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1979-03-01 第87回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月一日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 宇野  亨君 理事 北川 石松君    理事 國場 幸昌君 理事 津島 雄二君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       天野 光晴君    玉生 孝久君       西田  司君    野田 卯一君       高田 富之君    安藤  巖君       東中 光雄君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房会         計課長     後藤 利雄君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者     、         法務省民事局参         事官      橘  勝治君         法務省入国管理         局入国審査課長 黒岩 周六君         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      小長 啓一君         労働大臣官房国         際労働課長   平賀 俊行君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     安藤  巖君 同月二十八日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     安藤  巖君 三月一日  辞任         補欠選任   林  孝矩君     坂井 弘一君   安藤  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     林  孝矩君   東中 光雄君     安藤  巖君     ――――――――――――― 二月二十七日  昭和五十三年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十三年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十三年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その1)           めるの件)  昭和五十三年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その1) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。園田外務大臣
  3. 園田直

    園田国務大臣 昭和五十一年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は一千七百億三百万円余でありまして、支出済歳出額は一千五百四十四億六千百四十一万円余、翌年度繰越額は百十五億一千百三十四万円余、不用額は四十億三千二十四万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額一千五百六十六億一千六百九十七万円余、前年度繰越額百三十三億八千六百二万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発計画実施設計等委託費二千九百四十万円、経済開発等援助費百三十三億一千万円、在外公館施設費四千六百六十二万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、科学技術振興のため、国際原子力機関に対し同機関憲章に基づく分担金及び拠出金として八億七千二百六十四万円余、並びに国際連合その他各種国際機関に対する分担金等として百四十一億五千百六十二万円余。  次に、経済協力一環としての技術協力実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員二千七百十八名の受け入れ及び専門家八百十五名の派遣事業のほか、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力医療協力農業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等事業アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費七百四十億九千七百七十四万円余。  さらに、移住事業につきましては、中南米等への移住者四百十四名を送出及びこれを援護するため等の経費四十四億五千八百二十七万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは百六億二百三十一万円余でありまして、その内訳は、経済開発等援助費百四億八千三百五十四万円余、在外公館施設費一億一千八百七十六万円余。  また、財政法第四十二条ただし書の規定による事故繰越のものは九億九百三万円でありまして、その内訳は、経済開発等援助費九億九百三万円であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費を要することが少なかったこと、国際分担金その他諸費の項で為替相場の変動に伴い、国連開発計画等拠出金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。
  4. 加藤清二

    加藤委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。前田会計検査院第一局長
  5. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十一年度外務省決算を検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  6. 加藤清二

    加藤委員長 これにて説明の聴取を終わります。     ―――――――――――――
  7. 加藤清二

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 久しぶりに外務省関係審議しますので、相当数多くの問題に関して簡単に質問をいたしたいと思います。  最初に、アメリカILO脱退のその後、そのほかの国々アメリカに追随して脱退をするとかあるいはそういう動きがあるとか、ないし現在、ILOアメリカ脱退後どんな支障が来されているのか、アメリカが今後どうしようとしているのかを、ILO中心にしてまずお答えをいただきたいと思います。
  9. 平賀俊行

    平賀説明員 お答え申し上げます。  アメリカILO脱退いたしましたのは昭和五十二年の十一月でございますが、その後、第一にほかの国々アメリカに追随してILO脱退しようという動きのあったことはございませんし、現在もそういう状況はございません。しかし、アメリカ脱退する、アメリカILOにいないということは、主要国の非常に大きな国がILOにいないということでございますので、国際機関普遍性を保つという意味では非常に残念なことである。また、それがILOのそういう性格にかんがみ、大きな支障になっていると考えております。  それからもう一つは、財政的な面でございます。御承知のように、アメリカILOの中で一番大きなウエートといいますか、二五%の財政負担をしておったわけでございますが、アメリカ脱退したことに伴いまして、ILO活動面にやはり大きな支障を生じているところでございます。  それから、しかしこのようなILOの非常に変則的な状態を打開するために、わが国関係諸国と協力しましてできるだけ早くアメリカ復帰するように働きかけを行うとともに、ILOの中でもそういう状態が解消されるべく総会あるいは理事会の機会に努力しているところでございます。また、アメリカ自体もそういうILOサイドでの努力状況を見守っているところでございます。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 すると、アメリカは何が原因で脱退をしたんでしょうか。いま日本働きかけをやっている、ILO状態を見ながら、今後どういうことが改善されたらアメリカ復帰をするというふうに見ているか、その二点について。
  11. 平賀俊行

    平賀説明員 お答え申し上げます。  アメリカ脱退しました理由四つございます。一つは、ILO基本原則である政労使者構成原則というのが必ずしも厳格に守られていないということ。それからもう一つは、ILO条約等基準適用の仕方について国の間に、たとえば西欧先進諸国について特に厳しいとか、そういう基準適用の仕方が必ずしも一様でない。それから、ILOの伝統でありました適正な手続が無視されている。それから、これが一番の理由と言われておりますけれども、ILOが労使の問題というよりも政治的な問題を扱っている。大体この四つが、アメリカ脱退しましたときに文書の中に出されている理由でございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 アメリカが挙げている四つ理由日本の場合はそういうことは全然考えていない、日本の場合にはいまアメリカの挙げた四つは別に抵触をしないというか、ILOによる支障にはなっていない、こういうふうに考えていいわけですか。それが一つ。  大臣二つ目にお聞きしておきたいのですが、お聞きになったような状態ILOに対するアメリカ復帰というものに対して外務大臣としても関心をお持ちのはずですが、大臣アメリカに対する働きかけをおやりになっているのか、おやりになろうとしているのか、それもお伺いしておきたい。
  13. 平賀俊行

    平賀説明員 こういった四つの問題が日本に対してどうなっているかという御質問でございますが、わが国といたしましても、ILOが、先ほど申し上げましたように、アメリカ脱退理由になったような状況が見られているということは感じております。また、そういった方向を是正するために、わが国としても努力しておるところでございます。  ただ、それが日本に直接に支障になっているかというと、必ずしも日本に直接にかかわりのある問題でそういうことが起きたというふうには感じておりません。
  14. 園田直

    園田国務大臣 ILO脱退の問題は、私の記憶によりますと、石田労働大臣のときに起きた問題でありまして、当時、私、官房長官でありまして、アメリカ脱退をすると政治的にはILOが弱体化するおそれがある、活動力等も弱くなる、したがって手段を使って脱退しないようにいろいろやったわけでありますが、究極としてはやむを得ないと、そこで、一応脱退した後、これを復帰することに重点を置こう、こういうことで推移したと記憶しております。  その後内閣がかわりまして、次の藤井労働大臣は、アメリカ労働関係長官に会って復帰活動を展開しまして、それ以来、アメリカが一日も早く復帰するように努力をやっているところでございます。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、南アフリカ共和国に関してひとつお伺いしたいのです。  御存じのような黒人差別、弾圧、アパルトヘイト、これに対しては国連でも再三にわたって問題にし、一昨年は特に相当強い制裁を加えるという制裁事項まで、いろいろと条項を挙げて示したわけであります。しかし、その後、見ていますと、どうもしり抜けといいますか、制裁らしい制裁が実質的に行われていない。非常に政治的なあいまいな結果に終わって今日に至っているというように思うのです。  これにももちろん経済活動中心あるいはその他の問題もあって、わが国相当な力をいま入れ、ある意味投資なども行われているのですが、余りこのままで推移しますと、白人対黒人の問題の最後の拠点として、南アあたり相当の問題を包蔵しているように思うのですが、せっかくの国連決議等が行われましたら、日本欧米諸国もやはり実効の上がるような、しかも、いま言った、だれが見てもこれはひどいと思う状態を政治的になくしていくということにもうちょっと努力をすべきだと思うのですが、この点、今日までどんな考えでどういうふうに対処してこられたのか、今後の南アにおける問題がどうなると見ておいでになるのか、楽観をしておるのかどうかも含めてお答えをいただきたい。
  16. 園田直

    園田国務大臣 南アに対する実情は、いま残念ながら御発言のとおりでございまして、一部には、この人種差別をやっている南アに対して経済断交をやれという声もありますけれども、それは一部にとどまっておりまして、国連で決められた経済制裁という名目だけは保っておりますが、欧米諸国南アとの貿易は依然としてやっておるのが実情でございます。  わが国といたしましては、国連憲章の線に従って領事の連絡をやっている程度であって、外交関係は進めていないわけであります。かつまた、政府関係経済協力その他も一切やっておりません。それから、民間の投資もやっておらぬわけでありますが、残念ながら実情やむを得ずというか、一部の貿易をいまなおわが国もやっておるのが実情でございます。したがいまして、わが方としては、国連憲章決定にかかわらず人種差別ということは断じてやってはならぬことでありますから、これについてはブラックアフリカ諸国との経済関係の拡大を図りつつ、一方には南アに対する関係は逐次縮小していって、世界の世論に訴えていきたいと考えておるところでございます。御発言のとおり、まだはなはだ不徹底の段階でございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 それ以上どうしろということは申し上げませんが、いまの御答弁でしたら、まあまあもう少し政府南アに対する対応の仕方を見ていきたい、こういうふうに思います。  それから、ちょっと内容は違いますが、今度は海洋鉱物資源の問題、きょうはエネルギー庁もおいでいただいておるのですが、特にマンガン団塊採取についてちょっとお伺いしておきたいのですが、御存じのように太平洋マンガン団塊、これは米国のジョン・メロの調査が一番権威があるものとなっていますが、太平洋ではその分布の密度が非常に濃いのですね。資源の豊かな場所だけでも、マンガンが三千五百八十億トン、ニッケルが百四十七億トン、銅が七十八億トン、コバルト五十二億トン、これは間違いなくあるという報告がされているわけであります。これは現在の世界年間消費量がそのまま続いたとして、マンガンが十四万年、コバルト四十二万年、ニッケル七万二千年、銅が二千年はもつというのですから、大変なものが、こぶしのようにごろごろと大中小があの深海にあるわけであります。あることははっきりしている。  このため、日本を初めアメリカ、カナダ、イギリス、西独、ベルギー、オランダ、そういう各国がいわゆる国際企業グループをつくって、一斉に資源探査開発に乗り出しているわけです。ソ連などは独自の立場調査やいわゆる採取方法確立にいま一生懸命に努力をしている最中。とり方は、最近ではポンプによる吸い上げ方式や、バケツを次々におろしてすくい取るという連続バケット方式など、いわゆる採取技術もそういう面で発達して、ようやく実用化の域に達してきた、こう言われています。  だが、こういう先進国動きにいつものように真っ向から対立しているのが開発途上国。非常な対立を見て、一九六七年に地中海のマルタの代表が海洋法会議の第一委員会で、先進国にとってはまさに爆弾的だと当時言われた提案をしたわけであります。その提案というのは「科学技術の発展に伴って、深海底に対する権利の拡張が行われ出している。このような競争を阻止し、深海底とその資源人類共同財産であると宣言し、国際機関を設けて、資源は、特に開発途上国利益を考慮し、平和的に利用することを検討すべきである」という提案をされた。当然これは開発途上国の多くの国々の賛成するところとなりました。そして六九年には、国際条約に基づく国際管理機構が発足するまでマンガン団塊のような海底資源開発は差し控えるという、まあ自粛決議というのですか、これが通りまして、途上国の圧倒的な支持で採択をされているわけであります。  この経過の途中でちょっとお伺いしますが、いまの国際管理機構というものはもうできたのでしようかどうか、まだできていないのか。国際機関を設けるといったその国際機関である管理機構というものが、開発途上国の言うようにすでに今日までにできているのか、できつつあるのか、いまその相談がされているのか。海洋法会議のその後の会議の中でこれがどうなっているのかも、まず途中でお伺いをしておきたい。
  18. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  この深海海底開発のための国際管理機構は、海洋法条約一環として交渉されておりまして、現在の非公式統合草案の中でも骨格はかなり固まっております。国際海底全体を管理する国際オーソリティーというのがございまして、さらにそのうちで、特に半分の鉱区を直接国際機関開発するという国際エンタープライズを設立するという交渉がなされておるわけでございます。  ただ、まだその中において開発途上国及び先進国立場というものが調整されておりませんし、現在の条約交渉の中でテキストが固まりつつあるということでございますから、まだそのような管理機構ができ上がりつつあるということではなくて、あくまでも草案の中で交渉中ということでございます。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 この状況を受けて、アメリカ西ドイツ、こういう国々では企業グループによる自主的な開発を主張していることは当然で、日本もその一員だと思う。そしてこの国際管理機構が発足したら、各国企業グループにいわゆる採掘許可証を発給し、各企業利権料を払って資源開発を行う、これがいわゆる先進国のいまの大体の考えであります。そうしてやれば、途上国に対しても巨額の利権料を払って、それが入れば途上国もいいじゃないか、利権料方式でやっていけばという考え方がいまだに底流となっていると思う。  それを受けて、米国の場合、すでに深海底鉱物資源法案というものが何度も国会に提案をされている。そしていま審議をされて今日に至りました。これは国内企業に、現時点でいち早くマンガン団塊などの探査採取を許可しておいて、将来国際管理機構などができて企業が損失を受けた場合には、政府がこれを補償してやろう、こういう法案審議をずっとやってきたのですが、私は寡聞にしてまだ知っていませんが、アメリカで一体この深海底鉱物資源法案というものが審議されて、採択決定をされているのかどうか、外務省御存じかどうか。
  20. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  米国国内法準備されていることは事実でございまして、昨年実は下院は通ったわけでございますが、上院は通らないで、結局持ち越されておるわけでございます。まだことしの米国の議会でもその点は具体的に取り上げられておりませんが、今後審議が行われるというふうに了解しております。  確かに先生の言われるとおり、企業開発というもののために、条約ができ上がる前に暫定的に国内法準備するということは米国やドイツがやっておりますけれども、これは海洋法条約ができ上がりましたらばそちらに移行するということで、暫定的な国内立法であるというふうに了解しております。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題は、石油石油と言っていま騒いでいますが、世界にとって重要な問題なんだ。マンガン団塊から出るニッケルにしてもコバルトにしても銅にしても、とにかくわれわれが想像を絶するほどの量があることは確実に調査が終わっているわけです。国内法整備してアメリカがこれに力を入れているというこのやり口、いいか悪いかは別にして、やはり資源のない日本の国としては、しかもアニマルだ何だと言われて加工品を売りに出ていろいろと問題を醸している現状から言って、その方の自粛とはうらはらに、こういった目先にある海底資源深海底資源に対しては、国の立場でも相当力を入れることが当然だと思うのです。アメリカがやっている、西ドイツがやっている、日本でももうこれに対する国内法整備を行って、とにかく海洋法会議の第一委員会中心にして、どんな国際管理機構ができるか知りませんが、この間議長中心統合案が最終的には出ておりますが、それとは別に、やはり国内における採取ができるという、そういう国内法上の整備を行って、これに相当の力を入れていく必要があるだろうと思うのですね。こういう面では余りおくれないでいいのじゃないか。しかも、いまわが国はいわゆる黒字黒字を外国から責められている、アメリカ中心に。ということになれば、国内における技術なり施設なりを使う以外に、海外のこの種のいわゆる採掘なり調査などに相当技術を持っている国々に対して、これに外貨を充てて思い切ってやらせるということが必要じゃないか。そのことが非常に大きなプラスに将来なるというふうに思います。これは、現在何も国内法整備をやろうとしていない日本の立ちおくれに対して、相当国家的な立場で、アメリカ西ドイツに追随するわけではありませんが、思い切ってやっていかなければいけない焦眉の急の問題だろうというふうに思いますが、この点どうでしょう。  大臣、お聞きになっていて、日本のこのおくれを、やはり国務大臣として相当真剣に考えて、これに対する国内法整備なりその他を政府として思い切っておやりになる、急速に手当てをするという必要があると思います。現在の日本にありますいろんな法律だけでやらないで、アメリカ西ドイツ方式を見習いながら、やはり日本的なものを思い切って国内法整備ができるようにおやりになる。これ単独で、これプロパーで思い切って国家的な力を注ぐことができるように、外資もここに思い切って使うというようなことをあわせて考える必要があるというふうに思いますが、いかがですか。
  22. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言の問題、きわめて重大な問題でありまして、海底資源に対する見通しは莫大なものであります。  そこで、先進国は、一口にして言えば、自国の自主的な開発ということを主張し、開発途上国は、国際機関の制度の確立によって幅広く自国利益を守ろうとする意見対立をしておって、これはなかなかその食い違いが大きいものであります。三月十九日にジュネーブでこの会議がありますから、日本は、日本国資源安定供給という点からいろいろ考えながらも、開発途上国との意見も踏まえつつ、何とかジュネーブ会議が合意を見ればよいと思っておりますが、実際はなかなか楽観を許しません。その見通しについて、先進諸国はすでに国内法等準備をしているわけであります。  そこで、いま御発言のとおり、いよいよになってからやっては日本も手おくれになるぞ、これは手おくれになったら大変なことであるから、国内法検討あるいは準備等をやるべきであるという声もただいま承りましたし、また相当強く起こっている意見であります。いまジュネーブ会議を前にして私がはっきり申し上げるわけにまいりませんけれども、日本としても少なくともおくれをとらぬように、そういう準備検討はしなければならぬ時期に来たのではないかということでお答えにしていただきたいと思います。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひおやりいただきたいと思いますし、これは半年、一年の手おくれが後千載の悔いを残すと思います。いまでも遅過ぎるのですから、思い切って国務大臣としてこれに対しては相当の、いまおっしゃったような前提で、推進力になっていただくようにお願いをしたいと思う。  言わずもがなでございますが、国連全体を見ましても、特に開発途上国が数からいって三分の二ですから、これと真っ向から対立してこれを全部敵に回すような、そうでなくても途上国に対して私どもは相当の神経をいま使っておるし、政府もずいぶん周到な対応をしているようです。周到の上にも周到な対応をしながら、やはり海洋法会議の席上を通じて、わが国の無資源国であるという立場を十分強調しながら、ぜひひとつ実現をしていただくようにお願いをしたい。これは私の希望も添えておきます。  それから次に、いま南北朝鮮の話し合いが行われています。板門店における統一卓球チームの話し合いというのがこの五日にまた再開されます。七日には全体会議が持たれるという事態になっていますから、過去のことはくどく申し上げません。  まず、卓球の世界選手権大会が平壌で四月二十五日ですか、開かれますが、これに平和外交の、あるいは統一の一つの突破口をつくるための南北の話し合いができていることは非常に私はいいと思いますが、外務大臣として、万が一、五日に再開されて統一チーム結成の話ができ上がったとき、国際機関としてはまだこの統一チームで参加するということがいいか悪いかの意思表示を正式にしていないと思います。していないと思いますが、とにかく特に日本立場では、南北の平和的な統一というものは悲願でもあり、わが国の平和のためにも絶対に達成したいという願望の一つであります。  という点からいうと、これを受け入れる、受け入れないという国際機関の、いわゆるITTFですか、これが受け入れるかどうかという論議がこれから起きますが、前提としては、南北統一チームができたといったときに、わが国が積極的にこれを国際的に承認をして、その国際機関が受け入れをするというようにさせなければと思いますが、二つに分けてお答えをいただきたい。  統一チームのでき上がることが、わが国として、外務大臣として望ましいとお思いになるかどうか。それができたときに、国際機関が、いま想像するのではなかなかスムーズにその参加を認めるようにならないと思います。これを何としても参加させるように、わが国としては積極的に国際機関への働きかけ世界に先駆けてやるかどうか。二点に分けて、ひとつ大臣に。
  24. 園田直

    園田国務大臣 いまの問題は、御発言のとおり、三月五日話し合いが一方には行われます。一方には、世界卓球連盟は統一チームを参加させるかどうか検討中であると聞いておりますが、わが日本としては、統一チームがつくられて、これが世界卓球大会に参加するということは歓迎すべきことであると考えております。両方の南北対話、統一の雰囲気が、こういうスポーツ面でも出てきて、これの雰囲気づくりに役立つものと考えます。  したがいまして、五日の平壌の話が終わって、世界卓球連盟の話題になりますれば、わが方は、それぞれの機関を通じてこのような統一チームの参加を許されるよう要請する考えております。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひITTFに対する働きかけを積極的におやりいただくように。ある意味では、いまの統一チームができるできない、その前でもいいくらいに私は思うのです。前に国際的なそういう雰囲気をつくってやることが――できたら後でやる、これも一つの方法です。しかし、いまのこの事態に対してはむしろ積極的に、とにかく言葉では言わないが、統一チームの結成は大歓迎だということを、国際的な場でITTFに対する働きかけわが国が行うというようなことで示していくことすら私は必要じゃないかと思うので、一つ節が五日に過ぎた、できたらやるというのではなくて、もっと積極的に、両者をかみ合った問題として、ITTFに対してはすぐにも、その場合には積極的に認めるべきであるという働きかけをしていただくように、これは私も卓球の一部関係者として、ぜひこれはお願いをしておきたいと思います。もう一度。
  26. 園田直

    園田国務大臣 三月五日にこだわるわけではございません。御発言のとおりでありますから、了解いたしました。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 それから次に、北方領土の問題についてちょっとお伺いしたい。  この北方領土問題の、特にソ連の軍事基地拡張について、再三にわたってわが国はソ連に抗議を申し込んでいる。先ごろは国会の決議ができました。それで、ソ連のポリャンスキー駐日大使を外務省に呼んで、外務省の当事者から領土問題、特に軍事基地拡張に対する抗議を申し入れたり、ソ連にいる日本の魚本大使を通じて、つい先ごろは正式にソ連外務省に、国会決議の内容の説明と同時に、また強くこの軍事基地拡張に対する抗議の申し入れを行ったということが報道をされているわけであります。  そこで、きょうそれに対してお伺いしたいのは、ポリャンスキー大使を日本外務省に呼んで話したときに、ポリャンスキー大使は何をどう答えたか。プラウダが日本の国会決議に対してどうのこうのとまた一方的に反論を載せていますが、そうでなくて、正式に外交機関を通じて話した、大使を呼んだときの大使の応答はどうだったか。  それからもう一つは、魚本大使がソ連の外務省を訪問して、国会決議の内容を説明しながら、厳重ないわゆる抗議あるいは向こうの善処を促すという発言、申し入れをしたのに対して、正式にはソ連外務省がどう反応を示したのかというのを、まず二つお伺いしたい。
  28. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 二月五日に、高島外務審議官が在京ポリャンスキー大使を招致いたしまして、本件に関する日本政府の抗議を伝えましたときに、先方が申しましたことは、要旨といたしまして、自分の領土を守るのは当然の権利であって、これに対して日本側がとやかく言うのは内政干渉である、及びこのようなことでとやかく文句を言うことは、非友好的な行為とみなさざるを得ない、それから、いずれにしてもこの抗議の内容は本国政府に伝えることとするが、日ソ間においてはもっと建設的な問題を話し合うべきであるとして、先ごろソ連が提示をしました、いわゆる善隣協力条約、これの締結方をまた慫慂したわけでございます。もちろんこれに対しまして、高島外務審議官から日本政府立場を重ねて強調いたしました。  さらに、国会決議が行われました後を受けまして、二月二十六日に、モスクワにおきまして魚本大使がソ連外務省のフィリュービン次官を訪ねまして、国会決議が行われた事実及びその内容についてソ連側に伝達をいたしました。これに対しまして、フィリュービン外務次官は、決議についてはすでにそのことは承知しておるが、北方領土問題というものは元来存在しないものであって、したがってソ連側としては、この問題について日本側と話し合うつもりはない、これがまず第一点でございます。  第二点は、いま伝えられた決議は、これは日本政府に対して行われた決議であるから、それは決議が採択されようとされまいとこれは日本国内問題であって、外国政府の関知したことではない、これが第二点でございます。  それから、第三点といたしまして、この問題をめぐる最近の日本側の動きは日ソ両国間の友好関係の発展に逆行するものである、こういう要旨三点を述べたわけでございます。  これに対しまして魚本大使から、当然のことながら、決議は政府に対するものであるが、この決議によって、この問題に対する日本国民の強い関心と懸念、これを示すものであるという意味でこれを伝えた、こういうことを重ねて強調したわけでございます。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの日本におけるあるいはソ連における外交折衝を通じて、依然としてソ連は何ら考えなり態度を変えていないどころか、非常に強硬ないわゆる回答をしている、見解を述べているというふうに私は考えるわけであります。この、特にソ連の外務次官の三つの点に関する回答に対して、外務大臣はどうお考えになるかをここでお伺いをしたいのが一つ。  それから、前段に申し上げたように、ソ連の態度がますます、変化がないどころか少しシビアになり過ぎているというように思いますが、その裏にはやはり日中条約というものとのかかわり合いというものが強く感じられると思うのですが、その点どうお考えになるかが二つ目であります。  三つ目に、いまのようなソ連の態度を踏まえながら、なおかつ日ソ友好というものをわが国の外交の基本として今後もお進めになるはずだと思いますが、一体今後そういうソ連を相手にして、どういう方針で、どういう手だてでソ連との友好をより深めるようにしていくかという点を三つ目、最後にお伺いをしたいと思います。
  30. 園田直

