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1978-12-21 第86回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十二月二十一日(木曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      野田  哲君     丸谷 金保君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺田 熊雄君     理 事                 岩崎 純三君                 楠  正俊君                 降矢 敬雄君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 北  修二君                 世耕 政隆君                 長谷川 信君                 藤川 一秋君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 小野  明君                 丸谷 金保君                 吉田 正雄君                 黒柳  明君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君    国務大臣        法 務 大 臣  古井 喜實君        外 務 大 臣  園田  直君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       田中 六助君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        警察庁警備局外        事課長      城内 康光君        防衛庁装備局長  倉部 行雄君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        水産庁振興部沖        合課長      橋本  隆君        通商産業省機械        情報産業局電子        機器電機課長   小林 久雄君        自治省行政局選        挙部政治資金課        長        緒方信一郎君        会計検査院事務        総局第一局長   前田 泰男君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十年度一般会計歳入歳出決算昭和五十  年度特別会計歳入歳出決算昭和五十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和五十年度政府  関係機関決算書(第八十回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第八十回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第八十回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和五十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 小野明

    小野明君 外務大臣お尋ねをいたしますが、日中の平和友好条約締結に引き続きまして、先日、米中間国交正常化が行われたわけであります。まあ、突然の発表でありまして、上海コミュニケの必然的な延長とも考えられ、当然来年中には米中の国交正常化が行われるのではないかと、このようにわれわれも理解していたわけですが、余りにも突然と言えば突然ですが、この発表が行われた。いわば日本頭越しにこれが行われたのではないかという印象をまず受けるわけでありますが、事前アメリカ側から日本に対していかなるコメントが行われたのか、その辺をまず承りたいと思います。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えに先立って、一言お許しをいただいてごあいさつをしたいと存じます。  時局重大のとき、乏しきをもって、再び外務大臣の職に任ぜられました。今後とも委員各位の御叱責と御指導をお願い申し上げ、微力ながら全力を尽くすことをお誓いを申し上げて、一言あいさつとしたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  いまの御質問に対してお答えをいたしますが、正式の通告は、新聞等で報道されているとおり、発表前日の夜半、夜明けの二時ごろ、大統領から電話があるということで、内容は大体この問題だろうということで、大統領みずから総理電話をもって理解協力を求めると、こういうことがあったのは九時十五分でありますから、発表の数時間前でございます。同時に、御質問にございませんでしたが、中国からも同時刻に、事前に、数時間前にそういう通告があったわけでありまして、その際には内容等についても若干の説明がございました。しかし、中国指導者の方からも米国の方からも、米中正常化についてはそれぞれ日本意見なり、あるいは正常化するについてどのような方向に進むべきかという御意見はしばしば聞かれておりまして、私は両国に対していささかなりとも今度の正常化については日本が仲介の微力を尽くしたと、こう考えておるところでありまして、条件その他については大体想像しておったところであります。ただ時期につきましては、私も同じように、中間選挙が終わった後、今年度は無理であろうが来年だろうと思っておりまして、一月一日という時期は私も知らなかったわけでございます。
  7. 小野明

    小野明君 次に、日中条約につきましてもアジアの安定と平和に寄与するということで私ども賛成をいたしました。今回の米中の国交正常化という事態を迎えまして、一部の党を除いては、大体各党ともに同じように、アジアの安定と平和に寄与するということで賛成意見発表をいたしておるようであります。  そこで、三十年来のかつてのアジアにおける冷戦体制、この一部が崩壊をしたと。しつつあるといいますか、あえて一部と申し上げるわけですが、地殻変動を起こしつつあると、新事態を迎えているという認識を私ども持っておるわけでございますが、外務大臣としてはこの米中正常化という事態に対してどういう御認識をお持ちでございましょうか。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) アジアの国々からの電報を拝見しますと、どの国も米中正常化アジアの平和と安定のために歓迎、期待をするという電報であります。ソビエトのブレジネフ書記長からアメリカ大統領にあてられた親書も、まあ儀礼もありましょうが、大体同様趣旨親書が参っております。社会党代表団に対するソ連の談話はやや趣を異にしているようでありますけれども、私自身も米中正常化アジアの安定、平和に寄与するものであると期待をし、かつまたそうでなければならぬということを要望してこれを歓迎しているものであります。  ただし、この運営については、日中友好条約が、それぞれの関係国に一方には歓迎されながら  一方には一抹の不安を与えると同様、米中正常化も、今後の運営、実行によってこれが米中並び日本も含めてソ連に対抗する包囲網ではないということ、あくまでアジアの平和と安定に寄与するものであるということを留意しつつ今後の実績を積まれる必要があると考えております。
  9. 小野明

    小野明君 園田外務大臣が再任をされまして、日本の全方位外交というのは当然これは大平内閣におきましても継承をされるものであると、このように理解をいたしておるところであります。しかしながら、こういう事態を迎えまして、いま大臣も若干お触れになったわけでありますが、日本アジアにおける平和と安定を求める外交方針に、冷戦構造崩壊と、こういった認識を持つとしたならば、再検討を加えるべき外交方針があるのではないかと、このように考えますが、その点については大臣はどのようにお考えでしょうか。
  10. 園田直

    国務大臣園田直君) 国際情勢きわめて微妙でありますから、次々に起こる事態によって十分留意する必要はあるとは考えておりますが、日本外交は、いままでやってきました外交方針――大平総理アジアという問題からさらに広く汎太平洋地域という言葉を使われておりまするが、方向そのものは私はいままでの方向を修正する必要はなくて、さらにいままでの方針に具体的にいろんなことを加味しつつやるべきであると。日本はあくまで、まずアジアの平和と繁栄ということに貢献するために、経済技術協力等諸分野について関係国協力しながらこれを進めていく、そして平和の確保のために積極的な政治的役割りを果たすと、こういう方向をさらに推進していきたいと考えておるところでございます。
  11. 小野明

    小野明君 大臣の言われることは一般論でありますけれども、日中にいたしましても今回の米中にいたしましても、日本側理解というのは、アジアの平和と安定に寄与するという積極面を強調をされるといいますか、そういう見方をいたしておるわけでありますが、これにつきましては、対ソ外交の面において、ソ連側はこれと全く反対見解表明をいたしておるわけであります。いわゆる日米中三国同盟による対ソ包囲網の強化と、こういう厳しい見方をいたしておるところであります。これについて大臣はどのように対処されようといたしておるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) まず日中友好条約については、ソ連は御承知のとおりに、当初ソ連に対する対抗措置であるという厳しい態度でありましたが、その後いろいろ努力をいたし、グロムイコ外務大臣とも直接私会ったわけでありますが、その後やや変わりまして、日中友好条約ソ連に対する対抗措置であるか、あるいは真に平和を求めているものであるか、これは今後の日本の出方を見るというふうに若干修正されてきておることは幸いであると存じております。いま御発言のとおりでありまして、アジアの平和、安定と抽象的には申しますけれども、日本ソ連との外交関係をどのように友好方向に進めていくかということによって、全方位外交あるいはアジアの平和ということは具体的に達成されていくと存じております。  そこで、いま日中問題でボルテージが上がっておりましたが、ややこれもだんだん静まってくる状態にございます。一つは貿易問題でアメリカEC等がやや不安があった。それから一つは政治的な問題でASEANの各国に不安があった、これもだんだん静まってまいっております。一方、日ソ関係ボルテージが上がらぬわけでありまして、これをだんだん上げていって、そして中国日本関係ソ連日本関係を同様のボルテージに上げていくことが大事である、いわゆる私はこれを拡大均衡と、こう言っているわけであります。  そこで、ソ連日本関係はここでもう一遍原点に返ると申しまするか、最初に返って、日ソ両方テーブルに着く前にいろんな方法相互理解を深めることからやっていかなきゃならぬのじゃないかと、こういうことを考え、ひそかに準備検討をやっているところでありますが、ソ連立場に立ちますと、たとえば一例をとりますと、グロムイコ外務大臣が今度はおいでになる番でありますから、日本においで願いたいと、こう言うと、行くと。しかし、何月何日に行くという日にちを決めるわけにはいかぬ。それから田中総理訪問されて以来、向こうの方からは最高指導者おいでになっておらぬわけでありますから、ブレジネフ書記長は無理にしても、コスイギン総理おいで願いたいということをしばしば招請をしているわけでありますけれども、ソ連の側から言えばなかなか頭の痛いところであって、少なくとも指導者が他国を訪問する場合に、訪問したら訪問したことによって何らかの成果が上がったということでなければなかなか訪問はできないと存じます。そこで、日本訪問をしても、たとえばコスイギン総理グロムイコ外務大臣おいでになっても、帰るときに何らかの成果が上がるという見通しは薄い。しかも行った途端に北方領土北方領土という頭の痛い問題を言い出される、これではなかなか訪問もされにくい。だとするならば、ここに日本も、日本外交の基本である方針は貫きつつ、ソ連相互理解を深めて何らかの方法を考えなきゃならぬのじゃないか、こういうわけで、私はグロムイコ外務大臣には、われわれも考えるからあなたも考えてもらいたい、善隣友好条約平和条約両方が対立しておりまするけれども、これも話し合いさえつけばいろんな方法があるではありませんか、こういう話をしているわけでありますが、具体的にはなかなか申し上げにくいところではありますけれども、やはり双方が相互立場になってもっと理解を深め、その理解の上からテーブルに着いて話を進めるということを考えなきゃならぬ。日ソの問題が一番大事である、こう考えております。
  13. 小野明

    小野明君 まあ私も対ソ外交重点的にこの際進めなければならぬと、このように思いますが、いまお話のありましたグロムイコ外相の来日は確定をいたしておりますか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 二回にわたって必ず行くと、それから国連総会のときにお会いしたときにも行きますと、しかし何月何日と決めるわけにはいかぬと、こういうことでそのままになっているわけであります。
  15. 小野明

    小野明君 ちょうどわが党の飛鳥田代表団がいまソ連に行っておりますが、これはスースロフ政治局員発表いたしておるんでありますが、このソ連側見解というのは、まあ日中条約についてはソ連は若干見解を変えつつあると、こういうお話があったわけでありますが、そうではなくて、けさの報道によりますというと、非常に厳しい見方を変えていないようであります。  まあ、要点は三つあるわけでありますが、一つは、中国ソ連へ向けて米国カードを切ろうとしておるし、米中は同盟をつくろうとしておる。それはソ連に対して日本カードを切ることと同じだと。これは日本軍国主義ソ連に向けさせようとするものであると。こういう点が一つであります。  次に、ソ連に対するわが国北方領土返還要求に対しても、米中によるソ連敵対行為の一環であると。北方領土返還が一段と厳しい状況を迎えてまいったということがこれによってはっきりいたしてまいっておるところでありまして、さらにただいまお話もございましたが、なぜ日本はワシントンや北京と反ソ的な条約を結びながら、もう一つ友人モスクワとは――これは友人という表現をしてあるようでありますが、ソ連とは友好への努力をなぜ進めないのかと、こうまあスースロフ政治局員表明をいたしておるわけであります。いわば、まあこの点については、わが国ソ連に対して何ら対ソ友好外交努力を進めていないではないかと、非常に厳しい指摘でありました。これについて大臣見解を承りたいと思います。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 社会党委員長が訪ソされるに先立って、わざわざ時間を割いていただいて、外務大臣と率直に意見を交換し、私も将来に対する私の考え方を率直に委員長に申し上げておきました。ちょうど日中友好条約がそうであったと同様、日ソの問題も、先ほどから申し上げますとおり、政府も精魂を傾ける、また野党の方々はそれぞれの立場でいろいろ御努力を願う。強い回答もあればやわい回答もあると思いますが、その中で日ソ友好の打開の道を進めていくべきだと存じますが、具体的に私がグロムイコ外務大臣及びコスイギン総理と会った印象言葉から判断いたしますると、具体的には善隣友好条約をどうするんだということが向こうの表立った言い分でございます。これに乗ってくるならば日本の日ソ友好関係の気持ちは認めようと、これをやらなきゃ話にならぬぞというところもありますけれども、私はそれについてはやや弾力的な返答をいたしておりますが、ただ、いま出されておる善隣友好条約内容には同意しかねると、したがって進め方はいろいろ方法があるじゃありませんかと、それ以上は申し上げられませんが、そういう話をしているわけでありますが、グロムイコ外務大臣コスイギン総理と会った私の言葉のやりとり、印象から言いますと、ソ連の方も、必ずしも日本とはもう一切日中友好条約を結んだからだめだというのではなくて、日本ソ連に誠意を示すかどうかによって今後の態度を決めるというのが本心であるようでありますけれども、日本側から言わせると、日中友好条約は、何も悪いことをやったわけではないから改めてソ連にお願いする筋合いじゃない。またソ連の方から言えば、おれの方は日本がまじめにやってくれば話し合いに応ずるが、おれの方から頭を下げることはないというぐらいのところがいまの実情ではないかと、こう思います。したがって、そういう問題を考慮に入れつつ、各位のお力をかりつつきっかけをつくりたいと、こういうことを考えておるわけでございます。     ―――――――――――――
  17. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、野田哲君が委員を辞任され、その補欠として丸谷金保君が選任されました。     ―――――――――――――
  18. 小野明

    小野明君 わが党も、現在ソ連から提示をされたといわれる善隣協力条約については反対である。これは大臣もおわかりいただけると思うのでありますが、領土問題が入っていない。この領土問題の解決なくして善隣協力条約というものは私は検討することはできないと思います。そこで、平和条約締結に至るまでの間という前文がこの善隣協力条約にはございますね。領土問題が未解決であると、こういう表現、あるいは領土問題を含みますならばこの善隣協力条約検討という問題も考えられるのではないかと、このように思いますが、大臣はいかがですか。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) 現職でございますから、具体的に確答することは及ぼす影響大きいわけでありますが、グロムイコ外務大臣には、大体小野先生と同じような趣旨を私は、たとえば、今後本当に相談し合えば平和条約善隣友好条約同時審議ということも考えられるし、あるいは一本にすることも考えられるし、いろいろ方法はあるじゃありませんかと、こういうことで御推察を願いたいと存じます。
  20. 小野明

    小野明君 この対ソ問題というのは、アジアにおける冷戦構造の完全な解消という点においては一番重要な点であろうかと思います。さらに、外務大臣もこの点は非常に重点を置いて対処されるという御見解でありますから、なお一層の御努力を要請をしておきたいと思うのであります。  次に、昨日の衆議院の外務委員会におきまして、安保条約に基づく極東範囲から台湾を外すという見解表明がございました。これはもう米中の正常化によりまして当然この米台条約が破棄をされるわけでありますから、明年一月一日からこれはもう発効をすると考えても、事実上の発効をすると考えてよろしかろうかと思います。当委員会におきましても、何ら安保条約あるいは地位協定にかかわる、直接かかわる問題ではありませんが、いわゆる岸声明による極東範囲から台湾を除くと、こういう御表明につきまして再度ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) 第一に、先般の御意見でありますが、日本平和外交にとって、米ソ対決、中ソの対決、これをどのように日本立場でやっていくかということがアジアの平和の重大なポイントであるということは、御意見全く同意見でございます。  なお、本日の新聞安保条約変質あるいは極東範囲に関する記事が出ておりますが、これは必ずしも私の真意を伝えておりません。  まず第一に、安保条約変質ということは、米中正常化によって変質したと私は言ったわけではなくて、これとは関係なしに、三十年間の間に国際情勢変化によって必然性が出てきて、日米安保条約というものは逐次性格が変わってきた。これは米中正常化とは別個の問題。  どのように変わってきたか。御承知のとおり、私は第一回の安保条約行政協定には反対投票し、党を脱党した一人であります。その当時の日米安保条約というものは、三矢作戦と論議された過程においてもわかりますとおり、ややもすると米国世界戦略というものが大陸に対して目を向けておった。その場合に日本の自衛隊に一翼を担当させようということでありますから、これはアジアの平和、安定に寄与するものではないと私は思っておったから反対をしたわけでありますが、その後、冷戦から逐次、はっきり変わったとは申せませんけれども、少なくともソ連ブレジネフ書記長努力、それからこれに対してアメリカのベトナムから下がり、韓国から地上軍を撤退するということは、両方とも抑止力による平和という方に変わってきたと、こう思うわけであります。そういうわけで安保条約というものの本質が変わってきたと、こう私は申し上げたわけであります。  なおまた、その後さらに米国は、日本アジアにおける経済的役割りではなくて政治的役割り期待をするという意向があるようでありますが、その政治的役割りとは、力をもってアジアをどうこうということではなくて、少なくとも日本は持った経済力技術力、その他の政治力を使ってアジアに紛争を起こさせるなと、こういうことだと私は解釈しているわけであります。だとするならば、第一回目から引き続いて日米協議委員会等も、日本の方は大臣が二人出て、向こう太平洋軍司令官等が出て何年かに一回協議することになっておりますが、この仕組みというのはあくまで有事の際にどうやるかということに重点を置いてなされた仕組みでありますので、今日の日本政治的役割りは、有事を起こしてはならぬということが政治的役割りだと存じますので、だとするならば、軍事的な協議よりも政治的な判断が上にこなきゃならぬはずでありますから、そうだとするならば、少なくともこの協議委員会は、政治的な判断から、日本の閣僚と向こう最高責任者協議するような方向仕組みを変えていかなきゃならぬのじゃないか。こういうことで、私は数カ月前から安保条約見直しということを考え、そしてまたその意見の一部は委員会でも申し上げ、さらにアメリカには正式にそういう意向を申し伝えたところであります。  ただ、いますぐにその機構いじりをしようと考えていないのは、日中友好条約締結直後にこういう動きをいたしますると、ソ連に対する日中の対抗組織ということ、それから日米条約仕組みに変更を来すんだという誤解を受けてはいかぬので、その時期はしばらく延ばそうと、こう考えているところでありまして、安保条約変質というのは、国際情勢変化冷戦から抑止力の平和というふうに変わってきたと、こういうことから変質したと私は申し述べておるわけであります。  なおまた、台湾をめぐる問題でありますが、これは今度の米中正常化最大眼目は、台湾というものをめぐって米国中国意見がどう調整されるかということが一番問題であった。特に最後まで残った問題は、武力解放をしないということを中国に約束してもらいたい。中国はできない。それから、一方はまた、事態がいかようになろうとも台湾地域の安全と安寧については米国は重大な関心を持つと。こういう意味で米国は必要な兵器の供給はすると、他のことは一切正式なあれは絶つけれども、文化、通商等は日本と同様に実質的なものはやって、この安全には関心を持つと、こういうところの二つの点が問題であったと思いますけれども、一つは共同声明、そしてアメリカが一方的に台湾地域をめぐる問題で一方的な声明を出しております。これに対して中国は反発をしなかった。しかも事前に、共同声明を出し、一方アメリカは一方的な声明を出すということも中国は了承しておったと私は判断をいたします。したがいまして、米国それから中国の間で台湾地域をめぐって武力紛争、あるいは安保条約第六条の極東範囲という条約に該当する事態は発生しなくなったと見るのが当然だと私は判断をしておるわけであります。しかし、これはさらに中国あるいはアメリカ指導者と具体的に直接話し合いをする必要はあると考えておるわけであります。  したがいまして、米台条約の破棄は一年後であります。一年前の通告でありますから、一年間はこのままにいたしましても、その後極東範囲というものに台湾地域が入るか入らぬかということは、実際上言えば、中国言葉をかりれば名存実亡になったわけでありますけれども、名存実亡になったものをそのままほうっておくのか、あるいはこれは変更するのかということでありますが、これは先ほどから申し上げましたとおり、米国指導者とも、中国との相談並びに今後の見通しというもので相談しなきゃならぬことでありますが、どっちにいたしましても、このために安保条約を手直しする必要はない。第六条の中の極東範囲という、該当するかせぬかという解釈上の問題でありますから、これで日米が合意すればこれはどっちにでも決定できるわけであります。ただし、いま直ちに一年先のことをいまからやりますことは、それぞれ影響もあることでありまするし、また台湾地域に対する微妙な影響も大きいわけでありますから、これは将来米国と相談の上やるべきことであると、こういうふうに私は答弁したわけでございます。
  22. 小野明

    小野明君 解釈上の問題、運用上の問題ということでありますけれども、台湾極東範囲の外であるということは、同時にその周辺における出動の問題も同様であると、このように解釈をしてよろしいですか。
  23. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 周辺の地域の問題につきましては、従来の考え方に特に変更を加えるべきものはないというふうに考えております。
  24. 小野明

    小野明君 ちょっといま聞き漏らしたんですが、再度ひとつ御答弁を願います。
  25. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 極東範囲の問題と台湾との関係につきましてはいま大臣から御答弁がありましたとおりでございますけれども、私どもといたしまして、いま極東範囲極東の周辺に関する考え方、従来の考え方が特に今度の米中の正常化によって影響を受けるということはないんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  26. 小野明

    小野明君 大臣は来月訪米をされるようでございます。その主たる目的というのは、すでに置かれております安保協議委員会、これの改組といいますか、政治レベルの構成にいたしたいと、こういう御表明が、御答弁があったと思うのであります。同時に、たとえば極東範囲から台湾及びその周辺を除くと、こういう問題にいたしましても、ただ単に安保条約第六条の運用上あるいは解釈上の問題であるということで済ましてよろしいのかどうか。これには私はこの安保条約変質と、こういう米中正常化あるいは日中国交回復という問題、事態を迎えて、それには疑問のあるところであります。  そこで、来月訪米をされ、いかなる点についてアメリカ側協議をなさるおつもりであるか。もちろん外交上の問題でありまするから、そのすべてについてというわけにはいかない点もあるかと思いますけれども、訪米の目的、主たる協議点、これを御説明をいただきたいと思うのであります。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の正月、来年の一月に訪米するという記事が出ておりますが、これは速記録を見ていただくとわかりますが、私はこれは全くまだ決まっておりませんと、こういう答弁をいたしております。  しかし、訪米するかもわかりません。その訪米するかもわからぬと申しますのは、大平新総理が就任されてからまだ、日米外交は基軸であるとは言いながら、大統領総理話し合いは進んでいないわけであります。ところが、国内情勢、国会の都合を見ますると、なかなかここ早い機会に総理が訪米される機会は少なかろうと判断をされるわけであります。  そこで、まずもって第一の目的は、総理の名代として、まずアメリカに対して、新しい内閣ができたが、外交方針日米関係については何ら変更はないという趣旨のごあいさつをするのが行くとすれば第一の目的。第二番目には、日中、米中、もろもろの問題で行ったからにはお話をする機会もあるのではなかろうか。三番目に、できれば帰り道にドイツに回ってサミットその他の相談もしてきたいと、こう思っておるわけでありますが、国会の予算の審議の都合がどうなるか、ちょっと見当がつきませんし、まだ総理が決意をされておりませんので、私が訪米するかどうかということはいまなお未定でございます。
  28. 小野明

    小野明君 しかしながら、米中の正常化がその数時間前に日本に米中双方から通告があったと。しかも、従来の安保条約のたとえ運用上あるいは解釈上の問題であるとは言え、きわめてこれは日米安保条約にとっては重大な――ただいま変質という言葉もございましたが、この点については日本政府としては安保協議委員会の改組等の問題も含めて早急にこれは詰める必要がある。特に、日本にとって、冷戦構造崩壊しつつあるとは言うものの対ソ外交の重要性等もございます。とすれば、当然これは向こうから来てもらうか、あるいは外務大臣が行かれて協議すべき問題であると思いますが、日程上はいっと、こういうことはないにしても、ほぼこれはもう確定的な問題だと、こう見てもよろしいのではないでしょうか。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどから申し上げますとおり、まだ全然決定も内定もいたしておらぬ状態がいまの状態でありますが、小野先生の御意見は十分拝承してこれを検討したいと考えます。
  30. 小野明

    小野明君 次に、これは対ソ外交の一環と言うには適当でないと思うのでありますが、そういう見方をするのは当たっていないかもしれませんが、先ごろベトナムのグェン・ズィ・チン外相が来日をされました。大臣も何回か会談をされておるようでありますが、その会談の内容あるいは結果について御説明をいただきたいと思います。
  31. 園田直

    国務大臣園田直君) 当初ベトナムの外務大臣おいでになるときに、報道機関その他は、ベトナムのソ連一辺倒に対して私が強い意見を言うのではないかと、こういう推測をされておったところでありますが、いやしくも一国の外務大臣が、よその国がどこの国とどういう関係を結ぼうと、これに対して批判を加えることはこれは内政干渉でありまして、私は一言もそういうことは触れておりません。ただ、ソ連関係は国内に軍事基地を貸与してあるのか、カムラン湾に基地を貸してあるのか、こういうことを質問しただけであります。これに対してベトナムの外務大臣は、国内のことは言いませんでしたが、カムラン湾については、米国は最新のいろんな科学的な情報収集の機能を持っているはずであってカムラン湾がソ連に貸与されておるかどうかはそれではっきりわかるはずだと、こういうふうに答えております。  私は、おしかりを受けるかもわかりませんが、ASEANの国々が、越ソで条約を結ばれた、こういうことに不安を感じているという向きがあるが、私自身はベトナムがソ連条約を結ばれようとどうしようとこれに対しては一言の批判もありませんと、現に私の方は米国条約を結んでおります、中国とも条約を結んでおるんですから、これはお互いに悪意に非難すべき筋合いではない。ただ言いたいことは、われわれは米国の側に立ち、あなたはソ連の側に立っていらっしゃる。これはその国の立場、環境等によってそれぞれどちらの側に立つかは自由のことである。しかし問題は米国の側に立ったわれわれが米国と力を合わしてアジアの平和を撹乱をするのか、緊張をさらに激化していくのか、あるいは緊張を緩和をして平和の方向に持っていくのか。ベトナムもまた、ソ連の側に立ちながらもアジアの平和と安定に貢献されていくのか、あるいはアジアの平和と安定に反対方向にいかれるのか、こういうことが大事であると。こういうことでお互いにアジアの平和と安定に貢献しようということでは、言葉の上では意見が一致したわけであります。  ただ、私が率直に申し上げましたことは、ベトナム統一戦線の場合と現在インドシナ半島における行動とは、よく状況変化を考えてやってもらわなければなかなかわれわれも協力がしにくい。ということは、ベトナム統一戦線の場合に、同じ民族であって、そしてあなた方は統一ということをなし遂げられた。カンボジアは同一民族ではありません。そこへ兵力をもってこれを統一しようとなるならばこれはまた大変な問題だが、そうじゃなくても、国境に兵力を集結し、ゲリラの拠点をつくりあるいは反政府政権をつくり、現政権を打倒し、逐次ベトナム統一戦線のときと同じようにインドシナ半島を統一していこうという気配が見られるので、アジアの諸国は非常に心配をいたしておりますと。一年前ASEANの会議に福田総理と一緒に行ったときに、特に貴国と隣国関係にあるシンガポール、マレーシア、タイ、こういう国々は、ベトナムに応分の経済援助をしたい、こういうことに対して、間接直接いかようなる経済援助であろうとも、それはひいてはベトナムの力になってわれわれに脅威を与えることになっては困るから、その点は十分留意してやってくれという話があったが、今日ではさらにその懸念が大きくなっている。したがって、そうなってくれば日本は応分の協力ができなくなるおそれがある。われわれはベトナムの開発、復興には重大な関心がある、したがって、あなたの方もASEAN、近隣関係には特にそういう点に懸念がないように理解を深められんことを希望すると、向こう努力をしますと、こういうことで、今度の二回の会談は相互理解を深めることで相当成果があった、こういうふうに考えております。
  32. 小野明

