきいただきたいというふうに思うわけでございます。
  156. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、五十二年度でかなりたくさんの不用額繰越額よりもはるかによけいの不用額で切り捨てておりますが、その分については計画もあり、あらかじめ要請も受けていた、何とかやりたいと思ったけれども、もう見込みなしというのでその分は計画自体を白紙に戻してしまった、こういうことでございますか。
  157. 三橋信一

    ○三橋参考人 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘でございますが、これは五十三年度予算では執行しないという意味でございまして、計画の全体から落としたわけではございません。したがいまして、先ほど申し上げましたような事態が徐々に解決してまいります、そして仕事が進むようになってまいりましたらば、これを取り戻すような予算をいただくような仕組みでやっていく、したがってその分だけ全体から落としたというようなことではございません。
  158. 高田富之

    ○高田委員 いわゆる不用額で消してしまったのではなくて来年はできそうもないからということですね。再来年あるいはできるかもしれない。ですが、実際にタッチしておられる方々はいろいろ苦労なさっているのだろうと思いますが、何かわれわれにちょっと納得できないのは、予算というものはもともとできるかできないかわからぬものをやたらに予算に組むということはあり得ないと思うのでありまして、明年度の予算というのは原則として明年度に実行するということで初めからあるはずだと思うのです。  それでは、住宅公団なりあるいは宅地開発公団なり類似の事業をなさっているところで、こういうふうな極端にひどい、何%しかできなかったなんというそういう予算を三年も続けているというところは恐らくないのではないかと思うのです。私は知らないのですが、恐らく常識的にあり得ないと思うのです。  会計検査院の方にちょっとお伺いしますが、こういうのは異例のものだと思うのですが、どういうふうにごらんになっておるのですか。
  159. 岡峯佐一郎

    ○岡峯会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、当公団におきましてこのように多額の繰越額または不用額があることは非常に際立った現象であると理解いたしておりまして、検査の衝に当たる者といたしまして大変遺憾な予算の執行であると私は考えております。  このような事態ができました原因でございますが、いま御当局から御説明がございましたようにいろいろあるわけでございますが、私どもの基本的な考え方を申し上げますと、当該年度以前の事業年度におきまして事業計画が事業執行の実態に適合しない、そういう事態があるにもかかわりませず、このような事態をそのままといたしまして計画を進めてきたことがやはり基本的には原因である、このように考えているわけでございます。  したがいまして、昨年でございますが、当局に対しましてこのような事態につきまして見解をただしまして注意を喚起いたしたところでございますが、いま御当局から御説明がありましたように、五十三年度からは予算のつくり方といいますか、そういう方式を改められまして、今後は適切な事業規模の想定と申しますか策定と申しますか、そういったものを入念にされまして、このような事態の排除に努めるという御説明を受けている次第でございます。  このような事態でございますので、私どもといたしましてはそういった今後の執行状況につきましては十分見てまいりたい、このように考えている次第でございます。
  160. 高田富之

    ○高田委員 今後は本来のあり方に戻していただけるということですから、ぜひそういうことで進めていただけば結構なんですが、ただ、非常に重要な仕事を担当しておられる公団でありますし、先ほども馬場さんの質問にもありましたように、大都市圏にやたらに人口が集中するのはよくない、何とかして地方に工業を分散する、あるいは新しい都市づくりをやるという非常に大事なことですから、これは相当大規模にどんどん進めていただかなければならぬことなんですが、こういうことでいきますとどうもだんだん萎縮していくのじゃないか。実行予算がずっと小さくなって、五十三年度になりますといままでで一番小さい予算になるわけですね。  こういうような傾向で——これは恐らくいろいろ困難があるんだろうと思うのです、地方自治体に金がないとか。しかし、金のないような地方自治体でなければ開発する意味もないというようなことで、恐らく障害になる事項がたくさんあるのじゃないかと私は想像しておるのですが、そういうことを国土庁が大所高所から見て、障害を排除しながら事業がどんどん前向きに年々大きくなるように進めていただかないことには、せっかくつくった意味がないのじゃないか、こういう感じを実は禁じ得ないのですね。特に一般事業共通費の方を見ますときちっと予算どおり使っておられるし、またこれはふえているわけですね。こういう中で定員もふえているわけですから、スタッフはかなりそろえられているのだろうと思うのですね、いままでこれだけの大きな計画を立てられたのですから。それがずっとしぼんできまして、これではせっかく有能な人を集めても十分機能を発揮してないというようなことにもなるのじゃないかと思うのだな。  ですから、ここらの隘路をどうやって打開して、そして積極的に重要な仕事ができるように、普通の不動産会社だったらこういう時期ですからなかなかむずかしいということになるのでしょうけれども、普通の不動産会社のやれないところをやってもらうわけですから、そういう点では政治的にもっともっとバックアップしてもらわなければならない点がこういう公団に多いのじゃないかと思うのです。  こういうような点を実はいろいろとお聞きしたがったのですが、ひとつ御検討願いまして、もし御発言がありましたらそういう点で御意見を承りたい。
  161. 三橋信一

    ○三橋参考人 お説ごもっともでございます。私どもといたしましても、ただいま会計検査院からも御指摘のありましたように、検査院ともいろいろ御相談しながらやっておりますが、予算の組み方としては先ほどのようにいたしました結果だんだんに予算がしぼんできておる、むしろこれは私どもとしては原点に返ってやり直しているんだというつもりでございます。  と申しますのは、要請を受ける前にもちろん調査をいたしますが、その際に地方公共団体等との話し合いをきっちりつけまして、その上で予算を要求し、要請を受けるということに、実は昨年度から始めております。したがいまして、仕事の進みは非常に悪くなるおそれが当然ございます。個所数はふえません。ふえませんが、御指摘のようなことに至らないような措置は十分にやっていきたいと思います。  ただ、一言言いわけをさせていただきますと、こういう仕事と申しますものは、地元との話し合いがいつつくか、また融資については、その会社が急に融資を受けたい、話し合いをしている会社が急にどこかへ行きたいというように、話がいつつくかというような問題も急に解決するものなのでございます。したがいまして、解決しましたときに直ちにこれに応じられるという体制だけはどうしてもとっておかざるを得ない。そういう意味では、ある程度の余裕を持って予算をつくっておくと申しますか、逆に申しますとそれが繰り越しになるかもしれませんが、そういうようなことはある程度は御了解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私どもとして非常に不名誉なことでございますし、大事な仕事をしてまいるわけでございますから、今後関係各省あるいは地方公共団体といろいろと協議を重ねながら、御指摘のようなことのないように進めてまいりたいと考えておりますので、今後ともよろしく御援助いただきたいと思います。
  162. 高田富之

    ○高田委員 そこで、国土庁の方でもこの公団をもっと活用していくというたてまえに立って積極的に指導し、財政上の問題等があれば大蔵省にも交渉してやらなければならぬ、あるいは自治省とも……。恐らく一つの隘路は、いろいろあるでしょうが、地方自治体にいま金がない、ですからそういうところにかなり大きな無理があるのではないかという感じもするのです。そういうこともありますし、また一般的な土地問題のむずかしさに真っ正面からぶつかっておる仕事でもありますので、そういうことはあろうと思います。  いずれにいたしましても、いまの会計検査院の話もありましたので私も了承しますが、今後はしかしきちっとした予算、決算をおやりになり、かつ仕事面では積極性を持っておやりになるようにお願いしておきたいと思うのです。  そこで、時間もなくなりますのでこの機会に、いまの関連もあるわけですが、土地問題で長官にお伺いしたいのです。  この間国土庁で発表されました地価の動向を見ますると、大分地価の上昇傾向がここへ来て急ピッチになっておるというふうに見られるわけでありまして、各方面で相当これには憂慮しておる。新聞等を見ましても、論説等で非常に心配しておるわけです。われわれもこれは大変なことになるのではないかという気持ちを禁じ得ないのですが、いまの地価の上昇傾向、特に大都市圏の住宅用地等は代表的なものですが、この一月から三月までの第一・四半期、全国的に大変な上昇傾向を示しているのです。  これに対して国土庁としてはこの現象をどのようにとらえておられるのか、大まかな基本的な見解で結構ですから、大臣から伺っておきたい。
  163. 中野四郎

    中野国務大臣 昨年と比較いたしまして、今年の公示価格は全般的に見ますと五・二でありますから、やや強含みと言った方がいいかもしれません。ただ、これは所と物によりましてずいぶん変化がありまして、たとえば五・二が平均値でありましても、商業地域とか工業地域になりますとずっと下がっておる、低いのです。しかし、事、住宅地となりますと、これは所によってずいぶん変化があるのです。たとえば三大圏といいましても、名古屋、大阪、東京というふうに見てまいりますと、所によっては八・二、また東京周辺では都心近くでは九・九などというような高い評価額になっておるわけでありまして、せんじ詰めて申し上げますと、これは需要と供給のバランスが崩れておることであります。  こういうことを申し上げてはどうか知りませんが、景気浮揚を急ぐ余り最初の間公共事業にかなり力を入れておりましたけれども、すそに及ぼす影響が狭い。むしろ、すそ野の広い住宅政策にというふうに転じてまいりました。ここに非常な住宅地供給の悩みが生じてきたわけであります。  もう一つは、何と申し上げましても住宅地としての効用が増大したところが非常に高いのです。重ねて御検討中の先生ですから一々申し上げる必要はありませんけれども、道路がよくなった、交通は整備された、通勤はしやすい、学校もいい、病院も手近にあるというところになると、どうしてもこの方面に人が集中してまいります。その需要に対する供給が欠けておる、これが今日の地価の動向について御心配をかけておるような状況であると考えております。
  164. 高田富之