    園田国務大臣 日ソ間の友好関係を深めてまいりますことは日本の平和外交のために重要な要素でありますから、あらゆる手段を通じて友好関係は進めてまいりたいと存じます。しかし、日本とソ連の間には経済問題、開発問題等、建設的な問題もたくさんあるわけでありまして、利害が共通する面があるわけであります。そういう話し合いをする用意はございます。用意はございますが、北方四島問題は日本全国民の悲願であり、しかも日本の領土であることは明々白々たる事実であるばかりでなく、共同声明その他についても明記されているところでありますから、少なくともソ連がこの問題について話し合う態度を示すか、あるいは誠意ある態度を示すか、これは建設的な諸問題を解決していく一つの大前提であります。  日中問題については、すでに原委員御承知のとおりでありますから、これは今後とも日中友好条約がソ連に向けられたものでないということを一々行動によって示す所存でございます。ベトナムに対する問題について日本と中国が共同歩調をとっていないことは、これは一つの証左であると、私はソ連並びにベトナムに申し伝えてあるところでございます。  そこで、ソ連との間には、御承知のとおり事務会議あるいは経済合同会議等が順調に進められておるわけでありますから、今後こういうことの方からも話し合いを進めながら、あらゆる方法でソ連と日本が話し合う糸口をつかむ、そして実績を積み重ねつつこの北方四島問題に対する話し合いをやるというふうに考えております。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 いつもの答弁が返ってきたわけですが、対ソ外交という点では、いまちょっとお触れになったのですが、日中条約は何もソ連を対象に結んだものではないとか、あるいは中越戦争に対しても日本がどちら側についているのではないとかいうことも、確かに大変必要なことに違いないのですが、外交的な方法としては、やはりいまおっしゃったことと同時にもっと進んで、ソ連が誤解をしているであろう、あるいは強いて誤解をする点もあるかもしれません。そういう問題に対してはやはり事実をもってそれを示していく。  たとえば、最も大きな基本的な問題としては、結局鄧小平副首相の訪日、訪米等の裏にあるものが日中米のソ連に対する包囲作戦である、外交的なあるいはその他の意味を含めて、やはりソ連というものが暗黙のうちに対象となって、日中米が意識するとしないにかかわらず、現在の動きというものは、一緒になってソ連を対象にいろいろな外交的な問題の展開が結果的にはなされているというようなことも、ソ連にとって非常に大きな関心事であり、いまになるとソ連自体が一番きつく考えている問題だと思うのです。わが国のいわゆる日米関係の安保条約その他を通ずる歴史的な戦後の経過から見て、日米のあり方に対してはこれは御存じのとおりであり、日中のあり方に対してはまだまだこれからも問題があるので、そうソ連がやっかみを持って見たり、ソ連が誤解をするほどの状態がいますぐに日中間に起きるとは私は思っていない。にもかかわらず、まだ日中米というこの三極、三国がソ連を対象にした一つの包囲的な外交というような誤解があることは間違いないと私は思いますので、これに対しても具体的な事象を通じてソ連の誤解を解くように、ソ連の強いて誤解をしているように見えるその問題に真っ正面からぶつかって、その解明をしていくということも必要だと思うのです。単に一つの国だけを相手にしてどうのこうのという言いわけ以外に、あるいは具体的に事象を見せる以外に、日中米というこのかかわり合いにおいて、この三つが一緒になっているという憶測に対して、ソ連に対する現実的な対応をしていく必要があると思いますが、この点で何かお考えがあったらお聞かせをいただきたい。
  32. 園田直

    園田国務大臣 私も御発言のとおりだと考えますので、まず昨年九月グロムイコ外務大臣に私は直接、日本が日中友好条約を締結するについてまず第一番に言ったのは、正月にソ連の外務大臣、あなたに私が言ったのが一番最初である、次に私と鄧小平副主席及び私と黄華部長との会談の内容等を示し、その際にソ連に対するわが方の態度は明確にいたしておりまして、中国と共同してソ連に対抗するものではない、日本はソ連と友好関係を進めていくということをはっきり明言しておりますので、そういう点もるる説明し、今後もそういうことは御発言のとおり努力しなければならぬと考えております。  なお、先般鄧小平副主席が訪米いたしまして、帰りに日本に寄りまして、その際には総理、私との会談においてソ連問題というのは一切言葉に出ておりません。のみならず、その後においてもそういうことではないということは私は理解を求めておるところであります。  アメリカのことはわかりませんが、アメリカもその点は注意をして、米中正常化がソ連に対抗するものでないということを談話として発表したと記憶いたしております。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 次は、きのうですが、新聞報道によりますと、日中経済協力のあり方について中国側に重大な路線変更の兆しが見えてきたというふうに取り上げられています。  たとえば、昨年二月に始まった日中長期貿易取り決め、七八年から八五年、日本が鉄鋼中心のプラント類を輸出するかわりに中国原油を輸入、日中双方の利益を追求するという取り決めが基本になっている。先ほども申し上げましたように、人民日報の二十四日付社説では、近代化の達成目標のうちのあるものは軽率に決定し、資金力の限界を超えている、また鉄鋼への投資比率を縮小すべきである、それによって重化学工業中心から農業、軽工業への比重を高めるべきであるということを強調している。  鄧小平副首相が唱える重工業中心の近代化計画といいますか、これに対する事実上の修正を迫っているのかどうか知りませんが、中国の国情をよく知りませんが、珍しいことで、鄧小平がまだ何も言わないうちにこういった社説を出して、ある意味では鄧小平の中心的な政治課題に対して一つの注文をつけている。非常に民主化された中国らしい感じがしますが、そういう路線変更の兆しというものは確かにあると思うのです。  兆しがあると思うその理由なり背景というようなものを模索すると、東京で進められていた石油公団とのいわゆる渤海湾海底油田の共同開発をめぐる交渉を、調印間近になって中国側が突如打ち切り、帰国をしたという事実、これに対してはその後どうなっているのか、どういう見通しなのかをお伺いしたいと思います。  二つ目には、進行中の一連のプラント商談、これを現在中断しているわけです。その中断するという内容、何か条件がついているのか、無期限で中断なのかということ、これもお答えをいただきたい二つ目になります。  三つ目には、調印済みの宝山製鉄所の各種設備や一般プラント類の契約未発効、これを通告してきたわけです。一体未発効を通告をしてきたままなのか、これに対してわが国がある程度の見通しを持ちながら対策を講じているのかということも聞きたいのです。  これら三つのいま質問したことも、いわゆる路線変更の兆しの背景だ、こういうふうに見られるわけであります。したがって、そういったいまの中国の日本との経済協力関係の路線を変更するという、これは新聞の言い方ですが、そういうことにぴったり当たるのか、そういう兆しが確かにあって、わが国としてはこれをどう見ているのか。端的に言うと、かつて、ある面では中国との契約をしたものを一方的に破棄された事実もありますというようなことが再び起きそうなのか、依然として余り中国を信頼できない状態にあると見るのかということを含めて、いま私が背景なりその裏と指摘した三つの問題に対するお答えをいただきながら、一体この中国の路線変更と考えられるような、わが国に対して普通の国家間の契約がこんなに短時日の間に一部変更、一部停止、一部無期限で、とにかくどうこうなるというようなことがあったのでは、中国を相手にして何を話し合いするにも、普通ならば信用ができないというふうな結果になる危険があると思いますが、一体そういう点をどうお考えになっているか。具体的には当局から、後政治的な締めくくりの意味大臣からもお答えをいただきたい。
  34. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  御提起ありました三つの点でございますが、まず、石油公団の商談が急に、一週間ほど残しながら中断して先方が帰国したという件でございますが、これについては、私どもが聞いておりますところでは、先方は何ら理由を述べることなく、急に本国へ帰る必要が生じたから帰国したのであると、やや技術的な理由で帰国するかのごとき様子で帰国したそうでございます。その後、それについての新しい動きは聞いておりませんが、さらに当方から日中経済協会の責任者が、きのうでございますか、訪中したとか、さらに、中国側から要人が来るとかいうことがございますので、この石油についての商談のその後の動きはその辺で次第に明らかになるのではないかと思っております。  二番目に、一部の商談が中断したという話は、これは主に北京においていろんな商社の関係者が先方の公司その他と商談を重ねておりましたのが、ちょっと少し話を延ばしたいとか、あるいは逆に、きょうあすに返事してくれなければほかの国に話を移すとか、そういうような話として出てきたようで、かつこれがかなり、一件二件でなくて多いものですから、非常に当事者は当惑しておられるようでございまして、その背景等を探りたいということで現在事情を見きわめておられるようでございます。  三番目の、この契約済みの件というのは、これはいま宝山のことを御指摘ありましたけれども、宝山の製鉄所に関するものを含む一連のことでございまして、昨年じゅうに輸出成約いたしました約七千五百億円の商談のうち、十二月十六日以降に署名されたものにつきまして、中国側から去る二月の二十六日に、契約の発効条件であるところの上部の承認がいまだ得られないという理由でこの契約の発効を暫時留保したい、こう言ってきたそうでございまして、この中には宝山製鉄所発電プラント関係の一億九千万ドルも含まれているわけでございます。これについて先方からは明確な理由説明がなかったわけでございまして、これも関係者としてはその理由を探るのにいま腐心していうように聞いております。  ただいま原委員から御提起がありました現代化路線との関係でございますけれども、この四つの現代化路線は、御承知のとおり、農業、工業、科学技術、国防の四つの分野についての現代化を図るということでございまして、必ずしも重工業重視路線とは言い切れない面があるかと思います。従来から中国は、産業の面では農業と軽工業と重工業、この三部門をバランスをとって発達させるというのが基本路線にあったわけでございますが、そのうちで外国に発注する部分がどちらかというと重工業関係に集中しておりますので、外から見ますと重工業重視という印象はあるわけですけれども、もともとは全体をバランスをとるという考えであったかと思います。これが路線変更の兆しであるかどうかという点につきましては、これは情報も必ずしも十分でございませんし、相手国の内情でございますから軽々に判断することはいかがかとは思いますけれども、私ども政府関係あるいは民間で日中経済関係を長く担当しておられる方々といろいろ意見交換したおおよその感じといたしましては、この数日来の動きは、あるいはほかにも理由があるかもしれませんけれども、やはりその基調には、中国としてこの現代化路線を進めるに当たって、今後どのような優先順位あるいは分野の配分、あるいは場合によっては地域的な配分あるいは民需と軍需、あるいは重工業と軽工業と、いろんな分野における配分、そのための労働力とか運輸問題とか、そしてまた特に重要だと思われますのは、外国からの協力を得ます場合における資金の手当てというようなことについて、非常に大きな将来にわたる大計画でございますから、内部でいろんな部門が担当議論もし、そこにはいろいろ違った意見も出まして、それらの調整その他が行われておるのではないか。その結果、ときには急速に話し合いが進み、ある段階に来ますとしばらく内部調整に手間取るというようなある種の曲折というのはこれまでもございましたが、今後もあるのではないか。したがって、そういうような一回一回の現象だけで、大きな路線変更とか内部のいろいろな問題が起きたというふうに即断するのはあるいは早計ではないか。そういう意味におきましては、今後も情報をよく見きわめる必要があるというふうに考えております。
  35. 園田直

    園田国務大臣 結論としては、いま局長お答えしましたとおり、中国の約束不履行でもなければ、基本的な方針の変更でもないのではないかと判断をいたしております。具体的に言いますと、大部分の問題は、停止やキャンセルではなくて、ちょっと待ってくれという条件なしの留保になっております。  それから、こちらから正式に、いかようなることであるか、基本的な方針の変更であるかということについては、基本的な方針ではないという向こうの返答があったわけであります。その返答にかかわらず、しからばなぜこのようなことがあったか。いま国内でも相当打撃を受けているし、深刻なものであります。その際に、その理由を憶測することは軽率かもわかりませんけれども、やはり近代化に先立つものは何といっても資金であります。そこで、中国の持っておる外貨、それから、これに伴って近代化する場合には金融の問題が出てまいります。その金融の条件、金利、これとの問題で中国はしばしば、決して日本とだけで独占してやるものじゃない、世界各国の協力を求める、条件が同じなら日本に願うんだ、こういうことを言っておるところからも、そういうことも一つあるのではなかろうか。  それからもう一つは、日本の方も中国の方も日中の貿易ということ、友好条約締結を契機に近代化が打ち出されて、やや性急であったような気がいたします。具体的な青写真も持たないで、横に連絡をとらずに当事者同士がどんどん進めていって、長期の展望を持たないで、何か単なる商談みたいにわんわんと言ってしたところは反省しなければならぬのじゃないか。したがって、中国からいっても、日本とのいままでの契約はほとんど大型プロジェクトであります。大型プロジェクトだけであって、農村の近代化だとか、その他の細々とした問題については話がまだ表面に出てきていない。そういう点で、軍の近代化を除く三つの近代化でやはり若干調整をする、見直しをしなければ、中国の国内的にも、また日本からいっても、これはちょっともう一遍考えようというようなところが事情ではないかと想像をしながら、今後の成り行きをじっと注意をして見ておるところでございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 確かに大臣の言うように、非常にいい時期の反省期だと思いますね。反省しないと、とにかく余りぐんぐん進み過ぎますとどこかに無理か生じてきますから、いま言ったような問題、いまの見解、多分そうだろうと私は思う。  そこで、ひとつ今度は、この路線変更という言葉に言われるような、中国の私どもに対しての契約上の停滞なりという原因が日本の側にないだろうかという点をお伺いしたいのです。  たとえば中国、ベトナムの紛争が起きたという時点で、これはある意味では、人によっては、中国は鄧小平のいわゆる積極的な外交を通じて大分中国株が上がった、しかし、どうもこのベトナム問題を通じて非常に大きな失点を実はかせいじゃった、なるほど、平たく考えるとそんなふうに見えないこともない。大変損をしたような感じがする。私も後で触れますが、ベトナムとの問題に関しては私なりの考えを持っているわけであります。というような状態なども含めて、日本の側も、中国、ベトナムの紛争を契機にして、中国に対する、いまお話のあった金融の問題、金利の問題等にまで何かちゅうちょ逡巡といいますか、ある意味では、ついこの間までの積極的な態度からぐっと引っ込んだ、非常に消極的な態度で応対をするようになったとかいうような、たとえばの例ですが、中越紛争を通じて、どうもぐっといまになって引っ込みかげんになっているという理由日本の側にもあるのじゃないだろうかというふうにも考えられるのですが、この点、大臣どうですか。
  37. 園田直

    園田国務大臣 いままでのところは御承知のとおり民間の商談でやっておりますので、日本側にもそういうことがあるかどうか、十分検討してみたいと思います。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 国の立場でというか、いまの中国との経済協力の問題を民間が日本で応対をしていることを含めて、いま言った全体の外交面からの問題をお伺いしているという前提ですから、そのつもりでお答えをいただきたい。  たとえば、ではもう少し突っ込んでお伺いしてみますと、ベトナム政府に対する新規援助、これは日本ではもうすでにたな上げしましたね。ベトナムに対しては、援助のうちの相当部分がたな上げにされているという、これは事実あるわけです。それと見合ってやはり中国に対しても――中国の申し入れに対してこっちはどんどん積極的に応対をしていく、その応対の仕方が非常に積極的だ、ベトナムに対してはすでに理由をつけて新規援助のいわゆる手控えはすでに行っている、ベトナムにはソ連がいる、というふうに考えたときに、中越戦争を契機にして、やはり中国に対しても多少、ベトナムにとったと同じような配慮、べトナムにすればマイナスの配慮ですが、というものを、中国に対してもやはりしなければいけないという感じが日本の側に出てきたというようなことも考えられますか、これはどうですか。そんなことは全然ありませんか。
  39. 園田直

    園田国務大臣 ベトナムの経済援助、協力については、たな上げしておる事実はございません。実はベトナムの外務大臣と私、ゆっくり会って話をいたしまして、ベトナム援助については一年ぐらい前からASEANの諸国は非常に懸念を持っておる、特に隣接した国々は、軍事援助じゃなくても、日本がベトナムに援助をすれば、それが結局は軍事力となってわれわれに脅威を与えるという懸念の表明があった、そこで、そういうことを考えながら経済援助をやるのであるから、われわれの方も努力をするから、ベトナムの方もひとつASEANの国々については、そういう懸念がないように、懸念のある行動をとらないように、進んで理解を求められるようにということで、あの話し合いがまとまったわけであります。  そこで、新聞等では凍結したという言葉がありますが、全然凍結はしておりません。五十三年度分については、約束したものはもうどんどん実行されておりまして、大部分は進んで、八割ぐらいは援助は続けられておるわけであります。話し合いの中で、救援米の問題がありますが、この問題だけが進んでおりません。それは貸与でありますから、この貸与の条件等をベトナムから申し入れれば、それによってこちらは米を送り出す、こういうことになっておるわけでありますが、その後ベトナムでは米が少し楽になったのか、あるいは今度の紛争でその余裕がないのか、まだ条件が来ておりません。これだけはとどまっておるわけであります。五十四年度以降は、これはまた改めて具体的な問題については慎重に話し合おう、こういうことになっておるわけでありまして、ベトナムについても中国についても、政府はマイナスの行動はとっておりません。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 その問題は後でまたちょっと触れるようになるかもしれませんが、そこで石油の問題をちょっと。  最近、産油国が相次ぐ値上げを発表している。全体の流れとしてはそういう傾向にある。  それで、先日週刊誌の取材に答えて、小坂経済企画庁長官がこう言っているのですね。「幸い、目下のところは、関係方面の努力で当座の石油は確保してある。しかし、長期的展望としては、決して楽観できる材料ばかりではない。多くの人はイラン情勢に気をとられているけど、ぼくが心配しているのはアジアの動乱ですよ。海上に軍艦が横行するような事態になれば、タンカーの運航がむずかしくなり、輸送路の変更の問題が当然起きてきますからねえ」、こういう小坂長官発言、要するにアジアにおいて、ちょっと波立たしい状態がすでに起きている、これは御存じのいまの中越戦争を中心にした動きをとらえているに違いない。ソ連の手先がどうのこうの、あるいは何々艦隊がどこを遊よくを始めたといろいろ言って、アジアに確かに軍事的な行動が目立つようになってきたことは間違いない。  また、もう一面、山一証券の研究所の辻副社長というのが、産油国のことを心配してこう言っているのですね。「これまでOPECの指導権はサウジアラビア、イランという穏健派が握っていたのだが、今度はイランが急進派に入る可能性が強い。そうなると、リビア、アルジェリア、イラン、それにイラクの指導力が強まってきて、OPECを急進派が引っ張っていくようになるかもしれない。そうなると、供給問題に価格問題が加わって、石油消費国にとっては大変なことになりますからね」、こう言っているのであります。  この二つを兼ね合わせまして、同時にこの山一証券の辻副社長などの心配の裏には、四十八年秋に起こった第一次石油パニックと同じ、いわゆる狂乱物価の状態をある程度思い起こしながら、どうもいまの産油国の値上げの状態をずっと見ていると、その心配がいよいよ出てきたということが実は裏にあって、いま申し上げたような発言になったように思うのであります。私が憶測が過ぎているのかどうか知りませんが、四十八年の第一次石油ショック当時の狂乱物価と同じ徴候、兆し、 OPEC中心の石油の値上げを相次いで知らされている間に、こういったいわゆる危惧というものが国全体にすでにいま起きているように思うのですが、これに対して、いやそんな心配はない、全然石油ショックの二の舞になるような兆しはないというふうにお考えかどうか。私は事によるともう四十八年の第一次ショックと同じ状態の兆しが出てきているように思いますが、この点産油国中心のいまの動きを見て、どうお考えになるか、ひとつ。
  41. 園田直

    園田国務大臣 イランを中心にすることから、世界各国は石油の問題で非常に苦労しておることは事実であります。各国外務大臣、通産大臣に聞きますと、備蓄があるから大丈夫だ、国内のエネルギーには影響ない、こういう国と、それから備蓄に手をつける必要もないという国とあるわけであります。  そこで、わが方もそう言っている。本当にそうか、こう聞くと、いやまあ当分は、ということで、これは非常に複雑な問題がありまして、原委員も御承知のとおり、通産大臣なり私がここで、石油が大変なことになりますと言うと、それいけ、待ってましたとばかりに石油業者は非常な値上げをするわけであり、資源、 エネルギーをめぐって混乱をするわけでありますから、このお答えは非常にむずかしいわけでありますけれども、いま御発言になりました関係から言いますと、企画庁長官が心配していることはわかりますけれども、インドシナ半島の紛争というものが、日本のタンカーやあるいは船舶が航行するのに障害があるような事態に発展する可能性はきわめて少ない。中越の紛争が長期化することになれば、戦争というものは想像できない不測の事態を生むものでありますけれども、少なくとも米国も、それからソ連も、直接武力介入等をして平和を乱すようなことにしたくないという気持ちは底流にあるようであります。  それからまた、中越の事態を見ましても、雨期は四月でありまして、四月には部隊の運営ができないわけでありますから、長期化するといりても大体見当はつくのではなかろうか。その事態に、ソ連の艦艇またはその他の国の艦艇が日本の航行する船舶、タンカーに障害を与えるようなことはない、こう思います。  それから次に、イランを中心にする問題でありますが、イランの国は御承知のとおりに、なかなか国内の混乱がまだおさまっておりません。それから、新しい内閣が果たして国民の全面的な支持を受けるかどうか、これもなかなか流動的ではあると思いますけれども、しかし新政権はきわめて手がたい方法で政策を進めております。石油に対する政策等も逐次打ち出してきておりまして、そしてイランの総理はわが方の大使に対して、日本がいち早く承認したことを感謝する、同時に、自分たちは大国に対してはなかなか信用できない、そこで日本に期待する、こういうことで、一時は日本人の生命も危ないぐらいであるしいろいろな施設等も相当危険に陥ったわけでありますが、今日では、小型の車ではなくて、大型の車に日の丸をつけて走れば大丈夫だと言われるくらいに、イランの政府並びにその他の感情はやや好転しているわけであります。  そこで、今後一番大きな問題は、イランの新政権は国内の経済、産業をどう安定していくかということが一番むずかしい問題で、そうすると、イラン自身の問題からいっても石油を輸出をすることが最優先の問題だ、こういうふうにわれわれも想像しますが、同時に、イランの総理及び石油公団総裁等もこういうことを明言いたしております。そこでその場合には、日本にはまず相談しよう、こういうことになっておりますが、問題はやはり価格の問題だと存じます。価格が上がるにしても、順次上がるならばいいわけでありますが、一挙にぽっと上がると、おっしゃるとおりああいう石油ショックが来るようであります。  しかし、いまや石油の問題は、売る方と買う方の問題ではなくて、売る方と買う方が協力をして石油をどのように有効に使うか、あるいは節約して使うか、あるいは世界経済が撹乱をしないように、不況打開にどのように有効な手を打つかということで、両方が責任を持って相談するという段階に来ておりますので、これも流動的な問題でありますが、どうなるかわかりませんけれども、必ずしも危険な状態だけになるとは想像いたしません。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 確かに外務大臣が懸念を表明したらこれはまた大騒ぎになるでしょうし、つまらない買い占めなども起きるでしょう。おっしゃるとおりだと思いますが、懸念を表明あるいは持たれていることは事実で、しかも、後段おっしゃったように確かにいい材料もあると思います。反対に悪い材料も大変あるだろうと思いますから、この石油問題というのは相当慎重に政府として考えていかないともう大変な問題になりつつあるのだというのが私の見解でございますから……。  そうでなくても、一月十八日に総理官邸にNHKを含めた新聞協会の十三社の代表を呼んで、政府は懇談をしているわけですね。恒例の昼食会だなどと称してやっているのですが、中身はやはりこの石油という問題の扱いを慎重にしてくれ、大変なことになる恐れがあるということだったと思うのです。ということを考えても、いまマスコミも協力して、ある意味では楽観的なもの、悲観的なものをできるだけ出さないようにという配慮がされているように私は思うのです、これはいいことかもしれませんが……。いずれにしても、事がそうなってからでは遅いのでありますから、十分な配慮を行って、再びかつての石油ショックなり狂乱物価騒動の起きないような配慮を、政府として真剣に考える必要がある時期に来ているというふうに思いますので、この点ひとつ、だれが担当でだれがということよりは、やはり外国からの油が中心で行われるわけですが、十分な配慮をしていただくように、これは要望をしておきたいと思います。
  43. 園田直

    園田国務大臣 懸念の表明はできませんが、原委員の御意見はよくわかりましたということで、私の答えとしてお許しを願いたいと思います。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、最後に中越紛争だか戦争だか知りませんが、これについてもう何回も同僚委員が分科会なり外務委員会でお伺いしているようですから、余りくどいことをお伺いしようとは思いません。ただ、きのうの外務委員会で、外務大臣が、中国のベトナム侵攻に対しては正当性がないということだけは、珍しくずばりとお答えになったようです。それは間違いありませんか。
  45. 園田直

    園田国務大臣 どこの国を問わず、理由のいかんを問わず、紛争を力で解決しようとし、軍を他国に入れること、これは反対であって正当性はないと言ったことは事実でございます。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 すると、裏を返すと、正当な軍隊を使った正当な侵攻というものはないのだということになりますね。
  47. 園田直

