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1978-10-03 第85回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月三日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    井上  裕君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       白浜 仁吉君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       玉沢徳一郎君    浜田 幸一君       藤田 義光君    古井 喜實君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    井上 普方君       石野 久男君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    川俣健二郎君       小林  進君    沢田  広君       藤田 高敏君    武藤 山治君       横路 孝弘君    坂井 弘一君       谷口 是巨君    長谷雄幸久君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    河村  勝君       寺前  巖君    東中 光雄君       藤原ひろ子君    大原 一三君       小林 正巳君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農林水産大臣  中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君         国 務 大 臣 牛場 信彦君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         総理府人事局長 菅野 弘夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁大都市圏         整備局長    堺  徳吾君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁次長   米山 武政君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省立地         公害局長   伊勢谷三樹郎君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         労働大臣官房長 関  英夫君         労働省労働基準         局長      岩崎 隆造君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      石井 甲二君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     井上  裕君   根本龍太郎君     玉沢徳一郎君   松野 頼三君     浜田 幸一君   藤田 高敏君     沢田  広君   浅井 美幸君     谷口 是巨君   矢野 絢也君     長谷雄幸久君   東中 光雄君     藤原ひろ子君   小林 正巳君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   井上  裕君     足立 篤郎君   玉沢徳一郎君     根本龍太郎君   浜田 幸一君     松野 頼三君   沢田  広君     藤田 高敏君   谷口 是巨君     浅井 美幸君   長谷雄幸久君     矢野 絢也君   中馬 弘毅君     小林 正巳君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十三年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十三年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十三年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十三年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。河村勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 私は、民社党を代表して、補正予算案中心総理並びに関係閣僚質問をいたします。  私は、きょうは主として景気対策中心経済問題について質問をいたすつもりでございますが、初めに、いま問題になっております有事立法問題について、一言お尋ねをしておきたいと思います。  私は、有事立法問題というような最も冷静に処理をしなければならない問題が、あたかも緊急事態が発生しているかのような非常に騒がしい雰囲気の中で論議をされていることは、きわめて好ましからざる事態だと思います。有事に対応する法制の不備というものがいままであったことは事実であります。政府はそれを長い間放置をしてきました。その責任責任として、これまで放置をしておいて、いま格別に日本をめぐる国際情勢に大きな変化があるわけでもないのに、あわててこれを処理しようとすることはない。しかし、私が政府に要望したいのは、政府はこれまで、防衛問題、安保問題というような事柄については常に逃げの姿勢で、とかく本質論を回避してきた。今度はそうであってはいけないということです。きのう社会党の石橋さんの質問がありましたが、奇妙にその点は私は一致をしておりまして、この問題を、本質論を避けてあいまいにしておきますというと、シビリアンコントロールそのものもあいまいになる。だから、これは正面から腰を据えて取り組んでもらわなければいかぬ、そう思っているのであります。  そこで、きのうの石橋さんの質問は、これは自衛隊そのもの違憲だという立場であるから、有事立法反対立場です。ですから、立場はまるきり違うけれども事柄の筋としてはああいうものなんですね。ただ、自衛隊を否認をしているから、有事立法というものは結局違憲になってしまう、憲法の枠の中ではできないというような結論になってしまうのであって、私はそれとは全く見解が違う。だけれども石橋さんが言うように、有事立法範囲というものはかなり広範囲なものにならざるを得ない。それは、自衛隊を管理運営するという防衛庁任務からいって、その範囲を超えた問題が含まれることは間違いがないのです。  ところが、先般、この有事立法問題についての防衛庁見解というものが出ましたが、あれを見ておりまして、私は非常に奇異な感じを受けたのです。  それはなぜかと言いますと、「今回の研究は、むろん現行憲法範囲内で行うものであるから、旧憲法下戒厳令徴兵制のような制度を考えることはあり得ないし、また、言論統制などの措置検討対象としない。」こういうのですね。検討をしないのは、それはそれなりでよろしい、結構であるけれども、しかし、検討対象としないということは、裏返して言えば、対象としようと思えばできるということなんですね。防衛庁はその気になればやってもよろしいという意味なんですね、これは。  自衛隊を管理運営するという防衛庁、そういう実施部隊を持っている防衛庁が、自分たち任務を越えてやろうとするのは危険ですらあるのです。ですから、政府がこの有事立法問題と取り組むからには、そうした防衛庁調査研究範囲というのは、自衛隊を管理運営するという所掌事務、それを遂行するために必要な調査研究に限られるのであって、自衛隊そのものに直接かかわりのあることはこれはよろしいけれども、しかし、それを越えた国民の権利義務に関するような問題については自衛隊でやるべきではない。だから、行政の場においては、総理が議長として主宰をされる国防会議というものがあるのですね。ですから、この国防会議において、これを主体として調査研究すべきものである。それで、立法府においては、われわれが前から言っておりますように、国会に防衛委員会ないしは安全保障委員会というものをつくって、ここで、立法の場ではこれの検討に当たる、そういう、両々相まってやることがよろしいのであって、そこで初めてシビリアンコントロールを全うしつつ、有事に際して本当に自衛隊というものが機能を十分に発揮できる体制ができる、そういうものであろう。  政府にこの点の見解お尋ねをしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 有事問題に対する基本的な考え方、まあ私は、大体河村さんと所見を同じゅうするわけです。  そして、その際、国防会議との関係をどう考えるか、こういう話ですが、有事体制を詰めていく、そうしますと、これは防衛庁自衛隊、この職務権限を越えた諸般の問題が出てくる、このように思うわけであります。そういう問題は、これは防衛庁問題提起をする、それはよろしゅうございまするけれども、その検討内閣においてすべきである。内閣には国防会議という仕組みがまずあるわけでありまするから、国防会議においてこれを取り上げまして、そうしてそれらの検討に当たる、こういう考えであります。
  5. 河村勝

    河村委員 私は、経済問題に入りますので、この問題をこれ以上論議をするつもりはございません。これからあと、私の同僚議員がこれをトレースをして論議をすると思いますが、私の申しました、本当にシビリアンコントロールを全うしつつ有事立法というものをつくっていくという、そういう本旨をぜひ政府においても貫かれることを要望いたします。  そこで、当面の景気対策に入りますが、私は、補正予算を含めた今度の総合景気対策を一読いたしまして、全く去年と同じだなという印象を強く受けたのです。去年の秋もやはり同じように景気が途中で挫折をして、補正予算を組まざるを得なくなってきた。それとその中身までほとんど同じなんですね。それから、昨年は二兆円であって、ことしは二兆五千億になった、それだけの違いでありまして、昨年の場合には国債依存度三〇%、この枠を絶対守るというたてまえから、とにかく国債の増発を一切しないというたてまえでございました。ことしもやはり同様に、過去に行われた三千億の減税の後始末以外には国債を出さないというところを初めから枠をはめてしまってスタートしておりますから、結果として国の支出予算というもの、一般会計支出は本当にわずかなものであって、あとは財投とそれから地方財政、それに住宅については民間資金、こうしたものを勘定に入れて、それで二兆円なり二兆五千億なりの体裁をつくっておる。  結果はどうであったかということですね。私は昨年、国債依存度三〇%の枠にとらわれることは間違いである、財政均衡というものは中期的に考えるのであって、この際はやはり円高と不況という事態に対処するために、思い切って枠を外して実態に即応した対策をおとりなさいということをこの席で主張いたしました。結局、総理はそれをおやりにならなかった。結果はどうかというと、その後円高が進み、景気が悪化をして、第二次補正を組まなければならなくなって、その結果は国債依存度が三四%までふくらんでしまったわけですね。  同じことならば、事前に手を打てばより有効になる。ことしも同じことでありまして、この二兆五千億の事業規模予算では、とても総理がおっしゃるような実質七%程度経済成長というのは不可能である。だから、やがてまた事態に追われて第二次補正予算を組まなければならなくなるという去年の轍を繰り返すことになりはしないかということを私は非常に懸念をしております。この点、総理はどうお考えですか。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昨年のいまごろもやはり補正予算の御審議をお願いしたわけなんですが、昨年とことしを対比してみますと、昨年は補正を御審議願って、そしてこの予算を執行して下半期経済情勢に備えたわけです。ところが、私は大変不明の至りであったわけでありますが、円高現象というものがその後あのように急速に起こってくる、こういうことを予想しなかったのです。円高があの調子でやってきますと、わが国経済に与えるデフレ的効果、これは甚大なものがある。そこで第二次補正を編成しなければならぬ、こういうことになったわけでございますが、今日におきまして、私は昨年の轍を繰り返したくはありませんし、また同時に、この円高現象というものが昨年の下半期に見られたように厳しい状態で今後襲いかかってくる、このように見ておらないのです。国際情勢が大変混乱した、そうしてまた通貨の不安が非常に厳しい状態になってきたというときには、これからまたいろいろ対策を必要とするでしょう。しかし、私はそういうような、去年体験したような激しい変動が起こってくるような感じがいたさないわけです。  そういう展望の中で、下半期わが国経済にどういうふうに対処するか、こういうことになってくるわけでありますが、去年と同じような手法をとっているじゃないか、こういう御指摘ですが、景気対策とするとそう珍奇な名案というものはあり得ないのです。諸外国をずっと見ましても、公共事業をとっておる国もありまするし、あるいは減税政策をとっている国もありまするけれども、そうそう珍しい新しい手法というものは考え得られない。私どもは、わが国経済、また、わが国財政状況から見まして、昨年同様公共事業公共投資中心とする対策をとった方がよかろう。ただ、公共投資、これは従来の公共事業のほかに、あるいは文教でありますとか、あるいは福祉でありますとか、あるいはスポーツでありますとか、そういういわゆるわれわれの生活、これに密着いたしました投資、これに傾斜をかけたわけでございまするけれども、とにかくこの二兆五千億円の事業費、これをもって下半期経済には十分対処し得る。下半期経済はどういう状態かというと、ことしの初めに展望しましたそれに対しまして一つ変化が起こってくる。それは何かというと、引き続く円高、これによりまして輸出鈍化していく。私は、そのほかの経済の動きというのは、そう悪くはないと思います。円筒現象、それによる輸出鈍化、これが黒一点だ、こういうふうに思うのですが、その黒一点、輸出鈍化に伴うところのデフレ的要因、これを今回の補正予算中心とする総合経済対策で消してしまう、そうすると大体七%成長程度成長が実現できる、こういうことになりますので、昨年と大変基本的な事情は違っておるのだということを指摘しておきたいのであります。
  7. 河村勝

    河村委員 私も、ことしの場合、円高が現在より進むとは思っておりません。だから、そういう点の懸念を持たないということは同じであります。  それなら総理は、そういう円高という現象がこれから進まない限り、第二次補正というものは組まないでやれるのだ、そう断言できるのですか。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円高問題初め、わが国経済をめぐる環境、条件、これに激変がない限り、大体この二兆五千億円をもって対処し得る、このように考えておるわけであります。もとより、現実の経済情勢は刻々と変わっていきます。環境が変わっていくのです。それに対しましてはいろいろ対処の手法というものがあるわけです。あるいは金融というような手法もありましょうし、あるいはその他もろもろの具体的な行政措置ということもありましょうし、何も財政だけが万能の手法じゃございませんから、いま第二次補正というようなことを考えてはおりませんけれども、これから起こり得る客観情勢変化に対しましては、機動的、弾力的に対処していく、これはもちろん、そのように考えております。
  9. 河村勝

    河村委員 どうも総理のお返事というのは、最後があいまいになってくるのです。去年とことしの状況が違うという理由は、去年は円高という不測の事態が起こったから第二次補正を組まなければならなかった、ことしはそういう要因はなかろう、だからこれでやれるのだとおっしゃるならば、そんなにもろもろのもの、急激に変化をするものは一体何があるのですか。結局、自信がないからぼかしておられるのでしょう。ですから、何かというと機動的、弾力的に対処する、財政ばかりではないと言う。財政ばかりではないけれども、結局、機動的、弾力的の中には第二次補正も含まれているわけでしょう。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私、ここで第二次補正を用意するのだということは申しかねます。しかし、いずれにいたしましても経済は生き物だ。日本経済を取り巻く環境はどんどん変化していきます。その変化した環境に対しましてわが国経済がどういう反応を示すか、その反応状態を見まして、あらゆる手段を講じまして所期の経済目標を達成したい、このように考えておるのです。
  11. 河村勝

    河村委員 とにかく、そうした円高が急激に、いま以上に進むという特別な事情がないにもかかわらず、なおかつ、そういう将来に懸念を持たなければならない状態であるならば、それは先に行ってやるよりもいま半年前にやることがより有効であることは、これはもう当然のことなんですね。ですから、私はそれをおやりなさいと言っているのであります。  私どもはいま一兆円減税を主張しております。この一兆円減税を主張するのはどういうことかといいますと、二兆五千億の事業規模と言われるこの補正予算に加えて、少なくとも一兆円以上の追加需要がないと、総理の言われる実質七%成長、七%程度でも結構ですが、そういうものが達成できない。それでやがて雇用や経済実態そのものがだんだんまた悪くなる。もう一遍補正予算を組まなければならなくなる、そういう事態になるであろう。  なぜそう考えるかという理由は二つあります。下半期輸出減退が、政府が見通しておられるものよりもさらに深刻であるはずだというのが一つです。もう一つは、今度補正予算の中で想定をしておられる民間国内需要です。その中で民間消費支出は、政府目標をやや小さくしておられてそう大きな違いはございませんが、民間設備投資も、やや少し大き過ぎると思います。最も決定的に私がだめだと思われるのは、民間住宅建設です。これは政府の改定された、上方に修正された目標にとうてい到達できないのはもちろん、当初の目標にも到達できない。だから、一方で輸出で大きな穴があく、片一方で今度の補正予算の中で三分の一の位置づけを占める住宅建設が、まるっきりプラスアルファとしての効果がないだけでなくて、目標からも落ち込むであろう。  だから、政府が想定しておられるよりもふえていくその需給ギャップですね、輸出減退によるデフレ効果をどうやって相殺をするか。それには一兆円程度の、一兆円以上の追加需要をしなければならない。だから、私どもはあえて減税でなくてもいいと思うのです。もっと中期的な効果のある――国民年金を一挙に増額するという方法があればなお私はいいと思うのです。しかし、公共投資はもはや限界であるし、大きな福祉支出政府はいまなかなか踏み切りかねるであろうと思うので、そうなればほかに方法がない。だから一兆円減税ということを主張しているわけです。  そこで、私は政府にお伺いしたいのですけれども、企画庁長官輸出減退、これは当初名目で一・二%、実質でもって三%弱のプラスを見ていた、それを今度の改定で実質一%、名目で七%の下落、輸出減退、こういうふうに想定された根拠は何ですか。
  12. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 通産大臣も行政指導しておられますし、円高の結果もむろんあろうと思いますが、四月から六月で輸出数量の減は二・五でございます。七月は七・六、八月は暫定で四・二でございます。数量ベースで前年度を下回ることは避けられない、またそれは、ある意味で国際的な情勢でございます。一応通関ベースで、年度を通じまして六%と七%くらいの対前年度比の減があろうと考えております。単価で申しますと、ドル建てではそれでも二二、三%の上昇があるのではないか、円建てで申しますと一ポイントか二ポイントのマイナスになるのではないか、そういう想定のもとに計算をいたしております。
  13. 河村勝

    河村委員 私が言っているのは、輸出減退がおかしいというのではなくて、この程度減退で済むかということなんです。企画庁長官は、きのうの質問の中で、下半期輸出がどれだけ減るかということについて、数量ベースで輸出が減るというのはわが国にとって初体験だから見当がつかぬという答弁がありましたね。見当がつかぬものを想定に入れて指標をおつくりになったのですか。
  14. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 きのう申し上げましたのは、輸出の減、輸入の増というものが国民総生産に及ぼす影響が初めてのことでございますので非常に見当がつきにくいということを申し上げましたが、今回いたしましたのは、各商社関係等々の見通しを積み上げてみまして一応六%ないし七%の数量減ではないかという想定をいたしたわけでございまして、そういう意味では初めての体験でございますから、仮に円レートの先行きをそんなに変化がないと考えましても、なお数量でどのような過去の円高の影響が入ってくるかということは判定が非常にしにくい、一応六%ないし七%の減という想定を置いてみたわけでございます。
  15. 河村勝

    河村委員 私はそこのところが一番問題なんで、総理も恐らく第二次補正を組まなければならぬ場合があろうということで、さっきからしきりに第二次補正は要らないということまで言えない理由がそこにあると思うのです。  企画庁のいろいろな計測の一つ手法としてJカーブ効果ということを言っておりますね。円高の影響というのは、当初はドル建ての手取りをふやそうと思って努力するものだから円高円高を呼ぶ、従って、円高輸出に影響してくるのは半年ないし一年以上のタイムラグがあって、それで輸出減退が出てくる、そういう説ですね。そのおたくの企画庁の考え方が正しいとすれば、百九十円台まで急速に進んだのは七月以降、そうすると、それが実際の輸出減退になって出てくるのは一月以降が一番強くなるわけですね。そういうものを一体計算に入れてお考えなんであろうかどうであろうか、いかがですか。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこは非常にむずかしいところだと思っておりますのは、実は、円高が昨年の九月、十月ごろから始まっておりますので、いまわれわれが経験しております輸出の減というものが、ことしの二月ごろから始まりました円高によるものと、昨年十月ごろから始まりました円高によるものと、それがどういう関係になっておるかということは、事実上、非常にわかりにくうございます。確かに河村委員の言われますように、円高が効いてまいりますのはやはり時間がかかるということは事実だと思いますので、そうなりますと、輸出減退というものは、度合いはともかくといたしまして、かなり長期に続くと考えなければならない。ただ、この場合、四半期別で申しますと、ことしの一-三月に相当のかけ込みの輸出があったと思われますものですから、それから四-六の落ちをずっと今後とも続くと考えるのもちょっと現実的でございませんので、したがって、そこを基準にするわけにもまいるまい。長期的に減退の傾向があるということは事実でございますが、四-六の一-三からの落ちがずっと今後とも増幅されていくと考えるのも、少し行き過ぎではないかという感じを持っております。
  17. 河村勝

    河村委員 いままで経験したことのないことであるからなかなか計測をしにくいというのもわかりますけれども、やはり政府が一番情報をたくさんお持ちですよね、情報を独占している。これはわれわれとしては非常に不満なところであって、後ほどそれに対する提案を申し上げますけれども、やはり七月以降の通関実績だけじゃなしに、輸出成約、そうしたものを基礎にすればおよその見当がつくはずであって、私どもは七月の通関実績と成約しか数字がなくて、それから後、持っておりませんけれども、七月の通関実績は数量ベースでマイナス八%、輸出の成約はマイナス一〇%ですね。もしこの傾向が伸びていくならば、下半期というのは政府の見通しよりもかなり下がるはずですが、いかがですか。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もしそれが伸びていくならば、まさに河村委員の言われたようになりますけれども、先ほど申しましたように、一-三月のかけ込みから落ちましたその落ちのままそれを伸ばしていくということは、ちょっとそれも現実的ではなかろうという感じを片方で私は持っておるわけでございます。
  19. 河村勝

    河村委員 私は、一-二と四-六の比較を言っているのではなくて、七月から先というのはまた別の事柄でしょう。ですから、私は、どうもこういう数字を見ても、政府はもっと深刻に考えられるべきであって、もし補正予算で手当てをされるならば、多過ぎて悪いことはないのです。それは後でそれだけマイナスになるのでは決してなくて、もしことし、輸出減退が予想したよりなければ、それは幸せなことであって、ここで思い切った手当てをすれば、来年度の予算はやはり景気に対して積極型の予算をお組みになるでしょうけれども、それでもその額というものは、当初考えたよりは少なくて済むかもしれない。だから多少のことで、ここで輸出減退、それによるデフレギャップを縮めることができるならば、やはりやるべきなのですね。公債は一切発行しない、それでしのごうというのは考え方が逆立ちであって、そういう疑わしい条件があるならば、より手厚い手を打つというのが本当だと私は思いますが、総理、いかがですか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは企画庁の方からなお御説明申し上げて結構でございますが、大体これからの先々の輸出をどう見るか、こういうことを非常に重要視して、その輸出河村さんが言うような状態でないにしても減退してくるだろう。そういうことを踏まえますと、そこでマイナス影響が出てくる。そのマイナス影響は幾らか、こういう判断をしているわけです。  そこで、そのマイナスを補うに足る措置は何だといいますれば、今度の二兆五千億施策、これは二兆五千億円の補正予算とその他の総合的な対策から成っておるものでありますが、たまたま補正予算の額と需要喚起額二兆五千億円で一致しますけれども、そういう規模の施策をとったわけでありまして、河村さんは、それはどうも落ち込みがもっともっとひどいのじゃないかという見解ですが、私どもは、いろいろの資料を参酌いたしまして大体この程度でいくであろう、こういうふうに申し上げておるわけなんです。もとより経済は生き物ですから、いろいろ変化をしていくでしょう。その変化に対しましては、私はしばしば申し上げておるように、これは弾力的、機動的な対策を駆使いたしまして目標達成に遺憾なきを期していきたい、こういう考えです。
  21. 河村勝

    河村委員 二兆五千億円では足らないからさっきから一兆円減税の話をしているのでありまして、先行きのことですから、私は絶対にこうなるというだけの根拠はもちろんありません。しかし、実質一%か二%の輸出減退では済まないはずでありまして、少なくとも五%程度は落ち込むであろうというのがこれが常識でございます。だから、後でやはりそうだったかなと言われないように手当てをすべきであるというのが私の意見です。  それからもう一つ景気対策でもあり、かつ需要の中で大きな役割りを占めますのが住宅建設です。今度公庫住宅七万三千戸をつくって、それでいままで民間住宅建設の伸び率が名目で一三・六%であったものを一五%に伸ばす、実質で九・八%のものを一二%に伸ばす、こういう計画をおつくりですね。私は先ほど申し上げたように、これは決してプラスになる要因ではない。それはこの公庫融資は消化できるでしょう。だけれども、それがプラス効果になるところまではいかない。むしろ当初の目標よりも下回る、そう考えておるのですが、この今度の改定で、いままでの名目一三・六%でもかなり高いのに、さらにそれを一五%に伸ばされた根拠をお聞かせいただきたい。
  22. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御質問で、この追加の戸数の消化は可能だろう、こういうふうに一応戸数の方は肯定されておられるわけですが、当初の住宅投資の計画では十五兆ということになっておりますね。それで、今度の対策後には十五兆四千億円、こういうことにしておりまして、前年度の対比として一三・六%の伸びを一五%と踏んでおるわけでございます。これらの、十五兆四千億円と見ておるにつきましては、希望増とか質の向上であるとか、そういうものをも勘案しての考え方でございまして、今回の対策後の戸数また計画した十五兆四千億円の達成にさしたる至難はない、こう存じております。
  23. 河村勝

    河村委員 この住宅対策も昨年と全く同じなんです。昨年は、補正では事業規模で十万戸の公庫融資の追加をやりましたね。結果はどうだったのですか。昨年は、当初見込み一六・五%ふやすところを、この補正でもって一七%まで伸びがふえる、こう見ましたね。結果はわずかに七・五%の増ですね。そうでしょう。だから当初の目標を下回る半分以下しかいっていない。結局、公庫融資というものは、民間住宅、一般の銀行借り入れ等による建設の穴埋めをするだけ、肩がわりをするだけであって、下支えにはなってもプラス効果には全然働いていないのです。いかがですか。傾向も同じなんですよ、ことしの住宅建設の推移を見ておりますと。四月からの住宅建設の推移、これは経済企画庁の月例報告の数字です。四月が前期比でマイナス一〇・三%、五月がマイナス五・九%、六月がプラスで二六・五%、七月がマイナス一八・二%。これはどういうことかと言いますと、住宅公庫の融資がないときには二%前後、みんな前年同月比にしても下がっているのです。なぜ六月こういうふうにふえたかというと、四月に募集した住宅公庫の融資が一遍に着工ベースに乗ってきた。そこでばかっとふえた。それで七月も多少それの名残があるから、だから前年同月比では八・二%ふえておるけれども、それが消えるとまたもとに戻っちゃうのですね。去年のトレンドと全く同じ。去年と変わる要件というのは、一体その他の条件であるのでしょうか。何か去年とことしと事情が全く変わるというその事情でもあればお聞かせいただきたい。
  24. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど河村委員御指摘のように、今回の住宅金融公庫等の公的資金による住宅、これは七〇・八%と大幅にふえております。民間資金のは一〇・四%と減っておる。しかし全体としては八・三%の増となっておるのですが、この傾向を少し検討してみますと、住宅金融公庫の融資の実績は第一、第二分位者が増加しておって、本年第一回の募集の状況からすると四五%ぐらい、半分ぐらい占めておるのですね。そのことは民間自力階層以外の者が住宅金融公庫の方に来た、こういうふうに私は見ておるのです。  そこで、五十二年度で一分位、二分位はどの程度であったかというと、本年の場合よりはこれが下回っておりまして、一分位、二分位は住宅金融公庫の方に来ておる、それで民間自力階層の余力がある、したがって、この公庫融資の拡大が新規需要に対する拡大効果をもたらしてくるものである、こういうふうに見ておるわけでございます。そこで本年度の十五兆四千億円、これは戸数にして百六十万戸程度と見ておりますが、昨年度の実績が百五十三万二千戸でありますので、この程度の戸数の消化は可能だ、こういうふうに見ております。
  25. 河村勝

    河村委員 一分位も二分位もないのです。去年もことしも、条件は悪くなりこそすれ、よくはなっていない。それは雇用者所得の伸びをお考えいただけばわかるはずですね。なぜ最近、持ち家住宅をつくりたいという潜在需要はきわめて多いにもかかわらず民間住宅建設が伸びないかという理由は、これは二つあるのです。  一つは、可処分所得の伸びが非常に低くなってしまいました。ことしは春のベースアップも結局ならして五・九%ですね。それで定期収入が伸び悩んでおりますと先行きの不安が強い。だから将来についての不確実性というものが非常に影響いたしまして、ローンが返せなくなってしまうのではないか、そういう不安ですね、これが一番強いのです。  二つと申しましたが、これにも関連をいたしますが、それと土地が非常に高い。建物の方はこの五年間で二倍ぐらいになっているだけであるけれども、土地は四倍ぐらいになってしまった、そういうところにあるわけですね。  ですから、この住宅建設を減らしておるそういう要因、これを取り除かない限りことしが去年と変わってふえるという要素はないのです。去年は、五十一年度対五十二年度では建設戸数において完全に横ばいですね。ことしはわずかには伸びるかもしらぬけれども、とても政府の言うようなわけにはいかない。だから、この住宅建設の部門で大きな穴があきます。景気対策としても穴があくし、民間の需要効果としても穴があく。これと輸出減退、これとを両方合わせれば、少なくとも一兆円以上の需要の追加をやらなければ、総理の言われる実質七%程度成長は不可能であるというのがわれわれの主張の根拠なんです。  この住宅をどうやって建てるようにするかということについては、後ほどまた意見を申し上げますが、とにかく、この二つの要因についてどうも明確な答弁がございません。そういう不確定な要素が余りにも多い。少なくとも常識的には住宅も、ことしはぜいぜい実質では三%程度の伸びしかない。去年と同じ。輸出の方は、政府では実質で一、二%程度減退だと言っているけれども、五、六%になるであろうというのも、これも常識。そうであれば、ここでもって、総理いかがです、思い切ってわれわれの要求をお入れください。それで、もし減税というのがどうしても気に入らないのなら、私は、国民年金その他福祉年金、それに住宅に対する手当、後に案を申し上げますけれども、そういうもので同じような効果があるのであれば、かえって中期的にその方が役立つかもしれませんからそれでもいいし、とにかくここでもって有効需要追加の何らかの手を打たないと後でやはり去年との繰り返しになりますよということを再度申し上げて、総理の意見を伺いたい。
  26. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ことしの経済を展望してみますと、当初見通しいたしましたのに比べまして輸出の落ち込み、これをよく見ておかなければならぬ。それを踏まえていま何らの対策を講じないでいきますれば五・七%成長ぐらいのものしか考えられない、こういうことにいたしたわけです。これは慎重審議いたしましてそういう判断を下したわけであります。そうすると、国際社会から、またわが国の国内から求められておる七%程度成長という成長目標を達成するということには一・三%程度の需要を国内的要素で追加しなければならぬ、こういうふうに考えまして、そしてそれに必要な対策を総合対策として打ち出した、こういうことなので、どうも河村さんのお話を伺っておりますと、五・七%が少し大きいのじゃないか、あるいは一・三%、二兆五千億円で実現できるかということについて疑義をお持ちになっておられる、こういうことのようでございますが、これはるる御説明申し上げているとおり、五・七%の方も慎重審議した結果であり、また積み上げるところの一・三%につきましても、二兆五千億、総合施策をもちまして実現できる。一つ一ついろいろ御指摘でございますが、住宅につきましてもずいぶん検討検討したのです。宅地の険路、こういうものがどうかというような点につきましても精査をいたしまして、あの程度、七万戸程度ならばこれは消化できる、こういう確信を得ましたので御審議をお願いする、こういうことになりましたので、まあいろいろ精査いたしまして、この程度でもう大丈夫だ、こういうのですが、しかし、何回も申し上げておりますとおり、この経済の先行き、いろいろ変化考えられます。考えられまするから、その際にはその際といたしまして、あらゆる手法を動員いたしまして成長目標の達成、これをしていかなければならぬ、このように考えております。
  27. 河村勝

    河村委員 デフレ効果が深刻になってから手を打つのと、事前に手を打つのでは、効果がまるっきり違うのです。ですから、私どもは、少なくとも大きな懸念があるのだからいま手を打ちなさい。私も残念ながら、未来のことですから断言するだけの資格はございませんけれども、しかし、必ず結果は、ほうっておけば出てきます。ですから、一兆円減税をわれわれが、いま野党で共同で主張しております。まだ予算審議が終わるまでには日数がございます。どうかこの二、三日うちに総理に決断をしてもらいたい、それを強く要求をいたします。これはどうせ返事を求めても、いまイエスと言うはずはないから、御答弁は要りません。  そこで私は、総理がここまでこだわるのは、これは村山さんの方が元凶であろうと思うけれども、やはり国債ですね、赤字国債を累増することが心配だ、これはわれわれだって心配です。それで五十七年度に赤字国債を解消するという目標を昨年から立てて、あらゆる機会にPRをしておりますね。一体、五十七年度に赤字国債を解消するというのは、これは政府としての方針ですか。
  28. 村山達雄

    ○村山国務大臣 前回の通常国会でも申し上げましたように、これは暫定試算でございます。五十七年度に赤字公債から脱却するという終期を置きましたのは、御案内のように前期経済計画について暫定試算を二年間やっていただいたわけでございます。したがいまして、それとの整合性を保つという見地から、果たしてA案なりC案なり、特にC案でございますけれども、整合性が保てるかどうか、それを検討いたしたわけでございます。それから、もう一つ実態論でございますが、試算に示しておりますように大変な財政収支のアンバランスがございまして、このままいきますとやがては硬直化いたしまして、財政が国民の需要に応じきれないという問題、それからさらには、資金需要の出方によりましては財政経済の安定的な発展の妨げになる、こういう問題があるわけでございます。できるだけ早い方がいいに決まっておりますので、そこで五十七年に果たして整合性を持つかどうか、そういう意味で五十七年を設定したわけでございます。
  29. 河村勝

    河村委員 どうもそれも詭弁に近いのであって、大体経済審議会の、ことしの春でしたか、おつくりになった暫定試算というものは、大蔵省から五十七年度に赤字国債を解消するという枠を先に与えられて、それに合うようにあの暫定試算というものはつくったのですね。それで整合性を保つために、財政収支試算でも五十七年度赤字解消というのは、自分でルールを決めておいてそれとの整合性を保つというのは、これはナンセンスですよ。私どもも、いつまでも赤字国債の発行が続くことはいいとは思っておりません。私どもはいま中期経済計画をつくりまして政府にもお配りしたので、ごらんをいただいたかもしれませんけれども、私どもは、景気刺激型の予算は五十四年度で終わりにする。それで五十五年度からは景気に中立型の予算を持っていく。そしてその中で景気が完全にこれで回復をして――完全というのは少し言い過ぎかもしれませんけれども、民間の自律的な活動に任してよい状態になった段階では、五十七年までの間に税負担の増加も考える。同時に、完全雇用を目標として、それでいろいろな諸施策を打つ。福祉も高める。そうした政策目標を入れてやりまして、どうやってみても五十七年度に赤字を解消するというのは無理ですよ。これは政府でもおわかりになっているはずなのです、どう試算してみても。だから、五十七年度に赤字国債を解消するなんというから、そういう枠を決めてしまうから、いま一兆円減税ができないというようなことになるのです。だから、中期的に六十年がいいのか、六十一年がいいのか、その辺はいろいろございましょうけれども、大体その辺の見当でもって赤字国債はなくなるというめどがつけば、いまわずかの赤字国債を増発をすることを懸念する必要はない。だから、五十七年度赤字国債解消なんという看板はおろしたらいかがですか。
  30. 村山達雄

    ○村山国務大臣 さきに申し上げましたように、これは暫定試算でございます。こちらから注文して二年間延ばしてもらったということではございませんので、どこまで一体暫定試算が延長線上に計算できるかということでございます。そしてまた収支試算にも示されておりますように、問題はその中身でございまして、あの五十七年度で脱却するということでも財政収支は非常に大変なことになっておるようでございまして、あのCケースでも、五十七年度現在ではたしか九十兆を超える国債残高が出るわけでございます。一方において消化の問題も当然考えてまいらねばならぬのでございまして、この消化状況はもう御承知のとおりでございます。円建ての外債が、国際経済の要請からいたしまして、また日本が開かれた経済をつくるという点から言いまして、これはやはり日本としては国際金融市場と歩調を合わせてまいらねばなりません。最近は非常に多くなっておるわけでございまして、それだから国債のためにあの分を全部締め出すなんということにしましたら、これはまた大変な問題になるわけでございます。そういういろいろな現実的な問題を考えますと、できるだけ早い機会に脱却する方がよろしい。残せば残すほど、後へ送れば送るほど財政再建は困難になることはもう間違いないということを申し上げたいのでございます。
  31. 河村勝

    河村委員 それは残せば残すほどむずかしくなることはあたりまえのことでございますが、財政あって経済なし、財政あって国家なしでは仕方ないのですね。ですから、ただ赤字さえ解消すればいいということではないはずです。ですから、中期的に物を考えればそこにおのずから妥当な結論が出るということを申し上げているのです。  そこでもう一つ、私は大変不可解なのは、いまだに一般消費税を明年度、五十四年度導入するかもしれないという態度を政府が崩しておらない。もうこれなどは、一般消費税のいい悪いを言う前に、一体いまこういう景気が回復をしないでまだ不況回復の途中にある、五十四年度もなお七%程度成長目標にして、それで積極型の財政を組まなければならぬ、そういう時期に内需の足を猛烈に引っ張る増税をやるなんというのは、これはもう狂気のさたですね。しかし、その心理的影響は大きいのですよ。みんなそんなことはできやすまいと思っているし、われわれは絶対にやらせないと思っております。だけれども、一般には、政府はもう来年にも増税をもくろんでいるということは、やはり経済は心理の影響が大きいのですから、非常に大きな影響を民間経済活動に与える。国民にも消費行動にも影響を及ぼす。できっこないのだし、やるべきことじゃないのですから、とにかく来年はもう絶対に導入せぬということぐらい、はっきりここでもって言ったらいかがですか。
  32. 村山達雄

    ○村山国務大臣 昨日もほかの委員の方にお答えいたしましたが、来年から導入するということを決定しているわけではございません。いまやっておりますのは、必要がある場合にいかなるものを導入するかということをいま税制調査会が検討しているわけでございまして、その成案を得ますれば、来年度の予算編成に関連いたしまして税制改正案は別途出るわけでございます。  ただ、申し上げたいことは、やはり財政収支の問題と成長の問題、経常収支の問題、これらは相互に関連した問題でございまして、どの辺に調和点をとっていくのが一番いいか、これは来年度経済の見通しあるいは予算のフレームあるいは税収の動向、そういうものを総合勘案の上決めるべきものだと思っておりまして、現在の段階では、それはいずれとも決めていない、それらの要素が明らかになりましてから最終的に決定させていただきたい、かように考えておるのでございます。
  33. 河村勝

    河村委員 どうも、これが官僚答弁の最たるものですね。――私はもう官僚を脱却しておるからちょっと違いますが……。  総理、一体まだするともしないとも決めていないなんという答弁はいかがなものでしょうかね。一体、来年、一般消費税に限らず本格的な増税を導入できるコンディションに日本経済があるのですか。なければ、はっきり来年はやらぬとおっしゃったらいいのですよ。それで何がしかの安心感を経済界に与えたらよろしいじゃありませんか。いかがです。私はこういう答弁というのは本当に許しがたいと思うのですよ。いかがですか。
  34. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私どもは二年先、三年先、四年先、五年先、こういう先々のことまで考え経済の運営をやっているのです。景気対策が功を奏して、そして民間の自律活動が活発になってくる、こういうことになれば、これは民間でも相当金が要るのです。そういうときに、政府の方でも金が要るのだ、貸してくれ、こういうことになると、これはもう民間と政府が資金を競って争奪をする、そういうかっこうになる。これは非常に危険な状態なんです。そういう状態にしてはならぬというのでいろいろな準備をしておるわけなんです。確かに河村さん御指摘のように、いま今日の客観情勢で増税というようなことを考える余地はございません。しかし、政府としてあらゆる事態に備えて準備態勢を整えておかなければならぬ、そういうことで一般消費税構想というのが税制調査会の中で出てきておる、こういうことなんです。  御所見はよくわかります。この問題を政府の問題として取り上げるかどうかという判断につきましては、これは本当に慎重にやってまいります。
  35. 河村勝