    ○高田委員 土地の価値が非常に上がってきた、そういうようなことで需給の関係で上がるということなのですが、これを放置しておきますと、全体の地価の上昇傾向に拍車をかける。普通の商品であれば、上がってくればもうかりますから生産するわけですが、これは生産できませんから、全く独占的なものでございますので、必ず近隣に直ちに波及する。ですから、引き金になっているのはおっしゃるとおりいまのところ住宅用地が一番高いのですけれども、これは全般に上がっていることは間違いない。どの土地も全国的に上がっております。上がっている中で牽引車になっているのは住宅地である。ローンで自前で家を建てろという式の方面に余り力を入れ過ぎた、これはおっしゃるとおりだと思うのです。景気刺激というようなことでそれに力を入れ過ぎた、そういうかなり偏った住宅政策なのですね。  ですから、そんなことをこれから続けていきますと、住宅地は大変な値上がりをしてくるのではないか。値上がりをしてくればくるほど値上がり期待で売り手はなくなりますから、ますます供給は減る。だから、供給はますます減る一方だと思うのです。いまの傾向でいきますと、どうせ先は上がるのですから売らない方がいいということになります。そこで需給関係がますます逼迫する、こういうことになりますね。  そこで、これに対しましては何らかの措置を講じませんと、このままではどんどん上がる一方だと思うのです。去年からことしにかけての傾向を見ますとそれは明らかに出ておりますし、第一・四半期というのはもともと余り上がらない時期なのだそうですね、いままでの例でいきますと。いまこれだけ上がっているのじゃ、年間ほったらかしておいたらずっと上がるかもしれぬ、来年は物すごくなるのじゃないか、こういう期待感もまた持たれるだけに、この傾向は非常に危険だと思うのです。  そこで、国土庁とされては何らかの思い切った措置をお考えになっているのかどうか。と申しますのは、せっかくできました国土利用計画法ですか、これを見ましても、果たして大事なときにこれが発動できるのかどうかという心配があります。遊休土地なんていまたくさんあるわけですね。膨大なる遊休土地を抱え込んでいるわけなのですが、この法律によって指定をしてそこを有効利用させる、あるいはそれを指定して公共機関が買い上げてしまう、そういうふうな規定はあるにはありますけれども、強制力を全然持っておりませんから実際問題としては発動されていない。現在でも、いまおっしゃるような特殊な地域で、ここのところはどんどん値が上がる、上がりかけておるということがわかっておりましても、指定できないでしょう。規制区域指定というのは、法律をつくってから現在までに一件もないわけですね。できない。これは知事なんかに聞いてみても、やれないと言うのですね。そうだとは思っても、いいかげんな線を引いてここからここは価格はストップだとか、取引は全部許可制だとかいうようなことをやりますと、境の向こうとこっちとがこんなにひどいアンバランスになってしまうので、政治的にそんなことはとうていやれない、そんなどろをかぶる知事なんて全国にいっこない、こういうことで、いまだにこれは一つ利用されていない。これは規制地域の指定の問題ですが、遊休地の方も同じなんですね。指定してもこれは強制力がないですから、うっかり指定すると言いなりで売りつけられるという心配があるし、地方自治体には金はないですから、言いなりで高い値で買って遊休地を持っているやつを救済するなんというばかなことはできっこないので、結局、遊休地もそのままほったらかし、こういうことになってしまうのですね。  ですから私、ここらで国土利用計画法のような趣旨のものをもっと拡大したもので、強力な強制力を伴ったようなものでも考える。そうして遊休地をどんどん活用していくというような方法を講ずる。それから必要なところは、これも小さな区域を指定したのではだめだと思うのです。やはりその市町村全体、特に三大都市圏のごときは市街化区域なら区域全体が強制されるという形のものでなければ、これは一部分だけ線を引くというわけにはいかないと思うのですよ。そういうふうなことを何かいまお考えになっておられるのですか。近く何かお考えになる手だては進めておられるのでしょうか。いかがでしょうか。
  165. 中野四郎

    中野国務大臣 地価抑制の一番いい薬は、需要に満てるだけの土地が出ればこれは調整がついてくるわけなんであります。したがっていろいろと案を考え、また近い将来にこれを実施するための検討、努力をいま重ねておりますが、私の率直な考え方を申し上げますれば、余り役所式に考えるようにばあっと網をかけるようなことをしないで、きめ細かに即応をしていけるような措置を考えてはどうか。言いかえますれば、たとえばまだ百三十近いところの市街化区域、調整区域の線引きが直されずに置かれておるところがあります。これなども一応考えていく必要がありますが、ただ頭からばっとそれを見直すというような行き方はとらざるところでありまして、実際上に、住宅地としてここを見直せばかなりな評価はされる場面が出てくるという点が、きめ細かに調査をすればたくさんあるわけなんです。こういうものに対しましては、私は速やかな手を打つ方がいいと思います。  しかし、この場合には、先生のおっしゃるように、地方公共団体が、いろいろな費用がかかってまいりますから直ちにこれに賛成をいたしません。しかし、これに対しては国がめんどうを見たらいいじゃありませんか。そう地方公共団体だけにおっつけずに、国策を遂行する上においてはそのくらいのめんどうを見るのはあたりまえじゃないかと私は考えておるのです。  それからもう一つは、投機的なものに対しては厳格ないわゆる規制の方法をとっております。また、長期もの短期ものに対してそれぞれの区別をし、地価抑制のための措置はかなり強固にとられておると私は思いまするが、余り税金が高過ぎますと、出るべきものが出てこないのです。  ちょっとお答えが長くなりますか知りませんが、たとえば三大圏などという大きい地域に向かって直ちに線引きの見直しをやれということになりますと、弊害もかなりある。それよりも、東京圏とか名古屋圏、大阪圏というその周辺土地を出したいという人は相当あるのです。その要因は幾らもありまするけれども、最近の相続法が相当変わりまして、遺産等の相続をいたした場合でも、農地を経営してこれによって食っていけるかどうかという農家が相当あります。そういう細分化された農地は早く売却をして、そしてでき得れば自分らの働く道とともに生活の道をと考える人も相当あるわけでございますので、私はこういう点についても配慮をしてはどうか。  しかし、でき得るだけ税制の面でめんどうの見られるものはめんどうを見、それから線引きが直せるものはこれを直して、需要に応ずるような措置をとっていくことがいまは緊急に必要ではないか、こういうふうに私は考えておる次第であります。
  166. 高田富之

    ○高田委員 余り時間がないので残念なんですが、いまおっしゃるのも私は一つの見解だと思うのですが、ただ心配しますことは、そういうことですと、さっき私が指摘しましたように、これからずっと値段が上がるという心配をいまみんな持っているわけですね。そういうときに市街化区域を広げて調整区域を市街化区域に編入しましても、されたものがやはり同じなんでして、編入された、これはうれしい、高く売れるなということにはなりますが、直ちに売る必要はないのですね。せっぱ詰まって売る必要がある人は別ですが、そうでない限りは持っておる方が得だ、こういうことになるわけです。ですから、それよりもいま上がっている傾向を抑える方が先だ、抑えてしまえば、持っていたってつまらないということになるのですよ。上がっている限り絶対供給はふえないと思います。市街化区域をふやすよりも、いま市街化区域内にある膨大な遊休地や、それからいまあなたが指摘されたような——宅地並み課税というのは、税金で農業をやめさせるというのはだれが考えてもちょっと不合理な話なんで、反対されるのは無理もないのですが、しかし農業団体といえども、実際に農業経営をやる意思もないし実際やってもいない者が税金逃れのためにちょこちょこやっているのを擁護するとは絶対に言ってないのですから、また言うはずもないのですから、そういう見地から少し知恵を働かせれば策はあるのじゃないかと私は思うのですね。  新聞でちょっと見たのですが、何か東京の中にいまクリ林が毎年相当ふえつつある。どんどんふえる。そして全国のクリ林は減りつつあるわけですよ。東京都のクリ林だけどんどんふえているわけですね。これはだれが考えてもおかしいのです。これは客観的に見まして適地を利用しているとは考えられないのです。こういうものを農業なんだからということでいつまでもその状態で放置しておかないでも、方法があるのじゃなかろうか。これには私は農業団体といえども反対はしないと思うのです。  たとえば、埼玉県知事なども主張しているのですが、一定期間十年なり二十年、農地の相続は二十年ですが、二十年なら二十年というものは農業をここでやっていくのだという人は自分で申告をする。そうすると、自分で申告をした以上それは農地なんです。農地である限り、これは絶対に転用は許されませんから、どこまでも農業をやっていくか、農地として売るか以外に手はないのですね。そのかわり宅地並み課税を払う必要はない。こういうふうな選択制度で個々の農家の方にでも選択させるということになりますと、かなり状況は違ってくるのじゃなかろうか。  それは一つの案なんですけれども、いずれにしましても、東京の中にどんどんクリ林がふえていくという状況をただ見ている手はないと思うのですよ。ですから、後楽園が何百も入るくらいの膨大な空き地がある、そこへ持ってきてクリ林がどんどんふえているという状態を放置してほかに宅地をふやそうたって、これは前後矛盾しているはずなんで、そういうのを抑える手だてをまず強力に講じて、とにかく価格は上がらないのだという形にすることが供給をふやす道ではないか。  そこらについてこの機会に、先にいきますと遅くなってしまうので、ぜひともひとつ国土庁で高い見地から思い切った総合的な施策を——先ほど大臣がおっしゃったように、いまのような持ち家主義というのをここらで根本的に改めて、公的な貸し家を強力につくっていく、あるいは民間につくらせて家賃の補助でもしてやるとか、そういう方法もあるわけですから、そういう抜本的な土地宅地対策というものを総合的にお立てになるべき時期だと私は思うのですよ。これは安閑としておりますと一年後えらいことになるのじゃないか、正直私はそう思って心配しているのですが、ひとつ大臣から勇断を持って——西ヨーロッパあたりでかなりやっているそうですからね。日本土地が狭いのですから西ヨーロッパ以上の強力な土地政策をとらなかったら大変なことになると思うのです。ぜひここらで思い切った策を講じていただきたい、こういうことを申し上げて、私自身時間がないものであれなんですが、そういうことを申し上げたいのですが、ひとつ御決意のほどを承って、きょうはこの程度でおいとましたいと思います。
  167. 中野四郎

    中野国務大臣 お説のとおりでありますので、遊休土地の問題につきましても、官公署、地方公共団体で持っておる遊休土地はずいぶんあるのです。ところが、これらはおのおのの財政上の関係から高く売りたい。もしこれを高く売りますと、その周辺土地がまた上がってくるというような非常に困ることが生じます。先日閣議でも、私の方から、官公署の土地を売買する場合には地価公示価格を守りなさい、むしろ国土庁と呼応するようにして今日の土地不足をば補うようにしなければいけないと言って、合意を得ておるのですが、いまのクリ林の問題についてもよく理解できます。もちろんこれには農地課税の審議会がございまして、いろいろと検討もいたしましょう。しかし、先生御指摘のとおりの事情もよくわれわれも承知しておりまするので、近い将来に思い切ったいわゆる国土庁としての決意を明らかにして、速やかにこの需要に対するところの供給をばだんだんと進めていきたい、かように考えております。
  168. 高田富之

