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1979-03-23 第87回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月二十三日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 塩谷 一夫君    理事 愛野興一郎君 理事 大坪健一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 井上 一成君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 渡辺  朗君       川田 正則君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐野 嘉吉君       中山 正暉君    小林  進君       中川 嘉美君    寺前  巖君       依田  実君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務政務次官  志賀  節君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         厚生省児童家庭         局児童手当課長 鏑木 伸一君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   川田 正則君     佐々木義武君   佐野 嘉吉君     前田治一郎君   中山 正暉君     宇野 宗佑君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     中山 正暉君   佐々木義武君     川田 正則君   前田治一郎君     佐野 嘉吉君     ————————————— 三月十七日  廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約の紛争の解決に関する改正の受諾  について承認を求めるの件(条約第一一号) 同月十六日  核兵器完全禁止等に関する請願(工藤晃君(共)  紹介)(第一九七三号)  同(小林政子紹介)(第一九七四号)  同(不破哲三紹介)(第一九七五号)  同(松本善明紹介)(第一九七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(第八十四  回国会条約第一六号)  市民的及び政治的権利に関する国際規約締結  について承認を求めるの件(第八十四回国会条  約第一七号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 塩谷一夫

    塩谷委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、委員長より法務当局お尋ねしたいことがあります。去る一月二十三日の当委員会理事懇談会の協議に基づき、私から要求したトーマス・チータム、ハリー・カーン両氏昭和四十三年から四十四年にかけての出入国記録について、その後理事会等出席を求め再三提出方を求めたのでありまするが、いまだに提出を見ないどころか報告がありません。改めて法務省当局見解を求めます。  当委員会においても、調査の結果に基づいて具体的事実との関連においてお尋ねをいたしたいと思いますが、いかがですか。
  3. 小杉照夫

    小杉政府委員 お答え申し上げます。  この件につきましては、去る二月二日衆議院の予算委員会におきまして法務大臣が御答弁申し上げましたとおり、プライバシーの問題もございまして、慎重に検討を続け、今日に至った次第でございます。その間、参議院の予算委員会におきまして、二、三の委員から委員独自の御調査の結果に基づきまして、具体的事実との関連において特定の出入国歴についてお尋ねがございましたので、そのお尋ねに即してお答え申し上げたという経緯がございます。
  4. 塩谷一夫

    塩谷委員長 それでは具体的に質問します。  当委員会調査によると、チータム氏が国防総省をやめた後、昭和四十三年にグラマン社に入社して航空機宇宙部門担当の副社長になり、その年の年末に航空機売り込み等要務を帯びて来日したようであるが、その年末の来日は確かであるかどうか。
  5. 小杉照夫

    小杉政府委員 お答え申し上げます。  私ども出入国記録によりますると、ただいま委員長指摘のとおり、四十三年の年末に参っております。十二月の十三日に入国いたしまして、同年十二月の二十日に出国いたしております。
  6. 塩谷一夫

    塩谷委員長 第二一一、同じく当方の調査によりますると、昭和四十三年にカーン氏はチータム氏の推薦によりグラマン社のコンサルタントとして就任し、その直後、同年初めに二回、年末に二回、それぞれグラマン社要務を帯びて来日している模様であるが、それはいつ来たのであるか伺います。
  7. 小杉照夫

    小杉政府委員 カーン氏は、委員長指摘のとおり、四十三年年初に二回、年末に二回参っております。  まず、年初の方でございますが、一月の二十日入国、同一月二十六日出国。続きまして、二月の九日に参りまして、二月の二十五日に出国いたしております。これが年初の二回でございます。それから年末は、まず最初に十一月の十日に参りまして、十一月の二十八日出国いたしております。続きまして、翌十二月六日に参りまして、十四日に出国いたしております。
  8. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次に、本年一月三十日の新聞報道によれば、昭和四十四年春、カーン氏が海部氏のところへ代理店の話を持ってきたとあります。その後、チータム氏が来社し、同年八月十五日代理店契約を結んだとある。  両氏昭和四十四年の二、三月ごろ及び代理店契約を結ぶ前の六、七月ごろ来日しているようであるが、この点についてはどうなっているか。
  9. 小杉照夫

    小杉政府委員 お答え申し上げます。  まず、カーン氏から申し上げますが、カーン氏は四十四年の二月の二十日入国いたしまして、翌月三月四日に出国いたしております。さらに、二度目の来日が六月でございまして、六月の五日に入国して、同月二十二日に出国いたしております。  チータム氏でありますが、チータム氏は二月二十六日入国、三月五日に出国いたしております。さらに、六月につきましては、六月の十四日入国、同月の二十日に出国いたしております。
  10. 塩谷一夫

    塩谷委員長 ただいま法務省出入国記録報告を受けましたが、外務委員会としては国政調査権の問題、法務省見解の、これに対応の態度はまだ最終決定を見ておりませんから、これについては課題として残しておきたいと思います。      ————◇—————
  11. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次に、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件、市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺朗君。
  12. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約の両件につきまして質問をさせていただきます。  便宜上、前者を経済権規約、あるいは外務省の方の提案説明によりますと、これをAとしておられます。A規約あるいは経済権規約、こういうふうな呼び名で呼ばせていただきます。後者をB規約あるいは自由権規約、こういうふうに呼ばせていただいて質問を続けさせていただきたいと思います。  まず、外務省の方から説明書をいただきました、これに沿いながらお教えをいただきたいと思います。この規約成立経緯関連してでございます。  本年は、人権宣言採択三十周年に当たっている。そしてまた、人権宣言を一層具体的に敷衍したものが今回の両規約である、こうされております。これに関連いたしましてお尋ねしたいのは、世界人権宣言に盛られているが、こちらの両規約の中に盛られていないもの、あるいは両規約に新しく盛られているけれども世界人権宣言の方に盛られていないもの、この点について、細目ではなくて大きなところでお教えをいただきたいと思います。
  13. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 お答え申し上げます。  ただいま渡辺委員の御指摘の大要について申し上げますと、他国に庇護を求める権利、国籍に関する権利及び財産に関する権利世界人権宣言規定されておりますけれども国際人権規約には規定されておりません。他方、人民の自決の権利及び少数民族権利国際人権規約規定されておりまするが、世界人権宣言には規定されておりません。他の権利につきましては、基本的にはほぼ同じものを対象としておるというふうに考えております。
  14. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は後ほどまたさらに、具体的にいろいろ御質問させていただきたいと思いますが、この説明書に沿いながら先に確かめる意味で御質問をさせていただきたいと思います。  説明書の二ページ、(ロ)のところでございますけれども、大変重要なことだと思うのです。たとえば「B規約実施関連して同規約の下で設置される人権委員会締約国個人からの通報を、審議見解を述べる制度について規定した「市民的及び政治的権利に関する国際規約選択議定書」」これを略称選択議定書と呼ぶとする場合、これは採択されておりますけれども、この選択議定書は配付されておりませんが、これは私だけがいただいていないのでしょうか、いかがでございましょうか。
  15. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 選択議定書をお手元に差し上げませんのは大変手落ちでございまして失礼いたしました。早速いまお届け申し上げます。
  16. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは私だけがもらってないのでしょうか、配ってないのでしょうか。
  17. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 この選択議定書は実は御承認を求める対象に入っておりませんものですから、お分けしなかったのでございますけれども、全体を御判断いただく上に御必要だという御指摘でございますので、皆様方におくればせながら差し上げることにいたします。
  18. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私そこら辺でちょっと、後でもまた関連してまいりますけれども、これは大変重要なことだと思うのです。というのは、この選択議定書にのっとって締約国個人からの通報審議見解を述べる制度、こういうものが実施されるわけでございますから、ある意味ではこれは実施措置だと私は解釈いたしますが、いかがでございましょう。
  19. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 選択議定書個人出訴権を前提とした議定書でございまして、これはまた後ほどいろいろ御質問も賜るかと思いますけれども個人救済制度として果たして実際に機能いたしますかどうか、相当疑問な点があるという判断をわれわれは持っておりまして、この採択におきましても棄権の国が非常に多かったわけでございます。  そういう観点から、われわれとしてはこの選択議定書に加入することを当面考えておりませんので、そういう形で御承認を求めていないというのが経緯でございます。ただ、その中身につきましては、御指摘のように今後やはりいろいろ検討をして、この運用状況も見ながら考えてまいるという面も含まれておるということは御指摘のとおりでございますので、われわれとしてもこれを等閑視しているわけではないわけでございます。
  20. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私はいま御答弁いただいて大変不満でございます。というのは、説明書の四ページ、(3)のところに書いてありますけれども、この選択議定書は「締約国が十九箇国に留まっている事実からも窺われるところであるが、」云々と、こう書いてある。そして、これは今日の国際社会の現実のもとでは円滑に機能する最善の方法ではどうもないようだ、こういうふうにも書いてある。だからしてわが国政府としては、「同議定書締結することは考えていない。」こう断じていらっしゃる。これは何のための人権規約であるのか。これはやはり発効させ、そしてこれを守り、これを広げていくことに意味があるのに、最初からそれを実施することはどうも疑問がある、だからして「同議定書締結することは考えていない。」というのはちょっとおかしいのではあるまいか。ここら辺のことをどのようにお考えでございますか、お教えをいただきたい。
  21. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 人権規約の内容をいかにして履行し、担保いたしますかというのは大変重要な問題でございまして、御指摘のとおりでございます。  このほかに国連に対する報告制度というのがございまして、各締約国はその国における履行状況をリポートいたすわけでございまして、それに対して国連から、A規約B規約では若干の差異はございますけれども、それぞれの締約国にいろいろ勧告をしたり意見を表明したりする、そういうことがございます。  この制度の方はかなり実際的なものがあるのではないか、これは非常に重視すべきものであろうと思っておるのでございますが、個人出訴の問題は、基本的には、たとえば日本である個人の方が人権侵害を受けた場合には、日本のように完備したいわゆる救済制度が本質的にありますところにおいては国内においてその救済が行われ、なおかつ不満とされる場合に出訴されるということはあり得ることでございますけれども、やはり制度的には各国の動向をわれわれ慎重に見ておるのでございますけれども、十九カ国にとどまっておるということもございまして、われわれとしては、この文言先生に若干の御不満を招く表現になっておるわけでございますが、今後未来永劫に締結いたさない、こういう意味ではございませんで、ひとつ運用状況も慎重に見守りながら今後先生の御趣旨も体して検討してまいりたい、このような趣旨とぜひ御理解をいただきたいと思います。
