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1978-10-19 第85回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十九日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 瀬野栄次郎君       江藤 隆美君    金子 岩三君       熊谷 義雄君    倉成  正君       國場 幸昌君    玉沢徳一郎君       西銘 順治君    平泉  渉君       福島 譲二君    堀之内久男君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君    日野 市朗君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 一郎君  出席政府委員         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   堀川 春彦君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁次長   角道 謙一君  委員外出席者         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         農林水産省経済         局統計情報部長 柳井 昭司君         林野庁林政部長 石川  弘君         林野庁業務部長 秋山 智英君         労働省労働基準         局賃金福祉部賃         金課長     花田 達郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   佐藤  隆君     西銘 順治君 同日  辞任         補欠選任   西銘 順治君     佐藤  隆君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  農林水産業振興に関する件  昭和五十三年産とうきびの最低生産者価格等  に関する件  請 願    一 生産者米価引き上げ等に関する請願(      広瀬秀吉紹介)(第五四号)    二 水産庁に釣り人課新設に関する請願(      瀬野栄次郎紹介)(第一八七号)    三 乳価値上げ反対に関する請願井上一    成君紹介)(第九二二号)    四 二十トン未満サンマ漁業実施に関す      る請願椎名悦三郎紹介)(第一〇      二〇号)    五 資源管理型漁業の推進に関する請願(      椎名悦三郎紹介)(第一〇二一号)    六 米の消費拡大に関する請願椎名悦三      郎君紹介)(第一〇二二号)    七 畑作物共済制度拡充強化に関する請      願(椎名悦三郎紹介)(第一〇二三      号)    八 開拓地整備事業継続実施に関する請      願(椎名悦三郎紹介)(第一〇二四      号)    九 水田利用再編対策取りやめ等に関する      請願竹内猛紹介)(第一三三一      号)   一〇 森林行政確立に関する請願安田純      治君紹介)(第一六〇八号)   一一 米の強制転作及び農林畜産物輸入拡      大撤回等に関する請願寺前巖君紹      介)(第一六五三号)   一二 同(寺前巖紹介)(第一七九九号)   一三 乳価値上げ反対に関する請願外三件(      井上一成紹介)(第一七九七号)   一四 水田利用再編対策取りやめ等に関する      請願竹内猛紹介)(第一七九八      号)   一五 米の強制転作及び農林畜産物輸入拡      大撤回等に関する請願玉置一徳君紹      介)(第二四五八号)   一六 同(寺前巖紹介)(第二四五九号)   一七 昭和五十三年産予約限度超過米に関す      る請願井出一太郎紹介)(第二五      四三号)   一八 同(小川平二紹介)(第二五四四      号)   一九 同(唐沢俊二郎紹介)(第二五四五      号)   二〇 同(小坂善太郎紹介)(第二五四六      号)   二一 同(清水勇紹介)(第二五四七号)   二二 同(中島衛紹介)(第二五四八号)   二三 同(中村茂紹介)(第二五四九号)   二四 同(羽田孜紹介)(第二五五〇号)   二五 同(原茂紹介)(第二五五一号)   二六 同(向山一人紹介)(第二五五二      号)   二七 養鶏経営の安定に関する請願井出一      太郎君紹介)(第二五五三号)   二八 同(小川平二紹介)(第二五五四      号)   二九 同(唐沢俊二郎紹介)(第二五五五      号)   三〇 同(小坂善太郎紹介)(第二五五六      号)   三一 同(清水勇紹介)(第二五五七号)   三二 同(中島衛紹介)(第二五五八号)   三三 同(中村茂紹介)(第二五五九号)   三四 同(羽田孜紹介)(第二五六〇号)   三五 同(原茂紹介)(第二五六一号)   三六 同(向山一人紹介)(第二五六二      号)   三七 造林資金に係る補助及び融資制度の改      善に関する請願井出一太郎紹介)      (第二五六三号)   三八 同(小川平二紹介)(第二五六四      号)   三九 同(唐沢俊二郎紹介)(第二五六五      号)   四〇 同(小坂善太郎紹介)(第二五六六      号)   四一 同(清水勇紹介)(第二五六七号)   四二 同(中島衛紹介)(第二五六八号)   四三 同(中村茂紹介)(第二五六九号)   四四 同(羽田孜紹介)(第二五七〇号)   四五 同(原茂紹介)(第二五七一号)   四六 同(向山一人紹介)(第二五七二      号)   四七 農業基本政策確立等に関する請願(      井出一太郎紹介)(第二五七三号)   四八 同(小川平二紹介)(第二五七四      号)   四九 同(唐沢俊二郎紹介)(第二五七五      号)   五〇 同(小坂善太郎紹介)(第二五七六      号)   五一 同(清水勇紹介)(第二五七七号)   五二 同(中島衛紹介)(第二五七八号)   五三 同(中村茂紹介)(第二五七九号)   五四 同(羽田孜紹介)(第二五八〇号)   五五 同(原茂紹介)(第二五八一号)   五六 同(向山一人紹介)(第二五八二      号)   五七 岩手県田山、新町両営林署の統廃合問      題に関する請願椎名悦三郎紹介)      (第二七八一号)   五八 広域農業開発事業実施に伴う地方財      政負担の軽減に関する請願椎名悦三      郎君紹介)(第二八〇〇号)   五九 沿岸漁業改善資金制度の創設に関する      請願椎名悦三郎紹介)(第二八〇      六号)   六〇 水田利用再編対策に係る果樹等永年性      作物奨励補助金交付期間延長に関す      る請願椎名悦三郎紹介)(第二八      〇七号)   六一 昭和五十三年産予約限度超過米に関す      る請願増田甲子七君紹介)(第三一      六八号)   六二 養鶏経営の安定に関する請願増田甲      子七君紹介)(第三一六九号)   六三 造林資金に係る補助及び融資制度の改      善に関する請願増田甲子七君紹介)      (第三一七〇号)   六四 農業基本政策確立等に関する請願(      増田甲子七君紹介)(第三一七一号)      ————◇—————
  2. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  3. 片岡清一

    片岡委員 私は、最近の日本農業の現状から見まして非常にむずかしい段階にあるということから、今後どういうふうにむずかしい問題を御解決になるか、その御方針大臣から二、三承りたいということで御質問申し上げたいと存じます。  私は、いま日本農業が際会しておる二つ難関というものがあると思います。一つは、国内的な難関でございますが、高度経済成長時代においては、農業というものは、まあこれは自然を相手とし、しかも非常に狭い土地を利用して非常に不利な条件において営まれる弱い産業であるという立場から、非常に高度に成長いたしました他産業から見れば非常に同情すべき産業であるということで、農業に対する相当理解国民の間にあったと思います。したがいまして、相当いろいろ手厚い保護政策をとりましても、国民は大体それを理解しておった、これを受け入れておったという事情があったと思います。ところが、石油ショック以来日本経済がいわゆる安定成長時代に入りました、こういうことから、大変事情が変わりまして、いわゆる二次産業、三次産業の間においても大きな地殻変動が起こってまいりまして、そのあおりを食いまして倒産失業という問題が大きく起こってきたわけでございます。そういう段階にいま入りましたので、われわれが各方面の会合、ことに中小企業なんかの会合に出ますと、こういう倒産失業という憂き目に遭っておる、われわれがひどい目に遭っておるのに、ひとり農業だけは食管法初めいろいろの政策において保護をされておる、しかし自分たちはさっぱり、もちろん融資問題等についていろいろ配慮は政府はしてくれておるけれども、結局その融資とても後から金を返さなければならぬという点において余りありがたくない、それから見ると農業は非常に保護されておる、なぜこういう時代農業だけが保護されなければならぬのかという質問をよく受けて、ちょっと当惑をするのでございます。これは前の完全雇用時代高度成長時代には聞かれなかったことでございますが、いまそういう疑問が国民の間にかなり起こっておるという点で、わが国農業がいわゆる内部的に大きな圧力をこうむっておるというふうに私は考えておるわけでございます。  もう一つは、国外からの難題でございます。これは工業先進国が、安い原料を仕入れて自由に手に入れて、そして高度の成長を図っておった時代においては、自由貿易主義というものが非常に世界じゅう受け入れられておる。こういう時代においては、どの国においても農業というものは、先ほど申し上げましたように、自然を相手の非常に弱い産業であるということから、各国において農業に対して保護政策を多少にかかわらずやっておる、そういう点から、わが国が行っておるいろいろな政策についてある程度理解してくれた、こう思うのでございますが、これまた石油ショック以来世界経済に大きな潮流の変化が起こりまして、対外貿易の間においても大きな地殻変動が起こった、こういうことでございまして、その中でも有利な経済運営をやっておる日本、しからざる国との間に非常に落差が起こって、その落差の結果いろいろの摩擦が国際経済の上で生じておるという事態でございます。こういう大きな世界経済変化日本農業に大きな一つ圧力になってきておる。ことに日本との関係の深いアメリカ、その他EC、あるいはニュージーランド、オーストラリアといったような、ある程度農業産品について競争しておるといったような国々から、日本農業に対して厳しい圧力が加わっておることは大臣御承知のとおりでございます。  私は、こういうむずかしい事態に遭遇しておるということと、この内外二つ圧力に加わるにさらに最近かてて加えて、ことにことし、残念ながらという言葉を使うことは本当に残念なんですが、非常に好天に恵まれて豊作になった。そうしてまた過剰米ができてくるという状態が生まれておるわけでございます。農林当局大臣が苦労をされて水田再編対策に一生懸命にがんばられ、農民皆さん方もこれに心から協力をされて、最初の予期以上の成果が上がって、いわゆる百七十万トンの生産調整目標というものが非常にうまく進んでおった。ところが、今度の豊作でどうも調整目標としておる百七十万トン以上の豊作が見込まれるということでうれしい悲鳴が出てきておるわけでございます。  私はこの段階考えますと、先ほど言いました内外二つの大きな難問にさらにことしはこれが加わって、よけいむずかしい農業事情になってきた、こういうふうに思います。こういう困難なときにこそ、勇断をもってやられる中川農林大臣の本当の存在の値打ちが出てくると私は思います。しかしながら、これは大変むずかしい段階でございます。農民人たちは、場合によったら食管制度が危なくなるのじゃないか、あるいはまた、ことしみんなで協力した三年続きの生産調整の問題が、来年はさらにまた負担が大きく加わるのじゃないかというふうに心配をいたしております。  まず最初に、大臣がこういうやっかいな事態に処して、この食管問題、あるいは来年の生産調整も、三年間ちゃんと約束したのだからそのとおりだというふうに、われわれはぜひやっていただきたいと思いますが、そのことをはっきりと言明していただけると大変ありがたい、こういうふうに思います。
  4. 中川一郎

    中川国務大臣 片岡委員指摘のとおり、今日の日本経済も大変ですが、その中における農業というものも大変な事態を迎えております。また、農業に対するいろいろな批判も出てきておることも事実であり、さらに外圧がそれに加わって厳しいということでございます。その中で、また追いかけるように過剰米の問題が深刻となり、特にことしは大豊作でこの過剰米に拍車をかける。農村をめぐる環境は非常に厳しくありますが、基本的にはこの厳しさを、第一番目には農業に対して国民から理解をしてもらう、したがって、農業基本法等も見直せるものなら見直して、農業の位置づけを明確化してはどうかとも考えております。  外圧に対しては、農村影響を与えない、あるいは農業者経済影響を与えない調整をしたいと思ってがんばっております。  また、お米についてお尋ねございましたが、先産調整、十カ年計画稲作転換対策を講じておりますが、三年間は数量その他については変えないという基本方針でございますので、ことし豊作だからといって来年また減反面積をふやす、こういう措置はとらずに、三年間は決めたことを守っていく、過剰米過剰米として処理をする、こういう基本方針で対処したい。農家の皆さん方が不安がっているようでございますが、この点はみじんの心配もないように御理解いただきたいものだ、こう思っておる次第でございます。
  5. 片岡清一

    片岡委員 これは当然のことと思いますが、食管制度の堅持もぜひこの際御言明をいただきたいと思います。
  6. 中川一郎

    中川国務大臣 食管制度も、いろいろ批判はありますけれども、主食でありますお米を安定的に供給するという仕組みは、農村保護するだけでなくして、国家にとっても大事なことだ、基本的にはこう思っております。そのためには、必要な米が必要量生産される、こういうことが基本的に必要でございますから、食管制度を守らなければならないし、いま言ったような生産調整も、国と地方公共団体そして農業者一体となって食管を守るためにも実効を上げてまいらなければいかぬ、こう思っておるわけでございます。
  7. 片岡清一

    片岡委員 大変力強いお約束をいただいてありがたいのでございます。  次に、私がいま申し上げましたようなことから、非常に厳しい日本農業事情に対処していくためにはどうしていくべきかというような問題について若干御見解を承りたい、こう思うのでございますが、私は、減速経済に入りました今日において、農業国民食糧確保のためにぜひ必要なものだ、こういう立場から、あくまで農業基本を守ってもらわなければならぬと思います。そのためには、農業というものは国家安全保障につながるものだという立場から、農業基本をしっかり守ってもらうことが大事だと思うのでございます。戦後の平和アレルギー時代においては、どうかすると、世界じゅうでそれぞれ分業して食糧をやればいいのだということで、一国内における食糧確保というようなことは考えなくていいのだというような認識があったのでございますが、今日資源ナショナリズムというものが非常に盛んになってまいりました、意識が非常に強くなってまいりました。こういう段階において、日本のように資源が貧弱な国、資源小国、しかも四方を海に囲まれておるという、外国から物を輸入するということに対して非常にハンディがある国においては、何といっても国家安全保障立場から農業はきちんとしっかりしたものを守り、そして国民食糧確保という意味からぜひ必要なものである、こういうことを強調していかなければならぬと思います。いわゆる国家安全保障立場からの食糧問題、こういうことを考えたときには、その食糧を守るために、食糧自給体制を守るために国がある程度の予算を支出するということは、ちょうど安全保障のための大きな意味の支出である、こういうふうに思いますので、これはぜひ守っていかなければならぬ。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕 そのためには何としてもわが国国民食糧を確保する、安定供給を確保するためにはこれこれのものが大事なんだ、だからこれを国内でどうしてもつくっていかなければならぬ。そのためにはできれば地域分担制——一つ目標をそれぞれ農産品目に従った地域分担制というようなものもかつて考えて農林省でもやったことがございますが、必ずしも徹底しておりません。そういうものを考えてもらって、そしてその範囲においては、相当予算を食っても安全保障の費用と同じに扱って考えていく、そういう確たる一つ目標国民に示していただきたい。そして、できればその目標に従った地域分担制というものもある程度お示しいただきたい。もちろん、日本の国は共産主義国社会主義国ではございませんから計画経済というものはできないわけでございますが、大筋において国民の了承を得ていく、そのためには農業というものは、その範囲においては幾ら金がかかってもしっかり守っていくのだという態勢を示していただきたい、こういうふうに思うわけでございまして、それらの問題について農林大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。そういう立場から、外国貿易との間においても農産品二十二品目については最後まで自由化はやらないのだという強い意思でいま農林大臣も折衝に当たっておられるわけでございますが、このぎりぎりの一線を国内的にも国際的にも守っていただくことが大事だと思うのですが、これについての農林大臣のお考えを承りたいと思います。
  8. 中川一郎

    中川国務大臣 国民あるいは国家安全保障食糧が必要であるということは、石油ショック以来国民の間に浸透してきていると思います。あるいはアメリカ大豆輸出規制によって起きた混乱等からいたしましても、食糧というものは自給率を高めておかなければならない大事な問題だと思います。そういう考え方と、その上に、農業というものは地域人間あるいは社会構成上、社会形成上健全な発達というものが必要である、あるいはこのことが国土あるいは自然の環境を守る上にぜひとも必要だという意味国民に知ってもらう必要があるだろう、こう思うわけで、そういう意味で、農業を守ってまいらなければなりませんが、ただ国家安全保障だ、あるいは地域社会人間形成の上に大事だとあぐらをかいておることも許されないのであって、やはりそれなりの対応、すなわち安いそしておいしいものを国民に供給するという使命も忘れてはならない。こういう両面を考えつつ農政を推進していく必要があり、農業者も取り組んでいただく必要があるだろうと思います。  この中で、外国からの輸入について、最近自由化問題が出ておりますが、二十二品日持っておるわけです。それに対して、世界からいろいろと御意見もありますが、われわれとしては、どうしてもこの二十二品目は守り抜かなければならないものである、こういう基本的態度外国とも話し合いをいたしております。この点は、いろいろ注文はありましても、自由化には応ぜられないという態度でがんばって農村を守っていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  9. 片岡清一

    片岡委員 私は、いま特に、国民食糧安定供給のために、国家安全保障立場から、その限度においてはどこまでも農業を守らなければならぬという強い意味とともに、これについての国民の了解を得るために、このものはどうしても自給体制が必要なんだ、そのためにこれはできるだけこういう地域分担制でつくらせていくんだというような何か計画をお示しされることが、よけい国民の支持を得るのではないかというふうに思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  10. 中川一郎

    中川国務大臣 そういうことを踏まえまして、六十年の生産と、需要の見通しというものを立てまして、作物品目別努力目標を掲げているわけで、さらに加えて、御指摘のように地域分担といいますか、地域生産指標というものもつくりまして政策を行っております。ただ、計画経済ではございませんから、こういうものは世界事情あるいは国内事情等から実態と合わぬということが出てまいりまして、国会等でもしばしば御批判をいただいて、間違った計画を立てたのではないか、でたらめだったという御指摘もいただくように、五年、十年の先々を見通すということはなかなか容易ではございません。それをまたさらにブロック別におろしていくということになれば、いよいよまた問題も出てくるというようなことはありますが、長期的には将来の方向というものをきちっとしておく必要がある。それをさらに県別につくってはどうかという御意見でございますが、県別に国がつくるというよりは、そういった方向に従ってブロック別あるいは日本全体がございますから、それに見合ったものを県あるいは地方から積み上がってくる方が望ましいのではないか、上から押しつけるよりは、むしろ下からこう行きたいというものをつくって、そして上と下と両々にらみ合わせながら政策を遂行する、こういう方向が望ましいものと思っておるわけであります。
  11. 片岡清一

    片岡委員 いまお話しのように、計画経済ではございませんので、これをやることは大変むずかしいとは思いますが、生産調整の問題とも絡めて、農林大臣のおひざ元の選挙区のことを言うと非常に失礼なんですが、北海道あたりは余りうまい米はできないのだから、米はうまい米のできるところにお任せいただいて、そして別なものをできるだけつくるようにひとつ行政指導をやっていただくというようなことなどもあわせて考えていただきたいと思いますが、これは御返事はなかなかむずかしいと思いますが、将来の問題として、ひとつある程度強い行政指導をお願いできれば大変ありがたいと思います。  それで、私は、外圧との問題に関連いたしまして、日米農産品交渉農林大臣が何回かのストラウス通商代表との交渉で非常に御苦労を願っておるわけですが、国民は、対米貿易の黒字も本当の犯人は工業製品じゃないか、それをいつも農産品にしわ寄せをされる、こう言いながらも、アメリカはなかなかしつこくこういうことをやってくる、そういうことは何かほかに理由があるように思いますが、いままで交渉をせられた段階において、なぜ日本の零細な農業にある程度の理解を示してくれないのかという点でどうも農民は納得がいかないわけです。何か交渉の段階において、農産品にしわ寄せされないようないい方法がないものか、その感触をひとつ伺わせていただきたいと思います。
  12. 中川一郎

    中川国務大臣 この問題は、日本考えるのとアメリカへ行って考えるのとはちょっと違うわけなんです。日本考えますと、何で工業産品のしわ寄せを農業に持ってくるのか、しかも弱い農業にしわ寄せをするとはけしからぬという声がほうふつとしてあるわけですが、アメリカに参りますと単純でございます。日本の安い自動車を制限なしに買ってあげているじゃないですか、そうすればアメリカの安いオレンジ、牛肉も買ってもらうのが当然であって、もしその安い牛肉、オレンジが買えないというなら日本の自動車を買わないようにしますよ、それでよろしゅうございますか、こういうことになってくるわけです。もちろんアメリカ側も農産品で黒字がそんなに減るとは思っておりません。そのこともよく承知して、姿勢の問題だ、政治問題だ、取り組む姿勢が悪い、自分の方は売り込むが買う方は買わぬというのはどうも納得できないと——これはアメリカ農業が特に弱い産業ではない。大企業の大資本農業ですから、日本の零細農業の実態を言ってみても、それはそっちの問題であってという気持ちがございます。もちろんアメリカ日本農業をつぶしてしまってもいいとは言っておらないので、オレンジのこの程度、牛肉のこの程度、まあいますぐ自由化しろと言っても無理だろうが、長期的にそういうことに取り組む努力というものもあっていいのじゃないか、こういう言い方でございます。この辺がなかなか折り合わないところであり、むずかしいところでございます。  もう一つむずかしくしておりますのは、実は日本の消費者も外国の安いものを食べたいという声が非常に強い。これがアメリカ相当伝わっておりまして、アメリカへ行っても、中川さんそう言うけれども、日本の商社やその他の人に聞くと、あるいは一般市民に聞いてみると、牛肉は高い、安いものを食いたいというのが国民の声じゃないですか、それを何であなたが日本のためになることを理解できないのかという声もかなり強く反映してくるわけでございまして、交渉に臨むに当たりまして一番むずかしい点は、いま言った政治の姿勢の問題であるということと、もう一つは、日本にもそういう声があるではないかということがなかなか説得しにくい、むずかしい問題であると率直に申し上げる次第でございます。
  13. 片岡清一

    片岡委員 大変御苦労な点でございますが、今後とも、ぜひ日本農業立場を守っていただいて、ひとつしっかりがんばっていただきたいと存じます。  次に、私は、最初申し上げました日本農業の逢着しておるむずかしい問題で、国内自給体制というものは、安全保障立場を基準として国民のコンセンサスを得ていくということでございますが、その他の農産品については、これはやはり世界自由貿易主義というものを何とか確保していかないと、日本は貿易立国でございますから、貿易が自由貿易から保護主義に変わるということになれば、これはみずから首を絞めることになるわけでございまして、どうしてもやはり自由主義貿易というものを守っていかなければならないと思います。そのためには、日本農産品といえども、日本食糧のためにぜひ必要なもの以外は、またその数量以外は、自由貿易にたえ得る、自由競争にたえ得るような農業にしていかなければならぬ、私はこういうふうに思います。日本の米は外国のお米に比べて二倍ないし四倍、五倍高いと言われておりますが、学者あるいは実務家、評論家等のお話をいろいろ聞いてみましても、日本農業でも二十ヘクタールくらいの単位で大きな規模の農業をやっていけば、ある程度自由貿易に、自由競争にたえ得るような農業がやれるんだ、米でさえもそれが可能であるというようなことを言う人がおるわけでございまして、私は、やり方によってはそういうことをだんだん考えていかなければ遠い日本農業の将来から言うて大きな問題を持つことになると思います。  そういう意味で、先ほどちょっと農林大臣がお触れになりました農業基本法の問題でございますが、この農業基本法は昭和三十六、七年にできた法律でございまして、ちょうど日本高度成長へ向かう段階においてできた法律でございます。高度成長に従って一次産業が非常に衰えて、そして二次、三次産業へとたくさんの労働力が吸収されていく、そして農業が非常に貧弱な姿になりかかって、それと同時に、農村人たちと二次、三次産業人たちとの間に大きな収入の開きができてきたということ、この格差を埋めるためにということを大きな目的としてこの農業基本法ができておると私は思います。そういう意味で、農業基本法では、「近時、経済の著しい発展に伴なって農業と他産業との間において生産性及び従事者の生活水準の格差が拡大しつつある。」こういうことがまず前文で書かれておりまして、それを直すためにこの基本法ができた、こういうふうに了解するわけでございます。  ところが、いまや、先ほど言いましたように高度成長から低成長に移って、困っておるのは農業だけでなしに中小企業人たちも大変困っておるという事情が出てきました以上、先ほど農林大臣もおっしゃったように、農業は弱い産業だからというてその地位に安住しておることは許されぬ。どうしても、いろいろ農地の集積を図る、あるいは機械化を合理的に行うというようなことで、ぜひ生産コストを切り下げて、世界農産品と競争できるようなものにしていかなければならぬと思います。  そういうことになると、農業基本法が少し時代にそぐわない事態になってきたように思われるのでございますが、いま申し上げました新しい農業立場から、原則としては世界農業に太刀打ちできるような農業にしていくというようなことを目指して修正を加えるということについて、農林水産大臣は何かお考えになっておりますか。その辺の感触、お考えについて御所見を承りたいと思います。
  14. 中川一郎

    中川国務大臣 農業基本法ができましたのは、昭和三十六年でしたか、約二十年前になっております。読み直しましても、今日農政を進めていく上で特に支障があるということはないとは思います。しかし、二十年たてば事情も変わってきておりますし、特に、御指摘のように経営規模拡大、それによって低コストの農産物をつくるということが一番大きな課題だろうと思うのです。その場合、農地を開拓していく、農地の開発ということも一つの大きな政策でなければなりません。もう一つは、農地の移動を容易にする。その場合、農地そのものを移動するのか、利用権だけを移動する、耕作権の移動を容易にするのか、利用の集積という言葉があるようですが、そういったことがスムーズに行われるようにして、これからの農業を足腰強いものにしていく必要があるだろうと思う。そういうことをやっていく上に、農業基本法がはっきり言って対応できるかどうか、こういったようなこと等について、今日の農政に農業基本法がいかに対処すべきであるか。  もう一つは、先ほど言った農業の位置づけというものが国家安全保障上から必要である、あるいはまた人間社会形成上健全なものにする必要性からも農業の位置づけというものがあるのじゃないか、こういうようなことで、農業全般を考え農業基本法を見直してみる。これは初めから改正するということではなくして、改正の必要があるかどうかということも含めてひとつ検討してみたい、こう思っておるわけでございます。  それからもう一つ、先ほどの御指摘の中にちょっと誤解がありますと困りますから……。北海道の米は余りよくないということでございますが、そういうことも踏まえまして今度十年を目標にした生産調整では、北海道は実に全国平均の三倍以上の三五%近くやっておるわけです。富城とか新潟のようなところは大事だというので五・九%、富山県でもたしか八・七%、したがって北海道は富山県の五倍近くあるいは四倍というような地域指標を含めた生産調整をお願いして、北海道ではずいぶんひどいじゃないかと怒られながらもそういう方向でやっておることもこの際補足して申し上げておく次第でございます。
  15. 片岡清一

    片岡委員 もう時間がそろそろ迫ってまいりますので、今度ちょっと具体的な問題について御質問したいと思います。  それは農協の問題ですが、このごろいろいろな会合に行きますと、農協が物を売る点で少し行き過ぎがある、それで中小企業人たちが非常に困っておると言われる。ことに青果物組合の会合なんかに呼び出されますといろいろ文句を言われて、もう少し農協が自粛してほしいという声が大変強いのでございます。私がいろいろ聞いた例によりますと、たとえば組合員以外の人たちに対しても広く売り込みの広告を出して客集めをしておる。あるいはまた、一個十七円の卵を十円に売って、これを目玉商品にして一般のスーパーがときどきやっているような商法をやっておる。これはまさに不当廉売である。それから生産者から野菜を買って売るのならまだ話はわかるのですが、付近の大きな町の市場へ行って安い野菜を買ってきて、一生懸命にそれを売りつけておる、組合員のみならず員外の人にも売りつけておる、こういうようなことがございます。言うまでもなく農業協同組合法では、これは営利を目的とするものではないのだ、農協法弟八条では、「組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない。」ということをはっきり書いておるわけでございます。そういうことから、第九条で独占禁止法の適用を排除しておるわけです。ですから、組合員のために奉仕するということが目的だから独占禁止法の適用については差し控える、こういうふうになっておるわけでございます。ところがその独占禁止法の中でも、そういう特典があっても営利に走るようなことがあれば適用することがあるんだということにもなっております。  そういうことを考えますと、農協というのは相当自粛してもらいたい、そして町の商売の人たちと仲よくしていってもらう。きのう衆議院を通過いたしました大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律及びいわゆる商調法、こういうものの改正のときにも、われわれは農協をぜひ除外してほしいんだということで大いにがんばったわけです。そしてそれは当然除かれたわけですけれども、余りスーパーの進出が多過ぎたり、あるいは一つの町に二つとか三つとかいうようなものをつくるようなことになりますと、一般の中小企業に非常に大きな影響を及ぼすわけでございますから、そういうものについてはぜひひとつしっかりと行政指導をしていただきたい、こういうことを私は厳重にお願いしておきたいのですが、ちょっとそれについての見解を。
  16. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 ただいま御指摘ございました農協の購買事業における過度な事業活動というものにつきましては、先生が御指摘されましたような問題が指摘されておりましたので、農林水産省といたしましても、経済局長通達をことしの八月に出しまして、いま問題になりましたような店舗の設置のあり方でありますとか、それから地元の商業活動との調整でございますとか、それからさらには広告宣伝が過度に行き渡らないようにというようなこと、ないしは農協法の員外利用の考え方というようなもののあり方について通達を出して、自粛を要請したところでございます。  なお全国農協中央会におきましても、農協指導事業の立場から、同様の趣旨の全中会長の通知を八月にやはり組織内に出しておりまして、その中では、各都道府県ごとに農協の店舗運営基準委員会というようなものを設置いたしまして、いま御指摘がありましたような過度な購買活動にわたらないようにということも自発的にやっておる段階でございますので、ただいまの御指摘を踏まえまして、そういうふうな指摘が行われないような適正な購買事業が行われますよう今後とも指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  17. 片岡清一

    片岡委員 もう時間がなくなりましたので、最後にもう一問だけお聞きしたいと思います。  実は私のところで問題になったことですが、水産加工品をつくっておるところで、非常にお年寄りの七十、八十——八十はないかもしれませんが、六十、七十の年とった方を使っているわけです。これは自分が働くこと自体に非常に楽しみを感じて、家の中に閉じこもっているよりは、ここへ来てみんなと一緒に魚のはらわたを出したり、簡単な仕事をするのが楽しくてしようがないんだ。だから、金なんかどうでもいいからぜひ使ってくれということでみんな使っておる。ところが、それが最低賃金法にひっかかって、基準局から呼び出されて、けしからぬと言うてしかられる、こう言うのでございます。どうせ一人前の人を使うなら、年とった人以外を使った方がいいということで、その人たちを排除をすると、お年寄りたちは、情けない顔をして、頼む、金なんかどうでもいいんだ、こういうことです。私は最低賃金法の趣旨はよくわかるのですが、いまや日本の国は大変年齢構成が変わってきて、もう六十歳以上が一二%以上になったという段階でございます。それで、この老人対策というものが非常に大きな問題であり、老人福祉が、これはひとり金をあげるだけではなしに、働きがい、社会生活に参加する、活動に参加するというところに本当の年寄りの楽しみがあり、生きがいを感ずる、そういうことの必要性をつくづく感じておるわけですが、そういう意味で、生活を維持をしなければならぬために働いておる人と、金なんかどうでもいいんで本当に生きがいを感じながら働かしてもらいたいという人との間では、私は最低賃金制は二重につくってもいいんじゃないか、こういうふうに思います。だんだん定年制も延びるという段階で、賃金というものは、そういうふうに生活を維持する責任のある人とそうでない人と分けて考えていいんじゃないかというふうに思うわけですが、この点について、通り一遍の返事でなしに、真剣にこの問題を老人福祉対策とあわせて考えるという意味で、ひとつ前向きの返事をいただきたいと思います。それで私は終わります。
  18. 花田達郎

    ○花田説明員 お答え申し上げます。  最低賃金の水準も高まってまいりますと、特定の労働者、たとえばいま御指摘の高年齢者でございますけれども、そういう特定の層の雇用機会が狭められるおそれがあるということは御指摘のとおりでございます。現行の最低賃金法におきましても、たとえば体の不自由な方など一定の方につきましては、雇用の機会の場を狭めないという目的のためもございまして、都道府県労働基準局長の個別の許可に係らしめまして適用除外をする例がございます。ただ、この適用除外の基準には高年齢者という基準はないわけでございます。そこで、高年齢者の問題を取り扱う場合につきまして、実務的といいますか、個別的扱いということになりますと、年齢で取り扱うわけにはいきませんので、仕事で見まして、たとえば軽易な業務につきまして別建ての最賃をつくるという例も可能でございますし、それから軽易な労働という形で個別に適用除外を出す例も可能だと思います。ただ、制度的にこれを取り扱いますには、賃金は一つは作業能力、労働能力との見合いというようなこともございますけれども、年をとりますと作業能率が一般的に落ちると言われますけれども、これは非常に個人差がございます。それから、職種による違いもございます。したがいまして、年齢何歳で切るというようなことも非常にむずかしい問題でございます。  それからもう一つ、賃金は生活の糧、先ほど先生御指摘になりましたけれども、生活の糧という面もございますので、そうしますと、一定の年齢の方は老齢年金を受給しておられますので、それとの関係をどう考えるかということがございます。  それからもう一つ、雇用政策という点でいきますと、老人で働きたいという場合に、同じ仕事に若い人が競争でいるという場合にこれをどう調整するか。それから、これも先生御指摘になりましたけれども、生きがい労働というような観点から見る見方もあると思います。こういう問題につきましては、非常に基本的な問題でございまして、これについてはやはりそういう制度面から見た検討が必要だというふうに思っております。  そこで、労働省といたしましても、この問題を実は御検討いただくために学識者、それから使用者の代表、労働者の代表という三者で構成しております中央最低賃金審議会という諮問機関がございまして、この場で検討いただくようにお願いをいたしておりまして、すでに着手しているところでございます。そこで、この審議会の御検討の結果をまちまして対応してまいりたいというふうに考えております。
  19. 片岡清一

    片岡委員 終わります。
  20. 中尾栄一

    ○中尾委員長 松沢俊昭君。
  21. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、まず最初に、防衛庁来ておられますね、防衛庁の方で海上幕僚監部の分析班ですか、そこで「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」というのをおやりになっているということを聞いておりますけれども、食糧輸入全面ストップという場合において国民の摂取カロリーというのはどの程度になるのか、まずお聞きしたいと思います。
  22. 上野隆史

