○小林(進)
委員 何しろわずかな時間でございますので、おいでいただきました先生方に全部御質問を申し上げたいと思いますので、私の質問が全部終わりましたら、順次先生方から御答弁をちょうだいいたしたいと思います。一問一答で参りますととてもなかなか時間内で消化できませんので、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。
まず第一間でございますが、これはどなたと申し上げませんが、まず
参考人の方の団長と思われる方から御答弁いただきたい。その方がいなければ、ひとつ皆さん御相談をいただいてお答えいただきたい。
第一は、私は皆さん方の御
意見を聞いていますと、
批准を早めるべきだということをおっしゃっておりますが、なぜ一体
批准を早めなければならぬのかということが
一つであります。
批准を早めることのメリットは具体的に何か。
世界は百六十カ国近くありますが、
批准しているものは、A、
B規約に若干差異はありましても、まだ五十有余カ国、三分の一であります。三分の一の国だけであって、
批准しない国の中には、まず日本の
政府が兄貴分として尊敬してやまないアメリカも現在
批准しておりません。わが日本に一番
関係のあるお隣の中国も、あるいはカナダも、あるいは大韓民国も、あるいは北朝鮮も、
批准しない国を尋ねてまいりますと、ずいぶん日本の周辺で
関係のある国々が
批准をいたしておりません。なぜ急がなければならぬのか。
それから、第二点として私がお尋ねいたしたいのは、先生方は挙げて留保事項はやめるべきだという御
意見でありました。
宣言もやめるべきだとおっしゃいました。それからいま
一つといたしましては、早く
批准をしておいて、及ばざるところは実践あるいは追加あるいは修正等、
国内法を精力的にやるべきであるという希望
条項が述べられました。私はそれらの御
意見を承っておりますと、一体、留保された事項だけでも、これが
批准した後に日本の
政府は、急いでそういう形を改めるとお考えになりますかどうか、これが皆さん方にお聞きをしたい私の重点なんであります。いまこそ、
批准をしないさなかの中に、これをかがみにして、
国内法にあるもろもろの矛盾でありますとか、
労働基本権の問題
一つだけでも詰めていけばたくさんの問題がある、それを全部洗いざらしをいたしまして、そして
国内法の整備をするという作業が、
批准をしておいて後はもうそのまま放置されることよりは、むしろ成果を上げるのではないか。放置をするということを言いますと、少し私の言い過ぎだとおしかりを受けるかもしれませんが、大体この種の
批准や法律というものはやってしまうともはや能事終われり、これが
国会の長い習性であります。問題の仕上げをするまでは実に激しい議論をいたしますが、
一つその問題が通過をするなり
批准するなり、作業が終わってしまうと大抵のことは放棄される、もはや
仕事は終わった、こういう形になっているのが私の長い
国会の経験であります。その
意味においても、問題が重要であれば重要であるほど、
批准をする前にみんな
国内法に詰めておいて、詰めるだけ詰めて、問題のあるところはさらけ出すだけさらけ出しておいて、そしてりっぱな仕上げをした後に悔いのない
批准をする、私は仕上げ
方法としてはこの方がいいのではないかと思いますがゆえに、なぜ一体
批准を急がなければならないのかということに対して御質問を申し上げるわけであります。これは先生方に対する総括的な質問。
次に具体的に申し上げますが、時間がありませんから、まず
久保田参考人にお尋ねいたします。
私は、この
基本的人権というものは、昔の封建制度においては領主あるいは君主等に対するいわゆる
個人の
基本権を守る、
現代の
社会においては
国家から加えられるそういう
一つの侵害に対して
個人の
基本権を守るというのが、国際
人権法のよって生まれたもとであると思います。しかし、いまわれわれの周辺をながめますときに、われわれの
基本人権が侵されているのは単に
国家権力だけではございません。いわゆる私人による
基本人権の侵害というものがわれわれの周囲においてしばしば行われておるのであります。あるいは隣人による
基本人権の侵害と言ってもよろしいかもしれません。先ほどもどなたかお触れになりましたが、あるいは部落問題に対する
差別、これは国自身が加えている
人権侵害ではございません。これは私人による
差別であります。
基本人権の侵害であります。あるいは農村なんかに参りますと、まだ村八分などという制度があって、
個人の
