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1978-10-16 第85回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十六日(月曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢坂 英雄君    石川 要三君       石橋 一弥君    小島 静馬君       竹下  登君    玉生 孝久君       中馬 辰猪君    塚原 俊平君       萩原 幸雄君    水平 豊彦君       森   清君    井上 一成君       上田 卓三君    小川 仁一君       木原  実君    栂野 泰二君       安井 吉典君    山花 貞夫君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       甘利  正君    田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)     稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         国防会議事務局         長       久保 卓也君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府人事局長 菅野 弘夫君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君  委員外出席者         運輸省航空局技         術部長     森永 昌良君         自治大臣官房参         事官      野村 誠一君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     石橋 一弥君   関谷 勝嗣君     石川 要三君   福田  一君     森   清君   増田甲子七君     水平 豊彦君   木原  実君     小川 仁一君   久保  等君     安井 吉典君   山花 貞夫君     井上 一成君   田川 誠一君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     関谷 勝嗣君   石橋 一弥君     宇野  亨君   水平 豊彦君     増田甲子七君   森   清君     福田  一君   井上 一成君     山花 貞夫君   小川 仁一君     木原  実君   甘利  正君     田川 誠一君     ――――――――――――― 十月十四日  青少年健全育成に関する請願登坂重次郎君紹  介)(第一五一二号)  恩給共済年金受給者処遇改善に関する請願  (川崎寛治紹介)(第一五一三号)  旧国際電気通信株式会社社員期間恩給等通算  に関する請願新井彬之君紹介)(第一六五八  号)  同(島本虎三紹介)(第一六五九号)  有事立法及び日米共同作戦態勢強化反対に関  する請願柴田睦夫紹介)(第一六六〇号)  同(正森誠二紹介)(第一六六一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一号)  特別職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栂野泰二君。
  3. 栂野泰二

    栂野委員 防衛庁職員給与法改正案に関連しまして二、三御質問いたします。  防衛庁昭和五十四年度の業務計画案によりますと、自衛官停年年齢平均三年延長する、こういうことが出ておりますが、その内容、特に、延長しなければならぬ理由について御説明いただきたいと思います。
  4. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁では、自衛官停年を延長しようという計画をもちまして現在作業いたしておるところでございます。御承知のように、自衛官には若年停年制というものがしかれておりまして、現在二佐以下は五十歳という停年でございます。先生承知のように、近時のわが国の社会状況を見ますと、平均余命というものが大変延びておるということがございます。それからさらに、民間企業等の実態を見ますると、現在は、私どもの把握しておるところでは、大体五十五歳定年というのが民間企業大半を占めておる。しかも、最近さらにこの定年を延長しようという趨勢でございます。  そういう社会情勢というものを基本的な背景として考えておるところでございますけれども、なおさらに申し上げますと、自衛隊内部の問題といたしまして、非常に装備近代化というものが図られておりますので、一ころとは違いまして、知的能力というものを要求する度合いがかなり高まっておるのではないかというふうに考えております。またさらに、現在のような社会情勢でございますと、五十歳で停年退職をする、その後の、退職した自衛官生活の問題でございますけれども、現在五十歳で停年退職する自衛官停年退職者のうちの約九〇%を占めておる状況でございますが、ただ、この五十歳という年齢は、自衛官人生設計の上から申しまして、生活に非常に不安定な状況でございまして、モデルの状況をとりますと、大体において、まだ第一子が大学を卒業していないというような状況でございます。これは平均的な状況でございます。しかも、年金の問題について言うと、五十五歳にならないと年金受給ができない、こういう状況でございます。  したがいまして、このような退職する自衛官生活の不安定というものを何らかの意味において取り除く必要があるのではないか、こういうことと、自衛官をさらに魅力ある職業にして、しかも勤労意欲というものをさらに向上させる、こういう必要性から、停年を延長してみたらどうかということが数年前から議論がございまして、いろいろ検討いたしました結果、来年度から着手するようにということで計画いたしておるところでございまして、現在関係機関との間で協議をしているという状況でございます。
  5. 栂野泰二

    栂野委員 自衛官生活を抱えているわけですから、一般社会人と同じように、そういう生活の不安定を取り除いてあげるという趣旨は十分わかりますが、問題は、政府はかねがね精強な自衛隊ということを言っておられるのですね。そういう理由からこの停年制かしかれてきたと思うのですが、この点は検討されたと思いますが、そういう精強な自衛隊という理念との関係で、どこら辺に問題があるのか、その検討されたところを御説明願いたいと思います。
  6. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 先生指摘のように、いろいろな問題点がございます。これは、ただいまおっしゃいましたように、若年停年制をしていておるというゆえんのものは、部隊精強性を維持しよう、こういうことから出てまいっております。したがいまして、停年を延長するということに伴ってまず第一に上がってまいりましたのは、精強性が落ちるのではないかという問題でございます。  これにつきましてもいろいろ検討いたしましたけれども文部省とか厚生省とか、その他のいろいろな資料がございますが、そういう資料等をとりまして検討いたしました。大体体力向上というものは一般的な趨勢でございますけれども、私どもただいま把握しておるところでは、十年前に比べまして平均四歳程度若返っているという資料がございます。これは各種の運動項目につきましての得点を点数にあらわしまして総合得点を指数化したものでございますが、それによりますと、大体平均四歳ぐらい若返っているという資料がございます。  もちろん、自衛官の場合は他の組織と違いまして、体力というものを非常に必要とするということでございますので、このような一般的な状況をそのまま受け入れるわけにはいきませんけれども、それにいたしましても、先ほど申しましたように装備が非常に近代化しておるということからいいますと、体力を要求するという度合いは若干減っておる。かたがた国民体力というものは平均的に向上しているということから見ますと、大体三歳程度ぐらいは引き上げてもそれほど部隊精強性には影響がないのではないかというふうにいま考えておりまして、現在作業をいたしております結果から申しますと、平均三歳停年を延長いたしまして、自衛隊全体の平均年齢向上というものは約一・五歳程度でございます。  それからさらに、問題点といたしましては、昇任度合いというものが若干低下してまいるという問題がございます。つまり、退職すべき自衛官退職しないということであれば、その階級に上がれない状況が出てまいります。昇任率低下というものがございます。これは避けがたい問題でございまして、実は自衛隊におきましてアンケート調査をいたしました。部隊隊員希望というものをとってみました。そういたしますと、圧倒的多数の者は、昇任率が若干低下することはあっても停年を延長してもらった方がいいというのが非常に大きい希望でございました。そういうような問題がございまして若干の影響はあるものの、結論的には重大な支障になるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  7. 栂野泰二

    栂野委員 私はかねがね問題に思っておる点が一つあるのですが、自衛隊定員現員充足率の問題ですが、いま幹部は九八・五、それから曹クラスが九八・九、これは非常に高いですね。士は七四%平均になっているわけです。士についてはこの停年ということは関係ありませんから、もし曹以上について停年を延長するということになれば、ますますこの充足率の格差が開いてくるということになりますね。そうでなくても逆ピラミッドだと思うのですが、これがますますそういうふうになってくる。この辺の問題はどう考えておられますか。
  8. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 御指摘のような問題がございます。停年を延長いたしますと、それに伴いまして採用数というものをある程度考慮しなければならないという問題が出てまいります。したがいまして、士の隊員というものをインプットする数というものを若干減らす必要が出てまいります。これは人事管理上のピラミッドから考えて、当然そういうことになります。  そういたしますと、ますます逆ピラミッドのような姿になるということでございますので、私ともいま考えておりますのは、暫定的に格上げというものをいたします。つまり、曹の階級の者を若干ふやして、幹部階級別定数の方から若干曹の方に持ってまいります。それから、全体的な定数割り振りから考えまして、現在、士の充足率が非常に減ってまいっておりますので、階級別定数割り振り等から、全体的な勘案から士の充足率低下を来さないように、どのようにしたらば士の充足率というものをいまのようなままに維持できるかということを現在考えておるわけでございますけれども、やり方といたしましては、先ほど申しましたように、階級別定数というものを若干増減いたしまして、その間のバランスというものを保っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  9. 栂野泰二

    栂野委員 次に、予備自衛官の増員、これも五十四年度に計画しておられるようでありますが、この予備自衛官制度について防衛庁はどういう位置づけをしておられるか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  10. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 一般軍事常識といたしまして、予備勢力というものが各国できわめて重視されているというのは事実でございます。自衛隊法ができますときにも、この予備勢力をどういう形で確保するかということが議論されまして、予備自衛官制度というものが自衛隊法の中で取り上げられているわけでございます。  この考え方といいますのは、有事におきます部隊運用を考えます場合に、いわゆる後方支援部隊というものの規模もふくれ上がるだろうということ、それから現実におります自衛官を前線に向けた場合の後方支援業務といいますか、あるいは現実運用の問題といたしますと、現在の師団というものはその地域にとどまって防衛するというわけではございませんで、運用面からいきますと、これを攻撃を受けた付近に配置をいたしまして、いわゆる総力を挙げて攻撃を排除するという運用をいたすわけでございます。その場合に、その師団が移動した後の警備任務というようなものに当たらせるというような考え方もあるわけでございます。  それから、海上自衛隊航空自衛隊につきましては、当然のことながら、有事に際しましては、いわゆる航空機の運用あるいは艦艇の運用というものがきわめて活発になってまいるわけでございますので、基地業務の中で当然のことながら交代制あるいは港湾におきますいろいろな補給業務というものは時間を問わず行わなければならない。そういった意味交代要員、そういった形の予備自衛官というような任務を考えているわけでございます。
  11. 栂野泰二

    栂野委員 今度六千八百人増で四万六千四百人になるようでありますが、いま言われたような役割り予備自衛官が持つとしますと、現役勢力との関係で、目標は比率として大体どのぐらいに置いておられますか。
  12. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現実の問題といたしましては、予備自衛官というのは自衛官経験をした者の中から採用するわけでございます。したがいまして、これも強制するわけにはまいりませんので、希望者をとって編成するわけでございますが、私どもが四次防までの計画の中で考えておりましたのは、そういった退職者の中から、陸上自衛隊については四万五千人あるいは五万人程度の者によってそういった警備部隊というようなものは編成できるのではないかということを考えたことがございます。それからまた、海上自衛隊航空自衛隊につきましては、それぞれ数千人程度予備自衛官なら経験者の中から募集できるのではないかというようなことでございますが、現在お認めいただいております陸上自衛隊につきましては三万九千人、それから海上自衛隊につきましては六百人という者をどういうふうに配置をし、業務を行わせるかというようなことを決めているわけでございます。
  13. 栂野泰二

    栂野委員 そうしますと、陸について言えばいま十八万ですが、十八万とした場合に四万五千から五万という意味ですか、そういうことですか。
  14. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 十八万人体制の中でそのように考えているわけでございます。
  15. 栂野泰二

    栂野委員 予備自衛官訓練招集を受けるということになっておりますが、自衛隊法七十一条ですと、年二回以内で、年間を通じて二十日を超えない、こういうことになっているわけですが、この訓練招集実情はどういうふうになっておりますか。その訓練招集をした場合の応招率、それから待遇、手当等も含めて説明してください。
  16. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 訓練招集でございますけれども、御承知のように、隊法訓練招集をやるように規定されておりますけれども、現在は自衛官退職して一年未満の者、これは初年度だけ一日訓練というものを実施いたしております。これは退職して間がないということでございますので、まだ技量等を維持しているというような観点から一日だけ訓練をする、その他の予備自衛官につきましては、全員年間五日間の訓練を実施しておるわけでございます。実はこの一日訓練というものも当初はやっておらなかったわけでございますけれども、やはりこれはある程度技量を維持する必要があるということで始めたわけでございますが、一日あるいは五日間という日数は、やはり予備自衛官という者は現実職業を持っておりますので、その雇用先との関係等もございますので、現在、このような日にちで訓練をいたしておるわけでございまして、五十二年度の数字で申しますと、出頭率は全体で八四・一%という状態でございます。
  17. 栂野泰二

    栂野委員 けさほど予備自衛官定員及び現員表をいただきましたが、これを拝見しますと、陸で言いますと、現在の定員について、予備自衛官幹部が〇・八%、それから准尉が一八%、曹が一九%、士が二七%、こういうことになっていますね。この予備自衛官について、まず階級別定員というのは別にないということですが、これはなぜないのか。それから幹部大変比率が少ない。つまり自衛官に応募する人が少ないということなんでしょうか。ここら辺はどういうことになっていますか。
  18. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 階級別定数というものは現在定めておりません。  これは、実は自衛官退職状況、それから退職した自衛官予備自衛官への出願と申しますか希望者、これが非常にまちまちでございまして、定数を定めても、なかなか定数どおりにはいかぬという実情がございます。ただしかし、それにしても、全く場当たりということはいかがなものかということでございますので、一応内部的な基準というものがございますけれども、この数字は実は部外には公表しておりません。この基準に大体近づけるように運用はいたしておるわけでございますけれども、先ほど申しましたような実情もございますので、現在のような現員状況になっているわけでございます。
  19. 栂野泰二

    栂野委員 なぜ部外に公表できないのですか、発表できませんか。
  20. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは部隊編成表がございまして、現実の問題といたしまして、自衛官編成というものはでき上がっているわけです。したがいまして、先ほど御説明いたしましたように、師団が移動した後の警備部隊といいますか、そういう編成になっておりますので、いわゆる編成基準に基づきまして、そういう数を算出いたしておりますので、この点はいわゆる秘文書になっておりますので、公表を差し控えさせていただきたいと思います。
  21. 栂野泰二

    栂野委員 どうもそこまで隠すことはないと思うのですが、前々回でしたか、私、現役自衛官ですね、部隊、せめて師団別充足率等をお伺いしたんですが、これも出せないとおっしゃる。ところが、一般紙にはじゃんじゃん出ているんですね。そういうのがなぜ公表できないのか、ここら辺は再検討願いたいと思います。  いずれにしても、私はこう思うのですが、幹部がとにかく少ないというのは、要するに自衛官に応募する人が少ないということだろうと思うんですね。一つは、年齢制限関係があるかもしれません。停年プラス二年ですね。ということは、結局、曹以上の人は全部停年までほとんど勤める。ですから、あと二年しかないから、何もいまさら予備自衛官にと、こういうことだろうと思うんですね。この予備自衛官制度を見ますと、趣旨は最初お聞きしたのですが、いま有事即応態勢ということを盛んに言っておられますけれども初年度は一日だけ、あとは五日だけ、こういうことですね。しかも応招率は八四%、これはそう厳格に法律上の正当理由を云々しないで、どうしても出てこないのは仕方がないやということだろうと思うのですが、そこら辺を見ますと、いま盛んに有事立法だ何だということをおっしゃっているけれども、肝心の自衛隊内のこういう予備自衛官の取り扱いといいますか、ここら辺は至ってのんびりムードだ、こういう感じがしないではありません。そこら辺の問題を指摘しておきたいと思います。  次に、最近の新聞報道によりますと、何か防衛庁長官自衛官内局幹部に起用する意向を固めて、事務当局具体案の検討を指示された、こういうことが出ておりますが、これは長官、本当にこういう指示をなさったわけですか。
  22. 金丸信

    金丸国務大臣 実は、内局制服との関係の中で、私は素人ですから、いろいろ交流というものが必要だろうというような考え方の中で、どうだろうという私から提案をしたことは事実でありますが、いろいろ状況を聞いてみますと、内局局長や課長、部員の職は、自衛隊業務の基本的な事項について長官を補佐する文官職であり、もともと軍事専門的事項について長官を補佐するいわゆる幕僚監部等自衛官の職とは性格を異にしている、原則的にはそのような交流というものはでき得ないというような、いろいろの状況を私も承りまして、判断をいたしておるところであります。
  23. 栂野泰二

    栂野委員 ちょっと聞き取れないところがあったのですが、どうなんですか、結論的に、いろいろむずかしい問題があるので、そういうことは進めないということでございましょうか。
  24. 金丸信

    金丸国務大臣 交流するということはいろいろな意味でうまくない、こういうことであります。
  25. 栂野泰二

    栂野委員 ついでにお伺いしておきますけれども、いま派遣自衛官制度というのがありますね。これはいまどのくらいの自衛官内局の方に派遣されて、どういう仕事をなさっているのか御説明いただきたい。
  26. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 防衛庁設置法に基づく派遣勤務状況でございますけれども、九月一日現在で、九十七名の者が内局勤務ということになっております。この大半は、装備局にございます類別業務というものをいたしております。これは兵器の規格の分類でございますけれども、これはいわば現場作業のようなものでございまして、これが大半を占めておるような状況でございますが、そのほか官房防衛局人事教育局衛生局等にそれぞれ若干名ずつ勤務をいたして、これは補助的業務をいたしておる状況でございます。
  27. 栂野泰二

    栂野委員 逆に、内局から幕僚監部なり部隊の方にかつては出向といいますかそういうことがあったようですけれども、最近はどうなんですか。
  28. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 かつては防衛庁に採用されたいわゆる見習いが短期間幕に行って勉強してきたことはございますけれども、現在はやっておりません。
  29. 栂野泰二

    栂野委員 長官、いま長官の構想は取りやめということでありますけれども、どうなんですか、むしろ自衛官の方を内局へというよりも、内局部員をそういうことで幕僚監部なり現地の部隊に派遣するという、こういうお考えはございませんですか。
  30. 金丸信

    金丸国務大臣 私は制服政策に関与することはシビリアンコントロールの上からいってうまくないという考え方になったわけでありますが、制服はあくまでも制服の立場で自衛官としてやるべきであって、いわゆる内局に、いろいろの政策その他は、話し合いは防衛方の中で当然あってもいいとは思うのですが、文民統制という上から考えてみてうまくない、私はこういうように考えておるわけであります。
  31. 栂野泰二

    栂野委員 有事立法、奇襲対処問題に移らしていただきますけれども、この問題、御承知のようにどうも政府の見解が二転、三転しておりまして、一体いまどこら辺に落ちついているのか、どうも私よくわからないのです。きのうもNHKの政治討論会を拝見させていただきましたが、私やはりどうも納得できない点があるのです。恐らく国民の多くもそうだろうと思うのです。  そこで確認をさせていただきたいと思いますが、防衛出動命令下令前における奇襲攻撃について、一時、正当防衛あるいは緊急避難というふうな刑法上の違法性の阻却事由を援用するという考え方をとっておられましたが、これは現時点では撤回された、こういうことでよろしゅうございますか。
  32. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この奇襲対処の問題につきましては、いろいろ検討がなされておりますが、私どもが前の内閣委員会において御説明いたしました御説明が必ずしも十分でなかったという反省をいたしております。しかし、いま先生がおっしゃいました個人のいわゆる正当防衛権といいますか、生き残る権利といいますか、そういうものが全くなくなったというふうには私どもは考えていないわけでございます。御承知のように、自衛力の行使というのは国家の正当防衛権といいますか、正当防衛権に基づく行為と言われておるわけでございますが、同様に各個人にもその生き残る権利というものはあろうかと思います。  しかしながら、自衛隊そのものは部隊行動をするのが本旨でございます。したがって、その個人の判断だけで部隊の行動というものがカバーできない面があるということは当然のことでございまして、その点でいま検討しているわけでございますが、非常に大きな問題といたしましては、国家の正当防衛権に基づく自衛力の行使というのは、七十六条にございます総理大臣の防衛出動の命令によって行うものでございます。したがって当然のことながら、その部隊行動をしている者が生き残る権利といいますか、いわゆる自衛隊本来の任務を果たすために生き残るための応急措置というものがそれと同じであってはならないと思うわけでございます。そこら辺に検討しなければならない多くの問題を含んでおりますので、現在私どもで検討しているという状況でございます。
  33. 栂野泰二

    栂野委員 ですから、栗栖さんが超法規的に行動すると言われた、それはだめなんで、正当防衛なり緊急避難という理論をそこに援用したらどうかと思う、こういうことだったのですね。いまおっしゃるように、自衛隊のそういう侵略に対する反撃というのは、市民刑法上のそういう個人法益の保護を考えた理論では、これは追っつかないわけですね。ですから、別個の理論を立てなければどうにもつじつまが合わなくなった、こういうことだろうと思うのです。  そこで、いま奇襲攻撃に対する対処については、そういう正当防衛なり緊急避難という理論は取りやめて、何か別の理論構成を考えている、こういうことで承ってよろしいですか。
  34. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私どもは、個人の行動というものも、いわゆる正当防衛の要件に該当するような行為は刑法上罪を問われないというふうに理解しているわけでございます。したがいまして、いわゆる個人の集団であります自衛隊、これが部隊行動をしているわけでございますが、それが防衛出動が下令される以前の問題としてはどのような対応があるのかということを検討いたしておりますけれども、いずれにいたしましても、自衛力の行使、七十六条に基づくものとは違うものでございまして、その部隊が生き残って本来の任務を果たすためになし得ることといいますと、やはりこれは正当防衛の要件に該当するような範囲のことしかできないというふうには考えているわけでございます。
  35. 栂野泰二

    栂野委員 そこのところなんですが、そういう奇襲対処をしなければいかぬという場合に、個々の自衛官についてはなおかつ生きる権利、生き残る権利という観点から、依然として正当防衛なり緊急避難というふうな、そういうことを当てはめるという考え方を残すのですか、ここが問題なんですね。
  36. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは奇襲の実態というものをいろいろ検討しなければならないわけでございます。したがいまして、こういうのは例になるかどうかわかりませんけれども、非常に長い行軍をやっているようなときに、ほんのわずかの者が最後を行軍している者に何か危害を加えるときというようなことも、これはとっさの場合としては絶対あり得ないことじゃないと思うのですね。そういう場合に、そこにいる二、三人の者が個人の生き残る権利として抵抗することは、これは許されることだと思うのでございます。したがいまして、自衛隊員といえども人間でございますから、いわゆる人間として生き残る権利、そういうために応急措置をすることまでも完全に否定されるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  37. 栂野泰二

    栂野委員 いま出された例ならわかりますけれども、とにかく市民刑法をこんな問題に持ってくるというのは、混乱のもとなんで、要するに後で裁判にかけられたときに違法性阻却事由があるかないかなんという問題でしょう。奇襲対処の問題は全然次元の違う問題ですから、この際、そういう正当防衛とか、緊急避難とか、刑法上の違法阻却事由を持ち出すなんということは、少なくとも奇襲対処については完全にやめる、そこはひとつはっきりしていただきたいと思うのです。  それから、奇襲攻撃というものについて防衛庁はどういう概念規定をしておられますか。これは念のために伺います。
  38. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 奇襲攻撃というものが一体どういうものであるかというのが、栗栖発言以来いろいろ混同されておりますので、私どもといたしましては、検討し、分析をいたしました。したがいまして、この奇襲というものには二つの態様があるというふうに現時点で考えているわけでございます。  その一つは、国際間の緊張状態が高まってくる。たとえばある国との関係が非常に悪化してまいりまして、日本に対して相手の国が何か軍事行動をとる可能性がきわめて強くなってきている状況のもとで、奇襲が行われるという場合でございます。この場合は、当然のことながら、日本に対して攻撃をしかける側の国といたしましては、奇襲というものを目指してくるわけでございます。それは奇襲ということが攻撃の効果というものを高めるためには当然なことでございまして、その場合における奇襲というのは、まさに七十六条に基づくいわゆる防衛出動がいずれは発令されるような状況の中における奇襲というものが一つあるわけでございます。  それからもう一つは、現在のような平和な時期、日本は敵性国というものを持っていない、こういう状況のもとで、ある日突然降ってわいたように軍事力を行使する場合があるということでございまして、この場合の奇襲というものは、いわゆる国家意思として行われた奇襲であるのか、あるいはまた暴徒といいますか、あるいはその国の国家の体制に反対するような人々が集まって行動を起こしたのか、そこら辺はなかなかわからないと思いますけれども、いずれにいたしましても、これはきわめてあり得ざることでございますが、そういう場合には防衛出動というものは下令されていない状況であろうというふうに考えているわけでございます。
  39. 栂野泰二

    栂野委員 いま防衛局長がおっしゃったのは、奇襲攻撃の類型を一応二つにお分けになった。その前にちょっとお触れになりましたけれども奇襲攻撃というのは国家相手の、国家意思の発現による計画的、組織的な武力攻撃、つまり侵略の奇襲隊形、奇襲的侵略と言ってもいいかもしれませんが、ですから偶発的なものや、いまおっしゃるような暴徒だとか、反対制派の一部の者が侵入するといいますか、そういうものは入らない、こういうことでよろしいですか、奇襲の概念です。
  40. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 前段で御説明しました緊張状態が高まったときにそういったものが全くないかということになりますと、これは全くないと否定することまではできないと思いますけれども、通常の場合でございますと、国際関係が悪化してまいり、いずれにしても日本に対する攻撃をしようという意図を相手が持っている場合に行われる奇襲というものでございますが、この場合には、御承知のように情報機能を高め、あるいは総理大臣に対する報告の迅速性を確保するというような形によりまして、その時間的なずれというものをなくすために努力することによって奇襲攻撃を防ぐというような努力が必要であろうというふうに考えているわけでございます。
  41. 栂野泰二

    栂野委員 そこでまず要するに、平和時に、ある日突然降ってわいたような奇襲攻撃なんというものは、いま奇襲攻撃を、そういうふうに相手国の国家意思による計画的、組織的な武力攻撃というふうに規定しますと、これはあり得ない、起こり得ない。それで、第二の類型、つまり、緊張状態が高まった場合には奇襲攻撃があるかもしらぬが、これは七十六条の防衛出動の運用で十分対処できる、こういう見解を一ころは長官防衛局長は述べておられたのじゃありませんか。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  42. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、奇襲というものはあり得ないという考え方を基本にしておるわけであります。あり得ないということにするためには、いわゆるそのあり得ないようにする機能、たとえば情報あるいは通信施設、レーダー網、こういうようなものを完備することによって奇襲というものはあり得ない。この間、西ドイツのシュミット首相が見えて、ある新聞社の方がシュミットに、奇襲というものがあるかという質問をしたら、西ドイツには奇襲というものはないということを言ったそうでありますが、そういう意味で、超法規行動というあの栗栖君の発言について、これは自衛隊のいわゆる最高幹部たるものがこのような発言をすることは許せないということで栗栖君がやめたということになったわけでありますが、原則的にはないという考え方を私は持っておる。持っておるのだけれども、万々一あるというならば、それは研究してみようじゃないか、こういう考え方であります。
  43. 栂野泰二