  22. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この問題はまたこれからも論議をしたいところでございますが、関連してもう一つ聞いておきます。  選択議定書締約国がわずか十九カ国にとどまっているがと言ってあって、だから日本は入らないと。お尋ねいたします。先進国、そしてまた民主主義をその社会体制としている国家において、十九カ国と言われるけれども、どういう国があるのでございましょうか。
  23. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、ただいま十九カ国ということが紙に書いてございましたが、これは正確にいま調べましたら二十一カ国でございます。  それで、現在まで批准が行われております国は、国として申し上げますと——一カ国ずつ申し上げますか。
  24. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 特に先進国でかつ民主制度をとっている国ということでお願いします。
  25. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 スウェーデンが批准をしております。それから、オランダが批准をしております。ノルウェーが批准をしております。それから、イタリアが批准をしております。フィンランドが批准をしております。あとはかなり中南米の諸国が目立っておるようでございますが、ただいまは二十一カ国というふうに御理解をひとつ賜りたいと思います。(「訂正しないといかんよ」と呼ぶ者あり)
  26. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、人権規約という問題についての軽視というようなところが、いまのような御答弁を聞いていますと何か出てくるように思うのですよ。やはり正確にその点もこの文書の上には残しておいていただきたいし、それからまた、選択議定書も皆さんにお配りして審議もしていただく、こういう形にしてもらいたいと思います。  いま十九カ国の中に民主主義体制をとっている国、こういう国が幾つか挙げられました。わが国がこの「議定書締結することは考えていない。」こういうふうな物の言い方は、単なる不満とか、そんなことではございませんので、物の考え方の根本に私は関連してくると思います。これはなぜそういうふうな態度をおとりになったのか、もう一度はっきりとおっしゃっておいていただきたいと思います。それから、今後のお考えも聞かせておいていただきたいと思います。
  27. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 二十一カ国になりました。これは修正の表をまだお回ししておりませんので、御提出段階から変わりました事情でございますので、表を早急にひとつお手元に差し上げたいと思います。  それから、ただいまの御質問でございますけれども文言として「考えていない。」というのは、当面は考えていないということであると思います。この点は今後、先ほど申し上げましたように、この個人出訴規定運用状況を見まして判断をしてまいりたいと思います。  それから、当面「考えていない。」ということの理由でございますけれども、これは先ほど申し上げた点でございますけれども個人出訴のこのシステムが十分に作動いたしますかどうか、これについては多くの国が疑念を表明し、審議過程においてその経過があらわれておるわけでございまして、わが国もその一カ国であったわけでございまして、その立場を根本的に変えまして、積極的にまずこの選択議定書に加入するという確信を得るに至っていない現況でございますが、ある程度こういうものは運用でございますので、運用状況を見ながら、ひとつ先生指摘重要性もわれわれ忘れずに対処してまいりたいと思います。
  28. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その点ではきょうの段階は深追いをいたしません。この次にまた論議をさせていただきたいと思っております。  先に急ぎたいと思いますのでお聞きいたしますが、同じくこの説明書の二ページ、A規約は一九七六年に効力を生じた、B規約及び選択議定書は一九七六年に効力を生じた。しかし、実際に国連において審議採択されたのは、いずれもこれはこの時点よりも十年も前の話でございます。そうでございますね。そうすると、わが国署名は一九七八年五月三十日に園田大臣国連本部において行われた。これも考えてみると十二年間ぐらいかかっている。その間どうしてこのように大変長い間かかったのでしょうか、放置されたのでございましょうか。
  29. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 渡辺委員の御指摘になりましたこの時間的要素については、まさに御指摘のとおりでございまして、政府としては人権規約早期提出を目途といたしましてこの期間中努力してまいったわけでございますが、広範かつ多岐にわたっておるということは、先生規約を御一覧いただきまして御納得いただけると思うのでございますが、当初予想した以上にやはり時間がかかりまして、政府部内の調整を必要としたような次第でございます。また、当然のことでございますけれども、他の国際約束との関係も調べなければなりませんし、また国内法令との関係につきましても検討を行いまして、検討作業には、いろいろな文書からおくみ取りいただけますように、むずかしい面が少なからず存在をしたわけでございますけれども、大体におきまして作業を何とか進めることができまして、これらの問題も処理し得るという確信がつきましたので、御提出を申し上げたということでございまして、この間かけられました時間的長さはかなりのものであったことは御指摘のとおりでございますが、それの期間を活用いたしまして努力は行ってきたつもりでございます。
  30. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 しかし、もう一度聞きますけれども、この両規約国連総会全会一致採択されたのは一九六六年でございます。わが国署名を行ったのはそれから十二年たった七八年でございます。御努力されたと言うけれども、十二年間ほったらかしだったということにほかならないのではないだろうか。それが国際的にはわが国人権問題、そういうものに対してはどうも積極的ではないではないか、こういう評価を生む原因にもなりはしないだろうか。まあしかし、この問題は余り深追いすると時間がなくなりますから次に進ましてもらいますけれども、私はこの説明書で第三ページ、これもまたお尋ねをしたいと思っていることが幾つかあります。  このA規約B規約、この二つ、「双方が確保されてはじめて人権の保護が真に達成される」こういうふうにおっしゃっておられる。そこで、A規約については五十一カ国が、B規約については四十九カ国が締約国である。A、B数字がばらばらでございます。両方を一緒にしなければだめだとおっしゃっておられながら、そういう実態がここに報告されている。これはどのように私ども考えたらよろしいのでしょうか。その説明をしていただきたい。それから同時に、A規約には五十一でB規約には四十九でございますから、二カ国足らぬところはどこでございますか。
  31. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御指摘締約国の数でございますが、これまた修正の最近の紙を差し上げることにいたしますけれども、五十八カ国と五十五カ国でございまして、A規約五十八、Bが五十五でございまして、その差の御質問でございますが、オーストラリアガンビアフィリピンA規約のみの締約国でございます。その他の国は両規約締約国でございまして、これで数は合うわけでございまして、五十八と五十五の差はその国の差でございます。
  32. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 オーストラリアガンビアフィリピンがAには締約国になっており、それからまたBには入っていない。これはどのようにお考えでございます。
  33. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 この点でございますが、渡辺委員も御高承のように、このA規約におきまして漸進性を認めておるわけでございますが、B規約については人間本来の権利ということで、その手当て漸進性のごときものは認めていないという経緯があるわけでございまして、そういったような形も一つございましょうし、それから、開発途上国の場合には、やはりA規約の場合の手当てがその特殊性から十分になし得ないということがございますので、これにはある程度の南北問題等の見地からも猶予を与えるという考え方があるわけでございまして、そういったもろもろの客観情勢がやはり反映しているのではないかというふうにお考えをいただきたいと存じます。
  34. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それからこの三ページのところに書いてあるのですけれども、「国連の有力な加盟国である我が国規約締結することは、非締約国による規約締結を促進する効果をも有するものと期待され、ひいては、規約の真の普遍化にも貢献する所以である」と大変りっぱなことが書いてあるのです。ところが、先ほど私がお尋ねいたしましたA、B両規約及び選択議定書は私ども署名する考えはない、締約する考えはないなんて、こういうことを言っておられる。大変矛盾した話だとはお思いになりませんか、いかがでございます。
  35. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 先ほど来渡辺委員の御指摘になりますのは選択議定書のことであろうかと思いますが、A規約B規約については、もちろん今回御承認いただくことをわれわれ願っているわけでございまして、これがやはり先ほど申し上げましたような一部の開発途上国その他に対する一つの刺激と申しますか、それをいざなって他にも批准せしめる方向に作用するという点があろうかと思うのでございますが、先ほど来御指摘のこの選択議定書につきましては、当面は御承認をいただく考えはございませんので、したがいまして、この点については他の国に対してもこれをいざなうというような考え方はとっておらないわけでございます。ただ、A規約B規約については、もちろん日本が模範となるという考え方で対処をしておるわけでございます。
  36. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これまたいまの御答弁、ちょっと、ちょっとどころか大いに不満でございます。たとえば四ページのところ、これは「B規約第四十一条は、規約に基づく義務が他の締約国によって履行されていない旨を主張するいずれかの締約国通報人権委員会が受理し検討する制度を設けている。ただし、この制度は第四十一条に基づく宣言を行った締約国間でのみ適用される。」こういうふうにしてあって、「この規定は十箇国が宣言を行った時に発効することになっているが、現在までに宣言を行った国は六箇国にすぎず、同規定は未だ発効していない。なお、我が国は」「選択議定書と同様の理由によりかかる宣言を行う考えはない。」とはっきり言っているのです。これまたずいぶんおかしな話であります。B規約についても宣言をするというのは実施規定のようなものだと思うのですね。実施措置でございましょう。こちらの方には文章があってこちらの方はそれを宣言する、実施するという措置を決めて宣言はしない、こう言ったら、文章はあるけれども、それはそれだけだよ、こういう程度の受け取り方しかできないではありませんか。私はそういう意味お尋ねをしているのでありますから、なぜ宣言を、たとえば四ページに書いてあるように、わが国B規約規定されている四十一条に基づくところの宣言というのはやらぬ、こういうふうにおっしゃるのか。そこら辺も明らかにしていただきたい。
  37. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 四十一条の問題でございますが、これは渡辺委員も御高承のように、他の締約国がその締約国人権規約履行状況を見まして、これはどうも不満がある、もう少し努力しろという考え方から、その締約国に対して申し入れをしたりいたしまして、その努力をさらに加速せしめるという制度でございまして、任意調停制度という言葉を使っておるわけでございますが、この制度が十分に機能いたします前提というものがあるように思うわけでございまして、これはやはりそれぞれの内政干渉にわたらざる範囲内におきまして行う必要があることと、もう一つは文化的な同一性、歴史的な同一性ということから、他の国を顧みていろいろ文句をつけるということについての一種の確信と申しますか、十分な自信、その他を備えた国にして初めてこれが行えるということから、この制度につきまして、先ほど冒頭お答え申し上げました国連に対する報告制度、それから、国連から返ってまいります勧告制度、そういうものの方が、非常に多岐にわたります人権で、かつ国内施策的色彩の強い人権問題の内容の担保にはより有力であろうという認識がやはりあるようでございます。これは否定できないところでございまして、その辺が、選択的議定書の選択という言葉にあらわれておりますように、個々の国の選択にゆだねる問題であるという前提がある。四十一条におきましても、任意的調停制度という言葉にあらわれておりますように、任意のことを前提としておる。むしろ補完的な意味制度であると思いますけれども、これにつきましては、そういった意味から現実性というものに配慮しながら、これに対する宣言を行うかどうか、ただ御指摘のように、あくまでもこういう補完制度を活用すべきであるという御意見もあると存じますので、宣言を行うかどうかということは、今後とも情勢の推移を見て考えてまいりたいということでございまして、宣言を行わないということではございません。