    小野明君 ベトナム外相は五百億円の供与を要請をしたと。それに対して外務大臣は、情勢を見て供与を検討するという回答をされている。いわゆる五百億円という経済協力については拒否をされたと、こういうふうに報道されておるわけですが、この点はいかがですか。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務大臣の会談と並行して事務当局同士の折衝を続けさせました。そこで、経済援助の百億、それからお米の援助、こういうことは意見がほぼまとまりました。さらにその上積みに五百億のプロジェクトの要求でありましたけれども、これはいまからやりましても明年度の予算にはのらぬわけであります。それからプロジェクトとなりますと、なかなか厄介なことではありますが、両方で相談をして、調査団を派遣し、予算を取るということになるとやっぱり再来年のことになります。そこで今度のことで五百億円上積みということはこれはできませんと、今後両方で相談をしてやりましょうと。なお、その五百億円、その他の貴国の要求がわれわれもやりやすいように、ひとつアジアの国々に対する懸念は、理解とそれから協力を求めるように御努力願いたい。なおまた、経済援助の一部は、農産物等についてはお隣りのタイからぜひ買ってもらいたい、こういう話になっておるわけであります。
  34. 小野明

    小野明君 この問題は、私ども日中友好条約を結びましたときには、お互いに第三国条項でフリーハンドというものを持ちましたですね。いまのベトナムのことを見ますというと、中国からの援助というのは全く期待できない。さらにアメリカも、ベトナムがジューブ協定を踏みにじったということで戦後の復興援助を拒否をしておるわけですね。しかしながら、ベトナムはアメリカとの国交正常化については何ら前提条件をつけないと、非常に自主独立路線といいますか、フリーハンドを持った態度でありますね。米中、日中、この影が、日米中の関係がASEAN諸国、インドシナに与える影響というのはきわめて大きな影を落としておると、こういうふうに見なければならぬわけでありまして、それから見ますと、日本に援助を求める、これを拒否すればますますこれはベトナムがソ連に対する傾斜を深めることになる、こういう結果を招来しますね。とするならば、軍事援助ならいざ知らず、経済復興援助ならば、これはベトナムの要請に大幅にこたえるべきであると、大臣の言われる懸念もわかるわけですが、このように私は考える。それがインドシナ半島の平和と安定といいますか、大国の影響を少なくするといいますか、緩和するといいますか、緊張を緩和することに相なるのではないかと見ておりますが、その辺のベトナムの援助に対する考え方を御説明をいただきたいと思うんです。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国指導者と話しましたときに、他の諸般の問題はことごとく意見は一致をいたしました。ベトナムに対するわが国の経済援助だけは真っ向から反対であります。そして、るるとしてベトナムの実情、過去の歴史、友好関係等を言われております。そこで私は最後に、あなたのおっしゃることはよくわかるけれども、日本は少なくともアジアの一角で中ソの対立が火を噴いてはならぬ、アジアの平和と安定を考える、そういう意味でベトナムに対しては応分の経済援助は続けるんだと、こういうことを言いました。  先般、ハンガリー、それからチェコスロバキア、この東欧諸国に参りましたときにも、日中友好条約というものがソ連に対する懸念、中国日本の、たとえば日本中国から引きずり込まれるという話がありましたが、ベトナムに対して中国と真っ向から対立しながら援助をしている事実はどうだと、こう言うと、わかったと、こう言われるわけでありまして、おっしゃるとおりベトナムに対する援助は、外務大臣も言いましたが、われわれがベトナムに対する援助をやるゆえんのものは、一にアジア――東南アジアの安定と平和ということのためにやるのであるからその点は御理解を願いたいと、こういうことでありました。  そこで、五百億円の上積みのプロジェクトの問題は今度出てきた問題でありますので、正直に言うと、お米が事務当局では十万トンで、これでどうしても両方とも話がまとまらなかった。そこで、私は最後の場面で、大臣決裁で五万トン追加して十五万トンにしたわけであります。そこで、外務大臣には、こうやって、あなた御承知のとおり事務当局は相当強い、しかし五万トンを追加しました、初めて日本においでになってこれでお帰りを願いたい、あとのプロジェクトの問題は今後とも相談しましょうと、こういうことであります。  いまの御発言趣旨は十分踏まえて今後そういう問題は検討したいと考えております。
  36. 小野明

    小野明君 最後に朝鮮問題に触れたいと思うのでありますが、鄧小平副総理が来日をされたときには、朝鮮には緊張はないと、こういうふうにたしかコメントされたと思います。ところが、飛鳥田代表団ソ連に参りましたときのスースロフ政治局員説明では、朝鮮は緊張状態にある、全くこう相対立する見解がございます。私はこの日本平和外交に、全方位外交にとりまして、朝鮮問題というのはいま一つの大きな対ソ外交に次ぐ問題点であろうかと思うんですね。一説にはこの米中正常化によって民族問題に変化をしたと、こういう見方もあるようでありますが、やはり民族の自決権といいますか、何よりも先にこの民族の自決権を尊重する、そして南北統一を実現をしてまいるということが最大の私は要件ではなかろうかと思うのであります。  これについて、先般日中条約の審議の際にも申し上げたわけですが、南北統一が促進されるように環境づくりを行いたいというのが大臣の御答弁であったと思うんです。じゃ一体この環境づくりとは具体的に何を指すのか、そして、この南北統一にいかなる努力日本としてはおやりになろうと思っておられるのか、そのあたりをお聞きいたします。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) 第一に、南北の間に緊張が非常に激化をしておるという意見と、いや緊張、対決の様相はないという意見両方あるわけでありますが、一方、両国が一つの線を中心にして対決していることはこれはだれも知るとおりでありますけれども、緊張が激化していないというのは、その線を踏み越えて両方が火を噴くようなことはいまはないという意味でありましょうし、また一方から言えば、緊張しているという方は、新しいトンネルが出てきたり、いろいろな利害関係が出てきておって、必ずしもまだ安心する状態にはないという意味であって、これはどちらとも軍配は上げにくいと。しかし、私はどちらかというといま火を噴くような方向にはないと判断をいたしております。  今度の米中正常化によって、南北の話し合いの問題は悪い方にはいかない、年月がかかるかどうなるか、紆余曲折があるかわかりませんが、少なくとも米中が正常化されたことによって南北も話し合いをする方向に向かったか、あるいは顔が向いたかわかりませんけれども、悪い方向にはないと、こう判断をいたしております。  日本にとって、日ソに次ぐ問題がすぐ隣国の朝鮮半島の問題であることは間違いないところであります。しかし、これも現実にはなかなか米国が中に入ろうとしてうまくいかなかったり、いろいろ問題がございます。相当年限もかかると思いまするが、わが日本はそういう中でやはり終局の目的は、その地域の民族が平和的に話し合いで統一されることを願うのがこれが間違いのない道理であり、これ以外に道がないと存じます。  そこで、いま日本は北朝鮮と話し合いをする状態にございませんけれども、それを少なくとも何か問題があるごとに――と言っても、やれ入国問題があったり、逆に話ができにくい方向へ行ったり、あるいは漁業問題では話が進みそうになったりしますけれども、いずれにいたしましても北朝鮮と日本話し合いができ、そしてなるべく早い時期に政府同士もいろんな具体的な問題で話し合いができるというように環境づくりができるように努力をしたいと考えております。
  38. 小野明

    小野明君 総論はよくわかるわけですね。しかしながら、先般十一月の二十七、二十八、二十九の三日間、東京で朝鮮の自主的平和統一を求める世界会議というのが開かれたわけでありますが、これに対する日本政府態度というのは、いわば気違いじみたような態度でこれに対処したと私は言わざるを得ないと思うんであります。日本は憲法下言論の自由はあるわけですから、ああいう厳しい制限を設けること自体が私は問題ではないのかと、これは法務省の問題でありますが、外務省サイドから言えば、もっとそういう運動に対して理解を示すべきではないのか。特に朝鮮民主主義人民共和国に対しては厳しい入国制限があるわけですが、ひとつ政治レベルにおいても交流を認めてはどうかと、これが第一点。  さらに、北朝鮮には輸銀の適用もございません。やはり経済的な自立というものがなければ、外交の自主独立路線といいますか、これはベトナムについても同様でありますけれども、自主独立路線を歩むということも不可能であろうかと思うんです。この二点について大臣はどのようにお考えでございますか。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) 環境づくりと申しますのも、一には日本と朝鮮民主主義人民共和国との間の環境づくり、それからまた国内の環境づくりもそれより以上に大きい問題であると存じます。先般の統一大会における実情は御承知のとおりでありますが、また、一方から言って、朝鮮半島の統一大会という集会で、その集会の場を提供したわが日本の国の政策を批判されることはこれは政府としては耐えがたい、許しがたいことでありますので、これは相談の結果ああいうことになったわけでありますけれども、そういう場合にも、外務省としてはやはり入国の問題であの大会ができなくなることはこれは大変な問題であるということでやったわけでありますが、結論はああいうことになったわけであります。今後、ああいうときに両方が相まって、相譲り合って、こういうことが自由にしかも楽々とできるような環境づくり、こういうことも大事であると考えております。
  40. 小野明

    小野明君 最初の点はわかりましたが、後の二点ですね、今後、北朝鮮との間における政治レベルの交流、輸銀の適用、この二点についてはどのようにお考えですか。
  41. 園田直

    国務大臣園田直君) いまのような状況でありますから、輸銀または政府間の交渉という段階ではございませんけれども、そういう方向を目指して努力をしたいと考えております。
  42. 小野明

    小野明君 そういう点がやはりこの緊張緩和といいますか、それに役立つことは言うまでもありませんし、言葉だけではなくて、実際に大平内閣の施策としてとられていくことを私要望いたしておきたいと思うんです。  最後に、最近、十一月一日でありますが、アメリカの下院の国際関係委員会、いわゆるフレーザー委員会ですね、これが最終報告を発表いたしました。二年間に及んだアメリカ議会におけるコリアゲート事件とまで言われた問題に幕を閉じようといたしております。この最終報告書によりますと、きわめて明確にアメリカと韓国をめぐる黒い疑獄事件を結論づけておるんです。いわゆる金大中氏拉致事件はKCIAの犯行であると断定をしております。さらに、ソウルの地下鉄事件のリベートが日本に還流をしておるという点も明確に記録をされておるところであります。そして、これらに対して、私は日本政府が道義的なといいますか、良心的な対応を追られておる状況であると思います。いわば朴政権に同調し、加担をする日本政府と、こういう日韓の黒い癒着というものがアメリカ議会のこの最終報告書についても指摘をされるわけでありますが、やはりこの南北の統一ということは対話なくしては成立をしない。ところが、南自体における韓国と日本との黒い癒着という問題がある。そして、言論の自由はないとするならば、南自身における対話も不足をしておる。いわゆる南北の対話というのはほど遠い実情が日本と韓国との間にある。これがフレーザー委員会の報告からうかがわれるわけであります。このフレーザー委員会の報告書について、大臣はどのように対応をされようと思いますか。
  43. 園田直

    国務大臣園田直君) フレーザー委員会の報告は、御承知のとおりに多数の意見、これに加えて少数派の意見を明記してございます。御承知のように非常に膨大な報告でありますので、ただいま外務省ではこれを詳細に検討しておりますが、詳細は局長からお答えをいたさせます。
  44. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) いわゆるフレーザー委員会は、アメリカ下院の国際関係委員会に属する国際機構小委員会のことでございますが、今般発表されました同報告書の前書きと送付状を検討いたしますと、三点述べておりますが、第一点は、本報告書は国際関係委員会による検討のために提出されたものである、第二点は、本報告書記載の事実関係、結論、勧告は同小委員会の多数派の見解を示すものである、第三点は、国際関係委員会全体の委員見解を必ずしも反映するものではない、こういうふうに書いてあるわけでございます。  また、この報告書には、後段の部分に同小委員会の少数派の見解がありますが、この少数派としては、本件報告書に関して完全な支持を与えるものではないということが付記されておるわけでございまして、私どもとしては、このフレーザー委員会の報告書はこのような性格を持つ文書と受けとめまして、本報告書は十一月一日、御指摘のときに発表があり、二冊にわたる付属書が十二月に入りましてから発表になり、さらに証言の記録がその後発表になりました。これらが逐次到着いたしましたので、いま大臣が申し上げましたとおり、相当膨大な記録でございますけれども、現在詳細な検討を続けている段階でございます。
  45. 小野明

    小野明君 検討中であるということはわかりました。  そこで、大臣も大平新内閣の大臣に再任をされたわけであります。私はこのフレーザー委員会の指摘というのは、大平新内閣の道義性といいますか、こういう問題にどう対処するかを問われる報告書と、こう見たい。同時にまた、昨日から問題になっておりますように、ダグラスの問題もございます。これらに、やはり日本の政治が世界から問われておるという点を厳しく受けとめて、政治腐敗、政治道義の腐敗というものにえりを正して臨んでいただきたいと大臣に要望をいたしておきたいと思うのでありますが、この点の御見解を承りたいと思います。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) こういう問題は御指摘のとおりでありまして、少なくとも疑惑を晴らすことになるのか、真相を究明することになるのか、厳然たる姿勢で厳しくその事実の究明をしたいと考えております。
  47. 小野明

    小野明君 終わります。
  48. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初に、いまも小野議員から指摘があったわけですが、ロッキード問題に続きましてまたダグラス社問題が新たに提起をされたわけです。これはいずれもアメリカ側から発表された事件でありまして、まことに日本国民として不愉快でならないというふうに思います。ダグラスの問題の内容についてはきょうは省きたいと思いますが、大平内閣誕生以来初めて御出席の外務大臣でありますので、次のことについてお答えをいただきたいと思うのです。  それは、昨日もあったわけですが、ロッキード問題調査特別委員会につきまして、与党自民党側から解散の提起が行われているわけです。これは調べてみますと、この一年間だけでも数回に及んでいるわけです。与党の気持ちもわからないわけではないわけですが、しかし、ロッキード問題の国会におきます調査、追及、真相の究明ということは非常に大切なことであります。当然、司法当局による裁判も進んでいるわけでありますが、裁判は裁判といたしましても、政治の分野から見たロッキード問題の追及というのもこれまた大切なことだろうというふうに思います。  今回またダグラスの不正問題が発生をしているわけですから、政府自身としても毅然たる態度をとらなきゃいけない。特に私は、大平新総理大臣が合意と信頼ということを、予備選挙中もあるいはその後もしばしば政治信念として言われております。あるいは和の政治ということを言われているわけですが、これを善意に解釈すれば、開かれた政治、それに向かって国民との間に十分なコンセンサスを得たいという気持ちのあらわれではないかというふうに思います。そういう際に、大平新内閣が求めて和の政治あるいは信頼と合意ということを言うならば、まず第一に政治の姿勢として明らかにしなければならないのは、一番国民が不愉快に考えておりますロッキード問題の徹底的な究明、また新たに生まれたダグラス社問題についての真相究明ということが求められなければならないというふうに思います。  その立場から言いますと、与党の提案というのははなはだ不愉快でしようがない。これはいずれ国会の中の問題として議論をするわけですが、仮に十分審議が尽くされて、与野党合意のもとにこのロッキード問題調査特別委員会が解散したというならば、これは喜ばしいことだと思うんです。しかし、当の疑惑を持たれております方々の方からしばしば提起されるということについては、きわめて遺憾の至りだと思うんです。仮にこの調査特別委員会が衆参両院から消滅をした-合意に基づいてこれが解散になるなら問題ないんですけれども、そうでない状況のもとに、解散しろ、委員会を閉じろというふうに言うのは、私は国際的な信義あるいは国際的な日本の信用という問題から見てもこれは重大な問題だと思うんです。  現にダグラス社の問題につきましては、すでに報道もされておりますが、オランダの政府は、わが国にはこの本問題に関係がないかどうかということで、すでに政府自身が調査を始めているわけです。そのように国民に対します政府の責任あるいは政治の信用というものについて、それぞれの国は非常に慎重に構えているわけです。  以上のようなことから考えてみまして、直接委員会の構成には関係ないとは思いますけれども、国際的な立場からいってみて、外務大臣としても何らか真意を明らかにしてしかるべきじゃないかと私は思うわけですけれども、その点についてまず外務大臣の御意見お尋ねをするところです。
  49. 園田直

    国務大臣園田直君) このような問題に対する姿勢は御発言のとおりだと私も考えます。今度の特別委員会の存置に対する問題は、これは党の問題でありますから私はお答えはいたしませんけれども、少なくともこういう事件に対しては、疑惑であるならば疑惑であったと国民が納得するまで、あるいは疑惑でなくて事実そういうことがあったとするならば、これをあくまで徹底的につらくとも究明することが、国民、国会に対する政府の信頼を得るただ一つの道であり、またその責任と義務があると私は存じております。今度のダグラスの問題につきましても、ただいま入手いたしました四つの種類ではどのようかという断定をすることはできません。しかし、日本に何もなかったと断定する資料もないわけでありまして、むしろ会社側に対して不正その他のことがないか調査をしろという調査の国が日本の国へも入っているわけでありますから、しかもいろいろ金額等も言われておる状態でございますから、外務省としてはまず全力を尽くして事実を察知するためにいろんな資料を集めることに全努力を傾け、そしてその経過によって、必要なものであれば国会でも追及がありましょうし、またわれわれは政府として関係の運輸省とか法務省とかという、特に検察庁、法務省、こういうものと協議をして、これに対して自由に法務省が機能を発揮できるようにやる義務があると考えております。
  50. 穐山篤

    ○穐山篤君 ロッキードにしろ、あるいはダグラスの問題はそれぞれアメリカから指摘をされた。これは賄賂が使われたというふうに、技術的に言えばあるいは物理的に見れば金銭問題に限られるわけですが、私は少しこれらの問題を考えてみましてやや不信の念にかられることがしばしばあるわけです。  と申し上げますのは、たとえばロッキード事件の場合、あるいは今回のダグラス社の問題についてまだその背景がよくつかみ切れませんけれども、単にそれは金銭的な問題だけでなくして、それを包みます日米の通商問題あるいは日米外交問題がこれらに無関係ではないんじゃないかというふうに思うわけです。もちろん私は私どもの推測あるいは資料に基づきますので正確ではないと思いますけれども、ロッキード問題なんかでは明らかに単なる金銭問題でなくて、その他の外交問題あるいはその他の通商問題で日米で非常にやつかいな問題が解決しないために、解決を図ろうとするアメリカの意図が背景にあってこういう問題が出てくる。これは何もロッキード問題に限らず、その他の問題でもしばしばある事柄なんです。今回のダグラスの指摘につきましてはよくつかみ切れておりませんけれども、そういう点について外務大臣は何らかお考えがありますか。
  51. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの先生の御発言は、私が理解できないわけではありません。十分理解できます。いろんな問題が出てくる、これを究明する、そして究明したならやはり今後こういう事件が起きないようなことも考えなきゃならぬわけでありますが、それは単に日本側だけがえりを正し、姿勢を正しというだけではなくて、やっぱり多国間にわたる企業のあり方について、国際的にこれを何らか規制する方法なども考えていかなければならぬのではないかと考えておるところであります。
  52. 穐山篤

    ○穐山篤君 まあいま外務大臣、気持ちの上では私が指摘したこととほば同じようなことを言われているわけですが、やっぱり日米外交問題あるいは通商その他の問題、いろんな厄介な問題がありますけれども、ロッキードに次いでダグラスが出てくる、あるいはボーイングが出てくる、以下何々というふうに、常に日本外交問題に対してアメリカ側からそういった贈収賄事件などの角度から追及されるということは、これから一生日本がその種の問題について十分な配慮をしていかなきゃならないということをある意味では指摘をしているわけですね。日本外交の弱点を常に持たれながら日米外交あるいは通商ということがこれからも続いていくということは、私は好ましいことではないというふうに考えます。しかしまあ、きょうはそれ以上のことを申し上げるつもりはありません。  さて、その次に米中の国交樹立の問題でありますが、先ほどの御答弁の中でやや不鮮明、不正確な部分がありましたので、お伺いをしたいと思います。  外務大臣は、この米中の国交樹立について、予想よりも少し早かったというふうに言われているわけですが、まあ現実に北京におきます中国アメリカの連絡事務所との折衝、あるいはワシントンにおきます両国の折衝というものはずっとあったわけですね。したがってまあ、それぞれの大使館あるいはその他から十分適切な情報を持っていたと思うわけです。しかし、予想に反して非常に早かったという何か決定的な理由、背景というのはおありでしょうか。
  53. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど申し上げましたとおり、米中の正常化については、進展の状況、具体的な交渉の問題等はいささか存じておりました。われわれは、まあ私も予想よりも早かったと、こう言ったわけでありますが、予定よりも早めたというのが事実のようでありまして、その早めた理由というものは、諸般の国際情勢、それから中間選挙が終わった米国の国内情勢、あるいはどうも情報が漏れそうになったと、こういう諸般のことで少し両国で早めたような気がいたすわけでございます。
  54. 穐山篤

    ○穐山篤君 これはまあ私の推測ですが、外務省としては、いずれ米中の間に国交の樹立が行われるという、速度が速まっているということは、これはどなたでもわかっていたことだと思う。さて、その重大な節目になる一つとして、中ソ条約の事実上の消滅といいますか、破棄といいますか、これが境目になるというふうに判断をしておられたのかどうか、それ以降になるんじゃないだろうかというふうにお考えになっていたでしょうか、その点いかがです。
  55. 園田直

    国務大臣園田直君) 中ソ同盟条約の破棄は、最初に鄧小平副主席が私に言われたのが意思の表明の最初であり、その後国際的にも意思を表明されたようであります。したがって、この米中正常化というものが中ソ同盟条約の破棄の前とか後とかという要素は余りなかったのではないかと存じます。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 さて、少し予想より早かったという御判断の中の範疇に入るわけでしょうけれども、米中の国交が樹立をされると、近い将来されるという見通しに立ったとしてみても、台湾の措置について、そのものずばり米台条約は破棄をする、国交の断絶をするというふうに想像といいますか、予定をされておったんですか。
  57. 園田直

    国務大臣園田直君) 台湾からの米軍の撤退、米台条約の破棄、それから実際上の通商、文化交流その他以外の問題は正式の外交関係はなくなる、こういうことは想像をいたしておりました。
  58. 穐山篤

    ○穐山篤君 さて、安保条約第六条の点につきまして、先ほどの御答弁では、これは解釈の問題だと、運用の問題だというふうに説明見解表明があったわけですが、しかし、日米安保条約を結ぶ前提条件、あるいは結んだときの考え方というのは、フィリピン以北、台湾を含む全体の地域を想定をし、固定をして日米安保体制というものをつくったわけですね。ですから、全体の日米安保体制に対します少なくとも地域の問題について言えば、基盤が全く変わったというふうに考えることが正当だと思うんですが、その点いかがですか。
  59. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 先生御承知のとおり、日米安保条約はその前文におきましても、それから他の諸条、ことに第六条におきましても、「極東における国際の平和及び安全の維持」ということを言っているわけでございます。  そこで、御想起いただけるかと思いますが、この旧安保条約の改定をやりまして新しいこの条約ができましたときに、安保特別国会におきまして、この条約におきますところの極東極東における国際の平和、安全というところの極東というものとして、政府はいかなる範囲を考えているのかという点についての御論議がいろいろ行われまして、そして政府といたしましては、アメリカとも打ち合わせの上、その極東範囲というものをどういうふうに考えているかという点についての統一見解を出したわけでございます。それがただいま言われているところの極東範囲ということになっており、いままでのところ台湾地域もこれに含まれるということで来ているわけでございます。  したがいまして、先ほど来外務大臣もおっしゃっておられますように、この条約にあらわれるのはあくまでも極東ということでありまして、その極東の概念を具体的に条約の運用との関係でどういうふうに考えるかということがこの政府の統一見解になっているわけでございますから、その極東の問題というのは、いわば条約極東の解釈をどういうふうに考えるかという問題ということに相なるわけでございます。
  60. 穐山篤

    ○穐山篤君 その点少し政府側は、日米安保体制、日米安保条約に対します物の考え方、あるいは日米安保体制、安保条約に対します日本の周り、周辺の国々からの評価というものについてずいぶん甘い考え方を示しているんじゃないかというふうに思うわけです。  確かにいまお話がありましたように、この第六条の地域の解釈につきましては、まあ二転三転と言えば語弊がありますけれども、変化したことは承知をしております。しかし、いまも指摘がされておりますように、日米安保体制というのは、最初からこの地域を、全体の地域というものを固定をしてといいますか、想定をしてといいますか、極東の安全、平和というものを目指したものになるわけですが、台湾の部分が今度消えるわけですね。それは丸い物の中から一部がなくなったというふうに解釈をするのは、非常にそれは何といいますか、日米安保条約に対します日本をめぐる周辺からの注目といいますか、あるいは評価というものに十分こたえていない。また、私ども自身としても考えてみますと、まあ私どもは変質というふうに指摘をしているわけですけれども、ずいぶんそれは変わったわけですよね。変わったものを皆さん方の方では、いや別にそれは変わってないんだと、中に一つあるほくろが取れただけだというふうにおっしゃろうとしておりますけれども、これは非常にあいまいな解釈じゃないだろうかというふうに思いますが、もう一度その点はっきりしてください。
  61. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 条約に即して御説明申し上げますと、ただいま申し上げましたように、極東範囲が問題になりましたのは、ことに条約第六条との関係で、第六条が、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」にアメリカ合衆国の軍隊が日本の施設、区域を使用することができるということになっておりまして、米軍のわが国における施設、区域の使用の一般的目的を表示したところに極東という言葉が出てくるということでございます。これは米軍の行動の範囲をここで決めたということとは違うわけでございます。施設、区域の使用の一般的目的を示したもの、こういうことでございます。その極東というものをどういうふうに理解するかという点で、先ほど来申し上げておりますような極東政府統一見解というものが出て、そしてこの条約で、極東というものはそもそも地理学的に正確に固定されたものではないということを申して、そして具体的にはそのような地域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾の地域もこれに含まれると、こういうことになっているわけでございます。  そこで問題は、いまの近く達成されますところの米中の国交正常化、ことに一年後に米台防衛条約が消滅するという事態に照らして、この極東との関係が生ずるかということが問題になっているわけでございまして、その点につきまして、先ほど外務大臣お答えになっておられますように、台湾をめぐる武力紛争が、すなわち具体的に安保条約第六条の適用という事態台湾との関係で発生する可能性というものは非常に少なくなっているんじゃないか、こういう判断があって、その判断に基づいてこの問題を先々の問題としてどう考えていくかという点について、現実の事態、米側の考え方をも踏まえながらいろいろ検討していこう、こういう外務大臣のお考えを先ほど述べられたという関係に立つわけでございます。
  62. 穐山篤