    ○上野政府委員 お答え申し上げます。  まず最初にお断り申し上げておきますが、ただいま先生御指摘の研究でございますが、これは防衛庁海上幕僚監部防衛課の分析班という一分析部門が、部内の参考用にもなろうかということで、通産白書等、公刊資料を用いてOR手法によって勉強を行った結果のものでございまして、防衛庁といたしましてオーソライズしたものではないということを御認識願いたいと存じます。  それで、ただいまの先生の御質問でございますが、この分析の中では、輸入が全面ストップした場合に食糧がどうなるかということにつきましては、熱量が千五百四十五カロリー、それからたん白質が四十五・二グラム、脂肪が三十三グラムというような一つの事例を考えております。
  23. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 石油が輸入できなくなった、そして遠洋漁業ができなくなったという場合はどうなりますか。
  24. 上野隆史

    ○上野政府委員 油が五〇%カット、それから食糧が五〇%カット、そして遠洋漁業が一〇〇%カットの場合におきましては、熱量が千百九十九カロリー、たん白質が三十三・五グラム、脂肪が二十五・二グラムという試算をしております。
  25. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 農林省の方でやはりこれの調査というものをおやりになったという話を聞いておりますが、どうでしょうか。
  26. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 農林省という立場ではございませんが、官房企画室の中で、石油ショックがありましたときに、もしも石油ショック等で輸入ができなくなるという場合に、国内だけの土地をフルに稼働して農業生産を仮に試筆をしてみるとどんなことになるかというふうな試算をやったことがございまして、そのときはたしか昭和二十七年ごろの栄養水準になるだろうということを試算したと聞いております。
  27. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 農林省の試算されたその内容の問題でありますが、私の手元にあるところの資料からいたしますと、カロリーが二千百七カロリー、これを確保するためには四十七年をベースに国土資源を可能な限り活用することとし、一つとしては、水田の不作付地を解消して水稲のフル生産を行う。このフル生産というのは千四百五十万トン、そして二番目としては、水田裏作可能地に麦類となたねを、三番目としては、全国のゴルフ場千三百六十七カ所の面積十四万六千ヘクタールのうちの三分の二を耕地化してカンショを作付するほか、四番目としては、開拓可能地百五十四万ヘクタールを耕地及び草地に開発し、耕地については大豆、カンショを裏作にして麦類を植え付け、草地については永年牧草、燕麦を作付けることとする、こういうことをやらなければ二千百七カロリーというのを摂取することができない、こういう資料になっております。間違いございませんか。
  28. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 ただいま先生から御指摘がありました資料は、たしかそういうふうな企画室の試算をもとにいたしまして、ある新聞が記事として発表したもの、これの内容であろうというふうに思っております。農林省といたしまして具体的にどういう形でやるかということまで深く検討したわけではございませんで、一応そういうふうに最大限の国内資源を利用するということを申したところ、それをもとにして新聞が書いたというふうに聞いております。
  29. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いや、新聞が書いたのは間違いではないのじゃないですか。私は、要するに官房の方で研究されたものは大変貴重な資料だと思っております。だけれども、考えられることは、フル運転をやって水稲を千四百五十万トン生産するということは、これはもう大変なことだと思いますし、またゴルフ場を三分の二も耕地化するということも、これはちょっと私は、人の土地のゴルフ場をつぶすわけですから、大変なことだと思います。こういうふうなことをやることになりますと、国家総動員法でもつくってやる以外に方法がない、こう思うわけなんであります。  それから、この資料というのは農林省そのものとしてやったものではないのだというお話も出ておりますが、防衛庁の方ではちゃんと分析をしておられるわけです。いずれにいたしましても大変な事態に入るということだけは間違いないと思います。  この点、最近有事立法という問題が取りざたされております。中川農林大臣はこれに賛意を表しておられるかのような新聞記事も載っておるわけなんでありまするが、先ほど大臣の方では、農業基本法の見直しをやらなければならない、あるいはまた、たしか十七日の参議院の委員会で、農産物の長期見通しを全面的に改定をして、そしてさらに米作を抑制しなければならないというような発言もあったように聞いているわけなんであります。この大臣の発言というのは、国防上の見地だとかいろいろなことを言っておられますけれども、いまの防衛庁の分析、農林省の研究、こういう点からすると、長期見通しの改定というのは、むしろ農業生産の縮小につながるものであるのじゃないか。ということになりますと、有事立法などというもの以上にこの問題というのは大きな問題だと私は思います。中川農林大臣は一朝有事の際どうなるかということを考えないところの農政をおやりになっているのじゃないかというふうに私は受け取るわけでありますけれども、大臣はこれらについて一体どういう考え方を持っておられるか、お伺いしたいと思うのです。
  30. 中川一郎

    中川国務大臣 有事問題がこの国会でもずいぶん問題になりましたが、有事の場合にどうあるべきか、有事体制というものを考えなければならぬということは、私は当然のことだと思うのであります。有事があるから自衛隊があるわけで、自隊隊があって有事のときにどうしていいかわからぬという議論をすることは、私には不適当というか、考えられない。特に、政治家が国民の平和、安全ということを考えれば、平時はもとより、有事に対しても責任を持っていかなければいかぬわけですから、十分考えるべきだ、こういうことを主張しているわけでございます。  それから、食糧問題をどうするかというのは、これは有事の場合も考えておかなければなりませんが、平時の場合でも、アメリカその他の事情によって輸入できないということになれば、これは大変なことですから、国家安全保障上、有事にも平時にも対処できるように、国内資源はできるだけ活用する、そして自給度を上げていく、しかもバランスのとれたものにしていかなければならぬ。大豆、飼料作物、麦類といったような少ないもの、こういうものはできる限り増産をしていく、こういうことで取り組んでおりまして、有事が一年間ある場合にどうするかという農政を積極的にやっておかなければならぬ、こんなことは考えておりませんが、有事にも対処できるようなことも一方に頭に置きながら、農政というものはやっていかなければならぬ、こういうふうに考えます。
  31. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣、言葉はいろいろとありますけれども、防衛庁の調査からしますと、遠洋漁業までも含めますと千百九十九カロリーということなんです。昭和二十三年から四年の摂取カロリーは千八百五十五から千九百二十六となっているのです。これは大変な食糧危機であったわけですね。そして現在では二千五百以上をとっている。そうすると、現在の国民のとっているところの摂取カロリー量の半分以下になるのですよ。  それで、いまあなたの方では、米は余っているのだから減らさなければならない、長期見通しも変えていかなければならないということでありますけれども、たとえば長期見通しの中に、ビール麦なんかは六十年になると五〇%を生産できるというふうに書かれているのじゃないですか。しかし、ことしビール麦をつくって転作をやったら、大変な状態になったじゃないですか。ビール会社の方は買ってくれないわけなんですね。そして、来年の問題を一体どうするのかというのがまだ詰まっていないというところの状態なんじゃないですか。だから、米をつぶして麦をつくろうとしても、そういうネックが依然として存在している、こういうことが言えるのじゃないかと思うのです。あるいはまた、豆の問題にいたしましても、新潟県の方で豆の転作をやったわけです。種が何にもないのでしょう、わせ、なかて、おくての三種混合の種がばらまかれた。できたけれども、豆腐屋さんでさえもこれを買ってくれない、こういう状態になっておるのですから、もう転作はごめんだ、こういうことが現実に起きているわけであります。そういう点からいたしますと、米は余るから別なものにかえる、こういうようなことを言ってもなかなかかえるわけにはいかないという問題がある。  酒の消費拡大ということも、私は春の国会で提案したわけです。でありますけれども、酒は依然として三倍増の酒がはんらんをしている。しかも、そのアルコールというのは、ほとんどが外国から輸入された原料によってつくられている、こういう状態であるわけであります。酒にアルコールを添加させる、これは昭和十七年に法律の改正をやりまして、そして酒のつくり方を変えたわけであります。そのことは大変適切であったと思います。有事でありますから、米を酒につぶすということはやめてもらいたいという便宜上の措置であったと思います。しかし、備蓄をやって一朝有事の際心配ないところの状態をつくり出すということになると、やはり米と酒とのつながりということは出てくるのではないか。大蔵省は、米価審議会の前に米価を抑制するためのパンフレットを出しました。それによりますと、生産調整が始まってから五十三年までの奨励金は一兆二千五百六十九億円、これだけ出しているのだ、こう言っているわけです。その金をもらって喜んで転作をやっているという人は余りいないのです。仮に百万トンの米をただで酒屋にくれて酒をつくらせたとしても、三千億円程度しかかからぬと私は思うわけなんであります。だから、生産調整をやっていくことが、つまり日本農業生産のバランスをとることができるのだというような短絡的なことは間違いなのではないか。だから、そういう点からいって、いろいろお考えがあると思いますけれども、これは三年間、十カ年間生産調整をやっていこう、こういう意気込みでやっておられますけれども、この政策というのは誤っているのじゃないか、もっと別な方法を考えるべきなんじゃないか、こんなぐあいに考えますが、どうでしょうか。
  32. 中川一郎

    中川国務大臣 米の生産調整という問題は、これは何か政府の責任ばかりのようによくおっしゃるのですが、そうじゃないのです。これは、農業者地方団体も国も一体となってやらなければいかぬことなんです。ですから、たとえばビール麦の問題も、これは消費のないビール麦をつくってもらっても困る。契約栽培でありますから、契約の範囲内でやってもらいたいということは当然のことですし、大豆についても何か問題があることは確かでございましょう。ですから、別に大豆をつくらなければいかぬと規制したわけではないので、それ以外の何をつくっても結構です。何をつくっても結構だが、どうしてもないというなら管理転作でも結構で、農協に委託してくださいという道、いろいろなことをつくってあるのであって、だから転作はいかぬのだということに結びつけることにはならぬのだろうと思う。  それから、アルコールの問題も、これは酒を飲む人のことも考えなければいけない。やはりアルコールを添加した方がおいしいという人もあれば、添加しない方がいいという人もいる。あるいは農業も、国家経済考えないで、金は幾らでも出せばいいのだということではなくて、やはり国家経済のことも考えて、酒については税をいただくという国家経済上からできた仕組みがあるので、それを破って、何でもいいから高くてもいいから米をつくればいい、国家とか社会とかあるいは需要というものを無視して何でもかんでもつくらなければならぬのだ。そしてまた戦争中のことまで御心配いただく社会党の先生方だということは非常にありがたい進歩ではございますが、有事の際のことは考えなければいけませんが、これは生命保険みたいなもので、一朝有事のときに備えなければいかぬが、生命保険が高過ぎたのではこれは生命保険といえども入れないので、ある程度の有事に対処するために国家経済国民が犠牲を払うということは必要なことですが、そこには限界がある。その辺、有事も考え、消費者も考え生産者も考え国家財政も考え、いろいろと考えてやるところに政治があるのであって、ただ一方交通で、財政を無視したような議論をされても私としては受けとめるわけにまいらぬ、こういうことでございます。
  33. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私の言っているのは、それは有事立法までも検討しなければならぬというふうにお考えになっているというのに、攻撃を受けた場合にどうするんだという話から始まったのでしょう。ところが、日本列島の近海にはアメリカの船もいればあるいはソ連の船もいる。仮に日本が戦争に巻き込まれなかったとしても、極東に戦争が起きた場合においては海上輸送がストップするぐらいのことは考えておかなければならぬと思うのですよ。ですから、そういう場合、いまの摂取カロリーの二分の一以下になるというところのそういう分析の結果まで出ているとするならば、要するにそれに対応するところの、備えあるところの農業政策というものを政府の手で出すのが当然なんじゃないかと私は思うのです。ところが、長期見通しの全面改定なんというようなことを言っておられますけれども、あるいはまた、さっきは農業基本法の見直し、農地の流動化を促進させる、そして規模の拡大をやろう、こういうねらいだと私は思うわけであります。そうすれば、いまの農業人口というのはさらに減るということになるのじゃないですか。人手がない、機械だけに頼って大型化する、そして農民の生活というのは全く無視される、こういうような農業政策農民は望んでおらぬと私は思うわけなんです。そういう点もやはり簡単にはできない話なんじゃないか。だとするならば、生産調整だけに頭を悩ましているよりは、やはり米をつくりたい人はつくって、つくったところの米の処理をどうしていくか、あるいはまた米として備蓄ができなかったならば、米はアルコールに変えて備蓄するとかいろいろな方法というのは考えられてしかるべきなんじゃないかと私は思うのですよ。それがいまの農林省にはないんじゃないか。その点、大臣、一体どうお考えになっているかということを聞いているわけなんです。
  34. 中川一郎

    中川国務大臣 私がさっき、社会党さんも有事立法を考えてくれと言ったとしたら間違いであって、有事体制について御心配いただくということはありがたいことだという意味であります。  そこで、もし有事になった場合一体食糧がどうなるかと言ったら、私は防衛庁の計算や農林省の計算では済まぬと思うのです。なぜかというと、油がなくなりますと、いまトラクター農業ですから作業が一切できない。土地が幾らあっても、ゴルフ場を開発するといったって開発できない。極端なことを言うと、くわもなければかまもない時代になってしまって、もちろん牛、馬もいないということになればどうやって耕作するのか。そこで、エネルギー問題というのは食糧問題に優先してやらなければ、食糧の確保すらできない、輸送もできないということになります。そこで原子力船などの問題も、そういったことに対処して、農業政策上からも核エネルギーの利用というものを長期的に考えなければならぬというのですが、これも反対だという人がいるくらいの世の中ですから非常にむずかしいな、そういうことも考えておかないと、万般考えなければいかぬというところから、農業というものもあるいは有事体制というものも考えなければいかぬ。その中で米を有事体制のためにうんとつくっておいて、代替としていろいろなことを考えたらどうだ。もう考えるだけ考えているわけです。うどんに入れて怒られ、ラーメンに入れて怒られ、パンに入れて怒られ、学校給食に押し込んで、親が食わないものを子供に持ってくるとは何事だといって怒られしかられながら消費拡大については可能なものについて最大尽くしてやっているのです。  アルコール添加の問題も、十分研究しますが、やはり消費者あるいは財政というものを考えるならば無理なことはできないということで、できないものもありますけれども、政府としては、そういったことに対処して、無理押しだと言われるくらいまで消費拡大、米をつくる農業、しかも米については国際価格の五倍、六倍まで踏ん張って、そして食管制度も守って、消費者から怒られる中で農村を守り、食糧政策を守っているということを御理解いただき、農業者の皆さんもやはりこういった国の姿勢というものを理解していただいて、生産調整絶対だめだなどということでなくて、ともどもに汗を流すという姿勢でやっていただきたいと、心から特に松沢委員にはお願い申し上げる次第でございます。
  35. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 ビール麦なんか最たる例だと思いますけれども、外国の方から入ってきているところのビール麦、国内産と比較すると三・五倍くらいだというのですよ。それが問題になっているんじゃないですか。ですから、外国から輸入しているところの麦類というものを削減する以外に方法がないんじゃないですか。そのことはちっともさわらないで、そしてどんどん入れておって米をじゃまにする、じゃまにして麦をつくれといっても、麦は売れない、こういう状態というものが出ているわけなんでありまして、基本的には自給率をどう高めていくか、外国依存からどう脱皮するかというところの農業政策というものが私は必要だと思うわけなんです。そういう点の努力というものはなかったということは言えるのじゃないですか、どうですか。
  36. 中川一郎

    中川国務大臣 ビール麦だけおっしゃいますけれども、ビール麦はもうすでに自由化したものなんであって、それ以外のものについて、たとえば麦については日本では一万円出して買っているのです。外国から買えば千三百円で生産されるものを、国際価格の七倍も商い生産を認めながら麦を守って、さらにきょうも御審議いただきますが、サトウキビなんかも国際糖価に換算したら恐らく三千円か二千円でしょう。場合によってはゼロでも間に合わないというくらいのものを、国際価格の十倍、十五倍という——計算によってはですよ。それも守っていきたい。大豆についても三倍、四倍のものである。しかも、水田につくればそれに奨励金を差し上げるわけですから、その倍率がまた二倍になっていくというような、国内食糧保護のためには大変な、世界日本ほどやっている国はない、これだけやっている国があったら教えてもらいたいと思われるくらいで、御指摘を受けるまでもなく自給度の向上というものは国家安全保障上重要である。また、農村の占める地位というものが人間社会形成上きわめて重要なものであるというので、経済を度外視した政策をやっておるわけなんで、御指摘をいただきましたからさらに一周やりますが、いままでも御批判をいただくまでもなく、最善を尽くしているという姿勢で今後もやっていくつもりでございます。
  37. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いま私いろいろ申し上げましたが、やはり一朝有事の際、国民の生活に支障がないような食糧の確保というために、これはやはりさらに研究をしてもらいたいという希望を出しておきます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  それから、生産調整の問題をちょっと具体的に質問いたしたいと思いますが、百七十万トンの生産調整は、やはり予想よりも生産が上回った、九十万トンくらい上回るだろうという予想があるようでありますけれども、大分米は上回る。これはやはり考えてみますと、最初から工業製品と違って気候の関係だとか温度の関係だとかいう天然現象に農業というのは大変左右されるわけでありますから、面積を減らすことによって米の数を減らすということはなかなか不可能だと思います。ですから、ことしやったところの生産調整というのは、そういう意味ではまさに面積で米の数量を調整することができないというところの証明をやったと私は思っておるわけなんであります。だから、明年もこの繰り返しをやるとすれば、これまた狂いが出てくるのではないか。だから、それではどういうふうにして調整というものを図るかという問題はもう一度再検討する必要があるじゃないか。特に大臣は、頼む、こう言われるわけでありますけれども、これも春以来ここで議論をやりまして、条件のないところは無理じゃないですかと、農林省の方でも転作可能な、要するに水田面積の調査をやっておられるわけです。だから、町村ごとに見ますと、転作可能な面積を持っておらぬところの町村というのは相当あるわけであります。だから、全国的なトータルからいたしますと一一一%ぐらいの成績だというお話も聞いております。新潟県の場合におきましても一〇九%というところの速成率であります。それは表面上の問題でありまして、中身に入っていきますと決してそんな単純なものではありません。同じ町村でも、片っ方では三五%も消化をする、片っ方では全く消化ができない、こういう状態というのがあるわけであります。消化のできるところは一体どういうところかというと、やはり転作可能な面積のある場所であります。では成績の悪いところはどういうところかと申し上げますと、これは全く湿田地帯、こういうことになるわけであります。ですから、最初から条件が同じで出発して、片っ方は成績を上げない、片っ方は成績を上げたということになれば、正直者にばかを見せるわけにいかぬから限度数量はペナルティーをかけなければならない、こういうことになると思いますけれども、最初から条件の違ったところから出発するわけでありますから、条件の悪いところがやれなかったからといってペナルティーをかけるということは、これこそ正直者にばかを見せるという結果になるのではないか、こういうふうに実は考えるわけなんであります。  したがって、いままでの一年間の経験を踏まえて、こういう点について手直しをやらなければならぬところの事態に入っているのじゃないか、こう考えるわけなんでありますが、その点はどうでしょうか。
  38. 中川一郎

    中川国務大臣 減反の問題を数量で規制した方が実効が上がるんじゃないかという御指摘でございますが、まことにそのとおりでございます。数量でやれというなら、社会党の皆さんも数量というならすぐできるのです。  ことしでも、最終は数量ですから、それ以上の豊作米は買いません、千百七十万トンだけが必要な米で、それ以外のよけいできました八十万トンは要りません、こう言って、政府はそこに何にも手を出さなければこんなありがたいことはないんで、御指摘のとおりやらせていただきます。これで農民が納得するかどうか。  そこで、面積をやってくれた人には手厚いことをしていかなければいかぬ、豊作でできた分も責任を持ってあげましょう、農民に対して温かい方法をやっていこうということで、そのしわ寄せは五百三十万トンが六百万トンをオーバーする。オーバーしてもそれは過剰米処理として政府が責任を持ちましょう、こういうことで、農民考えれば、面積をやってくれた人にはそれだけの政策をやるという、面積でやった方がいいのではないか。数量でやれというならば本当にこんなありがたいことはありませんで、政府の財政負担はこれほど楽なものはない。ただ農民や皆様方が本当に納得してくれるかどうかの問題だけでございます。  次に、無理なところにやれということがいかぬという点のお尋ね、私どもも無理なところにやれとは言っていないのであります。排水の可能な面積というものも県別にずっと調べましてその要素も取り入れる、そして県の割り当てをする。その結果新潟県のような五・八%ですか、北海道のような三五%という差の出てきたのも、まさにそのためなんです。しかも、その県の中でも、可能なところと可能でないところは、県知事さんが無理なところは押しつけないということも弾力的にお願いしておりますし、それでもなおかつどうしてもできないならば、管理転作に対しても奨励金は出します。幾つも幾つも穴をあけてそういったことに対応できる仕組みで、無理してできないものに、排水のないところへ牧草をつくれとか大豆をつくれなんて過酷なことは一切言っていないのです。そういうことでございます。したがって三年間は、私は無理な生産調整はお願いしておらないし、これは変えるつもりはございません。  ただ、私が申し上げたいのは、そういうことを理由にして全面拒否という姿勢は困る。そういうことを理由にして、いや何々団体は全面拒否だ、無理な生産調整だからやらないという真っ向からやらない姿勢は困りますから、御協力を願います。こういうことを申し上げているので、無理なところまでやれというようなことは一切言っていないつもりであり、今後も言わないつもりであります。
  39. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣から見れば無理なことはやっていないのだ、農民から見るなら大変無理なことをやらせるじゃないか、こういう違いがあるわけであります。だから、私は数量で制限すればいいじゃないかということを言っているわけでありませんので、いまのやり方というのは問題があるじゃないか。だから、それは何とか検討して、やるのであるなら、やるなりに、もう少しちゃんと親切に、できなかったならばそれは米をつくってもやむを得ないじゃないかとか、そういう地帯があっても私はいいと思うのです。それを、どうしても管理転作までやれ、管理転作というのは実質的な休耕なんですよ。水田の高度利用ということを農林省は言っているのじゃないですか。休耕をやるのが水田の高度利用とは私は考えません。大臣はこういう点どう考えますか。
  40. 中川一郎

    中川国務大臣 無理なことを言ってない証拠には、管理転作の予定面積よりはずっと消化してくれまして、管理転作が予想以上に少ないのです。私どもは休耕は望まないから、なるべくほかのものをつくってくださいというので、世界で例のない大変な奨励金を差し上げると同時に、管理転作のしやすいように土地改良その他も緊急にやるもの、新しい仕組みをやるもの等々含めまして、既設の制度も十分活用するというようなことでやっておるのです。私は農家に無理を押しつけてないとは言いません。無理を願っていることは間違いないが、政府も無理しているのですから、大変な財政負担で、国民から大変な批判を浴びながら緊急体制で無理をしてやっているわけで、お互い無理と無理してやっておるので、のめない無理ではない、こういうことを言ったわけでございまして、全く負担がかかってないなんということは申し上げません。国も消費者もみんな無理をしながらこの難局を乗り越えよう。農村だけがのめない、拒否しなければならぬ無理は申し上げているつもりはございません。
  41. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 この生産調整というのは転作作物の定着化というのがねらいなんじゃないですか。ところが、条件のないところに定着をさせようとしたところで、私は無理があるのじゃないかと思うのです。これは農政上の基本問題だと私は思っておりまして、だから、たとえばえさの問題なんか見ますと、新潟県の場合においては二千五百くらいえさの転作をやった、こう言っているわけであります。でありますけれども、その六割というのは青刈りなんです。青刈りというのはいつまでも続くのかどうかということになりますと、これは続かないと思うのです。たとえば、この青刈りをやってそれはえさになっているのかどうかという問題が一つあります。えさにならないことになれば刈り捨てなんです。本当に農林省の方で濃厚飼料、粗飼料としてえさを取るというつもりであるならば、実らせて取った方がいいのじゃないですか、わらも取れますしそれからもみも取れるわけでありますから、もみは濃厚飼料として使われるわけであります。  いまどうですか。日本の濃厚飼料の自給率は二八%じゃないですか。あとの七〇%以上というのは外国から買っているわけなんですよ。だから、国内資源の活用ということになれば、青刈りなんかやらせないで米にしてそしてえさにした方がもっと合理的だということになるんじゃないですか。だから、これは定着化を図っているのか、ただ米作をつぶすためにやっているのか、ちっとも農民には理解ができないのですよ。その点はやはりちゃんと、なるほど国のためにこの方法でやった方がいいというところの理解のできるやり方をとらなければならぬのじゃないか、こう思うのですが、大臣どうでしょうか。
  42. 中川一郎

    中川国務大臣 その管理転作は恒久的にやろうという仕組みじゃないのです。排水ができないところは当面やむを得ないなというところを経過措置としてお願いしているので、だから十年かかってやりますというのはまさにそのためなんです。  それから、米をつくってその米をえさにした方がいい、まさにそのとおりです。ですから、えさ代で売ってくれるなら何ぼでも買いますから、米を一俵二千円ですか、二千円しかえさにすると値打ちがないんですから、二千円で売ってくれるなら幾らでもやりますから、あなたなかなかいいことを指摘してくれますから、ぜひ農家の皆さんに、二千円しか値打ちのないものは二千円で売っていただくという、こういう仕組みをぜひとも御協力願いたいと思います。
  43. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それじゃ聞きますけれども、農林省の生産調整のいろんな通達が出ております。要するに「作物等取扱要領」という通達の第六ですね。「青刈り稲の取扱いについて」、これは全面的に改正されるわけですか。
  44. 中川一郎

    中川国務大臣 農業団体が、一俵二千円で私らが責任を持って処理いたしますという担保があれば、全面的に改正いたします。
  45. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それで、ちゃんと奨励金も出す、こういうことなんですか。
  46. 中川一郎

    中川国務大臣 えさに利用されることが担保されるのなら奨励金はもちろん出します。
  47. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 ついででありますけれどもお聞きしますが、これは事務的な話になりますけれども、「青刈り稲の取扱いについて」という第六でありますが、この第六は三つの条件がついております。この三つの条件というのは、まず転作などの実施計画をつくって青刈りをやるということを記載して市町村長に提出する、これが一つであります。それから、農業者は家畜農家との間に契約を締結する。それから三番目といたしましては、「糊熟期以前に確認事務を行う者の立会いにより刈取りが行われていること。」この三つになっているわけなんですよ。  そこで、青刈りも刈り捨てはだめなんですよね。この確認事務というのはどこまでやるんですか、それをお聞きしたいと思うのです。
  48. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話しありますように、「取扱要領」の第六で、ただいま先生が申されましたこの三項目、この三つの要件すべてを満たすものということになっておりまして、これを市町村の職員が確認をするわけでございます。  その際にどこまで確認をするのか、こういうお尋ねでございますが、「適切な利用計画に沿って行う」という二番目のあれがございますけれども、これはこういうことで青刈り稲を植えまして、それを刈り取った、圃場から搬出をした、こういうことですね。有畜農家は有畜農家の人が圃場から搬出しているし、それから無畜農家の方はこの二にありますような有畜農家の方々との間に供給契約があるというようなことで、圃場から搬出をしたということをはっきり確認をする、こういうことでございます。その他もちろん三のこともございますが、先生のお尋ねはその辺であろうかと思いますので、お答え申し上げます。
  49. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 たんぼから出せばいいわけですか。出せばそこへ捨ててもいいわけですね。
  50. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 青刈り稲は主として飼料作物ということで、その例で申し上げておるわけですけれども、それはいま言った有畜農家がつくった場合、それから無畜農家の場合は、いま言いましたような供給契約等を締結しているということで、適正な利用計画に即して利用されるということを確認して圃場から搬出される、はっきりそういうものに限定をしてやる、こういうことでございまして、その運んだものを本当に牛が食べたかどうか、それの確認ということをやるとすれば、これが年がら年じゅう牛が食べたかどうか座っていて見ていなくちゃならないわけですね。それは現実問題として不可能でございますので、そこはただいま言いましたようにそこで割り切りまして、これであれば有効に利用されるというふうに断定をするということで割り切りをしておる、こういうことでございます。
  51. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そういうやり方でえさになったというふうに確認できますか。できっこないものをあなた方はやろうとしているわけなんですよ。率直に申し上げますと、みんなこれは刈り捨てですよ。それじゃ刈り捨ててたんぼに置きっ放しのものは奨励金くれないのですか。
  52. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 圃場において刈り捨てをするあるいはすき込むというものは、これはいま言いましたような三つの要件を満たすという角度から見まして、それにはまらないということで、これは奨励金の交付対象にはならない、かように考えております。
  53. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そういう場合には交付対象にはならない。  それからもう一つ聞きますけれども、新潟県なんか七月の二日ごろ確認が始まったわけですね。それからその先また背が伸びてきて米ができたという場合、これはどうなりますか。
  54. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 糊熟期前に刈り取りを市町村の職員が立ち会って確認をするというのが三項目目にあるわけであります。その糊熟期前に刈り取りをして、その後、後からまた穂が出てくるということで、しいなのようなものが出るという場面はあろうかとも思いますけれども、それは米というかっこうにはならないと思います。本当にそれがまとまった何俵という米になるようであれば、それはどうも糊熟期前に刈り取ったのかどうか怪しいわけでございますから、そういう事例があればお教えをいただきましてよく調べてみたいと思います。
  55. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣生産調整はこんな状態になっているのですよ。だから、とてもこれはえさ用の作物が定着するということは考えられない。それがやはり水田地帯の実態なんですよ。これを理解をしてもらいたいということなんですね。  それからもう一つの問題は、政府は転作をさせるために市町村に事務費の補助をやっておりますね。ところがどこの市町村も、県を通じてもらったところの補助交付金が非常に少額なんですね。たとえば私の新潟県の潟東村という村がありますけれども、これは一〇〇%の転作達成町村ですよ。それが補助をもらったのが二十三万六千円。それで転作にかかったところの金というのは、もうどうにもこうにもならぬものだから、村長さんが頼む頼むと言って部落の方に金を出して計画を立ててもらうという、その金が六百四十万円。余り事務がたくさんあるので、とてもじゃないけれども、これは一人雇わなければならぬといって、職員を一人雇った。これは百五十万円かかる。その他の事務費、印刷費だとかそういうものが百九万九千円、合計しますと八百九十九万九千円かかっておるのですよ。二十三万六千円しかもらわないで、八百九十九万九千円もかかるという、これがこの潟東村の実態になっているわけです。  それから新津市の実態を見ますと、もらったところの金額は二十九万一千円、かかったところの経費が七百二十六万円、こういう状態が続いております。  これは二つの市町村を例にとっただけでありまして、どこの市町村もみんなこんな状態になっているわけなんです。だから市町村長も大変困っているわけなんです。こういう実際にかかったところの経費というのは国の方で負担するのかどうか、はっきりしてもらいたいと思うのです。
  56. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策の推進、この関係につきまして非常に事務費がかかるわけでございますが、国の方としまして、一つは指導推進費補助金、それから奨励金の交付事務取り扱い交付金というものを県、それから市町村の方にも交付いたしておるわけでございます。  そこで、ただいま先生からお話ございましたのは、末端の市町村等におきまして、国の方から県を通じて交付される交付金が少ない。それに対して市町村の方で相当の経費負担、超過負担をやっておる、これを全部国の方で見るのか、こういうお尋ねでございますが、問題は、この水田利用再編対策、このことは国としても大きな農政上の問題として推進をいたしております。したがいまして、この事務的経費につきましても、一応標準的な経費というものを踏まえまして、相当多くの予算措置も講じ、今回も追加で若干見たり、来年度もまた強化したいと思っておりますが、ただいま先生からお話ございましたように、市町村の方で相当負担しているということは、これは承知をいたしておりますが、ただその市町村の段階で転作をし地域農業生産を図るということは、一つは、ただいま申し上げました国ベースからの水田利用再編対策というものと、もう一つは、市町村そのものの農業振興といいますか、これは当然地方自治法上から見ましても固有事務としてあるわけでございます。その分がどう明確に仕分けができるのか、そこはなかなか仕分けができないと思います。そういう問題もございますし、またこれは市町村、市町村によりまして、ただいま先生が挙げられたところは相当出されたようでございますし、そうでないところはほとんど出してないというところもございましょうし、これを全部そのまま現実を受け入れて国の方が見るということはおかしいのではないか。確かに十分でない面もございますから、それは私たちがこの水田利用再編対策を進める際の推進の関係なりあるいは現地確認の関係なり確かに経費はかかりますので、そういう標準的経費というものの増額といいますか、こういう問題は考えていきたい、努力していきたい、こう思っておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席片岡委員長代理着席〕 現実にやっておるものをそのまま国が全部見るということは困難であろう、こう思っております。
  57. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣に最後に御質問申し上げます。  食管制度を守っていく、こういうお話でございますが、いまの食管制度というのは一ころの食管制度とは大分変わってきているんじゃないかと思うのです。やはり生産したところの米というのは政府が全部買い上げる、よその方に流したらやみだ、こういう性質のものでありましたね。それから消費者価格というのも物価統制令できちんと抑えておりました。ところがいまは、買い入れ限度数量だとか、自主流通米制度だとか、そして限度外になりますと超過米だとか、簡単に言うならば三つの米ができてしまっておるわけですね。  それで、米の相場というのは、日本経済新聞にも自由米ということで相場が出ておりますね。私も毎日見ておるわけなんでありますけれども、生産地の方ではたとえば一万六千円程度の米、これが消費者が小売店から買う場合におきましては大体十キロ四千五百円ぐらいになっておるわけなんです。そうすると、これを六十キロに直しますと二万七千円。農民は一万五、六千円で売って、そして白米の段階で二万七千円で売れている、こういう状態というのがあるわけですね。  あるいはまた、神奈川県に調査に行きましたところが神奈川県の場合におきましては小売店が三千幾らとかある。そのうちの千八百というのは無認可の鑑札なしのお米屋さんだ、こういうことも実はわれわれは調べてきておるわけなんであります。  こういうような状態になっているのに、この食管制度というのが一体何の役割りを果たしているのか、私ははなはだ疑問に思うわけなんであります。結局生産者を守るために、消費者を守るために食管法というのはあるのじゃないか。ところがいまのような状態からいたしますと、米を取り扱ってくれるところの業者だとか団体だとかそのものを守るためにこの食管制度があるというふうに、これは極端に解釈するならば見られるんじゃないかと私は思うのです。  だから、この食管制度を守る守ると言っておられますけれども、実際は本来あるべきところの制度としてはもうすでに守られていないじゃないか、この点は一体どうお考えになるかお伺いしたいと思うのです。
  58. 中川一郎