    園田国務大臣 私としては、他国に軍隊を入れ、戦争によって紛争を解決するのは反対でありますから、即時停戦、撤退、平和的な話し合いをすべきであるという要望を中国にしているわけであります。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 それはアメリカ中心であるとソ連が中心であるとを問わず、いわゆる普遍的な方針としてそうお考えになっていると考えていいですか。
  49. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 これに余り時間がとれなくなったのですが、そういう前提に立って中東問題なり、あるいは今度のイランの問題なり、ないしかつてのキューバ問題なり、あるいはソ連のチェコの問題なりというものを過去にさかのぼっていろいろ考えていくと、論じていくと、外務大臣の言っていることに、ここにもあそこにも矛盾があるじゃないか、そのときになぜ一体いまと同じ態度でわが国の毅然たる所信を申し入れしなかったかというような問題がたくさんあるように私は思うのです。いまそれを論ずる時間がありませんから言いません。  私は一つだけこの問題で、正当性がない、こうおっしゃる、あるいは、いかなる場合でも軍隊を使ってはいけない、軍隊を使って他国に侵入を行うというようなことは平和的に問題を処理するたてまえの日本としては賛成できないとおっしゃったことは大事だと思うのですが、その基本となるものに例の一九七四年十二月十四日のいわゆる国際連合の決議がありまして、この決議で侵略の定義がはっきりと決められて、これは全会一致で採択をされて、日本ももちろんどこも賛成をしているわけであります。そのことをいま言って何のメリット、デメリットがあるかはこれは別なんでありますが、私は、日本が、いま外務大臣がおっしゃったように武力を行使する紛争に対しての問題を考えるときに、国連の一員としては当然七四年の満場一致採択をされたこの侵略の定義に照らしてみて、今後いかなるこういった事態があっても、この侵略の定義に照らしてわが国の外交的な態度をとっていくんだというふうにしなければいけないと思います。  過去をさかのぼったときには、私がいまちょっと申し上げたように何がしか私にも異論があり、じゃあどうしてああしなかった、こう言わなかった、言いたいことはずいぶんあるのですが、過去のことは言わない。残念ながら中越紛争が起きたのを契機にして、今後いかなることがあっても武力を行使して入っていく、入ってこられたといったような国際的な紛争に対しては、常に七四年の国連における全会一致採択された侵略の定義というものが前提でわが国の外交の基本的ないわゆる物差しにしていくのだということがはっきり決められていないと、非常に、まあそうでなくても日本に対するいろいろな心配がある、右翼主義化したとかしないとか言われているということも含めて、やはりわが国がいまこの七四年の侵略の定義というものを思い起こし、これに沿って常に、いまの中越戦争であろうとあるいはどこの今後起きるであろう紛争、ないことを望むが、あった場合にも、この侵略の定義というものを基準考え、厳しく諸外国に対して平和的な問題解決を要請していくんだという態度の表明がいまの日本として特に必要だと思いますが、この七四年の国連採択の侵略の定義に対してどうお考えになるか。これをいま私が提案申し上げたように、いまこそわが国の基本的な大事な態度表明として全世界にそのことを表明すべきである、率先垂範すべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  51. 園田直

    園田国務大臣 過去における過ちがいろいろあったであろうことは私も反省をいたします。しかし、平和外交というものは一貫したものでなければ、これは無力な、優柔不断な外交になるわけでありますから、厳しくとも、いろいろな条件が起ころうとも、今後一貫して日本の外交方針は平和外交に徹するということでいくことは当然で偽ると考えております。  日本政府は中越紛争について、あるいはベトナムとカンボジアの問題について、理由、経緯のいかんを問わず力をもって紛争を解決したり他国に軍隊を入れることは、その行動は正しくない、こういうことを主張しているわけであります。国連決議では、御承知のとおりにいまの規定がございます。この規定は、侵略というものに対する一つの定義を下しているわけであります。力をもってやろうとする行動は正しくないからおやめなさいということを言っているわけでありますが、これを侵略者とは断定してないわけであります。  ということは、中国はたび重なるベトナムの武力侵犯に対して自衛権の反撃をやっている、こう言っているし、ベトナムは逆に、いや中国の侵略である、こう言っているし、カンボジアにおいてはベトナムは自分たちが入っていったのは正当性がある、こう言っているし、カンボジアはそうじゃないと言い張っておったわけでありますので、これが侵略であるかどうかということは、最終的にはいまの定義に基づいて安保理事会決定することである。しかし、日本はそれとは別個に、事の理由を問わず力によってやる行動はよろしくないということは、一貫する所存でございます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねてだめ押しをしますが、今後中越の紛争を契機にして、わが国は国際間の紛争は平和的に解決をする、話し合いによって解決をするんだという日本の方針があるからというのではなくて、世界全体に通用するためにも、私が言っているように、この国連の七四年十二月の全会一致で採択した侵略の定義にのっとって一切の武力行使による国際間の紛争は認めない、このことは絶対に賛成しないという、侵略の定義に沿って今後ともあらゆる外国間の紛争に対処していくということをぴしっと確認をすべきだと私は思って申し上げたわけですが、この点もう一度外務大臣
  53. 園田直

    園田国務大臣 ただいまおっしゃいました個条は、日本も賛成をして決定された決議でありますから、これを方針にしていることは当然でございます。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わります。
  55. 加藤清二

    加藤委員長 北川石松君。
  56. 北川石松

    ○北川委員 五十一年度の決算外務省関係審議に当たりまして質問の機会を与えていただきまして、大変深く感謝いたします。園田外務大臣は十二時半までこちらにいらっしゃるということでございますので、順序を変更いたしますが、質問をいたしたいと思います。  私は、日本の将来というもの、あるいは資源のない日本世界平和の中の日本ということを考えますときに、これからの諸外国に対する外務省の姿勢というもの、外務省のこれからの諸外国との交流というものが大きく日本の将来を左右すると思うのです。いまの世界情勢、外務大臣が再三述べておられまするが、世界を大きな一つの中に見まして、今後の日本は政治的にどの国と友好を深めていき、どの国とは警戒を要するとか、あるいは世界を全部一つの友好国と見て外交方針を立てられるのが全方位外交であるのか、その点について外務大臣の所信を先に聞かしていただきたい、このように思います。
  57. 園田直

    園田国務大臣 外交の基本的なものは、平和の追求であろうと存じます。あらゆる人々が平和の中でしかも繁栄をしていく、かつまたいずれの国の国民も生活の格差がなくなるようにやっていくということが、私は平和の追求であり、これが外交の理念であると考えます。したがいまして、しばしば申し上げますとおり全方位外交、政治形態、思想のいかんを問わず、遠近大小を問わずすべての国と交際をやっていく。ただし、これはそれぞれ国の特性もあれば環境もありますから、どの国との関係が深く、どの国とは浅いかもわからぬということはあり得るかもわかりませんが、基本は、すべての国と外交友好関係を進めていきたいと考えております。
  58. 北川石松

    ○北川委員 すべての国と友好関係を結ぶことは大変結構なことでありますが、そのためには日本外務省在外公館、言うなれば大使を初めとするいろいろの形を諸外国に明治以来つけてきておりますが、現在の在外公館の人員また予算において十分であるのかどうか、これをお聞きいたしたいと思います。
  59. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 お答え申し上げます。  外務省といたしましては仰せのとおり外交実施体制の強化を急務と考えておりまして、その一環として特に在外公館の機構あるいは定員等の整備拡充を図ってきております。ことにわが国の経済力が近年著しく向上いたしまして、また国際情勢もますます多様化してまいっておりますので、この複雑な国際情勢に適確かつ迅速に対応するためにも、今後とも在外におきます外交実施体制の整備拡充ということについては格段の努力を払っておる次第でございます。具体的に申し上げますと、定員の面で申し上げるわけでございますが、五十三年度の在外の定員は現在千七百七十六名でございます。これは一館当たりは平均約十一名でございまして、官房関係あるいは領事関係の要員を除きますと一館当たりの平均は約七名でございます。これは他の主要国の公館の規模に比較いたしましてはなはだ小さく、われわれとしても至急拡充を図る必要があると考えております。ただ、現在の厳しい情勢でございますので一挙にはその目的は達成しがたいのでございますが、五十四年度予算では七十二名の増、合計いたしまして千八百四十八名をお願いいたしておる状況でございます。
  60. 北川石松

    ○北川委員 四十五年度の千四百九十六人から千八百余名に五十四年度でふやしてきたという、形の上ではふえてきたことは大変結構でありますし、たとえば中南米局の新設、これは角度を変えて見るなればいろいろありましょうが、友好国を一国でもふやすという点、また資源のない日本という点から見て、大変結構な措置であったと思います。  しかし、常に外交問題が形だけが整っていくということでなしに、その中に実のあるところの実績をもたらさなくては定員を増にしても効果がない、私はこのように考えるものでございます。たとえば中南米局を設置した、在外公館員を千八百名余にふやしたと言っても、まだ十分でないという考えを私は持つのです。さすれば中南米局を一つ動きに、右から左へこちらをふやしたからこちらを減らすというようなことであってはならないし、また欧州各国在外公館員、アメリカ、ASEAN諸国、いろいろ見てまいりましたときに、政府は全方位外交の中のどこに重点を置いておられるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  61. 園田直

    園田国務大臣 まず第一は、日本米国関係が基軸になることは当然であります。その次にはASEANの国々はきわめて大事であり、続いて隣邦諸国、こういう順番にくると思います。
  62. 北川石松

    ○北川委員 軍事的にと言うと、日本は平和条約と平和外交を基本にいたしておるし、日本の憲法では軍隊はあり得ないのでありますが、アメリカ日本とのつながりというものは現在の体制では切っても切れぬ仲でございます。対外援助費その他では、ASEAN、東南アジアの低開発国に対する日本の援助というものは決してまだ十分ではないと思うのですね。では、果たして外交の中で事前に諸外国の動きを速やかにキャッチしなければいけないというのは、欧州諸外国であろうかソビエトであろうか、あるいはイランのあの周辺であろうか、中国とベトナムの間か、あるいは北鮮と韓国の間であろうか、こういうところの分析をしてまいりましたときに、私はソビエトの動きというものが日本に対して一番先鋭化されておるのじゃないかと思うのでありますが、これについていかがですか。
  63. 園田直

    園田国務大臣 ソ連邦は御承知のとおりに日本の隣接する重要な国でありますから、この国の動きはきわめて大事であります。
  64. 北川石松

    ○北川委員 いま外務大臣は、重要な国である、こう言う。これだけでは、外務省が果たしてソビエトに対してどのように対処しておるかということに対して、われわれ日本人か、そういう外務省の方針であれば択捉、国後を初めとする北方領土四島に対しても、あるいは日中条約後のソビエトの動きというものに対しての日本の態度というものに対しても、必ずしも心の中に、ああよかったなと私の意には響いてこないのでありますが、再度外務大臣お答えを願いたいと思います。
  65. 園田直

    園田国務大臣 ソビエトはあらゆる意味において重要であるということは御承知のとおりでありまして、日本が懸念を払うべき大変な重要な国であります。
  66. 北川石松

    ○北川委員 重要である、重要であると言っておると時間がありませんが、ただ私は、日中条約というものは、言うなれば日本の国の中の法の運用いかんによって日本の国民の安全を保っているように、世界各国との日本の安全を保つということはやはり条約が大きな役目をする、このように考えるのであります。そういう点について、日中条約というものが世界の平和に寄与するというこの大きな前提に立って法の運用をやらなければならない。それは中国と日本条約による法の運用にかかってくると私は思うのです。そういう点についてソビエトと条約を早く進めていかなければならないと思うのでありますが、そのために日本のソビエトに対する公館員をふやし、あるいはこれに対する予算を大幅に計上してでも日ソの平和条約というものを結んでいく必要があると思う。その平和条約の上に立って北方四島というものは完全に日本に返ってくる。これの自信と前向きの姿勢がなくては外交の一つの大きな責任を果たし得ないのではないかということを私は感ずるのでありますが、再度外務大臣に御答弁を願いたいと思います。
  67. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言は私も全く同意見でありまして、そのとおりだと考えます。御承知のとおり、日本はこの前の戦争によって外交関係が中断をいたしました。そこで外務省は閉店休業の状態。戦争が終わってから終戦連絡事務所ができた。それは通訳係をやったわけであります。その後だんだんと外交関係を進めてきたわけでありますが、軍を持たない日本、これはまず第一に、弱いウサギが耳が大きいように、情報収集の能力がなければならぬことは事実であります。かつまた平素から各所と交際をして、たとえばソ連の内部の情報はフランスで耳に入るとかあるいは米国で耳に入るとかいろいろあるわけでありますから、外務省の機構そのものが時勢に合わない機構であることはおっしゃったとおりでありまして、それが他の役所と同じように行政改革の対象になって一律に抑えられていることは日本のためにきわめて不幸であると考えております。例を挙げませんけれども、イタリアの外務省の機構よりもはるかに日本が少ない。こういうことから考えてみましても、情報さえも大使館の電報だけではなかなかわからぬ、こういう状況でございます。
  68. 北川石松

    ○北川委員 イタリアがソビエトに派遣しておる外交官よりも日本の方がはるかに少ない。これはまさに残念至極であり、外務省というものは、もちろん国会の審議あるいは日本のいろいろな動きというものを重要視しなければいけないけれども、一つの大きな信念を持ってやるならば、堂々と、予算を繰り越すのじゃなくて、足らないからなお補正予算を組んででも任務を遂行したいという前向きの姿勢がなくてはならぬと考えております。外交の諸問題は、明治以来のマンネリズムの中ではとうてい解決していかない、前向きでやっていかなければならない。人間それぞれに長所もあり、また善も悪もございます。ましてや世界各国の人間を相手にするのでありますから、日本人の優秀さ、よさというもののみで世界を見てはならない、このように考えます。そのためには、ソビエトの中に日本人をより多く住まわしめ、より多くソビエト人と友好を保つことも必要であろうと私は考えるのであります。  そういう点において、たとえばシベリアの開発に対してソビエトは日本に大きく期待をしておる。この期待は日本技術日本の経済に対してであると思う。しかし、このシベリア開発というものはソビエトとの平和条約を締結した上でやらなければならない。日本の商社が先に立って、もうけに走ってしまうような、商社の独断を許すような外交であってはならない。商社を誘導し、商社に対して厳しい姿勢を持つ政治でなくてはならない。そういう点において、ソビエトと友好条約を一日も早く結ばなければならない。同時に、ソビエトが欲するところのもののみを日本が唯々諾々と受けてはならない。しかしながら、相手の国に入っていくおおらかな心も必要であろう。こういう意味におきまして、いま世界情勢の中における日本外交の各国に対する分野の中で、ソビエトに対する外交が一番重大じゃないかという見解を私は持つものでございますが、外務大臣、いかがでございましょう。
  69. 園田直

    園田国務大臣 非常に貴重な御意見で、そのとおりであると考えております。
  70. 北川石松

    ○北川委員 そのとおりであるという外務大臣の御意向でございます。政治というものは継承されていかなくてはならない。受け継がれていかなくてはならない。大臣がかわろうが、日本の外交は継承された伝統の中にあって信頼と信義をもって当たっていかなくてはいけない。外務大臣は間というもの――剣道の間でございましょうし、ためでございましょう、そういういろいろなものをみずからの血にし、肉にしておられますので、私は特に今後の日本の対ソ外交の中に、間とためと決断と、いまたたくときはたたく――外交においてでありますよ、武力においてはとても戦い得ない。日本海にはソビエトの潜水艦がうようよしておる。いろいろな兵器、武力においてはとうていソビエトと対抗できない。知性と技術と信義においてソビエトと対抗して、北方四島返還という日本国民の悲願を達成すべきである。これを切にお願いしておきたいと思います。  次に重要なことは、後進国、ASEAN諸国を初めとする日本の対外経済援助を仰いでおる国に対する日本の外交方針であると考えるものでございます。  先ごろ本年度の予算を審議いたしましたときに、経済開発等の援助費が歳出予算額中百六十億円、五十年度からの繰り越しが百三十三億円、予算原額二百九十三億、支出済み歳出額百七十二億、五十二年度への総繰越額は百十四億で、そのうち九億円は五十年度から繰り越し、さらに五十二年度に繰り越した、事故繰り越しというのでありますが、こういう点を調べてみますと、インドネシア、バングラデシュ、スリナム等への日本の援助が十分でないと思う。形は計上されても実際に向こうの国においてどれほど生かされておるか、こういう点について御答弁をお願いしたいと思います。
  71. 園田直

    園田国務大臣 日本経済協力は、今年度予算では財源がつらい中にも財政当局は非常に努力をしていただきまして、日本の年来の方針であった五年間倍増を、三年間倍増を達成するだけの予算を大体つけてもらったわけであります。しかし、それが達成された場合に、GNPの比率は幾らかというと〇・三二、実績面では〇・二一。国際的な平均目標は〇・七でありますから、今後とも量、質ともに格段の努力をしなければならぬと考えております。  その中で、インドネシアのお話が出ましたが、インドネシアに対する日本の援助、協力はASEANの国では最重点になっておりまして、一番高いはずであります。なおまた、今後もインドネシアの次の五カ年計画には全面的に協力するつもりでおります。
  72. 北川石松

    ○北川委員 いま外務大臣が本年度は大幅にとおっしゃったが、五十三年度は四百九十億円と大幅にアップされた。五十四年度は六百五十億円という数字を計上しておられる。これは数字の計上でございまして、そういう点で予算が完全に執行されなくてはならない。ただいま冒頭に御説明のありました五十一年度予算の経済開発の援助が繰り越されてきておる。しかも、この繰り越しが必ずしも相手国の事情によってのみ繰り越されたのではなくして――もっともっと大胆に後進国の中に入っていって、真心をもってこの予算の援助を執行されようとするならば、このような繰り越しはないのじゃないか。その繰り越しがこれだけありながらこれだけの、六百五十億円の予算を組む。これは消化できるか。食滞しないか。こういう点で、外務大臣が、各省と連携を保ちながら、それを担当する係官に御鞭撻と御指導を与えていただきたいと思います。さもなくば、せっかく日本がドル減らし――余り感心した言葉じゃないが、ドル減らし、ドル減らしということを最近よく言われますが、ドル減らしというような言葉の中で日本が予算を組むというならば、これは断じてよろしくない。そんな予算の組み方はあり得ないのであって、そういう点を考えますときに、本年組みました六百五十億円というものは、有効に相手国の血にし肉にしていく、技術そして精神面、そういう真の援助でなくてはならぬと思いますが、いかがでございましょう。
  73. 園田直

    園田国務大臣 予算に計上された金額をできるだけ全額使いこなすということは、きわめて大事であると思います。ただ、数字の上では繰り越しになりますが、一つ日本の会計年度と相手国の会計年度が違うという点もあるわけであります。もう一つは、工事のことでございますから、四月の会計年度を越して両年にわたる工事契約もあるわけであります。これはどうしても繰り越しにならざるを得ない。相手の自主独立の体制にこたえ、相手と相談をして実際に役に立つように援助をしたいという点から調査をやっている、各省の連絡があるわけでありますが、先手先手と打って、なるべく早くそれが短期間に詰まるよう、そして実績面が上がるように前々から努力をしております。いまの御注意がありましたから、ますますその努力を続けて予算を消化するようにいたします。
  74. 北川石松

    ○北川委員 外務大臣が十二時半になると所用でお立ちになりますので、いま御答弁がございましたので、それにさらに相手国の会計年度といろいろ違う点もこちらも十分承知はいたしておりますが、ただ、もう過ぎ去ったことでありますが、たとえば理事国に日本が負けたという現実が昨年暮れに示されましたね。ああいうような形が後進国からとられてくるということは日本に対する不信である。せっかく日本がこれから一つでも多くの友好国を、世界で一番友好国を持っているのは日本であるという形が世界平和の日本のとるべき道だ、このように考えるのでございます。  そういう点から見ますと、援助というものはドル減らしというような形でなしに、相手国の実情を十分把握して、その中に骨を埋める、相手と血と血の交流――血と血の交流までいくということは、相手国の女の人を日本人がめとり、そしてその子供を産むというくらいの情愛の深い援助をする気持ちになるならば、私は後進国に対する援助というものはすべて生きてくるのではないか、こういうことでございまして、六百五十億を本年度は計上していただいたことを大変うれしく思いますが、これをもって足れりとするのではなくて、なおなお予算が足らない、補正で組んでこいというくらいの前向きの姿勢を持って、しかも繰り越しのないように、会計年度の違うということはさらさら承知でございますが、もうすでにこれを出してから十年余も経過しようとする今日、私はそういう点の配慮を今後していただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。いかがでございますか。
  75. 加藤清二

    加藤委員長 外務大臣に申し上げます。お約束の時間となりましたので、御退席なされて結構でございます。
  76. 園田直

    園田国務大臣 はい。  おっしゃるとおりでございまして、少なくとも経済援助上で黒字減らしだとかそういう利害、打算でやるべきではない、誠心誠意相手の気持ちになってやるべきだ、こういうことはおっしゃるとおりでありますから、今後とも、十分注意をしてその実が上がるように努力をいたします。
  77. 北川石松

    ○北川委員 外務大臣にちょっと一言、お礼を申し上げておきたいと思います。大変多端なときでございますから、どうぞ御自愛していただき出して、御健康でやっていただきたい。前向きでお願いをいたしておきます。ありがとうございました。  では、続きまして海外援助費の問題でありますが、関係所管の御意見を聞かしていただきたいと思います。  大臣は、いま大変前向きの姿勢で御答弁願ったのでありますが、この繰り越してきた原因については係の方から御答弁をお願いしたい。
  78. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  繰り越しの原因につきましては、いま大臣からお話があったとおりでございますが、理由はいろいろあるわけでございますけれども、その一番大きなものがいま大臣からお話がございましたような相手国との会計年度の違い、それからわが国の無償援助の場合、これはプロジェクト無償と申しまして、相手国にたとえば訓練センターとか病院とかという施設をつくる、そういう形態の援助が大宗を占めているわけでございますが、その場合には四月に予算が成立いたしましてから相手国と交渉いたしまして、後、設計図を引くとか場所を選定するとか、いろいろ準備がございまして、実際に工事に着手いたしましてもなかなかその会計年度の中でその工事が終了するところまではいかないということがございまして、これが繰り越しを必要とする大きな原因の一つかと存じます。  そのほかにもいろいろあるわけでございますが、たとえば相手国といろいろ相談をして、かなり時間が経過してから相手国の方の計画が変わったということで、またその計画の差しかえというような問題が起こることがございます。わが方といたしましてもいろいろ改善策を考えているわけでございますが、たとえば一つは、翌年度の予算をどのように執行するかという計画につきましては、できるだけ早目に政府部内で計画を立てる、それで予算を御承認いただきましたら、できるだけ早く相手国側と相談に入るというような体制をとるということが一つでございますし、それから、先ほど相手国側の計画の変更で差しかえの必要が生ずるということを申し上げましたが、たとえばこれは技術協力の機材供与についてよく起こるわけでございますが、年度の初めに計画を一〇〇%ぴしっと決めてしまっておりますと、そういう変更が生じたときに対応がむずかしいということもございますので、最近始めておりますことは、三〇%ぐらい計画の段階で予備を見越しておきまして、差しかえの必要が生じた場合にはその予備の案件の中から充当していくというような形で、できるだけ執行のおくれを生じさせないようにするということもやっております。  いずれにいたしましても、御指摘のとおり、この執行のおくれの問題は相手国側、日本国、両方に原因があるわけでございますが、少なくとも日本国内で対応できるものは、いろいろな工夫をこらしながら執行率を高めるように努力いたしたいと考えております。
  79. 北川石松

    ○北川委員 いまの御答弁をいただきますと大臣と変わらないような御答弁のように感じますが、たとえばインドネシアの漁業訓練船、バングラデシュの中央農業普及技術開発研究所、スリナムの漁業訓練船に関するもの、これはどういうふうになっておりますか。一応お聞かせ願いたい。
  80. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘のございました案件一つ一つにつきまして具体的な現状を必ずしも把握いたしておりませんが、たまたまスリナムの漁業訓練船につきましては、これはわが国がスリナムに対しまして援助供与することにいたしまして、実際に現物が相手国の政府の手に渡りまして、単に無償援助ということだけにはとどまりませず、さらにこれに技術協力を加えまして相手国の水産業の発達に貢献するというプロジェクトでございます。それで漁業訓練船を供与いたしました後、日本人の専門家が五名現地に参りまして、実際に相手国の人たちの訓練に従事しているという一種のプロジェクト方式の援助をとっているわけでございます。たとえば海員訓練センターにつきまして執行のおくれが生じておるかどうか、ちょっと私現状を把握をいたしておりませんが、もしあるといたしますれば、先ほど申し上げましたようなことで、実際に予算をいただきましてから計画を詰め、工事に着工し完成するまでの間に時間をとったということではなかろうかと存じます。
  81. 北川石松

    ○北川委員 この対外援助についてでございますが、いまの御説明の中で、必ずしも十分満足すべきものではありませんが、関連いたしまして海外経済協力基金、これについて、五十一年度では伸び率九・五%、五十二年度で一六・四%、こういう形でございますが、これについての係の方の御説明を一応願いたいと思います。
  82. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  経済協力の中で、海外経済協力基金は政府開発援助につきましてほぼ半分ぐらいのウエートを占めております。そしてその事業規模の伸びはいま先生のおっしゃっているようなところかと思いますが、関連いたしまして、その伸びにもかかわらず余り支出がはかばかしくないじゃないかという御意向があろうかと思います。  これについて見解を申し述べますと、基金の貸し付け自体は原則といたしまして事業の進捗に応じて行います。事業の進捗自体はあくまでも買い入れ人すなわち相手国がその責任において実施をするものでございますので、国内と違いまして、いろいろ思わぬ事情がありまして貸し付け実行スピードが落ちるということも否めなかった事実でございます。借し付け実行のスピード自体は、それはあくまでも買い入れ人の事業実施能力ということに第一義的には依存するわけでございます。  しかし、基金といたしましてもいろいろ努力をいたしております。たとえば貸し付け実行を促進いたしますために、受け入れ国に対します執行率を促進するミッションを派遣いたしまして、こういうふうにやって事業振興を進めてもらいたい、こういうふうな手続で借り入れを早目にしてくださいというようなこともいたしております。また、借入国から担当者を呼びまして、いろいろ借入手続等につきセミナーを兼ねてやっており、兼ねて国内の事情等も見学をしてもらうというようなこともやっております。また、手続の簡素化、合理化にも努めておりますし、今後とも一層努めなければいけないと思っております。  さて、そういうことで、一体基金の最近の執行率はどうなっているかというのを御説明いたしますと、五十一年度は六六%、悪かったわけでございますが、五十二年度には、先ほど申し上げましたような努力も積み重ねまして、約七四%と伸びております。五十三年度はまだ終わっておりませんが、かなり大幅に改善されるものと期待いたしております。
  83. 北川石松

