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1978-10-17 第85回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十七日(火曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 儀作君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 玉置 和郎君                 秦野  章君                 二木 謙吾君                 降矢 敬義君                 前田 勲男君                 上田  哲君                 小野  明君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        科学技術庁振興        局長       山口 和男君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮津  泰君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        文部省学術国際        局長       篠澤 公平君        水産庁長官    森  整治君        通商産業省通商        政策局長     宮本 四郎君        通商産業省貿易        局長       水野上晃章君        資源エネルギー        庁石油部長    神谷 和男君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        法務省入国管理        局入国審査課長  黒岩 周六君        大蔵省理財局国        有財産総括課長  島崎 晴夫君        海上保安庁水路        部海図課長    佐藤 任弘君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本国中華人民共和国との間の平和友好条約  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国中華人民共和国との間の平和友好条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、私はあなたと長い間御交際を願っていろんなことを教えていただきました一人です。いまこうして日中平和友好条約が批准されようとしておる直前に、日中平和友好条約はいかぬという立場で物申すということはまことに残念でございますが、いろいろ考えてみましたら、政治家がそれぞれの立場国益を踏まえて論議をする、そのことは非情なものであるという考えを持っております。個人的には非常に好きな方である、そしてあなたのいろんなやり方について大いに学ぶところもございます。しかし、そういう個人的な感情を飛び越えて国益論議をしなきゃならぬということは何かこう胸に詰まるような思いがありまして、それを踏まえながら、実は、これからいろいろとお伺いするわけであります。  私は、この日中平和友好条約はいろんな点から大きな疑問を持っておるということをこれから申し上げますが、いずれにしましても、あなたがやられた交渉のあのうまさ、これはもう高く評価します。それだけに外交的手腕というものにかけては恐らく日本国随一じゃなかろうか、外交交渉ということにかけては恐らく世界外務大臣のトップに入るんじゃないか、こう思っております。  そこで、先般、アメリカグロムイコ外務大臣とお会いになったということを聞いておりまして、グロムイコさんとの間にもあなたと微妙なやりとりがあったやに承っております。さすがだなと思っておりますが、北方領土について、あれは覇権と見ないんだという日本側の解釈、これは中華人民共和国をそばに置いての言い方かと私は思いますが、そういうことならば、あなたと私の共通の友人、これは名前を挙げることは差し控えますが、数回ソ連に行かれていろいろとフリーな立場から打診をしておられることを私は知っております。そして、そのことについてもあなたも意見を求めておることも知っております。私がもしソ連であったら、おまえのところは北方領土というものを不法に占拠したんだ、強奪したんだ、だから返せと、こんなことを言うと、とても私は返さぬと思うのですよ。外交というものは、御承知でございましょうが、大国には自由がある、小国は常に制限をされなければならぬという、こういう一つの歴史の教えがあります。それだけに大国ソ連が、おまえのところは不法にも日本北方領土をかすめ取ったんだ、そして居座ったんだ、だから返せ返せって、私は返すものじゃないと思う。  そこで、この前からのこの日中条約論議の中で総理も言っておられますが、日本が敗戦した、その大変なショックのときにソ連があそこを占拠したんだ。もう少し言い方を変えますると、日本があのときに敗戦という日本建国以来初めてのショックでぼけておったと思うのです。そうしてあの北方四島というところに統治実効的支配を及ぼすということは私はかなわなかった、こう考えるのです。これは総理発言なんかにもそういう裏が読み取れます。ということであるならば、真空状態にあった。真空状態に当然外界から自然に空気が入ってくるようにソ連が入ってきたんだ。しかし、そのソ連とてアメリカ軍がおるかおらないかで非常に迷って、確認した上で、アメリカが入ってないということがわかって入ってきた。あの付近状態考えたら自然の流れであったかもわからない。  そこで、日本がそういう統治行為をできないような状態のときに入ってきて、そしていままで居座っておられる。言い方をかえれば、日本管理のできないときに管理していただいておるんだ、預っていただいておるんだ、だから、もう日本十分力がついてきました、ソ連さんの一番困っておるシベリア開発経済開発等に、あなたのところにもっと日本国が援助できますよ、支援できますよ、そのかわりもともとの家主である私のところにあれ返してくれませんかというふうな持ちかけ方はいかがなものでしょうか。
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えをする前に、ただいま玉置議員から信念の御披瀝がございましたが、これは国を愛する道はいろいろあるわけでありまして、私がやったことも必ずしも完全ではないし、また玉置議員発言されることは一つの愛国心の発露でありまして、深謀遠慮の結果であり、どのようにおしかりを受けようとも、批判を受けようとも、それが個人的な感情ではなく、むしろ私は玉置議員に対しても尊敬と敬意を表していることを表明をいたします。  ソ連に対し、北方四島の問題でありますが、長く粘り強くしんぼう強くやるというだけで、理論的には覇権になるかどうかわかりませんけれども、これは覇権だ、けしからぬ、覇権よりもっとひどい、返せ、こういうことでは私はむしろだんだんこの問題はかたくなってくると存じます。おっしゃるとおりに、そこのところを配慮しながらこの問題は進めていくべきであり、かつまた、この未解決の問題を除けばソ連日本の間には共通の点が多いわけであります。あるいは公式にあるいは非公式に言っているソ連の希望する点も私にはよくわかっておるつもりでございます。したがいまして、この前のニューヨークの会談でも、相違点は、私は向こうに、大臣に、もっとやさしくどならないで話し合いましょう、そして話し合えば、私もお願いするが、あなたの方も、必ずしも全部私は拒絶するという腹はございませんという、魚心あれば水心という程度の話はしてきたつもりでありまして、ただいまの玉置議員の方針に私も内々は賛成しているところではありますけれども、これからいよいよ始めるところでありますから、具体的には答弁お許しを願いたいと存じます。
  5. 玉置和郎

    玉置和郎君 この問題、もう一点聞きますが、ソ連立場にもしわれわれがなったとした場合、おまえは強盗じゃないか、だから返せというふうなことで言われて、もし返したとしたら、自分強盗であるということを認めることになりますね、それはどうですか。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) 全くそのとおりであると思います。外交はそれで言うならば力の関係で解決する以外はございません。そうではなくて平和外交に徹してやろうとするならば、やはり相手立場面目等考えつつ交渉は進めていくべきことである、私はそういう考え方に徹してやるつもりでございます。
  7. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、大臣実効的支配ですけれども、私が尖閣についてこの場所で、予算委員会だったと思いますが、お伺いしましたら、あそこは日本国政府が実効的に支配をしておるんだからという御答弁がありました。その後、総理までもそういうことを引用しました。そうすると、実効的支配ということになりますと、現在、竹島におきましても北方四島におきましても、それぞれ違った国が実効的支配をしておるということですが、それはどうですか。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 仰せのとおりでありますが、竹島に対する問題と尖閣列島に対する問題は対応の心構えが全然違うと存じます。
  9. 玉置和郎

    玉置和郎君 だから、これからは実効的支配という言葉について、これはもろ刃の剣だということを私は考えます。だから、この言葉の使い方、これはやはり御注意をなさった方がいいんじゃないか、こう思っておりますが、いかがですか。
  10. 園田直

    国務大臣園田直君) 尖閣列島の問題では、やはりこれも相手に面目もあることでありますし、こちらの立場もあることでありますから、私はこちらの立場を主張して、そしてこの前のような事件のないようにということで、それは絶対にしない、こういうことで、むしろ、いやそうではない、おれのものだという発言がなかったことは私は中国日本に対する非常な友情であると考えて帰ってきたわけであります。  実効支配についていろいろ問題があれば、十分検討いたします。
  11. 玉置和郎

    玉置和郎君 次に、中華民国台湾の問題ですが、どうも最近総理お答えになった文言の中で、中華民国の置かれておる地勢的立場、それから世界軍事情勢の動き、こういうものに対して認識を欠いておると私は思って心配をいたしております一人です。  そこで、こういうことが言われておるということを大臣も知っておられると思いますが、アメリカで、米国中共承認しても、中共――中共というのは中華人民共和国の略称でございますので、べっ視して言っておるわけじゃない。中華人民共和国ですから、その中華人民の中と共和国の共をとって中共と言っておるのでお許しをいただきたいと思いますが、中共台湾に侵攻しないであろうという、これは日本の中にも議論があります。私はこれは間違っておるということを考えております。  それはもう大臣も御承知だと思いますが、ここに中華民国国民党政府機関紙であります中央日報、これは中共の人民日報と同じような性格だと思いますが、次のような重大な社説を掲げております。これは去年の八月十八日の社説でございます。――米中正常化をされた後、中華民国ソ連に求めることが少ないであろう。しかし、米軍台湾から撤退した後、ソ連努力は必ず台湾海峡に侵入し、中共包囲体制を縮小する挙に出るであろう。中共ソ連包囲を突破するため挑発的な行動をとらざるを得なくなり、ついには台湾海峡戦争を遅き起こすことになる、こういうことを言っていますね。これは御存じですか。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) 武力解放ということをしばしば中国で言っておられることは承知をいたしております。しかし、私が、今度台湾の問題は出ませんでしたが、いろいろな会談を通じ米国と話をする結果、あそこに武力紛争が起こる可能性はないと私も判断をいたしております。
  13. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは、大臣基本的に違うんです。ここが基本的に違うんでありまして、中共アメリカが一たん国交を開いたなら、これは中共は必ず台湾積極的行動に出ることは間違いがないという、私たちはそういう認識を持っておるんです。そういうことになると、ソ連海洋戦略というものがあの台湾地域で分断されるわけです。  ソ連は、御承知のように、極東海軍というものを非常に強化しております。現在、ウラジオストク、それからカムチャッカとアメリカも驚くほどの強化ぶりであります。そのソ連海洋戦略というものを考えたら、そういう極東からあのバシー海峡台湾海峡を南下して、ずっとインド洋に出て、バルト海につなぐという、これはソ連海洋戦略基本だと私は思っております。それが中共が出てきて、あの台湾海域で分断されるようなことがあったらソ連承知しない、これはあたりまえのことじゃございませんか。だから中共台湾に対する武力攻勢がないというあなたの判断がありましても、ソ連がその挙に出てくる可能性まで否定するというわけには私はいかないだろう、こう思うんですが、どうですか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) その点は、米国の方でもいろいろ情報を集めたり、研究をしたり、意見交換しておるのではないかと想像されますが、その結果、武力紛争可能性は少ない、こういう結論を出しておるように判断をいたしまするし、私自身も国境に台湾武力解放の軍を集結しておるとか、いろいろの情報を聞いておりますが、私自身武力紛争可能性は少ないというのが私の判断でございます。
  15. 玉置和郎

    玉置和郎君 私たちはその可能性が大いにあるという、ですから、あなたと見解を異にします。それはあなたが外務大臣として、日本国国務大臣として、あの地域にそういう将来紛争がというか、大戦争に及ぶような紛争が予測されるなら、これはいまのような答弁はとても出てこない。しかし、一人の政治家として、特に中国問題――中国問題というのは中共国民政府も含めてあの地域全体を言うのでありまして、そういうものを研究しておる一人としては、いささか現在の日本政府のとっておる考え方は甘い、こう考えざるを得ないんです。そのことをアメリカ政府、現在のカーター政権は安心しておるという、このことはこれまた早計である。  私は、ことしもアメリカに行ってまいりましたし、去年もアメリカに行って主として何をやったかというと、こういう問題、エネルギーの問題、これが中心であります。そういう自分の経験からすれば、その可能性が大いにあると言うアメリカ政治家がたくさんおります。それだけにアメリカでは、ことしの九月の中旬に、この問題等について米華条約に変更を加えるという場合には、国会と事前に協議をしなさい、議会と協議しなさいということで、国際安全援助法の一環にこれを位置づけておりますね。これは御承知だと思います。さらに、こうした米議会米華関係に対する強い関心は州議会まで及んでおりまして、現在、確かに三十二州が中華民国支持決議案を採択しておること、これも御承知かと思います。  こういうことを考えていきますと、これはあの地域ソ連の進出を許して大きな紛争が惹起した場合には、アメリカもそこに引き込まれて大変な状態になるということの一つのおそれ、あらわれじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 国民の中で、特に議会の中にもそのような御意見があることは十分承知しておりまして、この議論をされている方々が米中接近に非常に警戒をしておられる、それも十分承知をいたしております。
  17. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、そういうアメリカ人たちが非常に心配しておりますのは、日中平和友好条約日本中華人民共和国との間でできた、そのはずみで米中が国交を開始する、米中が正常化に踏み切る、そういうことについて非常な懸念を持つ方が多うございます。それで、私は、総理やあなたが言われるように、日中は日中、日ソ日ソ、米中は米中、米ソ米ソという考え方、これが日本基本だと思うんですが、あなたが米中国交開始にはずみをつけるような気持ちがもしありとするならば、私は日本外交基本を誤るんじゃないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) 米中の間は、上海共同声明以来、双方が努力をしておるようではありますが、結局はいまおっしゃったような点が一つのキーポイントになるのではないか。したがって米中の接近状態がいまどのように進んでおるか、あるいは将来どうなるかについてはまだ私も判断はできないところでありますが、少なくとも日本自分友好条約を結んだからといって米国にはずみをつけるとか、あるいは引っ張るとか、そういうことはする考えはございません。
  19. 玉置和郎

    玉置和郎君 それを聞いて安心しました。  それは本年三月であったですか、外務省アジア局中心になってつくられた日中条約交渉の経緯の中にもちゃんとそういう趣旨のことがうたわれておりまして、日中平和友好条約締結された後にかえって日本中華民国の間の実務関係が安定していくんじゃないかという見解がありましたが、私は、それを見て、なるほどなと、こういう考え方アジア局中心にして持っておられるんだな、一つのりっぱな見識だなと、こう思っておりましたが、その点については間違いございませんか。
  20. 園田直

    国務大臣園田直君) 私、偽るのいやでありますから正直に申し上げますが、会談の最中に私が使った言葉の中にあって、事務当局考え方ではございません。それはどういう意味で言ったかというと、この条約締結を進めるためにわが方の利益よりもあなたの方の利益が多いじゃないかということを言うために、つい日本中国友好関係が結ばれれば米中関係だって悪くはならぬぞと、こういう意味のことを言ったことでありまして、一つ見識で言ったことではございません。
  21. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、次に尖閣の問題についてお伺いします。  きょうの朝日新聞に出ておりましたが、尖閣に八つの島があります。民有になっておるのが魚釣島、北小島南小島、久場島。それから沖繩返還と同時に国有になっておるのが大正島であろうかと思います。そうしてあとの沖の北岩、沖の南岩、飛瀬、こういうものは国有財産登記簿に記載がない、こういうふうに私は承知しております。それは領土領海に関する調査特別委員会を開きましたときに、いろいろ熱心に調査をしていただいた大蔵の方から報告を受けたわけでありまして、こういう場所で言うべきか言わざるべきかという判断に迷いましたが、この際、やはりきちっとしておいた方がいい、こう思いましてお聞きをするんですが、大蔵の方は来ていますか。
  22. 島崎晴夫

    説明員島崎晴夫君) ただいまの状況先生御指摘のとおりでございます。
  23. 玉置和郎

    玉置和郎君 いま大臣お答えになりましたように、実効的支配と言っておっても、あの問題のある尖閣にまだ国有財産登記のされていないこういう地域があるんです。これどう考えますか。
  24. 園田直

    国務大臣園田直君) まことに申しわけありませんが、登記がされてない島が二つあるというのは、きょうの新聞で見て、きっとこれは玉置議員調査だなと思って、あなたの御調査の結果だなと思って、すぐ詳細調べるように言った状態でございまして、恥ずかしながら二島が戸籍に載ってないということを初めて知ったわけでございます。
  25. 玉置和郎

    玉置和郎君 やっぱり私は大蔵省はしっかりしていると思いますよ。日本の役所で一番しっかりしておるのは大蔵省で、一番頼りないのが防衛庁外務省で、私はいつも言うんですけれども、日本大蔵省と警察、検察がしっかりしておるからもっておるような状態でありまして、大蔵というのはさすがだなあというふうに思っております。  こういう日本領海の中にある島ですら国有財産帳簿登記をされてない。私は、これは一種の歴代自由民主党政府の怠慢じゃないかとさえ思うんです。一体、何をやっているんだと。特に領海三海里から十二海里になってきまして、いま調査をしておりますと、確かに二百三十六であったですか、この十二海里の外縁付近にまだ名前のつけてもらってない、命名のされてない無人の島がある。岩礁に至っては四千から五千もあると言われております。非常にこれは残念なことでありまして、外務大臣日本国国務大臣のお一人として閣議の中でこうした問題について積極的な発言をされて推進役になるという御決意がおありかどうか、これお聞きいたします。
  26. 園田直

    国務大臣園田直君) 当然のことでございますから、そのようにして関係省とも連絡をとって間違いのないようにいたします。
  27. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、尖閣にまた関連することですが、尖閣のあの地域には石油埋蔵が非常に多いと言われておりますが、きょう通産のエネルギー庁が来ていますが、その状態はどうですか。
  28. 神谷和男

    政府委員神谷和男君) 尖閣列島周辺につきましては、昭和四十三年の十月十二日から同年の十一月二十九日までECAFEが東シナ海調査を実施いたしましたその結果の報告によりますと、東シナ海の大陸だな区域の堆積物石油賦存可能性がきわめて大きいとされる新第三紀層に属しておりまして、この堆積物の厚さも非常に厚いということが判明をいたしております。正確な埋蔵量等がわかりますためには試掘等さらに詳細な調査が必要でございますが、地質的には石油賦存が予想される地域である、こういうふうに考えられます。
  29. 玉置和郎

    玉置和郎君 この「チャイナ・オイル・アンド・エイシア」、これはアメリカから持ってきた資料で、いまエネルギー庁もこれを中心にして勉強していただいておりますが、日本には的確な資料がございません、尖閣地域石油埋蔵量については。こういう資料、あとまだ三冊ありますが、私は大学の先生にお願いをしていろいろと調査をしていただきましたら、尖閣のあの地域石油埋蔵量というのは、いまエネルギー庁から答えていただきましたように、恐らくアジア全域を通じて最高最大埋蔵量が予想されております。しかも、わが領海、さらに経済水域の中にほとんど入るという事実について大臣はどう考えますか。
  30. 園田直

    国務大臣園田直君) これは非常に大事な問題でありますから、慎重にかつ速やかにこれに対する調査その他は始めるべきであると考えます。
  31. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣ね、これを大きく伸ばしてわざわざ書いてきた。こういうことです(図面を示す)。「沖繩周辺における鉱業出願状況」、もうすでにこういうふうにして鉱業出願日本政府は受け付けておるのです。これ私が勝手につくったんじゃないんですよ、通産省から得た報告に基づいてこれを書いて、そしてこれは間違いがないかということをエネルギー庁に確認をした上の要図です。  エネルギー庁、これは間違いございませんね。
  32. 神谷和男

    政府委員神谷和男君) 出願がそのとおりになされておるというふうに考えられます。
  33. 玉置和郎

    玉置和郎君 問題は、なぜ、大臣、これを示したかというとやっぱり中間線なんですよ、中間線の取り方なんです。現在、中共の方は、中間線の取り方を人の住んでおるところを基点にしていますね。日本の方はそうじゃない、わが領土であるそのところから対象国のこの領土、国土の一番端の真ん中という考え方なんですね。そこにやっぱり紛議が起こる可能性はある、私はこう見ておるのです。それで、すでにこの出願は、日本沖繩返還をしてもらわないその先に、出願に対して許可を与えておる、受け付けておるのですね。だから、この辺もやっぱり紛議が出てくる。  私は、日本国政治家として、ある者は百億トンとも言われ、ある者は百五十億トンとも言われるこの尖閣地域石油埋蔵量、サウジアラビアが世界の最大を誇っておりましても二百十億トン、大変な石油埋蔵が予測されるこの尖閣地域になぜあれだけ執拗に食い下がったかというのはここにある。もうすでに世界エネルギー戦争に入ったと言われております。このエネルギー戦争の時代に突っ込んでいく日本国にとって、この尖閣周辺のこれだけ大きな埋蔵が予測されておるというときに、何としても腰を据えてがんばってもらいたい。私はこの問題こそ日中の間の最大の論議が交わされる場所だとこう思っていますが、いかがでございます。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) 領海周辺で調査をしておることは私も聞き及んでおります。問題は、領海以遠、いわゆるいま発言がありました大陸だなの境界をどこに決めるかということは、これは大事な問題であります。すでに中国に対しては大陸だな境界で話し合う用意がある旨伝えてございますが、中国からはまだ話が出てこないわけであります。そこで、この境界線が決まるときに非常な問題が起こることは私も想像いたしておるところでありますが、非常に大事な問題であると考えております。
  35. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、一九七〇年の十二月三十一日に、米国の国務省で年末のぎりぎりのときに緊急に会議が開かれた、いわゆるガルフ・レックス号事件、これ御存じですか。だれか知っておるかな。
  36. 神谷和男

    政府委員神谷和男君) ガルフ・レックス号事件については、先生先ほどお示しになりました「チャイナ・オイル・アンド・エイシア」の中に記述されておりますので、私どもその限りにおいては承知いたしております。  米政府で論争の末、東シナ海等の紛争地域でのガルフ・レックス号の探査について保護を与えないことを決定した旨その本に記述されておりますが、われわれの調査しました限りにおいて、その本の記述についてそれ以上の事実を現在のところ情報として得るところはできておりません。
  37. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務省、どう。
  38. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 大体、いま石油部長が御説明になったことと同程度に、新聞報道に基づく事実としては承知している程度でございます。
  39. 玉置和郎

    玉置和郎君 中江さんね、大臣はいま立たれましたが、ガルフ・レックス号事件の意味するものというのは大変なものです。これは。これをやはりよく調査なさって大国アメリカ中共の主張する石油地域に対する決意、決心、決断、こういうものを研究しておかないと日本は大変なことに巻き込まれる、私はこう考えるんです。第七艦隊をもってしてもガルフ・レックスという世界最新の探査船ですが、それを使うことのできなかったほど当時の中国中共というものの決意がかたかった、これを教えておるのがガルフ・レックス号事件ですよ。そして事の重大性にかんがみて、クリスマス休みからずっと正月休みを続けていく、あの休日を大変大事にするアメリカで緊急に十二月三十一日に会議が開かれたというものは一体何を意味するのか、こういうことについて外務省としてこの問題に通産と合い議をしながら研究をしていくというこのことはどう考えます。
  40. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 問題の重要性を知るための一つの先例といいますか、教訓としてよく勉強してみたい、こう思います。
  41. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、日本は十二海里が領海ですが、東京に例をとりまして館山の向こうの方十二海里、その外で日本の商船が某国の潜水艦か何かわからぬが奇襲を受けて、そうしてどうも撃沈をされたというふうな事態が起こったときに、日米の安保というものは発動するのかしないのか、これはどうですか。これは外務省の従来の答弁皆持っておるからね、変なことを言ったらだめだよ。
  42. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいまの先生の御設例は日本領海の外でございますので、日米安保条約第五条の発動要因にはならないというふうに考えます。
  43. 玉置和郎

    玉置和郎君 これ議論しておると時間がなくなるからやりませんが、法制局の見解として、そういうときにはそういう日米安保の発動はあり得るということを書いていますよ、これは。
  44. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先生のただいま御指摘の法制局の見解を直ちにいま記憶いたしませんけれども、従来、国会で論議されておりますときに、日本領海外における日本の船舶に対する攻撃に対してどう対処するかという問題に若干の議論の混乱があることがございます。  それはただいま私が申し上げましたように、第五条が発動される前の事態において、公海におけるわが国の船舶に対して武力攻撃が行われた場合、これは当然安保条約第五条からして、その五条の発動がないわけでございますけれども、他方、同じく公海におけるわが国の船舶に対する攻撃の議論で、一たん第五条の事態が発動されて、日米両国がわが国の施政下におけるいずれかの当事国に対する武力攻撃に対して共同で対処しておる、そういう事態の中で、わが国の船舶が公海において何らかの攻撃を受けているときに、どう日米両国が対処するか、そういう二つの問題が両方あるかと思いまして、恐らく先生の御指摘の方の答弁は、その後の方の事態の答弁ではなかろうかというふうに想像いたします。
  45. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、いまの問題はまた改めてやります。改めてやりまして、都合のいいときに都合のいいように答えておるんでね、これは大変な問題で、やはりこの辺できっちり国会として政府との間で整理しなきゃならぬ、私はこう思っております。そこで、なぜそういうことを言うのかということだけ結論づけておきます。  これはソ連からの一つ情報でありますが、恐らく尖閣領海の外で石油探査を日本が始めたら中共はすかさず軍事行動を起こすであろう、これはガルフ・レックス号事件が教えておるんです。すかさず中共が軍事行動を起こす。そのときにアメリカはもちろん出てこない。それはなぜか、アメリカと北京との間でこういう石油探査・開発、そういう問題についてある程度の話し合いが進んでおる、こういうことを言うわけです。これについて簡単でいいですが、どう思いますか。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御質問の中の法的解釈は大事でありますから、後でよく相談をしてお答えをいたします。  いまのような問題は、日本中国領海その他をめぐって紛争がある場合に想像されることでありまして、話し合いがついてやればそういう紛争はあり得ないと存じます。そこで、私は、この開発の問題については、領海、これはもう当然開発の権利があるわけであります。それから領海以遠の問題、それから中間線でもし紛争が起きている場合の問題、この三つに分けて開発は慎重に考えるべきだと考えております。
  47. 玉置和郎

    玉置和郎君 華国鋒主席が本年二月二十六日に近代化に関する十カ年計画を発表しています。この十カ年計画は、一九七六年から一九八五年までの計画でありますが、もう後残り七年二カ月しかない。その中でいろんなことが言われておりまするが、その主要な点を私はずっといま言いまして、最後に結論だけ聞いて終わりにしたいと思います。  華国鋒主席が言っておりますのは、四人組の妨害で一千億元、約十一兆円でありますが、財政収入で十一兆円の損害があった。それから工業生産のところで四百億元、こういうふうにして四十四兆四千億、これは大変な損害を受けたということを言っております。この計算はどういう基礎になっておるかわかりませんが、いずれにしても中国人民の経済は崩壊寸前だということを率直に訴えております。華国鋒主席がこういうことを言い出したということは開かれた中国の一部であるかとも思いますが、とにかくそう言っている。そうして国営企業がほとんど赤字だと、国営企業がいま九〇%になっていますが、ほとんど赤字だと、大変な状態だということを言っておりまして、このためにはどうするかということを言っております。  そして、この八年間、あの当時演説した後の約八年間足らずの間に、一九五〇年から一九七七年までの財政収入総額に相当するもの、これをやっぱり得なきゃならぬということを演説しております。一九五〇年から七七年までをいま推計することを許されるならば、というのは一九五〇年から一九五八年までの資料しかございませんので、そこから推計していくんですが、約七千四百七十七億米ドルだと思います。だから、この八年間で国家財政収入の総額はこれと同額ということになったら、七千四百七十七億ドルを得なければこの計画は遂行できないということになるわけでありますが、そういうことになりますと、年平均九百三十四・六億ドルをふやしていかなけりゃならぬということになるんです。そうすると、二・三倍の正常な国家財政収入が中共になけりゃならぬということになるんですね。こんなことできますか。日本国の予算規模を考えてみて、突然、来年から倍にふやすなんというようなことができますか。魔法のつえでもなけりゃ私はとてもできる相談ではないという考え方を持っております。これは後でいいです。  そこで、一九八五年までに食糧の収穫を四億トンにする、現在二億六千五百万トンぐらいだと思いましたがね、それだけに四億トンにするということになったら、一億四千万トンぐらいふやしていかなけりゃいかぬ。あと七年二カ月です。とてもこんなものはできる相談じゃない。  しかも、昨年十二月の二十三日、新華社の北京電は、食糧供給省としての四川省が食糧欠乏省に転落したと報じておる。それから昨年十二月七日の黒龍江省の放送で、同省の増産率が年平均一%に達していないどころか、三度も大幅減を伝えております。それから昨年八月十九日の甘粛省の放送で、三年間生産が年々低下して人民公社の労働収益は下降しておると言っている。昨年七月十七日には、北京中央放送は、穀物の宝庫の浙江省で三年連続減産をしておると。最近では汚職、窃盗、投機、やみ取引、公金横領、上部機関による農民搾取などで農民の勤労意欲がますます低下をして、次から次へと……こういうふうに人民日報やラジオが伝えておる。開かれた中国の一部です。これは。そういうときに華国鋒主席が幾ら言ってみたって四億トンが一九八五年までにできるはずがない。  さらに、石油もそうです。石油は年平均増加を二三%に置いておりますが、現在八千万から九千万トンの石油を掘り出しておる。それが一九八五年までに約五億トンにするという。その金はどうするんです。アメリカの試算によりますと、これは六百五十億ドルほど必要だと、そんな金一体どこから出てくるんですか。  鉄鋼です。鉄鋼はきょうの新聞にでかでかと載っておる。現在、鉄鋼は二千五百か二千六百万トンです。その鉄鋼を一九八五年までに六千万トンにしようというんですよ。三千四、五百万トンをこの七年二カ月でふやすという。そんなことできますか。これから高炉の建設にかかったって四年、五年かかるのです。粗鋼が出てくるまで四年、五年かかる。いまようやく上海のあの付近の新日鉄の間で合意ができたというだけです。ナンセンスですよ。これだけの華国鋒主席の演説に浮かれて、そうして飛び出していくこの日本の経済界というものはどっかで頭を冷やせと私は言いたい。  それで、ここに私は資料を持ってきていますが、さっき中江君に聞いたら、まあ先生、そういうことは余りやらぬ方がいいですよと言うからやりませんが、日本の商社を利用したこの巧みな中共の工作。マージンをあっちに配りこっちに配り、政治資金に配っている。これ全部資料ある。何だったら今度……ロッキード以上ですよ、これは。政治家名前も出てきておる。そうして財界首脳が女を世話してもらったどうのこうのということも出てきておる。それはどっから出てきたかというと、かつての友好商社が仲間割れして、私のところへ日曜日の夕方資料を届けに来た。忌まわしいことです。そうして特に某党がこの中心になってやっておる和水物産というのは最近信用が著しく落ちた。自由民主党の信用が上がって、某党の信用が落ちて、そこは年間いま三千万円ぐらいのマージンしかようもらっていないということまで書いてある。それに関係しているのはだれとだれと皆書いてある。ミスター鉄鋼、ミスター化学薬品、ミスター油、ミスター何がしというのがずうっと出てきておる。政治家名前が出てきておる。そういうことを考えましたときに、私は、これの経済協力という問題についてやっぱり頭を冷やすべきだ。  そこで言いますが、もう結論を出します。こんなことやっておって、一体、現在中国大陸の政治経済の安定の保証はどこにあるのかということ、これが第一。支払い能力があるのかということ。それからこの一番といまの二番とにらんだ援助計画というものは日本でやっぱりしっかり立てなきゃならぬじゃないかということ。  最後に、われわれはいま経済援助をしようとしておりますが、この経済援助は、これは私見でございますが、中共のいわゆる共産主義政権、いわゆる独裁政権です。独裁政権へのてこ入れです。これは。中国人民大衆というものが本当にこのことを喜んでおるかどうかというのは疑問です。青春時代を北京の学校で過ごし、だれよりもだれよりも中国人を愛しておる。好きです。その中国人民というものが本当に共産主義者に対して深い理解を示し協力をしておるかということになりますと、これは疑問です。むしろこの共産主義政権が倒れたらいいと願っておる中国人民大衆が非常に多いという事実も私は知っておる。だから、この中国大陸に対する経済援助というものは、共産主義政権を助けて、それを立て直らすのがいいのか悪いのかという、本当に中国人民大衆八億の民の心かどうかということを洗い直してみる必要がある。  私は、いま申し上げましたような諸点、もう少し掘り下げて議論をしたいと思いますが、それを申し上げまして、私の今日の話を終わります。
  48. 園田直