    栂野委員 平和時に、ある日突然に降ってわいたようになんということはあり得ない。だから、そういう場合を想定した検討というのは必要ないという断言をすべきだと私は思うのです。ところが、総理の答弁なんかを見ますと、どうもその類型を含めて万一から、万々一から、万々々一ということになったのですね。こういう万一というのはいいですよ。万々一とか万々々一なんということは全く仮定の議論でして、混乱するだけですね。いまの国際情勢なりあるいは軍事技術なりそういうものを見て、平和時のある日降ってわいたようなという類型はない、そういう事態における奇襲攻撃がないから、これは検討の余地なし、ここはまずはっきりできませんですか。
  44. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 奇襲の対処の問題というのは二つあるかと思います。奇襲に対処するためには自衛隊はどういう努力をしなければならないかという点が一つございます。これは有事即応態勢というものが当然のことながら考えられるわけでございますが、専守防衛を旨としております自衛隊としては、当然の努力であろうと思うわけでございます。その場合に、それでもなおかつあるかどうか、そういうことを含めて検討しているのが実情でございまして、理論的に申しますと、絶対という言葉は国際間ではあり得ないということも考えられます。そこで、私ども現実の問題としてそういうものがあるかないかということを検討し、必要な対策を講じたいというふうに考えているわけでございます。
  45. 栂野泰二

    栂野委員 その理論的に絶対あり得ないというのは、現実の政治論として私はあり得ないと思うので、それを離れて、たとえばたとえばという、こういう言ってみれば理論の遊戯みたいなことをやればこれはあり得るかもしれませんよ。しかし、現実の政治論としてあり得ないというのなら、これはもうそこのところは捨ててしまって、論議の対象から切り離していいと思うのですね。ここのところがはっきりしないから依然として混乱が起こる。だから、今度は第二の類型の場合ですね、緊張時の場合、これはあり得るかもしれません。だからそれに対しては、それじゃ現行法で十分なのか十分でないのかですね、ここの理論になると思う。だから、そこは現行法の運用で十分なんだ、こういうことでいいのじゃありませんか。大平さんもきのうそういう発言をなさったでしょう。
  46. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたその現実にあり得ないという御判断でございますが、その政治の御判断をいただくために、私どもは軍事的な見地から見て実際にはどういうことが考えられるのかということを検討いたしまして、そして政治の御判断で、そのことはもう考えなくてもいいということになれば、またその方向に従うということになろうかと思うわけでございます。
  47. 栂野泰二

    栂野委員 長官は奇襲がないようにするのが政治なんだとおっしゃいますね。私は、これも実はちょっと誤解を生ずる言い方だと思うのですね。奇襲攻撃があり得ないようにするのが政治というよりも、侵略そのものがあり得ないようにするのが政治だということでございまして、奇襲攻撃というのは侵略の中の一つの類型にすぎないわけですね。ですから、いま言いました、私は、今日議論になっている奇襲攻撃については、平和時の奇襲攻撃はこれはもうあり得ないと断定する。それから第二番目に、緊張時の奇襲攻撃については現行法の運用で十分対処できる。こういうはっきりした態度をとってもらいたい。  それでなおかつ、万一、万々一とかあるいは制服の諸君が言う場合に、それは今度は長官、そこはもう政治を信用しないことになる。現行法で十分対処できるのだという自信を持っていってもらえば、それから先なお万々一、万々々一なんという言う方は、これはもう政治を信用しないことになる。文民統制を信用しないということだと思いますね。ですから、そこは私はぜひそういうふうに政府の見解をまとめていただきたいと思っております。  時間がありませんので少し先へ進みますが、九月二十一日に発表になりましたこの防衛庁の見解ですが、これは現在でもこの見解を維持されるわけですか。
  48. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現在でもこの見解のとおりに考えております。
  49. 栂野泰二

    栂野委員 防衛庁の見解ですね、奇襲対処問題というのを読ませていただきましても、これは非常に難解ですね。むずかし過ぎてわからない。結局いま言ったようないろんな配慮があって、あっちにもひっかからぬように、こっちにもひっかからぬようにということをなさるから、こういうわけのわからぬ文章になってくると私は思いますね。国民が読んだってこれはわかりませんよ。  そこでこの有事法研究ですが、有事法制の研究の二項で、「研究の対象は、自衛隊法第七六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題」「現行の自衛隊法によつて自衛隊任務遂行に必要な法制の骨幹は整備されているが、」こうなっておりますが、そこでいろいろいままで議論があったけれども、この防衛庁見解の段階で、防衛庁としては有事法制については自衛隊の行動面に限って検討する。自衛隊の行動とは直接関係のない、たとえば秘密保護法であるとかそういうものは一切これからやらないんだ、こういう趣旨に受け取ってよろしいですか。
  50. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 それは研究の対象として、書いてございますように、「七六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題」ということでございますので、現在ございます自衛隊法の中で自衛隊の行動並びに権限という第六章、第七章を中心に研究をするわけでございまして、いまおっしゃいましたような秘密保護法といったようなものは考えていないわけでございます。そのことは第三項にも、言論統制は研究の対象としないという形で御説明してあるわけでございます。
  51. 栂野泰二

    栂野委員 そこで、そうなりますと竹岡官房長が、これは八月十七日の参議院内閣委員会ですか、研究対象として八項目挙げられましたね。この中には一般市民の避難誘導だとか自衛隊に対する国民の協力体制等々、いま言いました自衛隊の行動と直接関係のない部分が入っている。だからこれは防衛庁見解によって、つまり竹岡官房長のまとめられた八項目、これは撤回ということになりますか。
  52. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実はこの八項目の御説明をいたしましたときには、いわゆる各幕僚監部並びに内局の法制担当者が、従来の法制上の知識からいって何か関係があると思われるような関係法について集めた結果、分類しているわけでございますが、いわゆる法制専門家の立場で一応分類して、こんなことかなというようなことを予想として申し上げたわけでございまして、それぞれについて全然今後研究の対象にしないかということになりますと、これは今後の研究の結果によらなければならないわけでございます。しかしながら先ほど来申し上げておりますように、自衛隊の行動あるいは権限と関係のあるというような形で特に運用面からも検討する必要がございますので、防衛庁の見解にも書いてございますように、これから始めております防衛研究などとのすり合わせの結果に基づきまして今後研究を進めてまいりたいと思っておりますので、この八項目が撤回されたとかあるいはこう決まったとかいうようなものでないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 栂野泰二

    栂野委員 この八項目の中にも自衛隊の行動に関するものもあるんですよ、しかしそうでないものもあるから、これは紛らわしいからこの際撤回する、改めてしぼっていく、防衛庁の権限の範囲外だ、これには一切タッチしない、こういう答弁をきちんとしてほしい。
  54. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはいま申し上げましたように、自衛隊運用の立場からそれぞれのものをこう削ったりあるいは必要なものを加えたりということになりますから、この八項目にとらわれることなしに私どもは今後研究してまいりたいと思いますけれども、いわゆる幅としましては、もっと狭くなるのではないかというような気もいたします。しかし、そういうことを検討してまいるわけでございますから、いまこの八項目についてどうだということは御答弁申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  55. 栂野泰二

    栂野委員 そこで、この有事法制研究の三項には、「今回の研究は、むろん現行憲法の範囲内で行うものであるから、旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ないし、また、言論統制などの措置も検討の対象としない。」こうあります。これは当然そうあるべきなんですけれども防衛庁としては、先ほど来申し上げましたように、自衛隊の行動に関しない、自衛隊運用に関しないものは自衛隊の権限外だから、それは憲法違反であろうとなかろうと、そういう権限外のものは一切タッチしない、研究対象にしない、こういうふうに私は理解したいが、いかがでしょうか。
  56. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 自衛隊の権限外のことを直接研究の対象とする考えはございません。しかしながら、関係各省との間で、あるいは適用除外の問題、あるいは特例をつくるような場合、そういう場合には当然のことながら協議、調整しなければならぬ分野もあろうかと考えているわけでございます。
  57. 栂野泰二

    栂野委員 機密保護法について総理は、当面はやらぬけれども将来は検討する、こうおっしゃっています。長官は、きのうテレビを拝見していますと、それは総理の願望だろう、こうおっしゃっています。長官は、機密保護法については将来も検討する必要なしというお考えですか。
  58. 金丸信

    金丸国務大臣 機密保護法の問題につきましては、総理は、たとえて言えば自衛隊員が退官後も秘密を守る義務というようなものがある、そういうものは各官庁にもある、そういうようなことを一応将来考えてみたいという考え方のようなことを国会で答弁いたしておるようでありますが、それについて私には、総理から指示も何もないことですから、それは総理としての願望だろう、こう申し上げたわけでありますが、その問題について、将来いわゆる各官庁の機密がどんどん漏れていくようなことは、これは考えなければならぬ問題だろう、こういう考え方は私も持っております。
  59. 栂野泰二

    栂野委員 いまは防衛庁長官に総理から指示がない、長官もしかし、考えとしては総理と同じ考えだ、こういうことでございますか。
  60. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、総理の答弁を聞きながら、それは必要だという考え方、こういう考え方であります。
  61. 栂野泰二

    栂野委員 どうもその辺、長官自身もまた考えが変わられたように思いますが、時間もありませんから……。  いずれにしましても、防衛庁が機密保護法の検討をしたり研究をしたりということ、これは絶対あり得ないですね。
  62. 金丸信

    金丸国務大臣 金丸信が防衛庁長官である限り、いたしません。
  63. 栂野泰二

    栂野委員 久保局長、せっかくお見えになったのですが、時間が過ぎましたので、申しわけありませんが、また次の機会にやらしていただきまして、これで終わります。
  64. 始関伊平

  65. 小川仁一

    小川(仁)委員 人事院総裁にお伺いいたしますが、この八月十一日に行われました今回の人事院勧告、一般職職員給与に関する法律と、いわゆる人材確保法という、この二つの法律、違った法律でございますが、いままではこの法律に関してはそれぞれ別に勧告をしておられたのに、今回完全に一本化した勧告をしておられる。これはきわめて政治的ではないか。自民党や政府の考えておられる、特に教員に対して管理政策を強行しようとする政策に迎合した勧告でありますし、また、一緒に絡ましたということは、公務員の労働者の賃金、それは史上最低で、しかも、公務員にとっては決して好ましいものではありませんけれども、現下の情勢の中では、やはりわずかでも欲しいという状態のあるもの、これを人質にして人材確保法に基づくところの第四次勧告の強行をねらった、まことに独立機関としての人事院の存在理由をみずから否定するような勧告であると考えます。  このような違った法律、あるいは政府の一つの強硬政策に対して迎合するような勧告をしたということ自身が、みずから人事院の存在を否定するような結果になっていると思いますが、この一本化して勧告された理由というものについて御答弁を願いたい。
  66. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 今回の夏の勧告では、一般の勧告、それと同時に、いま御指摘のありましたような人確法に基づく勧告というものを一緒にお出しをしたということはそのとおりでございます。これは私たちといたしましては、別に政治的配慮とかその他のことを考えてやったものではございません。  御承知のように、人確法に基づく措置といたしましては第一次、第二次、第三次ということで来ておるわけでございますが、第三次の場合におきましては、これがいろいろな事情がございまして、おくれてまいりました。予算措置といたしましては、五十二年度の当初に実は計上されてきておったわけであります。これに基づいての勧告をやったわけですが、諸般の情勢でこれがおくれたということでございます。この第三次のいわゆる前半と言われておりますものは昨年の暮れに成立を見たということでございます。  ところで、第三次の残りの後半分につきましては、当然これはもっと早くやってもいいのではないかというような御議論もあり、われわれもそれなりの検討をしたわけでございますけれども、第三次後半というのは、現在の時点では一応財政的な裏づけのあるものとしては最終的な勧告ということに相なっております。したがいまして、これをやります場合におきましては、いままでやりました勧告の姿というものをながめ直して、どういうふうな姿になっていくのか、その落ちつきを見きわめた上で措置をすることが最も適切であろうという判断に立ったわけでございます。  ところが、第三次の前半分というものがおくれましたのと、これに基づいてそれぞれ地方地方で具体的な措置を講じますためにそれぞれの条例改正等が行われるわけでございますが、これが手続上の問題で大体六月の県会等を中心にして大体落ちつきを見せたというようなかっこうに相なってきております。私たち人事院といたしましての直接の対象は、教員につきましても当然国立学校の教員ということに相なるわけでございますけれども、しかしこれが地方にも波及をする、当然影響が行くということは現実の姿としてあるわけでございますので、これを無視するわけにもまいらないという点がございます。そういうことで、六月の大体の落着の結果を見まして、できるだけ速やかにということで研究を重ねました結果、その結論を得ましたので、八月の時点において一般職給与勧告と同時に出したということでございまして、格段の他意はないというふうに考えておるわけでございます。
  67. 小川仁一

    小川(仁)委員 同じ時期に出したということと、勧告の中に一緒に出したということは、いままで例かなかっただけに――同じ時期に出したという意味はわかりますよ。文書を一緒にしたという意味を私は聞いているのです。勧告文書を一緒にしたという意味を聞いている。
  68. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 それは時期的にちょうど一緒の時期ということに相なりましたものでございますから、これを別々にするよりもむしろ一本にする方が自然ではないかという角度から考えたわけでございます。  いずれにいたしましても、給与法の改正ということにつながるものでございます。人確法に基づく勧告であれ、また一般職給与法の一般勧告であれ、いずれもこれは給与法の改正につながるものでございますから、同じ時期であるということにたまたまなってまいりますれば、これを同時にやるということはむしろ自然ではないかというふうに考えたわけでございます。
  69. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、根拠法規がはっきり違うということと、もう一つは日教組、公務員共闘が人材確保法に基づく第四次勧告に対しては大変厳しく反対をしておった。しかもその財源を教育条件整備に充てろという要求を文部省にも出してある、政府にも出してある。同時に、第三次勧告は先ほどお話があったように一九七六年三月に行われましたけれども、国会では三回も廃案になっている、二回継続審議になっておる。一年六カ月を経てようやくそれが強行採決で可決をされたという経緯は総裁自身御承知のとおり、非常に問題のある法案であった。  しかも、二年六カ月を経た現在でも、あなたも御承知のとおり、都道府県の中では五府県がいまだにこれを実施していない、このような状況があるわけであります。したがって、人材確保法に基づく部分というのは、争いの種になることはいままでの経過からいって火を見るよりも明らかである。そういうものを一般公務員の今回の勧告と一緒にしたというのは、あなたがどう答弁されようとも、一般公務員の給与を人質にとってこれを強行するという意図があったればこそだというふうにしか考えられないのです。本当にそういう意図がありませんでしたか、私は、批判をしながらもう一度この点についてあなた方の本心を聞きたい。時期が一緒だから同じに出しましたなんという言い方は、これは単なる言い逃れにすぎないと思うので、その点を改めて明確にしていただきたい。根拠法規の違いと、現在問題が起きているというものを含めて一緒にしたという理由です。
  70. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人確法に基づく勧告につきましては、いろいろな問題点がございましたことは、私自身も十分に承知をいたしております。しかし、法律ができておることでもございますし、また、当の責任官庁であります文部省の方からの意見の提出というものもございましたので、それらを勘案しながら、慎重に各般の問題を分析いたしました結果、結論を得たというところから、勧告をお出しして今日まで来ておるわけでございます。  第三次の前半の問題につきましても、いま御指摘になりましたようないろいろな経緯がございました。しかし、これもそれなりに法律としては成立をすることになった。地方の実施状況については、トラブルのあったところもかなりございます。そういうような実態も踏まえてはおりますけれども、しかし、計画的に、財政的にこれを措置しなければならぬという人確法の精神、また具体的な財政の措置の問題、それを背景といたしまして、やはり最終的な措置といたしましては、勧告を義務づけられている人事院といたしましても、放置することができないということで、いろいろ検討をしてまいった結果、この八月に結論を得たということでございますので、一般の勧告と同時にこれをお出しをするということにいたしたということでございまして、このやり方等につきましては、繰り返して申し上げますように、別に他意はございません。
  71. 小川仁一

    小川(仁)委員 では、別々に出してもよかったわけですね。勧告を二つに出してもよかったわけですね。
  72. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 やり方の方法論としては、同時でありましても、一つにしなければ絶対にいけないというものではないと思います。それは一つの方法論でございましょう。しかし、同時に出すということであります限りは、これを一本にするというのがむしろ自然ではないかという考え方から、こういう措置に踏み切ったということでございます。
  73. 小川仁一

    小川(仁)委員 人事院というものの存在を改めて問題にし得るような条件だと思うので、あえてわかり切ったようなことをお聞きいたしますが、人事院というのは、公務員労働者のストライキ権の代償として、その賃金、労働条件、身分等を保全するために設けられた機関、こう考えてよろしゅうございますか。
  74. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 そのとおりでございます。
  75. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすれば、人事院は、その公務員労働者あるいは教育労働者の要求その他について慎重に審議をして、そのことが適当であればこれを実施し、適当でなければこれを取りやめる、こういったようないわゆる公務員の労働条件等に見合う賃金として、手当として裁定を下す、そういう立場にあると思います。そう考えてよろしゅうございますか。
  76. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 たてまえとしてはそのとおりでございまして、そういう立場からわれわれは厳正にいままで仕事を続けてきたつもりでございます。したがいまして、毎年のいろいろな勧告等をやります際にも、各方面の意見を率直に、端的にお聞きをして、参考にすべきことば参考にするということはやっております。組合側からの意向というものも随時、寄せられたものにつきましては虚心にいろいろ承って、入れるべきものは当然入れるということにつきましては大変な努力をいたしておるつもりでございます。
  77. 小川仁一

    小川(仁)委員 そういたしますと、特に問題になりました主任手当につきましては、日教組の意見というものを十二分にお聞きになったと考えてよろしゅうございますか。
  78. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 当然、これにつきましては、いろいろな場面場面で日教組関係の意見の御開陳もございました。また、実際に私も何回もお会いをして、いろいろお話を聞いたということは事実でございます。したがいまして、その間においていろいろな御意見のあることは十分に承知をいたしておりまして、それに対して当方は当方でいろいろ検討をいたしましたことは事実でございます。  しかし、事柄は人確法という法律でございまして、これに基づいて人事院に勧告義務が課せられておるという問題があり、なお責任官庁でございます文部省のお考えというものについても、正式に大臣の方から私方に対して提出されているという向きもございまして、そこらを総合勘案の上にこの結論が妥当であろうということで勧告を申し上げたということでございます。
  79. 小川仁一

    小川(仁)委員 人事院は、そういう経緯を持ちながらも、公務員に対する給与については特定の前提、たとえば賃金、諸手当についてもそれぞれの前提が存在をして給与をお出しになるわけでございますが、主任手当の持つ労働あるいは責任というものと手当とのかかわりの中で、特殊勤務手当というのを引用してお出しになっておられます。そして、いままでの国会のいろいろな質問の中では御苦労賃、こういう言葉も出ておりますが、特殊勤務手当というのは御苦労賃というふうに考えて、今後人事院にお話を申し上げてよろしいでしょうか。
  80. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  俗に主任手当でございますが、これはもちろん管理監督ということではございません。したがいまして、現在給与法に位置づけいたしております特別調整額、すなわち管理職手当の範疇には当然入らないものの性格でございます。  それから特殊勤務手当との関係の御質問でございますが、特殊勤務手当の中には、危険、不快、不健康というような一般に危険という範疇に属する性格のものと、職務内容が困難であるという範疇に属するものとがございます。  困難の範疇にありますものは、たとえば航空管制官でありますとか、用地交渉でありますとか、そういうものがございますし、教員の中で申しますれば、一般の普通の教官と違いまして、僻地等で多学年を担当しておるような場合の困難もございますが、そういういわば困難の範疇に属するものとして多学年担当手当あるいは教員特殊業務手当というものも現在ございますが、その範疇に位置づけたものでございまして、これは、そういう主任という特殊の校務を分担なさっておって、同僚の教員に対して一定の校務について連絡調整、指導助言をなさる、そういう勤務に対する手当、御苦労賃といいますか、そういう勤務の御苦労に対する手当、こういう関係でございます。
  81. 小川仁一

    小川(仁)委員 その分はまた後でお聞きするとして、もう一度総裁にお尋ねしますが、公務員労働者の要求その他に対して、ストライキを抑えて、その要求に対応するような賃金を出すためにあるいは決定するために存在するという人事院が、要らないというものを無理に押しつけて、その結果ストライキまでさせるというまことに奇妙な結果になったわけでございますね、事実経過として。こんな人事院なら存在理由はないじゃないですか。主任手当の押しつけ、それに反対してストライキまで打つ、こういうことと関連して、私は存在理由が疑わしくなりましたので、このものに関して人事院の存在理由を総裁から明らかにしていただきたいと思います。
  82. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人事院としての職務権限なりあるいは使命なりということにつきましては、われわれはいつも拳々服属しながら十分に気をつけてやっておるつもりでございます。従来もその態度でやってきておりますし、将来もこの態度を継続して、しっかりやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  いま御指摘になりました主任手当の問題でございますが、反対がありましたことは事実でございます。私もあらゆる機会にいろいろな角度から目にし、耳に聞いてよく承知をいたしておるわけであります。ただ、事柄は、反対があるからといって全部これをやらないかといいますと、これはそうでない、そうばかりではいけないという場合も中にはあるわけでございます。文部行政あるいは学校教育行政というものを進めます上で、当の責任官庁であります文部省が、やはり主任制度は重要であり、これを制度化することが必要であるというお考え方からこの制度化に踏み切られたということになったわけであります。その現実の姿がございます以上、それに対する給与的評価をやってもらいたいという要請に対して、当方は当方で慎重に検討いたしました結果、やはりこの程度の措置を講ずることは適当であるという結論に達しましたので、制度化を前提としてそれに対する給与的評価をやったというのが主任手当の問題であるというふうに考えております。
  83. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすると、人事院というのは、労働者、職員の要求がなくても、行政の方が必要であればそういう給与を、要らないというものを押しつける勧告をする、こういう性格も持つと考えていいわけですね。
  84. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 そういう言い方をされますと人事院といたしましては少し困る面があるわけでございますが、やはり人事院というのも国家機関でございます。そういう意味から制度と運用というものにつきましては配慮をしていかなければなりません。そういう角度から今度の一般勧告でも、すでに御承知でございますように、いわゆる五%以下という場合でございましても、あえてことしの場合は勧告に踏み切ったというようなこともありまして、人事院としての職責を十分自覚してやっておるつもりでございます。この主任手当の問題にいたしましても、日教組を中心とするいろんな御意見のあることは重々承知をいたしておりますけれども、他面やはり制度というものがある、その制度というものを前提にして給与的評価にならざるを得ないということになりますれば、そういうこともあえてやるということも時としてはあり得るというふうに御了承を賜りたいと思います。
  85. 小川仁一

    小川(仁)委員 今度の一本化の勧告の状態あるいは要らないというものを押しつける状態、こういうことを考えてみますと、さっきの五%以下の話とは全然話が違うので、五%以下であっても勧告をしたと言うけれども、あれは公務員労働者が、みんな必要だから出してくれという要求にこたえてやったものなんですよ。要らないという要求に対して押しつけたというのは、人事院始まってこれがただ一つでございましょう。それ以外に要らないというものを押しつけた例がございますか、勧告した例がございますか。
  86. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答えを申し上げます。  私どもが勧告をいたしますときには、水準だけではなくて、配分についても同時に勧告をする、そういう仕方になっておりまして、事勧告につきましては、やはり実際に給与の担当をなさっております各省の御意見、それから実際に職員側といいますか、受益者たる職員の意見、両方を十分聴取していることは事実でございます。その中にいろんな立場、いろんな関係、いろんな職場の反映がございますが、全体を当局も、各省の担当の側からの御意見も、職員のいろんな多面的な方向からの御意見も十分聴取して、その結果として、要るとか要らないとかではなくて、人事院が担当しております給与行政が整合的に運用されるようにという全体の関係から勧告しておる次第でございます。
  87. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうしますと、人事院としては、公立学校の主任と称せられるものの仕事の中身あるいは具体的な業務等も、手当とのかかわりの中で十分御研究なすった上でやられた、こう考えてよろしゅうございますか。
  88. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 主任の職務内容につきましては、もとを申しますれば、昔からといいますか、もともと学校の中に主任というのが、実際上そういう制度があった、実際上行われていたということは事実でございます。  それで、私どもは先ほどお話しございましたように、御苦労というような言い方で簡単に申しておりますが、そういう職務の実態がありまして、それでそれが制度化されて制度上も安定したものになって、しかもそれに対する人事運用が行われるというようなことになりました場合に、御苦労といいますか、その上積みに対して給与上それを評価して後からつける、こういう関係に相なっておりますので、当然その勤務の実態についても十分調査をいたしてやっておるつもりでございます。  主任につきましても、人事院が直接所管しております国立学校の付属の実態については、全部完全に調査をいたしておりまして実態を把握しておりますし、公立学校につきましても、文部当局を通じまして実情については十分御意見を伺っておる次第でございます。
  89. 小川仁一

    小川(仁)委員 公立小、中、高等学校の実態をいろいろ御勉強なさっているようですし、人材確保法というのはもともと国立の教員だけを対象にしたのではなくて、公立の教員も対象にしておられると思いますので、公立小中学校におけるいろいろな職種、仕事その他も御研究なさっておられると思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  90. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 公立につきましては、間接でございますが、文部省の方からデータをいただきまして、かつ説明を伺って理解しておる、こういうことでございます。
  91. 小川仁一

    小川(仁)委員 それは主任だけでございますか。他のいろいろな公立学校の仕事の中身まで関連をして御承知になっておるというふうな意味でございますか。
  92. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 公立学校の実態についてすべてと言うと言い過ぎだと思います。給与上措置いたします場合に、その関連として出てくる場面については十分伺っておる、そういうことでございます。
  93. 小川仁一

