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1979-05-07 第87回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月七日(月曜日)    午後一時九分開議  出席委員    委員長 塩谷 一夫君    理事 愛野興一郎君 理事 大坪健一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       川田 正則君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐野 嘉吉君       中山 正暉君    金子 みつ君       河上 民雄君    小林  進君       高沢 寅男君    浅井 美幸君       中川 嘉美君    寺前  巖君       依田  実君  委員外出席者         参  考  人         (全日本労働総         同盟政治局長) 小川  泰君        参  考  人        (東北学院大学        教授)     久保田きぬ子君         参  考  人         (弁 護 士) 中島 通子君         参  考  人         (全日本自治団         体労働組合書記         長)      真柄 栄吉君         参  考  人         (元日本弁護士         連合会会長)  和島 岩吉君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   松本 七郎君     金子 みつ君 同日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     松本 七郎君     ————————————— 五月四日  日本国平和宣言決議に関する請願(木村武千代  君紹介)(第三二二八号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三三一二号)  同(稲垣実男紹介)(第三三二一号)  同外三件(天野光晴紹介)(第三三四七号)  同(宇野亨紹介)(第三三四八号)  同(櫻内義雄紹介)(第三三四九号)  同(渡部行雄紹介)(第三三五〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(第八十四  回国会条約第一六号)  市民的及び政治的権利に関する国際規約締結  について承認を求めるの件(第八十四回国会条  約第一七号)      ————◇—————
  2. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これより会議を開きます。  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  本日は、参考人として全日本労働同盟政治局長小川泰君、東北学院大学教授久保田きぬ子君、弁護士中島通子君、全日本自治団体労働組合書記長真柄栄吉君、元日本弁護士連合会会長和島岩吉君、以上五名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。本日は、両件につきまして参考人方々の忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。  なお、御意見の御開陳はお一人十五分程度にお願いすることとし、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  御意見開陳は、久保田参考人からお願いいたします。
  3. 久保田きぬ子

    久保田参考人 申し上げさしていただきます。私の場合は、主として日本国憲法観点からということにさしていただきます。  わが国憲法は、諸先生に改めて申し上げるまでもございません、基本的人権保障をその基本原則にして、御承知のように詳細な規定を設けております。こういうふうにして憲法保障いたします基本的人権性格本質につきましては、憲法自身が「侵すことのできない永久の権利」であると規定いたしております。それは、人間人間であることによって当然享有する自由及び権利であると解されています。御審議中の国際人権規約二つは、これが認めておりまする権利も「人間固有尊厳に由来する」ものであるとしており、したがって、日本国憲法及び国際人権規約人権本質に関します基本認識は全く同一であると申せます。  それから第二に、日本国憲法は、基本的人権とは個人として尊重されることであり、生命、自由及び幸福追求に対する権利であると言っております。それは歴史的に見ますれば、もっぱら伝統的ないわゆる自由権意味していることは明らかでございますが、現代ではそれに加えまして、この自由権保障をより実質的に保障し、実効あるものにするため、参政権、さらにいわゆる社会権をその中に含むものと解され、そのような立場から憲法人権保障規定は成り立っております。この点に関しましても世界人権規約構成は全く同じであろうかと存じます。  それから第三番目に、そのようにして保障いたします基本的人権を享有する主体でございますが、これにつきましては日本国憲法規定におきましては「すべて國民は」という表現を用い、あるいは「何人も」という表現を用い、規定によりまして差異がございます。表現上こういう区別はございますけれども、たとえば参政権のように、その性質上当然国民にだけ限定されるべきものは別といたしまして、個人関係生活関係権利についてはすべて原則として、国民だけでなく外国人についても人権保障の諸規定の適用があるものと考えられます。この点につきましては判決でも、いやしくも人たることにより当然享有する人権は、不法侵入者、すなわち外国人でございます。不法侵入者といえどもこれを有するものと認むべきであると言っております。  その次に、いわゆる社会権と言われますものの性格についてでございます。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、その実質条項において規定いたしまする諸権利性格につきまして、プログラム的あるいは達成されるべき目標と解していると言えます。すなわちその第二条は、「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いる」こととし、そのための「個々に又は国際的な援助及び協力」を要請しているのでございます。  日本国憲法第二十五条は、社会権につきましての総則規定であると言われております。通説では、この二十五条は具体的な内容を持つ請求権ではなべ、政治に対する指針を示した規定であると解されております。昭和二十三年四月七日の最高裁判決も、この見解をとっております。それだけではございませんで、昭和四十二年五月二十四日の有名な朝日訴訟の大法廷判決におきましても、傍論ではございますが、重ねて本条は、健康で文化的な最低限度生活保障する国の責務を宣言したにとどまり、国民に対して具体的な権利を与えるものではなく、何が健康で文化的な最低限度であるかの認定は政府の合目的的な裁量権に任されていると述べております。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約及びわが国憲法保障する社会権規定が、以上のようにプログラム的な性格のものと解されますことは、この権利本質を考えますとき当然であると思います。  以上、国際人権規約日本国憲法との関係で重要だと思われます点の幾つかについて簡単に申し上げたのでございますが、一括して国際人権規約と呼ばれます経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、ことにその市民的及び政治的権利に関する国際規約実質条項には、幾つか耳なれない、また国内法としても十分成熟してない権利が含まれております。しかし、全体といたしましては、日本国憲法基本的人権保障の諸規定と、原則的には何ら抵触したり矛盾したりする点はないと私は確信いたしております。  次に、付言させていただきたいことが一つ二つございます。  国際人権規約の制定は、御承知のように国連発足当時からの重要案件でございました。その背景にございますのは、国連の第一の目的である国際社会の平和と安全の維持には、その構成員人権及び基本的自由を国際的に保障することがどうしても必要であるという認識でございます。世界人権宣言前文が言う「人類社会のすべての構成員固有尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における」「平和の基礎である」というこの考え方でございます。それはまた別の言葉で申しますならば、力の支配ではない、パワーポリティックスではない法の支配、ルール・オブ・ローによって国際社会実現を目指すという考え方でございます。  国連が創設されてから今日に至りますまでの三十余年の間、国連中心にいたしました国際社会は、遅々とした歩みではございますが、この方向に着実に動いてきていると私は思っております。少なくともそういう努力が続けられていると存じます。現在の国際社会は、各国家間の交流、連帯関係年ごとに強まっております。それを無視いたしましては、どんな大国といえどもこの地上に存立し得ないのだと存じます。こういうような段階になってまいりますと、人権保障は、従来もっぱら各国家国内法によって確保する、保障するというそういう伝統的な考え方では、とうてい人権の実効ある保障を期待することはできません。どうしても国際的な場でも保障されることが必要になります。各国による人権保障は、論理必然的に人権国際法的保障を要求することとなりまして、国際法的な裏づけを得て初めて、実効ある人権保障実現するのでございます。わが国国際人権規約承認し、その締約国となりますことは、日本国憲法基本原則である基本的人権尊重原則を真に実効的なものにする道でございまするし、また平和で安全な国際社会実現という人類理想に対して大きく貢献することになると確信いたしております。  また、わが国連合国との、平和条約におきまして、「あらゆる場合に国連憲章原則遵守し、世界人権宣言目的実現するために努力」することをお約束いたしております。以来、わが国外交国連中心主義をその基軸にして今日に至っております。国際人権規約はその国連において採択されました重要な国際条約でございます。国際的な権利章典とも言うべきものでございます。わが国が進んでこの国際人権規約承認することはきわめて当然のことであろうかと存じます。  最後に、私事にわたって大変恐縮でございますが、この二つ人権に関する国際規約実質条項審議に際しまして、私も政府代表代理の一員といたしまして、総会参加いたしたものでございます。それからすでに十一年の歳月がたっております。発効いたしましてからすでに三年近くも経過いたしておりますことを思いますと、国際社会の有力な指導国でありますわが国承認は実は遅過ぎるという感じがいたすのでございます。  そういう以上の意味から、速やかに御承認が望ましいと考えるものでございます。  以上でございます。失礼申し上げました。(拍手
  4. 塩谷一夫

  5. 和島岩吉

    和島参考人 和島でございます。  私は弁護士として、また国際人権規約批准促進を要請してまいりました大阪府民会議代表としての立場から意見開陳したいと思います。  私たちの所属する日本弁護士連合会では、つとに国際人権規約の持つ重大な意義を認め、昭和四十三年十月、長崎市における人権擁護大会国際人権規約批准措置決議昭和四十九年十一月水戸市における人権擁護大会では、批准促進宣言をして強い関心を示してまいりました。  なお、国際人権規約がいつまでもわが国批准されない事態を重視しまして、私たち大阪で、これが促進を要請する府民会議を結成しました。この会議は期せずして保守、革新を問わず、超党派的に各界各層人たちによって構成されました。この会議では人権規約意義を強調し、批准促進をしばしば政府に申し入れました。一昨年の十一月には、前国連人権部長マルク・シュライバー氏を招聘しまして、国連における人権規約各国対応状況につき紹介され、人権規約世界史的意義を再確認するとともに、わが国即時批准の必要をいまさらながら痛感したのであります。  国内における世論もますます高まってまいりまして、府民会議は昨年四月十一日、本年四月十九日、東京都において「各界のつどい」を主催しましたところ、広く全国各地より各界多数の参加を見、強い批准促進要請決議となり、この決議はその都度政府に申し入れました。  ここで国際人権規約基本的性格を考えてみたいと思います。  国際人権規約はその前文で、人類社会のすべての構成員固有尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することが、世界における自由、正義及び平和の基礎であること。これらの権利人間固有尊厳に由来すること。恐怖及び欠乏のない自由な人間理想は、すべての人々が、その市民的、政治的諸権利とともに、経済的、社会的、文化的諸権利を享有できる状態において初めて達成し得ること。次に、各国家国際連合憲章により、人間権利及び自由の普遍的な尊重及び遵守促進する義務を負い、個人が他の個人及びその属する社会に対して義務を負い、この規約に認められた権利促進及び遵守のために努力する責任があることと定めています。これが国際人権規約基本的性格であります。人権規約に見られるところは、人間尊厳人権尊重が平和の基礎であることを宣明していることであります。  次に、国際人権規約歴史的意義を考えてみたいと思います。  この規約が制定されました背景には、第二次世界大戦に対する全人類の痛烈な反省があります。周知のように、第二次大戦は数千万人に及ぶ人々生命を奪っただけでなく、ナチスによるユダヤ人の虐殺、わが国の軍隊による中国人に対する大量の殺傷をもたらしております。このような事態を繰り返さないためには、国際的な監視の中での徹底的な人権擁護必要性が各方面から指摘され、一九四八年に世界人権宣言が第三回国連総会で採択され、この宣言法的拘束を持たせるため、その後十八年を経て、一九六六年に国連第二十一回総会国際人権規約が採択されています。両規約選択議定書はいずれも一九七六年に発効しました。  国際人権規約成立は、人権尊重により、人類悲願である世界平和達成への通路を切り開いたものと言えましょう。この規約が国際的に励行されることにより、世界史が当面する一切の課題が力強く解決への道が切り開かれることを信じます。  国際人権規約を大観しますと、A、B両規約には共通して、民族自決権擁護、一切の差別禁止男女の平等を規定しています。A規約は、労働基本権、家庭の保護、生活水準の確保、健全な生活の享受、教育に対する権利文化的権利などいわゆる生存権的基本権を定めており、B規約は、生命尊重良心表現の自由、集会結社の自由、居住、移転、出国の自由、遡及処罰禁止など、いわゆる自由権的基本権と公務への参加権を一定めています。  要言しますれば、現代文明人類の理性が到達承認した集大成とも言えましょう。また人類が当面している諸問題を解決する基本法とも言えましょう。特に戦争時代の悲惨を体験してまいりましたわれわれ日本人には、B規約の残虐な行為の禁止戦争憎悪扇動禁止にだれよりも共感されますし、不当逮捕の防止は、戦時中の自由抑圧が想起されます。公正な裁判、監獄法人道的処遇は、当面いたしております司法問題に、民主化推進への指針ともなり得ましょう。  人権規約は、日本国憲法理想を一にしています。われわれ日本国民にとって見落とすことのできないのは、この人権規約日本国憲法とその理想を一にしていることであります。日本国憲法は、基本的人権尊重国民主権戦争放棄とを三大原則としています。人権尊重に徹し、戦争を放棄することが平和達成への唯一の道とするわが日本国憲法を、世界的に、国際的に人権規約承認したことを意味しているとも言えましょう。こうした観点から国際人権規約は、わが国世界に先駆けて批准さるべきであったと思います。  批准が当面する世界情勢国内情勢が持つ意義を考えてみましょう。現下の世界情勢は、世界人権宣言国際人権規約に結集した人類悲願である平和を希求する流れと、また一方には、対立する民族国家間の紛争を、武力を誇示し、武力による威嚇または武力の行使で解決しようとする動きは後を絶たず、一歩誤れば人類の滅亡にもつながる戦争を誘発する危険をはらんでいます。私は、なお希望を失わないのは、人権規約が強調するように、人間尊厳を認め、人権尊重することにより、世界平和を推進する動き人権規約批准にあらわれていることであります。このことは、世界が平和への道を探求していることでありましょう。人権尊重しない国家社会には真の平和はあり得ないことを、世界歴史が物語っています。このことがようやく国際人権規約批准により、国際的に承認されようとしているとも言えましょう。  現在、すでにA規約は五十八カ国、B規約は五十五カ国、選択議定書は二十一カ国によって批准されています。国内的にも解決を迫られている多くの人権問題があります。外国人差別的処遇部落差別、その他各種の差別問題が、日本国憲法下に問題となっています。規約が強調する内外人平等を含む一切の差別禁止は、これらの国内問題の解決にも大きく寄与すると思います。  人権規約に対するわが国対応を見てみます。人権尊重基本とし、戦争放棄宣言して平和への道を歩むわが国が、国際人権規約を今日まで批准しなかったことは、各国から奇異の念をもって見られています。日本国憲法のもとに平和国家として再出発したわが国は、世界各国の先頭に立って世界平和を推進すべき使命を自覚すべきであります。この使命の遂行のためにも、どの国よりも先にこの国際人権規約批准すべきであったのであります。重大な国際情勢のもとに、国を代表して平和外交を展開する使命を有する人々が、いまなおわが国がこの規約批准されないことにいかに当惑してきたか、察するに余りあります。こうした見地から、今日わが国がこれを批准することの意義は大きいと思います。  私は遅まきながら、国際人権規約批准が今国会審議されることになったことを歓迎するとともに、速やかに批准されることを強く要望するものであります。ただ、今次政府提出案件では、選択議定書が含まれず、A規約についても、公休日報酬スト権原則的付与高等教育漸進的無償化が留保されていることはまことに残念であります。A規約は特に第二条で、この規約に認められた権利実現を漸進的に達成するため云々と規定しております。即時全面的な実行を予定してはおりません。この点からも、政府案が前記の留保をすることの意味を解するに苦しむのであります。しかし、提案されている内容には不満ではありますが、とりあえず現在提案されているものの批准を早急に実現させ、残されたものについても可及的速やかに批准すべきものと考えます。いまや国際的にも国内的にも世論は盛り上がっています、平和達成悲願を込めて。  私たちは、いまもう一度あのいまわしい太平洋戦争反省の中で制定された日本国憲法をかみしめてみたいと思います。その第十二条において「この憲法國民保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と明記し、その前文において、われわれは平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとしている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う、と宣言しています。日本国憲法は、国際人権規約即時批准を強く要望しているものと考えます。  終わります。(拍手
  6. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  中島参考人
  7. 中島通子