    国務大臣園田直君) いま詳細な御意見を承りましたが、前半の中国の経済の実情はほぼ私も玉置委員と同じように判断をいたしております。今度の会談の際には、一歩も外へ出ませんでしたが、それでも経済的な相当な問題で、特に外貨の不足ということは非常に頭を悩ましておるようでありまして、ただ、問題は、そういう実情を中国の指導者が知っておって、そうして現代化は大変である。二十年かかるか三十年かかるかわからぬ。われわれは自力更生という線は捨てないけれども、すべての国の援助を受けたいんだ。いままでと違って、中国は開発途上の国だ。仮に現代化ができた場合でもそれを十億の人間で分けるんだから、他国に脅威を与えるなどというようなことはとても考えられないと正直に向こうから意見を言っておられたことであるし、また、日本財界の人々も、中国に対しては、これを市場として見るんではなくて、なかなかマージンは少ない、しかし、やはりお隣の国の繁栄に協力することが大事だという頭は確かにどこかにあるわけであります。  この日本中国に対する援助が共産主義の政権の援助になるかどうか、これは別といたしまして、わが国は、政権あるいは政体のいかんにかかわらず、隣国の繁栄を願うという平和外交基本方針にいたしております。どのような政権ができるかはその国自体の人民が選ぶことであると考えております。
  49. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、大事なことをいま抜かしましたので。  いま日本の鉄鋼の中共に対する輸出は一万二千円から一万三千円出血してやっておるんですよ、出血して。それで、そのはね返りはどこへ来るんだというと国内の鉄鋼価格へ来て、国内では八万円前後、鉄鋼、高炉の製品はね。ずうっと出血ですよ、一万二、三千円。何で中国大陸に輸出するのに出血せにゃいかぬですか。よその外国へ出すのにはそんな出血せぬでいいという。どこか狂っていますよ。十九日に稲山さんと会いますが、どこか稲山さんも狂っちょる。財界全体狂っちょる。それだけ言いたいことを言うて終わります。
  50. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日中条約もいよいよ批准承認という段取りになりまして、ともあれ大変喜ばしいことだと思います。  この日中条約締結承認をめぐりまして、すでに内外から賛否を通じての評価のあることも事実でございます。また、今後、この日中条約の精神というものを運用の面においてどう生かしていくかということがむしろ今後の問題としてきわめて大きな課題ではあるまいか、そうした観点に立って今後の取り組み方というものが重視されることは否めない事実でございます。すでに本件につきましては、衆参両院の本会議、予算委員会あるいは外務委員会等において、日中共同声明発出以来、さまざまな角度から議論がなされてまいりました。そこで、本日は、いままでの議論を踏まえて私なりに整理をしながら、いま一つの締めくくりの意味を込めて確認をしてまいりたい、このように思いますので、そのことをお含みの上御答弁をいただきたいと存ずるわけでございます。  まず、基本的な問題の一つは、本条約の持つ性格は、一体、どういうことであるのか。これはもうすでにアジア局自身も、これは講和条約という従来のそうした意味合いを持つものではないということも触れておられますし、こうした点について明確にされながら、また同時に、日中共同声明とのかかわり合い、従来もこの共同声明第八項に基づいて今回の平和友好条約がつくられたんだと、そのかかわり合い、この辺について整理をしながら明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  51. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 日中平和友好条約は、いま先生がおっしゃいましたように、この名前が初めて出てまいりましたのは一九七二年九月二十九日の日中共同声明の第八項であるわけです。この共同声明第八項で言う日中平和友好条約とは何かといいますと、これははっきりその第八項に書いてありますように、日中「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため」のものである、こういうことになっております。  そのことをさらにかみ砕いてどういう意味かということにつきましては、共同声明が出されました直後の北京における記者会見の席で、当時の大平外務大臣がおっしゃっておりますように、この条約は将来の日中関係を律するものであって、共同声明第六項の文脈の上にあるものだと、つまり平和五原則なり紛争の平和的解決というような将来の日中関係を律するための条約である、こういう認識は共同声明の文言からも、当時の外務大臣認識からもはっきりしていたと思います。したがいまして平和友好条約という名前がついておりますけれども、これは共同声明に前文にも本文にも数回にわたって出ておりますように、平和友好関係というものが一つの概念であったわけでございまして、そういう「平和友好関係を強固にし、発展させるため」の条約、そういうことでありますので、理論的に見ましても、この条約は平和条約ではないということははっきりしておる。  では、平和条約的なものはどこで処理されているかといいますと、これは共同声明の前文及び本文の第一項、この二つによって戦争の後始末というものは終わっているというふうに当時の大平外務大臣もはっきりおっしゃっておりますし、さらに大きく考えまして、日中間の暗い過去の清算はこの共同コミュニケによって終わっているということもはっきりおっしゃっているわけであります。  したがいまして政府認識といたしましては、日中間の過去の清算は共同声明で終わっている。日中平和友好条約は、この共同声明を出発点として将来の日中関係を律するものとしてその当時から約束されていた条約を締結したものである、こういうことでございます。
  52. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたとおりだと思うのでありますが、従来、終戦処理と申しますか、戦争終結宣言といいますのは、平和条約なり講和条約という形によって一つの帰結を生んだ。今回、特にこの共同声明が平和条約なり講和条約にかわるべき内容を持つものである、これはもう全く平和条約と何ら変わりがないんである、そういうふうに理解してよろしいのか。なぜ今回その共同声明という形がいわゆる平和条約的なそういう性格を持つようになったのか。とすれば、当然、国会の承認も得なければならなかったはずだと思うのでございますけれども、その手続が実際はなかった。この辺の経過についてどういうふうに理解をしたらいいのか。
  53. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 大筋のところを御説明申し上げまして、条約論につきましては条約局長からさらに説明していただくことにしたいと思います。  日本中国との戦争状態というのは、これは国と国との間の問題で、局地的な戦闘を終結させる休戦協定とは違いまして、平和条約ということになりますと国と国との問題になるわけでございます。で日本が国としての中国との間の戦争状態を終結をさせましたのは、日本国立場といたしましては、一九五二年の日華平和条約、これによって国と国との間の戦争状態というのは終結しておる。戦争状態の終結を地域的に区分するということは、これはできない相談でございまして、戦争状態は国と国との間の関係一つ状態であるわけです。これを平和条約で終結したというこの日華平和条約の処分的効力というものは、これは御承知のように日本の憲法の規定に従って締結された条約でありますので、そのことを争うことは日本政府としてはできないことである、これがまず前提にあったわけです。  にもかかわらず、中国大陸との間で日本との関係正常化するに当たりまして、中華人民共和国政府といいますのは一九四九年に誕生しているわけでございまして、戦争が始まったときはもちろん、戦争が休戦協定によって休戦されました一九四五年にも存在していなかった政府でございます。したがいまして一九四九年に誕生した中華人民共和国政府が、誕生前に日本が休戦をいたしました、そして誕生前に中華民国との間で戦争が始まった、その戦争の処理をどうするかということは、これは非常にむずかしい法理論の問題になるわけで、これは追って条約局長が説明すると思いますが、ところが、その終わった後の姿が、御承知のように、いままでの国際社会では見られなかった一つの国の中に二つの政府がといいますか、正統政府に対して革命政府が誕生しまして、その両者が長く並存するという状況がドイツだとかベトナムだとか朝鮮半島とか中国大陸というようなところに生まれた。非常に第二次大戦後の新しい分裂国家とか分断国家とか言われますが、そういう状況のもとで、なおかつ日本中国との間に関係正常化しなければならないという非常にむずかしい、新しい事態に即応することを迫られた。これは中国についても同じであったと思います。  したがいまして共同声明が出ましたときは、日本の日中戦争状態終結に関する法律的立場中華人民共和国政府の法律的立場とは全く相入れないものでありましたが、そのことを論議することよりも、日中を正常化することの方が大局的な目的であるということで、そのことを政治的に解決したのが日中共同声明ということでございます。したがいまして日中共同声明では「不正常な状態に終止符を打つ」という表現になった。これが経緯でございまして、国際法的にそれを説明する方は条約局長から御聴取いただきたい、こう思います。
  54. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 国際法の観点からの御説明を申し上げたいと存じますけれど、大筋につきましてはただいまアジア局長が発言されたとおりでございます。  若干補足して申し上げますならば、一つの国に、国際法上、他の国が二つの正統政府を認めるということは、これはあり得ざるところでございます。当時、一九五二年当時でございますが、わが国は中国という国を代表する正統政府としては中華民国政府をそういうものとして認めて、その中華民国政府との間で日中間の戦争状態の終結または戦後処理の処分的な問題を解決するということを日華平和条約において行ったわけでございます。  その法律的立場というものは、日中共同声明作成当時、先方の中国側は、この日華平和条約というものは当初から不法、無効なものであるという立場をとりましたけれども、わが国としては、先ほどアジア局長が申しましたように、国会の御承認を得て批准をした条約であり、これは憲法第九十八条によりましても、かかる条約は「誠実に遵守」していくということとされておりますし、この日華平和条約というものが当初から不法、無効なものであるという立場はわが国としては絶対に取り得ないというところであったわけでございます。このような困難な法律問題がございましたけれども、わが方からわが国のかかる法的立場を先方に十分に説明いたしまして、日中双方とも、この困難な法律的な問題を日中国正常化という大目的のために克服して、日中共同声明というあの文書が合意されるに至った、これが経緯でございます。  ところで、日中共同声明につきましては、先ほど来申し上げておりますわが国の法的立場に照らしまして、その内容は国会の御承認を仰ぐ事柄を含んでいない。これは憲法第七十三条第二号に言うところの外交関係の処理として行い得るものである。かかる立場に立ちまして日中共同声明というものは国会の御承認を求めずして行われた、外交的処理として行われた、こういうことでございます。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 端的にいまの御説明を通しまして将来に禍根を残さないためにも整理をして考えますと、むしろ日中共同声明というのと今回の日中平和友好条約、これはワンパッケージで考えられないのかどうなのか、全然切り離したものとして考える必要があるのか、この辺の理解はどういうふうにしたらいいのか。
  56. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 日中平和友好条約というものは、先ほどアジア局長が述べましたように、日中共同声明第八項というものから双方がこの締結を約束し合ったというかかわりがございます。しかしながら、日中間の戦後処理、とりもなおさず平和条約的なもの、そういうものは日中共同声明で日中問の戦後処理の問題は最終的に解決済みである、こういうことにつきましては日中双方に全く見解の相違はないところでございます。したがいまして今回の日中平和友好条約というものは、その意味におきまして、いわゆる講和条約ないしは講和条約的性格のものでは全くないということははっきり申せるところでございます。
  57. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの局長答弁は法文上言っておりますが、やや質問に答えた点にならぬと思いますが、今度結ばれた友好条約は共同声明の延長線上にあることは事実でございます。
  58. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変解釈の仕方というものはいろんな議論を呼ぶであろうということは十分考えられるわけでありますが、いま外務大臣から整理をされた御答弁があったようでございますし、やっぱり延長線上という、これもきわめて抽象的なとらまえ方かもしれませんね、考えてみますと。しかし、一応そうした私どもの判断でこれは処理をしなければならないであろう。  本来ならば、先ほど申し上げましたように、日中共同声明をもって戦争終結ということは、これは憲法上の解釈の上から考えましても、いま大森さんがお答えになられましたように相矛盾するものではあるまいかということになるおそれがございますね。そうしますと、私がいま申し上げたように、むしろワンパッケージとして考えた方が戦争終結であり、また日中両国間における将来展望に立った友好のきずなを第八項に基づく応用として取り決めたんだ、この方がむしろはっきりするんではあるまいかなという印象を持つわけでございます。衆議院でのやりとりもあったようでございまして、その辺がちょっと答弁の中で食い違いがあったやに私伺っておりましたので、もう一遍その辺を確認をする意味でいまお尋ねをしたわけでございます。  と同時に、今回のこの条約の内容を拝見いたしますと、確かに理想的なと申し上げればあるいは言い過ぎかもしれませんけれども、日中両国間が信頼と誠実を持ってその精神を遺憾なく今後の展開に寄与してもらいたい。特に覇権という問題についてはしばしば議論があった内容でもございますし、こうした覇権を求めない、また認めないという精神に立脚いたしますと、これはまさしくまた別な見方をすれば、日中中立不可侵条約の性格も持つんではあるまいかというような判断も成り立つわけでございますが、その辺の当局としての判断はいかがでございましょうか。
  59. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御承知のように、この条約の第一条には、平和五原則の一つとして相互不可侵というものが将来の日中関係を律する原則として掲げられております。また、第二条には、いま御指摘のように、日本覇権を求めない、また中国覇権を求めない。したがって当然でございますが、お互いに相手に対して覇権を行わない、こういうことになるわけでございますので、その面にだけ注目いたしますと不可侵条約的な要素を持っている、こういうことになろうと思いますが、条約そのものは、申し上げるまでもなく、不可侵の原則以外にもいろいろの広範な平和友好関係のための規定が入っている、こういうことでございます。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回、恐らく画期的と言われ、他国に例を見ないと言われておりますのが覇権条項であることはもうしばしば指摘されてきたとおりでございますが、国連憲章にも述べられておりますように、本条約第一条にはもう明確に平和五原則がうたわれております。それをさらに踏まえた上でこの覇権という新しい日本としての外交原則というものを打ち出したというふうに受けとめられましょうし、また国連を通じて望ましい今後の世界の趨勢としては、この覇権も盛り込んだそのあり方というものが平和五原則にもう一つ覇権という、そういうような行き方に今後日本としての外交政策の一環として主張を貫いていくのかどうなのか。また、国連自体としても、そうした日本の今回とった措置というものをどのように評価しているかわかりませんけれども、今後のあるべき平和のあり方として、これも当然国連憲章の一つに組み入れるべき筋合いのものではあるまいかというような方向に向くのかどうなのか、この辺はいかがなものでございましょうか。
  61. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 覇権という言葉外交文書として私たちの目に最初にとまりましたのは、御承知のように、米中上海コミュニケであったわけでございます。その当時は非常に新しい言葉であるというふうに思われておったわけでございますけれども、日中の共同声明の中にもそれが取り入れられましたのみならず、その後、中国が多くのアジア諸国との間で出しました共同コミュニケの中にもこの言葉が繰り返されている。さらに加えまして、国連の中でもすでに諸国家の経済権利義務憲章という総会決議の中で覇権というこの字が使われ始めておるわけです。  したがいまして、だんだんとこの覇権というもの、あるいは覇権を求めるべきでない、覇権を求める、確立しようとする行為には反対する、そういった考え方が普遍的なものに認識されてまいりますと、いま先生がおっしゃいましたように、国際的にもさらに広まっていくということは予想されるわけでございますけれども、ただ、この覇権を求める行為というのは、そもそも国連憲章の原則に反する行為であるというふうに私どもは認識しておりますし、中国もその認識に異論がないわけでございますので、国連憲章の諸原則が守られている限り覇権を求めるような行為は認められないということはすでに確立している、こういうふうに私どもは考えております。
  62. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 本条約締結に際しまして、これまたしばしば問題になりましたのが中ソ同盟条約であったはずでございます。いままでも鄧小平副首相の言明を通じまして、また外務大臣が先般訪中の際、鄧小平副首相と会った際の印象として述べられております。これは当然廃棄の方向である。  最近、伝えられるところによりますと、来年四月、つまり条約失効の一年前である来年四月に廃棄通告の希望を表明するというようなことが伝えられておりますが、その実現の可能性というものはあるのかないのか。そしてまた、希望表明いたしましても、実際の条約としての効力はあと一年残るわけでございますね。その一年というものはやはり効力があるままに推移していくのか、あるいは破棄通告という希望表明を境にして全くその効力を失うと判断したらいいのか、その点についてどのように受けとめられているのか。  私は、昨日も外務省の方に確認をしたのでございますが、戦争中大変不幸な事件がございました。一九四一年でございましたか、日ソ不可侵条約の締結がございました。一九四五年、あれはたしか五年間の有効期間があったと思いますが、一九四六年まで効力を有する。ところが、その一年前に破棄通告がモロトフ外務大臣を通じてあった。それから間もなく、八月八日、日本に対する宣戦布告をする。こういう経緯を考えてみますと、ソビエト自体の受けとめ方というのは、破棄通告あるいは破棄の希望表明ということがあったその時点ですでに効力を失う。過去の事例から見て、そういうふうに私は判断しても差し支えないのではあるまいかという前例にならえば、来年、中国がソビエトに対して破棄通告をした時点で、われわれのもやもやとしたものが一切払拭される。そうなることが望ましいという観点に立って、その辺をどのように判断され、また、中国側に対して、そういう希望表明の事実があるかどうかという、これはただ単なる印象としてではなく、確認をする方法はないものかどうなのか、その辺をまとめてお教えをいただきたいと思うわけであります。
  63. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) まず初めに、先生がおっしゃられました中国側の鄧小平副総理の来年四月には中ソ同盟条約の廃棄のために必要な措置をとるという発言でございますが、これは一国の副総理、党の副主席が一国の外務大臣に対しまして言明したところでございますし、その後、わが国の報道関係責任者の訪中団に対しましても、鄧小平副総理発言されているというふうに承知いたしておりますし、きわめて重い意味を持っているところでございまして、そのような措置が中国政府によってとられるということにつきましては、私どもはいささかの疑念も持っていないところでございます。  そこで、この廃棄通告の手続と実際上の条約の失効との関連につきましての御質問について御説明申し上げます。  初めに、先生が御指摘になりました日ソ不可侵条約の点でございますが、これはソ連側は一九四五年四月五日に日ソ中立条約の廃棄の通告をいたしました。その結果、この条約の規定に基づいて、この条約は一九四六年四月二十四日をもって失効することとなったわけでございます。しかるに、ソ連側は、その条約が法的に失効する以前である一九四五年八月八日に日本に対する宣戦布告を行ったわけでございます。条約が有効である間に、このような宣戦布告という措置をとったということは非常に明確に日ソ中立条約の違反であったというふうに考えております。  中ソ同盟条約につきましては、これも第六条に規定がございまして、「この条約の有効期間は、三十年とし、一方の締約国が期間満了の一年前までに廃棄する希望を表明しない場合には五年間延長されるものとし、この方法により順次延長される。」、このように私どもで作成しました仮訳でございますけれども、そのように規定されております。中国側が明年の四月十日までにこの中ソ同盟条約第六条の規定に即した法的措置をとりました場合は、この条約は一九八〇年四月十日に失効するということになるわけでございまして、したがいまして明年四月に廃棄の手続がとられた場合にも、なおこの条約は一九八〇年四月十日までは有効であるということでございまして、廃棄通告の手続をとったら直ちにこの条約が失効するということではございません。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 文部大臣に時間を割いて御出席をいただいておりますので、わずかな時間でございますが、とても十分ぐらいではお伺いできないと思うんですけれども、いま私都合上まとめて御質問申し上げます。政府としてのお考えを述べていただければと。  ちょうど日中条約締結承認されて外務大臣が帰国された直後に、参議院の外務委員会が開かれました。その折にいち早く文化交流の一環としての留学生問題を私取り上げました。一見大変結構だと私思うんです。ただ、日本の現状としてはいままでいろんな資料を拝見いたしておりますと、留学生の受け入れについてはまさしく後進国のいま状況である。いわゆる受け入れの条件は何も整っていない、これが大きな障害になる要素ではあるまいか。  確かに考えてみますと、一衣帯水とは言いながらも、日本の、あるいは日本と申しましてもいま昭和二けたの方が圧倒的に三分の二を占める現状でございますので、特に青少年の中国に対する認識と理解というものはゼロに等しいんではないだろうか、わずかに著書を経て理解をする程度。また逆に言うならば、中国自体も日本に対する理解というものはまずほとんどないに等しいということが言えるであろう。しかも、今後、日中平和友好条約の精神に基づいて強力な、政府考え方を通して申し上げれば、経済よりもむしろ文化に重点を置いたそうした展開ということが最も望ましいであろうという趣旨のお答えがございました。私は同感だと思うんです。なれば、その具体的な一つのあり方として当然留学生の問題あるいは学術交流という問題がすぐその俎上に上ってくるだろうと思うんです。  そこで、そうしたことを踏まえて、確かに現状はまさしく寒心にたえないという状況。それからもう一つは、すでに従来東南アジア地域からも相当数の留学生が日本に参っております。また帰っております。この帰った留学生のその後の行動がどうであったのか。言うなれば親日的なそういう判断のもとに新しいアジアの一員としての行動に目覚ましいものがあったろうかどうなのか、そうしたこともわれわれとしては十分見詰めていかなければならない問題点の一つであろう。しかし、いままでいろいろと伝わってくる話の中には、反日的あるいは排日的なそういう感情を持ったかつての留学生が非常に多いということが実は指摘されているわけです。  そうした問題はどうして起こったのか、恐らく日本におけるいろんな留学生自身感情を逆なでするようないろんな環境があったのであろう。これはいろんな観点から物を見ていかなければならぬと思いますが、端的に申し上げると、そういうことであろうというふうに思うわけです。こうした点も当然整理をしながら、今後、日中間にそういうみじんにも阻害要素が起き得るという可能性のない配慮を持って、正確に、そして喜んでいただける、それが次への新しい発展の基礎づくりになるというような立場に立っての留学性の受け入れでなければならないであろう。そしてまた中国から日本に対する受け入れもさることながら、今後は、日本からさらに中国へ留学するという行き方もございましょう。  また、次に申し上げたいことは、いま二万人というふうな数字が挙げられているようでございます。必ずしも日本だけではございませんね。ヨーロッパあたりにも行かしたい、アメリカあたりにも行かしたい。こうした場合に必ず比較されるわけでございます。日本はこうだった、アメリカはこうだった、ヨーロッパはこうだったということになりますと、そういう点でも日中間というものが長い間の歴史を考えてみた場合に、思わぬところに蹉践を来さないとも限らない。かつての孫文、魯迅あるいはいまの中日友好協会の廖承志さんあたりのたどった足跡というものを考えましても、果たしてどうであったかということを、いま云々する立場ではございませんけれども、そういう禍根を残さないためにも、この辺は基本的な今後の日本政府としての受け入れの態勢というものは万全を期さなければならぬだろう。それは官費になるのか、公費になるのか、私費留学というものを認められるのか、こうした点を総合して、いま三つか四つ私お尋ねしたと思うんです。それを総合してお時間の許す限り意のあるところをひとろお答えをいただきたい、こう思うわけです。
  65. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) お答えいたします。  全く同感であることをまず申し上げておきたいと思います。  留学生の受け入れは、中国の留学生のことが盛んに話題になりますけれども、今後とも、どこの国の留学生であっても同じ扱いをしていくということを決めております。  帰ってから、反日的な行動があるではないかというお話もございました、それも耳にしております。しかし、それは一部の者であるともうあえて率直に申し上げておきたいと思います。その原因は、いろいろ探求もしておりますけれども、日本語のむずかしさということも一つございます。日本人全体が外国人を受け入れることに必ずしもなれていない、こういうところから反日的な気持ちになって帰られる特に私費留学生のあることも承知をいたしております。一面におきましては、東南アジア、特にASEANの日本に留学した人たちなどはそれぞれ母国でもう実にりっぱな活躍をいたしております。元日本留学生アセアン評議会という会もつくりましてりっぱな活躍をしておりますことは、ことしの総会に招かれて、七月の初めに出席をいたしました私はまざまざとこの目で見てきたところでございます。  中国との問題は、やはり双方で相互理解に足りないところがまだ残されておる。十月の三日から十三日まで日本政府の招聘で、中国の教育次官を団長にした教育代表団の一行が来日をいたしました。文部省との間に実務者同士相当長時間をかけて二回の会議をやったわけでございます。日本の大学の自治の範囲の中に入学選抜の問題があるということを理解をしていただくのにもずいぶん時間がかかりました。日本では学校教育法で大学に進みますのに十二年の学校制度を経なければなりません。中国の学校制度がどうなっているかということを、いまの現実的な中国の学校制度のあり方を聞かしていただくのにもずいぶん時間がかかったわけでございます。  だんだん煮詰まってまいりまして判明をいたしましたことは、中国からの希望は、理工系を中心にできるだけ早く、進修生という言葉を使われますが、これは日本で言いますと大学院の研究生でございます。それを相当数派遣したいという希望がございました。それから学部留学生の派遣については、中国において日本語や数学、理科などの予備教育を、日本で言う高校卒業生に対してさらに積み上げを行って、その上で日本に学部留学生を頼みたい。そのための予備教育をするための日本人の教師派遣の希望がございました。  当方としては、中国との留学生交流が日中両国の友好関係発展の基盤になることでございますから、今回の申し入れを可能な限り受け入れたいという気持ちで対応いたしましたけれども、大学院の研究生ということになりますと、どれだけ日本語にすでに習熟しておられるか、そのことに対して今回の代表団は資料をお持ちでございませんでした。また、理工系というだけでは実は困るわけでありまして、専門課程は何であるとか、大学と協議を文部省がするにつきましても、何学部の、何学科の、どういう教授にその留学生を張りつけるかというところまで協議をしなければ、大学側としても入学を許可する資料としては足りませんものですから、そのような資料提出を求めたのでございますけれども、今回の代表団はそこまでは細かいデータをお持ちでございませんでした。幾つかの問題が残ったわけでございます。そこで合同委員会をひとつつくって、両国の間で周到な準備を整えようではありませんかという提案をいたしました。何ならば十一月にも今度は日本側から北京へ参りましょう、そうして北京で合同委員会の二回目を持ってはいかがでしょうかという提案をいたしました。帰国の上で、そのことについて回答するということでございました。  まだそういった問題が幾つも残っておりますので、いわば十年先、二十年先の中国の指導者をお預かりをして教育をするという大切なことでありますから、その意義の重要性を両国の行政の場でも十分認識をいたしまして、周到な準備の上で開始をするべきものだ、こう考えますので、具体的条件等について、なお今後協議を積み重ねていきたい、このように考えております。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一点だけ。  確かにお述べになったような、まだ具体的にこうだという結論の出る段階ではなかろうと私思うんですね。一つ一つ今後日中問の合同会議なり、適当なそういう話し合いの場を通じて、どういうふうに進めていくかということになるんであろう。中国側としては非常に急いでいる、できれば今年からというふうな御要望もあるやに伺っておりますが、それはもう今年といいましても、あとわずかに二カ月余り残すだけでございまして、技術的には相当困難であろう。恐らく来年からということになりますれば、当然、その予算措置というものも考えられなければならない。  従来の施設やなんかを考えましても、国の場合でも、あるいは公立の場合でも十分と言えない。これはもう日本の寮生の実態を見ましても、これが寮生活かと思えるような大変心配をするような場合がございますし、いわんや外国の方を受け入れるということになれば、それなりの条件を整えた施設にもお入りになっていただくというようなことを考えますと、当然、その予算的措置というものが、これは少々ぐらいじゃとても追いつかないではあるまいか。しかも予算措置をいたしたからといって直ちにそれがすべて整備されるというふうには限らないわけでございますので、恐らく今後五年計画なり十年計画というものを文部省としてもお考えの上、日中間の友好促進のために、新しい一つのレールを敷かなければならないわけでございますので、そうした面については、いまどのようにお取り組みになっておられるのか、またこれからなろうとしているのか。
  67. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 留学生の先方の希望の数を実は大変心配をして代表団を迎えたわけであります。二百という数字が不確定情報として入ってきたり、五百という数字が入ってきたり、二千という数字が入ってまいりましたり、一万という数字が入ってきたりでございましたから、大変そのことを気にして代表団を迎えたわけでありますが、一番中国が急いで希望しておられる大学院の研究生、これも実は数の明確な御表明がございませんでした。いろいろなことを協議、懇談をしております中で、私どもが推測してつかんだ数字は四百でございます。ですから大学院の新しい学期の来年四月、四百という数字であるならば、施設その他そんなに心配をしないで受け入れられる。  いま渋谷委員御指摘の点は、将来の問題として、当然中国も含めた留学生の枠を広げようという考えを持っていることでございますから、将来の計画としては、宿舎、あるいは決まった留学生宿舎ではなくて、日本の家庭の下宿に入りたいという希望もまた多いわけでありますから、そのようなあっせんまでやはり行政で関与していかなければなりません。総合的にそのようなことを考えますけれども、いまの御質問の直接の問題の中国のことについては、一番急いでおられる大学院段階の研究者は大体四百、これならば来年の四月受け入れることは宿舎とかそういうことでは可能である。  中国のお話では、全部中国の費用負担の、日本のいまの制度で言えば私費留学生という制度で受け入れるわけでございますから、これは予算措置等そんなに大がかりなものが要るわけではございません。むしろ心配しておりますのは、その学生たち日本語の習熟度がどこら辺まであるかということを実は一つの問題点としてこれから進めていく協議の中で明らかにしていきたい、このように考えております。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 文部大臣、結構でございます。  本筋にまた戻りますが、先ほどの条約の性格からずっとお尋ねしたいことを伺ってきたわけでございますが、やはり私どもは覇権行為というものが大変気になるわけでございまして、言うならば、当然、各国民が心からの願望を込めた要求であろう、こう思います。  しかし、現実には、いまこの世界各国で、恐らく厳正に言うならば、これは覇権行為だと思われるような紛争、そうしたものがやはりあるであろう。一昨々日の衆議院の外務委員会におきましても、北方四島の問題、竹島問題等がわが党の渡部君から出されていたようでございます。そのほかにも中越国境糾争あるいはカンボジアの問題あるいは中東の問題、こうした一連の紛争について、常に代理戦争と言われる背景には何らかの厳しい覇権的な、いわゆる支配行為に及ぶそういう意図的なものがあるのではないかということがしばしば繰り返し指摘をされてきております。  ただ、先ほども御答弁にありましたように、国連憲章の精神にのっとって、現実的には覇権という行為に対しては各国ともが厳重にないことを確認し合っておると。しかし、一方においては、いま申し上げたようにいろいろな形態で起こっているわけでありまして、こうした事件があった場合の、制裁措置と言うのはちょっと行き過ぎかもしれませんけれども、やはりそれぞれの裁量に任せられるということから、依然としてそういうような紛争なりあるいは限定戦争というものが尾を引いて後を絶たない。言うなれば国連の安保理事会あたりで明確にこの制裁措置がとられれば、この覇権という問題はもっと機能的に、もうオーソライズされた形で運用されていくんではあるまいかなどと、こう私なりに考える場合がございますけれども、政府といたしましては、大変重要な意味合いを持ちますだけに、いろんな解釈のある中でどんなふうにお考えになっていらっしゃるか。
  69. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 覇権とか覇権反対という概念が、先ほど私申し上げましたように、比較的新しく国際社会で通用し始めているということの一つの帰結でもあるわけでございますけれども、それを具体的にといいますか、さらに詳細にいかように定義し、また、それに対してどういう反対の立場を表明し、あるいは反対するという行動をとるかというような問題は一切まだはっきりしたものが出ていない、つまり一般的な原則である、一般的な原則として受け入れられ始めた、今度の条約はそれをはっきり日中間で原則として確認し合ったというところに意味があるものだと思います。  現実に今度の条約の交渉の過程におきましても、日本中国との間で、この覇権の具体的な例示をしてみるとか、それに対してどういう対応をするかというような具体的な対応の仕方、そういったものは一切討議されておらないわけでございまして、日中双方の交渉当事者の間で合意されておりますのは、覇権を求めない、また覇権を求める者には反対するという一般原則を確認し合った、そういうことで双方が満足しているというのが現状でございまして、いま先生の御質問のような問題点につきましては、これからこの条約が実際のケースにどう適用されていくかという過程を通じておのずから明らかになってくるんではなかろうか。たとえば平和五原則にいたしましても、国連憲章初め方々でいろいろ原則は繰り返されておりますけれども、具体的にそれでは何が内政干渉であるか、何がたとえば侵略であるかというような問題については、これはきちんとした分類なり定義があってのことではなくて、国際社会でおのずからその適用ぶりがケース・バイ・ケースで出てくる、こういうのがやはりいまの国際社会における一般原則というものの持つ性格ではなかろうか。したがって、大事なことは、この認め合った一般原則をこれから適正、妥当に適用していくということではなかろうか、こういうふうに思っております。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういたしますと、この平和五原則という考え方と――確かに覇権というものの持つ意味合いもこの平和五原則に実際は精神としては貫かれているはずでありますけれども、覇権という問題を日中間においてあえてそれを持ち出した。しかし、いま中江さんが答弁されたように、いろいろと変化する中で、どうしても必要に迫られれば、あえてそれを踏まえながらも新しい平和原則の一環として採用することもあり得るという趣旨だと思っています。  もし覇権ということが、日本でも同意をしたわけでございますので、それが新しい世界平和の秩序の原則ということになるならば、これは当然のことながら、日本といたしましても、ただ事が起こってからどうこうするんではなくして、やはりある程度の議論というもの、コンセンサスというものを国際間においてもすべきでありましょうし、必要とあらばあるいは国連憲章の一項目に挿入することも可能ではあるまいかというような考え方も当然出てくるだろうと思うんですが、いま政府としてはそこまではお考えになっていらっしゃいませんか。
  71. 園田直

    国務大臣園田直君) 反覇権問題で私が冒頭から強く主張し、向こうの確認を求めたことは、この条約に盛られる覇権は特定の第三国ではない。特定の第三国を対象にして条約を結ぶならば、国際情勢の変化によって再び名存実亡ということになってくる、こういうことを主張して、これは意見が一致をしたわけであります。  しかし、問題は、この反覇権が特定の第三国に向けられたものではないということを説明することも大事でありますが、それ以上に、いまあなたがおっしゃったように、国連その他の場合で各国ともこういうことになってきて、反覇権という言葉世界的な通念になり、それがだんだん結ばれていって世界平和の方に持っていくという考え方は早急にやらなければならぬ問題と考えております。  覇権のことについては、そういう趣旨があったので、第四条でああいう書き方をしておりますが、政治的には、これは日本外交方針の基本は自由である、あなたも自由である、特定の三国に向けられた覇権ではない、こういうことを意味しているわけでありますが、核不使用その他についても、覇権と同様、国連等にそれぞれの国が結んで、それをまとめていって核不使用時代をつくるというようなことに持っていくのと同様に、これは他国とよく話し合わなきゃならぬし、それから中国ともまた話していることは、反覇権判断は協議してやるわけではないし、それから行動は共回して行動するわけではない、こういうことを言っているだけでありますから、その他のことも折に触れてもう少し理解を深める必要があると存じております。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これはよけいなことかもしれませんけれども、今回の日中平和友好条約の精神にのっとって同一の趣旨に基づく条約を取り交わす国をいまお考えになっていらっしゃるかどうか。
  73. 園田直