    河村委員 私は、そういう中期的な考えをお聞きしたのじゃないのですよ。ことしから来年にかけての経済状態、これは一般消費税に限らず本格的な増税を導入できる状態にあるとお思いになるか、思わないか、それを聞いているのです。
  36. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それはもうわかってお答えをしているのですが、私どもはその先々のことまで考えて今日の施策を進めておるんだ、そういうことを申し上げておるわけなんです。政府財政を今日のような赤字の状態でほうっておくということは、これは本当に政府として許されるという問題ではございません。そういう認識の上に立ちまして、あれやこれやと検討しておる。検討を税制調査会が進めておる。これは河村さんも御異存はないところであろう、こういうふうに思いますが、それを現実の政治課題として取り上げるか取り上げないかということにつきましては、御指摘のように客観情勢をよく見て、そして慎重に判断してみたい、そういうふうに考えております。
  37. 河村勝

    河村委員 どうも驚いたものですな、全く。来年のことも物が言えないというんじゃ、これは本当に中期的な議論をしても始まらないわけで、ここにも、ヨーロッパに一般消費税の勉強に行った自民党の先生もおられるが、大体こんなものが、いま決めて来年導入できるかできないかぐらいだれでも知っているのに、しかも経済状態が許さないこともわかっているのに、それでもまだ慎重な答弁をしなければならぬというのは、一体どういう精神構造なんでしょうかね。どうも本当に驚きました。  そこで、増税をする前には少なくとも不公平税制の是正、それから行政改革、この二つをやるのが前提であるというのはわれわれの持論でもあり、国民のすべての声でもあるわけですね。不公平税制については、来年度、利子配当分離課税、医師優遇税制等についておやりになるという答弁をされたように思いますが、そうでしたかな。もう一遍ちょっと答弁をしていただきたいが、それはどうでしたか。
  38. 村山達雄

    ○村山国務大臣 利子配当の分離課税、いわゆる源泉選択の問題は、昭和五十五年暦年いっぱいまで続くわけでございます。片や、それを総合課税するといたしますと大変むずかしい技術問題が入ってくるわけでございますので、その問題は来年度からはとうていだめであるという認識はあるわけでございまして、五十五年暦年に間に合わせようということで、ことしの九月十二日でございましたが、いま税制調査会でその問題の検討に入っておる、こういう段取りでございます。  医師課税は、この前の通常国会でしばしば申し上げましたように、わが党におきまして、この制度は五十三年度限りとし、それに対応する諸般の政策を決定することに決まっております。政府も、与党・政府一体の立場からこれと呼応して進んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  39. 河村勝

    河村委員 問題は、もう一つ行政機構改革の方でございますが、昨年の十二月二十三日の閣議決定で行政改革の推進という項目をお決めになりましたね。これで終わる気はないという答弁が総理からはございましたが、これで終わったのじゃ何もないのですね。一体本気でおやりになる意思があるのであろうか。これでもって一体行政経費が実質的にどれだけ減るような案になっているのであろうか。ほとんどない。五十二年九月の閣議了解で、そこで方針をお決めになった、それよりもはるかに後退しちゃっているんですね。これは一体どういうわけなんでしょうか。  私は、昨年もこの委員会で、行政機構改革についてお尋ねをいたしましたが、その際、私は、中央官庁においては、本省レベルはいままでかなり切り詰めてやってきたと思うのですね。ですけれども、ブロック別の地方機関、これはもうくどくは申し上げませんけれども、各出先の通産局、財務局、陸運局、海運局その他、こうしたものについては、やはり歴史的な事情ででき上がっておるのでいきさつはあるけれども、今日の交通通信網の発達した時代にあれだけの機構は要らないはずだということを申し上げた。これは五十二年九月の閣議了解でも、「ブロック機関、府県単位機関については、省庁別に見直し、その整理合理化を行う。」これが五十二年九月の方針ですね。十二月に何もないですね。これは一体どこへ行ってしまったのですか。それでわずかに北海道の中の部分的な何か局を整理をしたというぐらい、それも名前を変えたというだけですね。これではとても官庁そのものの合理化はできません。  それから、公社公団につきましてもいろいろ具体的な例を挙げて申し上げました。たとえば宅地開発公団、これは要りません、住宅開発公団の宅地部で扱えばよろしいものだ、こういう主張をいたしましたが、逆に何か最近、住宅公団の宅地部を宅地開発公団にくっつけたんですね。それで宅地開発公団をふくらましたのです。これでは行政機構改革どころか逆行ですね。一体宅地開発公団というのをなぜつくらなければいけないのか、それもそもそもわからない。住宅公団の宅地部で結構なんですね。そんなに幅の広い大きな仕事をしているわけでもない。それで宅地開発の総裁、副総裁以下理事何名、こういう本社の機構で一体管理経費が幾らかかっているのですか。ことしのものがわかったら教えてください。多分数十億に上るでしょう。それだけでもくだらぬですよ。これでは行政機構改革というのは進みっこないし、それでは地方自治体の人員の膨張というのは官庁以上に大きい。こういうものに今後は減量経営をやって民間と同じような努力をしてもらいたいけれども、中央官庁がお手本を示さなければ、地方に言ったって聞きはしませんね。  一体どういうつもりでおやりになっているのだろうか、その見解をお伺いしたい。
  40. 荒舩清十郎

    ○荒舩国務大臣 ただいま河村さんのおっしゃるとおりでございまして、実際、行政整理というのは大変なむずかしい仕事です。これは簡単ではございません。民社党の御意見も、昨年のつくられたものもよく読んでおりますが、私は、いまの民間の非常な不況の問題、それから財政も非常な困難の状態、それは思い切って行政整理を断行しなくてはならない、国民の税金をむだにしないようにしなければならない、よくわかっております。  しかし、これはだんだんやってみると、総論では皆さん全部河村さんのおっしゃるとおりだ、それから各論に入りますとみんな反対です。そういう中へはさまって少しでも実行していかなければならない、こう考えておりまして、昨年の十二月二十三日の行政改革案でできるだけいろいろなことをやってきたつもりでございます。たとえば農林水産省にしたとか、あるいは営林局の整理をしたとか、あるいは中央官庁の五十一の課を整理しております。それから出先の千カ所を整理する、こういうことから始めまして、なかなか公社公団の整理も容易ではございませんが、まあ審議会を四十八整理統合する、それから補助金も千四百二十二億の大幅な実行をしたというようなことから始めて、できるものから順次やってきた状況でございます。  確かにおっしゃるようなところもございまして、もっともっと行政改革を断行しなければならない、こういうことは責任を持ってそう考えておりますが、議会の方でもひとつ各論にも御賛成をいただいて、ぜひ断行していきたいと考えております。  それから、日本住宅公団の宅地開発部門についての御意見もございましたが、これも大都市の周辺を開発していくということについては、やはり宅地公団に移管をする方が能率的だというような考えでやったわけでございます。  しかし私は、いまやっている行政整理、まだなかなか進まない点がありまして、これはひとつ大いに馬力をかけて努力するつもりでございます。  以上でございます。
  41. 河村勝

    河村委員 どうも、農林省を農林水産省にしたのまで行政改革の中に入るというのは、恐れ入ったことでございますね。あれは看板を書きかえただけよけいお金がかかっているぐらいで、ほかには合理化の要素は何もないんですよ。  総論賛成、各論反対、確かにそのとおりです。このくらいむずかしいものはございません。それは私もよく知っておりますが、しかし、本気でこれはおやりにならないといけないんじゃないんでしょうか。私はそう非現実論で言っているつもりはないんです。地方ブロック機関にしましても、それは全部やめてしまえというのは少し極端な言い方かもしれないけれども、現実に仕事の中身をお洗いになったことがありますか。大体は、あるものは地方、あるものは中央に持ってくれば済むことなんです。大体ちょっと大きなものは、地方に権限を与えていても、みんな本省から内面指導をやって、やっているわけです。私も昔役人だったから大体見当がつくのです。両方に引き上げれば、ほとんど残る仕事というのはないんですよ。ですから、やはりその辺から手をつけるのが本当だと思うのです。  公社公団は、これはもう勇気だけです。そんな宅地開発公団の存在意義なんて、いま荒舩さんも気が差されたのか、そこのところだけ何か物を読みましたけれども、それは要りませんね。住宅公団そのものが、もう地方の分譲住宅は限界に来てしまって、都市再開発に使命を移さなければならぬ時期でしょう。宅地開発公団をわざわざ別につくる意味は何もないんですよ。だから決断だけなんです。ですから、国会の方も各論に協力しなかった覚えはございませんけれども、問題があったら堂々とお出しになったらいかがでしょうか。どうですか、総理
  42. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行政改革についての河村さんのお話、私も考え方としては全く同感なんです。それで去年は、一年間この問題をどういうふうに進めるかということをつぶさに検討いたしまして、昨年の暮れ発表したようなああいう試案ができたわけですが、あれとてもなかなかいろいろな問題に手をつけておるのです。とにかく支分部局一千カ所を整理しましょう、これは相当抵抗もある問題なんですが、そこまでやる。それから定年制、これも検討を始めて、そうしてそう時間をかけずに国会の御審議を煩わしたい、こういうふうに考えておりますし、従来いろいろ問題のありました渡り鳥、あの問題にも相当の大なたをふるう、こういうことにいたしますとか、いろいろ工夫をしてきたのです。中央省庁の統合ということになりますと、はでで大受けをするという面もありますが、しかし、これは御承知のように建設大臣と国土庁長官の兼摂というようなことで一つの実を上げておりますし、また、よって閣僚のポストが一つあく、それに対しまして、これも行政改革の一つの眼点として求められておりましたところの対外経済担当大臣を設置する、こういうことをいたしますとか、かなりの工夫をしておるのです。  しかし、私がこの前から申し上げておるように、行政改革というのはこれをもって終わりにする考えはありません。なお皆さんの御協力のもとに、うまずたゆまずこれに取り組んでまいりたい、このように考えておりますので、この上ともひとつ御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  43. 河村勝

    河村委員 うまずたゆまずは結構ですけれども、これから政府が国民に対して税負担を高くする、増税を納得をしてもらうからには、やはり政府がやれる限りの減量経営を民間と同じようなことをやっていかなければ納得が得られない。だから、うまずたゆまずでは間に合わないのですよ。これはどっちかというと決断の方なんです。ですから本気で考えていただきたい。それを要望しておきます。  そこで、さっき住宅問題に触れました際に、どうやったら住宅建設をふやせるであろうかということについて後で申し述べると申しましたが、私どもは、さっきもちょっと触れましたけれども景気対策として減税だけを実は考えているわけではないのです。中期的な展望を持った対策が必要だと考えています。  いま、とにかく民間の貯蓄率が二三%を超えている状態です。民間の設備投資はいま非常に停滞をしておるし、これから先景気が回復しましても、かつてのような大きなものはなくて、やはりGNP対比でまあ一五%を超えるということはないでしょう。そうなれば、やはり民間の貯蓄が高い状態が続いておれば、それは政府が借金をして穴を埋めていかなければ景気は維持できないということになってしまうわけですね。いまはそういう状態でしょう。ですから、やはり貯蓄を減らしながら、それを消費なり投資に移していくことを考えなければいかぬわけですね。そういう意味で、私どもは年金と住宅というものを、中期的な目標であると同時に景気対策を兼ねた要求として実は考えておるのです。  それで、今度の場合でも、年金につきましては、老齢福祉年金を現在一万六千五百円を二万円に上げる。それから国民年金の五年年金その他をそれに見合って上げる。同時に、将来に向けて、いまは政府は厚生年金は一応世界的レベルに達したとおっしゃっている、これも多少問題があるのですけれども、きょうはそれに触れませんが、国民年金の一般に言われる基礎年金、このくらいのものは見通しをつける。すぐにやるといってもこれはできませんから、方向づけだけでもことしやっていく。そういうことによって将来に希望を与えていけば、そうすればそう貯金をしないでもいい。いま国民が貯蓄する理由というのは、不時の出費や病気、それから住宅、老後の生活、それと教育ですね。だから、とにかく住宅と年金ぐらいをはっきりさせることによって景気対策を兼ねた目標になるであろうというのが私どもの主張なんです。時間の残りが少なくなってしまいましたから、この点は申しておくだけにいたしますが、今後この一兆円減税問題と関連を持って政府考えておいていただきたい。この部分はそう申しておきます。  それから住宅問題で、先ほど申したように公庫融資を幾ら拡大をいたしましても、いまのままでは住宅建設はふえません。だから、ふやす目標として、私はこの春以来政府に言っておるのですけれども、二つございます。  一つは、いま地方自治体が民間デベロッパーに課している五〇%に近い公共公益施設整備費負担、これを二五%以上はデベロッパーに負担をさせてはならないというルールを決めて、その残余の二五%ぐらいは地方債を発行させて、それに対して国が利子補給する。もう一つは、銀行の民間の住宅ローンに対して二%程度、これはおとといかそこら大蔵大臣が、二十年もかかるので大変だからできないということですが、それだけのことならば、私は二十年でなくても結構だと思う。民間ローンを返すのは前半期が非常につらいわけですから、前半だけの利子補給でもよろしいと思うけれども、とにかくそうした両面を考えないと、さっきも言ったように住宅建設で必ずこの景気対策の穴があきますよ。  それと、今後民間の設備投資がそう大きくならないのであるならば、住宅産業をやはりアメリカ並みに、国全体の投資の中でもウエートの高いものにしていく必要があるでしょう。この辺でもってそういうことに踏み切るべき時期が来ていると思うのですが、総括的に総理の御意見を先に聞いて、あと建設大臣にちょっと問題点を答弁をいただきたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国全体の国民生活を見ますと、衣食住と言いますが、その衣食につきましてはかなりのところまできたと思うのです。問題は住宅、これがただ一つ残っておる、そういう現況かと思うわけです。ただ、国土が狭うございますものですから、土地対策、宅地対策が非常にむずかしい。しかも、人口が大都市に集中する傾向が非常に顕著にいま伸びてきた、そういう関係で都市における宅地対策は非常にむずかしいのです。  あれやこれやいろいろそういうことを含めまして、住宅対策をどういうふうに進行するかということにつきましては、通常国会までには全体的な構想をまとめまして、これは立法なんかをお願いしなければならぬ問題が多々あると思うのでありますが、ぜひひとつ御審議を煩わしたい、このように考えまして、ただいまその締めくくりを急いでおる、そういう段階でございます。
  45. 河村勝

    河村委員 時間が余りありませんので、問題点だけを答弁いただきたいのですが、実は私どもは、この利子補給を実行することによって需要者の買う土地を理論的には少なくとも二五%下げることができる、それによって宅地開発の促進をしたい。いま土地の値段が余りに高いために、土地がどんどん上がっている時期はまあよろしいけれども、一応安定している時期には結局土地が売れないというところで問題点になっているのですから、土地を下げて土地の需要をふやそうということなんです。政府の施策の中にことし三百億の宅地開発整備費予算というのがついているのは、私は知っております。知っておりますし、私はそれをいいかげんにばらまくのじゃないかと思っておりましたら、必ずしもそうではなくて、現実の宅地開発に結びつけて施行されていることも知っております。しかし、残念ながらその値段としての引き下げの効果というのはさっぱりなんですね。一体建設省としてあれでいいと思っているのか。やはり本当にやろうとするならば、私が言うようなことをやらなければならないのではないか、この点を伺いたいのです。
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 河村委員のおっしゃるとおりに、関連公共施設整備が非常にデベロッパーの負担になる。それが土地価格に反映する。そこで、その促進のために新制度を設けたわけでありますから、これはせいぜいその拡大をしていきたいと思うのです。民社党さんが絶えずおっしゃっておられる、地方自治体に地方債を発行さして、それでみずから施設の整備を行うように、それについては二五%を超える部分について考えろ。するとあと、やはり自力でやらなければならない面がありますね。そこのところがちょっとひっかかるのですね。どうしてもいまの地方自治体の実情からすると、それをもなかなかむずかしいのではないかという気がするのです。  それから、一方におきまして利子補給をしてやれということについては、御承知のように現在その施策の中には、やっておるわけですね。ただ、民社党さんのおっしゃっておるのと違いますのは、六・〇五%までの利子補給をする。それをどこまで下げるかということについては、これは財政上の問題になりますから、それを下げれば下げるほど効果のあることは承知をしておりますが、根っこになる二五%部分ですね、そこのところが問題ではないかと、こう思って、やはりこれは関連公共施設整備の促進の方を大いにやる方がいいというのが、現在私どもの方針にしておるわけです。
  47. 河村勝

    河村委員 二五%分を地方公共団体にやらせろと言っているんじゃないんですよ。通常、昔でも、宅地開発の際には二五%ぐらいは、要するに受益者負担みたいな形で宅地開発業者が持っているんですね。だから、それはそれでよろしい。そのぐらいは負担をさせろ。ただし、五〇%も、例の地方公共団体の宅地開発指導要綱というようなもので道路、公園、緑地、学校、託児所、幼稚園、そうしたものの費用を負担をさしてしまう。それが宅地の総費用の半分になってしまうのですね。だから宅地の値段がべらぼうになってしまうのだから、せめてそれを、二五%だけは開発業者に持たしてもいいから、あとは公共団体にやらせなさい。ただ、いま公共団体もつらいであろうから、地方債で賄って、それの利子補給をやらせたらいいだろう。本来これは、問題は資金繰りの問題なんです。地方公共団体は、そういう団地や何かができると、学校をつくったり道路をつくったりしなければならぬから金がかかるということなんでありますけれども、結局十年ぐらいの年次で見ればこれは元が取れる。だから一時的な負担でしょう。ですから、本来それまで開発者にかぶせるというのはおかしいわけですね。しかし、これは地方公共団体も、はい、そうかとなかなかいかないわけですね。ですから、政府が今度三百億の予算を出していろいろな道路とか河川をつくって、その分負担を安くしたと、こう言うのですけれども、実際裏負担分は、結局業者にみんなかぶせちゃうのですね。だから、安くなった効果というのはせいぜい二、三%、これじゃ何にもならない。利子補給でやれば、これはわずかの金で相当広範囲なものもできる。それで消化はそう問題はない。これは開発者に負担、縁故債で持たせるわけですし、そういうことですから、これが実現いたしますというと、宅地を安くして、しかも供給するのに非常に役に立つ。  これはひとつぜひ本気で考えていただきたい。これはただ建設省だけでやっても私はだめだと思うのですね。やっぱり宅地開発ないしは住宅というものを国の方針として取り上げて、地方公共団体にも協力をしてもらう、そういう態勢を政府としてとらないと、私はなかなか実行はできないと思います。これをぜひやってほしい。いかがですか。
  48. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方団体はつらいであろうがという表現がただいまございましたが、まさに地方団体の今日の財政状況は御承知のとおりでございます。  そこで、宅地の開発を行いまする場合に、公共団体は開発要綱でありますとか開発規則を持っておりまして、開発業者と協議をいたす。その際、公共施設や公益施設につきまして勢い開発業者に持たせる。それはもとより、すぐれた環境を整備してまいりましたり、あるいは住宅の乱開発を防ぐという観点もございましょうけれども、やはり財政的な点が大きなウエートを占めておる、かように判断せざるを得ないのであります。  そこで、二五%の線を引いてそれ以上のものは起債をというただいまの御提案は何回も承っておるのでございますけれども、ただ、個々の場合を考えてみますと、自然的な条件とか地理的な条件で、開発地点によりましてずいぶん条件が違っておるのでありますから、一律二五%という線を引きますことがなかなかむずかしいことも考えられますし、かつまた地方財政は御承知のとおりでございますから、御提案の処置につきましては慎重に検討いたしてまいる、かような考え方でございます。
  49. 河村勝

    河村委員 私も別段、一律に二五%というような、二五%というのは大体大ざっぱな考え方で言ったんですから、そういう数字にとらわれなくても結構ですけれども、これは自治省が本気にならないとできない仕事ですね。ですから、これは国全体の問題としてぜひ本気で検討してほしい。要望しておきます。  時間も余りなくなりましたので、円高差益の還元問題。  円が高くなって、それで日本の国民の所得がアメリカに近くなったとか西ドイツと同じになったとか言いながら、なかなか実感が出ない。それは結局、国内の購買力がなかなか平均的についていかないからだということでありましょうが、特にその中で、やっぱり円高がこれだけ進んでいながら輸入品の価格が安くならないものがたくさんある。これが国民にとって一番納得のいかない問題であろうと思います。  経済企画庁でいろいろ追跡調査をおやりになった、その結論の中で、九月の、輸入品価格動向調査(第四次)というのがございますが、その中で見まして、ウイスキーとかハンドバッグとか、そういうものは下がれば下がったでよろしいけれども、しかし国民生活に直結するものでは必ずしもないので、そういうものはともかくとして、やはり一番気になるのは魚、肉ですね、牛肉、これだろうと思うのです。これについて少しお尋ねをしたいと思うのです。  この中でマグロの値段ですね。マグロの値段というのは、最近輸入価格も下がったし、同時に小売価格も下がった、優等生の方に入ってきたという説明がありましたけれども、実際はとてもとてもそういうものではございませんで、輸入価格は確かに五十一年の十二月から順調に下がってきて、卸売価格も大体それに準じて下がってきておりますね。輸入価格が四三・五%下がって卸売価格が三八・一%下がっている。ところが小売価格になりますというと四・五%しか下がっていない。だから、下がらないも同然で、むしろ円高の差益は逆に拡大をしているという状況であります。  それからもう一つ、エビでありますけれども、これが輸入額としては、水産物の総輸入額六千億のうちで二千二百億がエビということで、ずいぶん大量に消費をしているのですけれども、これは輸入品が全体の六七%で一番大きなウエートを持っております。これに至っては、輸入価格はもちろんどんどん下がってきている。二八・八%下がってきている。卸売価格も一五・二%下がっているにもかかわらず、小売価格は逆に八%上がっているというのです。  私は、どうも農林水産物資というのは、特に水産物資、肉等については流通機構に一番大きな問題があると思うので、これほどに円高効果が卸売価格まで出てきていながら小売価格にさっぱり響かない、逆にエビなどについては値上がりをしてしまっているということは、納得がいかない。一体これはどういうことなんでしょうか、説明を伺いたいと思います。
  50. 中川一郎

    ○中川国務大臣 円高メリットが消費者に返ってないという御指摘が各方面からございますので、農林水産省といたしましても、毎月それぞれ品目を決めまして調査あるいは監督をいたしておるところでございます。十分ではありませんが、徐々に効果を発揮しつつあります。  そこで、御指摘のマグロでございますが、マグロは、実は外国産は二〇%しか入ってきておりません。しかもこれは円建てで入ってくることになっておる仕組みで、国内価格にスライドして決まり、逆に円をドルに換算をして支払いをするという仕組みになっておりますから、円高が直接マグロには影響ない仕組みになっております。ただ、御指摘のように卸も下がっておるわけですが消費者価格が下がらないというのは、マグロの歩どまりが五〇%であり、しかも刺身が多いようでございますので、調理、サービス費というものがかなりかかるというところからですが、それでも、先ほどお話があったように最近は若干下がってきております。そういった流通機構が牛肉同様に問題もありますので、今後とも御指摘にこたえるように指導してまいりたいと存じます。  エビは逆に、外国から七〇%入ってきております。五十数鬼という御指摘でございましたが、実は七〇%。しかも、入ってきます国が六十カ国に及び、種類も、あるいはサイズ、大きさも違う。そこで、輸入価格はそれら数多くのものの平均価格で表示されておりますし、それから国内消費価格は適当なサイズの、上質のものでもってエビの価格を表示しておりますので、全体平均で卸が計算される。それから、消費はいいもので表示されるということで、比較するところに若干無理な点がある、こういうようなこともありまして、言われるほどではありませんが、卸指摘の点は確かにございますから、今後とも最善の努力をしてまいりたいと存じます。
  51. 河村勝

    河村委員 いまの説明、適当なもので、言われるほどではないというのは本当にそうでしょうか。五〇%も卸売価格が下がっていて、それで小売に全然響かないというのは、どう考えても納得がいかないですよね。時間が迫ってきたので、この点これ以上議論している暇はないのですけれども、これはもう一遍洗い直していただけませんか。本当にこのとおりの数字だったら、これはもうどこかに大欠陥があるとしか言いようがないですね。もしそれほどの、言われるほどではないと言うなら、本当はどうなんだというのを出すべきでしょう。それを一遍出してください。  それと牛肉の問題ですけれども、これはもういまさら申すまでもないことでございますが、世界じゅうでこれほど高い牛肉を食っているというのは、何とも一般消費者には納得のいかないところであります。これは円高というよりも制度の問題でございますが、ひとつこの辺でもって思い切って不足払い方式を導入をして、それで牛肉の値段を下げる気はないかということなんですよ。いまは一キロについて調整金を六百円ずつ取っておりますね。ですから多少ばらつきがありますけれども、六月の輸入肉の輸入価格が五百九十円、約六百円です。それが売り渡し価格になりますと六百円をつけて、これはちょうど倍になってしまいますね。これは多少ばらつきがあるので数字は多少違いますけれども、これが国内に売り渡すときには、大体六百円のものなら千二百円になってしまう。倍になってしまう。だから、これぐらい矛盾した話はないのですよ。で、不足払い方式を導入せよと言うと、すぐに農林水産省は、非現実的な方法だとかなんとか言って相手にしない。しかし、ごく簡単な話が、仮に国内産の牛肉の数量と輸入数量とが同じだと仮定をします、いまは国内産品が少ないけれども。そうすれば、国内の市場価格に輸入価格を引き上げるために六百円の調整金が必要だというならば、その調整金を三百円にしてしまって、その三百円を生産者に不足払いとして渡せば、牛肉が、六百円のもので千二百円になるものが九百円で済む、簡単な論理でしょう。それをいまどうしているかというと、それを全部畜産事業団の中に入れて、そして畜産事業団が一般会計の補助手段としてその金を使っているわけですね。それは農林省としては便利でしょう。大蔵省に頭を下げないでも調整金で特定財源が出てきて、大体は牛肉の生産の奨励とかなんとかということに使っておられる。中には豚のために使っていたりなんかするのもあるけれども、三百億ぐらいの金を自由に使える。これはいいかもしれないけれども、直接消費者には全く響かないのですね。だから、国内の生産者価格の補給というものを、平均生産費を算定をして、それを限度として、いま申し上げたように、いまの六百円取るものならば三百円の調整金を不足払いに回す。そのやり方は屠場を使えばよろしい。屠場は全国にそうたくさんあるわけではない。屠場で枝肉としてさばくときに支給をすればよろしい。そういうことにして平均生産費を目途としてやっていけばだんだんと生産性も上がるであろうし、そうすれば調整命の額がさらに少なくても済む、そういう方法がなぜとれないのであろうか。どうも学者のグループなどが言うと、すぐに非現実的だと言う。非現実的な面も確かにあの案にはあったけれども、私が言ったように調整金の枠内で操作する分には、現在の段階だって少なくとも百五十円や二百円は下げられるはずだ、そういうことがなぜ考えられないのか、お答えをいただきたい。
  52. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先ほどのマグロ、エビについては、まだ納得いかないそうでございますので、過去も追跡調査をやっておりますが、今後も追跡調査をして、しかと矛盾があるならば正したいと思います。  それから、牛肉については非常に議論の多いところでございまして、御指摘のように、外国から入ってきます牛肉に六百円相当かけております。そこで、いま国内が約三十万トンで外国物が十万トン。上下がありますから、それで約四百億近く事業団が調整金を取っておる。この四百億を御指摘のように生産費を高めるための施策に大体使っておる。そこで、六百円のうち三百円を回したらいかがかということになりますと、量が三分の一ですから百円がところ安くなるという仕組みに、財源としては(河村委員「百五十円」と呼ぶ)百五十円ぐらいになりますか、百円でも百五十円でも、そういうことになります。  そこで問題なのは、英国あたりでもこの仕組みはやっておるそうですか、英国あたりでは牛の種類というのは一定したものなのです。ところが日本では、御承知のように肥育したものあり、えさだけのものあり、子供あり、乳雄あり、廃牛あり、しかも乳牛が三分の二を占めておるものですから、乳牛に至りますと、どの段階にどうしていまの百円なり百五十円を差し上げるか、こういう技術的な問題が実際問題としてあるということが一つ。  それから、その肉の動きをとらまえるのに流通経路が非常に複雑であるというところから、これが一元集荷という仕組みになりますれば、農協その他でやりますれば、そこでとらえて差し上げる、こういう仕組みもありますが、複雑であるだけに技術的に大変だということで、こういった点については、五十年にこの畜産物価格安定法に牛肉を入れます際ずいぶん議論いたしましたが、やはり安定帯価格制度がよかろうということになりましたが、今後とも研究はしてみたいと思います。牛肉については非常に国民の間から意見もあり、先生の御意見もありますので、牛肉の安売りについては、生産費を下げる、あるいは流通コストの改善を行う等、急にはできませんけれども、一生懸命努力をしてみたいと思っております。
  53. 河村勝

    河村委員 どうも、研究はしてみますがということでありますが、本当に研究する気はあるのですか。これは、私は、やる気があるかないかだけだと思うのです。それは、一元集荷でなくても屠場で把握ができるでしょう。それと、和牛の上等なもの、芸術品のようなものは対象にする必要はないわけですから、和牛の中、それから乳雄の中、乳廃牛の中、そのぐらいのものを対象にすればよろしいわけですから、屠場で仕分けるからにはそんなに技術的に困難でないという、私どもも提案をするからにはある程度自信を持って提案をしているのです。いかがですか。
  54. 中川一郎

    ○中川国務大臣 牛肉の値段につきましては、総理大臣からも特に関心が持たれて御指示がございまして、何とかそういった方法を取り入れられないかということで、畜産局部内でも検討いたしておりますので、最善を尽くしてみたいと存じます。
  55. 河村勝

    河村委員 ぜひひとつこれは消費者のために、国民全体のために本気で考えてほしいと思います。  最後に、中小企業問題で特定不況地域対策と産地振興問題についてお尋ねをいたします。  私ども民社党では、七月以来、いわゆる企業城下町、それと中小企業産地、こういうところの円高の被害がひどくて失業、倒産が続出をしているという状態を心配をいたしまして、実地調査を各地でいたしまして、その上で特定不況地域対策特別措置法という法案をつくって、そこで企業に対する融資、補助、それから雇用問題だけではなくて、これは従来の特定不況その他と違いまして縦割りの方法だけでは救済できない面がございますので、地域振興計画等も含めて総合立法をするつもりで準備をいたしました。ところが役所の方では、通産省は通産省、労働省は労働省、それから自治省も別につくるというようなことで、各省ばらばらでおやりになって始めてしまった。私どもも結局それで目的が達成されればよろしいと思っておったのですけれども、どうも三省ばらばらになってしまいますと、どうしてもそこに抜けができる。特に現在の段階で、企業に対する直接の融資その他は一応通産省所管の法案にも盛られておりますし、労働省の労働対策に一応盛られておりますが、この種の地域は、やはり市町村長あるいは府県が関与して地域振興計画をつくって、そこに公共事業をやるのでも計画的に発注をして――現に中核に、なっている企業、土木建設業以外のものでも、そういう公共事業を実行する能力のある企業というのはずいぶんある。しかし、ほっておきますと専門業者にしか行かない。だから、そういうものを直接つなぎの仕事としてそうした仕事のない企業に与える、そういうような方法を講じていくことが一番大切であろう、そう思っていたのですが、なかなか目的を達成できない。一体この抜けた部分、地域振興計画、それに基づく公共事業の計画的な発注、そうした問題を政府としてはどう考えているのか、それを伺いたい。
  56. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業対策の中でいま一番緊急を要します課題は二つございます。一つ円高対策でありまして、これは昨年の秋以来実施をしておりますが、昨年の秋からずいぶん円高になりましたので、その都度強化をしてまいりました。今回もさらに相当強化をすることにいたしまして予算措置等も講じております。  もう一つの課題は、いまお示しになりました地域振興対策であります。不況業種がその地域の中核産業であります場合には、その地域全体の中小企業あるいは関連下請企業等がおしなべて不況になっておりますので、それに対する緊急措置を講ずる、こういう課題が一つございます。  いまのお話は、地域全体の総合的な振興計画を考慮すべしという御意見でございますが、実は政府もそういう案を考えてみたことがございますが、何分にも時間が相当かかりますので、事は緊急を要しますので今回のような対策になったのでございます。ただ、雇用問題は非常に大事でございますから、これは労働省と協議をいたしまして二つの法案を出すことにいたしております。
  57. 河村勝

    河村委員 いよいよ時間がなくなりました。最後に、この特定地域の不況対策で救えない中小企業産地、たとえば燕とか関とかいう中小企業の集まった町、ここらについてはどうしてもこの法律では救えない。これについては、聞くところによると、中小企業産地振興法というようなものをつくられるという話を聞いておりますが、それを早く立案してほしいということと、今度の予算で中小企業市場転換等緊急補助制度というものができて、総額で二億円計上してあるようでありますけれども、全国で七十九地域ぐらいあるのに総額二億円の補助では、これはもうスズメの涙のようなものだと思います。一地域少なくとも二億円ぐらい出すつもりでなければとうてい対処できないと思いますが、その点、一体どう考えておられるのか、それをちょっと伺いたい。
  58. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 産地振興計画でございますが、これはいま準備をしております。  それから事業転換等に対する補助金でありますが、これは何分補正予算でございますので、きわめて少額になっておりますが、いずれ本格的に進める必要があろうかと考えております。
  59. 河村勝

    河村委員 時間ですから、これで終わりたいと思います。  さっきのエビ、マグロ等についての資料は、もし企画庁の追跡調査の資料が間違っているのであれば、そうでないものを出してください。  それから、総理に最後に、予算委員会はあと二日ございますから、その間に、冒頭からるる申し上げました点について篤とお考えの上、われわれの要望に沿う回答をぜひ出していただきたい。お願いをします。  終わります。
  60. 中野四郎

    中野委員長 農林大臣に資料の要求が先ほど河村君からありましたが、これに対して至急資料を委員会に提出していただきたいと思います。  これにて河村君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  61. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東中光雄君。
  62. 東中光雄

    東中委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、日中条約、奇襲問題、有事立法問題、経済問題等について質問をしたいと思います。  わが党は、日中平和友好条約については問題点を十分に究明しなければならない、こういう立場から、さきに上田、松本両議員が代表質問を行いましたが、その際はっきりした答弁がなかったものがあります。それを若干伺っておきたいと思います。  総理は、九月三十日の参議院の本会議で、今回の条約はいわゆる平和条約ではない、日中間の戦争終結処理は一九七二年の共同声明で完了した、こう答弁をされました。日中共同声明は、平和条約にかわる条約なのか。共同声明は国会の承認を得ていません。批准もしておりません。単なる政治的意思の表明である、こう思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  63. 大森誠一

    ○大森政府委員 私からお答え申し上げます。  日中平和友好条約は、今後の日中両国間の平和友好関係を一層強固にし発展させるという目的のために結ばれた条約でございます。この条約が、表題におきまして平和友好条約という「平和」という言葉を用いておりますのは、日中間の平和的及び友好的な関係を強化するという条約の趣旨を明らかにするためでございまして、平和条約という性格のものではございません。日中間の戦後処理の問題は、すべて最終的に日中共同声明において解決済みであるというのが総理の御答弁の趣旨でございまして、日中共同声明発出以後は、日中間には一切の戦後処理の問題はございません。
  64. 東中光雄

    東中委員 日中共同声明という、これは条約でない、批准はしていない、国会でも承認をしていないこの共同声明、これによって一切の戦争の終結の処理をしてしまったと言われるのですけれども、こういう条約でない、政治的意思表明をした共同声明で戦争終結処理を全部終わってしまうというのは、きわめて異例のことだと思うのですが、そういう異例のことをやられたということになるのかどうか。
  65. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中間で戦争状態がいつ終結したのだ、この問題につきましては、日中双方で見解の違いがあるのです。これは東中さんも御承知と思いますが、わが国の方は、日華平和条約で戦後処理一切が解決した、こういう見解であるのに対し、中国側は日華平和条約を否認しておる立場ですから、そういう立場はとりません。中国側としては、共同声明で戦後処理が済んだのだ、こういう立場ですが、いずれにしても見解の違いがあるわけです。しかし、いずれにいたしましても、あの共同声明が発出された。そこでその見解の相違も一切調整された。わが方はもうすでに日華平和条約で日中間の戦争状態は終結した、こういうふうに見ておりまするけれども、それに対して中国側はそう見ておらぬという状態が、共同声明で全部解決になった、そういう理解であります。
  66. 東中光雄

    東中委員 結局、中国側と日本とはその点についての見解は一致しないままで、政府は共同声明で一切の処理が終わったというふうに解釈しておる。しかし、一般的に言って、共同声明というような政治的な意思の表明をやった声明で戦争状態を終結するというのは、むしろないことじゃないか、非常に異例のことであるということをここに私は指摘をしまして、時間がありませんので、もう一点お伺いしたいのですけれども、それは覇権についてであります。  総理は、覇権の定義で、一国が他国の意思に反して力によって自己の意思を押しつける行為を覇権と言うのだ、こういうふうに説明されたのですが、もともと覇権というのはヘゲモニー主義であります。それのいわば訳語であって、武力による押しつけだけではなくて、大国主義、自分の運動のパターンを押しつける、こういうことをも意味するというのは、むしろ国際的な常識になっておるわけです。だから、総理の言われる力というものの中には、政治的強制も入るというふうに見るのが当然だと思うのでありますが、総理はいかがでございますか。
  67. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 貴見のとおりであります。
  68. 東中光雄