    ○高田委員 終わります。
  169. 加藤清二

    加藤委員長 林孝矩君。
  170. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ただいま同僚委員から質問がございましたが、冒頭私も地価問題に関して数点お伺いしておきたいと思います。  いま大臣から御答弁がございました決意のほど等について理解をさせていただいたわけですけれども、ただ実態そのものが想像以上に深刻な状態にあるということで、少し問題意識、受けとめ方というものにニュアンスの違いがあります。そういう点で、重複するかとも思いますけれどもお伺いしておきたいと思うのです。  国土庁が一日に発表した地価動向調査の内容によれば、地価が第一・四半期に平均一・五%の上昇、こういう状態であります。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕 これを昨年同期と比較いたしますと〇・七%の、倍以上上回る上昇率を示している、こういうことになっているわけですね。それから住宅地については、大臣が言われた東京圏二・七%、名古屋圏が二・八%というふうに、この地価の上昇自体もこれまた想像以上の上昇率を示している。全国平均で一・五%、こういう上昇率でありますけれども、同じ三カ月間、第一・四半期の消費者物価上昇率と比較いたしますと、〇・五八%の三倍近くになるわけですね。国土庁調査が開始された五十年以来、五十一年、五十二年、こういう経緯で見ましても、今回の地価の上昇率は最高の伸び率になっておる。したがって、この急上昇というものの基調が全然ダウンしないでそのままずっとこういう上昇線をたどっておるということですね。こういう状態を今度は先に延ばしていきますと、住宅地で年間一〇%を超える上昇率になる、こういう見方が専門家においてなされているわけです。  こういうことになってきますと問題は非常に重大である。したがって、地価高騰、こういうものだけで見てもそういう憂慮される状態でありますけれども、これに関連してミニ開発というような問題、それからミニ地主といいますか、そういう人たちの増加、こういうものが起こってスプロール現象をさらに大きくしていく、これが今度新たな問題として都市環境に悪影響を及ぼしていく、こういうことになるわけですね。したがいまして、今回の調査結果でわかったことを基本に考えてみても、非常に重大な問題を内在しているわけです。  これに対して、今回発表の際に政府が「おおむね安定的基調で推移している」、こういう見解を発表されているわけです。「おおむね安定的基調で推移している」という見方、本気にそう思っておられるのかどうか。この政府が発表された見解に対して、私どもは全然そういう楽観的な見解ではなしに、地価の先行きに対しては非常に情勢は憂慮すべきである、極端な言い方をすればオイルショックのときに似たような地価の狂乱時代を再現させるような要素も含んでおる、そういうことにしてはならないということで非常に懸念しているわけです。「安定的基調で推移している」というような見方、これは、私はここで確認しておきたいわけでありますけれども、先ほど来申し上げていますように、また同僚の委員からも同趣旨の質問がございましたように、五十年以来地価の高騰というものをずっと見てきまして、今回の発表はその延長線にあって、さらにこの線は上昇線をたどって伸びていく、特に政府が発表している住宅政策を実現するということがたとえば経済成長の目標を構成する一つの大きな要素である、こういうことから考えてみましても、全く反比例する、あるいはその大きな障害になる、住宅建設推進という面から考えてもそれを阻害する要件、こういうものがここに一つ大きくクローズアップされてきたわけです。  したがいまして、これは政府の言うような「安定的基調で推移している」ということではない。もし政府が本当にそのような楽観的な見解をお持ちになっておるということであれば、これは国民感情と全く逆の方向考え方ではないか、このように私は考えるわけでありますけれども、この点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  171. 山岡一男

    ○山岡政府委員 国土庁が地価公示を始めましてから、昭和四十六年は一六・五%、四十七年は一二四%、四十八年が三〇・九%、四十九年が三二・四%というふうに、五十年のころまでは毎年の公示額が上がったわけでございます。現在のところ安定的かどうかという判断につきまして、これは私どもに所属しております土地鑑定委員会が判定を出されるわけでございますが、往年は確かに安定的基調という言葉で過ごしておりました。最近に至りまして、全体としては安定的基調とおっしゃっておられますけれども、中身におきましては住宅地は非常に強含みだということを、従来なかった点を強く強調しておられます。  これは先ほど大臣からもお話ございましたとおり、最近の地価の値上がりの一番の原因は、大都市におきます住宅地の値上がりというようなものが一番中心であるという点であろうかと思います。  今回の地価の高騰等につきまして先ほど来大臣からもお話ございましたけれども、私ども地価の値上がりの要因といたしまして大きく分けますと大体三つあると思っております。そのうち大臣申し上げましたとおり、今回の地価高騰の主な理由と申しますのは、効用増によるもの、それから特に需要の厳しい大都市におきます住宅地供給の不足ということが原因だというふうに思っておりますが、一番われわれが幸いと思っておりますのは、幸いにして四十七年、四十八年当時のような全地域、全地目が一遍に三〇%も上がったというふうな投機的な土地取引による地価の値上がりというものは目下のところはないというふうに思われる点でございます。特に投機的土地取引につきまして、その当時、四十七、八年を経ましてから国土利用計画法も制定していただきましたし、税制も改正されておりますし、ことしはいち早く融資の規制も行っておる。そういう意味から言いまして、今後におきましてそう四十七、八年のような暴騰はないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  しかし、いま先生のおっしゃいましたように、ミニ開発というような問題につきましては私ども頭を悩ましております。どういうことかと申しますと、小さい宅地、たとえば百平方メーターの宅地ということになりますと、それはどうしても資産の価値としては余りありません。どちらかというと土地だけで売るわけにはまいりません。したがいまして、採算が成り立つ限り買い急ぎをいたしまして、公示価格等から離れました買い急ぎの値段で買っておる。そうして上物と一緒に売っておる。土地と上物と込みで売っておる。こういうことがミニ開発の実態でございます。  その点につきましての今後の取り扱い等について関係省庁との間でも十分相談をしながら対策を詰めてまいりたいと思います。本当にミニ開発についての御指摘につきましては大変耳が痛いわけでございまして、今後十分な対策を講ずるよう努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  172. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは大臣直接お答え願いたいのですが、いま御答弁がありました安定的基調に対する見解、これは大臣はどう思われていますか。いまのあれは大臣考え方じゃないんですね。大臣は安定的基調を保っておるというような見方をされてないと私は思うわけですけれども、政府が発表したときにはそういう見解が発表された。大臣の見解をお聞きしたい。
  173. 中野四郎

    中野国務大臣 数字は先ほど御指摘のとおりでありまして、確かに地価はお互いが心配する段階へ徐々に上がる傾向があります。しかし、この原因は、いま局長お話し申し上げましたように、その上がってくる要因があらかたわかっておるのです。把握できておるのです。これが一般通念上おそれておりまするインフレ等によって財産を紙幣から土地にかえるというような状況が起きますれば、これは容易ならぬ問題であります。この点が私らの一番心配しておる点でありますが、現時点の地価公示の率をごらんくださいましてもわかりますように、大変心配の段階ではあるけれども、強含みではあるけれども、この需要と供給のバランスさえ直していけばかなり安定する位置に行けるんだという自信があるわけなんです。  それがいわゆる線引きの見直しをしてはどうか。またそのやり方、方法については御質問があればお答えをいたします。または税制の問題を十分考える。売りたいという人もあるのです。事実上あるけれども、この高い税金ではとてものことに売り切れないという人も相当あるんです。  そういう諸般の事情もいろいろ含みを持っておりまして、決して楽観などはしておりはしません。このまま放任しておけば容易ならぬことになる。もし財政上の問題等においてインフレ等のことが考えられるような場合を想定いたしますれば、これは容易ならぬことであります。直ちに土地に降りかかってくることは当然であります。先ほどの高田さんの御質問にもありましたけれども、これは幾ら規制するからと言ってみたところで法律だけで守り得るものではない場合が起こってくる可能性がある。  そういう意味で、現時点においては地価がだんだん上がりつつある原因がやや把握できておりまするから、これに対してどういう対応策を速やかに実施するか、この点に苦慮をしておるような次第でございます。
  174. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま大臣がおっしゃった、また先ほど答弁もございましたけれども、この需要と供給のバランスと言いますけれども、需要と供給のバランスがとれる可能性というもの、正直言ってこれは住宅に関してとれるでしょうか。
  175. 中野四郎

    中野国務大臣 とる決意でございます。同時に、いまの住宅政策をどんどん進めていきますると、年間一万三千ヘクタールぐらいの土地が必要なんです。実質上に供給でき得るものは九千二、三百ヘクタールだと思うのです。  先ほどちょっと触れましたけれども、それぞれの個所それから事情、いろいろなものを勘案いたしまして、もし線引きの見直しをいたしますれば、見直しのいかんによりまするけれども、一年にこれから三万ヘクタールぐらいのものは出る可能性はあるのです。しかし、余り広範囲にこれをかけることは相当考えなければならぬ事情があります。一たん農地をば宅地に変革いたしますると、今後農地としての復活はまず至難であります。こういう国柄の自給自足を考えるときに、直ちに端的に農地をば宅地に転換すればそれで事足りるというようなわけにはまいりません。  その辺のところを十分考慮に入れて速やかに需給のバランスを図るようにいたしたい、かように考えております。
  176. 林孝矩

    ○林(孝)委員 決意のほどはよくわかったわけですけれども、今日までの住宅政策、五カ年計画あるいは三カ年計画、過去幾たびかこの住宅問題に対して土地価格と絡んで目標が設定され、今日までその目標が、結局需給のバランスが達成されたことは一回もないわけでありまして、そういう面でまだ、当然政府としてもそういう決意で臨まれておることはわかりますけれども、その可能性ということについては非常に納得できない面が多々あるわけです。  これもその一つでありますけれども、政府が地価抑制のために銀行窓口の土地融資規制、市街化区域内の農地の宅地化促進、優良住宅地供給促進のための土地税制の緩和、こうした対策を今日まで打ち出してきております。これの効果といいますか、これがどれだけ軌道に乗っておるかという点についてはどのような受けとめ方をされておりますか。
  177. 山岡一男