    ○穐山篤君 そうしますと、米台条約が破棄をされる。それに関連をして在日米軍の軍事行動範囲といいますか、それは台湾の部分についてはどういうふうな変化になるんですか。
  63. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) まず一般論といたしまして、先ほど申し上げておりますように、極東範囲というのは米軍の行動の範囲を限局したものということでは本来ないわけでございます。これは安保国会以来たびたび政府が御説明しているとおりでございます。  その一般論の上に立ちまして、現実に第六条を使って、米軍が台湾との関係日本の施設、区域を使って行動することがあり得るかという点の御指摘かと思いますが、この点につきましては、もちろん理論的にそのようなことがあるとすれば、事前協議を通じてわが国の同意が必要であるというのが安保条約のもともとのたてまえになっておりますけれども、ただ問題は、日本の施設、区域を使って台湾地域との関係で米軍が行動する実際上の可能性がどれだけあるのかという点につきましては、従来からも、上海コミュニケを出発点といたしますところの米中間関係改善の動きというものが七二年以来生じてきており、そして今般米中間では国交を正常化する、そして米台条約も一年後には消滅する、こういう事態に照らせば、いま申し上げましたような第六条との絡みでの台湾地域に対する米軍の行動というものの現実の可能性というものは非常になくなっているというふうに考えるべきではないかという点を、先ほど外務大臣がお述べになられたものだというふうに考えております。
  64. 穐山篤

    ○穐山篤君 先ほど外務大臣は、安保条約の見直しについて、すでにアメリカにも問題の提起をしているんだと、こうさらりと言われたわけですが、今後この範囲の中にいまの台湾の部分も入ることになるんだろうと思いますけれども、いまの説明がありましたように、日本の施設を使用して米軍が台湾周辺で軍事行動力をとることは、可能性として非常に少なくなる、まあなくなると、こういう見通しを言われたわけですが、そうしますと、もう一遍前に戻りますけれども、少なくなる、なくなるという前提条件に立つとするならば、そこの部分だけの紛争あるいは軍事行動力がなくなるという意味だけでなくして、これはそれを包む全体の在日米軍の軍事行動力にも大きく変化を来したことになるわけです。ですから、私は先ほど、これは極東という地域の中からほくろが一つ取れたんだというふうに軽く考えてもらっては困ると言ったのは、実はそこにあるわけです。  先ほどさらりと言われた安保見直しの中に、当然在日米軍がこれから、まあ事前協議は当然あるんだろうと思いますけれども、台湾地域を含む軍事行動力の点についての見直しということもわが方としては要求をしなければならぬ問題だというふうに思うわけです。まあ台湾の条項、あるいはベトナムからアメリカが撤退をしたということによりまして、在日米軍の装備、軍事力全体にも重大なかかわり合いが出てきたわけですね。したがって、日本立場とするならば、当然日本の安全あるいはアジアの安全ということを十分に考えるにいたしましても、必然的に在日米軍についての力量の低下といいますか、もっと具体的に言えば、戦力の問題について修正をしなければならないということに必然的になるわけですね。その点についてはいかがお考えですか。
  65. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 台湾地域をめぐりまして武力紛争が現実に発生する可能性が少ない、恐らく事実上ないだろうという点につきましては、一九七二年に米中間関係が改善されて上海コミュニケが出されましたとき以来、可能性の問題としてはそのような認識があったわけでございまして、従来とも政府はそういう認識をこの国会でも述べておるわけでございます。  他方、在日米軍の関係でございますけれども、米軍の台湾における駐留軍隊自身が、上海コミュニケの線に従いまして漸次減少をしていって、現在は七百人か八百人程度しかいない。これも来年の四月までには全部引き払っていくというような実態があるわけでございまして、在日米軍の体制につきましても、そのような実態に即した体制が従来からもとられているものだというふうに考えているわけでございます。  先ほど来御提起の問題は、安保条約極東における国際の平和、安全ということを言い、その極東としてどのようなことが観念されているかというその全体の安保体制の仕組みというものが一方あるわけでございますが、この仕組みそのものは、日中の今度の友好条約につきましても、それから今度の米中の国交正常化につきましても、その日米安保条約の全体の仕組み、枠組みというものには触れることなく、かかわることなくこれらが達成せられたという点におきまして、その枠組みというものに直ちに何らかの改変が生ずるということはないというふうに考えているわけでございますけれども、なおかつその上で現実に台湾地域をめぐる武力紛争の可能性がなくなってきたということを踏まえて、この辺をどういうふうに先々の問題として考えるかということが先ほど来申し上げている点になるわけでございます。
  66. 穐山篤

    ○穐山篤君 いまもお話があるわけですが、仮に政府が主張します、これは解釈、運用として外せばいいんだということになったとしてみても、その在日米軍の台湾周辺におきます軍事行動力というものは理屈上は残るわけですね。いまもお話があるとおり、論理上は残るわけです。しかし、米中の国交樹立あるいは日中の平和友好条約締結、批准というふうに、可能な限り平和への努力をしよう、しなければならないという立場に立つならば、日本政府として、論理的には台湾周辺におきます在日米軍の軍事行動力が残るにいたしましても、論理上残るにいたしましても、政策、政治の問題として、日本政府アメリカに対して、ここの部分についての抑止――抑止といいますか、軍事行動力をとどめる、あるいは封ずるといいますか、そういう努力は行うべきではないかというふうに考えますけれども、その点いかがですか。
  67. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 必ずしも先生の御質問の真意をつかんでいないかもしれませんけれども、在日米軍は、いま台湾地域における事態との関連で特別な軍事体制を組んでおるということはないと思います。軍隊でございますから、一般的な軍事戦闘能力というものはこれは蓄えて体制を整えているわけでございますけれども、そのうちこれが台湾との絡みの部分だというようなものがあって、それが在日米軍の中に備わっておるというようなことはあり得ないことであろうというふうに考えているわけでございます。
  68. 穐山篤

    ○穐山篤君 意見の違いがあるところはやむを得ないと思います。  さてその次に、日中平和友好条約を結び、日本は積極的に中国の近代化に手をかそうと、協力援助をしようと、こういう方針を掲げて国自身も積極的な具体的な政策を発表しておりますし、それから民間の部門におきましても、積極的に協定を結び、あるいは交流を行い、あるいはいろんなものについての協議に入っているわけですね。日本の産業界あるいは金融界としては、この日中貿易の拡大に非常に意欲的だし、また期待をしておった。  さてここに新たに米中の国交が樹立をした関係で、アメリカも積極的に中国との通商貿易というものについていままで以上に拡大をしていこうということは当然の理だというふうに思うわけです。そうしますと、再びここで日中、米中の間で、貿易戦争と言えば大げさになりますけれども、貿易通商の問題についてかなりの競争関係になってくるわけです。日本は全方位外交、仲よくしていこうということですから、トラブルはできるだけ避けていくということはよくわかります。しかし、現実にいま鉄鋼にしろあるいは石油の探査、発掘にしろ、いろんな分野に手を出しているわけです。日中の貿易を、米中の貿易の拡大に伴いまして、いままで日本政府あるいは産業界が持っておりました日中間の貿易体制なりあるいは通商の方針を変える気があるかどうか、あるいは変えなければならないのかどうかということをごく概括的にお尋ねします。
  69. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度アメリカ正常化を早めたという理由の一つには、アメリカ財界の突き上げがあったのではないかということが情報として流れております。日中友好条件締結後、ヨーロッパの諸国及びアメリカが、日本が貿易通商関係中国関係を独占するのではなかろうかという不安があったことは事実であります。当初から私は中国指導者と、そういうことになっては中国の近代化もおくれると、それからなおまた近代化は年限を急いでおられる、日本のみでできることではない、したがって、これは排他的にならずに、米国、ECの協力も正当に求められたがよかろうということで意見が一致をしておったわけであります。そこで私はそういう意見を開陳し、また鄧小平副主席は、しばしば場所をとらえて、中国の近代化あるいは通商貿易は日本の独占ではない、正当に競争をしてもらって条件のいいところと協力をしたい、条件が同じなら日本だと、こういう趣旨のことを言われておったわけであります。  したがいまして、米中正常化によって米国の企業その他が中国の近代化に協力して、一面には自分たちの分野を拡大しようということは当然考えられるところでございます。しかし、私はこれはやはり米国やEC諸国等もどんどん入ってきて、世界の関係諸国が協力をして中国の近代化を助けることがいいんじゃないか。特に日本協力できない面もあるわけであります。したがいまして、その過程においてやっぱり競争が出てまいりますといろいろぶつかることもあると思います。しかし、それは両方政府がそういう個々の利害が政治問題化しないように懸命に努力をする必要があると考えます。また、日本の企業も、過大な希望を中国の貿易通商に抱くことはこれは慎むべきであると考えております。
  70. 穐山篤

    ○穐山篤君 次に、朝鮮半島あるいは竹島の問題に移りたいと思いますが、米中国交樹立に伴いまして、わが国のインドシナに対する政策あるいは朝鮮半島、ソビエトに対する方針、問題というのは、相当これから急がなければならない課題だと思うんですが、目の前に一つぶら下がっておりますのが例の竹島問題です。これは前回の日韓大陸だなの協定の承認の際に集中的に審議をいたしましたので、多くを繰り返すつもりはありませんけれども、竹島問題の解決は時間を急がなければならない、こういう状況にあることは間違いないと思うんです。  さてそこで最初に、竹島の上に韓国側の警備が装備されているわけですけれども、前国会で御説明がありました装備以上に変化があったかどうかという問題がまず第一。  それから、お伺いをしますと、ことしのイカの操業につきましては、例年になく不作だというふうな情報も聞いているわけですが、この安全操業の点がその後どういうふうに確保されているのか、あるいは竹島周辺あるいは竹島の以北のイカ釣り漁などの実際の状況について、ことしの模様はどうなっているのか。やはり安全操業ということを確保するために海上保安庁で種々御苦労されているわけですけれども、この日本海側の保安庁側の竹島を包みます巡視の状況についてあらかじめお伺いをします。
  71. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御指摘の韓国の問題でありますが、まことに外務大臣として恥ずかしい話でありますが、韓国は隣国であり、日本と特殊な関係にあると言われながらも、大臣として諸般の問題を進めてまいりますのに、一番やりにくくて一番話が進まないのは韓国であって、まことに残念だと考えております。先般の日韓閣僚定期会議におきましても、私は領土問題を全体会議の中で取り上げたいと思いましたが、これはかなわず、外務大臣同士の会談に移したわけであります。この領土の問題は残念ながら平行線のままでありまして、前進はいたしません。ただ、これが紛争地帯であって、今後ともこの話は続けるということで辛うじて外務大臣は帰ってきたわけでありまして、領土問題については一言の前進も、約束も取りつけ得なかったというのが実情であります。  ただし、いまの漁業の問題は、これは領土の問題と違って、漁によって生活をしている漁民の問題であるから、この竹島問題の経緯にかんがみ、この操業というものがうまくいったからといって日本外務大臣は、だから領土問題は一歩前進したなどとそういう汚い絡み合いはさせないから、領土問題は今後とも続けてやるということで結構であるから、漁業の問題だけは双方で安全操業できるように善処しようじゃないかと、こういうことで、共同記者会見では両方大臣が立ち会ってその趣旨のことを発表したわけであります。  その後、選挙や国内事情、いろいろむずかしい問題がありましてなかなか進んでおりませんが、いまなお粘り強く、しかも何とかしたいと考えてやっているところでございます。具体的な問題については事務当局からお答えをいたさせます。
  72. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) いまの御質問がございましたうち、竹島の実情はどうかと、構築物がふえたんではないかという御質問がございましたが、これは御承知のとおり、従来より海上保安庁にお願いしまして、大体少なくとも年に一回この竹島の海上保安庁の巡視艇によります巡視をしていただいているわけでございます。今般も八月二十九日に巡視船「くずりゆう」によってこの巡視をしていただきました。詳細についてはあるいは海上保安庁から御説明するのが適当かと思いますが、この巡視によって視認されたところによりますと、従来からわが方が要求しているこの施設、構築物の撤去が行われていないのみならず、既存の建築物につきまして増築あるいは新築されたものがあることが確認された次第でございます。これにつきましては、十一月に入りまして海上保安庁からの報告を受けまして、口上書によりまして重ねて韓国側に対して抗議をいたし、撤去方を申し入れた、そういう外交上の措置をとった次第でございます。  漁業の実態については水産庁の方から御答弁いただけると思います。
  73. 橋本隆

    説明員(橋本隆君) 本年度におきます日本海でのイカ漁、特に竹島周辺の実情につきまして御説明申し上げます。  昨五十二年におきましての日本海でのスルメイカの漁獲量は、昨年は一昨年に比べますと不漁でございました。二十万トンやや下回る程度の漁獲であったと、かように考えておるわけでございますが、日本海のイカは資源的に見まして三つグループがございまして、夏に生まれるグループ、秋に生まれるグループ、冬に生まれるグループとございます。  夏に生まれるグループというのは、数量的には少のうございまして、能登半島から西の本土の近く、あるいは離島の周辺で、夏に産卵いたしまして岸近くを回遊する、余り回遊経路は大きくない、このような性格を持っております。  それから秋に産卵発生いたしますイカが、これが現在日本海のイカの七、八割を占めるという主群でございまして、これは対馬から五島沖の方面で秋に産卵いたしまして、日本海、ずっと沖合いの方を春からえさを求めて回遊北上いたしまして、秋にまた南下してまいって産卵行為を行うと、このようなことでございます。  それから冬生まれのグループ、これは量的にはさほど大きいものじゃございませんが、産卵時期は、産卵場は秋生まれとほぼ同じということでございまして、回遊の状況はやはり春から北へ上りますが、どちらかというと本土寄りのコースを通って上って秋にはおりてくる、このようなことでございます。  ところで、本年の状況でございますが、本年春から夏にかけましての竹島の周辺の実情は、冒頭申し上げまた夏生まれ群が岸の近くに滞留いたしまして、漁場の形成が五月解禁以降見られたわけでございます。  ただ、イカ漁業の主力をなします秋生まれの群につきましては、えさを求めての北上が例年よりもかなりことしは早うございまして、したがいまして、竹島周辺におきます春の時期の漁場形成の期間は比較的短期間でございました。本年は日本海の表面水温が非常に高うございまして、その高水温の影響がわりあい後まで影響があったというようなことで、本年のイカの魚群は長い間北海道の西沖のいわゆる武蔵堆といわれる辺、それから沿海州沖に長く滞留いたしまして、その後秋になりましても南下がおくれ、例年竹島周辺を通過するというその十月ごろになりましても、なお朝鮮海湾とかあるいは大和堆の周辺にずっと漁場の形成を続けておるというような状態が現在まで続いておるわけでございます。  で、秋生まれのグループ、主力をなします秋生まれのグループは、もう十二月でございますので、ほぼもうこの漁期は完了いたしておりまして、現在のところ冬生まれのイカをとっておるわけでございますが、群がかなり薄くなりまして、一部の漁船は黄海の方面にも出漁しておると、こういう実情でございます。今後だんだんしけもふえますので、次第に終漁に入るのじゃないかと、このように考えられるわけでございまして、今後も竹島周辺で主漁場を形成するという見通しは比較的少ないんじゃないかというように、各水試等から発表いたしますデータでは見られておるわけでございます。  本年の総括的な漁獲状況につきましては、秋になりましてわりあい大和堆周辺での漁獲が回復いたしまして、昨年にほぼ近い漁獲量ではなかろうかと、このように現在見ておるところでございます。
  74. 穐山篤

    ○穐山篤君 大臣、この前の竹島問題の集中審議の際に、私どもはこの竹島の帰属の問題について政府外交努力を強く求めたわけですね。しかし、いまお話がありますように、竹島の上にあります韓国側の警備あるいは設備というものが新たに増強されるという状況でありまして、既成事実をどんどんどんどん拡大をしていっているわけです。そのことについて、なぜ日本政府が強力に韓国政府に対して突っぱねることができないのかということを非常に不審に思うわけです。時間がありませんから余り過去にのぼることはやめたいと思いますが、日韓間におきますいろんな歴史を調べてみますと、領海の問題あるいは竹島の問題に関連をして、昭和三十八年、一九六三年の一月の九日の日に、自民党大野副総裁が、アメリカの調停で竹島というものは日本と韓国、日韓共有が可能だという言明をした歴史が残っているわけです。一国の与党の副総裁が、この竹島の帰属の問題について大変な発言をしたことが歴史的に残っているわけです。その一月九日の後、二十六日の日に、池田総理大臣が大野自民党副総裁の日韓共有の話を否定をしましたけれども、やはり韓国側はこの大野副総裁の言明というのを非常に重視をし、あるいは意を強くしたと思うわけです。それ以来膠着状況にあるわけです。  そこで、大臣は引き続き協議、交渉を継続するというふうに言われましたけれども、先ほども指摘をしましたように、朝鮮半島の平和の問題を解決するためにも、この竹島問題というのは一刻も早く解決しなければならない民族的な私は問題だというふうに思うわけです。何が原因で本問題の解決をおくらしているのか。あるいはその真の理由というものがあるはずなんですよね。もっと日本政府が強力な外交交渉というものをしなければ、この民族的な問題、帰属の問題は解決しないというふうに思います。これからどういう手続で竹島問題の帰属について解決を図るのか、もっときちっとした方針を明らかにしてもらいたい。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) 竹島問題が重要な問題であり、これを解決しなければならぬことはおっしゃるとおりでございます。先般は残念ながら時間もあり、漁業の操業問題もありましたから、いままでは御承知のとおりに韓国は竹島の問題は紛争地帯ではない、これはもう自分の方に決まっているんだと、こういう態度を取り続けておったわけでありますが、かろうじてこの問題でさらに協議を続けるという、まあ小さい針をぶち込んだだけで、これはこの前の定期閣僚会議は終わったわけであります。  残念でございまするが、実情はそのとおりでございまして、なおまた、逐次兵舎とか建物構築をして実績を積むということについては、私自身からも直接抗議をしたこともあります。あるいは出先やその他の方法を講じて、厳重に現状から、いろんな構築物その他をつくられぬようにという抗議はいたしておりますが、現状はごらんのとおりであります。わが国としては交渉を続け、何とかして国際裁判所に持ち込むか、あるいは両方で解決するか、必死の努力をしたいと考えておりますが、実力行使に対してこちらが実力行使ができない現状でありますから、粘り強く外交上で進めていく以外に道はないと考えております。
  76. 穐山篤

    ○穐山篤君 いまの問題はひとつ決意を新たにして強力な交渉を期待をします。  さて、もうあと十五分しか時間がありませんので、次に移らしてもらいます。  それは、きのう、おとつい、例の東京ラウンド、多角的貿易交渉が日米間の問題につきましてはめでたくまとまったようです。ただ、ECについては調整が大分あって、来年の春というふうに報道されているわけですが、日米間で関税問題が円満に運んだことは評価をしますが、さて、いま日米の間の通商貿易問題で依然として未解決といいますか、問題がエスカレートしております問題の一つに、例のダンピング課税の問題があるわけです。これは日本の電機業界はもちろんのことでありますが、これからの日米の通商問題に重大な影を投げかける問題でありますので、ダンピング課税の問題について取り上げたいと思うのです。  御案内のとおり、一九六八年三月にアメリカの電子工業会からアメリカの財務省に日本メーカーを提訴をしたのが事の始まりでありまして、すでに十年の経過をたどっているわけです。その経過を一つ一つお尋ねをしておったんでは時間が経過をしますので、現在時点におきましては、もはやアメリカのメーカーからの問題提起でなくて、主は、メーカーからアメリカの財務省に紛争の相手が変わったわけですね。アメリカの財務省と輸出業者との間にいま起きております紛争の中身、これはもうごく中心的な事柄で結構ですけれども、何が問題でどれだけ請求をされておって、さらにこの解決のためにいまどういうふうな状況になっているかというところを、しぼってひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  77. 園田直

    国務大臣園田直君) 東京ラウンドの問題は、政府調達の問題と政府側との問題を残して一応日米の間はまとまりました。米国とEC、日本とECの間はまだまとまっておりません。  いま御指摘のカラーテレビダンピングの問題は、経過は先生御承知のとおりでありますから経過は申し述べません。日本はガット委員会に、この物品税方式は、これは不当であるということで提訴を取り上げております。具体的なことについては事務当局から申し上げます。
  78. 小林久雄

    説明員(小林久雄君) 先生御指摘のとおり非常に大きな問題でございます。  まず、どういう点が問題かと申しますと、いわゆる物品税方式という非常に新しい方式でダンピングの課税を行うということでございまして、簡単に申しますと、本来、非常に複雑な商取引関係で国内の価格と輸出価格を比較してその差額がある場合にダンピング税を課するというものでございますが、この物品税方式はきわめて簡単な方式によりまして課税を行うということでございます。そういうようなことになりますと、販売事情の差異を全く無視をするというようなことになるわけでございまして、これは国際的なルール、ガットのルールに照らしましてもきわめて問題があるということでございます。  現在、ことしの三月の末日でございますが財務省が決定いたしましたのは、一九七二年及び七三年前半の輸出分につきまして課税を査定をいたしまして、税額としまして四千六百万ドルを支払うようにということを公表しているわけでございます。私の方といたしましては、こういうような不当な方式が強行されることになりますと、単にテレビのみならず、先生も御指摘のように、日米貿易全般に大きな混乱を招来するおそれがある、また先ほど申し上げましたように、国際的ルールに照らしても問題があるということでございまして、三月以来再三にわたりまして納得のいく解決が得られるよう、かつその納得が得られる方式が、合意といいますか、得られるまでダンピング税の徴収を猶予するようにということで、事あるたびごとに再三にわたりまして強力にアメリカ側に抗議を申し入れてきているところでございます。今後ともそういう方針で積極的に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  79. 穐山篤

    ○穐山篤君 事実を確かめておきたいんですけれども、一九七七年のたしか七月に、対米のカラーテレビの輸出につきまして、政府指導もかんで自主規制に入ったと思うんですね。その前の四月にアメリカの財務省は輸入保証金額というものを約二割、二〇%引き上げたということになっているわけですね。日本の業界あるいは政府側としても、できるだけトラブルを避けたいという意味で自主規制を始めたわけですが、その自主規制を行った際に当然日米間の協議があったと思うんです。その協議というのは、私の知っている範囲で言うと、自主規制をやるからこのダンピング課税を含むいろんな問題についてはなしにしようじゃないかというふうに私は事実を理解をしているわけですけれども、その点は間違いないんですか。
  80. 小林久雄

    説明員(小林久雄君) 先生の御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、自主規制を行うに当たりましては、カラーテレビにかかわります過去のもろもろの問題点について一括的に解決をしてまいりたいという方針アメリカ側と交渉をしておったわけでございます。
  81. 穐山篤

    ○穐山篤君 それで、先ほどのお答えでいきますと、一九七二年から七七年まで膨大な金が請求をされているわけですが、いまのお話によりますと、このダンピング課税の支払いを猶予してくれというふうに私はいま聞こえたわけですが、本来、この貿易一般協定のルールを読んでみましても、この物品税方式というのは私は不当だというふうに、あるいは理論的に構成ができないというふうに思うわけですが、そういう立場に立つとするならば、これはダンピング課税反対ということであって、金の支払いを猶予してくれとか、あるいは金額、総体のボリュームについて何らか値引きをしてくれということでは、これは筋が通らないと思う。もし猶予してくれというような話になれば、これは外交上の問題で、政治的に足して二で割るか三で割るか、そういうようなことだけが残されてしまう。もしこの物品税方式というものが理論的に認められるという実績が残るとするならば、これから、カラーテレビのみならず、それ以外の品物についても同様な問題が発生するおそれがあるわけです。したがって、私はその猶予してくれというところが非常に気になるわけですが、正確な態度をもう一遍おっしゃってください。
  82. 小林久雄

    説明員(小林久雄君) ただいま先生のおっしゃるとおりでございまして、猶予してくれと先ほど申し上げましたのは、納得が得られる物品税方式以外の合理的な課税の算定方式を適用するまで猶予をしてくれということを要求しているわけでございまして、基本的には、ガットのルールに照らして問題のない合理的な算定方式を使うようにということを強く要求をしているところでございます。
  83. 穐山篤

    ○穐山篤君 業界あるいは政府が、理屈の上では日本側の主張が正しいと思っておっても、やはり通商摩擦を避けたいという意味で自主規制に入られたと。自主規制に入る際にアメリカ側協議をして、まあ本トラブルというのはこのくらいでやめておくというふうな雰囲気があったというふうに理解をしているわけですが、依然としてこのまま続いていきますと、単にこの問題だけでなくして、いやな話ですけれども、ダグラス、ロッキードみたいな話もなきにしもあらずという、そういう問題に発展する可能性だってあるわけですよ。  そのことは別にいたしましても、さてこれから問題の解決をどういうふうにされようとするんですか。私は打開できないときに一歩も二歩も下がってやるということは承知できませんけれども、しかし、これも余り長く放置をしておきますと、別な新しい紛争を起こすような感じがしますので、早急に解決を図らなければなりませんけれども、ただ強力に交渉するだけでは納得できないと思うんです。こういう手順でこういう中身でいくならばアメリカも了解するだろうし、また日本の輸出業界・産業としてもこれは筋が通るというふうにならないと、すっきりした日本政府態度にならないと思うんですが、最後にその点をお伺いしておきます。
  84. 園田直

    国務大臣園田直君) いま事務当局から猶予してという言葉がありましたが、これはそういう意味ではなくて、すでに以前ダンピングというのは決定しているわけであります。そこでそのダンピングについてどのような払い戻しをやるか、課税をやるか、その方式で納得ができないと。だからそれが日本が納得のできるような案ができるまでは金を取られることは困ると、こういう意味のことを事務当局が言っているわけでありまして、おっしゃるとおり、ダンピングについて日本の業界が納得をし、それからわれわれが見て理論的に仕方がないと思い、それからアメリカの方もこれならばという点を具体的にわれわれは両方で話し合って早急に進めていくべきだと考えております。
  85. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十五分開会
  86. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十年度決算外二件を議題とし、外務省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのう衆参でダグラスの問題が論議されましたけれども、私も引き続きこの問題をやってみたいと思うんです。  というのは、つい先ほど、ダグラス社の広報担当の副社長のデービスさんという方から私のところにテレックスが入りました。それで、テレックスを見ますと、まあちょっと疑問だなと、こういう点がありますので、ひとつまたこれも踏まえて、新事実になるかどうかわかりませんけれども、むしろ私政府を督促する意味で指摘したいと。そういう意味で、官房長官もお忙しいところ申しわけなかったんですけれども、ひとつお聞きいただくとともにまた御答弁もいただきたいと、こう思います。  昨日の質疑ですと、当然8-Kのフォームですか、SECから出た、これを各省に配って検討していると、法務省も当然検討していると。これはどの程度ですか、犯罪容疑があれば外務省も動く――きのうの法務省の答弁ですと、まあ一生懸命調査はしていると、こういうことなんですが、いま現在どの程度調査は進行中なんでしょうか。
  88. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 去るアメリカ時間の十四日にSECの報告が明らかにされまして、十五日には日本内容が届いたわけでございます。この内容を現在検察当局が詳細に分析検討いたしておるわけでございます。分析検討するということは、それから何らかの犯罪の嫌疑が認められるか、あるいは犯罪捜査の端緒となるべきものが含まれておるか、そういうことを現在鋭意検討しておる段階でございます。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 その資料というのはこれですね。十数ページにわたる8-Kのフォーム。これ以外にはあるんですか。
  90. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) いまお示しのものを一生懸命分析検討しておるわけであります。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然これ外務省が配ったと、こういうことですか。外務省はこれ以外書類は持っていますか。
  92. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 持っておりません。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 持っていないということは、これがマスコミに報道された、だから急拠それを入手したと、こういう過程でしょうか。あるいはマスコミの活字になる前に外務省がこれを入手していたと――これは当然そうじゃないんですね。マスコミに報道されたから追っかけて資料要求して入手して各省に配ったと、こういうことでしょうか。
  94. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) これという点が正確を欠きますので……
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 これこれ。私英語読めないから、これ。
  96. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 私どもが入手いたしておりますのは、証券取引委員会からワシントン連邦地裁に提出された「永久差し止め命令及び付随的救済のための申立書」と、それから、連邦地裁による「ダグラス社に対する永久差し止め命令及びその他措置に関する最終決定」と、それから、ダグラス社による「同意及び今後の措置」という文書、さらにこれに付随して証券取引委員会に提出された「現状報告」と、この四つの書類でございます。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いま法務省に配ったのはこの一番最後のフォーム8-Kと、こういうことだけなんですか。あと全書類配っているんですか。
  98. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) いま私が挙げました全部の書類でございます。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 全書類を配っている――そうすると、このほかに相当分厚い書類があるんですね、外務省が入手したものは。
  100. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 分厚いという点は……
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 これより厚いとそれじゃ言っておきましょう。
  102. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) それが最後についておる付属書でございまして、その上書きのものと先ほど申しました別途二つの書類と、こういうことでございます。
  103. 黒柳明