    中島参考人 私は、女性権利、特に女性労働権利との関係意見を申し述べたいと思います。  人権歴史の中で、第二次大戦以降現段階における特質の一つに挙げられるべき点は、人権保障男女平等原則が国際的に確認されるようになったことであります。御審議中の国際人権規約、いわゆるA規約B規約が、いずれも第二条で性による差別のない人権保障規定したほか、さらに第三条を設けて、男女に同等の権利を確保すべきことを重ねて強調しているのは、男女平等原則重要性を示すものと言えましょう。この重要な原則実施を、単なる道義的な義務でなく、法的拘束力を持つものとして国家義務づける国際人権規約が今国会批准されようとしていることは、まことに意義深いものと考えます。ところが、政府説明書によりますと、「両規約目的とするところは、我が国政のよって立つ基盤として常に重視されて来たところ」であり、実体的にも「両規約の趣旨は、多くの面において既に国内的に確保されているところである」とされ、批准によって新たな措置は余り必要とされてないかのような印象を受けます。しかしながら、男女平等の原則に関しては何ら確保されておらず、特に労働権利の面では著しい性差別が存在し、A規約批准する以上、その実施のためには、立法措置を初め多くのことがなされなければならない点に特に注意を喚起し、以下四点にわたって具体的な意見を述べたいと思います。  第一点は、労働機会男女平等の保障であります。A規約第六条第一項は「すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利」を保障するため適当な措置をとることを義務づけ、同第二項は、その「措置には、個人に対して」「完全かつ生産的な雇用を達成するための」政策、方法等を含むと規定しております。ここに言う「生産的な雇用」とは、個人能力を完全に発揮させる雇用解釈され、本条は、すべての男女に、自己能力に応じた仕事を自由に選び、その労働によって自己生計を立てる機会を得る権利保障するものであります。  わが国憲法は、第二十二条で職業選択の自由を、同二十七条で勤労権利保障していますが、通説的解釈によれば、前者は職業及び営業の自由を国家から保障するものであり、後者は国家勤労を欲する者に職を与え、それができないときは失業対策を講ずる義務を負うものとされています。A規約第六条は、右のような憲法解釈とそれに基づく国内法の枠を明らかに超えるものであります。すなわちこれは、仕事を求めているすべての女性に、自己に適した仕事を自由に選択し、それによってみずからの生計を立てる機会男性と平等に保障するための積極的な措置国家義務づけるものであります。  現在女性は、女性であるというだけの理由で多くの職場から締め出されています。大卒女性就職難はますます深刻になっていますが、大卒に限らずすべての女性にとって、採用機会が与えられるのは男性と異なる職種、つまり補助労働単調労働であり、男性と異なる雇用形態や身分、つまりパートや臨時、準社員や嘱託です。これらの採用差別は近年ますます拡大する傾向を示しており、これらの差別を是正し、女性労働権保障するためには、採用段階における差別禁止する立法措置が不可欠となっております。この立法はすでに欧米諸国では実施に移されており、わが国でも昨年の国会において、社会党より男女雇用平等法案として提出されましたが、残念ながらいまだ成立に至っておりません。特にわが国では本条項の権利の完全な実現は、かかる立法措置なしにあり得ないことを強調したいと思います。  第二点は、労働条件における男女平等です。A規約第七条は「すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利」を保障し、(a)の(i)において「特に、女子については、同一労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件」を、(c)において「先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会」を保障しています。これらの規定は、同一価値労働についての男女同一賃金の原則にとどまらず、賃金以外の職種や昇進昇格、定年や退職基準等すべての労働条件についても男女の平等が保障されなければならないことを規定したものであります。  周知のとおり、わが国の労基法は、第四条で、女子であることを理由とする賃金差別禁止しているのみで、憲法十四条を受けて労働条件における均等待遇を定めた労基法第三条には、性別による差別禁止を明記しておりません。そのため、単純な賃金差別の是正がある程度進むと、それは仕事差別や身分差別に形を変え、近年女性差別はかえって拡大するという結果さえ生じています。これらの差別を是正し、女性男性と同等の良好な労働条件を享受することを保障するためには、わが国ではやはり立法措置が不可欠であり、その具体的な方法は、労基法三条に性別を加える方法と、新たな雇用平等法による方法と二通りありますが、わが国の法体系からすれば、その両方が必要であると考えます。  第三点は、労働時間の合理的な制限及び公休日等の報酬の問題であります。A規約第七条(d)は「休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬」を保障していますが、政府は、この公休日報酬について留保しています。  労働時間の合理的制限は、女性労働権を考える立場からは重大な関心を持たざるを得ない問題であります。昨年十一月に出された労働基準法研究会報告は、男女平等の雇用機会を得るために、基本的には女性男性と同様に時間外労働をすべきであり、生理休暇等も廃止すべきであるとしておりますが、現行の労働基準法は週四十八時間労働の上に、男性については三六協定さえ結べば無制限の時間外労働が可能であり、また、有給休暇についても六日という短さの上に、その取得率も低いという現状は、労働時間に関する国際基準から著しく立ちおくれ、各国から働き過ぎと非難されているところであります。  その働き過ぎ男性を基準として、女性も同じように働かなければ雇用の平等は保障できないという議論は、母性と基本的人権としての女性労働権を否定するものでありますが、また世界の潮流に逆行するものでもあります。少なくともILOの労働時間に関する基準までに労働時間——これは時間外労働を含めてでありますが——を短縮し、休日をふやせば、女性差別の理由とされている過保護論はその大半が存在基盤を失うでしょう。現在わが国が置かれている国際的立場からいっても、「労働時間の合理的制限」はILOの基準を下回るべきではありません。また最近の行政指導による時間短縮の実績を見れば、実施のための措置としては労働基準法改正という立法措置が不可欠であります。  もう一つの重要な問題点は、公休日報酬についてのわが国の留保であります。わが国では、月給制によって休日の報酬を受けるおおむね終身雇用労働者と、パート、臨時、アルバイトと呼ばれ、日給あるいは時間給によって休日の報酬を一切受けない差別雇用形態労働者に二分され、この二重構造によって労働者の低賃金と不安定雇用が支えられておりますが、近年ふえ続けている女性労働者がパートに集中している現状を考えるならば、本条項の留保は、雇用形態を通じての女性労働者の差別を固定化することになります。A規約自体が漸進的な効力を持つものであるにもかかわらず、これを留保するということは、将来の問題としても考えないということになるわけで、このような留保は一日も早く撤回されることを強く求めたいと思います。  第四点は、産前産後休暇の所得保障の問題であります。A規約第十条第二項は、働いている女性には「産前産後の合理的な期間においては、」「有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。」と規定しています。現在労働基準法は産前産後の休暇中の賃金について規定せず、健康保険法が六〇%の出産手当金を定めているにすぎません。しかし健康保険法の適用は常時五人以上の従業員を使用する事業所等の制限があり、多くの働く母親は、六〇%の所得保障さえない現状です。本条批准後は、すべての働く女性に出産休暇中の所得保障が行われるための立法措置が行われなければならなくなります。その場合の基準としては、ILO第九十五号勧告の示す一〇〇%保障が重視されるべきでありましょう。  ほかにも意見を述べたい点はありますが、両条約の目的とする男女平等を実現するためには、少なくとも以上の四点にわたる立法措置と、留保の撤回が不可欠であることを重ねて強調し、私の意見を終わります。(拍手
  8. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  真柄参考人
  9. 真柄栄吉

    真柄参考人 真柄です。  この国際人権規約は、恒久平和の確保と社会の発展のために欠くことのできない基礎として、政治、経済、社会、文化、すべての分野における基本的人権保障されなければならない、そのことを示したきわめて重要な意義を持つ国際条約とまず考えます。  第二次世界大戦の悲劇的な教訓の中から生み出された世界人権宣言は、一九四八年に採択され、戦後世界の平和建設の指導理念として広く世界に知られましたが、これは法的拘束力を持ちませんでした。国際人権規約は、この世界人権宣言に掲げられた内容を、批准をすれば法的義務を負わなければならない国際条約として整備されたものであって、その重要性から見て、今日までわが国において放置されていたことはきわめて残念と言わざるを得ません。わが国は先進工業国のトップグループの一員にランクされ、国連、ILOなど、国際諸機構の中で重要な役割りを果たさなければならない立場にあるわけでありますから、なおのことと考えます。  その批准の状況は詳細は省略いたしますが、日本だけが先進工業国の中で取り残されていると言って過言でありません。したがって、この国際人権規約批准は早急になされなければならない日本の責務と考えるものであります。ところが、政府はこの国際的責務を果たすべき重要な課題に対して、きわめて遺憾な態度をとっていると言わざるを得ません。それは、四項目にわたる「留保及び解釈に関する宣言」であります。私は、これらの「留保及び解釈に関する宣言」のうち、労働基本権に関することについて、参考人として意見を述べさしていただきたいと思います。  政府は、いわゆるA規約「第八条1(d)の規定に拘束されない権利を留保する。」として、ストライキ権保障の部分を適用させない措置を強行しようとしています。この留保措置によって直接的な影響を受けるのは、現行国内法によってストライキ権が不当にも禁止、制限されている官公労働者であるわけですが、官公労働者のスト権問題については、日本国内において長い間論議されてきた課題であり、その中でも、国際的に見てわが国の現行法が大幅に立ちおくれていることが指摘され続けてまいりました。国際人権規約でも、国際的常識として当然にストライキ権を保障すべきであるとしています。国連における最も基本的な人権条約としてあるこの国際人権規約スト権保障を明らかにしている事実を直視し、従来の国際的常識に反する態度を改める絶好の機会としてその批准をとらえるべきでなかったかと考えます。  政府の留保をする態度は、「人権尊重日本国憲法を支える基本理念の一つであり、」「規約締結は、わが国人権尊重の姿勢を改めて内外に宣明する観点から意義深いものと考えます。」という政府批准提案理由そのものにも反することでないかと考えます。これは体面のみ取りつくろおうとする態度であると非難せざるを得ません。  また、国際人権規約批准に伴う留保をすることによって、今後の官公労働者のスト権回復運動の前進に歯どめをかけようとする不誠実な態度にも通ずるものでないかと指摘せざるを得ないものであります。  私は、政府が提案理由に掲げるように、「人権尊重日本国憲法を支える基本理念の一つであり、」それを尊重する立場に立つのであるならば、その日本国憲法も明確に保障しているスト権保障を留保する必要は何もないし、政府が留保なしに批准をすることを英断されるよう強く望むものであります。  次は、いわゆるA規約第八条の2及びいわゆるB規約第二十二条の2にいう警察の構成員に消防職員が含まれると解釈する宣言の問題であります。この問題についてはILO八十七号条約に関し、毎年ILOの場で論議されていることでありまして、国際的には明確に結論が出されている問題と考えます。  ILO八十七号条約は結社の自由と団結権の保護を目的とする条約でありますが、この条約の第九条で、「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内法令で定める。」として、条令の適用に関する例外規定が置かれています。  日本政府は、この「警察」の中に消防が含まれていると強弁し続けてきたわけであります。消防が警察と本来異なるものであることは、政府がいかに強弁しようとも否定できないものでありまして、政府部内からもこのことを認めるやの言質もあります。たとえば昭和四十三年八月、「京都消防」という雑誌の中で、元消防庁長官の佐久間さんがそういう点について触れています。詳細は省略いたします。  ILOの場におきましても、このことについての結論は明確に出されていると思います。一九七二年、総評自治労は、消防職員の団結禁止措置をとり続ける日本政府の態度は、ILO八十七号条約に対する重大な違反行為であるとして、結社の自由委員会への提訴手続をとってまいりました。すでに条約勧告適用委員会ではこの問題が審議されており、七二年六月の第五十七回総会における条約勧告適用専門家委員会報告は、海上保安庁職員、入国警備官については、警察類似職員であるが、消防職員については団結権が与えられるべき部分であることを明らかにしております。  さらに、七三年六月の総会に対する条約勧告適用専門家委員会報告でも、この問題に対する画期的な見解を明らかにし、要は消防職員にも団結権が与えられるべき方向について、日本政府に適切な措置をとるよう希望したのであります。  しかし、このILOの明確な判断にもかかわらず、日本政府は一切それを無視し、消防職員の団結禁止の解除に向けての具体的措置に着手することをしてこなかったのであります。そこで、毎年の総会労働側から、日本政府の国際信義に背反する不誠実な態度に対する批判、ILOへの適切強力な措置の要請が提起され、それに対し日本政府は、「政府は消防職員の地位について長期的視野にたって慎重に考慮する」「日本の消防は、三〇〇年来警察的機能をもっており、ILO八七号条約第九条にいう「警察」にふくまれるのであり、条約違反ではない」など、日本における特殊性を強調しながら逃げ切ろうと繰り返してきているのであります。  しかし私は、論議の性格は明らかだと考えます。ILOの結論は明確であると申し上げましたが、ただそれに日本政府が従わない現状にあると言い尽くせると考えます。一九七七年の六十三回総会におきましても、この条約勧告適用専門家委員会は、「日本の消防職員の職務については、いくつかの特別な特色があるが、その反面、当委員会の判断によれば、これらの労働者を当条約の第九条にもとづき労働組合を結成する権利から排除することを正当化するようなものであるとは思われず、また団結権の承認は自動的にストライキ権をともなうものではないことが想起される」と報告しております。さらに昨年のILO第六十四回総会でも、官公労働者の労働基本権に関する国際基準としてのいわゆる百五十一号条約、公務における団結権の保護と雇用条件決定の手続に関する条約が採択されたのでありますが、この条約の審議の中でも消防職員の団結権問題は、日本政府の主張とは明確に反する結論が出されています。もっとも日本政府はこれらの提案に対する修正案を提起をいたし、「適用にあたり国内法令及び慣例に正当な考慮が与えられるべきである」と国内法優先の考え方を修正案の中で盛り込んだのでありますが、最終的には日本政府はこの修正案を撤回をいたしている事実もあります。  以上の経過については、若干、時間の関連があって割愛をする部分をお許しいただきたいと思います。  このようにILOの場では消防職員の団結権は国際的に保障されることが常識であり、そのように要約することが言えるのであります。国内におきましても、一昨年八月以来、全国消防職員協議会が結成され、自主的な活動が進められている現状にあり、消防職員の団結禁止という措置はますます無意味なものになりつつあると言えると考えます。  国際人権規約批准に当たりまして、何らの合理性もなく、国際的常識に反する解釈宣言をするようなことをせず、無条件で批准をすべきことを特に強調させていただきまして、参考人としての意見にかえさしていただくところであります。ありがとうございました。
  10. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  小川参考人
  11. 小川泰