    ○北川委員 ただいま御説明をちょうだいいたしまして、相手国のあることだから大変むずかしいとは思いますが、この経済援助、経済基金を指導しなくちゃいけないと思うのですね。日本は指導方でしょう。相手国と日本と、この間に立って海外援助を執行していくため必要な会社は、日本の会社か向こうの会社か。向こうの会社だけでしょうか、どうでしょう。その点ひとつ聞かしてください。
  84. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  それはいろいろの形があり得ると思います。たとえば無償資金協力について申しますと、先ほど申し上げましたようなプロジェクト援助の場合には相手国の政府が入札をするわけでございます。これは従来日本の物資、サービスをもって援助を行うということになっておりました関係上、日本関係業者の中から相手国政府が入札をいたしまして、それで調達先を決めるというようなことが行われるわけでございます。  それから物資を供与いたします場合には、やはり相手国の政府に資金を供与いたしまして、これをもって相手国政府が物資を調達するわけでございますけれども、これも日本のメーカーから直接調達するということにはなかなかまいりませんので、やはり間に日本の商社が介在するという例が一般的であろうかと存じます。
  85. 北川石松

    ○北川委員 外務省の経済等の援助の中では、一九七三年度一二・六%、七四年度四三・三%、七五年度二四・四%、七六年度に五八・六%と低水準であることをみずから指摘しておる。こういう点を今後、先ほど大臣の答弁もございましたが、相手国に十分感謝の意を持たれるような実のあるものにしていただきたいということをお願いをしておきたい。  初めに申し上げました日ソ条約あるいは国際連合との関係について、伊達条約局長また賀陽国際連合局長がおられますが、簡単に所信を述べていただきたいと思います。
  86. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 国連局としてどういう点についての御質問でございましょうか。
  87. 北川石松

    ○北川委員 私が先ほど園田外務大臣に、ソビエトとの平和条約を結ぶことが択捉、国後を日本に返還させる先決条件だということを申し上げた。それについてあなたは、国連局長としてどういう見解を持っておるかということです。
  88. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 国連におきましては、先生御指摘の問題が取り上げられたことはいままでないわけでございまして、直接にこの問題に国連がかかわり合ったことはいままでございません。ただ私は、外務省の一員といたしまして、先生の御指摘のとおりと思う一人でございまして、将来こういうような問題が国連で取り上げられるような契機が出てまいりました場合には、それに向かって全力を尽くすのが当然の務めだろうと考えておる次第でございます。
  89. 北川石松

    ○北川委員 伊達条約局長はいませんか。――いなければ賀陽さんからお伝え願いたいと思います。  そういう契機が出てきたら当然である、こういうようにあなたはお答えになった。国連局長としてどういうことかという再質問の形で、私が外務大臣の答弁を契機として質問申し上げたことを一つのポイントとしてあなたにお願い申し上げた。条約局長はおられないが、これは日本条約問題になりますので、いろいろと込み入った問題はあると思いますが、特に冒頭外務大臣に申し上げました日本とソビエトとの関係、ソ連の武力は世界平和に決して寄与しない、武力こそ私は最も悲しきものであるということをソビエトに知らしめなければならない。ソビエトみずからに武力世界制覇というものほど悲しいものはないということを知らすところの国連でなくちゃならない。そういう前向きの日本の外交姿勢というものをお願いを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  90. 加藤清二

    加藤委員長 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十八分開議
  91. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場猪太郎君。
  92. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 バンダルシャプールの石油化学コンビナートの件についてお伺いをいたしたいと思います。  最近、わが国企業海外進出であるとかあるいは海外経済協力等、非常に活発な活動が行われておりますし、その中でバンダルシャプール石油化学コンビナートの問題については、ただ単に石油の生産だとかあるいは企業の消長であるとかといったことだけではなしに、外交問題も含んでおりますし、そしてまた、わが国の今後の石油の需給計画にも大きく影響するところであろうと思いますし、そういう意味では、ただ経済的な問題だけにとどまらないと思います。しかも正確な情報がいまのところまだ入っておりません。したがって、この計画は中断だという記事が出てみたりあるいはまた続行だと言われたり凍結だと言われて、非常に情報が不安定であります。そういう意味ではこの際にはっきりした情報を私どもも知っておく必要もあると思いますし、外務大臣としていまどういう認識をしていらっしゃるのか、ひとつ正確な情報をお知らせいただきたいと思います。
  93. 園田直

    園田国務大臣 イランについては、今日の政権ができるまでは変化が急速でございまして、わが国初め各国とも相当困ったようでありますが、新政権ができた後は、まず第一は国内の治安回復に重点を置いているようであります。自動小銃初め二十万丁の兵器が民間人に渡り、政府に回収されたのが二万丁、しかも現政権に対する批判グループも数々ありまするし、あるいはまた一般の国民も前の王朝制の場合と今度の政権と変わっておるのか、あるいは同じではないかという不安等もまじって、なかなかまだ流動的であります。  しかしながら、一方、今度の政権は手がたく組閣を進めておりまするし、回教徒一色ということではなくて、回教徒出身の閣僚というのはほとんどおりませずに、ほとんどが経済の専門家あるいは学識経験者等で占められておることは、これは手がたいことであると考えております。  なおまた、新政権の外交方針というのは、いままでイランの方で排他的な運動をやった大国、欧米の諸国に対しては反発がありますけれども、しかしそれにもかかわらず、大体とる線は非同盟中立主義の線をたどるのであって、もちろん大国の、米国の言うとおりにもならぬが、またソ連に対しても普通の交際をしたいという意識もあらわれております。  なお、国内が一番問題でありますが、国内ではストライキがだんだんやまっていくとか、政府は精力的に各工場を回って従業員に説得をやっているような状態でありまして、逐次安定していくのじゃなかろうか。なお石油政策初め、政策等についても逐次打ち出されてくるということを、イランの政府から直接承っておるわけでございます。
  94. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 直接いまの新しい政府からということは、どういうルートで、どういうふうな方法で伝わってきておるのですか。
  95. 園田直

    園田国務大臣 まず治安の回復が終わったら、国内の経済あるいは体制の確立を図るということを念願としておるようでありますが、それについては、まずイランの財政は石油の輸出をなるべく早くやることが先決問題であるというのがイランの総理大臣並びに石油公団総裁の考え方のようでございまして、これを中心にして速やかに経済がもとに返るように、しかしそのほかにインフレその他の問題がありますから、これまた問題でありますが、逐次おさまっていくと考えております。
  96. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ通産省の方にお伺いいたしますが、このバンダルシャプールのコンビナートについて、先ほどもちょっと触れたのですが、ニュースとしては、工事が中断というニュースが流れたと思えば、凍結だと言ったり、あるいはまた続行しておると言ったり、いろいろのニュースがはっきりしない。どれが正しいのかわからないような状態で、混乱したまま流れておるわけでありますが、これについて現状をどのようにとらえていらっしゃるか。
  97. 小長啓一

    ○小長説明員 ただいまの御質問でございますが、一部の新聞に工事は中断しているのではないか、一部の新聞には政府は積極的に支援を決定しているのではないかというような記事が乱れ飛んだわけでございますけれども、私どもは、真相は次のように理解をしておるわけでございます。  現地の工事は、八五%程度完了しておるわけでございます。イランの新政権は、先ほど園田外務大臣もお触れになりましたけれども、本計画が国民生活の向上にもつながるプロジェクトであることから、一刻も早く完成させたいというような方針を打ち出しておるようでございますし、日本側の投資企業といたしましても、本計画の完遂の方針に変わりないというふうに私どもは承知しておるわけでございます。しかもまた、現地のイランの国内事情も、革命後少しずつ改善の方向に向かっておるというふうに聞いておりますので、今後とも工事中断といったような事態にはならないものというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほどちょっとお触れになりました、イラン側負担分の肩がわり等々の支援措置を決定したのではないかというような問題でございますが、それにつきましては、政府として具体的な支援措置をすでに決定したというような事実は全くございません。
  98. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 新しい政府の希望的な観測とか希望的な方針というのはよくわかりますけれども、一たん混乱状態に陥ったイランの国内、これはもう収束するというのは大変なことだと思います。しかし、それが具体的に軌道に乗るについては、いまどの程度軌道に乗っておるのか。たとえば復旧をするにいたしましても、技術者の相当数の人たちが帰っておったり、あるいはまた輸送がきかなかったりというような問題もあるでしょうし、現実の問題として、希望的な観測とは別に、どの程度の維持が行われておるのか、そして工事が一〇〇%とすれば、どれぐらいの工事をいま進められておるのか、そういう点についてお知らせいただきたい。
  99. 小長啓一

    ○小長説明員 バンダルシャプールの現地サイトにおきましては、調達可能な資機材及び資金で工事が続行されておるわけでございます。二月二十六日現在、私どもが承知しておる情報では、サイトには約千九百人の日本人が残っておるわけでございます。最盛時は三千六百人を超える日本人がいたわけでございますが、漸次引き揚げておるわけでございます。引き揚げるというのは、工事を中断して引き揚げておるのではなくて、自分の分担の仕事が終了したことに伴いまして引き揚げておるということでございまして、したがってその工事は続行されておるというのが現状でございます。  しかもまた、今後のスケジュールといたしましては、工事が完了した人たちはこれからさらに九百人ないし千名程度引き揚げることが想定されておるわけでございまして、したがって二月末には――二月末はもう過ぎておるわけでございますが、十分確認はまだされておりませんが、約千人程度に減るのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかし、これは工事の中断を意味するものではないことは、冒頭申し上げたとおりでござます。
  100. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その千人程度残ることができれば、いままでと同じようなベースで仕事は進んでおるというふうに見ることができるわけですか。
  101. 小長啓一

    ○小長説明員 これは仕事量自体が減っておるということでございます。  ちょっと具体的な例と申しますか、引例をさしていただきますと、たとえばビルディングの工事をやっておる際に、外装工事が完了いたしまして、いよいよ内装工事に入った。外装工事関連の人たちは仕事がないのでこれから引き揚げる、内装工事関連の人たちはこれから日本から現地に行くということになるわけでございます。  ところが、新しく行く人たちにつきましては、実はその現地でまだ十分ビザを発給していただけないというような点がございまして、必ずしもこちらの計画どおりに人が派遣されてないという点はございますけれども、こういう面につきましても漸次改善されていくのではないかというふうに期待をしておるわけでございます。
  102. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 現在の千人程度というのは、そうすると予定から言うたらどれぐらいの程度になるわけですか。
  103. 小長啓一

    ○小長説明員 予定というのはなかなかむずかしいのでございますが、一応こういう騒動が起こる前の話といたしましては、九月末くらいに一部プラントが完成をいたしますということを前提としておったわけでございますが、そのテンポからいたしますと、かなり全体の工事はおくれておるということは事実でございます。
  104. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 かなりというのはどの程度なのですか。当初は九月末ぐらいにほぼでき上がると言われておったのですが、では、その人数の点でなしに、具体的に三カ月おくれておるとか半年おくれておるというような表現の仕方で言えば、どれぐらいおくれておるのですか。
  105. 小長啓一

    ○小長説明員 なかなか量的な把握はむずかしいのでございますけれども、全体としては、いま八五%は完了しておるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、実は、これから具体的に進めるに当たりましては、イラン側とかなり事務的に詰めなければいかぬ問題が多いわけでございます。したがいまして、いまの時点で想定いたしますと、少なくとも二、三カ月はおくれておるのではないかという感じでございます。
  106. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ人的な面だけではなしに、協約によれば双方が同時に資金の分担をし合って建設を進めていくということになっているはずなんですが、その資金的な面については、銀行の閉鎖等あり、結局相当おくれておるのですね。世評では三百億足りないとかいろいろ言われておりますが、実際はどれぐらいの資金計画になっておって、そしてどれぐらい足りないのか。
  107. 小長啓一

    ○小長説明員 当初の計画では、五千五百億円が総額の金額ということで想定をされておったわけでございます。ところが、騒乱が起こる前の段階でコストオーバーランの問題がすでに論ぜられておりまして、最低一千億円程度のコストオーバーランは出るというふうに想定をされておるわけでございますが、実はその点につきましては、むしろ日本側の企業が先方の当事者との間で相談をするということになっておったわけでございますが、こういう騒乱のおかげでまだ具体的に相談できる機会が得られてないというのが現状でございます。  それから、五千五百億円のファイナンススキームの中で現実にいまどれだけ資金が調達されておるかということにつきましては、実はイラン側が出資をすべき総額というのは五百億円、それに対応いたしまして日本側の出資総額というのは五百億円ということになっておるわけでございますが、実はまだ満額が出資はされてない状況でございまして、日本側はいつでも出資をできる態勢は整えておるわけでございますが、イラン側と日本側とが五〇対五〇で出資するたてまえになっておりますので、先方との話がつき次第、また先方の資金調達ができるということを確認次第、日本側は出資できる態勢になっておるわけでございます。
  108. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうしますと、まだ現に八尋副社長が行っておいでになるそうですが、それがお帰りにならないと現地の事情はわからないのでしょうけれども、現実に仕事は進んでおる、といって資金の方はもうすでにいまでも切れておるわけですね。特にこの一月の終わりごろ、十二月の終わりごろから現地で資金調達するために、現地資金を集めるのに大わらわしたというような状態が続いておる中で、そんなに安心していいような状態で進んでおるのでしょうか。
  109. 小長啓一

    ○小長説明員 五千五百億円の中で、日本側の負担分は出資を含めまして総額三千億円ということになっておりまして、さっき申し上げました出資の部分を除きまして、融資等で先方に供給すべきものにつきましては、日本側は順調に供給を続けております。したがって、いま先生の御指摘の通貨が不足しているのではないかというのは、むしろ現地におきまして、円は送金されておるのだけれども、現地通貨にかわらないという面で一部資金ショートという問題がサイトに起こったわけでございますが、これもテヘランから直接現地通貨を輸送するといったような便法も講じたこともございまして、現在時点では何とか資金も回っておるという状況でございます。
  110. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 では、イランの新しい政府の側からの出資というものは、同等に今日も出つつあるわけなんですか。
  111. 小長啓一

    ○小長説明員 そこの点が実はまだ問題でございまして、先ほど申しました日本側、イラン側双方五百億円ずつということの中で、まだイラン側、日本側同じ金額を出資してないものがあるわけでございます。その点につきましては、今般イランに行っております企業代表が先方と話し合いをされる過程の中で、具体的な先方の案が出てくるのではないかと期待をしておりますけれども、まだ現実にそういうアプローチをされたということは聞いておりません。
  112. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 日本側だけがずっと出すということはなかなかできないと思いまするし、方針が早く決まらないと、結局幾ら希望しておっても仕事の方は現実に前へ進まなくなると思いますし、ストップするんじゃないでしょうか。  そういうときの用意として、この間の分科会で、外務大臣から、もしそういうふうな事態が来て政府が受け持たなければならないのだったら、そういう用意はあるというふうな御発言があったかに承りましたが、そのとおりでございましょうか。
  113. 園田直

    園田国務大臣 イランの情勢、まず背景を申し上げますと、新政権ができるまでは欧米排斥運動が非常に高まりまして、それに巻き込まれて日本人の方も生命の危険があったり、あるいはいまの工場の破壊等があるのじゃないかという危殆も非常にあったわけでありますが、新政権ができましてから一挙に好転いたしまして、いまでは大使館等の館員も、小型の車でこそこそ歩くよりも、大型の車で日の丸をつけて歩いた方が安全であるというふうに変わってきた。  変わってきたということは、何も日本が特別手を打ってこれが成功したということではなくて、欧米の排斥運動の反動として日本に期待するという面が非常に大きかった、それから政権の承認が早かったことがよかった、こう思っておるわけでありますが、向こうの総理、石油公団総裁とわが方の大使と絶えず接触しながらやっておるわけでありますが、いまの問題についても、希望ということを馬場委員おっしゃいましたが、そのとおりでありまして、新政権もとにかく石油を早く出したい、それからいまの工事は八割方できておるが、これだけは一刻も早くやりたいということを言っておるだけで、具体的にさてやる場合にどういうふうにやるのか、資金はどうなるのか、そういう具体的な検討に入るまでには向こうがいってないようであります。向こうの要求は、早くつくり上げて、技術移転を早くやってくれ、イラン人が主体になって工場が管理できるようにしてくれという希望はあります。  そこで、私の方では、今後治安が回復された暁には、いろいろ困難な問題がありましょうけれども、要求があれば万般協力する用意があります、場合によってはわが方から調査団を派遣をして、お国の方と私の方とで具体的に相談をしたい、こういうことに対して、まことに結構である、しかし、ごらんのとおり、わが方はいまのところはまだ話し合いをする具体的な案がないから、こちらの方で準備ができたらひとつ相談をするからおいで願いたい、こういうことになっておりますので、実は私、通産大臣と二人で、事務的には詰めずに、こういう状況にあるから、時期が来たならばひとつ各省、民間人も入れた調査団を向こうへやって、話し合いをやる必要があると言っているような状態でございまして、資金の面その他についても全然見当もつかなければ、向こうも何を日本に期待したらよいかという期待だけであって、具体的な問題はないわけであります。  そこで、いまの問題等でも、向こうの方で要求があれば何らか政府はできるだけの協力はしなければならぬ。ただ、ここで注意しなければならぬのは、欧米の人々が追い出された後、火事どろ式に日本が乗り込むとか、あるいは欧米が排斥されて、日本に好感が持たれたから、押しつけがましくこちらから石油を目当てに何しようかにしようということになれば、また欧米と同じようにイランの国民の反発を買うわけでありますから、この点は十分注意をしながら、向こうと連絡をしながら、向こうの要求に応じて受けて立つということにしたいと考えておるところでございます。
  114. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま外務大臣言われたように、こちらが幾ら積極的にやり、そしてまた好意的にやろうと思っても、他の諸外国との関連もこれあり、こういうふうにおっしゃったわけですから、確かにいろいろな問題を配慮しながらやらなければならない問題だと思います。そしてまた、先方の政府がはっきりと具体的にお願いをしたいという希望を出せないような状態になっているということは、これは決定を見るまでに、要望を出すに至るまでに相当長期間かかるのじゃないでしょうか。ということは、当分の間わが方、日本側だけでこれを継続していかなければならぬ時期が相当あると思うのですね。そういうときの資金対策というのは十分にいまついているのでしょうか。
  115. 小長啓一

    ○小長説明員 私どもは、現在日本企業代表がイランを訪問しておりまして、先方との接触の努力をしておるわけでございますので、その接触の結果を待ちまして、彼らの方から何か具体的な要請が出てまいりましたら、それを踏まえまして、関係各省と連絡をとりながら対応を考えていきたいというふうにいま考えておる次第でございます。
  116. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 聞くところによりますと、去年の暮れから二月十一日を境にして情勢が大いに変わりましたから、あるいは一日の違いがずいぶん情勢の違いになるかもわかりませんけれども、いままでの民間ペースでの投資というものは非常に無理があるのじゃないかということで、輸銀を初め興銀を幹事団とする協調融資についても異論があるというふうな、私ども新聞記事でしかわかりませんけれども、そういう記事を見る限りにおいては、幾ら希望的な観測があっても、この工事はなかなか実際には進めがたいのじゃないかというふうな観測がされるわけでありますが、その点はいかがでしょう。
  117. 小長啓一

    ○小長説明員 いま先生御指摘の点は、恐らく一月二十三日前後の新聞記事ではないかと思いますけれども、実は日本企業の代表でございますICDC社長の八尋さんが、本プロジェクトの日本側協調融資銀行団に対しまして、日本側の支払い約束額について融資方を要請をしたわけでございますが、それに対しまして、銀行団は前向きな検討を約したわけでございます。その際、物心両面で政府の支援を求めるべきである、また輸出保険の付保が前提条件であるといったような発言が銀行団から行われておることは事実でございます。その後、一月末、二月末、いずれも銀行団から計画どおりの融資が行われております。
  118. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ということになれば、イラン側の態度が明確にならなくても、日本独自の立場だけでもこれはずっと遂行していくという方針をはっきりと決めておいでになるわけでしょうか。
  119. 小長啓一

    ○小長説明員 そうではございませんで、いま申し上げましたのは、すでに決まっておる五千五百億円のファイナンススキームの中で、イラン側の出資に対応した日本側の出資分を除きましたその他の融資部分につきまして、日本側が当然分担すべきものということで決まっておるものにつきまして、計画どおり支出が行われておるということを申し上げたわけでございまして、これからの問題はまた別の問題でございます。
  120. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その間でも、工事を続行するためには当然できるだけ早い機会にイラン側の出資も実行を伴わなければならないわけでしょうが、いま現在ではそれが見通しがつかないということなんでしょう。そんな条件の中でどこまで続け得る可能性があるのでしょう。
  121. 小長啓一

    ○小長説明員 私どもは、先ほども申し上げましたように、八尋さんからの連絡を一日千秋の思いで待っているというのが正直な現状でございます。  それから、いま五千五百億円のファイナンススキームの中で具体的にどこまで工事が続行できるかということでございますが、これは先ほども申しましたように八五%完成をしているわけでございますから、何とか一〇〇%まで持っていきたいわけでございますけれども、千億を超えるコストオーバーラン分というのが別途生じておるわけでございますので、これから何%さらにオンできるかどうかというのは問題かございますけれども、いまの現地に蓄積されております資材、それから五千五百億円の中でこちらが計画どおり支出するということを前提といたしました場合にも、三月末ぐらいまでは工事の続行は可能であろうというふうに考えております。
  122. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 現時点ではなかなか判断しにくい点も多くあると思いますが、これは単なる経済問題だけじゃないと思いまするし、イランの国民のためにも続行しなければならぬと思うのです。  このプロジェクト自体ができ上がったときの問題点がいろいろあると思うのですが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  123. 小長啓一

    ○小長説明員 計画どおりでき上がったといたしました場合でも、一千億円を超えるコストオーバーランという問題があったわけでございますし、それからこのプロジェクトの完成と並行いたしまして、イラン側が別途独自に分担すべきものといたしまして、ガス源から本サイトまでのガスパイプライン、それから住宅の建設の問題、工業用水道の問題等々、イラン側が独自に負担すべき分野というのがあったわけでございますが、それらはいずれも今回の騒乱のおかげで必ずしも計画どおり進んでないという問題もあるわけでございます。したがいまして、本プロジェクト及びその周辺につきまして、かなりまだこれから解決しなければならない問題を幾つか抱えておるわけでございます。
  124. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 プロジェクト本体そのものが完成したとしても、いま言われたように工業用水の問題であるとかあるいはそこに働く人たちの確保ということでの住宅の問題というのは全然進んでおらないということは、完成したとしてもそれが稼働に至るまでの間相当期間がかかると思うのです。特に住宅問題など、少なくとも最低半年、一年ぐらいは見なければならぬと思うのです。ということになると、相当のおくれを見なければならぬと覚悟しなければならないわけですが、その点はいかがでしょう。
  125. 小長啓一

    ○小長説明員 私どもは、イランの新政府の最高方針が非常に本プロジェクトについて前向きである、したがって、その辺の考え方はそのうち末端にも浸透してまいりまして、したがって、日本側の代表でございます八尋さんが現地で折衝される際にもいい感触が徐々に出てくるのではないかということを期待をしておるわけでございまして、その過程でファイナンススキームについてもいろいろ前向きな具体的な検討が行われることを期待しておるわけでございます。その辺の朗報を待っておるというのが現状でございます。
  126. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その稼働するに至るまでも相当な困難な情勢があり、その間ずっと借入金ということでの金利負担というのは相当な額がある、四百億の負担であるとか五百億の負担であるとか言われておりますが、経営ということについて考えた場合にどうなんでしょうか。
  127. 小長啓一

    ○小長説明員 先生お触れになりましたように、本プロジェクトの具体的な採算性というような観点から見てまいりますと、今度予定されておりますコストオーバーランというようなことも考え合わせますと、なかなかむずかしい問題があることは事実でございます。  ただ、現時点でにわかに即断できない要素もあるのではないかと思いますのは、今後の石油化学製品の価格動向なり需給動向なりというのがどういうことになるのであろうかということとか、あるいはイラン国内市場におきます、ここでできました製品の販売動向というのがどうなるのであろうかというようなことも大きく採算には影響してくるわけでございまして、そういう問題につきましては、現時点ではにわかに判断できないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  128. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 新聞や雑誌等の情報でしかわれわれは伺うことはできないのですが、でき上がったとしても、まず第一にそのでき上がった当初は、このプロジェクト自体は、最初は政府にかかわりがなしに借款だけの問題であって、あくまで企業ベースで、非常に小規模な廃ガス利用という形での四十三年ごろからの発想だと聞いております。したがって、そのときには企業における独自の判断で、リスクも皆それこそ自前でという形で進んでおったのが、はからずも途中からこれは政府が関与するという形になってきたのじゃないでしょうか。  そういう意味では、特にその過程において四十六年、七、八年ごろから、エネルギー資源調査の自主開発構想ということで経済団体からも訪問がありましたし、そしてまた、四十六年に会社を設立させた当時には、まだ政府としては、通産省としては、いわゆるリップサービスの程度だったわけです。協力援助いたしましょうというリップサービスの程度だったのですが、その当時はそれこそ国内でも高度成長時代であって、少しでもこういう施設を増設したいということで、純然たる経済的な、会社の営利を目的としたそういう構想で進められた。  ところが、はからずも四十八年の例の石油ショック、それを契機として三木特使がおいでになり、さらに中曽根通産大臣も現地においでになって、十億ドルの混合借款なども行われ、そのときから急激に大きなプロジェクトに変わっていった。これはもちろん、こちらの日本側の事情だけじゃなしに、イラン側のただ単なる廃ガスの利用であるとかごく一部の原料生産ということじゃなしに、内需ということも考えて、イラン側の要請もあったということも事実でありましょうけれども、非常に大型のプロジェクトに変わっていった。ということは、このままでいけば民間ペースで企業がやっているわけですから、うまくいけば民間ペースの利益になる。もしこれがまずくいった場合に、結局政府の援助を求める、政府によって後のしりふきをするというような形になる、こういうプロジェクトに変質していったという過程があると思うのです。  そういう点での政府の責任というのは非常に大きいと思うのですが、その点はどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  129. 小長啓一