    ○黒柳明君 その、いわゆる簡単に言うとSECの申し立てに対するダグラス社の答弁、このほか三つあるわけです。それについて法務省は、刑事局長、入手して当然犯罪性があるかどうかも検討されていると。それにプラス、これは私素人の感触ですけれども、あるいは国民の常識と言ってもいいんでしょうか、ロッキード裁判における検事の冒頭陳述、例の元副社長の発言とか、そういうものも含めてそして犯罪性を調査していると、こう判断してよろしいんでしょうか。
  104. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ロッキード事件の捜査の過程で得ました知識を持った者が、ただいまお示しの報告をしさいに吟味をしておるわけでございます。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、わかりました。そのことについてはまたちょっと後で詳しく触れたいと思うんですけれどもね。  すると外務省、このほかに膨大な――膨大なと言うか、またほかのSECの申し立てに対する答弁書を入手していると。これも当然法務省では犯罪があるかどうかの検討として調査しているということは言えるんですね、これだけじゃなくして。
  106. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) そのこれというのがよく見えませんが……。
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 これ、8-Kの方。
  108. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 要するに、外務省が入手されました資料はすべていただいて検討の対象としております。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務省、これはどういう経過を経てダグラスとSECと地裁とが出したものでしょうか、どういう過程を経て。これはどういうものでしょうか、性格的には。
  110. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) まず、この証券取引委員会の手続というのは、マクダネル・ダグラス社の海外不正支払い容疑についてのワシントン連邦地裁に対する提訴及びこれに対するダグラス社の反応と、こういうことになるわけでございます。そこで、したがいましてまず証券取引委員会の提訴文と申しますか、申立書というのがございます。それが先ほど私が読み上げました最初の文書でございます。それが十四日付をもって出まして、それに対して連邦地裁が、「ダグラス社に対する永久差しとめ命令及びその他措置に関する最終決定」というのを行いまして、将来に向かって不正な取引を行ってはならないということを裁判所の命令として下し、それに対してダグラス社がこれに同意をしたということで、そのダグラス社の同意書というのが先ほど申しました三番目の紙でございます。その同意書に付随してありますところのダグラス社の証券取引委員会に対する報告が、先ほど先生がこれとおっしゃられた8-Kと称する「現状報告」と、こういうことで、これらの措置を通じましてダグラス社は証券取引委員会から提起された点について特別調査委員会を設立してその調査を行ってこれをいずれ報告すると、こういう形になっております。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま将来についてよからぬことをやっちゃいけないぞと、こういうこと、それと同時に、この事件についてどういうふうに三者で合意したんですか。それともう一つ、ダグラス社内部のスペシャルコミッティーをつくるといったのは何の目的でつくると、こういうことなんですか。
  112. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 連邦地裁の命令は、証券取引委員会が申し立てた事項について、まず証券取引委員会が海外の不正取引の容疑があるということでその調査、そのポイントを連邦地裁に提訴したわけでありまして、将来そのようなことが起こることのないようにということで提訴を行ったのに対して、そのダグラス社が、証券取引委員会の申し立てた事項を肯定も否定もすることなしに、しかし、その将来への差し止め命令についてはこれを受け入れてその措置をとりますということを言い、そしてその証券取引委員会が申し立てた事項についてはこの調査委員会をつくって検討をする、そして報告をいたします、こういう形になっているわけでございます。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 この二ページ目の七行目から十一行まで四行ばかり、これはどういうことが書いてあるんですか。
  114. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) これはダグラス社がその報告書の中で、不正な資金とか記録に残されていない資産、口座とか不法な政治的な取引その他その国内――アメリカの国内でございましょうが、国内におけるいかなる不正支払いも行われていない。そして証券取引委員会、その他いかなる政府機関――アメリカ政府機関でございます。委員会または官庁も、そのような疑いがあるという申し立てはしていないということをダグラス社の意思としてそこに示したものだ、こういうふうに思います。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 しかも、これはSECと地裁と合意をしたものですね、それで公表したもの。それで刑事局長、そのほかにもいろいろな個所があるんですけれども、いまのところが端的にその意思を示したものだと思うんです。将来に対して悪いことをするな、こういうことも当然あるかと思いますけれども、この問題についての結審ですから、というとこれはどうなんでしょうか、一件落着と、こういうことになるんでしょうか。
  116. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 私の理解でちょっといまのアメリカ局長のおっしゃったことを補足いたしますと、SECはマクダネル・ダグラス社に証券取引法違反の嫌疑があるということで調査をいたしまして、調査の結果、なるほど不正支払い等があるというふうに認めて、それをSECとマクダネル・ダグラス社の間で大ざっぱに言ってこういう不正支払いがありました、ついては社内に特別委員会をつくって調査をいたします、こういう同意をしたわけでございます。その同意があった後にSECとしては将来にわたってダグラス社の不正行為を防止し、過去に起きた不正を明らかにする目的で連邦司法省を通じまして連邦地方裁判所に先ほどアメリカ局長が述べられた命令の申し立てをした、裁判所は将来にわたって不正支払いをしちゃいけない、また、SECとダグラス社との間ですでにできておる同意書の内容どおり履行しなさい、こういう命令を出したわけでございます。したがいまして、今後ダグラス社としては、地裁の命令に基づきまして、このただいまお手元にあります報告の中にある不正支払いの詳細について社内的に明らかにして、これをSECと裁判所に提出をする義務を負う、こういう状況になっておると理解しております。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうするといまの不正があったということは、百八十万ドル、六九年から七七年十二月までの日本に流れた種類の金、それから十一万五千ドル、某高官あるいはセールスコンサルタントに不正があった、こういうふうなことでいいんですか。いわゆる日本関係に不正があった。ほかの外国も出ていますよね。日本関係だけ、日本関係に不正があった、こういう判断でいいんですか。
  118. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ほかの国の名前も出ておりますが、日本に関する限り、いま御指摘のようなものがダグラス社の社内の経理措置として正当になされておらない、すなわち、不正支払いの疑いがある、これを今後ダグラス社としては社内的に徹底的に調査をして明らかにしろ、こういうことでございます。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカ局長、いまの刑事局長の御答弁ちょっと私ニュアンスが違うなと感じた。それでいいですか、そのとおりで。
  120. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) そのとおりでございます。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いまその日本関係に不正があるというのはどこに出てますか、8-Kのフォームに。
  122. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 8-Kの書類に関する限りは、日本に関する記述があるわけでありますけれども、そこで不正があるという断定はしていないわけでございます。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうなりますと、先ほど申しましたSECの申し立てに対するダグラスの答弁書、このほかにあるわけでしょう。そこに出ているんですか。
  124. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) これは過去の経験に基づく推測でありますけれども、SECが独自にダグラス社に関して調査をしたその調査資料の中にはもっと細かいものがあるんじゃないかと思います。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、アメリカ局長、細かいものがあるかわからない。ぼくはあると断定してます、まだある。刑事局長の常識というのは、これは常識を超えた部分で非常に経験を踏まえてのものがある。ですから、要するにいま持っている中にないとすれば、これには出ていませんね。8-Kのフォームには出ていません。もう適正だ、プロパーだ、アプロプリエートだ、ライトだ、全く適正なんだと。これは向こうの商慣習が違いますからね。エアクラフトのセールスについてコミッションやったって、これは適正なんだと。ロッキードのときもそうでした。ここに一言も不適当だとは、適当じゃなかったとは出てません。  アメリカ局長、そうするとほかの入手した中に出ているのか、それとも、いま刑事局長がおっしゃったように、いままでの経験によると、ダグラスは当然あったし、SECは持っているんじゃなかろうか。とすれば――官房長官、寝る場じゃないですな。済みませんね、連日御多忙のところ。政府としてこれは早く手を打たなきゃならないんじゃないですか。いや推移を見てから、何かあってからなんといううちに、黒柳がきょうアメリカへ行って持って来ちゃったらどうするんですか、外務大臣。これからすぐぼくは成田に行ってアメリカへ飛んじゃって、あったじゃないかと言われたら大変なことになっちゃいますよ、事実の推移を見てからなんて言ってたら。どうですか、外務大臣。まあアメリカ局長何かあれば補足、なかったらひとつ外務大臣
  126. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 証券取引委員会が証券取引法の違反の容疑で提訴するに当たっては、それなりの調査はやった結果なんであろうと思われます。そういう意味で、いま刑事局長も言われたように、証券取引委員会自身がいろいろな事実関係の調査資料を持っているということはこれはあり得ないことではなかろうと思います。ただ、いずれにせよ、今回の提訴に関連して発表されました文書は先ほど申し上げましたとおりの文書でございまして、ダグラス社としては証券取引委員会からその申し立てがあったので、その詳細に関してはいま先生御指摘の8のKという現状報告の中に書いて、そうしてこれを発表することに同意をしたんだということを言っておりまして、その内容の具体的な詳細については、そのときに設置に同意をした特別調査委員会が今後それを調べていくということを言っているわけでございます。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然これがすべてでないと。私もそう思いますよ。それを公表するかしないかはSECあるいは地裁、ダグラスの同意、当然そういうものがあってドロップしたもの、それはあるかと思いますよ。だけれども、少なくとも日本の、失礼な言葉だけれども、マスコミに渡っている物、われわれが目に見られる物、この中では当事者のダグラスが全く適当、不適当なものはなかったと、適正であると、誤りは何にもないんだと、こういう連続じゃないですか。ところが刑事局長判断ですと、日本関係百八十万ドル、十一万五千ドル、その中に不適当のものがあったと、こう判断するわけでしょう。これは根拠はいずれにあるか私わかりませんよ、経験を踏まえてか常識であるか。それがここにありますか、資料が。外務大臣、ないんです、何にもこの資料は。それがもらえるとかもらえないかはこの次の話。いいですね。出すとか出さないとかはこの次の話。あるいはその後になるかわからない。ロッキードだって司法共助までいくのに大変な時間がかかったんですから。いいですね。  ところが、ロッキードといまと違う点――これは私、釈迦に説法ですけれども、ロッキードの場合はチャーチ委員会がみんな公表しましたでしょう。今度はそうじゃない。三者の合意、和解。もう落着なんですよ、この問題。将来にわたって悪いことするなということも含めて、これはもうこの事件でおしまいなんだと。だけれども、おまえたちまだまだ株主に対する手前もあるし、まだまだいろんなことも調べなきゃならないだろうからスペシャルコミティーをつくりなさいと、それを百二十日、三十日で重役会、三十日でSECに出しなさいと、こう合意したこの合意書というのは、公表した分はもうこれでおしまいなんですよと、こういう意味であることはダグラス社の当人が言っているし、SECだって何だってそういう意味で和解して出したんですから。だから、ロッキードから言う最終時点からスタートしたんです、この問題は。いいですね、官房長官、外務大臣。  ロッキードじゃ全くチャーチ委員会から始まったわけでしょう、資料の公表から。それから地裁にも行ったわけです。SECにも行ったわけです。日本国会としてはですよ、日本国会としては。ところが、この問題で私たちが触れたのは、最終的なもう一件落着から始まったんですから。ここに書いてあるとおりです。全く不正はなかったと、SECだって、どこのデパートメントだってどこのコミッションだって、全くアメリカの行政機関、司法機関では文句はないんだと、こういうことを言っているわけです。いまアメリカ局長に言ってもらったとおりですよ。  そういうものから始まったこの事件が、このまま推移を見る。何の推移を見ますか。まあそう言っちゃ失礼だけれども、そこに法務省が相当やってもらわないと、外務省じゃやっていたんだ――やっていたんだというよりこれ以上やらないんじゃなかろうかと思うんですよ、外務大臣。やらないと、もう法務省はいまのロッキードを踏まえて国内にある物でやらなきゃならないです。それは不可能です、こんなもの。出やしません、そんなものやったって。パズル遊びやっているんじゃないんですから。実際にもらった人がいるんですから、そのガバメントオフィシャル、これは出やしません。そんなことやったって、向こう協力なくしては。ロッキードのときと同じです。あるんですよ、まだ。確定なんですよ、一番最高の法務省の責任者の弁では。であるならば、外務省がそれを要求しなさい、出先を通して何かないんですかと、どうなんですかと。それで拒否されたとかどうとかだったらそれはまたその次の問題じゃないですか。どうですか、外務大臣
  128. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務大臣がこのような問題の場合にやるべき資料の収集は、ありとあらゆる資料を入手し、努力をし、そして第一は、これが犯罪の容疑があるかないかという判断を示すための資料を集める、次に、容疑があるとすれば、その犯罪の容疑を捜査するに必要な資料を集める、こういう二つの段階がありますが、現在としては、いま御発言のとおり、ありとあらゆる資料、そしてまたあると想像される資料、これをアメリカ政府、民間側にそれぞれの手を通じて努力をすることは当然のことであろうと考えます。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういう抽象的なことじゃなくて、私、抽象的なことを言ったつもりないんです。私が入手している物、マスコミの皆さんが入手している物、外務省が入手して各省庁に配っている物、その中にはないんです。不適当だと、こういうものはないんです、一言も。みんな適切だったと。これは商慣習が違いますから、セールスに対してのコミッションなんかもうリベートじゃない。贈収賄じゃありませんからね、向こうの概念じゃ。そうでしょう。それがあるという判断に基づいた刑事局長発言があるんですから、それを入れるという努力については早急にやらなきゃならないんじゃないですか。いままでは外務省が表だった、きのうまで、おとといまで、入手するまで。当然法務省が中心になるべき性格のものです、と思います。あたりまえですな、犯罪容疑の立証に対しては。だけれども、法務省だってやっぱり外交ルートというものを無視するわけにいきませんから、当初はやっぱり外交ルートでしょう。それで入手したものを各省に配ったんでしょう。それとロッキードの知識を持った人、それとドッキングして、あると、あるらしいと、こういう判断したんでしょう、いま現在わずか三日か四日で。われわれだって常識的にそういう判断はせざるを得ないですから。  となれば、さらにこれはただ単に、私がいま国会でやっているように、何かあるんでしょうじゃ、これは当然だめですよ。当然法務省の見解意見も聞きながら、外交ルートを通してもっともっと、推移を見るなんていうことじゃだめだということです、私言いたいのは。推移を見るじゃだめだというんです。積極的にやらなければ、一件落着から始まって、あと百八十日たったって何も出る可能性がないよという中で推移を見てるだけだと、これじゃだめですよ。四十七年の容疑が、これがもう灰色であるとか、あるいはもうだめだとか、立件できないとかいうこととは別です、それは。そんなこととは。これだけのものが来たことについて、あらゆる資料も取る、それから犯罪容疑を検討するとなる場合に、あらゆるものを取るという姿勢にまだ欠けているんじゃないかという私の指摘、これについて、抽象的にあらゆるものをなんて言ってないで、早速しかるべくだれかやってごらんなさいよ、向こうに。あるいはアメリカ大使にすぐ訓電でもして話し合う。これは国会に報告してもらう。どうですか。
  130. 園田直

    国務大臣園田直君) あらゆる資料、あらゆる手段を尽くすと申し上げたのは、いま御発言のような趣旨でございます。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃ、すぐ手を打ってくださいよ。推移を見てなんて言ったら、とんでもないことになりますよ。  それから同じくアメリカ局長ですね。まあいろいろあるんですけれども、長くなっちゃって時間が足りませんから……。たとえばこの九ページ。九ページの二、四、六、七行ぐらい、この段ひとつどういうことが書いてあるのか。まあマスコミでも日本字になってますからね。「パートオブザ」というところからですな。東大の試験じゃありませんから、大ざっぱでいいですよ。
  132. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 先生のおっしゃられるくだりのところは大体こういうことだろうと思います。伝えられるところによれば、販売促進費一万五千ドルの一部が一政府関係者に流れた可能性があるが、マクダネル・ダグラス社はこの伝聞に基づく報告を確認することはできなかった。これより後、追加的な五万ドルを――この販売コンサルタントは、その後追加的な五万ドルを受け取ったが、これは、このコンサルタントは独立した商業販売コンサルタントであった。彼は政府関係者でも航空関係職員でもなく、また彼に対して支払われたコミッション及びコンサルタント料が、政府関係者または航空関係職員に渡されたことを証明するものは何もないと、そういうような趣旨だろうと思います。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体八十五点ぐらいですね、厳しく点つけると。この中の要するに一万五千ドルの部分、パートが、「reportedly may have gone to agovernment official」。この「reportedly may have gone」、それからその次の「to conflrm this hearsay report.」。「ヒアセイ」、 これはどういうことを言っているんですか、正確に日本語に直すと。「reportedly may have gone to a govern-ment official」、それからその次の段の「to con-firm this hearsay reprt」。
  134. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) その点は、ただいま申し上げましたように、その一万五千ドルのその金の一部分が一政府関係者に行ったことがあるかもしれないという――報告されているとおりに行ったことがあるかもしれないということであり、そしてマクダネル・ダグラス社はこの伝聞に基づく報告、「ヒアセイワポート」というのはそういうようなことだろうかと思います、それを確認することができなかった、こういうこと。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのとおりです。満点です。そこで、この「リポーテッドリー」、何かにリポートされているんです、「メイハブ」で、かもしれない、「ヒアセイ」、風聞です、伝聞。これについて、外務省の英語の熟練者が多い中で、これはどういうことであるか、どこに根拠があるのか、調べましたか。
  136. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) これは文字どおり、マクダネル・ダグラス社に対して、対してということは、当然にそのマネージメントその他首脳部に対してそういう話が耳に入ったと、そういうことだろうと思います。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がないから言いましょう。これはアメリカの上院でこの問題が指摘されているんですよ、外務大臣。そんなことじゃないんです。そんなことじゃないの。何となくどこかから風聞でふわふわと来た、おれの耳に入った――要するに一万五千ドルが単数の政府高官に流れたということは断定じゃない、これはもう新聞の方も正確にお書きいただいていますね、断定じゃないわけです。ここらあたりに大きな焦点があるわけですよね。流れたら大変なことだと、また第二のロッキードだと、こういうことになるわけでしょう。だけど、これは全く「ヒアセイ」、風聞。その前の「リポーテッドリー」というのは、アメリカの上院で発言しているんです、このことを。アメリカ局長、これ調べましたか。
  138. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) アメリカの議会でこの問題が取り上げられたということは特に聞いておりません。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 聞いてないんじゃなくて、十五日からでしょう。十五日からですから、ぼくもそこまで外務省がロッキードのときにピッピッピッピッと手を打ったということは私思っていません。相当やっぱりマンマンデーであったなという感触です。ですから、いまも同じことじゃなかろうかという感触はありますけれども、外務大臣、それも含めましてです、私の言うのは。これはただ単なる風聞じゃないんです。だれかがどこかで言ったんだけど、そうだったな、だれだったけなというものじゃない。そんなところに「リポーテッドリー」なんて使いません。日本でいえば、うわさとか、失礼な言葉ですけれども、どこかの週刊誌とかはこういうことも言うでしょうが、この場合には違うんです、この場合には。アメリカ局長、大至急これ調べなさい。そこまでいかないとこれは出てきませんよ。「ガバメントオフィシャル」はだれであるかなんというのは。ダグラス社がこれから百数十日間かけて内部調査する。出しゃしません、名前なんか。出てこなかったらわかりゃしません、そんなものは。そこまでまだつかんでなかったら、大至急ひとつ外務大臣、調べなきゃならない点は、ここの点もその一つであるということを指摘しましょう。どうですか、アメリカ局長。こんなこと言ったってわからないでしょう。
  140. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの事実は事務当局は知らなかったようであります。早速、速記録を調べればわかることでありますから、調査をいたします。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 刑事局長、いろんな御苦労されているかと思うんですけれども、まあいろんなことをお聞きしたいんですが、先ほどロッキードに精通したというか、ロッキードの係の人の常識とおっしゃったか、正確な言葉はわかりませんけれども、当然それがなければこの調査のしようがないと思うんです。いま言ったように、外務省が必要な資料をまだ入手していません。もう熟練した英語の達人がいても、ただこれを、「リポーテッドリー」「ヒアセイ」を風聞で片づけちゃう。向こうできちっとした議員が発言して、それに基づいているということもわからない、いま現在。そういう状況ですから、ひとつ法務省がよっぽどしっかりしませんとね、外務省外交は――済みませんね、外務大臣怒らないでください、そんなに。中国でがんばったんですからね。よっぽど法務省が――法務大臣、済みません。法務大臣がいらっしゃるの、ちょっとマイクがあったので、陰になってて済みません、失礼申しました。法務省がよっぽどこの点、まあ外務省がありますんですけれども、刑事局長の冒頭の疑惑を踏まえて、よっぽどこれ外務省を督促するよりも、法務省が先行してやらなかったら、犯罪容疑の立証なんかできないんですから、いつまでもしかるべき時期なんて待っていたらこれは大変なことです。  きのうくしくも刑事局長が、いま調べていますと、犯罪容疑をと。またそれにさらに非常に厳しい面を指摘されたので、私は法務省はそんな時期待ちなんということはないかと思ので、さらにお聞きしたいんですが、検察庁の冒頭陳述です。刑事局長、これは石黒さんの――きのうも若干話がありました。元総理大臣田中角榮被告が通産大臣だった四十五年から四十六年まで、四回にわたって田中被告を訪ねたと。ロッキード社は裏金やそでの下を使って売り込みをするおそれがあるので、何とか全日空がDC10を採用するように援助してほしいと依頼したと。さらに田中被告は、四十五年の中ごろ、若狭被告に、三井物産からDC10を買うように口添えしてほしいと言われていると電話したと。これは検察側の冒頭陳述。このことについては検察側から事情聴取はしているのですか。
  142. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 要旨、ただいま御指摘のようなことが検察官の冒頭陳述に出てくるわけでございまして、冒頭陳述というのは証拠で立証しようと思っておることでございますから、これに見合う証拠は検察の手中にあると、こういうことでございます。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 こういう具体的なことも含めて、このフォーム8-Kを含めて犯罪容疑の立証というものをいま検討していると、こう判断していいですか。
  144. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 今回のダグラス社の不正支払いの問題は、ロッキード事件と直接関係はございませんが、ロッキード事件の公判立証に必要な限りにおいて、たとえばDC10の売り込み工作などというものは現在立証しつつあるわけでございます。そういう立証しつつあるそういう事柄を頭の中におさめておる者がSECの今回の報告書を一生懸命読んでおると、こういうことでございます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 四十七年九月二十一日、石黒さんがもと首相官邸に行ったとか、あるいは同じく四十七年十月二十日、若狭被告宅に行って田中、大平派の派閥にDC10をよろしくと頼んだとか、あるいはつい先だって藤原被告が、全日空についていろんなこともできると、こんな答弁もしたとか、こういうものも、済みません、くどいようですけれども、全部頭に入っている人がこのいまのダグラスの犯罪を立証する役目に当たっている、こういうことですね。
  146. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) まだ犯罪と決めつけておるわけじゃございませんが、犯罪の嫌疑の有無を、そういう知識を持った頭で一生懸命検討分析しておる、こういうことでございます。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのう司法共助というようなことがありましたけれども、あの司法共助なんというところにまでいかないと思います、私はこの事件は。司法共助以前に日米間で積極的に協力してやるべきものを見つけないとと思うのですが、この点どうでしょう。
  148. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 分析検討の結果、これは仮定の問題でございますが、犯罪の嫌疑があるということになりますと、直ちに捜査活動を開始することはあたりまえでございますが、その捜査活動の一環としていろんなことが考えられますが、国内的にいろんな参考人を調べるとか、証拠物を見るとかいうようなこともありましょうし、また仮に仮定の問題で申し上げておるわけですが、犯罪の嫌疑をかけると、いうことになりますと、たとえばSECが持っておるもうちょっと詳しい資料もほしくなるのじゃないか。そういうものがもし司法取り決めでいただけるようなことであれば、司法取り決めなどをやっていただくというような気持ちにも将来なるのではないか。いずれにいたしましても、現在行っています分析検討の結果を待って対処すべきものであろうと考えております。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務省当局がいまある資料ないしはロッキード公判で出てきた陳述、証言等を踏まえてということですね。そして、それでしかるべき後にSECがまだ持っているであろうというものをと、こういうふうなお言葉ですけれども、そこを私はうまくないと言うのです。  外務大臣、さっき言ったのはそこなんですよ。そういう順序で行ったのがロッキードなんです。ところが、今度はそういう順序で表面に出てきていないのです。しかも向こうの議会筋はこれに介入しません、絶対に。もうロッキードでこりたと、こういう話を私はそれこそヒヤセイですよ、リポーテッドリーになっていますから。そうすると三者ですよ、SECとダグラスと地裁と。ところが、地裁はやっぱり積極的にそんな資料証拠収集なんかしません。公表なんかできません。ダグラスは自分の方ですから。SECです、問題は。だけれども、SECの方はもう三者合意でこれで一件落着しようと合意したのですから、公表しませんよ。と同じことがあったじゃないですか、ボーイングで。刑事局長、一九七五年十月ですか、ボーイングの地裁で公表差しとめと、うやむやじゃないですかボーイング社。そうでしたね、刑事局長。この問題がこれでおしまいだと、公表差しとめとなったときどういう打つ手があるのか。これも仮定のことでしょうけれども、どういう打つ手であるんですか。ボーイング社はあのままでもう公表されずじまいじゃないですか。
  150. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ボーイング社に関するSECの調査で御指摘のようなことがあったことは私も承知しておりますが、あのような件について犯罪の捜査をしたこともございませんので、そういう場合にどうしたらいいか、そこまでちょっと考えが及んでおりません。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 及んでいない。法務大臣、現にロッキードの最中、ボーイングがSECからやっぱり容疑で追及されて、ですけれども合意で資料公表ストップになったんです、地裁の判決が。出てこなかったわけです。今度はもう初めからその時点からスタートしていると、私は素人だけれども判断するのですよ、法務大臣。それを失礼ですけれども、刑事局長は一生懸命みたいです。だけれども、何たって資料が少な過ぎる。「ガバメントオフィシャル」の定義はどうなんですか。だれなんですか、「ガバメントオフィシャル」の定義は。そういうことも犯罪の中においてはあんまりウエート置いてないんじゃないでしょうか。一字一句、やっぱり英語というのは生きた言葉ですから、使い用語があるんですよ。それをこちらが本当に限られた資料で、上院で議員が話していることも知らない、外務省がいま現在。それを限られたところで何がわかるかと、失礼ですけれども法務大臣、そうなったらこちらで調べて、何か容疑がかかったらSECの持っているものをもらいたい、あることは間違いない。早くそっちの方に手を打つと、あることは間違いないんですから。そういうこともやらなきゃいまのケースというのはだめなんじゃないでしょうか、法務大臣どう判断しますか。
  152. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 大臣お答えになります前に一言申し上げますが、法務検察当局としてなし得ることは犯罪捜査でございまして、犯罪の容疑が生じないうちに何らかの対外的なアクションをとるということは、権限の点からいってできないところでございます。
  153. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) いま刑事局長が申しましたように、犯罪の容疑がはっきりいたしますと、申すまでもなしにそれから先の捜査活動に入るわけでございますが、その前段階におきましては、容疑があるかないかとこういう段階におきましては、私の方がそうにぎやかに騒ぎまくるわけにもいきませんので、先ほど外務大臣がすでにおっしゃったように、十分外務大臣の方で配慮をされておるわけでありますから、これを待ちたいとそういうふうに考えております。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカ局長、もう配慮されているんですか、いま法務大臣が非常に思いやりのある言葉をおっしゃいましたけれども、もう配慮されていますね。どういう配慮かおっしゃってください。
  155. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 先ほども外務大臣から御答弁がありましたように、外務省といたしましても、入手し得る資料はこれをすべて入手することに最大限の努力をするというのが外務省の基本的な考え方でございます。そういう点で、いま具体的にどういう手をとおっしゃられてもいま直ちにお答えするわけにいきませんけれども、いまの姿勢の上で、現在現状でどういうことができるかよく検討してみたいと思います。
  156. 園田直

