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1979-02-15 第87回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月十五日(木曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員   委員長 和田 耕作君    理事 越智 通雄君 理事 川田 正則君    理事 國場 幸昌君 理事 本名  武君    理事 美濃 政市君 理事 斎藤  実君       小渕 恵三君    熊谷 義雄君       篠田 弘作君    染谷  誠君       竹中 修一君    村田敬次郎君       与謝野 馨君    木島喜兵衞君       島田 琢郎君    安井 吉典君       市川 雄一君    玉城 栄一君       瀬長亀次郎君    甘利  正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君  出席政府委員         総理府総務副長         官       住  栄作君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁防衛局長 原   徹君         外務省アメリカ         局長外務省条         約局長     中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君  委員外出席者         北方対策本部審         議官     小宮山五十二君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ───────────── 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     与謝野 馨君   山中 貞則君     染谷  誠君 同日  辞任         補欠選任   染谷  誠君     山中 貞則君   与謝野 馨君     石原慎太郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  北方問題に関する件  北方領土問題の解決促進に関する件      ────◇─────
  2. 和田耕作

    和田委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件、特に北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。本名武君。
  3. 本名武

    本名委員 大変限られた時間でございますので、意見やあるいは説明は省略してお尋ねしたいと思います。御答弁もしかるべくお願い申し上げます。  まず最初に防衛庁長官に伺いますが、昨年の六月ごろから、ソ連はわが固有領土である北方四島、特に国後択捉島に軍事基地やあるいは演習等、それぞれ軍事的措置がとられておりますが、-これに対して新聞等報道によりますと、大変重大な問題があると容易に察知することができます。あわせてまた、われわれとしても、わが固有領土にかかわることでありますから、非常な重大な関心を持っております。これについてソ連動き、その後の実態等の御説明をまずお願いいたします。
  4. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、昨年の夏以来各種の情報を入手いたしておりますが、それを総合的に判断いたしますときに、わが国固有領土でございますところの国後択捉両島地域相当規模ソ連地上軍部隊配備せられておる、そしてまた基地の建設が行われていることを推定いたしている次第でございます。部隊規模種類等の詳細につきましてはなお確認の努力中でございますけれども、私どもがすでに公表した限りにおきまして、その事実関係については、ソ連の方からも何ら反対の意思を表明してまいっておらないようでありますが、国の安全上非常に重大な問題でございますので、私どもも引き続き関心を持ちましてその監視をいたしている次第でございます。
  5. 本名武

    本名委員 いまのお話によりますと、ソ連は何ら対応を示していないということでありますが、対応を示す示さないは別にして、わが国政府として、特に防衛庁態度として、われわれとしてはぜひ知っておきたいことがある。それは、簡単に申し上げますと、どうもわれわれの目から見ますと、防衛庁のおとりになっている態度及びこれからやろうとすることが非常になまぬるいという印象を受けるのであります。なまぬるいということは必ずしも軍事力増強しないからだとかなんとかということではなくして、それよりもやはりソ連に対する反応を得るくらいな態度をもって国民の前にその力強さを示していただきたい。そういう点についていささかわれわれは心配をいたしている。これは国民のサイドから考え心配をいたしているのであります。それについてひとつ決意のほどを承りたいと思います。
  6. 山下元利

    山下国務大臣 私は、この国後択捉両島におきますところのソ連軍動きにつきまして報告を受けまして、これは国の安全上重大な問題でありますので、国民の皆様に知っていただく必要があるということを思いまして、直ちに公表いたすことを決意いたした次第であります。そして、この点は外務大臣の方にも御連絡いたしまして、しかるべき外交上の措置をとっていただいたわけでございます。  防衛庁といたしましては十分な情報を入手するように努力中でございますし、また私どもは、先ほど申しましたように、われわれが公表したことについてソ連としては事実関係として否定してまいっておりませんということは、私どものことが正確であるということを思うわけでございます。  これにつきまして、しからばどのような部隊であるかにつきましては、率直に申しまして、地上部隊増強されておりまするけれども海空部隊増強は見られておりません。それからまた、滑走路につきましても従前と変わらないようでございます。そうしたことを諸般から判断いたしますならば、主として島嶼防衛ということではなかろうかと推察するわけでございます。しかしこれは重大な問題でございますので、直ちにこの事態が急変するとは思いませんが、ただし非常に重要な事態でございまするので、十分監視を怠らないでやってまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  7. 本名武

    本名委員 昨年の五月末の演習の通告並びに今回の国後島を中心に拡大されたと想像される軍事基地構築とか演習等々について、防衛庁が直ちに公表されたことは一志評価いたします。ただ、私はどうもお話を承ってもそうですが、ソ連は一体何を意図しているかということについて明快な御見解はまだ聞いておりません。このソ連意図によってわれわれ国民決意やあるいはまた政府国民としてお願いするその方途、手段、それからまた外交を通じて外務大臣の御交渉がどうなるか、そういったことが逐次変化していかなければならぬ。その変化も前向きでなければいかぬ。しかももっと強硬でなければいかぬというふうに思うのですが、ソ連意図しているのは一体何であるかということをどういうふうに踏まえておられるか。  あわせて、その対応としては、私はほかの委員会長官お話を間接に聞きますと、防衛計画は変更する必要はないということであります。意図がどういうものであるか、その意図によっては防衛計画の変更もすべきではないかとさえ思うのであります。それをしないままにして公表だけ、あるいは実情はこうでございますというだけでは国民は納得しないという点について、もう一段と御説明を願いたい。そのソ連意図防衛計画と、そして国民にこれぞという安心のいく外交方針の基盤になるこの問題についての御解明をお願いしたいと思います。
  8. 山下元利

    山下国務大臣 現段階におきましては、両島地域におけるソ連地上軍の再配備意図を明確には推定できません。しかしながら、近年極東地域における増強近代化等努力してまいっておりますので、その一環として北方領土にも改めて地上軍部隊配備を行っていると考えられるわけでございます。このほか、ソ連軍事戦略上の観点から、北方領土及び千島列島地域あるいはオホーツク海等の地域的な重要性、現在の国際情勢等についての考慮もあるのではないかと考えられるわけでございます。  両島地域におきますソ連軍動向につきましては、なお今後の推移を見る必要がございますが、現在の状況から判断すれば、配備されているソ連軍の任務は、先ほど申しましたとおり、主として島嶼防衛的なものであると考えます。  わが方の対応ぶりにつきましてはいろいろ御指摘もございますが、直ちに結論を出すことは適当でないと考えまして、当面は冷静に対処していく所存でございます。しかしながら、このたびの両島地域における動向を含め、最近の国際軍事情勢につきましては重大な関心を持って注目いたすとともに、引き続き分析、検討を行い、適時適切な措置をとってまいりたいと考えております。
  9. 本名武

    本名委員 冷静に事態推移を見守りつつ対応するということは、私は日ソ関係の今後の友好の上にも必要であろうとは思います。しかし、向こうのやることをながめているだけで、あるいはいまのお話の前段でお聞きした内容によりますと、大体われわれ素人でも想定できるソ連意図であるとしか考えられないのであります。大変に厳しいことを申し上げて失礼でありますが、国民の知りたいところは、われわれ国民の常識で判断できる、あるいはマスコミの報道によって理解できる程度でなくして、もっと進んだ見解を私どもはお聞きしたい。時間がないので、この問題はいずれ改めてお聞きしたいと思います。  そこで、外務大臣にお尋ねいたします。いまお聞きのようなことでありますが、あの固有領土は、ここで申し上げる時間がありませんが、厳然としてわが国固有領土であるということはもう明白であります。同時に、サンフランシスコ条約並びに連合国側の取り決めの際においても、あの四島以北の島々についてはその帰属は決定していないはずであります。こういうことに対して一体外務省はどういうお考えでこの四島の問題の解決を図ろうとしておられるか、その点からひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 園田直

