○沓脱
タケ子君 大臣、お聞きのとおりで、問題になって何回か会合は持たれておるらしいです。しかし、さっぱり実効の上がる施策というのは進んでいないわけですが、そういう中で、被害が、ちょっとこの被害の広がりというのが実に憂慮されるような
状況にまで来ている。それはいわゆる
社会的に弱い
立場にある生活困難な
方々の層にその類が非常に広がってきているという問題、これは軽視できないと思うわけでございます。私
どもの
調査、ずいぶんたくさんございますけれ
ども、こんなことを許しておいていいのだろうかと思えるような幾つかの実例を若干聞いていただきます。
その一つは、生活保護
関係です。恐らく厚生大臣も
環境庁長官も、サラ金みたいなのはうちの省庁では
関係がないと思っていらっしゃるに違いないんですが、そうじゃないということなんです。
まず一つは、生活保護の受給者がどういう
状況になっているかという幾つかの例をちょっと聞いていただきたい。この種の
方々は、やはり実名を発表するということについてはばかられますので、実名は申し上げません。
これは川崎市のKさんという方ですが、四十五歳の婦人です、母子世帯、高等
学校三年生のお嬢さんとの二人暮らし。一昨年、五十一年の六月に、娘が高一のときに急病になって、そして緊急入院をした。そのときにお金をどうしても五万円ほど都合しなければならなかった。そこで、近所の知り合いの方と相談をして、何とかこの五万円を調達できないだろうかということを言ったら、相談を受けた方が、それじゃあんたの名前と印鑑とを貸しなさいということで、印鑑と名前を貸したら、その頼まれた御近所の方が、その方を保証人にして、金が要ると言うているKさんを保証人にしてサラ金で十六万円借りたというんですね。そして、五万円をKさんにはいと言って渡した。あとの十一万円はその方が自分の費用としてお使いになった。そういうことが何回かやられていて、このKさんは自分がサラ金業者へ行ったことはないんです。いつもその方に相談をしている、お金が要るときには。そうしてそのKさんが借り主になったり保証人になったりという形が繰り返されて、合計百二十万円の借金になった。百二十万のうち、それじゃKさんが全部使っているかというと、そうじゃないんですね。おおむね自分が借りてもらったと思っている金額は五十万程度のものだと。ところが、そのお世話をしておられた近所の奥さんが蒸発してしまった。そこで、いままではサラ金業者と接触がなかったんだけれ
ども、このKさんのところにサラ金業者が殺到してきたと。
このKさんの御家庭は母子世帯で、おかあさんが近所の自動車の部品工場で働いて生活を立てていたわけですけれ
ども、
子供が
病気になったり、あるいは仕事がうんとなくなって生活ができないというふうな場合には生活保護を受けておったり、仕事ができてきたら受給を打ち切ったり、こういう断続的な受け方をしていたんですが、その後生活保護の受給者になったわけです。ちょうど五十三年三月、ことしですね、生活保護の——このごろは銀行振り込みで支払ってますね、町では保護費は。だから、銀行振り込みの手帳と銀行の通帳と印鑑を、このお世話をした人が蒸発した後でどんどん押しかけて返せ返せと来て、ついにそれは取られた。しかし、それをとられたら生活ができないので、その人は四月分のお金を何とかして確保しなきゃいかぬと思って福祉事務所へ相談に行った。そして通帳の紛失届けを出して、今度は四月分からは福祉事務所で直接もらえるというふうに変えた。ところが、業者はその通帳に払い込まれるものと思っていたら払い込まれないもんだから、やってきて、もらっただろうと。いやもらってませんと言うたら、実はその業者は福祉事務所に電話をかけて、このKさんに保護費の支給はなされましたかと言うて聞いてるわけです。それは法律で定められているんだから支給は済んでおりますと言うて、ちゃんともろうた言うてるやないかということで巻き上げられるという