    国務大臣園田直君) 明確にしておきたいと思いますが、先ほど御発言の中の、司法取り決めなどは手おくれだということであります。それは犯罪の容疑があったら司法当局の要求によって外務省が情報を集めると、こういうことではなくて……
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうは言わなかった、そこまでは至らないだろうと言ったんです。
  158. 園田直

    国務大臣園田直君) そのような犯罪の容疑があるかどうかということを検討するための資料を全力をふるって外務省は集めるべきだ、こういうことでございます。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 SECともう接触していますか、SECと接触は。
  160. 園田直

    国務大臣園田直君) それぞれ手配をいたします。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、していますか、もうすでに。これからするのですか。いま私の話を聞いて、またうるさいからそれじゃあしたやろうということですか。いままではやってないんですか。
  162. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 従来までのところは、いま先ほど申しましたような資料を入手することに全力を挙げていたわけでございまして、その過程でその報告なんかの文言などの意味のわからないような点を問い合わせるというようなことはいたしております。いま外務大臣からの御答弁の趣旨に従いまして、今後なおどういう手が打てるか、至急検討してみたいと思います。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 SECの方も含めてやる。
  164. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) はい。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからSECに接触することも含めてやると。
  166. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 当然そういうことも含めて考えたいと思います。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がありませんで。  防衛庁、きのうも衆参で課長さんですか、お話があったというようなことで、新聞の活字だけしかわからないんです、私は。あれですか、ここの中には当然エアクラフトとしか出てきません。軍用機も出てこない、防衛庁も出てこない。これはどういう判断をされていますか、防衛庁。マスコミの活字によると、何かF4もRF4もと、こういうことで……。
  168. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 防衛庁といたしましては、昨日の参議院の決算委員会、あるいは衆議院の外務委員会でも申し上げましたわけでございますが、たとえばマクダネル・ダグラス社のF15等の選定につきましては、純粋に専門技術的な立場、あるいは防衛上の見地に立ちまして選定を行ってまいりました。そういう見地から、私どもは、この選定に関しましては問題はないというふうに確信いたしております。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 問題があるかどうか、これだけじゃわからないですわな、全く。確信する方が先行しちって、問題の方がさらにもっと先行しているかわかりませんよ。あるいは問題がこれから後からくっついてくるかわからない。  具体的に、この十ぺ-ジの下のところ、この「Japanese manufacture of MDC aircraft」。要するに百八十万ドルの中には含まれてないというわけですな、こういうものが。これはどういうふうに読んだらいいんでしょうか。
  170. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 先ほどの百八十万ドルの数字の中には、日本におけるダグラス社の航空機の生産からの受け取り収入にかかわるコミッション、あるいはその事務管理的な経費、支払いというもの、あるいはさらに航空機以外の製品の販売にかかわるコミッションは含まれていないと。特別委員会はこれらの支払いにつきましても調査をすることになるが、ダグラス社はこれらについても適切、妥当なものであると信じているというふうな趣旨であろうと思います。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 それを防衛庁のいわゆるライセンス生産には関係ないと、こういうふうに読むわけですね。
  172. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) この解釈につきましては外務省見解に沿いたいというふうに考えております。
  173. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、外務省見解はどういう見解なんですか。外務省はどういう見解
  174. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) これは先ほど来お話がありますように、あくまでもダグラス社の報告でございますから、ダグラス社の報告の文面について外務省が有権的な判断はなし得ないんだろうと思いますが、ただ私どもの気がつく限りでは、そこで先生よくごらんのとおり、そのくだりではただ「エアクラフト」と書いてあるだけで――本文の方はでございますね――軍用機とか非軍用機とかいう記述がないと。そこで注でいま先生のおっしゃられるようなことが書いてあると。これがいかなる意味を持つものかという点でございますが、私どもは、実はその実態を心得ておらないものですから、その辺についていかんとも判断をしがたいということでございます。
  175. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうするとこういうことですね。ここにいわゆるF4あるいはRF4、自衛隊が使っている軍用機、自衛隊機、これについてのコミッションが百八十万ドルの中には含まれているのかいないのかというのはこの文面だけじゃわからないと、ライセンス生産に対してのコミッションが入っているかどうかわからないと、こういうことですね。「エアクラフト」が意味するものがわからないというわけですか。「ジャパニーズマニュファクチュア」というのがわからないということですか。
  176. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 大変申しわけないんですが、私どもも確定的な解釈はなかなかできないと思います。ただ、「ジャパニーズマニュファクチュア」と言っているところを見れば、それが何らかのライセンス生産のことを言っているんじゃなかろうかという気はいたしますけれども。
  177. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうするとどうですか、装備局長。ライセンス生産を言っているんだと。
  178. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) いま外務省からお話がありましたように、もしそういう見解であれば一般的にはライセンス生産も含まれているかもしれない、あるいはまた含まれていない場合もあり得るというふうな感じは現在持っております。
  179. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、含まれているのか含まれていないのか。ともかく日本でつくられる航空機はライセンス生産じゃなかろうか。含まれているのかないのか。もし、含まれているとしたらこれは大変ですな。これはわかりませんね、この文面じゃ。含まれているとすれば大変ですねとぼくは言ってる。
  180. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 含まれていましても、この中身からは、現在のところ私ども特別な問題が含まれているというふうには必ずしもとれないんじゃないかというふうに思います。
  181. 黒柳明

    ○黒柳明君 まず第一点。ライセンス生産が含まれているかいないかわからないというんですね。これが第一点ですね、アメリカ局長。  いま言った、これはダグラス社の広報担当の副社長R・J・デービスさんですね。これはきょうの十一時にテレックスが入ったんですよ。私のところにテレックスがあってね。ダグラス社とテレックスで打ち合っているの。だからツーツーなの。すみませんね、外務省だってないでしょう。ダグラス社とホットラインがあるのは公明党の黒柳だけですから。だから悪いことはできない、あなた。まあこれは冗談です。済みません外務大臣、いまのは冗談。まあ問い合わせたんです、こちらが直ちに。これ読んでもらいます。これ、私英語の発音がまずいんでアメリカ局長に怒られるかわかりませんけれども。「MDC ALSO PAISCOMMISSIONS ON RECEIPTS RESULTINGFROM JAPANESE MANUFACTURE、」ここまでいいですね。「UNDER LICENSE、 OFMDC AERCRAFT」と、完全にライセンス生産も入っていますよと、こういう答えが来たんですよ。まずその一点。含まれている。後でこれお見せしますけれども、まだ続くから。いまのところだけは、どうかわからないと言っていたライセンス生産は入っていますよと、完全にここで広報担当の副社長はテレックスで送ってきたんです。皆さん方がわからない点もね。まずそこから見解聞きましょう。入っています、ライセンス生産分が。
  182. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 仮にライセンス生産が含まれているというふうな解釈になりました場合に、私どもの防衛庁としてのライセンス生産のほかにライセンス生産があるかないかという問題もございますし、また、この文章の趣旨からいいまして、必ずしもこの文章自体からは問題があるというふうには私ども現在考えていないわけでございます。
  183. 黒柳明

    ○黒柳明君 前段わからなかった。必ずしも防衛庁のライセンス生産がない、ある……。
  184. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) ライセンス生産というものが、防衛庁のライセンス生産がすべてであるかどうか、私現在承知しておりませんので、直ちに防衛庁のライセンス生産だけがここに含まれているというふうにも言えないんじゃないかというふうにも思います。
  185. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務大臣外務大臣、これはもう否定的になる、肯定的になるという立場じゃないと思いますよ、ここの委員会というのは。私は何も皆さん方に対してこれでもかってやって、皆さん方はそれに対してそうじゃないんだって、こう矛と盾でやり合う必要はないんです。そうでしょう。私だって日本の一国会議員ですから、もう与野党の域を超えまして、出すものは出さなきゃならない。口幅ったいようだけれども、私は知っていることはむしろ一言でもあれして、アメリカ局長の明晰な頭脳で、あるいは刑事局長の行動力で、それでこれをもう徹底的に解明できればという私の本当にささやかなクリスマスプレゼントみたいなものですよ。だから、これを否定してかかることはないんじゃないですか、装備局長。ライセンス生産があるかどうかわからない。わからないのを私は広報担当副社長からありという言質をとったんでしょう。法務大臣、これだけだったって感謝してもらわなきゃならないんじゃないですか。どうですか、刑事局長。ライセンス生産も入っているという証拠がここに来ました。これだけじゃ防衛庁も外務省も、きのうの国会の答弁のように、わからない、わからないなんです。後でお見せします、コピーを。ライセンス生産分も入ってますよという断定が来たんです。これはすべてじゃないと思いますよ。第一報だと思いますよ。これはまずわかった。それに対して装備局長は、いやライセンス生産が入ってたってうちだけじゃなくて運輸省で民間機があるかわからない。そんなことないですよ。いや、だけどたとえうちだけだったって悪いともいいとも決まってない。それはこの立場で装備局長が、へえ悪うございました、うちがありますとは言えないでしょう、公式には。私もそんなこと要求しませんよ。だけれども、すべてこの事実がわからないのに、私が――広報担当副社長だってこれは悪気があって来たわけじゃないんです。私たちはもう何にもやましいことないですよ、だけど事実は事実ですからと、こういうことなんですよ。それを、ライセンス生産があるかどうかわからないという疑点からあったということがわかったんでしょう。これだけだって感謝すべきじゃないですか。まずそこからひとつ感謝してもらおうじゃないですか。そこから始めましょう。装備局長
  186. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 有益な御意見をいただきましてまことにありがとうございました。
  187. 黒柳明

    ○黒柳明君 そう言われりゃ、私だって人間ですからね、初めからこんな汗かいてふーんなんてやりゃしないですよ。もっとおとなしくと思っているんです。だけどこちらがせっかく――これだって、外務大臣、法務大臣、来てしまえばただの一片のテレックスですよ。これだけ取るためには大変なやっぱり努力をするんです。アメリカ局長、わかるでしょう、一生懸命にやっている立場として。そこで、ライセンス生産も入っていると断定的に来たんですから、やっぱり感謝してもらう。公明党はやっぱり行動的な党だと、できればこの次一票入れようかなということまでも思ってもらう。済みません。  さて、その次です。それでライセンス生産があったからっておれの方だけじゃないなんて言う必要はないでしょう。問題はないなんて言ったら私はさらに言いたくなるんですよ。あるかどうかわからないんじゃないですか、いまの時点で。私だってわからない。断定的に問題があるなんて資料、何にも持ってません。もうこれでおしまいだから、何にもないですよ、この後は。それだけ言っときますから。ありません、当面は。第二報が来るでしょう、変なことやってたんなら。ともかく第一報では、ライセンス生産があるんだということがダグラス社当人から来たわけですから、これについて、そんなことであるならばうちが関係なきにしもあらずだと、こういう発言があっていいんじゃないですか。関係があるとは発言してもらわなくたっていいですよ。私もわからないんだから、まだあるかどうかは。だけど、明らかにライセンス生産というのは自衛隊機でしょう。この自衛隊機の中にセールスコミッションが出ていた。さらにいろんなものについてこれからスペシャルコミュニティーが調べるっていうんでしょう、ここで、いろんなものについて。その結果はまだ出てないんですよ。ともかくセールスコミッションで百八十万ドル、六九年から七七年十二月までは出ていると。その中にライセンス生産が入ってると。自衛隊機が当たる可能性が非常に強いということははっきりしたんじゃないですか。その認識だけは持てるでしょうね。
  188. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) いまの御指摘の点は、百八十万ドルの中には入っていないというふうに考えますし、また私ども、現在自衛隊機の選定に関しましては問題がないというふうに信じております。
  189. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、信じるのはいいんですよ。ぼくだったってあるとは信じてない。信じたくない。だけど、ライセンス生産がこれに含まれているかどうかわからないという言葉だったんでしょう、アメリカ局長も装備局長も。ところが、ライセンス生産含まれていますよという新しい段階に一歩進んだんでしょう。確信は確信で装備局長個人の確信でしょう。ですけど、現実的にはライセンス生産、自衛隊機も含まれている可能性が強くなったという認識はしてもらいたいということ。強くなった。容疑なんていうのはまだ断定じゃないんですから。  刑事局長、この点までを踏まえてどういうふうな感触でしょうか。
  190. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ただいま報告書の読みにつきまして貴重な資料を御提示いただきましたので、早速検察当局へ連絡してやりたいと思います。参考にすると思います。
  191. 黒柳明

    ○黒柳明君 装備局長、答弁はああいうふうにやるの。先輩ですからよくまねなさいよ。まだ就任したばっかしですから、済みません、まだなれない点があるかと思いますけどね。当然ですよ、これについては。これはもう外交儀礼だったって、これに食ってかかるなんていうのはもう愚の骨頂じゃないですか。  外務大臣、どうですか。
  192. 園田直

    国務大臣園田直君) いま入手しました資料では、先ほどから申し上げますとおり、百八十万ドルの中にはそれは入っていないということでありますから、わざわざ断っているところを見ると、それじゃ別にあるのかなあというまた逆に疑問も出てくるわけであります。ただいま貴重な御意見を承りましたから、それを糸口にしてさらに情報収集を努力をしたいと考えます。
  193. 黒柳明

    ○黒柳明君 刑事局長外務大臣、ちょっとニュアンスが違いますな、この文章。アメリカ局長、このニュアンスはいま二人のお言葉とは違いますな、ニュアンスは、完全に。断定的じゃないですよね。アメリカ局長、この文章、十ページのこの補足の文章の最後のワンフレーズ。
  194. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 先生の入手されましたその情報も、先ほど刑事局長からお話がありますように、その点も含めまして検討をさしていただきたいと思います。
  195. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、私が言っているのは、いま外務大臣が、もしいま言ったようなものがあれば百八十万ドルには含めてないからほかにあるのかなとこうおっしゃった。そのあれは、ここの文章からくる発言としてはちょっと違う。ということは、百八十万ドルの中には入ってません、しかしダグラスのスペシャルコミュニティーがさらに支払いについて調べますと、適当なことは信じておりますがと。だからもう一回調べるんです、百二十日間。調べて、入っているかもわからない、いま現在は入っていないと思いますと、こういうことですよ。いいですか。ですからそこらあたり、やっぱり一字一句よく報告を受けていただかないとうまくないという点があるんです。これはもう非常にこの言葉一つ一つ日本語だって同じです。向こうだって同じです。ですから、百八十万ドルの中に入っていませんと断定はしていません。入っていないと思うけれども、もう一回特別調査委員会で内部的に調べてみます、だけどその使い道については不適正なことはないと信じておりますと、こういうことであって、もう一つ調査に結果を託していると、こういうことです。ですから、百八十万ドルの中にライセンス生産のコミッションが入っているかもわかりません。もしこれが入ってなかったら、またいま外務大臣がおっしゃったように百八十万ドルの別に何物かがあったのかもわかりません。この点は当然これでは知る由ありません。刑事局長言った、アメリカ局長言った、SECに当たってより綿密な資料を取るよりほかないと、あるいはどこか向こうで公表されるのを待つよりほかないと。当然そういうことに思います。アメリカ局長、それでいいですね。間違いありませんな、私のあれで。
  196. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) ただいま先生の御提起の特別の点について、果たしてどれだけのものが入りますかは……
  197. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない、その読み、英語の読みですよ。
  198. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 英語の御指摘の点は、ダグラス社としてはこれらの支払いが適切かつ正当なものであったと信じているけれども、特別委員会がその支払いについても調査を行うだろうということを明確に述べております。
  199. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうですね。私の言ったのと間違いありませんな。
  200. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) そうです。特別委員会が調査を行うということを書いております。
  201. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、百八十万の中に入ってないとは言ってないですね。これから調査にまつということも言っているんですね。断定していませんね。
  202. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) そこの部分は、これらの支払いが適切かつ正当なものだったと信じているけれども、それについて特別調査委員会が調査を行うということでございます。
  203. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあいいや。ありますか、何か。
  204. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) おっしゃられるように、その注は、百八十万ドルの中にはこれこれのものは含まれていないと、その含まれていない支払いについて調査委員会がやはり調べるであろうと、こういうことだろうと思います。
  205. 黒柳明

    ○黒柳明君 それに対しての答えが来ているんです。それにつきましては、正当であるということはこっちも変わりありません、不適当であるというわけには、ダグラスですから。それに対しましては――さっきのライセンス生産は除きますよ、この英語ですから。それに対して調査した結果は、マクダネル・ダグラス社は事務所使用代及び事務経費及び立てかえ払いについても払いました。また航空機以外の製品販売についても手数料は支払っておりますと、こういうことなんです、刑事局長。ああ、ちょっとお聞きになっていないですか、済みません。ここに、百八十万ドル、航空機セールスのコミッションとして払いましたということがあるんですよ。それについての注があるんです。ただし、この額については云々云々を除いては払ってないと思う、だけれども、これからいまダグラス社で調査しますからと、こういうことですね。ところが、それについては、百八十万ドルからちゃんと支払いしておりますと。言葉はここに書いてあるとおりです。「アドミニストレイティブェクスペンスズ」とか、それから「リィンバーストオフィス」とか、同じ言葉を使っていますよ。これはもう払っていますと、百八十万ドルから。出てきています。ただ問題は、このライセンス生産の分が百八十万ドルからあったという断定はないんですが、これを見ると断定せざるを得ないです。ほかにはないみたいです。外務大臣おっしゃったように、あればほかにという感じがすると――この文章だけ見ますと、やっぱり百八十万ドルの中にライセンス生産のコミッションも入っていたんじゃなかろうかと、こういうような感触です、これは。書いてないんだからわかりません。ただ、ライセンス生産分のコミッションもありますと、こういったことしか書いてありません。百八十万の中にあったとは書いてありません。こういうこともこの文面には出ております、アメリカ局長。――アメリカ局長、何か人ごとみたいにふうっとこう、アメリカ局長、にらめっこですか。いまこの数字について、百八十万ドルの中には入ってないけれども調べますというのがあったでしょう、これコメントが。これについてはこの同じ言葉を使いまして――日本語ですからちょっと意味は違っています、いま言ったのは。言葉は同じ、そっくり。ここに出ている言葉そのまま使っている。これは百八十万ドルから支払われておりますと、こういうふうに手紙に書いてあります。そうすると、ライセンス分のコミッションも入っているのかというような感じがすると。別じゃなかろうと、こんな感じがすると、刑事局長、こうこの文面からは読めるんですが、真偽のほどはわかりません。装備局長、よく聞いていてよ、あなたが一番の当事者ですから。これから矢面に立つのは、もう刑事局長アメリカ局長は引っ込んでいきますよ。装備局長がどんどんどんどんクリスマスとともに前進していくんですよ。いいですね。こういうことも文面から察知できます、事実のほどはわからないと。どうですか装備局長。ここらあたりで一言、前向きな答弁してごらんなさい。
  206. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) ただいまいろいろ御指摘のありました点を十分に踏まえて考えてまいりたいということであります。
  207. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、法務大臣、済みません、最後に一言。もう時間がありませんものでね。  要するにこのようなことです。私は何も冗談で当然こんなことを言っているんじゃありませんし、もうここにくるまでの努力はお互いに大変なことは――何でもぱっと出てしまえば簡単なものです。そこにくるのが一言だってなかなか――まして向こうから、当事者から文面を取るなんというのは大変なことです、ロッキードのときもやりましたけれども。  それで十五日からわずかの日にちしかたっていないのにせよ、先ほども言いましたように、今回の事件の性質は全く違う、ロッキードの一番最終点から出発した。こういうことで非常に私の常識あるいは向こうのマスコミ、向こう関係者は、本当にロッキードのようになるのはむずかしいですね、これでうやむやですねというのがもう一〇〇%です、九九%です。そうあっちゃならない。そのためには何をするか。当然外交ルートを通じて、やっぱりSECが持っているんですから、そこにぐんぐんやっぱり突っ込んでいかなきゃならない。当然この三者の合意がありますから、裁判所の網がかかっていますから、これは言ったったってどうなるものじゃない、誠意がなければ、あるいは時間がなければ、あるいは相当の高度な政治判断がなければ。だけれども、これだって不可能とは言えない。それがやってない。  その一つは、いまのこの文々句々にしたったってどれだけの真剣な翻訳なり調査なりしているかと言ったら、失礼ですけれども、アメリカ局長、余り突っ込んでやってないみたいだ。私の方がよっぽど真剣にやっているみたいだ、いまのわずかな時間を経ただけでも。装備局長、ましてそのライセンス生産が入っているか入っていないか。大日本ですよ、世界第二の経済大国日本。まあそれとこれとは関係ないですけれども、それがこのライセンス生産があるかないかもわからない、防衛、外務の両省庁が。一本の要求を入れればすっと向こうから出てくるのがわからない。外務大臣、こういう不手際、申しわけないけれども。さらに法務省。刑事局長は本当にやっているけれども、もっと先行しましてね、これじゃ困ると、もっと外務省を督促しましてね。犯罪を立証するのは法務省なんだから、法務大臣なんだから、ここで就任早々やっぱり古井法務大臣はみごとだ、やっぱり大平内閣が目玉として立てた法務大臣だと、何もスタンドプレー、手柄ということはないですけれども、こうやらなきゃならない局面じゃないですか。情勢待ちなんということじゃないですよ。  まして防衛庁の装備局長、ライセンス生産が入っていると、こうわかった日にはすぐ長官に報告してください。それであわててください。いいですか、暮れもお正月もないようにひとつあわててくださいよ。あわてなかったら大変なことになりますから、いいですね。  さあ、いま言ったことを踏まえて外務大臣、法務大臣一言
  208. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの貴重な御意見と御努力が無にならぬように、それを糸口にして早速資料を集め、情報を集めるように指令をいたします。
  209. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) ただいまのお話は敬意を表しつつ篤と拝聴いたしましたので、御了承願いたいと思います。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、まだ三分あるね。  最後にそれじゃ装備局長、断定されるべき資料を私は持ってないんです。当然そんなことはないと確信すると、防衛庁長官がお出になっても同じような答弁が返ってきたと思いますよ。だけれども、確信は確信ですから、客観的事実は事実ですから、ひとつまた当時までさかのぼりまして、装備局長がやっぱり現職についていて一番の担当者ですからな、自衛隊機のライセンス生産、それにコミッションがあったなんといったら、もう一番のやっぱり渦中の人になるわけですから、至急これについては、新任早々で大変でしょうけれども、年末年始を迎えまして予算編成期で。ですけれども、真剣にこの問題に取り組んで、やっぱり逐次この決算委員会で報告を――提起があったんですから、委員長を通じて委員会に報告していただくと。年内にでもやっぱりしかるべくやっていただくと。これは外務、法務当局だって同じだと思うんですな。委員長を通じてひとつ委員会に報告してもらいたいと、こう思うんですが、その中のやっぱり真剣にやらなきゃならないのは防衛庁でしょうな、ライセンス生産の中のコミッションがあったと、これが断定的になったとしたら。そんなことはない、確信しますじゃ許されないんじゃないですか。その点最後に一つ締めくくってください。
  211. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) 先ほど来防衛庁の機種に関連しましてお話がございましたけれども、全く私どもそういったことは信じられないことでございます。そういう意味でございますけれども、関係省の――私ども防衛庁の立場から申しますと調査等限界がございますので、関係省の情報の収集あるいは調査、そういうものの推移を十分注意していきたいというふうに思っておりますが、しかし、やはり私どもとしては、今回のマクダネル社に関連する防衛庁の機種について疑惑があるというふうには思っておりませんので、念のため申し上げたいと思います。  以上でございます。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなこと言われると、思っているかいないか聞いてるんじゃない。客観的事実が、外務、防衛あるいは法務がわからない事実が一つ二つ出たんだから、それを踏まえては、思っているとかいないとか主観的な判断は客観的ないまの判断で消されていくんじゃないですか。あるいはトーンが薄くなるんじゃないですか、ダウンするんじゃないですか、必然的に。それをいまここ一時間半にわたってやったんですから、それを踏まえてなおかつ思ってないなんということを繰り返していたんじゃ、これはもう隣の隣の伊藤刑事局長に何やっているんだって笑われちゃいますよ。これは客観的なデータ、客観的な。しかもダグラスから来ているんですから、広報副社長から。これはやっぱり思っていないということについて、最後の締めくくりの言葉じゃおかしいんじゃないですか。とは思いますけれども、そういう点を指摘されたんですから、それについてはやっぱり防衛庁としましても姿勢を正して、本当に調査すべきはすると、各省庁と連絡とって厳しくこれに対しては速やかに対処いたしますと。ぼくが局長になって答弁した方がよっぽどりっぱな答弁ができる。どうですか、最後に。ないと思われますと言って、ぼくがああそうですか、結構でございましたと言って座ったら、何のためにいままで話してきたのかわかりゃしないじゃないですか。済みませんね、もう一回。
  213. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) それではもう一度。
  214. 倉部行雄

    説明員(倉部行雄君) ただいまの先生の御意見を踏まえまして私どもとしても努力いたしたいと、こう思います。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと小さくて聞こえなかったけれども結構です。どうも済みません。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 きょうは長官に大変お忙しいところを御出席いただいておりますので、最初、私はかためて長官に御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  SECの報告によりますと、ダグラス社の日本への航空機の売り込みに関連いたしまして、百九十一万五千ドルのコミッションが流れて、それが政府の高官にも流れていると、こういう重大な疑惑が提起されております。第二のロッキード事件とも言うべきこのダグラス社の疑惑につきまして、政府としても私は全容を究明するために全力を挙げると、こういう姿勢がなければいけないと思いますが、この点につきましてまず基本的な姿勢を長官にお伺いいたします。
  217. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 政府の基本的な態度でございますが、歴代内閣とも、国民の信頼、そういうことをモットーとしておりますし、もちろん大平新内閣も信頼と合意というキャッチフレーズを標榜しておりますので、国民の信頼を得なければならないという基本線には変わりありません。したがって、この問題につきましてもそういうビヘービアで臨むことはもちろんでございますが、この問題につきましてはいま法務、検察当局で調査中でございますので、その結果を踏まえてまた政府態度を決めたいというふうに思っております。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 きのうきょうの私は御答弁を伺っておりますと、本当に積極的にこの問題を解明しようという姿勢にいささか欠けるのではないかというふうに思っております。  そこでお伺いいたしますが、ダグラス社が日本への軍用機の売り込みに当たりまして日商岩井を代理店としていることは御存じでございましょうか。
  219. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 知りません。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、いわゆるエアバス商戦でロッキード社のトライスター、それからダグラス社のDC10と激しい売り込み競争をしていたボーイング社、これは747ですけれども、この日本での代理店が日商岩井、こういうことであったということも御存じないわけでございましょうか。
  221. 田中六助