    園田国務大臣 北方四島をソ連が不法占拠している事実というものはわれわれは容認しておりませんので、これに対する粘り強い返還交渉をやっておるわけでありますが、その四島に兵力増強または基地構築等、この早期解決または平和的解決に逆行するようなソ連態度並びに日本国民、特に北海道周辺の住民の方々に非常に不安を与えているという事実は、われわれは無関心でおるわけにはまいりません。直ちに外務省ソ連の大使を招致をして厳重な抗議をやっておるところであります。その交渉経過等については、必要であれば事務当局からお答えをいたします。しかし、これも単なる申し入れだけではなくて、四島返還中心にして粘り強く執拗にわれわれはこれをやる決意でございます。
  11. 本名武

    本名委員 事外交でございますし、また特殊なソ連という国柄でもありますから、私もいたずらに国民が反ソ感情に走って軽々な進展を図ろうとすることは慎むべきだろうとは思いますけれども、先ほど防衛庁長官から伺ったような実態を踏まえて、このまま推移するならば、国民感情は落ちつきが逆に反攻に出ることを私は恐れるのであります。そういう意味において、外務大臣としても今後十分その点を踏まえて積極的な交渉に移っていただきたい。  それから、ついでにちょっと伺っておきますが、かつて松本グロムイコ交換公文あるいはまた先般の田中ブレジネフ会談において、いずれも北方四島に対しては未解決であるという前提のもとに今後話し合いを進めましょうという相談をされたはずです。しかし、その後において解決済みであるという一点張りでいるということは、一体この松本グロムイコ交換公文であるとかあるいは田中ブレジネフ会談というものはどこにどういう実権を持って外交交渉に当たられるのか。あるいは日本政府はそれを放棄してしまって、新たな段階で、解決済みというソ連に対して物を申そうとするのか、その点の外務省姿勢をちょっと伺いたい。
  12. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまお尋ねの松本グロムイコ書簡と言われますものは、日ソ共同宣言によりまして日ソ間に国交を回復いたしますときに松本全権グロムイコ外務次官、当時の外務次官でございますが、との間に交わされました書簡でございまして、この中に「日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。」と、こういう書簡を出しまして、これに対しまして、グロムイコ第一外務次官の方から「領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。」このような返簡が参っておりまして、これは両国全権の正式な合意文書でございます。  さらに、お述べになりました田中ブレジネフ共同声明と言われますもの、これは共同声明でございますが、両国首脳が正式に署名をしたものでございまして、この中に、両国は、戦後未解決の諸問題を解決して平和条約締結交渉を行うことに同意するということが明文をもってうたわれておりまして、これも形は共同声明という形でございますが、やはり当然双方の首脳合意と見られるものでございます。したがいまして、このような文書による、しかも署名の行われた二つ合意文書がございます以上、先方が一方的に、これは解決済みである、あるいは存在しないというようなことを申しましても、これは正式な合意の違反である。したがって、私どもの立場は今日なお変わらない、正式なものであると考えております。
  13. 本名武

    本名委員 私は、四島の問題については、ソ連の言い分のいわゆる解決済みというその言葉の基本にある一つの問題は恐らくヤルタ協定だと思うのです。ヤルタ協定の生い立ちというものは、いま私が申し上げるまでもありませんが、全く当事国である日本を除外して、連合国戦勝国と称する国々によって一方的な主張をされたものである。これに対して、アメリカはかなり明快に反論いたしております。反論いたしておる中に、北海道は他の国には占領を認めないということになっておる。北海道はという中にこの四島が入っておるとわれわれは信じております。したがって、アメリカを初めとして心ある連合国軍側は私ども主張と何ら変わらないのであります。変わらないような時点に立って向こう解決済みとやっております。したがって、ヤルタ協定にさかのぼる、のぼらぬは別として、私はこの際、外交交渉のほかに国際司法裁判所に提訴するとか、何か具体的な当時の連合国に訴える手段をとることも外交一つの道ではないかと思うのでありますが、外務大臣の御見解を聞きます。
  14. 宮澤泰

    宮澤政府委員 国際司法裁判所に提訴するという問題でございますが、ソ連国際司法裁判所のいわゆる強制管轄権を受諾する宣言を行っておりませんので、これに提訴いたしますためには、改めてソ連との間にそのような趣旨の合意を行わなければならない。しかし過去の経験等にかんがみまして、ソ連がこれに同意する可能性はございませんので、かかる道も実は閉ざされておる。実はこのようなことを正式に日本側から提案したことはございますが、ソ連側は、ソ連は自国の領土を他人に決めてもらう気はない、こういう返事をした経緯もございます。  それから国際世論に広く訴えるという点でございますが、これはただいま本名委員の御指摘のとおりでございまして、外務省はたとえば外務大臣定期協議等の形を通じまして、各国に対して領土問題の存在を訴える、それからすでに国連の創立記念総会におきまして佐藤総理大臣領土問題について言及されまして、この問題の平和的解決を望むということをおっしゃったこともございます。その他私ども外務省の人間はあらゆる機会をとらえまして、私どもの話します相手外国政府に対してこの問題の存在を述べて啓蒙を図っておるということでございますし、あるいはソ連を訪問される、外国を訪問される日本政府の方のみならず、財界、経済界方等にもこの問題をよくお話し申し上げて外国政府お話し願っておる。このような努力は続けておるわけでございます。
  15. 本名武

    本名委員 お答えは要りませんが、私の申し上げた国際司法裁判所というのがわかりやすいので申し上げたのですが、サンフランシスコ講和会議のときにはソ連中心に数カ国が反対をいたしました。しかし、少なくとも講和会議に参列していたという事実は、反対したという事実は残っているわけであります。残っているからには、これをそのままにしておくということはない。したがって私は、国際司法裁判所とは限らず、やはりこういった連合国に訴える手段をもっと強硬にとるべきであるという意味で申し上げた。これはお答えは要りません。時間がなくなりました。  最後に、私はちょっと意見を交えて申し上げますが、やはり一番私は、国内において国民世論が四島を明確に認識すると同時に、この四島はわが物であるという態度国民が示すことが大事である。総理府中心政府は非常に苦労してこられました。しかし、だんだん、だんだんと四島が固有領土であるという考え国民の中に定着してまいりました。先日も一千二百五十万の署名をまとめてきました。二千万の署名目標を達成しようとしておりますが、こういう国民感情国民の意識の推移を心して、私は、この四島がわれわれの固有領土であるということを踏まえて、あらゆる角度からひとつ御交渉賜りますようお願い申し上げて、私の質問を終わりますが、大臣何か御意見ありましたら……。
  16. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、ソビエト以外の当時の関係国に強く働きかけることも大事であります。また、ソ連に対しても、これがソ連邦が言っておるように、一部の者の発言でもなければ、国で扇動した者の発言でもなくて、全国民悲願であり、これは北海道に属する固有領土であるということを粘り強く主張し続ける。その土台国民のかたい決意合意であることは発言のとおりであり、この土台の上を踏まえて粘り強く努力をする決意でございます。
  17. 和田耕作