    小川(仁)委員 いま公立の中学校、高等学校の中で免許状を持っていない教員が、自分の持っていない、免許外の教科を教えているという実態がございます。これは多分御存じのことと思いますが、たとえば国語の免許状を持っておる教員がその学校の学級数、時間数、そういう関係で音楽をやらせられる、あるいは音楽の教師が時間数が少ないために理科をやらされる、こういった自分の専門の免許状とは全然違った教科をやらせられている実態があるわけでございます。  これは文部省も御存じのとおりでございますし、この前の文教委員会では、全国で約五万人の教員がそのような状態に無理無理置かれているというわけでございます。五万人の教員はもちろん大変なことでございます。特に専門的な音楽等、中学三年の音楽等を国語の免許状しか持っていない教員がやらせられますと、これは不可能と言うよりほか方法がないわけでございます。こういう実態について文部省の方はこれをどういうふうにこれから措置しようとしておられるのか、人事院としてはこういう勤務状態というのは一体どう考えればいい、どう処置すべきかと考えておられるのか、それぞれ総裁、大臣からお聞きしたいと思います。
  94. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 この問題につきましては、文教委員会でも先生から御指摘のあったところでございまして、まず実態でございますが、これはいまお話しのように、五十二年度現在で四万七千名、これは延べ人数ですから、実際の人数はもう少し少なくなるかと思いますがございます。そこで、それは昭和四十年当時を振り返りますと七万人くらいになっておりますから、かなり減ってはきておるわけでございます。  そこで、いまの免許外教科担当の制度というのは、免許法の附則にあります制度でございまして、文部省としてはなるべくそういう事態を今後少なくしていこうという努力を一方でしてきたわけでございまして、その一つが学校の教員定数配置問題でございました。御承知のように、四十九年度からの五カ年計画では小規模中学校の定員配置の改善を図りましたこともあって、いま申しましたように、四十九年から現在までではかなり減ってきておるという事実がございます。そこで、この春第五次の定数改善を図るについての実態調査をいたしましたが、その関連において、いまの免許外教科担任の実態調査につきましてもさらに詳細に調査をいたしておりますので、その結果を待って、また今後の改善を図っていきたいと思うわけでございます。  もう一つの点は、この問題は定数の問題と同時に、具体的教員人事配置の問題でございまして、実は、いま先生のおっしゃったような免許外教科担任というのは、必ずしも僻地の中学校だけでなしに、都会の相当大きい中学校でもそういう実態がある。これはなぜかといいますと、やはり一つ一つの教科の受け持ち時間、開設授業時数というものはかなり差がございますから、それに適応した、それぞれの教科の定員をよほどうまく人事発令しないと、ある教科は余ってしまう、ある教科は先生が足りないということもございますので、その問題は一方また、生徒の増減等にも関係して、学校規模のあり方との関係でその教員配置を考えていかなければいかぬ、こういうことがございまして、その辺の配慮を一層よくしていただくというような指導をいままでもしてきておるわけでございます。  そしてもう一つは、先生、先般来御指摘がありましたようなこともございますので、実際の免許外教科担任教員のいわば研修の強化というようなことを五十四年度は一層拡充してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  95. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 免許外の教科担任の関係につきましては、そういう実情があるということは承知いたしております。ただ、いま文部省の方から御答弁がありましたように、文部省の方でその実情について御調査中ということも伺っております。  それから、制度的に言いまして、私どもが、まだこう申し上げるほど詳しくはないわけでありますが、給与上これを評価するしない、そういう検討をすることになりますと、やはり制度が安定してきて、それで、これは安定的にこういうとらえ方をすべきであるというところ、そういう熟した状態、あるいは将来の方向がわかった状態で、一般論でありますが、処理したい、こういうふうに思っておりますので、いずれにいたしましても、そういう実情をよく把握したい、こういうふうに思っております。
  96. 小川仁一

    小川(仁)委員 安定した状態というのはどういうことを意味するかわかりませんが、新しい中学校という制度ができたときからの問題は存在をいたしております。したがって、少なくとも三十年近くは、免許外担任という制度によって教育が行われています。  私は、この制度に対して手当を出せと言っているつもりはありません。ただ、公立学校についても、いろいろな事情を直接間接御調査をなさった、その上で、主任に対しては特殊勤務手当、御苦労賃を出している、こういうお話なんです。御苦労賃とか、中身をもし出されるなら、あなた方自身、給与とのかかわりの中で、もっとこういう勤務状態というものを御調査の上で、これには先、これには後とか、あるいはこういう状態にはこういう手当とかということを研究なさるべきではなかったか、こう思うから申し上げているのですが、それ以外にも、御苦労賃などというものを考えなければならないような公立学校における業務というものを御調査している、あるいはおわかりになっている面がありませんか。
  97. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 公立学校の関係につきましては、文部御当局の方から実情を伺いまして、それを踏まえましていろいろ実態を研究しておる、こういうことでございます。  それで、もちろん国立の付属について措置をいたしますことの、まあ準用という関係で公立という関係がありますので、それは国立の実態を分別をつけますだけではなくて、そちらの関係で公立の御事情を伺うということもございますが、およそ公立のいろんな実態についてすべて伺う、そういうことではございませんで、まず実情を伺って、たとえばいま話題になっております免許外の担当の関係でございますれば、これはいままでのところ、文部省からまだそういうことについての給与上の問題について具体的な御説明は伺っていない、実情は把握しておりますが、そういう状態でございます。
  98. 小川仁一

    小川(仁)委員 これはなくなるのが本来の性格でございますね。大体免許状を持っていないのに物を教えろということは初めから無理な話です。著しく困難どころの騒ぎじゃないですよ、これは。免許状を持っていないのですから。自動車とかその他ですと、直ちに罰金を取られる、免許外運転なんというのは、これはえらい大騒ぎになります。そういうものですから、本来これはなくすべき性格、労働条件、労働実態にあるものであって、賃金などを差し出すべきものでない、こう思いますが、どうですか。
  99. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 先ほど「安定的」という言葉をちょっと申し上げましたが、言葉があるいは不十分であろうかと思いますが、この制度が例外といいますか、当分の間という形で現在運用されておるのではないかと思います。  本来はどうであるかということは、これはやはり文部省から先ほどお答えがございましたように、職員の任用配置の問題とも絡む問題だろうと思っております。したがいまして、その結果、いろいろひずみでありますとかなんとかという関係で、御苦労という関係であるいは給与上の接点が出てくるかもしれませんが、それについてはまだ文部省から伺っていない、こういうことを申し上げております。
  100. 小川仁一

    小川(仁)委員 文部省にお伺いしますが、これは本来あり得べき状態ではないですね。大臣、どうですか。
  101. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 免許外教員というあり方はできるだけなくしていく方向で私ども努力をしなければならないと考えております。  いま初中局長からも、また人事院からもお答えがありましたように、教員配置の問題も絡んでいることでありますから、文教委員会でもうすでに何度か小川委員も御指摘になったことでありますが、ことしの五月一日現在で悉皆調査をいたしております。そのことも小川委員承知のところでありますが、その調査内容の一つに、免許外教員のあり方をミクロでも調査をしているところでございます。この悉皆調査で現状を正確にミクロでも把握をいたしまして、今後の教員の定数改善の長期計画の中でやはり検討しなければならない重要な問題の一つである、そのように心得ております。
  102. 小川仁一

    小川(仁)委員 文部省にさらにお願いしておきますが、たとえば小学校、中学校で寄宿舎があります。統合した結果、一年通して小学校の生徒を寄宿舎に入れて学校に通わせる、あるいは冬期間だけ入れて学校に通わせる、こういう状況があることはおわかりのとおりでございます。  そういう教員が手当としてもらっておりますのは宿直手当であります。宿直手当でありますと、これは人事院御承知のとおり、断続的労働でございますから、決まった時間にだけ見回りをすればいいだけでございます。そうですね。そうなりますと、小学校の生徒を寄宿舎に入れ、中学校の生徒を寄宿舎に入れておきながら、夕飯の六時のとき、消灯の九時のとき、それだけ見回ってそれで済むというふうに、文部省の方、お考えになっておりましょうか。同時に、そういう手当の仕方で果たして教育というものが完全に行われるでしょうか。人事院としては、これは宿日直手当で、それが教育上の問題からいいとお考えになるのか、あるいは考え直すべき時期と考えておられるのか、その点について両者からお伺いします。
  103. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 教育公務員に宿日直手当を支給する仕方については、人事院の規則でお決めになっておるところでありますが、私の承知いたしておりますところでは、同じ宿日直手当のうちでも、いまおっしゃったように、単に庁舎の見回りとか電話の接受とか、そういうことをやるだけの場合と、学校の先生が舎監として寄宿舎にお泊まりになって教育活動と関連して、夜間におけるいわば生活指導のようなものをやる場合、その内容を異にするわけでございます。  そこで、現在の制度では、単なる宿日直の場合は一回千六百円でございますか、そしていま問題になったような先生の舎監、宿直の場合等は、その五割増しで二千四百円というふうに、別の扱いになっておりますので、そのあり方は妥当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  104. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 国立の場合でございますと、寄宿舎を有しておりますのは、盲聾学校等特殊学校でございます。  それで、特殊学校の場合には、やはり一般の断続勤務の宿日直ということ以上に生徒の生活指導ということも当然ございます。そういうことで、これは一般の宿日直手当を割り増しをした宿日直手当を現につけておりますし、そういう宿日直手当の中にそういうパターンがございまして、もし一般の宿日直以上の生活指導的なものがあるとすれば、そういうふうにするのがよかろうというふうに考えております。
  105. 小川仁一

    小川(仁)委員 宿日直手当というのは、割り増しをすれば生活指導とか学習指導をしてもいいという性格を持つ手当ですか。
  106. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 宿日直手当は、本来、夜文書を受け付けましたり見回りをしたりという、そういう監視断続的な勤務でございます。その中に残業といいますか超過勤務、本来の勤務が起こりました場合には、本来の勤務を超過勤務手当で処理する、基本的に言えばそういうことであろうと思います。  しかし、それが正規の勤務時間内に行われておりますような明確な濃度と時間ということで、厳密に行われておるということでない場合に、含まれている程度というのはいろいろ程度がございますが、そういう場合には、それを全体的に評価いたしまして、宿日直手当の割り増しという言葉は少し言葉不足でございますが、金額的には割り増しになっておりますが、考え方としては一般の宿日直手当ではなくて、特別の宿日直勤務手当ということで特別の金額のものをそのほかに置いてお る、こういうことでございます。
  107. 小川仁一

    小川(仁)委員 いろいろお聞きしてみますと、この問題も実は冬季分校等を含めて戦前から存在している問題でありますし、さっきの免許外担任の問題にしても、いわゆる新制の中学校が発足してから三十年も続いている性格のものでございます。学校内で自主的に決めた主任その他とそれ以上の歴史を持った一つの問題なのです。  こういうのと今度の主任手当の強行ということを考えてみますと、私はそこの中で、本当に苦労している教員に対する給与とか手当とかいう問題ではなくて、その中で上からの指導、そして自分たちが意のままに動かすにいいような職種、教員の中に差別を持ち込むような職種についてのみ文部省や人事院はお考えになっておられて、本当に苦労している者については手当その他についても考えていないという感じがいたしました。  したがって今回の主任手当について、文部省としては一般の教職員の中で、いわゆる苦労の度の多い者たちに対する考え方をもっと優先をして、比較的持ち回り、あるいはお互いに校内で任務を分担し合うような主任、こういう者の手当をやめて、さっき言ったような苦労している教員に対する処遇の方法を考える、こうすべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  108. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 学校現場でそれぞれ御苦労を願っております教員の待遇改善は、人確法の趣旨とするところ、その確保、将来も当然私どもも努力を続けてまいらなければなりません。  いま一つの例としておっしゃいましたけれども、たとえば寄宿舎の宿日直勤務、大変な御努力をいただいております教員の方々にも、それをただ建物の保全だとかそんなことだけではなくて、生徒たちの生活指導という日常の業務を引き続いてやっていただいている。そういう意味から、まさに業務当直と呼ぶべき筋合いのものである。そういうことから通常のいわゆる宿日直手当の一千六百円ではなくて、それの五割増しというようなことを考慮してあるわけでございます。  そういう学校現場でそれぞれいろいろな御努力、御苦労を願っておる教員の皆さんのそれぞれの処遇改善は当然今後も考えていかなければなりませんことは、先ほど免許外教員のことについても基本的な考え方をお答えしたわけでありますが、主任の問題、やはり全国ほとんどすべての学校に自然発生的にできていた。小川委員は縦とおっしゃったけれども、私どもは全く縦ではなくて横の連絡調整、指導助言という仕事をお引き受けいただく主任という考え方を基本にしておりますから、縦から流して学校の管理を強めるから反対だというのはそこに誤解がございます。縦から流して学校管理を強めるのではない。学校管理も大変な仕事ではあるけれども、学校の中での教育指導の面の教育内容充実を図るために連絡調整、指導助言という横の連絡調整をお引き受け願う主任の制度、こう考えているわけでございます。  そういう主任というものが自然発生的にできていた。それの制度化を進めてきたのが主任の制度であって、先ほど五つの府県で支給されてないということ、そのとおりでございます。しかし、四十四の道府県で教育委員会規則も改正されたこともまた事実であって、だんだん定着をしてまいることを期待もし、その努力を私どもは続けてまいる決心でございますが、だんだんこれが定着をしてまいりますにつれて、学校管理の面を強めるための主任ではなくて、横の連絡調整、指導助言、そういう意味合いの校務分掌の中に立っての人事院の言われる特殊勤務、その困難性、御苦労に報いるという制度であることを私はだんだん理解がしていただけるもの、そういうふうに考えておりますから、ほかにも残っているものがあるから、主任制をやめろという御意見には賛成するわけにはまいりません。
  109. 小川仁一

    小川(仁)委員 いままでのお話は、ずっと文部省が毎回繰り返しておられたお話であります。しかし、現実的には学校現場の中では非常にこの主任問題を含めて混乱が出ており、未制定の県もある。しかし、それは自然につくり上げられたものだからと、こうおっしゃいますけれども、自然につくり上げたものというのは、お互いの人間関係、教員の仲間同士の間でつくり上げられたものでございまして、上から強制してつくられたものではございません。免許外担任にしてもそうです。その学校に五人しか教員がいないというときには、免許状がないから子供たちに教えないというわけにはいかない。当然だれかがその教科を教えてやらなければいけないというので、大変苦労して教員がお互い同士話し合って、だれはこれを、だれはこれをというふうに幾らかずつの得意の部分を利用してやっている。こういう教育というのは、その学校における教員のお互いの助け合い、自然的なものの中でつくり上げられて運営されているのです。これは教育の創造性でもあり自発性でもあろうと思うのです。  そこの中にどこかの部分に手当をやって、そしてその者が特別な地位に置かれる、こういう状態ということは、実はその状況を混乱させることにしかならないのであります。現実に幾つもの混乱がありますが、それは改めて文教委員会で申し上げることにしてここでは申し上げませんが、そういう混乱を起こしていった、こういうことは、文部省の要求があったにしても、実は人事院は教育という中身を余りよくお知りにならないで、さっきの寄宿舎問題にしてもあるいは免許外担任の問題にしてもお知りにならないで、これは国家公務員の中にはないとおっしゃればそれまでですけれども、一方的な文部省の言われた部分だけを検討してこういう手当を出してこられたから、こういう混乱が起こっているわけです。現在の教育の混乱の原因の中に人事院は一役買っているということをよく御承知の上、物を考えていただきたい、これは意見でございます。  なお、人確法に基づく勧告は今回で終わりでございますか。そしてまた二つの主任を拡大なされたようでありますが、あれはあれ以上広げない、主任については、また、あれは公立については拡大しない、こういうお考えでございますか。両者からお聞きしたいと思います。
  110. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 初めのお尋ねは、人確法の勧告はこれでおしまいかということでございます。  人材確保法の考え方といいますか進め方といたしまして、「財政上、計画的に」というふうにお決めいただいておりますが、この「財政上、計画的に」ということで財源措置がなされて進行してきましたそういう改善については、一応これで終わりということでございまして、私どもは、そういう意味で最終的な勧告である、こういうふうに考えております。
  111. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 人事院からは、最終的な措置として所要の改善を加えるようにという勧告をいただいたわけでございます。今後の教員の給与については、人確法の趣旨に即した優遇措置を確保していく努力を続けてまいることは当然のことでございます。
  112. 小川仁一

    小川(仁)委員 公立学校の方には拡大する意思があるかないかということもお尋ねしたわけですから、その点……。
  113. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 公立学校についても、今回の人事院の勧告に準じた措置をとってまいりたい、かように考えております。
  114. 小川仁一

    小川(仁)委員 研究主任とか教育実習主任とかいうのが安定した存在として公立学校の方に存在しているというふうにお考えなわけですね。
  115. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 国立の付属学校については、御指摘のように今回の勧告に際しまして、教育実習主任、研究主任の制度化されたのに伴ってそれに主任手当を支給する、こういう考え方が示されたわけでありますが、これは付属学校としての特質という点に着目し、そこにおけるいまの両主任に手当を支給する、こういうことでございますから、一般の公立学校については、それとまさに同じような主任は通常いないわけでございます。しかしながら、一つの学校としてその教育活動の円滑な運営を図るために、これまで手当が支給されております教務主任、学年主任等と比較して同じような仕事の困難度あるいは重要性を持つ主任というものがあるというふうに考えられますので、そこで公立学校について考えます場合は、いま付属学校について既存の手当支給主任にプラスして二種類の主任を対象としたというそのことにかんがみて、おおむね二つぐらいを目安にして、各県においてそれぞれの県の学校運営の実態というものを考えて、最も適当と考えられる主任を対象として手当支給をする方向で考えていただきたい、こういうふうにいまのところは考えておるわけでございます。
  116. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすると、公立小中学校にいわゆる研究主任というふうなものが存在する、こう考えているわけですね。
  117. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 先ほどちょっとお話が出ましたけれども、五十年の五月でしたか、人確法の実施に伴いまして主任の実態を調査するために各都道府県についてたしか全学校数の一〇%ぐらい、四千校ぐらいの小、中、高等学校について実態調査をいたしましたが、その際の主任の設立は教務主任、学年主任、進路指導主任、生徒指導主任等が平均して最も高いわけでありますが、それに続いて私の記憶では、研究主任あるいは研修主任というものを置いておる県が相当ございます。ただ、その研究、研修というのは、国立の研究主任というのがどちらかと言えば付属学校の教育研究に呼応して研究をするという主任とは若干性格を異にすると思いますけれども、おおよそ一つの組織体として教育活動をする学校というものにそういう先生方の研究なりあるいは資質向上なりのための研修というものの主任というものを置くことは当然予想されますし、またそれがすでに相当置かれておるという実態もあるように認識しておるわけでございます。
  118. 小川仁一

    小川(仁)委員 ちょっと話をかえますが、いまのような状態の中で主任などという名前は学校に参りますと幾つもあるのですよ。数学研究主任、国語研究主任、低学年研究主任、高学年研究主任、もう主任と名のつくものは小中学校においでいただけば十幾つもあるわけなんです。それが有機的に結び合ってやられているわけなんです。ですから、私はさっき言ったように、それは自主的にお互いの得意を生かし、あるいはお互いの助け合いの中でやられるものであるだけに、またそこの中に特定して幾つかの主任が公立の中に手当があるというだけで設けられるという方式については賛成できませんので、これは慎重以上にも慎重に、むしろ私は公立学校にはやるべきでないという観点から意見を申し述べておきます。  それからこの人材確保法案が通ったときに、附帯決議がございました。これは人事院も文部省も御承知と思いますが、その附帯決議の中でやられたと思いますが、幼稚園が今回国立についてのみ行われた、そして、しかも義務制に比べて半額、その理由を明確にしていただきたいのです。
  119. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 幼稚園の関係でございますが、勧告は国立について申し上げたわけでございますが、その前に国立の付属の関係につきまして小中校、義務教とそれから付属であります幼稚園、こういうことで勤務の実態あるいは職員構成、職場、そういう点につきまして、多面的な関係を綿密に調査いたしました。それで勧告は国立について特別手当を支給するということを申したわけでございます。  それから、金額を義務教の二分の一にしたということについてでございますが、これは人確法の趣旨が、特別手当の関係で申しますれば、まさに人材確保のための優遇措置そのものの手当というのが特別手当の本来の考え方でございますので、幼稚園は義務教ではないということで、それに対する均衡上の措置であるということで、まるまるは支給しないということでスタートしたわけでございます。  それで、これは今回の教員給与の改善の一連の中で一番最後になりましたが、やはりこれはどうすべきかということで長い間思案をしておったということは事実でございますが、今回が最終的な措置であるということで、それで慎重に調査をし、検討した結果、そういう職員あるいは勤務の実態において均衡上措置する必要があるということで、まるまるではないけれども、それではどうということで二分の一、そういう金額にしたわけでございます。
  120. 小川仁一

    小川(仁)委員 文部省にお伺いしますが、これは公立の幼稚園の方に拡大する意思はございますか。
  121. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 公立幼稚園につきましても、今回の人事院勧告の国に絡むところに準じて実施ができるように指導をいたしたい、かように考えております。
  122. 小川仁一

    小川(仁)委員 義務制と幼稚園で、片っ方は一〇〇%、片っ方は五〇%で均衡がとれるという理論をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  123. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 人確法の趣旨から申しますと、もともと義務教育を優遇するということが基本線でございまして、ただ、それとの均衡ということで、高等学校でありますとか幼稚園、それが話題になると思いますが、それにつきましてゼロというのは均衡を失する、まるまるというのは義務教そのものであるということで二分の一としたわけでございます。
  124. 小川仁一

    小川(仁)委員 高等学校の方はどうなっておりますか。
  125. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 高等学校は義務教に比べまして、どちらかと言えば給与の立て方として、職員構成がそうであるということで、歴史的にそういう経緯がございますが、基本給でいいますと俸給の曲線が有利な形になっております。そういうことで、この際義務教を優遇しますについて、従来からのそういう均衡関係というのが給与上どうしても必要でございますので、まさにそういう均衡ということで義務教と逆転をしたりするということは困るということで、そういう意味の非常に具体的な均衡ということで調整したわけでございます。
  126. 小川仁一

    小川(仁)委員 幼稚園の方が五〇%で均衡がとれて、高等学校の方が一〇〇%だから均衡がとれる、その理由給与表にある、こういう話でございますけれども、現在高等学校は義務化ということが言われておりまして、ほとんどの子供たちが入っているのも事実でございますが、いま私たち文教委員会で各党の教育のこれからの振興の方法を出したものを拝見いたしますと、自民党新生クラブでも民社党でも新自由クラブでも社会党でも、幼児教育というのを非常に大事に考えておられる、ほとんど義務教育と同じように考えておられるのが現在の実情でございます。まだそれが制度としては決まっておりませんけれども。また父兄の間でも幼稚園の設置要求が非常に厳しい多くの要求が出ている、こういうところでございますだけに、私はここの五〇%というのだけは理論的にどうにも合わないのではないか。言ってみれば子供の背の高さで、こっちは一メートル五十ぐらいあるし、こっちは八十センチぐらいだから半分にしたなんという、そんなふうな感じで決めたのではないかという印象さえ覚えるわけであります。幼児教育というものの大事さということを、これからの日本の教育体系の中で大事に考えておりますだけに、各党一致でこの問題については、あの政策から言えば不満じゃないかと思うので、これはぜひ一〇〇%に直していただきたい。直す意思があるかないか。今回で終わりだと言われますと、この分についてはどうしても承服できないので、その理由というものを、どうしても私は納得できませんから、もう一度聞かしていただく以外に方法がないと思います。
  127. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 おしかりをいただいておりますが、給与上の評価、その基礎になりますいろいろな実態の、あるいは職員構成、それから勤務の時間なり現場なりいろいろございますが、同じと言えば同じ面がございます。違うと言えば大変違うところもございます。したがいまして半分、こうことで一応均衡上の措置をしたわけでございます。全部同じということであれば全部同じになるでしょうが、いま制度上、実定法上の措置も違いますし、それから給与上の措置としても、その実態を反映してどう評価するかということで、現在の状況におきましては違うところは違う、こういうことで二分の一ということにしたわけでございます。
  128. 小川仁一

    小川(仁)委員 国会の附帯決議というのがございますね。御承知と思います。「高等学校、幼稚園並びに盲学校、聾学校及び養護学校の高等部及び幼稚部の教育職員給与についても、義務教育諸学校の教育職員給与改善との均衡を考慮して同時に必要な措置を講ずること。」こういうことですが、幼稚園の教員は教育職(三)表適用、こう考えてまいりますと、私は、確かに小さい子は午前中で帰すことがあります。そういう論理で言えば、小学校の一年生も午前中で帰します。あるいは教科の中身に、教育というよりも、いわゆる学問的形態を中心にした教育よりも、どちらかというと遊びを中心にした子供たちのしつけというふうなものもあります。  ただ、子供の成長過程の時期において、三歳児から六歳児あたりにおける子供たちに与える影響というのが非常に大きいというのは、これは教育学者、心理学者の全員が指摘するところであるだけに、ここに人材を集めなければならないだろう、俸給表上の違いではなしに、これは特別手当でありますだけに、俸給表の違いがあったとしても、特別手当という性格であるだけに、均衡というのはむしろ高等学校にも一〇〇から幼稚園にも一〇〇、こう考えるのが筋ではないかと思いますが、これは文部大臣からもひとつ御意見を伺い、人事院に再考を願いたいところでございます。
  129. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 専門の人事院の御勧告でございますから、文部省としてはそれをそのまま受けざるを得ません。
  130. 小川仁一

    小川(仁)委員 人事院で再考の余地はありませんか。
  131. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 先生おっしゃいましたように、まさにそういうことで均衡上ほっておくわけにはいかないということで、二分の一この際支給するというふうに決めたわけでございます。これは調査の結果、われわれ勤務に対する給与上の措置としてもちろん十分調査したつもりでございますが、なお、先ほど来先生の御質問の中にもございますように、幼児教育について幼稚園の関係、それから保育所の関係その他で文部省と厚生省の方で今後の方向について現在検討なさっている最中ということも一つあろうかと思いますが、しかし、そうは言いましても、これも先ほど来申しておりますように、人確法としては今回最終的なということでありますので、今回これに踏み切った、そういうことでございます。
  132. 小川仁一