    東中委員 それでは、それに関連してですが、二十九日に総理は、相手国の民主運動に武力闘争推進の立場から干渉、介入することが覇権になるかどうか、具体的な問題は当面してみないと判断できない、こういうふうに言われたわけでありますけれども、いままでいろいろあるわけです。  たとえば、一九七二年の三月二十九日、周恩来が、中国を訪れた岡田春夫さんやあるいは戸村一作に対して、連合赤軍がちょうど世を騒がせているあのときでありましたけれども日本の新左翼はすばらしいというような発言をしている。あるいは「よど号」事件についても、これは非常にすばらしいことだというようなことを日本に対して言うている。こういう持ち上げをしているわけです。そして連合赤軍側はどうかと言えば、毛沢東思想に基づいて武装されたプロレタリア軍団だというふうに彼ら自身が言うておる。こういう関係になっておる。  こういう具体的な問題で、そういう日本の政治について直接内部の問題についてやってくるというのは、自己のパターンを押しつけてくるというのは、やはり内政干渉になるのじゃないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  69. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 個々のケースにつきまして、それが覇権行為であるか、あるいはいまお話しのような問題、連想されるのは内政干渉になるのかというような、いろいろな問題があります。ありますが、その具体的な問題の全容をとらえて、そしてあらゆる角度から判断してみませんと、それが覇権行動であるかどうか、これは判断できないと思うのです。ですから、たとえばどういう事件と言いましても、よほどそれを吟味し掘り下げてみないと、これが条約に言われる覇権行動と言えるかどうか、これは申し上げかねる、こういうことを意味して過日の本会議ではお答えをしておる、こういうことでございます。
  70. 東中光雄

    東中委員 個々の問題について具体的に、しかし総合的に判断するということなんで、こういうことについては概念として内政干渉になるということを必ずしも否定されてないようにいまお聞きしたのですが、これは外務大臣にお伺いしたいのですけれども、外務大臣はある週刊誌上で、訪中のときに黄華外相に対して、「成田空港反対運動は、やがて反体制運動にいたり、いまではゲリラ運動に変って、日本共産党すら反対している。にもかかわらず、反対運動を指導する委員長(戸村一作氏)まで招いて歓迎し、激励までされるとは何ごとですか。これをみて日本の国民が、中国は内政不干渉の原則を守っていると思いますか。」こういうふうに述べたということが書かれておるわけです。中国は日本共産党に対して、中国共産党の持っておる武装闘争路線、これに従えということを言って干渉攻撃を始めた、そのうちに日本のにせ左翼暴力集団を支持するようになった、三里塚での彼らの実力行動を英雄的行動だと言ってほめたたえるようになった、こういう経過があるわけですけれども、これは明らかに干渉行為だ、平和五原則に反した覇権行為であって、日中平和友好条約の精神には一致しないのじゃないか、私はこう思うのでありますが、こういう発言を中国でされたという外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  71. 園田直

    ○園田国務大臣 そのような発言をいたしました。したがって、このようなことをなされれば、平和五原則といっても、日本国民は中国が内政不干渉とは受け取りません、今後御注意願いたい、こういうことを言ってきました。
  72. 東中光雄

    東中委員 そうすると、中国はそれに対してはどう言われたのでしょう。
  73. 園田直

    ○園田国務大臣 黙って聞いておられましたから、納得されたものと思います。
  74. 東中光雄

    東中委員 今日の国際社会で、思想、信条によって、あるいは所属によって一国への入国を許すか許さぬとかいうふうなことをやるのは、これはもう異例中の異例になっておると思うのですけれども、いまでは友好条約というものをつくったという中でもそういう事態が起こっておる。私はこれも覇権あるいは内政干渉になると思うのです。  もう一点お伺いしたいのですが、ベトナムの問題であります。  ベトナムに対して長期にわたって行われたアメリカのいわゆるベトナム侵略戦争、これは覇権になるのかならないのか、どういうふうにお考えでしょうか。覇権行為になるかどうか。
  75. 園田直

    ○園田国務大臣 これは紛争であると考えております。
  76. 東中光雄

    東中委員 ベトナム侵略戦争というのは、周知の事実でありますけれども、アメリカがベトナムを支配するためにナパーム弾を使った、毒ガスも使った、化学兵器も使った、皆殺し作戦もやった、大量殺戮行為をほしいままにした、これは世界周知の事実でありますが、こういう戦争を日中両国政府は、これは覇権行為でないという認識で一致したということになるのでありますか。
  77. 園田直

    ○園田国務大臣 私が中国と覇権行為について話しましたのは、それぞれの立場から覇権と判断し、覇権に抵抗する、こういう意味でありまして、他国の紛争というものは、われわれがこれをどう断定すべきかという筋合いのものじゃないと思います。
  78. 東中光雄

    東中委員 これは他国の紛争ではなくて、安保条約によって日本が基地にされ、日本がなければベトナム戦争はなかったと言われるぐらいに日本に直接関係しておる、そういう問題でありますので、これはひとつはっきりとしていただきたい、こう思うのでありますが、総理、今度の条約が結ばれるに際して、中国でいわゆる三つの世界論というのがございますけれども、これが背景になっておりますが、三つの世界論、御存じですか。
  79. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三つの世界論というのは寡聞にして聞いておりませんです。
  80. 東中光雄

    東中委員 これは簡単に申し上げますと、第一世界はソ連とアメリカ、第二世界は日本、西独などの先進国、第三世界は中国を含めての発展途上国、こういう考えで、中国が敵とするのは第一世界だ、第一世界の中でもアメリカとは接近しているから、ソ連が第一世界の中国の敵なんだ、それに対して反ソ国際統一戦線をつくっていくんだ、こういう論なんです。こういう論に立って今度の条約ということになっているわけですから、この覇権条項にしましてもいろいろ問題が出てくるわけであります。憲法上の規定の問題もあります。いま時間がありませんのでこの程度にしておきますけれども、あとは外務委員会でまたただしていきたい、こう思います。そういう政治的背景、中国政府のとっている方針というものについては当然十分理解をされてやられておるのではないかと思っておったのでありますが、知らぬと言われましたので、まことに遺憾に思う次第であります。(福田内閣総理大臣「いや、そういうことなら知っている」と呼ぶ)あとは外務委員会でやりますから……。  それで、私はいわゆる奇襲対処問題ということについてお伺いをしたいと思うのでありますが、きのうの審議でも、この間の代表質問の場合でも、奇襲について、総理は、奇襲は常識では今日では考えられない、理論上、観念的にあり得るという程度のものだ、万々一の可能性、防衛庁長官は万々一もないんじゃないかと思うけれども、やはりあるかもしれないという程度のものだ、こういうことを盛んに強調されておるわけであります。ところが、この問題が出てきた発端になった自衛隊幹部が言っておる奇襲というのは、そういう万々一の可能性の奇襲を言っているのではどうもないようなんです。栗栖発言でも、奇襲はあり得る、奇襲があった場合の法律は穴だらけだということを言って、そして超法規的行動ということまで言っているわけでありますから、奇襲の、同じ言葉を使っているけれども、概念は違うというふうに私は感じるわけであります。  それで、具体的に聞きたいと思うのですけれども、特定の武力攻撃があった場合、自衛隊の第一線指揮官が、急に不意打ちを受けた、奇襲を受けたんだということで、内閣総理大臣から防衛出動命令がない、すなわち政府も国会も知らない、そういう状態で、第一線指揮官の判断で戦闘行動に入るということは絶対に許されないというふうに思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  81. 金丸信

    ○金丸国務大臣 昨日からこの問題につきまして答弁をいたしておるわけでありますが、私は、奇襲という問題につきましては万々一、私は絶対ないと思うけれども、もしあるとすれば万々一の一つだ、こういう考え方で、それには、いわゆるいまの科学の進歩しておる、あるいは通信網の完備とかあるいは宇宙衛星、情報を得るとか、そういう中で奇襲というものが起こらないようにすることが政治だ、総理の権限を一つでも譲ることはいけない、それがシビリアンコントロールだという感じを私は持っておるわけでありまして、しかし、万々一の一つがあるならば、それはひとつ慎重に勉強してみようじゃないか、こういうことであります。
  82. 東中光雄

    東中委員 私はそういうことを聞いているんじゃないのです。武力攻撃があって、そして出動命令が出されていないのに現場にいる指揮官が、指揮官が予想しておった状態でない状態で入った、攻撃を受けたという場合に行動を起こすというようなことがあったら、これは皆さんの言われるシビリアンコントロールの原則からいって絶対に許されぬことだというふうに総理考えておられるのかおられないのかということを聞いておるのであります。これは総理考えをお聞きしたいわけです。私、法律論をやっておるわけじゃないのです。
  83. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いわゆる奇襲問題についての御質問でございますが、かねがね私自身も申し上げておりますように、国際法上の問題は別といたしまして、国内法的には自衛隊法の第七十六条に防衛出動という制度があって、その要件及び手続が明瞭に定められております。しかも、その条文をよく読みますと、奇襲といいますか、武力攻撃があった場合のみならず、そのおそれのある場合も防衛出動は下令ができる、また特に緊急を要する場合には、原則である事前の国会承認は事後でもよろしい、もちろんそれはのんべんだらりんと国会を開くわけじゃなくて、直ちに国会を開いて承認を受けなさいというふうに書いてございますので、そういう規定のしぶりから見まして、内閣総理大臣の防衛出動の命令がまだないのにいきなり奇襲を受けるということはまず基本的には考えられないというのが、われわれの法律の読み方でございました。私もそういう法律の読み方で従来自衛隊法を見ておったわけなんですが、突然、前続落議長が、いや、それは奇襲ということがあり得るのだというふうなことをおっしゃったものですから、それで私非常にびっくりしまして、もしそういうことがあればこれは大変なことである、これはひとつ本当にそういう事態があるのかないのかか、また、あった場合にはどういう事態がそこで起きるのかということを防衛庁なり専門の方によく研究してもらって、そうして、もし法制上それに対する対応策を整備する必要があるならば、それは私の方で御相談を受けて法律の作業をすることはやぶさかではございません、そういう意味で栗栖発言は検討に値します、こう申し上げたわけでございまして、奇襲という状態が本当にもうあすにでも起きるというようなことを心配しているわけでは毛頭ございません。  それからもう一つ、はっきり申し上げておきますが、自衛隊法七十六条で、国内法的には自衛隊が防衛出動をする際の要件及び手続が明瞭に決まっておるわけでございますから、現行法の解釈といたしましては、内閣総理大臣の防衛出動が下令される前に万々々一そういうことが起きたとした場合にも、現地の指揮官限りの判断で自衛隊法七十六条が予定しているような防衛出動ができるわけはございません。これは自衛隊法が明瞭に禁止しているところであるというのが私の法律解釈であり、総理もそのとおりだとおっしゃっていらっしゃいます。
  84. 東中光雄

    東中委員 ちょっと具体的に申し上げますと、いま竹島では韓国軍が武力占領をしておりますね。警備隊だと言っておるかもしれませんけれども、武器を持って日本の固有の領土竹島を占領しております。また、日本の巡視船が領海内におって、そこから突然砲撃を受けて、現に被害をこうむったということもあります。外務省は口上書を出して韓国に言うたこともある。この問題について、この事件が起こり始めたころに当時の鳩山総理大臣は、昭和三十年七月二十五日でありますけれども、「率直に言えば、竹島は日本の領土です。日本の領土を占領せられたのでありまするから、これは侵略と見るのが妥当で、自衛権の発動はできるわけであります。」しかし、自衛権を発動するかどうかは、これは慎重に考えなければいかぬ。そのために今度の場合は自衛権は発動しない、武力に訴えない。そして外交談判によって解決をつけるんだ。こういうふうに、これは議事録でありますけれども言うています。この場合に、日本の巡視船が突然砲撃を受けたというときに、それに対して総理大臣は何も言うてない。しかし、砲撃を受けた、まさに急迫不正の侵害です。だから、それに戦闘行動することができるのかどうか、それを奇襲だと言うてできるかどうかということが、いま論議されておる問題の実際上の中心問題だと私は思っておるのであります。そういう場合にでるのですか、できないのですか。総理大臣はどういうふうにお考えになっておるか。じゃないのです。総理大臣が自衛隊の最高司令官なんですから、最高責任者なんですから、どういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたい。
  85. 真田秀夫

    ○真田政府委員 申し上げるまでもなく内閣総理大臣自衛隊の最高指揮官でいらっしゃいます。最高指揮官でいらっしゃいますが、しかし、その権限はすべて国会が御制定になった法律に従ってやらなければならない。その法律の解釈が問題になるわけでございますから、あえて私がここでお答えを申し上げるわけでございます。  そこで問題は、いまも東中先生は、いきなり奇襲を受けた場合はどうだというふうな仮定でおっしゃるわけでございますが、先ほど来防衛庁長官もおっしゃいましたように、そういう奇襲どころか有事というようなことがないようにするのが日本の政治の要諦でございまして、そういうことをまず前提にしてわれわれ平素ものは考えておりません。先ほども申しましたように、まず自衛隊の防衛出動の手続、要件をよく読めば、そういう規定のしぶりからいっても奇襲ということはそんなにあり得るものじゃないのだという基本的な考えで法律を読んでおったわけでございます。  そこで、また仮定の万々々一の問題として、巡視艇が攻撃を受けた場合にどうするかとおっしゃる質問のようでございますけれども、巡視艇とおっしゃいますのは海上保安庁の巡視艇のことでございますか、それとも海上自衛隊の自衛艦のことでございますか。――問題は、海上自衛隊の自衛艦のことであれば、先ほどお答えしましたように、自衛隊法第七十六条の手続、要件が備わっておらなければ、七十六条が予定しているような抗戦はできません。これは明らかであります。七十六条が予定しているような抗戦が部隊長限りの判断でできるなどということは、私は毛頭考えておりません。
  86. 東中光雄

    東中委員 日本の巡視艇が巡視に行っておるときに砲撃を受けて被害をこうむったということは、仮定じゃなくて事実なんです。外務省はその事実に基づいて口上書で抗議をしたでしょう、当時、昭和二十八年ですけれども。そういう具体的な事態について、これは侵略行為である、侵略的武力行使であるということを鳩山総理大臣は判断をした。しかし、現場の指揮官がそんなものを判断して行動を起こしたらどういうことになるか。奇襲だとかなんとか、こういう理屈は抜きにして、攻撃を受けたから反撃するんだ、逃げておるわけにはいかぬのだというふうな理屈で反撃をしたらどうなるか。けさの新聞を見ますと、きのうの韓国の国会で、国防委員会では韓国の国防相が、竹島で何らかの出来事が発生すれば軍隊の出動もあり得る、そういうふうに言っているのです。そういう状態なんですね。だから、もしその現場の者が判断をして戦闘行為に入ったら、これはもう戦争に入っていくということになるから、絶対に許されない。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 私は法律の解釈を聞いているのじゃないのです。だから総理大臣に聞いているのです。絶対に許されぬことだというふうに私は思うのですが、その点は総理大臣はどうかということなんです。
  87. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま奇襲という事態は想定しておりませんものですから、それに奇襲という事態に対してどういうふうに対処するかという体制が決められておらないのです。そういう中で奇襲があった、こういうことが万一ありますれば、それは、自衛隊内閣総理大臣の指揮を受けるまでは行動することはできない、このように御理解いただきたいと思います。
  88. 東中光雄

    東中委員 それを、内閣総理大臣からの下令がないのに、攻撃を受けた、奇襲を受けたということで超法規的行動をやるということを言ったのが栗栖発言だと思うのでありますが、栗栖統幕議長を事実上解任された防衛庁長官に、栗栖統幕議長を事実上解任された理由、根拠ですね。これはもうかつてないことですから、どういうふうにお考えになっておるのか聞かせていただきたい。
  89. 金丸信

    ○金丸国務大臣 栗栖統幕議長が超法規行動、こういうことをあの統幕議長という立場で、あたかも自衛隊憲法を守らずに、あるいは法律も守らずというような誤解を招くおそれあり、私は、マスコミの人とか学者がそういうことを言うのであるならばこれは格別、しかし、あの地位におる栗栖君があのような発言をするということについては、これは絶対に許されない。ことに私は、奇襲というようなものはあり得ないという立場の中で、また、奇襲をあり得ないようにすることが政治だということであるならば、この問題にそういうような考え方で彼にやめてもらったということであります。
  90. 東中光雄

    東中委員 その後、九月の十四日でありますけれども、金丸防衛庁長官が、自衛隊法を改正して首相の出動命令の例外を設けることはしないということを記者会見で言われたことがあります。これは新聞紙上に、記者会見ということで出たことがあるのです。ちょうど同じ日に永野陸幕長が、われわれ制服としては、刑法三十五条で部隊奇襲対処ができる。要するに奇襲があったと思ったら、部隊でそれに対処して戦闘行動ができるというふうになるんだったら問題はない。そうでなかったら法律を改正してほしいのだけれども、それでやれそうだからそれでよろしいという趣旨の記者会見をしています。これは、奇襲の事態に対して、超法規的と統幕議長は言ったけれども、この人は刑法三十五条に基づいてというようなことを言っているのですが、刑法の三十五条で自衛隊の部隊行動ができるというふうなあほうなことを考える人というのはどこにもおらぬですよ。法律のあほうな考え方ですよ。そういうことは絶対に許されない。これはもう常識的に成り立たぬことを言っているわけですね。超法規的じゃなくて、超法規解釈でとにかく対処行動をやるということを言っているのです。しかも、いま長官が言われたように、制服で、陸幕長という立場でやっている。これは栗栖発言と性質は全く一緒であります。言葉が違うだけであります。この記者会見について問題意識さえ持たれていないような感じを、いま防衛庁長官のお顔を見ておって感じるわけでありますけれども、どうですか。これはいかぬことだというふうに考えておられるのか、そういうことは当然どんどんやっておっていいことだというふうに考えておられるのか、いかがでございますか。
  91. 金丸信

    ○金丸国務大臣 陸幕長の話を何とかかんとか東中さん言っておりますが、私はその話は耳にしてはおらぬ、記憶にありません。
  92. 東中光雄

    東中委員 防衛庁長官が、自分が記者会見をして言うたことに関連をして陸幕長が記者会見をして、翌日新聞に、それこそ何段見出し、五段も六段もの見出しで出ておるのを、それを全然見てなくて、関心も持ってなくて、記憶にない、こういうことだったら、これはもう防衛庁長官として失格ですよ。だって、自分の部下のそういう公的行動、栗栖さんに対してとったそれと同じことが起こっておるときに、知らぬということはないですよ。知らぬとすれば、それは重大な責任だと私は思います。実際は知っておったけれども、どうもいま考えてみれば、東中の言うことを聞いておれば論理的にはそうなるなあ、だから、逃げ口上としてそう言っておられるとしか思えないじゃないですか。
  93. 金丸信

    ○金丸国務大臣 いや、私は何も逃げ口上を言っているわけじゃないのですが、よく調べまして、すぐ御報告をいたします。
  94. 東中光雄

    東中委員 同じ性質のことを、統幕議長が事実上解任されたすぐ後で、今度は陸幕長が言うている。それについて関心を持っていない、こういう状態で制服の議論のペースの中へ入っていって今度の統一見解が出てきたのです。これは私、大変ゆゆしいことだと思っているのです。万々々ないというふうに思うておることをぽんと言われたからといって、法制面を含めて検討する、しかもそれは制服から言われたということで、制服が政治を動かしていくような、そういうペースにはまり込んでいる。これは非常に危険であります。このことを指摘をしまして、後で答弁をするということでありますから答弁をしてもらいたいと思います。  時間がありませんので先へ進みますが、次の質問の前提に、自衛隊あるいは自衛隊法、それから、防衛庁の発言の中には武力攻撃という言葉、それから武力の行使という言葉、武器の使用という言葉が出てきます。一般に常識的に考えておったら、武器の使用と武力の行使と武力攻撃とどこがどう違うのか、何かさっぱりわからないです。同じことを表現を変えているだけかもしれない。法制局長官、それこそ法律の番人だと言うんだったら、内閣責任者としてこの概念をはっきりさせて、一緒なのか違うのか、相違点を簡潔にやってください。
  95. 真田秀夫

    ○真田政府委員 なるべく簡潔にお答えを申し上げますが、なるほどおっしゃいますように、日本の法令には、武力の行使という言葉あるいは武器の使用という言葉がございます。まず気がつきますのは、武力の行使というのは憲法九条に書いてございます。それで、九条を読んでいただければおわかりだと思いますけれども、そこで言っている「武力の行使」というのは、「戦争の放棄」あるいは「武力による威嚇」というようなものと並べて書いてございますので、それから見ましても、そこに言う「武力の行使」というのは、いわゆる戦争に該当しない戦闘行為を行うこと、そういうような意味だと私は考えております。  それからもう一つ、武力の行使という言葉は自衛隊法の八十八条に出てまいります。これは、先ほど来問題になりました七十六条による出動命令があった場合に、自衛隊がそこで外敵を排除するために武力を行使する、そういう概念として武力の行使というのが出ているのだろうと思います。  それから、もう一つの武器の使用というのは、これは自衛隊法に限らずいろいろな法律に出ておりますが、問題を自衛隊法に限定してお答えいたしますと、自衛隊にはいろいろ任務がございますが、自衛隊法の第三条に、そういういわゆる防衛活動を主とした任務とし、そのほかに、必要があれば治安の維持なりいわゆる警察行動にも当たるというふうに書いてございます。  そこで、いまの言葉の使い分けでございますが、私はどうも、自衛隊法を合理的に読みますと、いまの武力の行使というのは、自衛隊任務のうちのいわゆる国の防衛活動、その場合をまず想定して用いているのだろうと思います。それが八十八条でございます。そのほかに、ただいま申しました従たる任務として警察活動を行います。治安出動などというのもその一例だと思いますけれども、そのほか海上警備活動とか、いろいろ警察活動を任務として持っております。その警察活動に従事する場合に武器を用いる、それを自衛隊法は各条文で武器の使用という言葉を使っているのだろう、それが一番合理的な解釈であろうというふうに私は考えております。  それからもう一つ、例の武力攻撃の御質問がありましたので……(東中委員「いいですよ」と呼ぶ)よろしゅうございますか。――それではやめておきます。
  96. 東中光雄

    東中委員 武器の使用と武力の行使はどう違うのかということを聞いているときに、その概念が実際問題としてどう違うのかと言っているときに、時間つぶしのように憲法九条を出してみたり自衛隊法七十六条を出したり、そんな話をいま聞いているわけではありません。これは私は、法制局長官としては実質上の答弁拒否だというふうに思うぐらいであります。時間がたって申しわけないから、そういうことは論議をしません。  しかし、ここで私は、領空侵犯に対する措置の問題についてお伺いしたいのですが、わが国は米軍第五空がずっとわが国の防空をやってきた。昭和三十四年にいわゆる松前・バーンズ協定によって航空自衛隊が肩がわりして引き継いだ。それから後の体制というのは、航空自衛隊日本全国を四分割した航空方面隊を持っている。それぞれがADCCと呼ばれる防空管制所、ADDCと呼ばれる戦闘指揮所、これをもって、領空侵犯があった場合に緊急発進をする、こういうふうな体制になっているわけであります。こういう体制になっているのですが、領空侵犯があった場合の措置、先ほど法制局長官が言われましたけれども、これは自衛隊が戦闘行為じゃなくて警察行動としてやるのだということになっていると思うのですけれども、そうじゃございませんか。
  97. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 平時におきます領空侵犯の措置は、自衛隊法八十四条によって航空自衛隊に与えられております。したがいまして、警察行動としてこれに対処することになるわけでございます。
  98. 東中光雄

    東中委員 ファントムが、あるいはF104が緊急発進をしてばっと飛んでいく。軍事行動のように見えますけれども、それは警察行動であるということをいま局長が言われたとおりであります。  ところが、そうして飛んでいく場合の根拠は自衛隊法の八十四条だ。八十四条は明らかに領空外への退去または着陸、そうした誘導措置をとるということになっているわけです。ところが、実際に現場の航空自衛隊の諸君に聞きますと、そういう警察行動どころの騒ぎじゃないわけです。まず、スクランブルの発進を防空管制所の司令官が出す。そうしたら、いまのファントムにしましても、F104にしましても計器飛行です。自分だけでは飛べないのです。だからADDCから、要するに防空戦闘指令所からレーダーを見ながら管制、誘導するということになるわけであります。そして、上へ行った場合にどうするのか。もし攻撃を受けた場合は、そこで現場の方面隊の司令官が、ACCの指令かどうか必ずしも明らかではありませんけれども、戦闘を命令するということがあるのであります。こういうふうに言っているわけです。これは平時のことです。だから内閣総理大臣政府も国会もだれも知らぬ。しかし、そういうふうにやれる、やるのだという体制になっているのだ、こう言っているわけであります。  だから、さっきの奇襲の問題と同じなのであります。そういう体制になっているのではないのかどうか、防衛庁長官、いかがでございますか。
  99. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 平時におきます領空侵犯の措置といたしましては、確認し、識別し、そして警告を発して、なおかつそれに従わないものは着陸をさせるようにということが内訓で示されているわけでございます。その際に、いわゆる正当防衛あるいは緊急避難の要件に該当するような場合、相手が非常に攻撃姿勢をとってきたような場合には武器を使用してよろしいということを内訓で定めておりますが、御承知のように現在のような平時におきましては、その際といえども、なおその状況を報告して指示を待つというのが運用としては正しいであろうというふうに指導しているわけでございます。したがいまして、これは相手が攻撃姿勢をとったということでございますから、相手の飛行機の種類にもよりましていろいろな態勢があるわけでございますが、それは現実にその要撃管制をしておるレーダーの上なんかでは判断できないわけでございまして、これはパイロットが判断をいたしまして、そういった場合に、身の危険を守るためには武器の使用をしてよろしいということを内訓で定めておるわけでございます。
  100. 東中光雄

    東中委員 ファントムが攻撃を受けた、もしくは受けるというふうに思ったら、身の危険をパイロットが守るためにファントムのあのミサイルをぼうんと撃ってもよろしいと言うのです。それを撃ってごらんなさい。向こうが韓国機だったら、こっちが撃ったら、これはもう戦闘行動であることは間違いないです。しかし、それは現場の司令官さえ知らぬということをいま言っているのです。本人の判断でやるのだ、こういうふうに言っておるのです。そういうことを内訓で決めてある。法律では決まっていない。それはなるべくせぬように指導している、しかし、できると言っているのです。やった場合には、国会も政府もだれも知らぬのに戦闘行動、空中戦が始まるわけです。どっちが先に撃ったか、どっちが撃とうとしたかというふうなことは、これは後から言うことでありまして、戦闘行動にその人自身の行動で入っていけるようなそういう内訓をつくっているということをいま言われたわけでありますけれども、この内訓というのは一体何ですか、防衛庁長官、内訓というのは何でありますか。
  101. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、平時において現実の任務を与えられておるのは航空自衛隊の要撃任務でございます。その要撃任務を――領空侵犯措置任務でございます。その領空侵犯措置任務を果たすに当たりましての行動の基準といいますか、そういうものを大臣の命令で出しているのが内訓でございます。  しかしながら、いま先生は、すぐ撃てるような態勢になっているということをおっしゃいましたけれども、現に、領空侵犯措置のために、要撃機は年間三百回以上上がっているわけでございます。そして、いまだかつてそういったことをやったことはない。いわゆるこういう状況のもとにおいてはそういうことは予想しておりませんけれども、万々一の場合、危害を加えられるような場合には武器を使用してよろしいということになっているわけでございます。
  102. 東中光雄

    東中委員 万々一の場合に武器を使用してもよろしい、戦闘行動に入ってもよろしいということになっているのだといま言ったのです。しかも防衛局長は、一番初めに、領空侵犯の措置と言い直す前に、要撃のときは、こう言ったのです。あれはまさに要撃機という感覚で防衛庁はつかんでいるから、だから要撃と言ったのです。それで、これは法律上こんなことを言ったらぐあいが悪いと思って、措置というふうに戻ったのです。そして、万々一の場合にやってもいいのだ。政府は先ほどまでの話では、そういうものは万々一ない、しかし、万々一あるかもしれぬから、そのときのことを法制面も含めて検討するのだ、こう言ったんですね。ところが、防衛庁長官命令で、検討するどころか、そのときには武器を使用してよろしい、ファントムは武器を撃ってよろしい、要撃をしてよろしいという規則になっているのだといま言ったんですよ、伊藤さんは。重大問題です。防衛庁長官、あなたの命令なんです。内訓というのは、内部の訓令でしょう。あなたの命令じゃないですか。あなたはこの命令自身を知っておりますか。防衛庁長官は知っているかどうか、まずお聞きしたい。――防衛庁長官。――いや、防衛庁長官知っているかどうかを伊藤局長がわかるわけないじゃないか。
  103. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 内訓というのは長官の命令でございますから、長官は当然御存じでございます。  いま先生がおっしゃいました中で、いわゆる領空侵犯措置というのは法律によって任務が与えられていることでございます。  それから、いま検討するといいますのは、七十六条によって防衛出動が下令される以前の問題があるのではないかというようなことにつきまして検討するというので、その内容は本質的に違うわけでございます。
  104. 東中光雄

    東中委員 法律によって領空侵犯措置が決められておることは事実です。しかし、法律によって、内訓で決めているような武器の使用、そんなことはどこにも決めてないのです。法律にないけれども内訓でつくった。ファントムが武器を使用するというのは、ミサイルを撃つよりほかにないのです。ピストルを撃つというのとは違うのです。それを許すということを内訓で決めているというのです。しかし、その事態は、七十六条の防衛命令は出されていない。だから、総理大臣もだれもみんな知らない。現場の者が判断してやってよろしい、なるべくやらぬようにした方がいいけれどもやってよろしいという規定があるんだ、こう言うのでしょう。そういう訓令をつくっているのが防衛庁長官だ、こういうわけでありますから、それで戦闘が起こったら盧溝橋と同じですよ、知らぬ間に起こるわけですから。その訓令を出していることになっている防衛庁長官、いつ、何という名前で、どういう内容でこの訓令が出されておるのか、お伺いしたい。
  105. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私は、先ほど来から申し上げておりますように、奇襲というものはあり得ない、またあり得ないようにすることが政治だと言っているので、いまのような訓令がもし――私が命令を出す、私は出しません。
  106. 東中光雄

    東中委員 これは重大な発言です。訓令、命令は出されておるということを伊藤防衛局長は言っているんでしょう。防衛庁長官が、その命令を出している人が、私は出しません、こう言っているのです。これはどういうことですか。
  107. 金丸信

    ○金丸国務大臣 これは三十九年に訓令が出ているというお話だそうでありますが……(「いま知ったのか」と呼ぶ者あり)いま知ったのです。そういう状況でありますから、私は、そういう問題については、そういう訓令はあるにいたしましても、そういうことのないようにすることが政治だ、こう考えております。
  108. 東中光雄

    東中委員 訓令を出したことを問題にしているのであって、自分で訓令を出しておいてそのことをなるべくやらぬようにしようと思うておる、こんな無責任な話がありますか。  総理大臣、事の事態はいま申し上げましたように、スクランブルで警察行動で発進して、そして上でそのパイロットが勝手に判断をして、実際は現場ではレーダーを見て指揮する、こう言っていますけれども、それで戦闘行為に入ることができるんだ、法上は規定はないけれども、訓令にはそういうふうに決めてあるんだということになっているわけです。戦争が起こる前提になる、あるいはそこに突き進んでいく、そういうことになりかねない訓令がつくられている。総理大臣は国防会議の議長、防衛行動の最高責任者であります。総理大臣自身がその訓令を見られたことがあるか。その内容を御承知ですか。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はその訓令を見ておりません。
  110. 東中光雄

    東中委員 外務大臣にお伺いしますが、外務大臣も国防会議の議員であります。戦争に入るようになるかもしれないというような、そういう危険な訓令があるということ、あるいはそれについて、その内容はどういうものかということについて御承知でありますか。
  111. 園田直

    ○園田国務大臣 総理大臣が答えられたとおりであります。
  112. 東中光雄

    東中委員 国防会議の議員、国の防衛、国防についての最高の機関である国防会議の議長、外務大臣、大蔵大臣、それから経企庁長官、副総理、この人たちが、そういう戦争がどうなるかも知れぬというような状態の訓令なるものがつくられている、つくった本人の防衛庁長官がそういうことがあること自体も知らぬと、こうおっしゃっている。これでは大変な事態になると思うのです。訓令を出していただきたい。ここへ訓令を出していただきたい。何を書いてあるのかということを出していただきたい。見ておられないのですから、出していただきたい。
  113. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、戦闘行動ではございませんで、正当防衛、緊急避難に基づく武器の使用でございます。そしてまた、このことは国際常識に従っていることでございまして、すぐミサイルを撃つとか、そういうことはないわけでございます。  また内訓は、これは秘でございますので、従来から内容につきまして概要は御説明いたしておりますけれども、内訓そのものは提出することは差し控えさせていただきたいと思います。
  114. 東中光雄

    東中委員 総理大臣も、国防会議を構成する議員各大臣も、防衛庁長官自身も、知らない。それによって武力発動、戦闘行動、いまミサイル以外に、それじゃ武器の使用といってあのファントムの中でピストルを撃てますか。撃てやせぬじゃないですか。ミサイルを撃つ以外にないじゃないですか。あるいは機関砲を撃つ以外に何がありますか。そういう武器の使用ということで戦闘行為に入るかもしれないということを認めておる根拠になっている内訓、これをぜひ出していただきたい。防衛庁長官、出せませんか。防衛庁長官、あなたの命令なんです。知っているか知らぬにかかわらず、命令、規則のその命令なんです。だから、それを出せませんか。防衛局長が出せませんと言うたら、もうそれに拘束されるということになるのですか。
  115. 金丸信

    ○金丸国務大臣 防衛庁で秘ということで出せないというものは出せない。出せるというものは出せます。
  116. 東中光雄

    東中委員 これは出せない理由が、いままでの国会でたった一回でありますけれども、言われておるのです。昭和四十三年の十月三十一日、決算委員会で当時の防衛局長宍戸さんが、航空総隊発第八号、領空侵犯の措置実施に関する達、「そういうものはございますけれども、米軍との関連がございますので、国会にお出しすることは、米軍の了承を得ておりませんので、ごかんべん願いたいと思います。」こう言っているのです。これでは、戦闘行為に入るか入らぬかということが問題になっているこの重大な問題について、シビリアンコントロールどころか、米軍があかんと言うておるから出せない、アメリカンコントロールじゃないですか。なぜ出せないのですか。この宍戸局長が当時言ったこと、これは事実を言っているのですから、いまになったら変えるというわけにいかぬでしょう。アメリカンコントロールじゃなくて、国民に、そして国権の最高機関であるこの国会にその内容を出して、審議をして、まかり間違ってもそういう暴走による、あるいは現場の指揮官による、あるいは現場のパイロットによる戦闘行為が先に暴走してしまうというようなことはやるべきでない、その審議をやるのが国会じゃないですか。なぜ出せないのですか。アメリカンコントロールでわれわれはいくんだということですか。防衛庁長官、いかがですか。
  117. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛庁の内訓でございますから、アメリカのコントロールのもとにあるものではございません。そして、いわゆる内訓の内容、これはまさに領空侵犯措置の態様でございますから、そういうのは内訓として秘にしているわけでございます。
  118. 東中光雄

    東中委員 防衛庁は、この内訓については、侵犯機と思われるものがあった場合にそれを捕捉し確認する、あるいはそれを誘導する、あるいは着陸を警告する、こういう措置をとりますということもこの内訓には書いてあると言うのです。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕 それは法律の範囲内なんです。  ところが問題は、その最後に、理由のいかんにかかわらず法律にない武器の使用ができる、一定の条件であるけれども、ファントムに武器の使用ができるということを加えて書いてあるのです。その重大な問題を、実際どうなっているのかということを、その規定を見なければわからない。その規定については米軍がぐあいが悪いから、米軍の了承を得てないから出せないのです、政府はそう言っていた。こういうことが一体許されるか。いわゆる松前・バーンズ協定の末項にそういうことが書いてあるのです。「要撃機の運用」というのがあって、「要撃機の運用は現行運用手順にしたがい実施する。」現行運用手順というのは、アメリカが現にやってきたことをもとにしてつくってあります。そして「総隊の要撃機は航空自衛隊の要撃準則を守り、五空の要撃機は太平洋空軍の交戦準則を守る」こういうふうになっている。そして「武器の使用に対する決定は、」ということも書いてある。  松前・バーンズ協定は秘密軍事協定であります。五空と航空総隊の間でつくられて、その内容をいまだに明らかにしない、そういう秘密軍事協定に基づいて同じ内容の内訓がつくられて、法律にない武器の使用を許すことになっておって、そしてその現場の指揮官が一方的に判断すればミサイルも撃てる、そこで戦争をやる、それから後で総理大臣は、これは戦争をやるのかやらぬのかということを命令するかどうか、そういう体制になっているのです。  これはゆゆしい問題であります。総理大臣、内容を見ておられないといまおっしゃった。どういう仕組みになっているのかということは総理大臣は言えない状態であります。ぜひその内容を明らかにして――私が言っているような事態になるのですから、だから国会へ出してそれを審議対象にする、総理大臣が最高の責任者として決断されるべきものではありませんか、いかがですか。
  119. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、松前・バーンズ協定の中に書いてございます要撃機というのは、領空侵犯措置についておるのは自衛隊の要撃機でございます。そして、この要撃準則というのがまさに内訓でございまして、現在の内訓は松前・バーンズ協定とは関係なく、日本自衛隊の航空機が、領空侵犯に当たっての対応の手順を決めてあるものでございます。
  120. 東中光雄

    東中委員 これは重大な発言をお伺いしました。松前・バーンズ協定に言うておる要撃の運用というものは内訓でやっておるのと同じだということ、これは初めて認められたようなものであります。そしてその内容はやり方だ、そのやり方は武器の使用、松前・バーンズ協定にも武器の使用と書いてある、それは一致しているじゃないか、私はそう言っているのです。だから、私の言っていることを認められた。
  121. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように松前・バーンズ協定というのは、アメリカから航空自衛隊が領空侵犯措置の行動を引き継ぐに当たりまして、松前・バーンズの間でのそのやり方についての取り決めを書いてあるものでございます。この場合に、当時は航空自衛隊の勢力が十分でございませんでしたので、アメリカの航空機も要撃任務についておったわけでございます。その際に、それぞれの指揮系統に従ってやるということ、それからそれぞれの規定に従ってやるということを取り決めてあるわけでございます。そして、航空自衛隊がその任務につきますときには、内訓を定めましてその対応の措置を決めたわけでございます。その際に、攻撃を受けるようなことがあったら武器を使用してもよろしいということを決めてあるだけのことでございまして、これは戦闘行動というものでは全くございませんで警察行動でございます。そして、これはまた国際常識に従ったものであるわけでございます。
  122. 東中光雄