  18. 安井吉典

    安井委員 私ども社会党は、いわゆる北方領土、これは歯舞、色丹の両島も、国後択捉を初め、千島列島全体が、わが国がかつて侵略、奪取をした土地でないということが明らかであるということからすれば、私は固有領土だ、そう断じていいのではないかと思っております。その固有領土を、国民全体の悲願にもかかわらず、なかなか返してくれないということはきわめて遺憾なことであるし、こちらの領土の上に軍事基地を増設をしていったり、あるいはそこで実弾射撃をやったり、軍事演習をやったりしてくれるということは、これは相手ソ連であろうと、どこの外国であろうと、われわれとして許すべきではないと思います。したがって、早く返してもらいたいし、さらにまた、私は、いま挙げたような、あるいはその他も含めて一切の軍事的な構築や行動というものをやめてもらうということを国会としても強く要求をしていくということは当然なことだと思います。  したがって、国会決議にも私ども賛成するわけでありますが、ただその進め方について私は二つの注文が政府にあります。  まず第一は、そのソ連軍事基地がどんどん増築、増強されつつあるという実態についての認識でありますが、かつてソ連地上部隊北方四島に千五百人ぐらい、六九年ごろまでにはいたわけですね。その後これが撤退して、また今度ちょっとふえてきたというわけですが、今度いま兵力数において、現状においてどれくらいですか。それから、もう一つ北海道にいる自衛隊兵力はいまどれくらいですか。
  19. 山下元利

    山下国務大臣 昭和三十五年までの状況、それから昨年の夏からの増強された状況については、御指摘のとおりでございますが、現在われわれが確認しておるところにおきましては、国後島におきますところのソ連軍地上部隊は数千名、そしてまた向こうの編成がちょっとわが国と同様ではございませんが、旅団クラス兵力であろうと思っておる次第でございます。  なお、北海道におきますところのわが自衛隊につきましては、陸上自衛隊は四個師団を持っておりますわけでありますが、その他の具体的な兵力につきましては、政府委員から御答弁させていただきます。
  20. 原徹

    原政府委員 北海道部隊でございますが、陸上自衛隊北部方面隊で大体五万人でございます。それから航空自衛隊が、北部航空方面隊で約三千七百人。あとは、海上自衛隊は、函館の基地隊と余市の防備隊というのがございますが、それだけで約五百人でございます。
  21. 安井吉典

    安井委員 彼我というか向こうとこちらの兵力関係はいまのお話で大体見当がつくわけですが、数千名というとこれはずいぶん数が大ざっぱなんですが、恐らくきっかりしたものはつかめるようなことにはなっていないのじゃないかと思うのです。しかし、いずれにしても、北海道とそれからあの島は、特に国後などは二十キロか三十キロぐらいしか幅はないわけですからね。もうすぐ目の前なんですから。  そういう形で置かれている状況ということから、いろいろな判断が出てくるわけでありますけれども、私は、やはり、ソ連側が、日中平和友好条約や、これは当然としても、米中の国交正常化、それを何か日米中三国同盟ができたような錯覚をしているということもあるし、また、そういうふうに見られては困るということをもっともっと明確にするわれわれの努力においても十分でないところもあるのではないか。とりわけ、昨年日米防衛協力のガイドラインができて、それができた同じ日の十一月二十七日には、日米合同演習が、空軍の演習が、三沢基地中心に、F4Eファントム等中心として強力に展開をされる。一方、こちらの方では、例の有事立法でがんがんやる。統幕議長発言。  私は、そういうふうな向こうの方の神経を高ぶらせるようなやり方が相次いできたということ、そういうようなことが逆に向こうの方の一種の心配をさせたりあるいは基地増強することの口実にされてきたということだけは間違いないのではないかと思います。やはり、こちら側の方も、あくまでも平和、そして友好を進めていくという態度外交政治一般においてソ連の方に見せていくという、そういう姿勢がなければ、単に決議をしたらそれで済むなんというようなものではないのじゃないか、私はそう思うわけであります。その点について、これはどちらのあれですかね、外務大臣ですかあるいは防衛庁長官ですか、ちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  22. 園田直

    園田国務大臣 今度のソ連兵力増強と申しますか、いま直ちに、防衛庁長官から言われたとおりに、その意図が那辺にあるか、即断することは過早ではありますけれども、私の判断からいたしますると、御承知のとおりソ連は近年極東兵力増強を行っております。その一環として増強されたということであって、ことさらに日本に対し脅威を与え、こういうことを聞かなければもっとふやすぞというようなたぐいのものではなかろうと、いまのところは判断をいたしております。  なお、ソ連に対するわが国外交は非常に鮮明にいたしております。日米安保体制及び日米関係基軸日本はしておる、この点はどういうことがあってもわれわれはこの体制でいくのだ。しかし、その体制の目的とするところは均衡による平和、これを追求している、こういうことは明瞭に言っておりまするから、米国日本関係がどうこうということでこれがどうこうされたものではなかろう。しかし、米中日関係については米国も注意をしておりますが、日本も十分この点は注意する必要はあると思いまするが、ただ、何かあった場合に、日本がどうもどこと仲がいいから、こういうことだからもっと控えろなんというようなことではなかなかうまくいくものではなかろう、こう考えております。
  23. 山下元利

    山下国務大臣 ただいま外務大臣からお答えになったとおりでございますが、「日米防衛協力のための指針」についての御指摘がございましたので、私ども考え方を申し上げたいと思います。  わが国防衛日米安保体制の堅持を基軸といたしておりますが、御指摘の「日米防衛協力のための指針」は、これによりまして安全保障体制の信頼性を維持し、円滑な運用を整備することを心がけたものでございまして、特定の国を対象としたものではなく、したがって、いずれの国をも刺激するようなものではないと私ども考えている次第でございます。
  24. 安井吉典

    安井委員 お二人の大臣からのお話がございましたけれども、こちらの方はそういうつもりでも、向こうはどうとるかわからないわけですよ。先ほどもいろいろ御質問がありましたけれども北海道にいる自衛隊の勢力と向こうと比べたら、ほんの距離がわずかしかないわけですから、ひょっとしたら北海道自衛隊国後へ攻めてくるかもしれない、だから防衛するんだと向こうの方はあるいはそういう説明を自分の方にしているのかもしれない、私はそんなようなものではないかと思いますね。だって北海道の方がずっと強いわけですから。だから私はいまのようなこういう事態防衛計画を再検討して、それじゃ北海道をもっとふやせ、そういうような動きをすることが困るわけなんで、やはり日本は平和憲法のもとに平和を追求する国だ、そういう実態を明らかにするということ、これが非常に大切だということをいま主張し、御答弁をいただいたわけです。御答弁は十分だとは思いませんけれども、私の主張であります。  それから第二は、やはり私ども領土を返してもらわなければいけないわけです。ただ、島よ返れとスローガンを掲げても、あるいはまた日本北海道における兵力をどんどん増しても、それによって返ってくるという筋のものではないと私は思います。やはりソ連がいま土俵にも上がってくれないわけですから、何とかして土俵に上がるような雰囲気をつくりながら、そしてがっちり腰を据えて両方の外務大臣同士で話し合ってもらう、そういう舞台づくりをしていくのがいまの段階で、出てこいと言ったってなかなかそうすぐには――去年も一年間交渉がなかったわけですから、国連でいろいろ外務大臣お話をされたわけですけれども。  ですから、そういう意味合いにおいて、たとえば長期経済協力協定の問題も向こうも希望しているようだし、そのほか両国の共同のプロジェクトも、サハリンの石油だとかシベリアの開発だとか、いろいろな問題が出てきているわけであります。そういうようなものを一つ一つ話し合いをし、それを一つの手がかりにしていく。善隣友好条約にしても、領土たな上げの善隣友好条約などというのは私どもはあり得ないと思います。しかしながら、何か話し合いの余地はないのかとか、きわめてむずかしい状態にあることはわかりますけれども、それを一つずつ手繰っていって、そういう努力をしていただきたいと思うわけです。事実、政党レベルでは、野党が行ってもそうしっかりしたお話政府間のようなふうにはいかないかもしれないが、しかし、みんな努力していますよ。社会党も行ったし、それから公明党も新自由クラブも行きました。そういうふうないろいろな交流や努力が続いているが、肝心の政府は去年一年、ことしにかけてほとんど動きがないじゃないかということを私は指摘しておきたいわけであります。やはりもう少し友好親善を深めていくといいますか、そういうことを下敷きにして領土問題に話を次第に延ばしていくという努力外務大臣にお願いをしたいわけですが、どうですか。
  25. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、私はグロムイコ外務大臣には、北方四島問題を誠意をもって話し合うという態度があるならばわれわれはほかのことも考えてみる余地はあるということだけは申し上げてあります。御指摘のとおり、すでに合同会議等は順調に進んでおりますから、そういうことを積み重ねつつ、一方では誠意を示し、一方では不動の決意努力をしながら進めていくべきであると考えております。
  26. 安井吉典