  38. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 おっしゃるように選択という言葉が使ってある。だからその国がチョイスをするわけでございます。選択だからよけいに日本のこれからの姿勢が問われるのではないか。先ほどもお聞きしましたように、この両規約を推進するのだという決意は文章の中に入っている。だけれども、今度は、総論ではそう言っておきながら、各論になってくると、選択の場合にはネガティブな方をとる。それではやはり本気ではないというものが感じられるので、いまお聞きしております。  関連して、先ほど来、説明書を見ても、有利なように有利なように数を少なく読んだりいろいろしておられたので、これはもう一度……。  ここには、十カ国が宣言を行ったときに発効することになっているが、現在は六カ国にすぎない、こうなっておりますが、本当でございましょうか。これもサバを読んで少な目に書いてあるのではないでしょうか。
  39. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 三月の末に十カ国目が実は批准いたしましてこれが発効いたしますので、直ちに国の数を修正する文書を差し上げることにいたします。
  40. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると、この説明書は基本的に全然違っていますね。つまりもう発効するわけです。そうすると、ますます選択するということが重要になってくるわけでございますが、政府としてどのように選択をこれからされますか。
  41. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 十カ国目になりまして、三月二十八日に発効するということでございます。これは数が示しますように、要件を満たしたわけでございますから発効いたすわけでございまして、これらの十カ国の間でこういうことも考えていくということだと存じますが、わが国としては、先ほど申し上げました理由によりまして、今後もこの制度の十カ国相互間の運用がまず基本的にどう行われるかということを見守るべき余裕は十分あるかと考えておりますし、そういった面で検討を続けてまいりたいと考えております。
  42. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 念のために、そしてこれからまた審議をさしていただくために、十カ国はどことどこでしょうか。
  43. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 国名を申し上げさせていただきます。  オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ連邦共和国、これは西ドイツでございます。イタリア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、以上でございます。
  44. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それから、この説明書だけでもいろいろ聞きたいところがたくさんあるのですけれども、これはこれとしておきまして、また時間をいただいて改めて質問をさしていただきます。  次に、ちょっと中身の方に入ってお聞きしたいと思うのです。  先ほどもお尋ねいたしました世界人権宣言、この中には盛られていないもの、新しく盛られたもの、それからまた、世界人権宣言にはあるけれども規約の中には入っておらない、こういうような点がお聞きしたときに出てまいりました。これらの点は、違いというものはどういうふうに理解したらよろしいのか。特に世界人権宣言の方は拘束力においては大変弱いものであり、いわばモラルなデクラレーションである、こういうふうに理解することができる。しかしながら今度の両規約は強い拘束力をも持っている、義務を要請しているものである、こういうふうに思いますが、それではその違いをどのように調整したらいいのか、考え方をお知らせいただきたい。
  45. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御指摘のように、人権宣言の方は法的拘束力ございません。この人権宣言を受けまして、やはり各国が集まってそれぞれお互いを拘束する条約をつくろうということで人権規約ができたわけでございまして、したがいまして、前者がより包括的な概念的なものであることは免れないところでございますが、人権規約におきましてもできるだけ世界人権宣言に沿うような形で内容的に取りまとめられたことはこれまた事実でございます。  若干の出入りがあるという御指摘でございますけれども、それが歴史的にどういうふうに説明されるかということでございますが、人権規約のみに存在する権利につきましては、人権宣言がもっぱら個人権利対象といたしましたためにこれに含まれておりませんでしたけれども、その後、渡辺委員も御高承のように、植民地でございました新興独立国の進出を初めといたしまして、国連において新たな潮流が生じたということでございまして、個人人権保障の前提として、まず人民、少数民族権利が認められなければならないということが強く確認をされた、これを人権規約に含めることがしかるべきであるという、人権宣言のその後の歴史の流れから、こういったものを新たに人権規約の中に加えたという経緯がございます。これも一つの重要な両者の表面上の違いの理由でございます。
  46. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 たとえば具体的にこの自由権の方の規約、つまりB規約、ここにおいて入っておりますね、自決の権利、これが第一部第一条にうたわれている。ところがわが国として、こういう問題が出てきたときに、これは国内の法制化もやっていくのだというようなことがこの規約採択する意味づけであろうと思うのですけれどもわが国としてはどういうふうに対応するのか、また民族自決権というものを国際法上どういうふうに見ておられるのか、この点、ちょっと聞いておきたいと思います。
  47. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御指摘の自決権の問題でございますが、これは両規約の一条でございますが、人権規約の草案作成のとき、時代背景をなす植民地独立の機運ということは先ほど申し上げたわけでございますが、この世界的な高まりを背景にして規約に盛りこまれたという経緯を念頭に置きまして、主としてこれは、人民の自決権と申しますのは、旧宗主国に対する植民地人民の政治的主張を基本に置き、これを国際的に支持するという方向で打ち出されたものでございますので、わが国といたしましてもこれを国際的に支持し推進するという強い立場を従来からとり、また今後もとりますことは言うまでもないところと存じます。
  48. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはたとえばこの二条のところに書いてある「規定に従って必要な行動をとることを約束する。」ということですから、いまの民族自決権の問題、これについても、これからのわが国の行動、外交行動、こういうものを非常に強く規制してくるというふうに理解してよろしいですね。
  49. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、第二条にこれを強く履行することを求められておりますので、国際的場裏におきましてわが国は、これを従来と同じく、さらにまたより強い形で主張してまいりたいと考えておるわけでございます。
  50. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまもお話がありましたように、このB規約の方は大変強い、そういう国の行動をも拘束する、こういう内容になっております。義務の設定の方が非常に強くうたわれている。それから社会権の方、A規約の方では漸進的なあり方というものを認めている。こちらの方は大変緩やかだ。だからして、B規約の方が大変強い、強い弱いで言うとそういうふうに私は理解をいたしますが、それでよろしいかということが一つ。  それだけに、説明書を読みますと、A規約の方、つまり社会権の方についてはこれは留保がつけられている幾つかの条項がある。ところが、強い方の拘束力を持つB規約の方、自由権の方に対しては何も留保がない。これでよろしいのですね。だから、これにうたわれていることは日本政府はやるということでございます。そう理解してよろしいですね。
  51. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 お答えいたします。  A規約の方は、御指摘のように国家が個人に対して積極的に与えるべき保護という意味の社会権を内容としておるわけでございまして、これはむしろ政策的な色彩が強いものでございますから、政策的に漸進的にこれを達成していくというのが前提になっております。B規約の方は、御指摘のように公権力の行使から個人を守るという保護権の古来伝統の権利でありまして、人間の本来の権利ということでございます。これを自由権と称しておるわけでございますが、いま御説明申し上げましたようなことで御理解いただきますように、A規約には今後の政策的な漸進性が許され、B規約については即時的な確保が必要とされておるということであろうかと思うわけでございまして、政府はこの点を踏まえまして検討いたしまして、A規約につきましては、すでに御承知をいただいております最小限の留保を付したということがございますが、B規約については、細かい点はまた今後御質問があるかと思いますが、いろいろ検討はいたしましたけれどもB規約においては現行法体制のままにその内容を担保し得るという考えのもとに留保をしておりません。
  52. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もっと具体的にそれではお尋ねをいたします。  これはこのB規約の方、自由権の方の第二十条の一項「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」これは立法措置は当然とられるわけでございますね。
  53. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 第二十条につきましては、いま御指摘のように「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」これで渡辺委員の御指摘意味は、わが国にかかる国内法がないではないかという御指摘であろうかと思います。これに対しまして、私ども考え方は憲法九条の戦争放棄の考え方に基づいておるわけでございまして、二十条は実は表現の自由をどの程度制約するかという別個のまた非常に重要な問題を抱えておりまして、それとのバランスをどう考えるかという重要な命題があるわけでございますが、わが国は憲法九条において戦争の放棄を規定しておりまして、実際にも戦争に対する強い否定的な感情が存在をすることにかんがみまする場合には、戦争宣伝行為が実際に行われるということは考えられないという立場に立っておりますし、また、仮にかかる宣伝行為が行われたといたしましても、実際には具体的な法益が侵害されるとは考えておらないわけでございます。したがって、わが国の現状におきましては、先ほど申し上げました表現の自由の尊重の必要性、そういったものも十分勘案いたしまする場合には、他人の権利の尊重、国家の安全、公共の秩序等のために表現の自由を法律により現在以上に制限してまで戦争宣伝行為を禁止する必要があるかと申しますと、これはにわかにあるということが言えない状況でございまして、そういった意味からいろいろと慎重な検討をいたしましたが、いまのような考え方に立ちまして、二十条については留保する考えはないわけでございます。
  54. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 同じく二十条の二項「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」これも立法措置を講じなくていいのですか。立法措置を講じなければならぬ項目ではございませんか。
  55. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 現在の段階におきまして、いま先生の御指摘のような国内立法の必要があるかどうかということは、いろいろな情報収集と申しますか、実態がどうであるかということの収集を努めて積極的に行っておるわけでございますが、本項に定められまして、かつ現行法制で規制し得ない行為によって具体的な法益侵害が行われる事態が一般化しておるということはどうも言えないのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、将来においてかかる事態が新たに生じますようなことが出てまいりました場合には別といたしまして、現状では、やはり先ほど申し上げましたと同じことでございますが、言論、出版等表現の自由の制限にかかわる重大な問題でございますので、非常に慎重に対処しなければならないのではないかという観点から、具体的法益の侵害を想定いたしませんで、留保いたしませんというのがわれわれの考えでございます。
  56. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこら辺よくわからないのです。慎重に対処すると言われながら、特に表現の自由の問題があるから非常に慎重に対処すると言っておられるけれども、立法措置はそれじゃ講じなくてよろしいのかということになると、現行法でもいいような御返事でもある。一体これはそういう問題があったときに、留保でもつけなければならぬのではないでしょうか。いかがでございます。