    中川国務大臣 食管の目的は、御承知のように、国民に安定的に食糧を供給するということが目的の柱でございます。  そこで、流通面においては食管外の米もあるではないかという御指摘はまさにそのとおりでございます。しかし、今日の米の需要、供給の状況からいって、もし国が全部賢い上げるという仕組みでやったとしたら——厳密に食管法を守っていきますと、配給に必要でない米は食管上の米でないということになります。そうなってくると、これはもう現在で言うならば六百万トンも余りそうですから、来年は三百万トン買えば十分でございます。それ以外は食管の米ではありません、そう規定づけて窮屈にやったら、これは農家が困るだけで大変なことになるだろうと思うのです。ですから、いまの食管は、どちらかというと価格の面でもあるいは生産の面でも農業者に有利になっておる、むしろ消費者は非常に迷惑をこうむっておるというのが実態だろうと思うのです。したがって、食管制度は廃止せよ、中川一郎、政治力あるならば、それをやったら国民的英雄になるであろうと言われるぐらい、消費者の方からは食管は廃棄してもらいたいというのが正直な声だろうと思うのです。  でありますが、食糧というものは安定的に供給するという、短期的な問題だけじゃなく長期的な問題がありますから、いろいろの非難はありましても、食糧を預かる農家の智さんが安心して生産ができるというために食管を守っていく、こういう思想でやっておるところであって、御指摘の弾力的な面もないとは言いませんが、これはまさに法律の中心は間違いないところを確保するという中での措置、こう御理解いただきたいと存じます。
  59. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、輸入が全面ストップされた場合どうなるかという問題につきましては、きょうは時間がありませんでしたからあれですけれども、これは大臣の方も非常に研究してもらいまして、それでやはり日本食糧自給率をどう高めるかという努力をやってもらいたいと思いますし、いずれこの問題でまた議論をやりたい、こう思っております。  それから食管の問題でありますが、食管の問題は、何も窮屈になるとか何とかということじゃなしに、米そのものの政策を変えるならば、これはきちんと従来どおりに食管は守っていけると私は思っています。いまのように値段をべらぼうに安く買いたたいて、そして消費者の側におきましては統制をはずしてしまうというところに一つの矛盾が出てくると私は思うのでありまして、こういう点もやはり検討していただきたい、こう思うわけなんであります。  それから生産調整の問題は、それはもう具体的に私は出しましたので、大臣も聞いておられるわけでありますが、市町村の段階におきましては大変苦しんでいる、こういうことでありますし、条件のないところに無理に強要はさせないで、もっと合理的な方法を考えてもらいたい、これは要望しておきます。  以上で終わります。
  60. 中川一郎

    中川国務大臣 有事のことは考えるな、考えないのが政治だ、ないようにするのが政治だという御議論の中に、有事のことも考えておけというまことに前向きの御姿勢、本当にありがとうございました。  それから、食管で米を買いたたいていると言われますが、こんなことでない。食管があればこそ、国際価格の五倍、六倍高い、しかも消費者から怒られ怒られながらやっておる。これだけは全く御返上申し上げておきます。食管があればこそ、高い高い米を買っておるし、したがって生産意欲も強くて強くて、ほかの農作物に比べ国際価格のこれまた三倍、四倍するものに奨励金をやってもなおかつ米をつくりたいほど米は魅力のある値段で買っておるということだけ申し上げておきます。  それから、事務費については事務当局が答弁しましたように、努力をしてまいりましたし、今後も努力をして町村の御期待にこたえたい、こう思います。
  61. 片岡清一

    片岡委員長代理 島田琢郎君。
  62. 島田琢郎

    ○島田委員 きょうは大臣がお見えでございますので、主として大臣にお尋ねをしてまいりますが、私の、質問通告をいたしております一、二番は時間の関係で省かせていただきまして、三番から入りたい、こう思います。  今回、閣議決定で改善計画が出されてまいりました。私どもは前国会における林野改善法の論議を通じて問題になる点をおおよそ明らかにいたしましたし、また、対案として林野再建整備法を社会党は出しました。それも十分御検討いただいたのでありますが、それでも私ども、改善計画を策定するに当たっての政府の姿勢について非常に心配をいたしておりましたから、去る九月十八日には大臣に直接、改善計画策定に当たっての問題になる点を出しまして要求をいたしたのは御承知のとおりでございます。  しかし、出てまいりましたこの改善計画は、私どもの前国会における論議やあるいは対案でありますわが党の法案、さらにはまた、修正されました部分についての意見考え方など、今回の計画の中でもまだ修正補強しなければならない点が数点大まかに分けてあると、こういうふうに中身の検討をいたしてまいりました。     〔片岡委員長代理退席委員長着席〕  昨日からこの議論を進めているのでありますが、どうも改善計画が立てられた背景というのは、あくまでも国有林野の赤字を解消するというその一点で執念のごとくそこに執着しておりまして、日本の山をどう守っていくのかという、そういう前向きの姿勢が出てこないというのはきわめて遺憾であります。特に、不良造林地の問題等についてもかなり精細に、私どもは現地調査等を踏まえながら実態を調査してきたのでありますが、その点にも私は大いに問題があると思っていますが、きょうは、前段お話し申し上げましたように、いわゆる手抜きの森林保育の実態に触れて、ぜひ政府側の考え方を明らかにしてほしい、こう思うわけでございます。  そこで、端的に言えることは、民有林の保育の実態と国有林の保育の実態というのが、比較して非常に差があり過ぎる。それは一体どういうところに原因があるのだろうかということで、今回の調査でも実は細かに現地の実態を見てきたのでありますけれども、そういう中でも非常に問題になる点は、たとえば青森営林局の盛岡営林署でありますけれども、四十一年に国有林が手がけておりました保育、つまり地ごしらえを初めとする下刈り、つる切り、除伐等の状態を昨年の五十二年で比較をしてみましても、ずいぶん手抜きになっている。たとえば地ごしらえについて言えば、四十一年を一〇〇とすれば六五%と低下をしている。下刈りは半分になっている。つる切りだって七五%となっている。除伐に至ってはほとんどやられていない、三分の一、こういう実態であります。  それを民有林と比較してみますと、昨年の国有林と民有林の比較では、民有林のいわゆる手入れの状態に比較をいたしまして、地ごしらえでは二九%、下刈りも二九%、つる切りで三〇%、除伐で一二%、こんなに格差があるのであります。こういう状態をそのままに放置しているということは、どうしても私どもは山を放棄しようとしているのではないかと疑わざるを得ないのでありますが、大臣、この盛岡営林署で行われておりますこうした保育の実態……。  もう一つつけ加えて、ついでですから申し上げておきますが、南の方に下りまして、熊本営林局の五島営林署でありますけれども、これは民間で比較をいたしてみますと、地ごしらえについては県が五十二人、森林組合は六十五人に対して、国有林は十四・五人、ヘクタール当たりでありますが、これしかかけてないのです。下刈りでは、県が十三人、森林組合は十四人に対して、国有林ではたったの六・二人であります。除伐については、県は二十二・一人かけていますし、森林組合は二十五人手を加えているのでありますが、それに対して国有林は十四・六人しかかけていない。首切りどころの話じゃないのでありまして、こういう保育を強化するだけでも、あるいは民有林並みに、また公有林と言われている県有林並みに手を加えていくとしたって、いまの人員では足りないぐらい強化をしていかなければならないという実態にあるのでありまして、この二つの営林署の例を出してみても、営林署をなくして人員を引き揚げするなんという実態には相ならぬと私は思うのですが、いかがですか。
  63. 中川一郎

    中川国務大臣 造林が手抜きでないかという御指摘でございます。そしてそのことが営林署やあるいは人員削減とどうかということでございますが、私は、人員の問題とは関係ないんじゃないかと思っているのです。というのは、請負という方法でやれば幾らでもできることであって、しかも、いまは直営と請負との比率は、造林でもあるいは手入れでも、直営の方が約倍高くコストがかかっているわけです。ですから、請負の制度をやっていただくならば幾らでも事業は支障なくできるというふうに思います。実態については事務当局から答弁させます。
  64. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生から民有林と国有林の比較においての御指摘があったわけでございますが、確かに一部においてはそういう地域もあろうかと思いますが、一般的に申し上げまして、国有林と民有林、いろいろ仕事のやり方も違っております。たとえば地ごしらえ等を見ますと、国有林の場合も主として天然林の跡地でございますけれども、全幹集材等々をやりまして、跡地に末木枝条が比較的残らない方法で地ごしらえをやるという形になっておりますし、そういうものに比べまして民有林の拡大造林の場合には、どうしても跡地に末木枝条等の残存が多いという形で人工数もよけいかかるという事例もございます。しかしながら、いずれにいたしましても造林事業というものは、これからの地ごしらえを中心にいたしまして山をよくする基本的な問題でございます。そういう意味で、私どもも、地ごしらえ、下刈り、除伐等々については十分対応できるような形で今後とも仕事を進めてまいりたいというふうに考えております。
  65. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣から、だから請負の方がいいんだ、こういう御説でありますけれども、私は昨日、直営直用という事業実行形態の問題について大変たくさんの時間を割いて長官と議論をしたのであります。長官はそんなふうには言ってないのですね、そんなに大臣の言うほど。国有林労働者の経験というのはきわめて豊富であります。これはお認めになるでしょう。ただ、きのうのことにまたさかのぼるという時間がないから、私はここで長々それを言うつもりはありませんけれども、単純に請負の方がいいんだと言ったって、請負の実態というのは一体どうなっているかということをよく考えてみないと、それはいまの実態から言えば、請負労働者の実態というのは、白ろう病一つの問題にしたって非常に多くの問題を抱えているんだし、単に消化すればいいといったような、そういうことで請負に回していくということになれば、民有林の労働者の今日的実態は一体どうなっていくのだろうかということを考えますと、これはもう寒気がするような実態にいまあるのですよ。それを単にそういう簡単な考え方で割り切ってしまうなんということは、私はこれは改めてほしいと思うのです。  つまり、たとえばこういう保育の実態、これは一部だといま長官はおっしゃいましたけれども、私は一部ではない、全国的にこういう傾向に国有林の実態はなっている。一部なのか全国的な傾向なのかという点はこれからも議論をしなくちゃいけない点でありますけれども、そういう実態のいわゆる資料があるとすれば、あなたは一部だとおっしゃるのであればその資料をぜひ提示してもらいたい、私はこう思っています。  時間がありませんから先に進まざるを得ませんが、この点はまた後ほど芳賀委員から細かに詰めていくことになると思います。  次に、国有林が赤字だ、赤字だと言っていますけれども、経営上もっと改善しなければならないところがあるのではないか。これはもういままで幾度も指摘をしてまいりましたが、私はこの中で特に国有林材の販売というものについて触れてみたいと思うのです。  契約のあり方というのは、御承知のように一般公売と随意契約と、こういうものがありますね。そのほかに指名競争入札というようなものもあります。しかし、随意契約に比較して一般公売を取り上げてみますと、四十七年からの統計でありますけれども、比率で言えば、競争入札百三十五に対して随契が百九、こういうことであります。以下四十八年、四十九年、五十年と比率が変わってまいりますが、若干最近は随契から一般公売という方に回る部分が多いような感じがいたしますけれども、しかし、随契を全くやめて競争入札でこれをやっていくとしたら一体どれくらい金額的に差が出るんだろう、これは単純計算でありますけれども計算をしてみましたら、四十七年で実に百七億、そういう差が出てまいります。四十八年では百六十五億、四十九年では八十七億、五十年は五十四億、五十一年は七十六億、こういう試算もできるわけであります。これは素材財売の場合であります。  もう一つ立木販売というのがありますが、これもいまのでんで計算をしてまいりますと、四十七年六十億、四十八年実に二百十四億、四十九年は百四十二億、五十年八十四億、五十一年九十七億。  五十二年の統計もきっとあると思うのでありますが、私はこの五年間を累計いたしてみますと、四十七年で素材と丸太の両方を合わせますと百六十七億、四十八年では三百七十九億、四十九年は二百二十九億、五十年は百三十八億、五十一年百七十三億。五十年、五十一年と下がってまいりましたのは、一般公売の方式に少しずつ切りかえる、そういう比率の変化があったからであります。  このように、いわゆる契約の形態を変えるだけでこれだけのものが出てくる。これは累積をいたしますと大変な数字になるのであります。こういう販売形態だって大いに検討すべきではないですか。この点はいかがですか。
  66. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 御指摘のように、これから国有林の改善を進めていくに出たりましては、いろいろな面で努力をしなければいけない問題あるいは改善をしなければいけない問題があろうと思います。  その一つとして、販売につきましても、私どもも販売についてはさらに有利な販売が行えるような方途を考えながら、販売の改善をしていかなければいけないというふうに考えております。いま御指摘になりました競争入札と随意契約との問題でございますが、私どもといたしましても、こういうものについては競争入札を原則としていこう、それからこういうものについては随意契約でいこうというような方針をそれぞれ立てております。そういう方針の中でやっておりまして、たとえばそういう傾向から、いまも先生御指摘になりましたけれども、四十七年から五十二年にかけまして、立木販売についても素材販売についても一般競争契約量をふやしておるわけでございますけれども、今後とも私ども、販売につきましてもそれなりの努力をしてまいりたいというふうに考えておりますが、一般競争契約と随意契約との関連では、随意契約につきましては、たとえば需要開発の必要な材、間伐材等々もございます。それから一般材の中でも、地元に国有林しかないというような、国有林の中に工場がございまして、それ以外に材を買う道がない工場もございます。そういういろいろな問題がございますが、一概に全部が一般競争契約というわけにはなかなかまいりませんけれども、先ほど申し上げましたような考えに立ちまして、その方向に向かって今後とも販売が有利になるような方途を考えながら改善を進めていきたいというふうに考えております。
  67. 島田琢郎

    ○島田委員 確かにおっしゃるように、随契を全くなくしてしまうということはできません。いま長官が言われたように、地元の特に中小工場の保護育成という一つの任務も持っていますから、それを全部なくせというのは極論でありますから、私はそういうつもりで申し上げているのではないが、単純に計算をしてみると販売の面だってそれぐらい差が出てくる。ここらは知恵を働かさなければいけない点ではないだろうか、こんなふうに思うのです。  素材販売と立木販売のことを申しましたけれども、やはりこれは素材で売るというのを原則にしなければいけない。もうそうでなくたって山荒らしだとかいろいろな問題がそこに出てまいりますから、やはり直営で丸太にしてそれを売っていく、こういうことを原則としていくべきだ。これも全部そうせいと言ったってそうはいかないでしょうから、そういう原則を踏まえて販売形態を変えていく、私は、これは非常に差し迫った問題として、国有林の赤字克服の一環としても緊急を要する検討課題だと思う。その努力の片りんはありますけれども、私はもう少し力を入れるべきだと思うし、この委員会でだってしばしばこういう議論をやっています。そして、大臣の答弁の中でも、一般公売を原則とするというニュアンスの、そういうことに力を入れたいという意味の答弁は得ているのでありますけれども、なかなか実行ということになると遅々として進んでいない。  重ねて申し上げますが、立木販売から原則として素材販売に切りかえ、そして地元の中小工場保護育成という見地をしっかり踏まえながら、随契から一般競争入札の方式に変えていく。このことによって、いま申し上げましたような金額は全部解消できるという意味ではありませんが、相当数有利販売が可能になるのだ、それがひいては国有林の赤字解消という一環につながっていく。金額が莫大ですからね、一億や二億じゃありませんから。  私は、この点について特に大臣にお尋ねをしておきます。御承知でもありましょうけれども、四十八年には行政管理庁からも指摘がされている。その後もう五年もたっているのですよ。一向に改まらないというのは行管指導という問題からいっても問題があるのではないでしょうか。大臣いかがですか。
  68. 中川一郎

    中川国務大臣 木材の売り払い方法については、競争入札ということでやっていくのがよかろうと私もかねがね思っておりますし、そういう努力もしてきたつもりでございます。事務当局もだんだんと対応してきてくれている。過去の経過措置もありますから急激にはできませんが、かなり対応しつつある、こう見ておりますし、さらに一層の努力を重ねていきたいと存じます。  ただ、丸太による素材生産、しかも直営ということになりますと、随意契約による販売の問題等、逆にコスト高という問題がそこに真正面から出てくる場合が多いわけでございまして、その辺のところをどうやっていくか、やはり山を守るということを中心にして販売方式について検討していきたいと存じます。
  69. 島田琢郎

    ○島田委員 ところで、概算契約というのは全面廃止すべきだ、さらに委託販売はもうこれ以上拡大しない、こういうことも必要だと思いますが、いかがですか。
  70. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 概算契約でございますけれども、概算契約をどうしてやっておるかということでございます。これは先生も十分御存じかと思いますけれども、樹種の中には早く売らなければ材が悪くなるものがございます。たとえばブナのようなものを春先前後に時間をかけて切り出しますと腐れが入る、虫が入る、そのために品質も低下してしまうという問題もございます。そのために迅速に売らなければいけないもの、あるいは風倒木や低質木が散在いたしておりましてそのために非常に調査にも金がかかるというような場合、また、山元等の貯木場その他が非常に狭くてそこになかなか集積し切らない、伐採の方が先に進んでしまうというような状況、こういうものがございまして、そういう場合にはやはり有利な販売方法として私どもも概算契約をやっておるわけでございまして、決してこれは概算契約によりまして販売コストが下がるという方向をとっておるわけではございません。また、したがいまして概算契約につきましてもその半分は公売で売っておるというのが実態でございます。  それから委託販売についてでございますが、委託販売については現在素材、販売の中で大体二・五%を占めておりますけれども、御存じのとおり民間の市場というのは関東から西の方が非常に発達いたしております。したがいまして、そういうところでは非常にお客も多いし、またそれぞれの情報等々も十分把握しておりますし、仕分けその他も十分やっておられる。そして売り方は競り売りあるいは入札という形でやっております。したがいまして、私どもといたしましても、そういう民有林の材と一緒になって市売り等で売れる場合はその方が有利な場合もございますので、そういう面についての委託販売は今後とも積極的に進めていきたいと思っております。  いま申し上げましたように、概算契約あるいは委託販売につきましても、それぞれその地域の実情なり販売のあり方等々について十分検討し、そして適切な売り方をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  71. 島田琢郎

    ○島田委員 いまの御説明で私は納得するわけでないのでして、あとう限り努力を払っていただかなければならぬし、私はこれは取りやめるべきだ、こういう主張を繰り返しいたしておきたいと思います。  それから、きのう実は石川林政部長と試算の問題でちょっとお話をしたのですが、時間がないために聞きっ放しでありました。私ども先般南木曽の妻篭営林署の現地調査をしたときにも、現地で大分食い違っているという点が出てまいりましたので再度……。  きのうは、四兆九千億、簿価計算ではあるけれどもそういう資産内容でありますと言うが、資産評価をするに当たって大事なのは、天然林の蓄積とか人工林の蓄積とかいうのが非常に大きなウエートを占めますね。南木曽町妻篭営林署のヘクタール当たりの資産評価で比較をしてみましたら、天然林の蓄積ではヘクタール当たり二百五十立米である、しかし現地の組合側が調べておりますととてもそんなにはない、こういう逆な結果が出ている。しかし人工林の蓄積ということになりますと、営林局側は二百立米だという見方でありますが、これは四百立米、こういうことでずいぶん差が出てくる。事ほどさように、資産評価に当たっての調べ方によってずいぶん大きな差が出る。こういうふうになりますから、細かに試算というものを——資産評価に当たっての計算方式をどういうふうに組み立てるかという問題はありますけれども、こういうふうに見てまいりますと、同じ山の責任を持っている立場の中でもこんなにずいぶん違うのですね。ですから、私は、四兆九千億、約五兆円という評価だそうでありますけれども、国有林というものは国民の財産としての価値がある、こういうものをもっとしっかりした調査に基づいてやはり国民にも知ってもらって、だから国有林というのは非常に大事だという認識を高めていく、そういうことが必要だと思っているのです。この点、いかがですか。
  72. 石川弘

    ○石川説明員 昨日お答えいたしましたように、立木の評価の問題と土地の評価の問題がございます。  立木につきましては、いま御指摘の数字を私、承知をいたしておりませんので、帰りましてよく調べてみますが、立木の評価については余り大きな評価差が出るというのは問題だと思いますので、その辺は十分検討させていただきます。  問題は土地でございますが、土地の場合になかなかいわゆる時価換算的な論法をとりにくいということがございまして、特に脊梁山脈のそういう水源地帯の土地というものを幾らに見るかという基本的問題がございますので、私、現在使っております約五兆円の評価というのはやはりそういう非常にむずかしい前提を置いての評価でございまして、一般の方々が、昨日も先生御指摘のように、たとえば時価で幾らかというような勘定とはちょっと違った感覚で評価せざるを得ないと思いますけれども、いま御指摘の、特に立木の物の見方が大きく違うということでは、これは将来の国の財産をどう見るかということに大きな差ができることでございますので、よく検討させていただきたいと思っております。
  73. 島田琢郎

    ○島田委員 ところで、この間私は御案内をしまして、馬路営林署の廃止問題で大臣とお会いをいたしました。大臣からきわめて積極的に、わかった、現地の調査もわれわれはわれわれなりにやらしてもらう、こういう約束をされました。お忘れではないですね。そのために確かに石川林政部長を現地に派遣されました。しかし、あのときの大臣のおっしゃり方と、石川部長が調査をしてきたのとは、お聞きいたしますとずいぶん違うのですね。大臣は、しっかり調査をせいと、こういうふうにニュアンスを強めてあのとき指示をされたと私は受けとめているのですが、しかし聞きますと、二時間ぐらい話を聞いたというよりは話のしっ放し、石川さんは弁が立つし、うまいから、ばんばんばんばん話をして、言いっ放しで恐らく帰ってきたのだと思うのですが、現地は大変不満ですよ。大臣、こういう御指示というのはおかしいのじゃないですか。いかがですか。
  74. 石川弘

    ○石川説明員 私が参りましたので、私からお答えさせていただきます。  時間をかけてというお話でございますが、私の方もあの前の晩着きまして、夜、村の方の方々と御連絡いたしまして、時間も十分とりたいということをお話ししたわけでございますが、すでに十時から開会するというようなお話でございまして、それでは十時に間に合うようにといって十時に参りました。会合を開きますと、冒頭に、先生方もおっしゃいましたように、たとえば村長さんの言葉をそのまま使わしていただきますと、土佐の酒を一杯飲んで一緒に話すぐらいのつもりで来てほしかったというありがたいお話があったわけでございますが、何せ国会開催中に急いで参りましたので、その日のうちに帰らざるを得ないということではございましたけれども、村の代表の方と二時間半にわたりまして御相談、お話を聞かしていただきました。いろいろ私どもの立場理解していただきたいということで御説明申し上げましたし、また村の方々からも過疎の問題を中心に真剣なお話がありましたので、私といたしましては十分事情を掌握して帰ったつもりでございます。
  75. 島田琢郎

    ○島田委員 もう時間が来ましたが、大臣、きょうはまたこの委員会が終わりました後、現地の方がお見えで、すでに秘書官を通じてお願いをしておりますが、非常にまじめな村長さんで、もうはったりもなければ何にもない、一生懸命村を考えて、営林署をなくさぬでくれと訴えていらっしゃるので、それは前回私お供したときにも強くそのことを感じました、私も初めてお目にかかったのでありますけれども。こういう人たちをだますなんということはいけませんよとあのとき私も申し上げたのですが、いやわかったから現地調査をよくやって、現地の意向もよく取り入れて検討させてもらうよ、こういうお話だったから、私は大変前向きに大臣はこの問題をとらえていらっしゃるな、こう思っていたのでありますが、いま国会開会中だから確かにいろいろ忙しいさなかでありますし、われわれも議論を持ち出しているさなかですから窮屈な時間帯ではあったでしょうけれども、これは馬路に限りません、いま俎上に上っております九つの営林署の地域住民との対話というのは、もっともっと深めていかなければならないというふうに、私は強くこの馬路の問題の中でも感じたのです。どうか拙速にされるようなことのないように、慎重にやはりこの問題に対処するというその第一の前提は、地元住民との腹を割った、本当にしっかりした話し合いを進められる、それは積極的におやりになる。しばしば大臣はそのことを強調されているのでありますから、この点については、ぜひひとつそういうことで臨んでいただくようにお願いをしたいと思うのです。  御答弁をいただく時間がございませんから、要請だけ申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 中尾栄一

    ○中尾委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  77. 中尾栄一

    ○中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今国会の当初に林野庁長官から委員会において概要の説明がありました国有林野事業の改善計画の内容、並びに現在農林省が鋭意進めておる九営林署の廃止問題につきまして、農林大臣を初め政府当局に質問をいたします。  まず第一に、改善計画の策定については、これは先般の通常国会において政府案を委員会修正して成立させたわけでございますが、その際、改善特別措置法に基づく改善計画の策定に当たっては、林政審議会の中に国有林野部会を設けて、まず国有林野部会において鋭意審議を求め、しかる後政府が決定することになるが、林政審の審議と並行して、国有林野事業の直接参加者である、たとえば全林野労働組合の意見等も十分に聴取して、そして林野庁を挙げて今後国有林の再建あるいは改善の方向に向かって踏み出すという明快な答弁があったわけでございます。九月二十二日に改善計画が策定されまして、これは公表されたわけでございますが、それまでの間に果たして国会で約束をした全林野労働組合等と具体的な計画策定についてどのような協議あるいは意見の聴取を行い、さらにまた、その意見等が今回の改善計画の中にどのような形で組み込まれておるかというような点についてまず質問いたします。
  79. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 改善計画の作成に当たりましては、林政審議会の国有林野部会を七月十八日から九月十四日まで八回にわたりまして開きまして、その間におきまして労働組合の代表の方々からこの部会の中でそれぞれ意見の開陳をお願いしたわけでございます。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の聞いたのは、意見の開陳じゃなくて、どういうような形で具体的な意見の聴取等を行って、提示された意見等が今回の改善計画の中のどういう内容の個所に盛り込まれておるか、そういう具体的な点について尋ねておるわけです。
  81. 石川弘

    ○石川説明員 この改善計画を策定します段取りといたしまして、先ほど長官からも御説明いたしましたように、国有林野部会を設けました。その場合に、国有林野部会にどういうことをかけるかという一番荒っぽい事業運営に関する基本方針その他検討の大項目を、七月十八日でございますけれども国有林野事業の改善に関する計画メモという形で委員会に提出したわけでございますが、それの提出に先立ちまして、こういうことを検討項目として審議をしていただくということを関係労働組合に話をいたしました。  そういうことで、まず検討の項目を決めまして中身に入ってまいりまして、先ほど長官から申し上げましたように前後八回の部会を開催をしているわけでございますけれども、その中で先ほど長官から申し上げました意見の開陳が行われましたけれども、その後、先ほど申しました検討項目のメモを成文化いたします段階に、これは時期で申し上げますと八月の末だったと思います。八月三十一日に実は審議をいたしておりますが、その案を前もって、委員会に提出するに先立ちまして、こういうような形を素案にして審議をしていただくという形で、今度は先ほどの検討メモをさらに内容のあるものにいたしまして、こういうことで検討したいので労働組合もこの検討内容について検討してほしいということを、私どもの方から関係労働組合に通知をいたしてあります。  そういう形で、先ほど申し上げました二十二日というのは、最終的なそういうプロセスを経たものができ上がったもの、要するに正式のものとしてこういう形にでき上がるということに説明しましたのは九月二十二日でございますけれども、そういうことの素案になりますものは、先ほど申し上げました七月十八日の段階あるいは八月の末の段階でいずれもわれわれの方から説明をいたし、それに対する向こうの意見も聞くという態度でやったわけでございますが、労働組合の方は、組織としては最終的にもらってからでないと意見は出せないというようなお話がございました。私ども、こういうものは関係者の意向を積み上げながらやるものでございますので、最終の仕上がりの段階でなければ意見が述べられないということでは大変困るということで何度もお話をしたわけでございますが、そういうようなことが繰り返されて、最終的には九月に仕上がったわけでございます。  そういうことで、組合の方からは具体的に意見を開陳する機会がなかったというようなお話もあったわけでございますが、私どもはその検討の各段階で検討の素材を差し上げて議論をするという態勢で進めたつもりでございます。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農林省としての案の策定の経過においていわゆる検討メモなるものを組合に示して意見を求めたところが、それには応じなかった、そういうことになるのですか。これは後日問題になる点ですから、率直に明確にしてもらいたいと思うのです。
  83. 石川弘

    ○石川説明員 繰り返して申し上げますが、国有林野事業の改善に関する計画メモという、これはどちらかというと項目でございます。この段階と、それから私どもが関係の委員さん方の御意見も集約しながら国有林野事業の改善に関する計画案というものをつくります段階にこれを提示しまして、これに対する意見を求めるということをいたしております。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは内容に入りますが、この改善計画の内容は大きく分けると六項目になっておりまして、第一が「国有林野事業の運営についての基本方針」、第二が「国有林野事業における造林及び林道の開設その他林業生産基盤の整備に関する事項」、この事項というのは政府の改善措置法に対しまして社会党が対案を出したわけでありますが、社会党の法案の重要な事項の中で国有林野事業における造林及び林道開設その他林業生産基盤の整備に関する事項等、これは政府案を修正する形の中でこれが法律として実現されたということは、これはもう改めて言うまでもありません。第三の事項は「国有林野事業の運営の能率化に関する事項」、第四が「国有林野事業の経営管理の適正化に関する事項」、第五が「国有林野事業に係る収入の確保に関する事項」、第六が「その他国有林野事業の改善に関し必要な事項」ということになっておりますが、きょうこれを全部にわたって詳細に論議する時間はございませんが、重点となる事項について集中的な質問をいたします。  まず、今後の国有林野事業における造林及び林道の開設その他林業生産基盤の整備に関する事項でありますが、これは何といいましても、単に国有林と言わず日本の森林全体を通じて総体的に資源が減少して、ややもすれば荒廃の現状をあらわしておるわけでありますからして、本当に国有林野、森林を存在の使命に基づいて生産を高め発展させるということになれば、当然これは計画の柱に据えることはもちろんのことであります。  そこで、政府の公表されました「森林資源整備の目標」、これは二ページにありますが、最初が森林の蓄積、その次が年間成長量、参考として年間の伐採量、人工林の面積、人工林面積の中の二十一年生以上のものの占める比率、それを昭和五十三年を計画の出発点といたしまして、十年後の六十二年までの間における基盤整備と見られる十カ年の計画、さらにまた目標達成のための二十年後の七十二年における状態というものが数字を挙げて示されておる。数字が掲げてあるのはこの点だけであって、あとはもう全部作文ということになっておるわけです。  そこで、まず、森林の蓄積については、今年度、昭和五十三年が七億七千万立方メートルということになっておるわけですが、これが十年後には七億八千万立方、二十年後の七十二年には八億三千万立方ということになるわけでございますが、最近極度に蓄積の現状それから年間の成長量というものが低下しておるということで、昭和五十三年はこの七億七千万立米の蓄積に対して千四百万立米の成長が見込まれておる。六十二年には年間千八百万立米、二十年後の七十二年にようやく二千二百万立米の年間成長量ということになるわけです。そうなると、これから十年間は、国有林野事業の生産量とも言われる伐採量については、今年度は千五百四十万立米、これが六十二年までの間は毎年毎年伐採量が低下いたしまして、六十二年には千三百五十万立米ということに激減するわけですね。それから先七十二年までの十年間は大体横ばいの傾向をたどって、七十二年には年間伐採量がようやく千四百五十万立米、つまり伐採量については今年度よりもまだ百万立米、二十年後といえども減少をしておるということが明らかになっておるわけです。そうすると、この十年間、二十年間は、生産面においてあるいは国有林野事業の期待する収益面においては現状よりも期待することはできないという、悲観的な低落、横ばい状態というものが長く続くわけであります。  そこで、問題は、一日も速やかに生産を刺激して国有林の蓄積を増大させるということが当面最大の任務ということになっておるわけでありますが、今後期待される人工林面積についても、五十三年は二百十五万ヘクタールが現況であります。それが十年後の六十二年には二百四十万ヘクタールの人工林面積ということになり、二十年後の七十二年には二百六十二万ヘクタールの人工林面積ということになるわけです。この計画目標の推移を見る限り、一番大事な人工林増大の点についてもその実施面積においても非常に過小であるというふうにわれわれは判断しておるわけでございますが、この「森林資源整備の目標」を踏まえて、果たしてこの目標を基礎にして自信を持った実行ができるのかどうか、そういう点についてはどう考えておるのですか。
  85. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生が改善計画の整備の目標についてそれぞれ指摘されまして、この目標に対して自信があるかどうかという御質問でございます。  私どもこの整備計画をつくるに当たりましては、これからの十年間、国有林の改善に当たりましては、その基盤となります国有林の目標である森林の整備ということ、これが何よりも大事であろうというように考えております。したがいまして、この目標に向かいまして国有林の管理経営を預かる者全員が一致団結をいたしまして、全力を挙げてこの方向に向かって森林の整備を図らなければいけないというように考えておりますし、この整備の目標が必ず達成されるような努力をいろいろな面から払っていかなければいけないというように考えております。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、この目標実行の組織的な実行主体というものは、あくまでも営林署が主体になって行わなければならぬと私は考えておるわけです。その上に営林局もあるし、林野庁もありますが、国有林野事業の実施基本主体ということになれば、農林省設置法に明らかなごとく、やはり営林署段階がこの具体的な施業の実行を責任を持ってやるということであると思います。その点はいかがですか。
  87. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 事業実行の責任は営林署がやることは先生の御指摘のとおりでございます。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、これから大事な十年、二十年の坂道に差しかかるという場合、一番大事な基盤である営林署を安易に、五十三年には九営林署を廃止するとか、長期的には一割の三十五営林署を廃止するということは、この改善計画目標の実行の面から見るとむしろ逆な方向に体制を弱体化させることになると思いますが、その点は大臣どうですか。
  89. 中川一郎

    中川国務大臣 数の上では減ることですから逆行するかに見えますが、数よりはむしろしっかりした営林署をつくる、あるいは経費の節約を図るという意味からいって、目的を達成する上にむしろプラスの方向に持っていきたいということで、約一割の営林署の統廃合を計画したわけでございます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ大臣にお伺いしますが、農林省設置法第七十条にはどういう規定が載っていますか。
  91. 中川一郎

    中川国務大臣 営林署の任務を書いてございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この条文は、政府が農林省設置法改正案の中で、この七十条の規定を抹殺するという改正案が出たのですね。結局委員会修正で従来のように復活させたわけですから、農林大臣が指図してここを削除せよというような改正案をつくりながら、設置法の七十条が何だかわからぬ。いま簡単に述べられましたが、それは中身ではないでしょう。営林署の設置について書いてあります——私の聞いているのは、営林署の行う、法文的には所掌事務でありますが、一体営林署というものは何をやる事業主体かということを聞いておるわけですよ。
  93. 石川弘