    安井委員 いま善隣友好条約の問題をちょっと触れたのですが、もちろんその領土問題をたな上げにしっ放しだというそういう仕組みはだれも容認できるわけはないと思います。しかし、これからの交渉一つの糸口という可能性はないわけではないと思うのですが、何か具体的な構想はおありですか。
  27. 園田直

    園田国務大臣 実務的ないろんな関係、経済その他の問題を具体的に進めながら、各方面から努力を続けたいと考えておりますが、いまここで具体的な考え等を申し上げる段階ではないと存じますので、お許しを願いたいと存じます。
  28. 安井吉典

    安井委員 経済のプロジェクトについてこれからさらに内容を具体化していくということについていかなる構想をお持ちですか。
  29. 園田直

    園田国務大臣 経済の協力については、いままでのところ、日本政府ソ連政府との見解が相当食い違っておるわけでありますが、民間あるいは事務的な協議をだんだん進めてまいりまして、できるだけの協力はしたいと考えておりますが、これもやはり領土についても向こうが話し合おうじゃないかというお気持ちがあればわれわれはどんどん進めていきたいと考えております。
  30. 安井吉典

    安井委員 魚心あれば水心、こう言いますから、どっちが魚でどっちが水かわかりませんけれども、その辺を日中の困難な事態を打開した園田さんならできないわけではないと思います。あるいは向こうでうまくいったから今度は逆にむずかしいのかもしれませんが、ひとつこの中心的な課題である領土問題の解決領土問題さえ解決すれば軍事基地云々などという話もなくなるわけですから。  さらにまた、交渉の問題について、私は軍事的な要素を払拭するという中で交渉を進めていくという問題について一つの提案もあるのですが、きょうは時間がありませんからそれは触れません。  私はいま準備されつつあるその決議でいいと思いますけれども、やはりあくまで日本が平和に徹した政治をやっているんだという姿勢を明確に向こうに示すことが一つと、それから友好を重ねる中で領土問題の解決に進むというその二つを、決議に私ども加わらせていただく一つの前提として申し上げておきたいわけであります。  最後に、総務長官に伺っておきますが、地元の根室の方では、総務長官に就任されるとすぐ北方領土地帯の現状についての視察があるんだが、三原さんはさっぱり来ないという声があるようです。沖繩には行ったが根室には来ないという声があって、しかし、いまの時期にすぐ行った方がいいのかどうかといういろんな問題もあると思いますけれども、時期を見てやはり現地の皆さんの、これはいろいろな生活の課題まで北方の責任者として責任をお持ちなわけでありますから、その少なくも視察ということだけに限定してお答えをいただければ、お願いしたいと思います。
  31. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 昨年の暮れ就任以来、ぜひひとつ北海道、根室を中心にいたします地帯と沖繩県には参りたいというのが私の念願でございます。予算編成国会へという事情になってまいりまして、現在もできるだけ早く参りたい――先般も地元の方々がおいでになって、一日も早くひとつやってこいという御要請もございましたし、ぜひ私自身責任者として現地に参りたいということを考えております。日程のつき次第参上いたす予定でございます。
  32. 和田耕作

    和田委員長 斎藤実君。
  33. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 最初に外務大臣にお尋ねをいたしますが、これからの日本外交の焦点はやはりソビエトに対する外交ということがきわめて重要になってくると思うのであります。経済協力だとかあるいは日ソ漁業交渉等いろいろ困難な問題がございますけれども、やはり何といっても領土問題が大きな壁になっているわけでございます。ソビエトは日ソ間に領土問題は存在しないのであるという態度をとっておるし、われわれとしては北方四島は日本固有領土だということでかみ合わないわけです。そういう中で、わが国固有領土である歯舞、色丹、国後択捉、その中でも国後択捉両島ソ連が大規模な常備軍を配置したという報道、これはもう国民はもとより北海道民にとっても大きな衝撃を与えておるわけでございます。この四島は固有領土として戦後これまでソ連に粘り強く交渉はしてまいりました。私は、ソ連両島を新たに基地化し軍隊を常駐させたとすれば、先ほど防衛庁長官お話にありましたように、たとえ防衛的なものであったとしても、これはきわめて不当であり、わが国国民感情を逆なでするきわめて刺激的な態度と言わざるを得ないわけですが、私は、政府は一遍の抗議だけではなくて、やはり毅然とした態度と粘り強い日本外交の総力を挙げて、四島返還要求というものをこれから強力に進めていかなければならないと思うわけですが、外務大臣の基本的な姿勢をまず最初にお伺いしたいと思います。
  34. 園田直

    園田国務大臣 ソ連に対する日本外交がきわめて大事であることは御発言のとおりであります。現状もまた御発言のとおりでありますけれども、また両国の間には利害共通する問題もたくさんあるわけでございます。そこで、いま御発言のとおり、国民の不動の決意合意の上に、四島問題を絶えず念頭に置きながら、両国間にある各種の問題あるいは各方面から糸口を見出すべく、絶えざる努力と行動をしたいと考えております。
  35. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、国後択捉両島ソ連の新しい基地が建設をされたということ、このソ連軍配備、これについて国民感情としてはきわめてこれはもう何とも言いようのない感じだろうと思うのですが、政府も早速ソ連に抗議をされましたね。その中で、「日本政府が入手した種々の情報によれば、」というふうにあるわけですが、この「種々の情報」とは具体的にどういう情報なのか伺いたい。
  36. 園田直

    園田国務大臣 防衛庁並びに外務省が主として各方面から得た情報を総合的にもととしてやっておりまするが、どの方面から入った情報だということは、今後の情報入手の観点からも困難を来しますので、これを具体的に答弁するわけにはまいりません。
  37. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 外務大臣から各方面からの情報という御答弁がございましたが、アメリカの人工衛星による偵察情報が入っているのではないかというふうに私は思うんですが、いかがですか。
  38. 園田直

    園田国務大臣 答弁はお許しを願いたいと思います。
  39. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 答弁ができないということですから、それでは次に進ましてもらいます。  昨年の五月だと思いましたが、国後択捉両島ソ連軍動きがあったというふうに報道されているわけですが、基地建設あるいは演習だという論議がずいぶんされました。それにしても今日まで八カ月を経過しておるわけですが、呼べばこたえるような北海道からの国後択捉なんですが、それまでなぜ八カ月間そういう事態が確認されなかったのか、防衛庁長官から伺います。
  40. 山下元利