    国務大臣園田直君) これはASEANの国国、アジアの国々、こういうことがまず最初である、こういう方々と相談をしてこれを広めていく。先般西独から来られましたが、西独の総理もわが方と基本的な外交方針は全く一致しているようでございます。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、今回の条約締結に当たりまして、特にソビエトを初め、あるいは広くASEAN諸国からもさまざまな論評、評価が加えられております。すでに、いままでの衆議院あたりの答弁を伺いましても、外務省を通じて日本立場、またこの日中条約の精神というものについて十分話し合いをしておりますので、いま不安を持っている、あるいは疑惑を持っている国々についても必ずや理解が求められるであろうというふうに私理解をしておりますが、しかし、事ほどさようにそのようないま動きでないことも事実のようであります。  しばしば報道によりましても、かつての大東亜共栄圏をあるいは日中が軸になって夢見ているんではあるまいかというような受けとめ方もあるようでございます。そうしたような誤解を生ずるということ、疑問を生ずるということは、これは今回の条約ができたそのものもさることながら、長い歴史的な経過の中で、さまざまなそれぞれの国が被害をこうむったということから考え出された受けとめ方であろう、こう思うわけであります。これはいつまでもそうした状態に置くということは決して好ましいあり方ではないと私は思います。  それで最近はようやく総理を初め、特に精力的に外務大臣はアジア地域を初め、遠く足を伸ばされて外交の展開に取り組んでいらっしゃいます。そうした点を踏まえつつ、私は一つの提言として申し上げたいわけでありますが、できるだけ早い機会に日本外務大臣、それから中国外務大臣中心になりまして、アジア地域の外相会議なら外相会議というものをお開きになりまして、十分日本の真意というもの、あるいは中国の真意というものを吐露しながら、そこに話し合いの場というものを通じてさらに認識と理解を深めるという場をつくられたらいかがなものであろうか。  なかなかそれでも、そうは言うけれどもという人間の受けとめ方というのはさまざまでございますから、どのように説得力を持っても、なおかつ疑問が残る場合があるかもしれませんけれども、やはりそうした努力を積み重ねることによって、そしてまたその後の日本なら日本考え方というものを具体的な事実の上においてそれが証明されたというのと相まって、初めてその真意というものが私は理解できるんではないだろうか。それは外務省の出先の方が大いに御努力をされていること結構だと私思うんですよ、やはり速やかな解消を求めるとするならば、トップレベルの会談を通じ、そしてその話し合いの中でさらに具体的な実績を挙げながら、なるほどそうであったのかと、この方がより効果的であり、将来新しい時代のアジアの発展と繁栄を築く大きな手がかり、足がかりになるんではあるまいか。  もう従来からもしばしば言われてきておりますように、とかく問題が起こってからああもしよう、こうもしようでは私は手おくれだと思うんです。ソビエトについては、これはまた別途の考え方を持たなければならぬと私思うんですが、特にASEANを中心とした地域あるいはベトナム、またカンボジア、大変悲惨な思いをいましているわけでございます。常に疑心暗鬼。あるいは北朝鮮の問題、これはきょうは限られた時間もあと幾らもございませんので、明日にまた残余の質問を継続してやらさしていただきたいと思っておりますけれども、いま申し上げたような観点に立ちまして、外務大臣としてはどのようにお取り扱いになるかお述べをいただいて、本日の私の質問を終わりたいと思っております。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御意見は非常に貴重な、しかもよく判断をされた御意見だと思って拝承をいたしておりました。  国連総会に出まして、日にちがきわめて限られておりましたが、私はいままでの慣例を破ってアジア、アフリカ、これに豪州とモンゴルの方だけを招待して特殊な招宴をいたしました。一部の批判はあったと思いますが、中国ももちろんこれに入っておりまして、非常に喜ばしい方の異常な宴会の気分でございまして、非常によかったなと考えて帰ってきたところでございます。  ただ、先般、私がバンコクで行われた外相会議に参りましたときにも、ASEANの国々は最初は向こうだけで外相会議をやって、そして次に私を呼び出してやったということは、ASEANの中には日本に兄貴分されてはかなわない、それから指導君になられてはかなわぬという見識も不安もあるわけでありますから、そのようなことを願いつつASEANの国々の人々の意見にこっちが従って、そういう場面が出てくることを期待しつつ努力をいたしたいと考えておりますので、御了解を願いたいと思います。
  76. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度として、午前二時三十分まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後二時三十三分開会
  77. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国中華人民共和国との間の平和友好条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  78. 上田哲

    ○上田哲君 本条約の締結に当たりまして、外務大臣政府各位、交渉当局の御努力に敬意を表したいと思います。  待望の条約でありまして、私どもも、この春、党として飛鳥田委員長を団長とする代表を北京に送りまして、私もその一員として参加して帰りました翌日、鄧小平副主席の来日の御報告を申し上げ、また、外務大臣は、その際、みずから訪中される決意を表明されたことを思い浮かべますと、大変感慨新たであります。  さて、その条約でありますけれども、長い経過あるいは国会に付託され審議が開始されまして以来の今日までの経過の中等々で、やはりはっきりしてまいりましたことがあると思います。二国間の条約、つまり二つの国、考えの違い、立場の違いがある、そうしたものを元来調整する約定でありますから、全く同じ考えであるはずはないし、そこをどのように調整し、今後の運営に生かしていくかというところに条約、外交の本旨があると思うのであります。その意味で言うと、最大の認識の相違と、あえて認識の相違というべきものは、やはりわが国において従来御答弁も受けておりますような長い不正常な関係を正し、将来にわたる友好関係を確立したいという願望、これと、中国側の言うなればグローバルな戦略判断というものということになるのではないかと思うのであります。そういう認識でよろしゅうございましょうか。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言のとおりでありまして、問題になりましたのは、一番重点はこの条約によってアジア及び世界の平和、安定に尽くそうということであります。問題になりました初頭の問題は、これが特定の第三国に向けたものではない、この二つでございます。
  80. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、私は先ほど申し上げましたように、本条約に賛成の立場であります。しかし、賛成というのは何も無条件にのみ込んでしまうということではなくて、違った国の意見立場をどのように調整しながら進んでいくかということでなければならないという視点でありますから、そういうことで言うならば、いまお認めいただいたように、最大の問題は、言うなればわが方における普遍原則と、中国における対ソ戦略といいましょうか、そういう問題の違いがあったというふうに理解せざるを得ないと思うのでありますが、よろしゅうございますね。
  81. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉が長きにわたりましたのは、いまおっしゃったような理由があったからだと判断をいたします。
  82. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、違いがあるのは当然でありますから、それを両国の立場でどのように理解し合っていくか、調整し合っていくかということになると思うのであります。  具体的にひとつお伺いしなきゃならぬと思いますけれども、中国側はだから具体的にどう考えているかということになりましょう。一つの例は、本年の八月十四日、人民日報の社説であります。長い文章でありますから、もちろん大臣も御存じと思いますから省略をいたしますけれども、縮めて言えば、長い社説の中の最後のところに、中日平和友好条約の調印はソ連社会帝国主義の干渉、破壊の陰謀の恥ずべき破産を宣言した、こういうことになると書いてあるわけであります。これはわが国の本条約に対する理解としてうべなうところでありましょうか、たがうところでありましょうか。
  83. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの点は、わが国の立場から言えば、たがうところであり、条約交渉の経緯については私から的確に意見を申し述べ、中国側はこれに対して同意をしたはずであります。
  84. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。  そこで、もう一つ、鄧小平副主席が、九月九日、報道関係論説責任者の訪中団に対して話された内容がございます。これもいろいろ長い話でありますけれども、その中で、私たち、つまり日中は、私たちは同じ脅威に直面しており、この共通の脅威に備えなければならない。日中、私たちは同じ脅威に直面している、この同じ脅威という共通認識を持つのでありましょうか。
  85. 園田直

    国務大臣園田直君) 多分、その御意見は鄧小平副主席はソ連に対する脅威だ、こういう意味でありましょうが、わが方は中ソの対立が脅威である、このように解釈をいたしております。
  86. 上田哲

    ○上田哲君 これは半歩進んだ大変オリジナリティと私は理解をいたします。  そうしますと、この共通の脅威にお互いに備えなければならないということは、鄧小平さんのお考え日本政府外交当局の考えは違うんだということになりますね。
  87. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりであって、一番大事なところであると考えます。
  88. 上田哲

    ○上田哲君 よく理解いたしました。それぞれの独立国でありますから、どのような見解をお持ちになるかはお互いに自由でありますけれども、相互不可侵の中で、あるいはその上にこそ相互尊重があって、いま伝えられている言葉の端々に非常に重要なニュアンスをわれわれはくみ取っているわけでありますから、明快に鄧小平さんが言われた、日中、私たちは同じ脅威に直面しているということではない、そしてその共通の脅威に備えようとしているのでもないということを確認させていただきました。  そうなりますと、その次にあります。だから日本も自己防御力を持つことに賛成しているという見解は、中国側の責任者の同様の発言であれ、わが国の関知しないところになるということには当然文脈はなると思うのでありますが、ここは確認する必要もありませんが、念のためにひとつ確認をさせていただきたいと思います。
  89. 園田直

    国務大臣園田直君) 向こうに行かれた方、報道班の方にそういう発言がしばしばあるようでありますけれども、私は、日中友好条約締結日本独自の防衛力を強化するなどという話は一点もなかったわけでありまして、これは日本国の防衛は日本国自体の問題であると考えております。
  90. 上田哲

    ○上田哲君 防衛についての見解がそれぞれ与党、野党にあるのはまたもとよりとして、その上の原則としての立場は了解をいたします。  付言いたしますが、私どもも中国要路と党代表として会談いたしましたときに、同じような趣旨の発言に際してわれわれの主張を述べてきたのでありまして、大いに異なる意見を闘わすことの中に真の友好は築かるべきである。軍事力の問題はきょうの主眼ではないんでありますが、この条約を締結するについて、この交渉の経過を含めて両国に最も大きな認識の違いという点ははっきりいたしました。  問題は、もう一遍繰り返しますけれども、その認識の違いがあって当然、その違いをお認めになられた上でこれをどのように昇華していくかということが問題だということで私はこのことを理解をしておきますが、さて、両国間、二国間の条約でありますから、二国間においてそれぞれそうした努力や工夫や理解を進めることは当然でありますけれども、それは二国間の約定のみに限定されるのではなくて、直接的に近隣する各国あるいは全世界的な影響というものもあるのは当然だと思うのであります。そういう意味で、外交当局として近隣諸国がどのようにこの日中条約締結を受け取っているか、その御認識を承りたい。たくさんは要らないんでありますが、韓国、朝鮮民主主義人民共和国アメリカというふうにしぼって伺いたいんでありまして、まず、韓国はどのように受け取っていると御認識でありますか。
  91. 園田直

    国務大臣園田直君) この友好条約締結について、韓国の南北の対立には悪い影響は与えない、これはいい方向に影響を与える、こう感じております。
  92. 上田哲

    ○上田哲君 朝鮮民主主義人民共和国はいかがでありましょうか。
  93. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 朝鮮民主主義人民共和国の方からは、公式に日中平和友好条約についての論評なり意見なりが出たということは承知しておりません。間接的に聞いておりますところでも、これを歓迎すると言ったと伝えられてみたり、これは歓迎できないというふうに言ったと伝えられてみたり、はっきりしないというのが現状でございます。
  94. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカはいかがでありましょうか。
  95. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が友好条約について一番最初に他国に発言した国はソ連であります。アメリカでは、日米首脳者会談のときに、近く友好条約締結に行くであろう、こう言ったときに、成功を祈ると言っただけでありますが、米国は、祝意と高い評価をする、こう言っておりますが、米欧ひとしくややある不安というのは、高く評価をしながら、期待しながらも、日中の間の経済関係で排他的にやられるのではないかと不安がかすかに、特にECの方ではあるような気がいたします。
  96. 上田哲

    ○上田哲君 そこで一つ伺いたいのでありますけれども、まず、アメリカとの関係であります。特に、私は、米中関係、この条約の締結によって米中関係の見通しいかんというところにまずしぼってお伺いをしたいのであります。  大臣自身ブレジンスキーさんに五月にお会いになったり、あるいはバンス長官にも再度お会いになったり、さまざまな交渉を持ち、かなり突っ込んだお話し合いがあったと私は理解をしておりますし、それは単純な表敬ではないと思っております。米中関係がこの日中条約締結によってどのような展開を見せるか、私はかなりと思っておるわけでありますけれども、その辺の感触をお尋ねいたしたいと思います。
  97. 園田直

    国務大臣園田直君) 先般のバンス国務長官と私の会談は一時間半ぐらいございましたが、日中友好条約締結については歓迎をし高く評価をする、こういう趣旨の話でございました。  それからまた、私、中国との会談中でも、テクニックというか駆け引きというか、日本中国締結することはどちらが有利かと、米中関係もうまくいくんじゃないかという言葉を習ったことも事実でございます。
  98. 上田哲

    ○上田哲君 このブレジンスキーさんが五月の二十日に北京で歓迎宴の席で述べたスピーチがございます。これは御存じのようにこういうスピーチは言いっ放しではございませんので記録をとるスピーチでありますが、意味合いもかなり重いわけでありますが、そこで述べられているところを要点をちょっと拾いながらお尋ねしたいんでありますけれども、わが国と、つまりアメリカと、わが国と中国との友好関係は共有する関心に基づいており、長期の戦略的見地から導き出されていると。共有する関心というのは、米中関係が大変具体的な表現で近くなっておるというふうに理解したいと思うんですが、いかがでしょうか。
  99. 園田直

    国務大臣園田直君) 私もそういう不安を感じた一人でございます。そこでブレジンスキーさん、特にバンス長官には、中ソの対立は一見すると、中ソの対立によってソ連の軍事勢力が一点に集中できないから不利なようではあるけれども、この中ソの対立を外交に利用することはきわめて冒険であって、危険である、したがってわが国はそれをあえてとらざるところ、中ソの対立は緩和の方向に持っていきたいのがわが国の念願であると。これに対してはバンスさんは同意をいたしました。
  100. 上田哲

    ○上田哲君 聞き間違いかもしらないんですが、いま不安をお持ちになったと、米中が大変親密の度合いを深めたのではないかと私がお尋ねしたときに、不安を感じたというふうにお聞きしたように思うんですが、そういうことですか、もしそうであれば。
  101. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が不安を感じたというのは、米中が接近することは私は喜んでおりますけれども、その米中が軍事的に協力してソ連に脅威を与えるとか、あるいはいろんなことを考えるということがあってはならぬなという不安を感じたわけでありますから、先ほどのようなことを両氏に対して言ったわけであります。
  102. 上田哲

    ○上田哲君 そこまで私はいま踏み込んだ、踏み込んだといいますか、そこまで絡めた言い方はしていないわけで、かなり平板な言い方でもっとフランクにとらえたいと思っておりますので、その言葉に私はしたがってこだわりません。  ただ、その次の、長期の戦略的見地と、これはやっぱりかの慎重なるブレジンスキー、私も一緒に討論したことがあるわけでありますが、謹厳なるブレジンスキーが長期の戦略的見地という言葉を使うということになると、これはやっぱりかなりな言葉ではないか。この戦略というのは何も一義的に軍事的とのみ私はまた扁平には申しておりません。しかし、少なくともたとえばある人の指摘をかりれば、スカラピーノ教授の言葉では統一戦線戦略、こういう言葉がこれに当たるはずであるという指摘もあるわけであります。そういうものであるとすれば、この長期の戦略的見地というのはよほどの、繰り返しますが、特に軍事的ということを強調しようとしているんではありません。しかし、もっと包括的な意味でかなり踏み込んだ共同関係といいましょうか、親密な関係というものを表示した表現だと受け取るべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  103. 園田直

    国務大臣園田直君) 多分そうであろうと存じまするけれども、現状においては必ずしも慎重な発言であるとは存じません。
  104. 上田哲

    ○上田哲君 慎重ではないと。
  105. 園田直

    国務大臣園田直君) 慎重な発言だとは思いません。
  106. 上田哲

    ○上田哲君 その後で、これも長いわけですから簡単に申し上げるわけですけれども、ブレジンスキーはこう言っているんですね。――われわれは、双方の関係について、第一に、米中の友好は世界平和にとって重要有益であり、――これはいいでしょう――第二に、安定して強い中国米国利益であり、その逆もまた真だということを言っているわけです。強大で自信に満ち世界的にかかわりを持つ米国中国利益であると。これが具体的なきずなの内容のものなんですね。強い中国アメリカにとっての利益であり、アメリカの強さは中国利益である。ここにおいてソリダリティが成立しているわけですね。これは私はちょっとした思いつきじゃなくて深い配慮や外交展望に基づいているだろうと思わざるを得ぬのですけれども、そうでしょう。
  107. 園田直

    国務大臣園田直君) 私もそのような発言が全部記憶に残っておりますので、慎重な発言ではなかった、こう言うわけでございまして、米国基本方針も必ずしもそういうものではないとバンス国務長官とお会いして私は判断しておりまするし、ブレジンスキー氏にもそういう注意を私は私の意見として申し上げたわけでございます。
  108. 上田哲

    ○上田哲君 ブレジンスキーさんにそういうふうにおっしゃったというところをもうちょっと具体的に御報告をいただきたい。
  109. 園田直

    国務大臣園田直君) ブレジンスキー氏に私が申し上げたのは、あなたの中国における発言、演説その他を拝聴いたしましたけれども、この中ソの対立を外交に利用することはきわめて冒険であって危険であります。まかり間違うとここで火を噴くようなことになりますよ、だからあえてわが国はそれには同意できない、こういう趣旨の発言をいたしました。
  110. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。そうすると、外務大臣の御認識は、アメリカにおける中国への接近あるいはその意思表示というのは、中ソ対立を利用したリアクションとしての米中接近である、こういうふうに理解をされているわけですね。念のために申し上げると、そうでないのなら米中接近は結構だが、そういう力学では困るんだという意味ですか。
  111. 園田直

    国務大臣園田直君) 米国基本的な物の考え方は、中国を強大にしてソ連に脅威を与えるとか、そういう考え方はないと私は確信をいたしております。しかも、そういう趣旨で私は話し合いをいたしております。ただし、中国が平和で繁栄することは私も希望しておりまするし、そういう意味で米中が接近することはよいことであると考えております。
  112. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、中ソ対立という力学の上に乗る友好関係の増進ということは望ましいことではないけれども、そういう前提、力学の上でないのであれば米中の接近というのは望ましいものであるということになりますか。
  113. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、隣国の繁栄を考えると、そういう危険がなければ結構なことであると考えております。
  114. 上田哲

    ○上田哲君 で現状の判断なんですけれども、そういう意味で、そういうふうに反射力学ではなくて、時の流れ、全体として、いまアメリカ中国はそういう意味で親密の度を増しつつあるという傾向の中にあると私は理解をしておるんですけれども、それでよろしいでしょうか。
  115. 園田直

    国務大臣園田直君) 上海共同声明以来、米中両国は互いに努力をしておりますが、やはり米中どの程度に進んでおるかは私の知るところではありませんが、上田さんと同じように、逐次、接近をしつつある方向だと判断をいたします。
  116. 上田哲

    ○上田哲君 そうだと思うんであります。  私が突っ込んで伺いたい一点は、園田外務大臣がその辺の感触をもっと具体的に持っておられるであろうから、また、それは今日の複雑な国際情勢の中での日本外務省としてはそうあらねばならぬだろうという立場から、これは期待を含めてこの際ぜひ御開陳をいただきたい。そうでなければ、日本海及び太平洋の安寧というものについての日中条約意味というものはやっぱり多角的でないと私は思うからであります。非常にこれは前向きに申し上げておるわけですが、たとえばカーター大統領就任以来、旅行制限の撤廃をいたしました。それから……いや、これは朝鮮の話なんですが、飛んでしまっちゃいけませんから、これは後にしましょう。  アメリカ国務次官補のホルブルックさんなんかが発言した言葉を使うなら、米ソ中日四大国の戦略的均衡が米国利益であり、米中日はこの安定維持をめぐる利益を分かち合っているというような表現がありますね。こういう発言でありますとか、今日までのさまざまな動きを見てまいりますと、ずばり私がお伺いしたいことは、米中正常化はもう来年間違いないだろう、これが大体の認識だろうと思うんですよ。これはさっきから申し上げているように、戦略という言葉を英語を日本語に訳すと何か大変きな臭い言葉になりますけれども、そうでなくて、まさに世界への長期的な視点というような見方で見れば、もはや米中接近というのは、さっき外務大臣が懸念されたような立場を乗り越えて、もっとグローバルな大きい視点で正常化に向かわざるを得ない、また向うべきでもあろうというふうにも思うわけですし、それはどうも今回の日中条約締結によって、その意味では悪くない立場で一歩を進めたんではないかと私は見たいわけです。来年にはもう米中正常化というのは間違いないと、私はやっぱり国際的に見られるように見たいと思うし。大臣もその感触を握っておられるだろうと思うんですが、いかがでしょうか。
  117. 園田直

    国務大臣園田直君) 米中の関係でありますから、第三国たる私がどの程度進んでいるか、見通しがどうかということを申し述べることは不穏当でありますが、いま上田さんのおっしゃったことを否定する情報は私は持っておりません。
  118. 上田哲

    ○上田哲君 慎重な配慮の中での御発言ですから、二重にも三重にもよく受け取ります。ひとつやっぱり欲が出るから伺うんですけれども、否定する情報がないというお話はかなり積極的な意味として私は受け取っていいと考えてよろしいですか。
  119. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど申し上げました理由で、これ以上の御答弁お許しを願いたいと思います。
  120. 上田哲

    ○上田哲君 こういう発言が出りゃもう大体間違いないんだというふうに私は理解しますから、外務大臣の口から再三そういう言葉があれば、それ以上は申し上げないのが本当でありましょう。  したがって、私は、そういう立場で物を見つつお話をするんでありますが、米中問題がそういうふうに解決をしていく、そしてそれが今回の日中条約の果たした大きな役割りであるというふうに考えるとすれば、まさに全方位外交なり平和外交なりというものの意味合いというのがそこに開花するわけでありますから、ぜひそういう立場で、いまの実は非常に含蓄のある御発言を推進していただきたいと私は思うんですが、そうなると、次に問題になってくるのは当然朝鮮の問題になるわけであります。  アメリカ米中正常化を来年にも必ず果たすだろうということになれば、当然に次は朝鮮半島の問題になることは言うまでもないはずであります。それで、この際、先ほどの御答弁で、韓国は悪い影響だとは思っていないということでありましたし、韓国に別に気がねをする必要はないというふうに私はさっきの御見解を承りましたから、ならば、一方では、アメリカと朝鮮民主主義人民共和国との間の壁がとれる。私はピョンヤンにも行ってまいりましたけれども、明らかにピョンヤンは米国とのさしの話し合いを望んでいるわけであります。これは当然の経過があるわけでありますが。それはまた先ほどもちょっと申し上げましたように、旅行制限撤廃であるとか、さまざまな動きの中で、米中の正常化の後、米朝の問題が当然出てくるであろう。これは朝鮮半島に対して重要な関心を持っているわが国としては当然具体的な日程として考えなければならないところだろうと思うんであります。米朝の動きがやっぱり促進される意味を本条約は持っているはずだということと、その全般についての御認識を承りたいと思います。
  121. 園田直

    国務大臣園田直君) 友好条約締結後の日本外交の最大の問題は、第一は、ソ連日本友好関係を促進していくこと、もう一つは、いまおっしゃいました朝鮮半島の平和と安定というものをどう環境づくりをしていくかということだと存じます。  米国は北の共和国の方といろいろ制限解除であるとか、あるいはいままで御承知のとおりのようないろいろなことを繰り返しているわけでありますが、基本的には韓国を加えない直接のあれはやらない、こういうことも言っておりますから、いろいろ問題、紆余曲折はあるとは思いますものの、これは日本としては朝鮮半島の平和と安定、そして民族自決、お互いの話し合いによって統一されることを願うということが大事でありますから、これについての環境づくりを日本もやるべきときであると考えております。
  122. 上田哲

    ○上田哲君 その環境づくりでありますけれども、外務大臣は、先月の日韓定期閣僚会議の際に、福田総理と朴大統領との首脳会談を申し入れたということであります。私はこの時期に申し入れた理由がよくわからないので、その理由もお聞かせいただきたいし、これは日中条約締結後直ちに日韓の首脳会談を開こうというのは、日中と日韓のバランスをとるなり、失礼ですが、さまざまな意見がある党内事情というものを配慮されてということになるんじゃないか。さっきのお話のように、アメリカは韓国を交えずにはという話があったとは聞きますけれども、しかし、独自な日本立場からすれば、いま日中条約締結をはずみとして、やっぱりその辺は韓国が特に悪い影響ではないと言っておるとお考えになるのであれば、一歩踏み込むべきときである。それとの関連で日韓首脳会談ですね、この辺の意味合いをもう少しクリアにしていただきたいと思うんです。
  123. 園田直

    国務大臣園田直君) この前の閣僚会議の機会を利用して、できれば貴国を訪問する機会をつくりたい、こういう程度の総理の御伝言を向こうに伝えただけでございます。
  124. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、ウエートということで言ってはいけませんけれども、これがたとえば朝鮮民主主義人民共和国日本でありますとか、あるいは国交回復ということを言っているわけじゃありませんけれども、何らかの朝鮮半島の緊張というものを緩和していくということの努力のために日韓首脳会談というものが必要条件であるとは考えないということですね。
  125. 園田直

    国務大臣園田直君) これは具体的に向こうも返答したわけでもないし。こちらも具体的に日程を詰めたわけでもございません。議題等についても話はいたしておりません。しかし、そういう会談がもしあるとすれば、朝鮮半島の平和と安定ということについては当然話をせられるであろうと想像いたします。
  126. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、韓国と朝鮮民主主義人民共和国との緊張緩和のあり方などについて積極的な提案を日中条約締結以後の情勢に基づいて提起なさることがあり得るということですか。
  127. 園田直

    国務大臣園田直君) これは総理のお考えでありますから、私からはっきりわかりませんけれども、総理も朝鮮半島の平和と安定については非常な関心を持っておられますので、そういう話も出るのではなかろうかと想像しておるわけであります。
  128. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣としてはいかがでしょうか。
  129. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島で北と南が話し合いをする機会をつくる、そういう環境をつくっいく、こういうことはきわめて大事であると思いますので、そういう方向でいろいろ北に向かっても南に向かっても日本は考慮しなきゃならぬことは必要であると考えます。
  130. 上田哲

    ○上田哲君 朝鮮民主主義人民共和国と韓国との話し合いということと朝鮮民主主義人民共和国アメリカとの話し合いということは別なわけなんでありまして、クロス承認とか四者会談とかいうふうに言われるものをピョンヤンは明確に否定しておりますから、これは別なんでありますから区別してお話をいたしますけれども、米朝の話し合いについて日本の果たす役割りというのはあるんでしょうか。あるいは今回の日中条約締結ということはそういうことに何らかの影響を与えるということになるのでしょうか。
  131. 園田直

    国務大臣園田直君) 友好条約締結が直接よい影響を与えると思いませんけれども、悪い影響は与えるはずはないので、間接的にはいい方向へ前進すると私は判断をしておりますが、米朝の関係については、私はやはりこれは日本としては喜ぶべきことであって、この米朝の関係も見ながら、両方が話し合いのできる環境づくりに日本はそれぞれ南や北に対して微力ではあっても努力をすることが正しいことだと考えております。
  132. 上田哲

    ○上田哲君 非常に積極的な御発言ですから、結構であります。  外務大臣がいろいろ、たとえば八十四国会でこれからは何とかピョンヤンとの話し合いの道を講じなければならぬであろうという認識を述べられたり、あるいは記者会見やその他の席でそれに類する発言をされていることがいろいろ発言としてはぶれておるものですから、私どもはその辺の真意をはかりかねている部分もあったんでありますが、いまの御発言は非常に前向きなものだというふうに私は理解をいたしました。それでよろしいですね。
  133. 園田直

    国務大臣園田直君) それが社会の必然性であるという考え方は十分持っておりますので、前向きだと解釈していただいて結構でございます。
  134. 上田哲

    ○上田哲君 重ねるようでありますけれども、たとえば日本海側のフグ漁一つを取り上げましても、日本の漁民で関係する者は三十万もあるわけでありまして、ピョンヤンとの具体的な交渉が前進することが期待できなければ、やっぱりわが国の非常に大きな問題にもかかわるということも具体的にたとえばあります。そういう意味で、いろいろ今回の日中の条約締結ということはアジア全体について好ましい方向でそういう面にも影響を及ぼすであろうということを認識することができるわけですね。
  135. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島の問題は、紆余曲折、実行についてはいろいろ困難もあると思いますけれども、私は日本が選んだ進路というのは、どこの地域においても、どこの場所においても、紛争、対決が激化をして火を噴くことは日本の絶滅に通ずるというかたい気持ちを持っておりますので、そういう考え方のもとで外交は進めていきたいと考えております。
  136. 上田哲

    ○上田哲君 そこはよく理解をいたしました。  そこで、一つだけ視点を戻して伺っておきますが、日韓閣僚会議ないしは首脳会議というのは、日中条約締結について、それに関連して日本外交が行わなければならない必須条件ないしは絶対条件などではありませんね。
  137. 園田直

    国務大臣園田直君) 日韓閣僚会議が日中関係に影響があるとは考えておりません。
  138. 上田哲

    ○上田哲君 問題をもとに戻します。  ところで、一つ伺いたいのは、中朝友好協力相互援助条約というのはどういう条約でありますか。
  139. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは中国と朝鮮民主主義人民共和国との間の協定でございますので、第三国である日本立場からどういう条約だということを規定づけることは非常に微妙だと思いますけれども、これは世上一般に言われておりますように、その名のとおり相互援助でございまして、軍事的な協力も含むというふうに理解しております。
  140. 上田哲

    ○上田哲君 その軍事的な協力を含むというところが問題になってこようと思うんであります。  その中朝友好協力相互援助条約の第二条は、どちらか一方の国が武力攻撃を受けて戦闘状態になったときは、他方の国は全力を挙げて武力その他の援助をする、こうなっておるわけでありますから、これは武力を含んだ相互援助協定だというのは紛れもないわけですね。そこで、問題は、もしそのどちらか一方、つまり中国、朝鮮民主主義人民共和国ですが、中国の場合は、この場合問題ないわけで、そっちにしぼりますけれども、朝鮮民主主義人民共和国がだから攻撃を受ければ、そういう事態があるとすれば、中国側は全力を挙げて武力その他の援助をするということになるわけですね。
  141. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 条約の解釈、適用は当事国のなすべきことでございますので、日本政府として的確なお答えはし得る立場にはございませんけれども、字面をそのとおり読みますと、そうなります。
  142. 上田哲

    ○上田哲君 そういうことなんですよ。そこで、字面は全くそれ以外に読みようがないわけです。朝鮮民主主義人民共和国が攻撃を受けたら中国は全力で武力でこれをやると書いてあるわけであります。  一方、日米安保条約によりますと、もし朝鮮半島で、このごろはやりの有事となれば、結果的には韓国のために日本の基地が米軍に使用されるということになり得るわけでありますね。これは字面どころではなくて、いままでの解釈でありますから繰り返すまでもないわけであります。確認しましょうか。
  143. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ただいま日米安保条約についての御質問がございましたけれども、その点につきましては、いかなる事態が朝鮮半島に起こるかということを仮定してつくられている条約ではございませんので、仮定の御質問については非常にお答えしにくいわけでございます。
  144. 上田哲

    ○上田哲君 これは時間がもったいないから、全然話にならない。そんなふまじめなことを言っていたら話にならぬです。もう一回勉強でもして出てきてもらうことになりますけれども、大事な日中条約の審議をするんですから、そんな三百代言みたいなことをちょろちょろ言っとっちゃ困る。適用しなきゃならない事態が起きたときはと聞いておるんですから、どういう事態が起きるかなんて議論は同義反復じゃありませんか、勉強してこなくちゃ困る、どこの法学部を出たか知らぬけど。もっとまじめにやりなさい。  問題となるのは、さっき申し上げたように、朝鮮民主主義人民共和国でそういうことが起きたら、中国は武力でやらなきやならぬというたてまえですよ。事態を想定しているかどうかの問題じゃないんです。条約上の話をしているんです。朝鮮半島で有事になって日本にある米軍基地というのはイエス、ノーいろいろあるけれども、とにかく出ていくことがあり得るのだと、言葉は正確にそうじゃないですか。ということは、この二つはぶつからざるを得ないことになっていくわけであります。いまわれわれは日中条約を不戦条約だと、言葉のいろんな解釈の問題はありましょうけれども、最も正しい意味において相互不戦の条約であるということを確認をしていると思います。そうですね。そうだとすると、われわれは一番近隣の朝鮮半島の問題について異なる二つの立場をとらなければならぬということにならざるを得ない条約上の関連が出てくるということを問題にしなきゃならぬと思う。いかがでありますか。
  145. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 日中平和友好条約日本中国もお互いに覇権を求めてはならない、また紛争を解決するために武力の威嚇または武力の行使はしないということは、これは日本中国との間の関係の問題でございます。他方、いま上田先生の御指摘の設例は、中国と北朝鮮との関係日本と韓国といいますか、日本アメリカの安全保障体制の問題でございますので、これは今度の条約に即して申し上げますと、第四条のそれぞれ第三国との関係についての立場には影響を受けないということになっておりますので、理論的には、中国が北朝鮮とそういう関係及び立場を持っているということと、日本がまた他方アメリカとの関係で独特の立場を持っているということとは必ずしも条約としては矛盾しない。  ただ、精神において、結果としてそういうことになりはしないかという御心配だろうと思いますが、これはまさしくそういう事態が起きないようにする努力にもかかわらず、そういう事態が起きたときにどう対処するかというときに、外交的にといいますか、政治的に判断される問題であろうと思います。ですから、三つの条約の関連ということを冷静に条約解釈としてみますと、これはそのものだけで相矛盾しているということにはならないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。
  146. 上田哲