  57. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 この点はやはり具体的に法益が侵害されるおそれがあるのかどうかという認定でございますが、この点につきまして、先ほど申し上げましたように、今後の事態はいろいろ見守らなければならないと思いますが、現時点におきましては少なくともそういう具体的法益の侵害の問題を冒してまで表現の自由それ自体に対して制限を加えるということには至らないのではないかというのが考え方でございますが、先ほどちょっと申し上げましたが、情報の収集ということを申し上げたわけでございますが、実態は絶えず変化いたしますので、その情報収集は、先生の御指示のように、今後も努めてまいりたいと思っております。
  58. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはいまの説明で何かよくわからない。やっぱりここにうたっている以上は、きちっと法制的にも、いま現行法はこれがありますからこれできちっとうたっているのです、あるいは新たにつくるのです、こういうふうなお答えでないと、何か歯切れの悪いことで、いまは大丈夫だけれどもみたいなお話では大変頼りない規定だというふうにも思います。  聞くところによると、審議の最中、国連作業をやっていらっしゃる最中、第三委員会日本側はこの案文に対しては反対の投票をされたと聞いておりますが、いかがでございますか。
  59. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御指摘のように、審議過程では反対投票をしておるわけでございます。
  60. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 審議過程で反対しておられて、ここでは賛成をしておられるというのは、これはどういうわけでございましょうか。
  61. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 これはわが国審議過程におきまして最も強く念頭に置きましたのは、憲法における表現の自由、言論の自由、そういった点を制約するような要因、そういったものに対しては慎重に対処すべきであるという考えで、審議過程におきましては、この規定の行き過ぎも心配をいたしまして反対をしたわけでございますが、その後検討いたしますと、この点は、先ほど申し上げましたように、具体的な法益の侵害ということに至らないということもございましたので、それでは人権規約の一部としてこれを受けとめていくということでよろしいという判断に至ったわけでございますが、審議過程におきましては、御指摘のように表現の自由等との関連で慎重論をとったわけでございます。
  62. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 慎重論をとったということと反対をしたということとはずいぶん話が違います。もっと突っ込んでいきたいのですが、時間が余りないようでございますから、委員長のお許しをいただいて、またこの次にもやらしていただきたいと私は思います。いま委員長の方から紙が回ってまいりましたので……。  ですが、これはやはりいまの、たとえば第一項で言ってある「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」たとえば「宣伝」というようなこともはっきりとしておかぬといけないだろうし、中身を定義しておかぬといけないだろうし、二項にあるいまの「差別」「敵意」「扇動」そういう言葉の中身も定義しておかぬといけないだろうし、そのときに定義をはっきりしておかれるべきではなかったのか。ちなみにお聞きいたしますけれども、この条項についてどこかの国が留保しているようなところはございませんか。
  63. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  B規約第二十条全体に留保しております国はニュージーランドと英国の二カ国でございます。また同条の第一項、戦争宣伝でございますが、それのみに留保をいたしております国はデンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの五カ国でございます。
  64. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 留保があるのですね。わが国はこれは留保してない。そうすると、ここでは、草案の作成過程では反対されたけれども、はっきりと確信持ってこれには賛成されたのだというふうに理解しますし、それからまた、わが国態度というものは留保も何もつけていないのですから、やはり何らかの定義か何かを、少なくとも国内向けにもきちっとしておられて、そしてこれは了承されたのだと思います。したがって、この条項についての言葉、表現の自由を侵害するおそれあり、こう言っていま答弁がありましたけれども、そうではないというところをきちっと示していただきたいと思っております。ですが、きょうは、委員長から紙が回ってきましたから、この次にひとつ回していただきましょうか。よろしゅうございますか。まだまだいろいろ質問したい点がございますので、お時間を改めていただきたいと存じます。では、きょうはこれにて一応終わらしていただきますので、次回またよろしくどうぞお願いします。  ありがとうございました。
  65. 塩谷一夫

    塩谷委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  66. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  67. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今回審議対象となっておりますこの二つの国際規約わが国が加盟することによって得るところの実効的な利益というのはどういうものか、この点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  68. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 お答えいたします。  A規約につきましては主として社会権、B規約につきましては人間本来の固有の権利でございますところの自由権、それを規定しておるわけでございますが、この規定に加入することによりまして、今後わが国人権保障の措置の一層の充実を期しますとともに、国際的には、未批准国をいざないまして、特に開発途上国批准をしてない国が多いわけでございますが、いわゆる人権尊重の観念の国際的な普遍化、そういったことに寄与することになるというのがこの両規約批准の意義ということが言えると思います。
  69. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 国家としては確かに国際的に言っても好感を持たれるというふうには思いますけれども、この規約に加盟することによって日本国民、そして日本に在住する外国人、これらの人が実際に国家からどういう利益を保障されるかということ、これを裏返しに言いますと、国家はいかなる実体的な義務を負うか、この点を明らかにしていただきたい。
  70. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 最初に、外国人の権利関係でございますが、両規約第二条に、内外人の別なくこの規約の内容を享受するということになっております。A規約は漸進的な国内施策というものを想定しておりますし、B規約はいわば猶予なしの即時的な措置ということを想定しておるわけでございますが、そういった条件を踏まえつつ内外人平等が確保されるということが一つの大きな意義であろうかと思います。  いわゆる日本国民についての裨益する面でございますが、これは枚挙にいとまない内容がございますので、一々これを申し上げることは差し控えますけれども、これらの権利につきましてA規約B規約の特性の中で伸長が図られるということが大きな意義であろうかと思っております。
  71. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまの御答弁からいきますと、そういったさまざまなメリットといいますか、そういうものを包含しているというように受けとめられるわけですが、そういうことであれば、なぜこの規約の加盟が延び延びになっていたのか、その理由について御説明をいただきたい。
  72. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 両規約採択されましてから相当な年数がたっておりますることは御指摘のとおりでございますが、何分にもこの両規約が枚挙にいとまない相当広範囲の人権にわたって規定をしておりますので、やはり関係国際約束との関連性も十分詰める必要がございますし、また国内法制、国内慣習等の調整面、そういった面について万全を期し、国内法との関連も確認いたしました上で御批准を願うということが大事であるという発想のもとに慎重に審議をさしていただいた過程があったわけでございまして、こういった見地から若干の時日は経過いたしましたが、今回御批准をお願いするということに立ち至ったわけでございます。
  73. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま御答弁の中に国内法との関連ということが出てまいりますが、新たな立法もしくは法改正、こういったものが当面は必要ないけれども、将来必要と思われるものがあるのではないか。もしないとするならば、人権規約への参加そのものはきわめて精神的なものであって実体的な意味が薄いことになるのではないかという疑問が出てくるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  74. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御批准の時点におきましては直ちに国内法的な措置を要するものは特に想定しておりませんが、先ほど御説明申し上げましたように、A規約の方の漸進的な国内施策という過程の中で、今後事態の推移を踏まえながら最終目標に向かっていろいろな措置を進めていくというものは、社会保障の外国人への適用の問題でございますとかそういった問題、特に内外人平等関係の問題についていろいろ今後考えてまいる問題が出てくると思います。  また、これは将来の問題でございますけれども、戦争宣伝の禁止あるいは宗教的、国民的憎悪の禁止、そういったものにつきましては、現在の段階では具体的な法益が侵害されておるというふうには判断しておりませんし、ある程度の国内法も担保されておりますし、これは戦争宣伝ではございませんで差別的憎悪の禁止の方でございますが、そういった見地から、現在の段階では即時的に何か措置を要するということは考えておりませんが、将来いろいろ情報を総合し、社会の変遷その他もございますと思いますので、そういった社会情勢の変転を踏まえて、こういった点についてはあるいは立法ということを考える時期が来ることも一概に否定はできないというように考えております。
  75. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、このA規約第二条一項のところに、「この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、」云々、こう出ておりますが、これからいくと、A規約のどの条項が立法措置対象となるか、社会の変遷を踏まえて云々というお話ではありますが、具体的にこのA規約そのものを見たときに、どうもまだどの条項が立法措置対象となっているのかという疑問が消えないわけですが、この点お答えをいただきたい。
  76. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 もう少し詳細に申し上げるべきだったと思いますけれどもA規約で申し上げますと、社会保障の外国人の適用がA規約の九条にございます。それから、公営住宅の外国人への適用という問題がA規約の十一条にございます。それから、今後国内法的な措置でございますか、あるいは行政措置あるいはその他の措置でございますか、必ずしも現在から予見はしがたいと思うのでございますが、弁理士資格の外国人への開放の問題、A規約の六条、あるいは国家賠償法の相互主義の廃止、B規約の二条の3、以上が内外人の平等関係でございます。  その他、賃金以外の部面における男女平等、A規約七条、あるいは先ほどちょっと申し上げました戦争宣伝の禁止、宗教的、差別的憎悪の唱道の禁止等も将来の問題としては措置対象となり得ることがあり得るというように現在一応予想をしておるわけでございます。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 やはり日本としても漸進的に立法をするというのが私は当然であろうと思いますが、いまいろいろな御答弁をいただきましたが、これらの点について資料として御提出をいただけるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  78. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいま御説明申し上げましたこれらの項目についての政府の今後の措置でございますが、これはA規約については漸進主義的な国内施策ということを念頭に置いてこれを行うわけでございますので、現在の段階で資料が完全に整備されておりませんけれども、今後可能な段階で御提出させていただきたいと考えております。