    山下国務大臣 ただいま外務大臣からお答えがございましたように、私ども情報源あるいはその収集方法等については申し上げられませんが、防衛庁といたしましては確信ある判断を持って、このたびの公表に踏み切ったわけでございます。そして昨年夏以来の動きをなぜ今日において公表したかということにつきましては、われわれも的確に情勢は把握いたしておりましたが、ようやく結氷期を迎えまして、それで一応ソ連軍動きも一段落いたしましたので、この機会に、それまでにおいて得られた資料によりまして、判断によりまして公表いたしたわけでございまして、なおこれにつきましては、春になりまして氷が解けるとかいうふうになりましたらまた動きが出てまいろうと思いますのですが、この段階において公表したわけでございまして、その時期的な問題については御了承賜りたいと思いますが、われわれは今後とも春氷が解けましても、さらにおさおさ怠りなく監視をしてまいる覚悟でございます。そしてまたこの問題につきましては、国民の皆様の大変な御関心も当然のことでございますので、私どもの方といたしまして適時適切な措置をとってまいりたいと思っておる次第であります。
  41. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 各種の新聞に出た写真を見ますと、四千メートルぐらいの滑走路があるとか、二万トン級の船舶が入る港があるとかいうふうに報道されているわけですが、先ほど防衛庁長官から兵備は大体数千名という話がありましたが、いま私が申し上げましたような滑走路だとかあるいは船が入る港があるとかというふうに報道されているわけですが、政府調査では具体的につかんでいらっしゃいますか。
  42. 山下元利

    山下国務大臣 各種の報道につきまして、私の立場から余り具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、ただいま御指摘滑走路の問題、国後島におきます滑走路につきましては、私どもの確認する限りにおきましても従前のものよりも拡張されたというふうには見ておりません。それから泊港でございますか、港でございますが、これにつきましての報道もせられておりますけれども、私ども、まだいま申し上げる段階ではございませんが、確認をいたしておる次第でございますが、伝えられるようなものではないと思っております。
  43. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 外務大臣、われわれはソ連と事を構えるとかそういう気持ちは決してないわけですが、しかし北海道の鼻先、しかもそれはわが国固有領土だという島であり、これは非常に国民感情として納得できないし、私は断じて許せないと思うのですが、外務省は一片の抗議を行っただけで終わりとするのか、何か具体的な行動を起こすのか、それに対して今後どう対処するのか伺いたいと思います。
  44. 園田直

    園田国務大臣 今度の兵力増強ソ連のねらいが何であるかは別にして、日本国民感情、特に北海道周辺の方々の不安の念、これは非常に大きなものであります。したがいまして、北方四島問題あるいは今度の増強問題について、これが一部の発言であるとかあるいは政府が扇動した発言であるとか、そういうことではなくて、全国民の非願であり、不安であり、しかも政党を通じての願いであるということを粘り強くまず理解してもらうことが必要であると存じます。したがいまして、先ほどから発言がありましたとおり、日本はあくまで平和を念願をする、日ソ交渉友好関係にもっと進めていきたい、こういうことを示しつつ、粘り強く理解と説得と抗議をやらなければならぬと私は考えております。
  45. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま大臣から粘り強く交渉していくという答弁がございましたが、これは日本とソビエトの問題でございますので、大臣答弁のようにひとつがんばっていただきたいと思うわけです。  私は、このソ連の行動に対してわが国は中国と共同の行動をとってはならないと思うのです。そのことはやはり中ソ対立の大きな問題に発展するだろうと思うし、そういう中ソ対立の中にわが国が巻き込まれてはならないと思うのですが、いかがですか。
  46. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおり特に注意をしなければならぬことであると考えております。
  47. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 中国と日本関係は漢民族と大和民族だということで共通した歴史的な経緯もあります。ただわが国も、またソ連わが国に対して非常に理解が足りないといいますか、信頼関係がないといいますか、不信というものがお互いにあるわけですね。これをやはり取り除かなければ友好的な外交というものは樹立できないだろうと私は思うのです。不信を取り払うあるいは信頼関係を取り戻す、これが外交の基本だろうと思うのです。これからソビエトと日本外交というものは大きな国策の上に重要な問題だと思いますので、相互の信頼関係、あるいは不信を取り除くということが大事だろうし、特に経済外交あるいは文化交流、あるいは人的な往来を拡大するとか、あらゆる総合的な外交を展開しなければ友好関係は樹立できないだろうと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 園田直

    園田国務大臣 これも全く御発言のとおりでありまして、まずソ連に対する理解、相互理解、これも言葉だけではなくて、ソ連に対する行動あるいはアジアの諸国に対する行動と一つ一つ実績を示しながら、理解を深めていく努力を必死に続けたいと考えております。     〔委員長退席、本名委員長代理着席〕
  49. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で質問を終わります。
  50. 本名武

    本名委員長代理 和田耕作君。
  51. 和田耕作

    和田(耕)委員 私は、委員長の場をかわっていただきまして、民社党の代表として、一言二言御質問を申し上げたいと思います。  先ほど来の御答弁を伺っておりますと、国後択捉ソ連軍増強を始めたのは昨年の五月、六月の段階、それが次第に増強されて、現在では兵力規模は数千名、旅団規模という御答弁がございました。旅団規模といいますと、ソビエトの一個師団は一万三千名ぐらいと聞いておりますから、約半分として六千五百名ということになりますが、これは相当規模地上部隊だと思います。戦後にソビエトがわが国固有領土国後択捉を不法占拠したときには相当の部隊がおったと聞いておりますが、次第にこれが漸減されて、ほとんど警備隊規模の千数百人というようなところになっておった。しかも装備等も本当の形だけの警備というような状態であったのが先ほど来のお話のようにずっと増強されておるということでございます。現在の兵力はいま申し上げたようなことで、北海道日本自衛隊のあれと比べましてもそう心配するようなものではないということはそのとおりだと思いますけれども、しかし一度不法占拠したときの兵力から撤退して、しかもそれを増強しておる。しかも最近の国際状況から見ると、日本と中国あるいはアメリカと中国等の新しい外交関係等を踏まえながらソビエトの外交姿勢等から勘案すると、この兵力増強というのは、現在心配する面は少ないとしても、それだけでこの問題を判断することはできない、将来へのいろいろな問題を顧慮する必要があると思うことが第一点。  もう一つは、先ほど外務大臣も仰せになっておられるように、日本固有領土の中に新しいそのような兵力を保つということの重要な意味国民が持っている心配、この点は私どもは強く考えてみなければならない問題であるし、こういう問題について日本政府としても、言葉は、何も敵視するというわけじゃないのですからやわらかい言葉であっても、言うべきことははっきりと政府として意思表示をするということが必要だと思うのです。そういうふうな意味で、各党とともに適切な一つ決議をいましょうとしておるところでございますけれども、先ほどからの御答弁で、ソビエトも防衛的な形のものであって、ということだけだと、やはり国民のこれに対する警戒心が薄らいでいくという感じもありますので、やはり現在の内外の状態から見て、日本としてははっきりした態度が必要なんだということを、ぜひともひとつ決意をお聞かせいただきたいことが第二点でございます。  簡単でよろしゅうございますから、外務大臣防衛庁長官から御決意の言葉をお伺いしたい。
  52. 山下元利

    山下国務大臣 昨今におきますところの両島地域におきますところの増強は、私どもとしては、諸般の事情から判断いたしまして、主として島嶼防衛的なものと考えておりますけれども、これは意図が那辺にあるや、私どもとしては、意図に関するものでございますから、いまのような地上軍部隊の数とか、あるいは海空状況等を見ました場合には主としてそう思いますけれども、やはり意図につきましては、私ども十分監視を怠ってはならないと思いますし、決して島嶼防衛的であるからいい、それで安心しているわけではございません。あくまでこの意図は那辺にあるかはわかりませんが、十分おさおさ怠りなく、監視してまいる決意でございます。
  53. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御質問は、外交の基本であり、やはり対ソ外交の一番大事なところだと存じます。お互いに話し合い、共通の利害はこれを詰めるということは、日本は何でもソ連の言うとおりになるという意味ではなくて、毅然たる態度、いわゆる日米安保体制基軸にして、そして、いざという場合には身構えるのだ、しかし、それは世界平和のためによろしくないから、その日米安保体制基軸として恒久の平和を追求する、均衡による平和を願っておるという毅然たる態度、及び四島問題についても、最後の決意だけははっきり申し上げた方がよいと私も考えております。
  54. 和田耕作