    東中委員 いままでは内訓内訓ということで、何のことかわからぬようなことを言われておったのですけれども、今度は、その内訓というのは松前・バーンズ協定に言う要撃準則であるということを初めてきょう明らかにされたわけです。それでつい要撃という言葉が先ほど来向こうから出てきた。  そういう中で、要撃というのは、警察活動というよりは戦闘行動になるでしょう。ファントムがミサイルを発射して、それは武器の使用でございまして戦闘行動ではありませんなんてどこに通用しますか。そういう理由はどこでも言うけれども。だってセルビアの一人の青年が一発発砲したということで第一次世界大戦が起こったじゃないですか。蘆溝橋あるいは柳条溝は、同じように出先でやってそれが大戦争になっていくでしょう。これは、要撃しに出て行った要撃機が、その現場の判断で航空戦闘に入ってくる。撃ったら向こうが撃つでしょう。向こうが撃ってきたらこっちが撃つ、空中戦ではないですか。それが空中戦でないなんて言っておったらまさにおかしいですよ。それは戦闘行為でしょう。  総理大臣も何にも知らぬ、そういう事態になる要撃規則をつくっている。法律上の根拠なしにつくっている。その内容を明らかにしなさい。これをせぬのだったら、もうほおかむりして、あの奇襲攻撃云々、奇襲対処論議なんというのは全くのインチキだということにならざるを得ない。私は、これこそアメリカンコントロールでいくのか、それとも本当に平和を守るという日本憲法立場に立ってやるのか、重大な問題だと思うのです。だから総理大臣、その点についてあなたも読んでないと言うのです。最高責任者が知らぬと言うのです。そういう問題については、出して審議をするというふうに総理大臣として決断されるべきだ、こう思うのですが、いかがですか。
  123. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国わが国の国益を踏まえて万事行政を運営しなければならぬ、そういうたてまえにある、このように承知しております。  各般のことから考えて、防衛庁で洗いざらい何でもかんでもこれを公にしてしまう、こういうことは妥当でない、こういうものもあるわけでありますが、いずれにいたしましても、防衛庁があるいは自衛隊が法律に違反して行動するということはあり得ざることで、これは許しません。しかし、国益のために秘密にしなければならぬということもこれはまたあるのだということも、しかと御理解いただきたいと思います。
  124. 東中光雄

    東中委員 これは秘密にしなければならぬものもある、そういう一般的なことを私は言っているのじゃないのです。そんなものはわかり切ったことなんです。これは訓令あるいは要撃準則、一種の法規的性質を持っているのです。法律に基づいてつくられた法規的性格を持っておる準則が、日本を戦争に巻き込んでいくかもしれないような規定が、出した防衛庁長官自身も知らないのにひとり歩きしている。その内容はどうなっているのかということを審議しなかったら、一体どこにシビリアンコントロールがあるのですか。  これは総理大臣が最高の責任者として、何にも都合の悪いことが書いてないのだったら見せたらいいじゃないですか。そのときに具体的にどういう命令を出すかとか、そういう作戦行動そのものの指揮だったら秘密にするということはあり得るかもしれません。これは準則なんです、規則なんです。どうなんですか、出すべきじゃないですか。――あなたに聞いているのじゃないのだ。
  125. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 内訓というのは、行動の基準を決めました命令でございます。したがいまして、その内訓は秘になっているわけでございます。  なお、いま先生がおっしゃいます御質問の中にございましたけれども日本は独立国でございますから、平時からやはり領土、領空に対する対処の措置というものを当然とっているわけでございますから、その範囲で、国際法の許す範囲、いわゆるその領土を侵してくるというものに対して必要な対処というものは当然のことだと考えているわけでございます。
  126. 東中光雄

    東中委員 こういう準則があるのは航空自衛隊だけであります。陸上もなければ海上もないのです。海上は海上保安庁がやっているのです、警察活動ですから。ところが、これだけは自衛隊がやっている。海上保安庁ではそういう武器使用なんという規則はつくってない、外国に対してですよ。それを自衛隊だけはやっておる、こういうことなんで、私は、いまの奇襲論議との関係で、きょうは新しいこと、要撃規則だということまで認められた、そういう重大な問題でありますから、この審議をやっていく上で、防衛庁が出して防衛庁が秘密にしておる、そうしたらもう国会では審議もできない、こんなばかなことはあり得ないわけですから、委員会として、委員長に、ぜひ提出要求を出していただきたい。
  127. 中野四郎

    中野委員長 もう少し正確に……。  理事の寺前君、ひとつ済みませんが、いまの要点は何ですか。  東中君、いま理事にお話ししておりますが、内訓で、出せないものだと言うのですから、御理解いただけませんか。
  128. 東中光雄

    東中委員 私はいま個人として要求をしましたけれども、出さないと言っている。国会として、委員会として正式に法律に基づいて提出命令をするというふうに計らってもらいたい。そうしなければ実際審議できぬじゃないですか、こういうことを言っているのです。
  129. 中野四郎

    中野委員長 理事会においてまた十分検討して、ごあいさつをいたします。  続けてください。東中君。
  130. 東中光雄

    東中委員 この問題については、出してもらって、そして審議をしなければ、これはもう国民に対して申しわけないと私は思いますから、問題を留保しておきたいと思います。  時間が余りありませんので、もう一遍お伺いしますが、いま申し上げた松前・バーンズ協定というのも、在日米軍第五空軍と日本の航空総隊との間でつくられた秘密協定であります。いま日米防衛協力小委員会というのが二年前からやられています。ここでは有事の際の日米共同作戦行動を含む共同対処行動のあり方について研究、協議をしたということでありますが、総理大臣、御承知でございましょうね。
  131. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 粗筋は承知しております。
  132. 東中光雄

    東中委員 有事立法研究とは言いませんけれども有事における自衛隊と米軍との共同作戦あるいはその他の、補給やらいろいろありますが、そういう共同対処行動についての、準則とは言わないで、ガイドラインをつくるということでやっておるようであります。これが、第八回小委員会が近く開かれて、そして十一月の日米安保協議委員会にかけて、外務大臣、防衛庁長官が出席をしてそれを承認するようになるんだというふうに言われておるのでありますけれども、このガイドライン、指針というのはどういう法律上の性質を持つのですか。それは米軍、自衛隊を拘束するのですか、しないのですか。いかがでございますか。
  133. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、この日米防衛協力小委員会でやっております作業は、緊急時における自衛隊と米軍との間の整合のとれた共同対処行動を確保するためにとるべき措置に関する指針を含めて日米間の協力のあり方に関する研究、協議をやる、こういうことでございます。先生のただいま御指摘になりました指針、ガイドラインというもとは、まさにガイドラインでございまして、緊急時において自衛隊と米軍とが共同で、指揮系統は異にしながらも整合のとれた共同対処行動を行うためにどのようなことをあらかじめ研究しておかなければならないか、どのような協力を行うべきかという点についての指針を定めたものでございます。したがいまして、これは日米間における協定とか条約とかいうような国際約束というようなものとは異なりまして、それぞれの自衛隊なり米軍なりが整合のとれた共同対処行動を効果的にとるためにあるべき姿についての研究、協議の結果を取りまとめたもの、こういうことでございます。
  134. 東中光雄

    東中委員 あるべき姿としてまとめたもの、だから、そこでまとまったものはあるべき姿だということで、そのように行動をしていくというのが指針だと思うのです。事実上、拘束していくことになります。  それで、私は、時間がありませんので一点だけ聞きますが、この合同小委員会で昨年の八月十六日、研究、協議する対象をどうするかということについて日米間で合意をしています。作戦の問題、それから情報の問題あるいは後方支援の問題、たくさんあります。たくさんあるのですから、時間がありませんから余り言いませんけれども、その中で一点お聞きしたいのは、情報保全を研究、協議の対象にするということで合意がされて、それ以後分科会でやっているわけです。情報保全というのは一体どういうことかということについてお聞きしたい。
  135. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 情報保全というのは、文字どおり、情報を交換するに当たって秘密が漏れないように内部の体制を固めるということでございます。
  136. 東中光雄

    東中委員 情報保全、それは情報、秘密を保護する、そういうことについて協議、研究をする、こういうわけなんですね。MSA秘密保護法あるいは刑特法によって在日米軍の軍事秘密を収集もしくは探知する、要するに国民の側から探知しに行った場合にそれを規制する法律ができていて、罰則があります。五年以下の懲役、十年以下の懲役になっておる。自衛隊にはそれがないわけです。だから、自衛隊と米軍と同じように扱おうと思ったら、あるいは、情報交換するのですから同じようにやろうとすればどうしなければならないかということを研究、協議しているのでしょう。議題にしたというのは、それを研究、協議するということ、それ以外にはあり得ないわけです。だから、ここで情報保全についての協議、研究をやっているということは、防衛秘密についてやっているということは明白だと思うのですが、どうですか。
  137. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 情報の秘密を保全するということはきわめて大事なことでございます。したがいまして、どういうルートを通じてどういう資格のある者がその情報の交換に当たるか、そういったことは研究いたしておるわけでございます。
  138. 東中光雄

    東中委員 あなたは何を言っているのですか。情報部会でやるのは、「情報交換」について、これを一つの議題にする。「情報活動及びその協力体制」について、これも議題にする。さらに「保全」、情報保全についても議題にする。三項目を挙げてあるじゃないですか。あなたがいま言っているのは、情報交換について言っているのじゃないですか。私が聞いているのは、情報保全、秘密保護ということについて日米間で対応が違うようになっておる。在日米軍に対する場合と自衛隊に対する場合とでは対応が違うようになっている。米軍に対しては、言論抑圧、取材の自由を抑えるような、そういう可能性のある、違憲の疑いきわめて大きい法律が二つできている。自衛隊にはない。そういう状態で情報保全をいかにあるべきかということについて研究、協議するということになれば、情報保全の対応をどうするかということを協議することになるわけですね。だから、秘密保護法をつくるかどうかというようなことじゃないのです。秘密を守るためにどうするかということについて協議したでしょうと、こう言っているのです。そうじゃないのですか。
  139. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 情報交換というのは、どういう内容の情報の交換が必要であるかという研究をやっているわけでございます。そしてまた、その情報を交換するに当たっては、それぞれが秘密を守り、そして外に漏れるようなことのないように、内部でどういうことを検討しなければならないかということを研究しているわけでございます。
  140. 東中光雄

    東中委員 あるいは後方支援についても同じことが言えます。この議題になっておるのは、後方支援で「後方補給活動の全般事項、後方補給活動の各機能」を研究議題にする、こういうようになっているわけですけれども、補給活動の機能をどうするかということについて言えば、たとえば食糧を後方支援で補給する、あるいは武器弾薬の補給をやる、その補給機能をどうするか、それを運ぶためには交通、運輸、通信、こういうことについてのあり方というものを考えなければいかぬ。それについての協議をしているわけであります。こういう議題が詳細に決まったのが去年の八月十六日であります。  同じ八月に、総理の了承のもとに、さきの防衛庁長官三原さんがいわゆる有事立法研究を指示した。佐藤総理大臣が、絶対にこういうことはあるべきじゃないんだ、ゆゆしい問題なんだ、こういう内容のものを平時に検討するというのはけしからぬ、こういうふうに国会でも答弁しておった、そういう問題を指示するようになった。百八十度変わったわけです。それは、それより一年前から日米防衛協力小委員会でやってきた、そして議題が決まった、そのときにそういう指示がされておる。一緒に進められている。日米共同対処行動のあり方についての研究をやっている人は、制服の、たとえば統幕から室長あたりが出ていっている。そして今度は有事立法研究がやられたら、自衛隊にその指示を言っているわけですから、そうしたら、同じ人が国内の有事体制についての研究をやっておる、これはもう一緒のものとして動いておるということは明白だと思うのですが、いかがでございますか。
  141. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 佐藤総理有事研究を否定したというお話でございますが、佐藤総理は、三矢研究に関連いたしまして、あの種の研究防衛庁長官が知らない、そういう状態で行われるということは妥当でないということを言っておるわけです。私の知る限りにおきましては、佐藤首相においては、有事研究は大事である、こういうふうに言っておる、このことであります。
  142. 東中光雄

    東中委員 平時のときにそういうものを研究するということはやっちゃいかぬことだと、会議録にちゃんと出ていますよ。だから、そういう問題について、ある日突然じゃなくて、くしくも同じ去年の八月に日米間での有事の対処についての研究、そしてこっちではやり出した。ガイドラインという規則をつくっていく、事実上の準則をつくっていくという作業に合わせて国内での指示をやり出した。これがもう客観的に動かぬ事実ですね。情報保全についても研究するんでしょう。後方支援についても研究するんでしょう。どっちも同じことをやっているじゃないですか。これは防衛庁長官、率直に認められたらどうですか。態度を堂々として出したらいいじゃないですか。
  143. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、わが国は日米安保体制をとっているわけでございますから、安保五条の発動下におきまして共同対処する際に、米側と日本側が整々とこれに対処する必要があるわけでございます。その研究は、一昨年坂田長官のもとで始められているわけでございます。しこうしてこの有事法制につきましては、昨年八月、三原長官からの指示に基づきまして研究を開始したものでございますから、これは、いま先生がおっしゃいましたようにその共同対処、それから有事法制というふうに結びついているものではないわけでございます。
  144. 東中光雄

    東中委員 一昨年から、坂田防衛庁長官の時代からシュレジンジャー会談でやるようになった、それについてはアメリカ側は大きな期待を持っている、体制が変わっていくんだということで非常に大きな期待を持っている、そのとおりであります。しかし、動き出した防衛協力小委員会が具体的にどういう議題についてやるかということで日米間で合意ができたのは、去年の八月十六日のこの小委員会だ、これは間違いないでしょう。そうしたらそのときに、今度は国内で指示がされている。研究をする当事者も同じなんです。実際上同じな部分がうんと多いという状態でこれが別々のものだなんて言うたら、全くの詭弁と言わざるを得ない、こう思うのです。
  145. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、昨年から始めております有事法制研究の担当者と、この日米防衛協力小委員会、そのもとにあります部会で検討している担当者とは、違うわけであります。この日米防衛協力小委員会におきましては日米の運用を中心研究しているわけでございまして、昨年の八月にああいう部会を設けましたにつきましては、このガイドラインというものを一体どういうような形でまとめるべきかという検討をしてまいりました。そしてその結果、ああいった部会を設けて実態に即した研究を進めて、それをガイドラインにまとめる方が効果的であろうという考えのもとにああいうことをやったわけでございまして、それとは別個に三原長官が、従来の有事法制研究法制の中で、自衛隊法の中で問題があるかないか、それを検討しろという御命令があったわけでございますから、これは違うわけでございます。
  146. 東中光雄

    東中委員 たてまえ論ばかり言っておったってそれはだめです。その点だけをはっきり申し上げて、実際に動いておることをもっと国民の前にちゃんと出すべきだということを、これは強く求めておきたいと思います。  時間がなくなりますので、経済財政、税制関係について若干お伺いしたいと思います。  総理大臣は、所信表明演説で、景気回復がおおむね政府経済見通しどおり進んでおり、「わが国経済の各方面にわたり、次第に明るさが広がりつつあります。」こう述べられて、そして七%成長を最大の目標として、その達成のために補正予算あるいは総合経済政策というものを、これは具体的に数字であらわされた目標、その目標達成のための措置をとっている、こういうことをやられたわけですが、一方、国民の側はどうかと言えば、これはもう御承知のように、たとえば倒産、一カ月一千件以上の倒産が昭和五十年の九月から実に三十六カ月間連続して続いておる。完全失業者百万人を超すという事態昭和五十二年の一月から二十一カ月間続いています。これは明るさが次第にふえてくるというようなことじゃないのです。全くの長期にわたるそういうものであります。  これに対してどういうふうな、たとえば成長率で言われているような目標を設定してやられているのかどうか。たとえば完全失業者百万人を割る目標をいつに置くのか、あるいは倒産件数月一千件をずっと超しているわけですから、異常な事態なんですから、それを割る目標をいつにするか。そういうようなことについて、そういう角度から国民の苦しみ、これを取り上げておられるのかおられないのか、その点をお伺いしたい。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま東中さんは、わが国経済は明るさを増しておるということを私が強調しておるという点を挙げられておりますが、わが国経済には二つの側面があるのです、国内的側面と対外的側面と。国内的側面はよろしい。いまあなたがお話しになったような見方を私はしておるのです。ところが、対外的側面というか貿易関係、これが輸出が減る、輸入がふえる、これは円高関係でございますが、そういう関係になる。それを総合しますと、円高関係が国全体の経済の足を引っ張る。そこで、いま御審議を煩わしておりまする補正予算案等の対策を打ち出しておる、こういうことでございます。  そこで、どういう目標をというと、やはり雇用を改善しなければならぬ、これは緊急の問題です。しかし、雇用を改善するにはどうするか、いろいろ細かい手はあります。ありまするけれども、大筋におきましては、やはり企業の操業度が回復して、そして職場が拡大されなければならぬ、そのように考えております。  私どもは、七%成長を実現して、そして来年の春、つまり本年度末、その時点ではとにかく、望ましい操業度というのは八五というふうに言われますが、八二、三%のところまでぐらいは持っていきたい、こう念願しているのです。そうしますと、経済界、国民の苦悩、これは著しく改善される、このように考えております。
  148. 東中光雄

    東中委員 全く長期にわたる不況、倒産の高い率ですね、あるいは完全失業者が非常に多い。そういうものについて具体的に、たとえば七%成長と言われるのですから、百万人を割るのはいつまでにやる、そういう目標を立てて、ことしじゅうにやる、そのための施策はこうだというふうな取り組みをされていないということは、国民にとっては明るくなってきた、こういうふうにはまいらない。どうも経済ということで、国民の経済、国民の経営、国民の失業という問題についてはすっと消えてしまうというのは、これは福田内閣経済における一つの姿勢だと思うわけです。その点を申し上げておきたいわけです。  次に、今国会の焦点の重要な一つになっております減税問題でありますが、所得税、住民税を合わせて一兆円の減税、老齢福祉年金の月二万円の引き上げを初め社会保障や社会福祉の緊急改善、これをやるべきだということを私たち共産党としては主張してまいりました。しかし、総理はこれを拒否されました。そういう減税はやらぬ、やれないという態度をとってこられたわけですけれども景気対策の三本柱であります、いわゆる公共投資民間設備投資及び国民の購買力向上に伴う個人消費支出の拡大、この三つが柱だと思いますが、政府は、大企業が潤うようないわゆる大型プロジェクトの公共投資には力を入れられますが、国民の購買力の向上、消費支出の拡大には手を打ってこられなかった。逆に、ことしの予算を見ますと、酒税の引き上げ、石油税の創設、国鉄運賃値上げ、大学授業料、公団家賃、保険料や医療費の値上げ、こういう公共料金の値上げで、新たに国民の負担は一兆六千億もふえるということになっています。こういう状態ですから、全国勤労者の消費支出というのはもう全く低迷をしています。  全国勤労者世帯の対前年比実質伸び率を見てみますと、四十九年はマイナス二・四、五十年は四・五、五十一年はマイナス〇・五、五十二年は一・四、もう全くの低迷であります。つまり、支出はふえてない。だから、景気対策から言えば、ここの分はもう低迷したままになっている、これを何とかせなければいかぬじゃないか。  これを内容的に言えば、各国との比較で、たとえばGNPに占める個人消費支出の割合は日本は非常に低い。最低だと言ってもいいと思います。たとえば一九七四年で言いますと、日本は五二・六%です。アメリカは六三・二%、イギリスは六三・五%、フランスは六一・六%、西ドイツが五三・五%、これは五三・五%ないし六三%、六三・五までいっている。日本はたったの五二・六であります。七五年の場合も、日本は五六・六で、アメリカ、イギリス、フランス、いずれも六〇以上になっている。日本はそういう意味では最低であります。  こういうふうに、消費支出が非常に低いということで、これが景気の回復を引っ張っているわけですから、だから、消費支出をふやす、そのために減税をやるべきだ。この実態を見て、それに対する対処をぜひとられる。大企業の経済成長と大型プロジェクト、こういう方向へばかり行っていたのではだめだ、こう思うのでありますが、総理大臣、いかがでございますか。
  149. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国民の消費支出は、東中さんの言われるような状態じゃございませんよ。いま、五十二年の消費支出の伸びが一・五ぐらいなことをおっしゃいましたが、これは実際は三・七です。その後の状態を見てみますと、着実に上昇を続けておる。私どもは、ことしは五・三ぐらいはいくのじゃないか、このように見ておるわけでありまして、五・三の消費支出、こういうことになりますれば、これは世界でも相当高い水準だ、私はこのように考えますが、そういう中で東中さんは、また酒の税金が上がるとか交通料金が上がるとか、国民の負担のかかるような政策ばかりが進められておる、こういう話ですが、そういう収入はまた全部国民に還元されているのですよ。国民の必要な方面に還元されておる。しかも、それでも政府は十分だとは思わないというので借金までして、国民にその借金によって集まった金をまた還元をする、こういう仕組みをとっておるわけでありまして、決して国民生活を度外視してやっておる、こういうような性格じゃございません。  しかも、いま東中さんは減税のことを言われますが、さあ減税しようとすると金が要るのです。東中さんの方はその金をどうやって調達しますか。私どもはいろいろ考えても、もう国債を発行する以外に道はない、こういうふうに考えるわけでございますが、さあ、その国債をこれ以上また発行して、その消化でもできないような状態になったらどうなるのです。私は、これは結局インフレにつながっていくと思うのですよ。私は、東中さんもインフレは考えておらぬと思うのです。そうすると、どうやって減税をやっていくのだろうか。しかも、私どもは、ここでこの暮れまでのことを考えてはいかぬと思うのです。やはり来年のことも再来年のことも再々来年のことも考えなければならぬ。そういうことを考えますと、先ほど申し上げましたように来年ごろからぼつぼつ景況感が出てくる、そういう際には民間の方でも金が要る、そういう際に政府は借金で金が要る、こういうようなことになったら金融市場というものは政府からも民間からも責め上げられる。それこそこれは高金利時代、そしてインフレ、こういうことになるので、そういう道を選んではいかぬじゃないか、その辺を心配しておるということを申し上げます。
  150. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんので申し上げますが、赤字国債、これ以上の国債の増発には私たちは絶対に反対です。それは福田総理自身がいままでずっと増発されてきて、そして去年の秋には、三〇%以上超したら日本経済社会を崩壊に導く危険がある、こうまで言われたのに、ことしになったら前倒しも含めて実質三八%近く、こういうのを出しておられるのです。ですから、こういうものは出すべきじゃない。それはインフレにも進むでしょうし、これは断じてそういう方法をとるべきじゃない。  それじゃ財源はどうするのか。不公正税制の是正をやる、これが一つです。それからもう一つは、不要不急のものを出さない、支出を減らすということです。防衛費は二兆円にもなっているんですよ。不要不急のものがあります。あるいは大企業への補助金がある。そういうものの支出を減らす。減税していく財源はあります。ただ問題は、たとえば不公正税制のことを言いましても、総理大臣は二千億か三千億ぐらいしかないという趣旨のことを言われますけれども、あそこで言われているのは租税特別措置法の問題について言われるだけなんですね。私たちはそうじゃなくて、それもある、しかし所得税法や法人税法本法にずいぶん不合理な減免税というのがあります。それを改めれば十分あるということを言っておるわけであります。具体的に数字を挙げて言っておりますが、いま時間もありませんので内容については申し上げません。しかし、そういう処置をとるべきだということを申し上げておきたいわけです。  それで、たとえば最近新聞で、特定のグループが岡本理研ゴムあるいはヂーゼル機器などの株を買い占めて、そしてこれをうんと上げて高値にして、買い戻さしてうんともうけた、それは税法上も問題があるということが大きく出ておりますけれども、テレビで一日一善で有名な笹川グループです。このグループの岡本理研ゴム関係だけでも、わずか半年間に四十億円もの大金を不当に手に入れた、こういうふうに言われております。普通なら四十億円の個人所得があれば、所得税と地方税を合わせますと約三十六億円の税金が払われなければならぬわけですが、この株の売買は原則として一円の税金もかからぬように、所得税法とそれに基づく政令でなっていますね。そういう関係になっておる、これは不公正税制じゃないか、こういうのはちゃんと取れるようにしたらいいじゃないか、こういうように言っているわけであります。  租税特別措置法だけじゃなくて、そういう不公正税制を是正する、こういう方向で総理大臣は決断をさるべきである。それをやれば、財源はないのじゃなくて、あるのです。赤字国債は出さなくてもいいのです。その点、いかがでしょう。
  151. 村山達雄

    ○村山国務大臣 二つ申し上げます。  いわゆる不公正税制が一体何であるか、これはやはり議論の土俵を一緒にしなければなりませんので、われわれは税制調査会におきまして、不公正税制が何であるかというのを一年間検討いたしました。で、その土俵を決めているわけでございます。その意味では、おっしゃっているような法人、個人の二重課税調整に関する基本的な問題、これは不公平税制に入れるべきではない、これは二重課税排除の方法でございます。それからまた、一部の人が言っておりますように引当金の問題、これもまた所得計算の合理的方法でございまして、その中に入れるべきではない、こう言っておるのでございます。そういたしますと、五十三年度予算で見ますいわゆる不公平税制によるところの減収というものは全体で八千九百五十億、これはグロスでございます。そのうち約六〇%近くが中小の関係、中小法人あるいは所得税、こういう関係でございます。その他が中小以外だということになるわけでございます。別途交際費課税をやっておりまして、本法から言いますと交際費は損金でございますが、これは逆の意味で特例をやっておりまして、これで四千億を取り返しているわけでございますが、これも大法人の方からうんと取り返している、こういう状況にあることをまず申し上げておきます。  それから第二点の、株の買い占めに基づくいわゆる有価証券の譲渡益、現在非課税だとおっしゃるのでございますが、法制上は課税になっているわけでございます。有価証券の通常の売買につきましては、これは有価証券取引税との関係がございまして非課税にいたしたのでございますが、現在例外がございまして、継続的に売買していると認められるもの、これは五十回、二十万株というようなことでやっておりますが、これは課税いたします。それから、実際上譲渡所得と同じような、つまり企業ぐるみ売ってしまうというようなものについては、単なる有価証券の売買と見ませんで、普通の譲渡所得と見て課税しておる。それから買い占めによるもうけ、これはかつてありましたが、いま課税しているのでございます。ただ問題は、買い占めという問題は非常に情報が入らぬわけでございます。入りますと、これは実行官庁がそれぞれ調べまして課税しておりますけれども、実際は隠密裏に行われるわけでございまして、なかなか事実がつかみがたいのでございます。幸いにいたしまして、今度東京取引所におきまして、買い占めの問題については証券業者に対しましてあらゆる情報を提供するようにということにこれからなりましたので、今後は情報が相当入ってくるであろう、こういうことで、国税庁はこれに対しまして今後は課税を強化してまいる、かような方針でおりますので、御報告申し上げておきます。
  152. 東中光雄

    東中委員 大蔵大臣は、自分たちの中で勝手に定義をして、勝手に枠をつくって、その枠からだけしか物を言わない。そういうことでは国民の本当の暮らしを見ておるということにならぬのですよ。そこから枠を越しなさい。だから、さっき私は総理決断を、やる気になったらできるのがあるのだということを言っているわけであります。その点は、そういう官僚的説明ではこれはだめですよ。政治的な決断を言うているときに、そういう答弁はむしろやめていただきたいということであります。  それから、いまの株の大がかりな買い占め問題については、税金はかからない。かかるのですとあなたはおっしゃったけれども、法律上のたてまえはかからないのでしょう。ただし、五十回、二十万株以上の場合は例外だ、こう言うておるのでありますけれども、これがまた大変な事態になってきておる。いまの買い占め問題は、国税庁で所得税法施行令二十七条で、有価証券の買い占めによる所得ということで調査を始められたということが報道されておりますが、笹川グループを初めとする最近行われている大がかりな株買い占め事件について、国税庁長官、これはどういうふうに動いておりますか。
  153. 磯邊律男

    磯邊政府委員 確かに、いま御指摘になりました事案につきまして一部の新聞で報道されましたことは、私も承知いたしております。私たちはあらゆる経済現象を的確にとらえまして、それが現在の法令に照らしまして課税すべきものであるということがわかりました場合には、適正な課税をやるということでやっておるわけでありますけれども、御指摘になりましたようないわゆる株式の買い占め、それによって反対売買をして巨利を得ておる人がおるというふうな情報もございますので、非常に重要な情報とわれわれはとらえまして、現在実態の調査中でございます。
  154. 東中光雄

    東中委員 買い占めについての調査を始めた。これはいままで二十七条関係では一回もやられていないわけですから、ひとつきちっと正すべきは正すということを要請しておきたいと思うのです。  それともう一つ、先ほど大蔵大臣も言われましたが、年間五十回以下の売買であれば何千万株、何億株売買をしても、それで得た利益には税金はかからないという仕組みになっていますね。五十回以上かつ二十万株、かつと書いてあるのはそういう意味であります。だから、それを利用して笹川良一氏は大変なことを言うております。こうすれば税金かからぬのだ、わしはそうやっておるのだと言っているのです。これは昨年の一月二十日号のある週刊誌でありますが、笹川氏がロッキード事件に関連してのインタビューの中で、児玉・小佐野・コーチャンを語る、という記事の中でこう言っています。「児玉くんは株をやっとるでしょう。これも株売買の回数が(法律に違反して)多い。扱う株数も多い。」だから、税金がかかってくるということです。「株の売買は年間に五十回、二十万株までとなっておる。両方超えたらあかん。たしかに二十万株なんて、今どき商売にならん。しかし、「注文伝票総括」ちゅうのがあって、「ひと口注文の)届け出をしておけば、ひと月に何回、一千万株売り買いしても一回ということになる。それでいけば、月に一千万株、年に一億二千万株やっても回数を超えないでしょう。」だから税金はかからなくなるのだ、わしはそういうふうにやっておるのだ、こう言っておるのです。「自分の名前を出せなかったら仮名届けを(証券会社に)出さないかん。わたしら、そういう研究するから、ひっかからん。」こう書いてあるのです、公表されているわけです。  これは売買を何遍もやるけれども、一月に一回にしてしまう。売買回数は五十回と決まっているのですから、それを一月ごとにまとめて一回にしてしまう。そうすれば何ぼやったって税金はかからないのだ、こういう論法なんです。これは本人自身がいわば自白しているわけですから。  この問題は重大な脱税になります。さっきの四十億でいけば、三十六億の脱税をそういう手段でやっておるのかもしれないということなんで、国税庁長官、彼自身の意見として書かれているこういうものがあるわけですから、そういう情報に基づいて、これはやはり脱税、脱法行為ということで調査をさるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  155. 磯邊律男

    磯邊政府委員 実際のいまの課税のやり方は、回数を数える場合に、売買注文総括票の枚数によって回数を数えておる。これは実際のいまの株式の売り買いの注文の形態の実態に合わせましてそういうことをやらざるを得ないわけでありますけれども、しかし、そういったことが悪用されているということがありとすればきわめて遺憾なことでございます。ただ単に、ただいま御指摘になりました特定の人の問題ではなくて、一般的にそういったものもわれわれは資料の収集をして、適正な課税をやるべく努力いたしております。
  156. 東中光雄

    東中委員 「わたしら、そういう研究するから、ひっかからん。」と言うて、「わたしら」と自分のことを言うておるのです。相手は笹川良一さんだったら言えないのですか、そうじゃないでしょう。一般の人ならやるけれどもこの人ならやれない、そんなばかなことはないです。具体的にこの人がこう言っているのだから、調査をしてみなさい。このことを要求をします。どうですか。
  157. 磯邊律男

    磯邊政府委員 特定の人の名前を申し上げることは御遠慮させていただきますが、私たちは、どういった人でありましても、課税すべき対象があれば適正な課税をやっているつもりであります。
  158. 東中光雄

    東中委員 このことについての調査をやるかやらぬか聞いているのです。いまの、四十億円もの個人所得があったということが新聞に出されている、それは重要な情報としてわれわれはやると、あなた言ったでしょう。それならこれについてもやりなさい。どうですか、やはりやらぬと言うのですか。
  159. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま先生がお読みになりました資料は、私もかつてそれを読んだ二とがございます。したがいまして、私たちの資料の中にはそれは入っております。
  160. 東中光雄

    東中委員 これはやるように強く要求をしておきます。  時間がございませんので、防衛庁の方で、先ほどの内訓について、陸幕長問題について調べるとおっしゃったから、調べて見解を聞かせていただきたいということが一つ。  それから、あの問題について、もう時間がありませんので申し上げておきますが、内訓の要撃準則については、総理大臣も内容を知らぬとおっしゃった。国防会議の各議員も知らぬとおっしゃった。それから防衛庁長官自身も知らぬとおっしゃった。しかも、私が申し上げたようなそういう重要な問題があるわけですから、少なくともそれを見て検討をされて、そしてこれは撤回すべきだ。検討されたら撤回しなければいかぬようになっているということを私はまず申し上げて、そして国会へ提出をする。撤回をして、こういうものだったということを提出されたら一番いいと思いますので、そのことを要求をしておきたい。防衛庁長官の陸幕長問題についての御回答を伺います。
  161. 金丸信

    ○金丸国務大臣 さきの内閣委員会で個人の行為を中心に説明したが、自衛隊は部隊行動を本旨とするものであるから、その面から検討することにした、陸幕長はこれに対して法律改正にこだわらない旨を発言したものでありまして、軟化いたしたということではありません。  いま一つ、対領空侵犯措置の指針に関する訓令を提出しろということでございますが、お手元に届きましたか。
  162. 中野四郎

    中野委員長 それは理事会の事項である。
  163. 金丸信

    ○金丸国務大臣 これは失礼しました。
  164. 中野四郎

    中野委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、大原一三君
  165. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、主として経済問題を中心に、総理の、当面するわが国経済運営の基本的な姿勢についてお伺いをしたいと思います。  私の全体の考え方は、わが国経済成長力というものが、いま一般的に考えられているような常識のラインでいいのかどうかという基本的な問題を全体として提起してみたいというふうに考えるわけでありますが、まず最初に、現在のデフレギャップ、つまり供給力と需要とのギャップがどの程度あるかということをお伺いしたいと思います。総理はこの点についてどのようにお考えでございますか、お答え願います。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの稼働率等から見ますと、かなりのデフレギャップがあるであろうとは考えておりますけれども、デフレギャップというものの定義を私どもいたしたこともございませんので、正確にどのぐらいということを計量いたしたことはございません。かなりのギャップはあろうと存じます。
  167. 大原一三

    ○大原(一)委員 大変計算のむずかしい問題でありますから、こういう場所で端的にお答えになれないと私は思いますけれども、私の試算が正しいかどうか、企画庁長官にひとつ後で御意見をいただきたいと思うのであります。  まず、わが国に現在ございます労働力の余剰、これは御承知のとおり約百二十九万という失業でございます。いわゆる石油ショック以前に比べまして二倍の失業率でございます。さらに、現在の失業率に換算してみますと二・三四、当時は一・三でございますから、一%だけ当時に比べて失業率が上回っているということが言えますね。そうしますと、その一%というのは、大体その当時の経済成長率で換算いたしますと、GNPの一〇%相当の余剰だということが言えると思うのです。  次に、いま企画庁長官がおっしゃいましたが、設備の余剰問題、これは先ほど総理が稼働率ということでお答えになりましたけれども、これも非常にむずかしい問題です。ただ、端的に計算してみますと、四十五年ベースの数字がいままでの係数でございましたから、それを基準にして最近の稼働率をはじきますと、八五%という数字が出てまいります。八五%は、四十五年当時、総理も企画庁長官実質稼働率はその一〇%下ぐらいだとおっしゃったですね、そうなりますと、実質稼働率はやはり八五から一〇引いた七五%ぐらいの稼働率になるかと思います。そうしますと、七五%の実質稼働率であるとすれば、適正稼働率をどこに見るかによって問題が変わってまいりますけれども、大体九〇%以上を適正稼働率と見ますと、設備の遊びが平均一五%ということになります。これはいままでの経済成長の弾力性から見ますと、いままでは一・五%でございました、だから一〇%の成長力に見合う設備の余力でございます。現在は鉱工業生産の弾力性というのが一でございますから、まあ一五%の成長余力があるということになろうかと思うのでありますが、ここにも一〇%以上の遊びがあるわけでございます。  それから、いままでわれわれが一番問題にしておりましたけれども、最近はその問題は出ない。国際収支の天井論というのはないですね。むしろたまり過ぎて困っておる。使いたい、使いたいけれども十分使えないというのが実態でございますから、輸入がふえるという心配による成長の頭打ちというものは、これはもう当然考えられません。  一方、貯蓄でございますけれども、これは経済成長の原動力になるわけですから、貯蓄がどういう形になっておるかは非常に重大な問題であります。全国銀行の貯蓄の伸びを見ますと、一四%ですね。ところが、企画庁のここ三年間の経済成長投資の伸びでございますが、これは名目で三%というようなことで、形式的には貯蓄超過経済ということが考えられると思うのであります。輸入と貯蓄に心配がない。であるとすれば、現在の余力というものは労働力と設備に化体されておりますから、一〇%程度のいわゆる成長余力が残っておるということになりますと、百九十兆掛ける一〇%でございますから、十九兆円内外のデフレギャップがあると私は結論したいのでございますが、長官、いかがです。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお話しのうちで、大体おっしゃいますことは数字としてはそのとおりと思いますけれども、現在の稼働率を私どもは八〇%ぐらいと考えております。指数が、おっしゃいますように変わりましたので、五十年の指数になっておりますが、換算いたしますと八〇・二とか三とか、七月あたりでその辺ではないかと考えておりますので、その点だけが、これは定義の仕方でございますのでどうということはございませんが、先ほど総理が年度末の稼働率を八三ぐらいにしたいと言われましたときにお使いになりました数字は、恐らく現在の稼働率を八〇ぐらいと考えておられるか、私どももそう考えております。ですから、労働力稼動率にかなりの余裕があるということは言われますとおりでありますし、貯蓄、輸入にも問題がないということも言われるとおりでございますので、かなりのデフレギャップがあるということはおっしゃいますとおりであると思いますけれども、それを係数的に何%と申し上げますことに、私どもいろいろ試算をいたしましても、これといってはっきり定義もございませんものですから、はっきりした数字で申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  169. 大原一三