    ○上田哲君 グーチョキパーですよ。チョキはグーに負けるのです。グーはパーに負けるのです。相互に回っていますからね。遠くの一つ一つをつなげてみれば、それは関係ないよという法解釈や技術論はできるのです。しかし、はっきりしていることは、いまも局長がお認めになったように、そういう事態になっては困るじゃないかということだけははっきりしていますね、そういう事態になったら本当に日本としては困るんだと。  私は、日中条約というのは日米安保条約にはかかわりなく締結をされた、条約上の表現としては結構だと思いますよ。つまり条文的には双方相関連するところはないのです。しかし、国際状況、国際情勢という観点からするならば、いかなる地球上の二国間の条約といえども、他のすべてのグローバルな関係と無関係であるという断定はできないわけですから、そういう意味では、ここはかかわりなくということはあり得ないということになりますね。だから条文上の解釈をあっちつつき、こっちつつきで議論をして逃げ回っていたらそれでうまくいくんだということにはならない部分のことを言っているわけですから、私は、自民党の総裁がおっしゃるように、万万万一の何とかというようなことをいまここで引っ張り出して、そんなことが起きたらどうするかなんということを議論しようとは思っておりません。ただ、ここでは条約の審議でありますから、そういう条約のおもむくところはなはだわが国にとってはぐあいの悪い事態が想定されるということは指摘もしなければならないし、避ける努力がなければならぬというのが外交努力ではないか。そういう立場で、そこに問題があるではないかという指摘を謙虚に受け取っていただいて御努力をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  147. 園田直

    国務大臣園田直君) 法文上の条約は先ほど言ったとおりでありますが、現実問題としては、南北の対立は激化していく方向にはないという判断をいたしております。  しかし、それは判断だけではなくて、そういう、あった場合には日本はこれは軍事介入はできないことは当然であります。作戦基地を朝鮮半島に対する作戦のため許すかどうかという問題が出てくるわけであります。そこでノーかイエスか、これをここで断定するわけにはいきませんが、友好条約締結されたことによって、日本の真の国益がノーと言ったが国益なのか、イエスと言ったが国益なのか、もっと日本ということではなくて、それによって世界戦争を再び呼び起こすかどうか、こういうことを判断してやるべき可能性が強くなってきたと判断をいたします。
  148. 上田哲

    ○上田哲君 そういう態度で、その方針でいま私が指摘したような問題が起きないようにしなければならぬということは確かなんですから、そういう努力をひとつ今後の外交努力として努力をしていただくということですね。これは何でもないことですが、念のためにひとつそのとおりだと言っていただきましょう。
  149. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりでありまして、したがってそのためには単に環境上の努力をするだけでなく、中国が日米安保条約に理解を示すということはどういう意味なのか。  私は、この日米安保条約が締結された当初は、これに反対投票をした一人であります。その後、国際情勢の変化、ベトナム、韓国からの中国の撤退等というものは、この日米安保条約が均衡による平和を目指しておると私は判断をし、また、そちらの方に持っていかなきゃならぬと考えております。したがって、その最大の努力は、まだ総理や党の了解を得ているわけではありませんけれども、いまの私が入っておりまする両国の合同協議会あるいはその下の委員会等の構成を見てみますると、この構成は従前どおりの構成であります。たとえば一例を挙げると、こちらは防衛庁長官とそれから外務大臣、向こうは太平洋司令官と大使、これはどう考えてみても、アメリカが何か考えておって、そしてそれをこうやれああやれという体制に通ずるものがあると思いますので、こういう点もひとつアメリカと協議をしながら、アジアの紛争日本が引き受ける、この条約は均衡による平和、こういうことを土台にするという日本発言が通るようなことなども考え努力をしなければならぬと内心いまひそかに検討しているところでございます。
  150. 上田哲

    ○上田哲君 私は満足しますよ。それはこういう問題について与党と野党というのが恐らく触れ合う最大のところでしょうな。ぜひひとつそういう努力をしていただきたいと思います。  そうなりますと、もう一つ申し上げたいのは、ぜひひとつ努力をするとおっしゃるのであれば、まさに日中条約締結ということがそういう安寧や平和の発展に役立ちたいわけですからね、お互いに。そうであれば、万万一出てくるような不測の事態を一生懸命顧慮することよりも、そういう日中条約締結ということをもって一歩進める、平和情勢をつくるために進めるということにあらゆる努力をしていただくといういまの具体的な一つだと思いますので、その接点がやっぱり日中条約、そして朝中条約、そしてまた安保ということはいろんな形のつながりもあることですから、これが問題が起きないように解決をしていくという課題にはなるわけです。これは。したがってその課題を解決していく努力がなければなりません。  今度、鄧小平さんがお見えになるわけですから、隔意なき御意見を交される中で、そうした問題をぜひひとつお話し合いを進めていただきたいと思うんでありますが、いかがでしょうか。
  151. 園田直

    国務大臣園田直君) 国際情勢の変化、そしてまた日本の進むべき道は、私は、総理がしばしば言われているように、軍事大国にはならない、軍事的脅威を与えない、平和に徹する、また平和に徹しなければ、消極的に言うと、日本の産業はどこかに紛争があれば停止をする状態にある。積極的に言えば、アジアで火を噴いた場合には日本の生きる道はもうほとんどない、こういうことを私考えておりますので、そういう点で万万一のような事態がないようなことを具体的に努力していくことが外務大臣の責任であると考えております。
  152. 上田哲

    ○上田哲君 したがって鄧小平さんがお見えになるわけでありますから、そこで単なるセレモニーじゃなくて、いま私が具体的に朝中条約、安保条約との関係において不測の事態が起きないような話し合いを具体的にやるというふうに申し上げたが、もっと抽象的に言っても結構です。朝鮮半島により平和な状態をつくり上げるために、この日中条約、そしてパイプができたわけですから、日中の。このパイプを通じて朝中もあるんですから、そういう努力を鄧小平さんと一緒に語り合ってもらう、あるいは努力を促すということを大臣に積極的に述べていただく、努力していただくということを希望したいのです。
  153. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理と鄧小平副主席の会談は両方でいま詰めておりまして、二国間問題には余り問題がないから、国際情勢その他について話したいという程度でいま詰めております。私は、機会を得て、黄華外交部長とはまだ細々した問題がありますが、そういう私の趣旨というものはお話をしたいと考えております。
  154. 上田哲

    ○上田哲君 私のいまの主張を取り入れていただくわけですね。
  155. 園田直

    国務大臣園田直君) ええ。
  156. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ時間ですから、私の意見を取り入れていただくということですね、結構です。  一つだけ。そうなりますと、具体的にこの十一月、来月二十七日から三日間、東京で朝鮮の統一のための第二回世界会議が開かれるわけであります。この会議に朝鮮民主主義人民共和国から代表がたくさん見えるわけであります。この入国問題が今日まで大変トラブルを起こしております。ぜひひとつこうしたことを契機にして大いに門戸を開くという御努力をしていただくことがやっぱりいいのではないか。東南アジアの諸国その他についても大いに友好関係を発展させるきっかけをこの中からつくりたいとも思いますけれども、これは時間がないのでそこは省略いたしますが、この一点にしぼります。ぜひさっき申し上げたことを総理との御会談の中で中国側との話し合いに含めていただくことの確認を得ましたので、もう一つ、その朝鮮問題については、この東京世界会議にできるだけひとつ幅を広げて大いに迎え入れるという御努力をいただくように御検討をお願いしたいと思います。
  157. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御意見は過去の経緯がありまして、いままでは非常に困難であったわけでありますが、これは田議員からもまたその御要望がございますので、ただいま慎重に検討しているところでございます。
  158. 上田哲

    ○上田哲君 前向きに。
  159. 園田直

    国務大臣園田直君) 前向きにいたします。
  160. 上田哲

    ○上田哲君 終わります。
  161. 立木洋

    ○立木洋君 私たち日中平和友好条約の審議に当たって、この条約が平和五原則に基づく日中関係の発展にこたえ得るかどうかという問題点を解明するという立場をとりまして、その結果、私たちは賛成をするという態度を決定したわけであります。  しかし、今日の複雑な国際情勢、さらには十余年にわたる中国からの日本に対する内政干渉的な問題、こういうような問題を考えまして、やはり今後の日本政府としてどういう具体的な外交姿勢で進むべきかという問題については、さらに十分に審議しなければならないだろうというふうに考えているわけです。ですから、平和五原則、で覇権には反対するという問題がただ単に文言上だけではなくして、これを忠実に履行していく、そういう努力が必要になるのではないかというふうに考えるわけです。そういう立場に立って、以下の質問をしたいと思うわけです。  一つは、今度の条約の締結に当たって、国際情勢についてもいろいろと中国側との協議、話し合い、それが緊密化されていくことになるだろうと思うわけですが、先日の衆議院の外務委員会でも、大臣は、日中共同の意思表明の問題等々をめぐっていろいろ議論がありましたけれども、最終的には、国際情勢などの一般の協議の中で話すこともあるというふうなお話になっておりました。このような国際情勢の問題で今後中国との間でやはり随時話し合われていくということになると思いますが、いかがでしょうか。
  162. 園田直

    国務大臣園田直君) 覇権行為の判断中国と話し合うことがあるか、こういう御質問でございましたから、私はそういうこともあり得るかもわかりません、こう答えましたが、この答弁は誤解を受けるおそれが非常に多いわけでありまして、条約の二条と四条において規定してありますとおり、覇権には反対ではあるが、どの行為を覇権判断をするか、あるいはその覇権にどのような抵抗をするかということは全然別個の問題でございます。したがいまして中国日本が協議して、そして覇権判断の統一を図るというようなことと誤解を受けては、これは各国も不安を抱くわけでありますから、私が言ったことは、そういう意味ではなくて、会談その他の際に国際情勢分析の中でそういう話が出るかもわからぬが、ある事件が起きた場合に両国が協議をして意思統一をする意味ではありませんと、こう答えたわけでございます。
  163. 立木洋

    ○立木洋君 もちろん、今後、中国側といろいろ国際情勢等の問題について話し合いをするということは、これは当然あり得ることですし、そうであろうと思いますが、その際、やっぱり一致しない点、路線上等の問題や国際情勢の認識等については一致しない点はしない点ではっきりさしておく必要があるだろうと思うんですね。一致しない点まであいまいにしておくというふうなことでは、これは済まされないわけですし、ただ単に誤解を生じるという意味合いだけではなくして、いろいろな問題が醸し出されるわけです。そういうこの条約の精神に基づいて、やはり一致しない点は一致しない点ということをはっきりさしておく必要があるだろうと思うんです。  そこで、先般来、いろいろ問題になっておりますが、中国外交姿勢、国際情勢の認識基本に三つの世界論というのがあるわけですが、改めて、この際、この三つの世界論について大臣自身がどのような御認識を持っておるのか、お尋ねしておきたいと思います。
  164. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、国連総会その他でも主張いたしましたが、弱いというか小さいというか、そういう国々が意見を合わして大国意見のままにならぬという道理は正しいと思います。しかしながら、第二、第三の世界というものがそれを結集して、目的が特定の国に対する対決の姿勢を強化するということであれば、それには私は同意ができません。
  165. 立木洋

    ○立木洋君 いま大臣が言われましたけれども、中国のいろいろな大会や政府の活動報告や憲法上で規定されている点を見てみますと、まさに大臣がいま言われました後者ですね、つまりソ米両超大国の間にはいつかは戦争が引き起こされるだろう、米ソ両国は新たな世界大戦の策源地であり、とりわけソ連社会帝国主義は一層大きな危険性を持っておるというのが中国の共産党の大会の決定の中で出されているわけです。同時に、同趣旨のことが政府活動報告でも行われておりますし、新しく採択されました中国の憲法の中でも三つの世界論の理論に従って最も広範な国際統一戦線を結成し、社会帝国主義、帝国主義の超大国覇権主義に反対という規定をしているわけです。ですから、この三つの世界論というのはまさに明確であるわけです。ですから、その点はやはりあいまいにされずに、明確に大臣見解を述べておいていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  166. 園田直

    国務大臣園田直君) 友好関係を結ぶについては、御発言のとおり、お互いに率直に意見を言い合うこともこれ友好関係を進める上の大事な要素でありますから、あいまいにいたさず、意見が違うところははっきり意見を申し述べる。特に、戦争の問題については、中国戦争必至だということからいまやや変わりまして、努力をすれば延ばすことができる、こういうことに変わっておりますが、わが日本としては、中国に対する友好は、お互いが努力をすれば回避できるんだという主張をするのが当然だと考えております。
  167. 立木洋

    ○立木洋君 この三つの世界論については直接の御認識というのはなかなかあれですが、もうちょっと突っ込んでお尋ねしたいと思うんです。  御承知の三つの世界論というのは、世界中国が勝手に分類しまして、第一世界アメリカソ連である、第二世界日本などを含む、あるいは発達した資本主義国等々、それから開発途上国を第三の世界というふうに分類しているわけですね。ただ、この三つの世界論というのは、分類しただけのことではなくして、問題点は、さきにも述べましたように、ソ連を最大の敵だというふうに規定をし、反ソ国際統一戦線の結成を目指すものだ、こういうふうに規定がされているわけですね。ですから、そのソ連を最大の敵とした中国の対外政策、対外戦略については第二世界、第三世界をも結集していくんだ、こういう立場なんです。  だとするならば、中国側の解釈によりますと、これは日本は第二世界に属しておるというふうに分類されていて、で初めて二国間の条約として今度反覇権という条項が入ったわけですね、そういうようなことを考えてみることが一つ重要であろうと思いますし、それから鄧小平副首相が述べておる点を言いますと、ソ連の意図しておる世界大戦計画は葬り去らなければならない、そのためには第二世界、第三世界、それに第一世界アメリカを含む全世界が結集されるべきであるということを述べているわけなんです。これは、戦争をおくらせなければならないというふうに中国が言っておると言いますけれども、その点に関して言えば、反覇権でわれわれつまり中国日本が共同すれば戦争をおくらせることができるというのが鄧小平副首相の発言であります。  これに賛成だということになると、若干意味合いが変わってくるわけでありますから、そういう点はやはり第三世界論については明確な御認識を持っていただいて、先般の答弁の中で大臣は幾つかの点について重要な点で中国側との見解の違いがあるということを明確に述べられたわけですから、この際、そういうことが基礎になっておる三つの世界論というものについてもきちっとした認識をお持ちになっておく必要があるだろうと思うんです。重ねて、日本をそういう第二世界として彼らの世界戦略の上に巻き込もうとする考え方、そして共同で覇権に対処するならば戦争を引き延ばすことができるであろうというような趣旨の見解については、大臣は賛成なさるんでしょうか。
  168. 園田直

    国務大臣園田直君) まず第一に、御質問ではございませんが、ソ連米国関係についての私の確信ある判断を申し上げたいと存じます。  私は、ソ連覇権国家と考え、決めたことはございません。のみならず、先般、ブレジネフ書記長があの不自由な体で西独を訪問された姿、それから向こうの指導者としばしば会見した結果において、ソ連というのはあくまで苦しい中にもいろいろやっておるのは均衡による平和を望んでおるのであって、戦争を回避しようという熱意は、これは高く評価すべきものであると私は判断をいたしております。米国もまた、いろいろソ連との間に問題はございますけれども、しかし、その話し合いを通じ、私との話し合いにおいても、やっぱり均衡による平和、ソ連を刺激して戦争に持っていきたくないというこの両方の気持ちは私は評価すべきであると考えております。  したがいましで、まず第一に、今度の友好条約では、特定の第三国、はっきり言えばソ連に対して統一行動をとって敵対行為をするものではないということは冒頭から私は強く主張をし、それが第二条特に第四条によって明文は決められておるわけであります。そういたしましても、ややもすると、今後われわれが注意しなければ、米中日が組んでソ連に対して包囲網をつくっておるという不安を与えるわけでありますから、その不安の解消には十分注意をして、今後、理解を深め、実行をもってこれを進める、これが日本考えておる中ソの対立は緩和の方向に向かっていくように、アジアにおいて中ソの対立が火を噴かないようにという、こういうことが妥結できると思います。  したがいまして各国と友好関係を結ぶことは日本も同様であり、中国も結構なことではありますけれども、それが特定の国に対する敵対行為の強化としてやられることにはわれわれは賛成はできません。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 直接三つの世界論ということを否定して反対をされたわけではありませんけれども、お考えとしては、そういうことには賛成しかねるというふうに理解をいたします。  話を進めますが、今度大臣中国に行かれての話し合いの中で、成田空港等々の件を引いて、こういうことは困るという趣旨のお話をされたということをお聞きしました。その際、中国側からは、あなたはそう言うけれども、中国やASEAN諸国は日本軍国主義の復活を心配しているんだという趣旨の話が出されたということも聞いたわけですが、ところが、その中国日本の自衛隊の増強を支持しておる。一方では軍国主義の復活に反対、心配を持ちながら、やっぱり自衛隊については増強を支持するというふうなことは明らかに矛盾しておると思うんですね。  そこで、この間、九月の十四日ですか、新自由クラブの代表の方々が中国を訪問された際に、鄧小平副首相が、この代表団の方々に対して、中国戦争を準備しなければならない、日本も準備するよう勧告しますという話が出されておるというのが新聞でも明確に報道されているわけです。こうした発言というのは、一切の戦力を保持しない、交戦権を放棄するということは日本の憲法で明確に定められておる、そういうわが国に対してこういうような戦争の準備をしなさいと勧告をしますというような発言というのは、これは重大なやはり発言だろうというふうに私たちは言わざるを得ないと思うんです。平和五原則の立場から見ましても、また先ほど来自衛の問題に関しては日本日本立場で行うという御答弁大臣からあったわけですから、この種の発言に対して、一体、大臣がどのようにお考えになるのか明確にお答えいただきたいと思うんです。
  170. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国の各指導者と会談した際に、日本の自衛力についての発言は全然ございませんでした。先ほど言われた、わが方がアジアに与えている不安ということを言われたが、アジアの国々は日本に対して不安を持っていると言われたことはこれは事実であります。私は、これに対しては、それはわれわれも十分反省すべきところであって、中国中国であのような内政干渉はしない、平和五原則と言いながら、内政干渉ととられるようなことは十分今後実行によって慎んでもらいたい。われわれも軍事的な脅威をアジアに与えないということは今後の実行によって示す、こういう話をしたわけでありますが、自衛隊の強化については私には全然話がございませんでした。  戦争の準備をしろなどということは、これは新聞で見たわけでありますから、私がこれを取り上げてどうこう言うわけではありませんけれども、一般的に言えば、これは不当な言葉であると存じます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 日本の軍国主義の復活のおそれという問題については、それはもちろん大臣とは評価が違いますけれども、その際、中国側の発言に対して、日本の憲法九条を見てくださいと、こう申し述べたというふうに大臣が言われておるわけですね。そういうことを大臣が申し述べた後ですよ、問題は、こういう戦争の準備をすべきであると勧告しますと。勧告しますというのは穏当じゃないですよ。一般的に言えばそれはどうだこうだと言われることではなくて、これはやっぱり重大な、日本について戦争の準備をしなさい、そういう勧告ですね。一般的にそれは穏当ではないということではなくて、こういう問題にはきちっとけじめをつけておかなければいけない。大臣とのお話し合いをする前にどうこうということがあったんではなくて、憲法九条を見てくださいといって大臣が言われた後なんですから、その点をもう少し明確にやはり大臣の姿勢をさしておいていただかないと、どっかでちょろちょろ話しているからということではないんですよ。あなたがお話し合いになった当の中国側の副首相ですから、もう一度はっきりさしておいていただきたい。
  172. 園田直

    国務大臣園田直君) これは新聞で聞いた情報でありますから、この事実を確かめた上で検討いたします。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 そういうことが事実であるとすれば、これは重大なことですから、大臣としてもしっかりと対処していただきたいと思います。  それで話を進めますが、大臣は、先日、衆議院の私たちの党の寺前議員の質問に対して、寺前議員がホルブルック・アメリカ国務次官補の発言、米中日が安定性を維持することに利益を分かち合うという問題に関して、そういう危険性がないのかという点については、それを大臣は否定なさいました、そういう考え方は毛頭ないと。そういう発言は一部であるというふうなお話もされたわけですが、しかし、これは決して一部ではなくて、ブレジンスキー・アメリカ大統領補佐官、これはアメリカの安全保障政策の責任者であります。その責任者が、われわれはグローバルな、あるいは地域覇権を打ち立てようとするいかなる国の試みに対しても抵抗するという中国の決意を認め、また、それを分かち合うものである、そして強力で確固とした中国アメリカにとって利益である、こういう趣旨のことを述べているわけで、これは決して一部の見解ではないというふうに考えているわけですが、この点について、基本的にはアメリカはそう考えておらないというふうに言われますけれども、改めてお尋ねをしておきたいと思います。
  174. 園田直

    国務大臣園田直君) ブレジンスキーの中国における発言及び帰国途中ブレジンスキー氏と直接会って、私がそれは危険であるということを言ったことは先ほど答弁したとおりでありますが、その後、バンス国務長官と会って、そういうことはないという確信を得て帰ったわけであります。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 バンス国務長官とお話し合いになったということでございますけれども、これはことしのアメリカの国防報告ですね、大臣お読みになりましたでしょうか。
  176. 園田直

    国務大臣園田直君) これは軍の発言でありますから、軍としての戦略というよりも戦術上の発言だと受けとめておりますけれども、それにいたしましても、この発言の中から米国が日中と組んで、そして侵攻、侵略を考えているなどとは私は判断をいたしません。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ問題点を指摘しておきますけれども、その国防報告の中にこう書いてあります。「中ソ紛争および中国軍の対ソ集中によって、われわれの側は米中衝突の可能性を再検討することになった。その結果、潜在的脅威である中国に対し、核戦力および即応通常兵力が備えとはなっているものの、われわれが米中衝突の概念を基礎に計画を練るということはもはやなくなった。」こういうことを述べていますね。その次のところで「われわれは欧州での戦争に伴って、アジアでも戦争あるいは戦争の脅威が発生し得ると考えている。その場合、第一の危険は、われわれの海軍および連絡線に対するソ連の攻撃によって生ずるだろう。」アジアにおいても戦争が起こり得るだろう、それはソ連によって起こるだろう、こういうことですね。そしてその後、中国が戦略的にソ連との均衡を保つおもりの役割りであるというように、いわゆるアメリカの対ソ戦略上での中国の位置づけというのを述べているわけです。また、軍事情勢報告の中でも、これはより明確になっておりますが、「アメリカソ連に戦略的に対抗するために中国との関係を改善することが重要である」、アメリカソ連に戦略的に対抗するために中国との関係の改善が重要である。これはまさにアメリカが対ソ戦略上中国をどう位置づけているかということをこれほど明確に述べたいわゆるアメリカ政府見解というのは私はないと思うんです。これはまさに一部の見解ではないんですね。  ですからこそ、やはり十分に注意しないといけないということを私たちは繰り返し述べてきたわけです。こういうアメリカの国防報告軍事情勢報告に述べられておるアメリカの対ソ戦略上における中国の位置づけについて大臣はどのようにお考えでしょうか。
  178. 園田直

    国務大臣園田直君) アメリカの軍の発言でありますから、軍自体が、そういう有事のおそれはない、もう大丈夫だ、ほっておいていいというようなことでは軍としての使命は果たされません。特に、均衡の平和を維持するということになってまいりますると、やはり軍は軍としてそれぞれの意見がありましょう。しかし、その後の米国関係を見ておりますると、たとえば中国に対する兵器の供与、こういうことはアメリカはやっておりません。ヨーロッパの諸国は話がそろそろ出ているようであります。そこで、それだけを取り上げて、安心はなりませんけれども、特にだからこうだときめつけるわけにはまいらぬと私は考えております。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、私は、アメリカ考え方ということについて申しますならば、やっぱりこういう見解が出されておる、これは決して何もアメリカの国防省が政府に了承も得ないで勝手に出しているんじゃないんですから、政府考え方として出されているわけですから、幾らそれは国防省が出したにしてもですよ、これはアメリカ政府見解であるということをやっぱり十分にお考えになっておかないとこれは大変なことになる。先ほど来、そういう見解は全くないから心配はございませんというふうなことでは、これは困るわけです。私は、世界情勢や今後の問題を本当に平和五原則に基づいて平和のために貢献するんだという外交姿勢を日本がとるならば、こういう点は十分に踏まえておく必要があるということを指摘しておきたいわけであります。  特に、マンスフィールド・アメリカ駐日大使、この方が中ソ国境に四十個師団以上のソ連軍を引きつけている中国について、これを東のNATOだというふうに評価をされた。また、この評価に関して、中国の鄧小平副首相も基本的には賛成しますということが述べられている。ですから、こういうことになると、米中関係というのはまさに対ソ戦略上の準軍事同盟的なものにならざるを得ないんではないかというふうな危惧も大いになされるわけであります。この点について改めてお尋ねしておきたい。
  180. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、そういう状態には発展していかないし、米中の問題が軍事同盟的になるとも考えておりませんが、しかし、きわめて微妙な問題で、これに対する警戒心、注意心というのが日本の国内にもあるわけでありまして、十分注意は払っていきますが、方向としては、そのような方向では進まないと判断をいたしております。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、アメリカのこの国防報告に述べられているような見地、つまり対ソ戦略に対して中国をこういう位置づけをしておるという問題に関して、日中平和友好条約締結される今日、日本としてはこのアメリカのこういう見地に同調されるのか、それとも同調されないのか、その点はいかがでしょうか。
  182. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど申し上げましたとおり、米ソの対立、中ソの対立は緩和の方向に持っていく努力をすることが日本の最高の方針であると考えておりますから、そういうことの現実には同意はいたしません。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、いままでたびたびお述べになっておる、日米基軸ということが日本外交の姿勢の基本であるということを述べておられますけれども、こういうような国防報告に述べられているような見地はとらないということでよろしゅうございますね。
  184. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほども申し上げましたとおり、日米安保条約を基軸とするということは均衡による平和を願うというのが日本考え方でございますから、対立激化の方向に向かっていかないように細心の注意を払い努力をすべきであると考えております。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 それでは改めてお尋ねしますけれども、いまの問題に関しては、そういう国防報告に述べられているような考え方については同調されないというふうに理解をいたします。  それからベトナムに対してアメリカが行った侵略戦争、これは覇権行為であるというふうにお考えでしょうか。
  186. 園田直

    国務大臣園田直君) これは済んだことではございますけれども、ベトナムにおけるインドシナ半島の平和と安定を願ってアメリカがやったことでございまするから、その結果は別として、いま日本政府がこれが覇権行為であったなどという断定をすべき筋合いのものではないと考えます。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 その点でやりとりを始めますとまた時間がかかりますから次に進めますが、日本の基地ですね、これを利用してアジアの外国に攻撃をかけるというふうな事態になれば、これは当然やはり覇権行為になるだろうと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  188. 園田直

    国務大臣園田直君) それはそうではないと存じます。そのとき起こった現実の環境、理由あるいは対立をした両方の考え方、こういうものによって決まるのであって、極東の平和に脅威を与えることについてアメリカはこれを排除するという保障をしているわけでありますから、その場合になってみなければ、アメリカが仮に力をもってどこかを侵略し、あるいは意思を押しつけようとするものであるならば別でありますけれども、いまここでこれが覇権であるという断定はすべきではないと存じます。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 大臣は、再々、繰り返し、いかなる国の覇権にも反対するというのがこの条約の精神である、それがたとえアメリカであろうと中国であろうとソ連であろうと覇権行為であるならば反対をするということは明確に述べられた。こういう外国にアメリカの意思を押しつけるような事態で日本の軍事基地が利用されるということは、当然、これは覇権行為になるというふうに考えますが、いかがでしょう。
  190. 園田直

    国務大臣園田直君) 一方が力をもって他国の意思に反して押しつける、こういうことが覇権行為だという概念ではありますけれども、あの当時は、南北の対立があって、そして自由主義の方をアメリカは要請によって支援をしておったものでありますから、過去にさかのぼってこれが覇権であるかどうかということは断定すべきことではないと存じます。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 それでは話を進めますが、これまでの国会審議を通じて、今日の条約というのが日中あるいは米日中の同盟につながるものでは絶対にないという御答弁をいただいております。この言明は、政府としていわゆる日本国民世界に明確に公約されたことであろうというふうに考えます。先ほど来、私の方でお尋ねしてきましたアメリカの対ソ戦略上の中国の位置づけという問題にも同調することなく、厳格に覇権には反対をするという立場を貫く、平和五原則はしっかりと守っていくという点について、この点に関する政府の決意を改めてお尋ねしておきたい。
  192. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国に対しても、米国に対しても、本当の友好関係というものは、やはり日本の要望も正しく述べ、あるいはいろんな問題があったときには、正しいと信ずる主張をやりながらやっていくのが本当の友好関係だと存じます。わが国が平和に徹し、いかなる場合にも紛争を避けるということについての信念に変わりはございません。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、次に、先ほども一番最初に私がお尋ねしたわけですが、衆議院の外務委員会での御答弁の中で、若干行き違いがあったのか、あるいは大臣答弁に不足があったのかということはありましょうけれども、当初、特定国の覇権行為に関して共同の意思表示を行うことは、拘束されないが、あり得るという趣旨の御答弁だった。その後の御答弁では、相談することがあり得るかもしれないというふうなお話になったわけですね。最後には、国際情勢の一般的な話し合いの中でそういうことがあり得るだろうという趣旨のように変えられたというふうに私は見ておるわけですが、この点はやはり先ほど来大臣も誤解を招くおそれがあるので御訂正をなさったということですが、そうであるならば、共同の意思表示、つまり特定の第三国の覇権行為に関して日中両国で共同の意思表示を行うことがあり得るかもしれないという趣旨の御答弁は、やっぱり明確に取り消されておいた方がよろしいんではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  194. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が申し上げましたのはお話しのとおりでありまして、話し合うことがあるかもわからぬと言ったのは、一般情勢その他の中で意見を交換することがあるだろうということを言ったので、覇権行為の判断について中国日本が協議会を開いて統一の意見をつくり、また、これに対して共同行動することは断じてないということは会談の中途においても明確にいたしておるところであります。私がそういうことがあり得るかもわからぬと言ったのは、たまたま両方で判断したことが一緒になることがあるかもわからぬ、そういう意味のことを言ったわけでありまして、相談して決めるとか、あるいは相談して意思を統一するとか、特に一種の共同行動をとるということは断じてないことは会談の中途においても十分明確にしてございます。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 それでは前段の御発言は、共同の意思表示ということはあり得るということは一応お取り消しになるというふうに理解をいたします。  今回の条約で平和五原則がはっきりと明記されておりますし、また覇権を求めるべきではないということも明確にされているわけであります。ですから、私たち考え方としては、現在の世界の動きから見ましても、いわゆる軍事同盟によって相手に抗するという道ではなく、そういう非同盟の道でやっぱり平和の道を追求していくということがきわめて重要になってくるだろうというふうに考えるわけです。こういう中立つまり非同盟という道をさらに強めていく、そういう努力をすべきであるというふうに考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
  196. 園田直