    ○石川説明員 先生御指摘の七十条でございますが、今回の改正で七十一条に番号が送られております。書いてありますことは「営林署は、営林局又は営林支局の所掌事務のうち、次の各号に掲げる事務を分掌する。」ということになっておりまして、「国有林野及び公有林野等官行造林地の造林及び営林を実施すること。」「民有林野の造林及び営林を指導すること。」「国有林野及び公有林野等官行造林地の産物及び製品の生産及び処分を行うこと。」それから四といたしまして、「立木の取得、加工及び処分を行うこと。」となっております。二項につきましては、その名称その他のことあるいはその職制等につきまして、農林水産省令に定めるということ、三項には、二署にまたがります場合に、その事務を署が行えるということを書いてある規定でございます。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 果たしていまの営林署が、この法律に掲げてあるような事項についてまじめに完全に任務遂行をやっておるですか。たとえば国有林の造林並びに営林——造林だけじゃないですよ、営林も仕事になるのですよ。それから公有林の分収林事業をやっているとか、官行事業は法律がなくなってしまったけれども、伐採期に入っているところは逐次収穫を行っているけれども……。営林署が国有林の造林、営林事業なるものを完全にやっていると思いますか。長官でいいです。
  95. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま林政部長から読み上げましたとおり、営林署の使命と申しますかそういうものは法文に書いてあるわけでございまして、全国に三百五十一営林署がございますが、その営林署は、それぞれの特徴の中でその営林署の国有林の管理につきましては万全を期する姿勢で実行はしておると考えております。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 業績を上げておりますか。
  97. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 営林署の仕事の業績ということになりますと、いろいろな問題があろうと思いますけれども、造林をすること、あるいは木を切ること、さらには木を売ること、そして国有林の土地を管理すること、いろいろな仕事がございます。それぞれの仕事について、営林署長の判断によりまして、決められた法規、規定、予算の中で的確な仕事をしておると理解しております。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第二号に、営林署は民有林の造林並びに営林を指導することとうたわれておりますね。この点は全然やっていないと思いますが、どうですか。
  99. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 民有林の営林指導の中で、特に森林経営の実際の仕事ではございませんけれども、技術指導を中心にして営林署は現在民有林の指導を一応やっておりますけれども、山を経営する直接の問題については、確かに先生御指摘のとおり営林署は余りやっておりません。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法律には、民有林の造林及び営林を指導することと書いてありますね。指導はもうできないのじゃないですか。できないというのは、ひまがないというよりも、民有林に対する国有林としての、日本の林政の面からそれを通じて指導する能力とか技術とか指導性が全く欠如しておるから、法律には「指導すること。」と書いてあっても、指導するものは何物もない。むしろ隣接の民有林から学ぶことは非常に多いが、指導することはない。そういうふうに立場が逆になっていると私は憂えておるわけですが、その点はどうですか。
  101. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生から、国有林の技術的な指導が非常に立ちおくれておるというような御指摘でございますが、国有林は非常に財政が厳しいために、営林署長以下、各営林署におきまして日夜真剣に取り組んでおる実態の中で、確かに先生御指摘のような実行面、直接にそういう問題、民有林の指導等には当たっておりませんけれども、一例を申し上げますと、前橋営林局管内に沼田営林署というのがございます。ここにおきましては、造林、伐採等につきまして、民有林の技術者を集めて研修をする、さらには外国の方まで来て国際的な研修をするというような組織もつくっておりまして、そういう形で技術的な指導はおさおさ怠りなくやっておるわけでございますけれども、全国全般ということになりますと、確かに先生の御指摘の面もないわけではなかろうというふうには考えます。
  102. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それほどに現在の営林署の実態は、組織、機構の上から見ても、あるいは人的な配置の面から見ても、非常に欠陥があり、また弱体化しておるのですよ。これをただ単に全林野労働組合がけしからぬのだということで片づけるわけにはいかぬと思うのですね。われわれが全国各地の人工林等を視察いたしましても、たまたま一方においては国有林の人工林地がある。それに接続して県有林であるとか市町村の公有林あるいは私有林の造林地がある。どこを比較してみても、この二つの林分がどちらがすぐれておるかということはわかりますが、先入観でこっちが国有林、こっちが民有林、そういう前提認識がなくてながめて、こっちの方がりっぱに森林の形成や保育をしておる、これを国有林じゃないかと言うと、いやそうじゃない、こっちは国有林じゃありません、こっちの方の放置されてぼろぼろの山、これが現在の国有林ですということに帰着するわけですね。それほど、日本の国土の同一地域の中における国有林と民有林の形成とか林分の状態というのは、非常に格段な差があるわけです。  こういう点は十分反省して、今回の大事な十カ年の改善計画とかあるいは将来二十年にわたる改善目標の達成の重大な反省として、やはりここから出発しなければ、造林を幾らやるとか、年間成長量がどうであるということだけを数字で書いてもこれは何にもならぬと思うのですよね。その点はどう考えておりますか。
  103. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま国有林の山が民有林に比較して非常に荒れておるという御指摘がございましたが、私どももこの改善計画を御審議いただきました時点で、いろいろな国有林の経営のあり方、技術的な取り組み方響において御指摘もいただいております。そういう観点から、改善計画をつくります場合に、この造林の推進の中で、やはり過去において試験研究の結果が十分とらえられないために、技術的な点から現在問題があったところ、あるいは自然条件のもとで施業の選択が必ずしも十分でなかったところ、あるいは病虫害、災害等によりまして所期の目的を達したような成績を遂げていないところ、こういうものも確かにある。こういうものの反省を十分踏まえて、これから幾多の試験研究もございます。そういうものをもとにしまして、そういう成果で今後技術合理性にのっとった森林施業をやっていくのだということをはっきり明記いたしておりまして、先生の御指摘のような点が全国的にないとは私どもも申し上げませんし、そういう観点から過去におきますいろいろな問題については十分に反省して取り組んでおり、この改善計画にも盛り込んだつもりでございます。
  104. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、先般の通常国会の際に当委員会で改善措置を修正で上げる際に、大臣並びに長官に私が質問したわけでございますが、その際、これからの新規の造林計画の実行は当然であるが、現在全国に二百十五万ヘクタールの国有林の人工林面積を保有しておる。この二百十五万ヘクタールの人工林に対して、約二割に近い四十万ヘクタールというのが不良造林地と言われておるが、この分については今後新しく策定する改善計画の中の造林とは別途に取り扱わないと、これからの新規計画の中で四十万ヘクタールに及ぶ不良造林地の経営を抜本的に改善するとか、あるいはだめなものは改値するとかということになると、もう十年間それだけで造林事業や予算というものは消耗してしまう。やはり別途に、改善計画策定の際に不良造林地に対してはどうしますということを明らかにすべきではないかということを私が指摘しました際に、長官は全面的にこれに同意したわけですね。  きのうのわが党の同僚委員の質問を聞くと、いや四十万なんということはない、全部で四万五千ヘクタールしかありませんということを言い出したわけですね。私が法案審議で質問した際には、別に長官は、いやそんなにありませんとか、それは間違いの数字でありますというような反論も、修正的な意見も何もなかったわけですね。法案を通す場合にはそういう指摘に対してこれを是認して、いまになってそんなにありませんというのはおかしいじゃないですか。長官がその間かわっているのじゃないですよ。藍原長官というのはあのときもきょうも健在ですからね。この不良造林地の問題を全く無視した状態でこれからの長期的な造林計画というのはできないのじゃないか。そういう膨大な不良造林地というものは年間成長量の基礎面積に入っているわけでしょう。そういう造林地に対して年間成長を期待することはできないのじゃないですか。架空の、樹木のないただ土地に対して、この一年間にたとえば一千四百万立米の成長が期待できるなんということは、根拠のない期待ということになるわけですね。一体これをどうするわけですか。
  105. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生のお言葉を返すようで失礼でございますけれども、この前の国会、八十四国会におきましても、私どもいろいろな委員会でこの問題も指摘されまして、組合の方の御調査によれば四十万ヘクタール不良造林地があるという御指摘でございますが、私どもの方の五十二年四月一日の調査によれば、四万五千ヘクタールというふうに押さえておるということを申し上げたと思いますけれども、その辺もし先生の御質問にお答えしていなかったとすれば、いまここでもう一度申し上げでおきたいというふうに思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  それから私どもはこういう成績の悪い造林地につきましても、できるだけ早くこれが解消するような形で、今回の改善計画全体を並行推進する中で、これらの解消についても図ってまいりたいということを考えております。
  106. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大臣にもよく聞いておいてもらいたいのですよ。大臣は単純に、いや全林野は寄生虫だ、この虫がいるから造林をしても木は育たぬしというようなことを、大臣になってからは余り言わぬようですけれども、これはよく聞いておいてください。  そこでこの信憑性をただすために、先日林野庁から資料を提出してもらったわけでございますが、これによりますと、昭和五十二年四月一日現在の人工林面積が二百五万ヘクタール、その中で生育不十分な造林地の面積が一万五千六十ヘクタールですね。それから早期に保育を要する造林面積が三万二百ヘクタール、これを二つ足すとなるほど四万五千二百六十ヘクタールということになるが、実際この程度の寡少な面積ではないのじゃないですか。長官どう思いますか。この面積は、林野庁が勝手に決めて、全国十四の局に、旭川営林局は何ヘクタールとか、あるいは秋田営林局は何ヘクタール不良造林地があることにしてと林野庁が割り当てをしたわけではないのでしょう。どうなんですか。割り当てをしてないとすれば、全国三百五十一ある営林署をもとに、あるいは具体的には担当区の段階からだんだん積み上げたものが各局ごとの面積、あるいは最終的には林野庁全体のトータルということになるわけですね。この点は、長官として点検したことがあるのですか。いや、不良面積が少ないほど結構ですよ、少ないのはけしからぬというわけではないですからね。これでおさまっていれば大したものですけれども、実態はどうですか。
  107. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生が御指摘になりました四万五千ヘクタールは、林野庁が造林地がいいか悪いかよくできているかどうかの判定の基準は一応指示いたしておりますけれども、その基準に基づきまして、それぞれの営林局が調査したものを集計したものでございます。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから実態はどうなっておるかというのですよ。  それともう一つは、林野庁の人工林面積の現況というのは、たとえば過去十年とか二十年の毎年毎年の人工林の新植面積の累計とは非常に大きな差が出ておるわけですね。何か途中で操作をしているのではないか。たとえば、人工林であるものがもう現況が人工林の形態をなしていないというような場合に、いつの間にかその面積を外してしまって、残りの人工林面積が現在幾らという、そういう操作でもしていなければ数字が合わないのですね。
  109. 秋山智英

    ○秋山説明員 お答えいたします。  国有林の経営につきましては、その基礎となる森林施業計画というのを五年ごとに作成いたします。これにおきましては、各林小班ごとに現地の実情を調査しまして、森林調査簿にこれを載せるわけでございますが、その中におきまして、先生ただいま御指摘ございました過去におきまして人工造林をした地域がございますが、気象災あるいは病虫害等によりまして、この人工林の中で成績が全く悪いものにつきまして、さらにその後非常に優良な天然林が入ってきておる段階におきましては、それを天然林として森林計画をつくる段階で組みかえをしておる例はございます。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、具体的にお尋ねしていきたいと思いますが、林野庁から提出されました局別の不良造林地の資料の中で、私の地元でもございますから、実例として旭川営林局管内について取り上げてみたいと思います。  旭川営林局の場合には人工林面積が十四万六千ヘクタールでありまして、その中で生育不十分な造林地が七百六十ヘクタール、早期保育を要する面積が二百三十ヘクタール、合わせて九百九十ヘクタールがいわゆる不良造林地ですね。だから、全国的に見ると成績が非常にいいのですね、不良造林地が少ないわけですから。それを、旭川局管内には二十五の事業実施の営林署があるわけでございますが、この営林署ごとに見ると非常に問題があるわけですね。三分の一ぐらいの営林署には不良造林地が一ヘクタールもないのですよ。これはもう全部良好ということになっていますからね。不良林地があるとみなすところも非常に面積が少ないわけです。これを一々検討する時間はありませんが、たまたま、ことし、国会の閉会中に現地調査をしました際に、旭川営林局管内の幌加内営林署並びに富良野営林署に案内をしていただきまして、具体的に造林地の視察をしたわけです。幌加内営林署は生育不十分な造林地が、当局資料によると十四ヘクタールということになっておるわけです。それから富良野営林署管内においては不良造林地は全くないという状態ですが、たまたま私がこの営林署の御案内をいただいて調査をしたその林班、これは詳しく言えば何林班という資料は後でお見せしてもいいですが、現地に行ってその造林地を見て、これはもうだれが見ても不良造林地であるという判断が一致する林班です。それは、富良野の場合、ゼロというものじゃないですよ。相当広大な面積があるわけですね。成林不可能という状態ですね。あるいは幌加内において私が見た一林班の面積だけでも十四ヘクタールを超えているわけです。これは全部不良で成林の見込みがないということになっておるわけですから、林野庁が末端の事業所の報告をうのみにして集計した場合に四万五千ヘクタールしかありませんと言うのは全く無責任じゃないかと思うのですよ。やはり長官といえども、担当部長であっても課長であっても、できるだけ機会をつくって、そうして全国の各営林局とかに、あるいは造林の状態等についても計画を立てて現地の調査とか指導をやるという必要があるのじゃないですか。それを全然やっていないから、上から不良造林の数字を割り当てしているのじゃないかというそしりが出てくるのですよ。こういう点は非常に問題じゃないですか。  だからやはり、現在の二百十五万ヘクタールの造林地というものは、この実態がどうなっているか、これを区分した場合に、これはもうすでに成林をしている、あるいは中途であるけれども十分な保育をすれば成林が期待できるとか、この造林地は現況においてはもう手の下しようがない、そういう態様というものは幾つかあると思うのですね。その区分というものを何らかの基準によって全国統一的な判断をさせておるのかどうか。その点はどうなんですか。
  111. 秋山智英

    ○秋山説明員 お答えいたします。  私ども、生育の不十分な造林地並びに早期に保育を要する造林地につきましては、先般の八十四国会でも御説明申し上げましたが、一応私どもの基準を定めまして、これに基づいて昭和五十二年四月一日現在の生育の不良な造林地等について調べた次第でございます。なお今後におきましても、この基準を中心にして調べていきたい、かように考えておるところでございます。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、せっかく金と労力をかけて造林をしたその造林地を、これはもう成林不可能ということで、不良造林地として勝手に帳簿から除外してしまうというやり方は問題があるのじゃないですか。知らぬ間に勝手にやるところに問題があると思うのですね。現在これだけの造林地があるが、ことしの調査によると、たとえば一千ヘクタールというのは造林地としてもう成林の見込みがないということをまず確認して、しかる後、これを国有林の区分の上から人工造林地としての価値がないという場合に一体どうするか。まさかすぐ天然林に帳簿を移すわけにもいかないでしょう。そういう点はどうやっているのですか。これがごまかしなんですよ。ないないと言っているのは、毎年のように適当に帳簿から落としてしまうわけだから、悪いのをふるい落としているから不良造林の残りがないように表面は見えるが、しかし、せっかく貴重な費用を投じて、労力を費やして育苗をする、それをまた造林地へ運んで植栽をして、そうして五年とか十年形式的な下刈りとか手入れをする。それがまことに不十分ですから、クマザサに覆われたり、つるに覆われて成林ができない、死滅してしまう。その間の手抜きというものは責任重大だと思うのですがね。そうなったものを勝手に人工造林面積から帳簿上落としてしまって、そうして不良造林地というものが四万五千ヘクタールしかありませんというようなやり方は、まことに無責任なやり方じゃないですか。  では、その帳簿から落として除外したものはどこに行っているのですか。どうなっているのですか。
  113. 秋山智英

    ○秋山説明員 お答えします。  先ほど帳簿から落とすというのは、毎年落とすということではございません。これは五年に一遍の森林施業計画を作成する段階で、現地におきまして検討いたしまして、すでに非常に優良な広葉樹等が生えておる場合で、それを伸ばす方がより森林をよくするためにベターであるというふうな判断の上に立ちまして、それは天然林に編入するわけでありますが、普通の平常時におきましては、毎年造林専業を実施しておりますので、造林事業を実施した段階におきまして森林の実態を毎年把握しております。これは決してそれを帳簿上から天然林に落とすというようなことはしておりません。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、過去二十年間に人工林の台帳から除外した面積はどのぐらいになっていますか。
  115. 秋山智英

    ○秋山説明員 お答えします。  これは林班沿革簿から調べてまいりませんとすぐ直ちには出てまいりませんし、また国有林から民有林の方にいろいろと所管がえしている人工林等もございますので、それらも含めまして検討しませんと数字が出てまいりません。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、聞いていますか。こういうでたらめな国有林の管理というものが行われているのですよ。これは決して国有林野労働組合が関係してこういうことをやっているわけじゃないですよ。いわゆる管理者なる地位にある人たちがそういう方法を知恵をしぼって考えて、表面上はいつまでたっても不良造林地は少ないというようなことを擬装するやり方を歴代続けてきたと言われてもこれは差しさわりないと思うのですよ。こういう点は、既往をいつまでもとがめるわけじゃないですよ。しかし、国有林が危機に当面しておるというこの時点に立って、わざわざ法律までつくって、これから十年、二十年の将来にわたって健全な国有林を立て直すという法律に基づいた計画が策定されたわけですから、やはり計画を立てた以上は、再び過ちを繰り返すというようなことであってはならぬと思うのですよ。それには、やはり戒めとして、現在までの人工林、つまり造林政策というものの大きな欠陥とその犯した責任というものはこれは明らかにしてもらわなければいかぬと思うのですよ。貴重な国費を費やして、そうして所期の目的を達することができない。そういうものがやはり直接間接に累積して、年間一千億を超え、単年度収支からいけば事業上のマイナスというものがつくられておるわけですから。  そこで、最初に戻りますが、現在の人工林の現況の調査とそれからその区分、そういうものはやはり速やかに、先ほど長官の言われた認定基準なら基準というものを早期に策定して、同一の物差し、尺度をもって、全国三百五十一の営林署長に対して、正確な調査、判断をやりなさいという指示を与えて、これは迅速に実行すべきだと思うのですが、その点はどうですか。
  117. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 造林地の成績の悪いものについては、ただいま御説明をるるいたしましたように、私どももそれなりに把握はいたしておりますけれども、さらに、ただいま本年の春からいま時分にかけましてそれぞれの営林局、営林署におきまして造林の事業を実行中でもございます。したがいまして、この事業が一段落いたしました暁に、私どもといたしましては、一定の基準に基づいた実態把握をやってまいりたいというふうに考えております。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことを行えば、これは設置法七十条の第一項に掲げてある、営林署というものは国有林の造林並びに営林を行う事業体であるということがはっきりしてくるのですよ。  造林もそうですか、営林というものは全くやってないですね。どこまでが造林の範疇であるかということに議論はあると思いますが、地ごしらえをして植えつけをする、それから七回とか九回とか、下刈りをやるとかあるいは幼齢木が相当伸びてくれば除伐をするとか、そういういわゆる保育というものはやはり営林ということにもなると思うのですね。それが最近は、予算上の制約を林野庁としてはまず第一に挙げておりますけれども、予算がないからできないと予算範囲で打ち切ってしまうから、計画の六〇%とか七〇%しかできない。わずかな予算目標を消化しようとすれば、安上がりの請負作業へ請け負わせる。なるほど表面は安上がりかもしらぬけれども、施業結果というものはまことに不十分で成果が上がっていないというようなことが繰り返されているわけです。だから、造林地によっては五回で下刈りをやめるべきでない、あと二回ないし三回行えば幼齢木がクマザサの上に頭を出す。それは北海道で言えばトドマツにしてもアカエゾにしても、しんが強いですから、ササの上に頭をちょっと出せばあとはどんどん伸びるが、いつもササで頭をなでられておると上へ伸びるわけにいかないのです。これは内地府県の杉にしてもヒノキにしても同様だと思うのですよ。そういうことを見届ける者がいないのでしょう。一体営林署の中において、造林地の見回りとか、天然林でもいいですけれども、山の見回りというものはだれがやることになっているのですか。
  119. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生十分御存じかと思いますけれども、営林署の出先に担当区がございます。担当区がそれぞれ自分の管内の国有林につきましては、順次、日常業務の合間、合間に巡視をいたしまして、森林の状況なり造林地の状況なりを把握することになっております。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは本当ですか。本当に担当区主任の責任任務ですか。担当区主任の管轄の範囲というものは、当然作業もやるわけですが、常時巡視し、見回りをして、問題があったら生育の経過等について報告しろ、これが君の責任ですよというふうになっていますか。私の知る範囲では、担当区主任の任務というのはそこまでは及んでいないというふうにも聞いておるわけですが、その辺が非常に大事だと思うのですね、任務分担というものが。
  121. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど来話が出ておりますけれども、営林署が管轄しております山の管理経営の責任者として指揮、命令をいたしますのは営林署長でございます。したがいまして、第一次的には、私が先ほど申し上げましたように、担当区主任が自分の受け持ち区域の山についてそれぞれ責任を持ってその状況を把握するという責任が担当区主任にもあろうと思いますが、営林署の単位で見た場合の責任者となれば営林署長でございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、営林署長は本署の部屋に座っておればいいわけですか。営林署長といったって山を管理したり回らなければならぬけれども、一年じゅう組合と団交ばかりやっているから部屋の外に出て山を見る暇がないというふうな極端なことを言うのがいるが、営林署長は署内におって号令だけかければいいということになっているのですか。ちゃんと規程があるでしょう、任務規程というのが。どうなっておるのですか。営林署長はわざわざ山の中に入る必要がないとなっておりますか。
  123. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 営林署長は当然自分の職務として、また責任として、自分の管内の山につきましては的確に把握する責任は持っております。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、署長なり造林課長なりいわゆる管理者と言われるクラスの職員が、たとえば在任中一年間山の中に入っていなかったという場合はどうなるのですか。
  125. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 各営林局、営林署の三百五十一の実態がそれぞれその営林署によって違っていると思いますけれども、営林署長の中に、もし三百六十五日一日も山に行かない営林署長がいるとすれば、これはある意味で職務を十分やっていないということにもなろうかと思いますが、私どもとしては、各営林局長の指導のもと、各営林署長はそれぞれ自分の骨内の国有林の管理経営には、日夜鋭意努力しているものというふうに考えます。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 とにかく国有林野面積が七百八十万ヘクタールある。営林署の数が、熱田は別途の営林署ですが、三百五十あるということになれば、少なくとも一営林署二万ヘクタール以上の平均管理面積を持っておるわけですから、毎年二万ヘクタールを、どういう形でも一回り見るなどということはなかなか容易ではないのですね。そうなれば、やはり担当区とか現場事業所の体制の強化、整備というのは大事だと思うのですね。いま平均すると、担当区の定員内職員は主任を入れて一・五人ないし二人でしょう。これでは、担当区主任、おまえに全責任を任せると言われてもなかなか十分な仕事はできないのですね。抽象的に人が多過ぎるとかいうことをよく宣伝の具に用いておりますが、実際八百万ヘクタールに及ぶ国民の財産である国有林を維持、管理するということになると、これは容易ならぬことなんです。しかも都会の中にあるわけじゃないでしょう。これは奥地林が多いですからね。だから、現地へ行っても大事な人工造林の林班は入林できないですよ。まず歩道がないのですからね。署長に、一体あなたはどうやって山へ見回りに入るか。いや先生、それはクマザサを分ければ入れます。そんなことでは、クマザサを分けて急峻な山腹の造林地の実態を見るなんということはできないと思うのですよ。昔は林道じゃなくて、作業上必要な歩道とか作業道というのがあったでしょう。そういうものは予算上の都合か何か全然ないですからね。私は子供のときから山歩きが好きだったからいまでも歩けますけれども、中央から来たひょろひょろした署長なんか、山の中へ実はそういう状態で入れないですよ、タケノコ取りとかキノコ取りくらいは入れるかもしれぬが。実際に設置法七十条にうたわれた造林と営林を責任を持って遂行しなければならないという肝心な責任者の署長にしても——何も私は特定の人物を非難するわけじゃないのですよ。こういう点を根本的に改めなければいけないと思うのです。  次に、造林の状態にしても、たとえば昨年地ごしらえが完了して新柄をしたアカエゾの林班を見たのですけれども、一年たった現況でちょうど全体の半分が活着しないで半分枯死しておるわけです。請負に付してなるほど安上がりでやったかもしれませんが、造林の目的というのは、安く植えれば全部枯れても構わぬというものじゃないでしょう。一年後に半分が枯れてしまった、こういう場合、枯れたからしようがないということでいままで済ましてきたわけです。しかし苗木は生き物ですからね。将来これが生育を期待するということになれば、ずさんな植え方をして一年後に半分活着しない、枯死したという場合において、契約上どういうことになっておるわけですか。一年たって半分以上も枯死してしまったような場合には、その請負業者の責任において補値するとか状態を回復しなければならぬというような約定等が具備されておるのですか。成り行き次第、苗木の直根を切ってしまってなるたけ植えやすくしろ、来年は枯れてもしようがない、とにかく親方日の丸だから余り心配しなさんなということで、安上がりの請負ばかりやっておると、造林事業にしても保育にしてもあるいは生産面の事業にしても、安上がりだけを強調して造林や営林をやるということになれば、現在のような状態に国有林が転落してしまうわけですね。この辺が大事だと思うのですよ。そこらのけじめは一体どうやっているのですか。
  127. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生からいろいろな御指摘がございましたけれども、まず初めに担当区の現場の人が非常に少ないという御指摘がございました。私ども現在考えておりますのは、確かに担当区には担当区員のほかに全国的に二名以上配置されているところはそうたくさんございません。そういう意味からもできるだけ担当区の職員をふやしたい、現場、第一線を充実したいというふうに考えております。そのためにも、ただいま営林局あるいは営林本署の管理部門におられる方々をできるだけ現地に配置いたしまして、現地の営林の監督が十分できるような体制を今後ともとっていきたいと考えております。  それから造林の問題でございますけれども、いま御指摘のような個所がたしかあったやに私も報告は受けております。こういう問題につきましても、なぜそういうふうになったのか原因を十分調査し、その対策は講じなければならないというふうに考えておりますが、私どもも造林は安上がりだからよろしいということでは決してございませんで、先生もおっしゃいましたように、いい山をつくるということ、そしてそれにはある意味では効率的、能率的にやらなければいけない。その範囲の中で私どもは技術を生かして今後いい山づくりができるような努力をさらに進めてまいりたいというふうに考えております。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、よく農林大臣も、直営直用と請負の労働生産性の問題というものを強調されますね。請負の場合は、造林に一例をとると、この苗木は営林署が苗畑で育苗したものを現場へ持っていくわけでしょう。だから、請負に付す場合の新植は、地ごしらえを含めても現場の条件整備作業とそれから植えつけだけでしょう。そうじゃないですか。苗木はちゃんと営林署でりっぱなものが育ててある。だからその苗畑から現場まで運ばなければならぬ。それを請負が、地ごしらえも請負でやる場合もありますから、そこへ規定に基づいた植えつけをする、それがいわゆる請負による造林でしょう。だから単純な単価計算ができるわけですね。  ところが、直営直用の場合には一体どういう生産性の計算をしているのですか。現場の直営直用だけで、その作業に参加した人員だけの人件費とか口数とか資材費というものだけを集計して、それで直直の一労働単位の生産性というものがどうであったとか、賃金から言うとどうであるというような、そういう比較を請負との間においてやっているのですか。それとも、国有林は特別会計方式でやっておる事業ですから、長官は特別会計の人件費になっているかあるいは一般会計から出ているか、そこは長官自身がよくわかっている点ですが、この特別会計による公共企業体事業ということになれば、公共企業体が直接行う実施事業については、直接現場労働に参加していない職員の賃金等も、それは間接経費というようなことで計上するかもしれぬが、そこで根本的な労働生産性の計算方法が全く異なっていると思うのですよね。そういう根本的な相違というものを全く無視して、請負は安上がりだからこれでいった方がいいとか、赤字解消になるとか直直はだめなんだという、わかっておってそういうことを言わないで、ただこっちの安上がりの方の請負でいけばいいんだというようなことでやっては、これは取り返しのつかぬようなことになると思います。  それからまた生産事業にしても、たとえば全国で伐木手が七千名おるという場合に、約半数の三千名以上が白ろう病の認定患者ということになって、直接伐採事業に参加できない。しかし、その人たちもやっぱり伐木手としての人員の中に入っているわけですからね。だから、半分病人になって働けない数まで入れて、そうして一人の労働単価がどうなったとか一人当たりの生産性がどうなったということをもし計算して請負と比較をしているということになれば、これは全くとんでもない話になるわけですね。そういう基礎的な計算、労働生産性の比較にしても、どういうふうにしてこうなったということがいままで明らかになっていないのですね。ただ単純に、もう国有林は一千億毎年赤字が出る、これをだんだん消滅していくためには直直をやめてそうして請負を拡大した方がいい。しかしそういっても、ことしの国会の質疑で長官は私の質問に答えて、造林関係の事業については慣用直営方式が全体の約三五%、請負が六五%——もう造林関係もほとんど実態が請負に移行してしまっておるわけですね。素材生産事業というのは、これは林野庁として技術者もおるし機械装備もあるし、これは全面的に請負というわけにいかぬので、この点については直用直営が約六〇%、請負が四〇%ということになっていますね。これが限界だと思うのですよ。それにもかかわらず、この改善計画の内容を見ると、労働基本問題協議会が意見書を政府に出したですね、これは答申じゃないですよ、意見書ですよ。この基本問題協議会の意見を尊重して、これからの国有林野の事業というものはいままで以上に請負に移行させるということがわざわざ書いてあるでしょう。そんなことは、国有林野事業改善特別措置法というものはそこまでは何も示していないわけですからね。何のために国有林だけが、林野庁だけが、根拠のない基本問題協議会の意見書なるものを、幸いにしてこれを尊重して、今後ますます無責任な安上がりの請負に移行させるというようなことは私は重大問題だと思うのですよ。それではことしの一月一日、何のために新しい常勤制度と称して、二万九千八百人を超えるいままでの日給制の常用あるいは一部定期のいわゆる国有林野事業の一番大事な基幹作業員を月給制に今度は位置づけをしたかという問題になるのですよ。こういうりっぱな有力な優秀労働力というものを確保するというのが改善法の目的の一つでしょう。じゃ、そういう確保された安定的な基幹労働者というものにどれだけ国有林野事業の仕事の実行を期待して、自分たちでやれるものは十分にやる、それでもなおできない場合には補完的に臨時雇用を充足するとか、場合によってはまた一部請負に付するということは当然これは経営上あり得ることですが、わざわざ一月に二万人近い、これは公共企業体の中では林野庁だけが行えた業績ですからね。そういうりっぱな優秀労働力というものを確保しながら、今後ますます基本問題協議会のその意見を尊重して請負にしますということになれば、国有林野事業が自分で確保しておる優秀な職員あるいは基幹労働者というものに何を期待して何をやればいいのですか。それは遊ばしておくのですか。こういうところに重大な矛盾があるのじゃないですか。  この改善計画の内容というものは非常に抽象的な作文にすぎませんが、これはやはり改善計画の毎年毎年の事業実施に当たって十分内容というものを検討し直して、この最初に出された計画に誤りがあれば、これは十分に修正、是正して、そうして本来の目的に合致したようにやりますということにならぬと、これは大変なことになると思うのですね。そういう点については農林大臣としては謙虚にどう考えていますか。
  129. 中川一郎