    小川参考人 小川でございます。  私は、あらかじめ用意してきたのですが、前四人の参考人の方がほとんど規範的な部分その他を言われておりますし、時間的な点もございますので、できるだけ重複を避ける意味で端的な内容に触れさしていただきたいと思います。  俗に言う人権規約、またA規約B規約と言われている一連のものについて、私の考えといたしましては、総体的に、原則として早くこれを批准し、日本の立場を明らかにすべきだという基本的な立場に立つことが一つであります。  二番目には、この規約の趣旨をよしとするならば、どういうふうにして実効が上がるように国内においてこれを適用させるのかということを、将来の課題として非常に重要な問題ではないかということを私は申し上げさしていただきます。  三つ目には、そういう内容がしっかり組み立てられるためには、国内法の整備が当然に必要になってまいりまするので、これを具体化するためにできるだけ恒常的な審議機関といいますか、検討機関といいますか、そういうものを即刻設けていただきまして、世の移り変わりやあるいはいろいろな動態の変化に対応して、前向きにこれに対応できるような措置が必要であろうということを申し上げさしていただきたいと思うのです。できればそういったような点は、政治の場でございますから、国会等で十分対応できるような附帯決議等の御検討を賜れば大変幸いだな、こんなふうに思っているわけでございます。  全体的な最後に、これに直接かかわる問題であるかどうかは別といたしまして、私としては難民問題について一言触れざるを得ないと思うのであります。難民問題につきましては、この規約とどういう関連を持つかは、私法律をよく存じませんけれども、別途集中的な検討をぜひ早目に行っていただきたいものだということを申し上げざるを得ないと思うのです。難民問題というのは、私は現実にベトナム難民の諸君と何回か数年にわたって触れておりますけれども、高邁な理想、高邁な条約という問題の前に、一日も早く、日本国としてこの問題にどう対応するのかという具体的な措置こそが、世界に向かって日本の人権に対する尊重態度を明確に打ち出す現実的な証左ではないかと私は思いますので、よろしく御検討をお願い申し上げ、それを受け入れるためにはたくさんの条件が必要だと思いますので、それぞれの条件整備のために力を注いでいただくことをこの際強調申し上げたいと思います。  以上が、総体的に私のこの人権規約に対する考え方でございます。  これから、何人かの方がお触れいただきました、当面、当国会で論議されている規約批准に当たって、政府提案の留保条項について一言ずつ触れさしていただきます。  まず第一の公の休日の報酬という問題は、私も条約案を読んでみましたし、関係各国にも問い合わせてみたのですが、なかなか公の休日の報酬というその「公の休日」という範疇と「報酬」のとらえ方というものが大変まちまちでございまして、私は、一体この条約自身は何を指しているのだろうかということを、できれば国会の名においてひとつ明確に規定さしていただいて、その上で当然にこの問題を国内に引き直して批准をしていくという態度をとっていただきたいというふうに思います。そういう意味でありまして、何も留保条件に賛成ということではありませんので、基本的には留保条件はつけない方がよろしいという立場で、内容を明確にした上でこれに対応してほしいということを申し上げさしていただきたいと思います。  二番目にはいわゆるストライキ権。ただいま前者の方も触れられましたが、これについても一言私どもの立場で触れさしていただきたいと思うのです。同盟罷業をする権利というものはいかなる産業、いかなる労働であっても基本的に権利として認めるべきである、この原則は毫も崩す必要はないという前提に私は立つわけでございまして、何らこれには条件をつける必要はないというのが基本的な考え方でございます。だがしかし、われわれ労働組合側からも、昨今の経済や社会の状況の変化、いろいろなものを考えた場合に、何でも自分が持っておる権利は、人に迷惑をかけてもしゃにむにふるうというようなことは、労働組合といえども、いわゆる公序良俗に照らしていかがかという良識は持ち合わせているつもりでございます。そういう意味合いにおきまして、いま論議をされておるこのストライキ権については条件つき、こういう条件をつけまして、そして基本的にスト権を認めるという方向で明確な立場をとらしていただくのが一番よろしいのではないかというふうに考えるわけでございます。前者は官公労働者のスト権、団結権等に触れられましたが、私どもは、民間労働者を組織しておる中でも、特に昭和二十九年以来電力労働者がスト権を規制されていることは御承知のとおりでありまして、われわれ、電力労働者がもし仮にストライキをやろうかというようなことになりますと世の中一体どうなるかというような点等についても、良識を持ってみずからを規制し、みずからのあり方というものでもってスト権問題では一つの問題提起をし、政府の検討を煩わしておる現状に照らしましても、十分な検討要因をこの中に含んでおるものというふうに考えておるわけでありまして、そういうこととイコールにして、だから留保しなければならないという問題とは次元が違うという観点に立って、この条項もよろしくひとつ御撤回いただいて、国内法の良識的な整備によってこれを速やかに批准すべきだ、こういうふうに私は申し上げてみたいと思います。  三番目の中等教育高等教育の漸進的な無償化という条項にもいろいろな留保条件がついておるようでありますが、これもどうも条約批准書の中の文言を照らしてみましても、国々によって、どこに線を引くのか、どういう規模のものかというものも恐らく画一性はなかなかできまいという感じはございますので、同様にそこらあたりも十分調査をして、日本としてはこういうことだということを明確に打ち出していただくのも一つ方法ではないかなというふうに考えております。だがしかし、この規約理想的なものであって、現実になじまないのだという考え方も仄聞するところあるようではございますけれども、私は、この方向は大変結構な方向でございますので、原則的に賛意を表しまして、むしろ規約の趣旨に沿えるように今後努力をすべきだという意味合いで、この条項の留保も撤回することを希望として申し添えておきたいと思います。  四番目の団結権の制限についてでありますが、これも前者が触れましたとおり、警察と消防、この区別は明確でありまして、何らこの問題について留保条件をつける理由はないという立場に立って、これも御撤回いただきたい、全体的にすんなりとこの国際人権規約はまず批准をなさることが一番よろしいのではないかということを、この際もう一度総体的に申し上げておきたいと存じます。  最後に、この人権規約の中身は大変むずかしい条約文章でありますので、なかなか、問題によっては難解なところがたくさんございますけれども、こういう国際的な人権規約批准するかしないか、あるいは国連と日本という関係、さらには国際化社会がどんどん進められる現状に照らして、一体われわれ日本国民としてこういうものに対応する基本的な姿勢はいかにあるべきかという点について、一言触れさせていただきたいと思うのです。  端的に申し上げまして、いまの一国社会というものは、一国だけで存立することができないことは明確でございまして、わけても日本のような各種の条件を持っておる国家といたしまして、同様に日本国憲法世界に冠たる平和憲法でございます。なかんずく憲法九条の戦争放棄、さらには唯一の原爆の被爆国としてのわれわれ日本人、こういう観点から、非核三原則というふうなものをもって、戦争に対する憎悪を憲法というものに照らして国際的に宣言している民族立場ということから考えるならば、ますますこの種の国連あるいは国際的なこういう問題には、むしろ多少の疑問があろうともそこは大きくのみ込んで、先駆けた国際的な立場を日本の立場というかっこうで明確に打ち出していくという姿勢こそが私は重要だというふうに思いますので、条約案件そのものの中をつぶさに吟味することも大切ではございますが、その内容を精査する余り消極的な姿勢をとるということは、何か本末転倒のきらいなしとしませんので、そういう基本的な姿勢でこの種の問題にはお取り組みいただくことを重ねて御要望申し上げさせていただきたいと思うのです。一たびこういう国際的な規約でわれわれの立場というものを明らかにした以上は、これを具体的に行動に起こし、実践のための具体化を急ぐということは当然のことでございますので、できるだけこの規約を速やかに批准をし、内容、条件の整備を急ぐために各般の手だてを良識ある国会として打っていただくことを特にお願い申し上げたいと思うのです。  最後に、一言だけ私の体験上触れさせていただきますが、私もいろいろな意味合いでこういう労働組合運動を続けておりますが、国連で昨年、国連軍縮総会というものが創立されて、初めて国際舞台で軍縮問題が取り上げられるということを聞きつけまして、民間代表として行ってまいりました。そしてできるだけ多くの代表部と接触もいたしましたし、日本国民として核兵器の廃絶、そして非核三原則の徹底、日本国憲法九条による戦争放棄民族としての意思を明確に国連の場に反映させようというので、民間代表として国連にも参加させていただきました。そういう体験の中からおもんぱかってみますと、一音で申し上げさせていただきますならば、こういう時代が進めば進むほど、戦争というものほど残酷なものはないということを日本人が一番よく知っているわけでありますので、いわゆる社会権とか自由権とかいろいろ言う前に、一たび戦争が起こったらすべてすっ飛ぶという基本的な気持ちで日本国憲法はでき上がっておるわけでありまするから、そういう世界の中の日本、日本の民族の誇りとして、各般の国際舞台には積極的に国の責任者が先頭となって参加をし、声高らかに国際世論の中に渦を巻き起こしていただきたいな、こういう気持ちを私は大変強く印象づけられて帰ってまいった一人でございます。  そういう立場からも、この人権規約というものの中身の一々については専門家ではありませんからわかりませんが、ごく常識的な日本人の一人として、総体的に批准促進をお急ぎいただきまして、国際的に日本の立場を明確に打ち出していただきたいものだということを申し添えまして、私の意見にかえさせていただきます。  ありがとうございました。
  12. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  13. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これより質疑に入ります。  なお、質疑の際は参考人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  14. 大坪健一郎

    ○大坪委員 大変時間がございませんので、きょうはお忙しいところを五人の先生方にお出かけいただきまして、大変貴重な御意見を聞かせていただきましたことを厚く御礼申し上げますとともに、各先生方に大変失礼でございますけれども、一つだけ質問をさせていただきたいと思います。  久保田先生は、耳なれない国内的法律的条項にそぐわない規定があるように思うということをおっしゃったように覚えておりますけれども、どういう点でございましょうか。  それから、この人権規約日本国憲法基本的理念においては同一のものであるというふうな御認識であるように承りましたけれども、現実にわが国社会に存在いたしておりますいろいろな問題について、日本国憲法との関連で早急な法律的保障を求める御意見も多いようでございますけれども、実際に、それらの問題はそれこそ立法府における立法問題としてこれからの論議で解決すべき問題もあるように思います。その点について、どういうふうにお考えになっておられるか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  15. 久保田きぬ子

    久保田参考人 お答え申し上げます。  耳なれない、法律的にまだ余り熟していないと申し上げましたのは、たとえば市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二十条などが適例だろうかと思うのでございます。表現の自由との関連におきまして、戦争のためのいかなる宣伝もしてはいけないということだとか、こういうものがあちらこちらに出てきておりますのを念頭に置いて申し上げたのでございます。  それから、次の二点でございますけれども、私もそれに関連して若干付言さしていただきますと、留保をおつけになりました。とりわけA規約に関しまして四点の留保をおつけになりました。私は、この留保をおつけにならない方がいいとお述べになりました他のお二人の参考人とは若干意見が異なるのでございますが、私も、留保をおつけにならない方がいい。それはなぜかと申しますと、A規約そのものが本質的にプログラム的なものであって、それで規約自体の中でもこれは「漸進的」にということでございます。それは立法府だけではございませんで、社会動きを見まして、逐次実現できるものからしでいくべきものではないだろうか、公の休日に対する保障というようなものも、すでに御指摘がございましたけれども、内容が不明確でございますし、私学に対しまして、中等教育高等教育に対しましての補助というようなことも、これもそれぞれの国家によりまして教育制度のあり方がさまざまでございます。それを一律にしろということをこの規約義務づけているものとは私は思えませんし、それから労働組合の組合の団結権の問題にいたしましても、それぞれある意味におきましての代替措置があるとか、あるいは小川参考人がお述べになりましたように、いわゆる常識を持っての自粛というような点で解決されていくべきもので、むしろこれは国内問題でございまして、規約そのものといたしましては、私も、プログラム的なものであり、漸進的に国会もそれから国民努力をするという形で、留保なしでなさいます方がよろしいのではないかというのが私の考えでございます。  以上でございます。もしあれでございましたら……。
  16. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いまの御説明に関連いたしまして、中島先生にお伺いいたします。  男女平等の関連で、このA規約規定に従えば、日本の現行法制度では不十分なものが多いから、早急に法律的な諸制度を確保しないとこの規約批准と平仄が合わないというようなお話がございましたけれども、私は、いま久保田先生のおっしゃいましたように、非常にプログラム的なA規約構成、趣旨から考えまして、中島先生のお話はちょっと無理な点があるのではないかと思いますけれども、その点はいかがでございましょう。
  17. 中島通子

    中島参考人 お答えいたします。  確かにA規約に関しましては、第二条におきまして漸進的な達成ということが明記されております。その意味で、プログラム的な性格を有することを否定するものではありませんが、しかし、これは「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を」達成するため、各国が必要なことを行動するということを約束しているものであります。特にこの規定に基づきまして各国が行ったことについては二年ごとに報告をすることが義務づけられておりまして、中でもA規約の中の労働権に関する保障は、段階的に申しまして最も早い時期に報告を義務づけられている内容のものであります。  問題は、これを実施するための方法というものが、いま読み上げました第二条の中では、単に立法措置だけに限らず、「その他のすべての適当な方法」というようなかなり広い意味での広い規定を設けでいることであります。それに対して、私は、先ほどから立法措置でなければならないのだということを強調いたしたわけですけれども、その理由とすることを少し敷衍させていただきたいと思います。  この点に関しましては、その国のさまざまの条件によっては必ずしも立法が必要ではない場合がございます。たとえば男女平等、特に雇用における男女平等という点に関しましては、スウェーデンとかあるいは西ドイツなどにおいては、法律という形をとらずに、労働組合の労働協約を通じてかなりの程度達成しております。しかし、それはなぜかというと、これらの国々においては、労働者の大多数が労働組合に組織化されているということであります。しかも、特にスウェーデンにおきましては、その労働組合自身が、男女平等に関して非常に深い認識のもとに積極的な政策をとって行動を起こしております。これらの条件によって、必ずしも立法措置をとらなくても男女平等が達成される可能性があるわけでありますが、しかし、翻って日本の状態を見てみますと、まず日本では、労働組合の加入率、組織率が大変低うございます。特に女性は、わずか二六・八%の女性が組合に組織化されているにすぎません。しかも、この組合は、企業内組合という性格を色濃く持っております。企業を超えた全国的な労働条件の統一を図るということは、非常に望み薄いという現状であります。加えて、日本の企業は企業間格差が大変著しい。ところが、日本の働く女性の四〇%は二九%以下の企業で働いております。これらの小企業あるいは個人企業と言われるような企業では、労働条件の確保を労働組合を通じて行うということはほとんど不可能な状態になっております。さらに、パート、臨時など、組合加入自体が否定されている女性労働者が非常に多い。しかも雇い主が、あるいはときには労働組合の幹部の側にも、女性に対する差別意識、性別役割り分担意識というものが大変根強くあります。これらのわが国の条件を見るならば、単なる組合の労使の交渉あるいは行政指導などによって、職場における男女平等を実現するということは非常に困難であると言わざるを得ないわけであります。したがって、私が先ほど申し上げましたことは、もちろんこのA規約そのものを否定するものではないどころか、A規約の早急な批准を求めるものでありますし、いま申し上げたような国内的な立法措置がとられない以上A規約批准することができないなどと言うつもりは毛頭ございませんが、しかしA規約批准した以上、しかもその実現各国義務づけられている以上、いま申し上げたような立法措置が特に日本においては必要とされるのだということを申し上げたのであります。
  18. 大坪健一郎

    ○大坪委員 同じような趣旨のことを自治団体労働組合の書記長であられる真柄書記長もおっしゃっておられますが、真柄さんにその点も関連して御質問申し上げたいのですが、一つは、賃金は労働に対する対価だという考え方が、わが国では労働基準法その他で一般化いたしております。公の休日について報酬を払うという議論は留保条項一つになっておりますけれども、賃金が労働に対する対価であるというわが国の一般通念以上の議論になるのではないか。国内で合意ができていない議論になるのではないか。そうなると、この部分については、私どもとしては、留保を撤回するということは非常にむずかしい問題をもたらすのではないか。つまり、いまお話のございました中小企業にたくさんおられます労働者の方々労働条件の問題になりますけれども、実は中小企業そのものの存立と大変大きくかかわってくる問題になるのではなかろうか。その辺をどのようにお考えになっていかれたらいいのか。A規約の漸進的に問題を解決していこうというプログラムは、そういう点との兼ね合いで出ていると思いますが、法律論として厳しく規定するのがいいかどうかということでございます。  それから二番目はスト権の問題でございますけれども、書記長のお話によりますと、特に消防関係労働者のスト権の問題について御説明がございましたけれども、昨年のILOの理事会では、消防問題を、日本としては警察の一部と考える。国際通念ではそうでないというような長い議論がございましたが、この問題は、どうも日本の国内問題だという考えになったようでございます。理事会ではそういうふうに決めたように私どもは聞いております。こういうことは、基本的には日本の国内問題として考えていくべき問題ではなかろうか。たとえば、昨年の六月の公共企業体等基本問題会議意見によりますと、現状を認めることについていろいろ議論がありましたけれども、当面、スト権の問題では現状を認めざるを得ないという結論になっておって、これが一般の国民の合意され得る最大限考慮だろう、こう言われております。ですから、そのスト権問題に兼ね合って、特に消防問題のような問題でそれを突破して留保を撤回せよということは、国内問題を国際問題とごちゃごちゃにしてしまうのではなかろうか、人権規約国会承認の問題とは切り離して国内問題として論議すべきことではないかと思うのですが、いかがなものでございましょうか。
  19. 真柄栄吉

    真柄参考人 第一の御質問でございますが、ほかの参考人の先生方もお述べになっていましたが、ここで言う公の休日という概念、具体的な範囲等については、私たちも必ずしも明確にそうだという前提を持つことが率直に言ってできていません。したがってそういう不確定的な概念を持つものであると仮に前提いたしまして、なおかつ賃金の本質的なあり方からいっておかしいのではないかというお尋ねにつきましては、私は原則的にはむしろ労働者の保護をする、こういう一つ考え方を優先させる中から具体的な適用というものを前向きに、ときによっては漸進的に図っていくべきではないだろうか、とりあえずはそういう見解を持っていますので、留保はそういう限りにおいて必要ないのではないかと考えます。  それから第二の問題でありますが、消防職員の問題が国内問題である、これは一面私も否定いたしません。ただ、昨年のILOの総会でもはっきり条約勧告適用委員会で述べていることなんですが、消防職員は団結権のカテゴリーに属する、こういう原則の上に立って、その問題が日本国内問題としてその進展を期待をする。ですから、私たち国内において前向きなそういう話し合いが行われ、そしてILOの条約なりあるいは精神に沿う方向で日本国内において解決することを強く私たち自身も望んでおる。それが第一点であり、国内問題ということに対する私たちの理解でなければいけないと考えます。  それから第二に、スト権と消防職員という問題でありますが、これもILOの見解の中で明らかにされていますように、消防職員に団結権を与えることは、イコールストライキ権を保障することにならないんだということをILOの見解ははっきりしているわけであります。私たちもこの見解には賛成であります。そういう意味で消防職員の問題について理解をし、また対処を望んでおることでお答えにかえさせていただくところでございます。
  20. 大坪健一郎