    ○小長説明員 先生御指摘のように、本プロジェクトがその当初の段階では民間主体の大型経済協力プロジェクトであったということは、御指摘のとおりだと思います。ただ、経緯を振り返っていただきますとおわかりいただけますように、ロレスタン地区の石油の権益の獲得との絡みで本プロジェクトが急浮上してきたことも事実でございまして、民間主体の経済協力プロジェクトではございましたけれども、一九七六年の三月の段階では円借款を供与する、あるいは輸出入銀行からダイレクトローンを供与するということを政府としてもお約束をしておるわけでございまして、民間主体ではございますが、政府が支援措置をとったという意味ではかなり政府的な色彩も強いプロジェクトであったこともおわかりいただけるかと思うわけでございます。  現在、そのプロジェクトが変質をしておるかという点でございますけれども、私どもは必ずしもそこまではまだ考えておりません。先ほども申しましたように、八尋さんが先方との交渉の結果を持ち帰られたところで、本プロジェクトをうまく進めるためにはどうすればいいかということを検討することになるわけでございますので、その過程で、従来の経緯を踏まえながら、具体的な検討を進めていくということになるのではないかと思っております。
  130. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当初から今日まで、形の上では依然として民間ペースだということだと思うのです。ただしかし、三井グループ五社の中でも三井物産を除いては、だんだん大きなプロジェクトに変わっていくことについて、これ以上負担に耐えられない、ある程度政府のもっと積極的な援助をという声もあるようですが、現在までのところはやはり民間ペース、当初の方針どおり変わりないということで来ているわけですか。それとも、もうここまで来たんだから、ひとつ政府にもっと積極的な介入援助ということをお願いしたいというところまで来ているのでしょうか。
  131. 小長啓一

    ○小長説明員 先ほども申しましたように、政府支援措置の具体的な内容につきましては、まだ全く白紙の状況でございます。
  132. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 現在では民間ペースで三井グループの判断に基づいてリスクも何もかも全部自主的な判断ということを言っているわけですね。しかし、先ほども言われているように、イランの政情がまだまだ固定的な状態にまで来ないということになると、今後の費用負担について行き詰まるような場合に、ある程度政府も負担をしなければならないということになると、先ほども言いましたように、まあ利益の上がるとき、うまくいっているときには企業側が利益を受け、そしてこれがまずく変わったときには政府がこのしりぬぐいをするという形になるおそれがあるのですが、その点はいかがなんでしょうか。
  133. 小長啓一

    ○小長説明員 非常にむずかしい問題の御指摘でございます。ただ、現段階で私どもが申し上げられますことは、三井グループが先方と詰めました結果に基づきまして、政府に対します具体的な支援要請を見た上で具体的に判断をしていきたいというふうに思うわけでございます。
  134. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私がいま言いましたようなことを外務大臣もちゃんと頭の中に入れていらっしゃるから、この間の分科会のときには、わざわざ三井グループを援助するというのではなくという断りをつけて返事をするという言葉を言われたと思うのですが、結果から見れば、政府は悪いときにはしりぬぐいをしなければならぬ。これは、最初から民間ペースだけでなしに政府と協調しながらのプロジェクトであれば、そういう取り決めも事前にできたのですが、いまはもし政府が手を引いてこのプロジェクトがうまくいかなくなった場合には外交上の問題にも発展する、したがって手を引くわけにもいかないし、といってもし資金がショートしたというような場合には政府が援助をしなければならぬという、非常に政府としてはつらい立場に陥っていると思うのですが、大臣、わざわざ三井グループを援助するというのではなくというお断りがあったということは、そういうことも頭の中にあったということでしょうか。
  135. 園田直

    園田国務大臣 私が申しましたのはそういう意味ではなくて、あくまでイランの政府がどうやるのか、それに応じていろいろな協力の用意をしたい、こう言ったわけでございます。
  136. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 純粋にそういうふうに言われたのでしょうけれども、結果から見たら私が申し上げるような形のものが出ていることは事実でございますね。その点はどうお考えになりますか。
  137. 園田直

    園田国務大臣 今後の状況次第でありますけれども、いま馬場委員がおっしゃったようなおそれもありますから、十分そういう点は検討して慎重にやりたいと存じます。
  138. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 これだけ大きなプロジェクトですから、一企業の問題じゃなしに、国としても失敗するわけにいかないし、十分その点国民の皆さんから理解を示していただけるような今後の対策というものを考えていただかなければならぬと思うのです。同時に、このプロジェクトが完成するような状態になるということはイランの石油の生産活動やほかの部面もそれぞれ軌道に乗ってくるということだろうと思うのですが、いま現在イラン全般としての生産活動がどういうふうな状況になるという見通しをつけておいでになるでしょうか。これはわが国の石油輸入政策にもかかわることでもあります。通常常識的に考えて正常な活動に半年ぐらいかかるだろうと言われております。少なくともこの秋まで、いままでのような状態で、輸入というのは期待できないと思いますが、そういう意味では国内の石油の需給に何らかの影響を与えると思うのですが、その点はどういうふうな観測をしていらっしゃるのでしょうか。
  139. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいまの御質問に対しまして的確に答えることができないのは残念でございますが、いろいろと予測ないし推測する向きが多うございます。これはただ単に日本だけではございませんでして、西欧各国におきましても、アメリカも含みますが、それからイランの中でもいろいろなことを言っている人がございます。たとえば、先般イランのバザルガン首相が追い追いに革命前の六百万バレル・デー台にまで生産が上がっていくのじゃないかというようなことを言ったという新聞記事がありました。これは新聞記事では確かにそうなっておりますが、本当に首相が言われたのかどうか確認できておりません。それからちょっとたちましてから、副首相のエンテザム氏がやはりだんだんと生産はノーマライズしていくといった趣旨をおっしゃいましたけれども、そのときは数量をおっしゃいませんでした。いろいろとIEAあたりで言っている数字とか矛盾しておりますけれども、大ざっぱに言いますと、アメリカ人その他の外国人の技術者がおった場合、御存じのとおりいま国外に待避しておりますが、これらが復帰してきて活動を再開した場合はどうだろうか、あるいはそうじゃない場合はどうだろうか、いろいろございまして、そういうことがわかりません。しかし三百万バレル・デーから四百万バレル・デーの間はイランの人々だけでもできるのじゃなかろうかといったようなことがよく言われておるわけでございます。その辺のことにつきましては、申しわけございませんが的確なことは申しかねるわけでございますので、この辺でちょっと失礼させていただきたいと思います。
  140. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 的確なことは言えないとおっしゃるのですが、予測がつかないで地域の現象からいろいろな憶測を生んで、非常に石油に対する不安というものが拡大していくのじゃないでしょうか。たとえば、九州石油はイランへの依存率が一番高いそうですが、もうすでに九州電力、新日鉄に対して一〇%削減ということを通告しているようですし、また丸善や三菱などもいま同様の措置をとりつつある。こういうふうにイランの影響、生産の見通し、これが十月なら十月にはっきり輸入がまた再開できるんだという見通しがついておればいいのですけれども、いまのところは暗中模索だ、情報不足だということのために、こういうことが随所に起こってきた場合には、われわれがどう思おうとやはり思惑買いもするでしょうし、そしてまた先走ったかつての石油ショックのような、ああいうひどいことはないにしても、何らかの売り惜しみ買い占め的なことが行われることも予想されるでしょうし、そういう現象が起こらないうちにもっと正確な情報をわれわれは知る必要があるのじゃないかと思うのですが、その情報というのはどういうところからどういう方法で入れていらっしゃるのでしょう。
  141. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 これはただいま申し上げましたように、イランの責任者の方の御発言その他がもちろん第一の情報源でございますが、これは主として在イランの日本大使館がいろいろとやっておるわけでございます。またいろいろ向こうの要路の人たちに、表には出ませんけれども、お話を聞いたりすることはやっておるわけであります。他方、西側におきましても、いろいろメジャー初め石油関係の業界がございますし、これらもいろいろと情報はございます。これは主として在欧米のわが在外公館等がそれをとってくるわけでございます。それからパリにIEA、国際エネルギー機関というのがございまして、これは御存じのとおり消費国の方の協力機関でございますが、この中でもいろいろな研究がございまして、これは日本のOECD代表部を経由してそういう情報が入っております。そのほかに新聞その他にいろいろ公刊の情報が出ておりますので、これらももちろん参照いたしておる次第でございます。
  142. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私、最初にも申し上げましたように、石油問題というのは外交問題にもあるいは国内の経済政策にも石油政策にも、そしてまた直接消費者にも全部響いてくる問題でございますね。したがって、ある程度早い時期に正確な情報というものを的確につかんでおきませんと、しかもいままで議論しております範囲内では、いろいろのいま言われた外国通信であるとかあるいは大使館とか在外公館のその中でも、楽観論と悲観論と両方ありますね、そのうちの楽観論だけを頼りにした情報分析で今日来ているわけですね。ですから、必ずしもいま言われているように、石油生産が三百万バレルあたりいくだろうということもどこにも根拠はないわけです。しかも、政府当局者もその希望は持っておってもそれが果たして種種の事情で実現できるかどうかということはだれも保証するものはないわけですから、このままずるずる情報不足のままでいってしまいますと、そしてその情報不足の間に各地で各石油企業の方から一〇%削減、二〇%削減というようなことが行われますと、これは国内にも大きな混乱を起こす原因になると思うのです。いかにも情報が不足しておると思うのですが、イラン大使館の情報がどういうふうに入っておるのか、仕組みをひとつ教えていただきたいと思うのです。
  143. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 情報収集活動というのは在外公館の最も重要な活動一つでございまして、現在のイランの大使館には十六名の実員が配置されておりますが、そこにおきましては、大使以下全館員を挙げて情報収集に努めております。  そのソースとしては、現地の政府あるいは民間あるいは他国の公館を初め、種々のソースから得ておるわけでございます。さらにペルシャ語の専門家も二人配置しておりまして、そういう人も使いましていろいろな方面から情報を得ておるという現状でございます。
  144. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 えらい形式的な御答弁ですが、いただきました表によりますと、全員で十九名ですね。そして、大使、公使のほかにそれぞれの分野で活躍していただいているのですが、ペルシャ語をやられる書記官が儀典担当の方と文化広報のお二人だということなんですね。あとは、ペルシャ語は日常の会話ぐらいはできるのでしょうけれども、主として英語でやっているわけですか。
  145. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 主として英語を駆使しまして情報収集に努めております。ただ、イラン政府の上層部あるいは民間の知識人は大体英語を話しますので、情報収集には特に遺漏はないと存じます。
  146. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 これだけで十分情報活動ができるというふうにおっしゃるのですか。
  147. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 一般的に申し上げまして、外務省の在外における布陣、ことに人的構成におきましては不十分であることはわれわれも率直に認めております。その意味におきまして、外務省の定員の増強というのはわれわれの毎年の予算要求の重点事項にいたしておりまして、人員の増強に努めておるわけでございます。  現在外務省の定員は、本省、在外合わせましても三千三百十一名。これはアメリカの四分の一であり、イタリアにも及ばないような状況でございますので、この人間をふやして、さらにそういう特殊語学の専門家をふやす努力を今後やっていきたいと存じます。
  148. 園田直

    園田国務大臣 いまの情報の問題でございますが、これは御発言のとおりきわめて不足であります。人員が不足であるばかりでなくて、こういう混乱時期に大使館筋の情報というのはとかく相手の政府と接触した情報が多いわけであります。イランの政府で石油の生産量の見通し、あるいは輸出はなるべく早くやりたい、いまにも輸出できるような話が折々正式の機関から出るわけでありますが、これは当然イランの国内外に対する政治的発言が多いということを考えて、取捨選択をし割引をしなければならぬことも非常に多いと思います。  したがいまして、その他は他の地域に散在する大使館のそれぞれの関係者からの聞き込み、これは案外有効でございます。それから一番有効なのは、やはり自分の生命に関しますから、その国に入っている民間人、財界人の情報がきわめて有効でありますけれども、いまイランではこれが限定されているという状態である。こういう点は十分注意をしながらやらなければ判断を誤るという心配をいたしております。
  149. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 対外的に信用を得るためにやはり言わなければならぬ発言もあるでしょうし、いま大臣の言われたように、本当に取捨選択というのはそこに高度の政治判断を要するものが相当あると思うのですね。まして言葉の違う国々でその外国からのいろいろの情報をとるというのは非常に困難な問題も多いと思うのです。  お聞きするところによれば、大体外国の英米あるいは独等の在外公館、あるいはまた商社、新聞社等々からおとりになっているというようなお話なんです。しかしそういうバイパスのも必要ですけれども、やはり直接の大使館の情報活動というのが一番主だと思うのですが、この儀典関係と文化広報の関係の書記官の方お二人だけがペルシャ語を御存じで、そしてそれぞれのレセプションであるとか儀礼的な催し物にこういう人たちがほとんどとられるということになると、肝心の方の仕事も果たせないというふうなことも多いのじゃないかと思うのです。そして、大体この方々は平均どれくらい在勤なさっているのでしょうか。
  150. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在外公館の在勤期間につきましては、一カ所は平均二年ないし三年でございます。二年くらい在勤して他の大使館に移ることもございます。特殊の語学、ことにこういうペルシャ語のような場合には、一カ所で四年くらい在勤する例もございます。
  151. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大体二年くらいでほとんどかわっていかれるのが実情のようですが、二年くらいということは何か根拠があるわけですか。
  152. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 一般的に申しますと、在外公館に長く在勤すればするほどその土地の人といろいろと知り合い、また情報収集活動もより活発に行い得るようになるわけでございますが、他方人事的な考慮をいたしますと、その在外公館員あるいは外務省員として広く見聞あるいは経験を広めさせる必要もございますので、ある一国だけに限って在勤させる、余りにも長く在勤させるのもどうかと思う場合もございますし、もう一つは、やはりことにそういう特殊語学の場合、勤務環境は必ずしも良好ではございませんので、そこだけに在勤させるのでは本人としても士気が上がらないということもございまして、健康地の大使館に転勤させるということもあるわけでございます。そういうことで、ある意味でやむを得ず二年くらいで転勤させる場合もございます。
  153. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 気候条件あるいは生活環境条件等いろいろの条件が厳しいところばかりということは、なかなか若い人たちも勤まらないこともわかりますが、しかしそれならばそれで、たとえばイランから帰ってきて国内でイラン関係の仕事をする、いわゆる仕事の継続性というようなことがあればいいのですが、どうも外務省のいまの人事配置を見ますと、二年行ったらまた別の仕事をするというようなことが非常に多いように思います。いわゆる仕事の継続性がないと思うのですね。ただでも、当時のシャー体制の王制のもとで、体制に対して接触を保つだけでも、二年ぐらいじゃやっと顔を覚えてあいさつを交わせる程度だと思うのです。ましていまの新しい政府ができた、反体制側の動向を察知するというようなことは、状況を把握するということは、なかなかそんなことはできないわけですね。しかも、二年や三年でしょっちゅう転勤をする。これでは仕事をやれといったって、情報を集めろといったって集まらないような仕組みになっているのじゃないでしょうか。
  154. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この中近東地域に例をとりますと、ペルシャ語の専門家とかアラビア語の専門家が在外に在勤いたしまして本省に帰ってきました場合は、たいていの場合、その地域を担当する課に配置しております。たとえばペルシャ語でありますと中近東一課に配置する、あるいはアラビア語でありますれば中近東一課または二課に配置するというふうにして、かなり継続性についても配慮をしておる次第でございます。  ただ、先ほどから申しますように、外交官として養成するためには、その地域だけの知識、経験しか持たないということでは困る点もございますので、たとえば経済協力局に行くとか、そういうこともございますが、そういうところに行きましても、中近東を担当することによって見聞を広め、経験を深めることはできるわけでございます。
  155. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 幅広く知識を求めることも大事ですけれども、情報収集が主たる任務である在外公館の中で、大使館、公使館の中で、どうもやはり情報が十分集まらないというような状態、むしろバイパスの方に頼らなければならないというような状態があるということについては、やはり何らかの改善策というものを考えていかなければならないと思うのですが、その点ひとつ大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  156. 園田直

    園田国務大臣 情報収集並びにその地域の専門の担当外交官ということについて数々の貴重な御意見を拝聴し、非常に承っておるところであります。ただいまの御発言の内容等は直ちに具体的にこれを検討し、そういうことに注意をして今後人員の配置、教育機構の拡充等をやりたいと考えております。ありがとうございました。
  157. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 さらに情報に関して、去年の暮れからことしにかけてイラン国内の動乱があったわけですが、実際には去年の一月九日にコムの聖地と言われるところから戒厳令がしかれた。そのころからまたそういう戒厳令がしかれるということは、それなりの根拠があったと思うわけですね。そして、当時の福田総理がおいでになって、現地を飛行機で回られたその日に十二の都市が戒厳令がしかれていたというような情勢も報告されているわけですが、その当時の情勢分析として、今日こういう状態になるというようなことをある程度予想されておったのでしょうか、それとも全く予想のつかなかったことなのでしょうか。
  158. 園田直

    園田国務大臣 私、イランには一月と、それから総理と一緒に行ったときと二回行ったわけであります。一月に参りましたときには初めてでございまするし、いろいろな報告を聞いておりましたが何ら特別な判断はつきませんでした。まことに恥ずかしい話であります。総理と一緒に行きましたときには、ちょうど戒厳令であり、デモがあったわけでありまして、当時の政府は、総理一行にはなるべくそのデモの状況に会わせないように配慮したものだと考えておりまするが、私は、首脳会談あるいは国王に会った印象からいって、これはただごとではない、何か起こるという判断をしておりました。
  159. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ですから、イラン側にしてみれば、日本に戒厳令の状態だとか、あるいは暴動の状態だとか、そういうことは見せたくないでしょうけれども、少なくとも在外の大使館そのものとしてはそういう情報などを積極的につかんでいたはずです。少なくとも表にあらわれた状態というものは積極的につかんでいたはずですし、そのときにはイラン側の情報じゃなしに、大使館側としてはどういう分析をいたしておりましたでしょうか。
  160. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 御存じのとおり、昨年の一月ごろから宗教界の人々を中心としましたデモ、それが暴動等になり、官憲の抑圧するところとなる。そうなりますといろいろな死者が出たわけでございまして、そういう方々の霊を弔うということで、回教シーア派の風習に従いまして、四十日ごとに比較的小規模なデモ、比較的小規模な暴動が、しかしながら相当広範囲にわたって行われたわけであります。いわば一種の宗教的な儀式にのっとったようなかっこうでございまして、当初は余り世界的な注目を引かなかったことは事実でございます。当時のイランの官憲自体も、どういうものでしょうか、余りこれを強く弾圧するといったようなことはしなくて、ただ具体的な案件の取り締まりだけをやっておった、そういうような感じでございます。  しかしながら、これが一向にとまらなくて、ますます広がってきたのは、察するに、そういったようなイラン政府の対応ぶりが相当緩いということから、一種の安心感といいましょうか、一種の期待感というものが出まして、それがだんだんと広がっていった。そうしますと、当初、宗教界と、都市の細民といわれておりますけれども、そういう言葉を使っていいかどうかわかりませんが、そういったような階層との結びつきのデモ等が主たる現象であったのが、だんだんといろいろな他の階層に広がっていった。たとえば学生でありますとか労働者でありますとか、特に官公庁の職員でございますが、そういったものに広がっていったわけでございます。ただし、これは余りはっきりした形をとっておりませんでして、大体六月ごろに何となしにそういうふうな気配があったわけでございます。もちろん当時の大使館としてもそれはわれわれに報告しておりますが、かくのごとき事態になるということは、もとよりその時点では大使館も、また私どもも、率直に申し上げますけれども、予測をいたしておりませんでした。  それが八月になりまして、先生あるいは御承知かもしれませんけれども、アバダンという南の方の町でございますが、あそこで映画館が焼き討ちに遭いまして七百名ほど犠牲者が出るという事件がありまして、これらが契機になりまして内閣交代があったわけであります。このときになりまして、これは事態が思ったより大変厄介であるという認識はみな持ったわけであります。大使館もその旨報告してきておりますが、ただ、そのときは、まだ当時の体制を完全に変えるということよりも、当時の体制の方におきましていろいろ譲歩ないしは改善を重ねて何とか事態を収拾していくことができるのではなかろうかといったような感じであったわけであります。  それが、ただいま外務大臣から御答弁申し上げましたように、いよいよ九月に、当時の福田総理にお供いたしまして参りましたときに、非常にその雰囲気が違うということがわかりまして、大使館としてもそのとき大臣に報告いたしておりましたけれども、思ったより事態が早く進んでおる、そういう印象を受けたわけであります。しかしながら、ああいったような国でございましたので、当時の体制から言いますと、国王がすべての中心を取り仕切っておったわけでありまして、もとより王宮の内部のことなので毎日わかるわけじゃございませんが、いろいろうわさが伝わっておったことは聞いております、たとえば国王が病気じゃないかとかなんとか。これは実際問題として、ただいま外務大臣が御報告いたしましたように、そういったようなトップクラスと日本側のトップクラスの方が会ったときに実感としてわいてきたわけであります。  その後は、事態が非常に早く進んだことは御存じでございますが、直接的にはやはり労働者、それから官公庁職員、これらが経済をすっかり麻痺させた、この辺が直接の原因だと思われます。そういった点につきましては大体においてそうなるとは思っておりましたけれども、かくも事態が早く進むという点につきましては、これは率直に申し上げますけれども、だれ人も予測がつかなかったと思います。
  161. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間が参りましたので、最後に御要望だけ申し上げておきますが、これはただイランの問題だけにとどまらず、特に海外への進出あるいは海外協力は今後も多くふえ続けるだろうと思いまするし、中近東を初め、アフリカ方面においてもなお政情の不安定のところが多いと思いまするし、在外公館の充実というような点についても、あるいは組織的にも、ひとつ外務省として格段の改革をやっていただきたいということを要望申し上げたいと思いますが、最後にひとつ大臣の抱負を、決意をお聞かせいただきたいと思います。
  162. 園田直

    園田国務大臣 御質問でもございましたが、数々の貴重な意見を拝聴して非常に勉強になりました。御意見を無にすることのないように、格段の努力をする所存でございます。
  163. 加藤清二

    加藤委員長 林孝矩君。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最初に竹島の問題に関して大臣に伺いたいと思います。  この竹島にかかわる問題は長年の懸案でありますし、また国会においても再三取り上げられてきた問題でもございます。しかし、依然として解決しないまま今日に至っている、そういう認識を持っております。昨年の日韓定期閣僚会議、九月三日、四日に行われたわけでありますが、この日韓定期閣僚会議の共同声明でも、竹島問題に関しては言及されていない。また一昨日、二十七日の朴東鎮外相との会談でも、園田外務大臣はこの竹島問題に直接触れておられないように伺っております。そこで政府としては、この竹島の領有問題の解決にどういう姿勢、むしろ熱意を持っているか、この点について最初に大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  165. 園田直

    園田国務大臣 竹島の問題では、領有権の問題と当面の漁業の安全操業の問、題が二つあるわけであります。領有権については日韓の間の話し合いで平和的に解決するということになっておりながら、韓国はこれは自分のものであると主張して、そしてその話し合いの対象になってないという態度をいままでとってきておったわけであります。外相定期会議ではこの点を私は激しく論難をして、今後とも領有権についてはあらゆる手段を尽くして主張するということを言ったわけでありますが、正直に言って閣僚会議では領有権の問題よりも漁業問題を私は重点に話し合ったわけであります。  そこで、正直に言うと、漁業の問題は別個の問題である、漁民の生活に関する問題である、したがって安全操業を許したからといって、これを領有権の問題と絡めない、そこまで私は言って操業の問題を話し合ったわけでありまして、共同声明には出ませんでしたが、共同記者会見の中ではこの点をはっきり言ったわけでございます。  その後経過しておりまするが、その経過は局長から報告させますが、先般、二、三日前、韓国の外務長官アメリカの帰途に立ち寄りました。その際には、まず第一に安全操業の問題を、ああいう話し合いになったにもかかわらずいままで解決しないのはきわめて不当である、これは早急に解決をしてもらいたい、特に漁期の五月ということを目標にして解決してもらいたいということは、これは第一に私は話題として話しました。
  166. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 経緯の大筋はただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、昨年の九月の閣僚会議における話し合いの結果を踏まえまして、自来今日に至るまで日韓当局間においてこの問題についての接触を続けているわけでございます。このときの合意が、漁業紛争を防止する、両国の漁業者の利益を保護するという趣旨から現実的に解決を図ろうということでございましたので、そういうことを踏まえて鋭意努力しているわけでございます。大変残念ながら現在の時点ではまだ決着を見るに至っておりません。私どもとしましては、特に五月ごろになりますとさらに漁期に達するということでございますので、関係漁業関係者、それから水産庁当局と連絡を密にいたしまして、いまなお引き続き努力しているというのが実情でございます。
  167. 林孝矩