    ○大原(一)委員 稼働率の計算については私もちょっと議論があるのでございますが、細かい話になるので省略いたします。  以上のような経済与件の中で何が起きているかということ、これはもうるるいままで討論がなされたところであります。私もその点について一応整理をしてみたいと思うのでありますが、第一は中小企業へのしわ寄せでございます。それはどういう数字にあらわれているかといいますと、企業の倒産件数、これは五十二年度というのが倒産件数が一番多い年でございました。年間で一万八千件。ところが、現在の月当たり千三百件のペースを年に直しますと一万六千件でございまして、倒産件数は五十一年の不況のときと大体同じ総件数に相なるはずでございます。ですから、企業に対する、特に一千万円以上の借金をしている企業でございますが、中小企業が大部分でございますが、そこへはっきりとしわ寄せが出ているという係数だと思います。  一方、雇用につきましては、特にこれは大企業の雇用のビヘービアというものは当然影響してくるわけでございますが、四十八年を一〇〇にいたしまして、現在の雇用指数は九三%ですね。生産は六%上乗せになりました。しかしながら雇用は逆に七%沈んでおるわけです。ですから、雇用に対して、有効需要が企業に働きかけて生産をふやして雇用をふやすという段階に至っていないということであります。ですから、この辺から見てくると、私は、今後の雇用問題には相当深刻に対処しなければならぬという指標がはっきりあらわれていると思うのです。  それから農業所得の問題でございますが、農林大臣よろしいですか。現在のそういう全体的な農業に対する経済環境のために農業所得も同じように横ばいでございますね。おととしと去年、五十一、五十二年度は横ばいであります。それ以前は大体調子よく二四%伸びてきたわけでありますが、横ばいであります。では、五十三年度の農業所得の見通しはどうかといいますと、減反で大体一四%、米の値上がりが一・五でございますから、差し引き一二%内外の、米に関してはマイナスになります。米のウエートが三五%でございますから、米だけで計算いたしますと全体の所得を四%下げてしまうというような農業環境である。中小企業だけでない、雇用もそうだ、農業も同じような環境の中に置かれているということであります。  その次に、もう一つ大変な問題が起きそうでありますが、総理大臣、お聞きいただきたいのでありますが、これが輸出だと思うのです。その輸出が一体どういうかっこうになっておるか。私は今年度の見通し等を見ましても、これは全く見せかけの輸出であります。これはむべなるかな、私がこの前の予算委員会において、ドルでこれをお書きにならぬ方がいいでしょうと申し上げたわけで、ことしから円建てのGNP表示になっておりまして、大変私も面食らって、これは幾らで計算したらいいのかということで、百三十一億ドルベースの黒字になるということでございますけれども、最近の指標を見ますと、いままでと輸出が非常にさま変わりであります。どういうさま変わりかといいますと、大体いままではドル建てが伸びて、円建ても伸びて、数量も伸びておりました。ところが、この四月からはっきり、その指標に顕著な転換が見られます。ドル建てば依然として伸びておる、しかし対前年同月比円建てにマイナスが出てきた、そして数量が各月、去年同期比でマイナスになっておるということでありますね。これが大変なんです。ことしの五十三年度の見通しの改定作業、長官のところでおやりになったと思うのでありますが、なぜ見通しが一・三のマイナスになったかというと、これは海外経済余剰、いまの表現で言えば、輸出及び海外からの所得がマイナス要因になっておるためにGNPは何%か下がる、したがって二兆五千億を上乗せして一・三%ぐらいの有効需要効果をつくらなければならぬという御判断になったと思うのでありますが、私は、いままでと違って円ベースと数量ペースで下がってきたということ、これは今年度の景況を占う上で大変重大な指標だと思うのです。ですから、これからの政策の中で、いままでは輸出が伸びて何とか息をつないでおったけれども、こっちの方も企業経営面にマイナスの影響を与えるということになりますと、これは大変な事態が起きると思うのであります。その点について、総理大臣いかがお考えでありますか。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今日の経済の大勢がどういうふうに動いているかという見方は、大原さんのおっしゃるとおりだと思うのであります。つまり、大体の調子はいいのですけれども輸出、これが数量的に減ってきておる。したがって、これを円に換算しますとマイナスになってくる、こういうことであります。これがわが国経済全体の足を引っ張っておるというのが現況ではあるまいか、そのように考えまして、その輸出の落ちに伴うところのデフレ要素をどういうふうに消すかということが当面の問題であり、政府としては先月の初めに決めました総合経済対策をもってそういう考え方のもとに対処をする、こういうつもりでございます。
  171. 大原一三

    ○大原(一)委員 結局この病気を治すには内需の拡大以外には方法がないということだと思うのです。それが結局、企業採算面へインパクトを与えてくるだろうと思うのです。  それで、日銀の短観を見ましても、下期に至ってマイナスになりますという見通しが大方の企業の判断でございますから、企業収益にも、まあ一部の人はかなり明るい見通しが出たと言いますけれども、この要素から考える限り、企業収益に対する明るい見通しというのも私は間違いだと思うのです。  そこで、企画庁長官にお伺いしたいのでありますけれども、私はいつも四十八年ベースの数字を基礎に議論いたしますが、在庫調整の判断ですね。この前からお答えになっておりますのは、三月ごろには在庫調整は終わるだろうという御判断でありますけれども、長官、これはいかがでしょうか。私、四十八年の在庫率水準から見まして、現在の在庫率水準は二八%をオーバーしております。しかも、毎月在庫はふえる気配なしに逓減しております。そういう意味で、企業の収益にも明るさがない、生産もそれほどふえていないということは、現在もなお在庫調整は進行中である。ということは、二兆五千億円の有効需要を注がれてもそれほど大きな効果にはならないのではないかという判断でございますけれども、長官の御意見を承りたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は前国会におきましてもいろいろ御議論のあったところでございまして、私どもは、瀞ぐらいになりますと在庫の調整が一巡するであろうということを申し上げました。ただ、その後、急に在庫の積み増しがあるような経済情勢ではなかろうという判断もつけ加えて申し上げましたわけでございますが、在庫の指数を見ておりますと、ちょうど一月ごろでございますと、これは五十年一〇〇でございますが、一〇六ぐらいのところにおりました。ただいまそれが一〇一ぐらいまで落ちておりまして、かなり順調に在庫の調整がされたということを示しておると思いますが、一部のものにつきましては、なおまだ在庫の減りが出ております。御指摘のような点が一部の商品には見えております。しかし、この春の御議論の焦点、御議論と申しますのは一般の世の中の議論の焦点でありました在庫というものが乗数効果の壁になるということ。いや、それは多分春ごろには一巡するのではないかという私ども考え方について申しますならば、まずまず春ごろに一応在庫の壁というものが非常に低くなって、政府公共投資効果がかなり浸透するに至った、その判断は間違っていなかったのではなかろうかと現在なお考えております。
  173. 大原一三

    ○大原(一)委員 企画庁筋によりますと、来年度の見通しは非常に明るいということで五十三年度の景気を占った経緯がたくさんの。パンフレットに出ております。私、一々それを取り上げませんけれども、ことに去年の白書は、在庫調整問題を中心にこれからの景気の予測を立てておる傾向がありますけれども、長官必ずしも明快にお答えになりませんが、企画庁の当初の見通しほど在庫調整が順調に進まなかった。もちろん、そのほかのいろいろの要因はございますよ。しかしながら、私はその点でやはりもう少し慎重な判断が必要であるという感じがするわけでございます。  そこで、総理に御質問申し上げたいのでありますが、わが国のいままでの経済成長率、先ほど見ましたように四十四年から四十八年までは九%の成長、四十九年から五十二年までは三・六%の成長、平均ですよ。そしてその当時の成長率に比べると二・五分の一です。これは経済に対する大変なショックであります。この前も私申し上げましたけれども、百キロのスピードで走っていたものが五十キロにいきなりスピードを緩めたのですから、そこにノッキングが起こります。そのノッキングがいわゆる失業でありあるいは企業の倒産である。さらにはまた、必要以上の黒字の外貨の蓄積というような形で出てきているのだと思うのです。  ところで、これから先のこの国内的国際的不均衡を抱え込んだ日本経済の長期成長率でございますけれども、私は、政府の見通しは若干楽観的に過ぎるのではないかという考え方をとるものであります。先ほどどなたかもおっしゃいましたが、アメリカの成長率が四%、EC全体が二・二%、西独二・四%の中で、イギリスが〇・七%という非常な低成長でございます。わが国の将来の成長もだんだんここへのめり込んでいって、いまの手法といまのシステムでいろいろの政策を立てていく限り、いわゆる低成長経済にのめり込んでいくのではないかという不安を持つものでございます。     〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 総理、この点についてどうお考えになりますか。
  174. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済は、波乱重畳というか、山あり谷ありという、そういう形は余り好ましくないと思うのです。やはり安定的に動いていくという形が好ましいのではないか、そのように考えます。そういう中で大事な問題は、やはりまず第一に物価です。物価の安定をしなければならぬ。次に大事なのは国際収支であります。第三は経済成長である。雇用、そういうことを考えながら経済活動をある程度の水準を維持しなければならぬ、こういう問題だろう、こういうふうに思います。  そういう立場に立ちまして、これから先々を一体どういうふうにいまこの時点で展望するかということになりますと、一昨年、五十年代前期経済計画というものをつくってみましたが、その後、ドル安円高関係で、あの計画は大変ずれてきてしまったのです。そういうずれ込みも考えまして、これから新しい展望を試みたいというので、いま経済審議会、専門家の皆さんに検討してもらっておりますが、いずれにいたしましても、これから先々をどういうふうに安定させるか、こういうことだと思います。  それから、非常に大事な問題がありますが、これはやはりエネルギーの問題ですね。この問題についてわが国としても、とにかく世界としても確固たる展望を持たなければならぬというふうに考えまして、エネルギー問題は特に重大な問題になってきておる、そういう認識でございます。
  175. 大原一三

    ○大原(一)委員 いま問題にしようと思っていました点を総理が指摘されたのでありますが、われわれは自由社会の活力を何とか最大限に生かしたい、そういう経済政策をとっていかなければならない。口だけで活力と一言っても、経済がしぼんでいっては活力は出てこないわけでありますから、与件の中で最大限の成長をとっていくのが私は一番いい政策ではないかというふうに考えるわけであります。  そこで、経済成長のネックの問題でありますけれども総理もときどき口にされます国土の狭隘という問題がまず一つ。それから資源エネルギーの問題、さらに公害の問題、次は財政がございますね、財政のネックの問題。国債が三八%に乗っちゃってどうにもならない。その次が国際収支の不均衡、つまり余り成長し過ぎると赤字になって困る。その心配はまずございません。さらにまた、公害問題も一時に比べれば何とか順調に解決されておるということになりますと、国土とエネルギーと財政、この問題がわれわれの成長のいわばアキレス腱になるか、手法、発想の転換によってもっと限界まで所与の条件で成長力を伸ばせるかのかぎだと思うのです。  そこで、国土でございますけれども、私は三全総を大変おもしろく読んだ者の一人であります。大変いいことが書いてある。しかしながら足と手がないのですね。まことに気持ちがいいです。明治百年間こうして都市中心経済成長をやってきた、いや、これからは地方分散で国土の全的利用を図っていくべきである、そうすることによって日本の福祉と生活を豊かにすることができるという構想でありますけれども、ちょうどだるまさんみたいなものであって、手と足がない。にらめっこしておるだけだ。これに手足をつけるのがこれからの政策の基本だというふうに考えるわけであります。  そこで私は、いま日本経済で何が病気になっておるかといいますと、これはやはり大都市圏ですね。東京都のごときは、全国の面積の〇・四、五というところへ公共投資の一〇%、平均的に二十倍を投資しているわけであります。それから首都圏でもって全国公共投資の二五%のシェアを占めておるということですね。こういうことをずんずんやっていきましたら、大都市が日本経済成長力の足を食っていくということに相なりませんか。  私は、一例でございますけれども、この前計算してみました。地下鉄がいま幾らだとお思いですか。最近の地下鉄で一番高いのは、一メートル二千七百万円であります。一メートルですよ。十メートルで二億七千万円、百メートルで二十七億。年間の財政支出が二億円という市町村というのはかなりございますよ。地下鉄十メートルにならないのです、その市町村はあくせくしながら一年間の労働、作業が。百メートルでもって二十七億、一キロでもって二百七十億ということに相なります。  とにかく、そういう非常な狭いところに過大な投資をして、有限な資源、総理の非常に好きな言葉でありますが、これは財政資源ですね、それを集中的に投下しても、いまの東京というのはまさに震災恐怖都市であります。そこへこれからまた、破れバケツに水と言ったら大変怒られるかもしれませんが、限られた資源を次々に投入していっても、経済成長はあり得ないと思います。だから、いわゆる大都市中心経済成長のパターンを変えて、別の角度からこれにメスを入れていかなければならない。いわゆる発想の転換を求めたいわけであります。  この際、私は幾つかの問題点を申し上げたいのでありますが、特に東京圏でございますが、何とか東京圏の過密都市の解消はできないものだろうか。総理、これはいまから取り組んでいただかないと、今後だれかがやるだろうでは困るのであります。いまから取り組んでいただきたい。通産省もいろいろのいわゆる工場再配置計画なるものをお持ちになっておる。お持ちになっておりますけれども、これは四十七年からでございますか、おやりになって、今日まで何件東京から工場が出ていきましたか。わずかに六十九件です。これは一いままでの高度成長の結果東京が住みづらくなって逃げていく人が大部分なんですね。住みづらくなって逃げていく。政策のおかげで出ていったというよりは、いままでの経済の道行きでございました。最近は出ていく人が一人もいない、そういう状況であります。ですから、この辺で思い切った工場の東京からの転換、できることなら東京というところは、行政、司法、立法、さらに情報機能に都市機能を純化していただいて、それ以外は三全総のラインに従って地方分散をしていただく、いまからそれをおやりになっていただく必要があると私は思うのです。この点、いかがでございますか。
  176. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 過密都市の問題は、わが国社会の大きな病弊というような見方ができるわけです。そこで、この問題をこのままほうっておくわけにいかない。ことに、いま大原さんが指摘されたように震災というようなことを考えました際に、これは非常に深刻な問題になってきておる、このように思うのです。  ただ、この問題を考え、処理するに当たりましては、東京なら東京あるいは大阪なら大阪、その局所だけで解決できない、これは全国的なスケールの考え方の中でのみ解決できる、そのように考えまして、そのゆえにいま第三次全国総合開発計画、三全総を進めようといたしておるわけなんですね。やはりああいう考え方があって、地方で受け入れ体制ができて、初めて大原さんの指摘される工場の地方分散、こういうこともできるのじゃないか、そのように考えまして、いま手足のない三全総に手もつけ足もつけ、こういうことを考えておる、このように御理解願います。
  177. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、いま立論のあれとして、総理がよく国土が狭隘だとおっしゃる。狭隘なところをますます狭く生きているのがいまの大都市構造でございます。その例は、先ほども申し上げました、限られた国の予算の二五%を吸収しても満員電車は解消できない、押しくらまんじゅう、しかも遠高狭の住宅しかつくれないというようなことは、これは資源の浪費である、公共投資の非効率これに過ぎたるものはないということから、国土は狭くない、もっと成長力を高めたいという発想から申し上げておるわけでございます。  そこで、多摩ニュータウンの問題、これも総理御存じのとおりであります。いま五万一千人ですか、将来四十一万人にふやしたいと言うけれども、なかなか人が入らないですね。そして現在までの五万人の投資が一兆円なのですね。しかも遠くて困る、入る人はいないということでございます。それが悪いと申し上げているわけじゃないですよ。いまの段階ではそれをやるしか方法がないのです。住んでいる人にいま出ていけと言うわけにはいきませんから、何とかして解決しようとすればそういった手法しかない。それがいわゆる国の財政というものの負荷量をますます大きくしていくということを申し上げているわけでございます。  そこで、地方分散、国土の全的有効利用というような政策をおやりになって、そして最後に大都市改造、これは並行的におやりになっていただかなければならぬのでありますが、問題が残る。先ほど震災恐怖都市と申し上げました。たとえば世田谷とか阿佐谷とか下町、大地震が起きたら本当に大変だと思うのです。  そこで、これはどなたにお聞きしたらいいのですか、建設大臣にお伺いしたいのでありますが、日本の建設省の政策の中でドイツにおけるような土地利用計画、つまり詳細計画がなぜ採用できないのか。いまの建設省では、都市計画法があって、その上に乗っかっているのは建築基準法であります。都市計画法は、第一種専住地域というふうに書いてあれば、百坪であれ何であれ、容積に関係なしにどんどんどんどんミニ開発ができる仕組みになっております。ところが外国の詳細計画というのは、面的規制の上に容積規制をして、低層制限をしながら都市改造をやってきております。イギリスの場合は、一六六六年大火があってから、いわゆる高度制限をし、さらにまた低層制限をして、今日の町づくりを三百年前からやってきてでき上がっておるわけでありますが、もう建設大臣、東京では遅過ぎませんか。なぜ日本にこういうような土地利用計画が採用できないか、お承りしたいと思います。
  178. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 西独の連邦建設法であるとか詳細計画制度、これを大いに勉強して、いいところを取り入れることにはやぶさかでありません。現在都市計画中央審議会におきまして市街化区域の秩序ある市街地形成を図るための方策について検討しておるわけでございますが、大原委員は十分御承知で御質問であると思うのですが、現に用途地域をはっきり分けて、工業地域とか商業地域とか住宅地域とかいうふうにしてもおりますし、あるいは高度利用地区とか防火地域とかあるいは再開発の促進区域であるとか、いろいろと区域の指定などをいたしまして、この詳細計画制度に見合うような制度が全然ないというわけではないのでありまして、今後ますます効率的な土地利用の促進の必要性がございます。したがいまして、いいことにつきましては極力勉強いたしまして御趣旨のような線に沿っていきたい、こう思います。
  179. 大原一三

    ○大原(一)委員 もちろん都市計画法、建築基準法は存じ上げておりますけれども、さっき申しましたように、申請があれば、居住地域であればどんなに高価な土地でも百坪の家を建てることができる。ドイツの場合は、百坪や三十坪の土地に家を建てる場合は詳細計画で登記を認めないことになっております。それだけきつい計画で町づくりをやっておるということであります。ですから、いま建設大臣がお約束をされたようにもっと前向きで、これは地震のお金を後ろ向きでつけるよりもっと大事なことでありますから、思い切った大都市の土地利用計画というものを法律をおつくりになってやらなければならない。いまの法律でもってただどうのこうのと言ったってできる話ではありません。たとえば、いまおっしゃいましたが、高度利用地区というのが都市計画法にございますけれども、この高度利用地区という法律がありながら――これはおやりになっていることは認めます。全国六十八都市について三百五十七ヘクタールだけですよ。東京ではどこだといいますと、白髪ですね、二十七ヘクタール。こんなことで計画がありますと言ったのでは、東京の住民は大震災が起きたらかわいそうであります。私は、いま即刻研究を始められて、こういうすぐれたいい法律、考え方については勇気を持って導入していただきたいと思います。  次に、総理にお伺いしたいのでありますが、二番目の成長のネックは何か。  国土政策をやっていけば、無限大の投資があります。たとえば東京でも、世田谷を五階建てのりっぱな町にロンドンみたいに変えようとすれば、何百兆の投資が必要でございましょう。ですから、仕事がないのじゃない、あるのです。あるけれども、その限界は何かということになりますと、第二番目の限界は財政でございます。  三七%が三八%、十一兆三千億円の赤字公債、しかも最近は公債発行状況が非常に厳しくなった。財政投融資資金、その中枢は何かといいますと郵便貯金でございます。この郵便貯金の伸び率が何と横ばいに近いものに落ちてきた。年金も、これは将来は支払い原資がふえる。厚生年金もふえるばかりで、原資になりますと郵便貯金が財政投融資の骨にならざるを得ない。ということになりますと、国にはお金がない。さあ、一体どうしたらいいだろうということが、どうしてもこれから考えていかなければならぬ問題であります。先ほど指摘しましたように、貯蓄超過経済であるということを企画庁長官暗にお認めになりましたが、お金は民間にあるのです。財政が、景気が悪くて税収が上がらぬでいわゆる国債を発行しなければならぬという状況になっているだけで、そこにお金はあるのです。そのお金を何とか吸収する方法はないかということをいろいろ考えてみますと、総理大臣、現在財政投融資でおやりになっているのです。それは何か、政府保証債といわゆる政府保証借入金というものですね。政府保証債は現在十五機関についておやりになっておる。それから、政府保証借り入れは二機関についておやりになっておる。これは利子補給はございません、プライム長期レートで取引をしていらっしゃるのに政府が保証しているだけです。これではだめなのです。ですから、これから財政手法を変えて、利子補給制度を大胆に導入されることによりまして民間資金をこういった都市改造資金なりあるいは列島改造、と言うと私は余り好きじゃないのでありますけれども、非常にクリーンな改造でなければならぬのです。いままでは列島改造、不動産屋が先に走っていきましたから、あれのないように、現在の国土利用計画を十分お使いなすってクリーンな開発をしていかなければならぬと思いますが、そこに金が要る。そういう資金を民間から政府部門へ、ないしは民間から民間開発部門へ導入するシステムを大胆に利用されればいいのではないかという考え方でございますが、総理、いかがでございますか。
  180. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま大原委員の言われたことには原則的に賛成でございまして、それでありますから政府も利子補給方式をずいぶん取り入れているわけでございます。今度の補正予算におきましても、構造不況対策あるいは金属工業等の立て直しについては十分やっているわけです。ただ、問題は、これは百も御承知でございますが、利子補給は、やっていますと後年度に大変な財政負担になってくるという性格を持っております。したがいまして、これも最終的には財政とのかかわり合いをどういうふうに持っていくか、程度問題でございますが、その考え方には私は原則的に賛成でございます。
  181. 大原一三

    ○大原(一)委員 そこで、後年度の負担という問題が出ましたけれども、現在四十三兆円に対する今年度の利子の支払い額は二兆五千七百二十七億円、さらに十兆円ずつ今後国債を発行していって、五年間だけいったとしますと、一年間に六千億円の利払いが六%金利でふえていくわけでございます。そうしますと、五年後の利払いだけでも五兆五千億円、こういうぐあいになるわけですね。国債というのは、元本から政府は調達したいというわけなんですね。ところが、利子補給というのは、利子だけちょっと出しておいて、元本は対民間、対政府の借り入れ、貸し方にしようというわけでありますから、元本の調達は要らないわけであります。ですから、仮に今後毎年十兆円――大蔵大臣、毎年十兆円お出しになる気はないかもしれませんが、それに対する六%、六千億円、その利子だけでもって、一%の利子補給なら六十兆円のお金が調達できるわけですね、とりあえず元本としては。二%の利子補給なら三十兆円ここへできるわけです。そういう手法の方が、こういう形で国債の元利払いをしていくよりも財政にとっては非常な軽量経営になっていくのではな  いかと思いますが、いかがですか。
  182. 村山達雄

    ○村山国務大臣 計算はもうまさにそのとおりでございます。ただ、どういうものに取り入れていくか、その対象の選び方が非常にむずかしいということは一つつけ加えておきます。
  183. 大原一三

    ○大原(一)委員 どういうものというのは、たとえば政府が詳細計画によって都市改造をやっていくもの、あるいは列島改造ラインに乗っかっていろいろ民間セクターがやっていかなければならない卒業、それを私は申し上げて、それがこれからの経済成長の唯一のパイプですから、大いにそれにそういう資金をつぎ込めば財政のネックが解消されるのではないかという考え方から申し上げたわけであります。  そこで、第三番目のネックは、総理大臣が先ほどおっしゃいましたエネルギーの制約問題です。私も、五十二年の六月、総合エネルギー調査会長期エネルギー見通し、五十年から六十年のいわゆる通産省関係の資料は見ております。  河本通産大臣にお伺いしますけれども、これは成長率六・一%ですね、省エネルギー率が一〇・八%、原子力発電、これが三千三百万キロワットがぎりぎりだ、外国から輸入する石油、世界石油総需要量の一〇%、四億三千二百万キロリットルがせいぜいであるという前提での試算でございますけれども、ジミー・カーターさんのこの前の省エネルギー法案を見ましたら、アメリカの経済成長四%に対してエネルギーの伸びが二%、半分なんですね。これは省エネルギー率幾らになりますかね、恐らく四割近いエネルギーの消費を節約しようという案になっていると思うのであります。  そこで、大変これは荒唐無稽な計算で恐縮でございますが、仮にわれわれが一〇%成長、そういうことはあり得ません、あり得ませんが、わかりやすく計算をいたしますとどういう問題が起きるかといいますと、一番最後にしわの寄ってくるところは、石油の輸入量を二億六千万キロリットル昭和六十年においてプラスアルファで乗っけなければならぬという数字になります。二億六千万キロリットル乗っけなければなりませんが、原子力発電を差し引きますと、それを原子力でカバーするとすると、六十年に福島第一スケールのいわゆる六基、これを一つと計算しまして、二十七カ所つくらなければならぬ計算に相なります。そこで、そういうことは当然できませんので、あと手をいじるところはどこかと言えば、通産大臣がいまお出しになっておる省エネルギー法案、一〇・八%ではなくて、ジミー・カーターさんの半分でいいから、一五%にされることであります。それから石油の開発は、一兆バレルという見通しからわれわれは三十年後になくなると言っておりますけれども、最近は二兆バレルありますと言う人もいる。北極、南極にもありますと言う。その後北海油田、アラスカにも石油が出たというようなことで、新しく発掘されつつあるところの石油の輸入量をできるだけふやしていくということが必要だと思います。この点について通産大臣にお伺いしたらいいんでしょうか。  科学技術庁長官にも御質問いたしますけれどもわが国の科学技術投資というものは世界最低ですね。GNPに対する割合が米、西独、仏、英がおおむね一・二%であるにかかわらず、わが国の科学技術庁は〇・五%ですね。こういうことではだめなんでありまして、エネルギーの開発にわれわれはむしろ国際水準の投資をしていかなければならない。一兆二千億ということが当然前提になると思いますが、時間がございましたのでたくさん申し上げましたが、通産大臣と科学技術庁長官の御答弁をお願いします。
  184. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 エネルギー政策の中心は当分石油であろうと思います。そこで、石油政策の一番の重要点は、開発、節約、備蓄、この三点にあると考えておりまして、それを中心に政策を進めております。いまのお話はもう少し節約、省エネルギーを拡大したらどうか、こういうお話でございますが、その基本的なお考えには賛成でございます。ただいま省エネルギーのための法律を用意しておりまして、これを中心に当分進めてみたいと考えております。一〇・八%の節約を目標としておりますが、この目標が達成されるかどうかを見まして、さらに将来その目標を引き上げていく、こういう方向で努力をいたします。
  185. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 いろいろお尋ねになりましたが、とりあえず研究開発費の問題についてお答え申し上げます。  わが国のエネルギーを含む科学技術の振興に要する投資額は大体GNPの〇・五%であって、ほかの先進諸国が一・二ないし一・三というのに比べて非常に低いというお話でございます。この点につきましては、先進諸国におきましては、たとえばアメリカ、フランス等を見ました場合に、軍事費の中に含まれます科学技術の研究費というものが相当に入っておりまして、その辺が十分はっきりつかめませんので確定したことは申し上げられませんが、必ずしも十分というわけにはいかぬかと思うわけであります。したがって、今後とも研究開発の投資には大きな努力を注がねばならぬ、このように考えておるわけでございます。
  186. 大原一三

    ○大原(一)委員 どうぞ長官、来年度予算でもひとつがんばっていただきたいと思います。  そこで、いままでエネルギー問題を申し上げましたが、時間がございませんので先にいきますが、次に、これだけの経済成長余力がありながら、それを使わないでしぼんでいったら、われわれは先進国に比べてまことにみすぼらしい資産しか持たないで沈没してしまう。ですから、われわれはできるだけの高い成長を持つこと、しかしながら日本だけいいことをして石油を使ってしまって何しているんだということでありますけれども、当面的には総理大臣、できるだけエンジンカントリーになってくれ、やることを大いにやってくれという、しかもためなくてもいい紙切れを三百億ドルもためてしまった、それを使う方法がないということであれば、いまわれわれの経済成長を伸ばしても文句を言う人はどこにもおりません。だから私は、いま七%成長が達成できるかできないか、二兆五千億から土地代を引いて一・二五の乗数を掛ければ、一・三%のへっこみがちょうど埋まって七%でございます。これも大事でございますけれども、そういうことじゃなくて、政策に発想の転換を求めたいという気持ちで申し上げているわけでございます。  そこで第四番目に問題になりますのは、発展途上国との関係でございます。  海外経済協力ということでありますけれども、ひとりわが国だけが成長してこれを取り残すということはできない。よく保護主義者は、発展途上国が進んでいくとわが国に対して鉄を売ったり化学繊維を売ったり、わが国経済にマイナスになりはしないか。そんなみみっちいことじゃなくて、世界人口の五割を占めているアジア地域、東南アジアだけでも三五%を占めている、中国を含め、日本を含めてでございますけれども、その経済発展というのはこれからの日本経済成長にとって不可欠の要素だと私は思うのです。だから、ぜい肉は当然切り落としていかなければならない、つまり産業構造の転換でありますけれども、その転換の手法が適当によろしきを得て、開発途上国が、経済成長わが国にだんだん追いついてくるということになれば、わが国の役割りというものも無限大にふくれるわけでございます。  そういう意味で私は総理一つ御注文があるわけでございますが、注文の方が大分みみっちくなって申しわけないのでありますけれども、三年間倍増計画、ODAでございますが、政府開発援助、これは外務省の資料によりますと、七七年、五十二年がGNPに対して〇・二一、ドルベースでございますから、五十五年が〇・二四。ところがDAC、先進諸国はすでに五十二年度に〇・三一協力をしております。われわれが倍増をして、これもドルベースで倍増をして〇・二一が〇・二四にしかなれない。DACはすでに〇・三一やっておる。  そこで総理にお願いがあるのでありますが、三年間倍増と言わず、三年間でDAC並みの〇・三一、GNPベースへ持っていかなければいかぬ。これをざっと計算してみますと、幾ら金が必要かといいますと、大体八億ドルさらにお乗せになったらいいわけであります。八億ドルといえば大体千六百億円でありますが、それを上乗せになるお気持ちはありませんか。いますぐとは申しませんけれども、御検討になる御決意はありませんか。
  187. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三年間で対GNP比〇・三一ですか、これが千六百億円の金を積めばいいのだというお話ですが、どこからそういう計算が出てくるか、ちょっとそんなくらいの金でとても〇・三一という目標、これに到達する、このように私、見ておりませんけれども、とにかく先進諸国は〇・三一やっておるのですから、これは少し時間がかかります。三年といってもとてもそれはできない。これはお約束できませんけれども、時間をかけてもその水準には達するように努力をしなければならぬ。さしあたり三年間で援助倍増と、これだけは実現をしたい、このように考えております。
  188. 大原一三

    ○大原(一)委員 いや、私の計算間違っていないと思うのですが、三年間倍増で二十八億四千八百万ドルになります、いまの貨幣価値で計算しますと。それが三十六億ドルにふえるわけでありますから、八億ドルプラスされる。そういうことで千六百億を上乗せしていけば――三年間で千六百億ですよ、そうしますと〇・三一、DAC並みの水準なんです。どうぞこの数字を総理胸に秘められて、これからの海外援助の総理の査定をひとつやっていただきたいという気持ちで申し上げているわけであります。  時間がございませんので、アジア圏のことに限りませんけれども、ドルの安定のための日本の積極的諸方策について一、二御提案申し上げたいと思うのであります。  アメリカの物価は、御承知のとおり卸売物価が前年比で八%、九%上がっておりますね。日本が三・何%ですから、逆にこれは加えなければならない。一二%というものは、ドルの減価が購買力で比較しても進んでおる。こういった事態が東南アジア諸国並びに発展途上国にどういう影響を及ぼすか、ドル離れ現象が起きるわけですね。それに対して、われわれはアメリカの物価政策やアメリカのドルのたれ流し、何もアメリカに、好んで手を挙げてドルを使ってくださいと言った覚えは一つもないのです。であるとすれば、エンジンカントリーとかいろいろありますけれども、応分の負担をする手法が別途一つあります。大蔵大臣、この方法は、いわゆる円経済圏をおつくりになる気持ちはないか。相対的に円の値段が安定していれば円取引で、さらに総理大臣は、円の自由化、これは円の自由化とはおっしゃっていませんけれども、為替政策の原則自由化、外資法、外為法の原則自由化をおっしゃっていますが、これにも相関する問題でございます。円の自由化を弾力的に進める。東南アジアだけでも輸出入の出入りが二一%あるわけですね、アジア全体のお互いに買う方も売る方も。そういう状況の中で、話し合いによって円の自由化を進めていくお考えはないかどうか。
  189. 村山達雄

    ○村山国務大臣 為替管理法は、現在の運用におきましてはほとんど西独、アメリカ等と変わりありませんで、ほとんどもう自由化になっております。しかし、法律のたてまえが原則制限で例外自由ということで、いま例外を全部やっておるわけであります。今度は来年度の予算編成と関連いたしまして、現在全面的に法律の改正をいたしまして、逆に原則自由ということにいたします。その際に残っておりますいろいろな為替上の制限をできるだけ撤廃いたしまして、先進諸国と名実ともに劣らないようなものにしたいと思っております。それはそれでいま作業を進めておるのでございます。  円経済圏の樹立の問題でございますが、いまアメリカがいわゆる基軸通貨であると言われるのは一体何であろうか。金との交換を停止しておりますけれども、私は三つあると思うのです。  一つは、貿易において世界の中でドル建てが一番多い。第二番目には通貨制度につきまして、いろいろな制度がございますけれども、他国の通貨にリンクしておる国を見ますと、やはりドルに圧倒的にリンクしておるという問題でございます。第三番目は、各国の外貨資産をどこに運用しておるかと申しますと、圧倒的にドルに運用しておるのでございます。それであればこそ、金から離脱いたしましても、ドルというものは基軸通貨であり、及ぼす影響が大きいわけでございます。  したがって、円経済圏が樹立されるということは、この三つの問題がそれなりにならなければなりません。しかし、この問題は、当然のことでございますけれども、相手方がどう選択をするかという問題にかかっておりまして、まさに世界経済の流れに沿っていくわけでございます。残念ながら、わが国の実情を見てみますと、輸入の方はほとんど一〇〇%外貨建て。輸出の方が辛うじて二割か二割五分ぐらい円建てだ。リンクしておる国があるかと申しますと、残念ながらないことは御承知のとおりでございます。それならば日本の円に運用しておる国があるかと申しますと、これは、いま円高でございますからだんだんふえてきておるという実情にあります。したがいまして、私たちは、それを無理にやるということになりますと、実勢に沿わない一つのものをつけますと、これがまた逆に投機の対象になってくるという心配を持っておるわけでございまして、われわれが実体経済の面でいまのような政策を進めてまいりますればいずれはそのようになるときがあるであろう、そういうときを考えながらわれわれは絶えずあすへの準備をしていく、かような考えでございます。
  190. 大原一三