    ○山岡政府委員 今回地価の安定化のための供給をふやすという見地から各種の財政上、金融上の措置を講じていただきましたが、その間の一環といたしまして、いま先生お話ございましたとおり個人の長期譲渡課税につきまして優良な宅地、優良な住宅建設に資するものにつきましては、一般のものと変わりまして四千万円までは二〇%、それを超すものは二分の一総合課税ということにことしから改正をしていただきました。法律が通ったばかりでございまして、実はまだ実績ははっきりいたしておりません。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、われわれ考えておりますのは、ちょうど今回の改正によりますと昭和五十年のころの負担率と同じくらいになる見込みでございます。昭和五十年のころの見込みになりますと、いまよりも相当な宅地が出るのではないかという期待をしておるということでございます。  それから融資の抑制でございますけれども、これはいち早く五十四年の二月から大蔵省の方で通達を出していただきまして、現地の方から毎月のそういう土地融資につきましての報告を取っておられるようでございます。実はその実績をまだ私ども拝見いたしておりませんが、同時に私どもがお願いいたしましたのは、宅地供給促進という見地もございますので、住宅建設もしくは本当に宅地を造成する費用、そういうものについては従来どおり貸してもらいたい、ただし本当に土地を転がすために買うというようなものについてはこの際一切戒めてもらいたいという趣旨でございまして、向こうからの通達にもそのような趣旨が書き込まれて出ておるということでございます。  私どもまだ最近の情勢を把握しておりませんので数字の御報告はできませんが、そういう状況で進んでおるわけでございます。
  178. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほど一つの問題として挙げましたミニ開発に対する対応、これについて現時点で具体的な対応策というものをお持ちですか。
  179. 山岡一男

    ○山岡政府委員 私ども、ミニ開発に対しましては大きな点で三つ問題があると思っております。  一つは、先ほど先生が御指摘ございました、たとえ一戸一戸は建築基準法に適合しておっても、周りの環境が悪くなる問題があるのじゃないかというのが一点ございます。  もう一点は、先ほど私が申し上げましたように、土地の買収に当たりまして、上物と一緒に売ればとにかくペイするという場合には買い進んで高い売り値をつくってしまうという点でございます。  三番目は、これは老婆心でございますけれども、一たんできましたミニ開発のものが将来本当に資産価値があるのかどうかという点の心配でございます。  そのために、ミニ開発に対しましては私ども何らかの手を打たなければならないと従来考えてきたわけでございますけれども、実際問題といたしまして、たとえば東京におきますと、約六割が百平方メートル以下の敷地の住宅ということでございます。したがいまして、一般に法律で規制をいたしますと、そのものが再建もできないというようなことになって非常に問題があるのではないか等々につきまして、いろいろ悩みがあったわけでございます。現在関係省と私ども相談を詰めまして、今後ミニ開発に対して法的な規制をするかどうかについても検討を進めたい。これはまだ検討中の問題でございます。  ただ、対策といたしまして、現在建築協定というのが建築基準法の中にございます。ミニ開発の中で特に著しくふえておりますのは、お屋敷町の遺産相続の場合の土地売却によるミニ開発の発生ということが非常に多いようでございます。したがいまして、そういう地域につきましては建築協定をつくっていただくというようなことについての奨励を、現在建設省が行っております。  さらに、都市計画法によりますと、開発許可が現在は千平方メートル以上ということが政令で決まっておりますが、三百平方メートルまでは開発許可の対象を引き下げられるという問題がございます。したがいまして、そういうミニ開発の多い地域についてはそういうふうなことを考えたらどうかということを建設省が目下指導中ということでございます。  しかし、今後のいろいろな大都市におきます土地利用上、小さい家は全然だめだということはなかなか困難でございます。したがいまして、二十五坪の二階建てというようなものでございましても、敷地をうまく使えれば環境もいいし住み心地もいいというふうなモデルのミニ開発をひとつつくったらどうかということでございまして、その点につきましては現在建設省の方でことし予算化をいたしまして、そういうものを現実にお目にかけるということで、これから作業を始めるということになっております。  それから、息の長い問題といたしまして、建設省の問題でございますが、地区詳細計画というのが西独等で非常に実効を上げております。そういう地区詳細計画のようなものを都市計画の中に導入するということが地域のそういうふうな良好な住環境の育成のために非常にいいことでございますので、そういう点につきまして現在審議会に諮問をされておりまして、間もなく答申をいただいてそういうものについての方向づけをするというふうに伺っておる次第でございます。  私どもそういう方向を一緒になって大いに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  180. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは大いにやらなければならないことと思うのです。さらにたとえば人口十万、二十万、三十万というような中小都市の場合に、ミニ開発が先行して、たとえば国道のバイパスの設置計画がある、その工事が五年、十年という形でおくれている場合に、その間にその計画地域を全然無視してミニ開発が進んでしまっておる。今度道路を引くということになってきて、計画が実現の段階に入ったときに、すでにミニ開発によって建築された家屋の取りこわし、立ち退き問題、こういうのが現実問題として現場では各所で起こっているわけです。ですから、需要供給のバランスもバランスですけれども、こうした建設省サイドの計画というものが十年、十五年とかいう以前からのものがあって、そしてその上にそれを全然無視した形でミニ開発が進んでしまっている。しかし、その計画が、調査費がつき、買収が始まる、そしていよいよ実現という段階になってきてぶつかるのがそうした立ち退き問題です。これがもし計画的な、都市計画といいますか都市行政というものがそこにあれば、こういう問題で予算を使うというようなことは省けるわけで非常に節約にもなる、こう思うわけでありますけれども、現実に現場ではそういうことが随所に見られるわけです。ですから、そういうことも含めて十分検討していただきたい。これは要望です。  それからもう一つ現象として、不動産業界に対する銀行融資の増大に関係して、史上空前と言われるマンションブームがいま起こっているわけです。マンション建設というものが非常にブームになっておりまして、それを背景にして地価の上昇にはずみがついているという現実の問題があります。これは特に大都市圏においては、もうでき上がるということになってくるとすぐ売れてしまうというぐらいの状態なんです。ですから、そういう大都市圏での一つの心配として、土地は必ず上がるんだという昔あった神話がよみがえってくるような一つ動きがあるということは事実なんです。ですから、そういう面に対しても、やはり今回の一般住宅だけではなしに、マンションブームというものによる特に大都市圏の場合の地価高騰に対するはずみ、これに対してはどういうふうな見解をお持ちでしょうか。
  181. 山岡一男

    ○山岡政府委員 先生お話のとおりマンションが非常にふえております。昭和五十三年度の供給戸数を調べてみますと、全国で九万六千九百戸でございます。そのうち総戸数に占める割合は三大都市圏が八万四千三百戸、全体の八七%でございます。特に東京圏が五万四千七百戸、五六%を占めております。したがいまして、東京圏が全体の六割を占めておるということでございますが、その中でも東京都について見ますと、東京都は三万四千百戸ということでございまして、これがまた圏域全体の六割を占めております。それがどういうところに建っておるかと申しますと、大体東京駅中心二十キロ圏内にその八五%が建っておるというのが五十三年度の実情でございます。まさに先生のおっしゃるとおり、そういうふうなマンションの立地が急速に進んだことが東京圏の土地の値上がりに非常に影響を与えている、そのとおりであろうかと思います。  その特別の対策ということにつきましては、いいものについては融資をする、悪いものについては融資をしないという意味の融資についての選別が現在行われております。現在いろいろなマンション融資をやられますけれども、そういうふうなもので公庫基準に合うようなものについてはいいものだということで貸す、そうでないものには貸さないというふうなことで選別されておりまして、ついついいいものならばお金が借りられるという方法でいい方に誘導するという政策が一つございます。  それから今回、先ほど申し上げました税制の穴あけの中で、やはり大都市におきます中高層住宅の中で優良住宅と認定を受けたもので三十戸以上のマンションというものを対象にいたしまして、そういうものに対して土地をお売りになる方については減税が及ぶ、それ以外のものについては四分の三総合課税で進むというふうなことでございます。  そういうふうな良好なものに対する税制上の優遇もしくは融資の優遇というのが現在の措置でございまして、そのようなインセンティブによりましていいものに誘導をされているというのが現在でございます。
  182. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまいろいろ問題を指摘いたしましたけれども、その地価の高騰を抑制するという、いわゆる安定した価格で地価をどれだけ長期にわたって保っていくか、こういうものと、片一方に住宅不足というものを解消するためにどうしても不足している住宅を建設していかなければならない、これが一つの車の両輪みたいになっておるわけでして、どっちかがとまればこれは真っすぐ進まない、こういう関係にあると思うわけです。それだけに今回の地価高騰というものが、政府が描いている住宅供給、こういうものと関連して考えますと、やはり相当強烈な行政指導というものか、そういうものがなければ、冒頭に申し上げましたように大きな心配が結果としてそのとおりになってしまう、私はこのような考え方を持っているわけです。  どうかそういうことでありますので、この問題に対しては極力積極的にまた能動的に、非常にスピーディーな対応といいますか、そういうものをしていただいて、国民の抱いている住宅を持ちたいという意識、こういうものが満たされるという、一つの大きな安心感を与えるような、そういう結果を生み出す行政を望んでおきたいと思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  183. 中野四郎

    中野国務大臣 その方向に向かって最大の努力をいたす決意でございます。
  184. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、水資源の問題についてお伺いいたします。  昨年からことしにかけて福岡市では十カ月給水制限が続けられた、これは余りにも有名な事実であります。市民の断水生活、これは実に二百八十七日、こういう日に及んだわけでありますが、九州だけではなしに、仙台、ここでも前例のない非常に深刻な状態でありましたし、また奈良市においても給水制限が行われ、非常に水不足ということが大きな社会問題になったことは、もう長官も御存じであろうと思います。  ことしということでお伺いしたいわけでありますけれども、これからいよいよ夏場に向かっていくわけですけれども、本格的な水の需要期を迎えるに当たって、この去年の例ではっきりしておりまするように、雨を頼りの給水という問題ですね。雨が降れば安心だけれども、降らなければ大変だ、こういう状態を続けていくということは非常に不安が多いわけです。ですから、ことし、もし梅雨どきに雨が降らなかったら去年と同じような渇水地獄といいますか、そういうものが訪れるのではないか、こういう心配がもうすでに起こりつつあるわけでありますけれども、いろいろな専門家学者の方だとかそういう人たちが、ことしの夏の水不足に対して警告をしている理由として、ことしの冬の記録的な暖冬異変、降雪量が極端に少なかった、それから最近の降雨量が異常に低いということで、たとえば東京都では三月下旬から節水PRをもうすでに行っている、こういう状態なんですね。  長官にお伺いしたいわけでありますけれども、この水不足という問題についてはやはり長期的な観点から処していかなければならないわけでありますが、とりあえず昨年の水不足で市民の生活に重大な影響が及んだことについて、ことしの夏はこの水飢饉といいますか水不足に対する心配はどのように受けとめたらいいのでしょうか。
  185. 中野四郎