やり方が続けられていると。毎月毎月早朝深夜に——これは川崎では月の五日が支給日だそうです。五日の日はもう朝夜、深夜、全く夜討ち朝駆けというんですか、そういう形で来てお金を巻き上げられる。巻き上げられるというのはこれはいわゆるサラ金の取り立ての常道でございまして、小さなアパートに何人かでやってきて、大きな声で返せ返せ言うて叫び回るわけですからね、いたたまれなくなってやはり渡してしまうと。ついには、余りの取り立ての厳しさに、娘の児童扶養手当ですね、これは二万二千五百円か、この証書も取り上げられたと。こういうことで、家賃も数ヵ月滞っていて、家主はいい顔をしないだけではなしに、福祉事務所へ電話をして聞いたら、あの人は百万ぐらいの借金を持っている、だから、もうそのうちに自殺するか蒸発するかしか方法がないですよというふうに言われたということを家主が言って、まあ大変冷たくなっていると、こんなことが起こっているわけです。
もう一つは、これは集団的な問題では、これはすでに御承知の福岡県の田川ですね。これは報道されましたから大臣御承知だと思いますが、報道されたのは三月ごろですけれ
ども、私は何らか手が打たれて改善をされているかと思っていたのですが、今日ただいまも変わっていないので改めて申し上げたい。
どういうことかと言うと、田川は御承知のように、二千三百世帯の生活保護世帯があるようです。毎月支給日が月の二日です。二日の日になりますと、生活保護の受給者が朝もう九時前から列をなして数十人、ときには百人以上も並んで順番を待っていると。ところが、その周りに大抵二十人ないし三十人の業者がかばんを持ってうろついておる。そして受給者は保護者のカードと印鑑を業者からもらって、そして窓口へ行って生活保護費を受け取って、その受け取った金をそばにおる業者のところへ持って行ってお金を返す。だから、たとえば四人世帯で十一万円の保護費をもらっても、大体利息で五万円払う人、あるいはその業者には五万円で済むけれ
ども、他の業者に二万、三万と払わなきゃならない。だから、保護費を二日にもらっても、もう三日、四日になったら生活ができないからまた改めて借りる、こういうことが依然として田川では続いております。ですから、保護者の人が言っておるのは、窓口でお金をもらうのは、全く私はお金をもらう機械になっているのと一緒だと、こういうようなことになっているわけです。
それからもう一つは、生活保護
関係で、京都の南区の例ですけれ
ども、これは本当に気の毒だなあと思ったのは、生活保護世帯の方六人が、昨年の十二月に、毎度毎度大変厳しい暮らしをしているんだから、せめてまあ正月は少し人並みの暮らしをしたいなと。そこで相談をして、一人五万円ずつ三十万をサラ金に借りに行った。六ヵ月払いで月の利息八分ですわ。月の利息八分といったら大体出資法の枠いっぱいいっぱいですね、近くです。で、借りて正月を過ごした。翌月から六回払いですからね、翌月は何とかして払った。二回目ぐらいからもう払えない、もともと金がないんだから。三回目も払えなかったら差し押さえをされたというんです。差し押えするものがあったんかいないうことで聞いたら、電話などはもちろんない。唯一の楽しみのテレビと冷蔵庫が押さえられた。これはあれですよ、保護カードや銀行の通帳を押さえたというのとはわけが違いますけれ
ども、そういうことがあった。これ以上いったら通帳が押さえられるというところで実はこれは私
どもの方に相談があって、そこで食いとめておるという段階なんですけれ
どもね。これがその次には保護カードを取り上げると、あるいは銀行振り込み通帳を取り上げるということになるわけです。
まあ時間の
関係がありますから、幾つかの、いわゆる
社会福祉
関係の年金その他——生活保護はもちろん、年金その他にずいぶんありますから、もう一つ二つ申し上げますと、たとえばこれは通算老齢年金ですね、七十歳のおばあちゃん、これは大阪市城東区のことですが、この方は十万円の借金をことしの二月にした。月の利息、これも八分ですね。何でその十万円を借りたかというと、嫁入りした娘の亭主が、自営業者だったんだけれ