    和田(耕)委員 一昨日、十三日でございました。北海道のほとんど全部の公共団体の責任者が陳情に参りまして、そうして、この際北方領土返還についての決意政府としても強めてもらうように、ほとんど日本の全部の団体を網羅しておると思いますが、二千万人署名を目指して約千二百五十万人の署名を受けました。かなり強い高揚もあるようです。  今回の軍事基地増強の問題を契機にしてまた強まっておると思いますが、これを、何も好戦的なものでなくて、やはり日本北方領土返還という正しい大義名分のもとで、もっと国民世論の組織化、あるいは高揚化を図っていく必要があると思うのですけれども、総務長官はこの点について、何か特別の企図なり計画を持っておられますか。
  55. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 北方四島に対しまする返還要求の基本的な方針等につきましては、るるいままで御審議の中に出てまいりました。そうして、いま言われましたように、そうした返還要求の最もやはり大切なことは世論の支持だと思います。国民の心情というか悲願というか、全国民悲願であり心情であるという態勢が一番大切だと思うわけでございます。そこで、御承知のように、担当総理府といたしましては、関係省庁と連絡をして、今日まで年中行事を設定してこれと取り組んでおるわけでございます。  国会におきましても、たびたび御決議をいただき、それから都道府県におきましても、四十七都道府県が全面的に決議をいたしております。市町村におきましても同様、四分の三、ほとんど全市町村が、三千数百の市町村が決議を終わろうとする態勢にある、いま申されましたように、国民全体の署名運動の展開が熾烈になされておるという状態でございます。  その時期に、昨年の夏以来のこの事態に対してどう対処するかということについて、私どもも検討をいたしました。もちろん外務省防衛庁等の意向なり、あるいは、閣議におきまする御意見等を拝聴して、どう対処するかということの検討をただいま進めておるところでございます。しかし、二月、三月に年間のそうした運動の山場が一つございます。その際において、特別この問題をどうこなしていくかということについて、当面して考えを進めておるところでございます。しかし、この問題がソ連の神経を余りにも刺激するというような点については、十分な配慮をせなければならぬかなと思いまするけれども、やはり国民世論が、公正に理解をしていただいて、この北方領土返還に対する情熱というものが強く燃えていかねばならぬという対処はいたさねばならぬというところで、いまのような具体的な計画を関係省庁と協議をいたしておるところでございます。
  56. 和田耕作

    和田(耕)委員 国際世論の問題も非常に重要だと思いますけれども、先ほど同僚委員の御質疑がありましたので、内外の世論の高揚に向かってひとつ格段の御計画と御努力をお願い申し上げまして、質問を終わります。
  57. 本名武

    本名委員長代理 瀬長亀次郎君。     〔本名委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初に外務大臣に、時間の関係がありますから、まとめて質問したいと思います。  第一に、北海道の一部である歯舞、色丹、これはもちろん、国後択捉両島を含む千島列島返還問題は、日本国民の正当な要求であり、不公正な戦後処理を国際的な道理に基づいて正すという観点から、政府が責任を持って解決しなければならない課題だと考えますがどうかということが一点です。  もう一つは、サンフランシスコ条約いわゆる二条(C)項の千島に関し、条約締結時に、西村条約局長は南千島を含むと答弁していたが、締結後五年たった一九五六年になって政府は、択捉国後は千島に入らないと主張し出して現在に至っております。さて、条約締結後、締結時の条文解釈を条約的手続を経ないで変更した例はあるのかどうか、これが二点です。  三番目に、外務大臣は昨年一月二十六日、参議院本会議において共産党の宮本議員の質問に対し、サンフランシスコ条約第二条(C)項は当時の状況にかんがみやむを得なかったと考えるというふうに答弁なさっております。これは現時点から見て妥当性を欠くものであったという認識でこのような御答弁をなさったかどうか、これが三点。  四番目、千島列島引き渡しという戦後の領土処理は、領土不拡大を決めたカイロ宣言、ポツダム宣言に反すると私は考えるが、大臣考えはどうか。  五番目に、いわゆる国後択捉、歯舞、色丹の四島一括返還論に立つ限り、北千島は永久に放棄することになり、これは公正な戦後処理という立場から見て妥当ではないと私は思うが、大臣意見はどうか。  以上、最初に五点だけまとめてお答え願います。
  59. 園田直

    園田国務大臣 まず第一番に、サンフランシスコ条約第二条(C)項、これについては千島列島は放棄をいたしております。ただし、歯舞、色丹、国後択捉北海道に属するわが国固有領土であるから、この不法占拠をわれわれは容認せず、返還を要求しているわけであります。千島列島については放棄したわけでありますから、この千島列島に対するソ連態度わが国としてこれを批判する法的性格は持たないわけでありまして、これは、千島列島に対しては、当時サンフランシスコ条約に参加をした国々全般に関する問題である、このように区別しているわけでございます。  次に、西村局長発言でありますが、すでに内容は御承知でありますから説明いたしません。当初発言しましたことは、どうも千島列島の中に国後択捉、歯舞、色丹が入るような誤解を与えておりましたので、その後、国後択捉、歯舞、色丹は固有領土であるというふうに発言を訂正したわけであります。その訂正した発言は、いまもなお政府はこれを堅持するところでございます。  次に……(瀬長委員「その件、国際的にあったかどうか」と呼ぶ)
  60. 和田耕作

    和田委員長 瀬長君、ちょっと待ってください。  外務大臣、御答弁を続けてください。
  61. 園田直

    園田国務大臣 後でまた改めて……。  次に、宮本委員長の質問に対して私が答弁いたしましたのは、ただいま答弁いたしました趣旨に基づいて答弁したものでございまして、千島列島及び北方四島あわせて、これは当然日本に返さるべきものであるという意味ではございません。
  62. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 四番目の千島列島引き渡しの戦後処理の問題、カイロ宣言、ポツダム宣言における領土不拡大を含めた問題についての御答弁が欠けておりますが。
  63. 園田直

    園田国務大臣 それは、カイロで決められた場合に、今度の戦争によって領土を拡大するものではないという連合国の話し合いはわれわれの承知しているところでありまして、これに対しても、われわれはその話し合いに違反するものであるとは考えておりません。
  64. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 五番目の問題、これの答弁がありませんが、いま大臣がおっしゃった四島一括返還論に立つ限り北千島は永久に放棄することになるはずであるが、この点は公正な戦後処理とは言えないと私は思うのです。これをどのようにお考えでしょうか。
  65. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいま北千島とおっしゃっておりますが、桑港の平和条約日本が放棄いたしたのは千島列島でございまして、この中には、私ども固有領土として返還を要求しておる北方四島は入らない、こういう前提でございます。  そこで、北千島とおっしゃいました千島列島でございますが、ただいまおっしゃいましたように、カイロ宣言あるいはそれを引用いたしましたポツダム宣言領土不拡大の原則にはこれはそぐわないものと思いますが、しかし、当時日本政府は、戦後、戦争状態を終結して名誉ある国際社会に復帰するために、この千島列島を放棄して桑港の平和条約署名いたしたものでございますので、千島列島日本としてはすでに放棄したもの、このように政府は解釈いたしております。
  66. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 千島列島は、いわゆる暴力とかいう戦争などに訴えて日本領土にしたものではないということはすでに御承知だと思いますが、そうであるならば、いまおっしゃった北千島、この問題の解決、いわゆる領土主権を放棄した、これを放棄したまま放置するつもりであるのかどうか。具体的には一体どうするつもりか、明確にしていただきたいと思います。
  67. 園田直