    中野国務大臣 昨年の春から西日本地方は非常に雨の量が少のうございまして、そこで福岡市内の皆さん方には十カ月に及ぶ節水という非常な苦痛を与えて申しわけないと思っております。  御指摘のようにただ端的に雨だけを頼っておるというようなわけにはまいりません。そこで、本年は、あそこにありまする御笠川、それから室見川、この二つの余水、いわゆる余り水を緊急取水工事をいたしまして、昨年の轍を踏まないように福岡市内へ流し込む。  基本的な長期計画としましては、御承知のように九州一の筑後川ですね、ここに大ぜきを設けまして、そしてあそこから導水をするといういわゆる構想を持ち、また実現をするために努力しておるのですけれども、すでに御承知のようにこれは上流の関係、それから流域の関係でいろいろと問題がある。事、水に関しますると、やはり水源地と受益をする末端の方との間の連帯感というものが、何と申しまするか非常な問題点が残るわけなのです。したがって、中に入っておりまする国といたしましては、双方の中に理解を求め、そうしてできるだけ早急に昨年の轍を踏まないような基本的な問題として、その大ぜきの開通に努力をいたしたい。  しかし、当面はそれを待っておるわけにいきませんから、先ほど申し上げたような御笠川、室見川というようなところから緊急措置としての工事をばいまどんどん進めておる、こういうわけでございます。
  186. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官仰せのように、九州福岡市においてはやはり筑後川というのが一つの大きなポイントになると思いますが、この水需要というのは、人口増ということ、また経済成長、都市化の問題、生活改善、こうしたことが総合されて、この需要が増加の一途をたどっていると言えると思うのです。したがって、近年における水使用量の推移、傾向、またその要因、こうしたものは分析、把握していかなければならないことだと思うのですけれども、国土庁としてはこうしたことについてはどのように把握をされていますか。
  187. 北野章

    ○北野政府委員 わが国の水需要につきましては、最近における経済の拡大、それから生活水準の向上によりまして非常に増大傾向を示しております。昭和四十年から五十年の約十年間について見ますと、生活用水は約二倍、それから工業用水は一・四倍、それから農業用水は一・一倍ということで、全体で約一・三倍の増加となっております。  その要因についていろいろ分析いたしてみますと、生活用水は昭和五十年百二十三億トン使われております。ただいま申しましたように十年間で約二倍の増大になっておるわけでございますが、これは一つには、生活水準の向上によりまして家庭用水の使用の増大、たとえばトイレの水洗化、それから家庭のふろの普及、あるいは先ほど土地問題で出ておりましたが、核家族化の進展等に伴いまして一人当たりの水使用量が非常に上昇してきたということで、昭和四十年には一人一日当たり九十六リッターという統計が出ておりますが、これが昭和五十年には約二倍の百七十五リッターということになっております。  それからもう一つ大きな要因は、都市化の進展による都市活動用水の増大でございます。これは事務所ビルあるいは学校、病院、そういった都市の機能を拡大するためのいろいろな施設ができておりますが、これがやはり昭和四十年には全国で年間十八億トンございましたが、昭和五十年には三十三億トンに増大しております。そういった要因で生活用水が非常にふえてきた。  次に、工業用水について見ますと、これは淡水補給水量で検討しておりますが、昭和五十年には年間百八十三億トン取水されております。これは四十年から見ますと約一・四倍に増大しておりまして、今後とも経済規模の拡大に応じて需要増が見込まれております。しかしながら、最近、経済活動の停滞、あるいは工業用水につきましてはかねてから行政指導等によりまして回収率の向上を図っております。いわゆる循環使用を図るということでございまして、これが昭和四十年には回収率三六%でございましたが、五十年には六五%ということで非常に合理化の努力をいたしておりまして、全体の使用量はふえますが、その淡水の補給水量としては伸び率が鈍化しているというふうな傾向になっております。  それから農業用水でございますが、これは昭和五十年には全国で五百七十億トンという使用量でございますが、これにつきましても水田の減少等によって使用量が減る半面、畑地灌漑の増加とかあるいは揚排水施設の分離等水田の高度利用等によりまして需要量は漸増する、穏やかに伸びるというふうな傾向になっております。
  188. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、今後の水需給動向についての調査、将来計画の策定という段階に入るわけでありますけれども、これについてもすでに国土庁では計画を立てられておる、このように伺っておりますが、その中で一番のボトルネックになるものは何か、それからその調査結果に対してどういう対策を、対応をされるかということ、特に関東の臨海地域、東海地域、近畿臨海地域、こうしたところの人口集中地域での供給不足に対してどう対処していくか、この面についてお答え願いたいと思います。
  189. 北野章

    ○北野政府委員 ただいま先生御指摘のように、国土庁では昨年長期水需給計画というものを発表しております。これによりますと、ただいま申しましたように、今後の用水の増加量を地域別にあるいは六十年とか六十五年といったような時間尺度で推定しておりますが、これによりますと、昭和五十年には全国で八百七十六億トンでございましたが、十五年先の六十五年には千百四十五億トン、この間新規に二百六十九億トンと約三割増加することになります。  その内訳が、いままでの傾向と同様に生活用水の伸び率が一番高うございまして、生活用水につきましては昭和五十年の百二十三億トンが昭和六十五年には二百十四億トンと約七割増加いたします。工業用水につきましては昭和五十年の百八十三億トンが昭和六十五年の二百九十三億トンヘと約六割、それから農業用水が昭和五十年の五百七十億トンが昭和六十五年の六百三十八億トンと約一割増加するわけでございます。  この需要の増加のほかに現在問題になっておりますのは、全国における水の供給施設の建設が非常におくれておりますので、河川水から暫定水利権等で非常に不安定な取水をやってしのいでおります。そういった河川水の不安定取水量が現在三十三億トンございます。それから、六十五年までに地盤沈下対策地域等で河川水へ転換しなければならない量、これが二十四億トンということで、合計五十七億トンを加えますと、昭和五十一年から六十五年までの総需要増加量は三百二十六億トンということになるわけでございます。  これに対しまして水の供給の見通しでございますが、ダム、せき、流況調整河川の建設あるいは湖沼開発等、今後とも河川の水の開発を中心として進めていく必要があるわけでございますが、次第にダム開発適地が少なくなってまいります。それから水源地域対策の問題の深刻化、そういったいろいろな制約条件が顕在化してまいりまして、そういった条件のもとで計画どおりに進捗したと仮定いたしますと、三百二十二億トンの供給が可能である。そのほかに新しく地下水から供給可能な量を十八億トンと見込んでおりまして、これを加えますと総供給可能水量は三百四十億トンということになります。したがいまして三百二十六億トンと三百四十億トンでございますからマクロでは均衡している、若干おつりが来るというふうなことになりますが、地域別に見ますと、昭和六十五年には関東臨海、近畿臨海それから北九州、この三つの地域でなお九億トンの水不足を生ずるというふうに見通されております。したがって、中間年次でございます昭和六十年ということに焦点を合わせてみますと、ダム等の建設は通常十年以上の期間がかかるというふうなことから見ますと、これらの三地域については水の需給はさらに厳しいというふうな状況にあることが予想されております。  このようなことに対してそれではどうするかということでございますが、何といっても計画的に水資源開発を進めなければならぬということが第一点でございますが、水を使用する側、国民、企業におきましても、こういった地域につきましては節水とか水使用の合理化を含めた合理化を大いに進めるということで、水資源開発と水使用の合理化を車の両輪のようにワンセットといたしました総合的な水需給対策というものを積極的に進めなければならないというふうに考えております。  それから、ダムの建設に伴う周辺地域の影響を緩和するということで、特に水源地域対策の強化というものに重点を置くということも非常に大切でございます。  それから水使用の合理化の中で、工業用水の合理化あるいは農業用水の合理化は進められておりますが、特に生活用水の合理化について、国としても積極的に対応しなければならぬというふうな考えでおりまして、新年度にいろいろ対応を考えておるということでございます。  したがいまして、マクロでは十年あるいは十五年先に均衡いたしますが、先生御指摘の近畿臨海、関東臨海それから北九州、そういった地域では、相当大胆に施策を展開しなければ、ますます需給が逼迫するというふうなことになるということでございます。
  190. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣、いまお伺いして御答弁がありましたように、この水問題、これはまたバランスの問題になるのですけれども、先ほどの土地問題と匹敵してまた非常に大きな問題で、特に関東臨海それから近畿、九州、こうしたところの人口急増地域においては、見通しからいっても水不足ということは必ず起こるといういまのデータであったわけですね。水資源を開発するということについても、適地というものを探してもなかなか見当たらない、こういう状態でありますし、その水資源地域でのダム建設、この地域ではどういうことが起こっているかといいますと、水没周辺地域の過疎化現象に拍車をかける、それから建設工事そのものによる環境問題であるとか、あるいは水没関係者の将来の生活再建の問題であるとか、こういうふうなことがまた水源地域対策としてどうしても解決してあげなければならない、こういうことにもつながっているわけです。  したがって、人口急増、水不足という問題で、水資源開発がなかなか思うように進まない、開発ということについても、ダム一つつくるにしても非常に時間のかかる問題でもありますし、この辺の交通整理をしていかないと、この問題も将来において大変大きな禍根を残すのではないかと思うのですが、この点について長官の見解を伺っておきたいと思うのです。
  191. 中野四郎