    ○大原(一)委員 あすへの準備をされるということでございますが、もちろん私は、為替取引が、外為法が原則自由化になりましても、有事立法、近ごろはやりの言葉で言いますと有事規制というものは当然残ると思います。だから、それがユーロダラーや、何か六千億近いオイルダラー等が一遍に入ってきて為替市場を混乱させ、日本経済を混乱させるということに対して規制することは自由でありますけれども、しかし、わが国のいまの金融状況を見ましても、マネーフローというものは本当によく安定していますね、一二%。いわゆる列島改造ブーム当時のマネーフロー二六%、三〇%に比べて、外貨が百五十億ドルから三百億ドルに上がったにかかわらず、四兆六千億近いものが民間に出たにかかわらず、マネーフローは一二%コンスタントに安定しておるわけですから、そう神経質にならず、金融政策さえ十全を得たら心配ないんじゃないかということも判断材料になるのじゃないかと思います。     〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕  次に話を進めますけれども経済成長問題に関連するわけでありますが、農林大臣にお伺いいたします。  経済成長には、やはりどうしましても第一次産業の自立化が前提になると思うのです。私から言うまでもなく、地球人口が倍になっても地球の面積が二倍にならないのですから、食糧の自給率の拡大、物によっては選択的拡大ということでいいのかもしれません、あるいは小麦と大豆をどこでもここでも今度つくらなければならないというような政策でなくともいいのかもしれない。そこら辺を十分これから反省、検討されまして、自立経営農家倍増計画をおつくりになるつもりはありませんか。これは農林省の新聞にも何か出ておりましたけれども、私の発想は、現在、専業農家が一〇%、それを二〇%にふやす。その専業農家が持っている農地が二七、八%、これを倍にふやす。その専業農家が日本の食糧生産の三七、八%を供給しておる。それを倍にふやす。いわゆる専業農家、自立経営農家倍増計画というものをつくっていただきたい。  それはどういうことでできるかといいますと、農地流動化政策以外にはございません。売買でなくて賃貸で結構。農林省は非常に御努力をなすって、いろいろな手法を講じていらっしゃいますね。いわゆる農地保有合理化法人、農地利用増進事業、さらにまた来年度予算には、農地利用促進事業で、右から左に賃貸に移ったら、三年間の場合は一万円上げようあるいは一万五千円を上げようという構想があるようでございますが、一つだけ申し上げますが、フランスにサファーというのがあります。これは農地保有合理化法人でありますが、農地の先買い権を持っております。そういう先買い権ということによって農地の積極的流動化を図っておりますが、いま申し上げたような提案について、農林大臣いかがお考えでありますか。
  191. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今日、農業は非常に厳しい状態にございます。これは米の生産過剰、そのほかにまた外圧というようなこと、あるいは消費者から安い物を食べたいという幾つかの要請が農業には覆いかぶさっておりまして、農家の皆さんも非常に心配をしておるというのが現状だろうと存じます。  そこで、御指摘の自立経営農家を育成するということが、今日までも農林省のやってきた重要な課題でございます。その場合、一番大事なのが農地でございまして、日本は農地面積が非常に少ないという構造的な問題点があって、厳しい条件からなかなか脱却できないという基本的な悩みを持ち、農政のむずかしさがあるわけでございます。少ない農地ではありますけれども、何とか農地の集積を図って自立経営農家をよくしていきたい。ところが、所有権の集積というのは、農地が資産的価値を持つというところから手放したがらないというので、そこで利用権だけでも集積させようというところから、農地法の改正を行ったり、あるいは農振法の改正を行ったり、あるいは農地保有合理化事業団を設定するなど、あるいは資金対策を講ずるなど各般の施策を講じて、いま御指摘のあった自立経営農家を育成していく、こういう方向でやっております。ただ、倍増計画と威勢のいいところまで行けるかどうかわかりませんが、粘り強くそういう方向で対処し、実質的には何年かかるかわかりませんけれども、倍増が三倍増にでもなるように長期的に努力をしていきたい、こう思っております。  先取り権については、これはまたちょっと研究してみませんと、わが国ではいろいろまた問題もあるところですから、十分検討してみたいと存じます。
  192. 大原一三

    ○大原(一)委員 いま農林大臣が幾つか挙げられましたけれども、農林大臣、いままでの政策は目玉がないのです。といいますことは、農地保有合理化法人、これはサファーと全く同じような仕組みになっているのですね。しかし先取り権がない。先買い権がないというところに、これについて肝心のてこが外れているわけです。農地保有合理化法人も全農地に対する関与率が、ここ四十五年からやってきて、今日までわずか一%です。これではだめです。やはりさっき申し上げましたような何か新しい手法を入れませんと、いろいろ制度はつくったが、先ほどの工場再配置と同じで、関与率というものはわずかに一%、これでは本当の政策と言えないと私は思いますので、そこらも十分御検討をいただきたいということでございます。  それから次の、アメリカからの風圧、外圧の問題でございますけれども、最近、数字を見て私も十分勉強してなかったのですが、輸入に対してアメリカの割合が農林水四九%ですね。半分であります。大豆九五%、オレンジ九九%、グレープフルーツ九一%、果汁八八%というようなことでありまして、とにかく風圧にいたずらに、農林大臣大変威勢のいい大臣でありますから、よもやそういうことはないわけでございますけれども、どうもぐらぐらしていった感じがする。自由化の問題は、先ほど申しましたように、自立倍増計画との兼ね合いで本当は解決すべき問題でありますけれども、そうかといって、これを大っぴらに入れますと、四十万畜産農家並びにまた三十五万ミカン農家は、これは壊滅するわけですから、それを漸進的に合理化を図りながら自由化のテンポを合わせていくという政策が必要だと思います。その際、今度ジュネーブで、十月十六日でございますか、日米農産物交渉があるそうでございますが、これは事務折衝ですね。大臣、いらっしゃらないのですか。これに臨む基本的な態度をここでお教えいただきたいと思います。
  193. 中川一郎

    ○中川国務大臣 一月にも農産物の輸入調整を行いましたが、これは当面する当時の日米貿易アンバランスに対する農産物輸入の対処ということでございました。現在進行中であり、この十月の十六日にストラウスさんと私どもの代表が話し合うという場もできておることも事実でございます。  一貫して申し上げますことは、日本の農家経営あるいは総合食糧政策に支障を与えない、こういうことを基本にして一月も調整いたしましたし、今度アメリカに参りましてのストラウスさんとの話し合いの場においてもそういうことを中心にして話し合ったわけですが、残念ながら話し合いはまとまらなかった、そしてジュネーブに場所が移された、こういうことでございます。  アメリカに参りました際も、風圧はちょっと強過ぎるのではないか。第一番目には、農産物ではアメリカの最高のお客さんである。わが国の輸入総額の約半分は農産物、五〇%近くいっております。六十億ドルに達している。それから、アメリカが世界に向かって売っている国々の中でも、日本が一番のお客さんである。オレンジ、牛肉については確かに問題はあるけれども、それ以外の農産物、小麦からトウモロコシ、柑橘類に至るまで、一番目の品目は、数え挙げろといえば切りがないくらいたくさんございます。そこで、安倍農林大臣の時代には大変なお客さんであったのが、わずか二年前、私が就任したときには、アメリカに行ってひとついいお客さんになってこいと言われたはずなのが、いまや悪者になるとはどういうことか、こういうことで、わが国の農業の事情等も十分説明し、急変することは困るということを説明してやってまいりましたし、今後もそういう考え方で進みたいと存じます。
  194. 大原一三

    ○大原(一)委員 だんだん時間がなくなりますので、考え方だけ申し上げていきますが、私、輸入の前にまず流通の合理化をやらなければならぬ部門が相当あると思いますね。これは先ほども提案がありましたので申し上げませんが、方法論が私の考えはちょっと違う。  牛肉でありますけれども、牛肉の流通の合理化についての処方ぜん、これはいろいろ考えてみるとなかなかむずかしい。聞けば聞くほどわからなくなるのが牛肉の流通機構のようであります。それに対してこういう考え方を持っておるのですが、いかがでございましょうか。  まず、外国から入ってきた牛肉は畜産振興事業団が扱うのは結構。さらにまた、三十万トン近い国内肉も全量瞬間タッチで畜産振興事業団が扱う。そして、いま農林省が進めようとしておる部分肉市場、見せかけではなくて実体流通の五割くらいを、これから進めていかれる部分肉市場で、流通を通して市場価格の形成を断行される気はないか、このことでございます。
  195. 中川一郎

    ○中川国務大臣 畜産振興事業団が国内牛肉まで扱うのはいかがか、外国からの輸入肉に限って調整するのがいいのじゃないか。ただ、御指摘の部分肉センター、産地食肉センターは全国的にネットワークをかけております。産地を合理化すると同時に消費地に部分肉センターを、とりあえず東京につくりまして、ことし、来年の予算でもって完成をしたい。これの結果を見て全国的に部分肉センターを、どこまでいけるか、五〇%という御指摘ですが、それぐらいのところはいきたいという気持ちでいま着手いたしておるところでございます。
  196. 大原一三

    ○大原(一)委員 これはお答え要りませんが、やはり第一次産業が経済全体に対して余り重荷になり過ぎますと、経済成長は鈍るということになりますね。ですから私はこういうことを申し上げておるわけでありますけれども、特に二百海里時代の漁業問題、それから山林ですね、これはもう全く荒廃の一途をたどりつつあると言うと過言でございますけれども、実際問題として採算の合わない山を二十年、三十年、四十年抱えているというのが実態なんですね。この一番のガンは、いろいろ考えてみますと、やはり外圧なんですね。それと、やはり四十年も五十年も、それは、国策からいったら治山治水のためにあるいは緑の保全のために大事だといったって、お金は一銭も出ないのですね、そういうロジックでは。ですから、これを採算が合うようにしてあげなければならないということになりますと、いろいろな処方せんがあると思います。たとえば、専業農家は全林家二百五十万のうちの二万ですね、そういうところへいわゆる荒廃した山林を集約化していくような手法も、転貸ないしは譲渡によってしていかなければならぬだろうというようなことを大胆にひとつ、せっかく大胆な農林大臣がいらっしゃるのですから、とにかく大臣は長いことが偉いんじゃないのです、何かをやることが偉いのでありますから、いらっしゃる間に十カ年計画、自立倍増計画をおやりになり、山林の自立化をおやりになるような方策をとっていただきたいということだけを申し上げます。  最後に、時間がなくなりましたので急ぎますけれども、厚生大臣と総理大臣にお伺いしたいのであります。  再び私、財政の硬直化の問題に触れたいと思うのであります。先ほどの議論に関連するのですけれども、国民年金と厚生年金の問題でございます。  これはもう厚生省十分御計算なさっているわけでありますが、昭和八十五年、これはいわゆる制度が完全に成熟化する段階でありますね。昭和八十五年に何と国民年金の支払い額が三十五兆円、厚生年金の支払い額は百四十五兆円、総支払い額が百八十兆円、そのうち国庫負担が三十七兆円、現在の百倍に相なるわけでございます。こういう年金制度を抱えながらいまの財政の仕組みでもって果たして国民総連帯の年金体系を打ち上げられるかどうか、私は大変不安であります。厚生大臣の長期的視野に立ったお見通しをお願いしたいと思います。
  197. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように今後の年金制度の成熟化、急速な老齢化社会に突入する日本の現状から言いますと、いま御指摘のような保険料にいたしましてもあるいは国庫負担にいたしましても非常に大きな負担になってくるわけでございます。五十一年価額での計算で見ましても、保険料の厚年の負担は現在千分の九・一%でございますけれども、これが一六・七ぐらいに国民の負担がなる、あるいは国民年金の保険料が五十一年価額で七千百五十円になりますから、五十一年価額で今年の年金保険料を計算いたしますと二千五百円でございますので約三倍近くになる、国庫負担もちょうど倍ぐらいになる、こういうような状況でございます。  したがいまして、私どもは、これは国民の御理解をいただかなければいかぬわけでございますが、何といいましても、幾ら御理解をいただいても、非常な財政負担と、各個人がどうしても負担し切れないような状況になるおそれがあるんじゃないか。したがいまして、われわれ、制度の改正をいまから準備をいたしまして、支給開始年齢等についても、一遍にはできませんが、逐次引き上げをやるような考え方をもっていかなければいかぬのじゃないだろうか。また同時に、長い間掛ける人が、そのまま計算していきますと大変な給付になるわけでございますが、ドイツやあるいはその他の国でも考えておりますような、一定の頭打ちの制度等もある程度導入をしていかなければいかぬのではないだろうか。いろいろ考えていかなければいかぬわけでございますが、当面は経過年金の部分の人たち、福祉年金や五年年金の方々についてはどうしても改善をしていかなければなりませんので、そこに重点を置きまして、なお、いま御指摘のような将来の国民並びに国庫の負担増、すべて国民負担でございますから、これらを考えまして、根本的な制度のあり方を少なくとも今年度いっぱいぐらいかけまして決定をして方針を決めていきたい、かように考えておるところでございます。(「やらなければだめだ」と呼ぶ者あり)
  198. 大原一三

    ○大原(一)委員 これは、どこかからも声がかかっていますけれども、早くやらないと大変なことです。といいますことは、この前、五十五歳を六十歳に定年延長されましたですね。厚生大臣十分御存じのとおりでありますが、二十九年から二十年間かかって四年に一年ずつずらしていったわけでしょう。これほど長期計画が必要な話。中には、もうおれは生きておらぬという人が大分いると思うのでありますけれども、それほどロングランな話なんです。年金の話をする限りは三十年回りでお話をしないと、材木の話と同じで、なかなかこの話は進まないのですが、いまみたいな政府の対応では、基本年金構想にしろあるいは一元化年金構想にしろ、あるいはいろいろ年金の財源調整の仕組みにしろ、これは百年河清を待つに等しいと思うのです。どうか厚生大臣、早く計画をお出しいただきたいと思います。ということは、残念ながら、厚生省がお出しになっている基本構想懇談会の中間意見というのはまだ迷っている。迷っていない意見というのは、総理大臣のところへお出しになった大河内委員会の答申でありますね。これはまことに明快。ならばそれとの、基本年金構想との関連を早くお決めにならないととても大変な問題が起きるということを申し上げたいわけであります。  そこで、総理大臣にお伺いしたいのでありますけれども、こういう膨大な将来の社会保障支出をもう歴然として抱えておりながら、さあそれに対する財源対策はどうだ。国民負担をどんどんふやしていくのか。先ほど、実質で九・一が十何ぼになると、名目ですと八十五年には二〇%になってしまいますね。二〇%になりますよ。そういう負担を強いていくのか。基本年金構想みたいにいわゆる財政負担で、五万円ぐらいか六万円でいいかわかりませんが、そのときの経済条件によってやっていくのか、その辺の基本的態度をいまからお決めいただかないと、これは後世に禍根を残すことに相なります。その点から申し上げているわけでありますが、いま、時あたかも一般消費税が提案されて、大蔵大臣、大変魅力的であるということで、当然であると思うのでありますが、国の財政がパンクしたからといって大事な財源をすぐ消費税につなげないで、来年景気が悪いのですからしばらく、その導入にわれわれは賛成ではありませんけれども、将来の年金体系との関連においてこの税金は大事にしておかなければいかぬと思いますよ。財政がパンクしたからこれをつくっちゃって、これを払えというようなことでやっていては、私は誤ると思うのです。  そこで、いま申し上げますけれどもわが国の租税負担は社会保険と合わせて、よく言われる数字でありますが、総理大臣御存じの二六%。アメリカ三七%、これは社会保険がありませんからアメリカの場合こう低いのですが、先進国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、どの国をとっても税金と社会保険が五割。そういう国に限って成長率が鈍いのであります。  そこで、総理大臣は、それらの諸負担を今後長く踏まえながら将来の租税負担は一体どの辺が適正か、経済の活力も生かし、そして総連帯の年金体系、保険体系をつくり上げながら活力も殺さないという租税負担の限度をどの辺にお考えですか、お答えいただきたい。
  199. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 年金問題の長期展望について非常に重要な御指摘がありますね。また、それが財政と大変かかわりのある問題であるという御指摘も、私は大変敬意を表します。  そこで、租税負担率が一体どの辺が適当であるか。私はいまの国家財政をながめてみますと、今日の二〇%だあるいは二一、二%だという状態は、これではとても国家財政の運営ができないと思うのです。さて、それじゃどの程度のものにするか。これはいま経済の長期展望をつくっておるのです。これは昭和六十年まで七カ年展望になりますか、それと見合いまして財政につきましても七カ年まで行き得るかどうか、これはまだ結論を得ておりませんけれども、これも長期展望というものをつくってみたい、このように考えておりますので、ここ数カ年間の程度のことをとらえてみて、ひとつ国民負担の適正な水準というものをながめてみたい、このように考えております。まだここで何%と、こうお答えできません。
  200. 大原一三

    ○大原(一)委員 余りいい答えじゃないのでありますが……(「大蔵省の先輩だからな」と呼ぶ者あり)いや、そうじゃない。時間がないわけであります。  そこで、お手元に租税負担の表が行っていますか。私、資料をお出ししましたが、総理大臣、大蔵大臣のところに行っていますか。これは赤線を見てください。これは直接税負担だけの状況を、東京四区三市三十九万人について、新財源構想研究会、これは大学の一流の先生方がおやりになったようであります。  それによりますと、現在の直接税の実効負担税率は、われわれが考えている累進課税じゃなくて、これは百十万のところは、上の赤い線を見ていただいたらいいのですが、七%ラインで、一千万から二千万のところで三二、三%のところへ行って、それからだんだん下がってきて、一億円のところの負担割合は、その一千万のところから下がってしまって二七、八%のところへ来ておるということでございますね。これは住民税の申告された所得を基礎にして、それをひっくり返していって、申告された分だけで、いまの現行税制上課税をしなくていいという漏れた部分を分母に置いて計算すると、累進税のグラフがこのように曲がってしまう。これに仮に間接税を入れますと大変なことになってしまいます、これは直接税だけですから。逆に直線ないしは逆進に相なる可能性があるということです。もちろんこういう計数はやった人によっていろいろ違うかもしれない、いろいろ批判もあるかもしれませんが、少なくとも堂堂たる大学の先生がこういうものを大っぴらに公表しておやりになるということはかなり責任を持っていらっしゃる。そういう実態の中で、すぐに消費税を入れますとこれまた逆進になってしまうのです。こういうぐらいに斜め下にグラフがなる勘定に相なろうと思うのです。一億円の五%、一方の方は下の、大体比例税率であれば問題はないのでありますけれども、逆進になろうということでありますから、消費税の導入の前にやることがあります。それは何か。この柱を立てることです。そして、現在抜けておるところの利子配当、キャピタルゲイン、不公平課税を取り込むことが消費税導入の大前提であることはこの表からおわかりになるだろうと思います。総理大臣いかがですか。総理大臣、専門家でいらっしゃいますから。
  201. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま、いわゆる不公平税制というものに触られまして、利子配当課税、これを整理すべし、こういうお話でございますが、これはそういうつもりなのです。ただ、これを準備なしに、よほどこれは準備が要るのですが、準備なしに廃止いたしまして総合課税だということになりますと、利子配当の捕捉が非常にむずかしゅうございます。その捕捉手段を一体どうするか、これを決めてかかりませんと、総合課税というものは本当に正しい形での実行ができない。かえって不平等を巻き起こす。つまり納税漏れが出てくる。そういうことで新たなる不平等問題を提起するということになりますから、いま大蔵省がせっかく、技術的にどういうふうにしたらその不平等が排除できるか、つまり利子配当、これをもう漏れなく捕捉できるかということを検討しています。
  202. 村山達雄

    ○村山国務大臣 誤解があるといけませんので、ちょっと事実関係だけ申し上げておきます。  ここに上がりました五十年の課税のところは、もう百も御承知でございましょうが、土地に対する四分の三総合をやらなかった、つまり二〇%の比例税率でやったときのカーブでございます。(大原(一)委員「それは違います。それは入って計算してある。五十年でありますけれども」と呼ぶ)だから、そのときは、もうおわかりのように、あのときに長者番付は軒並みに土地保有者で、全国で名のない人が出たのでございます。いま四分の三課税を二千万円以上やっておりますから、このラインでいきますと、この真ん中の線、黒線にいまなっている、こういうことだろうと思います。
  203. 大原一三

    ○大原(一)委員 細かいことを申し上げたくないのですが、それは意図的に、この注に書いてございますように、四分の三課税は五十年から実施されていると仮定して計算したグラフでございますから、そこに注書きが入っておりますから、ひとつ御注意願いたいと思うのです。  それから、もう時間がございませんので、最後に構造不況地域対策について承りたいのでありますが、通産省からいただきました十六地域、いろいろ見ますと、月間有効求人倍率が〇・一五から〇・三八の間に分布しております。通産省がピックアップされたのは、影響度をしんしゃくされて、メーンとなる中核企業のシェアを基準にしてお決めになったものでありますが、それを有効求人倍率に直していきますと、〇・一五から〇・三八であります。ところが、いろいろ調べてみますと、これ以外の地域で、この選ばれた十六地域の平均よりも有効求人倍率の低い地域がかなりピックアップできます。  そこで、これから法律をつくって、労働省、通産省お話しの上おやりになるのでありましょうが、今後、こういった地域を含め幾つぐらいに対象地域を広げる所存でございますか、お伺いしたいと思います。両大臣から。
  204. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般、とりあえず行政措置で十六地域を指定をいたしましたが、法律を通していただきました後政令をつくりまして、若干の地域を追加する予定であります。どの程度追加をいたしますか、いま作業中でございまして、もうしばらくするとはっきりいたします。
  205. 藤井勝志

    藤井国務大臣 お答えいたします。  いま御指摘のように、現在のところ十六地域でございますが、これから新しく地域指定は政令によってやるわけでございまして、その政令は通産省と労働省が協議して共同で決めるわけでございまして、政令決定の間においては、その地域の経済あるいは雇用情勢、こういったものの実態変化を十分把握して、実情に合うような地域指定をいたしたい、このように考えておりますから、十六地域よりも広がることは当然予想されるわけでございます。
  206. 大原一三

    ○大原(一)委員 はっきり申して、いま申し上げたぼくの言う地域は、門司、能代、熊野、八幡、若松というところは有効求人倍率が〇・一倍台ですね。そういうところがカバーされてくる。だから労働省との絡み合いが非常に問題になってくると思うのですね。この辺は十分慎重に御検討いただきたいと思います。  最後に、総理に締めくくって御質問申し上げたいのでありますが、私がいままで申し上げてきましたことは、やはりしょぼしょぼ成長ではいけない、もう少し思い切った発想の転換でこの経済政策にメスを入れられないだろうかということから、国土政策、エネルギー問題、さらにまた農業政策等々へお話を展開してきたわけであります。その際、財政のあり方等が大変問題になる。いままでどおりのやり方でしたらいずれパンクしてしまう、財政が牽引車になって経済を引っ張っていくことができない、できなければこういうような方法はどうでしょうかと御提案申し上げたわけでありますが、もし仮にもこれからの成長がだんだんしりすぼみになってヨーロッパ並みに落ちていったとしたら、福祉も十分でない、さらにまた国民資産も非常に貧弱なまま経済がいわゆるしりすぼみになる、そして国民が成長を忘れてただ分配だけ考えるような政策をとらなければいけなくなったら、ますます経済成長は鈍っていくと思うのです。そういう段階。ヨーロッパへこの前行ってまいりましたが、天下をとっているのはみんな社会民主党ですね。自由党はありません。ドイツとフランスとイタリーは例外ですが、これも社会化政策が非常に頻繁にとられておる。今日社会で自由経済の活力を言いながら、余りにも政府の対応がその場限りではないか。もう少し基本的なメスを入れられないか。どこへ行きましても、これだけ、明治百年以来高い福祉を受けているにかかわらず国民の満足感が非常に低い、農民にしても不満がある、中小企業にしてもそうだ、勤労者にしても全くそうだということですね。これはやはり政治のあり方にどこかに非常に欠陥があるのではないかということを考えますと、総理にお願いがあるのですけれども、私は、十人の総理大臣よりも一人のこういう政策の改革者であることがいまの現代の総理に求めらるべきであると思います。そういう意味で、私が申し上げました一貫した考え方をごしんしゃくいただいて前向きな御答弁を御期待いたしまして、後の関連質問に譲りたいと思います。
  207. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 きょうは大原さんのお話を久しぶりで承りまして、大変感銘を受けました。  私、所信表明でも申し上げたのですが、いまわが国をめぐる環境条件、世界情勢、これはまことに厳しい。しかし、そういう環境条件というものに押し流されてはいかぬ。やはり、そういう厳しい環境条件に挑戦をして、それを打開して、そしてわれわれの活力ある社会を建設していかなければならぬ。不確実時代、不確実時代と言って、それに安住をするという姿勢は、これは正しい姿勢じゃない。不確実時代の不確実性というものを一つ一つ解決して、そして活発な社会を建設する、これが大事なのだ、こういうことを申し上げたわけですが、大原さんのお話を承っておりますと、私と大体基本的な考え方においては一致するようであります。大変激励を受けましたが、やっていきます。
  208. 中野四郎

    中野委員長 この際、中馬弘毅君より関連質疑の申し出があります。大原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中馬弘毅君。
  209. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 総理は、最近の所信表明演説で、変化する時代に臨んでわれわれ日本民族の新しい活力の源泉を再び教育にこそ求めるべきであると確信すると、格調高くうたい上げられました。われわれ教育立国を主張する者として全く賛同いたす次第であります。  そこで、総理が目指されている教育ないし人づくりについて若干質問を申し上げたいと思います。  戦後三十年、新しい教育制度のもとで高学歴化が進み、いまでは高校進学率九三%、大学進学率は三八%という、世界で最も教育水準の高い国の一つになっております。内容はともかくとしまして、少なくとも国民すべてに高等教育を受けさせるという目的は達成されたと言ってよいかと思います。しかし、形ができ上がって中身に目を向けると、過当な進学競争や落ちこぼれの問題、一部での偏向教育や暴力学級、さらに少女売春といった非行の問題など、一々事例を挙げるまでもなく、国民の間に教育に対する不安と不満の声が大きくなってきております。  総理、この教育の荒廃とも言える風潮を生んだのは何が原因とお考えでしょうか。残念ながら、現場の実態を直視せずに、また時代の動きに対応できなかったわれわれ政治に携わる者の責任以外の何ものでもないと思います。中でも戦後三十年政権の座にあった政府・自民党の責任と言わざるを得ないのであります。評論家であれば、マスコミが悪いだとかあるいは日教組が悪い、これで済まされるかもしれません。しかし、いやしくも政権を担当する者として、自己の責任をたな上げにしてマスコミや日教組批判をするだけでは何ら事態の解決にはならない。それどころか、国民の負託を無視する不遜な態度と言われても仕方がないのじゃないかと思います。要は、教育改革の立案を急ぎ、そして実行することである、このように確信いたす次第でございます。  総理のこのたびの所信表明は、これまでの反省に立って、社会諸制度の抜本的改正を含む教育改革に早急に取り組む覚悟と理解してよろしゅうございますか。具体的な姿勢をお示し願いたいと思います。
  210. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は政治家といたしまして教育を非常に重視しております。教育といいましても、ただ単に学校教育だけを私は頭に描いているわけではないのです。家庭教育も大事である、社会教育も大事である、それらを一貫して考えておるわけですが、いま中馬さんは、日本の戦後教育、これは欠陥が多過ぎるというような御指摘でありますが、欠陥、確かにいま御指摘のような問題点が出ておるのですよ。それは私も承知しておりますが、しかし全体として見ますと、私は、戦後の日本の教育制度というのは国際社会の水準においてもかなりいいところへいっておる、このように見ております。義務教育、この普及度、これは世界一じゃありませんか。大学への進学率、これも世界第一級である。そういうようなことを考えますと、私は決して悪い面ばかりではないと思いますが、しかし、これからの世界情勢を展望し、その中で日本社会をどうやっていくかということを考えると、思いを新たにして、人づくり、この問題に取り組むべきであるということを強調したわけであります。  教育問題を考えるに当たりまして基本的な問題は、やはり教育の機会均等、こういうところにあると思います。この点は、いまの日本社会ではかなり充実してきた、これからも充実させなければなりませんけれども、今日でもかなり充実してきた。しかし、この教育の機会均等というものを機械的に考えてはいかぬ。やはり教育の目指すところは、一人一人の個人の資質を開発することであるということを考えますと、その資質をいかに開発していくか。文部省でいま習熟度に応じた学級編制ということを高等学校の段階で考えておりますが、そういうこともまた一つの教育の機会均等である、このように考えます。また、そういう考え方は、大学なんかになりますと、さらにさらにこれを取り入れていかなければならぬだろう、こういうふうに思いますが、いろいろ問題がありますから、一つ一つそれを整理するということを考えると同時に、これからの二十一世紀を展望して、教育制度、教育改革、そういう問題にも真剣に取り組んでいかなければならぬ、このように考えております。
  211. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 限られた時間でございますので、文部大臣にまとめてお答え願いたいと思います。  特に教育の中でも国際人の育成といいますか、いま、この無資源国日本にとって国際人を育てることこそ、ある意味では唯一の戦略武器ではないかという気がいたしておりますが、現実を見ますと、国際社会に通用する教養とかマナーとか、あるいは国際金融、貿易の実務、さらに語学を身につけた国際人というのは非常に少のうございます。これは一つの問題として、この日本という国が島国であるといったようなこともございますが、同じ無資源国スウェーデンでは、小学校の四年生から語学教育、しかも英会話教育をやっているのです。こういうことをやはり日本としては考えていかなければいかぬのじゃないか。それからお隣の中国や韓国にしましても、日本語学習といいますか、これが非常に盛んになってきております。一方、わが国の方は、特に隣の国の言葉というのはほとんど学校教育の中では取り上げられておりません。これは外国語大学はありますけれども、少なくとも外国語高校といったものはないわけでございまして、そういったことも含めたことを考えていかなければいけないという気がいたしております。  それから、留学生の受け入れでございますが、留学生で外国に留学に出ている者、これは一万二千人ぐらい、それから、外国から日本に来ている留学生、これは六千人ぐらい、約半分でございます。しかも、その中で少し偏りがあるのです。外国に行っている者の大半がアメリカ、ヨーロッパでございます。それから、来ている者の大半がアジアでございます。八割がそういう形でございます。この留学生の偏りということイコール文化格差だと思うのですが、文化格差がそのままあらわれているのが現実だと思うのです。しかし、国際化を図っていくとするならば、人為的にあるいは政策的に、これをちょうど半々にするぐらいのことにしなければいかぬのじゃないかという気がするのです。そういうことから、欧米に対しましては国費留学制度を大幅に拡充して、ある意味ではどんどん来てもらうという形を政策的にとる。それから、一方アジアの方なんですが、これは往々にして生活習慣の違いだとかあるいは施設上の配慮が不十分といったようなことで、帰国してから反日感情を持ってしまうというようなことがあると聞いています。留学生会館にしましても、外人だけをかためて入れておくのではなくて、日本人も一緒になった形を考えられないものだろうか。  それから、先ほど来お話の出ております中国からの五百人の留学生の受け入れの問題です。これも内容の細かいことは時間がございませんからいたしませんが、受け入れ体制を十分に配慮してからやらないと大変なことになるのじゃないかと思うのです。中国側は相当早くやってくれというような要望も、私もこの間中国に参りまして鄧小平副総理から伺ってきたわけでございますけれども体制を十分にせずにやるとまずい結果を招く可能性があると思うのです。これは、日清戦争の後で中国の留学生が日本に二千人も三千人も来たことがあろうかと思いますが、しかし、その受け入れ体制が不十分であったために、ほとんどの人が反日派になってしまったという事例もあるわけでございますから、この過ちを繰り返さないように、十分やっていただきたいと思います。  それから、外人教師の採用の問題でございます。このたび、英国人教師、これを二十人雇い入れるということは画期的な試みでございますが、その後、後々続く問題といたしまして、国家公務員法あるいは地方公務員法とのかかわり合いで、地位や待遇に制約が出てまいります。これをどう考えていくか。学校側の方にも受け入れを拒否するところがあったりして問題だと思いますが、やはり一定割合の外人教師が日本の各学校で活躍するよう、制度の改正だとかあるいは体制整備を図っていかなければいけないと思っております。文部省は少し御検討なさっているようでございますが、通常国会に提出の御意思があるかないか、その三点についてまずお伺いしたいと思います。
  212. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えいたします。  大変たくさんな御質問で、できるだけ急いで、かいつまんでお答えをしたいと思いますが、国際社会に通用するマナー、言葉、大変重要なことでございます。従来、日本の外国語教育、特に英語ですけれども、読むこと、書くことを重点にしてまいりました。それはそれでやはり歴史的な経過があったと思うのです。外国から学ぶ学問、それを日本語に直して理解をする、そういうことで日本の今日の学術水準というものを確保してきた。そのこと自体、私は間違ったやり方だったとは思いません。しかし、これからはそれだけであってはならないのであって、学校におきます読むこと、書くことだけの英語ではなくて、話す英語、聞く英語、このことにもっと力を注いだ教科内容を盛った学校教育でなければならない時代にまさになりました。  そこで、先般改定をいたしました学習指導要領の中でもこのことを一つの重点にいたしまして、話す英語、聞く英語、このことに一つの重点を置いた学習指導要領改定をやったわけでございます。そこで、やはり国際交流の急速な進展を考慮して、コミュニケーションがこれほど重要な時代になったわけでございますから、先ほどお話のありました、英国から教員を招聘をいたしましたことも、従来からやっておりますアメリカから十五名の英語教師を招聘をいたしておりますことも、今後さらにこれを拡充をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。今回の学習指導要領改定の一つの大きな柱でありますが、学校裁量に非常に大きな部分を任せてあります。文部省は大綱を定めるだけにとどめて、学校の現場の教員、学校の創意工夫にまとう、こういう非常に大き特色を持つわけでありますけれども、それだけに会話の教科書等、学校現場でひとつぜひ工夫をしてもらいたい、こういうふうなことも考えているところでございます。  留学生の受け入れと派遣の数が違い過ぎる、こういう御意見がございましたけれども、まさに先進国と日本の間を比べますと御指摘のとおりでございます。その中のお互いの国費留学生ということになりますと、これは大体同じ数で交換をしている、こういうことが言えるかと思います。やはり従来、学術の国際交流に関しますわが国の基本姿勢というものが、先ほども申し上げましたように、先進諸国から学ぶことを主眼とする傾向がありましたので、今日なお多数の研究者が欧米先進諸国に出ていきたい、こういう希望が多いわけでございます。一方、日本が招聘をいたします研究者は、ノーベル賞級の学者を招聘をして高度の研究結果を学び取りたい、こういうことが影響いたしまして、外国から日本に来られる研究者はやはり高度の学術を修めた方々が多い、そういう点に問題があるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたけれども、国費留学生の数は大体同じような数で交換をしている。ただ、こういうことがいつまでも続くことが好ましいとは考えませんので、日本からの若手研究者を国費で留学させる道ももっと拡充をしていきたい。海外からも、実はドイツのフンボルト財団等からも若手研究者を受け入れてくれないかというようなお話がございます。その受け入れの道を拡大をしていくことをただいま鋭意検討をしているところでございます。  それから、留学生の問題の御指摘、東南アジア留学生がかえって反日的な気風を持って帰る、こういう御指摘でございましたけれども、私は、東南アジアから日本に留学した人たちが反日分子になって帰る人が多数あるとは考えておりません。やはり日本の留学当時をなつかしみ、日本の留学当時をいつまでも忘れないで、いい点も悪い点も日本を理解をして、それぞれ本国で働いておられる元日本留学生の数の方が圧倒的に多いことを具体的な事例で承知をするものでございます。日本へせっかく勉強に来て日本に余りよくない感情を持って帰る、それはいろいろな問題がありましょうけれども、そう数多いことではないでありましょうけれども、やはり日本語のむずかしさということが一つあります。これは、東京外語あるいは大阪外語、その他の公私立の大学で日本語の研修機会をもう少しふやすように、ただいまそのふやし方について検討しているところでありますし……
  213. 中野四郎

    中野委員長 なるべく簡潔に。
  214. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 国公私立の学者の方々に、母国語別の日本語教育の手法研究してもらっているところでございます。  もう一つは、やはり家庭を離れて日本に勉強に来ている、家庭から離れているというさびしさにこたえてあげなければなりません。YWCAの御婦人方がやっておられるボランティア活動、大阪の商工会議所の里親活動、こういうことに余り行政が立ち入ってはなりませんけれども、何か行政でこれのお手伝いができないか、こういうこともただいま研究をしているところでございます。  中国からの留学生の受け入れにつきましては、きょう調査団が参っておりますので、私も明日お目にかかれるかと思いますが、十分にお互いの実情を認識し合う協議をこの調査団と進めてまいりたい、かように考えております。
  215. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 外人教師の件……。
  216. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 外人教師、英国から二十二名の方が到着をいたしましたが……
  217. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 公務員法の関係なんかについて。
  218. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 これは大学の場合でございます。大学の場合は国家公務員法との関係がございますので、その立法についてただいま検討しているところでございます。
  219. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 検討中ということでございますが、これも急いでいただきたいと思っております。  時間がほとんどございませんので、文化政策についてだけ、簡単にお聞きしておきます。  経済の発展や科学の技術の進歩、これはあくまで手段でありまして、豊かで質の高い文化、文明を創造する目的ということに対する手段でございます。教育基本法にも「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育」の普及徹底ということを言っておりまして、経済大国を目指す教育とは書いてないわけでございます。わが国もそろそろ独自の文化、文明を創造する段階を迎えた、このように思いますが、一歩振り返ってみますと、明治以降百十年、西欧文化の輸入の方に非常に急でございまして、わが民族が培ってきた文化というものをある意味で捨て去った。特に戦後は何か古いものは封建的なものだ、悪いものだといったことで捨て去ってしまったところが、いまの非常に大きな問題かと思っております。これは小学校の教育におきましても、ほとんどが西欧の絵画であり、音楽であり、踊りでありということで、日本の古来のもの、伝統的な文化というものを少なくとも教育の場には組み入れておらないですね。したがいまして、私たちが、私たち若い者と言った方がいいかもしれません、少し外国に行っていろいろな方と話しますと、ベートーベンだとかあるいはゴッホだとかいった向こうのことについては話を合わすことができるのです。ところが、相手が少し日本のことを知っておって、歌舞伎のことだとか、あるいはお茶の心とか能とかいわれたことを聞かれたときに答えられないのがいまの日本人なんですね。これではいけないのじゃないか。やはり独自のものをちゃんと身につけた上で、よそからの文化も入れて、それでこそ初めて新しい文化、文明の花が咲いていくのではないかという気がいたしております。いまの学校のカリキュラムの中にもっと日本の伝統文化を取り入れるといったことについて、総理あたり、どうお考えでございましょうか。  それから、日本の実情が少なくとも外国に余り知られていないケースが多うございます。ヨーロッパではカメラや車のカタログはたくさん出回っておりますけれども、逆に日本の文化を紹介したパンフレットというのはほとんど向こうで見たことがないということを聞いております。それから、逆に韓国だとかあるいは中国、オーストラリア、ドイツは非常に熱心に日本に対して自分たちの国のPRをいたしております。  この予算あたりを少し調べてみますと、文部省ではほとんどゼロだということ、一億にもならないということに私びっくりしたのでございますが、外務省が主として担当しておるようでございますけれども、外務省の予算にしましても、国際交流基金を通じたものが三十億、それから外務省の広報課あたりがやっておりますのが二十億、せいぜい五十億なんですね。これは外国と比較してどうだろうか、これまた、ちょっと外務大臣あたりお教え願いたいと思うのでございますが、このようなことでは、本当にこれから国際的な社会の中で資源も何もない日本が活躍していこうとした場合に、非常に心もとないという気がいたしております。やはり相手の国も知ることが愛することでございますから、日本のことの実情も知らずに日本を好きになってくれと言っても、これは無理な話でございますので、その辺に大幅な予算をつけてでもやっていく必要があるのではないかという気がいたしております。  時間が足らなくなりましたので、あえて、少し脈絡がおかしくなりますが、最後に、さきの参議院で私たちの有田議員が提言したことでございますが、街に一つの文化性を持たせていこうじゃないか、せめて公共建物の建築費の一部を伝統工芸を生かした装飾に充てるという施策、これに対して賛同を示されまして、文部大臣は、五十四年度概算要求にて態度を決するという御答弁をいただいております。これについて決心されたかどうか、これも最後で結構でございますから……。
  220. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 いまのわが国の伝統文化を学校のカリキュラムの中でもっと取り入れる、全く賛成でございます。小学校の鑑賞音楽などは、琴、尺八、三味線、それから長うた、越天楽等もすでにあるわけでございます。共通曲目にそういうことが入っている。高等学校生徒を対象にした歌舞伎等も、二カ月国立劇場でやりましても、切符が足りません。こういうことを拡充していかなければならないと考えております。学習指導要領を今回、学校の裁量に多く任せましたから、学校でもこれらの教材をもっとたくさん活用をしてくださるものと期待をいたしております。  日本文化の国際交流は国際交流基金が担当をしておられまして、文部省の予算は、五十三年度は八千数百万程度にとどまると思います。これは、国内芸術活動に文部省はもっぱら意を注ぐからでございます。  最後に、参議院の有田議員、柿沢議員等から御指摘のありましたまことに魅力のある御提案に対しまして、フランスの法律、ドイツの法律を取り寄せまして十分検討を続けてまいりました。日本におきまして、これは公立の学校ということになりますと、設置主体が都道府県であり、市町村である。そこら辺等の意見の一致も見なければなりません。実施をしておりますヨーロッパ各国でも、何を芸術品というか美術品というか、大変論争を重ねられて、どうも混乱をしているのが実情のようでございます。そこで、公立の学校において幾つかのところに先導的試行ができないものか、こういうことを政府部内で関係当局と御相談をしているところでございます。国立の教育施設につきましては、五十四年度の分につきまして十分その点を配慮をして実施をしていきたい、かように考えております。
  221. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 時間が参りましたので終わらしていただきますが、軍隊生活の経験が必要だとか、あるいは教育勅語の時代がよかったといった戦前の諸制度をなつかしむものではなくて、民族交流の新たな実験に挑戦する勇気を持って教育改革に取り組み、国際化時代にあって、世界に尊敬される国家、日本の基礎づくりをしていただきたいということを願いまして、質問を終わらせていただきます。
  222. 中野四郎