    国務大臣園田直君) いま均衡による平和を維持し、これに対する平和を願って努力しておる最中でありますから、その基本は、基軸は基軸でありますけれども、しかしながら世界の各国がそういう平和に向かって努力していくことは結構であると存じております。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、台湾問題で幾つかの点、もう一度念のためにお尋ねしておきたいと思うんです。  台湾問題に関して、大臣は、台湾地域武力解放やあるいは紛争、そういうものはないと私は確信いたしますということが最近の外務委員会でもお述べになりました。また、日中の共同声明では中華人民共和国領土であるという中国政府の主張に対して、それを理解し尊重するという旨述べられておるわけです。しかし、この問題については、いろいろと議論される中で、衆議院の外務委員会では、大臣は、この点では現実の問題と理想という点については若干のすれ違いがあるということもお述べになって、矛盾があるということも答弁の中でされているわけであります。  そこで、お尋ねしたいわけですが、現在、そういうように武力紛争の事態ということもないというふうに確信され、中国領土であるということに尊重を示した状況の中で、日米安保条約の極東条項に今日台湾を含めておく必要性がどうしてあるんでしょうか。
  198. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) これはたびたびこれまで申し上げてきているところでございますけれども、日中国正常化というものが日米安保条約にかかわりなく達成されましたのと同様に、今日の日中平和友好条約は日米安保条約にかかわりなく調印されたものでございます。したがいまして日米安保条約及びこの条約にかかわりますわが国政府立場は、この日中共同声明の発出によって何ら変わりがなかったのと同様に、今回の条約の調印ということによっても何ら変わるところがないところでございます。したがいまして、先ほど先生が言われました極東の範囲というものに台湾地域が含まれるということについては何らの変わりもないわけでございます。  先ほど先生御指摘になりました、この地域武力紛争が起こる可能性はないと確信するというのが私どもの判断でございますけれども、また、先般、総理お答えになりましたように、この極東条項に関連いたしまして日米安保条約のもとにおける事前協議というものにかかわる問題が生じて、アメリカ側から事前協議というものがありました際のわが国の対応ぶりにつきましては、イエスもあればノーもある。しかし、先ほど申し上げましたような台湾地域をめぐる武力紛争の発生の可能性がなくなっているとの判断、また日中平和友好関係ということをも念頭に置いて、慎重に配慮する、こういうことでございますので、この極東条項というものが不適当になった、やめるべきではないかという点については同調いたしかねるわけでございます。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 大臣ね、この間の、一昨々日ですか、衆議院で福田総理がこの問題についてお述べになって、状況が変わってきたと、しかし理論的に言うならばということでこの問題について説明されているわけですね。そこで、そういうことを踏まえて、いわゆるどうしていまの状況でなおかつ台湾条項ということをとどめておく必要があるのかという点について大臣の御見解を伺いたい。
  200. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国日本の話し合いでは、共同声明でも、安保条約に理解を示したわけであり、今度も、これに理解を示したわけであります。でありますから、これはこのままで私は結構だと考えて帰ってまいりました。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 それならちょっと話を進めますが、大平元外相が、この台湾問題をめぐってのことに関しては日中間で永久に一致できない問題だということを共同声明を結ばれた後述べられているわけですね。この点に関して大臣に衆議院で質問があったときに、答弁された点では、私は永久とは言わぬと、将来いろいろ変わることがあり得るだろうという趣旨のお話があったと思うんですね。だから、もちろん永久不変、固定だというふうなことではなくて、大臣はいろいろ情勢の将来の展望なんかもお持ちになってそういうふうにお述べになっただろうと思うんですが、台湾条項という問題、極東条項に台湾を含むというこの件に関しては、仮に米中が正常化し、国交が米中間で回復するというような事態になると、この極東条項に台湾を含むという問題についても再検討する可能性が生まれてくるのでしょうか。
  202. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどから申し上げますとおり、上海共同声明以来、米中は両方接近する努力をしているようでありますが、その話し合いがどこまで進んでおるのか、条件がどういう条件であるかということは予測する立場にございませんので、いまのようなことは、そのときの大きな問題になるとは存じますけれども、ここでもって仮定に立って私が答弁するわけにはまいりませんのでお許しを願いたいと存じます。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 大森さんが横から変なメモを渡すものだから、大臣に思ったとおり答弁してもらえると思ったのに。  私が言ったのは、その時点になると、台湾地域を含めるということを解消できるかということじゃないんですよ。それは当然重要な状況の変化がまた生まれてくるわけですから、その時期になると、やはり考えてみる必要はあるだろうというぐらいな御答弁は出るかと思ったんですけれども、なかなかそれがどういう状況かということがわからないということですから、それ以上言いませんが、だとするならば、この問題というのは大臣は永久不変だというふうには言えない、いろいろあり得るだろうと言ったけれども、大臣がお考えになっておるこういう台湾地域極東条項から外すというふうな場合は、どういうような場合が想定されるでしょうか。
  204. 園田直

    国務大臣園田直君) 台湾地域武力紛争が絶対ないということが両国で確認された場合、あるいは国際情勢の変化等によってこれが未来永劫のものではないと思いますけれども、それがいつどういうふうに変更されるかは私が答弁すべき筋合いではない、こういう意味であります。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、これでまたやりとりしていると時間をとりますから先に進みますが、今回の審議の中で、政府は、中国のわが国あるいは日本の運動に関する内政干渉といいますか内部干渉、こういう問題については今後毅然とした態度をとっていきますという御答弁をいただきました。これは当然なことだというふうに考えるわけです。今回、この条約が締結されて、双方とも覇権を求めず、平和五原則に基づいてやっていくんだという趣旨ですから、こういうことはますます努力されなければならない点だろうと考えるわけです。ですから、改めてこの問題についてどうこうということではありませんけれども、しかし、この問題というのは非常に重要な問題だと思うんです。私は若干のいままでの事実関係の問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  まず最初に、一九七〇年に、当時の周恩来首相が、いわゆる赤軍がハイジャック事件を日本で起こした、これについて、すばらしいことですという趣旨のお話があった。また、その翌年の七一年には、にせ左翼暴力集団が三里塚の闘争に接近するように私は勧めたんだ、そしたらそういうふうになりましたという趣旨のことを周恩来総理がまた述べておる。これはやはり大変な問題であったと思うんですね、こういうことは。ですから、一国の総理がこうした干渉をしていた事実を当時外務省は知っておられたのかどうなのか、あるいは知らなかったのかどうなのか、その事実についてお尋ねをします。
  206. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 情報としては承知しておりました。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、そういうことは日中国正常化の以前の問題ですね。日中国正常化のときに、そういうことは問題にしたのでしょうか、あるいは一切問題にしなかったのでしょうか。
  208. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、この会談の際に……
  209. 立木洋

    ○立木洋君 いや、そのときです。日中国正常化の。
  210. 園田直

    国務大臣園田直君) そのときのことは存じておりません。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 アジア局長も御存じないですか、その当時、問題になったのかどうか。
  212. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 詳細存じておりません。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、御存じないというのでこれはそれ以上聞きようがございませんが、こうした平和五原則に基づく、つまり内政不干渉という原則を含んだ平和五原則、これも日中国交が正常化されたときの共同コミュニケですか、の中でも第六項で明確に述べられていたわけですね。その後に、これは去年の七月の十一日、再々指摘をしているところでありますけれども、日本へ向けての北京放送で、革命の勝利をかち取るには単に口で争う手段に頼ることはできない、どうしても暴力革命の用意を整えなければならない、すべての革命的人民は武力で国家権力を奪取することに立脚点を置くべきである、鉄砲から国家権力が生まれる、これは全く正しい真理である。こういう形で日本国民に呼びかけたのが去年の七月の日本向けの北京放送であります。こういうように暴力革命をやるように勧めるというのは、これはただ単なる干渉だということで済まされない、きわめて根本的な問題になるだろうと思うのですね。こうしたことは日中国交が正常化した後の問題であるわけですから、この平和五原則の内政不干渉の原則に対する明らかな違反でもあるということであるわけですから、去年の七月の時点で、これについて何らかの抗議をなさったんでしょうか。
  214. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 北京放送とか、あるいはほかの国でも、いろいろ放送、新聞などで日本に対して間違った認識に基づくもの、あるいは日本から見て穏当でないものというようなものがあります場合には、これは日本政府としては機会あるごとに相手政府にその不当である点を指摘いたしますけれども、いまのような北京放送そのものが先生が言われますように内政干渉になるかというと、この点は私どもは国際法的に言いますと、それは内政干渉とは言えないだろう、こういうふうに思います。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 中江さんね、あなた内政干渉ではないという点に力点を置いて答えられたけれども、これは総理答弁でも、外務大臣答弁でも、これはやはり重要な問題ですと、今後毅然として対処をしますということが今回の国会の答弁でなされているわけでしょう。ですから、こういう問題が内政干渉に当たらないというふうに単純に済ますのではなくて、このことを重視しておく必要があると思うのですね。大臣、その点についての御見解を伺っておきたい。
  216. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私、先ほどの御説明の前段で申し上げましたように、そういうことに対しては日本政府は機会あるごとに注意を喚起することはしておるわけです。それが平和五原則あるいは共同声明第六項違反だといって追及するような、そういう法理論としては私どもはまだそういうものではないということを申し上げたわけで、不当な言動について毅然として注意を喚起し、その誤りを正す、これは当然やっておるわけでございます。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 そのときもやったわけですね。
  218. 中江要介

    政府委員(中江要介君) それはこれに限らず……
  219. 立木洋

    ○立木洋君 そのときにやったのかと。
  220. 中江要介

    政府委員(中江要介君) その点は記録を見ませんと、直ちにはお答えできません。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 あの当時、やっぱり抗議をやってないだろうと思うのですよ、私は。だけれども、この問題は非常に重要な問題ですから、今回の会談の中で、若干、大臣がこれらの問題――この問題とは言いませんけれども、これらの問題に関して中国側に注意を喚起するという趣旨の、それを抗議と言うか内政干渉がけしからぬというふうに言われたのかそれはわかりませんが、どういうようなお話をされたんでしょうか。
  222. 園田直

    国務大臣園田直君) いま言われたようなことを具体的に全部言ったわけではありませんが、共同声明発出以来も、中国の方は、仮に私の方で鄧小平副主席がけしからぬとか華国鋒主席がだめだとか、こういうことを言ったら黙っておられますか、成田の空港のようなことをやったらあなた方は黙っておりますか、友好条約を結ぶ前に、平和五原則とおっしゃっても、こういう日本国民が内政干渉ととるようなことは今後やめてもらわなければ友好条約締結するという前提にならぬということは、これは厳しく申し上げました。これに対して向こうは黙って聞いておりました。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど私が申し上げましたけれども、中国政府は、御承知のように、以前は、日米安保条約に反対だ、自衛隊の増強は軍国主義の復活につながるという厳しい態度をとっていたということは御存じだろうと思うんです。最近、これが大きく変化をして、百八十度といいますか、日米安保条約を容認する、自衛隊の増強についても支持をするというふうな態度に変わっているわけですね。一方では、日本政府がとっておるそういうふうなことに関して、彼らはそれを支持するということを述べている。ところが、一方では、同じその日本国国民に関しては、おまえたちは、先ほども述べましたけれども、革命的人民は武力で国家権力を奪取することに立脚点を置くべきである、日本政府を武力でひっくり返せということを日本国民に呼びかけている。これは全くおかしなことだと思うのですよ。一方では、自衛隊増強支持だ、一方では、その政権を武力で覆しなさい。これは私は全くおかしなことになる、筋が通っていないと思うのですね。  ですから、この問題に関しては、やはり私は中国からの内政干渉にわたる問題に関してはきちっとしないといけないということを私は明確にしておきたいと思うんですが、その点で重ねてお尋ねしますけれども、今後、こういう趣旨のことがあったならば、これは中江さんもさっき、そういうような間違ったことがあれば、それについてはその都度注意を喚起するなり、それぞれのことの申し入れを行うというのが外務省の姿勢であるというふうに私は理解しておるわけですから、こういう点に関しては、こういう事態が今後起こったならば、やっぱり毅然としてそういう問題に関しては相手に対して申し入れをするなり、抗議をするなり、そういうような対処をしていくべきだろうと思うんです。大臣自身も毅然として対処するというふうにお述べになっておるので、その点を改めて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。
  224. 園田直

    国務大臣園田直君) 友好条約後のわれわれのやるべきことは非常に責任が重いわけでありまして、その第一は、やはり互角の国家として、友好条約締結後であっても、不当なことがあり内政干渉があれば、これは敢然として抵抗し、主張することは当然のことだと存じます。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 それから、中国を訪問する公的な交流の問題に対して、わが党の議員が排除されているということについても何回かお尋ねをして、大臣からも明確なお話がありました。これは日本外務大臣として憲法上認められている政党を拒否したことは不愉快であるという趣旨のお話があったわけですね。この問題に関しては、入国を不当に拒否したというふうな問題については、中国を訪問されたときに、何らかの機会にお話し合いをなさったのか、あるいはお話し合いをされたとすれば、どういうふうなお話し合いだったのか聞かしていただきたいと思う。
  226. 園田直

    国務大臣園田直君) 向こうへ行きましたときには、公式の会談ではありませんでしたが、日本共産党は入国を拒否するのはけしからぬ、こう言っている、これは考慮願いたいというだけのことを言いましたら、それに対して返答はしないで、事実は、日本共産党は今度の批准に賛成しますかという逆に質問をされたのが事実であります。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 この件に関しても、今後、努力をされるという趣旨の御答弁があったわけですが、大臣承知のように、わが国の出入国管理令がありますが、この管理令の第五条の第一項は、外国人の上陸を拒否する場合の理由を列挙しているわけです。その第二項に「法務大臣は、本邦に上陸しようとする外国人が前項各号のいずれにも該当しない場合でも、その者の国籍又は市民権の属する国が同項各号以外の事由により日本人の上陸を拒否するときは、同一の事由により当該外国人の上陸を拒否することができる。」こういうふうに定めてあるわけですね。これは相互の入国に関しての相互主義の原則だと思うんですよ。これは日本としては明確に出入国管理令で法律上明記されている。  だとするならば、今度の条約では平等互恵の原則、平和五原則ということを明確にされておるわけですから、もしこの原則に忠実であろうとするならば、こうした中国側の不当な入国拒否に関してこの相互主義の原則をきちっと踏まえた対応の仕方をすることを含めて、私は中国側に明白に申し入れることもできますし、することも可能であろうと思うんですが、その点についての大臣の御所見をお伺いしたい。
  228. 園田直

    国務大臣園田直君) 入国の問題は主権に関する問題でありまするし、わが国も中国から来られる方をしばしば拒否したことがあります。しかし、共同声明発効以来は、拒否した事実はないように存じます。そういう意味からも、真剣に私はこの話は中国に話をするつもりでございます。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 それは重ねて御努力をお願いしたいと思うんですが、内政不干渉の問題に関して、わが党は繰り返し国会でもいろいろ質問をやってまいりました。この問題に関しては決して両党間の問題として私たちは問題にしているんではなくして、これはやはり日本の国、それから日本国民の問題として私たちは重視しなければならない、平和五原則をしっかり守っていくべきだという立場で私たちはやってきたわけであります。  しかし、十数年来の中国側からの態度というのは、御承知のように、あの文化大革命が行われて、あの文化革命の最中に、毛沢東思想というのはマルクス・レーニン主義の最高峰である、これをすべての国民は支持しなさいということが繰り返し強調された。特に、その中の重要な柱というのは、それぞれの国において武装革命、暴力革命をやるべきであるという路線を押しつけるという問題があったわけであります。ですから、その後の事態を皆さんごらんになっておわかりのように、明確にこれは各地でテロリズムが引き起こされてきた。日本における沖繩の場合でも、あるいは東大、新宿、成田、いろいろな点で暴力事件というのが起こってきているわけです。この問題というのはやっぱり重視しなければならない。こういう事態というのは私はすでにもう破産していると思いますが、しかし、私たちがこの問題に関して、私は、一九六六年、毛沢東と会談をしたときに、宮本委員長に同行していったものですからよくわかっておりますけれども、こういうような日本で暴力でもって革命をやれというふうな立場、共同してソ連に反対をすべきであるというふうな立場に私たちが同調しなかったからこそ私たちは不当なる干渉を受けてきた。これは決してわが党だけの問題ではなくして、これは重要な問題であるということを私たち考えてきているわけですから、この点を改めて、この際、強調しておきたいと思うんです。  それで今後の日中平和友好条約締結された以後の若干の外交問題についてお尋ねをしておきたいと思うんです。  今度の条約が締結されて後の幾つもの日本としては重要な外交課題を抱えておりますけれども、その中でとりわけどういう外交的な課題が重要だというふうにお考えになっておられますでしょうか。
  230. 園田直

    国務大臣園田直君) 第一に、日本ソ連友好関係を緊密に促進していくことが第一の課題であると考えております。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 第一にソ連。そのほか、特に重要視すべき外交課題というのはどういう課題がございますでしょうか。
  232. 園田直

    国務大臣園田直君) 二番目には、朝鮮半島の平和と統一ができるような国際環境をつくることが第二の課題であると考えております。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 それではソ連との関係について具体的な方針ですね、今後、どういうような外交を展開なさるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  234. 園田直

    国務大臣園田直君) いまからやろうとすることでありますから、なかなか具体的には申し上げられませんけれども、先般、国連総会で友好条約締結後初めてグロムイコ外務大臣と会ったわけであります。  その場合に、私は、グロムイコ外務大臣には、日中友好条約を結ぶということはあなたに初めて私は他国に対しては発言をした。それから中ソの対立については迷惑千万である。わが国は貴国と手を組んで中国に脅威を与えない、中国と協力をして敵対行為はしない、あくまで紛争が緩和の方向に向かっていくように微力ながら努力したいというのが念願であるからということと中ソ同盟条約の問題を話した、そのとおりに私はやったわで、今度の条約はその点は特に留意したところであります。二条と四条を読んでください。これは条文から言えば日本外交の自由を確保したことであるが、政治的に言えば、特定の第三国、すなわちソ連に対抗してつくったものじゃない、条約を読んでくださいと言ったら、読んだ。そこで、どこで反ソと書いてありますかと言ったら、書いてはないけれどもよろしくないと、こういう話がありましたけれども、結局、それはその程度で、十分間ぐらいでこの話は打ち切ろうと向こうから言われまして、今後の問題について話し合いがあったわけであります。  そこで、私は、日本の方針としては、未解決の問題を解決をして平和条約を締結し、その次に友好条約というような順番があります。この基本方針は守りますけれども、ただ友好条約は全面的に拒否しているわけではありません、ただし、いまの内容についてはそのまま同意できません。そこで、問題は、そういうもろもろの問題で未解決の問題さえ残せば、ソ連日本関係は必ず、共通する問題が多いわけでありますから、話し合いを重ねていけばうまくいくと存じます。こういう話をしたわけでありますが、ソ連の方では、今後の日本のやり方をよく見るんだという話はありましたけれども、最後には、ぜひひとつ両国で友好親善緊密化を進めていこうということは同意ですねと、それは異存はないと、こういうことで帰ってきたわけでありますが、今後、いろんな経済の事務協議会だとか漁業の打ち合わせ会とか、それからグロムイコ外務大臣日本においでになる機会とかあるわけであります。これは来ないのかと言ったら、来るけれども、いまここでいつ来いという返答をしろと言っても無理だという話もありましたから、こういう具体的な問題を話し合い、相互理解を深める機会をつくって、そして相互共通利益点も話しながら、未解決の問題についても、やれ覇権行為だとか、けしからぬとか、だから返せということでは解決しないので、相互理解を深めることによって逐次何らかの方法を生み出していこう。そのためには、今後、日ソ関係には、こちらもソ連立場に立ち、ソ連の方もまた日本立場考えてやってもらうような雰囲気をつくることが大事だと思います。その際、まあ私は冗談みたいにして、どうもソ連の方は声が大き過ぎる、何かおどされるような話をされたら日本人はなかなか聞きにくいからもっとやさしく話をしましょうと、こう言って帰ってきたのが現状でありますが、いままでの会談のやりとりで御想像願うように、各方面からの問題をとらえて相談をしながら、そうして相互理解を深めて、その相互理解の中に相手立場を理解していくような方向で進めていきたいと思います。  特に、今度の友好条約ソ連に向けられたものではない、それから米中日の関係包囲網ではないということは、今後、実行をもって理解を深めていかなければならぬと考えております。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど大臣が述べられた点で、覇権に反対するというのは、それがたとえ相手がどういう国であろうと、覇権にはわれわれは賛成できないし反対をするんだと、これは当然ソ連であろうとも、そうなければならないことだと思うんですね。ですから、誤りは誤りとしてやっぱりきちっとしなければならないだろうと思います。  でソ連との間で、日ソ両国が友好的な恒久的な関係を打ち立てていくという点でやはり欠かせないのは千島の問題だろうと思います。これは政府北方四島という言い方をされますが、私たちとしては千島の問題、この千島の問題を解決するということで本当の意味で両国の友好関係を発展させる基礎を打ち固めることが私はできるだろうと思うんです。  それで、きょうは、その千島の問題について議論をするつもりはありませんけれども、この解決に臨む日本政府の姿勢として、この千島の問題というのは日ソ間の問題でありますから、当然、日ソ間で努力をして解決すべきであるという態度をとらなければならないだろうと思うんです。かりそめにも第三国の力に頼るだとか、あるいは第三国と同盟を結んで相手に抵抗するだとかいうふうな態度はとるべきではないだろうと思いますが、この千島問題を解決する上でのいま私が述べたような点に関しての大臣の御見解をお聞きしておきたいと思うんです。
  236. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 千島ということでおっしゃられましたので、その点につきまして私からお答え申し上げます。  わが国の立場は、サンフランシスコ平和条約第二条の(C)項におきまして、千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しているというのがわが国の立場でございます。ただ、ソ連との間で問題になっております北方四島、これはここに言うところの「千島列島」に含まれていないわが国固有の領土である、こういう観点からその返還を粘り強く求めていく、こういうのがわが方の立場でございます。  なお、後段でおっしゃられました点、ほかの第三国と共同して云々ということはわが国としては考えていないところでございまして、日本独自の立場ソ連とこの点は粘り強く話し合いを進めていく、こういうことでございます。
  237. 立木洋

    ○立木洋君 その前段は要らないんですよ。それを言うと私はまた反論せぬといかぬ。これはそういうふうな考え方が私はやっぱり問題があると思っているわけで、その点についてあえて私はきょう述べなかった、その点について議論するつもりがないから。だけど、解決をすることについての基本的な姿勢ということを聞いたわけですから、ですから、その点に関して言えば、われわれはこの全千島の返還を要求している立場を主張しておりますし、この問題では、戦後処理におけるソ連の誤り、またサンフランシスコ平和条約で千島列島に対する放棄の条項に調印をしたという問題等等を含めて私たち意見があるわけですから、その点はきょうは繰り返しませんけれども、そういう前段の部分はお話は要らなかったわけです。  では、第二に重要だというふうにお述べになった朝鮮との関係ですが、考えてみますと、アジアの中で唯一の未承認国という形になってしまったわけですね。最も近い国である朝鮮民主主義人民共和国に対してこういう状態をいつまでも続けておくということは好ましくないことですし、朝鮮自身の統一という問題もあるわけですし、この朝鮮民主主義人民共和国に対する基本的な方針といいますか、を改めてお尋ねしておきたいと思うんです。
  238. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮の平和と安定はきわめて大事でありまして、したがいまして、この朝鮮半島における南北の対立が緩和をして、民族自決の精神に従って両方の対話が進み、統一ができることを念願するわけであります。アメリカはいろいろ努力をしておりますが、しかし、まだ具体的には進行していないようであります。ただ、アメリカは韓国を抜きにして北朝鮮と直接話し合いはしないという方針ではありますものの、北朝鮮の旅券の解除とか、いろいろやっておるようでございます。  わが日本も、あの均衡による平和というものは考慮に入れつつ、北朝鮮と事あるごとに話し合う機会をつくって、相互理解を深め、両方が対話ができるような国際環境づくりに微力ながら努力をしたいと考えております。
  239. 立木洋

    ○立木洋君 外相は、衆議院でしたか、朝鮮民主主義人民共和国との関係についても今後交流なども考え強めていきたいという趣旨の御答弁があったというふうに記憶しているわけですが、それは具体的な構想を念頭に置いておられるのかどうなのか。たとえば人事交流といいましても、いままでは政治的な関係ということについては、排除するといいますか、慎重に対応するだとかいうふうな対応があったわけですが、いままでの経済やスポーツ、文化等々の交流だけにかかわらず、こういうような政治関係等々の問題についても前向きで検討していくというようにお考えになっておられるのか、この点はいかがでしょうか。
  240. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島南北の対話にこぎつけるまでにはいろいろ紆余曲折あるいは困難な問題があると思いますが、漁業を初めもろもろの問題が起こるごとに相互理解を深めて、そういう環境づくりに前向きで努力をしたいと思っております。
  241. 立木洋

    ○立木洋君 経済関係の問題ですけれども、この経済関係の問題については、今後、朝鮮民主主義人民共和国との間でも強めていこうというふうにお考えになっておられるのか、あるいはいままでのように、いわゆる韓国との関係だけだというふうにお考えになっておられるのか、この経済関係の問題についてはいかがでしょうか。
  242. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済関係と申しましても、すでにもう漁業問題その他の問題が起こっておるわけでありますし、共和国の方と日本の民間人との貿易などもいろんな条件で非常な困難な状態に入っているようであります。けれども、そういう問題も現実の問題として起こったごとに、これは積み重ねていきたいと考えております。
  243. 立木洋

    ○立木洋君 大臣はお挙げになりませんでしたけれども、ベトナムとの関係についてちょっとお尋ねしておきたいんです。  これはもう私は深くここでは議論いたしません。御承知のように、今日、中国とベトナムとの関係というのは不幸な事態にあります。これがどうであるかというようなことを私はここで述べるつもりはありませんけれども、しかし、こうした中で日中平和友好条約が調印された、また中国中国でベトナムについていろいろ考えていることもあるだろうと思うんです。大臣もお話し合いになったかもしれませんけれども。しかし、中国側の主張がどうであろうとも、やはり日本とベトナムとは国交正常化したという関係があるわけですし、この日本とベトナムの国交正常化の精神を踏まえて、やはり今後日本もベトナムとの友好関係を発展さしていくべきであるというふうに考えるわけですが、この問題に関する大臣の御所見をお伺いしたい。
  244. 園田直

    国務大臣園田直君) ベトナムと日本との関係はきわめて順調に進んでおると私は判断をいたしております。こちらからもいろいろ協力をするし、ベトナムの方からも、事あるごとに、日本に関する問題ばかりでなく、相談も受けております。  ただし、中国会談の際、私の意見に反論をされたのはベトナム問題だけでありまして、いままでの経緯、それからベトナムに協力をすることは、これは一方的に強くするだけでむだだという意見がございました。そこで、私は、これに対して、最後に、黙って聞いておって、中国のベトナムに対する考え方感情、こういうものは理解できますと、しかし、ただ一点、わが日本はアジアの一角において中ソの対立を火を噴かしてはならぬということがわれわれの念願でありますから、ベトナムに対する協力は続けます。ただしカンボジアについても同様協力はやるんだと、こういうふうに言ってまいりました。
  245. 立木洋

    ○立木洋君 日本とベトナムとの関係、これは平和五原則に基づいて今後とも発展させるように努力していただきたいと思うわけですが、今度の水害の問題で、閣議で援助を決定されたということも報道されているわけですが、その援助の内容ですね、それから今後の見通しも含めて、この援助の問題についてお話をお聞きしたいと思うんですが。
  246. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の援助というのは、今度の洪水、台風の結果生じた緊急援助の問題につきましては、御承知のように、とりあえず一億円の緊急援助を赤十字社を通じてベトナムにすでに供与いたしたわけでございますけれども、ベトナムが一番困っておりますのは食糧の不足ということでございますので、その分につきましては引き続き政府としては積極的に検討してまいる、こういう方針でございます。
  247. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんので、この質問を終わるに当たって、次の点を述べておきたいと思うんです。  先ほども申し述べましたように、私たちの党としては、いわゆる内部問題に関する干渉、内政干渉等々について、私たち覇権行為には賛成しないという立場を貫いてきたからこそこういうものに関しては反対をしてきたわけです。こういう状況の中で、御承知のように、中国から一九六六年以降いろいろな干渉の問題がありました。今度のこの条約が締結されて後、この平和五原則に基づいて覇権を行わないという立場をしっかりと堅持して努力していくことがますます重要になるだろうと思います。また、政府がこういう内部干渉の問題に関して毅然とした対処を約束されたということについて、それは当然のことであると思いますが、現状としてはまだ完全にこの問題が解消されているわけではないわけです。現実の問題としては。ですから、こういう問題に関して、私たちは、あくまで今度の条約の平和五原則と覇権に反対するという立場を貫いていく、こういう立場を一層強化しなければならないし、私たちもそういう観点から中国の動向は見守っていきたいというふうに思っております。  それで日本政府がこの平和五原則に基づいて、しっかりと平和外交、自主的な外交を強力に進めるように努力すべきであるということを最後に強く要望し、大臣の御所見を伺って私の質問を終えたいと思います。
  248. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度の友好条約についてはいろいろ御批判もありますが、一番大きな問題は、友好条約締結後、日本が毅然として中国と真の意味友好関係を結べるか、そしてまた中国日本が本当にアジアの平和のために貢献するかという今後の問題にかかっていることはきわめて重大でございますから、御指摘の点は十分注意をして今後進めていきたいと存じます。
  249. 和田春生

    ○和田春生君 この日中平和友好条約に関しましては、調印後帰国されて本院の外務委員会で御報告があった際にも幾つかの問題点を取り上げて質問をいたしました。その際、外務大臣と私の見解が異なる点もありました。そういう点については追ってまた詳細にただしたいというふうに言っておったわけでございます。そうした問題も含めて御質問したいわけですが、いままでに同僚各委員からいろいろな問題についていろいろな角度から質問がございました。おおむね明らかになった点もあるわけでございます。できるだけ重複を避けたいと思います。ただ、これから質問を進めるに当たりまして、私の基本的な立場を申し上げておいて、そういうことを踏まえた上での御答弁をお願いしたいと思うんです。  一般的に、これが国内法の法案の審議であるとかあるいは政策に対する討議になりますと、賛成があり反対があり修正がある、あるいはいろいろ条件をつける、そういういろいろな角度からの取り組み方があるわけです。しかし、日本国を代表する政府がすでに調印をされた条約については、承認し批准をするのか、承認をせずこれをだめにしてしまうのか、二つに一つであります。これは非常にむずかしいところだと思うんです。私の立場基本的に言うと修正の立場なんです。まるまるこれを承認するというには問題があるという考え方なんですね。ですから国内法案の審議であれば修正をしたい、あるいは条件をつけたい、そういう問題がいろいろあるように思えます。同時に、今度の条約について園田外務大臣は非常な御努力をなされました。そのことに対しては深く敬意を表する次第であります。しかし、交渉の経緯と現在までの質疑応答というものを通じて伺っておりますと、どうも物事には表もあれば裏もある。ところが表の方の評価ばかりが先になって、裏の方については目をつぶろうとするかあるいはそれを避けて通ろう、それからやはり条約や国際関係についてはポジティブな面とネガティブな面がある。ネガティブな面については知らないふりをするか、あるいはそれについては特に突っ込んで考えようとすることを避けていっておるのではないかという疑いが非常に強くなってきているわけです。そういうことを前提にしながら幾つかの問題点をお伺いしたいと思います。  大体問題点は五つであります。一つ覇権条項です。もう一つ尖閣諸島に関する問題、もう一つ日中条約日ソ関係、もう一つ日中条約締結後の外交課題、とりわけパワーポリティックスの中における日本立場、こういうものを重点にし、最後に日中平和友好条約の評価について総括的な御意見を承りたい、こういうふうに考えております。  まず第一点でございますが、もう覇権反対についてはいままで論議が尽くされておりますので、それを蒸し返そうとは思いませんけれども、日中共同声明以降日本中国平和友好条約交渉が始まるその当初において、日本覇権反対の条項を含まない条約を結ぼう、このことを基本的方針にされておったというふうにわれわれは理解をしているわけです。間違いございませんか。
  250. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 交渉の当初におきまして、覇権を求めず、覇権に反対であるということは確かに共同声明の中では合意はしてあるけれども、そのことが果たして条約の中に条文としてなじむかどうかという点については事務的に検討した経緯がございます。そのときには覇権という字が果たして国際社会においてすでに受け入れられている概念であるかどうかという点が一番問題であったというふうに記憶しております。
  251. 和田春生

    ○和田春生君 本当にそうでしょうか。覇権反対というのは日中共同声明でうたっておるから、そういうことを宣言するとか、前文に抽象的にそういうことを書くということについては、共同声明を受け継ぐという上においてよかろうけれども、両国関係を継続的に拘束する条約の本文の中に入れるのは望ましくない、こういう態度をとっておったんじゃありませんか。
  252. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 望ましくないという手前の問題として、覇権というのが一体条約の中に入れて拘束を与えるようなものとして国際社会で熟しているかどうかという点について疑問があったと、こういうふうに私どもは受けとめていたわけでございます。
  253. 和田春生

    ○和田春生君 それならば、かつて宮澤四原則というものがございました。あれは私どもは原則なんというようなものではなくて、ごくあたりまえのことだと考えているんですが、そのことについても中国側から大変厳しい批判的な注文がついたという事実があります。そういう点は国会でも取り上げられてまいりました。それやこれやをめぐって、日中平和友好条約交渉にずいぶん紆余曲折と時間をかけましたね。なぜ時間がかかったんですか。
  254. 中江要介

    政府委員(中江要介君) その時間がかかりましたについては、私はただいま申し上げました時期の後で、今度は反覇権は反ソではないかという新たな政治上の問題が持ち込まれたということがあったと思います。で宮澤四条件と言われましたが、これは先生自身もそういうものでないと御否定になりましたそのとおりでございまして、四項目といいますか四点といいますか、そういうことがはっきりしているのであれば、この覇権反対条項というものを条約の中でどこかにうたうということは、これは考えてもいいという時期がございました。これに対して中国がいろいろ難点を示したかという点につきましては、当時の宮澤外務大臣の指摘された四点のどこがいいどこが悪いということではなくて、すでに共同声明ではっきりしていることをいまさらどうして細かい点まで日本は心配するのかという、一般的な消極的な態度であったわけでございまして、どの点がいい悪いということではなかった。宮澤四項目が出ましたのは、覇権というものの概念について必ずしも国際社会において確立してない部分をはっきりさせると同時に、その後出てまいりました、これがもっぱら反ソを意味するものだということではこれは日本は合意できないということでございますので、それが一般的なものであるということを表現しようとして、御説明された点をまとめられたのが四点であったと、こういうふうに理解しております。
  255. 和田春生