    小川(仁)委員 まあ最終的と言うから逆に問題が残るわけでございまして、しかし、幼児教育の重要性ということは、ぜひこれは文部省でも、それから人事院も教育の中身を勉強していただいて大事に考えていただきたいと思います。子供の一生というのはどの時期に決まるかというふうなことも含めて御勉強願いたいと思います。  それから、同じく附帯決議で二回も問題になっております。「学校事務職員給与改善についても配慮すること。」とございますが、これは均衡ではなくて配慮でございますが、どのような配慮をなさいましたか。
  133. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 附帯決議をいただいておりますし、もちろん私どもとしてもこれに対処する仕方としてどういうやり方があるかということを、人確法の一次改善以来何度もこれについて慎重に検討したことは事実でございます。それですでに二次改善のときでございますが、やはり事国立については、これは付属ということで大学の中で任用配置関係もあり、しかるべき処遇が行われておるということは事実でございます。それで問題は公立ということになりますれば、これは人事院が深入りすべきことではないかもしれませんが、やはり任用配置上のそういう何かいい知恵がないかということをその勧告の説明のところで特にお話し申し上げたという事実もございます。それで、これにつきましては、現在そういうこともありまして、文部省でその後処遇の問題として御指導なり通達をなさっておるように伺っております。
  134. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 これは具体のことを一つ申し上げますと、人確法成立の前年、四等級格づけを実施しておりました県が十九しかございませんでした。これの実施方指導を続けてまいりまして、五十二年度現在で四十一県にこれらの県がふえております。私どももなお努力を続けなければならないと考えております。
  135. 小川仁一

    小川(仁)委員 これについては給与法上の立場その他から再度御検討願うことをお願いをしておきます。  そして次に質問いたしますが、文部省の方で地方課長が各県の主管課長を集めて主任手当を教員が拠出しても寄付を受け付けることは適当でない、公益法人をつくったりする場合のその認可は慎重にやれ、こういうふうな御指導をなさったという話を承っておりますが、この事実はございますか。
  136. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 主任手当は、主任の処遇改善の一環としてやるわけですから、その手当の一部を組織的に、継続的に拠出をして教育条件の改善に充てるということは、やはり手当の趣旨からして適当でないというふうに私どもも考えておりますし、そこで県に対しては、それぞれの県において財政事情等もあるであろうけれども、教育条件の改善ということについては常に十分な努力をしてほしい、そしてそういったような拠出された金を受け取るということは、趣旨として適当でないからそれは受け取らないように、こういう指導をしておることは事実でございます。
  137. 小川仁一

    小川(仁)委員 もし月給の中からそういうお金を出してやったとしても受け取りませんか。
  138. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 たとえばある先生がおやめになる前に、自分で特定の勤めておった学校に寄付をなさるというようなことはあり得ることかと思いますけれども、私がいま申し上げましたのは、給与として支給される金のうちから一定の額を毎月組織的、継続的に組合として拠出させてこれを集めるというそのことがどうも適当でないということを申し上げているわけです。
  139. 小川仁一

    小川(仁)委員 そのことの適当、不適当と、学校における教育設備の不足というものは、どっちが教育上大事だと思われますか。
  140. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 いまの手当を集めて拠出するということと教育条件を整備するということは、本来それぞれ別なことでございますから、どちらかとおっしゃられても、ちょっとどちらというふうには申し上げられませんけれども、私は、いまも申し上げましたように、教育委員会としてはやはりできるだけ父兄負担の軽減を図って、公費による条件整備を十分にするようにということは常にお願いしておるところであり、これは非常に大切なことであるというふうに考えるわけでございます。
  141. 小川仁一

    小川(仁)委員 私の質問に答弁をしておりませんが、いま日本の教育条件で足りないものがずいぶんいっぱいあります。学校でこんなものを欲しい、あんなものも欲しい、そういうものに教員が、自分が持っているお金の中から出し合って寄付をして違法になりますか。――私は違法かと聞いているのです。
  142. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 教員の組織が、お互いに話し合ってお金を出し、それを寄付することでありますから、それは別に違法という問題にはならないと思います。
  143. 小川仁一

    小川(仁)委員 違法でなかったら、なぜ行政がそれをやめさせようとするのですか。この方だけの問題で聞いてください。
  144. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 違法であったら、これはもうやっていけないことでございます。しかし、私が申し上げているのは、それは手当支給の趣旨からして適当でない。だから、適当でないお金を受けることはやめなさいよと教育委員会の方を指導しておるわけでございます。これは別に違法かどうかという問題ではないわけでございます。
  145. 小川仁一

    小川(仁)委員 私がもらったお金を、私の住んでいる町の教育の設備が足りないから、幾らかでも足しになればと思って寄付しようとすることが適当じゃないんですか。適当じゃないというのは何に対して適当じゃないのですか。主任手当をもらったといいましても、入ってくるお金は、もうもらってしまえば私個人のものにかかわります。そのお金が、この五千円札は主任手当の分で、こっちの五千円札は月給の分だなんて区分けをつけているわけでもないでしょう。そのお金の処理については個人の自由が存在するわけだ、個人の自由で一定額を教育設備のために寄付をしよう、困っておる子供のためにやろうというのを断れというのなら、あなた方がそれを断るほど十分なる教育施設を責任持ってやっているのなら話はわかるけれども、全然不整備の状態の中でそういう善意をも否定するというのですか。
  146. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 何度も申し上げますように、先生方が拠出をしてお金を集めること自体を私ども言っているのではないので、教育条件を整備する責任のある教育委員会側にとっては、公費をもって条件を整備する努力を一層しなさい、そういう寄付を継続的に受け入れて整備をさせるということは教育委員会として適当ではないからその寄付は受け入れなさるな、こういうふうに言っておるわけであります。
  147. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすると、ほかのものの寄付も、とにかく教育委員会では教員以外からでも何でももらうなということを言っているわけですね。
  148. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 先ほども申し上げましたように、ケースによっては寄付をもらうことももちろんあるでしょうけれども、本件の場合は、これから毎月手当のうち一定額を拠出してそれを継続的に寄付をする、そういう寄付であるというから、これは適当でないと言っておるわけでございます。
  149. 小川仁一

    小川(仁)委員 どうもわかりませんね。手当の金でなければいいのですね。
  150. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 仮に本俸を毎月一定額拠出してそれを寄付する、そういうことはあり得ないと思いますけれども、そういうことであれば私はやはりちょっと考える、そういう寄付を受け入れて条件整備をすることはやめるべきだ、こういう指導をするかと思います。
  151. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすると、教員が自分がもらったお金から教育施設に寄付をすることは、月給であっても手当であっても何であっても、一切もらうべきじゃないという御指導をなさる、こういうことですね。
  152. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 どうも私の申し上げる真意が御理解いただけないようで大変残念でございますが、私は一切ということを申し上げているわけではないので、今回のような組織として一定の金額を継続的に拠出をし、それを条件整備に充てる、そういう寄付は適当ではない、こういうふうに言っておるわけでございます。
  153. 小川仁一

    小川(仁)委員 なぜ今回の場合だめで、ほかの場合はいいかということについて私は理解できません。というのは、もともと教員組合や教員は、主任手当は要らないから教育施設にお使いください、そっちの財源にお回しください、そしてよりよい施設をつくって教育をよりよくしてくださいとずっと長い間お願いして、自分で、口で言ってきたのです。このことはおわかりのとおり。父兄に対してそういうことを言ってきた教員は、もらえば当然それはいままで私たちが言ってきたとおり教育施設に使ってください、寄付することによって自分の言動に対する責任も果たせるし、子供たちにもいままでの言動に対する責任を果たせて、父兄や子供から信頼を得、教育が成功するのであって、なにあいつらは口では要らないと言いながら、出してもらったらポケットへ入れたじゃないかというかっこうになっては逆に父兄の不信、子供の不信を招いて教育にマイナスを来す、こういう立場から出そうとしているのですから、むしろ教育上非常にいいことじゃないか。父兄に対して教員がいままで言ってきたことを実施させるまことにいい機会、信頼を得るまことにいい機会だと思うので、このことはそういうこじつけのような論理でとめるべき性格ではない、こう思います。それは数の中には出さない人もあるでしょう、全部が出しているわけじゃないわけですから、全額を出しているわけでもないですから。そういう点を考えてみたら、大臣、本当に教師と父兄、教師と子供の関係において、教師が自分の口から言ったことを実践させないというやり方は果たしていいでしょうか、どうでしょうか、御答弁を願いたいと思います。
  154. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 教員か主任手当も含みます給与を直接受け取った後に、本人の自由意思によって組合に寄付をする、学校に寄付をする、それは合法的でございます。まさに合法的であります。しかし、法律に基づいて支給される職務の対価としての給与の一部を組織的、継続的に拠出することは、教員の処遇を改善するために行われる第三次給与改善の趣旨に沿うものではない。給与改善もまた教員の皆様が強く要望をされ、私どもも当然の御要望として受けとめて第三次給与改善を行うわけでございますから、組織的、継続的に拠出することを組合がお決めになることは第三次給与改善の趣旨にそぐわしいものではない、私はこのように思います。
  155. 小川仁一

    小川(仁)委員 最後になりますが、いま大臣は私の質問に対して御答弁なさっていないのです。私が質問を申し上げたのは、教員が父兄や子供の前でこういう主任手当は要らない、そして教育財政の不足の部分に使ってくれ、大きな声でこう言ってまいりました。そういう立場から、私たちはこれを教育財政の不足の部分に寄付をいたします。いままでの経過と決意の中からこう言うのが当然なわけでございましょう。その当然なことが実施されれば、父兄と教師、子供と教師の信頼関係がますます増すであろう。むしろそれをやらないで自分のふところに入れてしまえば、教員は何だかんだと言ってもやっぱり銭が欲しかっただけじゃないか、こういう批判を受けるであろう。こういう現在の状況の中で教員と父兄、子供の間の信頼関係を増すためにこういう状況をつくり出すことを悪いと考えているのかいいと考えているのか、何も抑える必要がないのではないか、こういう意味の質問でございました。だから、この点に限って御答弁を願いたいと思います。
  156. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 小川委員の御質問に正確にお答えしようと思いますと、さっき私がお答えをした主任というものをどう考えるかという基本にもう一遍議論が戻ってしまうと思います。  私どもは、学校管理の面ではない自然発生的に生まれた学校の教育指導のその中身のお仕事としての御苦労を願う主任の制度、それに報いるべき主任の手当、こういうことで考えて主任制度を明確にし、手当を支給しようとした。しかし、教員の一部の方々はこれは学校の管理を強めるものだというふうに、私から言わしめれば誤解をされて、そこのところを反対だと言われた、そのことは父兄の方もよく御承知になっていることでございます。先ほどお答えいたしましたように、これが定着をしてまいりましてもうしばらくいたしましたならば、教育、学校現場の管理を強める主任ではなくて、教育指導の面、その面からの教育内容の充実に資するものであるということは御理解がいただけると私は確信をいたしております。  そうでありますだけに、主任の手当をこういうふうなことに使ってもらうとおっしゃったからといって、いま主任手当を素直にお受け取りになりましても、父兄の方の受けとめ方は、あんなことを言っていてももらったらポケットへ入れたではないかという受け取り方ではなくて、主任というものは学校の教育指導の面で役立ってもらう、それだけの御苦労を願っておる、そういう気持ちが父兄の間には強いわけでございますから、当然の御苦労に報いる手当を受け取られた、父兄の側はそう理解をするであろう、私はそう考えます。
  157. 小川仁一

    小川(仁)委員 最後まで解釈は平行線のようでございます。しかし、さっき、自分のふところへ入ったものをどう使おうが合法的だとおっしゃいました。そのどう使おうが合法的だという立場で一応物をお考えになっている。私が申し上げているよりも大臣や局長がおっしゃっておる方がむしろ素直じゃないような感じがします。また元へ戻りますから……。私は元へ戻ってそこから討議をしようというつもりでやっておるのではありません、現在起きている事象のことですから。もうそろそろどう使おうと自由なわけでございます。それが教育にプラスにはなるものであったら大きな目で見ていただいて、つまらない県教委や市教委の御指導はおやめになっていただきたい。すべての県が出しているわけでもございません。そこの中で職務をわかった上でもらって、なおかつ出すという者についてまでいま言ったような、むしろ皆さんの方が前提に何か含むところがあって阻止するような、やめさせるような指導はやらないでいただきたい。いまこれだけ一つの騒ぎが起こって、第四次勧告で一応人確法が終わりを告げたわけであります。後はひとつ、それらの使途その他については自由に教員の意思に任せていただきたい、こうお願いを申し上げて、私からの質問その他を終わらせていただきます。
  158. 始関伊平

    始関委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十二分開議
  159. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安井吉典君。
  160. 安井吉典

    安井委員 きょう私の質問の中で井上一成君に関連質問ということでお許しをいただきたいこと、それで私の時間を短縮しなければいけません。その問題はひとつ後で理事さんに調節していただきますが、それと、総務長官のお仕事の都合もあるそうですし、それから、給与の問題では、私、外務委員会に行っているうちにもういろいろな問題点ほとんど尽くされているということを聞きましたので、給与関係ではただ一つ、寒冷地手当の点についてだけお尋ねをしてまいります。  人事院の勧告が行われました直後のこの委員会におきましてこの問題を私取り上げて人事院総裁といろいろお話し合いをしたわけでありますが、前回の委員会では、今度の勧告の際までには寒冷地手当の問題についての調整ができなかったので、勧告の中に入れなかったというお答えであり、かつ、今後でも問題がまとまればいつでも勧告をする構えで参ります。こういう御答弁をいただいて今日まで至っているわけでありますが、今日までの段階でその処理について前進ないし変化があったのかどうか。これは総裁から伺います。
  161. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 寒冷地手当の問題につきましては、この間の当委員会でも申し上げたとおりでございます。いま安井委員から御指摘になった内容と同じでございます。  実のところを申しますと、人事院といたしましては、大分問題が積み重なっておりますし、できるだけ早くこれらについての解決のめどを立てたいということで、でき得るならばこの前の夏の勧告の際にあわせてということで努力をしたわけでございます。しかしながらこの点につきましては、何分従来のいきさつ、経過等がございまして、やはり関係者の十分の御納得といいますか、そういうものを得てまいる必要があるというような観点で慎重に進めてまいりましたが、最後の詰めの段階でなお解決が見られなかったという面がございましたので、遺憾ながら、この前の夏の勧告の際には間に合わなかったということでございます。  しかし、基本姿勢といたしましては、できるだけ早くこの問題の解決を図りたいということで努力を続けてまいっております。何分にもしかし、それ以来ずっと勧告の作業もあり、また説明会その他のいろいろな行事が重なってきております。そういうようなこともございまして、この面についての目立った動きというものはあれ以来、現在のところまではまだございません。しかし問題点としては大体整理されてわかっておるわけですから、今度の諸法案が国会でもって御審議の上、決定をするということに相なりました暁におきましては、引き続いてこの問題とひとつ精力的に取り組んで、詰めを急いでまいりたい、かように考えております。
  162. 安井吉典

    安井委員 残った問題はいわゆる定額、定率等の支給方法の改善の問題が一つと、それから退職者等に対する制度改正の問題、これが二つ目、それから三つ目は支給地区分の問題、こうあるわけでありますが、ぜひ関係者の意見も聞いて調整を行い、できたらすぐ勧告をする、こういうことを今度も要請しておきます。  そして総理府の方も、勧告が行われれば、これだけ切り離してでも一番近い国会に法案を提出する、こういう運びをお約束願いたいと思います。
  163. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 いま申し上げましたとおり、問題点というものは大体集約されてきておるわけでございます。したがいまして、これの最終的な調整をひとつ今後精力的に推し進めまして、できるだけ早い機会に、成案がまとまれば勧告をするということにいたしたいと思っております。
  164. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 寒冷地手当問題でありますが、これは各地区からいろいろな御要請がございます。いま人事院の方で調整中でございますので、人事院の勧告がございますならば直ちに実施をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  165. 安井吉典

    安井委員 総務長官、しばらくの間結構です。  それでは今度は、防衛庁長官の方に移ります。  いろいろ問題があるわけでありますが、そのうち、この間、在外公館に警備官を送る、その中に防衛庁の方から自衛官を含めるということについての言明が委員会であったようでありますが、その中身についてちょっとお話し願いたいと思います。
  166. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 お答えいたします。  先般、外務省の方から私どもの方に御依頼がございまして、在外公館に、現在も警備官というものは配置されているようでございますけれども、さらにこれを強化したい、ついては防衛庁の方から協力をお願いしたい、こういう御依頼がございました。私ども承知しているところでは、在外公館長の指示に従って現地雇用の警備員を指揮し、在外公館の警備をするに当たって警備についての専門知識あるいは経験を有する者を補充するためにお願いをしたいということでございまして、私どもの方でその依頼を受けまして適任者を選考いたしました。現在考えておりますのは、全部で二十五名外務省の方に出向させたいということを考えておるところでございます。
  167. 安井吉典

    安井委員 それは現職の自衛官ですか。
  168. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 先生承知のように、現在防衛駐在官というものがございます。これは現職の自衛官から外務省の方に出向いたしまして、一たん自衛官を免ぜられまして外務事務官に任命し、あわせて自衛官を兼務するという形で防衛駐在官が派遣されておりますが、この在外公館の警備官というものは、外務省に出向いたさせまして、外務事務官に任命をいたしまして、自衛官の身分を失ったまま在外に派遣されるという性質のものでございます。
  169. 安井吉典

    安井委員 自衛官階級で言えばどういうような程度の人ですか。
  170. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 現在一尉ないし三佐を考えております。
  171. 安井吉典

    安井委員 外務事務官ということに一応なれば、防衛庁設置法だとか自衛隊法の適用はないということになるわけですか。  それからまた、定員の問題はどういうことになるのですか。
  172. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 当然のことながら防衛庁設置法ないし自衛隊法の適用はございません。  それから、定員はすべて外務省の定員で措置されることでございます。
  173. 安井吉典

    安井委員 警備官の業務でありますが、警察の方からと防衛庁の方からと両方から同じ数が行くというふうに聞いているわけですが、警備官というのと防衛駐在官的な立場で行っている人とは、どう違うわけですか。
  174. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 防衛駐在官の方は、これも言うまでもなく在外公館長の指示、監督を受けるわけでございまして、外務省職員として行動するわけですが、主として外務省の職務のうち防衛情報収集というような業務に従事をするということでございます。警備官の方は、私どもが聞いておりますのは、在外公館の警備体制等の企画立案、それから現地雇用の警備員の指揮監督、その他任国の治安関係行政機関との連絡調整というものが主たるものであるというふうに承知をいたしております。
  175. 安井吉典

    安井委員 そうすると、これは一応武官から文官にその間変わるというわけですね。  それからまた、そういう人たちを配置する在外公館はどことどこなのか、それも伺います。
  176. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 在外公館の場所は、事柄の性質上公表を差し控えたいという外務省の御意向がございますので、答弁は差し控えさしていただきたいと思います。  それから、ただいま先生おっしゃいましたように、武官と申しますか自衛官から文官になるわけでございまして、これは出向でございますので――出向という言葉は慣用的に使われていますが、一応帰るということを前提にした形ですけれども、出向というもので大体そのまま向うに行ってしまうということも人事上ございます。今回のものもそのまま向うに居つく者もあるだろうし、あるいは再び帰ってくることを希望する者もあるだろうと思いますけれども、その辺はまだよくわかっておりません。
  177. 安井吉典

    安井委員 私たち、海外派兵反対、これは国会も反対の決議をしているわけですが、こういうようなことでどんどん在外公館の警備官とかなんとかという名目で向こうへ送ることで、これが海外派兵だとは私は言いませんけれども、しかし何かそれの拡大というようなことで擬装されていくのではないか、あるいはそういう道がずっとならされていくのではないかという心配もするわけであります。そういうことはないのでしょうね、大臣、どうですか。
  178. 金丸信

    金丸国務大臣 そういうことはあり得ないと思いますし、また、銃を持って出かけるのでない、文官として出ていくということですから、そういう間違いは絶対ないと私は信じております。
  179. 安井吉典

    安井委員 次に、いわゆる有事立法の問題でずいぶん議論があるわけでありますが、けさの新聞では大平幹事長が、昨日の発言で、防衛論議はもっと広い視野に立って展開するべきであり、いまの自衛隊法で十分有事的な対応ができると思う、騒ぐ必要がないという言い方をされているようであります。どうも総裁選挙が近づいてきているだけにいろんな発言が大きく扱われているというきらいもありますが、与党の幹事長の発言であります。防衛庁としてどう受けとめておられますか。
  180. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、防衛問題を総裁選挙に利用するというようなことはあってはならないと思いますし、またそんな考え方で大平さんが発言をしておるとは私も考えませんが、大平さんの考え方も一つの考え方だと思います。  私は、自衛隊法というものは非常によくできていると思っています。そういうことでありますが、有事を仮定して自衛隊というものがある以上、有事に処してどうするかというような問題で頭の冷静なときにそういう問題を研究するということは必要だ、有事立法とこう言うから、すぐこれを立法に結びつけるけれども有事の際の研究をして、もし必要があるというならば立法をするということだけれども、その立法については、研究したものをいわゆる中間報告もいたします。ひた隠しもいたしません。またそれが当然シビリアンコントロールだと私は思っております。政治優先という立場からも、そういうような方法で理解していただくことが、いわゆる防衛の基本だろう、私はこういうような考え方を持っておるわけであります。
  181. 安井吉典

    安井委員 全く海の物とも山の物ともつかない有事立法がひとり歩きをしていると長官よく言われるわけでありますが、しかし、とにかく幽霊みたいに歩いている以上私たちは気になるし、国民も不安な気持ちで問題をながめているという段階ではないかと思います。そういうような意味で、まず有事というのは一体いまの段階でいかなる状態を有事というふうに押さえているのか。
  182. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま防衛庁で実施いたしております防衛に対する研究という問題につきましては、七十六条発動が下令されたその時点が有事ということであろう、それからが有事だ、こう私は考えております。
  183. 安井吉典

    安井委員 そうすると、武力攻撃のある場合であって、そのおそれのある場合、それは含まれないわけですか。
  184. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように防衛出動というのは、おそれのある場合を含んで出動が下令されるわけでございますから、七十六条に規定されております防衛出動が下令された以後というふうに私どもは考えているわけでございます。
  185. 安井吉典

    安井委員 七十七条の待機命令の段階では、これはいわゆるいま研究している対象には入らない、そう理解していいですか。
  186. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは先ほど大臣からも御説明いたしましたように、有事の概念の中には入りません。しかし、その時期はこの防衛出動と関係の深い時期でございます。したがいまして、そういうものとこの有事に至るまでの過程との関連等についても研究はしたいと考えておるわけでございます。
  187. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、研究の段階でいろいろな規制措置とかなんとか出てくるものも、七十七条から適用されるような法律も考えていく、そういうことですか。
  188. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはまだそこまで研究が行っておりませんので、いま的確にお答えできる段階にはございません。しかしながら、この有事の際に自衛隊が有効に活動できるような範囲で、その待機命令の分野についても研究はしてみたいと思っているわけでございます。
  189. 安井吉典

    安井委員 そうすると、長官がさっき防衛出動ということできちっとおっしゃったけれども、実際の研究はもっと前の段階から、かなり幅の広い段階からの問題点を研究している、そういうふうにいまのお答えは受け取られるわけですが、それでいいのですね。
  190. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私どもは、幅の広いというふうには考えていないわけでございます。  したがいまして、実はまだ検討に入っておりませんので、具体的にはなかなか申し上げられないわけでございますけれども、私の頭の中でこういう点は研究しなければならないかなと思います点は、たとえば予備自衛官の招集というのがございます。これは七十六条で防衛出動が下令されてから招集されるということになっておりますけれども、たとえばその待機命令の時点で招集が可能になりますと、編成その他の準備が整って防衛出動が下令された時点で有効に運用できるんではないかなという感じはいたしますけれども、その点につきましても、今後の研究の課題でございます。
  191. 安井吉典

    安井委員 その研究をこれからやるのですから、先走ってどうこうと言うわけにはいかぬでしょうけれども、何か非常事態に対する特別措置法案というようなもので問題点を一括した、そういうようなものでまとめ上げようというお考えなんですか。それとも一つ一つの法律に問題があるとすれば、その法律をいじろうということなんですか。どうですか。
  192. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まだ検討いたしておりませんので、何ともお答えできませんけれども、私どもは、七十六条で行動するに当たっても現在の自衛隊法で一応の規定があるというふうに判断いたしております。しかしながら、たとえば通信施設の優先使用なども、すでに自衛隊法の中で決められているわけでございますが、これは御承知のように、昭和二十二年にできました災害救助法の中の条項を適用しているようでございます。  ただ、自衛隊法は二十九年にできまして、その後にいろいろな法律もできておりますので、その中の適用除外の問題あるいは特例の問題、そういったものをまず検討いたしてみたいと思いまして、現実に私どもがいままでにやりましたのは、たとえば道路交通法とかあるいは海上衝突予防法とかあるいは航空法などというようなものの各条項について、これから研究したいというふうに考えているわけでございます。
  193. 安井吉典