  79. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これは私たちとしても先ほど述べたようにどういう点が立法措置対象となるかということは当然関心を抱かなければならないことだし、できればぜひこれは次回の委員会あたりまでに、最終的な詳細にわたるというのは若干時間がかかるかと思いますが、現段階でまとめ得る資料を、これも対象となる資料としてわれわれも参考にしていきたいと思いますので、御提出をいただくよう、ここで要望をしておきたいと思います。  次に、市民的及び政治的権利に関する国際規約選択議定書というのがありますが、これに関しては国連の場においてわが国が棄権をして、また国会にもこれを提出していないわけですけれども、この理由はどこにあるか、御説明をいただきたいと思います。
  80. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 お答えいたします。  人権の侵害について個人国連等に出訴するということを、いま先生指摘制度は想定しておるわけでございますが、これにつきましては、審議経過におきましてもいろいろな議論がございまして、個人国連に駆け込んでいくという形における人権問題の解決というものがどの程度の実効性が一体あるものであるかどうかという点については、その個人の属する国々の国内法的な救済の程度の問題もございましょうし、これは現実的に作動いたしますかどうか、かなり疑問を呈する向きが多いわけでございまして、そういった観点から、現在の段階では批准の国が非常に少ないわけでございまして、ようやく近く発効するような状況でございます。発効いたしましても、数としては非常に少ない数の批准による発効でございまして、われわれといたしましてはもう少しこの制度の具体的運用の実態を見守りまして、十分の確信を得てからこれに参加するということでも決して遅きに失するものではないという判断をしておるわけでございます。
  81. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、もし一定の条件が整えばこの選択議定書承認を求めるおつもりがあるというふうに解釈をしておってよろしいですか。
  82. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 一定の条件と申しますと、かなりはっきりしたものになるわけでございますけれども、現在の段階ではやはりこの制度が動き出しまして実際に個人出訴等が国連に行われて、その救済がどういう形で実現をされるのかどうかということを見きわめた上で、その段階考えていくというのが現実的であろうかと思いまして、一定の条件の充足ということよりも、現実のケースを見てまいるということが大事であろうかと思っております。
  83. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、このA、Bの両規約における用語の問題ですが、その解釈をここで明確にしておきたいと思うわけで、これらの規約には「市民」シビルですね、それから「人民」ピープルズとなっておりますが、あるいは「国民」ネーションとかシチズンとかパブリックとか、こういった用語が使われておりますが、このように使い分けた用語ですね、いろいろにこう出てきている。それ相当の理由があって、またそれぞれの固有の意義があると私は思いますが、いま言ったこの五つの用語ですね、たとえばシビルとピープルズとネーションズとシチズンそれからパブリックと、こう出てきている。用語の問題はこのほかにたくさんありますけれども、いまここで一例としてこの五つの用語の意義について、通俗的なものじゃなくて学術用語として厳密な解釈をここでお聞きしておきたい、このように思います。これは内閣の法制局であるか外務省か、どちらでしょう。
  84. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  人権規約の両規約にいま先生指摘になりましたような人をあらわすいろいろな言葉が出てまいるわけでございますが、国会に御提出申し上げました邦文のテキストにおきまして、できるだけテキストに忠実に訳出するように努力いたしたわけでございます。  まず「人民」というのは、英文ではピープルでございますが、これは人権規約規約の第一条に出てまいります概念でございまして、これは人を個人としてとらえるのではなくて一つの集団としてとらえた概念でございます。そして、このような形の使い方がたとえば国連憲章にも諸所に出てまいります。特に、国連憲章第一条二項におきましては「人民の同権及び自決の原則」というふうに言っておりますので、そういう、元来この規定が出てまいりました根拠になっております、植民地の人々が宗主国からの自決を求めるというその集団としてとらえた概念ということであろうと思います。  それから、「国民」という概念でございますが、これは国家を前提といたしまして、国籍を持っておる者とそうでない外国人とを区別する概念として出てきたものと了解いたします。先生指摘のようにネーションでございますとかナショナルというふうな形で使われておりますが、この人権規約の場合にはやはり一応、国籍を一つの基準に考えておるという場合に、その「国民」という使い方をいたしております。     〔奥田委員長代理退席、愛野委員長代理     着席〕  それから、「市民」でございますが、これは英文として対応いたしますのはシチズンでございます。シチズンという概念には国民という概念ももちろんあるわけでございますが、この人権規約で使われております、たとえばB規約の二十五条で使われておる場合のシチズンというのは、国民という概念よりも少し狭いと申しますか、参政権というものを頭に置いて民主的社会の運営に参加する者、言いかえれば公民権を持っておる者というふうな観念でとらえておると思いますので、日本語では「市民」というふうに訳しております。  そのほか、人をあらわす場合に、エブリワンでございますとか、オールパーソンズでございますとか、ノーワンとかいろいろな形が出てまいりますが、これは「すべての者」とか「何人も」とか、その場に即して最もわかりやすい表現で使っておる次第でございます。
  85. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、わが国においては、市民、人民、国民といった用語、これを憲法用語あるいは法律用語としてどのように使い分けているのか。いまいろいろそれぞれの意義を御説明をいただいたわけですが、憲法用語の場合はどうか、法律用語の場合はどうか、この点についてお答えをいただきます。
  86. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 いま先化御指摘になりましたように、憲法の第三章、基本的人権関係で出てまいりますのは、ほとんどの場合が「すべて國民は」というふうに使うか、もしくは「何人も」という形で使っておるのが通例でございます。憲法におきましては、「國民は」と言っておるときは、一般には国籍を持っておる日本国民を指しており、「何人も」と言っておるときには、国民に限らず、日本の領域におる外人も含むという趣旨で使われておると了解しております。  ただ、憲法におきましても必ずしもその用語が確実に使い分けされておるわけではございませんで、「何人も」という用語を使っております場合にも、実体的には国民しか指さない場合もあるので、少し用語の統一が画一にはできてないと思いますが、大体この二つの用語しか使っておりません。  法律におきましても、大体同じ用法を使っておると思います。
  87. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、たとえばB規約の十八条と二十五条がここでは関連してくると思いますが、十八条の一項に「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由」云々というのがあります。それから、二十五条に「すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、」とあります。これは解釈上どういう相違があるのか。  いまの御答弁によりますと「すべての者は」というところは、日本国憲法の場合「何人も」というところがありますが、日本にいるところの外国人も含まれるという立場に立って「何人も」としてもいいのではないだろうか。それから二十五条の場合の「すべての市民は」というところは、日本国憲法の「すべて國民は」という表現、すなわち日本の国籍を持った場合ですから、これは「すべての国民は」という言い方でもよかったのではないか、このように思いますが、この辺の相違を御説明いただきたいと思います。
  88. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  いま先生指摘になりましたように、十八条「すべての者は」というのは、エブリワンを訳したわけでございますが、これは日本の憲法では十九条、二十条に該当する規定でございます。それで、ここを「何人も」というふうに訳しましても実体的にはよかったのかとは存じますが、この人権規約の訳出に当たりましては、先ほども申しましたように、できるだけ原文に忠実で、原文が訳し分けておるときにはできるだけそれに従うという趣旨作業をいたした次第でございます。  それで、実質的に「すべての者」はエブリワンとかオールパーソンズを指す場合で、人権規約では肯定的に使うもの、たとえば、すべての者は権利を有するというふうな場合には「エブリワン シャル ハブ ザ ライト」というふうに書いてございますので、その場合には、すべての者は何々をするというふうに訳しております。  また、この同じ十八条の二項にも出てまいりますが、何人も強制を受けないというふうに否定形になっておる場合、これはノーワン何々という形で始まるわけですが、そのような様式を使っておる場合は「何人も」というふうに訳し分けたわけでございますが、先生指摘のようにその意味としては変わらないわけでございます。  それから二十五条につきましては、先ほども申しましたようにシチズンというのは、国民という概念ももちろんあるわけでございますが、二十五条で規定いたしておりますのはやはり参政権の問題でございますので、そういうものをあらわす用語として使われております「市民」、国民であっても、公民権を有しておる者と申しますか、政治に参画する者という意味で「市民」、原語の方でも普通の国民、ネーションなんかとは訳し分けておりますので、原語にできるだけ忠実に訳し分けた次第でございます。
  89. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、防衛問題でよくシビリアンコントロールという言葉が言われますけれども、ではこれを日本語で言うとどうなるのか。一般的に言われているところの文民統制で間違いないのか、あるいは、シビリアンという言葉に忠実であるならば、市民的な統制であるとか人民統制であるとか国民統制とかいろいろな訳し方があるのではないかと思いますが、どれが正しいのか。     〔愛野委員長代理退席、奥田委員長代理     着席〕 文民というのは一体どこから出てきた言葉なのか、では文民は市民というふうに解釈していいのか、どうもこの辺がいまの御説明と照らしていくと、なぜ文民という言葉が出てくるかということも疑問になってくるわけです。この辺はどうですか、用語の使い分けが非常にばらついているように思いますけれども、シビリアンコントロールという場合には、市民統制みたいな形でもいいのではないか、こんなふうにも思うわけですが、ひとつ責任のある御答弁をここでいただきたいと思います。
  90. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生いまおっしゃいました文民統制という言葉、そのシビリアンコントロールということで条約として出てまいった例は私承知いたしておりませんので、それが出てまいりました場合に条約としてどういうふうに訳したらいいかということについては、ちょっと御即答申し上げかねるのでございますが、文民という言葉が出てまいりましたのは、現行憲法第六十六条だったと思いますが、国務大臣の規定のところにその「文民」という言葉が出てまいりますので、それから使用されておる言葉だろうと存じます。
  91. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまここでこの言葉のいろいろな点をこれ以上ずっとやっていきますとこれだけで終わってしまいますから、時間の関係で次へ移りたいのですが、翻訳に忠実であるということも、もちろんこれはあることの方が大事だと思いますけれども、解釈の立場に立ったときに将来にそういう誤解を残さないように十分慎重に対処していただきたい、いまこの席ではこのように要望をしておきたいと思います。この言葉のばらつきということについて、まだまだいろいろとあろうかと思いますが、とりあえずきょうのところは次の方へ入ってまいりたいと思います。  わが国も加盟しているところの戦争放棄に関する条約、通称ブリアン・ケロッグ条約、この第一条に「締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言ス」ここでまた「人民」が出てきてしまいましたけれどもこのようにうたわれている。  これに対して国内でかなり議論が沸騰して、当時、その結果として帝国政府批准に際して宣言を行ったわけで、この宣言もここに出ております。「帝国政府ハ千九百二十八年八月二十七日巴里ニ於テ署名セラレタル戦争抛棄ニ関スル条約第一条中ノ「其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ」ナル字句ハ帝国憲法ノ条章ヨリ観テ日本国ニ限リ適用ナキモノト了解スルコトヲ宣言ス」と、こういうふうに出ているわけですけれども、以上の経過に基づいてこれから二、三御質問したいと思いますが、現行憲法のもとにおいては、この帝国政府宣言の内容、これは認められますか、どうですか。
  92. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生の御質問趣旨をひょっとしたら取り違えておるかもわかりませんが、現行憲法のもとでいまこのような条約ができて日本が入るとしたら、そのような宣言をすることは毛頭なかったと考えます。