    国務大臣田中六助君) よく知っておりません。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 これはもう周知の事実だと思います。こういうことを御存じないのは、ひょっとすれば私は長官だけではなかろうかというふうに思いますけれども、さらに重ねて伺わせていただきます。  私どもの調査によりますと、日商岩井から、長官の政治団体である東京六宏会、これ事務所は長官の議員会館になっておりますけれども、ここが一九七〇年から一九七四年の五年間に千百七十九万円の政治献金、これを受け取っておられるという、こういう事実がございますが、このことは間違いございませんでしょうか。
  223. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 政治資金規正法の、そういう法律によりまして正しく届けておりますので、それはそのとおりだと思います。むしろ私の記憶によりますと、昭和四十一年ごろから届けを出しているんじゃないかというふうに記憶しております。
  224. 安武洋子

    ○安武洋子君 私がいま申し上げました一九七〇年から一九七四年の五年間、この千百七十九万円といいますのは、日商岩井の政治献金の中では最高額でございます。私はここに一つの疑惑を持たざるを得ないと思うわけです。  たとえば一例を挙げますと、一昨年の十二月にSECが、ボーイング社につきまして、海外への売り込みに関しまして代理人十八人に対しまして七千七百万ドル、これは日本円にいたしますと約二百三十一億円でございますが、このコミッションが一九七一年から七五年にかけて支払われた事実、これがあるというふうに明らかにしております。このコミッションが日商岩井を通じまして日本政界に流れたという疑惑も指摘をされております。この時期こそボーイングが激しい対日売り込み、この工作を行っていた時期でございます。一九七〇年から七四年にかけて、ちょうどこの時期にかけて長官の政治団体が最高額の献金を受け取っておられるということになれば、このボーイングの対日工作の資金が含まれていると、こういう疑惑が生じてくると思いますけれども、この点に関してはいかがでございますか。
  225. 田中六助

    国務大臣田中六助君) そういうことがあったということは全く知りませんし、まあこの五年間でそういうトータルになるようでございますが、月に最初は二万円、その後は五万円ぐらいの入会費だったと思います。したがって、そういう裏でいろんな売り込みとかいうようなことについてこれと関連があるということは、ゆめにも考えていなかったし、現在もそのまま法にのっとって、政治資金規正法にのっとって自治省に届けておるわけでございます。
  226. 安武洋子

    ○安武洋子君 SECの報告をお読みじゃございませんのでしょうか。長官はいま疑惑を否定なさいました。しかし、全日空の若狭被告は、ボーイング社やダグラス社の方が日本の政治家を使って強力に売り込んできた、こういうふうに語っております。さらにロッキード公判でも、藤原亨一元全日空経営管理室長でございますね、この方は。ボーイング社からのリベートを日商岩井を通じて受け取った、こういうことも明らかにされております。全日空ルートの第五十五回の公判では、全日空がボーイング社の航空機を購入する際、合計約九千万円の裏金をもらったことがある、こう証言しておられます。そして国税庁の調査でも、全日空の裏金としてボーイング資金約一億円が入っていたことも確認されております。で、裏金の使い道は考えなかったが、選挙のときのおつき合いもあるしと、こういう藤原発言にも見られるように、相当広範囲な政治家にお金がばらまかれたというふうなことも考えられるわけです。また、全日空ルートの第六十四回の公判で、同じく藤原氏が、ボーイング社のB727、これを購入したときも、代理店の日商岩井が政治家にごあいさつをした前例があると、こう述べておられるんです。  こういうふうな事実を一つ一つ積み重ねて見てまいりますと、長官の政治団体に最高額の政治献金が届けられていると。こういうことにはやはり疑惑を持つのが私は当然だと、疑惑を持たれてもやむを得ないのではないかと、こういうふうに思いますが、いかがでございますか。
  227. 田中六助

    国務大臣田中六助君) あなたが疑惑を持つのはあなたの勝手でございますが、私は毎月会費として二万から五万いただいておってトータルがそういうふうになったんで、あなたの質問ではあたかもそれが一編で私に入ったような口ぶりでございますが、飛行機を売り込む、売り込まない、そういうことについて私は一切関知しておりませんし、全日空がどういうビヘービアをとったか、藤原という人がどういうビヘービアをとったかは全く知らないことです。
  228. 安武洋子

    ○安武洋子君 では重ねてお伺いをいたします。  日商岩井をめぐりましては、ボーイングだけではございません。いま焦点になっておりますダグラス社の軍用機の対日売り込みをめぐっても重大な疑惑が持たれているわけです。たとえば百八十万ドルのコミッションというのは、日商岩井を通じても流れている疑いがございます。日本にはダグラス社のF4ファントムが入っております。そして、今後F15イーグルが入ってくることになっております。  そこで、お伺いいたしますけれども、F4ファントムの売り込みをめぐって、第二次のFX戦争と言われるさまざまな疑惑が指摘されてきたわけですけれども、この売り込みで暗躍したのが、当時日商岩井の常務で、現在の副社長の海部八郎氏であると、こういうふうに言われております。長官は海部八郎氏と面識がおありでございましょうか。
  229. 田中六助

    国務大臣田中六助君) パーティーなどでお会いしたことはございます。
  230. 安武洋子

    ○安武洋子君 その程度でございますか。
  231. 田中六助

    国務大臣田中六助君) そうです。
  232. 安武洋子

    ○安武洋子君 ある新聞報道によりますと、「海部氏は池田内閣時代の首相秘書官田中六助氏と面識があった」と。また、「日商側がダグラス社に対し、日本国内での政治工作資金を通常の代理店手数料に上乗せして請求していた」、こういう疑惑が指摘されております。それから、これは長官の証言が載っておりますけれども、「海部氏は知っている。たしか親友の安倍晋太郎に紹介したと思う。」と、こういうふうなことも載っております。そして、長官御自身のこういう疑惑を解明するためにも、ダグラスの疑惑、こういうのは言うに及ばず、ボーイングの疑惑を含めて私は徹底的に解明なさらないといけないと思うんです。いろんな客観的な事実一つずつを重ね合わせますと、長官は私が疑惑を持つのは勝手だとおっしゃいますけれども、これは全国民がやはり疑惑を持たざるを得ません。長官先ほどおっしゃいましたように、大平内閣は信頼と合意を旗印にしているんだと、そのかなめでいらっしゃいます、そういう長官に、こういう一つずつを重ねていくと疑いを持たざるを得ないということについては、私は疑惑をお晴らしにならないといけないというふうに思うわけなんです。こういう点で、日商岩井との関係を私ははっきりなさるべきだと、こういうふうに考えますが、この点はいかがでございますか。
  233. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 先ほどから申しておりますように、日商岩井との関係は、毎月私の後援会でございます六宏会に、昭和四十一年六月ごろから入会の会員として二万円、あるいは最近――最近って、四十九年で終わっているわけでございますが、四、五万円の入会費が入っておるということでありまして、その裏で飛行機の売り込みがあったとかなかったとかということにつきましては一切関知しないことです。
  234. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは自治省からいただいた資料でございます。東京六宏会には一九七〇年に四百二十六万円、一九七一年に三十三万円、一九七二年六十万円、一九七三年に百六十万円、一九七四年に五百万円、合計千百七十九万円、こういうふうになっております。  そこで、私どもは長官の事務所に問い合わせをさせていただきました。そのときに長官のところの松永さんという方がお出でございました。で、政治資金の届け出の控えを見てみると、日商岩井からは二百六十三万円しか受け取っていない、なぜ千百七十九万円になっているのかわからない、こういうことを言うておられます。私は重大な問題だと思います。これは自治省にお届けになっている金額でございます。一方政治資金の届け出の控えを見ると、日商岩井からは二百六十三万円、これしか受け取っていない。期間は私どもは明確に一九七〇年から一九七四年までの政治資金というふうに申し上げております。これは重大な問題じゃございませんか。事実とすれば虚偽の報告にもなり得るわけでございますし、皮肉な見方をいたしますと、裏金と表金がこれは混乱したのではないかというふうにも思えるわけでございます。これはこのままなおざりにはできません。私はこれはちゃんとお調べくださって、一体どういうことになっていたのか、当委員会に御報告願いとうございますが、この点いかがでございましょうか。
  235. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 私の秘書の松永から、共産党の方からそういう問い合わせがあったということは聞いておりまして、すぐ調べるようにと言っております。言っておったわけですが、その調べでございますが、急に言われまして、私は自治省に届け出る届け出につきましてはいつも秘書に任しておりますし、松永秘書そのものは、途中で体を壊しまして、何年か遊んでおってまた最近復活したわけでございまして、彼も部分の短絡があるわけです。まして私自身、約十年近いことでございますし、あなたの要求するようにぼっと資料が出なかったのは認めますが、十分その点を再調べをして、あなたの要求どおり提出したいと思います。
  236. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの点よろしくお願いいたします。
  237. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 官房長官、この委員会にいまの安武洋子君からの要望のありました資料は御提出になりますね。
  238. 田中六助

    国務大臣田中六助君) よく調べまして必ず提出しようと思います。
  239. 安武洋子

    ○安武洋子君 お約束の時間でございます。大変お忙しい中をお越しいただきましたので、もっとお伺いいたしたいことはございますのですが、きょうはこのぐらいにさせていただきます。どうもありがとうございました。  引き続きまして、この問題につきましては、私はいま田中長官の問題を申し上げましたけれども、ダグラス社の民間機とか軍用機の代理店である三井物産、それから日商岩井、ここからの政治献金を受け取っている中には、何も田中長官だけではございません。田中角榮、これは越山会でございますね。それから福永一臣氏、一心会。橋口隆氏、国政研究会。中曽根康弘氏、新政治調査会。これらの政治団体も含まれていると思いますが、自治省、いかがでございましょうか、御確認願いますが。
  240. 緒方信一郎

    説明員緒方信一郎君) お答えをいたします。  三井物産にかかる昭和四十四年から昭和五十年までの間、それから日商岩井にかかります昭和四十四年から昭和四十九年までの間につきまして、自治大臣所管の政治団体がこの期間に両者からどのような寄付を受けているかということを、官報によりまして公表されたところに従って調べましたところ、ただいま先生のおっしゃいましたような政治団体が寄付を受けた団体として含まれております。ただし、個人の名前をおっしゃいましたけれども、私どもは何々系というようなことについては関知しておりませんが、おっしゃいました政治団体については含まれております。
  241. 安武洋子

    ○安武洋子君 そこで、ロッキードの公判での若狭被告の検事調書でも、「昭和四十七年十月二十日ごろの夜、三井物産の石黒規一副社長(当時)ら二人が訪ねてこられ、“実は自民党の大平派、田中派など主だった派閥にごあいさつしてあるのでDC10を採用してほしい”といわれた。“ごあいさつしてある”とは、お金を差し上げたという感じがした」と、検事調書にこう書いてございます。  さらに検察側の冒頭陳述や検事調書によりますと、「田中は七二年八月下旬ごろ、若狭に電話し「日航がダクラス社のDC10に、全日空がロッキード社のトライスターに決めてくれると非常に都合がよい」との意向を伝えています。それを聞いた渡辺は、「政治家とはうまく考えるもんですな」」と感心したことが明らかになっております。つまり、政治家が何らかの形で、DC10の売り込みについても、日航か全日空かはともかくとして、売り込みに働いたということは公判を通じて明らかになってきているわけです。  これらの趣旨から見て、日商岩井、三井物産、とりわけ三井物産からの政治献金について、献金の趣旨、性格等について重大な関心を払うべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  242. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 私がそういうことに重大な関心を払うべきかどうか、とっさにはお答えいたしかねます。
  243. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ重ねて法務省に伺います。  全日空の渡辺被告の検事調書によりますと、田中角榮が全日空の若狭に対して、先ほども申し上げましたように、日航がDC10、それから全日空がトライスター、これを導入してくれるとありがたい旨の電話があったと、こういうことなんです。検察当局としては、当然のことながら、検事調書は公判維持の重要な材料の一つとしてこういうものを提出されているわけですから、この検事調書の内容につきましてはこれは確信を持っておられるわけですね。この点を最初に確認しておきます。
  244. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘の検事調書は公判にまだ提出いたしておりません。渡辺証人の証言の際に、検察官の取り調べと異なる供述をいたしましたので、それを弾劾するために検事調書の一部を援用して尋問をしたことはあるようでございますが、まだ公判に提出されておりませんので、これにつきましての御答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  245. 安武洋子

    ○安武洋子君 全然確信のないもの、それを提出する提出しないは別として、検事調書にお書きになったわけですか。
  246. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 現在進行中のロッキード事件公判に関する問題でございまして、私どもといたしましては、ロッキード特別委員会におきましても、公判廷で証拠調べを終えました証拠書類、証拠物の関係につきましては、国政調査に御協力申し上げる意味において細かく御説明を申し上げておるわけでございますが、いまだ裁判所の目に触れていない調書の問題につきまして、これがどういうふうにつくられたとかそういうふうなことは、裁判への影響等も考慮いたしまして申し上げかねると、こういう次第でございます。
  247. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、どちらにしてもこういうふうに検事調書の中にお書きになったということは、一応こういうことを調べられて、やっぱり確信を持ってお書きになったというふうに思うわけですね。  これから推察するところによると、そして私が先ほど読み上げたこの問題でも、冒頭陳述でも、結局田中角榮は、日航がDC10、全日空がトライスターになることを願っていたということははっきりしているわけです。  ところで、結果はどうなったか。昭和四十七年十月には全日空がトライスターの導入を決定しております。それから昭和四十八年十二月には日航がDC10の導入を決定しております。これはまさに田中角榮が願ったとおりに事が運んでいるということなんです。途中にどういうことがあったか、そういうことは知りませんけれども、客観的に見て、最初に田中角榮が願ったとおりになったということはこれは歴然としていると、こういうふうに思いますけれども、これはいかがなんですか。
  248. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘の点は、一つの推理に基づく御見解であろうかと思います。
  249. 安武洋子

    ○安武洋子君 昨日も私どもの沓脱議員が、TDAのDC9の導入につきまして田中角榮が深くかかわっていると、こういう疑惑を提起いたしました。しかし、DC9ばかりか、DC10についても田中角榮が重要な役割りをやはり果たしているという疑惑はぬぐい切れないわけなんです。私はやはりここにも重大な関心を抱いていただかなければならないと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  250. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ただいまの御指摘は、何かその間に犯罪として捜査すべき事項があるのに捜査しないでいるという御指摘であるとすればそれはお返しをいたさなければなりませんが、検察当局及び私どもといたしましては、俗な言葉で申します疑惑というようなものを追い求めておるわけではございませんで、犯罪を追い求めておるわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  251. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは重要な中身があるんです。日航のDC10の導入自体これが非常に不自然で、疑惑に包まれているわけです。  たとえば日航は四十八年の十二月に、DC10を四十九年から五十一年にかけて六機導入する、このことを決定しております。ところが日航は、五十一年時点でもボーイング747、いわゆるジャンボ機の未使用機材、これがアメリカのアリゾナの飛行場に三機も放置されておったと、こういう事実があります。  さらに、私はここにこういうふうに持ってきておりますけれども、これは日本航空労働組合の内部告発の書類です。この中には、DC10を六機導入すると、DC10の未使用材料、いわゆるグランド機材が二機も生まれる事態にあったことが日航の五十一年から五十三年の事業計画に基づいて明らかにされていると、こういうことが書かれてあります。つまり、当面必要でないDC10を購入したということになるわけなんです。法務省はこの事実を御存じでございましょうか。
  252. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) ただいまの御質問、いろいろ御意見にわたる部分がございまして、それをイエスとも申し得ませんし、知らないというふうにもお答えしにくい大変微妙な問題でございまして、いろんなことをロッキード事件の立証に必要な限りにおいては調べておるわけでございます。立証上全く関係のないことは調べてないこともございます。そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  253. 安武洋子

    ○安武洋子君 きのうの御答弁とちょっと違って、きのう森羅万象すべてにわたって調べていると、こうおっしゃったんですけれども、今回のSECの報告、さらにさきに指摘いたしました田中角榮らの役割り、こういうものを考えますと、日航の不自然で不合理なDC10の導入の背後には、やはり政治家の圧力とダグラス社の不正資金の裏づけがあったという、こういうやはり重大な疑惑が生じてくるわけなんです。  それで検察庁はSECの報告に重大な関心を持ってはおると、こういうふうに御答弁でございますけれども、そうであるなら、ダグラスの疑惑の焦点とも言えるこうしたDC10の売り込みをめぐる疑惑についても当然重大な関心をお払いになるべきではないかとこういうふうに思いますが、この点いかがでございますか。
  254. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 一つの貴重な御意見として承っておきます。
  255. 安武洋子

    ○安武洋子君 ということは、こういう疑惑についてもやはり重大な関心をお払いになるということでございますか。
  256. 伊藤榮樹

    説明員(伊藤榮樹君) 現在検察当局がいたしておりますことは、SECの報告書を十分分析、検討いたしまして、それによって犯罪の嫌疑というものが生ずるかあるいは犯罪捜査の端緒が生ずるかということを検討しておるわけでございまして、将来仮に――仮定の問題でございますが、捜査を開始するというようなことになりますれば、一般論といたしまして捜査と申しますのは、頭の中で描きましたいわゆる疑惑とか、そういうものを追い求めるわけじゃございませんで、証拠によって事実から事実を追い求めて、そして犯罪の有無を明らかにしていくわけでございまして、そういう意味で先ほど来御指摘の点は、私、篤と拝聴いたしておりますので、何らかの方法で検察当局にそういう御意見があったということはお伝えしたいと思っておりますが、検察としてはただいま申しましたような態度で鋭意分析検討を進めておると、こういう状況でございます。
  257. 安武洋子

    ○安武洋子君 外務大臣、先ほどからの論議をお聞き及びと思います。外務大臣にお伺いいたしますけれども、ロッキード事件の際には、当時の三木内閣はフォード大統領親書まで送っておりまして、氏名を含む関係資料の公表並びに提供を求めております。その中では、「この事件がうやむやに葬られることは、かえって、日本の民主政治の致命傷になりかねない」、こういうことも書かれてございますし、日米関係のためにも真相究明に一段の協力を切望するというふうにも書かれているわけなんです。  第二のロッキード事件とも言うべきダグラス疑惑についても、こうした立場から、私はやはり米政府とSECに対しまして全面的な協力を要請すべきではないかと、こういうふうに考えますが、外務大臣の御所見をお伺いいたします。
  258. 園田直

    国務大臣園田直君) この問題に対する資料の入手については、先ほどから申し上げましたとおり、あらゆる手段を尽くし、あらゆる資料を集める努力をいたします。
  259. 安武洋子

    ○安武洋子君 日本政府としましては、こういう資料、調査の結果、これを公表してほしいと、当然アメリカに、SECに対して言うべきだと思いますが、これはいかがでございますか。
  260. 園田直

    国務大臣園田直君) 情報、資料の入手をやりまして、そういう障害がある場合には当然政府間の交渉もしたいと考えております。
  261. 安武洋子

    ○安武洋子君 重ねて外務大臣にお伺いいたします。  これは去る十月の三十一日でございますね、いわゆるフレーザー委員会が韓米関係に関する調査についての最終報告を議会に提出しております。この報告は直接には米韓関係に関する報告でございますけれども、金大中事件とか、あるいはソウルの地下鉄事件とか、朴政権の腐敗ぶりと日本のかかわり、文鮮明機関、こういうものなど日本関係のある問題についても述べられております。これら日本にかかわる報告について、一体外務大臣はどのように受けとめられておられるでしょうか。
  262. 園田直

    国務大臣園田直君) フレーザー委員会の報告は、御承知のとおりに、多数の意見と、これに少数の意見を併記してございまして、これはほかの問題と違って国会の委員会で出された報告書であります。非常に膨大な物でありまするので、ただいま外務省で急いで検討いたしておるわけでありますが、その検討の結果、これまた必要に応じてこの委員会に、書かれた問題点を中心にして資料を集める必要があれば資料収集に乗り出したいと考えております。
  263. 安武洋子

    ○安武洋子君 わが党は、このフレーザー委員会の報告の要点につきまして、田中官房長官を通じて政府にもお手渡しをいたしております。その要点をお読みになっただけでも、日本に関連のある問題につきましては、私は明確に出ていると思います。この点について外務大臣は一体どのようにいまお受けとめかということをお伺いいたしとうございます。
  264. 園田直

    国務大臣園田直君) 国会の報告ではあり、また少数意見、多数意見あるわけでありますが、具体的にいろいろ日本関係することが書かれておりますので、この疑惑を晴らすか、真相を究明するか、こういうことは当然やらなきやならぬと考えております。
  265. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、フレーザー委員会の報告は、金大中事件に関して、金大中氏を拉致したのがKCIAによる犯行であることを公式に断言いたしております。それから当時の駐日公使であった金在権こと金基完、これについて、彼が当時KCIAの東京支局長であって、彼を拉致の共犯者とする情報を受けていると、彼の事件への関与も明らかにしています。また、事件への駐米KCIA要員の関与など、米行政府内の一般的な認識は事件にKCIAが関与していると確信していた。さらに、KCIAによる金大中氏暗殺計画は在米活動時代からあったこと、また、この事件の背景には朴大統領の金大中氏に対する憎悪と敵意、あるいは米韓関係をめぐる問題があった、こういうことなどを明らかにしております。  フレーザー委員会の報告は、三年間にわたって膨大な調査を行った上に立って、公式な機関が公式な報告として出しているものでございます。その中で金大中事件の犯行をKCIAによるものと断定しているわけですけれども、このことは政治決着を見直す上でも重要な根拠になるものではないかというふうに思いますけれども、いかがお考えでございましょう。
  266. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) ただいま大臣も御説明ありましたように、膨大な報告でございまして、本報告書のほかに、さらにはアネックスが二部と、その後に聴聞会の記録がまた後から出たようでございまして、本体の方は十一月上旬に入手いたしました。付属の方は十二月の中旬に入手いたしました。聴聞会の記録はまだ到着していない状態でございます。私どもはこれはアメリカのこの委員会の出した、御指摘のような長い検討の結果の報告書でございますから、これをまず誤りなく全体として理解する必要があると思っておりまして、現在鋭意検討努力をしているところでございまして、その努力が進みます前に余りその個々の部分についてコメントするのは差し控えている次第でございます。
  267. 安武洋子

    ○安武洋子君 聴聞会の資料がまだだとおっしゃいましたが、これはお取り寄せいただくわけですね。お取り寄せになるわけですね。
  268. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) すでにこちらへ来る途中であろうかと思っております。
  269. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、こういう資料をすべて日本政府としては求められて、そして私はこういうものを国会にも明らかにしていただきたいというふうに思うわけです。  少し時間がないので急ぎますけれども、次に田中伊三次氏の発言についてお伺いいたしとうございます。  事件当時法務大臣をなさっておられた田中伊三次議員が、最近新聞とかテレビを通じてまして、事件発生当時すでに米CIA筋の情報を通じてKCIAによる犯行であること、または米CIAがKCIAに殺害中止指令を出していたこと、こういう重大な事実を明らかにされております。これはいわゆるKCIA犯行という第六感発言が実は根拠に基づくものであったという重大な事柄でございます。しかも、法務大臣という公職の中にあって、事件捜査のトップの地位におられた方の発言でございます。これが事実であれば、日本政府は当初からこの犯行がKCIAによって行われたということを知っていたということでございます。韓国の公権力による日本主権の侵害であったということを断定するに十分な根拠になるのではなかろうか、こういうふうに思いますが、この点はいかがでございますか。
  270. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) わが国の捜査当局の捜査の結果を伺ったところによりまして政府理解しておりますところでは、この金大中事件において韓国の公権力の行使があったと断定するには至っていないということでございますので、私どもそのように了解しております。
  271. 安武洋子

    ○安武洋子君 この点に関して田中氏から事情をお聞きでございましょうか。
  272. 城内康光

    説明員(城内康光君) お答えいたします。  警察は事情聴取というような捜査上の措置はとっておりません。ただ、田中先生の出身地を管轄いたします警察の幹部が、新聞にも報道されたことでもありますので、先生にお会いしたときに念のためにその報道のことについてお尋ねしたことはございます。しかし、新聞報道によりますと、第六感発言は根拠があるというようなことになっておりますけれども、そういう発言をしたというようなことはないというようなお話を伺っております。
  273. 安武洋子

    ○安武洋子君 テレビで御発言になっていらっしゃるわけです、御本人が第六感発言を。ですから、テレビによっていま私が先ほど申し上げたような発言をなさっていらっしゃるんですから、新聞報道なら本人の言ったこととあるいは違ったことが報道されるということもあり得るかもわかりませんけれども、テレビなら本人のおっしゃったとおりにそのまま電波に乗るわけですから、いまのお答えはおかしいです。
  274. 城内康光

    説明員(城内康光君) 私ども、いま御説明いたしましたように、直接先生にお会いしまして聞いておるわけでございます。問題は、第六感発言は根拠があるかどうかということでございますけれども、これはすでに四十八年の八月当時の参議院の法務委員会とかあるいは衆議院の法務委員会におきまして、根拠がないから第六感ということを言っているんだということを繰り返し御説明になっておるわけでございます。今回念のために先生からお話を伺ったのもやはりその線を出ておらないわけでございまして、私どもやはり根拠があるのかないのかというところが一番のポイントでございます。したがいまして、お会いして得られたものといいましては、捜査上私どもが必要と考えたようなものは何も得られなかったと、こういうことでございます。
  275. 安武洋子

    ○安武洋子君 田中発言はもっと具体的な中身をおっしゃっております。田中氏にいち早く事件を伝えた人がいる。KCIAの犯行であることを明らかにしている日本国の某高官がいる、こういうこともあります。それからまた、米CIAがKCIAに殺害中止命令を出したことによって金大中氏の命の安全が確保されたことを田中氏に伝えに来た親朴系の日本在住韓国人がいると、当時りっぱな役職を持っていたと、役名を持っていたと、よく知っている人がいる、こういうことを言っておられるわけです。こういう人はだれかということをお尋ねになりましたか。
  276. 城内康光

    説明員(城内康光君) 田中先生は当時現職の法務大臣でございまして、重大なことを御承知であれば当然私どものところにも教えていただけると、当時そういう立場にあられた方でございます。先ほどから御説明しておりますように、第六感ということについてお伺いしたわけでございますけれども、第六感が根拠があるというようなことについてははっきり否定されておるわけでございます。念のために申し上げますが、私ども捜査をやる者として必要なことは第一感から第五感まででございまして、第六感というのは私どもにとっては価値がないと、こういうことでございますので、余り詳しい、まして被疑者じゃございませんので、詳しい点について問いただすようなことは一切していないということは申し上げているとおりでございます。
  277. 安武洋子