ども倒産をした。そうして、何とか出かせぎをしてでもということで、台湾へ働きに行っているんだけれ
ども、金をさっぱり送ってこない。そこで、暮らしていけぬのでおばあちゃんに泣きついてきた。何とか十万円ということでことしの二月に十万円借りた。ところが、借りるときの条件に、その老齢年金の振り込み銀行通帳と印鑑と、そしてその証書とを担保として取られた、こういう
状況になってるんです。で、六月の一日にはこの老齢年金は十二万七千円振り込まれる予定になっていると、こういう
状況なんですね。
あるいは、厚生年金の
障害年金もやられている例があるんです。これは六十八歳と七十二歳のおばあちゃんとの御夫婦の世帯ですが、ここでは御主人が、六十八歳のおじいちゃんが厚生年金の
障害年金の受給者、おばあさんが七十二歳ですから老齢福祉年金の受給者なんですね。これ、両方とも取られている。そのおばあちゃんがはりの
治療をしなければならなくて、
医療は無料になっているけれ
ども、はりやあんまというのは無料じゃないものですから、ずいぶん費用がかかって、そうして二十万を借りて生活費の足しにした。その二十万を借りるときに、そのおじいさんの
障害年金証書、これは年額百二万五千三百円の証書を担保に取られた。その後も依然として生活が困難なために、ずっと二人とも病弱なので、さらに十五万円を借りて、今度は借りるときにおばあさんの老齢福祉年金証書を取り上げられた。まあこういう
状況になっているんです。これも実は相当なことになってから相談を受けて、これはいま解決の道を開きつつありますが。
それからまだもっと幾らでもあるんですけれ
どもね。もう一つは、これは重度
身体障害者で労災の
障害年金です。これは厚生大臣に直接は
関係ないようなものですけれ
ども、重度身障者なんでね。この人の場合もひどいんです。大阪市の方で六十歳の男子、五十二年の初めに実はこの人はお金を借りた。借りるときにその
障害年金証書と印鑑を担保に取られた。結局、五十二年中に元金が百四十七万円借りたことになっていたんですが、五十二年度中に、この
障害年金は労災
障害年金ですので年間二百万円になっている。これ、全部巻き上げられているんです。百四十七万円借りたのに、二百万円の
障害年金全部取り上げられている。あんまりひどいので、早く返してもらいたいと本人が業者に言ったら、何言ってんだと、まだあと百七十万残っているということですごまれた。どうにもようせぬので、これは大阪の無料法律相談所に相談にやってきたもんで、弁護士が介在をしてやっと証書を返還をしてもらったという
状況なんですね。
それからもう一つはこんなのもある。公害の認定
患者、これは尼崎の公害認定
患者、四十六歳の御婦人ですが、
障害度二級で、毎月四万三千円もらっている。この人の御主人というのは日雇いの労働者だ。
子供が五人で、おばあちゃんと、計八人世帯。なかなか生活が困難なんで、何とかお好み焼きでもして家計を助けようと思って、四十万円を借りた。ところがうまくいかなくて、なかなかお金にならない。また、運悪くその人が、本人が入院するために、さらにサラ金を二十万借りるということになった。そうすると、書きかえをするということで、さきの四十万と二十万を合わせて六十万円に書きかえをしてあげるから、公害手帳の、いわゆる公害認定
患者の
障害年金の振り込み手帳を、銀行の通帳と印鑑をよこせということで取られた、こういう
状況でございます。
私はその点、まあこれ、こういう実例を挙げておりますとずいぶんたくさんございますが、まず
最初にお聞きをしたいのは、こういうサラ金被害というものがこういうところまで及んできているんだと、こういう実情をこれは厚生大臣、
環境庁長官、御承知なのかどうか、まず
最初にそれをお聞きしたい。