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正木委員 どうもありがとうございました。
これでいささかは変わってくるでしょう。そのかわり、これが徹底いたしますと一斉に簡易裁判所へ押しかけるでしょうから、相当増員もしてもらわなければならぬかもわかりませんけれども、いずれにしてもそういう方法があるということがわかっただけでも私は大きな収穫であろうというふうに考えます。
それともう一つは、やはりこれは基本的に考えていかなければいけないのは、そういうサラ金業者に金を借りなければならないような状況の人、それはばくちの元手が要るからといって借りる人はほかでは調達できないでしょうけれども、真実暮らしに困って、また生業資金に困っているという人だっていると思うのですよ。そのためには、やはり生業資金等の貸し付けの制度というようなものももっと枠をふやし、そうして、その条件についてもある程度緩和をしていくという形でやっていかなければならぬだろうと私は思います。これは
答弁をいただいておりますと時間がございませんので、それを
関係の大臣の皆さん方に御要望申し上げておきますから、その点もあわせて考えていただきたいと思います。
さて、いよいよ
経済問題に入りたいと思います。
ちょっと時間が足りなくなってしまいましたが、けさは
武藤委員が、七%
成長の問題について疑問点をいろいろと提出されました。私は再びこれを繰り返さないで、それを引き継いだ形で議論をしたいと思うわけでございます。
総理は
財政均衡論者でございますから、
財政のことがしょっちゅう頭の中にあって、それが気になって、何とか
赤字をなくそう、何とか
国債発行を減らそうというふうに努力をされている。私はそれはそれなりに一つの見識だと思うのですけれども、しかし、戦後何回か
日本に不況期が訪れました。そして、その不況克服というものをやりましたし、四十年のときには、むしろあっという間にその不況期を乗り越えたという記録も出ているわけです。その当時はやはり、それはもちろん公共事業等を増発したりなんかはいたしましたけれども、主としてやはり民間の力で、民間自力回復力というものがまだ残っておりましたし、それが
設備投資の増大等につながって景気回復をしたし、同時にまた、その当時はいろいろの優遇税制をつくりながらも、要するに
輸出ドライブをかけることができた。これがやはり私は不況乗り切りのための大きな要素でなかったかと思います。ですから、その
輸出ドライブをかける、
輸出をどんどん振興していく、そのために、ひどいときには
国内価格と
輸出価格が違うというようなものが出てきたりなんかして大きな問題になったこともありますけれども、そのほか金融政策を併用して、さらには
財政的には公共事業を増発する。いまほど増発はしておりませんが、要するにその当時はちょっとてこを入れてやれば、民間の力があったから、その民間の力によって不況を克服することができたという時代なんですね。
今回の不況は、私は全く状況が違ってきているというふうに考えるわけです。確かにあのインフレの中で、とりあえずインフレを鎮静化させるということに意を用いられたということは、これまた一つの見識であると私は思いますが、同時に、その後、景気回復のための手おくれが相当大きく
影響していると思います。同時にまた、同じように
輸出を振興するというふうな形で景気回復をしようとした、ここに私は大きな問題点があるだろうと思います。
石油ショックによって、石油代金の支払いで
先進工業国はそれぞれ
赤字を抱えているような状況の中で、そこへ集中豪雨的に
日本から
輸出が行って向こうが受けられるわけはありませんし、そういう意味から言って、どうしても
輸出の頭打ちという問題が起こってまいりましたし、また、
輸出を頭打ちさせるために、あの
円高現象というものが急激に起こってきたとも考えられるわけです。そういう意味では、いまもう民間が景気回復をする力というものはまだまだ失われた
状態であろうというふうに、大まかに言って私は考えるわけですね。
そういうときには、
財政が
財政支出をしていくという形でそれにてこ入れをしていく、いわば景気回復の主役は
財政という時代になっている、これは私は間違った意見ではないように思うのです。ちょっと精緻さを欠いているかもわかりませんが、大まかに言って。そういう状況の中でそれでは