    中川国務大臣 まず直営と請負の基本的な問題についてお話がありましたが、直用の方が高い、請負の方が安い。平均的に大体倍高いコストになっております。計算の方法が違うのじゃないかという御指摘でございますが、そのような作為的な計算はいたしておりません。同じ作業をするのに、造林でもあるいは間伐でも大体倍高い、能率が半分しかない、こういうことが言えると思うのであります。  それから白ろう病の問題について御指摘がありましたが、白ろう病の問題も、民間の方が過当な労働をやったからたくさん白ろう病がいるような御指摘でございますが、むしろ逆に国有林の方が白ろう病患者で手当てをしなければならぬ人が多いということで、このことも御指摘は当たらないと思います。  それからこの問題について、基幹作業員を常勤化して遊ばしておくのかということですが、遊ばしておくわけじゃありませんで、せっかくやりましたのは、やはり職場にいる以上生きがいと誇りを持たして、不安定な身分よりは安定な身分の方がよいだろうという気持ちでやったものであります。遊ばしておくわけではありませんで、これらの人には十分働いてもらう場をつくらなければいかぬ。  それから今度の答申によって直営慣用を変更さしていくんじゃないかという御指摘ですが、経済的に見てよりよい直用、よりよい調質ということを目標にしておりまして、いまのようなだらしないことをやっておれば、だんだんだんだん請負でやっていかざるを得なくなるだろう。ですから、直直についても十分能率が上がる努力をしてもらいたい。むしろこっちの方が能率がいいということが明らかになれば直用直営がふえるのであって、意図的にどっちを減らすということじゃなくて、経済的にどっちがいいかということでございます。これは法律からはみ出しているじゃないですかということですが、合理的な経営とか経済性を上げるということは法律以前の問題であって、経営を担当する者としては一番いい経営はどういうふうにあるかということに裁定を置かなければ、国民の財産を預かっているわれわれとしては責任を負えない。やはり国民の財産でございますから国民が納得するようなやり方をやっていきたい、こう思う次第でございます。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、あなたしらばくれて言っているのじゃないですか。あなたはわれわれのように素人でなくて、昔北海道開発庁の職員をやって、大野開発庁長官の秘書官でかばん持ちなんかやったことはあるし、それから北海道開発予算を通じて、公共事業の単価の計算とか人件費の配分とかその管理費をどうするかということを自分で事務屋として手がけた経験があるでしょう。その場合、国有林野事業というのは一般会計でやっておるわけじゃない。国有林野事業特別会計法に基づいて特別会計方式でやっているから、これが公共企業体ということになるのですよ。だから、だけはどっちについているかわからぬが、とにかく林野庁の上級幹部から下級に至るまで特別会計の事業費で人件費は全部支弁しているわけです。そうなると、給料をもらうということになれば、造林の経費も持たせなければならぬ、あるいは素材生産とかその販売の経費の中にもこれはしょってもらわなければならぬということになるでしょう。ここに単価の計算上とか生産性の算定上の問題があるのじゃないか。請負に付する場合には、たとえば植えつけの造林費が一ヘクタールにつきたとえば三十名あればいいということになれば、一人の一日の労働賃金が七千円とか八千円とかというふうに計上する。それから全体の請負事業費のたとえば五%なら五%というものは別途事務費に計上する。これは単純な計算だから、ヘクタールとか一人でそれを割って、これが労働の生産性でございますということになると、その計算方法が全然違うわけです。特別会計の場合にはこういうふうにやっていますから、実際にその現場で働いておる職員や作業員の一人当たりの経費単価というものは、山で働かぬ偉い給料の高い人のものを相当しょっているわけだから、その点を国民の前に明らかにしないで、ただ請負は一人当たりの生産性が高い高いと——それから白ろう病の場合も、七千人の半分が白ろう病として認定されて、国家公務員の災害補償の取り扱いを受けなければならぬという非常に気の毒な状態になっておるでしょう。しかし、身分上はやはり林野庁の職員であり、それは依然として伐採手であるということになると、伐採手の総員で生産高を割れば、じゃあ一人当たりは非常に生産性が低いじゃないかという答えになるのですよ。請負並みにやれば、病人は全部除いて実際に現場で就労した人たちの労働の成果というものを一人当たり幾らということにすれば、そんな変わりは出てこないのですよね。そういうやるべきことを、知らしむべきことをやらないで、経費が倍も高い、だから請負にした方がいいんだということは、全く子供だましのような議論で、それがまかり通ると思っておっては、これから五十年、百年、二百年にわたる長期的な国有林野の経営というものは責任持ってできないじゃないか、能力がないじゃないかということになるわけですね。そこをよく今後反省して改めるものは改めていってもらいたいと思うのです。  それから最後に、これは昨年の十二月二十三日ですか、閣議決定と称して行政機構の縮小の一環として営林局の場合には、これは設置法の改正で四局を対象にするとか、営林署の場合には、これは五十三年度に北海道を除く九営林局単位に一署ずつの九署を廃止の方向に進める、将来はいつまでということはわからぬけれども、三百五十一のうちの一割程度は、この改善計画にも書いてあるけれども、この改善計画実施の状況をにらみながら縮小の方向に持っていくということが決まっておるわけですね。とにかくいきなり第一年目に一局一署で九つの営林署をなくしてしまおう。こういう無謀なやり方というのは、これからのこの改善計画実行の上から見ても、一番大事な設置法も強調しておること、営林署というものが国有林野の造林と営林を担当していかなければならぬ、民有林の造林と営林を指導しなければならぬ、国有林の立木の生産とか販売を営林署はやらなければならぬ、民有林の立木の取得とかそういう面についても、営林署というものは国有林野事業の重大な基礎的な事業の主体的な実施主体として積極的に仕事をしなさいということはもう全然行われておらぬ状態の中で、さらにまた、なお追い打ちをかけるように、いきなり画一的に一署減らすこの影響というのは甚大なわけですね、現地調査をやっても。  たとえば高知県の馬路営林署の場合は、あの村の人口は千九百六十二名しかいないのですよ。その中で肝心な営林署が一つ廃止されるということになれば、その影響は削減される営林署の署員並びに家族だけにはとどまらぬでしょう。その地域社会経済的あるいは産業上の問題とか行政上にも、もう重大なむしろ致命的な影響を与えるわけですよ。これがなくなったことによって馬路はもう社会形成ができないというようなそういう場合も出てくるわけですからね、人口二千にも足らぬような小さい山村の場合には。  そういうことを、ただ何も無計画に、とにかく高知営林局で一つつぶせ、熊本営林局の場合には離島の五島をなくせというようなことを一体どこで考えて天下り的にやり玉に上げてくるか、その真意がわからないですよ。幸いというか、農林省設置法の改正法案の審議の際、あるいはまた国有林野事業の改善特別措置法の両案を修正成立をさせる場合の審議の過程、あるいは農林水産委員会や内閣委員会の法案成立に附帯した附帯決議等においてもこの点は十分に指摘をしてありますし、この点は大臣も明快に、営林署廃止といっても政府や農林省が権限をもって一方的に廃止するということは全然しません、歴史的に長い関係を持ってきた、特に山村等における営林署の廃止については一方的なことはしない、あくまでも現地と十分話し合いをして、理解、協力を得ることができた暁に方針に基づいて廃止をしたいということを繰り返して言っておるわけですよ。この点だけは中川大臣としても明快に言っているので、その点は私も了としておるわけです。しかし、大臣だけがそう思っても長官とか各部長が、いや大臣、これは何が何でも来年一月に看板を外さなければいけませんよということになると、単純なところがある中川農林大臣は、そんならやっちまおうか、青嵐会ばりでやっちまおうかということになると、大臣考えていない点も強行されるということになるわけですから、この点は本当に国民の国有林という基本に立って、いま大変なときである、営林署を一つ二つなくしてこれで国有林が立ち直るものじゃないですから、ますます営林署に力を与えて、いままで以上二倍も三倍も、やっていなかった仕事がやれるような体制の整備強化というものの方向にこれを持っていくということが一番大事なわけだから、その点はくれぐれも大臣に私から申し上げまして、これについて特に大臣としての御所信があれば率直に述べてもらいたいと思います。
  131. 中川一郎

    中川国務大臣 私から申し上げるまでもなく、国有林が財政上非常なピンチになっておる、このままでいけば造林も林道もできないで、山を食って職員を抱えていかなければならぬというひどい状態です。山を大事にするとすれば月給が払えないんじゃないかという——これは残念ながら昔から国鉄、国有林、米・食管は悪の三Kと言われていよいよ悪質になってきたことも間違いない。国鉄も食管も大変です。諸悪の根源だと言われる三Kが待ったなしの状態になっていることは御承知のとおりでございます。  そこで、何とかしなければいかぬということで、国鉄ならば国鉄運賃の値上げ弾力化等で対処できますが、国有林にあっては値上げもできない。さすれば二つしかない。一つは、一般会計、国民の血税とも言うべき大変な税金を投入する。そしてまた、借り入れ等の国の手当てもしなければならぬ。もう一つは、国有林内の体質の改善をしなければいかぬ。この両々相まってなされるべきものであって、片方だけでできるものじゃない。その一環として、行政が、道路、交通、通信、いろいろな意味で便利化された今日においても古い時代の三百五十一の営林署をもってして、そして国民に税金を納めなさい、こういう仕事をやっていることは当然ですと言えるだろうか。やはり十カ年の計画を立てるならば三百五十一の約一割、三十五の営林署を、北海道にあっては五つの営林局を一つにということを——血のにじむような御理解をいただいて北海道はできました。北海道を除く九つの営林局については、一営林署をとりあえず改廃をお願いできないか、こういうことでございました。  これはあくまでも話し合いでございますが、話し合いの場合、二つ問題が出てまいるわけでございます。廃止することによって何か山を粗末にしたのではないかという議論が一つあるわけであります。治山が大事だ、造林が大事だというときに営林署を持っていってしまう、これはまさに話し合えばできることで、そういった合理化をやるのは、造林や林道や治山、そういった大切な問題をやるための整備であって、そのことによって事業が減るというようなことは断じてない。ただ心配になりますのは、御指摘のありました過疎問題でございます。過疎問題も、いま林野庁の責任ではありませんけれども、社会的な責任である、国家的な全体の責任である、これをないがしろにするわけにはいかぬというので、営林書がなくなった場合の過疎問題について、どういう姿になって、これを穴埋めするのにはどういう方法をやるということの話し合いをぜひ続けて、そして国家目的も達成していきたいし、過疎問題についてもできるだけの対応をして、理解と納得を得るように血のにじむ努力をして、今日の営林局あるいは林野庁の置かれている立場を切り抜けていきたいというのが基本的な考え方でございます。  ただ、ここで私が問題にしたいのは、反対のための反対というのがあるのではないか。特に労働組合の皆さん方が合理化反対闘争の一環として理屈抜きに全部だめだというような姿勢であるとするならば、これは反省してもらわないと、やはり合理化計画というものは労使一体となってやっていかなければ、労働君の皆さん方もこの難局を乗り越えなければ、自分たちだけが避けて通れると思っておったら大間違いである。厳しい問題のしりぬぐいをきちっとしておきませんと、最後にかぶってくるのは労働組合の方である。したがって、労働組合の皆さんも、そういう反対のための反対ではなくて、厳しい情勢を踏まえてともどもに汗を流す、こういう姿勢をお願いしたいなと思う次第でございます。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま大臣が労働組合の反対というようなことを言われましたが、問題をすりかえないでください。九営林署廃止の対象になっておる地元町村がこれに対してどういう対応をされておるかということは、これは大臣もすでにわかっておると思うのです。ある場合には大臣として担当部長等を地元に派遣して、現地で十分話し合いをするとか、あるいはまた地元の意見を聞くとか、実態の調査をさせますということで、大臣の意思で、たとえば馬路営林署関係等の調査に担当部長も出向いておるわけです。それが、大臣の指示で何が何でも廃止しますという伝達に行ってこいといってやったものだか、本当に地元の村長を初め住民の皆さんの意思がどうであるかとか、果たして大臣が曲解しているように全林野の組合だけが廃止反対をやっているかということは、現地へ行ってみなければわからないわけですね。そうなると、現地に出向いた場合に、いかなる目的を持って来たのかということを信用してもらわなければならぬですよ。ただ形式的に行って、いやもうみんなの言うことは聞かぬでもわかっている、時間が来ればだめなんですよと宣告的なことで行くのなら、何も行く必要はないのです。だから、大臣も言われたとおり、馬路村だけを例に挙げるわけではないが、どれを廃止してはいけないというのは一つずつ大きな理由はありますけれども、とにかく現在の人口が二千名を切っておる全くの山村であって、営林署設置の歴史も日本では古いわけですね。そうして馬路営林署の場合には、天然林から人工林の経営と伐採に入る大事な時期なわけです。そういう場合に、簡単にこれはもう看板を外せ、後はどうなっても構わぬぞというような冷酷なやり方は、これはやはり伝統ある国有林、林野庁として最初からとるべきでないのですよ。何もここで私は大臣と議論する気はないが、問題をすりかえて全林野労働組合が反対しておるのだからということでは、現地の実態、全く違うのですから、この点はやはり大臣の指示で現地に出張した担当部長あるいは現地の営林局長から実態を聴取して、今後一方的な強行はしないという大臣の約束が正しく守られるようにしてもらいたいと思います。これは別に答弁は要りません。
  133. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 野村光雄君。
  134. 野村光雄

    ○野村委員 最初に、きょうはせっかく久々に大臣おいででございますので、基本的な問題を二、三点お伺いいたしたいと思います。  大臣御就任なさいましてかれこれ一年たってまいりまして、振り返ってみますと、わが国農業にとりましても水産業にとりましても、大臣にとっては非常に目まぐるしい一年を過ごされたわけでございますが、そういう実質的な責任ある担当大臣として、農政をすみからすみまではだで感じられまして、そういう中から、かつて昭和三十六年に制定いたしました農業基本法、こういうものが現実とだんだんある程度変わってきているのじゃないか、こういうふうな観点から、何か大臣基本法の見直しということをお考えになっていらっしゃることを新聞で拝察をいたしたわけでございますけれども、私自身もやはり最近の国際情勢、国内情勢、こういう観点から、もっと現実に即応した中で前進的に見直すべきところは見直していく必要が当然あるのではないだろうか、こんな考えもいたしておるわけでございますけれども、大臣基本法見直しについての骨子といいますか、こういうものをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  135. 中川一郎

    中川国務大臣 野村委員指摘のとおり、就任いたしまして約一年にもなろうかといたしておりますが、当初就任したときも厳しいなとは思っておりましたが、一年間経験いたしまして、輸入の問題あるいは米の過剰の問題あるいは消費の減退の問題、さらには二百海里、山の荒廃というようなことで、農林水産業はすべて厳しいということをさらにひしひしと感じておるわけでございます。  その中で農業基本法の問題について御指摘がございましたが、昭和三十六年に判定された基本法ではございます。この基本法が、今日の農業に処していくのにそれほど支障になるかというと、支障になるという、どの条項がじゃまになるということではございません。ございませんが、事情が非常に変わっている中で、もっとよりよい基本法があるのではないか。たとえば農業の位置づけについても、単に食糧の自給度を上げる、国民食糧を確保するということだけじゃなくて、農村の地位というものが、人間及び社会形成上健全な地帯をつくっていくのには農村の果たす意味が大きいのではないか、そういう意味で、また国土の保全とか自然環境、そういうような使命を踏まえた農村の位置づけというもの、あるいは今日、国際化に対応して農業の体質を強くしなければいかぬ、その場合一番やはりネックになるのは、土地面積が少ないということだろう。その場合、土地面積を拡大するのには、農用地開発という問題もありますが、限られた国土でございますから、現存の農用地を移動していくということがスムーズに行われる。特に利用権の集積といいますか、利用権だけが移る、土地は手放さないけれどもというようなこともやっていくことが前向きにできるようなこと等について、さらによりよい法律があるかどうか。農業団体の皆さんからも農業基本法を見直してくれということもありましたので、団体あるいは学識経験者、政府が一回農業基本法を見直してみよう、こういうことで、改正するということを決めてやるというわけではありませんが、一回ひとつ考えてみよう。一方それに基づく昭和六十年度の生産と需要の見通しというのもございますが、これも昭和四十七年ですかをベースにしてつくられたものであり、その後事態相当変わっておりますから、これらについても並行して見通し等についても改正できるものなら改正したらと、こういうことで、両面についていま見直してみようと、こういうことでございます。
  136. 野村光雄

    ○野村委員 大臣のあらあらの構想が理解できたわけでございますが、私も確かに大臣おっしゃるような考えを一応持っておる一人でございますけれども、特に基本法の見直しと関連いたしまして、先ほど大臣もこれは触れておりましたけれども、需給の長期見通しというものを、新たにここでもう一回実情を把握しながら、これも一緒に見直して、そうして農業従事者にできるだけ長期的に安心して営農できるところの長期需給の見通しというものを策定して示す必要があるのじゃないか。ということは、私が申し上げるまでもなく、いよいよ十年を目途として発足いたしました水田利用再編対策、確かに十年の見通しではありますけれども、しかし実際にこの水田利用再編対策基本的な目的は、農産物の自給率の向上、こういうことを目的として出発をしたわけですが、いろいろな準備が足りない、急に米が余るからやらざるを得なくてやった、こういう事情もあったと思いますけれども、一つの実例でありますが、東北方面の青刈り問題、これが果たして自給率の向上という立場の中から適当であるかないかということ、こういうことを将来とも続けていくのがいいのか悪いのかということは十分これは再検討しなければならないのじゃないか。せっかくの美田を耕してつくっていながら結局は青刈りをしていく、実質的には刈り捨て、家畜の敷きわら、名目は飼料にはなっていますけれども、それらに対する畜産農家との結びつき、果たして飼料対策としての実質的な計画、そういうものがなされてこういう青刈り対策というものをしたのかというと、結局はやむを得ずして減反目標を達成せんがためにやらざるを得なかった、こういうのが偽らない実情だと思います。農家の立場にとって、せっかくのたんぼを耕しながらのこういう状態というものは、農家個人にとっても農政上の立場からしてもやはり見直して再検討しなければならないのじゃないか、こう思っておるのですが、率直な大臣のこれらの対応策、長期見通しというものについてお考えを聞きたいのであります。
  137. 中川一郎

    中川国務大臣 生産調整の中での稲の青刈りについては、われわれとしてはまじめな気持ちで対象作物として取り入れたわけなんです。というのは、水田では牧草をつくるよりも稲をつくった方が生産性が高いということで、自給率の悪い飼料作物としての青刈りが重要な意義を持つだろう、実際家畜の腹に入ってくれるだろうと思っておったのでございますが、青刈りして投げてしまう。重点作物ですから奨励金が高いことに着目して、そして実際飼料作物として使われないという実態であるとするならばわれわれの考えたことと違うわけで、国民批判も強い、そしてまた飼料の自給率向上に役立たぬということであるならばわれわれの意図をしたことと違いますので、ことしの実態をよく洗ってみて、もし御指摘のようなことであるならば趣旨と違いますから検討してみたい、こう思います。
  138. 野村光雄

    ○野村委員 ぜひ実態を再調査いただいて——現地の農業団体なりそういう立場からは、将来に対してこのままで果たしていいのかというのに対しては大きな疑問も出てきております。ぜひひとつ実態をあれして、農家が本当に作物を育成することに誇りと意欲を持てるような対策をすべきだ、私はこういうことで申し上げたわけでございます。  次に、農林省のこれからの、先ほど来申し上げております基本法なり自給率の長期見通しを立てていくというために一番大事なのは何といっても統計資料だと思うのでございますが、現時点でありますから統計資料にそういいかげんはないと私は思うけれども、ただ、これはもうすでに御存じと思いますけれども、この減反政策は農家にとってみますと、北海道で仮に三割なら三割転作しなければならない、こうなると、当然、農家の実際の立場に立ってみますと、ふだん余り米の反収の上がらない湿地帯とかまたは僻地とか、土壌的に余りよくない、反収の低いところをやる。これは農家の偽らない心情だと思う。そういう中で、平均反収というものは仮にこれだけだと言っていても、実際に残っているのは最高の反収を上げるところだけが残ってきている。こういうところに一律的に、統計上から来る計算だけでやっているところにも私は予想以上に米が——それは天候のあれもありますけれども、そういう点ももう少し実際の都道府県の実態、市町村との連携の中から正確な実態をつかみ直す必要が出てきているのじゃないか、私はこういう考えをしますが、この点に対してはいかがでございましょうか。
  139. 中川一郎

    中川国務大臣 減反をお願いいたしまして、現実問題としてはやはり農家の心理として、一番反収の少ない、生産性の悪いところからやりたいという気持ちだろうと思う。本来ならば生産性に見合った奨励金、たくさん米のとれるところにはたくさんの奨励金、少ないところには少ない奨励金、それを県段階でやるかあるいはブロック別でやるか、町村段階にするか、一筆一筆かということになってくると、どこが生産性が上がってどこが生産性がないというその把握が非常にむずかしいということで一律という仕組みをとらざるを得なかった。とった結果、実際面積は消化したが数量は消化されなかったという御指摘でございますが、実はそういうことも踏まえて、かなり生産性の低いところが生産調整されるだろうということで、百七十万トンに三十九万一千町歩というのは、かなりそういったことも横にらみでにらみながら面積をはじいたという経緯もありますが、ことし等の実績を見た上でまた三年後に見直すことになっておりますから、三年後の参考にはしたいと思いますが、ことし一年だけで、この仕組みについてはいやこれはまずいからということで変えるということではどうも農民の皆さんも混乱すると思いますから、三年の実績を見た上でまたその辺のところは研究してみたい、こう思います。     〔山崎(平)委員長代理退席片岡委員長代理着席〕
  140. 野村光雄

    ○野村委員 大臣、再三答弁にも立っていただきまして申しわけございませんが、これはどうしてもまたもう一つ基本的なことでございますから。  私が申し上げるまでもなく、再編対策を確実に推進しよう、こうすれば、申すまでもなく、圃場の整備事業というものを推進していかなければならぬ、これは農林省も再三おっしゃっているわけでございます。ところが大臣、実際のいま特に北海道あたりの現況を申しますと、いまこれから圃場整備をしなければならない残されている地点というのは、大半が非常に沢合い地帯でありますとか、この圃場整備事業に対する採択基準というものが、現行道営でも団地も二百ヘクタールを基準とされているわけですけれども、そういう二百ヘクタールという団地が、非常に高低が激しいとか、簡単にまとまらない。平たんなところはもう大体終わってしまった。残されているのは、どう見てもこの圃場整備事業を行う、圃場の整備をするのにはいままでの平たんのところよりも金が非常にかかる、こういう実情に置かれている。面積もまとまらない。これが現在の残されている、これから圃場整備事業を推進しなければならない現実の実態なわけです。そういう中で、最近聞きますと、反七十万ぐらいかけなければいま残っているところは高低は激しいし、もうできないんだ、こういうことでございますので、ぜひ円滑に水田利用再編対策を推進するための圃場整備事業を推進するためには、ひとつ補助率の改定、それからこの採択基準の緩和、事業費予算枠の拡大、こういうものを現実に即応して再検討してもらわなければ、いままで推進してきた平たんなところや、または採択基準がそれだけの大きな団地がまとまらない。高低は激しい、こういうことで金がかかる、こういうことが偽らないいま残された実態なんでございますけれども、これに対して思い切ってこれらの補助率の単価の改定なり、また採択基準の緩和、こういうものについて検討なさるお考えはないのかどうか、お伺いいたしたいわけです。
  141. 中川一郎

    中川国務大臣 掛場整備事業が今日非常に大事な土地改良となっておりますので、事業量用もふやす、予算等も意を用いているところであります。そして、御指摘の採択基準あるいは補助率の問題等のことも問題があることもよく承知しているつもりでございます。  そこで、採択基準については、必要があれば後でまた担当から御説明申し上げますが、かなり緩和の方向に今後もやっていきたい。ただ、補助率につきましては、実際問題として財政当局もいま財政がこういう時期なものですからなかなか厳しい。例外なく行政官庁は新規は認めないと同じぐらいの厳しさがありましてなかなか厳しくありますが、検討は十分してみたいと思いますが、少なくとも採択基準については前向きで対処したい、こう思っております。
  142. 野村光雄

    ○野村委員 担当官からちょっとお聞きしたいのでございます。御存じと思いますが、北海道の例からいきますと、この補助率の問題でございますが、特に道営と団体営と補助率の基準が、結局は団体営の方が少ない。むしろ先ほど言いましたように、採択基準の面積というものが、だんだん僻地へ行けば行くほど狭隘になっていくわけですから、二百ヘクタールなら二百ヘクタールというものはまとまらない。こういう事態になっていきますと、どうしても補助率の低い団体営に移行せざるを得ない、こういう苦境にあるわけですが、ひとつこれらに対する改定なり方向づけをお伺いしたい。
  143. 大場敏彦

    ○大場政府委員 御指摘のとおり、圃場整備事業に限らず土地改良事業すべてについて、お話のありました補助率の問題あるいは採択基準の改定の問題、すべてに努力をしているつもりでありますが、いまお話のありました圃場整備事業につきましては、特にお話のとおり、来年度の要求の重点事項としていま折衝中でございます。具体的に申し上げますれば、圃場整備事業につきましては、都道府県営の圃場整備事業につきましても、これは補助率をアップするということで農民負担の軽減に努めたい、こういう形で要求しております。  それから、採択条件につきましても、それぞれ都道府県営圃場整備あるいは団体営の圃場整備につきましても、これからやるところは、いまお話がありましたように、非常に条件が悪くなってきているところでありますから、そういうところを新しく取り組めるような形で条件緩和するということで、これはせっかく努力して実現いたしたいと思っております。
  144. 野村光雄

    ○野村委員 前向きな御答弁をいただきましたので、ぜひひとつ明年度から生産者の立場に立ちまして再検討いただきたいと思います。     〔片岡委員長代理退席羽田委員長代理着席〕  次に大臣、私はずっと農家を歩きまして農業団体の皆さんから本当に切実に言われていることなんですが、米の出荷どきを迎えまして、農家はどんどん農協へ出荷したいわけですけれども、そう言ったら失礼ですけれども、検査官が限られた人しかいない。ところが、八時間労働制、これは仕方がないのですが、大体限度は、一人千から千二、三百俵しかできないのだ。農業協同組合としては何とか少しでもはかばかしく受け入れしたい、農家の生産者の要求に応じたいということで、伝票の整理からあらゆる細かい事務的なことは全部二人から三人補助員をつけてやっているのですけれども、能率が非常に上がらない。こういう状態で、農業協同組合も困る、生産者も困る、こんな状態が偽らない先般来の実態でございます。  これ以上職員をふやすといっても、そう年がら年じゅう検査をやる仕事はないわけでございますから、限度はある。この点の対応策を思い切って機構の改善というものをする必要があるのじゃないか。たとえて言えば、農業団体からは、もうむしろ農業協同組合あたりに検査機構か何かを、一遍にとはいかなくてもある程度委譲してもらいたいものだ、こんな声も出ているわけですけれども、一遍にできるできないは別として、現行の実態がそういう実態であるということに対しての基本的な対応をやはりするべきじゃないかと思うのですが、この点に対してお考えを伺いたいのであります。
  145. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 御指摘のように、米の出荷の最盛期になりますと、生産農家からは、最近稲作の機械化が非常に進んだこと、あるいは兼業に出たいということで、非常に短期に出荷が集中しまして、したがいまして検査、買い入れも短期間でやってほしいという希望が出ておるわけでございます。私どもといたしましては、現状においてできるだけの御要望に沿うように、たとえば土曜も通常午前中で勤務時間は終わるわけでございますが、午後もやってほしいという御要望があれば、できるだけそれに応ずるようにいたしております。  ただ、実情を申し上げますと、全部じゃございませんけれども、食糧事務所でそういう努力をしましても、農業協同組合の協力も得ているわけでございますし、倉庫は農業協同組合の倉庫の前でやる場合が多いわけでございますが、検査して買い入れしますと、すぐ倉に入れなければいけない。そういうことになりますと、農業協同組合の職員も超過勤務をやらなければいけないというような問題が間々ございまして、これは食糧事務所にやられると自分の方もおつき合いしなければいけないという意味で問題が生ずる例も、必ずしも全部じゃございませんけれども、間々ございます。先生の地域というわけじゃございませんが、ときどきそういうことが現にあるわけでございます。その辺は両者話し合いまして、農家のためになることでもございますので、できるだけやるように努めております。  御指摘ございましたように、検査の後で事務的な処理の問題もございますので、土曜の午後ぐらいは事務処理に当てたいという内部事情もございますけれども、片や生産農家の方が一日も早く検査、買い入れをしてほしいということもございますので、その辺は事前によく話し合いをしながらやっておるわけでございます。  そこで、いま先生が最後におっしゃいましたが、農協に検査を委譲してほしいというような御希望があるやに伺いましたけれども、私の聞いておるところでは、そういうことが全くないとは言いませんけれども、一般的にはそれほど強くない。やはり検査は、全国的に流通するものでございますし、公的な機関が全国統一基準で、客観的な公正な検査をやってもらいたい。また、検査事務をやりますれば、季節的な繁閑も相当あることでございますので、それぞれの農協がやるといたしますれば、経費の問題もあるということで、そういう声が全くないとは申しませんけれども、一般的ではないように思います。  いずれにいたしましても、生産農家の御希望にできるだけ沿うように努力をしておりますし、また今後もしたいと思いますし、さらに、そのために農協にも事務的な御協力もお願いするということで、数年前より協力費というものも新たに計上して、交付をして、お願いをしておるところでございます。
  146. 野村光雄

    ○野村委員 最後に大臣に、私時間がございませんので、一点端的にお尋ねしますが、御存じのとおり、先般来ビートを初め大豆など畑作の価格決定がずっと一連行われました。その中で、私はしみじみ感じましたのは、大臣は特に畑作の地帯に明るいわけでございますが、畑作地帯の農家のいまの叫びというのは、確かに一部の転作奨励作物は奨励金が出て転作しているわけですが、もともとの畑の人はまず何にも恩典はないわけです。そういう中で、ともすると畑作は冷遇されがちな、と言ったら語弊があるかもしれませんけれども、そういう時代を迎えてきたわけですけれども、これらもやはりある程度、何をつくっても農業の所得としては大差はないのだという対応まで、畑作農家の基本的な優遇措置といいますか、もう少しさらに温かい対応をしていくのでなければ、本当に希望する今後のわが国自給率の平均した向上というものはむずかしいのではないか、こう考えるのですが、端的にその点の将来展望をお願いします。
  147. 中川一郎

    中川国務大臣 私も畑作地帯から出ておりますものですから、畑作については米に比べて非常に悪いのじゃないかということを長年言い続けてきた一人であり、御指摘の主張を持っておる一人でございます。ただ、畑作も、これはパリティその他というような一つのルールがありますから、価格だけではとてもいけない。そこで、ここ数年特に生産奨励金というものを、麦についても大豆についてもあるいはビートについても出しておったわけなんです。それを今度、生産調整、作付転換、そしてほかのものへの誘導というところから、畑作と他の農産物との価格のバランスをとらなければいかぬ、こういうので、奨励金をまるまる価格の中に織り込みまして、そしてそれにパリティを掛けていくということをやっていけば、まあまあ当座はいいのではないかというので、昨年からこの仕組みをとりまして、これは畑作には画期的なことだと思うのですが、毎年三%、五%しか上がっておらなかったものを、一年に三、四〇%に相当するぐらい値上げをした。このことが、国際価格と比較してみると、米に近いぐらい高いものになっているわけなんです。  それと、水田では経営面積が少ない。確かに畑作には価格問題で若干問題があるが、経営面積が大きいことでカバーができておるのではないか、こういうようなことでバランスをとっておるつもりでございますが、まさにまだ畑作地帯では納得がいっておらぬようですから、十分配慮していきたいと思いますが、私としては最善を尽くしたつもりであり、今後も十分その辺に意を向けてまいりたいと存じます。
  148. 羽田孜

  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日米農産物交渉、東京ラウンド、昭和五十三年産米対策及び温州ミカン対策その他の問題について、農林大臣並びに文部省当局に質問いたします。  今国会の最後の委員会になるわけでございまして、農政上の重要な問題がたくさんございますけれども、限られた時間でありますし、本日は大臣が出席でございますから重要な点をはしょって、時間の範囲内で数点伺いたいと思いますから、要点をかいつまんで答弁を承りたい、かように冒頭申し上げておきます。  日米農産物交渉すなわち東京ラウンドについて伺いますが、昭和五十二年度の農業白書の中で、五十ページから五十六ページにわたって述べてあるところでございますけれども、「内外経済変化と我が国の農産物輸入」として、わが国の農産物輸入の実情が述べられております。今後の農産物輸入に関しては、さまざまな理由を挙げて、今後の農畜産物の輸入を拡大する余地はないと述べ、また残存輸入制限品目の残り二十二品目についても「どれ一つをとってもこれを自由化するならば、我が国農漁業に与える影響は甚大である。」と結論づけられております。  このことについて、現在も今後も変わりない方針で臨む決意であると私は理解しておりますが、農林水産大臣の見解も変わりないか、まずこの点明確にお答えをいただきたい。
  150. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカを初め多くの国々から、自由化あるいは輸入枠の拡大という要請がございますが、御指摘がありましたように、わが国農業を守りあるいは農家所得を考えると、非常に大きな打撃をこうむりますので、自由化ということはまずまずできない。しかし、外国からの要望に対しても、わが国農村あるいは農業経済、農家経済影響を与えないという範囲内での輸入の枠の拡大ということはやってまいりますが、基本的には日本農村をおかしくするような自由化ないしは輸入の枠の拡大は行わないということを基本としてまいりたいと存じます。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そういうことは当然であるわけです。  そこで、日米農産物交渉の大筋決着を目指す予備交渉が十月十六日からジュネーブで始まったわけであります。つい先日から始まったわけでございますが、政府は、米国が強硬に要求している牛肉、オレンジなどの輸入自由化や関税の大幅引き下げにはとうてい応じられないとしているため、今回の予備交渉は難航必至で長期化することも予想される、かように私は見ておるわけでございます。  今回の交渉は、九月上旬にワシントンで行われた中川農林水産大臣ストラウス米通商交渉特別代表との交渉が合意に達しなかったことを受けて開かれることは言うまでもございませんが、議題は、一つ、オレンジ、牛肉、水産物の自由化輸入数量の大幅拡大、二つには、三十七品目に及ぶ最優先品目などの関税の約六〇%削減、三つには、サケ・マス、スケトウダラなど水産物の輸入自由化と関税引き下げ、この三点について話し合うことになるわけでありますが、政府の対応はどういう方針であるか、農林水産大臣からさらにお答えをいただきたいと思います。
  152. 中川一郎

    中川国務大臣 向こうから出ておりますリクエストについては、外交上の問題でございますから、何と何と何がどういう形でということはまだ申し上げるわけにはまいりませんが、オレンジ、牛肉、そして関税が対象になっていることは間違いがございません。そして、三番目に魚についてお話がありましたが、魚についての自由化の話は今度の対象になっておらないのではないかと思いますが、関税については魚についても対象になっておる。  そこで、ストラウスさんとの話し合いで合意に達しないのは、向こうの言い分どおりではわが国農業影響を与えるということで、のみ切れない、そこで、もう一回代表者間で話し合うということで、いまジュネーブで交渉に入ったところでございます。二日目か三日目になるわけですが、まだ具体的な内容についての話し合いは行われておりませんで、周辺をめぐるにらめっこというのですか、土俵づくりをやっておる段階でございますから、したがって、どうこうなるという見通しはまだ立ちませんが、基本的には、先ほど申し上げたような日本の農家に影響を与えない範囲での話し合いをつけたい。  これの見通しはどうかということですが、私としては、どんなことがあってもお互い合意が得られるような努力を最後まで続けてみたい、そして何とか決着をつけたい、こういう祈る気持ちでこの交渉を見守っておるわけでございます。
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに伺いますが、この関税問題ですけれども、日本も東京ラウンド全体を損なうことは避けたいというお考えのようであり、ある程度の引き下げには応ぜざるを得ないかなというような印象を受けるわけですけれども、このため、さきのワシントン交渉で米側に示した生鮮ブドウ、カニかん、クルミなど十七品目の改善提案に加えて最大限の引き下げ案を提示するのではないか、かように私たちもいろいろ感触を受けておるわけでございますが、これについては大臣はどういうふうにお考えですか。
  154. 中川一郎