    中野国務大臣 使う方の国民が、わりかた空気と水に対する安易な考えを持っておりますものですから、ダム一つつくりますにも、水源地と末流の水を利用する側との連帯感と申しますか、そういうものが非常にないのですね。これをどうしてもお互いが理解し合って、水を大いに活用し、とうとい水として利用するようにと思うのですけれども、それだけでは済まない問題があるのです。  私事を申し上げて恐縮でございますが、委員長加藤さんも私と同県でありますが、私の国には矢作川という川があります。この水域に約百十万人の人口がおって、二十六の市町村が生活をしております。末端の方では、水が来ない、水は金を出しておるのだから水道局がもっとどんどんやればいいじゃないかというような、わりかた安易な認識なんです。いま先生御指摘のように、水源地に参りますれば、何のためにわれわれが流域のために水没したり、こんな苦しみをしなければならないのだという感覚が非常に強いのであります。まず、精神的にも実質的にもこういう問題を解決しまして、でき得るだけ各所にダムを設置して、水が平均して流域に活用でき得るような道を開かなければならぬ。  いろいろな問題が醸されておりまするが、何といっても生きる上において一番大事なものなんですから、したがって関係当局を督励いたしまして、かなり努力してまいっております。今後もひとつ努力努力を重ねまして、万が一にも国民の皆さん方に水による悩みを深まらせるようなことが一切ないようにしたい、こういう考え方で努力をいたす決意であります。
  192. 林孝矩

    ○林(孝)委員 水資源開発事業費予算額、五十一年度から五十四年度までの推移をお伺いしたいと思います。
  193. 北野章

    ○北野政府委員 昭和五十一年度から五十四年度の水資源開発公団の予算でございますが、支出べースで、昭和五十一年度千二百六十五億二百八十五万四千円、対前年度比九九・〇%。それから昭和五十二年度千三百三十三億七千七百五十万二千円、対前年度比一〇五・四%。それから昭和五十三年度千五百九十八億二千四十七万五千円、対前年度比一一九・八%。それから昭和五十四年度千七百十二億五千八百七十三万一千円、対前年度比一〇七・二%ということになっております。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、国土庁所管の一般会計歳出決算報告書の水資源開発事業費の項を見ますと、五十一年度歳出予算現額が百九十五億二千三百万円、五十二年度二百六億五千二百万円、これに対して翌年度繰越額が五十一年度十九億六千二百万円、五十二年度は三十七億二千百万円、これだけの翌年度繰越額があるわけです。不用額を見ますと、五十一年度が三百万円、五十二年度が二億千七百万円となっておるわけですね。毎年非常に多額の繰越額並びに不用額が生じているわけでありますけれども、この理由は一体どういうことなんですか。
  195. 北野章

    ○北野政府委員 この繰越額並びに不用額については、公団の治水特会への交付金でございます。これが上がってくるわけでございまして、治水特会の交付金の対象になるのは、公団事業の中でダム、それから琵琶湖とか霞ケ浦の湖沼開発、それからせきでございます。このような事業につきましては、御案内のように、ダム等の建設は地元との用地補償の折衝が現在非常に重大な問題になっておりまして、これに多大の精力を注いでおるのでございますが、なかなかこちらの計画どおり進まない。しかも、補償交渉となりますと、当方で補償費を用意してないと迫力のある交渉ができないということで、五十一年度の繰り越しを見ますと各ダムとも、対象ダムが約十カ所ございますがへ大体三億程度の繰り越しに、補償交渉によってなっておるというのが多くなっております。  それから、もう一つの繰り越しの原因でございますが、ダム等を建設する場合に道路とか林道等のいわゆる補償工事をやらなければなりません。こういった補償工事は、それぞれ管理者がおりまして計画等について事前に十分調整をするわけでございますが、実際問題、いよいよ執行となりますと、こういった関係機関との協議に当初予想しない日時を要するというふうなことで、こういった補償工事の協議が調わないための繰り越しといったものが若干入ってございます。特に五十二年度が非常に繰り越しが多いわけでございますが、この中の一つの大きなものは、一庫ダムというのが最近完成間近になっておりまして、そういった最終の詰めの段階の繰り越しが多くなっているという結果が出ております。  それから、不用額でございますが、不用額につきましては執行残に伴う事務的な不用額が一応のベースでございますが、特に五十二年度多くなっておりますのは、木曽川水系の岩屋ダムがこの年度に竣工しておりまして、そういった竣工に伴います当初予定しておった計画が要らなくなったということで事業計画の変更によります不用ということになっております。  以上でございます。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま御説明があったとおりだと思いますが、特に五十二年度国土庁全体の繰越額四十七億七千二百万円のうちこの事業費の繰り越しが七八%も占めている、これは私は一つの問題だと思います。  それから、同じ五十二年度不用額が水資源開発公団事業計画の変更、いまおっしゃったとおり変更が主な原因だ、この公団の場合も、この事業計画の変更というような内容は一体どういうものなのか、この点はいかがですか。
  197. 北野章

    ○北野政府委員 岩屋ダムの周辺の地すべり対策について計画しておりましたが、それが当初計画よりも減になったということでございます。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その辺も非常に計画段階における問題ではないかと私は思うのですよ。ですからその点を、やはり決算上の一つの大きな問題ですから適正にやっていただきたい、これはもう要望です。  それから、水資源開発公団がダムなどの建設事業として布目ダム、それから用水路等建設事業として霞ケ浦用水及び筑後川下流用水、これを五十四年度から新規事業として開始することになっておるわけですけれども、これらの新規建設事業の計画の概要説明していただきたいと思います。  それから、今後の建設事業としてどのような計画をお持ちになっておるか、この点もよろしくお願いします。
  199. 北野章

    ○北野政府委員 お答えいたします。  五十四年度に新規着工する事業は、先生おっしゃいました布目ダム、それから霞ヶ浦用水、それから筑後川下流用水の三事業でございます。  布目ダムは淀川水系の布目川の上流に、ちょうど奈良市でございますが、その奈良市に建設するロックフィルダムでございまして、その目的は洪水調節と奈良県等の水道用水を供給するものでございます。総事業費約四百十億円、完成は昭和六十年度を予定しておりまして、昭和五十四年度事業費は十億円でございます。新規利水容量約一千万トンを見ております。  それから、霞ケ浦用水でございますが、これは利根川水系の霞ケ浦から取水いたしまして茨城県西南部地域に対して農業用水、これは約二万一千六百ヘクタールでございます。それから水道用水、これは水海道市ほか十七市町村、それから工業用水、これも同様水海道市ほか八市町村に対して供給をするために揚水機場——これはポンプ場でございます。それから基幹幹線水路、延長約四十九キロメートルを建設する事業でございまして、総事業費約五百億円、完成は昭和六十一年度を予定しておりまして、昭和五十四年度事業費は五億円でございます。  それから、筑後川下流用水は、筑後川から取水いたしまして、筑後、佐賀両平野にまたがる農地約五万五千ヘクタールに農業用水を供給するために筑後川下流の逆潮取水、通称アオ取水と言っておりますが、アオ取水を合口いたしまして取水の安定と合理的な水利用を図るものでございまして、施設といたしましては揚水機場、導水路を設けるものでございます。総事業費約三百四十億円、完成は昭和五十八年度を予定しておりまして、昭和五十四年度事業費は十五億円でございます。なお、この事業は、昭和四十九年度から施行中の国営灌漑排水事業を農林水産省から継承するものでございます。  それから、今後予定しております公団のダムでございますが、現在実施計画調査を行っておるダムが三つございます。一つは利根川水系の南摩川に建設する南摩ダム、思川開発と通称は言っております。それから淀川水系の桂川に建設する日吉ダム、それから同じく淀川水系の名張川に建設する比奈知ダムでございます。  これらのダムの計画の概要でございますが、南摩ダムにつきましては、栃木県の鹿沼市にロックフィルダムを建設いたしまして、大谷川という鬼怒川の支川がございますが、そこから一部導水をいたします。そういうことで洪水調節を行いますととも、栃木県に対する農業用水、それから栃木県、東京都等に対する都市用水を供給するものでございます。  それから、日吉ダムは京都府の日吉町に建設するロックフィルダムでございまして、洪水調節を行いますとともに、京都府、大阪府等の都市用水を供給するものでございます。  それから、比奈知ダムは、三重県の名張市に建設する重力式コンクリートダムでございまして、洪水調節を行いますとともに、三重県等の都市用水を供給するものでございます。  そのほか、利根川、木曽川、淀川水系等で予備調査をやっておるダムが数ダムございます。  以上でございます。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 需給計画が現行のダム計画と相まって順調に完成したとしても、先ほど答弁があったように、昭和六十年に関東臨海部、近畿臨海部、北九州を中心にして全国で十五億二千万立米の水が不足しておる、これははっきりしておることなんですね。ところが問題は、いまもダム建設の予定計画というものが発表されましたけれども、実際問題としてダム建設というものが行き詰まっておる。過去における一つの行政の不手際も重なっておるわけですね。先ほど私申しました水源地域対策一つにしても非常に不備な点がある。こういうこともダム建設をおくらせてきた一つの原因になっておるわけです。こういう水源地域対策の不備を解消し、また今日までのダム建設行政の不備等、一切のいろいろ問題の解消を図って、それでダム建設が予定どおり進んでも、まだ不足しているという実態にあるわけでありますから、これは将来非常に心配な点が多い。そこで節水というようなPRも必要になってくる。  今度は使う方の立場ですね。この節水とかあるいは合理的な、効率的な水利用といいますか、そういうものの推進についてお伺いしますが、たとえば工業用水の回収率向上、農業用水の水利用合理化の現状、これはどのようになっておるかという点、それから海水の淡水化、地下ダム及び淡水湖の建設などの新しい水資源開発、こういうものの開発プランというものは進められているかどうか、それから下水処理水の再利用などの水の循環利用、こういうものもどうなっているかという点、その点について説明をお願いしたいと思います。
  201. 北野章