    園田国務大臣 将来は考えるべき問題でありますが、日本はいま法的にソ連を批判する立場にはない、こういうことでございます。
  68. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはソ連を批判するのではなくて、北千島も日本領土なのです。それは間違いない。だから、それに対する自分の主権は積極的に守らなければいかぬわけです。やはり大臣としても、外交路線からいっても明確にして、国民領土主権を本当に守る必要があると思いますが、その点は要望しておきます。  次に、政府は今回、国後択捉両島へのソ連軍事基地建設と伝えられる件に関し抗議したということだが、二月一日、当委員会理事会での防衛庁の報告によれば、両島には終戦以来一貫して軍事施設はあるわけですね。さらに一九六〇年夏までは一個軍団、防空戦闘機四十機等、現在よりはるかに強大な軍事力存在していたということになっております。  ところで、調べましたら、いままで、二月に撤去要求をされたそれ一遍だけであって、全然そういった抗議はされていないが、これはどういうことであるのか、これが一つ。とりわけ、防衛庁の報告によれば、一九六〇年にソ連両島から軍事力を一たん引き揚げた後、再び進駐させたとされているが、このとき政府は何か抗議したのかどうか、この問題ですね。さらに、今回あえて抗議した理由は何か。  以上は外務大臣にお願いします。
  69. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいま外務大臣が御答弁なさいました千島列島の将来の問題でございますが、補足的に御説明をいたしますと、千島列島は、日本は桑港条約におきまして権利権原すべて放棄いたしましたので、これの将来の帰属云々等について日本政府としては云々すべき立場にない、こういうのが日本政府の立場でございますので、大臣の答弁の補足としてお答え申し上げます。  それから、ただいまの、軍備に対して抗議した根拠はどうかというお尋ねであったかと思いますが、これにつきましては、わが国固有領土である北方四島の上にソ連が居座っておること自体、これは不法であるということで、日本政府は昔からこれに抗議をいたし、この立ち退きを要求しておるわけでございますが、軍備ということは、国家主権の一つの示威として端的なそのあらわれである、したがって、日本政府は、ここに当然主権を主張しておるわけですから、よその国が不法にそのような行為を行うということは、不法占拠のさらに上塗りをする、こういうものと解釈いたしまして抗議をいたしたわけでございます。
  70. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が聞いておるのは、今度は抗議しましたね。前は抗議していないのですよ。なぜ前は抗議しなかったのか。抗議したことがあるかどうか。しなかった理由というよりは、していないのですね。今度なぜやったのかというだけの問題なのです。
  71. 宮澤泰

    宮澤政府委員 軍備あるいは軍隊の駐留、そのようなことは、ただいま申し上げましたように不法占拠のさらに上塗りのことでございますので、日本国政府は今日まで不法占拠そのものに対して抗議をいたしておったわけでございます。かたがた、一九六〇年以降昨年まで、ソ連側は特に軍備と名づけるほどのものは置いておりませんでしたので、格別その点を事新しく抗議いたしたことはございません。ただ、今回はいかにも急激に多くの兵力をそこに置いたということがわかりましたので、改めて抗議をいたしたわけでございます。
  72. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 急激にじゃないんですね。私聞いておるのは、一つ抜けておる点は、一九六〇年になってソ連両島から軍事力を一たん引き揚げた後、再び進駐したことがある。こういったときにも別に抗議していないのですよね。だから結局、政府の方針は一貫していないということがここに浮き彫りになったわけであります。  それで、時間がございませんので、もう一点まとめて申し上げたいと思いますが、これはぜひ外務大臣の方で答弁願いたいと思います。  自民党議員は当院の予算審議の中で、国後択捉からの奇襲攻撃を問題にして、E2Cの導入を初め、軍備拡大策を合理化する議論をしきりに出しております。このような事態外務大臣はどう見るのか。平和外交を主唱する外務大臣は、当然のこととしてこういった議論に反対すべきだと私思うのですが、いかがでございますかということ。  最後に、今回の事態の中で、冒頭で述べたように、千島問題処理が領土不拡大の原則に反するものであったとの認識の上に立ち、千島に関するすべての権原を放棄したサンフランシスコ条約二条(C)項を廃棄して、国際法上の返還要求の確固とした立場を確立し、本格的な全千島返還の対ソ交渉を展開すべきであると私は強く要望いたしまして、大臣の所見を伺いたいと思います。
  73. 園田直

    園田国務大臣 今度の軍備増強が、ソ連がどういう意向であるかはいま即断するわけにはまいりませんが、外務大臣としては、極東の兵力増強一環としてやられたことであって、特に日本を目標にしたものではないと、いまのところは判断をいたしております。  なお、千島列島については、これはソ連交渉すべき問題ではなくて、当時の連合国の処理すべき問題でありますから、いま、サンフランシスコ条約第二条(C)項を廃棄する考えはございません。
  74. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りましたので、最後に、委員長の許可を受けて、次に出されるであろう決議案に対する私の意見を申し上げたいと思います。  一つは、同意できない点。こっちの出すべき点についてははっきり国民の要望をまとめて、国際法上からも、あるいは後世の戦後処理の面から言っても、もっとすっきりする必要があるということが同意できない一つの点であります。  もう一つは、こういったような重大な主権に関する千島の返還の問題などは、もっともっと時間をかけて慎重に審議し、全会一致の形で持っていくというのが議会制民主主義の立場からいって当然ではないか。だから私、同意できませんが、とりわけ現在問題になっている国後択捉などにおける軍事基地問題に対しては、これはソ連による現在の千島占有状態を一層固定化するものであって、日本国民の切実な要望に反し、日ソ両国の平和友好関係の促進にとってきわめて遺憾である。この点はそういうふうに考えております。  さらに、私は特に政府に、みずから国際緊張を激化させる立場をとらないで、アジアの平和と安全に寄与する諸政策を積極的に進めるとともに、ソ連に対し、北海道の一部である、いかなる国際条約によってもわが国領土権が否定されたことのない歯舞と色丹の即時返還を求め、千島列島については、千島に対する一切の権原を放棄したサンフランシスコ平和条約第二条(C)項の廃棄を関係諸国に通告し、国際法上の交渉権、発言権を確立して、その返還を求める強力な外交交渉を行うべきであるということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  75. 山下元利

    山下国務大臣 先ほどの御指摘の中に関連いたしまして、防衛庁として申し上げたいことがございますのは、外務省からも御答弁がございましたが、ソ連が一九六〇年に軍備を撤収いたしましてから後は国境警備隊程度が存置されておりましたけれども、このような大規模兵力増強されたのは今回が初めてでございますので、その点申し上げておきたいと思います。
  76. 和田耕作

    和田委員長 次に、甘利正君。
  77. 甘利正

    ○甘利委員 さきに通告を申し上げました五点につきまして、順次質問を行います。すでに答弁がなされたものについては御省略をいただき、要点に対して簡明な御答弁をお願いする次第でございます。  まず、三点について防衛庁に質問をいたします。  第一点。ソ連北方四島において軍備強化を図っておりますのは日中平和条約に対する措置考えますが、防衛庁はどのようにお考えになるでしょうか。  第二点。ソ連の軍備強化は世界平和に貢献するものではない、むしろ世界平和にとって危険な存在考えますが、日本周辺におけるソ連軍増強はどのようなものになっているか、伺いたいのでございます。  第三点。防衛庁は今回の択捉国後両島におけるソ連軍動向について、ソ連軍の任務は島嶼の防衛意図したものなるがゆえに、わが国防衛計画を修正する必要はないという主たる見解をとっておられるようでございますが、この見方は少し甘いのではなかろうか、このように判断をするものでございます。根室半島をすぐ目の前にしたソ連軍のこのような動きに対して、防衛庁はもっと真剣に、あらゆる角度から対応策を検討さるべきではなかろうかと思いますが、いかがでしょう。  以上、三点についてお答えを願いたいわけでございます。
  78. 山下元利