    ○和田春生君 宮津さんが述べた四点のあれがいいとかこれが悪いとか、その議論をしようとしているわけじゃない。一つの例として引き出したわけです。さらに妥結に至るまでにおいても、覇権反対を言いながら、いずれの国に対するものではない、そういうべらぼうな話があるか、こういうことを中国側が言っておったことも歴然たる事実であります。また中国基本的な立場は、反覇権はすなわち反ソである。これは終始一貫しておったと思うんです。それをいま中江さんのおっしゃるように、そういうことでは困るからという形でずいぶん交渉が長引いたんじゃないんですか。
  256. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いまの御質問の中の、中国は反覇権は反ソであるというのは、より正確にはソ連覇権主義であるというのが中国立場で、したがって覇権に反対ということはソ連に反対することになるということで、中国覇権に反対ということはソ連だけだとは言わないのですけれども、ソ連覇権主義国である、したがって反覇権ソ連について言えば反ソになる、そういうふうに映ったわけでございます。これは中国の政策でございます。したがって、それは中国の対ソ政策で日本の対ソ政策とは違う。その違いをはっきり認識していただかないことには、ソ連に対する政策で日中が共同戦線を張るんだというようなことでは日本外交政策とは相異なる。その点についてしっかりした理解を得た上で覇権反対条項を取り扱おうというので時間がかかった、こういうことでございます。
  257. 和田春生

    ○和田春生君 言葉のあやではいろいろなことが言えると思うんですが、はっきり言えば五十二年以来今日までこれだけ長くかかった、交渉でも紆余曲折があったということは、一にかかって覇権反対、こういう状況に対する中国立場日本立場の食い違いを調整するということに精力が費やされたということは、いまの御説明をもってしても歴然たる事実だと思うんです。そうして、結果的にできた条約というものを見れば、この覇権反対の条項を除きますとあとはごくあたりまえのことをごくあたりまえの表現で条文化をしているわけでありますから、議論の余地のない問題なんですね。結果的にとは言いながら、覇権反対の条項が入ったわけです。  これからは外務大臣にお伺いしたいと思うんですが、その覇権反対とつり合いをとるように第四条が入ったわけで、これで日本の主張は貫かれたとおっしゃっているわけなんです。しかし日本基本的な立場は、そうした意味合いを持つ覇権反対というものを条約に本文化をすることは好ましくないんだということが出発点だった。これは疑いのない事実なんですよ、いまになってどう言おうと。結局入ったわけです。そして第四条というのは、一面から見れば日本側がこれで日中が共同してソ連に反対をするという行動をとるものではない、日本日本独自の立場をとるということが留保された、説明の材料ができたということは言えると思う。同時に、中国の方が世界最大の覇権国家はソ連社会帝国主義である、ソ連を最大の敵として、第一の主敵としてやっていく。そして第一の主敵に対抗するためには、第二の敵はアメリカだけれども、アメリカと組むこともそのための一つの方法論だというようなことは中国の要人もしばしば言っているわけですけれども、ともかくソ連覇権反対の対象として中国外交的に軍事的に戦略を進めるということについても、園田外務大臣は、それは中国のやり方だから日本はとやかく言うものではない、こう言っているわけですね。そうすると、日本はそのことによってソ連に反対をするというものではないという言いわけはできたが、同時に中国覇権反対、反ソ、こういう基本路線というものは何らこの条約によって影響を受けない。そして覇権反対という条項が条約の中に入ったわけです。ですから、幾ら日本が主観的にこの条約がうまくできましたできましたと言っても、客観的に見ればやはり日本は日中が結んで反ソ統一戦線の中に組み込まれた、あるいは組み込まれる道を歩んでいると、こういうふうに見るのは客観的には私はあたりまえだろうと思うんです。ソ連が、幾ら園田外務大臣がそうではないとおっしゃっても、条文には書いてなくたって、事実上はおれに対して反対ということになるんではないかと言うのも、いいか悪いかの議論をしているんじゃない、客観的に見れば当然じゃないでしょうか。私はそういう見方というものに対する評価を出発点にして、今後の日本外交考えていくというのでなければいけないと思う。  そうじゃなくて、第四条が入ったからいいんだ、日本の主張は貫いたんだ、条約は満点にできたんだと、まあ言ってみればそういう形で条約締結万歳万歳と言うて浮かれているというようなことではいかぬわけですね。現に諸外国の見方というものを見れば、ソ連の反応はそうでありますが、ベトナムがどういう反応を示したでしょうか。モンゴルはどういう反応を示したでしょうか。インドネシアはどういう反応を示したでしょうか。あるいは香港の中立系、左派系の新聞はどういうふうに評価したでしょうか。あるいはアメリカのクリスチャン・サイエンス・モニターあるいはフランスのフィガロとか、あるいは英国のザ・タイムズというような代表的なそういう新聞がどう評価したか。これは明らかに中国外交の勝利であるという評価をしているじゃありませんか。そういう点に対するどうも基本認識が欠けておって、四条が入ったんだからよかったんだよかったんだということを強調している。私はそういう姿勢に問題があると思う。四条が入ったことはよかったのだけれども、それは日本にとって弁解の材料ができただけである。大方の客観的な評価というものは必ずしもそのとおりには見ていない。日本がどういうふうに考えているか、おれはこう考えているんだから間違いないというんじゃなくて、人の言葉行動判断するのは第三者であり相手方なんだ。そこのところにどうも私は食い違いがあるように思うんです。大変御苦労なさってこういう条約を結ばれたということを否定するつもりで言っているわけじゃない。日中条約の今後について、そういう点を外務大臣はどういうふうにお考えになっているか伺いたいと思うんです。
  258. 園田直

    国務大臣園田直君) 覇権、反覇権の問題については、共同声明が両方で合意された後の日本の各紙の論調は非常に激しくこれを分析し、そして反対の意向が多かった新聞が多いと存じます。その後、その問題でこれが断続的に交渉が進められてきたわけでありますけれども、その後だんだん情勢は変化をして、反覇権ということは、国際法的な定義はなくてもこれは社会概念になってきたと私は存じておりました。したがって、今度の交渉が始まりまして私が行ってからは、この反覇権の問題ではさほど論争は私はいたしませんでした。  私が論争した第一点は、反覇権ということは社会通念である。したがって力をもって一方に押しつけようとすることに抵抗するのは当然である。言葉は過ぎるようだが、私は覇権行為があれば中国にも抵抗いたします。ソ連にもアメリカにも抵抗いたします。しかし、この反覇権ということが特定の第三国、ずばり言ってソ連に向けられたものであるならば、われわれは断じて反対をいたします。そしていままでのいきさつをずっと申し述べて、私はこの条約が特定の三国に向けて結ばれる条約であれば、それは再び中ソ同盟条約のように国際情勢の変化によって名存実亡の条約になるでありましょう。こういうことを主張して、それ以後はソ連に対する議論は全然この会談では出ませんでした。  そこで私は、第一、この反覇権というのはみずからの問題であって、日本中国が第一に覇権を行わない、お互いに侵さない。そして次にはアジアの国々に不安を与えてはならない、こういうことでやろうじゃありませんか、そもそも二国間の外交交渉というものは、両方の利害関係をお互いに主張して、どちらが勝ったどちらが負けたということではなくて、お互いに話をするうちに未来に向かって最高の道は何であるか、こういうことを研究して決めようじゃありませんか、こういうことでこの反覇権の問題は私は論争をしなかったわけであります。  しかし問題は、第二条と四条に書いてありますけれども、私は当初から第三国に向けられたものではないとかなんとかということよりも、それぞれの、特に日本外交方針の基本を、自由を確立するということが先決問題であると考えましたのでこのようにしたわけではありまけれども、しかし、いま和田委員がおっしゃいましたとおりに、ソ連はもちろん、これに不安を抱く国はこの条約によって、条約文から見ればそうではないけれども、そういうことに逐次利用されていくのじゃないかという不安を持たれるということは、これは十分留意をしなければならぬことは私自身考えております。したがいまして、今度の友好条約締結日本がどのような外交方針をとるか、あるいは中国日本の間でどのように責任を果たし合うかという大きな責任ができたということは自覚をいたしております。
  259. 和田春生

    ○和田春生君 いまの外務大臣の御答弁である程度了解をいたしますが、ただ一つ、先ほど来覇権というのはそういう通念になっている、あるいは同僚委員の質疑の中で、外交関係においても覇権反対という言葉は漸次定着しつつある、こういうようなお答えだったのですが、覇権反対という漢字を使っているのは、私の承知している限り中華人民共和国中華民国、それから韓国、日本、こういうような漢字を使っている範囲内でございますね。で国際的に通念として定着しているという場合の覇権という言葉ですね、英語で言えばどういうふうに使われているんですか。
  260. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 覇権ということを国際社会で英語で表現されているのはヘジェモニーということでございます。この点に関連してさらに補足さしていただければ、先ほどアジア局長からも申し述べましたとおり、米中上海コミュニケで使われたということ、さらには国連で採択されました諸国家の経済権利義務憲章の中で覇権を求める企てを差し控えるということ、これが採択されておりまして、ちなみにソ連もこれには賛成をいたしております。  それから、ごく最近ではことしの六月に非同盟外相会議というものが開かれまして、この会議には八十五カ国の非同盟諸国の外務大臣が出席いたしました。その会議におきましても政治宣言の文書というものが採択されまして、その中で英語で申し上げれば、ストラッグル・アデンスト・ヘジュモニー、覇権に対する闘争という言葉が用いられております。
  261. 和田春生

    ○和田春生君 そこで英語で言えばヘジェモニーだ、ソ連もその概念には賛成をしていると――問題にならないはずなんです。経緯を見ますと米中共同声明、日中共同声明のときに恐らく当時出かけていった田中首相にいたしましても大平外務大臣にしても、今日のように覇権反対が即ソ連の社会帝国主義反対であってソ連が主敵だ、そこまで意識して書いたのじゃないと思うんですね。ですから、そのときの覇権反対はいわゆるヘゲモニーに反対をする、こういうような気持ちであったんではないかと前後の情勢から見て推測されますし、当時からタッチされている中江さんもその趣旨のことをお話しになっているのを私も聞いておるわけです。ところが、その後中国の態度は変わってきたわけでしょう。帝国主義反対、覇権反対でも一番最初はアメリカ帝国主義反対なんです。前の社会党書記長の浅沼さんが行ったころには米帝国主義に反対なんです。米帝国主義と結ぶ日本の反動にも反対だったわけです。その次に米ソに反対になっている。その次にアメリカは友達になってソ連が反対になっちゃって、中国の態度がずっと変わっている。共同声明以後、七五年に新憲法を採択して、憲法の中にも覇権反対という言葉が明確に出てきた。それは明らかにソ連社会帝国主義というものを主敵にして書かれているわけですね。そうすると、今度の条約で同じ覇権反対という言葉は使っているけれども、日本がこの覇権反対というものについて意味づけていることと中国意味づけているところは違っているんだという事実があると思うんです。違っている。言葉は同じものだけれども意識の上の違い、その違いを第四条で逃げているわけです。私はそういう意味で、この覇権反対というものは条約に入って、今後日本中国並びに関連諸国の関係でいろいろな物議を醸してくる問題があり得ると思うんです。  そこで、日本中国との関係で言えば、日本が加害者であった、中国が被害者であった。そういう意味で、共同声明のときにもその点に触れて日本としては非常に遺憾の意を表しているわけですね。そういう関係だと思うんです。それは日本中国関係がそうですよ、しかし中国とほかの周辺諸国の関係でいった場合に、果たしてそう言い切れるだろうか、これは外務省にお伺いしたいと思うんですが、現在中国が周辺で抱えている国境紛争は、どういう相手国がございますか。
  262. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ちょっとその正確な資料を手持ちでは持っておりませんけれども、私の記憶をたどりますると、まずソ連との間の国境紛争、それからベトナムとの間の国境紛争、それからインドとの間の国境紛争、そういったものが顕著なものとして思い浮かびます。
  263. 和田春生

    ○和田春生君 それだけじゃありませんね。西沙群島をめぐってベトナムと中国が激しく争いましたね、これは戦闘まで行いました。南沙群島をめぐっても中国はこれもおれの領土だという形でフィリピン、ベトナムと争いを起こしておりますね。これは厳然たる事実です。それからことしの四月には、モンゴルとも日本友好関係にあるんですが、モンゴル大使が記者会見をいたしまして、中国が国境侵犯をしばしば繰り返した。その必要性からソ連軍の駐留を望んでいるのである。そのソ連軍の駐留を望んでいるということは全くけしからぬ、内政干渉だという記者会見もやっておりますね。いろいろ問題が起きているんです。  そこで、仮にベトナムと中国の現在の対立というものについて、中国が仮に平和国家であるという前提に立つ、そうすると、ベトナムもアメリカ帝国主義の侵略と支配に反対をして解放をかち取ったという形に言われているわけ、そうした帝国主義から解放された国と平和国家がなぜけんかをするかということは、絶対にこれは説明がつかなくなる。どっちかが悪いか、どっちも悪いか。その中国の周辺でいろいろな問題が起きているわけです。日本中国関係においては、確かにあの戦争、日清戦争昭和に入って日支事変で、満州事変いろいろありました。ずっと太平洋戦争に至るまで日本が常に侵入し、あるいは植民地支配をやり加害者であったかもわからないけれども、中国と周辺との国々という関係になったときに、日本中国関係は適用されないんです。そうした周辺の国々というのが存在をしている、そういう中で、この覇権反対という言葉が、日中双方の共同の行動意味しない、外務大臣はそういうことで相談するんではないが、話し合うことはあるかもわからぬと言いましたけれども、私は、こういう問題について日本がアジアの国家としていろいろ調整に首も突っ込みたい、役割りも果たしたいというときに、いろいろな問題が起きてくるんじゃないかと思いますが、どうですかその点、外務大臣
  264. 中江要介

    政府委員(中江要介君) この覇権反対条項の一番のポイントは、先ほど大臣も言われましたように、日本覇権を求めない、中国覇権を求めないというところがまず骨子でありますし、それが根幹である。第三国の覇権に反対するというのはそれの派生的な当然の立場としてそういうことがうたわれている、これがまず基本にあると思います。そういたしますと、いま御指摘の点は、中国覇権を求めない、こう言っておるその中国がどこかで覇権を求めてはしないかというような観点からの国境紛争領土紛争の御指摘かと思いますが、日本は御承知のように、まず第一に第三国の間の紛争についてこれを裁くようなあるいは判断を下すような立場にはありませんから、どうしてA国とB国との間で紛争が起きるのだろうかというのはA国、B国それぞれに事情があってのことだと思います。したがって軽々にはこれは判断は下せない。しかし覇権を求めるような行為はまず日本中国もしない、また第三国がそういうことを試みたならばこれには日本は反対だと、中国もまた反対だというその原則が確立されている、こういうことでございますので、この一般原則について日中が合意した当然の帰結として日中以外の場所で、地域で起きている事象を一々これに照らしてどうするかということは直ちには出てこない。先生がおっしゃいますように、日本がそれについて調停を頼まれるとか仲裁を頼まれるとか、そういうことになりますればこれは別でございますけれども、そうでない限りはそういうことににわかには判断はいたしかねる、こういうことだろうと思います。
  265. 園田直

    国務大臣園田直君) この反覇権議論の段階においては、この条約に規定された反覇権というのは、これは第三国に対する、特にソ連に対するものでないということは明確に会談の議事録に載っているわけであります。中国は以前から反覇権ということをソ連に対する反覇権という言葉に使っていることも十分承知をしておりますが、この点も今後日本が十分注意をしてやらなければならぬ重大な問題であると考えております。
  266. 和田春生

    ○和田春生君 この問題で余り時間をとっておりましても、他の問題に言及することができなくなりますのでこの程度にしたいと思うんですが、私の意見を言えば、覇権反対などというそういういろいろ問題をはらんだ文句を入れない条約を結んだのならば結構だったと思うんです。やはりこれは今後にいろいろ問題を引き起こす可能性のある、それは条約の条文から直接くるのではなくて、中国の態度、外交方針、政治戦略それと中国周辺の国々、これは日中関係は日中関係日本とベトナムは日本、ベトナムで割り切れない問題がいろいろな形で絡み合ってくるわけでありますから、そういう点については十分なる外交的配慮をしていただきたいと、こういうことをお願いをいたしておきたいと思います。  次に、第二の尖閣諸島に関する問題に移りたいと思います。  尖閣諸島の領有権についての今回の扱いにつきましては、もういままでの質疑をもって明らかにされておりますから、私は質問しようと思っておったのですが、これはやめようと思います。  そこで、この尖閣列島については、外務大臣のお話によりますと、鄧小平副総理がいまのままでいいではないか、ああいう領海侵犯のようなことは二度と起こさない、こういうことをおっしゃった。それはしかもそういう責任者が言ったのでこれは非常な重みがあることだ、それは信用していい、したがって将来紛争の起こる可能性はない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。この前の外務委員会の質問のときにも、大陸だな、二百海里水域をめぐって私はトラブルが起こる、こう申し上げたことに対して、そういう心配はないと思う、そういうことは平和的な話し合いで解決するんだ、こういうふうにおっしゃいましたが、いままでの質疑応答の過程を通じ、今日の時点においてもそうしたお考えに変わりはございませんでしょうか。
  267. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が鄧小平副主席に申し上げたのは、この前のような事件が起こったら困るということではなくて、その前提に尖閣列島に対する帰属の問題で、日本立場を主張した上で今後このような事件は困る、ないようにと強い要請をしたのに対して、そういう返事でありましたから、これは二度も三度も繰り返してこのような事件は絶対に起こさない、こういうことでありまして、わが日本はこれはいま紛争地帯とは考えておりませんので、日本が固有に支配している国だと、こういう態度をとっておりますので、私は、その際向こうが、いやこれは日本のものだと言うけれども、われわれは中国のものだと言っているんだということになれば、これは互角の論争になって紛争事態になりますけれども、日本の帰属を認めたことは一言もありませんが、中国領土だという主張は一言もなかったわけでありまして、こういう事件は起こさない、こういうことでありますから、この点で納得して帰った方が日本国益のためだと思って私は帰ってまいったわけであります。ただし、その後これを中心にしていろいろ問題が起こるかもわからぬという御注意は、これは十分留意をしなきゃならぬ問題であるとは考えております。
  268. 和田春生

    ○和田春生君 こういう話があるのでちょっと読み上げてみます。余り長いことはないんです。   尖閣列島を確保する工作にはきわめて大きな  意義があります。尖閣列島の闘争は長期的な闘  争であります。日本との国交のとき、双方は言  及することを避け、まず放置しておきました。  われわれは永遠にこの中国領土を放棄するこ  とはできず、日本も放棄できず、ここに問題が  あるのです。尖閣列島確保の運動は継続しなけ  ればなりません。運動の形態には高低があり得  てよいのです。以前のように日本が占領しよう  としたときには高まり、もち出さないときには  低くなる。この運動は波状的であり、長く久し  く継続しなければなりません。尖閣列島確保運  動の内容を充実させ、台湾問題と関連づけるこ  とを考慮すれば、工作はやりがいがあるのでは  ないでしょうか。  これはだれが言ったことだと園田さんは思いますか。
  269. 中江要介

    政府委員(中江要介君) どなただったか具体的に思い起こしませんが、責任ある地位の方の発言であるということで、かつて私も聞いたことがございます。
  270. 和田春生

    ○和田春生君 これは中国で国慶節に参加をいたしました中国の海外在住華僑の集まりの席上で、ほかならぬ鄧小平副総理が言った言葉であります。よろしいですか、園田さんとの話のときにはそのままでいいでしょうと、二、三十年とかいろいろな話がありますが、そういう言葉のあやは私は触れません。同じ人物が尖閣列島でこう言っているんです。日本が強く出たときには高まるけれども日本が黙っておったらこっちが低くなる、尖閣列島の確保というものは台湾問題とも関連づけて、やりがいのある工作であるということをこれは鄧小平さんが言っていることであります。したがって、鄧小平副総理が言ったから安心だというのは、その場の外交交渉としてそういうことでおさめたというのなら理解ができる。しかし、将来問題はまず起こらないだろう、平和な話し合いで解決できるだろうというふうな見方は大変甘い。私は、先ほど国家の表もあれば裏もある、国際関係にはポジティブな面ネガティブな面がある、そういうことを踏まえながら考えていかなくちゃいかぬというのは実はこういうことも指しているわけですが、いまのことをお聞きになって、外務大臣どういうふうにお感じになりますか。
  271. 園田直

    国務大臣園田直君) そのときの鄧小平副主席の言葉の中で、いまのような話はありませんでしたが、私が日本立場を主張して言ったときに、いままでのままで結構です。いつまでも結構です。こういう事件は起こしません、こう言った後で、しかしわが国でもなかなかやかましい団体がありますと、こういう話だけはございました。
  272. 和田春生

    ○和田春生君 実は、こういうふうに鄧副総理が話をしたのは七四年のことなんです。日中共同声明以降に話しているわけです。その後御承知のように、四人組の手によって鄧小平さんは七五年に一時失脚をされましたが、またすぐ復活をされてまいりました。その鄧小平副総理の歩いてきたいままでの経過、それからこの発言の内容、今日の中国行動というものを見た場合に、なかなかそこには端倪すべからざるものがありまして、そら甘い考えを持って取り組んだらえらいことになるんじゃないかと思うんです。  そこで、先ほど尖閣列島と海底石油のことについても同僚委員からの質問がありましたが、最初にお伺いしたいんですけれども、この尖閣が問題になったときに、尖閣列島を基点にして幾つも島がありますけれども、細かいことの出入りは別にして、二百海里水域の円を書いてみたことがありますか。そしてこの海域がどういう状況になるかということを検討してみたことが外務省あるいは海上保安庁、防衛庁等においてあるでしょうか。これは大臣でなくても結構です。
  273. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 主管官庁から別途御説明があるかと思いますが、私の記憶では、日本が二百海里の漁業水域を設定しようといたしましたときに、御承知のように、いまの法律のもとでは、日本列島の大まかに言いまして東、北の方には漁業水域を設定いたしましたが、南の方にはまだ設定しておらないわけでございます。法制上設定しておりませんけれども、日本全土にわたりまして二百海里の漁業水域を検討したことはあったと思いますので、その際に尖閣諸島につきましても二百海里の問題を検討したことはあった、こういうふうに思います。
  274. 和田春生

    ○和田春生君 どうも質問の意味がよくわかっていないのじゃないかと思うんですけれども、小さな図面ですが私は図面を持っている。これは二百海里問題が起きたときに自分でコンパスで二百海里でずっと円を書いてみたんです。尖閣列島で。いま持ってきているのはそれなんです。そうすると、これはもう東シナ海中国の東岸の方から台湾日本の先島諸島をぐるっと含んでしまう円が書けるわけです。ところが先ほどの質問の中でも明らかにされたんですが、その尖閣列島についても国有財産登記のない島が三つある。実はこの二百海里海洋分轄時代に入って日本の対応は常に後手後手でおくれっ放し。私は早くからこの問題に取り組んで、外務委員会、農水委員会で再三そういうことではいけないよと、もっとしっかり取り組めということを言い続けてきたんですが、どうもこの二百海里問題については、魚となるとばっと日本の世論も沸きますけれども、そういう海洋分轄、そういうような新しい時代に突入した国際的なパワーゲームという観点からどう取り上げて、どう取り組んでいくかという視点が全く日本外務省にも、いや日本政府自体に私は欠けているんじゃないかと思う。  そこでお伺いしたいんですが、領有権の問題については、日本の領有が問題ないということを言われるんですが、つい最近、中国の漁業代表団が参りまして、中国においても二百海里の経済水域実施の方針について言及をしたということが伝えられておりますが、その内容はどういうことだったのでしょうか。
  275. 森整治

    政府委員(森整治君) 一部新聞で報道されているわけでございますが、非公式に私どもが団長とお話をした際に、非公式だと思いますが、従来から中国は二百海里についてこれを支持する考え方を持っております。遅かれ早かれ二百海里の設定は行うことになると思います。その時期については政府が決めることですからという話がございました。それにつきましては、私どももそういうふうに理解はしておりますが、実は日中の漁業協定の修正を向こうから申し入れがございまして、それについての具体的な協議を行いたいということで、その日時等につきましていま協議を行っている最中でございます。したがいまして、したがいましてというのはあれですが、いま直ちに二百海里をそこで適用するというふうに私どもはいま考えてはおらない、いずれということではなかろうかというふうに思います。
  276. 和田春生

    ○和田春生君 これは非常に重要な問題であります。なぜかと言いますと、現在日本は太平洋岸側に二百海里水域、しかもこれは漁業専管水域ですけれども、適用しているわけです。まだエコノミックゾーンにまでは踏み切っておりませんが、日本海側があけてある。それは御承知のように韓国も実施していない、中国も実施していない、そういうところで一方的に実施するのはまずいという配慮からこれは特に政令をもってあけてあるというのは、現在の二百海里法成立のときの経過で御承知のとおりでありますね。ところが、中国がもし二百海里の実施に踏み切れば間髪を入れず韓国は実施に踏み切ります。これは私は韓国政府の責任者から確かめているわけです。そうすると、日本東シナ海からこちらの大陸寄りをあけておくわけにいかないわけです。すぐ実施をしなくちゃいかぬことになる。さて、そのときに尖閣列島の領有権、外務大臣があえて触れなかった帰属権というものがえらい意味を持ってくるわけです。  そこで、ここに仮に尖閣列島日本領土であるという前提に立って二百海里を引くと当然中国との間には中間線をとらざるを得ない、両方がオーバーラップしますから。それから尖閣列島が仮に中国が言うように、おれの領土だという形で二百海里の線引きをやると尖閣列島日本の南西諸島との間にその中間線が、先島諸島との間に中間線が来るわけですね。さて、それなら尖閣列島というものがなかったとして、そしてこちらの方は沖繩列島から先島諸島、そして向こう側は大陸、台湾、こういう形で中間線を引くと、これはどの主張が正しいということじゃないんですよ、技術的には三つのケースがあり得るんです。その場合一体どういうような線引きと食い違いになるか、これをひとつ説明してもらいたいと思います。
  277. 佐藤任弘

    説明員(佐藤任弘君) 海図上の概略の作図でございますが、尖閣諸島によって影響を受ける日中の中間線、これは北端の点は日本側の鳥島及び赤尾嶼、それから中国側の魚山列島を基点とした等距離点でございます。それから南西端は日本側の与那国島、それから魚釣島、中国側の棉花嶼というところをそれぞれ基点とした等距離点でございまして、この両点の間の中間線は、北の方から言いますと、当初南西方に向かいまして大体その中間付近で南の方に曲がって南西端に続いております。  それから次に、尖閣諸島が仮に中国領とした場合の日中の中間線ということでございますが、これも概略の作図をいたしますと、尖閣諸島によって影響を受ける点は先ほどの点と同じでございまして、北は鳥島、赤尾興及び魚山列島を基点とした等距離点、それから南西端は先ほどの与那国島、魚釣島及び棉花嶼、これをそれぞれ基点とした等距離点でございます。この両点の間の大体の中間線は、当初南南東の方に伸びまして、ほぼ中間の付近で南西に方向を転じております。  それから尖閣諸島が全く存在しないと仮定した場合の線でございますが、これはやはり概略の作図でございますが、尖閣諸島が日本領でございますから、これを前提とした中間線と、先ほど言いました中国領と仮定した場合の中間線のほぼ中央を通る線になります。
  278. 和田春生

    ○和田春生君 いま言葉で説明をされましたのでわかりにくいと思うのですが、私は図面を持っているわけです。外務大臣よろしいですか。この赤い線は尖閣列島日本領土であると仮定した場合の中間線になる。尖閣列島がもし中国領であるという、そんなことわれわれは断じて認めているわけじゃありませんが、いくとこの青い線になるわけです。仮に尖閣列島を宙に上げておいて、紛争地帯だからそれにひとつ触れずに引こうじゃないかというと、ちょうど尖閣列島の魚釣島の上ぐらいを通る中間線が引かれるわけです。これは計算をしてもらいましたところ、大体この中に含まれる面積というのは七万平方キロぐらいあるわけです。残念なことにこの尖閣列島から日本の方寄りのところには深い海溝がございまして、大陸だなというのは尖閣列島から全部大陸寄りになっちゃう。言うなれば、中国大陸の大陸だなの端っこくらいにぶら下がっているのが尖閣列島なんですね。  さて、こうなってまいりますと、向こうは経済水域考えるという形になってくる、日本も線引きをする、いまやらなくても遠からずやる。それは二年先か三年先かわかりません。先ほどの鄧小平副総理尖閣列島領有に関する言明との問題の絡み合いが出てくるわけだ。私は日中間の最大の紛争になると思う。そのことをこの前、条約締結からお帰りになったときの外務委員会でも私は指摘したわけです。外務大臣は、ならないと思う、平和的に話し合いで解決をすると言いますけれども、これは日韓大陸だな共同開発協定以上の大きな問題になる。領有権の問題に目をつぶって通るわけにいかないわけなんだ。日本がやはりこれを日本領土であるということは確固とした方針で堅持していく、それは交渉上触れなかったと言っても、線引きになれば、当然日本固有の領土であるという前提に立てば、先ほど私の申し上げました中間線でいったら、この赤い線を引かなくちゃいかぬことに二百海里ではなるわけです。大陸だなだけを外してどうするかというときになれば、この赤い線から尖閣列島寄りの方は、日韓大陸だな協定の先例に従えば共同開発になる。中国側の主張に従えば全部向こうになっちゃう。これはもう日韓大陸だなどころじゃない、はるかに大きな地域で、しかもここに非常に大きな石油埋蔵量が予測される、こういう状況になっているんですね。それに対して日本政府としてどういう方針を立てていられるのか。日中平和友好条約を結んだ、そして尖閣列島の問題については、領有権は日本の固有の領土であるから触れないと言っておる。そこまではいいとして、こういう問題があるんです。平和友好条約万歳万歳じゃなくて、これは深刻な私は外交課題になり得ると思う。解決の方略いかん。私は外務大臣にお伺いしたい。
  279. 中江要介

    政府委員(中江要介君) まず、日韓大陸だな協定以上の問題になるだろうということでございますけれども、日韓大陸だな協定の南部共同開発協定につきましては、国会の御審議の過程を通じて申し上をましたように、韓国の主張にも日本の主張にもある程度の国際法上の根拠があったので、これをどう解決するかということであったわけです。ところが尖閣諸島に対する領有権の主張というのは、やっとこの周辺に石油があるということが言われてからの、最初は台湾から領有権の主張があり、その後中国から領有権の主張があったということでございますけれども、これは全く根拠のない主張であります。したがいまして、根拠のある主張同士の話し合いと、根拠のある主張と根拠のない主張との話し合いとには質的な違いがある。したがいまして、私どもの立場からいたしますと、仮にこれが中国領であった場合とか、仮にこれがなきものとした場合にどうなるかというようなことを検討することすらも必要のないことであるという非常に強い立場であるわけです。したがいまして、日本が十分な国際法上の根拠に基づいて固有の領土として現に支配を続けている島、これは尖閣諸島であれどこの島であれそうでございますが、日本以外の国から根拠のない主張をされましても、そのことに対してどう対処するか、それは相手の根拠のないゆえんを説いてその間違いを正すという以外に方法はない。また、そういう根拠のない主張をされるとは思いませんけれども、もしされましたならば、その根拠のない主張を論駁するということ以外にない。したがいまして、韓国との間のように、相手にも根拠があるという場合とは質的に違うというのが私どもの立場でございます。  したがいまして、将来この地域について、台湾が主張いたしますか中国が主張いたしますか、あるいは場合によってフィリピンが主張いたしますか、それは存じません。しかし、尖閣諸島がわれわれの領土であるということについてはどこから見ましても一点の疑念もないわけでございますから、それに対して何かを備えておくということは、ただわれわれの主張を通していくという以外にない、こういうことでございます。
  280. 和田春生