    ○林(孝)委員 安全操業に関する話し合いが中心であったということでありますけれども、政府はこの竹島は日本の領土であるということ、したがって韓国が現在不法占拠をしているという、こういう認識に立っているかどうかという、これは確認でございますが、お願いしたいと思います。
  168. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  日本政府立場は、終始一貫竹島は歴史的にもそれから国際法的にも日本の領土であるという立場に立っているわけでございますから、現在同島に韓国官憲が所在することは不法な状況である、こういうふうに考えております。
  169. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昨年の十月二日の韓国の議会で韓国の国防相が、竹島には現在海洋警察隊が配置されておるわけですが、何らかの出来事が発生すれば軍として適切な措置をとる、こういう発言をしております。先ほど答弁がありましたように、日本政府としては話し合いによって平和裏に解決しよう、こういう立場をとっておるわけですね。一方韓国では、交渉、話し合い、そういうものに応じようとしない。そしていま申し上げましたように、何らかの出来事が発生すれば軍として適切な措置をとる、こういう発言を国防相がしておる。これは何らかの場合軍隊が出動するという意味と解釈するわけです。  こういうことは、一つはいわゆる国連憲章で禁止している武力による威嚇、これに該当すると私は思うのでありますけれども、政府はどのような受けとめ方をされておるか、見解をお伺いしたいと思います。
  170. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 いまの御質問の趣旨、先方の発言からこれは武力による威嚇かという御質問かと伺いましたけれども、これはすでにあそこに韓国の官憲が駐在すること自身が私どもといたしましては違法、不法だということで、御承知のとおり繰り返し抗議を行う、あるいは日韓間で閣僚レベルはもちろんのこと、各レベルでの公式、非公式の接触の際に必ず取り上げて問題にし、抗議をしていることでございます。したがいまして、その後における個々の行動あるいは言動というもの、もちろんそれがありますときにまた話題にして取り上げることはあるわけでございますが、いま御指摘のそういう発言があったからこれが不法になったというよりも、すでに存在すること自身が違法であるという立場で常時これに対する抗議をいたしまして、領土問題を平和的に粘り強く解決するという基本方針にのっとって処理しているという実情でございます。
  171. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問は、いま政府が認めたのは、結局現在不法に占拠しておる、違法である。その違法な占拠というものを前提としておることは事実でありますけれども、昨年の十月二日の韓国議会での国防相の発言、その発言の中に、竹島の状況について何らかの出来事が発生すれば軍として適切な措置をとる、こういう発言がなされている。これは一方で日本は平和解決ということで粘り強い努力をしておるにかかわらず、そこに海洋警察隊というものを配備して、そして何らかの出来事があれば軍として適切な措置をとるというようなこの議会での発言は、これは国連憲章で禁止しているところの武力による威嚇に該当するのではないかと思うわけなんです。もし該当しないというなら、その根拠を示していただきたい。
  172. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  いま御指摘のこと以外にいろいろ不法なことがございまして、最近の例では十一月八日に当方から改めて抗議の口上書を出しまして、一連のこういう韓国側の措置に対する抗議をするという措置をとっておるわけでございますが、いま御指摘の点だけについて申し上げますと、韓国側の立場――これは私どもは認める立場ではないわけでございますけれども、韓国側の立場としてはこれは自国の領土であると終始一貫言っておりまして、その自国の領土に対して韓国側から見た場合の外国が何かの侵害行為をした場合にどうするかという議論に対して、自国の領土である以上はもしそういうことが何かあった場合にはこれに対して韓国側の考える主権の行使としてあらゆる措置をとるということを韓国国内説明したというのが御指摘の発言の内容ではないか、このように理解しております。
  173. 林孝矩

    ○林(孝)委員 だから、その発言は、わが国から考えてみた場合に、私が指摘していることにはならないかということですよ。
  174. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のとおり、私もそれについて申し上げたつもりでございますけれども、そのような発言日本に向けられたか韓国国内における発言であったかはともかくといたしまして、これはやはり日本に対する一種の恫喝と申しますか、そういう発言であるというふうに考えます。きわめて遺憾なことであるという立場でございます。
  175. 林孝矩

    ○林(孝)委員 正確にもう一度申し上げますが、国連憲章によって禁止している武力による威嚇、これに該当するかしないかということなんです、私の聞いているのは。
  176. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生が国連憲章を引いておられるのは具体的には第二条の四項でございまして、すべての国連の加盟国は、その国際関係におきまして、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、慎まなければならない、ということを言っていることを指摘しておられるのだと思いますが、ただいま先生がお引きになりました韓国の国防相の発言そのものが、これは特に日本に対して向けられたものでもございませんし、これが直ちに国連憲章上の武力による威嚇ということまで法的に解釈できるかは問題のあるところだと思います。
  177. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それではどこの国に向けられて発言されたことですか。
  178. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 韓国の国防相の発言は私はよく承知しておらないものでございますから、どこの国に向けられたのか、日本という明示があるわけでございましょうか。
  179. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほども申し上げましたように、竹島というのは日本の島です。
  180. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 竹島というのは日本の領土であるということは確かにそのとおりでございますが、現状におきましては先生も御承知のようにわが国が施政を実行し得ない地域でございまして、韓国がそこに施政を実施しておる、占領しておる、わが方から言えば不法の占拠でございますが、実力をもってそこに施政をしておるということでございまして、それについて韓国が守るということを言っているだけでございますので、日本に対する武力による威嚇であるということにはならないと思うわけでございます。
  181. 林孝矩

    ○林(孝)委員 日本の領土である竹島に韓国が不法に占拠しておる、ここまでは認識は同じなんですね、それは違法だ。その竹島の周辺あるいは竹島に関して何かがあれば韓国は軍事的措置をとる。そこに何かがあればというそういう設定は、これは日本日本の領土と主張しているわけですから、日本に対してということは間違いないですね。言いかえればこういうことなんです。日本がこの竹島に関して何かを行えば韓国は軍事的措置をとる。これは、韓国の竹島に対する政治姿勢、措置、そういうものをずっとつなぎ合わせていって、バックグラウンドというのがあって、そして国防相のこの発言がある、対象地域は竹島だ、こういう一連の環境というものを考えたときに、これはどこに向けられているか。日本に向けられているというふうにどうして解釈できないのかということなんです。その解釈の問題と、それがそういう解釈ができるとしたならばこれは厳然として威嚇しているわけじゃないですか。そのように感じないですか。
  182. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  これはいま先生御指摘の行為のみならず、その前にもいろいろ銃撃があったとかそういう一連の行為、軍事行動、ないし先方から言えば警察行動かもしれませんけれども、そういう一連のことがすべて御指摘の問題にかかわるのだろうと思います。これはそれ全体が日本から見て違法、不法なことでございますから、それにもかかわらずそういうことが行われたり、またもし何かあればやるぞというような警告が行われた場合に、これが先ほど条約局長が申しました国連憲章上の威嚇に厳密に該当するかどうかという議論は別にあるかと思いますけれども、実際上日本に対して向けられた非常な恫喝、そういうものであるということは間違いないと思っております。
  183. 林孝矩

    ○林(孝)委員 どうも回りくどい言い方をするのですね。こういうのはもうはっきりしているわけです。日本は一生懸命平和的に解決しようと言っているのにかかわらず、何かがあれば軍事的措置をとるというような韓国の発言があり、現実に違法、不法に占拠しておる。これに対して粘り強さ、これは日本人独特のものでもありますし、また日本政府の平和的解決というそういうハートというものは非常に評価されるべきものだと思いますけれども、実際問題としてこれから先のことも考え合わせて、本当にそういうような発言が行われる――国会での発言ですから公式なものです。そして不法、違法に占拠しておる。  こういうことに対して、外務大臣は安全操業というものを中心に話をされたわけですけれども、いわゆる領有権の問題ですね、外務大臣としてこれに措置を考えるというようなお気持ちはいまお持ちであるかどうかということです。たとえばもう日韓閣僚会議をやる意味がないとか経済援助はしないとか、たとえばの話ですよ、そういうことも含めてお考えを伺っておきたいと思います。
  184. 園田直

    園田国務大臣 ちょうどあの時期は竹島をめぐる漁業問題で私が話をして帰った直後の議会であります。そこで野党か与党か知りませんが、何か秘密の約束をしたのだと追及をされた際の発言でありまして、これは明瞭に不法であり、日本に対する恫喝でありますから、直ちに抗議を申し込んだところであります。今後こういうことが重なるならば黙っておるわけにはまいりません。平和的解決をこっちも考える、平和的解決とは相談するだけのことではないということだけは、私お答えしておきます。
  185. 林孝矩

    ○林(孝)委員 了解いたしました。  次に、今度は操業問題に入りますけれども、日本の漁船がこの竹島の周辺十二海里以内で操業することができるのかどうか、これを韓国は容認しているかどうか、この点について再度確認の意味でお伺いしておきたいと思います。
  186. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 これはすでに御承知のところでございますけれども、昨年韓国側が十二海里を施行したときから三海里と十二海里の間の問題として発生したわけでございます。種々論議がありまして決着を見ませんでしたので、九月の閣僚会議のときの外相会談の話題になったことも御承知のとおりでございます。その後、日本側は当然日本側の主張を維持しながら先方と接触を続けておるわけでございます。先ほど申し上げたとおりでございます。現時点におきましては残念ながら先方との決着をいまだ見てないわけでございますけれども、次の漁期も迫っておりますので、それまでに日本の漁業者の利益が確保される形で本件が決着するように、その意気込みで現在努力しているという実情でございます。
  187. 林孝矩

    ○林(孝)委員 理論的には日本漁船は竹島周辺で操業ができる、ところが現実問題として操業できない状況に置かれておるということだと思うのですが、もし韓国の警備隊もしくは韓国軍隊、こういうものが日本漁船に対して武力攻撃、武力の行使といいますか、そういうものがあった場合どうするか、またそういうものはあり得ないと言えるかどうか、その点はどのように考えておられますか。
  188. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 いま御指摘のありましたようなこと、そのようなことが絶対あってはならないというのが私どもの強い悲願で、それがまさに、漁業問題を領土問題と切り離して漁業者の利益のために早急な解決を図るということの根幹にあるわけでございます。したがいまして、理論的に出漁可能であるとか、まあ大丈夫だろうというようなことで行ってそこで不測の事故があるということ、これは絶対避けなければなりませんので、そこのところをいま工夫して、出漁しかつ安全である、いやがらせその他の妨害あるいは不測の事態が起こるようなことにならないようこれを確保することが、いまの努力の一番の中心に置かれているというふうに申し上げたいと思います。
  189. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで大臣、五月という漁期をもって何とか安全に操業できるようにしたいということで交渉をされているわけですけれども、五月までといってもそう期間はないわけです。憂うるところは、いままでの韓国の竹島に関する姿勢、それと日本政府の対韓外交、こういうものの絡み、こういうことから考えるとその見通しが明るいのか暗いのか、この点私の印象としては非常に困難な状況に置かれているのではないかと考えるわけです。その決着が五月までにつけば非常に結構なことでありますけれども、日本の漁民としては五月までに何とか決着をつけてもらいたいけれども、果たして決着がつくかどうかという非常に不安な状況に置かれているわけでして、その見通し、めどというものに対しては大臣はどのように考えておられるか、伺いたいと思います。
  190. 園田直

    園田国務大臣 韓国には韓国の困難な事情があるようでありますし、かつまた安全操業については、日本は農林水産大臣の所管でありますが、向こうは国防長官の所管になっているようであります。そういう事情等もよくわかった上で定期閣僚会議で話をしたわけでありますから、そのときの話し合いによって当然解決されるべきである、いままで延びたのがおかしい、こう思っておるわけで、その点を私は韓国の長官には強く要請したわけでございます。
  191. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから次に、韓国政府の竹島問題に対する態度でありますけれども、これは日韓基本条約の際の紛争の解決に関する交換公文に違反するのではないか。これは過去にも何回となく論議をされてきたところでありますけれども、再度政府の見解を伺いたいと思います。
  192. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  日本政府のこの件に関しての考え方は終始一貫変わっていないわけでございまして、領有権に関する見解の相違というのは古い問題でございまして、日韓国交正常化交渉の中でも一つの大きな話題であったことは御承知のとおりでございまして、日本政府としては国交正常化の際に何とかこの問題を解決したいということで、これが国交正常化交渉が長引いた幾つかの原因のうちの一つですらあったわけでございますが、残念ながらその時点においては解決を見ませんで、御指摘の交換公文を取り交わす結果になったわけでございます。自来、日本政府といたしましては、この交換公文によりまして外交上の経路による交渉を通じて解決を図る、この方針を一貫してとってまいりまして、今日もそのとおりでございます。韓国側がこの話し合いの進捗に応じていない状況はきわめて残念でございますけれども、なおかつ政府としては平和的に話し合うという精神から、現在のところはこの交換公文による二国間の外交チャンネルによる話し合いという方針を引き続き維持している次第でございます。
  193. 園田直

    園田国務大臣 いまの局長の答弁で方針は結構でございますが、私は、向こうと折衝する際には見解の相違という立場をとっておりません。交換公文ではっきり決めたものを、なぜ約束を守らぬか、こういう態度をとっておりますので、一言だけつけ加えさせていただきます。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 竹島問題の最後の質問としてお伺いしておきますけれども、少なくとも日本に対する韓国の態度は反友好的なものである、こういう認識に立つわけです。そこで、竹島からの軍隊及び軍施設の撤退、撤去を求めるアクション、それから少なくとも竹島周辺で共同で操業できる水域という形が生まれないかという点、それからもし韓国が応じない場合、日本漁船も操業できない、こういうことになった場合、こういうときに至っては具体的な対抗措置を日本としてもとらなければならないのじゃないか、この三点についてお伺いしておきたいと思います。
  195. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 いま御提起の三点は、相互に非常に関係の深い三点かと思います。  施設の撤去その他については、これは平和的解決の一環として口上書その他による粘り強い交渉を続けているわけでございます。  それから、共同操業ということでございますけれども、従来は、三海里の中の問題については領有権の主張の対立ということがありまして事実上日本側が操業できなかったわけでございますけれども、実際上の一番重要な操業区域であります三海里の外については事実上――もちろん漁期にもよりますけれども、イカ等がそこでとれるときには、共同とは申しませんが双方の漁船が操業し得たはずでございますが、その状態がなくなったわけでございまして、いま鋭意努力しているのはそういう状態の回復、しかもそういう状態において不測の事態が起こらない状態を招来させるための努力を現在しているということでございます。  三番目につきましては、その裏返しのようなことでございまして、もちろん資源保存とかあるいは漁業紛争の防止とか、いろいろなことによって日韓が合意して、ある日韓双方が操業する水域に関して何らかの共同規制をとるという考え方は、これは日韓漁業協定にもございますから、その水域についてそういうような話し合いが漁業協定の枠内でできれば、これは一つの体制かと思いますけれども、いまのところは、日韓漁業協定による新たな共同規制水域をつくろうかという話は起こっておりません。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは次は、ソ連の北方領土の問題についての質問に移ります。  最近の北方領土問題の交渉の進展についてどうなっているか、また、前進の見通しがあるのかどうか、まずそれが一点。それから、政府は日ソ平和条約締結前にもソ連の提案してきた日ソ善隣協力条約、こういうものを締結することはあり得るかどうか。それから三番目に、並行的に進めることもあり得るということをかつて外務大臣発言されたかと記憶しておるわけでありますが、そういうことがあるかどうか、また、その意思はソ連に伝えているのかどうか、もし伝えているとするならば、そのソ連側の反応はどういう受けとめ方か、お伺いしたいと思います。
  197. 園田直

    園田国務大臣 まず、北方四島に関する日ソ間の問題は、先般国会決議があり、この決議を向こうに伝達した際にも、あくまでソ連は自国の領土であって内政干渉であるという態度をとっております。ただし、そのほかの実務的な問題、たとえば事務合同会議あるいは民間側との経済合同会議等は順調に進んでおって、今後の会議等も逐次進むような状態にございます。  次に、平和条約と善隣友好条約の問題でありますが、私がグロムイコ外務大臣に言ったのは、第一は、日本はあくまで北方四島返還ということは全国民の願いであって、これは正当な言い分である、したがって、ソ連と日本との間に交わされた共同声明のもとに、原点に返って、ソ連が領土問題について誠意を持って話し合うか、話し合う態度を示されるならばという大前提のもとに、そうなれば平和条約と善隣友好条約を並行にするとか、いろいろ話し合いの方法はあるではないかということでありまして、平和条約と善隣友好条約を並行するという提案をしたわけではありません。領土問題に誠意を持って話し合うならば、弾力的にその他の問題は話し合う用意がある、ただし、平和条約というものの先に善隣友好条約を結ぶ考えはございません。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 今回のソ連の国後への軍事施設構築、これはソ連が防衛上必要という判断で行われたものであるのかないのか、ほかに意味があるのかどうか、したがって、将来国後、択捉二島が返還される場合には、これらの諸島の非武装化、こういうものが条件とされる場合が出てくるのではないか、そうした場合にこうした条件を受け入れるということもあり得るかどうか、これは将来のことでありますけれどもお伺いしたいと思います。それとも、返還に際しては一切無条件が前提でなければならない、こういう考え方で四島返還というものを考えられておるか、その点はどうですか。
  199. 園田直

    園田国務大臣 四島返還の話し合いにまだなってないわけでありまして、向こうは解決済みということを言っておる状態であります。したがいまして、その際、責任ある私の口から、仮に返還があればこういう条件はのむとかのまぬとか言うことはお許し願いたいと存じますけれども、これは、返還の話し合いがあればいろいろまた具体的に話し合いが出てくることは当然であると思います。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 確認しておきたいわけでありますが、日ソ共同宣言は国家間を拘束する条約である、また松本・グロムイコ往復書簡も日ソ共同宣言と不可分の文書である、これなしでは日ソ共同宣言は成立しなかった、こういう歴史的経過があると理解するわけです。したがって、これもまた条約として日ソ両国を拘束する文書であると位置づける、こういう認識を私はするわけでありますけれども、政府はどのような認識をされておりますか。
  201. 園田直

    園田国務大臣 共同宣言と、いまおっしゃいました松本・グロムイコ往復書簡、これは密接不可分な関係にあり、しかも共同宣言の際にもこの書簡は生きていることは当然でありまして、両方読み合わせるならば日本の主張が正しいということは明々白々であると存じます。
  202. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、領土問題は解決済み、こういう主張をソ連は過去何回となくしておるわけでありますが、いま確認した事実から判断して政府はどう理解されておるか。歯舞、色丹の二島は日ソ共同宣言で返還されることを約束しているということ、そういう事実認識において領土問題解決済みということなのか、それとも国後、択捉を含む千島諸島については日ソ間に問題として残されるのではなく、すでに解決済みという意味で解決済みということなのか、それともわが国が返還を主張する四島を含めてすべて領土問題はソ連領となっており、解決済み、こういう意味での解決済みということなのか、どういうふうに政府は理解されておりますか。
  203. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連側はいわゆる領土問題なるものは存在しない、すでに解決済みであるということをしばしば述べております。私どもの立場から申しますと、歯舞、色丹につきましては、ただいま御指摘のとおり日ソ共同宣言という正式の合意のもとにその措置について決まったものでございますから、ある意味ではその措置について、取り扱いについて解決したものと考えております。  ただ私どもは、この歯舞、色丹に加えて国後、択捉、この二島が歯舞、色丹とともに一括して返還さるべきものと考えておりますので、これは私どもにとっては未解決の問題である、しかし、この四島は一括返還ということで平和条約のもとに返されるべきであるというのが私どもの主張でございますので、したがって平和条約ができていないという限り、この問題はすべて未解決とまた見えるわけでございますが、ソ連側が解決済みと申しておりますのは、恐らくこの国後、択捉についてはすでにこれはソ連側への帰属が決まったという意味で解決ということを主張しているものと思いますが、私どもはその主張には承服いたしておらない、こういうことでございます。
  204. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、松本・グロムイコ往復書簡の合意された内容、これとソ連政府の言う領土問題は解決済みという態度は、明らかに矛盾するものである、こう思うわけですね。ソ連政府が北方領土解決済みということを言う限り、ソ連はこの往復書簡を無効であるとかあるいは何ら意味のない文書、このようにみなしている、このように私は思うわけですけれども、この点について、これは認識の問題でありますが、どのようにお考えになっておるか、認識されておるか、お伺いしたいと思います。
  205. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連側の今日までの立場は、松本・グロムイコ書簡及びその後に行われました日ソ共同宣言に反するものと私どもは考えております。御説のとおりに考えております。
  206. 林孝矩

    ○林(孝)委員 反するものということで、ソ連政府にこの点に関して注意を喚起したことはございますか。
  207. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 過去、日ソ共同宣言以来一貫して、あらゆる方法で日本政府がこの四島の一括返還を迫っておる、こういう事実で明らかでございます。
  208. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ところで、一九六〇年の日米安保締結を契機にして、ソ連側が、日ソ共同宣言の第九項の歯舞、色丹返還条項、これは無効だと言って、最近また、その同じ意味のことを持ち出してきておる。新聞報道で明らかになっておるわけであります。もしそれが事実とするならば、条約不履行をソ連みずから宣明したものだ、私はそう思うわけですけれども、条約違反という考え方についてどのような見解をお持ちになっていますか。
  209. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま御指摘の一九六〇年のソ連側の申し入れというものは、俗にグロムイコ覚書と呼ばれるもののことを御指摘と思いますが、歯舞、色丹の返還ということは正式な合意である日ソ共同宣言で取り決められたことでございまして、グロムイコ覚書のごとき国の一方的な意思によって変更し得るものでございませんので、もしソ連側が正式にそういうことを決心し、意味するとすれば、これは日ソ共同宣言の違反と私どもは考えております。
  210. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昨年十一月にソ連を訪問した新自由クラブの河野代表に対して、シチコフソ連連邦会議議長がいまのグロムイコ覚書を持ち出して、日米安保条約の締結によって日ソ共同宣言による歯舞色丹の返還についての状況が変わったので、ソ連はこれに拘束されない旨を述べたということであります。この見解は、コスイギン首相、デミチェフ文化相等も支持している、こういうことはソ連側の見解でありますけれども、国際法上認められるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  211. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  日ソ共同宣言と申しますのは、御承知のように両国の首脳も署名いたしましたりっぱな正式の国際文書でございまして、国際文書を一方的に廃棄ないし破棄するというようなことは国際法上認められることではございません。
  212. 林孝矩

    ○林(孝)委員 条約の破棄理由として事情変更の原則というもの、これは法理論上認められているわけでありますが、それを前面に出してきているということだと思うのです。ところが、条約というものは実際には安定性ということからこの原則にはむしろ否定的である。そこで政府は、ソ連がこの事情変更の原則を援用して日ソ共同宣言第九項の歯舞、色丹返還を拒否している、こういうように認識され、受けとめられておる。であるならば、このことに対して逆に、日米安保条約の締結が事情変更の原則を援用するという理由になるかどうかということを考え合わせた上で、ソ連に対する北方四島の領土問題に対する行動を起こされたらどうか、このように私は考えるわけでありますが、その点についてはどのように考えられておりますか。
  213. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ソ連が事情変更の原則を援用いたしておるのかどうかもよくわからないわけでございますけれども、先生もおっしゃいましたように事情変更の原則というのは国際条約の安定性を害するものでございまして、極力狭く解釈するのが国際間の通説でございます。特に日ソ共同宣言に関しましては、日ソ共同宣言が調印されました際にすでに日本は日米安全保障条約というのがございまして、アメリカの軍隊が駐留しておった。それを承知の上で日ソ共同宣言を結んだわけでございますので、事情変更の原則というのはこの場合にはまさに適用がないものだと考えるのでございます。
  214. 林孝矩

    ○林(孝)委員 全くそのとおりでございまして、旧安保があって六〇年に改定された。したがって、ソ連が日ソ共同宣言を行った、これは旧安保があったときにすでに行われているわけであって、それが改定されたというだけのことであって、初めて締結されたという事情ということではないということですね。したがって、それは言い方としては非常にけしからぬことだ。私申し上げたいことは、そういう日ソ共同宣言の遵守というものをソ連にもっと積極的に迫るべきではないか、こういうことを申し上げたいわけです。  同時に、日ソ平和条約が締結されず日ソ共同宣言となった経緯というものがあるわけですね。それから松本・グロムイコ往復書簡が交換された経緯というものもまたある。こういう経緯から見て、北方領土問題は決して解決済みではない、こういうことをソ連に対して積極的に申し入れていく。こういうことを繰り返し繰り返しやっていくことが大事ではないか。これは大臣にお伺いしたいと思います。
  215. 園田直

    園田国務大臣 きわめて大事な、しかも重大な根拠でありますから、そういう方向で今後折衝いたします。
  216. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、ソ連の北方領土の問題はこれぐらいにして、次に移ります。  一九七七年五月パリで行われました国際経済協力会議、それから八月福田前首相のASEAN、ビルマ訪問などで、わが国が今後五年間に政府開発援助を倍増以上に拡大するように努力する、こういう趣旨の意思表明がなされたわけです。そして昨年のボンのサミットにおいて三カ年で倍増するよう約束をされた、いわゆるスピードを速めるという約束をされたわけですね。外務大臣もことしの本院における外交演説において改めてこの点を強調された。政府としては今後政府開発援助の三年間倍増の確実な達成を図る、こういう表明をされております。政府開発援助三年間倍増に対する大臣の取り組まれる姿勢、これをお伺いしたいわけであります。と同時に、政府開発援助の実績、七六年、七七年、できましたら七八年についてもお伺いしたいと思います。
  217. 園田直

    園田国務大臣 政府開発援助については御発言のとおりでありまして、五年間倍増を三年間で倍増する。今年度御審議を願っております予算におきましても、財源乏しい中ではありますが、ほぼ三年間倍増の実績に達するように予算は計上してもらったわけであります。しかし、これができ上がった場合におきましてGNPの比率はどうかというと、予算面では〇・三一、実績面では〇・二ちょっと上がる程度でありまして、国際の平均目標は〇・七であります。そこで三年間倍増の約束ができましたけれども、これで日本の位置する立場から政府開発援助が満足だというわけではございません。少なくともまず当面は、いまの予算面〇・三一から実績面の〇・三一まで上がるように努力をし、続いてやはり〇・七を目標にして前進をしなければ、御承知のとおりにASEAN等へ参りまして、いろいろまじめに話しましても、たった一言、西独と日本の援助はどうだ、遠い方が多くて近い方が安いのはどうだ、こう言われるわけでありますから、やはり政府開発援助というものは日本がもっと努力をし、単に余るからというだけではなくて、骨身を削って、ASEANの国々、他の開発途上の国々の援助に協力をするということでなければならぬと考えております。  なお、開発援助の実績については局長から答弁をいたさせます。
  218. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 政府開発援助の実績について御報告いたします。  DACに提出いたしました報告に基づくものでございますが、これは暦年でございますが、昭和五十一年の政府開発援助は総額約十一億ドルでございまして、GNPに対する比率は〇・二〇となっております。昭和五十二年暦年につきましては総額約十四億ドルでございまして、国民総生産、GNPに対する比率は〇・二一ということになっております。昭和五十三年、昨年の実績につきましては目下集計中でございまして、まだ最終的な数字が出ておりません。
  219. 林孝矩