    ○大坪委員 時間がなくなりましたので、同盟の小川先生には大変申しわけないのですけれども、あなた大変概括的なお話をしていただきましたので、同僚の皆さんから御質疑があると思います。  和島先生に最後に、B規約批准した国の個人に対する義務違反に対しては、個人が申し立てをしまして人権委員会のようなものがこれを審議するという選択議定書という制度がありますけれども、これはやはり早期に採用した方がいいのじゃないかというお考えでございましょうか。実際上は、たとえば表現の自由の問題について社会主義の国と私ども自由主義の国との間にはいろいろ考えが違うというふうに、国際間の問題について人権の価値判断の基準が必ずしもまだ斉一化しておりません。そういう時期にこういうことが現実にスムーズに動くのだろうかどうだろうかという感じがいたしますけれども、法律論的に言って、あるいは制度論的に言ってどういうことでございましょうか、ちょっとお教えいただきたい。
  21. 和島岩吉

    和島参考人 お答えいたします。  個人に対する人権侵害が選択議定書によって救済を求められるという制度は、人権規約に魂を入れるものじゃないか、そういうふうにまず考えられると思うのであります。人権規約は、国またはその他の団体を基準に遵守義務を強調しておりますが、問題はやはり個人に対する人権侵害の形で起こることは、日本の国内問題としても、また世界各国で提起されておる問題においても、やはり選択議定書のような制度があって初めて人権侵害が救済されていく、そういうことから考えましても、この選択議定書批准が非常に私は重大だと考えるのであります。  ただ、次に指摘されました、社会主義国とそうでない国々との間で基準も違う、なるほどそのとおりだと考えます。しかし、その国々も批准し、そうでない自由国においても批准していく、その共通の場所がこの人権規約なり選択議定書でできるということが、これが非常に人権規約に重大な世界史的な意義が認められるところじゃないか、そこにこそ真の意義があるのじゃないか、こういうことをまず私は考えられるのであります。  すでに人権規約そのものは社会主義国においても相当数批准されております。それは大いに具体的に問題が起これば、御懸念のようないろいろな論点が具体化して、むずかしい問題が起こることも予想されます。しかし、そういう問題が予想されるところにこそ真の意義があるのじゃないか。そういう意味において、私は、選択議定書批准が非常に重大な意義を持ち、この人権規約に画竜点睛の真の精神を注入するものだ、さように考えております。
  22. 大坪健一郎

    ○大坪委員 終わります。
  23. 塩谷一夫

    塩谷委員長 小林進君。
  24. 小林進

    ○小林(進)委員 何しろわずかな時間でございますので、おいでいただきました先生方に全部御質問を申し上げたいと思いますので、私の質問が全部終わりましたら、順次先生方から御答弁をちょうだいいたしたいと思います。一問一答で参りますととてもなかなか時間内で消化できませんので、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。  まず第一間でございますが、これはどなたと申し上げませんが、まず参考人の方の団長と思われる方から御答弁いただきたい。その方がいなければ、ひとつ皆さん御相談をいただいてお答えいただきたい。  第一は、私は皆さん方の御意見を聞いていますと、批准を早めるべきだということをおっしゃっておりますが、なぜ一体批准を早めなければならぬのかということが一つであります。批准を早めることのメリットは具体的に何か。世界は百六十カ国近くありますが、批准しているものは、A、B規約に若干差異はありましても、まだ五十有余カ国、三分の一であります。三分の一の国だけであって、批准しない国の中には、まず日本の政府が兄貴分として尊敬してやまないアメリカも現在批准しておりません。わが日本に一番関係のあるお隣の中国も、あるいはカナダも、あるいは大韓民国も、あるいは北朝鮮も、批准しない国を尋ねてまいりますと、ずいぶん日本の周辺で関係のある国々が批准をいたしておりません。なぜ急がなければならぬのか。  それから、第二点として私がお尋ねいたしたいのは、先生方は挙げて留保事項はやめるべきだという御意見でありました。宣言もやめるべきだとおっしゃいました。それからいま一つといたしましては、早く批准をしておいて、及ばざるところは実践あるいは追加あるいは修正等、国内法を精力的にやるべきであるという希望条項が述べられました。私はそれらの御意見を承っておりますと、一体、留保された事項だけでも、これが批准した後に日本の政府は、急いでそういう形を改めるとお考えになりますかどうか、これが皆さん方にお聞きをしたい私の重点なんであります。いまこそ、批准をしないさなかの中に、これをかがみにして、国内法にあるもろもろの矛盾でありますとか、労働基本権の問題一つだけでも詰めていけばたくさんの問題がある、それを全部洗いざらしをいたしまして、そして国内法の整備をするという作業が、批准をしておいて後はもうそのまま放置されることよりは、むしろ成果を上げるのではないか。放置をするということを言いますと、少し私の言い過ぎだとおしかりを受けるかもしれませんが、大体この種の批准や法律というものはやってしまうともはや能事終われり、これが国会の長い習性であります。問題の仕上げをするまでは実に激しい議論をいたしますが、一つその問題が通過をするなり批准するなり、作業が終わってしまうと大抵のことは放棄される、もはや仕事は終わった、こういう形になっているのが私の長い国会の経験であります。その意味においても、問題が重要であれば重要であるほど、批准をする前にみんな国内法に詰めておいて、詰めるだけ詰めて、問題のあるところはさらけ出すだけさらけ出しておいて、そしてりっぱな仕上げをした後に悔いのない批准をする、私は仕上げ方法としてはこの方がいいのではないかと思いますがゆえに、なぜ一体批准を急がなければならないのかということに対して御質問を申し上げるわけであります。これは先生方に対する総括的な質問。  次に具体的に申し上げますが、時間がありませんから、まず久保田参考人にお尋ねいたします。  私は、この基本的人権というものは、昔の封建制度においては領主あるいは君主等に対するいわゆる個人基本権を守る、現代社会においては国家から加えられるそういう一つの侵害に対して個人基本権を守るというのが、国際人権法のよって生まれたもとであると思います。しかし、いまわれわれの周辺をながめますときに、われわれの基本人権が侵されているのは単に国家権力だけではございません。いわゆる私人による基本人権の侵害というものがわれわれの周囲においてしばしば行われておるのであります。あるいは隣人による基本人権の侵害と言ってもよろしいかもしれません。先ほどもどなたかお触れになりましたが、あるいは部落問題に対する差別、これは国自身が加えている人権侵害ではございません。これは私人による差別であります。基本人権の侵害であります。あるいは農村なんかに参りますと、まだ村八分などという制度があって、個人基本人権が侵害されております。こうした私人による基本人権の侵害を一体どうして救済するのか。これは、その侵害を受けた個人にとっては、国家権力による侵害も、私人による、隣人による侵害も苦しみは同じであります。被害法益は同じであります。これもこの際、徹底的に解明をしていただかなければ、問題は常に将来に残すことになるのであります。  そのことに関連いたしまして、私はここでもやりましたが、いま日本において一番大きな侵害を受けているものはあの金大中氏の事件であります。これは日本の国、日本の法律のもとに健やかに滞在をいたしておりました。それが侵害をせられて韓国まで持っていかれた。その侵害をした者が国家権力であります。韓国の国家権力であれば、それは日本の主権の侵害である、あるいは日本の人権の侵害でありましょうが、しかし政府は、それはまだ、韓国の国家権力による、いわゆるKCIAによる侵害だという証明が出ないから、これは基本人権の侵害ではない、こう言っている。問題はこれなんであります。しかしその中には、金策雲などという韓国の外交官、一等書記官もちゃんといる。KCIAという、いわゆる韓国の国家権力の侵害が証明されなくとも、あるいは金東雲という私人による侵害であろうとも、これは被害者たる金大中氏にとっては完全な個人人権の侵害であると私は思う。その後ろに韓国の国家権力があるなしにかかわらず、金大中氏に対する完全なる人権侵害だと私は思う。それを日本政府解決しようとしないじゃありませんか。アメリカ政府は夢中になって、いまでも、アメリカの国会も国務省もこの金大中事件の解決人権侵害に対し、解決する情熱を燃やしておりますが、日本政府は、政治解決をしたと言って、やらない。やらない政府、外務省がわれわれの前に、この国際的基本人権批准をやってくれと言って出すこと自体は、大変な自己矛盾じゃないか、自己撞着じゃないかと思う。  そういうことから考えまして、いわゆる私人による人権侵害を一体どういうふうに防いでこれを守り抜けばいいのかどうか、こういう重大な問題がまだ未解決であるということについて、私は先生の御意見を承っておきたいと思うのであります。  それから和島先生にお伺いをいたしたいのでございますが、先生は最も強力な批准推進論者でいらっしゃるようでございます。しかし、その中でもA規約に留保条項があるのはやはり間違いだ、こうおっしゃっておりますが、A規約というのは一体何でありましょうか。これは漸進的規定である。何年何月何日までこれを完全に実行せいとかあるいは国内法の改正をせよとかいう規定一つもありません。だから、専門家の学者の解釈によれば、単なる努力事項であって、これは五十年、極端に言えば百年そのままにしておいても、われわれはいまその批准のために努力しておりますと言えば済むものである。それをあえて日本政府がこれを留保したことには、やはり一つの裏があるのではないか。すなわち、反動的な物の考え方です。この世界人権規約を反動的に抑えて、永久的に逆コースを進もうという反動姿勢のあらわれではないか。それ以外に考えられない。これは留保しないことによって失うものは一つもないのであります、くどいようでありますけれども。それを先生が、批准をせしめた後で、日本の政府をして改めさせる方向へ持っていった方がいいと言うことは、ただ言葉の論理にして一それはまあ社会党でも天下を取れば別でありますけれども、いまの保守政権の間においてはむしろ逆の方向へ持っていくおそれがある、私はこう考えておるのでありまして、この点は一体先生はどうお考えになりますか、お尋ねをしておきたいと思うのであります。  時間もありませんから、まだ問題はありますけれども、このくらいにしておきましょう。  中島先生にお伺いをいたしたいのでございますが、中島先生から男女平等の問題で詳しく御説明がございましたが、私は、実は男女平等の問題に対しては余り勉強いたしておりませんので、わからないのであります。しかし、それぞれの、肉体的にも体力的にも生理的にも男女の違いがあるのでありますから、やはりその体力、生理その他の完全な条件を備えること自体が私は男女の平等ではないかと思うのでございます。さもなければ、先生のおっしゃるように、男も時間外労働をやる、だから女性もやればいい、女性だけに生理休暇はいかぬ、乱暴とおっしゃるかもしれませんが、そういう議論も出てくるわけでありますから、やはり女性女性らしく、生理休暇も与えるべきだ、時間外労働もやらせるべきではないと言えば、われわれの言う常識の男女、平等観から若干変わったものが出てまいりますので、この変わったもの自体が男女平等の本質ではないかと私は考えておるのであります。  むずかしい理屈は別にいたしまして、産前産後の有給休暇につきまして、これはまだ女性の中自体に職業によって日本の政府差別を設けていることは、先生御存じのとおりでございますが、これをまず女性立場から闘い取るのが本当ではないか。それに関連いたしまして、先生は農村の婦人の産前産後の有給休暇を一体どのようにお考えになっておるのか、中小企業に働いている女性の問題について一体どうお考えになっておるのか、これをひとつお伺いをいたしておきたいのでございます。  なお、生理休暇の問題に関連いたしまして、男には生理はありませんけれども、やはり若干の、一カ月を通じて体調の悪いときもありますから、これに準ずるべき休暇を男性にも与えるべきではないかという意見もありますが、これについてもひとつ承っておきたいと思うのであります。  次に、真柄参考人にお伺いをいたします。  同盟罷業をする権利、官公労のみを差別してこれを奪っているのはけしからぬという御意見でございましたが、しからば一体これをどのように与えるためにどう具体化すべきかということが一点であります。  第二点は、軍隊あるいは警察に対しては御意見はありませんでしたけれども、軍隊の中にも軍属を含むかどうか、これは明確にこの問題をいまひとつ詰めておく必要がある。警察官といいましても、警察官の中にはいわゆる一般の事務職員あるいは雑役、単純な労働者、そういう者も警察署という一つ構成の中に含まれているわけでありますが、そういう人たちも警察官の構成員として団結権、ストライキ権を一体奪われてよいものかどうか、こういう点もお伺いをいたしておきたいと思うのでございます。  なお、公の休日に関する報酬の問題、先ほども大坪先生の御質問にお答えがあったようでございますけれども、私はこの問題は大変大きな問題だと思っております。ということは、広義に解するか狭義に解するかによってこの内容がくるっと変わってくるからでございまして、わが日本には地方地方によりまして公休日というものがございます。たとえば東京都におきましても、十月一日を都民の日としてこれを公休日と定めている。こういうものはやはり有給休暇と認めるほどの広義の意味に解せるのかどうか。また週に一日訪れる日曜日、この週休日も一体公の休日に値するのかどうか、そして有給休暇の対象となるのかどうか。  それから「公の休日についての報酬」に関連をいたしまして、日給月給制は、公の休日にはいまの場合は賃金をもらっていない、このままでいいのか。出来高払いのものは一体(d)項に該当しないのか、パートタイムはどうなるのか、臨時雇いはこの規約に当てはまらぬのか、日雇いはどうなるのか、こういう問題が出てくると思うのでございまして、むしろ公の休日などをこのままにして批准をすると、日本の反動政府はさらに一切のものに給料をくれないような方向へ持っていかれるおそれが大変あるのであります。これはもっともっと詰めてきちっとしておかないで批准をすると大変なことになるぞ、こういうような憂いを私は持っているわけでございますが、この点もひとつお話を承っておきたいと思うのでございます。  なお、高等教育の問題に関連いたしまして、今度は小川先生にお伺いいたしたいのでございますが、なるほど日本の政府は、この高等教育にいたしましても留保をいたしております。留保をいたしておりますが、日本の私学教育といえどももはや経営が困難である。事実上、文部省は、これは高等教育というからには短大から大学の課程でございましょうけれども、年間数百億円の金を組んでいわゆる運営費というものを相当多く補助いたしております。その他もろもろの金を出して、パーフェクト、完全ではありませんが、無償化といいますか、この規約にあるとおりの方向へ国は動いている。また現実にはそこへ行かなければもはや教育は不可能になっている。これは大変いい傾向です。それが何割になっているか知りませんけれども、国は補助をいたしておるのでございます。それをあえて国が留保しているということは非常に反動的な物の考え方である。私はその意味におきまして、この点も先生方の御意見を承っておきたいと思うのであります。(発言する者あり)  大分文句が出ましたから、私はここら辺で質問を終わりにして、御返答をお伺いいたしたいと思います。どうぞよろしく、順次御回答をお願いいたしたいと思います。
  25. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ただいまの小林君の質問の中で第一の三点ほどの質問に対して、どなたかまとめて代表的に御答弁いただけましょうか。——和島先生、いかがですか、恐れ入りますが。
  26. 和島岩吉