    ○北野政府委員 お答えいたします。  まず、工業用水あるいは農業用水の合理化の現状でございますが、先ほど申しましたように工業用水は増大の一途をたどってきましたが、水利用の合理化の努力によりまして工業用水の回収率も、昭和四十年が三五・五%でございましたが、昭和五十年には六四・五%と向上しております。それから将来の方向でございますが、長期水需給計画におきましてもさらに回収率の向上を見込むということで、昭和六十年及び六十五年にはそれぞれ七三・六%及び七六・八%と、揚水型の工業用水についてはほぼ限界近くまで回収率を向上するという努力をする予定でおります。  それから、農業用水の合理化でございますが、最近の農地転用等に伴います余剰農業用水の都市用水への転換、これは従来からも逐次行われてきておりますが、現在、制度の改正等も行いまして、土地改良事業の一環として農業用水の合理化が行われております。現在全国で行っております県営、国営規模以上のものは六地域ございます。  このような合理化を行っておりますが、将来における水需給の逼迫に対処するため、関係省庁におきましてはそれぞれの立場から水使用の合理化を行ってきておりますが、国土庁におきましては特に八月一日を水の日、それから一週間を水の週間というふうに閣議で了解していただきまして、水資源の有限性を踏まえた節水型社会の形成を目指してなお一層の水利用の合理化を推進するための啓蒙活動を積極的に行っておるということでございます。  それから、海水の淡水化、地下ダムの開発プランでございますが、海水の淡水化とか地下ダムの開発は、今後下水処理水の有効利用とともに将来における水供給の一つの方法として期待されております。  海水の淡水化につきましては、わが国は世界有数の技術的レベルを持っておりますが、何せエネルギーが必要である、それからコストが非常に高いという問題がありまして、現在では島嶼部あるいは半島部等の地域で二、三実用化されておるということで、まだ一般に普及されるまで実用化に至っておりません。しかし、通産省あるいは造水促進センター等で鋭意調査研究を推進しておるという現状でございます。  それから、地下ダムの開発につきましては、地下水は水質的にも非常にすぐれた有用な水資源でございますが、地下にそういったダムをつくるということになりますと、地下水障害の面からいろいろ周辺に対する配慮が必要であるということで、技術的にさらに検討する必要があるため、一部これにつきましても長崎県の島嶼部で実験的な実施例がある程度で、この問題についてもさらに調査研究を進めていっておるというのが現状でございます。  それから、雑用水の利用でございますが、先生御指摘のように水供給の限界が近づいてくる地域につきましては、水を使用する側においても合理化対策を積極的に進めなければならぬという観点から、特に都市用水の中の生活用水について合理的な利用を図っていくということで、政府におきましてはかねてから関係地方公共団体で構成されております水利用合理化推進協議会というのがございます、十都道府県七市でつくられておりますが、そういった場を通じ、また部内の水資源基本問題研究会等の場で雑用水利用の促進について現在積極的に検討をしておるところでございます。しかし、雑用水利用の現状は、東京、大阪等の大都市圏を中心地方公共団体の行政指導等によりまして全国で現在約四十カ所行われておるだけでございまして、まだ緒についたばかりというふうな現状でございます。  特に雑用水利用の問題点といたしましては、水処理施設のほかに、従来の上水道水系の配管とは別に二重配管をしなければならぬということで、既設ビル等についてはなかなかそういうものは導入できないということで、処理施設あるいは配管ということで水のコストが水道料金に比べましてかなり割高になります。そのほかに水を使用する側の心理的な嫌悪感がございまして、そういった使用者に対するPRも必要でございます。それから衛生上、管理上のいろいろ技術的なあるいは制度的な問題がございまして、今後こういった面につきまして検討していかなければならぬという現状でございます。  当面の対策といたしましては、現在関係省庁が緊密な連携を図りながら、五十四年度から金融上の優遇措置それから税制上の特別措置を適用することにいたしておりまして、こういったことを活用することによりまして雑用水利用の社会的、経済的合理性を高めるといいますか、そういったことで環境条件をつくってまいりたい。そういうことで、将来はこういった個別の循環利用ではなしに、さらに水量節約効果の大きい広域的な循環利用というふうな方向への足固めということで、新年度から国がそういう制度といいますか助成措置に乗り出したというのが現状でございます。
  202. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が参りましたので、残余の質問はまた別の機会にするとしてここで終わりますが、最後に長官にも要望しておきますけれども、こうした土地の問題またいまの水資源の問題、これは非常に国民の重大関心事であります。国民の前に明らかにしつつ行政を進めていただきたい。水の問題にしても、もうことしの夏ということで差し迫って不安な状態がある場合に、ことしの夏についてはこの地域、この地域について、地域によって違うと思いますから、こういう方向で臨みたい、しかしどうしてもこれだけは不足するからこれだけの節水が必要だとかということを含めて、常に国民の前に実情を明らかにし、また将来の対応の仕方についても明らかにしながら行政を行っていただきたい、このことを要望して、質問を終わらせていただきたいと思います。  なお、通産それから環境庁、北海道開発庁等、質問時間がございませんので、また別の機会にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  203. 加藤清二

  204. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、原子力発電所の事故につきまして、今回のアメリカにおけるスリーマイル島の事故から何を学ぶかという点で質問をいたしたいと思います。  この事故につきましてアメリカの厚生教育長官でございますカリーファーノという人が次のように証言をいたしております。今回の事故から最低一人の死者が出ることになる、ある科学者は十名の死者が出ると述べていると言っております。これは結局、半径五十マイルで二百万人が放射能の影響を受けて、三千五百人レムという影響の中で何人がんになるかの推定から割り出したものだと言われておりますが、今回はこれでとどまりましたけれども、御承知のように一時は炉心溶融、すなわちメルトダウンで大量に放射能がばらまかれるおそれもあったわけでございます。  このような事態が起こりまして、今回の事故から日本に当てはめますと、学者によりますと八十倍を超す危険度があると言っておる人もございます。日本は十九基、千二百六十七万七千キロワットという発電量を持っておるわけでございますし、すでに八十万キロワットあるいは百万キロワットという大型の原発を設置をいたしておるわけでございますから、これは大変なことなのですが、この事態をどういうふうに見るかということでございます。そして、今回のスリーマイル島の事故からこれを日本に当てはめた場合にどういう事態が起こるのかというようなことにつきましてすでに検討を始めておられるのかどうか、最初伺いたいのであります。  これは国土庁長官伺いたいのです。何を学んでおられるか。
  205. 中野四郎

    中野国務大臣 原子力発電所につきましては、原子炉等の規制法及び電気事業法によりその安全性の確保が図られておりますが、しかしながら、万一事故が発生した場合、放射性物質の大量放出によってその影響周辺地域に及ぶ場合には、災害対策基本法に定めるところに従って避難等の必要の応急対策が講じられることになっております。  今回のアメリカの原子力発電所事故に際してとられました防災対策の状況にかんがみまして、わが国においても原子力発電所防災対策については、総理の閣議における指示もあり、関係省庁とも十分協議をいたしました上、なお一層の充実強化を図るように努めていきたいと考えております。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 国土庁はもちろん防災の主務官庁としての任務を持っておりますし、それから防災の場合に当然被害の想定ということが基礎になって、これだけの被害が予想される、したがってそれに対してたとえば避難の問題とか、いろいろな対応策が出てくるわけです。  その点で伺いたいのですが、これは最初科学技術庁の方へ伺いますけれども、まず科学技術庁が一九五九年八月に、すなわちいまから二十年前でありますが、日本原子力産業会議に対して調査を委託をして、そして専門学者研究成果として、「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆の損害額に関する試算」というのが出ております。これは翌年の四月に科学技術庁に対して原産会議の方から提出をされたものでございます。これは原子力損害賠償法の責任限度の基礎資料となったものでございまして、わが国における唯一の文献だと言われておるわけでございますが、これは現在どのように取り扱われておりますか。
  207. 加藤泰丸

    加藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御質問のございました昭和三十四年度に私どもが原産会議の方に対して委託をして研究をしていただきました「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆の損害額に関する試算」についてでございますが、先ほど先生からもお話ございましたように、この報告書は、当時私どもは原子力損害賠償法を新しく制定いたしたいというような動きがございまして、その際の原子力損害賠償法の起草の参考にいたしたいというような意味で原産会議にこのような研究を委託したものでございます。  しかしながら、この報告書は、その内容の前に前提としましてございますような非常に大胆な仮定を置いてこれは考えたものであって、その結論とか数字の結果だけを乱用しないというふうにしてほしいというような注もついてございますように、これは当時このような研究をするにつきましていろいろな前提条件をたくさん置きまして検討をしていただいたというようなものでございます。  この報告の結果、私どもとしましては、実際問題としましては、現在この原賠法が制定される段階になりまして、非常に大きな損害が出た場合においては国がやはり何らかの援助をする必要があるというようなことに基づきまして、その趣旨が法律にも入ってございますが、そういったような趣旨を法律に入れる際にこのような研究の成果が検討され、使われたということでございます。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 その原子力損害賠償法の制定に当たっての国会審議の中で、この報告書のどの部分が国会へ提出をされ、論議の対象になっておりますか。
  209. 加藤泰丸

    加藤説明員 先ほども御答弁申し上げましたように、この報告書はいろいろな前提、仮定を置いて行ったものであって、その数字そのものをみだりに使わないようにということがこの報告書の注にもついてございますが、私どもがこの原賠法においてこの報告書の趣旨を使わさせていただきましたのは、これはこの報告書におきましてはMCA、マキシマム・クレジブル・アクシデントという言葉が使ってございますが、そのマキシマム・クレジブル・アクシデント、日本語に翻訳をいたしますれば、最悪の事故のようなかっこうで訳すのがよろしいかと思いますが、そういったような事故を初めのこの検討の段階ではいろいろ試算をしてみたわけですが、そのMCAのレベルではなかなか損害が出ない。したがって、さらにMCAを超えるような大きな損害が出た場合においてはどの程度の被害が出るんだろうかということをいろんな条件を組み合わせながら検討をしたものでございますが、結果といたしまして、この報告書ではそういったような考え得るMCAをさらに超えるような問題があった場合においてはかなり大規模被害が出るということがこの報告書では出ておりまして、したがってわれわれは、原賠法を制定する際におきましても、そのような大きな被害が出た場合においては国が援助をするんだというような条項を設けたというのに、そのような研究の成果が使われておるという趣旨でございます。
  210. 山原健二郎