基本人権が侵害されております。こうした私人による
基本人権の侵害を一体どうして救済するのか。これは、その侵害を受けた
個人にとっては、
国家権力による侵害も、私人による、隣人による侵害も苦しみは同じであります。被害法益は同じであります。これもこの際、徹底的に解明をしていただかなければ、問題は常に将来に残すことになるのであります。
そのことに関連いたしまして、私はここでもやりましたが、いま日本において一番大きな侵害を受けているものはあの金大中氏の事件であります。これは日本の国、日本の法律のもとに健やかに滞在をいたしておりました。それが侵害をせられて韓国まで持っていかれた。その侵害をした者が
国家権力であります。韓国の
国家権力であれば、それは日本の主権の侵害である、あるいは日本の
人権の侵害でありましょうが、しかし
政府は、それはまだ、韓国の
国家権力による、いわゆるKCIAによる侵害だという証明が出ないから、これは
基本人権の侵害ではない、こう言っている。問題はこれなんであります。しかしその中には、金策雲などという韓国の
外交官、一等書記官もちゃんといる。KCIAという、いわゆる韓国の
国家権力の侵害が証明されなくとも、あるいは金東雲という私人による侵害であろうとも、これは被害者たる金大中氏にとっては完全な
個人の
人権の侵害であると私は思う。その後ろに韓国の
国家権力があるなしにかかわらず、金大中氏に対する完全なる
人権侵害だと私は思う。それを日本
政府は
解決しようとしないじゃありませんか。アメリカ
政府は夢中になって、いまでも、アメリカの
国会も国務省もこの金大中事件の
解決、
人権侵害に対し、
解決する情熱を燃やしておりますが、日本
政府は、
政治的
解決をしたと言って、やらない。やらない
政府、外務省がわれわれの前に、この国際的
基本人権の
批准をやってくれと言って出すこと自体は、大変な
自己矛盾じゃないか、
自己撞着じゃないかと思う。
そういうことから考えまして、いわゆる私人による
人権侵害を一体どういうふうに防いでこれを守り抜けばいいのかどうか、こういう重大な問題がまだ未
解決であるということについて、私は先生の御
意見を承っておきたいと思うのであります。
それから
和島先生にお伺いをいたしたいのでございますが、先生は最も強力な
批准推進論者でいらっしゃるようでございます。しかし、その中でも
A規約に留保
条項があるのはやはり間違いだ、こうおっしゃっておりますが、
A規約というのは一体何でありましょうか。これは漸進的
規定である。何年何月何日までこれを完全に実行せいとかあるいは
国内法の改正をせよとかいう
規定は
一つもありません。だから、専門家の学者の
解釈によれば、単なる
努力事項であって、これは五十年、極端に言えば百年そのままにしておいても、われわれはいまその
批准のために
努力しておりますと言えば済むものである。それをあえて日本
政府がこれを留保したことには、やはり
一つの裏があるのではないか。すなわち、反動的な物の
考え方です。この
世界人権規約を反動的に抑えて、永久的に逆コースを進もうという反動姿勢のあらわれではないか。それ以外に考えられない。これは留保しないことによって失うものは
一つもないのであります、くどいようでありますけれども。それを先生が、
批准をせしめた後で、日本の
政府をして改めさせる方向へ持っていった方がいいと言うことは、ただ言葉の論理にして一それはまあ
社会党でも天下を取れば別でありますけれども、いまの保守政権の間においてはむしろ逆の方向へ持っていくおそれがある、私はこう考えておるのでありまして、この点は一体先生はどうお考えになりますか、お尋ねをしておきたいと思うのであります。
時間もありませんから、まだ問題はありますけれども、このくらいにしておきましょう。
中島先生にお伺いをいたしたいのでございますが、
中島先生から
男女平等の問題で詳しく御説明がございましたが、私は、実は
男女平等の問題に対しては余り勉強いたしておりませんので、わからないのであります。しかし、それぞれの、肉体的にも体力的にも生理的にも
男女の違いがあるのでありますから、やはりその体力、生理その他の完全な条件を備えること自体が私は
男女の平等ではないかと思うのでございます。さもなければ、先生のおっしゃるように、男も時間外
労働をやる、だから
女性もやればいい、
女性だけに生理休暇はいかぬ、乱暴とおっしゃるかもしれませんが、そういう議論も出てくるわけでありますから、やはり
女性は
女性らしく、生理休暇も与えるべきだ、時間外