    和島参考人 決して私は団長じゃないから御遠慮申し上げておいたのですが、御指名を受けましたので簡単に意見開陳します。  なぜ批准を急ぐか。私はさっき意見開陳しましたが、戦争を放棄することによって世界平和を実現しようという大きい理想を持った日本国憲法の名において、決して他国に追随していいという結論は出ないと思うのです。日本国こそが先頭に立って、まだわずか三分の一ぐらいしか批准していないじゃないかとおっしゃいましたが、それでも日本は遅きに失する、私はそういう考えであります。これは基本的な考え方の相違でありますからそれ以上は申しませんが、先ほど私が申し上げた意見開陳を、速記でもできたらもう一度お読みいただいたら、これに対してお答え申しておるつもりであります。  それから、特に、私からの意見開陳の際に十分ではありませんでしたが、人権侵害は特に国家権力による侵害が一番重大だという点においては小林先生の意見と同感であります。私たち日本弁護士連合会では、権力による人権侵害の問題はいろいろな人権擁護の機関がありますが、大抵弁護士会へ申告してくるので、いつも矢面に立ってわれわれやってきたのであります。しかし、個人による侵害はどうかという御質問でありますが、この問題は人権規約こそ問題提起しておることで、先ほどの人権規約前文、A、B両規約共通の第五条までの間に問題提起しておりますから、それをもう一度ごらん願いたいと思うのであります。しかし、具体的に個人人権侵害にどう対処するかという問題は、これは各国の状況に応じてこれから制度的に設定されていかなければいかぬ問題じゃないかと思うのです。これを批准することによって、初めて、国会においてもこれを具体的にどういうふうに設定していくか、部落問題においては同対法等が法律的につくられておりますが、村八分その他いろいろの問題については及ばずながらわれわれ日本弁護士会においてこれらの問題を取り上げてまいりました。しかし、これではいまだ不十分でありまして、これからひとつ先生方の高い見識と高い実力をもって国会においていろいろ御審議願って、至れり尽くせりの制度をつくって、各国の先頭に立って、日本こそ人権擁護されておるという実を示していただきたいのであります。  以上不十分かもしれませんが、お答えしておきます。
  27. 久保田きぬ子

    久保田参考人 申し上げます。  御指摘のとおりに、人権侵害の問題はもはや現在では国家権力による侵害の問題から私人による侵害の問題に移っております。これをどういうふうにして救済すべきかということ。これはそれぞれ各国いろいろと工夫をいたしておりますようでございまして、たとえばドイツでは西独の基本法の一条の解釈規定で第三者効力というような理論をとっております。それからアメリカでは私的政府とかあるいはステートアクション、州の行為、日本で言えば国家の行為にひっかかるところを求めて、そして私人による人権の侵害を救済しようといたしておりますし、日本では幾つかの労働関係の判例に示されておりますように、民法九十条の公序良俗違反の条項を用いておるのでございますが、私が承知いたしております限りでは、今日では各国国家権力による人権侵害もさることながら、巨大な労働組合であるとか、巨大な宗教団体であるとか、その他の私的団体によります人権侵害がゆゆしい問題になっております。それに対しまして、憲法を専攻いたしております者は、懸命にどうにかして救済する道はないかということを詰めておりますけれども、それぞれの国はそれぞれの国の法体系というものもございますものですから、既存の法体系によって救済していこうという努力をしておりますのが実情であろうかと思います。  私も、もはや人権の侵害は国家権力だけの侵害だけを考える段階ではないということは御指摘のとおりだと存ずるのでございます。しかし、これは大変むずかしいことでございまして、法的にするか、ことに憲法の場合には原則といたしまして、そして伝統的に憲法のたてまえは国家生活における基本的なルールでございまして、国家権力対国家構成員という考え方構成されておりますので、大変むずかしいと思うのでございます。それに関連いたしまして、和島参考人から一言お触れになりましたプロトコルの問題でございます。いわば市民的、政治的権利に関する選択議定書の問題でございますが、これは実は個人に対する侵害に対する救済でございますが、この条項審議のもう一つ前の人種差別の撤廃に関する条約の実施条項審議に参画いたしました者といたしまして、それがそのまま人権規約のプロトコルになっておりますのでございますが、私自身といたしましては、どうやって人権侵害の事実を認定するかというところに全く制度的に抜けておるものがございます。だれがやるのか。で、その主張をいたしまして、それが真にそれであるかどうかということの認定は非常にむずかしいものでございますから、問題は、国内的にさえ解決できておりませんものを国際的に解決することは、より一層困難ではないだろうかと思います。そういう意味におきまして、このたび国際条約の御提案の中にこのプロトコルが外されておりますることは私は大変御賢明であるというふうに承知いたしております。  大変私が長くなりまして恐縮でございますが、なぜ批准を早めるか、なぜ留保をやめるべきだというのかという私の見方を申し上げますと、いささか外へ出てまいっておりますと、日本はこういう条約に対しまして大変誠実でございまして、国内法体制が決まってすっかり完備しない限りにはしないというきわめて優等生で誠実過ぎるんでございますが、私は国際条約ないしは国際社会をながめまして、日本の程度ほどの人権保障国内的にされていない国の方がずっと多いわけでございます。そういう国のことをも考慮いたしますと、わずかなことにかかずらわりまして、余りにも日本人が正直で誠実であることによって批准をしないということは、日本が逆に誤解を受けるもとになっているやに私は考えます。そういう意味で、不満なところはいろいろございましょうけれども、にもかかわらずこれだけ人権保障が整備いたしておりまする国が率先していくべきではないか。いずれにいたしましても、人間のいたしますことでございますから不備のところはございましょうけれども、私は、これは整備が先ではなくしてむしろ国民努力にまつよりほかしようがない、その結果の国民の合意を得ることへの努力の方が先決ではないかというふうに考えておりますものでございますから、ぜひ御批准を早めていただきたい、留保も、これは全く国内的な御配慮からの留保であるように思うのでございます。そういう意味でできるならばすんなりとなすった方がよろしいというので、大変失礼でございますけれども……(小林(進)委員「金大中は」と呼ぶ)金大中の問題は、私は新聞で拝見いたしておりまするだけでございまして、これも私がそういう意味で、たとえばアメリカをお出しになっていらっしゃいましたけれども、アメリカのやり方を事例にとりますならば、やはりそこに何らかの形で国家権力が介入していたということが立証されない限り困難ではないかという気が法律的にはいたします。それはむしろもっと次元の異なる問題のように思いまして、私の領域外でございますので、御遠慮させていただきます。  以上でございます。
  28. 和島岩吉

    和島参考人 先ほど私個人に指名されたお答えをこの順序でさせていただいておきます。  先ほど意見開陳しましたように、留保条項は非常に残念だと私は思っておるのです。しかし、現実にいまの段階で大乗的な見地から批准をすることが日本国の最も必要に迫られた状況だと考えております。その意味で、原案は不満ではあるが、現実に今国会で提案されております批准案は早期に批准さるべきだというのが基本的な私の考え方であります。  先ほどの小林先生の御質問では、批准してしもうたらその後はほっておくのではないかということでしたが、私は、小林先生を初め有力な国会議員の先生方が、批准されたからもうあれで能事終われりだ、すみっこにこの人権規約をほうり込んでいいというような方は一人もいらっしゃらないのじゃないかと思うのです。そういう信頼のもとに事態を考えますと、やはりこの原案は批准されなければならない。また、批准されると、留保条項というものがいかに不条理なものか、日本が留保することがいかに不条理であるかを改めてわれわれも考えさせられることにもなるのじゃないか。ですから、私は決して留保条項は賛成ではないが、批准案は今国会でぜひ批准していただきたい、そういう基本的な考え方を持っております。そうすることによって、留保条項に対してはひとつ皆様方で慎重に御審議願って、この次には一刻も早く、一日も早くこれらのものを撤回しようじゃないかという論議が期せずしてわき起こるんではないかという強い期待を持って、原案を一日も早く批准願いたい、こういうことを考えておる次第であります。  以上、お答えしておきます。
  29. 中島通子

    中島参考人 先ほどの御質問にお答えいたします。  まず、男女の肉体的、生理的条件の違いを無視して機械的に平等にしてもだめなのではないかという御意見だったと思いますが、その点は全く私も異議ございません。これに加えて、現在女性が家事、育児を一方的に一人で負担しているというこれらの条件を無視して、直ちにすべての労働条件男女同一にするということは、全く現実離れしたゆゆしいことだと考えております。人権尊重というのは、そもそも、母性を持つ女性が母性とその健康を破壊されることなく労働する権利というものを保障することにあるわけでありまして、このようなことが保障されないならば、これは人権の理念に全く反することになります。問題は、そのような女性の持つ条件に基づく保護が差別の理由となっていることであります。これは、たとえば昨年の労働基準法研究会報告をめぐって行われた議論の中で出てきたことでございますが、平等を要求する以上は保護を撤廃するべきであるという議論、両方、保護も平等もというのは甘えではないか、虫がよ過ぎるなどという意見が大分出されました。しかしこのような考え方というものは、女性労働権というものを基本的人権としてとらえないところから発生しているものであります。  女性労働権というものが、その内容につきまして具体的に明らかになり、内容的に深められたのはそう古いことではありません。つまり、一九七五年の国際婦人年に各種の国際会議が行われましたけれども、その中で初めて女性労働権基本的人権として深くとらえることができました。特にILOの六十回総会決議宣言、あるいは行動計画の中で繰り返し明らかにされていることは、女性の働く権利人間として奪うことのできない権利であるということであります。その具体的な内容というのは、女性の年齢とか、婚姻関係あるいは子供の有無、家庭責任、これらの事情によって奪われることのない、左右されることのない権利女性労働権である、しかもこれは母性保護とは矛盾しないのだ、狭い意味での母性保護だけではなく、男女平等を目指す過渡的時期における積極的な特別取り扱いというのは差別とみなされないのであるということが明確にうたわれております。このような基本的人権としての女性労働権を考えるならば、女性に一定の保護が認められるということによって差別を認めるということが全く成り立たないということは明らかになると思います。  しかし、もう一つつけ加えたいと思いますのは、現在の女性だけの保護というものが未来にわたっていつまでもいまの状態でいいのであろうかということであります。この点については私自身は、女性だけが保護される必要がなくなるような労働条件というものを目指さなければならないと考えております。この点については先ほど労働時間の問題を中心にして申し上げたところでございますが、先ほどの御質問の生理休暇の点に関連して申し上げますと、全体の労働時間が短縮して休暇もふえる、そういう労働条件全体の底上げがなされるならば、必ずしもすべての女性が生理休暇をとる必要がなくなることはあり得ると思います。しかしその場合でも、特に個人的な条件の違いによって生理のときに休む必要がある女性はなくならないのであります。この点については先ほど男性の生理休暇というお話がありましたけれども、男性にも体調の悪いときというのはあるわけですから、このようなときにはすべての男女労働者が何の不安もなく、しかも所得が保障された形での休暇が保障されるということこそ私どもは目指したいと思います。そのような意味では、現在の女性だけの保護は男性全体にも適用、拡大されるという形での男女平等、女性だけの保護の解消を目指したいというふうに考えます。  もう一点、出産休暇の点でございます。先ほど私もこの点は大分強調したつもりでありますが、一部の女性だけが出産休暇中の所得を保障されるということではなくて、お話しのように中小企業で働く女性あるいは農村の女性も含めて、すべての働く女性が出産休暇を安心して休める、しかも所得が保障されるというような制度を何としても私どもは目指したいと思っております。そのためには先ほど申し上げましたA規約条項にあるとおり、これは有給休暇という形が困難であるならば、社会保障の中で、すべての働く女性に適用されるような社会保障が確立される必要があると考えております。  最後に、これはちょっと私に対する質問ではなかったようですけれども、公の休日に関する留保については、私も先ほど述べましたとおり、大変重大な問題だと考えております。その点で、パートや臨時などと言われている労働者が、この留保条項によってますます労働条件が切り下げられ、格差が拡大されることが決してないように、この国会においてぜひ歯どめとなるような何らかの措置をとっていただきたいということを強くお願いしたいと思います。
  30. 真柄栄吉

    真柄参考人 初めにストライキ権の問題についてのお尋ねがありましたが、憲法二十八条で言う労働基本権がすべての労働者に保障されている点は疑いのないところだと思います。しかし現実にはやはり国内外の世論の動向などを踏まえた立法政策上の問題として処理されていく、そういう現実的な側面を見落とすこともできないと思います。さような意味で、たとえばILOが示しているストライキに対する基本的な見解はストライキ権の保障そのものには触れていませんけれども、それが奪われておる場合には完全なる代償機能が与えられておるべきだ、こうした基本的な見解なども重要にしんしゃくされるべきではなかろうかと思いますし、同時に、たとえば同じ交通労働者でありまして首都圏の中においても法の適用によって与えられる与えられてない、こういう問題についても、立法政策上の見地からなるべくのことなら憲法の精神に近づける方向で処理されていくべき問題ではなかろうか、かように考えてお答えにかえさせていただきます。  なお、軍隊と警察の問題についてお尋ねがありましたが、簡単に言って軍隊とはいわゆる戦闘員に限定をし、なおかつ警察についても給与法上に言う一般職は含まない、これは国内外に定着をした解釈ではないかと私は考えています。  なお、公の休日に関しまして、私は先ほど労働者保護の見地からということを申し上げましたが、政府が留保をしている有力な理由としては、賃金は労働の対価として、ある意味では労使間の合意によって決められるべき筋合いだという、そういう説論があるようにうかがわれます。したがいまして、私はそのような意味対応させて労働者保護と申し上げたのでありまして、言いかえるならば、広い意味での労使間の合意の条件をつくり上げていくためにも、たとえば、団結権の擁護労働組合の組織など、そうした積極的な一つの施策あるいは指導というものも並行させながら、こうした未組織あるいは中小零細労働者にも組織されておる労働者と同様な諸条件が享受できるように、政府みずからが努力をしていただきたいものだ。なおまた日給、時間給制等の問題については、これは当然通常の労働者の賃金に見合うべきだ、そういう見地から、考え方としては与えられるべきである、こういう理解をしている点を申し添えさせていただきたいと思います。  以上です。
  31. 小川泰

    小川参考人 先生の御質問は私と同じ御意見のようですから、特段私から申し添えるような意見はないのかなと思って伺っておりましたが、間違いでしょうか。大体同じだという御意向ですから、特段答える必要はないのじゃないかな、こう思っております。
  32. 小林進

    ○小林(進)委員 これで、質問を終わります。
  33. 塩谷一夫

  34. 土井たか子

    ○土井委員 本日は、大変お忙しい中をわざわざ当委員会のために参考人として御出席の諸先生に、まず御礼申し上げます。  もう持ち時間の方が経過をいたしてしまっておりますので、具体的に私はお尋ねをさせていただきます。  久保田先生と和島先生に同じことについて御見解を承りたいのですが、B規約の四条を見ますと、「国民の生存を脅かす公の緊急事態」が公式に宣言されました場合に、法の前の平等とか集会の自由、表現の自由等の規定に違反する措置をとることができるということになっております。私は、この規定について、先日当委員会において政府に対する質問をいたしました。その席で、政府側からは、日本国憲法からすればそのような措置をとることはできない、今後もそのような立法は考えていないというふうな趣旨の御答弁を私たちはもうすでに聞いているわけでありますが、憲法の精神からいたしまして、また憲法規定からいたしまして、わが国がこのB規約の四条をどう解釈すればよいか、ひとつお二方の先生から御見解を承りたいのでございます。  さて、中島先生には、この平等を保障するためには母性保護というものを解消しなければならないという一連の見解があることについて、小林委員の質問に対して先ほど少し御答弁をいただきました。私は、その御答弁を承って、それで理解はできるわけでありますけれども、しかし先生御承知のとおり、昨年の十一月に前労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会の報告書が出ております。この報告書の趣旨からいたしましても、いまその平等を保障していくことのためには母性保護を解消しなければならないという、こういうふうな趣旨がその根底にあるように思われてなりません。したがいまして、もう一たびこの保護と平等との関係について先生の御見解を、そしてまた昨年十一月に出されましたあの労働基準法研究会の報告書に対する取り扱いが今後どのようになければならないかという、そういう、先生のあの報告書の今後の取り扱いに対する御見解があれば、それを一つは承りたいと思うのです。  それと、もう一点は、きょう先生の御発言の中に、女性についての労働権保障のためには、わが国の場合特に立法措置が必要であるという趣旨の御見解を披瀝されました。その理由はどういうところにあるかということをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。  さて、あとの先生方につきまして、特に真柄先生には、もう先ほど来ILO関係の御見解も出ているわけでありますけれども、特に先生御自身が、あのILOの昨年総会労働代表として出席されているという経緯もございますから、ILOで日本国の政府が、日本政府の主張は受け入れられているというふうな説明をされていることが事実であるかどうか、この点を一つは先生から直にお聞かせいただきたいと思います。  それと、公務員制度審議会の答申というのが七三年の九月に出されておりますが、今日に至るまで五年半もこれは経過しておるのでありますけれども、その答申の内容というのが尊重されて具体的な措置が講じられてきているのかどうかという点ですね。これもあわせてひとつお聞かせをいただきたいと思います。  最後に小川先生には、きょう直接この問題に関係をするということになるかどうかは疑問なしといたしませんけれども、難民対策について、特に別途、このことに対する審議国会で具体的に講じてもらいたいという御要望も含めて、きょうは御意見をここでお聞かせくださいました。難民対策に対して特に先生が先生なりにお考えになっていらっしゃる具体策がございましたら、それを一言お聞かせいただきたいと思います。  以上でございます。
  35. 久保田きぬ子