    中川国務大臣 関税につきましても、アメリカ初め多くの国々からリクエストが来ておるわけでございます。そこで、アメリカでは、若干の話し合いはありましたが、実質的な話し合いを余り行われなかったわけで、すべてジューネーブにしようということでジュネーブに譲ってございます。  したがいまして、まだどういう数字、どういう品目ということにはなっておりませんが、何分にも一九八七年、十年後を見通した関税のあり方ということでございますので、世界各国の動き等を見ながら、わが国だけが特にということではなく、世界の全体とにらみ合いながら対処してまいりたい、どの品目がどうということは申し上げられませんが、わが国としてもできるだけの対応をしたいという気持ちではございます。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 自由化輸入数量の拡大問題ですけれども、政府は、どんなことがあっても自由化については受け入れられない、こういったことはしばしば答弁しておられます。ある程度の輸入枠拡大で乗り切るというような考えのようでございますが、私たちは、枠を拡大したのでは、これはもう自由化につながるわけですから、日本農業の、いわゆる果樹農家の壊滅につながるということで、われわれは機会あるごとに大臣にも強い要請を、また強腰の外交をやっていただくようにということで要求してきたところでございます。  そこで、このため、オレンジの輸入枠は、現行の年間四万五千トンにどの程度の上積みを図るかが焦点になることは従来の経過から当然考えられます。また米側は、ワシントン交渉で突然提案してきたオレンジの季節自由化要求をジュネーブ交渉でも持ち出す場面も予想されて、当然これは波乱を呼ぶのではないか、かように予測いたしております。  そこで、牛肉もオレンジ同様自由化をめぐる応酬が予想されるので、白米間の新たな懸案となっている牛のインサイドスカート、いわゆる腹横筋ですが、これをめぐっての日米の主張が恐らく対立をするということが私たちもいろいろな立場からうなずけるわけでございますけれども、これについても大臣はしっかりがんばってもらいたいと思うのですけれども、この点はどういうふうに対処する考えでおられるか、あわせて伺っておきたい。
  156. 中川一郎

    中川国務大臣 インサイドスカートにつきましては、これは法律違反でございますから、自由化してないものが自由化したのと同じルートで流れておる。したがいまして、われわれとしてはそういった法律違反の輸入だけは、これは何としてでもやめてもらいたい。しかし、需要があるならば、正規のルートで入る道があるならば工夫はしてみたいと思いますが、指摘されておったような従来の仕組みを、アメリカから言われましてもこれに応ずるというわけにはまいらない。違反のものは違反としての扱いをしていきたい、こう思います。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 東京ラウンドについては、冒頭申しましたように、十月十六日からすでにジュネーブで始まって、いま交渉中であります。国益に関する問題等もありますので、いろいろ具体的な内容については聞くことを避けますけれども、しかし国会もいよいよ明後日二十一日に閉会するわけでございますから、日本農民の大変な関心事でございますし、十二月決着を目指して精力的に交渉を進められて、日本農業の破壊に通じない、ひとつ今後国益に関する交渉をしていただくように重ねて政府当局並びに農林大臣にも強くお願いをしておきます。われわれもこの問題については、閉会中であっても十一月の二十一日、二十二日には委員会を開いて、さらに交渉の経過を見守りながら閉会中の、委員会でいろいろと政府の姿勢をただす、また国民の声を政治に反映させたい、かように思っております。  一応この点については以上で質問を打ち切りまして、さらに通告しておりました問題点を若干お尋ねをしてまいりたいと思います。  次は、農業の中期計画の問題ですけれども、今国会中にもいろいろ問題点が政府からも出されておりますが、まず農業の中期計画について、農林水産省は農業の中期計画というべき農政の新しい基本政策を打ち出すという方針を決めて、近く農政審議会に諮問をするということのようであります。これは農産物の過剰や海外からの自由化要求などでわが国農業が、申すまでもなく大きな曲がり角に差しかかっており、これまでの農政を全面的に転換する必要があると判断される。その柱は食糧需給の見直しと農業の構造改善の二つで、当面、米をつくり過ぎないようにするため転作を進めるだけでなく、米価を長期的にも抑制をする、こういうようなことが報道されて、われわれ耳に入っておるわけでございますが、この農業の中期計画方針並びに大綱ということを当委員会で明らかにしていただきたい、かように思うわけであります。
  158. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 ただいま先生から御指摘がございました中期計画の話は、先日ある新聞にそのような報道がされましたので、あるいは農林省がそのようなことをやっておるとお考えいただいておるのかと思いますが、農林省といたしましてただいま中期計画を作成するというような作業はいたしておらないわけでございます。  ただ、先ほど来大臣もお答えしておりますように、最近のわが国農業をめぐる条件というものは非常に厳しい事態にございますので、こういうふうな中で将来の農業をしっかりと見定めていく、そのために必要な計画的な方向づけを考えていくということが必要になっておりますので、そのような農業、農政のあり方全体の見直しをやっておる段階でございまして、その中におきまして先ほど来御指摘がありました六十年の長期目標につきましても、作成当時からすでに相当時間がたっておりますので、農産物の需要なり農業生産の状況というようなものを将来にわたりまして十分に見定めまして、この六十年の長期計画につきましても再検討する必要があるのではないかということで検討を始めておるという段階であります。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ことしも何回か私、この問題と、さらには農業基本法の問題についても大臣に見解を求めてまいりまして、本員の質問に対して大臣も、農業基本法の改正等も含めていろいろ答弁がございました。  御承知のように、農産物の長期需給見通しは、作物ごとの生産、消費、自給率などの六十年目標を定めたものでありますが、この達成が危ぶまれておる関係上、また六十五年目標に変えようという考えが当然起きるのではないか、かように私たちは見ております。また、この背景には今後わが国がある程度農産物の輸入を見越して、変わらざるを得ないという政府考えも当然これは考えられるわけでございまして、そういう絡みもあっていろいろ検討が迫られておる、かように認識をいたしておるわけでございます。六十年を目標としている農産物の長期需給見通しをやはり立て直すとともに、高度成長の一翼を担い、農政の憲法といわれてきましたところの農業基本法を改正する、また検討していくということは当然でありまして、過般来の大臣答弁によっても十分検討していくということの見解が述べられましたが、こういったことについて大臣は、中期計画さらには農業基本法改正というようなこと等について、重大ないわば曲がり角に来ておるし、いよいよ農業が追い詰められてきた現段階において積極的に取り組むべきであると、かようにさらに再確認したいわけです。  今国会は、冒頭に申し上げましたように、あさってで終わるわけでございますけれども、閉会中重要な問題が次々に起きてくるわけでございますから、この機会にひとつ大臣から日本農業の将来のために、さらにひとつ確認の意味も含めてお答えをいただきたい、かように思います。
  160. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほど松本官房長から答弁申し上げましたように、六十年の長期見通しについて、今日の農業をめぐる情勢が変わっておりますので見直したらどうかということで作業を進めておる。もう一つは、農業基本法が昭和三十六年にできております。もうすでにかれこれ二十年を経過しようといたしておりまして、この間、農業をめぐる情勢も非常に変わってきております。そこで、これからの農業をやっていく上に基本法がじゃまになるというか、支障になるというようなことはどうもないようではありますけれども、何分にも長年たっておりますし、今後農政を進めていく上においてよりよいものがあればというような声も農業団体からもありまして、農業基本法を含めてこれからの農業のあり方というものを考えてみたい。改正を前提とはしておりませんが、その議論の上において改正が必要であるということに達すれば改正もやぶさかでない、こういう態度で変わりつつある今日の農業に対処していきたい、どうあるべきがいいかということを農業団体あるいは学識経験者、役所、三者一体となって検討してみたい、こういうわけであります。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十三年産米対策について伺います。  中川農林大臣は、十月三日、九月十五日現在の五十三年産水陸稲の作付面積と水稲の作柄概況を報告されたわけですが、それによると、水稲の作況指数は一〇七の良で、八月十五日現在の前回指数より一ポイント高く、この時点では四十八年以来の豊作でありまして、十アール当たりの収量は四百九十四キログラムで、過去最高の昭和五十年の四百八十一キログラムを大きく上回っております。その結果、水稲、陸稲を合わせた試算によると、予想収穫量は千二百五十七万五千トンと、政府の今年度生産計画千百七十万トンを八十七万五千トンも上回る見通しとなったわけであります。このため、来年十月末の政府古米在庫数量は六百万トンを上回ることがほぼ確実となったとしているが、最終的には恐らく作況指数が、私たち思うところ、一一〇になるのではないか、かように見られております。  農林大臣はこの点どう見通しておられますか。ひとつこの作柄並びに作況指数について大臣のお考え、見通しをお聞きしておきたい、かように思います。
  162. 柳井昭司

    ○柳井説明員 先生いまお話のございましたように、九月十五日現在の作柄につきましてはまさにそのとおりでございまして、その次の作柄予想といたしましては、この十月十五日現有におきまして調査いたしましたものを今月末あるいは来月初めに発表いたしたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、現段階においてそれほど的確な数字を申し上げることは困難でございますが、過去のいろいろな趨勢等から見ました場合に、年によりまして九月十五日の作況をさらに上回る場合あるいは下回る場合とございますので、確実なことは申し上げられないわけでございますが、本年の状況からいたしますと、九月十五日以降も気象条件は水稲にとって非常に順調であるというようなこともございます。したがいまして、若干上がる可能性というものは考えられないこともないわけでございますが、先生いまお話のございましたような二〇というような数字にはならないのではないかということを現在の段階において考えておるところでございます。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 若干上がる可能性はある、しかし一一〇にはならないのではないかと思うということですけれども、これはいずれ最終的な調査の結果によってはっきりするわけでございますので、その時点で明快になると思います。私は恐らく最終的には一一〇ぐらいにいくのじゃないかと思っております。その点は意見の相違として、いずれにしても上がることは事実であります。  そこで、ことしの大豊作から、農林水産省の米需給均衡化対策は、水田再編対策の初年度から大幅に狂ったことになりまして、またもや政府の需給見通しの甘さが露呈されたことになるわけであります。御承知のように、生産調整については理解と協力を得てやると言っておられた農林省当局でございましたが、実際はペナルティーをかけ、半ば強制的にやった今回の生産調整が、その結果面積的には達成率一一一%の実績を上げましたけれども、数量的には大変な見当違いであったわけであります。これでは農民の不信はますますつのるばかりであります。  こういったことで、政府の需給見通しの甘さということに対して、大臣としてはどういうふうに認識しておられるか、また反省しておられるか、その点農林水産大臣からお答えいただきたい。
  164. 中川一郎

    中川国務大臣 この厳しい生産調整に対して、農家の皆さんもあるいは団体、特に地方公共団体の文字どおりの理解と協力によって希望どおりの生産調整ができて、この点については感謝もし、高く評価もいたしておるところでございます。ただ、それになおかつ天候がいいということで、先ほど御指摘ありましたように、八十数万トンの予想を上回る収穫量があった。天候について見通しが誤っておったということについてはまことに不徳のいたすところであったと思いますが、ことしのような稲にいい年というものは毎年あるものじゃない。だから、ことしよかったからといって、来年生産調整の数母を変えるということではなくて、生産調整を当初計画いたしましたとおり三年間はこの数字は動かさないということで、数字はそういうことでございますが、そういう中でさらに積極的な、農家の時さんや団体、そして地方公共団体の皆さんの一層の理解と協力によって来年度もりっぱに生産調整の仕事をやっていきたい、こういうことでございます。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は農家側に立つわけでございますので余り言いたくないのですけれども、農家もやはり生産調整をするためには、どうしても反収の少ないところを生産調整するということは、これは人情として当然のことだと思う。それと新規開田等もいろいろあるわけでございます。また、関東以北における七月二十二、三日ごろいわゆる青刈りした後さらに萌芽して、反収の少ないところでも三儀、多いところでは四、五俵ないしは六俵ぐらいとれるというところもあるわけです。いろいろあるわけです。これは減反に応じた後の結果として出るわけですから、農家がそれを収納することはだれでも当然だというように考えております。そういったことやら、いま大臣の言ったような天候の作用ということも当然ある。天候がよかったから、うれしい悲鳴で、結構なことであると思うのです。足らないときの心配と米が過剰であるときの心配は、大変な心配の違いがございます。そんなことも百も承知の上でございますが、私はいずれにしても今後こういったことで毎年同じことを繰り返していくという状態では問題がある、こう思う。  それには一つは、平均反収のとり方ということが一つ問題になるというふうに考えておるのですけれども、こういった点についても、これは避けて通れない問題であるがゆえに、私は最初申しましたように農家の立場であるからいろいろ懸念する点もたくさんあるのですけれども、これについては政府はどういうふうにお考えであるのか。これはどうしても避けて通れぬ問題であるゆえに、この機会に、来年の生産調整問題もございますからお尋ねをしておきたい。農林水産大臣からでも事務当局からでも結構ですから、見解を求めます。
  166. 柳井昭司

    ○柳井説明員 統計情報部におきまして平年反収を出しておるわけでございますが、この平年反収につきましては、気象条件が平年並みあるいは被害率が平年並み、こういうことを前提といたしまして、最近におけるところの品種あるいは土地条件の整備というような栽培技術の進歩等を勘案いたしまして、過去の趨勢値をベースにいたしまして算出しているわけでございまして、統計学的に見ましても、大体その過去の平年収量というものをベースにした場合、的確な数字を算出しているというふうに考えておるわけでございます。  なお、その年その年の平均的な収量をどう見るかというのは、平年収量の上に立って考えるべき事柄ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応いまの点は聞き置くということにしておきまして、農林水産大臣にお伺いいたしますが、ことし始まった第二次生産調整は、当初第一期計画として三年間の計画でスタートしたわけであります。先ほどから申し上げますように、この生産調整が初年度から大幅に狂ったことに対して、一部では来年度の生産調整を上積みするのではないかという心配の声があることも事実であります。これに対して農林大臣は、本会議場でもまた予算委員会でも、これまでの発言に見る限り上積みを打ち消しておられる。当然のことだと思う。最初のボタンをつけ間違うと最後まで狂ってくるように、十年間の計画でまず三年を第一期としてスタートを切ったばかり、しかも、ことしは天候の関係でこのような大豊作ができた。これはうれしい悲鳴でありますから、一部には喜べない大豊作というふうに書いてある報道もなされておりましたが、いずれにしても、過剰で余っておるときの苦しみの方が足らないときよりも当然まさっておるわけでございますから、そういう意味でこの生産調整に対しては、来年度はことしの生産調整を続けるというふうに大臣は答弁されております。  これについて私も当委員会で改めて大臣の決意またお考えを確認する意味で承っておきたい、かように思います。
  168. 中川一郎

    中川国務大臣 私が本会議であるいは予算委員会で答弁し、明らかにしましたように、この生産調整は十カ年の長期計画であり、そのうちの三年をとりあえずの第一期分として実施しておりますので、ことし豊作になったからといって来年転作面積を強化するというようなことはしないで、ことし並みのことを三年間やっていきたいということをはっきり申し上げます。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 過剰米の問題ですけれども、昭和五十四年十月末には六百万トンを上回るともまた七百万トンにもふくれ上がるとも言われております。今年の過剰在庫と来年の過剰米の見通しについてはどういうように見ておられるか、これまたひとつ明確に当委員会で明らかにしていただきたい、かように思います。
  170. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今年の十月、今月の末でございますが、五十三米穀年度の終わりから新米穀年度に持ち越す古米の量につきましては、かねて五百三十万トンぐらいではないかという予測をしておりましたが、今年夏が非常に暑かったこともございまして、米の消費量が予想しておりましたよりは減退いたしております。また、ことしは特に好天に恵まれて、先ほど来お話がありますように、大豊作であったということに伴いまして収穫期が繰り上がっておりますし、そういうこともございまして出荷の時期がこれまた繰り上がっております。そういうこともございますので、五百三十万トンという見通しは若干上回るのではないかというように考えております。その数字が幾らかということはいまはっきり申し上げる用意はございませんが、若干、五百三十万トンを上回る。  なお、来年の十月末の古米の持ち越し量でございますけれども、ことしの豊作は直接には来年の十月末の持ち越し量に影響する面が大きいわけでございますが、先ほど来の数字、ことしの作柄予想等から見ますと、需要の見方をどうするかということによっても動きますけれども、六百万トン台に上がるということは必至だというように見ております。それ以上さらに細部につきましては、まだにわかに、具体的に数字をもって申し上げる用意はございません。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 澤邊食糧庁長官にお答えいただきたいが、先ほど申しましたように、政府のことしの生産計画千百七十万トンを、一〇七の作況指数でいくと、八十七万五千トン上回るということを申し上げたわけですが、実際には最終的にはかなり超過米がまだふえる、かように見ておりますけれども、仮に八十数万トンとして米の需要との関係はどうかということをお尋ねするわけですけれども、現在の米の需要というものが二十万トン落ち込んでいる、こういうふうになっております。そうしますと、先ほども申し上げた生産計画オーバーの八十数万トンプラス二十万トンとしましても約百万トンの超過米になるのではないか、かように見ておりますけれども、この点は食糧庁長官はどう見ておられますか。
  172. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 最近の米の需要、消費の動向を見てみますと、年間で千百七十万トンというのは過大ではないか、実態から見ますとやや大き過ぎるというふうに思います。まだ最終的に詰めておりませんけれども、五十二会計年度、と言いますのはことしの三月まででございます。その総需要量について年末までに例年発表することになりますけれども、私どもまだ細部を詰めておるところでございますが、大ざっぱに言いまして千百五十万トン前後ではないかというふうに考えております。先生の御指摘になっておるのもそういうのを根拠にして二十万トン減ではないか、こういうふうにおっしゃっているのだと思います。  そこで、超過米の発生の問題でございますが、千二百五十七万トンという数字は、統計情報部の発表の際の「注」にもございますように、青刈り稲、これが全部粒になって食用として生産されるという仮定のもとに計算しておりますし、また畑作の稲、オカボですが、これは干ばつでかなり減になりますけれども、正確にわからないので一応平年作を前提にしておるということがございまして、千二百五十七万トンというふうになっておるわけでございます。その意味では、作況が変わらなければ若干それよりその数字を下回るということはあり縛るわけです。そういうことを前提といたしますと、ことしの千百七十万トンの計画を上回って余り米として出てくるのが私どもは八十万トン前後ではないかというふうに思っておるわけでございます。     〔羽田委員長代理退席委員長着席〕 先ほど言いました需要の二十万トンは直ちに超過米、余り米に回るわけではございませんので、超過米とか余り米といいますのは、八百三十万トンの政府の買い入れ限度を上回るものということでございますので、二十万トンさらにそれに加えて計算する必要はないのではないかというふうに思っております。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いずれにしても、来年秋には六百万トンないし七百万トン近い米が超過米として余るのじゃないかというような懸念も持たれるわけでございますが、政府は古米在庫の取り扱いがこのように大きな問題になってまいりましたので、農林水産省としてはその処理計画を検討されておるようではございますが、それによると、一つは、古米減らしに伴う政府の売却損の処理を数年間にわたり繰り延べることができるよう現行の食糧管理特別会計法を改正する。二つには、米菓など加工原料用に回すときには値引きをする。三つには、海外輸出するほか、食糧難の発展途上国への無償援助にも振り向けるというような処理計画考えていろいろ検討しておられるようですが、これについて政府の見解を承っておきたい。
  174. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 五百三十万トンの古米の持ち越しという、それを若干上回ると申し上げましたけれども、それを前提に見ますと、そのうちで二百万トンは備蓄の意味を含めました計画的な持ち越しでございますので、二百万トンを引いた三百三十万トンがいわゆる過剰だ、こういうふうに見られるわけでございます。来年になりますと六百万トンを超すということになりますと、六百万トン・プラスアルファから二百万トン引いたものがいわゆる過剰だ、こういうふうにわれわれは見るわけでございます。  そこで、それの処理につきまして、かなりの量になっておりますので、計画的に処理をすることに着手をすべき時期に来ておるということで現在検討に入っております。処理の用途を何に振り向けるか。前回は輸出用、飼料用それから米菓その他の加工原料用ということになったわけでございますが、今回も大体その三つだろうというふうに思いますが、その割合を計画上どういうふうに想定をするか、また処理の着手の時期をいつから始めるか、何年間で処理するか。それからまた、前回は特別会計法の改正をいたしまして、損失を処理後七年間繰り延べすることができるということで、単年度で処理の年だけで損失を繰り入れる必要がないという特別措置をとったわけでございますが、そのような措置をとるかどうかということによりまして、その方法いかんによりましていろいろ財政負担も変わってくるわけでございます。現在、ここでどのような方法でやるかということを申し上げる段階に残念ながら至っておりません。ただ、私どもといたしましては、先生がいまおっしゃいました繰り延べにつきましても、その必要があるかどうかということを現在検討しております。前回は、先ほど申しましたように、七年間の繰り延べをした。ただ、七年間がいいのか、あるいはそれ以上あるいはそれより短くするのか、あるいはそもそもそういう繰り延べ措置をやるのかどうかということも含めまして検討しておるということでございます。  それからまた、米菓その他の国内原料用に処分する場合の価格、現在はトン当たり十四万三千円でやっておるわけでございますが、それをさらに引き下げることによりましてそういう用途に振り向ける量をふやしていくということも一つ考えでございますので検討はいたしておりますが、まだ結論は出しておりません。  海外につきましても、一般的には前回よりは条件はよくございませんけれども、つい最近ベトナムの水害等によりまして年間二百万トンの需給に穴があくというような話も聞いておりますが、まだ正確ではございませんが、いま調査を依頼をしておるところでございます。そういう援助、その場合、先生がいまおっしゃった無償援助だけではなしに有償の援助を含めまして検討していきたいというふうに思っております。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十三年産米対策については、あとたくさん通告いたしておりましたし、また学校給食についても文部省わざわざおいでいただいて御答弁いただくようになっておりましたけれども、時間が大分迫ってきましたので、これは次回に譲るということで御了承をいただきたいと思います。  温州ミカン対策について若干承っておきたいと思いますので、この点について答弁を求めます。  まず第一点は、五十三年産温州ミカンの生産量は、八月一日の農林水産省発表の三百九万七千トンから日園連の八月二十日発表の二百九十九万トンをいずれもかなり下回ると言われております。よって、ことしは三百万トンをかなり下回る見込みのようにわれわれは感じておりますが、この点について当局の生産見通しはどうか。  時間も迫っておりますので、簡潔にお答えください。
  176. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、統計情報部の方で八月一日現在の生産予想収穫量を発表しました。それが三百九万七千トンでございます。これが三百万トンの大台を相当落ち込むのではないかというお尋ねでございますが、正確にはまた十月一日現在のものが十月の末に公表になるわけでございますが、ただ減る要因はあるように思います。といいますのは、一つは、八月以降の干ばつでございますが、そういうような影響によりましてどうも落ち込みはせぬかという感じはいたしておりますが、正確には十月一日現在の数字が出たらはっきりすると思います。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ミカンを三年間で二割減反しようという温州ミカン園転換促進事業は、各県での組織討議もほぼ終わり、今月にも農業団体の方針を決めることになっておりますが、長期的なミカン過剰基調を解決するにはどうしたらよいかということであります。多くの意見が闘わされておりますけれども、オレンジ自由化問題の外圧がかかっておりまして、これに加えてミカンの不作など、干ばつもございましたが、こういった複雑な要素が加わっております。その受けとめ方もさまざまでございまして、全国の意思統一までにはまだ紆余曲折が予想されるところでございます。  そこで、このような二割減反構想について各県の意見の集約並びに実情を農林水産省はどういうようにつかんでおられますか、簡潔にお答えください。
  178. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 日園連なりあるいは全中等におきまして、ことしの春以来二割減反、三万ヘクタールというような転換対策を進めようという動きがございます。そこで、生産者団体側におきましては、八月以来これを単協なり県農協連段階で討議を行っておったわけでございますが、去る十月十三日にミカン主産県中央会・経済連・専門連会長合同会議というのを開きまして今後の進め方等につきましての一応の意見集約を行った、かように聞いているわけでございます。  農林水産省といたしましては、温州ミカンにつきましては今後この需要の拡大とともに、やはり積極的に他作物への転換といいますか、そういうことで生産調整を進める必要があろうということで考えておりまして、ただいまの十月十三日に一応意見集約をしたと聞いておりますので、そういう生産者団体と十分協議もしたい。他方また、ミカン生産県の知事会議というものもございますので、その辺との意見調整といいますか、そういう協議を重ねまして、官民ともどもにこのミカンの転換対策といいますか、これを進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長から答弁ありましたように、時間がないからちょっと申し上げておきますけれども、ただいま申されたミカン主産県中央会・経済連・専門連会長合同会議等で、いまおっしゃった以外にミカン需給均衡対策の互助制度なども検討しておるようですから、政府の方も十分指導していただいて、大変な時期に来ておりますので、ひとつ対策を講じていただくように重ねてお願いしておきます。  それから、果汁ですけれども、日本の果汁については調整保管がいま一万五千トンございますが、なぜ消費が伸びないのか、品質はどうなのかということが一つ問題でございます。果汁の消費拡大ということについては、こういうときでもあるからなおさらのこと政府は本腰を入れてもらいたいと思うが、これについてどういう見解をお持ちであるのか、お答えをいただきたい。
  180. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 果汁の消費でございますが、これは長期的に見ますと、今後果汁は伸びるであろうと考えております。ただ、ただいま先生からもお話がございましたように、現在一万五千トンの調整保管をやっておりますが、昨年は七十万トンほど果汁に仕向けたわけでございます。非常に生産量が多かったものですから、生果を少なくするためにむしろその分を回した、こういうことで、要するに短期的に見ますとちょっと多目でございましたので、一万五千トンの調整保管となっております。  それから、ことしの場合はまた逆に、先ほども先生からお尋ねのように三百万トンを割りそうだということでございます。したがいまして、その辺ではことしは加工仕向けが相当少なくなるであろうということで調整はつくと思いますが、長期的に見れば今後果汁の消費の方は伸びるし、また、それに伴います仕向け量というのがふえていくということですが、ただ、これも手をこまねいているのではなしに、先ほどの二割減反という問題もございますから、積極的に、この果汁の消費拡大という面については施策の面等におきましても強化していくということで考えておるわけでございます。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、最後に、農林水産大臣に特に要望を兼ねて質問申し上げ、強力な対策を講じていただきたい、かように思うわけです。  温州ミカンの品質の改良の問題でございます。端的に申しまして、世界じゅう回ってみましても、どこの国に行きましてもミカンの皮がかたい。小さい幼児であっても子供であっても皮をむいて食べられるというのは、日本の温州ミカンだけです。私はこれほどいい果物はない、かように思っております。農林水産大臣は北海道出身でございますからビート、ハッカ、または大豆だけではないとは思いますが、西日本のミカンに対して少し冷たいじゃないかという声があるわけです。そこで、小さい子供でもまた病人でも、どんな方でもみずから皮をむいて食べられるミカンというのは温州ミカンだけだ。大抵のミカンは皮がかたい。この温州ミカンは絶対に世界に負けないミカンであり、またオレンジの輸入にも負けない、かように自負しております。  ただ、問題は香りが少ないというのが一つの欠点であります。そういったところで、何としてもこの温州ミカンの品種改良をしまして——皮は簡単に小さい子供でもむける、そこに香りがついたならば絶対オレンジにも負けない、世界的に高く評価されるミカンである、かように常日ごろから思っておりますので、ぜひとも温州ミカンの品種改良をして、ネーブル、ポンカンまたはオレンジのような香りがこれにつくということをやって、温州ミカンをつくっている日本のミカン農家が力強い将来の希望を持てるような対策を講じていただく、温州ミカンの品種改良に強力な、また早急な対策を講じていただきたい。  最後に大臣の見解を求めて、私の質問は終わりたいと思う。
  182. 中川一郎

    中川国務大臣 まことにうがった御指摘をいただきまして、ありがとうございました。もしそれができれば本当にいいことだと思いますし、いま技術会議の方に聞いてみましたら、オレンジと交配して香りが出ないかということで試験研究をやっているそうですから、一層の努力を払って成功するようにいたしたいと思います。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたから、以上で私の質問を終わります。
  184. 中尾栄一

    ○中尾委員長 神田厚君。
  185. 神田厚

    ○神田委員 私は、来年度の一つの重点施策という形で出ております農地の流動化に対する奨励金の問題、ビール麦の問題、養鶏の生産調整の問題、それから林業の問題、この四点について、ただいまから、限られた時間でありますが、質問をさせていただきたい、このように考えております。  まず最初に、農林水産省は、来年度の予算の概算要求づくりに伴う省内での検討の中で、新しい非常に大事な施策をとろうとしております。これは農用地高度利用促進事業と呼ばれているようなものでありますけれども、これによりますと、農業委員を主体に農地の流動化の推進員を置いて、そして貸し手農家に流動化の奨励金を払う、その払い方も三年の場合は十アール一万円、四、五年の場合は一万五千円、六年以上は二万円、こんなようなことを考えておられるようであります。  この中で特に問題になるだろうと思いますのは、現行の法律の中で、この所有権と利用権を分離するような形でこういう施策がとられているわけでありますが、法律的な問題は全然ないのかという問題、これが第一点であります。第二点は、こういうふうな形をどの程度の規模において実施しようとしておるのか。そして、そのことは零細農家の切り捨てにつながっていく危険性はないのか、この三点について御質問申し上げたい。
  186. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いま御指摘になりましたように、来年度の課題として農用地間度利用増進事業という予算を要求中であります。これは考え方といたしましては、すでに五十年度の農振法の改正によりまして農用地利用増進事黄というものをスタートさせておりますが、それをさらに徹底させるという意味で、現在、地域農政特別対策事業という中でそういった運動を展開中でありますが、それにさらにはずみをつけるという意味で要求中のものであります。  具体的に申し上げますれば、各地域地域の実情に即して農用地の利用合理化を図っていく、つまり貸し手側と借り手側をうまく結びつけていく、両者にある矛盾点を地域的合意の中で解決していく、こういった手法でありますが、それを進めるために農業委員会という制度を活用いたしまして、具体的な集落の中で借り手を探し出し、また同時に貸し手を探し出す、こういった掘り起こし運動をすることが一点、それからもう一つは、これもいまお話しになりましたように、農地を貸した場合、貸し手側に、賃借権の設定期間の長短に応じて反当たり幾らといったいわゆる踏み切り料的なものを交付する。これは地代補助というものではもちろんございませんで、貸し手側がちゅうちょするという場合に、村落全体の意思あるいは国全体の意思としてはそういうことをすることが大事なのだ、こういった意思の反映として一種の踏み切り料的な形で一定の金額を奨励的な意味で交付しよう、こういったことであります。これは現在すでに、借り手側が土地を借りる場合に農協等から金を借りて耕作料を一掃前払いする、そういう場合に利子補給相当分を補給しているわけでありますが、いわばそれの変形という形で、貸し手側にも地域の実情に応じて与え得る、こういった制度を創設しているわけであります。  第一点の法律論的にどうか、こういったことにつきましては、冒頭に申し上げましたように、農用地利用増進事業という事業でやるわけでありますから、農地法の三条、七条、十九条といった規定はいずれも適用が除外されるということになっておりますので、法律的な問題はもちろんないわけであります。  それから、今後どういう規模でやっていくかという御指摘でございますが、われわれは農用地利用増進事業を進める具体的な手法として、地域農政特別対策事業というムーブメントの中でやっていこうということを申し上げましたが、それがいま全国的に二千五百ないし三千ぐらいの町村を考えております。来年度予算要求しておりますのは、その中で特にそういったムード、運動が荷まってきているところを対象にして両度利用増進事業をやっていこうということで、来年度千町村ぐらいを対象にしておりますが、逐次これは五十四、五十五というぐあいに全町村に及ぼしていこうというような計画を持っております。  それから、貧農切り捨てみたいな形になるおそれはないかという御心配でございますが、これは無理無理にやるわけではもちろんございませんで、二種兼農家等がやはり兼業のために農地を、所有権を手放すのはいやだ、しかし人に貸すのなら、また返すときに離作料というような補償、そういうめんどうな手続がないならば貸してもいい、こういう農家はかなり広範にあるわけでありますから、そういう方々と納得ずくの上で、片っ方規模拡大を欲している農家にその利用を提供する、こういった形でありますから、需要と供給というものとをうまく結びつけて、農地の効率的な利用、それから中核農家の規模拡大に資する、こういうことであります。そのためには、切り捨てということよりも、逆に農地を貸す人にとって安心するような形で貸す、こういった仕組みで考えられた制度であります。
  187. 神田厚

    ○神田委員 この制度はもろ刃の剣で非常に危険な面と、それからうまくできれば日本農業を救う道にも通じていく、両方あると思うのですね。したがいまして、三千から二千程度の町村を予定してやっているという中で、千の町村についてやるということでありますが、これは私はやり方が非常に問題だろうと思うのですね。  この場合に、それでは具体的にどういう農家を対象とするのかということですね。たとえば、量を対象にしていくのか、それともどこか働きに行きたい、貸したいという人を対象にやるのか、その辺は農業委員会なりその担当する人のあれでやるのでしょうが、全体的にそれを統括して指導するというのはどこになるわけですか。
  188. 大場敏彦

    ○大場政府委員 借り手は、当然いわゆる自立経営農家ないしは中核農家、そういったものになるわけです。貸し手側は、これはどれというのを特定しているわけではありませんが、考え方としてはいわゆる二種兼農家、安定兼業農家、そういったものが対象になるのではないかというふうに思っております。  われわれの考えといたしましては、そういう他に働きに行っているというために土地を貸してもいいけれども、うかつに貸してしまったらずっと賃借権が固定してしまうのじゃないか、いざまた自分がやりたい、返してもらいたいというときに、離作料を取られてしまうのではないか、こういう心配がある、いわゆる旧農地法意識というものがかなり濃厚に残っている地域もあるわけであります。しかし、また一方、借りる方からすれば、いつでも取り上げられてしまったんじゃ経営の安定ができない、やはりそこには投資の意欲もわいてこないという形で、ある一定の土地はコンスタントに自分の支配下に置くこと、経営下に置くことがなければできない、だめだ、こういった両方の相矛盾する要求があるわけですね。それを町村が媒体になって、俗な言葉で言えば集団的な見合いみたいなもので貸し手側のグループと借り手側のグループというものが集団的合意のもとで、そこに町村というものが媒介して、いわゆる保証人的な立場に立って、そして両者に心配がないような形で安全に貸し借りが行われるようにする、その結果、いろいろ阻害している条件をどけて、農地の流動化というものがスムーズに流れるようにするというのがこの制度の考え方でありまして、あくまで本質は貸し手側の納得ずく、借り手側の納得ずく、そういった合意に基づいてやるような仕事であって、私どもは一括的にある特定の画一的な制度を全国的なベースで考えて、それを各地域に画一的に押しつけるということは、どうも農地流動化の手法としては適切ではないんじゃないか、やはり地域によっては需給事情も異なるし、地域事情も集落によって異なるわけでありますから、その実情に応じたような形で合意で解決していくという手法が一番現実的であるという認識のもとでこの制度を進めているわけであります。
  189. 神田厚