    ○山原委員 科学技術庁が当時この調査を依頼するに当たりまして、その二年前の一九五七年にアメリカ原子力委員会が行いました「公衆災害を伴う原子力発電所事故の研究」、いわゆるWASH七四〇文書というのがございます。これはブルックヘブン国立研究所が作成した報告書でありますが、この手法を参考とするように原産会議に指示をいたしておるわけです。  そこでアメリカの場合は、このいわゆるブルックヘブン国立研究所作成のこの文書は公開をされております。すなわちこれは最大想定事故、メルトダウンを想定しまして、その際に二十万キロワットの事故が生じた場合に、即死三千四百人、急性放射性疾患四万三千人、被害総額約七十億ドルという数字が出ておるわけでございます。これはアメリカの場合はこの大胆な数字というものが公表されておるわけでございます。  これを日本に単純に当てはめてみますと、日本の場合は八十万キロワット、百万キロワットというような事態も起こっておりますけれども、単純に計算しましても、いわゆる炉心溶融が生まれました場合には一万七千人の即死、人口密度等から申しましてもっと大きな被害が出るであろうということなんです。これは想像されます。  原産会議報告を見ますと、メルトダウンで二十五キロメートルの地点で致死曝射、すなわちこれは東海村を中心にしますと水戸市がこれに入ります。六十四キロメートルで傷害見込み。それから百六十キロメートルで緊急立ち退き、これは東京都が入るわけです。こういう数字を原産会議が出しておるわけでございますけれども、これは私ここへ写しを持ってきておりますが、これが報告書です。この報告書のうちの国会審議に供与されたもの、公開されたものはわずかに総論部分の十七ページでございまして、これは二百数十ページにわたる膨大なもので、この総論部分の根拠資料がずっと出ているわけです。これが結局幻の報告書とでもいいましょうか、これが未公開で今日まで来ているわけです。  アメリカの場合はいま言いましたように公開をされて、それに対する災害の体制というものがかなり厳しく組まれておりますが、日本の場合は、これは少なくとも公開をされていないという状態があるわけです。何しろ十九年前のことでございますから、当時は当時としましても、その後今回のような事故が発生をしてまいりますと、これはやはり問題であって、その後これにかわるような研究がなされておるとするならばそれはまた別でありますけれども、恐らくこれは日本においては唯一の被害想定資料であると思います。  そこで、私はこの内容を見ますと、二百四十四ページにわたるものでございますが、その各論についての公開はなされておりませんけれども、その項目だけ見ましても、事故の種類と規模、これがAとなっておりまして、Bは想定する原子炉設置点と周辺状況、Cは煙霧の拡散、沈下、Dは放出放射能の人体及び土地使用に及ぼす影響、Eは放出放射能の農漁業への影響、それからFは物的、人的損害額の試算基礎、Gが大型原子炉事故から生じ得る人的、物的の公衆損害の試算結果、こういうふうになっておりまして、当時としましては詳細かつ科学的に検討されたものであると思います。しかも、これは報告書に書かれておりますように、事故の前提条件については過小評価の側にあるとしておるのでございまして、過大な事故を想定しておるものではないわけでございます。そしてその被害総額というのが余りにも大きくショッキングなものでございましたから、当時としましてはこれは恐らく、岸内閣のときでございますが、米原子炉メーカーが日本市場に進出をする時期でございますから、未公開のままに終わったものと思われるわけであります。  ところが、これをよく見ますと、この各論が非常に具体的でありまして、たとえば風向きによってどういうふうになるかというような問題、あるいは原発から出たときの温度によってどのように被害が異なってくるかという変化の問題、これに対する対処の仕方がここから生まれてくるわけでございます。それからさらに、どういう被曝かによって医学的対応などもこの中に提示をされております。また、農漁業の場合には食物への連鎖影響についての対応の問題なども出てきておりまして、少なくとも自主、民主、公開の日本の原子力問題の立場からするならば、これは当然公開して、注もついて結構でありますけれども、少なくとも国土庁——国土庁が生まれたのはその後でありますから当時は国土庁はなかったわけですけれども、たとえば消防庁あるいは自治省とかそういう地方自治体に関係のあるところにはこれを公開をして、これに基づいて防災対策が立てられるべきではなかったかと私は思うのです。  そういう意味で、きょうは消防庁もおいでくださっておりますが、消防庁の方におきましてはこういう資料に基づいて防災の対策、対応あるいは応急対策というものがとられておるのか、あるいは避難をする場合にどういうふうにするかというようなことが科学的に検討されておるのかどうか、このような資料の提供を受けたことがあるかどうか、お聞きをいたしたいのです。
  211. 中川登

    ○中川説明員 消防庁にはお尋ねの書類はいただいておりません。いままで調べたところではいただいてないわけでございます。
  212. 山原健二郎

    ○山原委員 後で国土庁長官にお伺いしたいと思いますが、いま消防庁を例に出しておいでていただいたわけですけれども、消防庁としては知らないという状態でございます。消防庁にも原子力災害に際しての避難指導あるいは場所の具体的指示などの責務を持たされておりますが、原子力による被害の場合、どこにどれだけどのように避難するかということなどは消防庁にとって当然必要なものでございまして、一番大事なところですね。これなどは資料として提供しまして、それに基づいて消防庁としても、あるいは各自治体と、科学者も入れまして、風向きによって温度によってどういう事態が起こるのかということは当然検討されていいものだと思うのですが、これが公表されていないということは非常に遺憾であります。当時はこれで済ましたかもしれませんが、安全だと言い切ってきましたところの安全神話とさえ言われるこの原子力発電所問題が、今回はあのような事故に発展をしまして一時は全くのパニック状態になる。アメリカの場合は先ほど言いましたように公表されてそれに対する厳しい体制をとってなおかつパニック状態が生まれるわけですから、日本の場合には全く隠された資料、全く知らないままに事態が起こったときにはどのような事態が起こるかということを考えてみますと、これはゆゆしい問題だと思うのです。  それで、当時は恐らく、私が言いましたように、岸内閣としてはアメリカの原子炉メーカーに対する日本市場の開放ということが最大の任務になっておったようでありますから、こういうショッキングなものはなるべく出さない方がいいというふうなお考えであったかもしれません。けれども、その後今日の段階で今回のアメリカにおける事故、こういうものを考えてみますと、これはもう一度見直さなければならぬ、こういうふうに思うのです。  それで、国土庁は防災に関Lては連絡調整、総合的防災対策、災害の予防、応急復旧などの責任を持つ主務官庁でございますから、この原子力発電所の災害についてもことが最も重要な資料を収集しまして連絡調整を図るべきところだと思うのです。そうしますと、少なくとも国土庁に対Lてはこれらの資料が提供されまして、国土庁としても各省庁と相談をし、あるいは学者とも相談をしながら対応を当然とるべきものだと思うのでございますけれども、これについて国土庁長官のお考え伺いたいのであります。
  213. 加藤清二

    加藤説明員 その前にひとつ科学技術庁の方から・・・・・・。  この原産会議に委託をして行いました研究は、先ほども申し上げましたように、原賠法の審議に際しまして、きわめて一般的な条件、しかもそれに風の向きであるとか温度であるとか、ただいま先生おっしゃいましたいろいろな条件を組み合わせまして、そこでもって仮定の上に立ちまして、それではこういったいままでのMCAというレベルの損害を超えれば全体として一体どの程度の被害が出るのだろうかというようなことをここでもって検討して、原賠法審議の役に立てたいというのがこの趣旨でございまして、ここの報告書にも出ておりますように「多くの本質的で重要な条件を前提としたものであり、又大きな不確かさを伴っていることである。これらの条件や不確かさをぬきにしては本報告の結論自体全くその意味を失うといっても過言ではない。」ということが書いてございますように、ここに載っかっているのは非常に仮定が多いということでございます。したがいまして、そのような仮定に基づいた結果というものを直ちに行政の面において利用していただくということはいかがであろうかと私どもは思っているわけでございます。  この資料の公表の問題でございますが、昭和三十六年当時の国会におきましてもこの資料は参考資料としてお配りしてございます。それから先ほどお話しございました、二百四十数ページとおっしゃいましたけれども、それに及ぶような付録につきましては非常に大部でございます。私どもはこの付録に載っかっておりますことの結論はすべてこの本文の方に要約をされているというぐあいに考えておりますものですから、国会等にお配りいたしましたのも多分その当時はこの本文だけをお配りしたということではなかろうかと思うわけでございます。
  214. 山原健二郎

    ○山原委員 事情はそういうことであろうと思いますが・・・・・・。
  215. 加藤清二

    加藤委員長 長官に要求があるのでしょう。もういいんですか。
  216. 山原健二郎

    ○山原委員 長官にお伺いしたいのですが、途中で飛び入りの答弁があったものですから・・・・・。  いまおっしゃったのですけれども、長官、後でこれを見ていただいても結構ですが、この総括部分というのは本当に十七ページぐらいです。いまおっしゃったようなもの、これは出てないのです、付録は。この中にいろいろな細かいことがあるわけで,いまおっしゃったようにいろいろの心配もあったり、またこれを突然行政レベルに乗せるべきものではないというようなことがあるかもしれませんけれども、しかしこれが今日までの唯一の資料とするならば当然各省庁にも見せて——それは注釈がついてもいいわけです、これはそのまま使えるものではないとかあるいは最大限のものを予想したものだとか。そういうこと自体は科学技術庁が原産会議に出したときにやっているわけですから。でもこれだけの資料は科学技術庁が一人占めして門外不出にしておくべきものではなくて、少なくとも防災に関係のある、しかも防災の主務機関であるところの国土庁長官に対してこれぐらいのものは見せて、そしてこれに対する検討、そして主務長官として国土保全、国民生命の保全のための責任ある態度をとれるような立場をとっていただくような配慮をするのが当然じゃありませんか。だから私はそのことを言っているわけでございまして、どうか中野長官におかれましても、いまの資料に対する検討を加えていただきまして、そしてこの万全の対策、特に今日のような新しい事態が起こった局面で、長官は各省庁を指揮して、安全性のないような原子力発電所は国土庁長官の名においてつくらせないぞというくらいの勧告をするくらいの決意で臨んでいただきたいと思いまして、あえてこの問題を取り上げたわけでございますが、長官の御決意のほどと御見解を承りたいのであります。
  217. 中野四郎

    中野国務大臣 御趣旨全く同感であります。一たん非常の場合に処する国土庁といたしましても、そういう貴重な資料があれば当然こちら側にお手渡し願うのが正しいことだと思っております。  いずれにいたしましても安全委員会もあることでございまして、わが方といたしましては一たん非常の場合には最善の道を進む考え方でおります。
  218. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、いまのお考え方に基づきまして科学技術庁とも担談をされまして資料の提出を求め、しかも国土庁は連絡調整機関としまして、各省庁においてこれに対する対策をぜひしっかりと立てていただきたいと思います。その点よろしいですか。
  219. 中野四郎

    中野国務大臣 承知いたしました。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  221. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、明九日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三一十二分散会