    ○和田春生君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったのかもわかりませんけれども、私の質問を正確に中江さんはとらえていないんですよ。日韓大陸だなの場合には二百海里の線引きとか境界の問題をたな上げにして、共同開発に限ってやったわけなんです。確かに韓国側の主張にも根拠がある、日本側にも根拠がある、相討ちの形で共同開発にしたわけですね。ですから私たちはそれに賛成したわけです。これはそうあってしかるべきだという形で日韓大陸だな協定には賛成したわけです。今度は、しかし尖閣列島の場合に、私は二百海里の問題でいま持ち出したんですよ、いいですか、仮に大陸だなでいけば韓国と同じ主張を中国がとれば、尖閣列島までは中国大陸の自然延長だという線でくるんです。いいですか、そうすると、その間において問題になるのは自然延長をそのまま認めるか中間線でとるかの争いになると思う。ところがエコノミックゾーンという形になってまいりますと海岸線からの二百海里でしょう。  そこで、いま尖閣列島日本領土だとして経済水域の二百海里というものを日本が線を引けば、中国の海岸まで行っちゃうんです。向こうからも来ますから、中間線という形でやる。そうすると、もう二度と言いませんけれども示したような線になる。もし、根拠のない中国側の主張だから日本側がそれでいくと、はいわかりましたと中国が言えば領有権を中国は完全に放棄したことになる、日本領土であるということを認めたことになる。そういうふうになることを私たちは期待し強く望みますよ。これは尖閣諸島が中国領土であっていいなんて思っていないんです。  ところがここにもう一つ問題がある。それは中国を代表する唯一の合法政権は中華人民共和国だということを日中共同声明以来認めたわけです。しかし台湾中華民国という政権が厳然として存在しているこの事実は何人も否定できないんです。この中華民国も、尖閣諸島は台湾本島の付属の島であって当然わが方のものである。それを沖繩返還に際して、アメリカが施政権返還のときに尖閣諸島をも一緒に返したのはけしからぬという抗議をしているのは御存じのとおりですね。中華人民共和国も同時にあの施政権返還のときに、日本で国会が承認をしたときに、返還協定を公式に外交部声明でけしからぬと言っているわけです。  そうすると、この問題については、中華民国政府日本との間においても、当然この二百海里の問題になれば中華民国も独自の立場に立って二百海里を引くでしょう。三国の交差点になってくる、それが果たしてすんなりうまくいくだろうか。仮に中華人民共和国日本の言い分をひとつ認めて、それはもう根拠のないことだから、日本のおっしゃるとおりですと言うて引き下がろうとしても中華民国は絶対黙らぬですよ。それは何をねらっているのかと言えば華僑をねらっている、そのことは鄧小平副総理もよく知っておりますから、先ほど引用した後の方で、在外華僑に対するわれわれの宣伝工作という面から見れば、尖閣列島の領有権の主張というものはきわめて重大だということを言っているわけですね。だから、それが根拠のない主張だからおれたちの言うとおりになりますなんて言って、そのとおりにいけば結構ですが、私はそうはならぬのではないか。だからそれに対してどう備えるかというのは、正しい主張は通すというのはいいんですが、通すためにはそれだけにやはりわれわれの戦略がなけりゃいかぬじゃないですか。いま一々その外交戦略をここで並べなさいというふうに私は言おうとは思いませんよ。腹をくくっているんですかね、うまくいくと思っておって、やられたら二百海里のときと同じですよ。どろなわでてんやわんやになって振り回されて、結局後で歯を食いしばってほぞをかむことになるわけなんです。だから、それは問題になり得るということを前提にして、主張は主張として持っているけれども、じゃどうやってそれに対処していくか。近く二百海里の水域を実施する方針であると言っている、間髪を入れず韓国もやる、間髪を入れず中華民国もやりますよ、日本はどうするんですか、黙って指をくわえて見ているんですか。そのときには実力行使の問題だって起きないとは限らないですよ、それが国際関係というものだ。国というものについて絶対善なる国、絶対悪なる国なんという見方をしていけませんよ、国益というものが絡んでいるわけです。現在、しかも明らかにパワーゲームの世界なんだ。一体外務大臣、どういうふうにそれに対して取り組もうとされているんですか。
  281. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 一言で言いますと、国際法に従って二百海里の経済水域を設定いたしますときには国際法に従ってやる。国際法に従いますと、それぞれ自分領土から二百海里ということですから、日本政府としては尖閣諸島は自分領土ですから、そこから二百海里をはかる。で相手の国から二百海里が出てきて重複すれば中間線による。この基本原則といいますか、法に沿った主張というものをあくまでも続ける。それに対してチャレンジがあれば、これを受けてその非を正す、これ以外に方法はないだろう、こういうふうに思います。
  282. 和田春生

    ○和田春生君 外務大臣いかがですか。
  283. 園田直

    国務大臣園田直君) そのようなことが起こらないという前提でやっているわけでありますが、万万一起こった場合には、これは武力または力による解決はしないで話し合いでするという項は入っているわけでありますから、その点を歯どめにしながら毅然として交渉をしていく対策をいまから検討しなきゃならぬと考えております。
  284. 和田春生

    ○和田春生君 この問題では、一つの仮定の条件を置いてやっているわけでありますから、この席上でこれ以上追及しようとは思いません。しかし、領有権の問題や線引きをたな上げをして共同開発、こういうことであるならば、日韓大陸だな協定のように、むしろそうなればこれはよき先例になるわけですね。そういうシステムを一つつくったわけです。方法を。しかし二百海里の線引きという形になりますと、領有権というものが決定的な要素になるんです。島がどっちの領土であるか、これはもう黒白をはっきりしなくてはいけないことになります。  これは竹島についてもその問題は十分起こり得ますね。現に北方四島の場合には、日本の固有の領土だと言っているけれども、ソ連が占領しているという厳然たる事実の前に日本は引き下がった。同じように中国が引き下がってくれれば大変幸いです。私は、果たしてそうなるかどうかというのは疑問がありますから、十分やはりそういう問題はこれからの重要な外交課題として起こり得るのである。それは日中平和友好条約を結んだから万事話し合いでうまくいくというようなものではなくて、国益並びに外交戦略、特に中国にとっては在外華僑に対する対策、宣伝というものも含めている重大な問題だということは御認識の上取り組んでいただきたい。いまここで、この問題をこれ以上取り上げて論ずることは一応置くことにいたしたいと思います。いまの点については外務大臣よろしゅうございますね。
  285. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御注意は十分承って慎重に対処をいたします。
  286. 和田春生

    ○和田春生君 それでは次の問題に移りたいと思います。  日ソ関係については先ほど来大分触れましたので、これは特に時間の関係もありますから取り上げることをせずに、全般の中で議論をいたしたいと思うんですが、その一つは、これも同僚委員の御質問の中にございましたけれども、この平和友好条約締結調印以来、日本中国の経済協力というものが非常な勢いで過熱ぎみである。どこまで成約してどこまでいくかということについては問題があるにしても、大変な勢いで進んでいるようでございます。ところが一方、中国においては農業、工業、科学技術、軍事と、四つの近代化ということを非常に重視をしている。その近代化のためには、日本や西ヨーロッパからでもどんどん新しい技術も資本も入れなくてはいけない、あるいは兵器も買いたい、これはもう中国の責任者が言っていることは御承知のとおりであるわけであります。しかも、この中国の首脳のだれがどう言ったということは一々もうここであげつらいませんけれども、見解によれば、とりわけ対ソ戦略から見て軍事、国防の近代化というものを急がなくてはいけない、国防の近代化をするためには工業と科学技術というものの近代化が絶対必要である、そういうふうに位置づけていることは明らかな事実だと思うんです。そこで日本が経済協力をするということは、当然この中国の四つの近代化政策、その中に含めている軍事の近代化、充実ということに対して寄与するという結果を招くことになるわけです。それが周辺諸国に及ぼす影響、そういうものについてはどういうお考えをお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  287. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国の現代化については協力を正式に求められました。その際、私は、現代化については応分の協力はしたい、ただし、軍の現代化については協力はできませんとはっきり言ってきたわけでありますが、この問題についても、また軍の現代化と言っても非常に広範にわたってくるわけでありますから、なかなか、いろいろ問題が出てくると思いますが、この点は特に周辺、隣国ソ連の誤解を招かないように慎重に検討してやらなければならぬと考えております。
  288. 和田春生

    ○和田春生君 この点について、いままでの質疑をお伺いしておりますと、衆議院における総理の御答弁等も含めまして、どうも日本政府は経済は平和だと、それから兵器を輸出したり、そういうような軍事力について力をかすことは戦争への道である、日本は平和国家であるから経済的な面においてはやるけれども、そういう問題には手を染めないということでどうも割り切っているというふうに感じられるんです。今日の国際情勢あるいは経済情勢ですね、経済は平和で軍事は戦争だというふうな、そんな仕分けはできませんよ。中国に大きな製鉄所ができれば鉄は戦車になるし大砲の弾になりますし軍艦になる。これはもうすぐ兵器に転換をするわけです。  時間もありませんから一々政府委員の方に答弁を求めませんけれども、これはこういう話があるのは御存じだと思います。木綿をつくるということはこれは平和産業か――そうですと言うんですね。じゃ包帯は軍需品かと、こういう問題がある。これは最大の軍需品になる。しかし、木綿そのものを見ておれば別に軍需品ということでないけれども、いざ戦争に備えるという形になれば木綿こそは最大の軍需品で、恐らくどの国でも統制してしまうでしょう、それは確保しなければどうにもならないですから。何も包帯だけじゃありませんよ。これは何でもなるわけです。特にコンピューターを初めそういうような技術というものは近代的な軍の装備になくてはならないものなんです。むしろオンラインシステムとか、あるいは情報処理システムというのは、それは軍事技術として発達したものの産業への応用だと言ってもいいくらいのものなんです。  したがって、日本は武器を輸出いたしません、経済的に協力をしているんだから、平和的な中国の国家の発展に協力をしているんでありますから別に悪いことはいたしておりませんと言ったって、そんなものは国際的な常識では絶対通用いたしません。武器を買うのがぐあい悪ければ武器になり得るものをどんどん導入すればいいわけです。手っ取り早いところ、でき上がったものを買い入れる。将来のそういうコントロールシステム、誘導システムのためには日本から大型コンピューターのハードウエア、ソフトウエアを含めてどんどん入れていく、それを組み合わしてやっていけば中国の軍の近代化というものはたちまちにしては成らないかもしれない、相当な年数はかかるかもわからぬけれどもできていくわけですか司ら、そういう問題がある。  ですから、中国周辺の国々で、日中平和友好条約ができたということは外交辞令では結構でございますと言っているけれども、そのことによって日本中国の経済協力が中国の軍事力というものを増強するという形になっていったときに、それがアジアの超大国、そういう形でわれわれに対して非常な圧力を及ぼさないかということの懸念がある。それは明らかな事実です。そういう話をわれわれもう幾つも聞いているわけです。どこの何という大臣がどう言ったということはここでは言いませんが言っているわけですね。そういう問題があるんです。ただ日本は、国策として海外派兵はいたしません、武器の輸出はいたしません、こういうことを政策として決めているから分かれているように思うだけで、一たん輸出をされて他国の手に渡ってしまえば、それは鉄だって化学プラントだって、ICの技術とコンピューターだってロケットだって全部これは軍事力に転化をさせられるわけです。その基礎がなければ軍事力の近代化はできないんですよ。そういう点に関して余りにも日本政府はきれいごとじゃないんでしょうか。それでおれはいい子だおれはいい子だと言っておったら、いい子だとは私は思ってくれるとは思わない。むしろ日本自分だけがいい子になって何やっているのか危なくて仕方がないという警戒心をかき立てることになるんじゃないか。  私は日中の経済協力がいけないと言っているわけじゃないんです。日ソの経済協力もいいと思いますよ。だけれど、おれは経済の面だけで協力をしているんだから、軍事的にはノー関係でいい子だという論理はやめた方がいいと思う。特に中国の四つの近代化の最重点に軍事、国防力の近代化というものがある以上、日本のそういうような全面的な経済協力というものは中国国軍の増強に大きなプラス効果をもたらすことになる。それが将来のアジア情勢、世界情勢にどういう影響を及ぼすだろうかというところまで考えながら物を言い、対応を考えてもらわないといけない。私は非常にそういう点いまの日本政府の対応に危険な傾向を感ずるわけですが、いかがでしょうか、外務大臣
  289. 園田直

    国務大臣園田直君) 軍事と経済が相関連してそれが広くなっていることは御指摘のとおりだと思います。しかし、これには国際的な社会通念もあるし、また限度もあるわけであります。ココムの規制等も逐次緩和する方向に向かっておるわけでありますから、いま言われたようなことは注意をしながら国際的に批判を受けないように、これは十分留意をして経済協力を進めていくことはこれまたおっしゃるとおりだと思います。
  290. 和田春生

    ○和田春生君 その点について、日本は兵器輸出はいたしませんといろいろなことを言っておりますが、これは衆議院の方でも取り上げられたようですけれども、大変そういう点で、ソ連はもとよりのこと周辺諸国を刺激するような出来事がありましたね。それは御承知のように、日中平和友好条約が調印をされると真っ先にやってきた中に参謀次長が入っておる。さらに日本のそういう軍事技術のトップランクのOBですね、自衛隊のOBとは言うけれども、現実にそれらの人は全部そういう日本で言えば兵器産業、軍需産業につながるところに仕事を持っているんです。研究とか生産とかの現場に。その人が三人行きましたですね。これは軽く考えるようなことではないと思うんです。金丸防衛庁長官は、もし軍事技術を提供することがわかったら自衛隊法によって処罰されるなんという太平楽を並べておられますけれども、処罰するしないの問題じゃないんですよ。そういう私が指摘したような問題があるにもかかわらずこういうことが行われる。なぜ中国がかつてはあれほど批判をしておった自衛隊を、最近では方針が変わってまいりまして自衛隊大いに結構、こう言っているようですけれども、そういう軍事技術者を招待をしたのか。そこで詳細な軍事機密に関することに対して議論がされたなんて私も思いません。なぜ招待をしたのかという問題がある。しかも、それらの人はOBだけれども、結局、兵器としての完成品ではないかもわからないが、いつの場合でも軍事力に転化できるという高度な日本のそういう研究開発や技術に関連している人々である。そういう人たち友好関係を持つということは、四つの近代化の中では軍事の近代化に結びつく行為としか考えられない。  さらにまた、留学生の問題もそうですね。まずその工学関係、技術関係の者をどんどん送り込みたい。本当に日中双方の友好を増進する、理解を深めるというなら文化系統の人が相当来なくちゃならぬはずなんです。日本からもそうであるべきはずなんです。それが技術畑ですね。そういうような工学とか、そういうような面の者を大量に送ろうというのは一体何か。それは科学技術の近代化と、やはり軍事の近代化というものにつながっている。私はそういうものはありのままに見た方がいい。だから中国はけしからぬ国だと言おうとしてないんです。ソ連だってそうなんです。アメリカだってそうなんですね、ヨーロッパだってそうですよ。平和を口に唱えている国でもイスラエルと、それからアラブ諸国の両方に対してどんどん武器を輸出している国だって実際あるわけなんです。それがパワーポリティックスの世界の現実ではないですか。そういう中で日本だけがきれいごとを並べて、おれはいい子ですと、悪いことはいたしませんと言っていれば、みんながいい子だいい子だと言ってくれるかというと、私はそんなことはないと思うのです。こういう事実があるわけです。  そういう点を踏まえた場合に、やはり日中の経済協力というものは、よほどそれに対する政府の姿勢というものは注意しなければならないし、私はそういう面で余りにも日本政府の態度は安逸である、イージーゴーイングだ。そういうパワーポリティックスの現状というものの認識が欠けているんではないか。ありのままに見ながら、日本はそういう地位に置かれているということを私は十分考えておく必要があると思う。そうした意味で、私は外務大臣にお伺いしたいのですけれども、いままで総理外務大臣も、日ソ日ソ、日中は日中、中ソは中ソ、日米は日米というふうにおっしゃっておりました。私は、この日中平和友好条約締結によって、日本は明らかにそういう国際的な確執、パワーゲームの中に組み込まれたという判断をしているのですけれども、外務大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  291. 園田直

    国務大臣園田直君) いまお話しになったことは私も理解はできます。たとえば中国の軍人が日本に来訪した。これは来訪すれば戦前からでもそうでありますが、これに対する待遇を与え、そして迎えることはそれは当然であって、ソ連からおいでになれば、ソ連からおいでになった方を日本防衛庁防衛庁のお客さんとして迎えるでありましょう。ただし、その時期が余りにも世間に不安を与えるような時期であったということはこれは認めざるを得ない。技術その他についても今後十分留意したいと思いますけれども、しかし、かと言ってこの友好条約によって日本がこの力と力の関係の中に引きずり込まれた、こういうことはないという確信をいたしますし、また確信だけではなくて、今後、いま注意されたような事ごとに留意をしながら日本が実行をやっていくことによって、隣国、関係国の不安を除くように決然として実行をしなければならぬと考えております。
  292. 和田春生

    ○和田春生君 私は、日本がパワーゲームの主役をなす、こういうことがいいと思っているわけではありません。しかし、その中に位置づけられたという自覚を持って、そういう国際的なパワーポリティックスの中で日本はみずからをどう位置づけ、どう行動するかということが日本外交戦略だと考えている。その中に私は入っておりませんという考え方では、現実に対応するはっきりした外交戦略は生まれてこない、私はそういう見解を持っている。戦後、吉田内閣のときに、日本は第一の選択をやりまして日米安保条約を結んだ。日本の防衛は安保条約にゆだねておいて、その中でひたすら国内の復興に努めてきた。いい悪いの批評はいろいろありますけれども、一つの選択だったと思うんです。第二の選択は、池田内閣時代以来の高度成長政策、外にも内にも極力事を構えずに、対話と協調とかいろいろなことを言っておりましたが、ひたすら高度経済成長路線を歩んできた。こういう道を日本は第二の選択としてやってきたと思うんですね。それはそれなりの意義があったと思います。いろいろ問題点もありましたし、われわれも批判を持っている。しかし、そのときには日本の国際的な影響力がまだまだ微弱であって、ある意味で言えば、アメリカの政策とアメリカの軍事力のかさの中にあったわけです。  しかし、今日、日本は自由世界第二の経済力を持っているわけです。世界の最先端の技術を持っているわけです。やる気になりさえすれば、いまの日本の技術で核兵器の開発も可能であれば、世界の最先端を行く兵器の開発製造だって可能な技術を持っている。日本は国の国策としてそれはやらないよと抑制をしているということだけなんですね。そうすると、そういったものからはみ出してしまっている。その日本の影響力というものは非常に大きなものがあるんですよ。先ほど言ったように、経済と軍事というものは本質的に二者択一に区別できないものだということがあるわけです。いずれとも転換できるわけです。軍事的なパワーを背景にしながら経済的な利益を取っていくという古い時代の、植民地時代のああいう露骨なやり方ではなくとも、現にあっちこっちで行われているじゃありませんか。二百海里の時代の海洋分割の様相を見れば明らかな事実なんですね。そういう中で、やはり日本もそういうパワーポリティックスの中に置かれている。そうして覇権反対の条項の入った日中平和友好条約中国の間には結んだ、そうして協力がどんどんどんどん発展していこうという。一方においては、領土問題がひっかかっているからソ連との間にはそういう関係がないという中で、やはりそういうパワーゲームの中にいやおうなしに日本は組み込まれているんだという自覚の上に立って今後の外交方針を考えるべきじゃないでしょうか。  そういう意味で、やはりこの日中以後、ポスト日中の日本外交戦略というものに対しての日本政府の懸念の態度というものに対して、私は非常に心もとないものを感じているんですけれども、先ほどおっしゃいましたが重ねてこれをお伺いしたいと思う。大事な問題ですから、内閣総理大臣防衛庁長官も兼務しているような形でぜひお答え願いたいと思うんです。
  293. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまは力と力の関係の中に日本が入ったと言われますが、私は、力と力の関係をまだ否定できる国際情勢ではない、均衡による平和、抑制力による平和が保たれているわけでありますから、その中に入っておるという自覚は日本が忘れてはならぬと思います。しかしながら、日本がその中に取り巻かれながらも、力と力の関係を緩和の方向へ緩和の方向へ持っていくという努力をする。こういう方向でやるについては、いま御注意の点も十分留意をしながら、かつまた関係諸国とも緊密に連絡をしながらやっていく必要があると考えております。
  294. 和田春生

    ○和田春生君 最後に、ソ連との関係についてひとつお伺いをしたいと思うんです。  ソ連の戦略というものが、いわば暖かい凍らない海を求めてイランの方面から進出しようとしていることは、これはもう否定すべくもない事実であります。そこで、もし仮に日中の次に米中ということで、今度は米中正常化、その際に米華条約が破棄される、そういう事態が仮に起こったとします。そうすると、幾らアメリカ台湾におけるプレゼンスを続けると言っても、それは事実上そこにおるというだけであって、防衛、軍事関係等に関しましては、米華条約を破棄すれば権限がなくなるわけです。そうした場合に、一つの見方は、中華人民共和国の方がいわゆる台湾解放という形で出てくる可能性、こういうものも幾つかの選択肢の中では一つ考えておかなくちゃならぬ可能性があると思うのです。しかし同時に、北方に数十個師団のソ連軍を控えて強圧を受けているわけです。そしてもう軍事力ではとうていソ連にいまのままでは対抗できないという中国が、うかつにここで戦端を構えると、背後のソ連というものを意識しますから、すぐにはなかなか手を出さない。しかも米中関係というものがあるというときに、ソ連の太平洋艦隊が台湾海峡に大挙出動してくる、それは中華民国がそういうことを望むとは思わないけれども、ある日忽然と台湾海峡の澎湖列島にソ連の原子力艦隊が黒々とした姿をあらわしたというような形になれば、これはまさに西太平洋南部における制海権というものはソ連海軍の手に帰することは間違いない。現在の軍事力配置から言ってアメリカは対抗できないと思います。そういうふうになったときに、軍事的なそういうソ連の存在というものを、それは政治的、心理的にもいろいろな圧力になりますから、東南アジア諸国を含めまして、いまのままであってはいけないと思いますね。シーパワーというのは、いろいろな面を含めてそういうものだと思うんです。直接武力攻撃をするとかなんとかいかなくとも、存在を示すことによって、それを背景にして政治的な影響力を与えていく。そうすれば現在アメリカの方を向いている東南アジアの国々も、これは危ないという形でソ連の方に向かわないとも限らない。日本は北と南から相当大きな脅威を受けることになる。これは一つの仮定です。しかし、考え得る選択肢の一つだと思う、軍事戦略的に見れば。  そういうような事態が起こったら、私は日本にとってこれはいろいろな面で非常にむずかしい立場に置かれると思いますね。そういう状態を起こさないようにするためには、日中の次には米中だぞということではなしに、やはり米華条約の存在と台湾周辺の安全というものは、これは中華人民共和国を合法的な唯一の政府と認めるというのは政治的な決定なんですけれども、現実には中華人民共和国の主権は及ばずに、中華民国という国は日本承認していないにしても存在はしている。しかも米華条約がある。韓国と中華民国との関係というものもあるわけですね。そういう状況を見た場合に、やはりこの方面に関するわが国の外交的対応というものは、対中国関係を含めても大変大切で、余り簡単に、日中の次は米中でと、ほいほい日本の方式でいけばいいという感じがどうも日本の中にあるようですけれども、私はやはり日本の将来にとって慎重に検討すべき課題ではないかと思うんです。その点に関する外務大臣見解を承りたいと思います。
  295. 園田直

    国務大臣園田直君) 米中関係が逐次進んでいるような気がいたします。また進んでいると思いますが、一番その中で、私が言うべきことでもないし確信を持っているわけではありませんけれども、いまおっしゃったようなことが一番米国の細心の注意と関心を払っているところであろうとは私も判断をいたします。わが国もこれに対しては重大な関心を払うべきであると存じております。
  296. 和田春生

    ○和田春生君 終わります。
  297. 田英夫

    ○田英夫君 私は、まず長い間の懸案であった日中平和友好条約締結について、外務大臣がいろいろな困難を乗り越えて決断をされ、締結に踏み切られたということに対して心から敬意を表したいと思います。  先ほどから各党、各委員の御質問、そして政府側の御答弁を伺っておりまして、大変批評家めいた言い方で恐縮でありますけれども、それぞれの党あるいは委員の皆さんのいわば国際情勢といいますか、あるいは人類社会の現状といいますか、そういうものについてのお考えあるいは把握の仕方がにじみ出ているという感じがいたしまして、大変興味深く勉強さしていただいたわけであります。  そこで、まず外務大臣に伺いたいのは、いま日中平和友好条約というものが締結をされた現在の状況の中で、日本政府外交基本方針といいますか基本原則といいますか、いま外務大臣の頭の中にある外交基本原則というのは一体何かということをまず伺いたいと思います。
  298. 園田直

    国務大臣園田直君) いまいろいろ御注意を受け、御指摘を受けたわけでありますが、そういう点に留意をしながら、まず今度の締結された友好条約が真に日中が侵し侵されず、しかもアジアの平和と繁栄というものを通じて世界の平和に貢献するんだということの固めはきわめて大事であると存じます。そして、まず第一にやらなければならぬことは対ソ外交の友好促進であると考えます。その次には、何といってもアジアとしては朝鮮半島の平和と安定が必要でありますから、朝鮮半島の平和と安定の方向に向かって努力をする。これが今日わが国がとるべきことではありますものの、しかしそれは局地的な問題でありまして、この問題をめぐって、それが有効に、しかも関係諸国から信頼されるように努力をするということもまたきわめて大事であると考えております。
  299. 田英夫

    ○田英夫君 ひとつこれは、外務大臣として日本外交を預かっておられるお立場からの御認識を伺いたいのでありますが、日本は一九五二年のサンフランシスコ平和条約というもので一つの大きな方向を定めたわけでありますけれども、いま和田委員は第一の選択と言われましたが、私もそのとおりであろうと思います。そこで、当時はいわゆる東西対立、冷戦構造という国際情勢の中で西側の陣営、つまり自由陣営、アメリカの陣営を日本が選択をした、こういうことになると思います。それは同時に反共の立場をとったということも言えると思います。そこで、いま日中平和友好条約というものが締結をされた。外務大臣は次の課題は日ソだと、こう言われたわけでありますけれども、これはともに社会主義、共産主義の国であります。そういう中であえて日中平和友好条約というものを締結をされた、その選択に踏み切られたということは、私はサンフランシスコ平和条約での選択に次ぐ第二の大きな日本の選択と言っっていいのではないか、こういう気持ちがするんですが、いかがでしょうか。
  300. 園田直

    国務大臣園田直君) いろいろ御批判を受けるとは思いますものの、今度中国友好条約締結したということは、東西両陣営が力の関係を進めていって、そして再び争いを起こすか、あるいは共存共栄ができるかという、これに対するかけだという自覚を私は持っております。日本の置かれた立場、これから言っても、東西両陣営の激突があれば日本の生きる道は私はほとんどない。共存共栄という世界、これを何とかしていまの力の均衡による平和から一歩でも共存共栄の方向に持っていくということが日本にとっては一番大事であると私は確信をいたしております。
  301. 田英夫

    ○田英夫君 こういう考え方に同意をしていただけるかどうか伺いたいんです。つまりサンフランシスコ平和条約を締結した当時の国際情勢は、先ほど申し上げたとおり冷戦構造であった。東西対立であった。イデオロギーの対立で世界は動いていた。しかし現在はきわめて複雑であって、中ソの対立ということが一つの大きな焦点であるということでもあらわれているとおり、全く違った国際情勢になっているということ。したがって、いま大臣が言われたこととは違って、東西間の共存ということがテーマではなくて、全然情勢が変わってきているんだという、そういう立場から日本の生きていく道を探っていかなければならない、こういう方向に変えなくちゃいけないんじゃないだろうか。そこに日中平和友好条約というものを結ぶ必然性が出てきたんだ。東西の中の東じゃないんだ、中国が終わったから次はソ連なんだ、それは共に東なんだ、こういう認識では済まなくなってきているというところにいまの国際情勢の現状があるんじゃないか。国際情勢の変化があるんじゃないか。それに対応されたのが今度の日中平和友好条約締結なんだという受け取り方は、これは納得していただけるでしょうか。
  302. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、先ほど申し上げたようなことでありますが、やはり現実問題としては均衡による平和というのがいま保たれておって、その中でも各所でいろいろな複雑な情勢が出ておるわけでありますから、いままでの線から出て新しい中立の道へ進むという選択では断じてございません。平和の均衡の中に国際情勢の変化を見詰めつつ、これが逐次共存共栄の方向に両陣営が緩和していく努力をしたい、こういうことでございます。
  303. 田英夫

    ○田英夫君 いま日米安保条約というものも一方でそのまま存在をする、同時に日中平和友好条約というものがここで結ばれた。けさからも実はこれが両立するのかしないのかという御議論もありました。しかし、現実にここに政府はその両方を選択をされ、事実としてその二つの条約が存在をする。こういうことは東西対立、冷戦構造という状況の中ではあり得ないことですね。あり得なかったことですよ。それが結べるようになった。同時に、やはりアメリカの変化ということもけさから話題になりました。なぜアメリカが変化をしてきたのか。米中関係にブレジンスキーとバンスの間に違いがあるとは言いながら、やはり風が吹き抜けている。風通しがよくなってきている。こういう状況がなぜ起こってきているのか。これを東西の共存とか、そういう受け取り方では説明がつかなくなってきている。そこにきょうのいろいろな議論、また私から言わせれば、大変申しわけない言い方ですが、混乱がいま起こってきているんじゃないか、こう思うんですけれども、そこのところをすかっと、東西対立、冷戦構造という頭ではもうだめなんだと、こういうふうに割り切ったときに全部説明がつくんじゃないでしょうか。日米安保条約と日中平和友好条約を同じ自民党政府が結ばれていて、それが可能であるということが生まれてきた理由がそこに出てくるんじゃないか、別の解釈が必要じゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  304. 園田直

    国務大臣園田直君) 米ソは依然としていろいろな問題で対決をいたしております。しかし、対決をしておるが、まずソ連の方から言いますと、ブレジネフ書記長の根底にあるものは、やはり戦争を起こしたくない、何とかして平和を追求したいという気持ちが強いことは、私は強く確信をし、また西欧の国々でもそういうことは非常にそのように判断しているようであります。アメリカ自体も、またこの冷戦構造からだんだん変わってきておる、こういうことはよく理解をしておるようでありまして、具体的に言うと、中東その他の問題で対決はしておるようではありますが、米ソはお互いにそういう問題についてもわれわれが知らないほど緊密に連絡をしておると私は判断をいたしております。このようなお互いに警戒はしつつも均衡の中に平和を保っていこう、こういうことが冷戦構造から社会が変わりつつあるその過渡期であるから、各所に紛争はありますもののその情勢判断は誤りでないと私は考えておるわけであります。
  305. 田英夫

    ○田英夫君 こういう言い方をした人がいるんです。これはいわゆる革新勢力と言われる側の人ですけれども、いまベトナムとカンボジアが相戦っているということをとらえて、全く不思議なことが起こってきている、かつてともにアメリカの侵略に対して戦ったその両国がいまここで相争っているのは一体なぜだろうか、こう私に質問をした人がおります。この人は、失礼ながら、それは先ほどから私が申し上げているような国際情勢の大きな変化というものをとらえられないで、依然として東西対立、資本主義か社会主義かと、こういうイデオロギーの対立でしか世界を見ていないと、このベトナム、カンボジアの戦いというものは説明がつかなくなる。  しかし、そうではなくて、覇権か反覇権かという立場からこれを見たときには実に明快に説明がつくんじゃないでしょうか。私は中国の三つの世界論をそのままここで受け売りするつもりはありませんけれども、いまの国際情勢というものを覇権に反対をするという立場から見たときに、このベトナム、カンボジアの戦いというものは説明がついてくるんじゃないかと思います。このベトナム、カンボジアの紛争というものを大臣はどういうふうに受け取っておられますか。
  306. 園田直

    国務大臣園田直君) ベトナム、カンボジアの争いというのは、私もあなたと同じような判断をいたしております。
  307. 田英夫

    ○田英夫君 私も実はベトナム戦争のさなかにベトナムを訪れたことがあり、そしてアメリカに対してどういう気持ちであの人たちが戦っていたかもよく知っているつもりであります。しかし現在の情勢というものは、私が訪問したのが十年ほど前でありますけれども、その間の国際情勢の変化、これが実はあのインドシナの一角でみごとにあらわれてきている、残念ながら。こういうことになってくるんじゃないでしょうか。それはいわゆるニクソン訪中というあたりから大きく変わってきて、アメリカはもちろん、アメリカだけでなくて世界が大きく変わってきている、こういうことを認識して対処していかないと、きょう、失礼ながら私は端の方で皆さんの御議論を聞きながら、ある部分で非常によく理解できる部分と、ある部分で全く理解できない部分があるわけです。  そこでずばり伺いますが、冒頭外務大臣日本外交基本原則は何かと伺ったのを別の言い方で、いまや覇権主義に反対をするという、覇権反対ということ、その覇権という意味はもちろん先ほど条約局長答弁をされた、いま世界の通念となりつつある覇権、その覇権に反対をするという、そういうことであると言ってはいけないんでしょうか。
  308. 園田直

    国務大臣園田直君) 少なくとも力と力の関係に抵抗しながら逐次力によって解決される社会というものをなくしていこうという念願は御発言のとおりでございます。
  309. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどのベトナム、カンボジアの問題といい、いまの外務大臣の御答弁といい、私の漠然とかもしれませんが描いている国際情勢の認識と非常に一致をしてきている感じがいたします。そういう点から、昨年の福田総理大臣のASEAN諸国訪問のときにマニラで出されましたいわゆる福田三原則というものを改めて拝見をすると、これは東南アジアの問題、ASEANの問題に限って言われたわけでありますけれども、しかしそこに出てくるものは、いま私が申し上げた覇権に反対をするといいますか、力である地域やある国を制圧するということを許さないといいますか、それに反対をする。日本自身ももちろん覇権主義はとらない。この福田三原則と言われるものの第一は、平和に徹して軍事大国にはならない。これは今度の日中条約の中でも確認をされていることでありますけれども、さらに第二、第三をいわば眼光紙背に徹して読めばこれはそういう意味と受け取れる。そういう意味で、私はこの福田三原則は覇権主義に反対をする精神がにじみ出ている、こういうふうに受け取りたいのでありますが、これはいかがでしょうか。
  310. 園田直

    国務大臣園田直君) 福田総理がASEANで出された三つの項目、これをASEANの国々の人々が意外に歓迎したのはその点にあると存じております。
  311. 田英夫