  93. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 要するに、いま申し上げたように「其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ」というところですね、「其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ」ナル字句ハ帝国憲法ノ条章ヨリ観テ日本国ニ限リ適用ナキモノト了解スルコトヲ宣言ス」ですから、こういった帝国政府宣言の内容そのもの、「人民」というところに焦点がしぼられていますが、これが現行憲法のもとでは認められるのかどうかということです。もう少し申しますと、現行憲法のもとにおいても「人民」という字句が不適当であるのかどうかということです。「各自ノ人民ノ名ニ於テ」というのは明治憲法では認められなかった、こう解釈するわけですね、いまここで。しかしながら、現行憲法の場合ですと、主権在民であるがゆえに、これは当然、こういう表現といいますか、こういうものは認められていっていいのじゃないだろうか、こういう立場からいま御質問したわけです。
  94. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 いま先生指摘になりました、昭和四年に帝国政府が行いました宣言趣旨は、「人民ノ名ニ於テ」という、その「人民」という言葉遣いがもともと問題であったことはそうであろうかと思いますが、当時政府がそのような宣言をする必要を感じた主たる原因は、帝国憲法第十三条によりますと条約締結権が天皇の大権事項であったので、天皇が人民の代理としてこの条約締結するのではない、日本の憲法体制上締結権者の問題として問題が提起されて、そのゆえにそのような宣言を行ったというふうに私理解いたしております。したがいまして、現憲法のもとにおきましては、先生もおっしゃいましたように主権在民の憲法でございますので、そのような宣言を行う必要は毛頭ないわけでございます。
  95. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、現行憲法はその前文でもって主権が国民にあることを宣言しておる、七十三条においては、内閣が国会の承認を条件として条約締結し、第七条において天皇の国事行為として批准書を認証することになっている、こういうわけですけれども、こういった理由から、もし帝国政府宣言が現憲法に照らして不適当であるということであるならば、この帝国政府宣言を、これは当然取り消す措置をとるべきではないかと思いますね。この点はどうでしょうか。もしこれが不適当という結論に達した場合のことですけれども、この帝国政府宣言というものがそのままになっちゃっているのか、それとも取り消された形をとっているのか、この点もあわせてお聞きをしておきたいと思います。
  96. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 いま先生指摘のこの不戦条約は、平和条約宣言によりまして日本について復活いたしておりますので、わが国について効力を有しておる条約でございます。そして、先生指摘宣言というのは、先ほど申し述べましたような理由昭和四年に帝国政府が行った宣言でございまして、その宣言自体はそのまま残っておると申しますか、歴史的な文書として残っておるというのが実情でございます。ただ、先生その宣言を取り消したらというお話でございましたが、当時の宣言の法的意味は何であったのかということを考えてみますと、先ほども申し上げましたように、帝国憲法の規定するところによって、締約権者としての枠組みと申しますか、法制上問題があるということで宣言したわけでございますが、条約によって日本が拘束される内容につきましてはいささかもその宣言によって変更されておりません。したがいまして、その宣言自体は条約の法的効果を何ら変更せしめるような宣言ではないわけでございます。したがいまして、歴史的な文書ということでは残っておると思いますが、現時点におきましてそれを特に撤回する措置をとる必要があるというふうには考えておりません。
  97. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、この帝国政府宣言というものは、条約法上の留保を意味するのかどうか、その宣言をした効果そのものは留保と同じ意味を持っているのかどうか、そういうふうに解釈をしていいかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  98. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 現在その留保というのが国際法上何であるかということを最もよくあらわしておるのが、これはまだ発効いたしておりませんが、条約条約規定されておるところでございます。その規定されておるところによりますと、条約の特定の条項の法的効果を排除し、もしくは修正するもの、これを留保と観念いたしております。そのような見地からこの帝国政府宣言を見てみますと、先ほども申し上げましたように、不戦条約の法的効果、わが国が拘束されます法的効果には何ら影響を及ぼす内容の宣言でございませんので、いわゆる国際法上の留保ではないというふうに観念いたしております。
  99. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それではA規約十三条の二項の(a)ですが、「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。」こういうふうになっていますが、ここで英文の方をちょっと参照していただきたいのですが、英文の七ページ、いま日本語で言ったのはこのページの真ん中辺にありますが、このところを読んでみますと、「プライマリー エデュケーション シャル ビー コンパルソリー アンド アベーラブル フリーツー オール」とこうなっている。これはどこにもカンマがない。ごらんいただければわかると思います。「コンパルソリー アンド アベーラブル フリー」ずっと続いていますね。私の読んだところでは、すべての者に対し義務的かつ無償のものとすると、こういうふうに読めるわけです。もう一度日本語に戻ってみると、「初等教育は、義務的なものとし、」ポツしてありますね。そして「すべての者に対して無償のものとする」ちょっとここのところおかしいのじゃないだろうか。外務省の解釈でいくと、したがって、「義務的なものとし」というところで一たん切れて、その次に「無償」だけが「すべての者」に対してかかってきているような形、言いかえれば、義務教育は「すべての者」という意味を含んでないという解釈が成り立つのじゃないだろうか。どうしてこんなような訳がなされたのか。何か意図的に訳されたのじゃないかという気がしてならないわけです。先ほど来御答弁いただいたように、原文に忠実な翻訳ということを何遍もおっしゃっているので、その御答弁に非常に反するような気がするわけですね。参考までに国際条約集で、これは横田喜三郎、高野雄一御両人の編集ですけれども、この中のいまのところの訳を見てみますと、私の考えと実は一致するわけで、「初等教育は、すべての者に対し義務的かつ無償としなければならない。」こう出ているわけですね。これは外務省の翻訳と全然違う。これではおかしいなということで英語を見てみたら、なるほどこちらの方の条約集並びに私自身の解釈の方が間違ってないと私は思うのです。ここのところはなぜこんなふうな解釈の仕方をしたのだろうか、何かそこに意図的なものが、まあないと思いますけれども、なぜかという理由をここで伺いたいと思います。
  100. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、恐らく「義務的」という言葉の中にすべての者に対して義務的であるという考え方を内包しておるという配慮もあってこのような解釈、「義務的なものとし、」ということで、すでにその中にすべての者に対するという意図が明確に表現されておるということで恐らくかような訳文になったかと私は思うのでございますが、そのようにしか解せられず、内容については、御指摘もございましたように、どちらの文章によりましても内容の担保は同じことになるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  101. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただ、くどいようですが、全くここの一行だけです。こういうところもほかにあるかもしれません。だけれども、これだけだったら、中学の英語の程度ですね、中学生だって訳せる。「プライマリー エデュケーション シャル ビー コンパルソリー アンド アベーラブル フリー」とずっと続いてしまっているのですから、どんな訳をしたって、優秀な外務省のスタッフの方々がいらっしゃる、そんな翻訳、こっちの外務省の翻訳みたいになるはずないと思うのですがね。寝ぼけ眼で見たってこんなものはわかる。どうしてこういうような訳し方をしたのかということをいま聞いているわけです。このままでいきますと、義務的なものをすべてのものに押しつけることのないように外務省としての翻訳をしたのじゃないかと受けとめられる。ここのところは、どうでしょう。そういうことがないと私は思いたいけれども、もしそうだとするならば、こういう重要なところを翻訳でごまかすということはけしからぬと私は思うのです。もしそうでなかったらお答えをいただきたいと思います。
  102. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先生いま御指摘になりましたところ、先ほど申し上げましたように、私ども忠実に訳すということでやっておりまして、何か特別な意図があるということは毛頭ございません。このところにつきましては、法制局においてもいろいろ協議をしたわけでございますが、先生仰せのように、「コンパルソリー アンド アベーラブル フリー」、その両方が「ツー オール」にかかっておるというふうな読み方はもちろんございまして、その面についても検討したわけでございますが、「コンパルソリー」、教育制度が義務的であるということはそのこと自体で、特に特定の人に対してと言う必要がないのではないか、コンパルソリー ツー オールというふうにかかるよりも「プライマリーエデュケーション シャル ビー コンパルソリー」ということで、それはもう義務教育であるということで観念し、それから、「ツー オール」はすべての者に無償であるというところに強調してかけるということで、原文の意味が意図しておるところと結果的には違わないと申しますか、忠実に反映しておるのではないか、検討した結果このような訳出をしたわけでございます。
  103. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうなると、むしろ忠実じゃないようにこれは受けとめられますね。その「義務的」というのは、ではだれを指しているのか、だれとだれとだれを指しているのかということですね。どうも漠然とし過ぎるように私は思う。この締約国の子弟すべてを含むとされるのがこれは当然ですからね。これでいくと、いやいやこれは主として日本人だけですよと言われても、ああそうか、それじゃ、終わりの方の無償の方は「すべての者」なんだからそう言われても仕方がない。これはあくまでも締約国の子弟すべてを含むとされるのが当然だと私は思う。「すべての者」を「義務的なもの」の前に持ってくるべきじゃないかということを先ほどから申し上げておるわけですけれども、こういうところは直すべきじゃないですか、ここのところは当然非常に重要な意味合いを含んでいると私は思う。もしそうでなければ、一般の関係者というのはこの条約集を見て解釈するのが当然だと思います、まだ一般の人たちはこの外務省の翻訳は持っていない、やはりあくまでもこういう条約集を見て解釈をするわけですから、この横田、高野両氏、編集者に対して誤りを指摘してあげた方が親切なんじゃないだろうか、私はこう思いますけれどもいかがでしょう、これはこの条約集が誤りだと。
  104. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  横田先生なんかの条約集に書いてありますことが誤りというふうに申し上げるつもりはないわけでございまして、この十三条2の(a)の全体の趣旨と申しますか、それの訳し方にはいろいろあるかとも存じますが、このように現在御提出申し上げておりますテキストどおりのものとして何ら原文から乖離しておるものではない、と申しますか、原文と全く同じものであるというふうにわれわれといたしましては確信をして作業いたした次第でございます。
  105. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 けれども一つの英文に対して明らかに二通りの解釈が出ている。やはりこの条約集の方の翻訳、私が初め思った訳し方の方が正しいと私は思います。これは、どこにも切れ目がない。だから、英語の先生に見てもらっても、こっちの外務省の翻訳は百点満点で五十点はくれるかどうかわからないけれども、ちょっとお粗末なような気がする。それをもってこれも向こうも全く同じですと言うのは、これはちょっと議事録に残すのもお互いお恥ずかしい話じゃないかなと私は思うわけです。そういうことで、いや両方とも結局は同じことを意味するのですということで逃れてしまうようではならないと私は思うけれども、これは非常に重要な問題なので、ひとつ十分、これはいざというときに必ず問題が出てくる。「義務的」、義務教育そのものですね、一体だれとだれを対象としているのか。何かの場合に言い逃れとして、いやこれは別に締約国の子弟全部を指しているという意味で訳したのじゃございませんと言ってしまえばそれまで。条約日本文をごらんいただければ——もっともこれは英語の方が優先ですけれども。もうこれ以上くどいことは言いません。ただ、そういうことで非常に問題があるということは指摘しなければならないし、これはこのままで見過してはならないということももう一つ。  さらに、外務省の優秀なスタッフがこんな簡単な英語を大変誤解を生じやすい翻訳の仕方をしているということは、ほかのところはどうなってしまっているのだろうというふうに、私はちょっと心配せざるを得ないわけです。しかも答弁では、いやそれでも正しいのでございますということになってくるとちょっと、これから翻訳を見ても信用してずっと読んでいけないような気がしてならないわけであります。このところを重要点として私はいまここでぜひ指摘をしておきたいと思います。  時間がたってまいりましたので次に参ります。  これに関連して言うわけですが、そうすると、在日外国人子弟はわが国で無償の初等教育を受ける権利を持つと解釈してもいいですね。