    ○林(孝)委員 七六年十一億ドル、〇・二〇%、七七年十四億二千万ドル、〇・二一%、七八年はいま集計中ということでありますけれども、一つお伺いしておきたいのは、八〇年には何%の目標を立てておられるか。
  220. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 私どもといたしましていま一生懸命努力しておりますことは、ただいま大臣からも御答弁がございましたように、GNPに対します比率をできるだけ引き上げるということでございます。今年度の予算におきましても、財政難の折からかなり大きな政府開発援助予算を組んだわけでございますが、八〇年のGNP比率がどれぐらいになるかということは、それまでのGNPの伸び等不確定要素も多々ございまして、現時点において八〇年に何%に達するということを申し上げかねるのが現状でございます。
  221. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの大臣お答えになった本年度は〇・三一%の水準という、これは先進諸国では七七年にすでに〇・三一%ということでありますから、相当わが国がおくれておる。おくれているということと反比例して国際的な責任というものはますます大きくなっておるということでありますから、これはわが国にとって非常に重大な問題だと思うわけです。そういうことから考えますと、いまの八〇年についてはちょっとわからないということでありましたけれども、目標があってその数値を達成する年度というものを明らかにしておく必要があるのではないでしょうか。
  222. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 中期的な目標を立てましてそれに向かって努力をするという方式をとることが望ましいことは私も先生と全く同様に考えておりまして、関係各省ともそのような方向で検討を進めることといたしたいと考えております。
  223. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五十二年度の政府ベース技術協力の支出額は三百九十六億九千九百万、そのうち七五・三%に当たる二百九十八億八千九百万、これが外務省の所管です。さらにそのうちの八〇%、これが国際協力事業団を通しての技術協力、金額で言いますと二百四十億千八百万、このようになっておりますが、間違いございませんでしょうか。
  224. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 国際協力事業団の予算でございますが、これが管理費を含めました総額あるいは管理費を含めませんいわゆるODAにカウントされる部分、それからまたその中の技術協力関係、移住関係等さまざまございまして、いま先生がおっしゃいました数字がどれに該当するか、にわかにはチェックいたしかねるのでございますけれども、海外技術協力事業費ということでODAにカウントされるものについて私がいま手持ちの数字は、五十二年度の実績が二百五十八億円ということになっております。
  225. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その技術協力の支出額、これは国際協力事業団の事業の中枢をなしていると思うのですけれども、いわゆる国際協力事業団は、この技術協力、資金協力、移住事業、こういうものを中心活動しておるわけですよ。したがって、わが国経済協力にとってはなくてはならない存在であるわけでありますが、この国際協力事業団の行っておる事業について若干伺いたいと思います。  まず、研修員受け入れ事業でありますけれども、七七年度新規に二千六百七十三名が受け入れられているわけですね。コロンボプラン加盟より現在まで政府ベースで受け入れた人員、これは幾らになっておりますか。それから研修員の滞在費、研修付帯費、これは幾ら支給されておるか。またそれが改善される予定があるのかないのか、その点を伺いたいと思います。
  226. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 いま担当の者が調べておりますので、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  227. 林孝矩

    ○林(孝)委員 研修員の語学力が非常にばらつきがあるということでありますけれども、日本語教育の実施はどのようにされているか、お伺いしたいと思います。
  228. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 事業団は各地に研修センターを設けておりまして、外国から研修員が参りますとそこでまず事前研修を行うわけでございますが、その際に日本語の教育を行っているわけでございます。
  229. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その日本語教育を行っているという教育に非常にばらつきがあるということなんですが、そういうことはございませんか。
  230. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 特にばらつきがあるというふうには、私は報告を受けておりませんです。
  231. 林孝矩

    ○林(孝)委員 毎年、二千人以上の人を受け入れており、同じくらいの研修員が帰国していくわけでありますが、アフターケアについてはどうなっておりますでしょうか。
  232. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 海外から研修員が日本に参りまして、せっかく日本を知る機会があったわけでございますので、それが本国に帰りました後も日本との結びつきを続けていくということは非常に意義があるというふうに考えておりまして、そのアフターケアにつきましてはいろいろなことを行っておりますが、たとえば日本から巡回指導チームというようなものを派遣いたしまして、帰国研修員の所属機関を訪問して最新の技術を指導するということ、あるいは帰国研修員がせっかく日本で習得した技術を帰国後も有効に活用できるように機材供与を行うというようなこと、それから帰国研修員に対しまして最新の技術情報を提供することを目的として文献を送るというようなこと、それから帰国研修員が帰国後も日本との結びつきを続けていくために帰国研修員の同窓会を設けるというようなことを奨励いたしまして、これに対して支援を行うというようなこと、それから一度来日いたしまして研修を受けた者が後日さらに高度な研修を日本で受ける機会を与えますために、上級コースというようなものを設置する、このようなことを行っております。
  233. 林孝矩

    ○林(孝)委員 巡回指導の実施率はどの程度になっておるか、お伺いしたいのです。  それから次に、専門家派遣事業、これは七六年度新規赴任四百四十人、七十七年度新規に三千八十八名を派遣しておるわけでありますが、どのような基準で選考されておるか、この二点をお願いします。
  234. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  最初の巡回指導チームの派遣につきましては、昭和五十二には十二チーム、対象コースは二十一コース、それから昭和五十三年度にも同じく十二チーム、対象コース十七コースというものを派遣いたしております。  それから、専門家の選考につきましては、これは国際協力事業団の方でそれぞれの専門家関係いたします国内官庁、関係省庁とも十分御相談しながら、それぞれの目的に合致したできるだけ資格のある専門家を選考するように努力していると承知いたしております。
  235. 林孝矩

    ○林(孝)委員 派遣専門家の待遇改善、身分保証のためにどのような措置をとられておるかということ、それから専門家派遣のための養成案件、調査チーム派遣はどの程度実施してきたか、また最近の傾向として受け入れ側の要望にはどのようなものがあるか、お伺いします。
  236. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 専門家に対する待遇につきましては、これはその格づけ等についてそれぞれございますので、いまちょっと数字をもってお答えすることが困難でございますが、昭和五十四年度の予算政府原案におきましては、まず専門家が安んじて仕事をしていただけるように、その福利厚生事業を重点項目の一つといたしまして、専門家が外国へ行かれるときの海外労災保険への加入のための経費というものを計上いたしております。また、専門家の養成確保、これも昭和五十四年度予算政府原案の重点事項の一つでございますけれども、そのために、たとえば先ほどもお話がございました専門家の募集でございますが、これも事業団みずから公募をして、民間を含めて広く適格な専門家に来ていただくという公募のための費用、あるいは専門家が外国に行かれる前の研修のための費用、そういうようなものについての増額を図っております。  それから、最近の傾向といたしましては、ますます開発途上国側からの要望というのは多岐をきわめておりまして、特にどの分野についての要望が多いということは一言では申しにくいのでございますけれども、いずれにいたしましても、わが方といたしましては、多様化する開発途上国側の要望にできるだけ適確に対応していくということを旨といたしまして処理している所存でございます。
  237. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、開発調査事業は七七年度百五十二件、五十一億円の開発調査実施していると認識しておりますが、今後どのような方向に拡大されていくのか。
  238. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  開発調査も、私ども今度の昭和五十四年度予算におきまして重点項目の一つとしたところでございまして、その理由は、先ほどからお話がございましたODAの三年倍増にいたしましても、政府開発援助を増大していきますためには途上国側のいわゆる援助吸収能力と申しますか、適確なプロジェクトが途上国側にあって、それでその援助資金を受け入れ得るような状況にするということが大事でございます。そのためには、日本技術協力をもちまして相手国側の開発プロジェクトをつくるということについての協力を行うことが、今後におきます政府開発援助を伸ばすためにも重要であるということで、開発調査につきましては昭和五十四年度予算政府原案では、金額ベースで二九%の増というものを組んでございます。件数は予算の積み上げの根拠としてはあるわけでございますけれども、実際は遠隔地の場合あるいは近い地域の場合、それから開発調査に行く調査団の人数、規模等によってかなり変更がございますので、件数をもって申し上げることはちょっと困難かと思います。
  239. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ただいま申し上げましたように七七年度が五十一億、今年度は八十六億一千七百万、これでよろしいですか。
  240. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 五十四年度予算は八十六億円でございます。
  241. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そのようにこの開発調査の予算を見ますと、五十一億、六十六億、八十六億と年度ごとに拡大されていっておる、こういうことであります。後でこれは少し関連してきますから確認しておいたわけであります。  その次に、大規模開発プロジェクト調査、これも七七年度より開始されたわけでありますが、実績と件数、延べ派遣人員、決算額をお伺いしたいと思います。
  242. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  大規模開発プロジェクト調査の五十二年度の実績でございますが、これは七件、二億八千万円ということになっております。延べ人員につきましてはいま担当の者が調べております。
  243. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五十三年度はどうなっておりますか。
  244. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 五十三年度につきましてはまだ進行中でございますので、ちょっと金額的にこの時点では申し上げかねるわけでございます。
  245. 林孝矩

    ○林(孝)委員 当初予算で四億六千万円を四億二千万円に減額修正した事実がありますが、これはどういう理由でそうされたのですか。
  246. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 これは円高のために支出官レートの変更がございまして、円高による減額補正があったわけでございます。
  247. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、十件の調査予定で予算を組んでいたのにかかわらず、八件の実施にとどめている、これはどういうわけでしょう。
  248. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 下回った二件についてでございますが、いずれも相手国政府の事情によるものでございまして、一つはブラジルのビトリア都市開発計画というものに着手する予定であったわけでございますが、事前調査を行っただけで本格調査には至らなかったというのがその理由でございます。  それからもう一つの案件は、ジョルダンの北部地域総合開発計画でございますが、これは五十二年度の実施予定が五十三年度にずれ込みましたので、五十二年度には実施しなかったということでございます。
  249. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ちょっと問題を指摘いたしますが、この八件の実施の内容を見ますと、単年度で調査事業の完了しているものが三件、前年度に他の事業実施していたものの後始末のための事業が一件、単年度で完了しないで次年度に持ち越されたものが四件、こういうふうに分かれておりますが、そのうちの二件、これがいま報告のありましたブラジルとジョルダンの二件ですが、これはともに二月、三月という年度予算のぎりぎりのところで派遣されているわけですね。その内容は事前調査のためということですね。こういう実態は、われわれが見ると、予算消化のために派遣しているというような疑問が出てくるわけです。なぜもっと早く事前調査ができなかったのかという根拠が明らかでない。こういう点はどのように説明されますか。
  250. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 五十三年の二月から三月にかけてぎりぎりの時期に派遣されたというお話、これはジョルダンの北部地域総合開発計画についてと存じますが、これは日本側といたしましては、もう少し早く派遣するという予定で準備を進めておりましたところ、ジョルダン政府側の担当者がしばらく不在をしておりまして、そのために日程の詰めが少しおくれたという事情によったものとの報告を受けております。
  251. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ブラジルはどうですか。
  252. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ブラジルにつきましては、先ほど申し上げましたようなことで、事前調査だけはしたのでございますけれども、その後ブラジル側の方で本格調査はよろしいということで、本格調査をするに至らなかったということだと承知いたしております。
  253. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、八件の中のコスタリカの太平洋岸総合開発計画調査、この派遣は説明だけに行ったのですか、どうなんでしょうか。
  254. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 コスタリカの件につきましては、五十一年度に本格調査実施したわけでございます。そして五十二年になって参りましたのは、その本格調査の結果の報告書についての説明のために行ったということでございます。
  255. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうした場合に、たとえば派遣する人員だとかそういう基準は、事業団では設けられておるわけですか。
  256. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 これは調査の対象となったプロジェクトの内容にもよるわけでございますが、大規模プロジェクトの場合は、非常に大きなプロジェクトで多岐にわたるという関係もございまして、その規模につきましては、それぞれの調査について御協力を願った各省とも御相談しながら決めるわけでございます。大体五、六人というのが普通の規模のようでございます。
  257. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまこうして一つ一つ伺っておるのは、これを分析していけばいろいろな問題があるわけであります。一つは、この協力事業団の事業の取り組み方、それから、これから少し指摘しますけれども人事、いろいろな面で親方日の丸といいますか、そういうふうな緩慢な事業考えざるを得ないようなことが多過ぎるわけですね。  たとえば、人事の面を考えてみましても、この国際協力事業団の構成は非常におかしなことになっているわけです。役員が十六名おりますが、そのうち十四名が各省から出向しておる。比率は八七・五%。それから部長職三十三名、そのうちの十五名、四五・五%がやはり各省庁から出向しておる。課長職は八十二名おって、そのうちの二二%、十八名が各省庁から出向しておる。こういうふうに見ていきますと、この国際協力事業団の役員、部長課長という役付の大半が各省庁から出向していっているわけですね。ところが、一般の八百六十三名という人たちにとっては、仕事を五年やっても十年やっても、こういうシステムだと、課長あるいは部長という役付になっていけないわけですね。なるほど必要があってこういう形をとられたのだと思いますけれども、現実の問題として、仕事に対する意欲がそういうところから減退していっているという事実もあります。それから今度は、出向している人たちの中にも、出向していってまた本省に戻ってくる、いわゆる腰かけ的な状況で国際協力事業団で仕事をする、ここにまた一つの弛緩が生まれるわけですね。  こういうシステムの問題、それからいま申し上げましたような、事業団が行っている事業の内容についての問題、これは側面から見ておりましてこれでいいのかというような感じを受けるわけですけれども、当局の皆さん方はどういうふうにそれを受けとめられておりますか。
  258. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 事業団の幹部にできるだけ事業団のプロパーの職員を登用していくということが、事業団の職員の勤労意欲と士気を向上させるために大事だという御指摘の点、私は全くそのとおりだと考えております。  何分事業団は若い団体でございまして、片や技術協力について各国からきわめて多岐の要請がある、また仕事もかなり複雑であるということで、これに必要な知識と技術を持った人材を手早く獲得するというためには、やはり各省庁の御協力も必要だったわけでございますけれども、事業団も発足後すでに四年を経ておりますし、事業団の内部でその事務に習熟した職員もだんだんふえてきておりますので、今後できるだけいま御指摘のような方向で、事業プロパーの職員を幹部に登用していくという方向で対処していきたいと考えております。
  259. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が来ましたので、大臣にお伺いいたしますけれども、いまこのシステムの問題を指摘しました。それから、この事業団の事業の内容については詳しく議論する時間がございませんけれども、やはり国の予算、国民の税金でもって賄われているわけですから、しっかりした仕事をしてもらわなければ困る。まして国際協力という経済の大きな中枢をなすわけでありますから。と同時に、この協力事業団の年間払っておる家賃を見ますと、四億四千三百八十万、これが家賃なんです。家賃に四億四千三百八十万も払うということは一般常識から考えて非常に高い、払い過ぎ。高いというか、事業団がそういう家賃のところに住めるということはこれまたそれでいいのかどうかという、私はきょうは問題の提起だけにとどめておきますけれども、こうした点について大臣の見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  260. 園田直

    園田国務大臣 事業団の仕事がだんだん多岐にわたりまして、しかもきわめて重要になってきております。そういう時期に事業団の運営ということはきわめて大事でありまして、いまの家賃の問題、それから専門職の養成の問題、それから特に先ほど指摘されたプロパーの職員を逐次管理職に登用していく、そして出向者の管理職をだんだん切りかえていく、こういうことはきわめて大事なことでありますから、いま提案いただきました諸問題について改めて検討しながら、事業団が適切に運営されるよう努力をいたします。
  261. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  262. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと待ってください。武藤経済協力局長に申し上げます。林季矩君の質問に対して答弁漏れがあるはずでございます。それはいつ答弁されますか。
  263. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 失礼いたしました。五十二年度延べ人員を先ほど申し上げませんでした。百三名でございます。
  264. 加藤清二

  265. 東中光雄

    東中委員 二月三日の予算委員会の総括質問でわが党の不破書記局長が、米軍基地への核兵器の持ち込みの疑惑について、第一海兵航空団の核兵器要員名簿を示しましていろいろお伺いをしたのでありますが、そのときの総理大臣の御答弁は、政府としては勉強してみるということになっておったわけでありますが、お示ししました文書について、外務省としてまた防衛庁としてどういうふうに御検討いただいたか、お承りしたいと思います。
  266. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いただきました資料につきましては検討さしていただきましたけれども、検討の結果、先般政府説明いたしましたように、本計画は核の配置とは結びつかないということが確認されました。  御報告申し上げます。
  267. 東中光雄

    東中委員 まずお伺いしますが、この計画ですが、第一海兵航空団核兵器要員名簿、一九七六年三月十日現在ということで抄訳をしてお渡ししましたが、同時に原本といいますか、原文もお示ししたわけでありますが、こういうものを米軍側で出しておるということ自体は米側に問い合わすなりなんなりして確認をされておるのかどうか、まずその点はどうでしょう。
  268. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 外務省を通じて確認しております。
  269. 東中光雄

    東中委員 これは確認をされて、真正のものであるということですね。
  270. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いただきました紙そのものがどういう性質のものかは別といたしまして、PRP計画というものはあるということでございます。
  271. 東中光雄

    東中委員 PRP計画がある。PRP計画はこの間不破書記局長がいろいろ説明をいたしました。この点について、原文によりますと一番左に、もちろん英語でありますが、氏名が書かれ、次に階級の符牒が書かれ、そしてその次に社会保障番号が書かれて、その次が軍事特技の区分が書かれておる。そしてその次、職務区分というのが書かれています。あと保安審査区分と所属部隊、こういうふうに読めると思うのですが、やはりそれは政府の方もそういうふうに確認をされますか。
  272. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いただいた書類を検討させていただきました結果、そのように読めます。
  273. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、ここでいわゆる職務区分のところで「CONT」あるいは「LIM」あるいは「CRIT」、こういうような職務区分の符号があるわけですが、これがいわゆるコントロールド・ポジション、リミテッド・ポジション、クリティカル・ポジションであるというふうに政府としても読まれておるわけですね。
  274. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 さようであろうと思われます。
  275. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、不破議員がそのときにも指摘いたしましたが、こういう区分はアメリカの議会合同原子力委員会軍事利用小委員会聴聞会議事録、これは国会にもあるわけですが、これの「核技術の軍事利用」第二部の十ページから二十四ページに転載されております国防総省指示書第五二一〇・四一号、一九六八年八月十四日付のこの指示書の中でいろいろ言われているクリティカル・ポジションあるいはリミテッド・ポジションあるいはコントロールド・ポジション、こういうものだということも当然確認をされておることだと思うのですが、いかがですか。
  276. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 おっしゃった限りにおいてはそのとおりと存じます。
  277. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、問題はPRP計画というものについてどのように考えておるかということの見解の相違ということになるわけだと思うのでありますが、ここにアメリカの下院歳出委員会軍事建設予算小委員会聴聞会の議事録「七九年度軍事建設予算」第二部、これは一九七八年二月二十三日の論議でありますが、ロング議員が「核兵器や化学兵器に接近したりその保全の責任を負っている警備要員やその他の要員は要員信頼度計画というものの対象下に置かれると聞いている。これらの要員が、同計画に組み入れられる際の身体的、精神病学的な評価しか受けないというのは本当か。どうして定期的、年次的な身体・精神病的評価は行われないのか」、こういう質問をしたのに対して、R・コッター国防長官補佐官が、これは原子力担当の人ですが、文書で回答しているのが載っております。それによりますと、「核兵器とともに仕事をしている要員は、「核兵器要員信頼度計画」」、ニュークリア・ウエポン・パーソナル・リライアビリティー・プログラム、こういうふうに書きまして、「(PRP)のもとにおかれる。同計画では、各個人の医学的評価は、必要な手続きの一つである」、こういう答弁をしているわけですが、これによりますと、要員信頼度計画、PRPは核兵器とともに仕事をしている要員に対する検査システムであるということを認めているものだと言えると思うのです。  なお、その続きの答弁でこういうふうにも言っています。パーソナル・リライアビリティー・プログラム、「PRPは、核兵器の貯蔵所に立ち入る権限を与えられている要員や核兵器の整備、配備、使用において役割を負わされている要員の審査検討を行うものである。われわれの経験の示すところによれば、こうした保全の構想とこれらの計画は、〔核兵器の〕保全の必要と、〔核〕兵器の作戦運用上の要請とを釣り合わせ、その結果、わが抑止力が信頼できることを裏づけてくれているのである」ということを言っているわけです。これはこの議事録の二百九ページから二百十ページのところで書いてある。  こういうアメリカ政府の公式の発言で、PRPは核兵器要員あるいは核兵器に携わる者、その者に対する管理システム、こういうことをはっきり言っているわけですが、その点はいかがでしょうか。
  278. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いまお読みいただいたテキストの限りではさようでございますけれども、少し先回りの御答弁になるかも存じませんけれども、核兵器とともに働いている要員はPRP計画のもとに置かれておる、そう言っておりますけれども、これはまた同時に、PRP計画のもとに置かれている要員が核兵器とともに必ずしも働いていると言っているのではございません。
  279. 東中光雄

    東中委員 そのほかやはり同じ議事録で、下院の歳出委員会軍事建設予算小委員会聴聞会の議事録ですが、七八年二月二十三日「七九年度軍事建設予算」第二部、これの三百二十二ページ、これはマッケイ小委員長が要員信頼度計画、PRPについて説明してほしいということを言ったのに対して、回答は、核兵器に関連した任務を遂行している要員各人の信頼度を可能な限り最も高い水準に保つためにあるのだということも公式に言っています。明白に核兵器に関連した任務を遂行している者、その者に対して水準を高くするために信頼度をいろいろテストする、こう言っているわけです。  さらにこれはもう挙げれば枚挙にいとまがないほどあります。国防総省が「核兵器保全の基本手引き」というのを出しておる。これは一九七五年の四月一日、上下両院合同原子力委員会第一次年次報告書、これは八十三ページから八十六ページに「米軍の核兵器保全管理についての六本柱の仕組み」というものを説明している中で、第一は「核兵器そのものに取りつけられたかぎ」、これが第一の保全管理の柱だ。二番目が、「核兵器を扱う人間の監視体制――核兵器要員信頼度計画 PRP」、こういうふうに言っています。三番目は「貯蔵中の核兵器の防護装置」。その他「核兵器貯蔵庫の特別の建設規則」など六つあるわけですが、これはもう明白に核兵器に携わる人、そういうものとしてそれに対してそういう信頼度のテストをやるということになっているわけですが、その点はどうでしょう。
  280. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 ただいまと同じ答弁になって恐縮でございますけれども、実際に御指摘になりましたような任務についている者、それがPRPのもとに置かれていることは、これは確かでございますが、PRP計画のもとに置かれている者が必ずしもそういう職についているというわけでございません。むしろPRP計画というものは、私どもの理解しているところによりますと、現に配置されている個人あるいはその配置につくことが考慮されている人間、そういう個人の信頼度を評価するための計画でございます。また、何人もこの評価に合格するまでは核関連配置についたりあるいは配置のための訓練を受けないということが決まっております。したがって、この評価に合格した場合、評価と申しますよりもこれは一種の適性検査でございまして、適性検査に合格した者の中には現在核関係配置についてない者がある。これは明記されてございますし、またそのための訓練さえ受けていない者もございます。
  281. 東中光雄

    東中委員 いま私が先ほど来挙げておるのは公式のアメリカ政府の答弁であって、あなたのいま言われているようなのは防衛庁が適当に都合のいいようにまとめておられるのじゃないかという感じさえするわけです。これについてはいろいろ論じられておりますし、むしろ今日では常識ではないかというふうに思うわけであります。  共産党の調査団がことしの一月二十四日にジーン・R・ラロック提督ですね、現在国防情報センター所長をやっている人です。昔こういう核兵器にも関与してきたということが言われておる人に会ってPRPについて聞いたときに、こういうふうに言っているのですね。核兵器と核兵器体系に関連がなければ、個々人にこのようなクリアランスは行わない、これらのポジション、職務は属人的なものではなくて、そういうポジションを与えられている場所を離れた人間からは取り上げられるものだ、属人的なものではないということをはっきり言っておりますし、このラロック研究所といいますか、国防情報センターが編集している「アメリカ国防政策の今日的諸問題」、これは一九七六年発行の本でありますが、これでバリー・R・シュナイダーという人が「戦術核兵器安全上の四つのジレンマ」という論文を書いています。これによっても、属人的なものではない、その職務についている人の、つく前とそしてついてからもいろいろテストをし管理をするんだ、こういうふうに言っておるわけですね。  あるいは、これも国会図書館にある本でありますが、ニューヨーク大学のジョエル・レイラスという人が「ニュークリア・ウエポンス・セーフティー・アンド・ザ・コモン・デフェンス」という、一九六七年の本でありますけれども、ここでも一九六二年以来、全米軍の核部隊に対してPRPの確立を義務づけたんだ、特定の人間にどこまでもついて回るような資格ではない、核兵器を取り扱ったり核兵器体系に組み入れられたりしている特別の部隊、つまり核部隊に固有のものなのだ、その職務、ポジションについている人について、そういういわば管理体制をとるんだ。そしてこの岩国にいる第一航空団のそれぞれの人について、それぞれのポジション、この間不破議員から具体的に指摘をしましたようなそういう状態になっておるということはむしろ当然なんじゃないかというふうに思うのですが、どうでしょう。
  282. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 ただいま先生御提起のラロック氏の話でございますけれども、私ども理解いたします限りで、二月の五日に山口県の県の関係の方々が岩国の司令官にお会いになられてまさにその問題を提起されておられて、ラロック氏はこう言っているけれどもどうだということを言ったのに対して、司令官は、それは違う、要するにそれは属人的なものなんだということで、そのことはちっとも機密ではないんだということを司令官自身がはっきり言っておりますので、恐らくラロック氏の言っていることは誤りであろうというふうに考えられます。  私どもといたしましては、このパーソナル・リライアビリティー・プログラムの問題は過去にも国会でいろいろ御論議があったところでございますけれども、せっかくこの前、不破委員からの御提起がありましたことでもあり、念には念を入れるという意味で、ここのアメリカの大使館にも確認いたしましたけれども、そもそもパーソナル・リライアビリティー・プログラムというのは、核を扱う資格や能力のある人間の人格、人間の安定性、信頼性、そういうものを常々評価していく計画なんであって、そういう計画があるからといって、そこに当然核があるということでは全くないんだ、そういうこととはつながらないんだという点を、アメリカの大使館の方も確認をいたしておる次第でございます。
  283. 東中光雄