    久保田参考人 いまの土井先生の「公の緊急事態」のこの条項でございます。実は、これは恐らく日本政府の御見解といたしましては、日本国憲法に改憲の規定がないからということでこういう事態が予想されないという御見解と思うのでございますが、これは私の推測でございますが、事実上の問題といたしまして、改憲の規定があるかないかは問いませんで国の緊急事態というものはあり得るのではないだろうかと思うのでございます。これはこの中でこの四条で、国際人権規約に対する制限の意味で置かれているように私は承知いたしております。しかも、この制限条項は「事態の緊急性が真に必要とする限度において、」ということで、において認める、私はそれもその言葉のとおりだろうと思うのでございますが、一体それでは何が「事態の緊急性が真に必要とする限度」かという判断基準というものが不明確でございますし、この規定自体が大変明確性を欠いておるのが実態ではないかと思います。しかも、その必要とする限度においても、その基づく義務違反をとることができるけれども、それにも幾つかの、その後に続いておりまする明示的な制限があるので、人種等々の制限があるというわけで、国連総会におきましても第三委員会におきましても最も論議の集中したところでございますが、ここも諸先生御承知のようにいろいろの国、発展段階も違っておりますし、法体系の整備その他も違っておりまするところの国でございまして、それらの国でむしろ、いわゆる先進国と言われます近代法体系の整備いたしておりまする国は、そういう意味でのいわゆる表現の自由の制限につながりますこういう制限条項が明確性を欠くことは問題であるといって問題にいたしましたのでございますが、むしろ発展途上国等におきましては、どうしても必要であるということでこれが入ったように、私、二十年近い前のことでございますけれども、おぼろげながらいま思い起こしておりますんでございまして、私自身の見解といたしましては、この条項は運用のいかんによりましては、この規約全体を空文化するおそれがあるというふうに私は思っておりますのでございます。しかし、これも国際社会という、いろいろの人たちの寄り集まりの中でできました合意でございますから、できるだけそういう趣旨と反することの運営がなされないような形でこれを遵守していくべきではないだろうかというのが私の見解でございます。お答えになるかどうか存じませんけれども。
  36. 和島岩吉

    和島参考人 大体のお答えは久保田先生の御答弁で尽きると思うのであります。ただ、ただし書きの条項に特に十分な注意を払うべきだ、そういうふうに私は考えております。
  37. 中島通子

    中島参考人 最初の保護と平等の関係、特に昨年の労働基準法研究会報告との関係で御質問がありましたが、その点に関しては先ほどある程度お答えしたところでございます。  報告書の一番の誤りというものは、まず労働者の、実際に働いている女性労働者の実態把握が全く不十分である、実態に基づかない議論であるということが、これは多くの労働組合その他の労働者の側から指摘されておりますが、全くそのとおりなわけであります。この誤った事実認識に基づいてこの報告書は、せっかく雇用の平等を確保するための新しい立法というものを提起しながら、それとの抱き合わせで保護の解消を提起している。つまり保護を解消しない限りは平等法を制定することはできないのである、この二つはワンセットであるということを大原則にしております。この点が一番大きな誤りだというふうに私は考えております。  本来、女性労働権、平等な労働権というものは、先ほど申し上げましたとおり、基本的人権として女性人間であるということによって、ただそれのみに基づいて当然に保障されなければならない権利であります。これに対して母性保護というものは、この点について報告件は、狭い意味での母性保護、つまり妊娠、出産中の保護とそれ以外の保護を分けまして、後者については一般女子の保護という形で分けているわけですけれども、しかし、この両者は、保護立法歴史を見れば明らかになるとおり、すべて広い意味での母性保護として出発したわけであります。この母性保護と女性労働権、平等な労働権が両立すべきであるということは、この点に関する限り労基法の報告書も認めているところであります。つまり平等法の制定を言うと同時に、妊娠、出炭にかかわる狭い意味での母性保護の一定の拡充というものを述べているわけですから、保護と平等の両立というものは、非常に狭い意味では認めているわけです。ただし、それ以外、労働時間の制限等については、これは母性保護でないという形で切り捨てているわけですけれども、この点が根本的に誤っている。  どうしてこのような誤りが出てくるのかということになりますが、これは保護も平等も両方とも恩恵としてとらえているのではないか。つまり女性にとって当然認めらるべき権利ではなくて、政府なりあるいは使用者から恩恵として与えられる権利というとらえ方、こういうとらえ方があるために、両方も、保護も平等もよこせというのはぜいたくだ、過保護だというような議論が出てくるわけです。したがって、この点に関しては、両者の基本的人権としての性格を正しくとらえるならば、抱き合わせ論が全く誤りである。それぞれ切り離して、平等は平等自体として保障されなければならないし、保護は保護としてさまざまな条件の中でこれは形を変えていくものであることは、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、この保護は保護として当然認めなければならない、この両者が両立すべきということは明らかになると思います。  それから、もう一つの二番目の御質問で、労働権保障のための立法措置を特に強調した点はなぜであるかという御質問ですけれども、この御質問に対しては、先ほど大坪先生ですかの御質問に対してかなりお答えしたつもりでございます。つまり特に日本の女性労働者は組織率が大変低くて、しかも労働組合に加入資格のない臨時、パートあるいは非常に小規模な企業で働いている。したがって、労使の交渉にゆだねる形によっては男女の、平等は実現しないのであるということがまず第一に強調したいことでございます。さらに労使を含めての女性差別意識といいますか、性別役割り分担意識というものが大変根強いために、強制力を持たない単なる行政指導によっても男女平等を実現することが非常に困難である。この事実は、たとえば労働省が国際婦人年の五年間の前期重点目標として定年差別、結婚退職制等の是正のための五カ年計画を立てて行政指導を行いましたけれども、その結果を見ても余り効果が上がっていないということを統計は示しております。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  さらに時間短縮問題については、昨年、新しい次官通達というような形で時間短縮を図ることが行政指導によって行われようといたしました。しかし、これも統計を見ますと、この行政指導の中でかえって労働時間が延長しているわけですね。つまり不況期から一定の脱出傾向が見られているわけですが、その中で残業がふえています。企業は減量経営と称して新しい人を雇わず、現在いる労働者に長期の残業をさせるということで切り抜けようとしている。     〔大坪委員長代理退席、愛野委員長代理     着席〕 したがって、労働時間というものは行政指導にもかかわらず、全体として最近ふえているということが統計によって示されております。  この二つの例を見ても明らかなとおり、現在の日本では、単なる行政指導によって雇用における男女平等を実現するということは大変困難であるということを申し上げたいと思います。しかし、私は立法措置が必要であると申したからといって、立法措置が万能である、法律さえつくればすべてが解決するなどということは全く思っておりません。このつくられた法律が、現実に動いて運用されて現実を変えていくためには、さまざまの条件整備というものが必要であります。その条件整備の中には、先ほどから言っている母性保護の充実であるとか、あるいは全体の労働条件の向上であるとか、さらに家事、育児の負担というものを社会化しあるいは男女が共同で分担できるようにすることだとか、さらに、先ほどから出ている企業間格差の問題に対して有効な経済政策というふうなものまで含めて、条件整備というものが図られないならば、単なる法律ができても男女平等というものは実現されないであろうということは強調しておきたいと思います。しかし、それにもかかわらず、やはりいま日本にとっては男女平等のための立法措置が絶対に必要であるということでございます。
  38. 真柄栄吉

    真柄参考人 お尋ねの第一でありますが、私は代表顧問として参加したわけでありますが、日本政府考え方が受け入れられたという、そういう主張は理解できません。  その第一に、先ほどもちょっと触れましたが、とりわけ消防職員の団結権に関しましては、全文を読むのは省略いたしますが、「当委員会政府に対して、ふたたび問題となっているこのカテゴリーの労働者に団結権を与える課題を継続するとともに、これに関連するいかなる進展をも当委員会に報告するよう要請する」とありますように、国内での進展というものを期待している。そしてその目標は、少なくともILOが示している団結権の考え方に基づくもの、こう理解をしている点が第一点であります。  第二点は、昨年、特に公務員に関するいわゆる百五十一号条約がILOの場でつくられました。その場合に、先ほどちょっと省略いたしましたが、日本政府から、国内法並びにその慣例に対する考慮が与えられるべきであるという修正案が出されたのでありますが、これについて日本政府は、最終的に撤回したのであります。それには、わずかにオーストラリア政府だけが日本政府の修正案に支持を表明するという状況が一つありました。同時に、いわゆる労働側グループでなく使用者側グループの代表であるパルメゾン氏でありますが、この方も、日本政府のような解釈の多様性を訴えることは条約草案の前文をもって足りる、したがって、消防職員に関してはILO専門家委員会の見解に従うべきであると述べ、労働側でなく使用者側グループも労働側に対する賛意を示したことも事実として存在するのであります。したがって、日本政府はこの修正案を撤回するに至ったのでありますが、その撤回に際しまして、日本政府の発言内容を記録にとどめるように要請したのであります。これに対して労働側は、そのこと自身には反対しないけれども、その際、必ず専門家委員会の見解をあわせて明記してほしいと述べ、この旨が受け入れられまして、日本政府考え方は、少なくとも修正案提出、撤回という過程で支持されなかった、こう理解するのが客観的に妥当ではないかと私は信ずるところであります。  次に、公制審にかかわる問題ですが、いわゆる七四春闘を契機として、非現業公務員等にかかわる公制審答申の懸案事項についてのお尋ねと理解するものでありますが、簡単に言って、まだ尊重されていないと申し上げることができると私は思います。  管理職の範囲の整備あるいは法人格付与にかかわるいわゆる二法案については、昨年六月法案が成立いたしまして、内容的には不満なものを私たち感じますが、一応けじめがつけられたと考えます。しかし、なお未解決の問題として、公務員問題連絡会議等で検討すべきとされていますいま申し上げました消防職員の団結権問題、あるいは公務員等の労働関係における刑事罰規定を最小限にとどめる問題、さらに労使間の話し合い促進のための機構整備の問題、あるいはまた交渉が不調の場合の調整機関の問題など、いずれも重要な問題であると考えますが、今日まで何ら具体的な改善の措置がとられていませんし、どのような検討が行われているのか、検討が行われていないのか、明らかにされてない現状なのであります。  したがいまして、冒頭申し上げましたように、私は、この公制審の答申が今日改めて公務員問題連絡会議等を通じて促進されるように強く希望を申し上げて、答弁にかえさせていただくものであります。
  39. 小川泰

    小川参考人 お答え申し上げます。  本来、難民ということはあってはならないことだという原則に実は私は立っているのです。なぜ難民あるいは亡命、こういうものが起こるのかというところにもう少し基本的なメスを入れる必要があるのではないか、こういう点が疑問として大変多うございます。ただ事実は起こっております。  私どもが、具体的に避けて通れない体験からこの問題に大変な関心を寄せたというのは、私どもの仲間の中に全日本海員組合というものがございます。私どもの仲間は外航、内航、漁船、商船、いろいろなところに従事しておりまして、御案内のとおり、外洋におきまして難破状態の船に乗っておる人々が、救助的なかっこうで船に乗せてもらうことを求められますね。このときに、一体日本の国にそういう人々を乗せて帰って保護する法律があるのかないのかなどという判断をして、ないからさようなら、これは実際問題としてできますか。目の前に難破同様の生きておる人が何人といえどもおった場合には、船乗りとしては、これはもうすべてを乗り越えて人道的に助けるのがあたりまえだということで、何人か救って戻ってきたことが事実の発端であります。さて、港に着いていかがするか、これは大分厄介な問題だなということに端を発しまして、実は数人の方を国内に入れ込んだときに、そういう方々を入れ込む費用とか生活のめんどうとか一切を構うところがないのですね。結局私どもの方で何とかやりくりしながら、亡命、難民を求める国に移転をするまでの間めんどうを見た、こういう経過が実はありまして、これは大変困ったことだな、こういう現実から端を発しておるわけであります。  したがって、そういう苦労がないように、特に日本のような海洋国家、しかも、先進国首脳会議のメンバーに入ろうというような国家が、その種の問題に全然手つかずでおるということは果たしていかがかなという観点で私は申し上げたまででありまして、私どももまだふなれでございますから、その内容の具体的な細かい点等については吟味に至っておりません。しかし基本的には、この種の人権規約批准しようという考え方に立つならば、当然のごとくその問題も、具体的に対処する最低の条件整備ぐらいはしてしかるべきだ、こういう観点から私は申し上げております。  なお、もう一つの事実は、そういうところにぶつかりまして難民の方々が寄港をするわけですね。−そして国内法で許されている一定の期間、数日間預かるわけですね。この際は、キリスト教会であるとか、いわゆるボランティア的な善意の方々によってこの生活が救済され、最低の生活が維持されていく。こういう状況を私どもが、収容所といいますか、そのいらっしゃるところを訪ねまして見てまいりますと、見るにたえない状況がございましたので、みんなのカンパを寄せ合って数百万円の金を用意しまして、日本政府に少しでも役立ってくれよというので実は持って上がったのです。ところが受け取るところがないのですね。せっかく善意でそういう人たちにシャツの一枚も、寒いときには毛布の一枚もというて集めたものをどこへ持っていったらいいかなと思って調べ回ったところが、結局国連の日本の出先機関にこれを寄付する以外にないのですね。そして国連の日本の出先機関にこれを寄付申し上げて、国連の難民措置としてしかるべきルートを通じてその人たちのところへ行く。これでは何ともならぬな、こういう体験を実は私ども実際にいたしております。  あるいは、ある国の人が勉学のために日本に留学しておるということがありますね。ところがお国では国家体制が変わってしまった。仕送りしてくる金は来ない、帰るにも帰るすべがない、一体どうするか、こういう人たちもいろいろな意味合いでわれわれのところに連携を持ってくる。これもわれわれのできる範囲内でということでいまやっておるのですが、それには限界があるなというケースがたくさんございますので、そういう体験上の問題をもとにしまして、必要な最低条件ぐらいは、私はこの際、国際人権規約と同様に、もう一日一日待ったなしの問題も解決していく姿勢が必要だなというので特段取り上げて申し上げた、こういうことでございますので、よろしくひとつ御検討を煩わしたいと思います。  以上であります。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 ありがとうございました。
  41. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 次に、中川嘉美君。
  42. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間も余りございませんので、各参考人方々に一、二問ずつお伺いをしたいと思います。  久保田参考人に対してですけれども、先ほど述べられた御意見の中で、人権規約には、国内法との関連で見ると成熟していない権利もあるが、本質的に日本国憲法と矛盾するものではない、こういう形でお述べになっていたように思いますが、この国内法との関連で見ると成熟していない権利、これは一体何を意味して言われているのか、どういう形で処理されるのが最も好ましいか、この点について御意見を承りたいと思います。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 久保田きぬ子

    久保田参考人 先ほど大坪先生の御質問にも申し上げたのでございますが、たとえばでございますけれども、二十条の「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」あるいは「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道」というような、こういう概念は日本の法律にはないと私は存ずるのでございますが、精神から考えますと、平和憲法を持っておりますし、それから表現の自由を手厚く保障いたしておるものといたしまして、成熟しておりませんし、耳なれてはおりませんけれども、当然その中に含めて、そういうことはしてはいけないということは、ちっとも国内法国内憲法に抵触するものではないという、これが一つの例でございます。その他もっと拾い上げてくればよろしかったのでございますけれども、つい私、自分の持っている条文にはないものですからあれでございますが、それでございます。
  44. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう一点だけ伺います。  わが国がこの人権規約批准するに当たって、これを補完するものとして、政治亡命者に対する庇護権についても立法化する必要があるのじゃないだろうか。多くの諸外国では憲法で庇護権を制定しているわけですけれども、日本国憲法ではこの規定がないわけでありますが、この点に関しての御意見を伺っておきたいと思います。
  45. 久保田きぬ子