労働もやらせるべきではないと言えば、われわれの言う常識の
男女、平等観から若干変わったものが出てまいりますので、この変わったもの自体が
男女平等の
本質ではないかと私は考えておるのであります。
むずかしい理屈は別にいたしまして、産前産後の有給休暇につきまして、これはまだ
女性の中自体に
職業によって日本の
政府は
差別を設けていることは、先生御存じのとおりでございますが、これをまず
女性の
立場から闘い取るのが本当ではないか。それに関連いたしまして、先生は農村の婦人の産前産後の有給休暇を一体どのようにお考えになっておるのか、中小企業に働いている
女性の問題について一体どうお考えになっておるのか、これをひとつお伺いをいたしておきたいのでございます。
なお、生理休暇の問題に関連いたしまして、男には生理はありませんけれども、やはり若干の、一カ月を通じて体調の悪いときもありますから、これに準ずるべき休暇を
男性にも与えるべきではないかという
意見もありますが、これについてもひとつ承っておきたいと思うのであります。
次に、
真柄参考人にお伺いをいたします。
同盟罷業をする
権利、官公労のみを
差別してこれを奪っているのはけしからぬという御
意見でございましたが、しからば一体これをどのように与えるためにどう具体化すべきかということが一点であります。
第二点は、軍隊あるいは警察に対しては御
意見はありませんでしたけれども、軍隊の中にも軍属を含むかどうか、これは明確にこの問題をいまひとつ詰めておく必要がある。警察官といいましても、警察官の中にはいわゆる一般の事務職員あるいは雑役、単純な
労働者、そういう者も警察署という
一つの
構成の中に含まれているわけでありますが、そういう
人たちも警察官の
構成員として団結権、ストライキ権を一体奪われてよいものかどうか、こういう点もお伺いをいたしておきたいと思うのでございます。
なお、公の休日に関する
報酬の問題、先ほども大坪先生の御質問にお答えがあったようでございますけれども、私はこの問題は大変大きな問題だと思っております。ということは、広義に解するか狭義に解するかによってこの
内容がくるっと変わってくるからでございまして、わが日本には地方地方によりまして
公休日というものがございます。たとえば東京都におきましても、十月一日を都民の日としてこれを
公休日と定めている。こういうものはやはり有給休暇と認めるほどの広義の
意味に解せるのかどうか。また週に一日訪れる日曜日、この週休日も一体公の休日に値するのかどうか、そして有給休暇の対象となるのかどうか。
それから「公の休日についての
報酬」に関連をいたしまして、日給月給制は、公の休日にはいまの場合は賃金をもらっていない、このままでいいのか。出来高払いのものは一体(d)項に該当しないのか、パートタイムはどうなるのか、臨時雇いはこの
規約に当てはまらぬのか、日雇いはどうなるのか、こういう問題が出てくると思うのでございまして、むしろ公の休日などをこのままにして
批准をすると、日本の反動
政府はさらに一切のものに給料をくれないような方向へ持っていかれるおそれが大変あるのであります。これはもっともっと詰めてきちっとしておかないで
批准をすると大変なことになるぞ、こういうような憂いを私は持っているわけでございますが、この点もひとつお話を承っておきたいと思うのでございます。
なお、
高等教育の問題に関連いたしまして、今度は
小川先生にお伺いいたしたいのでございますが、なるほど日本の
政府は、この
高等教育にいたしましても留保をいたしております。留保をいたしておりますが、日本の私学
教育といえどももはや経営が困難である。事実上、文部省は、これは
高等教育というからには短大から大学の課程でございましょうけれども、年間数百億円の金を組んでいわゆる運営費というものを相当多く補助いたしております。その他もろもろの金を出して、パーフェクト、完全ではありませんが、無償化といいますか、この
規約にあるとおりの方向へ国は動いている。また現実にはそこへ行かなければもはや
教育は不可能になっている。これは大変いい傾向です。それが何割になっているか知りませんけれども、国は補助をいたしておるのでございます。それをあえて国が留保しているということは非常に反動的な物の
考え方である。私はその
意味におきまして、この点も先生方の御
意見を承っておきたいと思うのであります。(発言する者あり)
大分文句が出ましたから、私はここら辺で質問を終わりにして、御返答をお伺いいたしたいと思います。どうぞよろしく、順次御回答をお願いいたしたいと思います。