    ○神田委員 これは現在のような農業の状況の中で、ただそれだけやってもだめだと思うのです。計画的にどういうふうなことをやらせるのか、地域でどういうふうなものをやらせるのか、そういう一つ地域計画みたいなものをきちんと持って、その中でそれで農林省なら農林省のどこがその責任を持ってそういうものをやっていくのか。いまみたいに、話を聞いていますと、何だかただ貸すところがあれば全部それをまとめちゃえばいいというような話では、結局余り効果がないと思うのです。農業というのは、やはり一つの何をつくらせるか、何をつくるかということについてきちんとした土台がないところで、いまみたいに米をつくっちゃだめだというのに、結局そういう米しかできないような土地を集積しても、私はこれは余り効果がないと思うのです。その辺のところはどういうふうに考えておるのですか。
  190. 大場敏彦

    ○大場政府委員 おっしゃるとおりであろうと思います。私どもの意図しているのもそういったことを意図しているわけで、結局具体的な村づくり運動、別名われわれは地域農政特別対策事業ということで施策を展開しておるわけでございますが、もっと卑俗な言葉で言えば村づくり運動、部落相談会から出発したそういった村づくり運動、この村の農政というものをどういう方向に持っていくかという方向づけをした中で、この中での中核農家の存在はどうするか、この規模拡大をするためにはどういう農家から貸してもらったらいいか、そういう具体的な計画というもの、どういった生産計画をこの地域でつくったらいいだろうかということとあわせて全体的な村づくりの方向づけをした中で、その中で一つの大事な仕事としての農川地利用増進事業というものを進めていく、農用地の利用の合理化というものを進めていくということがねらいであって、おっしゃるとおりのことだろうと思います。
  191. 神田厚

    ○神田委員 そういうことでありますならば、一つやはり私ども考えておりますのは、生産団地の育成ですね、そういう新しい生産組織、団地的な中核農家を幾つか集めて、それに何をやらせるというふうな、そういう大きい見通しを持たないと、ただここで土地をまとめただけではだめだと思うのです。その辺のところをこれから十分に研究をしていただきたい。私は、きょうはこの問題についての質問はこれで終わりますけれども、これは大変重要な問題ですから、引き続いて委員会等で質問させていただきたい、このように考えております。  続きまして、ビール麦の問題につきまして御質問を申し上げます。  現在、ビール麦の生産者とそれから会社の方とのいわゆる基本契約の交渉が非常に難航しておりますが、この中で、生産者の方はやはりもっと農林省あたりがしつかりと後押しをしてくれ、そしてビール会社との交渉の中でもう少し生産者の立場に立って物を言ってくれ、そういうふうなことを強く望んでいるようであります。  大臣にお伺いしますが、現在のこのビール会社との交渉というのはどういうふうな状況で、農林省はどういう指導をなさっておりますか。
  192. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十四年産のビール麦の播種期もだんだん迫っているわけでございますが、例年ビール麦につきましては、先生御案内のとおり、これは契約栽培ということで経済連とビール会社が契約をやっておったわけでございます。しかも、それが大体二月ぐらいでございましたけれども、ことしはむしろ早目にその辺の契約をやったらどうかということで、全農、全中等の農業団体とそれから麦酒酒造組合、洋酒組合、そういうところとの話し合いを早々と持ったわけでございます。  ところが、五十三年産の麦で、一部北九州等で契約数量をオーバーしたというところがございます。一応契約数量の一割のアローアンスがございますが、それも突き抜けましてオーバーをしたというところがありまして、ビール会社が引き取らないというような問題もあったわけでございますが、そういうことも踏まえまして、契約数量というものをさらに多くするということを、当然農業団体としてもそういう線で強くビール会社と当たった。また、ビール会社の方は、先ほど申し上げましたような例もあったものですから、その辺が非常に慎重になってきておるというようなことで、そういう団体間での話し合いといいますものをそれぞれにわたってやったわけですが、ついに合意が得られなかったということで、農林水産省の方にも行政指導といいますか、そういう面で乗り出してくれという要請がございました。したがいまして、農蚕園芸局としましては、現在、国税庁がビールの所管官庁になりますので、そちらとこの話を強力に展開をし、しかも早期に決めたいということで、いませっかく取り組み中でございます。
  193. 神田厚

    ○神田委員 そろそろ交渉も大詰めだというような話もありますね。それで、問題なのは、契約数量をきちんと生産者としてはある程度確保できるのかどうか。麦作振興という大義名分がありますね。そういう中で、せっかくそういう意欲のあるところに、ビール会社が今度は買わないというような形になってしまったのでは水をかけるようなものであります。ですから、そういう基本的な考え方の一番の問題は、国内産の麦芽を余り使わな過ぎる、これをもう少し使うような指導というのはできないのか、そういうことを含めて、農林省の方の考えはどういうふうになっておりますか。
  194. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十年五月に公表いたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」、これにおきましてもビール麦につきましてはおおむね五割の自給率を確保したいという線で公表をいたしておるわけでございます。したがいまして、農蚕園芸局といたしましては、当然そういう線まで持っていきたいということで、麦作振興対策ということで、ビール麦を含めて進めておるわけでございます。現在のビール向けではどのぐらいの自給率かといいますと、五十二年で一二%というところでございます。問題は、さらにそういう長期的な見通しの線に沿って、逐次自給率を上げていきたいということで、国税庁当局の方にもその辺は強く話してあります。  ただ問題は、最近の輸入のモルト、これの内外麦の格差が、昔と違いまして非常に開いてきておる。現在では、輸入のモルトはトン当たり大体八万円でございます。それが、五十三年産の内麦を使いますと大体二十八万円ということに試算が出ます。三・五倍ほどのものになる。それで、ビール会社の方もその辺のことが一番コストに響くという角度で、処理に苦労をしておるというのが偽らない現状でございます。  ただ、農蚕園芸局としては、その辺は当然先ほど申し上げましたような線で、根強く説得といいますか、努めて、その辺の自給率を上げていくという方向で、契約数量等も逐次上げたいという方向でせっかく努力中、こういうことでございます。
  195. 神田厚

    ○神田委員 大臣にお伺いしますが、このビール麦の問題というのは非常に大事なんですね、麦作振興をにしきの御旗でやっているわけでありますから。五十四年の契約数量については、生産者の言っておる要求というものについて十二分にこれを勘案しまして、そしてビール会社に対しての農林省の指導が要請されているわけでありますから、それをきちんと指導すること、もう一つは、先ほど言った国内の麦芽の利用というものをもう少し高めるような形でこれの指導をすること、この二点について御意見を伺いたいと思います。
  196. 中川一郎

    中川国務大臣 農林省としては、米が余っている時代であり、特に麦をつくりたいという時期ですから、何としてもたくさん買っていただきたい、これはもう農家だけではなくて農林省の問題でもあるわけなんです。しかし、これは強制力を持ちませんで、ひたすらお願いする以外にないわけですけれども、われわれとしてはできるだけ大蔵当局にもお願いし、そしてビール会社に協力してもらうという姿勢で最善を尽くしたいと存じます。
  197. 神田厚

    ○神田委員 ビール麦について最後に御質問申し上げます。  こういうような形で麦が余ってしまうと、来年度からは何か地域的な、府県別目標みたいなものをつくって、それで生産をさせるというようなことも一部考えられている、こんなようなことも聞いているのでありますが、そういった方向で指導をなさるつもりでありますか。
  198. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十四年産の麦につきまして、契約数量が合意に達するということになりますれば、当然その線に基づきまして、これはビール会社のいろいろな地盤の各県がございますが、その辺の意向も聞く、そしてまた県の方の農家の方々の作付の希望というものもございますから、その辺も取り入れて、農業団体とも相談しながら配分をしていく、そしてそれに基づいて契約栽培というものがビール会社の方と農業団体の方で行われるというふうにしてまいりたい、こう思っております。
  199. 神田厚

    ○神田委員 何かちょっとはっきりしませんけれども、時間がありませんから次に移ります。またビールの問題も、後で質問させてもらいます。  次に、鶏の問題です。さきの国会で、養鶏の問題で全会一致で国会決議がされました。生産調整を中心とした国会決議でありまして、この画期的な国会決議がされて多くの養鶏農家は非常に大きな期待を持ったのであります。ところが、それから半年たって、それでは一体その生産調整はきちんと実行されたのか、やみ増羽の問題はきちんと是正されているのか、こういうことを聞いていきますと、その行政のやり方というのははなはだ怠慢であるという声が返ってきております。  それでまず、いろいろ問題になりましたイセ、タケクマ、これらを先頭とするやみ増羽の是正について、農林省としてはどういう指導をしたのか、そしてどういう実効が上がっているのか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  200. 杉山克己

    ○杉山政府委員 鶏卵の生産調整につきましては、国会でも御決議をいただいたところでございまして、私ども、四月の二十八日に農林省三局長名をもって生産調整実施に関する通達を出したのでございますが、この通達の実施方について、その後、極力指導を続けてまいっているところでございます。  具体的には、何といっても、全体としてそもそもやみ増羽がどのくらいあるか、飼養羽数がどれだけ動いているのかということを確認するのが第一でございます。そこで、その確認調査を強化拡充するということで、従来年二回行っておりましたところのものを年四回行うということに改めて、本年はすでにこの五月と八月に二回にわたっての調査を行ったところでございます。五月の調査の結果は、総体としてすでにまとまっているところでございます。  それから、そういう調査を行うのと並行いたしまして、八月の九日に全国鶏卵需給調整協議会を開催いたしまして、都道府県なり養鶏関係の全国団体に対しましてその趣旨の徹底を図る、そして生産調整の強化拡充、無断増羽の是正ということについて要請をしてまいっているところでございます。  現在までどれだけ成果が挙がって無断増羽が是正されたかということでございますが、的確な数字をもってお答えするような状況になっておりませんけれども、これは市町村の協議会におきましてまず第一次的な実態確認、それから、その地域におきますところの無断増羽と認められるものに対する是正要請を行うということにいたしております。市町村の段階でむずかしいものについては県に上げて、さらには農政局に上げてということでのやみ増羽の是正を指導してまいっているところで、それなりに、もともとがむずかしい問題でございますので、目に見えてはっきりした数字ではなかなかお示ししがたいのでございますが、かなり自粛の傾向もあらわれてきて、やみ増羽は幾分おさまった傾向にあるというふうに見受けられるわけでございます。  それから、個別の具体的な事例について、たとえばイセ、タケクマというものはどうかということでございましたが、これは正直申し上げまして、前回この場でもって御報告申し上げましたのは、その時点におきますところの宮城県庁の調査あるいはその他の県庁の調査を申し上げたのでございますが、その後厳正な、先ほど申し上げましたような五月、八月の確認調査を行うに及びまして、むしろ隠れておった実態が出てきた。むしろ形の上では羽数は増加しているという実情が明らかになりました。弁解を申し上げるようでございますが、鶏の数を確認するというのは、何十万羽、百万羽にも及ぶものはなかなか確認がむずかしい。そういうことのために推計でもって当初数字を出さざるを得なかったということもあったのかと思いますが、実態としては確かに減ってまいっております。減ってまいっておりますが、表面上の数字としては若干ふえた形になっております。ただ、五月の数字に比べまして現在ではこれがさらに減ってきているということと、それからイセグループにつきましては、現在、宮城県庁との間でもって減羽の計画についての調整が行われている状況でございます。  なお、このむずかしい個別ケースの問題につきましては、私ども農林省といたしましても、諸般の情勢を勘案いたしまして、直接農林省に来てもらうというようなことで十数回にわたって実情を聴取する、あるいは生産調整の協力方を要請するというようなことで個別の指導も行っているところでございます。
  201. 神田厚

    ○神田委員 お話を聞いていますと、自粛をしてきた、自粛をするような傾向にあるというのですが、傾向にあるとか何とかいうのじゃなくて、あの話は四十九年のその時点に戻すんだというきちんとした話があったわけですね。ですから、実際それでは四十九年の時点にどの程度戻っているのか。市町村から、県から農政局の方へむずかしいのは上がってくる。どの程度に現在農政局に上がってきているのがあるのか。そういうような問題を含めますと、生産調整のやみ増羽に対する取り組みはまだまだ非常に手ぬるいところがあると思うんですね。  それで、私はひとつこれで局長の方にお願いしておきたいのは、企業養鶏の府県別の実態を資料として提出をしてもらいたい。北海道あるいは九州、どこでもいい、全国に一体どの程度の企業養鶏がなされているのか。そして、それらについてのやみ増羽というのはどういう実態であったのか。そして、それをどういうふうに今後指導しようとしているのか。それらについての資料の提出と、それから今後の指導の方針、いつごろまでにこのやみ増羽の問題は片をつけるのか。その辺はいかがですか。
  202. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整は、基本として四十九年の飼養羽数に戻すということを原則といたしております。ただ、実際問題として、これを強制して、違反するものは処罰するというようなところまでは及んでおりませんために、なかなか実行しがたい、実行にむずかしい点があるということを先ほど来申し上げているわけでございます。  そこで、企業養鶏がどういう形でやみ増羽が行われているかということでございますが、五月の調査によりますと、全体の生産者、これは一千羽以上の生産者を調査したのでございますが、経営体数が一万六千八十八、そのうち、企業というよりは羽数でもって調べたのでございますが、十万羽以上の飼養経営は七十九経営ございます。全体の一千羽以上の飼養経営の無断増羽数、途中の数字を省略いたしまして、無断増羽数の結果だけ申し上げますと、四百十万二千羽ということになっておりますが、そのうち、七十九経営の十万羽以上の経営におきますところの無断増羽数は百四十万二千羽ということで、かなり高くなっております。  それから、こういう企業養鶏の実態はどうかということでございますが、企業養鶏の考え方、つかまえ方、若干議論といいますか、むずかしい問題が一つございます。私どもは単純に羽数の多いものを対象にとらえるならとらえやすいのでございますが、企業経営となりますと、農家とか個別の経営体と契約をしておりまして契約飼養を行っている、そして、いわゆるインテグレートを行っているものが一つの形態であろうかというふうに思います。それから、商社系のものが直接ある程度規模のまとまった大きな工場といいますか、養鶏場を経営しているというのがその第二であろうかと思います。そうなりますと、必ずしも十万羽以上というような大きいものだけとは限らない。そういう経営形態ではあっても羽数はそれほど大きくないというものもございます。  お尋ねでございますので、資料として後ほどまとめます際に、企業的経営と思われるもので十万羽以上のもの、これが大体飼養羽数でもって三十数%を占めていると思われます。その辺をつかんで県別の分布を資料としてまとめたいと思います。
  203. 神田厚

    ○神田委員 それで、いつまでにこのやみ増羽の問題というのはけりをつけようとしているのか。
  204. 杉山克己

    ○杉山政府委員 率直に申し上げまして、行政上の責任の持ち得ない、全く自信が完全に持ち得ないということについて、何月何日というように時日を限ってお約束することはできないわけでございます。私どもといたしましては、その方向に向けて最大限の努力をする、是正に今後ともあらゆる手段を使って努めるということを申し上げるのみでございます。
  205. 神田厚

    ○神田委員 最大限というのは、もう本当に最大限ですから……。やはりそういうのを放置しているから卵価も低いし、安定基金がだめになってくるというようないろいろな悪い状況がたくさん出てくるのです。ですから、諸悪の根源はやみ増羽なんですから、これを早くやらなければいけない。ひとつそういう意味で、勇断をもって取り組んでいただきたいことをお願いをします。  養鶏については最後の問題、卵価基金、これが大変な問題になっております。そして、この基金の救済措置についていろいろ農林省の方にも要望が行っているようでありますが、時間もありませんので細かいことは申しません。安定基金の救済について当局はどういう措置をおとりになるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  206. 杉山克己

    ○杉山政府委員 卵価安定基金の充実につきましては、すでに五十三年度予算の際に、それまでキログラム当たり国の助成単価は一円三銭でございましたものを一円五十四銭に上げるという予算上の補強措置を行っております。この春から夏、さらには秋にかけまして、卵価は著しく、相当長期にわたって低迷したわけでございます。このため、この基金から、関係者が集めました基金とそれから国の補助金の基金、この基金の払い出しを行って補てんを行ったわけでございます。払い出しが、補てんの額がきわめて多額に上る、現在まで積み立てたものあるいは国の補助だけで不足するということで、三十一億円の借り入れを行うこととしたわけでございます。これは承認事項でございまして、その承認を行ったということ。そして、借り入れを行いますれば当然金利がかかる、その金利について、これは畜産振興事業団を通じて約四億円強の補助を行うということにいたしたわけでございます。そのほか……(神田委員「今後どういうふうにするか結論だけ」と呼ぶ)そういう補強措置を行っておりますが、なおこれから先、基金の運営には若干問題があるということでございますので、単に基金の問題だけでなしに、調整保管とか液卵の買い入れ等の問題も含めまして、それから幸い最近は卵価も若干回復してまいっております。それらの情勢も見きわめて、全体的な問題としてとらえて対策も検討してまいりたいと考えます。
  207. 神田厚

    ○神田委員 養鶏問題について、大臣に最後にお願いしたいのですが、一つは、やみ増羽の是正、これを、局長も答弁したような形でありますが、ひとつ大臣の方からも決意をお聞かせいただきたい。  もう一つは、卵価安定基金の救済措置について、ひとつ全面的にそれを前向きにお願いしたい。  この二点についてお願いしたいと思います。
  208. 中川一郎

    中川国務大臣 やみ増羽問題というのは大変な問題で、農林省も一生懸命やってまいりましたが、さらに徹底するように最善を尽くしたいと思います。  安定基金の問題についても総合的な一環の中で検討してまいりたい、こう思います。
  209. 神田厚

    ○神田委員 次に、項目では最後になりますが、林業問題について林野庁並びに大臣の方にお伺いいたします。  国有林野事業特別会計、これもまた昭和五十二年度の決算において約九百億円の赤字を出してしまった。この最大の理由は、一つは、外材の輸入の増大と円高の影響、さらには国産材の価格低迷、こういうふうなことが考えられるのであります。  林野庁は国産材の価格の見通し、あるいは外材の問題についてもそうでありましたが、価格見通しに非常に甘さがあったのではないか、こういう指摘があるのですが、どうですか。答弁は簡単にお願いします。
  210. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 木材価格の問題でございますけれども、先生御存じのように、木材は現在六五%外材が輸入されております。したがいまして、現在の木材価格を支配しておりますのは、どうしても外材の価格が中心になろうというふうにわれわれ考えます。なおかつ、木材価格のまた一つの変動の要因といたしまして、住宅建設等木材の需要の問題もございます。したがいまして、この点につきましてはそのときの経済状況その他によりましてなかなか判断のつかないものもございます。  しかし、私どもは、木材価格という問題につきましては、毎年当初予算を組む場合に、その年の大体の伸び率、従前の傾向を考えました伸び率を勘案しながら対応しておりますので、毎年毎年につきましてはそんなに大きな見通しの誤りはないというふうに考えております。ただ、長期的に見た場合でございますけれども、昭和四十八年に林業の基本的な長期の見通しをつくっておりますけれども、その時点と現時点では日本経済状況が全部変わっておりますので、そういう点からおっしゃいますれば、また、そういう点から判断いたしますれば、確かにその辺の見通しの違いがあったというふうに言えるかもしれませんが、これはひとり林業だけで判断のつく問題でもないというふうにわれわれ考えておりますし、そういう点から考えまして、必ずしも木材価格の見通しに甘さがあったために、それだけで国有林の財政がおかしくなったというふうには考えておりません。
  211. 神田厚

    ○神田委員 国有林野の赤字の問題はいろいろなことが言われております。一つには、国有林野事業特別会計が単年度の収支決算になっている、これも問題があるのではないかという指摘があります。国有林野事業の持ついろいろな機能、さらには国民的な要請の強い公益的な機能へ対応するためには、木材の売り払い代でそのすべてにこたえること自体が無理なんだ。したがって、特別会計制度そのものを見直し、あるいは手直しを図って、適切な森林林業経営に当たるべきでありまして、八十四通常国会で成立を見た国有林野事業改善特別措置法による一般会計財源の投入と合わせて政府としても思い切った財源措置をとる考えはないかどうか、この辺は大臣の御見解を伺いたいのでありますが、いかがですか。
  212. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生御指摘になりましたように、国有林は特別会計制度でやっておりますけれども、これについては、現在の国有林の財政上の状況等々勘案されまして、先般成立を見ました改善特別措置法によりまして、本年度から、一般会計から林道、造林といったような基盤的な事業に対しての助成をいただくことになったわけでございます。私ども、今回成立いたしました法律をもとにいたしましてこの十年間改善に努力いたしますれば、二十年先には一応財政は見通し得るという判断を持っておりますので、私どもといたしましても、現在の制度を効率的に運用し、そして事業の運営については適確な運営をすることによりまして財政の立て直しはやり得るというふうに判断をいたしております。
  213. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、余り突っ込んだ話はできません。  次には、営林署の統廃合の問題、これを御質問申し上げます。  林野庁は、さきに青森営林局など内地九営林局についてそれぞれ一営林署の廃止統合を明らかにしておりますが、委員会の附帯決議の中で、営林署の統廃合については、地域住民の十二分な理解と納得を得るように努める、そして地域関係者の要請等を踏まえつつそれをやっていくのだと言っているわけであります。現在各地域でほとんどの地域関係者が反対をしている立場でありますが、政府としてはそういう反対があってもこれをやるのかどうか、その辺はどうでございますか。附帯決議の趣旨を尊重できるのかどうか。
  214. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国会の附帯決議でございますから、これについては私ども十分尊重し、対応していく考え方でございます。したがいまして、八月以来、場所を決め、さらには内容について現在地元等に十分御理解いただけるような説得を営林局を中心に実行いたしておりますし、必要な個所につきましては本庁からも出向いた個所もございますけれども、そういうことによりまして、地元の御理解、御納得をいただけるような努力をさらに続けてまいりたいと考えております。
  215. 神田厚

    ○神田委員 営林署の統廃合は間接費を節減することがねらいだ、こういうことでやられているわけですが、労働組合も全部反対をしている、こういう中で労使の対立が激化してしまったりあるいは地域との関係がまずくなったりして、果たして本当に廃止しようとした趣旨が貫けるのかどうか、デメリットの方が多いのではないか、そんなふうなことを考えるのですが、いかがですか。
  216. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 今回私どもが実行しようとしております営林署の統廃合は、国有林の改善の一環でございます。したがいまして、私どもとすれば、この問題ばかりでなくいろいろな問題をこれから改善をしてまいらなければいけないと考えておりますが、その改善をするに当たりましては、当然労働組合にもその話をし、説明をし、労働組合の御協力というものもなければなかなか実行し得ないというふうに考えております。そういう意味から、労働組合はもちろんのこと、営林局署の職員は当然のことでございますし、国有林改善のために労使協調しながら営林署の統廃合あるいはその他の改善を進めることが何よりも必要だというふうに考えております。  従来もそういう姿勢で私どもやってまいりましたけれども、今後とも労働組合等にも十分その辺を説明し、協力、納得がいただけるような努力をしてまいりたいと思っております。
  217. 神田厚

    ○神田委員 十二分に話し合いをして、その上で納得を得た上でやるというわけですね。
  218. 中川一郎

    中川国務大臣 きわめて大事な問題ですから私からも申し上げますが、これは労使一体となってやらなければならないということなんです。ところが、いま労の方はどちらかというと反対だという立場のようでございます。反対で通るものなら私どももいいのですが、労働組合が反対のままにこれができないということになりますれば、今度の改善計画は実効が上がらないということで、一般会計からの導入なども、労働組合が反対したことが原因であったということが明らかになった場合は、一般会計からの繰り入れも見合わせなければならないという非常な事態になるということでございますので、ただ単に話し合いができないで済んだというようななまやさしいものではないということだけははっきり申し上げておきます。
  219. 神田厚

    ○神田委員 大変大事な問題ですね。しかし、これは十二分に話し合いを続けながらやっていくという基本的な形で、時間的なものについて余り無理をしない方がいいんじゃないかと私は思うのです。  ついでに、営林署の統廃合が、昭和四十七年十二月の林政審答申以降、およそ一割程度と言われている。昭和五十三年度以降の改善計画期間内に実施したいとの意向が明らかにされているが、昭和五十四年においては具体的に計画をされているのかどうか。さらには、今後における営林署の統廃合の実施基準並びに地域についてはどのように考えているのか。これも非常に大事な問題でありますが、この辺についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  220. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 営林署の統廃合につきましては、昭和五十四年度の予算要求並びに組織、定員の要求におきましては、現在のところ、営林署の廃止は考えておりません。  それから、今後の営林署統廃合の考え方でございますけれども、私ども、改善期間中に一応やってまいりたいというふうに考えておりますけれども、今回と同様に、やはり事業規模の小さいところ、あるいは比較的管理面積の狭いところ、あるいはお互いに近距離にございまして交通の非常に便利なところ、そういうようなところであって、合併いたしましても森林の管理上あるいは事業実行上支障のないというふうに判断されるところを営林署の統廃合の対象地域として考えておりますし、今後ともそういう点を中心にいたしまして総合的な判断で決めてまいりたいというふうに思っております。
  221. 神田厚

    ○神田委員 時間が来ましたので、これできょうの質問は終わりますけれども、営林署の統廃合の問題あるいはいろんな林業の問題については、これから先非常に大変な問題がいろいろ待ち構えております。どうかそういうことで、この統廃合の問題も含めまして、今後とも当局の方のきちんとした、いわゆる国内の森林資源を守っていくという立場も含めまして、ひとつ十二分な対応を十二分な話し合いのもとでやっていただきたい、最後に大臣にお願いをいたしまして、御答弁いただいて質問を終わりたいと思います。
  222. 中川一郎

    中川国務大臣 十分な話し合いもし、しっかりした林野を守っていきたいということでございますが、労使一体となり切れないで最後まで労働組合が反対していくということになればいつまでたってもできませんから、重大な決意でこれに取り組まなければならぬ、別の角度からの検討が必要である、こういう悲壮な決意でこの問題と取り組み、山を守っていきたいと存じます。
  223. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  224. 中尾栄一

    ○中尾委員長 津川武一君。
  225. 津川武一

    ○津川委員 農林水産大臣にお尋ねしますが、実は十月九日の毎日新聞の夕刊を見てびっくりしてしまったわけであります。それにはこう書いてあります。「五十三年産米が空前の豊作となり、米過剰問題の深刻化に悩む農林水産省は九日までに、米価審議会を来年度は早期に開き、生産者米価の実質引き下げを図るとともに、古米処理を開始するなど、当面の方針を固めた。」「このうち、生産者米価引き下げは北海道、青森の米をねらって行う方針だ。両道県の米は質が他県より劣るうえ、収量は全国平均を一−二割上回る多収穫米だ。」「そこで農林水産省は、こうした品質格差を来年度から生産者米価に反映させることを決め、米価審議会に諮って両道県の米価を引き下げる意向である。」  私、次の日、十月十日、体育の日なので家におったら、その晩のうちに東京の農協関係の人から電話が入ってきて、見ているかと。私の方は毎日新聞の夕刊ないのです。それで、今度は次の日の十月十日の毎日新聞を見ましたら、そうでもなくなっておって、「中川農相は九日夜「米価審議会を来年度早期に開き、生産者米価の実質引き下げを図るという方針は固めていない」と語った。」「生産調整に協力してもらっている北海道、東北などの米作地帯に悪影響を与えないような対策をとりたい」というふうに書かれております。  そうして、十月十二日の日本農業新聞にこう書いてあります。「中川農相は十一日、閣議後の記者会見で、一部の新聞が「生産者米価、来年度引き下げへ農水省が検討、まず青森、北海道産」と報道したことに対し「九日までに方針を決めたことはないし、議論もしていない。こうしたことは農家を混乱におとしいれるので、困る。抗議する」と激怒。」と書いてあります。これでその電話をかけた人も心配ないと言っているんですが、ここで心配しておる北海道や東北の農民大臣態度を明確にしていただければと思うわけであります。
  226. 中川一郎

    中川国務大臣 一部新聞の報道に津川委員がびっくりしたそうですし、農村もびっくりしたと思いますが、私も実はそれ以上にびっくりしたわけでございます。価格について議論したこともなければ方針を固めたこともない。上げるとも下げるとも考えたことなければ、わけても北海道と青森を名指しで下げるなんということ、議論の対象になろうはずもありません。もし、そんな地域を限って青森県と北海道を下げると言えば、これは憲法違反でございますから、当然の権利を特定の地域にだけ差別をつけるというようなことはでき得ようもありません。すべて初めから終わりまでびっくりしたばかりじゃなく、翌日、固まっていないと言ったといえば、何かがあったから固まっていないのであって、それもまただめだ、全部だめだというので重大な抗議をいたし、その後謝罪もありまして納得したわけでございますが、ああいう報道が出たことは火も種も全くないところから出たのであって、私としては心外であり、ああいうことがなかったということを明確に申し上げておきます。
  227. 津川武一

    ○津川委員 一安心しました。  そこで、水田利用再編対策についてでございますが、大臣が繰り返し答弁しているから聞かなくてもいいことなんですが、ことし豊作になったからといって百七十万トン、三十九万ヘクタールというのを来年、再来年変えることはないと思うのですが、この点一つ。  それからもう一つは、十年計画でやっておりまして、十年たてば需給は単年度の毎年バランスがとれてめんどうなことをしなくてもいい、そういうふうになるという見通しなのか、いつまで再編利用対策をやって減反しなければならないかという心配があるわけです。したがって、十年という計画を立てた意味、そういうふうに私みたいに解釈していいのか、この二点を言明していただきます。
  228. 中川一郎

    中川国務大臣 今度の転換対策は十年間をめどにしてございます。十年間というのは十年間で、前は一時米をやめてもらうという政策だったのです。前、四十五年の当時ですね。今度は十年間で米以外のものに定着をしてもらう、それには約十年かかるだろう。とりあえず数量、やり方等は三年間は原則として今年度のもので対応していくということになっておりますし、ことし豊作だからといって来年また限度数量を変えるとか転換面積を変えるというようなことはしない、こういう方針でございます。
  229. 津川武一

    ○津川委員 そこで、もう少し再編対策について伺ってみたいと思います。  再編対策が始まったとき、私たちは、上から押しつけるのもいけないし、地域考えないで一律にやるのもいけないし、農民の納得を得た上でやれ、自主的にやれるようなことをせい、そういう意味においてあの政府のやり方には問題があるとして反対したわけです。しかし、お米が余っていいということでもないので、私たちも米からほかの作物への転換をやっぱり求めているわけです。その点で私たちは、地域の実情に即して農民が自主的に転換できるように国が施策を講じ、これに援助せい、こういう対策を持ったわけであります。そこで、この立場から若干の質問をしてみます。  私の周りで、四ヘクタールの水田を持って一ヘクタール転作しました。そこのところへ大豆やジャガイモやニンニクなどを植えて、反収十五万ばかり上げているのです。それで奨励金もらっている。こういう創意工夫に鋭意努めている農民もいるわけです。私たちはこういう点で、今度の再編対策の中に一つの芽が出てきたと思っているのですが、そうでない部分もまたかなりあるのです。  たとえば、その一つの例として、青森県の浪岡町、大豆四十四・三ヘクタール、ソバ百七十一ヘクタール、麦四十九ヘクタール、ニンニク十六ヘクタールの転作をやったわけであります。この間、農協の総会が開かれまして、企画課長が発表したところでは、千二百十一戸の農家が転作して、予想した収穫量の二〇%より上がってなくて、一戸平均で十七万円の損失になっている、収入減になっている、こういうことなんです。このうちでソバですが、百七十一ヘクタール転作して、最初の予想では三千五百俵からの収穫を見込んだ。実際に取れたのは五十俵。このうちで一局部の大釈迦という地域で、二十一ヘクタールは刈り取らないで霜がおりてくる、いまそのままに放棄してあります。これではやはりいけないと思います。こんな例ばかりでなく、よくいっている例もありますが、こんな例もあるということ、ここに一つの本質がひそんでいて、これから対策を講ずる一つの重要な因子があるから私は問題にしているのです。  どうしてこのようになったかということを現地で農民に聞いてみましたら、第一は、水田をそのままにして、そこで種をまいてやってみた。水が来て芽が出ない。出てもだめ。またやってもだめなんで、もうあきらめちゃったというのですよ。ここのところに一番大きな問題があるわけです。  もう一つは、いま話した収量が少ない。三千五百俵取れると思っているのに五十俵しか取れない。この地域でさっきの放棄したところでは、二十一ヘクタールで刈ってみてどうなるかというと十七俵、これでは何ぼ奨励金もらっていても、農民魂があるんだから、そこでやはり採算のとれる、収支が賄われる、再生産費が償うものでなければ、皆さんがこれをおやりにならない。  もう一つの問題は、今度は刈ってみようと思ってバインダー入れてみたら、実ったのがぼろぼろ落ちて全然だめなんだ。そこで、収穫しようとすればどうしても手でなければだめだというので、それもやってみたけれども、あきらめちゃったというのです。これは一つの実例で、私は方々歩いてみたらこんな例も必ずしも少なくない。  そこで、問題は排水なんです。ソバでも大豆でも小麦でも、転作を容易ならしめたり進めたりしていく上で根本は土地改良、その中での排水、ここが基盤なんであります。私は、順調な転作を必要とするならばこの排水、土地基盤整備は一つの重点的な施策でなければならないと思うわけです。農林省も恐らくこのように考えていると思うのです。  そこで、考えてやっていると言っておりますから、それが五十四年度の予算の中で実際にどういうふうに実現されているかをお答え願いたいのであります。
  230. 中川一郎

    中川国務大臣 転換については排水問題が一番ガンだろうと思うのです。そこで、今日までもやってまいりましたが、五十四年度は新たに簡単に排水が掘れる予算を二百三十億ほど新規要求、いままでの仕組みとは違った予算を要求いたしております。これと従来の制度の予算合わせて約五百億ぐらいで、そういった排水の悪いところで転換が成功しなかった、こういうことに対処していきたい、これは本当に真剣に取り組んでその問題を解決したい、こう思っているわけでございます。
  231. 津川武一