    安井委員 研究の結果がどうなるこうなるということをいま聞いたってむだだと思いますから、それはあとの問題にいたしますが、憲法の範囲内で研究するということを政府はしばしば言われるわけであります。ということになると、戒厳令だとか徴兵制のようなものは考えられないということ、言論の統制等の措置も考えないというふうにも言われています。一体それじゃ何を問題として考えているのかということになるわけなんですが、八月の十七日でしたか、いわゆる八項目ということを参議院でおっしゃっているわけです。その後何か取り消されたようなふうにも聞いておりますが、憲法の範囲内で研究はする――もうすでに一年間してきているわけですね。しかし、一体何をやっているのかということが、一たん八項目などというようなものが新聞に書かれて、それが何か消えちゃったようなことで、それでもなお研究している。わかっているのは憲法の範囲内だということだけ、一体何だろうという、不安感を国民は持っているわけです。研究の対象は何なのかということをもう一度改めてこの際お聞かせをいただきたい。
  194. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、この一年間何をしてきていたのか、そしてまた、何をしようとするのかということについて、確かに私どもは、遅々として進まなかったという反省もございます。それから、過去一年間は主として法制の担当者が、いわゆる法律知識のもとに思いつくようなものを総さらいして、たとえばこんなものがあるのかなということで項目だけ洗い出したというようなのが実情でございます。  そこで、八項目につきましては、そういった法制の専門家であります担当者が集まった中で、大体この項目から見ると、こういうような形で研究を進めるのがいいのかなというような考えを持ったようでございますが、このことは実際問題として防衛庁として決めたわけではございません。そこで、いろいろ道路交通法あるいは海上衝突予防法といった既存の法律と、自衛隊有事に行動する場合とのすり合わせというのをやってきております段階におきまして、現在自衛隊法で定められておりますいわゆる有事の際の行動あるいは権限との関係を研究するに当たりまして、どうしても自衛隊運用部隊運用というものを中心に考えなければならないというようなことでございまして、いわゆる防衛研究というものの進展、進みぐあい、そういうものとすり合わせながら、本当に自衛隊有事に行動するに当たって、現在決められている自衛隊法の中の条項の中にどういう問題があるのだろうかということを研究しなければならないというふうに考えているわけでございまして、実は実体を伴った分類ではなかったという反省もあるわけでございます。  したがいまして、あの八項目という言葉自体でもうすでに研究の対象がはっきり決まったというものではございませんで、これから研究をしていく過程において、あるいは八項目になるか、あるいは五項目になるか、その辺のところは将来めどをつけてまいる必要があるとは考えておりますが、いずれにいたしましても、大臣がしばしば御答弁申し上げておりますように、その過程におきましても、まとまった節々においては研究について御報告し、また国会でも御審議いただくというような形をとってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  195. 安井吉典

    安井委員 そうすると、あの八項目というものは一応消えてしまって、別な何項目とかという立て方はしないで今後の作業を進めていく、そう受け取っていいわけですか。
  196. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 もともと八項目というのは決めたとか決めないとかいうものではございませんで、先ほど御説明いたしましたように、いわゆる法制の担当者が思いつくままに項目をまとめた、それを分類するとこういうことになるのかなといった程度のものでございまして、内容を伴った分類ではないわけでございます。したがいまして、今後の研究の過程におきましてそれぞれの法律を研究し、あるいはまた自衛隊の行動を研究していく過程においてそういった分類というのも可能になるのではないかということでございます。
  197. 安井吉典

    安井委員 まだ問題はあるのですが、これも後にします。  きょう法制局長官においでをいただいて、何か足が悪いのだそうで、お越しいただいて済みません。  十月七日の予算委員会でこういう御発言がありますね。言論の統制と有事立法との関係について、最高裁で判決もたくさんあり、公選法にも文書活動の制限を規定している、一般論で言えば、憲法上絶対に言論制限ができないとは考えていない、言論の制限によって克服されなければならない事態の重大さとの均衡を考えなければならないという御発言のように新聞は伝えておりますが、この際、正確にもう一度お話しいただきたいと思います。
  198. 真田秀夫

    ○真田政府委員 申し上げるまでもないことでございますけれども有事の際に、どういう表現の自由に対する制約をするかとか、しなさいとかというようなことは、これは実態判断を伴う、実態判断を前提とする政策問題でございますから、私の方からこうしなさい、ああしなさいということを申し上げる立場ではもちろんございません。  先般の当院における予算委員会での私の発言は、某委員の方が憲法に定める基本的人権、特に表現の自由の保障については、いかなる場合でも制約はできないんだ、その制約をすれば、それは憲法違反になる、したがってその研究をすること自体も憲法違反になるというふうにとられるような御発言がございましたので、それで、現実にそういう制約の立法をするかしないかということとは無関係に、ただ法制上の考え方としては、憲法の解釈上そういうことではないのであって、表現の自由といえども公共の福祉のために必要な場合には、合理的な限度において制約を加えるということは、これはそのときも申し上げましたが、累次の最高裁判所の判例もあり、またそういうことを内容とする実定法も数々ありますという御説明をいたしまして、幾つかの実例を御紹介したわけでございまして、その考え方はいまでも変わっておりません。
  199. 安井吉典

    安井委員 法律論として、有事の場合、言論の自由を制限したり、報道の自由を制限することは法律論としてはできる、そういうことですね。
  200. 真田秀夫

    ○真田政府委員 法律論といたしましては、絶対制約になじまないというものではないということを申し上げたいわけでございまして、憲法上、制約する法律をつくることができるからと言って、もちろんやたらに基本的人権の制約が許されるものではございません。それは、先ほどもお読みになりましたように、そういう制約を加えることによって克服しなければならない事態の重大さとの関係において、合理的な範囲で制約を加えることは憲法が禁止しているところではない、こういうふうに申し上げたいと思います。
  201. 安井吉典

    安井委員 私は、その法律論そのものにも若干疑問があるわけなのです。これも後で申し上げますけれども、そういうことになると、機密保護法の問題が、これも予算委員会で次々議論をされたようでありますが、防衛庁の方は、つくらぬとこう言う。それから総理の方は、いますぐとは言わぬが、将来は一般人の処罰をも含んだ機密保護法の必要があるかもしれないというような意味の発言が総理からある、こういうことなのですが、いまの長官のお話によれば、機密保護法というものもかなりな制限を含んだ、つまり基本的な人権なり、言論やその他の制限を含んだ機密保護法も違憲だとは言えない場合がある、そういうふうになるわけですが、それでいいのですか。
  202. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほども申しましたように、その制約を加えることによって克服する必要のある事態の重大さ、つまり制約をすることによって保護しなければならない国益、それとの比較において合理的な範囲でなければならないというのが一般命題でございます。また防衛庁の方でどういう研究をなさるか、研究の結果ももちろん出ているわけではございませんので、いまこの場で、どの程度のことならよろしいんだというようなことを的確に申し上げるような材料も何にも私、持ち合わせておりません。  ただ、参議院の予算委員会で某委員の方が、そういう軍機保護法あるいは機密保護法のような研究をすれば、それは結果においてそういう秘密の探知、収集、漏泄、その未遂、予備、陰謀まで全部ワンセットに処罰の対象になるというふうな結果に結びつくじゃないかというふうにおっしゃったものですから、それは問題なのであって、それはやはり立法を必要とする際の中身の問題で、その中身をよく、先ほど申しましたような制約を加えることによって保護しなければならない国益との関連において、合理的な範囲でなければならない、こういう意味でございます。
  203. 安井吉典

    安井委員 総理の発言の中には、これは総理が言うわけですね、機密保護法を将来つくるとしても、あるいは必要でしょうというところまで言われて、そして、ただ憲法を外れることはできません、違憲のものは、これはもう当然できないわけでありますと、こう言われるわけなんですよ。しかし、長官の先ほど来のお話の様子から言えば、違憲か違憲でないか、とりわけ言論とか報道の自由というものについてはかなり広げても――総理は、機密保護法はつくりますよ、憲法の範囲ですよということを言われるわけですね。しかし、その後同時に長官の方が、いや、かなりのところまでいけますよ、憲法違反でない形でいけますよというふうに、二つのあれが結び合わされて、オーバーラップされて私の頭に映ってくるわけです。その点、これは総理がいないので長官だけに伺うわけですから、純粋な法律論だけになりますけれども、その法理論の問題から、後で申し上げますが、余り間口を広げる可能性があるようなおっしゃり方をされていると、この際、誤解があるような気がするわけです。もう少しお話を慎んでいただいた方が私はいいように思うのですが、どうですか。
  204. 真田秀夫

    ○真田政府委員 純粋に憲法解釈として申し上げれば、先ほど来御説明しているような表現しか実はできないわけで、だた、先ほど来申しておりますように、やたらに基本的人権を制約するなどということが現憲法上許されるはずはございません。私は、純粋の法理論を申し上げているのであって、やたらに、あるいは、かなり広い範囲で言論の制限ができるというような形で、そういう方向で物事を考え、あるいは御説明した覚えは毛頭ございません。何度も申し上げますように、合理的な限度内において、しかも制約を加えることによって保護しなければならない国益との兼ね合いで合理的な範囲でなければいけないということは再々申し上げております。
  205. 安井吉典

    安井委員 基本的人権や国民の非常に大事な権利、それを制限する場合も公共の福祉という言葉で憲法は四つの条件を置いているわけです。公共の福祉という言葉が四カ所使われていますね。ですから、公共の福祉というものを一つの逃げ場にして、権利制限をどんどんやってきているというようなことが今日までの最高裁判例等に私どもの目から見るとあらわれてきているような気がするし、国民一人一人の権利主張があると、何か公共の福祉という逃げ場で、すいと、これは憲法違反じゃない、こうなるわけですよ。だから、長官のお考えの中に、どうも公共の福祉という言葉の理解が非常に弾力的で、最高裁は私はどうもそんな感じがするのですけれども、それと同じようなことで、もう少し公共の福祉というものはきちっとした概念としてつかむ必要があるのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  206. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいまおっしゃいましたように、いまの憲法の条文では、公共の福祉という言葉が十二条と十三条に出てまいります。つまり基本的人権といえども公共の福祉のために使いなさい、あるいは公共の福祉の範囲内において国政上最大の尊重をしなさいということが十二条、十三条に書いてございます。これはおよそ基本的人権一般について当てはまる憲法の規定だろうと思います。そのほかに、第二十二条、職業選択の自由ですが、そこのところに公共の福祉の範囲内においてということが書いてございます。それから、二十九条の第二項、財産権の内容ですが、そこにも公共の福祉に適合するように法律で財産権の内容は定めなさいということが書いてございます。  こういうもろもろの規定の解釈といたしまして、基本的人権のうちでもそういう経済的な生活についての、あるいは経済的な生活にかかわり合いのある人権と、心理作用といいますか、そういう精神生活にかかわり合いのある基本的人権との間では、公共の福祉との兼ね合いで制約ができる範囲についてはおのずから差はあるだろうという考えも私たちは持っております。
  207. 安井吉典

    安井委員 先ほど来の、言論の制限も違憲ではない場合もあるというのは、公共の福祉を考えてのことなのですね。
  208. 真田秀夫

    ○真田政府委員 公共の福祉との兼ね合いで、場合によっては制約を加えても違憲ではない、憲法が許容している範囲内のものもあり得る、こういうわけでございます。
  209. 安井吉典

    安井委員 きょうはもうしり切れトンボになりますから次に譲りますが、公共の福祉の見方について憲法学者でもいろいろ意見があるわけですね。とりわけ抽象的、包括的な概念でしかないものですから、いろいろな見方が出てくるということではないかと思います。いろいろ調べてみると学説がたくさんあるのでびっくりするわけですが、そういう中でも、国民の基本的な権利や自由を否定するための公権的な発動を正当化するための公共の福祉という言葉の見方、これは問題だという指摘がかなりあるようですね。ですから、一つの国家権力の発動をしていくところの政治原理として公共の福祉をあげつらうこともおかしい、こういう言い方をする人もあるようであります。あるいはまた、いまの日本国憲法というのは戦争を否定しているわけです。軍備も否定しています。そういう中において、公共の福祉という内容には戦争とか軍備は入らないと理解すべきだという言い方をしている学者もいるようです。  ですから、なるほど、最高裁の判定はかなり広く公共の福祉を解釈しているようだし、また、いろいろな事件が何でもかんでも公共の福祉というので訴訟を上げてきているということにも原因があるかと思いますが、いまのような機密保護法とかなんとかが問題になっている段階であるだけに、この問題についてもう少し真剣な討議を私たちはしていく必要があるのではないか。法制局の方でも、この間うち国会でのそういう御発言があっただけに、きょうここで結論をすぐ出していかなければならぬというわけじゃありませんけれども、この問題について私たちの考え方ももっと聞いてほしいし、また問題を掘り下げた討議が必要ではないかと私は思います。  きょうは一応、問題提起だけしておきます。もし御発言があったら……。
  210. 真田秀夫

    ○真田政府委員 表現の自由を制約する場合の一方の国益、法益としての公共の福祉を考える場合に非常に慎重の上にも慎重でなければならないという先生のお考え方には、私は同感でございます。
  211. 安井吉典

    安井委員 総務長官の出席の関係があるそうですから、もうちょっと続けます。座ってください。  防衛二法の改正の問題でありますが、この前この委員会で私の質問に対して、あれは官房長でしたか、次の通常国会に防衛二法の改正案をまとまれば出す、とりわけ定員の問題にめどがつけば出すこともあり得るという御答弁があったのをいま思い出すわけでありますが、どうなんですか。
  212. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま、私どもは大蔵省に対して概算要求をいたしております。その中で、海上自衛官、航空自衛官の増員の要求をいたしております。これが、いわゆる予算の政府原案の中にその増員が認められることになりますと、防衛庁設置法改正というものをお願いしなければならないと考えております。
  213. 安井吉典

    安井委員 そうすると、その予算がもし認められるような状況になれば、この間は防衛庁の機構改革やその他を含めた問題も提案をする、そういうふうな御答弁だったのです。その点はどうですか。
  214. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 機構改革といいましても、私どもはいわゆる防衛庁の中央の機構の問題、あるいは統幕の権限の問題、そういったものを研究いたしておりますけれども、それは今回の、来年度の法律改正にはとても間に合わないというふうに考えております。  ただ、その機構の問題といいますと、これもいま増員の関係で要求をいたしておりますけれども、たとえば海上自衛隊あるいは航空自衛隊の中で、海上自衛隊の潜水隊群というのが現在二つございます。これは潜水艦の部隊編成でございますが、その編成をいわゆるその戦術思想を統一するというような考え方から潜水艦隊という一つの組織にしたいというようなことも考えております。  それからまた、航空自衛隊におきましては、現在補給統制処というのがございまして、それぞれの補給処に対する統制を行っているわけでございます。その補給統制処に補給部門のいわゆる監督権といいますか管理権、そういうものを持たせることによりまして、補給統制本部というふうにして、各補給処を指揮統制させる方が効果的な補給態勢が整うのではないかということで、そのことにつきまして予算上定員その他が認められました際には、自衛隊法改正という形でお願いしなければならないかと考えているわけでございます。
  215. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、予算の交渉の成り行き次第だ、それによって定員の問題とそれから海上と航空の二つの編成がえの問題が出てくる、そういうことで、それ以外のたとえば有事立法の研究とか何かいまいろいろされているような問題の一部があらわれてくるというようなことはありませんか。
  216. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 それは研究の進みぐあいから見て全くございません。ただ、私、いま一つ申し忘れましたけれども、やはり自衛隊法関係でございますが、予備自衛官の増員というのを予算で要求いたしておりますが、これが予算で認められますと、その増員六千数百人でございますが、その関係が出てまいると考えております。
  217. 安井吉典

    安井委員 先ほど防衛局長は、防衛研究の作業結果を前提としてということを言われたし、防衛庁の見解の中にもそのことを書いてあります。その防衛研究の作業結果というその作業はどういうふうに進んでいるのか、それを伺います。
  218. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実は、その防衛研究と有事法制の研究というものは非常にかかわり合いを持たせて始めたというわけのものではございません。御承知のように、有事法制の研究は昨年の八月、三原長官の指示のもとに始めたわけでございます。ことしの八月から防衛研究を始めましたのは、自衛隊の勢力というものが四次防までは非常に質量ともにふえてまいってきた時期でございます。一昨年防衛計画の大綱をお決めいただきまして、自衛隊の規模というものが一応現在のような状況のもとにおいては、一つの規模というものが政府によって定められたわけでございます。  それから一方におきまして、ミグ事件の反省等からいたしまして、中央指揮機構というものが重要であるということで、これは一昨年来研究を始めております。私どもといたしましては、現時点におきます目標といたしまして、五十七年度から運用ができるというようなテンポで研究を進め、その指揮組織を建設したいと考えているわけでございます。  そういう観点からいたしますと、従来、陸海空それぞれの自衛隊が現在の兵力で、勢力で、いま攻撃があった場合にはどのような運用をするかというのは研究いたしておったわけでございますが、そういった観点からいたしますと、中央組織の完成に伴いましていわゆるその統合運用といいますか、陸海空の統合運用の面を重視しなければなりませんし、また、現在の勢力で最も効果的に対応するにはどうすればいいかということも研究したいというふうに考えて始めたものでございます。  ところが、御承知のように、有事法制の研究というものは関連があるかと思われるような法制担当者の知識で研究を始めておったわけでございますが、自衛隊有事における行動を確保するという観点からいたしますと、どうしてもその運用研究とのすり合わせというものが必要になってまいります。したがいまして、防衛研究が前提というわけではございませんけれども、その関連におきまして、現在の自衛隊法で決めてあります有事の際の行動に問題があるのかないのかということは、研究しなければならないというふうに考えているわけでございます。
  219. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、防衛研究の方は、一応のめどがつくのはいつごろに置いているわけですか。
  220. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ことしの八月から始めまして、一応二年というもので研究をまとめたいというふうに考えております。
  221. 安井吉典

    安井委員 そうすると、それが前提で有事立法ということになると、いわゆる有事立法というのは、みんなの目の前にあらわれてくるようなのは二年後ということですか。その防衛研究が前提だというふうに言われておるわけですからね。そうですか。
  222. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは昨年から有事法制の研究というものを始めましたけれども、意外に緻密な作業というものが要求されるようでございます。したがいまして、実際問題といたしまして、この一年間かかってやったというのは、先ほども御説明しましたように、たとえば道路交通法とか海上衝突予防法とかいったような範囲しかできなかったわけでございますので、必ずしもその前提ということではございませんけれども有事法制の研究というものはもっと長い期間がかかるだろうと私どもは予想しているわけでございます。
  223. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、有事法制なるものは、そう一年や二年や三年や四年やそこらでは問題化するものではない、かなり遠い将来だ、機密保護法なるものはまたそれよりも後だ、そういうふうな理解でいいのですか。
  224. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、有事法制の研究、先ほど来から申し上げておりますように、その研究の中間報告もいたします。こういうことでありますし、また慎重にこれは対処すべきだということで、いま安井先生がおっしゃっておるように、一年あるいは二年ででき上がるというものではないと私は考えております。  しかし、一遍に十も二十もつくるということでなくて、研究するということは、一つのテーマが、ある程度の成果が上がって研究の結果が出てくれば、途中でそういうものも報告する。だから、一遍に幾つか出すということではなくて、一つ一つここへ出して、そうしてそういう問題が、いやそんなものは必要じゃないということであれば却下されるわけですから、亡霊が飛び交っているというような状況が今日の状況ではないか、こう私は考えておるわけでございます。
  225. 安井吉典

    安井委員 これで終わりますが、私はいままでいろいろお聞きいたしましたけれども有事立法を早く出しなさいとか、防衛研究をうんとやりなさいとか言う立場ではございません。外務委員会で総理は、何かよからぬ国が急に攻撃をしてきたら、それは断固はねつけなければならない、そのために有事立法が必要だというようなおっしゃり方をされている点において、私は非常におかしいと思うわけですよ。有事立法などという法律が一つできたら、その法律で敵を追い返すということができるのですか。法律というのは大変な力があるものだなあと、さっき総理の話を聞きながらそう私は思ったわけですが、法律を整えたら、それで戦争がどうだなんてものじゃなしに、法律がもしもあわててそんなものをつくるということになると、法律だけじゃだめなんで、やはり軍備をふやさなければいけないという発想が続いて出てくる。大幅な軍備拡大。有事のための法律ができて軍備が拡大できたら、もう後は戦争するだけです。そういうことで過去の日本の歴史もそうだし、世界の歴史はそう進んできているわけです。ですから私は、やはりいまの段階で国民に不安を与えるような、そういうような物の考え方や研究はやめていただきたい。そうでないと、まさに戦争準備のための作業をいまやっているんだという、そういう気持ちを国民に与えてしまうのではないか、そう思うわけです。  たくさん問題がありますが、これはまた後日に譲ります。これで終わります。
  226. 始関伊平

    始関委員長 上田卓三君。
  227. 上田卓三

    ○上田委員 きょうは給与改正についての委員会でございますが、特に防衛庁、施設庁の方もお見えでございますので、関連いたしまして、大臣からお答えをいただきたい、このように思うわけであります。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕  金丸長官は、昨日のテレビ討論会で、シビリアンコントロール、いわゆる文民統制とは政治優先、また国会優先である、こういうように力説をされておったわけであります。また一昨十四日の新聞は、防衛庁のいわゆる「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」について報道をしておりました。それによりますと、有事には御飯は朝夕一杯弱で日本列島は飢餓列島になり、子供たちはやせ衰え、すべての輸入食糧がとだえた場合、一九七二年に百四十一センチであった男子十一歳の身長が第二次大戦直後の百三十センチに縮まる、こういうようなことでありまして、要するに有事国民生活に致命的影響を与えるのであり、日本経済が本当に要求するものはすべての周辺諸国との善隣友好である、こういうように述べておるわけであります。  いわゆる国際緊張の緩和が非常に大事でありますが、政治の任務というものは有事を避けることである。そういうことから防衛政策の問題は、政治、経済、外交をも含めた総合的立場から、特に広く全体を見渡す方向で検討されなければならない、それが真の文民統制である、こういうことであります。栗栖発言をとらえて福田首相が、奇襲対処と有事立法の検討を指示するということ自体、制服組への屈服であり、文民統制を危うくするのではないか、こういうようにわれわれは考えるわけでありますが、その点についての長官のお考え方というものを述べていただきたい、このように思います。
  228. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、防衛という問題は、日本の平和憲法を踏まえてみましても、侵さず侵されずということが、今日の日本の専守防衛の精神だろうと考えておるわけであります。そういうことですから、いまお話がありましたように、日本はあらゆる努力をして戦前の日本のようなことにしないという、外交もあるでしょう、あるいは経済協力もあるでしょう、そういうようなことをして、日本が戦い、あるいは日本が侵されることのないような万般の対策を講ずることは、まずやらねばならぬ基本だと私は考えております。  そういう中で、仮に日本を侵すものがあるときはどうするんだ、有事があるときはどうするんだ、その過程の中で自衛隊というものがあるということであります。そういうことであるならば、私は、自衛隊はいろいろ食糧の問題、安全保障の問題等万般について研究する――私は研究する必要はあると思うのですよ。もしそうなったときは日本人の食生活はどうなる、あるいはたん白源はどうなる、そういうようなことも十二分に研究して、だから、戦いをやるようなことを、日本に攻めてこられるようなことをしないように、日本が侵されることのないようなあらゆる対策を講ずるということが当然だと私は思うわけであります。  私は、奇襲の問題につきましては、奇襲は絶対ないようにしなければならぬ、ないようにすることが政治だと言っておるのですが、奇襲というものは、レーダー網、また科学の進歩、発達している現在、じゃそれで現実のきょう日本はどうかというお話がありますが、きょうの日本の周辺の状況は、いわゆる日本が侵されるような状況ではない。そういう均衡のとれた状況の中で、あらゆる設備、施設をすれば、絶対奇襲というものはあり得ないという考え方。また、その奇襲という問題の中に、一つの何か立法をするということになれば、実際は文民統制というものはどうなる、シビリアンコントロールはどうなるということを考えてみれば、これは絶対譲ってはいけないけれども、万か丁――いわゆる制服か奇襲というものかあるかもしらぬという考え方を持っておるわけでありますから、私は絶対ないと思うけれども、それでは万一あるというのであれば、その研究はしてみるがいいであろう、こういうことでございます。
  229. 上田卓三

    ○上田委員 長官は討論会の場でも、栗栖氏の奇襲対処の際のいわゆる超法規的行動について、これはまさに法を侵し、憲法を侵すもので辞任してもらった、このように答えておられるわけでありまして、この超法規的行動を強く退けておられるわけであります。  奇襲は確かに、今月の七日の参議院の予算委員会の論議のように、二種類に分かれるのではないか。一つは、栗栖氏の指摘によるような、いわゆる平和時に突然奇襲攻撃がかけられるケース、それからもう一つは、国際的緊張が高まり、そうした情勢に伴って奇襲が起こるケース、この二つが予想されるわけでありますが、前者については、栗栖氏が言うように、抽象的あるいは観念的には、自衛隊法の七十六条による防衛出動命令が数時間おくれることもあろう、こういうように考えるわけであります。  長官にお聞きいたしますが、万が一の場合という栗栖氏のようなケースも含めて、どのような事態、いかなる種類の奇襲であれ、自衛隊が単独の意思で動くことは文民統制を根底から覆すことになる、このように思うわけでございますが、長官は、どのような種類の奇襲時にも文民統制の原則を絶対守り抜くということを国民に約束できるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  230. 金丸信

    金丸国務大臣 私は先ほど来から申し上げておるわけでありますが、奇襲を絶対にないようにすることが政治だ、こう申し上げておりますし、さきの質問者からもそのような問題が出ましたが、先般西ドイツからシュミット首相が見えた、そのとき、ある新聞社の記者が、西ドイツには奇襲というものが考えられるか、奇襲というものは考え得られぬと、こういうはっきり答弁をいたしたそうでありますが、私は、そういう点から言いましても、奇襲というものはあり得ないという考え方でおるわけでありますが、制服のいわゆる専門家があるかもしらぬと言う、そのあるかもしらぬと言うのじゃ、あるかないか知らぬが、ひとつ研究してみろ。私は絶対にない、こういう考え方ですから、先ほども申し上げましたように、総理の権限を一つでも譲ることは文民統制に反する、こういう考え方を私は持っておるわけであります。
  231. 上田卓三