  106. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生の仰せのとおりでございます。
  107. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうすると、A規約加盟国に在留する日本人子弟、すなわち外国にいるところの日本人子弟ですね、これは当該国の教育機関で無償の初等教育が受けられると解しますけれども、この点もよろしいですね。
  108. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生仰せのとおりでございます。
  109. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この条約によりますと、公立、私立にかかわらず、初等教育については無償で行うことが条約の精神と解すべきじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょう。
  110. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  この人権規約で申しておりますのは、初等教育を義務的な制度とし、すべての者に対して無償で提供するということでございますので、締約国となりました暁には、国といたしましては国公立の初等教育の学校において無償教育をする義務があるわけでございますが、そのような便益と申しますか、それを提供すれば十分である、そのような便益が提供されておるにかかわらず、父母が子弟を私立の学校に入れる場合には、その私立についての無償教育については何ら触れておらない、このように理解いたしております。
  111. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ですから、これが先ほどの英文のあれとも当然関係してくるのです。国公立ならいいということ、それから私立に対してはそうじゃない、無償でなくてもいいということ、こういう問題と先ほどの英文のあれとは、切っても切れない関係が生じてくると思うのです。この問題は、また改めて両方かけて別の機会を得たいと私は思います。  さらに、すでに指摘されている点ですけれども、改めて確認のために、これは政府見解を伺っておきたいと思いますが、A規約の第六条の一項に、「この規約締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保障するため適当な措置をとる。この権利には、すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。」こうなっておりますが、この「すべての者」ということは、外国人も含まれているのかいないのか、この点はいかがでしょうか。
  112. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 一般的に申しますと、外国人も入っております。
  113. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 政府は、従来日本の労働者の生活を圧迫しないために、基本的には外国人労働者の雇い入れを認めないという政策をとっているのじゃないでしょうか。入国管理令によっても単純労働者の場合には日本に雇い入れないというふうに解しておりますが、いまの御答弁で間違いないのかどうか、外国人も含まれる、このように考えていいか、もう一回確認してください。
  114. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 中川委員の御指摘のただいまの点は、解釈としては仰せのとおりでございますが、同時に、六条一項の規定が合理的な範囲内におきまして、外人に対してある種の制限を課するということも想定しております。これは入管令の考え方で、外国人の入国に際して滞在期間、条件を付しますとか、あるいは条件に違反した場合には退去強制等の措置をとるということは、主権国家に内在する権利とされているわけでございまして、また、外国人が選択し得る職業の範囲等についても、ある程度の制限が合理的に認められるということと両立する範囲内において、御指摘の一般論が成り立つものであろう、かように考えております。
  115. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 このA規約第七条の(a)の(i)のところに、女子は、男子の享受する労働条件に劣らない労働条件と同一賃金を保障される旨が述べられているわけですけれどもわが国の労働基本法には、男女で労働条件に差をつけてはならないというような明文規定というものはないように思われます。だから言ってみれば、最初に申し上げたのは、日本の労働基本法から言うと、平等の規定そのものはないように私は思うという意味なのですが、この条約参加と労働基本法、この関係というものはどういうものになるのか、この点を伺いたいと思います。
  116. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 賃金につきましては、労働基準法に規定がございます。その他につきましては、民法の公序良俗の規定によりましてこれを律しておるというのがわれわれの解釈でございます。
  117. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、A規約第九条に行きますけれども、当事国は、すべての者が社会保険を含む社会保障を受ける権利を有することを認めると、社会保障のことが出ておりますが、国民年金の取り扱いについてはどうするのか、何らかの法改正を必要とするのじゃないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  118. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 お答えいたします。  国籍要件のある制度といたしまして、国民年金、それから児童手当等があるわけでございますけれども、これらにつきましては人権規約趣旨に従いまして、各制度の性格、技術的問題点等を踏まえまして漸進的に努力してまいりたいと思っております。
  119. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 国民年金は二十五年の長期にわたって掛金を必要としているわけですが、短期滞在、たとえば三年とか五年とかいう短期滞在の在日外国人については非常にむずかしい問題じゃないか。言いかえれば掛け損になってしまうのではないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  120. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 幾つかの技術的な問題点もございますので、さらに検討してまいりたいと思います。
  121. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 したがって、私は何らかの法改正を必要としないですかと聞いたわけなんで、漸進的に前向きに検討しますということではなくて、もっともっとこういう点は詰められていかなければならないと思いますので、一つ一つの項目について、こういう事態が起きてこないのかどうか、起きてくるならそれにどう対処するのか、ひとつ十分に対応をしていただきたい、こう思います。  次に、いわゆる部落出身の人とかあるいは帰化した人、こういう人たちは国内において有形無形の差別待遇がされているようですけれども、このことはA規約第二条の二項に反するのじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  122. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 人権規約に「社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。」という規定があるわけでございまして、この趣旨にのっとって人権規約に特定されております権利につきましては充実を図っていくというのがわれわれの立場であろうと考えております。
  123. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほど来非常に一般的な御答弁が多いように思うのですが、たとえばこういったいまの問題でも、公務員とか企業等への就職なんかで現実にいろいろな問題が出てきているわけですね。そんな一般的な考え方ではなくて、改めてこの際、条約批准に際して不当な差別を撤廃するというような具体的な対策あるいは行政指導、そういったことを講ずべきではないかという意味で私は伺っているわけで、その点をもう一度お答えいただきたい。
  124. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいま申し上げました第二条の精神を全面的に牛かしてまいりますために今後とも努力いたしますが、より具体的な話をせよというお言葉でございますけれども、差別の排除、そういったもののために何らかの法的規制が必要であるかどうかということは、これは政府としても検討をしておるところでございまして、現時点におきましては、なお実態の把握のための情報等の収集が必要であるという考えであるわけでございますが、御指摘もございましたので、この点はそういう考え方で対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  125. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 A規約第二十五条で「すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を」確認するという規定がありますけれども、このことは一九六二年の十二月十四日国連総会採択された総会決議、すなわち天然資源に対する永久的主権というものを国際法化したものと解していいのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。     〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、これはA規約の一条の第二項「すべての人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。」という一般原則をここで確認したものでございます。先ほど御指摘のございました国連決議もこれの延長線上においてとらうべき性質のものであろうと思っております。
  127. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間が参ったようですのであと一問だけ伺います。  A規約B規約のいずれも留保条項というものはないわけです。留保を承認することもあるいは禁止することも当然書いてない。こういう条約における留保というものは認められるのかどうか。また留保を行った場合にその留保の効力はどうなるのか。積極的に留保に反対しない限り他の条約当事国はこういった留保を黙示的に承認したということになるのかどうか。この点はいかがでしょうか。
  128. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の先生の御指摘でございます、この条約には留保を認める条項もないし禁ずる条項もないのに留保ができるかどうかということでございますが、一般的に申しまして、多数国間条約におきましては、条約の目的と本質に違反しない限りの留保は認められるという国際慣行ができております。また、この人権規約につきましても多くの国が留保を付している事実がございます。  それから第二点の、このような留保条項のない条約で留保した場合に、それがどういう法的効果を持つかという御質問でございますが、三通りの場合があると存じます。  第一の場合は、留保した国の留保に対しまして何ら異議を申し立てないと申しますか、明示的にまたは黙示的にその留保を認める国との関係でございますが、その両者の国の間におきましては、その留保が付された条項は、留保が付された限度において修正された形で適用が行われるということでございます。  第二番目の場合といたしましては、異議を申し立てる国がございまして、かつその国は、留保した国との条約関係には入るけれども留保には異議があるという形の異議を申し立てた場合でございますが、この場合には、その留保を付した条項につきましてその当事国間に何ら合意がないわけでございますので、留保を付した条項自体が白紙になると申しますか、適用がなくなった形で条約関係が成立する。  第三番目の場合は、これも異議を申し立てる国でございますが、異議を申し立てるとともにそのような留保を付す国との間には条約関係に入りたくないという意味の異議を申し立てた場合でございます。この場合には両国間においては条約の適用がないということでございます。