    久保田参考人 庇護権、いわゆるライト・オブ・アサイラムに関しましては、これは実は世界人権宣言にはございますけれども、国際人権規約の中には入っていない点でございます。私がこれをどうということを申し上げるあれはございませんけれども、少なくとも人権規約の中には含まれていないものでございます。ただ、人権規約の精神からいたしまして、人道的な問題で、これは別途国会政府でお考えになるべき事項ではないかと考えております。  以上でございます。
  46. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、和島参考人に伺いたいと思いますが、B規約の第二十条一項、先ほども出てまいりました「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」こういう規定がありますけれども、この規定は、B規約加盟国に戦争宣伝禁止のための立法措置義務づけたものと解されるかどうか、日本国憲法及び他のわが国の法律は戦争宣伝を実体法的に禁止しているのかどうか、この点について御意見を伺いたいと思います。
  47. 和島岩吉

    和島参考人 お答えします。  B規約承認によって、立法措置を講じなくても法的拘束力を受けると考えるべきだと私は考えております。  なお、これを徹底するために、必要ありや否やは国会の先生方でひとつ御検討を願って、単に国際人権規約法的拘束力があるからそれで能事終われりとしていいのか、さらに具体的にこれを徹底するために国内立法を必要とするかは先生方で御検討願って善処していただきたい、さように考えます。
  48. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 確かに戦争宣伝の禁止というものはきわめて抽象的、観念的、主観的な概念でありますけれども、何か明確な基準というものを法律で確定できるものかどうか、私も非常にこれは問題があろうかと思います。もし裁判所等で戦争宣伝禁止問題が争われた場合、これは実務に携わる参考人のお立場で、果たしてどのような御意見をお持ちになるか、あわせて伺っておきたいと思います。
  49. 和島岩吉

    和島参考人 なるほど御指摘のように、具体的のケースとしてそういう問題が裁判所に係属した場合は非常にむずかしい問題が起こると思うのです、言論、出版等の自由の問題と絡み合って。そういう場合を予想すると、やはり相当論議を重ね、御検討願って、事前に立法措置が必要となるのじゃないか。ことにこの種の法律違反は刑事問題として起こってくるのじゃないか。御指摘のような具体的の事案として、何がしは戦争を扇動したということになると、やはり刑事事件として起こると、罪刑法定主義の立場から、あらかじめ設けられた構成要件に該当しなければ罰することはできない。そうすると、御指摘のように、単なる道徳的な規定にとどまるという懸念があります。その懸念は、同時にこの規定が骨抜きになる可能性、危険をはらんでまいります。そういう意味において、やはり具体的に——これはしかし、立法化するといっても非常に広範囲な問題になって、なかなかむずかしい問題は起こると思いますが、真剣に御検討願いたい事項だと思います。
  50. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 中島参考人に一問だけ伺いますが、女性労働権利あるいは男女平等等を専門にやっていらっしゃるお立場で、ちょっと角度を変えて伺ってみたいと思うのですが、日本国籍に帰化した人たち、実際に法のもとの平等がこの人たちに対して保障されているのかどうか、この点に関連してちょっと伺いたいと思います。  たとえば米国等では、ドイツからの難民、まあ亡命者といいますか、キッシンジャー氏等が国務の枢要な地位についたりあるいは国会議員となっているわけですけれども、わが国については、帰化した日本国民にはこのような例が皆無なようである。これは単に能力の問題とか本人の意思の問題だとかの形式論で片づけることはできないのじゃないかという感じがするわけですけれども、こういった形式論で片づけることは果たして妥当であるかどうか。私見ではありますけれども、これらの人たちにも可能性を開放すべきではないかというふうに私は思うわけです。女性労働権利あるいは男女平等等の専門であられるお立場から、こういったケースに対しての御意見は一体どんなものであるか、またその場合に、具体的にどう対処すべきであるか、この辺に関する御意見を伺いたいと思います。
  51. 中島通子

    中島参考人 実際に帰化した人々が、特に帰化した女性がどのような待遇を受けているかということに関する統計は、私調査したことはございませんけれども、これは経験的な事実で申し上げても平等な取り扱いを受けていないということは言えるのではないかと思います。その点、非常に重要な問題でありますが、しかし、この帰化自体が大変困難な条件を加えられているわけです。特に帰化の条件について、夫が日本人であって外国人の妻を帰化する場合にはかなり容易であるけれども、逆に日本人が妻であって外国人の夫を帰化するときには大変めんどうな条件が要るとか、さらに日本人の女性の子供で外国人の父親の子供を帰化させることは大変困難なことになっております。このような点も平等という観点からは改められなければならない問題である。さらに言えば、帰化そのものでなくて、帰化しなくても、日本で異なる国籍を持っていても日本で同等の権利を享受することがもっと認められるべきではないか。  それからもう一つ国際人権規約との関係で重要な問題になっているのは、児童の国籍取得権の点でございます。この点については、前にすでにこの外務委員会で議論が行われたと聞いておりますので特に触れませんでしたけれども、母親が日本人であって父親が外国人である場合には、日本の国籍法は父系の血統主義をとっているためにその子供に日本人の国籍を取得させることはできません。たとえば、その父親がアメリカ人である場合には、アメリカは出生地主義をとっているために、日本で生まれた子供は、父親がアメリカ人である場合には無国籍者になってしまうという大変不合理な問題があるわけです。これは明らかに国際人権規約B規約に反することになりますので、これらの点については立法措置が必要になるのではないかと考えます。
  52. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 真柄参考人に一問だけ伺います。  政府は若干の難民を引き受けることになったようですけれども、これらの難民はA規約第六条第一項及び第二項の労働権あるいは教育を受ける権利保障されると解されるかどうか、この点一点だけ伺いたいと思います。
  53. 真柄栄吉

    真柄参考人 難民問題、私に対するお尋ねでしょうか。
  54. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうです。
  55. 真柄栄吉

    真柄参考人 私、余り明らかに事情をのみ込んでいませんので、ちょっと答弁は控えさせていただきたいと思います。
  56. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 労働権等を中心として、参考人からこういった問題についての何らかの御意見をという立場からいまお聞きしたわけです。  それでは、小川参考人に伺いたいと思います。  国家による本規約の不履行あるいは違反行為によって人民が損失をこうむった場合の救済措置規定がないことに私自身は若干の懸念を抱くわけでありますが、こういう場合に国民の救済というものはどうなるかについて御意見を伺いたいと思います。  私は人権委員会個人の通報を認めた選択議定書に加入しなかったことはB規約の実効性を著しく減殺させるものと考えますけれども、参考人としては速やかにこの議定書に加入すべきとの御意見を持っておられるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  57. 小川泰

    小川参考人 御指摘のとおり、私、総括的に触れましたが、選択議定書、これも含めて速やかに承認すべきだ、こういう立場に立っておりますので、その旨だけお答えいたします。
  58. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最後にもう一間だけ小川参考人に伺っておきます。  規約第一条の規定は、在日外国人にも政治活動が許される、このように解釈されるかどうか。特に政治的な難民がわが国で自由のための政治活動をすることは許されるべきだと解されるかどうか。また不法入国という理由で法務省が執行する外国人に対する退去強制、これが時として事実上の政治亡命者の本国送還であって人権無視の不当な措置であるとの批判がありますけれども、この点に対する参考人のお考えを伺っておきたいと思います。
  59. 小川泰

    小川参考人 私が難民問題あるいは亡命問題を取り上げましたのは、規範的な人権という問題で実は取り上げました。その国々によってそれをどういうふうに受けて消化をするかという自由があるだろうと私は思います。したがって、いまのお問いのように、日本は日本なりに政治活動の自由という規範が国内法でありますから、それによって整理されていけばよろしいのではないか、あるいは労働権にいたしましても同様だというふうに実は私は考えておるのです。  いま真柄さんの方に質問がありましたように、たとえば労働条件労働権というものもそんなに分け隔てする必要はない。加えて社会保障全般、こういった問題も同様の権利義務が発生してまいります。そういうものは個々に、たとえば保険システムであるか、国家保障システムであるのか、そういう国内法とそのそれぞれの仕組みが持っておる性格に照らして、それぞれその内容対応していかざるを得ないのじゃないかというあたりはわれわれ検討しておるのですが、実際上現実に起こってみませんと、どういう条件の方がどういうかっこうでそれに対応するかというきわめて現実の問題を私どもとしては引き合いに出して検討しませんと、これはなかなか抽象論ではさばけないものかなと思っております。基本的には同様扱いという原則でよろしいのではないかなと思っております。
  60. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  61. 塩谷一夫

    塩谷委員長 渡辺朗君。
  62. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは早速質問をさせていただきます。  本日は、参考人の皆様方に貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。時間の点もございますので、一、二だけを各参考人の諸先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  一つは、今回の両規約に対しましてA規約の方では留保がある。この留保の四項目については、諸先生ともむしろ撤回の御意見があったように私は聞いております。そして両規約締結することに積極的に乗り出すべきである、急ぐべきである、こういう御意見でございました。  関連いたしまして、B規約の場合の選択議定書、これがございます。御案内のように、締約国個人が、人権侵害の問題が起こった場合には人権委員会に通報するという選択議定書の問題でございます。これについては日本政府の方の考え方としては、まだまだ同議定書が、またそれに定める制度が現在の国際社会においては円滑に機能するかどうかわからない、あるいは人権の保護という目的を達成する最善の方法かどうかもわからないというわけで、むしろこれを締結する意図はないんだという立場でおります。これは御案内のとおりでございます。  ただ私は考えますと、このB規約というのは、A規約と違いまして即時的確保の権利、こういったものをうたっている規約である。そこで、選択議定書締結しないということになりますと、何か、日本政府の姿勢というものがぽかっと穴があいたような、その部分においては後ろ向きになってしまう、私は、こういう感じがするわけであります。確かに、先ほど久保田先生の方から御指摘ありました問題点もあろうと思いますけれども、和島先生のおっしゃったように、選択議定書といったものを結ぶことによって、この規約に対して目玉を入れることになるという意味づけもあるのではあるまいかと私は思います。その点で、和島先生の御意向はもうお聞きいたしましたが、重ねて久保田先生あるいは中島先生、真柄先生、小川先生、四参考人方々にその点についての御意見を聞かしていただければと思います。
  63. 久保田きぬ子

    久保田参考人 先ほど申し上げましたように、通報システム、個人による通報でございますが、人権侵害があったという通報が個人から参りましても、それをどうやって認定するか、非常にむずかしゅうございます。したがって、B規約に基づきましてできました、いわゆるコミッションではないコミッティーの方の委員会が何回か開かれておりますけれども、私の得ておる情報の限りでは、全く動いていないのが実情ではないかということでございました。これは、いかに動き得ないかということではないかという気がいたすのでございます。  象徴的な意味のございます国際社会における人権保障が、いままでは国際条約国家を拘束するものであったのが、さらに個人にも保護が及ぶという、大変画期的な国際法上の発展ではございますけれども、それをつなぎます制度的な措置というものが、少なくともこの条約、プロトコルに関しましてはまだできていない。そういたしますると、逆の場合、通報制度が行われまして、これが悪用されるおそれもあるのではないかという気がいたします。戦争のない平和な、安全な社会を求めてこういう国際規約ができておりまするのに、それが根拠になりまして、思いがけない国際紛争の種をまくようなことがあってはいけないという、私は大変消極的かつ保守的な人間でございますし、法律をやっておりますとどうも保守的になります、そうでない方もいらしゃいますけれども……。何か、反対に使われがちなような気がいたしまして、そういう意味で、人権規約規定に関しましてほとんど審議がなされていないと思うのです、その実質的な審議は。人種差別撤廃の条約案に関する実施条項のところで、私ども二十回総会に出ました者が苦労いたしました点でございます。できていなくてもいいじゃないかという、かなりずさんな見解だったのでございます。そこまで見込むことは、日本政府が御承認の提案をなさらなかったのは、私自身の判断といたしましては、賢明であると思っております。  以上でございます。
  64. 中島通子

    中島参考人 私も一応法律家でございますが、法律家の要件としての厳密性を欠くのかもしれませんが、私としましては、選択議定書について批准しないということは賛成できないという立場をとっております。  最初の意見の中でも申し上げましたけれども、政府のこの両条約の批准の提案理由を拝見しておりますと、現実的には、留保条項を除いて、大体日本では確保されている、しかし、これを批准するという意味は、外国に対して日本の姿勢を示すことである、その外国に対する日本の姿勢を示すために批准する必要があるのだというような御説明でありますけれども、このような説明を拝見しますと、私は、先ほど小林先生の方から御意見があったと思いますが、ただかっこうだけをつけて、よその国に対しては、日本はちゃんと人権保障していますよという姿勢だけを示して、実質的な実効性という点については積極的な姿勢を持っていないのではないかという危惧を抱かざるを得ないのであります。そういう点からいって、やはりB規約に関しては、選択議定書というものを抜きに単なる批准をするということは、単なるかっこうづけに終わるということもあり得るわけでありまして、この点についてはやはり国会で十分な審議を尽くされ、早急にこの批准にまで持っていっていただきたいというふうに考えております。  この点について、ただいま、余り実効性がないのではないか、むしろ逆に利用されるのではないかという御意見がございましたけれども、私もそんなに詳しく調べて存じているわけではありませんが、ヨーロッパの人権条約に基づく救済措置ですか、この点についてかなりの程度、個人国家に、国家人権侵害を訴えて実効性を上げているというような資料も読みましたので、やはりその点についてはもっと積極的に、どうやって実効性を確保するような制度ができるのかということを、わが国批准して参加した上で、英知を集めて検討していきたい、そういう積極的な姿勢がぜひ欲しいというふうに考えております。
  65. 真柄栄吉

    真柄参考人 私は経験的な立場から申し上げるのでありますが、たとえばILO条約等を考えた場合に、結社の自由委員会にアピールをする、そういう手続なり権利が一般的に認められていますし、それに対してILO条約の適用状況がどうなっているかという点についての、条約適用勧告委員会なども設置をされることによって、条約の適用についてのしり抜け防止というような措置が現に講じられています。したがって、国際条約あるいは批准案件という問題については、いま御指摘のB規約選択議定書も当然批准をされる、これが常識的であり、かつ人権を取り扱う本質に照らしてみても望ましいことではないか、かように思っています。
  66. 小川泰

    小川参考人 私も、当然批准さるべきだという前提に立ちます。理由は、時間がありませんし、多くの方が言われておりますから……。  特に、最近私ども国際労働運動をやっておりますと、しばしば労働権問題で逮捕されたりあるいは圧迫されたりというものが国際舞台で取り上げられまして、その救済運動とかいろんなものが起こるような事態になりまして、早うこういう問題は、われわれが調査に行ってみても、なかなかその国々によって明確な調査もできないというような場面にぶつかったりいたしますので、あらゆる角度から人権擁護するという立場で、この種の議定書は当然批准して、むしろ数の少ない国が批准しているんだみたいなやりとりがされているようですけれども、私はそういった点には日本あたりはどんどん入っていって要件を満たすというような、積極的な役割りを果たしながら、この種のものは進めるべきだというふうに思っております。  以上です。
  67. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございます。  次に同じくB規約の四十一条に基づく宣言を行うか否かの問題でございます。先ほどお伺いしましたのは、個人人権委員会に通報するという問題についての点でございましたが、今度は国として、よその国が人権をじゅうりんしているという問題があるという場合に、宣言国の間だけしかこの問題を取り上げることができない、こういうことになっておりますし、今日日本では宣言をしておりません。また、しようという考え方もいますぐにはないようでございます。果たしてそれでよろしいのかどうなのか。この問題は十カ国以上がすでに宣言をいたしまして発効しているわけでございます。そういうような状態にかんがみて日本としてはこの宣言をするべきか否か、このことを端的に、するべきだという御意見か、そうではない、しばらく待った方がよろしいのか、ここら辺を、申しわけありませんがお一人ずつ一言で結構でございますから、順にお聞かせいただければありがたいと思います。
  68. 久保田きぬ子