    ○上田委員 栗栖氏の言う奇襲のケースに対処するには、やはり法的裏づけを与えるということになれば非常に重大なことになるだろう、こういうように思うわけであります。ないならば、いわゆる総理の防衛出動命令と国会の承認以前に自衛隊が行動できるということになるわけでありますから、もともと組織的ないわゆる防衛行動は警察行動と異なり、明確な政治の意思決定を必要とするわけであります。これは文民統制の核心でありまして、逆にこうした法的裏づけを準備することは、有事に際して自衛隊の行動が先行し、それに政治が引きずり回される、こういうことになるわけであります。  自衛隊の行動が先行し、それに政治が引きずり回されるという、こういう奇襲攻撃に対する対処は、いわゆる法制を準備するかどうかは政治にとって重大な決断を要する問題ではないか、このように考えるわけであります。そういう点で、長官はいかなる種類の奇襲であれ、超法規的行動が許されない以上、部隊に法的裏づけを持った裁量権を絶対に与えてはならない、こういうふうに考えるわけでありますが、長官の考えをお聞かせいただきたいと思います。
  232. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、超法規行動という問題のとき、盧溝橋という問題を申し上げたわけでありますが、いわゆる中央政府の命令なくして盧溝橋の一部隊が指揮官によって、あの一発の銃声によって第二次世界大戦が起きたという考え方は持っておるわけであります。ですから、いや、それはもういまの日本には、いわゆる海外へ行ってそのようなことをすることはないんじゃないかという反論もあります。しかし、私はそれじゃ、あの函館にソ連のミグ25が飛び込んできた、これを領空侵犯ということで海上において一発の銃声において墜落させておいたら、それはどうなった。一発の銃声というものは、一億一千万の運命にかかわっておるということは重大な問題であろうと私は考えておるわけであります。そういう意味で、前線の部隊の指揮官がいわゆる超法規行動をとっていい、私はそんなことは許されるものじゃないという考え方は根本にあるわけであります。  先ほどから申し上げましたように、いわゆる制服があるかもしらぬと言うのだったら、あるかないか、よくそれを研究してみろ、こういうことでありまして、私の考えは十分御理解いただけたと私は思っております。
  233. 上田卓三

    ○上田委員 政治的に非常に深刻な意味を持つところの奇襲に対する対処、結局、政府の姿勢というものをずっと考えて、あるいは調べてまいりますと、徹頭徹尾無責任ではないか、こういうように考えざるを得ないわけであります。武装力を掌握する政府としては、本当にわれわれとしては安心ならない、こういうように断定せざるを得ない、このように思うわけであります。  まず第一の見解が丸山事務次官の、まず逃げる、こういう発言であります。さらに伊藤防衛局長の個人の正当防衛あるいは緊急避難、こういう言葉になってあらわれております。それから竹岡官房長の集団的正当防衛論と、二転、三転いたしておるわけでありまして、こうした主張は制服組に一蹴される、次は刑法三十五条の正当行為論が浮上することになるわけでありますが、こういうように歯どめがなくなるという批判に政府が遭うて、結局九月二十一日の防衛庁の見解になってきておるわけであります。  この見解として、奇襲を避けるのが政治の仕事としながら、部隊行動、法的側面を含めて検討、こういうことは制服組の要求の生き残ったしろものと言ってしかりだ、このように思うわけでありまして、将来の検討はともかくといたしまして、現行法のもとで、この防衛出動命令前に、奇襲に対して反撃するのかしないのか、そういう点について、その理由は一体どこにあるのかということをひとつ明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  234. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、自衛隊が国家の正当防衛権に基づいて武力を行使するのは、あくまで内閣総理大臣の命令を待って、七十六条の防衛出動のもとに行うということは、これはきちんとしているわけでございます。  そこで、奇襲というのは一体どういうものがあるかということにつきましては、それぞれの方がいろいろなことを考えて言っておられるわけでございます。したがいまして、実態としてどういうものがあるかということを研究いたすわけでございますが、確かに八月の当委員会において御答弁申し上げました、いわゆる個人の正当防衛の要件に該当するような行為は許されるだろうという御説明をいたしましたのは、大変誤解を与えた点もございましたが、この点はおわびしなければならないと思っておりますが、たとえば自衛隊員が演習をやっている、訓練をやっているというようなときに、何か危害を加えられたようなときに、やはり自衛隊員といえども人間でございますから、生き残る権利がある。そしてまた、自衛隊部隊行動を本旨としているわけでございますから、自衛隊に与えられている国の防衛、そういったものの任務を果たすためにも、自衛隊としても生き残っていなければならないという観点から申し上げたわけでございまして、これは七十六条に基づく武力行使とは全く違って、とっさの判断として、応急措置としてやれるものはどういうものであるかということでございまして、刑法に基づいて何をやるというものではないわけでございます。
  235. 上田卓三

    ○上田委員 いわゆる防衛出動下令前には奇襲反撃できないという判断の背景には、軍部独走の可能性を残すよりも、いわゆる奇襲を甘受することを、第二次世界大戦の反省の上に立って選択したという、この法成立当時の思想があるのではないか、こういうように思うわけでありまして、こうしたこと自体、平和憲法を守るという姿勢の表明であり、対外的には、日本の平和思想を明らかにすることで緊張緩和に貢献してきたのである、こういうようにわれわれは考えておるわけであります。  今月の四日の日本経済新聞の報道によりますと、防衛庁首脳は、「奇襲を受けた部隊には死んでもらう。死ぬのも仕事だ。その死の上に立って首相が防衛出動を下令するかどうかを判断するということだ」、こういうように説明したと書かれておるわけであります。ところが一方、陸海空の三幕僚長と民社党との八月二十八日の会談で、三幕僚長は、いわゆる首相の防衛出動下令が間に合わない場合、自動的に対処しなければならないこともあり得る、このように述べたと言われておるわけであります。永野幕僚長は九月十四日の記者会見で、制服として、部隊行動として対処できることをはっきりしてもらえば、いわゆる現行法の解釈でも構わない、こういうように言われておるようでありますが、奇襲対処について、防衛出動下令前に奇襲反撃できないということを制服組に徹底させることが必要だ、こういうように思うわけでありますが、そのことは絶対できるのかどうか、そのことを本当に国民に約束してもらいたい、こういうように思うわけでありますが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  236. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず七十六条の防衛出動下令後と同じような行動ができないということは、非常に徹底して教育されております。現に栗栖発言がありました後、私も制服の方々とお話をいたしておりますが、いわゆる防衛出動が適時適切に下令できるように情報を上に上げ、そして適切な判断を仰ぐというのが自衛隊に与えられている最大の任務であるということを申しているわけでございます。したがいまして、先ほど大臣も申し上げましたように、超法規的な行動をとるということはあり得ないと考えておるわけでございます。
  237. 上田卓三

    ○上田委員 防衛庁は、検討の対象を平和なときに突然降ってわいたような奇襲に限定した、こういうことであります。しかも奇襲の側にいわゆる国家意思のあるものとないものとがある、こういうことのようでありますが、特に陸上自衛隊に、沿岸警備を中心とする領域警備の警察権を与えるという法改正をねらっているのではないか、首相発言との折り合いを図っている、こういうように聞いておるわけであります。  伊藤局長にお聞きいたしますが、国家意思に基づき、しかも組織的、計画的でなく、警察力で第一次的に対処できない、いわゆる降ってわいたような奇襲などというものは一体どんなものであるのかお答えいただきたいし、そんなSFまがいの、いわゆる観念の所産を思いつくからこそ文民統制に対する制服の批判が一層高まってくるのではないか、このように思うわけでありますが、その点について明確にお答えいただきたいと思います。
  238. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先生も御承知のように、日本は周辺が海に囲まれているわけでございます。したがいまして、領土に入ってくる前に必ず海を侵犯してくるわけでございますが、この領海侵犯の措置という警察行動は海上保安庁が担当しているわけでございます。その際にも、なお海上保安庁の力で足りない暴力的な不法行為があったようなときには、自衛隊警備行動という形でそれに協力するということが可能になっているわけでございます。陸上に上がってきた場合は、不法な入国ということになるわけでございましょうが、そういう点につきましては、まず警察がそれに対処するということになると考えておりまして、自衛隊に沿岸警備任務を与えるということは考えていないわけでございます。
  239. 上田卓三

    ○上田委員 いずれにいたしましても、福田内閣の内外政策は完全に行き詰まっておる、こう断言せざるを得ないだろう。急激な円高は輸出の落ち込みをもたらしておりますし、また七%成長の見通しを困難なものとしておるだろう、このように私は思うわけであります。特に景気対策用に公債を発行しようとしても、公債の売れ行きは著しく悪化をしておるわけでありますし、また特に一般消費税に見られる大増税で対処するか、それとも悪性のインフレーションによる道か、こういうことでありますが、いずれにせよ国民の激しい抵抗は不可避であろう、このように考えるわけであります。そういう意味で、これを鎮圧せんとする危機感というのですか、為政者の危機感が今回の奇襲対処あるいは有事立法論議のそういう意味での背景といいますか、あるいは政府自身の非常な右旋回というのですか右傾化を私は見てとらなければならない、このように考えているわけであります。  今日の内外の情勢は、こうした軍事力の増強や治安体制強化への危険な策動を断じて許すものではない、このように考えるわけでありまして、わが党は徹底的に反対の国民運動で、軍国主義をつぼみのうちに葬り去らなければならない、このように決意をいたしておることをここで強く訴えまして、次の関係もございますので、有事立法、奇襲対処問題についてはこの程度に終えておきたいと思います。  次に、私の地元の八尾空港の中に自衛隊の中部方面航空隊があるわけでありますが、その八尾基地を西へ四百メートル、面積にして約三万平米の拡張が伝えられておるわけでございます。今年度六千万円の予算で約三千平米を買収し、来年度数億円の予算で残りの買収と、そして借り上げが予定されている、このように聞いておるわけでございますが、八尾空港東側の八尾基地拡張計画の概要をぜひとも示していただきたい、八尾基地の拡張の目的は一体何なのかということを明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  240. 古賀速雄

    ○古賀政府委員 お答え申し上げます。  いま先生の御質問のとおり、八尾駐とん地のヘリコプター離発着場の周辺につきまして、ここいらは大変市街化をしておりますので、その飛行の安全と騒音の軽減等を少しでも図るために改善をいたしたいと思いまして、同離発着場の進行方面下の市街地と反対の西側へそれを約四百メートルばかり移設をする計画をただいま持っておるわけでございまして、その規模といたしましては、いま先生がおっしゃいました約三万平米でございます。私どもとしては、これはまだ計画段階で、今月早々地元と協議に入るといったような状況でございます。
  241. 上田卓三

    ○上田委員 拡張を予定されているひし形の農耕地は、八尾空港の滑走路と誘導路に囲まれた地域であるわけでありまして、防衛施設庁は地元の地主が買い取りを希望しているからだと主張しておられるようであります。外形的には地主が防衛庁に一筆入れるという形にはなっておりますが、実際には同地域が空港内部の土地であり、進入道路もなく、建物も建てられないということをフルに活用して、過去十数年間地元の部隊が秘密裏にかつ執拗に買収工作を行った結果であろう、このように思うわけであります。地元の八尾市にも寝耳に水の話でありまして、今月の六日に簡単な説明を受けただけであるようであります。すでに八尾市の助役は二回にわたって施設庁に反対の申し入れを行っておることも御承知のことだ、こういうように思うわけであります。  いずれにいたしましても、現在連絡あるいは観測のヘリOH6、これは十機、三人乗りのようでございます。あるいは多用途のヘリコプターUH1、これは九人乗りのようでありますが、これが二十機。しかしながら、今回の拡張計画でヘリポート面積が数倍になりあるいは相当規模の部隊の増強につながる、このように思うわけでありまして、将来の八尾基地の部隊の整備計画は一体どうなっておるのかということを篤とお聞かせいただきたい、このように思います。
  242. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現在八尾に配備いたしておりますのは、中部方面航空隊の隷下のヘリコプター隊と方面飛行隊、それから三師団の第三飛行隊というのが配備されているわけでございます。     〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕 機数につきましては、いま先生がおっしゃったとおりでございますが、今回の土地を買収してヘリポートを移設するということは、部隊の配備関係からの要請ではございませんで、これは航空機の事故を未然に防止すること、あるいは騒音対策という観点からヘリポートを移設するということでございますので、私どもといたしましては八尾にその他の部隊を増加配備するというような計画は全く持っておりません。
  243. 上田卓三

    ○上田委員 部隊の増強が目的ではない、騒音とか安全対策が目的だ、こういうように言いたいのだろうと思うのですけれども、八尾基地を西側に四百メートルそっくり移転させる、そして跡地を緑地にでもするというならば話はわかるわけでございます。ところが、現在の部隊施設はそのままにして西側に四百メートル拡張するというのでは、基地の拡張以外の何物でもない、こういうように思うわけであります。  そういう点で、環境対策基本法に基づく航空機騒音に関する環境基準によれば、八尾空港はことしの十二月二十七日までに環境基準七十五以内にする必要がある、こういうことになっておるわけであります。防衛庁は、八尾基地東側のいわゆる居住地域の騒音を実際に実測したことがあるのかどうか、また騒音は現在幾つあるのかあるいは環境基準を幾つオーバーしているので、今回の拡張でどの程度にこの騒音を下げることができるのかということで、はっきりとしたお答えをいただきたい。そうでなければ話にも何にもならない、こういうように考えるわけでありまして、数億の血税を投入する、そういう計画であれば、そのくらいのことは当然のことじゃないか、このように考えるわけであります。八尾市と協力して騒音、安全対策を十分検討することが当面の急務ではないか、こういうように考えるわけであります。その意思があるかどうか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  244. 古賀速雄

    ○古賀政府委員 お答えいたします。  環境庁の示します基準は、先生も御承知のようにWECPNLの数値ではかるわけでございますけれども、ここは所管が運輸省の関係もございまして、防衛庁としてはWECPNLの数値の環境調査はしておりませんけれども、ただこの八尾飛行場といいますか、ヘリコプターの離発着場の進入表面下の境界の騒音でございますが、単なるホンではかった騒音でございますが、これは八十から八十五ホンぐらいあるわけでございます。このヘリコプターの離発着場がもし仮に西の方へ移動したといたしますと、これはもちろん移動しておりませんから実際に実測はできないのでございますけれども、同様な推定をいたしますと、この同地点がやはり六から七ホンぐらいは軽減をするというふうに私どもとしては思っておるわけでございます。  それで、これを移します大きな理由は騒音のこともさることでございますけれども、やはり先ほども何度も申し上げましたけれども、離発着場のヘリコプターの進入方向からの着陸点と市街地との距離が大変近うございまして、このように近い離発着場というのは陸上自衛隊の中ではここだけでございまして、そういう意味でこれを西の方へ離して、そして飛行の安全も図ろう、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし先生も大変御心配になっておりますように、地元の関係もございますので、私どもといたしましては、十分に地元と協議をいたしまして納得のいく線でこれをおさめたいと思っておりますので、決してこれを無理やりにやるというふうなことを考えているわけではございません。
  245. 上田卓三

    ○上田委員 八尾空港と八尾基地がいわゆる東西三キロにわたって八尾市を分断いたしておるわけでありまして、都市計画上の最大のネックになっておるわけであります。八尾空港は、この滑走路上を何本もの通学路と農道が横切るいわゆる欠陥空港である、こう断言してもいいのではないか、このように考えておるわけであります。  現在、一九八〇年春のいわゆる空港整備への大阪市の地下鉄の開通をめどに航空局それから大阪府と八尾市の三者で民航地区の三角地帯への移転を中心とする整備計画が鋭意煮詰まってきておるわけでありまして、昨年春の国会でも私はこの問題を質問いたしまして、防衛庁は空港整備の足は引っ張らない、このように答えていただいたわけでありますし、地元住民と八尾市は今回の八尾基地のいわゆる拡張計画が空港の整備に否定的影響を与えるのではないか、こういうふうに心配をしておるわけでありまして、二十数年の課題であるところの空港整備について、基地拡張計画を差しおいてもやはり防衛庁は府や市や航空局に協力しなければならないし、ぜひとも協力してもらいたい、こういうふうに考えておるわけでありますので、その点について明確にお答えをいただきたいと思います。
  246. 古賀速雄

    ○古賀政府委員 運輸省所管の八尾空港の空港整備計画に私ども計画が邪魔をするというふうなことは絶対にないように私どもとしても配慮いたしたいと思いますし、運輸省とも十分その点は今後も調整を図ってまいりたいと思っておる次第でございます。
  247. 上田卓三

    ○上田委員 この問題はまた別の機会に詰めて話をしたい、こういうふうに思っておりますので、私の質問の趣旨というものを十分に踏まえて協力していただきたい、このように思います。  次に移りたいと思うわけであります。  運輸省の方もお見えのようでございますが、今月の十日の夜大阪からホノルルに向かうパンナムのジャンボ機が、大阪空港を離陸直後エンジンに異常を起こして大阪空港に引き返したという事件が起きておるわけであります。その際エンジンのカバーを三カ所に七片、人口密集地帯に落下させた、こういうことのようでございますが、その滑走路の北端の二百メートルに大きな破片が二つ、それから離陸直下の宝塚市に大きな破片と中の破片が三つ、それから着陸コースの最遠地でありますところの羽曳野市に二カ所落ちておるようでございまして、この順番で破片が大きくなっているということはこの順で落としていったものであると想定できるわけであります。  したがって、エンジンのトラブルは離陸以前に原因があるというように思わざるを得ないわけでありますが、カバーが脱落する際エンジン本体を破損して火災や爆発を引き起こせば墜落の大惨事になっておったのではないか、このように考えられるわけでありまして、事故後運輸省はどのような措置を講じられたのか、こうした事故を防止するためにどのような対策を講じておるのかという点についてお答えをいただきたいと思います。
  248. 森永昌良

    ○森永説明員 お答えいたします。  パンナムの事故機からエンジンのカバーが落ちた順序等につきましては、まだこの落下事故全体の調査を運輸省の中にございます航空事故調査委員会の手によって連日進めておりますので、その結論を待つ段階でございます。いまのところ、いま先生のおっしゃった順序であるかどうか、ちょっとはっきり言えない段階でございます。運輸省といたしましては、いま申し上げました事故調査委員会が翌朝から詳細にわたり現地で調査をいたしておりまして、現在も東京に帰りまして、いろいろとその後の調査をやっておるわけでございまして、ほかの事故もいろいろございますけれども、特に今回の事件を起こした社会的な影響を重視いたしまして、なるべく早く答えを出したいということで努力をいたしているわけでございます。  それから、航空局といたしましては今回の事件にかんがみまして、早速十二日にパンアメリカン航空の極東地区の総支配人を呼びまして、今回の事件につきまして厳重に警告をいたしますとともに、被害を受けられた方々に対して十分な補償措置をとるように申し渡してございます。
  249. 上田卓三

    ○上田委員 パンナムは大阪-ホノルル直行使を今月の二日に就航させたわけでありまして、同日故障を起こし、離陸制限の午後九時をオーバーして出発を強行したわけであります。空港事務所によると、パンナムは機体の精密な整備はニューヨークで行っており、大阪空港では機体に異常がないかどうか整備士が目で見てチェックする程度だ、こういうように言っておるようでありますが、運輸省は日本に乗り入れている外国の航空会社の整備と検査を監督する上でどのような権限を持ち、どのような監督を行っているのかについて御報告をいただきたいと思います。
  250. 森永昌良

    ○森永説明員 お答えいたします。  わが国に乗り入れております外国の航空機の整備につきましては、国際民間航空条約の規定に基づきましてその航空機の登録されている国の政府が監督することになっております。したがいまして、わが国に直接監督する権限はございません。  次に、パンナムの大阪での整備状況についてでございますけれども、これはあくまでも寄港地の一つでございますし、逆に日本航空がヨーロッパあるいはアメリカの飛行場におりる場合も全く同じでございますが、この場合は地上に停留する時間が約二時間でございまして、その範囲内において簡単な点検をいたしているわけで、通常一、二時間の間に二ないし四名の整備関係者によって比較的簡単な点検を行っている状況にございまして、これは各国ともいずれの航空会社においても大体同じものでございます。
  251. 上田卓三

    ○上田委員 われわれの調査では、大阪空港乗り入れの外国の航空会社十三社のいわゆる整備検査体制はまことに貧弱であるというようにわれわれは考えておるわけでありまして、専属の整備士を一人も置いていない会社、あるいはその都度成田から三人ばかり同乗させる会社とかあるいはパンナムに委託する会社など、実にずさんで、各社がもたれ合っている、あるいはやりくりしているのが実情ではないか、こういうように思うわけであります。  そういう点で土曜日に運輸省に問い合わせたところ、十三社のそれぞれの整備士の数すら把握していなかったような実情があるわけでありまして、大阪空港乗り入れ十三社の一日当たりの乗り入れ便数、それからそれぞれの整備士の数、あるいは整備検査体制についての運輸省の調査結果をここで報告してもらいたい、このように思います。
  252. 森永昌良

    ○森永説明員 先刻もお答え申し上げましたとおり、各国の航空機はそれぞれの国の政府によって認められた整備方式によって整備をやっているわけでございまして、国ごとにいろいろ違うのはそのせいでございます。したがいまして、私どもは大阪空港に乗り入れておる十三の航空会社の整備体制の内容について指導監督する権限も持っておりませんし、実態も、先生指摘のとおり今度の結果、調べて初めて大体把握したような実態でございます。逆に日本航空が寄航しております外国の寄航地につきましては詳細に把握をいたしておりますし、その整備の実態等についても定期的に私ども職員が出向きまして検査をし、指導監督をいたしているわけでございます。  それから現在の十三のこれを全部申し上げますと大分あれでございますが、パンアメリカン航空はホノルル-大阪線を週七便飛ばしておりまして、整備士は八名置いておりまして、この中で七名はアメリカ政府のいわゆる整備の有資格者でございます。それから勤務体制は早番と遅番とございまして、これがツーシフトの勤務体制になっておりまして、部品等も、ここに乗り入れている航空会社の中では一番ここに置いている状況でございます。  あと大きいところでは大韓航空がございます。これは便数等もパンナムよりずっと多いのでありますが、ここの整備士は九名、勤務体制はやはり同じようにツーシフトでございまして、同じような点検をやっているわけです。  そこら辺が大きいところで、いま先生の御指摘をいただいたとおり、小さいところは成田から飛行機に乗って一緒にやってきて、地元にあります新明和グラウンド・サービスという会社を使いまして実際の点検をやっておる会社もございます。そういうところは便数が少ないところでございます。  いずれにしても、繰り返すようでございますが、それぞれの政府の規定に基づいて一応適格なものとしてやっているものだと考えます。
  253. 上田卓三

    ○上田委員 住民の感情として、日本の上空を飛ぶ外国航空機の整備と点検、このいわゆる検査に対して日本政府が何の監督権限も持たずに、実情も全然把握していないということは納得できない、このように思うわけであります。国際条約上やむを得ないというならば、整備士を一人も置いていない会社あるいはその都度成田から運ぶ会社などに対しては、それぞれの国の監督官庁に対して指導強化を求めることはできるのではないか、こういうように思うわけであります。  日本航空が外国に乗り入れる場合、乗り入れ先に整備員を常駐させていると聞いておるわけでありますが、運輸省は事故のたびに後手後手に回らずに、各社に対して定期的に整備検査体制について報告を求めることぐらいは当然ではないか、こういうように思うわけでありますが、その点についてお聞かせいただきたいことと、それから十日間に二回も事故を引き起こしたパンナムの日本での整備検査体制の強化について、運輸省はアメリカの連邦航空局に強く申し入れて、その結果をぜひとも報告してもらいたい、このように思うわけであります。
  254. 森永昌良

    ○森永説明員 先ほども申し上げましたとおり、この落下事件の原因につきましては航空事故調査委員会で調査中でございますので、それの原因がはっきりしませんと、外国の政府に申し入れるにしても的確なところが出ないのじゃないかということで、まず運輸省としましては早急にこの原因を調べたい。それが整備のミスなのかあるいはそれ以外の要素なのか、まずそこらあたりを早く答えを出して、それから動き出したいというふうに考えております。  それで、アメリカのFAAの話が出ましたけれども、FAAは現在東京に極東地区のアメリカの民間航空に関する監督をするためのチームが置かれておりまして、そこには運航関係、整備関係のスタッフもおりますし、今回の事故に関連して当然動いていると思いますけれども、日本政府としてアメリカ政府に物申すのはもう少し中身を調べた後にしたい。少なくともパンナムにつきましては、申し上げましたとおり十二日に厳重に申し入れておりますので、政府に対してはもう少し後にいたしたい、そういうふうに考えております。  さらにそれ以外の航空会社等につきましては、その方の内容がもう少しはっきりしました段階で同じように、日本に乗り入れている外国航空会社のオペレーション関係の集いもございますので、そういうところを通じまして先生の御趣旨に沿うような指導をいたしたいと考えております。
  255. 上田卓三