    ○安武洋子君 田中氏のところに――私が先ほど申し上げたようなことをおっしゃっているわけですよ、田中氏御自身が。じゃもう一度はっきりそのことをお伺いになればいかがなんでしょう。田中元法相に事情を至急にお聞きになると、そして情報提供者である高官、この線をたどっていけばKCIAの犯行だと、こういうことを裏づけることは可能なわけなんです。本当に調査をおやりになるというお気持ちがあるなら、やはり田中氏に至急に私は事情をもう一度しっかりと聞かれるべきだと、こういうふうに思いますけれども、いかがなんでしょうか。聞いて私はやはりこの委員会に御報告していただきとうございます。
  278. 城内康光

    説明員(城内康光君) 警察といたしましては、現在も捜査本部を置きまして鋭意捜査を進めておるわけでございます。私どもは、やはり先ほど法務省の刑事局長お答えになりましたように、捜査でございますので、一つ一つ事実を積み上げてやっていくということでなければならないわけでございます。もちろんその犯人を見つけるというだけじゃなくて、私どもの捜査の延長といたしましては、その原因であるとか、その背後関係というものに及ぶわけでございますが、いきなりそういうものについて先入感を持つということでは捜査としてはいけない、やはり事実を積み重ねていく過程、そういうものを通じてそういうものがおのずと証拠的にはっきりしてくると、こういうことだろうと思います。そういう姿勢で実は田中先生にも、先ほど申し上げたように、捜査上の措置じゃございませんが、念のためお聞きしたという措置をとったわけでございます。これまでのところでは先生から改めて伺う必要もないというふうに私どもは考えておりまして、現在やっております捜査を着実に進めていくことに全力を挙げたいと考えております。
  279. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちっとも捜査が進んでないじゃないですか。フレーザー委員会の報告が出ているということを申し上げました。その中に金大中事件が新しく提起されているわけでしょう。事態は変わっているわけです。それから、田中氏はもっと具体的におっしゃっているわけでしょう。いまもう一度繰り返しませんけれども、具体的なことをずっとおっしゃれば、捜査に本当に御熱心なら、事態を本当に解明しようと思うなら、お聞きになるのがあたりまえじゃありませんか、普通の捜査の常識からいきまして。それが常道でしょう。こういう情報をよく知っている人にもう少し聞けばすぐにわかるわけでしょう。この情報提供者に聞けばKCIAの犯行であったということが裏づけられると、そこまでちゃんと事態が進んできている、フレーザー委員会の報告と両方で。そういう御答弁をなさるということ自体が私はやっぱりおかしいと思いますよ。これだけいろいろと真相が明らかになってきてKCIAの犯行でないなんて言っているのは、日本政府と韓国政府だけなんでしょう。こういうふうな状態の中で、私はわが国の主権を本当に守ろうという立場にお立ちなら、田中氏にもう一度はっきりと事情をお聞きになるというふうなことはこれは欠かすべからざることだと思うのです。  そこで、私は外務大臣にお伺いいたしますけれども、外務大臣はこのことをどうお考えかということと、それからいま金大中氏は身柄を拘束されております。せめていま、とりあえず自由にすると、自由になってもらうということがこれはきわめて大事なことではなかろうかというふうに思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  280. 園田直

    国務大臣園田直君) 金大中事件、いろいろ御意見がありますが、外務省としては、御調査なさる関係庁の判断によって外務省としては動くべき場面があるわけであります。しかし、金大中氏の身柄については重大な関心がありますので、私はしばしば韓国には、人道上の見地からこの取り扱いについては申し入れをいたしてございます。
  281. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は田中元法務大臣はさらに重大なことを明かしていられると思うのです。それは韓国公権力による重大な主権侵害、これを追及できなかったのには、韓国に頭が上がらない癒着があったので韓国の困ることは日本政府は言わなかったと、こういうふうに言われているわけなんです。私は、事件後の政府の取り組みの経過を見てみますと非常につじつまが合うなと、こう思うわけです。いまや、KCIAの犯行でないと否定しているのは、私が先ほども申し上げましたように、日韓両国だけというふうになっていると思うのですよ。ですから、証言とか、捜査の行き着くところ、すべてKCIAの犯行と裏づけるのにもう十分過ぎるほどのいろいろなものが出ているというのは、これは衆目の一致するところなんです。私は政府がいまも頑強にこのことをお認めにならないというのは、やはり田中伊三次氏の指摘のように癒着があった、こういうことがあったということが事実だということの裏づけにほかならないというふうに思うわけなんです。  そこで、私もう一度外務大臣にお伺いいたしますけれども、本気でこの問題を解明なさるおつもりがあるのかどうか、そして、いま金大中氏のお身柄の自由については非常に関心をお持ちだということがございましたけれども、この点についてさらにもう一度強力に韓国に働きかけていただくことができるかどうか、その点をお伺いいたします。
  282. 園田直

    国務大臣園田直君) まず第二番目の方からお答えいたしますが、金大中氏の取り扱いについては、人道上の見地から今後とも韓国には意見は申し入れるつもりでございます。  なお、最初の御質問でありますが、これは外務省の権限ではなくて、やはり金大中事件が一応決着したという立場になっているからには、これが再び政府方向が変わらなければ外務省としては動く範囲はないわけでございますので、関心を持ちつつ見守っておるわけであります。
  283. 安武洋子

    ○安武洋子君 外務大臣もやはりいまの内閣の御一人でございます。私はいまの大平内閣としても、この問題を本気で解明するという立場に立っていただかなければならないと思います。そのことを強く申し添えまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。
  284. 三治重信

    ○三治重信君 私は海外経済協力問題について御質問をしたいと思います。  五十年度の決算書にも経済協力のことが書かれておりまして、この中に技術協力、それからあと青年海外協力隊の派遣の問題開発調査、センター協力、医療協力、農業協力、開発技術協力、開発協力、専門家養成確保等の事業、アジア諸国等の開発途上国に対する経済開発援助、また国連開発と、こういうふうなのが書いてありますが、この中で、これは平面的に書いてありますが、非常に日本の今後の外交の中で海外経済協力が、私は日本平和外交として、国力が許す限り積極的に展開すべきだと、こういうふうな考え方を持ち、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 前の福田内閣においても、ASEANへ福田総理が行かれた場合に、経済協力を三倍ないし五倍にすると、こういうような発言で非常に大きくセンセーショナルに報道されたことも記憶に新たなところであります。そういう中で、外務省の海外経済協力について、どういうところに重点を置いて積極的にやっていこうと、こう考えておられるか、ひとつ全体の構想の中の重点を御説明願いたいと思います。
  285. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 経済協力はいわゆる南北問題、先進国と開発途上国との間の問題の解決に貢献するきわめて重要な部門でございまして、特にわが国の場合は、貿易の面におきましても、それから資源の面におきましても、開発途上国と特に深い関係を有しているところでもございますので、経済協力の拡充と申しますものは、ただいま先生の御指摘のございましたとおり、大変重要なことだと考えております。そのため経済協力の拡充ということは、これは政府の重要施策の一つとして進めているところでございまして、特にその実施に当たりましては、重点を示せということでございますけれども、やはり政府ベースの経済協力について申しますと、政府ベースの経済協力は非常に条件がよろしい、非常に開発効果がある、援助性が高いということでもございますので、開発途上国の中でも特に貧困途上国というものを重点にしながら、その経済発展、民生安定に貢献するということを第一義に考えたいと思っております。  で、経済協力の手段についてでございますが、ただいま御指摘のございましたとおり、いろいろの分野に分かれているわけでございますけれども、全般的に申しまして一番重要なことは、まず経済協力の量を拡大し、質を改善するというこの二つであろうと考えております。  量の問題につきましては、かねてから政府開発援助を三年間に倍増するという目標を立てておりまして、その目標に向かって着実に努力を重ねているということでございますし、また質の改善につきましては、質を改善するためには援助の中の贈与と呼ばれます部分、この割合を多くするということと、借款の条件をよくするということと二つ重要なわけでございますが、特にこの贈与の部分の拡大ということにつきましては、特に無償資金協力、技術協力でございますけれども、これを今後拡充するということを重点施策といたしまして質の改善を図ってまいりたいと、かように考えております。
  286. 三治重信

    ○三治重信君 経済の方はいまのそういう御説明で大体いいわけなんです。私も賛成なんですが、民生の方ですね、民生の方で特に重点を置いておられるところはどこの部面ですか。
  287. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) これはわが国としても重点としているところでございますが、特に過去一年半、二年ほど前から、国際的にも、政府開発援助については特に開発途上国の中でもその貧困層が直接に裨益するような援助に重点を置いていくことがしかるべきであるという議論が高まっておりまして、わが国といたしましても、例で申し上げますと、たとえば医療協力、それから教育、それから社会インフラと申しますか、そのような分野におきます経済協力をこれからだんだんふやしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  288. 三治重信

    ○三治重信君 これはいま南北問題、こういうふうにおっしゃって、この南北問題の中に共産圏、いわゆる社会主義国、社会主義政権を持っている国に対して経済協力をどういうふうにお考えになっていますか。
  289. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 社会主義諸国でございましても、開発途上国でありますれば、その国の経済社会の開発に寄与するために経済協力を行っているわけでございまして、たとえば過去の実績で申しますと、政府借款は、ベトナム、それから政変後のラオス、ブルガリア、ユーゴスラビアなどに供与したことがございます。それからまた無償援助につきましては、ベトナムそれからラオス、モンゴル等にも供与しているわけでございまして、ともかくわが国の経済協力と申しますものは、社会主義体制のいかんを問わず、開発途上にある国の開発に協力する、そういう趣旨から出ているわけでございます。
  290. 三治重信

    ○三治重信君 今度中国とも平和友好条約ができたわけなんですが、この海外経済協力中国まで拡大される見通しというのか、そういう考え方はございますですか。
  291. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 政府ベースの経済協力につきましては、当面中国との間で話し合いが進められておりますのは技術協力でございまして、まず第一番目といたしまして、鉄道の分野における技術協力につきましていま打ち合わせを行っているところでございます。それから資金協力の面におきましては、現在話し合いが行われておりますのは輸銀ベースのものでございまして、これは経済協力の範疇からいたしますと民間ベースの経済協力という範疇に入るかと思いますが、そのような形で中国側との間に目下話し合いが行われているというのが現状でございます。
  292. 三治重信

    ○三治重信君 そうするとあれですか、中国への技術協力、こういうのは結局政府の予算でいわゆる負担をして、中国にこちらの技術者やエンジニアをこちらの金でやるとか、向こうから入って来るのにこちらの政府の金でみんな研修を受け入れるとか、そういうことを考えておられるわけですか。
  293. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 政府ベースの技術協力につきましては御指摘のとおりでございまして、政府の予算の一部もこれは使うことになるわけでございますけれども、中国の方も余り全額日本側に負担をおかけするのも心苦しいということで、負担の一部を中国側が持つというような方式も現在検討されているところでございます。ただ、いずれにいたしましても、一部の費用を日本政府の予算から支出するということにはなるわけでございます。
  294. 園田直

    国務大臣園田直君) いま三治先生の、共産圏に対する援助でございますが、これは大体三つか二つに区分されるべきものであります。共産圏で開発途上国の地域と、それからもう一つは、お隣の中国、それからさらにこの上に東欧共産圏諸国が経済技術協力を求めることがだんだん強くなってきたわけであります。  そこで、開発途上国の共産圏については、これは従来どおり、いろいろその国の実情を理解しつつその国の開発にこちらも協力するということで進めていきたいと存じますが、中国に対する協力では、ASEANまたはその他の国々が、中国日本経済技術協力をすることによって、いまでも余り多くない日本の経済協力が自分の方が削られるんではないかという不安があるわけであります。そこで、中国が近ごろ、自分の国は開発途上国であるからひとつ助けてくれという、姿勢は非常に低いわけでありますが、中国自体は、やはり中国も東欧も、主として日本に望んでおるのは技術とそれから長期の借款ということになっているわけであります。中国は、まあ日本政府よりも一般銀行に対していろいろ話を進めているようでございます。この借款についてECの諸国は、御承知の紳士協定がございますから、金利は特別な操作はせぬだろうなということを絶えず責められるわけでありますが、私が東欧諸国や中国に話を聞くところによると、どうも日本の金利はECよりも高いというお話もありますが、なかなか証拠がわからずに困っていると、こういう点でありますけれども、こういう三つに区分をしながら、やはり日本政府あるいは一般銀行等を総合しながら中国並びに東欧諸国の共産圏には協力していくことが必要ではないか。こちらの方が重点である。開発途上国にはやはり経済援助が重点であると、このように考えているわけでございます。
  295. 三治重信

    ○三治重信君 ありがとうございました。後で、最後の方でお聞きしようと思っていたことを先に非常に明快に言っていただいてありがとうございました。  まあその点で、この海外経済協力というのは、一番初めお伺いしたように、広げていくと際限がなくなっていくと思いますし、項目も非常に多くなり、それから国の対応の仕方もまあ多々ますます弁ず式に陥りやすいと思うんですが、この点はひとつ外交を進めていかれる場合に、やはり南北問題なら南北問題という一つの中心点を置いてやっていかれぬと、かえって援助をした、それがまあいろいろの相手の受ける価値判断日本がやっている全体の様子を見る、受けたいという国側が、かえって平たい言葉ではひがみ、それからおれのところだけ差別待遇するとか、こういうふうな誤解を受けるようなことになると、海外経済協力をやるがためにかえって大変な日本に対する不信をもたらすと、こういうことを特に気をつけていかなければならぬし、またそういうことばっかり気をつけていると何もできないというところがあるから、この海外経済協力についてはひとつ基本原則というものをはっきり立てて、それからまた私は、南北問題で基本的にこの開発途上国だと、こういう線をひとつ強く出して、まあ大きなスケールと、こういう対象の国からいわゆる信頼を受ける、長期的に信頼感を受けるやり方をひとつぜひお願いをしたい。  そこで、そのうちの一つに、この決算書にも書いてありますけれども、青年の海外協力隊派遣の問題があります。  この問題は、私聞くところによると、最近経済協力事業団の方のまあ所管というのですか、それにやらしているということなんですけれども、一番初めはむしろ独立の団体であったと。で、むしろこの経済協力事業団は、技術協力というものをしっかりやっていくために技術者というものを海外に派遣する、あるいは受け入れるいろいろの技術者のそういう待遇や人件費の問題を考えていくと、この海外協力隊のいわゆる純ボランティア的な、現地に入って、現地の一般の原住民と同じような生活をするとか、そういう指導とかなんかいうよりか、むしろ現地人とともに生活をし、ともにやるということになってくると、そういう技術協力とは、雇用条件、労働条件、そういう経済関係が非常に格差ができる。こういうことを考えると、むしろこの海外経済協力事業団、この技術協力を非常にやっておられる協力事業団が青年海外協力隊を一緒に所管するというのはどうだろう、ちょっと問題があるんじゃないかと、こういう意見も聞きますが、まずひとつこの青年海外協力隊への政府の基本的な態度、また海外経済協力事業団の方でこれを技術協力と一緒にしていることについて何らかの矛盾を感じていないかどうか、これについて御意見をお伺いします。
  296. 武藤利昭

    説明員(武藤利昭君) 青年海外協力隊は、ただいま先生御指摘のとおりでございまして、技術協力のために派遣される専門家とは違いまして、若い人たちが開発途上国の非常に環境の悪いところに入り込みまして、現地の人たちと寝食をともにしながら、仕事を教えると申しますか、技術の移転をするということでございます。非常に待遇の面で専門家と青年海外協力隊の間に差があることも事実ではございますが、むしろ協力隊につきましては、その発足の趣旨からいたしましても、そういう報酬を求めるのではなく、本当に現地並みの生活をする、そういうことによって現地の人たちと心を通わせるということでございまして、あえてそういう低い俸給にもかかわらずなお海外に出かけていきたいという、そういう若い方たちに行っていただいているわけでございます。そういう意味では、事業団が行っております技術協力と、この青年海外協力隊の行っております仕事には若干の性格の相違があることはただいま先生がおっしゃったとおりでございますけれども、ただ、青年海外協力隊と申しましても、これもやはり相手国政府との関係におきましては技術の移転ということを目的にしているわけでございまして、その限りにおきましては、専門家によります技術協力と相補うというような面もあるわけでございます。それで、いまは国際協力事業団の中で半ば独立の組織といたしまして協力隊がある、そのような形が一番望ましいのであろうと、一番妥当であろうというふうに考えております。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕  それからまた、かねがね御指摘をいただいているわけでございますけれども、わが国の海外技術協力を行うに当たりまして、技術協力要員の不足という問題があるわけでございます。わが国の場合、なかなか言葉の問題、それから非常に日本が環境がよくなりまして、開発途上国に行って仕事をするという人たちの数が必ずしも多くない、その他理由がございまして、技術協力につきましてはその技術協力要員の問題があるわけでございますが、青年海外協力隊で若いときから現地に行かれ、それで非常によくやってくださる優秀な方につきましては、お帰りになりました後も、もうそれっきりということにはしませんで、再度青年海外協力隊になって出ていただきましたり、あるいは事業団の方に入っていただきまして、事業団の方の専門家としてまた御活躍いただくというような両者間の融通し合うような関係もあるわけでございまして、そういういろいろな事情をあわせ考えました場合、恐らく現状が一番適当ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  297. 三治重信

    ○三治重信君 私も、まだこの海外経済協力事業の問題について関心は持っているんですが、本当に具体的な問題についてこれはという確信を持つわけではございませんが、二、三の例を言いますというと、オイスカでフィリピンのミンダナオとか何か、現地の方へ稲作の、現地民と一緒に稲作の増産をやったと。そうしたら二、三年で、現地の郡長というのですか、の人たちの非常な信用を得たと。むしろ農事試験場をつくるよりか、こういう青年が三、四人でも現地の農民と一緒に稲作作業をやってくれた方が全体としての稲作の生産のレベルアップに非常に役立つと。それはそういうこともある。私は、ひとつ今後非常に大学卒業生がたくさん出て、国内ばっかりじゃなくて、やはりまず裸一貫になって現地の中へ、何も特別な観念というのですか、技術とかそういう一段上から見るんじゃなくて、どんな問題でも現地の人たちの悩みなり生活をその中から向上さす、一つのリーダー的になる青年として海外へいろいろ送り込んで、またそういうことによって非常に生きがいを感ずる青年がたくさん出て、むしろこういう特別教わらんで自分から現地でわかって入っていく方が将来経済協力なんかの基盤ができると、こういうふうに思って、これを非常に拡大してもらいたいと思っているわけなんです。  そのためには、私はこういうものこそ事業団でなくて、本当にこういう一つの精神力と、現地との心の通う人間的な指導力を持った町のスタッフに任す、あるいはもっと言えば、そういうことをもくろむ宗教団体とかオイスカとか、みずから自然発生的にいろいろの経験をもって、そういう現地の住民と一緒にこういう青年を預けてくれるならばやってみたいというふうな人がある。そういうふうなところへいわゆる援助費、協力費を出していった方が、一律的な海外青年協力隊ということで事業団でやるよりか、そういう一つのセンターをつくって、そのセンターの中にいろいろのそういう有志なり宗教団体なりまた専門家が、自分たちのその能力を青年と一緒に発揮して各開発途上国へ行くというふうな雄大な構想をやってみたらどうか。こういうようなものは一にスタッフだと思うんですね。それとか、町の中にいろいろそういう青年と一緒にやってみたいという、まあ金も要らない、金もそう望まない、肩書きとか、何々課長とか何々隊長とか要らない、そういう人たちがある。そういう者を呼び出してそしてこの海外経済協力隊の構想を出したいと思っておりますが、ひとつそういうものを検討し、日本の青年を海外経済協力、ことにこの青年協力隊で人間の基礎をひとつつくって、海外の他民族、他国民と若いときに触れ合う、そしてそこの場で彼らの生活慣習をほんとにはだ身で知るという人間をつくっていくことが、私は日本人、また将来のために非常にいいんじゃないかと思うんですが、そういうことをあわせて、ひとつごく簡単に、時間が参りましたので大臣から伺って、この部面は日本の海外協力の人材を養成する大きな構想をひとつ打ち立ててもらいたいと思うんですが、ひとつ御意見を聞いて質問を終わりたいと思います。
  298. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見は非常に適切な、しかも高い見識の御意見でありまして、私もできるならばそういう構想をやりたいと考えておったところでありますが、御意見をもとにして十分検討をし、いまの御意見が通りますように努力をいたしたいと考えます。  なお、一つ問題は、海外に出ていったりっぱな青年の人々が現地で寝食をともにし、そしてよその国の人々と心が触れ合い、見識を広めて帰ってくる。帰ってきた場合の日本の国内で受ける待遇というものが非常に問題になっているわけでありまして、この点等も、ひとつぜひ御指導、御援助をお願いしたいと考えているところでございます。
  299. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私、外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  歴代自由民主党政府は、機会あるごとに日米安保条約は尊重、強化すると、こういうことを言明してこられましたが、今後もこの考え方に変わりはありませんでしょうか、どうでしょうか。
  300. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本米国関係は、日米安保条約を基軸にして進んでいることは御承知のとおりでありますが、しかし、その日米関係のあり方というものは、国際情勢、社会の必然性によって逐次変わっていくべきものであると考えております。少なくとも現段階における国際情勢というものは、冷戦という立場から抑止力による平和というふうに変わってまいり、その中でまた米国中国国交正常化ということもできたわけでありまして、緊張緩和の方向へは進むが緊張激化の方向へは進まない、また進ましてはならぬ、こう考えておりますので、そういう方向日米安保条約というものもわれわれは考えていくべきだ、こういうわけで私は日米安保見直し論というものを実は考え、米国の方にもその意思を伝えてあるところでございます。
  301. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいまの大臣の御答弁で基本的なお考えが理解できたわけでありますが、ところで、日米安保の軍事同盟の側面と言われておる面から、沖繩が米軍のかなめ基地となっておることは御承知だと思うんです。この事実をどのように受けとめておられるでしょうか。
  302. 園田直

    国務大臣園田直君) 台湾あるいはアジアの平和、安定のために、権衡の勢力による平和維持という点から、沖繩は非常な重要な役割りを果たしてこられ、また沖繩の方々には御迷惑をかけているわけでありますが、今度台湾地域をめぐって米中正常化ができましたことは、これによって沖繩の軍事基地なり軍備というのが強化される方向ではないと、このように判断をいたしております。
  303. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの問題は後に触れたいと思うのでありますが、私は、あえて日米安保が維持、強化されていくという前提に立ちますというと、常にそのしわ寄せば、沖繩が国益の名のもとに国策の犠牲になって今日まできた、これからもそういう心配が多分にある、こういうことをいままでの過程の中から十分評価できるわけであります。  そこで、ただいまアジアの平和、日本の安全の方向に進みつつあるので、緩和されることはあっても強化はされぬ、こういうことをおっしゃったわけでありますが、このことも具体的には日米共同委員会の中で取り決められることでありますので、さらにその細部の問題になるところは防衛庁、施設庁の問題になりますので、その点はまた後日に触れることにいたしまして、沖繩が常に日本の国益の名のもとに国策の犠牲にされてきた。このことは同情では償えない、私たちとしては生命、財産、人権にかかわる重大な問題だと、こう思っておりますので、日米協議委員会で、具体的に、沖繩の五三%を占める基地の中から起こる基地公害、これは具体的にはきょうは申し上げませんが、御存じかと思いますが、そういうわけで、緊張緩和の線に沿うて沖繩県民の要望が一日も早く入れられるように御努力をお願いしたいと思いまして、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  304. 園田直

    国務大臣園田直君) 御承知のごとく、韓国から米軍が逐次撤退をし、それから今度は米国との正常化によって一年後には米台条約が破棄になり、米軍はまたそれより早目に撤退するわけでありますが、台湾及び韓国から撤退された軍が日本の基地に増加をされて日本の基地が強化されるということはあり得ないと、こう考えております。なおまた、米中正常化というものを、私はこれを期待し歓迎しているわけでありますが、歓迎するゆえんのものは、アジアの平和と安定、繁栄に貢献するということにおいて期待をし歓迎しておるわけでありまして、米中正常化ができたことによってアジアの中で有事のおそれがふえてくるというようなことは断じてない、またあってはならない、こう思っておりますので、沖繩の基地がこのような変化によって強化される必要はない、また強化されることはない、こう思っておるわけでありますが、今後の私が入っておりまするいろんな相談、協議会等では私はその趣旨米国とは相談をしていくべきであると考えております。
  305. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの大臣のお考えをもう返すようなことになりますが、事実は、たとえば時間のずれはありますが、去る三月七日から十七日まで米韓合同演習、いわゆるチーム・スピリット78の合同演習が、横田基地をミサイル中継基地とし、あるいは沖繩基地の在沖アメリカ海兵隊の大集団の出動によって、しかも三十八度線の近くで大演習が行われた。この事実をもってすれば、これはむしろ朝鮮半島の緊張を高めることがあっても、私は平和と安全の方向にはまいらぬじゃないか。しかも、これの日米安保の目的にも反するのではないかと、こう理解いたしておりますが、その点いかがでしょうか。
  306. 園田直

    国務大臣園田直君) 先般の米韓合同演習で、それぞれ米軍の兵力が、沖繩ばかりでなく、日本の基地も使われたことは私も承知をいたしております。しかし、現在は権衡による平和という段階であり、抑止力による平和という段階でありますけれども、そういうわけで演習をやった。特にアジアの諸国では、アメリカアジアの防衛に責任を持たないのではないか、いざという場合にはアジアは見捨てられるのではなかろうかというアメリカに対する不信感が非常に強かったわけであります。これに対する一つのアピールでもあったと、こう存じておりますが、朝鮮半島でも、先ほども申し上げましたが、一方にはこれは対立が激化していると言う人もあるし、一方にはいや緊張は激化していないと言う人もあるわけでありますが、トンネルが見つかったり、いろいろ南北の間には問題があるとは存じますけれども、国際情勢から判断をして、南北の間にいま火を噴くようなことはあり得ないと、こういうことから判断をすると、大筋は私が先ほど申し上げたような方向必然性として進むであろうと、こう判断をいたしております。
  307. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ次に、いま話題を呼んでおります米中国交樹立の問題、五十四年一月一日からということになっておりますが、これはマスコミの報ずるところによると、世界の平和、とりわけアジアの平和と安定に寄与すると、大臣もそうおっしゃったわけですが、このことによって米台防衛条約破棄と、それから台湾から米軍が撤退と、さっきおっしゃったところです。このことは当然その目的からしますと問題ないと思うんですが、ところが、このことがいま特に基地から受ける不安、危険が多発しておる沖繩の立場からすると、そのことが即沖繩の基地強化になるのではないかという不安がいっぱいあるわけです。先ほどお話もあったわけですが、そのことを改めて、そういうことが本当にないのであるか、予想されるのであるか、予想されぬのであるか、はっきりそういうことはないと、こういう点ですね、もう一遍大臣の御見解をお聞きしたいんです。
  308. 園田直

    国務大臣園田直君) 私がここでそのようなことはないと断定するのにはやや過早であり、また軽率であると存じますので、ないと断定はできませんけれども、台湾地域をめぐる米中の正常化によって私はこれは基地の強化という方向にはつながり得ないと、こう考えております。また、今後そういう腹組みで米国とはいろいろ話し合ってみたいと考えております。
  309. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひその方向にまた御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、米中国交樹立と台湾の問題に関連して、これは外務省、あるいは内閣の分野になるかしれませんが、アメリカ米台条約を破棄すると、そして台湾から米軍を引き上げると、この声明に対して非常にうろたえるといいますか、大きな国論として台湾の人民が騒いでおると、こういうことがマスコミで報ぜられておりますが、大臣とされて現状どのように把握していらっしゃいますか。
  310. 柳谷謙介