    久保田参考人 一言で申し上げますと、これも私にはある意味ではきわめて危険なものを含んでおりますので、もうちょっとお待ちになって、早急に御宣言なさる必要はなかろうかと思います。
  69. 中島通子

    中島参考人 規約の実効性を確保し、しかも国際的に確保するという趣旨から言えば、やはり宣言を行うべきであると考えられますが、しかし、この点については私はまだ十分に検討しておりませんので、その程度にさせていただきたいと思います。
  70. 真柄栄吉

    真柄参考人 一般的に宣言国になるのは望ましいと考えられますが、特に日本政府の場合は、たとえば働き過ぎというような国際的批判の中で、時間短縮、週休二日というようなのを何か日本政府も取り上げざるを得ないような国際的な要請になってきている。ですから、後手後手に対応する日本政府の伝統的なあり方という問題については、やはり先進諸国としての立場からもっと勇気を持って考えるべきではないか、かように考えます。
  71. 小川泰

    小川参考人 理由は差し控えて、私も望ましいという一言に尽きます。
  72. 和島岩吉

    和島参考人 私は積極的にやるべきだという考え方を持っております。この規定の体裁から見ましても「喚起することができる。」となっておりますから、具体的実践の場においてはやはり政治的考慮も払う余地があるのではなかろうかと考えております。
  73. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。  先ほどの参考人のお話を聞いておりましたときに、小川参考人の方からA、B規約締結国となるということは、同時にやはりこの規約に盛り込まれていること、これの実効を上げることが大切なんだということをおっしゃっておられました。これは諸先生方も同じお気持ちであろうと思いますが、そのまた関連で何らかの国内法との調整がまだまだございましょう。特に漸進的な内容を含んでおりますA規約の中身をこれから具体化させていくという場合に、時間もかかるし、いろいろな手だてを講じなければならない。そうすると何らかの調整機関なりあるいは実施機関というようなものが必要ではあるまいかという御指摘が小川参考人の方からございました。  小川参考人、再度それについて何らか御意見、アイデアというものがございましたら、また同じく労働運動の側から参考人として出ていただいております真柄さんの方にも御意見がありましたら、お聞かせをいただければありがたいと思いますが、先に小川さんの方から何かありましたらどうぞ。
  74. 小川泰

    小川参考人 この国会の運営なり権限、機能、慣習というものを私よく存じておりません。しかし基本的に見ればやはり国権の最高機関でありますから、この機関のもとに、私も申し上げましたとおり恒常的にいろいろな問題に対応する一つの機関をつくりなさい、こういう抽象論を申し上げておりますので、国防会議から始まっていろいろなものが消化されていらっしゃいますから、そういうバランスの中でぜひ取り上げていただきたい問題だ。そうしませんと、これは批准しましたというだけの話であって、後実際に動きがないというくらいつまらぬことはないわけでありますから、それをむしろ実行に移すという構えこそ大事じゃないか、私はこう思っているくらいなんで、特段ひとつ御検討願って即刻設定をお願い申し上げたい、こういう程度で御勘弁いただきたいと思います。
  75. 真柄栄吉

    真柄参考人 法律専門的にはいろいろな広範な検討事項が必要となると考えられますけれども、基本的には国内法を整備するその積極的な方向で対処が望ましいと私は考えます。以上です。
  76. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点でいかがでございましょう、久保田先生あるいは中島先生、御意見はお持ちでございましょうか。何か実施機関を置くという発想、構想がありましたらお教えをいただきたいと思います。
  77. 久保田きぬ子

    久保田参考人 私のようなもので別に特段のいい知恵は全くございませんが、ただ一言申し上げたいのは、人権尊重、確保と申しますことは、法体系を整備し制度をつくることによってできる、守られる、実現するものだ、それも必要ではございますけれども、私はそうではないと思います。その前提にあります国民人権意識あるいは人権本質に対する理解で、人権憲法により法律により条約によって与えられているものではないわけでございます。その本質を忘れないことが第一ではないかと思います。
  78. 中島通子

    中島参考人 私は先ほどから申し述べておりますように、人権規約批准した以上立法措置が必要となるということを大変強調してまいりました。この立場からしますと、この批准が行われそのまま放置されるということは大変困ることでありますので、これはぜひともこの規約に沿った国内法の整備に直ちに着手していただきたいと思います。そのことが恒常的に行われる機関というものを特別に具体的に考えてはおりませんでしたけれども、確かにそういうものが必要だと考えますので、それは国会内にでもぜひつくっていただきたいというふうに考えております。
  79. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これを最後にいたしますが、もう一つだけ質問をさせていただきます。  先ほどから難民問題が出てまいりました。人権規約に基づく難民に対する対応の仕方、私それを推し進めてまいりますと、今回は四月三日の閣議で、ちょっとどろなわ式でございますけれども、五百人程度の難民の定住を認めるとか、あるいは難民救済センターのようなところにお金を支出するとか、こういうようなことも決まったようであります。ただし注目すべきことは、これら五百人の方を受け入れてもその方々の就職あっせんであるとか、これからの待遇であるとか、日本国内の処遇を日本人と同じようにするのかどうなのか、そういうところが残ってまいります。  こういう問題も含めまして、日本の国というのは、どちらかというと労働市場を国際的に開放しておらない世界の中でも有数の鎖国的国家であろうと思います。特にその観点から労働運動のお二人の方に、同盟、総評として今後のこれからの労働市場開放の問題、外国人労働者が日本で働けるようなチャンスをどのようにつくるのか、あるいはむしろ鎖国的方針を今後続けていかれるのか、労働運動の立場から御両氏の方に御意見を聞かせていただければありがたいと思います。
  80. 真柄栄吉

    真柄参考人 御質問の、これからの難民を含めた労働問題につきましては、日本の労働運動も国際的に開かれたそうした立場で積極的な対応策を探っていかなければいけない、そういう時代に差しかかっていると理解していますので、お答えにかえさせていただきたいと思います。
  81. 小川泰

    小川参考人 具体的にどういう予見をもって当たるかというのはケース・バイ・ケースで実際にはやっていかなければならぬと思いますが、基本的に私たち、もうかれこれ十年以上になりますか、国際的に労働市場というものも鎖国的であってはいけないということで、私ども自身が火をつけ出しまして、現在は政府も相当なてこ入れをしていただいて、海外技術協力というサイドからずいぶんと、いわゆる各関係国際産業レベルでだんだん発展してきておる、こういう経過にちなみましても、これは十分な技術を習得していただいて、そして母国でさらに労働者の地位の向上に寄与しよう、こういう意味合いの問題でありますけれども、似たような私たちの発想がございますので、当然にこれは受け入れて、できるだけわれわれと懸隔のないような方向で検討をしなければならぬ問題だなというふうに考えております。
  82. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  83. 塩谷一夫

    塩谷委員長 寺前巖君。
  84. 寺前巖

    ○寺前委員 予定された時間から大分はみ出したものですから、皆さんもお気の毒だと思いますので、私一言だけお聞きをしたいと思います。  それは、先ほどから参考人の皆さん方の御意見を承っておりますと、日本国憲法に照らしてももつと早い時期にこの問題に対する対処ができたはずだ、むしろ留保なんかつけずに無条件で批准すべきであったというような提起が共通した問題の一つだと思います。同時にもう一つは、せっかくこういう規約批准しても、国内的に実効ある対策をきちんとやらなかったならばだめじゃないか、そのための法律も整備しなければいけないだろうし、法律があったからといって必ずしも実行されるということにはなっていない、それを積極的に進めよ、こういう御意見が圧倒的な御意見だったと思います。私もそういうふうに思いますし、外務大臣自身も当委員会でこの人権規約を提起するに当たって「留保条項なしに批准をするのが望ましい姿ではありますけれども、残念ながら、時間その他の関係政府部内の意見が統一をできなかったということを恥じておる」ということを言っておりますし、または「将来、法的な解釈その他は別として、解除する方向に努力をし、また、そういう責任があるということ」も述べております。私は、そういう態度が大体日本のこの分野を関心をもってあるいは積極的に問題提起する人々の間に透徹してきておる内容だろうというふうに思います。  そこで、違った角度からお聞きしたいわけですが、本規約が作成されて十一、二年たちました。それからすでに発効されて二年たってきたと思うのです。非常におくれているということを指摘されてきているわけですが、私が国際条約を知っている中だけで人権に関するものを見てみると、十五、六の人権の条約があります。ところが、現実に日本がこれについて署名し批准をしたというのは、婦人の参政権に関する条約とかあるいは人身売買並びに他人の売春からの搾取を禁止する条約、この二本程度しか知らないわけであります。圧倒的に人権に関する条約というものが批准をされていないというところに私は日本の後進性というのか、日本の責任問題というのは国際舞台において大きくあるだろうというふうに強く感ずるものです。  そこで私の質問をしたいのは、それらの人権に関する規約はいろいろありますが、特にこの人権規約は、あの苦い戦争の経験の中から、あの道を抑えるためには、何としても基本的人権が破壊されておった、基本的な人間としての権利が破壊されておってあの戦争の道があったという苦い経験のところから特に人権規約というのがつくられてきているということは、この規約前文にも書かれているところだというふうに私は理解します。そういうふうに見てきたときに、特に戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約というものが一九六八年に出されて一九七〇年十一月に発効している。日本はこの条約に対していまだに国会にも提起していないという、こういう現実的な事実が存在しているわけです。こういう問題に対して、私はあの戦争との関係人権を考える場合に、重要な一つがこの戦争犯罪との関係にあると思うのです。この戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約というものについて、私はこれは速やかに批准をすべき性格であるというふうに思うのですが、皆さん方の御意見を端的にお話をしていただきたいというのが私の最後の質問でございます。  なお、せっかくの機会ですから、スト権の留保の問題について、公務員に対する全面一律の禁止を日本の国内法でやっておりますし、あるいは鉄道のストライキを禁止するというようなことは、国際的にこういう一律に処置をしているということを、私は少なくとも労働運動が存在し、先進的な国家として位置づけられている国ではこういう  ところはないと思うのですが、もしも特別な御発言があったら御指摘をいただきたい。また、消防  についても先ほどちょっとありましたけれども、特別に先進諸国でこういう扱いを受けている国はないというふうに私は思うのですが、特別に御発言があったら、あわせて御発言をいただいたらありがたいと思います。   以上です。
  85. 久保田きぬ子

    久保田参考人 私もいろいろ人権に関します個別条約を日本が批准していらっしゃらないことを承知いたしておりますが、この個別条約はいろいろございまして、すでに日本では十分達成されているからしないというものもございますし、それからいろいろ問題があってしないというものもあるのではないだろうかと思うのでございますが、それはさておきまして、人権規約はそれらを総合いたします総則的な条約でございますものですから、それが先行するのが望ましいのではないかという気がいたします。一般論といたしましては、先ほども申し上げましたように、日本は大変良心的で、神経質なまでに細心で、国内法制が十分整備されてないとしないという面がございますけれども、そこはもう少し国際条約を、姿勢を示す意味では積極的におやりになったらいいだろうというのが、私の一般論としての見解ではございますが、中には十分検討した上でしないと逆にその意図と反する結果になるのがあるのではないかと思うものでございますから、そういう意味では私は個別条約に関しましては個別的に検討する必要があるのではないかと存じております。  以上でございます。
  86. 和島岩吉

    和島参考人 私は質問者と全く同意見であります。この国際規約批准によって懸案の人権関係の諸条約が前向きに検討され推進されることを大いに期待しております。
  87. 中島通子

    中島参考人 私も、人権規約と同趣旨の人権に関する条約の批准に関してわが国がもっと積極的な姿勢をとらなければならないというふうに考えております。ただ、いま御指摘の戦争犯罪に関する条約については、大変申しわけありませんが、私、十分に検討しておりませんので、その程度に御勘弁いただきたいと思います。  ただ、この人権規約と全く同趣旨のあるいは関連する、さらに私が先ほどから申し上げている立法措置関係する条約といたしましては、ILO関係に非常に数多くございます。女性権利に関して最も密接なのは百十一号条約でありますが、これをまだ批准してない。これは多くの働く女性たちから非常に強い批准の要求が上がっております。これは早急に批准していただきたいというふうに考えております。  さらに労働時間に関するILO条約についても、第一号が二十二ございますが、これについても、第一号条約を初めとして全く批准していないという現状は、それこそ世界に恥ずべきことではないかと考えておりますので、これらの点についても早急に批准が行われるべきであるというふうに考えております。  なお、留保条項について、私の意見は主として公の休日に関してだけ述べましたけれども、ただいま御指摘のスト権の留保について大変遺憾に思っております。  特に、政府のこの説明を拝見いたしますと「争議行為の禁止に関し同条と我が国の関係法令の定めるところが必ずしも合致しないこと等の我が国の現状にかんがみ、当該規定に拘束されない権利を留保することとする。」というふうな説明になっております。これを読みますと、わが国の法律によってストライキ権を労働者に与えた場合に初めて批准できるのだということのようでありまして、ということは、そもそもストライキ権というものを基本的人権として認めないという立場の表明にほかならないのではないかというふうに考えておりますので、この点については早急に留保を撤回されるように求めるものであります。
  88. 真柄栄吉

    真柄参考人 先生御指摘のように、人権にかかわる条約が私どもの調べでも十八ぐらいあって、二つしか批准をしていない。この国際人権規約がぜひ批准をされて、それが契機となって、関係各方面で前向きなこうした批准の方向が追求されることが望ましいと考えています。同時に、ILOの条約につきましても、いまお話がありましたが、現在百五十一にわたる条約があるのですが、わが国批准をしているのは三十五にすぎません。同様な意味で、こんな機会を契機にいたしまして、前向きな検討をぜひお願いしたい。  特に、スト権、消防職員の団結権等に関連をさせながら私は思うのでありますが、日本政府はどうしても、国際的に日本の立場の特殊性あるいは例外的立場というものを強調することによって、条約の批准もしくは条約の内容についての消極的な態度に終始をする、率直に言ってそういうあしき伝統的な態度があるように見受けられますので、ぜひこんな機会を契機にいたしまして、先進国としての積極的な役割りを、こうした人権並びに労働者にかかわる条約等に関連をさせて、積極的に果たしてほしいということを強く希望して、お答えにかえさせていただきたいと思います。
  89. 小川泰

    小川参考人 基本的には質問者と同じであります。  ただ、私、不勉強で、戦争犯罪にかかわる問題をつまびらかに承知しておりませんので、ちょっと答えは保留させていただきたい。考え方は先ほど来申し述べたことで御想定を賜りたいというふうに思います。  ただ、一つ、たとえばスト権の問題を取り上げましても、この手順といいますか、物を決める立場というものが何かこう私はあっちゃこっちゃになっているのではないかなという感じがどうもしてならないのです。いま申し上げたとおり、国際条約とかいろいろなものを批准したらそれでおしまい、幾つ内容不備のものがあったとしても、これで終わったんだよ、そういう性向も一つありまして、これも私はちょっといただけないなと思っておりますし、また逆向きに、これを批准をしてしまうと、何か急いでいやなものもやらなければならぬかというような感じのために、自分の体をちゃんと確かめてから、それで足りるか足りないかで批准しましょう、こういう傾向、両方ありますね。これはやはり私はそういう立場に余りこだわらないで、いいものはいいのだとしてやるべきではないかというふうに思うのです。  また逆に、国際条約がこうなっているからというので、国内で当然に解決すべきものを国際場裏に持ち出して、そのもとで何か有利なものをつくろうというふうな、そういうやり方も私はちょっといただけないなというふうな感じがいたすものでありまして、そこら辺がどうも問題や条約やによって取り扱い方がそれぞれあっちゃこっちゃになっている可能性が強いと思うので、そういった点は、私は最後の判断はやはり国民的な良識というものに基づいて、なすべきはなしあるいは批准すべきものは批准する、こういうことを腹を決めてかかる時代に差しかかったのではないかと思うので、一つ一つもう一度整理し吟味すべきではないか、こんな気持ちでおります。
  90. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  91. 塩谷一夫

    塩谷委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。  御意見は、両件の審査に十分生かしてまいりたいと存じております。ありがとうございました。(拍手)  次回は、明八日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会