    山下国務大臣 第一点については、日中条約の締結につきまして、ソ連側がこれを歓迎しない旨の表明をわが国に対して行ってまいりましたことは承知いたしておりますが、しかし、このたびの両島地域におきますところの動きが御指摘のような意図を含んでいたかどうかを断定できるような資料は、ただいま持ち合わせておりません。  それから、極東ソ連軍増強に伴うわが国周辺での動きは、主として艦艇あるいは航空機に関するものでございますが、これらの動きにつきましては、たとえば昨年五月下旬から約一カ月問にわたり、本邦南方から東方の洋上において、クレスタII級巡洋艦二隻、カシン級及びクリバック級駆逐艦各一隻による演習が実施されたほか、昨年三月十七日には対馬海峡においてTU95型機、また十二月五日には、礼文島北方ソ連機によるわが国への領空侵犯の発生等が最近の主な動きでございまして、その両島地域におきますソ連軍動向につきましては先ほどから申し上げたとおりでございますが、これにつきまして防衛庁が、主として島嶼防衛意図したものであろうというふうに判断しておりますのは、いま確かに地上部隊増強せられましたけれども海空兵力等の動きとか滑走路等の状況判断いたしました場合に、これは直ちに脅威をもたらすものとは考えない、このように思うわけでございます。しかし、意図というものは相手方のことでございますので、私どもは主として島嶼防衛的なものであると判断いたしますけれども、十分に監視をしてまいらなければならないと思うわけでございます。  なお、防衛計画の修正の問題につきましては、私どもはただいまのところこれを修正する要はないと考えておりますけれども、昨今の国際軍事情勢等にも重大な関心をもって注目いたしておる次第でございますので、引き続き分析、検討を行い、おさおさ怠りなく監視し、適時適切な措置をとってまいりたいと考えております。
  79. 甘利正

    ○甘利委員 次に、外務省に対して伺います。  本問題に対して外務省が厳しく抗議をしておられるわけでございますが、これに対しまして駐日ソ連大使は、北方領土問題は存在しない、ソ連領土で何をしようとソ連の自由であり、それに抗議するのは内政干渉である、このように日本の抗議を拒否しておるわけでございます。そこで、このようなソ連主張を黙って見逃しているということでよいのだろうかどうだろうかという点について一点お尋ねいたします。  そうして第二点は、政府北方領土問題は日ソ二国間の問題だから日ソ二国間で経済協力等の話し合いを糸口として真剣な解決努力すればよろしいのだというふうに重点を置いておられるようでございます。そうして、この問題を国連の広場に持ち出しますといたずらにソ連を刺激するだけで問題の好転はとうてい期待できない、こういうふうなお考えであるように承りますが、いまのような対ソ外交を続けていく限り北方領土はわれわれの手には戻ってこない、このように私は考えるものでございます。しかも、今回の事件に見るように、日ソ関係はますます緊張を増すばかりでございます。いまやアメリカも中国もみんな日本の立場を支持しておるわけでございます。それだから、わが国としても国連の場において国際世論の支持を得て問題の解決を図るべきであろうと思います。つまり、日ソ両国間の問題として解決するというほかに、国連の広場において、国際世論において、その両論において解決すべきであろうと考えておりますが、外務大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  80. 園田直

    園田国務大臣 まず最初に、ポリャンスキー在京大使が北方四島の問題は存在しないと言うことに対しては、これは全く理不尽な議論であって、四島は固有領土であり、しかも日ソ共同宣言に明記された事項であることは周知の事実でありますから、これをわが外務省主張いたしております。ポリャンスキーのその言葉に対しても直ちに高島審議官は、いま発言されましたような趣旨のことを反論いたし、ポリャンスキーはこれを拒否はするが本国にはそのまま伝える、こういうことで今後とも主張を続けるつもりでございます。  次に、この北方四島の問題を国連の場に提起したらどうだ、これも一つの方法であると思います。しかし、二国間の問題ではあるが、二国間で話し合うと同時に御発言のとおり他国の世論も喚起する、日本の国内の世論はさらにこれを決意をかたくしてもらうことはきわめて大事でありますけれども、国連のいまの機構からいたしまして、国連で提起して果たしてこれの解決の道になるかどうかということになると相当な疑問があるわけであります。したがいまして、そういうことも念頭に置きつつ他国の同意を得るよう努力しながら、今後の交渉推移動きを見守りつつ考えてみたいと思います。
  81. 甘利正

    ○甘利委員 質問を終わります。     ─────────────
  82. 和田耕作

    和田委員長 この際、北方領土問題の解決促進に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本案に関しましては、各党の代表者間におきまして協議を願っておりましたが、その協議が調い、案文がまとまりました。  まず、案文を朗読いたします。     北方領土問題の解決促進に関する件(案)   わが国固有領土である歯舞、色丹及び国後択捉等の北方領土が永年にわたる日本国民の要望にもかかわらず、いまなおその返還が実現せず、更に、最近ソ連は、国後択捉両島において軍事施設の構築等を図っていることは、日ソ両国の平和友好関係の促進にとって誠に遺憾なことである。   よって政府は、北方領土問題の平和的解決の精神に逆行するこのようなソ連軍事的措置が速やかに撤回されるようソ連政府に対し要求するとともに、北方領土問題の早期解決を図り、平和条約を締結して、日ソ間の安定的平和友好関係を確立するよう努力すべきである。   右決議する。 以上であります。  この際、趣旨の説明を申し上げます。  わが国固有領土である歯舞、色丹及び国後択捉等の北方領土の一日も早い返還は、全日本国民の多知にわたる悲願であります。しかしながら戦後三十余年を経過した今日もなお、北方領土返還は実現しておりません。  さらにまた、ソ連は昨年夏以来、国後択捉両島において、相当規模地上軍部隊を配置し、軍事基地の建設を行うとともに、両島周辺において軍事演習を行っております。これらのことは、日ソ両国の平和友好関係の促進にとってまことに遺憾なことであります。  政府は、北方領土問題の平和的解決の精神に逆行するこのようなソ連軍事的措置が速やかに撤回されるようソ連政府に対して強く要求するとともに、北方領土問題の早期解決を図り、平和条約を締結して、日ソ両国の安定的平和友好関係を確立するよう最善の努力を払うべきであります。  以上をもって、本決議案の趣旨の説明といたします。  何とぞ、御賛同あらんことをお願いいたします。  なお、本件の案文作成に当たりましては、お手元に参考資料として配付した案文についても各党問において熱心な協議を重ねてまいったのでありますが、本案については意見の一致が見られなかったことを御報告いたします。  採決いたします。  北方領土問題の解決促進に関する件を本委員会決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  83. 和田耕作

    和田委員長 起立総員。よって、北方領土問題の解決促進に関する件は本委員会決議とするに決しました。  ただいまの決議に対して政府から発言を求められておりますので、これを許します。園田外務大臣
  84. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御決議に対しまして所信を申し述べます。政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を十分に体しまして、今後とも粘り強く対ソ折衝を進めるべく、引き続き最大限の努力を払う所存であります。
  85. 和田耕作

    和田委員長 なお、ただいまの決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 和田耕作

    和田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時十一分散会