    ○田英夫君 これは八月十八日に日中平和友好条約締結をされた直後の外務委員会で、大変短い時間でありましたけれども私の中国での体験を御披露いたしました。つまり、いま中国人たちが依然としてあの戦争中の日本軍の侵略行為に対して厳しい姿勢をとっているということを申し上げたわけでありますけれども、ASEANの人たちもまた同様であります。ASEANでこのようなことを日本総理大臣が言われたということの意味は、いま外務大臣が言われたとおりまことに意義がある。私は、いまや自民党政府外交方針は、覇権主義に反対をするという言い方をしてもこれは決しておかしくない。日米安保条約が一方であり、日中平和友好条約がここに結ばれたこういう現実の上に立っても、なおかつこれは覇権主義に反対をするという意味で表現をすれば、私どもの考えと一致をする部分が非常に多い、こういうふうに実は受け取っているわけであります。  そこで、今度の日中平和友好条約の性格といいますか、この点についても、これは衆議院以来ずっといろいろな点から皆さんが議論をしてこられました。つまり講和条約的な性格があるのかどうかという点ですね。これはもう御議論が済んだところでありますから、もうこれ以上重ねて申しませんけれども、いま私が申し上げた中国人たちは、たとえば無錫というところの近くの農村を訪れたときに、その農村の広場には「怨恨の場」と黒い板に白い字で書かれている。その村の外れのほら穴の入り口には「血涙の渕」と書いてあったという話をいたしました。そうした気持ちをやはり私どもは戦争を知らないわれわれの同胞に知らせながら、改めてこの日中条約というものの意義を考える必要があるんじゃないだろうか。なぜか私は、いま多くの方々がかつてのあの戦争についての反省ということを私どもが申し上げると、若い人たちを含めて決していい顔をしない、あるいはそのことを避けようとする。いい顔をしないのはあたりまえです。自分たちのいやなことなんですから。しかし、これはやはり政治をあずかる者としてはとるべき態度ではないと思うし、今度の日中平和友好条約の性格は、条約論として条約局長が言っておられることも私は承知をしておりますけれども、条約論として日台条約で戦争状態は終わったとか、あるいは日中共同声明によって戦争は終結したとかいうような、そういう条約論の問題ではなくて、もっと政治的な高い立場からこのことを考えるべきではないか。つまり、これはいわゆる講和条約的な、平和条約的な要素を、文章の上にはなるほど今回の条約は一言もそういう問題を含んでおりませんけれども、そういう要素を持っているんだということを改めて自分たちに言い聞かせるべきではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  312. 園田直

    国務大臣園田直君) 条約論についてはすでに議論されたところでありますから、事務当局の言ったことを私はここで覆すつもりはございません。ただ、友好条約を契機にして過去を振り返りつつ隣国の繁栄に協力をするという重大な責任があると考えます。  なおまた、私は現実にこの前、ASEAN外相会議に参りましたが、そのとき意外にASEANの態度が変わってまいりましたのは、冒頭に就任早々であるからあいさつを許してもらいたいと言って言いましたことは、皆さん方は聞かれることはいやでありましょう、私も言うことはいやであります。しかし、この前、過去に起こした戦争というものを抜きにしては本当のASEANの関係は出てまいりません。こういうことから私は二つの点を反省すると言って反省したら、逆にASEANの方から、そこまで思い詰めるなと言わんばかりの発言があって、いわゆるゆかた外交というものができたと私は微力ながら喜んでいるわけでありますが、中国に対しましても、私は遺憾の表明をした後、さらにそれから進んで、悠久何千年の歴史を見るとお互いに興亡盛衰があって、そして強い国が弱い国に脅威を与え、あるいは弱い国がまた脅威を受ける、やってきたことは日中だけではなくて世界の歴史であります。ところが、それではもうこの平和に向かうか混乱に向かうかという、人類が生き延びていくかという――世界を切り抜ける時代ではないと思う、この行き詰まった世界に人類がどうやって生き延びていくか、新しい人類の生存の秩序をつくるのが、そのスタートをつくるのがこの日中友好条約だと思う。そこで、たとえばヨーロッパでは興亡常ならざるフランスやドイツがいまや過去をりっぱに清算して提携をしておって、そしてECの主導権を握っておる。主導権を握るつもりはないが、われわれはわれわれで十分反省をし、またあなた方もひとつお互いに隣国の繁栄に協力をし、その繁栄を分かち合うというところに自国の繁栄を探す。こういうつもりで私はやっておりますという趣旨のことを申し述べましたら、これには非常に理解を示されたわけでありまして、私はそういうつもりで今後やっていくべきだと存じます。
  313. 田英夫

    ○田英夫君 外務大臣が今回中国との交渉の中で、戦没された中国人たちに対して哀悼の意を表されたということを聞いております。あるいはいまのASEANの例も引かれましたけれども、こういうことの積み上げこそが実は日本外交にとってきわめて重要である。  いま有事立法の問題などが日本の中でしきりに言われている。私は有事立法のことについて、憲法を改悪してまでこれをやろうというような声が大きな声で言われているということに対して非常に私は憤激を覚えるのです。つまり、先ほど申し上げた中国人たちの気持ちあるいは朝鮮、韓国の人たちの気持ち、東南アジアの人たち、こうした日本戦争の被害者たちに対して、いま日本が軍備を強化して戦争にいまにも取り組むんだと言わんばかりのそういう発言というものをここでまず慎む、これが非常に重要ではないかという気がいたします。  そこで、繰り返して申し上げますけれども、いままでの日本外交というのは、サンフランシスコ平和条約での一つの選択以後、実は、具体的な問題については幾つかの誤りを犯さざるを得なかった。つまりそれは、あるいは日本だけの責任ではないかもしれませんけれども、朝鮮が南北に分断されているという問題、中国台湾という存在を抱えているという問題、こういう中で、たとえば中国について言えば、一九七一年の国連総会での中国の代表権問題では明らかに日本は誤りを犯しました。いま朝鮮の問題についても、先ほどから私が言っているような、大きく転換をしている国際情勢の中で再び誤りを犯してはならない、繰り返してはならないと思うんです。  そこで朝鮮のことを伺いたいのですけれども、朝鮮が一つか二つかという議論がずっと続けられてまいりました。私も実は議員になって以来、この外務委員会で朝鮮問題を何十回か取り上げてきた中で、そのノートは全部とってあります。改めて最近それを見詰めてみました。繰り返して見てみましたが、この一つか二つかという問題を歴代の外務大臣に伺ってまいりました。しかし、実は残念ながら明快な答弁一つもないんです。園田外務大臣は、いまこの新しい選択を日本の責任者としてされたこの状況の中で、朝鮮の問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  314. 園田直

    国務大臣園田直君) 新しい選択をしたとおっしゃいましたが、私自身は諸般を考慮して、情勢の変化に応じてやっているだけでありまして、新しい道を選択したとは考えておりません。いろいろ御批判あるいは見解の相違があると思いますけれども、やはりアジアにおける真の平和が来るのは朝鮮半島が一つになるということがこれは前提条件であります。したがいまして、いま一つか二つかということは、現職の外務大臣でありますから申し上げませんけれども、朝鮮半島は一つのものでなければならぬということは私ははっきり申し上げられると存じます。
  315. 田英夫

    ○田英夫君 いま言葉の端で新しい道ということではなくて、情勢の変化に応じて対処したんだ、それはまことにそのとおりでむしろ私の方が訂正をすべきかと思います。まさに世界が新しい情勢になったからそれに対応されたんだ、こういう御認識を持っておられるというふうに、これは私もそうなんで、大変その点は言葉の問題として私も訂正をいたしますが、朝鮮は一つだ、こういう前提に立ったときに、先ほどから申し上げているような情勢の変化というもの、つまり東西対立という状態からいまの新しい状態に変わってきたというこの情勢は朝鮮の統一にとって好ましいプラスの方向なのかマイナスの方向なのか、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  316. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は必然の変化と申しましたが、私、武道をやっておりますが、武道で、よろいからかみしもに変わり、差す刀も変わってきた。これは必然の変化、こう言っているわけでありますが、そういう意味において、社会の必然性において変化をした、こうお受け取り願えればありがたいことでございます。  なお、友好条約締結について、朝鮮の南北の紛争が悪い影響を与えて激化する方向にはまいらぬと私は考えております。むしろどのような微力のものかもわかりませんけれども、いい方向へ影響を与えたと私は考えておるわけでございます。
  317. 田英夫

    ○田英夫君 私は、日中平和友好条約締結日本政府がされたというそういう情勢、それが締結をするというそういう必然性といいますか、その情勢こそがまさに私は朝鮮半島が一つになる方向にとってまことに好ましい方向がいま出てきている。つまり東西対立、冷戦構造であるならば、資本主義、自由主義の陣営の韓国と、社会主義、共産主義の陣営の朝鮮民主主義人民共和国というものがこう相対立している状態は、これは容易に一つになりにくい。ところが、いま世界はイデオロギー対立の時代ではなくなった。もちろんイデオロギーがそれぞれあって、ぶつかり合っていることも事実であります。しかし、それはかつてのような資本主義と社会主義の対決的な対立という形だけではない。二つの世界ではないんだというそういうことからすれば、第一朝鮮が分断されたのはそもそも東西対立のなせるわざですから、その東西対立という情勢が変化をして違った形になってきているということは、これは朝鮮半島が一つになるという意味で、たとえば金日成主席がかつて提案をした高麗連邦というようなことをやるにしても、イデオロギーが全く異なっているのに一つになんかなれるかという、そういうことはいささか状況が変わってきた、こういうふうに受け取っていいか、その点はいかがでしょうか。
  318. 園田直

    国務大臣園田直君) 私もいまや資本主義と共産主義が対決をして、人類の生きる道をなくする時代ではなくて、両方がお互いに相互理解をしてやっていくべき時期だというふうに考えております。そういう意味で、やはりイデオロギーが違えば話はしない、自分の方が正しくて相手は悪い、こういう考え方はやや教条主義的であって、この点はお互いに友好の情を持って話し合う必要があると考えております。
  319. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、けさもお話がありましたけれども、十一月に朝鮮の統一のための世界会議、第一回が昨年の二月だったですかブラッセルでありました。私も出席をした一人ですけれども、今回東京で第二回が開かれるということで社会党、共産党、総評の皆さんが大変努力をしておられる。この御努力には私は大変敬意を表しますし、第一回に出席した一人として、立木委員もそのときに行っておられたわけでありますが、重大な関心を持っているわけです。  問題は、ただこういう言葉が韓国の民主化運動をやっている人たちの間にあるのを御披露しておきたいと思いますが、一民主化、二統一。これに対して一統一、二民主化。こういう言い方が韓国の民主化運動をやっている人たちの間で、つまり朴政権に反対をしている人たちの間で言われているんですね。韓国の人たちは一民主化、二統一でなければならない、こう言っているわけです。つまり韓国の民主化をやらなければ朝鮮の統一はあり得ない、こういうことを言いたいわけであります。この違いというのは実は非常に微妙であり重要なんですね。私はこのことをひとつ政府も朝鮮問題に取り組まれる中でぜひお考えいただきたいと同時に、いま世界会議というものをやるに当たって、私どももあるいは政府の皆さんも含めて日本人が考えなくちゃいけないのはそれに関連をしたことじゃないか、こう思うわけです。いま東西対立、冷戦構造というものから大きく変化して、幸いにして統一ができる情勢が次第に醸し出されてきている中で、ここでイデオロギーを持ち出して、そのイデオロギーのどっちがいいかということを朝鮮半島に持ち込んではならない。つまり冷戦構造を朝鮮半島に持ち込んではならないということがまず第一に非常に重要だろうと思います。  同時に、アメリカの中でも最近議論が高まっているように、あの朴政権のような民主主義を否定するようなやり方が許されていいだろうかという問題についても、この際イデオロギーというものを離れて民主主義という立場から冷静に判断を下す必要があるんじゃないか。これが朝鮮半島の平和、つまり統一ということについて非常に重要な問題になってきているということです。ですから、私はこの際、第二回の世界会議を準備しておられる皆さんにもお願いをしたいことは、朝鮮民主主義人民共和国の代表を日本に入れる問題は上田委員も取り上げられた。私も、ぜひ政府はこれは大きなアジアの平和、世界の平和という意味からお考えいただきたい。入国を認める方向でお考えいただきたいと思います。同時に、主催者の側にお願いしたいといいますか、これは政府も見詰めていただきたいことですが、韓国の一民主化という問題について熱心にやっておられる方々をこの会議に重要な一つの参加者として加えるということを忘れてはならない、このことです。これは第一回のブラッセル会議のときに、主としてヨーロッパ、そして非同盟諸国から参加をしたアジアやアフリカの国々の代表が、終了後、口をそろえて私に第二回はぜひ東京でやってくれということを言った中で言ったことです。これをぜひ政府も、これから日中後朝鮮半島が非常に重要だとさつき大臣も言われたわけですが、ぜひこういうことをお考えいただきたい。まさにこれからは朝鮮半島の問題も、イデオロギーにとらわれて北は社会主義だからだめなんだというようなきめつけ方を自民党の皆さん、政府の皆さんもしないでいただきたい。朝鮮半島に冷戦構造を持ち込んではならぬ、これが日中平和友好条約を結んだと同じ時代の変化に即応していくという、さっき大臣の言われた方向の朝鮮半島への適応じゃないか、こう思うんですが、大臣のお気持ちを伺いたいと思います。
  320. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島のことに対する問題は、私は現職の大臣でありますから、第三国に対する批判は御意見を承るだけにしておきます。  なお、いまの入国の問題でありますが、これは御承知のとおりに法務省が所管でありまして、法務省はなかなか法律と慣例をかたく守るところでありまして、非常に困難ではありますけれども努力はするつもりでおります。
  321. 田英夫

    ○田英夫君 ぜひ朝鮮との交流という問題も重要なテーマとしてお考えいただきたい。それは一時といいますか、一時代前は、つまり冷戦構造時代は私どもの対応も北との国交正常化、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化ということがわれわれにとって重要なテーマであったことは事実であります。しかし私は数年前からこれは全く事情が変わってきていると思います。朝鮮民主主義人民共和国の側も日本との国交正常化ということは二つの朝鮮の固定化に連なるということで、その道はとらないということをすでに数年前からはっきり言ってきている。これはむしろ北側が大きな状態の変化をきわめて鋭敏に認識をしているからだと思います。そういう状態を踏まえて考えたときに、私はなおさらのこと、国交がない状態の中での朝鮮民主主義人民共和国のいろいろな階層の人たちとの交流あるいは日本人たちが向こうへ行くという交流、これが非常に重要になってくると思うんですが、法務省の方はおいでになっていると思いますが、ことしに入ってからでもいいですし、去年一年の実績でもいいですが、いまの状態についてお答えいただきたいと思います。
  322. 黒岩周六

    説明員(黒岩周六君) お答えいたします。  北朝鮮からの来日者数は、五十二年におきましては百三十三名、五十三年、これは八月まででございますけれども二百二十四名となっております。  他方、日本人の北朝鮮向け渡航者は三百八十七名、五十二年でございます。五十三年は八月までですが三百九十二名となっております。  なお、在日朝鮮人の北朝鮮向けの再入国者数は五十二年が八百三十一、五十三年が同じく八月まで八百五十二名となっております。
  323. 田英夫

    ○田英夫君 いまの数字で大臣もおわかりいただいたと思いますが、かたいという法務省も若干の数字上の変化は認めておられるわけでありまして、これは私どもにとってみればまだまだ不十分、何百という数字であっては不十分なのでありますし、中身の問題もありますが、この点はひとつ、先ほどから申し上げたような日中平和友好条約締結をされたというそのことの意義は、実は単に日中間の問題だけではなくて、世界情勢の変化に即応されたんだという評価を私どもはしているんでありまして、その線をぜひ推し進めていただきたい、こう思います。  そこで、もう一つ日中の具体的な問題として、これも八月十八日の外務委員会平和友好条約締結直後に御提案を申し上げたわけでありますが、科学技術協力協定を結ぶべきではないか。もちろん、先ほど和田委員が言われた懸念というものを私も無視するつもりはありません。しかしまた、先日の外務委員会ではかつての戦争への反省、いわゆる賠償請求権を放棄してくれたという問題について関連をして申し上げたんでありますが、その関連の問題とはまた切り離しても四つの近代化の中の重要な一つのテーマである科学技術協力協定を結ぶべきではないか、こういう御提案を申し上げたところ、新聞報道などによりますと、科学技術庁は来年二月に訪中代表団を派遣するという御計画もある、こう聞いております。まず大臣に伺いたいのは、この協定を結ぶ方向なのかどうかですね。
  324. 園田直

    国務大臣園田直君) 鄧小平副主席からのお話で、一番重要な点として言われたのは科学技術が非常におくれておる、したがって科学技術の協力を求めたいという発言が正式にあったわけでありまして、したがって日本の科学技術庁でもこれに対応していろいろ交渉を進めていくと考えます。向こうからそういう話があったら、改めてそういう情勢も含めて検討したいと考えます。
  325. 田英夫

    ○田英夫君 科学技術庁がおいででしたら具体的にお答えください。
  326. 山口和男

    政府委員(山口和男君) 科学技術庁の考え方について申し上げたいと存じます。  中国日本との科学技術協力について大変熱心であるということは御案内のとおりでございますが、わが国としても日中両国で科学技術協力を推進するということにつきましては、相互の科学技術発展にとって裨益するところが大きいというように考えるわけでございます。ただ、現状では中国の科学技術の事情等につきまして必ずしもまだ十分把握されていないという面もございます。また中国側が日本との科学技術協力につきまして、どういった分野について協力を望んでいるかというような点も十分把握する必要があるわけでございまして、当面専門家の交流というようなことを通じまして中国の科学技術事情を把握して、また交流の実績を重ねていきたいというように考えておるわけでございます。  協定の必要性につきましては、協定がないと科学技術協力ができないということは必ずしもないわけでございますけれども、ただ、協定があることによって科学技術協力の円滑な実施が図れるというような必要性が認められるかどうか、そういった場合には協定の問題も含めて中国側と十分話し合いを進めていく必要があろうというように考えておるところでございます。
  327. 田英夫

    ○田英夫君 いろいろ心配をする気持ちはわからないではないのです。つまり軍事面に回るのではないかとかね。これは政治の問題ですから、ある問題を進めようとすればいろいろ配慮しなけりゃならぬ点が出てくるということはよくわかります。しかし、私が申し上げたいのは先ほどの平和友好条約という問題、平和をとっても友好ということをとっても、まさに日本として中国といかに平和友好的に協力をするかということが重要なんで、その中で相手側の事情からすれば科学技術の現代化というものが非常に望まれている。そこで、四月に訪中して耿ヒョウ副首相と会いましたときにこの問題を私どもの気持ちとして話しました。これは大変感謝するという答えが返ってきておりますし、いまの大臣と鄧小平副主席とのお話の中でも、そういう要望があったということでありますから、改めて私はこの科学技術協力協定を推進していただきたいということをこの際申し上げておきたいと思います。  次の問題ですが、私どもはやはりあの戦争の反省の上に立つということが、繰り返して申し上げますが非常に重要だと思っているわけです。その一つのあらわれとしていまの憲法がある。こういう状態の中で、しかもいまの世界情勢というのは、残念ながらいわゆる軍縮とか核をなくすとかいう方向からすれば、前向きの方向にはない。去る五月にニューヨークの国連本部で開かれました国連軍縮総会に私ども社民連は一つの具体的な提案をいたしました。これは政府にもその趣旨を御説明いたしましたから御存じかと思いますが、つまり一つはアジア・太平洋非核武装地帯をつくるべきである。これが一つ。もう一つは非核武装同盟、非核同盟と言ってもいいと思いますが、こうしたものを核を持っていない国々の間で締結をすべきではないか、大きくその二つ。あと国連の機構の中の問題なども提案をいたしましたが、大きくは私どもの考えはその二つに集約できると思います。  まず第一に、アジア・太平洋非核武装地帯という問題は、従来から社会党を初め日本の中で幾つかの政党、団体などでも取り上げられてきた問題でありますけれども、園田外務大臣もこの点については発言をしておられるようであります。改めて伺いたいんですが、こういうお考えはおありになるでしょうか。
  328. 園田直

    国務大臣園田直君) そのようなことを私が軍縮特別総会で私の提案として述べたことは御承知のとおりであります。しかし、アジア・太平洋地域にいますぐそういう地帯が設定できるについてはまだ条件がなかなかそろっておりませんが、そういう方向に向かって逐次個々に努力をしていきたいと考えております。
  329. 田英夫

    ○田英夫君 私も実はワルトハイム事務総長を初め、国連でこの問題を話しましたときに、いますぐにできる状態にはないと思うということを言ったわけです。また同時に、ワシントンを訪問してアメリカ人たちにもこのことを話しましたが、アメリカ人たちの中にも賛否はあります。その否定的な方向の中には、いわゆる中南米トラテロルコ条約は、つまり核保有国との地理的関係があってできたけれども、あなた方のところはまあ自分たちを含め――アメリカを含め、ソ連中国という核保有国、核大国の間にはさまれているという状態の中で大変むずかしいんじゃないかという否定的な、これはアメリカの議員ですが、そういう意見を述べた人もあるわけであります。なかなかいろいろな問題があると思いますが、これはやはりいろいろと積み上げていかなければならない問題であるということは私も認めます。  そこで、これはいわゆる中南米の非核武装条約、トラテロルコ条約の中で示された一つのあの知恵ですね、つまり、核保有国がこの条約に署名をしなければ発効しないという、これは一つの知恵だと思います。それでアメリカあるいは中国はいち早くこれに署名をいたしましたけれども、ソ連がどうしてもこの署名をしないためにこの条約は効力を持つことができなかった。ようやくことしになって、たしかことしと思いますが、ソ連が署名をしてこの条約は発効しているのであります。そうなりますと、私は中国が核実験をしたことについて大変残念に思うと同時に、中国が第一回の核実験以来述べてきたそのことを私は一つの大きなよりどころにして、まず核保有国の中で、いま平和友好条約締結したこの中国、そしてアメリカ、こういうところと日本政府はこの問題について話し合っていかれる用意があるかどうか、この辺が一つのスタートになるのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  330. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国は、核はみずから使用しないということをしばしば言明しておるわけであります。かつまた、いま両国の中に、第一に両国の覇権は行わないという話も出ているわけでありますから、そういう雰囲気は出てきたと思います。そこで慎重に検討をしながら、逐次段階を踏んでこのような事態をつくることが真にわれわれの願う平和の社会をつくることでございますから、御意見は十分承って考慮したいと考えております。
  331. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つの問題、いまのは地域を限った問題でありますけれども、これもやはり時間をかけ世界に呼びかけていくという問題でありますから、大変いろいろな困難はあることを承知の上でありますが、やはり日本という立場からすれば、核を持たない国々が自分たちは絶対に核を持たないといういわゆる日本の非核三原則、この精神を柱にした同盟条約というもので結ばれる、そういうことがもし実現できるならばこれは大変望ましいことではないかと思いますが、この考えについての大臣のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  332. 園田直

    国務大臣園田直君) 逐次条件の整うにつれてそのようなことを目標にしていくことは、これはよいことであると私も考えます。
  333. 田英夫

    ○田英夫君 こういう問題というのは従来やや、まあはっきり言えば、政府というような立場の責任をとらないで済む政治勢力が言いっ放しのようにして言ってきたきらいがあるんじゃないだろうか。戦後いろいろな平和運動とか提案とかいう中で、実は実行を伴わなかった、あるいはせいぜい国内で叫ばれるという形で言われるだけであった、こういう気がしてならないのでありますが、いまや大きな世界情勢の変化の中で、日本は責任ある立場政府がこういう問題に取り組んでいける状態になってきたんじゃないかという、そういう気がするんですね。だから私はあえて、われわれ自身がいわば何か人気取りのようにこういうことを言っているだけではなくて、たとえば私どもの立場からすれば、世界の中で同じような考えを持っている政党に訴えることもできるでしょうし、そういうことも実は始めているつもりです。  しかし、やはりこういう問題は、実は先ほどから申し上げていることはわれわれの考えと自民党政府の皆さんの時代認識というものにそんなに大きな違いがないのじゃないかということを基本に持ちながら申し上げているんですけれども、そういう意味から、この二つの提案というものについて前に進むような方向で実はやっていただきたい。第一の非核武装地帯の問題については、大臣もすでに国連の場というところで提唱されたわけでありますから、もしこれを前向きに実行、実現の方向に向けてされないならば、先ほどから私が日本の国内で政治勢力が言いっ放しで言ってきたと同じようなことを日本政府世界に向かってやることになってしまうわけでありまして、これはさっきいい子になるという言葉が使われましたが、つまりいい子になろうとするにすぎなくて、結局日本は言うだけじゃないかということになってしまうわけですね。ですから、アジア・太平洋非核武装地帯というようなことになれば、当然中国はその中の非常に重要な対話の相手、これを実現するための対話の相手になる。アメリカは太平洋という地域に核を持っているわけですから対話の相手になるという仕組みになってくるので、その辺のところを改めて聞かしていただきたいと思います。
  334. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が国連軍縮特別総会で言いましたのは、私の決意のみならず世界に対する私の誓約であると考えております。ただ正直に言って、ドイツの指導者と話したときに、ドイツの指導者と私の考えることは完全にいろいろの問題で一致をする。ただ残念ながら、ドイツの方は、それをドイツの指導者が実行に移し、世界に呼びかける場合にドイツの世論というものは大多数がこれを支持しておるが、わが日本ではなかなか足元の方でいろいろ異論が起こってきて世論の統一ができないことは、これは日本がドイツに一歩おくれておる、こういうことを私は言ったことでありますけれども、私は国内においてこれを言わずに軍縮総会の場所で言ったことはそういう意味だと解釈していただいて、ただ国内に対する人気取りだとか言いっ放しだということは、微力ではありますし、速度は遅いかもわかりませんが、その点は、世界の国際会議の場所で言ったことは責任を持って、微々たる速度であっても実現の方向に努力するということは改めて申し上げます。
  335. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、やや日中と関連がないような問題かもしれませんが、日中平和友好条約締結されたということで、いわゆる戦争の処理という問題が、議論があるにせよとにかくここで一つ大きな問題が終わりました。ソ連との問題は実はまだ片づいていないわけであります。あと朝鮮民主主義人民共和国という問題が一つ残っている。  ところが、一つ片づいたようでいて片づいていない、小さいと言っては大変失礼になりますけれども問題があります。それはミクロネシアの問題です。一九六九年に日本アメリカの間でミクロネシア協定、通称ミクロネシア協定と言われているものが結ばれた。実は、これは、いわゆるミクロネシア地域人たちの頭越しに、彼らには何の相談もせずに日本アメリカ政府との間でこれが締結をされた。何と日米双方五百万ドルずつ、当時の金で日本は十八億円という全くわずかな金額であの太平洋戦争中に膨大な、莫大な被害を受けたあの島の人たちの戦後処理をしたことになっているわけです。このことについては、実は以前に何回かこの外務委員会で私は取り上げた。協定そのものは、残念ながら自民党の多数によってすでに可決をされて発効しているわけでありますが、これではだめですよということを申し上げた。その後、実は三年前に現地に行ってきました。つぶさに島の人たちの気持ちも聞いてきた。引き続き、島の人たちの気持ちからすれば、これはあの協定では済みませんよということも、また外務委員会で申し上げてきた。  先般、七月にワシントンに参りましたときに、国務省の関係の皆さんにも、ニューサム国務次官にも会いまして、このことを改めて提起してきました。私は日本政府を困らせようと思ってこの話を持ち出しているわけではありません。つまり日本があの戦争の責任を感ずるという、先ほどから申し上げている日中でもそうですけれども、あらゆる問題についてこれはきれいに処理すべきだ、心から処理すべきだという心情から申し上げたいのですけれども、実はあのときの協定で、日本は物資、役務などのつまり現物で十八億円分、五百万ドル分を支払う、アメリカはキャッシュで補償的に支払う。たとえば亡くなった人あるいは家を焼かれたということについて、それぞれ細かな規定を設けて住民から要求を提出をさしたわけであります。ちょうど私が参りましたときにはその要求が集約をされている状況にあった。ついに集約をされた結果を聞きますと、五百万ドルなどとは全くけたが二けた違うわけです。一億を超したそうであります。それをアメリカ政府は削りに削って現在二千四百万ドルというところまで削ってきているわけです。その削り方は、アメリカ政府がこの協定に基づいておやりになったことですから私どもがとやかく申し上げることではないかもしれない。しかし、アメリカは現在に至るもなおかつこのあふれてしまった金額をどう処理したらいいか、議会の反対などもありまして支払えないでいるというのが実情じゃないでしょうか。そしてアメリカ議会の一部には、日本はあのときに五百万ドルということでもう処理したけれども、この二千四百万ドルをまた半分に割って千二百万ドルを日本に支払わしてはどうかという意見もあることは事実なんです。つまりこの問題は、私が申し上げたとおり再燃してきているわけです。それは余りにも本人たちの声も聞かずに、被害を与えた側の両者が勝手に相談をしてやったからじゃないでしょうか。こういう戦後処理というのがあっていいだろうか。しかも、かつては日本は委任統治領として責任を負っていた地域であるはずです。  こういうことを考えますと、この地域の問題というのは、日中問題がいま解決されたこの状況で改めて私はお考えいただきたい。アメリカ政府のたとえばニューサム国務次官も初めて聞いたと、こう言って驚いて関係の人を呼んですぐそこで聞いておりました。大臣も恐らく、私は失礼ながらこのことは初めてお聞きになったろうと思います。私はここで政府を困らせるつもりで申し上げるのじゃないので、協定というものが二国間でできてしまっている以上、そのいい悪いはいまさら言ってもしようがないわけです。ですから、たとえば国際協力事業団というようなものができているのですから、その新しい仕事としてこれを取り上げるということも可能ではないかと思います。一つの提案として申し上げますが、いかがでしょうか。
  336. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ミクロネシア問題に関しまする請求権の取り決めにつきましては、私ここにテキストは持っておりませんけれども、数年前に日米間で取り決めができまして、いま先生御指摘のように、日米双方とも五百万ドルずつの支払いということをもって、これにかかわる請求権の問題は、わが方にとりましては最終的に解決された、こういう形になっているわけでございます。したがいまして、先生もいま御理解を示されましたように、この協定をさらに手直しするということはできない立場にあるわけでございます。  なお、ただいま先生が御提案になりました国際協力事業団を通じての何らかの協力という問題につきましては、私は主管の者ではございませんけれども、主管局の方にも先生の御提言を伝えておきたい、かように存じます。
  337. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおり、私も初めて聞いた話であって申しわけございません。法的にはいま言ったとおりでありますが、たとえば他の国々に対しても請求権を放棄した、賠償を放棄した国々等には経済協力その他で考慮しつつ御恩返しというか、やっているわけでありますから、いまのミクロネシアの問題もよく調査をして、その実情を把握をして、国際協力事業団でやるなり、あるいは経済閣僚の方で何とか心情的に報いができるように考えてみたいと思います。
  338. 田英夫

    ○田英夫君 最後に一つソ連との関係の問題で、いわゆる北方領土の返還と平和条約の関係ということできわめて困難な状況にあることはこれはもう周知の事実でありますけれども、これに対してソ連側は善隣条約というものを持ち出してきている、しかもそれを一方的に発表してしまった。こういういきさつは衆参の今度の審議を通じて大臣からもお話がありましたが、まことに遺憾な状況だと思います。信義の上からも。したがって、日本側が平和条約の日本案というものを向こうに渡されているけれども、これも両方預かったままになっている。日本はその内容について向こうが一方的に発表したからといって、こっちが日本案を発表するつもりはない、こういうお答えも衆議院であったと聞いておりますが、一つだけ、これはもうお答えにならなければそれで結構なんですけれども、この日本案の中に当然北方領土の返還の問題が含まれていると思いますが、そのとおりかどうか。
  339. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) そのとおりお考えいただいて結構でございます。
  340. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は、政府のお立場もよくわかりますからこれ以上の内容について伺うことを避けますが、当然、これは歯舞、色丹、国後、択捉という島を挙げてその返還の要求をする、こういう状況になっていると理解をいたします。  時間がなくなりましたが、私は繰り返して申し上げたいのですけれども、今回の日中平和友好条約締結というものが、大臣が言われたとおり、国際情勢の変化に応じてとった措置なんだということを私は大変意義の深いお言葉として受け取りたいと思います。残念ながら、これはいまの日本だけに限ったことではないかもしれませんけれども、政治の動きの中でもう過去のものになった冷戦構造というものが頭から抜け切らないで、さまざまの政治を見ようとする動きが政治の中でもジャーナリズムの中でも、いまだに非常に数多くあるというそういうことの中で、今回の政府がとられた日中平和友好条約締結ということの意義は私は非常に大きい、それを繰り返して申し上げますが、冷戦構造というものにとらわれないで新しい世界の情勢に対応してやったんだ、こういうふうに私どもは受け取っているということを最後に申し上げて質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  341. 園田直

    国務大臣園田直君) 数々のいろいろな御意見を承って感謝をいたします。今度できた友好条約、私の不手際もあり、いろいろ憂慮すべき点もあると思いますが、私が締結をした真の心情を理解をいただいたような気がいたして心から感謝をいたします。
  342. 菅野儀作

    委員長菅野儀作君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後七時十九分散会