    ○津川委員 排水に一生懸命やった、二百三十億円使うというこの予算、私も要求予算を見まして、新規事業としてそういうふうなものが基幹排水対策事業として百億円、小規模排水対策事業費として百三十億円、これ説明聞いて私もよかったと思っている。  ところで問題は、コンバインを使っている、四人か五人で一つのグループをつくってやっているわけですが、ここで大豆なりソバなりにやるとすれば多くても三町歩か四町歩、五町歩、五ヘクタールいかない。ここでやっていくときに、いま大臣が話された二つの二百三十億円で、これでこういうところの排水ができるのかということなんだ。そこまでこの予算がおりていかなければならない。もう一つの問題は、いま行ってみますと、一ヘクタールつくっているところは九アールぐらい転作しているのです。九アールぽつんぽつんとあるわけです。これをぽつんぽつんあるままでやらしていく、やっていこうとする向きもあるのです。この排水ができるのか。本当は五人なり六人なり集めてやって、そこで土地基盤整備をやるということになってくるわけですね。したがって、この排水の基本的な問題、やがて十年後に米のことでそういうことしなくてもいい、定着するという形にまでいくのか、農林大臣に聞いたのはその意味なのです。これで十年後にいまの排水をやれるという計画をお持ちになっているか、年次計画的にお持ちになっておやりになっておられるのかということです。こういう三ヘクタール、四ヘクタールのところの排水もできるような形にすべきだという点が一つ。それで、十年計画農民に示して進めていかなければ問題が解決しないということ。今度私は農林省の側にいま立ってみてこんな質問しているのです。お答え願います。
  232. 大場敏彦

    ○大場政府委員 来年度新たな要求をしているわけでありますが、その中で基幹の県営事業につきましては、これも本来であるならば団体クラスのものを県営事業でまとめてやるという形で二十ヘクタールぐらいのところまで採択基準を引き下げている。小規模なものは五ヘクタールという本当の末端のところまで採択基準を引き下げて、要するにあらゆるところを拾ってしまおう、こういうような形で対応するつもりであります。ことに考え方といたしましては、ほかの事業でももちろん排水事業はやっているわけです。先ほど大臣が申し上げましたように、この事業だけじゃなしにほかの膨大な事業でも排水事業をやっているわけですが、この事業のねらいは、特に排水の条件が劣悪なところ、そういったところをきわめて短期間の間に、五年なら五年と、五年ぐらいを想定しておりますが、五年なら五年の間に緊急的にやってしまう。一地区そう何年もかからないで、短い期間に計画的にやってしまおう、そういうようなことがねらいでありまして、いわば排水の劣悪なところを拾ってそこを集中的にできるだけ末端まで拾う。そうして緊急的に、計画的にやってしまうというような形で、全体計画として、いま数字は手元に持ってきておりませんけれども、大体そういう悪いところを全国的に拾って、五年ぐらいの間に全部片づけてしまう。一地区はせいぜい小規模なところは一年で片づける、それから県営クラスの大規模なところでも三年ぐらいで片づけようというようなつもりで、大蔵省といま折衝しております。
  233. 津川武一

    ○津川委員 そこで、水の条件の悪いところを重点的にやる、まあ必要だし、重点的にやって大豆なりソバなりができるような土地条件になればいいのだけれども、西津軽郡の車力というところへ行ってみたら、道の両端に、大豆とソバやったのはみんなだめになっているんだ。これはさるけ地帯、湿地地帯で、昔は入ると多分ここまで入った。田植えするときにこんなに大きなげたで田植えした。そこへいまようやく表土が固まって水田地帯になっているわけです。ここに行ってみたら、悪いところの水を抜いてくれるのはありがたいが、これは一体できるのか、こういう話なのです。そういう本当にどうしようもない湿地地帯、米以外にやらない形で育ててきた土地条件のところをいま一律にソバや大豆を植えさせている。こういう限界地域あたりなどというものは、やれるところとやれないところ、やっていけないところと考えているのかどうかという、この点を明らかにしていただきます。
  234. 大場敏彦

    ○大場政府委員 もちろん転作に当たって、いま先生がおっしゃったように、それは地域、圃場の選定というものは大事であるということは申し上げるまでもないわけで、そういう意味でできるだけ水利条件の劣悪なところは避けて、地域の中でもいいところで選んでいただくというのは当然のことだろうと思うのです。しかし、どうしても悪いところでもやらざるを得ないというケースがありますから、そういう場合には、通常われわれがいま既存の系統の排水事業でやっているものよりも排水レベルを上げてこの事業をやろう。この事業は、繰り返しますが、排水条件が非常に劣悪である、そういったところを対象にして、排水レベルも単に機械が入る、乾田化ということだけでなしに、普通の畑作物の栽培が可能になるような条件まで高いレベルにまで排水を高める、こういったところをねらいにしている事業であります。
  235. 津川武一

    ○津川委員 それから、この例でもわかったように、今度方々の農業改良普及所に行ってみました。そして、今度の稲作再編対策に対してどうするかと皆さんの意見を聞いてみたら、やらなきゃならぬし、やりたいと思っている。だが、手間賃も取れない、再生産費が賄えないようなものの指導をするのは非常につらいと言っている。ソバ三俵上がって一万八千円、これをつくれという指導というのはちょっと酷だ、やらざるを得ないからやっているけれども、おいらの情熱が向こうに移っていかないからだれも聞いてくれないという、こういうことなんです。  したがって、転作を進めていくもう一つの条件は、つくったものによって再生産費が賄われる。生産費所得補償方式でいく。農民であるから奨励金もらって一時生計を立てていくというのでは満足しないんだ。そこで、転作した作物に本気になるとすれば、そこの再生産費が償われるように、収量と価格の保証がなければちょっとやりづらいと言う。農民の気持ちもそうです。その点で、今度の要求した予算を見てみたが、そこのところは余り見つからない。  この点の方針予算要求との関係がどうなっているか、聞かしていただきたいと思うのです。
  236. 中川一郎

    中川国務大臣 収量については、いまの排水その他によって土地条件をよくしていくということですし、価格問題については、基幹的な麦あるいは大豆、飼料作物は直接じゃありませんが、肉の価格対策というようなことで持っていきたい。それ以外のソバとかいうようなものについて、直接価格について保証するような仕組みは残念ながら現状で仕組むわけにはまいらぬ、こういうことでございますが、流通対策等について指導なり何なりについては、普及員あるいは直接農政局等が指導していく、こういうことで対処したいと思うわけでございます。
  237. 津川武一

    ○津川委員 大臣はめんどうだと言う。これより先論争しませんが、やはり価格で見てあげるということがかなり必要だということを私は指摘して、次に行きます。  私が次に移ろうと思っていた流通のことを大臣が触れてくれたからちょうどよかったのですが、青刈りなんです。金木町というところに行きましたら小田川という川がありまして、その周りに七百メートルから千メートル、穂が出たばかりの稲が青刈りされて雨に打たれている。そこに金木町青刈り稲集荷場というふうにかかっているのです。役場の費用でそこに集めているのです。どうするんだと言ったら、だれも買ってくれないからこれは腐らすほかに仕方がない。それをどこへ持っていって腐らすかというと、これも役場の費用でやらざるを得ない、こういう状況なんです。どうしてこんなことになったと聞いたら、隣に市浦という村があって肉牛をやっている、ここで買ってくれる、ここに売るから青刈りをやれというので農民はそのつもりでおったのです。持っていったらそれを買わないのです。どうにもしようがない。最初から約束がなかったわけです。売れるという見通し、売ってやるという流通の見通しがないままに青刈りさせたところに問題があるわけです。  これはひとつ青刈りだけじゃなく、これからいろいろな作物で、特に畑作物は売っていく道、販売の体制、流通の体制がなくて減反をやるとまたこんなふうになりますので、この転作作物に対して流通対策、これは大臣が言ってくれたからいいのだけれども、もう少し詳しく答えていただきたいと思います。農蚕園芸局長、ひとつどうです。
  238. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 転作作物につきましては、麦なり大豆なり、その他ただいまお話のございますソバというようなものもございます。麦につきましては一応食管で買い入れる、ビール麦はビール会社の方で買い入れる、こういう形でございますし、大豆の方は、これは大豆なたね交付金法ということで、いわゆる調整販売計画に全国集荷団体が乗っけてさばいていくということでやるわけでございます。  それで、先ほどもたとえばソバという話も出たわけでございますが、このソバにつきましても、実はいろいろ価格なり流通の問題を詰めておりますけれども、たとえば不足払いみたいなことができぬかということも検討はしております。ただ問題は、不足払いというようなことをやりますると、基準価格をどうするか、ところが、これが非常にばらばらでございますので、なかなか一本というのがむずかしいとか、あるいは調整販売計画といいましても、現在のあれからすると農協サイドで集荷をいま余りやっておらないのです。そういう実態もございますので、なかなかそれをそういうかっこうに持っていくのがむずかしいとかいうようなことで、寄り寄りこの辺なども農業団体等ともいろいろ話し合ったりしてやっておるところでございまして、そういう流通とまた価格的なものもかみ合わしたかっこうで、いろいろ前向きにその辺もやっていきたいということで今後とも努力したい、かように思います。
  239. 津川武一

    ○津川委員 大臣の時間があって、あと五分しか私の時間がないそうです。  それで、余り米のことについてお尋ねいたします。ことし八十万トンぐらい余るとかいろいろな議論が出てまいりましたけれども、この余り米の問題について、私たちの地方自治体の県庁からも議会からも、生産調整に協力した人の限度数量以上に出た米は全量買い上げるようにという陳情がここに来ているわけなんですが、これをどうするかという点が一つ。  もう一つの問題は、お米の中で流通しづらいお米があるわけです。軟質米だとか食味に問題があったりして。これが正規のルートで集められないとやみになって、それで米の自由化へという大変な道に走る心配があるので、どうしても余り米、特に卸が受け取るのを余り喜ばないお米を正常のルートに乗せる、そのために必要な援助をしなければならない。これが二つ目の問題です。  三つ目の問題は、こういうお米が若干あります。こういうお米はやはりつくりやすい、寒さにも強い、倒伏もしない、いもちにも強い、そこで問題の売りづらい点がある。その売りづらい点を直すような基本的な試験研究をやって、日本のお米の全体の水準を上げて、そうした形で米の需給バランスをとるべきだと思うのですが、この三点について、五分という制限がありますので、お答え願いたいと思うのです。
  240. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 三つのうち最初二つについてお答えいたしたいと思います。  限度超過米を全量買い上げしろという御要請は何回もあるわけでございますけれども、これにつきましてはこれまでもしばしば大臣以下私どもお答えしておりますように、食管法に基づいて、現在国民に供給を確保するために必要な限度において買い入れをするという考えに立っておりますので、買い上げをいたすことはいたしませんけれども、これが秩序ある流通をさせなければいけないという点で、従来からもやっておりましたけれども、流通促進費という一カ月、六十キログラム当たり百円という、まあ金倉相当額でございますが、そういう援助をする。また、適正流通対策費といいまして、集荷団体に特別に集荷をし、販売をさせるということのために、集荷団体に対しましては一俵当たり今年度は四百円、また卸業者に対しては百円というのを交付することにいたしております。これの配分につきましても、今年度の転作目標の達成の程度も考慮しながら交付してまいりたい、かように考えております。
  241. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 現下の状況にかんがみ、米の消費拡大を国策として推進しているもとで、食味の点からお米離れが起こるというようなことでは大変困りますので、私ども試験研究における米の育種の目標は、食味の点を大変重視してやっておるわけでございます。今後とも真剣に努力をしてまいりたいと思っております。ただ、食味と、たとえば耐冷性というようなものの間には相反する性質と申しますか、なかなかなじみにくい要素もございます。むずかしさもございますが、真剣に努力するつもりでございます。
  242. 津川武一

    ○津川委員 終わります。      ————◇—————
  243. 中尾栄一

    ○中尾委員長 島田琢郎君。
  244. 島田琢郎

    ○島田委員 時間が大分窮屈でありますから、手際よく質問をし、わかりやすく答えていただかないと時間がむだになってしまうわけでありますから……。  サトウキビの価格決定の時期が迫ってまいりまして、若干の質問をいたします中で、ぜひひとつ決定に当たってはサトウキビ生産農家の期待に十分こたえる、そういう価格の決定をしてほしい、こう思っておるわけでありますが、いつごろ決めるのでしょうか。  そして、ついでですから、パリティの方もわかり切っている話でありますけれども、パリティは幾らで、昨年方式で計算をすると一体幾らになるか、ことしのてん菜方式で決定をすると一体幾らになるか、この点をお尋ねいたします。
  245. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 サトウキビの生産者価格について、五十三年度のてん菜と同様の方式によりまして試算をいたしますと、農家の手取り価格は、パリティアップの指数が一・九四でございますので、一万八千七百三十円、それから最低生産者価格につきましては、二分の一織り込むということで計算をされることになりますが、これについてもパリティアップをするということで、残りが奨励金ということに相なるわけでございます。
  246. 島田琢郎

    ○島田委員 ことしのてん菜方式でやったら幾らになるか。ビートが決まりましたでしょう、てん菜の生産者価格の決定方式でやると、ことしの方式でやったら幾らになりますか。
  247. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいま農家の手取り額について申し上げました数字が、てん菜方式でやった場合の手取り額でございます。
  248. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、サトウキビの場合は上乗せをしていますが、これはこれからの問題になるのでありましょうが、サトウキビのことしの実態を考えますと、年々力が入ってきておりまして、生産者も真剣に生産に取り組んでいるということはありますから、ひとつこの際、そうした少し拍車のかかりかけたこういう時期でありますから、これが後ろにまたバックするようなことがないようにするためにも、ぜひ価格決定に当たってそういう点の配慮を小まめにしていただきたい、こう思っているのですが、そういう見込みについてはいかがですか。
  249. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 昨年決定を見ました農家手取り額を基準として、パリティ指数を乗じたものを基準として適正に価格決定を行うという方針でございます。昨年の決定価格に加算されました額につきましては、当然それが基準額となるということでパリティ指数が乗ぜられ、ことしの価格決定の際の基準額ということに相なるわけでございます。
  250. 島田琢郎

    ○島田委員 私の聞いたのは全くぶつ切り、そういうことでやるのか、従来大分議論のあったところでありますけれども、パリティで出された価格に最終的に上乗せをする考えはないのか、こういう点であります。  これは局長に聞いたって無理なんでありまして、大臣、時間が短いからはしょって言っているので、サトウキビの生産の実態等をわきまえていらっしゃると思うから、その辺はいかがですか。
  251. 中川一郎

    中川国務大臣 価格につきましてはパリティを掛けていく、掛けるベースは生産奨励金を含めたもの、こういうことで、それ以上プラスということは今後の検討課題ではありますけれども、それ以上プラスということは、いまのところ言い得る段階にはなっておりません。
  252. 島田琢郎

    ○島田委員 生産調査が発表になっています。沖繩のサトウキビばかりではありませんけれども、かかった生産費、つまり発表になっている生産費から見て、いつも決定される価格は農家手取り価格にしても非常に低い、こういう不満が現地には残るのでありますが、やはり正確に生産費を見積もってあげる、こういうことが非常に大事だと思うので私はあえてその点を申し上げたわけであります。パリティの方式でやれば幾らになるかというのは私もわかっているのでありますが、そのほかに沖繩を特にお考えになるという温かい気持ちがないのですかと聞いたのでありますが、大臣からはまあパリティそのものである、こういうことで、余り温かい返答が返ってこないのは残念であります。しかし、現に五十二年のサトウキビの生産調査結果によりますと一万九千九百六十四円、五十一年は一万九千三十円でありますから、四・九%生産費は上がっているのだ、そういう点を配慮されるお考えはないのか。現地は、特にサトウキビについては沖繩と南西諸島、つまり鹿児島、あるいは同じサトウキビの生産でも、株出し、春植え、夏植えと、その生産費の実態というのはいろいろ違うわけでありますけれども、それをだんごにして最後に価格を決定するのでありますが、そういう意味考えますと、できるだけ生産費が償えることが必要だというのは現地の要求にまつまでもないわけでありまして、そういう点で考えますならば、特にサトウキビの場合は生所方式というものをひとつぜひ考えてもらいたいという現地の要請が出てくるのはその辺だろうと思うのです。特に収穫どきの労働時間あるいは収穫にかけます労働の厳しさというものを特質的に抱えているサトウキビの生産というのは、ほかの農畜産物の問題とはやや違った内容を持っているわけであります心ら、こういう点を配慮して価格を決定してほしい。  再度、大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  253. 中川一郎

    中川国務大臣 現地の農家や関係者から、生産費を下回る価格はいかがかという議論は十分聞いております。ただ、これは仕組みが生産費を補償するという仕組みじゃなくて、パリティを基準として再生産が確保されるという仕組みでございまして、法律から言ってもそういうことは義務づけられていないということ、それから第二番目には、沖繩復帰後、六千円相当であったものを一万円にし、一万五千円にし、一万八千円にしということで約三倍の値上げをし、御期待にこたえてきたつもりでございます。  なお、労働力がかかっておるために生産費を上回らないという問題もありますので、むしろ長期的に考えるならば生産性向上を図ることが大事であるというところから、サトウキビの原原種農場もことしから設置をする、あるいは省力化等々、政策的に今後推進をして、生産費が下がることに努力していくことの方が長期的に体質のいいサトウキビができる、こういう基本方針で対処したいと思っているわけでございます。
  254. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣のおっしゃっていることを私は否定しませんし、そのとおりであります。サトウキビの生産に当たっての諸般の条件を整備する、これはまず何よりも急がれることであります。したがって、私は、そのお考えに対してはぜひひとつ積極的に進めてほしいと思うのですけれども、しかし沖繩の現状を考えますと、土地基盤整備の問題一つ取り上げてみても、なかなか思うように進んでいかないという悩みを持っているわけでありますから、それを補完する意味ででも、当面、百七十時間という大変労働時間のかかるサトウキビについては特別な手当てが必要だ、こういうふうに思うものですから、土地基盤整備ができ上がり、機械を導入してもそれが効率的に動いていけるような条件というものが早急にでき上がることが前提でありますけれども、その間における価格の保証措置というのは非常に大串だ、こういうふうに私は考えているわけです。原原種農場もようやくでき上がりつつありますから、これに大いに期待もしていますし、さらに試験研究機関の充実などは一周望まれることでありますし、また、そういう意味では、私がしばしばここでも問題にしております休耕補償等の措置というのは、非常に当面の問題として大事な点だ。ところが、いままで御答弁は幾度かいただいているのでありますが、何としてもこの問題は他に波及するので困ると言って、検討をするという姿勢さえも政府当局がお見せにならぬというのは大変遺憾だと私は思っているのです。検討ぐらいしたっていいではないかと思うのですが、いかがです。
  255. 大場敏彦

    ○大場政府委員 圃場整備事業をやったために植えつけ期がずれて休耕せざるを得ない、その場合の補償という議論は、私ども何回も伺っております。しかし、これはいま先生御指摘になりましたように、何もサトウキビだけの話じゃなく、また沖繩だけの問題でもございませんし、北海道のビートということもございますし、あるいは果樹だとか、そういったものとの関連もあるわけで、これだけを切り離して休耕補償をするという制度、助成は、現在の制度の中ではなかなかなじみにくいのではないか。やはりわれわれは、冷たいような言い方ではありますけれども、その投資をすることによる後年度に発生する生産性の向上という形でそれは埋めるというのが原則じゃないかというふうに思っております。
  256. 島田琢郎

    ○島田委員 やはり冷たい返事しか返ってこないわけでありますが、しかし検討ぐらいはしてもいいと私は思うのですね。きのうもこの点はちょっと議論をしたのでありますけれども、時間がありませんから先へ進まざるを得ませんが、沖繩はもう一つ問題を抱えておりまして、含みつ糖という問題があるのです。これも沖繩県にとっては大変大事な産物なんでありますが、近年、外国からの輸入、つまり台湾赤穂が非常に入ってまいりまして、国内産の含みつ糖を圧迫するという事態もあって、地元ではゆゆしき一大事と大変憂慮しております。  この点の対策については、これもまた糖安法のアウトサイダーというふうなことになって、しかも自由化ということでありますから、この問題の取り組みもなかなかむずかしいということはしばしばこの委員会で答弁をいただいているのでありますけれども、しかし、ほうっておくわけにはまいらぬのでありますから、何としてもこれを前向きに消費拡大等の道を講ずるとか、あるいは国内産の含みつ糖を優先消費するとか、やはりそういったような点では行政上の責任を十分負って指導を強化するとかいうようなことが必要だと私は思っているのです。地元からは法制化をしてもらいたいという意見さえ強く上がっているのであります。この点はいかがです。
  257. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 含みつ糖の対策につきましては、御承知のとおり、復帰前の琉球政府の施策を引き継ぎまして、復帰対策の一環といたしまして、当分の間、販売価格とコスト価格との差の三分の二を国庫補助で助成をいたしておるところでございます。  それで、含みつ糖につきましては、当面そのような措置を講じていきたいと考えておりますが、ただいま御指摘の台湾赤糖との関係でございますが、これにつきましては、自由化をされておるということもございまして、その輸入を規制するということはなかなか困難でございます。ただ、国内における需要の面でいきますと、国内産の黒砂糖と台湾赤糖、それから国内で粗糖から生産されます再製糖につきまして、それぞれ固有の用途がございます。しかし、それぞれ固有な用途はございますが、需要と見合った形で輸入をされるということでなければいろいろ悪影響をもたらすということで、農林水産省が主催をいたしまして関係者の協議会を開き、秩序ある輸入をするということで指導をいたしております。ただいま、木砂糖年度におきましては、前砂糖年度が六千トンの輸入でありましたものを、五千トン程度にとどめるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  258. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  259. 中尾栄一

    ○中尾委員長 瀬野栄次郎君。
  260. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十三年滝サトウキビの最低生産者価格については、来る十月二十六日に政府は決定の方針のようであります。当初十月二十七日と聞いておりましたが、二十六日決定というふうに私たちも仄聞しております。サトウキビについては、例年当委員会で政府に繰り返し要求してきたところであります。御承知のように、沖繩農業並びに鹿児島県南西諸島においては、生産基盤の整備が他都道府県に比べ大きく立ちおくれているほか、サトウキビ生産者価格は生産費を大きく下回っている実情であります。このことについては、去る九月二十七日当委員会で長時間私からも政府に見解をただしてきたことでございますけれども、さらに価格決定前に落下のことをお尋ねしておきます。  去る十月六日決定を見ました昭和五十三年産てん菜の最低生産者価格は、トン当たり一万七千四百十円で、五十二年のトン当たり一万六千四十円に対し八・五%のアップでございました。奨励金はトン当たり千六十円で、五十二年の二千八十円に比し五一%に激減し、農家手取りはトン当たり一万八千四百七十円で決定したわけであります。てん菜とサトウキビの差が従来からだんだん縮まっているということで、沖繩のキビ作農家を初め、また鹿児島南西諸島のキビ作農家の皆さんは大変憂慮をいたしております。ちなみに申しますと、四十八年はトン当たり千円の差があったのですけれども、五十二年は三百五十円に差が縮まったということで、以下申し上げるようなことを確認しつつ、政府の見解をただすわけでございます。  サトウキビとてん菜の生産費、労働時間、家族労働報酬については大きな開きがあるわけですが、沖繩の例をとってみますと、五十一年がトン当たり一万九千三十円だったのが、てん菜は一万三千六百九十二円で、その差が沖繩の例で五千三百三十八円、沖繩、鹿児島平均を見ましても六千百七十七円の差がありますが、この認識は間違いございませんか。
  261. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいまお示しの数字につきましては、そのとおりだというふうに思います。
  262. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、サトウキビ、てん菜の労働時間を見ましても、十アール当たり五十一年、沖繩では百七十・二時間、沖繩、鹿児島平均では百六十三・九時間であるのに対し、てん菜の場合は三十六・四時間で、その差が百三十三・八時間もございます。これは農林水産省の生産調査による資料を私は引用しているわけですが、サトウキビはてん菜の四倍強の労働を投下しているということになるわけですが、この点も間違いございませんか。
  263. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 生産調査におけるその数字は、そのとおりでございます。
  264. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、サトウキビ、てん菜の家族労働報酬の推移を見てみましても、五十一年度の数字を見ますと、沖繩は一日当たり四千百五十円、沖繩、鹿児島平均で三千六百三十八円、てん菜の場合は九千四百六十円。したがって、沖繩とてん菜の場合を比べてみましたら、その差が五千三百十円でございます。サトウキビの家族労働報酬は一日当たり三千六百三十八円、これは沖繩、鹿児島平均でございますけれども、五十一年の例ですが、このようにてん菜と大きな差がある、こういうふうに私は試算しておりますが、これも間違いございませんか。
  265. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 そのとおりでございます。
  266. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、やはりサトウキビとてん菜にはかなりこういった格差がある。しかも、台風の強い鹿児島南西諸島並びに沖繩において、このような苦渋にあえぎながらキビ作農家は農業にいそしんでおります。もちろん、本土の米作、お米に匹敵するいわば主幹作物であります。こういったことはたびたび申し上げてきたわけでありますが、そういった点から、今回の価格決定に当たってはこの鹿児島南西諸島並びに沖繩の農民の皆さんに十分こたえていただきたい。まことに気の毒な状態でございます。そういった点で、こういった家族の労働報酬あるいは生産費あるいは労働時間にしても、またあらゆる諸条件にしても、いわゆる基盤整備等も本土に比べて大変おくれておるわけですから、そういった面で十分こういったものを織り込んで検討していただく、かように私は思うのですが、当局の見解はどうですか。
  267. 中川一郎

    中川国務大臣 サトウキビとの間には、できた生産品、品物についてもまた大きな差があります。北海道の方は値打ちがあるし、サトウキビの方の砂糖は値打ちがないというようなこともあり、あながちバランスがとれておらないというものでもございませんが、十分事情はわかりますけれども、これから慎重に検討して、最終案を得たいと思います。
  268. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大変時間が厳しい中でございますので、もう一点農林水産大臣に伺って見解を求めます。  キビ作農家の最大の要求は、ただいまも農林水産大臣が若干お答えになりましたが、昭和五十三年産サトウキビの生産者価格について生産費並びに所得を補償し、前年度最低生産者価格に奨励金を織り込んだ額に、生所方式により最近における労賃、物価等の上昇等を考慮し、農家の所得と再生産の確保が十分図られる価格水準に引き上げ、農家が安心して生産に従事できるよう価格決定をしていただきたい、かように思うわけであります。  この点について、沖繩並びに鹿児島南西諸島のキビ作農家の強い要請に対し、農林水産大臣はどうこたえてことしの生産者価格を決定なさろうとするのか、最後に決意をお伺いしておきたい、かように思うわけであります。
  269. 中川一郎

    中川国務大臣 生産費所得補償の仕組みは、残念ながらとることができません。長期的に沖繩のサトウキビが安定するように最善を尽くして決定をいたしたいと存じます。
  270. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いずれにしても、十月二十六日には価格決定をするわけですが、国会が十月二十一日に終わる関係もあり、休会に入った中で価格が決定されるわけです。私たちも、二十六日の決定に当たっては十分政府の決定を見守りながら、サトウキビの価格について注視をしていきたい、かように思っております。  期間も迫っておるわけでございますので、以上申し上げた点について、時間が厳しい中での最終的な質問でございましたが、政府としてもキビ作農家に十分こたえるべく最大の努力を払って、再生産が営まれるように、希望が持てるキビ作に従事できるように価格決定をしていただくように重ねてお願いを申し上げて、質問を終わります。
  271. 中尾栄一

    ○中尾委員長 神田厚君。
  272. 神田厚

    ○神田委員 昭和五十三年産のサトウキビの最低生産者価格の決定が目前でありますが、大変限られた時間で、二、三基本的なことをお伺いしたいと思います。  まず第一点は、やはり価格の問題であります。言うまでもなく、沖繩におけるサトウキビというのは本土の米作と匹敵するとずっと言われておりました。したがいまして、その価格の問題はそれなりに非常に大事であります。従来からずっと生産団体は生産費所得補償方式で価格を決定してくれ、こういう要求をしているわけでありますが、奨励金を加えたような形での価格決定が今年度はできるのかどうか、その辺のところをひとつお聞きしたいと思います。  第二点は、サトウキビの生産振興のための基盤整備、あるいはそれらのいろいろな条件の整備が土地基盤整備などを含めてきちんと行われているのかどうか。これは、これから先のいろいろな問題を考えまして、沖繩におけるサトウキビの生産振興のための基盤整備、条件整備をもう少し国の方で力を入れてやらなければいけない、こういうようなことを強く考えるのであります。  三番目には、輸入糖との関係であります。御案内のように、台湾の方から相当数の競合する砂糖が入ってくるわけでありますが、これらが、沖繩のサトウキビの問題に対しまして、需給といいますか、悪い影響を与えていないのかどうか、自前の沖繩産の、国産のものをもう少し使わせる指導をすべきではないのか。  この三点についてお伺いしたいと思います。
  273. 中川一郎

    中川国務大臣 第一番目、価格につきましては、所得補償方式は残念ながらとるわけにはまいりません。  基整整備等につきましては、最善を尽くして、御期待にこたえたいと存じます。  含みつ糖の台湾からの輸入が問題ないかということでございますが、むしろそれよりも、生産が伸び過ぎている、そしてストックがあるというところに問題があろうかと存じます。
  274. 神田厚

    ○神田委員 いろいろ問題がありますが、時間も限られておりますので、これで終わりますけれども、どうかひとつ沖繩県のそういう事情をしんしゃくして、よろしくお願いいたしたいと思います。
  275. 中尾栄一

    ○中尾委員長 津川武一君。
  276. 津川武一

    ○津川委員 私の時間五分ということで大変ですが、この間実は沖繩県の副知事、県会議員の方たちがたくさん陳情に来まして、いろいろ事情を聞いてみました。  その中で問題になったのは、やはり生産者価格の決定に当たっては再生産費が確保できる水準に設定してほしい、こういうことなんです。大臣、余りつれない返事しないで、そこいらだけせめてやる必要があると思うのです。この点では、沖繩県と鹿児島県の陳情を伝えるだけで進んでいきます。  第二の問題は、生産対策でございますが、灌漑排水基盤整備、宮古では地下にダムまでつくってやっているし、その点で政府でもずいぶん予算を組んでくれているが、進まない。問題は、春まく、夏まくときに、それまでに基盤整備ができていないものだからやれない。そこで、このままだと何年かかってやれるかわからないので、思い切って休耕補償なんかやるべきじゃないかということを切に申しておるわけであります。この点も沖繩の人たちの現状と要求を伝えるだけにします。  御答弁をいただきたいのは、その次の問題であります。何としても一番大きな労働力を使うのは刈り取り、収穫なんです。それで、年齢が高齢化しているし、労働力が足りない。どうしてもここにひっかかってしまうわけです。そこで、どうしても機械化をしなきゃならぬ。沖繩では外国の大型機械は使えない。中型もしくは小型でなければならない。政府農業機械化研究所に研究さしていて、開発途中で三年の期限が切れて、やめちゃっているのです。いまのままだと進まないので、これがやはり大きな要求になりまして、話し合いになりました、政府がせっかくつくったのだからもう少し進めていけばと。そこで、政府がお金をとめてしまったものだから、沖繩は自分で県費でやっている。ここのところ、ひとつもう一回開いて、沖繩の実情に合う中型、小型の収穫機をつくるというこの一点だけ答えていただいて、私の質問を終わります。
  277. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 サトウキビの収穫機、この開発導入の関係でございますが、小型機の方は、これはもう機械化研究所の方で大分前に開発もし、現在相当導入されております。それから、中型機でございますけれども、これにつきましても、農業機械化研究所の方で中型も一応完成をしまして、現在入れておりますが、その入れた際に、現地からいろいろやはり御注文がございます。その注文を現在入れて、そこの改良の方をいまやっておるのでございまして、その辺の改良をなるべく速やかにして導入をさらに進めていく、こういうことで対処したいと思います。
  278. 津川武一

    ○津川委員 終わります。     —————————————
  279. 中尾栄一

    ○中尾委員長 この際、片岡清一君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る昭和五十三年産とうきびの最低生産者価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。島田琢郎君。
  280. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、昭和五十三年産とうきびの最低生産者価格等に関する件について御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     昭和五十三年産とうきびの最低生産者価格等に関する件(案)   甘味資源自給率の向上と地域農業振興対策の一環として沖繩県及び南西諸島における農業の基幹作物であるさとうきびの生産振興を図ることは、現下の農政の最重要課題となつている。   よつて政府は、当面する本年産とうきびの最低生産者価格等の決定に当たつては、左記事項の実現に努めるべきである。     記  一、昭和五十三年産さとうきびの生産者価格については、前年度最低生産者価格に奨励金を加えた額に農業パリテイ指数を乗じた価格、最近における労賃、物価等の上昇等を考慮し、農家の所得と再生産の確保が十分図られる価格水準に引き上げること。  二、甘しや糖の事業団買入れ価格については、製糖歩留まりの実態及び人件費等の上昇を十分に織り込んだ価格水準に引き上げること。  三、さとうきびの生産振興のため、土地基盤の整備、地力培養、原原種農場・試験研究機関等の充実強化による優良種苗の増殖普及、高性能機械の開発普及並びに病害虫防除対策を強化すること。特に、土地基盤整備については今後一層の促進を図ること。    なお、さとうきび生産合理化緊急対策事業を継続実施すること。  四、離島振興のため含みつ糖に対する助成措置を継続するとともに国内産含みつ糖の積極的な消費拡大に努めること。  五、砂糖の売戻し特例法の適切な運用により、砂糖の価格安定を図り、国内産糖の取引きの安定に資するよう努めること。   右決議する。  以上の決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じてすでに各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  281. 中尾栄一

    ○中尾委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  片岡清一君外五名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  282. 中尾栄一

    ○中尾委員長 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、本決議に対し、政府より所信を求めます。中川農林水産大臣
  283. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの御決議につきましては、十分検討し、適切に対処すべく努力いたす所存でございます。
  284. 中尾栄一

    ○中尾委員長 ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らうことといたします。      ————◇—————
  286. 中尾栄一

    ○中尾委員長 次に、請願の審査に入ります。  今国会において、本委員会に付託になりました請願は全部で六十四件であります。  本日の請願日程第一から第六四までの請願を一括して議題といたします。  各請願の内容につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、先ほど各党理事間におきましても慎重に検討いたしましたので、この際、各請願についての紹介議員からの説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  本日の請願日程中、第二、第四ないし第八、第一〇、第二七ないし第六〇及び第六二ないし第六四の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  290. 中尾栄一

    ○中尾委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は農業基本政策確立等に関する陳情書外二十五件外十八件でございます。右、御報告いたします。      ————◇—————
  291. 中尾栄一

    ○中尾委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  すなわち  芳賀貢君外十三名提出、国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置法案  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件 以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行いたい旨、議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査におきまして、委員会に参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十二分散会