    説明員(柳谷謙介君) 私ども、いろいろな情報によって、この米中国交正常化後の台湾の情勢というものには当然非常に注目しているわけでございます。いままで得られました種々の反応でございますけれども、すでに御承知のように、アンガー駐台米大使が蒋経国総統にこの事情を説明したのに対して、これを受けまして蒋総統がかなり強い調子の声明を発表したとか、その後、国民に対してラジオ、テレビを通じて談話を発表したとか、一方では新聞論調にもアメリカに対する失望等をかなり強く表明したものがあったとか、あるいはアメリカ大使館前で群衆が数百名集まったとかいうような、動揺を示すような情報なり、台湾側の衝撃を示す情報もございますけれども、全体としていま私どもが見ております限りにおきましては、これはある程度、七二年の上海コミュニケ以来、いずれはこういう事態が来るということをまあ台湾側においても織り込まれていたかということもあるかと思いますけれども、全体の反応としては非常な混乱が起こったというようにはどうも見られないようでございます。たとえば、アメリカとの間においても今後民間レベルの交流を継続して増進していくと、米国人民との友好関係を大切にし促進しなければならないというような論調が出たようなこともございまして、米中正常化発表直後に一部に非常に心配されたといいますか、予見する向きがあったところの大きな動揺はいまのところ私ども聞いていない実情でございます。
  311. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その問題をめぐって、大臣、どうお考えでしょうか。
  312. 園田直

    国務大臣園田直君) いま局長答えましたとおり、台湾はこの事態が発生すると同時に総統の声明談話を発表し、それから各飛行場は警戒体制をとり、いろいろ処置をやって、これが台湾としてはいろんな面で政府も動揺したとは存じますが、表面上はきわめて冷静を装い、これが混乱に陥るようなことはないと私も判断をいたしております。
  313. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 不安、動揺をしておることは素人でもお察しできるわけですが、そのことと関連しまして、私は台湾の人民があるいは国外に亡命とかあるいは脱出とか、あるいは難民的な状態で台湾から脱出することが予想されるわけなんですが、その場合に、実は前にベトナム難民が沖繩の与那国に漂流しまして、与那国は町を挙げてなけなしの予算を補正をして温かく遇しているが、まあ結果的には招かざる客と非常に迷惑をしたことがあるわけなんですね。そういうことからしましても、特に台湾と沖繩は距離的に一番近い。沖繩を経て本島にと、あるいは外国にと、こういうことが十分予想されるわけなんですが、これは十分予想されることでありますので、沖繩県民に迷惑のかからぬようにひとつ配慮を十分とってほしいと。これは事実はまだ起こっておらぬわけですが、これは一つのそういう過去の事実もありますので、十分県民に迷惑をかけないように国としてとるべき態度、配慮をしてほしい、こう要望しておきたいと思いますが、大臣いかがでしょう。
  314. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は先般北京に参りましたときに、中国指導者台湾の問題を話しました。そのときに、アジアで経済成長の伸びているところは韓国と台湾地域である。韓国は、相当無理をしたために金利の暴騰、失業者、インフレ、これが起こるようなおそれがあって天井に近くなってきた。しかし、台湾地域というのは、面積、人口、資源、それから各国がこれに投資をしている、こういうことで台湾の経済成長というものは韓国と比べて非常に安定的である。なおまた、この台湾については中国の方々は領土の一部であると言っておられるからには、これを敵国扱いせずに、台湾の安全、繁栄についてはお考えになったがよかろうという愚見を申し上げておったわけでありますが、その後中国指導者鄧小平氏を含めて、台湾の現状は尊重する、各国の投資はこれを守るというような、統一という言葉が祖国復帰に変わり、それからまた、今度の問題で共同声明のほかにアメリカが一方的に声明を出して、そうして台湾の安全と将来については重大な関心があると、こういうことを言ったわけでありますが、その一方的な声明を中国はこれを否定しなかったばかりでなく、この共同声明が出されることについても内々話し合いがついて出された。こういう観点からして、台湾の住民が将来について非常な不安を覚え、あるいは武力解放などのおそれがあって外へ逃げ出すということは万々ないとは存じまするが、しかし、沖繩住民の代表として先生が御心配されることはごもっともでありますから、そのようなことがあった場合には万全を期するよう準備をしたいと考えております。
  315. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間が迫りましたので、最後に尖閣列島の所属について、ちょうど大臣は日中平和友好条約の中で鄧小平副首相とお話し合いになった張本人でありますので、確かめておきたいと思います。  私はかって、北方領土とそして竹島と南の尖閣列島は国際紛争の火種になると、こういうことを申し上げたことがありますが、その尖閣列島の所属がわれわれとしましては当然日本の領有であると、しかもその籍は沖繩の八重山の石垣市に属しておると、こういうことは当然過ぎるほど当然だと、こう思っておるわけですが、ところが、大臣が鄧小平副総理とのお話し合いの中では、何かしら解決したようなまたすっきりしないような、マスコミ報道によりますとあいまいな感じを受けたわけでありますが、この機会に、本当の話し合い内容はどうなのか、これをひとつ大臣から直接お聞きしまして確認をいたしたいと、こう思うわけであります。よろしくお願いします。
  316. 園田直

    国務大臣園田直君) 尖閣列島は国際的な紛争の地帯にはなっていないわけでありまして、北方四島、竹島とは全然違っております。経緯は、御承知のとおりに、あの尖閣列島の周辺に資源があるという話が出てから、まず、台湾地域の方であれはおれのものだという主張をし、続いてこれにおくれて、台湾は自分の領土の一部であるという立場から中国わが国の領土であると主張したものであります。  しかし、この尖閣列島は、御承知のごとくわが方の主権下にあり、しかも、これは実効的に支配をしているわけであります。向こうが横やりを入れたが、日本はそういうことはないというのが現在の立場でありまして、そこでこの間ああいう尖閣列島周辺における中国漁業群団の騒動があったわけであります。まず私は、鄧小平副主席に言ったことは、日本の尖閣列島に対する立場を申し述べ、そうして今後あのような事件があっては困ると、こう言ったわけであります。これに対して鄧小平副主席は、この前のことは偶発事件である、今後はああいうことは絶対に起こさないと、こういう保証があったわけであります。日本の実効支配下にあり、この前のような事件があれば、日本としてはこの尖閣列島は当然いまの支配下のまま進めていくということであって、それ以上詰めることは決して日本のためにはならぬということで打ち切ったわけでありますが、実際のやりとりはいま言ったとおりでございます。  したがいまして、この前のような事件がなければこのままで日本が実効支配を進めていけばそれでよろしいと、私はこう解釈をいたしております。
  317. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、いままでの経過はよくわかりましたが、今後、尖閣列島に対して日本政府としてどのような対策を講じていらっしゃるか。尖閣列島に対して日本政府としてどのように対処していらっしゃるか。具体的な問題点ございましたらお聞きしたいのですが。
  318. 園田直

    国務大臣園田直君) 尖閣列島に日本の実効支配下にあるという実績を積むべきだという意見もありますが、私はそのような観点ではなくて、尖閣列島は日本の領土であると、こういう立場から、この周辺、特に沖繩その他の方々がここで漁業をなさり、この周辺で何かなさる場合に必要な灯台であるとか、避難港であるとか、こういうことをつくることは差し支えない、そういうことを進めていくべきだと考えております。
  319. 秦豊

    ○秦豊君 初めに外務大臣に伺っておきたいんですが、きのうの衆議院の段階で大臣からなされた、台湾極東範囲から除外するという答弁ですね。確かに安保論争史上一つのエポックだと思います。それもかなり大きいという認識です。それはしかし、あくまで条約の解釈とか認識であって、運用という点とは次元と位相が違うと思うのです。しかしまあ、いやしくも佐藤・ニクソンという共同コミュニケから発生した一つの解釈、認識ですから、たとえば、いやしくも一国の園田外務大臣が公的機関で答弁をされるという場合には、何らかのサウンドはワシントンに送っておられたのかどうか、ないし日ごろの接触の中でそれはおのずから醸成されていった解釈だから、ことさらにサウンドは送らなくても日米間のコミュニケーションは成立しているという種類の問題なのか、その点まず伺いたいんですが。
  320. 園田直

    国務大臣園田直君) これは速記録を読んでいただくとよくわかるところでありますが、極東範囲から除外するという発言は私はいたしておりません。ただ、米中正常化によって一番問題になったのはこの台湾地域の問題であることは、私も両方から話は聞いております。その場合に、一番最後に残った問題は、中国武力解放しないという約束をしてもらいたい、それから米国は、今後とも台湾の安全については重大な関心がある、必要な兵器は供給するということを中国にのませると。中国の方から米軍撤退その他の条件が出たわけであります。そこで、中国の方では武力解放しないという約束はできないと。そこでその結論は一方が声明を出し、これを中国が出すことを了承し、これに否定を与えなかったという点で、一方が名を取り、一方が実を取ったというかっこうで、日本人が重箱のすみをほじるのと比べてさすがに大国と大国だなあと思って私は聞いておるわけでありますが、したがいまして、こういうことからいかように物を考えてみましても、安保条約第六条の中の極東範囲、その中の台湾地域というものに六条が発動されて米軍が武力介入するとか、あるいは台湾地域周辺に中国米国関係で紛争が起こるということは絶対にない、と言いたいところでありますが、慎重に、ほとんどなくなったと。したがって名存実亡というか、御承知のごとく米台条約は一年間で切れるわけであります。その一年間はいまのままであります。その米台条約が切れた後、その必要がなくなったから第六条の極東範囲の中の台湾地域というものが、これを取り除くのか、あるいはそのままやられるのか、これは私一人で断定できる問題ではありませんが、少なくとも米国日本がある時期に話し合うべき問題であると、こういうことをお答えしておるわけでございます。
  321. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、これは米中間は考えられませんね、常識的に。ところが、蓋然性としては、台湾海峡というところは軍事的な枢要なポイントですから、中ソという段階では考え得る。その場合は在日米軍は独自の行動を留保したい、これは軍の常識だと思うのですよ。そういう場合には、園田外相の答弁は除外という明確なニュアンスではないとおっしゃるけれども、まだ速記録は私拝見はしていないが、篤と拝見しますけれども、やはりあれはマスコミの見出しが極端にあおったとは私は思わないのです。やっぱり階段を一段登ったんだと。二段かもしれない。そういう解釈を私は持っているのですよ。だから、ワシントンヘのサウンドは別としても、実際にそれを運用する場合には何ら変わらない。仮に不幸な出来事であるけれども、台湾海峡で米軍が行動するというふうな場合の、たとえば事前協議というと皆さんには答弁のパターンがおありで、事前協議がかかった場合にはイエスもあればノーもあるという在来型の古典的な答弁がありますから、そこにやはり入っていくということになるから、解釈は解釈、認識認識だが、位相と次元が違うのだから、在日米軍が台湾海峡に不幸にして出撃というふうなことになった場合は、米軍は何らの制肘も受けないというふうなことになるんじゃありませんか。どうでしょう。
  322. 園田直

    国務大臣園田直君) これは二つの面から、日米安保条約の面と、それから正常化をやったわけでありますから、中国と当然米国条約がなくても理解し合うか相談し合うか、この二つのことが出てくると存じます。
  323. 秦豊

    ○秦豊君 こういうテーマというのはなかなか二十五分になじみませんけれども、ちょっとあえて進めたいんだけれども、園田さんは来年一月ワシントンを訪問される。そうすると、いままさにきのうの答弁のようなテーマ、極東範囲台湾条項、これは国務長官との間の話し合いの中では一つの大きなテーマになりますよね。また、そうであらねばならない。これはアメリカ側との合意というのは論理的には得られると思うのです。ただ、いま言われた政治的な、あるいは米台の一年間のクッションがあるから、そういう時期に日米最高責任者が話し合われて果たして合意が形成できるかどうかについての見通しはどうでしょう。
  324. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の新聞に報ずるところの訪米でありますが、実はこれはまだ内定も方向も決まっていないわけであります。と申しますことは、国会の予算審議がいつ再開されるか、こういう問題と、それから外国からおいでになる賓客その他の接遇の問題とありますので、その間に私が果たして行けるかどうか、全くいまのところは疑問でございます。そこで、仮定でお答えするとまた新聞で誤解を受けるわけでありますが、私がもし行くとするならば、第一は新内閣成立後、総理米国に訪米する余裕がありませんので、その間の連絡というか、外交方針その他について理解を深めるためということが一つで、なおこういう問題についても、日中友好条約締結後は米国指導者と会っておりますが、この米中正常化の後は今度が初めてでありますから、こういう問題で実際にこれをどうするかは一年後のことでありますけれども、心構えとして、いろいろ話をすることは御発言のとおり必要じゃないかと考えております。  私のきのうの新聞発表に対して、日本外務大臣が、台湾日米安保条約における極東の一部ではなくなったとこう言ったがどうだと、こういうことに対して米国の方では、私が言ったように次に述べております。実情はまだわからぬけれども、多分日本外務大臣はこの地域でそのような発生の可能性がなくなったと、こう答えられたものであると思う、自分たちもこれについては同様の意見を持っているが、しかし、その後の問題についてはどう対応するかは全体についても日本その他と協議する必要がある時期には出てくるであろうと、こう言っておりますから、向こうの方も大体私と同じ考え方だと思っております。
  325. 秦豊

    ○秦豊君 そうしますと、仮定を積み重ねて恐縮に存じますけれども、恐らく園田さんはいらっしゃらなければならないほど課題がたまっておりますし、恐らく予算審議は一月二十二日以降の再開だろうから、無理をすれば無理ができるというふうになって訪米が実現すると思いますが、仮に国務長官と園田外相との間に、では基本的合意がこの問題について成立した場合にはどういう形をとるんでしょうか。交換公文という問題ではない。どういうかっこうが可能性としてはあり得ましょう。
  326. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度の米中正常化については、一月一日というのは私はわかりませんでしたが、実際は秦先生御承知のとおり、中国に対しても米国に対しても、私は私なりに米中正常化が進むという方向で微力ながら仲介の労をとった一人でありますから、大体中国のお考えも米国のお考えもわかると思います。そこで話し合いは、大体心組みについてはできると思います、その場合には。仮定で申しわけありませんが、しかしそれをどうするかということは今後一年後に起こることであって、その相談がどのような形で出てくるか。ただ了解し合ったところでとまっておいて、一年後あるいは必要な時期に相談の結果に基づいてやるかと、こういう筋書きになると思いますが、いま仮定の問題でお答えいたしたわけではございません。
  327. 秦豊

    ○秦豊君 大体感触というか、方向をつかんでおきたいと思います。この種の問題というのは恐らく来年の予算国会から大きな底流の一つになると思います。つまり、北東アジアの安全保障の枠組みに関する問題だと思うんです。非常に慎重にお答えになって結構なんですけれども、仮に東京、ワシントンの了解、合意が一応形成された、この問題について。そうすると、当然考えられるのは、次は東京、北京の一つの合意、さらには東京、北京、ワシントンという合意は、つまり認識と解釈を共通しなければならない時期は早晩訪れるのではないかと考えられます。それは私の考え違いではないでしょうね。
  328. 園田直

    国務大臣園田直君) これは現実問題としてはなかなか慎重を要すべき問題でありまして、第一には台湾地域の方々が混乱をされたり騒動が起こるという、この動揺も考えなければなりませんので、これは慎重にやるべき。  もう一つは、いまのようなことになりますと、あたかも米中正常化、日中国交回復が、一部に言われているように、米・中・日の対ソ包囲網ととられることはきわめてこれは危険であり、しかも日本外交を進める上について不利でございますので、この点は十分慎重に考えながらやるべきことで、いまお答えすべきことではないと存じます。
  329. 秦豊

    ○秦豊君 それはそうかもしれません。  それから念のために――これは確認もできませんし、お答えにくいテーマ、ポイントかもしれませんが、よく園田外相は台湾地域では武力紛争は起こり得ないという答弁をびしっとされていますね。当然台湾極東範囲に関連するわけなんですけれども、これは今後も繰り返される種類の答弁だと思います。それはしかし、米中双方からそれぞれ何らかの具体的な感触というか、材料というか、根拠というふうなものが仮にあり得た、それを踏まえておっしゃっているのか、あるいは米中間に局限しておっしゃっているのか、そうであれば中ソ間は外れるわけですから、その辺をちょっと伺っておきたい。
  330. 園田直

    国務大臣園田直君) 私がそのような発言を数回やりましたゆえんのものは、中国指導者米国指導者の大体ねらっている点がわかっておったからそのようなことを言っておったわけでありまして、ソ連意向を聞いたわけではございません。
  331. 秦豊

    ○秦豊君 それから、この間ベトナム・ハノイから客が来て、グエン・ズイ・チン外相ですね。直接はもちろんわかりませんけれども、あなたとの会談が終わった。そこでだから改めて伺うんですけれども、ベトナムの展開している外交路線、戦略ですね。あなたはやっぱりあなた方のいわゆるというのをつけていらっしゃるが、いわゆる自主独立路線なるものが、国際的に一定の評価を得たならば日本からのハノイヘの援助については考える方向がある、そうでないならば別に考えねばならぬというニュアンスのことをおっしゃっていますね。私はそう承知しているわけですけれども、いまのベトナム・ハノイの外交路線を、卓然自立した自主独立路線というふうに認識、解釈できるかどうか、私は疑念なきを得ないと思っています。やはりソビエト圏、コメコン体制へののめり込みが過剰である、一辺倒ではないかという認識を私は外せない。外務大臣、いかがですか。
  332. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も正直に言うと秦先生と同じような解釈をいたしておりますが、ただ、ソ連一辺倒にのめり込んだといって追い込むことは東洋の平和のために決して賢明ではない。  そこで私は次のように外務大臣には言いました。あなたの方でソビエトと条約を結ばれた。コメコンに入られた。だからソ連一辺倒だと私はきめつけ、だからどうこうすべきではないと言うことは、これは内政干渉であるから私は言いません。わが日本米国条約を結び、あなた方が争っている中国とは友好条約を結んでいるわけですから。ただ問題は、米側に立った日本ソ連側に立ったベトナムが、これがアジアの平和を撹乱をする、緊張を激化するという方向にいくか、あるいはそうではなくて、両側に立ってはおるが、その立場を利用してアジアの平和と安定の方向に貢献するかということによってわれわれの関係は決まってくるんだ。正直言うと、不安というのは自主独立路線ということよりも、むしろASEANの国々、特に近隣のシンガポール、それからマレーシア、タイ、こういう国々は、一年前総理と参りましたときに、ベトナムの戦災復興については応分の協力をしたいと思う、それがアジアの平和に貢献することだと思うという日本側意向に対し、ASEANの国々、特に三国は、どのような面で協力されともそれがひいてはベトナムを強大化することになって、間接的にわれわれが脅威を受けるということは困るという話がありましたので、その点は十分留意をしてやりますとこう言っておいたが、いまあなた方のカンボジアその他に対する行動というものは非常にASEANの国々に懸念を与えておる。正直に言って、内政干渉をするわけではありませんけれども、ベトナムの統一戦線でやられた外交、統一戦線でやられた戦略というものをそのまま今度お使いになると、ASEANの国々、国際的には通用いたしませんよ。ベトナムの統一は同じ民族の話であります。今度は他民族、他国に対する問題でありますから、平和だ、友好だと口にはしながら、実際やることは国境に兵力を集結し、ゲリラの拠点を設け、そして現政権に反対する政権をつくり、まず現政権を打倒し、そしてベトナム親政権をつくり、なし崩しにインドシナ半島の統一を考えている。これは非常にASEANの国々に不安を与えておる。日本の国内にもそういう点に対する懸念が新聞論調等で出てきておるから、われわれは応分の経済協力をしたいと思うけれども、わが日本がそういう懸念によってブレーキをかけられないように、応分の経済協力ができるようにあなたの方も言葉ではなくて実行によって努力をし、ASEANの国々に理解を求める努力をされたいと。そこで外務大臣は、努力をすると、こういうことでございます。
  333. 秦豊

    ○秦豊君 何だか時間が残り少なのようですから、テーマをちょっと変えたいと思うんですがね。これはいきなり変わるわけですが、牛場さんですね――これはお答えにくい点は国務大臣園田直氏でお答えいただきたいんですが、お世辞でも何でもなく、福田さんの内閣のときにやはり最も目覚ましく仕事をされたというのは、まあ以下お世辞ゼロですけれども、外務大臣、それから牛場大臣、あと一、二の閣僚というふうに局限されます、これは客観評価として。それで、大平さんには大平さんの見解があったと思います。おありだと思いますけれども、やはり園田さんとのコンビもよかったし、ああいう人を――あの人は都知事候補なんて擬せられて御迷惑だろうと思いますが、やはり本筋は、キャリアを積み重ねて、人間関係を世界的に扶植されたわけですから、やはり広く言えばわれわれの大きな資産だと思いますし、それを無にするのもいかにも愚かしい。牛場さんの活用――牛場さんと言うと非常にお答えにくいかもしれませんが、やはり移動大使というふうなことはなかなか相手国の受け取り方が違ってくると思うんですよ。いまさら大臣は復活できない、便法は何かあるという場合で、園田大臣としては牛場さん的な、ないしは牛場さん個人でもいいですが、どういうふうに活用の方法があるとお考えでしょう。ぼくはかなり重要な経済外交の一分野だと思いますよ。どういうふうにお考えでしょう。
  334. 園田直

    国務大臣園田直君) 牛場海外担当国務大臣の活躍はおっしゃるとおりに私も高く評価いたしております。あの人の経歴、人柄、こういうことによって、私が外交の問題に専念できたというのも牛場さんがおられたからだと感謝いたしております。したがいまして、こうなりましたから、私は牛場さんの宝というものを失いたくありませんので、外務省の顧問として相談役におってもらいたいと希望をいたしております。  なお、今後は経済問題が重点になってまいります。経済問題も、向こう一年間というものは、個々の、貿易とか通商とかそういう利害の対立問題よりも、経済の本質である金融という方向に大きく変わってきて、本当の経済問題に変わってきている。こういう時期であり、かつまたあちらこちらに問題が起こるわけでありますから、私は専門の大使を外務大臣の下に設けて、そしてこれを牛場さんのかわりにいろいろやってもらいたいと考えておるところでございます。
  335. 秦豊

    ○秦豊君 それは牛場さんがまたよみがえられるかもしれませんよね、そのポストに。そう解釈してよろしいですか。
  336. 園田直

    国務大臣園田直君) それは制度でありますからそういう可能性もありますが、牛場さんと私の話し合いでは、牛場さんは、東京ラウンドを終了したら自分は相談役であります、そっちの方は別な人にと、こういうことでありますから、可能性としては牛場さんは私の相談役、牛場さんの仕事をやってもらうのは別に設ける、こういうことになっておるわけでございます。
  337. 秦豊

    ○秦豊君 それから、いまたとえば野村総研とか三菱総研、期せずして同じリポートが出つつあるんだが、二十一世紀を模索した一つの構想がアンケート等で構成されていて、今度の大平さんは野村総研ともかなり濃いかかわりを持っていらっしゃる。それはそれでいいんですけれども、環太平洋構想というのはわけのわからないようななかなか完熟しないまだ青い実だと思うんですよ。だから、ドクター・キッシンジャーが太平洋の世紀と言ったり、それから大平さんが環太平洋構想と、それは大変楽しい構想なんだけれども、それはやがて外務委員会その他でもつかれもし論議もされると思いますが、私は一つだけ園田外相に伺っておきたいのは、六月の東京サミットは結構でしょう。その前に、たとえば私が仮に名づければ第一回環太平洋主要国外相会議というふうなものを東京に招致されて、もちろん園田さんが主宰されて何をやるのか。たとえば、アジア域内での、環太平洋域内での経済技術協力、それから農産物や原材料、加工品の安定供給の問題、まあやや疑似ロメ協定的な構想の萌芽を模索するとか、あるいは安定的な市場を提供するためのプランニングをするとか、あるいは特産物の関税の引き下げを練ってみるとか、あるいはまたさらには、望むらくは円の域内流通問題について環太平洋諸国の反応をあらかじめ吸い上げておくとか、やることはたくさんあるのですね。やろうと思えばやることはたくさんある。問題は政治日程、外務大臣の時間の物理的な制約だと思います。だから、東京サミットを分厚にする意味でも、私が言ったような、これはまあ素人の思いつきなんですけれども、こういうお考えはございますか。
  338. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見は決して素人の考えではなくてごりっぱな意見であり、私もそういうことを実現できるように努力したいと考えておりますが、問題は、まず汎太平洋ではなくてASEANの外相会議のことを考えてみましても、先般、バンコクで行われた外相会議に私招かれて行ったわけであります。そこで非常に打ち解けていままでにないように裸で話し合う機会ができたと思いますが、そのときに、この次もひとつ日本外務大臣を呼ぶことに決めようと、こういう意見が出たわけでありますが、どうも日本外務大臣を呼ぶということに決めてしまうといろいろ問題があると。あくまで自主的なわれわれの会合であって、それに日本がお客さんでおいでになるということにしたいというところから出ますと、外相会議必然性というものはみんな認めながらも、日本が集めたり日本発言をしたりしてはなかなか微妙なところがある。ましていわんや汎太平洋会議というのは、そういうことでありますから、逐次理解を深め信頼を得てある時期にはそういうことをしたいと思いますが、いまの段階、特にサミット前ということは時期尚早であると私は判断をいたしております。
  339. 秦豊

    ○秦豊君 ごくごくわずかな時間が残っていますので、さっき喜屋武先生が聞かれた尖閣とはちょっと全然違ったアングルで伺っておきたいのですが、去る十月三十一日に、自民党のこれは公式機関である総務会が、尖閣諸島の実効支配を強めるためにもつと具体的にやる必要があると。具体性とは何か。予算の裏づけだというので、当初は海流調査費というのを要求しようという意見があって、それがフェードアウトして何だか変わって、灯台とかヘリポートを建設するための予算を要求すべきではないかという声が散見されたようです。もちろん予算がいままだ概算からずっと大蔵決定への途次にありますから即断はできませんけれども、喜屋武先生に対する御答弁でも外相の真意は大体私、看取できますが、これ以上灯台をパワーアップしたりヘリポートを何とかしたりなんとかということは余り外交的ではないという認識を基本的に私持っております。仮にこういう予算がまとまってずっと要求されるとなっても、もちろんぼくらはそれに反対する立場ですけれども、外相としてはどういう考えをお持ちですか。
  340. 園田直

    国務大臣園田直君) 二国間の相談というのは、やはり個人の交際と同じように、面目もあれば感情もあるわけであります。そういう意味におきまして、せっかく、この前のような事件は絶対に起こさない、いまのままでいいじゃないかと、こういう中国指導者の責任ある発言が公式の会談であったわけであります。それに追い打ちをかけるように、これでもかこれでもかと実効支配の実績を誇示することは決して賢明ではない。ただ、その地域周辺の住民の方々の必要性に応じて避難港をつくるとか灯台をつくられることなら結構でございますけれども、これを誇示して、もう文句はないだろう、文句は出ないだろう、この前のことをやるならやってみろと言わんばかりの行動は決してよろしくないと考えております。
  341. 秦豊

    ○秦豊君 終わります。
  342. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 他に御発言もないようですから、外務省決算についてはこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会      ―――――・―――――