    ○上田委員 その問題はその程度にしまして、十分にひとつ監督し、そしてその結果等について逐一報告してもらいたい、このように思います。  総理府長官あるいは人事院の方もおそろいのようでございますので、本題の給与問題について御質問申し上げたいと思います。  人事院勧告の三・八四%は、物価の上昇率、五十三年四月の物価、対前年上昇率は全国で三・九%、それから東京で四・五%あるわけでございますが、それにも及ばない現状であります。ましてや特別給まで〇・一カ月分カットされるとなると、公務員の生活は大変厳しくなるわけでございまして、人事院は一体どのように考えておるのか。また、民間の賃上げでは賃金ドリフト等があって、実際もっと高いはずであります。このことを考えるならば、勧告はもっと高くてもよかったのではないか、こういうように考えるわけでありますが、その点についての考え方をひとつお示しいただきたい、このように思います。
  256. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 本年の勧告でございますが、これはいま御指摘にもございましたように、現行制度の人事院勧告が始まりまして以来の最低の率であったということはそのとおりでございます。ただ、この点につきましては、先刻よく御承知のように、人事院といたしましては、公務員の給与の問題を取り上げる際には官民較差ということに重点を置きまして措置をしてまいっております。すなわち、民間の給与の実態というものを広範に、しかも詳細に調査をいたしまして、その結果出てまいりましたものと公務員の給与というものを突き合わせをいたしまして、その間に較差がございますればその較差を埋めていただくということを趣旨として従来からやってまいっておりまして、そのやり方自体はおおむね一般の御了解も得ておるのではないか、制度としては定着をしてきておるのではないかというふうに考えておるのであります。  その結果、今年の場合は、こういう民間の経済景況がございましたので、それを反映いたしました結果三・八四ということに結果として出てまいったということでございます。物価の問題その他とのにらみ合わせも、当然われわれとしては十分頭に入れて作業をしてまいり、また結論も出しておるわけでございますが、あくまでわれわれといたしましては、民間の給与実態を把握いたします際に、物価その他の点も全部前提として、それが溶け込んだ形で民間の給与の決定がなされておるという前提に立って現在まで作業を進めてまいっておるのであります。  そういう意味からいいまして、これはやはり物価の点も今年の景況の反映といたしましては相当低くそれが出てきておるというようなことで、この点につきましてはやむを得ない面があったのではないかというふうに考えております。ただ、御承知のように較差の問題につきましては、この較差を埋めるということがございますが、そのほかに御承知のように定期昇給その他の措置がございますが、それらの点を加味して考えてまいりますならば、いま御指摘の物価の上昇にも足らないということには相ならないのではないかというふうに考えておる次第でございます。  なお、特別給の点については、この間からいろいろ御論議をいただいておりまして、人事院といたしましても大変不本意と申しますか、心ならずもというようなことで、こういう減額に踏み切らざるを得なかったのであります。一昨年に引き続いての減額でございますので、私自身といたしましても大変苦慮いたしました。ただ、調査をいたしました結果が厳然と出てまいっておるということでございますので、そういう点はやはり放置ができない。放置するということになりますと、やはり国民の税金でもって公務員の給与というものは賄われておるというような、そういう一番大事なところに触れることにも相なってまいりますので、そういう点は、この間も涙をふるってというふうに申し上げましたが、私といたしましては大変苦慮をいたしましたけれども、たてまえ上の措置としてこれはやむを得ないということで、減額をお願いせざるを得なかったということでございます。  なお、第三の点といたしまして、民間では要するに二段構え的なことでベースアップ等が行われておるという御指摘でございます。  これらの点につきましては、無論四月現時点においてそういう措置が講じられておりますのであれば、そういう面はわれわれの方の調査ではっきりと把握をしてきてまいっておりますから、その点は民間の給与の実態は反映をいたしておるということを申し上げてよろしいかと思いますが、全体といたしましては、その二段構えの措置をとっておりますものは率としては非常に少ないというようなことでございますし、また今後、四月以降、年内あるいは来年にもわたってそういう措置が講ぜられているということになりますと、その面は若干時期的にはおくれますけれども、来年の調査にはそれが入ってくるというようなことでその点の調整がとられてまいるというふうに解釈をいたしておる次第でございます。
  257. 上田卓三

    ○上田委員 四十八年の九月に公務員制度審議会答申が出されたわけでありますが、そこで労使双方の意見を聞くとされておりますが、現状は参事官が意見を聞くだけであって、答申の精神とは全く違っておるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、人事院はこの公制審の答申について検討しているとは思うが、その経過はどのようになっておるのかということ、それから労使双方の意見を聞くための制度を確立するのかどうか。さらに、総理府はどのような指導をしているのか。  それから、公務員共闘会議から給与勧告基礎作業の改善に関する申し入れが二月の二日に総裁あて出されておるわけでありますが、それに対してどう対処されたのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  258. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 御指摘になりました公制審の答申でございますが、これは趣旨として結構であり、また当然答申自体は尊重しなければならぬということで、いち早く当時人事院会議を開きましてこれの受け入れについての方針を決定をいたしたわけでございます。いまお話に出ております参事官を設けることにしたというのもその具体的な措置の一つというふうにお考えいただいて結構でございます。  ところで、この参事官制度というものは、その窓口といたしまして制度的にはっきり確立するということの意味が非常にあったわけでありますが、しかし人事院といたしましてはそのことだけでこの問題が万事解決したとは決して考えておりません。  先生も御承知だと思いますが、給与の問題だけを取り上げてみましても、年間で最近でも約二百回ぐらいの交渉がございます。陳情その他の交渉があるわけでありまして、これは私自身も何回も代表の方々とはお会いをいたしております。その他いろいろな段階、事務総長の段階、給与局長の段階あるいは課長の段階その他を通じまして大変頻繁に組合側の意見というものも聴取をいたしておるわけでございます。また、労使ということになっておりますので、関係各省庁の人事担当その他給与担当の方々の意見も直接に承っておるわけでありまして、その点慎重に配慮をいたしておるつもりでございますし、また、その点に関しましては恐らく労使の関係、特に組合側の方々もそれなりの評価はしてもらっているのではないかというふうに、口幅ったいようでございますけれども、われわれとしては自負をいたしておる面もございます。  また、毎年勧告のこと等が問題になってまいります際には、各方面から意見の申し出がございます。また文書の提出がございます。そういうことにつきましてはあとう限りの配慮は毎年加えてきておるわけでございます。ただ、事柄の性質上、そのままを全部勧告に反映できるというものと、そうでないものとがございます。そういうようなことにつきましては、できるものはこういうことでやりたい、また、できないものはこういうことでひとつ御了解を賜りたいということで、一々手を尽くして御説明を申し上げ、また御了解を得るように努力をいたしておるつもりでございまして、今後ともこの姿勢はあくまでも貫いてまいる所存でございます。
  259. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生お尋ねの総理府がどういう指導をしておるかという御質問でございますけれども、ちょっと質問の趣旨が十分とれませんでしたが、公務員制度審議会の答申のうち、その運用でできるものについてということでございますれば、それは各省に対しまして、たとえば交渉を大いに促進しなさい等々につきまして連絡をして、そういう意味で各省を指導しております。  それから、人事院のいま言われました給与の調査について労使双方の意見を聞けというお話でございますれば、いま人事院の方からお話がございましたようなことでございまして、実効が上がっておると思いますので、特に総理府の方から云々申し上げている段階ではございません。
  260. 上田卓三

    ○上田委員 公務員共闘の組合は、かねてから比較事業所規模千人以上の企業を調査することを要求しておるわけでありますが、高度成長時代にこれを取り上げなかったのだから、低成長になったからといって現在の規模百人を切り下げるということはないと思うわけですけれども、その点についてはどのようにお考えですか。
  261. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 民間の企業の規模でございますが、この規模につきましては、それぞれの立場立場において異なった主張がなされておることは御承知のとおりでございます。  いまお話しのように、公務員共闘その他からは、従来から、国家公務員の組織というものは民間のいかなる大企業よりももっと大きな規模、組織のものであるからして、せめて千人以上の従業員を抱えておる企業、これ以上のところとひとつ対比をすべきではないかという主張がございます。また、他面、特に景気が悪くなるということになりますと、ベースアップどころではないというような事業所もあるわけでございます。主として小規模の事業所ということに相なろうかと思いますが、そういうところではそういう現実が出てまいります。そういう方面からは、やはり親方日の丸でその点けしからぬではないだろうか、もっと小規模のところまでも網羅して、それを徹底的に調べて比較をしてもらわないと片手落ちではないかというような主張がこれまたございます。  それらの点、両方の主張は、それぞれの理屈はそれなりにあるというふうに私も考えておりますが、しかし、いまお話しになりましたように、こういう関係というものは、一つの労働慣行と申しますか、給与決定の基本前提にかかわることでございまして、これはそれなりに従前からの積み重ねでだんだんと今日の姿になってきたわけでありまして、こういうものをその都度変更するということになりますと、これは大変問題であろうと私考えております。そういう意味で、意見は意見として十分拝聴はいたしますけれども、そういう労働慣行に類するような事柄、給与決定の基本前提につながるような事柄は、そう軽々に変更すべきではない。現在やっております方式というものが、結果的には民間の企業の従業者の六割以上を把握いたしておるわけでございますので、ほどほどのところではあるまいかというふうに考えておりますので、これを軽々に変更したりというようなことは私自身としては考えておりません。
  262. 上田卓三

    ○上田委員 時間の関係もありますので、ひとつ簡潔にお答えをいただくように、あなたが相当時間をとってしゃべっておるようですので、ひとつ御注意申し上げたいと思います。  ことしは扶養手当に重点を置いたことによって、いわゆる配分の比率が手当に偏っておるわけでありますが、これはどういう意味を持っておるのかということ、それからそれは第二基本給の方向を進めようとしているのかどうかという点について、簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  263. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  ことしの公務員のベースアップの率が低かった、それが実質ではどうかという先生劈頭の御質問にありましたように、実はことしの配分に非常に気を使いましたことも事実でございまして、本俸、俸給でこれを全部配分いたしてしまいますと、これはたとえば制度的には三十歳ぐらいは何号ぐらいにおる、何等級におるということはわかっておりましても、実際問題として、たとえば六等級の中ごろに行きますと、結婚して子供が一人ということにはなっておりましてもひとり者もおるというような関係になりますので、なけなしのわずかな配分をいたしますにつきましては、そういうところは、子供がおれば、あるいは結婚すれば、扶養手当でいくという方が具体的でかつ適切であるという原資の配分に非常に細かい配慮を使った結果でございまして、それによって給与構成を特段にどういうふうに意図をしたということではございません。
  264. 上田卓三

    ○上田委員 三十五年の行政職の(一)表の五等級は二八・六%であったわけでありますが、五十三年には三二・六%になっております。これは一体どういう理由であるか、お聞かせいただきたい。  四等級以上では、新たに指定職俸給表をつくって、そうして五十三年一月十五日の現在員では大幅に高級官僚が該当している。本省の課長及び課長補佐は新三等級をつくり、そして職務評価の見直しではなく官職名でもって上位に位置づけをされておるようでございます。ところが、五等級の大部分、五十歳以上の公務員は、青春時代は戦争に、また戦後は日本の復興のためにこき使われてきたわけでありまして、今日の日本の基礎を築いた彼らは、いわゆる人事院勧告制度が発足してからは、勧告の完全実施を値切ってきた政府のために莫大な損失を受けてきた人々であろう、こういうように考えるわけであります。その人たちが五十歳代となり、今回は定昇のストップ、さらに年金あるいは退職金と攻撃されてきておるわけでありますが、果たしてこの人たちに責任があるのか。この階層の人たちを十分に処遇することなくして日本の戦後は終わってはいない、こういうふうに考えるわけでありまして、これらの職員の処遇を今後どのようにしていくつもりか、ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  265. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  五等級と申しますと本省の係長、主任というクラスでございます。私どもは、現在の給与法のたてまえは職務給を基本原則といたしておる関係上、等級別に標準職務をつくりまして、それのメジャーに従って、かなう職務と責任の者について評価をして格づけをしていくという原則を維持しておりますが、いま先生がお話しのように、戦後大きく行政規模が伸びたときに大ぜい採用されたとか、特段のそれぞれの事情のある節がございます。それで、職務給であります関係上、組織にマッチした定数、ポストの数しかございませんが、これは同時に職員の側から見ますれば処遇問題でもございますので、俸給表の上で金額を上げるだけではそういう人には、あるいは処遇問題として問題があるというような場合には、組織ということ以外に専門的な能力あるいは経験の深さを評価いたしまして、処遇も考えながら等級を設定しておるというようなやり方を特にそういう職員構成の集団のところについてはずっと配慮してきたことは事実でございます。  したがって、いま劈頭に先生が申されましたように、五等級の定数が非常にふくれてきた、あるいは新しく四等級を使ってそこのところに官職評価をしながら運用しておる、そういう運用を現在やっておるのも、そういう実態を踏まえてのことでございます。こういうことは、これは単に公務員の部内だけではなくて、当時のそういう世代に生まれて戦後こういう状態になった民間でも、大きなあるいは古い企業においては同じ状態だろうと思いますが、そういうことも考えながら、今後の問題としてそういう集団を頭に置きながら、職務給のたてまえを通しながら今後ともこの方向で処理していきたい、そう考えております。
  266. 上田卓三

    ○上田委員 人事院勧告は八月十一日に出され、そして九月一日に閣議決定して、そして今次の臨時国会で審議されておるわけでありますが、新賃金の支払いまでかなりの期間がかかりますし、特に人勧は公務員労働者にとって賃金決定の当面の代償機能であり、人勧を尊重する立場から公務員給与を専決事項、閣議決定で早期確定あるいは早期支払いを行うべきではないか、こういうように思うわけでありまして、総理府のいわゆる検討経過あるいは結論はどうなっているのかについて明確にお答えをいただきたいと思います。
  267. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 早期支払いのことは、前にも国会でも附帯決議をいただいておりますので、われわれも非常に重要なことと思って研究をいたしております。今度の法案でございますけれども、八月十一日に勧告をいただきまして一月半ぐらいで国会に提出、それも閣法の第一号、第二号ということで真っ先に出しておりますので、そういう点については今度も十分努力をいたしたつもりでございますが、今後とも努力をいたしたいと思います。  ただ、具体的ないろいろな方法につきましては、前にもいろいろ御議論をいただいたことがございますけれども、技術的に、あるいは中身としましてもむずかしい問題がございますので、さらに検討をして早期支給の実現に万全を期していきたいというふうに考えております。
  268. 上田卓三

    ○上田委員 給与問題につきましては、その程度におきたいと思います。  せっかく稻村総務長官あるいは砂田文部大臣もお見えのようでございますので、来年三月三十一日に期限切れとなりますところのいわゆる同和対策事業特別措置法の強化延長の問題について、あと残された時間御質問申し上げたいと思うわけであります。私の同僚でございます井上一成代議士の方から最初に若干時間をいただきまして御質問申し上げ、その後私が引き続いて質問したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  269. 始関伊平

    始関委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。井上一成君。
  270. 井上一成

    井上(一)委員 まず、私は人勧の問題に触れて人事院の見解を最初に聞きたいのですが、国家公務員が外郭団体に出向した場合に、その国家公務員在職中の号数をかなり上回った号数に位置づけておる、こういう実情であるわけなんです。このことについて人事院総裁としてどういう御見解をお持ちなのか、まずお聞きしたいと思います。
  271. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 私どもの方は公務員の給与について所管はいたしておるわけでございますけれども、これがやめまして後、公団、事業団等に参りまする際の給与決定のことは私どもの所管ではございません。したがいまして、その点はやはりここで見解にわたることを御披露申し上げることはむしろ適当ではないと思いますので、他の総理府その他からお答えをいたすことが適当であろうと思います。
  272. 井上一成

    井上(一)委員 大体そういうことが国会の中ではよく言われる答弁のパターンです。  私は、ここで基本的なやっぱり物の考え方、認識の度合いというものを明確にしながら問題の処理に当たっていくということがとりわけ行政についてはぜひ必要である、そういう見地から、総理府の総務長官並びに文部大臣に詩を朗読します。二つの詩を朗読しますから、先ほど一部についてはお渡しをしてあります。この詩を私が読みますから、それぞれ両大臣の率直な御感想をひとつお聞かせいただきたい。  「ふるさと」ということで、いわゆる被差別部落出身の丸岡忠雄さんが、   “ふるさとをかくす”ことを   父(ちち)は   けもののような 鋭(するど)さで覚(おぼ)えた     ふるさとを あばかれ     ふたたびかえらぬ友(とも)がいた     ふるさとを告白(こくはく)し     許婚者(いいなづけ)に去(さ)られた友(とも)がいた   わが子(こ)よ   おまえには   胸張(むねは)って ふるさとを名(な)のらせたい   瞳(ひとみ)をあげ 何(なに)のためらいもなく   “これが私(わたし)のふるさとです”            と名(な)のらせたい こういう詩があるわけです。  もう一つ、「わが息子によせる母の願い」、これは広島のお母さんが自分の息子に自分の願いを込めてつくられたものです。   わが息子よ   元気に立ち上ってほしい   一部落の人間として   いままで知らなかった   いや知らされなかった   未知の世界に   どんなに苦しい時も   どんなに悲しい時も   同朋の多くいることを   わが息子よ   勇気を出して立上がってほしい   一部落の人間として   始めて受けたあのくつじょくの言葉を   いままで気にしなかった   友人の言葉に   先生の言葉に   あらゆる言葉に   あらゆることに気を使うであろう   部落エタの二字のために   わが息子よ   力強く立上がってほしい   一部落の人間として   あなたの背負された宿命   いわれなきエタの二字に   この二字にいどむあなたに   母は声を大にして叫びたい   どうか自分の力で   力強く正しく進んでほしい   わが息子よ   冷静であってほしい   心の整理のつかぬまま   京都の集会に出向いた あなた   そこでどのようなことがわかろうと   どうか冷静であってほしい   心をおちつけてほしい   心のよりどころを失わないでほしい   あなたのしなくてはならないことが   山と積まれています   わが息子よ   いつまでも初心を忘れないでほしい   あなたが始めて部落出身を知ったとき   私に言いましたね   いかに正しく部落のことを理解してくれる人   でも   いかに良く部落解放を勇気づけてくれる人で   も   わかり得ないであろう   エタの二字の重さを   そのわかり得ないであろう二字のためにも   わが息子よ   力強く生きてほしい   力の続く限り闘ってほしい   現代にエタの二字が消ゆるとも   一生消ゆることのない現代の私たちの心に   でも残してはいけない   決してけっして、つがせてはいけない   決してけっして、つがせてはいけない   次代の子らに  この二つの詩を私はいまここで朗読しました。両大臣の率直な御心境、お考えを明確にお答えいただきたいと思うのです。
  273. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 二つの詩を朗読されました。心から同情申し上げなきゃならぬと思います。  担当大臣といたしましては、この社会的な差別と申しますか、全力を挙げてこの解消のために尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  274. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 井上委員が御朗読になりました二つの詩を伺って、私は心痛む思いで拝聴をいたしました。特に解放に目覚められたお母様の詩に非常に力強いものを感じたわけでございます。  文部大臣といたしましては、憲法、教育基本法を基本とした同和教育というもののなお一層の普及、浸透に力を尽くしてまいらなければならない、そういう気持ちに駆り立たされる思いで詩の朗読を拝聴いたしました。
  275. 井上一成

    井上(一)委員 総務長官、あなたはいま「同情」という言葉をお使いになりましたね。実際にそういう気持ちで受けとめていらっしゃいますか。
  276. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 私は、いまの二つの詩を朗読されまして、大変涙が出る思いでお聞きをいたしておりました。
  277. 井上一成

    井上(一)委員 総務長官、あなたの誤った認識がきょうの差別を解消することができないのです。あなたは、たしか二月の二十七日だったと思いますが、予算委員会で差別発言をみずからなさっているのです。同情ということそれ自体に潜在的な差別意識、心理的差別意識があるんですよ。わかりますか。その物の考え方がやはり行政をして潜在的な差別をなお温存さす、あるいは差別をさらに拡大さしていくという一つの紛れもない要因だ。あなたは強く反省をしなければいけない、あるいは考えを直してもらわなければいけない、同情というような、哀れみというような、そういうことじゃないんだから。どうですか。
  278. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 「同情」という発言は取り消させていただきます。
  279. 井上一成

    井上(一)委員 長官、いかに差別が暴力であるかということを私は知ってほしい。そして差別というものがいかに生きていく上に重い厚い壁になっているかということをもっともっと身をもって、あなたとかかわり合いのあるものだとして認識をしてほしいから私はこれだけ力説をしているわけです。いかがですか。おわかりですか。
  280. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 井上委員の御指摘はよくわかります。
  281. 井上一成

    井上(一)委員 「よくわかります」ではまだ満足がいかない、あるいは問題の解決にはならないわけです。そのためにただ部落問題を、同和問題を理解をした、あるいは知識を広めたということだけじゃだめなんです。その問題を解決するために行政はどうあるべきかということを次に考えなければいけないわけです。どう考えていらっしゃるんですか。
  282. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 先ほども申し上げましたように、やはりこの格差というものを一日も早く是正をしなければならない。そのためには、さかのぼって四十四年の特別措置法によって、御不満の点もございましょうが、曲がりなりにも私は成果を上げたものと考えております。そういう意味から来年の三月三十一日で期限が切れるわけでございますが、これは延長をいたしまして、できるだけこの法律によって格差の是正を図っていかなければならぬ、こういう決意でおるわけであります。
  283. 井上一成

    井上(一)委員 総務長官、差別をなくするためにどのようなことを行政府は考えるか。もっと端的なことを言えば、差別のない社会があれば、そういう社会になれば別に何の法律も要らぬでしょう。差別をなくするために同対審答申の精神にのっとって特別措置法がつくられたんでしょう。いま現在あなたは差別が温存しておるということを十分御認識ですね。
  284. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 この前の上田委員の要請によって現地を見てまいりました。兵庫県の某市某地区に行ってまいりましたが、私はその事実を見まして、私はその地域内に格差のあることをよく見てまいりました。
  285. 井上一成

    井上(一)委員 それを直すためにこの法律というか、制度というものの必要性ということはわかりますね。
  286. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 あらゆる委員会、特に予算委員会等においても、私はこの法律必要性を率直にお答えをしておるつもりであります。
  287. 井上一成

    井上(一)委員 なぜ必要かということです。なぜいま必要なんですか。
  288. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 いま申し上げたように、上田委員が理屈を言っておるよりか現地に入って、見た方がわかりやすいということでございますから、私は私なりに長官になりましてから、あらゆる地区の陳情を受けております。そういう意味から大体のことは私なりに掌握をしておるとは思いますが、それよりかはやはり現地に入ることによってこの目で見るということがむしろ確実性がある、こういうようなことから入って視察をさせていただいたわけでございますので、いまその必要性というのが明らかにはっきりとしておる、先ほど来も申し上げたとおりであります。
  289. 井上一成

    井上(一)委員 総務長官、そこには差別があるから必要なのですよ。わかりますね。もう端的に、どうですか、差別があるから必要なのでしょう。おっしゃってください、イエスかノーかで。
  290. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 簡単に申し上げますならば、環境の差別はきわめてはなはだしい、こういうふうに判断をしてまいりました。
  291. 井上一成

    井上(一)委員 いや私の言っていることにお答えくださいよ。そこに差別があるからこの法律が必要だ、こういうことなのです。どうなんですか。
  292. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 私は、法律がなくても予算措置でできる、たとえば今年度は皆さんの大変なお力添えをいただきまして、過去にない二千六百三十億、四二・七%の、万々一を考えて概算要求をいたしております。しかしながら、この法の特殊性というのは幅広く各省庁にまたがっておる、総理府としては事業費というのは一銭もないのです。そういう意味からどこかまとめていくところがなければ大変な混乱を生ずる、こういう意味から総理府総務長官がその窓口、すなわち所管大臣ということで、いまから九年前すなわち足かけ十年前に総理府が連格調整の機能の役割りを果たす、こういうことで総理府に同和対策室というものが設けられておるわけであります。そういう意味から法律がなければできないとか法律があればいいとかということではなくて、法律がなくても予算措置でできるけれども、しかし混乱の起きることを考えたならば、私はこの法律はつくっておく必要がある、こういう認識に立っておるわけであります。
  293. 井上一成

    井上(一)委員 私は、「法律がなくても」云々というくだりについてはもっと詰めた質問をしたいんです。いわゆる特別措置法を制定する同和対策審議会の答申の精神というものをあなたは十分御認識になっていらっしゃらない。私は、法律ということ、この制度というものが差別があるから必要であるということをあなたがお認めになるかどうかということにいま質問を集中しているわけです。本当に差別があるからこの法律というものが必要であるというふうに私は考え、また同対審の答申の精神はそうであり、そのための行政の制度的な問題としてここに特措法がつくられたんだ、こういう認識をしているのですよ。大臣いかがなんですか。もうややっこしいことは要りませんから、簡単明瞭に私が尋ねている核心に触れてお答えをください。
  294. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 私も簡単明瞭に答えておるつもりであります。たとえば審議会の問題についてもよく承知をしております。そういう意味から環境の整備というものをなさねばならない、そのためにはやはり法律があった方が各省庁まとめていくという場合において大変調整機能の役割りを果たしておる、こういう意味から私はこの法律が必要である、こういうふうに申し上げているわけであります。
  295. 井上一成

    井上(一)委員 法律が必要である。それは、私はくどいんですけれども、もう一度どうしてもここを明確にしておきたいのです。差別があるから必要である、差別の実態というものを認識しているからこの法律が必要である、私の考えはこういうことなんです。どっちなんですか。
  296. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 この前行ってまいりましたよ。だから、環境の整備は急がなければならない、こういう認識に立っておるということでひとつおわかりを願わなければならぬ、こういうように思います。
  297. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、生活環境の改善を図る、そのために必要である。生活環境の改善というものは、私は、平たく言えば何も差別を受けている地域だけには限定しない。長い差別を受けているその集落以外にも生活環境を改善しなければいけないところもあるでしょう。しかし、特措法というものは差別を受けている人たちの生活環境を直すために必要としたわけなんです。どうなんですか。ただ向こうへ行って見た、現実生活環境の格差を見て、是正したいんだ、そのために必要なんだ、そういうことはとりもなおさず差別があるから、その差別をなくするために必要だという御認識なのか、そこを聞きたいのですよ。
  298. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 それは、生活環境の整備ということはどこも大事だと思います。そういう意味でこの特別措置法が設けられておるという理由は、ここで御承知おきを願いませんと……。ただ、どういうところでそのことを強調されるのかということは大体私もわかっておるわけでありますけれども、大変皆さんの要請が強くてまた新しく百二十地区の、これもあれをしろとかいろいろな問題が出ておりますが、やはり必要であるというところは新しく追加をしていく必要もある、こういうふうに考えております。  井上委員の質問が大変うまいわけでありまして、いろいろな問題を引き出そうとされることのその気持ちはよくわかりますが、まあこの辺でひとつよろしく。
  299. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと総務長官、あなたの答弁は不謹慎だ、私はまじめに質問しているんだ。何を引き出すとか引き出さないとか……。  本来差別がなければ必要のない法律ですよ。差別の実態がなければこの法律は必要ないんだ。私は好きこのんでこの法律をこうしなさい、ああしなさいと言っているんじゃないのですよ。差別があるからこの法律が必要であるかどうかということについて、あなたの考えを聞いておるのです。担当の総理府総務長官として。それは、われわれは各省に窓口があることをより望みますよ。しかし本来から言えば、差別がなかったら総理府にもこういう行政は必要ないわけですよ。差別をなくするための行政でしょう。総務長官どうなんですか。
  300. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 先ほど来、この法律は必要である、延長すべきである、こういうことを(井上(一)委員「なぜ必要なんだ」と呼ぶ)必要であるということは、目的があるから必要である。これはあらゆる機会を通じて私は、予算委員会等においても数回、上田委員の質問に対しても必要だということを申し上げているわけでございますから、何のために必要か、必要であるから必要である、こういうふうにひとつ考えていただかなければならぬと思います。
  301. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと後ろから言いなさんな。総務長官の本心というか、あなたのお考えをじかに聞かしていただく方がいいのです。  必要であるということは差別があるということを認められた、実態も承知した、こういうことです。だから、私がそういう認識に立ってよろしいですか。
  302. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 まだこの間に消化すべき残事業が三千二百六十億あるのです。まだでっかいのです。そのほかに、その間の物価上昇率、去年とおととしは物価が低迷しておりましたが、それから前というのは狂乱物価であった、こういうような関係から、物価上昇率をも含まずに国費だけが三千二百六十億残っておるわけでございますから、必要であるということは論を待たないことだ、こういうふうに私はいつもあらゆる角度から申し上げておるわけでございますから、この法案がなぜ必要であるかはこういうことで御判断ができるものだ、こういうふうに私は思っております。
  303. 井上一成