    中野委員長 これにて大原君、中馬君の質疑は終了いたしました。次に、藤田高敏君。
  223. 藤田高敏

    藤田(高)委員 昨日来から経済問題を中心にさまざまな質問が行われておるわけでありますが、私も主として財政問題を中心に、その他為替の差益還元の問題、あるいは今日の経済問題と一体の課題であります雇用問題等々について質問をいたしたいと思います。  本来なれば財政問題から入りたいところでございますが、通産大臣、何か国際的な関係で大事な御予定があるようでございますので、そういうことを考慮いたしまして、為替の差益還元問題から質問をいたしたいと思います。  率直にお尋ねをいたしますが、差益還元の問題につきましては、遅きに失したのではないかという強い批判もありますけれども、現実の問題として国民に差益を還元するという具体的な対策を講じましたことについては、私ども敬意を表するところであります。しかし、今回行いました差益還元のあり方について、あるいは電気、ガスの問題については、その法律の適用についていささか問題があるのではないか。このたび政府がやりましたこの還元の法律を見ますと、電気事業法では二十一条、ガス事業法では二十条、この法律を適用して還元をするのだということを決定しておるようでありますが、これはどういう根拠に基づくものか、通産大臣の見解を聞かしてもらいたい。
  224. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお述べになりました法律の条項に基づきまして為替差益の還元を進めておるところでございますが、法律解釈につきましては政府委員から答弁をいたします。
  225. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 今回のような事態、すなわち為替レートの急激な変更に伴いまして供給規程で定められている料金が適切でなくなった場合にとるべき措置ということにつきましては、現行の法律にはどんぴしゃり当てはまる条文の規定がございません。と申しますのは、電気事業法、ガス事業法を立法いたしました当時におきましては、固定レート制でございまして、為替の変動ということを想定していなかったためでございます。  そこで、現在ある法律の規定のうち何が一番使いやすいであろうかということを考えますと、電気事業法で申しますと、二十三条による供給規程の変更申請手続、それからもう一つは二十一条ただし書きによりますところの現行の供給規程から離脱することを認める手続、この二つがあるわけで、どちらが適切であるかということを考えた次第でございます。  二十三条を適用いたしますときの問題点は、手続に非常に時間がかかるということでございます。手続に時間がかかっておりますと、手続している最中にまた為替レートが変わってしまう。そういたしますと、変更申請をまた変更しろという命令を出さなければいけなくなって、切りがなくなるではないかというような問題点がございます。二十一条ただし書きによりますと、とにかく機敏に為替差益の還元の手続を済ますことができるという面におきまして、二十三条と比較いたしまして実際的であるというふうに考えましたので、今回の緊急臨時の事態に対処するために二十一条ただし書きを適用した次第でございます。
  226. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いま説明がありましたように、電気事業法の二十一条、ガス事業法の二十条を適用したというわけでありますが、その主たる理由は時間的に間に合わないということで、いわば法律の解釈においては私は便宜的な解釈をしてやっておると思うのです。これは時間の関係もありますから私の方から率直に申し上げますと、今日の電気事業法の二十一条は、供給条件についての義務を設定しております。いま長官の説明によると、二十一条による条文解釈としては、通産省からお出しになっておる「電気事業法の解説」から言いましても、この二十一条を適用するときには、災害を受けた地域について緊急に料金を割り引く必要があり、公聴会等の手続を経ているいとまのないときにやるのだ、特に例外的に行う供給規程によりがたいというのは、十九条の規定による供給規程によりがたい特別の事情というのは、たとえば天災地変による災害を受けたような場合に特定な地域に対して緊急避難の措置としてやるのだというのが、この二十一条の趣旨であります。  しかし、私の主張は、電気事業法の二十三条、ガス事業法で言えば十八条を適用すべきでないか。これは、二十三条によりますと、供給規程に関する命令及び処分ということで、通産大臣は「電気の料金その他の供給条件が社会的経済事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、」と、これが二十三条の規定でありまして、今回のいわゆる為替変動による為替差益の還元というのは、私は、まさに国際的な経済的条件の変動と社会的経済事情の変動によるというこの二十三条の規定にまさしく適合するのでありまして、この中の解説は省略いたしますけれども、二十三条の規定に沿って還元することが法の適用としては的確であって、二十一条を適用することは便宜主義的な法の解釈ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  227. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほども申し上げましたように、立法をした当時におきましては為替変動という事態を想定しておりませんでしたけれども、法律の適用は、時代、情勢の変化に応じて適用するということでよろしいのではないかと思っております。したがいまして、立法当時の解説書に書いてない為替変動に対する対応ということを二十一条ただし書きで行うということにつきましては、それが適切を欠くというようなことはないのではないかと存じます。  それからもう一つ、二十三条でやります場合には、先ほども申し上げましたように、二十三条による手続をやっている最中にまた経済情勢の著しい変動、すなわち為替相場の著しい変動が起こった場合には一体どう対処するのかというような問題が生じてまいりますので、二十三条というのはどうも現実の事態に対して余り適応性がないのではないかというふうに考えたわけであります。
  228. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほどの答弁では、為替変動相場の関係について、動いておるからという言い方でありますが、あるいは時間的な関係でという説明があったと思うのですが、為替の変動については、いまさら申し上げるまでもなく、円高状態になりかけたのが五十二年の一月ごろからでありまして、特に昨年の九月の段階では急カーブで上昇するような状態が生まれてきておるわけですから、少なくとも一年前あるいは極論すれば二年前ということになるのですが、一年後からやるにしても、一年前に差益還元の問題は現実の課題にならなければいけなかったわけですね。そういう点からいけば、法律解釈として二十一条でいきますと、たとえば電気会社なり事業会社が、政府の方針がそういうふうに決まりましても差益を還元しない、あるいは時間的に延ばすというようなことになった場合に、通産大臣が命令をもって料金の改定を命ずることはできないでしょう。二十三条の場合は、いわゆるそういう不心得な業界はないとしましても、法律上の解釈問題としては、そういう業界が差益還元をしないということになった場合、通産大臣は命令権をもって還元さすというのがこの二十三条ですからね。しかも、経済的、社会的な事情の変動によるということが本文の中心ですから、まさに為替変動相場というのは経済的、客観的条件の変化でありまして、先ほどの説明ではありませんが、緊急避難の措置的な形として還元をやる性格のものではない。したがって、法律の適用については大変問題があるところでありまして、もし通産当局がいまのようなかたくなな見解で今後も終始するということであれば、私どもは別途この問題の適、不適について争わなければならない、そういう事態さえ起こると思うわけでありまして、私は、この電気事業法の素直な解釈からいけば、当然二十三条の適用こそが正しい適用の仕方ではないか、こう思うのでありますが、大臣の御所見を伺いたい。
  229. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 為替差益を還元いたします場合に、法律のどの条項を適用するかということにつきましてはずいぶん相談をいたしました。しかしながら、最終判断といたしまして、先ほど長官から答弁をいたしましたように、二十一条を適用しよう、こういうことになったのでございます。
  230. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは結論として二十一条を適用することになったということだけで、通産大臣の御答弁、きわめて不親切ですね。私はこんなことを、プライベートに関することを申し上げて失礼だけれども、国会答弁を聞いておっても、あなたの答弁は比較的歯切れもよくて、問題の急所をついた答弁をされておることについて半ば敬意を表してきたのですが、この問題に関する限りはいまのは答弁になっていませんね。二十三条を適用するかどうかになれば、あなたが業界に対して適切なやり方について問題があれば命令をもって料金改定をやるというのが二十三条の規定ですよ。極端に言えば、そういう答弁をなさることは、あなた自身の、電気業界なりガス業界に対してあなたが持っている最高の権限を放棄することになるじゃないですか、どうですか。
  231. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 なお、もう一回、正確を期する意味におきまして長官から答弁させます。(藤田(高)委員「長官ではだめだよ。長官の見解はもう聞きました。二十三条は、直接通産大臣の権限に関する問題じゃないですか。君の答弁はもういいよ、二回も三回も聞かなくてもわかっておる」と呼ぶ)
  232. 中野四郎

    中野委員長 藤田君、法制局長官からちょっと。
  233. 真田秀夫

    ○真田政府委員 委員長のお許しを得ましたので、暫時答弁をすることをお許し願いたいと思います。  電気事業法に関してだけ申し上げますが、御指摘のように電気事業法にはいろいるな規定がございます。  まず、その方法としまして二つあるわけなのです一つまり、電気事業者は、もともと、供給規程を定めて認可を受けて、その認可を受けた供給規程に従って供給しなければならないという義務があることは当然でございます。その場合に、その供給規程自身もまた認可を受けて改正するという方法もございます。それは十九条の一項の後段でございます。  もう一つの方法といたしましては、供給規程はそのままにしておいて、特別の事由がある場合に通産大臣の認可を受けて、供給規程によらない料金その他の供給条件によって供給しても構わないというのが二十一条のただし書きの規定でございます。その二十一条のただし書きの規定によりますと、「供給規程により難い特別の事情がある場合において、通商産業大臣の認可を受けた」云々と書いてございまして、その場合の通産大臣の認可についてはかなりの裁量を読み込んでもよろしいというふうに私たちは考えましたので、通産省から御相談を受けた場合に、違法ではないというふうにお伝えしたわけでございます。
  234. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きわめて頼りない法解釈をやる法制局長官がおるものだとびっくりしたのですがね。この法律のこれは通産省が出しているのですよ。これには、あなたが二十一条でやっておる法律解釈は、緊急避難の措置的なものに限ると書いておるじゃないですか。この円高差益の問題は緊急避難の措置ですか。先ほどから言っておるように、去年の九月からこんなカーブで円が上昇する事態が起こっておるのでしょう。やろうとすれば十分時間があるじゃないですか。この解釈からいけば、天変地変、地震とか火災とかそういうなにが起こったときに、特定の地域を指定して、十九条に基づいて決めておる料金を一部変更してその地域の住民に適切な措置を講ずるというのが二十一条じゃありませんか。二十三条を適用すべきことを二十一条で逃げるなどということは、全く法律の解釈として、私も法律の関係では素人ですけれども、素人である私がこれだけ大きな疑問を持つのです。なぜ二十一条を適用したのかということになれば、この五十二年度の為替差益の還元の方法とも関連するのですけれども、通産当局が余りにも業界を過保護視する、ここに一つの政治的よりどころがあって、法律の解釈についても適用してはならない法律を適用しておると思うのですよ。これは行政の姿勢としても問題があると私は思う。  ですから、いまのようなことで時間をとっておりましてはあとの質問もできませんので、もし同じような答弁を大臣御自身までが繰り返されるのであれば、私は別途、党で相談をして、この問題は法律上の問題として争うことも考えなければならない。特に通産大臣は、重ねて申し上げますが、二十一条でやっておるわけですが、二十一条でやった場合、先ほども言ったように、通産省の方針に反してやらなかったときに命令権がないじゃないですか。料金の改定をやりなさいという命令権がないじゃないですか。大臣自身のそういう法律で与えられておる権限までも、業界のためにあなたは放棄するのですか、どうですか。
  235. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは先ほども長官が申し上げましたように、この法律をつくりましたときには今回のような事態考えていなかったのです。そこで、ぴたりと当たるような条文はありませんが、いろいろ相談をいたしました結果、いま長官並びに法制局の長官から説明がありましたような法律解釈によって実行することにしたわけでございます。
  236. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はこの答弁には納得がいきません。したがって、この問題は別途継続して何らかの形で追及をしていくつもりでございます。この問題は、私は留保いたしておきます。  そこで、二つ目の問題は、五十二年の差益還元の問題、五十三年の差益還元の問題ですが、五十二年の問題は、きょう私は、還元額そのものの多い少ないをコンピューターがたたいた数字で争おうとは思いません。一応政府が出してきておる五十二年度は九百二十五億、五十三年度は円高差益総額としての三千八百八十億、割引額七〇%として二千六百六十億、この数字を一応前提にして議論をいたしたいと思いますが、なぜ五十二年は、五十三年を飛び越えて五十四年以降の内部留保金として積み立てたのでしょうか。この理由一つ。  そういう措置を講じますと、差益にしろ利益には変わりないわけですから、当然これは税金として取られますね。したがって、その税金はたしか四百六十九億ですか、これは取られておるわけですよ。差益は受益者に適切に還元するということがたてまえですからね。公益事業の原則からいけば、やはりこの種の利益は国民に還元するというのが事業法の根本精神でもあると私は思うのです。それを国民に還元しないで、わざわざ税金を約半分国に取られて、国民に返すべきものを税金で取らせて、そして残ったものを、また五十四年以降何に使うのか知らないけれども、企業の内部留保の資金として積み立てる、このやり方自身問題があるのじゃないでしょうか。なぜ、どういう考え方でこういう措置をおとりになったのか、これは五十二年度の問題としてお尋ねいたしたい。  それと、この五十二年度の内部留保の金は何に使わす予定ですか。
  237. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この円高差益の問題が起こりましたのは昨年の秋からでございまして、秋に二百七十円水準が二百四十円まで急上昇いたしまして、しばらく落ちついておりましたが、またこの春から再び急上昇が始まって現在の水準になっておるわけであります。  それで、第一段階の変動の場合はさほど大きな金額でもありませんし、五十三年から値上げの年になっておりましたので、値上げをさせないで、できるだけ長く現在の料金を据え置きさせることによりまして消費者に利益を還元させよう、こういう基本方針を決めました。ところが、さらにまた円高になりましてその利益がだんだんと大きくなりましたので、第二段階といたしましては、景気回復のために設備投資の拡大、それから黒字対策としての緊急輸入対策に協力させる、こういうことによりましてある程度値上げを吸収しよう、つまり国民経済全体に寄与させるという形で値上げを吸収しよう、こういうことを考えたのであります。そういうことがありましたので、昨年の決算の場合は、いま申し上げましたように今年度以降の据え置きに充当させよう、こういう考え方でやったわけであります。その金額は、いまお述べになりましたように電力業界で約千億、ガス三社で約百六十億であります。税金に半分納めておりますので、ざっとその金額の半分が特別会計として積み立てになっておりまして、これは将来の、先ほど申し上げました料金の据え置き資金として使わせるつもりでございます。
  238. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、この処理の仕方自体に一つ問題があると思うのですね。そういう五十四年度以降に繰り越して企業の内部留保として認めるようなことをしなければ、税金で取らなくて済んだわけですね。そうでしょう。その税金の分は、これは国民に還元しようと思えば、今度の五十三年度の還元方式ではありませんけれども、料金の引き下げだったら引き下げという形で返せることはできたわけです。そういうことは需要者に対して一つの損害を与えるような措置の仕方ではないかということが一点。  もう一点は、いまの大臣の答弁で、私、そのやり方は了承できないのですが、五十四年度以降に積み立てた内部留保金はコストの上昇を抑制するための財源に使わすのだ、こう言っておるのです。  それでは、私ここでひとつお尋ねいたしたいのですが、この間、日にちはちょっと忘れましたが、この八月に参議院か衆議院で、参考人で東京電力の平岩社長を呼びまして、そこでこの問題について一問一答がなされておる。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 この電気事業連合会の会長である東京電力の社長が、この金は設備資金に使うのだ、こういうことを答弁しておりますね。これは設備投資の資金には使わせませんか、どうですか。
  239. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十二年度の場合は実は金額もそう大きな金額ではありませんし、現在の料金は五十一年、五十二年の料金を決めたものですから、五十三年以降はコストも相当いろいろ上昇しておりますし、投資関係も拡大しておりまして、その資本費の負担も相当重くなっておりますので、ある程度の料金の値上げが必要だ、このように判断をしておったのでありますが、先ほど申し上げましたように、相当な金額に達しましたので、これを据え置きのために使わせよう、こういうことに決定をしたのでございます。そして、先ほども申し上げましたように、純然たる別会計としてこれを凍結いたしておりまして、五十三年、五十四年の料金凍結のための財源の一部としてこれを使用させる予定にいたしております。
  240. 藤田高敏

    藤田(高)委員 問題の一番聞きたい答弁が出ないわけでありますが、設備投資に充てる資金は、常識的には社債の発行であるとか増資であるとかあるいは借入金によってやるべきものであって、この種の国民に還元すべき財源をもって設備投資の資金に充てるというような、いま指摘いたしましたこの東京電力社長に代表されるような考え方を認めることは不当だと私は思うのです。ですから、その点についての見解をひとつ聞かせてもらいたい。これが一つ。  時間の関係質問をかためて申し上げますが、五十三年の還元のあり方について、政府は、家庭用の電力料金、そしていわゆる工場が使う電力料金、この二つをいわば込みにして二百七十円だったら二百七十円という平均の額を出して、そうして、この一年間なら一年間に電力を使った会社の総電力量は幾らかというものを掛けてそれを企業に返す。片一方、一般の国民にはその同じ平均の額でこれまた総量を掛けて返すようななにをやっておりますが、私はやはり厳格な意味から言って、この配分の仕方は問題があると思うのです。なぜかと言えば、家庭用の電力はキロワット当たり仮に二十円としますね。業界が使っておる電力料金は単価が十三円ということになれば、返すときには、単価と使った量の掛けたものに見合うものを返すべきですよ。それを、両方平均した額で、そうしてその量だけ掛け合って返すということは、これは私は公平の――電気事業法でいう一番大事なところは公平主義なんですね。原価主義、公平主義なんですよ。これからいくと、全くこれも法律の適用を二十一条でやったと同じような形の便宜主義ですよ。全く便宜主義で、それは受益者の方から言えば、それだけの高い料金を払って電気を使っておるのだから、返すときにはそれ相応の、それに比例した形で返すべきであって、両方込みにした平均で返すなんというのはまさしく不平等な返還の仕方ではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  241. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 二つの御質問がございますが、一つは、設備投資をする場合には社債と増資によるべしというお話でございますが、これまで電力会社は大規模な設備投資をしておりますが、その主たる財源は社債と社内の蓄積であります。これを全部外部資本に仰ぎますと料金がだんだん高くなりますので、償却とか利益の一部とか、そういうものも社内に蓄積をいたしまして設備投資の方に使わせております。それから同時に、一昨年社債の枠を資本金の四倍に広げましたので、社債を出しまして資金を調達をいたしております。資本を増加いたしますことはコストが余り高くなりますので、いまのところはそう大きな金額は期待をいたしておりません。したがいまして、やはりいま申し上げましたように、幾つかの財源を集めまして大規模な投資を進めていく、こういうことをいたしております。  それから、還元方法の内容についての御意見でございますが、原則はあくまで公平にやるということをたてまえといたしております。家庭にいたしましても企業にいたしましても、全体として公平にこれを取り扱う、こういう考え方でございまして、ただいまのところは公平にいっておると思いますが、もし御不審の点があれば長官から答弁をさせます。
  242. 藤田高敏

    藤田(高)委員 所管大臣は、私は知らな過ぎるんじゃないかと思うんですね、これは。これだけで時間をとるのは大変私残念に思うのですが、私がいま指摘しておるような、料金に使った電気量を掛けて、そして還元するものは還元するという、実質的に公平の原則に沿って還元をいたしますと、私の試算でいきますと、いま政府が出しておる五十三年度の一家庭当たりの還元額は、東京電力の場合は月三百二十円ですね。それが、私のような還元方式をとりますと四百四十八円になる。家庭には月にして百二十八円多く返すことになるのです。関西電力で言えば、政府案によると二百八十三円が、私の試算によれば四百十九円、月百三十六円多く家庭に還元することになるわけです。こういう、物を売るときに高く売りつけておいて、今度利益が上がって返すときには、その高い額で売りつけたものに見合う返し方をしないなんということは、これはあなたがおっしゃる公平の原則に反するのじゃないでしょうか。私は、この法律の適用にしても、この還元の仕方についても、全く電気事業法の精神を無視した行政といいますか、還元の仕方だということを指摘せざるを得ないのです。どうでしょうか。
  243. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先生御承知のとおり、家庭用電灯料金と、それから業務用との差のよって来るところは、資本費に差異があるところでございます。家庭用の場合には、配電のために末端まで施設をしていかなければいけないというところから、そこでコストがかかりますので、家庭用電気料金が大口の業務用よりは高くなっておるという、そういうコスト主義によっておるわけでございます。  今回の差益の還元分は、言うまでもなく燃料費の低下というところからコストの低下が来ておるわけでございまして、この燃料費の低下というのは配電設備等とは何も関係のない問題でございます。この燃料費の低下分をどういうふうにユーザーに公平に還元するかということになりますと、発電端における電力使用量というものに比例して返すというのが公平であるというふうに考えまして、あのような還元の方法をとったわけでございます。
  244. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これまた、私は納得できません。したがって、この問題も留保して、後刻また何らかの形で問題を取り上げる。  ただ、総理にこの問題の締めくくりとしてお尋ねしたいのですけれども、いま私が主張しておることの真意は理解されたのではないかと思うのです。私は、円高問題が今後どうなるかということは、これは予測もつきがたい面もありましょうけれども、やはり今後差益の還元ということになれば、私がいま主張しておるようなことを十分尊重した上で還元方法を再検討するということがあってもいいんじゃないかと思うのですが、どうでございましょうか。
  245. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 おっしゃる趣旨はよく理解しました。  そこで、まあしかし、いま五十三年度の差益還元手続、これはもう進行いたしまして、これを変えることはなかなか困難と思いますが、御趣旨の点は将来の問題といたしましてまたよく検討してもらう、このように考えております。
  246. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、差益還元問題はこのあたりで一応、留保部分を除いて終わりたいと思います。  次に、財政問題でありますが、財政問題は、経済問題と関連をしてもうずいぶん議論になったところでございますので、極力計数、資料は省いた形できょうは議論をいたしたいと思うのでありますが、私はことしの一月以降本委員会におきましても、国債の償還問題を中心として、わが国財政の再建の方途をどこに中心を置くのかという点については、財政収支試算ではございませんが、やはり少なくとも赤字国債から早く脱却する、ここを財政再建のかぎにする必要があるのではないか、こう思うわけであります。  いまさら言うまでもなく、私は、今日の財政事情はまさにサラ金財政じゃないか、仮分数財政じゃないかと思う。というのは、一般財源が三十四兆円で国債が四十三兆円というような状態で、しかも単年度の中に三七%というような、十一兆円からの国債の占める割合がある。これはまさにいびつなサラ金財政の姿であろうと私は思うのです。  そういう点からいって、私は、基本的な考え方として、この赤字国債からの脱却というところを中心に置いて今後の財政再建をやるのかどうか、この点をひとつ所管大臣から承りたい。
  247. 村山達雄

    ○村山国務大臣 財政問題としてはその点にポイントがある、全く同感でございます。
  248. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういう点からいきますと、ひとつお尋ねしたいのですが、これは確定的なものではありませんが、この間の国会で出ました例の財政収支試算、これによりますといろいろの手法がありますが、増税型でいくのか、歳出抑制型でいくのか、両方折衷したものでいくのか、いろいろ案がありましたが、いずれにしても、そのめどを五十七年に赤字国債から脱却するというところへかなりアクセントを置いた財政当局の方針が出たと思うのです。ところが、今日、これは新聞や報道の限りですけれども、いまのままいっておると、その計画が五十八年にずれるのじゃないか、六十年にずれ込むのじゃないか、こういう心配があるわけですね。そうしたら、いま大臣がそういうことだとおっしゃるのだけれども、どうも私どもの目に、あるいは耳に入ってくるものはそういうものでない。このことを非常に憂慮するのですが、見通しはどうでしょうか。
  249. 村山達雄

    ○村山国務大臣 五十三年度の予算を決めますときにもこの問題がやはり一番つらいところでございまして、日本経済をつくづくながめてみますと、マクロでは確かにいいのでございますけれども、ミクロが非常に悪い。それから財政が悪い。実は財政とミクロと一緒に直したいのでございますが、やはり二兎を追う者は一兎を得ずで、どちらを先にするのか、ここの判断が非常に問題でございました。  また、経常収支の黒字はもう当時から問題でございまして、その意味で内需を拡大し、そしてやはり日本経済の、つまり自由主義経済で申しますと企業の体力をつけることから始めなければならぬ、そのために臨時異例の措置を講じまして、あえて三七%ということになったわけでございますが、そのときに、いま藤田委員がおっしゃいましたように、公共投資というものと、それから経常部門というものとおのずから性質が違いますし、将来の対応も違うであろうということで、投資部門と経常部門を分けまして、そしてそれぞれの経費の増加と、それからそれに対応するところの公債の増加というものを見合いまして、そして主眼としては、まず臨時異例の措置を講じ、そして経済の立ち直りを見つつ赤字公債の脱却をやりたい、こういう念願で五十三年度組んだわけでございます。  五十四年度につきまして、いまいろいろな話が出ております。財政当局といたしましては、財政収支のバランスを何とか直さなければならぬということを考えておるのでございますけれども、しかし、同時にまた、まだ抜け切っていないという点もございますので、しばしば申しますように、この辺の問題は経済的な見直しも行われますし、また国際情勢も違ってまいりますので、最終的判断はその時点でさしていただきたい。財政当局といたしましては、財政バランスを早く直したいという面には変わりございません。
  250. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、いまこのようにお互い審議をしておりますが、実質的には五十四年度の予算案が、概算計画というものが並行的に進行しておると思うのですよ。ですから、なるほど理論的なことというか、理屈の上の議論のやりとりでなくて、少し、生きた財政学といいますか、現実に動いておるこの財政問題をどうするのだという観点で、焦点を合わせて議論をすることがお互い政治家の任務じゃないか。その点では、一般消費税の問題もそうでありますが、一般消費税の問題だって、現実に五十四年度の予算編成が、もうほとんど概算計画というものが出ておる段階ですから、総理ではありませんけれども、あるいは大蔵大臣ではないけれども、これから検討するというのではなくて、一般消費税を採用するということになれば、三兆になるのか五兆になるのか、かなり大きな財源ですね。そういうことになれば、そのことが国債発行を、ことし十一兆円のものをいま伝えられておるように十三兆円にするのか、依然として十四兆円にせざるを得ないのか、それともそういうようなことの良否を越えて、一般消費税を採用した場合にはそれが減るのだとか、あるいは一般消費税に手をつける前に国債も抑えていく、国債の発行額も抑えます、いわんや、一般消費税は今日の経済環境の中ではそぐいません、だから来年は見送りましょう、しかし財政の収支が償わないじゃないかということになれば、高度成長型の歳出予算をかなり性格の変わったものにするのだ、私は、こういう総合的な観点からこの赤字国債の問題、国債発行の問題も出てくると思うのです。  そこで、ついでと言ったら悪いですが、ここでお尋ねしておきたいのです。これは総理からぜひ、私、後で減税の問題との関連でと思ったのですが、いま私が申し上げたような立場から言っても、一般消費税の問題は、もうここであれやこれやの議論を展開する段階ではなくて、来年度の予算に入れるのか入れないのか、収入財源として見るのか見ないのか、見送るのかどうかという、私は時期的にも結論を出すべき時期じゃないかと思うのですよ。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点で総理の決断を含めての御見解を承りたいのが一つと、それと大蔵大臣には、いま私が言ったような趣旨で、冒頭申し上げたように国債発行というものを極力抑えていくのだ、それが財政再建のかぎなんだというところに焦点を合わせて今後の財政計画を立てられるのかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  251. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず、私からお答えさしていただきます。  実は、概算がまとまっておるのでございますが、概算要求の段階では景気対策を来年度どうするかということを入れないで、その問題は年末における諸情勢がわかる段階でやるのでございまして、全くその考慮を入れないところで概算要求をお願い申し上げたのでございます。したがいまして、いま出ておりますのはかなり圧縮されたものが出ておるわけでございますが、これにどれだけの景気対策が必要であるか、それとの関連において消費税というものを導入するかどうか、それを来年度の経済見通しなりあるいは経済情勢の見通しができた段階で決めてまいりたい、こういう考えでございます。
  252. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一般消費税をいかなる段階で取り入れるか、こういうこと、これはまだ、いま今日この段階は税制調査会の特別部会で論議をしておる、こういう段階でございます。政府としてこれにどういうふうに対処するか、これはまだ税制調査会としての固まった意見が出てきておるわけでもなし、藤田さんのおっしゃることよくわかりますが、もう少し推移を見たい、このように考えます。
  253. 藤田高敏

    藤田(高)委員 後でも触れるかもわかりませんが、私は、やはり一般消費税は、今日の経済環境の中で、内需を喚起しなければいかぬという情勢の中で採用することは、これは良策ではない。そして、財源が不如意だから、財政が不如意だからということで、短絡的といいますか、一遍に増税に手をつけるという発想ではなくて、それ以前になすべき手だてというものはあるだろう。これは昨日来多くの同僚から意見が出たところでございますので、私は重ねて申しません。しかし、物の運び方として、財政再建の道筋として、私は、増税に手をつけることは一番後回し、こういう考え方で、一般消費税は少なくとも来年の財源に充当するような考え方だけはやめてもらいたい、これを強く要請しておきます。  そこで、大蔵大臣は、私の基本的な考え方に賛成はしてくれたのですが、けさのだれかの行政改革の問題ではありませんが、総論賛成、各論になると、反対というようなことで、実際は、いまの大蔵当局部内のいろいろな動き方を見ておりますと、やはり国債発行というものに、安易と言えば言い過ぎかもわからないけれども国債発行を従来型のパターンで、財政一つの大きな財源のよりどころに求めようとする、こういう動きが依然としてあるような気がするわけですよ。その代表的なものは、国債市場消化の拡大策として、銀行が国債を売る、いわゆる窓販の行為を銀行いわゆる金融機関にやらそうとする動きが出ておるわけですね。私から多くを申し上げるまでもないと思うのですが、最近の国債の消化現象というのは非常に私は憂慮すべき状態に来ておるのじゃないか。これは構造的なものと一時的な現象のものとがあるでしょうけれども、きのうだったですかね、証券局長がどこかの新聞社の対談でも言っておりますように、構造的なものは、何と言ってもいま最近非常に売れ行きが悪くなっておる、特に証券界ではこれをもてあましておるというような事態まで起こっておりますのは、私は、基本的にはやはり国債発行量が長期もの、十年ものというその長期ものの国債が非常な重圧になっておると思うわけですよ。そういういまの国債消化の現状、これは私素人ですから詳しい数字はともかくとして、年末までに三兆八千億だとか年度内に四兆八千億さばかなければいかぬ。まだそれだけが消化できていないんだというような状態からいっても、来年度以降の国債発行額というものはやはり思い切って発行額を落としていくということが大事であって、いま大蔵当局がやりかけようとしておる銀行の窓販をやらすとか、あるいは二年もの、三年もの、あるいは十八カ月ものというような短期ものを出して、国債の多様化政策によって国債を発行していく、少々多くのものが出てきても、これはそういう販売活動といいますか市場拡大の政策をとるのだからやったらいいんじゃないか、こういう基本的な考え方で、国債の発行額を抑えないといかぬと言いながら、実際の大蔵当局のやろうとしておることは、消化を拡大するような方向をとりつつあると思うのです。これはどうも私は矛盾するんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  254. 村山達雄

    ○村山国務大臣 おっしゃるとおりに、まず第一に、国債の発行は極力総額で抑えたい、特に財政収支バランスから申しますと、赤字国債をできるだけ圧縮したい。それから同時にまた、いま御指摘がありましたように、消化が最もよくなるようにしなければならない。しかし最近は、これは私も構造的な問題であるのか一時的な現象であるか十分見きわめねばなりませんが、とにかく一極の笠利の底打ち感から出たと言われておるわけでございますけれども、やはり資金の運用の方が短期ものの方にいまずっと向いておるわけでございます。したがいまして、いろいろ苦心をいたしまして、ことしのうちに二年ものを何とかひとつ出したい。五年もの、三年ものがありますが、二年ものを一遍出してみたい。その出す形も、金融機関と非常に競合するわけでございまして、国だけがよければいいというわけではございませんので、その辺のやり方を、金融機関との資金競合を来さないようなやり方で工夫してみたいと思っておるわけでございます。  銀行の窓販の問題ももちろんございますけれども、これはまた両分野にまたがる問題でもあり、また国債の管理政策としてもこれは重大な問題でございますので、いま慎重に、かつできるだけ早くこの問題を解決したい、かように思っておるところでございます。
  255. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは端的に聞きますが、国債消化の手段としての金融機関の窓販はやるお考えですか。それが一つと、いま一つは、二年ものをやりたいというのですけれども、二年ものというようなことになりますと、やはり金融機関の定期預金の二年ものと競合するだろうし、あるいは利付金融債との競合問題も起こってくるというようなことで、これは銀行の窓販問題と同様に、非常に大きな問題を証券界、金融界に起こすのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  256. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いわゆる窓販の問題につきましては、二つの問題を国債管理政策上考えておるわけでございますが、一つは、消化が当面よくなるかどうかという問題。それから、それがいわば浮動所有者として市場に出てまいりますと価格が非常に低落してくる、逆に笠利が上がっていくというその安定の問題と、この両面から考えてまいらねばならぬ、かように思っているわけでございまして、かきね論のほかに、実質的にいま論議されておるのはそういう点であるわけでございます。銀行が窓販になったときに、果たしてそれが将来への撹乱分子にならないかどうか、その点が大きな問題として論議され、そしてわれわれもまた、いまその点を検討しておるということでございます。  それから、二年ものをうかつに出すと大変だというのは御指摘のとおりでございます。ですから、それをシ団引き受けというような形でいきますと、おっしゃるようになかなかむずかしい問題でございますので、場合によりますと、市場において競争入札というような方法をとることによりまして既存の金融秩序が混乱、撹乱をしないというような方法もいま検討しておるところでございます。
  257. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この種の問題は、私は投資家でもないですから余り議論をしたくないわけでありますが、ただ、窓販制度をつくっていくとか、あるいは国債の多様化を図るために二年、三年ものをやるとかいうようなことになると、いわゆる国債の消化を拡大するという政策にこれはなるわけですね。ですから、基本的に国債発行を抑制するという方針からいけば、窓販をやるにしても証券界からの非常な抵抗もあるだろう。端的に言って私は、窓販をやりますと、たとえば毛利先生だったら毛利先生が会社をやっておる、その会社に銀行が一億の金を融資するときに、大企業はともかくとして中小企業の場合だと、一億の金を、まあ一千万の金を融資するが、いわゆる銀行の持っておる国債を抱き合わせて一緒に買いなさい、こういう拘束預金的なことが現実の問題として起こるのじゃなかろうか、これは私、一番心配するところです。そういう現実の中小企業なんていうのは、第二の歩積みといいますか、歩積み両建てじゃありませんが、そういうことが金融行政の中で出てきたのではこれはもうたまらない、こういうことになると思うので、私はこの窓販の問題等については早く結論を出す必要があるのじゃないか。大蔵省というところは局はあって省はないと、非常に奇妙なことを最近聞いたのですけれども、局というのがそれぞれ非常な権限なり方針を持っておって、独立ですか、省というものはないというようなことを聞いて、なるほどなとこう思ったのですけれども、どうでしょうか、参考までに銀行局長の窓販に対する見解と証券局長見解をひとつここで聞かしてもらいましょう、非常に大事な問題ですから。
  258. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答え申し上げます。  国債の消化問題は、先生御指摘のように非常に重大な問題でございまして、この窓口販売の問題というのは、銀行と証券業界との業務範囲の問題、そのような次元ではなくて、やはり国債管理政策としてどのようにあるべきかという理念で御判断をいただいて御結論をお出しいただくのが適当ではないか、このように考えております。  銀行局といたしましては、国債管理政策としてどちらが望ましいかという御判断をいただいて、その御判断に従おう、このように考えております。
  259. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 お答えいたします。  国債の窓口販売の問題につきましては、国債をいかに円滑に消化するかという観点から検討さるべき問題でございまして、現在大蔵省の審議会でございます証券取引審議会で、国債の流通市場の問題あるいは消化構造、安定構造の問題というのを検討していただいているところでございます。その過程におきまして、先生御指摘の窓口販売の問題も議論していただく予定でございます。
  260. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、局があって省がないと言ったのは、もっと自信のある答弁をしてくれると思ったのですけれども、これではやはり局がなくて省があるというかっこうになるのじゃないかと思うのですね。そういう点では、経過はどうだということは大体私も存じております。また、きのうは理財局長の、こういう写真入りで、「どう立て直す国債の消化難」という対談記事が出ておりますが、これあたりを見ると、大体窓販の結論は出たのじゃないか。理財局としては、発行したものが消化できぬことではどうにもなりませんから、窓販であろうと、二年ものであろうと三年ものであろうと、とにかく消化してくれることになればいいというのが理財局の考え方でしょう。銀行局は、いま言っておりますが、徳田さんのいろいろ書かれたものなんかも読んでみると、やはり窓販をやるべきだということですから、こういうことになると、私は少し局の見識ある見解を聞かしてもらいたいと思ったのですが、やはり大臣に気がねをなさったのでしょう。  しかし、私は、今日の国債情勢の現状からいくと、この窓販問題はもう結論を出すべきじゃないかと思うのですよ、議論の段階ではなくて。これはやはり、窓販だったら窓販をやるというのであれば、証券界の抵抗があっても、大蔵省のOBである谷村さんか谷川さんかだれか知らぬが、そういう人に代表される抵抗があろうとも、大蔵当局としての定見ある方針というものをもうこの段階で結論を出してもいいのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。できれば、これは大蔵大臣だけでお答えできなければ、総理の御見解も聞かしてもらいたい。
  261. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほどいみじくも藤田委員が指摘されましたように、窓販にしたときに、いわば取引先に対する押しつけが出るのじゃないか、それが結局いざというときになりますと、不安になると大量に出てまいりまして国債価格に非常に変動を与える。裏から言われたわけでございますが、そういう問題も一つあるわけでございます。  実は、借りかえ制度の問題、いわば乗りかえ制度の問題というのは、大体シ団との話で五十七年度までに解決をつけるということで、従来はそれほどは急いでいなかったわけでございますが、ここへ来まして国債の消化状況は思わしくない。ちょっとかげりが出た。余り悪い悪いと言いますとこれは大変でございますので、私も遠慮いたしますが、一時的な原因なのか構造的な問題であるのか、とくと見定めねばなりませんが、その意味では、五十七年と言っておったのはもう少し早く結論を出す必要があるだろう、いまそういう意味で申し上げているわけでございます。
  262. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 窓販問題は、これは大蔵大臣、大変苦心していると思うのです。とにかく証券業界は多額の国債を消化をしておる。非常に熱心にやっておるわけです。その証券業界は、銀行などの窓販、これに、率直に言うと余りいい顔をしておらぬ。そういう中で証券業界を意気阻喪さしてもまずいし、しかし、国債は証券業界が一生懸命消化する、その上にさらに消化の窓口をつくるということ、それができれば大変いいわけですから、そういう方向で円満にこの問題を処理したいというので、多少時間は延びておりますが、私は外から見ておりまして、だんだんその決着の方へ機運は熟しつつあるのじゃないか。なおこの上とも大蔵大臣に努力してもらいたい、このように考えます。
  263. 藤田高敏