財政を何に使っていくかという形で、要するに公共事業一本やりという形で公共事業を年々増大させていった。これはこれなりに私は意味のあることだと思うのです。ただ問題は、一本やりであったというところが問題なんです。私は、公共事業よりも減税等の問題の方が効果があるというようなことは言いません。しかし、こういう時代には、いろいろ複合された政策というものが同時に実行されていかないと景気回復はできないのじゃないかというふうに私は考えているわけです。
そこで、問題を簡単に整理をいたしまして、私の言いたいことは、まず第一に、七%ないしは七%程度とけさおっしゃいましたね。私は、七%でなければ六・九%や六・八%じゃいかぬと言っているわけではないのです。七%近い
成長で私は結構だと思うのです。いまこのままいったって六%に乗るか乗らぬかわからぬという民間の
経済機関の調査報告さえあるぐらいですから、六%に乗って七%に近くなれば上できだと私は思っているのですがね。
それでは、なぜ七%程度の
経済成長が必要なのかという議論、その後、そんな必要な景気回復がなぜおくれたのかという原因論、その上に立って、それでは必要性、目的論というのがちゃんと出てくるでありましょうから、その目的に合わすために、おくれてきたけれどもいま何をなすべきかという方法論、私はこの三つはやはりじっくりやらなければいかぬだろうと思うのですね。その割りには時間がなくなってきちゃったな。
とりあえず私は第一番の、それではなぜ七%程度の
経済成長が必要なのかという議論、これは私は、その目的というものは大体皆さん方と共通しているだろうと思います。私は、第一にはやはり
雇用の安定だろうと思うのです。こんな
雇用の不安定な状況の中から
失業者を減らしていく、そのために七%の
経済成長というものが必要なのじゃないかと考えますね。
それともう一つは、何といってもこれ以上激しい
円高に見舞われるようなことがあってはなりません。そのためにはやはり
輸入をふやしていかなければなりません。その
輸入はどうしてふえるかというと、
内需を拡大するという形でふやすよりほかに道がない。その方法としては、公共事業であるとかいろいろなものがあるかもしれませんが、
内需を拡大していかなければいかぬでしょう。これがもしできませんと、貿易収支がいつまでも膨大な
黒字を残したまま、そうして七%近い
成長もできないということになると、私は、今度は
総理が約束されてきたボンでのお約束のあれが実行されないということになってまいりますと、また急激に外圧が加わって
円高現象が起こってくるという悪循環が起こるおそれが多分にあるのじゃないかという気がしますね。
もう一つは、やはりそれと同時に、
内需が拡大しませんと、私が心配なのは、
輸入がふえてこない。
輸入がふえてこないのに見合った形での
輸出というふうにどんどん
輸出が減ってきますと、ある意味では縮小
均衡という形になってまいりますから、これは貿易で生きていかなければならぬ
日本にとっては重大な問題だと私は思うのです。やはり拡大
均衡に持っていかなければなりませんから、
輸入をうんとふやす、そしてそれに見合った
輸出という形での、少なくとも現状維持の状況というものは続けていく必要があるのじゃないかというように考えますね。
三つ目は、やはり
総理が一番心配なさっている
財政問題です。
稲葉秀三さんがおもしろいことを言っているのですよ。「企業設備が過剰になり、他方で貯蓄超過が起っている状況のもとでは、
政府が有効需要を外から投入しなければならない。」これはいま申し上げたように
財政主役ということですね。「それから、今の
日本は三年から五年間は、三〇%以上の
国債発行をしていかないと六%
成長は確保しえないように思われる。」そこで、この人はここのプロセスを言っているのですけれども、「国債を発行し
財政支出をし、それが
経済に活力を与え、景気を上昇させ、次の段階で工業生産やGNPを高め、企業に活力を与え、
雇用を増大させ、民間
設備投資を上向かせ、税収の増大を図り、この結果、国債依存率を引き下げる。」ということにならなければいかぬ。こう言っておるわけですね。
だから私は野方図に国債を発行していいというふうなむちゃな議論をしようとは思いませんけれども、しかし、いま
財政が主役になって景気回復をしなければならない、そうしないと結果的には
財政へ返ってくる余裕というものも生まれてこないというならば、いまはそう
総理や
大蔵大臣のように
赤字ばかりを恐れているということでは、結局中途半端な形で、いつまでたってもこの
財政状況の悪さが延びていくだけにすぎないと私は思うわけであります。どうでしょうか。