  129. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 A規約B規約に対して留保をつけた国、それから留保内容、そういったものはどうなっているのか、資料として参考のために提出願えるかどうか、最後にお答えをいただきたいと思います。
  130. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 御要請のございました方々にすでに差し上げてあるのでございますが、皆様に差し上げるようにさしていただきます。
  131. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、一応きょうはA規約を主体として御質問いたしましたので、きょうは一たんこの辺で終わることにして、残余はまた次回に伺いたいと思います。
  132. 塩谷一夫

  133. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 午前中の質問に引き続きまして、二、三の点を大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  実は、大臣いらっしゃらない午前中の時間におきまして、私、質問をさせていただきました。その際に申し上げたのですけれども、これは大変重要な両規約であると思います。そしてまた大臣も、提案をされる際に御説明がございました。これを採択していくことはわが国人権尊重の姿勢を改めて内外に宣明する観点から大変に意義の深いものである、こういう立場を表明しておられました。  ところで、この細目についてはおきまして、たとえばこの人権規約、これは、個人あるいは国、これが国連のもとに構成されていきます人権委員会に提訴する機能を備えることということになっております。その機能というものはすでに発効するか、あるいはまた今月末にも発効するということになっているわけであります。それだけに、選択議定書に盛られております内容を見るとき、われわれの国がこれの締約国になる、あるいは宣言国になる、そのことによって、大臣が提案をされました、わが国人権尊重の姿勢を改めて対外的にも明らかにするという大きな意義を果たすのではあるまいかと思います。ところが、けさ当局の方の御説明をお聞きいたしますと、締約国にはなる意思はない、それからまた宣言する意思もないという立場が明らかにされておりました。大臣、この点はどのように対処されようとしておられますか。特に選択という言葉がここに出てきておりますように、私どもがそういう態度をとることを選択するのか、あるいは将来においては宣言をしあるいは締約国になるという立場をここではっきりと宣言されるのか、これはやはり選択の問題がここで出てきておると思いますので、お尋ねをいたしたいと思います。
  134. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの問題はなかなか大事な問題でありまして、当分これがどのようになるか見守った上で検討をしたいと考えております。
  135. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この問題について私もお尋ねいたしましたが、これはもうすでに機能を開始しているわけでございますので、やはり日本という国、ここでそういうものを積極的に前向きに進めるのだという立場が必要ではないかと思います。しかも、聞いてみますと、締約国の中、宣言国の中には民主主義体制をとる先進国が加わっておりますから、したがいまして、大臣には前向きな検討をお願いしたいと思いますが、重ねて、いかがでございましょうか。
  136. 園田直

    園田国務大臣 このような問題でよその国が動いてから後をついていくということは、とかく日本が立場を誤解されるおそれもありますので、ただいまの御発言も十分考慮に入れて検討をいたします。
  137. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 次に、自由権の方をうたっておりますB規約の二十条の問題をけさ取り上げて御質問をさしていただきました。第一項は「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」二項は「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」この問題でございますが、関連いたしまして、B規約、これを採択するということ、そしてまたこれにわが国締約国になるということ、こうなりますと、第二条にも書いてありますように「必要な行動をとることを約束する。」対外的にもこれをはっきりと約束するという立場を明らかにするものでございます。ところが、第四条を見てみますと、たとえば戦争の問題、これに関連いたしまして第四条、「国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。」こういうことになっている。つまり、公にこれは緊急事態であるというふうに宣言をしている場合には、この規約に反する行動もとれるというようなことにも読み取れる。そうなりますと、この規約そのものが、ひとつ事態を戦争ということを考えていただくと、空洞化してしまうのじゃあるまいかという懸念を持つのでありますけれども、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  138. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 二十条と第四条との関連の御質問でございますが、二十条につきましては、午前中御答弁申し上げた点が若干舌足らずであったかと思いますので、補足させていただきますが、第二項の「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」日本国内法では、先生も御承知と存じまするが、若干の手当てが刑法その他でなされておるわけでございまして、こういった点が一つございます。  それから、表現の自由との関連性、そういったものも考慮しなければならない。現実にはこういった国内法と、それから侵害されておる法益が実際に存するかどうかという点をあわせて考えますると、現在では法律で禁止するというほどの事態になっていないという判断のもとに留保をいたさなかったということでございます。  午前中申し上げましたときに国内法の御説明につきまして若干十分でなかったという点がございましたので、補足させていただきます。  第四条につきましては、緊急事態の場合にいわば人権の保護を制限できるということでございまして、これは考え方としては新しい考え方ということを指摘する向きがあるわけでございますが、同時に、第二項をお読みいただきますと、第一項の規定は、以下の規定に違反することを許すものでないという規定がございますことにお気づきと思います。したがいまして、緊急事態がございましたときに人権の制限ができる場合も、こういったような制約をこうむりながらこれを行わざるを得ないということでございまして、その中には、生命に対する権利でございますとか、拷問、非人道的な取り扱いの禁止でございますとか、あるいは遡及処罰の禁止でございますとか、もろもろの制約要件がかぶっておるわけでございます。  もう一つは、かかる人権の制限をいたすという権利はこの条約において与えられておるわけでございますが、果たしてそういう人権制限をするかどうかということは締約国の意思の問題でございまして、制限をしなければならないということではないことは、これは自明のことであると思いますので、この点はわが国にはそういった国内法も現在ございませんし、人権の制限を可能ならしめるような国内法もございませんし、憲法の精神もあるわけでございまして、この点につきましては、第四条を日本が直ちにこれを行うということを想定することはきわめてむずかしいことではないかと考えておるわけでございます。
  139. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 二十条の問題でけさほどもお尋ねいたしましたが、またいまも、どうも私御答弁を聞いていて明確にならないわけであります。第一項目、第二項目、この問題に関連いたしまして、わが国はいま立法措置の必要なしとするならば、国内法規で取り締まりがなし得るというふうに解釈できる。そうしますと、具体的にその根拠は何なのか。いまのお話では若干の手当て国内法でなされており、いまはまたその事態でもないと判断する、こういうお話である。そこら辺をもうちょっと御説明をしていただきたいと思います。
  140. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 若干と申し上げたのでございますが、少し長くなりますが申し上げさせていただきますと、現行の日本国内法では、憲法十一条の基本的人権の享有、十二条の自由、権利の乱用の禁止、十三条の個人の尊重、幸福追求の権利、十四条の法のもとの平等、十九条の思想、良心の自由、二十条の信教の自由、両性の本質的平等、その他の社会権の精神、九十九条の憲法擁護義務、刑法に参りまして、二百二十二条の脅迫の規定、二百三十条の名誉毀損、侮辱の二百三十一条、信用毀損の二百三十三条、暴力行為等処罰ニ関スル法律、不法行為の民法七百九条、そういった既存の法律が国民的、人種的、宗教的な憎悪の宣伝を抑止する国内法としては指摘し得るところでございまして、これとさらに実際の法益の侵害があるかどうかということの判定とあわせますと、現状においては国内立法を必要としないというのがわれわれの判断でございます。  戦争の方の憎悪の唱道につきましては、これはやはり憲法第九条の精神の浸透ということによりまして現実の法益の侵害というものはない、したがって、現在におきましては少なくとも国内立法を新たに要する段階ではないという判断でございます。
  141. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうであるとするならば、なぜ起草段階ではこれは反対だという態度をとられたのであるのか。それはいかがな理由に基づいたものでございましょうか。
  142. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 これは審議過程の記録をいろいろ読んでみたのでございますが、同規約の十九条の表現の自由がございますので、表現の自由というものが非常に強調されている時期においてこの審議が行われたということもございますし、いろいろまたすぐにその場で投票態度を示さなければならないということもございましたので、そういう精神から、審議過程においては反対の態度を述べたわけでございますが、若干時間をかけましてその後国内的に検討いたしました結果、ただいまのような国内法の手当て、それから現実の法益侵害の程度ということで、これは十分現状においては状況が担保できるという判断をしたと申し上げざるを得ないと思います。
  143. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 かなり苦しい御説明をいただきましたが、これはこれ以上追及するようなことは差し控えたいと思います。  ただ、けさほども指摘をさせていただいた。ニュージーランド、イギリス、デンマーク、そういうところはここに留保をつけている。そういうふうに何かあいまいであったり、それから憎悪というような言葉にしても大変定義がむずかしい、言論、表現の自由を侵すことになるという懸念がある、そういう場合には、留保をつけてもよかったのではあるまいか。にもかかわらずここではっきりとうたわれたということは、もっと明確な根拠を持っておられたからここに賛成をされたのであろう、そういうふうに私は理解しております。この問題につきましては、またまた改めて御質問をさしてもいただきたいと思っておりますので、お願いをいたします。  最後に、一問だけ外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  人権規約と非常に関連がございます。総理はアメリカに近々いらっしゃると聞いております。その際に、世界から日本態度が大変注目されているのはベトナム難民問題でございます。インドシナ難民センターというのを、一部新聞が報道したところによりますと、日本は積極的に援助をすることを態度としている。これはASEANの構想であるというふうに報じられておりますが、外務大臣、これについての積極的な取り組みの中身でございますが、お知らせをいただけませんでしょうか。
  144. 園田直

    園田国務大臣 難民の問題については御指摘のとおりでありまして、日本は非常に厳しくやられているわけでありますが、しかし、各国に非難があるからという次元の低いことではなくて、やはり人道上の問題、人権の問題、そしてまたもう一つは、アジアの安定要素を壊す一つの要因でありますから、国内的にはさらに飛躍した難民対策を立てるべくいま準備中でございます。ただいまの御質問のインドネシアの島に難民センターをつくるということは、先般、インドネシアの外務大臣が参りましたときに、その青写真の説明がございました。概略申し上げると、ASEANの国という名目でインドネシアの島を提供する。そこでその島を難民センターにするために、それぞれの国の援助を願いたい、こういう計画でございます。そこで私は、インドネシアの外務大臣には、きわめてりっぱな構想であるし、また的確な施設であると思うから、具体的な構想ができましたら応分の協力をする用意をいたしますと、このように答えておるわけでございます。
  145. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ただいま人権規約審議の最中でもございます。また、日ごろASEAN外交については非常に積極的な外相でございますから、このインドシナ難民センターの問題については、ひとつ積極的かつイニシアチブをとりながらの御活躍を期待いたします。  以上をもって終わります。ありがとうございました。
  146. 塩谷一夫

    塩谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十三分散会