    東中委員 PRPというのは、その文字だけでいけば核兵器要員ということにはならぬわけですね、パーソナル・リライアビリティー・プログラムでありますから。これがPRPと言われておるけれども、核兵器要員のプログラムなんだということ、このことは先ほど来認めておられるわけですね。  それについて、山口県地方課長の福田さんと岩国市の基地対策担当部の河本さんが、ロバート・B・ミラー大佐という岩国の基地司令官に聞いたということを言われておりますが、ここではいま外務省そして防衛庁が認められたような核兵器ということについて触れないで、信頼できる人物のリストアップなんだという形で言っている。  それから沖繩で、県の大浜渉外部長が海兵隊基地司令部の参謀長グレーデン大佐にこの二十六日にただしに行ったときも、核兵器要員とは書かれていない、PRPとしか書かれてないのだからということを強調しているのですね。いまここで言われているのとはちょっと違うわけですよ。現地の司令官や軍人が説明した範囲では、いまここで御答弁になったこととも違うことを言っている。なぜそういうことを言わなければいけないのか。  それから同時に、もう一つ申し上げなければいかぬのは、この名簿が単に資格を持っているというだけだったら、なぜわざわざつくる必要があるのか。これが核部隊であるからこそ、その要員はこうなっておるんだということでつくられておるのであって、単なる資格であったらわざわざそういうものをつくる必要は何もないわけです。そういう点についての説明ができないと思うのですけれども、どういうふうにお考えになっていますか。
  284. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 まず第一点、PRPということは、そのこと自身は個人的信頼性計画というようなことになるかと思いますが、私ども理解しておりますのは、これはもっぱら核兵器を取り扱い得る要員との関係で行われている計画であると承知いたしております。  そこで、いまの先生のお尋ねでございますが、御承知のように米軍は全世界に展開している軍隊でありますから、米軍の要員が世界じゅうのいかなる部隊の任務につく場合にも、その要員に当該必要な任務が遂行し得るような資格や能力を常に備えている者が必要なことは当然であろうと思われるわけであります。そしてそのような要員がおり、そしてそのような要員の信頼性についてふだんからチェックし評価する計画を米軍が実施しているということがあるからと言って、そこに核兵器そのものがある、それらの人たちが核兵器をそこで扱っておるということには全くならない。むしろ、そのような能力や資格を持っている者がどこにどれだけいるかということを常に明らかにし、そしてその人たちの人格の信頼性を常々チェックしておくことによって、必要な事態が生じた場合に、そこにおる米軍に当該有資格者を回すと申しますか、任地につくということができるようなことを容易にしておく、そういうようなことから、ふだんからそのような計画をつくっておる、そして実施しておる、こういうふうに理解いたしている次第でございます。
  285. 東中光雄

    東中委員 要するにPRP計画というのは、核兵器のニュークリアウエポンというのが前についておるのと変わらないんだということ、そういう理解でおるということはしかとお伺いしたわけでありますが、いま言われている資格だけでは説明のつかないことがたくさんある。というのは、この名簿についてこの前分析をして説明をしましたように、たとえば第一海兵航空団の所属の飛行機であっても、スカイホークとイントルーダーについてはこういう関係の人が配置されておる。しかしファントムについてはほとんど配置されていない。あるいは第一兵器部隊については、これはもう非常にたくさんの人が配置されておる。その関係のMPについても、ほかのMPと違ってそういう資格を持った人が配置されておる。あるいは普天間のあの運搬を担当するヘリコプターにしても、そこには必要なだけの核兵器要員が配置されておるという結果が、この分析によって十分出てくることであります。  そういう状態にあるものを、単なる資格だということだったら、これは説明にも何にもならない。こういう名簿がわざわざつくられておるのは、そういう体制になっていることを自覚してのものじゃないか。普通に言えば、これは符牒で書いてありますから、なかなか何のことかわからぬわけです。いろいろ解析をしてやっとわかるようになっている、こういう状態ですね。そんなことする必要は何もないわけですよ。  だから私たちはまだ引き続いて追及をしますが、時間がございませんのできょうはこの程度にしますけれども、岩国の第一航空団についての核部隊としての疑惑というのは非常に深まった。それはいまなお全く払拭されていない。払拭されていないどころか、この資料によって非常に大きな決定的な証拠にさえなるというふうに思っておるのでありますが、外務大臣、こういう問題についての非核三原則というのは国是と言われるぐらいに非常に重要な問題であります。  そういう点から見まして、こういう点についての米議会でのいろんな答弁から見ましても、疑惑は一層深まっておると思うのであります。岩国の部隊についての調査をされるように要求をしたいのでありますが、外務大臣の御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  286. 園田直

    園田国務大臣 非核三原則は堅持するところであり、米国にも通意をしてあり、各種の会議の場合でもこれを前提として話をしております。ただし、大事な問題でありますから、疑惑があれば調査をし、確認することはやぶさかではございません。ただし、岩国、普天間については、すでに確認済みでございます。
  287. 加藤清二

    加藤委員長 東中光雄君に申し上げます。お約束の時間を超過いたしておりまするので、結論を急いでください。
  288. 東中光雄

    東中委員 それでは終わります。
  289. 加藤清二

    加藤委員長 次に、田川誠一君。
  290. 田川誠一

    ○田川委員 時間がありませんから簡単に質問をいたします。  まず、外務大臣にお伺いしたいのは、日中平和友好条約ができまして、日中間の懸案事項はほとんど片づいたわけですが、御承知のように長い間の戦争状態、不正常な状態、両国間のそういう不幸な関係が長く続いておりました関係で、中国に残留をしている日本人がずいぶんたくさんいるはずであります。まだはっきりした数字はわからないと思いますけれども、わかっていたら教えていただきたい、恐らくわからないと思います。推定で四千人、五千人あるいは一万人もいるのではないかという話も聞いております。その中国に残留している日本人の中で国籍のあいまいな人がかなりいるのではないか。終戦のあの混乱した時期に中国人と無理やりに結婚をした日本人の女性、あるいは戦争中中国の婦人と結婚した日本の男性、そういうような人々の中で、中国では外国人とみなされており、日本の方ではもう国籍がなくなってしまった、あるいは最初から国籍がない、こういうような無国籍の状態にある人がかなりいるのではないか、後で具体的な例を一つ出しますけれども。  それからもう一つは、中国の婦人と結婚して中国に永住をしたい、しかし日本の国籍は持っている、中国人としての国籍も得たいという人も中にはあるんじゃないかと私は思うのです。たとえば、いま言いましたように、中国の国籍がなくて中国に在住をし、これからずっと長くそこで骨を埋めるという日本人が、中国に国籍がないために、中国人とは違った差別待遇を受けておる面がかなりある。一面に、外国人扱いされていますから、いい面もあると思うのです。食糧の配給なんというのは外国人扱いですから、国内の人よりいい。しかし何か思想問題が起こる、トラブルが起こると、あれは外国人だからということで疑いの目をもって見られるというような境遇にもある。ですから、中国にいながら中国の国籍がないために、中国人と同じような仕事をし、中国のために働いておる人が別な扱いを受けておるという面もあるわけです。  私はきょう国籍の問題だけにしぼりますけれども、そうしたように中国にいる日本人でどっちかにはっきりした方が将来のためにいいという問題が残されている。どうもそういう問題の解決の仕方が遅いものですから、いろいろ問題が起きてくるわけです。  私は外務大臣に細かいことはお伺いしませんが、そういう懸案の問題について、一体政府は今後もっと促進してなるべく早く戦後のごたごたした細かい処理をやっていくだけの熱意をお持ちかどうかということをまずお伺いしたい。
  291. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言のことは私もよく承っておりまして、私が北京に参りましたときにもそういう方々が来られて、泣きながらいろいろな苦衷の訴えをされました。そこで、黄華外務部長には率直にこの点を打ち明けて、善処方協力願いたいと申し入れをいたしております。  いまのお話の中で、日本の籍と中国の籍、両方持ちたいというのは、これはちょっと中国の方でも受け入れがたい困難な問題であるし、理論的にもまたむずかしい問題じゃないか。向こうに住んでおって中国の国籍をとりたいあるいは日本の国籍をとりたいという方については、中国の方でも協力するというふうな御返答をいただいておりますが、何分にもわれわれの想像以上に数も多いようでありまするし、かつまた、そういう立場でいままでは表面に出ないで、隠れておるというわけではありませんが、そういう生活をしておられた方もあるようで、調査その他については困難をきわめているようでありますけれども、こちらの事務当局と向こうの事務当局と鋭意努力をしておりますが、今後とも、この点は個人の基本的な問題でありますからなるべく早く促進するように努力をし、中国にもお願いをいたします。
  292. 田川誠一

    ○田川委員 いまの二重国籍は私の方で要求したわけじゃないんで、それはちょっと私の言い方もまずかったと思いますけれども、向こうの国籍をとれば当然日本の国籍は失うし、そういうことは余りよくないことですから、そういう意味で申し上げたのではございません。  そこで、いま一つ例をちょっと出しますけれども、これは無国籍の例なんです。私のところへ昭和五十二年八月に――中国の東北の旧満州の吉林に田中和子、旧姓は山中田鶴子、この人は三年前から、つまり昭和四十九年ごろから日本に里帰りしたいと中国にも申し入れ、日本にも申し入れていた。ところがこの婦人、日本の婦人で現在四十九歳ですが、この人は中国人と結婚して子供が五人、もちろん主人も元気でいるのです。この人は中国では外国人とみなされている。そして、日本では日本の国籍を与えられていないのです。大連生まれなんです。昭和四年二月十六日に大連で生まれまして、昭和四年の生まれですから満四十九歳。ところが、一歳か二歳で養子に出されちゃった。両親を知ったのは――もらわれて、山中寅次郎、ツル夫婦に養子に出されたわけです。本人はもう赤ん坊のときに出されましたから山中姓を名のってずっといたわけです。ところが、この養父母が相次いで亡くなりまして、四歳のときにお父さんが亡くなり、十一歳のときにお母さんが亡くなった。お母さんが亡くなったのは、昭和十五年。十一歳のときにお母さんの山中ツルさんが亡くなった。その亡くなるときに初めて、本当の子じゃないということをお母さんが臨終の席で言った。私のところに来た手紙に、養母が死ぬ前に私を呼びつけ、私はおまえの実母ではありません、あなたの実母は子供が多く、私とはよいお友だちだったので、私がおまえをもらったわけですと言って母は息を引き取った。あんまり急のことであって、名前も聞かないで、原籍も聞かなかった。本籍も聞かないで、その後は自分の住んでいた家主の小松重俊さん夫婦に引き取られてずっと過ごしてきた。そうして、終戦のときまでこの小松夫婦に育てられて小学校も終え、終戦を迎えた。そして、終戦の翌年にこの小松夫婦は日本へ引き揚げてきた。日本へ引き揚げるときに、後でこの小松夫人からの私への手紙に、ごたごたした混雑でこの田中和子さん、旧姓山中田鶴子さんが置いてきぼり食っちゃった。そのときに十七歳。十七歳でたった一人ぼっちで中国で、このときは吉林にいたわけですが、置いてきぼりになったものですから、中国人と結婚してずっとそれ以来今日まできているというのが、ちょっと長くなりましたが、この人の略歴なんですね。  そして、この人は、いまから五年前に、自分は日本人である――手紙を見ても日本人と何ら変わらないような手紙で、私どものところへ何回も便りをよこしておるのですけれども、自分は日本人だ、日本人だから、もう五十になるから、一度日本を見て、祖国を見てから死にたいということで何回となく一時帰国を願い出ているのだけれども、一向果たすことができないで、二年前に私のところへ言ってきたわけです。  それ以来、私も、かわいそうだから何とかして一回だけでもいいから日本へ来させたい。里帰りの制度もある。聞いてみると、里帰りの制度は、国費で旅費も出してくれる。中国側の方は、国内の費用を省によっては中国側も受け持ってくれるということですから、里帰りに乗せられれば一時帰国ができるということで、何回となく試みたけれども実現ができない。  その実現ができないというのは、まず国籍がない、日本の国籍がないから。その国籍がないために実現ができない。一体これはどうやったらいいのでしょうか。  きょう法務省の担当が来ておりますけれども、日本の国籍法から言うとなかなかむずかしいのですね。実際のお父さん、お母さんがわからないのです。名前もわからない。どこに住んでいたかもわからない。養父母だけは、さっき申し上げたように名前がわかっているわけです。しかし死んじゃった。そうして、何回も手紙を往復している間に、だれか日本人でおまえさんを知っている人がいないかと言ったら、私のところへ数名の人を、日本にすでに帰った人、自分が子供のとき、あるいは学校を卒業した当時近所にいた人、数名挙げてきた。その数名挙げてきた人に私が手紙を出して、日本人としての証明ができるかどうかと言ったら、その中の二人が私のところへ、この人は日本人ですという証明をしてくれる手紙をくれたわけです。その手紙を法務省に出して、何とかして日本人としての国籍を与えてくれないか、そうすれば中国の方では一時帰国者として里帰りの対象になるし、帰れるからと言ったけれども、だめなんです。そのだめな理由は後で言っていただきます。  その手紙をくれた人の一人は、養父母が死んだ後家主であった人の奥さんなんです。小松さんの奥さんがまだ健在で日本にいるわけです。その人が、確かに田中さんは日本人ですという手紙を私のところへくれました。それから近所に住んでいたもう一人の人、川添春美さんという人が、やはり日本人であるという証明をくれたわけです。その証明を二つ添えて法務省の民事局の方に出したのが去年ですか、大分前に出しました。それがだめなんです。  ちょっとだめな理由をあなたの方から説明してください。
  293. 橘勝治

    ○橘説明員 日本人でありながら日本に戸籍を有しない者を戸籍に載せる方法でございますが、二通りの方法が考えられるわけでございます。  一つは出生届を出すという方法でございますが、出生届につきましては、父母が明確であるということが必要でございます。したがいまして、ただいま御指摘のような件につきましては、これは父母が全くわからないということでございますので、出生届によりまして戸籍に載せるということができないわけでございます。  そういたしますと、もう一つの方法でございますが、これは就籍という方法がございます。これはやはり戸籍に載っていない者につきまして、家庭裁判所の許可を得まして籍に載せるという方法でございます。これにつきましては、家庭裁判所で事実を調査いたしまして、確かに日本人である、そして戸籍に現実に載っていないということを確かめました上で、就籍の許可の裁判をするということになるわけでございます。  したがいまして、その場合に重要なことは、家庭裁判所に申し立てをいたしまして日本人であるということの証明をしなければいけないということになるわけでございます。その証明のためにはいろんな証拠、どんな証拠でもよろしいわけでございまして、御指摘がありましたような本人の生育歴を知っている証人の証言等も一つの証拠になるわけでございます。  ただ、やはり重要な点は、家庭裁判所が直に本人からいろいろ事情を聴取するという点でございまして、外国におりますとそれが現実にできないという難点があるわけでございます。  なお、就籍の申し立てにつきましては、本人が家庭裁判所に出頭することができませんでも、たとえば弁護士を代理人に立てまして申し立てをするということは可能でございます。
  294. 田川誠一

    ○田川委員 実は時間がありませんから、法務省に事前に話をして、きょうも参事官とも話をしてきたわけです。私は国籍法のことはよくわかりませんけれども、二条四号を見ますと、父母がわからなくても、日本で生まれた場合国籍が与えられるんですね、そうですか。
  295. 橘勝治

    ○橘説明員 国籍法の二条の四号でございますが、これは日本で生まれた場合におきまして、父母がともに知れないとき、これはたとえば捨て子のような場合でございますね。初めわかっていた父母が後に所在が不明になるということではございませんで、初めから全然わからないという場合でございます。
  296. 田川誠一

    ○田川委員 当時の満州大連のようなところは、外国には違いありませんでしたけれども、日本が占領しておった地域である。そういう地域で隣近所の人が、あるいは養父母から引き取って育てた人、そういう人が日本人であるということを証明しているにもかかわらず日本人として扱えないということは、法律的にはなかなか困難だけれども、どうも現実から見るとずいぶん気の毒な気がしてならないんですね。ここで法律論議をしてもどうしようもありませんが、とにかく本人は祖国日本を一回見て死にたいということをたびたび言っているんです。そうして国籍が取得できれば中国側から里帰りとして一時帰国ができるんだから、何かそういう便法をすることができないだろうか、こういうことが本人の気持ちなんですね。  いま橘さんから、就籍という手段があるいはあるかもしれない、そこで国籍を与えられるかもしれないというお話がありました。これもやろうと思えば手続は踏めるわけですけれども、とにかく東北の吉林にいるわけですから、弁護士をつけるといったってだれが弁護士をつけるんでしょうか。代理人になるといったってなかなか大変なことなんで、そう簡単にはいかないんですね。そこで国籍の問題はともかくとして、とにかく無国籍のままに日本に里帰りができる方法はないだろうか。  外務省はいかがですか。そういう便法を講ずる方法がないのか、絶対にないのか、あるいは考える余地はあるのか、外務省の担当、どなたでも結構ですから。
  297. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答え申し上げます。  無国籍者は、日本人の妻である者以外の場合は日本に入国しなければ日本への帰化の要件となりませんので、帰化申請があればこれは法務省の方に審査をお願いすることになりますが、なかなか現状においてはむずかしいのではなかろうか、こう考えております。
  298. 田川誠一

    ○田川委員 いや、あなたにお伺いしたいのは――じゃ入国することがむずかしいということですか、いまのお答えは。無国籍のままで日本へ連れてこられる方法はないのか、こういう質問をしているんです。
  299. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 これはむしろ法務省の問題かと思いますので、法務省の方から御答弁をお願いいたします。
  300. 田川誠一

    ○田川委員 法務省はそれを許可するかどうか、入れるか入れないかということなんです。そうでしょう。そういうことでしょう。私が聞いているのは、まあ常識的に日本人だと言われている吉林にいるこの田中和子さんの希望を入れる方法はないだろうか。たとえば外交交渉で中国側に、日本の国籍はこういう理由でなかなかむずかしい。むずかしいが、一時帰国させることはできないだろうかという交渉をやる方法はないだろうか、こういうことを聞いているのです。
  301. 黒岩周六

    ○黒岩説明員 お答え申し上げます。  先生の御質問、若干あれがあるかと思うのでございますけれども、中国に在留しておりますいわゆる日本人孤児で中国におきまして無国籍者として扱われておる方、こういう方が入国したいという場合につきまして、そういうケースも多々あろうかと思うのでありますけれども、その方及びその方の親族の戸籍関係の確認が困難でありましても、その他の資料等々によりましてその方が元日本人である可能性が大であるということが判明いたしました場合には、かつまた、そういうことをもちまして外務省より法務省に協議がございました場合には、法務省といたしましてはとりあえずこの方を外国人として入国を認める、そういうことになる次第でございます。
  302. 田川誠一

    ○田川委員 そうすると、いまこの田中和子さんの私が説明した要件では、大体入国できるということで解釈してよろしゅうございますね。
  303. 黒岩周六

    ○黒岩説明員 お答えいたします。  田中さんの具体的なケースにつきましては、失礼ながら私本日初めて伺いましたようなことでございますもので、改めて検討させていただきまして、先ほど申し述べましたようなことで、繰り返すようでありますけれども、仮に日本人としての入国が困難でありました場合には、とりあえずは無国籍者あるいは外国人ということで入っていただきまして、もっともその際にも若干の手続等はございますけれども、そしてしかるべく措置をとるということが考えられようと思います。
  304. 田川誠一

    ○田川委員 いまあなたが先に答えたから私も質問を続けたわけですけれども、その前に向こうを出るに要件が必要なんですよ。私が最初に外務省に聞いたのは、里帰りでというと日本の国籍がなければ出られないのです。こっちでいま入国管理局が入れると言うけれども、できない。だから、それを向こうを出させる方法がないだろうか、こういうことをさっきからお尋ねしているのです。
  305. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  先ほど入管当局から話がありましたように、無国籍者の立場からの日本への入国ないしは帰国ということについては、一定のルールがあるわけでございます。北京の日本大使館における一つの大変大きな仕事は、こういうケースをどうやって温かくお世話するかということにあるわけでございまして、相当たくさんのケースがあるわけです。大体一件ごとにそれぞれ事情を異にいたしますので、担当官が伺ってからそれぞれのケースについて何か裏づけの資料がないかとか、写真がないかとか、名前でも覚えてないかということを一件ごとに扱っているわけでございますが、その場合、いま田川委員の御指摘になりましたように、向こうが出国を認めなければ帰れないということが、一つ常に出てくる問題でございます。これは基本的には中国の当局が当該人間の中国からの出国について許可するかしないかという問題は一般論としてあるだろうと思いますけれども、個々のケースにつきまして、いま御指摘の例のように非常に事情がよくわかる、そういう場合に中国側の許可がないだけの理由で出国が滞っているということでございますれば、これは当然在外機関が中国側のしかるべき当局と話して、また理由をよく説得いたしまして、そういう理由によって出国が滞ることがなくなるように努力するのは当然でございます。最終的な決定は恐らく中国側ということになるかと思いますけれども、そのための努力をわが出先当局が惜しむものではないということでございます。
  306. 園田直

    園田国務大臣 いまの答弁と余り変わりありませんけれども、いま田川委員質問されたのは、法的な理論はこちらに聞かれて、日本に入る道はむずかしいけれども何とかあるかもわからぬ、そこで向こうの中国の方から何とか出してくれるために外交交渉をやるだけの努力をするか、こういう御質問だと思います。私は、当然やるべきであって、一般論ではなくて、いまの個々のケースを田川委員から詳細もっと承りまして、法務省とも連絡をし、中国ともそういう交渉、お願いをいたさせます。
  307. 田川誠一

    ○田川委員 さすがは政治的な高所から御判断していただいて、大変恐縮でございます。  時間がありませんから申し上げますと、外国人として入国をするよりも、やはり国籍がなかなかむずかしいけれども、いろいろな状況証拠からすれば日本人とみなされるということで、中国を出て日本へ来れば、厚生省では里帰りとして国費で旅費を出せるわけですね。これが外国人ということになりますと、なかなか旅費の問題をどうするかということがまた問題になるわけです。ですから、たとえば養父母から引き取った第二の養母が、これは日本人に間違いない、あるいは近所に一緒に暮らしていた人が、日本人に間違いないという証明があれば、状況証拠としてかなり日本人と思われる要素が強いわけですね。だからそういう要素で日本人と同じような立場で里帰りをさせれば本人の希望も達せられるわけですね。  どうでしょうか、法務省の橘参事官にお伺いしますが、仮に就籍を申請する場合にも、先ほど私が説明したような第二の養父母が証明したり近隣に住んでいた人が日本人として証明するというのは、かなり日本人としての状況証拠として整っていると見てよろしいかどうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  308. 橘勝治

    ○橘説明員 この問題は最終的には裁判所が判断する問題でございますので、こういう具体的な問題につきましての見通しを申し上げることは恐らく適当ではないのではないかと考えるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、裁判所で証拠になる資料といたしましてはもうあらゆるものが対象になるわけでございまして、ごく一般的に申しますならば、就籍の申し立てをしてくる事例というのは、非常に証拠が薄いと申しますか、余り証拠がない例が多いわけでございます。したがいまして、比較的若い時期に一緒に生活をした者が現にいるということは、本人の立場からいえば非常に力強いといいますか、そういうことが言えるのではないかと思います。  それからつけ加えますと、外国にいる者につきましても、在外公館を通じまして間接的に本人の供述を求めることは手続上可能でございます。
  309. 田川誠一

    ○田川委員 もうこれでやめますが、外務大臣にお願いしたいことは、いま法務省の方がお述べになりましたように、就籍という手続をとった場合に、全然手がかりがない人よりもかなり日本人としての状況証拠になるというようなお話でございます。ですから、でき得ることなら日本人という扱いでこちらに来られるような話を出先機関を通じてやっていただければ、これは外交当局がやればそうむずかしいことじゃないと思うのですね。ですから、そういう意味で今後ひとつ出先に、こういう小さな問題だけれども戦後に残された一つの問題としてこれを解決するように努力していただく、このことをお願いいたしたい。  いまこれとやや似たような問題で、お聞きになっていらっしゃると思いますが、日本と中国との間で、たとえば終戦のどさくさに子供を置いてきてそのままになっているということで、日本にいる肉親が中国で何とかして自分の子供を探してほしいと言っているのが九十五名あるそうですね、昨年現在ですけれども。これは民間団体の調べた資料でございます。それから中国に残された孤児で、肉親を探したがまだ帰国できない者が六十数名いるそうですね。それから中国に残留した孤児で肉親がまだ発見されない、肉親がわからない、自分は日本人だけれども親を探してほしいと言って中国で日本側に申し入れをしているのが百九十名くらいいるそうです。これは去年の資料ですから多少数は違うと思うのです。  これだけ見ましても、これはある民間団体、長野県にある中国残留日本人肉親探し運動推進本部の日中友好手をつなぐ会全国会の会長から私どもに出された資料なんですけれども、こういう一民間団体の資料でもこれだけ解決していない人たちがいるわけでございまして、どうぞひとつこういう方面の仕事もわれわれ日本人の同胞としてやらなければならぬ一つの務めだと思いますので、一層努力をしていただくようにお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。
  310. 園田直

    園田国務大臣 決して小さい問題ではなくて非常に大事な問題であります。鋭意努力をいたします。
  311. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、来る二十日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会