    藤田(高)委員 やはり大蔵出身の村山大蔵大臣でありますし、同じく総理でございますから、こういう大蔵省に直接関係する問題というのは、なかなか采配を振るのがむずかしいのじゃないか。これは心情的に同情申し上げるのですけれども、私が先ほどから言っておるように、国債に抱えられたわが国財政、しかも一方では国債の消化が非常にむずかしい。むずかしいから消化能力をふやす方向に力を入れるのか、それとも来年以降はそういうむずかしい条件があるのであれば、消化能力をふやす方に力を入れるのではなくて、公債発行枠自身を抑えていく方に力を入れるのか、私は、やはり後者の方だと思うのです。後者の方でやるべきじゃないか。そうして、金融界なり証券界に大きな混乱を巻き起こしてまで窓販をやるとかというようなことになりますと――国債発行ではありませんけれども、どうしても三〇%のガイドラインがあるときにはもうこれを超えたらいかぬということで、坊大蔵大臣のときなんか〇・一を争うガイドライン論争をやったと思うのですよ。ところが、その三〇%のガイドラインを超えた途端に三四%になったかと思ったら、税の五十四年度の前取りまでやって、結果的には三七%、この補正を含めますとまた三七・六%、まさに国債発行雪だるまというので、四十年に総理国債発行に最初手をつけたときに、私どもは、一遍国債発行をやるとどんどん雪だるまになる。これは三〇%なら三〇%で抑えておかないから三七になっていくわけですよ、四〇に。ですから、窓販とかなんとかということで市中消化の枠をふやすようなことをやりますと、どうしても人情の常として国債発行の枠がそのことによって惰性に流される、こういう観点からも、この制度については私はやはり歯どめをかけていく必要があるのじゃないか、こう思うのですが、この点についての見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  264. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず第一点の、国債発行の縮減の方か消化能力の方か、こういうお話でございます。これは両方やりたいと思っているのでございます。  それから、いまの窓販の問題でございますけれども、先ほど申しましたように、いまの少しかげりの見えているのが、これが一時的な現象なのかそれとも構造的な問題になるのか、この辺を見きわめてまいらなければなりません。それから、単に消化したときに、一時シ団に引き受けてもらったときによけい消化するというだけでは国債管理政策にならぬのでございまして、これが事情がありますと、企業が少し悪くなるとどんどん売り放つというようなことでは困るのでございます。安定的にやはり消化の層を拡大しておく、そういうところにねらいを持って実はこの窓販の問題を考えているということでございます。(発言する者あり)
  265. 藤田高敏

    藤田(高)委員 後ろでささやきが聞えますように、わかったようなわからぬようなことで残念でありますが、質問の持ち時間の関係で、この問題はこの程度でとどめておきたいと思います。  ただ、結論的には、私冒頭申し上げたことと一貫するわけでありますが、やはり国債を三七を少なくとも三五に、そして三〇に抑えていくという努力をしないと大変なことになるのじゃないか。そういう意味で、便宜主義的な、先ほどの差益還元の法律適用ではありませんが、何でもまあまあ主義で、便宜主義で枠を拡大するようなことについては厳に戒めるべきではないかという点を強く要請をいたしておきたいと思います。  そこで次は、特に今回提案されました補正予算関係でありますが、この補正予算景気効果の問題、それに関連いたします減税の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  いろいろ昨日来、特にわが党の武藤委員の方から、この景気動向の問題につきまして専門家としての質問が展開されましたが、私はきわめて素朴かつ素人の質問でありますが、この予算では成長率、現在五%程度というのが、総理に代表される政府当局の皆さんがおっしゃっておるように、これが、この予算を組んだから国際的な公約にもなっておる七%が大体達成できるのではないかという考え方は甘いと私は思うのです、これはもう全く私の素人の観測かもわかりませんが。  その一つは、総括的に言いますと、この予算はなるほど事業規模で二兆五千億、こういうものでありますけれども、実際の純増の財源というものは千四百五十億。そしてその中から、これは私は後で問題にしたいと思うのですが、繰越剰余金の二分の一、六百四十億を引きますと、実際財源的に純増したものはわずか八百億程度なんです。ですから、これは個々の問題では反論もあるでしょうし、私もそれには意見を出したいと思いますが、私をして言わしむれば、右の肩の荷物を左の肩にかけかえた程度であって、その経済的な効果というものは、これは数字の上で一%とかあるいは五%程度のものが七%近く上がるような、そういうペニシリン的な効果を持つ補正予算ではないと私は思うのですが、私のこの認識、どうでしょうか。
  266. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これもたびたび御説明申し上げましたけれども、いわゆる今度の公共投資事業費という問題と、それから追加歳出が幾らであるかという問題と、それから財源を何から持ってくるかというのはそれぞれ違う問題だと私は思っておるのでございます。そして、どれだけ景気刺激になるかということは、この公共投資事業費でございまして、これは御案内のように、二兆五千億でございます。しかし、そのうち用地費もありますし、それから債務負担もありますし、民間の住宅投資なんかにつきましてはシフトの関係もございますので、それらを全部引きますと、ことしの事業費としては約二兆だと言われておるのでございます。あとは、いろいろな乗数効果を見ますと、たまたま同じ二兆五千億ぐらいになる、これはその問題だと思うのでございます。  それから、追加歳出が幾らかということは、もうお出しいたしましたように、七千百五十億でございまして、この公共事業関係では約四千六百億でございます。七千百五十億になりましたのは、これは不況対策であるとかあるいは経済対策があるからでございます。財源は一体何で生み出すのかというところが問題なのでございますが、公共事業の予備費二千億はもう皆さんカウントできるだろうと思います、いままで成長には入れておりませんでしたから。これはそのために取ってあったと言っても差し支えございませんので、それを入れさせていただきました。それから交付税の減、九百六十億ございます。しかし、これはこのまま一般会計では減に立てているのでございます。その場合に、一般会計ではそれだけ減りますから、これは財源に使えるわけです。ただ、その場合に、地方財政にそれを渡しませんと、地方の方で今度はその景気浮揚効果がそれだけ減るわけでございますので、そこは財投でつないでまいりまして、そして後の返還は一般会計から年度で入れていくというわけでございますから、これもカウントできるわけでございます。  その他剰余金の問題がございますが、これはまた、そのうち二分の一は使わしていただきたいということを出しおります。  それから、当初予算国債の利子は六分六厘八毛で計算しておると思いますが、その金利が下がりましたから、この分を入れさせていただきます。あるいは円高によりまして、実際同じ物を防衛庁その他購入するわけでございますが、これは安くなりましたから、その分を使わしていただくわけでございまして、これはいずれもGNPに対してマイナス効果にはならぬということはもう御案内とのおりでございます。  要するに、先生のおっしゃっているような意味でできるだけ公債の発行を少なくしながら有効な財源を使いまして、そして最大限のGNP効果をあらわすためにはどうしたらいいか、これが財政当局の命題であるわけでございます。
  267. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、この問題だけやりますと、私も好かぬ方じゃないですから大変なにしますけれども、これからこの問題について何人かの大臣にお尋ねしたいと思うのですが、一つは、いまたまたま答弁がありましたが、例の公共事業の予備費の二千億ですね。二千億なんというものは、これはもうまさしく需要効果になるんだ、そしてそれがGNPに影響が出るんだ、まあ簡単に言えばそういうことでしょう。私はこのあたりの認識が違うと思うのです。  ただ、これは、通産大臣に一つだけ聞きます。というのは、もう少し早く聞いたらよかったのですが、この公共事業の予備費の二千億ですね、これなんかは当初予算を組みましたときに、もう業界は、実戦部隊である産業界は、このものを入れて事業予算を組んでおるのですよ。私、きのうも武藤先生の質問の後、業界に皆電話をかげて聞いてみた。いろいろな算定をしておるところへ聞いてみた。聞いてみましたら、この二千億なんというのはもう当初予算を組んだときに出るものだということで、いわば業界はこういったものをGNPにはね返るものとしてもう計算しておりますよというのが全部ですよ。その点では、大蔵省あたりが頭の中で考えておるものと実際の産業界とは違うのじゃないか。私はこのあたりに一つのギャップが生まれてきておると思う。ですから、通産大臣は、当初予算の議会が終わる後半にもう、今日審議されておる補正予算を組まなければいかぬのじゃないかということを御発言になられた。これはやはりあなたがそういう実戦部隊の情報というものを常に握られておるからだろうと私は思うのです。そういう観点からいくと、いま大蔵大臣の御答弁になられたものと、通産大臣が直接感じられておるものとは違うのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  268. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいまのところは、何もしなければことしの経済見通し、経済成長はどうなるかというようなことについて関係者の間でいろいろ議論を重ねまして、そして現状のままいきますと五・七%ぐらいの成長しかできないのではないか。そこで二兆五千億という事業規模の追加、内需の拡大が必要だ、こういうことになったわけでありますが、御案内のように経済はきわめて流動的でございまして、特に貿易の動向がどうもはっきりしない点が若干ございます。そういうことでございますから、先ほど来総理関係大臣からいろいろお話がございますように、やはり経済運営にはあらゆる方法を考え、同時に機動的に対処していく、こういう基本方針がずっと必要ではないか、このように理解をしております。
  269. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣は御予定があるようでございますから、御退席結構でございますが、私は、いままでの御答弁の中ではきょうはとても歯切れが悪かったということだけ、出るに当たって申しわけないですけれども申し上げておきたいと思います。  そこで、結局この補正予算景気効果の問題でありますが、総理はきのうのやりとりの中で一つ、今後の見通しについて、輸出関係については、経常収支の関係から見ていわば非常に鮮やかに下期は変わるだろうということを武藤委員に答弁をされたと思うのですが、この内容は、経常収支の額で言いますと、去年とことしと比較して、見通しを含めてどういうものを想定なさっているのでしょうか。去年は輸出によってGNPを支えた率というのはどの程度のものであったのか、これは経済企画庁長官に、大臣には質問のなにをしてないのですけれども、影響力がどれぐらいであったか、ちょっと……。
  270. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず昭和五十二年度でございますが、全体の成長の中で、実質値で申し上げた方がわかりいいと思いますので申し上げますが、海外経常余剰が一・四貢献いたしております。その中で輸出の貢献は一・七、輸入の貢献はマイナスでございますので〇・三でございます。それから五十三年度でございますが、先ほど仰せになりましたようなことから、輸出もマイナスの貢献、輸入もマイナスの貢献ということで、一ポイント以上の、つまりGNPを下に引っ張ります効果になるかと考えております。
  271. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは時間がございましたら、私は、いわば景気効果の面から見て、この補正予算の中には債務負担行為分が二千五百億も含まれている、あるいは地方単独事業に金の裏づけが十分ではないのではないかという点についての自治大臣の見解、こういう心配をする余り、そういった点についての見解も聞かしてもらいたい、こう思っておったわけでありますが、一応全体的な時間の配分から私の質問を続けたいと思うのです。  先へ進みたいと思うのですが、いま経済企画庁長官がおっしゃいましたように、五十三年度がGNPで去年と比べて一%程度下がる、こういうふうに言われたと思うのですが、理解の仕方としてはそれでいいのでしょうか、七%の中に含まれる。
  272. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 言葉が足りませんで。そうでございます。寄与度の方で七%の中に含まれる。
  273. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういたしますと、端的に言うと、結局内需だけで七%これから押し上げていかなければいかぬ、一%この経常収支の関係で言えば下がるわけですから、だからその分も内需でGNPを上げていくような作用をしなければ七%の達成ができなくなる、こういうふうに理解していいわけですか。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御理解のとおりでございます。
  275. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまお聞きのとおり、私の見解からいけば、公共事業予備費の二千億というのは、大蔵省が考えておるようなことではなくて、業界はもう年度予算の中でそういうものが実際GNPに影響するものだというふうに算定をしておるというような実態論、あるいはいま長官がおっしゃったような経常収支の関係では一%程度これは影響度があるというわけですから、そういうものを内需の面でGNPを押し上げていかなければいかぬということになると、私は、ここで公共事業中心とする今度の補正額で果たして七%というものが実現可能であろうかということになると、非常に心配せざるを得ないというわけであります。  いま一つの出題は、これまた同僚議員関係を引き合いに出すわけでありますが、昨日、一般公共事業をやる場合の用地買収費として、これは経企庁の方からもらったようでありますが、これによりますと、当初予算では用地買収費は大体二〇%とこう見ていたけれども、この補正では平均で三・一だという。その中身を見ますと、住宅関係が一八・八で、道路整備なんかは四・七、こうなっておるんですね。これは私全く素人の意見かもわかりませんが、こんなに安い、土地買収費が公共事業の中に占める率が四・七なんというものは、これは常識では理解できないわけですよ。そうすると、こういう安い買収費で事業ができるというのであれば、これはどういう事業なのか、個所数を一覧表にして出してもらいたいと思うのです、これの裏づけになる。そういうものが出ないと、これだけでは信用をおくことができないと思うのです。どうでしょうか。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、私ども勝手に想定をいたしたわけでは実はございませんでしたので、財政当局のいろいろな準備等を聞きましてはじいた数字でございますが、個所まで財政当局が出せる状態でございますかどうか、ちょっと相談をさせていただきませんと、はっきりいたしません。
  277. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、少なくともことしの当初予算のときに、これだけ大きな国債発行をやって、異常だと言われるような公共事業をやるのだけれども、果たしてそれで失業者がどれぐらい減るのかという質問をやりましたときに、櫻内建設大臣に代表される答弁は、腰だめ的に約五万程度の失業者が減るだろう、こういうことを言ったわけでありますが、私は、少なくとも政府の出してくるこの種の資料にはそれなりの積算の基礎があるのではないかと思うのです。ですから、これは腰だめに出されたものではないだろう、したがってこれの裏づけになる資料をぜひ私は出してもらいたい、この点は強く要望いたしておきます。これは後で御答弁を願いたいと思うわけです。  そこで、時間的な関係がありますので、私の結論として申し上げたいのは、いま指摘をいたしました三、四点の要素から見ましても、やはりここで七%というものを達成する目標のもとに、雇用問題の解決を図るというところに重点を置きながらわが国景気効果を上げていくということになれば、やはり同僚議員が昨日来指摘しましたように、減税によって内需を喚起する以外に方策がないのではないか。やはり処方の仕方を、去年もおととしもことしも公共事業という、医学で言えば西洋医学的なものでずっとやってきた。やってきたけれども、西洋医学だけではどうにもならぬ。このあたりで一遍東洋医学を入れて、漢方薬じゃありませんが、そういう処方で病人の体を治すということを一つ手法としてやる必要があるのではないかと思うのですよ。この減税の問題については、すぐ総理にしても大蔵大臣にしても、減税をやれと言うのだけれども、やるということになれば財源が要るじゃないか、その財源は何だと言ったら、これは国債だ、公債だ、こういう形でおっしゃるのですけれども、私は、やはり私ども社会党が主張いたしておりますように、いきなり国債によらなくともその財源というものはあるのではないかということが一つです。これは後で申し上げます。  そこで、私この機会に、これは政府にぜひ反省を求めなければいかぬと思うのですが、私、一月の二十七日だったと思うのですが、五十二年度の補正予算審議しましたときに、二次補正で出されてきた政府予算案は、私の記憶に間違いなければたしか八千億の歳入欠陥、税の収入欠陥が八千億ある。したがって、下手をすると五十二年度の決算は赤字になるかもわからぬというので、決算調整資金というものをつくってここへ二千億積み立てることになった。私はその制度上の問題で、これはまた非常におかしいじゃないかという議論をやったわけでありますが、結果的には、そのときには決算調整資金を入れて一兆円の赤字予算を組んだわけです。ところがどうでしょうか、三カ月たたぬ間に結論は五千五百億の黒字になって出てきたわけですね。そうでしょう。五千五百億の黒字になって出てきた。そうして結果的には四千二百億の発行予定額の公債を四千二百億それで落として、そうして今度のこの予算に出てきたものが千二百八十億という新規財源として繰越財源が計上されておるわけですよ。  この一連の、五十二年度の補正とはいいながら、いま国会は十五カ月予算として審議しておるわけでしょう。あのときに政府が十五カ月予算でこの補正も組むのだし、当初予算も組むのだということで、そこでいま審議しておるこの補正も十五カ月予算の枠内で審議しておるわけですよ。そうしますと、この五千五、億の黒字になったということは、年度から言えば五十二年度のものであっても、十五カ月予算というこの枠の中では一体のものとして考えなければいかぬのですよ。そうすると、今日の大蔵当局の財政計画というものは率直に言って無定見だ。昔の大蔵省というものはそんなものだったのだろうか、こう思うわけですね。  これは、失礼かもわかりませんが、古い話ですが、三土忠造さんなんという人は、私の義理のおやじもよく知っておったようでありますが、そのころの予算原案というものは単純だったでしょうけれども予算案の中の数字は、もう昔で言えば一銭一厘までみんな記憶をするくらい、非常にシビアに財政計画なり予算というものに対して真剣に取り組んだ。ところが今日、三カ月前には一兆円の赤字が出る、それで決算調整資金までつくった。ところが三カ月たってみたら五千五百億の黒字が出てくる。こういう今日の大蔵省の財政計画に対して、私ども減税をやれと言うたら、金はない、すぐ国債じゃないと財源はない。ところが公共事業をやるといったら、どこからか知らぬがすぐ金が出てくる。これは一兆円でも一兆五千億円でも、専売納付金みたいなものを崩したり、あっちこっちからひっかけて一兆円くらいのものはすぐ出してくる。本当にわれわれ野党に代表される、いまや野党だけではありません、これは、私は国民世論からいけば、減税の世論は多数を占めておると思うのですよ。そういう減税に対しては非常に冷淡で、短絡的に財源を赤字公債に求める。これは財政当局の減税に対する物の考え方、取り組み方というものが非常に不熱心じゃないかと思うのですが、この点について、反省を含めて、どう考えておるかということをお尋ねいたしたい。
  278. 村山達雄

    ○村山国務大臣 三点申し上げたいと思います。  一つは、減税とそれから公共投資と、なぜ減税をやらぬかということでございます。これは一つは、藤田委員も御指摘のとおりに、近く一般的な負担の増を求めなければならない、こういうときに減税をやりますれば、この財源は最もわれわれが縮減したい赤字公債によらざるを得ないのでございます。そのことは財政再建をきわめて困難にいたします。それから所得税の負担の方から減税の必要があるかどうか。これはしばしば申し上げておるとおり、わが国の所得税は一般の国に比べましてまず半分でございまして、特に中小所得者に対しましては非常に軽くなっておるのでございます。その意味で申しますと、貯蓄性向の高い国でございますし、効果という点から申しましてもいかがなものであろうかということでございます。第三点は、まさに言われておるところの、同じ金を使ったときの効果の問題でございますが、いろいろな計算はありますけれども、どう考えてみても、やはり公共投資の方が、同じ金を使ったときの景気浮揚効果は多いわけでございます。これはごく簡単に申しますれば、もう先生には釈迦に説法でございますけれども、貯蓄の分は初めから削られるわけでございますから、どうしても乗数効果が違ってくることは当然だろうと思うのでございます。そういう意味で、私たちは公共投資は十分消化できると思っておりますし、そういう意味で減税はぜひこらえてもらいたい、こういうことを言っておるわけでございます。  第二点は、いま申し上げた決算調整資金の問題でございます。この問題は、去年、赤字が必ず出るからといってつくったわけでは、私が提案理由で申しましたようにそういうことではございません。これは恒久的制度といたしまして、剰余金が出た場合にはその処分の方法はあるけれども、もし赤字になった場合には、現在は財政制度はその制度を欠いているわけでございます。そして赤字のおそれも十分あるということを含めまして、昨年度の第二次補正の機会に決算調整資金を出させていただきました。これは歳出権限でございますので、三月末にはすでに決算調整資金の方に繰り入れてございます。  それから、いま、剰余金が出てずいぶんずさんではないか、どんなかっこうで出たのだ、こういうお話でございますが、ごく簡単に申し上げますと、税収の増が八千億……(藤田(高)委員「それはわかっておるのだ。黒字になったことは間違いないじゃないか。すぐ結論を言いなさい。経過はいい。」と呼ぶ)千二百八十億というのは全体の予算規模にいたしますと〇・三%でございます。だから、まあぴたっと当たれば一番よろしいのでございますが、この程度のそれは本当に御了承いただきたいと思っているのでございます。  それから三番目には、先ほど用地費の関係で三・一%だ、こういう話で、その積算の根拠、これは個所づけで持ってこいということでございますが、個所づけはまだこれからでございます。ただ、私たちが各省にお願いいたしましたのは、少ない金額で景気効果を上げるわけでございますので、用地費のすでに準備してある分、少なくとも用地費の最も少ないものを持ってきてもらいたいということで、各省の感覚とすり合わせまして、これは専門家でございますから、大体それぐらいのところであろう、こういうところでございますので、個所づけの点はひとつ御容赦いただきたいと思います。
  279. 藤田高敏

    藤田(高)委員 五十二年度の決算額において五千五百億の黒字が出た。これは四千二百億の赤字公債を発行するのを抑えたから結果的には千二百八十億しか出なかったけれども、二月の段階では赤字になるということで八千億の公債を発行して、そして赤字決算になるかもわからぬということで決算調整資金をつくったのでしょう。これは、そんな基本的なことまで何か弁解するようなことを言うこと自身がどうかと私は思うのです。二月の段階ではそういう状態であったということを財政当局が提案をしておいて、三カ月たって五千五百億の黒字が出たら、まあまあこの程度のことはぴたりいかぬでも勘弁してもらいたい。私はここに今日の財政当局の財政再建に向けての考え方なり、その積算というか取り組みが非常にふまじめではないかと思うのです。それは、これだけ円高相場その他の経済情勢の変動の激しいときですから策定できないこともあるでしょうけれども、この種の問題はもっと率直に財政当局としても反省するという答弁がどうしてできないのでしょう。そこまで大蔵大臣が反省の色なくおっしゃるのであれば、私はどうしてもこの問題を出さざるを得ない。  それは何といっても、この財政運営のあり方ですよ。あなたたちはどうですか、この当初予算の国会で、剰余金が出たら、国債発行をやっておる段階は一千億出ようと百億出ようと、それは全部赤字国債の償還財源に充てるのだということを約束したではないですか。約束したでしょう。それで、それは五十年の十月二十九日に七十六国会で、当時の大平大蔵大臣がそういったことを言明した。その翌年の五月十二日には、衆議院の大蔵委員会に同じ趣旨の資料が配られた。私はそのことをことしの一月、二月の予算委員会で、国債償還の問題にひっかけて、これから余剰財源ができたらどうするのですか、この方針によってやると、こう言ったじゃないですか。言っておいて、半年たたぬ間にこの予算書は何ですか、これ。半分財源に使っておるじゃないですか、あなたは。あなたは使っておるでしょう。これだけ財政方針に基本的な国債償還についてお互いが論議をして、そして国民も、そういう方向で行くのはいいだろうということになっておるものが、こういうふうに軽々に変えられる。私は、いまの五千五百億の黒字じゃないけれども、いま少しお互いが理論で、この予算のやりとりで、あいつ、してやったとかどうだとかというそんなけちなことではなしに、財政当局も、もっと反省すべきものは率直に反省する。われわれも政策論で論議するときは、減税をやれというのであれば可能な限りその財源をどこに求めるかと、そういう真剣な対応の議論でないと私は本当の政治というものにならぬのじゃないかと思うのですよ。  そういう点で私は、何も責任を追及することが目的ではありません。ありませんが、いまの大蔵大臣のあの答弁は、私はどうしてもいただけない。そういうことであれば、この財源の使い方なんかは絶対承服することはできませんよ。これは少なくとも予算委員会に諮った上でこういう資金の余剰金を半分使わしてもらいたいというぐらいな同意を得なくして、大蔵当局だけの勝手でやるなんということは絶対許しませんよ。その点どうですか。
  280. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いままで大平大臣のときに、赤字公債の償還が終わるまでは、剰余金は全額国債整理基金特別会計に入れますと大蔵大臣として申し上げました。私もまたそう申し上げたのでございます。ただいまの厳しい御批判は、私も率直にまた謙虚に厳しく受けとめておるつもりでございます。  ただ、御案内のように今度のような非常に厳しい財源のもとで赤字国債をできるだけ少なくしたい、こういうことでございまして、少なくともこの前の特別減税の三千億以内にはぜひとどめたい、こういう悲願がございましたものでございますので、お約束したにもかかわらず半分、財政法で規定しておる最小限度だけひとつ入れさせていただきたいということで、本当に率直にその点はおわび申し上げますが、どうかひとつわれわれの立場も御理解、御了解賜りたいと、深くおわび申し上げますとともに、お願い申し上げたいと思います。
  281. 藤田高敏

    藤田(高)委員 のっぴきならぬ、どうだと言ってこういうふうに証拠を出せばああいう態度で出てくる。いいですか。半年前に一兆円の赤字が出そうだ。ところが、三カ月、四カ月たった決算では五千五百億の黒字になる。こういう状態も、これはやはり財政当局としてもっと真剣に取り組むべきじゃないかということについての反省がないわけですよ。そうでしょう。私は、きのうから議論もあったけれども、その場逃れじゃなくて、そういう点ではもっと真剣に、あなた個人を責めてみたって、三文の得にもならないんだ。問題は、お互い、わが国財政をどうするんだ、国民生活をどうしていくんだ、将来に向けて。そういう真剣な立場で、人憎さでやっておるんじゃないですから、そういう意味で謙虚に反省すべきものは反省し合ってやっていくべきじゃないか。この点は行政全般の問題を含めて総理の基本的な見解を聞かしてもらいたい。
  282. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の補正予算でその財源の一部に前年度剰余金の半額を使う、これはいままでのいきさつから見ますと、いま藤田さんが御指摘になったような問題があるのです。そこでずいぶん大蔵省でもこの問題を論議し、国会に申しわけないなあ、しかしこれを使わなければまた赤字公債をよけいに発行しなければならぬ、こういうことでございます。どっちを選択するか、こういうことになりまして、藤田さんも大変力説されている、赤字公債を減らさなければならぬ、こういう原則もある。こういうところから、ひとつこの際剰余金の半額を財源に充当する。そのかわり国会に対しましては、いろいろいきさつがあるから国会に深くおわびをしよう、こういうような結論に到達いたしたわけでございますが、まあとにかく赤字公債は減らせ、これは藤田さんの御意見、本当に私もそのとおりに思うのです。そういうことを踏まえまして、今後は十分御所見を承りまして、これを踏んまえまして努力していきたい、このように考えます。
  283. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理のああいう見解の表明がありましたが、この問題についてはそういう予算委員会で約束した経緯もございますので、私はこの問題は最終的な結論は、了承するしないの結論は後日に譲りたい、こう思います。  それでは、肝心な減税の中身についての意見を申し上げる時間がございませんが、いま私特に強調いたしたいのは、減税を要求すると、いきなりすべてが赤字国債でなければ財源がないんだという発想は、これは間違いじゃないか。やはり本当に減税もひとつ公共事業と並行していまの景気浮揚策の要素にしていこうということであれば、きょうは時間がありませんから項目だけ申し上げますと、私ども社会党は、たとえば給与改善費の余裕金は公共事業に充てるのではなくて、それは性格から言えば個人消費の枠を拡大する、そういう財源に見合うものだから、これは減税に向けてみてはどうだろうか。あるいは既定経費の節約についても、たとえば二千億程度をやろうとすればできないことはないではないか。あるいは予備費の問題につきましても、この補正予算で四百五十億使っておりますが、すでにいままで使ってきた千百億余りを含めてなおかつ千四百五十億ぐらいな予備費がある。そういうものをたとえば半分なりあるいは一千億なり使って減税ができないものかどうか。あるいは今日の、先ほどから申し上げました為替差益を生むような企業に対してたとえば会社臨時特別税のようなものを復活して、税を負担する能力のある会社から、赤字の会社から取れと言っておるのじゃないのですから、そういう負担能力のある会社に対してはそういう税金を復活して税を取る。その税金を減税で国民に還元をする。あるいは高額所得者に対するたとえば一〇%の付加税というようなもので、私ここ十項目ぐらいありますが、将来に向けての税制の制度改革をやらなくとも、今年度は今年度だけにやろうとすればできる課題があるわけですよ。そうしてその適否についてはお互い、政府側とわれわれの側に見解の違いもあるかもわからないけれども、私は減税をやろうとすれば五千億、一兆円の減税は可能である、そういうものにいま少し、公共事業に力を入れるぐらいな同じ比重で減税に目を向けるという政策的配慮があってもいいのじゃないか、こう思うわけですよ。そういう意味でこの減税に対する総理見解を聞かしていただいて、財政経済問題の質問を終わりたいと思います。
  284. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 減税を行うということになりますと、それだけの財源が必要になってくるわけです。その財源、同じ財源を使うならば一体どういう施策が効率的であるか、こういう問題だろうと思うのです。いま日本国民が求めておることは何だろうといいますれば、私はやはり雇用問題を早く改善をするような方策を何かとれということじゃないかと思うのです。そういうことと、それからもう一つは、とにかく日本経済全体が円高で落ち込んでくる、これを何とか補うための需要創造政策をとれ、こういうことだろう、こういうふうに思うのです。そのいずれかを見ますと、減税という施策よりはやはり公共投資という施策の方がすぐれておる。これは私は、はっきり自信を持って申し上げることができると思うのです。それから同時にもう一つ財政論ですが、減税となりますと、藤田さんも強調されましたが、やはりあれに問題があるわけですよ、赤字公債を何とか少なくしていくという努力をしなければならぬ。これと真っ正面からぶつかる問題になってくるわけです。  そういうようなことをあれこれ考えますと、この際は、同じ財源でありますれば公共投資だ。減税という方式をとらない方がいいのじゃないか。まあことしばかりのことを考えているわけではないのです。財政体質を改善しなければならぬ、こういう先々のことまで考えますと、どうしてもここで減税という方式は出てこない、このように考えています。
  285. 藤田高敏

    藤田(高)委員 減税問題になりますと総理は大変かたくなで、まさにオウム返しということで、そこにはきわめて生産的な議論の発展がないことを残念に思います。ただ願わくば、総理は何といっても経済通ですから、当たるも八卦当たらぬも八卦ということもありますが、ある人の見方によると、減税総理が最後の決め手として残しておるんじゃないかという非常にうがった見方をする人もございます。これをどのように御判断されるかはともかくとして、そういう判断もありますし、きょうはもう時間もありませんが、OECDに代表される国際的な世論も、これはまあ大蔵当局からいけばよけいな内政干渉だというような御意見もあったようでありますが、やはり減税によって景気を刺激するということは今日資本主義国家の中における常識じゃないか。したがいまして、この問題は、なお私どもはこの減税の主張をさらに実現するために努力を続けることを申し上げまして、この質問を終わりたいと思います。  そこで、きょうは雇用の問題が全部残りました。そのために労働大臣なり運輸大臣あるいは自治大臣といったような方には質問ができなくて大変申しわけありませんが、また改めて雇用問題は全部後日に譲らしていただきまして、最後に私、同和対策事業の関係につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  この問題は多くを申し上げるまでもないと思うところですが、わが党の衆参両院における代表質問でもこの問題をお尋ねをしたところでございます。ところが、総理の答弁は、各党間において合意を見た上で、こういうわけでありますが、御案内のように野党全部は、五年の延長でぜひ同和対策事業特別措置法を延長すべしという結論がもう出ておるわけです。結論が出てないのは、あなたが総裁である自民党だけなんですね。しかし、自民党の中の稻村総務長官に代表される方は、これはあれこれの資料がありますが、いろいろな名誉のために言わない方がいいかもわかりませんけれども、稻村長官は、五年ということをわれわれの側にもうはっきり約束をしておるわけですよ。新聞にもたくさん出ておるわけです。この問題は、延長するかしないかの法律の議案になれば、議員立法ではなくて政府提案、こうなるわけですから、私は、やはり総理、総裁である福田総理がぜひこの問題についてこの国会、できればこの予算委員会開会中にこの結論を出してほしいと思うのですが、総理見解はどうでしょうか。
  286. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 同和対策事業の延長の問題に絡みまして、私は社会党のだれかに五年ということを言ったと言われますが、そんな事実は一切ありません。
  287. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 同和問題、私も念頭に十分置いてある問題ですので、本会議で申し上げたように、この問題はまだ自民党と各党との間の意見調整が整っておらぬようであります。私といたしましては、国会対策委員長にその調整方を依頼してありますが、早く各党間の意見調整を終えて、そして、それはそれの上に立って、政府提案にしますか、議員立法にしますか、それは別といたしまして、決着をなるべく早くつけたい、そのように考えております。
  288. 藤田高敏

    藤田(高)委員 まだ二、三分ありますから満度に時間を使わさせてもらいますが、稻村総務長官のような水かけ論をやろうと私は思いません、子供のけんかじゃありませんからね。そんなことは言いませんけれども、お互い信義を重んずるという立場からも、政治家は都合のいいことだけを言うのではなくて、責任ある大臣が、個人的といいますか、党のそれぞれの責任ある立場の者にそれに近い約束をしたということになれば、政治家の態度としては自分が職をなげうってでもそのことをやるというのが、民主政治下における政治家のとるべき態度ですよ。そんなことをだれにも約束しませんなんということを言われるが、ここに幾つもありますよ。ありますけれども、時間もないし、お互いそんなことを言い合ってみたってなにだから私はやりません。やらないけれども、しかし、そんなことはある意味では、いまのこの断面では重要な課題ではなくて、いまの断面は五年延長をすることを早急に結論を出す必要があるのじゃないかということ。私があえて、これは議運になりますかもわかりませんが、この種の基本的な問題は、たとえば日韓問題あるいは会期延長の問題等で取引の材料で何だかやるような、そういう間違った誤解や印象を与えない形で適切に結論を出すべきじゃないか。この同和関係の地域を抱えております市町村のいろいろ集めた、市町村から出してもらった統計によりましても、この十カ年計画の残事業というものは、かれこれ一兆二、三千億も残っておるということになれば、もう客観的な事実からしても五年程度の延長というものは非常に当然のことではないかと思うわけですよ。そういう点で願わくは、私、せっかちなようでありますが、この予算委員会が終了するまでにひとつ政府部内として御検討いただいて結論を出してもらいたい。  最後にもう一度総理見解を伺いまして、私の質問を終わります。
  289. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本問題は、なるべく早く決着がつくように努力いたします。
  290. 中野四郎

    中野委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時散会