    井上(一)委員 総務長官、あなたはまだまだ不勉強だ。いま私が朗読した差別の苦しみ、怒りというものにあなたはまだ同化されておらない。非常に残念だとぼくは思う。しかし、これは機会がありますし、本当にあなたの考え方というものについては、やっぱりもっともっと――後ろに座って、いま長官の耳元で答弁を教えるんだったら、ちゃんと前もってレクチュアしておきなさいよ。  文部大臣、私は二百で結構です。差別があるからこの制度が必要であるというのが私の持論です。差別が温存している、差別の実態がここにあるから特別措置法というものが必要であるということを私は言っているわけなんです。いかがでございますか。一言で結構です。そのとおりなのか、違うのか。
  304. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 私は、同和対策特別措置法というような法律があること自体悲しいと思います。やはりそんな法律を必要としない社会の実現をこそ目指してまいらなければならない、こう考えます。
  305. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ文部大臣、来年で切れようとしているのですけれども、稻村総務長官は必要だとおっしゃっているのですよ。文部大臣は、まだ差別が解消されてない、完全に部落の解放がなされていない、同和教育なんかで現地も十分御認識だろうし、深い見識を持っていらっしゃると思うので、文部大臣、いかがですか。来年三月ではとうていだめだ、まだ差別の事象が随所にある、この法律を残すこと、こんな法律があることは本当に悲しいことなんだけれども、こういう差別の実態がある、これはお認めになられますね。そして、当然延ばすべきだというお考えに立つのかどうか。
  306. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 予算委員会等で同和対策特別措置法の所管大臣の総務長官の答弁も聞いておりますが、延ばす決心をしておりますということを明確に総務長官もお答えをしておるようであります。私も同感と心の中で思いながらその答弁を聞いております。
  307. 井上一成

    井上(一)委員 わかりました。  文部大臣、私は、二年だとか三年だとか五年だとか期限を切ること自体にも非常にこれはいろいろな問題があるわけなんです。私は、一つのめどだ、できれば五年以内にそういう差別を全くなくするんだという行政の主体的な目標だと思うのです。この前時限立法を十年としたということは、昭和四十四年に、十年間に何とか差別をなくそうということで行政努力、行政の主体性をもって、努力目標と言ってはなんですけれども、そういう願望の中で時限立法になったわけなんです。しかし今日まだ差別があるとするならば、その差別解消までこのような制度は必要である、まだもっともっと補強していかなければいけない、日本の法律の制度からいけば補足をしていかなければいけない、そういうことなんです。そういう私の見解に文部大臣、いかがでございましょうか。私はあなたは担当外ですから何年延ばすということをあなたには求めません。でも私が言うように、差別のある限りこの制度については、より差別をなくするために、まだもっと補強しなければいけない部分もあるけれども、差別をなくするまでこういう制度は必要であるという私の持論に対しての文部大臣のお考えあるいは受けとめ方を聞かしてください。
  308. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 いつまでという答えを、所管大臣をそばに置いて私がお答えするわけにはまいりません。それはおわかりいただけると思うのですが、先ほども申し上げましたように、こんな法律を必要としない社会づくりに同和教育の面でなお一層拡充をしなければならない、かようには私は強く考えております。
  309. 井上一成

    井上(一)委員 稻村総務長官、文部大臣は同和教育を通して差別のない社会をつくるために最大の努力をする、こういうことでございます。そういうことで差別をなくする、そしてこの制度が当面、基本的には差別がなくなるまでこの法律は、好まないけれども私は必要とするのではないだろうか。決して好まない。私は決してこんな法律があること自身を好きこのんで訴えているんじゃない。でも、差別があるという今日的な現実の姿を見たら、いやだけれども、この制度によってその差別をなくするために努力をするのがわれわれ国会の立場であり、また行政府である政府の立場でしょう。そうでしょう。だから、少なくとも当面、一定のめどとして総務長官、どういう御認識を持っていらっしゃいますか。
  310. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 先ほど来からの御指摘のとおり、まあ、この法律がなくなる、しかも美しい格差のない社会ができることは、これは当然のことであります。しかしながら、現実においてやはりこの問題の残事業が残されておるわけでありますから、この残事業を消化をするという意味から、私はこの法律は残しておくべきである。しかしながら、やはり行政のめどとして、いまあなたが御指摘のとおり、いつまででもこのままだらだらと行くのがいいのかどうかというと、十年という年月を切ったことも、一つの行政の枠組みの中におけるところの政策である。今度の場合も何年がいいかという問題は、明日小委員会がここで開かれ、活発な議論が出ると思いますが、その中で何年が適当であろうかという問題が必ず出てくる、私はこういうふうにこいねがっておるというのが現状であります。
  311. 井上一成

    井上(一)委員 政府として、担当大臣として、私はここで、小委員会で論議は尽くされて当然だろうと思うのですよ。行政府としては何年で全く差別を解消できる、五年でできるのか、三年でできるのか、二年でできるのか、あるいは半年でできるのか、現実的な物理的な問題も考えた中で、常識的な判断を私は求めておるわけなんです。短時間でこの差別の解消ということは、残念なことだけれどもなし得ないということなんです。だから、一定のめどとしてどれほどのお考えを行政府は持っていらっしゃるのか。
  312. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 きょうは四時から党の首脳会議がありました。そこで、上田委員の質問の時間中でありましたが、実は御了解をちょうだいいたしましてそこに参りまして、私の考え方もはっきりと申し上げてまいりました。そういう意味で、きょうここで申し上げるということは、私の立場として、この法の性格からいって、各党の合意に達するというたてまえを踏んでおりますけれども、いまあなたが私に質問された行政府の責任者としての考え方は、これは党のきょうの首脳会議の場所においてはっきりと申し上げてまいりました。
  313. 井上一成

    井上(一)委員 党の中で行政府の責任者として明確に申し上げられた、非常に結構だと思います。だから、あえて国会のこの審議の場で、ひとつ今度は私の質問に答えて、行政府の責任者としてのお考えをここで披瀝していただきたい。
  314. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 先ほど来も申し上げたように、この法の性格上、私は各党の合意に達するというたてまえをとっております。  そこで、私は、きょうは党の首脳会議においてはっきりと私の考え方を申し上げてきたわけです。そういう意味で、まあここではっきりとお答えをするということより、むしろ明日の小委員会において、各省庁が皆出てまいるわけです。そういう意味から、明日の質問の中で各省庁に対して、できるのかできないのか、これは私は私なりに各省庁の意見をよく集約しております。そういう意味で、明日の小委員会において各党の積極的な意見を開陳していただいて、政府全体の考え方というものを集約して、私が最後にお答えをするということがたてまえではないか、私はこういうふうに思っております。
  315. 井上一成

    井上(一)委員 いや、もう深く追いませんが、先ほどあなたは行政府の責任者として自民党の首脳に話をしてきた、こういうことなんです。自民党の首脳に話をすること、行政府の責任者としてならば、国会の質疑の場で明確にすべきなんですよ、一党人あるいは一国会議員としてというプライベートであったのじゃないのですから。しかし、これはあすの小委員会であなたが明確にされるということだから、私は深く追いません。  最後に、私は重ねて申し上げておきます。  差別をなくすることが私たちの願いであり、そのために国民が一人一人すべてかかわり合いがあるんだという認識に立ってこそ、国民的課題だということになるのですよ。総務長官、おわかりですね。そういうことを考えたら、私は、民主主議だ、いろいろなことを言われているけれども、民主主義の原点というものは部落解放、同和問題を解決することにあると思うのですよ。この問題が解決できない間は、日本に本当の民主主義なんというものは定着しない、私はこういう強い信念を持っておるのです。だから、本当に日本に正しい民主主義を定着さすんだという意気込みをここで私は再度確認をして、私も関連質問の中で短い限られた時間ですから、そのことを確認したいわけですよ。私の考えている民主主義とはこうだ、差別をなくする、この問題が解決しない限り、日本には民主主義は定着しないんだという強い信念を持っておる、そのことでよろしいですね、あなたもその考えを持っていただけますねということを確認したいと思うのです。
  316. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 御質問のとおり、これはやはり国民的な課題である、私は、井上委員の御指摘については率直に認めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  317. 井上一成

    井上(一)委員 最後にもう一点。この特別措置法というものは、ただ被差別部落の国民を対象にしたということでとらえられたら誤りですよということです。それは日本国民全体の問題としてとらえなければいけない。このことで私は、総務長官は全くそのとおりだ、これもまた私の指摘のとおりだとおっしゃるのか、あすの小委員会にその立場に立って臨むというお気持ちを持っていらっしゃるのかどうか、これまた確認をしておきたいと思います。
  318. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 全く御指摘のとおりであります。そういう意味で私は、明日各省庁に対して相当深く入った質問があると思います。それを踏まえて私は総合的にお答えをしたい。いま井上委員のそのことを御指摘のとおりである、こういうことを踏まえて明日はお答えをしたいということであります。
  319. 井上一成

    井上(一)委員 最後に総務長官、あなたはいままで誤った認識を持ち、差別に対する強い怒りというもの、そして重い苦しみというものを十分に御認識を持っていらっしゃらなかった。そのためにも今回は勇気ある判断、決断、あなたのた政治家としての、あるいは大臣としての本当に花道じゃないかと私は思うのですよ。まさにあなたのためにこの審議を私はしているんだ、このように思っているのですよ。きょうも冒頭から私が指摘したのですから、ぜひ正しい認識の中で本当に民主主義を打ち立てるんだという勇気ある決断を期待して、私は質問を終えたいと思います。
  320. 上田卓三

    ○上田委員 先ほど井上先生が申し上げたのは、要するに、この日本の社会から部落差別を完全になくするために法律があるのですね。そのために十カ年の時限立法ができたのですね。ところが、来年三月三十一日に法律が切れるが、いまの状況から見れば残事業が相当ある、あるいは差別事件が枚挙にいとまがない、こういう状況のもとであと何年延ばすか、二年、三年、五年という形が出ているが、年限の問題もさることながら部落問題がこの日本の社会から完全になくなるまで法律が必要なんですねということを聞いているのです。その中には法律がなくても予算を組んだらいいという意見もあるかもしれない。しかしながら、先ほど長官はこの問題を解決するためには法律が必要なんですとおっしゃったのですから、部落差別が残る限りこの法律を存続させて問題の解決のために取り組むことは当然ではないか、こういうように思うわけであります。  さてそこで、この延長の幅の問題でございますが、先般のこの内閣委員会において社会党の理事の上原康助先生、それからまた予算委員会で大出理事を先頭にいたしまして、多くの方々から御質問があったわけでございます。その中で、とりわけ長官は神戸の部落を視察されてその感想も含めてお答えになったと思うのですね。特に大出先生のお話は二年とか三年という短期間じゃなしに、やはりもっと長期の延長が必要なのではないかという問いに対して、長官は短期じゃなしにきめ細かくという形でお答えにもなっておりますし、また総理も本会議において、予算委員会においてもそうですけれども、あなたも含めて今国会で、本来ならば前の国会で決着を見るべきはずであったものが今国会に延びたわけでありますから、今国会で決着がつけば非常にうれしいということをおっしゃられたと思うのです。とりわけ長官は――私は知りませんよ。知りませんが、十二月一日の総裁選をめぐって、だれがなるにしてもやはり通常から言うならば、恐らくまた内閣改造ということになるわけでありますから、そういう意味で、次の新しい組閣であなたがまた総理府の長官になればそれはいいですよ。しかし、ならないとなれば、あなたは国会でいろいろな約束もされ問題の発言もされた経緯から見て、われわれとしてはぜひとも今国会であなたの手で円満解決をしてもらいたい、こういうように思っておるわけであります。  そこで具体的に申し上げたいわけでありますが、残事業が三千二百六十億、これは国庫負担分だけでございますが、この数字に大きな問題があると私は思うので、質問するわけであります。  特に五十年以後ずっと物価スライドの問題がありますね。この点について幾つかの指標といいますか、卸売物価とか消費者物価とかその他いろいろありますが、たとえば消費者物価ということになれば何%増を見込んでおられるのか。それからいわゆる五十年調査以後の百二十の追加の地区指定がありますね。それに対して大体どれだけの事業量を見積もっておるのか、その点についてお答えいただきたいと思うのです。
  321. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 いまの物価上昇率の換算の問題でありますが、延長の問題が大きな一つの山場を迎えておるときでございますから、それは延長の中において事務当局として決められることである。こういうような意味から、ここで事務当局が手を挙げて説明すると、そんなことがあるかないかと来ますから、問題は延長が大きな山場である、こういうふうに受けとめていただきたいと思います。
  322. 上田卓三

    ○上田委員 時間もありませんし、あす小委員会もあるということもありますが、長官、お答えいただかなくてもこちらでは大体わかっておるのです。恐らく消費者物価については二〇%、あるいは若干ふえても統計的には出てくるのじゃないかというふうに思います。しかしながら、そういうものを加えたとしても私は四千億程度のものしか出てこないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  自治省の方お見えでございますので、きょう特に自治省の方に、長官の前であるいは内閣委員先生方の前ではっきりしていただきたいのですが、自治省は、自治体が行うところの同和対策事業に対して起債、同和対策事業債というものを出しておられるわけであります。いわゆる特措法のいうところの補助対象になって十条適用をされたものと、それから市町村、自治体が同和対策事業としてやっているにもかかわらずこの法律の適用を受けないで、補助対象にならないで単独でやっている同和事業に対して自治省が同和の起債を出しているのですね。その実態というものをひとつここで御報告いただきたいと思うのです。
  323. 野村誠一

    ○野村説明員 ただいまの同和対策事業債について、補助対象のものとそうでないものがどうなっているかというような御趣旨の御質問であったかと思います。  私ども特別措置法に基づく事業に対しまして起債を充当しておりますけれども、と同時に地方公共団体の行う同和対策事業、結果として地方債計画の中に同和対策事業債として財政対策の一環として措置しているところでございます。  この同和対策事業、個々の事業につきましては一応都道府県において許可をしているところでございますけれども、その後許可の充当結果の報告から一応集計した数字がございますので、それを申し上げてみますと、卑近の五十二年度につきましては、一応国庫補助事業とされているものが九百二十五億になっております。それから単独事業になっておりますのが七百六十二億、比率で申しますと五五%と四五%、こういう形になっているところでございます。
  324. 上田卓三

    ○上田委員 いま自治省の方の報告で明らかなように、いわゆる全体の、全国の市町村、自治体が行う同和対策事業の中で、国の同和対策事業特別措置法の法律に基づいて補助対象になっておるのが五五%で、あとの四五%が補助対象になっておらないということが出てきたわけですね。五十二年度の数字でそういう形で、五五対四五という数字が出ているのですけれども、この五十年調査の時点では、恐らく全同和対策事業に対する国の補助対象になっている、特措法の対象になっているのは三五%程度だというように私は思うわけです。  そういうことを考えた場合に、長官、あなたが言うところの、総理府が言うところの残事業三千二百六十億は、自治省が同和債として渡しているところの、いわゆる対象外の同和対策事業が含まれていないのですね。だから三千二百六十億に対して、四五%増の部分くらいのものが――あなたの方はこういうふうに見ているけれども、実際はそれ以上の角度で同和対策がなされているという実態があるわけでありますから、さらに自治省が、国が認めていないにもかかわらず同和対策として別に起債を出しているということ自身、私は端的な言葉で言うならば、この起債も含めて国の十条適用にし、各省に対して、同和対策事業の中に入れるべきだ。これは恐らく自治省の財政局長の通達で各省、特に大蔵省に対して、これも同和対策事業にすべきである、法の適用を行うべきであると要請している文書は私も何回も見ているのですね。だから、そういうことを考えた場合、ただ単に三千二百六十億という残事業ではなしに、同和対策事業全体の残事業というものを考えてもらわなければならない。特に私がいま申し上げた、自治省の方が言っている中には学校建設費などは含まれていないのですね。だから、全国市長会か五十二年の十月に調査した残事業は一兆二千億になっているのですね。ところが、これはなぜ多いのかというと、学校建設費が入っているからだということをおっしゃっているわけであります。確かに入っている部分もありますが、そうでない部分も多くあるわけでありますから、そういう数字になってあらわれているということを十分考えて、そういう自治省の方の裏づけから見ても、恐らく一兆円近い残事業が見込まれてくるのではないか、こういうふうにわれわれは推計するわけであります。そういうことから見ても、各党が言っているところの最低五年というものは当然妥当性があるのではないか、あるいは端的に言うならば、全同和対策の残事業と言うならば、私は十年以上かかると見なければならぬというふうに思っておるわけであります。私は関係者の一人でありますから、この部落差別が本当にきょうのいまでも、あすからでもなくなってほしい、本当を言うならば、この十年の法律の中でもう五年くらいで問題が解決すればそれ以上よいことはないと思っているわけです。そういう意味で、九年たって十年に間近に迫っている中で、いまなお特別措置法を五年延長してくれと言っていることは、本当の部落大衆の血の叫びだと私は思うのです。そういう意味で心して聞いてもらわぬと、あるいはバナナのたたき売りのように五年とか三年とかいう形で、とりわけこういう重要な政治課題に対して取引にするというのですか、駆け引きに使うということはもってのほかだと私は思っておるわけであります。  そういう点で、こういう重要な人権問題であるところのこの同和対策事業特別措置法の強化延長については、十二分に腹を踏んまえて、あしたの小委員会で本当に自民党がどうあろうとという言い方はおかしいかもわかりませんが、やはりこの問題の解決は自民党がするのではないのですから、政府の責任で解決を行うということが同対審の答申なりあるいは特別措置法の趣旨だと私は思っておりますので、長官の決断というものを特に要望いたしまして、所感を述べていただいて、若干時間も経過したようでございますので、質問を終わりたいと思います。
  325. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 先ほど来井上さんの質問にもお答えしたとおり、残事業、これは大体国費だけのことを申し上げておるわけでありますから、その中でいろいろな問題があると思いますが、問題は延長するというその中で事務的に詰めていくことはできる。私の方は各省庁の調整、連絡機能の役割りを果たしておるわけでございますから、各省庁の意見は十二分に承っておりますし、また地方の自治体の意見も十分に承っておりますし、また各団体の意見も十分に幅広くいろいろ承っておるわけでございますから、そういう意味で御指摘の点は十分踏まえて対処してまいりたい、こういうふうに思っております。
  326. 上田卓三

    ○上田委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
  327. 始関伊平

    始関委員長 これにて各法律案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  328. 始関伊平

    始関委員長 この際、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対し、岩垂寿喜男君及び柴田睦夫君から修正案がそれぞれ提出されております。  提出者から順次趣旨の説明を求めます。岩垂寿喜男君。     ―――――――――――――  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  329. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付しておりますので、朗読は省略させていただき、その要旨を簡潔に申し上げます。  修正点は、十二月に支給する期末手当の支給割合の引き下げを取りやめることであります。  公務員の特別給につきましては、かつて佐藤人事院総裁が衆議院内閣委員会において、民間の特別給は景気に左右されるが、公務員の方は法律で規定され固定的な形となり、民間が下がってもそれに応じて下げるわけにはいかないと言明しており、また、一昨年当委員会で、特別給については、公務員給与制度の特殊性にかんがみ、民間の動向を考慮し、可及的速やかに従前の支給割合に回復するよう努めることとの附帯決議を全会一致で付しているところであります。しかるに、人事院は従前の支給割合に回復するどころか、一九七六年勧告に続いて今回も期末手当を〇・一カ月分削るよう勧告しているのでありまして、このことは、佐藤前総裁の言明をないがしろにするばかりか、国会の意思をも無視するものと言わなければなりません。  本年の人事院勧告の資料でも明らかなように、特別給の支給総額を基準給与で除して、民間の支給月数を算出して公務員の特別給と比較しているのでありますが、しかし、公務員の特別給は本俸、扶養手当、調整手当の三者だけで算出されることとなっているのでありまして、通勤、住居、寒冷地などの諸手当を含めた基準給与で算出されることにはなっていないのであります。このように、特別給算定の基礎となる給与の官民の相違並びに一九六〇年以来官民比較に際してコンマ以下二けたが削られてきた累積が〇・九七カ月分にも達していることなどを考慮しても、〇・一カ月分の引き下げは断じて許すことができません。  申すまでもありませんが、今回の給与改善は物価の値上がりにも追いつかず、公務員労働者の生活が確保できない低額であったことを考えれば、この措置の不当性は一層明らかであります。  以上が修正案の内容及び提出の理由であります。何とぞ各位の御賛同を賜り、御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  330. 始関伊平

    始関委員長 次に、柴田睦夫君。     ―――――――――――――  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  331. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本共産党・革新共同を代表して、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の内容と提案理由を御説明申し上げます。  修正案の内容は、第一に、期末手当〇・一カ月削減の改定条文を削除すること、第二に、一般職給与法第十三条の特殊勤務手当に関する規定中、同手当が支給される「特殊な勤務」の下に、「(教育に関する業務についての連絡調整及び指導助言に関する勤務を除く。)」との括弧書きを加える改正条文を新たに加えること、第三に、義務教育等教員特別手当に関する一般職給与法第十九条の五の規定を国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員給与等に関する特別措置法の体系に移すとともに、同手当の支給月額の最高を政府提案どおり二万二百円に改めること、以上三点であります。  修正案の第一は、本委員会における復元決議や公務員労働者の反対にもかかわらず、作為的な官民比較を口実に期末手当を一方的に削減することに反対し、その中止を求めるものであります。  第二、第三の修正部分は、人確法に基づく教員給与改定に関するもので、すべての教員の待遇改善を図る教員特別手当の増額を行いつつ、同時に主任手当支給対象の拡大、校長、教頭の管理職手当増額の人事院規則改正と本法案との連動一体関係を完全に断ち切り、あわせてすでに支給された主任手当の撤廃を行おうとするものです。つまり、修正案の第二は、括弧書きを加えることによって主任手当の支給対象の拡大に歯どめをかけるというだけでなく、主任手当支給の根拠となっている人事院規則の条項を廃止しなければならない状況に追い込み、すでに支給されている主任手当そのものを撤廃し、今後も特殊勤務手当の条文を根拠にして主任手当を支給できないようにしようとするものであります。  人材確保法に基づく教員の給与改善は、教員に優秀な人材を確保するために教員の給与の特別優遇措置を定めるものであり、現行法制上は、各職種間の俸給の一定の均衡の上に組み立てられた一般職給与法体系の中で行うべきではなく、教員の給与の特別措置を定めることを目的として制定された教員の給与特別措置法の体系の中で行うべきものであります。  修正案の第三は、教員給与の特別措置として支給されている教員特別手当の支給根拠を一般職給与法から教員の給与特別措置法の体系に移し、法体系上より合理的な姿に是正するとともに、人確法に基づく教員の給与改定を教員の給与特別措置法の体系の中で行うようにすることによって、引き続く改善を可能ならしめ、あわせて人事院規則の改正だけで主任手当の支給や校長、教頭の管理職手当の増額ができないようにしようとするものであります。  なお、わが党の修正案は、教員特別手当増額を政府提案どおり実施することとするものでありますが、これは、以上の措置をとることにより、法律改正事項と人事院規則改正事項との連動一体関係を完全に断ち切ることができるので、すべての教員に一率に支給される同手当の増額を拒否する必要がないからであります。  以上が日本共産党・革新共同提案の修正案の内容と提案理由であります。
  332. 始関伊平

    始関委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。  両修正案について別に発言の申し出もありません。  この際、両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣に意見があればこれを許します。稻村総理府総務長官。
  333. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府といたしましては反対であります。     ―――――――――――――
  334. 始関伊平

    始関委員長 これより一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案並びに同案に対する両修正案、特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  これより採決に入ります。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案並びに本案に対する岩垂寿喜男君提出の修正案及び柴田睦夫君提出の修正案について採決いたします。  この際、念のため申し上げます。  岩垂寿喜夫君提出の修正案と柴田睦夫君提出の修正案中「第十九条の三第二項の改正規定を削る。」の部分は、その内容が全く共通であります。  採決の順序について申し上げます。  まず、両修正案の共通部分について採決し、次に、共通部分を除く柴田睦夫君提出の修正案について採決を行い、最後に、原案について採決いたします。  それでは順次採決いたします。  まず、岩垂寿喜男君提出の修正案及び柴田睦夫君提出の修正案中共通部分について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  335. 始関伊平

    始関委員長 起立少数。よって、共通部分は否決されました。  次に、ただいまの共通部分を除く柴田睦夫君提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  336. 始関伊平

    始関委員長 起立少数。よって、柴田睦夫君提出の共通部分を除く修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  337. 始関伊平

    始関委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  338. 始関伊平

    始関委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  339. 始関伊平

    始関委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、総理府総務長官及び防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。稻村総理府総務長官。
  340. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 一般職及び特別職給与改正法案につきましては、ただいま議決を賜り、深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
  341. 始関伊平

  342. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛庁提出、職員給与法の一部改正案につきまして、連日の御審議をいただきまして、ただいま採決をいただきまして、まことにありがとうございました。
  343. 始関伊平

    始関委員長 なお、ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  344. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  345. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る十八日水曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十五分散会      ――――◇―――――